【涼宮ハルヒ】谷川流 the 53章【学校を出よう!】
Q批評とか感想とか書きたいんだけど?
A自由に書いてもらってもかまわんが、叩きは幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。
Q煽られたりしたんだけど…
Aそこは閉鎖空間です。 普通の人ならまず気にしません。 あなたも干渉はしないで下さい。
Q見たいキャラのSSが無いんだけど…
A無ければ自分で作ればいいのよ!
Q俺、文才無いんだけど…
A文才なんて関係ない。 必要なのは妄想の力だけ… あなたの思うままに書いて…
Q読んでたら苦手なジャンルだったんだけど…
Aふみぃ… 読み飛ばしてくださぁーい。 作者さんも怪しいジャンルの場合は前もって宣言お願いしまぁす。
Q保管庫のどれがオススメ?
Aそれは自分できめるっさ! 良いも悪いも読まないと分からないにょろ。
Q〜ていうシチュ、自分で作れないから手っ取り早く書いてくれ。
Aうん、それ無理。 だっていきなり言われていいのができると思う?
Q投下したSSは基本的に保管庫に転載されるの?
A拒否しない場合は基本的に収納されるのね。 嫌なときは言って欲しいのね。
Q次スレのタイミングは?
A460KBを越えたあたりで一度聞いてくれ。 それは僕にとっても規定事項だ。
Q新刊ネタはいつから書いていい?
A最低でも…………一般の――――発売日の…………24時まで――――待つ。
A一般の発売日の24時まで待ってもらえますか? 先輩、ゴメンナサイです。
Q1レスあたりに投稿できる容量の最大と目安は?
A容量は4096Bytes・一行字数は全角で最大120字くらい・最大60行です。
Aんふっ。書き手の好みで改行をするのも揃えるもバッチリOKです。
あなたの――>1は―――――とても――――乙ね―――――
埋め荒らしってどこにでもわくな
何が嬉しいんだか
普通に埋めようと思ったら1秒差で1000とってしまったorz
すまん埋めてしまった
いちもつ
10 :
52-265:2007/09/29(土) 20:43:09 ID:EVKg0VXM
とりあえず
>>1乙。
では、投下します。
エロなし。17レス予定。
続き物です。
Prologue.
「よくさあ、二度あることは三度あるって言うでしょ。という事は、よ。悪い事だって一度で止めておけば大抵の事は万事解決、円満終了、視界良好オールグリーンってわけじゃない」
とある夏の日の夕暮れ時、これまたとある遊歩道で、最近知り合いになった少女が、いつも通り意味が分からない俺様理論を並べ立てだした。
「でも、何故かは分からないんだけど『こういう事』って必ず繰り返すわよね。………悲しいけれど、それが人ってやつなのかしら」
「いや、そのセリフはどう聞いても言い訳だとしか思えないんだが」
ただ、お前が今視界不良青信号大絶賛点滅中な迷子さんである事を考えると、方向性は間違って無いのかもしれんがな。
「うっさいわねー! あんただって同罪でしょう!」
迷子が懲罰対象になるとはひどい法律もあったものである。まあ、出会った時からこいつは『こう』なのでいい加減慣れてきてはいるが。
………それが幸福なのか不幸なのかは考えないようにしつつ、話題を変える。
「ああ、そういや、一度あったら二度目もある、という意味の言葉もあったよな。確か、えーと、一、一…………」
「一匹見たら三十匹!」
「それだ! って、ちっがーう! つーかお前、三十回も同じ事繰り返す気かよ!」
俺のツッコミがシグナルレッドな夕焼け空へと、無駄に高らかに響き渡った。
///
と、そんな場面を思い出したのは、まあ、ハッキリ言って現実逃避だ。
「戦って、現実と」
『逃げるという選択肢を本当に知らないんじゃないか?』とたまに将来が心配になるほど冷静な長門の声に引き戻され、ついでに両手で強制的に前を見させられる。
目の前には一匹見たら三十匹なアレとは違うものの、おそらく同じくらいの不快感をこちらに与えてくるであろうカマドウマが、数十匹ほど群れていた。もちろんいつかの時と同じで全長5m以上の、だ。
「ふふふふふ、ここはあたしが未来的に何とか………」ぷちっ
「いやいやいや、ここは僕が超能力的に何とか………」ぷちっ
潰された二人を長門が『情報操作は得意』などと言いながら空気入れで膨らませている、しゅこしゅこ。
………ピカソもビックリのシュールっぷりだ。ただまあ、絵にしたところで価値は二束三文だろうけどな。
「あなたも」 しゅこしゅこ
長門に空気入れを渡された。目の前には二次元へと退化をとげた古泉が、………ある。
「レッツしゅこしゅこ」 しゅこしゅこ
………ああ、帰りたい。
古泉の口に空気入れの先端を差し込みながら、引き戻された現実から何とか逃避しようと無駄な努力を続ける。しゅこしゅこ
………どうにもこの空気のかわりに気力が抜けていく音が邪魔である。しゅこしゅこ
無駄な努力の一端として、どうしてこのような事態になったのかでも回想してみようかね。しゅこしゅこ
………やれやれ。しゅこしゅこ
――――――――――――――――――――
喜緑江美里の暴走〜The sigh of fake star〜
――――――――――――――――――――
1.
「それでは、合宿に行きましょう」
夏休みに入って少したち、ジュライがオーガストへバトンタッチしようかというそんな日の朝早く、人の家のチャイムを小学生のように16連射しやがった俺の後ろを指定席にしている少女、喜緑江美里、は開口一番にこんな初耳話を俺にぶちかましやがった。
「おやつは300円以内です」
「いや、そうじゃなくて」
いつもながら人の話を聞かないやつである。
「お弁当の中に入ってるものは、何と、おやつになりません!」
「いや、だからな」
つーか、聞いているのに、聞いてないふりをしているというのが正しいのかもしれないな、………政治家にでもなれば、いいポジションまでいくんじゃないか。
とりあえず、適当に話を合わせつつ、様子を見る事にでもしようかね。
「でも、お弁当の中にガムとかチョコとか入れるのは駄目ですからね」
「ああ、夏の遠足でそれやって、チョコ味のおにぎりを食べるハメになった事があるな」
フロンティアスピリッツあふれる小学校時代の苦くて甘い思い出だ。
「あらあら、どんな感じでした?」
「甘くて、しょっぱくて、ぬるねちゃで、………何というか、異次元だった。しばらくトラウマで弁当が食べられなくなったほどだ」
「ご愁傷様です。でも、大丈夫ですよ。今回はちゃんとわたしがお弁当を作ってきましたから」
「マジで、ラッキー!」
「うふふ、では参りましょうか」
「オーケー、レッツゴー! ………って、違うわ!」
あまりにも自然な流れに危うくそのまま乗ってしまうところだった。
「えーと、だな」
時間は早朝、眠たすぎてエンジンのかかりが悪い脳みそを騙し騙し動かしつつ、質問の言葉をひねり出す。
「で、いつからだ、合宿?」
「今日からです」
「唐突すぎるだろっ!」
「間違えました。むしろ今からです」
「悪化したー!」
あまりのショックにエンジンフルスロットルである。ようやく目が覚めた、とも言う。
「無駄だとは思うが一応聞いておく。俺の都合は?」
スタートダッシュで致命的な遅れが出ているものの、エンジンがかかってしまったので走らなきゃならなくなったレーサーの気分で質問する。………はたして完走できるんだろうかね。
「親御さんの許可ならもう1週間ほど前に頂いていますよ」
「そんなとこで外堀から埋めていくなよ! もっと大胆に天守閣狙えよ!」
いきなりのエンジントラブルである。しかも原因は整備班の裏切り、………ダメだこりゃ。
「そういえばお母様から『バカ息子ですが末永くよろしくお願いします』と、何だかよく分からないけれど嬉しくなってしまうお願いをされました」
「いろんな意味で人生リタイヤ一歩手前じゃねーか!」
「???」
首を傾げられる。
溜息が出た。急な天候悪化のせいでレースは中止、だな。
しかし、こういう事は本気で鈍いんだよな、こいつ。
「えっと、駄目、かな?」
俺の溜息をどう取ったのか、上目遣いでこっちを見あげてくる江美里。
「あー、うあー、………いや、いいけどな」
結局のところ、レースの勝敗関係なくいつも通り巻き込まれる俺、とそういう事なのだろう。
ふはははは、今日はこの辺で勘弁しといたらー、………泣いてなんかないぞ。
///
すでに準備されていた着替えなどの『お泊りセット』をニヤニヤ笑いで手渡してくる親に対し、『地獄に落ちろ』と親指を下に向けつつ、希望するお土産を聞いてから自転車で家を出る。
後部座席に当たり前のように座ってくる江美里を当たり前のように待ち、当たり前のように腰に回される手を当たり前のように許可して、当たり前のような二人乗りで当たり前のように集合場所へと向かった。
「曲名は『当たり前のブルース』ですね」
「意味の分からんボケをかますな」
「あう、恋人に対してつれない言葉ですね」
「コメントに困るレスポンスを返すな!」
ああ、そういえば、言い忘れていたかもしれないが、そういう事、である。
出会ったり、別れたり、泣いたり、笑ったり、いろいろと紆余曲折っぽい何かがあった後で、
―――俺達は今、恋をしている。
それを伝えた時のそれぞれの反応であるが、
「ふえー、おめでとうございましゅるー」
「おやおや、ようやくですか」
「………おめでとう」
「ああ! なんだ! ラブか! ラブなのか! 胸が恋焦がれてラブラブファイヤーとでも言いたいのか! 畜生、お前なんか一生ラブってろ、このラブレンジャー!」
このように、いきなり錯乱しだした谷口という名の馬鹿一人以外はおおむね祝福してくれた。………最近思うのだが、もう馬鹿という名の谷口と言った方が日本語的に正しいのではないだろうか?
進行方向に注意を払いながらも、ちょっとだけ視界に空をいれる。
みんな、祝福してくれた。
だから多分、今はもう居ない彼女も、祝福してくれるだろう、………と、思いたい。
『このまま続けても不幸になるだけよ』
………多分、だけど。
『それまで、喜緑さんをよろしくね』
こう、言ってたしな。
少しだけ、痛い。なるほど、これは確かに不幸な痛みだ。
「………痛みますか」
分かるのか?
「あなたは、いつもそんな顔をしますから」
本当に俺の事を理解してくれているようで、ありがとう、マジ愛してる。
「………ニャー」
腰に回された手に、きゅっと力が込められた。
不幸になる、それもあるかもしれない。おそらく、この痛みは俺という存在が消え去るまで続くものなのだろう。
それでも、だ。
今後部座席に感じる重さは、腰に回された手の暖かさは、それでも確かに幸福なのだ。
幸福を物理的な重さとして感じつつ、ペダルを踏みこむ俺であった。
2.
二時間後、俺達は海面を矢のようにとまではいかないが、まあそれなりの速さで進むフェリーの客室にいた。
「あふあー」
俺の隣に座っていた江美里が何となく微笑みたくなるような欠伸をしつつ、ぽすっ、とこちらに寄りかかってきた。
「いや、周りにみんな居るからな」
古泉はいつもと変わらないニヤケ面で、朝比奈さんは手で顔を覆いつつも人差し指と中指の間から、長門は本を読むふりをしながらもチラチラと、それぞれこっちを見ている。
つーか、俺達は二等客室の大部屋の一角を陣取ってるだけなわけで、周囲の一般客からの微笑ましさと嫉み僻み恨みとをミックスさせた視線がガスガスと俺に突き刺さってくるわけで………。
「見せつけてやればいいんですよー」
「俺にそんな趣味は無い。………というか、お前、疲れてんのか?」
もうほとんど目が開いていない。いわゆる糸目状態である。
「いえ、自分でもどうしてかは分からないんですけど、昨夜はどうにも寝付けなくて………、すー」
そのまま寝だしやがった。………てか、どうしろと?
「うふふ、喜緑さん、可愛いです」
「そうですね。どうやらあなたの隣は安心できる場所らしいですしね」
「………らぶらぶ」
好き勝手言う三人を睨みながらも、俺は自分を抑えるのに必死である。周囲の一般客からも口笛を吹かれたり、視線に殺気が混じりだしたりしていたが、もうそんな事を気にしている余裕なんてない。
「んー、すー、すー」
多分、江美里にはそんな期待はないのだろうが、………こう、感触とか匂いとか息遣いとかがダイレクトリンクで思春期男子には毒を食らわば100までとって感じでうわもうあひー!
「………指向拡散による情報処理能力の大幅な低下を確認」
「ふえ? 長門さん、それってどういう事ですか?」
「まあ、壊れたという事でしょうね」
「あ、そういう事ですか、ありがとう古泉くん。………って、それ大変じゃないですか! だいじょ、って白目むいてるしー!」
「お、俺なら大丈夫さ、あひー!」
「いやー! 本当にぶっ壊れてますよー、この人!」
「失礼な事を言う人だね、あひー!」
「いやもう何といいますか。………すみません、白目のままでこっちをむかないでください」
「じゃあ教えておくれよ。一体この俺のどこが壊れているって言うんだい、あひー?」
「………全部」
「………あひー」
結局、残った理性を総動員して、こっそり長門に頼み体を動かなくしてもらいつつ、この地獄のような天国はフェリーが陸地に着くまで続くのであった。
///
フェリーを降りてクルーザーに乗り換える。
どうやら今から行くのはいわゆる孤島という場所らしい。『僕の知り合いに富豪の方がおられましてね』とはこの旅行を企画した古泉のセリフだ。………ブルジョワジーめ。
「いえ、僕の力ではなく、『機関』の力が凄いという事ですよ」
「ああ、お前と同じ自称超能力者の寄り合いみたいなやつか」
ちなみに今運転席にいる全身から執事感を漂わせている新川さんという人も『機関』とやらの一員らしい。
「その『自称』というのはいい加減取っていただけませんか?」
古泉が肩を落としながら懇願してきた。
………いや、そんなこと言われても、俺はお前が超能力使っている場面なんて見た事ないんだぞ。
まあ話を聞く限りでは、超能力云々以外でも江美里が原因で起こる様々なトラブルを裏で解決してきてはいるらしいのだが、どちらにせよ見た事がないのには変わりない。
「使う機会が無いんですよ。喜緑さんはここ最近、ずっと安定していますしね」
古泉の声に合わせるように、クルーザーの後ろの方で楽しそうに話している三人娘に目をやる。
「ふえー、孤島ですかー。何か怖い事が起こりそうですねー」
「大丈夫ですよ。あなたのような人は最初に被害にあって舞台から強制退場くらいますから」
「そ、それのどこが大丈夫なんですかー!」
「………怖いのは、一瞬だけ」
「いやー! むしろ今からずっと怖がりまくりですー!」
俺から言わせてもらうと、出会ってからずっと、アイツはなんも変わってないんだけどなあ。
「ふふふ、言い直しましょう。あなたと出会ってから、正確にはあなたと喋るようになってから、一度も僕等は力を使っていません」
何でもこいつ等の力は江美里が不機嫌になった時に出来る、閉鎖空間というやつの中でしか使えないらしい。
で、古泉が言うには、江美里は俺と知り合ってから閉鎖空間を創っていない、ようだ。
………つーことは、俺とアイツが喧嘩するとこいつ等って大変な事になるかも、なんだよなあ。
「まあ、そんな考え方もあります。けど、僕個人の意見を言わせてもらいますと、あなたとの喧嘩なら大丈夫だろうと思いますよ、保証します」
お前の保証があってもねえ。人類の未来がかかった喧嘩ってやりにくいだろ。
「………やりにくいとか言っている割には結構してますよね、痴話喧嘩」
正直、すまんかった、………いろんな意味で。
「まあ、いいですよ。『俺らの仕事はガキ共にちゃんと喧嘩をさせる事だ』と、そこで運転している人も言ってますからね」
………恐ろしいほど男らしい執事だった。
///
ふと、温度を感じたので隣を見てみると、長門が俺の横に座って本を読み出していた。
クルーザーの後部では朝比奈さんと江美里が寄り添うようにして寝息をたてている。
どうやら、二人を起こさないようこっちに移動してきたようだな。
「本を読むだけなら起こすような事はないだろ?」
「………」
何故か非難めいた目で見られた。古泉が肩をすくめているのがプチむかつく。
「しかし、あいつも安定してるんだったら、こんな旅行なんて計画する必要なかったんじゃないか?」
なので、こんな、ちょっと意地の悪い八つ当たり気味の質問を古泉にしてしまう。
「いや、そうかもしれませんが、こんな学生らしい事っていうのも希望されているかもしれませんでしたしね。その、気分転換とか、ね」
『誰が希望してるんだ?』という言葉はさすがに意地悪すぎるので自重した。
しかし、気分転換、………ね。
朝倉涼子が『転校』ではなく『消失』したという事実を伝えた時、朝比奈さんは大泣きし、古泉は『そうですか』と一言だけ呟いた。
―――そして次の日、一日だけ、二人とも学校を休んだ。
休んだ時に何をしていたかってのは、俺は知らないし、知る気もない。
でも、こうして前に進もうとしている姿を見ると、おそらく休んで良かったのだろうと思う。
『迷惑かけてるよなー』と思いながら、『でも謝るのは何か違うよなー』とも思い、どうしようもなくなって、あさっての方向に視線をやる。
「いいえ、あなたのせいではありませんよ」
………俺、そんなに心を読みやすいか、古泉?
「さあ、山勘で適当に言っただけなのかもしれませんよ」
「ああ、なんつーかもう、………俺も寝る」
不貞寝モードに移行する。もう今は何を言っても墓穴を掘る気がするからな、ザックザクだ。
「ははは。ああ、それと『ガキはガキらしく遊んどけ。後始末はこっちでちゃんとやっとくからよ』と、そこの執事服の方が」
………惚れてしまいそうなくらい男前な執事だった。
「ところで、どうでもいい事なんだが、どうしてあの新川さんって人は執事服なんだ」
「ああ、あれは彼の趣味です」
………深くはつっこまないでおこう。確実に蛇かそれに準ずる何かが出る藪なんて、つつかないほうが良いに決まってる。
「………あ」
呟きが聞こえたので閉じようとした目を開け横を見ると、長門がクルーザーの進行方向を注視していた。あと、何故かさっきより俺に近い位置にいたのだが、まあそれは問題じゃない。
「長門、何かあるのか?」
一応、聞いてみる。
まあでも、今回は単なる小旅行だし、そんなに大きな事件に巻き込まれる事も無いだろう、なあ、長門よ?
「………」
「何故に目をそらす?」
「人生とは常に事件に満ち溢れているもの、らしい」
「いや、何があるんだよ?」
いい言葉っぽくお茶を濁そうしてもお兄ちゃんはごまかされませんからね。
「………一緒に楽しもうね、お兄ちゃん」
「いやーん! お兄ちゃんわっくわくー!」
俺がそうやって濁ったお茶を一気に飲み干そうとしたその時、
突如現れた陸地にクルーザーが激突し、
その衝撃で俺達は空中に放り出され、
ついでに意識も放り出され、
そして、目覚めたらそこは、大量のカマドウマが跋扈するワクワクレジャーランド(あなたの命もワックワク)になっていたのである。
―――うわーい。
3.
さて、カマドウマ達はこっちが不用意に近づかない限りは攻撃してくる事はないようだ。しゅこしゅこ
長門と一緒に空気入れで自称未来人と超能力者、通称ヤクタタネーズを膨らませつつ状況を整理してみる。しゅこしゅこ
「で、これは、何だ?」しゅこしゅこ
俺には無理だ、という当然かつ自虐的な結論の元、この場で唯一役に立ちそうな存在に助けを求める。これで俺もヤクタタネーズの一員である、………谷口曰くのラブレンジャーよりはマシだろうがね。しゅこー
「んー、まあ、どちらも『あまりなりたくない』という点では変わりないかもしれませんけどね」
「えー、ラブレンジャーってかっこよさそうじゃないですかー」
しゅこしゅこ終了、元祖ヤクタタネーズ復活である。
………あと、ラブはありえないっす。いや、マジで。
///
さて、改めて状況を整理しよう。
俺達がいる場所は半径100mほどの岩場、周囲は海。
激突したはずのクルーザーはなく、それを運転していた新川さんや、後ろの方で寝ていた江美里の姿も見えない。
変わりに見えるのが数十匹ほどのカマドウマであり、………あー、もうマジどんな化学反応だよ、これ。
「それで長門よ。これは一体どういう状況なんだ?」
やっぱり俺には無理だ。ヤクタタズレッド登場である。
「おやおや、考える事をやめたら、そこで停滞してしまいますよ。質問というものはあらかじめ自分なりの答えというものを持ってからするべきだ、と僕は思いますけどね」
ははははは、殴りたい。
「んじゃお前の答えってのは何だ?」
「そうですね………」
古泉は周囲を見渡しながら、しばらく考えた後で、こう言った。
「停滞も、悪い事ばかりではないですよね」
ヤクタタズブラック爆誕の瞬間だった。よし、とりあえず殴らせろ。
「そうですよねっ! あたしもそう思います。………よく分かんないですけど」
ヤクタタズピンクもご降臨なさった。ああ、とりあえず頭撫でさせてください。
ついでなので『それぞれが思う役に立ちそうにないポーズ』をとり、叫んでみる。
「「「ダメダメ戦隊 ヤクタタネーズ!」」」
ああ、自虐的ベクトルマイナスビーダッシュもここまでいくと気持ちよくなってくるなあ。
「仰るとおりかと。ただ、ヤクタタネーズよりヤクタタネンジャーの方がより戦隊ものっぽいと思いますよ」
「あ、言われてみればそうですね。古泉くん凄いですー」
「むー、何となく悔しいがお前が言う事も一理ある。………よし、やり直しだ!」
「了解。あ、長門さんもどうですか?」
古泉が何故か肩を震わせている長門に声をかける。
「あ、それいいですねー。長門さんが加わってくれたら百人力ですよ」
朝比奈さんの勧誘に、長門は絶対零度の視線をもって答える。
「うん、その視線の意味は『どうしてもっと早く誘ってくれなかったの?』という事なんだな」
ははは、有希はいつまでたっても甘えんぼさんだなあ。………ところで、どうしてそんな『ピースサインもどきを左目にあてる』という、どこかデジャブを感じさせるポーズをとっているのかな?
まあとにかく、もう一押しで長門も吹っ切れそうだったので、とりあえず三人で役に立ちそうにないポーズをとり、満面の笑みで長門を勧誘してみる。
「さあ、キミも一緒に、レッツヤクタタネー!」
俺達の熱意あふれる勧誘に、長門は何かを吹っ切ったような表情でこう言った。
「ゆきりんビーム」
―――吹き飛ばされる馬鹿三人。
///
瞬殺ついでに我に返り、長門先生の話を正座で聞かされる俺達。珍しく真剣モードである、もしくは罰則を受ける生徒モード、とも言うが。
「この空間は何人かの情報処理機能を結合させてつくられた特殊な情報閉鎖空間。ここに存在しているのはわたし達という固有情報体のみである、と推測される」
「あ、足がー」
………うん、わかんね。まあ、真剣にやったからってテストで満点取れるわけじゃないって事だよなあ。
「なるほど、ようするにAという世界に並存するように形成されたBという世界にA世界の精神体のみが閉じ込められた、という事ですか」
「頭も足もー、しびびびびー」
古泉の容易になったのか難解になったのか分からないような注釈が入る。
んー、ようするに、夢、って事なのか?
それなら納得できるな、うん。というか、潰されてから空気入れで膨らんで復活するってのは、ちょっと現実であって欲しくないしなあ。
「平たく言うと、そう。我々の有機体部位は今も現実世界のクルーザーの上であると考えられる」
「も、もう駄目ですー、いろんな意味でー」
「なるほど、ところで長門さん、いいかげん朝比奈さんがうっと………、大変そうですのでそろそろ正座を止めてもいいでしょうか?」
「ふひゃあ、今古泉くんがひどい事言いそうになってましたよー!」
「おい古泉、いくらみんなの総意だからって、言って良い事と悪い事があるだろ」
「ふきゃあ、総意だったんですかー!」
「とりあえず、朝比奈みくるだけ後30分追加」
「ふにゃーーー!!!」
真剣モードは5分持たなかった。あきれるくらいにいつも通りの俺達である。
「ちなみに、このまま放置するとどうなるんだ?」
「どうもならない。ただ、現実世界のわたし達は永遠に眠り続けるだけ」
あ、なるほど。もうすでにどうにかなっている、とそういうわけですか、納得………したくねー!
「戻り方は、前と同じ、という事でよろしいですか?」
「………そう」
夕日に向かって叫ぼうとしていた俺のかわりに、古泉が聞いた質問に対し長門が必要最小限の文字数でもって簡潔に答えた。
どうやら俺達の任務は眼前数十メートルほどで群れあっているカマドウマの駆除、らしいな。
「と、いう事はー、あたしの出番ですねっ!」
いやあんたさっき瞬殺されてましたから。
「という事は、ふふふ。ついに僕の出番ですね」
ちなみにお前もぷちっといかれてたからな、ぷちっと。
「………」
「………」
あ、古泉と朝比奈さんが岩場の隅で膝を抱えながら雑草を抜き始めた。
………まあ、可哀そうではあるが、邪魔しないだけでも、よしとしようか。
///
「で、長門。どうにか出来そうか?」
「………数が多い。せめて、あと一人いれば」
前の時は一匹だったのだが、今回はなんと数十匹である。数の暴力ってのは恐ろしいね。
しかし、長門以外でもう一人、か。
頭の中にうかんできた存在を振り払う。
………それは、そいつは、こっちを選んだ俺が期待しちゃいけない存在だ。
だから、今、俺が期待するべきなのは―――、
「ふふふふふ、お困りのようですね」
ふいに聞こえてきた声に顔を上げる。
―――そこに、一人の、
――――――俺が、よく知ってる
―――――――――少女が、立って、
「じゃじゃじゃじゃーん!」
………いたのを全力で見なかった事にした、つーか、ありゃ幻覚だ、………と信じたい。
そんな俺の希望を全力で打ち砕くかのように『それ』は高らかに名乗りをあげた。
「SOS戦隊ラブレンジャーが一人、ラブグリーン! みんなのピンチに参上です!」
確かに、どえらい惨状ではある。ヤクタタネーズが正常に思えてくるほどだ。
少女は、ちゃんと前が見えるのか疑わしい緑色のサングラスに、俺達の学校の制服を緑に染めなおしただけのようにみえる服、そしていつもより緑分がやや増しているふわふわな長髪で………、つーか、団長様、何やってんすか?
ああ、胸の前に両手を使ったハートマークをかざしていますね。ラブっぽいポーズを必死で考えたんでしょうねえ、多分。
そういった陰の努力っぽいのをあえて無視していうと、正直、『やっちゃったー』って感じなんですけどねえ。………いや、可愛くはあるのですけれどね。
「しまった」
「何だ、長門?」
「このままいくと、わたしはきっと『ラブブルー』」
ああ、そりゃ大変だな。
「イエローになってカレーを食べる事が、今のわたしの、夢、………希望」
「ブルーだったとしてもお兄ちゃんが食べさせてあげるから! そんな悲しい希望を持っちゃ駄目ー!」
「あ、それと、このままいくと、あなたはきっと『ラブレッド』」
「夢も希望もなくなったー!」
こうして、かすかに見えていた希望を別ベクトルの絶望に変化させながらも、俺達に心強い助っ人が加わったのである。
しかし、ここから出るための最初の仕事がちょっとバーサク入った助っ人を正気に戻す事というのはどうにも、
「明日のラブレンジャーは、あ・な・た・達・です!」
………いや、もうどうでもいいか、やれやれ。
4.
とりあえず呆然自失のラブ予備軍二人組を長門に任せ、江美里を引っ張って皆に声が聞こえないであろう位置まで移動する。
「どうしたんですか? わたしには悪のカマドウマを倒すという使命があるんですよ」
あー、駄目だこいつ。完璧に入り込んでやがる。
本当は常識人のくせに無理して非常識な行動とるから、たまにこうやって暴走するんだよなあ。まあ、そんなところが………いや、そんな場合じゃなかったな。
とりあえず周囲を見えなくさせてそうなサングラスを取り上げ、江美里の両肩に手を置く。
「よし、とりあえず俺と一緒に数字を言っていこうか。………1、………2、」
「「………3」」
こっちを不満そうに見つめてくる江美里。まだまだ絶好調バーサク状態のようである。
「「………4」」
ふと、頭の中で何かが引っかかったかのように視線がそれる。
「………5」
「………5、………あ、れ?」
瞳孔が拡散した。どうやら何かに気付いたようである。
「………6」
「ふえ、え、あれれ?」
慌てて周囲、主にまだショックという状態異常から回復していない二人、と自分の格好を見直す。
「………7」
「んー」
目を閉じ、何かを考えている。おそらくさっきまでの自分の行動を反芻しているのだろう。
「………8」
「ウニャア!」
一気に耳まで真っ赤になった。うん、めでたく正気の世界へとご帰還なさったらしい。………本人にとってはノットめでたいなのかもしれんが。
「………9」
「ああ、あー、ううー」
せっかくなのできりがいいところまで数えることにしよう。いや、決して涙目で俺を見上げてくる江美里が可愛いから、もうちょっと引き伸ばしていじめてみようとか、そんな事は思ってないぞ。………最低100までは数えるがな。
「………じ「あ、あなたのせいですー!」
10数えるまもなく胸倉をつかまれ、俺の野望は儚く潰えるのであった。世界はかくも理不尽である。
「だ、だってしょうがないじゃないですかー! みんないきなり発生源不明の情報空間に閉じ込められちゃうし、規模的に長門さん一人だとちょっとつらいかもだったし、でもでも古泉さんや朝比奈さんにばれるわけにはいかないし………」
照れ隠しなのか、ばれたらやばそうな事を叫びまくる江美里。
………どうでもいい事だが、さっきから俺の首が良い感じで絞まっている。
「ばれたら困るけど、でもわたしはもう見捨てないって決めてるんだし、そしたらなんか谷口さんがラブレンジャーとか言ってたのを思い出したし………」
ああ、最後の部分が致命傷だったんだな、そりゃ。
ところで、お前が絞めてる俺の首もそろそろ致命的なんだが、脳に血が行かないと人ってタイヘンナコトニナリマ………。
///
頭が、ボーとしてくる。
そうして、世間体とか、照れとかそういった自分を縛り付けていたものから解き放たれ、俺は、自由な、一匹の獣となって、
「………ぐふっ」
そのまま愉快に屠殺されようとしたその時、
「うええー」
涙目で顔を真っ赤にした、大好きな少女の姿が視界に入った。
(ああ、可愛いなぁ………、あひー!)
素直にそう思い、思ったので、
ドサッ
「ふえ、え、え?」
―――とりあえず押し倒してみた、あひー!
///
「え、な、何? 何なんですか?」
はて、何だろう? とりあえず脱がしてから考えるとしよう、あひー!
「ちょ、ま、待って、待って! スカート脱がさないでー!」
ん、駄目か、あひー?
「駄目に決まってるでしょう! 冷静になってよく考えてください!」
む、脱がす前に考える事、か。よし………、
ポク、ポク、ポク、チーン!
「つまり着たままでするのがお好みだと、あひー!」
「悪化したー!」
マイラバーが何か叫んでいるが、もう俺的には答えが出ているのでスカートの中に手を入れる。
「や、駄目! ほ、ほら、みんな見てますよ!」
古泉はニヤケ面を固まらせ、朝比奈さんは人差し指と中指の間から目を血走らせてガン見、長門にいたってはどこからともなく取り出したビデオカメラを回している。
なるほど、ようするに、
「見せつけてやれば良いじゃないか、あひー!」
「さらに悪化したー! というか、あなた、壊れてないですかー!」
江美里が何か言っているようだが、正直もうほとんど耳に声が入ってこない。………いや、脳が認識してくれないんだな、あひー!
「いや、自分でもよく分からないんだけど、今夜は眠れない気がするぞ、あひー! ………ぐはっ」
殴られた。しかもよく見るとマイダーリンちょっとマジ泣き入ってるし………。
「んー、そんなに嫌、かな、あひー?」
パンツに指をかけたまま聞く。
「あ、いえ、婚前旅行とも言いますし、ちゃんと勝負下着ですから、どうしても嫌、というわけではないんですが、できればもう少しロマンティックな所で………」
よし、じゃあ移動しようか、あひー! 満天の星空が見える丘を、これから二人で探しに行こう、あひー!
「えっと、その前に『あれ』を何とかしませんと」
マイハニーの視線の先にはカマドウマの群れがいた。
「ふっふっふ、俺達のラブの邪魔をする無粋な虫けらどもめが、あひー!」
「確実に暴走してますよね、あなた」
「よし、ラブレンジャー出動だっ、あひー!」
しかし なにも おこらなかった
「ん、どうした、みんな、あひー?」
なぜか視線を合わせようとしない隊員達の中、マイステディーことラブグリーンが俺の両肩に手を置き、言った。
「はい、とりあえずわたしと一緒に数字を言っていきましょうね。………1、………2」
静けさの中に野生の勘が危険を知らせるような有無を言わさぬ迫力を併せ持つ表情で言われたので、それに従う。
「………3」
「………3、あひー!」
しかしまあ、こんな事してる場合じゃないってのになあ。目の前のカマドウマだけじゃなくて俺達にはもっと戦わなくてはならない敵が………
「………4」
「………4、あひー?」
敵、敵って何だったけなあ? たしか、………、
「………5」
「………5、………あれ?」
つーか、俺、………ナニヤッテンダロウカ?
「………6」
慌てて周囲を見回す。
「いえ、僕は何も」
目を逸らすラブブラック。
「………7」
さらに見回す。
「………これが、………羞恥」
絶対零度を超越した瞳をこっちに突き刺してくるラブブルー。
「………8」
絶望を感じながら見回す。
「えー、あたしはかっこいいと思いますけどねぇ、ラブレンジャー」
イノセントなセリフが逆に心に突き刺さるラブピンク。
「………9」
自分の顔が真っ赤になってきているのが分かる。
ああ、どうやら俺、………『やっちゃった』、らしい。
///
「………」
いつの間にかカウントの声は途絶え、あたりを静寂が支配していた。
しばらくの間、空に向けていた視線を地上に戻す。
目の前には大泣きする一歩手前の顔をした江美里がいた。
(………ああ、最悪だ)
江美里の口が開く。今ならどんな暴言だって甘んじて受けなければならないだろう。いや、むしろ受けたい気分だ!
「わ、わたしは………」
カモン罵倒! レッツ言葉の暴力! この暴走馬鹿を地獄へと突き落としてくれ!
「わたしは、どんなあなたでもついていきますから!」
………、
………あは、
………あはは、
………あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、
………………………………………………………………………………………………………………うん、自分で死のう。
がすっ! がすっ! がすっ!
「いやー! レッドが岩場に頭をぶつけだしましたよー!」
「し、しっかりしてください、レッド! あなたには守らなきゃいけないラブがあるじゃないですか!」
どごすっ! ごりゅっ! ごがすうっ!
「悪化したー!」
「………逆効果」
ああ、良い感じに気が遠くなってきたなあ。それじゃ、最後に一つだけ。
「明日のレッドは、君だ、………あひー」ガクリ
「そんな遺言、いやー!」
愛しい人の叫びを最期のBGMにして、俺は夜空の星となった。
………てかマジで消え去りてー!
やべ、支援だ。
5.
クルーザーは無事に孤島へと辿り着き、そこにそびえ立つ洋館の中で、俺達は夕飯前の一時を荷物整理がてらの休憩にあてている所だった。
もう一度言う。クルーザーは無事に孤島に辿り着いた。途中の道のりでも特に何事もなく、無事に、だ。
もしかしたら何かあったのかもしれないが、少なくとも俺は何も覚えていない。
―――そう、これももう一度言っておこう。俺は、何も、覚えて、いない!
覚えていないといったら覚えていない。無だ、ゼロだ、ナッシングだ!
「………ラブレッド」
「うおおおおお!」
頭を抱えながらゴロゴロと床を転がる。思い出すな、思い出したら負けだ。
「………手遅れ」
「まあ、あまりお気になさらずに、としか言いようがないですね」
ちくしょう、古泉と長門、お前等一回俺の立場になって考えてみろ。………あと江美里、何で鼻押さえてるんだ?
「うーん、かっこいいと思うんですけどねー。『よし、ラブレンジャー、出動だっ、あひー!』」
「うぼぼごえー!」
朝比奈さんに笑顔で邪気ゼロのとどめをくらい再度床を転がる俺。
「ど、どうしましょう長門さん! 床を転がる彼が可愛すぎて鼻血が止まりません! これが、これが『あひー!』なのでしょうか?」
「………バカップル」
「失礼ですね。わたしはあんな風に床を転がったりはしませんよ」
「おや、そうなのですか。まあそれは良いとして聞きたい事があるのですが、よろしいですか、ラブグリーン、ラブレッド」
「うげぼぷえー!」
「ウニャアアアー!」
床を転がるバカップル。
それを見ながら古泉が、今まで聞いた事がないほどの冷たい声で、こう、言った。
「………やはり、あの状況を、『非常識というもの』を普通に受け入れているようですね、喜緑さん」
「「………あ!」」固まる長門と江美里。
「え、あれ、あ、そうか。………え、ええー!」盛大にパニクる朝比奈さん。
「はてさて、どうやら僕のあなたに対する認識は少々間違っていたようですね」
ああ、そういやこいつにとって江美里は神様で、だからそれを巻き込まないよう裏で事件を起こしたり、解決したりしてたんだっけ。………どうでもいい事だったんで忘れていたが。
「一応、この部屋にいるのは僕達SOS団団員だけです。盗聴器のたぐいもありません、誓って」
ただ、古泉にとっては、それは自分のアイデンティティーに関わる大問題なのだろう。
(………あれ?)
小骨が刺さったくらいの違和感がある。………これは、何だ?
「僕は、ただ、真実を、自分が今までやってきた事は何だったのかを、知りたい」
部屋に響く真剣な声も、今の俺にはその小骨を膨らませる効果しかない。
「話して、いただけますか?」
多分この感覚は、俺がみんなに朝倉涼子の真実を告げたあの時にも感じたもので………。
///
さて、江美里が説明している間、俺は部屋から追い出される事になった。どうやら、俺には聞かれたくない話らしい。
先程の釈然としない気分を抱えたまま何となく館内をうろついていると、
「おや、どうされましたか?」
夕食の用意をしているはずの、必要ないのに執事になりきっている新川さんと出会った。
「いえ、ちょっと具材を取りに倉庫へ向かう途中でしたので。それと、執事は私の趣味ですから」
………そうですか。本人から直接聞いてしまった以上はちゃんとつっこまないといけないとは思うのですが、ちょっと気分が優れないので簡略化しますね、なんでやねん。
「ふむ、そういう事ですか」
倉庫に向かう新川さんと一緒に歩きながら、詳しい部分は省いて、ただ『彼女が隠し事をしている』という事だけを相談してみた。
「信じるしか、ないのでしょうな」
さっきの簡略式ツッコミが良かったのか悪かったのか、こんな当たり障りのない答えが返ってきた。
江美里を信じる事ならちゃんと出来ていると思う。だから、どうして俺が釈然としない気持ちを抱えているかというと………、
………あれ? どうしてだ?
「それと」
何が疑問なのかが疑問であるという、典型的な堂々巡りの泥沼パターンにおちいりかけている俺に対し、新川さんはニヤリと笑いながら言った。
「真っ直ぐ進めんのはガキの特権だ。後悔のないよう突っ走りな!」
思わず全ての悩みを忘れて『結婚してください』と土下座してしまいそうになるほど男らしい執事だった。
………結局、答えはくれなかったけど。
///
気分が完全に晴れるとまではいかなかったが、『他人に話を聞いてもらう』という行為だけでちょっとはスッとしたらしく、足取りも、羽根をつけて死ぬほど努力したら2mくらいは飛べそうなほど若干ではあるが、軽めに部屋に戻る。
ノックして、話が終わった事を確認してから、何が出てくるか分からない天ノ岩戸をそっと開けた。
どうやら話が終わった直後だったらしく、それぞれがそれぞれのやり方で物思いにふけっているようだ。どうやら鬼や蛇が出るような事態は避けられたらしい。
「おう、どうだ?」
まず窓際で空を眺めていた古泉に近づき、小声でそう聞く。
「………そうですね。不満がないといえば嘘になりますが、納得は出来ました」
そうか、そりゃよかった。俺はお前が、『こんな団やってられっかー』って飛び出していってそのまま引きこもって部屋で一人畳の目をかぞえださないか、と不安でたまらなかったんだよ。
「………一度、あなたの中の古泉一樹像について、とことんまで語り合う必要があるみたいですね」
適当にいつも通りのやり取りを交し合いながら、視線をもう一人の方に移す。
支援
支援?
29 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 21:49:21 ID:fuFCkweE
原 作 者 の 新 作 読 む と や っ ぱ 圧 倒 的 な 力 の 差 を 感 じ て し ま う 。
こ れ は も う 如 何 と も し が た い ね ……
もう一人、朝比奈さんはさっきからずっと、腕を組んだり頭に手を当てたり挙動不審と取られても仕方のない動作を繰り返しながら、部屋の中をうろうろしている。
「ふえ、あ!」
視線が俺に固定される。どうやら俺が入ってきた事に今更気付いたらしい。
「あの、………、あの、………、………本当だ、言えない」
朝比奈さんは雛鳥が餌をねだるようにも見える可愛らしい口パクを数回繰り返したあと、泣きそうな顔でそう呟いた。
「あーと、朝比奈さん「あたしは」
とりあえず慰めようとした俺の言葉をさえぎり、彼女は言った。
「あたしには、世界の法則だとか形だとかそんな難しい事はよく分からないけど」
俺から目を逸らさずに、江美里に向けて、こう言った。
「あたしは、喜緑さんは間違ってるって、そう、思うんです」
ああ、そうか。
それで、気付いた。
俺が感じた疑問、喉に刺さった魚の小骨、釈然としないものの正体。
朝倉の暴走、その時の彼女とのやり取り、古泉や朝比奈さん達の考えとは明らかに違う立ち位置にいる江美里。これらは世界に関わる事で、決してどうでも良い事なんかじゃない。
それなのに、俺はそれらを『昨日の夕飯って何だった』とかいう質問と同じくらいに『どうでもいい事』として流してしまっている。
何故だ?
いや、実はこれの答えも分かっている。
答えは、そこに江美里がいるからだ、である。
だから、結局、俺の疑問は、こうだ。
『どうして俺は、江美里の事を疑問に思わず、信じてしまえるのだろうか?』
違う言い方をすると、こうなのだ。
『どうして俺は、江美里の事を、疑えないのだろうか?』
部屋に吹き込んでくる風の中に、若干の湿り気を感じた。
―――どうやら、一雨きそうな気配である。
支援
Epilogue.
「そういやアンタ、名前は?」
「あ、言ってなかったか?」
「疑問に疑問で返すな!」
つるべ落としという表現に花丸をあげたくなるほど急速に広がっていく夕焼けの中で、愉快なくらい理不尽に怒るポニテ少女。彼女と知り合いになったのは、ほぼ奇跡と言っても良いほどの偶然であった、………と信じたい。
そもそもの始まりは不思議探索中にたまたま道に迷った時、以前見た事のあるポニテ少女が歩いていたので道を聞いてみると、『あたしも迷子ですー! 悪かったわねー!』ときれいな逆ギレをくらった事である。
それから何故か、道に迷うたびにこいつと出会う事になり、しかもこいつも確率100%で迷子になっており、いつからともなくこんな会話を交わすようになり、そして知り合いへ、と。
………真面目に考えてみると、かなりイヤな関係だな、これ。
ただまあ、その程度の軽い関係がなんだか心地よいのも確かではある。
それを壊したくなかったし、どうせ名前を言う事に意味なんてなかったから、軽く流すことにした。
「名無しのゴンベエだ」
「あっそ、じゃ、ゴンで良いわね」
「流すどころか発展させられている!」
こいつ、やっぱ、すげー! 世界の法則をぶち抜いてやがる。
「あたしは、………ハルでいいかな、うん」
「それも偽名か?」
「あら、あんた、偽名なの?」
「疑問に疑問で返すのは駄目なんじゃなかったのか?」
「疑問に疑問で返すな!」
「えー!」
まあ、そんな感じでお互いに、偽の名前を交わしあった。
そうこうしているうちに知っている道に出たため、今日はここで別れる事にする。
「そいじゃ、またね!」
「おう、またな!」
また迷子になるのか、などと無粋な事は言わず、
差し出された手と手を、ぱーんと軽快に鳴らしあって、
俺達は顔見知り以上友人未満のまま、別々の道を歩き出した。
―――少なくとも、今日のところは、まだ。
33 :
52-265:2007/09/29(土) 21:53:27 ID:EVKg0VXM
以上です。
では、また。
>>33 GJ!!エピローグで「ハ?前と繋がってなくね?」って思ってしまったけど、
プロローグと繋がるんだな
現代文で読み方鍛えてて良かったw
>>33 GJ!
鬼緑スキーの俺にとってはこの作品のこの後が楽しみです
>>33 漢な新川氏にばかり目が行ってしまう俺は異端なのだろうか
>>33 GJ!
「あひー」で笑った笑ったwww
続き待ってます。
前回のシリアスからギャグへの落差がなんだかな〜
と思ってギャグの部分飛ばし読みしてたら内容がほとんどなくて俺涙目。
次回に期待。
原作者の新作読むとやっぱ圧倒的な力の差を感じてしまう。
これはもう如何ともしがたいね……
>>33 本当、マジに最高だ。たった数行で何度も笑わせてもらった。
読み終わった直後に感じたのは、谷川ワールドから自分はまだ離れられないな〜て事。
ハルヒを思い出そうとして思い出せないのは、原作でのキョンの佐々木への気持ちに近いね。
何か思い出したくないような出来事あったのかな。つたない感想でごめんよ〜〜。
>>40 本当、マジに最高だ。たった数行で何度も笑わせてもらった。
読み終わった直後に感じたのは、谷川ワールドから自分はまだ離れられないな〜て事。
ハルヒを思い出そうとして思い出せないのは、原作でのキョンの佐々木への気持ちに近いね。
何か思い出したくないような出来事あったのかな。つたない感想でごめんよ〜〜。
アスタリスクを待つか。
ギャグは面白かったんだが、
キョンが壊れすぎw
ほとんどオリキャラになってないか?
キョンと呼ばれる人物も二人居るしな。
ギャグシーンはこれ、人によっては付いて行けんな…
アナル並にキャラが崩壊して原型を留めて無いし。読んでて調子狂うというか疲れる。
それに本筋マダー?って感じで読んだ気がしない。エロパロに投下された作品は読むとき気合い入れるんだけど、なんか肩透かしを喰らった気分だ。
いや、この崩壊度も何らかの伏線なら納得いくんだけどな。別人設定とか。
このキョンには偽者疑惑があるじゃないか
キョンどころか全員にあるような気がするんだが
>>47 >>48 「キョン」に限定していえば、「ほとんど「キョン」と呼ばれていない」「あだ名の由来が思い出せない」だしなあ。
それでいてカマドウマに覚えがあるととれる今回の話、作者さんはミスリードを狙っているのは確実だろうしね。
まあ、未完にならなければ答えは出るわけで。
とにかく、GJ。
>>33
すいません。
鶴屋さんがハルヒにみくるを取られたと思って文芸室をめちゃくちゃにしようと?したけどSOS団のアルバムに鶴屋さんを仲間としてる?ようなことが書かれてて思いとどまったようなSSエロパロにありませんでしたかね。
>>33 ハルヒSSを読んでる気はしなくて微妙だけど面白かった。
最終話で全員オリジナルではない「何か」みたいな設定が明かされなきゃと思うくらい別人すぎる。
そういうミスリードみたいなのを誘ってない限り、シチュスレでオリジナル書いた方がいいと思う。
なんというか読ませる力があるだけにもったいなく感じる。
>>52 > ハルヒSSを読んでる気はしなくて
ああ、成程。
面白くない訳じゃないのに素直にGJしたくない理由がやっと分かったよ。
とりあえず最後まで読まない限り何とも言えないので待機しとく。驚愕の真相wktk。
まあこれでキョンが本人だったら、次からは創作スレへどうぞとしか言えんが。
語り手がキョンじゃなくなると登場人物は同じでもハルヒって感じがしないのは面白いな。
面白いかぁ?
ああ、そうか。
キョンがキョンらしくないから、このSS読んでても微妙な感じがするんだ。
キョンはこんなキャラじゃないよなあ、と思い続けてるからどうにも入り込めないというか。
やっぱハルヒSSはキョンデレがあってこそってことか。
だんだんキョンと離してくみたいなのは案外受け入れられるんだけどね。
というかSS長編は大概そうなる。
ただキョン以外のキャラはそんなに原作から離れてないように感じる
キョンフィルターがないから違和感がある人もいるだろたうけど俺は好きだな
まあギャグは人を選ぶところがあるからな
>>53 すいません。
エロパロでエクスカリバーは42-652、42-713しかなかったんですがエロパロじゃなかったんですかね。
お前ら何でも「エクスカリバー」って答えりゃいいってもんじゃねぇぞ。
えっ?エクスカリバーってベルカの防衛の要のやつ?
・・・俺が悪かったよ。
>>66 よう同志
だがそれはエクスキャリバーではないか?
>>64 SOS団が無ければ(ハルヒが居なければ)ミクルとマブダチでいられたのに!
と鶴屋さんがヤンデレして、フルボッコにしようと部室だったかハルヒの部屋に忍び込んだら
アルバムだったか写真立てに鶴屋さんの写った写真に、マジックで名誉顧問だか親友って描かれてて
涙ながらに正気に戻った話だろお?
たしか……古泉一樹のある意味ワn……ごめんウソ。
題名を思い出せない。ここかVIPだとは思うんだけど
確かエロパロ板だと思うが、朝倉が売春するという切ないSSがあったような気がするが…。
あ、キャリバーか。
ory
>71
長門のは確認できたけど、確か朝倉さん版のもあった気がする。
>>68 俺は去年の冬くらいから住み着いて、それまでのココの作品全部読んで、
以来読み続けてるけど、そんな設定のは無かったと思う
>>68 >>73 ですか。自分も一応エロパロのは全部読んだので、やはりVIPのほうですかね。
探してみます。
いじめスレに、似た設定のものがあったと思う
あたしだって、体をもてあますことくらいはあるわよ」
あの時、俺は思った。こいつは何を急に口走っているのかと。
少なくともそれは健全な少年・少女の集う昼間の教室で呟くような言葉ではない。
話の流れからしても、そんなことまで奴に聞いていないのだ。そんなものは全くの蛇足でしかない。
彼女、涼宮ハルヒは一体何を考えてそんな言葉を発したのか、答えは謎のまま、俺はその疑問を表に出さずにその場をやり過ごした。
そして、「今」の俺はこう考えている。ああ、そういう伏線の張り方か、と。
「ちょっと、聞いてるの?キョン!」
一体ここはどこなのだろうか。少なくともいつもの見慣れた教室や自宅とは遠くかけ離れているということだけは確かだろう。
耳を劈くようなハルヒの罵声は、ただでさえうるさいのに、周りの壁という壁に反響しつくして、前衛的なオーケストラを奏でている。まったく、こんな狭いところで音量を考えずに怒鳴るのは勘弁願いたいものだ。
俺は軽い眩暈を覚えながら、何故こんなことになったのか、それについて記憶を探っていた。
俺は間違いなく自分の家で、自分の部屋で、自分の布団で寝ていたはずだ。
そして、俺は今なぜか薄暗く狭い洞窟の中にいる。更に、その唯一の出入り口は、落石で派手にふさがってしまっている訳だが。
岩と岩のかすかな隙間から、空気が通り抜けていることで窒息死だけは免れているのが唯一つの救いだろう。
しかし何より俺が頭を抱えたくなるのは、俺とこの場に居合わせるのが涼宮ハルヒ、彼女ただ一人だけということなのだ。
「あぁ」
俺は深いため息とともにその場に腰を下ろした。
「ただの夢で済んでくれればどれだけ楽なことか」
横目で隣をちらりと見れば、そこには機嫌の悪そうな創造主がいる。あっちも何故こんなことになったのかわからない、といった具合だろう。そのしかめっ面の中には不安と疑念が見え隠れしていた。
「…………どうなってんのよ、コレ」
「そんなこと俺に説明できるわけないだろう」
いや、説明はできるんだが。でも、お前は信じないだろうし、そもそも話すことはいわゆる禁則事項ってやつだ。
しかしまぁ、経験則というのは非常に心強いもので、何かしらもう動揺するのさえめんどくさくなってしまった自分がいる。この状況の指し示す事実、そしてその解決方法をおそらく俺は知っているのだ。
――――だからといって、ホイホイと事務作業的にできることでもないんだがな。俺にだって一応葛藤とかは色々ある。
とにかく、今はハルヒの奴にいらないストレスを与えないようにしてやろう。随意不随意に関わらず、自分で作り上げた世界のクセに、ハルヒはどうもこの状況に若干怯えているようなのだ。
「どうすんのよ、こんなの………!」
「まぁ、落ち着け。といっても無理かも知れんが」
「当たり前でしょ!むしろあんたがそんなにのほほんとしてるのが怖いくらいよ!!」
「けど、今俺たちにはこの状況を打開する術を持たないのもまた事実な訳だ」
「………それは、そうだけど」
力なく、ぺたんとその場に座り込んでしまったハルヒを見て、俺は少し安心した。こんなところでパニックでも起こされたら鼓膜が何枚あっても足りない。
その後、俺たちはどちらも特に喋ることのないまま、時間だけが過ぎていった。
どれくらい経った頃だろうか。不思議と腹も減らなければ、便意も催さない。この狭い閉鎖空間の中、最たる心配事はその二つだった俺としてはありがたい限りだ。きっとそういう世界の仕組みなのだろう。
そんな時、ハルヒがおもむろに口を開いた。
「ねぇ、なんかちょっと……寒くない?」
言われてみれば、そうかもしれない。しかし、気にならないといえば気にならない程度のものだ。と言っても、それは生物学上雄である俺の立場からの意見であって、体感温度は基本的に女性の方が低い。
「そうかも知れんな」
俺は上着を脱いでハルヒの肩に掛けてやった。
「ほれ、これで少しはマシになるだろ」
「あ………」
ハルヒは一瞬戸惑いながら口を開いた。
「でもこんなことしたらあんたが冷えるでしょうが!」
「俺は別にそうでもないから大丈夫だ。というよりむしろ、お前が寒そうにしているのを見ているとこっちまで寒くなる」
「何よ、キョンのクセに偉そうに………」
ハルヒが俺の上着に包まるようにして、顔を背けたその時だった。鼻で笑おうとした俺は、何とタイミングの悪いことに寒くもないのにくしゃみをしてしまったのだ。ああ、メンツ丸つぶれだ。
「何よ、やっぱり寒いんじゃない」
「違う!今のはだな……」
「仕方ないわね……あ、あんたももっと、こっち来なさいよ」
何を言っとるんだお前は。とりあえず、俺の上着の裾をピラピラさせて一緒に入れというサインをするのをやめてくれ。
「俺なら本当になんともないから、ほっとけ!」
「馬鹿キョン!団員の体調管理も団長の大事な仕事の一つなのよ!いいから黙ってこっち来なさい!!」
その時俺は考えた。今不必要にハルヒに反抗するのは得策ではない。俺としても一刻も早くこの訳のわからん状況から脱却し、平凡な朝を迎えたいのだ。
「わかった、わかったからあまり怒鳴るな。頭に響いてかなわん」
俺は横に体をずらすように移動して、ハルヒと密着するように肩を並べた。上着を精一杯伸ばして、ようやく二人が収まるか収まらないかというところだ。
「なぁ、ハルヒ。やっぱりコレは無理があるぞ。なにせもともと俺が一人で着る為の服なんだからな」
「いいから黙ってなさいよ!…………このままでいいの」
むう。
俺は今、不覚にもこいつのセリフと表情にドキリとしてしまった。しかも体が密着しているもんだからやたらと恥ずかしいものがある。
そんなこんなで目も合わせられないが、時々隣の顔を盗み見ると、向こうも似たような顔をしていた。
そう、ここから先は言わずもがなだ。
どちらともなく、手を重ねていて、気づいたら向かい合ってお互いの顔がどんどん近づいて、吸い寄せられるように唇と唇は触れ合って――――
毎度毎度気恥ずかしいものがあるが、悪い気はしないのも確かだ。本来ならば、こういうことは世界を救うためではなくて青少年の甘酸っぱい青春の一ページを刻むためにあるべきだ、というのは譲らないけどな。
俺がハルヒと唇を重ねてから、10秒ほどが経過した。世界はまだ収束する様相を見せはしない。
20秒。
3、30…………。
待て。どうも何かがおかしい。
お互いが自然に――――ハルヒに関しては若干名残惜しそうな顔をしていたようで複雑だったが――――唇を離して、顔を見合わせた。
どうもあちらも少し驚いたというか、恥ずかしいというか、なんというかそんな顔をしている。そりゃそうだ。今までキスしてたんだからな。
しかし、今問題なのは、何故この世界が収束に向かわないのか――――――それだけだ。
「あ、あれ……いつもの夢じゃないん……だ………?」
どうやらハルヒの奴も自覚はしていたらしい。記憶があるのはお互い様ってことか。
「……………………」
しかし、コレは困った。今俺は最後のの切り札を使った。だが状況は改善されない。もう俺には何の手立ても残されちゃいないってことだ。
そして、それ以上に以前と違うのは、キスしてそのまま元の世界に逃げるという訳にはいかないこの抜き差しならない展開。
なんと気まずいことか。俺はもはや何を喋ったらいいかもわからなかった。
「………」
「あ………」
気づくとハルヒは自分の唇に指を当てて、どこか遠くを見ているようだった。
「どうかしたか?」
我ながら訳のわからないことを言ってしまった。キスしておいてどうかしたか、とはむしろ俺の頭の方がどうかしてしまったのではないだろうか。
ハルヒは紅潮した頬を更に赤く染めながら言った。
「え?……その……味、こんななんだと思って……」
ええい、ハルヒよ。こんな時に何をクソ真面目に答えとるんだ。混乱してゆく状況と俺の脳内を他所に、ハルヒの暴走はどんどん加速しているようだ。
しかし。俺は考え直した。
こういう時だからこそなのかもしれない。ハルヒはハルヒで色々あるのだろう。きっと、今が普段の自分から脱却するきっかけと考えているに違いないのだ。
そう思えばこそ、俺は余計とクソ真面目に状況を捉えざるを得ない。ここは、ハルヒの作った世界の中で、いわば彼女の本心の塊のようなところだ。
そんなところで、ハルヒは俺にこうも積極的にアプローチしてきている。それが何を意味するかは、いちいち言うべきところでもないだろう。
はっきり言おう。俺だって男だ。そんなことを言われて平気ではいられるはずもない。しかし、………
と、長々と処理落ちした脳を働かせている間に、気づけば俺はハルヒにもう一度唇を奪われていた。
「ん……んんっ………」
先程とは違い、やや乱暴に舌を絡めながらハルヒは俺に擦り寄ってきた。
明らかに俺の胸の鼓動は限界速度を超えている気がする。そして俺は自分でも知らない間にハルヒを抱きしめて壁に押し付けていた。
何か今まで溜まっていた抑圧のようなものがお互いに堰を切ってあふれ出したようだった。お互いに貪欲に唇を貪りあって非常に長い時間が過ぎた。
俺の股間では既に息子がいきりたっている。きっとハルヒにもバレているはずだ。
一向に収束しない世界。境界線の上に立つ一組の男女。邪魔者は何もない。
「……!?」
状況に流されたとでも言おうか、無意識の内に目の前に横たわる華奢な体を組み敷こうとしていたことに気づき、俺は一度ハルヒから手を離した。
なぁ、ハルヒよ。これがお前の望んだ世界なのか?もしここで、俺たちが一線を越えてしまって、それで世界は救われるのか?
おそらくそれだけではダメなはずだ。きっとそうだ。
俺がここで自分の欲望に任せてこいつを抱いてしまえば、今回はそれで事が収まるかもしれない。けれど、そうすることによって物語は悪い方向へ、おそらく次への道筋すら断たれてしまうことになるだろう。
一体俺は何を言いたいのか?それはつまり、物事には順序があると言うことだ。
「ちょっと……キョン……?」
状況のつかめていないハルヒの肩に手を置いて、
「いいかハルヒ、良く聞け」
俺は少し間を置いてから言った。自分への決心に少し時間がかかった。
「ポニーテール萌えだとか、そういうことじゃなくてだな、その、単純に俺は…………」
ふぅ。
自分でもとんでもないことを口走ってしまった気がする。だが後悔はしていない。形式的というか、事後承諾的にはなってしまったが、こういうのは大事なんだろう。
俺があの恥ずかしい単語群を捲くし立てた後、この洞窟の中にしばし静寂が訪れた。そして、ハルヒは全く俺に目を合わせようとしない。なんともつらい数分間があったものだ。
そう思って俺も目をそらしたその時だった。
ハルヒはゆっくりと俺の方へにじり寄って来た。何も喋ることなく、本当に、なんだろうか、人が変わってしまったかのように大人しい印象を受けた。
ハルヒはそのまま両手を俺の胸の辺りに添えるように懐に入ってきてずっと下を向いていた。
「キョンのくせに………」
こいつはこの期に及んでまだ憎まれ口を叩こうってのか?いや、それは違うはずだ。いくら俺が鈍いといわれようがそれくらいはわかる。
「俺のくせに、なんだ?」
ハルヒは俺の服をギュッと力をこめて握り締めて顔を上げた。
「…………そんなのわかるわけないでしょ………勝手にあたしの頭の中ぐちゃぐちゃにしといて………」
「でも、」
上目遣いのハルヒが一瞬俺の眼に映って、その後すぐにお互い目を瞑った。
「今回は許してあげる」
「ん……んっ……ちゅ………んむ…」
やさしくお互いを確かめ合うようにキスをしながら、俺は右手でハルヒの耳やら頭やら首筋やらをそっと撫でてやる。
その度にかすかな嬌声をあげるハルヒをいとおしく思いながら、お互いの唾液を混ぜ合わせるように口の中を愛撫した。
「やぁ………っっ!キョン……くすぐったいじゃ……な……んんっ……ふぁ」
反応を確かめながら、ゆっくりと服の中に手を忍ばせて二つのふくらみを揉みしだいていく。一般的なことを考えれば、同年代の中では中々いいサイズだ。
ハルヒはというと、完全になすがままという形で目を瞑って体を俺に預けている。しかし一向に唇だけは離そうとしない。
「ぷぁ…ふむぅ……ん……ちゅぱ……ん……」
少々手間取りながらもブラを下にずりおろし、俺はハルヒの双丘を直接指でなぞっていく。
その瞬間、驚いたのか、はたまた何かを期待したのか、その両方なのか定かではないがハルヒの体がビクッと反応した。そして、俺の指がその尖端に辿り着いた時、ハルヒの反応は顕著なものとなった。
「や………あっ、あっ……そこ……触っちゃ………はぁんっ……あ、あァァっ!」
先程よりも息を荒くして、舌を突き出すようにハルヒは震えていた。予想外だがどうもこいつはお気に入りのようだ。
その思わぬ快感に酔いしれるようなハルヒの表情が俺の中のSっ気に火をつけた。少しいじめてみたい気がする。
「気持ちいいのか、コレ」
俺は人差し指の腹で擦るように二つの突起を責めていく。乳首はもう完全に固くなって天を仰ぐようにそそり立っていた。
「あぁぁっ!!ちが……そうじゃ……はひィィ!」
予想通りの答えが返ってきたので、ハルヒが喋り終わる前に先程よりも強く乳頭をつねってやる。
「あはァ……ダメぇ………コレ……らめぇ……」
「なんだ、違うのか?それはすまなかったな。もうやめておこう」
しっかりと反応楽しんでから、不意に手を離してやる。ああ、意外と俺ってこういうの好きかも。
「え………?」
「悪かったな、嫌がってんのに」
「いや、そ、その……はぁ……はぁ」
予想外といった様子でハルヒは息を荒げたままモジモジとしていたが、やがて完全に折れてしまった。
「い、いいから」
ハルヒはボソリと呟く。
「え?何だって?」
俺はわざとにそう聞き返した。どうして欲しいかなんてわかっている。ただ、あいつの口からそれを聞きたいだけだったりする。
「その、しても………いいから」
「何をだ?」
「馬鹿キョン!いい加減にしなさいよ!!」
ハルヒもついにキレた。しかし、ここで下がってはいつもと同じなので俺は黙って様子をうかがうことにする。すると、ようやく観念したのかハルヒは泣き出しそうなほどに顔をくしゃくしゃにして俺の耳元で囁いた。
「……お願いだから……その………乳首……いじるのやめないで………」
「よくできました」
俺はそうハルヒの耳に囁き返してやると、ハルヒの服をたくし上げて、突起をこねるように愛撫していった。
「あっ、あっ、それ…………ひゃう……んはァ……あぁぁぁっ、やっ、あァっ……………」
ハルヒは蕩けた表情でどこか遠くの方を見つめるように情けない声を出した。
「随分敏感なんだな………普段から自分でも触ってるのか?」
一言一言、言葉で責めてやるたびにまた一段と感度が上がっている気がする。ハルヒの新しい一面を垣間見た気がした。
「やっ………その……それは……言わ…な…いで………はぅぅ……んんっ!」
言わないで、ということはしてるんだな、などと一人で考えながら俺は逸る気持ちを抑えて言葉責めを続けた。
「気持ちいいか……ほら?」
痙攣するように小刻みに震えながら、ハルヒはあられもない声で答える。
「はァん、あぁっ……あっ、あっ、だ、え……これ……い…いひィ……よぉ………」
口の端からは既に溢れた唾液がだらしなく垂れている。まさかここまでとは思っていなかった。俺はこんな姿を見せてくれるハルヒのことをいとおしく思った。
また、やさしく口付けしてやると、もう完全に雌としての涼宮ハルヒは出来上がっていた。俺は上半身の愛撫を一旦終え、太ももからゆっくりとスカートの中に指を這わせていく。
「……はぁ………はぁ………」
表面的には恥ずかしがるそぶりを見せながらも、彼女のその瞳の奥には完全にその先を期待する妖艶な光が揺らいでいた。
ハルヒは自分から自然に股を開くように、俺の手を自分の陰部へと誘った。
ワッフルワッフル
原作者の新作読むとやっぱ圧倒的な力の差を感じてしまう。
これはもう如何ともしがたいね……
続きはまだか?それと題名ないぞ。
この生殺し野郎。
超GJ
変なやつは気にせず続きを頼む
突然の投下wそして良作の予感
続きプリーズ
連投規制にでも引っかかって、投下を諦めたのかな?
