嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その38

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSSを扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ37.5ロシ(皆殺し)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187181981/

■まとめサイト
2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html

■避難所
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 二人目の子
http://www2.atchs.jp/dorobouneko/
2名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 14:21:57 ID:aHB+OPCq
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第20章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1183835795/
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板 その2
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1172035731/
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレin角煮板3rd
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1176121368/
誘導用
【一人で】ハーレムな小説を書くスレ【総食い】 11P
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1186857625/
ヤンデレの小説を書こう!Part9
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1186477725/
ほのぼの純愛 9スレ目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171372657/
●●寝取り・寝取られ総合スレ5●●
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179749372/
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187005483/
3名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 14:22:32 ID:aHB+OPCq
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
4名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 14:39:26 ID:PtHzh0I2
>>1乙。
だけど、その39の間違いじゃ?
5名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 14:39:38 ID:cSViDwFA
>>1乙!
6名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 14:45:20 ID:aHB+OPCq
>>4
前の38スレは消されてしまったので、ここが新しい38スレと言う事で・・・
旧38スレの祟りがありません様に・・・
7名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 15:13:44 ID:Jd6mIK4w
てか、本当なら39じゃないのか?
8名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 15:19:20 ID:Jd6mIK4w
嫉妬した女の子が可愛いのに
どうして、リアルはうざいんだろと定説を語りたくなる
この頃
9名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 16:53:32 ID:k/lkm2ct
やっぱり自分にその思いが向けられるときついのと、二次元の嫉妬は妄想でできてるからな
まー三次元の嫉妬も好きという人もいるだろうから、あんま何がきらいとか言わない方がいいぞ
10名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 16:55:06 ID:AGc5x+g1
>>8
リアル女は、自分が選ぶ立場であると自覚しているから
そしてそれが事実であることがたまらなく腹立つのであった
11名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 17:55:11 ID:OSZgXeiY
>>10
それに現実がどうであれ
周りで一番自分がカワイイと思ってるし。

「あたしなんて可愛くないしぃ……」
なんてのは全て建て前田。
それを否定してもらえるのが前提で喋ってるからな。
……それを意識してるかどうかは別として。
12名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 10:32:21 ID:OsNhg6RQ
顔文字とかそういうの入れてるSSはきついな
とあるSSで「どうでもいいのか・・・orz」←これみて読む気が半減した
13名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 11:02:03 ID:h1UMEij3
顔文字ちがう
14名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 11:44:14 ID:1aVvlZGo
>12 なら見なければいい
作者はお前一人のために作ってるわけじゃないんだし、ギャル文字とか使ってるならともかく、そういうのはあんまりな…
15名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 13:19:12 ID:crsGaI97
専ブラのあぼ〜ん機能を使えばいいのにな。
16名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 13:40:20 ID:r01OiO9t
問題なのは前スレを埋める気はあるのかと
17名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 15:13:49 ID:5jTwdIcV
いや、だってなんか気まずい雰囲気だし・・・。
18名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 15:50:51 ID:8/DEyzeB
>>8
いや、三次元でもヤンデレはありでしょ。ただ滅茶苦茶自分を想ってくれる
美人がいない、もしくは居たとしてもその愛を向けてくれる対象が漏れた地じゃないだけで・・
きっと、加藤あいとか狩名とか愛撫先とか松島奈々子とか山口友子とかだったらみんなも
うれしいんじゃない?ww
19名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 15:59:50 ID:mVPPo2FL
三次元の話とか必要ないから
20名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 16:12:53 ID:94s/m4x7
三次元の話はネタに使えるぞ
21名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 16:50:32 ID:Y8sf17Xb
エロゲのヒロインに惚れられた、って話がヤンデレスレにあったね

頑張れば三次元に干渉可能らしい
22名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 19:04:57 ID:1aVvlZGo
俺的にはアイドルとかどうでもいいがな。
普通に考えれば手が届く距離にいないアイドルという三次元で、アイドルを自分にどう近づけても不自然だからな

そういうのを題材にしたSSならいいが…
23愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/08/31(金) 19:15:06 ID:4B65lNPf
こんにちは。
前スレ>>393の続き投下します。
24名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 19:17:14 ID:RvEiDdPM
むしろ、幼馴染がアイドルになって、仕事に追われて
主人公と疎遠になっている最中に泥棒猫がその隙を上手く突いて
恋人同士になる

ずっと、自分を支え続けてくれた主人公が寝取られたことにより
幼馴染が黒化するようなSSとかどうよ?

この場合はアイドル生命の危機に陥っても
幼馴染の勝利を期待する
25 ◆oNTNicc3Mg :2007/08/31(金) 19:31:58 ID:vHA9acFz
ちょっとパソコンの調子が悪いので時間を置きます

申し訳ないです
26名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 20:00:09 ID:1aVvlZGo
>>24

というか俺、今妹でそれを考えてるわ…
家に来た妹のマネージャーとかが、泥棒猫に…
27 ◆oNTNicc3Mg :2007/08/31(金) 20:14:15 ID:4B65lNPf
今度こそ行きます
28愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/08/31(金) 20:15:04 ID:4B65lNPf
「ありがとうございましたっ!! 本当にありがとうございました!!!!」

 あれから何回この台詞を言われただろうか。感謝されるのは別に悪い気分じゃないんだ
けど、なんだかくすぐったい。

 強盗も警察に連れて行かれて、僕はコンビニの奥の事務室らしき所にいた。どうやらあ
の男は麻薬をやっていたらしい。警察の人にそう説明をうけた。確かにあの狂い様は、正
常な人間とは思えなかった。

 それで、終始腰をぬかしていた店長らしきおっさんは警察と一緒に店を出て行って、事
務室の中は僕とあの店員さんの二人だけだった。

 ―――密室で二人っきり!! ってバカか。

 自分で自分に突っ込みをいれる。

「いやまあ、別にそんな……」

 でも、こんなにもくすぐったい理由にはやっぱり、

「あなたがいなかったら、私はどうなっていたか分かりませんし」

 この娘が、とても可愛いからってこともあるんだろう。
 こういう娘に、ひたすら感謝されるっていうのは何だか照れる。それに、一度は見捨て
ようとしていたのだから、少し罪悪感もある。

「でも怪我がなくてよかったよ、ホントに」

 こんな可愛い娘に傷なんかが付かなくて本当によかったと思う。
29愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/08/31(金) 20:16:24 ID:4B65lNPf
「……はい、あなたのお陰です」

 あのまま見捨てていたら、きっと僕は僕のことを嫌いになっていただろう。そうならな
くてよかった。

「でも、あなたの方に怪我をさせてしまって……」
「ああ、こんなのただのかすり傷だって」

 僕は笑ってそう答えた。あの後左腕の傷は消毒して包帯を巻いてもらった。これだけや
ってもらえば問題は無いだろう。

「制服代はこちらで弁償させてもらいますから」
「いいって、これぐらい。裁縫は得意なんだ」

 この嘘もきっとカッコ付け過ぎ。だけど、それくらいの嘘を今は格好良く言いたい気分
だった。

「あの……本当にありがとうございました!!」

 そう言って店員さんはまたペコリ。きっとこのままじゃ堂々巡りだ。そう思って僕は、

「それじゃあ俺、帰りますね」

 そう言った。

「はいっ、ありがとうございました!!」

 最後に彼女の顔を見たかったけれど、頭を深く下げたままだったのでそれは叶わなかった。

30愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/08/31(金) 20:17:19 ID:4B65lNPf
コンビニを出ると外はもう真っ暗で、そして寒かった。しばらく暖房の効いた室内にい
たので、冷たい風に当たって身体がぶるっと震えた。

「さむっ………」

 吐く息は、当然のごとく白い。

 ―――冬は、僕の一番好きな季節だ。

 冷たい風、白い息、石油ストーブの匂い、張り詰めた空気、全部好きだ。そして一番好
きなのが、空。
 
僕は空を見上げる。雨はもう止んでいた。

 冬の夜空は、空気が澄んでいるので他の季節と違って星が良く見える。

 別に僕は星座に詳しいとかそういうのじゃない。北斗七星と、あとはオリオン座くらいし
か分からない。

 だけど僕は、冬の夜空が大好きだ。

星の光が、好きだ。

「あはは…………」

 口、半開きになってらあ。それに気付いて、一人で哀しく笑った。
31『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/08/31(金) 20:17:48 ID:46e0L8Ld
それでは先に投下します
32愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/08/31(金) 20:19:13 ID:4B65lNPf
 いつも通りの放課後、遼君は私に昨日の強盗騒ぎのことを話した。

「てな訳で、俺の華麗なアクションで強盗を撃退したんすよ!!」

 彼は少し興奮気味でそのことを私に話した。

「ふ〜ん……」

 感心したような態度を見せてから

「嘘でしょ?」

 そう言ってみる。

「な、嘘じゃないっすよ〜。まあ、多少の脚色はしてますけど……」

 遼君はそう焦る。その姿が面白くて私は笑った。

「コンビニ強盗の件なら私も今朝クラスの子に聞いたよ。お疲れ様〜」
「知ってたんじゃないっすか〜!!」

 ―――私は遼君が、好きだ。

いつから好きになったのかは、はっきりとは覚えていない。気付いたら、彼に強く惹か
れている自分がいた。

遼君は素直で、面白くて、そして優しい。

 だからこうやって彼と過ごすこの時間は、私の生活で一番大切なかけがえのない時間な
のだ。他の人から見ると下らなくて無益な時間に見えるかもしれないけれど、私にとって
は何よりも大事なものなのだ。
33『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/08/31(金) 20:20:50 ID:46e0L8Ld
「……ですから、ここの訳は、『この泥棒猫!』ということになります。」
「なんなの?あの女?転校するやいなや、自己紹介で愛の告白?しかも翔に?ありえないわよ。」
 四時間目、英語の授業。すでに昼前だというのに、翔子はずっとこんなテンションだ。理由は当然、衝撃の転校生、皆川静流。俺の従姉妹らしいが、まったく記憶にない。
親族関係なんて、自分の親以外に接したことはないはずだ。 でも、先生が従姉妹だっていたんだし、本当なのかも。
「えー、では次、この単語は、『genocide』ですね。はい、リピートアフタミー。」
「しかも休み時間になるたび翔に近付いたりして。ああいうのがストーカーになったりするのよね。ま、運悪く翔は休み時間は毎回トイレに行ってたけどねっ!」
 せっかくの俺の心のオアシス、風子先生の授業が集中できない。このかわいい声に癒されるのを毎週楽しみにしてるのに。
『翔子 うるさい』
「だめよっ!私のこの怒りは、決して消えることは……」
『だまらないと 今日はもうくちきかないよ』
「……………」
 ふふふ、かわいいやつめ。
34愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/08/31(金) 20:21:07 ID:4B65lNPf
 彼も、遼君もそう思っていてくれていることを、私は願っている。

「あれ? 遼君、その上着どうしたの」

 彼の制服の上着の左腕の部分に、とても雑で、糸のほつれの酷い縫い目を見つけた。

「ああ、これっすか……昨日の強盗にね」

 苦笑いしながら遼君はそう答えた。

「だ、大丈夫!? 痛くないの!?」

 強盗と戦ったときに怪我をしたなんて話は、クラスメイトからも、もちろん彼からも聞
いていなかった。

「え、ええ。まあ、かすり傷っすから」
「そう、よかった………」

 それを聞いて安心してから、自分が明らかに取り乱していたことに気付いた。恥ずかし
くて、顔が赤くなりそうだった。

「それで、自分で縫ったんですけど………あんまり上手くいかなくて」

 またしても苦笑。私は彼のこういう仕草もたまらなく好きだったりする。
35『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/08/31(金) 20:22:07 ID:46e0L8Ld
 時はついに昼休み。授業間の休みはトイレにいて凌げたが、さすがにこれはそうもいかない。ああっ、ほらっ!懸命に話しかけようとする圭太を無視して……
「翔さん、昼休みです。案内ついでに食堂でお昼ご飯にしましょう。」
 ギュム
 何のためらいもなく、俺の手を握り、グイグイと引っ張る。
 ゴゴゴゴゴ………
「………」
 翔子の怒りが、顔を見なくても分かる。ただ、さっきの言いつけを素直に守っているため、無言のまま自分の手の甲を抓っている。
 翔子による激痛と、静流ちゃんの暖かく、柔らかい感覚に涙が出そうだ。だめだ、このまま食堂に行ったら胃潰瘍になる。誰か……ヘルプッ!
「………」
「………」
 ふと顔をあげると、捨てられた老犬のような目をした圭太と目が合った。……全然かわいくねぇ。
「け、けいたも、一緒に……」
「えっと、そこの方。いつまでぼーっと立ってるんですか?邪魔、なんですけど。」
「ウワアァァァァン!ちくしょーー!!!」
 哀れ、圭太。静流ちゃんに一蹴され、泣きながら教室を飛び出ていった。
「さ、邪魔ものも……一応、いなくなったので、早く食堂に行きましょう。」
36『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/08/31(金) 20:22:52 ID:46e0L8Ld
 場所は移って食堂。我が校の食堂のスタンスは、『おふくろの味』らしい。いかにも『おふくろっ!』と言った感じのおばちゃんが厨房を仕切っている。
「さ、翔さんは何を食べますか?カレー?カツ丼?それともわ…」
「素うどん。安いから。」
「そうですか。では、私も。」
 そう言って彼女はお金を入れ、食券を二枚買いテキパキとうどんを受け取る。かなり手慣れてる辺り、前の学校も食堂があったのだろうか。などと考えているうちに、片方のうどんを俺に渡す。
「これぐらい自分で買うよ。はい、お金。」
「いえ、いいんですよ。再会できたお祝いです。安いですけど、気持ちはいっぱいですから」
「あぁ、うん。ありがと。」
 俺のお金を持った手をそっと包む。ああ、やっぱり暖かい……と同時に、やっぱり激痛。さっきから抓りっ放しの手を、更に爪を立てる。
「ふふふ、おいしいですか?そんな女に奢ってもらった素・う・ど・ん・わぁ〜〜〜?」
 んにゃろう。俺が言い返せないからって調子に乗りやがって。今一度主従関係をはっきりとさせておくべきだな。
37『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/08/31(金) 20:24:58 ID:46e0L8Ld
「んんっ。」
 うどんを喉に詰まらせたふりをし、胸を、というか乳首をドンドンと叩く。当然その感覚は翔子にも伝わるわけで……
「ひぁぅっ!」
 突然のことに可愛らしい悲鳴をあげる。ふふ、これが男と女の違いだ。気持ちよかろう!……が!
「あ、ふるぅぅ。」
 その快感もまた、反射して俺に伝わり、おもわず変な声をあげてしまう。
「…………」
 そんな俺の様子を、静流ちゃんは怒ったような目で見ていた。
「あ、はは……え、と…素うどん、おいしいな。」
「無味、ですけどね。」
 そんな雰囲気で、俺は青ざめ静流ちゃんは不機嫌、翔子は嬉し恥ずかしなまま、昼休みは過ぎていった。








「あ、もうこんな時間ですね。」
「ん?まだ授業までには時間あるよ。」
 食休み中、急に静流ちゃんが立上がり、そんなことを言う。
「いえ、今日は引っ越しの関係で、早退するんです。ごめんなさい。なんだか慌ただしくて。」
「いや、別に構わないけど……じゃあ、また明日。」
「ええ、そうですね。また今度……」
 すると、彼女は突然、俺耳元に近付き……
「……今度ふたりきりで食べましょうね。」
 そう、囁いた。
38『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46 :2007/08/31(金) 20:26:16 ID:46e0L8Ld
以上です。
それと>>1乙です!
39名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 20:26:17 ID:3RzPBJsQ
あのー、リロードしてみてはいかがでしょうか?
40名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 20:30:33 ID:46e0L8Ld
うわorz
本当に申し訳ない…
41名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 20:30:33 ID:UIRkW6wa
なにやらすごいことになってますね・・・
42名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 20:31:01 ID:/gv6+xZe
これは何というサンドイッチ…
一回投下した時点で気付くだろ、普通…
ちょっとマナー悪いんでないかい?
43愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/08/31(金) 20:31:13 ID:4B65lNPf
何かタイミング被っちゃって申し訳ないです。

>>34の続きから行きます
44名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 20:31:46 ID:NtxgvQbZ
長吹いたwwwwwお二方GJ!!
45愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/08/31(金) 20:32:07 ID:4B65lNPf
「貸して……」
「え?」
「直してあげるから、ほら」

 もうちょっと優しい言い方でも良かったかもしれないと、言ってから後悔した。

「裁縫セットがあったはずだから」

 ここの放送室には色々なものが置いてある。裁縫セットの他にも、大量の割り箸だとか、
ビンゴゲームに使うカード、ギターの弦、調理道具一式、星座早見盤……etc.とまあ役に立
つものから立たないものまでいろいろなものが揃っている。恐らく卒業生たちが置き忘れ
ていったものだろう。

 裁縫セットはすぐに見つかった。

「ほら、早く脱いで」
「あ、はい」

 遼君から上着を受け取る。受け取った上着には彼の体温がまだ残っていて、私の鼓動は
少し速くなった。

 手早く上着の縫い目を直して、遼君に上着を返した。
46愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/08/31(金) 20:33:05 ID:4B65lNPf
「どうもありがとうございました!!」

 そう言って遼君は頭を下げた。こうやって素直なのも彼のいいところだ。
「どーいたしましてー」

 わざとそっけない態度で言ってしまう。ここが私の素直じゃないところ。分かってるけ
ど直せない。これはもうどうしようもない。

「いや〜、だけど先輩って器用っすね〜。ホントに何でも出来る」

 そんなことはない。好きな男の子に自分の気持ちを素直に伝えることも出来ない不器用
で臆病な人間。それが自分。

「そんなに褒めたって何にもでないよ」

 それでも、彼といるときは他の人といるときに比べて、素の自分でいられると思う。気
兼ねもなく、楽で、心地いい。

「え、そうなんすか? 損したなあ〜」
「全くも〜」

 出来ればもう一歩先に踏み込みたい。だけど、その勇気が私にはない。今の関係を壊す
のが怖い。ああ何だかこの思考はホントに『恋する女の子』みたいだ。実際恋をしている
から間違いじゃないんだけど、何故か滑稽に聞こえてしまう。そんなことを考えながら、
私は遼君をみて微笑んだ。
47愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/08/31(金) 20:34:56 ID:4B65lNPf
以上で今回分終了です。
嫉妬成分はもうちょい先になりそうです。
定期的に投下できたらいいなと思ってます。
48名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 20:56:46 ID:iktFNkA9
お二人ともGJ!
49名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 22:32:52 ID:XMr91aso
2つのSSが組んずほぐれつ、
これこそ正に修羅場!
50名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 22:52:31 ID:RvEiDdPM
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm954863

↑に匹敵するような血縁関係のSSを求めるわけだがww
51名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 01:14:15 ID:oUAA+kIC
>>50
何だ。誠って良いやつだったんだ。
52名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 01:30:40 ID:6h9E3pxL
>>50
SSスレにまで張るなよニコ厨。オーバーフロースレにでも行ってかまってもらえ。
53名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 01:39:56 ID:BfAXEZYZ
あっ、やべぇ
俺、愛しさと心の壁が好きだ
54名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 04:52:37 ID:7hvj0a0V
阿修羅氏乙。
仕事速いなw
55名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 07:38:10 ID:0FnQSYeu
吉里吉里とか使って修羅場ゲー作りたいんだが…そういうのって過去にあった?
本スレでやるべきかな?
56名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 11:25:24 ID:fB6fNt30
てか、まとめに過去に作った嫉妬サウンドノベルはあるが
吉里吉里は知らんな
57名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 14:57:32 ID:5GatkVX3
管理人さん乙です
58名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 15:09:57 ID:KBFY1/3s
59名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 15:18:27 ID:BfAXEZYZ
ちょうどそのスレチェックしてて吹いたwwww
60名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 16:11:52 ID:5GatkVX3
それとwktk
61名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 20:04:41 ID:MQDDtqjg
>>55
ttp://www30.atwiki.jp/yandere/pages/1.html

皆知ってるか…てかそもそもここで出していいものじゃなかったか…
ごめんね!>>55君ごめんなさい!許して!ちゃんと監禁してあげ(ry
62名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 20:15:07 ID:A9Yd++0C
一応言っておくけれど、>>61はこのスレとは関係ない企画な。
63名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 20:36:15 ID:zsGoQyq7
しかし、サウンドノベルをやりたいと思っても
シナリオを一人で書くのは無謀だ

文庫2−3冊書くには1年はかかるw
64名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 20:40:44 ID:0FnQSYeu
>>56SSをサウンドのベルにしたのじゃなくて、分岐とかもあるのがしたい
>>61ヤンデレと修羅場は似て非なるものだったんだよ!!な、なんだってー(ry
ぶっちゃけた話>>61みて修羅場スレ住民とこんなことしたいなーって思ったんだけどね。
住民のかぶりはどれくらい?ここ見てる人で関わってる人いる?
65名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 20:44:24 ID:q3Krs93c
少しスレ違い板違いな気も…
ゲーム製作系の板に行ったら?
66名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 20:48:38 ID:A9Yd++0C
>>64

ん?
分岐ならあったぜ。
しかも、二週目から別エンド選択可能とか。
67名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 21:05:40 ID:0FnQSYeu
>>66マジか。凝ってるな〜。そんな感じでやりたい。
>>65ゲーム制作っていうと…同人ゲーム板とか?前回の時はどうだったんだろう…ゲームも「エロパロ」にはかわりないきもするが
他板にたててもまとめに載せてもらえれば人は来ると思うんだが…
このスレってage進行でいいんだっけ?
68名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 21:09:36 ID:fVy1tUPr
>>66
それってWaldだよな?
まだまとめからダウンロードできるんじゃないか?
未プレイの人達はやってみるよろし。
69名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 21:13:32 ID:fVy1tUPr
>>67
>前回の時はどうだったんだろう…
個人で制作した神がうpろだにうpしてそれをここに告知した
70名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 21:15:33 ID:q3Krs93c
>>1
>醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSSを扱うスレです。

ゲームを作るスレではない。
前の例もここで作ったわけではない。
ここは君に都合の良い人材を集めるスレではない。
ゲ製作でも同人ゲームでもvipでも好きなところでやればいい。
71名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 21:20:14 ID:A9Yd++0C
え、ID:0FnQSYeuってノベルゲーの投下宣言しに来ただけじゃないの?
72名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 21:24:52 ID:q3Krs93c
ああ、投下宣言なら大歓迎。
是非ともID:0FnQSYeuの渾身の嫉妬ゲーをうpってくれ。
楽しみに待ってる。
73名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 21:26:49 ID:zsGoQyq7
てか、ゲーム製作の技術を相談するのはスレ外

まだ、神が修羅場スレで投稿したサウンドノベルを作りますよ
は合法だな。作ってくれたら、うpすれば。もちろん、プレイする。

それにしても、このスレにはいろんな神々がいるんだから
マジでサウンドノベルゲームとか作れそうじゃないの?
74名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 21:26:52 ID:iUvfqNoI
まあ荒れる前にこの話題は流して投下を待機待機
75名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 21:50:29 ID:0FnQSYeu
ゲーム案は皆殺しの怨念…とか反対派は住民をとられることをおそれたこのスレ…とか考えちゃう俺は末期
76名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 22:12:25 ID:A9Yd++0C
ああ、そうなんだ。

末期?大変だね。

じゃあ直ぐにでも精神科のある病院に通った方が良いんじゃないの?
77名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 22:20:31 ID:R537a7Vj
とりあえずageるなとだけ言いたい
78名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 22:27:38 ID:0FnQSYeu
あ…俺ageてるから荒らしだと思われたのか…すまんかった
79「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/01(土) 22:49:48 ID:q56844yO
投下します。
80「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/01(土) 22:50:28 ID:q56844yO
+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +



「………もし、サンドロ様?」
「何だユエ、今書状の文面を考えてるからあまり声を掛けないでくれ」

 国王、伯爵間での確執を元に起きたクーデター、それを利用したヒラサカによるジウの侵略終了から
間も無く。戦後処理も滞りなく済み吸収した旧ジウ領の城内に置かれた、私の私室。
 今後のジウ統治についての相談という建前の下、何故ウォーレーン城の様に自分と同室でないのか、
と憤って入って来たユエは、机に向かい他方への報告文を書いている私とは別に、室内に居た先客の姿
を目にしてその場で若干硬直した。

「その娘、…ええ、護衛のタルワールでしたか。………そこで一体、何をしているのですか?」
「……」

 名前を呼ばれ、私のベッドの上で一人寝そべり寛いでいたタルワールがぴくりと反応するが、声が自
分ではなくこちらへ宛てたものだとわかり頭を再び枕に沈める。じきに軽く頬擦りをし始めたそれは、
勿論私の普段使っている物。
 その光景を視界の端に捉えたか、背後で微かに息を飲む音がする。

 …デジャヴだな。

「部屋は用意してあるが、こいつには一応ここへ自由に出入りする許可を出してある。邪魔になるので
寝る時などは帰ってもらうがな」

 椅子をずらし、ユエの方へと振り返ってそう言った。もっとも、離れてしまっては護衛の意味が無い
ので部屋割りはここのすぐ隣、有事に備え何時でも呼び出せるようになっているのだが。

「………あ、あら……そう、なのですか。それは良かったですわね、貴女」
「……」

 こくこく

 今度は自分に向けられた言葉と判断して、タルワールが無言のまま二度頷く。大きめに広げた扇子で
口元を隠し、何とか余裕の態度を保っているものの、それに対してユエが今どの様な表情をしているか
は想像に難くない。

「では申し訳有りませんが、サンドロ様はこれからわたくしと大事なお話をしなければなりませんので
、その間は少し席を外して下さいな?」
「……」

 ちらり

「そう言うことだ、少し外で訓練でもしてこい。こっちは大丈夫だから」
「…うん」

 一瞬こちらへと指示を仰いだ護衛の少女は、私が促すと素直にベッドから降り、そのままユエの横を
すり抜けてぺたぺたと退室して行った。

 ……良し、合格。

 内心で、深く満足の笑みを浮かべる。それから足音がしなくなり、タルワールの気配も完全に消える
までたっぷりと待ち、

「………ずるい」
「まあ一つ落ち着けユ」
「ず〜〜る〜〜い〜〜〜!!!」
81「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/01(土) 22:52:00 ID:q56844yO
 大人としての体裁を取っていたユエが、とうとう爆発した。

「ずるいずるいずるいずるい! なんであの娘が良くてわたくしが駄目なの!? ずっと会えなかった
のに! 用が無ければ部屋に入れもしないのにっ!!」

 ばたばたばたっ

 これはまた、いきなり飛ばしてるな…。

 持っていた扇子をいきなりこちらに投げ付け、近くの手頃な家具を、手当たり次第に掴んで振り回し
ては落としていく。これ程の子供っぽい荒れ様は、列島時代からも久しく目にしていない。
 だがそれは、過去の行いを省みた自制心の裏返しとも取れる。もし一昔前までのユエであったなら、
あの場か、あるいは私が知らせた時点で即座にタルワールを始末しに掛かった筈だ。

「ばかばかばかぁ! ちょっと許してあげたらいつの間にかすぐに別の女を連れて来て! おまけに部
屋を自由に出入りなんて!! 信じられない、久景様の浮気者っ!!」

 ポカ、ポカポカポカッ!

 当たる物が無くなったユエが私の胸に飛び込み押し倒して、しかし力はわざと弱めに抑えて叩いてく
る。本気で私を怒らせ、自分の存在が無視されるのを恐れるが為の手加減。

「うぅ、うっうぅ……」

 ともすれば打算的にも思える姿はその実、かつて私が彼女に願って止まなかった理想の形。例え表面
上のみだとしても、聞き分けの良い女をきっちり演じてくれれば構わないのだ。

「な、なんでっ! ぐずっ…、どうじでぇ!? いつも、いつも!!」

 胸中の不満をここぞとばかりにぶつけてくるユエは、既に顔も声も涙でボロボロの有様。
 そうと考えれば、ようやくこちらの思いに応える成長を見せてくれた彼女に対し、仄かな感慨深さと
愛しさが湧き上がってくる。

「……ぁっ」
「以前の様に暴走したら今度こそ離れるつもりだったが、良く我慢出来たな、ユエ」

 だから、在りし日の様にユエを、自らの両手でそっと抱き締めてやった。

「……たっ…ためしてた…の、ですか?」
「ああ、前よりちゃんと大人になってて安心した。これなら例え他に女官を置くとしても問題は無いだ
ろう。」
「ぅっ…ふぇ、ふぇええぇぇえん!! ばか! ひとでなし!!」

 慈しむよう、労うようにと頭や背中を優しく撫でさすってやる。私の膝の上で幼児に戻った風に、恥
も外聞も無く泣き喚く彼女を抱え、そうして心の中に浮かぶ達成感。
 公を濁さずスマートに、向こうから離れられなくさせ、自らの掌で望むままに支配する快楽がここに
ある。
 今までも度々、様々な形で折り合いを付けてきた。脳裏の奥底に根付く、他者を従わせたい思いから
来る子供じみた征服欲。

「そう言うな、折角頑張ってくれたんだ。たまにはお前の好きな事をしてやろう」
「ぇえぇ……ふぇ、ぇえ? …え?」

 気紛れに放ったそのたった一言で、戸惑いながらもやはりぴたりと泣き止むユエ。そんな人間の持つ
現金な本能が、私は堪らなく好きだった。
82「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/01(土) 22:52:39 ID:q56844yO
「うっく……ほんとうですかぁ? うそでは、ないですよね?」
「私に出来る限りは付き合ってやる」
「〜〜〜〜〜」

 同じ涙でも、先程までと打って変わった喜びも露わな表情で、ユエはいきなりこちらの唇に吸い付い
てくる。背に回された両腕は締め付けも全力になって、何があっても離さないと言わんばかり。

 こればかりは、多分死ぬまで止められそうも無いな。



 如かして、その日の夜。私の部屋にて。

「は〜い、旦那様の大好きなお刺身ですよ、あ〜〜ん♪」
「……あーーん」

 ひょい、ぱく

「こちらの煮物も自信作です。はい、あ〜〜ん♪」
「……あーーん」

 ひょい、ぱく、ひょい、ぱく

 今、私は心の底から戦慄していた。問題点は色々とあるが、何が一番恐ろしいかと言えば、

 子供相手にするならまだしも、いい歳した男が間抜けに口を広げてあーん、て……。

 何たる屈辱。こんな事をしている自分が少し信じられない。
 あの後、ユエが私に一通り甘え倒してから最後の締めにふと呟いたのが、今晩の食事をここで共でし
よう、という願い出。
 丁度気を良くしていた私は特に考えもせず、どうせ列島に居た頃と変わらない、いつも通りの食卓に
違いないと、二つ返事で了承。
 思えばそこでもう少し具体的に聞いておけば良かったのだろう。…そう、主に料理の食べ方等を。

「はい旦那様、あ〜〜ん♪」

 ひょい

「なあユエ、私が悪かった。悪かったからこれだけはも……あーーん」

 ぱく

 隣に座るユエが甘い声を出しながら、炊いた米を箸で摘まみこちらへ寄せる。いい加減精神が限界を
迎える頃合、いよいよ私が許しを請おうとするが、口元までやって来た食べ物とその場の空気を前に、
律儀にもつい飯事に付き合ってしまう。
 見事に純和風で揃えられた料理でテーブルを覆い、私とユエ、二人きりの晩餐。

「……」

 と、少なくともユエはそう認識している筈。おそらく今の彼女には、目の前で俄かに敵意を醸し出す
少女の姿すら、路傍の石程度にも思っていない。

「なに…してるの」

 ドアを開け立ち尽くすタルワールの表情は、化石の如く動かないまま。例えるならば、夕飯時に家へ
戻ると父親が愛人と仲睦まじくしている現場を目撃した娘のする様な、そんな顔だった。
83「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/01(土) 22:53:15 ID:q56844yO
「食事だ。多少、家庭的な、……ぱく」
「どうでしょう? 御口に合いましたか?」
「ああ、美味い」

 開き直ったか、闖入者の存在を一顧だにしないユエに料理を食べさせられながら、私はどうしたもの
かと考える。

「……アレク」

 常の無表情とは微妙に意味合いの異なる、言わば硬直に似た状態。極僅かに開かれた瞳から窺える感
情を表すなら、動揺か驚愕のどちらかだろう。

 この時間まで帰って来なかったというと、ゴースがまた気を利かせたか。

 いっそ勢いに任せ、一息に終わらせていれば鉢合わせる事も無かったに違いない。もっとも、そもそ
もこの食事の主導権がユエにあるので、急ごうにも急げないのが現状ではあるのだが。

「まだなら、お前も食べるか?」
「……」

 こくり

 駄目元で誘ってみると、意外にもタルワールは頷き食卓に着いた。ゴースが足止めしてくれていたの
なら、てっきり何処か穴場の料理店にでも連れていたのではと思っていたが。

 とすん

 ………げ。

 自らの手前にある椅子を悉く無視し、わざわざテーブルをぐるりと回って、私の隣へ。

「…………あら」

 そこで、ようやくタルワールに気付いたと言わんばかりの態度で、それまで機嫌良く箸を運んでいた
ユエが動きを止め、こちらを見つめる。それに対し、さり気ない目配せで謝罪の意と、流れに合わせて
くれるよう頼んだが。

「あら、まあ……うふふ」
「……」

 これは、絶対に通じてないだろ―――

 左右から私を挟み、方や不気味な微笑を浮かべたユエ、方や強張ったままな表情のタルワール。二人
の視線が肉眼で捉えられないものを伴い、しばし空中でぶつかり合う。

「…おい、おい。ユエ、タルワール」
「…………」
「…………」

 聞いちゃいない。

 結果オーライ、とは言えんだろうな。…私もまだまだか。

 今回は、調子に乗って少しばかりサービスが過ぎた。
 いつ如何なる時であろうとも、金と女に油断してはならない。自らの些細な失敗を通じ、過去に得た
教訓を改めて心に刻む。

「もう良いなら勝手に食べるぞ、私は」

 後に起こるであろう諸々の面倒事に備え、とりあえず空腹だけは満たしておく事にした。
84「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/01(土) 22:56:07 ID:q56844yO
投下終了、今回は戦争関係無しの嫉妬スレらしい一コマ。
高校の時にクラスで喧嘩なんかが起きても、近くに居る人ほど割と
冷静になって弁当を食べていたような気がします。
85名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 23:06:43 ID:PkazIymr
GJ。ユエかわええなww病んでないストレートな依存。
86名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 23:18:25 ID:KAq2uz2c
>>84
GJ!!
ついに修羅場ktkr!!
87名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 23:24:33 ID:+dC2ecUc
タルワールはむしろ養子にすればいいんだよ!
88名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 23:46:16 ID:iUvfqNoI
かわいらしい修羅場も、これはこれでまたとても愛おしく思えるものざんすね
89名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 00:16:42 ID:lxwshViY
こんな、なんてことない日常のひとコマがとても
嬉しいのは修羅場スレ住人失格なんだろうか・・・
90名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 00:27:08 ID:3anljlXm
>>いつ如何なる時であろうとも、金と女に油断してはならない。自らの些細な失敗を通じ、過去に得た
教訓を改めて心に刻む。
この教訓が生かされることは未来永劫無さそうだなw
91名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 00:32:09 ID:Vat9DXuc
>>84
GJ!!
こういう気丈なヒロインが主人公の前でだけ幼くなるっていうのは大好物ですぜ
タルワールもボチボチ嫉妬心が出てきたみたいでこれからに期待してます
92名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 01:18:16 ID:Lgm5n47h
GJ!
いつかこの三人が親子になったりしないかな…。
家庭内修羅場ktkr!
93名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 03:50:38 ID:YLHWhEuC
GJ!!!!
征服欲ゆえに修羅場と嫉妬を飼い慣らそうとしてしまうサンドロの人生が常に修羅場と嫉妬を背負う事になるのは当然か
94名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 09:16:02 ID:Y6N3hJuT
GJだサンドロw

なんだろう

SS見てて思うのだが、大抵の主人公は女の気持ちを受け止めようとするが、重すぎて抱えられず、困惑し対処に失敗してるよな
サンドロはそういう状態を避けようと、ある程度距離を取ろうとするが、なんとか途中まではうまく行くが、どうしても最後うまくいかず、女にやられてしまうタイプなきがする
95名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 10:36:05 ID:J9g2A5j7
>>84
GJ!!!!!!!!!!
サンドロww頑張れwwww
96名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 11:26:20 ID:aPlxR47w
タルワール喰っちゃって欲しい
97名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 12:56:44 ID:Z2S6cIvg
とうとうタルワールも嫉妬フラグが立ったな・・・
今の内からwktkが止まらねぇ!
98名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 13:20:15 ID:VseT1VR8
       ,-、             ,.-、
     ./:::::\          /::::::ヽ
    /::::::::::::;ゝ--──-- 、._/::::::::::::::|
    /,.-‐''"´          \:::::::::::|
  /                ヽ、::::|
 /                   ヽ|
 l                         l
. |    ●                 |
 l  , , ,           ●      l   ぶって
 ` 、      (__人__丿    、、、   /     ぶって
   `ー 、__               /
       /`'''ー‐‐──‐‐‐┬'''""´
       /,          |
      (_/          |  |
        ,         ヽ、_)   ∩
       l           |\  ノ |    
 .       |    ヘ      |`ヽ二 ノ
 .        |   /  \    /
99名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 19:29:38 ID:dMTAoq5q
それなんて某政治家ネタwwww
100名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 21:27:34 ID:lxwshViY
>>98
どうでもいいけどなんか萌えたw
101名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 22:40:02 ID:ckumbl/I
>>98
俺には打てねぇorz
102名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 23:32:58 ID:wHMSXqAi
>>84
タルワールとユエの絡みキタ-(n‘∀‘)ηGJ!!

