1 :
初のスレ建て:
3 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 19:11:38 ID:/dPLzX2s
申し訳ありません。
前のスレを投下の途中で使い切ってしまいました。
ですので、もう一度こちらで最初から投下させて頂きます。
誠に申し訳ありません。
7 :
1/10:2007/10/02(火) 02:33:41 ID:j6s1yNec
夕日。
なぜかその日は、夕日の色が赤過ぎて嫌な感じがした。
放課後、ぼくとミュウマはいつものように待ち合わせて、一緒に帰っていた。
途中にある人気の少ない公園の中を、やっぱりいつものように何度かぐるぐると回る。
帰ってしまうのが惜しい気がするからだ。
また明日逢える。そう解ってはいても、今、逢っていることのほうがずっと大切に思える。
彼女の温もり。柔らかさ。きれいな瞳。
それを手離したくない。そばにいたいと思う。
唐突なエッチから始まったぼくらの恋愛だけど、このごろやっと気持ちが追いついてきた気がする。
彼女は最初からぼくのことを好きだったんだろうけど、ぼくはというと正直な話、エッチに流されててよく解らなかった。
本当に好きなのか、それともただ可愛い女の子とエッチできるのが嬉しいだけなのか。
彼女にしてみれば、好きな人にこんな風に思われていたなんて最悪かもしれない。
でも、今は違う。
胸を張って、彼女を好きだと言える。
ただ……ぼくはぼくの中にいる、彼女が本当に好きだった“向こうの世界の王子”に嫉妬している。
強く逞しく男らしい、ぼくとは全然違う見知らぬぼく。
誰もいないベンチのそばで座るでもなく、ただ、ぼくは軽く溜息を吐いた。
ぼくと腕を組んでいるミュウマが見上げて、小首をかしげた。
「……ナオ?」
彼女の言葉は少ないけれど、その静かで優しい響きはぼくにとって魅力的だ。
ぼくは頭を振って、答えた。
「なんでもないよ」
ぼくの目をじっと覗き込む。
ふいに手を伸ばして、ぼくの頭を撫でた。
顔をほんのり赤く染めて、微笑む。
急に涙が込み上げてきた。
「ミュウマ!」
「ひゃん?!」
ぼくは思い切り彼女を抱きしめた。
8 :
2/10:2007/10/02(火) 02:34:25 ID:j6s1yNec
風に揺れる木の葉の音も街の音も消えて、お互いの鼓動だけが聞こえる。
ほどよい重みを持った、しなやかで柔らかな温かさ。
好きだ。好きなんだ。
この気持ちに前世とか異世界とか関係ない。
「ナ、オ……くる、し……」
「あ、ご、ごめん」
力を緩める。
少し離れて、彼女の顔を見つめた。
真っ直ぐだけど、潤んだ目でぼくを見返す。
彼女は頬を一層赤くして、そっと目を閉じた。
彼女の唇に、ぼくの唇を重ね合わせた。
魔法の時間。
ぼくは彼女を木が覆い茂って一歩先に暗くなっている林の中に、手を繋いで連れて行く。
彼女も黙ってついてきた。
しっとりと足元の葉が濡れている。
奥にあった、やや太めの幹に優しくミュウマの背をもたれさせる。
顔が近い。お互いの息が掛かる。
ゆっくりと距離を縮め、またキス。
今度は深い。
「ん……ちゅ、ちゅぷ……んん」
その体勢のまま、制服の上から胸を触る。
薄い小学生が着けるようなブラの奥に、乳首だけがぷっくりと硬くなっていた。
それを手のひらで転がす。
「ん! んふぅ! あ」
ビクビクと身体が反応した。
「ん、んん……るぁ……」
彼女がぼくをぎゅっと抱きしめた。
ぼくは彼女の唇を執拗に求める。
「ん! んふ、ちゅぱっ、ぷふっ……」
ぼくは制服の中に手を滑り込ませる。
じかにその先端のしこりに触れた。
「ひんぅ!」
ぼくは彼女からちょっと離れた。
顔を見ると全体が赤く、口は半開きで目の焦点が合っていない。
声は無く、吐息と喘ぎだけが漏れる。
「あ、はぁっ! はぁはぁ、ああっ、あっ……」
ぼくは彼女の下半身へ手を伸ばした。
制服の短いスカートをまくり、もう直接、綿のパンツの中に手のひらを入れた。
滑らかなお腹の下に少ない陰毛を感じた。
そしてその先には、熱くとろけて淫水が溢れている秘裂があった。
「うわ、すごいよ……べちゃべちゃだ……」
指の先だけではなく、手のひら、手の甲、全てが濡れてしまう。
ミュウマは喉の奥から喘ぎを上げた。
「あああっ! あひゅう、うう、はっあっ!」
9 :
3/10:2007/10/02(火) 02:35:08 ID:j6s1yNec
彼女の腰がうねうねと、指を求めるように蠢く。
「ホント、ミュウマはエッチな子だなぁ……」
この言葉に彼女は弱い。
それを聞いた途端、何かに憑かれたように、すでに大きくなっているぼくのモノを掴んできた。
かすれた声で、淫蕩なセリフを吐く。
「……あ、あたし、スケベでぇ、え、えっちなの、お、だから、は、はやくコレほし、いの……」
彼女はしばらく、ぼくのモノをしごく。
「はぁ、はぁ……か、たいよ、すっ、ごい……」
彼女はズボンのジッパーを素早く下ろすとトランクスの前を広げ、ソレを取り出した。
「……濡れて、あ、熱い、よ……ナオ……」
柔らかに握って、リズミカルに擦る。
気持いい。
「う、うう……ミュウマにもしてあげる」
ぼくは彼女の秘部に人差し指と中指を同時に二本、挿れた。
つるりと奥に達した。
「んぁぁぁっ! あ、あっあっあああ……」
ガクガクと身体全体が小刻みに震えたかと思うと急にがっくりとぼくにしなだれかかってくる。
「……あ、足、ちから、はぁ入ら、な……」
「ちょっとイッちゃった?」
「う、ん……ちょっと……イッちゃっ……た」
大きく肩で息をするミュウマ。
ぼくは、彼女の股間から手を抜くと、両手でパンツを引き下ろした。
「ん……す、すーすーす、る……」
ぼくは彼女を抱きかかえるようにして、股間のモノをそこに挟んだ。
「うあっ! ナオ、ナオの、硬いので、めくれちゃうぅ!」
一気に彼女の愛液が溢れ出した。
彼女がぼくの胸に抱きついて、懇願した。
「いやっ、いや、擦るの、いやあ! 入れて入れて、い、入れてぇ!」
ぼくは彼女から離れると、指示した。
「さ、向こう側の木に手をついて」
「ん……こう、か、な」
彼女は言われるまま、背後からセックスをする体勢になった。
まくれ上がったスカートの下に、未発達ながらも丸みを帯びた白いお尻が見える。
「じゃあ、するよ」
ぼくはもう破裂寸前のモノを、そこにあてがった。
だが、まだ挿入せず、ぐにぐにと擦る。
「ナ、ナオぉ……じ、らさな、いで……」
ぼくは頷いた。
「じゃあ今日もおねだりしてよ。ちゃんとぼくのほうを見ながらね」
10 :
4/10:2007/10/02(火) 02:35:40 ID:j6s1yNec
彼女は体中がピンクに染まった。
彼女は息を飲むと、ゆっくり言った。
「……な、ナオのぉお、おチン……ポぉ、あたし、のぉおま●こに挿れて、くらさい……」
ぼくはニッコリ微笑んだ。
「よく言えまし……たっ!」
ズン、と一気に挿入する。
中が熱く滑って、ぎっちりと奥まで埋まる。
彼女の背中がぐっと反った。
「ふゅあぁぁぁっ!」
ぼくはそれを見ながら、腰を律動させた。
ぱんぱん、とミュウマの尻肉と、ぼくの太ももが当たる。
その間からは、ぐちゅぐちゅといやらしい体液の音が漏れ響く。
「あっあっ、あーっあっ! ナオぅ、す、すご、いっあああ、るぁっ、うふぁ!」
彼女の中の締め付けが、きゅきゅっと強まる。
「う、あ、み、ミュウマの中、も、すごいよっ! あ、はぁはぁはぁっ……」
ぼくは彼女の腰骨のほうを持って、さらに奥深く突いた。
「ひぅっ! おく、おく、きて、きてる! おく、ナオチンポ、きてるぅ!」
「はぁっはぁっ、ミュウマ●コ、きもちいいよ、う、はぁっはっ、で、出そう、出る、う」
もう何を言っているかよく解らない。ただ、その快感に酔い痴れていた。
「ナオチンポ汁出して! なおちんぽぉ汁いっぱいぃぃ!」
「あ、ああ! ミュウマ●コに、出るよ! 出るでるでる――」
限界が来た。
獣のように、腰を振った。
「ああああっ! ナオ、なおちんぽッ! いふゅっ! いふゅのっ!」
「う、うあ、出るッ! みゅうま●こ出すよッ!」
自分のモノが一瞬、膨れたのがわかった。
「うわぁあああああ――ッ!」
「い、いふゅぅぅぅ――んんんッ!」
ダクダクと彼女の中に全てを注いだ。
「はぁ……な、なおちんぽじる、で……おなか、いっぱいぃ……」
ぼくがゆっくりと、ソレを抜くと中からだらだらと精液が垂れてきた。
お互いの事後処理をして、ベンチのある開けた道のほうへ戻った。
またしばらく歩く。
ぼくは、決意した。
ぼくにとってどうしても言わなければいけないことを言う。
「ミュウマは、ぼくのこと……生まれ変わりの王子じゃなく、佐原ナオユキとして、好きなの?」
彼女は少し、目を見開いた。
すぐに哀しそうな顔をして、つぶやく。
「……ごめん、なさい……」
そのまま、ぼくの腕を振り払って逃げるように駆けだした。
11 :
5/10:2007/10/02(火) 02:36:20 ID:j6s1yNec
「あっ、ミュウマ!」
日が落ちて、すっかり藍色に染まった公園の中で、ぼくは彼女を追った。
「ん? え、なんだこれ?!」
唐突に世界から色が無くなった。
ミュウマの悲鳴が聞こえた。
そっちをみると、人の姿になったエルがミュウマをかばっている。
さらにその向こうで、黒い霧のようなものが蠢いていた。
エルが叫んだ。
「くっ! なぜだ! おまえも還れなくなるのに!」
その霧のようなものが徐々に、人間の形になっていく。
「ゆるさぬ……ミュウマ。おまえはなぜ、どこにいっても幸せになれるのじゃ……」
霧は金髪の女の子になった。ミュウマと同じかそれ以下の背の高さだ。
よくゲームでみるような魔法使いっぽいフードを被っている。
目は青く、吊り目で鋭い。髪は真ん中分けでそれぞれ、結っている。
彼女は手に持っている、先に丸い玉が付いた金属の杖を振りかざす。
「出でよ! ライノゴン! 死すがよい! ミュウマ!」
杖の先が赤く光ると空間が円形に歪み、その奥から何か大きな生き物が姿を現してきた。
ぼくは身体が勝手に動いた。
「やめろ!」
魔法使いに体当たりを喰らわせた。
「きゃぁっ!」
ちょっと声が可愛い。
いや、そうじゃない。
ぼくはその子に覆い被さるようにして、その杖を持つ腕にチョップした。
杖が落ちた。光が消える。
だが、遅かったみたいだ。
エルが叫ぶ。
「ナオ様! 早くそこから逃げて下さい!」
地響きが聞こえる。
猛り狂った獣の声が迫ってきた。
一角のサイに長いしっぽの生えたトカゲにも似た魔獣。
あの夢で見たドラゴンそっくりだ。
「くっ!」
ぼくは魔法使いの女の子を胸に抱いて、転がった。
次の瞬間、すぐ横を恐ろしく重い足音が駆け抜ける。
ぼくは立ち上がってミュウマのほうへ向かう。
12 :
6/10:2007/10/02(火) 02:37:29 ID:j6s1yNec
「ミュウマ! エル!」
エルがミュウマを腕に抱いて、片手からなにか魔法陣のようなものを出し、その猛突進を防いでいる。
魔獣は攻撃態勢なのだろう、頭を思い切り低くして、ツノを真っ直ぐ前に突き出していた。
「く……!」
エルの表情から、それを抑えるだけで必死なのが伝わってきた。
どうすればいいんだ……どうすれば!
その時、ふいにぼくの中から声が聞こえた。
『ナオユキ。聞こえるか。俺はナオ王子だ』
えっ! そ、そうなの? 王子にしては口が悪いなぁ。
『ほっとけ。それであのライノゴンだが、俺が倒してやってもいいぞ』
ど、どういうこと?
『俺はヤツに借りがある。ミュウマを守るためにヤツと戦って死んだんだ。あのときはまだヴァーディアが完全に覚醒していなかったからな』
そうか……あの夢はそういう意味だったのか。
『だが今の俺は違う。おまえに転生し、ミュウマを抱くことで完全に目覚めたんだ。俺に任せな。ヤツを葬ってやる』
ありがたい話だ。
だが……ぼくは反発した。
「いやだ。ぼくはぼくの力でなんとかしたい。ぼくがぼく自身でミュウマを助けたいんだ」
王子は軽く笑った。
『ふ、そうか。ならやってみるんだな。だが無理ならすぐ出て行ってミュウマを助けるぞ。俺だってミュウマが大事なんだ』
ぼくは頷く。
そう、だよな。王子だって命を張ってミュウマを助けたんだ。
今のぼくと同じか、それ以上にミュウマのことを好きなんだ。
でも。だからこそ、ぼくが今度は命を張る番なんだ。
ぼくは魔法使いの女の子に声を掛けた。
「なにか武器、持ってない?!」
彼女はぼくを見つめてぼんやりしていた。
彼女に駆け寄って、肩を揺する。
「ね、何か武器持ってないの!」
彼女は我に返ったように、顔を真っ赤にして答える。
「えっ! あ、そ、そんなの魔法使いが持ってるワケないのじゃ!」
ぼくはしかたなく、そこに転がっている杖を手に取った。
「借りるよ!」
「あ、ちょ! それあたしの!」
ぼくは杖を振りかざして、魔物に突進した。
「うおぁぁぁっ!」
エルが抑えている頭を強く殴りつける。
物凄く硬い衝撃が手に走る。
しびれて、杖を落としそうになる。
だけど、もう一度握り締めて、二回、三回。
全然効いてない感じだ。
エルの苦悶の表情が、その限界を物語る。
マズイ!
13 :
7/10:2007/10/02(火) 02:38:19 ID:j6s1yNec
その時、ミュウマがひと言だけ、叫んだ。
「ツノ!」
一瞬、なんのことか解らなかったがすぐに理解した。
「ありがとう! ミュウマ!」
ぼくは、攻撃目標を変えた。
その頭に生えている一本角の真ん中に狙いを定めて、杖を振り下ろした。
硬い物同士がぶつかる高い音が響いた。
魔物の一本角は、見事に折れ砕けた。
同時に杖も折れてしまう。
魔獣は狂ったような雄叫びを上げて横に倒れ込み、悶え苦しんだ。
やがて動きが止まると、砂のようなものになり、崩れ消え去った。
「はぁっはぁっ……」
穏やかに、世界に色が戻ってきた。
「よくやった。おまえの力だけでここまでやれるなら、俺はもう用済みだな」
目の前にスッと、ぼくとそっくりの男性が現れた。
だが目は鋭く、口元は不敵な笑いを浮かべている。
全身は甲冑に包まれてるが、やや透けていた。
彼以外の全員が一斉に驚いた。
「ナオ王子!?」
彼はみんなに笑いかけた。
「ミュウマ姫、エル、それにキア。久しぶりだな」
エルは平伏した。
ミュウマは胸の前でぎゅっと手を握り、泣いている。
キアと呼ばれた魔法使いの少女は、ガクガクと震えだした。
彼はひとりひとりに話しかける。
「ミュウマ姫。ナオユキを通じてあなたを抱けて光栄です。
それで気付いたんですが、あなたはもう本当は俺じゃなく、ナオユキを愛してらっしゃる。
でも彼を傷付けたと思い、言えなかったんですね。それで逃げた」
ミュウマはコクコクと頷いた。
そうだったのか……。
「大丈夫ですよ。彼は俺じゃあなく、完全に彼になる。ですから末永く幸せになってください」
ミュウマとぼくは自然に手を繋いでいた。
14 :
8/10:2007/10/02(火) 02:39:01 ID:j6s1yNec
「エル。よく今までミュウマ姫を守ってくれた。これからはナオユキも含めて、今まで以上に色々と世話をしてやってくれ」
「御意」
エルは短く答えた。
相変わらず、ふだんはクールだ。
彼はキアと呼んだ魔法使いに振り向いた。
彼女は怯えて、逃げようとしたが足腰が立たなくなっているようだった。
「キア上級魔法官。逃げなくていい。俺の部下だったおまえが俺を殺したのは間違いだったのだろう」
キアがハッと息を飲んだ。
「おまえは俺をミュウマ姫に盗られるのが嫌だったんだな。だから、あんな事をした。でも、俺が命を賭けてミュウマ姫を守るのは当然だろ」
キアはうつむいてしまう。
地面に雫がぽろぽろと落ちる。
「あ、あたしは罪を償いたかった……謝りたかったのじゃ……だからこの世界でのミュウマの情報を密かに集めておった……じゃが……」
王子がその言葉を続けた。
「ミュウマ姫は俺の転生したナオユキと出会っていた。それを知ったおまえは嫉妬に抗えなかった。
還れない事を知っていながら、ミュウマ姫を殺しにこの世界に来たってわけだ。そうだろ」
ガックリとうなだれるキア。
王子は快活に笑う。
「心配ない。これからはナオユキがおまえの相手をしてくれる」
って、ええ?!
「ナオユキは俺のヴァーディアが目覚めた身体を持っているからな。精力もすごいぞ?」
キアの顔が一瞬で茹で蛸になった。
だが、なんとなく嬉しそうだ。
「はっはっは。だが、罰はあるかもな。エルもそうだが王族以外はこちらの世界に来ると、昼は別の生き物になるらしいからな」
「うにゅ……」
キアがまたかくっと首を曲げ、呻いた。
15 :
9/10:2007/10/02(火) 02:40:26 ID:j6s1yNec
彼はぼくのほうを向いた。
「さて、ナオユキ。そろそろ時間だ。俺はおまえと完全に一体化する。
もうこうやって話すこともないだろう。三人を頼んだぞ。じゃあな」
彼があっさりと別れの言葉を口にした途端、彼がぼくに入ってきた。
そのとき。
ぼくは、ぼくになった。
あれから。
ぼくの身体の弱さは完全に直り、どちらかというと筋肉質でしっかりした身体になった。
ミュウマは相変わらず、言葉は少ない。でも頭が良いから、どんどん覚えている。
とは言え、ぼくのせいで性的な言葉からだけど。
エルはキアと夜だけは仲が良い。もちろん性的な意味で。
お互い、魔力で部分的に男になったり女になったりしている。
キアはぼくを求めることもあるがその時は必ず三人一緒だった。普通ならもたないけどね。
ちなみにキアの昼の姿は、猫だった。トラジマでけっこうかわいい。
そんな、ぼくの不思議でエッチな体験は、今も続いている。
10レスの予定が一つ早く終わりましたが、以上です。
これでこのお話はお開きです。
ここまでお読み頂き有り難うございました。
それでは失礼します。
見事なSSでした。GJ!
そして
>前スレかおるさとー氏
GJ!
肩の力を抜いて明るく読める作品も素敵ですね。
クリームコロッケが食べたくなりました。
続編にwktkです。
演技であるという展開希望w
>>16 coobard氏 GJです!
終わってしまうのは寂しいですねー。広がりそうなネタなのに。
>もちろん性的な意味で。
吹いたw
20 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 17:20:45 ID:ylqguTP0
この話は終わりだけど続編あるんだよね?
とにかくGJ!
ごめ、あげちゃった
某オレターンスレから来ました。
投下しますね。
エロ無しですみません。
このスレ初なので何か問題があればツッコミヨロです。
【雫と涙と告白と】
それはまあ、雫は確かに恋愛音痴なヤツなのだが。
しかしそれでも年頃の女の子には違いない。女の子の気持ちは女の子に聞くべきだ。そう
オレは思うんだ。
「オレさ、好きな娘ができたんだ」
「――真琴が? ……誰を?」
手持ち無沙汰に長い髪をくるくると弄んでいた雫は、やや不思議そうな表情でオレを
見上げてくる。
二人きり、放課後の部室。
オレは部活仲間の雫に対し、恋愛相談を持ちかけているところだった。
雫はオレの親友だ。
異性だが、コイツとオレとはなんでも話し合える貴重な間柄だった。
人見知りで無愛想。そのうえ人付き合いも下手くそ極まる困ったヤツなのだが、真面目で
思いやりがあり、人を見る目も確か。見た目こそとても高校生とは思えないちびすけだけれど、
オレは彼女を他の誰よりも信頼している。
「雫のクラスのさ、加奈ちゃん。イイ娘だろ?」
雫はその瞳を子供のように大きく見開いた。びっくりおめめ、というやつか。
――へえ、コイツでもこんな表情ができるんだな。
普段の雫はいつだって無表情だ。驚いたり笑ったりするようなことは滅多に無い。
無口。
物静か。
ポーカーフェイス。
そんな言葉が服を着て歩き回っているようなヤツなのだ。
恐らく全校で一番雫と親しくて、全校で一番雫を良く知っているはずのオレでさえ、彼女の
笑顔を見た記憶はほんの数えるほど。驚いたところなんて、見るのはこれが初めてだ。
「――なんだよなんだよ? オレが誰かを好きになったことが、そんなに驚くような
ことなのかよ?」
「…………ん。……違うよ、真琴」
雫はくすりと笑う。
おちゃらけぎみなオレの言葉への反応にしては、やけにその笑みは寂しそうで切なそうで。
じっとこちらを見つめてくるその黒目がちの瞳に、オレはかなり戸惑った。
いまにも泣きだしそうに見えたんだ。
何を思ってなのかはわからない。
ただ、ある意味とてもこいつらしい、内心をごまかして隠そうとする微笑みであることは
よくわかる。それが更にオレをうろたえさせる。
なんだよ、どうしたんだよ雫? オレたちの間で隠し事なんてナシだろ?
オレの片思い相手の加奈ちゃんは、雫の数少ない友達だ。
誤解されやすいタチの雫は、学校では昔から孤立しがちだった。目立っていじめられる
ことこそ無いけれど、邪険に扱われることも多い。
そんな雫にとって加奈ちゃんは、オレを除いた中では一番の親友と言えそうだった。オレが
加奈ちゃんのことをイイなと思ったそのきっかけも、雫への接し方がとても優しげだったくらい
なのだから。
ひょっとして、取られてしまうと思っているのだろうか? オレを加奈ちゃんに、あるいは
加奈ちゃんをオレに。
「……真琴はニブいから」
「んなっ?」
「……そういう方面に興味は無いと思ってた」
ぽつりぽつりと囁くような声で呟く雫。
「なっ? なんでだよ誤解だよ! ニブくねーし! オレだって女の子好きだよ大好きだよ!」
「…………ん。いいよ、協力する」
「……あ、……えと、そか。サンキュ。……んで、どう思うよお前の目から見て。オレに
勝算はありそうだと思うか、正直なところ」
「…………」
雫は黙って一つこくりと頷いた。
「ん? そりゃ、オレはこのままでコクっちゃっても大丈夫ってことか?」
「…………」
こくり、とまた一つ。
「やったーっ、そか。じゃあオレ頑張るわ。サポートよろしくな?」
「……ん。了解」
言葉では喜びつつも、オレは内心複雑だった。
自分の科白が、自分のものじゃないみたいに空気中を上滑りしていく。
先ほどの雫の表情が頭から離れない。胸に刺さった小さな棘がどうしても抜けてくれなくて、
ただ、じんじんじんと心の中を疼かせる。
――な、雫。
本当はお前、寂しいんじゃないのか?
オレ、仮に加奈ちゃんと付き合うことになったとしても、お前のことを蔑ろにしたりは
しないぜ。絶対だ。それは加奈ちゃんも一緒だと思うぜ?
だから。
だからさ。
そんな寂しそうにするなよ。元気出してくれよ。
夕暮れだ。
窓から差し込んでくる橙色の光の束が、妙に目に痛かった。
◆◇◆
翌日から、雫はオレの背中の後押しをしてくれるようになったのだが。
でも、どうにも気が乗らない。
加奈ちゃんのことを好きなはずなのに、少しも気分は弾まない。
脳裏に浮かぶのは、ただ泣きそうな雫の顔ばかり。
……やれやれ、だ。どうかしてるよなオレも。
昼休み、雫のクラスに顔を出すと、彼女はさかんにオレをけしかけてくる。
加奈ちゃんとオレとを引き合わせ、雫自身はというとなんのつもりかシャドウボクシングの
真似事だ。
ジャブだフックだアッパーだ。
ちびっこボクサーここにあり。ってなんだこれ?
いけっ! やれっ! ぶちかませっ!!
そんな科白が聞こえてきそうな仕草である。
……オレをたきつけているつもりなのかね? もう訳わからんのだが。
「あー、加奈ちゃん加奈ちゃん? 雫がまたなにかオカシナことをしはじめてるけど、
気にしないでやってくれな」
「あはははっ。雫がおかしいのはいつものことだから気にしないよ? でもさ、マコトくんも
雫の面倒大変だねー」
「おっ、オレの苦労をわかってくれるのか、嬉しいね。誰にも理解されないんだよな、
コイツの保護者でいることの大変さ」
「ふふーん。とかなんとか言っちゃってー。わかってるんでしょ、そこが雫のかわいいとこ
なんだって。よろしく頼みますよ? マコトくん」
そんな会話。
加奈ちゃんとの間を取り持ってくれている雫には悪いのだが、恋愛や告白みたいな流れには
ちっともならないし、そうする気にもなれなかった。
「……………………」
なんだよ雫。そんな怖い目で睨むなよ。
「…………ヘタレ」
るせーよ。このちびっこ。
◆◇◆
一週間が過ぎた。
雫はことあるごとにオレと加奈ちゃんを二人っきりへと仕向けてくる。
いいかげん、さすがにオレも気がついた。自分が加奈ちゃんに惚れた訳ではないってことに。
素敵な娘だと思う。可愛らしい、イイ娘だと思う。
でも、それだけなんだよな。
雫と出会ったばかりの頃を思い出す。
あれは確か、4年以上前、中学に入学したての頃だったか。
ガリガリ君アイスにかじりつきながら歩く、ある春の日の、いつもの帰り道。
グラウンド脇の公園で、数名の男子生徒に絡まれているクラスメイトを見かけた。
まだ一度も会話したことのない少女だった。同じクラスで無かったなら、どう見ても
低学年の小学生にしか思えない、小柄でちんちくりんな中学生。
彼女は震えながらも両腕を大きく広げ、背中に何かをかばっていた。背後を見れば、
マジックでいたずら書きされた小さな子犬が一匹、やはりぷるぷると震えている。
ははん。なるほどね。
チビがチビを助けてるわけか。
「テメー、ガキのクセに生意気ぁんだよっ!」
「糞チビが、邪魔すんじゃねーよっ!」
「……っ」
いつも寡黙な彼女だった。
こんなときでさえ少女は一言も声をあげようとはせず、助けも呼ばずにただ少年たちに
刺すような視線を向ける。泣きそうなのを、必死にこらえて。
「なあ、この女にもイタズラ書きしてや――んぶはっ!」
べちゃりん。
オレが投げつけた食いかけのガリガリ君ソーダ味は、中央男子の顔面にクリーンヒットした。
ちぇっ、まだ半分も食ってなかったんだぜ?
「あーあ。勿体ねえなあ、ちくしょーめ」
「な、何だっ、テメーも邪魔すんのかっ!」
「おう。やるか? 相手してやるぜ」
オレは唇の端だけで笑いながら、拳を突き出して彼らを睨みつける。
「その子はオレの連れだ。――お前ら、そいつをどうする気だって?」
腕っ節こそからっきしだが、目つきの悪さと背の高さ、ついでにハッタリと逃げ足には
自信のあるオレだった。
いざとなれば、彼女を抱えてダッシュしよう。そう思っていたのだが。
「……ちっ」
そこまで子犬に執着心は無かったのだろう、少年たちはすごすごと逃げ去っていく。
ああ、っていうか多分この娘、小学生と間違われてたんだろうな。それで与し易しと思われて
いたに違いない。
オレは目潰し用にと隠し持っていた一握りの砂をぱんぱんと払い落とす。
「よ、アンタ、大丈夫だったか?」
相変わらず声こそ出さないが、少女は何度もぺこりぺこりとお辞儀する。
顔つきこそ無表情のそのままだけど、精一杯謝意を伝えようという気持ちは十分に伝わってくる。
なんだか、面白いヤツだ。
「えーっと、同じクラス、だったよな? すまん、まだ名前覚えてねーんだ。……いいって、
もうお礼はいいから気にすんなよ」
ポーカーフェイスは崩さずに、ただ、こくりと頷く少女。
「しゃべれない、訳じゃないんだよな? 話すことはできるんだろ?」
こくり。
どこまでも無表情な彼女だ。
ただ、なぜかそのとき、オレは彼女が辛そうに見えた。どこか話をするのが苦痛そうに
見えていたんだ。
後から聞いた話だが、彼女は幼い頃、喉の病気でガラガラな声しか出すことができなかった
そうだ。今ではもう完治しているのだが、その頃にいじめられたことが原因で、人と
言葉を交わすのが極端に苦手になってしまったようなのだ。
「や、う、えと、責めてる訳じゃねえよ? 会話が苦手なヤツだっているもんな。無口だって
立派な個性だと思うぜ? 無理に明るく振舞う必要なんてぜんぜんねーし」
「…………」
「……たださ。誰かに助けを求めたり、大事なことを伝えたりしたいときにはさ、自分の
できることはどんなことでもやってみるべきじゃねーのかな? できるかぎりの大声で、
助けを呼ぶべきじゃねーのかな」
「……」
「いや、すまん偉そうに。ただ、何かあったら心配だしさ、あの――」
「…………ありがとう、真琴くん。私、雫」
か細くも、可愛らしい綺麗な声で、彼女はそう答えてくれた。
――これが、オレが雫の声を始めて聞いた瞬間だった。
思えば、最初からオレは雫を気に入っていた。
愛すべきヤツだと思ったし、すぐに親友にもなった。
はじめからあいつはオレにとって大事な人間だった。雫が悲しんでいるのを見たそれだけで
他の女の子への思いなんてどこかへ霧散してしまうくらいに、誰よりも大切な少女だったんだ。
しかし。
だけどさ。
オレは雫に惚れているのだろうか?
そんな自覚はこれっぽっちも無いんだ。
雫のことを女の子として見たことなんて、これまでにただの一度も無い。これからそんな眼で
見ることだって、とてもできそうな気はしない。
なにしろ16歳になった今でさえ、あいつは小学生と見間違えそうになるちびっこだし、
色気のカケラもない、何を考えているかわからない無愛想なヤツだし、第一雫はオレの
親友であって――。
「あーもう訳わからん。めんどくせーなあ、ほんと」
「……何が?」
「のあっ!」
ひとりごちたオレに、いきなり後ろから声がかけられる。
雫だ。いつもながら、気配もなく忍び寄る特殊諜報員みたいなヤツだった。おまいはゴルゴかよ。
「びっくりさせるなよ。別に、なんでもねーし」
「……真琴、元気無さそうだよ」
「んー、男の悩みってヤツだ。お前には縁の無い話だよ」
「……ああ。エロいこと」
「ちげーよっ!!」
◆◇◆
放課後だ。
いつものように部室に向かったオレは、扉の前で通せんぼしている雫を見つけた。
「雫。何してんだ?」
「…………」
何も言わず、左右に突っ張らかせた両腕をぷるぷると震わせながら、雫は上目遣いでオレを
見つめてくる。
どうやら部室には誰かがいる様子。中に入るな近寄るな、覗き込んだりもしちゃだめだ、
ということらしい。
しかし理由も聞かずにそうもいかないわけで。雫は必死にこちらを遮ろうとしてくるが、
30cmにもなろうかという身長差ではオレに抗えるはずもなく。
「?」
オレは扉の隙間から部室の中を覗き込む。
中にいたのは、うちの部長と加奈ちゃんだった。
いつの間にそんな関係になっていたのやら、二人は熱いキスの真っ最中。
「…………」
まだ雫はオレを必死に遮っていた。
加奈ちゃんをオレに見せないように。オレが傷つかないように。オレのために。
雫は広げた両手を震わせたまま、泣きそうな瞳でオレをじっと見つめ続ける。
どうして。
どうしてお前がそんなに必死になってるんだよ。
どうしてお前が泣きそうになってるんだよ。
その姿が、初めて出会ったときのものと重なって見えた。
――どうしてこう、こいつは他人のことになると一生懸命なんだろうな。
何を言い訳することもなく、誰にどう思われるかも構わずに、ただ、必死に誰かのために。
ほんっと、お前、莫迦だろ。
そしてどうやら、オレは莫迦なヤツが大好きなようだ。
「もう、いい」
オレは無意識のうちに、雫をぎゅっと抱きしめていた。
「悪かった。……オレが加奈ちゃんに惚れたって話な。アレ間違いだ」
「…………?」
「気がついたんだ。もっと別のヤツのこと、昔からずっと好きだったってことにさ」
「……」
今自分の抱えている気持ちが恋なのか友情なのか、それはいまだにわからない。
そもそも恋がどんなものかさえ答えられないオレなのだ。
でも、そんなことはもうどうでもよかった。
オレにとって、誰が一番大切な女の子なのか。それははっきりしていたのだから。
「――ソイツは恐ろしく無口で、人見知りが激しくてさ。オレはとにかくソイツを守って
やりたくて、それだけで手一杯で。その自分の気持ちが恋なのか友情なのかもよくわからなく
なっちまってたんだ。そんなことで悩んじまってた」
「…………真琴?」
「でも、なんかバカバカしくなったんだよ。オレがソイツのこと好きだ、ってことには何にも
変わりないものな」
大きく一つ深呼吸して、オレは先を続ける。
「――雫。オレ、お前のことが好きだ。お前に恋してる」
「……………………」
雫は俯いたまま、ぴくりとも動かない。
――考えてみれば、いきなりこんなこと言い出すのは迷惑だっただろうか?
そりゃそうか。恋愛相談しておいて突然それはないよな。
「あ、や、単にオレの気持ちがそうだってだけで、雫に今すぐ何かして欲しいわけじゃねーんだ。
その、なんだ、お前の気持ちも考えず、いきなりこんなこと言い出してすまん。
嘘や冗談じゃない、本気の話なんだ。いつかお前の気持ちも――」
オレは慌てて雫から両手を離し、どぎまぎしながらとにかく言葉を紡ぎまくった。
とにかく何かしゃべっていないと間が持たない気がしていた。
雫の気持ちが気になって、聞き出したくてしかたがなかったのだが、すぐにそれどころじゃ
なくなった。
雫があらんかぎりの大声で泣き出したのだ。
「……っぐ…………っえぐ、……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!……ひぐっ、……んわぁ
ああああんっ!」
「し、雫!?」
「わぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
雫の大声なんて、聞いたのは始めてだ。
雫はぽろぽろぽろとビー玉みたいな涙を零しはじめたかと思うと、オレの胸に顔をうずめ、
傍目も気にせずにまるで幼い子供みたいに泣きじゃくりだす。
部室棟を歩く生徒たちからは奇異の目で見られまくりだ。まいったな、これは。
廊下脇のベンチに二人並んで座る。
雫はコアラの子供みたいに、オレの胴にぎゅっと抱きついたまま。オレのTシャツは、
雫の涙とよだれとハナミズでもうでろんでろん。
30分もしないうちに、雫はすうすうと寝息を立てだした。泣き疲れて眠ってしまったらしい。
ふう。ほんとに子供みたいなやつだな。
このままにしておく訳にはいかないが、起こしてしまうのも忍びない。オレは雫を背負って
彼女の自宅まで送り届けることにした。正直起こすのが怖くもあったのだ。
雫の家の人がいてくれて助かった。
とりあえず、部活中に泣き出したこと、そしてそのまま寝てしまったことを伝えておく。
当然どうして泣いたのか尋ねられたが、オレが告白したせいだとも言えず、
「オレにも何が何だかわからないんです。本人に聞いてみていただけますか?」
とお茶を濁す。
いや実際わからねえしなあ。
やはり、オレの告白が迷惑だったのだろうなあ。へこむね。
「あと、すみません。雫には、オレが謝っていたと伝えてもらえますか」
と伝言をお願いしてその場を立ち去ったのだが、よく考えたら謝ってたと伝えたら、
雫が泣いた責任がオレにあることがバレバレじゃねーかよ。
ううむ、これまたまいったね。
今度雫のお母さんにお会いする時には、この話題が出ないことを祈るのみ、だ。
◆◇◆
翌朝だ。
いつものように登校すると、校舎の玄関先で雫を見つけた。
向こうもオレを見つけると、全速力でダダダダダ――――っとこちらに駆け寄ってくる。
近づいてきても速度は落とさずに、そのままの勢いでジャンプして頭からオレのボディに
体当たり。
「ぐはっ」
こいつがちびすけのおかげでたいしたダメージにはならなかったが。え? 何これ?
何の遊び?
「泣いたのは真琴のせい。だからこれは仕返し」
「はあ?」
「…………私も」
雫は小さな声で何事かを呟いて、そのままぴとっとオレに張り付いた。まだその仕返しと
やらが続いてるのか?
「なんだよ」
すぅ、と大きく息を吸い。
それから、雫は大声で返事をする。
「…………私も、真琴が大好き――――――――っ!!」
それは雫にはありえない、全校生徒全員に聞こえるかというくらいの大絶叫。
「ちょ、な、――し、しし、し、ずくっ!!」
いや。昨日の返事をくれたのは、嬉しいよ、めっちゃ嬉しいさ。
だが問題はこの状況だ。
登校中の生徒たちが次々とオレたちを取り囲みはじめ、あちこちから囃し立てる声が聞こえだし、
しまいには拍手まで巻き起こる。
待て待て待て待ておいおいおいおい、勘弁してくれよー。
「…………何? 真琴」
「な、何言い出してんだよ大声でっ! 恥ずかしいだろが!」
頬が熱い。めちゃめちゃ熱い。
全身の血液が全て頬に集まってきた。もう、どうしたらいいやら。
「…………大事なことは大声で」
「は?」
「…………そう言ったのは真琴」
オレは校舎の玄関にへたり込んだ。
文字通りの orz っていうヤツだ。
……言ったよ。ああ、確かに言ったさ。
だがな、TPOってもんがあるんじゃないのか普通はよ!? っていうか、人見知りの癖になぜ
こういうところだけ羞恥心が欠如しているのか、お前には!?
そして、更にだ。
「……………………」
じ――――っ。
その場に座り込み、正面からオレを凝視する雫。
何、その何かを期待するまなざし。
なんだよ? まだ何かあるのかよ?
「………………真琴も、大声で」
「――何だって?」
オレにも大声で恥ずかしい科白を叫べといいやがりますか、このちんまいのは。
雫、なんだかテンションおかしくねーか? オレの告白のせいでハイになってるのだろうか、
ひょっとして。
「………………大声で」
「いまここで? いや無理だから。オレには無理絶対無理。超無理」
雫は即時首を振り、オレの必死の返答を断固拒否。
なんでそんな悲しそうな目をするんだよ。周りにはギャラリーのみなさんがまだ
たくさんいるんだぜ? ダメだってできねえって。
「…………大事なことは大声で」
じっとオレを見つめ続ける雫の瞳。
ダメだ。オレ、こいつのこの目にはどうしても逆らえないんだ。
「くっ、あーもうわかったわかったよ言ってやるよ。一度しか言わねえからな――っ!!」
なんてこった。
4年前のオレに、あんなこと言わないほうがいいぞ、と助言してやりたい。
まさかこんな羞恥プレイが待っているとは、予想もつかなかった。人生、一寸先には
何が待ち受けているかわからんね。
「オレもっ! 雫のことがっ! 大好きだ――――っ!」
オレは絶叫した。
ギャラリーの大歓声とともに、雫はぎゅっとオレに抱きついてくる。
――校内新聞にオレと雫がバカップルとして掲載されたのは、その翌日のことだった。
実際この日を境として、雫はバカップルめいたことを次々とやらかしてくれるのだが、それはまあ、
また別の話。
以上ですよ。
ではまたいずれ。
GJ!雫がかわいすぎる。
男の名前が真琴でよかった。
「天沢」とか「聖司」だったら吹くところだった。
同じくGJ!!
シリーズ化きぼん、エロなしでも良し。
うほっGJ
台詞の頭に…つければ無口キャラ
まで読んだ
ぶっちゃけすぎだが真理だw
>>16 GJ!
無口ていうかすでにハーレムですな
良かった!
>>31 GJ
オレターンってどこなんかな
なんだこのGJ過ぎる流れはwww
職人さんが増えたか!?
>>39 前スレからスムーズに移行できてるな。
月が変わっていきなり三作品だもんな。すばらしいことだ。
あとは保管庫が更新されれば…
>>39-40 前スレのかおるさとー氏のが終わってからすぐにこのスレが立ったからな。
まあ今更だが
>>1乙
んじゃさらにいまさらに
前スレかおるさとー氏にGJ!
続編期待する!
やあ(´・ω・`)
今回の話は本編と本編の間を繋ぐブリッジ的な話なんだ。
『彼女』のいない、仁の日常が描かれている。つまり、出て来るのは男だけ。
と言うわけで、興味のない人は読み飛ばしてくれて構わない。
でも、このブリッジ部分にはきっと言葉では言い表せない、伏線のようなものが含まれていると思う。
これから先を書く上でどうしても外せなかったシーンだと、そう思ったからこの話を書いたんだ。
じゃあ、投下を始めようか。
そして翌日。
その日の授業を仁は、彼にしては珍しく睡魔と戦いながら過ごしていた。
まあ、無理もない。
結局昨晩は寮に着いたのが十二時半過ぎ。それから風呂に入って翌日の予習をしてと日課をこなし、布団に入った頃には二時近く。
さらに、布団に入ってからも悪夢にうなされ、結局熟睡することができなかったのだ。
四時間目で限界が来た。
眠気に耐えかねてつい目を閉じ、目を覚ましたのは校内に響く昼休み開始のチャイムの音と生徒達の喧噪で。
「うわ、やっちまった」
教師に当てられなかったのが唯一の幸運か。
仁は眠い目をこすりながら、一つ伸びをする。
と、その時だ。
「)&、/ズoシイジ'ナイT。&マ%ガジ(キ`ョ$チュ6ニ<.ナyテ」
耳障りな雑音に、仁が振り向く。
いつの間に現れたのか、そこには得体の知れない何かが存在していた。
やや潰れた円筒の上に乗っているのは、上半分程から夥しい量の細い毛の生えた球体。
さらに円筒の両脇からは、半ばほどに節のある円筒が伸びており、その先端は五つに分かれている。
異形はその分かれた先端の片方を仁の肩の上に乗せ、球体の下半分に空いた、赤い色を内に秘めた空洞から雑音を撒き散らす。
「z\カ、&マ%トeッシ)ノHラスiナッwカラFシ@/テカ。ナYカ#ッqノカ/」
思わず背筋が寒くなるほどの異形の姿だが、壊すのはさして難しく無さそうだ。
特に、球体部分に填まった、ぎょろぎょろと動く二つのゼラチン質めいた白と黒の部分は見るからに脆そうに見える。
いつの間にか手にしていた、この軽いが硬質な棒のようなもので力いっぱい刺せば、簡単に貫けるだろう。
仁はどこか醒めた気分で、口元に薄ら笑いすら浮かべながら、棒のようなものを握る手に力を込め――
「おーい、まだ寝てんのか? 古橋」
クラスメイトが自分を呼ぶ声で、仁は目を覚ました。
授業が始まってしばらくして、眠気に耐えかねてつい目を閉じたと思えば、気付づけば授業は終わっている。
教師に当てられなかったのが唯一の幸運か。
「え? ――ああ、悪い。聞いてなかった」
何だか、目を覚ます直前に変な夢を見た気もする。
仁は眠い目をこすりながら一つ伸びをした。と、その手から、何かが転げ落ちた。
「シャーペン?」
そう。それは何の変哲もないシャープペンシルだ。
が、それを握っていた右手を見れば、よっぽど強い力で握っていたのか、力の入れ過ぎで皮膚に痕が残っている。
「で、何だっけ、甘木?」
床に落ちたシャーペンを拾いながら、仁は話しかけてきたクラスメイト――甘木に聞き返す。
甘木は呆れたように肩を竦めながら、
「いやだから、お前が授業中に寝るなんて珍しいなって。後ろから見ててもはっきりと分かったぜ」
「あー、まあな。ちょっと昨日はあんまり寝られなくて」
ノートを見れば、途中まで眠気に耐えようとしていたのか、アラビア文字の様な珍妙な記号の数々。
これは後で、誰かにノートを見せてもらわなければならないだろう。
そんなことを考えながら、仁は鞄から昼食を取り出す。
自炊というほど本格的ではないが、いつも昼は自分で用意している。
寮で一人暮らしの勤労学生は色々と厳しいのだ。
「ひょっとしてあれか。噂の彼女と夜までしっぽりか」
「ぶほぉあっ!?」
不意に思いついたように言った甘木の言葉に、仁は思わず握り飯を吹き出した。
「おおおおお前、それ一体誰から聞いた?」
思いっきり吃りながら言う仁に、甘木は再び呆れたように、
「誰って……皆が噂してるぜ。お前が急に社交的になったのは、絶対女のせいだってな。
俺としては信じられなかったが――その反応を見ると、どうやら本当っぽいな。
で、どんな奴なんだ? その物好きは」
「ど、どんなって言われてもな……」
まさか、そんなことを噂されていたとは。
どうりで最近、クラスメイトから話しかけられることが多い訳だ。
「良いじゃねぇか。けちけちしないで教えろよ」
甘木は後ろの席から椅子を引きずって来ると、仁の机に並べた。いかにも興味津々と言った感じである。
「己(オレ)も興味があるな。お主(おんし)をここまで丸くさせた女子(おなご)には」
そんな二人に傍らから声をかけたのは、高校生と言われても一重には信じられないような巨漢。
身の丈190近く、体格もプロレスラーか何かのように逞しく、剃った頭は日差しを燦々と浴びて輝いている。
仁のクラスメイトの一人、蘇我と言うのが彼の名前だ。
学校近くにある古寺、実相寺の住職の息子で、その体格とどこか古風な口調が特徴的。
いかつい外見に似合わず社交的な性格で、目立つ外見と合わせ、このクラスのムードメーカー的存在である。
ちなみに彼には実家が神職故か、世話焼きなところがある。
ついしばらく前。仁があまり他の人間と関わろうとしなかったころから、色々と気にかけてくれていた。
「おう甘木。頼まれてたもんじゃ。カツサンドは売り切れじゃったから、かわりに竜田サンドにしておいたぞ」
「あ、悪いな」
手にした袋の内一つを甘木に押し付けると、やはり近くの机から椅子を引っ張ってきて仁の机に並べる。
「で、その女子は美人なのか? 同じ学校の生徒か?」
位置的に見下ろしながら、表情で見上げるという器用な態勢で蘇我が尋ねた。
対する仁は、表情は困惑気に、しかし口元には笑みを浮かべながら答える。
何のことはない。誰かに話したくて、惚気たくてたまらなかったのだ。
「ああ。見た目はかなり可愛いな。学校は――よくわからん。
少なくとも、この学校の生徒じゃないとは思うが……」
「へぇ、他校の生徒かよ。やるじゃん。
――で、名前は何て言うんだ? 写メとかプリクラとかは無いのか?」
甘木の言葉に、仁は僅かに考えると、
「写真とかは……無いな。名前も聞いたこと無いし」
その仁の言葉に甘木は眉根を寄せ、蘇我もむう、と呻きを漏らす。
「はぁ!? それお前、ホントに付きあってんのか?」
「お主、それはひょっとして物陰から相手を見つめながら妄想に浸っているとか言う類いでは……」
憐れみと不信の込められた視線に、仁は否定するように首を振る。
「いや、それは無いって。確かにプライベートなことは何も知らないが、ちゃんと付き合ってるって」
「ホントかぁ? 大体、名前も知らないで普段どうやって会話してるんだよ」
「ん――」
甘木の言葉に、再び考え込む。
僅かな逡巡の後、
「いや、彼女喋れないからさ。だから普段は俺が学校で何があったかとか話して……あとはまあ、普通に――いちゃついてるくらいかな」
「くぁーっ、二人の間に言葉はいらないってか? 惚気るのもいい加減にしろよこの野郎」
最後の方はボソボソと呟くような声だったが、二人の耳には十分届いたらしい。
甘木は体中を掻き毟るような動作をしながら羨ましがる。
が、ふと我に返り、
「まあ、けどあれだな。やっぱ、名前くらい知っといたほうがいいんじゃねぇの?」
言いながら視線を投げた先は、教室の窓際。
仁と蘇我も釣られるようにそちらに視線を向ける。そこにいるのは机を並べて食事中の一組の男女だ。
この二人、クラスで――いや、学年でも有名なバカップルである。
「ねぇ団。今週の日曜日、一緒に金城山にハイキングに行かない?」
「安縫、また趣味のミステリースポット探検かい?
でも、あそこはこの間米軍機の墜落事故があったばかりだろう。危険じゃないのか」
「だからこそよ。噂じゃ、米軍だけじゃ無くて自衛隊やCIAも調査をしてるんですって。
いかにも何かありそうじゃない。ね、行きましょうよ、団」
「わかったよ、安縫。君一人を行かせるのは心配だし、僕も付き合うよ」
「やったぁ。団、大好き」
「ははは、よせよ安縫。皆が見てるじゃないか」
明らかに、二人の回りだけ空気がピンク色に染まっている。
仁は視線を向けたことを激しく後悔した。
「――で、あの桃色魔空空間がどうしたんだ?」
呆れたように言う声には明らかに力が無い。
対する甘木はと言うと二人の桃色魔空空間に呆然としていたが、仁の言葉にはっと我に返り、
「いや、だからさ。アレだよ。『団』『安縫』とかって呼び合いだよ。
他人行儀にあんた、とか君、とかなんて呼ぶのも変だろ。恋人同士なら」
そんなものかな、と仁は考える。
確かに、恋人同士ならば名前や愛称で呼び合うイメージがある。
「けどさ、何か彼女訳有りっぽいし、あんまり色々聞くのもなぁ……」
「いいじゃねぇか、名前くらい。減るもんじゃないし」
と、その時。それまで黙っていた蘇我が不意に口を開いた。
「名前を聞くのに抵抗があるのなら、お主が愛称なり戒名なりをつければ良いじゃろう」
「おお、それナイスな提案じゃん」
甘木も手を打って同意する。
「愛称か――」
確かに、それは良い意見かもしれない。
そうすれば彼女に声をかける時、何と言って呼びかけるか悩まずにすむ。
何より甘木の言うとおり、その方が恋人同士らしい。
だが、何て呼べば良いのだろうか。変な名前をつけては逆効果だ。
思わず考え込む仁に、蘇我が言う。
「名前にはな、それ自体に言霊――すなわち力が宿るもんじゃ。
そして、名付けるという行為にもな」
例えば、同じ公園の片隅に生えた一輪のタンポポでも、単なる名前の無い雑草として見る人間と、それをタンポポの花だと認識して見る人間だと受け取り方は大きく異なる。
視界にただ入っているだけでは、人は物を認識できない。
物と名前を関連づけることで初めて、その物が何であるかを正常に認識できるのだ。
ノってきたのか、蘇我の語りがまるで説法でもする時のように朗々としたものへと変化して行く。
「故に、もしも物の名前や意味と言った概念を失ってしまえば――
それまで普通に見えていた世界すら、正常に認識することが適わなくなるじゃろうな」
そんな感じでブリッジでした。
ちなみに仁の通っている高校は円谷高校。バイト先はセブンイレブンで、店長の名前は桐山。
次こそ、次こそはアリスといちゃいちゃラブラブするはずです。
それでは、また逢う日まで。ごきげんよう
GJ。繋ぎの回だが、名前か…戒名はやめとけw
謎の異形、シャーペン、ノートに書いた文字、アリスと繋がる要素はこの辺りか。
本編ではアリスの名前は出てきてないけど。
>店長の名前は桐山
オールバックでマシンガン持って襲ってくるのか。
追記
隊長、10年近くに前に亡くなられていたとは・・・
ご冥福をお祈りします。
GJGJ〜!
やばい、面白い!
しかし、作品全体はどっちに
向かってるんだろうね、
本当に幸せになってほしいんだけど。
なんなんだ、この新作ラッシュは。皆さんGJっす。
普段はそっけないけど二人きりになるとさりげなくこっちに寄りかかってきたり、
別れ際になるとこっちの手を両手で握り締めながら「またね」と言ってくれたり、
落ち込んでる時は何も言わず頭を抱きしめながらナデナデしてくれるような娘が欲しいです
>>56甘え無口(二人の時デレデレ分100%)というやつだな。
それに猫耳がついてて、無言で猫のように甘えてくるという要素も欲しいですな。
もしくは猫擬人化(コイネコ風味)で。
後は無言で寄って来て、長い髪をマフラーみたいに二人の首に巻いてほのぼのしながら寄り添うとか。
うん・・・変な要素を加えたな、すまない。
「唖の奴隷女」って、このスレ的に許容範囲内?
>>49氏のアリスだって喋れない?みたいだし、喋れないこと自体は問題ないかと。
重要なのはいちゃいちゃラブラブできているかでしょう。
虐待は個人的に嫌ス
>>60 自分も虐待は好きじゃないけど、
それは個人の好みで、スレ的にはまた
別じゃない?
書き手にはできる限りフリーハンドを与えるべきだと思うので。
虐待、凌辱には注意書き推奨ってとこでは?
俺は虐待でも全然ok
どんどん来てくれ
>>49 激しくGJ!!
仁のSAN値が下がってきてる予感…
ハッピーエンドになれるのかな…
自分もSAN値下げまくりながら期待してます!
私の適応係数は84%です
☆とか魔空空間とかネタにあふれてますねまぁカポーの冥福を祈りつつ続きを待つ
そういや、もう3スレ目かぁ……早かったな
今更だが、1スレ目から無茶苦茶恵まれてたな、職人様バンザーイ
ちょっと過去作品読み返してくる
>>66 2スレ目は早かったね。連載が増えたからかな。職人さんたちに改めてGJ。
保管庫更新されないね…管理人さん忙しいのかも。
視界を覆うのは深い霧。
一寸先も見えないような、とても深く、とても白い、壁。
霧のほかに見えるものと言えば、俺達が歩いている道路に、その両端を埋め尽くしているであろう一面の田圃。
そして、俺の左手を握る小さな、小さな少女。
「まだ、冬には早いのにな」
頭一つ。いや、頭二つは小さいそいつは返事代わりに小さな体を密着させてきた。
冬物の制服の上からでも感じる、こいつの体温。
それは、確かに温かい。温かいが、普段に比べれば、低い。
今日の最高気温予報は26℃。程よく温かかくなるだろうと踏んだんだが、どうやら失敗したようだ。
朝の冷え込みに加え、この濃霧。
こいつだけではない。俺も結構寒い。
さて、寒い時にはどうするか。
厚着をする、温かいものを食べる、暖を取る。
どれもが、今この時は不可能だ。
この町唯一の高校までは残り少なくとも20分はある。
自販機なんて気の利いたものは無い。あるのは広大な田圃だけ。
そして、居るのは俺とこいつの二人だけ。
ならば、する事は一つ。
「……」
一瞬、恥ずかしがるような気配を感じたが、まさに一瞬だった。
こいつは俺にされるがまま、即ち。より身体を密着させて、手を繋いだまま俺のポケットに入れる、という行為を受け入れて変わらない歩調で歩いている。
高校まで残り20分。
俺は、全神経を左半身に集中させた。
俺達の通う高校は、即ちこの町唯一の高校で、イコール正真正銘田舎の高校だ。
校舎は木造二階建て、築一世紀くらいは経っているんじゃないかと思わせる風貌。
教室は全部で三十数室、生徒はおよそ二百人。
この町は、田舎町だ。
山に囲まれ、都心までは三時間以上かかる上に、海まではその倍はかかる立地条件。
他の田舎町に比べればまだマシと言われているが、繁華街なんてものは名前だけ。
遊べるところなんて何にもない。
それを嫌う若者は、そう少なくない。というか大半そうだ。
だから、中学を卒業すると都会に出ていくのが半分くらい。
残りの半分は、こうして高校に進学して、都会の大学目指して日々励んでいる。
いや、励んでいた。と言うべきか。
時期は11月目前。大学の推薦入試はとうに終わっており、進路が決まっていない生徒は絶無と言える。
そんな状態の俺達高校三年生は、残り少ない授業にまったく耳を傾けず、ただ学校に来ているだけなのが大半だ。
俺の目の前のこいつ以外は。
初老の数学教師が黒板に書き出す数式をノートに写し、問題を解いていく、
他の連中と言えば、寝てたり、本読んでたり、喋ってたり。
まともに授業を受けているのはこいつ含めて二、三人といった所か。
腰まで届く黒い髪が揺れた。
気付けば、この教室で三年も過ごしていたのか。
そう考えると、こいつも今はぼろい机を使いこなしているが、入学当初はその身長もあって"座らせられている"感が溢れていた。
「……」
いきなり、噂のそいつが振り向いた。
フレームの無い眼鏡の奥にある、髪の様に黒い瞳と目が合った。
その瞳は、暗に非難の声を浴びせかけている。
「悪い」
短く小さくそう呟いた。
それを聞いたこいつは小さく首を横に振ると黒板に視線を戻した。
考えが読まれていたのだろう。幼馴染とはいえ恐れ入る。
そんな事を考えると、ぼろいスピーカーから音割れしたチャイムが響いた。
昼休みだ。
昼休み。
それは全ての学生の憩いの時間で、安らぎの時間で、学校で唯一楽しめる時間だ。
それはおそらく、どこの町、どこの国でも変わらないだろう。
「天気予報、当たってたな」
そんな時間を満喫する為に、俺達は学校の屋上へとやってきた。
扉をくぐれば目に入るのはどこまでも続く田園風景に四方を覆う山脈と青い空に白い雲。
朝の冷え込みが嘘のような陽気さがそこにはあった。
「……」
俺にやや遅れて出てきたこいつは、空を仰いで目を細めた。
その横顔が微笑んでると分るのは俺くらいだろう。
そう広くない屋上の隅に小さなレジャーシートを引き、そこに腰を落とす。
俺に続いて、こいつもゆっくりと腰を落とした。
二人座れば一杯なレジャーシート。
窮屈では無い。むしろこれじゃなきゃダメなのだ。
「今日のおかずは何だ?」
携えた鞄から取り出された弁当箱を受け取りながら言った。
「……出汁巻き」
注意深く聞かなければ気付かないような小さな声。
だが、俺はそれを聞き逃さない。
「そっか。お前出汁巻き作るの上手いからな」
弁当箱を開けながら、その味に想いを馳せる。
こいつの作る料理はいつも絶品だ。
しかも、毎回隠し味が違ったりして、同じ料理でも微妙に味が異なって飽きが来ない。
「おぉ、美味そ〜」
そこには一見、地味な弁当があった。
弁当箱の半分を占める日の丸ご飯。四分の一を占める出汁巻き卵。そして鶏肉の唐揚。
料理の数は少ないが、その分量は多くなってる。
何から何まで俺好みだ。
「いただきます」
「……ます」
言い終わるや否や、俺は出汁巻き卵を口に放り込んだ。
卵は半熟でも無く、完熟でもない。言わば半々熟とも言える塩梅に仕上がっており、口辺りは最高だった。
噛み締めると同時に卵特有の柔らかい味と、バターの風味が広がる。
それを味わいつつも、米に箸を伸ばす。
流石は田舎。伊達に田圃に囲まれていない。
米はもはや表現するに勿体ない程に旨かった。
素材の味もさることながら、その調理方法もまた一流だった。
恐らくは、釜で炊いたのであろうそれは炊飯器の米とは次元が違っていた。
そして何より、出汁巻き卵と喰い合わせる事によってお互いの味が何倍にも増強されているのだ。
少なくとも50回は咀嚼して、味わいつくして飲み込んだ。それくらいウマい。
次に鶏肉の唐揚だ。
箸で掴んだ瞬間、衣のパリパリ具合に驚いた。
作ったのは少なくとも六時間前、それなのにこの状態を保てる技術力に感服する。
感服しながらも口に運び、一気に頬張る。
噛み締める毎に鶏肉のジューシーな肉汁が溢れ出し、何とも言えない幸福感に包まれる。
衣にレモンでも混入してあるのか、柑橘の香りが鼻をくすぐり爽やかな後味がまたたまらない。
そしてまた米を口に運ぶ。
やはり米には肉があう。肉汁をすった米はその味を何倍にも高める。
料理界のスーパーサブは伊達じゃない。
そんなこんなで弁当箱を物の数分で空にしてしまった。
「ふぅ。ごちそうさま」
「……さま」
弁当箱を渡し、弁当の余韻に浸る。
毎日こんなうまい昼飯を食える俺は本当に幸せ者だ。
「……」
くい、と袖を引かれた。
何事かと思ってそちらを向けば、小さなそいつが顔を赤くしながら俯いていた。
弁当の感想でも聞きたいのだろうか。
それにしては様子が可笑しいが。
「して」
一瞬。いや、数瞬思考が停止した。
何を言っているのか。
いや、言っている事は分っている、理解している。
だが、何故にこんな時にこんな場所で。
と、思ったが、そう言えばここ最近、めっきりやってなかった。
「……いや?」
震える声で、こいつは言った。
受験を控えていたこいつにとって、そういう事は妨げになるだろうと思って控えていたのが裏目に出ていたようだ。
そういえば、俺も俺でここ最近処理していなかった気がする。
「いや、全然」
返事を聞く前に、こいつの口の中に舌を捩じ込んだ。
抵抗らしい抵抗もせず、それどころか嬉々として舌を絡ませて来た。
こいつの口の中は、さっきの弁当の残り香がまだ残っていた。
出汁巻き卵の味、鶏肉の唐揚の味、米の味。
それら全てを舐め取るように、歯茎をなぞり、歯を撫でまわし、唇を吸い取る。
そうすると、まるで弁当を食べているような錯覚に陥り、唾液がどんどん溢れてくる。
そいつの頬を両手で掴み、顔を上に向かせる。
そして、一気に俺の唾液を注ぎ込む。
一瞬、嬉しそうに驚いたそいつは、ごくりごくりと喉を鳴らして俺の唾液を呑み込んだ。
こいつの唇をきれいに舐め取ってから口を放した。
そして、その顔を見た。
頬は真っ赤に上気し、目には理性の欠片なんてありはしない。
ただ、肉欲に揺れる一人の女がそこに居た。
「……我慢……出来ない」
そう呟くと、そいつはいきなり立ち上がり、パンツを脱いだ。
俺の目前に晒し出された秘所には毛すら生え揃っておらず、子供のようなきれいな割れ目がそこにはあった。
それは子供らしい面影を残す反面、愛液で妖しく濡れていた。
子供らしい性器が大人の象徴たる愛液で濡れている。それに思わず背筋が震える。
もう、俺は我慢など出来なかった。
直ぐにズボンを降ろし、臨戦体制となった息子を取りだした。
それを見たこいつは嬉しそうに笑うと、その腰をいきなり沈めてきた。
「……ぁ」
そこは、何も触っていないのに既にぐちょぐちょで、凄い勢いで締め付けてきた。
柔らかい肉の壁が、欲望の赴くままに俺の息子を包み潰していく感触。
挿れたばかりだと言うのに、俺はイきそうだった。
「……ん……ぁ」
だが、それはこいつも同じだったようだ。
焦点の定まらない視線を泳がし、頬を真っ赤に染めて唇からは涎がだらしなく垂れている。
俺はこいつのずれ落ちた眼鏡を取ってやり、唇を塞いだ。
それが合図と言わんばかりにこいつは腰を上下に降り始めた。
「……ん……ふぅ……!」
唇と唇の隙間から洩れる嬌声。
ピストン運動の度にぐちょぐちょと鳴く接合部。
動くたびに、こいつの膣は俺の息子をぎゅうぎゅうに締め付ける。
もう俺は長くは無い。
そして、それはこいつも同じはずだ。
だから、俺はこいつの腰を掴み、俺も腰を振り始めた。
二度、三度と腰を振り、息子を膣の奥へと突き入れる。
「んぅ!」
最後に、渾身の力を込めて息子を奥へ、深く突き刺した。
その瞬間、膣はこれまでに無いほど収束して、小刻みに振動を始めた。
それと同時、背中にこいつの細い腕が回された。
「うぁ……」
思わず、声が漏れた。
それほどまでに、こいつの最後の締め付けは凄まじかった。
自分でもどれほど出しているのか分からなくなるような射精。
頭から爪先まで電気の様に流れる快感に、意識が飛びかける。
だが、それをこいつは許してくれないようだ。
精液の一滴すら残さず搾り取ろうと蠢く膣に、快感の余韻に追い打ちをかけてくるのだ。
お互い、繋がったままどれくらい過ごしていただろうか。
ようやく落ち着いた頃、そいつは腰を上げた。
にゅるり、と俺の息子が力無く垂れ落ちるの同時に、そいつの秘所から俺の精液がどろちと漏れ落ちた。
自分でもこれほど出していたのかと思うほど、大量に漏れ落ちていた。
そいつはすっかりいつもの無表情に戻り、鞄からティッシュを出し俺の息子を奇麗に拭き取った。
次に自分の秘所を綺麗にすると、鞄から替えの下着を取り出して穿いた。
俺も俺でズボンを掃き直し、屋上に大の字になった。
「……」
すると、こいつは無言で俺の上に覆いかぶさってきた。
俺の胸辺りに頬を当て、何をするでもなくじっとしていた。
太陽が翳った。
「……寂しい」
小さく、短くこいつは言った。
俺はその言葉の意味を理解していた。
こいつは今年、大学を受験して、真面目なこいつは当然合格した。
俺は受験もせず、就職もしない。
俺は親父の後を継いで農家になる。
俺はこの町が好きだ。
俺が育ったこの町が好きだ。
幾ら田舎でも、都会に無いものがたくさんある。
だから、俺はここで生きていきたかった。
毎日畑仕事に精を出し、似たような毎日を繰り返す。
俺はそれでいい。それが良かった。
「大学だって、そう遠くないんだろ」
でも、こいつは大学に行く。
場所は詳しく聞いてないから分らないが、この町に大学は無い。
恐らく町を出て行ってしまうのだろう。
こいつだけじゃない。俺だって寂しい。
でも、あえてそれを考えないようにした。
「一生会えない訳じゃないだろ」
口では言えるが、俺はこいつ抜きで生きていけるだろうか。
「……うん」
小さく、呟いた。
俺は、その小さな体を抱きしめた。
あれから、半年経った。
俺は親父の後を継ぎ、農家になる為に農家見習いをしている。
土に汚れる毎日、それが何故か無性に嬉しかった。
時刻は昼過ぎ。
広大な田圃を歩き、道路を目指す。
いや……そこに立つ、そいつを目指す。
「今日のおかずは何だ?」
何時ものように、弁当を作ってきてくれる俺の可愛い、愛しい恋人。
その遥か後方には、真新しい大学が建っていた。
以上です
エロシーン書くのは生まれて初めてなので、読みづらいかもしれませんが許してください
>>76 GJGJGJGJGJGJ!!!!!!