また夜に続きが来るかも。
うっははーい
予告は欲しかったな
VIPの続きかな?
続きマダー?
全裸で待つ
97の優しさに泣いた
>>96 しょうがないですね、僕が"内側"から暖めて差し上げましょう
なんでそんなに行間を空けるんだ。
詰めた方が読み易い。
投稿中だと思って、俺でさえ今は黙ってるんだから…。
俺は空いてる方が読みやすい
2ちゃんじゃタグ打てるわけじゃねえんだ
ウダウダ言ってねえで嫌なら読むな
俺は読みにくい。嫌とかじゃなくて、「読みにくい」
はい続き待ってますよ。いやマジでお願いします。溜めて待ってるんだからな。
では何故、普段の書き込みに空白行を使わないのか?
読みやすい読みにくいの問題もあるが、
「読んで読んで!」という書き手の自己顕示欲が見えてしまうから、改行厨は嫌いなんだ。
このレスも嫌なら読むな。
◆LeyXT4003g
どう改行するかは人によりけりだろーよ
まぁでも詰められるところは詰めて、
場面が変わるところや強調したい部分があるところで行空ける方が
無駄が少なくて良い、と思うのは俺だけではないはずだ
このレスも嫌なら読むな。
読んでもらいたい所を強調するのは当然の心理だと思うんだけどな。
詰め込みすぎて起伏のない文章だとポイントが読み飛ばされる危険があるし、
そもそもSSなんて自己顕示欲がなきゃ書かんでしょ、普通に考えて。
書き手の工夫を厨行為とか貶すのは同じ書き手として許せん。
あのね。気に入らなきゃ自分で編集して欲しいのね。
エディタに貼って好きなだけ自分好みに改行いじればいいじゃない。
フォーマットに関する注文をそんなに細かく指摘してどうすんの?
そんなことより重視すべきなのは地の文や表現力、内容、展開でしょ。
これらは読み手じゃどうすることもできない箇所なんだから。
なんという健全な流れ
まあ書く人によって違っていいんじゃね?と思うよ。
>>104 まるで俺の書き方がSSの標準規格だ!と言わんばかり。
あまりに頭が固いとしか言いようがない。
◆LeyXT4003gの作品読んでみたいんだが、まとめにある?
113 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 00:44:53 ID:Ij52DkLF
>>84 意味の在る空白に思えない
普通に読みにくい
>>112 あるらしいが投下時にはトリがないので不明。
>>114 なんだそれw
自己主張する所、逆だろ…
当の本人も言っていた憶えがあるが、
SSを書いているなら、批評もだらだらと意味のない煽り文なんて書かず、
自分のSSを見せつけて「どうだ、これなら読みやすくて完璧だろう」ぐらい言ってもらいたいものだ。
まあ実際、ここでちょくちょく名前が挙げられる書き手さんたちは皆、文章、小説を書く上での基本が守られているけどな。
妙なフォーマットとでもそれで統一さえしてれば問題ない。改行も必ず一行ずつならそれでいいんだけどね。2行だったり3行だったりマチマチだとやっぱり読みにくいと感じる。
>>117 俺はどちらでもいい(つまりガッチリ守らなくてもいいかな?くらい)けど、ストーリー等以外に突っ込まれにくくなるのは確かだと思う。
>>117 そんなことはない。
そもそも、日本語の文章なんだから縦書きすべき。
SSの中で最も読みづらくつまらない作品が◆LeyXT4003gの書いたもの。
自分でまともな文章かけないからケチつけてるんだろ?
朝比奈さんが的確な批評家だった時期もありました
でもそれは過去のものです
・朝比奈さん空気説
・朝比奈さん逃亡説
・朝比奈さん失踪説
・朝比奈さん死亡説
・朝比奈さん脂肪説
さあ選べ
そうやって良作家をごたごたに巻き込むなよ
最悪なことするやつだな
ああ…やっと俺にもあの台詞を言うことができる。
なんで俺が帰ってくると荒れてるんだ?
俺はハルヒの恥部を下着の上から軽く撫でてやった。指の感触で、もう下着の中は濡れているのがよくわかる。
筋に沿うようにして指を這わせると、ハルヒは背中をのけぞるように微細に身体を震わせて息を呑んだ。
「んくぅ………ぁっ………ふぁぁっ」
そのまま下着を脱がせてしまおうかとも思ったが、俺は思いとどまってそのままハルヒの敏感な部分をいじることにした。
少し動きづらかったので、壁にもたれて座る俺の膝の上にハルヒを座らせて、彼女を背後から抱きとめる形に俺は体勢を入れ替える。
俺は蜜壷の入り口付近を中指でぐりぐりと小さな円を描くように擦っていく。下着を通した柔らかな刺激がハルヒには心地良いようで、開きっぱなしの口からは小さく声が漏れ続けていた。
ハルヒの様子を確認しながら、俺は中指は動かしたまま、更に右手の手のひら全体を使って股に擦り付けるように愛撫してゆき、同時に空いた左手で先程のように胸の突起を愛でてやった。
「……ふぁ!?………やっ、あっぁぅぅ…………ぁっ……あぇぇ……なん……でぇ……?……あぁぁっ……あはぁぁぁっ……」
ハルヒの明らかに反応がおかしい。彼女は先程までとは比べ物にならないくらいによがって鳴いているようだ。
それなら話は早い。ハルヒには存分に楽しんでもらおう。俺は手を休めずに、そのままハルヒの首の後ろから舌を這わせて、耳の裏をなぞったり、耳殻をあま噛みしたりとさらに彼女を責め立てた。
「ぁぁぁっ……やっ……やっ……らめ…ぇぇぇぇっ………これ……はひィ……はひィィ………あっ……!!…やぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっっっ!!!」
ビクビクと首筋をうねらせて弓なりになったかと思うと、ハルヒは急に力が抜けたように俺にもたれかかってきた。おそらく果ててしまったのだろう。
「……はぁぁっ……はぁぁっ………ぁァ……」
「大丈夫か、ハルヒ?」
未だ余韻に浸っているハルヒを見て、俺は大げさと言ってもいいくらいの反応に若干驚きながらも、彼女を絶頂に導けたことに少し満足し、リボンの乱れた頭を撫でながら訊ねた。
「そんなに気持ちよかったのか、これ」
ハルヒはうまく喋れなかったのか、息を整えるように間を置いてから恥ずかしそうに喋りだした。
「………なんていうか………その……」
ハルヒは単語をひねり出すように口に出していく。きっとうまく頭が働かないのだろう。
「いつもの……あたしの……仕方と……同じ……で………しかも……耳……ぞくぞく……って………」
こいつは驚いた。どうも俺はハルヒの自慰方法を再現してしまったらしい。ていうかこいつ、いつも履いたまましてるのか。
この時の俺はなんとも言えない興奮と優越感を覚えて、少し調子に乗っていたのかもしれない。いや、確実に乗っていた。
「なぁ、ハルヒ」
わざと耳のすぐそばで囁く。ハルヒは先程の耳愛撫のせいか、やたら敏感に反応したようだった。
「そんなによかったんなら、もっとしてやるよ」
俺はそう言って耳に軽くキスをすると、もう一度手を元の場所へと伸ばした。
「え……?やっ……あ、あた……今……イッた……ばっか…ん……やぁぁぁっ!!」
先程よりもいやらしい手つきで俺はハルヒの敏感な部分を愛でていく。抵抗しようとするも四肢に力の入らないハルヒは言葉にならない声をあげるしかなかった。
「ぁぁぁぁァ…………ぁぁぁぁァ…………ぁぁぁぁァ…………」
首筋に跡が残るくらい吸い付きながら、中指を穴の奥に押し込んで、それと一緒に乳首を少し力を入れてつねってやると、ハルヒは簡単に二度目の絶頂を迎えた。
「んっ……はァァァ…あっ、あっ、あっ、あっ…!?…ぃ…はひィィィィィィィィィィっっ!!!」
だらりとしたハルヒの頬を舐めるようにキスしてやると、残った力を振り絞ってハルヒは俺の唇を求めてきた。こういうのもなんだかグッと来るものがある。
「ん……………んちゅ………ちゅぱ………んふぁ……」
ハルヒの休憩も兼ねて、しばらくの間俺はそのまま舌を絡め続けた。二度の絶頂を越え、熱心に俺の舌を追うハルヒは、どこか甘える仔猫のような妖艶さを醸し出していた。
個人的にはこんなにかわいい仕草を見せるハルヒも珍しいので、今しばらくこの状況を楽しんでいたいところだが、これだけの行為を経て俺としてももう限界だ。恥ずかしい話、こいつの腰の辺りに息子が擦れているだけで若干気持ちよくなってしまっている俺がいるのも確かだ。
そんなことを考えながらもあまりの愛おしさに次への展開に足踏みしていたその時、ハルヒはおもむろに呟いた。
「……ねぇ」
舌を口の中に収めて今までの余韻を味わうかのようにしながらハルヒは淫靡な笑みを浮かべた。
「キョン……欲しい………」
その言葉はこの世界の鍵だったのかもしれない。俺はハルヒを抱きかかえるように押し倒し、逸る気持ちを押し殺しながらズボンを下ろした。下着が張り裂けそうなほどに勃起した俺のペニスを見て、ハルヒはごくりと唾を飲んだ。
ハルヒはそっとその細長い指でパンツ越しに俺自身を撫でるように包み込んだ。
「すご……これ……こんなに熱いんだ………」
そのままじわじわとハルヒは口を近づけて、先っちょに軽くキスをした。俺は予想外の出来事に少しためらいがちに声を上げてしまった。
「なっ…!何をして・・・・・・っ!!」
そんな俺を制すようにハルヒは優しく答えた。
「ちょっとしたあいさつみたいなものよ」
まったくこいつの考えることはわからん。しかし、唯一つはっきりしていることがあるとすれば、それはハルヒの毒に俺がもう完全にやられているということだけだ。
俺は早々と下着を脱ぎ捨てて、ハルヒの顔の両脇に手をついた。
「………しても、いいか?」
ハルヒは俺の顔を抱きかかえるようにして、また唇を重ねてから悪戯に答えた。
「してくれなきゃ、許してあげない」
俺はなるべく紳士的に振舞おうと思っていた。自分だけが気持ちのよいセックスというのも自分の考えに反する。
と、そんな偉そうなことを考えてみたはいいものの、何より俺だって初めてなのだ。実際始めてみればそんなことまで頭も回らなければ、うまくことが運ぶわけもない。
悪戦苦闘しつつも挿入した直後は、痛みと緊張でこわばったハルヒをなだめる術も思いつかず、自分の快楽に負けてただ腰を動かしていた。
しかし、すぐに苦しそうなハルヒの顔が目に入り、思わず情けなくなった俺は一度動くのを止めた。重苦しい雰囲気の中、二人の激しい息遣いだけが洞窟の中にこだました。
「…すまん、痛かっただろう……」
そう言いながらも本人の中で未だ陰りも見せずにいきり立ってしまっている俺は、人生至上最低に情けなかったことだろう。
「……バカ!何で謝んのよ……さ、最初は誰だって……とにかくキョンが気に病むことじゃないの!」
目の端に涙を溜めたままそう強がるハルヒを見て、俺は自分の不甲斐なさをさらに痛感するとともに、ハルヒの不器用な愛情表現に心を打たれた。
なんだかんだ言って、俺はこいつのことが本当に好きなのだ。結局のところ、初めて会ったときから、世界を救うとか、そういうことは関係なくて、俺は俺自身の感情で、この涼宮ハルヒのことが好きなのだ、そう確信した。
俺はなんだか心が温かくなって、ハルヒと一つになったまま彼女を抱きしめて、その場に寝転がった。
「………キョン?」
「…………少し、このままでいないか?」
ハルヒはいつか俺に見せたような優しい微笑みで小さく頷いた。
俺とハルヒは何も喋らずに二人で抱き合っていた。時折お互いの愛情を確認するようにキスをはさむ。もうどちらにも緊張はなかった。
そんな状態のまま何分が経っただろうか。
「……ぁっ」
ハルヒは、急に小さくうめくような声を上げた。
「………どうした?」
少し、彼女の顔色がおかしい、そう感じた。
「……なんだろ………なんか………むずむずする………」
その時、俺のペニスが不意に脈打った。それに合わせてハルヒはビクンと体を跳ね上がらせる。
「ひゃ……っ………!?」
「す、すまん、痛かったか?」
ハルヒは俺の言葉に答えながらも何か別のことを考えているようだった。
「ちが……ぁぁ………な…に………ぁっ………これ……」
そう言いかけると、なんと突然彼女はゆっくりとではあるが自分から腰を動かし始めたのだった。
「なんで……腰……勝手に………あぁっ…これ…やば……い……かも」
ハルヒは目の焦点が合っていないようで、自分で自分がどうなっているのかさえわかっていない様子だ。俺はそれを見て、今なら少しは動いてもよさそうな気がして自分からも腰を動かしてみた。
「え……!?……ちょ…っと……キョン……なに…ゃっ………ぁぁぁっ、あぇぇ…あぇぇ……ふぁぁっ」
これは確実に快感の波に呑まれてきている。そう確信した俺は、ハルヒに問いかけてみた。
「どうした?」
俺は少しずつグラインドの幅を広げていく。ハルヒは混乱した様子で答えのような、感想のようなものを口にした。
「よくっ……わか…ぁっ……ない……けどっ……ひぁぁ……ぁぁぁっ!!………こ……なの……は…ひィっ……めて………」
俺はハルヒの腰の動きに合わせてうまくこすれあう角度を探しながら、彼女の身体を突き上げていった。彼女の膣は先程までとは別人のような締め付けで、俺のペニスを根元からくわえ込んでいる。
「あっ、あっ、ひゃぅぅぅぅ…………すご………イィィのぉ………ぉぉ……キョ…ん……きょぉ……んんっ」
二人はいつの間にか激しく絡み合い、お互いに必死で快楽を得ようとしていた。
かく言う俺の方も、あまりの気持ちの良さにもうすぐにでも果ててしまいそうになるのを必死で抑えて腰を打ちつけた。何重にも折重なった襞が包み込むように俺の陰茎に絡みつき、出し入れするだけでも恐ろしいほどの刺激が俺を襲っているのだ。
「くはッ……ハルヒ…………これは………やばい……」
「きょ…ぉん……きょ…ん……きもち……ひいのぉ…………あら…しィ……あひィっ…ぁぁぁぁぇぇ……ぁはっ」
蕩けるような目でこちらを見つめるハルヒを見る度に、俺の高揚感はどんどん高まっていく。俺はしゃぶりつく様にハルヒの唇を貪った。
二人の汗と体液が混ざって、なんともいえない臭いがあたりに充満する。両手両足で俺の身体をがっちりと抱きしめるハルヒの顔はもう唾液まみれになっている。
その場の何もかもが俺にとって興奮材料であり、俺は我を忘れて行為に没頭した。
そして、たまたま俺が身体の角度を変えた時、ちょうどペニスが子宮口の奥のくぼみと淫核の裏側を擦ってゆき、それと同時にハルヒの喘ぎ声が一オクターブ上がった。
「あはァ……!?……そこぉ………そこらめぇぇぇ……おかひく………なっひゃう……の…!!……んにゃぁぁぁっ…………ゃぁぁ!!んひぁぁぁぁ!!!」
ハルヒがまるで発情期の猫のような声で鳴く。俺は角度をこのまま固定し、ハルヒの弱いところに何度も何度も擦れるように小刻みに腰を動かした。
「ゃぁぁぁぁぁ………きょん……もっと……そこぉ……もっとぉぉ……ぁっ、にゃぅぅぅ!!にゃぅぅぅぅっ!!」
「うっ………ハル…ひっ………そんな……締めたら……俺はっ………」
俺はもう確実に限界だ。俺は自分の中に昇りつめる何かを感じていたが、ハルヒもどうやら限界が近いようだ。
「ゃぁぁぁぁ………も……ォ………だめ……あ、あた………も……しゅごいの………クる……キちゃう……よぉぉ………ひ…あひィ……あへぇ……!!」
急に膣内が小刻みに痙攣するように蠢き出して、直後にそのままハルヒは足の先を大きく反らして絶頂を迎えた。
「……はぅんっ!?……にゃぅ…あぁっ……あっ……やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!」
俺は何とか先に一人果ててしまうのを免れたわけだ。本当ならば同じタイミングで絶頂を迎えたかったがそううまくはいかないだろう。後はさっさと自分のものを引き抜いて、破裂寸前のペニスを解き放ってやるだけだった。
しかし、ハルヒがなかなか離してくれず、俺が手間取っているその時だった。
「おい、ハルヒ、俺も……その、外に出さないと…まず…い」
ハルヒは俺の言うことなど全く耳に入っていない様子で口を開いた。
「ああ………きょん………すきぃ………だい…しゅ…きぃぃ……」
「え?お、お前……!…っっくぁ!!!!!!」
こんな時にそんなセリフを耳元で呟かれたら。俺はその瞬間に全ての箍が外れてハルヒの膣内に大量の白濁液を放出してしまった。
ああ、やっちまった。しかし俺は、もう何も考えたくなかったので言い知れない幸福感とともにその場に倒れこんだ。
あれからどれだけ経ったか知らないが、俺はとてつもない倦怠感とともに目を覚ました。しかし、予想に反してそこは俺の部屋ではなく、未だ洞窟のままだった。
そして、俺の目前およそ3センチの距離には涼宮ハルヒと思われる人物の顔があった。
「あ!やっと起きたわね!」
俺たちはほぼ裸で、懐中電灯の薄暗い光だけの洞窟の中、上着を下に敷いて寝そべっていた。どこかで水の滴る音がする。外は雨なのだろうか。
俺は寝起きの呆けた頭にムチを打って考えた。おかしい。何故世界は元に戻らないんだ?ハルヒの望みはかなえたはずだ。
だが、しかし、俺はその判断が間違っていたことにすぐ気づかされることになる。
「ねぇ、キョン」
ハルヒは俺の胸に顔をうずめながら消え入るような声で呟いた。
「さっきの……その……………」
俺は記憶をたどって、恥ずかしさと申し訳なさに頭を掻き毟りながら答えた。そうだ、俺は勢い余って彼女に膣内出ししてしまったのだ。
「す、すまん……その、膣内に出したのは……不可抗力というか……」
ハルヒは慌てて俺の言葉を否定するように遮って続けた。
「そ、そうじゃなくて!それは……別にどうでもいいのよ………大丈夫な日だし」
……どうでもいいって事はないだろう。本当にこいつの判断基準はわからん。
「その………すごく……よかった………て言ってんの……」
そう言って照れて顔を俺の胸に隠してしまったハルヒを抱きしめて、俺は答えた。
「そいつは、よかった」
こいつに満足してもらえたのならそれでいい。というかまぁ、俺も存分に満足しているんだが。
ん?待て、じゃあなぜ元の世界に戻らないんだろうか。
「そ、それでね?」
ハルヒの話は続いた。
「まだ助けもこないだろうし、それまであんたがしたいって言うなら、もう一回……その、してもいいんだけど……」
「…………………………」
ああ、そういうことか。俺は思った。こいつはまだ満足なんかしていないのだ。むしろ味をしめていると言ってもいい。俺は、こいつが飽きるまで平穏な世界には帰れないのだろう。
「……で、どうする?」
もう一度言う。俺は涼宮ハルヒの毒に完全にやられている、と。
チクショウ。
それから俺たちが三回ほど情事を済ませた後のことだった。
さすがに寒いので服は着て、二人でで寄り添って眠っていた所に古泉たちが消防隊と思しき面々を引き連れて外から岩を除去して助けに来たのだ。
なんとか事に及んでいたのはバレずに済んだが俺としては何もかもが理解不能なわけで。俺の予想では、そのうち眠たくなって、次に起きたら自分の部屋でフロイト先生爆笑という筋書きだったのだが。
「もぅ、焦りましたよぉー!”近くの山にそれっぽい洞窟見つけたから次の日曜は早朝から探検よ!”なんて涼宮さんが言い出したかと思った矢先に先発隊のキョン君たち二人だけ落盤で閉じ込められちゃったんですからぁ!」
ああ、朝比奈さん、明瞭かつ説明的なセリフをどうもありがとう。
「あの状況では私が介入して落盤を除去すると涼宮ハルヒに不信感を与えることが予想された。生命の危険性の度合いから考えても、この場合レスキューが着くのを待つのが最良」
長門のおっしゃる通りでございます。
「え?閉鎖空間ですか?今日はまだ一度も発生していませんよ?」
…………………………。
三人の話を聞くとともに、俺はもう一度記憶を整理した。………ああ、なんてこった。俺はそもそも閉鎖空間の中になんかいなかったのだ。
俺は部屋で寝てたんじゃあない。確かに、この山に探検に来たのだった。
落盤の際に頭を打ったショックか何かで記憶が混乱していたのもあるのだろう。起きたときの状況があまりにもそれっぽすぎて、俺はとんでもない勘違いをしてしまった。そして、おそらくそれはハルヒも同様だったようだ。
ああ、つまり、俺は現実の世界でハルヒとどうこうなってしまったわけだ。閉鎖空間の中で、夢のひと時、というわけではないらしい。
しかし、すぐに俺は考え直した。これでよかったんじゃないかと。今回の騒動のおかげで、俺たちはお互いに素直な気持ちに向き合えたのだし、これでハルヒのストレスが減ってくれれば世界の危機も減るはずだ。
「ほら、キョン!ボーっと突っ立ってないでさっさと帰るわよ!」
強引に俺の手を引いて残りの面々を半ば置き去りにする形で走り出したハルヒは、みんなが見えないところまで来ると急に立ち止まって嬉しそうに俺の腕にまとわりついてきた。
まぁ、こういう現実も決して悪いものじゃないだろう。むしろ俺は心のどこかで望んでいたのかもしれない。俺はハルヒの手をしっかり握ってやると自分のポケットに突っ込んでそのまま家路に着いた。
終わりですか?
134 :
76:2007/10/03(水) 06:07:34 ID:tnFDFBJs
一応これで終了。後半のデータが飛んだので書き直すのに時間がかかってしまった。
あと、無意味な空白の件とそれに付随したスレの荒れに関しては非常に申し訳ない。
俺、目悪くてパソコンで字書くときすぐ行間開けたがるんだ。
さらにこの話、一応オチを用意していたんだが後から読み返したらgdgdだったのでちょっと離して置いときます。
もうイラネって人はこの下スルーで。
「ふぅ…なんとかうまくいきましたね」
古泉はため息をついてその場に腰を下ろした。
「あれで本当に騙せたんでしょうか……?」
心配そうな顔つきのでみくるは答えた。
「おそらく大丈夫。行動、会話、バイオリズム等からの判断では気づいていない」
長門はいつもどおり表情一つ変えず、どこか遠くを見ながら機械的に呟く。
「でもやっぱり、閉鎖空間から戻ってきた二人をすぐにその場で気絶させて、似たような洞窟作って放り込んで一旦出口を塞いでからまた助けに来るなんて、やりすぎじゃないですか………?」
今回は彼女は状況説明係だ。
「朝比奈さんだって、あんなモタモタしてる二人は見てられないでしょう?結果、こうやって僕の仕事も減ることになりそうですし」
長門は微かにその言葉に頷いた。
「それはそうですけどぉー」
「さぁ、僕らも帰りましょうか」
帰り路、早朝の秋空があまりにも綺麗に澄み渡っていたもんで、朝焼けに染まった雲が俺の心の色を表しているようだ、などと詩人に浸っていたら後頭部をハルヒにドつかれた。
「キリキリ歩きなさいよ!馬鹿キョン!!」
おしまい
Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!
そのフィナーレ大事じゃないかっ、ちゃんと本文のうちに入れておこうよ!
最初は落ちを入れるのは怖いかもしれないが、頑張って本編に入れようぜ。
なんかエロパロというか全般的につながりづらいな
空行が気に入らんやつは詩と小説が融合したもんだと思えばいい
>>134 そのオチが無かったなら実は世界は既に誰も気付かない内に改変されたんじゃ……
とか思って微妙な気持ちになる所だったよw
GJ!
久しぶりにハルヒエロSSを読んだような気がした。
ともあれGJ。ちょっくら作業してくる。
あと、奴がまたケチつけてくるからちゃんとNGワードに登録しておくんだぜ?
>>142 余計なコト言わない。
朝から調子悪くて見れなかったけどようやく読めた。
これはGJと言わざるをえない。書き直しもお疲れ様でした。
物凄い勢いでGJ
作業終了!
GJ!!
147 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:16:30 ID:9h8uENLM
148 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:37:06 ID:A/8trGRx
キョンが死んでしまい朝倉に命を与えられて元に戻る作品ってあったよな?
27-620様: 『涼宮ハルヒの完結』
これだな
このスレ住民の検索力は異常。
惚れ惚れするw
みなさん急にムラムラしだした様ですね
俺はムクムクしてきた
ちょっと流るんにファンレター書いてくるわ
156 :
小ネタ:2007/10/05(金) 01:09:23 ID:uuY6lGI2
「ほらほら谷口、あたしが見てるんだから、さっさとしごいて逝きなさい!」
「他人に見られての自慰なんて……嫌だ……」
「でもあたしを見て興奮してるのは確かなんでしょ?ほら!」
ハルヒの手が谷口のズボンの上からでもはっきりと確認できる「もの」に添えられていく。
「もうこんなになってる…やっぱり興奮してるんだ」
「触るなよ!俺は朝倉を思って……」
「あいつの事なんか忘れてよ。あたしが気持ちよくしてあげるんだから感謝しなさい!」
「てめーに自慰の手伝いなんてさせられるかよ…ぅ」
谷口の言葉を無視してハルヒはズボンのチャックをを開け、トランクスからものを取り出し、
激しく、時には優しく撫でる。
「やめてくれよ!どうせ俺はモテないし彼女なんてできないと分かってるんだから…」
「うるさい!興奮してるんでしょ?さっさと逝きなさいよ、プライドだけは高いんだから!」
「お前なんかに逝か……ぅっ」
「そろそろ逝くみたいね…我慢なんかしなくていいわよ、「どぴゅ」っと出しなさい…いいわね?」
谷口は無抵抗に、首を縦に振る。ハルヒが激しくしごく。
「出るっ……うっ!」
どぴゅ、ぴゅくっ、ぴゅく…
谷口のものから放たれる白い液体が、ハルヒの手に、床にかかる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「あたしの手があんたの精液でベトベトになってる。なんか気持ち悪いわね…けど気持ちよかったでしょ?」
「ああ……一人でやるより気持ちよかったぜ……」
「抵抗しなきゃ、もっと気持ちよく逝ってたのにね……」
「今度もキョンがいない間に頼むぜ……」
「今度は…あたしも気持ちよくさせてよね?(はぁと)」
「ふふふ……ユニーク」
つづくかどうかわからない
谷ハルktkr
キモイな
谷ハル好きの俺でも泣く文才
「ん……ちゅ、ん……」
「……っく……」
――”くちゅ……、ぴちゃ……”
湿った水音と微かな二人の息遣いが、人気のなくなった部室から漏れ聞こえている。窓から差し込む日の光はとうに茜色へと変わり、学内へと残っている部活組の生徒の喧騒も納まりつつある頃だった。
男――キョンは普段団長であるハルヒが腰掛けている椅子へと腰をおろしており、逆には女――ハルヒはかしずくようにキョンの股座へと体を割り込ませ、小刻みに頭を上下させている。
左手は根元周辺に固定させて、右手は太ももを愛撫するように、熱を移すようにゆっくりと擦る。
「ん、んん……ぷぁっ……どう? 気持ち、いい?」
「ああ……」
規則的に上下していた頭がゆっくりとあがり、ちゅば、という粘っこい音を立て亀頭から離れていく。口と亀頭には銀色の橋が架かり、暫くの間繋がっていたが、地面へとひかれるように落ちて行く。
その間にハルヒは、太ももを愛撫していた右手を袋へと移動させ、一なでした後、親指でくすぐるように裏スジを揉み込む。
「ハルヒ……」
キョンはそういって右手をハルヒの後頭部へ回し、催促するように軽く引き寄せる。
その力加減は拒否しようと思えば容易に解けそうな微々たるものだったが、ハルヒはそのキョンの行為を受け入れるようにまた顔を亀頭へ近づけて、
――”れろっ……”
「ぅあ……っ」
キョンはたまらずに声を上げる。
一度大きく舐め上げて反応をうかがうと、今度は焦らすようにチロチロと蛇のように小刻みにカリの周辺を突付いていく。
「ふふ……」
楽しそうに笑うハルヒ。
その顔はこういうのもいいでしょ? という悪戯めいたものが伺える。
口技というのは女性上位の行為であるため、ハルヒの性格からすれば男を責める、攻撃的な立ち位置は得意分野なのかもしれない。
「……うまくなったな」
その一連の手管を受けたキョンは感慨深くそう漏らす。
「……アンタが仕込んだんでしょ?」
眉を顰め上目遣いに顔を覗き込むハルヒ。まあ、確かにそうだが……と、キョンはバツの悪そうに苦笑いした。
ハルヒはもともと性の知識が豊富だったとはいえない女であった。だが、何でも器用にこなすハルヒは行為を重ねるごとに確実に男のツボというものを理解し、回数をこなすばこなすほど与える快楽を底上げしていった。
最初はおっかなびっくりだったのにな、とキョンは思いをはせる。
「……ね、そろそろイキたいんじゃない?」
――”しゅ、しゅ……”
会話の最中にも左手を小刻みに扱き、右手は睾丸を撫で回していたため、キョンのペニスは痙攣するようにひくひくと脈打っていた。
「何処に出したい? 顔? 口? それとも胸?」
動きを休ませすにそう口を開く。
暗に何も要求しなければ、このまま手で射精をさせてしまうわよ、なんて含ませているのだろう。徐々にペニスを擦る速度を上げている。
「…………」
「……ねぇ、どこに…出したいの?」
あくまでキョンの口から要求を聞きだすつもりなのか、速度を上げていた手の動きは段々と緩慢になっていく。
「………………口で」
「……ふふ、なぁに?」
聞こえなかったはずはない。現にボソリと要求を口にした後、ハルヒは口を半開きにあけ、舌をこれ見よがしにいやらしく動かし挑発している。
「……口に出したい」
「ん〜?」
「……ハルヒ……っ」
遂に我慢が出来なくなったキョンは、切なげに声を上げる。
自分の名前をそんな風に呼ばれたハルヒは、体をふるふると震わせ、
「―――全部飲んであげる」
――”ちゅうぅ………っ!”
「くぁっ!」
突然の吸い上げ。
暖かいぬめりと共に、強烈なバキューム。
「ハルヒ……ハルヒ……っ!」
「ん、ん……! ちゅ、ちゅぶ……、うん、ん……あむっ」
―――”ぐちゅ…、ぐちゅ…”
口の中で舌を思い切り掻き回す。頬はくぼんだり膨らんだりし、校内に溜まった唾液が撹拌されるいやらしい水音が部屋内へと大きく響き渡っていく。
「〜〜〜〜っ!」
キョンは言葉にならない声を上げながら、あまりの快楽に顔を歪めた。
――”ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ”
これほど激しい動きをしているのに、全く苦痛が無い。歯を当てる事も無くかといって唇で歯を覆っているわけではない。
フェラチオでありがちなのは唇を内側に伸ばして歯が当たらないようにする行為だが、それは男性からすればあまり気持ちのいい行為ではないのだ。唇に歯が当たっていると感触が硬くなり、快楽は半減するからだ。
だが今ハルヒが行っているのは唇を突き出し、柔らかい部分をぬめる様に滑らし愛撫しながら口を開き歯を当てないようにしている。
自然と空気が混ざり密着間が薄れるのだが、そこはハルヒの工夫が生かされており、粘つく唾液で口内を埋め尽くし、舌でその唾液を撹拌しながら愛撫しているのだ。暖かくぬめった唾液の奔流がペニスをぐるぐると回るように泳いでいる。
気持ちよくない、はずがない。
「ハ、ルヒ……っ!」
「ん……れろ、あ……む」
限界が近い。
両方ともそれを悟っている。
「ん……うん、んん」
ハルヒはしごいていた左手と右手を解放してキョンの腰へと回す。
そのまま此方へ引き寄せるように、その勢いで更に速度を上げた。
「ハルヒ……! もう……っ!」
――”ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ”
「出る……っ!」
「んん……っ!」
射精の瞬間、ハルヒは喉奥の限界までペニスを飲み込み、思いっきり吸い上げた。
"ドクッ、ドク――ッ!"
「ん―――っ!」
口内解放される精。喉奥に直接注ぎ込むような激しい奔流。
「ぅん、ん、んん……」
―――”ごくっ……ごくっ……”
出されるたびにそのまま胃へと喉を鳴らし流し込む。
あまりの量に咽そうになるが、
「ん……」
けして口を離そうとせず、口からも溢さずに全て口で受け止めていく。涙目になりながらも心配は要らないとばかりに腰に回っていた手を背中へと移し、優しく上下に撫でていく。強い愛情が伺える行為だ。
――”ごくり……っ”
最後の一滴まで飲み干したハルヒは、ゆっくりと口を離して行き、
「ん……はぁ……」
唇を離し、大きく一息つくと口周りの汚れた残滓を舌で舐め取っていく。
本当に全部、飲み干したのだ。
「…………口の中が苦いわ」
開口一番にそうハルヒは苦笑いを浮かべた。
なんとなく書いてみたけど、限界を感じた。
エロって難しいなぁ。
まだまだ、おまえさんの限界はこんなもんじゃないはずだ!!
ってことで続きヨロ
自分で良い出来だと自覚があるのになんて投下すんだろな?
>>165 GJ!
限界を超える努力をするんだっ!!
このスレでな?
169 :
156:2007/10/05(金) 06:46:17 ID:dVT4hQ7L
スミマセンスミマセン(AA略)
こ、これは!朝からフェラSSか?早く本番を書くんだ。さぁさぁ
もしくは濃厚なクンニで!
172 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 10:52:44 ID:uwzjVVuX
GJ!!
ID:gvuW8tyf
GJ。
俺にはエロものを書く力がないようだ……
保管庫の作品、誤字が直せないのが辛いな。
作者では無いが、名前の誤字とか見るとね…
………………
…………
……
「ふう……」
精を出しきったキョンは深い息を吐きながら、椅子の背もたれに背を預けるように身を投げ出した。軽い虚脱感が体中に駆け回っている。しかしどこか充実したものを確かに感じていた。
「はぁ〜……っく」
不意に下半身に痺れが疾る。
視線を下げてみると、
「…………出したら終わりなの?」
少しばかり不満顔のハルヒが右手で持て余すようにペニスを弄っていた。
男は一回出せば強い満足感を得られるため、事が終わった後パートナーを蔑ろにしがちである。一生懸命奉仕した分その態度はないんじゃないか、という不満がハルヒの中にあるのだろう。
「……悪い」
無神経だったな、とキョンは謝るように手をハルヒの頬へと差し出す。
ハルヒは少しまだ不満を残していたものの、素直にその差し出される手に顔を摺り寄せていった。
「はむっ」
「ぅあ……っ」
頬を撫でていた手にハルヒが唇を当てくわえ込む。チロチロと甘噛みするように指先を愛撫していく。
「ハルヒ……?」
その行為の意味するところが分からなくてキョンはハルヒの表情を覗く。甘えているようにも思えるが、普段ハルヒはなかなかキョンには甘えてこないためキョンは本当にその意味が分からなかった。
とりあえず空いたもう一方の手で髪に手串を通すように流す。
「……ぷぁっ。……ねえキョン」
指から口を離し、上目にキョンを覗くハルヒ。
その瞳には燻っている体の熱を持て余すような怪しい何かが宿っていた。
「ハルヒ……」
求められるままに椅子から立ち上がり、ハルヒの手を引き立ち上がらせる。
その手に引かれるままハルヒは立ち上がり、温もりを移すようにキョンの胸へと顔を寄せる。
キョンは何も言わずに腕をハルヒの背中に回して強く抱きしめた。
「ん、はぁ……っ」
――”ふるふる……っ!”
ハルヒはその感触と暖かさに体を軽く痙攣させ、数度こわばった後ぐったりと力が抜けていった。
「お、おいハルヒ……?」
「は、はぁ……ん、ん……っ」
ハルヒは少し呼吸を乱しながら身をよじる。キョンはそのハルヒの仕草を見て、情事の際昂ぶったハルヒが見せる仕草と似たものを感じ、まさかと思い問いかける。
「もしかしてハルヒ……」
「はぁ……はぁ……」
「……イった、のか?」
「…………ばかっ」
図星だったのだろう、恥かしがるように顔を胸へと押し付ける。
――”ずくん……!”
キョンは体中に痺れが走ったように感じた。
そしてその痺れはキョンのペニスにも伝わり、先ほど同じように、それ以上のいきりを見せていく。
ハルヒは下腹部に押し付けられたそれを敏感に感じ取ったのか、
「…………」
上目遣いにキョンの顔を覗き込む。
「ハルヒ……」
キョンは更に抱きしめる力を込めていく。
「……いいか?」
「………………」
ハルヒは返事をせずに、ただキョンの胸にしがみつく力を強めた。
………………
…………
……
「ん……! あ、あぁぁ――っ!」
「くっ」
ハルヒを机へと横たえ、軽く陰部へと手を伸ばし準備が整っている事を確かめたキョンは、ペニスを数度擦るようにした後、一気に体内へと突き入れた。
「うぁ……あ、あ……」
――”びくっ……びくっ……”
それだけで軽く絶頂を迎えたのか、性器を盛んに収縮させながら、口を半開きに舌を虚空へとさまよわせる。
その舌に誘われるようにキョンは自分の唇をよせ、吸い付くように合わせた後舌を絡ませていく。ハルヒは絶頂の余韻を残しつつも夢中になってその行為を受け入れ、お返しとばかりに積極的に唇を擦り合わせる。
「ん、ちゅ……あむっ……はぁ……」
「ん、んん……」
お互いくぐもった声を出しながらも夢中になってキスを続けていく。
その間にハルヒから波が少し落ち着いたのを感じたキョンは、腰を軽く動かし始める。
「あっあっ……」
揺さぶられるのと同時に、ハルヒは鼻にかかった声を上げ始める。
「ハルヒ……気持ち、いいぞ……っ」
「キョン……キョン……っ!」
一度精を吐いているため余裕のあるキョンは、快楽に身を任せているハルヒを見下ろすように腰の速度を上げる。突き入れるたびにくねらせる腰の動きに合わせる様に力強くハルヒの膣内を擦る。
「す、ごい……っ! 気持ち、いいっ……キョン……キョン……っ!」
我を忘れたようにあえぎ声を上げるハルヒ。
無意識のうちにだろうが、あえぎ声にしきりに混じるのはキョンという単語。それは快楽を与えてくれている相手の名前だからよんでいるのか。それとも――
「ハルヒ……っ、ハルヒ……っ」
腰を振るキョンも次第に余裕がなくなったように息を切らせ、相手の名前を呼びながら強くむさぼっていく。
その声に反応したのか、ハルヒが虚ろになっていた瞳を、今も自分を揺さぶっている相手へと合わせる。力なく横たえていた体を持ち上げ、投げ出されていた両手をキョンの背中へと回していく。そして汗で背に張り付いていた制服を強く握り締めた。
――”ずちゅっ……ぐちゅ……っ”
先ほどよりを大きく響き渡る水音。
熱く粘つくハルヒの粘液が、掻きだされるように机へ零れ落ちる。気がつけば腰の辺りまで水たまりのような跡が出来ており、ハルヒのめくれ上がった制服のスカートを乱し汚していく。
「あ……あぅ……あっ……!」
ハルヒは腰にまわした手を後頭部へと持って行き、顎をそらせるように胸を張る。
揺さぶられる体にあわせて、扇情的に円を描くように胸が上下に揺れている。キョンはその胸の頂きに唇を寄せて、
――”かりっ……”
「んはぁあぁぁっ――!」
歯を軽く立てるとハルヒはびくり、と体を痙攣させた。
――”びくっ……びくっ……!”
何度目かになる絶頂。
挿入されたときとは違い、深く体に響き渡る甘い痺れ。ひくひくと痙攣する膣の感触にキョンは腰の動きを緩めていった。
「……イった、か?」
「は、はぁっ、はぁ…………っ!」
過呼吸のように喉を揺らし息も絶え絶えなハルヒは、その問いに答えることは出来ず、顔を首筋へと寄せ擦り付ける様に髪を振り乱す。
その首筋にかかる髪の感触を楽しみながら、キョンはゆっくりと右手をハルヒの背中へと回し擦る。強い絶頂の後にこうされると嬉しい、と伝え聞いた知識だ。
ハルヒは背中を撫でられていることを敏感に察したのか、
「キョ、ン……っ」
潤む瞳でキョンの顔を見上げている。
キョンは唇を寄せ、軽くキスをした。
「ん、あふ……」
「ん、ちゅ……」
最初のような情熱的なキスではなく、唇を舐めるようなバードキス。
「……ハルヒ」
「…………」
続きを求められている事を察したのか、ハルヒは唇を離し小さく頷くと体の力を抜いた。
―――”ずちゅ……ずちゅ……”
ゆっくりと腰の動きを再開する。
「ん……あ、ぁあ……」
その感触に喉を反らし、揺らされるままに身を任せていく。
――”ずちゅっ、ぐちゅっ、ずちゅっ……”
「ハルヒ……っ!」
先ほどまでの行為の間に絶頂が近づいていたのか、キョンは速度をどんどんと上げていく。
「出、そうだ……!」
「膣内、膣内に……っ!」
そういってハルヒは縋るように背中に回した両手の力を込める。
「ハ、ハルヒ……」
避妊具をしていないことに気付いたのか、キョンは戸惑うように声を上げる。
突き上げる腰の動きもそれにあわせて、浅くなっていく。
そのことに気付いたハルヒは、
「だ、め……! 膣内に……!」
首筋へ顔を摺り寄せ、強請るように体も寄せる。
「ハルヒ……まずい……って!」
「だめっ……だめっ……! 膣内に……膣内に出さなきゃ、許さ……ないっ!」
戸惑うように腰の動きが緩くなって来たキョン。
だが、ハルヒはそれを許さず、自ら腰を大胆に揺らし射精の後押しする。
「く……出る……っ!」
「あ、あぁぁぁ―――っ!」
キョンがペニスを抜こうとしたのを察したハルヒは、先回りして両足を腰に回し、逃がさないとばかりに強く締め付けた。
――”ドクッ、ドク―――ッ!”
深く突き入れられたペニスから精が疾る。
子宮口に直接浴びせられる熱いキョンの精を感じ、ハルヒも絶頂を迎えた。
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
――”ひくっ……ひくっ……!”
快楽に身を震わせたハルヒから力が抜けると同時に、腰を固定していた両足もほどけていく。
キョンはゆっくりと身を離し、ハルヒからペニスを抜き取っていく。
――”ごぽ……っ”
抜き取ると同時に、膣口がひくひくと震え、膣内から大量の精液が吐き出される。
すぐに愛液と混じったそれは、太もも近くに伝い水溜りのように溜まった。
「はぁ……はぁ……」
余韻に身を任せているハルヒ。
キョンはそれらの見ながらやられた、と思いながらも脱力するハルヒの髪に手を伸ばし撫でるように梳いた後、軽くキスを交わしハルヒに体を預けていった。
………………
…………
……
「馬鹿みたいに出したわね……これ」
体から熱が抜けて幾分か冷静になったハルヒは、スカートに常備されているティッシュを二、三枚とり、精液やら愛液やらが混じる股間を拭きながらそう言った。
「あのな……」
呆れたような声を出すキョン。
開口一番にその言葉か、何て思いながら、自身も乱れた服装を整えていく。
「大丈夫、なのか?」
「……なにが?」
キョン言っていることの意味が分からないのだろう、怪訝そうな目でキョンを横目で見る。
「だから……まあ、その」
「……ああ」
言いにくそうにしているキョンから察したのか、軽く笑みを浮かべて、
「もちろんよ」
「そうか……」
「ばっちり危険日だから」
「って、おい!?」
その言葉に慌てるキョン。
しかしハルヒはそんなキョンを見つめながら、悪戯めいた瞳を見せる。
「……冗談よ。まあ、出来ちゃったとしても責任は取ってもらうから、別に構わないんだけどね」
そういってハルヒは肩を竦めて笑った。
からかわれたことを知ったキョンは、眉を一瞬顰めるが、その後諦めたようにため息をついたのだった。
以上っす。
口内射精、絶頂、中だし好きの俺の妄想が先走ったようなSSです。
エロを書くのは初めての経験だったので、まあなんか至らぬところや指摘があれば遠慮なくお願いします。
大学生は暇なので、機会があればそういう指摘や意見を参考にまた書いてみようかな、と思ってますので。
乙!&GJ!
朝から乙
そしてGJ
一人称と三人称が混ざっててなんだかモニョモニョしちゃうな
>>183 いやいや良かったざんすよ。できれば挿入シーンを少し長くしてもらえたら…
もっと良くなるざんす。偉そうな事言ってスマン
投下します。
ショタ、エロなし、キョンの母がしゃべります。
苦手な方はスルーして下さい。
モテ男の小型化
「まってよぅ、おねぇちゃ〜ん」
さて、このかわいらしくも情けない発言。
これだけを聞くと朝比奈さんが持ち前の愛らしさを存分に発揮してすがってくるように感じるだろう。
しかし、その愛らしい天使さんに姉がいるとも聞いてないし、
誰かをそう呼んでいるのも見たことがない。
ではこれは誰かと言うと、
「はやくはやく、キョン君!ほら、手つないであげるから!」
…そう、俺なのである。
「うん。でもなんで、きたこう?てとこにいくの?」
「だってキョン君いないとハルにゃん達寂しがるもん!」
「???」
あぁ…妹よ。お前は昨日言われたこともう忘れたのか?
そして、俺をこんな姿にしたハルヒは間違いなく寂しがってないぞ。
それにそこの俺、なんにもわかってないぞ。
「それにねー、わたしも北高行ったことないのー!ぼーけんだよ!ぼーけん!!」
「!?ぼーけん?」
…俺の目がキラキラしてる。そういえばこの頃の俺、ハルヒ的な思想を持ってたな。
「そーだよー。じゃあ行くよー!レッツゴー!オー!!」
「オー!!」
はじめてのおつかいみたいだな。
まぁ今回俺にできることはないから古泉達にまかせるしかないんだが…
不安だ…とてつもなく嫌な予感がする。
ここの二人がなにを言い出すかもちろん心配だが、
俺がこの姿になったとき、ハルヒを除く団員のテンションがやや変な感じになってたからな。
いや、その前からおかしかったか…
今実態のない俺は感覚だけで口唇に触れながら昨日のことを思い返していた。
―――――
見上げれば、雲もそこそこに心が洗われるような青い空。
朝特有の澄んだ空気。ちょっと冷たい心地よい風。
そんな日曜日。
にも関わらず、俺は休日だと思って惰眠をむさぶろうと心に決めてたときに、
強制的に予定をいれられて鬱々まっさかりな人のような表情で、いつもの駅前にチャリで向かっていた。
普段、日曜は探索もなく俺にとって本当の意味で休日なのだが、
昨日の探索終了間際、
「あたし、明日午後から用事があるんだけど、午前中暇なのよね。」
我らの団長様が言ってきた。
「そうかそうか、それじゃ俺はこれで」
半ば結果はわかっていたのだが、右手をシュタっと挙げ立ち去ろうと踵を返した時、
「待ちなさいキョン!団長の言うことを最後まで聞かないとはいい度胸ね。
まあいいわ。みんな明日9時に駅前ね!遅れたらキョンだから!」
と、いつもの我侭っぷりを発揮して、午前中のみの探索に駆り出せれている。
て言うか、遅れたらキョンって…
罰金=俺というイメージを払拭したいんだが、無理なんだろうね。
さっき考えてた例え,つまり俺のことじゃねーか
、と一人でつっこみながらだらだらチャリチャリと走らせていたら
いつのまにか駅前に着いていた。
いかん、まだ完全に脳が覚醒してないな。
言うまでもなく最後は俺だね。うん、わかってた。
仕方ない、自腹でモーニングコーヒーでもキメこんで渋さを演出しつつ眠気をとばそう。
もしかしたら朝比奈さんが、
「キョン君いつもと違って大人っぽいです。なんだか見とれちゃいますぅ。」
などと言ってくれるかもしれん。
そんなことを妄想しつつ、いつもの喫茶店でコーヒーを飲んでると、
「何格好つけてんの?なんかバカみたいよ。」
人の淡い期待を一撃で粉々にしてくれやがった。
あーわかってるよ。どーせ俺はさえない一般人ですよ。
「そー言えばあんたよくコーヒー飲んでるわね。なに?俺は大人なんだぞーってアピール?イタイわよあんた。」
いや、さすがにそれはない。単に好きなだけだ。
さすがにこの年でそんなこと思う奴いないだろう。
「いるじゃない、ここに。イタイわよあんた。」
だから好きなだけだって!
「何必死になってんのよ。イタイわよあんた。」
こ、こいつ…
「ふふ…キョン君かわいい。」
くっ…トドメ…
ただいつもと違った飲み方しただけで、なんでこんなダメージをくらわなきゃいかんのだ。
畜生、理不尽だ。しかも妄想とまったく逆のことを言われてるし…
「ホント、キョンもガキよね。そうだ!今日は午前中だけだしキョンの家に行きましょう!」
いろいろツッコミたいとこだが勘弁してやろう。それよりも
「なんで俺んちなんだ?俺としては他の奴らの家のほうが興味あるぞ。」
長門はいつも世話になってるからいいとして、
古泉や朝比奈さんがどんな暮らしをしてるか気になるしな。
おまけでハルヒもだ。
「別にいいじゃない。それとも何?見られて困るようなものでもあるの?
思春期男子特有のブツとか、…あたしの写真が飾られてるとか。」
「そんなものはない。それにな今日び好きな奴の写真を飾る奴なんてめったにいないと思うぞ。」
「!?な…」
ん?なんかハルヒが顔をあかくして俯いてしまった。
自分の昭和的な考えが恥ずかしかったのか?
「おや?やはりあなたの想い人は涼宮さんだったんですね。それに好きな人の写真を飾るのは別に時代遅れと思いませんよ。」
そーなのか?…ってちょっとまて。
なんで俺の想い人がハルヒになってんだよ!
「だ、だって好きな奴って…」
ああ、朝比奈さんあれはただの物の例え、言葉の綾です。
だからそんな悲しそうな瞳で見つめないで下さい。なぜか罪悪感がでてきます。
長門も人を射殺す様な視線はやめなさい。
「…っの、馬鹿キョン!!くだらないこと言ってないで早くいくわよ!」
「おまえから言い出したんだろうが。それに今日親がいるぞ?」
「望むとこよ!!」
「望むって…ハァ、俺ここまで来た意味あんのか?」
「みんなに奢る為よ!!!」
ウワ、こいつ言い切りやがった。悪魔かおまえは…
「うるさいわね!とっとと行くわよ!!」
そう言うとハルヒは店を出て行った。
妙にプリプリしてるハルヒを見送りつつ勘定をしながら考える。
俺の存在意義って、何?
「何もたもたしてんのよー!のろまーー!!」
ヒドイな…
―――――
「ここがキョンの家なの?へ〜、ふ〜ん…」
ハルヒは家に着くなりにやにやとしている。
何企んでいるんだ?見た通り平凡な家だぞ?
「べつに〜、この先お世話になるからね〜」
…こいつは俺の家までSOS色に染める気か?
「わ、わたしもお世話になります!」
どうしました?朝比奈さん。そんなに焦らなくても…
「それは違う。」
ん?長門?
「私がお世話になる。」
なんだ?ハルヒはなにかしら俺んちを利用しようとしてるのだろう。
それが覆らないのはわかってる。
みんな仲間なんだから誰かをハブにする訳ないんだが…
「なあ、古泉。」
三人娘は無言で見つめあってる。
「なんでしょう。」
「なんだこの空気。」
「さあ?」
古泉は苦笑しながら肩を竦めた。
なんなんだろうね、いったい。
おい、ハルヒそんなとこに突っ立ってないで中入れ。
「!?わかってるわよ!バカキョン♪でも、あたしを先に家に上がらせようとしたのは評価するわ!」
何言ってんだ?別に誰からでもいいんだが、楽しそうなんでまあいい。
そして、ハルヒの後をふくれた感じで二人がつづいてきたので、
俺なにかしたか?と思いつつおふくろに帰宅を告げた。
「早かったわね。あら、お友達?」
「ああ、こいつらは…」
「急におしかけて来てすいません。初めまして、キョン君と団活してる者達です。」
ハルヒは、にこやかにそう言いながら頭を下げた。
こいつ、ここでも猫被るのか…
「まあ、これはご丁寧に。それで、あんた」
「なんだ?」
「どの娘が彼女なの?」
あーもう!お約束だな、おい!
団活のメンバーって言われたばかりじゃねーか!
「長門有希。よろしく、お義母さん。」
つっこむ間に、長門が一歩前に出てきた。
長門よ、間違っちゃいないが‘おかあさん’じゃなくてこの人には‘おばさん’で充分だぞ?
「!?有希!」
「長門さん!ずるい!」
と言いつつ二人がおふくろに詰め寄ってきた。
「涼宮ハルヒです!お義母さん!!」
「朝比奈みくるちゃんです!お義母様!!」
おふくろは、「あらあら、まあまあ。」などと笑っているが、
ちょっと若人達の勢いに困惑してるな。
しかし、どーしたんだ?今日みんな変だぞ?
朝比奈さんにいたっては軽くパニックになってるし。
どうしたもんかと思っていると、
「初めまして。古泉一樹です。」
絶妙の間で古泉が入ってきた。
正直助かった。恩にきるぜ。口には出さんが。
「あら?かわいい子ね。年上のお姉さんは好きかしら?」
おふくろが世間的にかなりきびしいことを言いやがった。
あんたも変になったか?
「ハァ…先部屋に行ってるぞ!」
ここにいたら疲れるだけだ。
俺は、はしゃいでる奴らをこころなしか勝ち誇りながら黙ってみている長門を
ついでとばかりに、いつかの図書館のように肩を押しながら部屋に向かった。
「あんたー!有希になにしてんのよ!!」
ハルヒよ、もう地が出てるぞ。それにそんな勢いで迫ってくるな。
すごく逃げたくなる。
「長門さん!さっきからずるいですー!!」
な!?あ、朝比奈さんまで…は、速い!!?
俺は恐怖を感じ、気付いたときには逃げていた。
「逃げんなぁ!エロキョーン!!」
肩を押しながら全力で階段をのぼるという、トリッキーなことにも長門は余裕で対応してくれてる。
一瞬足が鳴門のように見えたが気にしない。
それよりも逃げたとこで行き着くとこは俺の部屋な訳で…
つまりは行き止まりな訳で…
「うりゃー」と、かわい気のあるかけ声ではなく
「うぉりゃああぁぁぁ」と地の底から出てくるような声でドロップキックをかまされた。
どーやったらここでドロップキックなんかできるんだよ…
痛む背中を押さえながら、運よく倒れこんだベッドの上で振り返ると
「わたしだって…えーい!」
天使様が降ってこられた。俗に言うフライングボディアタック。
「ぐはぁ」とはいうが、ベッドのクッションと天使様のクッションでバインバイン。
もういろんなとこがバインバイン。
あれ?ここヴァルハラ?
と満ち足りた顔をしてると、‘ガッ’と顔をつかまれ長門に引きずり下ろされた。
俗に言うアイアンクロー。オーケー長門、落ち着こうか…
その握力だと顔がねクシャってなっちゃうんだ。
とてつもない圧迫から開放され心底安堵してると、
長門が自分と朝比奈さんの胸を交互に何回も見て「あなたは動かないで」と言った。
この体勢と長門の言葉に、あれ?前にもこんなことがあったな。などと思い、
あーそうかあれ、朝倉の時に…
と思い出したときには長門の膝が俺の頬を振りぬいた後だった。
その後もまたベッドまで吹っ飛ばされた俺に
「エロキョンがぁ!」とハルヒが降ってきたり
「ダメですよ!涼宮さん!」と朝比奈さんがハルヒを止めようとしてつまずき、そのまま折り重なる様になったり
「………」無言で長門が飛んできたり
「あ!はるにゃんたちだ!なにしてんの?わたしもやる〜」と妹までも降ってきたりした。
つまり古典的なイジメだ。
その際目の前にあったハルヒの顔が真っ赤になっていたので、苦しそうだなと思い
「おい、みんな。さすがにちと辛いぞ。」と言ってもどけないし、
ハルヒも重いのか、さらに赤くなって接近してくるので
「ハルヒが重さに負けて潰れそうだ。このままだとキス的なものになっちまいそ…」
言い切るまえにどけてくれた。妹は笑いながら転げ落ちただけだが。
「……バカキョン…黙ってなさいよ…」
ハルヒがなんかぶつぶつ言ってたが、これでみんなようやく落ち着いてくれた。
今は、ハルヒが部屋をあさったり朝比奈さんと妹がじゃれたり長門が文庫本読んだり
まあ普段通りすごしてる。
しかし疲れたな…
「ちょっと、キョン!あんたアルバムとかないの?」
「そこにCDラックあるだろ。」
「アホ!写真のよ!あんたの小さい頃のマヌケ顔見せなさいって言ってんの!」
あぁ、この部屋にはないな。下の居間だろう。しかしあんなもの見てもおもしろくないぞ?
「いいから!早く取って来なさい!」
「わかったわかった。あんま部屋荒らすなよ。」
言っても無駄なのはわかってるが一応注意して居間へと下りた。
「……って、おまえ何やってんだ?」
一瞬絶句して中年のおばさんに、にこにこ見つめられている野郎に一応聞いてみる。
なかなか近寄りがたいぞ。
「いや…おかあさんに、あなたの学校生活を聞きたいとここに拉致…ぅん…案内されまして…」
などと顔を引きつらせながら言いながらも、幾分か安堵してる感じだな。
そーいえば古泉がいなかったことに今気付いた。
すまん。悪気はなかった。おふくろよ、あんまり変なことしてくれるな。
「一樹くん、ほんとにいい子ね〜。食べちゃいたい。」
のわ!潤んだ瞳できついこと述べやがった!全身に鳥肌が立つのがわかる。
おい!古泉!この人本格的に変だ!さっさと上に行くぞ!
「え、ええ…それでは。」
俺はアルバムを引っ掴むと固まっている古泉を連れて部屋に戻った。
「もう少し早く気付いて欲しかったのですが…」
知るか。こっちはこっちでいろいろ大変だったんだよ!
「二人で何ぶつぶつ言ってんの?それより、それさっさと見せ…」
遮るように、ハルヒの携帯が鳴った。
「もしもし?え!?もうそんな時間?わかったわよ…帰るわよ。」
あー気がつけばもう昼前だな。
で、どーすんだ?みんなも帰るか?
「それに興味がある。まだ居る。」
「わ、わたしもそれ見たいです!」
「な!?ダ、ダメよ!あたしのいない間に秘められたキョンを見るなんて!」
いったいなんだそれは。俺に不思議属性はないぞ。
「あなたは今、親を待たせている。早く帰るべき。」
「待たせたらかわいそうですよ?」
「ぬぅ…。古泉君!キョンが二人に変なことしないか見張っといて!それからキョン明日それ学校に持ってきなさいよ!」
わかったよ。それより親御さん待ってるんだろ?早く行ったほうがいいんじゃないか?
「わかってるわよ!絶対持ってきなさいよ!」
「はいはい。」
「はい、は一回!絶対持ってくるのよ!」
やけに念をおしながらハルヒは家を飛び出した。
なんでこんなおもしろみのないもの見たいかねぇ。
「ぜったいよ〜〜〜〜!」
…あいつに羞恥心というものはないのか?
一言いってやろうと窓を開けるとハルヒはもういなかった。
足速すぎるぞ。
―――――
「キョン君かわいいですぅ。今と違ってすごい素直そうです。」
「あのね〜キョン君この頃すごい純粋だったんだって!なんでこんなひねくれ者になったのかなっておかーさんが言ってた!」
朝比奈さんと妹がキャッキャッ言いながらアルバムを見ている。
微笑ましい光景ではあるのだが、‘今と違って’とはどーゆー意味だろう…
長門も写真と俺を交互にみて不思議そうな顔してるのはなぜかな?
「写真を見る限り、この頃のあなたとのギャップがすごいですからね。」
「変わらない奴のほうがおかしいだろ。それに、俺は今でも充分素直だ!」
その時、妹を除くみんなが驚いた顔をして見つめてきた。
長門は俺にわかる程度だが…
そんな変なこと言ったか?
「いえ、それもあるんですが、その…涼宮さんです。」
あるのかよ!ってそんな状況じゃなさそうだな。
「おい、下に行ってみんなにジュース持ってきてくれないか?」
「えー?キョン君行ってきてよー。」
「冷蔵庫に俺のぶんのケーキあったろ?それやるから。」
「!?わかった!行ってくる!」
ちょろいな。あ、ジュースはケーキ食ってからでいいぞ!
「うん!」と言い部屋を出た妹を確認して、
「で?あいつがまた何かやらかしたのか?」
「ええ。閉鎖空間ではないのですが…」
「世界が改変されようとしている。」
長門が被せるように言って来た。
おいおい、閉鎖空間だと思っていたら世界改変かよ。あれはもうこりごりなんだが…
「大丈夫。今回はあんなことにはならない。」
少し悲しそうに言ってきた。
あぁ、すまん。少し無神経だった。
「涼宮ハルヒは局所的に改変しようとしている。」
「涼宮さんはよほどあなたの小さな頃を見たかったようですね。」
どーいうことだ?局所的?俺の小さな頃?わからんぞ。
朝比奈さんもわかってない顔してるじゃないか。
あれ?とゆーことはこのお方、純粋に俺の発言にびっくりしたのか?
…まあいい。で結局どーなるんだ?
「おそらく今から30分52秒、51、50……」
「わかったわかった。約30分後、でいいか?」
「いい。あなたは5歳児になる。」
シャ、写真が見られなかったってだけで俺を5歳児にするってか?!
「かわいらしい方ですね。」
アホか!明日持って行くというのに!
これはシャレにならんぞ!なんとかならんのか長門?
「ならない。涼宮ハルヒの力は未知なとこが多い。思念体の許可もおりない。」
クソッ!いきなり5歳児って…あのバカ!
「まあまあ、落ち着いて下さい。涼宮さんもずっとあなたを子供にしているとは思えません。
それよりも、元に戻るまでの期間が問題です。」
…確かにそうだな。すまんな取り乱しちまった。
「それで長門さん。このまま子供になると彼は生活が難しいくなるでしょう。
ご家族やご近所、学校などの情報を改竄する訳にはいかないでしょうか?」
ハルヒがそこんとこを上手く改変してくれれば早いのだが。
古泉の話を聞くかぎり期待できないのだろう。
「それもできない。涼宮ハルヒが改変した世界で情報を改竄するのはなにが起こるかわからない。最悪、彼はずっと5歳児のまま。」
「それは危険ですね。では、機関のほうでいろいろやってみましょう。」
すまんな、手間かける。
「問題が一つある。その対処を施したい。許可を。」
問題は山ずみなんだが…どーした長門?急に許可を求められても困るぞ?
何か重要なことか?
「このまま5歳児になると今のあなたの意識はなくなってしまう。元に戻ったとき、その間の記憶がないのは不都合と考えられる。」
え!?そーなのか?11,2年前の俺そのものになるのか?
「そう。だから今のあなたの意識を保存して、見守ることができる様にしたいと思う。」
ん?どーゆーことだ?
「つまり、守護霊みたいなものでしょう。」
………まあしょうがないか。確かに子供になった間のことは、知っておきたいしな。
じゃあ頼む長門。噛むんだろ?
「そう。」
やれやれと腕を出したとき、朝比奈さんが「あ!ダメ!」と言った時には噛みつかれてた。
口唇に。
長門曰く「脳の近くのほうが確実。」らしかった。おもいっきり目を逸らしていたが。
「今日の長門さんはズルイというより卑怯です…」
朝比奈さんが何かつぶやいてたが、俺は突然のことに我を失って口唇をなぞっていた。
いかん、ボーとしていた。一番の懸案事項だ。
「古泉。家族に対してだがこれはさすがに機関もどうしようもないんじゃないか?」
「そうですね…」
古泉は顎に手を当て、いつもとは違う真面目な顔で考えてる。
あんまり家族はまきこみたくないんだが、さて…
「あ、あの〜キョン君が家出したというのはどーですか?子供になったキョン君はわたしが面倒みますから。」
恥ずかしそうに朝比奈さんが提案した。
それは大変魅力的な案ですが、さすがに…
「それはダメ。」
お?長門?