さて、、whichコーイー
103名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 06:19:23 ID:0WRAU9DC
男の嫉妬に萌えてしまった俺はダメな人です…orz
104名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 07:40:51 ID:6bdBmJbj
kwsk
105名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 14:38:17 ID:2rAxs1GA
ショタの嫉妬ならいいんだけど。
106名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 15:17:03 ID:0WRAU9DC
>>104
親友だった男女がやっちまって、でも実は女には恋人がいて
誠実な男は自分を責めて諦めようとするんだが
ふとした事で自分が女に惚れてると気付いてしまう、と。
修羅場とかはあまりなかったが
独占欲と相手を想う気持ちの間で揺れる男に、なんか萌えた。
スレ違いですねごめんなさい。
107名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 16:56:52 ID:O4P0d68P
>>103
別にダメじゃないけどいちいち書き込むなよ
108名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 19:40:13 ID:fJ3LGtTB
幼稚園児の女の子の嫉妬とかもいいよな
子供らしい可愛いヤキモチとかじゃなくて、異常なまでの独占欲っぷりとか
自分の好きな幼稚園の男先生が女先生と仲良くしてるのを影で見ていて
大人顔負けの恐ろしい形相しながら、お気に入りの人形をグチャグチャにするとか
男先生が他の女の子と遊んでて、お絵かきの時間にその女の子の残虐な死体描いたり


どう考えてもロリコンです、本当にありがとうございました
109名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 20:31:05 ID:wUtI0zCI
バカだ、こいつ
ロリコンって2回も言ったぞ
110名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 21:16:35 ID:bFuutLRE
バカだ、こいつ
どこでロリコンって2回言ったんだ?
111名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 21:33:00 ID:XGNG2sJ/
>>108>>109は同一人物なんだよ
112名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 21:33:45 ID:3m0+e0ki
バカだ、こいつ
って言いたかっただけなんだから置いとこうぜ
113名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 22:52:12 ID:6bdBmJbj
どう考えても荒らしです
本当にありがとうございました
114名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 00:41:14 ID:U80vOHX+
wktk
115名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 16:18:14 ID:U80vOHX+
wtkk
116名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 18:05:53 ID:bTxyvc1E
寂れてるー
117名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 18:27:16 ID:KPFzGetG
みんな修羅場で忙しいんだろ
羨ましいぜ、まったく
118名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 18:31:07 ID:bTxyvc1E
毎日、鋸で女性の首が飛ぶのか
なんてうらyましい
119名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 22:40:18 ID:P2HN+YP3
>>108
可愛い嫉妬なら毎日のように見れるのにな。
120名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 00:42:48 ID:bIVAk/48
>>118
結果じゃない、過程が大事なんだ
猟奇が好きなんじゃない、可愛い女の子が嫉妬に狂うのが好きなんだ
121名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 01:22:01 ID:hSFmyzKO
そういえばタランチュラの話が保管庫に収録されてないけど、
どうなったの?
122名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 04:19:53 ID:g5th2B77
wktk
123名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 09:54:27 ID:V1RXBnjM
>>121
まぁ普通に入れ忘れだと思うよ。
スレ番号とレス番号を教えれば入れてくれると思う
124名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 13:15:05 ID:wqM1kF7v
なんかアニメのスクイズって原作よりヤバくなってないか?
毎週m(ryの最低っぶりと修羅場が加速してるwww
125名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 19:09:10 ID:V1RXBnjM
それがいいんじゃないか
126名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 20:46:37 ID:DiGYr5Ua
しかし、言葉様のあの一途さに比べて、このSSのヒロイン共は
一途さが足りないんじゃないの?
127名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 20:48:57 ID:AC4RQSBj
【審議中】
      _,.ヒXナ,、
 ( (  ,'´/~⌒^ヽ
    ( ll( ノハノ) )
     (リ( ゚ ヮ゚ノ∩
     (,,)つ()<iソ
     ,'´ソW厄ヽ  ) )
     `(ノ"i_ツ"´
128名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 20:50:13 ID:lTp64vaP
【審議継続中】

マーマー ∧,,∧  ∧,,∧オマエラヤメ
 ∧∧(´・ω・)(・ω・`)∧∧
(´・ω・)  U) (U とノ(ω・` )ケンカイクナイ
|し U∧∧    ∧∧と ノ
 u-u( ・ω・)=つ);:)ω・`)  
    (っ ≡つ=つ⊂⊂) 
    ( /∪ バババ∪ ̄\_)
     オラオラ!!
129名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 21:03:59 ID:rzdDnoVX