続きを待ってたかいがあったぜ!
大変面白いです
ところで、お腹が減ったのはどうすればいいんだwww
GJだよコンチクショウ!
弁当も食べる、彼女も食べる、両方しなくちゃならないのが恋人のつらいところだよな…羨ましいか?俺は羨ましい。
GJ!
おいしそうな食事風景を書ける人の小説はみんな上手い、と
別スレでたった今書いたばかりだったのですが、ほんとにそう思います。
あーお腹減ったよー。
うむ、じんと来る良いお話でした。
>>79 あなた素クールスレ住人ですね!?
>>80 はいー。
ミュウマの coobard氏しかり、ここの住人に素クール好きはかなり
いるような気がしますね。
>>76 ええーい、朝飯食べる前に見るんじゃなかったwww
お腹が空いて力が出ないGJ!!
おまけに股間がっ!なぜだ!
>>80-81 お、前々から居るんじゃないかと思っていたが、やっぱり混ざってるかw
あっちもこっちも良作多いから最高!!
ここと素クールと、ツンデレとデレデレと新ジャンルを跨いで、毎日ウハウハ。
読み切れずに眠る日々。書きたくなって、小ネタはでてもプロットが出来ない日々。
いつか名を馳せるその日まで努力を続けよう。
何が言いたいかと言うとGJだ。
おなかすいたー・・・・・・
GJ!!
切なさがとても凝縮されてて、感動しながら涙目になった。
更に影響されておいしい物が食べたくなった。
>>86 俺はてっきり甘えん坊な〜のとこかとおもてたよ
>>76 GJ!他スレでSS書いてますがこういう素晴らしい作品を見るとやる気出ます。
>>83 その中のスレに長編モノ書いてますが見ていただきありがとうございます。
個人特定やめれ
ゲレゲレ
ボロンゴ
プックル
何故ドラクエwww
いやー懐かしいな
ただ、無口っていないんだよなぁドラクエ
ふぅ……
1とかの主人公
3、4を女主人公でやればいいじゃん
3なんか、ファミコン版だと男装無口少女だぜ。
お前ら反応早すぎwww
そうか、勇者は無口って考えはなかったな
台詞出てないだけでしゃべってると思ってたからなぁ
ヘラクレスの栄光IIIだと、パロディ的に
「主人公は無口」という設定がちゃんと作られてる
男だけど。
>>101 つまり、乗り移りで女体に入ってたらやられちゃって、
女の快感に目覚める、と?
・・・賛否がわかれそうだなw
IIIの女武道家は無口(ある意味)かわいい。
アッサラーム(名前違うかもしれんがぱふばふの町)でいつも喋らせてる俺。
いや〜ねぇ ふけつよぉ。
女賢者>>>>>>超えられない壁>>>全て
そんな訳で無口なRPGものが見たいです
主人公が喋らない作品やりなさい
このスレの住人的には引っ込み思案で何もして来ず、
話しかけたりするとすぐ真っ赤になって目を反らしてしまうような子と
無口だけど恥ずかしがりというわけではなく積極的にアプローチしてきたり
よく笑顔を見せてくれたりする子とどっちが好き?
>>107 結論は決まってるだろう。
どっちも好きだぁぁああああ!!
後者に決まってんだろうがああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!
一人ずつ用意して、3P。
書くのすげえ大変そう
つまり、恥ずかしがり屋の子を積極的な子が引っ張ったり舐めたりずんぐほぐれつしたりに誘うのですね?
>>107 貴様、それは愚問だ
両方好きに決まっている
>>110-111 いいなそれwww
ただ、そこまでいくのが難しいだろうなぁ……
いきなりエロシーンからいきますか?
>>107 後者のような無口な素直クール系はよく見るから前者も見てみたいな
沈黙が落ちていた。
ベッドサイドに腰掛けた俺の前には、双子の少女。
そっくりの子顔、流れるような黒髪を肩の辺りで切りそろえている姿など、
揃いの日本人形を思わせる。
同じように無口で、先ほどから一言も発していないのも相俟って、
俺に、人形遊びをしているような、倒錯的な感覚を覚えさせた。
ただし、二人とも浮かべている表情は豊かで、それでいて正反対だ
右側の少女は俺の膝を無理やりに開き、目を細めてにこにこと笑っていて、
左側の少女は頬を真っ赤に染めながら視線をそらしているが、どうしてもいきり立つそれが気になるらしい、
ときおり、ちらちらと視線を向けていた。
右側の少女がペニスを手に取る。白魚のような指に触れられただけで快感が走る。
口元を近づけて、小さな、熱い舌で一舐め。
呻く俺を見て笑い、次に、目を見開く左側の少女へと顔を向ける。
左側の少女は、意を決したように頷き、同じようにして俺の息子へと顔を近づけた。
おずおずと唇を広げた所で、その後頭部を右の少女が掴み、一物へと押し付ける。
同時に、自らも俺のものへと唇をつけた。
両側から唇に挟まれて俺の左舷メガ粒子砲が唸りを上げる
こうですかわかりません><
>>114 GJ左舷弾幕薄いよ!詳細を!
107よ、幾千の愛の言葉より鴛鴦の間にて全て預け寄りかかる。
そんな彼女達が心の琴線を弾くのだ!
>>114 GJ
ただな
>俺の左舷メガ粒子砲が唸りをあげる
俺の麦茶を返せwww
風邪を引いて薬も無い上一人暮らしなので看病してくれる人もいないし食事も買いに行けない
無口娘が看病なんてしなくていいからせめて一緒にいてくれないかなあなんて思う秋の夜
目が覚めると、枕元に誰かがいた。
「うわあああっ」
俺は布団を蹴飛ばして飛び起きると、そのままあとづさる。
だ、誰だ?
「……」
座布団の上に正座しているその女の子は、驚きとショックを半分づつ混ぜたような表情で俺を見ている。
べしゃ、とどこかで塗れた雑巾を床にたたきつけたような音がする。
「……」
その正座している女の子は、ショートカットの癖っ毛の下の真ん丸いつぶらな瞳で俺のことを見つめている。
着ているというよりも着られているという感じのセーラー服。
さいきんちょっとむちっとしてきて気になっている、スカートから覗くふともも。
「な、なんだ、園子か…」
いつも俺の部屋に入り浸っている、このアパートの大家さんとこの一人娘でかつての家庭教師の生徒である女の子が
熱でうなされている俺の様子を見に来てくれていたというわけで。
「……心配だった」
園子はものすごく口数が少ない。
複雑な家庭環境で育ったからなのか、すごく大人しくてあまり自己主張をしない、でも頭の回転は早くて
他人をすごく思いやってるイイ子だ。ほんと、最近の女子高生にしておくにはもったいないくらいのイイ子なのだった。
そんなイイ子は、熱でフラフラになって帰宅した俺のことを気に掛けてこうやって来てくれたわけで。
でも、いくらなんでも暗い部屋の中で俺のことをじっと見つめているのは驚くというかビビるというかちょっとちびりそうになる。
園子は正座している傍らには洗面器が置いてある。
布団の上の枕も、気が付いたらゴム製の水枕に替わってるし。
ていうか、その洗面器で冷やしてくれた濡れタオルがさっきまで俺の額の上に置いてあったんだ。
さっきべしゃっと畳に落ちた濡れタオルはその音だったわけで。
俺は思い立って園子に尋ねた。
「俺のこと、心配で来てくれたのか?」
「……」
こくり、と園子は無言で頷く。
黒目がちな大きな瞳は、純粋に心配そうな色で揺れている。
俺はこんな親切で可愛くていじらしくて優しい女の子を安心させたいキモチで胸の中が一杯になってしまう。
「大丈、ぶ、だ」
言いながら咳き込んでしまう。
「…すごい汗」
園子は立ち上がると、俺を布団の上に座らせる。
そして台所からお湯を入れた洗面器を持ってくると、別のタオルをそのお湯で絞る。
園子の細くて小さな指が、俺のパジャマのボタンを外していく。
されるがままになっている俺は、いったいいつパジャマなんて着たんだっけ?と朦朧とした頭で考える。
会社から早退してきて、背広をほっぽってネクタイもほどいて投げて、シャツとパンツいっちょで布団に
倒れこんだだけな気がするのだ。そもそもココ最近寝るときパジャマなんて着てないし。
もしかして、園子が着させてくれたのか?
園子は俺の裸に緊張しているのか、ちょっと強張った表情で俺の首筋にタオルを当ててくる。
寝汗で湿った肌が、熱いタオルで拭われていくのは気持ちがいい。
園子のちっこい手が俺の肩を掴み、胸、腹、とタオルを走らせていく。
熱いタオル。すごい熱い。っていうか、園子の手も火照っているくらい熱い。
ていうか洗面器のお湯、もしかしてほぼ熱湯なんじゃないか?
真剣な顔で俺の身体を拭ってくれている園子。
俺がこのアパートに越してきたときにはまだほんのちびっ子だった園子。
家庭教師をしてるうちに、だんだん打ち解けてきて、ときどき笑顔や笑い声も聞かせてくれるようになったのは俺が大学2年に
なったころだった。中学生になり、高校に合格したときには珍しく嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねながら俺に抱きついてきたっけ。
そのときに感じた園子の身体つきにドキっとしてしまったのを覚えている。それはグラマーではないが、明らかに子供とは違う女の子の
身体の柔らかさだった。そう。ちょうどコレくらいの柔らかさで、こんな匂いがして、これくらい体温が高くて―――
――って!おい!なんで俺園子ちゃんを押し倒してんの?いや、これは熱でフラフラになっただけで!いや、そんな下心とか
全然無くて!っていうか、園子ちゃんもなんか言えって!キャーとか!なんでそんな真っ赤な顔で、うるうると瞳潤ませてんの?
ヤバイって!そんな顔されたら!俺どうにかなっちゃうって!色っぽくため息とか吐かれても困るし!
---------------------------------------------------------
>>118に捧ぐ そしてつづかない
>>120 続かないだって!?嘘だと言ってよバーニィ!!
>>122 左曲がりということじゃないのかと小一時間(ry
>>118 IDがドラクエ8
つまりお前は無口な8主人公を女体化したSSをだな…
なんか……凄く賑やかになったなぁ…感動
月に三、四回は投下あるし……
職人さん増えたし……今五人くらいか?
あー、やべえ、目から汁が
ぐはっ!?
誤爆スレにしたつもりが該当板にやっちまっただと!?
お詫びに全裸で土下座
>126
.。о(それがお詫びだと?
小ネタ投下しろぃ!誰かが拾って作品になるかもしれないだろう。)
>>127 昼休み終了のチャイムの音が聞こえたため、俺は渋々体を起こした。
「くぅ〜………ふぁ」
現在地は屋上、当たり前だが外にある。
しかし、意外と今の季節でも、昼寝が出来る暖かい場所があるのだ。
「くっー……」
体を大きく伸ばす、ここで俺はようやく、
「なにやってるんだ?佳奈」
俺の方をじっと見ていた俺の彼女の存在に気が付いた。
で、その問いを受けた佳奈は何故か赤面し、何も言わずに顔を逸らす。
「………………」
「………………」
問いに答えが返ってこないため、会話が繋がらず、沈黙が間を支配する。
「……あー、しゃべりたくないなら別にいいぞ」
なんとなく居心地が悪くなり、俺はその沈黙を破る。
「………れて…」
と、そこで佳奈がなにかを呟くが、声が小さくてうまく聞き取れない。
「ん?なんだって?」
聞き返す俺に、先ほどより赤面した顔を俺に向けて、
「…寝顔に見とれてた」
と、言った。
そんな、ある日の学校の昼休み
無口娘に誤解をさせてしまい、なかなか誤解が解けず仕方ないから土下座した…というのはどうよ
>>129そこは
「だから誤解だって。コンタクト一緒に探して、そのお礼されてただけだって」
「・・・本当?」
「なんでそこまで疑うんだ?どうしたら信用してくれる?」
「・・・してくれたら信じる・・・」
「え?」
「・・・えっちしてくれたら信じる・・・」
「・・・分かったよ。じゃあ夜な」
「駄目・・・今すぐ・・・」
「え?いや、さすがに昼間からは・・・おい!服脱ぐな!」
「やだ・・・我慢・・・できない・・・」
の方が土下座より萌えるだろ常考
一見過疎に見えてネタが投下されるとすぐ住人や職人が集まるとは…
あれだ、お前らまで無口なんだな
>>132 ……馬鹿……ここに居るなら普通わかること、
無口♂×無口♀という電波を受信した。
難易度高そうだ
>>134 会話文のみの小ネタなら前スレにあったはず
一回普通に書こうとしたら死んだがな
なに話してるかが説明不可に近い
普段は無口でこちらから話しかけても最低限しか話さないが
修学旅行で飛行機+バス乗ってる時機内消灯時間を除くあいだ(たぶん10時間以上)
ずっと途切れることなく話してて驚いたことがあった
138 :
136:2007/10/19(金) 19:32:35 ID:GdxLa9yM
リアル知り合い男を女体化・・・・・・
いくらなんでも酷だろwwwwwwきっと嫌悪に耐えられないwwww
しかしそれでもやって欲しいと願う俺は壊れてるんだろうな
進藤を思い出した
知っているか?
無口さんは3つに分けられる
滅多に喋らない子
普段無表情な子
人見知りする子
この3つだ
あの子は―−たしかに無口だった
「・・・・・・ゅ?」
彼女は妖子
俺の相棒となる女性
「・・・・・・だいすき」
そして彼女の言葉で物語りの幕は上がる
「・・・・・・あれはゆきのふるさむいひだった・・・・・・」
>>140 俺は「自分の立場のほうを女体化」
という半実話プロットを作ったことがあるぞ
ゼロwwwww
>>142 変化する表情
変わる運命
変われない想い
交際規定は唯一つ「察しろ」
>>146 そして殺伐とした空気の読みあいが始まった。
邂逅を重ねる度
あいつの無口が目についた
彼と彼女の間に会話という手段ない、お互いの目を見て、手を触れて
お互いを感じれば通じる、だから言葉などいらない。
授業終了の鐘と共に彼女は彼の前に現れた、軽くはにかみながら手にはお弁当。
彼も照れながら受けとると弁当箱を広げる、彼の笑顔が広がった。
彼の前の席を陣取り彼女は輝かしいばかりの目で彼の食事を見守る。
卵焼き、彼はそれを頬張ると彼女に親指を立てて感想を告げる、彼女は歓喜で
だらけきった顔、彼は次々と弁当を平らげ、空っぽになった弁当箱を彼女に見せる。
この間クラスは無音状態、なぜからこの無口カップルの会話を聞いてみたいと
クラス中の人間が息を潜めているからだ、しかし今のところ聞こえたのは彼の食事する音のみ。
今回も聞けなかったか、そうみんなが諦めかけた時。
・・・チュッ
まさに漫画のような音がクラスに響いた。
台詞無くても通じ合ってるのがいいね
両方無口なのもいいな
二人でベンチに腰を下ろし、私は彼を見た。
「………………」
彼の所望はきっと膝枕。きっとそうだ。
「……?」
ぽんぽんと膝をたたきながら首をかしげてみる。
が、どうやら違うらしい。
「……」
ふるふると首を振り、彼はじっと私を見る。
「…………」
前からハグ?
「……ん?」
両手を伸ばし、また首を傾げてみる。
が、どうやらこれもまた違うらしい。
「…………」
ふるふると首を振り、彼はまたじっと私を見る。
ええい、どうしたいって言うのよっ――と、聞けたらどれだけ楽だろう。
そんな勇気は、私たちには無い。
私には、彼に聞く勇気が。
彼には、私に告げる勇気が。
お互いにこういう人間だと知っていて、それでも付き合い始めた私たち。
「…………」
じっと彼の目を見つめる。
わからない。けど、わからないから知りたくなる。
もっともっと、彼の事を。
だから、こうやって彼の求めるものを考えてるのは、楽しい。
「…………」
わかった。きっとこうだ。
私は立ち上がり、彼の膝を指差し、首を傾げた。
「……ん」
彼の頷きに、私の顔には自然と笑みが浮かぶ。
やった、当たった! この瞬間は、とても嬉しい。
彼の望むことをやってあげられる事が。
そして、彼の考える事を一つまた知れたという事が。
「……うん」
か……考えてみると、ちょっと恥ずかしいけど……。
私は彼の膝の上に、腰を下ろした。
彼は私の背中を包み込むように、私の身体を抱きしめる。
「ん……」
彼の体温を背中に感じた。
「……あったかい、な」
「……ん」
だんだん冷たくなってきた風。でも、二人でいたらそんな事は関係なさそうだ。
俺だったら股間がビンビンになっちまうな
無口の威力を改めて思い知った…
丸ノ内規制に弾かれて書き込めない
携帯からテスト、書き込めてたら小ネタ投下
カモン!
ちょっとやり損ねたんだけど、それでよきゃ。
近所の公園でよく見るヤツなんだがベージュ色のコート一年中着てるヤツ。
チラッとみえたんだけど、けっこスタイルよくてさ、
よくアニキと「あんな女抱いてみたいもんだよな」なんて話してたわけ。
そしたら「やっちまうか」なんて言うもんだから俺も「いいッスね」
なんて答えたんだけど、そんときゃ冗談だとばっかおもってたワケよ。
んでさ、ベンチに座ってダラダラ学校がクソだの話してた。
夕方になった頃にさ「口裂け女だー」「キャー」とかガキ共が走り回ってんの。
その女いつもマスクして帽子かぶっててさ、今日もガキにからかわれてた。
何言われても無視無視ってカンジでしゃべらねーからガキ共もつけあがんの。
見慣れた光景に、あのコートの下のデカイ乳揉んでみてぇなーとか妄想してたら
なんかアニキがブチキレながらガキ散らしててさ、女つれてこっちもどってきた。
軽くパニクったね、その女はさんでベンチ座ってさ、
いろいろとアニキが話しかけてんだけど、いい匂いするなとか
ちょと胸の谷間見えたりとかで興奮してて何しゃべってたんだか
もうそんなの関係ねーってかんじで思考回路ショート寸前なワケ。
女はアニキが話しかける度に頷いたりとかしててあんましゃべんなかったかも。
で、アニキとその女が立ち上がった時さ俺も話すりゃよかったなー
とかいまさらながら後悔。
まぁ知り合いになれたような気がしてたからそれだけでもハッピーってな。
んで、俺も立ち上がってアニキについてったんだけど、ベンチの裏側の方。
ちょっとした雑木林になってるほういくわけ。
なんでだろうと思ってみたら、アニキの右手にナイフとかあってさ、
女も肩震わせててさ、ヤバイヤバイ、これマジヤバとか感想。
通りから人が見えなくなったあたりで、アニキが女に
「ソコに手ついてケツあげな」ってナイフ突きつけて言ってた。
しばらく女はだまって立ってたんだけど、ナイフちらつかせたら
観念したのか太い木の幹に抱きつくようにした。
「これでお前も童貞卒業だな」とかいうわけ。
たしかに抱きたいとはいったけど、コレめっちゃやばくね?
それでも、少し、ほんの少しだけ落ちついてきたら
ケツむけてビクビク震えてる女みて立ってきちゃってさ、
こりゃもうやるしかねーよな?な?
コートとスカートまくりあげてフリフリのショーツとご対面。
生。生ケツ。エロ画像とかじゃなくてマジモン。
スゲーさわりごこちいいのな。撫で回してたら
スボンに擦れただけでイキそうになって焦った。
ヤバイヤバイ、俺がヤバイ。
ルパンさながらの高速脱衣でズボンとトランクスからマイサン開放。
ショーツの上から下のお口を探しつつさわりまくる。
少し湿ってる?かんじはするけど濡れてるのとは違う感じがした。
初めてとはいえテラ単位のエロ画像を所持する俺の手にかかれば
穴が分らないとかいうドジなマヌケはしないのだよ、フヒヒwwサーセンww
とかショーツの中に手を滑り込ませる。
あったけぇ〜、ここがクリちゃんッスねぇ〜といじってみれば
女がビクンって反応した。帽子がすれて落ちて髪がふぁさっと流れるのもツボった。
アンタ最高、俺も気分最高。その反応がみた見たくて、
しばらくいじってると女の息が荒くなってきてソコも濡れてきた。
もうしんぼうたまらんとショーツを下げて御開帳。
「じゃあ俺は口でさせてもらうかな」と、アニキ。
ごめん、アニキのことすっかりさっぱりきっかり忘れてた。
とりあえずマイサンがどうにもこうにもガマンの限界で臨界点で放射能駄々漏れ
クリから指をずらして位置をさぐる。
ここは尿道、コレ正論。そして……肛門……?
アレ?暗くてよく見えないとはいえ見つけ損ねるか?
俺緊張しすぎ、モチツケ。
再度調査開始、ここは、こうで…このへん…のハズなんだが……
「ヒイィッ!」
野太い情け無い声に釣られて見上げるとアニキのチンコが見えた。
イラネ。
というかマスク握り締めてチンコまるだしでプルプル震えてるのはどうかと。
いくらこういう場面だからとはいえさすがに幻滅を感じる。
「なにしてんス…か……アに?」
そう言おうとしたけど、俺もビビッちまって声が続かなかった。
女が俺のほうを振り向いた時にマスクで隠されていた顔が見えた。
切れ長の瞳。日本人にしてはやや高い鼻、紅潮させたいろっぽい頬。
そして、その白い肌に覆われた在るべき部分。
(なんという無口!)
ビビリまくってた俺たちは、女が身じろぎするのにさえ恐怖を覚え、
一目散にその場から逃げ出していた。
ってのが三十分くらい前。
何度か携帯いれたけど、アニキに繋がったのはさっき一回だけで、
フゴフゴ息の音しか聞こえないもんだから
落ち着いたらどこいるかおしえてくれってメール飛ばした。
つかね、いくら無我夢中っつっても公園の中の森で出口が見つからないってどうよ?
まっすぐあるきゃ五分で出られる距離よ?
あ、メールの返事きたっぽい。
アニキと合流したらまたここに顔だすわ。
>>157 なんつうか……ちと注意書きが欲しかった……かな?
多分こういうの嫌な人もいるだろうし
まぁ、とりあえず乙
すまない、配慮が足りなかったのだわ
もし次に機会があればその辺気が付けるように精進してくる
このスレには合わないタイプのネタかな。個人的にはそうでもないが。
のっぺらぼう思い出したよ。
そんなに気にしなくてもいいんじゃない?
たまには毛色の違う作品だっていいじゃないか。嫌いなの目にしたら読み手が
スルーすればいいし。
まあ無口のイミが違うけど、下手な注意書きはネタバレになっちゃうしね。
あまり問題視して書き手を萎縮させちゃうことの方が問題かと。
しかし、語り口うまいなあ。かなり面白かったよ。GJ!
年上の無口娘なんてのはどうだ
小さい頃はおねえちゃん、おねえちゃんと呼んでよく遊んでてさ
最近は疎遠になってるけど偶然高校が同じでまた仲良くなって
無口であまり話もできない自分のところにいつも来てくれるくらいになって
…なんて電波を受信した。あとは任せた
どっちでもいいんじゃないの
無口といって真っ先に受信した電波が
虐待されていた少女と兄の話だったのだが
いかがなものか。
167 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 04:27:36 ID:wE0sekKT
たぶん正統派 恥ずかしがり屋さん系とでも。
前回の口直しになればと、少し 多 め に 口 付 け て おいた。
残念なことにエロは読むのは好きなくせに書くのが恥ずかしいんだ。
自分で書くと頭がフットーしそうで何度キングクリムゾンでエロ抜こうと思ったこと
か。
もしもの場合は鳥を有効に使ってくれ。
飴とガム7/7
くいくい。
「……」
「……」
僕を見上げる視線。
くいくい〜っ。
「……」
「…だーめっ。遅刻してくるような子はオシオキ必至」
ついに耐え切れず、彼女の顔を見て答えてしまう。
その時、がばっと抱きついてくる腕をかわす事も忘れない。
「ぅぅ……さびしいよぉ…」
「…そりゃ僕だってツライさ」
それならとばかりに彼女は抱きついてくるが、ソレとコレとは別。
「……♪」
「もう、駄目ったらだ〜めっ、お預け! もうすこしでしょ?」
『件名:週末 本文:森林公園にハイキングに行こう。』
何度か自分から誘ったことはあったのだが、彼女の方から誘われるのは初めてのこと
だった。
というのも、彼女は先週、携帯ショップ店員に捕まったらしく、
断りを入れるまもなく買わされてしまったらしい。
セールスには気をつけろといつも言ってるんだが、今回ばかりは店員にGJを送ろう。
ボタンを押してみてはオロオロする彼女もかわいかったけど、
三日ほどで使いこなしたうえに風か嵐かってほどにメールを打つようになっていた。
大概が『すき』だの『金魚にエサあげてみた』だの他愛も無いものだが、
コイツこんな事思ってるんだなっていうのが伝わってきて、
いつもの彼女からは分らない意外な一面を発見できた。
約束の当日、僕は駅で二時間待った。
浮かれて二時間前に来た分は自己責任なのでノーカンだが、
朝に見かけたサラリーマンが昼飯食べに駅に来て、こちらに哀れみの目を向けた時は
へこんだ。
交番のお巡りさんの視線も地味にイタイ。
そんな中、着信音に気付いて携帯のメールをチェックする。
『Re25: おそくなってごめんね 』
そして人の気配を感じてみれば、大きなリュックを背負った彼女が正面に立ってい
た。
待ちくたびれた僕は彼女に遅刻のペナルティを与えることにした。
半分は逆恨みもはいってるかもしれないが。
『現地到着までキス禁止』
何を言ってるのか分らないと思うが、彼女も何を言われたのか分っていないようだっ
た。
そして意味を理解した時彼女の顔が蒼白に染まっていくのが分った。
「!?」
「……そんな顔してもだめ、ってかその顔も駄目! 僕がくじけそうになる」
瞳を潤ませて擦り寄ってくる彼女の破壊力は毒チワワ並みだ。
このまま彼女のアタックを許せば恋愛パンチドランカーになってしまう。
「はいはい、いくよ。 現地に着くまでだからって! 走っちゃだめ!」
「…!」
彼女曰く、口とはキスするための器官であり他はおまけなんだそうだ。
一緒に電車乗るときなら、山の手一駅の間隔でキスキス。
そのくせ恥ずかしいのかキスが終わるとうつむいて黙り込んでしまう。
彼女とキスする時、若干身長差があるので僕は少し腰を落とさなければいけないのだ
が、
荷物を抱えていてそうしない時などは、首に腕を絡めてきて強引に唇を奪われる。
そんな彼女だからこそのオシオキがこれなのである。
「!!!」
ぐいぐいぐいぐいっ!
「ストップ! ストップ! 服のびちゃう」
顔を真っ赤にさせておねだりする彼女がかわいそうになってきたが、
その顔を見ていると嗜虐心が湧いてきてしまった。
「……それじゃ、ドコがさびしいのかなぁ?」
「……」
つんつん
彼女は自分の唇をぷにぷに指差して訴える。
付き合いだしてしばらくしてから彼女は口紅をつけなくなった。
僕の顔が口紅で染まってしまうからだ。
だが口紅をのせなくても、かわいいピンク色の唇は魅力を失うわけでなく、
以前にも増して扇情的に濡れている。
「ん〜、それじゃわからないな〜」
「…!」
ぽこ! ぽこ! ぽこ! ぽこ!
叩かれてしまった。
「ちゃんと言えたらご褒美あげたのになぁ〜」
ぽこ! ぽて
「!?」
少し考えるようにうつむいて、彼女はやわらかそうな唇を震わせた。
「…ぉ……ぃ…」
付き合いの長さから何を言おうとしてるかは読み取れた。
「ん〜? それじゃ聞こえないよ」
耳に届くようにじゃないと。
「……」
だから待つ。
「………………」
もじもじもじもじ。
「…ぉくちが…さびしいのっ!」
「はい、よくできました!」
僕の声を聞いて彼女が幸せそうな笑顔を浮かべる。
「それじゃご褒美あげないとね」
「…♪」
こくこくこくっ
覚悟完了とばかりに目を閉じおとがいをそらす彼女。
そして僕はポケットから板ガムを取り出して彼女の口元に当てる。
彼女のまゆがハの字に歪む。
んむ。困った顔もなかなかにかわいい。
「……」
もきゅもきゅ
板ガムは無事彼女の口の中へ収まっていった。
「……!!」
彼女の瞳が強く何かを訴えてくる。
(これは違う! 私がんばった!)と。
「言ったでしょ? 現地に着くまではキス禁止って。」
「…」
「ほら、もうちょっとで着くから」
「…」
「…」
ちょっといじめすぎちゃったかなぁ…。
「……」
くいくい
「ん? どうした?」
再び彼女は自分の唇を指差しアピールする。
「もっとほしいのか?」
「……」
こくこく
「はいよ」
「……」
もきゅもきゅ
くいくい
「ん??? もっと?」
仕方ないのでガムの束ごと彼女に渡す。
まぁこれくらいで機嫌直してくれればいいか、なんて思いながら。
現地に到着し、荷物を降ろす。
シート越しの芝生が気持ちよく日差しも頃合いで、つい横になってしまう。
「んぅ〜ん、気持ちいい」
「……」
も き ゅ
大の字に寝転がった僕の上に彼女が覆いかぶさって日陰を作る。
いたずらっぽく怒ったほっぺたを膨らませて、
微かに残るミントの匂いが僕の唇に触れた。
ちゅ
「…んっ……」
「んふぅ……」
唇の感触を確かめ合う優しいキス。
彼女の両手が僕の頬に添えられる。
「…んっちゅ…」
「…はむっ…ぬっ!」
じわじわと強くなるミント臭。
僕の口の中に柔らかい感触が侵入してきてさらに強くなった。
「……んっんっ…」
「…ん! んっーんー!」
これ舌違う! ミント! ガム! ギブ!
驚く僕を楽しそうに見つめる彼女の瞳。
僕の頬を挟む両手は力強く拘束から逃れられない。
1パック分……いや、自前の分も使いやがったな!
僕の口の中に巨大なガムの塊が押し込まれてくる。
必死に舌で抵抗するも、彼女のリードは崩せない。
「……んふっ♪」
「………………」
口いっぱいにガムを詰め込まれてクールでミントで涙目。
「…もう、いじめない?」
「……」
こくこく
喋れない僕はいつも彼女がしてるように頷くことしか出来なかった。
ちょっとした凶器になっていたガムを捨て遅い昼食をとることにした。
彼女が背負ってきたリュックには、
明らかに胃袋が二人分では足りない量のお弁当が入っていた。
「……君の事考えてたら…だって…」
との事、遅刻したのも僕の為にとつい料理に熱中してしまったからだそうだ。
「…それならそうと言ってくれれば…」
「……だって、あんな事いうから……」
ちゅ
「……」
「…た、たべようか」
「……」
ふるふる
「…たべないの?」
「……」
つんつん
彼女は自分の胸の辺りを指差した。
「…? 胸に…キス?」
「……」
ふるふる
「……ずっと…お預けされてたんだもん……」
彼女は座っているシートから腰を少し浮かせると、
僕にだけ見えるようにスカートを覗かせた。
「……もう、ガマンできないの……ね?」
「でも、ここはマズイ…よね?」
「…ちゃんと……いえたから……ごほうび♪…ね」
ちゅっ
「…ん、ふぁ…」
「んむっ……ちゅ」
合わされた唇の間で蠢く二本の舌。
ひたすらお互いを確認する為にになぞり、絡め合う。
時折引き離されるその逢瀬も、透明な糸が二人を手繰り寄せ、繋ぎ、編みこんでゆ
く。
「……んっく……」
「はぁ…っ…っふ」
僕は彼女の胸に手を伸ばす。
指先が触れるか触れないか、微かに服をなぞった頃。
「…!…っふぁ!…胸は……だめぇ」
息も絶え絶えに言い、胸に触れようとしていた僕の手を彼女が捕まえる。
その手はそのままスカートの中へと誘導され、僕の手はそこで水音をはじけさせた。
「…んっ…あっはぁ…んむっ……」
「…ねぇ……どうして胸はだめなのかな?」
聞かないでも分っている事だがあえて口に出す。
「…んっ…ばっ…ひぅん!…し、しらないっ!」
彼女の胸は小さい、とても。
そして大きさと反比例するかのように感度がいい。
空いたもう一方の手を再度彼女の胸に向ける。
「ひんっ!……だっ…あ…はぅぅん」
今はただ添えただけに過ぎない、そして彼女はこう言う。
「やめっ…くふぅん……はずかしいのぉおお!!」
人よりも小さいのに感じてしまう、恥ずべきいやらしい胸。
快楽に貪欲なその部分に彼女はコンプレックスを抱いている。
「はずかしいの? でも、ほら。 こんなに気持ち良さそうだよ?」
上半分だけボタンをはずし、両手に収まってしまう乳房を直に包み込み、
人差し指と中指の間に、かわいく自己主張している乳首を挟みこね回す。
「…ッ!……ぁ!ぁ!っ!…っあ!」
「ぅう…ぁん!…もぅ!…いじっ!…めないって…ぃいい!」
そのまま彼女を押し倒し口から首にかけて幾つものキスをする。
上着のボタンを全てはずし、フロントホックのブラも取り払った。
「んっ…ちゅぱ…ああ……僕も…もぅ」
「っはぁ…はぁ…っん…いいっ…よっ…」
彼女の胸に舌を這わせながら自分のズボンを脱ぎ捨てる。
「くぅんん……っは…あっふ……きて!…ねぇ、きて!」
ぐっしょりと濡れてしまった彼女の下着を下ろし、
きつく引き締まった膣を一気に貫く。
「…んんんんんっ!!」
「あぁ…!…すごい、すごいよ!」
少しでも彼女の奥へと腰を打ち付ける。
「んっんっんっ!…っふぁ…あっあぁぁあんっ…んっ!」
彼女の腕が僕の首に回される。
「んっ…好っきっ…だいっ!すきっ…!」
「僕もっ…っはぁはぁ…あいしっ…んちゅっちゅ…ん!」
正直この状態で口を塞がれると苦しい。
感じられる彼女の体温と匂いと快楽と……頭が真っ白に…
「んっ…はふっ…ふんむっ…ん!!!!!」
「っ…んぱっ…くちゅ…んっんっんーーー!」
ぴんぽろり〜ん♪
「………」
「ん…へ?」
イった後の脱力感と酸欠で回らない頭に妙な機会音が響いてきた。
ぐったりして息を整えてる彼女は動ける様子も無く…
「まぁーまぁーー! お兄ちゃんとお姉ちゃんチューしてたーー!」
ナンデストー!!!
そう叫んで走り去ってゆく幼女。僕がそのくらいの頃なんて携帯電話すらなかったっ
ての!
まぁハイキングコースど真ん中もいいとこ、人がいないからと油断してた…。
「やっばいなぁ……」
「……♪」
「なんで嬉しそうなんだよ?」
しょっちゅうキスするのは恥ずかしくて見られるのはなんでもないのか?
「……君となら……平気かなって」
「そ、そうですか…」
こういうとこ女って強いなぁとしみじみ思う。
「…ねぇ?」
Hの後は恥ずかしさが緩和されるのか少し饒舌になる彼女。
「なに?」
「…さっきみたいな女の子がいいな」
写メ取り逃げしていった幼女の事だろうか?
たしかにかわいいとは思ったけど、そんな趣味はないし……
「……♪」
すりすり
「…!」
うん、避妊しなかったね。
貯金たまったらプロポーズしようって思ってたけど、
これはこれでありなのかもな…。
「……ぱーぱっ!」
「!」
ぴりりろり〜ん♪
今、すっごいまぬけ顔撮られた。不意打ちすぎる。
「…………」
なんでも、子供が生まれたら『あなたが出来た時のパパの顔』と言って見せたいらし
い。
「……♪」
女って強すぎるなぁ……
GJ!
これをGJと言わず何と言おう!
ううっ、GJ作品じゃないか…嫉妬さえ生まれるほどの…
恥ずかしくなる気持ちはわかる。すっごくわかる。抜くのと書くのは別だからな…
でも見事じゃないか。萌えとエロが見事にマッチしてるじゃないか。
『無口』と『恥じらい』ッ!この世にこれほど相性のいいものがあるだろうかッ!
GJGJ!!
なんといういい作品
新作プリーズ!!(マテ
>>178 いや、ない!!
>>176神GJ!!!!
ハァハァ・・・あんた俺たちを興奮で萌え殺す気なのですか?
だがそれでもいい。こんな最高無口が見られるのなら、俺が女にさせられて喋れなくさせられてもいい。
GJ!これはいい無口
>>180 言霊を抑えるために喋らないようにしているわけですね
口にバッテンマスクつけた言霊使いの話クルコレ
>>176 グジョーブ!
幼女に撮られた写真がどうなるのかが気になる俺はきっと凌辱属性w
「口が無い……!!!」
「……」
「あ、なんだマスクか」
風邪で喉がつぶれて声が出せないってのはアリかな
オカルト好きな俺は何も言わずぼーっとこっちを見てるだけの少女幽霊に萌えますが
その少女が見えるようになったのは、つい先日の事。
特に何かきっかけがあったような覚えは無い。振り返ったらそこにいた。
いや、居たというのは正確じゃないな。彼女は浮いていたんだから。
「俺、霊感無いはずなんだけどなー」
その少女は、どこからどう見ても幽霊だった。これ以上無いくらいに幽霊である
事を主張していた。向こうが透けて見える、半透明の身体に白っぽい顔や手。
手足ではなくて、手。幽霊の常に漏れず、彼女に足はなかった。
彼女が幽霊でないというのなら、一体何だと言うのだろうか。
「………………」
彼女は俺を見ている。キョトンとしたというか何というか、まあ、ボーっとした感じで
俺の事をずっと見つめているようだった。視線は俺に結ばれているようで、目と目があっても
動じずに俺を見つめ続けている。
視線を感じながら、俺は彼女を観察した。
目鼻立ちが整った可愛い顔をしている。来ているのはワンピース。肌の白さに勝るとも
劣らない、純白のそれは、彼女の可愛さをより引き立てているようだった。
「……なんだかなぁ」
感情がこもっているようでこもっていないような、そんな不思議な視線に、何だか俺は
照れくさくなってきて顔を背けた。
照れくさくはあるが、嫌な感じはしない。むしろ、何だか……その……嬉しい?
「おーい」
俺はもう一度視線を彼女のそれとあわせ、声をかけてみた。
「?」
小首をかしげる彼女。その仕種が、何だか小さな動物を思わせて、ますます可愛い。
「お前何でここにいるんだ?」
小首をかしげたまま、彼女は初めて俺から視線を外した。外れた視線は宙を彷徨う。
何か考えているのだろう。
「……」
ふるふる。しばらく経って、彼女は首を横に振った。
「わからない、って事か?」
「……」
こくこく。今度は彼女は首を縦に振った。
「……どうしたもんだかなぁ」
嫌な感じはしない。何か、憑かれたとか、のろわれたとか、そういう感じは無い。
だからだろうか。俺は自分でも思いもしない事を口走っていた。
「しばらく、ここにいるか?」
彼女の瞳が、少し大きくなる。驚いたのだろうか。
「だって、自分がなんでここにいるのかわからないんだろ? だったら思い出すまで
ここにいればいいよ。別に俺は困らないからさ」
大きくした瞳で俺を捉えながら、彼女は小首をかしげた。
いいの?と訊いているのだろうか。
「ああ、君さえ良ければ」
その言葉に、彼女は初めての表情を見せた。
それは笑顔。
「……なんだかなぁ」
俺はそのあまりの可愛さに苦笑いするしかなかった。
「じゃま、よろしく頼むよ」
「……」
俺の挨拶にこくこくと、笑顔で頷く彼女。
――奇妙な同居生活は、こうして始まった。
>>185 こうですか!? わかりません!
店長!
この店のワッフル、全部俺が買った!
じゃあ俺はこの店のスコーン全部!
20分足らずでここまで書けるとは…
>>186の才能に期待せざるを得ない
190 :
185:2007/10/26(金) 20:54:28 ID:akulNmV8
>>186 うん、それそれ。ジャストミート。サンクス。
君の才能に嫉妬だぜ。
なぜ嫉妬するか。
それは俺が書こうとしていたからさorz
数日が経った。
彼女は、基本的には俺を見ているだけだ。 それ以外に特に何をするでもなく、
ただただ俺を見ている。俺はといえば、そんな彼女の視線を受けながら、
いつも通りの生活を送るだけだ。変わった事と言えば、時々彼女と"会話"をするように
なった事くらいだろうか。
そんな彼女は基本的に俺の部屋から出られないらしく、俺が部屋を出て行こうと
すると、酷く寂しそうな視線を俺に注ぐ。
ちょっとだけ申し訳なく思いながら、俺はいつも仕事に行く。
「今日もなるべく早く帰るから……そんな顔せずにいい子で待っててくれな」
行ってきますの挨拶。彼女は寂しそうな視線はそのままに、笑顔を浮かべて俺を見送ってくれる。
そういう風に挨拶のできる同居人(幽霊だが、まあ人型をしているので人でいいだろう)が
出来たのは嬉しくもあり、その同居人に寂しい想いをさせてしまうのは心苦しくもある。
まあ、働かなくては食う事はできないわけで……ごめんな。
「お前、最近付き合い悪いよなー」
「すまんなー、最近ちと野暮用が多くてな」
同僚の苦笑に苦笑を返し、その日も俺は足早に帰途を急ぐ。
「ただいまー」
ただいまの挨拶。そういう風に挨拶のできる同居人ができたのは嬉しいし、それに
その時彼女が見せてくれる笑顔が、何よりも嬉しい。
「ちょっと遅くなっちゃったな……って、あれ?」
だが、今日はその笑顔が、いつもある所に――事務机の後ろの空間に――なかった。
「おーい、どこ行ったー?」
それほど広くない部屋だ。十代半ばくらい――に見える――の彼女の身体が
隠れるスペースは、そう多くない。
「……まさか」
その時、俺の脳裏に嫌な予感が走った。その予感に従い、押しいれの方を見てみると……
「何をやってんだ、君は……」
押入れに頭を突っ込んで、ごそごそしている彼女の姿がそこにあった。
声に気づいたのか、彼女は俺の方を振り返り、
「……」
にこりと笑った。
「ただいま……遅くなってごめんな」
「……」
ふるふる。彼女は首を横に振る。どうやら気にしていないらしい。
「しかし、何をしてたんだ? 幽霊なんだから物触れないんじゃ……げっ!?」
そこまで言って、俺は大変な事に気づいてしまった。
その押入れの中に何が入っていたかという事と、今日出勤する時に、押入れの
戸を閉め忘れて出てきてしまった事を。
彼女は何の制約があるのか、扉などをすり抜けるという幽霊には付き物の能力が
使えないらしく、実質俺の部屋の中がその行動範囲となっている。
だが、今日に限ってはそうではなかった。押入れの中という、新たな行動範囲。
「……中、見たの?」
「……」
こくこく。彼女は首を縦に振った。心なしか、その頬が赤いような気がしないでもない。
「……俺が遅くなって、普段見れない所が見れるようになってたから、見た、と?」
「……」
こくこく。彼女はやはり首を縦に振った。いつも俺を捉えて離さないはずの彼女の
視線が、心なしか他所を向いているような気がしないでもない。
「……まいったなぁ」
押入れの中には、まあ、その……男の子には必要不可欠なものが入っていた。
まあぶっちゃけた話、いわゆるエロい本やらビデオやら、だ。
「何というか、その……ごめん」
とりあえず謝ってみる。
「……」
ふるふる。
彼女は、今まで見せた事の無い、困った顔で首を横に振る。
元々そっちについては淡白で、自分で処理するのもごくたまにやる程度だったんだが、
たまにであるにしろそういう事をやるからには、色々とおかずも必要になってくるわけで。
……まあ、そんな事を言ってみた所で、彼女が卑猥なものを目にする事になってしまったのは、
全面的に俺が悪いことに変わりは無い。
「とりあえず、これは明日まとめて処分してくるから。嫌なもん見せちゃったね……ホントごめん」
これが俺に示せる、彼女への精一杯の誠意だった。
が。
「……」
ふるふる。彼女はよそうに反し、今まで見せた事の無いような必死の形相で首を横に振った。
「え?」
「……」
次に押入れの方を指差し、にこりと笑う。
「……捨てなくて、いいって事?」
こくこく。俺の確認に、彼女は首を縦に振った。
「けど……いいの?」
「……」
こくこく。彼女はまた首を縦に振る。
寛大というか鷹揚というか何というか……いいんだろうか?
「……けど、どっちにしろ、君がいたら使えないわけだし」
使うつもりもなかったし、必要もなかった。
彼女がここに現れて以来、心身ともに充実していたし、そのせいか、そういう処理が
必要な程に欲求がたまった事はなかった。
「……」
彼女の顔が目に見えるほど赤くなった。
やばっ、これじゃセクハラだ!?
「ご、ごめんっ! また俺……え?」
だが……彼女が顔を赤くしたのは、俺の言葉のせいではなかった。
「……」
ふるふる。こくこく。彼女は首を横に振った後、今度は首を縦に振り、そして笑った。
「……えっと」
ど、どういう意味だ?
「え……エロい事、OK?」
「……」
こくこく。彼女は首を縦に振った。
「というか、して……見せて欲しい、って事?」
「……」
……こく、こく。一瞬の間を置いて、彼女は首を縦に振った。
「……」
「……」
今度は俺が赤くなる番だった。
「い、意外に、大胆なんだな、君って」
「……」
彼女の白い肌は、頭の先から爪先――は無いから……まあ、全身って事だ――まで、
朱に染まっていた。白いワンピースが、その朱色をさらに強調している。
普段の真っ白な彼女も可愛いが……その朱に染まった彼女も、何というか……ああ。
「みたいん、だよ、ね?」
「……」
こくこく。再度の確認に、彼女はやはり首を縦に振る。
「見て楽しいもんでもないと思うけど……俺で、よければ」
「……」
こくこく。彼女は首を勢いよく縦に振った。
まるで、俺でなければダメなんだと言わんかの如く――ってのは流石に自意識過剰だろうか?
「じゃあ、一つお願いが」
自意識過剰ついでに、俺はとんでもないお願いを彼女にしてみた。
「見せるから……手伝って貰えないかな?」
「……?」
その言葉の意味が、すぐには彼女にはわからなかったようで。
「……!」
小首をかしげてしばらく考えた後、彼女は両の頬を手で押さえながら俯いてしまった。
「あ、ダメだよね! そりゃそうだよな、ごめんごめん、またとんでもない事を言っちゃったな。
今のは無しってことにしてくれると」
「……」
こくり。彼女は俯いたまま、一度だけ、首を縦に振った。
「嬉し……えっ!?」
……ま、マジですか?
「い……いいの?」
「……」
こくり。今度は、顔を上げ、僕の方をいつもの――それよりは随分と潤んだように見える――
瞳で見つめながら、一度だけ、頷いた。
「……すー、はー」
まさか、そのとんでもない要望が受け入れてもらえるとは思っていなかった俺は、
跳ね上がる鼓動を何とか落ち着けようと深呼吸をする。
「……」
彼女の胸も、俺のそれと同じように、大きく上下している――まあ、息を吸う必要は
多分無いのだろうけど。
「な、なんて言えばいいのかわからない、けど……よろしくお願いします」
「……」
俺のその言葉に、彼女はいつものにこりとした笑顔とはちょっとばかり違う、
照れたような顔で笑った。
一先ずここまで。
エロくしようかどうしようか悩みましたが、エロくする方向で。
>>194 仕事早すぎGJ!!
さぁ早く続きを(ry
ってか俺も欲しいな……無口美少女幽霊
ちょっと恐山いってくる
恐山に向かった
>>195 その前に、突如現れた無口美少女幽霊
が入った婆さん!
続きはちょっと待ってくださいね。
俺も自縛霊になってくるわ
男だけど
自爆霊?
ウイングガンダムとかの亡霊か
任務了解
綾波レイ(2人目・自爆済み)の攻略を開始する
>>200 自爆霊は無口スレと関係ねぇだろ…………って、
すまん、綾波ならOKじゃないか。
202 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 10:53:35 ID:joDzVvKv
は や く つ づ き を
生殺しだ…
>>186 GJ! 続きに期待しているッ!
きみのこえ 21/21
下記シーン描写があるので注意されたし。
器具による強制無口 洗脳行為
相手の意思を尊重しない性交渉
無駄に長くてすまない。
無口娘のつもりだが…思ってるような期待には応えられそうに無い。
語りだしたら止まらないのでこれ落としたら無口に戻ります。
自分では気付けない部分もあるからマジな酷評はツライけどとてもありがたい。
そしてたった一言のGJでも救われる。
全ての職人と読んでくれた方々、レスくれた方々に感謝。
773 :名無しさん@ピンキー :2007/12/27(木) 21:25:39 ID:RLghGVzj
>>709 その幼馴染で無口属性の彼女が横にいる俺は勝ち組
もちろん白い美肌がキレイなハイスペック美少女だ
永遠のセブンティーン!
別の何かと勘違いしたヤツはモニターごしに謝っとけ
774 :名無しさん@ピンキー :2007/12/27(木) 21:25:48 ID:RLghGVzj
かわいい彼女さんでしあわせですね〜v ミ・w・ミ
775 :名無しさん@ピンキー :2007/12/27(木) 21:29:22 ID:ksmst929
脳内ウザイもうここくんじゃねえ
一生モニター入ってろ
自演房乙wwwwwwwwwwwww
自演じゃねーっての、彼女の代弁…まぁある意味自作自演か。
どうせこれでネタも切れだしもうこねえYO!
真っ暗な部屋の中、しばらく見つめていたモニターから目を離す。
隣にはモニターの明かりを受け、肌の白さが際立つ少女が浮かび上がる。
「……」
「脳内だってさ」
男は、自分の言葉で女が笑ってくれたように感じた。
私の想いを、知ってほしかったのです。
大学ノートって言うけど、本当に大学で使っているのでしょうか?
私は行くことは無いでしょうけどね。
あ、購買のおばちゃんに聞いておけばよかったかもです。 ミ・w・ミ
そう書き込まれたノートは僅かな期間だったと言うのに、
書き直しや汗で、また握りつぶされたかのようになって、
ボロボロに痛んでいた。
私と裕君の最初の思い出はひどいものでした。
体の弱い私は学校をよく休んでいて、たまに登校できた日も憂鬱でした。
先生に指されても答える声は届かなくて、
男の子達からはいじめられてしまっていたからです。
「おまえら、そんなやついじめてたのしいのか?」
休み時間の教室での事でした。
突然の大声に私をいじめていた子達もびっくりしていました。
その時の私には裕君が運命の王子様に見えました。
「…った、たのしいにきまってんじゃん!」
いじめっ子の一人が言い返しました。
「ふぅん」
裕君はそういうと大股でこちらに歩いてきました。
そして私に手を差し伸べてくれたのです。
感謝の気持ちがいっぱいです。これでもういじめられないと思いました。
「じゃあ、こいつ今日から俺専用だから」
裕君の話す言葉の意味が分らなかったです。
もちろんすぐにその意味を知ることになりました。
裕君と初めて会った時の感情は絶望だったんですよ?
覚えていますか、裕君。 ミ・w・ミ
次の日から裕君のいじめが始まりました。
本当につらかったのですよ?
毎朝のように家に来て私を連れ出しましたね。
通学路の坂道で息切れしてしまう私を罵倒したり、
給食の牛乳取ったり、バケツで水かぶせたり。
当然、裕君は毎日先生に怒られていました。
たまに御両親も呼ばれていましたね。
今思うと、結構大変な事だったのではないでしょうか?
でも、ある時私は気付いてしまったのです。
梅雨時の雨の日の朝、お母さんが裕君が来ないのを気にしていたのです。
その時の私は、裕君がだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いっきらいでした。
私が朝食を食べている間、お母さんは電話をしていました。
しきりに腰を折ってお辞儀をしているので、電話の相手が気になりました。
おトイレにいく振りをしてこっそり聞き耳を立てた私に聞こえたのは、
「…いつも…ありがとう……また、お迎えお願いね、お大事に、裕君」
いつも? また? 裕君!?
混乱してしまった私はお母さんを泣きながら問い詰めました。
いじめの首謀者はお母さんだったのか、と。
その日は半日近く喧嘩してたんですよ?
あ、私が喧嘩したの、それが初めてだったのかも。
喧嘩記念日ですね、今度お祝いしてください。 ミ・w・ミ
裕君にお迎えを頼んだのはお母さんでした。
「静を守ってあげてください」と幼い男の子に両親は頭を下げて頼んだそうです。
親の目の届かない学校で、病弱で友達が作れない私の為に、
幼馴染をボディーガードにつけてくれていたのでした。
それでも私をいじめる事に文句を言うと、
「男の子は照れ屋さんで、みえっぱりなのよ。
飾られた言葉の向こうに『ほんとう』はあるの」
言われた時はよくわかりませんでしたが、今なら痛いほど分ります。
「殴っても死なない様に鍛えてやるからな、まだ殺人犯になりたくないし」
そういって拳を振り回し、私を追い掛け回しましたね。
でも、一発も殴られた記憶はないのです。
「こら裕次郎! それ静の牛乳でしょうが!」
裕君のあだ名は和美のつけた『裕次郎』で広まっていましたね。
私はそのあだ名で呼んだことはないけれど。
「はぁ〜? 静は俺の物だし意味分らないんですけどぉー?」
「こんの馬鹿ゆーじろぉ! ったく…はい、静。
私の半分わけてあげるからね、みるくちゅっちゅちまちょうねぇ〜」
「……ぁ」
和美は転校生だったけど。持ち前の明るさですぐにクラスになじんでいた。
『きゃー、この子かわいすぎー! もーらいっ!』
そういって私の頭を撫で回したのが一週間ほど前のことだったはずです。
ただ、初日のこの発言で裕君とは仲が悪かったですね。
「つまりソレも俺の物ッ!」
和美の差し出してくれた牛乳も裕君が奪い取って飲んでしまう。
「……」
「…ちょ、馬鹿っ! それアタシが半分…くち…」
「あばよっ!」
あっという間の出来事に対応できない私。
顔を赤らめて口ごもってしまった和美。
さっと教室を抜け出してしまう裕君。
裕君が教室に戻ってくるのはいつも五時間目の終わりごろ。
無理して牛乳を飲むからお腹を壊すのです。
でもそれは、私が牛乳を飲めなくていじめられていた事があったの
知っていたからなののでしょう? ミ・w・ミ
「……っ…」
小学校では授業中におトイレにいったりしてもからかわれました。
「……ぅ…」
だからここは我慢のしどころ。…なのに。
「…ぁ…ぃ……」
大ピンチです。我慢しすぎて動いたら漏れてしまいそうです。
せっかく休み時間になったのに次の授業にはいってしまいました。
「っぁ……ぉ…!」
ザッパーン!ビシャッしゃービチャビチャボタッボタ……
全身に悪寒が走り、目の前が真っ暗になりました。
私はずぶぬれになってバケツをかぶっていたからです。
驚いて弛緩してしまった私の緊張は、
あっけなくバケツの水量アップに貢献していました。
「なにやっとるかぁ!」
担任の先生の怒鳴り声がします。
やっぱり犯人は裕君でした。
裕君なりに私を助けてくれたのは感謝しています。
でもね、女の子がおしっこ我慢してるのを見破ったり、
雑巾しぼったバケツの水だったり突っ込みたいところはいっぱいあります。
どうですか、裕君。
いじめってこんなにも引きずってしまうのですよ?