「彼の面倒はわたしが見る。」
いや、そういうことじゃなくてだな。
日曜の昼間、それも友人を家に招いてる奴がいきなり家出なんてかなり無理があるんだ。
しかもあと20分もない。
「この際、涼宮さんのことも含め全部説明しましょう。」
「それしかないか。しかし、こんなことすぐには信じないぞ?」
「あなたのご家族です。大丈夫でしょう。それに目の前で小さくなれば信じざるを得ないでしょう。」
「一部納得できないとこがあるが、まあそうだな。にしても時間がない急ごう。」
俺達は、見つめ合って動かない長門と朝比奈さんをおいて一階に下りた。
「一樹君が言うなら本当なんでしょう」
「キョン君子供になっちゃうの?じゃあ、わたしおねーちゃんだね!」
…3分もかからなかった。器がでかいのか、どっか抜けてるのかわからんな。
「おい、妹よ。そんな訳だからあんまり目立つような…連れまわしたりするなよ。あとハルヒには絶対言うな!」
「え〜?ん〜わかった。あんまりね!」
本当にわかってんだろうか。
「そろそろ。」
おわ!長門いつの間に!
驚いていると急に体が浮遊感に包まれた。どーやら小型化が始まったみたいだな。
浮遊感が治まったので下を見てみると完全に5歳児の俺がいた。
さすがに、おふくろも妹も実際目の当たりにすると驚いているな。少し安心した。
少しキョロキョロしていた俺(小)だが、
「あ!おかーさん!この人達だれ〜?」
と言いながらパタパタとおふくろの下に行こうとするが、いかんせん着ている服が大きすぎる。
ポテッと転ぶと「うぅ〜」と泣くのを堪えて「泣かなかったよおかーさん!」と。
…これ本当に俺なのか?いや、5歳だから別に普通なんだろうが…きついな。
なぜかみんな沈黙して、俺(小)を見ていたのだが、
「やっぱりキョン君はわたしが持って帰ります!」
ちょ…朝比奈さん?持って帰るて!
「いえいえ、ここは機関のほうで。いや僕の家でも…」
どーした、古泉!おまえまで!
「………」
長門が無言で俺(小)の手を引いてる!?
「ダメですよ!長門さん!いつもおいしい思いしてるんだから今回ぐらい!」
「朝比奈さん、そんな大岡なことをしてはいけません。ここは中立な機関に…」
「………」
あぁみんなの様子がおかしい。
俺(小)も訳がわからずおふくろに救いの目で見ているが、おふくろはあっけにとられて固まっている。
いよいよ泣くと思われた時
「キョン君はわたしのだからダメーーー!」
妹の叫びにおふくろが我をとり戻して、「はいはいみんな大丈夫だから。」と、俺(小)を抱き上げた。
ふぅ、今回は妹に助けられたな。しかし人を所有物扱いしてはいけないぞ?
―――――
「では、明日の放課後にまたお伺いさせてもらいます。」
と、昨日古泉が言ってたんだが、この端から見ると愛らしい姉弟はすでに北高前である。
昨日の話では、我が一族の家訓で、
‘第一子は一定期間、同じ血筋の第一子と変わって生活する’
と訳のわからないかなり無茶な設定を作って急遽それが行われることとなり、今俺は俺(小)の実家にいることになっている。
これを機関が工作するために一日あけて今日の放課後、俺(小)とハルヒを対面させるだんどりを決めるはずだったんだが、
妹の「キョン君北高にいくよ〜!」の一言でだんどりもなにもなくなった。
まあ校内で子供二人がウロウロしてたら教師なりなんなりに家に帰らされるだろう。
ちなみに昨日、妹とのやりとりで
「おねーちゃんだれ〜?キョンって僕のこと?」
この頃キョンと呼ばれてない上に姉などいないので当然の質問を
「おねーちゃんはおねーちゃんだよ!キョン君はキョン君だよ!」
ハルヒも真っ青のゴリ押しをして「そーなんだ。」と俺(小)を納得させた。
今更ながら、5才の俺は素直、純粋というよりもただのアホなんじゃないのか?
軽く落ち込みながら気付くと二人は文芸部室前にいた。
教師にエンカウントしない上に最短ルートでここまでくるとは…妹の行く末が恐ろしい。
「キョン君すごいね!なんでここってわかったの?」
「ん〜、なんとなく!」
あっ、俺だった。
「あのアホキョン!一族の家訓ってなによ!つまんないじゃない…アルバム持ってくるって言ったのに…」
ハルヒの怒ってるのかイジケてるのかわからない声が聞こえる。
お前のせいだよ!と声にならない声で言ってると
「はるにゃ〜ん!遊びに来たよ!」
勢いよく妹がドアを開けた。
「へ?妹ちゃん!?どーしたの、こんなとこまで!」
「はるにゃん寂しがってると思ってキョン君連れてきた!」
「え!キョン!?」
ハルヒはもちろんのこと、他の団員も驚いてるな。まあ当然か。
古泉に至っては口の端をピクピクさせている。
すまんな、後はまかせたぞ。
「え?キョン?」
ハルヒは俺(小)を見るなり不思議そうに見つめている。
「か、彼のかわりに来た子です!こ、この子もキョン君と呼ばれてるそうです!」
おい、古泉。焦りすぎだ。
「そーなの?でもなんで古泉君が知ってるの?」
「え、えぇ…昨日帰るときにちょうどいらっしゃいまして。長門さんも朝比奈さんも会っていますよ。」
「むっ…団長であるあたしだけ知らないなんて、キョンのせいだわ!」
なんでだよ!そもそもお前が原因だ!
ん?俺(小)がそわそわしてるな。
「おねーちゃん、あの人だれ?ほかの人は昨日あったけどなまえわかんない。」
「そーだったね!この人は、はるにゃん!」
「妹ちゃん。そろそろお義妹ちゃんって呼んでいいわよ。」
「うん。わかった、はるにゃん!」
「………」
「でね、この人がみくるちゃん!」
「あ、あのわたしもお義妹…」
「うん。わかった、みくるちゃん!」
「………」
「それで、この人が有希!」
「わた…」
「うん。わかった、有希!」
「………」
「ありがとう!おねーちゃん!」
「うん!おねーちゃんだよ!」
…そんなにおねーちゃんがうれしいのだろう。そうだろう。別に黒い意図はないはずだ。
「ほんとキョンの血縁者とは思えないくらい素直でいい子ね。」
妹による紹介のあと、軽くしょげている古泉を尻目にハルヒは俺(小)と戯れている。
すまんな古泉。妹は紹介終わり!ってな満足気な顔してる。あきらめろ。
「はるおねーちゃん、ここは何するとこなの?」
「よく聞いてくれたわね!ここは世の中のありとあらゆる不思議を見つけ楽しんじゃおうってとこよ!」
「ふしぎ?たのしむ?」
「そーね…宇宙人、未来人、超能力者とかと遊ぼう!ってことよ。キョン君も興味ある?」
ハルヒがキョン君って…、なんだろうね?このむず痒さは。
「!?うん!宇宙人とかっているの?ぼくも遊びたい!仲間にいれて、はるおねーちゃん。」
俺(小)が瞳をキラキラさせながらハルヒを見上げていた。
うむ、立派な上目遣いだ。自分がやってると思うと頭を抱えたくなる。
「か、かわいい…気に入ったわ!SOS団の入団を許可するわ!」
ハルヒは俺(小)をなぜか抱きしめながら言うと
「ありがとう、はるおねーちゃん。」
俺(小)も抱きしめながらハルヒに埋まっている。
なんだよこれ。妙にこっ恥ずかしいぞ。
「宇宙人の…」
ハルヒと俺(小)を呆然と見ていると長門がいつのまにかそばに寄っていた。
「なに?ゆきおねーちゃん。」
「女の宇宙人がいたらどうする?」
唐突になにを言い出すんだ?
「え?ん〜と、結婚する!」
唐突になにを言い出すんだ!俺(小)は!意味わかってんのか!?
「わかった。」
うお!なぜか長門と目があったぞ。やはり長門には俺が見えてんのか?
「じゃ、じゃあ!」
「なに?みくるちゃん。」
朝比奈さんが慌てながら聞いてきた。
俺(小)はなぜか朝比奈さんにはおねーちゃんをつけていない。なぜだろう。
「未来人の女の子はどうですか?」
「ん〜とね〜、およめさんにする!」
つまりなんでもいいんだな俺(小)は…
朝比奈さんは「ウフフ…」と身をくねらせている。朝比奈さん?子供の言うことですよ?
「それでは超能力者の男の子はどうでしょう。」
古泉までが聞いてきた。
「ん〜親友になる!」
古泉は、「おやおや」と言いながら虚空に向かってウインクをしていた。
残念ながらそこに俺はいないがな。にしても気持ち悪いからやめろ。
「それじゃあいろんな不思議を探す元気いっぱいな女の子はどうかしら?」
やはりハルヒも聞いてきた。
「友達になっていっしょにぼーけんする!」
即答したね。俺(小)は。ハルヒを見る他の団員がなんともいえない目で見ている。
「な、なに?この敗北感は…キョ、キョン君あたしのことは好き?」
なにをテンパってるんだこいつは。俺(小)も「うん、すきー」とか言うんじゃありません。
ハルヒが子供の言うことに顔を赤くしていると
「こんちはー!差し入れにきたっさ!」
いつもハイテンションな鶴屋さんが入ってきた。
「なんだい?キョン君はいないのかい?つまんないな〜。ん?このちっこいのはだれっかな〜?」
なんだかうれしいことを言ってくれるね。
ん?俺(小)が若干震えてるような…
「は、はるおねーちゃん…」
「ん?どうしたの?この人は鶴屋さんといって…」
「お、おばけだー!」
「にょろ!?」
…みんなあっけにとられてるな。かくいう俺もだ。
何を言い出すんだ俺(小)は!
「だ、大丈夫よ。ほらちゃんと足あるでしょ?」
いち早く立ち直ったハルヒが言うと
「で、でも!にょろって鳴いた!にょろって!」
言っちゃいけないことを言い放ちやがった。
周りをみるとみんな固まっているが、朝比奈さんは顔を真っ赤にして口を押さえている。
鶴屋さんは冬のときみたいに某お菓子屋のマスコットのような顔で考えこんでいる。
「それにさっき、キバがあるのをぼく見たよ!」
八重歯のことだろう。
「おばけじゃないなら、ようかいだ!はるおねーちゃん!」
「い、いや…」
めずらしい。ハルヒが困っている。
「ぺこーん!」
「また鳴いたー!」
ここで朝比奈さんが吹き出した。
「閃いた効果音にょろ!みくる!なに笑ってるんだい!?」
まるで笑うのは私の役目だといわんばかりに朝比奈さんに言うと
「ふふ…君にはキョン君の匂いがするね…」
と、映画の時みたいに俺(小)に迫ってきた。
「うわー!おでこにょーんが、おでこにょーんがせまってくるよ!」
「わたしゃドレミファかい!?」
もう訳がわからない。朝比奈さんは腹を押さえて床を転げまくってるし。
「はるおねーちゃん、たすけて!」
「だ、だいじょうぶだから…」
「うわーん。はるおねーちゃんなんかだいきらいだー」
「えぇ!?」
ハルヒが固まった。
「観念するにょろよ…」
「うわー!」
俺(小)を捕まえようとした瞬間、パシッと鶴屋さんの手が払われた。
「ほほう…有希っこ。邪魔する気かい?」
「ゆ、ゆきおねーちゃん!」
俺(小)が長門に抱きついた。しかし情けないな…
「大丈夫。あなたはわたしが守る。」
「うん!」
俺(小)が離れたのを合図に、俺(小)を捕まえようとする鶴屋さんとそうはさせまいとその手を払う長門の戦いが始まった。
すげぇ。まるでカンフー映画だなこれ。
「う〜ん、髪が邪魔だね。有希っこ、ちょっと待つっさ。」
鶴屋さんはポケットからゴムをだすと髪を後ろに纏めて縛った。
非のうちようがないポニーテールだ。うむすばらしい。
「さー、有希っこ!いく…にょろ?」
…俺(小)が鶴屋さんの手を握ってる。
「ごめんなさい。こんなきれいな人がようかいなわけないや。」
おいおいマジか?単純すぎるぞ。
「ん〜いいっさ。キョン君におしおきするからさ。」
「やっぱりおこってるの?ぼくおしおきされるの?」
うるんだ瞳で鶴屋さんを見ている俺(小)を
「君もキョン君っていうのかい?違うキョン君だから安心するにょろ!」
俺が全然安心できないこというと鶴屋さんは俺(小)を抱きしめた。
「ほら、大丈夫だったでしょ?」
いつのまにか復活したハルヒをみると、無理矢理なポニーテールになっていた。
なに対抗してんだ。
「うん…ごめんね?はるおねーちゃん。」
「キョン君かわいい♪」
あれ?朝比奈さん今まで転げまわってませんでした?
いつのまにポニーテールを?しかもリボンで。
朝比奈さんのすばやさについていろいろ考えていると、
「あなたには、おしおきが必要。」
長門がばっちり俺を見てつぶやいた。
その後そろそろ下校する時間になったとき
「キョン君今日あたしの家に泊まらない?」
とハルヒが言い出したのをきっかけに
「ここはやっぱり肉体的に包容力あるわたしが…」
「……私」
「待つっさ!部屋がいっぱいあるこの鶴屋さんが…」
「男同士のぼくが…」
と昨日の再現+αで揉めていたとき
「キョン君はわたしのなのーーー!!!」
今まで完全に空気になっていた妹の叫びにより帰宅することになった。
ふぅ…予定外だったがハルヒとの対面も上手くいったんじゃなかろうか。
たぶん満足してくれただろう。得に問題もなかったしな。明日には戻れるだろう。
しかし見てるだけで疲れたな…
―――――
朝起きるとちゃんと元に戻っていた。いささか不安だったがちゃんと戻れてなによりだ。
おふくろに「また可愛げのないあんたに戻ったのね。」と微妙に傷つくことを言われたのだが
「やっぱりキョン君はこっちのほうがいい!」と妹に抱きつかれたので良しとしよう。
妹よ、今度パフェ食わしてやる。
「キョン君だいすきー♪」
ふむ、キスまでされた。っとこんなことしてる場合じゃないな。このままだと遅刻してしまう。
いつものように早朝ハイキングをして
教室に入るとハルヒはもう席についていた。
「よう、ハルヒ。」
「あら、もう家訓とやらは終わったの?」
「あぁ。まだ小さい子だったからな。昨日の夜には帰ってたよ。そういえばおまえも見たらしいな。」
一応話をあわせておかないとな。
「あんたと違ってすんごい可愛かった!」
「ほほぅ。あいつは俺とそっくりと評判なんだ。しかし可愛いと言われてもうれしくないぞ。」
「あんたには言ってない!確かに似てたけど全然違う生き物だわ!」
残念ながら同一人物だけどな。と心の中で笑ってると
「あ!いたいたキョン君!」
鶴屋さんが教室に入ってきた。
「あら?どうしたの鶴屋さん?」
「キョン君をおしおきに来たっさ!」
言うと同時に抱きつかれた。朝の教室で!クラスメートの前で!!ハルヒの前で!!!
「ちょっ…つ、鶴屋さん、なにを…」
「だから、おしおきっさ!」
なんとか逃れようともがいてると、ガッと右手が掴まれた。
ハルヒはまだ呆然としている。誰だ?
「おしおき。」
長門がそのまま自分の胸におしつけてきた。
「長門いつのまに!?それにこれおしおき??」
胸をさわるのがおしおきってのもおかしいが、なんていうか自虐?
「………」
すいませんでした。その握力は大変危険です。ポキッといっちゃいます。
「あ、あんた…」
ハルヒが再起動した。よし落ち着け、冷静になろうか。
「な に し て ん の よ!」
一文字づつグーで殴られた。
確かにこれはおしおきだなぁ。でも俺なにもしてないよね。
薄れる意識のなかこいつ本当に女か?と思われるフックをくらいブラックアウトした。
さて、放課後の話である。
「おまえ普通気を失わせるほど殴るか?」
「あんたが悪いんでしょ!」
ハルヒはまだプリプリしている。
「ったく…もうちょっと女らしくできないもんかね。」
「女らしくってなによ!どーせみくるちゃんみたいなのがタイプなんでしょ!」
「なんでタイプの話になってんだよ!別にタイプとかじゃねーよ!」
「そ、そんなぁ…」
「ち、違いますよ。朝比奈さんが嫌いな訳じゃないですよ!」
「じゃあどんな女がタイプなのよ!そうだ、あんた今から女装しなさい!」
「おい、意味がわからんぞ!なんでいきなり女装なんだよ!」
「あんたのタイプの女になりきりなさいってことよ!」
「アホか!断る!」
こんなアホなやりとりを帰り道でも続けていた。
ハルヒがいつもみんなと別れるとこで
「絶対女になりきらすからね!」
と捨て台詞をはきながら走って帰っていった。
「なあ…長門。」
「何?」
一応ダメもとで聞いてみよう。
「あとどのくらいだ?」
「約30分。」
やっぱりか…
「また機関のほうにおまかせ下さい。」
すまんな、頼むよ。
「え?え?」
朝比奈さん。いろいろアドバイスを聞くかもしれません。
「は、はあ…??」
そして30分後俺は女になった。
おわり
以上です。
ではでは。
>>208 GJ!!もちろん女子Ver.もありますよね?
>>208 続きがあるに違いない!
書いてくれるのを楽しみにしてます!GJ!
キョン子ちゃんwktk
GJでした!
>>183 甘酸っぱくてよいです。オチの流れも好き。
コレは俺の感じ方だけど、三人称だと写実的というか淡々とした感じがあるかも。
神視点(三人称)プラス、ときおり一人称も混ぜた方がエロちっくかも。書き方としては邪道かも知れないけど。
>>208 まさにどたばたハーレム。なんというか、実にラノベらしい(?)と思った。
なんか新鮮に感じるから不思議だ。
妹子黒すぎwww
次のTSに期待
モ テ 男 ( 笑 )
保管庫さま
52-744様: 『涼宮ハルヒの結婚生活』 1
の最後の部分、
────
「だめだ」
完
────
これは別の人間のレスですかと。書き手本人ではありませんが、報告です。
>>183 >>208 おまいらGJ。
すまん唐突にちと聞きたいんだが
以前ここで見たはずのSSなんだが
わたぁし の正体が具現化した神人で、ついに登場した異世界人でしたってな
ネタのかなりよくできた奴
誰のなんてSSだったか教えてくれまいか
セイクリッド・カプリチオ
盛り上がって参りました
このSSで一切つっこみが入らないことに泣いた
>>220 dクスサンクス
ふと読み返したくなったのに思い出せなくてアッーしてたんだ
保管庫いってくる
>>222 なんというか、開き直ってる作品だから突っ込むのが野暮かと思った。
読んでて疲れない、息抜き出来たよ
それに突っ込むほど掘り下げてもないぬるま湯なSSだし
いかん、ちんこのおさまりが…
朝から元気だね
>>224 「そこまでやらんでも」ってくらい完成度高いよな。執筆能力分けてほしいくらいだ。
230 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 23:15:24 ID:9nYubcQd
原作者の新作読むとやっぱ圧倒的な力の差を感じてしまう。
これはもう如何ともしがたいね……
ネタにマジレスなのは承知の上で言わせてくれ
その「新作」はいつ出た分だ、オイ?
四月だから半年前だね
保管庫みていたら、黒みくるとか黒古泉とかハイテンションユッキー
とかの新作が読みたくなってしまった。新作(屮゚Д゚)屮 カモーン
新作は来年?
この時期に噂が聞こえてこないとこ見ると、年内発売は難しいかなー
根拠もなく来年の4月頃発売だと妄想してる。分裂の1年後みたいな。
誰か>236の妄想を払拭してくれ。演技が悪い
滝にでも打たれてこいよ
うわ…
佐々木厨厨のこと言っただけでなに佐々木スキー扱いしてるんだよ…
佐々木みたいな男口調の女なんか好きじゃないし
男口調でもないだろあれは。好きだけど。
【佐々木厨】
∧,,∧ ∧,,∧ ∧,,∧ ∧,,∧
∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧ ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U ( ´・) (・` ) と ノ | U ( ´・) (・` ) と ノ
u-u (l ∧,,∧ ∧,,∧ u-u (l ) (∧,,∧ ∧,,∧
`u-∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧`u-∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U ( ´・) (・` ) と ノ| U ( ´・) (・` ) と ノ
u-u (l ) ( ノu-u u-u (l ) ( ノu-u
`u-u'. `u-u' `u-u'. `u-u'
【佐々木ちゅうちゅう】
(⌒ー⌒) (⌒ー⌒)
(⌒-⌒)´・ω)(・ω・`(⌒ー⌒)
( ´・ω ー⌒)(⌒ー⌒)ω・` )
| U( ´・) (・` ) と ノ
〜-u (l ) ( ノu-u'〜
〜'u-u' `u-u`〜
【佐々木ちゅうちゅうちゅう】
_
/´ `フ
/ ,!
レ _, r ミ (⌒ー⌒)
/ `ミ __,xノ゙、 r( ´n
. / i > ,/ (⌒ー⌒)
,' . ,' 〜'oー、_) r( n)
; ', l l `/ <_
i | | | 〜'し -一┘
,.-‐! ミ i i (⌒ー⌒)
//´``、 ミ 、 ー、 ( ´・ω)
. | l `──-ハ、,,),)'''´ 〜、/ っっ
ヽ.ー─'´) (⌒ー⌒) └ー-、ぅ
 ̄ ̄ r、´・ω・))
(⌒ー⌒) > _/´
n__n (´・ω・`) 〜'し-一┘
(⌒ー⌒)ノ c' っ
c('・ω・`)っ 〜(_,'ーo'
` ̄ ̄´
ワザワザこんなもの作るなよw
そんなちゅうなら大歓迎だw
かわいいなw
かわいいなオイwwww
保管庫でさ、長編で2ページ以上に分かれてるやつって、なんか目立っていいな。
投下する時に、分割掲載希望、とか書いたらそうしてくれるかなw
涼宮ハルヒの演奏の続きはまだかいな。
252 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/09(火) 19:09:23 ID:tEG/MeE5
「一日団長」的なネタって無いの?
たまにはハルヒに命令する長門とかみくるとか古泉とかもみたいなぁ
昨日ハルヒスレで、ハルヒと古泉の役職を入れ替えるってSSがあったよ。
脱衣オセロの新作読むとやっぱ圧倒的な力の差を感じてしまう。
これはもう如何ともしがたいね……
>>243を見るとやっぱ圧倒的な癒しの光を感じてしまう。
これはもう如何ともしがたいね……(*´∀`)
脱衣オセロはガチ
学校のエロくないオススメSSは何?
『古泉一樹のある種の罠』
空気を読まずにエロ分投下。
朝倉×キョンのバカエロですが、朝倉がアホ倉さんになっているうえに、キョンがSMチックに暴走していますので、
そういったシチュエーションが苦手な方や、キャライメージを壊したくない方はスルーヨロ。
変態佐々木シリーズの3P編はもうしばらく掛かりそうです。投げ出したわけじゃないんで、もう少し待ってくださいm(_ _)m
25レス予定。
『朝倉涼子のカウンセリング』
いつかと同じような西日でオレンジ色に染まる放課後の教室。俺はその引き戸を開けた。
そこにいたのは、美少女委員長こと朝倉涼子だった。
「遅いよ」
「なんだ、またお前か」
「そ。予想通りだったでしょ。入ったら?」
「だが断る」
「ちょっ!!話が進まないじゃない!入ってよ!!」
いくら俺が異常事態に慣れっこになっているとはいえ、ここでノコノコと入るほどお人好しじゃない。
「誰が入るか。またあのコンクリ空間に閉じ込められるのはごめんだからな。だいたい何なんだこれは?新手のジョークか?」
「まったく疑り深いなあ。これはあなたが見ている夢よ、夢。ホラホラ、現実感ないでしょ?」
と、言いながら浅く腰掛けていた机でジャグリングを始める朝倉。
だが、マトリックスもびっくりな戦闘をやらかしやがった当事者の申告では説得力がないことこの上ない。
「どうせ嘘つくんなら、もう少しマシな嘘をつけ」
「いやだなあ。有機生命体ってたった一年でこんなにスれちゃうものなの?去年のキョン君は、もうちょっと可愛かったわよ」
宇宙人と未来人と超能力者からの保証書が付いた普通の人間でも、あのトンデモ団体に属してると、いやでも経験値を積まざるを得ないからな。
何より、お前に1年で2回も殺されかければ、人生経験としては十分すぎるほどだ。
「ふぅ、しょうがないなぁ。分かったわ。じゃあ一度目を覚ましてみてよ。それでもう一回ここに来たら、夢だって事が信じられるでしょ?」
その声と共にふと我に返って辺りを見回すと、目覚まし時計の夜光塗料があと数時間は惰眠を貪れることを示していた。
やれやれ夢か……って、えーと、今どんな夢見てたんだっけ?
再び睡魔に引きずられながら、だんだんぼやける意識のもとで必死に思い出そうとしていると、
今度は教卓に腰を掛けた黄色いチューリップのような笑顔から明るい声が降ってきた。
「おはよう!」
「……お早くない。だいたい俺はゆっくり寝たいんだ。邪魔すんな」
いやいやながら教室の扉をくぐり、前列あたりの適当な椅子に腰を下ろす。もちろん朝倉とは、ある程度の距離をとりつつだが。
「じゃあこれが夢ってことは認めてくれた?」
「ああ、不本意ながらな。だが、せめて布団の中くらいはトラブルと無縁の空間にしてくれ。でないと酷使されっぱなしの心と体がくたばっちまう。
で?単刀直入に聞くが、今度はどんなトラブルなんだ?お前が出張ってきてるってことは、長門がやばいことになってるんじゃないだろうな」
「いいえ。トラブルが発生したのは、長門さんじゃなくてあなたのほうよ」
「どういうことだ。分かるように説明してくれ」
「いま自分でも言ってたじゃない。心が酷使されっぱなしだって。長門さんの観測で、あなたの頭部情報処理システムの深層領域におけるエラーデータが、
危険な水位にまで蓄積されていることが分かったの。それで私がその解消役に抜擢されたってわけ」
「エラーだと?またどこぞの情報生命体の仕業か?」
「いいえ。それなら長門さんが取り除けばいいだけだもの。私が呼び出される必要なんてないわ。
これはあなたたち風に言えば……そうね、ストレスの蓄積というべきかしら。
キョン君ってずっとSOS団で活動しているわよね。もちろんあなたなりに楽しい高校生活なんでしょうけど、
涼宮さんに深く関わって暮らすというのは、安全装置の壊れた核爆弾の上でダンスを踊るようなものだもの。
無意識下にエラーデータが蓄積するのは、有機生命体である以上避けられない現象だわ」
「ふん。ハルヒはそんなんじゃねーよ。あいつはただの我がままで傍若無人で強引で前向きで、ちょっとだけもろい普通の女の子だ」
「さすがね。キョン君の情報体には、あの涼宮さんのすべてを受け入れる能力がある。これは情報統合思念体にもないすごい力だわ。
でも、残念ながらあなたの体は通常の有機生命体なの。だから高度に発達した情報体に有機体の器が追いつかなくて、その接合部位に負荷が蓄積しちゃってるってわけ」
「体の頑丈さだけが取り得なんでな、にわかには信じがたいが……だいたい、俺のストレスなんて、お前らの得意技でちょいちょいっと消せないもんなのか?」
「うん、それ無理。あなたたちが大脳新皮質って呼んでる表層領域のエラーならなんとかなるんだけど、
キョン君の場合は情報体と有機体を繋ぐ深層領域に物理的な障害の兆候があるの。
この部分って構造がシンプルなだけに、私たちでも弄りようがないのよ」
「じゃあお前は、どうやって俺のエラーとやらを解消させるんだ?」
「簡単よ。私を好きにして」
……パードゥン?何言ってんだこいつは?意味分からん。分かるやつはここに来て説明しろ!
「だーかーらー、私の体をめちゃくちゃにしていいって言ってるのよ」
ちっちっちっと、ハルヒのように人差し指を立てながら解説する朝倉。だが、こいつはどういう冗談だ?
「おーけー。情報伝達の齟齬は解消された。だがな、なんでそういう結論になるのか説明しろ」
「まったく。女の子が抱いてって頼んでるんだから、思春期の青少年らしく四の五の言わずに、ルパンダイヴのひとつもしてみせてよ。
だいたい、これって最初っから夢オチなのよ?こんなにおいしい話ってないじゃない」
ぷっと頬を膨らませる朝倉。その無防備な表情に一瞬ドキッとする。だが、ここでフラフラと心動かされてはこいつの思う壺だ。
「断る。どうせそうやってまたハルヒを刺激しようって腹だろ。そうは問屋がおろすもんか」
「違うわ。さっきから言ってるでしょ。問題になっているキョン君の頭部情報処理システムのエラーは、
情報体が制御している表層領域じゃなくて、有機体の維持を司る深層領域にあるの。
いわば人間の部分じゃなくて獣の部分ね。だから、そこのエラーを消去するには、獣性を開放する必要があるのよ。
それで私が、キョンくんに獣のように陵辱してもらうために、ここに派遣されたってわけ」
……言わんとしてることは、なんとなく理解できた。が……できたら他の選択肢も頼む。
「うーん、原始的な有機生命体の基本欲求って、くう、ねる、やる、の三つよね。
食うと寝るでエラーが解消しきれなくて今の事態になってるから、あとは『やる』しかないんだけど……
どうせならキョン君は『姦る』ほうがいいでしょ?もちろん『殺る』がいいって言うなら喜んで突き合うわよ?」
優等生委員長な笑顔がニヤリと歪む。あのー朝倉さん?その『つきあう』は字が間違ってませんか?
それはともかく、いくら清く正しい高校生活のおかげで星の数ほどの情熱を持て余しているとはいえ、
いきなり抱けといわれて、ハイじゃあお言葉に甘えて、と答えるほど落ちぶれちゃいない。
「それならせめて長門を呼んでくれ。お前が相手じゃ息子がブルっちまってな。正直、抱けって言われたって抱けるもんじゃない」
「うん、それ無理。もちろんこの計画が決まったら長門さんは即座に立候補したわ。でも、キョン君は長門さんを獣のように抱けないでしょ?」
獣のようにって言われてもな。正直やってみないことには自分の性癖なんて分からん。
「じゃあ質問を変えるわね。あなた、長門さんが輪姦されてたら参加できる?」
ふざけんな!たとえ手足を捥がれようとも断る!それに誰かをけしかけてそんなことしてみろ!お前の親玉を後悔すら出来なくさせてやるぞ!
「そんなに怖い顔しないでよ。ね、キョン君は長門さんが襲われているシーンを思い浮かべることすらできないでしょ?
それって深層領域の段階で拒否してるってことなの。でも、私にならできる。だって、あなたの深部メモリーにとって私は敵だもの」
何言ってやがる。そんなのとっくの昔に忘れちまったよ。
それにもしお前が誰かに襲われてたら絶対助けるさ。もっとも、お前が敵わない相手に俺が力になれるとは思えんがな。
だいたいストレスの量なら、俺よりも仕事のある古泉や朝比奈さんのほうがずっと上だろ。まずは先にそっちを解消してやってくれ。
「ああ、彼らなら大丈夫よ。朝比奈さんは私たちから見ればまだまだ稚拙だけど、頭部情報システムの制御技術があるし、古泉君は森さんと、その……。
あ、あれはあれでエラーの解消に役立ってるんでしょうね!?やっぱり有機生命体って興味深いわ!」
無理やりっぽく浮かべられた笑顔と濁した言葉の先が非常に気になるが……あえて聞くのはよそう。幸せの形は人それぞれだ。
それにハルヒ自身のストレスは……聞くまでもないな。そのための古泉の機関だ。
「それもあるけど、古泉君が閉鎖空間と呼ぶ情報制御空間を発生させるほどのエネルギーは、現在、ほとんどあなたに向けられてるのよ。
依存しきっているといっても過言じゃないわね。何でこんな小容量の記憶装置で、あれだけの情報量を受け止められるのかしら?
ありえないわ。やっぱりスキャンするだけじゃなくて、頭部の有機体を直接調査してみるべきだと思わない?」
おい、ナイフを出すな。振るな。こっちに向けるな。よく聞いてりゃめちゃくちゃ恐いこと言ってるじゃねーか!
「まぁ冗談は横に置いといてっと。じゃ、さっそくで悪いんだけど、私に襲いかかって。ね、お願い♪」
置くな。だいたいお前は男の生理が分かってなさすぎだ。そんなに可愛くお願いされて襲い掛かるやつがどこにいる。
「ちぇーっ、そんなに私って魅力ない?犯るのっていや?わたしには思春期の男子が性行動を拒否する概念が理解できないんだけど。
だいたい私ってば良妻賢母人格をプログラムされてるのよ。だからばっちり床上手!
それに男性型インターフェイスが世界中から集めた娼婦のおねーさんの性技データとも同期を取ったから、
キョン君の想像もつかないような、すんっっっごいことだってできちゃうのに!まぁ私という個体は初めてだけどさ」
ブツブツと呟きながら足をブラブラさせる朝倉。お前、そのはっちゃけキャラだったらもっと人気出てたぞ?
「ふーんだっ。不特定多数の人気者なんて任務はもうこりごりだわ。私だって長門さんみたいに定点観測をしたかったんだから。
あなたは知らないでしょうけどね、長門さんの報告って、涼宮さんに関する事務連絡を除けば、あとはキョン君のものばかりなのよ。
まったく。情景をありありと思い浮かべられる身にもなってほしいもんだわ!」
いきなりプリプリ怒り出した朝倉は、唖然とする俺のほうをキッとひと睨みすると、教卓から飛び降りてツカツカと歩み寄ってきた。
「手!!」
「手?」
「そ。手を出してよ。ガブッてやっちゃうんだから!」
お前、なんだかハルヒに似てきたぞ。
「ひゅん、ひょうへいはわ」
ふん、光栄だわ、とでも言いたいようだが、噛みながらしゃべるんじゃありません。
んで、いったいどんなナノマシンを注入したんだ?どうせろくなもんじゃないんだろうけどさ。
「朝倉涼子謹製の急進的スペシャルブレンドよ。やっぱり長門さんのレシピじゃ甘すぎだわ。現場の独断で強硬に変革を進めちゃってもいいわよね?」
いたずらっ子の表情でニヤリと微笑む朝倉。だが、その目には揺ぎ無い決意がみなぎっていた。
徐々に心臓の鼓動が早まり、頭がボーっとしてくる。なんだこれは?何をしやがった?くそっ媚薬ってやつか?
「媚薬とは少し違うわね。簡単に言うとキョン君の情報体の理性にあたる部分にちょっとだけ眠ってもらうことにしたの」
おい、俺の情報体とやらは、お前の親玉すら消せるハルヒパワーを受け止めてんだろ!それが暴れ出したらまずいって!
「うん。それは長門さんにも言われたわ。でもね、私はあなたの全てを受け止めたいの。これが私なりの贖罪。2度も殺そうとしてごめんね」
まるで仮面が崩れ落ちるように優等生な笑顔が歪み、その下から母親とはぐれてべそを掻く子供のような不安げな表情が現れた。
くそっお前だましてたな。本当はずっと心の中で泣いてたんだろ。
「大丈夫。あなたは明日の朝、起きた瞬間にすべてを忘れるから。だから、私がつけちゃった傷を返して。
キョン君の抱えているものを全部私に吐き出していいよ」
朝倉が手を伸ばし、イスにへたり込んだ俺の頭を胸にフワリと抱きかかえる。
その暖かい感触と包み込むような安心感に促がされて、俺の理性はまどろむように徐々に眠っていった。
遠のく意識を何とか保つために必死で顔を上げると、赤ん坊を覗き込む母親のような優しい瞳が俺を見つめていた。
そのあまりの美しさに見蕩れていると、視野がだんだんと狭まっていき、古いテレビを消すように、俺の中で何かがプツリと切れた。
頭を包み込む物体に手を伸ばす。フワフワと柔らかく優しい感触。
「ふふっ。ほんとに男子ってバストが好きよね。体操服に着替えると、みんな視覚スキャンをこことお尻に集中させるんだもの」
当たり前だ。これEカップくらいあるだろ?真面目委員長の癖にこんなデカい乳を揺らしやがって。
気にならない野郎がいたら神経科と泌尿器科に連れて行け。たぶん即座に入院手続きをしてもらえるだろうよ。
「ひどいなー。そんなことって、ぁんっ」
その言葉を遮るように、俺は朝倉の乳房をぐにっと揉みこんだ。
制服と下着越しでもその存在感は隠しようがなく、むしろセーラー服の硬い質感が興奮を倍化させる。
夢中になってぐにぐにと力を入れるたびに、まろやかな乳房は変幻自在に形を変え、突き立てる指を制服ごと優しく包み込んだ。
だが、しわくちゃになる布とは対照的に、朝倉の母性の象徴はいつまでもピンと指を弾き返してきた。
たまらなくなった俺が、一刻も早く生乳を拝まんとセーラー服に手を掛けると、
ビリッという音ともに北高セーラーに特徴的な胸当ての部分が縦に引き裂かれた。
っておい、俺ってこんなに力があったか?
「あっんもう、乱暴なんだからぁ。でも、大丈夫よ。ここはあなたの夢だから、あなたが望むことは何でも起きるの。
一切遠慮しないで、思うが侭にどんどんやっちゃって。ふふっ、これがキョン君の願望か〜。一生懸命でちょっと可愛い!」
お姉さんの笑顔で朝倉が俺の頭をいい子いい子するように撫でる。いささかご都合主義過ぎる展開に疑念を覚えたが、
破れた制服から覗く純白のブラジャーを目にしたとたん、そんな些細なことはどうでも良くなった。
そのブラは、こいつの真面目な性格に合わせるように素っ気ないほどのシンプルなデザインで、
余裕たっぷりな態度とは裏腹に羞恥でピンクに染まった朝倉の柔肌を鮮烈に引き立てている。
調子に乗って布地をさらに大きく引き裂き、その全てを露出させると、華奢なうなじと儚げな鎖骨の下には、
朝倉の一生懸命すぎる性格の一部を象徴するような自己主張の激しい乳房が潜んでいた。
デカい。ある程度予想はしていたが、実物は妄想をはるかに上回る大きさだ。
まったく、真面目で清楚な委員長というキャラクターには、あるまじき暴挙じゃないか。
俺はなぜか酷く裏切られたような思いで、朝倉のブラに手を掛け、その大きさに合わせて3連になったフロントホックを外そうと試みた。
が、こいつがなかなか手ごわい。しかも外そうとするたびに、窮屈に押し込められた胸がゆっさゆっさと挑発的に揺れるもんで、気ばかり焦ってしかたがない。
「あ、ちょっとまって、私が外してあげるから」
助け舟を出そうとする朝倉の手を払いのけるように、俺はその布地を一気に引っ張った。
歪んで壊れる金具。俺のその粗暴な振る舞いを、朝倉は媚びの混じった笑顔でたしなめた。
「も〜大丈夫よ。私はいなくなったりしないから。焦らないで。ねっ、ゆっくりやろっ?」
朝倉の手が俺の髪をワシャワシャとかき回すたびに、豊かなおっぱいがブルンブルンと暴れまわる。
その迫力に呆気にとられて凝視する俺の粘りつくような視線に、さすがの朝倉も真っ赤になって顔を伏せた。
朝比奈さんほどではないものの、十分すぎる質量を持った乳房が興奮で荒くなった呼吸に合わせてゆったりと上下する。
朝倉の乳は、その真面目で清楚な容姿とは裏腹に、清らかさよりもおおらかさを感じさせる釣鐘型で、
美麗なまろみを帯びながら、半強制的に男の欲望を煽る魔性の魅力を秘めていた。
その生々しい乳に手を伸ばし、パン生地でもこねるようにゆっくりと揉みしだくと、
ずっしりとした量感を持つその物体は、牡丹雪のような儚げな感触で十指をフワリと暖かく溶かしんでいった。
だが同時に、初めて男を受け入れる滑らかできめ細かい柔肌が、果敢にも指の侵入を押し返し、瑞々しい張りを保った乳肉が指の間からぷにぷにとはみ出した。
そして、自在に形を変える朝倉の乳房は、手を離すたびに完璧なるアールカーブを保つ形状に戻り、誘うようにプルンと跳ねて、俺の理性をドロドロに溶かしていく。
「はっんぁふぅぁっんっ、ふふ。好きなだけ揉んでねキョンく、んんっ」
教室で優等生な委員長の乳房に手をかけるというシチュエーションがいやがうえにも興奮を掻き立て、
俺は我を忘れて、その豊饒なる山塊を欲望の赴くままに揉み、つまみ、ねじり、そして、こねくり回した。
すると、最初は一生懸命な俺の様子を笑顔で見守っていた朝倉も、だんだんとその吐息に余裕がなくなり、
その興奮に比例するように、淡い桜色で少し大きめな乳輪の中心が自己主張するようにピンと立ってきた。
その控えめながらも妖しい美しさに引き込まれるように、俺は右手で揉み心地を堪能しながら、
もう一方の乳首に吸い付き、味覚や嗅覚も総動員して朝倉乳を味わってみることにした。
「ふぅぁっんっ」
初めて男から与えられる刺激によって、さすがの朝倉も処女雪の肌を真っ赤に粟立たせ、
同時に女の子にしか出せないフワッとした優しい香りが立ち昇る。
その清冽な香気は俺の全身に心地よい弛緩を誘い、舌をくすぐる仄かな甘みがジンジンと脳を麻痺させた。
そして、視界いっぱいに広がる象牙のような白い肌と、耳をくすぐるトクントクンという心臓のリズムが
俺の猛り狂う興奮を徐々に鎮めていき、朝倉の持つ陽だまりのような温かさが体の隅々にまで広がっていった。
その心地よさにつられて、まるで赤ん坊のように忘我の境地で朝倉の乳房にむしゃぶりついていると、
覚えているはずのない暖かな記憶呼び起こされ、不思議な安心感が心に沁み渡っていった。
心配という単語すら知らなかった原初の記憶。
訳のわからない感動が心の奥底から突き上がり、気がつくと、俺は数年ぶりの涙を流していた。
情けねえ。
慌てて口を離して涙をぬぐおうとすると、朝倉が俺の頭を胸にぎゅっと抱きかかえて、その行動を制止してきた。
優しい手が励ますように背中をさすり、柔らかい頬が俺の頭をゆっくりと頬ずりする。
ただ暖かく、心地いい空間。
呼吸をするたびに肺を満たす仄かに甘い香り。
心の棘が少しずつ溶けていく感覚。
絶対的な安心感に満たされた俺は、いつの間にか朝倉の胸の中でトロトロとまどろんでいた。
ふと目を覚ますと、朝倉の大きく優しい瞳が目の前にあった。
「うふふ。キョンくん赤ちゃんみたいでとっても可愛い!おっぱいおいちかったでしゅかー?」
俺の気恥ずかしさを吹き飛ばすように明るく話しかけてきた朝倉が、母性本能全開のお母さんモードで頭を撫でてくる……
ぐおぉ!死にてえ!恥ずかしさのあまりに頭を抱えて悶えていると、朝倉はその姿すらも愛おしいと言わんばかりに、また俺の頭をギュッとだき抱えてくれた。
とたんに干したての布団のような優しい感触に包まれる。そのなんとも言えないフワッとした暖かさに導かれて、俺は不覚にもまたコトンと眠りに落ちそうになってしまった。
はて?俺ってマザコンの気でもあったのか?
慌ててブルブルと頭を振り、その疑惑を払拭するための反撃として、もう一回朝倉の桜色の乳首に吸い付いてみた。
「はーい、好きなだけ吸っていいでちゅよー」
母性本能に溢れる笑顔で、うっとりと顔を赤らめながら、おっぱいを差し出す朝倉。
だが、赤ん坊にこんな真似はできるまい。ちょっとした悪戯のつもりで、俺は朝倉の硬く立った乳首に軽く歯を当て、コリコリと甘噛みで責めてみた。
「きゃっ、んぁんっ。い、痛いよキョンくん、ちょっと、だ、ダメだってば、ぁん!」
いきなり余裕をなくして狼狽する朝倉。やべえ、やっぱりやりすぎだったか?
だが、一旦口を離した俺を咎めるような視線で睨んでくる朝倉の瞳には、非難よりも媚びと好奇心が溢れていた。
あれ?痛いんじゃなかったのか?俺がまじまじと顔を覗き込むと、朝倉は赤い顔をさらに真っ赤にして、両手で支えた右乳を差し出してきた。
「ごめんね。ちょっと驚いちゃっただけよ。はいっ好きなだけ吸って」
その目はどう見てもあらぬ期待に満ちてに輝いている。もしかしてこいつは、真面目で清楚な委員長にあるまじき属性を持っているのか?
ちょっと意地悪な気分になった俺が、ぴんと尖った乳首をつまみ、軽くひねってみると、朝倉はビクリと震えた。
「だ、ダメだよキョン君。女の子のおっぱいは粘膜並みに敏感なものなの。そ、そんな風にするようには、できてないのよ」
優等生の顔で諭しながらも、トロンとした瞳で絞るようにした胸をさらに突き出す朝倉。はいはい、よーするにもっと強くしてほしいんだな。
焦らすようにクリクリと乳首を刺激すると、さっきまでの余裕に満ちた態度から一転、朝倉は弱々しい困惑した笑顔を浮かべて荒い息をつきだした。
その庇護欲を大いにそそる表情に、暖かな愛しさがこみ上げてくる。
だが同時に、この清楚で真面目な委員長を滅茶苦茶に乱れさせたいというオスとしての好奇心が、活火山のように腹の底から湧きあがってきた。
一瞬の判定で、愛しさよりも好奇心に負けた俺は、手始めに朝倉の乳首を親指と人差し指でつまみ、ぐっと力を込めて潰してみた。
「かはぁぁっん」
ビクリと全身を硬直させ、白い喉を掻きむしるようにして悶える朝倉。しかし、男からは想像もつかない痛みを与えられているはずの委員長は、
それを制止しようとはせず、むしろ熱に浮かされたように潤んだ瞳が更なる刺激を要求してきた。
そういうことなら、お望み通りにやらせてもらいましょう。
遠慮の必要がないことを確信した俺は、朝倉の左乳に吸い付き、唇で乳輪を支えながら、傷つけない程度に歯を立てて引っ張ってみた。
胸板から引き離されて無残な三角錐となった乳房から、被虐のフェロモンを多量に含んだ脂汗が噴出す。
雄の劣情を一瞬でレッドゾーンに叩き込む若雌特有の甘酸っぱい香り。
その吸引力に引き寄せられて、俺は空いている右の乳首をグリグリとひねり、
さらに乳房を引きちぎるように鷲づかみしながら、左乳首に容赦のない甘噛み責めを繰り返した。
「んぁっ、かはぁnあぁぁっ、あっあんン〜」
切羽詰った雌の甘い悲鳴が獣欲を刺激し、破壊衝動に近い加虐心がマグマのように噴き上がる。
新雪の平原を踏み荒らすような高揚感と、真芯でボールを捕らえたホームランのような爽快感。
雌を嬲り尽くしたいという雄としての根源的な欲求が全身を駆け抜け、背骨に赤熱する鉄棒を突っ込まれたような興奮に突き動かされた俺は、
本能の赴くままに、飽きることなく朝倉の優等生乳を陵辱し続けた。
はじめこそ一責めごとに悲鳴に近いあえぎ声を上げながらビクンビクンと反応していた朝倉であったが、
次第に小さく「んっ」と何かに耐えるようなにくぐもった声を上げるようになってきた。
それは明らかに痛みに耐えるためではなく、それに付随する強烈な感覚を必死に抑えようとしている声だった。
羞恥と狼狽を隠す余裕もなく、下唇を噛みながら、キュッと健康的な眉を寄せて何かに耐える朝倉。
その必死で健気な表情に、飛び立つ練習をする小鳥を応援したくなるような暖かい感情がこみ上げてきた。
「朝倉、俺に我慢するなって言ったんだから、お前も我慢しちゃだめだ」
「でも……そんなのダメよ。今日はキョンくんに気持ちよくなってもらう日なのよ。私は目的がすべてなんだから、それじゃあべこべに……んっ」
一途で意地っ張りで真面目すぎる委員長に言うことを聞かせるのはこれが一番だ。
朝倉の真っ赤になった頬を両手で挟み、任務と感情の間でワナワナと震えるその唇を塞ぐと、
驚きで目を丸くしていた朝倉は、やがて決心したようにゆっくりと瞳を閉じた。
ついばむようなキスから、徐々に舌を滑り込ませ、全てを啜るような濃厚なキスに切り替える。
同時に、再び乳房に手を伸ばし、あらん限りの力で揉み潰すと、キュッと眉根を寄せた朝倉の目尻から、何かを吹っ切るような涙が溢れ出した。
俺はその金剛石の雫をキスで拾いながら、両乳からピンとせり出した乳首同士をグリグリとこすり合わせてみた。
「ひいぃぃっらめぇ〜!ノイズが、情報がフローしちゃうぅぅ〜〜!!」
とたんにガクガクと震えだす朝倉。これが弱点か。さらに指先に力を込めながら、硬く尖った乳首を回転させるようにこすり合わせ続けると、
すがりつく様に強く俺に抱きついていた朝倉は、すぐに俺の名前を叫びながら、硬直するようにビクンと震え、やがてくたりと全身の力を抜いた。
「あれ?え!?ちょっと!?ど、どうしよう!?」
数分の絶頂による気絶から帰ってきた朝倉は、エヘヘと照れ笑いを浮かべて、思い出したようにselectやらenterやらと高速言語でぶつぶつと呟いていたと思ったら、
急に財布を落としてしまった小学生のように、今にも泣きだしそうな顔でオロオロと慌てだした。
「どうしたんだ?よう分からんが、とりあえず何が起きたのか教えてくれ」
「あ、あのね、その、切れちゃったみたいなの。私たちって常に思念体と微弱なコンタクトをとってるんだけど、いま、それが通じてないの。
長門さんが途中で介入してこないように、ここは他のインターフェイスが全精力を注いで作った情報操作空間だから、わたし単体の情報処理能力じゃとても……。
どうしよう!?もしかしたら私たちここに、閉じ込められちゃったかもしれないわ!?」
大人びた優等生の雰囲気が完全に消え、迷子の子供のように不安げに目に涙を溜める朝倉。どうやら緊急事態らしいが、その可愛さに思わず笑みがこぼれる。
まあこういう時にオロオロしたところでなにも始まらんってことは、この1年で十分すぎるほど学習したからな。とりあえず、朝倉にも落ち着いてもらおう。
「でもここは基本的に俺の夢の中なんだろ?じゃあ時間になれば、妹がいやでも起こしてくれるから心配無用だ。
どっから覚えてきたんだか知らんが、あのアホウはこのところプロレス技を駆使してきやがるからな。
それに、長門だって去年のクリスマス以来、親玉から距離を置いても、けっこう上手くやってるみたいじゃないか。
まぁ時々ポカをやらかして喜緑さんに怒られてるみたいだけどな。どうにかなるさ」
おずおずとした上目遣いで俺を見上げる朝倉の可愛さのあまり、つい妹にするように頭をワシャワシャと撫でていると、
くすぐったそうにしていた朝倉は、長門の名前を耳にしたとたん、ムムッと眉を吊り上げて目を輝かせ、一転して顔を蒼ざめさせた。うむ、喜緑さんの名前は禁則のようだな。
「そ、そうよね。長門さんに出来て、私にできないってことはないわよね。いつまでもバックアップじゃないってとこを見せてあげるわ!」
しばらく逡巡していた朝倉は、決然とした表情でニッコリと俺に微笑みかけてきた。
それはいつかの朝の坂道で挨拶をしてきた時と同じ委員長の笑顔であったが、同時に、一瞬呆気に取られるほど晴れハレの笑顔でもあった。
これが自然体の朝倉か。去年の春や冬の記憶が強烈すぎて本来のこいつを見失っていたが、
そう言えばこいつは、入学初日からクラスの中心になっちまうような明るさを持ってたんだっけな。
その朝焼けの空のような笑顔に見蕩れていたら、次の瞬間、また何かを思い出したらしく、朝倉は怒られてシュンとしたシェパードのような表情で俺を見上げてきた。
「それと、とても言いにくいことなんだけど……私、変なバグを抱えてるみたいなの」
これ以上は無いくらいにドヨーンとした声音で落ち込む朝倉。まったく笑ったり凹んだり忙しいやつだ。
情報をメインに進化を遂げてきたこいつらにとって、バグってのは致命的な意味を持つんだろうが……。
落ち着いてそのバグとやらを言ってみな。たぶん有機生命体には当たり前の現象だから。
「うん、あのね、わたし……最初はキョン君にバストをぎゅってされると、嬉しいけどとても痛かったの。
でも、だんだん『嬉しい』だけじゃなくて、『気持ちいい』が『痛い』を洗い流すようになってきちゃって……。
気がついたら、いつのまにか『痛い』がなくなって、直接『気持ちいい』に変換されるようになっちゃったの。
これって私の個体特性!?変だよねこんなの?私がバグ持ちってことなんでしょ?」
俺に愛想を尽かされるとでも思ったのか、朝倉は怯えたリスのように震えだした。
こいつらがどれだけ人間を研究してるのか知らないが、こういうことは耳学問じゃ理解できないからな。たぶんエラーとして自動的に消去されちまう類の情報なんだろう。
分からないなりにも、それを感知できたってことは、朝倉は今、急速に人間らしくなってきてるってことだ。だとしたら、喜ぶべきことだぜ、それは。
「安心しろ。そいつは多分マゾヒズムってやつだ。一般的かどうかは分からんが、痛みが快感になっちまうってのは、人間には往々にしてあることみたいだぞ」
「マゾヒズム?これがマゾなの!?」
いきなり昼夜が逆転したように、パッと明るい表情になる朝倉。おいおい、そんなに喜ぶことか?
「だって、私がマゾ女ならキョン君をご主人様って呼ばなきゃいけないんでしょ?
中田氏奴隷に堕とされた私は、どんなに誠心誠意ご奉仕しても、5箱200円のティッシュ代を節約するためだけの生オナホとして扱われるよね?
心身のすべての捧げてお仕えするマゾ穴と、それにチンポミルクでご褒美をあげるご主人様というのが、有機生命体が追い求める理想の男女関係なんでしょ!?
喜緑さんがループの夏休みを目一杯使って解析した結果なら間違いないはずだわ!」
目をキラキラに輝かせて、興奮した口調で叫ぶ朝倉。
……えーとさ、お前が素直な良い子だってことは、よーーく分かった。だがな、ちょっとだけ人を疑うってことも覚えようぜ?
しかし、俺の真摯なツッコミはまったく耳に届いていないようで、初めて魚を釣った小学生並みに
はしゃぎまわる朝倉は、呆れ顔の俺を気にもせず、膝立ちですり寄ってきた。
「ご奉仕の基本っていったら、やっぱりフェラよね?」
イスに浅く腰掛ける俺の股の間までやってきて、はにかみ笑いを浮かべながら、おずおずと許可を求めるように上目遣いで見上げてくる朝倉。
何というかもう突っ込みを入れる気にもならん。好きにしてくれ。
俺がゲンナリと肯くと、美少女委員長はクリスマスプレゼントの封を開ける子供のように目を輝かせながら、
ガチガチにテントを張ったズボンのベルトをカチャカチャと外した。
そして、俺自身も信じられないくらいに硬化した愚息をトランクスから引きずり出すと、
鈴口にご挨拶のフレンチキスを施し、ニコニコ顔のまま、ぱくりとむしゃぶりついてきた。
キュッと締め上げるような柔らかい唇と、蕩けるように暖かい舌がムスコにネットリと絡みつく。
他のインターフェイスが世界中の娼婦から集めたエロ技データベースと同期を取ったというだけあって、
朝倉の唇は絶妙のテクでジュポジュポといやらしい音を立てながら竿をしごき始めた。
夕暮れに染まる教室で、いつもは退屈な授業を受けるだけのイスに腰掛けながら、床にひざまずいた真面目な委員長にフェラをさせる。
健全な思春期男子なら一度は妄想するであろうそのシチュエーションは、楽しそうにストロークする頭に合わせて、
理想的な釣鐘型の乳房がたゆんたゆんと揺れることで、息を呑むようないやらしさを醸し出していた。
まるで楽器を奏でるようにフェラをする朝倉は、ハラリと頬に掛かる長髪を時々耳にかき上げながら、真剣な表情で愚息を喉の奥まで吸い込み、
媚びを多分に含んだ上目使いで俺を見つめつつ、唇を窄めてゆったりとした擬似ピストンを繰り返す。
笑窪のようにキュッと窄められたその頬には、愚息が突き込まれるたびに亀頭の形がくっきりと浮かび上がり、
数本の黒髪が上気した頬に唾液でベッタリとこびりつくことで、異様な色気をかもし出している。
俺の食い入るような視線に気付くと、いいことを思いついたというようにニコッと微笑んだ朝倉は、
器用にもシャフトに舌を這わせながら、ポケットから青いゴムを取り出し、豊かな黒髪を一本にくくった。
そこに現れたのは、夢にまで見たポニーテールフェラだった。
グンと更に反りあがる愚息の反応を見て、再びエンジン全開で嬉しげにチュポチュポと咥える朝倉。
その頭がリズミカルに前後するたびに、反則的なまでに似合っているポニーがピョコピョコと左右に跳ねる。
そして、テールの下からは、興奮で桃色に染まった細いうなじがのぞき、まとめきれなかった後れ毛が儚げに揺れている。
さらには、ぐぼっと勢いよく喉奥まで息子を咥え込むたびに、鎖骨あたりまで跳ね上る毛先が墨痕鮮やかに朝倉の肌の白さを彩り、
ゆるゆると味わうようにあごが引かれるたびに、フワリと散った黒髪と水色の襟のコントラストが目に眩しく映る。
キュッと一本にまとめられた黒髪ロングの清楚さと、ショートカットだけに許されるはずのうなじの健康美。
それらの初々しい美しさが、淫蕩で媚びを多量に含んだ火照るような視線によって逆説的に強調され、
夕暮れに染まる教室で真面目委員長の顔にグロテスクな愚息を突き入れているという現実を生々しく浮かび上がらせた。
清楚さと健康美と淫靡さがまったく矛盾すること無く並立し、お互いに引き立てあう。
これはポニーテールにのみ許される女性美の極致であり、同時に、これこそがまさしくポニーテール属性持ちにとっての桃源郷だった。
その余りの美しさに、思わずその穢れなき房を両手で掴むと、俺は股間に向けてぐっと引き寄せた。
必然的に喉の最深部までシャフトを食い込ませることとなった朝倉は、一瞬驚いた表情で俺を見上げ、
すぐにトロンと潤んだ瞳をゆっくりと閉じた。
ポニーテールを鷲づかみにして、清楚で一途な委員長の顔を犯す。
いままで妄想すらしえなかったシチュエーションに、突沸するような興奮に煽られた俺は、
ポニーテールを掴んで頭を固定すると、中腰になって朝倉の小さな口に容赦ないピストン喰らわせていた。
さすがのインターフェイスの目尻からも大粒の涙がこぼれ、ぐぼぐぼという苦しげな喉音を立てる。
だが、俺を見守るように上げられた朝倉の視線には、全てを包み込むような優しい光が溢れていた。
「朝倉っ!!!」
その無垢で穏やかな瞳に釣り込まれた俺が愚息を喉奥から引き抜きぬいた瞬間、
脳の一番深い部分から搾り出された欲望が、精液となって生真面目な委員長の顔に降り注がれた。
顔面シャワーという言葉通り、まるでシャワーを注ぎかけるような射精。
それは驚いて目を瞑った委員長の理性的な顔だけでは飽き足らず、まるでトリートメントでもするかのように、
朝倉の豊かな黒髪にべっとりとこびり付き、その一本一本を包み込むように、ヌルヌルと絡み付いていった。
口内に絡まる半固形の白濁を朝倉が息苦しそうにコクリと飲み干すと、その反動できっちりした髪の分け目に溜まっていた
スペルマが少しずつトロリと流れ出し、ブクブクとした泡を形作りながら前髪の先から糸を引いた。
そして、そのこってりした白濁液はうっとりと目を閉じる朝倉の健康的な眉を汚しながらゆっくりと流れ、
すっと通った鼻筋で分かれながら、桃色に上気した頬を伝って、卵形に整ったあご先からポトポトと垂れ、豊かな胸の谷間に汚らわしい栗の花を咲かせた。
その壮絶な光景に息をするのも忘れて魅入っていると、朝倉は吸い込まれそうな微笑を浮かべながら、顔中に広がった白濁液を指で集めては、一本一本丁寧に舐め清めていった。
そして、深い胸の谷間に貯まった子種汁を指で乳首なすりつけ、挑発的な視線を俺に送りながら、セルフパイ舐めで美味しそうに処理していった。
さらに、髪全体がむせ返るような栗の汁でヌルヌルになっていることに気付くと、ちょっと困ったような表情を浮かべて、
ポニーテールを梳くようにして精液をかき集め、その手のひらに溜めた半固形のミルクを
三々九度の杯を干すように、ずずっといやらしい音を立てながら啜ってみせた。
そして、白い喉をコクリと鳴らすたびにビクビクと体を痙攣させていた朝倉は、最後の一滴まで飲み干すと、
ポワンとした夢見心地の瞳のまま、ぱたりと倒れた。っておい!大丈夫か、朝倉!?
「キョンくんの半数体型有機情報子って凄すぎね。匂いだけでもオーバーフローを起こしそうなのに、
粘膜から直接摂取した瞬間に暖かいエラーが対数的に溢れてきてフリーズしちゃったの。
私ってばエラーでハングアップしたのに、なんでこんなに嬉しいんだろう?もしかして、これが感情って言うやつなのかしら!?」
精飲で絶頂に達した朝倉は、幸せそうな気絶から帰ってくると、意味不明な単語を並べ立てながら、キラキラの笑顔を浮かべ……
「それにしても、ずるいわ長門さんったら。いくらキョンくんがティッシュ捨てたものとはいえ、こんなにすごい情報素子を独り占めするなんて。
現在進行形の分は譲るけど、待機モードだった頃と同期して、キョンくんが中学時代に1日3回休日7回を日課としていた分は、私が貰ってもいいわよね?」
……トンでも発言をぶちまけやがった。えーと……一部は聞かなかったことにするから好きにしてくれ。
「うふふ、ありがとう。それにしてもポニーテールがヌルヌルだわ。ここでカピカピになってる分だけでもすごい情報量だけど……
えーと、あなたの頭部情報処理システムのエラーは、まだまだたくさん残ってるみたいね。
ほんとは何回かに分けて除去する予定だったんだけど、思念体とはリンクが切れちゃってるから、
今のところこの空間から脱出する術はないし……仕方がないから今日一日で全部処分しちゃいましょう!」
嬉しそうな悪戯っ子の笑顔で、さも当たり前のように宣言する朝倉。
俺としては教室で美少女委員長にイラマチオでぶっカケただけで、十分すぎるくらいにストレス解消になったんだが、そのエラーとやらは、あとどれくらい残ってるんだ?
「うーんと、そうね。今の情報量から概算すると……どんなに少なく見積もっても3桁分はあるわね。
どうする?このままべちゃべちゃカピカピになるまでポニーテールで髪コキしようか?」
……さ、3桁ですと!?あまりにも論外な数に俺が呆然としていると、それを質問に対する否定と受け取ったのか、朝倉は勝手に話を進め出した。
「あ、やっぱり他のシチュエーションを試したい?そうね、じゃあ、こんなのはどうかしら?」
その声と共に、周囲の景色がサラサラと崩れたと思ったら、気がつくと俺たちは校庭のど真ん中に立っていた。
どこからともなく聞こえてくる一番鳥の鳴き声と、まだ少し暗い西の空。これっていったい……?
「あ〜気持ちがいいわ。朝の校庭は!」
うーんと大きく伸びをする朝倉。っておい!!ここでそのネタもってくるか?しかもなんでブルマに着替えてんだ?
「いいじゃない。どうせ青姦するなら、こういうところで思いっきり犯らなきゃ」
いつかの登校中に声をかけてきた時とのように、明るくハキハキと答える朝倉。
ちゃっかりスペルマも拭ったすがすがしいポニーの笑顔が朝日に照らされた校舎に映える。
シチュエーション的には、まだ誰も来ていない朝の校庭でおっぱじめようってことか?
いやいやちょっとまて、突っ込みどこはそこじゃないな。だいたい俺は青姦がしたいなんて一言も言ってないぞ?
「まあまあ細かいことは気にしないで!予感を信じて、さあ走ってみない?」
をい。お前明らかに自分の趣味でやってるだろ?
「ほーらっ、グダグダ言わない!この太ももを欲望の赴くままにめちゃくちゃにできるのよ?」
そう言いながら朝倉は、ピシャリと自分の太ももを叩きつつ、校庭の真ん中に四つん這いになってみせた。
雌豹のポーズで下向きの弓なりになった腰の滑らかなアールカーブが、きゅんと突き上げられた安産型の臀部へと続き、
綺麗な弧を描きながら女性特有の丸みによって究極の曲線美を織り成している。
そして、その頂点に位置するたおやかな桃尻は、あとほんの少しでも大きかったら下品になってしまうギリギリのところで踏みとどまり、今にも蕩けそうな爛熟の危うさを漂わせていた。
さらに、半強制的に雄の劣情を誘う逆ハートの肉塊から立ち昇る小悪魔的な魅力は、裾をきちんとブルマに入れることで細さが強調された腰へと収束し、
キュッとくびれた腰から豊かな臀部にかけてのラインが、青い果実の清純さと、濃密で艶やかな女性美という背反する二律の共存を許していた。
その完成された女性美の象徴である艶尻から伸びる太ももに、少しきつめのブルマが食い込むことによって尻と腿の境界線が強調され、
むっちりと浮いた瑞々しい腿肉が、若雌特有の甘美なしなやかさによって、雄の粘りつくような視線を誘引している。
そして、その自然で心地よい太さの腿のまろやかさは、紺色のブルマと相まって初々しくも絶対的な存在感を放ち、
一方で、うっすらと火照った処女雪の肌が、ブルマに締め付けられて軽く鬱血することで、残虐なほどの淫靡さを醸し出している。
むせ返るような濃密な女性美と、台風一過の青空のような健康美。
その究極のアンバランスさが雄の欲情を強烈にそそり、滾るような興奮にそそのかされた俺は、朝倉の後ろに回り込んで真面目委員長のブルマ尻に手を伸ばした。
その重力に逆らうようにプルンと張った逆ハート型の艶尻は、紺色の布地に拘束されながらも、羞恥による興奮で荒くなった呼吸に合わせて、プルプルと震えている。
バクバクと脈打つ心臓に急かされるように、俺は朝倉尻に指をしっかりとめり込ませながら、円を描くようにゆっくりと揉みこんでみた。
委員長の桃尻は期待通りの蕩けるような感触で、しっとりと手のひらに吸い付きながらも、同時にずっしりとして肉厚な感触がブルマと共に指を弾き返してくる。
そして、なめらかできめ細かい太ももは、最上級の絹のように指をすべらせ、ひんやりとした爽快感を伴って、俺の理性を絡めとっていった。
そのあまりにもすばらしい感触に、時を忘れて両手でブルマ尻のしっとりした量感を楽しみ、内部に掌を滑り込ませてなめらかで柔らかい感触を堪能していると、
興奮に輝きだした艶尻の中心部がブルマを湿らせ、同時に、雄を狂わせる芳醇な香りを放ちだした。
清楚で真面目な委員長の癖に、男に尻をまさぐられて股ぐらを濡らしやがって!!