【審議中】
    |∧∧|       (( ) )(( ) ) ((⌒ )
 __(;゚Д゚)___    (( ) )((⌒ ) (( ) )
 |⊂l>>126 l⊃ |     ノ火.,、 ノ人.,  、ノ人.,、
  ̄ ̄|.|.  .|| ̄ ̄    γノ)::)γノ)::) γノ)::) 
    |.|=.=.||       ゝ人ノ ゝ火ノ  ゝ人ノ
    |∪∪|        ||∧,,∧|| ∧,,∧ ||  ボォオ
    |    |      ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
    |    |      ( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
   ~~~~~~~~     | U (  ´・) (・`  ). .と ノ
              u-u (    ) (   ノ u-u
                  `u-u'. `u-u'
130名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 21:10:07 ID:rNr1R1pB
-----------------┐┌---------------------------┐┌--------------
LIVE    【審議中】| | LIVE           【審議中】| |LIVE:::::::::::::【審議中】
  ∧,,∧        | | ∧,,∧          ∧,,∧   .| |::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 (・ω・`)∧,,∧  ∧ | | ´・ω) ∧,,∧  ∧,,∧(・ω・`    | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 ∧∧ (´・ω・)∧,,∧| |  ∧,,∧´・ω・)(・ω・`∧,,∧    .| |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヘ⌒
( ´・ω)∧,,_∧(  ´・ | | ( ´・ω) つと  |  U (・ω・`)   | |   .ヘ⌒ヘ  (´・ω・
.U   (´・ω・`)    | | (  ´・) / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ(・`  )  | |  (´・ω・`) ,ノノ川川
     (    )    | | (  ´・)/ 旦     旦 丶(・`  .| |  ノノ川川レ
      埼玉支部 | |      旦       旦NY支部 | |     火星支部
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                      ∧,,∧ zZZ
   ∧∧  .∧,,∧  ∧,,∧    (´-ω-`)    ∧,,∧   ∧,,∧   ∧,,∧
  (ω・` ) (´・ω・) (・ω・`)  ___(____)___ (・ω・`) (´・ω・`) (´・ω・)
  (  U)  ( つと) (   )  E======ヨ  (  U)  ( つと)  (   )
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  議 長  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
/______________|        |_____________ヽ
 ∧∧ ∧∧            |        |  ∧,,∧  ∧,,∧  ∧,,∧
( ´・ω)(ω・` )  ∧,,∧ ∧,,∧  ∧,,∧     ( ´・ω) (ω・` ) (´・ω・)
| U |と   (´・ω・)(´・ω・`)(・ω・`)  (  ´・) ∧,,∧ (・`  ) ( ´・ω)
(  ´・)  (・`  )|   U) ( つと ∧,,∧U)    | U (    ) |と   (
131名無しさん@ピンキー :2007/09/05(水) 23:16:38 ID:AbxXPm16
【審議終了】
            ∧,,∧     ∧,,∧
    ∧ ∧    (    )    ( ・ω・)
   (ω・ )     (  U)     ( つ日ノ   ∧,,∧
   | U       u-u       u-u     ( uω)
    u-u                    (∩∩)

        ∧,,∧      ∩ ∧_∧ 審議結果
        (・ω・')    ⊂⌒( ・ω・) 「はいはいわろす」
       ⊂∪∪⊃      `ヽ_∩∩
132名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 23:49:35 ID:MnINOWTB
お前らの団結力に感動した
133名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 23:51:43 ID:kkRM/let
火星支部ってどこだよwwワロタww
134名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 01:36:18 ID:fmo5P3xA
ワロスwww
135名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 13:27:53 ID:a210eGOp
クァー
136名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 13:56:44 ID:UX3wkrGP
てか、1週間もSS投下がないなんて
黄金期が懐かしいのぅ
137名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 16:45:49 ID:sYfotAcT
今日の木曜洋画劇場は嫉妬関連だってさ
138名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 22:53:12 ID:wSjn/jyP
嵐の前の静けさ・・・
139名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 00:29:25 ID:rEcGOC2f
最近のスレ鎮静化は
埋めてさえもらえなかった37,5(皆殺し)ちゃんが
次々と住人をSATSUGAIしている
と妄想した。
あれ…こんな時間に誰か来たみたいだ?
ちょっと行ってくる。
140名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 02:10:38 ID:PEdv8nxI
このスレを愛して止まない住人なので、保守替わりに投下します(^-^)/
141狂った世界の誕生日:2007/09/07(金) 02:13:12 ID:PEdv8nxI
俺は今にも踊りだしそうな気分で帰途についている。
ふと油断すれば、にやけてしまいそうな顔を必死に抑えようとするものの、これからの事を考えるだけで叫びたくなる。
そう、年齢=彼女いない人生だった俺にもやっと春が来たんだ!!
誕生日が来るたびに妹から言われる嫌みの数々、例えば・・・。
「あらお兄ちゃん、今年も家族でお祝いですか?」
とか・・・。
酷い時は誕生日の朝、俺の顔を見るなり溜め息をつかれた事もあった。
確かに妹は可愛いと思う。
何度か仲介頼まれた事もあったし、兄の俺でさえドキッとした時が何度もある。
だけど、妹が付き合ってるとかいう噂は聞いたことがない。
そんな事考えているうちに家に着いたらしい。
鍵を取り出し、中に入ると玄関に妹がいた。
その様子からして、どうやら俺を待っていたのだと思う。
「お兄さん、早いお帰りですね。」
玄関に立っている妹は腰に手を当てて。
口の端がひくひくしている。
間違いなく怒っているのだろう。
「何してるんだ?そんなとこで。」
「な・・・」
顔に朱色が刺し、今度は青色に変わる。
器用なやつだ。
「ま、まぁ良いでしょう。」
コホンと少し咳をして間を置くと、俺をしっかりと見据えて続ける。
「問題です、今日は何日でしょう?」
「何日って・・・今日は8月8日・・・あっ!?」
あまりに嬉し過ぎて忘れていたらしい。
「我が家の決まり事は忘れてしまいましたか?お兄さん」
我が家の決まり事は数あるが、例外を除いて誕生日は可能な限り家族で祝うことなどが盛り込まれている。
「分かったのなら早く着替えて来なさい。」
「りょーかい。」
俺は服を着替える為に二階へと向かう事にした。
俺が着替えを済ませ、テーブルに着くとそこには普段以上に豪華な料理が陳列しており食欲が刺激される。
「うおお、豪華だなぁ・・・」
「当たり前です、私が作ったのだからこれぐらいは当然。」
「そういや親父達からは連絡あったのか?」
目の前に広がる料理にを堪能しながら尋ねる。
「はい、二人とも遅くなるそうです。」
「そか。」
あの二人はいつも帰りが遅いし、今更とやかく言うつもりはない。
そんな事を考えてると妹の顔が不意に勝ち誇った勝者みたいな顔になる。
そろそろか・・・。
「お兄さん、また今年も家族で誕生日祝いですね。」
きた!!!
今から話す事を聞くとこいつはどんな反応するか容易に想像できる。
きっと間抜けな顔しながら驚くのだろう。
142狂った世界の誕生日:2007/09/07(金) 02:17:53 ID:PEdv8nxI
「あ〜それなんだけどな、来年から大丈夫だ。」
「え・・・?」
箸を握っていた妹の手が大きく揺れると箸がその手から滑り落ちる。
「ど、どういうこと?」
バンと強くテーブルが叩かれ、皿が音を奏でた。
うむ、予想以上に動揺しているな。
「彼女が出来たんだ。」
妹は一際目を大きく開くと言いかけた言葉を飲み込むと、静かに顔を俯かせ、テーブルを見つめた。
「だから、来年からは心配する必要ないからな。」
これでやっと愚痴から解放される。
なんと素晴らしい誕生日なのだろうか!!
「・・・相手・・誰なの?」
依然顔は俯かせたままで、小さく呟く。
「あ、ああクラスメートの川島さんだよ」
「ぃゃ・・・」
「え?」
「いやあぁぁぁぁ!!」
子供の様に体を丸め耳を塞ぎながら叫び続ける。
普段の妹からは想像できない程の動揺ぶりに俺は内心焦っていた。
何が原因なんだ?
分からない。
とりあえず今は妹が先だ。
「おい、落ち着けって!!」
「お兄さんが取られる・・・いゃ、いやあああ!!!」
無理やり妹を立たせると、正気に戻ってくれる事を願いながら頬をビンタする。
乾いた音が鳴り響くと共に叫び声が止んだ。
俺は妹が元に戻ったか確認する為に瞳と瞳を合わせる。
恐怖・・・。
妹の瞳を見たとき直感でそう感じた。
いや、恐怖という言葉しか浮かばなかった。
男女共に魅了して止まないあの美しい瞳ではなく、濁った瞳。
そう、これは死んだ魚の濁った瞳に非常に酷似している。
その濁った瞳が俺を見つけるとニタリと笑う。
「ねぇお兄さん、お兄さんはずっと私と居たら良いのよ。」
妹の手が妖しく俺の頬を滑り唇辺りで動きを止める。
本来ならば嬉しい筈の行為なのだが、俺には死神が手を延ばしている様に感じてならない。
目の前に居るのは本当に妹なのだろうか?
「ひぃ・・・」
反射的に後ずさった俺は壁にぶつかり動きを阻まれる。
妹が一歩また一歩と俺に近寄る、本能は逃げろと警鐘を鳴らすのだが体が動かない。
やがて、目の前に妹背中に壁と完全に退路が絶たれた状態になった。
「お兄さんは騙されてるのよ。」
妹は必要以上に接近し、妹との距離が数ミリになる。
「ひっ・・・」
妹は濁った瞳のままニタリと笑いながら、太ももを俺の足にこすりつける様にして強く抱きつく。
143狂った世界の誕生日:2007/09/07(金) 02:21:11 ID:PEdv8nxI
双丘はいびつに形を変え妹から漂うシャンプーの匂いが否応無しに本能を刺激する。
「・離れ・・ろ」
「そっか、アイツが邪魔してるのね。」
妹は急に離れると、背中を向けながら続ける。
「私ね分かった事があるんだぁ。」
「・・なにが・・だ?」
余りにも日常から離れた恐怖に、気が遠くなりながらも堪えて聞き返す。
「私と兄さんの邪魔する雌猫はお掃除しないといけないよね?」
雌猫?掃除?
一体何を、言ってるんだ?
「それじゃ、行ってくるね。」
台所から出てきた妹の手には鈍い輝きを放つ包丁が握られていた。
「・・・何をするつもり・・なんだ?」
妹が笑った。
今までで見たことがない最上の笑いで、ただ一言だけ紡ぐ。
「お掃除よ、お 兄 さ ん 」
俺はただ妹の背中を見ている事しかできなかった。
やがて、妹の背中が視界から消え同時に俺は得体の知れない恐怖から解放された為か、気付けば涙を流していた。
誕生日、それは皮肉にも壊れた世界の始まりとなった。
きっと、俺はもう抜け出すことが出来ないだろう。
そう、それはまるでメビウスの輪みたいに・・・。
144名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 02:25:35 ID:PEdv8nxI
以上です、お目汚しすいません。。
暇つぶしにでも楽しまれたら幸いです。

「草」の作者様、いつも楽しみながら読んでます。
ゆえ可愛いよ、ゆえ(σ・∀・)σ
145名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 02:44:11 ID:s8gg/TFw
GJ!!!やっぱキモウトの嫉妬はいいねー
146名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 03:56:51 ID:rEcGOC2f
>>144
たいへんありがたいです。
乙です。
147優しさと愛しさの不協和音 ◆3t1YD77Mg6 :2007/09/07(金) 09:31:47 ID:QBLImUXW
久しぶりに投下します
ちなみにタイトルは苦しくて(仮)じゃなくて
以後「優しさと愛しさの不協和音」でおねがいします
148優しさと愛しさの不協和音3 ◆3t1YD77Mg6 :2007/09/07(金) 09:35:33 ID:QBLImUXW
ぼくがいて、かのじょがいて、かーさんがいて、とーさんがいて、おばさんがいて、おじさんがいて。

だけどあのひから、そうあの時から僕の世界は真っ暗になった。
前が見えなくて、昔に戻りたくて、母さんが恋しくて、
誰かに甘えたくて、だけど誰も傷つけたくなくて、僕はそんな世界に閉じこもってしまった。
「ゆーくんあそぼ?」
「ゆーくんごはんたべないとだめだよ?」
僕を心配する彼女の気持ちを軽く見て、誰にも僕の気持ちはわからないと決め付けて。

そしてとうとうある日、僕は決定的に彼女を傷つけてしまった。
その時になってやっと気づくのだ。
僕が母さんの事で苦しんでいたように、彼女も僕の事で苦しんでいたのだと。
まだ幼かった僕はそんな事にも気づけずに、ひたすら彼女を傷つけていた。
いや幼かったなんて言い訳にならない。
自分が傷ついていたからといって、誰かを傷つけていいはずがない。
そんなことに僕は初めて気づいた、いや気づかされた。

だから僕にとって彼女はひたすらに大切な存在なのだ。
149優しさと愛しさの不協和音3 ◆3t1YD77Mg6 :2007/09/07(金) 09:36:54 ID:QBLImUXW
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

小鳥がさえずり、目がまどろみ、頭がぼーっとする。
なんだか変な感じで目覚めてしまった。
窓の外はもう明るくて雲ひとつない晴れ晴れとした空だ。
いつもは朝が弱くて目覚ましも効かないから、直に起こしてもらっているというのに
今日はなぜか早起きしてしまった。
なんだか目の辺りに違和感を覚えて触れてみると、水滴がつく。

「涙?」

よく小説なんかで悲しい夢を見ると涙を流すシーンがあるが、僕は悲しい夢でも見たのだろうか?

わからない

ただ昨日の裕美が見せた寂しそうな笑顔が気になって、感傷的になってたのかもしれない。
僕にとって裕美は大切な人なのだ
それに嘘偽りなどない。

だから裕美がなぜ寂しそうにしてたのかはわからないが、僕にとっては気にかかることだったのだ。
だけど悲しいことに僕に他人の感情は掴めない。
考えを理解できない。
鈍いのだ、決定的に他人の感情に。
こういうときそういうのが恨めしい。
彼女の考えてることがわかれば、助けて上げられるというのに。
150優しさと愛しさの不協和音3 ◆3t1YD77Mg6 :2007/09/07(金) 09:37:35 ID:QBLImUXW

「兄さん?もう起きてたんだ?」

ふと考えにふけっていると、いつのまにか部屋の中に直がいた。
というか僕が一人で起きてることに驚いて、開いた口がふさがらない様子だ。
そんなに僕が一人で起きたことが信じられないのかと、少しショックを感じながらも
直に僕の感情を悟られないように、少し声を明るくしながらベッドから降りる。

「おはよう直。そんなこんなに晴れなのに今すぐ雨が降るなんていうような顔しないでよ。
 僕が起きてたことがそんなに珍しい?」

直も立ち直ったように見えて、まだまだ完全には立ち直れてないのだ。
こんなことで直を心配させてはいけない。

「うん。兄さんってこの世が終わっても一人じゃ起きれない気がしたから。」

なんか直が言うとそれ冗談に聞こえないぞ?
というか朝には弱いが、目覚めはいいほうだぞ僕。
というかなんでそんな残念そうな顔してるんですか直さん。
僕が起きてた事がそんなにショックだったんですか。
それって兄としての威厳を尽くつぶされる感じがするんですが。

「っとこんな事言ってる場合じゃないね。せっかく早く起きたんだし、余裕をもって学校に行こう。」

そういいながらまだ残念そうな顔をする直を半ば強制的に部屋の外に出すと、僕は着替え始めた。

151優しさと愛しさの不協和音3 ◆3t1YD77Mg6 :2007/09/07(金) 09:40:01 ID:QBLImUXW
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

教室に着くと、いつものように須藤が現れる。
それもいつものように呪いの言葉付で。

「よっ、優磨。憎いね色男。今日も美女二人を引き連れて登校ですか。」

とか大声で言ってくるのだ。
僕としてはたまったものではない。
そのたびに教室中の男子から憎しみと嫉妬が混じった視線を受けることになるし、
隣の裕美は裕美でなんか恥ずかしそうにするしで居心地が悪い。

というか裕美、そんな態度とられるととっても困るんですが。
なんだか僕が直と裕美に二股かけてるダメ男みたいじゃないか。
全く須藤じゃあるまいし、僕に二股する勇気もできるような顔も持ってない。
そんなことを思いながらも自分の席に着く。
須藤が僕の後ろの席なのが恨めしい。

まあ裕美については昨日の出来事だったのでいつものように心配していたのだが
家から出たとき、裕美が待っていてくれたのだがいつものような笑顔で

「おはよう、優磨君。」

と言ってくれたので安心したのだった。

やっぱり彼女は僕にとって大切な人だから、笑って隣にいてほしかったのだ。
とはいっても裕美は大切な幼馴染ではあるが、恋愛対象ではないし、
義妹の直についてはいわずもがなだ。
まさかいくら血がつながってない美人の義妹とはいえ、漫画や小説じゃあるまいし
恋愛対象になるはずがない。
152優しさと愛しさの不協和音3 ◆3t1YD77Mg6 :2007/09/07(金) 09:40:52 ID:QBLImUXW
全く須藤のやつ、僕の考えてることを見透かしてるくせにこういうとこ面倒なんだよな。
なんか昨日とか起きてすぐとか、須藤に相談でもしようかと実は悩んでいたのだが、
こいつにわざわざ餌を与える必要はない。
与えてしまったが最後また僕はクラスで針のムシロになるのだ。

というか僕こんなやつに相談しようとしたのがあってるのか心配になってきた。
須藤のやつ何を考えてるのかわからないくせに、時々妙に鋭いことを言って密かに尊敬したりするのだが、
そんなに鋭いのなら女の子の気持ちくらい気づけという話だ。
毎年のようにあんな悲劇にあっちゃ僕の身が持たない。
それともあいつ女の子の気持ちを知りながらもあえて受け流しているのか?
それならそれで幻滅する話だが、なんとも掴めないやつだ

それでも付き合っているのはあいつといるのが気楽なせいか。
クラスのみんなは用がないのにべらべらと世間話をし、放課後になると毎日のように街へ繰り出す。
それが悪いとは言わないが、いかにもうすっぺらすぎて僕にはあわない。
どうでもいいような周りと話すのは最低限にしたい。
もちろん大事な人である裕美や直や詩織さんや父さんとの何気ない日常は大切だ。
だけどそれをどうでもいいような他人に適用できるかといえば、僕には無理だ。
せいぜい世間話をして、笑顔で周りと合わせるだけ。

須藤もそこらへん同じなようで、みんなのまえでは僕を困らせてはいるが、基本的に僕個人には興味はない。
だから僕と須藤二人きりになると会話はない。
会話する必要がないほど仲がいい、以心伝心とか言葉がある。
だけれども僕と須藤の仲は逆だ。
会話しなくていいからこそ仲がいい。疲れないでいい。
だから僕と須藤が二人きりになってるところを見た人が言うには
「お前らの空間はいれねえ」「須藤君と弘瀬君ってあれなの?」「三角関係?ってもえるねー」
とかいわれてちょっと顔がひきつったことがある。
あれ以来あんま二人きりにはならないようにしてるが。
153優しさと愛しさの不協和音3 ◆3t1YD77Mg6 :2007/09/07(金) 09:41:33 ID:QBLImUXW
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

いつものように昼休みを裕美と直と須藤といっしょに屋上で食べた。
またいつものようになぜか裕美と直がかみ合わないのはちょっと諦めていた。
裕美が
「今日のも食べて」と箸であーんとしてくるし、
直はちょっと不機嫌な顔で
「兄さん」とか言ってくるし、
須藤は須藤でいつものように、全てを見透かしたようなすました目で笑いを堪えていた。

ちょっと個人的には勘弁してもらいたい状況だったけど、昼休みの恒例行事にでもなってしまうのだろうか。

まーそれはいいとして
本題は帰りのホームルームだ。
全く勘弁してほしい。
今は二学期で、僕らは二年生で、来年受験だから今年ちゃんとしたものがしたいのはわかる。
それで劇をしようといったのもわかる。
わかるのだが勘弁してほしい。
配役を決めるとき僕は主役になった。
気乗りしないが主役になった。
だがそこまではいい。問題はそこからだ。
いくら僕が女顔で、いくら須藤と仲良く見られてるとはいえ、なぜ須藤を主人公の男役で
なぜ僕が「ヒロイン」役なのですか。
しかも一部の女子は妙に熱っぽい目で僕と須藤を見くらべてるし、須藤は須藤でまたいつもの笑いをしているし、
一部の男子と女子は哀れんだ目で僕を見てるし、裕美は少し思いつめた目で僕を見ている。

僕が一体何をしたんだ。なんでこんなことになるんだ。
というか須藤とラブシーンなんて想像しただけで吐き気がするし怖気がする。







神は死んだ
154優しさと愛しさの不協和音3 ◆3t1YD77Mg6 :2007/09/07(金) 09:42:55 ID:QBLImUXW
投下終了です
久しぶりに投下しました
これから微妙に修羅場を計画してます
でも今回もまだ修羅場ないです
すいません
155名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 21:27:28 ID:6EBv+bwl
GJ
156名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 00:00:11 ID:WugRgcj+
gj

&草町wktk
157名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 00:16:30 ID:Y/sdnknM
ようやく言えるGJ
158「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/08(土) 02:17:26 ID:3tw8LxCW
投下します。
159「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/08(土) 02:18:01 ID:3tw8LxCW
+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +



 夕陽に照らされ、暮れなずむ王都に聳えるジウ改め、ヒラサカ国本城。

「ウォーレーン地方にリザニアからの使者が来たようだ」

 来たか、…予想より少し遅かったな。

 先の騒乱でヒラサカの手に落ち、女王直々に国が誇る辣腕宰相に任命されて一月半。執務室にて部下
数人と書類の処理を行っているデコーズが、判を押しながらそう言った。

「向こうの話では君に用らしいが、今度は何をしでかしたのかね?」
「以前の所属がリザニアだった。それだけだ」
「ほう……独立した、という事か」

 素知らぬ顔で答える私に対し、おおよそそんな所だろうと思ったよ、と、デコーズ。

「しかしまあ、君も大概その手のやり口が好みだな。全く恐れ入る」
「意味の無い犠牲は国を弱らせる。血を流すだけが戦ではないだろう」
「確かに、それは同意せざるを得まい」

 忙しなく書類を捌く両手とは裏腹に、彼の顔は至って涼しげだ。私が見込んだだけあって、戦後処理
による連日の労働を物ともしない余裕振りである。

「さて、それで結局どうするかね」
「行って来よう。まだ時間は掛かるが、ここの復興はお前とユエが居ればとりあえず回る」
「なるほど、では出掛ける前に女王陛下への許可は君自身が取ってくれたまえ。我輩や他の者が言った
ところで、聞く耳など持つまい」

 自国の足場を固めるまでの間は、警戒は怠らずとも、他方への侵攻もしばらくは控えた方が良い。ウ
ォーレーンの様子見も兼ねて、今が時期的にも安定している。

「わかった。……ところで、用とは具体的に何だ」

 相変わらず目線を書類に走らせているデコーズに、私はそう尋ねた。あちらも子供の使いという訳で
もなし、それぐらいは聞き及んでいるだろう。

「同盟の誘い、との事だ。…が、事情を聞いた限りでは君を指名する辺り」

 言葉通りに受け取るのは如何なものか、口にせずともそう言っているのがわかる。

「くれぐれも気を付けたまえよ」
「ああ」

 そんな短いやり取りを終えると、私は使者の待つウォーレーンへ向かうべく、執務室を後にした。



「お待ちしてました、アレクサンドロ殿」

 こいつか…。
160「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/08(土) 02:18:36 ID:3tw8LxCW
 準備を整え、ジウ地方から馬を飛ばして約四日。城の応接間で私を待っていたのは、リザニアの外
交官の一人、ハーマイン。
 エイブル将軍率いる軍においても時に参謀役として働き、武力優先なリザニアの将兵には珍しい頭
脳担当の男。イスト、イストリア属国化の際にも各種手続きを手伝う為に現れたりと、記憶に残って
いるのは専ら各地を奔走する姿だった。

「最後に会ったのは、あなたがあの方へ報告をしに行った帰りでしょうか」
「そうだな」

 再度軽い会釈をしてくる相手に、こちらも愛想程度に付き合う。
 ここの城主を任せていたツガワに頼んだお蔭で、辺りに他の人間の気配は無い。室内には私と護衛
に連れて来たタルワール、そして目の前のハーマインのみ。

「話を聞いてここに居るものだとばかり思っていたのですが、ご足労頂き申し訳ありません」
「前置きはその辺で良い、用件を言ってくれ」
「……わかりました」

 互いに世間話をしに来たわけではない。挨拶を続けようとするハーマインに対して先を促すと、向
こうも折り込み済みなのだろう、入室時からの真剣な面持ちのまま一つ頷く。

 さて、一体何を言いに来たのか。

「アレクサンドロ殿、リザニアへ戻るつもりはありませんか?」

 彼の口から出た台詞は、私が予想していた幾つかの内容に当て嵌まるものだった。

「無いな。少なくとも、この場で戻るのは有り得ない」
「それは我々の敵に回ると、そういう事でしょうか」

 敵、その単語一つで、どちらからともなく不穏な雰囲気が漂う。

「現段階ではそれも無い。例え今リザニアへ攻め込んだ所で、特に旨味があるとは思わん」
「つまり、いずれは攻め込むと?」
「あの将軍に隙が出来ればの話だが、どうだかな。逆にこちらへと攻め込むならば、迷わず剣を執ら
せてもらおう。
 ……要するに、以前のウォーレーンと概ね変わらない、不可侵状態だ」

 問い掛けに対して、半分本音で答える。
 そんな私の返事もとっくにお見通しなのだろう、ハーマインはやはりといった表情で、ソファに浅
く掛けていた腰をゆっくり据え直した。

「仕方がありませんね。それでは当初の目的通り、改めて同盟の申込をさせて頂きましょう
 まず内容についてですが…」
「…ちょっと待て」

 さり気なく発せられた言葉に違和感を覚え、咄嗟に続きを遮る。……当初の目的?
161「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/08(土) 02:19:22 ID:3tw8LxCW
「聞くが、さっきの話はお前の独断か」
「はい」

 真顔のまま、将軍の指示を受けてやって来た筈の使者は、はっきりとそう答えた。
 命令違反。与えられた職務は意にそぐわぬものでも忠実に実行する、ともすれば私の体裁用の外面
よりも地で生真面目なこの男が。

「…話術の一環として、とうとうジョークを覚えたか」
「冗談を口にした覚えはありませんし、覚えようと思っても、あれだけは未だに理解出来ません」

 だろうな。

 その驚くほどの生真面目さ故に、言葉遊びはともかく、軽口や冗談の類が全く通じないのもまた確
かな話。一切余分の無い理路整然とした交渉が売りなだけあって、ハーマイン本人もまた、遊び心を
何処かへ置き忘れた様に融通の利かない性格と認識している。

「考えてみれば、普段からいきなり本題に入っていたお前が、あれだけ前置きをしたというのも珍し
い。…どういう風の吹き回しだ?」
「国内、特に西側での情勢が芳しくありません。要であるエイブル将軍に、以前の様な活力が失われ
てしまいました」

 唐突に。

「あなたのせいです」

 ハーマインが、硬質な声でそう言った。

「おいおい」

 他国の将に自らの弱みを晒す様な発言をするのも驚きだが、その内容もまた衝撃的である。リィス
隊長等ならいざ知らず、よりにもよってあの将軍がやる気を失っている、と。

 ………ほう。

 センスの欠片も無い、冗談にもならない戯言だとしたらまだ聞き流す事も出来た。
 しかし、反射的に覗き込んだハーマインの目、その瞳の奥底には、どんな嘘の思念も感じ取れない
。視線を通じて心を読んだ私にとって、それは何よりも決定的な事実を意味していた。

 将軍が演技をしていて、こいつが真に受けたのだとしたら話は別だが。

 そんな事をするメリットがそもそも無い。

「幸い、今はどうにか落ち着きを取り戻しています。とは言え、本調子には程遠い状態ですが」
「それがどうした。まさか私を情で釣ろうとなどと思ってるわけではないだろう」
「将軍にそのつもりは無いようです。プライドの高い人ですから」

 まるで、自分はその限りではないと言わんばかりの口調。
162「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/08(土) 02:20:14 ID:3tw8LxCW
 …ああ、成る程。

 強い意志を込め、真っ直ぐにこちらを見据えるハーマインの目。私の思考は、そこでようやく一つ
の結論に至った。

「つまり、提案者はお前。今日までの間は、渋る爺さんを説得する準備期間だった訳か」
「そうなります」

 白々しい態度で頷く外交官。……面白い。

「意外だな。もう少し固い奴と思っていたが」
「時と場合によるかと。あなたのような相手ならば、特に」

 どんな事を喋ったのか、このとんだ食わせ者のせいで、爺は既にヒラサカへの戦意を殆ど失いかけ
ているらしい。

「同盟を結びましょう、アレクサンドロ殿。大陸を自分の手にする為に動いているあなたにとって、
決して損は無い条件を用意します」

 ソファから立ち上がり、こちらへ向かって、そっと片手を差し出すハーマイン。

「エイブル将軍が同じ理由で居るとしてもか」
「先の事など、誰にも分かりはしません。それならば、現状において、より有利な方向へ運ぶべきだ
と思います」
「リザニアとヒラサカ、双方が凌ぎを削るのは無益だと?」
「わたしには、あなたが裏切った最初からそう示唆しているように見えました」

 不意に、喉から笑いが零れる。

「わかるか、お前も」
「あの方と比べても、あなたは大分捻くれてます。…今のリザニアは、あなたの的になりますか?」

 いいや、射程にはまだ遠いさ。

「くくっ…」

 仕掛けた見えざる罠を察知して、己が身と共に釘を刺す。流石は知将といったところか。

 隙あらば取り込んでやろうと思っていたのだがな…。

 他の邪魔者を排除したければ、互いに協力する価値がある。内々に仕込んだ手を尽くして、もっと
切羽詰まらせてから持ち掛けてやるつもりだったが、やはりそこまで甘くはない。

「……?」

 首を小さく傾げ、横に立ったきり、さっぱり話の流れに付いて行けてない様子のタルワール。
 キルキア大陸統一同盟。ハーマインの提示した矛盾を孕む題に、私は言葉ではなく、笑みと握手を
以って返した。
163「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/08(土) 02:23:59 ID:3tw8LxCW
投下終了。最近サンドロの言動が大人の嘘まみれです。
164名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 02:26:06 ID:WnTqa87S
>>163
GJ!
スレ開いたら投下真っ最中なんて・・・今日は良い事があるに違いない
165名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 02:36:55 ID:u35E/sly
GJ!!
今回は野郎ばっかだったけど二人の駆け引きがかっこいい!
このスレじゃやっぱメインは女性だけど男性でも魅力的なキャラを作れる作者の素晴らしい才能に嫉妬w
166名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 02:40:01 ID:Y/sdnknM
ひもじい時に食べるご飯ってなんでこんなにおいしいんだろ
GJ
167名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 03:03:32 ID:UY0sCEYW
GJ
同盟か、「彼女達」はどう動くのかな?
168名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 23:32:11 ID:dL4frbSN
昼間に書き込みなしかよ!!!!!
169Bloody Mary the last order 『prologue』 ◆XAsJoDwS3o :2007/09/08(土) 23:49:15 ID:An7luKAf
これより投下します。
今回から新しいタイトルということで、前回のとき同様まずはガイダンス的なものから。

 このお話は Bloody Mary の三つ目のお話に当たります。
例によって初見の方を度外視して書いてしまっているので、
先に1st、2nd containerをお読みいただくことをお勧めします。
なお、その上でもし「気に入った」という奇特な方がいらっしゃいましたら、
『ぶらっでぃ☆まりぃ』にも目を通してもらえると後々いいことがあるかもしれません。


では投下開始。今回は導入部のみになります。
170Bloody Mary the last order 『prologue』 ◆XAsJoDwS3o :2007/09/08(土) 23:50:07 ID:An7luKAf

 人というのは他者と切り離して生活しない限り、どうあっても思う様生きるなんてことはできない。
人間は生きていく過程で常に必ず何かと折り合いをつけて妥協している。
それがたとえ貧困に喘ぐ者であっても、富める者であっても。
――大陸指折りの大国を統べる、一国の主であったとしても、だ。

 正直に言えば、自分の立場に絡み付くしがらみにウンザリしていた。
政略結婚で娶った妻にも。僕を心の底から憎んでいる弟にも。神でも崇めるかのような眼で見つめてくる民たちにも。
日々生きることで精一杯な人たちから見れば、贅沢な悩みだと言うだろう。いや、自分でもそう思う。
それでも――唯一安らげるのは、"彼女"の存在だけ。そう思っていた。

 だから彼女をダシに、それらを切り捨てた。
何より一番大切だから……そう言っておきながら、その実は彼女を利用しただけなのだ。
ただ、自分が国を束ねる重責から逃げたかっただけなのだ。

 そうやって皇帝の座から逃げ出して、初めて気付いた大切なもの。
あれだけ嫌がっていたしがらみの中にこそあった、その大切なものを捨ててしまったことに僕は後悔した。

だけどもう一度拾いに戻るためには、かつて最も大切だと言った彼女を置き去りにしなければならず。
かと言って一旦気付いてしまった大切なものを、そのまま捨て置くことも到底できず。


 だからこれは、どちらも捨てたくないと欲張った結果なのだ。







 霞む視界。ぼんやりした頭に響く馬の蹄の音。
体温は既に自覚できるほどにまで下がっているというのに、脇腹だけはまだ依然として燃えるように熱い。

「はぁ…っ。はぁ…っ」

 滴る冷や汗を拭う。
馬の背で揺らされる度に傷口に響き、その都度激痛が全身を襲う。

「そろそろ……国境か……」

 そう呟くと、一瞬だけ気が抜けて危うく失神してしまいそうになった。
脇腹に手を当てる。一際強い痛みが脳髄を駆け抜けて青年は目を細めた。

その痛みを引き金にして、泣いている少女の顔が脳裡に浮かぶ。
瞬間的に来た道を引き返したくなったが、ぐっと手綱を握って振り返るのを堪えた。

(戻って何の意味がある?どっちに行ったって裏切り者のくせに)

「あ……?」
 地平の向こう。
かすかに見え始めた建物を目にして彼は弱々しく声を上げた。
171Bloody Mary the last order 『prologue』 ◆XAsJoDwS3o :2007/09/08(土) 23:51:49 ID:An7luKAf









 大陸の勢力を二分する、北の北方大教国と南のグレイル帝国。
その大国同士が戦争を始めて早三年が過ぎた。
当初は帝国が優勢だったこの戦争も、今や帝都にまで敵軍の手が伸びようとしていた。

 そんな中、帝国側に立ちこれまで何度も国を助けてきた一人の傭兵が、辺境の駐屯地でひとり酒を煽っている。
その男はまだ二十歳前後だったが、体格の大きさと強面のせいで実年齢より上に見られることが間々あった。
だが屈強なその肉体に反して、今の彼の瞳はあたかも死人のように濁っている。

「…んぐ……」
 生気の宿らない瞳で酒を喉に流し込む。
男は、本来ならば国に貢献した人物として称えられるべき者だった。だが今の彼の表情にその頃の面影は少ない。

 グレイル帝国、北西の国境駐留警備。
帝都の貴族連中に煙たがられ、追い出されるようにそこの警備を任されたのが彼の部隊だ。
大してすることもなく、ただ苛立つ毎日。戦争中にも関わらず戦いに駆り出されないのは、男にとってこの上ない屈辱だった。
本当の戦火はもっと東なのだ。

 敗戦寸前でも己の兵力を――傭兵とはいえ―――遊ばせておくってことは、よっぽどオレたちを帝都に呼び戻したくないらしい。
ただでさえ皇帝不在で国が不安定だと言うのに……あいつらは自分の国が蹂躙されることになってもいいのか?

 募る苛立ちを抑えきれず、男は八つ当たりするように空になった杯を机に叩きつけた。

「…くそったれが」

 『剣帝』とまで謳われ、先頭に立って国を率いていた皇帝が行方を眩ませておよそ一年。
 兵士たちの士気の源になっていた彼を失い、戦争は敗退の一途を辿っている。
国を統率する為政者とはいえ、たった一人の人間がいなくなるだけでこうも見事に戦況が逆転するとはあまり考えられない事態だが、
これには別の、もうひとつの理由がある。
 皇弟を始めとする一部の貴族連中が、皇帝不在に託けて自分の国を食い物にしているのだ。
それでは勝てる戦いも勝てないというものだろう。
それに皇帝が姿を消したせいで皇妃の気が触れてしまったことが事態を更に悪化させている。
…帝国が滅ぶのは時間の問題だ。

「何処行ったんだよ…お前は」
 呟くように、消えた戦友に問いかける男。

 ただの一傭兵だった彼を引き抜き、自分の傍らに置いて共に戦うように言ったのが皇帝だった。
傭兵と皇帝。身分こそ大きく違うが、幾多の戦いを重ね二人は親友と呼べるまでの間柄になっていた。

 その皇帝が行方不明になったのは戦場ではない。…城内なのだ。
戦場であれば人知れず命を落とした可能性も考えられるが、帝都の…しかも城内で行方を眩ませたのは不可解すぎる。
しかもあれほどの男が、安易に暗殺なり誘拐なりされたとは考えられない。

……とすれば不慮の事故か、自分の意志で蒸発したか。
最後に目撃されたのが城内だとすると、後者の可能性の方が遥かに高い。

―――なら、何故オレに一言も言わなかった。
 男はもう何度脳裡に浮かべたか知れない問いを、戦友に投げかける。
172Bloody Mary the last order 『prologue』 ◆XAsJoDwS3o :2007/09/08(土) 23:54:16 ID:An7luKAf


「ふぅ……」
 これも今日何度ついたか解らない溜息。
もはや男にできることなど何もなかった。


皇帝が消えたせいで既に帝国は虫の息だ。

……このまま、帝国が滅ぶまで此処で腐っているんだろうか。
僻地に飛ばされてから既に半年以上が経ち、男はすっかり意気消沈していた。
沈んだ気分をアルコールで誤魔化そうと、再び杯に酒を注いでいたとき。


「隊長ッ!!」

 部下のひとりが血相を変えて部屋に飛び込んできた。
その騒々しさにも大して驚かず面倒くさそうに一瞥する男。

「あん?なんだよ」
「そ、それが……それが……」
 かなり興奮しているらしく、部下は言葉を何度も詰まらせる。
その様子を黙って見ていた男は鬱陶しげにチッと小さく舌打ちしてから「早く言え」と急かした。


「陛下が――――皇帝陛下が見つかりました!!」


「………ハァ?」
 あまりに突飛な部下の発言に一時的に思考が固まる。だが、それも一瞬。
次の瞬間には冷や水でも浴びせられたかのように椅子を蹴飛ばしていた。
一人の青年が別の部下の肩を借りて部屋に現れたからだ。
脇腹を庇うようにして姿を見せたその青年。多少顔色は悪かったが、間違いなく一年前に行方知れずになったグレイル帝国の皇帝だった。

「ガラハドッ!?」
 部下を押しのけて、土気色した青年の肩を担ぐ。
「テメェ、今まで何処に居やがったんだよ!
戦時中だってときにフラッと消えやがって――いや、今はンなことよりも……」
 彼に訊きたいことが山ほどあった。だが、青年が脇腹に負っている傷を見て男は口を噤む。
頭を切り替えてすぐに診療所に足を向けようとした刹那。
「待った……ベイリン。
手当ては要らない。それよりも――」
 やっと青年の口を開かせた言葉は、とても正気の沙汰とは思えないものだった。

「バカかッ、さっさと手当てを………って…おい、これ…」
 青年を叱責しながら担ぎ直した拍子に、彼の怪我の不自然さに気付いた。
「この傷、いつのだ…?なんで今まで放ったらかしにしていた!?」
 真っ赤になった彼の衣服に触れても自分には全く血が付いていない。
衣服に付着している血は、表面的には大部分が既に固まっている。負傷してからどれだけ時間が経っているかを想像して、男はゾッとした。

「いいんだ……これは。
……気軽に塞いでいい傷じゃない」
 息も絶え絶えで男にそう答える青年。
怪我自体はそれほど大したものではなかったが、手当てせずに放置していたことで青年の体力を根こそぎ奪っていた。
173Bloody Mary the last order 『prologue』 ◆XAsJoDwS3o :2007/09/08(土) 23:55:00 ID:An7luKAf


「それよりベイリン。
済まないが、馬車を用意してくれ。帝都まで戻りたい」
「ざけんなっ!だから手当てが先だろうがッ!」
 青年の無謀な申し出に、彼が手負いなのも忘れて怒鳴り声を上げた。

「…時間が惜しいんだ。もう帝都のそばまで前線が下がってるって聞いたぞ?
議論している暇なんてない」
 死に体の身体にも関わらず、鋭い瞳で男に訴えかける。
彼が頑固者であることを知っていた男はその眼を見て説得を諦め、「くそ」と悪態をついてから部下に馬車を用意するように命じた。

「…ありがとう」
「但し、馬車の中で手当てを受けさせるからな。それが条件だ」
 自分を担ぎ上げる男を見ながら、青年はフッと力なく笑った。



「…だけどよ、その傷。誰に付けられたんだ?」
 男が青年に問う。
男の知る限りでは、青年を手負いにさせるほどの人物に心当たりがなかった。
いかに過酷な戦場であろうと、彼がかすり傷すら負うことはなかった。だからこそ『剣帝』と呼ばれているのだ。