まだまだま〜だありますけど、ノートも時間も足りなくなっちゃいますね。
水に流して〜なんて言い訳したら雑巾しぼっておきます ミ・w・ミ
小学校の高学年になってくると色々分ってくるようになりました。
だからあの日、精一杯の覚悟を決めて裕君に告白しにいったんです。
「……ゆぅ…くん」
「ん、なに?」
「……」
「…なんか用あんの?」
「……」
それでも裕君の前に来ると緊張して何も言えなくなってしまうのです。
「………」
「…いわなきゃわかんねーって…つかもうかえっていい?」
「あっ…だめっ!…その…あのね…」
帰ろうとする裕君の腕を思わず掴んでしまっていた。
「あの…あのっ…ごめんなさいっ!」
「…はぁ?」
理解できないといった表情で固まる裕君。
「ずっと…わたっ…わたしっ裕君に…迷惑…かけてたっ」
気持ちが高ぶってしまい涙も鼻水もでてグシャグシャの顔になってしまう。
「だから…あやまらないとっ…ごめ…ごめんなさぃい…うぇ…」
私が泣き止んで落ち着くまで裕君は私の頭を撫でていてくれた。
「…はぁ…馬鹿かおまえ? ごめんなんて言われてもうれしくねーよ」
その言葉に私は凍ってしまう、初めて会った時に裏切られたと感じた様な絶望。
「静は『ごめんなさい』っていわれて嬉しいのか?」
「……」
首を横に振って私は答えます。
「だろ? そうだな…ありがとうってのはメジャーすぎるしなぁ…」
裕君に許してもらうためには…そう思い、彼の言葉を聞き漏らすまいと、
私は耳を澄まし、裕君を見つめ続けました。
「いいことおもいついた。 ごめんなさいの代わりに『好き』って言え
そのほうが俺もうれしいな、うんそれでいこう」
裕君はそういうといやらしく笑うのです。
この頃は恋愛感情というよりも、
そういう言葉自体口にするのが恥ずかしく、
たしかに贖罪として辱められる効果は甚大なものでした。
「ほら、どうした? 謝るんじゃなかったのか」
「………!」
謝ってることになってるのかどうかなんて分らなくなって、
頭の中こんがらがって、私は人生始めての告白を無理やりに音にしました。
「…ゅ…ぅ…く…ん…す…き…っ!」
「よし、それじゃこれからもそれで頼むな」
そういって裕君は私を一人置き去りにしていってしまいまた。
あの時の顔が忘れられないと裕君は言います。
忘れてください。覚えてても言わないでください。
これは警告であり忠告であり約束ですっ! ミ・w・ミ
中学校になるといじめというほどのものはなくなってましたね。
私と和美と裕君と。一番楽しかった頃だったかもしれません。
あの事さえ無ければ。
出席日数だけはギリギリで夏休みに出席だけ取りに行ったり、
保健室で一日を過ごす事が多くなっていました。
それでも三人で過ごす毎日は楽しくて満足していました。
裕君にだけの『ごめんなさい』もまだ続いていました。
無事に三年生に上がり、先生よりも受験生が走るような頃でした。
通っていた中学校は焼却炉がある所でゴミはそこに集められていました。
掃除が終われば教室のゴミ箱を持って行き、朝に日直が回収してくるのです。
今日はその日直が休んでしまったため、私が取りに行くことになりました。
「……(今までゴミ箱が無いのに気付かないなんてみんな…あ、私もか)」
校舎の角を曲がると焼却炉です。
放課後ということもあってか数人の生徒がいました。
こちらからは背中しか見えませんでしたが、
うちのクラスのゴミ箱がイスにされているのだけは分りました。
声をかけようと少しだけ深呼吸。知らない人と話すのは勇気がいるのです。
「でさ、アイツなんつったっけおまえのクラスの」
「小泉静だっけ?」
(……!)
なんで私の名前が出るのでしょう。
とっさに校舎に身を隠してしまいました。
この歳にもなれば恋愛にだって興味も出てくるだろうし、
もしかしたら告白されてしまうのかもっ。
和美がよく『しずちゃんかわいすぎぃ〜』
と、挨拶のごとく言ってくれるけれどそうなのかなっ!?
なんて自惚れてしまえるほどに、私の考えは稚拙なものだった。
今まで何度過度な期待をして馬鹿を見てきたのでしょうか。
「そうそいつ、小泉ならチクらねぇって、
どうせ泣き寝入りして学校こなくなるぐらいだって」
「バカか? 一発で終わりかよ、写真撮って脅してペットだろ?
授業中にローター回して喘がせてぇ」
「趣味わりぃ! で、いつやる?」
「掃除おわったらここくんじゃね? 今週は小泉が掃除当番のはず」
「ッシャー! んじゃ誰先やる? あれ絶対処女だぜ」
「あー、亀田ボコって持ってた金額当てて近い順とかどうよ?」
「準備運動ってか? 森、おまえちょっと亀田ひっぱってきて」
「だりぃ〜、まぁいってくっかぁ〜」
手のひらが汗でぐっしょり濡れていました。
逃げなければ、ここから一刻も早く離れないと!
ガタンッ!
私は走り出します、躓きながら。
貧弱な肺がもう悲鳴を上げ始めます。
かつて無い恐怖が心臓を締め付けました。
涙で視界が滲みます。
校舎の入り口を曲がった所で強い衝撃が身を包みました。
次の瞬間、男子用の制服の胸の辺りが目の前に広がっていたのです。
呆然とした一瞬の隙に、二本の太い腕が後ろに回され抱きしめられてしました。
身をよじって抜け出そうとしますがビクともしません。
頭の上から聞こえてくる言葉は楽しそうに囁きました。
「逃がさないぜぇ」
その声を聞いて私は堪えきれなくなって声を上げて泣き出してしまいました。
「んむっ…!」
「馬鹿! 周りに聞こえる!」
私の口はおおきな手のひらに塞がれながら、
嗚咽を吐き出すことしか出来ませんでした。
「てめぇ、掃除さぼってどこいきやがりますか…って、おま泣くなよ」
「…ひっく…っ!…」
「あー、怒ってないから、な? とりあえず落ち着こうぜ?」
「たす…っけて……犯され…ちゃう…うふぁぁあんん」
「はぁ!? おい! どういうことだよ! とりあえず教室行こうな?」
「…ぐすっ!…ぅぅ!…」
首を振り乱し提案を拒否しました。
今は学校の中にすら居たくない、
周りの生徒全てが私を監視してるような錯覚すら覚えたからです。
私は幸運にもめぐり合えた裕君にすがりながら校門に向かいました。
私と裕君はそのまま私の家に向かいました。
「学校サボっちゃったな…」
「……」
その時の私は、元気付けようとしてくれてる裕君の言葉も、
窓の外の景色を見るように何も感じられなくなっていました。
部屋に座り込むと、二人っきりの空間に思い沈黙が流れました。
再び泣き始めてしまった私を、裕君は優しく抱きしめてくれました。
どのくらい時間が経ったのでしょうか。
私は放課後のできごとを少しずつ話しました。
じっと話を聞いてくれた裕君が、
膝の上で拳を握り締めていたのを鮮明に覚えています。
「…アイツら…ブッとばしてくるッ!」
話しを聞き終えると裕君はそういって立ち上がりました。
「……いかないで」
「……」
「…裕君……私を…抱いて」
「なっ!」
裕君は凄く驚いた表情をしていました。
逆に私は、全てを吐き出したからか、吹っ切れてしまったのか、
とても冷静に落ち着いていました。
「ばっ、馬鹿な事言うなよ…静、落ち着けって」
「…私は…落ち着いてるよ…ねぇ、お願い」
「そんなこと…俺達にはまだ早い!」
「ねぇっ!……私を……守って」
「…静」
立ち尽くす裕君を見上げながら私は考えていました。
せめて初めてだけは…好きな人と……。
もしかしたら、この時の私は冷静になったのではなくて、
狂っていたのかもしれませんね。
ただ、それが最善に思えて行動に移してしまったのです。
私は立ち上がり、引き出しからカッターを取り出しました。
チキチキチキチキチキチキチキ
「お、おい! 何してんだ!?」
裕君が慌ててこちらに手を伸ばします。
その手も、カッターの伸びきった刃が私の首筋に当てられると、
時間が止まったように凍り付いきました。
裕君、これなら『だるまさんがころんだオブ・ザ・イヤー』取れますね。
「わかった…わかったから、それをこっちに渡せ」
「……」
まだだめ。
裕君の目は、まだ私を止められると思っている。
「………駄目。……裕君」
そういって私は部屋のあらゆる場所に視線を移します。
裕君も私の視線を追って同じものを見ます。
一度も使うことが無かったなわとび、私が写っている鏡、
鉛筆立てのはさみ、制服の架かったハンガー、ガラス窓、
知っていますか? たった一枚の新聞紙でも人は殺せるのです。
自殺には向かないですけれど。
「解ったよ、静」
「……ありがとう、裕君」
私は机にカッターを置き、服を脱ぎ始めます。
恥ずかしいという感情は気にならない程度にしか起きませんでした。
着ぐるみを脱ぐ様な、視点がいっこ後ろにあるような感覚でした。
「……裕君?」
私はベッドに寄りかかり呼びかけました。
「あ、あぁ…」
声を掛けられて、やっと裕君は金縛りから解放されたようでした。
裕君はもそもそとゆっくりしたペースで服を脱ぎます。
それでも最後の抵抗とばかりにトランクス一枚で私に顔を向けます。
「なぁ…静」
「……」
私はゆっくりと首を横にに振りました。
二人分の重みがベッドを軋ませます。
横になり脚を広げ、その間に裕君を招き入れました。
叱られた子供のように座って困っている裕君。
「……」
「……しよ」
男の子の裸がどういうものかは知識としては知っていましたが、
実際に見るのはこれが初めてでした。
引き締められた身体についているアレが大きくなるのでしょうか、
今はかわいくぶら下がっています。
「…少し…濡らさないとな」
裕君に丸見えになっているアソコは、私の心を映すかのように乾いていました。
ふとももに手がかかり裕君の吐息がくすぐるようにかかりました。
健全とは言えない私の身体は、上辺だけの成長にとどまっており、
恥ずかしながら産毛のようなものが、申し訳程度に覆っているだけでした。
肌を濡らす裕君の舌が優しくアソコをなぞっていきます。
…っ………ちゃっ…………ぬるり……
一生懸命に、必死に、精一杯、私の為だけに動かしてくれる愛しい舌。
私は上体をあげ優しく裕君の頭を撫でて言いました。
「……もう…いいよ」
裕君の愛撫と気持ちがくすぐったくてそこでやめさせました。
その時は、それで十分濡れていると思ったからです。
実際は裕君の唾液でぐしょぐしょになっていただけで、
私自身からは濡れていませんでした。ごめんね、酷い女で。
身体を起こして向かい合った裕君は、申し訳なさそうに俯いていました。
裕君のソレは始めたときと変らず、力なくうなだれたままでした。
「…裕君は……悪くないの…」
そういって私は身体をかがめて裕君に顔を埋めました。
「し、静っ!?」
先ほどとは逆転した体勢になり、裕君の驚く声が頭の上から聞こえました。
えっちの知識はお子様程度しかありませんでしたが、
和美が私の恥ずかしがる様を見ようと、無理やり聞かせてくれてたのが
少しは役に立ったのかもしれません。和美には感謝しないとですね。
とは言っても、実際に『舐めてあげたら喜ぶ』という情報だけでは、
正直な所どうすればいいのかは出たとこ勝負でした。
…ぴちゃ……っ…ぬちゃ……
こうですか? わかりません。
…くちゅ……ちゅ……っ……
舌を這わせようとすると逃げてしまうソレを捕まえて、
先っぽの方から舐めていきます。
ちょっとしょっぱいのは汗でしょうか、
そういえば二人ともシャワー浴びていないですね。
裕君にもこんな思いをさせてしまったかと思うと、申し訳なくなります。
でもでも私は裕君のなら嫌じゃないですよっ。
口に含ませた唾液を塗りつけるように下から上へ、
唇ではむようにやわらかく噛んで、できた架空の噛み跡を舌で確認する。
括れている所のしわを数えるようになぞり、
鼻先で押し上げるようにして裏側を舐め上げます。
結構がんばってるつもりだけど、裕君はなかなか元気になってくれません。
やり方がまちがっているのでしょうか。
私は裕君の表情を確認しながらソレを口に咥えました。
…ちゅ……はむ……んふっ……
口の中で転がすように舌をまわし、全体を飲み込みます。
裕君の表情をチェックするのも忘れません。
ただ、この姿勢だと上目遣いになってしまうのですこし苦しいです。
そして溜まってきた唾液を嚥下した時。
「…っぁ!」
「…!」
私の中のソレはぴくんと震え、裕君が声を漏らしました。
「…痛…かった?」
恐る恐る顔を上げ、私は聞きました。
「大丈夫、気持ちよかったんだよ」
そういって裕君は私の頬を撫でてくれました。
(ああ、感じてくれたんだ…)
安心させてくれた裕君の手の上に私の手を当て、
目を閉じて少しの間だけその温もりを分けてもらいました。
そして再び、先ほどの間隔を忘れないうちに裕君のモノを口に含みます。
飲み下すように、乳飲み子のように吸い付いて、
舌全体でやわらかい先端をすりつぶすように口の上に押し当てます。
そして脈動。
先ほどより大きく震えたソレは、次第に私の口の中を埋め尽くしていきました。
…ちゅぱ…っ……んむっ…!
口からあふれ出るほどに膨張したソレで、
私の喉の奥を突いてしまい、思わず吐き出してしまいました。
「っぷはっ!……けふっ…っふ…」
最初に見た姿からは想像もしなかった成長ぶりに私は驚きました。
自分のアソコをちゃんと見たのは小学校の保健の授業の時でしたが、
指一本ギリギリ位の大きさしかなかったと思います。
あの頃のままとは思いませんが、私のアソコに迎え入れるにしては…
その…すごく……大きいです。
私はその不安を押し殺し、裕君を見つめます。
「……」
「………わかった」
渋々という感じがしましたが、裕君は頷いてくれました。
始めの時の様に私は横になります。
すこし時間がかかったせいで私のアソコは乾き始めていましたが、
裕君のソレは私の唾液でぬめっていたのでたぶん平気です。
「入れるよ…」
「…」
大丈夫という意思をこめて私は笑顔で頷きました。
裕君の手が壊れ物を扱うようにそっと腰に回され、
熱くなった裕君が私に触れました。
「…っ!」
あぁ。
「……っ!!…」
あはああああぁぁぁぁあああああ!
「!!…!!!っ!…!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
駄目ダメだめ! あっっがっっはぁああっく!
「っ!!……っはあぅうう……ぐっ!」
「静っ! 悪い…痛かったろう、やっぱりやめよう? 今じゃなくても…」
「だっ…はぁ…だめ…なの…我慢……我慢するから…ちゃんとして…」
零れない程度の涙と絶対の意思を浮かべて私は答えます。
「…少しだけ、我慢しろよ!」
「っ!」
ああああああああああああああああああああああああああ
「……ぁ…っ!…ぁ…ぁ……!」
圧迫される内臓の感覚と、初めて味わう強烈な痛み。
やり方を忘れてしまったかのように呼吸が上手く出来ません。
声を出せず口を大きくぱくぱくさせながら、私は全身をつっぱります。
「大丈夫、ほら、ちゃんとできたよ」
「…っ…は……っは…」
整わない息を吐きながら下腹部に視線を送りました。
あれだけ大きかった物が根元までしっかりと繋がっているのがわかります。
「…はぁ…っはぁ…」
お腹の違和感も痛みも休まらないけれど、
肌と肌の触れ合う部分から伝わるあたたかさに、
ためていた涙がこぼれてしまいました。
だから。
「…動いて…いいよ」
「…でもまだ…つらいんだろ?」
とってもつらいです。
でも、男の人ってそうしないと気持ちよくなれないんだよね?
だから。
「……」
もうだいじょうぶだよっていう表情でこたえるのです。
ぎこちなく裕君は腰を動かし始めました。
突き上げる腰にくる衝撃とともに、リズムを携えてやってくる痛み。
つらくて、痛い、痛いよ、裕君。
けれど、それだけは悟られまいと私は表情をつくる。
揺らされる身体に合わせて息をする。
…っ…はっ……はっ……はぁっ……あっ…
…っ…あっ…あっ…あふぁっ…っは…
裕君の動きが激しくなり、私の呼吸も小刻みに漏れる。
「…静っ……俺、もうっ」
あっあっあっ…あっあン…あっ
裕君のモノが力強く私の奥に押し付けられ、ふるふると身体を震わせていました。
「はぁっ、はぁっ…」
射精した? のかな?
裕君が私に覆いかぶさって、荒く息をしていました。
しばらくして裕君のモノが私から抜け落ち、
アソコに感じる寂しい虚脱感と、
そこからゆっくりと肌を這いお尻に流れてゆくものを感じた頃。
ようやく私は、終わったのだとわかりました。
「……裕君、好き」
私は胸の上に乗る裕君の頭を抱きしめながら言いました。
「…静……」
「…好き」
「俺は…こんな形でおまえを抱きたくなかった…」
「…」
「ごめんな」
「…違うよ」
「え?」
「…ごめんじゃ……うれしくないよ」
「静…………好きだ」
「…うん、私もすきだよ」
「うぅ、静っ! 好きだ、好きだ好きだ……」
「好きっ…ぐすっ…裕君っ…好きっ…だよ…」
私達はお互いを強く抱きしめながら、
二人とも泣き疲れて眠ってしまうまで好きだと言い合っていました。
この時交し合った『好き』って本当の好きなのでしょうか。
私は……だと信じています、裕君はどうだったのでしょうか?
どうですか? 恥ずかしの初体験告白っ!
えっちな気分になっちゃいましたか?
本当に痛かったんですよ?
起きてでシーツを見て二人でびっくりしましたね、
日の丸ベッドか〜ってくらいに血が広がっていて、
二人とも血がべったりのバリバリでした。
それは痛いわけだなって私は妙に納得していました。
シーツの件は、生理が来たってお母さんにはいったけど、
その時本当はまだ初潮すら来ていませんでした。
たぶんばれてますよ、裕君。
お母さん優しかったでしょう? ミ・w・ミ
制服を着て家を出ると霧のような雨が降っていました。
傘を差そうか少し迷い、そのまま立ち尽くしてしまいました。
昨日の事を思い出して顔が熱くなります。
段々と粒が増えてきた雨が私の肌を伝い冷やしていきます。
そして事の始まりまでに記憶を振り返ってしまった時、
火照っていた頬は急速に熱を失い涙が溢れてきてしまったのです。
問題は解決したわけではなく、一時の安らぎに身を任せていただけなのだと。
一晩にして、私の心には根の深い欲望が張り巡らされていたのです。
せめて初めてだけは、それさえあればきっと
何があっても耐えられると昨日は信じていたのに。
他の誰にもこの身体を触らせたくない、裕君のためだけの私。
そう思ってしまったら、学校へ行くことが出来なくなりました。
脚は鉛のように重く、水を吸い込んだ制服は肌に張り付くいて、
喉はカラカラに乾いて私を動かそうとしないのです。
気が付けば傘は足元に落ち、雨は打ちつける様に音を立てていました。
玄関の外で倒れていた私を見つけたのはお母さんだったそうです。
救急車で運ばれた私は、そのまま入院することになりました。
ちょっと重い風邪なんだろう、そう思ってベッドで過ごしていました。
本当に馬鹿ですね、私。
もし過去に戻って自分に忠告できる機会があるのなら、
今まで生きていた時間と同じだけ、
過去で過ごさないといけないかもしれません。
私に残された時間では足りないというのに。 ミ・w・ミ
私が入院すると、裕君と和美はお見舞いに来てくれました。
あの日の事なんて無かったかのように、
学校の話、芸能人の話、他愛も無い場かな話。
私はいつものように相槌をうって、
はしゃぐ和美を裕君が突っ込むといった日常。
白く寂しい空間に持ち込んでくれるお土産としては、
これ以上は無い最高のおみまいではないでしょうか。
さっきこのノートを見られそうになった。
まだ、だめだよ裕君。
もう少し、もう少しで書き終わるから ミ・w・ミ
何よりも、和美に彼氏が出来たというのが一番驚きました。
「どうよ、しずっ! 恋する乙女の輝き具合!」 カシャ!
「うお! まぶしっ!」
「…和美…反則」
使い捨てカメラを携えた和美が声をあげて笑っていました。
「てっめぇ!『院内では静にッ!』」
三人とも看護婦さんに怒られてしまいました。
私は被害者だと思う。
それからしばらく話をして二人は帰って行きました。
あ、和美の彼氏がどんな人かは聞きそびれてしまいました。
入院するのは慣れているとはいえ、
二週間も経つとさすがに病室は飽きてきました。
風邪の方は良くなったと思うのですが、未だに退院できませんでした。
両親はこの機会に私の身体を治したいと考えているようです。
『今は…無理…です…せめて16歳……いえ…まず』
あの日断片的に聞こえた医者と両親の会話。
幼い頃の記憶ですが、16歳という現実的な数字が胸の奥に焦げ付き、
歳を数えるごとにその火傷はグズグズと膿んでいきました。
あと、半年。
その時に思いついたのが、そう。このノートです。
もっと書きたいことはいっぱいあります。
それでも伝えたい想いは言葉にするのが大変で、
ずっと頭の中をぐるぐるしていて、なかなかペンが進みません。
ページの片隅は濡れた跡で丸く膨れ上がり変形していた。
その次のページからはバラバラに破かれ引き裂かれたものを、
セロハンテープで繋ぎ戻し、上の余白に書き足しがあった。
嘘も隠し事も全部私。
だから全てを知ってほしいのです。
一度は破り捨てられた手記。
残りの薄くなったノートを俺は持ち直した。
学校を卒業できなくなってしまうのは、それほど残念には思いませんでした。
ただ、裕君と和美がお見舞いに来てくれる度、
私は嬉しい反面、憂鬱になっていったのです。
変らない日々を過ごす私は段々と二人の話題についていけなくなりました。
元々喋る事の得意ではない私は、前にも増して言葉数が減っていきました。
裕君の学校の話題も、和美の芸能人の話題もわかりません。
私の前で裕君と楽しそうに話す和美が少しずつ、鬱陶しくすらなっていました。
私が裕君を笑わせてあげたいのに、和美は奪っていってしまうと。
頭ではわかっているのです、ただ、心が理解してくれないのです。
私を心配してくれる二人。
たった二人の友達。
だから解ってしまうのです。
何か隠し事をしてることがあると。
時折二人がかわす視線、仕草、雰囲気、私を置いていってしまう二人。
もしかして二人は付き合っているのですか?
和美に彼氏の事を聞いても、『機会が来たらね』と答えてくれません。
消灯時間の後は裕君の事を考えます。
その、ほんのささやかな妄想にさえ和美はやってきて、
私の裕君を連れて行ってしまうのです。
お願いだから、あと少しだけ私に裕君をください。
せめて私が眠るまでの間。
沈む気持ちを追い討ちするかのように私の体調は悪化していきました。
初めは点滴、そして今は呼吸を補助するマスクまでついています。
最近は裕君一人でお見舞いに来てくれます。
たまに和美も一緒なのですが、すぐに部屋を出ていってくれます。
何も話せなくなってしまった私。
それでも私と裕君ならお互いの顔を見るだけである程度は伝わる。
私に残された唯一の楽しみ。
裕君はお見舞いに来てるというのに私のベッドで居眠りしてしまう。
椅子に腰掛け上体をベッドに、私のお腹を枕にしたこともあったね。
その寝顔をみつめながら唄う事。
タイトルも歌詞もわからない歌。
古いレコードのように途切れた音を奏で、
途中までしか知らなくてまた最初から唄いなおす。
最近思うのです。
私は本当に裕君を好きなのかどうか。
謝る度に繰り返される『好き』を信じているだけなのか、
昔から? いつから? 白くて暗い病室でずっと考えていました。
だからギリギリまで答えを出すのを躊躇ってしまったのかもしれません。
ここまで。
これ以上書き出したらきりが無くなってしまうし、
そろそろ裕君が面会に来る時間だからです。
…む、ちょっと遅い。
そして、本当に大事な事は
私の言葉で直接伝えようと思います。
これを読んでいるという事は
私の言葉聴いてもらえたのだと想います。
私の想い、つたわりましたか?
読み終えて、俺はしばらく声を出すことができなかった。
709 :きみのこえ1/15 :2007/12/27(木) 19:10:12 ID:RLghGVzj
私の想いを、知ってほしかったのです。
大学ノートって言うけど、本当に大学で使っているのでしょうか?
私は行くことは無いでしょうけどね。
(………………………………………省略されました)
これを読んでいるという事は
私の言葉聴いてもらえたのだと想います。
私の想い、つたわりましたか?
724 :名無しさん@ピンキー :2007/12/27(木) 20:03:00 ID:2cHdEVIp
>>723 正直キモイ
725 :名無しさん@ピンキー :2007/12/27(木) 20:06:33 ID:412364PK
がんばったのは分るけど・・・
お、さっそくレスがあるなってこいつうぜええええ。
おまえ、どんだけ苦労してテキストに直したと思ってんだよ!
「ああ、だいじょぶだって、これ読んで感動しないやついねーから」
男に返ってくる返事は無い。そして返事を期待してたわけでもなく、
モニターから目を離さずに必死にリロードを繰り返す。
部屋にはカタカタとキーボードを打つ音だけが響く。
何度来てもここの臭いにだけは慣れなかった。
「ごめん、アタシだめだ…裕次郎」
「そうか」
病院の待合室のソファーに座り、和美が声を殺して泣く。
静に点滴やマスクがついていき、
その姿をまともに見ることが出来なくなっていた。
「アタシ、…ひぐっ、静にだけは笑顔でいたいから」
「先帰ってていいからな」
俺はそう言い残して病室に向かう。
痛々しく衰弱していく静の姿に俺も涙腺が緩み始めてしまう。
「よ」
「……」
「悪ぃがまた少し寝かせてくれ、寝てないんだ」
「……」
寝てないなんて嘘だ。
静のベッドを少し占領してその微かに伝わる温もりに埋まる。
気付かれないように、息を殺して涙を流す。
しばらくすると静の唄声が聞こえ始める。
「…♪〜…♪♪…#♪…♪〜…」
月の裏側のように普段は見ることの出来ない一面。
それとなく振ってみたことはあるのだが起きてる時に聞けたことは無い。
「…♪〜…♪♪…#♪…♪〜…」
このままずっと、きみのこえを聞いていたかった。
何年か前のドラマで流れていた曲の同じパートを繰り返す壊れた歌姫。
もうすぐ来る彼女の誕生日に、この曲のオルゴールをプレゼントする。
探すのが大変だったが、和美の彼氏とやらが作った曲だとかで、
条件付だがオルゴールそのものを作ってもらえることになった。
そのせいで少し寂しい想いをさせてしまったかもしれないが。
12/28
小泉 静は今日で16歳になる。
プレゼントを受け取るのに少し時間が掛かってしまった。
和美が一緒にこれないと謝っていた事も伝えなくては。
凍て付く様な寒さの中、病院へ急いだ。
息を整えて病室に入る。
「よぉ」
「………」
静はベッドの角度を上げて一冊のノートを持って待っていた。
前に覗こうとしたら凄く怒られたやつだ。
「…けほっ…」
軽く咳き込んで俺を見上げる静は何時に無く真剣な表情だった。
プレゼントを出すタイミングをなくしてしまった俺は、
いつもの椅子に座り、静の様子を見守った。
「今日はどうしたんだ?」
「…………けふっ…………けふっ………」
「…」
静はマスクをはずすと、ゆっくりと話し出した。
「………言わなきゃ……けふっ……いけない事…………あるの」
「ああ、なんだ?」
「……けふっけふっ!…………っ……………」
「…」
たっぷり三十分は経っただろうか、静は俺の手を取って言った。
「………裕君……ごめんなさい…っ…愛しています……っ…けふっ…」
『ごめんなさい』その言葉はあの日以来、静の口から出たことは無かった。
「けふっけふっ…ごほっ!」
「静!」
咳が酷くなってきた静にマスクをを渡そうとする。
「けふっけふっ!」
だが静はそれを受け取らず俺の首に手を伸ばした。
押し付けるような乱暴なキス。
勢いが付きすぎて唇が切れ、血の味がした。
「……」
「……っ」
「けふっけふっごふっ!っ!」
「おいっ、大丈夫か! 静! 静っ!」
静の口元にマスクをあてナースコールを押す。
「くっそ! 速く来いよ!」
やがてやってきた看護士に俺は追い出され、
しばらくすると医者が病室に呼ばれていた。
「君、大丈夫? 血が出てるわよ」
通りがかった看護婦に指摘され、唇が切れているのを思い出した。
滲む様な軽い痛み。
そういえば、これがファーストキスになるんだな。
今、このすぐ横で静が苦しんでいるというにもかかわらず、
俺の頭の中は静の言った言葉を反芻していた。
『ごめんなさい、愛しています』
渡しそびれたオルゴールをそっと脇に置いて、
俺は一冊の大学ノートを手にとり、ページをめくった。
その日からしばらくの間面会は出来なかった。
静の姿を見ることが出来たのは、年が明けてから十日が経っていた。
面会の許可は下りたものの、彼女はあの日から目を覚ましていないそうだ。
病室に入ると見慣れない医者が眠っている静の横に立っていた。
彼女の担当医はどうしたのだろうか?
「やぁ、待ってたよ」
「あんたは?」
「見たまんまのお医者様様。彼女の身体については僕の専門じゃないけど
ついさっき担当が代ったって所かな」
「はぁ…」
「ほら、がんばらないと。 彼女死んじゃうよ?」
「っ! それが医者の台詞かよ!? 治すのが仕事じゃねぇのかよ!」
「イエェェス! アイ、ドゥー! 僕はしがない精神科医
だから外側の入れ物はノータッチ! あ、今胡散臭いとか思ったでしょ?」
頭イカレてるんじゃないかこいつ。
「んむ、いい勘をしている。僕はとても優秀な超一流の三流だからね、
今まで僕の手で患者を治療できたことはまったくをもってナッッシン!」
「ふざけんなッ! そんなヤツに静を任せられるかよ!」
「グゥゥゥッド! だから君が治すんだ」
「なん…だって?」
「詳しい話は僕のオフィスでしよう。ついて来るといい。あ、何か飲むかね?」
そういって病室を後にするヤブ医者。
妙なテンションに流されてしまったものの、
ここにいても仕方が無いので後を追うことにした。
「ようこそ、僕の王国へ」
迎え入れられた部屋は医術書よりもオカルトチックな蔵書や
置物、巻物? 凄くよさそうな壷が散乱しており、
医者のいる空間にふさわしくないのは確定的に明らか。
「とりあえず、これでも飲んで落ち着いてくれ」
そういって渡される青い回復薬の小瓶。
「…」
「それじゃサクサクいこうか、君は彼女の病気が何か知っているかい?
知らないだろう? そのくせ不治の病みたいな事おもってるでしょ?」
「まぁ…そうかもしれ」
「同じ条件で育てた花に、異なった感情を与えた実験を知っているかい?
憎しみを与えた花は、愛情を与えた花よりも速く枯れてしまったそうだ。
では、幽霊は信じているかい? 恨みを持って化けて出たり、
孫の代まで守ろうと守護霊がいるという話、聞いた事位はあるよね」
話が長いうえに、俺の話を聞こうとしない。
「で! 何が言いたいんだ!?」
「せっかちだなぁ、ようは病は気からって事。ハートさ。
強い感情は身体に影響する。死にたいなんて思ったら治るものも治らない、
逆に気力だけで生きてるような人もいるしね、
ヒトが考えうる事象は全て実現しうるんだよ。
専門外だから詳しくはしらないけど、彼女の体の異常は
内蔵の発育不全みたいなものかな、臓器の成長が遅いだけで十分治療可能だ
外見や精神年齢よりも肉体の方はとても幼いんだ、そしてそれは
今回程度の風邪なら問題なく退院できるはずだった」
「…どういう事だよ」
そう言いつつも俺はあのノートと静との会話を思い出していた。
『ごめんなさい、愛しています』
「今病んでいるのは肉体の方よりも心の方、個人個人の患者の心のケアなんて
会って五分の僕には当然無理さ、だから僕が治療できた患者は一人も居ない
だが、僕は治療の為の方法だけは知っている。君ならこの意味わかるね?」
「…お願いします、俺に…教えてください」
「グゥゥゥッッッド! それでは医療とオカルトの関連性から講義しようか…」
当然のことながらその講義は役に立つものではなく、
三時間ほどそれに耐えたあと、強引に聞き出した方法は五分もかからなかった。
それからしばらく俺は静につきっきりになり、
ベッドから起き上がれるようになった頃には、和美とも話せる様になっていた。
ヤブ医者め、効果は抜群だ。
821 :名無しさん@ピンキー :2007/12/27(木) 22:12:40 ID:29QpniMo
>>RLghGVzj
わかったからもうしゃべんな
お前がわかってねーっつーの!
モニターの中から出てきやがれ!そしたら嫌ってほど見せ付けてやる!
あ、馬鹿なに埋めはじめてんだよ! 荒らしじゃねーって、ちょおま
まてって、おいィ! 連投規制ってなんだよ!
dat落ちたらせっかく書いたやつよめねーだろ、考えろよ!
ガチャ、とドアの開く音が聞こえる。
空気の動く気配がしてテーブルの上にコトンと何かが置かれた。
湯気とともに立ち上るコーヒーの香りが、
意識をモニターから現実に引き戻す。
「……」
「お、サンキュー、静」
再びモニターに顔を向けようとすると袖を引っ張られた。
「…」
「わかった、わかった、そんな顔するなよ」
コーヒーのお礼にと俺は静に軽いキスをする。
静が目覚めてから半年以上経つが、「王子様のキス」は、
いまだに彼女のお気に入りらしく、朝起こす時は必須になっていた。
静が離れてゆく唇を追いかけようとしたとき、
肘に当たってコーヒーが俺のズボンにこぼれた。
「っっっっっ!あっちいいいい!」
「…裕君っ!」
急いでズボンを脱いで真っ赤になった太ももを晒す、
静は本当に申し訳なさそうな表情をしてそこにタオルを当ててくれていた。
「…裕君…好き」
幾度と無くかわされた二人だけに通じる『好き』
最初は冗談のつもりだったのだが言われ続けているうちに、
やめさせるタイミングを無くし、面白いから、むずがゆい、恥ずかしいと、
受け止める心境もだんだんと変化していった。そして今は……。
ただ、これを聞くと怒れなくなってしまう事は最初から変らなかったが。
「…ったく、しょうがねぇヤツだなぁ…」
そうつぶやいた俺もしょうがないヤツなので、
仕返しとばかりにキスをしてやった。
…んっ……んちゅ……
「…」
「…!」
う、まずい、トランクスだけではこの変化を隠し切れない!
「うあ、あっそうだ、レス見ないとだなーみないとー」
さも大事な事の様に椅子に座りなおし机の下に股間を隠す。
カタカタカタカタ
「明日は和美の彼氏のライブ行く約束だったよなー」
ぐいぐいぐいぐい
「芸能人と中学生の交際なんてのはまずかったよなー」
ぐいぐいぐいぐい
…どうやら隠し切れなかったようだ。
「………うふっ」
静がニヤニヤしながら袖をひっぱっている。
俺はタイミングを見計らって書き込みをして静かに振り返る。
「はぁ…静の身体が元気になったらやり直すって約束したもんな
けどその前に渡したいものがあるんだ」
「……?」
袖を引く手を止めキョトンとする静に小さな木箱を渡す。
「誕生日おめでとう、静」
手渡した箱を開ける静。
〜♪〜〜♪♪〜#♪〜♪〜〜
中に納まっていたのは一六と一年分の重み
「…裕君…ありがとう」
そして俺は十七年分の重みを身体で受け止めた。
「…ん…っちゅ…」
…っ……ちゅ…!?
貴様見ているなッ!
俺はこっそりとPCの電源を電源を落とした。
1000 :名無しさん@ピンキー :2007/12/28(金) 00:00:02 ID:ILvU4evr
>>774 Happy Birthday
1001 :1001:Over 1000 Thread
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
>>224 あれ?なんか目から変な水でてる…
…ち、違うわよっ。これは別に感動したとかそんなんじゃ、
――ああっもう、一回だけしか言わないわよっ
…………G、J
>>224 GJ
あれか、俺の体から水分絞りださせる気ですか?
なんつう作品だよおい…………
さてと、じゃあ俺もテキトーに言ってみるか
God bless you
>>224 狂おしいほどGJ
不覚にも「うお! まぶしっ!」に吹いたw
>>224 個人的に、ノリのいい精神科医が大変気にいったw
そして切なくなりつつ最後に幸せな感動にGJ
231 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 19:28:23 ID:joDzVvKv
GJ!
良いもん見させてもらったぞ
出来るならさらに続きw(ry
232 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 20:37:52 ID:xcW6wAji
GJすぐる
GJ
だけどどう読んだらいいのかよく分からなかった
>>224,ブロンと様で耐え切れずに吹いてしまった、どうしてくれるw
だが、好きだ!愛してる!
1000 :名無しさん@ピンキー :2007/12/28(金) 00:00:02 ID:ILvU4evr
>>774 Happy Birthday
IDがあいらぶゆーふぉーえばーなんすね。
>>224 いいもの見させてもらった。ありがとう。
GJ!
二人はおしゃべりでいつも賑やかなバカップル
毎日のように喧嘩もするけどすぐ仲直り。
でも今回ばかりは許せない。
本気で怒った彼女は、彼氏にちょっとした復習を思いつく。
TVでやっていた催眠術の特番。
これで彼氏を黙らせてしまおう!と。
さすがに完璧にしゃべれないのはかわいそうだと思った彼女は、
一日に一言だけならOKと自己流にアレンジを加えた。
そして翌日。
彼氏に催眠術をかけていたはずの彼女は、
目の前のろうそくの明かりが……
…………だんだん……霞んで…きて…
しゃべりたくてムズムズ
えっちの声でも言ったら一言
元気いっぱいの無口娘は好きですか?
自分じゃくっそ長くなるだろうし、
エロまでいけそうにないのでネタシチュ投下。誰か!
朝っぱらからそんな233を妄想してごめんなさい。
@クール無口っ子
A恥ずかしがりや無口っ子
B甘えん坊無口っ子
C活発無口っ子
お前らはどれが一番好きだ?あ、眼鏡とかのオプションは別途につけてくれ
もちろん俺は全部好きだ!!
シャイニング無口っ娘かな
AかBだなjk
Aで目が前髪で少し隠れる位のセミロング娘
A+眼鏡+(体の)ちっちゃい子希望
>>245 お前は俺かwww
あと、Bでセミロング+小柄ちょいロリも捨てがたい
>>242 俺はダブルインパクト式無口っ子だな。
冗談はさておき、@+長髪+スレンダー
>>241 皆の前では@、二人きりだとB
それで長身長髪なら何も言わん
無口っ子って書くの難しいな……このスレの神たちはすごいと再認識したよ
………………。
………。
ぴくっ。
「おーい」
たったったった……。
ぴと。
「おっと」
ぎゅ。
「うん。おはよう。今日は大丈夫?」
こくこく。
「じゃあ行こっか」
くいくい。
「ん?忘れ物?」
ふるふる。
「じゃあ、オンブ?」
……。っふるふる。
「今、いいなとか思った?」
ぼ。
「顔、赤いよ?」
ぽかっぽかっぽかっ。
「あはは、ごめんごめん」
ぐいっ。
「わっ」
どてっ。
「いたた…なにす、」
ちゅ。
「………」
………。
「…言ってくれればしゃがむのに」
ぴと………ぼそぼそ。
「……んー押し倒す方が恥ずかしいと思うけどなぁ」
ぷぃ。
「んー…なら、」
ひょい。
!?
じたばたじたばたじ…。
ちゅ。
………くてん。
「これで許してくれる」
………。
「おーい?」
…こくり。
「ん。じゃあ行こっか。お姫様?」
勢いで投下。
ストーリー皆無だが…私は謝らないっ!
では何事もなかった様にどうぞ
>>251 何も言う必要はあるまい。
……くてん。
>>251 あなたには甘えんぼうで無口なお姫様を書く義務があると思うんだ。
>>251ネタGJ!!
その勢いでストーリーキボン
……くてん
↑(*´Д`)
やあ(´・ω・`)
うん。「また」なんだ。すまない。
前回からあれだけ間を空けておいて、今回もブリッジなんだ。
と言うわけで、今回もまた興味ない方は『彼女』の呼び声あるいはブリッジ、であぼーんしておいてくれ。
じゃあ、続きを始めようか。
「ジュリエット、オデット、コッペリア、ドロシー……うーん……」
バイトをしながらも、仁は必死に彼女に相応しい名前を考え続けていた。
午後の授業の内容なんて欠片も頭に入っていない。
考え始め、そろそろ六時間を越えている。
が、それだけ頭を悩ませてもなお、彼女に相応しい名前は思いつかなかった。
「アリエノール、エルゼベート、ジャンヌ、シャラザード……」
検品しながらもさらに考える。
普通ならばそんな風に気を散らしていると数え間違いやら入力ミスを起こす物だが、今日は不思議とミスも無い。
まるで頭が、彼女の事を考えている頭と、検品作業をこなしている頭の二つに分かれているかのようだ。
「アフロディテ、ファーティマ、ヴィシュヌ、此花咲耶姫……」
駄目だ。
どの名前も、彼女の持つ魅力や独特な雰囲気の百分の一、いや千分の一も表せていない。
あの、幼女のように無邪気な笑顔。
拗ねてそっぽを向いた時の横顔。
お腹を空かせ、期待した眼差しでこちらを見上げる上目使いの表情。
時折見せる、物憂げな表情。
そして、頬を朱に染め、目を閉じて口づけをねだる時の甘えた顔。
――百万の言葉より、なお雄弁に語る表情と動作。
何故か回りの人間に気づかれない幽霊のような存在だが、抱き締めた体の柔らかさと暖かさは決して夢幻のものではない。
「和泉式部、額田王、小野小町、小野妹子……」
違う。妹子は男だ。
自分で自分に突っ込みを入れ、そこでようやく我に返る。
気づけば検品が終わっていた。
さすがに注意力が散漫すぎたと反省し入力端末をチェックするが、不思議と値に間違いはなかった。
さらに、時間を見てみるといつもの三分の一くらいしかかかっていない。
「これも……愛の為せる力かっ!?」
自分で言って恥ずかしくなった。
とりあえず、ごまかす為に咳払いを一つ。
ついでに辺りを見回すが、特に彼に注意を払っていた人間はいないようだ。
――最近、気付けばいつも彼女のことを考えている。
これもまた、つい先日までの彼からは考えられなかったことだ。
これまでの彼の生活は、第一に学業だった。
よい成績を取って一流大学に入り、目指すは政治家か弁護士か、あるいは外交官か。
別にそれらの職に興味や感心がある訳ではない。
ただ、世間的に立派な仕事、であればなんでも良かった。
とにかく、一流の仕事について、そして――
「……兄貴だけが子供じゃないって事、思い出させてやる」
仁には歳の離れた兄が一人いた。
眉目秀麗成績優秀おまけにスポーツ万能。
両親にとって、自慢の息子だった。
母にとっては、兄だけが自慢の子供だったのだ。
己が腹を痛めて産んだ子は、もう一人居たのに。
兄が事故で死んだ後、母親は事あるごとにこう口にした。
お前が死ねば良かったのに、と。
それに比べれば、父はまだ優しかった。
彼はこう言ったのだ。
死んだ兄に負けないような、立派な人間になりなさい、と。
結局、仁は兄の代用品でしかなかった。
だから、学業に集中したいと言って家を出て――こうして、バイトをしながら寮生活を送っている。
まったく、今までの彼の生活からは考えられないことだ。
自分が、授業なんてどうでも良くなるほどに、他人のことを考えているなんて。
本当に、彼女と出逢って自分の生活は変わったと思う。
それはまるで、うさぎの穴に落ちた気分。
見知らぬ少女を追いかけてたどり着いたのは、今までとは全く違う、不思議な世界。
「――――それだ!」
どうして今まで思いつかなかったのだろう。
彼女の雰囲気を、最も的確に表現した名前。
彼の好きな作家の、代表作とも言える作品の主人公。
彼女に相応しい名前は、それしかない。
だが……彼女は喜んでくれるだろうか?
彼がつけるこの名前を、気に入ってくれるだろうか。
その日の夜はいつにも増して、彼女がやってくる時間が待ち遠しかった。
そんな訳で、ようやく公式(?)にヒロインの名前が決定。
実際に命名するのは次回になりますが。
……かわいいおにゃのこのヤンデレは絵になるのに、男のヤンデレってどうも絵になりませんよね。
とりあえず萌えシーンを書くために、
>>224氏と
>>251氏の作品を128回ほど読み直してきます。
ではでは、また逢う日まで。ごきげんよう〜
>>258 君は……とりあえず食われてこい
誰にって?そりゃあ出番なくていじけてるあの子にですよ
ってかGJ!!な訳で
早く本編の続(ry
な訳で
そろそろ全裸も風邪ひくしな
全裸はそろそろきついだろう、せめてパンツくらいはけよw
最近は全身タイツで待機が流行らしいぞ。
もじもじ君を想像する俺ってどうなんだろう…
わかりやすくていいじゃないw
なんで俺に対するレスで伸びてんだwww
しかし、なんと言われようと全裸だ、これはガチ
ゼルダスレで全裸待機者がすごいカオスな差し入れされてたな。
全身タイツは暖かいらしいが。
布団にカビが生えて捨てることになり
毎夜寒い思いをしてる俺もいる
投下あってから雑談入るまでが今回は異様に早えなてめえらwww
しかし、俺は雑談に参加せずに
>>258にGJをする
まあ、名前決まりましたー、なだけだからね。
だがそれがGJ!
しかし思っている名前と違ったらどうしようという一抹の不安がw
「僕はここにいる」が激しく似合うスレ認定。
271 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 14:56:32 ID:08inSxuV
お前は俺のプライドを傷付けた。
勝手にBBにやられるがいい('・ω・)
これはひどい誤爆
>>272 BB?NFが浮かんだが違うだろうな……
ところで、ここんとこの流れは最高だな
いいぞ、もっと続け
この季節も全裸で待機し続けられる、寒さに強い俺が通りますよ
おひさしぶりです。ミュウマの外伝的なお話を投下します。
よろしくお願いします。
276 :
1/10:2007/11/05(月) 00:26:10 ID:0mqw2zSc
10月の終わり。秋の夕暮れ。
僕とミュウマはいつものように放課後の校庭を横切って、帰ろうとしていた。
僕たちふたりの並んだ影がオレンジ色のグラウンドに長く伸びている。
「……にふ」
彼女は最近お気に入りの可愛らしい言葉、というか声を出した。
僕の腕をぐっと抱き寄せ、頬を付ける。
ふたりの影がひとつになった。
「にふふ……」
嬉しそうだ。
袖越しに当たる、頬のふにっとした感触が少しくすぐったい。
「にふーん」
僕の肩の高さにある頭をグリグリと押しつける。
ふわりと優しいフローラルの香りがする。
彼女の短く蒼い髪が夕焼けの色に縁取られ、キラキラと金色の糸のように輝く。
きれいだ。
僕は思わず立ち止まる。
「……?」
彼女が僕を真っ直ぐな瞳で見上げて、小首をかしげた。
僕は少し笑うと、反対側の手で彼女の頭を撫でた。
サラサラとした感触。それでいて、水面のように光を跳ね返している。
ふいに彼女が僕の名を呼んだ。
「……ナオ……」
見開いた瞳から銀の滴がポロポロと零れる。
僕は慌てて聞いた。
「な、ど、どうしたの?」
彼女は夕焼けの光より赤く頬を紅潮させ、笑った。
「……ここに……そばに……ナオが、いる、から」
消え入りそうな声でそれだけ言うと涙を拭いた。
277 :
2/10:2007/11/05(月) 00:26:53 ID:0mqw2zSc
やがて、ゆっくりと目を閉じる。
幼さの残る彼女の、愛らしい顔。
その中で小さなピンクの唇が、花のように艶めいている。
僕は彼女のほうに向いて、そっと両肩に手を乗せた。
顔を近づける。
彼女がその雰囲気から次の瞬間を期待したのか、息を吸った。
だけど、僕は耳元に囁いたんだ。
「ここは校庭だからダメだよ」
彼女は僕の手を払って、パッと僕から離れた。
険しい表情で僕を睨んでいる。
頬を膨らませながら、また違った不思議な声を出した。
「んぎゅう……」
しまった。むくれちゃった。ぶんむくれだ。
どうフォローしようか考えていると、彼女がポツリと言った。
「……保健室……」
今度は僕が真っ赤になる番だった。
「あああのときは、だって、その、ミュウマから来てくれたから、流れでしちゃたっていうか」
うう、さらにマズイこと言っちゃった。
彼女の目が哀しい光を帯びた。
「……だれ、でも、よかっ……たんだ……」
うわー! こんな時はどうすればいいんだ? 助けて! 王子!
なんて言っても、もう僕は僕だから無理か。
えーと、えーと……。
ふいに僕自身、思ってもいない言葉が出た。
「バカ!」
ミュウマがビクッとした。
「僕はミュウマだから、流れに乗ったんだよ。誰でも良かったわけじゃない!」
そう言ってすかさず、彼女を抱きしめる。
「今はこれだけで許してくれ。帰ったら、その、してあげるから」
彼女が抱き返してくれる。
「……ん……」
ナイスフォロー。でも、やっぱりちょっとどこかに僕じゃない感じもある。
それでも、これが今の僕なんだと無理矢理納得したけど。
278 :
3/10:2007/11/05(月) 00:27:37 ID:0mqw2zSc
「ただいまー……って誰もいなくても、つい言っちゃうな。さあ、入って」
僕のウチは共働きで、父さんは残業、母さんは夕方のパートに出ている。
つまり、この時間は誰も家にいない。
ミュウマがおずおずと、玄関に入ってきた。
「お邪魔、します……」
そういってすぐ付いてくるかと思えば少し遅れている。
気になって後ろを見ると、彼女は僕の分まで靴をキッチリと揃えていた。
それはこちらの世界に来てから覚えたもののひとつだろう。
そういう普通のしぐさにも優雅さと気品を感じさせる。さすがに元お姫様だ。
「そう言えば、前に一度お見舞いに来てくれたよね。あの時はありがとう」
はにかみながら、ふるふると顔を横に振った。
僕はキッチンの前で止まると、顔を赤くしながら彼女に頼んだ。
「えと、先に、その、僕の部屋に行ってて……。と、とりあえず、飲み物でも用意するから」
彼女も急速に顔を赤くして、こくんと頷いた。
そのまま、階段を登っていく。
お互い、これからのことを考えてドキドキしてるんだ。
「えーと、飲み物……あれ、もうないのか。しかたないなぁ」
僕はお盆に用意していたコップをしまい、湯飲みと急須を出した。
お茶のパックを急須に放り込んで、お湯を注ぐ。
緑茶の良い香りが立ちのぼった。
「それで、お菓子かなにか……って、甘納豆しかないってどういうことなんだ」
おやつを入れてあるカゴを見て溜息を吐いた。
「まあ、お茶には合うけどさ」
僕は甘納豆の小袋をいくつかとお茶をお盆に載せて、二階へ向かった。
「おまたせ」
ドアを開けて部屋に入ると、彼女はベッドの上でちょっと飛び上がった。
慌ててベッドの下に、今まで見ていた本を隠した。
というより戻したというほうが正しい。
僕は古典的な方法でその本を隠していた。
そう、健康な男子なら誰でもが手にしている、Hな本だ。
279 :
4/10:2007/11/05(月) 00:28:24 ID:0mqw2zSc
彼女はベッドの上で、ちょこんと正座をしている。
その顔を火照らせて、うつむいていた。
お互い気まずい無言。
僕は見られたという気持ち。
彼女も見ているのを見られたという気持ちだろう。
僕はなんとか気を取り直して、お盆をテーブルに置いた。
そのままテーブルの近くに座る。彼女のそばには恥ずかしくて、必要以上に近づけない気がしたから。
「え、えと……甘納豆、大丈夫?」
彼女のいた世界にはおそらくなかっただろう。
そうでなくても独特の匂いはあるし、嫌いな人もいる。
彼女は、ハッとして僕の顔を見つめた。
あ、やっぱりダメなのかな。
「甘納豆、やっぱり嫌い、かな?」
ミュウマは手を握って口に当て、少し戸惑うような表情を見せた。
ただでさえ赤い顔が、更に紅潮する。
「……だ、大丈夫……」
ぽつりと言うとベッドから降りて、僕のほうへしなだれかかる。
「えっ、ちょ……?」
僕は押し倒されるような格好になった。
彼女は僕の股間に顔を近づけ、制服のズボンにあるジッパーを下げた。
まだ小さいままの僕自身を彼女は、手でしごいた。
「う……」
僕のモノは急激に大きくなっていく。
彼女の息が僕の肉茎に当たる。
「はぁはぁ……ん」
彼女は僕の先端にキスをした。
「ちゅ……ん……こ、こう、かな……」
舌先で、ちろちろと先端の鈴口を舐める。
僕は彼女の頭を押さえ、髪に指を絡めた。
「ううっ! き、きもちいい……」
彼女が僕のカリの裏を軽く舐めながら、聞いた。
280 :
5/10:2007/11/05(月) 00:29:06 ID:0mqw2zSc
「んぷふぅ……アマ・ナトゥ、きもち、いい?」
「えっ?」
「ん、ナオ、さっき……ア、アマ・ナトゥ、して、欲しいって、言った……んちゅ」
「えええっ!」
もしかして彼女のいた世界の言葉で、その、この行為のこと、そう言うのか?
「……アマ・ナトゥ……あたし、も、興奮、しちゃ、うんん……」
彼女は僕のモノを口に頬張った。
片手で茎の部分を擦りながら、空いている手を自分のスカートの中に入れた。
「ふぅっ! んんん! んちゅぷ、ちゅる、ちゅっ……」
もうすっかりスィッチが入ってしまっているようだ。
その目はとろけるようにきらめき、息は荒く、額に汗が浮き始めている。
一生懸命に僕の男性器をしゃぶっている。そのぎこちなさが僕の心を掴んだ。
ミュウマはふだんでも可愛いけど、Hになったときはもっと可愛い。エロカワってこのことだよ。
「ああっ、みゅ、ミュウマ、いいよ……はぁっはぁっ」
彼女は嬉しそうに言う。
「あ、また、おっきく、なった……ちゅぷ、ちゅっ、ちゅる……んぐ」
彼女が喉の奥まで僕のモノを飲み込む。
「んふぅ、ぐ、ぐぅ、んふぅ……」
眉をしかめているが、よだれでベタベタの口元は笑っている。
彼女のスカートの中からより激しく、くちゅくちゅといういやらしい淫水の音が聞こえてきた。
「あっ、ああ、ミュウマ、なんてエッチなんだ……っう」
彼女は肉棒から口を少し離して、僕の太ももに頭を乗せる。
上目遣いで僕に淫らな質問を投げかけた。
「んあ……はぁはぁ……え、エッチな子……きら、い?」
その瞳には淫蕩な妖しい光が浮かんでいる。
彼女は足をだらしなく開き、たくし上げたスカートの下の、パンツの中で蠢く指を見せつけた。
281 :
6/10:2007/11/05(月) 00:30:44 ID:0mqw2zSc
それは僕のほうが無口になる瞬間だった。
僕は身体を起こし、彼女に激しいキスをした。
「んんぶ、ちゅ、ちゅる……んん」
唇を離して、彼女に言った。
「好きだ。ミュウマ!」
彼女はこっくりと頷いた。
彼女をお姫様だっこで抱き上げ、ベッドにそっと寝かせた。
もう一度、キス。
お互いがお互いの着ている物の前を、はだけさせた。
吐息だけがその部屋を満たしていた。
僕は彼女の綿でできたブラをずらし上げる。
ぷっくりと少しだけ膨らんだ乳房が現れた。その先端が痛そうなくらいにつんと立っている。
「あれ、ちょっと大きくなった?」
彼女は両手で顔を押さえて、わずかに頷いた。
「そうなんだ。でも僕はこのままがいいかも」
そう言って、その尖ったピンクの部分を口に含んだ。
「ふっ!」
彼女が跳ねる。
顔を押さえていた手が崩れ、小指が唇に入った。
「ふううん、ふぁあっ!」
乳首をころころと舌で転がすように舐めながら、もう片方を指でつまんだ。
「っくふ!」
強い反応がある。それを見た僕もだんだん我慢が出来なくなってきた。
僕は空いている手で、お尻を撫でた。
つるりとして起伏が少なく、幼い感じの硬さがある。だが、それでいて柔らかさもあった。
僕はそのすべすべとした滑らかな感触を楽しんだ。
「んん……ナオの、手、やらし、い、いよぉ」
僕は唇を胸から、お腹に滑らせた。
こちらもすべすべとして、滑らかだ。それにまばゆいほど白い。
僕はさらに顔を下げる。
スカートを超えて、パンツに達した。
甘く切ない匂いが立ち上っている。
僕はくらくらした。
「ああ、ミュウマの匂い……」
282 :
7/10:2007/11/05(月) 00:32:06 ID:0mqw2zSc
パンツの上から、その大事な部分に口と鼻を押しつけた。
「ひゅうっん!」
彼女は僕の頭を抑えつける。
「はっ、はぁっはぁっ! くるるぅあ、い、いひゅう……っ」
彼女は仰け反って、硬直し、くたっとした。
胸が激しく上下している。
口からは唾液が垂れている。
僕は顔を上げて、聞いた。
「ミュウマ、イッちゃった?」
うつろな目で僕を見て、かすかに頷く。
僕は笑った。
「自分だけ先にイクなんて悪い子だなぁ」
僕はズボンとパンツを降ろした。
いきり立つ僕の性器は、今にも暴走しそうだった。
僕が彼女のパンツに手を掛けると、彼女はぴくりとした。
「ん……」
そして腰を浮かせた。
すっかり愛液でベトベトになったミュウマのパンツを、取り去った。
僕は彼女に覆い被さって、優しくキスをした。
「挿れるよ」
彼女は僕を潤んだ瞳で見つめて、頷いた。
僕は一気に彼女の中に挿った。
「んあああっ!」
ミュウマは顎を上げて喘いだ。
「はぁっ、はぁっ、ミュウマ! ミュウマぁ!」
首輪を外された獣のように、ぼくは彼女を襲う。
飢えていた。
欲していた。
そして、狂っていた。
283 :
8/10:2007/11/05(月) 00:32:56 ID:0mqw2zSc
ミュウマは僕に犯されるたび、歓喜の叫びを上げた。
「はぐっ! うあっ! ああ、あっあっあああ! おチンポ! ひいいの!」
彼女の軽い身体を起こさせて、体位を変える。
腰を両手で持って、下から突き上げる格好になった。
「はっはあっ! ミュウマ●コ気持ちいいよっ! あう!」
ミュウマは僕の肩を掴み、弓なりになって声を上げた。
「あっ、あっ、ああっ! ナオチンポ、もいいのっ! ナオチンポいいい!」
僕は彼女の背中に手を回し、抱きしめながら腰を動かした。
「ひぃう! あっ! こ、これ、しゅき……! おく、にナオチンポくるの!」
彼女も僕の動きに合わせて、腰を振った。
「はっ、ああっ! くるるぅ! くるるあーっ!」
「ぼ、ぼくも、出る、でるでる……!」
僕たちは揺れながら、強く抱き合った。
「ナオ、ナオ、しゅきしゅきぃふゅう――っ!」
「ああっ、ミュウマ! 愛してるっ!」
ガクガクと震えるように腰を擦り合わせて、僕たちは混ざってしまうような錯覚に陥った。
「い、ふゅうううう――んんんっ!」
「う、うあああ――っ!」
どくん!