訳のわからない理不尽な怒りを覚えた俺は、むっちりとした柔肌を包み込むブルマを無理やり引き摺り下ろした。
紺色をした最後の拘束を解かれた朝倉尻は、剥きたてのゆで卵のようなプリンとした張りと、
糖蜜の滴る爛熟した白桃のような危うさによって、改めてその圧倒的な存在感を誇示し、
校庭の真ん中で四つん這いになりながら、朝日に映えて輝いている。
さらに、紺ブルマと木綿のシンプルな下着は、目を見張るような白い肌との鮮やかなコントラストを織り成しながらも、
その健康的な太ももに途中で絡まることで、拘束具のように股をぴっちりと閉じさせた。
窮屈な体勢でツンと突き上げられた朝倉の桃尻は、健康的な若雌の汗によってしっとりと輝き、
量感溢れる太ももを伝う愛液が、むせ返るようなメスの香りを放ちながら雄の滾りを誘淫している。
その脳を痺れさせるような淫靡さに我を失った俺は、この完璧なる雌の塊に最後の華を添えるべく、全力で平手を打ち下ろしていた。
「きゃん!」
ぱしーーんという高い音と共に、朝倉尻の処女雪の肌に紅いモミジが浮かぶ。
掌に伝わる痺れと、突き抜けるような爽快感。
腹の底から湧き上がる愛しさと、相反するようなドロドロとした加虐心。
大太鼓のそばに撥が置いてあったらとりあえず叩いてみたくなるように、
俺の脳髄に潜む悪魔は、朝倉に与える恥辱と苦痛を一切省みず、一心不乱に艶尻にスパンキングを喰らわせていた。
どれくらいの数を叩き下ろしたのだろうか。
最初は一叩きごとに尻を打ち据えられる屈辱に震え、苦痛の呻きを上げていた朝倉であったが、
痛覚を快感に置き換えてしまう委員長の声音には、すぐに媚びが混じり始め、尻たぶが真っ赤に染まる頃には、
明らかに淫猥な嬌声を上げて、全身から淫蜜の匂いを発しながら自ら誘うように尻を振っていた。
このマゾ雌め!自分が叩いていることを棚に上げて、その痴態に酔いしれる美獣の淫らさに更なる興奮を滾らせた俺は、
真っ赤に火照った尻たぶを掴んで、ぱっくりと割るように無理やり開かせると、
糸を引いた粘液がしたたる程にぐずぐずに濡れぼそった割れ目に向かって、猛り狂う愚息を突き入れた。
瞬間、ぐちぐちと軟らかいレバーを押しつぶすような感触が息子を締め付け、亀頭の先から洪水の河川のように猛り狂う快感の奔流が伝わってくる。
その光景を脳裏に焼けつけようと、接合部分を凝視すると、朝倉の秘部からは一筋の赤い糸が滴っていた。
朝倉!?そういえば、こいつも初めてだったのに!俺ってやつはなんて残酷なことを!
自らの犯した罪の大きさに蒼ざめて凝固していると、ポニーテールを振り乱して上半身ごと振り返った朝倉は、
目尻に大粒の涙をためながらも、全てを包み込むような優しい笑顔が浮かべていた。
「朝倉……俺」
朝倉の柔らかい笑顔がコクンと縦にふられる。その圧倒的な暖かさに励まされて、俺は一気に腰を進めていた。
ぐちぐちに愚息を包み込む抵抗感が消え、朝倉の笑顔が一瞬何かに耐えるように歪む。
だが、けぶるように細められた目尻からこぼれた涙が校庭の土に吸い込まれるよりも早く、朝倉の顔には再び春風のような優しい笑顔が浮かんでいた。
そのあまりの神々しさに粟立つような興奮を覚えた俺は、朝倉の最深部に入った瞬間、呆けたように全てをぶちまけていた。
まるで壊れた蛇口のように噴き出す白い濁流。
それは脳から快感という字を根こそぎ掻き出す作業に等しく、脳内を爆ぜる歓喜の渦が俺の自我そのものを真っ白に燃やし尽くした。
だが、オスの存在意義そのものである膣内発射という行為は、狂わしいほどの征服感と幸福感を伴って全身の細胞を震わせ、
更に雌を嬲り尽くしたいという本能的な飢餓感となって、第二、第三の射精を誘発した。
その放精のタイミングに合わせてきゅんきゅんと締まる雌穴は、襞の一枚一枚をねっとりと絡みつかせて雄を優しく包み込み、
舌先に似た突起に覆われた膣壁が、さざ波のような蠕動を繰り返すことで侵入者を更に奥へといざなった。
そのすべてを絞りつくすような甘い収縮に促がされて、俺は委員長の胎内に一切遠慮することなくドプドプとスペルマを注ぎ込み、
放出された精鋭たちが、わずかな受精の可能性を求めて膣内を駆け回ることで、朝倉の最も深い部分を俺色に染め上げていった。
その長い長い射精の瞬間が過ぎると、息を止めて噴射の余韻を味わっていた朝倉は、
菩薩のように穏やかな笑顔を浮かべながら、ピーンと背筋を伸ばし、やがてクタリと崩れるように全身の力を抜いた。
朝焼けの校庭に大の字になって寝転ぶ。横には幸せそうな笑顔を浮かべて微睡む美少女。
朝を彩る小鳥の囀り。徐々に明るくなっていく高い空。叫び出したくなるほどの贅沢な瞬間。
この空気を少しでも多く体内に取り込むべく、目一杯に深呼吸したところで、隣で気を失っていた朝倉がぴったりとすがりついてきた。
「キョン君、わたしね、今とても暖かい情報の海を漂っているの。この感情はなんて表現すべきなのかな?
安心感と、歓喜と、誇らしさから構成されていることは分かるのに、それぞれを分離できないし、分離したくないの。
あれ?やだな。わたし、なんで泣いてるんだろ?でも変だな。ノイズがこんなに嬉しいなんて」
クスクスと笑いながらも、優しい瞳から大粒の涙を零していた朝倉は、俺の胸にしなだれかかると、やがて遊びつかれた子供のように穏やかな寝息をたて始めた。
ぴとっと胸に押し付けられた軟らかい頬から暖かい体温が伝わり、長い睫毛が風に揺れている。
一切の警戒を排した無垢な寝顔。その頭を撫でながら、安らかな顔を見守っていた俺も、いつしかつられるように微睡んでいった。
顔にかかるサラサラの感触と、唇をくすぐるふんわりとした柔らかさで目を覚ますと、目の前に悪戯に成功した子供のような瞳が笑っていた。
えーと、ここはグラウンド……じゃなくて、ベッドの上だな。
「おはようございます、あ・な・た」
あなた?俺が寝ぼけ眼で周囲を見回すと、どうやらここは宇宙人の寮になっている例のマンションのようだ。
「キョン君のエラーは、まだまだたくさん残ってるから、いろんなシチュエーションでバンバン抜かなきゃいけないでしょ?
だから、回数を稼ぐためにも、今度は新婚ほやほやのラブラブカップルっていうパターンはどうかしら?
もちろん喜緑さんが長門さんに対抗して掻き集めたマンガライブラリーで研究してるから、予習はばっちりよ。
日本の妻たるものは、おはようのチュウで旦那様を起こしたら、まずお口で朝勃ちを処理するのよね?
それで、そのまま一緒にトイレへ行って、アナルに半勃ちのものぶち込んでもらって温泉浣腸でしょ。
朝御飯は海苔と卵と焼き魚で、美味しく作れたら、ご主人様はテーブルの下でしゃぶる妻に蛋白質のご褒美をあげるのよね。
もちろん出勤前には、玄関に立ったご主人様の後ろにひざまずいてアナルリップで手コキも忘れないわ。
手の平いっぱいに溜まったスペルマを妻が三々九度で飲み干すのが日本伝統の行ってらっしゃいの儀式なのよね?
それに、旦那様がお仕事から戻ったら、妻は必ず裸エプロンでお出迎えして、そのまま玄関でお帰りなさいませの立ちバック膣内発射をいただくのよね。
そのあと、お風呂で生乳スポンジ洗いと潜望鏡とローションプレイで奉仕して、頑張れた分だけ三穴に白い濃厚なご褒美をもらえるんでしょ?
それに口移しでお夕飯を食べた後は、リビングでテレビでも見ながら寛ぎタイムを迎えるんだけど、
妻はご主人様がお気に入りのタレントさんを見ながら、妄想擬似レイプできるように、いつでも雌穴を濡らして待機してなきゃいけないのよね?
そうやって、その日のご奉仕をきちんと頑張れたら、夜は寝室でご褒美のラブラブエッチ。
もっと頑張らなきゃいけなかった日は、外に連れ出されて青姦レイプ調教を受けるんだったわよね。どう?予習は完璧でしょ!?」
エッヘンと胸を張る朝倉。確かにここまで間違っているとある意味完璧だ。てか、喜緑さん、あなたの部屋には、いったいどんなマンガが揃ってるんですか……。
「あ、もちろん休日は、ノースリーブでタートルネックな薄手のサマーセーターで露出デートに連れてってもらえると嬉しいかな。
当然のごとくノーパンノーブラだし、なるべくオッパイがたゆんたゆんに揺れる歩き方をさせられて、浮きBには服の上から乳首クリップをされちゃうのよね?
それに、タートルネックの下にはペット用の安っぽい首輪が巻いてあって、ご主人様は時々腰に手を回すふりをして、
服の下に通したリードを引っ張ることで、私に性処理ペットとしての自覚を促がすのよね?
もちろん事あるごとに路地裏やトイレで容赦なく膣内発射をして、一瞬でも気を抜いたらスペルマ様が太ももに溢れちゃう状態を常にキープしておくんでしょ?
けっこう大変そうだけど、きちんとペットとしての従順な一日を過ごせたら、
次のデートではご褒美に前後の穴に遠隔操作バイブを突っ込んで、放置プレイで調教をしてもらえるなんて素敵だわ」
……なんつーかもう頭が痛くなってきた。てか、何をどうやったらそこまで偏った知識になるんだか……なあ、少しだけでいいから喜緑さんのチョイスを疑おうぜ、朝倉。
だが、俺の心からの忠告は、委員長の耳にまったく届いてないようで、目を潤ませた朝倉の妄想はだんだんと暴走していった。
「あ、もちろんキョン君が委員長としての私を性処理玩具にしたいんなら、喜んで穴を貸すわよ。男子って真面目な女の子を穴奴隷として飼うのが夢なんでしょ?
朝は強制ハイキングコース脇の草むらに連れ込んで、後背位で思う存分膣内発射なんてどうかしら?
登校中の他の生徒にバレないように、喘ぎ声を噛み殺しながら犯る青姦ってぜったい興奮するわよ。
中休みには、空き教室に引きずり込まれて、ノーブラの制服の上から強制パイズリよね。
20分じゃ襟の裏に発射された精液をきちんと洗い落とす時間はないから、
私は精液の匂いをプンプンさせたまま3、4時間目の授業を受けざるを得なくて、周りの女子から変な目で見られちゃうの。
お昼休みは、お弁当もそこそこに、私を人の来ない男子便所に連れ込んで、小便器に跨らせながら立ちバックで精巣が空っぽになるまで膣内発射っていうのはどう?
精液を排出するためだけに存在する委員長便女って感じで、興奮間違いなしだと思うんだけど。
もちろん体育の時間は、体育倉庫に引きずり込まれて、ブルマを少しずらしながらアナルレイプよね。
記録係の委員長がいないんで探しに来たクラスメイトに見つからないように、
ジャージの猿轡であえぎ声を抑えさせながら、おなかがパンパンになっちゃうまで直腸に吹き上げるの。
もちろん放課後の文芸部活動は、机の下にもぐりこんだ性処理委員長に顔射よね。
眼鏡の私にベットリとカけて、レンズにこびり付いた精液をペロペロ舐めさせるなんてどうかしら?」
非常に楽しそうな声の朝倉は、長門と対決していたときのような不敵な笑顔を浮かべている。
あのー朝倉さん?ひょっとしてすでに喜緑さんのデータベースを逸脱して、あなたの願望が混じってませんか?
しかも、登場人物が黒髪ロングの優等生委員長とはいえ、某シリーズとだいぶシチュエーションが被っちゃってるような……。
それでなくてもワンパターンなんだから、ちょっとは自重してくれ。
「私の体に飽きたら、教室で乱交パーティーっていうのも面白いかもしれないわね。
5組のみんなで楽しいLHRを姦るの。もちろん男子の参加者はキョンくんだけで、あとは女子よ。
グリークラブのメンバーを窓際に並べて、バックから連続中田氏なんてどうかしら?彼女たちなら、みんないい声で鳴くと思うな。
もちろんここはキョンくんの夢だから、現実の彼女たちには何も影響を及ぼさないけど、
骨格筋からきちんとスキャンしてあるから、再構成された彼女たちの締まりはホンモノよ。
それに5組だけじゃなくて、SOS団関係者を除いた谷口君ランキングA以上の美少女クラスを特別編成するっていうのも悪くないわよね。
その輪姦学校で私が参加できなかった春以来の高校生活のイベントを一つ一つ消化していくの。
うん、これってとっても素晴らしいアイディアだと思わない?
だって、中間期末の成績上位者は、テストが返ってくるときに、ご褒美に公衆の面前でキョンくんにレイプしてもらえたり、
球技大会ではキョンくんのタマタマをクラスみんなの舌で転がしたりするのよ。
もちろんキョン君は勃起したら、いつでも好きな子を抱けるの。それがたとえ授業中でも、ちょっとトイレに行くみたいに手を挙げて、
『せんせー、勃っちゃったんで、阪中さんに膣内発射していいですか』なんて言って、
みんなが真面目に授業を受けてる教室の後ろで、ロッカーに手をついた彼女を立ちバックで犯した挙句、
仕上げにあのショートカットがドロドロになるまでぶっカケるなんていうのはどう?
それに、文化祭もアンケート調査なんかじゃなくて、娼館をやりましょうよ。
みんながそれぞれ思いつく限りのエッチなコスプレをして、お客様のキョンくんをもてなしたら楽しいに決まってるわ。
あ、でも映画撮影も捨てがたいわよね。当然、超ハードな裏モノ。
異時間同位体のキョン君で構成された悪役のレイプ団が、お望みの子を徹底的に輪姦するんだけど、
ズタボロになったその子に輪姦便女という十字架を忘れさせる為に、
ヒーロー役のキョン君が、その子を自我崩壊に追い込むまで徹底的にセカンドレイプするの。
このハートフルストーリーならオスカーでも金獅子でも取り放題よね」
次々に湧きあがる朝倉のトンデモ妄想は、もはや突っ込みを入れられる次元ではない。
さっきから変だとは思っていたが、どうやらこの急進派のおバカ娘は完全にぶっ壊れちまったらしい。
ナイフで襲われた時は体が危なかったが、今回は心がやばい上に救援が絶望的な分、むしろ前以上のピンチなんじゃないか?
「どうかしらキョン君?とりあえず今挙げたシチュエーションだけでもコンプリートしてみない?」
ポワンと熱に浮かされたような顔で振り向く朝倉。そこには今まで見た中でも、最上級の晴れハレな笑顔が浮かんでいる。
だが、その目はトロンと潤みつつ妖しく据わっており、俺に本気のヤバさとは何かってことを実感させている。
背中を伝う嫌な汗を無視して、脳内会議を決行してみたところで、解決策が出るはずもない。
なんせ逃げ出そうにもこの空間に逃げ場はないし、そもそも朝倉ですらここを解除できないから、こんな事態に陥ってるわけだしな。
この極めて深刻な事態を何とか打開すべくブンブン音を立てて回転する頭とは裏腹に、
朝倉穴の心地よさを刻み込まれてしまった股間は、朝倉の提案に同意を示し、初めてエロ本を見たときよりも激しくいきり立っていた。
溜息をつきながら覚悟を決めた俺は、宇宙を統括する存在の愛娘とガチエロバトルで勝つという、有機生命体開闢以来の難題に向けて、股間の村正に力を込めた。
やれやれ、生きて帰ってこられるかな、俺?
頭を撫でたり、頬をコチョコチョくすぐられたりする優しい感触で、俺の意識は徐々に拡大していった。
ぼんやりとした霧が掛かったような脳みそを無理やりたたき起こしてなんとか目を開けると、そこには朝倉の大きな瞳が楽しそうに俺を覗き込んでいた。
えーと、ここは自分の部屋のベッド……で、いいんだよな?
目が合うと朝倉は驚いた猫のように部屋の隅までジャンプして、ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイと呟きながらひたすら平謝りに謝ってきた。まて。なんでお前が謝ってんだ?
「あの……キョン君、ほんとに大丈夫なの?その、私ってばまた暴走しちゃって……後でデータライブラリー見たらとんでもないことを姦ってたんだけど……」
「お前がトンチキな妄想語りをしてたことは覚えちゃいるが、その後の記憶はあやふやだからな。
それに関しちゃ一切気にする必要はないし、何より、お前のお陰ですっきり爽快みたいだ。ありがとな」
「え゛!?許してくれるの!?」
ガバッと顔を上げ、すがる様に見つめてくる朝倉。当たり前だ。許すも何も、お前は俺のストレスを解消してくれたんだろ。むしろ俺が礼を言わなきゃならん立場だ。
「ありがとう。そういってもらえると嬉しいわ」
ニコニコ顔に戻った朝倉は、すばやくにじり寄ってくると、その大きな胸に俺の頭を抱きかかえた。コラ、そんなことすると、また勃っちま……わないな。
「うん。もう大丈夫みたいね。ここはまだあの夢の続きなの。エラーが残ってたら反応するだろうから一応確認してみたけど、もう全て解消されたみたい。
あ、でも安心して。有機体には何も影響はないわ。起きたら朝の生理現象はもうばっちり!」
いたずらっぽい笑顔でウインクする朝倉。うっすらとトンでもなく爛れた乱交生活を送った記憶があるが、どうやら絞りつくされちまったって事はないみたいだな。
「それとね……あなたには、きちんと報告しておきたいことがあるの」
えーと、このパターンはやっぱり、デキチャッタミタイナノってやつだよな?
朝倉が作ってくれた朝食を、母親の明るい面を継いでおてんばに育った娘とワイワイ騒ぎながら食べる光景が一瞬にして頭に広がる……うん。なかなか悪くないな。
「残念ながら違うわ。それだったら私もどんなに嬉しいんでしょうけど。そうじゃなくてね、その……あのね、私、壊しちゃったみたいなのよ」
嫌な予感で飛び起きる。壊した!?っておいっ!まさか世界を壊しちゃったとか物騒なことになってるんじゃないだろうな!?
「うーん、あなたにとっては違うけど、私にとってはそれに近いかもしれないわね。その……私ね、親分を壊しちゃったのよ」
そう告げる朝倉の表情は、お気に入りオモチャが突然動かなくなって当惑する子供のようだった。
親分だと?えーとお前のは確か……情報なんたらの急進派だったよな?
「そ。情報統合思念体の急進派が私の元親分。
詳しく説明するとね、たぶん長門さんが仕組んでくれたプログラムだと思うだけど、あなたが256回目の半数体型有機情報爆発を起こして、
深層メモリーのエラーがすべて解消された瞬間に、あの情報制御空間の封鎖が自動的に解除されたの。
それでね、私の情報統合思念体とのリンクもすぐに戻ったんだけど、向うがものすごく心配してたみたいなんで、
キョン君から受け取った有機情報子由来の情報を急いで全部送ったの。そうしたら、私の親分がパンクしちゃって……。
考えてみれば当然よね。私はキョン君の情報体のリンクに包まれてたから大丈夫だったけど、涼宮さんからの情報放射を凝縮した有機情報爆発256回分だもんね」
クスクスと可笑しそうに笑う朝倉。なんだか突っ込んではいけない数字が混じったようだが、とりあえずそれは置いとくとして、
お前の親玉って確か宇宙を統括してるんだったよな?一部とはいえ壊れるのはやばくないのか?
「うーんと、そうよねえ。でも、長門さんは心配してないみたいだから大丈夫なんじゃない?
見てみる?長門さんたら急進派がオーバーフローで弾けちゃった瞬間に大笑いしたのよ」
顎に人差し指を添えながら小首をかしげる朝倉。長門が大笑いだと?想像もつかず首をひねっていたら、朝倉がその様子を見せてくれた。
そこでは腹を抱えて笑い転げる長門が、思い返したようにいつもの無表情な正座に戻り、また吹き出して笑い転げるという非常にレアな光景が広がっていた。
おまけに、その横では困惑顔で半べそな喜緑さんが『何を笑っているんですかぁ』と、それだけが解決策だとでも言わんばかりに長門の頭をぺちぺち叩いている。
シュールだ。だが同時に、それは子猫がじゃれあうような微笑ましい光景でもあった。
「ね?穏健派は困ってるみたいだけど、主流派は笑ってるだけだし。大丈夫っぽいわよ。
思念体のアシストがないからちょっと不安定だけど、急進派に属していたほかの意識体たちも現状を楽しんでるみたい。もちろん私という個体もね」
朝倉は遠足が待ちきれない子供のように目を輝かせながら、その場でクルクルと回転して見せた。
少しよろめくあたりがやや危なっかしいが、本人はそれも含めて現状を楽しんでいるようだ。
なるほど、確かにこの様子なら大丈夫そうだな。
「それに、姦らなくて後悔するよりも、犯って後悔するのが私の信条だしね。
すごいでしょ。信条よ、信条。私、いまプログラムでも派閥の意思でもなく、自分の意思で自立行動をしちゃってるのよ!」
初めて漢字で自分の名前を書いた子供のようにエッヘンと胸を張る朝倉。その表情は微笑ましいんだが、明らかにその『ヤる』は間違ってると思うぞ。
「まあ、気にしない気にしない。それと、お役目上注意しておくけど、あんなにエラーを溜めちゃダメよ。
いくらキョン君の情報体が特殊とはいえ、急進派がパンクしちゃうほどの量だったんだから。
まぁ涼宮さんからの情報放射がなくなることはありえないから……彼女に全部返しちゃうのが一番の方法かな?」
腕組みをしながら、うーんと首をかしげる朝倉。返すって……やっぱ今回の方法で返すんだよな。
「当然でしょ。あ、でも安心して。今日の記憶は起きた瞬間に全て消去されちゃうけど、
体に刻み込まれた記憶までは完全に消せないから、キョン君ってば童貞のくせにとんでもないテクニシャンになってるはずよ。
だって、1コマの授業内で30名のクラスメートを連続レイプして全員イき潰すなんて、普通の有機生命体にはぜったい不可能だもの。
だから、涼宮さんがどんなに名器の持ち主でも、気後れせずにどんどん天国に送ってあげられるわよ。
それにしても、無から生み出された涼宮さんの情報爆発をキョン君が濃縮して、それをまた涼宮さんに返すなんて。
これってどんな情報還流になるのかしら?情報生命体としては、ぜひとも見てみたい光景だわ。
もっとも、私という個体にはちょっとだけエラーが生じそうだけど」
そういいながら苦笑した朝倉は、すっと小指を立てた右手を差し出してきた。
「約束して。もう無理しないこと。それから、もうちょっと素直になること」
前者の努力は確約するが、後者は生まれ持ったもんだからな……などと考え込んでいたら、突然、朝倉の足元がサラサラと光る結晶となって消え始めた。
おい!待ってくれ!!
慌てて引きとめようと伸ばした俺の右手に、朝倉のひんやりとして柔らかい小指が絡みつく。
「はい!ゆーびきりげーんまん!嘘ついたら針千本のーますっ」
朝倉は呆然とする俺に小指をぎゅっと絡ませながら、いつかと同じように少し悲しげな微笑を浮かべている。
「切るのは約束を果たすほうからよ。ね、ほらっいい子だから」
躊躇する間にも朝倉は少しずつ消えていく。わかった約束する。
でもな、一度は忘れたとしても、俺は今日のお前を思い出すからな。いつになるかは分からんが絶対だ!覚悟しとけよ!
俺はもう一度小指にぎゅっと力を込めると、決意と共にそれを切った。
困惑顔の朝倉は、ちょっと嬉しそうで、同時に、できの悪い弟を励ます姉のような晴れハレな笑顔を浮かべた。
「楽しみにしてるわ。それまで涼宮さんとお幸せに。じゃあね!」
目を覚ますと、俺は布団から手を突き出しながら何かを掴もうとしていた。はて?何をやりたかったんだ?
とてもいい夢を見ていた気がするが、その輪郭は起きた瞬間に急速にぼやけ、残念ながら何一つ覚えていない。
なんだか物凄くもったいないことをした気分でベッドの上に起き上がって首をかしげていると、妹がバーンとドアを開けた。
「キョンくん〜あさだよ〜!ってあれ?起きてる!!」
「おう、おはよ。おいおいなんだよ、俺が起きてるのがそんなに珍しいか?」
不発に終わったボディープレスが惜しいのか、驚いて毛を逆立てたシャミセンのような表情の妹が心配げに問いかけてきた。
「キョンくん泣いてるよ?だいじょうぶ?こわい夢でも見たの?」
なに!?慌てて顔に手をやると、自分でもびっくりするくらいの涙が、まるで滝のように流れ落ちている。
おいおいどうしちまったんだ俺?さっきの夢は、とても楽しかったはずだろ?
我が鳥頭は、すがすがしいくらいにスッパリと内容を忘れているが、涙なんかを流したら誰かを侮辱してしまう気がして、俺は慌てて顔を拭った。
「心配してくれてありがとな。でも、見たのは怖い夢じゃないんだ。親友がな、ケラケラ笑いながら背中をパーンって叩いてくれた夢だ」
ま、詳細は覚えてないけどな。なんだかそんな夢だった気がするのさ。
こうして自分でも気味が悪いほどのすっきりした朝を迎えた俺は、定時よりだいぶ早く起きてきた息子を訝しがるお袋の追求を適当に受け流しつつ、
久しぶりに心ゆくまで朝食を楽しみ、普段よりかなり早めにチャリをこぎだした。
気分爽快。このところの寝不足が嘘のように体が軽く、このまま42.195kmだって走れそうなほどだ。
どこまでも続く青空の下、ペダルを踏む足に力を込めて、意味もなく加速してみる。
その横では、爽やかな朝の風を受けて、黄色いチューリップが楽しげに揺れていた。
・・・・・・・・・・・・・・・
おわり
Gj!!!
3P編も期待してます。
その朝焼けの空のような笑顔に見蕩れていたら、次の瞬間、また何かを思い出したらしく、朝倉は怒られてシュンとしたシェパードのような表情で俺を見上げてきた。
「それと、とても言いにくいことなんだけど……私、変なバグを抱えてるみたいなの」
これ以上は無いくらいにドヨーンとした声音で落ち込む朝倉。まったく笑ったり凹んだり忙しいやつだ。
情報をメインに進化を遂げてきたこいつらにとって、バグってのは致命的な意味を持つんだろうが……。
落ち着いてそのバグとやらを言ってみな。たぶん有機生命体には当たり前の現象だから。
「うん、あのね、わたし……最初はキョン君にバストをぎゅってされると、嬉しいけどとても痛かったの。
でも、だんだん『嬉しい』だけじゃなくて、『気持ちいい』が『痛い』を洗い流すようになってきちゃって……。
気がついたら、いつのまにか『痛い』がなくなって、直接『気持ちいい』に変換されるようになっちゃったの。
これって私の個体特性!?変だよねこんなの?私がバグ持ちってことなんでしょ?」
俺に愛想を尽かされるとでも思ったのか、朝倉は怯えたリスのように震えだした。
こいつらがどれだけ人間を研究してるのか知らないが、こういうことは耳学問じゃ理解できないからな。たぶんエラーとして自動的に消去されちまう類の情報なんだろう。
分からないなりにも、それを感知できたってことは、朝倉は今、急速に人間らしくなってきてるってことだ。だとしたら、喜ぶべきことだぜ、それは。
「安心しろ。そいつは多分マゾヒズムってやつだ。一般的かどうかは分からんが、痛みが快感になっちまうってのは、人間には往々にしてあることみたいだぞ」
「マゾヒズム?これがマゾなの!?」
いきなり昼夜が逆転したように、パッと明るい表情になる朝倉。おいおい、そんなに喜ぶことか?
「だって、私がマゾ女ならキョン君をご主人様って呼ばなきゃいけないんでしょ?
中田氏奴隷に堕とされた私は、どんなに誠心誠意ご奉仕しても、5箱200円のティッシュ代を節約するためだけの生オナホとして扱われるよね?
心身のすべての捧げてお仕えするマゾ穴と、それにチンポミルクでご褒美をあげるご主人様というのが、有機生命体が追い求める理想の男女関係なんでしょ!?
喜緑さんがループの夏休みを目一杯使って解析した結果なら間違いないはずだわ!」
目をキラキラに輝かせて、興奮した口調で叫ぶ朝倉。
……えーとさ、お前が素直な良い子だってことは、よーーく分かった。だがな、ちょっとだけ人を疑うってことも覚えようぜ?
しかし、俺の真摯なツッコミはまったく耳に届いていないようで、初めて魚を釣った小学生並みに
はしゃぎまわる朝倉は、呆れ顔の俺を気にもせず、膝立ちですり寄ってきた。
エロス!
そして多人数
相変わらず良い仕事してますなあ
GJ!
おっきした。
しかしキョンと朝倉の壊れっぷりはwww
まぁ、この壊れっぷりが魅力でもあるんだけどね。
朝倉…ますます好きになれそうだ。GJ
すいません、ファンの作業員です。
最後がちょっぴりしんみりしてるのもいいです。泣けます。
以上、感想でした。では作業してきます。本当にあり(ry
正直言うと変態ハルヒは苦手だったんだけど、朝倉は変態が似合うのに気づいて変態ハルヒも好きになれそうな気がしてきたよ。
金玉が痛い
佐々木とハルヒの奴はいまいち好きになれなかったが、
朝倉がやると全然違和感なくてむしろ抜けた。
300 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 05:48:11 ID:WaBcQCQS
Nice Asakura
>>264 GJ!
>1コマの授業内で30名のクラスメートを連続レイプして
ちょwwwクラス全員かよwww
>1コマの授業内で30名のクラスメートを連続レイプして全員イき潰すなんて
アッー!w
>あなたが256回目の(ry
だから、30人ぐらいは何とかなるんだろね
1人6回としても、残る76回は朝倉さんとですか・・・はげしーw
女性徒以外も……
その後古泉が6組に転入して来たそうな。
>>303 そこは特別編成された美少女クラスでの行状と考えれば(ry
>>307 つか、それしか考えられんだろ。
しかし、理性を眠らせてるわりには理性的だな。キョンは本能にまでキョンフィルターが実装されているのか。
新作も楽しみにさせてもらいますよ、
>>264さん
>>264 GJ!いつも思うが本当に上手い。
豊かな語彙に裏打ちされたエロ文章力はプロと比べても遜色ない気が。
非エロ投下します。
キョン語り訓練のための実験作。
分析的なお話なので苦手な方はスルーよろしく。
『ぬくもりのなかでおもうこと』
真夜中に目覚めて、寝直そうにもなかなか寝付けないという経験はないだろうか。
俺の場合、可能であれば脳細胞から抹消したい記憶を植え付けられた日を思い出さざるを得なくなり、
その度に拳銃を捜そうとする衝動に駆られたりしたのだが、今ではそれも過去のことと思えるように
なってきた。触れられたくはないがな。
まあ、そんなデタラメな非日常に遭遇しなくても、眠れなくなることはあるものらしい。
そんなやくたいもないことを考えながら、見慣れた、というほどではないが俺の感覚としてそこそこ
記憶に残る天井をぼんやりと見つめていた。
布団の暖かさを全身に、それとは別の、無機物には絶対に生み出せないぬくもりを左腕を中心とした
半身に感じ、おまけに心地よいそよ風を横顔に浴びながら、意識を手放せる奴がいたらみてみたいね。
今何時なのかは枕元にある目覚まし時計をみればすぐにわかるのだが、少しでも身じろぎすればそよ風の
主を起こしてしまいそうで、かろうじて視界に入る穏やかであろう寝顔を観賞することすらままならない。
室内は真っ暗なので、おそらくまだ夜は長いのだろう。どうしたものかね。
さて、この状況で眠れる奴がどうこうといったが、この状況に気付く前俺は少しは眠っていたはず
である。何せ、この体勢をとった覚えはないからな。記憶にある就寝前の行動については、悪いが
黙秘権を行使させてもらう。下手に言葉にすると、自分を抑えきれなくなりそうなんでね。
……いかん、思い出したら懸念が現実になりかねん。何とかして気を紛らわさねば。
そこでふと、柄にもないことを考えてごまかすことを思いついた。
いつかの幽霊騒動の時には実のない思索は古泉に任せておけばいいと決めこんではみたが、高校入学を
機に始まった俺の巻き込まれ人生を見返してみれば、気になることはいくらでも出てくる。
今日は……そうだな、俺にとって最初の非日常について考えてみるか。
情報統合思念体。情報だけの生命体なんていわれてもいまだに何のことだかさっぱりだが、宇宙人と
いうわかりやすい例えのおかげで、連中曰く有機生命体の、おまけに掛け値なしの凡人の俺とは根本的に
別物な存在だということだけは理解できる。少なくとも親玉連中は、いけ好かない奴らだってのもだ。
進化したいのか何だかしらんが、「進化の可能性」であるところのハルヒを煽るためだけに俺を殺そう
とした時に味わった恐怖は、一生もののトラウマだ。あれは急進派の、さらにいえば朝倉の独断だった
らしいが、殺される側にすれば意見の出所はどうでもいい。第一、俺が死んだらハルヒが行動を起こす
ってのは、どこの桶屋の発想だ。頭のいい奴は考え方が常軌を逸しているという話があるが、当時の
俺は、あいつが立ち上げた目的不明の団体の一員である以上の価値なんてなかった。今だってそうだ。
いちクラスメイトが突然殺されたって、あのころのあいつにはせいぜい「不思議なこと」のひとつで
片づけられたに違いない。いや、日常の範囲内だろうな。死ぬんなら価値のある死に方をしたい、
なんて殊勝な考え方ができるほど俺は達観しちゃいないし、恨みはあっても恩のない奴らのために
命を懸けるなんてマジでごめんだ。
朝比奈さんのためだったら、少しは考えてみてもいいかもしれないけどさ。万一、あの方が俺の死を
心から願うなんてことになったら、それを知っただけでショック死しちまうかもな。
朝比奈さんで思い出したが、親玉共は時間も空間も超越しているとかいってたな。一万五千四百九十八回も
同じ夏休みを過ごしたときだっけ。俺には最後の一回以外に正確な記憶なんざありはしないわけだが、
連中はその間の出来事を自分が造り出した何とかインターフェースを通じて全部知ってるわけか。
おとといの晩飯が思い出せないとかそんなことには無縁なんだろうが、何か引っかかるんだよな。
夏休みの宿題のことは連中だって把握してたはずだし、俺でさえ思いついた突破口に気づけねえなんて、
本当にあの状況についてどうでもいいって意見だったのかね。それにしちゃ、変化のない状況には
否定的らしいし、はっきりしない奴らだぜ、全く。
記憶を過去にもっていくことができれば、赤点レーダーをかいくぐるには便利そうだけどさ。
まあ、未来のことがわかったって面白くないどころか変に気を遣う羽目になるばかりだし、未来を
知ろうとしてお説教を受けるのは一回で十分なんだけどな。
それにしても、あいつらにとっての「進化」ってなんなんだろうな。俺からすれば連中は完膚無きまでに
俺達地球に済む生き物よりハイスペックだ。変な空間に人を閉じこめやがったり、どう考えても物理を
無視したことを笑顔を浮かべながらやってのけたり、金縛りに遭わせたり……くそ、また背筋が凍る
ようなことを思い出しちまった。まあ、それでも全能ではないことは確かなんだよな。
あの気味の悪い吹雪の中の竜宮城に放り込まれたとき、少なくとも奴らは別口の宇宙存在とやらに
アドバンテージをとられていたはずだ。あの時、ハルヒと古泉の知恵がなかったら、完全にお手上げ
だった。俺には逆立ちしてもあの計算式の意味がわからなかっただろうからな。あの時は自分の無力さ
加減に本気でいらだったが、SOS団の絆の強さが感じられたのはうれしかったぜ。
しかし、あの時古泉が気付いた最後のヒント、妙に直球だったな。あれがコンピ研との勝負の時のように
俺に理解できるように教えてくれてたんだったら、どうにかフォローしてやりたかったな。
それにハルヒ曰く「悪夢」の世界にも奴らはろくに介入ができなかった。おまけに「失望している」と
まで感じたそうじゃないか。いい気味だ。何でもできるような気になって、そういう奴に限っていざ
不測の事態になったらなんにもできねえんだ。はなっから自分が駄目だと決めこむのも芸がないが、
出来の良さにあぐらをかいてる奴は、いつか足許をすくわれるのが相場なんだよ。
まあ、そういう連中の進化なんて、俺からすりゃくだらないもんなのかもしらんし、第一俺にすれば
生き物らしさを示すものを「エラー」だの「バグ」だの抜かす奴らだ、興味を持ちたくもない。
……あの時のようなことを考えてみやがれ、絶対に容赦しねえからな。
そうやってとりとめもなく考えているうちに、頭が痛くなってきやがった。つくづく自分の出来の悪さを
思い知らされるね。我ながら愚かなことをしていたもんだ。おかげで、落ち着かせるべきところは落ち着
いたが、気分がえらく悪くなってしまった。
右手を何の気なしに額にやる。別に熱くも冷たくもないんだが、少し気を晴らしてみたかったのさ。
それがいけなかったと気付いたのは、例によってやった後なんだが。
「…………」
すまん、起こしちまったか。
「…………」
俺以外なら出会った頃と同じ、俺にはとてもそうとは思えなくなった闇色の瞳が、寝起きというのが信じ
られないくらいはっきりと眼前の存在を映し込む。
「何だか眠れなくてな、くだらないことを考えてたら頭痛がしただけだ。」
その瞳に宿る「心配」の色に、理由もなく強い罪悪感が襲ってきた。こいつの心の平穏を守りたいのに、
それを乱すのが他ならぬ俺である場合、どうすれば償えるんだろうね。
おそらく文殊が3人寄ったって出せやしない答えを捜していると。
「…………」
身体に感じるぬくもりが変わった。ずっと左半身だけに感じていたものが、今は全身を包んでくれている。
ちょっと待ってくれ。今まで俺が意図的に目を逸らそうとしていたところに真正面から飛び込まれたら、
こっちとしては混乱するほかないわけなんだが。
「だいじょうぶ」
抑揚のない、平坦で記憶に残りにくい声が耳から全身に染み渡ってくる。飢餓感が刺激されて、自分の
原始的な欲求がさっきまでの俺をあざ笑うかのように膨れ上がるのを自覚する。全然だいじょうぶじゃ
ないんだが。睡眠時間はきちんと確保しないと、ただでさえ朝に弱い俺は寝坊確実だぞ。
「あなたが望むようにすればいい」
そういわれて抵抗できるほど、凡人の理性が強靱にできてるはずもなく。
俺はその言葉に従って、互いの距離をゼロにする行為を始めるんだ。
この先はひとつ、禁則事項ということで。
315 :
310:2007/10/11(木) 23:02:24 ID:swsu6HQn
以上です。
GJ
うおっ!!ちょっと間置いてた時に投下されてた
>>315 くど過ぎず、短すぎず、キョンの語りっぽさが出てるね
訓練となると…次は訓練の成果を見せてくれるってワケだな!
待ってます!GJでした
中身がないな。
ただ文章力には目を引かれるものがあった。
出し惜しみしてんじゃないかしら。独り占めにする気?
もっと改行があってもいいような気がする
でも好きな文章だGJ
次は抜ける文章ヨロ
BBS形式の場合、文字数で改行すると文字の大きさでズレてしまって逆に読みにくくなるから、区切りのいいとこで改行する方がいいかも。
1行に120文字入るから参考にして欲しい。
小ネタいきます。
馬鹿話。
両袖、胴体部分、裏地、襟はじゃんけん
「今日も元気に不思議探索っ…なんだけど、最近急に寒くなってきたわね」
まぁ、夏の暑さが異常なだけにその気持ちは分かる。
秋の空もそれらしくなってきたとある週末。
俺達は相も変わらず不思議探索という名の市内徘徊に精を出していた。
「昨日の夜はちょっと降ったみたいだからどうなるかと思ったけど、晴れて良かったわ。…ちょっと涼しいけど」
俺は天気予報を見てきたのでコートを引っ張り出してきたが、ハルヒの奴は上こそ長袖だが下はミニスカートときた。
カーディガンも着ていないから流石に寒いだろう。
ちなみに長門はいつも通り。
朝比奈さんは胸の部分だけ編み目が多そうなセーターを着てらっしゃる。
あと古泉も服を着ているな。
「これは地球に向けて宇宙人が密かに謀略を企てているって事だわ! なんとかしないと! 寒いし!」
何をだよ? とうとう妄想が地球規模になってきたぞ。てか最後の一言が主語だろお前。
「とりあえずあそこの喫茶店でお茶しながら考えましょ。キョン、あたしミルクティーとハニートースト」
奢り確定。と言うかやっぱお前寒いんだろ。
「あの、いつもすいません」
「……」
「光栄ですね」
うーん、君達もたまには遠慮というものを知ってくれ給え。
喫茶店でハルヒはハニートーストに顔をほころばせ、珍しく無防備なほのぼの顔で幸せそうにしていた。やっぱり寒かった
だけだなこいつ。
「キョン君、私のモンブランちょっと食べてみてくれませんか? 量が多くて…」
コーヒーだけだった俺に哀れみをかけてくれたのはやはり朝比奈さんである。
このケーキ半分の為なら華厳の滝で水ごりしたっていいね。
「いいんですか?」
「はい、ぜひ」
俺は殿様から褒美を貰う農民の気持ちでありがたくそれを頂く事とする。腐らなければ家宝にしたいね。
「あ、でも一口でいけそうですね…。それじゃ」
そう言い、事もあろうに朝比奈さんは残りのケーキを、当然自分も口を付けたフォークに刺し…。
「はい、あーん」
世界は見捨てたもんじゃないぜ!
俺は人生二回分の幸せをここで使った気分で甘露を味わった。
「キョン! これあんまり美味しくないから食べなさい! あとあんた食べるの下手そうだから蜂蜜が落ちないように食べさせて
あげるわ! 仕方なく! 仕方なくよ!」
そう言ってハルヒはさっきまで美味しいと言っていたトーストを俺の口に押し込む。
待て待て待て! せっかくのモンブランの後味が…。
嗚呼、もう蜂蜜の味しかしないし…。
そして綺麗に食わせると言った筈が口の周りを蜂蜜でべたべたにされ、その後更に長門のパフェをやはり俺の手を使わずに食わされる
事になる。
だが、ポッキーを口にくわえて食べさせようとされたときは流石に驚いたぞ。
流石に二人の視線と古泉の凍り付いたスマイルが痛々しくて辞退させてもらったが。
…喫茶店ってこんなに疲れる場所だったか?
その後、体も温まった、と言うか空気が色々ヒートアップした俺達は、頭を冷やす為に公園の方へ足を運ぶ。
紅葉が目に優しく、舞い散る落ち葉はパステル調で石畳の遊歩道を染めていた。
「落ち葉が舞い散る遊歩道って素敵ですよね」
朝比奈さんが何となく俺に近づきつつ、ロマンティックな事をおっしゃった。
Exactlyでございます!
もう一回言うぞ。
Exactlyでございます!
「うふふ、こういう時、映画の恋人同士だと腕を組んで…」
心なしか潤んだ瞳の女神朝比奈みくる(属性ロリ顔巨乳・ドジメイドLv.99・俺マグネタイト消費量最大)はつつ、と俺の横に並び、
何かを求めるように指を泳がせ、グッピーが水草をついばむ様に俺の指をつんつんとつつきながら、俺の瞳を見詰める。
あー、天下の往来で人を押し倒すと罪になるんだっけ? でも同意の上ならいいかな?
乾いた砂で出来ている理性の門がみくるビームで木っ端微塵に崩されようとしていたその時、俺と朝比奈さんは背中から、地獄の
業火が蝋燭の炎に思える灼熱の視線と、液体ヘリウムがいい湯加減に思える絶対零度を超えた冷気の視線を背中に突き刺された。
と言うか突き抜けた。
朝比奈さんは別の意味で涙目になり、血の気を引かせて俺からつつ、と離れる。
それでも最後まで目を離さないのが健気だ。
「なにおしてゐるのョばかきょン」
言葉遣いが変になっていますよハルヒさん。
「五月蠅い! あんたがみくるちゃんに変な色目使っていたから助けてあげただけよ! この晴天の変態男!」
晴天の霹靂ね。
「しょ、しょんなことないで…す…」
決死の覚悟でフォローしようとした朝比奈さんだが、長門の一睨みでいよいよ縮こまり、声も出せなくなってしまう。
あーあ、泣いてる泣いてる。
長門、あんまりいじめちゃ駄目だ。
そしてさも当然のように長門が先ほどの朝比奈さんのポジションに流れ込んできた。
しかもあっさりと俺の腕に自分の手を回して。
「ふえ…」
ずるい、と言う心の叫びが聞こえたが、もう一つの怒声にそれもかき消される。
「キっっっっ…キキキキョンっっっっ!あんたっ! 今度は有希にまで迫ろうっての! この節操無しの極楽鳥っ!」
お前の目は体のどこに付いているのか、そしてその網膜には何が写っているのか、一度科学的に検査させてくれ。NASA呼ぶから。
「有希! キョンになんかイヤイヤくっつく必要無いのよ! どこの女に手を出すか分からない節操なしなんだから! 汚れるから
離れなさい!」
ハルヒは顔を真っ赤にしながら、俺を指さして怒りに打ち震えていた。
なんか指が折れそうなくらい反っているぞ。
長門は、そんなハルヒをちらりと見て、まるっきり冷静に言った。
「だから、この人がそんな事をしないように私がずっとこうして見張ればいい。全て任せて。それなら、あなたは何もしなくていい」
しかも腕に頭をこつん、と寄りかからせる。
今の俺達、端からの見た目はもう、さっき朝比奈さんが言った映画に出てくるアレだよアレ。
「な、な、な…」
うーん、ハルヒの背中からなんか非常に嫌な気が沸き上がっている様な気がするなぁ。
その後ろでは古泉が蒼白というか真っ白になってエクトプラズムを沸き上がらせている。
古泉、それ、切れたら死ぬぞ。
「こここ、このエロキョ」
不条理で不名誉な事を言いつつのしのしと迫ってきたハルヒが、突然こけた。
「きゃあっ!」
どうやら落ち葉の下に水たまりがあり、そこを踏んでしまったという事になる。
ハルヒはそのまま豪快に尻餅をついた。
ばちゃ、と音がする。
「ひっ!」
ハルヒが短い悲鳴を上げた。
「あ」
俺も思わず声を出す。
「す、涼宮さん?」
朝比奈さんも分かった様だ。
水たまりに足を滑らせ、そしてこけた。
それはつまり…。
「つ…冷たい…」
ハルヒは尻の痛さと冷たさに、思わず涙目で呟いた。
怒りがそのまま情けなさになったのか、今にも泣き出しそうな顔になっている。
「立てるか?」
「う、うん」
俺は手を差し伸べてハルヒを立たせる。
突然の事に動転しているのかずいぶんと素直なハルヒ。
「…濡れた」
ハルヒは顔を赤くしてスカートの後ろを押さえていた。
「気持ち悪い…。どうしよう…」
濡れた下着の感触がどうにも気持ち悪いらしい。
「ど、どうしましょうか? このあたりにランジェリー屋さんは…」
「うう…そこまで穿いていくの嫌…」
更にだだっこモードだ。
「で、でも、こんなところで…」
やれやれ。
俺はコートを脱ぎ、ハルヒの肩にそれをかけた。
突然の事にハルヒがえ? と呆けた顔をする。珍しい顔だな。
「とりあえずそのままにしていろ」
俺はコートのボタンを止め、プールで首から被るタオルみたいにする。
「これならコートで見えないから、そこの木の陰にでも行けばなんとか出来るだろ? 後はそのコートそのまま着てていいから、
店に行って替えを買ってこい」
「あ、うん…」
ハルヒにしてはずいぶん素直に頷く。
「……」
が、中々向こうに行こうとせず、顔をコートに埋めて深呼吸している。
「これが…キョンの…」
ん? なんだ?
「な、なんでもない!」
ハルヒは赤い顔をしながら、慌てて木の向こうに行った。
細い木なので大して隠れていないし、コートで隠れて見えないとはいえやっている事はアレなので、マナーとして向こうを向いておく。
「……」
遅い。
流石に遅い。
俺はそっと向こうを見ると、ハルヒは木の向こう側で立ちつくしている様だ。
なんかすごい勢いですーはーすーはーと鼻息が聞こえるのは気のせいか?
朝比奈さんと長門と見ると、何故か羨望のまなざしでハルヒを見ていた。
朝比奈さん?
「え? あ! あ、あの…呼んできますね?」
朝比奈さんがそう言って木の向こうのハルヒに声をかけると、ハルヒもハルヒで何故か素っ頓狂な声を出して飛び上がる。
何やってんだ?
それからようやくあいつはこっちに戻り、店に行く事になった。
「んじゃ今日は解散だな」
「あの、キョン…」
「ん? ああ、コートは今度でいいぞ」
「そ、そう? ありがと…」
だぶだぶの袖を顔に寄せ、未だに赤い顔のハルヒは、珍しく申し訳なさそうな顔で礼を言った。
「それじゃ、あたし店に…」
「私もお付き合いします」
「え? 別に…」
「一緒に行く」
「ゆ、有希? きゃ!」
二人はがっちりと両の腕、と言うかコートの袖を掴み、連行する様な形でハルヒを連れて行ってしまう。
「ちょ、ちょっと! そんなに腕強くつかまないで…! か、顔くっつけ…い、痛い痛い! 二人とも、腕噛んでない? 噛んでない?」
「……」
俺は、2つの鼻息を耳に残しつつその場を後にした。
…多分、あのコートは戻ってこない気がする。
それは予感、と言うか確信。
そしてそれは次の日、コートを汚してしまったから弁償する、と女性陣三人から渡される新品のコートで証明されるのであった。
JUNMENかよ。俺のコート確か丸井だぞ?
で、汚れててもいいから返せと言ってみたら、全員蜘蛛の子を散らす様にその場から消えてしまった。
なんか知らないが、やれやれだぜ。
さらば、俺のコートよ。
そしてようこそ、新品のコートよ。
願わくば、末永く…。
おわり
以上。
おそまつ。
コートは三つにバラバラにされたのか…
乙!
古泉のポジションにいても、純粋に羨ましいとは思えなくなるな
ここまでくるとwwwww
乙!
一つだけ。Exactllyなw
Lは2つにしてくれw
話の内容はよかった
>>古泉も服をきてるな。
にちょっと吹いた。ちょっとだけだからねッ!
古泉が空気と化しているwww
こういう系統のネタは大好きだw
>>327 職場でお茶噴いたじゃねーか GJ!!
古泉の扱いの軽さに全俺号泣w
それに3人娘は匂いフェチ確定なのか!
実は裏地が一番需要高いんじゃね?ww
タイトルだけ見て朝倉さんの解体ショーネタかと思った
>>330 exactlyで合ってるぞ。Lは1つだった。
俺もLが1つか2つかで迷って辞書引いたよ
受験生だってのに…orz
>>327 匂いネタ好きだわwみっくるんるんが積極的なSSは久々な希ガス
GJ
というかexactlyはルビが「その通りでございます」じゃなかったか
/ , -''"´ \
/ / / ,. ‐'''""~´ ̄ ̄\
V / / / }
∨ / / ,,.. -一ァ',二二二{
V ,..,/ ,.ィ彳 f==<r'二二二{、 | ̄ ̄ __|__ |
∨| ヘ`<=''~ 弋ッ-ミ'''テ~ナ/ |ー― \/ ´ ̄| 「 ̄` | | \/
〉'| | ト、 i{ ,..`二/ =|/''′ |__ /\ 匚]__ !__, |_ | __/
//ヽヽぅ ヽ { =|
//匚 ̄]〕 丶,-‐ ,> ( そ の と お り で ご ざ い ま す )
/´r┐|__,|ト、 、____`7´
__人..二.」' l>、 ヽ`,二/
´"''ー-?A_\ ∠三ノ
―-、__ ``ヾニ='′
`ヽ /、
|‐- ...__ /ヽ\_
\  ̄ `ヽ \
こらwwwwww
ネタもよく、料理もよかった
後は色々と言い回しを確認していただければ
>>337 キョンのレベルに合わせたらあんなもんでないんか?
>>341 確かに、そうかもね。
キョンはたとえ話や慣用句を間違えて用いることが多いんだよな。
原作最新作でも、女性二人をさして「ツーペア」、神もどき二人とのつきあいの密度について
「技あり有効2本で一本勝ち」という表現があるし。
らしさを出そうとするとハードルが高い。それを使いこなせる作者さんには感服するぞ、純粋に。
ダービー乙!
>>342 つーかそれキョンのキャラ設定じゃなくて谷川が素で教養ないだけっすから
それが味なんだけど
M i k u r u n r u n (禁則事項でございます)
H u n m m o f f u (カマドウマでございます)
>>327 かなりいまさらだけど、
外伝的にでもそれぞれのコートの破片の使われ方をちょっとみてみたいなw
Maggare (超能力者でございます)
>>347 三人のオナニーか?(;´Д`)ハァハァ
レザーソーでコートを三つに解体。
Nice coat.
中で何も穿いてませんよ
三人ともノーパンなのか
三人とも長門の家に集合、(部分的な)コートのみ着用で状態でキョンを呼びつけるとか?
・・・ってかそしたら誰かが隠さなきゃいけないところが隠せないのか。
長門もみくるも小柄だから3人一緒にノーパンでコートにくるまってるほうが現実的かぁ
実はそんなに小さくもなかったような
どういうプレイだよw
>>344 まあ、キャラ付けのためにわざと間違えさせてるって事はないだろうしなw
キョン「ワザと誤用するのがコツだ」
>>356 くんかくんかしながらキョンをまってるうちに興奮してきて訳がわからなく・・・
いつの間にか絡み合ってる3人をキョンが目撃してしまい、
「俺も混ぜろ〜!」ってプレイ?w
・・・キャラが違いすぎるな;
むしろ、3人とも興奮してるけどハルヒだけ暴走して、長門に協力させてみくるに襲い掛かってるところにキョンが到着。
とめるつもりがキョンも興奮しちゃってさらに訳がわからなく・・・
朝目が覚めたら、部屋中べとべとだったとかか?w
>>358 どこから突っ込むべきか迷うけど、とりあえず一つ。
それ、あんまりコート関係なくね?