敵国のどんな名将をも一太刀で屠ってきた青年を傷つけることができる者など、この世には存在しないと数分前まで確信していたのに。
男は不思議でたまらなかった。

「ははっ……剣を握ったこともない、ただの侍女だよ」
 青年が掠れた声で答える。
肩越しに青年の顔を覗くと、彼は少し淋しげな表情をしていた。

「本当に、戦い方なんて何も知らない……ただの女の子だよ……」

 男は、自嘲気味に笑う青年の言葉に耳を傾けながら。
皇帝と同時期に姿を消した、使用人の少女の名を思い出そうとしていた。





 こののち。
落城寸前だった帝国は、皇帝が帝都に戻ってから約半年で敵国の猛攻を退け。
両国の痛み分けで戦争は終結することになる。


―――――――――そして、時が流れて………
174Bloody Mary the last order 『prologue』 ◆XAsJoDwS3o :2007/09/08(土) 23:57:38 ID:An7luKAf
以上。
第一話とセットで投下する予定でしたが、
一話がかなり長くなってしまったのでそちらは次の機会ということで。

今までに増して亀更新になるかと思いますが、気長にお付き合い頂ければ幸いです。
175名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 00:04:16 ID:muG8djL1
まつでよ
176名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 00:04:47 ID:NT5V31JW
GJ!!
再開は嬉しい限りです、これからも頑張って下さい!
177名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 01:35:46 ID:wH7eiGnZ
何ヶ月でも待つよ。
GJ。
178名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 03:25:00 ID:bzTuFa0L
ブラッディマリーが!!
待ちますとも、いつまでも
179名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 10:46:16 ID:DvJn5fBH
侍女の名前はアイスソードだな
180名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 12:18:01 ID:FOO1luca
ころしてでもうばいとる
181名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 12:50:33 ID:HXl4Odko
貴方を待って毎日スレを見ていたんだああああああああああああああああ!!111111111
182名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 17:36:57 ID:kj/kyHAx
ブラッティマリーキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
GJ!続きwktkして待ってます!

しかし…皇妃の気が触れたとか侍女に刺されたとか…
業の深いことでw
183名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 18:54:21 ID:LoH60/Mj
しかし同作品で二人の修羅場体質な男が出るのは初めてじゃないかね
184名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 18:57:07 ID:CruRH7HA
つredpepper
185名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 20:44:21 ID:UVMH7+HR
阿修羅様保管庫更新お疲れ様です
サイトがどんどん凄くなっているわけだが(*´д`*)
それにしても・・・買ったのか、あの本w
186名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 21:04:58 ID:wH7eiGnZ
>>184
読んだが、これから修羅場ってとこで寸止めのままか…続き読みてぇぇeeeeeee!!
187名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 22:05:27 ID:Wmz6KpvC
>>182
まだ前日譚だな。親代わりのベイリン隊長がまだ騎士だし。
主人公の出自をやるんだろうと期待。
188名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 23:39:38 ID:OsJP8/5z
新参の俺はまだ旧作を読んでないから新作は読めない・・・(´・ω・`)
189名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 00:43:49 ID:ZgHnphvK
>>188
一週間夜更かしすれば保管庫の作品は読み切れる
頑張れ
190名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 09:00:36 ID:QNgQwpM3
>>1も読めない悪い子やもしれん
191名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 11:23:12 ID:Xur/kS9t
タランチュラの話はSSまとめにないと思ったら、名レス名シーンのとこのプロットにあった…
192愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/10(月) 14:00:14 ID:2mxX3x6P
こんにちは
>>28の続き投下します。
193愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/10(月) 14:01:13 ID:2mxX3x6P
 今日は早めに学校を出た。なぜかというともうすぐ期末テストが控えているわけだから
だ。先輩の成績は全く問題ないのだけれど、僕のほうがヤバい。
 
 先輩と一緒に学校を出ると、いつもの風景に一つ見慣れないものが入り込んでいるのを
見つけた。

「何すかね? アレ」
「さあ……何だろうね」

 黒塗りのベンツ、そして黒いスーツに、黒いサングラスの男が数人。
 どう見ても怪しいその集団は、校門の脇から学校の中を覗いていた。

「怪しいっすね……」
「うん、怪しいね……」

 僕も先輩も自然に声を潜めていた。
 
「とりあえず、触らぬ神に」
「祟りなし……っすね」

 僕らはその脇をそそくさと通り抜けて、さっさと退散することにした。

 が、しかし

「君、ちょっといいかね」

 そのどすの効いた声は明らかに僕に向けられていた。

「は、はい……何でしょう?」

 恐る恐る振り返る。
 僕の顔を確認してから、男はおもむろに上着の内ポケットに手を突っ込んだ。
194愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/10(月) 14:02:35 ID:2mxX3x6P
 ――――まさか、銃!!??

 僕は慌てて駆け出そうと方向転換をした。このままじゃ殺される!!
 だが、僕の目の前には別の黒尽くめがいて逃走経路は絶たれていた。

「くっ………」

 気付くと僕の周りはいつの間にか黒尽くめに囲まれていて、先輩とは隔離されていた。

「ふむ、やはり間違いないな……」

 先ほどの男が、手元の紙と僕の顔とを交互に見比べて言った。銃は持っていないようだ
った。少しだけ僕は安心した。

「あの、一体……」
「ご同行願えますか?」

 黒尽くめは無表情に、平らな声でそう言った。

「は?」

 理解できていない僕を無視してことは進んでいた。両腕を黒尽くめに掴まれて、僕は車
の中に押し込まれた。

「ちょ、ちょちょちょちょっと!!」

 僕の抗議もむなしく、ベンツは発進した。

「遼君!!!」

 ドアが閉められるときに、先輩の声が聞こえた……ような気がした。
195愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/10(月) 14:03:54 ID:2mxX3x6P



 車に揺られて僕が連れて行かれた場所は、立派なお屋敷だった。この街の高台に位置す
る壮大な屋敷。いかにも金持ちが住んでそうな建物だった。
 一体全体、どうして僕はこんなところに連れてこられたのだろうか? 今までの人生で、
こんなデカイ屋敷に住んでいる人と知り合いになったことはないと思う。
 うわ、内装もかなり豪華だ。壁にかかってるこの絵なんかは、きっとかなり高いんだろ
う。

 と、僕は大きな扉の前に着いた。

「失礼します」

 黒尽くめの一人がドアをノックして言った。

「うむ、入れ」

 中からは、低く厳つい声が返ってきた。その声に僕は緊張してしまった。

 ―――もしかして、ヤクザの屋敷!?

 だとすれば、最悪。人生終わった。

 重い扉が、ゆっくりと開かれる。

 扉が開いていくと共に、僕の緊張も高まる。

「ようこそいらっしゃった!! 歓迎いたすぞ」

 扉の先の広間の豪華なソファーにどっしりと構えているのは、白髪の老人だった。着物
なんかを着込んでいて、やけに威圧感があった。
196愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/10(月) 14:05:35 ID:2mxX3x6P
「は、はあ……」

 僕は何も言えなかった。歓迎なんて言われても、別に招待状とかを貰った訳でもないし、
それにこんな知り合いはいない。親戚でもなければ、もちろん友人でもない。恐らく、初
めて会った人だろう。

「昨日は本当にお世話になった。なんとお礼をしていいのやら……」

 昨日? はて、この老人と昨日僕は何か係わりをもっただろうか。

 考えるまでなく、ノー。電車で席を譲った覚えだってない。まあ、普段からそんなこと
はしないけれど。

 ―――と、僕はその老人の横に見覚えのある顔を見つけた。圧倒的な存在感の彼にすっ
かり、彼女は隠れてしまっていた。

「あ、昨日の店員さん」

 気付くのに時間がかかったのは、昨日と服装が違ったのも原因の一つだろう。

 僕がそう言うと彼女の顔はパアっと明るくなった。

「はい! 覚えていてくださいましたか!!」

 昨日のことなんだから忘れているわけないだろう。それにこんな可愛い娘なんだし……。

「君がいなかったら、家の娘はどうなっていたことか」

 この時点で、僕の頭の中で色々なことが繋がった。

 昨日の店員さんはここの家に住んでて、あのいかつい爺さんはあの店員さんの父親か何
か。それできっと、今日僕がここに連れてこられた理由は、昨日のお礼をするためなんだ
ろう。


197愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/10(月) 14:06:44 ID:2mxX3x6P



 あの時のこと、昨日彼が私を助けてくれたときのことを思い出すと、今でも体が熱くな
ってくる。
 強盗の狂気に満ちた目から私を救ってくれた彼は、本当に格好よかった。まるで、悪の
魔王に捕まったお姫様を助け出す、『王子様』みたいだった。

 家に帰ってから、彼の名前を聞いておかなかったことを後悔した。かろうじて分かるの
は、制服から通っている高校くらい。何年生で、どこに住んでいて、どんな生活を送って
いるのか、それらは全くわからなかった。

 気になって気になって仕方がなくて、私は家の者に彼を探してもらうことにした。何と
してもキチンとお礼がしたかったしそれに―――もう一度彼に会いたかった。

 感じたことのない胸の高鳴り。彼のことを思うだけで、鼓動は自然に速まった。
 初めての経験。これがいわゆる『恋』なのだろうか?

 私は小学校も、中学校も、そして今通っている高校も全部女子校だったから、同年代の
男の子と接したことがほとんどなくって、だからよく言う『恋愛』の経験なんかは一切な
い。

 だから、もう一度彼と会いたかった。もう一度会ってこの感情の正体を確かめたかった。
 家の者たちには手がかりとして、昨日のコンビニの監視カメラから抜き取った彼の顔写
真を持たせた。

「あの、中原さん」

 二人きりでは間が持たなくなって、私は彼に話しかけた。

「は、はい?」

 彼も少し固くなっているようだった。
 全くお父さんたら何考えてるんだか……。いきなり、

『それじゃあ、後は若い者に任せて……』

 なんて言っていなくなるなんて。それで私たちは今、広間で二人っきりになってしまっ
ている。お見合いじゃないんだから変な気を遣わなくていいのに。

「今日はその、少し乱暴なやり方になってしまったみたいで、申し訳ないです」

 使用人たちは一体何を勘違いしたんだか……。あんな連れて行き方をしたら、彼もビッ
クリするに決まってるのに。

「いや、そんな気にしなくていいからさ」

 困ったような笑顔で彼は笑った。

「それにさっきから、綾瀬さん頭下げてばっかりだし」
198愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/10(月) 14:08:52 ID:2mxX3x6P

 彼の一言で、私はハッとした。

「そ、そういえば」
「ね?」

 思わず笑いがこみ上げてきて、私たちは二人で笑った。このお陰で、場の空気が少し緩
んだ気がした。

「それにしたって立派なお家だよね」

 彼は周りをきょろきょろ見回しながら言った。

「そうですね、無駄に大きいですよね」

 ホントに無駄に大きな家だと思う。家族は私と父親だけだから、部屋は大量に余ってい
る。残りは住み込みの使用人が使ったり、たまに来るお客様用の部屋になったりしている。

「物凄い大家族でもないと使いきれそうにないよね……」
「そうですね」

 また少しの沈黙が訪れてから、中原さんが口を開いた。

「あのさ、俺と綾瀬さんって同い年なんだよね?」
「はい、そうですが……」

 そのことはさっきの軽い自己紹介で話したのだけど、どうしたのだろう?

「じゃあさ、敬語とかじゃなくっていいんじゃないかな?」

 にこりと笑いながら彼は言った。その姿もやっぱり爽やかで、胸がドキンと鳴った。

「い、い、い、いえっそのっ」

 声が上ずっているのが自分でも分かった。顔が赤くなってしまう。そんな私を見て中原
さんはまたにっこり笑ってくれた。

「あの何て言うか、これはクセみたいなもので、私も無意識のうちにそうなってしまうん
です」

 焦っている自分が本当に嫌になった。

「そっか、なら別に無理しなくていいんだけどさ」

 優しく笑う中原さんは、本当に格好よかった。

「あの、本当に昨日はありがとうございました」

 改めて私はお礼を言った。

「別にそんなに大したことじゃないからさ、ホントに頭あげてよ」

 困ったように彼は言う。それでも、何度感謝したって足りないくらいだった。
199愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/10(月) 14:10:51 ID:2mxX3x6P

「何かお礼をさせていただきたいんですけど」

 だから別に気にしなくっていいって、と彼は笑った。

「そういう訳には」
「じゃあ、もう一杯このお茶貰える?」

 私の言葉を遮って中原さんはそう言った。

「俺、こんなおいしい紅茶飲んだことなくってさ。流石だね」

 私は急いでお代わりを彼のカップの中に注いだ。

「綾瀬さんはさ、何であそこのコンビニでバイトしてたの?」

 新しく入ったお茶を一口飲んでから、彼はそう尋ねてきた。

「社会勉強です」
「社会勉強?」

 確かにこんな家に住んでいるのに、わざわざアルバイトするのは疑問に思うだろう。

「はい、今までずっと学校と家の往復だけの生活だったので、ちょっと私世間知らずだか
ら」

 なんて言うと聞こえは良いかもしれないけど、本当はお父さんに強制されただけだった。

「へ〜、偉いんだね」

 やった、中原さんに褒められた。思わず頬が緩む。

「でも今回の一件で、お父様がもうあんな危ない仕事はだめだって」
「ありゃりゃ、大変だね」
「はい………」

 あのままあの店で働いていられたら、これから中原さんと沢山会えるのに。

 それから、私と中原さんは互いの趣味だとか血液型だとか誕生日だとか、そういう他愛
ない話をした(中原さんの誕生日は四月だそうだ。覚えておこう!!)。
200愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/10(月) 14:12:26 ID:2mxX3x6P
「お嬢様、そろそろお時間が……」

 ノックをして執事が入ってきて言った。確かにもう結構な時間だった。

「あっ、ごめんなさい。こんな時間まで引き止めてしまって」
「別に帰ったって何にもするわけじゃないから大丈夫だよ」

 中原さんはまた、笑って言った。まだ数時間しか一緒にいないのに、この人は本当に優
しい人なんだと、心から思った。

 帰ろうとする中原さんに私は勇気を振り絞って言った。

「あの……ま、また会ってくれますか?」

 頷いてくれた彼を見て、私は今までに感じたことのない程の幸福感に包まれた。





 帰りも僕は黒塗りのベンツに乗せてもらった。こんなの一生に何回あるだろうか?

 ああしかし綾瀬さん可愛かったなあ。彼女の姿を思い返して僕は思わずため息を吐いた。
 まるでお人形さんみたいに彼女は可愛かった。
 あんな可愛い娘にあんなに感謝されて、もうマジで言うこと無し!! って感じだった
りした。

『あの……ま、また会ってくれますか?』

 あんなの顔赤くしながら言うなんて、反則に決まってる。

 鞄から携帯を取り出すと、先輩からメールが来ていた。何やら黒尽くめに拉致された僕
を心配してくれているらしい。

『大丈夫でした〜
 詳しいことは明日学校で話しますね』
と、先輩にはこれだけ送っておいた。
201愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/10(月) 14:15:07 ID:2mxX3x6P
以上で今回分終了です。
これにて二人のヒロインが出揃いました。
これからちょっとずつ嫉妬成分が入っていきます。
次回もよろしくお願いします。
202名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 14:22:56 ID:nt5A+eC5
リアルタイムでGJ!
これからの展開にwktkが止まらんw
203名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 14:34:31 ID:ZgHnphvK
wktkが止まらないッ!
GJ!GJ!GJ!
204名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 16:40:05 ID:lQuUJKkP
GJ!!
先輩がこれからどう出るかが激しく気になるぜ!
205名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 17:59:50 ID:lH+n/ZnG
これはナイスなキュンキュンだぜ
206名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 18:06:42 ID:2QulM1+z
>>201
GJ!!!!!
激しくwktk!
207トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/09/10(月) 22:26:27 ID:7kyV1rLT
では投下致します
208雪桜の舞う時に ◆J7GMgIOEyA :2007/09/10(月) 22:28:12 ID:7kyV1rLT
 アナザー4『バトル』

 夏の暑い陽射しが私の長い艶やかな黒髪に容赦なく降り注ぎ、意識は朦朧としてきた。
それは単に私が桧山さんのお弁当が食べてないから、元気が出ないんじゃあありませんよ。
単純に言うと体の悪そうなインスタント食品を食べていると、さすがに胸元が気持ち悪くなってきました。
お母さんが帰ってくるまで、栄養不足で私は死ぬかもしれません。
 本当なら、この夏休みは家で一人きりで過ごして、飢えを防ぐ予定でしたが。
 今年の夏は違うんですよ。
 この一週間、桧山さんの家の前で含み笑いをしながら眺めているんです。
 家事を一通り終わらせてから、昼頃に桧山さんのお宅の前でずっと立ち尽くすんです。
建物と敷地を見ながら、桧山さんがどのような一日を過ごしているのか想像します。
もう、それだけで私は頬が緩んで楽しい気持ちになれます。
 えへへ。
 
 まるで、どこぞのストーカーのようですけど。
 私はどこぞの犯罪者と一緒にしないでください。
 正面堂々と桧山さんの家の入り口に立っているだけですから。
 招き猫ならず招き雪桜の効果に桧山さんも私にメロメロです。
 うにゅ。
 それにしても、今年の夏はちょっと暑いかな。
桧山さんに誘惑するためにちょっと短いスカートを履いてきて、上は清純な白いブラウスを着ているんですけど。
もし、夕立とか来て、びしょびしょに濡れたとしても、
私のブラが透けて見えているところを桧山さんが一生懸命見てくれるなんてことがあれば……。
 私を襲ってくれるかも。

 さてと、隣の飼っているワンちゃんが私に向かって吠えているので黙らせてきますよ。
少しだけ待ってくださいね桧山さん。
 と、私は桧山さんの部屋がある辺りに投げキッスを送ると、犬退治へ向かった。
209雪桜の舞う時に ◆J7GMgIOEyA :2007/09/10(月) 22:30:36 ID:7kyV1rLT

★桧山家
 五月蝿い獣を標的にして、俺はナイフを投げる訓練を続けていた。
もう、怒りとか憎しみ以前にこの異常な状況に俺の頭をすでにパニックを起こしているかもしれない。
 そのストレス解消のために虎を思う存分に虐めていた。

「つ、つ、つ、剛君。い、い、い、今、頬をかすったよぉぉ!!」
「一週間前に買い漁ったナイフをそろそろ広い集めないとな」
 虎を吊るために服の隙間にナイフが固定されて、見事な標的として完成していた。
各急所に当たれば……恐らく、即死するだろう。

 狙う箇所は。
 頭。左腕。右腕。右足。左足。胸。目。股間。その他、虎の肉体箇所。

 その部分に当たれば、点数が貰える。外れたら、点数は貰えない。
 このゲームは『闇の虎殺しゲーム』と俺は名付けた。

 ルールは簡単だ。

 手持ちのナイフを投げて、虎が死ねば、俺の勝ち。手持ちのナイフがなくなると画面にコンティニューが出来るので
虎の足元に落ちているナイフを集めて、再スタートだ。
 まあ、ゲームクリアしても何の意味はないけどな。

「それにしても、ライトのせいで全く当たらないな」
「つ、剛君、これ、は、は、犯罪だよぉ〜!!!!」
 と、虎が何か涙目になりながら、反対を訴えているが。俺はそれを当然のように無視して、ナイフ投げを続行した。
軽く余所見しながら、的を狙わずにナイフを投げた。
 そのナイフは鋭い金属音と共に虎の胴体のスレスレに突き刺さる。
「うぎゃぁぁぁぁぁーーーーー!!」
「当たってない。当たってない」
「当たってなくても、死ぬ。これは死にます!!」
「まあ、運が悪かったら死ぬことはあるんじゃない?」
「ひ、酷い。酷すぎるでしょ。オイ」
「酷いだって……」
 俺は的になっている虎を軽く睨み付けて、窓の方向に指を差して大声で叫んだ。
「瑠依が恋人宣言したせいで雪桜さんを傷つけた。そして、この有様だ!! 
毎日毎日、雪桜さんが玄関前でうふふふって笑っているんだぞ。
そのおかげで外に出られることも出来ないし、この時間になると……」


「ワンちゃん。聞いてくださいよ。私の桧山さんはとてもとても優しい方なんですよ。
私は彼の事がとても大好きなのに桧山さんはちっとも私の事を見てくれないんです。
いつも、玄関前に立っているのに声の一つもかけてくれないのは私のことを嫌いなんでしょうか? 
ううん。違います。桧山さんは私のことを愛しているんです。間違いありません。
 ワンちゃんはどう思いますか?」
「ワゥ? ク〜ン」
「やっぱり、ワンちゃんも桧山さんは私のことが大好きって思いますか。えへへ」

「って感じに隣に飼っている犬にまで恋話に相談する始末。おかげで近所の皆様の俺を見る視線がちょっと冷たい。
てか、犬の飼い主ですらも恋人の雪桜さんを引き取ってくれと嘆願書まで提出してきた。
さすがに年頃の女の子が毎日毎日犬と相談する奇妙な出来事に精神が壊れたそうだ」
「全然、私のせいじゃないよ。あの泥棒猫が勝手にやっていることでしょ。さっさと警察を呼べばいいのでは?」
「警察なんて裏金作りに必死だ。どうせ、女の子に言い寄られている奴は豆腐の角に頭をぶつけて死ねとか念仏を唱えてくるだろう」
「だったら、私が剛君のために排除してくるわよ」
「できるのか?」
「私は剛君のためなら、何でもやれます」
「だったら、行け。犬の飼い主が俺に抗議と苦情を言って来る前に!!」
「その前にナイフを外してから〜」
 と、磔にしていたナイフを俺は嘆息しながら無表情に抜いてやった。
210雪桜の舞う時に ◆J7GMgIOEyA :2007/09/10(月) 22:32:29 ID:7kyV1rLT
「そ〜こ〜のど・ろ・ぼ・う・ね・こ〜〜〜!!」
 抜いた途端に瑠依は勢い良く玄関まで飛び出していた。
常人ではない脚力に虎の野性を感じずにはいられなかったが、近所迷惑になるから大声で叫ばないで欲しい。

俺は惰性で彼女の後を追うと隣の家の前で犬と恋相談している雪桜さんと虎が対峙していた。
以前にガチで対面していたのは夕日の屋上以来だろうか。犬は虎の表情に恐がり、大人しく犬小屋に退避。
 虎と雪桜さんの熱い目線が繰り広げられていたが、外は猛暑なのでいい加減に俺は家に戻りたかった。

「何ですか? 東大寺さん」
「剛君の命令であなたを排除しようと思って。ねぇ、剛君?」
「俺としては穏便に雪桜さんを玄関の前でうろつくのは辞めさせて欲しいのだが」
「にゃーにゃーにゃーにゃー桧山さんです。一週間ぶりに桧山さんと口を聞きました。
私に会いに来たんですよね? ね?」
 空を飛びそうなぐらいに雪桜さんの見えない尻尾は振っていた。
嬉しそうに蔓延なる笑顔を浮かべ、俺に駆け寄ろうとするが瑠依が立ち塞がる。

「剛君は私の恋人になる予定なんだから。あんたみたいな女に指一本を触れさせてたまるもんですか!!」
「東大寺さんが恋人になる予定でしたら、私はひ、桧山さんの妻になるんですから!! 
これは予定じゃなくて。確定事項だもん」
「泥棒猫……。がるるる。生かしておくわけにはいかないわ」
 虎も雪桜さんもここで熱くならないでくれ。ただでさえ、肌を焼きそうな陽射しの下から一秒でも早く抜け出したいというのに。
何で俺のことでこんなに熱くなれるのか逆に感心していたりする。
「剛君。いいよね!!」

「俺がバトルスタートと言えば、二人は存分に戦ってくれ。
勝負はどちらかが気絶するまでだ。もし、雪桜さんが勝てば、俺の家のフリーパスをやろう。
虎が負けたら、今晩の飯は抜きだ。それでいいな?」 
「ブ−ブー。私が勝った時の商品はないの?」
「また、『闇の虎殺しゲーム』をやりたいのか? 今回の騒動の責任を取るために俺がせっかく手筈を整えたのにな」

「ううっ……。頑張って全力を尽くしますよぉぉぉ」
 それでこそ。虎だ。


(東大寺瑠依さえ倒せば。私は桧山さんのお家に入ることができるんです。
このチャンスを絶対に逃すことは出来ません。見ていてください。桧山さん。私はきっと勝ちますからね)

 二人は少し距離を離れて、互いに睨みながら構えを取る。
211雪桜の舞う時に ◆J7GMgIOEyA :2007/09/10(月) 22:33:47 ID:7kyV1rLT
 憎めない猛獣・虎
         東大寺瑠依
              VS  
             愛らしい猫ストーカー
                  雪桜志穂

『バトルスタートだ!!』

「私は桧山さんのためなら。東大寺さんの一人や二人ぐらい皮を剥ぎ取って、明日のおかずにしてあげます!!」
 雪桜は猫耳装備を着用した。
 攻撃力UP
 防御力UP
 素早さUP
 尻尾攻撃力UP
「今こそ、泥棒猫の決着の時が来たのよ。いざ、目覚めよ。眠っている潜在能力をここに解放する!!」
 瑠依は虎の野性を完全に解放した。
 全てのステータスがUP。
「貴女には明日の朝日を拝むことすら許されません!!
 てぃっ!!」

 雪桜の攻撃!!
 雪桜は尻尾を振り回した。

 瑠依に15のダメージ。
 瑠依に15のダメージ。
 瑠依に15のダメ−ジ。
「舐めるんじゃないわよ!!」
 瑠依の攻撃!!
 瑠依は爪で引っ掻いた。
 雪桜に50のダメ−ジ。
 雪桜に50のダメ−ジ。
 雪桜に50のダメ−ジ。
「私は絶対に負けません!!」
 雪桜の攻撃。
 雪桜は肉球を虎の顔に押し付ける。
 瑠依に25のダメ−ジ。
 瑠依に25のダメ−ジ。
 瑠依に25のダメ−ジ。
「泥棒猫のくせに剛君と口を聞くなんて生意気すぎだよ!!
 大人しく、粗大ゴミになりさい!!」
 瑠依の攻撃。
 瑠依の遠吠えが鼓膜に響く。
 雪桜は30のダメ−ジ。
 雪桜は30のダメ−ジ。
 雪桜は30のダメ−ジ。

 雪桜は力尽きた。
212雪桜の舞う時に ◆J7GMgIOEyA :2007/09/10(月) 22:35:22 ID:7kyV1rLT
「おとといきやがれですぅ」

(東大寺さんみたいな人に負けてしまうなんて私は本当にダメダメです。
桧山さんと一緒に居られる機会をこんな形で見逃すなんて)

「負けるな。頑張れ雪桜さん!!」

(桧山さん……)

(いつも、あなたの声は私に力をくれる)

(ありがとう。大好きです)

 なんと、雪桜は起き上がった。

 雪桜の攻撃。
「天翔猫閃!!」
 超神速の尻尾が瑠依に襲いかかる。
 瑠依に9999のダメ−ジ。

 瑠依は倒れ去った。
「愛は必ず最後に勝利するんですっ!! にゃっっっーー!!」
 WIN 雪桜。

 と、女の熾烈な戦いはこうしてあっけなく決着は着いた。
雪桜さんの目に映らない速さで放たれた尻尾が虎に炸裂した途端に瑠依は空を飛んだ。
一体、何Mぐらい飛んだのかは測定器もないのでわからないが、地面に鈍い音と共に落下する姿は滑稽であった。
 正直、雪桜さんに声援を送るつもりはなかったが。人として虎に負けるのはどうであろうかと疑問を覚えたので、
劣勢だった雪桜さんに軽く応援をしただけでこの格闘ゲ−ムの超必殺技コマンドを入力したのような技を虎にお見舞いするとは。
少しだけ反省している。
 その勝利者の雪桜さんは蔓延なる笑顔を浮かべて、こっちにやって来た。
「これで桧山さんの家に入ってもいいんですよね?」
「わかった。約束だもんな」
「はいっ。今日からまたよろしくお願いしますねっ!!」
 と、雪桜さんは俺の腕に抱きついた。腕の辺りに柔らかな感触を感じるが、心地良かったのであえて何も言わなかった。
そのまま、足は俺の家に向かうが。
 哀れな敗北者の末路を大人しく見物していた。雪桜さんの強烈な一撃を喰らい、
立ち上がることもできずに熱いアスファルトの上で置き去りにされた虎は口を開けて、よだれを垂れ流していた。
 それでも、俺は虎の介抱することなく、雪桜さんと共に一緒に家に入っていた。


 いつか、流せるだろうか?
 完璧な涙を。



 ちなみにアスファルトに倒れているのが雪桜さんならば優しく救急車を呼び、
名医に診察しろと五月蝿く注文するのだが。虎はこんな程度で死なないから別によし。

 さて、勝利者になった雪桜さんに美味しい物でもご馳走しようかな
213トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/09/10(月) 22:37:59 ID:7kyV1rLT
以上で投下終了です。
ついに猫ストーカーが桧山宅に侵入です
まあ、ストーカーネタでお約束と言えば
家に帰れば、両親とストーカーが仲良く談笑して凍り付く
ってのは一度やりたいと思っていますw

後、近い内に桜荘にようこそを投下します。

では。次回もよろしくお願いします
214名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 23:26:22 ID:mHTSZPkI
ギャグとはいえ、剛ひどすぎないか?
剛に対する評価がガラッと変わったよ…
215名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 23:31:20 ID:Nu/zWgQe
色んな意味で男主人公が強いなら、修羅場にゃならんわけでな…
216ニコ動から来ました:2007/09/10(月) 23:40:53 ID:vklqFiw+
これなんてスレ?
217名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 23:43:43 ID:py6DtwJs
>>216
どこから来たんですか?
218名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 10:32:05 ID:+GBLqRyI
ニコニコ動画からってオイw
219名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 11:15:58 ID:IMt3F8jo
頭の弱い子は相手にするな
220名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 14:30:28 ID:CQhItHY1
>>213
雪桜さんが飛天の技を使えるとは
GJ
221名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 22:46:33 ID:QR7XWkNT
>>213
神林ネタかよw
222名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 23:42:16 ID:NjEeFd+P
>>213
これ、リトルバスターズのバトルシステムネタかよw
223名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 08:09:20 ID:kh10mSh2
今週の絶望先生にちょっとときめいたw
224名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 16:01:38 ID:u+pq5GV8
wktk
225名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 21:38:33 ID:dFz9dh1Q
人が全くいないのは何故なんだ?
226名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 23:03:30 ID:3X/jT4T9
まぁ今は一休みってところじゃない?
227或騎士之難儀4 ◆CjaIRU0OF. :2007/09/12(水) 23:09:24 ID:p8/YkcbM
投下します
228或騎士之難儀4 ◆CjaIRU0OF. :2007/09/12(水) 23:10:20 ID:p8/YkcbM

<一>

 仕事に出れば、千里耳の我儘に振り回され、何故か厄介ごとに巻き込まれ。
 かといって、屋敷に戻れば、姉の叱責と妹の罵詈が容赦なく降り注ぐ。
 それらに耳を塞いで剣の鍛錬に没頭し、疲れ果てて眠る。
 夕方になれば、起床し、再び仕事に赴く。
 畢竟、右庵の一日といえばその繰り返しであった。

 忙しさに追われてただその日常を繰り返すことしかできない。
 右庵自身が何かを変えたい、と思っても、そのような暇は、意識してもなかなか作れないのである。
 その元凶とも言えるのが、右庵が都廻において受け持っている役目である。
 千里耳から受取った書を詰め所へと送るという役目は、一日たりとて休むことを許されないのである。

 右庵にしても、やってみたいこと、あるいはやらねばならないと考えていることは幾つかあった。

 その最たるものが、紗恵と十夜の嫁入り先を探すことであった。
 紗恵は二十六、十夜もすでに十九である。
 さすがに、そろそろ嫁入り先を探さなければいけない歳ではあった。

 とはいっても、二人とも婚期を過ぎているわけではないし、器量も悪くない。
 右庵自身が使用人を雇っていないせいもあり、家事全般もそつなくこなす。
 唯一つ問題があるとすれば、少々家格が低い、ということぐらいであろうか。
 とはいっても、木下家程度の家格で嫁を探している家などいくらでもある。
 だから、右庵自身がその気になれば、縁談などすぐにまとまるはずである。

 一般的に考えればそのはずであったし、右庵自身も都廻になったばかりの頃はそう思っていた。

「お断りします」

 右庵がその言葉を聞いたのは、役目を終え、屋敷に戻ってきた時のことであった。
 目の前に座っているのは紗恵である。
 彼女は、いつもと変わらぬ冷たい瞳でそう言い放った。

「…しかし、姉様」
「断る、といったはずですが。
 これで何回目ですか?」

 説得を試みようとした右庵の出鼻をくじくように、もう一度紗恵は同じことを言った。
 その瞳に、右庵は背筋が冷たくなる。まるで刃を突きつけられているかのような感覚に、一瞬息が止まる。
 とはいえ、そこで退くことはできなかった。

「相手は勘定方の役目についている方で…」
「もう何度も聞きました。
 その上で私は、この事はお断りする、と言っているのです。
 それとも、貴方はそこまでして私をこの屋敷から追い出したいのですか?」

 私が家長である以上、貴女もいつまでもこの屋敷にいるわけにはいくまい。
 そんな言葉が右庵の頭を過るが、口にはしなかった。
 代わりに、紗恵の要望に沿うような話を持ち出す。
229或騎士之難儀4 ◆CjaIRU0OF. :2007/09/12(水) 23:11:24 ID:p8/YkcbM

「…相手方は婿入りも吝かではない、と仰っております」
「木下の家を他人のものにする気ですか?
 私の婿、ということはその男が長男の扱いを受けることになるのですよ」
「それも已む無しかと」

 今度の言葉は、本心からのものだった。
 どうしても紗恵が屋敷を出て行かぬ、というのなら右庵は家長の座を放棄することすら覚悟していた。
 幸い、都廻の役目は、木下家に与えられたものではなく、右庵本人に与えられたものである。
 屋敷を出ていったとしても、どうにかなるという考えが右庵にはあった。

 しかし、崖に飛び降りるほどの覚悟で言った右庵の言葉は、姉には相手にもされなかった。

「話になりません」

 今回も駄目だったか、という弱気の虫が声をあげる。
 だがそれでも、右庵は頼まないわけにはいかなかった。

「…せめて、会っていただくだけでもできないでしょうか」
「この事については、これ以上話すことはありません」
「そこをどうにか、お願い致します。
 会えば、悪い男ではない、ということも姉様にご理解いただけると思います。
 どうにか…」

 右庵は頭を下げた。
 そこで、紗恵の言葉が止まった。
 考えを改めてくれたのだろうか。
 そんなわずかな希望とともに右庵は頭を上げた。
 しかし。

「…」

 紗恵は、すでに右庵の前にはいなかった。
 溜息をつくでもなく、右庵はただ黙り、視線を宙に彷徨わせた。

230或騎士之難儀4 ◆CjaIRU0OF. :2007/09/12(水) 23:11:59 ID:p8/YkcbM

<二>

 紗恵が、嫁入りを拒否するのは初めてのことではなかった。
 右庵自身が具体的に嫁入り先を探してきた時だけで二回目である。
 それこそ、遠まわしに嫁入りを勧めた回数も含めれば、十は軽く越えるだろう。

 右庵は紗恵の態度が、愛着のある屋敷を出たくは無い、という意志の表れかと考えていた。
 だからこそ、婿入りも許容できるような相手を探してきたのだ。
 しかし、それでも紗恵は頭を縦に振らなかった。

 何か別のところに紗恵の本意はあるのか。
 右庵は考えてみたものの、全く思い当たることはなかった。

「…」

 どうしたものか、と思ってもどうすることもできない。
 体が疲れているだろうか、頭にもやがかかっているような感覚もある。  

 くらり、と足がもつれそうになったところを、どうにか踏みとどまり、頭を振る。
 これはただ眠たいだけか、と考え、右庵は諦めて床に入ることに決めた。 

 滅多にしない長話をしてしまったせいで、いつも右庵が眠る時刻はすでに過ぎ去ってしまっている。
 間もなく正午ではある。良くて二と半時程度しか眠ることはできないだろう。

 寝ぼけた頭の中で、何とはなしに、右庵は一つのことを思い出した。

 確か、紗恵は一度縁談がまとまりかけたことがあったのではないか。
 あれは、いつだったか。
 父と母が死ぬ、少し前だったような気がする。

 あの頃のことは色々ありすぎて、一つ一つのことを具体的に思い出すのが難しい。
 しかし、確かに紗恵はあの時にまとまりかけた縁談があったはずだ。

 とはいえ、そのことを紗恵本人に聞くわけにはいかないだろう。

 ならば、十夜に聞くべきか。
 しかし、彼女は八年前は十を過ぎたばかりの幼子だった。
 縁談のことなど、覚えているかどうか以前に、耳にしているかも怪しい。

 では、誰なら知っているだろうか。
 そもそも、何でそんなことを知ろうというのか。

 そうか、と右庵は己のうちで頷く。
 以前上手くいった経験があるなら、そこを辿れば答えが見つかるかもしれない、と思ったのだ。

 思考は混乱し、まどろむ。
 目を閉じると、あっさりと眠りにつくことができた。 
231或騎士之難儀4 ◆CjaIRU0OF. :2007/09/12(水) 23:14:02 ID:p8/YkcbM

<三>

「姉様?まだ起きてるのですか?」
「ええ…寝付けないのです」

 時刻は正午を過ぎた頃である。
 十夜が姉の部屋をのぞくと、そこには紗恵がいた。
 平常であれば、部屋にいる右庵同様、紗恵も床についている時刻である。
 だが、何故か紗恵は眠ることもなく、彼女の部屋でただ座っているだけだった。

「何かあったのですか?」
「…十夜には隠せませんね」

 紗恵が困ったように微笑む。
 紗恵の話の内容は、縁談を右庵が持ち込んだ、という話であった。

「それで、縁談を受けるのですか?」

 話が終わると同時、十夜は思わず前のめりになってそう聞いた。
 だが、紗恵は首を横に振るだけであった。

「話を聞く限りではいいご縁であるように私には思われるのですが」
「…右庵殿もそうおっしゃっていましたね」

 先ほどとは違う、物憂げな笑みを紗恵は浮かべる。
 十夜は紗恵の表情に、内心右庵に対して苛立ちながらも、どうにか言葉を継いだ。

「では、何故。
 このような縁談を兄様が持ち込むなど、滅多にありません。
 ここで断れば、次は無いのかもしれないのですよ!」

 語気が荒くなったことを、十夜は言葉を口にしてから悟った。 
 紗恵がどこか驚いた顔をしたのを見て、しまった、とも考えた。
 しかし、紗恵が驚いたのは別のことについてであった。

「…右庵殿は、頻繁に縁談の話を持ち出されます。
 十夜は気づいていなかったのですか?」
「…え?」
「つい三ヶ月ほど前など、今回と同じように、縁談をある程度まとめて私に紹介したのです。
 その時も断ったのですが」
「……」

 紗恵の言葉に思わず、十夜は呆けてしまった。
 縁談があったことなど、初耳だったのである。
 同じ屋敷で暮らしている以上、些細な会話まで全て知っているはずなのだが、紗恵の縁談や結婚に関する話は聞いたこともなかった。

 妙な疎外感を覚えると同時、何故そのことを右庵が自分に言わないのか、という腹立たしい思いが浮かんできた。

 しかし、そのような怒りなど今はどうでもういいことのはずであった。
 十夜はどうにか自分の心を落ち着けて、もう一度、紗恵に本題を問いただした。

「と、ともかく。
 何故それらの縁談を断ったのですか?
 せめて、相手に会うぐらいすればよかったではないですか」
「そうもいきません。
 一度会ってしまえば、相手方は私にもその気がある、と勘違いしてしまうでしょう」
232或騎士之難儀4 ◆CjaIRU0OF. :2007/09/12(水) 23:15:39 ID:p8/YkcbM
 十夜は黙り込む。
 紗恵も、次に言うべき言葉を思いつかなかったようであった。
 暫くして、十夜は、紗恵の意図を率直に聞いた。

「姉様は、結婚なさるおつもりが無いのですか?」
「ええ」
「何故ですか?
 このようなところにおられても…」

 十夜の言葉に、紗恵の表情が一瞬無くなる。
 不意に背筋に寒気が走ったように十夜は感じた。
 それは、幼い頃から時折感じていた、紗恵に叱られる前触れのようなものであった。
 十夜は、反射的に目を閉じる。

 しかし、何も紗恵は言わなかった。
 十夜が目を開けると、紗恵は、いつもの微笑みを浮かべていた。

「…そうですね。
 正直、嫁ぐということに否定的な気持ちは私にもありません。
 しかし、木下の家や、貴女のことが私は心配なのです」

 ほう、と息をする紗恵の言葉には嘘は無いようであった。
 紗恵の、自分のことを思いやる気持ちに、十夜は暖かいものに包まれる感覚を覚えた。

「十夜がどこかいい家に嫁げれば、私の心配も一つなくなるでしょうか」

 その言葉は、どこか冗談染みたもののように聞こえた。
 ただ、確かに自分が嫁入りでもすれば、紗恵の重荷も少しは軽くなるだろう。

 とはいえ、木下の家のことは、どうにもなるまい。
 後一郎が家を任せられるほど立派な人間であれば、と考え、紗恵は正直にそのことを口にした。

「兄様がもう少ししっかりしておられれば…」