僕は彼女の膣内に全てを放った。
「うあっ……ナ、ナオチンポ汁……おくに、い、っぱ、い……」
ビクビクと痙攣するように、僕たちは果てた。
284 :
9/10:2007/11/05(月) 00:33:33 ID:0mqw2zSc
「にふ……」
ミュウマは僕の腕枕で満足そうにまったりとしていた。
カーテン越しに外を見ると、いつの間にかかなり暗い。ほとんど夜になっている。
僕はミュウマの眠りを妨げないように身体を起こして、ほの暗い部屋の時計を見た。
「あれ……」
その秒針は止まっていた。まさか、これは……。
「その通りです。ナオ様」
セクシーな魔女の姿をした全身黒づくめの女性が現れた。エルだ。
マントと魔女の三角帽がなければ、ちょうどバニーガールのような格好に見える。
有無を言わせない大きな胸とくびれた腰。そしてやや冷たいが妖艶な表情。
ミュウマとはまた違う大人のエロティックさがある。
すぐとなりに、オレンジ色のカボチャを帽子に仕立てたものを被った女の子も現れる。キアだ。
「って、なぜあたしがカボチャなのじゃ! 魔法はあたしのほうが本職なのに!」
文句のわりに手には明るいランプを持ち、うまくカボチャをデザインしたコスチュームを着こなしている。
魔法で作ったのだろうか。それとも裁縫が得意なのか? いずれにせよ、それは彼女の金髪碧眼に似合っていて、とても可愛らしい。
285 :
10/10:2007/11/05(月) 00:34:04 ID:0mqw2zSc
「ってそれって……」
エルが帽子のつばを直して言った。
「はい。こちらの世界でも、わたしたちの世界にあったものと似たお祭りがあると聞いて、やってみました」
横からキアが金髪を揺らしながら、割り込んでくる。
「は、はーろいん? じゃったか」
エルが頷いて、僕に手を差し出した。キアも続けて同じ行動を取った。
「ナオ様。トリック・オア・トリート」
え、えっと、ああ。お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞ、って意味だっけ。
「ああ、お菓子。えーと……あ、甘納豆で」
って、しまった! この言葉は向こうの世界でフェラチオの事だったじゃないか。
エルとキアが、お互い目くばせした。
「つまり、悪戯がお望みと言うことですね」
「ナオユキ、そのような事を直接言っってしまうとはのう! この好き者が!」
「いや、今のはちがっ!」
僕は問答無用に勢いで、二人に押し倒されたのだった。
《end》
以上です。ここまでお読み頂いてありがとうございます。
やや遅くなってネタの時期がズレてしまいました。
申し訳ありません。
それでは、このスレの発展をお祈りしつつ、失礼します。
とにかくGJ。
でもよかった。俺がさっきからつまんでたの、乾燥納豆(七味味)でw
GJ!アマ・ナトゥされたいw
委員長タイプの無口娘という電波が来た
>>289を見て
委員長タイプ(女)と補佐役(男)の電波を受信した。
補佐っつうか通訳www
>>291を見て9人無口1人通訳の生徒会という電波を受信した。人数は適当。
無口ハーレムか……大変そうだ
実は通訳以外も
>>292以外とは普通にしゃべるという後付け設定
「「「「…………」」」」
無言の重圧、キツい、正直キツい
「……俺がなにかしたか?」
>>292は問いかける、生徒会の面々に、
「「「「…………」」」」
が、返ってきたのはまたしても無言、何故か冷や汗が背中を伝う。
――まずい、なんか知らないが非常にまずい。
第六感が警告を告げる、ここに居るとやばいぞ、と。
「あー……用事なさそうだから俺は帰るよ」
そう言い、後ろにある扉に向かって歩きだそうとしたら
「待て」
「待って」
「待ちなさい」
「待ってください」
制止の言葉がかけられる。
何故か冷や汗を超えて脂汗が流れてくるような感じがしてくる。
>>292は首をギギと音が鳴りそうなぎこちな《省略されました》
わっふるわっふるわっふるわっふるわっふるわっふる
突然だし今更なんだが、裾を引っ張って「…ん。」と言ってくれる少女がいいと思うんだ。
>>300 そして振り向いた瞬間唐突にキスとかされた日には…
「だから!先約入ってんだって!勘弁してくれよ!」
ある日曜日の早朝のこと、一人の青年が携帯電話に向かってなにやら怒鳴っている。
「しつこ過ぎるっつーの!こっちは一週間前からだっての!」
その電話口の論争を眺める少女がいた。
凛とした黒髪を肩まで伸ばし、対照的な白のワンピースで着飾っている。
「あー!もう!だから違うって!明日でいいだろ……って…切りやがった…。」
ぼやきながら携帯電話を閉じる青年の服の裾をいつのまにか隣にいた少女が引っ張っる。
「……行けないの…?」
泣きそうな瞳、上目遣い。
青年は腰を屈め少女に背を合わせて、彼女の頭を優しく撫でた。
「大丈夫、ちゃんと断ったから。」
「……ん。」
少女の顔に笑みが溢れ、彼女は青年の手をとり《省略されました》
まっするまっする
続かないといいつつ
>>120の続き
――――――――――――――――――――
園子に嫌われてしまった。
園子ってのは大家さんちの娘さんで、俺がこのアパートに越してきた大学一年の頃から
ずっと家庭教師をしてて、まるで妹みたいに可愛がってきた女の子なのだ。
ちょっと前まではだいたい週一くらいの頻度で、俺と園子は朝一緒に駅まで行ってたりしてた。
そこそこ会話もしてたし。
と、いっても園子はほとんど喋らないので、一方的に話す俺にたいして時折「……はい」とか
「…そうです」とかしか言わないわけだが。
ともかく、そんな園子に最近避けられているような気がする。
滅多に会わなくなったし、昨日なんて大家さんちの玄関から出てくる園子に手を振ったら、逃げられた。
そりゃ俺が悪いんだろう。
熱で朦朧としてたとはいえ、看病しに来てくれた園子を押し倒すなんて、それは確かに悪かった。
おまけに俺上半身裸だったし。
弁解させてもらえば、アレは別に変な気を起こしたわけじゃなくて熱で布団の上に座っていられなくなって
倒れただけで、その倒れた下に園子がいただけの話なのだ。
まあ、でも確かに園子にしてみればショックだったのかも。
兄みたいに思ってた男に恐怖を感じたら、そりゃトラウマにもなるだろう。
でも、いくらなんでもなあ。
逃げることはないんじゃないかと思う。
そんなことを思いつつ、夜食のカップ麺にお湯を入れてたら、アパートのドアを誰かがノックした。
誰だ?こんな夜中に。
ドアを開けると、そこには園子が立っていた。
「あれ?園子?いったいどうし――」
そこまでしか言えなかった。
コートを着た園子が、俺の身体に抱きついてきたから。
ちっこい身体が、俺の胸に飛び込んできた。
ふわふわのショートヘアが、俺の顔に押し付けられていい匂いがする。
お日様の匂いとシャンプーを混ぜたような、どことなく甘くて柑橘系のいい匂い。
そんな匂いを嗅ぎながら、俺は園子の突然すぎる行動にどうすることもできないでいた。
「そ、そ、園子ちゃん?」
やっと搾り出すようにしてそう声をかける。
でも、園子は俺の言葉などまったく気にもせずに俺の胸元に顔を押し当てながら、かすかになにかを
呟いている。聞こえないけど。
「……おん……の……なんて」
いつもの無口な園子が、そんな声を出しながら俺の身体に細い腕を回して抱きついている。
「おい、園子?どうしたんだ?」
こんな夜中に、突然園子がやってくるなんて尋常じゃない。
胸にしがみついてくる園子の顔を無理やり、上向かせる。
真っ赤になった女の子の顔が俺の視界に飛び込んできた。
頬から、額から、耳まで真っ赤に染めた女の子。
小学生だったころからずっと見ていた女の子が、何か熱に浮かされたような表情で俺を見つめている。
「園子、おい、落ち着け。いったいどうしたんだ?」
突然園子はつぶらな瞳を潤ませると、その目じりから涙を流し始めた。
「…ふ…く…ふぁぁぁあああああん」
園子は、こらえ切れない嗚咽を漏らしながら俺の胸に顔を埋める。
胸が痛んだ。
園子が泣いている。ダメだ。園子は、いつも笑ってなきゃダメなんだ。
そう思ってしまった俺は、いつしか園子を抱きしめていた。
胸の中で涙をこぼしながら声にならない嗚咽を漏らし続ける園子。
ちいさな頃から、ずっと見てきた園子。
ランドセルを背負ってた頃から、高校のセーラー服を着るようになった今まで、妹みたいに可愛がってきた園子。
そんな園子が、泣いてちゃダメなんだ。
俺は園子のちっちゃな身体を抱きしめる。
手のひらで背中を撫ぜ、小さな頭の後頭部をかき抱くように抱きしめる。
「園子」
俺は園子の耳にそう囁いた。
その囁きを耳にした園子はひくん、と身体を震わせる。
「園子。泣くなよ」
ぷるぷる震えている園子。
「……ふ……ぐぅ」
「泣くなって」
「う…うぁぁあああああーーーー」
園子はその瞳からぽろぽろと涙をこぼしながら泣きじゃくっている。
俺が園子の頭を撫でれば撫でるほど、園子はふるふると震えながら涙をこぼし続ける。
玄関で抱き合ってるのもなんなので、座らせて落ち着かせることにした。
スンスン言っている園子にお茶を出してみる。
座布団に座ってちゃぶ台に向かっている園子は、視線をお茶にずっと落としたままだ。
何が恥ずかしいのか顔を真っ赤にして、時々鼻を鳴らしている園子はコートの下に
高校の制服のセーラー服を着ていた。なんでだ?
俺は園子に尋ねてみる。
「園子。何があったんだ?」
「……」
「……黙ってちゃわかんないだろ?」
園子は、基本的にすごくいい子で。
他人を困らせるようなことは絶対にしない。
大家さんちは御園さんという苗字で。
普通そんな姓の香具師は娘に「園子」なんてつけたりしない。被ってるから。
園子は、大家さんちの遠縁で、七歳の頃両親が蒸発してしまったから子供のいない御園さんちに貰われてきたのだという。
家庭教師を始めて二年目にして、園子はそのことを打ち明けてくれた。
そんな苦労をしてるからなのか、園子はものすごく内向的で、それでいてものすごく素直な子だ。
そんな女の子が、俺の問いかけに対して口ごもっている。
言えないようなことなんだろうか?
「…ぃ…が…」
園子の薄桃色の唇がかすかに動く。
ヒロ兄ぃが、と園子は言っているようだ。
俺のことを園子はヒロ兄ぃ、と呼んでいる。
俺の名がひろゆきだからそれはそれでかまわないが、弟妹のいない俺には「兄ぃ」ってのが
ちょっとキュンとくる呼び名だってのはこのさいさておく。
で、園子だ。
口ごもりつつも、園子は続ける。
「…………」
俺が?女の人と、いっしょにいた…って?何のことだ?
「……………………」
え?部屋に入れた?女の人を?
腑に落ちた。
そういえば、昨日、職場の同僚の田中さんがこの部屋に来たんだっけ。
田中さんには俺の古いノートパソコンを譲る約束をしてて、で、昨日はたまたま近くまで来てたから
うちまで取りに来た、ただそれだけのことだった。
ま、そりゃたしかに田中さんて女の人ですけど。美人だし。
でも、あの人俺の先輩の奥さんっすよ?
そんな気出すわけないじゃん。
――園子って、もしかして嫉妬してる?
園子はまた涙ぐみ始める。
「…おん……のひとが…」
よく聞き取れないが、俺が部屋に女の人を上げたのがショックだったらしい。
「わた…………っと………のこ……だった……のに」
おい待てそれはなんだなんて言った今!?
わたしずっとひろにぃのことすきだったのに
そう言わなかったか?
耳たぶまで真っ赤にしながら、うつむいた園子はそれをもう一度繰り返す。
「わたし……ずっと、ヒロ兄ぃのこと……す、すき、だったのに」
そう言って園子は顔を上げた。
つぶらな瞳。低い鼻。ふっくらとした唇。薄ばら色に染まるぷにっとしたほっぺた。
俺はその顔に見とれていた。
妹程度に思っていた。
園子はいつまでも子供な、ちっこい妹分だと思っていた。
でも、その顔はまぎれもなく女の子の顔だった。
恋に焦がれているその少女の顔は、俺の心の奥底をズキっと甘く痛ませた。
――かわいい
――園子が。ガキだとおもってた園子が。こんなに――可愛い。
そんな可愛い女の子が、自分のことを好きだ、と言っている。
それはまるで夢のような幸せなことだ、と俺は実感してしまう。
気の弱い、なにかにつけ他人の顔色をうかがってしまうような女の子。
自分からあまり話をすることの少ない、いつもなにかに怯えているハムスターみたいな小動物のような女の子。
そんな園子が、自分の内心を吐露している。
それにはどんな決意が要ったのか、俺にはわかる。
だから、俺が園子を抱きしめていたのは全く自然な流れであり。
胸の中で「…くふぅっ」というような幸せそうな甘い吐息を漏らす女の子が可愛くて、
好きで、愛しくてたまらない。
体温が高いのか、制服越しに感じる園子の肌はとても熱かった。
園子の身体は柔らかい。ちっこくて、力を入れたら骨が折れちゃいそうなくらい頼りなくて。
その身体についているまるい胸はまぎれも無く女の子であることの証拠で。
そんな園子を抱きしめているうちに、俺は身体の中がだんだん熱くなってくるのを感じていた。
「園子」
俺が耳元でそう囁くと、園子は身体をびくんと震わせる。
「園子」
耳にかかった髪の毛を除けながら、耳元に囁いてやると園子の身体からはくったりと力が抜けていく。
「…う…」
また泣きそうになる園子に俺は囁く。
「泣くなよ。…ごめんな。俺、お前がそんなこと思ってたのに気づかなかった」
「……ぅ」
ぴったりと寄せあった頬が熱い。
「妹みたいに思ってた。ごめんな。こんなこと女の子の方から言わせたらダメなのにな」
「……」
身体を少しだけ離して、園子の顔を覗き込む。
涙を瞳のふちにたたえながら、園子は俺の顔をまっすぐに見ている。
「俺も、お前のことが、好きだ」
涙が決壊した。
つつー、と赤いままの頬に涙の線が流れていく。
園子のあごに手を当てると、上向きにさせた唇に、自分の唇をそっと重ねる。
ふんわりとしたやわらかさ。
かすかに香る、柑橘系のような匂いと、興奮に熱くなった血潮の熱を感じる。
しびれるようなそのキスの感触に、俺は唇を離したくない。
長いキスを終えると、俺と園子の唇の間には銀色の糸の橋がかかった。
キスしながら呼吸ができないのか、園子は荒く口で息をついている。
ふとした疑問がわいて来る。
「園子、お前キスするの初めてか?」
その問いに意外な答えが返ってきた。
「……二回目、です」
「二回目?」
園子はキスの経験があるのか。そんな意外な、でもどういうわけかムカムカするような感覚を
胸の中に感じていた俺は、続く園子の言葉にはっとした。
「……先々週、ヒロ兄ぃがしてくれたときが、ファーストキス……です」
なぬ?!
「……………………………………」
俺が襲い掛かってきてすごくびっくりした、と園子は言う。
いや、それは襲い掛かったんじゃねえ!っていうか誤解だ!
「……………………………………」
そのとき、キスしてくれて、キスして貰えてすごく嬉しかった、って?
園子はこくりと頷く。
キスなんてしたっけか?
「……………………………………」
「動転して逃げてしまってごめんなさい、だって?」
再び頷く園子。
そんなことしちまってたのか俺。
そんなつもりは毛頭無かったのだが、園子にしてみたらそれは念願の行為だったらしい。
「……………………………………」
「きょ、今日は逃げません、って……それって……そういう意味か?」
園子は小さく、しかし力強く頷いた。
――――――――――――――――――――――――――
続くか続かないかわからん
続いて欲しかったらワッフルワッフルと叫んでください
「ワッフルワッフル」と叫んだら、「早朝からうるさい」と隣の住人から怒られた。
どうしてくれる。続かねば許さん!!
という気分なのは仕方ないよね?
ちなみに逆の隣と向かいも「ワッフルワッフル」と叫んでいた。
>>310 死のうと思っていた。
今日の早朝、無口スレに短編が投下されていた。
これは陽が昇るまでワッフルワッフルするものであろう。
投下されるまで生きていようと思った。
口で糞垂れる前に始めとケツにワッフルワッフルをつけワッフル!
ワッフルわっふるワッフルわっふるワッフルわっふるワッフルわっふるワッフルあっふるワッフルわっふるァッフルあっふるあッフルあっふるァッフルあっf……………
しってるか?
連呼してると「わ」か言いにくくなってくるんだぜ
続きを読みたいのは分かるけど無茶するなよ?
喉張り裂け、血反吐吐くまで
ワッフー、ワッフル、ワッフリャー!!!
ワアアアァァアァッッッッフゥゥゥゥルゥゥウウウゥゥゥ
>>310 うん良いねぇ、俺こういう甘ったるいの大好きだから・・・ワッフルワッフル
____________ ______
| | / | |
| | / | |
/ \\ / / | | /
/ / / / | /
___/ / / / レ
畜生、AA失敗した。
ワッフルGJ
ワワワワッフルワッフル
ワッフルワッフル
ところで無口娘の同じクラスの男子で、無口で友達もあまりいない自分にも積極的に話しかけてくれ、
勉強に詰まった所は優しく教えてくれたり、クラスの人間とトラブルになった時にはうまく話せない自分に代わって仲裁してくれたりして
だんだん無口娘はそいつが好きになっていき、次第に二人は接近してってさ
でも自分は無口だし男も恥ずかしがりでなかなか告白できずにいたけど
勇気を出して男の家に行き想いを告げ、男も前からお前が好きだった、と告白
想いが通じたのが嬉しくて二人とも激しく抱き合いながらキスしちゃったりする
でも二人ともそこで満足して、セクロスまで行かず眠っちゃいました
なんていう電波を受信した
文才がなくて書けないのがくやしいビクビク
てか朝っぱらからこんな妄想してる俺キメェ
>>310 『夜食のカップ麺』が完全にのびちゃって
デロンデロンになるくらい、ワッフルワッフル
>>321 朝っぱらから、内気な無口スキーにぐっさり止め刺すなよ、ワッフル
>>321 無口っ娘系王道話だな
でも、キスで満足ってのは異議あり
入れたときの、痛い? って問いかけに耳まで真っ赤にして、
無言でふるふると首を横に振りながら、それでも痛みに全身を強張らせてて、
だから離れようとしするのに、ぎゅっとしがみついて離そうとしない所が良いんだ
とか言ってみる。
>>321 そこまで考えてるならあとは努力と気合いと根性で書けるぞ
文才?自分で作り出して磨きあげるものだ
物書きがSSを書くのでは無い
SSを書いた者が物書きなのだ
ワッフルワッフルしてるだけなのに無駄にアツいこのスレが大好きです。
「わっふる」
「……ワッフル? なんだそれ」
「…わっふるわっふる」
「そんなにワッフル食いたいのか?」
…ふるふる
最後の「…ふるふる」だけで萌えた俺は末期ですね
>>327 そんなお前さんには
つHELLSING 9巻
>>327 大丈夫だ、まだ初期症状
俺なんて無口っ子がこっちもジッと見てるだけで萌える
>>329 俺なんか教室で誰も話しかけてくれなくてもその状況に萌えるぜ。
>>330 それ友達いないかいじめられてるかのどっちかだろwww
はっ、まさか貴様……真性のマゾか!?
リア厨の頃、いつも隣で本読んでる子がたまらなく好きだったけど
俺ヘタレなんでorz
今日も、あの人がとなりに座る。
席替えで決まった席順、たまたま私はあの人のとなりの席に座る。
ずっと気になってた男の子。
神様が気を利かせてくれたのか。
でもそれは、お節介。
こうして、あの人の一番近くに座っていても、私はあの人に、声をかけることも出来ない。
ずっと、本を開いてページに目を落とすだけ。
もちろん、本の中身なんて、ちっとも頭に入らない。
私が、好きなヒトに声をかける勇気がないことを知っていて、神様はこんな意地悪をしてくるのだ。
いま、
>>333君が、こっちを見た。
私が今読んでる本に興味を持ったのだろうか。
それとも、次の授業で提出する宿題を忘れたのだろうか。
教科書を忘れたって言うんだったら、机を寄せて、いっしょに見ようか? って言ってあげてもいい。
まだ
>>333君は私を見てる。
うん! 勇気を出して、私!
声をかけて、きっかけを作らなきゃ!
「あ・・・」
声が出ないよ〜っ!
頑張れ、頑張れ私!
「あの・・・・・・」
よし! もうひといき!!
「わたしに、なにか?」
やったっ! いえたよっっ!!
って、もう
>>333君、こっちを見てない〜っ!!
「あの、あのっ!・・・」
聞こえてない〜っ!!
神様は、意地悪です。
私が、声も小さくて、引っ込み思案なことを知ってて、大好きなあの人のとなりに座らせるなんて。
きっと神様は、こんな私を見て、天国で笑っているはず。
でも私、めげません。
私にはまだ、あしたがあるんだから。
翌日は、席替えでした。
かみさまの、いじわる。
END OF TEXT
338 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 08:00:10 ID:+AYIpCJK
これは……
>>333にちょっと慰み酒でも盛りにいくか
342 :
書く人:2007/11/15(木) 18:18:01 ID:/xZ/JVqq
私は
>>333ではありませんが・・・
記憶の仕組みは未だ難解不可思議だ。
五分前の大切な要件を忘れてしまうかと思えば、10年前の何気ない記憶をふと思い出させる。
なぜ俺がこんなことを思ったかというと、理由は二つ。
一つは今日、図書館に来たのが記憶のメカニズムについてのレポートを書くための資料を借りに来たため。
もう一つは、その図書館のカウンターに座って本を読んでいた司書の横顔に見覚えがあったため。
思い出されるのは中学の頃、ほんの数か月の間、自分の横にいた少女と、本に目を落とす目の前の女性の面影が重なった。
淡い切なさと共に、彼女の名前が胸にせり上がり、名前の方だけが口を出た。
「××…」
弾かれたように彼女は顔をあげた。どうやら、俺がここに突っ立っていたことにすら気づいていなかったらしい。
本に熱中すると、周りが見えなくなるところも昔のままだ。
懐かしさを覚えながら、同時に少し焦りに似た感情を得る。
自分にとって彼女は想いをよせていた相手だが、彼女にとっての自分は一度席が隣り合っただけの同窓生に過ぎない。
いきなり呼び捨てにしたのはまずったか?
彼女の記憶の端にでも自分の名前が残っていることに期待しながら、俺は自分の名前を名乗ろうとした。
けれども、
「……
>>333……くん?」
目を丸くした彼女の口から、記憶していたのより少し大人びた声に載せられた、俺の名前が聞こえてきた。
などという神展開を夢想してみんとす。
343 :
(´・ω・):2007/11/15(木) 20:13:57 ID:XaEhK8Y9
「……や」
「ああ、何だ。入ってたのか」
「ん」
「ん、じゃ俺は先に身体を…待て貴様一体どうやって侵入した」
一日の締めは熱い風呂に限る。
そういつものように浴室に入ると、幼馴染の彩花さんがバスタオル一枚で待ち構えておられました。
「これで」
と、何事でもないように銀色の鍵をちらつかせる彩花殿。
…正直うちの両親にはもう少し思慮のある行動を望みたい。無駄とはわかっているのだけれども切実に。
「…で、何故ここに?」
「お風呂、一緒」
What?
「洗いっこ」
…( ゚д゚ )
「…は、はやく、しろっ」
(さくしゃは にげだした)
>>342 暇人なので続けてみる
「あ、まだ覚えてくれてたんだ」
なんだか少し照れ臭くなり、漫画のキャラがやるように頭を掻く。
「……忘れる訳……ない」
「え?」
「……なんでも……」
顔を真っ赤にしてうつ向きながらぼそぼそとしゃべる彼女。
なんというか、あの頃と全く変わらない様子を見て、何故か顔が自然に笑ってしまった
同級生だったころもそうだ、
俺が話しかけると、彼女は顔を真っ赤にしてうつ向き、ぼそぼそと話した。
「………」
気づいてみれば、彼女はこちらを見つめていた。
「ん?俺の顔になんかついてるか?」
尋ねるが、彼女は再び顔を真っ赤にしてうつ向き、ぼそぼそとしゃべるだけだ。
な《携帯からだと異常にだるいので省略されました》
後は任せた
>>344 なんとなく任された
んとなく、彼女の声に耳を傾ける。
「……ついて……ない」
本当に時々ちょっとしたことで聞くことが出来たあの頃と、全く変わっていない声。
ホントに可愛らしくて、優しげなその声がもう一度聞けるなんて、思ってなかったから。
できれば、もう少し彼女と話しがしたくなった。
こほんっと、背中の方から咳の音が聞こえて、俺は慌てて本を差し出す。
「あのさ、後で時間あるかな? これ、俺の携帯番号。良かったら電話して?」
素早くメモ用紙に番号を書き付けて、彼女に手渡す。
言いながら、俺自身、顔が赤くなってるのを自覚した。
「え…………? でも」
「その、迷惑じゃなかったらで、いいんだ。あ、あとこの本の貸し出しお願い」
「ん……」
また咳の音。
もう少しくらい、余裕見てくれても良いんじゃないかと言いたい。
かなり本気で言いたいけど、彼女に迷惑になったら困るし。
そんな事を思いながら、俺は彼女を見詰めて笑って見せた。
「はい……、貸し出し期間は…………二週間……です」
「ん、わかってる。じゃあ、電話待ってるから」
「…………はい」
ほんの一瞬だけ、嬉しそうに笑ってくれた彼女に胸の奥がさやぐ。
終わったはずの初恋。それを叶えるチャンスをこんどこそ、手放したくない。
だから【続きは省略されました】
次誰か頼んだ
346 :
書く人:2007/11/15(木) 23:35:33 ID:/xZ/JVqq
せっかくの流れだから続けてみんとす
だからこそ、今回は打って出ようと思う。
おはようと一言かけるだけで、その日の精神力のほとんどを費やすような中坊ではもうないのだ。
自動ドアの前で、少し振り返ると彼女のうつむき加減の後ろ姿が見えた。読書を再開したのだろう。ひょっとして、俺は読書の邪魔をして、彼女に悪い印象を持たれたのではないか?
一瞬、そんな悪い想像が頭を横切り、次にそんな自分の弱気を否定する。
さっき、強気にいくと決めたばかりではないか?
自分のへたれぶりに先が思いやられながらも、俺は彼女をデートに誘う算段を考え始めていた。
〜 her side 〜
自動ドアのモーター音が止まったのを聴いて、私は彼が図書館から出たのを知った。
私は小さくため息を付く。成分は安堵感とさみしさ。胸にあてた手は、とくとくと言う心音を伝えてくる。
声をかけられた時、わずかに拍動を速めた心臓は、カウンター越しにたった男の人が彼だと思い当たった瞬間
一気にその回転数を上げ、壊れて止まってしまうのではと思えたほどだった。
一度だけ、少しの間だけ、誰よりも近くにいることが出来た彼。好きだった…彼。けれど、想いを伝えることができなかった。
「変に……思われなかったかな?」
脈拍が落ち、心の天秤が高揚に傾いた状態から平常に針を戻すと、そのまま消沈へと傾いて行く。
今の自分の姿は、贔屓目に見てもぱっとしない。生地が厚手の茶系統スカートに上は少しくたびれたブラウス。その上に紺色カーディガン。おばあさんみたいだ。
その上、顔は化粧っ気がまるでなく、もうスッピンに近い。フレームの太い眼鏡に、少しコンプレックスの太目の眉毛。
「おまけに…ちゃんとお話もできなかった…」
ボソボソとしたはっきりとしない喋り方。おどおどとした態度。これは眉毛より遙かにコンプレックスに思っているけれど、なかなか治ってくれない。
「変な奴って……気持ち悪い奴って思われたかな…‥」
気持が一層沈みかけて、けれど首を振る。このままでは駄目だ、と。
「…こ【続きは眠くなったので省略】
347 :
書く人:2007/11/15(木) 23:42:38 ID:/xZ/JVqq
さて、このままリレーで行くか、それとも言い出しっぺの私が責任を取るか?
私としてはリレーでやってみたいのだが…
何このわっふるスレw
>>347とりまあんたの熱いソウルのバトンは俺がしっかりと受け継いどくぜ。
「・・・こんな私を好きになってくれる訳ないよね・・・」
十年以上一方通行の想い。そしてこれからも永遠叶うはずがないって分かっている想い。
また会えて電話番号を教えてくれただけでも本当に嬉しかった。もう十分に満たされていた。
なのに
彼女の幸せは
まだ
止まらない
〜再会編・完〜
何か長編な流れにしちまった気がしてきたな。
>>333の呟きがこんな展開になるとはなw
とても面白い流れだ
>>349 貴様は禁書スレ住人と見た、違ったらあれだが
そして続けるぜ
――番外編――
夢を見た、あの頃の俺と彼女の夢を。
いや、正確には……違う。
なぜなら、その夢では俺と彼女が楽しそうに笑いながら話していたからだ。
きっと、これはあの頃の俺が願っていたこと、
きっと彼女と再び再開したのをきっかけに心のどこかで思いだしだのだろう、
それは一つの分岐、今からでも、少し遅いかもしれないけど、辿れる一つの未来。
夢が色褪せていく、きっともうすぐ目覚めるのだろう。
なぜか、そのなかでこの夢は、この夢で考えたことは思い出せないだろう、
そんな根拠のない確信を持ちながら、俺は夢から引き上げられた。
――後は任せたぞ同志よ――
>>351 胸の中に《モヤッ》としたものを抱えたまま目が覚める。
なんだ……? まあ、いいか。
枕元に置いてある携帯を手に取る。
着信のランプが点滅していた。録音メッセージまで残っている。
夜更けに誰だったのだろう?
思い当たる友人の顔を思い浮かべながら携帯を開く。
見たことの無い電話番号が残されている……誰だ?
メッセージを再生してみても1分半ほど無言のままだ。
悪戯なのだろうか、それとも思い出せない友人なのだろうか?
残されたナンバーにダイヤルするべきかどうか
携帯を手にしばらく悩んでいた。
gngr!ワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフル
>>354 333は実際にその無口っ娘に再会しちまってここを見に来る所じゃないじゃねw
>>351驚いたなwwまあ禁書スキーなら分かるかもとは思ったが
358 :
333:2007/11/16(金) 20:54:30 ID:kLcxZM+n
この空気に水差すのもな、と思いROMってました
とりあえず、友達通じて連絡は取れるようになったけど、未だ敬語のやりとりをしてる俺達orz
「今時ワン切り、ってのでもないよな」
というか、業者の方とて一人に一分半もの時間をかけるとも思えない。
「……着信アリ…ってか?まさか…」
口に出してから、背筋が寒くなるのを感じた。もちろん、怪談系の番組を見た夜には一人でトイレに行けなくなるような年でもないが、全くそう言うのの影響を受けないほどに剛胆でもリアリストでもない。
舌打ち一つして、履歴を呼び出しかけなおすことにした。このまま放置すると、逆に気になって眠れなさそうだ。
指先が少し震えて、二回ほど操作を間違えた。
〜her side〜
「……もう駄目」
泣きそうになりながら、私は表示の暗くなった携帯の液晶画面を見つめる。
さっきまで高鳴っていた胸の鼓動は、今や葬送曲のリズムをとっているように聞こえた。
手にした携帯電話がついさっきまでつながっていたのは、
>>333君の携帯電話。かけた理由はちゃんと通じるかと言う確認と、電話帳への登録のため。
―――と言うのは建前。声を聞きたかったから、と言うのが本音。
私の心は二つの方向に引き裂かれようとしていた。彼と再会できた現状に満足しようとする動きと、もっと彼の傍に近づきたいという動き。前の方がより理性的な動きで、後の方が感情的な動き。感情的――と言うことは、それこそが本音と言うこと。
気づいたのは、図書館から帰って布団に入って、
>>333君に関する気持ちの整理をしていた時。
好き。一方通行であっても、こんな冴えない地味な私が叶え得ることもないような感情であっても、それは事実。
そしてこうも考えた。自分の願いが叶わない最大の原因は、他でもないこの、自分の後ろ向きの思考のせい、と。
中学生の頃、彼と関が隣り合ってもしゃべれなかった時、そして席が別々になった時、私は神様は意地悪だと思った。けれど少し背が伸び、少し経験を積んだ私は理解した。問題は神様が意地悪さではなくて、自分の勇気のなさなのだと。
今度こそ、勇気を出そう。たとえ振られても……きっと意味がある。どうせ駄目だとあきらめて「あの時こうしていれば良かった」と、小さな針のような切なさを抱えていくよりも…そっちの方がずっといい。
そう思って、私は渡されたメモを手に、彼に電話をかけた。
玉砕でした。私のいくじなし…。
具体的には、最初に女の人の声が出てそれが留守番電話サービスの物だと知り安堵して落ち着くまで19秒。
次に何を話すべきか考えてない自分に気づき、慌てて頭が真っ白になること25秒。何とか気を取り直し、話すべき文面を推敲して38秒。
覚悟を決めるのに7秒。そして「夜遅くにごめんなさい」と言うため息を吸うのに1秒。
これでちょうど1分30秒。電話が自動で切れた。
……もう、寝よ。良く考えればもう遅いし、
>>333君も迷惑だよね?
ため息をつきながら、携帯を閉じようとした時だった。
突然に液晶画面が明るくなり彼の名前を表示したかと思うと、デフォルト設定のままの着信音が鳴り響き、私をショック死させかねないほどに驚かしたのは。
【続きwktk】
360 :
書く人:2007/11/16(金) 21:00:50 ID:s4d1U+e5
がんばってくださいオリジナル
>>333 何かあったら報告よろ
わざわざ書き手スレに宣伝なんかするなよ。変なの呼び寄せたらどうするんだ。
みんなwktkだけで止まるよりはましかと思ったんだが、すまん
こういうのは無理に続けようとすると歪むから、止まったら止まったで
諦めるようにしとくのがいいよ。
>>359 wktkされては書かねばなるまい
「もしもし?」
「……ぁ」
慌てて電話に出た私は、その声が紛れもない
>>333君のものだと気付いて、目頭が熱くなった。
だって、こんな夜遅くに書けてくるなんて思ってなかったから。
「えと、そのもしもし? 聞こえてる? えと、間違い電話?」
「……ぁ、あのっ!」
>>333君の声が、少し困ったような、怯えたような感じで、私自身出せるなんて思ったこともないくらい、大きな声が飛び出した。
「わっ!? ……って、あれ? もしかして――か?」
「う、うん……、夜遅くに……ごめんね」
「いや、良いよ。そっか――か、電話してくれてありがとう」
彼の優しい声を聞いた瞬間、心臓が裏返るくらいの勢いでやかましくなり始めた。
いくら何でも電話越しに届くハズ無い。自分に言い聞かせながら、私は深呼吸する。
少しでも落ち着いて、もう少し話しがしたかったから。
「……あの」「あのさ」
だから、言葉を口にしようとした途端、彼と声が重なった。
〜
>>333 side〜
電話から聞こえてきた声に、内心ほっとした。
と言うか、まさか電話番号を渡したその日に掛かってくるなんて、思ってもなかったから。
……こんな時間にもかかわらず、電話をかけてくれるなんて、もしかして、ひょっとしたら……。
そんなことを思ってしまったからかも知れない。
他愛もない会話をしながら、彼女を、デ、デートに誘ってみようかなって、そんなことを考えて。
「……あの」「あのさ」
声が被ってしまった。
【続きはCMの後で】
∧_∧ +
(0゜・∀・) ワクワクテカテカ
(0゜∪ ∪ +
と__)__) +
>>361 そんなに目くじら立てる必要はないんじゃないか?
とりあえず、結果オーライだったんだし
>>365 バトンタッチされてみる
しかし、
>>333のリアルな今後が普通に気になるな
「「…………」」
互いに沈黙、
「……先にどうぞ」「先にいいよ」
再び声が被る、
「「…………」」
再び互いに沈黙、そのことに、どちらともなく、笑い出した。
気付けば感じていた緊張は微塵もなく消え去り、
それは彼女も同じなのか、自然と会話をしていた。
「へえ、そんなこともあるんだな」
「……うん、私も、驚いたよ」
「そうだ、あの通りに隠れた名店、ってやつがあるんだけど、知ってた?
「……そんなの、全然知らなかったよ」
会話が弾む、それがとても心地よく感じる、
さてと、そろそろ本題を切り出さないと、
「……あの!」
と、思った矢先に彼女が少し上ずった声で話してくる。
「ん?なに?」
「その……あの……明日暇ですか!!」
《携帯の文字数制限にひっかかったorz 同志よ、後を頼む、完成はさせねばなるまい》
畜生!
続きが気になって何度もきちまう!
・・・本当は自分で書ければ一番いいってのは分かってるんだがよ・・・
頑張って書いてみた。フリーメモなんて初めて使ったぜ。
明日暇ですか・・・って・・・
待て。待て待て待て!いきなりか?何のフラグも立ててないのにいきなりか?
焦りすぎな俺の脳が産み出した幻聴か?
「その・・・お店、案内して欲しいから・・・」
どうやら幻聴じゃないらしい。としたら、これはいわゆる孔明の罠、じゃなくて落ち着け俺!
デートか?デートなのか?いや、しかし、いやいや・・・。
「あ、ごめんなさい。いきなり迷惑だった・・・よね」
「そんな事ない、ちょうど暇だったんだ」
俺の戸惑いの時間を否定と受けとったのか、気落ちしたような声に、俺は反射で応えた。
すまん友よ、一緒にレポートはできなさそうだ。まあ開始一時間でプレステに電源が入るんだし良いだろ?
「・・・よかった」
心から安心したような響き。俺は自分の返答が正解だったと確信した。
【続きは省略されました】
たまには遊びも必要さな
みんなGJだ
このもどかしさがたまんねえ
GJだ。頑張れ。ワッフルワッフル
>>372 続けてみる、って夜に続けるといいつつ、次の日の昼前ってどうよ、俺?
〜 her side 〜
「それじゃさ、明日、どこで待ち合わせしようか?」
「……あの、図書館の前で……」
心臓がバクバクとやかましい音を立てる。
顔が熱い。ううん、耳まで熱くなってる。
自分から誘うなんて、はしたないって思われたかな? でも、でもでも、受け入れてくれた。ちゃんと付き合ってくれるっていった。
「じゃあさ、明日十時に図書館前で、待ち合わせで良いかな?」
「はい……、待ってます」
「ん、わかった。時間もそろそろ遅いし、それじゃ××お休み。あ、寝不足でクマとか作らないようにな」
「そんなの、つくらないですよ……、それじゃ、お休みなさい」
「ん、お休み」
ぷつっと、電話が切れた。手に持った携帯から聞こえてた彼の声が、耳の奥にまだ残っている。
「っ」
信じ、られない。だって、諦めてたのに。自分からデ、デ、デートに、誘ったのだって場の勢いだもの。
好きになってもらえるなんて、思ってなかったもの。
けど、受け入れてくれたんだ。彼は、
>>333君は私のお誘いを受け入れてくれたんだ。
「……いいよね」
少しだけでも、私に好意を抱いてくれてるって、思っても良いんだよね。
デ、デート、生まれて初めてでしかも初恋だった人との。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
やった、やったっ、やったっっっ!!
信じられない! 信じられないっ!! 信じられないっっっ!!
ぎゅっと携帯を握りしめて、ベッドに身を預ける。預けて身悶える。
嬉しい、とても嬉しい。きっと、生まれて初めてだ、こんな気分!
明日は、精一杯めかし込もう。ファッション雑誌の通販で買ったけど、袖を通してなかったアレを来てみるのも良いかな。
……し、下着は、すこしだけ、色っぽいのも、いいかも。
き、期待してるわけじゃないけど、でもでも……
って、このままだと、朝まで悶えてしまう気がして、私はベッドの中に潜り込む。
「……お休み
>>333君」
想像の彼に言葉をかけて、私は瞼を閉じた。
【続きは頼んだ】
頼まれたw
待ち合わせ場所を確認して電話を切る。
「ふぅーっ」
電話一本で こんなにドキドキして……まるであの頃に戻ったみたいだな。
電話を枕元に置き、彼女との会話を反芻する。
……ん? 会話を反芻?
「あの娘……話してたな……」
まどろみの中で そんなことを考える。
電話だと顔が見えない分、話しやすいと言うことを聞いた記憶がある。
「内気なあの娘らしいか……」
まぶたを閉じると彼女の顔が浮かぶ。
いつも、うつむいてばかりいた彼女。
どんな笑顔なんだろう? 明日はどんな服をきてくるのかな? 髪型は?
思いがけず彼女のことばかり考えている。
まったく、中学生でもあるまいに……。
夜明け前に見た夢は とても人には言えないような夢だった……。
家族が起きだす前に洗面所で下着を洗う姿は誰にも見られたくなかった……。
《あと頼む》
結果的に言えばパンツの中での暴発は、俺にとって有利に働いた。股間部の不快感によって早く目覚めたため、
身支度の時間を大幅に取ることが出来たのだ。朝からめかしこんだせいで、家族からさんざんにからかわれた記憶は忘れておこう。
図書館の前、元がよくわからない前衛的なモニュメントがある広場。待ち合わせ場所はそこだ。
広場の入り口で腕時計で時間を確認する。時間は9時45分。ちょうどいい時間…だろう、多分。
広場に入り彼女の姿を探す。―――いた。そこには散歩をしているらしい老人と犬を連れた子供以外に、女の子が一人いるだけだ。
図書館の軒先にある石造りのベンチに腰掛けている。角度的にこちらから彼女の顔は視覚になっているが、体格や雰囲気からして間違いないだろう。
俯き加減で座る彼女の装いは、全体的におとなしい印象だった。スカートはロングで、
レースの装飾が少し入っている。靴のヒールは低め。コートは装飾が少ないあっさりとしたもの。人によっては地味と表現するかもしれないが、
俺は清潔感があって可愛らしいと思った。むしろ、俺なんかがエスコートしていいのかという気おくれさえ感じるほどだ。
「…っし!」
小さく気合を入れて、俺は彼女に接近する。第一歩で右手と右足が一緒に出たのは御愛嬌だ。
声が上ずらないようにと細心の注意を払いながら
「ごめん、待った?」
まともに発音できた。その事実に内心喝采を上げる俺。全く、中学生かよ。と頭のどこか冷静な部分がそんな自分に突っ込む。
が、そんな大人な部分も含めて脳が完全にフリーズするような視覚情報が飛び込んできた。
「ぁっ……」
声に反応して彼女の…
「目……どうしたの?」
彼女の眼が、一晩中泣きとおしたかのように真っ赤に腫れあがっていたのだ。
〜her side〜
最悪…最悪…もう最悪だよぉ…。
顔を上げ、彼の驚いた顔を見て、私は死にたいと思った。
そんな彼を見た私の眼は、熱く熱を持ち腫れあがっていた。見た目も、きっとすごくみっともないのだろう。
「目……どうしたの?」
気を使ってと言うより、驚いてといった感じの強い
>>333君の声。
諦めと、情けなさと、後悔と…そんな感情でいっぱいになる私。思わず、腫れあがった目から涙がこぼれる。
ああ…最悪だ。ただでさえ美人と言うには程遠い顔をしているのに、その上でこんなひどい顔を見られるなんて…。その上泣き出しちゃうなんて。
落ち込む私にけれど彼は急かすことなく、隣に座って無言で待っててくれる。その態度に私は少しだけ落ち着きを取り戻し、この目の理由を口にした。
「……コンタクト…」
〜
>>333 side〜
「コンタクト?コンタクトレンズ?」
彼女は無言で、頷いた。
普段は眼鏡なのだが、今日はめかしこもうと滅多にしないコンタクトレンズにした所、どうも合わなくて目が腫れてしまったらしい。
途切れ途切れな涙声を総括すると、そう言うことらしい。
「……(くすん)」
目を腫らしたまま、すっかりしょげ込んでいる彼女。その姿を気の毒に思う反面、少し嬉しいと感じている自分を感じた。
俺のデートのために、普段しないようなおめかしをしようとしてくれた。その事実が単純に嬉しかった。
けれど、だからと言ってその喜びが、彼女の状態を可哀そうに思う感情を上回ることはない。
「とりあえず…図書館に入らないか?冷やした方がいいよ」
彼女は無言で頷くとポーチから眼鏡ケースを取り出した。ケースの中から出たのは、図書館で会った時に彼女が掛けていたのと違う、縁の細い眼鏡だ。
だが、ここで運命のいたずらが起こる。いや、運命のせいじゃない。単純なヒューマンエラー。しかも責任は八割俺だ。
視界が悪かったせいか、彼女は眼鏡を取り落してしまう。
俺の反射神経はレンズの落下を見た瞬間、即座に反応してレンズが石畳に接触する前に掴みとる。そこまではナイスだった。
グニャリ
思い切り握ってしまった眼鏡のフレームが、上記のような擬態語で歪んでしまったその瞬間までは、ナイスだった。
《さあ、次の挑戦者は君だ!》
377 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 21:25:26 ID:cv0PgS+z
居るもんなんだな、職人って
GJ!&wktk
俺にとって有利に働いたフイタw
すっごーいリレーだな
何人参加しているんだ?
>>379 俺と書く人がこりずに二回三回とバトンもらったりしてるから四、五人かな
>>376 携帯だと文字数制限厳し過ぎる……
「あ……」
嫌な汗がぶわっと吹き出す、
「……?」
眼鏡を外した時の視力が余程低いのか、彼女には眼鏡が曲がった様子が見えていないようだ。
「あの、えーっと……」
まずい、非常に気まずい、それこそ今すぐ土下座したくなるぐらい気まずい。
――自分だけ
「……どうかしたの?」
彼女が尋ねてくる、ここは素直に謝るべきだろう。しかし、非常にさい先が悪い……
「……ごめん、眼鏡、曲げちゃった」
この言葉を聞いて、彼女は一瞬驚いた顔をし、それからくすくす笑い始めた。
怒られはすれど、笑われる意味がわからない、自分の頭の中に?が飛び交う。
「……もしかして、眼鏡を、握ったまま?」
彼女に言われる、確かに握りっぱなしだ。
「うん」
素直に頷く。
「離して、みて?」
言われた通りに、握った手を素直に離す、と
「……ええ!?」
曲がった眼鏡がいきなり元の形に戻る、頭がパニック状態になる。
「……これは、えーっと……形状記憶合金?ってやつで出来ててね、
ほら、こうやってぐにゃぐにゃ曲げても大丈夫なの」
俺の手から眼鏡を取り、言ったとおりにぐにゃぐにゃ曲げてみせてくれた。
「……こんな眼鏡あるんだな」
驚きでいっぱいである、
「うん、ちょっと……高いけどね」
彼女は笑顔を見せながら、眼鏡のレンズを吹き、かけた。
《職人さん、投下したい作品があるならがんがん割り込んでください》
1レスにまとめられたものを2レス使わなきゃいけないなんて……
やっぱ携帯の馬鹿!!
待て、形状記憶合金は40゚Cぐらいの湯にいれなきゃならん。
考えろ、代替品を…
グラスファイバー!!!
いや、普通にあるぞ、こういう素材の眼鏡。合金じゃなくて樹脂の一種らしいが。
そんなことより、メガネフレームの弁償のために女の子の手を引いて…というシチュで書いていた俺涙目。
書き直さなくてはorz
>>383 俺も、それ考えてた。
けど、予想外を生かすのもリレーの楽しみってことで、投下。
「えと、それじゃとりあえずハンカチ濡らしてくるから、この辺で待っててくれる?」
眼鏡のおかげ(?)で気分がほぐれた様子の彼女に総言葉をかける。
こくんと頷く彼女を置いて、俺は冷水器に向かった。いくら口に含む訳じゃないとしても、トイレの水を使うのはどうかと思ったから。
ハンカチを濡らして軽く絞りながら、少しだけ視線を彼女の方に向けた。
とくんっと胸の奥が跳ねる。
彼女が見知らぬ男に話しかけられているのが見えたから。
〜her side〜
>>333君が、冷水器でハンカチを濡らしてるのが見えて。
私はまだ涙が少したまった目を、軽く押さえた。
コンタクトはもう外してるから、大分ましになったけど……
「お、なんや××ちゃん、今日はやけにめかしこんどうやんか? なんかよかこつでんあったんけぇの?」
いきなり背後から声をかけられて、びくって肩が勝手に震えた。
ゆっくりと振り返って、そこにいた何となくとぼけた顔立ちの人に上目遣いを向ける。
「……大林さん、おはようございます」
司書の先輩、大林建昭さんに返事を返しながら、私は早く彼が戻ってくるのを待つ。
正直に言えば、この人はかなり苦手。
喋るのが辛い私に、なぜかいつも声をかけてきて喋らそうとするから。
けど、大林さんにはもう素敵な彼女がいる。
だから、私に声をかけるのは単なる挨拶のおまけみたいなもの。
その大林さんが、不意に周囲をくるりと見渡して、冷水器にいる彼の所で視線を止めた。
「……へえ、××ちゃんにもやっと春が訪れたっぺか。いやしかし、いきなり電話番号貰った相手とデートってのはキャラが違うっぽいわさな」
相変わらず、この人の口調は変だと思う。……何となく纏っている軽い雰囲気も、好きになれない。
だから、私はただ黙って頷く。
「そうかそうか、ええこっちゃ。やっぱ女は男と一緒にならんなんしの。ま、お邪魔虫は馬に蹴られる前に退散しときゃぁでの。なかようせにゃならんとばい」
「……はい」
その、どこか優しげな声に、少しだけ首を傾げながら私は返事をして。
彼が少し焦ったような表情で近づいてくるのを、少しだけほっとしながら見詰めていた。
【つ・づ・き、つ・づ・き(AA略)】
GJ
妄想している間に先を越されているのもリレーの面白いところだね
さてさて、どう料理してやろうか……
【料理してみた】
〜333side〜
その男が彼女の隣から立ち去っても俺の心は穏やかではなかった。あからさまに嫉妬だ。
感情に促されるままに駆け足で彼女の前に立ち
「・・・えっと・・・」
言葉に詰まった。
「・・・?」
俺の不振な行動に、彼女は小首を傾げて、まだ腫れの残る目でこちらを見上げる。
「あっ、こ、これ!濡らして来たから」
「う、うん」
取り繕うようにハンカチを差し出すと、彼女は少し戸惑いを見せながらも受け取ってくれた。
俺は彼女の隣に座り、内心胸を撫で下ろした。
あの時、自分は何を言おうとしたのか?
あの時、自分は何をしようとしたのか?
俺自身にも分からない。ただ嫉妬心のままに行動していたら、きっと気まずい事に・・・。
と、俺は気付いた。そもそも彼女には、俺に嫉妬されるいわれはないじゃないか。
俺はただの元クラスメート。彼氏でもないくせに・・・。
・・・そう言えば、彼女には付き合ってる相手はいるのだろうか?
このリレー小説が始まってから続きが気になってしょうがないw
こういうのもたまには良いな。
《her side》
ハンカチを渡してくれた時は少し戸惑っていた。
いま、隣に座っている彼は必死に何かを考えている……。
私が何かいけないことをしたのだろうか?
男の人と待ち合わせをして会うことなんて初めてだったから勝手がわからなくて、
何か彼に失礼なことでもしていたのだろうか?
不安が胸をよぎる。
せっかく、彼を誘うことが出来て
いま、こうして隣に座っているだけでも嬉しくて仕方ないのに。
私は初めから失敗を犯してしまったのだろうか。
見つめることしか出来ず、不安がどんどん大きくなっていく。
腫れた目から、コンタクトの痛みではない涙がこぼれそうになった。
彼の前では、私はあの頃の女の子のままなのだろうか。
あれから10年、私も少しは成長している。
あの頃と同じ徹は踏むまい。
さあどうだw
神様、私に勇気を下さいっ!
あれ?
改行ミスったっぽいですごめんなさい
四、五日の頻度で書き込もうって勝手に俺の中で決めたわけだ。
俺の仕事が夜の仕事(仕事中)な訳で、全然時間取れないわけだorz
神様!私に勇気を下さいっ!
「あの・・・っ!今、お付きあいしてる人、いますかっ?」
〜 333 side 〜
「・・・え?」
このときの俺の顔はきっと間抜け面だったに違いない。
けれど仕方ないじゃないか。今まさに訊いてみたい話題に対して、向こうから触れてきたんだから。
しかしこれはどういう事だ?
無口な彼女が自分から訊いてくるって事は、俺に恋人がいるかどうかは彼女にとってかなり気になるトピックスだと言うことで・・・。
お、おいおい!落ち着けよ、俺の脳!何をご都合主義の妄想をしてやがる!?それより返事だ、返事!
俺は空回りする思考回路を叱咤して言葉を探す。
実際は否定のためのワンセンテンスが必要なだけなのに、処理能力が落ちた生体CPUはクラッシュしまくる。
それでも俺はどうにかして隣に座っておもいつめた様な表情を浮かべる彼女への返事をに成功した。
「い、いや、いないよ」
声が上擦り気味になってしまった。これじゃあ意識しているのがもろばれじゃないか!
そんな感じにまたも空回りしはじめた俺の頭は、続く彼女の台詞に一気に氷ついた。
彼女は控え目な、けれど心から嬉しそうな笑顔でこう呟いた。
「・・・良かった」
〜 her side 〜
彼に恋人はいない。
その答えに私の心は踊り、同時にホッとしてーーー不意に気付いた。
自分が勢いに任せて、ろくに考えず出した質問が、実はかなり意味深かつ大胆なんじゃないかと言うことに。
【続きは省略されました】
ちょっと見ない間に伸びてるなと思えば…
GJ!
ワッフル応援
どきどき、どきどき
胸が苦しくなる。 なんていうことを聞いてしまったのだろう。
勇気を出して一歩だけ踏み込んだ処が地雷原だったなんて……。
心の扉を開いて踏み込んでいくなんていうことは、私には出来ないのかも。
《昼休みが終わる直前だと短いのしか書けません……》
なかなかいい流れですな
GJ!!
恋人はいるか、と訪ねて、いないという答えが返ってきてから「良かった」と言う。
……これってほとんど「私はあなたのことが気になってます」って言ってるようなものだよね……。
――ぅぁぅぅぁぁぁぁぁぁぅぁぅぁっ!
どうしよう!考えてみれば見るほど地雷原!慣れないことなんてするんじゃなかった!
>>333君はどう思ったかな?迷惑そうな顔してるかな?けど…もし、もしも万が一、嬉しそうな顔をしていてくれたら…。
私は恐る恐る、けれども若干の期待を込めて、彼の顔を盗み見た。
「………(ふりーず)」
か、固まってる……。これって……ダメってことかな?
……やっぱり…そうだよね。こんなおしゃべりも下手で、地味な女の子に好かれても、嬉しくなんてないよね。
幸福感で膨らんでいた心が、急にしぼんでいくのを感じだ。
うん、けれど……いい。これでいい。最初は恋人になれるなんて期待してなかったんだもの。
二人でお出かけ……向こうはそう思ってないかもしれないけど、デートをすることができただけでも、幸せだもの。
けれど……このままじゃ、このあとも気まずいままかな?
それは嫌だと思い、私は何とか顔を笑顔にしてこう言った。
「……あ、その……私も男の人とお付き合いしたことないから……、同じくらいの年の人にそう言うの変かなって聞きたくて……」
とっさに出てきた言い訳。気持ちが落ち込んでいたおかげか、それは自然に言うことができた。
〜
>>333 side 〜
彼女がいつもと同じ控え目な、けれどどこか悲しそうな笑顔で告げた言葉に、俺はようやく冷静さを取り戻す。
それと同時に、自分が随分と恥ずかしい早合点をしていたことにも気づく。うわっ、俺ってダセェ。
「変じゃないよ、きっと。そう言うのは他人に合わせたりするようなもんでもないと思うし」
答える俺の顔には、自然と笑みが浮かんだ。
男と付き合ったことがない―――実は同性と付き合ってるんです、などと言う変化球さえなければつまりは彼女はフリーということだ。
さっきの「良かった」っていうのも、きっと恋人がいない仲間を見つけた安心感で……あれ?
妙だ。「俺が今まで異性と付き合ったことがあるのか?」を気にしているなら「『今』、お付きあいしてる人〜」と言うのはおかしい。
「今までにお付き合いした人〜」と聞くのが正しいはずだ。言い間違いの可能性は低い。読書家なせいか、彼女の言葉は文法的に適格だ。
じゃあ一体……
「あの……」
遠慮がちな彼女の声が、俺の意識を思考の海から引っ張り上げた。
「そろそろ…出よ?…眼はもう大丈夫だから」
「ん?ああ」
俺は彼女の目を見る。確かに、もう腫れはすっかり引いていた。俺を待たせるのに気兼ねして無理をしているということはなさそうだ。
「ハンカチ……洗って返すね?」
「あ、い、いいよ別に…」
「けど……」
彼女は今まで目に当てていた濡れたハンカチを両手で、まるで何か大切なものであるかのように持って、こちらを見つめる。
そうされると、厚意をむげに断るのも悪い気がした。
「……じゃあ、頼む」
「……」
彼女は頷くと、ポーチから自分のハンカチを取り出し、俺のハンカチを包んだ。
【続…けてください】
職人が…完結させてくれるまで…わっふるを止めない!!!
(wktkで)震えるぞハート!(GJで)燃えつきるほどヒート!!!
自重など…戯言だ!
↓次で一気に急展開を期待
いやいや、ここはゆっくりじっくりねっとりと、恋愛していって貰いたい
急展開
「・・・実は私双子なの」
「な、なんだ(ry」
うあぁぁぁああああ!!
ブクマから辿ってもでやがるぞぉぉぉぉお!?
ようするに保管庫オワタ\(^O^)/
というか今更なんだが、忍者って18禁OKなんだ。
無口な忍者っ娘萌え〜〜〜!
いやさ、なかなかリレーの続きが来なくてついorz
中断せずに最後まで行ってほしいなぁ。あ、けど終わってしまうのもいやだなぁ…
404すら出なくなった
捕手
甘納豆を食べるたびにミュウマを思いだすとは俺の脳みそが腐ってやがる
>>411 大丈夫だ、正常です
仕事でホテル泊まるたびry
自部屋二階にあるんだが窓を見るたびry
ベッドが微妙に膨らんでいるとry
旅館に泊まるたびry
OBとして学校に行き、保健室ry
人をやめたほうがいいな俺……
>>412 あれ?俺この時間カレー食ってたはずだが…
【his side】
図書館を出た後、俺達は昨日電話で紹介した店―――洋菓子店へと向かった。ワッフルが有名だが俺としてはシュークリームが一押し。
彼女もそこのシュークリームを気に入ってくれたようだ。証拠に、持ちかえりでいくつかシュークリームを買っていった。家族へのお土産らしい。
その頃になると、図書館の時に感じた沈んだ様子も消えていた。まあ、最初から俺の勘違いだったのかもしれないけれど。
店を出たらウィンドウショッピング。クリスマスまで一か月というこの季節、街は華やかで見ているだけで楽しい気分になる。
一緒に歩いていて俺はいろいろと彼女に話しかけたが、やがてそれもせず隣を歩くようになった。話題が尽きた、というわけではない。
彼女が求めるのはあれやこれやと話題を振ることではない。一緒に何かを見て、何かを聞いて、一言か二言感想を交わす。そんな静かな時間の共有だ。
気の早いクリスマスソングが流れる街の中、穏やかな無言に混ざる小さな声。胸がときめくようで、けれど落ち着くような、そんな時間を過ごした。
確信を持った。俺は彼女のことが好きなのだ。彼女以上の美人や可愛い人は、この世に何人もいるだろう。
けれど俺は彼女を選ぶだろうし、願わくば……彼女に選ばれたい。
俺の心は膨れ上がり、そして揺るがないものになっていった。
「今日はありがとうな、誘ってくれて」
「……こちらこそ……ありがとう」
俺達は街灯と窓からの明かりを頼りに住宅地の道を歩いていた。彼女を家に送るためだ。
吐く息が白い。時間は五時過ぎだが、この時期になるとすっかり日は沈み、女の子を一人で歩かせるわけにもいかない。
―――と言うのは建前で、本当は彼女の家を知っておきたかったから。別にストーキングするつもりはないので勘違いするなよ?