さあ、それを文章にするんだ
M e g a s s a (にょろ)
「キョン。僕はね、常に冷静でありたいのさ。そうでなければ、周囲の事象を上手く判断することができない。どうにも僕には情緒的な感情が欠落しているらしくてね、専ら経験則や理屈に頼る傾向があるし、それを由としている。
デカルトの方法序説には共感する部分が多いよ。僕は科学者ではないけれど、自分の目で見たものを情緒に頼って処理をしたいとは思わない。おそらく真であろうということを突き止めてから物事を進めたい」
朝から降り続いた雨はまだ空から小さな粒となって降っていた。霧のようにしとしとと空気を濡らし、空を灰色一色に染め上げている。
昼過ぎの暗い校舎は静かで、蛍光灯の明かりだけが廊下を照らしていた。その中で、佐々木の柔らかい声だけが廊下に響く。
「僕自身が人間である以上、知覚をこの曖昧な器官である体に頼らなければいけないのは明白だろう。しかし、この体で感じるものだけが世界のすべてではない。知覚できないからといって存在を否定するだなんて何千年前の科学だよ。
けどね、例えば小さな原子、いやウィルスや単細胞程度であっても僕の持つこの目ではうまく見ることができない。だがその存在を顕微鏡などで観察することはできる」
授業が終わり、俺と佐々木は日直の仕事を終えてこれから帰宅するところだった。
二学期の中間テストも終わり、ほんの少しだけのんびりした気分になれる。まぁそんな中、隣を歩いている佐々木がいつものように語り始めたわけだが。
「でも顕微鏡で覗いた世界がまた真実かどうかはわからない。そこに見えた映像は僕にも見える形状に変換されたものだからだ。画角も狭すぎる。そして、人には知覚できない様々なものがこういった変換によって情報としてもたらされる。
よくテレビなどで使われるサーモグラフィーもそうだ。視覚的に物体の温度を把握できるよう、あれもまた通常の知覚、この場合は視覚で捉えられるように変換したものだから」
あまりの眠気に思わず欠伸が出た。饒舌に任せて言葉を連ねる佐々木は、機嫌よさそうに手をひらひらとさせながら話している。
俺は重たい鞄を背負いなおして廊下を歩く。
一階の職員室から出て、廊下を歩き、下駄箱へ向かった。中庭に通じる扉が開け放たれていて、そこから入ってきた雨が廊下を濡らしている。
「象徴化されたものを真実の姿だと思って接するのはあまりに愚かだと思わないか? その変換する作業は人に知覚できないものを知覚可能にするため必要だから仕方ないにしても、それが決して真の姿では……きゃあっ!!」
佐々木が派手に転んだ。
濡れた廊下に足を進めた途端、その足が前に滑り、尻餅をつくようにして腰から落ちやがった。
「お、おい大丈夫か?」
今のコケ方はちょっと痛そうだ。まったく予測してなかったみたいだしな。
「……いたた」
苦痛に顔をしかめ、腰に手をやっている。俺は助け起こそうと手を出して、そこで制止した。
ちょうど、佐々木が膝を立てて両足を広げているもんだから、スカートの中が丸見えだった。
腿の間に見えた白いパンツに、廊下に溜まっていた水が染み込んでいく。まるでお漏らしでもしたみたいだ。
白地に水が染みていくものだから、吸い付いた肌の色がパンツの上に滲んでいく。
「なっ?!」
慌てて佐々木がスカートでパンツを隠した。その顔に焦りのようなものが見えたのは間違いない。
「あっ、いや、違うぞ。たまたま見えちまっただけだからな」
「……ああ、わかってる……。ただ、その、あれだ。見えたことは言わないで欲しかった」
しかし、白か。うん。いいもの見せてもらった。案外シンプルなもの履いてるんだな。
まぁ色っぽいレースの下着つけててもそれはそれでビックリだが。
そうやってぼんやり考え事をしていたが、佐々木が起き上がってくる気配がない。
どうやら一人で立てないらしい。俺は佐々木の手を取って、その体を引き起こしてやった。
「……すまない」
佐々木は腰を手の甲で叩き、痛みが治まるのを待っている。
「大丈夫か?」
「ああ、たいしたことはない」
今のはかなり痛いと思うんだがな。俺もああいう転び方をしたことがあるからわかる。
「腰打ったんだろ? 保健室行こうぜ」
「別にそこまでしなくてもいいだろう……」
佐々木は顔を赤くして、ぷいと横を向いた。
「それにお前、今のでケツ濡れただろ。スカートも濡れてるぞ。着替えたほうがいいって」
「う……ああ」
「負ぶってやろうか?」
「いや、遠慮しておこう。自分で歩ける」
本当かよ。
佐々木は歩こうとしているようだったが、どうも尻が痛いらしく立ちすくんだままだった。
「ほら、掴まれよ」
俺は佐々木の手を取って自分の肩に回した。これでいくらかは歩きやすくなるはずだ。
「そ、そこまでしてもらわなくたっていい。自分で歩けるさ。保健室なんてすぐそこだろう」
「いいから、掴まっとけ」
肩に佐々木の体重をわずかに感じながら、ゆっくりと歩き始める。佐々木もなんだかんだ言って、歩くのが辛そうだ。だというのに、俺に体重を預けることをよしとしないのか、少し離れて歩こうとしていた。
こういう時くらい人の好意に甘えたっていいだろうに。いちいち難儀なヤツだな。
「……すまない。みっともないところを見せてしまった」
ぽつりと佐々木がそう呟く。割と恥ずかしかったらしい。気持ちはわからんでもない。
「ま、まぁあれだ。パンツ見たことは忘れるから」
びくりと佐々木の体が一度震えた。
「……それはまぁ、仕方ない。別に君に非があることじゃないし。僕が言いたかったのは転んでしまうのがみっともなく、情けないということだ」
パンツじゃなかったのか。
「気にすんなよ。誰だって転ぶ時は転ぶさ」
「すまない……。ああ、本当にみっともない。なんてことだ」
どうやら佐々木は滑ったことを気にしているらしい。別に周りの目があるところで転んだわけでもないだろうに。
どうせ俺しか見てなかったはずだから、そこまで深く気に病むことじゃない。
「それにしても、意外とかわいい悲鳴だったな。喋ってる最中だったけど、舌は噛まなかったんだよな?」
佐々木の体がびくっと震えて、さらに俺と距離を取ろうとする。
んなことしたら歩けないだろうと、俺は佐々木の腰に手を回して抱き寄せるようにして距離を詰めさせた。
「し、仕方ないだろう。咄嗟のことだったんだ。ああ、僕だって突然ああいうことが起これば多少なりとも動揺をするよ。それは僕が未熟だったからだ。ああ、未熟だったからこそあんなみっともない声を出してしまったわけだけどね。
なに、もう金輪際ああいうことが無いよう僕は注意を払って生活するよ。例え転ぼうが車に跳ねられようが情けなくみっともない悲鳴を上げたりしないくらいにね」
早口で一気にそうまくしたてる佐々木。
「いや、そこまでせんでもいいだろ。別に悲鳴あげるくらい普通だし」
「そういう問題じゃない。僕は常に冷静でいたい。だからあの程度のことでいちいち悲鳴を上げるような愚かな自分のことが許せないのさ」
「そうやってムキになってる時点で冷静じゃないと思うんだが」
「ッ?!」
「まぁそんだけ喋れれば舌は噛まなかったみたいだな。よかった」
「う、ううなんてことだ。僕としたことが」
保健室の前まで来ると、その扉を開いた。病院と同じ、どこか無機質な匂いが鼻をつく。
入学して以来、2,3回しか来たことが無いもんだから、どうも入るのに緊張してしまう。
部屋を見渡すと、誰もいないようだった。
「すいませーん。誰かいますか?」
声をかけても返事がない。奥にはカーテンで仕切られたベッドが二床あったはず。
カーテンで仕切られてるから人がいるかどうかはわからない。
「とりあえず佐々木、座っとけ」
俺は置いてあった丸椅子を引き寄せて、そこに佐々木を座らせた。
持っていた鞄を、足元に放っておく。
奥のベッドを見てみたが、誰もいないようだった。だったら鍵くらい閉めとけよと思わないでもないが、何か急な用事で出かけているのかもしれない。
しかし困った。保健室のおばちゃんがいないと、佐々木を診てもらうことができない。
「どうする佐々木? 先生いないみたいだけど」
「だから、たいしたことはないと言っているだろう。わざわざ治療を受けるほどじゃない」
「そうか。まぁどっちにしても着替にゃならんだろ。今日は体育あったし、体操服持ってんだろ?」
「ああ……」
「そりゃよかった。でもパンツの換えは無いんだよな?」
「んなっ?!」
「でもまぁ長ズボンがあれば大丈夫か」
とりあえず、佐々木に着替えてもらって、それから保健室の先生が戻ってくるのを待とう。
電気も点けっぱなしだったし、そのうち戻ってくるはずだ。
「……情けない」
「佐々木、じゃあ俺外出てるから着替えろよ」
「なんてみっともないところを……」
椅子に座りうなだれてぶつぶつと何かを呟いている。
「おい聞いてんのか?」
「え? ああ、着替えればいいんだろ。わかってるさ。ああ、君には本当に世話になりっぱなしだな。本当に自分が情けないよ」
そこまで思いつめるようなことかね。
転んだ友人を介抱するってだけでいちいち大袈裟なヤツだな。
「気にすんなよ。人の世話すんのなんて妹で慣れてる」
「妹? ふふ、そうか、妹か。ふふふ」
自嘲するように薄い笑みを浮かべて佐々木が立ち上がる。足元の鞄を拾うと、奥のベッドに向かい、カーテンを閉め切る。
「じゃあ俺出てるから着替え終わったら呼んでくれ」
「ふん、別に僕みたいなのが着替える程度で君がいちいち退室する必要なんかない。そこで待っていてくれ」
妙にトゲトゲしい声でそう言いやがる。
まぁ別にいいかと、俺は近くにあったパイプ椅子に座り込んだ。さっきまで佐々木が座っていた椅子を見ると、その表面が濡れている。
やっぱりあいつケツ濡れてたんだな。パンツまで濡れてたらさぞかし気持ち悪いだろうに。
カーテンを見ると、ぼんやりと佐々木のシルエットが浮かんでいた。スカートの中に手を入れている様子が見える。
両手のラインがゆっくりと両足を伝い落ちていった。カーテンの下の部分だけは開いているもんだから、そこに佐々木の足が見えた。
その足首に、佐々木が脱いだばかりのパンツが引っ掛かっている。先に上靴を脱いでからにパンツ脱げばいいのに。
佐々木の白いパンツは靴にひっかかっていたが、なんとかそれを抜き取った。
こうやって冷静に考えると、妙にエロいシチュエーションだ。
すぐ近くで女の子がパンツ脱いでるんだからな。しかも脱ぎたてのパンツが今しっかりと見えたぞ。
俺は薄ぼんやりとしたシルエットを食い入るように見つめてしまった。
鞄から体操着を取り出したらしい。佐々木はそれを穿こうと片足をあげる。
長ズボンに片足を差し入れていく。だからお前、先に上靴脱げよと。
そこで異変が起こった。佐々木がバランスを崩したのだ。
慌てたように手を振って咄嗟にカーテンを掴んだようだが、体を支えきれずにカーテンからこちらへと思い切り倒れこんできた。
カーテンの留め金がバチバチと音を立てて外れる。カーテンが保健室の棚にぶちあたって表面のガラスを叩いた。
カーテンを掴んだままだったものだから、変に回転をしながら佐々木の体が倒れこんでくる。どだん、と重い音を立てて佐々木が尻餅をついた。
「…………」
放心したように佐々木がしばらくぼんやりと視線を宙に漂わせる。
俺はというと視線は一箇所に集中していた。
「それにしても、意外とかわいい悲鳴だったな。喋ってる最中だったけど、舌は噛まなかったんだよな?」
佐々木の体がびくっと震えて、さらに俺と距離を取ろうとする。
んなことしたら歩けないだろうと、俺は佐々木の腰に手を回して抱き寄せるようにして距離を詰めさせた。
「し、仕方ないだろう。咄嗟のことだったんだ。ああ、僕だって突然ああいうことが起これば多少なりとも動揺をするよ。それは僕が未熟だったからだ。ああ、未熟だったからこそあんなみっともない声を出してしまったわけだけどね。
なに、もう金輪際ああいうことが無いよう僕は注意を払って生活するよ。例え転ぼうが車に跳ねられようが情けなくみっともない悲鳴を上げたりしないくらいにね」
早口で一気にそうまくしたてる佐々木。
「いや、そこまでせんでもいいだろ。別に悲鳴あげるくらい普通だし」
「そういう問題じゃない。僕は常に冷静でいたい。だからあの程度のことでいちいち悲鳴を上げるような愚かな自分のことが許せないのさ」
「そうやってムキになってる時点で冷静じゃないと思うんだが」
「ッ?!」
「まぁそんだけ喋れれば舌は噛まなかったみたいだな。よかった」
「う、ううなんてことだ。僕としたことが」
保健室の前まで来ると、その扉を開いた。病院と同じ、どこか無機質な匂いが鼻をつく。
入学して以来、2,3回しか来たことが無いもんだから、どうも入るのに緊張してしまう。
部屋を見渡すと、誰もいないようだった。
「すいませーん。誰かいますか?」
声をかけても返事がない。奥にはカーテンで仕切られたベッドが二床あったはず。
カーテンで仕切られてるから人がいるかどうかはわからない。
佐々木は片足をズボンに突っ込んで、膝を立てて、股を開いた状態で固まっていた。
つまり、なんだ、その。
女の子の大事なところが丸見えだった。パンツはさっき脱いだばっかりだからな。
スカートもめくれあがり、下半身を隠すものは何も無い。
蛍光灯に照らされた佐々木の薄い陰毛と、その下にある割れ目もくっきりと見えた。
放心していた佐々木が、にやりと笑う。
「ふふ、どうだいキョン。今度はみっともない悲鳴はあげなかったぞ」
誇らしげに、そう言い放つ。ああそうか、こいつ悲鳴を聞かれたのがそんなに嫌だったのか。プライドの高いヤツだからな。
視線が合うと、急に恥ずかしくなった。
「それより佐々木、前隠せ」
「え?」
佐々木が視線を自分の体に落とした。そして、自分が一体どういう状況にあるのかを悟ったのだろう。
顔が固まった。わなわなと佐々木が震える。
せめてもの情けと、俺は後ろを向いて耳を塞いだ。
「キョン、後生だ。今日のことは忘れてくれ」
俯いたまま佐々木が呟く。
「あ、ああわかった」
帰り道を二人で歩きながら俺は佐々木の代わりに傘を差してやった。
まだ腰が痛むのか、歩みは遅い。
どうやら随分とショックを受けてしまったらしい。大丈夫だろうか。
「その、なんだ。佐々木も女の子だし、ショックなのはわかるけどさ元気出せよ」
「き、君というヤツは……。忘れてくれと言った矢先に思い出させないでくれ」
「え? ああ、すまん。けどまぁ、その、俺が見たことは忘れるから」
「聞いたことも忘れてくれ」
「大丈夫。耳塞いでたから、佐々木の悲鳴なんか聞こえなかったって」
「ほう、耳を塞いでいたのに君は僕が声をあげたかどうかがわかるのかい」
「いや、それはだな」
まぁ耳を塞いでてもあれだけでかい声出してりゃ聴こえるって話で……。
「だから佐々木、深いことは気にすんなって。忘れろ」
「うん、僕はもう忘れた。君が忘れてくれれば問題ない」
佐々木はもう忘れたつもりらしい。話を合わせてやるのも友情というヤツか。
この話題は避けたほうがよさそうだ。
二人で並んで歩く。しとしと降り続く雨が鬱陶しく足元を濡らした。少し風が出てきた。風の向きに合わせて少し傘を傾ける。
車道の端を歩いていても、天気のせいか静かで、人通りさえ少ない。いつもはもうちょっと車が走ってるものだが。
傍に広がる田んぼはすでに収穫を終えていて、寒々しい焦げ茶色を晒している。アスファルトに出来た水溜りを避けながら、のんびりと歩いた。
風がさらに強くなってくる。代わりに雨が殆ど降らなくなっていたので、もう傘を差さなくてもいいかもしれない。
こんな天気だからか、どうにもテンションが上がらない。普段から低いけどさ。
それに二人でいる時はいつも佐々木が何か喋るものだから、俺は何を話していいのかがわからない。
沈黙だけがやけに耳をついて、痛々しい。
「そ、そうだ。その埴輪スタイルもなかなか似合ってるぞ」
「なっ?!」
佐々木はスカートの下に体操着の長ズボンを穿いていた。俺達の学年の色である緑が、スカートから生えている。
「寒い日なんかそれで通学したらどうだ? 暖かいぞ」
「断る。こんなみっともない格好で外を歩くだなんて屈辱だ」
どうやら埴輪スタイルはお気に召さなかったらしい。
「ああ、そうだ。なんで僕がこんな恥ずかしい格好をしなきゃいけないんだ」
「そりゃ転んでパンツが濡れたからだろ」
「キョン。いい加減、忘れてくれないか? なぁ、僕は君を友人と見込んで頼んでいるんだ」
佐々木の目がちょっと怖い。なんていうか今にも切れそうなロープを見てる気分だ。
「あ、ああ。了解した」
「情けない。ああ、本当にみっともない」
お前だって忘れてねぇじゃねぇか。
「お、おい大丈夫か?」
今のコケ方はちょっと痛そうだ。まったく予測してなかったみたいだしな。
「……いたた」
苦痛に顔をしかめ、腰に手をやっている。俺は助け起こそうと手を出して、そこで制止した。
ちょうど、佐々木が膝を立てて両足を広げているもんだから、スカートの中が丸見えだった。
腿の間に見えた白いパンツに、廊下に溜まっていた水が染み込んでいく。まるでお漏らしでもしたみたいだ。
白地に水が染みていくものだから、吸い付いた肌の色がパンツの上に滲んでいく。
「なっ?!」
慌てて佐々木がスカートでパンツを隠した。その顔に焦りのようなものが見えたのは間違いない。
「あっ、いや、違うぞ。たまたま見えちまっただけだからな」
「……ああ、わかってる……。ただ、その、あれだ。見えたことは言わないで欲しかった」
しかし、白か。うん。いいもの見せてもらった。案外シンプルなもの履いてるんだな。
まぁ色っぽいレースの下着つけててもそれはそれでビックリだが。
そうやってぼんやり考え事をしていたが、佐々木が起き上がってくる気配がない。
どうやら一人で立てないらしい。俺は佐々木の手を取って、その体を引き起こしてやった。
「……すまない」
佐々木は腰を手の甲で叩き、痛みが治まるのを待っている。
「大丈夫か?」
「ああ、たいしたことはない」
今のはかなり痛いと思うんだがな。俺もああいう転び方をしたことがあるからわかる。
「腰打ったんだろ? 保健室行こうぜ」
「別にそこまでしなくてもいいだろう……」
佐々木は顔を赤くして、ぷいと横を向いた。
「それにお前、今のでケツ濡れただろ。スカートも濡れてるぞ。着替えたほうがいいって」
「う……ああ」
「負ぶってやろうか?」
「いや、遠慮しておこう。自分で歩ける」
本当かよ。
佐々木は歩こうとしているようだったが、どうも尻が痛いらしく立ちすくんだままだった。
「キョン、ちょっと止まってくれ」
佐々木が立ち止まって辺りを見渡す。俺の他に誰もいないことを確認すると、佐々木は両手をスカートの中にいれ、長ズボンを一気に下ろした。
傍に立っていた電柱に手をかけ、器用に足だけで靴を脱ぐと、ズボンをズリ下ろして脱ぎ去った。
脱いだズボンをぐるぐると丸めながらもう一度靴を履き、佐々木はズボンを鞄の中へ放り込んだ。
「お前なぁ……」
「こんなみっともない格好を誰かに晒すだなんて僕にはもう耐えられない」
「でもお前、パンツ履いてないだろ」
「よく考えてみれば、スカートの中を覗かれるだなんてことは殆どありえない話だ。それともキョン、君は女子生徒のスカートの中をすべて把握しているとでもいうのかい?」
「そりゃ、お前の言うこともわからんでもないが……。見えそうで見えないもんだしなぁ」
かといってノーパンで歩くつもりか。
こいつの美意識はよくわからん。素直にスカートの中にズボンの埴輪スタイルで帰ればいいものを。
その時、強い風が吹いた。さっきから強くはなっているとは思ったが、突風と言ってもいいほどの強い風だった。
スカートが思い切りめくれ上がっていた。一瞬だったが、その中ももちろん見えた。慌てて佐々木がスカートを抑えた時にはもう遅かった。
「……」
「……」
「耳、塞いどいたほうがいいか?」
「その必要は無い。ふ、ふふふ。なんだっていうんだい。君に外性器を見られた程度で、僕がうろたえて悲鳴をあげるとでもいうのかい?」
「あげてたじゃないか」
「忘れろ」
命令形だった。すんません。忘れますからそんな怖い目で睨まないでくれ。
「ふふふ。そうだとも。体を見られたというだけの話さ。肉体的な苦痛なんかまったく無いし、至って問題無い。ああむしろ君が見たいのならこんな体いくらでも見せてやるさ。見るかい? 穴が開くほど見てもいい。もう穴は開いてるけどね」
「落ち着け佐々木」
「僕はいつだって落ち着いているよ。ああ、今だって冷静そのものだ。僕は常にそう在りたいと思っているんだからね。ふふ」
冷静なようには見えないけどな。なんか顔赤いし、目が泳いでるし、瞬きの回数も異常に多いし。
「だから落ち着けって。俺も忘れるから、お前も忘れろ」
「ふ、ふふふふふふ」
怖いよあんた。
「あのさ佐々木。ズボンを折り返せばなんとかスカートの中に隠れて外から見えなくなるんじゃないのか? それなら下にズボン穿いてるとかわからないだろうし」
「……」
佐々木はぽかんとした様子で俺を見つめていた。次第にその顔に俺への非難の色が浮かび始める。
「キョン、君はそれに気づいていて僕にそれを告げなかったのかい?」
「まさか?! 今思い出しただけだって」
「だろうね。僕の大切な友人である君が、まさか黙っているだなんてことは無いはずだからな。ははは」
「そうそう」
佐々木は鞄からさっき脱いだばかりの長ズボンを取り出した。
それを穿こうとわずかに前かがみになった時、また突風が吹いた。佐々木のスカートをめくりあげ、後ろに突き出された尻を顕わにする。
さらにスカートが腰の上に引っ掛かり、まるで自分でめくり上げて尻を誰かに見せ付けているようだった。
「……」
「いや、隠せ。固まるんじゃない」
俺は腰の上にひっかかっていたスカートを戻してやる。さすがに野外でケツ丸出しはまずいだろう。
「なんだかもうどうでもよくなってきたよ」
「こういう運の悪い日だってあるさ。元気出せ」
段々とかわいそうになってきた。
佐々木はスカートの下にズボンを穿き、裾を折り返してスカートの中に納めた。これでパッと見ならスカートの下にズボンを穿いているようには見えまい。
「よかったな。これで一件落着だ」
「なんのことだい? 今日は何も無かった。わかるね?」
無意味にきらきらとした瞳で俺をじっと見てくる。
こうやって見てると、こいつの顔立ちの可愛さがよく見てとれて少しだけ胸が弾んだ。
そんな可愛い女の子のパンツどころか、その中身まで見てしまったんだから、佐々木には悪いが俺の運勢は最高のようだ。
神様がいるなら感謝したいね。信じてないけど。
「キョン……。僕は忘れろと言ったはずだよ。どうして顔が赤いのかな」
無邪気な瞳で小首を傾げ、じっと尋ねてくる。
「いや、気のせいだろ。なに、たいしたことじゃない」
「そうか、ならいい。さて、僕はもう行くよ」
「大丈夫か?」
「はぁ? 何を言ってるんだいキョン。いつもの帰り道を一人で帰るくらいは普通だろう。幼稚園児でも出来ることだ。それともなんだい、君は僕を幼稚園児以下だと判断しているのか? 心外だね」
「そうじゃなくて、痛めた腰とかもう大丈夫なのか?」
「腰? なんのことかな」
「……」
何がなんでも無かったことにするらしい。
「ああ、まぁそんじゃ気をつけてな。家帰ってゆっくりしろよ」
「じゃあキョン。またね」
案外しっかりとした足取りで佐々木が去っていく。横断歩道を渡って、住宅街へと消えていった。
どうやら打ち付けた腰の具合はもういいらしい。まぁそれならそれでいいんだけどさ。
あいつ、妙に強がりなところがあるから心配だ。
住宅街へ入る角を曲がって消えていくその姿を見送って、はたと気づいた。そういや、あいつの傘借りっぱなしじゃないか。
俺は片手に持った濃紺の男性用傘が、佐々木のものであることに思い至った。
雨が止んだとはいえ、あいつが忘れていくとはな。
今ならすぐ追いつくはずだ。
俺はそう思って走り出した。道路から住宅街に入って佐々木の姿を探す。
すると、民家の塀に手をつけて目を閉じ、腰をさすっている佐々木がいた。その表情は、難問が解けなくて苦しんでいる数学者のようだ。
なんだよお前、やっぱりまだ痛いんじゃねぇかよ。
「おい佐々木」
声をかけるとびくっと体が震えた。どうやら俺がここに居るのがよっぽどおかしかったらしい。
「ど、どうしたんだいキョン」
慌ててまっすぐ立つと、佐々木はさも余裕でございとばかりに微笑みを浮かべた。こいつの強がりもここまで来ると金賞ものだな。
「やっぱお前、まだ腰痛いんだろ」
「なんのことだかわからないね。いい加減にしてくれ」
「そりゃこっちのセリフだ馬鹿」
恥ずかしい目に遭ってショック受けるのはわかった。けど、体が辛い時くらい誰かに頼ったってバチは当たらないぜ。神様が偏屈でない限りはな。
俺は佐々木に近づくと、背を向けて負ぶされと言った。
「キョン、君は何か勘違いをしているよ。君に背負われるいわれはまったくない」
「ほう、じゃあお前はまさに健康だと言うのか。だったらちょっとランニングでもしようぜ」
「……キョン。だから僕は」
「やかましい。グダグダ言ってると無理矢理抱え上げるぞ」
佐々木に近づいて、膝に手をかけようとする。
「わかった! 待ってくれ。わかったから」
「じゃあ素直に負ぶされよ。まだ腰痛いんだろ」
「うん、まぁ……多少は。でも迷惑じゃないかい?」
「迷惑なわけあるか馬鹿。ほら」
背を向けてかがむと、ゆっくりと佐々木が俺の背に体重をかけてきた。俺は佐々木の両膝の下あたりに手を差し入れて、ゆっくりと佐々木の体を持ち上げる。
鞄は佐々木に背負ってもらい、傘も佐々木に持ってもらった。
「重くないかい?」
「いや、全然。妹と大差ないな」
「……また妹さんか」
背の上で佐々木が小さく息を吐いたのがわかった。その意味はよくわからんが、とりあえず歩き出すことにした。
佐々木は遠慮してるのか、妙に体を離そうとするので余計に疲れる。荷物を持つのと一緒で、もう少し近づいてもらったほうが楽なんだがな。
そう告げると、佐々木がゆっくりと俺の肩に手を回してきた。
「君がこっちのほうが楽だというのなら仕方が無い。君に従うよ」
「そうしてくれ」
背負いなおすように、俺は軽く膝を伸ばして佐々木の体を揺らした。そうすると背負うのも多少楽になる。
「ううっ」
「あっ、すまん。もしかして痛かったか?」
揺らしたせいで腰が痛んだのだろうか。
「いや、違う。全然違うから気にしないでくれ。ほら、前を見て歩いてくれないか」
「ん、ああ。大丈夫なら別にいいんだけど、お前、痛い時はちゃんと痛いって言えよ本当」
「わかった、わかったから振り向かないでまっすぐ歩いてくれ」
雨が上がったかと思えば、今朝からずっと空を覆っていた雲が割れていくのが見えた。
金色の光が灰色を切り裂いている。ああ、もう夕焼けの時間なのか。随分早くなったもんだ。確かに夏至と冬至なら冬至のほうが近いしな。
雨上がりの空が広がっていく。山脈へ流れる雲は早く、現れた天頂の空は青い。けれど、空の端は地平から炎が沸き立っているかのような赤色を吹き上げていた。
支援とか必要なんだっけ?
「おお、綺麗だな」
「……うん」
佐々木の住んでいる地域が微妙に海と山が近いのもあって、住宅街へ向かうと段々と上り坂が多くなってくる。まぁおかげで夕日を見下ろせるんだけど。
「なぁキョン。疲れただろう。もういいよ」
「まだ大丈夫だぞ」
「……僕もずっと背負われてるとさすがに苦痛だからね。そこの公園で一休みしないか?」
佐々木が指差した辺りに、切り立った崖に臨むような公園があった。ちょうど都合よくベンチもあるみたいだったが、雨に濡れてて座れそうにはないな。
俺は公園に入ると、佐々木の体をゆっくり下ろした。
「大丈夫か?」
「ああ、大丈夫さ。本当に、君がそこまで心配する程じゃないよ」
夕日を受けた佐々木の顔が赤く染まっていた。なんでだろう。雨上がりの夕日ってのは、普段の夕日より色が濃いような気がする。
別に変わらないと思うんだけどな。
佐々木はゆっくりと公園の崖側に歩いていった。そこにある柵に捕まって、落ちていく夕日をじっと眺めていた。
俺も釣られてその隣に立つ。坂が多くて嫌な街だが、こうやって高い場所から景色を見下ろせるのはなかなかいいものだ。
「なぁ佐々木。お前さ、情緒が欠落してるとかなんとか言ってたけど、夕日見て綺麗だと思うんだったら別に欠落なんかしてないんじゃないのか?」
「……さぁ、どうだろうね」
「なんかで読んだことがあるぞ。科学じゃ人が何かを綺麗だとかそう思う気持ちは説明できないとかさ。でも思うもんは仕方ない。だからまぁ情緒的だとかなんとかいって、大昔からありがたがってるんだろ。お前もそれでいいだろたまにはこうやってのんびりするのもいいぜ」
「そうかもしれないな。時には、理性に頼らず心に任せるのもいいかもしれない……」
「ああ、そうしとけ」
「でも生憎僕の性分じゃないのさ。こういうのも悪くはないけどね。だから、ほんの時々でいいよ。そうだな……その時、君が今みたいに隣にいてくれたら嬉しいかな」
早い雲と、流れ続ける強い風が佐々木の短い髪を揺らした。
佐々木は片手で髪を抑えながら俺を見て、普通の女の子のように微笑んだ。
終わり。
368と372で、二重投稿になってしまった。
そこだけ飛ばしてください。
これはGJ
もっとやってくれ
>>380 >>368>>372は他の投下してるIDと違うな。2つ使ってんのかな?
一瞬佐々木スレにいるような錯覚がして「ここPINKじゃねぇぞ」って思ったけど
間違ってるのは俺の方だったw
会話が多かったからだろうか、長くても読みやすかったです
GJ!!ダイジェストでもいいから佐々木サイドも読みたいです
GJ!
キョンはこの日で運を使い果たしたなw
>>382 ここには
>>291みたいに投下中の作品をコピペする奴が居るみたいだ。
いつもの粘着荒らしクンだよ。気にしない方がいい。
GJ!これはタイトルが欲しいw
佐々木語りが上手いな。
襲ってくれよキョン!
原作テイストが強めで良いなGJ!
タイトルは
1佐々木のアソコ丸見え。
2佐々木のマンコ丸見え。
3見えちゃったよ佐々木さん。
4見たのか?見せたんだよ!佐々木さん。
5佐々木×キョン。
6ある日の禁止事項。
7二人の秘め事。
8尻餅そして…丸見え…。
よかったよ〜
タイトルは「佐々木さんの恥辱」を希望します。
age
なんというラッキースケベ
いいな、キョン×佐々木
古泉×みくるをみたかったり・・・
投下します
>>188の続きです
一応TS。キョンの母がしゃべります。苦手な方はスルーして下さい。
>>201でお義妹ちゃんと見える方は変態さんです。普通の方はお義姉ちゃんと見えます。
…はい、ごめんなさい。では、いきます。
モテ男の女型化
「な、長門さん!今回はさせませんよ!」
朝比奈さんがカバディの様なポーズで俺と長門の間をシャカシャカ動いてる。
非常に愛らしいんだが、何してるんだろう。
どうしました、朝比奈さん?
「え?えっと…キョン君がまた変身するんですよね?そしたらまた長門さんが噛んじゃいますから!」
どうやら俺を守ってるつもりらしい。それにしても、変身…。うん、まあ変身だな…
「今回涼宮ハルヒは、今のあなたで女になることを望んでいる。だから意識はそのまま。噛む必要はない。」
ということは、ハルヒの扱いになれてる俺で動けるわけか。
子供のときより楽に解決できそうだな。
「万が一があるかもしれない。噛んどく?」
「ダ、ダメです!」
朝比奈さんはまだカバディをしている。
噛まれたことあるんだから痛くないことは知ってるはずなんだが、ここまでされるとさすがにな。
「いや、いいよ。噛む必要ないんだろ?長門にも負担かけたくないしな。」
「……そう。」
若干悲しそうな表情してるな。ここは…
「ありがとな、長門。」
笑顔でそう言って頭を撫でてやる。この撫で心地さはなんだろうね。癖になりそうだ。
「やっぱり長門さんはズルイですぅ!」
「まあまあ、そんなことよりも、」
そ、そんなこと!?と涙目なってる朝比奈さんを尻目に
「まずは女性になる前にご家族に説明したほうがよろしいかと。」
古泉が間に入ってきた。
そうだな。事情は知ってるとはいえ、いきなり女が帰ってきたら戸惑うだろう。
「長門、あと何分ある?」
「約15分。」
あと15分か。ここから家まで5分かからないけど一応急いだほうがよさそうだな。
「よし、帰るか。みんなも来てくれるだろ?」
「ええ。」「…そう。」「見張らないと!」
一名ほど違った意図を感じるが、気にしないでおこう。
―――――
予定通り家に着いたな。良かったおふくろも居る。
さっさと済ませちまおう、みんな入ってくれ。
「ただいま。おふくろちょっと話が…」
「おじゃまします。」「ただいまです。お義母さま。」「!?ただいま。お義母さん。」
さらに一名脱線した気がする。
「おかえり。あら、いらっしゃい。一樹君お姉さんが恋しくなった?」
まだそんなこと言ってんのかこの人は。それよりハルヒのことで話があるんだよ。
「また子供になるの?そっちの方がかわいいから大歓迎よ。」
「親としてどうなんだそれ。そうじゃなくてな…」
言い出すと共に服が破け素っ裸になり、いろんなものが無くなったり出てきたり増えたり減ったりして服が再構成された。
「ハニーフラッシュ…じゃなくて、まあこういうことだ。」
おふくろは固まってるな。長門は気まずそうに俯いてる。古泉も朝比奈さんも顔を赤くして俯いてる。
みんな後ろにいて良かったが…ハルヒよ、変な演出加えてくれるな。
しかし長門さん?もう少し時間あったんじゃないのかな?
「涼宮ハルヒは不思議がいっぱい。」
確かにな。でも目を見て話そうな。
長門によると、俺が女に生まれ順調に育った場合の姿らしい。
男で良かった。俺から見るといろいろきつい。ていうよりも何か気持ち悪い。
「自分の女性姿ですからそう思うのも無理ありませんが、とても魅力的ですよ。」
気持ち悪いこと言うな。フォローしてるつもりか?
「キョン君本当に綺麗…なんだかちょっとくやしいです。」
朝比奈さんはいつもやさしいですね。でも正直に言っていいんですよ?
「あんた女に生まれたほうが良かったわね。」
どういう意味だ。
「………納得いかない。」
不意に今までジッと俺を見つめていた長門がつぶやいた。
何かおかしなとこがあるのだろうかと自分をまさぐってると、ガッと右の胸を掴まれた。
「………治まりきらない。」
長門さん。相変わらずの握力ですね。でもね?このままだとモゲルと思うんだ。よくわからんが勘弁してくれたらありがたい。
「ただいま〜!あっ!みんなどーしたの!?」
ちょうど妹が帰ってきて長門が離してくれた。おかえり妹よ。そしてナイスだ。
「え?おねーちゃんだれ〜?」
5才の俺と同じ口調じゃないか。…来年中学生だよな?
「この人はキョン君ですよ。」
「え!?キョン君??」
「そーだ。ハルヒによって今度は女になっちまった。」
説明すると同時に妹は飛び込んできた。もう少し落ち着いたらどうだ?
「だって〜キョン君きれーなんだもん。それにいい匂いがする〜。」
「わかったから離れろ。いつまでも玄関にいてもしょうがない。」
抱きついてフガフガしてる妹を引き剥がし、みんなを促し居間に向かった。
「えっと…先日とお、同じように…その、機関で…」
「ウフフ♪」
おい、おばさん。そんな熱い瞳で古泉を見つめるな。古泉がしゃべりにくいだろう。
そして俺も寒気がする。
「と…ということですので、彼はまた家訓によって親戚の家に行っているということで、
あと学校のことはこちらで編入、というより交換留学生のような形で工作したのでご安心を。」
いつの間に工作したんだ?…って!俺これで学校行くのか!?
「あたりまえじゃない。唯でさえ成績悪いのにサボりなんて許さないよ。
そんなことしたら有無を言わさず予備校にぶち込むから。」
くっ…卑怯な…
「制服等は明日の早朝に持ってきますので今日のとこはこれで失礼しますね。」
「お、おい。制服って…」
「ええ、女生徒のです。楽しみにしてて下さいね。あ、後で機関の者がサイズを測りに来るのでよろしくお願いします。」
「わかったわ。一樹君何から何までありがとね。今度お姉さんお礼しなくちゃね。バチコーン♪」
ウインクすんな!バチコーン言うな!!あんたほんとダメだな!!!
「で、では…僕はこれで失礼します。」
ハァ…女の制服…これはきついな。
「うーん、それじゃわたしも帰りますね。」
あ、長門も朝比奈さんも結局やることがなかったな。
申し訳ないな。なんか無理に来てもらったみたいで。
「いいんですよぅ。それにキョン君の家ならいつでも来ちゃいます!」
朝比奈さんは本当に心が広いね。
「あら?もう帰るの?せっかくだから一緒に晩御飯でもどう?しまった一樹君帰すんじゃなかったわね…」
「あんま無理に引き止めるなよ。もう時間も遅いんだ。」
「いいじゃない。将来、娘になるかもしれない子と料理してみたいし。」
この前からお約束なことを言ってるが、ツッコンでも無駄なんだろう。
「わかった。お義母さん。朝比奈みくるは帰宅する様なので私が残る。カレーが得意。」
長門の純粋さに心うたれるね。しかしレトルトって得意のうちに入るのか?
「言い回しがズルイです、長門さん!わたしも残ります!」
う〜ん、最近この二人仲良いな。見てて微笑ましい。
「あらあら楽しくなってきたわね。それじゃ台所にいきましょうか。」
「おかーさん!キョン君はわたしのだよ!」
軽くにやけていた俺一人残してみんな台所へ消えていった。若干寂しい気持ちになるが、
まあ、いいか。うまそうなもんが食えそうだしな。
しかし、明日どーすっかなぁ…
―――――
「長門さんはいつもずっこいですよぅ。わたしだって…」
さっきから朝比奈さんがなにやら長門に言ってるが、長門は完全にスルーしてる。
しかし今の俺には気にかけてる余裕がない。羞恥心でどうにかなりそうだ。すごく現実逃避したい。
「それにしても驚きました。パジャマ姿の朝比奈さんと長門さんがいるとは予想外でしたからね。」
そういえば朝、制服を持ってきた古泉がポカーンと口を開けて固まったのはなかなか愉快だったな。
「おふくろが無理矢理泊まらしたんだよ。夜遅くに女の子を一人で帰せないってな。」
そこは俺も同意して二人は妹の部屋で寝ていたんだが、
「長門よ、いつの間に俺のベッドに入ってきたんだ?起きた時さすがにびっくりしたぞ?」
今は女になってるから良い…いや良くはないが、俺だって思春期まっさかりだ。いろいろもてあます。
「そーですよ!一緒のベッドで寝るなんて…恋人同士がすることです!!」
朝比奈さんが叫んだ。やっぱり朝比奈さんも長門を大事に想ってるんだな。こういうやさしさはなんだかうれしい。
「なら問題ない。」
「なにがですか!?」
「彼は一昨日、女の宇宙人がいたら結婚すると言った。私に異論はない。よって結婚できる年までは恋人同士と言える。」
…純粋過ぎんぞ、長門。子供の言うことを真に受けちゃいけません。
「なら、わたしだってお嫁さんです!一緒のベッドで寝る権利があります!」
朝比奈さんもムキにならないで下さい。
「早い者勝ち」
「やっぱり長門さんは卑怯です!」
あ〜もういいや。
二人のやりとりを聞き流しながら、店のウインドウに薄く映る自分を見た。
どう見ても女だな。でも自分で見るとやはり違和感がある。なんか気持ち悪いし。ほんと男に生まれて良かった。
「そんなことないですよ。先日も言いましたがとても魅力的です。そこら辺の女性では歯が立たないでしょう。」
「どこがだよ。女にしたらでかい方だし、目も細い。それにこの髪型だと武士にしか見えんぞ。」
女になったとき髪が腰のあたりまで伸びた。重くて邪魔くさかったのでおふくろにばっさり切ってもらおうとしたんだが
「ダメよ。ポニーテールにできないじゃない。」と却下された。遺伝ってすごいな。
「そーですね…僕から言わしてもらいますと、スラッとして背が高く、細いわりにスタイルが良い。
目が細いと言いますが、そのきつめの目も魅力の一部です。妖艶とも言えますね。そんな目で微笑まれたら男性なんてイチコロですよ。もちろん髪型も良く似合ってます。
あとは、口調を女性らしくすれば完璧ですね。」
「百歩…いや千歩譲っておまえの言う通りだとしてもな、俺のこころは漢だ。制服だけでこんなに恥ずかしいんだ、女口調なんかできるか!」
「それは残念です。しかし今の口調でもそれはそれで…」
クソッ!このニヤケ顔楽しんでやがる!どうにかしてやり返せないだろうか。
…そうだ。多少ベタだが
「さっきスタイルがどうとか言ってたな。ちょっと触ってみるか?なに、男同士だ。気にするな。」
自分で胸を揉みながら古泉に迫る。ほんとに触ってきたら痴漢の称号を与えてやろう。
…しかしほんとにでかいな。朝比奈さんよりは小さいと思うが。
……っていかん。自分で自分の胸を揉んでモンモンとしてしまった。
「遠慮しときましょう。あとが怖そうだ。」
涼しい顔して言いやがった。なんか自滅した気がするな。
「私が触る。」
長門が瞬間移動してきた。よし長門落ち着け。なんか知らんが落ち着け。
「……やはり納得いかない」
言うと同時に両手でわし掴みされた。
オーケーだ長門、これは引っ張るものじゃない。今度こそモゲルと思うぞ?
「有希なにしてんの?あら、古泉くんにみくるちゃんもおはよう!!朝からめずらしいわね!」
助かった…おはよう、ハルヒ。朝から元気だな。
「え?あんた誰?なんであたしの名前知ってんの?なんかキョンみたいなしゃべり方ね。」
しまった!つい普段通り接してしまった。
「彼女は彼の親戚の方ですよ。なんでもまた家訓によってかわりに来たみたいです。」
「また…キョン休みなの?なによ…あたしに知らせないで急に…」
いきなりハルヒのテンションが落ちたな。よし今のうちに機関が用意してくれた名前で自己紹介しとこう。
「あいつからおまえのことはよく聞いてるよ。短い間だがよろしくな。」
できれば今日中に終わらしたいが。
「……あんたキョンの代わりなのよね。じゃああんたもSOS団の一員よ!キョンがあたしのことなんて言ってるか言う義務があるわ!
放課後団室に来なさい!キョン子!。」
またテンション上がってきたな。相変わらずよくわからん奴だ。それよりも
「なんだキョン子って。さっき名前言ったろうが。」
「ほんとキョンみたいな口調ね。キョンの代わりだからいいじゃない。それともキョン美がいい?」
「アホか!それならいっそキョンでいいじゃないか!」
「それはダメね。キョンはキョンだけよ。他の誰でもないわ。」
強引だな、おい!
こうなると自分の意思を変えないだろうな。しかしこのままじゃちょっと悔しい…
「じゃあしょうがない。俺はおまえをハルハルと呼ばしてもらおう。」
「な!?ダメよ!それであたしを呼んでいいのは一人だけなの!」
なんだ?急にあたふたしやがって。母親にでも呼ばれてるのか?
「と、とにかく!あんたはキョン子よ!!」
「ハァ…わかったよハル子。」
「ハルヒ!!」
やれやれ
―――――
朝のホームルームで岡部が簡単に事情を説明し、自己紹介をした。
クラスの奴らは男言葉に多少面くらってたがハルヒの蛮行になれてるせいかあんまり気にならないようだ。
さて、一時間目は体育か。ハルヒが着替えだす前にはやく出ないとな。
おい谷口なにボーとこっち見てんだ?行くぞ。
「え?どこへ?…ハッ!すまん、キョンよ。とうとう俺の時代が来たようだ。先に大人の階段上らせてもらうぜ。
おまえが帰ってきた時には親戚だな…」
何をぶつぶつ言ってんだ?先行ってるぞ。
「ちょっとキョン子!着替え持ってどこ行く気?女子はここで着替えよ!」
…そーだった俺もここで着替えなくちゃならんのか。これはいろいろまずいんじゃなかろうか。
「残念だったね、谷口。キョン子さんは着替え場所を勘違いしてただけみたいだったね。」
国木田…おまえまでキョン子言うか。
「ふふ…甘いな国木田。よく考えてみろ。なぜ俺の名前が谷口とわかったか。それは事前に俺のことを調べていた…
つまり俺に惚れているということなのだ!」
こいつ、脳に虫が沸いてんじゃないのか?まあ一応この寒い誤解を解いておこう。
「あーすまんすまん。キョンからクラスに谷口というとんでもないアホでスケベがいると聞いてな。
こっちを変な目で見てきたからすぐわかった。着替えを見られたくないから連れ出そうとしただけだ。」
「…だそうだから、これ以上変態にならないように早く教室から出よう。」
そう言って国木田は固まってる谷口を引きずって出て行った。ふむ、完璧だ。
それよりもここからが問題だな。
って!みんなもう着替えはじめてる!これはちょっと刺激が…
「あんた何モジモジしてんの?さっさと着替えなさい!なんなら手伝ってあげるわよ…うりゃぁぁあ!」
ハルヒに返事をするまえに脱がされた。こいつ朝比奈さんで慣れてやがるな。
て言うかやめろ!恥ずかしいだろ!
「うわ!でっかい!みくるちゃんには劣るけど揉みごたえがあるわね。」
アホか!揉むな!おい、そんなダイレクトに……そ、そこ…は…こねく…りまわ…すとこじゃ…ハァ…ァ…ん…
「………」
「…ハ…ャ…ゥン…ってアホ!何真顔で揉みしだいとるか!!」
「ハッ!?あたしったら何を?キョンと触れあってるようで…キョン子侮れないわね…」
何を言ってるんだ、こいつは!
しかし危なかった…男で生まれ育った約17年間の大切な何かが壊れるとこだった。
「す、すごいのね…私も…」
ん?なんか視線が…
「キョン子ちゃん…」「少しだけでいいから…」「お、おねえさま…」
真っ赤な顔をした阪中を筆頭に下着姿の女子達がワラワラと…なんか怖いぞ!
「おい、ハルヒ!なんとかしろ!おまえのせいでみんな妙な術にかかってるぞ!」
「え!?わ、わかったわ!あんた達止まりなさい!キョンはあたしのよ!」
「間違えてる!いろいろ間違えてるから!!なにがわかっただ!ハル子!」
「え?え?……ハルヒよ!」
「あーもう!俺は逃げる!先に行ってるからな!」
「ちょ、待ちなさい!キョン子!」
なんで体育の前に疲れないといかんのだ…
―――――
授業はバスケだった。
どーやら女で育った俺は運動神経が良いらしくハルヒと互角以上の対戦をしていた。
「やるわね、キョン子。でもこれを二本とも決めればあたしのチームの勝利よ!」
「そうだな、でも気は抜かないことだ。時間はもう少しある。」
「ふん!いくわよ!」
ハルヒは一本目を決めた。これで同点。
「あ!?」
二本目を外しやがった。
すかさず俺は背の高さを生かしてリバウンドをとる。
「阪中!いくぞ!」
俺は阪中にパスすると全力で前へ走る。「待ちなさ〜い!キョン子〜!」と追ってくるハルヒが少し怖い。
「はいなのね!」
阪中から絶妙なパスを受け、そのまま俺はジャンプをしながら半回転して後ろ向きにダンクをした。
正直気持ちいい。まあゴールの高さはみんなが楽しめるように少し低くしてるがな。
「何格好つけてんのよ〜!」とハルヒが叫んだと同時に試合終了。
悪いなハルヒ。たまにはおまえに勝ちたいからな。
しかしダンクってどうよ?俺本当に女に生まれたほうが良かったんじゃないか?と軽くショックを受けつつ阪中らチームメイトに抱きつかれてた。
うむ、やわらかい。
授業が終わり着替えの時また襲われたりしたが、あれよという間に昼休みである。
「あんたずっと寝ていたわね。」
「勉強は得意ではないらしいからな。」
「なによ、らしいって。」
女の俺は男より馬鹿みたいだ。谷口以上だろう。なんせちょっとした漢字がわからなかったりする。
英語の教師が喋ってることも長門の高速言語に聞こえ、板書もたまに読めないからな。
やっぱり男に生まれてよかった。
「それよりも、おまえ食堂に行かないのか?昼休み終わっちまうぞ。」
「パンがあるからいいわ。それにあたしが居なくなるとあんたも困るでしょ?」
体育が終わってから妙に女子達がまとわりついてくる。
それをハルヒが牽制してくれてるので助かってはいるのだが少し残念なのはなぜだろう。
「なに?あんた、ゆりんゆりんな人なの?アブノーマルもほどほどにしときなさい。」
「なんだよ、ゆりんゆりんって。俺はいたってノーマルだ。」
しかし今体が女である以上そうなってしまうのか?
いかんな。やはり早急に男に戻らなければ。
「そんな男言葉で言われてもねぇ。あんた彼氏とかいないの?」
「そんなものはおらん。」
いてたまるか。
「ふ〜ん、ま、どうでもいいけど。」
じゃあ聞いてくんなよ。
「どーでもよくないのね!大事なことなのね!」
阪中がいつの間にか隣にいた。なんだ?女ってのは気配を消せるのか?どうでもいいが目が少し怖いぞ。
「女の子同士なんて不純なのね…でもキョン君の周りはいっぱい美人さんがいるし…キョン子ちゃんなら…」
「ん?なんだって??」
「へ!?あ、あの…キョン君もいいけどキョン子ちゃんもね!って言ったのね。」
なんだその正月のカレーの様な扱いは。意味がわからんぞ。そしてさりげなく胸を揉むな。
「はいはい阪中さん。キョン子にそっちの気はないわ。それとこの胸はあたしが揉むためにあるのよ。」
「アホか!おまえも揉むな!」
また真顔になって迫ってきたので俺は屋上へと避難した。
ふぅ…しかし女の俺のスペックがだいたい理解できたな。だからどうしたって感じだが。
―――――
くだらないやりとりで昼休みは終わり、午後の授業は睡眠という時空魔法を使って今は放課後である。
「さあ!キョンがあたしの事をなんて言ってるのか事細かく説明しなさい!」
ハルヒは授業が終わった瞬間にまだ夢の住人だった俺を引きずるように文芸部室にひっぱりこんだ。
おまえはもうちょっと落ち着け。拉致された気分だ。
「落ち着いてるわよ!ただ少しキョンがあたしのことどんだけ好きなのか早く聞きたいだけよ!」
いつ好きかどうかの話になったんだ?何をテンパってるんだか。
「そう急かすな。別にたいした事は聞いてないぞ。」
「いいから!」
そう言われてもな…そもそも何も聞いてない。俺自身だし。適当に言っとくか。
「そうだな…無駄に行動力があって周りを疲れさす。特に俺が。と言ってたな。」
「…え?ほんとに?」
ハルヒが不安そうな顔して見上げてきた。
本当の事だがちょっと意地悪だったな。
「でも、そのおかげで今俺はそこら辺の奴らよりずっと楽しい高校生活を過ごせているから、ハルヒには感謝している。だとよ。」
これも本当だが、なにやらこっ恥ずかしいな。
「あ、あたりまえだわ!団長に感謝するのは団員として当然よ!」
「そうかい。良かったな。」
「そ、それで…他には?」
「他?なんだ他って。」
「だから!まだ何か聞いてるでしょ!もっとあたしがこうした方がいいとか、ああしたら可愛くなるとか!」
「何言ってんだ?「こう」とか「ああ」とか言われてもわからんぞ。」
だいたい可愛くってなんだよ。…いやポニーには…っていかんいかん。
「何か聞いてるんでしょ!?もったいぶらずに言いなさい!」
「なにそんな熱くなってんだよ。もう何も聞いてない。」
「あたしはいつも熱い女よ!隠してたら為にならないわよ!」
あーもう、誰かこいつをなんとかしてくれ。
「私のことはなんて言ってた?」
おわ、長門いつからここに居たんだ?頼むから気配を消さないでほしい。心臓に悪い。
「最初からいた。彼はなんて言ってた?」
「い、いや…長門?俺は、その、おまえ知って…」
「なんて言ってた?」
なんだこのプレッシャーは?しかしなんか言っとかないと大変なことになりそうだ。なぜか俺の胸に手をかざしてるし。
「え、えーと…なんでもこなせて完璧なんだけど、どこか危なげで守ってあげたくなる存在…かな?」
「…そう。」
ふぅ…どうやら正解だったようだな。
「ちょっと!あたしにはそういうこと言ってないの!?」
「それよりもわたしには何かないんですか!?」
「みくるちゃん!?」
いつの間に入ってきたんだ?古泉も居るし。て言うかハルヒ以外俺が女に変わってるだけって知ってるだろ。
俺にどうしてほしいんだ?
「涼宮さんや長門さんばかりズルイです!わたしも聞きたいです!」
朝比奈さんそんなに迫られると、どうにかなってしまいそうなんですが…
俺が男って忘れてるんじゃなかろうか。
それと最近この方から「ズルイ」ばっかり聞いてる気がする…うぉ!さらに密着してきた。
「わ、わかりました。えーと、ドジっ娘なんだけど心を癒してくれる天使の様な人…って。」
「え?そんな…ふぁぁ」
「な!?あ、あたしにもそういうのあるんでしょ!?言いなさい!!」
「私にもまだある気がする。」
古泉!ニヤケてないで助けろ!
「いえいえ、僕は彼から何も聞いてないので。」
…もう勘弁してくれ。
この後も三人娘から質問攻めにあった。しかしこれでハルヒも満足したろう。今日中には戻れそうだな。
―――――
透き通るような青い空、やわらかい日差しが散歩にはもってこいの休日の午後、俺は古泉と並んで歩いていた。
まぁいつもの不思議探索な訳だが、
「おい、ほんとにこれで戻るのか?」
「いえ、これは森さんがどうしてもと言いまして。関係ありませんよ。」
今俺は値段が張りそうな白のワンピースを基調とした、森さんプロデュースの格好をしている。
ついでに言えば化粧までしている。つまりまだ俺は女だったりする。
「な!?なんだと!おまえ昨日の夜電話でそろそろ戻りましょうかって俺の神経を逆なでするようなこと言ってたじゃないか!
女らしいとこを見せればいいんじゃなかったのか!?だから我慢して化粧までしたのに!と言うか戻れる方法があるならさっさとやっとけよ!」
「まあまあ、その方法も確実とは言えませんし、十中八九閉鎖空間が生まれますから今まで黙っていたんです。しかし涼宮さんは女性のあなたが気に入ったらしく
なかなか戻りそうな様子ではなかったので森さんに相談したところ明日まで待ってくれと頼まれたんです。」
「俺を女装させたいが為に!?そこは断ってくれよ!」
「あなたはあの微笑の前に逆らうことができますか?」
「……俺が悪かった。」
「いえ、わかってもらえて幸いです。」
朝、森さんに化粧される時に「さすがにそれは…」と断ろうとしたら「しないとダメです。」
と虎も逃げ出すようなオーラで微笑まれたからな。
「しかしな、今はおまえといるからいいが、午前朝比奈さんとパートナーだったろ?びっくりするくらいナンパされてな。
ウザいったらなかったぞ。」
「それだけあなたと朝比奈さんが魅力的だということですよ。」
「アホか。はぁ…しかしモテ期ってのは人生で三度あるっていうじゃないか。その大事な一つで男からモテるってどうなんだ?
そもそも戻ったあとで俺にモテ期ってくるのか?」
「…それ、本気で言ってるんですか?」
「あたりまえだ。おまえみたいなツラがいい奴にモテ期もなにもないだろうがな。」
「ふぅ…これは手に負えませんね。」
古泉は肩を竦めながら溜息をついた。
溜息をつきたいのは俺のほうなんだがな。所詮ハンサムボーイにはわからないことなのさ。
「やあキョン、こんな短期間でこんなにも変わるとは、さすがに驚きを隠せないね。」
あても無くブラブラしてたら突然声をかけられ、振り向くと佐々木が微笑んで見ていた。
なんで俺ってわかったんだ?
「わたし達の情報網だってすごいんです。侮っちゃいけないのです!」
橘もいたのか。古泉は相変わらずニヤケ顔だからほっといても大丈夫だろう。
「俺が女として生まれたらこうなってたらしいぞ。きついだろ?ほんと男で良かったよ。」
「あれ?私のことはスルーなのですか?」
「男で良かったのは同意って言うか男でなくちゃ困るね。それはおいといて今の君はそこら辺の女優より格段に綺麗だよ。」
「そこら辺に女優はいないと思うがな。あんまりからかわないでくれ。」
「僕は正直に言ってるよ。キョンはあらゆる意味でもっと自覚したほうがいいね。」
何を自覚しろってんだ。
「僕っ子と俺っ子…この組み合わせは最強なのです…しかも片方はお姉さま系…
佐々木さん!!やっぱり涼宮さんの力は佐々木さんのほうが相応しいのです!そしてその力でキョンさんと姉妹に!」
「しかし今のキョンが古泉君といるとまさにベストカップルだ。なんだか妬けちゃうよ。」
「あれ?佐々木さんもスルーなのですか?」
「それは光栄ですね。」
「気持ち悪いこと言うな!」
橘が不穏なこと言ってたが佐々木が空気を読んでくれたようだ。だいたい俺っ子てなんだよ…
「―――――あなたは―――嫁……なの?―――――」
ぅお!いたのか昆布娘!
「―――それとも―――――私が……嫁?―――――」
相変わらず何を言ってるのか全然わからない。佐々木も大変だなこんな連中と一緒だと。
「そうでもないな。なかなか愉快な人達だ。少なくとも退屈はしないね。
それでは僕らは用事があるのでこれで失礼するよ。次会うまでには男に戻ってくれてるとありがたいな。
僕には女性を愛でる趣味はないからね。それじゃ。」
「あ!待ってください、佐々木さん!女同士も案外悪くないのですよ!」
なにやら佐々木が爆弾発言をした気がするが橘のせいでよく聞き取れなかった。
「……さて僕達もそろそろ戻りましょうか。」
「そうだな。」
佐々木達を見送りつつ俺達は駅前へと戻った。
―――――
「先ほど手をうちました。これで男に戻れると思います。」
帰宅して風呂に入ってると古泉から連絡があった
「そうか、すまんな。しかし何をしたんだ?なんか嫌な予感がするんだが。」
「明日になればわかると思いますよ。あとのことはあなたにお任せします。」
「あとのことってのが非常に意味深だな。」
「深い意味はありません。あなたならなんとかしてくれるでしょう…っと、すいません案の定閉鎖空間が発生したようですね。」
「何をしたんだいったい…まあいい怪我しないように頑張れよ。」
「そんな色っぽいハスキーボイスで言われると俄然やる気がでますね。それでは。」
アホかとツッコム前にきりやがった。
やれやれ俺ものぼせない内に風呂からでようかね。
…う〜む、自分の体なのに未だに直視できんな。俺もまだまだ純粋だね。
それよりも名残惜しい気分にならない内にさっさと着替えて寝よう。起きたら男だ。
「キョン君おはよー!あ!男に戻ってる!!」
妹の体を張った目覚ましで起こされた。よかった、ちゃんと元に戻ったか。
「あんたやっぱり女のほうが良かったわね。もったいない。」
おふくろが非常に傷つくことを言ってきた。
でも「キョン君は男のほうがいいよー!」と妹がまた抱きついてきたので良しとしよう。
妹よ今度デラックスパフェ食わせてやる。
「キョン君だいだいだいすきー♪」ふむ、キスするのはいいが舌をいれてくるな。
よし今日は気分がいいので早めに学校に行くかね。
いつもより爽快に早朝ハイキングをして教室に入るとすでにハルヒがいた。
「よう、久しぶりだ…な。ハルヒ?」
「そうね。ちょっと団室までついてきなさい。」
なんだろう非常に怒ってらっしゃる。
「よし!断る。」
「………」
ぶん殴られた。
曳きづられながら団室につくとなぜか他の団員がいた。
「昨日古泉君から聞いたわ。あんた隠してることがあるでしょう。」
まさかハルヒにばらしたのか?いや、みんなの表情からそれはなさそうだな。
「何をだよ。別に何も隠してないぞ。」
「とぼける気?古泉君…」
「ええ、では。森さんから聞いたのですが、活発で非常にかわいらしい女性とあなたがそれはそれは仲むつまじく手を繋いで歩いていたのを目撃したと。」
「おい…まさかおまえ…」
「はい、ご想像の通りです。森さんは仕事の関係でそちらにいたそうです、いや〜偶然ですね。」
白々しいわ!あとのことってこれのことか!無茶だろ!!
「さあどーゆーことか説明してもらおうかしら?」
「知らん!事実無根だ!そんなことはいっさいなかった!」
「嘘おっしゃい!その女のどこが良かったのよ!目!?鼻!?口!?この浮気者!!!」
「だから知らんと言っとるだろうが!浮気者って意味わからんぞ!」
「なによ!どうせ昨日別れるときもテールランプ五回点滅さして、
‘今は離れ離れになるけど次に会うときはエアーズロックに行って世界の中心でアイを叫んだけものになって帰ってくる。そして結婚しよう。愛してる。’
てサインだしたんでしょ!?正直に言いなさいよ!」
「五回点滅だけでそんな壮大なサインあるか!!そこは‘あいしてる’だけでいいだろ!」
「やっぱりしてたんじゃない!」
「バイクも車も持っとらんわ!」
「う〜キョンが訳のわからない女にとられちゃう!キョンはあたしのなのに〜あたしのなのに〜〜」
ハルヒが故障した!
「あ〜ん…キョンは…ヒッ…あた…ッのなの…に…うあ〜ん。」
「す、涼宮さん!落ち着いて!キョン君はなにもしてませんから!」
「……そう、古泉一樹が言ってるのは間違い。」
おぉ!この為の朝比奈さんと長門か!助かった!
「……ホント?有希?」
「そう、彼と手を繋いでたのは私。」
長門!?
「ぇえ!?長門さんなんですか!?」
ぇえ!?朝比奈さん!?
「ぅあ〜ん、キョンが〜キョンが〜」
「長門さんズルイですよぅ!!」
「……彼は私のもの。」
なんだこのカオスな状況は。どうにかしろ古泉!おまえにも責任はあるぞ!
「こ、こんなことになるとは…す、涼宮さん落ち着いて僕の言ったことを思い出してください!」
「…ヒッ…ゥ…?」
「活発で非常にかわいらしい女性…つまり涼宮さんのような人です!彼も涼宮さんに会えなくて寂しかったんですよ!」
「……!?」
何を勝手なこと言ってるんだ!
「…でも…有希が…。」
「冷静に考えてください。彼が向こうに行ってる間長門さんはずっとこっちにいたんですよ?彼と一緒にいるのは不可能なんです!」
なぜ俺を睨む、長門よ。
「じゃ、じゃあキョンは…」
「ええ、涼宮さんのものです。」
「なんでだよ!!おまえまで狂ったのか!?」
なんて言ってる間にハルヒが「キョン〜」と俺に向かって飛んできたのだが
朝比奈さんが「させません!」と妙に腰が入った体勢でブロッキングしていた。
朝比奈さんって実は強いのか?
「め〜がっさ〜!キョン君の匂いがするにょろ!!」
ドカンと扉が開けられ鶴屋さんが飛び込んできた。
「ふふぅ…最近キョン君に会ってなかったからね。覚悟するにょろよ。」
鶴屋さんが俺に抱きつこうとしたのを「させない。彼は私が守る。」と長門が立ちふさがった。
「ほほぅ。有希っこ…第2ラウンドだね。いくにょろよ!」
長門と鶴屋さんのカンフーを見ながら思う。どうすんだよこの状況。
「あなたも大変ですね。」
「居たんですか、黄緑さん。」
「驚かないんですね。それとわざと名前間違えました?」
どうしてわかったんだろう。
「この状況で驚くほうがむずかしいですよ。」
「そうですか。それよりそろそろ授業ですよ。なので今は誰もいない保健室に私といきませんか?」
「なのでの意味がまったくわかりません。遠慮しときます。」
「あら、冷たいんですね。」
はぁ、登校するまで気分良かったんだけどな。一気に疲れた。
「まあまあ、男に戻れたのですからいいじゃないですか。」
「そうかもしれんが、おまえこれどうするつもりだ?」
「……どうしましょう?」
古泉はお手上げってな感じで肩を竦めた。俺もお手上げだよ。
……帰ろうかな。
「キョン〜キョン〜キョン〜」
ハルヒに抱きつかれた。
おわり
以上です。
ではでは。
まさかホントに続いてたとは!乙!
強気みくるいいなw
くっ…なんという破壊力のあるSSだ…
クラスの女子達に笑ったw
GodJobと言わせていただきたい
やや腐臭が漂うんで酢が
GJ
こういうのもっと頼むw
このシリーズ続いたりは・・・しないのか?
全員暴走してる!
>>408 GJ!! 続いてほしいが、もう変身するネタがないな。
無理やり考えるとするならば、ロリ化か動物化のどちらかな?
きょこたんの扱いはどこに出ても相変わらずだなwww
次のネタはアレか。いよいよ「巨大な毒虫」か。
ロリ化は
高校生→思春期前
男→女
と2段変化を要するから面倒だな。それにハルヒがロリを望むとも思えんし
動物だと学校に行けんわなw
思春期前とは限らないか。ちょっと語弊がありました。
連レスすまん。
どうでもいいが、「」の中に句点を入れるな。
面白かったです!!
次は成人化がみたいな
>>326 >JUNMENかよ。俺のコート確か丸井だぞ?
JUNMENは押しも押されもせぬ丸井系な件w
つまり、何も問題もないんじゃ(ry
面白かった。女の子たちがいいね
よし、妹。自重しなくていい。もっとやr(ry
誰か居ないと思ったらミヨキチが居ないのか。
そうか、次はキョンがミヨキチにんなるのか
そうか、次はキョンとシャミセンが入れ替わるのか
キョンがにゃーにゃーいいながらすりすりするわけですな
そのキョンinシャミ略してキャミはハルヒが妹からの奪取に成功すると
「あんたが妹ちゃんみたいに可愛かったらいいのに」
↓
妹と入れ替えだろ
キョン化した妹が妹化したキョンと…
疲れているようだ、お休み
妹inキョンの体って凄い兵器だよな
キョンの体で「わーい、ハルにゃん」と抱きついたり、
「みくるちゃんがいい!」とか言い切っちゃうんだろ
【・・・・・・・・】(・・・・・・・・)
天才岸本が考案したNARUTO世界で生きていくための基本スキル。
マンガの売りは短期間での提供力だとほざく岸本が更に短期間で作品を完成させるために、
台詞を考える時間を省いた結果生まれた天才的発明。
これによりネーム作成時間が飛躍的に短縮され、さらに短期間での作品提供を可能にした。
やっぱり長門はタダ者じゃなかった
両袖、胴体部分、裏地、襟はじゃんけんの続きを書いてみた。
今回はちょっとエロありだが相変わらず馬鹿話。
両袖、その少し後の話
「……」
「……」
「……」
いや…別に有希が三人いるとかじゃないわよ。
あたし達三人、有希とみくるちゃんは一着のさえないコートを中心に三すくみで、何故か丁寧に正座していた。
まるで三国同盟ね。
Gacktは最初どうかと思ったけど、みんな演技が大仰だから馴染んでいたのがすごかった。
で、場所は有希の家。
時間は馬鹿キョンからコートを貰った帰り。
パンツ? あんなの今だけなんだから、コンビニで十分よコンビニで。時間がもったいないわ。
「で、二人とも、もう一度言っておくけど、そもそもこれはキョンがあ・た・し、に自ら着させてくれたコートなのよ。つまり、あたしに
主権があるわ」
「で、ですから! そっ! それだけじゃ、独り占めの理由にはにゃりません!」
珍しくみくるちゃんがまた反論する。
可愛いけど生意気だわ。上級生だけど。
「それは貴女の思いこみ。私が転んでも彼は同じ事をしてくれた。それどころか、私だったら彼は更に、体を心配して家まで負ぶってくれた筈。
そして彼の広くて心地よい背中のおおらかさについ眠ってしまった私を彼は合い鍵を使って部屋まで運び、そっと布団に眠らせてからおやすみの
優しく、そして長いキスをして静かに帰る。私は目覚めた時に独りの寂しさについ涙を零してしまうが、ふと枕元を見るとそこには指輪の入った
小さな箱がおいてあり、手紙には結…」
ちょっと待ちなさいよ! むきー! 有希まで反論? て言うか人の発言を思い込みとか言ってあんたの後半文章も激しく思いこみじゃない!
合い鍵なんて渡してないでしょ! そもそもここオートロックだし! 安っぽい携帯小説サイトにでも投稿する気? 語る気? キョンは
確かにみんなに優しいけど、あたしに他の人が越えられない壁十枚分は優しいのよ!
『>』が百個は並ぶわよ!
「とにかく! こんなさえない地味コートが手元にあってもどうにもならないでしょ? だからあたしが回収してあげようって言っているの!」
「なら、そんなさえないコートは貴女の手元にあるのは似合わない。地味な私にこそそれは似合う。朝比奈みくる、あなたにもこのコートは
体型的にも絶対に合わない。私の体型なら問題ない」
あたしに口撃した後、返す刀でみくるちゃんにも口撃とはやるわね。しかも所々に自虐が入っている辺りが、少し反論しづらい雰囲気を作って
いるわ。流石本の虫。
「う〜〜」
みくるちゃんはもう返す言葉が無いみたい。
…違うわね。反論したら怖いのと可哀想なのがごちゃ混ぜって表情だわ。
そんな押し倒したくなっちゃう涙目で有希を見ている。
…多分、睨んでいるつもりなんだろうな。
「……」
「……」
「……」
はぁ。
結局、膠着状態に戻ってしまった。
仕方ないわね。
あたしの燃え尽きる程ヒートなハートには及ばないにしても、二人の気持ちも分かったわ。
「山分けしましょ」
「え?」
「……」
みくるちゃんは頭に?を浮かべ、有希は珍しくぶん、と音が聞こえるくらいの勢いで頷いた。
「え? やまわ…えぇえっ!? いいんですか?」
七秒掛かって理解したみたいね。
いいのよ、あたしも名誉あるSOS団の超団長。
広い心と隙あらば抜け駆けの精神で、謀反を企てようとした部員にも平等に権利をあげるわ。
…あんまり否定すると、分が悪くなりそうだし。
「う、嬉しいんですけど…」
踏ん切りはすぱっと付けた方がいいわよ。三方一両損! ちょっと違うかもしれないけど気分はそんなもんよ。
あたしがここまで気持ちをあけっぴろげにしたんだから!
「有希! 切るものある?」
有希は音も立てずに立ち上がり、台所へと向かった。
台所でなんか小声がぶつぶつ聞こえた気もするけど、あの子も独り言なんて言うのかしら?
「…これ」
で、有希が戻ってきて…ってあんた、それ、もしかしてメスじゃないの? なんでそんなもんがある訳!?
有希が持ってきたのはカッターでもはさみでもなく、おそらくは手術用の本物のメス。
「…これが一番綺麗に切れる」
それはそうだけど。
有希は元の位置に座り、メスを目線の高さに構える。
なんだか、果物とか切ってもくっつけたら元通りになりそうな輝き。
まさかお金燃やした炎で鍛えたとか言わないわよね?
有希は中央の不干渉地帯に鎮座していたキョンのコートを手に取り、真剣なまなざしでメスを構えた。
あ…自分で言ってなんだけど、ちょっとコートが可哀想…。
「大丈夫。痛くはしない」
そう言い、コートの肩口にメスを滑り込ませた。
有希はバイオリンを弾く様な滑らかな動作でメスを滑らせる。
驚いたのは、あたしはてっきり縫い目から布を切り分けるだけかと思っていたけど、有希はそうじゃなくて、縫い目の糸のみを切っていた事。
数分後、コートはまるで縫製前の状態みたいに綺麗に分解されていた。
それは左右の腕と胴体、裏地、コート特有の大きな襟の合計五つに分けられた。
「…縫ったら、元に戻りそうですぅ」
みくるちゃんが感嘆の声を上げる。
あたしは綺麗に切り分けられた、位にしか見えないけど、お裁縫が好きだから分かるんだろうな。
…って、なんで五つなのよ! 三つでいいじゃないの!
「部分によりレアさが違う」
「! レアさ! 確かにそうですぅ」
あ。
そうだわ! そうよ! 流石有希だわ!
部位によって残り香の量や質が違うのよ。
単純に面積では割りきれない黄金比を見失うところだったわ!
ダヴィンチも大あわてよ。
ちなみに、あたし的見地から言えば、キョンの髪のにおい、首筋のにおいを最も濃く残している襟が最も貴重な部位。
そこの香りをかげば、キョンのあったかい首筋にかじりついているのと同じ気持ちになれるし、ほんわりと残る髪の香りをかげば、この胸に
キョンの頭を抱きしめている気分になれるもの。
魚で例えれば、本鰹のカマトロってところね。あたしの好みだけど。
次になんと言っても裏地よ。
胸、背中とキョンの胴体の香りを一心に受けた裏地は肌触りの良さを生かして抱きついてよしシーツにしてよしと大きさを生かした楽しみ方が
出来るわ。
肉で例えるなら米沢牛のA-5かしら。ただ、個人的には霜降りの肉って油まみれで好きじゃないけど、価値的にね。
次は両腕。
言っておくけどこの順位はあくまでも順位を付けたらと言う意味であって、実際はどれも拮抗しているんだからね。
で、この筒に手を入れれば、まるでキョンの腕に抱かれている様な気分になれるし、アームウォーマーとしてそのまま外にも着ていけ…ないか。
でも部屋でならOKね。
たくましい両腕に抱かれて眠るなんて中々無い贅沢よ。
次に裏地を抜いた胴体部分。
裏地程の魅力は無いけど、キョンの体を一番多く包み込んできた部分であり、それはつまりキョンの体に包まれているのと同じって事だわ。
裏地よりもしっかりしている分抱擁されている気分が高まるし、外見的にも鏡に映して見ればまるでキョンのコートの中に入れて貰っている様な
気分になれるわ…。
例えるなら…もういいわ、くどいし。
じゅる。
あたしじゃない涎の音がした。
桃色のトリップ空間から戻ると、みくるちゃんと有希がお預け中のわんこみたいな表情で涎を垂らしていたわ。
有希のこんな顔珍しいわねって、はっ!? あたし、もしかして声に出していた?