「…全くその通りです」

 その時、姉妹の間で同じ意図が通ったように、十夜には思えた。

 話がやむ。
 そこで十夜は、紗恵の部屋を去ることにした。

 とりあえず、やるべきことができた、と十夜は考えた。
 紗恵の負担にならぬよう、立派な家に嫁ぐ。
 とはいえ、自分ではそんな縁など作ることもままならない。
 少々不満ではあるが、家長である後一郎に頼む必要があるのだ。

 さて、どう言ったものだろうか。
 十夜はそう考えつつ、掃除の続きをすることにした。
233或騎士之難儀4 ◆CjaIRU0OF. :2007/09/12(水) 23:16:16 ID:p8/YkcbM

<四>

「と、いうわけです」
「…私にはわかりかねるのですが」
「よいですか!?
 姉様は、今まで長女としてこの家を支えてこられました!
 ですから!!そのご恩を返すためにも、私は立派な家に嫁がなければいけないのです!!」
「…とりあえず、貴女のために縁談をもってこい、ということでしょうか」
「そういうことです」
「…姉様の縁談を先にまとめなければならないのですが…」
「姉様が言ったのです!
 私が嫁に行けば、安心して嫁に行ける、と!!」
「…」

 夕方に目を覚ました右庵は、起床と同時に持ちかけられた、十夜の頼みに面食らっていた。
 彼女自身の勢いもそうだったが、内容自体も今まで聞いたことのないような頼みだったからである。

「…とはいえ、一朝一夕というわけには」
「わかっています!ですから、とりあえず姉様より先に、私の縁談をまとめて欲しいと言ったのです!」
「…」

 そう上手くいくものだろうか、と右庵は考えたものの、十夜に逆らっても彼女の機嫌を損ねるだけだということは良く知っていた。
 とりあえずその場は頷いておいたものの、実際にその通りにできるとは考えにくい。

 ただ、十夜のことを心配して紗恵は家に残っている、ということはそこそこ興味深い話であった。
 そうであれば、確かに十夜の言うとおり、十夜の縁談を纏めれば、紗恵も嫁にいくことを承諾してくれるのかもしれない。
 それは、今まで考えもつかなかったことである。

「右庵殿、食事ができました」

 部屋の外からそう声をかけた紗恵にも、朝の様子を引き摺っている様子は見られなかった。
 紗恵に今参ります、と答えてから。

「…ありがとうございます」
「はい?何か言いましたか、兄様」
「…いえ」

 妹に頭を下げ、右庵の一日は始まった。
234或騎士之難儀4 ◆CjaIRU0OF. :2007/09/12(水) 23:18:27 ID:p8/YkcbM

<五>

「上手く言ったものだな。
 妹を屋敷から追い出せば、後に残るのはお前とあ奴だけ」

 夜の庭。
 投げかけられた不快な言葉に、刃を構える。
 月光を受けるその刃は、見事なまでに輝いていた。

 闇を払い、妖や魔を退けるはずの光。
 だがしかし、目の前にいる存在は何も感じてはいないようだった。

「私を切れば、王命が下るぞ?
 下手人を探せ、とな」

 冗談に聞く耳を持つ必要は無い。
 相手は、人ではない。
 これを殺したところで、何ら問題はないはずなのである。
 そもそも、殺せるとは思っていない。

「右庵がいなければ、言葉を交わす意味も無い、ということか」
「…その名を呼ぶな」

 口にされた名に、思わず言葉が先に出た。
 相手もそれを狙っていたのだろう。

「奴をそう呼んでいいのは自分だけ、か?
 自分の物にでもしたつもりか」

 嘲る様子の口調に、腹が捩れる感覚を覚える。
 それこそが相手の意図するところなのだとわかっていても、どうしようもない。

「やっと満足してもらえる相手が見つかった、と奴もほっとしていたのに。
 全く、あまり弟に迷惑をかけるものではないぞ」
「…黙れ」
「奴から離れるつもりはない、か。
 邪魔になる者は、八年前のように全て消す気か?」

 何故それを、とは聞かない。
 ただ、刃を振ることで答えた。

「魔を退ける煌き、とはいったものの。
 残念ながら妖魔の類ではないのだが」

 刀を振りかぶった時点で、標的はいつの間にか間合いの外にいる。
 しかし、それが無駄な行為であっても、敵意を失くすつもりもなかった。

「しかし、右庵に惚れた女でもできた場合はどうする気だ?」

 そんなことがありえるはずがない。
 もしあったとしても、どうなるかは知れている。

「それこそ愚問か。
 邪魔者を全て消す、と先ほど私が言ったとおりになるだけだな」
235或騎士之難儀4 ◆CjaIRU0OF. :2007/09/12(水) 23:19:42 ID:p8/YkcbM

 表情は浮かんでいないはずだ。
 考えを読まれたか、とも思う。
 と、相手は頭に手をあて、やや大げさに首を振った。

「私の苦労もわかって欲しいのだが。
 今回のこともそうだが、あまり無茶はしないようにしてほしいものだ。
 あれ程頑丈で、しかも色々と都合のいい男はそうはいない。
 それこそ、私の相棒が務まるような男は、な。
 だからこそ、お前が何かをして、奴が王都にいられなくなりでもしたら、厄介なのだ」
「…貴様」
「だからお前が怒るなというに。
 男女の情愛をかわすようなつもりは私にもないぞ」

 そうは言うものの、油断はならない。
 いつ、何がどうなるかなどわからないのだ。
 この女にそのつもりがなくとも、男の方がそのつもりになってしまうことだってある。

「気持ちもわからんではない。
 お前との付き合いも、そう短いものではないのだからな」
「…貴様が右庵殿を引き回さなければ、私もこのようなことはしない」

 それはそうだ。
 自分の敵わない相手に、意味もなく刃を向けるほど愚かにはなれない。

「そうもいくまい。
 私にも色々と都合がある。お前に都合があるようにな」
「ならば、せめて右庵殿に付き纏うのは止めてもらおうか。
 あのように身を寄せ合う必要などないだろう」
「そうは言っても、な。
 商売女のような格好の者と、騎士が並んで歩くのなら、あのような関係が自然だろう」
「いつも袴姿でいればいいだろう」
「あの格好をしていると、右庵が窮屈そうなのだ」

 くく、と笑った女に、さらに怒りが膨れ上がる。
 自分の方が、彼のことをわかっているとでも言うつもりなのか。

 が、相手は自分の怒りになど興味はないようだった。

「…間もなく時間か。
 私は戻るぞ。そろそろあ奴が書の催促に来るのでな」

 当て付けそのものの言葉に、ぐ、と刀の柄を握り締める。
 しかし、相手は涼しい顔でひらひらと手を振るだけだった。

「よいか?重ねて言うが、無茶はするなよ。
 特に、あ奴が持ち出した縁談の相手に手出しなどするな。
 今と昔は違う。
 あれで、あ奴は切れ者だぞ…そういったことに関してはな」

 最後に聞こえたのは、ひどく具体的な忠告だった。
 だが、それも声だけである。
 自分が相対していたはずの女は、すでに屋敷の庭のどこにもいなかった。
236或騎士之難儀4 ◆CjaIRU0OF. :2007/09/12(水) 23:22:45 ID:p8/YkcbM

 夜もとうに深くなり、肌寒さを感じる。

 きっと、「彼」は今夜も王都の中を巡っている。
 そして、明日の朝まであの女に振り回されるのだ。

 そう考えると、気が気ではない。
 だが、何もできない。

 彼がいない間、屋敷を守るのが自分の役目。
 彼が働けるよう、補佐をするのが自分の役目。

 そも、自分の体はそこまで頑丈ではない。
 この寒空の下、彼について回ったところで、体を悪くするのが関の山だろう。

 叫び出したいような思いを無理やり押し込め、屋敷の中へ、そして自分の部屋に戻る。

 灯をつける。

 暗闇に、わずかな光が生まれた。
 弱い光の下、浮かび上がったのは、最愛の人の着物だった。
237或騎士之難儀4 ◆CjaIRU0OF. :2007/09/12(水) 23:24:46 ID:p8/YkcbM
以上で投下終了です。
前スレ>>535さんの質問ですが、直後に張られていた説明で間違いありません。
説明に従えば右庵=忌み名、後一郎=字、といったところです。
もっとよく知りたい人は、武士 名前 などで検索するといいかもしれません。
238名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 23:27:37 ID:EjWXO4As
リアルタイムGJ!
何というツンヤンデレ……
間違いなくツボにジャストミート
妹の方も右庵に対してどうにかなるんだろうか
うーん先が気になるな
239名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 00:24:04 ID:/okrvE0F
GJ
八年前に何があったのか…両親は、相手先は……気になるな
240名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 00:37:55 ID:of+BOp2m
>>237
やベー、姉様の性格がめっちゃツボだわ・・・
それにしても千里耳と紗恵の間にどんな確執があるのか・8年前に何があったのか、滅茶苦茶気になるし
早く続きが読みたいのでがんばってください!!
241 ◆WIhkQEicx2 :2007/09/13(木) 00:54:57 ID:n3n5fsiJ
投下します。
242鬼 ◆WIhkQEicx2 :2007/09/13(木) 00:57:28 ID:n3n5fsiJ
明かりなど何もない夜の教室で、ぼう、と何かが揺らめく。
煙が漂っているようでもあり、袋の中に何か光を出すものが入っているようでもある。
しかしそれは煙でも光でもない。魂である。鬼、といってもいいかもしれない。
よくよく見れば、その姿が現代の教室にはまるで似合わぬ、刀を身につけた侍風であることが分かる。
和装に身を包み、しかし髷は結わず自然に流している。
その魂は生前の名前を、森巣誠一郎といった。彼は、この場所を訪れたことを後悔していた。
最初に外観を見た時から、陰の気が濃い、と感じた。
最早人の身ではない彼にとって、それはむしろ心地いい場所であることを示す。自然、足が向いた。
この時代の子供たちの学び舎であるということは分かっていたが、
既に使われていないということは、草の生え始めた外壁を見てもはっきりしていた。
そこの住人であるかのように、何の躊躇もなく建物に立ち入った。

(迂闊だった。)
と、彼は思っている。
彼が心地よい場所とは、つまり他の息をしなくなった者たちにとっても心地いいということだ。
既に人の姿かたちとか意思といったものを捨て、何か不透明なもの、といった程度のものになった者なら、
無視もできるし襲ってくるなら切り捨てることもできた。

しかし、彼がその日出会ったものは、完全な人の形を保ったままの、しかも少女の霊だった。
数えることもなく何階か上った先の廊下で出くわしたその少女は、座り込んで泣いていた。
女子学生のよく身に着けている服と同種のものを身に着けている。この学校で死んだ者の魂だろうか。
その少女に、彼は、
「どうした。」
と、声をかけた。死んだものにどうしたも糞もない、ということもあるが、
彼はそういうことができない性分である。見捨てて立ち去る自分に負い目を感じる。
少女は、青白い顔を森巣の方に向け、しばらくその姿を見つめていた。
立ち上がりはしない。突然に言い放った。
「私を切って。」
243鬼 ◆WIhkQEicx2 :2007/09/13(木) 00:59:26 ID:n3n5fsiJ
予想していなかった言葉に、少し目を見開き少女を見る。
少女は、たじろがなかった。
双方何も言わないままでいると、しばらくして少女がぽつりぽつりと語った。

何人と落ちても誰も自分の傍にはいてくれない。皆自分とは別のところに逝ってしまう。
もう落ちるのには飽きた。今度こそ誰かに終わりにしてほしい。

少女は転落して果てたものであり、これまで何人か人を道ずれにして見たものの、
浮かばれることも満足することもできない、という、おおよそのことは森巣にも分かった。
そして、自分が何をすべきかといえば。立ち去るか、切るかしかないのだろうということも見当がつく。
元気を出せ、という言葉ほどその場で滑稽なこともないし、念仏を唱えてやることもできない。
その身に大小を帯びている森巣の様子を見て、彼女は切られようという思考に至ったのだろう。
切ってやれば、この少女の未練とか無念といったものも断ち切れるのだろうか。
魂の行き着く先などは彼には分からなかった。が、刀を抜いた。
それを見て、少女はそっとうなだれる。首を、差し出した。
その細い首に、森巣の刀が走った。

そういうことがあって、彼は自分の行動を後悔している。
こういう場所には、少女のような思いを抱えた先客がいるということを思い出すべきだった。
(あの少女は、自分のような者に出会うべきではなかった。)
そういう思いが強い。
自分の無念が何であるかも知れずただただこの世をさ迷っているような、そんな男に出会わず、
何かを諭してやるような人物と出会っていれば。
無常といった気持ちを、改めて彼は覚えていた。

が、不意にそういった気持ちが消えた。
生きているものの匂いを嗅ぎつけたからである。
どこからか、漂ってくる。彼のような虚ろのものではない、確かな息遣い。
(どこかに、いる。しかし姿が見えない。)
妙だった。彼の目は、反射した光を網膜で捉えるのでなく、ものの魂を感じ取る、といったように見える。
それなのに、何も見えない。
244鬼 ◆WIhkQEicx2 :2007/09/13(木) 01:02:12 ID:n3n5fsiJ
すっと再び刀を抜き、下段に構え、左踵を上げる。
(遁甲で身を隠しているのか。)
彼のいた時代にも、この時代にも、そういう術士たちは生き続けている。
生きている頃にはむしろ疑っていたが、闇夜に住むようになってからは否応なしに出会う連中だ。
「誰だ。」
見えないものに向かって、声をかける。
「分かるの?大したものね。」
果たして、どこからか返事があった。返事をするとは、相手はどうやら素直な人物のようだ。
しかし、声から相手の位置は分からない。空気が震えるというよりは、頭の中に直接響いているだけだ。
「何の用かは分からないが、私は誰かに害を成すつもりはない。」
だから放っておけ、という意味だった。術士は大抵悪霊を払うか生きている人間を呪うかで、
無害な霊をいちいち成仏させてやるのは僧の仕事というのが相場である。
「抜け抜けと。肝試しに訪れる人を突き落として殺す、地縛霊の癖に。」
ふん、と笑うように声は言う。彼には一瞬何のことだか分からなかった。
が、すぐにそれが先ほど自分が切った少女の霊のことだと解した。
「人違いだ!」
咄嗟に、大声で弁解したが、声はそれ以上響いてこなかった。どうやら説得はできそうにもない。
油断なくあたりを見渡す。
きゅ、と、微かに床と砂利が擦れて鳴るような音がした。すぐにその方向に目をやる。
そこには何もなかった。ただの暗闇である。しかし、何かがいる。
少し離れたその位置にどう対処しようか思案していると、相手の方から動いた。

ただの暗闇の中から、いきなり手が生えた。いや、手だけが現れた。
見るとその手は白い何かを指で摘んでいる。それを、森巣に向かって振り放った。
大した速さではない。体にたどり着く前に、刀を跳ね上げて切り払う。
しかし。
(重い!)
鉄の腕に刀身を握られて、思い切り押されているような感覚。
それでも何とか押し返し跳ね返した。ひらひらと下に落ちたそれを見ると、ただの紙片である。
(ただの紙に、呪をかけているのか!)
相手はかなりの呪術者か陰陽師であるらしい。
再び暗闇から紙片を掴んだ手が現れる。目をこらすと、紙片のすぐ横に顔らしきものも見えた。
ぶつぶつと口が何かを呟いているようだが、不可視の術のせいかおぼろげにしか見えない。
再び投げつけられたそれを今度は上段から叩き伏せるが、やはり尋常な重さではない。
が、ぎりぎりで押しのけて進めないということはない程度の重さだった。
次々と投げつけられるそれを牛の群れを掻き分けるような気持ちで押し分けながら、
彼は暗闇の方へと歩を進める。
245名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 01:04:18 ID:n3n5fsiJ
「嘘!?く、来るなぁ!!」
暗闇の方も、自分の間合いに森巣が侵入してくるのがわかるだけに、
一歩一歩と必死で遠ざかりながら紙片を投げようとする。
しかし、うまくはいかないようだった。どうやら、何か布のようなもので身を包んでおり、
それが霊である森巣の目から逃れることが出来るのと同時に、身を包むものの動きを阻んでいるらしい。
森巣は、襲撃者の後ずさる動きが鈍いことに気づくや否や、渾身の力で床を蹴りつけた。
右足が地に着くのと同時に、切っ先は紙片を摘む手のその紙片だけを正確に貫いていた。

紙片と共に、襲撃者の身を包む布のようなものも巻き込まれたらしい。
はらり、とそれが落ちる。
現れたのは、白い小袖に緋袴の巫女だった。
年は20にも満たぬだろう。大きく見開かれた黒い瞳が、こちらを呆然と見つめている。
白い頬に、つ、と赤い血が流れた。どうやら、切っ先が顔にも触れたらしい。
彼が刀を引く前に、芯を抜かれたようにどすんと巫女が床に尻餅をつく。
何事か、と思っていると、巫女の大きな目から涙が流れ出した。
彼は、慌てた。それを顔には出さなかったが、こんな年端もいかない娘相手に必死に応戦し、
挙句刀を向けて泣かせてしまったとあっては、なにやら恥ずかしくもある。
君が調伏しようとしていたのは別の霊であり、自分は君にも他の人間にも危害を加えるつもりはない、
ということを何とか説明しようと思ったが、
しかしそれを考えていたせいで、手に持つ武器を鞘に収めるのを忘れていた。

彼女にとって、自分の眼前に刀をつきつけ、何かを考え込んでいる森巣の姿は、
彼女をどうやって殺そうかと思案している悪霊の姿にしか見えなかった。
生きたまま切り刻まれるのか、あるいは一撃で首を落とされてしまうのか。
もしかしたら、散々に嬲られ犯され殺されるのかもしれない。
ここで何人も殺しているだろう悪霊なら、そういうことをしても何も不思議ではなかった。
自殺した学生の霊か何かだろう、と高をくぐっていた挙句、自分の術が通じない敵に出会ってしまった。
不意に股が濡れているのに気づく。恐怖に耐え切れず漏らしてしまったのだ。
ああ、なんて情けないのだろう、と絶望する。しかし、彼女にはもうこう懇願するしかない。
「お願い。殺さないで。」

彼の目の前で助命を願う巫女の姿は、たまらなく痛々しかった。
抱きしめて、大丈夫だと言ってやりたいほどだったが、しかし先ほどまで彼女とは命のやりとりをしていたのである。
結局、ここでも彼は去る以外の何も方法が思い浮かばなかった。
刀を引き納め、振り返ると、心もち急ぎ足でその場を後にした。
昇降口と呼ばれる門を出ると、空は白みかけていた。
結局、彼はこの日二回も女の涙を見ながら、そのどちらにもたいしたことをしてやることはできなかった。
(俺が誰かにしてやれることなど、もう何もないのだ。)
何を果たせば満足できるのかも分からないままに、諦めだけが身に積もっていく。
太陽に晒され、さらに薄くなっていく自分の体を見ながら、森巣はため息をついていた。

これが、森巣誠一郎と鏡春菜との、最初の出会いになる。
246 ◆WIhkQEicx2 :2007/09/13(木) 01:04:55 ID:n3n5fsiJ
ここまでです。続きます。
247名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 01:05:29 ID:4hwrR9rc
GJ!
>234の初っ端の千里耳の台詞に吹きましたw
姉さんの静かなる策謀にwktkです!
248名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 01:11:05 ID:n3n5fsiJ
おお、俺も言い忘れてた。
>>237、GJ!妹が展開され始めるのが楽しみです。
249名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 01:19:29 ID:/okrvE0F
何やら長編の香りがして戻ってきました
本日二回目ですけどGJです
250名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 15:01:41 ID:HU+82/tx
>>237>>246
乙です!!続きを楽しみ待ってます。
まとめサイトの管理人さん、仕事早すぎw乙です!いつもお世話になっとります。
251ふすまの奥で ◆KJPplSAabQ :2007/09/13(木) 18:47:42 ID:Osjl1vaE
「…真里菜、起きてる?」
トントンとふすまをノックしながら、制服姿の少年は尋ねた。
しばらく待っても返事は無い。

…寝ているのだろうか?
だったら起こさない方がいいかな。
そう思い、静かにふすまを開ける。

和室の中で、布団で横になってる少女を見る。
すうすうと規則正しい寝息が聞こえる。
やはり眠っているようだ。

足音を立てないように気をつけながら、布団の横に座る。
そして、少女の右腕に眼をやり、点滴の針が外れてないか確認する。

「…よし、大丈夫だな」
やれやれと一息つくと、少年は少女を見る。

…今日も綺麗だなあ、こいつは。
肌こそ、病的に青白いが、その少女はまるで人形のようだ。
しかも人形の中でも、超一流の職人が精魂込めて作り上げたような、
見事な一品だ。

ぼんやりと少女を見続けていると、少女の顔に変化が現れた。
怖い夢でも見ているのだろうか、少女は苦しげに顔を歪ませ、微かなうめき声を
立て始めた。
穏やかだった寝息も苦しげなものに変わり、起こすかどうか迷っていた少年も、
少女のまぶたに、涙が浮かび始めた事に気付くと、慌てて少女の体を揺すり、
声をかける。

「真里菜、真里菜!」
必死に少年は少女の体を揺する。
「…う、あ?」
目が覚めたのか、少女は瞳を開けた。

「……お、にい、さま…?」
まだ意識が戻りきってない、焦点の合ってない瞳だったが、
少女はまるで縋るような手つきで、少年の手を握った。

「…あのね、またね、夢見たの。
 あの時の、夢。お母さんに、刺されたときの」
「…うん」
震える少女―――植田真里菜の頭を撫でながら、その少年、
白井真太郎は答える。

「もう、忘れたいのに、思い出したくないのに」
「…うん」

「…怖いの」
「…うん」
無言で、真里菜の頭を撫で続ける。
252ふすまの奥で ◆KJPplSAabQ :2007/09/13(木) 18:48:29 ID:Osjl1vaE
どれくらい、無言のときが過ぎただろうか、
「…お兄様」
唐突に真里菜が立ち上がり、真太郎に抱きついた。

「なっ!ちょ、真里菜!」
真太郎はとんでもなく慌てた。
今まで布団に隠れて見えなかったが、真里菜の格好はネグリジェ一つだった。
ほぼ下着姿の女の子に、とんでもない綺麗な子に、例えそれが血の繋がった
妹でも、抱きつかれたのだから当然焦る。

「真里菜!ちょ、離れなさい!」
大慌てで引き剥がそうとするが、真里菜はぎゅっとしがみついたまま離れない。

「真里菜!離れろって!離れた方がいいぞ!
 このままじゃお兄ちゃん、ちょっと」
「……震えが、」

焦りまくっていた真太郎だが、
「…震えが、止まるまででいいから…
 お願い、こうさせていて…」
か細い、真里菜の声を聞くと、沸騰しそうだった脳みそもすぐに
常温に戻った。

真里菜の背中に手を回し、そっと抱きしめ、優しく背中をたたいてやる。
そうすると安心できるのか、震えていた真里菜が、徐々に落ち行いてゆくのが
解った。

そうやって、しばらくの間、真里菜と抱き合っていたのだが、
「ッん…」
真太郎の手が真里菜のわき腹に当たると、真里菜が艶かしい声を上げた。

その声で、頭から飛んでいた劣情が再び頭に上ってきてしまった。
そうだというのに、真里菜はよりいっそう、真太郎に抱きついてくる。

顔がどんどん赤くなっていくのがわかる。
鼻息が荒くなりそうで困る。
やばい。勃ちそう。
ダメだ。妹だぞ。こいつは。実の妹。
そりゃ、実感なんて無いけど。
妹。妹。妹なんだぞー―――!!
253ふすまの奥で ◆KJPplSAabQ :2007/09/13(木) 18:49:52 ID:Osjl1vaE
「…お兄ちゃん。
 なにやってるの…」
「おわっ!!」
 
ビクッと振り向くと、そこにもう一人の妹、シノがいた。
「…いつ帰ってきたんだ」
「…ついさっき。
 ご飯できたから来いってお母さんが」
「ああ、わかった。真里菜連れてすぐいくよ。
 先行っててくれ」
「うん…」

そう言ったのに、シノは部屋から立ち去らなかった。
「どうした?シノ」
「…いつまで、抱き合ってるの…」
拗ねたような、泣きそうな顔のシノに指摘され、改めて自分の状態に慌てる。
今度は真里菜もすぐに体を離した。


真里菜を支え、真太郎は廊下を歩く。
その二人を見ながら、シノは後ろからついていく。

悔しい。ねたましい。離れて欲しい。
そう思ってしまう自分がいやだった。

真里菜さん。
真太郎の本当の妹。

まだ子供の頃、真太郎と真里菜は両親の離婚で離れ離れになった。
真太郎がついていったのは父親の方で、その父の再婚相手が、シノの
母親だった。

真太郎とシノはすぐに仲良くなった。
一緒に遊んだし、シノが泣いていたらすぐに飛んできてくれたし、
いい事をすれば沢山褒めてくれた。

シノは本当に真太郎が好きになった。

けど、どうしても受け入れられない事が一つだけあった。
真里菜のコト。

真太郎はよく真里菜の事を話した。
何が好きだったか。何が嫌いだったか。
どんなときケンカしたか。どうやって仲直りしたか。

懐かしそうに話をする真太郎を見ると、シノは怖くなった。
お兄ちゃんは、いつか、私じゃなくて、本当の妹の所に行っちゃうのではないか。
254ふすまの奥で ◆KJPplSAabQ :2007/09/13(木) 18:50:22 ID:Osjl1vaE
だから、思い切って聞いてみた。
私と、その妹、どっちが好き?と。

真太郎は決められないよ。と答えた。
それを聞いて、シノは思いっきり泣いた。
泣けば、真太郎はすぐにシノの思うようにしてくれるから。
今度もすぐに、自分の方が好きといってくれると思った。

それなのに、真太郎は答えを変えなかった。
何度聞いても、何度聞いても自分の方が好きだといってくれなかった。

その日から、決定的にシノは真里菜を憎んだ。
会ったこともない、真太郎と血の繋がりを持った真里菜が許せなかった。


その真里菜が、今、この家にいる。
真太郎に支えられて歩いている。


つらい事があったんだから。
真里菜さんの支えは、真太郎しかいないんだから。
そう思っても、胸の苦しみは取れなかった。

「シノさん?」
気がつけば、真里菜さんがこっちを見て、不安そうな顔をしていた。
いけないいけない、と思い、不快な感情を沈めて、笑顔を向ける。

ホッとしたような表情で、真里菜は微笑み返す。
その微笑に、何か引っかかるものを感じる。

なぜか、真里菜の微笑が、仮面のように感じる。
まるで、彼女もまた、心の奥に、どろどろとした情念を隠しているかのように。
255名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 19:39:47 ID:ViWAd6uG
投下終了・・・かな?
>>251
付き合いの長い義妹vs突然現れた実妹か
大好物です。
256名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 19:42:48 ID:5ZCw72zE
GJ!!!

続きも楽しみに待ってます!!
257名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 22:34:36 ID:PxdlJVIF
実キモウトと義キモウトの対決
意外となかったので期待しちゃうかも
258名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 22:49:05 ID:bp2FxECs
キモウトの保管庫にある
259名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 23:21:07 ID:9P1B7xsR
>>255
まとめサイトの「赤色」が似たような設定だったかな…
しかし頑張って完結させて欲しいyo?
260名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 23:30:51 ID:I19RbTnu
投下が多くて良い流れですね
先週の閑散としてたのが嘘のよう
皆さんGJです

では私も投下します
261白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/09/13(木) 23:33:05 ID:I19RbTnu
<div align="center">+    +    +    +<div align="left">


「クリス……。 いい加減其の仏頂面やめなさい」
 呆れを含んだ声でリオは声を洩らす。
「こういう夜更けこそモンスターが何時襲ってくるとも限らないから気を張ってるんです」
 だがクリスは相も変らずの表情で返す。
 其の応えにリオはまた溜息を洩らす。
「アンナのことですか?」
 リオがそう言うとクリスは不機嫌そうに視線をそらす。
「アンナの何がそんなに気に食わないんですか? 良いコじゃないですか。
セツナだってこのコの事気を許して……」
「それがイヤなんですよ」
 言いかけのリオの言葉を遮るようにクリスは言葉を発した。
 そして忌々しげに視線を向けるは安らかに寝息を立ててるアンナ。
「昨日今日知り合ったばかりの癖して姉さんに馴れ馴れしく懐いて……!
しかも其の事で姉さんに受け入れてもらって……!」
 そう、今アンナが眠ってるのは同じく静かに寝息を立ててるセツナの膝の上。
 それが尚一層クリスを苛立たせていた。
「挙句の果てに『お姉さまと呼んでも良いですか』だぁ?!
ふざけるのも大概にしとけってんだ!!」
「わ、分かりましたから少し落ち着きなさい。 ね?」
 リオは檄昂しそうなクリスを必死になだめる。

「それにしてもどうしたんです? いや、あなたがセツナを慕ってるのは良く解かってますが」
 そう。 セツナに言い寄ってくるものがいればそれが男であれ女であれ
そう言う時クリスはいつも不快感を露わにしていた。
 そして其の気持はリオも分からないでもなかった。
 何故ならそう言った連中の殆どがセツナの『勇者』の肩書きに寄ってくる連中ばかり。
 だからセツナの方もそうした連中はまともに相手になどしなかった。
 
「でもさっきも言いましたが、アンナは良いコじゃないですか。 そんなに毛嫌いしなくても」
「だから……。 だからイヤなんです」
「どう言う事です?」
「リオにいさんの言うとおりこの小娘は嫌な女じゃないと、悪い人間じゃないと思いますよ。
でも、だけど……いや、だからなのかな。 何か油断ならないそんな感じがするんです……。
気を抜いたら奪われてしまうような……」
 そう言うとクリスはそれっきり黙りこんでしまった。
 其の表情は重くリオもそれ以上は訊ける雰囲気ではなかった。
 そうして夜は更けていった。

 
<div align="center">+    +    +    +<div align="left">
262名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 23:34:25 ID:I19RbTnu
 アンナを送り届けた私達は今、彼女の住む町に――屋敷に逗留してた。
 ちなみに町のつくりは城壁に囲まれた所謂城塞都市。
 送り届けるまでの道のりでも感じたのだがこの地方のモンスターは結構手強く、
それゆえの堅固なつくりの町であった。

 アンナを無事送り届けた私達だったがそこでお別れではなかった。
 いや、最初はお別れするつもりだったんだけどね。
 このコ――アンナに私達を父親に紹介したいと、そして会って欲しいとせがまれて
残っていたのだ。
 私達が送り届けた時彼女の父親が居なかったのはモンスター討伐に赴いていたから。
 それは彼女の父親がこの地方を治める領主としての勤め――。

 そしてアンナは話してくれた。 自分の父親のことを。
 母親を幼い頃亡くし男手一つで自分を育ててくれた父を尊敬してる事。
 昔は冒険者をしてたらしいが彼女が生まれる前に戦いで利き腕と片足を失い
冒険者を引退した事。
 しかし彼女から言わせればそれでも父の強さは別格だと言う。
 隻足ゆえに以前のような冒険の旅は無理でもこの地をモンスターの驚異から護る。
 それぐらいの事を十分やってのけられるだけの強さを持ってるらしいのだと。
 彼女の剣はそんな父から教わったもの。
 そして稽古でとは言え一度も勝った事が無いと。

 そんな風に父親の事を話すアンナはとても誇らしく見えた。
 いや、アンナだけじゃない。 彼女の父は町や屋敷の人たちからも慕われていた。
 父親を知らない私にとってそんな姿は少し羨ましく見えた。
 もとの世界にいた頃も友達の父親のことをそんな風に感じてたっけ……。



 そして一晩明けた今日アンナの父親が帰ってきた。
 彼女は父親の帰宅を知るや嬉しそうに玄関へと駆けていった。

(父親か……)
 玄関へと駆け行くアンナの背中を見ながら私は自分の父親のことを思い起こしていた。
 父親――いや、遺伝的な繋がりはあっても父親となんて認めたくは無い存在。
 父親がいなかったお陰で幼かった頃私がどれだけ辛く寂しかったか。
 だから――私は憎んでいた。 出会った事もなく顔も知らない父親に当たる男のことを。
 その理由は寂しかったからだけじゃない。
 母の――母さんの心を縛り続けていた事も其の一つだった。
 友達の父親が羨ましくて、その中には再婚による血の繋がらない父親の子もいた。
 そしてその子は血が繋がっていないことを感じさせないくらい義理の父と仲良しだった。
 だから母さんが再婚――いや其の男と結婚していなかったので正確には違うかしら――
してくれれば、そう願ったりもした。
 でも母さんには結婚などする意志はなかった。
 母さんは自分が捨てられたのにそれでも其の男の事が忘れられなかったのだ。
 母さんの事は好きだったけど其の一点だけは嫌いだった。
 だから其の事で喧嘩した事もあったっけ。
 そんな母さんも事故で逝ってしまった。 交通事故であっけなく。
 今わの際、母さんは私のことを案じつつも最後に願ったのは、それは……。

263名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 23:36:00 ID:I19RbTnu
「お帰りなさいお父様! 待ってたのよ、是非お父様に出会って欲しい方がいらしてるの!」
 玄関から響いてきた其の声に、過去の感傷に浸ってしまった私は引き戻された。
 アンナの嬉しそうな賑やかな声に。
 そしてややあってアンナは一人の男性と共に部屋に戻ってきた。
 見たところおそらく四十台といったところだろうか。
 私より頭一つ分近く背が高いだろうか。 髪は黒に近い濃いブラウン。
 服の上からも分かる屈強な体付きは普通の中年男性とは異なり鍛えこまれてるのが分かる。
 顔つきからもこれまでの歩んできた年相応の人生の深さや重さが滲み出ているかのよう。
 なるほど、アンナが尊敬し慕う気持も分かる気がする。

 私は挨拶をしようと席を立ち其の男性――アンナの父と視線が合った瞬間
思わず息を呑んだ。
 間違い無くその人とは初対面で始めてみる顔で、それなのに、何? この感じは?
 記憶ではなくもっと根幹的な、肉体が、血が、細胞が叫ぶ。
 ――私はこの人を知っていると――
 私はそれが一体どう言う事なのか困惑を隠せぬ表情で視線を外せずにいた。
 そしてその人も私の顔を見、驚いたような表情を見せていた。
 そして震える口を開き――。

「アキ……ナ?」
 鳥肌が立った。 其の口から発せられた名前に、私の思考は凍りついた。
「今、何と仰いました……?」
 何でこの人の口からその名前が出てくるの――
「あ、いや失礼しました。 昔の知人に似ていたもので……」
 何故なら――
「アキナ……。 そう仰いませんでしたか?
 其の名前は――
「"あきな”は……白澤 秋奈は……、
――私の母の名前です」


To be continued...
264名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 23:38:16 ID:I19RbTnu
投下終了です
途中からタイトルが抜けてるのはミスですorz
お待たせして久しぶりで申し訳ないです
265名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 23:50:26 ID:QhK2oohM
全部が全部面白い、とにかく続き待ってます
266名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 00:12:52 ID:3Ku+ObsL
白き牙が読めるなんて…今日はゆっくり眠れそうだ
GJ
267名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 00:16:20 ID:aByY5kb9
リオではなく、セツナをめぐる修羅場にwktkした。
クリス、最初はリオ>セツナだったのに、今ではすっかりセツナ≧リオ、セツナ>リオになって...
268名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 00:50:40 ID:TWT8tLvy
白き牙キタ━(゚∀゚)━!!
クリスだいすき
269名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 13:42:41 ID:X/fp8uui
wkyk
270名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 16:35:10 ID:E1Vdf5o6
書き込みが少ないおかげで神達が投稿してくれる
いい雰囲気だ
271名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 16:45:52 ID:HuWT5/Hg
>書き込みが少ない
関係ない
272名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 18:36:47 ID:3Ku+ObsL
>>270
関係ない

というかお前は何か勘違いをしてないか?
時間が有り余ってる人ばかりじゃないんだぜ?
少ない時間の中で書いてる人だっている。
行き詰まって筆を置く人だっている。
そういう事を考えてものを言ってくれ。
頼む。
273名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 19:17:28 ID:322qKFaT
ニートが書いているんじゃないのか_?
274名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 19:36:00 ID:kOpA+K5i
>>273
だったらすごいニートだな
ラノベ書きだろ
275名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 19:41:30 ID:qSFbP4VP
いがみ合うくらいなら黙ってろ
276名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 19:56:50 ID:322qKFaT
いや、働けよニートSS作家
アルバイトしながら小説家になろうとする連中は死ぬ程いるぞ
こんなとこで中途半端にSSなんて書いているから、人生も中途半端なんだよ
277名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 19:57:19 ID:vgEY1wdf
いい加減スルー覚えろ
278名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 20:12:44 ID:HuWT5/Hg
働きながらだと失敗する奴挫折する奴が多い
周りの協力ってのは大切
甘えられるうちに甘えとけ

俺はバイトしながら小説家めざしてたけど
結局自分の食い扶持稼ぐのに精一杯で
夢なんかあきらめたよ

279名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 20:16:09 ID:322qKFaT
>>278
あなたの痛い過去話をする場所ではないので
他のスレでやってもらえませんか? 正直、スレ以外の
話でスレを荒らすのはよくないと思いますよ
280名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 20:22:21 ID:HuWT5/Hg
ああ、すまん
たしかにチラシの裏だったな、、、

荒らすつもりはなかった
ちょっと感傷にひたってしまったようだ
忘れてくれ
281名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 20:36:20 ID:NZPzasmC
>>279
荒らしがなにを偉そうにw
282名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 20:38:58 ID:a9kyebtD
たった3行の身の上話だ。
聞いてやるぐらいの度量はある。
気にするこたあねえよ。
283名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 20:56:29 ID:HrTAWQkD
>>282の漢気に惚れた
284名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 21:19:53 ID:VI938PB7
この変な流れを変えてくれる神が来てくれないかなぁ・・・。
285愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/14(金) 21:29:07 ID:Km18UY3w
皆さん乙です
>>200の続き投下します。
286愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/14(金) 21:30:02 ID:Km18UY3w
「おはよ遼君」

 いつも通りの朝、通学路で私は遼君に声をかけた。

「あ、おはようございます」

 よし、今日は朝から遼君と会えた、いいことありそう。なんて心の中でガッツポーズ。

「今朝も寒いっすね〜」

 何だか嬉しそうに遼君は言った。

「どうしたの、そんなにニヤニヤして?」

 彼の機嫌がいいと、私まで何だか嬉しくなる。

「冬は好きなんすよ」

 これまた笑顔。やっぱり私は彼のことが好きなんだ。

「そうなんだ〜」

 こんな他愛もない会話をしながら、学校までの坂道を登る。

「あれ?」

 突然遼君が声をあげた。その視線の先には、

「あの車って………」

 いつぞやの黒塗りのベンツが悠々と走っていた。

「また誘拐されちゃうかもね」

 冗談めいた口調で私は言った。

「まさか」

遼君は苦笑いをしながら、それでもあの車が気になっているようだった。
287愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/14(金) 21:31:07 ID:Km18UY3w
あの誘拐事件か一週間が経っていた。遼君が可愛い女の子との再会について頬を思いっ
きり緩ませながら話すのを見て、私はどうしようもなく不愉快な気分になって、そしてそ
んな自分が嫌になったりもした。

 黒塗りのベンツは周りに威圧感を振りまきながら進んでいって、校門の前で停止した。

「もしかして……」

 私の心に今あるのは、不安。
 じゃあ遼君の心の中にあるのは?

「マジかよ……」

 ――――もしそれが期待だったら、

「中原さん、おはようございます!!」
「え!? 綾瀬さん、それウチの制服じゃ」

 ――――そしたら私は、どうすればいいんだろうか?




 正直、驚いた。こんなことが起こるなんて思ってもみなかった。

「今日からお世話になります、綾瀬楓です。よろしくおねがいします!!!」

 朝のHR、担任の紹介をうけた後、綾瀬さんはそう言って頭を下げた。彼女が教室に入
ってきたときからずっと、教室中がざわめいている。

「すげー、可愛い……」
「ほ、惚れた……」
「あんな娘、初めて見た……」

 それくらい、綾瀬さんは可愛いのだ。

指定された席に向かう途中、綾瀬さんは僕の方を見てニッコリ微笑んだ。
…………それだけで、今日一日幸せに過ごせそうだった。
288愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/14(金) 21:32:48 ID:Km18UY3w



一時間目が終わってからの休み時間、当然クラスメイトたちは綾瀬さんのもとに詰め寄
った。

「どこに住んでんの!?」
「え、えっと……桜ヶ丘のほうに」
「血液型は!?」
「え、Aです」
「誕生日は!?」
「十月さんじゅ」
「俺、高橋っていうの!!! よろしく!!!」
「え、あ、はい、よろし」
「てめえ、抜け駆けしやがって!!!! 俺武藤、よろ」
「お、俺佐藤!!!」
「え? え?」
「田中です!!!!!!!」
「わ、あわわ」

 可愛そうに綾瀬さん、飢えた獣たちに囲まれて。

「は、はう〜〜〜」

 漫画とかだったら混乱で目が渦巻きになっているんだろうなあ、とか呑気に考えながら
僕は席をたって、手を叩きながら群集の中に割って入った。

「はいはい諸君落ち着いて、綾瀬さんも困ってるだろ?」

 みんなが次第に落ち着きを取り戻し始める。もう高校生だしそんなにガキじゃないって