それだけ言葉を交わして、再び無言。気まずくはない。お互いの心が通じ合ってるという確信が温かい。
けれどそんな確信が幻想であると突き付けられるような言葉が、彼女の口からでた。彼女の家の前に来た時だ。
「ここ…」
「あ、うん。それでさ…ハンカチのことなんだけど……」
それをネタにして、俺は次に会う約束を取り付けようとした。だが…
「住所…教えて」
「え?」
まさか家に来てくれるのか!?と、期待した俺だが
「小さいものだから……郵便で送るね」
「………え…?」
幸福で膨れ上がった俺の心に、不意打ちの一言が亀裂を入れた。
なぜ……会えばいいものを……。
茫然と俺は彼女の顔を見る。彼女の顔は、家の窓から差す光で逆光になり、良く読み取ることができなかった。
【her side】
「わざわざ……その為だけに会う必要もないよね」
自分の口から出る言葉は、私の胸を切り裂いていく。けれど、止めることはない。諦めるために必要だから。
彼は、私のことを好きではないのだ。
嫌われている、というわけではないと思う。好かれているのだとは思う。けれどもそれは友達として。私が望む形ではない。
もちろんそれだけで、幸せだと思った。けれど……私の心はそれで納得しないだろう。
彼と街を歩いた時、とても楽しかった。
私の遅い足に合わせてゆっくり歩いてくれる彼。口下手な私の言葉を、急かさずに待ってくれる彼。私の言葉に、しっかり答えてくれる彼…。
好き。彼のことが好き。彼の存在を確認する程に、そんな気持ちがあふれる。叶わない想いが溢れる。それが、堪らなく辛かった。
これ以上彼といたら、彼への想いが溢れ続けたら、叶わない願望と不自由な現実の間で、私は壊れてしまう。
だから…もう会わない。そう決めた。その為に自傷の言葉を紡ぐ。もう私に会わないで。もう私に構わないで。もう私に想わせないで。もう私に…
「…楽しかったよ。バイバイ」
せめて、最後は笑顔を彼の記憶に残したい。泣きそうになった私は、逃げるように家に入ろうとして…
「待てよ」
手首を掴まれ、引っ張られた。
驚く。顔を上げて彼を見る。目が合う。顔が近い。引っ張られた。もっと近づく。小さく声が漏れた。彼の吐息を唇に感じた。そして…
―――私と彼の、唇が重なった。
手から紙箱が落ちた。音がして、真っ白になった頭のどこかが、なぜかシュークリームの心配をしていた。
【>>his side】
解らなかった。何もわからなかった。
なぜ彼女がそんなことを言うのか?なぜ言ってる彼女の方が悲しそうな顔をしているのか?俺はどうしたいのか?俺が何をするべきなのか?
解らなかった。何もわからなかった。
レポートのために調べたところ、頭蓋骨の中で鎮座している1400t少々の脳味噌様は体が必要とする酸素と栄養をかなりの割合で消費しているらしい。
普段から贅沢させてるんだからこんな時ぐらい働けよ!
そんな気持が通じたのか、俺の心の承諾を受けるより早く俺の脳は運動野を中心として行動を起こした。
去ろうとする彼女の腕を掴んで引っ張り寄せて……キスをした。
柔らけえ…。
焦りより、感動が勝った。どれほどの時間が経っただろうか。キスを追え、けれども暴走した脳味噌が支配する俺の体は止まらなかった。
「好きだ」
おいおい。ドラマみたいだな。麻痺した心がそんな感想を漏らす。
「好きなんだ。俺、君のことがずっと好きだったんだ」
繰り返して、俺は言う。眼鏡のレンズを通して見つめた彼女の眼は、丸く見開かれていた。びっくりとか、茫然とか、まさにそんな感じだ。
その彼女の様子を見て、ようやく満足した俺の意思が自分の体の支配権を取り戻す。
最初に俺の心がしたことは、大脳を利用した客観的な状況把握。
―――女の子を捕まえて、強引にキスをしました。 完
爆死。
「そ、それだけだから!っていうか、だからまた会いたいっていうか…!」
慌てる。俺は慌てまくる。なんてことをしちまったんだ俺は!
「あ、じ、じゃ、じゃあ!また電話する」
なんとかそれだけ言って、逃げるように…というか逃げだした。扉の音がしないことから、彼女はキスをされたまま外にいるらしい。
当然のごとくヘタレな俺は、振りかえることはできなかった。
【>>her side】
「キス……されちゃった」
現実が自覚できたのは、寝る直前だった。パジャマに着替えるまでの記憶がない。髪やお腹の様子からし、お風呂も晩御飯も済ましたようだけど…。
「〜〜〜〜〜っ!」
そんなことはどうでも良い。あ、家族に不審に思われるのはいやだけど…けれどどうでも良い。
「ファーストキス……っ、そ、それに……」
『好きだ』
信じられない! 信じられないっ!! 信じられないっっっ!!
まるで子供のように、ベッドの上で足をパタパタする私。どうしたいとか、どうするべきとか、そんなことを考える余裕はなかった。
ただただ、その信じられない現実に、私の頭はパンクしていた。
どれだけそうしていたろうか。私は机の上におかれたポシェットを見る。いつの間にか手に取り、彼のハンカチを取り出していた。
「…
>>333くん……の…」
単に、濡れただけの布切れ。けれど私の混乱しきった、そのハンカチには彼の一部のように思えた。
パジャマが濡れるのも気にせずそっと抱き締め、彼に奪われた唇を指先で撫でて…
「
>>333…くん……」
……気づけば、私は変な気持に……Hな気持ちになっていた。
【こ、これ以上は無理っす!誰か、誰か続きを…!】
416 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 00:48:18 ID:R5F/bqK/
エロパートktkr!
翌朝。結局悶々とした気持ちのまま、なんだかよくわからないうちに朝日が昇っていた。
――なんてオチを期待
ここはオナニーしかないだろw
これは難易度高いなwwwwwwwww
エロは俺には少し無理なので、その後の純愛ルート書いとくぜ
え、えろ展開は俺には無理だっ!
いや大歓迎なんだけどね、技量が……
同志の皆様
現在書いてるよ!!
って方がいらっしゃらないなら私が書きますがいかがいたしましょう
何を言うかと思えば・・・。
誰にはばかることがあろうか?
書くがよい、っていうか書いてください、お願いします。
おかしい。
私は軽く息を呑む。
今目の前にあるのは、手に取り握っているのは、ただの濡れたハンカチなのに。
綺麗にアイロン掛けされていただろう布切れは、私のせいでぐしゃぐしゃで、決して目を引くわけでもないのに。
……どうしてこんなにも胸がドキドキするのだろう。
確かにこれは彼のハンカチだ。でもこれは彼本人ではない。
それなのに私はなんでこんな、
「ん……」
股間に手を伸ばしてみる。
何をやっているのだろう。こんなはしたないこと、ダメなのに。
「……」
指を奥に突っ込んで、軽くかき回した。襞の感触は温かく、ぬめる。
ベッドの上で私は熱に浮かされるように行為に耽った。
何度かこうした経験はあった。彼のことを思い浮かべてしたこともある。
でもこれは違う。妄想の中で都合よく動かす彼ではなく、持ち物を直接手にしているのだ。
(
>>333君……)
多少乾いてしまった布切れに慕情を寄せながら、私は狂ったように指を動かした。
「ん……んんっ、あ……んっ」
鼻に押し当てて匂いをかぐ。水っぽい中に彼の温もりがある気がした。
間近に感じた彼の唇と男の子の匂いが、温もりの中に。
(ダメっ……、止まらない)
ハンカチの端をぎゅっと噛み締めながら、私は秘所をかき回した。
今まで味わったことのない快感が股から脳天に駆け抜ける。指を動かす度に、快楽の波が意識を溶かす。
羞恥心とか罪悪感とか、そんな余計なことは一切隅に追いやられていた。嫌な気持ちが沸き立つより先に、興奮と快感でいっぱいになる。
今日一日、頑張って話をした。
みっともないところを見せても、彼は優しく接してくれた。
一緒に買ったシュークリームは、祝福してくれるように甘く優しい味だった。
そして、そして、
(キス……
>>333君との……)
あんなことまでされて、その後さらに思いがけない告白もあって、
「あっ……あっ、んんっ、ひう……んっ、あっ……」
こんなこと、夢の中でしかありえなかったのに、
(好き、
>>333君……私も大好き、あなたのことが……ずっと、ずっと前から)
指の動きが激しくなる。私の大事な部分は液でぐしゃぐしゃになっていて、もう指もふやけてしまいそうなくらいだった。
雷に打たれるように体がびくびく震えた。頭はお湯をかぶったように熱くて、寝込んでしまいそうなほどくらくらした。
……あまりの気持ちよさにくらくらした。
(ダメっ、もう……)
鼻に押し当てたハンカチの匂い、唇に残るキスの感触、身体中から流れる歓喜の汗、全てが麻薬みたいに私をおかしくさせ、もう流されるしかなかった。
そして、
「んん――――っっ!!」
一際高い快楽の波が、意識を一瞬真っ白にした。
(や、やあっ……ダメ……気持ちよすぎるよぉ……)
茫洋と意識が拡散していく。まるでどこか遠い世界に飛ばされてしまったみたいだ。
昂った意識が体が果てると同時に徐々に熱を失っていく。波が引いていく。
「…………」
これまで経験した何よりも気持ちのいい行為だった。ただハンカチを握り締めていただけなのに。
ふと想像する。
(これがもし
>>333君の指だったら……)
いや、指どころかそれ以上の行為だってある。もしも彼と、そんな風になったら、
(……バカ、私のバカ! 何を考えているのっ、そんな……いやらしいこと……)
火照った頭をバシ、バシ、と手の平で叩いて叱りつける。
「…………」
無言のまま天井を見上げ、私は想いをはせた。
彼に対する恋慕と……謝罪を。
(せっかく好きって言ってもらったのに……こんなはしたなかったら、嫌われちゃうよ……)
ごめんなさい、と心の中で繰り返し呟き、私は小さくため息をついた。
神 降 臨 !
続きマジwktk
〜
>>333 side 〜
「……俺、何やってんだろう。」
手の中にあるティッシュをゴミ箱に放り投げて、深い溜息を吐く。
勢い任せで告白しちまって、しかもろくな言葉も無しで逃げ出して。
「挙げ句の果てに、コレだもんなぁ」
力無く垂れた【自分】を睨んで、もう一度溜息を吐いた。
彼女の柔らかくて温かだった唇の感触と、その芳しい香りが思い出されて。
気がつけばそのまま……。
「はぁ」
もう、世界の終わりってのをかいま見た気分で、溜息を吐く。
バカなんだろうな、俺。
そりゃ確かにショックだったさ。彼女にあんな風に言われたのは。
彼女から誘ってくれたのに、きっと好きになってくれているのに、あんな風に無かったことにしようなんて言われて。
けど、だからって、いきなり告白して、しかもそのままキスなんて……。
あーもう、自分が本気で嫌になる。
けど、今更告白を無かったことになんて出来ない。
いや、そんなことしたくない。そりゃ気恥ずかしいし、彼女と顔を合わせるのは凄く恥ずかしいけど。
でも俺は彼女が好きだ。彼女が好きだって思いだけは変わらないんだ。
もう振り返ってばかりで話すのを怖がったりなんてしないって決めただろ。
だから、もう止まらない。
彼女の答えを、今日みたいな彼女自身想ってないような偽りの答えじゃなくて、彼女の本当の想いを聞くんだ。
それがもし、嫌いって答えでも――辛いし苦しいけれど――構わない。
「…………電話」
ふと思いついて、手を携帯に伸ばす。
時間はそろそろ午前になろうかとしているところ。
こんな時間にかけるのは非常識だよな。迷惑だよな。
わかってる、けど、どうしても確かめたい。彼女の本当の気持ちを。
だから、俺は携帯に手を伸ば……そうとして、とりあえずパンツをちゃんと上げた。
【ってことで、続きはよろしく】
まとめ乙。あなたがいるからリレーにGJを贈れるんだぜ。
つぎはテレホンセックルに超期待!
テラシュークリームwktk
うん、電話越しとは言え丸出しはまずい。
パンツをあげて、今度こそ電話に手を伸ば・・・・・・すまえに手を洗う事にする。気分的に息子を握り締めていた手でこんな内容の電話はしたくない。
そうだ、ついでにシャワーでも浴びて気分的を落ち着けよう。さっきのような失敗をしないように。
うん、それがいい。
シャワーを浴びたら電話すると言う堅い決意を胸に俺は部屋を出たのだった。
〜 her side 〜
「・・・ふぁ・・・」
次の日、私は図書館のカウンターで眠気と戦っていた。
彼を想ってはしたなくなってしまった後、私は眠れなかった。
また電話すると言う彼の言葉が頭から離れなかったからだ。
かかって来たら何と答えよう?どんな風に答えよう?
そんなことを、ベッドの中で悶々と考えてか、考えて、考えて・・・・・・気付いたら朝になってました。
電話、来なかったな・・・。
彼は後でと言っていたけど、一体どのくらい後なんだろう?
ポケットから携帯を取り出す。
普段は電源を切ってロッカーにいれているけど・・・今日はマナー違反をしてしまった。
けれどもそのかいなく、着信はない。
【続きwktk】
………………
まったくあんたらはw
ちょっと出張に言っている間に
GJだらけじゃないか
着信の無い携帯電話の画面は酷く意地悪だ。
『お前なんかに電話してくる奴なんていないよ』
まるで電話に苛められているような気になってくる。
携帯電話というものを持った頃も そんな気がしたな……
とても淋しかった……
時間が経つにつれ、そんなことも気にならなくなったけれど。
彼の言葉が気になっている私は電話から意識が離れない。
彼氏からの電話やメールを心待ちにしていた友人の姿を不思議な気持ちで見ていたことを思い出す。
ああ……そうか、こういうことだったんだ。
いやねぇ私ったら、彼氏だなんて……
彼とは、まだ そういう関係でもないのに。
何を期待しているのかしら?
でも、《キス》をした……
初めてだった……
唇が触れた感触を思い出す。 とても甘美な気持ちだった。
抱き締められた。 力強く。
彼に男性を感じるには十分だった。
そのことを思い出しただけでショーツが気になる。
いやねぇ私ったら、何を期待しているのかしら?
昨夜……あんなにシたばかりなのに……
自分の中に、あの頃の少女の私と
いまの女である私が同居している。
どちらの私も同じことを言うの。
『彼が欲しいの……。 彼が好きなの……』
彼から電話が来ないのなら、私からしてみようかしら?
でも、私が踏み込むと地雷原が……
どうしよう……
どうしよう……
【あと、よろしく!!】
437 :
じうご:2007/11/28(水) 20:32:24 ID:ZfCg7oxv
>>436 少し、時間は遡る
――his side――
「………ん?」
やけに眩しい、そう思い目を開け、窓を見る。見れば、朝日が俺を照らして……
「……ってああ!?なんで寝てるんだ俺は!?」
朝になっている、ということを認識した頭は一瞬で覚醒、そして混乱する。
「ちょっと待てよ、落ち着け俺……」
昨夜の記憶を思い起こす、
「彼女に後で電話するって言って、風呂に入って……」
長風呂をし、すっかり記憶から彼女との約束が消え、寝た。
「……………………」
自分の最悪っぷりに思わず自己嫌悪をし、頭を抱えてしまう。
"後で電話する"そう言ってすっぽかされた、自分なら……不機嫌になる。
「ああ……くそっ、なにしてんだよ俺は」
携帯電話を手に取る、が、かける勇気が湧いてこない。
「…………………」
アドレスから彼女の電話番号を呼び出して、発信するだけ、それだけなのに
「う……ああ〜」
ただ、謝ればいい、それだけなのに
「ああああ、もう、なんでだ!」
携帯電話を投げる、たったこれだけのことに、決断をくだせない自分が腹立つ。
「…………でもな」
話さなければ、そう思い、投げた携帯電話をまた手に取った。
《後は任せます》
うん、任された。
……あれから結局電話を手にした物の、かける事が出来なくて。
俺は学校の中にいた。
「……こ、こんどこそ」
休み時間を狙って、アドレス帳を選択する。
あとは、通話ボタンを押すだけ。
でも、俺からかけても迷惑じゃないかな。
あ、そう言えば昨日すっぽかした約束の埋め合わせ……
「だ〜〜〜〜〜っっ」
自分が本気で嫌になりながら、思わず俺は小声で叫びながら頭を抱えてしまった。
わかってる、彼女のことだからきっと待ってるはず。なのに……。
「……この臆病者め」
いきなり背後から高い少女のような声が聞こえて、俺は慌てて振り向いた。
「な、何でお前がココにいるんだ!?」
俺の前でにやにや笑っているのは、木船香織だった。
女みたいな名前で、女みたいな顔立ちで、女みたいな衣装を着ているが、れっきとした男だ。
「なんでって同じ講義取ってるんだぞ? 同じ場所にいるのは当たり前だろうが」
にやにやと笑っているこいつが、色恋に関しては天才的なまでに持てまくってることを思い出す。
……俺が携帯相手に身悶えていることで、大体のことを理解しているんだろうな。
「ま、なんだ。ようやくお前にも春が来たってことか」
「……さあね」
そのどこか楽しんでる声音が不快で、思わず普段以上に尖った言葉を投げてしまう。
そんな俺の苛立ちに気付いたんだと思うけど、木船がなんか邪悪な笑みを浮かべた。
瞬間。
いきなり手の中から携帯が消えた。
「って! 何しやがるコラ!」
「ふーん、××か、初めて見る名前だな。うん、つまり彼女に電話かけようとして、かけられないヘタレ君か?」
「るっせぇっ! とっとと返せ、コラ!」
思わず立ち上がりながら手を伸ばして。
その指が通話ボタンを狙ったように押してしまう。
「あ……」
「ほら、電話なってるぞ? まさか切ったりはしないよな?」
思わず木船を睨みながら、俺は携帯を取り戻した。
〜 her side 〜
きっ、き、きき、ききき、来たっ!
電話っ!彼からの電話っ!
携帯の振動に、口から心臓飛び出そうなほど私は驚いた。
電話が来ると分かってた癖にこんなに驚いちゃうなんて・・・こんなんでちゃんとお返事出来るだろうか?
迷っている間にも携帯は私を急かす。
で、出なきゃ!早く電話に出なきゃ・・・。
私の震える指は通話ボタンを・・・
「××ちゃん、アカンぜよぉ。携帯きらなぁ」
押し間違えて切ってしまった。
原因は、突然肥をかけてきた大林さん。
せっかくの・・・彼の電話・・・
「・・・どないしたん?」
落ち込んだ私には、答える事も出来なかった。
〜333 side 〜
船木が珍しく気遣うような表情をむけてくる。
ああ、分かってる。分かってるさ。
最近の携帯は、電話帳登録されていれば出る前にかけてきたのが誰か分かる。
そして彼女は俺の番号を登録したと言ってたし、さらに切れたのは着信後。
分かるさ、ああ、わかるとも!これが意味することくらい!
「きっとボタンを押し間違えて・・・」
「・・・昼飯、奢るってやるよ」
船木が俺の肩を叩いた。
グッバイ 初恋
〜her side 〜
「もーしわけなかとです!」
「いいです、もう・・・」
奥の作業室でペコペコと頭を下げる大林さんに私は言う。
大林さんに悪気かあったわけではないのだし・・・
「こうなったらワシが一肌でも二肌でも脱いで何とか・・・」
等とは言うが、失礼な感想かもしれないけれど、この人に何か出来るとは思えない。
黙ってうつ向く私。消極的な拒絶のつもりだったのに、大林さんはそれを肯定と受け取ったようで
「よっしゃ!今からごっつい助っ人呼ぶから期待しててや!」
「そ・・・っ」
そんなのいいです、と言う前に、大林さんはどこかに電話をかけてしまった。
二、三回のコールの後、
「お、船木か?ちょいと相談あるをやけど・・・」
【勝手に人を繋げてみた。続けてください】
GJだけど、船木じゃなくて「木船」みたいですよ。
ついでにいうなら、
さすがに肥をかけられたら、誰だってびっくりするわさ。
参加したいんだけど、入りどころが掴めない。
リレーって難しいですね。
442 :
書く人:2007/11/29(木) 00:43:32 ID:kT5AoCit
ごめん、巣で間違えた。
脳ない変換でお願いします
これは
>>333がピンチだ
さてさて、どうやって救ってやろうかな
>>441 妄想の思いつくままにどうぞw
たまには このような遊びも面白いものですよ
〜
>>333 side 〜
真っ暗闇になった世界の中、木船の胸元から場違いに明るい着メロが流れてきた。
「……あー、悪いな」
苦笑を浮かべながら木船が携帯を取り出すのを、何となくぼーっと眺めてみる。
……てか、どうでも、いいんだけどさ。
あー、告白しただけじゃなくて無理矢理キスしたってのが、悪かったんだろうなぁ……。
俺って、なんて最低なんだろ。
「……おう、叔父貴、なんのようじゃい? ……変な言葉遣いはおめえのまねじゃけえ、ま、冗談はさておき」
一瞬、聞こえてきた声が理解できなくて、視線を木船に向け直す。
にやっと笑った木船が、そのまま携帯に答えを返していく。
「ああ、ふん……へぇ、面白い偶然だな…………ってマジ? ホントに。いや、実はさこっちも似たような状態でさ」
……なんかわからないが、俺のことを話題にしてるような気がして、木船をじろりと睨み付ける。
けど、俺のことなんか無視して、木船はそのまま電話に没頭する。
「で、名前は? ……いや、そんな偶然あるのかってビビっただけ。……んじゃ、また後でかけ直すわ」
「……楽しそうだな」
睨み付けながらぼそりと呟いた瞬間、にやりともう一度笑いかけてくる。
「ああ、人生色々って奴だからな。あ、そうそう、昼飯奢るって言ったけど、アレ無しな」
「あ?」
「思いっきり宴会するぞ。俺の叔父貴がさ、奢ってくれるってよ」
なんでいきなりそうなるんだ?
……と目で問いかけるけど、木船はにやにや笑うだけで答えようとしなくて。
「……へぇへぇ、どうせ失恋してんだから、やけ酒でもかっくらってやるよ」
ふかい溜息を吐きながら、それでも木船なりの気の使い方に、少しだけ苦笑を浮かべた。
彼側と彼女側に分けた描写がこんなに面白い効果を生むと誰が予測し得ただろうか。
GJですよ皆様。
GJでございます
続きwktk
せんせー、そろそろリレー以外の作品も食べたいです……
ワガママいってスマソ
読みたいなら、let's自給自足!待ってるぜ!
ただ、俺としてはまだまだリレーにはwktkしっぱなしだが
449 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 21:01:40 ID:Rq+g8k+E
保管が見れないorz
消えたのか?
450 :
333:2007/12/01(土) 01:00:07 ID:EJwsUNu9
皆様リレーご苦労様です。癒されております。
最近は、会う機会も少し取れたりでそこそこいい感じです。
自分の一言へのレスが無かったら、メアドすら知ろうとしなかった俺なんで
本当に皆ありがとう。感謝してる。
正直リレーもここまで続くと思わなかったしな
とにかく本当にありがとう。空気?何それ?おいしい?
>>450 なにはともあれ良かったですな。
これからも、進展あったら報告頼む。
がんばれよ〜
>>444 着いた店は、まぁ、なかなか良さそうな所だった。
「さてと、叔父貴はもう来てるかな〜」
木船は店内をキョロキョロ見渡して、
「お、居た居た、ほらいくよ」
店の奥のほうに進んでいく、俺は連れられていくままに、
「おー、やっと来おったか」
どこか人の良さを感じさせる声と、
「……え?
>>333君?」
彼女の声に出迎えられ……って、
「……え?なんでここに?」
「……私は連れられて来たの」
その言葉を聞き、思わず二人の方へ振り替えれば、無言でニヤニヤしている様子が目に入った。
……謀ったな、あいつら
そう思うも、自分の頬がなぜか緩んでいくのを感じる。
「ま、早くパァーッと始めよ」
唐突に木船がそういって、たった四人だけの宴会が始まった。
《頑張れー、あともう少しだ》
>>452 〜 her side 〜
「……えと、その」
目の前に座る
>>333君に、私は何も言うことが出来ない。
だって、振られたって思ってたのに。けど、彼は恥ずかしそうで照れ臭そうな、だけどどこか嬉しそうな笑顔浮かべてくれてるから。
だから、私もなんとか微笑む事が、出来て。
「あ〜、さっきはゴメン。変な時間に電話して……」「いえ、嬉しかったです。……私こそ、操作ミスで出れなくて、そのごめんなさい」
「はぁああ〜〜〜〜」
そう言った瞬間、彼が思いきり溜息を吐いて、思わずびくって肩が震えた。
だって、怒ってるんじゃないかって、思ったから。
「よかったぁ〜〜、その、俺 嫌われてんじゃないかって思ったからさ」
「そそそそっ! そんなこと無いですっ! ……ぁ」
彼の言葉を思い切り否定して、それがその告白の答えになってることに気付いて。
私は顔が熱くなるのを感じた。
けれど、その言葉を取り消すことは出来なく――うぅん、したくないから。
「私も……、
>>333君と会えて嬉しいです」
素直に思ったことを口に出来た。
きっと顔が真っ赤になってると思う。それだけじゃなくて、きっと耳まで赤くなってるはず。
だけど、いい。
だって、目の前の
>>333君が笑ってくれているから。
「ちっ、良い雰囲気出しやがって、手前ぇにゃもったいなさ過ぎるお嬢さんじゃないかよ」
いきなり、
>>333君が思い切り頭をがくんって倒した。
うぅん、木船さん――だったっけ、女の人みたいに見える男の人に、思い切り頭を叩かれたんだ。
「って、いきなり何しやがる!」
そんな木船さんに、彼が怒ったような表情を向ける。
けど、それはどこか楽しげで、楽しそうにしている彼を見るのが、私も楽しい。
「まぁ、ええやないか。まずは乾杯からせにゃならんでの。ぶちようけのむっぺよ」
「……はい」
私の隣に、半分くらい間を空けて座る大林さんが、いつもの口調で喋って。
みんなの前にビールの中ジョッキが置かれて、私の前にはチョコレート色の変わった飲み物が出てきた。
大林さんの選んだソレはいわゆるカクテルと言う物らしい。
甘めで飲みやすいのを選んだからって、言われて押し切られたんだけど、 ……私、お酒飲むの初めてなんだよね。
「ま、若いカップルの前途を祝して」
「……あの、大林さん、恥ずかしい、です」
「えと、それはちょっと、まだ……」
「るっさい、アホ介。お前はだぁってろ。ってことで××さんどうぞ」
木船さんが楽しげに笑って行ってくれたことの意味を理解して。
私はカクテルの入ったコップを持ち上げた。
「……乾杯」
かんぱいとみんなが口々に言うのを聞きながら、私はこくんっと生まれて初めてアルコールを口にした。
【続き、がんばれー。エロは自分が書きたいなぁと言ってみたり】
>>454 乙にしてGJです。
>エロは自分が書きたいなぁ
>女子一人称の方が書きやすい
つまり女性視点でエロを書きたいということか。
>>453 ――his side――
結果から言おう。
あの二人は早々に「あとは二人で〜」と言って去り、
残された俺と彼女は楽しく談笑しながら飲んでいたのだが……
「……………」
「あー……大丈夫?」
「……え、あ、大丈夫」
彼女はどうやらお酒を飲むのが初めてらしく、ペースが飲むわからなかったのか、
すでに顔は真っ赤で、言葉は微妙に呂律が回っておらず、おまけに反応が鈍い。
「えーっと、そろそろ行こうか」
「……………あ、はい、わかりました」
ちなみに、俺はかなり酒に強いほうなので、これぐらいではなんともない。
会計に行こうと、立ち上げる。それに合わせるように、彼女も立ち上げったが
「…………あれ?」
そう言って、ふらついた足取りで後ろに倒れそうになる。
「わっ!!ちょっと待った」
咄嗟に、彼女の方に行き、支える。
「………………すみません」
「良いって別に」
彼女を支えたまま、会計を済ませ、店を出る。かなり長居をしていたらしく、
日が早く沈むようになった空は、すでに紫色で、月が見えていた。
《なんか限界、眠いから寝るよあとは任せた》
〜 her side 〜
せかいがぐるぐるまわっている。
うん。
だいじょうぶ。わたしも同時にまわってればだいじょうぶ。
でもあまりまわっちゃうとめが回る。
そうだ。
ぎゅっとすればいいんだ。
いいにおい。
汗と整髪料のいいにおいがする。
ぎゅうっ、と腕をだきしめると、そのにおいはもっと大きくなる。
腕はちょっと太くて、筋肉質で、わたしの腕とは大違いだ。
やっぱり男の人の腕って、すごいんだ。
うまれてはじめておとこの人の腕に抱きついて、その感触はとてもすごくステキだ。
耳元で
>>333君がなにか言ってきている。
ステキ。ステキ。
>>333君の息の温かさとか、耳をジンジンとしびれさせるような響きとか、
その高くも低くもない音程とか。なにをいってるかわかんないけど、すごくステキ。
抱きついている
>>333君の腕と触れている皮膚の裏側あたりがなんだか甘痒くうずいてきてしまう。
あれ?
ここ、どこだっけ?
ちょっと寒い。
>>333君の腕はあったかい。
体もあったかい。
だからぎゅうう、と、もっと強く抱きしめる。
当たってるおっぱいが「くにょん」と歪んじゃうくらい強く。
ふらふらしちゃいそうなわたしを、
>>333君はしっかりと支えながらあるかせてくれている。
ステキ。こんなふうに、べたべたいちゃいちゃしながら街を歩くカップルを「バカみたい」と思ってたけど。
わたしは間違ってた。
それはすごくステキで、嬉しくて、楽しくてシアワセなことなんだ。うん。
ろれつの回らない言葉で
>>333君にそれを伝えたのだけど、わかってくれたかな?
なんだか色とりどりのネオンが目に映っている。
世界がふわふわしてるから気がつかなかった。
隣でわたしを支えてくれている
>>333君がなんだかちょっと無口になってるみたい。
――ダメなのかな。
わたしが地味でつまんない女だから、
>>333君はそんなふうにつまんなくなっちゃうのかな。
そう考えると、なんだか泣きたい気持ちになってしまう。
>>333君にはシアワセになってほしい。
>>333君みたいなステキな男の人は、いつでもシアワセで楽しい気持ちになっていて欲しい。
でも、わたしじゃダメなのかもしれない。
気がついたらわたしは、
「……わたしじゃ…ダメなのかな」
彼の耳元でそうささやいていた。
【続きは頼んだぜ兄弟】
458 :
書く人:2007/12/02(日) 09:33:43 ID:jR1yhCZx
〜
>>333 side 〜
「ふふ……」
頬笑みながら、彼女が回る。
クルクルと舞うように、冬の夜風にスカートを乗せて、妖精のように…。
……と、表現すれば可愛いものの、客観的に言わせてもらえば完全に酔っ払いだ。
「つか、何で回るんだ?」
「…世界が…回ってるもの。だから…私も……」
うん、やっぱり酔っぱらっている。
酔っぱらった彼女はしばらく回っていたが、やがて三半規管に限界が来たらしい。足がもつれる。
「おっと…」
俺は手をのばして彼女の手を取って引張る。反動で彼女の体がこちらに向かってくる。
受けとめた感触は羽毛のように柔らかく軽く、しかし確かな実体と質量を俺に与えた。
「大丈夫?」
店を出てから何度目かの質問。彼女は惚けたようにこちらを見て頷く。
酔っ払ってはいるもののとりあえず大丈夫そうなので、歩きはじめる。
彼女は今度は回らなかった。代わりに、俺の腕を抱きしめるようにしてきた。
正直助かる。いつ転ぶかハラハラして見ずに済むし……それに、暖かい。
錯覚なのだとは思う。冬の寒さによる熱の略奪を防いでくれる厚手の生地は、同時に俺と彼女の間に厳然と存在して熱の交換を妨げる。
けれども腕に感じる彼女の体の柔らかさは温もりを錯覚させる。それは錯覚だが、彼女と言う温かい存在を確かに俺に伝える。
そう……彼女は今、俺の隣にいる。
彼女の体の柔らかい感触も、冬の空気に混ざる甘い香りも、確かに今、俺の隣にいる彼女の存在を伝えてくれる。
感動だった。そうとしか表現する言葉を知らなかった。
人間は生まれた時は興奮と沈静の二種類しかない。それが快不快、喜怒哀楽と分化していき、一つ一つがラベリングされていくことで感情が形成される。
感情が動いた。それは俺が今まで知らなかった類のもので、快いもので、喜楽に属するものだ。
「……××」
何か言おうとして、初めて感じた感情は、彼女の名前という形で口を零れた。
彼女は何も答えなかった。声は小さかったし、彼女も意識が朦朧としていたのだろう。
理性ではそう分かっていても、胸が締め付けられるような切なさを感じる。
……俺ってばこんなに乙女チックだったのか?
自分のポエマーっぷりに呆れていると、声への答えだとしたら時間差付きの反応が来た。
俺の腕を抱きしめる力が増す。
彼女の柔らかな感触が、よりはっきりと腕に伝わってきた。特に胸とかが「くにょん」と。
「…っ、××?」
「あったかい……」
うろたえる俺に、安心し切ったように彼女は俺に体重を預けながら呟く。
その信頼と、感じるはずのない体温を感じるという錯覚の共有を、俺は嬉しく思った。
「すてき…」
「ん?」
「間違いだよ、私…。ばかみたいなことじゃ間違えだもん…。
だって幸せで、うれしくて、たのしくて、幸せなこと」
酔っぱらっている彼女の言葉は文法が間違っていて、単語が重複していて、呂列が回っていなかった。
けれど、確実に分かったことがある。彼女は今、幸せを感じている。そしてその理由は俺にある。
「ああ…」
俺が言ったのは感嘆だったのだろうか返答だったのだろうか?自分でもわからなかったが、言葉の理由は俺も幸せを感じたからだった。
不意に目が、アンバランスなクリスマスカラーのイルミネーションが巻きつけられた看板を捉えた。
『休憩一時間―――』
ラブホテル、という類のものだ。
459 :
書く人:2007/12/02(日) 09:35:19 ID:jR1yhCZx
満たされていた幸福感を、稲妻のように切り裂いて衝動が突き抜けた。
性欲だ。腕に感じる彼女の感触が、急に生々しいものに感じられた。幾重もの布切れ越し感じる、やわらかな肉。異性の体。
「……わたしじゃ…ダメなのかな」
耳元で声がして、はっとした。潤んだ彼女の瞳が、俺をとらえていた。
「
>>333くん、しゃべんなくて…私が地味でつまんない女だから、シアワセじゃないんだよね?
私が……
>>333君が私でシアワセになってほしいのに…」
目の潤みが、涙になって零れる。
めまいがしてきた。世界が回り、自分の脈動が聞こえる。
『食っちまえ』
脳裏に響いた声は、木船が去り際に言った冗談の記憶か俺の本能の誘惑か?
「…何でもするよ?どうすればいいの?私の全部をあげるよ?それでシアワセになれない?
>>333君はシアワセになれない?」
耳朶を震わせる声は、彼女の誘惑か俺の都合のいい妄想か?
ああ、俺は酔ってる。何に?アルコールにか?彼女にか?性欲にか?ラブホの前でこんなことを言われているという状況にか?
ぐるぐると回る思考の中で……俺は……
「………駄目だよ」
〜 her side 〜
抱きしめられて、告げられた。
「………駄目だよ」
ああ…やっぱり私じゃ駄目なのか…かなしいな。
「そうじゃない!」
じゃあ、どう駄目なの?
「どうって…ま、まだ再会して間もないし…
酔っぱらってる所をなんて卑怯だと思うし…
まだ君の気持をしっかり聞いてないから」
気持ち?どういうことだろう。私は…
あ、そうか。私、言ってなかったっけ?
彼に言ってなかったっけ?
うん、好きだって言ってないや。
恥しいな…。けど言おう。いいや、言っちゃおう。
地味な私だけど、今は酔っぱらってるもの。酔っ払ってていつもと違うもの。
いつもと違う私だから、いつもと違うことをしちゃうもん
「大好き」
ああ、気持ちいい。ぎゅっと縮こまっていた心が広がるみたい。
「
>>333くんのこと…大好き。好きなの。私だってずっと好きだったの。
腕が好きだし、たくましいし、ハンカチでエッチな気持ちになっちゃうくらい好きだよ?」
「え、えっち…って」
うん?何か変なこと言ったかな?地雷原かな?けどいい。もっと言おう。
「大好き…私、
>>333くんのこと、好き…で…」
460 :
書く人:2007/12/02(日) 09:37:40 ID:jR1yhCZx
〜
>>333 side 〜
突然に、言葉が途切れてから一分ほど経って、俺はようやく気付いた。
「……××?」
声を掛けても、戻ってくるのは一定間隔の呼吸のみ。寝てしまったようだ。
「はぁぁぁ…」
その場に崩れ落ちてしまいそうな脱力感。
ああ、やっぱり酔っぱらってたんだな、それもひどく。
勢いに任せてここに連れ込まなくて良かった。
たぶん、この状況で行為に至っても、彼女はきっと許してくれるだろう。けれど、俺自身がきっと許せなかったはずだ。
「好き…か」
改めて確認して心が温かくなる。
『
>>333くんのこと…大好き。好きなの。私だってずっと好きだったの。
腕が好きだし、たくましいし、ハンカチでエッチな気持ちになっちゃうくらい好きだよ?』
胸中でリフレインして、確信する。
想いが通じた、と。
……まあ、なんだかめちゃくちゃ爆弾発言が紛れ込んでいる気がしないでもないが…それでも、
「両想い、か」
顔がニヤける。好きな人に、好きになってもらえる。そんなありふれた、けれど最高の奇跡。
「けど……だとしたらちょっともったいなかったかな」
緊張感が抜けた所に、ちょっと魔が差してきた。
が、一蹴する。焦ることはない。
彼女と、これからゆっくりと時間を共有していこう。彼女と着実に時間と、思い出と、絆を積み重ねて……そして……
「とりあえず、タクシーだな」
俺は彼女を支えながら、大通りの方に歩きだした。
【長文失礼。あえて寸止め。酔った勢いはいけません。
リアル
>>333がんばってください。応援してます】
なにはともあれGJ
「そんなありふれた、けれど最高の奇跡」なんて良いフレーズだよなぁ。
お見事でした。
読み終わった今の顔は誰にも見られたくないなぁ
ニヤニヤしてるからw
彼女を自宅まで送り届け、家族に託して家路につく。
ふう……意識はしっかりしている。
まだ酔っているはずだけど、胸の奥深いところから何かが湧き出てくる。
興奮、感動、焦燥?
自分でも正体がわからずに自分の気持ちを持て余す。
落ち着けよ俺。
部屋に入って、ベッドに転がっても気持ちは落ち着かない。
こういうときはクールに一本抜いて……とも考えたが、分身は静かに眠ったようだ。
ピクリともしない。
動物的本能よりも、人として恋が成就した興奮のほうが強いと言うのか……
彼女が、好きだっていってくれた……ずっと好きだったって……。
俺も……好きだった。 あの頃も、そして今も。
俺の中から湧き上がってくるこいつは……喜びか?
ああ、そうか。 俺は嬉しいんだ。
彼女と、想いは繋がっていたことが。
中学生だった あの頃、自分の恋心を伝えることすら出来ずに時間は流れてしまった。
あれから10年。
お互いに成長し、経験を積み、再会出来たことはきっと只の偶然じゃない。
俺と彼女が自分に素直になって想いを伝えあうことが出来るようになるまでに必要だった時間なんだ。
俺は……彼女が好きだ。
一眠りして目が覚めたら、彼女に会いに行こう。
そしてもう一度、彼女に想いを伝えよう。
今度は、他人の手も酒の勢いも借りずに。
自分の言葉で、自分の想いを 彼女に伝えよう。
自分自身の気持ちに整理がついたせいか、少し落ち着いてきた。
落ち着いたとたんに本能が鎌首を持ち上げてくる。
現金な奴だ。
自らの本能と熱く格闘した俺は心地好さの中で眠りに落ちていった。
【クライマックスに向けてラストスパートだw ラストは盛り上げようぜ!!!】
〜
>>333 side 〜
「えと、本当に良いのか?」
「うん……」
俺は自分の部屋に上げた彼女を見詰めながら、へたれてしまう自分に活を入れる。
「……ずっと好きだったから。……もう、止まらないから」
彼女の声に、俺は小さく頷いて見せる。
どくんどくんとやかましい音が響く中。
どうしてこうなったかを思い出していた。
今日も講義を受けに出てきた俺の周りは、あっという間に男友達で占められていた。
むろん、原因は言うまでもなく昨日のことをあっさりと言いふらしまくった木船だ。
元々、ダチとバカやってることが多い俺だけど、その手の話題は全くなくて――というか、俺のダチは大抵そう言う奴で木船が変わってるだけだけど――だから嫉妬混じりの祝福でもみくちゃにされてしまった。
単純に言えばそれだけのこと。
……だったんだが。
昼飯時、学食に行こうとした俺の携帯がいきなり鳴って、彼女から電話が入ったんだ。
木船と大林さんに謀られて校門前に来ていたらしい。
――しかも、手作り弁当を携えて。
正直、ダチ連中からの殺意を受けながら――無論、木船が冗談半分で広めたからだ――俺は彼女と合流して、そのままふける事にした。
何でかって言えば、かなり身の危険を感じたからだ。
……なんせ、わざわざ校門までついてきて、彼女と俺の周りを取り巻いてくれたんだから。
しかも、彼女に不躾な質問までし始めたんだから、逃げる以外に彼女を護る手段が無かったわけだ。
で、そのままデートにかこつけて、夕食時になったから送っていこうと思ったんだ。
その時に、彼女が俺の家を見たいって言い出したってだけの話し。
だけど、本当は気付くべきだったんだ。
彼女が、そのつもりでいることを。
「俺、……俺さ」
何の変哲もない、家具らしい家具もない俺の部屋。
なのに、ただ彼女がいてくれるだけで、きっと一流ホテルでさえ敵わないほどの雰囲気に包まれた部屋で、俺は目の前に立っている彼女を見詰める。
彼女は顔を赤くしたまま、ただこっちをじっと見詰めてくる。
その様子に、胸の奥が熱くなる。
昨夜の事を、全部覚えてるって彼女は言った。
とても恥ずかしくて、思い出すと顔から火が出ちゃいそうだとも言った。
そして、彼女が向けてきた言葉に、俺はまだ、答えが出せない。
いや、答えはとっくに決まってる。だけど、その先を口に出来ない。
どこまでヘタレなんだろうか、俺は。
「あの、さ」
彼女は何も言わずにただ見詰めてくる。待ってくれている。
だから、俺は顔をしっかりと上げて、いきなり自分の頬を軽くはたいた。
「?」
驚いたように目を丸くする彼女に笑いかけて、俺は深呼吸をして彼女を見詰める。
「俺もさ、××の……、君のことがずっと好きだった。君が初恋で、言葉をかけることも出来なくて結局、終わるはずだったんだと思う」
呟きながら、一歩だけ前に踏み出して。
「好きだ。君のことを誰よりも何よりも好きで、大切にしたい。そう思ってる」
「……じゃぁ、なんで昨夜は?」
顔を赤らめた彼女が、じっとこちらを見詰めてくる。
その真剣な眼差しに、答えるために、数度深呼吸した。
「だってさ、酔っぱらった女の子に手を出すなんて、男として最低だからな。そりゃ、据え膳食わぬは男の恥って言う奴もいると思うけど……、好きな女性だからこそ、そんな事したくなかったんだ」
言いながら、更に一歩を詰めて、俺は彼女を抱きしめていた。
彼女も俺の背中に腕を回して抱きついてきて。
気がつけば、そのままキスを交わしていた。
〜 her side 〜
キス、してる。
唐突に奪われたんじゃなくて、一方的に押しつけたのでもなくて、きちんとお互いのことを思いながら、キスしてる。
時々、こすりつけるようにされると、ぞくって背筋が粟立って胸の奥が暖かくなってくる。
……悪戯心を起こして、私は彼の唇に舌を這わせた。
んっ、と彼が困ったような表情を浮かべながら私を受け入れてくれる。
同じように舌を出して、私の唇を舐めてくれた。
それだけの事で、口から生まれた痺れが、背中を通ってお腹の奥に響いて来た。
いけないって思うよりも早く、じゅんっと液体が湧く感触を覚えた。
彼の唇をこじ開けて、舌を差し込む。
彼も同じようにしてくれて。
普通なら他の人が触れるはずもない場所を預けていることが、預けられていることが嬉しくて心地よくて…………気持ちよくて。
液体が漏れていくのを抑えられない。
「んっ……ぷはっ」
彼が私から唇を離して、少しだけ困ったような表情を浮かべる。
「あの、さ。今日はこれからどっか出掛けようか? ゆっくりと歩くだけでも良いんだけどさ」
「……いや、です」
彼の言いたいことが理解できたから。
私はしっかりと首を振った。
だって、決めてたから。彼へ向ける思いをこれからもずっと忘れないために。
初恋……うぅん、違う。
同じ人に、抱いた二度目の恋を、終わらせないために。
私は彼の目を見詰める。
その瞳に、映り込んでる私の顔は真剣と言うより、……どこかはしたなく見えたけど、ソレだって構わない。
だって、こんな顔を見せるのは、彼にだけ。
>>333君にだけだから。
「最後まで、して欲しいです。……抱いて、欲しいです」
彼がじっとこちらを見詰めたまま、一歩下がる。
抱擁がなくなるのが寂しいけど、それが拒絶じゃないって解ってたから。
私はただ微笑んで見せた。
「今まで、大好きでいたから。今もずっと大好きだから。これからも大好きでいたいから」
だから、と。
彼に微笑みを向けたまま、私はまだ羽織ったままだったコートを脱いで、そのままぱさりと床に落とした。
「えと、本当に良いのか?」
彼の戸惑いを乗せた言葉に頷いてみせる。
「うん……、ずっと好きだったから。……もう、止まらないから」
決心を込めて来たんだから。受け止めて欲しいから。
……好きな人が好きでいてくれるって解って、もうこの想いは止まらなくて、止めようとも思えなくて。
「それとも、私って、魅力ない……かな?」
「そんなこと無いっ!」
思わず呟いた卑下の言葉に、彼が慌てて否定してくれる。
……ソレを望んでいた自分に、っていうより女の性にすこしだけ嫌気がさすけど、彼は受け止めてくれた。
今はそれだけが真実で、私は彼の返事を待たずにブラウスのボタンを一つ一つ外しはじめた。
〜
>>333 side 〜
もう、止められなかった。
彼女が、あの引っ込み思案で恥ずかしがり屋だった彼女が、自分から俺のために服を脱いでいく。
その光景は生唾物だった。
図書館の司書をしているだけあって、日焼けとは全く縁がなさそうな抜けるような白い肌が、露わになる。
……黒いレースの下着がやけに扇情的で、掌に少し余るくらいの胸は、きっと平均より少し大きいものだと思う。
「……
>>333君も、脱いで欲しい……な」
伏し目がちになりながら彼女が呟く。
「あ、ああ」
慌てて服を脱ぎながら、俺は、少しだけ不埒な想像をしてしまった。
自分から求めてくる彼女。
眼鏡で解りづらいけど、きっと誰よりも綺麗な彼女の事だから、今までに誰かと付き合ったことがあるかも知れない。
ホックの外れたスカートが、ぱさりと彼女の足下に落ちた。
ごくんっと大きな音と共に、思わず唾を飲み込んでしまう。
……黒い下着だから解りづらいけど、彼女の中心部分が色ずんで、……きっと濡れてるって解ってしまったから。
俺も慌てて服を脱いで、下着になった時点で動きが止まってしまう。
もう上を向いて固まっていたから。
それが恥ずかしくて、だけど隠すことは出来なくて。
俺は彼女と向き合う。
「……その、私、ハジメテだから……」
頬を赤らめる彼女に、どくんって体の奥から音が響く。
ハジメテなのに、自分から求めてきた彼女。
それがどれだけ恥ずかしくて、勇気がいることなのか解ったから。
「俺も、はじめてなんだ。だから、変なことしたら、ごめん」
呟きながら手を伸ばして、彼女を引き寄せた。
そのまま背中と膝裏に腕を回して抱き上げる。
「いいよ……貴方になら、なにをされても、いい」
胸が震えるってこんな時のことを言うんだろうなって、そう思える。
けど、その気持ちを言葉に代えることが出来なくて、俺はただ彼女に口づけて、そのままベッドまで移動する。
優しく彼女をベッドに寝かせて、笑いかける。
すこしでも彼女が安心するように。
そして、俺は彼女に覆い被さった。
〜 her side 〜
月明かりの差し込む部屋の中。
私は彼の腕を枕にして、一人顔を赤らめていた。
思い出すだけで、恥ずかしくなってくる。
彼の手の動き一つ一つに自分でも思っても見なかったくらいに気持ちよくなって、はしたない喘ぎ声を上げてしまった。
彼が入ってきたとき、あまりの痛さに涙を見せて彼に心配させた。
必死で彼にしがみついたときに、彼の背中に爪を立ててしまった。
……なのに、少しの間彼に小突かれただけで、痛みより快感を覚えてしまった。
最後に、彼が達するときに、後先考えずに中に出してとねだってしまった。
全部、恥ずかしすぎて、穴があったら入るんじゃなくてそのまま埋められてしまいたい。
そう思うくらいに恥ずかしい。
「……好きだよ」
彼の寝顔を見ながら、私はそっと舌の上に言葉を載せる。
彼の事が何よりも愛おしい。
彼が側にいてくれると思うと、叫び出したいくらいの嬉しさが込み上げてくる。
きっと、人を好きなるって、こういう事なんだと思う。
側にいてくれるのが嬉しい。
側にいられるのが嬉しい。
お互いを必要と思いあえることが、何よりも嬉しいから、誰かを好きなるんだって。
「……最期まで、いっしょにいようね」
小さく呟いて。
私は彼の頬にそっと口づけた。
〜
>>333 side 〜
「ん……」
なんだか、くすぐったさを覚えて俺は目を覚ます。
窓から見える白々あけの空に、そんなに寝てたのかと思って首を傾げた。
なんだか寝過ぎで余計眠くなってる気がして。
ついでに昨夜は結局晩飯を食ってなかったような気がしたから。
「す〜す〜」
いきなり隣から寝息が聞こえて。一瞬口から心臓が飛び出しそうになった。
慌てて視線をそちらに向けて。
昨夜の彼女との甘い一時が一気に蘇る。
「……俺」
気持ちよさとかは、基本的にどうでも良かった。
体だけの気持ちよさを言うなら、自分の手でこすってる方が気持ちいいとかって気がしたから。
けど、痛みに耐えて必死にしがみついてくる彼女の様子が。
幾度か動いていると痛みよりも快感を覚えているらしい彼女の様子が。
なにより、大好きな、……愛しい人と快楽を分かち合えたと言う事実が。
体だけの快感の幾数倍もの気持ちよさを感じたから。
愛らしい寝息を立てる彼女をみながら思う。
これからも、ずっと彼女といられるだろうかと。
「何、大丈夫さ」
そんな僅かな不安とも呼べない想いに、苦笑を浮かべる。
だって、俺は彼女に二度も恋をしたんだ。
幼くて諦めただけの初恋と、ソレよりも遙かに強い二度目の恋。
きっと、これからすれ違いはきっとある。
俺も彼女も、生きているんだ。
想いがずれるときもあるし、好きだから余計にお互いの些細なことが許せなくなるときが来るかも知れない。
だけど、きっと大丈夫。
もしその時、二度目の恋が終わっても、きっと俺は彼女にまた恋をするに決まってる。
言葉が足りなくて傷つけるかも知れない。
彼女を想うからこそ、傷つくことがあるかも知れない。
けれど、俺は彼女を大切に想う。
思い続ける。
きっと、そんな想いが、恋情よりもずっとつよくて大きな愛情なんだ。
「……××、愛してる」
呟きながら、俺は彼女の頬にそっとキスをした。
We hope that
>>333 are happyend
The End
最高GJ
なんか終わってしまうとなるともったいない気がするな
>>469 ナイスフォロー
そしてGJ!!
延々と耳元で小一時間GJ!!
この2週間足らずの間にずっとssを書いてくれた職人達全てにGJ!!!!!
そして願わくば
>>333の恋が実りますように。
>>469何かもう感情ごちゃまぜだ・・・
まずはありがとう。理想の純愛ENDだな。
本当にきれいな終わり方だな。ラストがあなたでよかった。
そしてこのスレで力を合わせて書き上げた、最高の純愛【無口】作品に乾杯!!!
そして
>>333にこのSSが幸せをもたらす事、幸せな未来がある事を心から祈ってる。
全て参加者と住人にGJ
面白い遊びだったよ
ああ、もうGJすぎる
そんな作品にGJしか言葉を送れない自分がふがいない
仕方ないので心の底からのGJで伝えさせてほしい
GJ!!
みんな本当に無口娘を愛してるんだな……
そうでなかったら、こんな風にリレーが最後まで続くはずがない。
そもそも友達同士でさえ、リレー小説はたいてい途中で止まるのに!
完走萌えでとう! 書いたみんなにスーパーGJ!!!
まさか最後まで続くと思ってなかったな
結局俺は傍観者してるだけだったけど、大変楽しませてもらった
リアル
>>333もうまくやって欲しいな。
もはや言うまでもないんだが、リレー参加者全員にGJ!
478 :
333:2007/12/03(月) 23:49:39 ID:tndsjWzn
正直、言葉が浮かびませんが、皆本当にありがとう。
なんか分かんないけど、泣けた。本当にありがとう。
今、全部読んで少しテンパってて上手く言えないけど
お前らみたいな奴らがいてよかった。本当に。
後悔しないよう頑張る。俺なりに誠意で応えるから
その言葉が聞けてよかった。幸せになってくれよ。
てか今更だが、このスレの絆に涙が止まらなくなった。ここにいてよかったと本当に実感させられた。
さて、ところで無口っ娘クリスマスネタの需要が増えて来る訳だが何かいい案あるか?
すげえ、こんなにきれいにまとまったリレーなんて初めて見たよ
>>333と書いた皆さんGJ!!
何人か固定のレベルの高い書き手がいたのと、
ジラし担当とプッシュ担当のバランスがよかったのが
成功の秘訣だったのかもな。
何はともあれみんなGJ!
とりあえず、保管庫がないと勿体無い(`・ω・)
無口スレの保管庫は死んでるのか……
保管庫消えたのか。
じゃあwiki辺りで作るか?
消失した作品データ・・・。
勿体ない
>>484 まぁそれがいいだろうな、頼む
>>485 過去ログを持ってる人にうpしてもらえば大丈夫だろう
読み手の専ブラの中にもdatがあると思うけど・・・
>>486すまん。今出張中で携帯しか持ってないんだ。
まだしばらく帰れないから、すまないが他にできる人がやってくれ。
一応、wiki立ち上げだけなら出来る。
そのかわり、更新かなり遅くなるんで出来れば手助け欲しい。
誰でも編集可能にすると、悪さする奴が出そうなんだが、さてどうしよう。
実害がでてから制限したら?
猫の手も借りたいところだろうし
では、誰でも編集可能で立ち上げてくる。
保管庫乙&サンクス!