「キョンの髪のにおい…から丸聞こえでした」
「臨場感たっぷり」
「……」
えーと、と、とりあえず、ローテーションって事でどうかしら?
「かわりばんこって事ですか?」
「悪くない」
「そうそう、いいでしょ? 両腕、裏地、胴体をかわりばんこにして、一番香りがいい襟はその都度じゃんけんで占有って事でどう?」
「が、頑張って勝ちます!」
「正々堂々と」
「よーし! それじゃー合意と見なしていいわね? せーの!」
「「「じゃーんけーん」」」
「あ」
みくるちゃんの声であたしは拳を振り上げたまま仰け反ってこけそうになった。
「何? 今更ルール変更は無しよ!」
「い、いえ…さっき言おうとして忘れて…それに今更遅い事なんですけど…」
「だから何よ」
「…このコート、キョン君からいただいたんでしたっけ?」
「「あ」」
珍しく有希とハモったわ。
「……」
「……」
「……」
「じ、事後承諾って事でいいんじゃない?」
「でで、でも…キョン君には…どうやってお詫びしたらいいんでしょう…?」
「べ、別に、キョンになんて、あ…あやまらなくても…でも…もしも怒ったらどうしよう…? お前なんか嫌いだっていわれたら…きらわ…き…
ひっく…うぅ…いや…うぐぅ…」
「お、落ち着いてください! キョン君は非道い事なんて言いません! えっと、えっと…」
「証拠隠滅」
「「え?」」
…ぐす、今日は良くハモるわね。
「やってしまった事は仕方がない。ある高名な哲学者も言っている。『バレなければ嘘ではない』と」
その言葉が哲学者かどうかはともかく、今となっては有希に全面賛成だわ。
でも…どうしよう。
「彼には別のコートを買って渡す。このコートは汚れた等の理由を付けて渡さなければいい。それに、彼は許してくれる。間違いなく」
…普段の無垢なイメージからは考えられない冷徹な表情と判断ね。これならモリアーティ教授も逃げ出すんじゃないかしら?
みくるちゃん? そのちゃうねん、みたいな手の動きはなに?
「で、でも…私、恥ずかしいんですけど…今、持ち合わせが…」
「う…あ、あたしだってそうよ。無くはないけど、コート買う程のは…」
「今回は任せて」
有希がどこからか、きらりと輝くゴールドカードを取り出した。
有希! あんた輝いているわ!
「その代わり、最初に襟を得るのは私」
有希! あんたちゃっかりしているわ!
その後、次回不思議探索のペア優先くじ引き工作や、帰りに二人きりになる割合、使ったストローの割り当てとか様々な取引の後、今回の
割り振りはあたしが裏地、みくるちゃんが両袖、有希が胴体と襟になった。
香りが逃げない様にジップロックに入れて、さぁ、これからコートの買い出しだわ!
そのあと解散して、心ゆくまでオナ…想いにふけるわよ!
「「すーはーすーはー」」
「…ってこら! みくるちゃん! こんなところでおっぱいいじりはじめないの! 有希も下着に手入れない!」
「……」
「もう、駄目です…」
み、みくるちゃん! 有希!
ああっ! みくるちゃん、そんな、女同士だからって、待って待って! セーター脱ぎ始めちゃだめ!
有希は…ああっ! もう下着脱いでるじゃない!
だ、駄目! だめよ、こんな、こんな、女の子同士だからって…その…男の子の…で、こんな風に乱れるなんて…。
「貴女の想いはその程度?」
有希が呟いた。
あたしは息をのむ。
みくるちゃんも、普段あれだけ恥ずかしがり屋なのに今、目の前でとうとう胸をさらけ出している。
女のあたしが見ても目が離せないそれを恥ずかしげもなく揉みしだいていた。
それは…その布が…キョンのだから…す、好きな、人の…だから…。
好きな人。
好きな男の人。
大好きな、キョン。
だから、こんなにはしたない真似も出来る。
心臓が早鐘の様になり始める。
あたしは袋を手に取り、封を開ける。
そこからはキョンの体の香りがふんわりと流れはじめ、あたしの鼻腔をキョンで埋め尽くす。
体が震えた。
キョン…。
あたしは裏地に顔を埋め、思い切り深呼吸する。
肺にキョンが流れ込む。
ずくん、と下腹が、あたしの女がうずいた。
あたしはまるで馬鹿な不良がするやつみたいに、袋に顔をつっこんで深呼吸を繰り返している。
一呼吸する度に下腹が、子宮がうずく。
下着が湿り始めたのが分かる。
信じられない。
香りを嗅いでいるだけなのに。
みくるちゃんを見ると、既に上着は完全に脱ぎ、ズボンの方も足首まで下げて、体育座りみたいな姿勢でいた。
脱ぎかけのその姿は何て言うか、とってもエロい。
袖を胸の間に挟み、その先は顔に埋めて荒く呼吸。
そしてもう一本の袖は自分の腕に通して、あそこをいじっていた。
きっと、キョンの手でいじられているって思っているんだ…。
そう思うと羨ましかった。
袖もいいな…。
みくるちゃんの行為がまるで自分の行為の様に思えてくる。
あたしは裏地を手に取り、そのまま下着の中に手を入れる。
うぁ…。
裏地があたしの敏感な部分をこする。
キョンの体に触れていた布が、あたしを弄んでいるよぉ…。
どうしよう…すごく気持ちいい…。
不意にみくるちゃんと目が合った。
みくるちゃんは優しげに微笑む。
こんな時までかわいいんだから…。
有希を見ると、もっとすごい。
既に有希は全裸。
横臥してコートを抱き枕の様に手と足で抱きかかえ、襟をマスクの様に口に当てて荒い呼吸を繰り返している。
あれは…抱かれているんだ。
キョンが、有希を求めて獣の様に覆い被さり、唇を奪っている…。
いいな…いいな…キョンからあんなに求められて…。
あたしはうらやましさで目が潤むのが分かる。
無意識に裏地を体に巻き付け、あたしは裏地の上から全身をまさぐる。
そう、あたしも今、キョンに体中を触られている…。
キョンの香りが体中に染み込む。
手が、舌があたしの体をキョンに染める。
普段絶対出さない様な声が出る。
有希を見た時、やはり目が合った。
有希の瞳も何となく微笑んでいた。
ああ、そうだ。
あたし達は今、お互いがお互いを観察しあって、同じ人に抱かれているんだ。
お互いの痴態を見せ合い、見せつけながら、高めあっている。
自分の愛情の深さを、興奮の度合いを。
こんなに愛しているんだ、と。
…あっ。
いけない、もう、イキそう…。
駄目、駄目。
キョン…うしろなんて駄目…きたないよぉ…。
あ…そんな…両方いっぺんになんて駄目…。
許して…。怖い…。
逆らえないから…だから、駄目…本当に、すべて許しちゃうから…。
キスして…キスして…。
…は…あっ…キョン…キョン…キョーンっ!
…頭の中が真っ白になる瞬間、二人の声も重なった気がした。
「……」
「……」
「……」
それから少しの後。
あたし達は裸のまま、またキョンのコートを目の前に悩んでいた。
「どうしよう」
「まさかこんな…」
「うかつ」
うん、うかつだった。
あの後、三人が目を覚ましてから、互いに交換してもう1ラウンド、と言う事になったんだけど、いざ交換してみたら、なんとキョンの
香りがしなかった!
そう、あたし達、あまりにも激しく乱れちゃったのか、キョンの香りをあたし達の香りで上書きしちゃったみたいなの。
むぅ、こんな事で消えちゃうなんて着込みが足りないわよ、キョン、と責任転嫁はさておいて…。
「…どうします?」
「どうって、洗っても全部落ちるだけだし…」
「修復は不可能」
「……」
「……」
「……」
三人の、大きなため息が重なった。
…いい機会だから、いっそ本物でやる?
「えっ!?」
「…!」
二人が流石に驚いた表情になる。
でも、見逃さないわよ。
あんた達の瞳がきらりと輝いたのを。
とりあえず、これはこれでまだ使えるんだから各自持ち帰って、早くコート買いに行きましょう。
次の計画は、その時に…ね。
おわり
以上。
おそまつ。
GJ!
本物期待wwww
GJ!!
ちょwほんとにそこまで話を広げるかww
ついでにブラックジャックの小ネタに吹いたww
確かにバカだなw
いや、これマジすごいと思う。
さくさく読めると思ったら無駄な部分がほとんどなくて洗練されてるんだな。
ハルヒの一人称も掴めてるし、言い回しも面白い。
ちょっと尊敬した。
正直ハルヒがキモいwwwwww
次回作期待!
実にけしからん!
続けてくださいおながいします
もしかして変態佐々ハルの人?いや、違うかな・・・
ホームズネタとか色んな小ネタ混ざってるなぁ
俺達はもしかしてここで天才に出会ったのかもしれない…
>>438 ホワイトデーのお返しに手作りの金太郎飴と指輪を挙げた話を書いた人かな?
上手いしみんなすごいバカで楽しすぎるw
>ひっく…うぅ…いや…うぐぅ…
>うぐぅ…
おいwwww
「うぐぅ」
というと、本体は病院に居て自分の分身が主人公に向かって時速60`で走りまくるやつのことか!
そう、それ。原作準拠スレでアニメ繋がりの話するのもなんだと思ったけど、
ツッコみたい欲求を抑えきれなかったw
| ', i l / l イ,、-‐ーー‐--、::::,、-‐ー-、l !::i;::::::::::';::::::::::::::::::l l:::::::::` ‐、
| ', l イ// l/ r'/ /-''"´ ̄ ̄ヽ `,-''"´``‐、 ヽl';::::::::::';ヽ/:::::ノ ノ::::::::::::';::::\
| ',! l/ /::::/::::::/::::::::::l l:l lヽ、二ニニニニニニ、-'´:';:::::::::::::';:::::::
ヽ! /、:/:::::;イ::_,、-'´ノ:l し u l:!';:l ';::::/:l', ';::::::l';::::::';:::::::::::::';::::::
___l___ /、`二//-‐''"´::l|::l l! ';!u ';/:::l ', ';::::::l ';:::::i::::::l:::::::';:::::
ノ l Jヽ レ/::/ /:イ:\/l:l l::l u !. l / ';:::l ', ';:::::l. ';::::l::::::l::::::::i::::
ノヌ レ /:l l:::::lヽ|l l:l し !/ ';:l,、-‐、::::l ';::::l:::::l:::::::::l:::
/ ヽ、_ /::l l:::::l l\l ヽ-' / ';!-ー 、';::ト、';::::l:::::l:::::::::l::
ム ヒ /::::l/l::::lニ‐-、`` / /;;;;;;;;;;;;;ヽ! i::::l::::l:::::::::::l:
月 ヒ /i::/ l::l;;;;;ヽ \ i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l l::l::::l:::::::::::::
ノ l ヽヽノ /:::l/:l /;;l:!;;;;;;;;;', ';;;;;;;;;;;;;;;;;ノ l:l:::l:::::::::::::
 ̄ ̄ /::::;ィ::l. l;;;;!;;;;;;;;;;;l `‐--‐'´.....:::::::::!l:イ:::::::::::::
__|_ ヽヽ /イ//l::l ヽ、;;;;;;;ノ.... し :::::::::::::::::::::ヽ /!リ l::::::::::::::
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| ヽー /イ';::l ’ し u. i l l:::::::::::::::
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| /l し _,.ノ `フ" ,' ,' ,ィ::/:;'::::::::
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| _,、-‐'"´';:::::::::イ:l';:::` ‐ 、._____,、-‐'"´ u / し
| | | | \ l::/ l::::::/リ ';:::::lリ:::::l';:::l l:l:::::l\ u /
| | | | \/ l:::/ ノ ';::/ ';::::l l::l リ l::l l::/ヽ / し
.・. ・ ・. ・ ヽ \ リ レ ヽ! り レノ `y
そうか、次はキョンとカマドウマが入れ替わるのか
微妙にあずまんがも入ってるよなw
こういう小ネタが所々に散りばめられてると面白いな。
保管庫更新されていたな。
それよりも、演奏の続きまだかな?
>>453 放置すると20日過ぎに悲しそうに会いに来るあいつだな!
何こいつ…
きめぇ…
何こいつ…
きめぇ…
連レスしてた
佐々木みたいな男口調の女なんか好きじゃないし
自重するわ
うわ…
佐々木厨厨のこと言っただけでなに佐々木スキー扱いスマソ
保管庫を読み返していて未完ものに当たるとなんか悲しくなる
inドラクエも未完だったよな
あと○天国も待ち続けてる俺がいる。
マダーを繰り返しとけば抹消みたいにいつか完結することを祈ってる。
まあいくらマダーを繰り返しても某ラノベみたいに完結しないのもあるんだけどねw
ハルヒが手のひらサイズに小型化した・・・・
っていうSSを前に読んだ気がしたのだが、あったか?
未完って言えば幼女化したハルヒもいた。
前戯が終わろうとしたところでイキ過ぎて目がうつろになったところで、だったけど。
>>467 シャミと意識が入れ替わって猫になるのは合ったと思うが。
ポニーテール
変態佐々木の人の変態朝倉とてもよかった
このままでは朝倉がかわいそうなので
佐々木シリーズに出して欲しい
そしてキョンにやられまくって子供を産ませて欲しいです
日常待ってるのは俺だけ?
「日常」は保管庫読み終わったあと、
「未完かよっ」
って突っ込んでしまった
477 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 23:37:40 ID:7VWEVKy5
そんな俺の返事を聞いて、それまでこちらを向いていた古泉が前の方に向き直った。
ミラー越しに見える、まるで獲物を目の前にした肉食獣のような顔。
猫なで声とはこういうのを言うのだろうと思う声で、古泉は言った。
「それでも、我々はあなたを見捨てたりはしません。何故なら、それが涼宮さんが望んだことだからです」
俺は古泉のその言葉で、ずっと心の奥底に封印していようとしていた、あの件をぶちまけることに決めた。
後がどうなろうと、知ったことか。
「古泉」
「なんでしょう?」
「お前は何故『涼宮』の側にいてやらない?」
「……ご存じの通り、僕たちはあくまでも涼宮さんのメンタル面の担当ですからね。残念ですが現実世界では
無力に等しいのです」
「そうじゃない。『涼宮』には「お前」という恋人が居るのに、なんで『涼宮』に振られた俺が、わざわざ
フォローしてやらなければいけないんだと聞いているんだ」
車の中に沈黙が流れた。
「……今、なんと?」
「だから……お前は『涼宮』の恋人なのに、なんで俺を引っ張り出すのか?と聞いたんだ」
「??仰る意味がよく分からないのですが、僕は涼宮さんとそう言ったお付き合いはしておりませんよ。
以前あなたに言ったように、僕は身の程というのを十分にわきまえているつもりですから」
「ならば聞くが、2次試験当日の朝に、俺が駅前で見たあの光景は幻だったのか?」
古泉の息を呑む声が聞こえた。ゆっくりとこちらを振り返る。
「……見ていたのですか?」
「ああ。それと、二人でスイートルームに向かっていくところもな」
脳内の奥底に封印していた、二度と思い出したくないあの光景が再び脳内にフラッシュバックされる。
478 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 23:42:26 ID:7VWEVKy5
黒塗りハイヤーは、静かにサービスエリアを出た。
本当なら、小腹も空いてきたことだしレストランでメシでも食いたかったのだが、時間に余裕が無いと長門の
一言で缶コーヒーのみを購入し、俺たちは再び車上の人になった。
「……どこに向かっているんだ?このままだと県外に出ちまうぜ?」
「空港ですよ。もう一つのね」
空港?ああ、そう言えば県北に小さな地方空港があったな。
「ちょっと待て!もしかして俺が連れて行かれるのは……」
「ええ、涼宮さんの所です。チャーター便で飛んで貰います」
「待てよ、俺はまだ『涼宮』の所に行くとは言ってないぜ?」
「分かってますよ。でも僕の話を最後まで聞けば、あなたは必ず涼宮さんに会いたくなるはずです。必ずね」
自信たっぷりに断言する古泉。先ほどのショックから抜け出したようで、いつもの口調に戻っていた。
「では、順にご説明します。まず、あなたが引っ越されてからの涼宮さんは、しばらくの間は落ち着いていま
した。閉鎖空間も出現せず、特進クラスで勉強に精を出されていたんです。ところが、GWの遠征が終わった
あたりから少々異変が現れ始めました。実はあなたが転校したことで我々『機関』も、出動の機会が増える
のではないかという意見が大勢を占めていました。ところが新学期が始まってからGWまでの間に出現した
『閉鎖空間』は僅かに一回のみです。しかもかなり規模が小さく、すぐに消滅してしまったそうです。駆け
つけた仲間によると、そこには神人も現れませんでした」
「それはアレか、新学期初めて電話で『涼宮』と話した、あの時か」
「ええ、そうです。実は、それ以降あの2次試験の日まで『閉鎖空間』は出現していなかったんです」
「『閉鎖空間』の出現回数が減ったと言うことは良い事じゃないか」
アイツも大人になったと言うことなんだろうよ。一年近くも出現していないなんて新記録じゃないか?
「ところが、事はそう単純ではありません。過去、毎年涼宮さんが『閉鎖空間』を作り出す日があったのを
覚えていますか?」
「ああ」
7月8日、七夕だ。翌日になると偉く不機嫌な顔をしていたから、良く覚えてる。
もちろん、自分がやったことも含めてな。
未来遡行。校庭の落書き。3年間の時間凍結。異時間同位体。朝比奈さん(大)。そして、ジョン・スミス。
忘れられるわけがない。
コピペ死ねよ
ちょっと質問なんだけど、
原作で花見のイベントってあったっけ?
なんか頭ん中がSSとごっちゃになってわかんなくなった
分裂にて春休みに鶴屋さん邸で決行済み。
482 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 23:56:49 ID:7VWEVKy5
すいません、477と478は誤爆です。
テラハズカシス……
>>476 きっとこれから投下されるんだよ
そう言ってもう1年経ったかもだが…
誤爆だったのか。申し訳ない。
遅レスだが
>>467 それハルヒじゃなくて『人形朝倉』じゃまいか?番号忘れたけど
おいおいどこの誤爆だよ、非常に気になるぜ?
VIP
あーそうかVIPか
あっちはチェック入れてなかったからな
これを気にちょっと見てみるか
誤爆は仕方がない、だがなsageろよ。
>>480 キョンの消失で花見はやるけど…違うっぽいね
花見ってありがちな気がするけど、SSでもあんま見ないな。
ありだちだから敬遠すんのかね。
花見をし酒を呑んでエロに至電波を受信
>>492 SOS団で花見してから長門家に移動しみんなで酒飲んだ挙句に女性陣たちの前で
古泉とキョンがツイスターゲームで口付け寸前というカオスなら昔書いた記憶がw
朴念仁の愛され方の続き。
馬鹿話なんで短く、短くと思ったのに長くなった。反省。
めどい人はスルーで。
居るかどうか分からない人も出てくるので、その辺はご容赦。
朴念仁の嵌り方
「ぷぷ…」
かっこーん。
「ぶひゃひゃひゃひゃあははははっっ!」
清々しくも正直やかましい位大きな笑い声と、庭の鹿威しが涼しげな音を出したのは同時だった。
「あはっあはっあはははは! おお、お姉さんこんなに笑ったのは生まれて初めてにょろよーー! ぶははははは!」
生涯初めてかはどうかはともかく、貴女はけっこう日頃からそれくらい笑っていますよ。
俺は予想通りのリアクションに乾いた笑顔で返すしかなかった。
朝比奈さんのクラスメイト、正当庶民派の俺には想像も出来ない対極的正統派名家の御曹司たる淑女、鶴屋さんは、歴史的文豪の面々が
座っている光景が似合うであろう重厚さを醸し出す二十畳の客間の真ん中で、その部屋には不釣り合いな大笑いを絶賛上演中だった。
観客俺。
最初こそきちんと座布団に座っていたのだが、俺の言葉と共にやがて体がのけぞり始め、震え、仕舞いには仰向けになって笑い声の音量を
跳ね上げた。
なんか、笑い声が天上に反射して増幅されています。
それと、着物で大の字になると足下が色々危険です。
特に俺の目線的に。
「はーっはーっはーっ…。ちょ、ちょっとタンマ。は、肺から酸素が無くなったにょろ…」
鶴屋さんは大の字のまま、目に涙を浮かべながら大きく息をしている。
「キョン君恐るべしにょろ〜…」
太陽の様なスマイルはそのまま。
それからしばらくの間、鶴屋さんは先ほどの俺のセリフを思い出す度に突然笑っては深呼吸してを繰り返した。
「お嬢様」
ふと、ふすまの向こうから落ち着いた女性の声がする。
タイミングからして、恐らく笑い声が落ち着くのを待っていたのだろう。
俺はその声から、上品な老婆の姿を想像した。
「にょろ?」
「お茶をお持ちしました」
「にょろー」
「承知しました。失礼します」
たった今まであれだけの笑い声がしていたにも関わらず、襖の向こうの人は至って落ち着いた声でやりとりしている。
きっと鶴屋さんは普段からこんな感じなんだろうな。
て言うか、ここの家はにょろーで話が通じますか、にょろーで。いっぺん言ってみようか。
俺はヒラ団員の悲しい性か、無意識にお茶を取りに行こうと立ち上がってしまった。
その時、突然鶴屋さんは「めがっさー!」と叫びながら畳の上をころがり、そのまま俺の足を掴んだ。
それも意味分かりません、とか言っている場合じゃない。
「うわ!」
とっさにマトリクスの様な姿勢でバランスを取り、体制を建て直す。
我ながら非常識なポーズだ。これならスタンドだって出せそうだぜ。
「うわ! じゃないにょろ。キョン君、何する気にょろ?」
鶴屋さんがバネでも付いているかの様な勢いで立ち上がる。
「いや、お茶を取りに行こうとふが」
鶴屋さんは俺の鼻を指でつまんでぐりぐりする。痛いです。
「どこの世界にお客様にお茶を取りに行かせる無礼もんが居るにょろ! あたしが取ってくるから、キョン君はどっしり座ってお茶を待って
ればいいにょろ! 不動如山!」
そう言って鶴屋さんは俺の背中を押して元の位置に戻させる。
よし、と鶴屋さんは襖を開け、お盆をもって戻ってくる。
割と早足で歩いている様に見えるのに、ほとんど無音で歩くのがすごい。
それに、下見てないのに、縁はちゃんと踏まずに歩くし。
「はい、粗茶だけどどうぞっ!」
ここで出されるお茶の場合、どんなに粗茶と言われようとも玉露百パーセントとかそういうレベル以外の上物以外考えられませんけどね。
ついでに、和菓子も添えられていた。
うす桃色の、なんとも上品な色の餅菓子である。
俺は進められるままに茶碗を手に取る。
見てみろこの茶碗。年代物の青磁で、向こう側から光がうっすら透ける薄さだ。そして花模様が上品に浮き彫りになっている。
これ一腕で、俺の小遣いなんて年単位でふっとぶんだろうな。
「キョン君、茶碗の銘を嗜むのもいいけどさ、お茶は飲まないと味がわかんないよ」
そうですね。俺はくい、と一口飲む。
美味い。
それは、俺みたいな奴の舌ですら、品質の違いをこれでもかと分からせる美味さだった。
そして半畳分程の距離を置き俺の対面に座る鶴屋さんもお茶を飲む。
ぷはー、と満足げな微笑みが可愛らしいと言うか何というか。
ところでこの広い部屋、どうして机がないんですか? 本当ならベッドより大きな机が鎮座してそうな部屋ですけど。
「そんなもん置いておいたらキョン君の声が遠くになっちゃうにょろから、えいやっととっぱらっちゃったよ!」
えいやっとは言葉の綾だろうが、部屋に通される直前、にょろーと言う声と共に重々しい物の落下音が聞こえたのは気のせいだよな?
まぁ、それなら声が良く聞こえると言うところで、話の続きをしてもいいですか?
「ほい? 話…。はなし……ぶぷぷ…あ、あはは…おおお思いだしちゃったにょろーー! ぎゃはははははっっ! キョ、キョン君が!
キョン君がそんな事言うなんて!しし信じられないっさ! はひゃひゃひゃひゃっ!」
またまた超高級笑い袋になって転げ回る鶴屋さん。ですから転がると着物から見目麗しい太股がのぞいちゃいますよ。
「あひゃははははははっっ! お姉さん笑い死にしひょうにょよ〜〜!」
噛んでるし。
まぁ、そういう反応するよな、と俺はため息混じりに残りの茶を飲み干した。
今日の午後の事だった。
俺は至って健全な善意による行動の果てに修羅の道の鱗片を見た。
「い、妹とミヨキチを?」
「そうよ! 明日の探索はあたしに有希、みくるちゃんに古泉くん、そして妹ちゃんとミヨキチでやるわ!」
俺は?
「あんたは居るに決まっているの!」
だよな。
「しかし、ミヨキチは入院しているお母」「大丈夫です。私、出ます」
ミヨキチは珍しく俺の言葉を遮って意見する、と言うか宣言する。
「いいのか?」
ミヨキチは俺を見上げると、強い意志を含んだ瞳で力強く微笑んだ。
「これは、決して避けては通れない道なんです」
命を賭して、と使命感に燃える無垢な瞳。
…いや、何の目的もない市街徘徊なんだが。
妹を見れば、もちろん、とばかりにミヨキチと同じく凛々しい瞳で頷いている。
お前の凛々しい顔は珍しいぞ。
「いじわるー」
一瞬で普段の顔に戻った。
ハルヒや長門、朝比奈さんを見ても皆同じような感じだ。
俺はため息と言う名の生返事しかできなかった。
「それじゃ今日は解散! キョン! 遅れたら今日の死刑と併せて打ち首獄門市中引き回しの上張りつけ水攻め島流しだからね!」
俺は一体どんな極悪人だよ。
仕方ない、と妹を連れ、ミヨキチを病院まで送り届けようとした時。
「ちょっと待った!」
ハルヒが目をらんらんと輝かせて俺達を呼び止めた。
「妹ちゃんにミヨキチ、ちょっと明日の打ち合わせしない?」
妙に優しい声と表情。
俺はそれが逆に怖いね。
「いや、ハルヒ、それは…」
「いいよ、ハルにゃん」
「私も、構わないです」
君たち、オオカミの群れに自ら飛び込んでも、ガブやメイの様に種族を超えた親友になれるとは決して思ってはいけないんだぞ!
「分かった、なら俺も」「キョンはいいのよ」
あの、ハルヒさん? 明日の不思議探索の打ち合わせですよね?
それなら当然俺も…。
「キョン…? これ以上…あたしを怒らせる気かしら?」
美しい笑顔。だが恐ろしさ以外を感じないのが不思議だ。
あ。
忘れていた。
忘れたいと思ってました。
ぶっちゃけ無かった事にしたいです。
目を閉じて開いたら、やっぱりベッドの上だった。ああ、夢か。やれやれだ。なんて風になったらいいなぁ。先ほどまでの超修羅場。
だが、意地でも現実と認識させんとばかりに、もう二人の鬼も目を光らせている。
はっきり言います。
お二人とも怖いです。
だがそれにしたって、この我が儘全開の全能神に、バーダックも裸足で逃げ出す万能最強宇宙人、可愛いさでならきっと人を殺せる未来人と
いった超人の群に、ただの小学生二人を置いてけぼりってのはいいのか?
俺は生まれたばかりの子猫を捨てなければならない無能な飼い主の瞳で二人を見る。
「お兄さん、丁度お互いに、色々…お話ししたい事もありますし」
「うん、だからキョンくんはさきにかえっていていいよ」
色々、の意味がものすごく気になるが、これはもう女同士の問題の様だ。
「…無事に帰って来いよ?」
「やだなー、ハルにゃんたちとおはなしするだけだよー」
「そうですよ。ご心配なく」
だが俺は見たぞ。
ほんのわずか、口元が引きつっているのを俺は見逃さない。
すまない、妹よ、ミヨキチよ。
今度俺に出来る事があったら何でも言ってくれ。
出来ればシモの事以外で。
「聞き分けが良くていい子だわ。それじゃキョン、あんたはさっさと帰りなさい」
「あ、ええと、キョン君、まぁ、ご心配なく」
「人権はそれなりに守る」
朝比奈さんと長門も二人を悪くする気は無い様だ。無い様だが! 何となく言葉の端々が不安なんです!
「…分かった」
だが、反論すればかえって二人に危機が及ぶ事になるのは明白。
俺は一人、帰路につく事となった。
…だが、このまま帰る事は出来なかった。明日、何が起きるのか想像が付かない。
そして何よりもその原因は…。
俺は、引き寄せられる様に鶴屋家へと足を動かしていた。
暫くの後、俺は鶴屋家の門前に立っていた。
いつ見ても本当にでかい。
でかいだけじゃない。
この門一つとっても重要文化財になりかねない重厚さをもっている。
これは、成金と本当の金持ちの決定的な差だ。
ウチとあんたの家、どっちが大きい? なんて厚顔無恥な事を平気で聞いてくる成金とは雲泥の差がある。
この家には、歴史がある。
…そこでふと、俺は冷静に考えた。
こんな場違いな場所に俺が来ても、鶴屋さんは会ってくれるだろうか?
もしかしたら、鶴屋さんが居たとしても使いの人とかに追い返されて終わり、なんて事にならないだろうか?
そもそも俺は朝比奈さんの様な同級生ではなく、朝比奈さんを通じて知っているだけの一下級生だ。
朝比奈さんなら顔パスかも知れないが…。
身の程知らずだったか?
そう思い、踵を返そうとしたその時。
「やっほー」
「うわ!」
突然、門に隣接した通用門の小窓が開き、鶴屋さんが笑顔と共に顔を覗かせた。
一瞬、小窓からはい出そうとする猫みたいで可愛いと思ったのは秘密にしよう。
「キョン君、何か御用かなっ?」
「あ、こ、こんにちは。用、と言うか…ちょっと聞いて欲しい事が…ご迷惑ならすぐ帰ります」
「だーれがそんな事言ったにょろか? ちょっと待ってね。鍵開けるから」
小窓が一反閉まり、門の向こうから元気な声が聞こえる。
「だからはやく解除するにょろ! 予定にない? あたしの客だってばさっ! 急な来客だから時間かかる? だったらブレーカー切れば
いいっさ! 動かなくなる? 手であけるっさ! 両の手両の足は動かすためにあるんだよっ!」
一体、どんな警備なんだろう?
それから約一分後、トラックだって入れそうな重厚な門がゆっくりと開き始めた。
「お待たせ! いやー、気の利かないセキュリティでごめんね!」
鶴屋さんが満面の笑みで俺を迎えてくれた。
普段着の鶴屋さんは清楚な着物姿だ。整った顔立ちには和服が実に似合う。
開いた扉は想像以上に分厚く、門の後ろには重い扉を手で開いて疲れたのか、屈強な二人の男性が肩で息をしている。
「大丈夫ですか? 俺なら、通用門でもなんでも…」
「キョン君を通用門から通す様な真似しないにょろよ。ささ、どーぞどーぞ」
差し出された手を見ると、すこし汚れている。
もしかして、鶴屋さんも門を引っ張ったとか? 何とも律儀な人だ。
俺は自宅の廊下なら何往復するか分からない距離の廊下を歩き、鶴屋さんの導きで客間に通される。
少しして、先ほどの着物から着替えた鶴屋さんが入ってきた。
先ほどの着物は橙色を基調とした大きな花柄を織り込んだものだったが、今目の前にいる鶴屋さんは朱を貴重とした落ち着いた小花柄の
着物だ。
言うまでもなく、どちらも似合っている。
「さて、今日はどんな御用なのかな?」
真っ直ぐに正座して俺を見る目は真剣そのもの。
俺は訳もなく、どこか気恥ずかしさを覚えてしまう。
「…鶴屋さんにしか、言えない事なんです」
「ほうほう? それはそれは! では、おねーさんにいってみるにょろにょろ」
鶴屋さんは興味津々心わくわくどきがむねむね全開の瞳を輝かせ、俺ににじり寄る。
「……」
「……」
「顔が近いです」
「にょ〜」
鶴屋さんはちぇ〜っと言う顔で自分の座布団に座り直る。
「SOS団の、事なんです」
「みくるがまた何かそそうでもしたのかい?」
それ、朝比奈さんが聞いたら泣きますよ?
「そうじゃなくて、古泉を除いた女性全員…併せて妹、そして妹の友達も含めた女性全員の事で、相談なんですよ」
「そりゃ何ともお色気たっぷりの相談にょろねぇ?」
「端から聞けばそうかもしれません。その彼女達から…俺が…」
「ふんふん」
「非常に…」
「ひじょーに?」
「ものすごく、過度に…好かれているんです」
「……」
「……」
鶴屋さんは実に表情豊かに静止し、俺の言葉を考え、整理し、理解し、納得する。
そして。
「……ぷ…ぷぷ……ふっ……ぶあっははははははーーーーーーっ!」
そして、時は動き出す。
かっこーん。
鹿威しが鳴った。
「はーっ…はーっ…落ち着いたにょろ」
そして、話は冒頭に戻る。
「……」
俺は会話より遥かに長い笑い時間の間に逆に冷静になっていた。
いや、これが正常だ、と。
「ありがとうございました」
「はい?」
瞬間、太陽の様な笑顔が真顔になり、鶴屋さんは大きな瞳であれ? と言っている。
「いえ、鶴屋さんに聞いて貰ったおかげで、ぐちゃぐちゃにこんがらがっていた馬鹿な思考がほどけました」
俺は清々しい気持ちで言うが、逆に鶴屋さんの表情には陰が出始めた。
「え…ち、ちょっと待って! あたしはまだなんにも話してないよ? あ…もしかして機嫌悪くしちゃった? 怒った? 笑いすぎた?
いやその、キョン君を馬鹿にしたんじゃないんだよ?」
「いえ、その笑いで十分です」
「ち、違うの! ま、待って待って! そんな皮肉お願いだから言わないで! 待って!」
鶴屋さんにしては狼狽した表情。
こんな表情もするんだな。
俺はありがとうございます、と立ち上がりかける。
「だめーっ!」
突然鶴屋さんが狐の様に飛び跳ね、俺の服の裾を掴む。
「わっ!」
俺はその勢いに押され、そのまま仰向けにぶっ倒れる。
そして、俺の動きをトレースしたかの様に鶴屋さんも時間をずらして俺の上に落下してきた。
「げほ!」
「にょふっ!」
肺から空気が押し出され、一瞬視界が飛ぶ。
「…つ」
ぼやけた視界が戻った時、そこには倒れた俺の腹の上辺りに顔を載せ、腕をきめている鶴屋さんが居る。
端から見るとT字状になっている様だ。
痛くも苦しくはないが、鶴屋さんはどうやら俺を押さえ込んでいるらしい。
力を入れている様には見えないが、梃子か何かの応用なのか、ちょっと体が動かない。
これも合気道か何かの技だろうか。
「…あの」
俺はどこか諦めた様な気分で言う。
「笑いすぎはあやまるから! ごめんなさい! 相談に来てくれたのに無礼だった! まだあたしは解答も何もしてないよ!」
対して、鶴屋さんは逆に先ほどまでの笑い声が嘘の様な真摯な表情。
その瞳には真剣さと後悔、更には狼狽が滲んでいた。
でも、それがますます俺の頭を冷ましていた。
俺がやっぱり、一人相撲していただけなんだ、と。
「いや、だから俺のど阿呆なご都合妄想は鶴屋さんの爆笑で、やっぱり俺のご都合的勘違いだったのだと見事に証明されました」
「え?」
「そんな訳ないそんな訳ないと思ってはいたんですよ。最初は…。でも、だんだんハルヒや長門、朝比奈さんの行動や言動がどうしても俺を
誘っているようにしか思えなくなって…。しかも、身内である妹まで異常に過度なスキンシップを求めてくるようになって、果てはミヨキチ
までが同じ様に…。でも、それはやっぱり何かの間違いなんですよ。言いたくないけどそれは古泉にこそあっておかしくない事で、俺の様な
奴にハルヒ達の様な美人達が、万が一もなびく訳が無いんです」
俺はごとりと畳の上に頭を降ろし、自嘲気味に口をゆがめる。
深呼吸すると体から力が抜ける。
体、そして心が楽になった。
良かった。
やはり、俺一人の思いこみだったんだよ…。
俺がハルヒや長門、朝比奈さんの誘惑と思って必死に違う事を考えたり、誘惑に負けそうになるのを堪えていたのも全部独りよがりの妄想
だったのさ。
妹だって、まだ考えが幼いからスキンシップの度が過ぎただけだ。今度、ちゃんと境界線を教えないとな。ミヨキチも妹の影響だろう。
一緒にそれとなく教えればあんな事もうしないだろう。
「キョン君」
俺は目を開けた。
いつの間にか、鶴屋さんが俺の胸の上に顔を載せている。
「何ですか?」
「だから、あたしは放置かい?」
鶴屋さんはむつけた表情で、すらりとした指で俺の胸の上にのの字を書いている。
「ええと、俺の用は済んだし、鶴屋さんも先ほど見事に俺の馬鹿妄想を打ち砕いてくれましたから、もうこれ以上お邪魔は」「分かってない」
真剣な瞳で鶴屋さんは呟いた。
「?」
「君は、本当に損な性格だね」
諭す様な、悲しい様な声だった。
「キョン君は、どうしてあたしの所に相談に来たのかな?」
「それは、鶴屋さんなら、絶対に俺には…」
言いかけ、次の言葉が出ない。
これも当然の事だ。
鶴屋さんほどの人が、俺になんて絶対に…。
だが、これを本人の前で言うのは、例えその通りでも。
「失礼にょろよ〜」
見事に俺の考えを読み取ったらしい。
鶴屋さんは俺の鼻をつんつん、と指でつつきながら、いつも通りの明るくて、どこか悪戯っぽい笑顔に戻って言う。
「すいません…」
「二重の意味で失礼にょろよ。ぷんぷん」
そう言うと、鶴屋さんは体制を変え、今度は俺に馬乗りになった。
「……」
あの、鶴屋さん、今来ているのはお着物ですよね?
「これがディアンドルに見えるにょろ?」
いえいえ、オーストリアの民族衣装には到底見えません…ではなく! そのつまり、馬乗りになるという事は当然足を開く訳で、着物で
足を開いて跨るという事はつまり開いた部分は多分下着であり…それが…。
満面の笑みの鶴屋さんの顔から、うっかり俺は視線を腰に落としてしまった。
そこには…薄紫のレースの下着が丸見え状態っ!
紐だし!
全体的に透けているし!
真ん中に何か見えそうな! いや見えているようなっ!
色々すごいセクシーだけど絶望的に着物には合わないですっっっ!
と、とにかく理性がシス卿に取り込まれそうな、そんなヘブンな物体が、俺の腹の上に熱を帯びて鎮座していた。
だめだ! これもきっと何かの間違い! 陰謀! 策略だ! 孔明の罠だ! て言うか俺の都合の良い妄想だ! 目覚めろ俺! 砕け散れ
馬鹿な妄想!
いやむしろ俺が砕け散ってしまえ!
ゴルディオンハンマーはどこだ!
「キョン君!」
ラオコーンの如き苦悶の表情であった筈の俺を、鶴屋さんが強い口調で呼ぶ。
はっと目を開けた俺の前に、静かだが、確かに怒った表情の鶴屋さんが居た。
「女の子はね、そりゃ人によるけど、概ね人を好きになるのに損得勘定なんてしないんだよ。キョン君はどうしてそんなに自分を殺すのかな?」
「それ…は…」
真摯な瞳が心を打ちますが、正直下着のインパクトに打ち消されています。
「みくるも、ハルにゃんも、有希っこも…本気なんだよ。たまにしか顔を出さないあたしだって一発で分かるくらいにね。あのハルにゃん達が、
自分をさらけ出してあたしに悩みを打ち明けに来た時は胸が締め付けられそうだったよ」
「みんな、悩んで…?」
明るく笑うハルヒ、真っ直ぐな瞳で俺を見詰める長門、子供の様に微笑む朝比奈さんの顔がよぎる。
みんな、俺の事を…?
「ハルにゃんは、キョン君にわざと意地悪しているみたいに当たる事でキョン君の堪忍袋の緒が切れて、みんなが居なくなった後の部室で
呼び止められ、何って言おうとしたらいきなり机に体を押しつけられて、泣いていやがる自分を無視して、あんな事やこんな事をしてくれ
たら、それをネタに一生を約束させるのに、変に我慢強くてなかなか上手くいかないって泣いてたし」
はい?
「有希っこも、そっち関係にはまったく無知だと思わせて無知故の大胆さを演じて、知らず知らずにキョン君を興奮させてしまい、気が付いた
時はすでに遅く、ぷっつんしてケダモノと化したキョン君に繋がったまま抜いて貰えず気絶するまでされちゃって、それをネタに一生一緒に
居られる様にしたいけど、胸の容量が少ないせいか作戦が不発ばかりって俯いちゃうし」
…え?
「みくるも、コスプレ衣装を実はこっそり改造して丈を短くしたり、胸やおしりの部分の布を薄くしたりして、時々部室で二人きりになった
時にはお茶に怪しい薬を少しだけ忍ばせて、辛抱たまらん状態になったキョン君が襲われて、体中をめちゃくちゃにされたところをタイミング
良くみんなに見られたら、晴れて夫婦になれるのに、あたしドジだから上手くできないんですってぽろぽろ泣いちゃうんだよ」
……。
一瞬、深い感慨に浸れるかと思ったが、何故か宇宙の彼方にその感情が吹き飛んだ。
「でも、あたしもそれを聞いている時、本当は切なくて、羨ましくて堪らないんだよ」
貴女も、切なくなる前に彼女達の頭の方を心配してあげてください。
て言うか羨ましがっているのはあくまでもその想いですよね? やりたいとか言わないですよね?
とりあえず一瞬でも三人に覚えた胸の切なさを返して欲しい。
で、そんな事俺に言っちゃっていいんですか?
「キョン君が本気で気付いていなかったら言わなかったけど、気付いていない振りって言うんなら別っさ。あたしだって塩を送りっぱなしは
嫌にょろ」
だからってそんな洗いざらい…。
「女はこういう時は、例え親友同士でも怖いにょろよ」
……。
「でも、でもね、あたしは、そんなみんなを心底愛おしいと思う。少し弾けた行動も、想いの裏返しなんだよ」
裏返しどころかめくれかえってどこか異次元に吹っ飛んでる気がします。
「でも、その感情と同じくらい…あのね、君には言うよ。その時ね、彼女達を憎らしいとも思っちゃったんだ」
鶴屋さん…。
「ええと、とにかく、分かったかい? 君は、そんなにまで好かれているんだよ」
信じられない言葉だった。
「ハルヒ達は、その…色々と、すごい連中なんです。俺なんて、居るのがおこがましい位に…。そんな平凡な男が、どうしてそんな彼女達に
好かれている、なんて思えますか?」
「…真面目だね。馬鹿がつくくらい、真面目で…残酷だよ。女殺しってのは君の事だね」
鶴屋さんは馬乗りのまま優しく微笑む。
出来れば腰をゆっくりグラインドさせないでください。
「古泉君も悩む訳だね」
キコエナイ! 全身全霊で今の一言は聞こえないっっっ!
「キョン君、キョン君は女の子を、例えば相手がお金持ちかどうかで選ぶ?」
「そんな事しません!」
「それと同じ」
「……」
「すごいと思っている人たちに頼られる、好かれるのは、君の方がすごいところがあるからなんだよ。勉強とかそういうのじゃなく、ね」
「…でも、俺はどうしたらいいのか分からないんです」
「成り行きに任せればいいんだよ。だって、あの子達はすごい連中なんでしょ? それなら、君も、周りの子達だって、悪い様になんか
しないもんさ」
鶴屋さんは笑った。
眩くて、そして暖かい微笑み。
…ああ、この人もすごい。
のどの奥に突き刺さっていた棘が、じわじわと溶けていく気がする。
どう行動しようかとか、そう言うのは分からない。
でも、その場その場で『動ける』勇気が持てた気がする。
「…ありがとうございます」
「うむ! アリストテレス曰く、素直な事はいい事にょろ!」
絶対違う。
鶴屋さんは馬乗りのまま腕を組んでえへん、とふんぞり返った。
あの、そうするとますます股間が押しつけられる気が…。
ヘソの上あたりがなんとなくじっとりと熱いんですけど。
「むふふふ、ところでキョン君?」
打って変わって小悪魔の様な、可愛らしくも悪戯で邪悪な微笑み。
鶴屋さんは獲物を狙って跳び上がった時の狐の様に、俺の両肩に手を置いて質問を始めた。
「もう一度聞くけど、どうして君はあたしにそう言う相談をしに来たのかな?」
「……」
何かもう、俺の脳は再び警鐘を打ち鳴らしている。
この人に、俺はたった今助けられた筈なのに、何故俺の脳はハルヒ達に対するものと同じ警鐘を鳴らし始めているのだろう?
「どうして、あたしは『違う』と思ったのかなぁ?」
「いえ、それは…」
「そりゃあ、SOS団の正式団員達に比べればあたしは出番が少ないよ。でもね、キョン君に対する気持ちの蓄積は決して負けていないのさっ!」
正直、どうしよう?
「他の女の子の気持ちを代弁させる失礼、あたしの気持ちを分かってない失礼。この二つの失礼をとりあえず詫びてもらうにょろ〜」
どうやって? と言えなかった。
「んっ」
鶴屋さんは俺の体の上にそのまま体全体を乗せながら、肩を掴んでいた手を素早く両頬に固定さてそのまま唇を重ねた。
少しの間、時間が止まる。
やがて、鶴屋さんは唇を嘗め回し始めた。
そしてそのまま唇は肌から離さず、器用に頬やあご、首筋までも舐め始める。
「おいしいにょろよ…」
耳に甘い言葉が響く。
「んむ…」
程なく鶴屋さんの唇が俺の唇に戻ってきた。
そんな筈は無いのに、蜂蜜を舐めている様な甘みを感じる。
鶴屋さんの長い髪がふわりと降りかかり、その滑らかさと柔らかな香りで意識が遠くなりそうになる。
密壷に填っているような感じだ。
重ねた唇は決して放さず、そしてまんべんなく位置を変えながら、鶴屋さんは味と感触を楽しんでいる様だった。
感覚が鋭敏になっているのか、唇をついばむ音が妙に大きく聞こえる。
「ふ…んん…」
鶴屋さんはもう、どう見ても夢中としか思えぬ恍惚の表情で俺の唇をついばみ続ける。
いつもの太陽の様な笑みを携えた爽やかな表情とは打って変わり、その妖艶とすら言える表情に俺も意識が飛びかける。
「んう…ちゅ…」
その時。
「お茶のお代わりをお持ちしました」
「…ぷあ…おいて…くちゅ…おいて…ちゅぱ…ちゅ…ちゅ…」
「失礼します」
ちょっとまってっっ!
俺は思わず飛び起きようとしたが、人一人の体重が上半身にかかっている上にそもそも顔が動かせない為どうにもならない。
今お茶を持ってきた婆やさん(予想)! 聞こえてますよね?
この声や音、あなた絶対に聞こえていますよね!?
俺は鶴屋さんに目で訴えたが、鶴屋さんはそうかもね、と目で笑い、事も無げに行為に没頭し続けた。
鶴屋さん、あなた普段どういう行動してますか? こういう事していても誰も気にしないんですか?
あたしのやる事に文句は言わせないにょろー。
瞳がそう言っていた。
別の意味で目眩がする。
やがてすこしずつ唇が舌で押し開けられ、更に甘いそれが俺の口の中にゆっくりと、確実に、口腔内すべてを舐め尽くそうと大胆に
進入してくる。
両腕が俺の頭を抱え込み、離さないぞとの意思表示がこれでもかと伝わる。
そして舌は舌で、歯茎、舌、頬の内壁と、自分でも舐めた事無いんじゃないかと思える所まで懇ろに舐め尽くされた。
「んぷ…」
数分後。流石に酸素が欲しかったらしい。
鶴屋さんが俺の唇から舌を離す。
「鶴屋さん」
「何?」
「キス、長すぎません? と言うかスキンシップが過激です」
普通なら頭が真っ白になって何も考えられない所だが、何故か今の俺は落ち着いていた。
鶴屋さんのおかげかね?
「ふっふっふっ。冷静で嬉しいよ。こういう事は先手必勝なのさっ! 学校じゃハルにゃん達と比べて圧倒的に逢える時間が少ないから、
こういう風に蛸が蛸壺に嵌った時に利子付きで甘い汁を吸っておかないとね! そして、その時こそ、普段の練習が実践でモノを言うんだよっ!
こんな風にね」
そうか。俺はずいぶんと立派な蛸壺に嵌っちまったらしい。て言うか練習ってナニをしてますかあなたは。
「では快く同意を得た事だし遠慮無く続きにょろー。はむ」
快くも同意も何も許可した覚えはないが、俺は再び唇を塞がれた。
そして鶴屋さんの手が頭から離れ、手探りで俺の手を掴むと背中に誘導しようとしている。
抱いて、と言う事か。
だが、そんな最中でも口を一切離そうとしないせいか、どうにもうまくいかない。
これが、気付かせてくれた礼になるかは分からない。
だが、応えるべきだろう。
俺はその手を握り返し、そのまま放さずに腰のあたりをぐい、と掴んだ。
「! …ひょんふん…」
唇をくっつけたままで鶴屋さんが呟く。
その目は少し驚きの色を含んでいた。
当然かも知れない。
突如、背中に手を回して固定された状態になってしまったのだから。
「これじゃ…縛られているみたいだよ…」
だが、その声には恐怖どころか悦びが混じる。
鶴屋さんの息はだんだん荒くなる。
こういうの、好きですか?
「…女の子にそんな事言わせないでにょろ…。あ…そんな…は…んむ…」
ならば少々強引にいかせてもらおう。
今度は俺から鶴屋さんの唇を奪う。
馬乗りで折り重なり、しかも後ろ手。
とんでもなくはしたない格好で俺の上に乗っている鶴屋さんは、強引な行為になすがままで唇をぬらし続けた。
「あ…んむ…すごい…。あたし…今…キョン君に…犯されているみたい…」
その声は上気し、瞳は潤んでいた。
この状態では見えないが、おそらく上に乗っている鶴屋さんは尻を丸出しにしているだろう。
その状況と鶴屋さんの言葉に、俺は思わず興奮する。
握っていた鶴屋さんの手を離し、手が尻を掴んだ。
「ひあ…」
柔らかで暖かい尻の感触が心地よかった。
もう、このままどうなるのだろうと思った時。
「あん…あ…まって…これ以上は…許して…ぷ…あ…」
その言葉に俺が手と唇を離すと、鶴屋さんはごとりと頭を胸の上に落とした。
一体、どれほどの時間鶴屋さんを抱きしめていたのだろう。
手を離すと、後ろ手になっていた鶴屋さんの手はのろのろと俺の頭を抱きかかえる。
「詫びを入れて貰うつもりが…詫びを入れちゃったにょろ…」
「鶴屋さん…俺…」
その言葉をついばむ様なキスが止めた。
「これ以上は、正直残念だけど今はお預けだね。この先は流石にアンフェアになっちゃうし、このまま…全部奪われても、きっとみんなは
引いたりしないから」
俺の自惚れではなく、心底残念そうな顔で鶴屋さんは言った。
ああ、そうか。
俺は思い出す。
明日の探索、一体どうなるのだろう? と。
「でも…」
鶴屋さんは俺の上でむくりと起きあがり、悪戯な顔で笑う。
「キョン君、おっぱいは好きかい?」
すいません、正直大好きです。
「それじゃ、えいっ!」
うおっ!
鶴屋さんは着物の肩をぐい、と開き、肩口を露わにする。
そしてそのまま着物をずらし…。
「ぽろりにょろ」
目の前に、豊満な乳房が現れた。
形が良く、つややかなそれは鶴屋さんのおでこの様に…げふんげふん。
とにかく、目の毒どころか致死的な美しさだった。
「触っていいよ」
鶴屋さんが俺に起きて、と促し、俺と鶴屋さんは座位の駅弁スタイルになった。
眼前の胸もそうだが、より股間に密着する鶴屋さんの下着とその中身の感触が俺の息子を元気づける。
俺は両の手で胸を触り、そっと揉んだ。
「あっ…」
それは素の鶴屋さんの声。
俺はゆっくりと胸を揉み、登頂の乳首をそっとつまむ。
「やっ! …え、えっ? あっ! あっ! そんな…うそ!? うそっ!?」
鶴屋さんが仰け反ってもだえながら、何故か疑問符を浮かべている。
ここで逃げられても嫌なので、腰を抱き寄せ固定。
どうしたんですか?
「だ…だって、だって…あっあっ! おか、おかしいよ…」
何が?
「ちがう…ちがうよ…だって、こんなに気持ちいいなんて…違うよ…やっ! あうっ! ダメ! ダメぇっ!」
そう言われても止まりません。
「やんっ! なん…なんでっ? ここまで気持ちいいなんて…想像と…ちが…ひっ! あっあっあっ!」
鶴屋さんは驚きと恍惚を混ぜた表情で、痙攣する様に体を跳ねさせながら仰け反る。
胸が弱いのを自分では知らなかった、と言うところか。
珍しく取り乱している鶴屋さんを見ているとやっぱり少々いじめてみたくなる。
俺は胸を揉んでいた片方の手を腰に回し、ぐい、と胸を顔の前に引き寄せる。
「ひっ!?」
流石察しがいい。
「キョン君! やめてやめて! おねがい! ゆるして! ゆるして! ごめんなさい! ごめんなさい! ゆるしてっ!」
鶴屋さんはやめてやめて、と本気で涙を流している。
今日は色々初めての経験や見るものが多いな。
色々技も持っている筈なのに錯乱しているのか、子供の様に腕を伸ばして体を離そうとしているだけだし。
表情も動きも、普段のりりしさはかけらもない鶴屋さん。
だがそれでも、いや、それはそれでとても魅力的だった。
「やん! やだ! ゆるしてゆるして! おねがい! やめてっ!」
うん、それ無理。
俺は誰も触れた事が無い乳房を揉むだけにとどめず、それをそっと口に含んだ。
「ひ…」
鶴屋さんの全身が硬直した。
舌で乳首をゆっくりと舐める。
甘い。
俺はころころと乳首をころがし、登頂をくりくりと細かく左右に揺する。
「…き…あ…」
体ががくがくと震えた。
俺はそのまま、乳首をやんわりと唇で噛む。
「〜〜〜〜!!!!!」
次の瞬間、鶴屋さんは声にならない悲鳴をあげて思いっきり仰け反った。
勢いで口からぶるん、と乳房が離れる。
やっぱり歯で噛まなくて良かった。
そして体ががくがくと痙攣し…鶴屋さんは
仰け反った体制のまま、果てた。
俺の股間を、なんだか暖かいもので濡らしながら。
うん、やっぱり美人でもあれはそれなりに匂うんだな。
で、えーと、どうしよう?
「……。しん…じられ…ない…」
仰け反ったままの鶴屋さんを畳に降ろすと、人形の様に体を弛緩させたまま、寝言の様な呟きで鶴屋さんは言った。
「あたしが…こんな風に…」
どこか焦点の合っていない瞳で鶴屋さんは呟いた。
あの、すいません、やりすぎました。
俺は乱れきった衣服をなんとか前だけでもと隠し、謝る。
「キョン君…」
はい。
「君が…本当に怖くなったよ…」
え?
「あたしを…ここまで…ここまで…なんて…」
そう言い、自分の股間にそっと指を当てる。
ぴちゃ、と下着から音がした。
「おまけに、お漏らしさせてくれちゃった…。ここまで…あたしを…めちゃくちゃにするなんて…」
すいません、本当にすいません。
「…覚悟、してね」
何をですか?
「色々だよ。そして、君だけじゃなくて…」
鶴屋さんは天井を眺め、何故か不敵に微笑んだ。
「ちょっと待ってね」
鶴屋さんは瞳を閉じ、大きな深呼吸を何回かする。だんだん、下がっていた眉がいつもの鶴屋眉になってきた。
「…さて、着替えないとね。キョン君、起こして」
一分ほどして、鶴屋さんがいつもの声で言う。
俺は手を取り、鶴屋さんを座らせた。
「にょろー…」
気怠げに鳴く鶴屋さん。
「かしこまりました」
心臓が飛び出るかと思った。
いや、多分何センチかは動いたと思う。
婆やさん(仮名)居たの!?
ずっと居たんですか!?
全部聞いてたんですか!?
不可思議言語のやりとりよりもその事実が俺を驚愕させる。
「ばっちゃに隠し事は不要にょろ」
そう言う問題じゃないと思うんですが!
「戦国時代だって、親方様と側室の初夜は襖一枚隔てた向こうに何人も付き人が居る状態で行われたにょろよ」
そうだけど! そうだけど!
流石に慌てる俺によしよし、と優しくキスをする鶴屋さん。
「替えをお持ちしました。キョン様のは礼の一式で宜しいですか?」
「にょーろー」
「はい。では失礼します」
この言語を解析できたら多分ロゼッタストーンの解析に次ぐ偉業だろうな、とか思っている内に鶴屋さんはのろのろと歩いて着物を二着
持って来た。
一着は鶴屋さん、もう一着は俺、か。
「それじゃ、洗濯するから着替えてね。流石にその服のままは帰れないでしょ? 妹ちゃんなんか勘がいいから、絶対に問いつめられるよ」
その通りです。ご厚意に甘えさせて貰います。
「あたしが先に着替えるから、ちょっと後ろ向いていてくれるかな? それとも着替えさせてくれる?」
いえ、頭を冷やさせてください。
「ふっふー」
なんですか? その出来るかな? みたいな表情は。
「まぁいいっさ。そんじゃお着替え開始にょろよー」
俺は速やかに後ろを向く。
「終わったにょろよー」
早っ!
思わず振り向くと、先ほどの着物よりやや軽めな、浴衣みたいな作りの着物を着ている鶴屋さんが居た。
涼しげな格好も似合っています。
で、えーと、なんか、胸の開きが大きいですよ? それに、質は良さそうですが布地が薄いんですか? その…胸の先が…くっきりと…。
「うっふん」
やめてください。頭冷やしている最中なんです。と言うか、そんな格好流石に家の人に見られていいんですか?
「この辺りはばっちゃ以外入って来ないから平気にょろ」
…それってつまり、この辺り一角全て鶴屋さんの領域、って事ですか?
「んー、そんなところ。でも領域なんて言わないでよっ。部屋だよ部屋」
相変わらずスケールが違うというか次元が違う。
「さて、キョン君こそ早く着替えないと、あたしのあれの匂いが染みついちゃうよ? 薔薇の香りには思えないからねぇ」
そうでした。
えーと、それじゃ鶴屋さん、後ろを…。
「しゅるっと」
わぁ。
鶴屋さん、突然俺のベルトを素早く抜きました。
「ちょいちょいっと」
そしてシャツのボタンをぷちぷちと外し、あっさり上半身裸に剥かれちゃいました。
いやーん。
「それー!」
って鶴屋さん! ズボンを! 一気にっ!
「ぅわ」
おもちゃを見つけた子供みたいな表情で、鶴屋さんが満面の笑みを描く。なんか瞳も輝いていませんか?
ええと…なんと言うか…どうしよう。
「…見ちゃった」
少し興奮気味の表情。頬がほんのり紅色で色っぽい。
「…ちゅ」
って! 鶴屋さん! ちょっと!
そこは! そこは! オベリスクが発動しちゃうっ!
「えーと、ここ? ぺろ」
俺のターンっ!
「え? …わっ! すご…別の生き物みたい…。えと…やっぱり、あそこで止めたら男の子はたいへんだよねぇ? …ところで、これって
普通の大きさ…なのかな? なんか、おっきい…」
…たぶん平均と思いますよ。
「そうなの? 親父っち以外のは見た事なくて…」
意外にウブ?
「失礼にょろー! これでも正真正銘バリバリ伝説な箱入り娘なんだからねっ! 運動会や学芸会以外じゃ男の子と手繋いだ事も無いんだよっ!」
その割には行動が色々すごいんですけどっ!
「そのかわり、女の子に関しては知識も実技も豊富にょろ。それ繋がりでねっ」
……。
なんだろう、一瞬朝比奈さんの泣き顔が頭に浮かんだぞ。
「だから…気持ちよくなかったら、ごめんね」
そう言い、鶴屋さんはあーんと口を開け、俺のオベリスクをくわえ込んだ。
ふんもっふ!
「…んっ! げほっ! げほっ!」
喉の奥に入れすぎたのか鶴屋さんが激しくむせて顔を離す。
大丈夫ですか? …もしかして、俺のが匂ったとか? すいませんっ!
「えほ…だ、大丈夫。初めてだから加減がわからなくて…。それに、変な匂いだけど…キョン君のだから…なんか、嫌じゃ…ないみたい」
自分でも恥ずかしい事を言っていると分かっているのか、鶴屋さんの顔が真っ赤になる。
いかん、その表情、俺のオベリスクにパワーが流れ込む。
「それじゃ、続きね」
鶴屋さんは俺を寝かせると、股間に顔を埋める。
「えーと、本当はあたしもひっくり返った方がいいんだろうけど…ごめんね、今キョン君にあそこいじられたら、多分本当に気絶しちゃうか…
我慢が、もう…」
謝らないでください。多分、それやられたら俺も本当に理性が吹っ飛びます。
ありがとう。そう言って鶴屋さんは暖かい口腔に俺を納める。
舌をまとわりつかせ、ゆっくりとゆっくりと動かすそれは、未知の快感となり俺の下半身を刺激していた。
湿った音が耳に響き、それも興奮度を高める。
何よりも、鶴屋さんという才色兼備な女性が俺の股間に顔を埋めて息子を加えているという非現実的な現実が何よりすごい。
「つ、鶴屋さん……!」
俺は思わず鶴屋さんの頭を押さえていた。
ちょっと驚いた表情だったが、いいよ、と目で合図してくれ、俺は逆らうことなく鶴屋さんの頭を自分でゆっくり上下させる。
「…っ!」
程なく、俺は快感の絶頂に達し、鶴屋さんの口の中にそれを吐き出した。
「んむーっ!」
流石に鶴屋さんが苦悶の表情を浮かべるが、自分でも腰をしっかり掴み、顔を離そうとはしない。
押し寄せる快感の波が収まってきた頃、鶴屋さんは深くくわえ込んでいたそれをゆっくり、ずるずると放し、やがてぷるん、と唇から
それが外れた。
口をつぐんだままの鶴屋さんはちょっと悩んでから、顔を持ち上げて薬を飲む時みたいに、口の中のそれを飲み込もうとして…。
「!!」
大あわてで立ち上がり、部屋の隅のゴミ箱に顔をつっこんだ。
大丈夫ですかっ!
「げほっ! げほっ!」
俺は鶴屋さんの背中をさする。
「…けほ…大丈夫。胃の中のものを出しちゃった訳じゃないよ…」
鶴屋さんは顔を上げ、涙ぐんだ瞳で健気に微笑んだ。
本当に平気ですか? 気分は?
「んー…何て言うか、やっぱり、匂いがすごくて…ごめんね、飲めなかった。だんだん慣れるから、許してね」
いやいや、許すも何も…て言うか無理に飲めなんて言いません。
…だんだん?
「慣れるから」
真摯な瞳が俺を見る。
……。
「頑張って、って言って」
「頑張ってください」
「めがっさ! …ところで、キョン君はスッキリした?」
そりゃもう。
「ふふ、あたしもなんだかとっても気分爽快だよ。それに、お互いに初めてをたくさんあげちゃったね。キスに、おフェラに、ペッティングに、
ごっくんは…未遂だけど、ちょっと飲んだからまぁよしとして、粗相までして、しかもキョン君にかけちゃったんだから、これはもう、相当な
アドバンテージをSOS団から奪ったねっ!」
確かに。
これを知られた時、俺は人生が終わるかも知れませんが。
「ふふふ」
悪戯な微笑みがそれでも可愛らしくて、俺も頬をゆるめる。
ところで、そろそろ帰ります。流石に時間も経ちました。
「んー、夕餉も一緒にと言いたいけど、あんまり独り占めじゃ悪いしね。そんじゃ、体吹いて、これに着替えてね」
鶴屋さんは用意されていた衣装一式を俺に勧める。
下着からジャケットまで一通りだ。
あの、俺が着てきた服から明らかにランクが跳ね上がっています。それとなんでこんなにサイズぴったりですか?
「ふっ。鶴屋家の情報網を甘く見ると怖いにょろよ」
色々怖いなぁ。
「んじゃ、脱いだ服はこっちで洗っておくっさ」
恐縮です。
それじゃ、今度この服もクリーニングしてから、俺の服を返してもらいに伺いますね。
「それはそのうちいずれいつの日か、ふと記憶の片隅でそれに気が付いたら気になったらひょっとして返そうかなって考える事があるかも
しれないと思うのは思想の自由にょろ。過去の事は、特に衣服関連の事はきれいさっぱり忘れるといいって今朝の新聞の占いに出ていたっさ〜
にょろにょろにょろ…」
鶴屋さんは漫画で見る催眠術師みたいな手つきでやたら文面の明確な呪文を唱える。
…えーと、それじゃ、この服もそのうちって事で…。
「にょろ!」
その後、着物の上にもう一枚羽織を着た鶴屋さんに連れられ、俺は鶴屋家の長い廊下を歩いている。
「今のところ、あたしが肉体的関係で一歩リードにょろね。ふふふ…内緒だけど」
鶴屋さんは俺の腕につかまり、頬ずりしながら楽しそうに言う。
「先の見えないレースっていうのは、どうしてこうもどきどきするものなんだろうね…」
最早言うのもアホらしいが、鶴屋さんもこの信じられない五つ巴に飛び込む気まんまん…と言うか実質飛び込んでいるな。
そうすると六つ巴?