ことだろう。

「はあ、はあ…………中原さん、助かりました。ありがとうございます」

 言うと同時に天使の笑みが発動。生きててよかった〜。
 と、僕が和むのとは反対に、級友たちは殺気立っていった。

「何、おまえら知り合いなの?」

 し、しまった。
289愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/14(金) 21:34:18 ID:Km18UY3w

「い、いや、知り合いっつーか何つーか……」

僕は言葉を濁して何とか最悪の事態を回避しようと努める。

「い、いえ、中原さんは知り合いなんかじゃなくて……」
「そうそう知り合いなんかじゃなくて」

 ナイスだ綾瀬さん。

「中原さんは私の……だ、大事な人です」
「そうそう大事な……って、え!?」

 おいおいそんな顔を赤らめながら言ったら、みんなに誤解が……って、え? え?この
娘は何を言ってるんだ!?

 ほらみんなまた殺気立ってるし、

「み、みんなほら落ち着いて、もう高校生なんだから大人に、ね?」

 何を言っても無駄のようだ。目に宿った殺意は消えるどころかどんどん膨らんでいく。

「や、やめろーーーーーーーー!!!!!」

 死刑、確定。




「あ、あの中原さん」

昼休みになった。私は待ってましたというばかりに彼のところへ向かった。

「どうしたの、綾瀬さん?」

 中原さんはにこやかに振り向いて、それからすぐ
「あ………やば」
「え?」

 すぐに気まずそうな顔をした。

「とりあえず外へ!!」

 中原さんは急に私の手を掴んで、教室から逃げ出すように走り出した。
290愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/14(金) 21:36:27 ID:Km18UY3w

「え? え? どうしたんですか?」

 いきなりの出来事に私の頭は上手く動いてくれない。中原さんは走り続ける。

「あ! こら中原!!!」
「抜け駆けは許さねえぞ!!」
「待ちやがれーーー!!!」

 教室中から野太い声が溢れ出すのを、走りながら私は聞いていた。でもそのときの私の
心は、中原さんと繋がれた右手にあって、他の人達のことなんてちっとも考えていなかっ
た。

 胸が、すごくドキドキしていた。

 中原さんが私の手を握っている。

 私の、手を。

 私も中原さんの手をぎゅっと握り返す。

 このままずっと走っていてもいいな、なんてそんなことまで考えていた。




「はあ、はあ……ここまで来れば大丈夫かな……」

 鬼のようなクラスメイトたちから何とか逃げ切って、僕らがやってきた先は屋上だった。

「はあ、はあ、はあ、はあ………すっごく、ドキドキしました」

 綾瀬さんが息を切らしながらいった。

「ゴメンね、急にこんなに走らせちゃって」

 でも、こうでもしないと僕は確実に飢えた餓鬼ども、もとい愉快なクラスメイトたちに、
先ほど同様、ボコボコにされてしまう訳で。

「いえ、そんな………楽しかったですし」

 何故か綾瀬さんは顔を赤くしてモジモジしながら、まるで照れてるみたいにそんなこと
を―――
291愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/14(金) 21:38:57 ID:Km18UY3w

「あ」

 やっとその理由に気付いて、僕は綾瀬さんと繋いでいた手を急いで離した。

「そっ、そのっ、ごめん!!!」
「あっ………」

 離された僕の右手を見て、切なそうな声を出す綾瀬さん。そんな綾瀬さんを見て僕も思
わず顔が赤くなってしまったりして、もうどうすればいいか分からない。

「え、ええっと、その………それで綾瀬さん、なんの用だったの?」

 何とか平常心を取り戻して、僕は綾瀬さんに尋ねた。

「あの、お昼ご飯、ご一緒できないかなって思って」

 これまた顔を赤らめながら。全く、こんな可愛い娘にこんな表情でこんな提案をされたら

「うん、もちろんいいよ」

 断れるはずがないだろう。

「本当ですか!? ありがとうございます!!」

 そんでもってこの笑顔が、僕をとんでもなく幸せな気分にしてくれる。

 僕と綾瀬さんはベンチに腰掛ける。流石にもう十二月ということもあって周りには誰も
いない。
292愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/14(金) 21:40:03 ID:Km18UY3w
綾瀬さんは嬉しそうに鼻歌なんかを歌いながらお弁当の包みを開いていく。その様子を
僕はにこやかに見ながら自分の弁当を……

「あ」

 持っていなかった。弁当、というか今朝コンビニで買ったおにぎりは教室に置きっぱなしだ。

「どうしました?」
「いや、昼飯、教室だった」

 取りに戻ろうにも教室に行った途端、僕はこの天国には帰って来られなくなるだろう。
愉快な仲間達の手によって。

「す、すみません。私が急に」
「いや、急に連れ出しちゃったのは俺だからそんな謝んないでよ」

 どっちが悪いとかそういう問題じゃなくて、仕方のないことなのだ。

「昼は次の休み時間にでも食べればいいから、綾瀬さんは気にしないで」

 ね、と付け足して僕は綾瀬さんに言った。

「それじゃあ、私のお弁当少しあげます」

 少し悩んだ後、綾瀬さんはそう言った。

「そんな、綾瀬さんのもらうなんて」
「いいんです。私どうせ食べきれないんだから」

 そう言って、はい、とサンドウィッチを手渡してくれた。なんだかんだ迷った挙句、僕
はそれを受け取って、楽しい昼食の時間を過ごした。


293愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/14(金) 21:43:55 ID:Km18UY3w
以上で投下終了です。
そいでもって、脱字発見したんで訂正です。
>>286
誤:あの誘拐事件か一週間が経っていた。
正:あの誘拐事件から一週間が経っていた。

申し訳ないです。
次回もよろしくお願いします。
294愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/14(金) 21:45:50 ID:Km18UY3w
安価>>286 じゃなくて>>287でした!!
重ね重ね申し訳ないです……。
295名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 21:46:03 ID:zBiYI6Pc
リアルタイムktkr
作者様GJですっ。
296名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 21:47:16 ID:NJ0klj84
乙ー。学園ものはこうでないとって感じだね!
297名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 21:48:23 ID:3Ku+ObsL
GJです
毎回楽しみにしてます

あと皆さん、すいませんでした
298名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 22:39:25 ID:b5XQgk5K
>>294
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
自分がフラグを踏んでると気付いていない遼君が可愛そうだw
続きも期待してますよ〜
299名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 22:43:28 ID:z3a/Yllu
>>298
乙です!二人が対面したらヤバいだろうな・・・w先輩頑張れ。超頑張れ。
300名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 23:08:39 ID:E01vIY3O
>>255
乙!!GJ!!
301名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 23:16:02 ID:z3a/Yllu
間違った・・・
>>299>>294宛です
302名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 13:43:58 ID:aTttRovO
>>294
GJ!!!!
俺この作品ほんとに期待してるから頑張ってくれ!
303名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 18:02:58 ID:pMyR0yVQ
草まちwktk
304名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 00:37:00 ID:qZc18RN6
スレ違でスマンが携帯機種変して保管庫行ったら

QUERY_STRINGに y= が重複しており処理できません。この現象が出た場合、再度TOPページwww.sjk.co.jpから入りなおすことによって回避できる場合があります。

しか出ないんだか原因わかりませんか?
305名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 01:31:46 ID:sEfajgjA
QUERY_STRINGに y=-( ゚д゚)・∵;;
306トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/09/16(日) 01:57:31 ID:7CWE98HW
では投下致します

307桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/09/16(日) 02:01:16 ID:7CWE98HW
 第11話『悪魔と呼ばれる者』

 幼馴染たちが桜荘にやってきてからもう2週間の月日が経過していた。
更紗も刹那も桜荘に自分の部屋を敷金保証金なしで借りることができた。
ただし、保証人が俺になっているおかげで奈津子さんに『二人が逃げたら未払いの家賃と賠償金を払うのよ』と
軽く脅されてしまった。

まあ、すでに帰る家がない住所不定の二人に部屋を素性が怪しいと判断されて、どの会社も貸してはくれないだろう。
桜荘は敷地が広く空き部屋も余っているというのに入居者は全くいないと言って等しい。
そのような事情があるためか、奈津子さんにとて、更紗と刹那を入居させることは歓迎すべきことであったのだ。
 ただ、困ったことに所持金をここに来るまでに使い果していた更紗と刹那の生活用品やら下着やらなどを揃える必要があった。
俺は仕方なく自分の貯金の半分も引き落として、二人の生活用品を揃えた。
その金額は二人が泣きながら絶対に返すよと真っ赤な誓いを強制的に結ばれた。

  更紗と刹那が桜荘に馴染んできた頃。桜は間もなく枯れ落ちようとしていた。

 憩いの場にて、桜荘の住民の皆と一緒に安曇さん作ってくれた朝食を食べていた時であった。
席を立った奈津子さんが珍しくお酒の一滴も飲まずに皆に語りかけた。

「さてと。桜荘の桜がもうじきに枯れるから、私たちのお花見を今週の休日に開こうと思うんだけど。
誰か都合の悪い人がいるかな?」

 桜荘の管理人兼オーナーである奈津子さんが提案するのは桜荘恒例のお花見会であった。
普段、桜荘の中央の庭にある木は桜が咲く頃になると一般人の方々、町内の皆様、会社のお花見会として場所を貸し出すのである。
奈津子さんは有料で提供しているおかげで桜が咲いている間は収入を得ることとなる。
そのお金は奈津子さんの懐にはいかずに桜荘を維持するために賄われるのだ。
桜の木が枯れ落ちる時期に合わせて、桜荘の住民たちだけのお花見会が開かれる。
  来年も良い桜が咲きますように祈りと感謝の意を込めながら。

「私は大学が休みなので朝からご馳走を作りますからね。楽しみにしてください」
「去年、雪菜は桜荘に住んでいなかったからね。初めてのお花見会だよ。真穂さん。美味しい料理を一杯作ってね」
「任せてくださいよ」
 去年の桜荘のお花見会の頃に雪菜はまだ桜荘に住んでいなかった。
その数日後に雪菜と邂逅するわけなのだが、それはまた別の話だ。

「去年のお花見会はいろんな意味で盛り上がりませんでしたね。
私が参加してなかったのも確かなことですが。一樹さんが場を盛り上げるために衣服の全てを脱いで、歩道に出てくれれば、
面白いことになっていたのに」
「引きこもっていた分際で人を犯罪者というか露出狂に仕上げるつもりか。美耶子……」

「まさか……一樹さんを陥れるために日々努力している女の子にそんな恐ろしい犯罪もどきが出来るわけがありませんよ。
せいぜい、近所の皆様に一樹さんは桜荘に住んでいる女の子を脅迫して凌辱しまくっていることを言い広めているだけですから」

「なお悪いわ!!」
 饒舌な毒舌口調の美耶子のテンションに頭がまだ寝呆けている状態ではさすがに付いていける状態ではない。
せめて、相手をするならコーヒを飲んで完全に目覚めてからだ。
308桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/09/16(日) 02:02:32 ID:7CWE98HW
「カズちゃんは凌辱するよりされる方が好きなんだよね?」
「更紗も美耶子という悪魔の囁きに乗るな」
 朝食を食べている更紗がお茶碗を持ちながら、箸を俺の方に差して言っていた。お行儀が悪いぞ。
「お花見会に参加するなら、カレー専門店オレンジの仕事と都合を合わせる必要がありますね」
「大丈夫だよ。刹那。今のあの店は客をライバル店に取られているから。
人手はそんなに必要じゃないし。お花見会に3人とも休めると思うよ」
 更紗と刹那はカレー専門店オレンジのスタッフとして採用された。
朝倉京子という頭のネジの外れた女の登場でうやむやになった件を改めてクソ店長に認めさせた。
単純にイナズマキックで気絶させてから腹話術化したクソ店長の口からサイヨウサイヨウサイヨウと言わせたので
文句なしに二人の採用は決定された。
 ただ、朝倉京子率いるライバル店のブルーは早くて美味しくて安いモットーに駅前で可愛い制服姿をして堂々と広告を配っていた。
その効果があったのか、ブルーには客が大幅に客入りが右肩上がりに好調になり。
逆にオレンジはライバル店に客を取られて、どんどんと寂れて行く一方であった。
「じゃあ、全員参加ということで。今週の休日のためにいろいろと準備するわよ!!」
「おっーーーー!!」
 皆が揃え合うように声を合わせて腕を上げた。桜荘恒例のお花見会は皆にとって楽しみな行事になりつつある。
去年と大きく比べて違うのはその瞳に生気が篭もり、自然と皆が笑顔を浮かべていた。
 ただ、とある二人以外は……。
309桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/09/16(日) 02:05:40 ID:7CWE98HW
 労働というのは日本人にとっての義務であり、ある年令に達すると強制的に社会に放り出されるわけだが。
さて、俺の働いている職場のカレーを専門に扱っているお店は客が全くやって来なくなった。
その原因は隣に何の伏線もなくライバル店のブルーが先週に開店されたから。
当初は開店セールが過ぎた頃にはある程度のお客が戻ってくるとお気楽に思っていたが計算が狂ってしまった。
 新しくアルバイトの更紗や刹那を雇ったのにこれでは何の意味もなくなった。

青山次郎、朝倉京子の勝ち誇る高笑いが脳裏に聞こえてくると自然と怒りが沸いてきた。
 とはいえ。

 アルバイトの立場である俺が出来ることは何もない。
唯一、店の最大最悪の危機に対して、皆を引っ張って行くリーダーシップを取るべき存在である店長は。

「ちょうちょ−ちょうちょーちょうちょー。わ〜い」
 現実逃避していた。
「ダメだ。こりゃ」
 新たなバイト先か就職先を探した方がいいかもしれない。
 真面目にそう思っている最中に店のドアに飾られている鐘の音が鳴り響いた。
 客が来たと思って、ホールから飛び出してくるとそこには憎きライバル店の
ウエイトレス兼ホールスタッフの朝倉京子の姿がそこに在った。

「あらあら。せっかく、お客として来たんだからさ。もう少し笑顔で迎えてくれないの?」
「客ってか、あんたはただのスパイだろ」
「スパイ? こんな寂れた店にスパイする諜報機関があれば教えて欲しいわ。
とりあえず、私はあなたたちの絶対敗北を見届けるために遅い昼食を食べに来たんだから。
何でもいいから持ってきてくれる?」
「わ、わかりました……」

 一応、お客としてやってきた朝倉京子を邪険して追い出すのは敗北の二文字を認めることだ。
俺は不機嫌な顔を隠して朝倉京子をテーブルに案内する。
 そして、適当なメニューの名前を叫んだ。

「店長っっ!! 貧乳カレーをお願いします!!」

「Oh!! 気合いと私の怨念を込めて作らせて頂くぞよ!!!!」
「ってアンタら……いい度胸じゃない。コロス。コ、コロしてやるわ!!」

 顔を赤面させた朝倉京子が俺の衣服を掴んで、拳を強く握っていた。
ウエイトレスで鍛え上げた腕力は平均年令の女性を僅かに上回ると同時に
欠点を指摘された恥辱の怒りのおかげでそれは更に倍増されていた。
 いざ、殴りかからんとした時に心強い味方が通りすがりとしてやってきた。

「お客さま。水とおしぼりです。
後、カズちゃんの顔に傷の一つでも付けたら。
間違いなく、その場で八つ裂きになりますからね。お気を付けてください。
後、今度から馴々しくカズちゃんと口を聞いたら、問答無用に私がキレます」

「な、何よ。この子は……」
 突如、現われた更紗が黒い殺気を朝倉京子に向けて放っていた。
少しだけ後ろに一歩を下がりたい彼女は誇り高いプライドが邪魔して下がることができない。
表情は少し怯えを含めていたが、傲慢な態度を無理矢理に繕うとしていた。
「さっさと持って来なさいよね!!」
「はいはい」
 黒化した更紗の首っこを猫のように掴んで、俺達はホールに戻って行く。
これ以上、朝倉京子と会話すると更紗が熱いカレーライスを何かの拍子で顔面にぶつけるかもしれない。

それはそれでオレンジの信頼と信用というものを失ってしまうのだ。
 更紗よりも大人しい彼女に料理を運んでもらうしかない。
 俺はその彼女の名前を呼んだ。
310桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/09/16(日) 02:08:41 ID:7CWE98HW
「おめぇの出番だ。刹那!!」
「わ、私、頑張って貧乳カレーを運びます」

 おどおどしい態度で刹那は出来上がった貧乳カレーをトレイの上に載せて、貧乳の元へと向かう。
足はびくびくと震えているが、人見知り激しかった刹那はこの仕事をきっかけに対人スキルの方は上がっている。
ただ、不機嫌さを全く隠さない貧乳がホールの方に人を殺せそうな視線を送っているのだ。
その辺にいる見た目だけが格好いいチンピラだったら数秒で睨み負けて、情けない悲鳴を上げて退散するだろう。

「あ、あ、あの貧乳カレーです。冷めない内にどうぞ」
「貧乳言うなぁぁぁぁ!!
 そ・れ・か・ら・。注文を頼んでから、何分待たせるつもりなの? 
私の店じゃあ、この程度のカレーは数分以内に出来上がるわよ」

「ううっ……すみませんですぅ」
 貧乳の罵声に耐え切れずに、半分泣きそうな表情を浮かべた刹那は助けを求めるかのようにホールにいる俺達に視線を向けた。

(刹那ちゃん……ああいう狂暴な人種とか大苦手なんだよね)
(ああ。小さい頃、野良犬に追われたトラウマを思い出すんだろうな)

 と、俺と刹那は親鳥の暖かい目で小鳥の巣立ちを悠長に眺めていた。
又は見捨てたともいう。それから、刹那は朝倉京子の罵声を何分も聞かされるのであった。

 朝倉京子が遅い昼飯をのんびりと食べている時にドアに飾られている鐘の音が鳴り響く。
見知った制服と共に現われたのは毎日顔を合わせている雪菜と……美耶子だった。

「いらしゃいませ。って、雪菜ちゃん。それに美耶子ちゃんがオレンジにやって来るのは私がバイトしてから始めてだよね? だよね?」
「そうですね。桜荘唯一の危険人物の一樹さんがアルバイトしている
お店を荒らしたのは更紗さんがアルバイトする前でしたので、始めてと言えば始めてですね」
「うわっ。同じ空間で暮らしている人たちが自分の職場に来るとなんだか無性にサービスしたくなるよ……」
「雪菜ちゃんと一緒に来る時はいつも店に大赤字無限コンボを喰らわしているのでお気遣いなくですよ」
「まあ、更紗さんも美耶子さんがここに来る意味をおのずとわかってくると思うよ。
雪菜はお兄ちゃんが頑張って労働している姿を見るだけで満足なんだけど。この人は違うからね〜」

 毎日のように通ってくる妹分の雪菜は常連客として扱っている為に何の動揺はしなかったが、
美耶子だけはさすがの俺も息を呑む程に驚愕する。
前回の悪夢の出来事を思い出すだけで胃が締め付けられるような痛みに襲われる。多分、神経胃炎だろう。

「じゃあ、二人とも席について。すぐに水とおしぼりを持って行くから」
 更紗が水とおしぼりを取りに行っている間に俺は雪菜と美耶子が着いた席に向かっていた。
今回はどのような意図で来たのか確かめるためである。

「いらしゃいませ。学校帰りの買い喰いは校則とかで禁止されていないのか?」
「あはははあははっ。何を怯えているんですか。一樹さん。
今日は雪菜ちゃんと一緒にカレーというものを食べに来たんですよ。
それにお客を接待する態度じゃあありませんよ」
「では。ご注文の方をどうぞ」

「雪菜ちゃんは何にする?」
「雪菜は当然、極・甘・カレーをお願いします」
「だったら……私は店長が推薦する100倍カレー、30分以内に完食すると賞金一万円が貰えちゃうものをお願いしますね」
「は、は、はい。わかりました」
 悪魔は意味ありげに微笑する。



それはきっと……これから起きる戦いの狼煙なんだろうということで次回に続く。
311トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/09/16(日) 02:10:34 ID:7CWE98HW
以上で投下終了です。
さすがにこの時間帯の投稿は眠たくてたまりませんね。
というわけで寝ます。

次回を楽しみに待ってください。
それでは。
312名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 04:04:45 ID:FsV9FcoI
GJ!!!
313名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 04:13:43 ID:hw5DSb5a
GJでした!!!!!
314名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 08:01:31 ID:1P99776x
枯れちゃうんですか?
315「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/16(日) 11:25:14 ID:AUXVMioS
投下します。
316「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/16(日) 11:25:48 ID:AUXVMioS
+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +



「―――以上だ。リザニア王の印は既に押されてある。後はお前の認可を貰うだけだが」
「……以上、って久景様」

 旧ジウ、改築を終えて今や完全にヒラサカ城とその名を変えた、城内の王室にて。私からウォーレ
ーンでのハーマインとの取引の報告と、同盟の誓約証を受け取ったユエが、いつもの余裕を失った表
情で信じられないという風にこちらを窺う。

「御言葉ですが…一体、何をお考えなのですか?」

 その呟きに、浮いた感情は全く無い。ただ単純に、自分の前に座っている人間の言っている事が理
解出来ない、納得が行かないといった、不信感を露わにした瞳。
 理由は、言うまでも無くキルキア大陸統一同盟について。

 ”リザニア国、ヒラサカ国間での物資流通、及び軍事面での相互支援。並びに、両国の領土侵略の
禁止。尚、期限は現在暫定的に、キルキア大陸において両国以外の国家が全て無くなるまでとする”

 とどのつまりが、手を取り合って仲良く大陸を支配しましょう、と言う内容。
 他の国を残さず滅ぼした後に互いをどうするか、それについては何も記されてはいない。改めて敵
対するも、同盟関係を続けるも本人達の考え一つとなっているが、

「こんな、みすみす敵に塩を送る様な同盟。こちらへ攻め入れる程に、リザニアの情勢が予想よりも
出来上がっているならばこそ、一時的な和睦としてこの案も認められます。ですが、これはその逆。
放っておけば自ずと崩れてくれるかもしれない強敵の手助けをするなど、わたくしには正気とは思え
ません」
「………」
「焦らずとも、我々は既に正面から他国へ侵略を行えるだけの力を有しております。多少なり時間を
掛けさえすれば、たとえリザニア級の国家がこの先あったとして、然したる障害にならないだけの軍
へ成長する見込みが十分あるのです。
 だと言うのに……久景様は、リザニアへと再び降るおつもりなのですか?」

 もう一度、真剣な眼差しで見つめてくる。大局の流れを決して見誤らぬその目が、今この状態で同
盟を結んだ場合のヒラサカ、ひいては私の行く末を雄弁に語っていた。
 自分の仕える主として信頼しているからこそ、内心の戸惑いをあえて隠そうとはせず、そう口にし
たユエ。そんな部下としての彼女は、やはり心強い存在と言えるだろう。

「…列島の頃は、そこまで後の事を考える余裕も無かった。何せあの頃のあそこはここより余程切迫
していた上、私も口にこそしなかったが、自分が世界で一番優れているなどと言う壮大な勘違いをし
ていたからな」
「久景様?」
「折角の機会だ、お前にははっきり聞いて置いて欲しい」

 机を挟んで真向かいに居るユエに、私も視線を合わせる。
 遍く人民の頂点に立つ者は唯一でなければならない。人の上に立つからには、頂点は相応しい器を
持った者でなければならない。
317「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/16(日) 11:26:22 ID:AUXVMioS
「私は支配者になりたいと思っている。何故だかわかるか?」
「そうした願望が自分にはあるからだと、以前に直接お聞きしました」

 突然の問い掛けに対して、もう随分前になされただろう会話の内容を忘れずに取り出すユエ。確か
に、たまたま機嫌が良かった時にそんな事を話した記憶がある。

「だが、理由はそれだけでは無い。侵略したい、征服したいと思うからには、そこに私個人の理想へ
変えようとする意思がある。付け加えて、私は完璧主義者だ」

 理想水準を満たせないものは自分で矯正し、納得の出来る秩序と完成度を求める。周囲との関係や
人材の教育もまた然り。
 それは、例えばこれまで習得した数々の技術であったり。リザニア所属時における、本来征服とは
縁の遠い筈の様々な行動であったり。―――あるいは、列島や大陸の支配であったり。
 無秩序の中にも秩序を見出す。不完全なものがあれば穴埋めをする。満足の行く結果を出そうとあ
らゆる努力を惜しまず費やし、そうして常に成果を上げ続けた。

「エイブル将軍が私を必要としていた様に、私の中でのキルキアの治世にしても、エイブル将軍と、
リザニア国という優れた素材が必要となっている」

 全力で私と戦い勝利した人物なのだ。求める水準に見合わぬ筈も無い。
 さりとて、支配欲求のもう半分。完全に理屈ではない感情の部分が、人に従うのを決して良しとし
ないのもまた揺るがぬ事実。

 そこだけが、未だ割り切れないでいる。

 完璧さを求める為に征服をする。征服をする為に完璧さを求める。
 どちらかが元となっているのではない。この二つが並立している事こそが、私が大陸制覇を目指す
原動力。キルキア全土を制圧していく事も。その後にある支配も。全ては目的であり、手段なのだ。

「リザニアは他の国よりも優れている。軍事面ではなく、単純に国が豊かという意味でだ。王は良き
政治を行えるだけの器量と人望を併せ持ち、文官連中さえもう少しまともな人材が増えれば文句は無
いだろう。
 正直、あの国による支配であれば、私も特に不満は無い」
「! それは……ですが、ならばなぜ貴方様は、わたくしにヒラサカを立ち上げさせたのですか」

 書状を机に置き、ユエがそう申し立てる。
 不満が無いならそのままリザニアに居れば良い。言ってくれさえすれば、自分達もわざわざこんな
まどろっこしい事はせず、素直にリザニア内における私の軍団としてあったのに。言葉の端から、そ
うした意味合いがありありと読み取れた。
 私の視線はこちらを見るユエを外れ、再び机の上に置かれた紙へと移る。

「その通りだ。実際その同盟を結んでしまえば、ヒラサカとリザニアは事実上の合併をする様なもの
。最初からそうしておけば良かったと言うお前の考えももっともだろう。だから、言うなればこれは
問題の先送りという事になる」

 無論、本当に合わさったわけではない。例えその間に互いが何らかの危機にあったとしても、そこ
を好機と見限り裏切ってしまえばそれまで。
 これだけは断言出来るが、私やハーマインの様な人間は自らの利から離れれば時期を計って必ず相
手を切る。手段は場合により様々だが、その目的で動いた時には、相手はまず間違いなく逃れられな
い状況にある筈だろう。信頼と同じだけの警戒によって、薄皮一枚の協力関係は成り立つ。

 ……が、それでもまだ甘い。
318「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/16(日) 11:26:56 ID:AUXVMioS
「最終的には、あの将軍に全て譲るおつもりなのですか? 大陸東半分を御自分で担当して。この同
盟は、貴方様の決心を付ける為の準備期間だと…」
「それが半分…いや、四分の一くらいか。残りは逆に、リザニアを上手く利用して、直接の衝突を避
けながらヒラサカへと」
「出来るのですか?」

 欺瞞を見透かさんと細められた瞳。

「久景様。貴方様はこんな手段でリザニアを奪えると、本当に御思いなのですか?」
「急ぐなら、この方法以外を取るわけには行かない」

 ならば何故、急ごうとするのですか?
 口に出さずとも、彼女の頭には既に答えが浮かんでいただろう。

「久景様は、変わられました。絡め手を使う事はあっても、昔はもっと強引に全てを支配して来まし
たのに」
「自覚している」

 中途半端。ここに来て、リザニアに対する私の態度はまさしくその一言に尽きる。
 認めてはいても、付こうとはしない。奪うつもりはあるが、拘り過ぎ。

「わたくしは、何があっても貴方様に付き従います」

 そう言ったユエが、誓約証へとペンを走らせた。これで、今ここにヒラサカとリザニアの同盟は締
結された事になる。一人の男の甘さによって。

「いつか決断する日が来た時、どの様に振舞ってもわたくしは構いません」

 徐に立ち上がり、私の背後へと回る。書状を手に持ったまま、ユエは後ろからそっとこちらの頭を
抱き寄せた。暖かな感触が伝わってくるそれは、私が彼女をあやすときに、膝枕の次に良く使ってい
た方法。

「ああ」

 未だに迷っている。決定的な一打を放つ事を。

「済まない、迷惑を掛ける」
「大丈夫です。貴方様の御傍に居られればそれで」

 征服者として、私はおそらく劣化しているのだ。
319「草」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/16(日) 11:28:16 ID:AUXVMioS
投下終了です。
本当は前回分と合わせて出したかったのですが、ペースが本来のものに
戻ってしまったため短く二つに分かれてしまいました。申し訳ない。
320名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 11:41:49 ID:vtkv1QV8
一番槍GJ!!
321名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 12:11:49 ID:q9JAVc5W
これは良いヘタレ
GJ!
322名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 12:19:55 ID:76CXuacZ
GJ!!
完璧主義者かつ迷いのサンドロ……
どうでもいいけど暴走するかもなリザニア内の女達とかの事は計算に入ってるんだろうか?
いやそれより早くもっと修羅場要員増えないかな〜、伏線は沢山出てるので期待が止まらなくて。
323トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/09/16(日) 17:23:07 ID:p/fKM0TD
では投下致します
324桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/09/16(日) 17:25:09 ID:p/fKM0TD

 第12話『オレンジの危機』
 
美耶子たちが注文したメニューをホールの方に伝えるため暗澹たる足取りで向かっていた。
当然であろう。これから始まるのはカレー専門店『オレンジ』の最大最悪の危機。
俺の時給以上の労力と一般人には縁がない常識を疑うような騒動に巻き込まれることとなる。
平穏な生活を望む俺としては何事もないカレー店を経営して、今日一日を無事に終えたいところなんですが……。
 厨房を覗くとまたアホなことをやっている店長の姿を見て、俺は凄まじい程にその大きな尻を蹴りを入れてやりたい気分になるが、
今は戦力を失うが惜しいので。腹の奥底から戦いの狼煙を上げるオーダーを読み上げた。

「オーダーが入ります……。極甘カレーが一つ。そして、100倍カレーが一つ。以上です」
「100倍カレーだって……!!」
「店長。悪魔がデビルの奴が来たんですよ」
「面白い。久々に腕が鳴るぜ……ただ、カレーを作る日々に飽き飽きしていたぞよ。
 貴様らは今この時を持って、悪魔を倒す剣として生まれ変わるぞよ!! 
 クソったれな平穏をぶち壊し、今度こそ我々はデビルに勝つ!! 
奴に奪われた一五万円をこの手に取り戻す!! 貴様らはその覚悟があるか!!」

「カレー!! カレー!! カレー!! カレー!!」
「カレー!! カレー!! カレー!! カレー!!」
「カレー!! カレー!! カレー!! カレー!!」

「野郎ども!! この戦いの目的は何だ!!」
「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!! デビルの内臓を食い散らせ!!」
「ヤンマー!! ヤンマー!! ヤンマー!! ヤンマー!!」
「マンボー!! マンボー!! マンボー!! マンボー!!」

「OK! 行くぞ!!」
 店長の号令で俺や更紗や刹那が持ち場に着く。カレーが出来上がるまで待機するだけだが、
厨房にはかつてのない熱気と気合いだけが込められていた。
「アルバイトの研修で意味のわからない叫び声の練習はこのためなの?」
 更紗がぽつりと言う。
「デビルを打ち倒すための儀式みたいなもんらしい」
 だが、俺は知っている。そんなアホみたいな掛け声とは関係なしにデビルである美耶子には15連敗しているという現実。
特に意味はないんだろうなと……。
325桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/09/16(日) 17:28:06 ID:p/fKM0TD
 出来上がったカレーを刹那が美耶子と雪菜のテーブルの元に運ぶ頃には客席はギャラリーで埋まってしまっていた。
恐らく、隣のライバル店ブルーから流れてしまった客層だと思うが、
たった一人の小娘が100倍カレーに挑戦するだけなのに何でこんなに騒動しくなるのであろうか。
「極・甘・カレーと100倍カレーをお持ち致しました。
100倍カレーに挑戦するお客さまへ。
もし、そのカレーを食べて精神が発狂したり、ショックで突然死しても当店は一切責任はありません。
この契約書にサインしてから、私が合図してから30分以内に食べれたら賞金の一万をお渡しいたします。
もし、制限時間内に食べれなかった場合は罰金100万を頂くことになるので出来るだけ制限時間内にお召くださいませ」

 刹那が差し出された契約書に美耶子が躊躇なくサインをした。
100倍カレーに挑戦した勇者達は限りなくいたのだが……誰も罰金の100万円を払う人間はいなかった。
大抵は生死の境界線を彷徨い、五体不満足で日常生活を送ることになるからだ。
 美耶子はたった一人だけ人類が誰もが成し遂げることができなかったオレンジ名物100倍カレーを制した時には英雄と崇められた。
小遣い稼ぎのために100倍カレーに挑戦するだけで人々は恐れ、敬い、その偉業をこの目で見るために自然と集まってくるのだ。

「今日も軽く伝説を達成しましょうか……」
「美耶子さん。負けても勝ってもお兄ちゃんの奢りなんだから。そんなに気負うわなくても」
「あははっ……そうですね。でも、一樹さんの困った顔が見たいので。ここはいつものように完全勝利を目指しますよ」
「伝説に挑戦する前にどれだけ辛いのか私が一口だけ味見していいですか?」
「いいですよ。刹那さん 」
「よし。辛いと言っても人が食べれるものじゃないはずです」
 刹那は100倍カレーをスプーンで口に含んでから数秒後ぐらい経ってから。
その頬は真っ赤に染まって口から炎を吐いた。

「刹那ちゃん?」
 厨房の片隅で大人しく様子を見ていた更紗が刹那の変貌に思わず駆け出しそうになるが、俺は彼女の細い腕を掴んで制止させる。

「もう、刹那は俺が知っている刹那じゃないんだ。
常人が100倍カレーを食べると一般人なんて
一瞬で精神がドス黒い何かに汚染させられるんだ。もう、遅い」

「そんなことって……」
 焦点が合わない虚ろな瞳で刹那は100倍カレーを食べたことによる副作用で口から火炎放射をあちこち吐きまくっていた。
他の客の髪の毛に燃え移ったりするが、そんなことはどうでもいい。
 刹那は店の中央を陣取り、周囲の呼び掛けるように叫んだ。

「カレー専門店にいるオレンジのお客さま皆様。
 お願いがあります。死んで頂けないでしょうか?
 自殺して欲しかったのですけど。駄目ですか?
 ではオレンジの従業員方々、皆殺しにしてください。
 虐殺です」

「するかぁぁぁっっっ!!」
 俺と更紗が速攻で刹那の頭をハリセンでどついた。
「お客さま……どうも、申し訳ありませんでした」
 適当に周囲のお客に頭を下げて、俺と更紗で発狂した刹那を厨房の所にまで連行して行った。
あの100倍カレーを食べた刹那は虚ろな瞳で天井を見上げながら炎を吐く。
俺達が出来ることはその口に水を流すことしかできない。なんて無力なんだ俺達は。
326桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/09/16(日) 17:30:26 ID:p/fKM0TD
「なんなのよ。この店は……」
 朝倉京子が目を丸くしてこの状況を理解できずに驚愕してぼそりと呟いていた。

「うふふふっ……。今日のカレーは美味しいですね。えへへっへっ……」
「美耶子さん。今日も完全に完食コ−スだね。雪菜なら100倍カレーって聞いただけでも卒倒するというのに」
「雪菜ちゃんももう子供じゃないんだから、極甘味ばかり食べないで辛い物を食べて、
今度は一緒に100倍カレーに挑戦するべきです」
「雪菜、遠慮するよ……」
 あの刹那を発狂させた100倍カレーのほとんどを美耶子は平らげていた。
皿にはほんの少しだけ残っており、今回も完食コースなのは間違いなかった。
「何故だ。ワタシが徹夜で考え込んだ対デビル用100倍カレー改がこんなにあっさりと突破されるなんて。
悪夢を見ているのだろうかカズキ」

「クソ店長がどういうスパイスを作ったのかは知らないが。
あんたのポケットマネーから1万円のお札が飛び出すのは確定事項だな」
「カズキのお給料から差し引いてもいいか?」
「あっはははは。余裕ではみがき殺すことになるかもしれないが。それでもいいなら」
「だって、赤字続きのお店を更に傾けるなんて残酷なことを出来るわけがない」
「いや、更紗と刹那と俺の給料は毎月未来永劫支払うことができるのか? クソ店長」
「あきらめやがれですぅ」

 少し色気のあるクソ店長の言葉に静かな怒りと殺意が沸いてくる。
業務用のカレー鍋(中身アリ)を頭にぶちかけても、一体どこの誰が責められようか? 

学生時代なら少年法というものがあったのでやりたい放題にできるわけだが、
社会人ならここは大人しく我慢しておく必要がある。
 さてと、視点を美耶子の方に戻すと彼女の中心に盛大な拍手と声援が店内を包み込んだ。

どうやら、あの100倍カレーを見事に完食したようである。

「さすがはデビル……あの人外カレーを16回も完食するとは……。

この街に新たな歴史が刻まれた。デビル・ミヤコに栄光あれーーー!!」

「デビル・デビル・デビル・デビル」
「デビル・デビル・デビル・デビル」
「デビル・デビル・デビル・デビル」
 オレンジ店内はデビルコールに一色されていた。
それは店内にいる客だけではなく、外にいる見物客たちも大声で美耶子を讃えるように大声でデビルの名前を叫んでいる。
「ど、どうも。応援ありがとう!! 今度も私はきっと頑張って完食してみせます!!」

「デビル・デビル・デビル・デビル」
「デビル・デビル・デビル・デビル」
「デビル・デビル・デビル・デビル」
 一番の最高の盛り上がりに客達は喉の奥底から吐き出される声は鼓膜が破れそうなに情熱が篭もっていた。
「ど、ど、どうして。カレー一つでこんなに盛り上がれるのよ……」
 耳を抑えながら、カレーをひたすら寂しく食べていた朝倉京子の呟きは……。
まあ、誰にも聞こえないだろうな。
327桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/09/16(日) 17:32:35 ID:p/fKM0TD
 美耶子が100倍カレーを完食してからのオレンジ店は正に大繁盛であった。
招き猫的存在の美耶子が閉店するまで雪菜と一緒に居てくれたおかげで彼女を拝もうとする客で後が絶えなかった。
おかげで隣のブルーが開店した以来でウチの売り上げはいつもの数倍以上の利益を得ることとなったのだ。
 カレー専門店オレンジの救世主的存在になった美耶子を労わるために閉店した店で祝賀会が開かれることとなった。
と言っても、残り物のカレーを皆で食べるだけなのだか。

「今日はもうカレーなんて見たくないんだけど」
「刹那ちゃん。100倍カレー改のことは記憶の彼方に忘れてさ、
これはカズちゃんが愛情を込めて作ったカレーライスだと思えば。きっと、大丈夫だよ」
「う、うん。そうだよね。カズ君が作ったカレーならきっと食べれるはず」
「刹那さん、よっぽどあのカレーのせいでカレー自体にトラウマが……」
「一樹さんの唾液入りのカレーだと私は食べれないんですけどね」

 と、女性陣は呑気に談笑しながらカレーを食べていた。
俺はホールの方で皿を洗っているわけだが、その量は気が遠くなるような膨大な量であった。
こんな小さな店に最新型の食器洗い機ははなく、節約の為に手洗いで今まで過ごしてきたわけだが。

この量を一人で洗うとなると、家に帰れるのは日付が変わる頃であろうか。
クソ店長は明日の仕込みをするので手伝うことができないし、刹那と更紗に手伝わせるのは俺のプライドが許さない。
というわけで一人で皿を洗っているわけだが、全てを終わらせるにはまだまだ遠い。

 人が丁寧にカレーの汚れが拭き取っている最中にクソ店長が鼻歌を歌いながら、こっちへとやって来た。
何か嫌味とか言えば、瞬時に俺の蹴りが奴の尻へ飛ぶであろう。

「よう。カズキ」
「何ですか。クソ店長」
「あの子はこの1年間で随分と元気になったぞよ」
「美耶子のことか?」
「最初に100倍カレーを無理矢理に挑戦させた頃と比べると今は人を引き寄せるようないい笑顔をしてる」
「うん? そうか。俺は小悪魔が何かを企んでいる笑顔のように見えるんだが」
「カズキの目は節穴か? 引きこもりだったミヤコが最初にここに来た時に比べるとな」
「んなことはわかってる」
 美耶子が外の世界に羽撃くきっかけはたった小さな思いやりであり、笑顔を取り戻したのは桜荘の皆の生活のおかげである。
一応、美耶子の件に関してはクソ店長もそれなりに貢献しているので、何かと気にかけているのであろう。

「あんたのカレーのおかげでもあるけどな」
 俺は人生で生まれて初めて、このクソ店長を誉めた。
お互い顔を見合わせながら苦笑すると自分の仕事に戻っていた。
328トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/09/16(日) 17:36:29 ID:p/fKM0TD
以上で投下終了です。
329名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 19:45:06 ID:7N/7EH5s
まーたトライデント氏か、もういいよ
330名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 19:51:03 ID:iAx/O3Zj
ツマンネ
331名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 20:06:44 ID:YDtBB3/J
>>328
投下GJ!!
332名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 20:12:07 ID:fRmFicEO
GJ!!ヤンマーマンボー吹いたwwww
333名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 20:28:07 ID:e54PHnev