こんばんは。久しぶり……ではないですね。リレーに参加したし。
でも一つの作品投下という意味では二ヶ月ぶりです。せめて一ヶ月にできるよう頑張ります。
以下に投下します。縁シリーズラストです。
今回過去の作品を上回って一番長くなってしまいました。
長いのが苦手な方はスルーでお願いします。
『縁の切れ目 言霊の約束』
遠藤守の住むアパートの一室で、依子は呆然と固まっていた。
部屋には三人の人間がいた。依子と、守と、もう一人若い女性の三人が座卓を囲んでいる。
その女性は美しかった。
人形のように整った顔立ち。流水のように滑らかな黒髪。厚手のスーツは凛とした雰囲気を際立たせ、服の間から見える柔肌は雪のように白い。
そして、依子にとてもよく似ていた。
依子は何も考えられず、何も言葉が出なかった。色々なことが急に起こりすぎて、頭が混乱していた。
一度だけ小さく深呼吸をする。簡単に落ち着けるものではないが、事態の整理には効果的だ。
依子は整理する。頭の中で、今までに起こった出来事を。
昨日の夜、依子は守を二ヶ月半ぶりに訪ねた。
しばらく訪ねなかった理由は気まずかったからだ。
守に告白されて、依子はまだ返事を返していない。さすがにそんな状態で顔を会わせる度胸はなかった。
以前までの依子は、彼の想いに気付いていなかったので気兼ねなく会いに行っていたが、さすがに二の足を踏むようになっていた。
だが昨日、そんなことを頭から消し去るほどの事態が我が身に降りかかった。
縁が突然見えなくなってしまったのだ。
昨日の夕方、自らを生霊と名乗る少女に『何か』をされて、
……目が覚めたときには世界は変わっていた。
アスファルトからビルの壁、街行く人々から空の彼方まで、世界を覆う無数の糸が、跡形もなくなっていた。
少女は何度も謝ってきた。魂を傷付けた、巻き込んでしまった、傷は治したが、何らかの後遺症があるかもしれない。色々なことを言っていたが、あまり頭には入らなかった。
何が起きたのか、すぐには理解できなかった。世界の変化に意識がついていかなかった。
いや、変わったのは自分の方かもしれない。
それから後のことを依子ははっきりとは覚えていない。少女に何か言ったかもしれない。言わなかったかもしれない。
気付いたときには守の部屋の前に辿り着いていた。
すがれる相手が欲しかったのだろう。家には保護者の義母がいたが、誰でもよかったわけではない。
依子はいつも一歩退いて接していたので、彼女では駄目だった。身近な者で体が向いた相手が守だったのだ。
気まずさが消えたわけではないが、不安の方が強かった。
守は多少驚きはしたものの、いつもと変わらず迎えてくれた。
会った瞬間思わずすがりついて、部屋の中に入ってからも落ち着きのないまま一方的に事情を話して、それを、ただ静かに聞いてくれた。
頼れる人だった。
そのあと安心からか疲労が一気に襲ってきた。遅いから泊まっていくよう守に勧められて、依子は素直に従った。
これまでにも何度か泊まったことはあったが、守の気持ちを知った今、前のような気軽さは持てなかった。
借りたベッドの中で依子は思った。このいとこは、自分にいつでも手を出せたはずなのだ。だがそんなことは一度もなかった。せいぜい頭を撫でる程度だった。
そこに守なりの真摯さが込められているような気がして、嬉しくなった。同時に申し訳なく思った。
だがそんなことは、今の依子には瑣抹事でしかなかった。
守を見やる。その胸元から生えているであろうものを見るために。
何も、見えなかった。
依子と守の縁の糸が前まで確かにあったはずなのに。
依子はぎゅっと目を瞑る。昨日までのあの感覚が錯覚だったかのようで、胸が苦しくなった。
眠気に意識が侵食されるまで、依子はひたすら強く目を瞑っていた。
翌朝目を覚ますと、すぐ横に自分によく似た女性が無表情に座っていた。
ぎょっとして跳ね起きると、女性は微かに首を傾げた。
誰、という疑問はすぐに吹き飛んだ。もう何年も会っていない相手だが、依子には一目で十分だった。
「お姉……ちゃん?」
神守依澄はその声を聞くと、小さく微笑した。
「依澄さん、どうかな」
守の問いかけに依澄は小さく頷く。
夕べのうちに守が連絡したらしい。目の前にいる麗人は、依子の知らない成長を遂げていたが、間違いなく依子の姉だった。
霊能を操る一族、神守。
その神守の歴代当主の中でも屈指とまで言われる彼女の力をもってすれば、あるいは依子を治せるかもしれない。守はそう言った。
依澄の透き通るような目が依子を見据える。
動悸が激しくなった。八年ぶりに自分の前に現れた姉は、前よりもずっと無彩色性が増したように感じた。
縁も、見えない。
ずっと縁の糸を見通すことであらゆるものを判断してきた依子には、それが不安で仕方がない。
「……」
依澄はやがて無言のうちに首を振った。
「どうなの?」
守が不安そうに尋ねると、美しい唇が開かれた。
「……私には治せません」
無表情に断じた答えは、依子の心にさざ波を立てた。
「魂が以前とは変わってしまっています。縁視の力はもう取り戻せないと思います」
清澄な声が淡々と語る。
それはとても残酷な響きに聞こえた。依子の主観かもしれないが、まるで鋭利な鎌に身を裂かれたような。
依澄は無表情だ。
守が短い息を漏らした。残念そうに肩を落とす。
「依子ちゃん……」
「……」
依子はぐっと歯を噛み締めると、にこやかに笑った。
「……別にたいしたことじゃないよ。見えないはずのものがやっぱり見えなくなっただけだよ」
依子は、言い訳としてはかなり下手だな、と自覚しながらもそう言い切る。
依澄の表情は変わらない。
依子にはその顔の奥にある心が見えない。
「あ……、えっと、」
守が何かを言おうとしてなぜか言い淀んだ。微妙な空気は依子にとっても感じのいいものではない。
「……」
依澄はそんないとこに柔らかく微笑んだ。微かに熱っぽい気持ちがこもった微笑。
そして、
「……依子」
不意にかけられた声に依子はびくりと肩を震わせた。
「……な、なに?」
「…………今度、実家に戻って来ませんか?」
――唐突。
「……え?」
姉の顔を思わず見返す。
不安や困惑でいっぱいの頭の中に、急にそんなことを投げ掛けられてもこっちは困るだけなのに。依子は姉に少しだけ腹が立った。
「ちょっと待って。なんで急にそんなこと、」
「……大丈夫、……今のあなたなら戻ってこれます」
「……」
何を確信しているのか、姉の言葉には妙に力があった。言霊とは違う感じの力だ。
それに呑まれてしまい、依子は口をつぐんだ。言いたいことも考えたいこともたくさんあるはずなのに。
そんな依子の心情を知ってか知らずか、依澄はおもむろに立ち上がった。
そのまま頭をぺこりと下げると、玄関へと足を向ける。
「依澄さん?」
「戻ります……」
「ちょっと、お姉ちゃん」
呼び止めようとすると依澄は軽く振り向いた。
「待ってます……から」
それだけ言い残して、依澄は部屋を出ていった。
送ってくる、と守も部屋を飛び出し、そして依子だけが残された。
依子は仰向けにベッドに倒れ込むと、ゆっくりと目を閉じた。
窓から光が射す。閉じた目でも、その眩しさはしっかりと伝わってくる。
とても静かだった。
夜が明けても、結局縁視はなくなったままだ。
それでも、確かにあの感覚は昨日まで存在していた。
溜め息が漏れる。
(駄目だな、私……)
自分はもっと明るい性格だったはずだ。それが今はどうだ。糸が見えなくなっただけでこんなにも不安定になっている。
それだけ依存していたのだろう。あの糸を通して、依子はあらゆる関係を見抜き、理解してきた。
人と人との繋がり、これからめぐり会う出来事との関係、ときには人の心さえも見通すことができたのだ。
ものごころがついたときには既に持ち合わせていた力だった。それ故、見えることが当たり前すぎて、呼吸と変わらないくらい自然な感覚だった。
それが急になくなってしまって、依子はこれからどうすればいいのか何もわからない。
失明したわけではない。腕や脚がなくなったわけでもない。だが、あるいはそれと同等とも言える喪失感が胸に広がっている。
お腹がぐう、と小さく鳴った。
「……」
安物の目覚まし時計がカチ、カチ、と規則正しい音を立てている。短針は『10』の字を差している。
(こんなときにもお腹は空くんだよね……)
夕べ、何も食べてない反動からか、お腹が少し痛かった。
何か作ろうか。そう思ってキッチンを見やる。守によく料理を作ってやっていたので、造りは把握している。
「……」
依子は動かなかった。思っただけで、起き上がることすらしなかった。
錆びれていくような虚しさを抱えたまま、依子はただ柔らかなベッドに身を委ねていた。
無気力な頭の中を巡るのは、再会した姉のことだった。
しばらくして、守が戻ってきた。
「ただいまー……って、大丈夫?」
虚ろに倒れたままの依子に心配そうな声をかける。
「……お腹空いた」
思ったことをそのまま吐くと、守は小さく笑った。
「そう思ってパンと飲み物を買ってきたよ。一緒に食べよう」
「……うん」
依子は体を起こすと、座卓に並べられた菓子パンとペットボトルの飲み物を見つめた。昔から好きなミルククリームのサンドパンがある。
守は紅茶のボトルと合わせてそれを依子に差し出した。
「好きだよね、これ」
「……ありがとう」
こんな些細なことを覚えているいとこに、少し驚く。
袋を破り、パンをかじる。柔らかいミルクの味が口いっぱいに広がった。
「あのさ」
ジャムパンを頬張りながら守が口を開いた。
「迷惑、だったかな?」
「え?」
「いや、急に依澄さんを呼んだりしてさ」
依子は手を止める。
「……別にそんなことはないよ。いきなりだったから驚きはしたけど……」
「それならよかった。二人には仲良くしてもらいたいんだけど、依子ちゃんは会いたくないのかな、ってずっと思ってたから」
「そんなことない。でも……」
「でも?」
「私は実家にはいられないから、こっちから会いに行けないんだよ。向こうは忙しいし会う機会が」
待って、と守が言葉を遮った。
「前から疑問だったんだけど、実家にはいられないってなんで?」
依子は目をしばたたかせた。
「……言ってなかった?」
「聞いてないよ。」
「……」
確かに言った覚えはなかった。だが当然知っていると思っていた。依澄か誰かが話しているものだと思い込んでいた。
仕方ないか、と内心で呟くと依子は言葉を探した。
「えーと……簡単に言うとね、神守家は一つの世代に一人の人間しかいてはいけないんだ」
「……?」
「『神守』を名乗れるのは一人だけなの。それ以外は『神守』を名乗れない。今だと、お姉ちゃんだけ」
「……どうして?」
「神を守り、神に守られる人数が決まっているから」
胸が少し痛む。自分は選ばれなかったのだ。
守はいぶかしげに眉を寄せた。
「それと依子ちゃんが実家にいられないのと何の関係が?」
「今から話すよ。わかりやすく話せるかどうか自信ないけど」
軽く深呼吸して気持ちを落ち着かせると、依子は静かに語りだした。
「『神守家』の役割はね、二つあるの。
一つは霊能力を持って霊的な問題を解決すること。
で、もう一つはその名が示すとおり、神様を守ること。
緋水の神様についてはマモルくんも知ってるよね? 昔からこの辺り一帯を治めてきた神様。
それを神守家はずっと守ってきた。崇め奉り、保護することで、土地の安寧を得てきた。
眉唾と言えばそれまでだけど、本当に力があるんだよ? 神守の力が強いのは、緋水の神様に力を借りてるからだもの。
だから、神守家は緋水の神様を守ると同時に加護を受けているの。
ただし、緋水の神様の加護を直接受けられる人間は一人だけなの。
つまり神守の当主だけ。当主はいわば巫女となって、正式に『神守』を名乗る。
だから神守の名を持つ者は一人だけしかいない。
本家が神守と呼ばれてるのに、苗字が緋水になっているのはそのためなんだ。お母さんも前までは神守だったけど、今は緋水姓になってるからね。
たった一人の神守が、巫女となって神様を守る。本来概念でしかない神様を規定することで、神様という存在を守る。それが神守の役目。
その見返りに神守は力を得る。名前によって神様からの加護を受け、その力を土地の平安に使う。
……言葉じゃどうしても嘘っぽくなっちゃうね。私も神様に直接会ったわけじゃないから確信を持って説明できるわけじゃないんだけど、まあとにかく。ここから本題。
神守を名乗れるのは一人だけ。だからお母さんの後継は私かお姉ちゃんのどちらか一人だった。
私は知ってのとおり才能がなかったから、当主にはなれなかった。
正直悔しかったな……私ね、できればお姉ちゃんの助けになりたかったの。当主になれば、もうお姉ちゃんは私の面倒なんか見なくて済むと思ってたから。
でも仕方ないと思ってる。何も問題はなかった。私が一つ諦めて、家族と普通に生きていくだけ――そのはずだった。
お姉ちゃんが当主になることが決まって、ちょうどそのための準備をしていた頃だったかな。
私は高熱に倒れた。
病気じゃなかった。私は緋水の神様の力に当てられたの。
私はお姉ちゃんに最も近い人間だったから、変に影響を受けてしまったみたい。
お姉ちゃんの力が日増しに強くなっていくにつれて私の体調は悪くなっていった。
力にあてられないようにするには二つの方法がある。
一つは自身の魂の形を大幅に変えて、神守固有の魂の形をなくすこと。もう一つは単純にその土地から離れること。
私には才能がなかったから、自身の魂操作さえろくにできなかった。
だから、私には後者の方法しか手がなかった。
お父さんはお母さんの『盾』だったし、お母さんも先代としてお姉ちゃんのそばから離れるわけにはいかなかったから、私は一人で実家を去らなければならなかった。
……もちろん哀しいよ。でも迷惑かけるわけにはいかないじゃない。あれ以上あそこにいたら、死んでたかもしれないしね。
だから、ただそれだけだよ。私に才能がなくて、ちょっと巡り合わせが悪かっただけ。
本当に、うん……それだけの話。
喉が渇いたので、ペットボトルの紅茶を口元に傾けた。冷たさが心地よい。
守が小さく頷いて、口を開く。
「依子ちゃんがこっちに移ったのはそれが理由?」
「うん。おじさんとおばさんには子供がいなかったからちょうどよかったみたい」
まるで他人事のような言い種だな、と依子は思った。義父も義母もとてもいい人たちなのに。
すると守が不審げに眉をひそめた。
「つまり、依子ちゃんは緋水の土地に入れない、ってことだよね?」
「うん……そうだよ」
「でも依澄さんはさっき、君に戻ってこないか尋ねた。どうして?」
「わからないよ……。私があそこにいられないのは間違いないことなのに」
「ひょっとして、もう大丈夫になったとか?」
守のポジティブな意見に依子は首を振った。そんな簡単にいく問題ではないのだ。
「どうして大丈夫になったと思うの?」
「いや、依澄さんが言ったことだし」
確かに言っていた。今のあなたなら大丈夫と。あれはどういう意味なのだろう。今の私なら?
依子は考え込む。今の自分。縁の見えなくなった自分。何も持たない自分。そんな自分に何があって大丈夫なのか。
「あ」
そのとき守が短い声を上げた。
「何?」
「いや、そういうことなのかな、って」
よくわからないことを言う。
「……? そういうことって?」
「緋水の神様の力にあてられないようにする方法だよ。離れるだけじゃなく、もう一つ方法があるんでしょ?」
「え? うん、魂の形を変えて……あ」
気付いた。その瞬間守と顔を見合わせた。
緋水の神様の力にあてられるのは、神守家固有の魂の形を保持してしまっているためだ。
当主になるにあたって、魂が力を受け入れやすい形になっているわけだが、自身の霊能や魂をうまく操作できない依子はそのせいで悪い影響を受けてしまっている。
だが逆に言えば、その形を変えてしまえば影響を受けなくてすむということである。
「私の魂が以前とは変わってしまっているから……もう影響を、受けない……?」
「だと思ったんだけど、どうかな?」
「……」
迷いが生まれる。
もしそうだとしたら、とても嬉しいことだ。もう二度と戻れないと諦めていたあの土地を、また踏めるのだ。
だが、果たして受け入れてくれるだろうか。土地は、家族は、以前の私ではない私を認めてくれるだろうか。
「不安なら、ぼくもいっしょに行こうか?」
「え?」
幼馴染みの申し出に依子は驚いた。
「大丈夫。何があってもいっしょにいるから。いっしょにいたいから」
いとこの顔を見つめる。守はとても優しげに微笑んでいた。
前から彼はこんな笑みを浮かべていただろうか。依子は戸惑う。縁が見えないために相手をうまく計れないことが、逆にその顔をより強く見せているような。
不思議と安心できる笑みだった。とても不安なのに、守ってくれそうで。
「……うん」
依子は小さく頷いた。
家に戻った依子は、自分の部屋でばたりとベッドに倒れ込んだ。
(疲れた……)
本当に何もかもが急すぎた。変わっていく世界は依子にとってあまりに激しい。
縁糸の消えた世界が目の前に広がっている。
やはり少し不安だ。自分は今、誰と繋がっていて、これから誰と繋がっていくのだろう。
だが、さっきの守との会話でちょっとだけ立ち直ることができた。
守と話し合って、緋水に戻るのは週末ということになった。金曜日の夕方、学校が終わったら駅で待ち合わせする約束だ。
戻れる。八年振りに、あの場所に。
「……」
しばらくぼんやりと枕の感触に埋もれていると、ドアがノックされた。
「入るわよ」
現れたのは義母の百合原友美(ゆりはらともみ)だった。義父の仁(ひとし)が単身赴任中なのでこの家には依子と彼女しかいない。
「あら……どうしたの? まだ体調悪いの?」
「あ……ううん、ちょっとぼーっとしてただけ」
「そう? 夕べはびっくりしたわよ。急に守君から連絡が来るんだもの。具合が悪くなったって言ってたけど、大丈夫なの?」
「う、うん。もう平気」
百合原家は神守とは縁遠い親戚で、友美もただの一般人だ。神守家についても特に詳しいわけではなく、依子は自分の縁の力についても話したことがない。
だからこういうとき、詳細をうまく話せなくて依子は困ってしまう。ただでさえ接し方に苦慮しているのに。
「それにしても、あなたが守君の部屋に泊まったのも久し振りね。しばらく行ってなかったでしょ?」
「あー、うん、ちょっと気が乗らなかったから」
「私としてはそれくらいが当たり前だと思うけどね」
「へ? なんで」
「女子高生が一人暮らしの若い男の部屋に泊まるなんて危なすぎでしょ。信用できる守君だから許してるけど、あなたは自覚ないの?」
言われて依子は押し黙った。
そういえばまだ答えを返していないな、と依子は微かに胸が痛んだ。サボテンの棘のように小さな針が一本だけ刺さっているような小さな痛み。
「あの、おばさん」
依子は話題を変える。週末のことを言っておかないと。
「私、金曜日に学校が終わったら、実家に帰ろうと思う」
友美の目が大きく見開かれた。
「……そう、なの?」
「うん。いいかな?」
「……あなたがそういうなら構わないけれど……大丈夫なの? いろいろと家の方で問題があるんじゃ、」
「大丈夫になったの。だから、問題ないよ」
「……そう。ならいいわ。……家族同士仲が良いのが一番だものね……」
依子がこれまで実家に戻らなかった理由を友美は知らない。喧嘩や勘当と勘違いしているのかもしれない。突っ込むと説明が面倒なので何も言わないが。
「そういうわけだから、金曜日から夕食はいらない。土日の間、向こうで過ごすから……」
「依子」
友美の固い声が言葉を遮った。
なぜか、気圧される。
「ちゃんと……帰ってくるのよね?」
「おばさん……?」
友美の顔を見つめる。声と同様にどこか固かった。
「あ……向こうに戻れるなら、もうこちらにいる必要はないのでしょう? そうなると、寂しいと思ってね……」
不安げな表情はまるで迷子のように寂しく見えた。
後ろめたい気持ちが風船のように膨らむ。割れそうなほど、それは儚く感じた。
「……大丈夫。そんな簡単に出ていったりしないよ。まだ私高校生だし、この街が好きだし」
しばらくはまだお世話になるはずである。少なくとも卒業までは。
「そう……ならいいわ。最後まで面倒見させてね、依子」
「……うん、ありがとう。おば……お母さん」
瞬間、義母はひどく驚いた顔になった。
「……初めてかもね。そう呼ばれたの」
「ごめんなさい。恥ずかしかったから……」
「ううん、嬉しいわ。とても」
本当に嬉しそうな様子で言われて、依子はくすぐったく思った。
だがそのくすぐったさは、嫌いじゃない。
「今度、お父さんが帰ってきたときにも言ってあげてね。きっと喜ぶから」
「……頑張る」
温かい空気が感情を上気させるようで、依子はほんのり頬を赤く染めた。
そして金曜日。
依子は守と一緒に、八年振りに故郷へと帰った。
神守市内某ホテル。
二階の隅部屋で、少年と少女が話をしていた。
といっても一方は言葉を発さない。少年の方が一方的に語りかけているように見える。
「この街もだいぶ回ったけど、もう目立った悪霊はいないみたいだ」
少女はこくりと頷く。
「そろそろ出るか。しばらくは『食事』の必要はないけど、いつまでもこの街にとどまっている理由はない」
「……」
少女が無言のまま少年を見つめた。
「……心残りか? でも俺たちにできることはもうないぞ」
「……」
少女は黙したままだが、互いの意志疎通は問題ないようだ。
「あの子の縁の能力とやらがどういう類のものかは知らないけど、お前はちゃんと魂の傷を治したんだろ。それでどうにもならなかったのなら、どうにもできない」
「……」
「……じゃあ会うしかないな。会って、話でもしてこい。土日は休みだから迷惑でもないだろ」
「……」
「会うのが怖いのはわかる。でも、引っ掛かってるんだろずっと。必要なら謝れ。許してもらえなくても、それしかできないなら、できることをするしかない」
「……」
少女はほう、と溜め息をつくと、少年を見据えて再び頷いた。
「決心ついたか? なら出発だ。あの子の場所は『感知』で測る。で、きっちり謝ろう。大切な友達なんだから」
少女の顔が真っ赤になった。恥ずかしげにうつむくと、上目遣いに少年を睨む。
「そんな顔するな。友達は大事にしないと。……いつまでも実体でいるのもなんだし、そろそろ戻してくれ」
その言葉に少女は居住まいを正した。そして少年の頭を軽く右手で撫でると、少年の体が瞬時に消え去った。
跡には何も残らない。まるで幽霊か何かのような、そんな薄く朧な一瞬だった。
少女は気にした風もなく荷物をまとめる。
旅行バッグに荷物を詰めると、そのまま緩やかな足取りで部屋を出ていった。
小さな金属音と共にドアが閉まり、部屋は元の静寂に包まれた。
神守市から電車で三時間のところに依子と守の故郷、緋水がある。
緋水とはその土地一帯の俗称である。正式な地名を言うなら牧村町という実に平凡な名があるが、地元民には緋水の名で通っている。
かつて土地の神を慰撫するために、一人の女性が血水と化してその身を捧げた、という故事が由来だ。
周囲を山に囲まれた綺麗な土地だが、交通の便は悪い。牧村駅は無人駅で各駅停車の電車しか停まらず、バスも一時間に一台しか通らない。
だから、二人が緋水に到着する頃には、時計の針は夜九時を回っていた。
夜気に冷えた体を依子は震わせる。吐く息は真っ白だ。上空に寒気が流れ込んでいて、明日の夜には雪が降るという話だった。
寂しい夜の駅前に一台の車がやって来た。暗闇の中で明るく映える白い車は、依子たちの前でゆっくりと停車した。
運転席から顔を出したのは和服姿の依澄だった。その格好でいつも運転しているのだろうか。
二人は後部座席に乗り込む。それを確認すると、依澄は慣れた手付きで発進させた。
依子は落ち着かなげに外の景色を見渡す。八年振りの故郷は、何も変わっていなかった。
隣の守が囁く。
「二年ぶりかな、ここに帰ってくるのも」
「……あんまり変わってないね」
闇の中、周りに広がるは畑ばかり。遠くに見える民家の明かりは片手で数えられた。そのくせ道々の常夜灯だけはしっかりと強い光を放っていて、運転には困らないようだった。
心がひどく浮き立った。
不意に依澄が尋ねてきた。
「体は……大丈夫ですか?」
咄嗟に反応できず、依子は慌てた。
「え……あ、えと、う、うん、大丈夫……だと思う」
「……よかったです」
依澄の声は安堵に満ちていた。
それを聞いて依子は少しだけほっとした。同時にとても嬉しく思った。
三十分後、車はようやく目的地に到着した。
山の田舎のど真ん中、不釣り合いに立派な門扉が鎮座ましている。
離れのガレージに車を入れ、三人は降りる。そこから先程通り過ぎた玄関へと向かった。
懐かしい門扉は昔からの記念碑のように変わらなかった。呼び鈴を鳴らすと備え付けのインターホンから声が響いてきた。
『はーい、三人とも入り口にいるわね、ちょっと待ってて』
底抜けに明るい声が聞こえた瞬間、依子は顔を強張らせた。
そして門扉が開くと同時に明かりがつき、中の空間が開けた。
そこには和服を着付けた女性が立っていた。
美しい人だった。見た目は二十代と言っても通用する。背は依子と変わらない。薄い化粧は柔らかな白い肌に馴染んで、セミロングの黒髪が対称的に明るく映える。
依子は――うまく言葉が出なかった。
するとその淑女がゆっくりと近付いてきた。
咄嗟に反応できない依子の目前に歩み寄ってくる。
そして、依子はそのまま抱き締められた。
一瞬で息が詰まった。懐かしさと切なさ、混交した感情に胸が張り裂けそうになる。
「おかえりなさい、りこちゃん」
依子の母、緋水朱音(あかね)は包み込むような声で囁いた。
明日また改めて挨拶に来ます、と近所に居を構える遠藤家へ守が戻るのを見送ると、依子は母姉と共に屋敷内へと入った。
石畳から玄関へ入ると、そこには冷たい木の匂いが広がっていた。靴を脱ぎ、朱音に続いて長い廊下を歩く。板張りの床がぎしりと音を立てた。
小さい頃にも思ったことだが、この屋敷は広すぎる。昔は大勢の使用人を抱えていたために多くの部屋が必要だったらしいが、今は使用人自体数人しか抱えていないらしい。それは八年前と同じだった。
町の会合や客人の宿泊に使うこともあるらしいが、基本的には使わない部屋ばかりだ。
夜の屋敷は寂しく、怖かった。
「昔はりこちゃんもこの家の中でかくれんぼしてたのよね」
母に言われて依子ははっとなる。
「すみちゃんやまーくんといっしょにいろんなところに隠れたりしてたものね。憶えてる?」
憶えている。依子は小さい頃の情景を思い起こした。
「でも、あれは昼間だったよ。夜とは違う……」
「そうね。怖いもんね。一応結界張ってるから変な悪霊さんとかはいないはずなんだけど、暗いとやっぱりいやな感じするよね」
「べ、別に怖くはないけど」
それを聞いて朱音はおかしげに笑った。
「……何?」
不満顔で返すと、朱音は首を振った。
「なんでもない。りこちゃんかわいいな、って」
「――」
屈託のない笑顔でそんなことを言われたせいか、自分でも顔が赤くなるのをはっきり自覚した。
「さ、こっちよ」
構わず促された部屋に依子は入る。
通された部屋は小さな六畳の和室だった。明かりがつき、真っ白な障子と薄草色の畳が目の前に広がる。
「荷物を置いたら食事にしましょう。お母さん、今日は腕によりをかけて作ったから」
「うん」
小さな旅行鞄を隅に置き、依子は居間へと向かった。
居間には大きな卓の上に、温かい料理が並んでいた。
ご飯、すまし汁、鰤と大根の煮付け、鶏の唐揚げ、二種類のサラダ、蛸とわかめの酢の物、ひじきの和え物に茄子の漬物もある。
そして卓のすぐ横には、母と姉以外に見知った顔があった。
顎に薄い髭を生やした中年の男性。
男性は微笑するとおもむろに近付いてきた。
依子は心臓の早鐘に押されるように、慌てて口を開く。
「ただ」「おかえり。依子」
穏やかな優しい声に、依子の言葉は遮られた。
「待っていたよ。寒かっただろう。さ、こちらに座りなさい」
父――緋水昭宗(あきむね)の、八年前と変わらない声。
どうしてこんなにも変わっていないのだろう。依子は言葉が出なくなる。細かいことを言えば、お父さん白髪やしわも増えたしいろいろあるけれど、でも、
ぽん、と肩を叩かれた。
横を見ると、依澄が小さな微笑を浮かべていた。
その表情はあまりに小さな変化だったが、とても嬉しそうに見えた。このときばかりは姉の不可思議さが氷解したように映った。
次いで、父と母の顔を見る。
二人とも心からの笑みを浮かべていた。まるで大切な宝物を取り戻したような、そんな笑顔だった。
依子はくっ、と一瞬だけうつむき、すぐに顔を上げた。
「――ただいま」
渾身の笑顔だったと思う。
それから依子は再会した家族と楽しげに食事を囲んだ。
昔の思い出から互いの近況に至るまでたくさんのことを話した。久し振りに食べる母の手料理に舌鼓を打ち、父の穏和な話しぶりに耳を傾けた。
依子は揺れる。目の前に広がる縁のない世界で、それでも楽しくあることに。
縁視の力を失って。でもそれを吹き飛ばすかのような幸運を得て。
喪失感と充足感が入り混じる今の心境に戸惑いつつも、依子はただ嬉しかった。同時に少し寂しかった。
家族との縁を、この目できちんと見ておきたかったから。
夕食後、お風呂に入って髪を乾かして歯を磨いて、そして依子は床に着いた。
不安を煽った暗がりが、今はたいして気にならなかった。暗い方が縁のない世界を見なくて済む。
意識が落ちる直前、いとこのことが思い出された。
不安が薄くなったように思えた。
辺りは雪に包まれていた。
真っ白な雪景色が世界を覆い、その真ん中で依子は呆然と立ち尽くしていた。
目の前には歳上の男の子。
男の子は困ったように頭をかいていた。
依子は気付く。そんな表情をさせているのは私だ。私が何か言ったせいだ。
でも自分は何を言ったのだろう。
男の子はしばしうつ向き、やがてゆっくりと顔を上げた。
――ありがとう。
一瞬依子は何のことだかわからなかった。しかしすぐに思い出して理解が及ぶ。
少女は自分の拙い想いをぶつけたのだ。幼いながらも真剣な想いを。
男の子は言葉が続かないのか、何も言わない。
白銀の世界の中で、依子の目を見つめたまま、人形のように立ち続ける。
依子はそんな相手を見返しながら、自らの想いを紡いでいった。
依子が目を覚ましたとき、時刻は既に十時をまわっていた。
洗顔と歯磨きをし、髪を整え服を着替える。水が冷たく、朝の空気が体を震わせた。
居間に行くとちょうど朱音が食事の用意をしていた。
「おはよう、お母さん」
「おはよう。昨日はぐっすり眠れた?」
「うん。今から朝ごはん?」
「私はね。お父さんとすみちゃんはもう済ませちゃったわ」
「? お仕事?」
「すみちゃんは今日は少し遠出する必要があって朝早くに出てったわ。夜には戻ってくるわよ。お父さんはまーくんの家に」
「稽古?」
「そう言ってたわ」
守の家は元々神守家を物理的障害から守るために武術を受け継いできた家系である。
神守家の分家として遠藤家があり、昭宗は守の母方の叔父に当たる。昭宗は朱音の『盾』として結婚したのだ。実は大恋愛だったのだが。
「久しぶりにまーくんを鍛えるつもりかもね。嬉しそうな顔だった」
「見に行っていい?」
「ご飯食べてからね。やりすぎないように見張っておいて」
依子は頷き、母の準備を手伝い始めた。
朝食を終え、依子は遠藤宅に向かった。
庭を抜けるとき、昔馴染みのお手伝いさんに出会い、少しだけ話をした。親しげで温かい口ぶりがこちらを受け入れてくれてるようで、嬉しかった。
屋敷から二百メートルほど離れたところにある小さな二階建ての家に依子は向かった。裏の方により大きな道場があるのが特徴的な、遠藤家の敷地だ。
依子は直接道場に行くために、裏門へと回る。
やや低い塀に囲まれた敷地は広いが豪奢ではない。あくまで家と道場を囲むだけの塀と、華美さに欠けた狭い庭は住人の性格を表しているようだ。
びゅうと吹く木枯らしが、スカートの下の足を縛るように駆け抜けた。依子は軽くスカートを押さえて寒さに耐える。
(寒いなぁ……)
山の中ということもあるのだろう。豊かな自然に四方を囲まれ静謐な空気を湛えた土地は、都会に慣れた依子の肌を粟立たせる。
裏門から道場に近付くと大きな音と奇声が響いてきた。依子は入り口を恐る恐る開けて中を覗き込んだ。
板張りの空間の真ん中で二人の男が対峙していた。道着姿の守と昭宗がじりじりと間合いを測り合っている。
目に飛び込んできた瞬間、その張り詰めた緊張感に当てられて、依子は身をすくませた。
邪魔しないように慎重に扉を閉める。そろそろと忍び足で中に入った。
壁際に守の母、火梁(ひばり)が袴姿で座っている。火梁はすぐに気付いて小さく手招きをした。依子は隣まで寄っていき、同じように座る。道場だからか正座だ。
守が動いた。右足から前に踏み込み、相手の懐に入る。
昭宗は左足を奥に退くように滑らせる。守の体を内側に引き込むような体移動をこなし、上体をやや落とした。
瞬間、昭宗の右足が動いた。そこまでは見えたが、次の動作は依子には見えなかった。
気付いたら守が尻餅をついて倒れていた。
足を払われたのだろうか? そんな依子の疑問を置き去りにするかのように、昭宗がトドメとばかりにサッカーボールキックを放った。
「やっ――」
依子は反射的に叫ぼうとして、途中で止まった。
昭宗が踏み込んだ瞬間を狙って、守が軸足を蹴ったのだ。
座った状態から軽く押す程度の蹴りだったが、昭宗はバランスを崩した。
前のめりに傾ぐ相手の下半身に、守はすかさず組み付く。
同時に引き倒して背後に回り、腕と首を、
「ふっ!」
昭宗の右肘が背後についた守の脇腹に刺さった。
守は怯まず昭宗の首に腕を回し、絞めあげた。
「――」
昭宗の手がバンバンと床を叩いた。降参の合図。
守は慎重に腕の力を緩め、昭宗から体を離す。昭宗は少しだけ残念そうな苦笑いを浮かべた。
(勝った――)
守がまさか昭宗に勝つとは。昭宗は神守家の『盾』を務めるほどの力を持つはずなのに。守はそこまで強かったのか。
(……当たり前か。後継ぎだもんね)
いずれ守は遠藤家の役目を果たすため、神守の『盾』となる。本人もそう言っていたので、それは決定事項なのだろう。
それはつまり、神守依澄の『盾』となるということだ。
(あ……)
不意に昨夜見た夢のことを思い出した。
あれは遠い昔にあった出来事だ。小さい頃の依子と守。
あのときも冬だった。辺りは雪に覆われていて、吐く息が真っ白に消えていくのをよく憶えている。
そして、依子は言った。
――わたし、マモルくんのこと好きだよ。
守はありがとうと言った。依子はそれをマモルくんらしいなと思って、少しだけ寂しく感じた。守は何も言わずに、ただ立ち尽くしていた。
寒空の下の、小さな思い出。
そのときのことを記憶から掘り出して、依子は気付いた。いや、思い出した。
(……そうか)
あのとき守が浮かべていた顔。あれがすべてを表していて、依子はあのときに知ったのだ。
守は、きっと、
「依子ちゃん?」
急に声をかけられて顔を上げると、すぐ目の前に守の顔があった。
「ひゃっ!」
依子は思わずのけぞる。守は不思議そうに首を傾げた。
「だ、大丈夫? どうしたの?」
「な、なんでもない!」
激しく動揺しながら、そんな説得力皆無の台詞が出てくる。
咄嗟に話をそらした。
「あ、お、おめでとう。勝ったんだね」
「え? ああ、その前に結構ボコボコにされてるけどね」
言われてみると、頬辺りを切っており、手も多少腫れていた。
そのとき、帯を締め直しながら近付いてきた昭宗が笑った。
「いや、強かったよ。向こうでも稽古を続けているのかい?」
「基本稽古くらいしかできないですけどね。どうしても打ち込みとか型稽古ばかりになってしまって」
「それであれだけ動けるならたいしたものだ。ラストの軸足払いにやられたよ」
「いやもうとにかく夢中で」
男同士だと気が合うのか、二人は楽しげに談笑し始める。
「ほう。道理であんなに動きがバラバラだったのか、息子よ」
そんな男二人の会話に火梁が割り込んだ。
「剛法と柔法のバランスが全然なってない。これは私が揉んでやらなきゃダメだな」
「え」
守の表情が固まった。なんというか、嫌いな食べ物が食卓に並んだときのような、露骨に苦い顔だった。
昭宗がそれを見て苦笑を浮かべる。
「おや、兄貴もまだまだ元気みたいだね。じゃあ私が相手してやるよ。最近平和ボケがすぎるみたいだし」
「え」
昭宗の表情も固まった。なんというか、昔からのトラウマに出くわしたような、心底嫌そうな顔だった。
火梁は立ち上がると軽く伸びをした。それから振り返って、依子ににっこりと微笑んだ。
「大きくなったね、依子ちゃん。すごく見違えた」
「は、はい、ありがとうございます」
「本当はいっしょにお茶でも飲んで話をしたいところなんだけど、愚息と愚兄の相手をしなきゃいけないから、ちょっと待ってて」
「「いや、お構いなく」」
重なった男二人の言葉を火梁は軽く睨めつけて一蹴する。
そして邪悪な笑みと共に、気軽な調子で言い放った。
「ま、遠慮するな」
三十分後、道場の真ん中には息を切らして膝をつく男二人の姿があった。
左右を畑に挟まれた小道を、依子と守は歩いていた。
昨日は夜だったので周りもよく見えなかったのだが、こうして見回すとやはり田舎の風景が広がる。
四方を囲む山々は昔から変わらない。家はぽつりぽつりと散らばる格好で、土手や林や野原の方がずっと多い。
懐かしさばかりが込み上げてくる故郷の変わらなさに、依子は軽い心地よさを覚えた。
だが、一晩経ってこうして冷静に見てみると、多少の不安も感じる。
今の自分とこの土地に、縁はあるのだろうか。
「どうしたの?」
守の声に依子は顔を上げた。
首を振る。
「なんでもないよ」
「そう?」
「うん、ぼんやりしてただけ。てかマモルくんの方こそどうしたの? 声に張りがないけど」
「誰かが傷を増やしてくれたからね。脇腹痛い」
「それは……ご愁傷さま」
大きな怪我はないみたいだが、投げられたり転がされたりしたせいか打ち身が多いようだ。依子は苦笑いを浮かべた。
そのとき守が尋ねた。
「……やっぱり見えないと違和感ある?」
え? と依子は思わず固まった。
「ぼくには縁の糸なんて見えないから、それがどういう感覚かわからないけど、それって生まれつきのものなんでしょ? 五感がなくなるような感じなのかな、ってずっと考えてた」
「……ずっと?」
「依子ちゃんが先週ぼくの部屋に来てからずっと考えてた。で、なんとかできないか考えてた」
「……どうして」
何を言っているのだろう。守にできることは何もないのに、何もしなくていいのに、彼はそれをずっと考えていたというのか。
「だって、依子ちゃんがずっと不安そうにしてるから、取り除いてあげたくて」
「……でも、力をなくしたおかげで帰ってこれたんだよ?」
「いや、まあそれはそうなんだけど、それでも不安なのに変わりはないんじゃないかと思ってさ」
守は普段と変わらない口調で呟く。
「……昔からそうだよね」
「え?」
「マモルくんはいつも相手のことを考えてる。相手に合わせるのがうまい。だから、ちょっとかなわないなと思って」
この人はどんなときもお人好しで、気遣いを忘れないのだ。それは性質もあるが意識してのことなのだろう。依子には好ましく映る点だ。
「ありがとう、心配してくれて。でも大丈夫だから」
「……無理しないでね」
「大丈夫だってば。ここに戻ってこれてすごく嬉しいし、不安なんてないよ」
依子はにっこり笑うと、道の先へと駆け出した。
「ほら、先行くよ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。さっきの稽古で体中痛くて」
「どんまいっ」
依子は親指をぐっと立てると、いとこは小さく苦笑を洩らした。
二人が到着した場所は林の奥に流れる小さな川辺だった。
清流が静かに上から下へ。山間を通る水の流れは透明度が高く、底の石々の丸みがくっきりと見えた。
小さい頃、依子たち三人の遊び場だった場所だ。
「さすがに冷たいね」
手を伸ばして水に触れる依子。冬一歩手前の時季。寒さが増せば一面凍りつくこともあるだろう。
「でも懐かしい。ここも変わってないんだね」
夏にはよく川遊びをした。三人で暑い日射しを浴びながら、水をかけあったり魚を捕ったりした。
「……綺麗だね」
微かなせせらぎに耳を傾けながら、依子はぽつりと呟く。
「うん。……座ろうか」
二人は近くの大きな岩の上に腰掛けた。そのままただ何とはなしに遊び場を眺める。
「依子ちゃん」
「ん?」
守が口を開いたので、軽く聞き返した。
「しばらくさ、うちを訪ねてこなかったよね」
「――」
少し不意打ちだった。
「あ、えっと、その、」
慌てふためく依子。その様子を守はじっと見つめる。
その反応に対してか、不意に破顔した。
「……よかった」
「え?」
「少しはぼくのこと、意識してくれてたみたいだから」
嬉しそうに守は頬を緩ませる。
「一番怖かったのは、あの告白をなかったことにされることだったんだ。でも少しは意識してもらえてるみたいだね」
「なかったことって、そんなことしないよ」
「かもしれないけど、人の心は読めないからさ。さっきの反応見るまでびくびくしてたよ」
「は、反応って」
動揺を表に出しすぎたことに依子は赤面した。だって、いきなりあんなこと訊いてくるから。
「本気なんだ、それだけ」
「……わかってるよ」
先伸ばしにしていた答えを、そろそろ明確にしなければならないのかもしれない。依子は小さく深呼吸した。
「……あのとき、すごくびっくりしたんだよ」
「……ごめん」
「いきなりプロポーズなんて、サプライズもいいところだよ」
「……」
小さくなる守。
「……でも、嬉しかったかな」
「っ、」
「初めて人から告白されたし、周りで一番信頼できる人が相手だったから……うん、嬉しかった」
「……」
いとこを横目で見やる。真剣な眼差しとぶつかり、慌てて目を戻した。
微かに逡巡が生まれる。
依子はぐっと歯を噛み締めた。
「……でも私、正直よくわからないの。マモルくんのことは大好きだけど、恋愛なのか親愛なのか、自分でもよくわからない」
「……」
「……私にとってね、マモルくんはずっとお兄さんだったの。ずっと頼れる兄だったから、そういう目で見てこなかった」
「……」
「でも、今は……意識してる。ちょっと不思議な感じだけど、そういう目で見てる」
「……」
胸がどきどきした。自分の素直な気持ちを吐露するのは、少し恥ずかしい。
「でね、今朝夢を見たの。昔の、私がまだ八歳になる前の夢」
あまり順序立てて話せていないのは依子自身の心が波打っているためだろうか。
「マモルくんに私はこう言った。『わたし、マモルくんのこと好きだよ』って」
「……」
「マモルくんはこう言った。『ありがとう』。そのときにね、気付いたの。マモルくん、お姉ちゃんのことが好きだったんだよね」
「……」
守は答えない。
依子は構わず続ける。
「それでね、思ったの。マモルくんには私よりもお姉ちゃんの方が似合ってるんじゃないかなって」
「……え?」
守の顔が変わった。
予想外の言葉だったのか、表情が強張る。
「お姉ちゃんもマモルくんのこと好きなんだよ。多分、私よりもずっと想いは深い」
「いや、それは」
「マモルくんが今でもお姉ちゃんのことを好きなら、私よりもお姉ちゃんの方を優先してあげて。私はいいから」
「依子ちゃん!」
鋭い声に依子は口を閉じた。
守の目が鋭さを増している。少し怒っているようだった。
「依子ちゃんは依子ちゃんで依澄さんは依澄さんだ。比べることじゃない」
依子は怯みかける。だが、自分は、
「言ったはずだよ。私はマモルくんのことを好きかどうかよくわからないって。あのときの言葉は、恋愛とは違うものだったんだよ」
七歳の頃の出来事なのだ。そんなあやふやな心を引っ張り出して応えることなど、依子にはできなかった。
「それよりもちゃんと好きでいてくれる人を大切にすべきだよ。それとも、マモルくんはお姉ちゃんのこと嫌いなの?」
「――」
「そんなはずないよね。マモルくんはお姉ちゃんのこと、私を好きになるよりもずっと昔から好きなはずだから」
守の想いに応えられるかどうか、依子には自信がない。だが、姉にはそれがあると思う。
それに、それだけじゃなくて、
「……お姉ちゃん、昔から優しいんだよ。私、お姉ちゃんと喧嘩したことほとんどない。いつもお姉ちゃんから折れてくれた」
「……」
「あの人はいつもそう。いつだって自分以外の誰かを優先するの。私はそういうお姉ちゃんが大好きだし、憧れてる。マモルくんだってそうでしょ? 誰かに世話を焼くのはお姉ちゃんの影響でしょ?」
「……」
「でも、それっていつだって自分を後回しにしてるってことだよ。多分あの人は、好きな人さえ簡単に誰かに譲ってしまう。そんなの、私は嫌だよ」
「……」
「でも、もしもマモルくんがお姉ちゃんを選んでくれたら、きっとお姉ちゃんは自分を優先してくれると思うの。だから私は……」
「……嫌だよ」
守が苦しげに言葉を吐き出した。
苦い思いが容易に測れるその響きに、依子は気圧された。
「依澄さんのことは好きだよ。でもそれが依子ちゃんに対する気持ちを上回ることは、ない。ぼくは君しか選ばない」
守の目には明確な光があった。強い想いのこもった目だ。
依子は茫然と相手を見つめる。
「……お姉ちゃんはどうなるの?」
「依澄さんは強い人だから、きっと大丈夫だよ。ぼく以外の人に巡り会えるかもしれないし」
「……冷たいよ、マモルくん……」
「かもしれない。でも、誰かを選ばなければならないのなら、ぼくは自分の想いに正直になる」
「……私にはできないよ。自分の気持ちがよくわからないのに、正直になんて」
瞬間、依子の体が傾いだ。
守に肩を抱き寄せられて、依子は相手の体にもたれかかった。
「ちょっと、マモルく、」
慌てて顔を上げると、いとこの顔が目の前にあって、
(え?)
硬直したときには唇を奪われていた。
守の顔が今までにないくらい近くにある。生温かい感触がひどく現実感を伴っていた。
何の反応もできずに、依子はただ固まっていた。
初めてのキスは数秒で終わり、気付いたときにはもう相手の顔は離れていた。
「……依子ちゃん」
「……」
依子は何も言わない。何を言えばいいかわからなかった。
恋愛に疎い依子でも、守の想いの深さは充分感じ取れた。
こんなに好かれてしまっている。こんなに愛されてしまっている。
それはきっと嬉しいことだ。この胸の高鳴りはキスの余韻だけじゃないと思う。
だが、その深さが、依子には辛かった。
「……」
「……」
互いに何も言えず、時間だけが無為に過ぎる。
清流の音がやけに哀しげに聞こえた。冷たい風に体を縮め、空を見上げる。
暗い雲が少しずつ天を覆っていくのが見えた。
雪が降ってきそうだったので、二人は川辺から離れた。そのまま緋水の家へと歩き始める。
気まずさから互いに一度も口を開かなかった。喧嘩ではないが、不用意に何かを言えばより気まずさが増すのではないかという危惧があって、会話を躊躇させた。
こんなに互いの心が乖離したことがあっただろうか。依子は以前を振り返り、寂しくなった。前みたいにずっと兄でいてくれれば、こんなに悩むこともなかったのに。
だが、守はずっと想いを抱えていて、何も感じていなかったのは自分だけだったのだ。いつかは向き合わなければならないことだったはずだ。
縁視の力を持っていたにも関わらず、守の想いに気付かなかった自分は本当に馬鹿だ。何のための力だろう。
想いを受け入れた方がいいのだろうか。このいとこの真剣な想いを、受け入れて、
「……?」
気付くといつの間にか屋敷の前に着いていた。
門の前には、着物を着付けた姉の姿。
「お姉ちゃん」
「……」
依澄は不思議そうにこちらを見つめてきた。小首を傾げて漆黒の瞳を優しく和らげる。
依子には理解できない、優しさを湛えた目。どんなときも色褪せることのない深さを持つ目。
昔から、姉はよくわからないところがあった。
歳が少し離れているせいもあるだろう。いつだって依子の先にいて、依子を守ってくれる存在だった。
誰にも頼らず、弱味を見せない。そして誰かのためにいつも働きかけるのだ。
依子はそれがずっと嫌だった。姉を守りたくて、姉の役に立ちたくて、一生懸命背伸びをしていた。
後継を競ったのもそれが理由だった。才能はなかったが、姉に憧れて、同時に負担を減らしたくて、依子は依子なりに頑張った。
だが、それが報われることはなかった。いつだって依子は助けられる側で、姉は一人違う場所に立っていた。
そんな姉が一つだけ執着するものがあった。同い年の男の子だ。
縁視によってずっと見てきたのだ。姉が他とは違う想いを彼に抱いている様を。そしてそれはきっと今でも変わらない。
なのに、その彼は自分のことを好きだと言う。
応えられるわけがなかった。その想いに応えてしまったら、姉はもう、何も特別なものを持たなくなってしまう。
ずっと守られて、こちらは何も返せなくて、さらには逆に奪おうとしている。そんなことできるわけがなかった。
依子は思う。自分は守が好きなのだろう。恋愛か親愛かはともかく、想いに応えたいと思うから。
だが、姉も同じくらい大好きなのだ。ならばそれに対してどうするかは、もう一つしかないと思う。
依子は気軽な口調で話しかけた。
「お仕事終わったの?」
依澄はこくりと頷く。
「雪降るらしいから早く中に入ろ? 今日はマモルくんもこっちで食べてくって言うし」
できるだけ平静な声で言うと、依澄が口を開いた。
「……何か、ありましたか?」
静かな問いにどきりとした。
口を開いたということは、今の問いかけが依澄にとって重要であるということだろう。何かを感じ取ったのかもしれない。
依子は微笑み、首を振った。
「何もないよ。河原に行って、懐かしい気持ちに浸ってたの」
「……本当に?」
依澄は訝しげな顔で、依子ではなく守を見やった。
「えっと、」
「本当だよ。ね?」
依子は目で守を抑える。守はうまく返せずに黙り込んだ。
「……」
依澄はしばらく不審な顔をしていたが、やがて何も言わずに小さく頷いた。
「どこまで行ってたの? 遠出って聞いたけど」
「少し、東京まで」
「東京……私ほとんど行ったことないなぁ。ディズニーランドには行ったけど……あれは千葉か」
「……」
「でも早く帰ってこれてよかったね。夜から一気に寒くなりそうだもんね。遅くなってたらきっと大変で……」
依子は空々しい会話を続ける。
棘が深く突き刺さるようで心が痛かった。
部屋の襖を閉めて隅の暖房ヒーターのスイッチを入れると、依子は行儀悪く畳に寝転がった。
どっと疲れが出て全身に広がっていく。天井に向かって大きく息を吐き出し、ゆっくりと目を閉じた。
誰かが前に言っていた。
「お前には誰かいるのか?」と。
いる。依子には大切な人たちが。才能がなく、力も失った自分を支えてくれる、大切な家族。
それは、依子が縁視によって誰かを手助けしていたのとは違うのかもしれない。
それでも依子は救われた。それの一番はやはり姉なのだろう。姉がきっかけを作ってくれたからこそ、依子はここに戻ってこれたのだから。
なのに、自分には何も返せない。
そんな自分にできることがあるとすれば、
思考を巡らせるうちに、依子の頭はゆっくりと眠りに落ちていった。
夢は、見なかった。
「……?」
自室の布団の上で体を休めていた神守依澄は、不意に違和感を覚えて顔を上げた。
外の方で何か妙な気配がするのを感じ取った。外と言っても近くではなく、屋敷から三キロメートルは離れているようだが。
この緋水の土地では依澄の感覚は文字通り『神懸る』。
普段なら絶対に捕捉できない距離だが、土地神の力が憑依するこの地では、依澄の霊感は極限まで研ぎ澄まされるのだ。
依澄は気配の位置を正確に捉えるために意識を集中させた。
「……」
少しだけ驚く。
対象は魂が何にも守られていない、剥き出しの状態のようだ。しかし明確な意思を持たない脆弱な霊とは違い、動きは知能の高い生物のそれである。
珍しい。生霊がこの地に来るなんて。それも二人も。
悪意や殺意は見られないので悪い相手ではなさそうだ。むしろ魂の質は優しい感触を受ける。
なぜかこちらに向かっている。
ゆっくりながら、確かにこちらを目指して来ている。何の用だろうか。少なくとも依澄に心当たりはない。
「……」
屋敷の周囲には結界が張ってある。こちらから招かない限り侵入される心配はない。
依澄は迷う。対処すべきかどうか。放っておいても問題はなさそうだが。
しばらく様子を見よう。依澄は相手の位置を捕捉したまま、再び横になって目を閉じた。
居間の方では両親が守と話をしているようだ。
そして依子は、自分と同じように休んでいる。
「……」
魂が昨日よりもブレている。心が不安定なためだろうが、何か心配事を抱えているのだろうか。
依澄は体を休めながら、意識は一切休まずに周りに気を配っていた。
何かあれば、いつでも飛び出せるように。
声が、聞こえた。
瞬間、依子は驚きのあまり飛び起きてしまった。
「え……?」
周りを見回す。
高い天井に小さな卓。暖房の音は微かで、障子の向こうからしとしとと音が聞こえる。雪が降っているようだ。
何も気にするようなものはない。
(夢だったのかな……)
人はいつも夢を見ているというが、必ず覚えているわけではない。今の依子に夢の記憶はなかった。
ただ、声が聞こえた気がしただけで。
知った声だった。
それに気付いた瞬間、依子ははっとなった。
なんとなく、もう会うことはないのだろうと思っていた。なのにその声を聞いたというのは、不思議な縁を感じる。
(そうか……)
縁を見る能力がなくなったからといって縁そのものがなくなったわけじゃない。
たぶん彼女とはまだ縁が繋がっているのだろう。
あんな別れ方をしたために中途半端になっていたが、心の隅でずっと気になっていた。
(……力はなくなっても、縁は残ってるんだね……)
少しだけ嬉しくて、少しだけ悲しかった。
それが今の自分なのだ。
「……」
声が聞こえたということは近くに彼女がいるということだ。なぜ彼女がこの地にいるのかはわからないが。
依子は立ち上がると、ハンガーにかかったコートを取り、素早く羽織った。
そして暖房のスイッチを切ると、部屋を出て玄関へと向かった。
その頃守は、緋水夫妻と居間で話をしていた。
依子も依澄も疲れたのか、自分の部屋で休んでいる。夕食までまだしばらくあるので、守は昭宗と火梁に対する愚痴などで盛り上がっていた。
そこに夕食を作り終えた朱音も加わり、三人で談笑していたのだが、途中から朱音が昔の話を始めた。
それは、依子の話だった。
朱音が依子にどんな気持ちを抱いているのか、どれだけ依子を大事に思っているのか、その話からはっきりとした愛情が伝わってきて、守は嬉しくなった。
依子は愛されている。周りにとても恵まれ、大事にされている。
だが依子は、それを素直に受け取ろうとしないところがある。
その理由はわからないが、守はそれが嫌いだった。依子は幸せになっていい人間だし、幸せになってほしいと思う。できることなら自分の手で幸せにしたいと思う。
好意を受け取るのを怖がらないでほしい。それをわかってほしいと切に思った。
「……あれ?」
玄関の方で音がした。足音と、扉が一旦開いてすぐに閉められる音。
「……依子ちゃん、かな」
守の鋭敏な聴覚は靴音の微妙な差異を聴き分けた。依澄の草履の音ではなく、スニーカーの軽い靴音だった。
時刻は七時。外はもう真っ暗だ。加えて雪もちらほらと降り始めているようで、外に出るのは少々危ないだろう。
「ちょっと見てきます」
守が言うと、朱音はにっこり笑ってひらひらと手を振った。
「帰ってくるまでにご飯並べておくから。りこちゃんをよろしくね」
そして立ち上がろうとした昭宗の腕を掴み、台所へと引きずっていく。
「あっくんは手伝い」
「いや、私も依子が心配、」
「『盾』は主に逆らっちゃダメ。それに、まーくんに任せとけば大丈夫よ」
「……」
ずるずる連れていかれる昭宗に、守は苦笑を浮かべた。
「すぐに戻りますから」
守はそう言うと、少しだけ速い足取りで玄関へと向かった。
外に出ると、真っ暗な空から白い雪がさらさらと流れるように降っていた。
玄関の明かりを受けて微かに輝く銀色。寒々とした風が顔を撫で、依子は身震いした。
また、声がした。
(聞こえる?)
聞こえた。はっきりと、頭の中に少女の声が。
依子は庭をそろそろと慎重な様子で渡り、門の前まで近付いた。
いるのだろうか、そこに。
門を開けた。
広がる闇の中、家の前の常夜灯が雪景色を照らしている。
誰もいなかった。
依子は一瞬きょとんとなり、それからため息をついた。白い息が顔にかかるように立ち上る。
気のせいだったのかもしれない。考えてみれば当たり前だった。彼女がここまで来ているわけがない。私がここにいることさえ知らないのに。
(…………依子)
そのとき再び声が頭に響いて、依子は弾かれたように顔を上げた。
門から出て依子は駆け出す。近くまで来ている。なぜかは知らないが、確かに今の思念は、
「――」
白い世界の真ん中で、依子は案山子のように立ち尽くした。
目の前に小さな人影が立っている。その背は依子よりずっと小さくて、依子よりずっと深い目を持っていた。
「……美春さん」
美春という名の少女は、小さく頷いた。
「……どうしてここが?」
依子の質問に思念が返ってきた。
(明良に手伝ってもらったの。明良は魂を感知したり探すのが得意だから)
「あきら……?」
(私のパートナー。この前、あなたも会ったはずだけど)
言われて依子は思い出した。見た目は美春とそう変わらないくらいの歳の少年。彼が明良というパートナーなのだろうか。
「え? でもその人は?」
姿が見えないことに疑問を抱くと、美春が答えた。
(彼も私と同じ生霊。ただ、普段は幽体でいるから今は見えない。でもちゃんとここにいる)
「そう、なんだ」
見えないが、美春がそう言うならそうなのだろう。依子は気にしないことにした。
「えっと、こんばんは」
(うん……)
二人は互いに挨拶を交わし、そして黙り込んだ。
何を言えばいいのだろう。どこかに引っ掛かっていた思いがあったはずなのに、本人を目の前にするとそれが出てこない。
依子は目前の少女を見やる。相変わらず口を開かない。
やっぱり姉に似ていると思った。直接会うとどう接すればいいか迷ってしまうところまで、よく似ている。
美春が微かに身じろぎをした。
(あの)
「う、うん」
(私……あなたに謝りに来たの)
「……え?」
予想外の言葉に依子は戸惑いの声を上げた。
(あの時のことをずっと謝りたかった。あなたの大事なものを壊してしまって、謝りきれないくらい申し訳なく思ったから……)
「……」
依子は絶句した。こちらは美春に対して恨みなど少しも抱いていないのだ。それなのに、
(償いなんてできないことはわかってる。でもこれだけは、改めてきちんと伝えたかった。だから……ごめんなさい)
深々と頭を下げてくる少女に、依子は軽く息を呑んだ。
この人はそのためだけにこんなところまで来たというのか。たった一度しか会っていない人間にただ謝るためだけに。
依子はほう、とたまっていた息を吐き出した。
「いいの、もうそのことは、別に」
(……でも)
「また少し、お話したいけど……いいかな」
雪が弱くなった。寒さは変わらないが、だいぶましになった。
(……うん)
少女の頷きに依子は小さく微笑んだ。
結界が張ってあるため、美春は屋敷内に入れない。依澄に頼めば解いてもらえるだろうが、今は姉と顔を会わせたくなかった。
二人は屋敷から少し離れて、畑道の傍らにぽつりと建っている東屋に入った。
町内にある休憩場所の一つで、畑仕事の合間によく使われている場所だ。寒さはあるが、雪を被らなくて済むのでましといったところか。
木製ベンチに腰掛けると、二人は顔を見合わせた。
(……話、って?)
「あ、うん……」
依子は軽く深呼吸をして気を落ち着かせる。
別に大層な話をするわけではない。ただ、わだかまりなど一切ないことをちゃんとわかってもらいたかった。
「ここ、私のふるさとなの」
(……そうなんだ)
「うん。でも私は八年間戻ってこなかった。戻れなかったの」
美春が訝しげに目を細めた。
依子は続ける。
「緋水の神様……ここの土地神様に私の魂を受け入れてもらえなくてね、ここから離れなくちゃならなくなったの」
(……?)
「でも美春さんが私の魂の形を変えてくれたおかげで、私はここにまた戻ってこれた。美春さんにそんな気がなかったのはわかってるけど、それでもここに戻ってこれたのは美春さんのおかげ」
(それは……)
「だから、恨むどころかむしろ感謝してるの。美春さんが負い目を感じる必要なんてないんだよ」
(……)
美春は何も言わない。無表情な顔は、話を理解できているかどうかもよくわからない。
ただ、納得はできていないようだ。
(……私の犯した失敗が功名だったと?)
「結果的にね。だから気にする必要はないんだよ」
(……それは、責任を負わなくていい理由には、ならない)
無表情に美春は思い捨てた。
「そんな、頑なにならなくても」
(違う。あなたはもう縁の力を失ってしまったんでしょう? それは決して軽くないんじゃないの?)
「――」
真正面から問い掛けられて依子は息が詰まった。
それは――その通りだった。生まれた時からそれがあるのが当たり前で、今ここにないというのは、強烈な違和を感じて、
何より、怖い。
感覚を失うということがこんなにも怖いとは思わなかった。この一週間そ知らぬ顔をしながらも、ずっと不安だった。
だが、
「……うん、それは確かにそうだよ。でも、何かを失ったわけじゃなかった」
(……え?)
「周りは何も変わっていないよ。友達は普段と同じように接してくれるし、家族は昔と同じように温かい。大切な人たちはみんな変わってないの。変わったのは私だけ」
(……)
「……ううん、本当はみんな変わっていくのかもしれない。でも私はそれに気付かないし、周りも私の変化に気付いて変わるわけじゃない」
(……)
「私がどう受けとめてどう呑み込むか。たぶん……大事なのはそれだけだと思う」
何かが変わるということは、それほど特別なことではない。いつだって世界は変化し続けているし、永遠に続くものなど、ない。
力を失ったこと。それは決して依子の存在や意味を否定するものではないし、うつろいゆく日常の1ページにすぎない。
みんなあらゆる変化の中を生きている。失いたくないものもあるだろうし、失ってしまった者もたくさんいるはずだ。それでもそれを受けとめて生きている。
依子はこれからも生きていくのだ。ならばきちんと受けとめて、日常を歩んでいかなければならない。不安でも、怖くても、生きる気があるなら進まなければならない。
そしてその中で、大切なものを見つけていくことこそが大事なのだと思う。それは変わらない何かかもしれないし、変わってしまった何かかもしれない。
その大切なものが、自分にとっての確かなものになるのなら、不安や怖さを乗り越えられるのではないだろうか。
「もう起こってしまったことを変えることはできないよ。私にできることがあるとしたら、『頑張る』、それだけだと思う」
美春は無表情に思念を飛ばした。
(当たり前のことを当たり前にする……それが一番大事ってこと?)
「地道にまっすぐ進むことでしか人は生きていけないと思うの。劇的な何かを期待してもいいけど、それで何もしないわけにはいかないでしょ」
そして依子は、にこりと微笑んだ。
自分にできることを精一杯するのだ。そうすれば少しは、周りの人たちに何かを返せるかもしれない。
姉にも、きっと。
(そんなこと考えてたのね……)
美春は感心したように囁いた。
「あ、違うの。ずっとこんな考えを持ってたわけじゃなくて、さっきなんとなく思ったことなの」
(……そうなの?)
「美春さんが来るまでずっとうじうじ悩んでた。でも美春さんに会って、ふっきれたというか」
ちゃんと縁は繋がっている。これまでにやってきたことが水泡に帰したわけではないことを再確認して、これを途切らせてはならないと思ったのだ。
「だから、実はちょっと思い付きで言ったところもあるの。ごめんね、偉そうなこと言って」
そのとき、美春が優しげに微笑んだ。
綺麗な笑顔に不意を突かれ、依子はどきりとする。
(強いのね、あなたは)
「……そ、そんなことない、けど」
(でも、もう少し肩の力を抜いてもいいと思う)
「え?」
生霊の少女は笑みを収める。
(さっきから気になってた。無理して明るく振る舞ってるみたいだけど、本当は元気ないのかも、って)
「…………」
依子は言葉を失う。見た目は少女でも中身はずっと大人なのだろう。その鋭敏さは脱帽ものだった。
「かなわないなあ……」
(何かあった?)
依子はごまかし笑いを浮かべながら髪を撫で上げた。
「うん……なんていうか、私は恋愛には向かないなぁ、って話」
(……色事?)
「や、そんなんじゃなくて、ちょっと迷ってるというか」
うまく言えなくて、依子は悩ましげにポニーの黒髪を揺らす。
守は白い息を吐きながら、夜目を凝らして依子を探していた。
そんなに慌てるでもなく、屋敷の外を歩き回る。小降りの粉雪が僅かながらうっとおしいが、常夜灯が視界をかなりクリアにしていた。
しばらくして、少し離れた東屋に人影を発見した。
二つの影が見えた。声から一人は依子と判断する。ただ、もう一方から声は聞こえない。喋っているのは依子一人だ。
誰と会っているのだろうか。
目を凝らすと、依子よりも一回り小さい少女が、依子と共にベンチに座っていた。
邪魔をしてはいけないと思い、守は物陰に隠れたまま待機した。
ぽつりぽつりと呟かれる声が耳に届く。立ち聞きはしたくなかったが、鋭敏な聴力が嫌でも拾ってしまう。
自分にも関係のある話のようだった。
依子は話した。姉のことを。守のことを。自分の気持ちのことを。
どちらも大好きで、だからこそ迷っていることを。
かつて依子は守に言った。相手を傷付けることを恐れて中途半端になってしまう、と。
あのとき依子は、理解のためなら踏み込むと明言した。しかし今、果たして同じことを言えるかといったら、言えないかもしれない。
あのときは縁視の力があった。だからあんなことを言えたのだ。だが今は違う。今の自分は裸に等しい。ただの弱い一人の人間だ。
それでもいい。やるべきことは決まっている。依子はそれを包み隠さずに話した。
「もう私はマモルくんに会わない方がいいのかもしれない。会うと意識するし、向こうも私を意識する。でもそれだと、お姉ちゃんに悪いから」
(……譲るの?)