ふーん、楽しそうだなぁ。
…駄目だ。いくら第三者的視点でものを見ようとしても現実は今の鶴屋さんの様に俺の腕にのしかかってくる。
「キョン君。もう一度言うけど、君は充分すごいんだよ。人としてね」
煽てられた人間はたいてい自滅しますよ。
「そうならないのがすごい所なのさっ!」
自信ないなぁ。
そんな俺を見て鶴屋さんはさも楽しそうに笑った。
ついでにちょっと股間を撫で…あふん。
「…ふふ、もうすぐ…どきどきにょろね」
何が!? 分かっているけど聞きますよ! 何が!?
鶴屋さんは禁則事項です、と人差し指を口に当てて微笑んだ。
その笑顔が美しくもどこか怖いのは、きっと規定事項です。
つづく
以上。
おそまつ。
名称とか細かいとこ変だろうけど許してね。
>>447 >>450 どっちの人ともちゃうねん。
乙!です。後は佐々木、橘、周防、森さんかな?クラスメイトの阪中
非常にGJデス
うわ…
佐々木厨厨のこと言っただけでなに佐々木スキー扱いしてるんだよ…
佐々木みたいな男口調の女なんか好きじゃないし
512 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 17:40:59 ID:+Mo++E15
GJ!!
続き期待してます
専ブラなのにsage忘れた。すまん
>>511 男口調ともまた違うと思うぞ。あのくどい言い回しが煩わしいだけだろ。俺は大好きだけどな!
投下します。
キョン×みくるものですが、エロはありません。
たぶん37レスです。
「わぁ、これ可愛いなあ」
これ見よがしに仰々しくショースタンドで展開されている目玉商品の一つを手に取り、朝比奈さんは感嘆の声を上げてそれに魅入っている。
昭和基地辺りの寒さくらい厳しい家計を憂う俺は、その横でチラチラと値札を目で追う。財布の中身との緊急会議を急いで開く必要がありそうだ。
「……あ。やややっぱり、ちょっとわたしには似合わないかなぁ」
きっと、値札に記された数字の羅列が目に入ったのだろう。
オドオドと不審者の如く立ち振る舞いで商品を戻し、朝比奈さんはタタッと別の陳列什器へ向かう。嗅ぎ慣れた安物のシャンプーの香りを、置き土産に残していくのがまた憎い。
「朝比奈さん。これ気に入ったんなら、これにしましょう。たぶん、大丈夫ですから」
俺が使う分の出費を色々と切り詰めれば、まあなんとかなりそうだしな。
ロウソクの長さを計るまでもなく、寿命を削らんばかりに頑張ってくれた朝比奈さんには、これくらいのお返しは当然の必然ってもんさ。むしろこれでも安いくらいですよ。
「ええっ、そんな。あたしより絶対キョンくんの方が大変でしたよ」
もうどっちが大変だったとか関係なく、とにかく今俺は猛烈に朝比奈さんにお返しがしたいんです。それこそ俺の身を売っても構わないくらいだ。
「ありがとう、キョンくん。気持ちはとっても嬉しい。でも、ダメ。ダメですからね。後のこと考えないと」
店内の野郎客全員を一瞬で恋に落とせそうな笑顔を俺に向け、その笑顔のままの朝比奈さんに俺は軽くお叱りを受けた。なんだかM属性が芽生えてしまいそうだ。
笑顔は別に減るもんではないが、これ以上他の男どもに見せていると何か減ってしまいそうな気がして、俺はすぐさま話題を変えて元の状態へと導く。ちょっと惜しい気もするが、俺はいつだってこの笑顔を拝見できるしな。
そうして値段を第一に気に掛けつつも朝比奈さんお気に入りの靴を探して、久々の、本当に久々のショッピングらしいショッピングを俺たちは楽しんでいた。
「あ、えと……これ可愛い」
わざわざ値札を確認してから「可愛い」と言う心遣いが、もう果てしなくたまりません。
「いいですね、試着してみましょうか」
俺はニヤケそうになる頬を左手で制しながら、右手を上げて店員を呼ぶ。
営業スマイルの奥に忙しさを垣間見せつつも、俺の声に反応を見せたお姉系店員がこちらへとやって来る。朝比奈さんが希望のサイズを告げると、在庫を確認すると言ってバックルームへと姿を消した。
「あ、キョンくん。今日のご飯どうします?」
他の客が扉を開けた際に入り込む風が艶やかな栗色の髪を揺らし、今度はその揺れる髪が俺の平常心を揺らしてくる。十万本のエナメル質ミサイル。
俺は懸命に迎撃を試みようと、晩飯のことだけを頭に浮かべることにした。
「そうですね。えーと」
俺がメニューを考えあぐねていると、そのあいだに在庫を調べ上げた店員が戻ってきた。
だが朝比奈さん指定のサイズはどうやら品切れらしく、ワンサイズ上の物を抱えて、どうですか、と試着を勧めてくる。
「……じゃあ、一度履いてみます」
履き込みすぎて、その可憐な容姿には不釣合いな状態になっている靴を脱ぎ、朝比奈さんは真新しい靴へと足を運ぶ。私服に裸足って、なんかいいな。
「ふぇ、ちょっと大きいかも……。残念です」
ガラスの靴を履きこなすには少しばかり幼い容姿だったシンデレラは、一瞬、顔を曇らせるが、
「あ、じゃあこれ。これも可愛い」
年頃の女の子は何かと移り変わりが激しいようで、すぐさま笑顔を取り戻して次の候補を手に取る。まあ、朝比奈さんが履くのならなんだって可愛くなりますよ。
「あ、ピッタリ」
店を出た俺と朝比奈さんは、特に行き先を決めるでもなく適当な方向へ歩き出した。
予想よりリーズナブルに済ませることになった朝比奈さんへのプレゼント入りの紙袋を右手に持ち、さて次はどうしようかと目的地を決めかねていると、
「そういえばキョンくん、ご飯どうします?」
ああ、さっき訊かれてそのままでしたね。えーと、そうですね。
「久し振りに、朝比奈さんが作ったサンドイッチが食べたいです」
あの鶴屋山で食べて以来、一度も口にしていませんからね。
「ええっ、そんなのでいいの?」
そんなのも何も、俺にとってはどんなフルコースよりもごちそうです。それにさっき、後のことを考えないと、って言ったのは朝比奈さんですからね。贅沢はいけません。
「ありがとう。そう言ってくれると作り甲斐があるなぁ。うん、贅沢はダメですね」
そう自分を戒めて、頭をコツン、とやる朝比奈さん。
その可愛らしい仕草に地球も興奮を隠しきれなかったのか、自身が立ち昇らせた熱気の分の空気を埋めるように、俺たちの足元に風を吹き付けてくる。
スカートは膝下だが、それでも眩しい膝小僧を見え隠れさせるその風に俺は少しの嫉妬を覚えつつ、そんなガキな自分を心の中で嘲っていた。
等間隔に植えられた、まだ育ちきっていない街路樹を俺がぼーっと数えていると、
「あ、いや、ちょっと、朝比奈さん」
「えへ。いいですよね」
とか言って背伸びして腕を絡めておいでになった。幼顔の少女も、ちょっとした大人びた振る舞いで本当に大人っぽく見えてしまうから侮れない。年下に見えたシンデレラは、魔女の魔法の一振りで上級生へ。
いっぽう俺はといえば、赤い顔を冷やす作業で精一杯で、なんだかいつもとは立場を逆転されてしまった感じだ。
羞恥心と優越感が絶妙にブレンドされたような感情を湧き上がらせつつ、俺は周りの男どもから突き刺さる視線を左右へと受け流していた。このお方は俺のもんだぞ、と。
そうして俺が見知らぬ人々と牽制し合っていると、加えて肩にもふわっとした感触が現れる。またもやシャンプーの香り。
お世辞にも王子様とは程遠い俺に、シンデレラなんぞもったいないのは百も承知だが、それでも俺は離したくない。絡まる腕に力を入れ、ぐっと強く引き寄せる。それに答えて、朝比奈さんが頭を肩にコツンとやってくれるのがこそばゆい。
半年前に蒔かれた苦労の種が、ようやく花開いた至高のひと時。
そう、全ては半年前に。
半年前。文芸部室。
おぼろげな記憶の地引き網を引っ張らずとも、キュートな字体という海上保安の巡視船が、記憶の海から該当する人物をすぐさま引き揚げてくる。一瞬で誰なのかを推測できた。
そもそもこういった呼び出し手段を選択している時点で、端から俺の先入観は全開でスタートアップしており、結果ある人物だと完全に決め付けていた。
未来ではデジタル化が一周して逆にアナログに回帰しているのだろうか、手紙という古くからの習わし。うむ、音楽とかでも何かとアナログに執着する人がいたりするからな。あながちそうなのかもしれん。
エコマークが好感度の上昇に拍車を掛ける可愛らしい便箋をポケットに忍ばせ、俺は放課後の部室で待ち呆けていた。
「あ、ごごめんなさい。待たせちゃいました?」
痛んだ扉を労わるようにそっと開け、俺の前に姿を現したのは、ちょっとばかし予想とはズレた人物だった。いや、同一人物なんだから合ってるっちゃあ合ってるんだが。
「いえいえ、俺も今来たばかりですよ」
脳内モニターに映し出していた人物像をズームアウトで小さく写し直すと、俺の眼前に現れた人物と一致する。
そう、大きい方の朝比奈さんではなく、見慣れた俺の朝比奈さんだ。
「あの、またなんですけど、ちょっと付いて来て欲しいところがあって……」
乾季を凌ぎきれなかった稲みたいに萎びた様子で、朝比奈さんは申し訳なさそうに俺に請う。
茶っ葉の買出しか、はたまた未来絡みの付き添いなのか、どっちにしろ次世紀のヴィーナスにこんなお願いの仕方をされたんじゃあ、俺がイエス以外の回答を弾き出すわけがない。過去でも異空間でもお供いたしましょう。
「よかったぁ。うふ、ありがとう」
いえいえ、こちらこそ毎日の眼福をありがとうございます。
まあ、どちらかといえば二人きりで茶っ葉の買出しの方が色々と満たされる気もするが、未来のおつかいだって十分なもんさ。
どこへ行こうとも、朝比奈さんの萎びた稲には俺が水を満たして差し上げたいね。
俺が勝手に朝比奈水田に足を踏み込まんと長靴に履き替えようとしていると、俺の手に小さな手の感触が伝わってきた。眼福ならぬ触福とでも言うべきだろうか。この時点で、俺の方の水田は七割くらい水で満たされたようなもんだ。
「では、いきますね。目を閉じて……」
言われるがままに瞼を下ろし、お世辞にも気持ちいいとは言えないあのハードな感覚に備える。
「じゃあ長門さん、ちょっと行って来ますね」
ちなみに今まで全く触れていなかったが、長門も部屋の隅っこで活字漁りに精を出していることを伝えておこう。
「…………」
目を瞑っているのでなんとも言えんが、なんとなく長門が今うなずいたような気がする。
長門に、いってきます、とテレパシーを送っている俺を尻目に、いよいよ浮遊感が身体を襲い始めた。
そして次の瞬間。
部室の扉がやかましく開いた気がした。
しかしすぐに時間遡行に入ったため、それは気のせいだったのかもしれないと思い直し、しばし壮絶なバイキングにリンパ液を掻き回されていた。
「ふぇ……何か……」
遡行中に聞こえたどことなく不安げな朝比奈さんの呟きも、きっと気のせいなんだろう。病は気から的な要素で、さっきの扉の音が心に妙なつっかえを作っているが故に聞こえた幻に違いない。
あーもう、とにかく気持ち悪くてどうでも良くなってきた。いい加減慣れてきそうなもんだが、遊園地のコーヒーカップでさえ苦手な部類に入る俺には、ちときつい。
ようやく身体がまともな感覚を取り戻し、靴底が地面と接しているのを確認する。
さて、いつのどこへ来たのやらと朝比奈さんの方を振り向くと、
「……あれ? うそ……」
ウォーリーでも紛れ込んでいるのかと思うほど電波時計を凝視している朝比奈さんは、大きな瞳をさらに大きくして呟いた。
「どうしたんです? ていうか、とりあえず今はいつなんですか?」
まず問い掛けてみるが、俺の問いは朝比奈さんの耳には入らなかったようで、
「……そんな、確かに四年前に」
こちらを振り向くことはなく、独り言は絶賛進行中である。
ていうか、また四年前なんですか。
「ううん。確かに四年前に行く予定でした。けど、けど、こんなの、どうしよう……」
今にも泣きそうな表情を色付かせ、朝比奈さんは手を微かに震わせる。雲行きの怪しさを匂わせる空気が、それを発生源に辺りに立ち込めていく。
どうやら遡行地点を間違えたらしい。
「朝比奈さん。別に間違った時間に来ただけなら、もう一回時間遡行すればいいじゃないですか」
まず普通ならこう考えて当然のはずだし、いくら朝比奈さんでもこれくらいは容易に考え付くはずだ。
だが朝比奈さんは、ゆっくりと首を横に振り、
「……それが、うぅ、ぐす」
犯した過失が自責の念をくすぐったのか、朝比奈さんは小さな泣き声を響かせている。
いったいどうしたというのだろう。また遡行し直すってだけでは解決策としては成り立たないのだろうか。
「朝比奈さん、いったい今はいつなんです?」
砂場を横取りされた園児みたいに泣く頭を慰めつつ、二度目となるその質問を俺はぶつけた。
「……ご、五年前なんです。どうして、どうしてあの断層を越えることが……」
そこで俺は、朝比奈さんとペアになったあの春の不思議探索を脳裏に浮かべた。
並んでベンチに腰を下ろし、自分が未来から来たと告白した幼い天使。その会話の中にあった一節。四年前にハルヒによって時間の歪みが生じ、それ以上の過去に遡れなくなったという説明を思い出した。
「あのハルヒのせいでそれ以上過去に行けないってやつですか」
「……はい」
この朝比奈さんの狼狽ぶりから察するに、逆にここから断層とやらを越えて未来へ行くこともできないのだろう。要するに元の時間軸にも戻れないってことか。
……って、これはひょっとして、ものすごくマズい事態ということではないだろうか。なんてこった。
長きによって培われた俺のエマージェンシー耐性はどこへやら、俺は段々と焦燥の色を隠せなくなり始める。
落ち着け、帰れないわけがない。きっと何かを見落として、
ん? いや、待てよ。それなら、
「朝比奈さん。その断層ってやつの一歩手前の時間まで行きましょう。そうすりゃすぐに、時間の流れが自然と断層を越えてくれるはずでしょう?」
天使の涙のワックスが脳の滑りを良くしたのか、焦燥から一転、我ながらアイデアマンである。
だが俺の自画自賛もそこそこに、朝比奈さんは決定打となる否定のボールを俺に打ち込む。
「……それが、TPDD自体が作動しないんです。ここの時間平面流動の波形と噛み合わないの。きっとあの四年前の、あ、今居るところからは十ヶ月後だけど、その時空振動で色々なものが変わっちゃったんだわ……」
相変わらず理屈はよく解らんが、またしてもハルヒだってことか。
「未来と連絡を取って、なんとかしてもらったりとかもできないんですか?」
「……はい。時間遡行も通信も、他の時間平面にアクセスするメカニズムは全部一緒なんです。あの夏休みの時みたいに、閉じ込められた状態なの……」
くそ、八方塞がりじゃないか。
てことはだな、ハルヒが時間を歪める時までここで普通に十ヶ月過ごさないといけないわけで、しかも朝比奈さんと二人きりでの糖度百パーセントな……。
いやいやいや、この非常事態になんてこと考えてんだ俺は。冷静なのは自分で誉めてやらんこともないが、頭に浮かぶ物がいちいちピンク色だってんなら、あたふたしている方が幾分マシだ。
「キョンくん、ごめんなさい。ごめんなさい。ほんとにごめんなさい……。あの時、部室に涼宮さんが入ってきたことにすぐ気付けば……。長門さん、うまく誤魔化してくれてるかな……」
朝比奈さんは俺に何度も陳謝を並べ、とうとう声を上げて泣き出した。ていうか、やっぱりハルヒだったのか。
「朝比奈さん、これはあなたが悪いわけじゃない。俺は大丈夫ですから、そんなに責任を感じることはないですよ」
ゆっくり、なだめるように言葉を掛け、俺は俯く頭を優しく撫でる。夕方という絵筆が辺りを濃いオレンジ色で塗りつぶし、お互いの影は細長く地面に描かれる。二人の体勢がそれと妙にマッチして、なんだかどこぞのゴールデンタイムドラマみたいだ。
しばらくその状態を保ったまま朝比奈さんが落ち着くのを待ってみるが、このムードが色々な自制心の邪魔立てに拍車を掛けている状態で、少しばかりやり辛い。ついでに柔らかい髪の感触がなお後押し。
思わず抱きしめてしまいそうになる衝動を抑えつつ、俺は決意した。
「朝比奈さん、帰れないのなら仕方ありません。二人で、ここで十ヶ月待ちましょう」
そう言うと、朝比奈さんはそっと俺の顔を見上げる。新聞紙で磨いた鏡のように、伝う涙が強くオレンジの光を反射して眩しい。
「……それしかないですね。キョンくん、ありがとう」
そこで俺に向けて作られる笑顔は、その反射する光よりも断然眩しかった。
うん、いいね、その顔。
やっぱ、稲は水に浸っていてこそなのさ。
こうしてこの時間軸で十ヶ月待つことを決めた俺と朝比奈さんの生活が、音もなく幕を上げた。
だが、時間に干渉できない朝比奈さんは一般人に相違なく、俺に至ってはもともと一般人である。一般の高校生二人が自らの力で生計を立てるというのはあまりにも困難であり、正直、苛烈を極めた。
だが知り合いにすがり付くとなれば、それはもれなく歴史の改竄というオマケが付いてくることになり、そもそも立場上身分を明かすことができない。
そして知り合いのみならず身分を明かすのはタブーであり、そのせいで足枷を付けられたように動きが取り辛かった。
ここが四年前なら長門に頼っていたところだが、この時間軸では長門はまだ生まれてすらいない。改めて、どれだけ長門に甘えていたのかを思い知らされたね。
つまり、正真正銘ゼロからのスタートだった。
まず俺たちは住居スペースの確保に身を乗り出すと共に、俺の仕事探しも平行して行った。
住居に関しては、理想を言えば俺と朝比奈さんは別々にした方が色々と問題が起きずに済むのだろうが、こちとら無一文の高校生である。
加えて、俺たちに科せられたハンデは経済面だけにとどまらず、身分の証明をできないが故に親の承諾を得ることもできないという、未成年にとってはそれこそ超重量級の足枷がはめられている。これが何よりも部屋探しに支障をきたした。
仕事に関しては、今の二人の所持金を考慮すると、まず日雇い即払いのバイトが適切だという結論に至った。まあ適切というか、ハンデを考えるとそういう雇用形態でしか雇ってもらえなさそうな気もするが。
とりあえず初日である今日はすでに陽が西に傾ききっていたので、仕事はもちろん部屋探しにもあまり手を付けることができず、家なき子はノンフィクションとなることが決まった。マジで言いたい。同情するなら金をくれ。
それっぽくする為にルソーを拝借してこようかとか企みつつ、朝比奈さんには心痛の至りこの上ないのだが、俺は公園で朝を迎えようと提案した。
俯きながらも素直に従ってくれる可愛い上級生に、俺は何があろうと無事に十ヶ月過ごすことを心に決め、ささやかな夕食入りのコンビニ袋を携えてベンチに腰を下ろすのだった。
「朝比奈さん、寒くないですか?」
暦は寒季というわけではないのだが、夜の公園ってのは何かと冷えるもんだからな。この先の十ヶ月間を考慮すれば、体調管理ってのは極めて重要だ。
「あ、はい。大丈夫。女の子って冷え性が多いけど、実際寒さには強いんですよ?」
俺より半シーズン分薄着の朝比奈さんが、胸を張って少しばかり自慢げに答える。強調されたそのボリュームがやけに目に付き、俺の中の色々なリミッターを解除しようとしてくるから困りものだ。
「確かに、女の人の方が基本的に露出度は高いような気がしますからね」
街をうろつくと、真冬でもミニスカートなんてのも割と見かけるからな。寒さ的にも性別的にも俺には到底マネできん。
「でしょ。女の子って強いんだから」
おにぎりの封を切りつつ、俺は小学生時代に年間通して短パンだったクラスメイトの男子を思い出していた。
いっぽう朝比奈さんも年中ノースリーブだったクラスメイトでも思い出しているのか、明後日の方を向いてパンを齧っている。夜の闇のせいで、パンの種類が何なのかまでは解らなかった。
やがて短いディナータイムを終えた俺と朝比奈さんは、まるでこの先の不安を取り繕うかのように雑談に興じ始め、湧き上がる何かを抑えていた。相身互いな二人。
それでも、しばらくそうしているうちに瞼のカラータイマーは点滅しだし、口数は自然と減っていく。
そしてやっぱり肌寒いのか俺たちはいつしか肩を寄せ合い、やがて夢の入り口に足を突っ込んでいた。
その翌日は、朝から住まいと仕事探しに時間を費やした。
まずはその際にでっち上げの嘘話を作る。俺と朝比奈さんは兄妹であり、両親が事故で他界したため二人きりでの生活を余儀なくされたというちょっと眉唾っぽいが、とりあえずそういう設定にしておいた。
絞ったターゲットは、敷金礼金なしの超格安オンボロアパートである。
不安感満開の朝比奈さんのために、まず設定と色々な理由付けの再確認を二人で行う。これから十三階段を上りそうな朝比奈さんの表情に、何かこっちまでネガティブな感情が押し寄せてきそうになるが、ここまで来ればとにかく大家へゴーだ。
結果、一件目二件目は見事に撃沈したのだが、三件目の大家さんが割と話のわかる人で、前払いの家賃を五日だけ待ってもらえる形で契約が成立した。
途中、なんで施設に入らないのとか不動産を通さないのとか多少つっこまれた点もあったりしたが、なんとかデタラメに理屈付けて誤魔化してやった。
仕事の方も明日と明後日の分までは取り付け、時間遡行前からポケットに入れっぱなしだった俺の財布の中身と合わせた結果、かろうじて激安の家賃分は確保できそうなことが解った。家なき子は再びフィクションの世界へ。
とにかく、まずは一歩を踏み出すことに成功した。
そして、早くも一ヶ月後。
俺たちの生活もようやく軌道に乗り始め、とはいっても相変わらずエンゲル係数は内閣の支持率より高い値をキープしているわけだが、取り急ぎ死活問題に発展しそうなほどでもなかった。
まあ、それでも充分すぎるくらい俺たちの経済状況は芳しくなく、それでも端からのニ週間に比べれば間違いなくマシである。あれはもう泥水を啜るような生活だったと言っても過言ではない。
その間、精神的にプレハブ小屋の隅あたりにまで追い込まれたにも拘らず、どうにかそれを乗り切ることができたのは、ひとえにこのお方が傍に居てくれたおかげに他ならない。
「キョンくんキョンくん、起きて。起きないと間に合わないですよ」
あーもう、うるさい。いいからお前はシャミセンの縄張り争いにでもセコンドで付いてろ。そのうち負けそうだったらタオルでも投げてやれ。
「ふえぇ。あのぉ……」
なんだ? タオルならタンスの二段目に入ってるぞ。
「起きないと仕事に……」
仕事? おいおい、いつのまに高校生からリーマンへ飛び級というか飛び職というか、ビフォーアフターも甚だし過ぎるだろ。
ん? そういえばお前、なんか声にプラス方向の補正が掛かっているように感じるんだが。
「もう、キョンくん! 起きないとダメっ!」
「ったくもう! だからシャミセ……朝比奈さんっ! すすすみません!!」
いよいよ俺も頭にヤキが回り始めたのか、あろうことかエンジェルを我が妹と錯覚したらしい。
もうこれは死刑どころか、終身刑で寿命ギリギリまで懲役させられた後に、けっきょく処刑されてもいいくらいの重罪である。
ここんとこ色々と張り詰めていたせいで、一気に身体にツケが回ったのだろうか。久々の寝坊だ。
「はい。早く着替えないと」
そう言って服を手渡してくれるのは非常にありがたいんですが、
「あの、朝比奈さん」
「なんですか?」
「今から着替えるんですけど……」
「ひゃいっ。ごめんなさいっ」
もともと高い声をさらに裏返らせつつ、朝比奈さんは二秒で厚手の布で仕切られている向こう側へ退散した。
なんだか以前にも同じようなやりとりを交わした気もするが、あの時は立場が逆だったっけ。
とにかく俺は超特急で着替えを済ませ、ニ、三歩で辿り着く狭い玄関へと直行する。宣言通り三歩で到着するや否や足を靴に突っ込み、
「いってらっしゃい、キョンくん」
至福の瞬間である。
もうこれを聞きたいが為に仕事に行くようなもんであり、金は二の次三の次で充分、早い話が要するに朝比奈さん最高というわけである。
そんな最高なお方と寝食を共にしているにも拘らず、煩悩の暴走を今だ抑え続けている自分に、瑞宝小綬章を半分に割ったもんくらいは送ってやりたい。
いやスマン、朝比奈さんは最高だが今の俺たちにとってはお金も最高だ。お金最高。人前で口にするには、あまりにも人間を疑われる危険性が付き纏う台詞だな。自重しよう。
「いってきます」
新婚生活気分もそこそこに、ようやく普段通りの一日がスタートする。
昼間の仕事に加え、夜にも働かざるを得なかった先ごろまでを考えると、ずいぶん心に余裕を持てるようになった。色の無かった空も、今の俺にはとびきり青く写る。
心持ち早歩きで常勤させてもらえることになった仕事場へ足を進めつつ、あたふたと家事をこなす朝比奈さんの雄姿を想像して、俺は自然と頬を緩ませていた。
気付くと頭の中のフラワーガーデンは、一種類の解語の花で埋め尽くされ始めていた。
それから僅かな日が過ぎた頃。
うちわで扇ぐ朝比奈さんの薄着姿が芭蕉扇ばりの破壊力を生み出したのか、夏はどこかへ吹き飛ばされたようで、ようやく涼しげな秋風が火照った体を冷やし始めた。
それに伴い、今は朝比奈さんもスーパーで購入した無地の長袖に身を包んでおり、それには少しばかり秋の到来を悔やまされる。山あり谷ありとまではいかないが、丘あり溝ありくらいの浮き沈みグラフだ。
「もう少し待っててね」
脱いだ俺の作業服と入れ替えに、朝比奈さんは簡単な着替えを俺に差し出し、部屋の中に仕切りもなく取り付けられてあるキッチンへと向かう。急いでいる様子がこれまた良いし、なんだか嬉しい。
そしてまもなく、これがテーブルなんだとしたら本来のテーブルはオブジェとかアートにカテゴライズされそうな、そんな簡易な木の台に質素な夕食が配膳される。
「いただきます」
「いただきまぁす」
とまあ大体こんな感じで毎日の晩飯時を過ごしているというわけだ。うむ、今日も料亭の味。普段のドジっぷりは新手のドッキリなんじゃないかと思えるほど、相変わらず料理の腕は三ツ星級だ。
こうして舌鼓を打って食事を進めていると、ふと作業着のポケットに入れっぱなしだった二枚の紙切れの存在を思い出した。
「あ、そうだ。朝比奈さんって、野球とか興味あります?」
あの夏の野球大会を思い出す分には、朝比奈さんが興味を示したような素振りはこれっぽっちもなかったとは思うけどな。とりあえず訊いてみた。
「ひえっ。やや野球ですか?」
朝比奈さんもあの野球大会が脳裏を掠めたのか、まるで猟師に銃口を突きつけられた野ウサギのようになっていらっしゃる。やっぱあのノックがトラウマになってるんだろうか。
「いや、プレイする側じゃなくて、今度は観戦する側なんですけど」
と、俺が不安を取り除く言葉を掛けると、朝比奈さんは胸を撫で下ろし、
「……あ、そうですか。それなら大丈夫です。でも、あんまり見たことないなあ」
「俺もそんなに好きってわけじゃないんですけど、仕事場の人にチケットを貰ったんですよ。せっかくですし、見に行きませんか?」
最近、忙しくてまともに出掛けることなんて無かったしな。ついでに言えばお金も無かったし。
「……じゃあ、そうですね。たまには。行きましょう。うふ」
そして翌日。暦は平日だが俺は仕事が休みなのでセルフホリデイである。
むしろ休みだからこそチケットを譲り受けたんだが、まあとにかく、そういうわけで俺たちは地元球団のホームである球場へいざ赴かんとしているわけだ。
蔦が妙に艶めかしさを醸し出している外観を横目にゲートをくぐると、さすがに人気球団なだけあって球場内は人で溢れかえっている。
はぐれる心配があるので、不可抗力で手を握れるのは予想外の収穫だ。
バイオリンの弓毛のように繊細な手を引きながら、俺は野次や歓声のあいだを縫うように進む。ふと後ろを振り向くと、場内の熱気のためか、はたまた別の熱気によるものなのか赤らめた愛らしい笑顔があるのが、またいい。
しばらく調子良く進んでいると、
「わひゃっ。すすすみませんっ」
甲高い謝罪の声と同時に、俺は繋いでいる手に急に引っ張られる形で立ち止まることになった。
どうやら朝比奈さんがすれ違いざまに誰かとぶつかったらしく、ペコペコと頭を下げている。
「大丈夫ですか? ちゃんと前を見てないと、危ないですよ」
俺がいったん足を止めてそう言うと、朝比奈さんは一歩分の距離を詰め、絡めていた二人の指をほどいて両手で俺の腕の掴んできた。通りゃんせだった二人の距離が、コーヒーをろ過できそうなほどの隙間へと狭まる。
「これなら、大丈夫ですよねっ」
そう俺に言い聞かせる朝比奈さんの手は先程よりも熱を帯び、それが袖越しにも伝わってくる。
このお方は、これを小悪魔的なカリキュラムに沿って行っているわけではなく、純粋にただ大丈夫だという理由でやっているのだからタチが悪い。自分だけが意識しすぎて、これじゃ俺がピエロだ。
「早いとこ席に着いちゃいましょう」
やられっぱなしでなんだか悔しいので、俺は普通を装って黙々と指定の席へと向かうことにした。
「えーと、お、ここだ」
やがて外野席の一角に、チケットに記されてある番号と一致する座席を発見する。二人して並んで腰を下ろし、ようやく観戦タイムだ。
「ふえぇ。なんだか、すごく盛り上がってるなぁ」
すでにプレイボールのサイレンは鳴らされており、どうやら地元球団がリードしているようで異様な盛り上がりである。テレビで聞いたことのありそうな応援歌とメガホンを叩く音が、やかましく鼓膜を揺さぶる。
仮にもにわかファンとも言い難い俺と朝比奈さんは、飛ばされっぱなしのジェット風船と共に置いてけぼりを食らわされた感じで、顔を見合わせて苦笑い。
とにかくリンくらいなら発火してしまいそうなほどの熱気であり、まさかその為に禁煙にしているのではないかと思わせるほどだ。
そんな徳用マッチ箱と化したライトスタンドをぐるりと見渡しつつ、俺は日本一の熱狂的ファンと言われるその所以を実感していた。
「思っていたより、色んな感じの人が来てるんですねえ。ちょっとびっくり」
「はは。結構こんなもんだと思いますよ。要するに、日本人は野球好きってことです」
多くはないが、若い女性同士のグループもあれば、カップルと見受けられる男女も居る。俺と朝比奈さんの前席を陣取っているのは家族連れだしな。確かに色々な人種の巣窟だ。
「ねえ」
前のその家族連れの女の子が、父親らしき人物に何か訊きたげに呼び掛けている。
「すごく人がたくさん居るわね」
「そうだな」
その父親は慈しむような視線を我が子に送りつつ、頷いている。微笑ましい光景だ。朝比奈さんもやんわりと頬を緩めてそれを眺めている。
「ここには、どれだけの人が集まってんの?」
うむ、実に子供らしい純朴な質問だ。その純粋な心をいつまでも忘れず、ぜひとも真っ直ぐな人間に育って欲しいもんだ。間違ってもどこぞの爆弾娘のように捻くれることのないようにだな……。
……なんだろな、これ。このデジャブともつかない記憶の深海から溢れんばかりの忌々しい感覚。
いや、待て。少女の今の質問。これは間違いなくどこかで聞いた覚えがある。
確か……いや、まさかな。ありえん。いくら少女が黒髪のロングヘアだからって、
「うーん、そうだな、確か……」
と父親は一瞬考えたあと、あろうことか首を後ろに捻って俺の方に視線を送り、
「兄ちゃん。ここ満員で何人くらいだっけ?」
度肝を抜かれた。
待て待て待て。なんなんだこれは。なんのドッキリだ一体。
だが、まあ焦るほどのもんじゃない。普通に答えてやれば何も問題はないはずだ。
「そ、そうですね。確か……ご五万人くらいかとぅお」
トゥオ。
いったい俺はどこの母国語を喋っているのだろうか。今まで気付かなかったが、どうやら俺はバイリンガルという我が家系切っての地位に就けるかもしれない肩書きを獲得していたらしい。
生まれはL.A、育ちはニューヨーク。悪そうな奴はだいたい友達ということにでもしておこう。
「おーそうだそうだ。ありがとな兄ちゃん。おいハルヒ、満員だから五万人くらいだな」
……なんてこった。
よもやこんな些細なエピソードにも俺が一枚噛んでいようとは。
まさかとは思うが、あのトンデモ娘はこれをさせるが為にわざわざ断層とやらに風穴を開けたんじゃあるまいな。
「ええっ! まさか……涼み、んご」
ようやく事態を理解したらしい朝比奈さんの容易ならない発言を遮るべく、俺は傷ものCDの音飛び並に一足飛びで近づき、とっさに朝比奈さんの口を塞ぐ。
すると朝比奈さんは自らの失言に気付いたようで、何やらアイコンタクトらしき視線を俺に送ってきた。
俺が口を塞いでいる手を引っ込めると、
「あのぅ、これって……偶然なのかな」
と、小声で俺に囁いてきた。
そうか。朝比奈さんはハルヒの野球場エピソードのことを知らないのだ。
言われてみりゃそうだな。今俺たちが万里の波濤を凌ぎつつ生計を立てているこの時代は、本来なら観測は不可能であり、ましてや実際に身を置くことなど叶わないはずだからな。
「どうなんでしょうね。俺には解らないことですよ」
しばらく俺と朝比奈さんは、白と黒という一見縁起の悪そうな縦縞の押せ押せムードに流されつつ適当に応援に励んでいたが、正直試合の内容なんざ全く頭に入ってこなかった。
しかしそんな俺の上辺の応援に関わらずとも勝手に試合は進行し、やがて勝手に九回表を迎えることとなる。
ここらでもう観戦は充分だろう。お世辞にも広いとは言えない出入り口で人だかりに揉まれないよう、早いとこ脱出しないと後々面倒だからな。
ただ単に人だかりは疲れるってのもあるが、何しろ圧倒的に男が大半を占めるこの満員御礼の中で、朝比奈さんが揉みくちゃにされる可能性がある。そうなると俺自ら場外乱闘に発展させてしまいかねん。
「朝比奈さん、そろそろ出ましょうか」
「そ、そうですね。楽しかった……なぁ」
そう言ってくれるのは非常に感激なんですが、やはり朝比奈さんはこのムードに気後れしてしまっていたようで、台詞の中に疲労感が滲み出ているのが伝わってくる。
うーん、せっかくここへ来てから初めてのデートっぽいイベントだってのに、デートコースの選択を見誤ったかもしれん。
「今度は、どこか朝比奈さんが行きたいところに行きましょう」
銀傘にはね返ってこだまする歓声を背中に受けつつ、俺はさりげに次回のデート予告をしておく。
「そうですねぇ。でも……」
朝比奈さんはそう言ってからいったん言葉を区切り、
「余裕があれば、ね」
まるで無茶言う弟を言い宥めるかのように、しこたま柔軟材が配合されてそうな物腰で俺の顔を覗き込むように言う。
きっと金銭的に、ということだろう。
初めてお目に掛かる朝比奈さんのお姉さん的な一面に、やっぱ上級生なんだなと今更なことを実感しつつも、俺と並んで家路につく横顔はどう見ても幼かった。
「帰ってご飯作らなきゃ」
「朝比奈さん、今日くらいはいいですよ。時間も時間ですし、どこかで簡単に夕食を済ませて帰りましょう」
なにも仕事をしているのは俺だけではない。ここのところは朝比奈さんも家事の合間を縫って内職に勤しんでいるのだ。
だから俺が休みの日には家事をちょくちょく手伝っているんだが、普段はきっと蟻というより二宮尊徳くらい休んでないんじゃないかと心配でならない。このお方が折り紙付きの努力家だってことをなまじ知ってるが故に余計だ。
「ダメです。外食なんて三日分の食費にはなるんだから」
「いや、でも朝比奈さん。たまには休んでくれないと俺が心配です」
「キョンくんに比べたら、わたしなんて全然。だから、ダメ。作ります」
ほんと、こういう時だけ主張が強いんだからな、このお方は。
結局情けなくも言い返せなかった俺は、この頑固なエンジェルを満足させるような折衷案を足りない頭で練っていると、
「ん? どうしたんですか?」
朝比奈さんの足が止まり、何かあらぬ方向に熱い視線が注がれていた。
俺がその視線を辿ると、なんてことのない、ちょっとした可愛らしい雑貨屋に目を奪われているらしい。
朝比奈さんは、俺の視線が自分のそれを辿っていることに気付くと、
「……あ、はは早く帰らないと」
いたずら好きの妖精が人間に見つかったかのように、なんでもないよ的なニュアンスを含んだ台詞を残して再び足を進め始めた。
「ちょっと寄りましょうか」
そんな可愛い妖精のいたずらを目の当たりにして、やすやすと放っておけるほど甲斐性がないわけじゃないぜ俺も。
「え? でもぉ……あ、ちょっと、え? わっ」
「ほらほら、入りましょう」
すごすごとその場を離れようとする狭い肩を両手で以って軌道修正し、俺もろとも雑貨店内に押し込む。
全く抵抗を見せないあたり、やっぱり入りたくてしょうがなかったんだこの人は。まあ、そこが庇護欲をくすぐるというか、俺的に直球で言うと可愛いってことだけどな。
「わぁ、たくさん」
店内は、アンティークな置物から子供受けも良さそうな可愛らしい小物まで、たいして広くもない敷地に幅広い品揃えである。おかげで人が通れるスペースが狭い。
店内に入るや否や、原石だったダイヤモンドの朝比奈さんの目が、ブリリアントカットを施して一層輝きを放つ瞳になり、夢中で品定めにいそしんでいらっしゃる。
うん、入って正解だったな。こんな朝飯前のお茶漬けくらいのことで小躍りする朝比奈さんを拝見できるってんなら、何杯だっておかわり無料でいい。
それからしばらく俺も適当に商品を物色しつつ、朝飯前のお茶漬けというかお茶漬け自体が朝飯でいいじゃないかと日本の諺にイチャモンを付けていると、
「これって、なんなのかなぁ?」
店内狭しと動き回っていた朝比奈さんが、一つの木製人形の前で立ち止まり、何か疑問符を浮かべている。
俺はその声に呼び寄せられるように朝比奈さんに並び、その人形を手に取って見る。
「なんだか怖い顔して不気味なんだけど、でも可愛い感じもして、ちょっと不思議なお人形さん……」
険しい表情でどこかヨーロッパあたりの国の軍人のような出で立ちをしたその人形は、確かに見る者を少し物怖じさせるような、それでいて憎めない雰囲気を備えている。
「はは。これは、くるみ割り人形ですね」
俺が疑問に答えると、朝比奈さんは58面体ブリリアントカットの瞳を今度は丸く変化させ、
「ふえっ。このお人形さんがくるみを割っちゃうんですか?」
信じられないといった様子で、舐め回すように人形を凝視している。
「本来はそうなんですけどね。俺もそう詳しいわけじゃないんですが、最近のやつは完全にインテリア仕様で、実際にくるみを割ることはできないと思いますよ」
「そうなんだぁ。へぇー」
朝比奈さんは俺の適当な解説にしきりに頷き、どうやらこの木製軍人に興味津々のようである。買ってあげるか?
「そ、そろそろ帰りましょう。キョンくん」
俺が財布の紐の封印を解くべく呪文を唱えていると、朝比奈さんは呪文を遮るかのように言葉の呪符を俺の財布に貼り付け、そそくさと店から逃げるように出て行く。
それに釣られて俺も店を後にするが、これじゃあ俺が財布から何か復活させてはいけないものを復活させようとしていたみたいで、なんだか癪だ。
「今日は何作ろうかなぁ」
なんて、朝比奈さんは先程の軍人様にえらく心を魅かれていたのが、まるで嘘のように振る舞っている。
そんな健気な姿を見ちまったからには、仕方ないだろ、やっぱ。
「すみません朝比奈さん。ちょっとトイレに行ってきたいんですけど」
「あ、はい。じゃあここで待ってますね」
朝比奈さんは剥き出しのコンクリートに背をもたれ掛け、にこやかに俺を見送る。よく解らんが無機質なコンクリートも朝比奈さんの背中で綺麗にリフォーム出来そうな勢いだ。
俺はそんな朝比奈さんを置いてダッシュするが、もちろん行き先はトイレではない。さっきの雑貨屋、あのくるみ割り人形をなけなしの懐を叩いて購入すべく駆け足をしている。
再び俺が店内に入ると、そこの店主は俺が忘れ物をしたとでも勘違いしたのかキョロキョロと床を見渡していたが、俺がくるみ割り人形を手に取ると、目的を理解したようでレジへと入った。
もともと薄い財布が、ギガザインの内容くらいさらに薄くなるのを見届けると、俺はすぐさま店を出て朝比奈さんのもとへ戻るべく再び小走り。
「おまたせしました」
「はい。おかえ……ええっ!」
俺が抱えていた小箱の中身を理解したのか、朝比奈さんは寝起きドッキリを仕掛けられたアイドルの如く勢いで驚いてくれる。例のプラカードでも用意すべきだっただろうか。
とりあえず蓋に手を掛けてご開帳すると、
「……かか買っちゃったんですかぁ」
朝比奈さんは、困惑と歓喜のリキュールを菜箸なんぞでステアリングしてしまったかのような、どことなく微妙な表情をしていらっしゃる。
俺はその表情を歓喜一色に染め上げるべく、
「朝比奈さん。これ、貰ってやってください。それと、この人形代は小遣いの前倒しということで。なので今月の小遣いは要りません」
それでこの人形代以上に浮くってんなら、何か朝比奈さんの好きなように使えばいい。コーヒーへと変換されてむさ苦しい俺の喉を通るくらいなら、フローラルの香りとか漂ってそうな朝比奈さん愛用財布に仕舞われていた方が、よほどマシだろうしな。
英世、いや、漱石だって、その方がお金冥利に尽きるってもんさ。
「ええっ! そんな、そんなのダメですよ! 仕事中の飲み物とか」
「水とか飲めるからいいですよ」
「でも、その他にも」
「いいんです」
「でもぉ……」
「とにかくいいんです。貰ってくれますよね?」
頷いていいものなのか悩みあぐねているようで、朝比奈さんはせわしなく地面と俺の顔のあいだで視線を何往復もさせている。その際、一定のテンポでこちらを見ることになるわけだが、そん時の表情がやたらと切ないのがもうなんというか。
まったく、仕方ねえな。
見兼ねた俺は、その濁りに染まぬ蓮のような手をそっと取り、箱を持たせて差し上げた。
そして、
「あと、今日の晩飯は俺が作りますから。今日はいっそ朝比奈デーってことで、朝比奈さんはゆっくりしていてください。ちなみにもう決めたことなんで、これは覆りませんからね」
といった具合に、とっさにアドリブで付け加えたのはいいものの、いささかカッコつけ過ぎたな。
俺はなんだか妙に背中がむず痒くなり、それを取り繕うかのように、星座を探すみたいに上空に視線を彷徨わせる。
やっぱりキャラじゃないな俺は。これじゃあ、似合わぬ僧の腕立てどころかウェイトトレーニングだ。
「…………」
そら見たことか。寒中見舞いを送るにはまだまだ程遠く、やっと西瓜が隅の陳列棚に追いやられ始めたくらいだってのに、朝比奈さんが冬季先取りで固まっていらっしゃるではないか。
アレか。ここは一つ何か斬新なボケでも入れて、止まった空気を戻しておくべきか?
「キョンくん……」
はい、なんでしょう。俺の笑いのレベルでは、おそらく哀れみを含んだ苦笑くらいしか生み出さないと思いますが、それでも構わないならもう少し待ってやってください。
俺は吉本興業の門を叩く必要があるかもしれないと一瞬考えたが、そうではなかった。
「……キョンくん」
今にも零れ落ちそうな涙で目を潤わせて、朝比奈さんはそっと俺に寄り掛かり、胸に顔を埋めてきた。
待て待て、一体どうしたというんだ。俺のギャグにお耳を汚すのがそんなに嫌なのか?
予想の範疇を超えた事態に、一瞬何が起こったのかと、脳神経の膜電位の変化が速度を上げて処理を促す。だが所詮、俺なんて谷口あたりと大差のない低脳持ちだ。
俺が答えを弾き出す前に、朝比奈さんの口からそれが漏れた。
「ありがとう……ありがとう、キョンくん……」
シャツが涙で滲んでいくと共に、小動物を抱いた時のような心地良い体温が俺の身体にも滲んでいく。
俺は自然と朝比奈さんの小さな背中、それと頭に、ハイウェイのカーブよりも緩やかに手を伸ばす。
それを待っていたかのように朝比奈さんは、
「ずっと、大切にします。未来に持って帰るの、許してもらえるといいなぁ」
しめやかに俺の胸から頭を離し、だが背中に触れている俺の手はさながら、朝比奈さんは俺の顔を見上げる形で呟く。
正直、この距離感はマズい。俺が僅か頭を下げれば、すぐにも星空の下でのラブシーンになりうる程度の隔たりである。
このまま放っておくと湧き溢れる煩悩を抑え切る自信がないので、俺は「抑」という字を使って表せそうな俺の中のあらゆる物を総動員して、俺の中の巨大な何かに立ち向かう。そこに変身ヒーローの登場はない。ウルトラマンではなくウルトラQ的な抑止活動。
「……あー、もう夜になると、あれですね。割と肌寒い季節になってきましたね」
「うふ、そうですね」
至近距離で涙目の朝比奈さんに微笑まれるという、核攻撃以外の何物でもないその仕草に、俺の「抑」隊員たちは苦戦を強いられる。
いよいよ陥落まであと僅かかと思われたが、どうやら強めの秋風が一瞬味方に付いてくれたようで、
「ひえっ」
朝比奈さんは突風によろめかされ、それによって俺との距離がひらく。おかげで隊員たちも矛先を向ける対象が消え、一斉に出撃から帰還を果たすが、それはそれでなんだかちょっと惜しい気もする。
そんな俺の心中を汲んでくれたのか、朝比奈さんはよろめく際に俺の手を掴んで転倒を防ぐ。それによって、どこぞの路線を見習ったのか俺朝比奈間のダイヤも縮まったようで、二人の距離は再び電車とホームの間ほどへと。
拭いた涙で水気を伴った手の感触のやばさに、俺が黄色い線の内側へ避難していると、
「ご、ごめんなさい。あたし、ほんとにドジ」
とどめと言わんばかりに、例のジェスチャーが炸裂する。つまりアレだ。朝比奈さんの見慣れた、頭をコツンとやる仕草である。それがまたこの期に及んで俺の頬を緩ませ、口が両端から釣られて引っ張られる魚みたくなる。
俺はもう被弾を気に掛けず強行突破を決め込もうと、
「朝比奈さん」
「なんですか?」
俺はもう片方の手もそっと掴み、
「あと九ヶ月、楽しく過ごせたらいいですね」
ありったけの笑顔で反撃してやった。
すると朝比奈さんの表情は、俺のそれなど歯牙にも掛けないほど輝かしい、みるみる満面の笑顔へと変化と遂げ、
「はいっ」
瞳は正にブリリアントカットを超える最先端の114面体カット。腰が砕けたね。
その計算され尽くした屈折率が織り成す輝きに呼応するように、俺は自然と強く握る。
水仕事で荒れた、ささくれ立った小さな手を。
その日を境に、確実に何かが変化の兆しを見せ始めた。変化といっても、季節の移り変わりのように定期的なものではなく、また微小変化群ネフローゼだとか変化という単語が組み込まれた病に陥ったわけでもない。
詳細に渡って語るにはちと困難な変化だが、二人の雰囲気というかなんというか、どことなく抽象的にしか説明しようのないものだ。
だが一つだけ言っておくと、悪い変化ということだけは絶対にない。
そしてそれからは、休日には必ずと言っていいほど二人で出掛けるようになった。
とはいっても、散歩がてらに公園のベンチで、近所のガキに見守られつつ朝比奈さん特製弁当を頬張るとか、僅かな生活必需品の買出しついでに、冷やかし以外の何物でもない長時間ウィンドウショッピングとか、その程度のものである。
要するに予算ゼロのお出掛けプランだと、それくらいの行動パターンに制限されるわけだ。
だが普通の貧乏デートってわけじゃないぜ。こちとら傍を固めているのは、誰あろう時間を超越した天使朝比奈さんである。どんなに高価なランチに舌鼓を打ったところで、すれ違う男どもから向けられる羨望の眼差しはプライスレス。これには勝てるまい。
まあこっちは粉骨砕身の働きで衣食住にしがみ付いてんだから、蛍雪の功というか、使っている鍬は光るってことで、要するに苦労してんだから許せ世間の男衆ってとこだ。
もちろんそれは俺だけの苦労ではなく、朝比奈さんの弛まぬ努力あってこそのものなのは何度でも述べておこう。
さらに二ヵ月後に至っては、
「あ、すごい。今月、食費が一万円切っちゃった」
もうベテラン主婦も顔負けどころか顔を見る前に負けそうな勢いである。スーパーの特売コーナーが近所の主婦たちでごった返していたところで、朝比奈さんがお出ましになると人だかりがモーゼのように割れるんじゃなかろうか。
もしかしたら俺の体にも、いつの間にかダビデの星が刻まれていたりするのかもしれん。
とにかくそういった具合に、お互いが進歩し合って生活基盤を確固たるものへと昇華させていった。
そして当分のあいだは特に大きな出来事もなく、割と単調な生活パターンだった。
だがそれでも、俺は気付けばそれを充実した毎日だと思うようになっていたし、実際、充実していたんだと思う。要所要所で朝比奈さんが微笑ましいドジっぷりを発揮してくれたりと、ハルヒとは別の意味で一緒に居て飽きることがなかったしな。
そんなある日。
そのドジっぷりを窺わせるあるエピソードが引き金となり、俺はようやく気付かされることになった。
「あ、あれ? 鍵、鍵がぁ……」
休日。そして寒波が、北斎も描かずにはいられないほどの文字通り波となって押し寄せてきそうな季節である。
長らくこの町内に閉じこもっていた足をいつもより少しばかり伸ばして、編み笠を売りに行く勢いで隣町まで行ってきたその帰りだ。
朝比奈さんのこの言動で察する通り、どうやら家の鍵が見当たらないらしい。
「……え? ちょっと、マジですか朝比奈さん」
俺の焦りを他所に、ゴソゴソとバッグを漁り続ける朝比奈さん。
「暗くてよくバッグの中が……」
普通なら自転車置き場というものは、電灯とか光を供給するものが設置されていて当然なんだろうが、いかんせんここは超オンボロアパートの備え付け物である。見事に真っ暗で、離れた街灯からおこぼれを受けている程度の明度なのが憎たらしい。
「ちょっと待ってください」
俺はその場にしゃがみ込み、今スタンドを立てたばかりの譲り物の自転車に手を伸ばす。スタンドを支点に片手で後輪を浮かせ、もう片方の手でペダルを回してライトを点ける。
「わぁ、ありがとう。これならよく見えます」
ミラーボールみたくライトの光を乱反射させるビニール製のバッグが、間接的に朝比奈さんの顔に薄いスポットを浴びせる。ぼんやりと照らされて艶やかに写るその顔に、俺はつい見とれてしまう。
そうして俺の視線に気付くこともなく、再び朝比奈さんはゴソゴソと探し続けたのだが、けっきょく鍵は見つけられず終いだった。
だが夜も遅く、大家さんに鍵を借りに行くのは少しためらわれる。それでもなぜか、俺は全く焦っちゃいなかったし、むしろ楽しんでいたのかもしれない。
「朝比奈さん。行きませんか久々に? あのベンチ」
緩やかなペダルの回転数をゼロにまで下げ、明度の調節権を再び月夜に預けた上で、俺はしっかりと朝比奈さんを見据えて言う。
今の俺と朝比奈さんのスタート地点とも言える、数ヶ月前に二人で朝を迎えたあの公園。俺は再びそこで朝を迎えようと思い立った。
「ええっ。またあそこで寝るんですか?」
半歩ぶん後退りして、朝比奈さんは少しだけ驚きを見せる。
「どうせ家に入れないのなら、どうかな、と思ったんですけど。いや、朝比奈さんの気が進まないのならやめときましょう」
「ううん、行く。行きましょう。なんだかとっても久し振りだし」
早いもんであれからもう半年だからな。そろそろ近所付き合いも控えておいた方が歴史に優しいかもしれん。
めでたく意見が一致したところで、俺と朝比奈さんは公園へと足を進め始める。そういえば夜に揃って出歩くのも久し振りだ。普段は二人で出掛けたとしても、外食反対派の朝比奈さんの主張により夕方には帰ってたしな。
すっかり慣れた女の子の遅い歩調に合わせつつ、俺はこの数ヶ月で撮り溜められた追憶のフィルムを回して脳裏にそれを映し出していた。
コンビニ袋の擦れるビニールの音が響く、あの公園での夜。奔走した仕事探しと住居探し。野球観戦。そのあとに買ったくるみ割り人形。主役とヒロインによる二人きりでの数々のシーンは、安っぽいながらも温かいものばかり。
そしてそのフィルムが巻き切られる頃には、俺はもう気付いていた。
それは仕方のないことで、ベタな例えだが人という字のように支え合って生きていく二人にしてみれば、必然だったのかもしれない。
十ヶ月後を目指して進んでいたのが、今や十ヶ月を惜しむように過ごしている。正確に刻む電波時計の数字が、今の俺にはひどく残酷に写る。
気付いたのはそんな感情。ちょっと考えてみれば、すぐに解ることだった。
今まで朝比奈さんに抱いていた、まるでお気に入りのアイドルを愛でる憧れのような、そんな感覚。それがずっと二人で居ることによって、さらに深い感情へと進化していく。
これもまた安っぽい、ありふれたラブストーリーだ。
だがどんなに安っぽくたって、それが今の俺の有るがままであり、気持ちの全てだった。
冬の乾燥した空気が、荒れてザラついた小さな手に追い討ちをかけるように攻め立てている。
そう、早く誰かがその手を守ってやるべきなんだ。
公園に辿り着くまでの僅かな時間、俺は熱暴走しそうなほど頭を高速回転させて考えた。それこそ本当に、風邪ではなく何かエンジン的な理屈で発熱しそうなほど脳を酷使したかもしれない。
何に掛けても守ってやりたい、その小さな手。
けど、解ってる。朝比奈さんはこの時代で生を受けた俺とは違う。いずれ未来に帰ってしまうし、それに俺が付いて行くこともかなわない。
あらかじめ引き裂かれることが台本に記されてある、そんな悲しいラブストーリー。
それに、そもそも朝比奈さんが俺なんかにそういう感情を抱いているとは到底思えないしな。俺の気持ちを伝えたところで、すべからずして撃沈ってわけだ。
伝えるべきか、このまま自分の胸に仕舞っておくべきか。
けど、やっぱりこのままじゃ俺の季節は冬から先に進まない。
一年で一番綺麗なこの季節の夜景は、なぞりにくかった薄い輪郭をその光でくっきりと映し出す。
しばらく夜の散歩を満喫したところで、一度深呼吸をしてこの先に待つ大仕事に備える。
気休めにしかならない程度の備えだが、低い気温がその深呼吸を白く色付かせて目に見える形にしてくれるおかげで、とりあえず少しだけでも何かやったって気分にさせてくれる。
そんな舌の上ではなく夜空の上で溶けるわた飴を流れ作業の如く量産しているうちに、いつの間にか公園へと辿り着いていた。
そして、そんな夜空まであの日と似たような雲加減の下、俺は心を決めて口を開く。
「朝比奈さん。俺、この半年間朝比奈さんと過ごせて本当に良かったです。色々と支えてくれて、ありがとうございました」
そこいらのドラマあたりなら、何よ急に改まって、とか言われるまさにそれである。
まずは前置きとしてのお礼。俺みたいな蛙の心臓持ちまでもが、いきなりアイラブユーなんて言えるほど人間の基本性能は高くない。アイドリングで温めておかないと、告白本番でトップギアに入れられないことになっちまう。
なんとも回りくどくて面倒だが、まあこれくらいが年相応のピュアさ加減でいいと思うぜ。別の角度で捉えると、ヘタレって言えないこともないけどな。
「……え、どどどうしちゃったのキョンくん。いや、そんな、あたしの方こそごめんなさい。ううん、ありがとう。こんなにとんでもないことになっちゃったのに、ずっと助けてくれて……」
ワンクッション置いたつもりだったのだが、そのクッションですら朝比奈さんには刺激が強かったようで、あたふたと俺の言葉に答える。
「いやいや、そんな。俺の方こそ……」
「ええっ。いえ、あたしこそ……」
これこそいわゆるニッポンジンである。このまま名刺交換でもすれば様になるのかもしれんが、あいにく俺は名刺など持ち合わせちゃいないし、たとえ持っていたところで本当に交換するような場面ではない。
愛の告白などというものには縁遠い俺に力添えしてくれるせっかくの状況だってのに、むざむざこの機会を逃すわけにはいかないからな。
朝比奈さんは次の言葉を慌てて探しているのか、目をキョロつかせながら口を開き掛けてはまた閉じてを繰り返し出す。
おかげで数秒ほどの沈黙が二人の間を通り過ぎ、その沈黙が名刺交換ムードをリセットしてくれた。
よし、今だ。今しかないだろ。今言わなけりゃ、また雰囲気が明々後日くらいの方向に逸れちまう。
でも焦っちゃ駄目だ。SOS団で一年近く、それに加えて二人で半年も一緒に過ごしてきたんだ。変に格好つけなくたって、きっと俺なりの言葉でいい。
焦らず、ゆっくりとだ。
「朝比奈さん。お、俺、この半年で大きく変わったものが、いや、気持ちがあるんです」
だが、どれだけ落ち着こうと足掻いたところで、所詮は俺なんて恋愛経験ゼロのヒヨっ子。朝比奈さんの肩に手を置こうとしたものの、震えてなんとも無様な仕草になってしまった。
「……あ、あの。キョ、キョンくん?」
そんな挙動不審な仕草のせいで、俺の只ならぬ気配を感じ取ってしまったのか、朝比奈さんは僅かに後退る。
くそ、しくった。今から優しさ百パーセントの気持ちを伝えようってのに、逆に怖がらせてどうすんだ。
だが、今更ここで怯むわけにはいかん。
「俺、あなたのことが……」
無意識のうちに、朝比奈さんの肩に添えた自分の手に力が入ってしまう。
冷静に、冷静にだ。力を抜いて、言葉の続きを紡げ。
「あなたのことが、す……」
生まれてこのかた背負ったことのないほどの大仕事をとうとう成し遂げようと、最後の一文字を口にするその直前だった。
「ほぇっ! まま待ってキョンくん! その、その続きは言っちゃ……ダメ。ダメです……」
冬の寒さで硬いつららと化した一雫の言葉が、その最後の一文字を切り離した。
先程のニッポンジンムードをリセットしてくれた沈黙が、掌をかえしたように今度は歯切れの悪いムードを連れてUターンして戻ってくる。
「……朝比奈さん」
そのムードに耐えかねたのか、時間の確認を言い抜けにするかのように、朝比奈さんは一瞬手首に巻かれたデジタル数字に目を落とし、そのまま俯き顔を俺に見せ続けた。
やっぱりか。どうせこんなこったろうと思ったさ。
そりゃ迷惑だよな。好きでもない男に好きだなんて言われて、しかも、いつかは別れなきゃならないことを解ってる奴にだ。何考えてんだって思うだろうよ。
あーやっぱ言わなきゃよかったのかもな。
愛はエゴだなんていうのを時折耳にすることがあるが、今の俺がまさにそれじゃないか。朝比奈さんを困惑させる可能性が高いことを解っていながら、俺は自分の気持ちを満たす為に爆弾発言に至ったんだからな。
どうすんだよこれから。気マズイったらありゃしねえ。
せめて朝比奈さんが俺に少しでも恋心とか恋愛感情というものを抱いてくれていれば、幼馴染くらいのレベルの関係で微妙な距離感を保ちつつやっていけたのかもしれんが。
「キョンくん……。あたし、あたしは、いずれ未来に……だから……」
ええ、承知の上です。そして、清水寺の舞台にハシゴを掛けて降りていくくらいの覚悟ならあります。
「だから、あたしはこの時代では……」
全部解っているつもりです。それでも俺は、
「ダメ……。いえ、ううん。でも、でも、あたしだって……」
朝比奈さんの下瞼で受け止めている透き通った水分が、抑えていたであろう感情と共に今にも氾濫を起こしそうになっている。それを見て、俺は言い切れなかった二文字の言葉を最後まで言わずにはいられなくなった。
虹の輪郭を形取ったかのような丸っこい肩に再びそっと手を添えると、寒さのせいなのか別の感情がそうさせたのか、朝比奈さんは唇の端を細かく震わせて、
「……キョンくん」
呼ばれ慣れた二人称が、至近距離にいる俺でさえ聞き取りづらいほどの僅かな空気の振動量で、俺の鼓膜を揺らした。
それを合図にするように、俺はとうとう、
「朝比奈さん。俺、あなたが好きで……す」
「え?」
聞き返された。ていうか、語尾がやたらと細々とした声になってしまった。
この期に及んでなんて情けない告白してんだ俺は。やっぱり、どこぞのレトルトご飯じゃないんだから、思い立ったら二分で口伝てなんていうお手軽告白でうまくいくわけがない。ご飯ってのは時間を掛けて噛み砕かないと、甘くはならないからな。
まあどっちにしろ、最初言い掛けた時に俺が何を言わんとしていたのか、朝比奈さんはそれを理解した上で断る前振りのような台詞を口にしていたからな。どうせ振られるのは確定だ。
いや、断る前振りというか、はっきりと、ダメ、って言ったっけ。んで、それに続いて、「でも、あたしだって」とかなんとか……。
……でも?
でも、っていうのは要するに、しかし、って意味だよな。それは次にくる言葉が、前の言葉と相反する場合に用いられるわけであって……、
「キョンくん……どうして、どうして……」
朝比奈さんの瞼のダムは余程の上流地点に設置されていたようで、清流のように澄み切った涙を放流させながら、俺の胸に両手を添えて寄り掛かってきた。
「……どうして、許されないの? あたし、あたしだってこんなに、ずっとキョンくんのこと……」
俺のこと?