トライデント氏の作品はどうでもいいから
さっさと草を投下してくれないか?
いい加減に古参が威張って投下するのはやめて欲しいよね
引き際を考えてくれ
334名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 20:35:21 ID:oc6hGqQv
嫉妬スレの終焉の時がやってきたな
神もいないし、スレの住人も愛想がついていなくなった
管理人の阿修羅に関しては3ヶ月も更新をサボったナマケモノ

もう、いいだろ。こんなスレは荒らしに食われて終了でいいよね?
335名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 20:51:23 ID:7DmuslIR
だが断る!!!
336名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 20:55:56 ID:1Qj/lTPQ
転帰予報の続きがすっごく気になる、早く投下ができるように頑張ってください!!
337名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 20:56:27 ID:oc6hGqQv
自作自演で盛り上がるなよw
338名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 21:13:03 ID:/GJ2C4i9
このスレ、さぁいよいよ来るぜ!ってところで筆を置いちゃう作品も結構あるからなー。
雨の音も、もう一人のヒロインが出てくる直前で止まってるし、
転帰予報も姉妹が覚醒したところで止まってるんだよな。
俺ぁ待ってますよ!
339名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 21:13:18 ID:oc6hGqQv
私にGJと言わせたいなら
ツンデレ嫉妬少女を連れて来い
あのパルフェやらき☆すた以上のツインテールのツンデレだ

そして、最高のツンデレ海原雄山を超えることが出来たら
GJと叫ぼう
340名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 21:25:56 ID:rxQs0bXg
話し切って悪いが、
ひぐらしのレナがヤンデレって思ってる奴多すぎないか?というか、詩音とかまで…ただの痛い子じゃん。すぐヤンデレな小説があると、テラひぐらしとかいうやついるけど…ヤンデレが好きな奴としてはなんか嫌なんだよな…。


過去に話されてると思うが言わせてくれ。スルーしておK
341名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 21:36:22 ID:pUBVmJAf
>>340
とりあえずお前はヤンデレスレに帰れ
342名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 21:50:25 ID:0JDOEqnF
愛あってこその狂気なのに、愛のない狂気なんて基地外以外の何者でもない
けど、このスレは嫉妬がメインだから、>>1さえ読めばヤンデレブームに流されてるだけのやつもスレ違いの発言はあまりしないだろ
最初、ろくに知らないのに流行に便乗する業者がいるから、そういうのが出てくるかもしれん。だが、ヤンデレがツンデレみたいに流行れば、ヤンデレの副産物として修羅場も流行するかもしれないし、そうなれば未完作品の作者が帰ってきてくれるかもしれない
343名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 21:56:14 ID:Z0AZ+aIf
ヤンデレの流行の起爆剤は孝之と誠にかかっている
344名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 22:06:52 ID:dmV8Bqk9
う、うろたえるなっ。嫉妬スレ住人はうろたえないっ!!

というか二三ヶ月ぐらいのんびり待とうぜ?ちょっとせっかち過ぎだよみんな。
345名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 22:09:10 ID:zqmexN6M
とりあえずヤンデレ云々の話はヤンデレスレでやろうぜ?
嫉妬・修羅場とヤンデレは似て非なるものだと思うし
346名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 22:15:22 ID:q9JAVc5W
これは良い住人点呼
ノシ
347名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 22:34:00 ID:U0c2e/XM
ノシ

のんびり待ってるんで作者の皆様頑張って!!
348名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 22:43:31 ID:TmDAAG58
とりあえず前スレ埋めようぜ
349名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 22:59:56 ID:PtxtNgMv
前スレまだ埋まってなかったのかw
350名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 23:36:52 ID:svVVP9n0
>>339
ツンデレ(のみ)はスレ違いだと承知しているがこれだけは言わせろ

最強のツンデレはオーガ
351名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 23:58:40 ID:nXNkw26D
貴様はッ!!
中国拳法を嘗めたッ!!
352名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 00:33:58 ID:HbeDmgAe
ツンデレキャラの嫉妬はOKじゃないのか_?
作品にするのは難しそうだな

ちゃんとツンとデレをやらないとツンデレにならないし
更に嫉妬と修羅場をやらなきゃね・・・・。
353名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 00:54:01 ID:Wwek8nlD
このスレ、ツンデレっぽいのも結構いたんじゃなかったかな。特に幼馴染系で。
厳密にはツンではなくデレ隠しって状態か。
いきなり好きです付き合ってください、とはっきり言ってくる状態から始めると、
主人公をド外道にする以外の道を塞がれがちだろうし。
354名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 01:05:01 ID:UbOy+I4Z
まぁ、ここはあくまで嫉妬・三角関係・修羅場っていうシチュエーションのスレだからな
キャラがツンデレだろうが素直クールだろうが素直シュールだろうが
三つのどれかのシチュエーションに当てはまっていれば何でもいいと思う、個人的には
まぁ、行き過ぎてる場合には単体のスレでやったほうがいいとは思うが
355名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 01:23:57 ID:slqTC318
紗恵さんなんかおもくそツンヤンデレじゃないか
356名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 12:57:28 ID:RtRON2RN
嫉妬と修羅場があればなんでもおいしく頂きますとも
357名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 15:49:46 ID:n9s9MnX3
世界一嫉妬深いってのはいったいどんな人間なんだろうな
「男君が呼吸しているときに口の中に入っていく酸素が憎い!」

…くらいの思考の持ち主なのか
358名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 17:37:37 ID:JWt8h2p3
>>357
そこまで行くと狂気だな
まぁ俺はおいしく頂くが、嫉妬かといわれると微妙かも (´・ω・`)

>>353
外道以外にも朴念仁だとか主人公が受け体質でもいけそうだぜ
受け体質だと主人公が萌えキャラになったりするが|ω・`)
359名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 17:56:42 ID:jHQs/wbB
>>357
もはやそこまで逝くと、何かの経絡秘孔を突かれたとしか思えないw
想いが満たされないとボン!

(((( ;゚Д゚)))
360名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 18:12:29 ID:UbOy+I4Z
せめて「男君の愛用してる○○(物)が憎い!」ぐらいにしておこうぜ
あれ?大して変わらない気が・・・
361名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 20:43:45 ID:9/9p1TLD
いつになったら、本スレが復活するの?
362↓みない方が良いです;;すみません。:2007/09/17(月) 21:19:57 ID:tleaoYnA
363名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 21:24:07 ID:Tr/lqLpJ
なんかね、このスレの怖いとこは2日ぐらい見て無かっただけで大変なことになるのよね。
364名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 21:47:01 ID:kgP1yiRu
とりあえずsageろ
365名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 23:58:11 ID:9/9p1TLD
泥棒猫が始末されると三味線になるらしいが
366名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 00:26:29 ID:C0lioQ2e
>>304ですが未だに原因がわかりません

スレチですが誰かわかりませんか?

携帯から失礼します
367名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 00:33:06 ID:kyNOWJ8P
ロザライン:
私、昨日の夜は寝ずにずっと貴方を待っていたのよ?
ロザライン:
ほら、見なさい。私の目、真っ赤でしょう。昨日から姉
さん一睡もしてないのよ?
ロザライン:
瞼の下にはおっきな隈が出来ちゃって、朝仕事に行くと
きそれを隠すために厚化粧をしなくちゃいけなくなって、
ロザライン:
職場にいったらいったでああロザライン警視もとうとう
嫁き遅れを気にする年になったんだなハハハと無能な部
下たちに陰口を叩かれて
ロザライン
聞こえてんのよこの陰険野郎と逆上したせいで書記のオ
バサン連中がにやにやしてだいたいアンタこそ売れ残り
じゃないのと名前の後ろに嬢をつけて皮肉ったら
ロザライン:
取っ組み合いの喧嘩になって回りの馬鹿どもはそれを止
めもせずはやし立てて婆さんの癖に意外と力が強くて三
人がかりで間接を極められ痛みに喘いで参った参ったと
ロザライン:
苦渋をなめる結果になりそれが上司の目にとまって呼び
出されて見逃す代わりに性的嫌がらせをしようとしてき
たけど股間に蹴りいれてやって
ロザライン:
またその件でもっとえらい人に呼び出されて君減給ねと
事務的に言い渡された後ろに股間に氷嚢を当てた上司が
いたから睨み付けてやったら悲鳴を上げて逃げていって
ロザライン:
私の顔がそんなに恐いのかと化粧直しにいったお手洗い
の鏡をみるとさっき拭った時に口紅が滲んで般若もかく
わという顔で部署に戻ってもいらいらして
ロザライン:
仕事が手につかなくてあの俗物どもがまたロザライン嬢
のヒステリーかやれやれだぜなんて寝言をほざきやがる
ものだからババアどもがにやにやして
ロザライン:
散々な仕事をがんばって定時で終わらせて家に帰ってき
ても誰もいなくて昨日の夕食だったスープを見たら悲し
くなってきてそれも悪くなってたから捨てるはめになり
ロザライン:
そのうち涙があふれてきて聞いてるのヨセフ職場で受け
た屈辱も家で一人暮れていた悲しみもみんなみんなヨセ
フ貴方のためなのよわかる?
ロザライン:
それを貴方は謝りもせず必死に言い訳を考えているみた
いでなにか驚いたとおもったら急にだらしない顔になっ
て本当に聞いているのヨセフ
ロザライン:
どうせこのあいだのルーなんとかっていう売女のことで
も考えていたんでしょうけどみんな姉さんにはお見通し
なのよ
368名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 00:35:05 ID:kyNOWJ8P
ロザライン:
昔の貴方はもっと素直で姉さんのいうことをよくきくい
い子だったのに今の弟ときたらちゃんと私の目を見なさ
いヨセフ
ロザライン
だいたい貴方はいつもそうね口ばかり達者になってそれ
で利口になったつもりなの?今の貴方をみたらジュリア
ン小父さんだってきっと草葉の陰で泣いてるでしょうね
ロザライン:
それもみんなあのフレデリックとかいういかがわしい男
と付き合った影響なのかしらまったく外でどんな悪さを
覚えてくるのやら姉さん心配で心配で夜も眠れないわ
ロザライン:
貴方の交友関係には口出しはしませんけどねもっと分別
をもって行動してくれなきゃいけないのよ分別よ分別わ
かる?
ロザライン
何よその目は男友達は良いとしても女に関しては私にも
口出しする権利はあるわ女ってものはとてもとても恐い
ものなのよといつも言ってるじゃない
ロザライン:
ああいった身持ちの軽い輩はヨセフみたいに純粋無垢な
若い燕をかどわかそうと必死なのよだって貴方の顔は女
の子みたいに可愛いですものね
ロザライン:
それで貴方が節操なく笑顔を振りまくものだから自分に
気があるのだと勘違いした馬鹿な雌犬どもが薄汚い尻尾
を振って恥も外聞のなく無様に媚びへつらうの
ロザライン:
そんな貴方の身と貞操を守るために私がどれだけ苦労し
たか酒場なんて浮浪者と娼婦の溜まり場へ行くことはラ
イオンの群れの中へ子ウサギを放すことに等しいわよ
ロザライン:
なのに貴方ときたら私がどれだけ泣いて懇願しても言う
ことなんか聞きやしないいいえお水はいらないわヨセフ
はそこに座って姉さんの話をちゃんと聞きなさい
ロザライン:
とにかく私が言いたいことはただ一つなのよ……
ロザライン:
私を一人にしないで!どこにもいかないで!
ロザライン:
何もいわずにいなくなったりしないと約束して!
ロザライン:
なぜかって?愛してるからに決まっているじゃない!
ロザライン:
そうよ愛しているのよ!弟に対する家族愛なんて陳腐な
ものじゃなくて、一人の男性としてあなたを愛してるの
よ!
ロザライン:
世界のなによりだれよりどんなことよりもヨセフが好き
なの!大好きなの!あなたさえいれば私はなにもいらな
いの!
ロザライン:
ヨセフが望むなら私はなんだってやってあげる!国王暗
殺だって眉一つ動かさずやってのけるから!
369名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 00:37:29 ID:kyNOWJ8P
ロザライン:
あなたも私を愛して!姉としてでも、ロザラインという
恋人としてでもいい、何でもいいから私を愛してちょう
だい!
ロザライン:
だからもう、一人にしないで……
ロザライン:
むかしみたいに、私の傍からいなくなったりしないで…

ロザライン:
私だけを見て!他の女なんかみないで!他の女のところ
なんかいかないで!
ロザライン:
なにがあってもずっとわたしといっしょにいてください







某フリーRPG、主人公の姉の台詞からコピペ
ほぼ原文ママ
どうみてもキモ姉です本当に(ry
370名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 01:12:49 ID:5FLmMN9h
そこまで書き込んでおいて「某」とかぼかすんじゃねえ
いや、教えてください
371名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 01:30:56 ID:kyNOWJ8P
>>370
ttp://park.geocities.jp/tilisakuhokanmark2/
ここのゲサロ4ってところにある「リュンコイスの魔王」って作品
RPGツクール製だから色々準備しないといけないので注意


キモ姉の他にヤンデレ化するヒロインが出てくる
ここの住人なら知ってると思ったけど
やっぱマイナーなのかこれ
372名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 02:04:22 ID:MwUjg0ya
自分の中でだけ常識
373名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 02:54:52 ID:Zdh6+YPc
                       _,.-‐"':" ̄~゙'ヽ、       __
      _,---‐" ̄\         /          ``ー‐-、   ノ   \
    /        ヽ      ;"                ) /      \
   /   ぐ .し   |      /                |ノ/        \
  /    ら .ら     |     |                 )/.|   ・  オ   |
  |    .い な    |     |          ,;';;,,    /ノ |   ・   レ   |
  |     ・  い    |    |::::.................:::::::::;;,'^;、::::::'''..,,_;、丿 |   ・   に   |
  |     ・  作    |    /:::::::::::::::::::::::::::;"゙, /゙~゙`''::;'゙;     |  ・   だ.  |
  |    あ  品    |    `、;;::::::::::::::::;/ ),;'   :.'.,、   |  ・   っ  |
  |    る       |  ,へノ   `'''''"´   .:;     .:::_ヽ  |  ・   て   |
  |    ・        Y   \       .::;     ::::ゝ    .|  ・         |
  |    ・       ∧    \     ::::::、   .:;`     |         |
  |    ・       |ヽ丶    \;;  :::;;;;::..,,、. ::i       |          |
  |    ・       | `       \;;;;/    `゙"       \
374名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 03:35:20 ID:ebXJVIJ9
ってか、キャラの初期位置が設定されてない、ってでてきてできないんだけど…
375名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 04:37:24 ID:hjpU5zgf
俺もよくやり方がわからんな
376名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 05:36:54 ID:vMV5mKGX
RPGと言えば懐かしのエストポリス伝記1のルフィアがなかなかに良かった。
377名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 19:45:25 ID:W38s6/2T
なんかネットをテーマとした嫉妬を見たい
俺には文才が無いから無理だお
378名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 20:34:44 ID:KZxwxSmo
>>357
その娘最終的には
「男君が埋められる土が憎い」とか、
「男君の骨が収められる骨壺が(ry」とか言い出しそう。
行き着く先はカニバリズム。
379名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 20:40:44 ID:pCAFlMdM
ここってエロパロ板だよな?
誰もエロ書いてないみたいだがこのスレじゃ御法度なのか?
380名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 20:56:30 ID:seiIWJ28
>>379
まずは保管庫に行って、ここにどんなSSが投下されたのか確認する事をお勧めする
381名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 20:57:11 ID:JWVxXnz8
別にそんな事はないです。嫉妬、修羅場がメインならどっちでも。
優先順位の問題。
382名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 21:02:04 ID:KPsrrQLi
エロありなしとかにこだわり始めるスレは大抵廃れる
383名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 21:14:24 ID:2lQsVaVG
エロシーンと修羅場は直接からめにくいしな
ワンパターンになる
384名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 21:17:48 ID:7nbcJKUG
>>379
修羅場で抜ける俺には関係のない話だ
385名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 21:36:26 ID:Bpf2v0qf
359
女装したケンシロウみたいな女が、
神谷明の声で357の台詞を
言ってる所を想像した。
386名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 00:27:39 ID:HPCpQSSH
エロってなにさ!
世の中にはネクロフィリアだっているんなら。
少女が嫉妬にもだえる様や、凶暴な純愛ってだけおったつ変態紳士だっているんだぜ。
387名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 05:47:58 ID:r6RySyRL
変態じゃないよ変態という名の紳士だよ
388名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 05:52:15 ID:4I9XavuC
新参ものですがよろしく御願いします。
投下させていただきます。
389蒼天の夢 01 ◇4I9XavuC:2007/09/19(水) 05:56:09 ID:4I9XavuC
 洞窟の中は所々から入り込んでくる陽光でほんのり明るかった。
 光と一緒に入ってくる歓声から推測するに今日の客入りも上々だ。
 そんな普段、気にもしないことを気にするあたり、今の自分の余裕のなさが伺えた。
「はぁ……」
 俺はため息をつきながら真新しい鞍を見つめた。
 まだ一度も使われていない鞍からは渋い革の匂いがしていた。どんな生き物のための鞍でも最初はこの匂いがする。
 そして、使われてゆくごとにどんどん変わってゆく。
 馬の鞍は汗臭くなる。
 ラクダの鞍は硫黄臭くなるそうだ。
 だが、ワイバーンの鞍は錆びた鉄のような臭いに変わる。
 なぜそういう臭いになるのかは分からない。
 どうなるにせよ、臭いが変わる頃には自分はもうこの鞍を使ってないだろう。そう自嘲気味に思いながら目の前に横たわる大きな水色の胴体に鞍を載せた。
 一瞬、胴体がくすぐったいように微かに震えた。
 長く、大きな胴体だ。なめらかな曲線を描き、そこからはトカゲのような鋭利な首と頭、力強い二本の足、鞭のような尾、そして蝙蝠のような、しかし蝙蝠のそれよりも美しく優雅な翼が生えていた。
ワイバーンと呼ばれる魔獣である。
 その姿は二本足なのを除けばドラゴンに非常に似ていた。
 しかし、ワイバーンはドラゴンより二周りも小さく炎も吐かず、知能も低い。
体も筋肉の塊のようなドラゴンと比べるととてつもなく細く、学者たちからはドラゴンの退化した姿などと言われている。
俺は鞍を固定する四本のベルトを締め、鞍を掴んで何回か揺らしてみた。
 びくともしない。
 鞍を確認し終えると、床においてあった兜をかぶり、しっかりと紐を結ぶ。
「おい、ジース早くしろ!」
「今いく」
 洞窟にぽっかり開いた大きな出口。そこにいた誘導員にこれ以上せかされないよう、手綱を水色のワイバーンにくわえさせ出口へと俺の“相棒”を引いていった。
 外に出た瞬間、新たな歓声が沸き起こる。
 快晴の下、断崖絶壁に建てられたいくつもの観客席からは色鮮やかな旗が振られ、応援歌が響いていた。
 俺たちはちょうど観客席から見下ろされる場所にある崖から突き出たプラットフォームに出ていた。
「そりゃ負け役がいないとレースにならないしな……」
 俺はそう呟きながらワイバーンに騎乗した。
 そして飛行中落ちないためのベルトを自分の体と鞍に固定すると、力いっぱい叫んだ。
「アズ―ル!」
 名を呼ぶと相棒は今まで折りたたんでいた水色の翼を広げた。
 再び歓声が上がる。
 貧弱とされるワイバーンたちはたった一つだけ、遠い親戚のドラゴンを凌駕する力を有していた。
 それは空を飛ぶことである。
 天を舞う時だけはワイバーンたちは他の生き物の追従を許さぬ美しさと強さを発揮する。
 鈍重なドラゴンより速く、綺麗なだけのペガサスより鋭く彼らは飛ぶ。
 そんなワイバーンの空中機動を一番よく見られるのがクリフ・スキッドと呼ばれる競技である。
 主に山や絶壁沿いのコースを飛び、一番速いワイバーンを競うという単純だが危険なレースだ。毎年多くの人間とワイバーンが勝利を得るため空へ舞い上がり、散ってゆくスポーツ。
 それでも参加しようと志す者は後を絶たず、ここ数年クリフ・スキッドの人気は衰えるところを知らない。
 俺もそうやって魅せられた連中の一人だ。
 アズールは二、三回大きく羽ばたくと、二本の足に力をこめた。準備が整った、の合図だ。
 俺は大きく息を吸い込むと相棒のわき腹を蹴った。
そして今日もスキッダーと呼ばれるワイバーンの騎手として、蒼い空にわが身を相棒と共に委ねた。
390蒼天の夢 01 ◇4I9XavuC:2007/09/19(水) 05:57:59 ID:4I9XavuC
 狭い店内には時計の音しかしなかった。
 既に十一時を回っているのに客が一人もこない。
 けどそれも当然だ。
 ここ、グレイ・クリフの住人なら今のわたしみたいに店番でもしてなければ土曜は絶対、街をうろついていたりしない。
 そんなことをするのはせいぜい郊外の塔に住んでいるあの忌々しいエルフ魔女ぐらい。
 土曜はみな、街の名の由来となる山、グレイ・クリフに上りクリフ・スキッドを観るのが普通だ。何せクリフ・スキッドはこの街の主要事業であり、それがなかったらそもそもこの土地に街を興そうなんて誰も考えなかっただろう。
 かく言うわたしも行きたくてうずうずしている。
 特に今日のレースはどうしても見たい。
 今日はわたしの憧れるスキッダーが出場しているからだ。
 彼の名はジース・グリン。
 グレイ・クリフの地元スキッダーの一人だ。今のところ大した成績はあげていないけど彼は間違いなく近い将来、王都のリーグ戦に出られるほどの大物スキッダーになるに違いない。
 わたしはそう確信している。
 彼がみたい。彼の飛ぶ雄姿がみたい。彼の勝利する瞬間がみたい。
 そんな気持ちだけがどんどん大きくなってゆく。
 そう思うと、いてもたってもいられなくなった。
 はっと周りを見回す。わたし以外にこの店には誰もいない。店主のおばさんもどうせクリフ・スキッドを観にいっているはず。
 一度決断すると行動は早かった。
 わたしはカウンターの引き出しから羽ペンを取り出すと、すばやく紙に――

 “急用ができたのですこし店をあけます  ミリア”

 と書き残し、店の扉に『閉店』と書かれた札を下げグレイ・クリフ山へと走り出した。
 
 わたしがグレイ・クリフ山の山頂についた時にはレースがはじまる直前だった。
 さすがは普段使わない山頂と麓を往復する馬車に乗っただけのことはある。賃金は高いけど自分で山道を登るよりは遥かにはやい。
 わたしは急いでチケットを買い、それから竜券を買った。
 もちろん賭けるのはジースさんだ。
「ミリアちゃん、毎回言うのもなんだがそいつに賭けたって金をどぶに捨てるようなもんだよ」
 竜券を握りしめるわたしを見て売り場のおじさんが呆れた声でいった。
「いいんです!それにお金のために買ってるわけじゃないですし」
 そう、わたしは彼のレースを観にくるたびジースさんに賭けている。だけど別にお金のためじゃない。
「そりゃ毎回10ギード程度じゃ万が一勝っても大した金にゃならないが……」
 売り場のおじさんは首をかしげながら言う。
「いや、俺が言うのもなんだけどそれだったら貯めたほうがいいじゃないか?おまえさん以外にジースに賭けてるやつなんてほとんどいないぞ?」
「これは私のこだわりなんです。ほっといてください」
 わたしがジースさんに賭けているのは本当にただのこだわり。わたしなりの彼への想いを表現する方法にすぎない。それにわたし以外に彼に賭けている人がいないのなら好都合だ。
 正直、彼にはわたし以外賭けてほしくない。
 わたしだけでいい。
 彼のファンはわたし一人でいいのだ。
 すると突然、山頂に角笛の雄雄しい音が響きレース開始を告げていた。
「あ!レースはじまっちゃうからおじさんまたね!」
 わたしはおじさんの返事も待たずに急いで観客席へと向かった。
 遅れてきたので観客席はすでに満席だった。
 座れないのは残念だけど、ジースさんが観られるのなら立っているのも苦じゃない。
 それにこの観客席の位置は自分にとってある意味、特等席だ。
 本当の特等席はスタート地点やコーナー付近。それも貴族などお金持ち専用の席だ。わたしみたいな平民はたいてい山がまっすぐ横に伸びているところ、つまり直線コース近くの席しかとれない。
 だけど直線はスキッダーたちがワイバーンの高度を上げる場面なので観客たちのすぐ目の前を通過する場所だ。つまり一番ジースさんをよく見られるのがこの直線沿いにつくられた席なのだ。
 わたしは適当な場所に移動するとワイバーンたちがやってくるだろう方角に目を向けた。
 彼の姿をこの目に焼きつけるため。
391名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 06:00:35 ID:4I9XavuC
投下終了です
まだ続きます。失礼します
392名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 06:27:07 ID:sLiuDBYj
とりあえずsageませう
393名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 06:27:45 ID:03ZKAL6i
一番ヤリGJ!
ファンタジー物は大好きなので続きwktkで待ってます
394名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 07:32:31 ID:LrN81z1i
sageとトリップ知らないのかな?
2ちゃんの使い方を見れば分かるから、まずそちらを読むことオススメ。
395名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 07:45:41 ID:4I9XavuC
ご指摘ありがとうございます
今後注意します
396蒼天の夢  ◆ozOtJW9BFA :2007/09/19(水) 19:18:26 ID:4I9XavuC
再び投下します
今朝はありがとうございました
397蒼天の夢 02  ◆ozOtJW9BFA :2007/09/19(水) 19:20:55 ID:4I9XavuC
 競技が終わり、陽が沈んでも絶壁をくり抜いてできたワイバーン用の馬場は活気に満ちていた。
 ワイバーンの鳴き声。走り回る従業員やスキッダーたち。
 たとえレースが終わってもやることは山ほどある。
 ワイバーンに餌をやったり装備を片付けたりとむしろレース中より忙しい。
 下男を雇えるスキッダーは楽だ。レースが終わればそのまま帰れるのだから。
 だが俺のようなスポンサーつきでようやく参加できている奴にそんな余裕はない。
 ワイバーンの餌や装備の手入れなど、全て自分でやらなければならない。
 とにかくため息が出そうになるのを堪え、俺は備品のチェックに専念しようとした。
 忙しい時は自分の不甲斐なさをあまり考えずに済む。
 ちなみにレースの結果は10人中6位。
 決してよくない結果だがいつものことだった。
「よう、ジース!お疲れ」
 そこへ別のスキッダーが声をかけてきた。
 短く刈られた茶髪に悪戯っぽい笑みが特徴的な青年。
 名はアザラスと言い、同じグレイ・クリフのスキッダーの一人。
 今日のレースでは俺の次、つまり7位だった騎手だ。
「お疲れ……」
 俺は適当に返事をすると再び雑務に戻った。
 アザラスは気にした様子もなく、話続ける。
「このあと友達と飲みにいくんだけどどうだ?」
「おまえ、ワイバーンの世話は終わったのか?」
 俺は呆れ声で返した。
 こいつは負けた割にのん気だなと思った。
「ああ、終わったよ。それよりどうだ?」
「いや、遠慮しておく」
「ん、そうか。んじゃ俺たちは縁者の園亭にいるから、気が変わったらきてくれ」
 そう言い残してアザラスは兜を肩にぶら下げながら去っていった。
 声が大きいためか途中途中、他のスキッダーにも声を掛けているのが聞こえてくる。
 俺はどうにもあの同世代の同僚が苦手だった。気に食わないと言ってもいい。
 一見、愛想がよくて気の良い男だが、ヘラヘラした感じが嫌だった。
 いつも王都リーグに出るだのでかいことを口にしながら、成績は中の下。それでいて、負けてもまるで勝ったかのように明るく振舞っている。
 他の皆が必死になって頑張っている中、どうにも彼の態度は好きになれない。
 貴族だから恐らく勝てなくとも大丈夫なのだろう。
 クリフ・スキッドはとにかくお金のかかる競技だ。誰もがすぐにはじめられるものではない。
 だから多くのスキッダーは貴族だ。もちろん全員という訳ではない。
 俺のように地元の商会の支援を受けてやっている平民のスキッダーもいる。
 但しワイバーンを含め、装備はすべてスポンサーのものであり、成績が悪ければ他のスキッダーと取って代われることもある。
 今回送られてきた新しい鞍だって贈り物ではなく、成績不振の続く俺に喝を入れるためのものだろう。
 このまま結果を残せなかった場合、最悪――
「あー!やめだ!やめ!」
 物事がうまくいかないとどんどん悪い方向に考えてしまう。
 俺の悪い癖だ。
 とにかく来週だ。来週のレースで今日以上の成績を残せばいいだけだ。
 気分を切り替え、俺はとにかく仕事を終わらせることに専念した。
 そして全ての後片付けが終わったあと、アズールの頭を一撫でしてから山を下りた。
398蒼天の夢 02  ◆ozOtJW9BFA :2007/09/19(水) 19:22:11 ID:4I9XavuC
 麓の街につく頃には夜も更けていた。
 しかしそれでも街の方にはまだまだ活気が残っている。
 グレイ・クリフの街は主にクリフ・スキッドで収入を得ている街だ。
 国土の八割以上が山岳地帯のここアルス王国では珍しいことではない。
 元々資源の少ない土地。他に売り物にできるものは傭兵などの人的資源ぐらいしかない。
 よって観光やクリフ・スキッド関係の事業は特に力が入れられる。
 グレイ・クリフも例にもれず、夜になっても街の宿や酒場の明かりは灯ったままだ。
 夕飯がまだなので立ち寄ろうとも考えたが今日は騒がしい中で食事できる気分ではない。
 帰って適当に果物でもかじるか。
 俺は賑やかな繁華街を抜け、住宅地のはずれにある我が家へとまっすぐ帰った。
「ただいま」
 家の扉を開けるとまだ明かりがついていたことに驚いたがすぐにその理由が分かった。
「おうボウズ。帰ったか」
 そう言いながら熱いフライパン片手に出迎えたのが専業主夫の親父。
 エプロンをつけているものの、体格が大きいためどう見ても料理中、というより刀剣でも鍛えていそうな鍛冶屋にしか見えない。
「おかえりなさい。どうせ夕飯まででしょ?」
 見透かしたように言うのは食卓の上で何かを調合していた我が家の大黒柱にして街の薬師である母。
 そして――
「お久しぶり」
 部屋に響き渡るような澄んだ声。
 古典的な緑色のとんがり帽子に腰まで届く銀色の髪。
 美しいという言葉さえ陳腐に聞こえてしまうほどの端正な顔立ち。
 そして出自を語る細長く尖った耳。
「ひさしぶり、エリシアさん」
 母の隣には微笑を浮かべたエルフの魔術師、エリシアさんが座っていた。

「え?じゃあ俺のこと待っててくれたわけじゃないの?」
 遅い夕飯のあと、みなで食卓を囲んで紅茶をすすっていた。
 ちなみに俺の期待と反して遅い夕飯は何も俺のためではなかったらしい。
「当たり前でしょ。別にレースに勝ったわけでもなし」
「今日はエリシアさんが来てくれたからな。料理には少しこだわってみたんだが、少し遅くなった。おまえはタイミングよく帰ってきただけだ」
 相変わらず息子に対してデリカシーのない両親である。
「お疲れ様ジース君」
 対してエリシアさんの優しい労いはまさに神の贈り物だ。
「ありがとう。そういえばエリシアさんここ数年見かけなかったけど何処かに行ってたの?」
「秘密」
 そう言って人差し指を唇にあてるエリシアさん。
 相変わらず謎の多い女性だ。
 だがこの謎多きエルフの魔術師とはもう何年も家族そろって付き合いがある。
 母は薬師ということもあり、山で採れる様々な植物に詳しかった。
 エリシアさんはそういった植物を母から買うため、何年も前からちょくちょく我が家に訪れていた。
 普通ならお得意様で終わるところだが、母と妙に気が合ったらしく商売以外でも会うようになったとか。
 そんなこんなで俺も幼かった頃にはよく遊んでもらった記憶がある。
 他にも彼女は俺の家庭教師だったことさえあった。
 たいてい平民の子供は10歳前後になると街の神殿で読み書きを覚える。だが当時、神殿への寄付金という名の教育費をケチった親父はエリシアさんに俺の読み書きを教えさせた。
 結果、俺は平民ながら貴族の子弟たちのように、エリシアさんという専属の家庭教師がついていた。
 おかげで共通語に加えエルフ語まで読めるようになった。
 しばらく談笑していると帰る時間なのか、エリシアさんがすっと立ち上がった。
「あら、もうこんな時間。ごめんなさいね、引き止めちゃって」
 母親はすまなそうに言い、親父は俺に顎で扉の方を指した。
「言われなくともちゃんと送っていくさ」
 どうせ言うだろうと思い、俺はすぐさま家の倉庫からたいまつをとりにいった。
「ごちそうさまでした。ごきげんよう」
 エリシアさんは両親と礼を交わすとゆったりと扉を出て行った。
 俺もたいまつに火を灯し、あとに続く。
399蒼天の夢 02  ◆ozOtJW9BFA :2007/09/19(水) 19:23:25 ID:4I9XavuC
 治安が比較的良好なグレイ・クリフでも夜道は完全に安全というわけではない。
 もっとも『グレイ・クリフの魔女』ことエリシアさんに手を出す輩はいないだろう。
 魔女というのは彼女がこの街に越してきた時ついたあだ名らしい。
 なんでもグレイ・クリフに現れてからたった一日で彼女は街の郊外に五階建ての塔を興した。そのことに驚愕した街の住民つけた名だ。
 だから本当は見送りなんて必要ない。
 例え襲われたって賊程度じゃ簡単に返り討ちだろう。
 そんなことを考えながら隣を歩いていると、彼女の方から声をかけてきた。
「かわったのね」
「え?」
 いつもの淡白なしゃべり方だったので一瞬何のことかと分からなかった。
「あ、ああ。会うのは確か三年ぶりだったからね」
「人間ってすぐかわる」
「さすがにエルフほど長寿じゃないから――」
「そうじゃない」
 彼女は歩みを止めると、俺の眼を見た。
 確かにここ三年で俺の目線はようやくエリシアさんを見下ろす形になった。
 もうすぐ19歳にもなる俺にしてみれば当然なのだが、エルフの彼女からしてみれば大きな変化なのだろう。
「私の髪、触らなくなった」
 彼女は肩から銀の川のように流れる髪を差し出しながら言った。
 口元はわずかに笑っているようにも見える。
「あ、いや……」
 何のことかようやく分かった途端、急に恥ずかしくなった。
「触ってもいいのに……」
 小さい頃から俺にはちょっと変わった癖があった。女性の長い髪を見るとどうしても触りたくなるのだ。特にエリシアさんの綺麗な銀髪は耐え難い魅力を放っているので、よく研ぐように弄っていた記憶がある。
 母からはよく『恥ずかしいからやめなさい』とか『女性の髪を勝手に触るもんじゃない』など叱られてはいた。
 それでもエリシアさん本人からは止められなかったこともあり、気づくとすっかり癖として定着していた。
「さすがにこの歳でそれはマズいかな、と」
 最近になってようやく自分がどれだけ恥ずかしいことをやっていたかに気づいた。
 以来、件のこと思い出すと崖から飛び降りたくなる。
「どうして?」
「どうしてって……それはやっぱり女性の髪を触るのは無礼だし、その」
「でもジース君いつも触ってた」
「それは俺も小さかったし……」
「大きくなったら触っちゃいけないの?」
「大人になったら流石に……」
「ジース君まだ子供」
 変わらず微かな笑みを見せながらエリシアさんはそっと俺の頭を撫でた。
「これでもクリフ・スキッダーなんだけど」
 エルフの彼女から見れば俺なんてまだまだ子供なのは分かる。
 でも19歳にもなって子供の時みたいに頭を撫でられるのは納得がいかない。
「子供」
 彼女はそれでも撫で続けた。
 しかも段々と撫でられるのが気持ちなってくるから危険だ。
「そりゃ今は未熟かもしれないけど、俺だっていつかは――痛ッ!」
 ちょっと不機嫌な顔してみた途端、痛みが走った。
 よく見ると頭を撫でていた手には俺の黒い髪の毛が数本握られていた。
「ふふふ、生意気」
「何するんだよ!」
 頭を押さえる俺をよそに彼女はむしりとった髪の毛を懐から出したビンに入れていた。
「これはお土産」
「は?」
「あとは大丈夫。ありがとう」
 そう言うとエリシアさんはさっさと闇の中に消えていった。
 あまりにも突発的なことだったので一瞬唖然としてしまった。
 追いかけようと思ったが、気づくとたいまつに照らされた小さな空間と、夜空の中でもその存在を誇示する魔女の塔しか見えなかった。
400蒼天の夢  ◆ozOtJW9BFA :2007/09/19(水) 19:24:56 ID:4I9XavuC
投下終了です。
失礼します。
401名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 20:08:36 ID:fk8Qfl+x
>>400
GJ!!!!
母から買っている植物と、ジースの髪の毛・・・。エリシアさん、一体何を・・・((;゚Д゚)ガクガクブルブル
続きを楽しみに待ってます。
402名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 21:12:34 ID:W2mx5abe
朝ktkrかと思ってたら夜も来ててビックリしましたぃ。
作者様GJです。
403名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 21:28:34 ID:sLiuDBYj
筆が早くて感心です。GJ。
404名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 21:35:37 ID:oDve00IZ
>>400
一日に二度も投下するなよアホ
405名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 21:52:38 ID:fxhlNnKU
>>400
ふぁんたじぃはええですのう。gj
406名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 22:00:12 ID:EbKS8aA8
>>400
GJ!!エルフとかイイよね。
407名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 22:11:19 ID:Irv0zJ1b
>>404
お前は二度と書き込むなよ、な!
408名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 22:23:46 ID:oDve00IZ
>>407
アンカーすらまともに打てない人に言われたくないな^^;
409名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 22:28:51 ID:QuR930p/
>407
スルースキルをそろそろ覚えろ
410名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 22:31:17 ID:ZnpQv3J8