「譲るなんて……マモルくんは物じゃないよ。でもまあ、そんな感じ。私よりもお姉ちゃんの方が絶対マモルくんのこと好きだと思うし」
(……)
それが一番だと依子は考えていた。守には悪いが、姉を悲しませたくなかった。
「随分とシスコンかもね。でも、そうしたいから」
(……本当に?)
美春が首を傾げて言った。
それは別に普通の、何でもないただの問い掛けだった。思念の響きも決して強くない、素朴な問い。
なのに、なぜか依子は怯んだ。
(本当に、そうしたいの?)
重ねられる問い。
「う、うん」
(……それで、あなたのお姉さんは幸せになれるの?)
「……え?」
もちろん、と言おうとして、なぜか躊躇した。
どうして。
(……私はその人と会ったわけではないから、本当のところはわからないけど、でももし私がその立場なら……嬉しくないと思う)
「……」
(その決意はお姉さんと話をして出した結論なの?)
依子は首を振る。
生霊の少女はため息をついた。
(それじゃ意味がないよ。一人だけわかったつもりになっても、一方通行になったらどうするの?)
「でも……」
(話をすること。あなたがお姉さんのことを大切に思っているのなら、なおさらね。お姉さんのこと苦手?)
「……ちょっとだけ」
(でも頑張らなきゃ。当たり前のことをやり抜くなら、お姉さんとちゃんと話さないといけない。そう、思う)
「……」
厳しいな、と依子はうつ向く。
話す。ただそれだけのことをするのにこんなにもためらってしまうのは、自分に勇気がないからだろうか。
(依子)
名前を呼ばれて依子は慌てて顔を上げた。
すぐ目の前に小さな手が伸ばされていた。
驚く間もなく、小枝のように細い指が頬に触れる。
ひやりと冷たい感触は、周りの寒々とした空気よりもずっと肌に浸透してくる。
(あなたはもっと好意を受け入れるべきだと思う。他の人の幸せを願うのも構わないけど、自分が傷付いてまでそれをする必要はどこにもない)
両頬を優しく挟まれながら頭に流れてくる思念。
諭すような言葉はまるで母親のように慈愛に満ちていたが、依子は素直に頷けなかった。
「でも……お姉ちゃんはいつも誰かのために生きているんだよ? なのにお姉ちゃんのために生きる人は誰もいないの?」
(あなたがいるじゃない)
「私なんか――」
(家族がいる。好きな人がいる。守りたい人がいる。お姉さんを支えるのは周りの人たち。いとこの子だけじゃない)
「……」
(肩の力を抜きなさい、依子。生きるのは大変だけど……そうね、『楽しめる』ことなのだから、そんな泣きそうな顔をしてはいけない)
頬を包む両手に微かに力がこもった。
(いとこの子に会いたくないのなら離れてもいい。でもそうではないのなら、少しでも一緒にいたいと思うなら、その気持ちに素直になるべき)
「…………私は」
(自信を持って。あなたはいろんな人たちを助けてきたのでしょう。それは縁の力じゃなく、あなたのおかげ。そんなあなたが、姉を支えられないわけがない。いえ、ひょっとしたらもう支えになっているのかもしれない)
「…………」
少女はとても深い、祝福の笑みを湛え、耳元で囁いた。
(偉そうなことばかり言ってごめん。話は終わり。もう行って。このままだと風邪をひいてしまうから。ほら、迎えが来てる)
美春の手が離れ、依子の後ろを指差した。
振り向くと、守が小さく白い息を吐いて立っていた。どこか気まずそうな風だ。
そして顔を戻したとき、もう少女の姿はなかった。
「美春さん!」
呼び掛けにどこかから思念が届いた。
(さようなら、依子)
「また、また会えるよね?」
(……)
しばしの沈黙の後、返事が返ってきた。
(……友達でしょ? なら……きっとまた会える。お互いに、縁を大切に思っていれば)
思念の声はどこか嬉しそうだった。
「約束だよ? 絶対にまた――」
(うん。またね……)
そうして思念は闇に消えた。
二つの人影が離れていくのを遠くから見つめ、美春は小さく頷いた。
(ちょっとすっきりしたかも。会えてよかった)
間近にいる守護霊の少年に囁く。
少年のからかうような思念が返ってきた。
美春は僅かに頬を赤らめる。
と、
(どうしたの?)
不意に、少年の気配が緊張と警戒に変わった。
(……?)
顔を上げる。そして左に目を向けて、よく目を凝らした。
人影が一つ、闇の中で微かに揺れ動いた。
(誰?)
思念を飛ばすと、相手は常夜灯の下にゆっくりと姿を現した。
日本人形のように綺麗な黒髪を持った、美しい女性だった。
着物姿の大和撫子。肌は雪に負けないくらい白く、服の上から窺えるほっそりした肢体は控え目ながら女性らしさに満ちていた。
和傘をさしたその麗人は、厚着でもないのに、寒空の下で身じろぎ一つ見せない。
(……あなたは?)
思わず飛ばしてしまった思念に、麗人は答えた。
「姉です」
短い答えに美春ははっと気付く。
(依子の……お姉さん?)
「神守依澄です。先程は妹がお世話になりました」
姿勢のよい丁寧な一礼に美春はつい見とれる。
(……見てたの? 気配を感じなかったけど……)
「……」
依澄と名乗った女性は、質問に答えなかった。
ただ、言った。
「あなた……言霊を使いますね?」
(!?)
唐突な質問に、美春はらしくもなく狼狽の表情を浮かべた。
依澄の言葉は質問というより確認に近い響きだった。確信しているのだろうか。
(……わかるの?)
「はい……私もそうですから」
(? でも、普通に話して……)
「言霊の制御に多少は慣れていますので」
軽く言ってのけたが、それがどれほど凄いことか、美春にはわかる。強い霊力を持つほど、その制御は難しいのだ。
目の前の美人は美春が出会った中でも最高レベルの霊能者だ。気味が悪いくらい魂が安定している。
何より、美しい。外見もだが、魂そのものが。
本当に人なのだろうか。疑問さえ感じてしまう程に、体と魂が完璧に調和している。
依子が苦手と言った意味がわかる気がした。彼女は『ひどく』特別だった。
美しさに目を奪われていると、依澄がおもむろに傘をたたみ始めた。
小さく一礼する姿に、美春は戸惑った。一体、何を。
そして、
『あなたは言霊を使えません』
瞬間、強烈な霊波が美春の魂を縛った。
剥き出しの魂に直接言霊をぶつけられて、美春はたじろぐ。
しかしそれも一瞬で、すぐに立ち直った。
(急に……何?)
予告もなしにいきなり不意打ちを喰らわされたことに少しむっとして、美春は相手を睨んだ。
依澄は動じた様子もなく、言った。
「喋ってみてください」
(……?)
そこで美春は思い返す。今、彼女はなんと言った?
口を開いてみた。
「……まさか」
呟いた瞬間、美春は自らの口を両手で押さえた。
霊波が……出てない?
もう一度口を開く。
「あ……」
やはり、霊波は出てない。
恐る恐る顔を上げると、依澄は満足げに微笑んでいた。
「……あなたの言霊の力なの?」
依澄は頷く。その顔には何の邪気もなく、つい見とれてしまう。
一目でこちらが言霊の力に縛られているのを見抜いたのだろうか。
「通じるようですね……では、これも」
さらに依澄は、小さなお守りを差し出してきた。
「……これは?」
「この土地の神様のお守りです。中に私の言霊の力を込めた護符が入っています」
依澄は雪より透き通る、綺麗な声で言った。
彼女の言霊の力は声だけではなく、書いた文字にまで影響するらしい。すぐに消える声とは違い、文字の力は破損しない限り半永久的に残るのだそうだ。
つまり、これを身に付けていれば、美春はもう言霊の力に悩まされずに済むのだ。
思いもしなかった出来事に、美春は喜ぶより先に困惑していた。
「どうしてこんな……」
依澄は再び微笑む。
「……依子の友達、ですから」
「……それだけで?」
「あなたのような方が依子の周りにいて下さるのですから、きっと……あの子は幸せですよね」
目を細め、穏やかに微笑む依澄。
その目は何を見ているのだろうか。美春には判断できなかった。
ただ、彼女が本当に妹を大切に思っていることは理解できた。
「……あなたがおせっかい焼きだということはわかった。姉妹揃ってお人好しね」
「……」
依澄は何も言わない。
美春は相手の裡を推し測るように強く見据える。
「……あなたは肩の力が抜けているようね」
「……?」
「妹とは違うってこと。あなたは無理してないみたいだから」
「……」
美春は姉妹の間に決定的な違いがあるのを確信した。それは能力の差ではなく性質の差で、依澄の異常性を際立たせるものだったが、納得できるものだった。
これに比べると依子は随分と正常だ。そしてこれは、憧れたり目指したりする地点にはないのかもしれない。
美春はため息をついた。
「依子と話をしてあげて。あの子の葛藤は些細なものだけど、その些細なものに迷うのが普通の人だから」
依子は姉とは違うのだ。助けがないと生きていけないし、助け合って生きるのが当たり前だ。
依澄のように助けっぱなしの人間の方がおかしいのだ。
「ありがとうございます。……駅までお送り致しますが」
背中を向けた美春に、依澄の声が届く。凛として、雪よりも清涼な音。
「いらない。あなたはさっさと家に戻って、妹に構ってあげて」
「……」
「あとありがとう、お守り。すごく嬉しかった」
「……はい」
美春は返事を聞き届けると、振り返りもせず、そのまま歩き出した。
そこで依澄は言った。
「あなたも、生きることを『楽しんで』下さい」
一単語だけ強調して言われた。依子との話を聞かれていたのだろう。
少し前ならあんなこと、誰に対しても言わなかったかもしれない。
でも、今の美春には友達ができたから。
「ええ、お互いにね。依子によろしく」
それだけ言って、今度こそ美春はその場を後にした。
少しずつ降り積もっていく雪の絨毯に、生の足跡をしっかりと刻み込みながら。
屋敷に戻った依子と守は食卓で温かい料理に出迎えられた。
羊肉ステーキにほうれん草と人参のソテーを添え、ミートボールとトマトのスープ、二種類のサラダが脇を彩る。デザートにフルーツの盛り合わせが並ぶ。
朱音は帰ってきた二人ににこやかな笑顔を振り撒くと、すみちゃんももうすぐ来るからちょっと待っててね、と言った。
濡れた髪を拭き終わる頃になって、依澄が姿を現した。
依子はつい気を張りそうになったが、美春の言葉を思い出して小さく息を吐いた。
肩の力を抜く。それはたぶん、いつもの、当たり前の依子でいろということなのだろう。
難しいことではない。本当に、ただの依子でいればいいのだ。
この世界で、ただ一人の人間として、唯一の自分として。
やがて全員が卓につき、にぎやかな夕食が始まった。
食事を終えて依子が一息ついていると、向かいに座る依澄が言った。
「お風呂、一緒にどうですか?」
依子は意表を突かれて目が点になった。
「あ……うん」
なんとなく頷くと、なぜか依澄はにっこり笑った。
こちらが驚いてしまうくらい嬉しそうな顔だった。
緋水家の浴場は広い。
浴室ではなく浴『場』という時点でそれはもう間違いない。実際に目にすれば、浴場から『大』浴場に格上げしたくなるほどの広さだ。
これもやはり大人数がいた頃の名残だった。昔は真ん中を壁で仕切って男女別に分けていたらしいが、今はもう壁も取り除かれている。
掃除が大変だが、そこはお手伝いに任せている。ちなみに現在緋水家が雇っている使用人は三人で、主に掃除担当である。
その広々とした浴場の隅で、依子は依澄に髪を洗ってもらっていた。
熱気のこもった浴場には二人しかおらず、シャワーの音がやけに虚しく響く。
依子はちょこんとイスに座り、背後の姉に任せる。
依澄は依子の黒髪を優しげな手つきで撫でると、シャワーですすいでいった。それから手の平にシャンプーを泡立て、丁寧に洗い始める。
「依子」
ごく自然に名を呼ばれた。それに対して依子は流されるように声だけを返す。
「なに?」
「守くんのこと、好きですか?」
心臓が止まりそうになった。
「なっ……!?」
振り返ろうとする依子の肩を、依澄は両手で押さえ付ける。
「動かないで下さい」
「……うん」
織物を織るように、依澄の手つきは繊細に動く。
くすぐったい感触が心地よい。わしゃわしゃという泡立ての音が耳に響いた。
「……私は好きです。昔から、ずっと」
囁くように、依澄は言った。
「たぶん初恋で……今も変わらないです、それは」
「……」
「でも私は彼を選びません」
「……どうして?」
依子の問いに、依澄は答えなかった。
依澄が蛇口を捻り、再びシャワーからお湯を出す。
温かいお湯を髪にかけられて、依子は体をすくませた。目をつぶってじっと動かずにいると、泡とお湯が体を流れていくのが感じとれた。
「彼はあなたを選んでいますから」
シャワーの途切れと共に、依澄が囁いた。
数秒の間。
「……それだけ?」
依子の確認に依澄は頷く。
「でも、好きなんでしょ?」
「……」
「なのに諦めるの?」
「……諦めるのとはちょっと違いますが……そうですね」
その淡々とした返しに、依子は悲しくなった。なんでこの人はこんなにも執着がないのだろう。
「なんで……どうしていつもそうなの?」
「……?」
「ずっとそうじゃない。昔から、なんでも簡単に私に譲って、なんにも我が儘言わなくて、人の頼みを断らなくて、そんなの……」
好きなおもちゃも、お菓子も、お洋服も、依澄は人が欲しがれば簡単に譲った。
ものだけじゃなく、心さえそうだった。常に周りに気を配り、自分のことは二の次。いつも自分は後回しで、そっちのけだった。
「少しは自分を大切にしてよ……執着を持ってよ……私は、お姉ちゃんに幸せになってほしいのに……」
口が震える。言葉を募らせるうちに涙が溢れてきて、やがて止まらなくなった。
依子の願いはそれだけなのだ。自分ばかり幸せになるなんて、そんなのは間違っている。
もしかしたらこの世で一番優しいかもしれないこの人が、どうして幸せになれないというのか。そんなこと、許せるわけ、
「……私は幸せですよ」
「……え?」
とめどなく流れる涙の中、依子は姉の言葉にぼんやりと顔を上げた。
目の前の鏡に、依澄の微笑む姿が映っている。
「家族がいます……好きな人がいます……こんなにも愛してくれる大切な妹がいます」
「……」
その言葉はさっき美春が口にしたことと重なるようで、依子は奇妙な既視感にとらわれた。
「それに……私の何よりの望みは、『他の人たちの幸せ』なのですから、私自身が恵まれても、それは私の幸せにはなりません」
「……どういう意味?」
「私は、自分に執着を持つことが『できない』んです」
さらりとした調子で、依澄は言った。
依子は押し黙った。
「……そういう性質なんです。まったく執着がないわけではありませんが、他人と自分を天秤にかけたら、他人を優先してしまう。それは変えようがないし……変える気もありません」
「……マモルくんが欲しいとは思わないの?」
「あなたを悲しませてまで欲しいとは思いません」
けれんみなど微塵もない言葉。
依子は何も返せず、ただうなだれた。
「でも……私は……」
不意に温かい感触が背中いっぱいに広がった。
依澄が依子の体を背後から抱きしめたのだ。
「お、お姉ちゃん!?」
いきなりのことに依子は頓狂な声を上げた。
細腕が強く体を締め付けてくる。痛くはなかったが、乳房の柔らかい感触と肩越しに頬にかかる吐息が密着を明確に感じさせ、ひどく気恥ずかしくなった。
「……最初、あなたに会いに行くのが怖かったんです」
「――え?」
意外な告白に依子は目を丸くした。
「恨まれているかもしれない。そうでなくても会いに行ったりしたら、あなたに嫌な思いをさせてしまうかもしれない。そう思うと……怖くて仕方ありませんでした」
「……」
それは少なからず驚きだった。ほとんど完璧とも言える姉が、そんなことを思っていたなんて。
「……でも、私の恐怖よりもあなたの不安を取り除く方が大事でしたから、私はあなたに会いに行きました。……行ってよかったと思っています」
依澄は諭すように耳元で囁く。
「私はそうしたいからそうしました。あなたもそうしてください。だから――答えて。守くんのこと、好きですか?」
真摯で真剣な問いに、依子は咄嗟に答えられなかった。
だが、ひょっとしたら、もう心の中では決まっていたのかもしれない。
拙く淡い答えが、七歳の頃から。
依子は高揚する胸を押さえて深呼吸した。
「……好きだよ。たぶん、もうずっと前から」
依子にとって、守は兄だった。なぜならば、姉が好きになった相手だったからだ。
二人が結婚すれば、守は自分の兄になる。幼いながらそんな知識と認識があり、依子はずっとそれを受け入れてきたのだ。
だが、本当に心の奥底では。
「好き。マモルくんが大好き。ずっといっしょにいたいくらい大好き」
「……」
依澄は腕の力を緩め、体を離した。
依子は体ごと振り返って姉に向き直る。
顔を見ると、微笑ではなく、はっきりと深い笑みを湛えていた。
「今のはなかなか可愛かったですよ、依子」
「……へ?」
「肩の力も抜けてるし、素のあなたって感じですね。それでいいんです」
「……」
美春と同じようなことを言う。
「あとは、彼に伝えるだけですね」
「え?」
「告白して、キスの一つでもしてあげたらどうですか?」
「な……」
依子は絶句して、息を呑む。昼の、川辺での出来事を思い出して、思わず赤面した。
茹で蛸のようになってしまった依子に依澄が首を傾げる。
「……ひょっとして、もう済ませてしまいましたか?」
「な、何が!?」
反射的に聞き返したが、依澄は無視してうんうん頷いた。
「……ならもうあとは一つしかないですね」
「……」
「今日は守くんも泊まっていくようですし、アタックしてみたらどうですか?」
「……」
からかわれているのか、それとも本気で言っているのか、姉の言葉に依子は困り果てた。どう答えろと。
「今日は随分饒舌だね……」
「あなたと話せて嬉しいからですよ」
「からかわれてばかりじゃおもしろくない……」
「いえ、結構本気です」
存外に強い声だった。
「依子次第ですけど、好きな人に抱かれるのも悪くないと思います。それとも、怖いですか?」
「……」
急にそんなこと言われても、と依子は困惑した。
少し想像する。
数秒後、恥ずかしさに思わずうつむいた。
だが、あまり嫌な気はしなかった。
「勇気が持てないなら後押ししますよ?」
「……」
依子は白い湯気の真ん中で高鳴る胸に倒れてしまいそうになった。
布団の敷かれた客間で、守は一人考え事をしていた。
昼間、依子が言った九年前のことを思い出していたのだ。
あのとき依子は言った。
――わたし、マモルくんのこと好きだよ。
あのときはまだ依子より依澄の方が好きで、守は彼女を妹としか見てなかった。
だから守は言ったのだ。ありがとう、と。
あれは誤魔化しの言葉だ。稚拙な想いをうやむやにする、卑怯な言葉。
依子は続けて言った。
――あとね、お姉ちゃんのことも好き。だからずっと、三人いっしょにいたいな。
依子自身もあまり憶えている様子ではなかったが、言葉だけ捉えると親愛の告白のようだった。
だがもし、あれが恋愛の告白なら、
(先に告白されてたんだな、ぼくは)
あるいは機を逃したのかもしれない。守はつい苦笑した。
依子のことを好きになったのはそれから五年後のことだ。
高校に通うために神守市内で一人暮らしを始めて、そして久しぶりに会ったいとこの少女に、守は次第に心を奪われていったのだ。
小学生から中学生になって、可憐さに磨きがかかっていくにつれて、さらに想いは強くなった。
理由があるかと問われると、はっきりとは答えられない。
強いて言うなら、依澄よりもずっと人間味があって、輝いて見えたためだろうか。
依澄はしばしば超然的な空気を漂わせていたが、依子はもっと等身大で、より身近に感じたのだ。
例えるなら、高い嶺に咲く花と、庭先に咲く花の違いだ。
前者は美しいが遠すぎて現実感がなく、後者は前者ほど美しくないが近くにいて安心させてくれるのだ。
守は後者の花を愛しく思い、守ろうと決めた。
いつか前者を守る立場に戻らなくてはならないと知っていても。
とんとん、と襖を叩く音がして、守は物思いを中断した。
顔を上げて襖を見やる。
「どうぞ」
襖が開いた瞬間、守は目を見開いた。
「……」
依子が顔を真っ赤にして立っていた。
パジャマ姿である。ピンクの布地は薄くはないものの、体のラインが普段着よりも幾分はっきりと表れて色っぽい。
うつ向いたまま依子は動かない。
守は小さく唾を呑み込むと、とりあえず声をかけてみた。
「あの、どうしたの?」
「……」
依子は答えず、恐る恐るといった調子で顔を上げた。
「……」
「依子ちゃん?」
「……は、話が、」
か細い声でそれだけ言うと、また口を閉じてしまう。
「とりあえず入って。廊下は寒いから風邪ひくよ?」
「……」
こくん、と頷くと、そそくさと襖を閉めて中に入ってきた。守は隅の座布団に手を伸ばす。
「あ、ここでいいから……」
依子は首を振ってそれを制し、既に敷かれた布団の上に腰を下ろした。
そのまま体操座りをする少女。脚線がより強調されるようで、守は思わず目をそらした。
「は、話って?」
「うん……」
訊いてみるものの、依子はなぜか話さない。
何度か逡巡して、何かを言おうとするのだが、またすぐ口をつぐんでしまう。
言いにくいことなのだろうか。それとももっと別のことか。
「……昼間はごめん」
先に話を切り出したのは守の方だった。
依子は不思議そうな顔をした。が、すぐに思い出したのか、また顔を紅潮させた。
「あ……その……」
「ご、ごめん。なんていうか、思わず……って思わずでやっちゃいけないんだけど、でもぼくは本気で、」
狼狽してうまく言葉がまとまらない。守は情けない気分になった。
「……ん。わかってる」
依子が頷いた。
守はいとこを見据える。依子は赤面したまま口をぎゅっ、と引き結んでいる。
「……」
「……」
沈黙。
長い静寂だった。暖房の音がぼう……と静かに鳴るだけの室内で、二人はぎこちなく固まる。
どれだけそうしていただろうか。おそらくは一分も経っていないだろう。
だが守には永遠にさえ思えた。この瞬間で全てが止まっているとさえ感じた。
うつむいたまま視線を合わせないでいると、依子が微かに身じろぐ気配が伝わってきた。呼吸のための胸の収縮が、空気を揺らすようだった。
「……お母さんが前に言ってた」
ぽつりと漏らすように、依子は言った。
「私の名前、依子の『依』にはいろんな意味と思いをこめたんだ、って」
「……それは」
守は顔を上げる。
「たよる、とりつく、よりかかる、意味だけ並べると随分悪いイメージだけど、そうじゃないんだって」
「……」
「いいよりどころを持てるように、そして誰かのよりどころになれるように、そんな意味を込めてこの名前にしたんだ、……って」
「……」
守は頷く。それはさっき、夕食前に朱音から聞かされていた話だった。
依澄のときにも同じ理由でその漢字を使ったという。『子』の字をつけたのは子年だったかららしい。
朱音は楽しそうに話していた。
『よりどころっていうのは特別なものじゃないの。ちょっとだけ自分を支えてくれる、ささやかな宝物みたいなもの。私は子供たちにそれを見つけてほしいなと思って、名前をつけたのよ』
ちなみに私のよりどころはすみちゃんとりこちゃん、おまけであっくんね。そう言って彼女は笑っていた。
伯母の顔は穏やかで、娘への深い愛情に満ちていた。
それもきっと特別なことではない。二人を見ていればわかる。それは、朱音がとても依子を愛していると、ただひたすらに当たり前のこと。
当たり前に、大切なこと。
「私は――依子。特別な力なんて何も持たないけど、私は私。これまでも、これからも、それは変わらない」
「……うん」
「一つ一つやるべきことをこなしていって、ずっと生きていくよ。それはたぶん、みんな同じだと思うから」
「うん」
そこで依子は顔を上げ、守を見つめた。
「マモルくん」
「う、うん」
まっすぐ見つめられて、守は少しだけ落ち着かなくなった。
「私ね、マモルくんはお姉ちゃんといつか結婚すると思ってたの。だからマモルくんはいつまでも私の兄で、私もずっと妹だと思ってた」
「……」
「でも、それはもう違う。九年前のあやふやな想いとも違う。私はよりどころを定めるために、今の答えを怖がらずに出さなきゃならないの。だから、言うね」
そして、依子は紅潮した顔をぎこちなく笑顔に変えて、懸命な調子で言った。
「大好きだよ、マモルくん……誰よりも、何よりも」
その言葉は胸に染み込むように、じわりと心に浸透した。
九年前とは違う、明確な愛情を持って放たれた言葉。
今の彼女が出した精一杯の答えに、守は嬉しさのあまり卒倒しそうだった。
だから、
「……」
守は無言で目の前の想い人を抱き締めた。
「っ、」
驚いたように身を固くする依子。
力一杯抱き締めたりはしない。ただ彼女の温もりを感じていたかった。
少女の体から少しずつ固さが抜けていく。しばらくして、体操座りを崩した依子の手が、守の背に回された。おずおずとした手つきだった。
「ぼくも、大好きだ」
「……」
間近にある頭がこくりと頷いた。
「……」
それからしばらく、二人は動かなかった。
守は急速に高鳴る左胸にうろたえそうになる。
依子も同じなのか、固まった体を動かそうとはしなかった。だが、嫌がられているわけではないようだ。
少しだけ、手を動かしてみた。
「!」
依子の肩がびくりと強張る。守はそれに驚いて再び硬直した。
パジャマ越しに、少女の鼓動と温もりが伝わる。
「……」
「……」
暖房の音が小さくなっている。暖かい部屋の中で温かい感触を受けながら、守は唾を呑み込んだ。
不意に依子が口を開いた。
「……したい?」
一瞬何を言われたのかわからなかった。
「……何が?」
「……だから、……その」
言い淀む依子の様子に守は訝しむ。しかし、
「…………え!?」
「察してよすぐに……」
「いや、だって、それって」
守がその意味に気付かなかったのは、そういうこととは無縁なイメージを依子に抱いていたからだ。だからその言葉に、守は驚くしかなかった。
「いや、まあ、その」
「私は、別にいいよ……好き合った人同士なら、普通……だよね?」
「それは……そうだけど、でも」
「しないの?」
「あ、だって、まだ早いかもわからない、ていうか」
「……お姉ちゃんとはしたくせに」
驚きのあまり、思わず守は依子から体を離した。
上目遣いに守を見やる依子。
「……私とはダメなの?」
「いや、そんなことは……って、なんでそのこと」
「……お姉ちゃんに聞いた」
「…………」
秘密にしておこうと言ったのは依澄さんの方なのに。守は心の中でぼやく。
「……」
また静かな空間が出来上がる。
一言で言えば嬉しい。だがあまりに唐突すぎて、どう反応したものか戸惑いがあるのも事実だった。
前にも同じような場面に出くわしたことがあるが、今回は自分の想い人である。より強い緊張が心を縛るようだった。
依子が、今度は幾分はっきりと言った。
「……『別に』なんて言い方は、ダメだよね。……訂正。してくれる?」
「いや、無理しなくても」
「無理じゃないよ。本当に……してほしい」
頬をうっすらと染めながら、依子はゆっくりと、はっきりと言った。
「……」
守はしばらく黙っていたが、やがて盛大にため息をついた。
自分のへたれ加減に呆れた。好きな相手からの申し出なのだ。躊躇なんていらない。
守のため息に依子がつらそうに目を細めた。
「……ごめん。急に何言ってるんだろうね、私。マモルくんも困るよね、いきなりこんな」
「いいよ」
守が短く答えた。
「え?」
「……好きな人にそんなこと言われて、断ると思う?」
「……マモルくんならあるいは」
「いやいやいやいや」
どんなイメージですか依子さん。
「言っとくけどぼくも男だからね。君の脳内の遠藤守像を根底から覆すくらいに激しくするかもわかんないよ」
「う……」
たじろぐ依子。目元に若干不安の陰が浮いた。
「……どサド」
「大丈夫、優しくするから」
「いらない」
「いや、なんでそこで意地張るの」
「したいようにしてよ。私もそうするから」
依子はどこかふっきるように言うと、おもむろに身を寄せてきた。
守はもうためらわなかった。小さな体を抱き寄せると、その唇に自身のそれを重ねた。
抵抗はなかった。驚くような反応もなく、柔らかく受け止めてくれた。お風呂上がりのしっとりした髪から、優しい匂いがした。
「ん……」
みずみずしい感触に、守はたまらない気持ちになった。髪の香りが、体の温もりが、唇の感触が、こちらの興奮をあっという間に高めてくる。
体を離し、二人はしばし見つめ合った。
「脱ぐね……」
依子の小さな手がパジャマのボタンを一つ一つ外していく。守はそれをぼんやりと眺めていた。
シャツの下には何も着けていなかった。前立ての間から覗く胸の膨らみが際どく映える。
ボタンを外し終えると、依子はそこで手を止めた。
「マモルくんも脱いでよ……私だけなんて、恥ずかしい……」
「あ……うん」
慌てて守も自分の服に手をかける。黒のトレーナーを脱ぎ去ると、鍛えられた体が露になった。
「……それは?」
右脇腹に貼られた湿布に依子が眉をひそめた。守は肩をすくめて、
「昭宗さんに肘もらっちゃったからね。ちょっと痣になってて。でも大丈夫。折れてないし、すぐに治るよ」
「朝のやつ? 痛くないの」
「多少は。まあたいしたことないよ」
しかし依子の目から不安の色は消えない。
「……やっぱりやめる?」
「そんなこと、できると思う?」
「……」
「正直、早く君を抱きたい。脱がすよ?」
守が手を伸ばす。前立てに触れようとすると、依子の顔が強張った。
守はあえて無視して、そのままパジャマを剥いだ。
「……!」
上の裸身が完全に現れた瞬間、依子が両腕で胸を隠そうとした。しかし守はその手を掴んで赦さない。
発育のよい胸が目に飛び込んできた。巨乳という程ではないが、思わず掴みたくなってしまいそうな綺麗な形をしていた。
羞恥心に真っ赤になる少女。
守は依子をゆっくりと布団の上に押し倒す。胸を凝視すると、依子は恥ずかしさからか目を逸らす。
腕を離し、守は白い双房に触れてみた。
「……!」
反射的に力の入る体の中で、二つの膨らみの柔らかさは別格だった。まるで生クリームみたいにねっとりと柔らかい。
最初こそ抵抗の動きを見せたが、優しく揉み込んでいくうちに、依子は受け入れるように身じろぐのをやめた。
守は美しい胸を丁寧に揉み回す。乳肌はしっとりと吸い付くようで、手の平に驚く程フィットした。
(ちょっと信じられないな……)
今こうして触れていることは夢なのではないか。そんな疑いさえ抱いてしまう。
桃色の先端が固さを帯び始めてきた。少しは緊張も解けてきたのだろうか。
「依子ちゃん、気持ちいい?」
耳に触れそうな距離まで唇を近付けて囁く。形のいいその小さな耳に触りたいと思ったが、守は一旦抑える。
「……」
返事は返ってこなかった。ただ、震える顎を微かに上下させる。弱々しい頷きだった。
たまらない嗜虐心にとらわれて、守は喉をぐびりと鳴らした。
真っ赤になっている右の耳たぶを甘く噛む。不意打ち過ぎたか、依子は反射的に首をすくめた。
唇で挟むようにくわえ込み、舌で感触を味わう。柔らかい耳たぶを唾液で濡らしていくと、よりいっそう震えが強くなった。
耳を舐めながら右手で胸を愛撫する。乳首に指を這わせると、依子は小さく喘いだ。
「かわいいよ、依子ちゃん」
「……」
依子は答えない。
「下も脱がすよ」
ぼんやりとした目を何度かぱちくりさせる。しばらくして無言で頷くと、ズボンをゆっくり下げようとした。
守はそれを最後まで待てなかった。おずおずと下ろしていく依子の手を掴むと、自身の手でズボンをずり下ろした。
下着ごと一気に脱がすと、少女の隠された下半身が明かりの下にさらされた。
「――」
依子は困惑と羞恥で固まり、次の瞬間左手で股の部分を隠した。
何かに耐えるようにぎゅっ、と目をつぶっているその姿に、守は心臓が壊れるかと思った。
普段見られない幼馴染みの様子は、気が狂いそうなくらい新鮮でかわいい。
守は正直に言った。
「ごめん。ひょっとしたら優しくできないかも」
「……」
「できるだけ痛くないようにするけど、抑え効かないかもしれない。すごく……興奮してるから」
依子は無言だった。
それでも左手をゆっくりとずらし、下腹部がよく見えるように腰を気持ち程度浮かせた。続ける意思はあるらしい。
現れた陰部は、随分と小さく控え目に見えた。静梨や依澄のものとも違う、薄く綺麗な肉質だった。
守は股間に右手を差し入れると、秘部に指を這わせた。割れ目に沿って上下になぞると、ぴくぴく腰が動いた。
人差し指と中指で秘唇を撫であげる。誰も触ったことのないそこは、淡い綺麗な桃色を保っており、ここを今から征服するのかと思うと下半身が激しくうずいた。
割れ目を執拗になぞり続ける。依子は抵抗しない。こちらに気を遣っているのかおとなしくしている。それとは正反対に、指を縦に動かすたびに体だけが小刻みに反応した。
柔らかい感触をひたすら楽しんでいると、徐々に割れ目から液が漏れ出てきた。
感じてるかどうかはともかく、体は反応している。これなら多少大胆に攻めてもいいかもしれない。
指を、中に侵入させた。
「!」
瞬間、依子の体が一際大きく震えた。
守は耳元で、ためらい気味に囁く。
「依子ちゃんの体、触ってるだけで気持ちいいよ。だから……もっと触りたい。いいかな?」
返事はなかなか返ってこなかった。
十秒以上経過してから、ようやく微かな声で「ん……」と呟かれる。
頷きがなければ拒絶の声とも取れる声。
中指を膣の入り口に入れて、小さく抜き差しを繰り返す。始めは慣らすようにゆっくりと動かし、徐々に大きくかき回していく。
処女の秘壺は狭かった。だが中のぬめりは確実に増しており、指に淫水の熱さが伝わってくる。
「……、……っ」
依子は口をぎゅっ、と結んだまま懸命に耐えている。
「……ん……っ、……ッ!」
まともな声ではなく、唇の隙間から漏れ出る空気の塊のような声だった。意識的な言葉はなく、それはまるで依澄のようだと守は思った。
「依子ちゃん、ひょっとして緊張すると声出なくなるタイプ?」
「……」
図星らしい。依子は赤面したまま何も答えなかった。
締め付けが強くなった。中の肉が指に絡み付くように、ぎゅうぎゅうと締めてくる。
そんな膣中を守は容赦なくかき回した。まとわりつく愛液が小さく音を立てる。淫らな刺激音が耳に誘惑の歌を聴かせた。
依子はもはやろくに抵抗できない状態だった。いやいやをするように首を振っていたが、女唇をいじられていくうちにその動きはかき消されていった。
守は開きっぱなしの少女の口を自らのそれで塞いだ。
舌を絡め、唾液を塗り込み、口内をねっとりと犯す。丁寧なキスを送り込むと、依子の体はみるみるうちに弛緩していった。
呼吸が困難になる程濃厚なキスを続ける。右手は秘部をひたすらにかき混ぜ、左手は少女の背中を通って左胸を、ときに右胸を、執拗に揉みほぐした。
「ひぅ……っ、んっ……はぁ……っ、ん……」
処女とは思えない程、依子は淫らに乱れた。
「んんっ……う……ん……あ…………んっ」
きっと意識しての喘ぎではないだろう。声自体は小さく、部屋の外に洩れるかどうかも微妙なくらいだ。
だがその声は、青年の情欲の波を高々と煽るのには充分すぎる効果を持っていた。
依子の目に快楽の昂りが、薄く涙となって滲む。
このまま指でいじり続ければ絶頂を迎えるだろう。だがそれは少し寂しい気がした。やはり、一緒になりたい。繋がりたい。
守は膣穴から指を抜いた。愛液が指先にまとわりつき、秘部と透明な橋を作る。
依子が不思議そうに守を見やった。潤んだ瞳は切なげで、困ったような、苦しそうな顔だ。
「……イキそう?」
「……?」
恥ずかしがるかと思ったが、依子は表情をあまり大きく変えなかった。
怪訝に思い、守は尋ねた。
「ひょっとして、依子ちゃん何もしたことない?」
「……?」
いまいち伝わってないようで、守は言葉を選び、訊く。
「いや、だから、その……自分でいじったり、とか」
「!?」
ようやく理解できたようで、依子は驚いた後、みるみるうちに真っ赤になった。
慌てて首を振って否定する。顔はりんごみたいに赤い。
「じゃあイったこともないよね」
「……」
知識としては知っているかもしれない。だがその感覚は経験しないとわからないだろう。
「さっきぼくに触られてるとき、変な気分にならなかった? 意識が飛びそうになったりとか」
おずおずと頷く依子。
「その先に絶頂があるんだけど……一回指でイっとく?」
気を抜く意味でもそれがいいかもしれないと思う。本番できちんと感じられるかどうかはわからないし、痛いだけで終わったりしたら依子に悪い。
依子は首を振った。
「痛いかもよ?」
「……大丈夫……だよ」
かすれた声で微笑む。
「マモルくんも……気持ちよくなって……」
「……」
健気な言葉に守は背筋がぞくぞく、と震えるのを感じた。
嬉しさと愛しさが入り混じり、元々高まっていた興奮がさらに高まる。
「ありがとう。ぼくも頑張るから」
依子が微笑と共に頷いた。
守はジーンズを脱ぎ、その下のトランクスも脱いだ。
薄いポリエステル製の下着を取り払い、現れた逸物は、豪儀に硬直していた。
仰向けに横たわったまま、依子が不安げに見つめてくる。
――ああ、見られてる。
守は少し恥ずかしくなった。依子に見られるのはなんだか特別な気がした。
ジーンズのポケットから財布を取り出す。その中から抜き出したのは、袋に入った薄いピンクの避妊具。
依子がそれを見て、眉を上げる。
「一応きちんとしとかないとね、こういうことは」
すると依子はなぜか苦笑いを浮かべた。複雑な面持ちと言えるだろうか。
そのまま体を起こす。脇に脱ぎ捨てられたパジャマに手を伸ばすと、普段ほとんど使うことのないだろうポケットを探った。
守が尋ねるのを制するように、依子は探り当てたものを突き出して見せた。
「……あれ?」
種類は違うが、守が財布から取り出したのと同じ物品だった。バラではなく箱だったが。
「……依澄さんが?」
依子が用意したとは思えなかった。少女はこくこくと頷く。
普段から常に用意しているわけじゃないだろう。昼間出かけているときに先を見越して購入してきたのだろうか。
もちろん依澄といえども未来予知ができるわけじゃないので、これもたまたまなのだろう。だが依澄にしては下世話な『お遊び』でも、きちんと後で意味を持ってくる辺りがさすがというかなんというか。
「神守に帰ったら、これでたくさん愛してあげるから」
「っ」
依子が微かに怯んだ。耳を真っ赤にしてうつむき、やがて小さく頷いた。
守は微笑むと、袋から避妊具を抜き取り、屹立した自分の逸物に装着した。
依子は自分から仰向けになった。生まれたままの姿の少女は、右手で胸を、左手で股間を隠して守をじっ、と見つめてくる。
守は膝立ちのまま、赤子のように這って近付く。
「依子ちゃん……」
白い両脚に手をかけ、横に開いた。軽い抵抗をあっさり押し退け、大事な箇所を目前に捉える。依子ももう目立った抵抗を見せなかった。
体を股の間に割り込ませ、怒張した肉棒を近付ける。繋がる直前というのは何度やっても緊張してしまう。
「ん……」
濡れた入り口を焦らすように肉棒で撫でると、依子が耐えきれないような喘ぎを洩らした。
今度こそ進入する。粘膜を擦り合わせて早く気持ちよくなりたいという欲望をこらえながら、ゆっくりと、ゆっくりと、亀頭を秘部の肉へと埋め込んでいく。
「んっ……」
苦しげな声が短く発された。守はそこで挿入を止める。
「大丈夫?」
「……」
返事はない。だが息を止めて歯を食い縛っている様子から、痛いであろうことは充分伝わってくる。
「力抜いて。入らないよ」
「……」
真上から声を落とすと、依子は駄々をこねるように首を振った。
「じゃあそれでいいよ。ちょっと乱暴になるけど、我慢してね」
下腹部をさらに押し込む。亀頭が未開拓の秘奥を切り開くように進んでいく。
依子の顔が苦痛の色を濃くした。声は抑えているが、どう見ても苦しそうだ。
徐々に肉棒全体が依子の中に埋まっていく。カタツムリが殻の中に閉じこもるように、ゆっくりと深く。
「…………」
涙目の依子が荒い呼吸と共にこちらを見上げた。まだだろうかと、もう限界のように瞳がぶれる。
「入ったよ」
「…………んっ」
必死で耐えるその様子は健気で、とても愛しく思った。
「今日は痛いだけかもしれないけど、何度も抱いて必ず気持ちよくさせてあげるからね」
耳元で囁くと、依子はぼんやりと口を開いた。
「……あ……これからも、するの……?」
「当たり前だよ。……言っとくけど、今すごく嬉しいんだからね。好きな娘を自分だけが独り占めしているんだから」
「……」
自分だけの、よりどころ。
「ずっとこうしたかったんだ。一回で済むわけがないよ。恋人として、これから君を何度も抱くから」
真剣に守は言った。
「こい……びと……」
かすれた声で虚空に呟く少女。
やがて嬉しそうに、とても嬉しそうに、依子は笑った。
「わたしも……いっしょかも」
「……その言葉、忘れないから」
守は微笑むと、腰を動かし始めた。
処女の膣は狭かった。先程あれだけ指でいじり回したにもかかわらず、棒を押し潰さんばかりに強い肉圧だった。
愛液で中はとろとろだが、その潤滑油が意味をなさないくらいにきつい。
見ると、何度か往復する中で血が滲み出してきていた。
痛いのも当然だった。今の依子に快楽は欠片もないだろう。ただ早く終わってほしいと願うだけかもしれない。
実際、依子は苦悶の表情で行為に耐えるだけだった。白い歯を噛みしめ、体を委ねて喘ぎ続ける。
だからといって、守は行為を早く終わらせたくはなかった。
力強い締め付けが射精を激しく促してくるが、恋人の肉壺を堪能し続けたいという思いがそれを拒んだ。
果てれば気持ちいいのはわかっている。しかしそこに到る過程をいつまでも味わっていたいという思いも同時にあり、往復をひたすら繰り返す。
「あ……んっ」
色っぽくも聞こえる依子の喘ぎ。たとえ苦痛の声でも、それは守の聴覚を簡単にとろかす。
……色っぽい?
「ん……あ……んっ、んんっ……あっ」
声に色が混じっている。締め付けは依然としてきついが、拒絶するような抵抗感はない。むしろ締め付けて離さないような。
(……感じてるのかな……?)
守は腰の動きを少しだけ速めた。
「ふあっ!」
それまでどこか抑え気味の声を洩らすばかりだった依子が、初めて大きな悲鳴を上げた。
「ごめんっ、痛かった?」
「……」
返事はなく、依子は落ち着きない呼吸を続けている。
はやとちりだったのだろう。守は乱暴にならないように腰の動きを再び抑えて、
「マモル……くん」
「……なに? どうかした?」
「……なにかヘンなの……」
「は?」
「痛いのに、痛くないの……頭がおかしくなりそうだよ……」
「…………」
守は一瞬呆気に取られて、思わず腰の動きを止めてしまった。
だがすぐに我に返ると、これまでよりも激しいピストンを打ち込み始めた。
「ひゃあ!? あんっ!」
間を置いた不意打ちに、依子は甲高い叫びを上げた。
「やっ、あんっ、……マモル、くんっ、激し……あっ、あんっ!」
もう無言ではいられないようで、最初よりもずっと大きく喘いだ。
守は抑えていた衝動を一気に緩めた。汗と液でまみれた色白の太股に、体当たりをするように腰をぶつけた。
ゴムに包まれた肉棒が奥まで突進する。根本まで完全に突き入れると、内側の肉がまとわり付くように蠕動した。
腰を引く。亀頭が出る寸前まで引き抜くと、襞々が引っ掛かって堪らない刺激を与えてくる。
再び奥まで貫く。すぐにまた引く。出し入れを重ね、互いの性器をゴム越しにひたすら擦り合わせた。摩擦でヒートしていく逸物は、まるで稼働中の電池のように熱かった。
目に映るのは必死に耐える恋人の姿。しかし、苦痛よりも快楽の色が強く見えるのは、守の錯覚ではないと思う。
守は腰の動きをさらに速めつつ、二つの胸の膨らみを鷲掴んだ。
「やっ……ダメっ」
乳首を人差し指の腹で撫で潰すと、依子は一際高く喘いだ。
執拗に柔らかい乳房を揉み回し、先っぽを刺激する。こねるたびにぴくぴく体が震えた。
守はもう全力だった。依子の体と声と匂いしか知覚できないくらい、行為に陶酔し、没頭した。
顔を近付け、胸から首筋に舌を這わせる。汗ばんだ肌の味はどこか背徳的な甘さがあった。
下から順にキスを贈る。胸、鎖骨、首筋、顎、頬、目元、鼻、額。とにかくあらゆるところに守は唇を添えた。
依子は揺れっぱなしの瞳を細めると、とても嬉しげな笑みを浮かべた。
「すき……だいすき……」
喘ぎと暖房の音に掻き消されてしまいそうな、そんなか細い声だった。
心どころか魂が締め付けられそうな程にゾクゾクした。愛しさが性欲を無茶苦茶に肥大させた。
守は依子の背中に両腕を回すと、ぐい、と抱き寄せるように持ち上げた。急に対面座位の体勢にさせられて、依子はひゃっ、と驚きの声を上げた。
「マ、マモルくん……?」
守は答えずに腰を突き上げた。
「あっ、いっ、」
これ以上入らないくらい深々と肉棒が突き刺さる。さすがに痛みが走ったか、依子は顔を苦くしかめる。
だが守は動くのをやめない。こんなに気持ちのいいこと、抑えられるわけがない。
「ふあっ、あんっ、やっ、やんっ、あ、あぁっ」
最奥に亀頭の先が当たる。粘液が割れ目から染み出て、桃色のゴムの根本まで垂れてきた。陰毛と蜜が絡み合い、部屋の明かりを受けて淫猥に光る。
守は歓喜する男性器の根本から先端まで、圧倒的な快感をむさぼるために意識をひたすらそれに傾けた。
避妊具を着けていてもまったく快感は阻害されない。依子の膣内の熱と感触はめまいがしそうな程に気持ちよく、もういつ射精してもおかしくなかった。
「マモルくん……マモルくん……」
うわ言のように依子は守の名を呟き続けた。守の首筋に両腕を回し、もたれかかるように上体を密着させてくる。
「あう……ダメ……」
力なく体を預ける依子。もう何も考えられないに違いない。突き上げられる肉柱に合わせて反射的に腰を動かすだけだった。
守はもう限界寸前だった。
守は高まってきた射精感を、ギリギリまで溜め込み我慢する。
この至福の時間はもう長くない。一秒でも長く、恍惚に浸っていたかった。
「あっ、んっ、あ、ひぅんっ、やあ……あんっ、ああっ……」
「依子ちゃん……もう……」
二人は至近で見つめ合い、互いに嬉しさと気持ちよさの入り混じった笑みを浮かべ合った。
欲望に覆い尽くされた男性器が激しく秘壺を掻き回す。女陰から愛液が飛沫となって散りそうな程に、二つの陰部は淫らに呼応した。
やがて、頭の中が白い閃光に埋め尽くされるような感覚と共に、守は絶頂を迎えた。
「んん――――――っっ!!」
ゴムの中に精液が吐き出されると同時に、依子の体が感電したように揺れた。
震えはしばらくの間止まらず、依子は目を瞑って懸命に耐えていた。
徐々に互いの体から力が抜けていく。しなだれる少女の体を優しく抱きとめながら、守は萎れた肉棒を引き抜いた。表面を粘液が伝い、避妊具が微かに光を反射させて輝いていた。
二人は脱力した体を密着させたまま動かなかった。
ぼんやりと目線を交差させた状態で何も言わず、ただ抱き合うだけだった。直接肌の温もりを、目の前の息遣いを、心臓の鼓動を、たくさんの汗と一緒に感じ合っていた。
依子がにっこりと嬉しげな笑みを浮かべた。
守もつられて笑った。そしておもむろに顔を近付けて、優しいキスをした。
二人は抱き合ったまま、愛情を確かめるように唇を重ね続けていた。
「結婚?」
翌日、朱音が言った一言に、依子は荷物をまとめる手を止めた。
「誰が?」
「りこちゃんが」
「……誰と?」
「まーくんと」
「…………」
依子は目を細めて実の母親を見やった。
「……なんで?」
「え? だってりこちゃん、まーくんのこと好きなんでしょ?」
「いや、それはそうだけど……」一瞬の間。「……なんで知ってるの?」
「かわいい声だったからね」
顔が刹那で真っ赤になった。昨夜の情事が脳裏に走り、依子はうつむいてしまう。
「かわいいわーりこちゃん。あっくん泣いてたわよ」
「……」
そんなに大きな声を出していたという意識はなかった。出していたとしても広い屋敷の一隅でのこと、気付かれていないと思っていたのに。
いや、まあそれはともかく、
「……だ、だからって、なんで……結婚……なんて」
うまく声が出なかった。恥ずかしさが顔を真っ赤に覆っているようだ。
「愛し合った二人の行く末なんて、ハッピーエンドなら一つに決まってるじゃない。王子さまがニューヨークで花嫁を見つけることだってあるんだから」
全然関係ないし、そもそもそれ映画だし。依子はため息をつく。
少し落ち着きを取り戻すと、小さく首を振った。
「……ダメだよそんなの」
「どうして? 日本じゃ十六歳で結婚できるわよ」
「まだ高校生だもん。それに……」
依子は昨日友達に言われたことを思い出す。
「……結婚もいいけど、簡単に道を決めてしまうのももったいない気がするの。まだまだ先は長いし、たくさん考えて決めたい。だって……楽しみたいもの」
「……」
朱音は微かに眉を上げると、それからにっこり笑った。
「そっか。先は長いものね。結婚はちょっと早すぎたかな。お母さん先走りすぎちゃった」
「うん」
依子は小さく笑う。
荷物は少ないので整理はすぐに終わった。旅行鞄のジッパーを閉め、依子は軽い息を吐く。
朱音が笑顔のまま言った。
「まあでも、婚約くらいは交わしてもいいんじゃないかしら」
「……婚約って」
大袈裟なことだと依子は苦笑を浮かべる。
「……将来、マモルくんよりもっといい人が現れるかもしれないよ? そのときはどうするの?」
「それは絶対にありえないわね」
断言された。
依子は思わず口ごもった。正直自分でもありえないなと思っていたから。
数日前まであんなにも態度を決めかねていたのに、今は体の内側に根を張るように、心はぶれない。
縁が見えていたときとは違う安定感が、内面にあった。
「結婚なんてまだわからないけど……そうなれたらいいね」
「そのときは遠藤依子になるのかしら」
「……ん?」
そのとき、唐突に思い出した。
前に依子は自分の苗字を言いたくなくて、遠藤姓を名乗ったことがあったのだ。
あのときは咄嗟に口から出ただけだったが、今になってそれが思い出されるなんて。
「……どうしたの?」
「ううん。言霊って、本当にあるんだなぁ、って思っただけ」
「? すみちゃんのこと?」
「違う。お姉ちゃんのじゃなくて……ううん、なんでもない」
朱音は軽く首を傾げたが、すぐに微笑んだ。
「まあいつどこにいようと、りこちゃんはりこちゃんだもんね。苗字なんて関係ないか」
「……ありがとう、お母さん」
依子は神守を名乗れなかった。緋水の名も、今は持っていない。
それでも依子は依子だ。どんな姓を持とうと、それだけは変わらない。
今なら百合原姓を名乗れそうな気がした。
帰ったら友美になんて言おう。やっぱりただいまって言いたいかな。依子は義母の優しい顔を思い浮かべる。
「何時の電車に乗ればいいかな?」
「三時くらいのに乗ればちょうどいい時間じゃないかしら。それまでにまーくんちにも挨拶に行ってらっしゃい」
「うん」
外は数センチ程積もった雪が地面を白く覆っていた。
ぐしゃ、とした感触を足の裏に受けながら遠藤家に行くと、ちょうど火梁が道場を開けようとしていた。
「おばさん」
「ああ、依子ちゃん。今日守と帰るんだろう?」
「はい。だから挨拶に」
「またちょくちょく帰って来なよ。今回は守がそっちでお世話になったから、次はうちでごちそうしてあげるよ」
男勝りの彼女だが、実は優しい人柄である。実の息子や兄には容赦ないが、それも一種の愛情表現なのだろう。
依子が微笑で応えると、火梁も小さく笑った。
「悩みごとは解決したようだね」
「え?」
「昨日は元気なかったから。でも一晩で整理がついたのなら大したものだよ」
見透かされるほど、昨日は元気がなかっただろうか。
そもそも昨日はこの家を出た後の方が憂鬱で、火梁の前ではそんな素振りは見せていなかったはずなのに。
「……誰だって悩みはありますよ」
「そりゃそうだ。うちの愚息にさえ生意気にも悩みがある。だからあんたが悩んでいても大したことじゃない」
「……」
「でもなかなか解決しないから悩むんだろう? じゃあやっぱりあんたは大したものだよ」
「……マモルくんのおかげですよ」
「あれが役に立ったのなら功名だ。あいつにも意味ができる」
よくわからない言い草に首を傾げると、火梁は言った。
「あいつはあんたに必要な奴かい?」
「……はい。とても」
「そっか」
火梁は一つ頷くと道場の鍵を外しだ。最近は門下生も減ってきててね、とぼやきながら扉を開ける。
そして、
「あれはあんたの『盾』だ。望むなら、ずっと側にいてもらいな。未熟だが、きっとこれからは守ってくれる」
「え?」
依子はまた疑問の声を上げた。
マモルくんが、私の『盾』?
火梁はもう何も言わなかった。ただ親指で家の方を指しただけで、そのまま道場の中へと消える。
多分守は奥にいるという意味だろう。依子は釈然としないまま家の玄関へと向かった。
守の部屋は家の一番奥にある。
依子はドアの前で何度か深呼吸を繰り返し、二回ノックを重ねた。
「んー?」
がさがさと騒がしかった物音が止まり、中から間伸びした声が聞こえた。
入るね、と言ってドアを開けると、守が荷物整理をしていた。
「あ……」
守の顔がりんごのように真っ赤になった。
それを見て依子も急に恥ずかしくなったが、深呼吸が効いたのかすぐに落ち着けた。
「おはよ」
いつもと同じく挨拶をすると、守は照れ隠しの笑みを浮かべ、もうすぐ正午だよと言った。
「……ちょっと不思議だな」
「何が?」
「たった一晩で、依子ちゃんが違って見える」
「……そ、そうかな」
落ち着きが一言で掻き消された。赤面しながらよくそんな台詞を言えるものだ。
「三時の電車がちょうどいい時間だって」
「そうなの? じゃあちょっと急ぐかな」
守は再び手を動かす。何やら部屋中引っくり返しているようだが。
「何やってるの?」
「母さんに後で送ってもらう荷物を整理してる」
「手伝おっか?」
「じゃあそっちの服なんかをお願い」
依子は言われるままに、脇に追いやられた衣類を畳み始めた。
しばらく無言で作業を進める。衣服は畳んだ先から段ボール箱に詰め込んでいった。
不意に守がぽつりと言った。
「ぼくは昭宗さんの後を継げないみたいだ」
「……?」
依子は怪訝な顔でいとこを見やった。
「母さんに言われたんだ。一つの盾で二人の人間を守れるのか、って」
「それは、」
「依澄さんの『盾』になるには、彼女を最優先に守れる人間じゃないと駄目なんだ。でも、ぼくは依澄さんを選ばなかった」
「……」
心がズキリと痛んだ。
だが後悔はしない。守に対する気持ちは本物だから。
「後継者の立場を外された、ってこと?」
「うん、そうなる。まあ後継候補は他にもいるからそれは大丈夫だけど」
守は口を引き締めると、依子に向かって言った。
「だから、ぼくは君の『盾』になる」
「……え?」
いきなりの宣言に依子は呆然となった。
「この前は君を守れなかったけど、もう二度とそんなことにならないようにする。ずっと側にいたいから」
「…………」
これは――改めて、ということなのだろうか。
「プロポーズ?」
「え!?」
「違うの?」
「い、いや、その、……うん。まあ、そういうこと」
「すぐ結婚したいって思う?」
「……ちょっと早いかな。あと何年か待ってほしい」
「じゃあ婚約だけね」
依子は守に近付くと、唇に軽くキスをした。
驚きの顔を見せる恋人に、少女ははにかむ。
「約束」
「……うん」
二人は照れくさそうに微笑み合った。
依澄の運転する車で駅まで送り届けてもらうと、二人は無人の駅構内へと入った。
後ろから見送りのために依澄もついてくる。昭宗と朱音は町の集会があるため来れなかった。
「依子」
姉の声に依子は振り向く。
「なに?」
「……」
依澄は何も言わず、ただ妹の頭を撫でた。
「……どうしたの? 急に」
笑って返すと、依澄も微笑んだ。
何も言わない。
昨日の饒舌ぶりが夢だったかのように、元の無口に戻っていた。
だが依子は気にしない。言葉がなくても、姉の心は充分伝わってきた。
だから、依子は最高の笑みを返した。
「ありがとう、お姉ちゃん」
依澄は微笑み、そして頷いた。
踏み切りの音が聞こえる。電車がやって来る。
「いつか……」
「?」
「いつかお姉ちゃんを助けてあげられるような、そんな人間になるから」
依澄は首を傾げた。どうやって、と動作で尋ねる。
「例えばお姉ちゃんの仕事の手伝いで、喋れないお姉ちゃんの代わりに商談をするとか」
「――」
自分の欠点を突かれて、依澄は微かに動揺の色を見せた。
「例えばお母さんに任せっきりな会計を請け負うとか」
「……」
「例えばデジタルに弱いお姉ちゃんに代わって、ホームページを開いて管理・運営するとか」
「……」
「法曹になって緋水専属で雇ってもらうのもいいかもね。田舎だとそういうのにも困るでしょ」
「……」
依澄は困ったように顔を曇らせた。
依子はそんな姉の珍しい顔を面白そうに眺める。
「あは、何でも出来そうなお姉ちゃんだけど、結構弱点あるね」
「……」
依澄はからかう妹の額を猫手でこつんと叩いた。依子はごまかすように笑う。
大きな音を立てて、電車がホームに入ってきた。
「行こ、マモルくんっ」
「あ、うん。それじゃ、依澄さん」
依子と守は停車を待って、開いたドアをくぐる。
振り返って、依子は姉に手を振った。
「私本気だからね。絶対お姉ちゃん助けるからっ」
依澄も微笑のまま手を振った。
ドアが閉まる。外から姉が何か言ったような気がした。待ってますと聞こえた気がした。
電車が動き出す。真横に流れていく駅のホームを、依子はじっと見つめた。
しばらくして視界から姉の姿が消え、駅も消えた。そして牧村町の景色が現れた。
依子は座りもせずに、ただそれを眺めていた。楽しそうに眺めていた。
トンネルに入って何も見えなくなってしまうまで、依子はそうしていた。
やがておもむろに守に向き直ると、満面の笑顔で言った。
「また一緒に帰ってこようね」
「うん」
そのときカーブに差し掛かり、電車が大きく傾いて揺れた。
二人は慌てて吊り革を掴み、難を逃れる。
冷や汗混じりに顔を見合わせた。
「……座ろっか」
「そうだね」
恋人たちは小さく笑い合った。
以上で投下終了です。
ぶっちゃけ長すぎですよね……初めての方はストーリーわからないと思うのでエロだけお楽しみ下さいw
ところで
>>518にミス発見。料理は「出迎え」ないですよねw
GJ
なんという大作を、二人が結ばれて良かったです、ただ依澄さんが切ない(´;ω;`)
良い意味で守を諦めないでもらいたいけどそういうんじゃないのかなぁ
535 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 06:48:46 ID:OUAE9Ea5
GJ
GJ!!!
朝から良いものを読ませていただきました
神キテターーーー!!
GJ!GJ!GJ!