ポジティブな方向で脳の回路を働かせれば、なんだかすごく幸せな答えが朝比奈さんの口から漏れそうな気配だ。
……いや、いかんいかん。せっかく振られる準備は万端だってのに、変に期待すると後で精神的にマズいことになる。
割り込んできた期待心で高揚していく自分を、咎めるように落ち着かせていると、
「あ、朝比奈さん!」
俺の胸に当てられていた緩い力がすっと消えたかと思うと、朝比奈さんは振り向きざまに走り出した。
「待ってください!」
反射的に俺はそのあとを追う。
正直、このまま樹海とか崖とか良からぬスポットへと身を投じそうな空気に一瞬焦ったが、流石にそれは大丈夫だとすぐに思い直した。
とにかく寒い中、何か別の汗を掻きそうになりつつ鬼ごっこ開始かと思われたのだが、そこはやっぱり朝比奈さんである。ある意味、韋駄天様も衝撃を隠せない斬新なスプリンターっぷりに、気付けば俺はすでに追い付いていた。
振られている細い腕を掴み、包むように緩やかにこちらを向かせる。
「……ううっ」
流す涙の規定量オーバーのせいか、何も言えずに固まっている朝比奈さんに助け舟を出そうと、俺は掛ける言葉を探す。
「……大丈夫ですか?」
こんなことしか言えない自分がつくづく嫌になってくる。なんだよ、大丈夫ですか、って。通りすがりの親切心じゃないんだから、もっと何かあるだろ。
夜中のコンビニ店員くらい気の効かない台詞に、俺は自分のボキャブラリーの無さを呪いそうになっていると、
「……はい、大丈夫です。キョンくん、わたしも言わせて」
やっぱり、この人は強い。表向きの強がりではなく、どんなことがあろうとも決してめげる事の無い、芯の通った強さがある。それがあの大きな朝比奈さんへと繋がることを俺は知っているし、尊敬せずにはいられない。
再確認した。普段の愛らしい姿もその強さも全部込みで、俺は朝比奈さんのことが好きなんだ。
そしていつか、そう遠からぬ未来に、時間の流れがきっと二人を別つ。
それでも、俺はやっぱりこの人と居たい。
だから、
「すみません。先にもう一度、はっきりと言わせてください」
丸い肩に添える手も、今度はてんで震えることもない。
「俺は朝比奈さんのことが好きです。だから、いつか別れなきゃならないその時が来るまで……いや、そんなもん俺が来させやしません。だから、ずっと俺の傍にいてください」
パーフェクト。赤ペンなんてこれっぽっちも入る余地はない。俺の持つ能力を超えているみたいで、何か悪いリバウンドが返ってくるんじゃないだろうかと思うほどの出来。
「わたしも、もう自分の気持ちに嘘はつけません。だから……あの、うん、ずっと………」
唇を噛みながら少しづつ言葉を紡いでいくその小さな姿は、必死に涙を堪えていることを俺に伝えてくる。
「……ずっと」
「朝比奈さん、ここは感情を抑えなくたっていいんですよ」
最後まで聞く代わりに、俺は両手でその華奢な背中を抱きしめた。
それが引き金になったようで、堪えていた分の涙が一気に朝比奈さんの頬を伝っていく。
「落ち着いたら言ってください。それまでずっとこうしてますから」
幾度となく目にした、見慣れた朝比奈さんの泣き顔。だがそれは、満天の星空に紛れて誰にも気付かれることのない流れ星のように、今の俺には儚く写る。
そんな瞬く間の命で終わる流れ星の代わりに、俺は目の前にある細い涙の筋をその軌道に見立てて、願いを唱えた。
ずっと、この人と一緒に居られますように、と。
それからは、一分、一秒を噛み締めるように、毎日を二人で過ごした。
もちろん俺は仕事があるので四六時中というわけにはいかないが、それでも前以上に二人でいる時間を増やした。
休みの日には二人で出掛けるという習慣も、もちろん欠かさず続ける。相変わらず行動範囲は限られているが、別にどこへ行こうとも二人で居ればそれで楽しかった。
金銭的に僅かな余裕が出れば、普段は控えているようなちょっとばかしの遠出やランチに心躍らせ、ささやかな贅沢を満喫する。
朝比奈さんの靴も買ってあげた。女の子だってのに、履き潰されて黒ずんだスニーカーで足元のオシャレを演出しようってのは、ちょっとばかし無理があるからな。
当初それを提案した直後は、「ダメです。そんな贅沢」なんていう予想通りの反応で朝比奈さんは片意地を張って拒んでいたのだが、珍しく俺がそれ以上の意地を張って、ほぼ強引にファッションビルへと連れ出したのだ。
春を迎えようとする季節の変わり目に、俺が風邪を引いたりもした。
おそらく気温的にも落ち着きを見せたことに気が緩んだのだろう、朝から気怠さの俵を背負いつつ、重い体が朝の仕度を阻害するような感覚のひき始めだった。
「……あの、どうかしたんですか?」
眉を八の字に固定して、朝比奈さんが心配げに俺の顔を覗き込んでくる。
「いや、なんか体が重くて。たぶん暖かさで気持ちが緩んだんでしょう。気を入れ直さないと」
ダラダラと仕事するわけにもいかないしな。クビにでもなった日にゃ、それこそ首を吊ることになりかねない。
せめて顔筋の緩みだけでも引き締めようと、俺は洗面台へ向かい、蛇口を捻って頭を前に倒す。ちょうど90度近いお辞儀の体勢になったその時である。
クラッときた。
名斬られ役者かもしれない俺のフラつきっぷりに、朝比奈さんは「ひゃいっ」なんて口走りながら俺に手を伸ばしてくれる。ワンテンポツーテンポ遅いのはきっと愛嬌だろう。
そうして結局その日は、悔しくも仕事を休むことになってしまった。
必要以上の心配顔を作りながら付きっ切りで看病してくれていた朝比奈さんには悪いが、俺はそんな朝比奈さんを目にして一人頬を緩ませていたのは秘密だ。
そんな、特別なところなどこれといって見当たらない、他愛も無いショートストーリーを積み重ねながら、日々は忙しなく過ぎていった。
単調なのに充実した毎日。安上がりなのに、きっとミリオネアより満たされた幸福感。
けど、うず高く積み重ねられた数々のショートストーリーは、まるでジェンガのように紙一重のバランスだった。
時間の流れという残酷な通告者が、十ヶ月後という突き棒を携えて、そのジェンガを倒すべくこちらへ向かっている。
冬に流した大量の朝比奈さんの涙が今頃になって蒸発し始めたのか、雲の密度が増したようで、今にも雨がパラつきそうな梅雨も中頃といった季節。
どうにも最近、流れ作業と化してきたいつも通りの仕事を終えると、俺は今にも降り出しそうな雨を気に掛けて早々に帰路についた。
朝比奈さんの言う通り、傘を携えておいた方が良かったのかもしれん。家を出る時にパラついていないと、嵩ばってどうも傘を持つ気にはなれないんだよな。誰か某収納カプセルとか開発してくれないだろうか。
なぜかそこで某ジャンピングシューズが脳裏に浮かんだ俺は、それこそ足にバネが付いたような軽やかさで家へ続く道のりを歩んでいた。
距離的にはようやく折り返し地点、なんとか雨が降り出す前に玄関をくぐれそうな予感がしてきた頃。その予感を揺るがすように、暗雲が一層どす黒さを増し始めた。
「キョンくん」
見計らったかのようなタイミングで背後から聞こえたその声は、毎日聞いている可愛い声にとてもよく似た、だがそれとは少々艶の入り具合が異なる声。
見知らぬ人が間違って声を掛けてきたんだろう。きっと、そうだ。偶然にもあだ名が同じようだが、別にありえない話じゃない。
「キョンくん、待って」
きっと俺とは無関係のキョンとやらを呼び止めているにも拘らず、まるで俺の背中に浴びせられているような錯覚。そう、錯覚だ。
だが、反射的に体を半回転させた俺の視界に写ったのは、ガラスの靴を素敵に履きこなせそうな、成長したシンデレラの端麗な姿だった。
「お話が、あります」
真っ白になる俺の頭の中に黒インクを落とすように、近づくハイヒールの音が俺の頭で黒い波紋を作る。
お話? いや、せっかくご足労いただいたところ申し訳ないですが、俺は早いとこ帰って明日という休日を有意義に過ごすための計画を二人で綿密に練るという、衣食住に並ぶ大切な仕事が待っているんです。
だから、今日のところは、
「キョンくん、お願いだから聞いて」
そういえば、こないだ譲り受けたチケットの映画って、まだギリギリやってたよな。確かあの双子の片割れがボロカスに評価していたような気もするが、
「キョンくん!」
人通りといえば野良猫程度の夜の歩道に、高く張り上げる声が響く。
「キョンくん、気持ちは解るの。でもね、とても大事な話をあなたに聞いてもらわなければいけないの」
うって変わって今度はペースト状の何かでも包んでいそうな柔らかい口調。でも、きっとそれを齧ったところで甘ったるいカスタードクリームの味なんかしやしない。そこにあるのは苦い大人の味なんだろうよ。
まだまだ俺はビールの旨さも解らないガキだからさ、そんなもんはもっと俺が歳食ってからにしてくれ朝比奈さん(大)。
「涼宮さんが大規模な時空振動を起こしてから三日間、あたしはここでのあなたたち二人の関係を見てきました」
そうですか。ならば話は早い。
「とても驚いたわ」
まあ、俺自身が驚いていますからね。
「そして、とても嬉しかった。あたしのことをこんなにも想ってくれていて……」
そうですか。ならば当然、辛酸を嘗め尽くした末にようやくここまで辿り着いた俺たちのことを祝福していただけるんですよね?
よもや共に歩んできたパートナーご本人から祝福の言葉をいただくことになろうとは。そうそう体験できることじゃないな。
「キョンくん、あたしだってもちろん祝福してあげたい。一緒に喜びたい。何しろそれはあたし自身のことなんだから。でも、」
何かを思い出すようにゆっくりと瞼を閉じ、そして僅かな間を置いたあと、朝比奈さん(大)は再び俺の目を見据える。
「あなたたちを、このまま元の時間軸へ帰すわけにはいきません」
その台詞が来るだろうことを、俺は充分に予想できたし、覚悟はしていた。
けど、覚悟してたからって、それをやすやすと受け入れられるほど俺は物分かりの良い人間じゃない。納得なんてできやしない。
俺と朝比奈さんがここで紡いできた絆は、どれだけの想いの上で成り立っているのか、この人はそれを知っているはずだ。それに、
「今のSOS団なら、たぶん大丈夫ですよ。俺たちがこのままの関係を保ったまま帰ったとしても、きっとうまくやっていけると思います」
SOS団。
何年も離れていたってわけじゃないのに、やたらと懐かしい響きに感じる。
うん、そうだよな。ハルヒは最初、団の規律だかなんだかで団員内の恋愛は禁止だとぬかしていたが、今のあいつならなんだかんだで解ってくれるさ。
「キョンくん、ダメなの。涼宮さんに及ぼす影響は、決して良い方向じゃないわ。それともう一つ」
まだ何かあるってのか。
「今こうしてあなたの目の前に居るわたしは、今のところ間違いなくあなたとここで過ごしてきた幼いわたしの延長線上です」
ええ、解っていますとも。
「だからここで起こったことは、あたしだって経験しているはず。今のところあなたたちに、既定事項から外れたような出来事が起こったことはありませんから」
「なら、あなたにだって今俺がどういう想いを抱いているのか、それを充分に理解できるはずですよね」
俺が問い質すように言葉をぶつけると、朝比奈さん(大)はその水晶のような顔を蒸気に当てたように曇らせ、
「それがね、キョンくん。あたしはここで起こった出来事を、あなたとここで過ごしてきたことを、今の今まで知らなかったの。覚えてないの……」
やっぱり、話なんて聞かずにとっとと帰っておくべきだった。
それがどういう意味を示すのか、俺と俺の朝比奈さんの向かうべき方向がどのように示されているのか、そんなもんちっとも理解したくないってのに、それに反して俺の脳は珍しく理解を示しやがった。
だからといって、俺は心のコンパスが示す方向を書き込まれた地図を手放すつもりは毛頭ない。あの日あの涙に唱えた願いがこんなにもあっさりと崩れ落ちるなんて、俺は嫌だ。涙で地図がフヤけたって、そっと扱えば破れることなんてないと信じたい。
「そうですか。でも、俺はもう朝比奈さんのことが好きなんです。誰にどう言われようがこの気持ちを譲るつもりはありません」
「お願い、キョンくん。このままの状態で帰ってしまうと、あなたにとってもそっちのあたしにとっても良くないの。それに、あたしの居る未来と分岐してしまう」
たとえ分岐したとしても、今の朝比奈さん(大)がいっせーので消滅するわけじゃないんだよな? なら、そっちはそっち、こっちはこっちでお互い自分の世界に生きれば完全なるノープロブレムじゃないか。
「ダメ。それじゃ、ダメなの……。お願い、解ってキョンくん」
解るも何も、なぜダメなのかそれについて簡易な説明すらされていないってのに、何をどう理解しろってんだ。
「で、具体的に朝比奈さんは俺たちをどうしたいんですか?」
「あたしたち時間遡行者に掛けられる禁則事項のようなものです。原理は同じ。それをあなたと幼いわたしに受けてもらいます」
それを受けたことによってどうなるのか、そこで吐き出される結果は、やはりどう考えても一つしか思い浮かばない。
「あなたたちのその十ヶ月間の記憶を、頭の中の深いところに閉じ込めます」
俺は特に何も言葉を発することなく、大きな朝比奈さんに背を向けて足を動かし始める。
予想はしていたものの、それを実際に聞かされるとやはりショックは隠せなかった。
「待ってキョンくん!」
俺の背中を追いかけて、朝比奈さん(大)が小走りでこちらへ駆け寄ってくる。
追い付いた俺の手を掴んで、何か小さな錠剤を俺の手に握らせた。なんだこれは。
「副作用の全く無い睡眠薬。その時にこれで……」
俺は無言で朝比奈さんに背を向け、再び足を進める。
「今すぐとは言わないから。明日の夜九時にあの公園で待ってます。酷だけど、それまでに心の準備をしておいて。そっちのあたしには、もう未来からの指令が届いていると思うわ。……だから」
もういい。
「キョンくん、解って……」
それっきり、もう俺の耳に艶掛かった朝比奈さんの言葉が届くことはなかった。朝比奈さん自身は、加えて何か言葉を発していたのかもしれないが、俺がそれを耳で受け止められる状態ではなかった。
実際には、いつもと比べて別段暗いわけではないと思うのだが、家へ続く夜道がやたらと暗闇に包まれているように感じる。シーラカンスの住処だって、これよりはもうちょっと光が射しているに違いない。
そうして、視覚的にも精神的にも深海に沈められた俺は、その水圧で重くなった体を引きずるようにして自宅のオンボロアパートを目指していた。
肩にポツンと小粒の水滴が当たる。
降り出す前に玄関をくぐれそうな予感は、やっぱり当たらなかった。
季節に似合わずさほど大気中に水分が含まれていないのか、今や健康的と言えなくもない俺の肌に大して汗は浮かんでこない。梅雨らしさ全開の昨日とはうって変わって、今日の空はヤケにご機嫌さまである。
おかげで紫外線というお天道様の不可視攻撃を直撃している俺と朝比奈さんは、
「……暑いです」
「……言わないでください、朝比奈さん」
この時期にひたすら伸びるツル植物とは対照的に、今にも萎びてヘタりそうである。
口に出して言ってしまうと余計に暑く感じるという誰もが知りうる法則ですら、未来では通用しないのだろうか。何か画期的な方法が未来にあるのだとすれば、ぜひともこっちにその情報をもたらして頂きたいもんだ。
「言っちゃうと余計に暑くなるのは解ってるんだけど、つい……」
なんだ、そこはやっぱり未来も今も同じなのか。
「あのぉ、どうせなら、もっと暑くなっちゃいません?」
「えーとですね、それは一体どういう意味で」
熟れた林檎のような顔色を俺に見せまいとしているのか、視線をアスファルトに固定しつつ、朝比奈さんは俺と隣接している側の手をやたらとモジモジさせている。
なるほどね。この期に及んでなんて初々しいお方だ。
その意図を瞬時に掴んだ俺は、サッとその手を取って握ってやる。お互いの指を交互に絡ませ、二人して握り合う。いわゆる恋人握りというやつだ。
「……ん」
スローに俺の顔を見上げた朝比奈さんは、まどろむように目を細めて小さく笑う。
俺の視野で縁取ったその笑顔の周りは、逆光のせいか綺麗な紗が掛かって俺の目に写っていた。光のイリュージョン。どこの最前席よりも間近で見られるマジックショー。タネが解ってしまっても、ずっと見ていたいと思うね。
「ちょっとだけ、贅沢しちゃおうと思うんだけど」
俺が危うくイリュージョンの虜になりかけていると、朝比奈さんが珍しくそんなことを提案してきた。
「贅沢、ですか?」
「はい。冷たい物でも食べようかなぁって」
それだけで贅沢になるような世の中だとすれば、もうファミレスですら自動ドアをくぐったところでノーネクタイなら門前払いだろう。ドアをくぐった後で門前払いってのも妙な言い回しだが。
「ははは、いいですね。じゃあ、あそこのコンビニに、」
「え? コンビニ……ですか?」
そのあと俺と朝比奈さんが辿り着いたのは、男同士なら間違いなく場違いであろう小洒落たカフェだった。
とりあえず、贅沢と聞いてまずコンビニが浮かんだ俺は、どうやら貯金箱をいつまでも割れないタイプの人間だったらしい。女の子らしいのは朝比奈さんだが、女々しいのは俺の方だな。
とにかく世知辛い人間性が露呈された俺の対面で、朝比奈さんはバニラアイスをメインに用いたスイーツを召し上がっていらっしゃる。
「キョンくんは、それだけでいいの?」
コースターに水滴を染み込ませているアイスコーヒーの入ったグラスに目線をやりつつ、朝比奈さんは問い掛けてくる。
「ええ。今一番、口にしたいのがこれですから」
これは別に遠慮しているわけではなく、俺が欲していた物は本当にアイスコーヒーだっただけだ。うむ、アルミ缶に閉じ込められているものとは雲泥の差。久々のコーヒーの味に感動を覚えるね。
「なんだか、悪いなぁ。わたしだけこんな……」
朝比奈さんの幸せ顔が拝めることを考慮すれば、コーヒーはおろか都会の水道水でもお釣りがくるほど贅沢ってもんです。
「ええっ。それ、水道水なんですかぁ!?」
「いや、あの、どう考えても水道水にしては黒すぎると……」
未来の都会ってのは、上水道ですらこれほどまでに汚染が進行しているのだろうか。いよいよ俺にとっても環境問題が余所ごとでは済まされなくなってきた。頑張れ地球。
しかし、このまま環境ISOの取得に向かうのもなんなので、俺は別の話題を振ることにした。
「それにしても、朝比奈さんの方からこんな店に入ろうなんて、珍しいですね」
どうやら変える話題の方向性が悪かったのかもしれない。
「だって、これでもう……」
朝比奈さんは俯いて表情を曇らせるが、数瞬後には自分を咎めるように小さく首を振り、柔らかなエンジェルスマイルを取り戻す。
「ううん、なんでもないの。気にしないでくださいっ」
そう言われると余計に気にしてしまうのが人間の性ってもんなんだろうが、なぜか俺はそれを気に掛けることを放棄していた。
しばらく他愛も無い会話を続けていると、気付けば街灯が虫たちを呼び寄せているような頃合を時計の針は指している。ちょっと長居しすぎたかもしれないが、まあ店内はさほど混んでいる様子でもなし、モラルに反することでもないだろう。
伝票の取り合い合戦を征した朝比奈さんの小さな背中を眺めつつ、さてこれからどうしたものかと頭の予定表を捲っていると、
「なんかあそこ、チカチカしてるな」
「え、どこですか?」
近くの小学校のグラウンドだろうか。何かあそこで光を発している様子が窺える。
「花火か。あそこの児童たちが校内に忍び込んでいるんだな、きっと」
「わぁ、楽しそう」
そんなことを言われると、次に発する言葉はこれしか無いに決まってるだろ?
「俺たちも、ちょっと忍び込んじゃいましょうか」
キャッキャ喚きながら危なっかしい手付きで火を点ける子供たちにヒヤヒヤしつつも、俺と朝比奈さんは校舎からグラウンドへ渡す石段に陣取って、それを眺めている。
夏祭りの花火大会には遠く及ばない規模なのはもちろんだが、それでも手持ち花火ってのは趣があっていい。最近の小賢しいガキたちも、こういう時ばかりは無邪気な顔を見せてくれるもんだ。
「いいなぁ」
夜の暗闇のせいか宇宙を連想させる広い校庭に、子供たちが小さな流星群を絶え間なく降り注がせる。それが夜空とシンクロして空の境界線が曖昧になっているようで、なんとも幻想的な光景を生み出していた。
まあ、そんなグラウンドに出現したプラネタリウムに魅入っている朝比奈さんの横顔だって、それに引けを取らない煌きを放っていると思うけどな。
その横に並ぶ俺は、どちらに見惚れるべきか一瞬戸惑ったあと、けっきょく見慣れた横顔に心を奪われることにした。毎日見てるし、これからも見続けていくつもりなのに、なんでだろうね。
俺が人間に芽生えた帰巣本能について思考を巡らせていると、俺の視線に気付いた朝比奈さんが控えめに小さく微笑みかけてくる。
そんなモデストリー精神を抱えたところが大好きなのだが、俺だってどっちかというとその部類。これじゃあ、いつになったら次の恋愛的ステップに進めるのか解ったもんじゃない。こうして結婚の高年齢化は進んでいくのだろうか。
ここで一歩前に踏み出そうと、俺は傍にある温かい肩に自分の肩を寄せ、甘い香りの髪に頬を付ける。
「キョンくん。十ヶ月間あたしと居てくれて、ありがとう」
喋った時の振動が、朝比奈さんの頭を介して俺の頬に伝わってくるのが心地良い。
「何言ってるんですか。これからもずっと一緒なんですから、そういうのは死が二人を別つ時までとっておいてください」
そうだ。俺と朝比奈さんには、次の扉がまだいくつも残ってるんだからな。
「そろそろ……時間。行きましょう、キョンくん」
ここは聞こえない素振りをしていたいところだが、こんなに間近に居れば、そういうわけにもいかない。
「どこへですか? 場所によっては、俺は行きません」
「あの公園です」
どうしてだ。なぜそんな所に行く必要がある。そこへ足を踏み入れると何が俺と朝比奈さんを待ち受けているのか、それは朝比奈さんも知ってるんですよね?
ずっと一緒に居たいって気持ちは、俺も朝比奈さんも同じだったんじゃないのか? 結局、単なる俺の自意識過剰だったってオチかよ。
「キョンくん。キョンくんがあたしのことを、好きだ、って言ってくれた時、あたしはすごくすごく嬉しかった。ほんとに夢みたいでした。あたしも、ずっと一緒に居たいと思いました」
その時に言ったとおり、俺だってその気持ちは同じです。
「でも、それは許されないことだって解ってました。だから、その時にね、もう心に決めたの」
決めたって、何を。
「キョンくん。あなたがこの十ヶ月を忘れることになっても、あたしはこれからもずっと、この十ヶ月を、あなたを想っていますから」
ちょっと待ってください。それは一体どういう、
「未来の指令に背いちゃうことになるし、このままのあたしだと涼宮さんとうまくやっていけないと思うし、だからきっと、もうあたしはSOS団に戻ることは出来ません。けど、大丈夫です。未来からは別の人がそっちに行くと思うから」
待ってくれ。
「キョンくんにとっては、こうしてあたしと一緒に居ることが一番良いことじゃないの」
「待ってください! 俺は朝比奈さんのことを忘れるつもりなんて、これっぽっちも無いし、それに、そんなことをしたら朝比奈さんはどうなるんですか! せっかく今まで偉くなるために頑張ってきたってのに、これじゃあ、」
そうだった。俺は今まで、肝心なことをすっとばしていた。
たとえ俺がこの十ヶ月を忘れようが忘れまいが、朝比奈さんに住み着いた今の俺への気持ちは、朝比奈さん(大)への進化の道を閉ざしてしまう可能性が高い。
朝比奈さんが今まで育ててきた努力の実を、俺は何も考えずに虫食み続けてきたんだ。
ずっと一緒に居てください、なんて言葉、それは結局俺が自分のことしか考えてなかった証拠じゃないか。
そんで、朝比奈さんの葛藤なんてこれっぽっちも考えずに、一人でのうのうと幸せ気分に浸って、どうせ未来へ帰るのなんて当分は先のことだろうなんて楽観視して。
いや、楽観視じゃない。ただ逃げていただけなんだ。朝比奈さんが現実と向き合っている間、俺は知らないフリをしていただけなのかもしれない。
つまり俺は自分の都合で、想い人の将来を摘み取ろうとしていたんだ。
とんだ最低野郎じゃないか。ゴールデンラズベリー賞総ナメも夢じゃないノンフィクションだ。
でも、俺はやっぱりこの人が大好きなんだ。最後の最後でアカデミー賞へのどんでん返しを目指す。だから、
「朝比奈さん。あなたにとってこの十ヶ月の記憶は、これから先、きっと邪魔になるし辛いものになるかもしれない。朝比奈さんにだけそんな思いをさせるなんて、俺はしたくない」
そんなことを言い始めた俺を、朝比奈さんは不思議顔で見つめる。
「だから、やっぱり行きましょう。あの公園へ。それで、二人で終わらせましょう。今の俺たちを」
そして、キャリア組も真っ青な出世劇を俺に見せてください。
「……ダメ。そんなのダメです! あたしが忘れちゃったら、この十ヶ月が本当に無かったことになっちゃいます!」
大きい方の朝比奈さんが、ずっと覚えていてくれるさ。つまりあと何年かすれば、朝比奈さん自身が知ることになるから心配ない。二人が紡いだ、このかけがえのない時間たちをさ。
「お願い、考え直してキョンくん。あなただって、この十ヶ月が無かったことになるなんて、嫌ですよね!?」
嫌じゃないと言えば嘘になりますが、それよりも大事なものに今さっき気付いてしまったもんで。それに、
「俺が忘れてるってのに朝比奈さんだけが覚えてるなんて、そんなの悔しいじゃないですか。だから、これは俺からのお願いです」
その言葉と共に、俺は俺の大好きな人に手を差し出す。
「俺と一緒に、同じ道を歩んでください」
まるでプロポーズとも取れるその言葉とは裏腹に、別れの時計はひどく大きなアラームを鳴らしている。
少なくとも、チャペルで奏でる祝福のベルとは似ても似つかない音だった。
公園までの道のりを無言で進んでいたせいか、握った手の感触に意識が集中してしまって、何か少し気恥ずかしくなってくる。それが付き合い始めの初々しい気持ちを少し取り戻したようで、ちょっとこそばゆい。
ふと隣に目をやると、決意を固めたのか引き締めた顔で足を進める朝比奈さんの姿が俺の網膜を覆う。その姿は小さくも凛とした大人の女性で、あの大きな朝比奈さんと同一人物だという事実を、改めて俺に実感させるには充分だった。
そんな当然のことを考えながら、裸足の子供に優しい程度に丸みを帯びた公園の小石を靴底に確かめつつ、俺と朝比奈さんは足を止める。人影はまだ見当たらない。
「俺と朝比奈さんは、ここで間違いなく足跡を残しました」
いっときの夕立で消されてしまうほどの、薄い足跡。でも、
「これは実際の出来事なんです。夢じゃない。砂嵐が足跡を吹き飛ばしたとしても、その足跡がさっきまでそこにあったことは事実なんです。誰も覚えてなくたって、確かにあった事実を消されるわけじゃない」
俺はデニムのポケットに手を突っ込み、例の錠剤を指で確認する。
「だから、そんな顔しないでください。俺が大好きなのは、笑顔の朝比奈さんなんですから」
朝比奈さんのエンジェルスマイルがどこまでも健在なら、俺もきっと最後まで暑苦しい笑顔を撒き散らしてやるさ。
「……キョンくん」
この十ヶ月で何度も何度も朝比奈さんの口から聞いた、呼ばれ慣れ過ぎて今や愛着すら湧いてきた俺のそのニックネームを、朝比奈さんは包むように柔らかく呟き、
「ほんとのこと言うとね、ここに来る前から、あ、ここっていうのはこの四年前の時間平面上のことね。その、ここに来る前からキョンくんのこと、あの、ええと、少し好きでした……」
……マジですか。
そういうことなら、もっと普段から敏感にアンテナを張り巡らせておくんだったぜ。相変わらずこの手の感性が不十分な自分をなんとかしたい。
「あ、でも、今みたいにこんなにも想うようになったのは、一緒に暮らし始めてから。それに、ここに来てから最初の頃は全然そんな余裕が有りませんでしたし。うふ、なんだか一年も経ってないのに、とても昔のことみたい」
最初は俺だってそれどころじゃなかったさ。気を抜いたりなんてすれば、それこそ衣食住の内のどれかがいつ欠けてもおかしくはなかったからな。
「そうだなぁ。不安で不安で、どうしてこんなことになっちゃったんだろうって、良くないことばかり考えてました」
いたって正常な反応ですよ。あの状況に置かれて、ネガティブな思考に至らない方がおかしい。
「でも、キョンくんはちゃんと頑張ってて、だからあたしも頑張らなきゃって。隣にキョンくんの姿を見て、何度もホッとして」
俺だって、朝比奈さんの横顔に何度救われたことか。
「一ヶ月くらいが過ぎた頃かな。少し余裕が出てきたその辺りからは、とっても楽しかったです。きっと、そうですね。それくらいから、十ヶ月経つのが少しずつ怖くなってきたのかも」
なんだ、俺と一緒じゃないか。
「だから、そんな気持ちだったから、キョンくんの好きだ、って言葉を聞いた時は、もうとっても嬉しくて、涙が出るほど嬉しくて、さっきも言ったけど覚悟の上でキョンくんとの関係と選びました」
透き通った瞳を潤ませて、頬を染めながら朝比奈さんは口を小さく動かす。
「ごめんなさい。こうなることを解っていたのに、期待を持たせるようなことをして……」
謝る必要なんてありません。
俺だって逆の立場ならそうしていただろうし、何よりこの十ヶ月を振り返ってみると、本当に幸せだったと思いますし。それこそ、これから先の人生で味わうことになる幸せ成分を全部詰め込んだくらい幸せでした。
「あたしも本当に幸せでした。楽しかったことや嬉しかったことがいっぱいで、流石に全部思い出せないなぁ。えへ、キョンくんに色々買ってもらっちゃったりとかもしましたね」
色々っつっても、俺の小遣いからの出費は木製人形と靴だけですけどね。
「そのくるみ割り人形なんですけど、あの、ちょっとしたイタズラで手放しちゃったの……」
ちょっとしたイタズラ?
「はい。今のわたしに出来る、精一杯のイタズラ。ごめんなさい……」
いえいえ、あんなのいつだって買える代物ですから気にしないでください。それに俺が買ったとはいえ、朝比奈さんの物に違いないんですから、朝比奈さんの好きにしてもらって構いません。
「よかった」
呟くような安堵の言葉と共に、朝比奈さんはその少ない体重をゆっくりと俺の胸に預けてくる。涼しい夜風に映えるその体温がとても心地良く、まるで俺の決心を揺るがせようとしているようだった。
いっそ本当に、このままどこかへ逃げてやろうか。
「キョンくん、今までありがとう」
「何言ってるんですか。やめてください。それじゃあ今生の別れみたいですよ、朝比奈さん」
たとえ二人の思い出が脳裏から消え去ったとしても、これからもずっと会えることに変わりは無いんですから。
そうだな、考えようによっちゃあ、あのドキドキをまた一から味わう事ができるかもしれないんだからな。それはそれでアリなのかもしれん。人生で二度も初恋を体験できるなんて、そうそう有るもんじゃない。
「キョンくん」
今度はハキハキと、だがとても柔らかい口調で、朝比奈さんは俺のあだ名を声にする。
「わたしはこの時代の人間ではありません。もっと、未来から来ました」
ええ、だから俺たちはこうして、
「いつ、どの時間平面からここに来たのかは言えません。言いたくても言えないんです。過去人に未来のことを伝えるのは厳重に制限されていて、わたしたち時間遡行者は、必要以上の言動は強制暗示によってブロックが掛かるんです」
それも、ずいぶん前に聞きました。
「でも、必要以上のことなのに、こんなことは言えちゃうの。キョンくん、」
潤んだ瞳で真っ直ぐに俺を捉えて、朝比奈さんは今日一番の微笑みを零し、
「大好き」
とびっきりの笑顔を涙が伝うその光景は、下手な夜景よりよっぽど輝いていた。
例の錠剤をジーンズのポケットから取り出し、それを握り締めたまま、俺は小さな背中を自分の胸に抱き寄せた。
離したくない。でも、こんなにも好きだからこそ、俺は決めたんだ。この人のあるべき将来を奪わないために。
「朝比奈さん。これからも、頑張ってください」
片手で背中を抱いたまま、俺は握っていた小粒の錠剤を朝比奈さんの口へと運ぶ。
一瞬怯んだ朝比奈さんだったが、その錠剤を目にしてそれが何なのかを理解したのか、すんなりと俺の指先を自分の口元へと受け入れた。
それでも笑顔を崩さない朝比奈さんに応えて、俺も精一杯の笑顔を試みる。
錆び付いた街灯が上手く笑えていない俺を見兼ねたのか、その街灯は朝比奈さんに逆光ビームを浴びせていて、それが引きつった笑顔を少し誤魔化してくれているのが心強い。
なんというか、これは夢じゃないなんて自分で言っておきながらなんだが、まさに夢のような十ヶ月だったな。あっという間だったように感じられるが、九十分サイクルのレム睡眠にしちゃあ、あまりにも長すぎたくらいだ。
だったら夢なら夢らしく、ここらで潮時を迎えるのが妥当なんだろうさ。
そろそろ目覚まし時計がやかましく鳴り響いて、ベッドから叩き起こされるに違いない。けど、今が夢ならそれはあって然るべき、当然のことだ。現実は常に厳しい。
「……キョン、くん」
いよいよ薬の効果が目に見え始めた。
朝比奈さんの瞼はトロンと半開きになり、俺の胸に添えられている手から力が抜けていくのが判る。
せめて朝比奈さんが眠るまで、心の中で団旗を振り続けてやろう。生まれ変わって頑張る朝比奈さんへのエールだ。
「この時代で、俺はずっと応援してますから」
なんなら長門に頼んで、皆で団旗を抱えてそっちへ応援に行ってもいい。
「……嫌」
え?
「……やっぱり、嫌。忘れたく……ない。忘……れたく……」
眠気に必死に抵抗している朝比奈さんの唇は、真冬かと思わせるほどに痙攣していた。
「……朝比奈さん」
「忘れ……たく、ない。怖……い……、助……けて、キョ……くん……助けて……よぅ」
「朝比……朝比奈さん!!」
俺は胸の前にある小さな手をギュッと掴む。掴んでみると、大きく震えているのが解る。
「朝比奈さん! 吐き出してください! 無理してでも吐き出してください! そんで、二人で遠くへ逃げましょう!」
やっぱり、こんなの許さねえ。
なんで俺たちなんだ。なんでこんな目に遭うのが俺と朝比奈さんなんだよ!
他に居るだろうが。もっとこんな目に遭って然るべき奴が世の中に居るだろうが!
「朝比奈さん、出来ますか!? 無理なら、口の中に手入れますから! 朝比奈さん!」
朝比奈さんは残った気力を振り絞るように、震えながら俺の頬に手を伸ばす。
僅かに動く唇から発せられる言葉は、もう小さ過ぎて俺の耳には届かない。
頬に感じる手から力が失われていく。まるで俺の頬がゴールといわんばかりに。
そして、瞳を閉じて崩れ落ちた幼いシンデレラは、十二時の鐘と共に魔法のドレスを脱ぎ去った。
幾筋もの涙の跡を、その顔に残して。
けど、そこにあったのは笑顔。
チラつく街灯にかき消されるほどの、蛍よりかは少しばかり明るい安らかな笑顔だった。
しばらく立ち尽くしていた俺は、真っ白の頭に色を取り戻そうと気を入れ直す。
そして、おそらく辺りで息を潜めているであろう人物に声を掛ける。
「朝比奈さん、居るんですよね。出てきてください」
近くの茂みから葉擦れの音が聞こえて、その人物は俺に姿を見せた。
だが、
「……うう、うぐっ、ひぐっ」
隠れている間ずっと涙を堪えていたのか、俺に姿を見せた途端に嗚咽を漏らし出した。
「……見てられない。こんなの、見てられないよぅ……」
イヤイヤと首を横に振り、その瞳からは湧き水のように涙が溢れている。
色々成長しても、泣き方は幼い朝比奈さんと全く変わらないな。そういや、大きい朝比奈さんの泣き顔は初めて見たかもしれん。
「朝比奈さん、最後の仕上げはあなたの仕事です。ほら、早くしないと逃げるかもしれませんよ俺」
朝比奈さんは何か俺に言っているようだが、嗚咽が入り混じっていて言葉になっていない。
仕方ない。最後も俺自身の手でケリを付けてやるか。
「睡眠薬、まだあります?」
俺の質問が聞こえたようで、朝比奈さんはおもむろに手を動かすが、何かに気付いたように動きを止めて、
「……ダメ、です。そこまでしなくても……」
嗚咽を堪えながら、朝比奈さんは俺の要求を却下。
けど、さっきの動きで解っちまった。薬はスカートのポケットだ。
「……そうですか」
と、言いつつ俺は朝比奈さんにゆっくりと歩み寄る。今からスリ紛いの行動に出るだけに、頭の中は後ろめたさ全開で、それが顔に出ていないか心配だ。
けど、やっぱり朝比奈さんは朝比奈さん。そんな俺の心配を他所に、なんなくポケットから錠剤の奪取に成功。まあ、泣くのに精一杯で他のことに干渉する余裕があまり無かったんだろう。
「ダ、ダメっ。キョンくんっ」
朝比奈さんは慌てて俺の手から奪い返そうとするが、そこは俺に適うはずもなく、
「朝比奈さん。あなたにとっても、この出来事を鮮明に覚えておくことはきっと辛いでしょう。忘れていいとは言いませんが、ちょこっとだけ頭の片隅に置いといてくれれば、それで俺は満足です」
「……キョンくん」
そうさ。当事者である俺と俺の朝比奈さんが覚えていないのなら、これは誰を幸せにするでもない歴史だ。
もちろん誰かに覚えておいて欲しいことに変わりは無いが、それによって誰かが辛い思いをするのなら、こだわる必要は無い。
「後は頼みましたよ。じゃあまた、SOS団団員その一である俺に会いに来てやってください」
焼肉後の口にガムを放り込むくらいの何気なさで、俺はあっさりと錠剤を口に放り込んだ。
「キョンくん、キョンくん! ダメっ!」
やがて薬が体に回り始め、俺は地面に膝を付く。
遠のく意識の中で、華麗なシルエットがこちらへ近寄ってくるのが見えた。
「ぐすっ、キョンくん、ダメ、こんなの、こんなのって……」
だが、そのシルエットから覗く表情はくしゃくしゃに崩れていて、だから俺は、
「笑顔……で、お願い……します」
今の俺にとっちゃあ、最後のお願いってやつさ。
大きく頷いて見せた朝比奈さんは、長い瞬きで涙を止めたあと、
「はい」
いつかに見た、見る者すべてを恋に落としそうな笑顔を見せてくれた。
俺の瞳は最後に、目の前の笑顔と静かに眠った笑顔の二つを、ずっと写し続けていた。
数時間前。どこかの家庭。
夕飯までの時間的に中途半端な空きを、俺は読み散らかした漫画風呂のベッドで悶々と過ごしていた。
特に何をしているでもなく、よって部屋の中は静寂に包まれており、辺りから発せられる色々な音が鮮明に耳に届く。
その色々な音の一部に紛れて、忙しなく階段を刻む足音が聞こえた。
「キョンくーん、郵便だよー」
その足音の主はノックという基本マナーを躊躇なくすっとばして、俺の目の前へと駆け込む。
郵便って、手紙か?
「わかんないけど、これー」
そう言って、銀杏の葉サイズの手で掴んだ封筒を高々と掲げ、俺に差し出してくる。
膨らんでいる封筒を見ると、どうやら手紙ではなさそうだ。仮に手紙が入っていたしても、それ以外にも間違いなく何か入っている。
なんだろうか。全く心当たりがないのだが。開ける前に時限装置の音とか確認した方がいいのだろうか。
「きっとキョンくんの入学のお祝いだよー。中学生ってもう大人の仲間だもん」
つっこみたい要素が端々に散りばめられた台詞だが、今俺は赤のコードか青のコードどっちを選ぶかで精一杯なんだ。今日のところはスルーしておいてやる。
「とにかく、お前は部屋から出て行け」
「えー、中に入ってるの見たいー」
本能に忠実なこいつなら、外にボールを投げれば四つ足で走って拾いに出て行ってくれるだろうかとか思ったが、それはそれで兄として家族として何か悲しい。
とりあえずなんとか説得して部屋から妹を追い出した俺は、覚悟を決めて封筒に手を掛ける。
もちろん本当に爆弾だとは思っていなかったが、得体の知れない物が入っている可能性を無視は出来ない。封筒の口を広げて、中を目視で確認する。
すると、俺の僅かな不安も杞憂だったようで、結局そこから出てきたものは、一枚の便箋、と木製の人形が一体。
なんだこれは。
便箋、はまあ解る。誰からのものかは全く予想が付かないが、手紙ということでまず間違いない。
だが、問題はその次である。人形。はて。
俺は別にアンティークな趣味など持っちゃいないし、宛て先の間違いじゃないのだろうか。
しかし、俺の目が正常であるならば、封筒には我が家の住所と俺の名前がしっかりと刻まれてある。差出人の名前は見当たらない。
あまりの不気味さに背筋を凍らせつつも、とにかく便箋を広げてみる。
すると見覚えのない字体が俺の視界に飛び込んできた。
『幼いあなたへ
拝啓
. お元気ですか?
. 私は、元気です。
敬具
あなたを想うくるみ割り人形より』
なんだこりゃ。ますます解らなくなってきた。
国木田あたりが仕出かした、とびっきりのジョークならまだ笑えるが、あいつはそういうキャラではない。
うーん、どうしたものか。
「やれやれ」
何気に年寄り臭い台詞を吐いてしまうのも、これじゃあ頷けるってもんだろうよ。
でも、なんだろうな。文面は何か不気味なのに、この手紙からは全く嫌な感じがしない。
しばらく手紙を眺めて、俺はそっと元通りに手紙を折り畳んだ。
そして、その手紙と人形を、滅多に開くことの無い、机の一番下の引き出しの一番奥にそっと仕舞った。
夕飯まではまだ時間がある。
なぜか再度ベッドに戻る気にもなれず、俺は机に肘を付いて近所のガキたちのボール遊びをじっと眺めていた。
そして、夕飯を呼ぶ声が俺に届く頃には、俺はもう手紙のことを忘れかけていた。
「ふう」
外から聞こえる下校する生徒たちの話し声もひと段落つき、残るは日直や掃除当番に当たっている者がダルそうに校内に留まっている頃、俺と朝比奈さんは元の文芸部室へと舞い戻ってきた。
「キョンくん、付き合ってくれてありがとう」
いえいえ。そういう風に、手を握って俺にお礼の言葉を述べる朝比奈さんを拝めたんですから、それだけでも充分な対価が得られたってもんです。
いや、むしろお釣りが有り余って、俺が更に何か支払うべきかもしれん。そうだな、子供銀行の紙幣くらいなら、妹の部屋を探ればきっと束で出てくるに違いない。
「ただいま長門」
誘われるままホイホイと時の旅路へと足を踏み込んだその時と何一つ変わらぬ様子で、文芸部室の正式保有者は淡々と文学に励んでいる。
俺の言葉を受けて、長門は俺を一瞥し、またすぐに活字の空へと視線を羽ばたかせる。なんだかこの読書描写もそろそろ飽きてきた。
「しかし朝比奈さん。今回の指令って、一体なんだったんでしょう」
完全にトンボ帰りだったような気がするんですが。
四年前に行って、また直ぐに戻ってきただけ。これが仕事なら交通費すら経費で落とすのにひと苦労しそうだ。
「ふえぇ。それが、あたしもよく解らないんです。ごめんなさい……」
……まあ、残念ながら朝比奈さんには知らされていないだろうことは予想してたけどな。
そんな、まだ空を飛ぶほどに羽を上手く使えない幼いエンジェルの憂うべき身分に慈愛の心を抱きつつ、俺は一つ気に掛かっていたことを思い出した。
「そういえば長門、あのあとハルヒはどうだったんだ?」
そうだった。俺と朝比奈さんがここから消える徹底的瞬間を、あのハルヒに目撃されたかもしれない。
「大丈夫。特に問題は無い」
問題ない、って。見られたんだとしたらマズいだろ。
「涼宮ハルヒがあなたたちを目視できた時間は、人間には残像程度としか認識できないほど僅かなもの」
「やっぱり、一応は見られたのか。変な勘ぐりをしてなければいいが」
「大丈夫」
まあ、長門がそこまで言うのであれば、ずいぶんと安心できる。今やこいつのお墨付きとあらば、俺は天動説を唱えられたところで易々と信じてしまうだろうからな。
「そうか、なら良かった。で、そのハルヒはどこへ行ったんだ?」
だが、流石の長門も全知とはいかないらしく、この質問には俺と目を合わせて僅かに首を傾げる。
まあいい。どうせまた日本中のコロッケをカレーコロッケに変えるくらい、くだらないことを企んでいるんだろうよ。
「あ、あのぅ。ほんの一瞬でも、涼宮さんが見たのって、わたしとキョンくんが手を繋いでい、」
こうして朝比奈さんが折角おしゃっているお言葉を、俺は一言一句聞き逃すまいと耳を傾けていたさなか。どこのどいつだか知らんがそれを遮る輩がいたようで、
「あー、なんか今日はムカつくわ。とっととミーティングして終わらせるわよ」
扉をやかましく開いて登場するなり文句を垂らしながら、我らが長はムスッとした顔と共に大股で部室内へ入り込んでくる。濁点だらけの擬音が今にも聞こえてきそうだ。
「なんだ。何か気に入らないことでもあったか」
こいつの不機嫌オーラは定期的にやってくるからな。今やすっかり慣れちまった。今回はおおかたコロッケが天カスにでも変わっちまったんだろうよ。それが晩飯のメインディシュだったんなら少しは同情してやらんこともないぞ。
「違うわよ。ていうか、どこからコロッケが出てくんのよ」
まるで他所の子の愚行を遠目で見る近所のおばさんのような視線を俺に向けつつ、ハルヒは肩肘を付いて否定してきた。
「じゃあ、なんなんだよ」
「幻覚よ幻覚。なんか一瞬、とてつもなくくだらない幻覚が見えたのよ。あー、気分悪いわ。いよいよあたしも末期に違いないわ」
何の末期だ。
「なんか、部室だとまた幻覚が見えそうでイライラするわ。場所変えてミーティングしましょ。いいわよね」
そう提案したらしっぱなしで、俺たちの返事を聞くまでもなく一人で部室を出ようとするハルヒ。
「ちょっと待て。ミーティングするのは構わんが、一体なんのミーティングだ」
「今ミーティングっていったらツーリング以外の何があんのよ。嫌なら、あんたは一人でひたすらボルトにワッシャーでも付けてなさい」
地味な作業だなおい。せめて賃金はどこから発生するのか、はっきりさせておいてくれ。
そんな労働の対価を求める俺の叫びも虚しく、ハルヒは今度こそ部室をあとにする。
「おや、今日は外出でしたっけ」
部室から出ようとするハルヒと出会い頭に衝突しそうになりつつ、ようやく古泉が姿を現した。
「こないだ決まった鶴屋家別荘への自転車ツーリングのミーティングよ。古泉くんも来てちょうだい」
「そうですか。では、参りましょう」
ミーティングと聞いて外出することに一切つっこまない古泉だが、こちらもそんな古泉に今更つっこむ気も起こらず、こうしてめでたく出張ミーティングが行われることになった。
朝比奈さんもハルヒのあとに次いで部室を出ようと扉に向かったところで、俺も席を立つ。だが、
「長門、行くぞ」
今だ本を閉じてなかった長門が、俺の呼び掛けを受けてか一瞬こちらに視線を送ってから、ようやく本を閉じる。
「どうしたんだ、えらくゆっくりだな。置いてけぼり食らうぞ」
先程までは本に隠れて見えなかったが、その本の下敷きにしていた方の長門の手には、何か小さな人形のような物が握られている。
「安心して。終わったわけではない」
「何がだ?」
「まだ始まったばかり」
「だから何がだ」
長門は俺の質問には答えず、音も無く立ち上がり音も無くこちらへやってくる。もうこれは忍び足というか、たぶん数ミリくらい地面から浮いているんじゃないだろうか。こいつならやりかねない。
「これはもう、あなたが持っていた方がいい」
そう言って、身長を数ミリほどサバ読みしているかもしれない長門が、握っている人形を俺に差し出してきた。
「どうしたんだこの人形」
「転移するには媒介が必要。その媒体としてこれが非常に適切だった。だからそれに使用した」
……すまんが俺は暗号の類はあまり得意じゃないんだ長門。
「とにかく俺たちも行こう。マジで置いてかれちまう」
長門が放った意味深な言葉を気に掛けつつも、俺たちはハルヒのあとを追って部室を出た。
ツーリングの目的地が鶴屋家の別荘ということもあって、ハルヒは今日の独演会に鶴屋さんも誘っていたらしい。
どちらか一人の時よりハイテンション二乗増しのハルヒ鶴屋コンビの笑い声をBGMに、辿り着いたのは結局いつもの喫茶店である。
「あっこまでは、けっこう長い道のりだかんねっ。着いた頃にはお腹ペコペコだと思うから、美味いもんいっぱい用意して待っとくよっ」
レモンティーに突き刺さったストローを指でつつきながら、鶴屋さんは皆の顔を順番に見て言う。
「楽しみにしてるわ。さあ、これでいよいよ急がないわけにはいかなくなったわよみんな。絶品料理が冷めないように、超特急でペダルを漕ぐつもりだから遅れないようにしなさい!」
完全にツーリングの趣旨を間違った方向に持っていってるな、こいつは。ツーリングってのは普通、自転車やバイクでの移動自体を楽しむものじゃないのか。
まあ、確かに鶴屋さんの用意してくれる、美味いもん、ってのはかなり期待できる。俺なんかだと、普通に生きていれば一生に一度出くわすことが出来ればいいくらいの上物が出てくるのかもしれない。
「あっははっ。こりゃあ、みくるは頑張らないと置いてかれて迷子だねっ。なんならみくる専用の先導バイクでも付けるかい?」
「ええっ。あああたし頑張りますから、大丈夫ですっ」
朝比奈さんの慌てる姿を見て、鶴屋さんは笑い転げている。一体この人のツボはどれだけあるのだろうか。本当に色々と計り知れないお方だ。
「そういや長門。お前、自転車持ってんのか?」
「持っていない」
「……やっぱりか。そういうことは早めに言わないとだな」
「そういうことでしたら、僕の知り合いにリサイクルショップを経営している方が居ますので、無料で貸してもらえるよう頼んでみましょう」
「何? 有希、自転車持ってなかったの?」
こうして、おそらく鶴屋さんのおかげかいつの間にかハルヒも機嫌を取り戻し、しばらく和やかなムードで話し合いは進んでいた。流石は鶴屋さんである。
だが、
「…………」
俺たちの隣に陣取った二人の男女客が、再びハルヒの機嫌を損ねてしまったようである。
その二人は対面ではなく隣同士で腰を下ろし、要するに世間一般で言うバカップルというやつだ。
「何、あれ」
ピンク色のオーラがこっちにもユラユラと漂ってきて、お冷が今にもピーチジュースに変わりそうな勢いである。そういや、水をビールに変えるマジックならテレビで見た記憶があるな。
「いちいち気にするなハルヒ。隣は隣、俺たちは俺たちだ」
そうは言ってみたものの、確かにあれは目に毒だ。こっちまで恥ずかしくなってくる。
イヤらしい感じは全くしないのだが、二人とも頬を赤らめる場面がやたらと多く、あまりにも初々しくてピュアというか、なんか自分の汚れ具合に気が滅入りそうになってくるな、これは。
「ふえぇ……」
恥ずかしくなってきたのか顔を俯けている朝比奈さんとは正反対に、長門は毛穴の数まで観察するかのように、その二人をジッと眺めている。
で、一人でずっと笑いを堪えている様子なのが鶴屋さん。
「くく……あ、あたしはもうすぐ親戚の集まりに行かないとダメなんだっ。だから今日はこれでおいとまさせてもらうとすっかなっ」
「そう。じゃあまたね鶴屋さん」
絶対笑いを堪え切れずに逃げたなあの人。
「まだ喉が渇くわね! グレープフルーツジュースちょうだい!」
ハルヒの不機嫌は絶好調のようで、自分の分のオレンジジュースを一気に啜り上げ、ドンッと音を立ててグラスを置き、大声で店員に叫ぶ。
「なんだ、足りないんなら俺の分やるぞ」
「いらないわよ、あんたの唾入りなんか」
俺の弁当は平気で食うくせに、よくわからん奴だ。
「……まあ、いいわ。もらってあげる」
と言って、けっきょく俺からグラスを奪い取りストローに口を付けるハルヒ。どっちなんだよ、まったく。
それは置いといてだ。
「……おい、なんで顔を赤くしてんだ。俺まで恥ずかしくなるだろうが」
そして黙るな。何を意識してるのかこいつは、妙なところで変な反応しやがる。
ほれ、追加のグレープフルーツジュースが到着したぞ。
「う、うるさいわね! 返すわよ! 自分で飲みたかったんなら、あげるなんて言うんじゃないわよ!」
持っていたグラスを俺に突き返し、新しく現れたグラスをむんずと掴んで、ハルヒはまたもや一気に啜り出す。
フンと横を向いてストローを吸うハルヒの横顔は、肩口で揃えられた髪で表情が隠れていた。
「けっこう減ってるなおい」
氷が溶けて薄められたジュースの味が、なぜか俺には妙に美味く感じた。
あはは、やっぱハルにゃんたちはおもろいねっ。あん時の空気ったらなかったよっ。
これはダメだっ。思い出したらまた笑いそうになっちゃうね。
「くくくっ」
けっきょく街中で思い出し笑いをしていまい、あたしはちょびっとだけ周りの注目を浴びる。
やっちゃったねぇ。けど、たまにはこういうのも逆に清々しい気がするからオールオッケーっさ。
髪を風と遊ばせながら、家への道のりをあたしは軽快に進んでいく。そろそろ、少し髪を切ってもいい頃かもしんないね。今度の休みあたりにでも、あのおもろい美容師さんを呼ぶとすっかなっ。
「おんや?」
いつの間にかあたしの数十メートルほど先に、二つの人影が見えている。
あれは、
「おーいっ! みくるとキョ……」
いや、違うねっ。人違いだっ。
よく見ると全然違うよ。っていうか前の二人、さっきのカップルじゃないかっ。
あはは、バカだねあたしは。あの二人が手を繋いで歩いてるなんて、ありえないのにさっ。
でも、なんでだろーねぇ。顔も服装も全然似てないのに、なんであの二人と間違えたのかぜんっぜんわかんないよっ。こりゃ傑作だっ。
「うーん」
にしても、どうすっかなあ。こっち振り返っちゃってるよあのカップル。
よし、決めたっ。今日は赤っ恥デーだっ。さっきの思い出し笑いのついでに、思いっきり赤っ恥掻いてみるとすっかなっ。
心を決めたあたしは、大きく息を吸い込んで、
「おーいっ! みくるとキョンくんっ!」
ちょっと強めの風に押されながら、二人のもとへと駆け足を始める。
どうしてわざわざ近づくのかって、あたしはやるならとことんやる主義だかんね。
だから、
見知らぬ二人に言い訳をするために、あたしはスカートを少し押さえて駆け足をするのさっ。
以上です。
480KBくらいで収まると思っていたのですが、思ったより容量食ってしまって申し訳ないです。
そろそろ次スレの頃合かと思われるんで、このまま自分が立てようと思うんですが、どうでしょう?
お願いします
じっくり読んでます。
良いんじゃないかと>次スレ
>>555 乙で〜す
途中まで読んだけど明日また読みます
次スレヨロ
>>555 読みました。
未読の方のため今のところコメントは控えますが、いいお話でした。
何となく以前こちらで読んだ作品に通ずるところを感じたんですが、もし同じ作者さんなら、
その腕前に感服します。リスペクトならもっとびっくりですけど。
このスレの住人で、よかった。
乙!ちょっと切ないね
泣いた……
『二度目の選択』以来だ……
非単調の人かな?
久々の気合の入ったSS、ありがとうございました。
>>555 物悲しい、それでいて温かい……っていうのかな
純粋に良い話だと思いました。お疲れ様です。
>>555心から泣きました。睡眠薬あたりからもう涙が止まらなかった。
長編お疲れさまでした。とりあえず今から頑張って涙を止めようと思います。
最後に一言。神GJ!!
GJ。破綻のない構成力、グイグイ読ませる文章力。
結末はある程度想像できる展開で、ここまで素直に面白く読めるっていうのは本当にすごいことだと思う。
読み終わったあと非単調〜と同じ時間軸だとしたら、
すべて思い出したらキョンは確実に精神崩壊するだろうな、なんて考えてしまった。
>>555 泣きまくりました。何度も。何言っていいかわからないな…GJ。
なんでみくるはいい話多いのに報われない話ばかりなんだろう…
>>555 直球ストレート、ブレの一つもなく落し所へと落とす。
構成から端的表現まで全部含めてこれは自分には書けない。
素直に感服しました。お疲れさまでしたと、あえて普通に。
>>571 僕から言わせれば、未来人は規定事項で現地人とはむすばれないのさ…くそったれ!
>>575 いや、読みは原曲通りで良いと思うよ
未来じゃなくて来未だから
>>575 よう俺。みくるにアイアンクローして頭を割る長門を想像した。
>>577 完璧だな、名前に過不足がないwwww
正直キョンは、情報思念体より先に、未来と事を構えた方がいいんじゃなかろうか
>>578 未来の朝比奈さん(大)とは戦えないだろ。
藤原相手なら手加減無しのガチンコバトル起こしそうだが。
>>555 GJ
>>579 それは無理だよ。過去が変わったら今までの(大)の助けも全部タイムパラドクスになっちゃうし…
(大)だって好きでやってるわけじゃないんだから
キョンの良さ、朝比奈さんの良さがすっごく表に出ていて、読んでいてグイグイ引き込まれました。
とても面白かったので、次作を大いに期待してます。
おもしろかったんだけど話の流れが非短調と一緒じゃねと思ってしまった。
>>555 読みました〜
切ない、切ないよ…(´;ω;`)
他の人も言ってるけど、非単調の人なんだろーか?
非単調の時もそうだし今回も感動させてもらいました
GJというより、素直にありがとうと申し上げます。
形見っぽいモノがラストにまた出てくるパターン大好きです
救われた気がするからかな。
違う方の作品っすよ
( ゜Д゜)
( ゜Д゜)
すまん、誤爆った。
>>584 マジか…俺二重で誤爆だな
Riの罠wwwww
長門は尾獣を改良して地球破壊兵器を計画中らしい
ナルトはもういい
>>580 パラドックスか………
原作は見事なほどにパラドックスのオンパレードになっているんだよな。
だからこそ、多少矛盾していようと救いがあるのが不自然にならんですむのだが。
例えどんなかたちであれ、不幸せな結末でなくってよかったよ、GJ!
>>555
佐々木スレで「セイクリッド・カプリチオ」のURLが貼られてて
まだ読んでないことを思い出して読んできた。
ふぅ…長かったが面白かった。
あと5Mどうするか…
埋め
スマン、5Kだったwww
朝比奈さんが乗り移ったかw
朝比奈さんは次スレw
598 :
みくる:2007/10/19(金) 00:34:10 ID:siyKzmgD
ひゃ〜い
599 :
みちる:2007/10/19(金) 01:08:45 ID:3HHyz7Z1
ひゃ〜い
なんでみくるスレみたいになってんだww
ひゃ〜い
ひゃ〜い
つまんね
>>134 まず、謝らなければならないだろうね。
確かにこれは空白行が必要だ。三点リーダが画面いっぱいに蔓延る光景は見るだけで嫌になったよ。
次回もこのエロゲ文体で行くのなら文字数改行することを勧める。エロゲだって一行字数が決まってるだろう?
それに読み手にセルフ改行してもらうより、自分で折り返し箇所を決めたほうが良いはずだよ。
内容に関しては、このスレのSSとしてはプロットもトリックもオーソドクスな出来。ワンパターンな性描写も含めてね。
おっと、けなしたつもりはない。要するにGJ!ってことさ。このスレで本気エロSSは意外に貴重だからね。
「落ち」の部分は、主人公一人称主観という原則を守るのなら、作中に潜ませ「知らぬは主人公ばかりなり」で書き上げるべきだろうが、
特別こだわらないのなら、オチとしてきちんと付け加えたほうが良かったね。
後書きで読み手に聞くなんて、あってはならないことさ。
それにどのみち発表するのなら、天の声語りなどという手抜きでなく、じっくり時間かけて書いてほしかったよ。
さて、最後に駄目出しさせてもらえば、「挿入」シーンはどうしてもいただけない。
童貞にとって一世一代のイベントのはずだろう。それを何故行間で済ませたのか理解に苦しむ。
投稿に欠落があるのか、空白行を削ってしまったのか、書いてみたが気に入らず消してそのままなのか。
はたまた、アニメ等で「挿れるぞ」という台詞とともに暗転し、次にはまぐわっているシーンとなるものがあるが
それの影響だろうか。まさか他著作を改変したのではあるまいね?ないとは思っているけどね。
……ああそうそう、これは言っておかなければ。
書き手は個人的な事情まで語る必要はない。匿名掲示板上の確かめようのない言い訳は見苦しいだけさ。
ま、他人様のことは、言えないのだけどね。
>>183 テンプレそのままの無個性エロSSをありがとうございました。
次に書かれる際には二次創作らしさを重視してお願いしますね。
できるものならですが……フフ。
>>208 見事なハーレム&ドタバタ劇です。
あなたを含め、このスレの職人氏の頭はどうなってるんでしょうね。毎行毎行ネタの浮かぶ発想力、いや羨ましい。
ですが、詳細を避けるべきシーンまで、辻褄を(やや強引に)合わせ丁寧にネタにしてしまっているために、
本来日常側にいるべきキャラを、極めてご都合主義的に非日常側に引っ張り込んだ結果(これが簡単にできてしまうと物語にならない!)、
原作の設定の枠を破ってしまうというタブーを犯す羽目になってしまっています。
原作あっての二次創作なのですから、フルオブフェアリーよりフェイスフルを心掛けるべきだと俺は思いますよ。
せめてキョン母に長門が噛みついて納得させるとか……(それはそれでまた深刻なタブーなのですが)。
けれど、これほど楽しい作品を書かれる方のことです。何もかもわかった上なのかもしれませんね。
なお、無駄な空白行を毛嫌いする俺ですが、このような使い方が反則かどうかは悩むところです。
例えば原作者氏は、こうした「話題転換」や「詩的間」では原則通り空白行を使わず、結果駄文にしていますから。
ひゃ、ひゃ〜い……
>>264 俺の頭の程度のせいか知らんが、まったくもって理解できないね。
俗に言うベタベタ頭クラクラ展開。それはまあいい。数兆ある古今未来の物語は僅か31のパターンに分類できる。
一人称夢オチという反則にしても、一応注意はしているようなのでクレームはつけない。問題は細部だ。
秀逸だと思える箇所はいくつもあった。しかしだな……。
直接的な抽象語を安易に選び、大事な場面で紋切り的比喩やお約束の文句を使い、当然あるべき肝心な描写を書かない。
冷静、陳腐、物足りなさ。これは首から上でなく腹から下に訴える官能小説としては致命的な欠陥だ。
飴玉かと思って舐めてみたところ糖蜜を塗ったビー玉だった気分だな。
悲しい気分を「悲しい」と書いて済ませたら小説ではない、という大原則を思い出してくれ。
それから台詞のみによる妄想垂れ流し部。なぜ台詞を混ぜつつ地の文で書かなかったんだ。ここでもう一回ヌかせることもできたはずだろう?
妄想の書き殴りを止めやしないが、書き終えた後で他の可能性についても考える余裕が欲しいものだな。
>>327 あのあの、3レスも引っ張ってまで書くほどのネタではないかな、と……。
でも!とってもいいと思います!俺ハーレムネタ大好きです!
>>380 これも、ここまで引っ張らなきゃならない話なの?
お約束ネタを上手に利用して見事なシリアス仕立てにしましたねぱちぱちぱち、って言いたいとこなんだけど
平気で「割れ目」とか書いちゃってるし、ネタと文字の数、それに雰囲気のバランスを考えずに、気ままに書いたってだけじゃない?
どうせエロまで繋げる気なら、悲鳴を上げさせるのはスッテンコロリした瞬間より、ジンワリジワジワきた瞬間を選ぶべきだったと思う。
それに空白行……いいえ、言わないどく。
無理して補助輪無しで出発されて、途中で怪我して引っ返されちゃうより、
補助輪つけて無事目的地に着いてもらったほうが、待つこっちはずっといいから。
>>408 橘の台詞「スルー」はこのSSにしてはベタに過ぎる、と思う。
ここでは、あなたに考えてほしいことを述べる。
古泉一樹による解釈を採用すれば、涼宮ハルヒは願望のまま無自覚に世界を改変できる。
そこで疑問。彼女の意識において無自覚な世界の改変は、無意識の領域においても完全に無自覚なのだろうか?
意識と無意識の「行為」について、3つのモデルを提示する。尚、3つとも問題はある。
A:《願望》→〈〉→実現 「桜が咲いたらなあと思ったら、桜が咲いた」(完全無自覚)
B:《願望》→〈操作〉→実現 「桜を咲かせてみたら、桜が咲いた」(能力のみ自覚)
C:《願望》→〈操作→記憶〉→実現 「桜を咲かせてみたら、桜が咲いた。あたしが咲かせた」(能力及び因果の自覚)
(但し、《》内は意識、〈〉内は無意識での「行為」とする。「操作」には実現すべき「願望」の選別や情報パラメータ設定をも含む)
あなたの解釈は、どれに近い?
>>439 「三国同盟」までで投げたんだけど、好意的な感想が多かったから、面白い話なんだと思い直して最後まで読んでみたよ。
ええと、投稿した後で読み直してみて、後悔はない?
見たところ、ネタには気を遣ってるのに、文章のほうが疎かになってて、ホントもったいないんだ。
文法的に読みにくかったり、言葉が重なってくどかったり、冷静なのか陶酔してるのか中途半端な説明口調だったりで、
せっかくの楽しくてエッチな作品の雰囲気に水を差してしまってる。
それにこの短文文体なら、もう少し「代」名詞を考えて選んでほしかった。「裏地」じゃあねえ……。
推敲は、ちゃんと冷めた頭で、時間かけてやろう。焦っちゃいけないよ、うん。
>>508 わーい、エロエロだぁ♪
こないだのレス取り消しっ!ゴメン!ここまで思い切ってくれるなんてソーゾーつかなかった!
鈍ちんのテーソーを破っちゃったし、このまま一話一犯シリーズ書けちゃいそうだね。書いて書いて〜!!
けど、主人公もだけど、ヒロインのみんなまで彼女にウチアケ相談しちゃったのは、考えてみるとヘンな気がするんだ。
んん、もしかして相談されたなんて話は―――あーあー!こーゆー展開だったんならゴメン☆
かってに注文つけちゃうとすると……えちえちしてるとこでのワンパタ、何とかできないかなあ?
レーセーなまんまかコーフンしちゃってるかで、見えるもんは違って見えてくるはずだよね。小説ってそういうもんだし。
でも、プロの書いたエロ小説でも描写はワンパタだったりするし、よっぽどの人じゃなきゃ無理ムボーなのカモ……。
>>555 山田洋次的――。