いつも通りの読み応えのある長さ、いいものです
そうか、こうなりましたか……
ってか、他の『盾』候補者なんて居たのね……さぁどんなやつだどんなやつだ
守君は依子ちゃんとハッピーエンド、依澄ちゃんは……さぁどうなるんだ
しかし、これで終わりかぁ……願うなら、ちょっと番外編が欲しかったりします
まだ見てたいしこの作品
最後にもう一度
GJ!
GJ
前の話とかよくわからんが、良かったよ。
浴場でのやり取りには心が洗われるようだったし、緊張感から入るHシーンもツボだっだ。
GJ&お疲れ様
最高のストーリーでした。いや、長いこと楽しませていただいてありがとうございます。
上の方たちも仰ってますけど、依澄さんの補完とかもあれば嬉しいなー、とか……
御要望があったみたいなので少しだけお答えします。
依澄の話はいちおう別にあります。除霊とかバトルとかエロとか。そのうち投下したいです。
が、まだ書き始めていないのでいつになるかはわかりません…できるだけ早く頑張ります。
あと、美春の話もちょっと書こうかなーと思っています。あのロリ生霊をもうちょっと掘り下げてみたいです。
でもエプロン精霊と無口な幼馴染みの話も書きたいので、次どれになるかはわかりません。すみません。
落ち着け、早まるんじゃない……!!
>>542 どれも逆立ち土下座全裸待機でお待ちしております
>>かおるさとーさん
保守しつつスクワット全裸で待機しております。
ところで無口保管庫wikiを見る方へ。
現在保管庫に2スレ目収納中です。
自分のやりやすいように作業してるんで、まだSSページ等のリンク貼ってないんですが、
作業終了時にはきちんとリンクさせますんで、気がついた方もしばらく放置して下さい。
作業終了時にはここへきてその旨書き込んでいきます。
よろしくお願いします。
>>544 2スレ目保管、乙ですー。影ながら応援してます。
>>544 乙です。
自分も一スレ目の一部を登録したのですが、転載しただけでしたのでタイトル記載、SS一覧への掲載等諸々の作業してくださった皆様、ありがとうございます。
2スレ目保管終了〜。
結構時間かかりますね、これ。
可能な限りネタは収納しました(つもり)。
1レスだけの非エロのネタでもそこから発展させてもらえればラッキーです。
タグ検索するとページ設定の呼び方の問題で、そのスレ内の順番は前後しちゃいます。
本文以外は後から設定し直せないみたいなので、後の祭りorz
すいませんでした…
>>546 >>547 手伝って頂きありがとうございます、Wiki立ち上げ人です。
タグ検索は機械的な並び替えで、読みを変えても対処はしづらいと思うので、このままで行くしかないかと思います。
一応、ページの読み方そのものは管理者権限で変えることが出来ます。
おっしゃって頂ければ対応しますので、お気軽にどうぞ。
立ち上げるだけ立ち上げて、保管そのものを人任せのような状態にしていてごめんなさい。
誤字脱字の修正等、裏方作業はこちらで受け持ちたいなと思っています。
549 :
547:2007/12/10(月) 23:40:18 ID:ud8lvqt9
>>548 まあ最初に立ち上げる人がいなかったら、こういう風に手伝えることもなかったんで、
それはそれでいいんじゃないでしょうか?
このスレが好きで手が空いている奴が保管する、ってことで。
読み方とタグ検索の順番に関連は無いんですね。
それなら変更する必要性はないかなー。
それでは名無しに戻りますノシ
何の因果か夜中に目が覚めちゃったので、3スレ目もついカッとなって収納しはじめてみてしまった。
後悔はしていない。
(嘘です…眠いですorz)
今から仕事に行くんで、作業再開は夜だと思う。
またリンク等は放置しておいてもらえるとありがたいです。
552 :
550:2007/12/12(水) 04:22:56 ID:4GDKwNDX
つんつん。
「ん?」
振り返ると、彼女が首を傾げていた。
(こんな夜遅くまでどうしたの?朝になっちゃうよ?)
「ああ、ちょっとやらなきゃいけないことがあってね。」
彼女は、僕の瞳の奥に何かが存在するかのように見つめてくる。
でも、その視線は決して非難するようなキツいものではなく、木漏れ日のようにやわらかいもので。
(でも明日も仕事でしょ?そんなに大事なことなの?)
「うーん、無口な女の子がいかに魅力的か、って他の人にお知らせしたくてね。ついこんな時間になっちゃったんだよ。」
そう言うと、彼女はそっと、吐いているのかどうかわからないぐらいのささやかなため息を吐く。
(そう言ってくれるのはとっても嬉しい。でもね、そういうのはわかってくれる人がたくさんいなくてもいいものなの。
少し、ううん、一番大事な人一人が知ってくれていれれば。)
ちょっと感動してうるうるした僕は、慌ててモニターを見るフリをする。
「まあ、あと少しだから。…俺のことなんかより、――こそ寝なよ。今が大事な時期だもんな。」
そういうと彼女はちょっと誇らしげに、あまり心配しないで、というようにお腹を押し付けてきた。
(この子もパパが心配だって言ってるんじゃない?)
彼女のお腹にそっと触れると、そこはとても元気で。
「…子供は無口になりそうもないね。」
僕は知らない内に止めていた息を大きく吐き出すと、彼女を支えながら、朝までのささやかな休息をとるべく寝室へと向かった。
果たして休むことができたのか、それとも次の日見事なクマを作って会社の人に笑われたかどうか、別のお話。
553 :
550:2007/12/12(水) 04:29:11 ID:4GDKwNDX
…というわけで、3スレ目も収納終了です。
ちょっと書いてみて思ったけど、やっぱり職人さん達はすごいです。
あんな風には書けないorz
しかも最後「それは」が抜けたせいでものすごく最後がヘンorzorz
>>coobard ◆69/69YEfXIさん
トリップなしでページ作成してしまい、申し訳ありませんでした。
これからは気をつけます。
ぜひこれに気を悪くなさらず、作品投下を続けてください。心待ちにしております。
>>wiki管理人さん
誤ページ早速削除してくれてありがとうございました。
今度こそちゃんと休みます…
>>553 乙にしてGJ!これはいい奥さん。
過去作品見返してみるとちょっと感慨深いな…
小ネタ、短編、長編、リレーと一年半でこんなにも作品が投下されてきたんだな。
これからもスレ住人として繁栄を願い続けるぜ。無言で。
557 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 01:21:14 ID:bGITk9Q6
558 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 01:51:20 ID:2dOOUXaZ
>>557-558 お前さん方、無言は良いが(まんまりよくないが)ageないでくれないか……
>>559 なんだまんまりってorz
あんまり なんだぜ……
>>560 全く、いつもあんまり喋らないから
いざ話すというときに間違えるんだよ、お前は。
まあそれもお前の可愛いところだけどな(なでなで
563 :
560:2007/12/13(木) 16:11:09 ID:dlL1l1iz
まんまりに萌え!
>>553氏
いえいえ、お気になさらずー。
ゆくうりおやすみくだしあ。
無口な娘の新しいネタが降りて来ればまた、お邪魔します。
>>wiki管理人様
重ねて御礼申し上げます。
ありがとうございました。
《まんまり》
湖の底に漂うマリモのように静かに時の流れるに任せる無口な女の子
<<まんまり>>
生態:放って置いても一人で本を読んだりして平気そうな顔を見せるが、
実は見えないところで寂しくて泣いていることがある。
567 :
560:2007/12/15(土) 01:25:12 ID:RQ4g3s+O
自分のミスがどんどん一人歩きしてる^^;
もう小ネタ書いても良いよね?
>>561さんにも登場願います。答えは聞かないけどw
568 :
560:2007/12/15(土) 03:23:13 ID:oBUhuLBn
「まんまり、しないで…………あれ……?」
間違えちゃった……
あんまりって言うつもりだったのに……。まんまりって……なんだろう……?
うう……恥ずかしい……
「全く、いつもあんまり喋らないから、いざ話すというときに間違えるんだよ、まりは」
「あ……ごろーくん……」
いつの間にか隣にいたごろーくんは、ぽん、とわたしの頭に手をおいた。
……本当にいつからいたんだろう……?
それよりも……さっきの間違い……、ごろーくんに聞かれてたんだ……
「うう……聞いてたの……?」
「そりゃもうばっちりと」
顔が赤くなってくのが分かる……やっぱり恥ずかしいよぅ……
「まあ、それもお前の可愛いところだけどな」
「あ……」
いつものようにニコニコした笑顔で……ごろーくんがわたしの頭をなでてくれる……
心地よくて……すごくおちつく……
「ん……次は……気をつけるね……」
少しだけ……顔がゆるんだかも……
「どした、まり? なんか嬉しそうだけど」
「ん……なでられるの……好きだから……」
「そっか。じゃあもう少し続けるよ」
「うん……ありがと……」
恥ずかしいのがなくなったわけじゃないけど……でも、今はどうでもいいや……
そんなことを気にするよりも……少しだけ伸びた、この至福の時間を堪能したいから……
569 :
560:2007/12/15(土) 03:24:31 ID:oBUhuLBn
我ながら遅筆(汗
宣言通り、小ネタを作ってみました。ちなみにキャラの名前ですが、
『まり』は『まんまり』が一人歩きしちゃってるので、「そっからもってくりゃいいじゃん」ということで『まり』。
ごろーくんは『561→ご・ろ・一(いち)→ごろー(伸ばし棒に変更)』という安直仕様w
キャラに名前がある方が自分的に動かしやすいので、てきとーにつけましたw
>>561さんのおかげでネタが出来たも同然なので、無情の感謝をば。
それでは……ROMに……戻ります……
ぐっじょぶ!
誤字から生まれる愛もあるとゆーことか…
572 :
561:2007/12/15(土) 11:43:32 ID:DIO7yDM0
まさか自分の何気ないレスがこんな素晴らしいSSに昇華されるとは……
GJです! 和ませてもらいました
561=ごろーくんワロスw
GJです
574 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 09:47:19 ID:Rd+br2jD
誰も居ないのか、保守ついでに呟く
じうご氏はいなくなったのかなぁ……
毎日チェックしてる俺がいる
みんなしてクリスマスネタを準備していると妄想する俺がいる
ドッペルゲンガーは死の前兆だ!注意しろ
おいおい、怖いこというなよ(ガクブル
じうご氏・・・帰ってきて・・・・・。
10月アタマに立ったスレがもう448KBまで埋まっているんだから
人気マンガ・アニメ関連を除けば相当早いスレ消化だと思うが。
>>582 リレーで一気に容量使ったからじゃね?
あー、でもかおるさとー氏のも結構長かったからな…
長いのは大好きだから問題ないけど
こんな時間ですが
歌がめっちゃ上手いんだけれど極度の上がり症で普段は無口。
で、家族や信頼できる人にならなんとか話せる女の子ってよくわからない妄想した俺
うん。吊ってくるわ……
>>584 しむらー、保管庫保管庫
似たのはあるぞ、確かな
いつまでも待ってる
勿論考えてるよね?
さもなくば・・・
「・・・おしおき・・・」
(好きな無口少女タイプで連想せい)
>587
ボンテージ着てロウソクもって鞭持ってる超ノリノリの無口な女の子を連想した
おいおい、ロリってところを忘れちゃならんぞ?
>>587 ボンテージ着てロウソク持って顔真っ赤にして恥ずかしがってる無口なロリっ子を連想した。
592 :
前スレ230:2007/12/21(金) 20:50:37 ID:EkUGdRGT
突然スミマセン。
前スレでお世話になった230改め“ふみお”というものです。
>>577氏の発言に触発され、クリスマスネタのSSを書いています。
しかし、以外にも長引き、容量が増大。
このまま投下したのではこのスレが、480kbを超えてしまいそうです。
ので、このスレに投下したほうがいいのか、それとも別の所にUPすればいいのか、
それとも新スレを待ったほうがいいのか、悩んでいます。
どうか、皆様の意見をお聞かせください。
また、新スレに投下を希望される場合は、スレ立てもお願いして宜しいでしょうか?
甘えた発言であることは重々承知しております。
それでもお許し願えるのであれば、何らかの意見を提示して頂けます様、お願い申し上げます。
なにぶん、ネタがネタなので、もうあまり時間がありません。
速めの意見を、お願い申し上げます。
それでは、失礼いたします。
何気に初レス。
今SS書いてるんだけど、何も喋れないのはこのスレの部類に入る?
例
男「なぁ・・・・・・今日の晩飯は何を作るつもりだ?」
男がそう聞くと、女はポケットからメモ帳を取り出し、何やら書き始めた
カキカキ・・・・・・
『今日も男君が好きなカレーです』
女は文字を書いたメモ帳を男に見せ、微笑む。
「・・・・・・そうか、楽しみだ」
カキカキ・・・・・・
『楽しみに待ってて下さいね』
「わかったよ」
女はペンとメモ帳をポケットにしまい込むと、再び台所へ向かった。
男はそれを見届けた後、深いため息をついた。
「・・・・・・今日もカレーか。好物でも1週間続くとさすがにキツイぜ」
女の笑顔に断れない男だった・・・・・・
こんなんで筆談するSSなんだけど、スレ違い?
>>593 全然全く問題無しだ、カマーン
>>592 うーん……とりあえず、投下途中でスレ容量がっ!!
ってならない為に新スレ立てて投下したほうがいいと思います
>>592 スレまたぎはあまりよろしくないので次スレ投下がいいかと。
>>593 過去作品にも筆談はあったし問題なしです。
>>592 君が新スレに25日に書き込めるように努力する。
ところで、我々はみな筆談(?)のみなわけだが、無口が多いな。
598 :
593:2007/12/22(土) 00:35:16 ID:r/rth5ms
受け入れ感謝
だがしかし、あまりの遅筆な為に24日までに完成出来なさそうorz
サンタなネタなので間に合わなかったら途中まで投下します
>>596 と言うことは・・・
住人の中に無口少女が居るという事でありますか
隊長!!
600を取りつつ
誰か次スレを……携帯からじゃ無理だから
残りはまだ452kbなんだけど、次スレ立てた方がいいの?
よければ自分が立てましょうか?
>>601 >>592が容量厳しいって言ってるからね。
でも今すぐじゃなくて24日になってからでもいいと思う。
>>602 おお!早い、ありがとう。
わかりました、24日に誰もスレ立てしてないようなら立てます。
「待て待て!直ぐに立てろ!」っていう意見があれば遠慮せず言ってください。
605 :
604:2007/12/23(日) 02:25:36 ID:zPOCe6eA
あと追加の一言
・・・前スレは無理に・・・消化して欲しく無い・・・かも・・・
・・・ギリギリまでdat落ち・・・して欲しく・・・無い・・・から・・・
>>604 テンプレ乙です。
あと提案なんだが、カウントの所は『四言目』とかどうだろう?
無口少女がスレが一つ進む毎に一言話してくれる、みたいな感じで良いと思うんだが
608 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/23(日) 15:42:59 ID:kTGd0ipg
初犬っていう、思いっきりエロアニメが良かったよ。
なんだろう?凄く心癒された。
>>609 あれは良いものだ……
漫画もオススメ。
さっそく注文してくr
新スレ立て乙
どうでもいいが新スレ
無口少女多くなってるw
614 :
前スレ230:2007/12/24(月) 17:43:55 ID:RbwXe+ee
新スレ立て、お疲れ様です。
ありがたくSS投下に使わせていただきます。
現在、作品でお返しできるよう、ラストスパート中です。
なんとか明日には完成できそうですが……。
とりあえず、シングルベルで頑張ります。
なんだかんだ言ってこっちも50以上残り容量が。どうしてくれようか。
>>615 みんなで妄想ネタ連続カキコ
きっとそれで埋まるさ
なら、筆談ツンデレとかどうよ?
筆はツンツン、行動デレデレ。
無口娘に目隠しをして
筆でツンツンして
デレーンとさせるプレイ?
>>618 うまい棒吹いたw
「・・・はぁ・・・ふぁ・・・」
こいつ普段無口なんだが、感じている時は結構饒舌なんだよな。
顔やあえぐ声なんかはほんとエロいし。
ツンツン
「あふっ・・・だ、だめ」
スルスル
「ひっ!・・・も、もう・・・・・・い、いゃあ」
ん?何をしてるかだと?新年の書き初めに備えて筆を引っ張り出したはいいが、こいつが遊びに来たのでつい成り行きで筆プレイをする羽目になってしまったのだ。
細かい点は突っ込んでくれるな。ただ「いつもと変わったことがしたいな〜」という邪気のある青少年の願望によるものだ。
620 :
618:2007/12/25(火) 23:45:21 ID:eHY9gAwu
下半身に目をやるとはっきり濡れているのが解る。毛の薄い筋目にそろそろと筆を這わす。
ビクッ
声をあげる余裕もなくなったのか、無言で体を震わせる。だが俺にとってはどんな言葉よりもはっきり伝わってくる。
筆を進める度に奥深くから催促の印が染みだしてくる。頃合いを見計らって、一番感じるこりこりした宝石を突っついてやる。
ビクビクビクッ
体を痙攣させて答えてくれた。俺の拙い愛撫で心底感じてくれる、こいつが愛しい。
ん?なんだ?
「・・・来て・・・」
流石に俺もこれ以上は語れない。こいつの乱れ振りを知るのは俺だけなのだから。
621 :
619:2007/12/25(火) 23:51:21 ID:eHY9gAwu
スレ汚しすまん。
ちなみに
>>620は618でなく619だな・・・
罰として筆責めにあってくるorz
素敵な電波を送ってくれた
>>618ありがとう。無口少女の幸あれ。
623 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 15:18:15 ID:GNUDivcU
ここもほす
ほす
625 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 20:34:59 ID:aOo2sxg5
普段は話すの苦手なの…
でも…今は言わなきゃ。
「保守age」
ここ…も…保守…
…頑張る
627 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/29(土) 05:13:09 ID:H2twO6Oy
上げ
保守しなきゃちょうどよかったのにw
つか、埋めてくれみんな。
産め
>>628 あと330も埋めろと?
やはりここは小ネタ連射もしくは保守しないで落とすかだ
容量が500kb超えても落ちるから、必ずしもレス数で稼ぐ必要はないんだ。
>>631 でもあと40kbぐらいあるぞ。
小ネタとか書いてくれる人とか居なかった結構きつくないか?
どうしようも無い時はAA使うか?
>>632 一本投下してみたいと思いますので、今年いっぱい待ってもらえますか?
落とし損ねたクリスマスネタを書いてます
新年すぎても投下なしだったら埋めていただいてかまいませんので
「俺の子供を産んでくれないか」
プロポーズのつもりで彼女の手を握り、瞳を見つめた。
あまりに唐突だったせいか、彼女の動揺は手に取るように明らかだった。
幼い頃からいつも一緒だった。家が隣で同い年だった俺たちは兄妹と間違われるほど一緒にいた。
口数の少ない彼女は 時に残酷な子供たちの標的になった。
泣きじゃくる彼女を背に、年上の大きな少年を相手に大立ち回りを演じたこともあった。
幼稚園、小学校。俺の隣か後ろに必ず彼女がいた。
気の合う同性の友人にも恵まれたはずなのに、彼女が俺から離れることは無かった。
中学の頃も、それは変わらなかった。
幼馴染を女の子と意識する年頃になった俺が、彼女を遠ざけるようなことをした時期もあったが
言葉無く俺を見つめる その眼差しから逃れられるものではなかった。
俺は彼女のことが好きだった。
高校進学の時には進学先のことで両家の家族を巻き込んだ騒動があった。
唇を噛んだ彼女が俺の服の裾を掴んで離さない姿を見た両家の親が深いため息をついて折れた事件は
俺と彼女の秘めていた恋心が明らかになった瞬間だった。
高校と大学生活を送った7年間は2人にとって試練の連続だった。
お互いの心が見えなくなったこともあった。
信じられなくなったこともあった。
俺にも彼女にも様々な誘惑があった。
仕事を始めてからも擦れ違いは よく起こった。
喧嘩して部屋を飛び出して公園でタバコを吸いながら子供たちが遊ぶ姿を眺めて
かつての俺と彼女のことを思い出す。
体が大きくなり。それまで見えていたものが見えなくなり。暮らしが変わり、住む場所も変わり。
考え方やモノの見かたも変わった。
それでも、過去に見えていたものを忘れたわけでは無かった。
目を閉じれば、俺の背中にすがる彼女の泣き顔が浮かぶ。
俺を探す不安に満ちた眼差しが浮かぶ。
俺は……俺にしか見せない彼女の笑顔を守りたくて……彼女の笑った顔が大好きで……
どんなときでも、そのことを思い出すと気持ちが落ち着いた。
部屋への帰り道。 少し遠回りして駅前のケーキ屋に寄る。
彼女の好きなナポレオン・パイを2人分買って部屋に急ぐ。
部屋では彼女が俺のお気に入りの豆を挽いてコーヒーを淹れてくれていた。
お互い、相手のご機嫌を伺うことも達者になった。
20数年間、いつも一緒だった。これから数十年先も変わらないだろう。
だから俺は覚悟を決めてプロポーズした。
俺の言葉を理解した彼女の瞳から大粒の涙がこぼれた。
俺の胸に飛び込んでくる彼女の体を抱きしめる。
ここから先、俺たちに言葉は必要無かった。
キスをしながらセーターを脱がせ、背中のホックを外すと形の良い胸がこぼれてくる。
大きくは無いが先端を咥えると切ない声が――
省略されま(ry
>>635 あっ、こんな所にいやがったか!
おい、さっさと執筆の作業に戻れ!!
>>635 > 大きくは無いが先端を咥えると切ない声が――
まで読んだ。
続きマダーーーー?
>>635 「・・・まだ・・・?」
中途半端は無口少女も怒るでよ。
では質問。無口少女が主人公(朴念仁)に愛の告白をする時の理想の一言(or行動)とは?
逆レ一択
>>638 男の部屋で二人っきりのときにベッドに並んで腰掛け、
世間話の途中で急に男の手の上に自分のを重ねて上目遣いで一言、
「……しよ?」
>>638 無言で背中に抱きつき、耳元でそっと、顔を真っ赤にしながら
「…………………好き」
>>638 裸で後ろから抱きつくとか
目の前で服を脱いで抱きつくとか
寝ている布団に裸で忍び込むとか
無口なだけに突然、突飛な行動に走りやすかったりして
目が覚めた。
どうやらいつの間にか眠っていたらしい。
「・・・・・・・・・おはよう」
聞きなれたか細い声がした。そちらへ目を向けると、
春の優しい日差しに照らされた見慣れた彼女の顔と、真っ青な空。
そこで男は自分が膝枕をされている事に気が付いた。
「・・・・・・おはよう」
恥かしくなって起き上がろうとしたが、彼女の手が男の頭を
幸せそうに撫でているので起き上がる事が出来ない。
しばらく彼女の好きなままにしていると、ボソリと呟く。
「・・・・・・時間・・・・・・止まればいいのに・・・・・・」
「・・・・・・そーだな」
彼女の顔が近づく。男は彼女を受け入れ、唇が重なった。
そんな春の一時。
季節感豚切りスマソ
『後輩サンタとクリスマスと』
緑野純一(みどりのじゅんいち)がその娘に初めて出会ったのは一年前のことである。
イブの夜、彼女もいない彼はバイト帰りの道を寂しく歩いていた。
空には紅い満月が昇っていて、なんとはなしにそれを眺めていた。
そのとき、視界に妙なものが入ってきた。
それは、民家の屋根を次から次へと跳び移っていく人影だった。
始めはいまいち認識できていなかったが、それに気付くと純一はあまりの出来事に固まってしまった。
アニメの忍者じゃあるまいに、そんな芸当のできる人間がいるわけがないと思ってしまったこともある。
するとその人影が、こちらにだんだんと近付いてきた。
人影はあっという間に頭上の電線に辿り着いた。やがて呆然となる純一の目の前に音もなく降り立つ。
随分可愛らしいサンタだと思った。
人影は小さな女の子だった。サンタの格好をして、手にはなぜか大きな紙袋を抱えていた。
女の子のサンタコスならミニスカであってほしいところだが、つなぎだった。露出度の低い暖かそうな服。
「…………」
彼は突然の遭遇に声も出なかった。
少女は無言で紙袋に右手を突っ込み、何かを取り出す。
そして、それをこちらに差し出してきた。
「……?」
見ると、それは店でケーキやなんかを入れるための、小さな紙箱だった。
純一はしばらくそれを見つめていたが、念押しするようにさらに突き出してくる様子に押されておずおずと受け取った。
少女はそれを確認するとにこりと微笑んだ。
純一は思わずドキッとした。
少女は背を向けるとそのまま道を駆けて行った。走るというよりはふわふわ浮くような、そんな軽やかさだった。
家に帰って箱を開けてみると、いちごのショートケーキが入っていた。
手作りらしきそれは、程よい甘さで美味だった。
半年後、純一はその少女と再会した。
時間潰しに行った学校の図書室で、静かに読書しているのを見掛けたのだ。
校章の色から一年生であることがわかったが、はたと困ってしまった。半年前のことをどうやって訊けばいいのかわからなかったのだ。
元々そんなに女子と親しくしているわけじゃないので、どう切り出せばいいのかもよくわからない。ひょっとしたら自分のことなど忘れているかもしれない。
どう話しかけようか迷っていると、少女は立ち上がって奥の本棚へと向かっていった。
純一はそろそろとあとをついていったが、そのままだったら間違いなく不審者扱いされていたに違いない。
だが幸いなことに、直後に起きた出来事によってそうはならなかった。いや、幸いではなかったが。
突然、目の前の風景が揺れた。
眩暈ではなかった。次の瞬間、大きな震動が世界を揺さぶった。
悲鳴が図書館に響いた。唐突に起きた大きな地震に、誰もが混乱した。
純一自身そうなりそうな状態で前を見ると、例の少女は大きな本棚と本棚の間で座り込んでしまっていた。
分厚い専門書ばかり並んでいる区画だった。純一は思わず少女に向かって駆け出していた。
少女に覆い被さるように跳び込んだ瞬間、背中にハードカバーの本が無数に降ってきた。
鈍い衝撃が背中を、脚を、時折頭を打つ中、純一は不思議と少女の身だけを案じていた。
やがて揺れが収まると、慌てて下の少女に無事かどうか確認する。
「だ、大丈夫か?」
「……は、はい」
何が起こったのかわかってない様子で、きょとんと見上げてくる少女。
その距離はあまりにも近く、半年前と同じように胸がときめいてしまった。
少女はゆっくり下から這い出ると、不安気な声で囁いた。
「あの……大丈夫……ですか?」
「……何が?」
「……本、たくさん落ちてきました」
言われて、ようやく純一は身体中の痛みを自覚した。
本の角が背中や腰、太股やふくらはぎを突き刺すように打ったので、妙に痛みが深い。
少女が無事で安心したためだろうか、一気に痛みが激しくなった。顔を歪めて悶絶する純一に少女が慌てた声を出す。
「あ、あの、保健室に」
少女が肩を貸してくる。
少し気恥ずかしかったが、余裕のない純一は素直にその肩に手を回した。
間近で感じた彼女の匂いは、微かに甘かった。
その日以来、純一はその娘――後羽由芽(あとばゆめ)とよく話すようになった。
彼女は純一に負い目を感じるのか(打撲ばかりでたいしたことはなかったのだが)いつも口数少なくおとなしかった。
それでも純一は気にしなかった。おとなしい娘の方がタイプだったし、彼女は言葉少なくても、気配りのできる優しい娘だったからだ。
だが、あのイブの夜のことだけはどうしても訊けなかった。
◇ ◇ ◇
「クリスマス?」
昼休みの食堂内、橋本風見(はしもとかざみ)は弁当をつつく箸を止めて顔を上げた。
対面の席に座っている幼馴染みの甘利紗枝(あまりさえ)は、ん、と頷き、温かいお茶を静かに飲む。
風見は微かに胸が高鳴るのを自覚しながら、紗枝に笑いかけた。
「今年もまたお互い相手なしか……」
二週間後に迫ったクリスマスイブだが、生まれてこの方一度も彼女と過ごしたことがない。というか、彼女がいたことがない。
だが、それを寂しいと感じたことはなかった。
「……」
紗枝は目を細めて風見を睨む。
「怒るなよ。ちゃんとプレゼント用意するし、また一緒に家でケーキ食べよう」
「……」
紗枝の顔が無表情に戻る。わかりやすい反応だ。
こんな風にわかりやすい反応を見せるのは珍しいと思う。それほどイブに執心なのか。
ちょっとだけ、風見は嬉しくなった。
「紗枝も用意してくれる? プレゼント」
頷く紗枝。
「楽しみだな。去年はセーターだったよね」
「……」
「わかってるよ。当日まで中身は内緒だろ」
「……」
寂しいなんて思うわけがない。
一番大切な幼馴染みが今年も一緒にいてくれるのだから。
「で、そのために今日もバイトか」
バイトの帰り道、風見がイブの約束のことを話すと、同級生でバイト仲間の緑野純一はねめるようにこちらを見つめた。
「付き合ってるわけじゃないんだよな、甘利とは」
「うん」
「なのにプレゼントは毎年贈っている、と」
「誕生日もね」
「……」
純一は小さく唸る。
「それはどういう関係なんだ?」
「だから幼馴染みだって」
「いや、俺にも幼馴染みくらいいるけど、そんなこと一度だってやったことないぞ。まあ、そんな親しくもないからだろうけど」
「……」
風見は口を閉ざした。
「あー、気にするなよ? 別に変って言ってるわけじゃないんだ。ただ、羨ましいなって」
「?」
「いいイブになりそうじゃねえか。俺はなんにもない」
「ミドリは彼女とかいないの?」
「てめえ、ちゃんと聞いとけよ。なんにもないってことはなんにもないってことなんだよ」
「……ごめん」
「謝るな! さらに腹立つわ」
純一はがなったが、別に怒った様子でもなかった。「まあ、楽しめよ。いつだって仲のいい相手がいるってのはいいことだと思うからよ」
緑野純一とはこういう奴なのだ。言葉や行動は一見乱暴だが、誠実で真摯だ。
だからその言葉も茶化しは一切なかった。
「ありがとう」
風見は素直に礼を言った。純一はああ、と軽く頷く。
小さく息を吐くと、白い湯気が目の前の空間を満たし、すぐに消える。
イブには雪が降るかもしれないという。それはとても綺麗だが、大変そうでもあった。
「なあ、変なこと訊いていいか」
不意に純一が言った。頷いて寄越すと、ややためらうような素振りを見せた。
「何?」
「あ、いや……お前、サンタって信じる?」
「どのサンタ?」
「どのって、」
「公認サンタは実際にいるから、信じるも信じないもない。けど、トナカイの引くソリに乗って空を飛ぶサンタとなると、信じないかな」
「公認サンタ?」
「いるんだよそういうのが。で、なんでそんな質問を?」
「いや……」
純一はまた言い淀む。
「いいから言ってみなよ」
風見が促すと彼は一つ頷き、言った。
「……知り合いの女の子がサンタだったら、お前どうする?」
「……は?」
純一が言うには、去年のイブの夜にサンタに会ったらしい。
そのサンタは小さな女の子で、しかも学校の後輩だったという。
ソリもトナカイも持たないサンタは、屋根から屋根へと跳び移って民家を回っていたそうだ。
眉唾ものだと思ったが、純一が嘘をつくとも思えない。
そのことを冴恵(さえ)に話すと、彼女は思い出したように言った。
「それって、クリスちゃんですよ」
ひょんなことから風見に仕えることになったエプロン精霊は、懐かしそうに目を細めた。
「……クリスちゃん?」
クリスチャンでもクリス・チャン・リーでもなさそうなので訊いてみる。
「はい、『クリスマス』って名前の精霊だったと思います。昔、前のご主人様にお仕えしていたときに会ったことがあります」
「……精霊?」
「私がエプロンについてるのと同じで、確かその子はサンタ服についているんですよ。で、クリスマスになるといろんな人たちにケーキを配るんです」
「……」
「無口な子でした。けど、とてもいい子でしたよ。ケーキ美味しかったですし」
「……じゃあ、その女の子も?」
「心当たりがそれしかないのではっきりとは言えませんけど、おそらく」
「……」
風見は頭をかいた。まさかこのエプロンメイドと似たような存在が他にもいたとは。
とはいえ、それを純一にそのまま伝えるかどうかは悩みどころである。いくらなんでも信じてはもらえないだろう。
「……」
風見はキッチンに立つ冴恵の姿を見やる。エプロン精霊は鼻唄と共に、皿洗いにいそしんでいる。
その姿はどこからどう見ても、幼馴染みの甘利紗枝のものだった。
今でも時折疑って見てしまう。これは紗枝の演技なのではないかと。
エプロンを介して紗枝の体に乗り移っているのだと冴恵は言う。だが『冴恵』などという人格は最初から存在せず、甘利紗枝は甘利紗枝でしかないのではないか。そんな疑念はいつまでも晴れない。
「……」
風見はソファーに寝転がり、ゆっくりと目を閉じた。
エプロンメイドもコスプレサンタも別に誰かに迷惑をかけているわけじゃない。演技かどうかもひょっとしたら些細なことなのかもしれない。
世の中にちょっとだけ混じる不思議な味。
(ま、害はないしね)
そんなスパイスがあっても構わないだろう。風見にとって、冴恵も日常の大切なピースの一つだから。
「風見さま? そんなところではなく、きちんとベッドでお休み下さい。イブの前に体調を崩されては、紗枝さんも残念がります」
風見は目を開けて体を起こした。覗き込んでくる冴恵を複雑な気持ちで見やる。その姿でそんな心配されても。
「……そうだね。きちんと部屋で寝るよ」
「歯磨きもお忘れなく」
小学生かと風見は苦笑した。
◇ ◇ ◇
クリスマスイブまであと十日。
その日の放課後、純一は由芽に会うために、下駄箱前で彼女が来るのを待っていた。
しばらくして、由芽が姿を現した。後ろには友達もいる。
「あ……」
由芽がこちらに気付いて、小さな声を漏らした。この少女は純一を見るといつもこんな申し訳なさそうな顔をする。
「ん? どしたの」
後ろの友達が由芽に尋ねる。こちらを一瞬胡散臭そうに見たのは気のせいだろうか。
「ううん……なんでもない。こんにちは、緑野先輩」
「ああ、後羽」
二人が挨拶を交わすと、その友達が怪訝な顔で由芽を凝視した。
「この人、由芽の何?」
「え? ……あの、地震のときに私を助けてくれて、その、」
「半年前の?」
「う、うん」
すると今度は純一の顔をじー、と見つめてくる。
「な、何?」
「……なるほど」
友達は合点がいったのか、うんうんと頷いた。
「由芽、あんた男の趣味悪くないと思うな。私の趣味とは違うけど」
「い、糸乃(いとの)」
声を上げる由芽に糸乃と呼ばれた友達はからからと笑った。
「んじゃ私、先帰るね」
「え、ちょ、」
「先輩と仲良く頑張れー」
友達は謎のエールを残してそのまま足早に去っていった。
「……もうっ」
困ったように頬を膨らませる由芽。その様子が純一には新鮮だった。
「楽しい友達だな」
「ご、ごめんなさい。糸乃が失礼なことばかり言って」
「いや、いいよ。それより、その、一緒に帰っていいか?」
由芽はそれを聞いて目をぱちくりとさせた。
「は、はい、もちろん」
知り合って半年。初めてのことに少々戸惑っているようだった。
由芽がスリッパから外靴に履き替えるのを待って、純一は彼女の隣に並ぶ。
「……」
純一は小柄な後輩を眺めやり、それから思案した。
彼女は去年『あんなこと』をしていたが、今年はどうなのだろう。
もし今年もサンタの真似事をするなら、イブに暇などないだろう。
イブの日にデートやなんかの約束を申し出ても断られるかもしれない。
「……」
不安が胸を覆う。
いや、駄目元で言ってみるのもアリだ。言うだけならタダだし、たとえ断られても由芽はその程度で壁を作る娘じゃない。……多分。
純一は意を決すると、校門を出たところで由芽に向き直った。
「あ、後羽」
「……え? ……あ、は、はい」
考え事をしていたのか、由芽はどこかぼんやりしていた。
純一は言った。
「イブの日、暇あるかな?」
「え?」
「その、時間あったら、俺に付き合ってほしいんだけど……」
「……」
由芽は目をしばたく。
「あ……どうかな」
「……イブは……ダメです」
「……やっぱダメ?」
急すぎたか、それとも今年も『する』のか。疑念が膨らむ。
「彼氏と約束とかあるのか?」
「そ、そんなのいませんっ」
大きな声で否定する由芽。我に返ったのか、途端に縮こまる。
「そんなの……いませんよ」
呟く様子はどこか寂しそうだ。
やっぱり言わない方がよかったか、と純一は少し後悔した。
「悪い。急に変なこと言ってごめんな」
「……ち、違います……先輩は別に……」
互いに言って、互いに黙り込む。
「……」
「……」
二人は黙りこくったまま歩く。
微妙な空気を作ってしまったことに、純一はいっそう後悔を深める。
元々おとなしい娘だからあまり会話がないのは仕方ないかもしれない。しかし今の気まずい空気は純一のせいなので、どうにも心苦しかった。
そのとき、由芽がぽつりと呟いた。
「クリスマスなら……」
「え?」
「イブじゃなくてクリスマスなら……空いてます、時間」
その申し出に、純一は一瞬呆けた。
「あの、先輩?」
「あ、いや、……空いてる?」
「はい、クリスマスなら」
「じゃあその日に」
よかった、と純一はほっとした。同時に内心でガッツポーズを決める。
「あの、これって……デートのお誘い……ですよね」
「あ、ああ、うん」
由芽はそれを聞くと顔を伏せた。まるで顔を見られたくないような素振りだった。
やがておもむろに顔を上げると、柔らかく微笑んで言った。
「楽しみに……待ってます」
純一はその笑顔に思わず固まりそうになり、反射的に顔をそらした。気恥ずかしさの熱に、髪の毛の先まで真っ赤になってしまいそうだった。
そこで考える。クリスマスなのだからプレゼントが必要だ。女の子に贈るプレゼントはどういうものがいいのか。
横でにこやかに微笑む彼女を見ていると、いいかげんには考えられなかった。
クリスマスイブ。
純一は風見とともに夕方の街に来ていた。
目的は風見のアドバイスを受けてのプレゼント購入だ。毎年幼馴染みの女の子にプレゼントを買っているという風見なら、そのあたりの具合というか案配がわかりそうに思った。
「けど……」
純一は周囲を見回す。クリスマス色に彩られた街中には当然ながらカップルが多く、居心地が悪かった。
「なんでわざわざイブを選んだ」
「ぼくもプレゼント買わないといけないんだよ」
「甘利との約束は今日だろ。当日に買ってんのかいつも」
「高いんだよ服は」
「はあ?」
風見が言うには目当てのコートが五万円くらいするらしく、直前までバイトをしていたという。そういえば待ち合わせ場所はバイト先に近いコンビニだった。
「さっきまでやってたのか、バイト」
「ミドリがいない分、いつもより受け持つ量多かったんだぞ」
「悪い、イブとクリスマスは空けるつもりだった」
「まあ終わったからいいけど。お金もちゃんともらえたしね。無理言って手取りにしてもらったよ」
二人はとりあえず洋服店に向かう。
コートを買うと言っていたが、服に無頓着な純一には五万円など考えられない金額だった。それとも、それくらいが当たり前なのか。
「なあ、女の子って何をあげれば喜ぶんだ?」
風見は首を傾げた。
「さあ?」
「さあ……って、お前だけが頼りなんだぞ」
風見は軽く頭をかいた。
「人それぞれだよ。人によってはガラクタでもいいかもしれないし、どんなに高価なものでも満足しないかもしれない」
「じゃあどうするんだよ」
「ぼくはその人に合いそうなものを選んでる。今回はたまたま見掛けたコート。白いのが似合うと思ったんだ」
「……」
なんだかあまりアドバイスになってないような気がする。若干ノロけが入ってないか。
「うーん、そうだな……あえて言うなら実用的なものの方がいいかな?」
「実用的?」
「服とか靴とかバッグだよ。時計やマグカップなんかもいいかも。そういう身近で役立つものの方が喜ばれるかもね」
「へえ」
「高すぎると相手に気を遣わせてしまうかもしれないから、値段も多少考慮した方がいいかな。宝石とかは避けた方が無難」
「なるほど」
純一は感心して頷いた。急に役立つアドバイスを聞かされたような。
「手袋とかマフラーは?」
「それもアリだと思うよ。ベタだけど大きなハズレにはなりにくいし」
手持ちの金は二万円。高価なものは無理だが、それなりのものは買える。
いろいろ思案していると、いつの間にか目当てのブティックに辿り着いていた。表通りから少し外れた場所だった。
店内に入ると、若い女性客ばかりで賑わっていた。居心地の悪さがさらに高まる。
風見が奥の店員と話をする間、控え目ながら店内を見て回る。ここでプレゼントが見つかるなら手間もかからないのだが。
由芽はあまりアクセサリーを身に付けたりするタイプではなさそうなので、セーターやコートといった衣服を中心に探してみる。
ミンクのコート、十七万八千円。
……………………。
見なかったことにする。レジカウンター近くのセーターに目を向けてみる。
ホワイトカシミアのセーター、二万五千円。
無理だ。買えない。
よく見るとそれなりにリーズナブルな値段の服もけっこうあったが、純一はいまいちピンとこなかった。
(後羽に合いそうなもの……ね)
しばらく店内をぶらついたが、結局何も選ばなかった。
風見のところに戻ると、大きな袋を手に提げている。どうやら買えたようだ。
「何かいいもの見つかった?」
「いや」
「じゃあ他のところも行ってみようか。服だけじゃなく、小物屋とかも」
風見は目当てのものを買えたためか、どことなく嬉しそうだ。
店を出て、表通りに戻る途中で純一は尋ねてみた。
「嬉しそうだな」
「そりゃ、お金貯めてお目当てのものがようやく買えたんだから、嬉しいに決まってるよ」
「お前のじゃないんだぞ」
「プレゼントでもなんでも、嬉しいことに変わりはないよ」
簡単に言ってのける友人を、純一は呆れたように見つめた。
おそらくこいつは相手のことをよくわかっていて、自分みたいに思い悩んではいないのだろう。純一は由芽のことを考えても、はっきり自信を持って捉えることができない。
もちろんまったく思い悩んでいないわけではないだろうが、相互理解の深度が違いすぎるように思えた。
(俺ってホントダメだな……)
空を見ると薄暗い雲が全体を覆い始めていた。
それから二人は何軒かの店舗を回った。
別の洋服屋はもちろん、マスコットグッズ店やアクセサリー店も一応回ったが、純一はなかなかプレゼントを選べなかった。なんというか、どれも同じに見えてしまうのだ。
何を買えばいいのか迷いに迷った。もう適当に決めてしまおうかとも考えたが、そういうわけにもいかず、時間だけが無駄に過ぎていった。
もう一度考え直す。果たして由芽に合うプレゼントとはなんなのだろうか。
純一は熟考する。自分の中での由芽の印象とはなんだろう。
一つしかなかった。一年前のサンタ姿。
あのとき小さな手でケーキの箱を差し出してきて、その後に浮かべた笑顔はとても魅力的だった。
(小さな手だったな……素手だった)
きっかけは単純だった。イメージがプレゼントの中身を一気に固めていく。
「よし、決めた」
「え?」
いいかげん疲れていたのだろう、風見が気のない声を漏らした。
純一は悪い、と一言謝り、最初のブティックに戻ることを告げた。
プレゼントをようやく購入して、待ち合わせ場所のコンビニに戻ってきたときには、日はすっかり落ちていた。
ちらほらと雪が降る中時刻を確認する。午後8時だった。
「悪かったな、遅くまで付き合わせてしまって」
「いいよ、紗枝にはメールしたし。それより、うまく渡せるといいね」
「頑張るよ。不安はあるけどな」
果たしてこれでよかったのだろうか。純一は手元の袋を自信なく眺める。
コンビニ前のバス停には何人かの人間がいたが、混んではいなかった。ただ、これから来るバスの中は満杯だろう。雪も降ってきたし、ダイヤに乱れが生じるかもしれない。
純一は白い息を虚空に向けて吐き出した。粉雪と湯気が入り混じるように合わさり、消える。
その虚空の先に、何かが見えた。
(!?)
道路を挟んで向かいの民家の屋根。そこで小さな人影が動いていた。
音もなく歩道に降り立つ。その姿はやはりサンタの格好だった。
気配を消すようにあまりにさりげない動きだったが、格好が格好なのでさすがに目立つ。純一以外の人間も少女サンタに気付いたようだった。
サンタはそ知らぬ様子でそのまま歩道を歩いていく。
純一は居ても立ってもいられなくなり、風見に一言、
「俺、用ができた」
と耳打ちするや、全速力で駆け出した。
「え? ちょっと、ミドリ?」
「早く甘利のところに行ってやれー!」
大声でそれだけ叫び残すと、純一はもう振り返らず、少女の後を追った。
少女の後を追っていくと、次第に中心街から離れて住宅街の方へと入っていった。
少女の足取りは決して速くなかったが、なんというか闇に紛れるような気配の希薄さが追跡を妨げるようで、純一はついていくのが精一杯だった。
ふと気付くと、住宅街の真ん中で純一は少女を完全に見失っていた。
(くそ、どこだ)
周りの小道だけではなく、屋根や電柱の上にも目を向ける。夜闇の中ではろくに探すこともできず、途方に暮れかけた。
そのとき、
「……誰?」
と、聞き覚えのある声がした。
聞き覚えどころではない声に純一は振り返る。
そこに、いた。
野暮ったいサンタ服姿の少女が、常夜灯の下に影を落としていた。
その顔はやはり見知った後輩のもので、一年前の光景と重なるようだった。
純一は彼女の名前を呼んだ。
「後羽!」
少女は首を傾げた。
「……?」
その表情は後羽由芽のものには見えなかった。感情が奥底に隠されているようで、由芽らしくない無表情だった。
その様子を怪訝に思い、純一は再び叫ぶ。
「後羽!」
少女が傾げた首を元に戻し、近付いてきた。
「……由芽の……知り合い?」
意表を突く問い掛けに、純一は眉を寄せる。
「何、言ってる……。後羽はお前だろ」
「……」
少女は静かに首を振った。
何の冗談だ、と純一は訝しんだが、一つ思い付いて言った。
「姉妹とかか? 双子とか」
「……」
少女は答えず、背中を向けた。そのまま足音もなく歩き出す。
「おい」
「ついてくれば……話す……」
呟くように放たれた言葉に、純一は黙り込んだ。
意を決して歩き出すと、少女が振り返って答えた。
「クリス」
「……は?」
「私の名前。……本名はクリスマスだけど……私を知る人は……みんなそう呼ぶ」
ぼそぼそと囁く声は若干聞き取りづらいが、純一は頷いた。
「クリス、か。俺は緑野純一。呼び方は好きに呼んでくれ」
するとクリスと名乗った少女はにこりと微笑んだ。
一年前とまったく同じ笑みだった。
しかしすぐに笑みを収め、元の無表情に戻る。
純一はそれを見て、確かに違うな、と思った。姿形は一緒でも、後羽由芽の持つ雰囲気とは明らかに異なっていた。
では、この少女は一体何者なのだろうか。
クリスはしばらく歩き、近くの公園へと入った。奥のベンチに腰掛けると、目の前に立つ純一を見上げた。
「で、話してくれるのか?」
視線を返しながら純一は尋ねた。
クリスはしばし考え込み、それから言った。
「私は……由芽の体を借りてる……」
意味がわからなかった。
純一はおもいっきり不審な顔をし、眉をしかめた。
「……あの、頭悪い俺にもっかい説明してくれるか?」
「……」
クリスは表情を変えなかった。
「信じないなら……信じなくていい」
「いや、俺は困るんだよ。わけわかんねえしな。さっきの意味は何だ? 借りる?」
「そのままの……意味……」
クリスは言葉少なながらも断言する。
「本体はこの服……これを通して……由芽の体を借りてる……」
「……」
純一はクリスを睨む。
口調は真面目だが、内容は馬鹿馬鹿しいの一語に尽きた。
しかし、クリスは特に動揺を見せない。ただ話すだけと言わんばかりに無表情だ。
「……わかった、それが本当だとしよう。で、何の目的があって体を借りてるんだ?」
「……ケーキを、配りたい」
「……」
思い出す。去年もらったものもケーキだった。
「去年もやってたな。やっぱりあれはお前だったのか」
「憶えてる。……どうだった?」
「何が」
「……ケーキ」
「……おいしかったよ。甘すぎなくて、俺の舌に合ってた」
「……」
クリスは、とても嬉しそうに微笑んだ。
「今年も配ってるのか」
「イブの夜だけしか……私は動けない。毎年イブの夜だけ……由芽が体を貸してくれる……」
クリスはどこか申し訳なさそうに呟いた。
言っていることは電波だったが、辻褄は合っていた。由芽がなぜイブの日の約束を断ったのかという理由に当てはまるからだ。
だが、現実的に考えるなら、
「演技じゃないのか、『クリス』」
そっちの方が自然だった。
「……手伝って」
唐突に頼まれた。
「は?」
「……イブを過ぎれば……この体は由芽の意識に戻る」
「……その間ついてこい、と?」
「……」
勝手な言い草だと思ったが、言っていることはそれなりに納得できるものだと思った。
本当か嘘か測るには間近で見張るのが一番だったし、何より彼女の活動に興味があった。
実際のところ、演技かどうかなどどうでもよかったのかもしれない。純一は純粋にこの小さなサンタに興味を抱いていた。
「わかった。手伝うよ」
騙されているという思いの中で、騙されてもいいかなと思う自分がいることが不思議だった。
活動はシンプルだった。
各家を訪問し、ケーキを渡す。それだけだった。
もちろん見知らぬ人間の急な訪問に警戒する者は多かったが、イブ限定の無料キャンペーンだと言えばある程度納得してもらえた。それでも警戒して受け取らない相手はいたが。
それより不思議だったのはクリスの持っている袋だった。純一が中を探っても何も出てこなかったが、クリスが探るとケーキの入った箱が出てくるのだ。
「手品か?」
「……魔法」
少女はそうのたまった。
しばらく一軒一軒民家を回っていたが、純一は効率が悪いように思った。
「おい、一つ一つ家を回るより、人の大勢いるところで配った方がいいんじゃないか」
「……」
クリスは答えない。
「おい」
「目立ちすぎると……由芽に迷惑がかかる……」
「……」
純一は押し黙った。
時刻を確認すると9時を過ぎていた。まだ三時間弱ある。
「……まったく、今日だけだぞ」
雪の舞い散る中、クリスは淡々とケーキを配り続ける。
風が強まり、雪が横に凪ぐ。刺すような鋭い寒さに純一は肩を震わせた。
「おい、寒くないのかよ」
「……」
クリスはふるふると首を振った。しかしその小さな体は微かに震えている。
「ウソついてどうするよ」
「っ」
「一旦休憩な。コーヒーでも飲もう。おごるから」
首を振って拒絶するクリスの手を無理矢理掴み、純一は強引に引きずっていく。
(……冷たい手だな)
掴んだ手の感触は、こちらが凍りそうなほど冷えていた。
クリスは諦めて純一の為すがままにしている。
近くの自販機で温かい缶コーヒーを買う。クリスはもの珍しそうに自販機をしげしげと眺める。
「ほら、お前のだ」
「……」
クリスは純一が飲むのを見ながら、それを真似るように缶に口をつけ、おそるおそる傾けた。
「……甘苦い」
「砂糖入ってるからな」
純一が言うと、少女はふっと微笑んだ。
「でも……温かい」
「……」
純一はサンタ服の少女をぼんやり見つめる。
次第にわからなくなってきた。目の前の少女は明らかに後羽由芽とは違う。本当に体を借りてるように見える。信じ難いことだが。
いや、もう内心では信じているのだ。少女の言が本当なのだと。
何より、そんなことなど関係なく、純一はこの少女に惹かれていた。
だがそうなると、自分はクリスが好きなのだろうか。
後羽由芽のことは何とも思っていないのだろうか。
「……純一は」
クリスが不意に口を開いた。
「……ん?」
「由芽の恋人……なの?」
「……。違う」
「じゃあ……何?」
「俺にもわからん」
「由芽は多分……純一のこと好きだよ……」
「……なんでわかるんだよ」
「なんとなく……」
「なんだそりゃ」
由芽の体を使っているとそういうところまで感じ取れるとか、そういうことだろうか。
考えが既に毒されているような気がして、純一はため息をついた。
「そろそろ行くか。まだ二時間以上あるぞ」
「……」
二人は飲み干した缶を自販機横のゴミ箱に捨て、再び雪の中を歩き出す。
クリスは厚めのサンタ服を着込んでいるとはいえ、どことなく寒そうに見える。
純一は見かねて、手元の紙袋を開けた。
中から取り出したのは、暖かそうな白い手袋だった。手首部分にはマスタード色のくるみボタンがついていて、シンプルながらかわいらしいデザインだ。
「……?」
不思議そうに目を丸くするクリスに、純一はそれを差し出した。
「つけろ」
「……え?」
「プレゼントだ。後羽にあげるつもりだったけど、この寒い中で素手は見てられねえから、これつけろ」
「……」
クリスは驚いたように固まっていたが、しばらくして首を振った。
「由芽に……悪い……」
純一はカッとなって叫んだ。
「いいんだよ! 元々お前をイメージして買ったんだから」
「……?」
「サンタ服の後羽をイメージして買ったんだ。この色ならサンタ服にも合うんじゃないか、って」
「……」
「そ、それにその体は後羽のなんだろ。じゃあ風邪ひいたらお前のせいってことになる。それはなんか、嫌だしな」
「……」
クリスは何も言わない。
無言の空気に耐えきれず、純一は顔を背けた。
「つけたくないなら別にいいよ。後で改めて後羽に、」
「……ありがとう」
その声は、笑顔は、これまでのクリスのものとは少し違っていた。
見つめ直す。確かにクリスの笑顔だが、なんだか後羽由芽の色も混じっているように見えて、純一はどっちがどっちかわからなくなってしまった。
だが、その笑顔がこれまでの表情の中で一番魅力的に思えて、純一は心の中が一際熱くなった。
思った。自分はどちらの彼女も好きなのだ。クリスも、由芽も、どちらも同じくらい好きなのだ。
なら問題ないかもしれない。目の前にこの少女がいてくれるなら。
クリスは手袋をつけて純一に両手を掲げてみせた。
「……似合う?」
「……ああ、ぴったりだよ」
少女は再び満面の笑みを浮かべた。
それから二時間以上、二人はひたすら民家を回った。
無限にケーキが出てくる袋を片手に、少女は家々を訪ねる。
本来あまり人と話すのは苦手だというクリスに代わって、純一が玄関から訪問した。いつもは二階の窓などからこっそりケーキを置いていくという。
初めて会ったときに屋根の上を移動していた理由はそれだったわけだが、そんな怪しいケーキを好き好んで食べる人間は少ないだろう。ひょっとしたらこれまでの多くのケーキは捨てられていたのかもしれない。
そういう意味では、役に立てたのだろう。純一は嬉しく思った。
やがて日付が変わる十分前に、二人は一番最初の公園に戻ってきた。
「案外短いんだな、四時間近く配ってたはずなのに」
「……いつもより、たくさん配れた……」
満足げにクリスは呟いた。
純一は小さく笑った。
「そっか、よかったな」
「純一のおかげ……」
「お前の頑張りだろ」
「……」
クリスは照れたように顔を伏せる。
もうすぐ日付が替わる。クリスの言が正しいなら、もう時間は少ない。
聞いておきたいことがあった。
「なあ、なんでケーキ配ってるんだ? なんか理由でもあるのか?」
「……わからない」
「わからない、ってお前……」
「私が喜べなかった分……みんなに喜んでほしい……のかも、しれない」
「……」
少女の言葉は推し測れない。
過去に何があったのか、純一にはわからない。ただ、この少女が誰かの幸せを願っていることだけは感じ取れた。
この少女は本当にサンタなのだ。おとなしくて愛想も足りないが、とても一生懸命なサンタクロース。
「なあ、俺にもケーキくれるか?」
「……?」
「去年うまかったからさ、今年もほしい」
「……」
クリスは袋から紙箱を取り出し、純一に渡す。
純一は受け取ると、礼を言った。
「ありがとな」
「……ん」
クリスはもう一つ箱を取り出す。
「ん、なんだ?」
「由芽の分……」
「……ああ、そうか、わかった」
もう一つの箱も受け取る。クリスは満足したように夜空を見上げた。
雪を掴むように両手を掲げ、広げる。外灯の下、白い手袋が明るく映えた。
純一は携帯電話の表示を確認する。もう、残り五分しかない。
「クリス」
「?」
「来年も会えるよな?」
「……」
「まだ全然配りきれてねえじゃねえか。来年も、配るんだろ?」
「……手伝ってくれるの?」
「ああ、来年だけじゃない、毎年手伝ってやるよ。お前のこと、嫌いじゃないし」
「……」
クリスは口を閉じると、顔を近付けてきた。
「な、なんだよ」
「……好きなの?」
心臓が跳ねた。
「な……」
「嫌いじゃないって……言った」
「う……それは、その……」
「……私は好き……かも」
そんなことを言う。
純一はヤケクソ気味に叫んだ。
「ああ、好きだよ! 初めて会ったときから好きだったよ!」
クリスは小さな声ながら言い募る。
「由芽のことは……どうなの?」
「後羽のことも好きだよ。どっちも俺は好きだ」
クリスはにっこり笑った。
「よかった……」
「何が」
「ちゃんと……由芽の側にいてあげてね」
「……」
「また……来年ね」
クリスは小さな手の平をバイバイと振る。あと一分。
純一はクリスを真正面から見つめ、はっきりと言った。
「その手袋は後羽へのプレゼントだけど、お前にあげたプレゼントでもあるんだからな。来年も必ずつけてこいよ」
クリスはにっこりと笑った。
「ありがとう……プレゼントをもらうのは……初めてだったよ……」
メリークリスマス。
その一言を言い終えた瞬間日付が替わり、クリスマスという名の少女は糸が切れたようにその場に倒れ込んだ。
純一は慌てて少女に駆け寄り、体を抱き起こす。
しばらくして、少女は夢から覚めたように目を開けた。
「後羽!」
「……先輩?」
元の後羽由芽の口調。純一はほっとして、由芽に微笑んだ。
「大丈夫か?」
「は、はい。……あ」
由芽は自分の服装に気付き、次いで純一を見た。純一は黙って見返す。
「……クリスに会ったんですか?」
「ああ。ケーキももらった。また来年って」
「先輩がついててくれたんですね。よかった……」
さっきのクリスと似たようなことを言う由芽に、純一はつい笑う。
きょとんとなって純一を見上げる由芽。
「立てるか?」
「は、はい。ありがとうございます」
由芽を立たせると、純一は軽く深呼吸して言った。
「好きだ、後羽。付き合ってほしい」
突然の告白に、由芽はひどく驚いたようだった。
「え? あ、あの、」
「……駄目か?」
「い、いえ、そんなわけ……私も、好きです」
クリスの言ったとおりだった。答えを聞くと、純一は由芽を抱き寄せた。
由芽は慌てたように身じろぎしたが、やがて動きを止め、体を純一に預けた。
「……この手袋、先輩のですか?」
「お前へのプレゼントだよ」
「暖かい……」
由芽は顔を上げ、にっこりと笑った。
「メリークリスマスです、先輩」
「……ああ、メリークリスマス」
大好きな笑顔を見つめ返しながら、純一は祝福の言葉を唱えた。
◇ ◇ ◇
10時頃に風見がようやく自宅に帰りつくと、門の前で紗枝が傘を差して立っていた。
じろりと睨まれ、風見は顔が引きつった。
「ご、ごめん、遅くなった」
「……」
「いや、ミドリの用に時間かかって」
「……」
「あ、あの、バスも事故で遅れて」
「……」
紗枝は何も言わない。普段から無口だが、今は機嫌の悪さがオーラとなって見えるようだった。
「あの、これ、プレゼント」
冷や汗をかきながら、風見はプレゼントの袋を渡す。紗枝は一瞥すると、その袋を受け取った。
それから紗枝は風見の顔に手を添えた。
どきりとする中、紗枝の手は風見の両目を塞ぐ。
目を瞑れ、ということなのだろう。風見はおとなしく目を瞑った。
首元に何かを巻かれた。
思わず目を開けると、首にチェックのマフラーが巻かれていた。
幼馴染みを見ると、ぷいとそっぽを向いて目を合わせない。心なしか、頬が少し赤かった。
「手編み?」
「……」
横を向いたまま、微かに頷く紗枝。
「ありがとう、紗枝」
紗枝はしばらく何の反応も見せなかったが、やがて上目遣いにはにかんだ。
風見はその笑顔がマフラー以上に嬉しく、幼馴染みに対する想いで胸がいっぱいになった。
「家、入ろっか」
紗枝は頷くと、風見の腕を引っ張って傘の下に入れた。風見は抵抗せずに紗枝の好きにさせた。
雪の降る中、幼馴染みの腕の感触は柔らかく、温かかった。
今夜はホワイトクリスマス。
みんなが少しだけ、幸せになれる日。