髪触るっていいよね、なんかいい
411名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 22:34:25 ID:jFlTyVI9
>>407
何故粘着に釣られるのか
何故スルースキルを身につけないのか
412名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 22:49:57 ID:LDi/NWlo
>>410
お前は俺か
413名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 23:22:44 ID:WhJ7UuUe
>>400
面白いです。続き楽しみにしてます。
414名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 23:53:53 ID:qdPmrU4e
リクームやグルドの過去話もよろ
415名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 23:59:44 ID:STcDgHO8
>>414
それなんてギニュー特選鯛
416名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 00:27:37 ID:5P4sgfkJ
>>371で紹介されていた「リュンコイスの魔王」をDLしてプレイしている。



まだ途中ではあるが……うん、良い修羅場。

>>366>>369の台詞を見たときには震えたね。
これからの展開が楽しみなので、続きのプレイに没頭します。
417名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 10:33:14 ID:gbjy4ktp
ツクール2000のランタイムインストしてゲームダウンロードしたのだが
起動アイコンがみつからない・・・
418名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 14:03:39 ID:ToW4xhgp
exeは共通だから、他所でダウソしる
419名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 23:27:03 ID:Qg2ZmyZT
>>371

「リュンコイスの魔王」、このスレ的にはかなりオススメ。
純な乙女がキモ姉への対抗心と主人公への激しい愛情から、ヤンデレヒロインにクラスチェンジするところなんか最高。
 ……ラストは色々な意味で衝撃的。
420名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 03:53:15 ID:6a1UONp1
プレイできてない奴も多そうだけどな
421名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 05:19:22 ID:gIKo5rS7
できないやつは厨ばかり
ってか、やり方がわからないやつっているの?
422名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 06:08:17 ID:UWyFIJ23
台詞回しがくどすぎて3時間ほどプレイしてダウンした
423名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 06:09:08 ID:/9J/QbNe
おまいら今日の「暴れん坊将軍」の再放送は必見ですよ。 たとえ三次元でも。
424a:2007/09/21(金) 17:17:29 ID:jbOB5A4f
2007/08/10 17:10:12 oo
私は中3です。3月10日、卒業式でした。
そして、卒業式が終わっていえに帰って、友達と遊びに行っていました。
そしたら!!彼氏に見つかって(?)彼氏の家に急遽行く事になりました。
そして行き成り彼氏は私の胸を触り始めて、ベッドにたおれました。
そしたら制服のスカートをめくり上げて、パンツの中に手を入れて、
チンコの中に指を入れて・・・「クチュクチュクチュ」って。わざといやらしい音を立てて・・・。
そして彼氏はこういいました。「服脱いで」と。
私はビックリしたので「え?」と聞き返しました。私はもちろんエッチはやったことはあります。その彼氏と。ほかの人ともやった事はありますが・・・(藁
そして、彼氏は「オレ、脱いでる所とか写メとるの好きだから」っていいました。
私は納得して、自分でぬぎはじめました。
そして彼氏は私の体で遊び始めました。チンコに指を入れてクチュクチュいやらしい音を出したり、胸をもみもみしたり、なめたり。
そして彼氏は写メもとりまくってました。私のチンコの穴。胸。全体など。
そして彼氏は我慢できなくなったらしく、こういいました。
「オレのズボン脱がせて」と。私は喜んで脱がしました。
ズボンのチャックを開けて、ズボンを下ろして、ガラパンを下ろして。
そしたら彼氏のもうすでに大きくなっているあそこが出てきました。
そして私は彼氏をベッドに寝かし、私はうえにのぼって彼氏のあそこと私のチンコを押さえつけるようにしながら写メをとりました。
とても気持ちよかったです。
この写メを見たい人はこのスレを8箇所に張ってください。
そしたら[               ]←ここにアドレスが出てきます。
それをクリックすると、彼がとった写メすべてのってます。
私がとった写メも、動画も載せてます。
動画はわかりにくいようにしています。
「☆」をクリックすると動画がみれます。
このスレを1箇所にも張らなかった人は、不幸がおこります。
大好きな人が一年以上学校に来なかったり。
嫌いな人があなたの席の隣になったり。
親戚が亡くなったり。
けど本当に写メ、動画ありますので8ヶ所にはってみてください!

425名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 18:00:18 ID:9w7WPnPx
>>423
暴れん坊将軍には何があったんだぜ?
426名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 18:14:41 ID:IW6gG1s+
>>419
これは良い嫉妬だな
姉がハンケチを噛み締めながら尾行をしているシーンなどおっきしてしまったよ

あとでかい方のラスボスの最強技がエグ過ぎる
全滅の繰り返しで撃破に3時間かかったorz
427愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/21(金) 20:05:25 ID:bs+rZOTd
皆さん乙です。
>>292の続き投下します。
428愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/21(金) 20:06:37 ID:bs+rZOTd
 ―――おかしい。

 昼休みが始まってもう三十分が経つのに、遼君はまだやってこない。いつもなら昼休み
の連絡放送と昼ごはんの為に、毎日放送室にやってくるのに……。無論私が放送室にいる
のは遼君と昼ごはんを食べるためだけど。

 ぐ〜〜。

 お腹が間抜けな音を立てて鳴る。遼君が来るまで私も昼ごはんは我慢していた。一体何
があったのだろう? 先生に用事でも頼まれたのだろうか?

「遅いよ、遼君……」

 思わずそう呟いてしまった。一人でいる放送室は静かで寒くて、そして寂しかった。

「はあ………」

 何だか、嫌な予感がする。

 教室にでも見に行ってみようか? でもそんなことしたら遼君に変に思われるだろう
か? でもやっぱり心配だし、行ったほうがいいかな。どういう理由にすればいいだろう?

『放送室に来なかったから心配になって』

 これじゃあ好きだってことがバレバレだ。

『連絡放送サボりやがって何やってんだコラァ!!』

 うん、これはいい。でもいちいちこんなことで教室まで行ったら嫌われるだろうか? ウ
ザイ先輩だなんて思われたら一貫の終わりだ。ああもうどうすればいいんだろう? とにか
く会いたいよ……会いたいよ遼君!!

「ええいもう、行ってしまえ!!!」

 とりあえず教室にいるかどうかだけ見に行ってみよう、それからどうするかはその時考
えればいい!!

「突撃!!」
429愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/21(金) 20:08:45 ID:bs+rZOTd

「突撃!!」

 私が放送室を出ようとノブに手をかけたときだった。

「あれ?」

 勝手にドアのノブは回って扉が開かれた。バランスを崩して私は前に倒れる。

「……おわっ、と。大丈夫っすか先輩?」

 バランスを崩した私が倒れこんだその先は、

「りょ、遼君……」

 誰よりも待ち望んだ彼の胸の中で、私はしばらくそのままで居たくなった。でも、その
幸せはやっぱりそんなに長くは続かないようで、

「よいしょっと」

 遼君は私の肩を掴んで、私の体勢を立て直した。

「怪我はないっすか?」
「……うん」

 やさしく笑う遼君。私はどうしようもない幸福感に包まれる。

 ―――――だけど、

「し、失礼します」

 ―――――だけどその瞬間、私の幸せは音を立てて崩れ去った。






430愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/21(金) 20:09:58 ID:bs+rZOTd
「んじゃあ入って」

 僕は綾瀬さんを中に招き入れた。

「し、失礼しま〜す」

 綾瀬さんがおずおずと中に入ってきた。少し緊張したその表情も、ああ、ため息が出そ
うになるくらい可愛い。

「……………誰?」

 先輩はポカンとした様子で呟いた。

「あ、こちら今日転校してきた綾瀬楓さんです。学校の案内してたとこなんすよ」
「よ、よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げる綾瀬さん。

「……………先輩?」

 未だにただ立ち尽くす先輩に、心配になって僕は声をかけた。

「……え? あ、ゴメンゴメンちょっとぼーっとしちゃって……」

 申し訳なさそうに笑った後、先輩は「よろしくね」といつものような口調で言った。

 だけど、その昼休みの先輩の様子はどこかおかしかった。




431愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/21(金) 20:12:18 ID:bs+rZOTd
 一瞬で分かった、とでも言うべきだろうか。

 あの人は、放送室にいたあの先輩は、確実に中原さんのことが好きだ。

 昼休みが終わって午後の授業が始まっても、私はそのことを思い出していた。

 最初に中原さんと喋っていたときのあの表情、同じく私が入ってきた時のそれ、そして
その後の様子。

『女の勘』とでも言うものなのだろうか、こんなのは初めてだ。

 綺麗な、人だった。

 あの人は私の何倍もの時間を中原さんと過ごしていて、私の知らない中原さんを沢山知
っている。正直、分は悪い。

でも、

「…………負けるわけには、行かないですよね」

 誰にも聞こえないくらいの声で、私は言った。自分自身を鼓舞するために、この戦いに
勝利するために。

 中原さんの後ろ姿を見て、今日何度目か分からないため息をついた。黒板に書いてある
授業内容をノートに写している。

 ああ、これから毎日彼の背中を眺められるなんて、私は何て幸せなんだろう?

 だめだめ、背中なんかで満足してちゃ駄目なんだ。

 もっと、もっと近くに。

 もっと、中原さんの近くに。

 ―――そして願わくば………。

 その後のことを考えると、顔が赤くなった。

 これももう、今日何度目か分からない。

 よし、決めた。私も放送部に入ろう。

 まずは、そこからだ。


432愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/21(金) 20:14:20 ID:bs+rZOTd


 不安は的中した。当たりも当たり、大当たりした訳だから『女の勘』っていうのもあな
がち間違いじゃないんだろう。

「…………ハア」

 昼休みが終わって始まった午後の授業。今の私には何の教科なのかは分からないし、興
味すらない。

 窓の外を見ながら考えてるのは、もちろん彼のこと。

 あの娘(綾瀬さんっていったっけ)に話しかける遼君の目、それに遼君を見る彼女の目。
頭にこびりついて離れない。

(嫉妬ってやつか………)

 自分がこんなにそんなことをする人間だなんて今まで思ったこともなかった。

 遼君は彼女のことをどう思ってるんだろうか?

 あれだけ可愛い娘だし、嫌いってことはないだろう。でも、でもきっと知り合ってまだ
少ししか経ってないし、好きってことも………希望的観測すぎるだろうか。

 全く彼の気持ちは分からない。

「でも」

 はっきりしてるのは、あの娘が遼君のことを好きだっていうこと。

 あの表情は、あの声は、あの目は、完全に恋をしている。
433愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/21(金) 20:14:58 ID:bs+rZOTd

「…………ハア」

 それを考えるだけでまた、胸の中にとんでもなく汚いものが込みあがってくる。

 ―――嫌だ。遼君を取られたくない。遼君が私以外の女の子にあんな風に笑うのを見た
くない。

 それに、それにあの娘が私は許せなかった。放送室に、私と遼君の聖域に、入り込んで
きたあの娘が私は許せなかった。

「…………負けるもんか」

 そうだ、負けてたまるか。遼君を好きな気持ちだったら、出会って間もないあんな娘に
なんか負けるはずがない。もう怖がってなんかいられないんだ。『ただの先輩』のままで
いる訳にはいかないんだ。臆病な自分を変えないといけないんだ。

「…………よし!」

 今日は遼君の勉強を見てあげよう。密室二人っきりの放送室、これは私にとっての最大
の武器だ。あわよくば急接近!!

 さあ心は決まった。あとは全力で事にあたるのみ!!

 ノートに大きく太く、『打倒綾瀬楓!!!!』と書いて、私の決断式は完了した。

434愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/21(金) 20:17:27 ID:bs+rZOTd
以上で今回分終了です。
やっと嫉妬成分が入り始めたところでしょうか……。
次回もよろしくお願いします。
435名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 20:37:45 ID:uLTYp2W5
GJ
436名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 21:20:09 ID:r8gnCUIt
私の親友は少しだけ変わっている。腰まで伸びた栗色の髪に、染み一つない白磁のような肌。長い睫毛と宝石のようにきらきらと輝く大きな瞳。小さく整った頬骨と露に濡れた薔薇の蕾のような唇。
スカートから覗くしなやかな素肌の脚は、言い様のない艶やかさを思わせる。
セーラー服の上に薄い膨みを主張する乳房と、小さくはだけられて薄紅に色付いた鎖骨。
なんと淫靡な姿だろう。ただそこに立っているというだけで見るものに官能的な衝動を催させる、天性の娼婦。
それでもなお、控えめに伏せた目元と穏かな物腰はどこか修道女のような貞淑さを感じさせた。
女の私から見ても、親友の姿は綺麗だ。その上、仕草は可愛くもある。
天は二物を与えずというが、目の前にいる親友の美しさに関してはこれでもかというぐらい甘やかし放題だ。
私だって、容姿に少しは自身がある。何度となく男子から告白されたし、同性から綺麗で羨ましいと言われることなんてしょっちゅうだ。
だけれど、親友はそれ以上に綺麗で可愛い。そんじょそこらのモデルなんか比較にならないくらいスタイルも顔立ちも優れている。
悔しいなんて思う気持ちも萎えるほど別次元の美しさを誇るのだ、親友の容姿は。
しかし、先に述べたように、私の親友は少し変わっている。
具体的にいうならば、体のごく一部分が。観念的にいうならば、その全てが。
アイドルにも負けないくらい綺麗な親友はその見かけに反して、実は男の子なのだ。
そう、男の子。男で雄でMANで♂。生物学上完っ璧な男性。小さい頃一緒にお風呂に入ったときには股座にちゃんとぞうさんがくっ付いていた。

437名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 21:23:26 ID:r8gnCUIt
「あはは。ずっと夢だったんだ。今みたいにこうして制服着て町を歩くのが。どう?ボクのセーラー服姿、似合ってる?」
「すっごく似合ってる。思わず嫉妬しちゃうくらいに。」
目の前でくるくると廻ってスカートをはためかせている親友の制服姿は、本当に悔しくなるくらい似合っている。
三月十日、卒業式を終えて一旦家に帰ってから、私と親友は町へ繰り出した。
私は私服で、私の親友は前から彼の悲願であった、セーラー服に袖を通して。
幸い、私たちの体格は同じくらいだったので彼が私の制服を着込んでいても違和感はない。
親友は昔から女装が好きだった。いや、女装は彼の趣味だといってもいい。
小学校のころは毎日女の子の姿で登校し、中学ではやはり校則で学生服を着なければいけなかったが、彼の学生服姿はまるで男装の麗人のようで、男子女子の両方に倒錯的な想いを抱かれたりもしていた。
私は彼の趣味に口を出すつもりはないが、やはり女装というのはちょっといただけない。
「なんだかボクたち姉妹みたいだね。ほら、早くいこ!」
「う、うん。」
親友が私の手をとって歩き出す。柔らかい感触に思わず顔が熱くなった。
たしかに私たち姉妹のように見えるかもしれないが、恋人同士には見てもらえないだろうか。
私は女で、彼は男。異性で手を繋いで町を歩くのだから、これは立派なデートじゃないか。
一度意識してしまうと、一気に落ち着きを失ってしまった。心臓の動悸が激しくなる。顔に血が上り、視線が定まらずきょろきょろと動く。
今の私の姿を見る人がいたら、女の子同士腕を組んで顔を赤らめている私を挙動不審に思うだろう。
でも、それも仕方が無い。私は彼に恋をしているのだから。

438名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 21:25:55 ID:r8gnCUIt
初めに意識したのがいつだったのかは覚えていない。気が付けば、私は親友を好きになっていた。
私たちは幼馴染で、小さいころから良く一緒に遊んでいた。彼は女の子のような容姿に違わず女の子のような性格で、女の子の遊びが好きだった。
親友の趣味と性格は見て通りのああだから周りに馴染めずいつも孤立していて、幼馴染の私くらいしかまともに接しようという人間はいなかった。
そのころの私は時々考えたものだ。私は親友なのだから彼と遊んであげなきゃいけない、私だけが彼を助けてあげられるのだ、と。
それからだろう、私の心の中に彼に対する独占欲ともいえる責任感が目覚めたのは。
年齢が上がるにつれて排他的だった周りの子供たちにも寛容さが生まれ、彼の存在もクラスの輪に馴染み始めてくる。
ちょっと変わった子だけど性格はいいし、何より可愛い美少年。そんな彼がクラスの人気者になるまでにはそれほど時間はかからなかった。
彼は私だけのものではなくなってしまったのだ。

「ぼーっとしてどうしたの?早くたべなきゃアイスとけちゃうよ?」
「あっ……そうだね。ごめん。」
気が付けば、考え事で上の空になっていた私を不信に思い首をかしげる彼が目の前にいた。細かいことは気にしない性格なのか、彼はすぐにまた自分のアイスに舌を伸ばした。
彼の仕草はひとつひとつが艶かしい。垂れてきたクリームをつつ、と充血した舌でなぞり、掬い取る姿に色気を感じる。
彼はそのまま棒状のソレに満遍なく舌を這わせ、頂点に溜まった液体に美味しそうに吸い付いた。
なんという厭らしい仕草だろう。周囲にいる男性は誰しもが彼を凝視している。以前に、耳年増の同級生に見せられたビデオの映像を思い出してむず痒い気持ちになった。

439名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 21:29:30 ID:r8gnCUIt
「あれ?キミはもしかして……」
突然、横から野太い声が聞こえた。髭の濃い中年がやたら馴れ馴れしい仕草で私たちに近づいてくる。
新手のナンパなのだろうか。それにしても一度鏡で自分の顔を確認してからきて欲しいものだ。私たちの年齢以前に、顔面そのものが条例違反に引っかかっている。
「どうも、こんにちは。こんなところで会うなんて奇遇ですね。」
「いや〜、相変わらず可愛いねキミは。その娘もしかして、コレかい?」
ぶよぶよと脂肪が集まった赤ん坊のような小指を立てる肉団子。
「ち、違いますよ。ただの幼馴染ですって。」
どういうことだろう。目の前にいるクリーチャーは彼の知り合いだとでもいうのだろうか。
こんな汚らわしい生き物に視姦されると体じゅうにさぶいぼが出る。中年特有の腐ったチーズのような体臭が鼻をつき、私は目をしかめた。
「あ、この人?父さんの友達だよ。」
どうやら彼の父親の関係者らしい。私は握手を求められたが、こんなおぞましいものに触れるのはごめんなので視線で断ってやった。
私を蚊帳の外にしたまま、彼とニューボーンエイリアンは談笑を続ける。異種族コミュニケーションも大事だが、歩み寄る相手は選んだほうがいいと思う。
あんな青魔法を使いそうな種族は、人間とは決して相容れないだろうから。
こんな街中ではなくエリア51でやるべきである会談をしばらく行うと、目の前のラージノーズグレイは彼の耳元にその汚らしい口元を寄せて、なにやら二三言呟いた。
いったいなにを言われたのだろうか、ジャバ・ザ・ハットの唇が動くにつれ、彼の儚い表情は徐々に歪んでいく。
顔を真っ青を通り超して蒼白にした彼が、私の方に向き直る。
「ちょっと用事が出来ちゃったからさ……先に帰っててもらえる、かな。」
悲しそうにそれだけ言い残して、親友は先ほど現れた髭の中年に手を引かれほいほいついて行ってしまった。
そして私は彼の様子を不審に思い、彼らの後を尾行した。



440名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 21:32:08 ID:r8gnCUIt
窓から覗く部屋の中に、引き締まった腿と銀色に光る腹が見える。一本の大きな黒い線がその腹を横切っている。
男の腕だ。男は寝台にうずくまって、親友をかかえ、ひしと抱きしめる。そして、男の口は親友の性の口のすぐ近くにあり、彼らは途方もなくおぞましい接吻のために身体を近づけあう。
暗い色の身体がほの白い体の前に跪いているのが見える。
しばらくすると、男が親友の上に身体を横たえ、呻くようになにかを言いながらぴったりと身を寄せる。男は親友を引き裂こうとし、親友の上にのしかかった。
二人は互いの身体のなかに深くはいりこみ、男は快楽へと突き進んでゆく。二人は身体を波打つように動かす。二人の充血した器官が私の目にはいる。
私は、彼ら二人がつくりなす汚らわしく奇怪な交合を目の当たりにした。
男が機械的に何かを繰り返すと、肉の結びつきはぐったりとなった。男はもう堪能しきっていた。
傍観者の私は、一人涙を流した。






441名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 21:35:45 ID:r8gnCUIt
>>424を見て勢いで書いてしまった。
女装美少年なら萌えると思ったが、自分の文章力では萌えられなかった。今は後悔している。
スレ汚しごめんなさい。吊ってきます。
442名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 21:57:41 ID:oY6SIra6
これは・・・なんともコメントしずらいな
443名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 22:00:14 ID:JL9NHrpN
うん、、まぁその、、、なんだ

ガンバレ
444名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 22:01:06 ID:mBRfhwJ7
もう少し書いてくれればよかったんだがな
445名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 22:02:11 ID:JUDoFNkX
スレ間違えたかとおもた
446蒼天の夢  ◆ozOtJW9BFA :2007/09/21(金) 22:22:59 ID:OyPy8Vpg
皆さん、こんばんは
続きを投下させていただきます
447蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/21(金) 22:24:13 ID:OyPy8Vpg
 俺の朝は早い。
 まだ朝靄が街を覆い、空が紫かがっている内から家を出る。
 グレイ・クリフでレースが行われるのは週一回だがスキッダーは毎日練習する。
 そして俺の練習は家を出た瞬間からはじまる。
 まずはワイバーンの馬場(竜場とも言う)があるグレイ・クリフ山頂まで走りこみ。
 家から街までは平坦だから楽だ。問題は麓の街から山頂までの道のり。
 アルス王国の者なら誰でも山道は慣れたもの。しかし、走って登るとなると話は別である。
 ペースを考えながら走らないといけないのでなかなか馬鹿にできない鍛錬だ。
 唯一、気に入らないのは山道の幅が狭いこと。
 特に大きな馬車が通れば山腹にへばりついて道を開けなくてはならない。
 そして案の上、今朝走っていたら馬車が来たため一旦道を開けなければならなかった。
 ただ今回ばかりはへばりつくどころか道から外れ、山の斜面にまで退かなければならなかった。
「はあ……はあ……なんだよ。あれ」
 思わず立ち止まってしまうほど派手な馬車だった。
 四頭の黒馬に引かれたワインレッドの車両。所々金の装飾で彩られ、馬車の横腹には翼を生やした狼の紋章が描かれていた。
 貴族の馬車なんてグレイ・クリフじゃ珍しくもないが、あそこまで大きく豪華な馬車は未だ見たことがない。
 以前アザラスの馬車を見たことがあるが今の馬車に比べたらそれこそ小悪魔インプとドラゴンぐらいの差はある。
 まさに権力と財力を誇示するが如く。
 名のある貴族には違いないだろうが、生憎と俺はそういった事柄に興味はない。
 と同時にレースのない日曜の朝に大貴族がグレイ・クリフ山に何の用か、と好奇心が湧く。
 幸い、俺の目的地も恐らくあの馬車と同じだ。
 考え事は山頂に着いてから。
 俺は再び険しい山道を走り出した。

 山頂の洞窟内に到着すると俺は汗をしっかりと拭き取り、クリフ・スキッド用の革鎧に着替える。
 着替え室から竜場に向かい、腹を空かしたアズールにたっぷりと餌をやる。
 朝早いにも関わらず、周りには既に何人ものスキッダーたちが各々の練習の準備をしていた。
 そんな中、俺の走りこみ中の疑問の答えが目に入った。
448蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/21(金) 22:25:15 ID:OyPy8Vpg
 竜場の中でも大きめに作られた奥の区画の一つ。
 そこには見たことのない赤いワイバーン。
 まるで竜神を拝めるかのように赤いワイバーンを世話する茶色い制服の一団。
 一団を護衛するかのように直立不動で立つ完全武装の兵士。
 そして彼らの盾には山を登ってくる際に見たあの馬車と同じ、翼の生えた狼が描かれていた。
 なるほど、と納得した。
 つまり今日からスキッダーがもう一人増えるのだ。
 とてつもなく“高貴”なスキッダーが。
「おはよう諸君!今日も王都リーグ目指して頑張ろうじゃないか!」
 準備をしながらチラチラと高貴な一団を見ていると、全く高貴じゃない貴族が姿を現した。
 アザラスである。
 最初は他の従業員やスキッダーに挨拶して回っていたが、俺の望みとは逆に奴の声がどんどんと近づいてくる。
「おはよう!ジース」
 予想はしていたが、アザラスは最終的に俺の方にやってきてしまった。
 こうなっては適当にはぐらかすしかない。
「おはよう」
「次のレースのため頑張ろうな!」
「ああ」
「次こそは上位にあがろう」
「そうだな」
「ところで見たか?ベイヴェルグ公爵家の連中だぜ」
「ベイヴェルグ?」
 ひたすら生返事で通そうと思っていたが、どうやら好奇心の方が勝ってしまったようだ。
「ん?ジースは知らないのか?」
 一見気さくに笑っているアザラス。その実、眼には自分の知識を披露したいという気持ちがありありと浮かんでいた。
「貴族の名前なんて一々覚えてられん」
「悲しいこと言うなよ」
「んで、そのベイなんとか様はどうなんだ?」
「ああ、そうそう。とにかく地味に影響力が大きい――」
 ベイヴェルグ公爵家。
 公爵という爵位の中でも最も高い位を持っているから偉い、というのは俺でも分かっていた。
449蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/21(金) 22:25:58 ID:OyPy8Vpg
 だがアルス王国の主要穀倉地帯の領主だというのは初耳だった。
 簡単に言うと輸入品か自家栽培でないかぎり、毎日口にする食べ物は高い確率でベイヴェルグ領地産だということだ。
「まったく、これぐらいこの国の人間として知っておけよ」
 アザラスは説明が終わるとやれやれと言った感じに肩を竦めた。
「悪かったな」
 相変わらず気に障る仕草をする奴だ。
 しかしアザラスの言う通りならば、なぜグレイ・クリフにわざわざ公爵家の人間が来るのだろうか。
 確かにグレイ・クリフは週一回必ずレースを組むほどクリフ・スキッドに熱心な街だが、腕の良いスキッダーはたいてい他の主要都市に集まる。
 少なくとも名声を手にしたいのならここより良い場所は幾らでもあるはずだ。
「まあ、大方あの一族の坊ちゃんの道楽かなんかだろ」
 俺の考え事をよそに、アザラスは呆れたような態度で話題を締めくくった。
 自分のことを棚にあげて何を、と言いかけて俺は何とか己の口を塞いだ。
 ここで反応してはこいつとの会話が長引いてしまう。
 とにかく俺の練習が遅れない内にここを出ようと思った瞬間だった。
「恥を知れ!」
 鋭い女の声が竜場内に轟いた。
 アズールでさえ驚いて飛び跳ねたぐらいだ。
 声は話題の主役であったベイヴェルグ家の一団の方向から来ていた。
 そーっと横目で見ると少女がベイヴェルグ家の兵士に向かって何か怒鳴りつけている。
「ん?あんな娘いたか?」
 不思議そうな顔でアザラスが尋ねてきたが俺もあの娘を見るのははじめてだ。
 あの一団に隠れて見えなかっただけだろうか。
 そう思っている内に少女は引きとめようとしているベイヴェルグの家来たちを無視して着替え室の方へと歩きはじめた。
 先ほどの叫び声で気圧されたのか途中スキッダー、従業員問わず全員少女に道を譲ってゆく。
 一瞬だけ情けないな、と思ったがすぐに自分の愚かさを理解した。
「「うおっ」」
 不覚にも隣のアザラスとハモってしまうぐらい少女の姿は美しく、気品があった。
 肩で切り揃えられた金髪。
 研ぎ澄まされた刃物を思わせる切れ長の眼。
 エリシアさんが森のように爽やかでゆったりとした美しさなら、目の前の少女はグレイ・クリフ山の如く壮大で鋭利な美しさだ。
450蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/21(金) 22:28:26 ID:OyPy8Vpg
 それだけではない。
 洞窟内にとどく淡い光でも反射してみせる紅い革鎧と脇に抱えた女神のレリーフが施された兜。
 両方ともワイバーンを一頭買えるぐらいの品なのだろう。
 なにより革鎧の胸部に縫い付けられた紋章。
 彼女がまさしくアザラスの言っていたベイヴェルグ公爵家の“道楽”息子ならぬ娘であると確信した。
 とりあえず俺の好奇心は満たされたので後は自分のことに集中するだけだ。
「よう!俺はドレンの子、アザラス。昨日はいなかったようだけど今朝ついたのか?」
 一方で俺とは行動原理が正反対の奴がさっそく少女に声をかけていた。
 ここまで来ると気さく通り越して、ただの馬鹿である。
「馴れ馴れしい……」
 呼び止められた少女は一端止まると、強烈な視線をアザラスに向けた。
 まるで虫けらでも見ているかのような見下した眼。
 直接見られている訳でもないのに、つい後ずさりしたくなってしまう。
「おいおい、同じスキッダーじゃないか。それにここは闘技場じゃない。競技選手同士もっと気楽にいこうぜ」
 そのままビクついて引っ込むかと思っていたアザラスは意外にも真面目な顔で話していた。
 少しだけ見直したかもしれない。
「ふん、田舎貴族が偉そうに何を申すか!勝負事においては己以外すべてが敵。ましてやクリフ・スキッドはもとはと言えば竜騎兵を鍛えるための演習の一つ。戦へと赴くのと同じ覚悟で挑むのが礼儀」
 もとから不機嫌だったのか、アザラスの態度が癪に障ったのか少女は物凄い剣幕でまくし立てた。
「それを競技?選手同士?笑わせるな!まったく、お前のような輩がよくもスキッダーなどと名乗れるものだ!」
 相手に言い返す隙を与えぬ猛攻である。
 アザラスをはじめ、グレイ・クリフのスキッダーたちは割と気楽である。だからお互い貴族だの平民だのと気にしない。
 それに慣れて忘れていたが、本来貴族様というのはこういうものなのだろう。
「わかった、わかった。俺が悪かったよ。とにかく名前を聞かせてくれないか」
 出だしはよかったがアザラスはすぐに折れた。
 前言撤回。
 やっぱりこいつ駄目だ。
「……私はエラミノの子、ティオーナ。ティオーナ・エラミノ・ベイヴェルグだ」
 アザラスのみならず竜場のいる全員に宣言するかのように彼女は名乗りをあげた。
 まるで他の者に何度も名乗らせるな、と暗に言うような尊大な口ぶりである。
「そ、そうか。よろしくな」
 アザラスは手を差し出すもティオーナは一瞥をくれるだけで歩き去っていった。
「ありゃ乗ってるワイバーンの方が大人しいんじゃないのか?」
 誰かが声を潜めて言った。
 まったくその通りである。
 貴族の女性と言ったらもっと慎ましやかな淑女を想像していた。ティオーナ嬢は貴族女性の幻想を見事なまでに打ち砕いてくれた。
 だがこのままだとあのアザラスでも可哀相に見えてくる。もちろん間違っても俺は奴に同情なんてしてやらない。
 兜を持ち、俺は練習に赴くためさっさと竜場を後にした。
451蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/21(金) 22:30:10 ID:OyPy8Vpg
 投下終了です
 ノリと勢いで書いてるせいか、嫉妬要素まだちょっと先です。
 ほんとうにすみません
452名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 23:03:34 ID:Nm+jVp7t
いつか嫉妬があるなら問題なしだぜ
453名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 23:20:39 ID:wDlTuyci
女性キャラの魅力をきちんと描写できていてGJ。
でも個人的には主人公のワイバーンに興味があったり。
454名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 01:45:34 ID:1IPxH64I
何故か最近毎日沃野の胡桃が夢にでてくるwww
455名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 02:17:18 ID:pgJyg+rr
>>454
マリー隊長(Ver.bad)と胡桃は最狂
ヒロイン人気投票をしたって勝つに違いない
456名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 11:28:41 ID:AiiYfJF9
ごめん、話し切って悪いんだけど
↑の方に書いてあるログを読んでもリュンコイスの魔王の起動アイコンがどうしてもわからない。
誰か教えてもらえないだろうか?
457名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 12:00:55 ID:yi/QmzbJ
>>456
いい加減ググれよクレクレ厨……

ようはツクール2000製RPGをプレイするには、RPG_RT.exeという実行ファイルが必要なんだよ。
ベクターとかで落とせるゲームには最初からこれが入っているんだけど、これみたいな2ch作品は容量削減やウイルス対策やらで実行ファイルを入れてない場合が多い。
だから他のゲームとかから実行ファイル持ってきてやらないとプレイ出来ないんだ。
で、実行ファイルは剣を持ったショタのアイコンなんだけど、バージョンが古いとゲームによっては起動できなかったりするから注意しろよ。
最新版の実行ファイルはttp://park.geocities.jp/tilisakuhokanmark2/で落とせるから
ゲームフォルダ(マップや他のRPG_RTファイルが大量に入ってるところ)にそれをコピーして、最後にショタのアイコンをクリックしてやればゲーム起動が完了ってわけ。
458名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 12:02:06 ID:ztfA45pU
なぜ本スレに移らないお前ら
459名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 12:10:14 ID:U4bo3Kpq
>>457
わざわざ説明してあげるお前に脱帽した
460名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 12:46:37 ID:IPg1m3Ta
スクイズ放送中止だってな
461名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 13:18:29 ID:avDdhl3Q
こちらでどうぞ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第22章
ttp://qiufen.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1190013647/
462名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 13:55:41 ID:NQ/yrwXh
>>457
良いツンデレだな
463名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 17:51:57 ID:U4bo3Kpq
>>456
つーか、リュンコイスは修羅場以外は糞ゲーだぞ?専門用語ばっかだし…無意味に言葉を難しくいうのがウザすぎてたまらない。そんなに必死になるなよ
464名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 20:10:53 ID:+CkQYhHp
草待ちwktk
465トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/09/22(土) 22:33:36 ID:G208EnIY
では投稿致します
466桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/09/22(土) 22:37:35 ID:G208EnIY
 第13話『枯れる桜』

 更紗と刹那が桜荘に来てから2週間。
桜はもうすぐ枯れ落ちて今年の最後の見納めの時に二人の歓迎会の意味を含めて桜荘の恒例のお花見会が開かれた。

毎年、桜荘にある桜は一般にも開放されて多くの人で賑わう。
どこぞの会社の団体がお花見する時にはちゃんと料金を支払って、桜荘の自慢の桜を見物しながら飲み食いをする。
その料金で桜荘の維持費に使われている。

桜荘に人があんまり住んでいないのに奈津子さんたちが生活をしていく理由はそこにある。
多くの会社にバショ代を払ってもらえるおかげであんな豪華な生活を送れるのだと俺は確信した。
 とはいえ。そんな私利利欲塗れの桜が散る風景をこの目に刻み込みながら、

安曇さんの料理を食べるのは悪いことではない。
去年は奈津子さんと俺だけで虚しく酒を飲んで二日酔いに遭うことに比べたら数倍マシである。
 今年のお花見会はちゃんと公言した通りに美耶子や安曇さん。そして、その後に桜荘に住むことになった雪菜。

そして、俺の大切な幼馴染である更紗と刹那。
 皆がようやく揃った、桜荘恒例のお花見会が始まろうとしていた。


「桜荘恒例のお花見会を始めるわよ。
今年は一樹君が公言した通りに桜荘の皆一緒に揃ってお花見をすることができた。
これは私たちにとって喜ばしいことであり、去年までは叶うはずがなかった行事でした。
新たに桜荘の仲間に加わった更紗ちゃんに刹那ちゃんも居るし。
今日のお花見会は私の奢りで盛大に盛り上げましょう!! 
 というわけで乾杯!! 真穂ちゃん、私の秘蔵のお酒を持ってきて。
今日はそう簡単に寝かせてあげないわよ」


「そうですね。奈津子さん。今日は地獄の果てまで御供します。うっっ……」
「真穂ちゃんもついに大人の階段を登り始める時がやってきたのよ」
 と、奈津子さんの挨拶終了後にさっそくパシリとして安曇さんは泣きながら秘蔵のお酒を取りに走りだした。
 桜荘の中でも大きな桜の木の前に場所を陣取り、俺達は安曇さんが懸命に作った料理を並べて、
夜の桜を見上げながら散り行く名残を楽しんでいた。

単純に言えば、花より団子の女性陣は奈津子さんにあっさりと捕まり、アルコ−ル度数が高そうな酒を飲まされている。
俺はちゃんと今年の桜の散る場面を思い出の一つとして刻み込んでいる。
すでに酒臭い女性陣に比べて、ちゃんとお花見をやってますよ俺。

 黙々と美味しいという言葉以外は評価できない安曇さんの料理を食べながら、
無意味にテンションが高い女性陣は五月蝿く騒いでいた。元気でいいことだ。

「で、雪菜は言ってあげたんですよ……私にコクってくるのは2000年早いって。
本当にどうして年頃の男の子は万年発情期なんだろうか?」
「それは男の本性がオオカミさんだからですぅ。
一樹さんが私たちを監禁して凌辱行為に走るのかと
毎日毎日怯えている私は彼氏がいない方が幸せな人生を送れると……」
467桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/09/22(土) 22:39:23 ID:G208EnIY
 と、美耶子は男という生物というよりは俺がどれだけ危険な男であると熱弁していた。
本来なら背後から首を絞めて失神コースの刑は確実なのだが。
二人の頬は真っ赤に染まるぐらいに出来上がっていた。
酔っ払い相手に実力行使すると俺の服に嘔吐物が付着しそうで恐い。
ここは大人しく雪菜と美耶子の会話を聞かなかったことにして、
更紗と刹那の方に近寄ると逆に近寄りづらい雰囲気を醸し出していた。 
二人は顔を俯いて奈津子さんのお酒を少しずつ小さな口で飲みながら、ぼそぼそと呟き始めていた。

「ねぇ、刹那ちゃん」
「なぁに更紗ちゃん」
「私たちってそんなに魅力がないのかな?」
「カズ君。私たちをデートに誘ったり、夜に襲ったりとかしないよね」
「私は桜荘に引っ越してきた時はちょっと期待していたんだよ。
カズちゃんと一緒に暮らせるから、以前みたいな関係に戻れるって思っていたんだけど」
「うんうん」
「カズちゃんは私たちに少しだけ距離を置いているよ」
「やっぱり、カズちゃんが好きだって言った英津子さんの事が忘れなくて……。
でも、英津子さんを徹底的に問い詰めても何にもわからなかったし。カズ君の嘘だったね」
「その英津子さんは問い詰めのせいで人間不振になって、
一人の男の子を監禁して犬プレイさせているらしいよ。羨ましいよ」
 と、二人は痛々しい会話を永遠と続けていた。
やはり、お酒が入ると普段のタガが外れるらしいが、当事者である俺は傍目から聞いているだけで身震いがする。
更紗と刹那に視線を合わせないように俺は二人の会話を全身全霊で耳に傾けていた。

『カズ君の観察日記とかさ……』

『カズちゃんを監禁して、思う存分に甘えたり、』

『カズ君の首輪と鎖を買ってこなきゃ』

『カズちゃんの口に私の唾液を……』

『カズ君のためならなんでも……』

 と、恐ろしい呟きが含み笑いと共に聞こえてきた。お酒を飲む人が変わるのかと長い間幼馴染をやっているけど、
この驚愕の事実を今知った。出来るだけ二人に酒を飲まさないようにしよう。


『恋愛同盟を結成して……本格的にアプローチを』


『あの時の言葉は嘘だったのかな?』

 もう、俺は完全に無視を決め込みこれ以上幼馴染の会話を聞き取るのをやめた。
だって、そうだろう。こんな会話を聞けば幼馴染に拒絶反応の一つや二つぐらい起こるもんである。
468桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/09/22(土) 22:41:09 ID:G208EnIY
 さて、盛り上がってきたお花見会は奈津子さん以外の参加者はすでにノックアウトで倒れていた。
俺は女性陣のスカートの裾から見える下着などを隠しながら、奈津子さんの元で一緒に酒を飲んでいた。
泡を吹いて倒れている安曇さんの髪を優しく撫でている奈津子さんは魔性の女がよく似合っていた。

「こんなに楽しいお花見会は始めてだよ」
「いつもと変わらないと思うぞ。憩いの場で皆で飯を食べるのと殆ど一緒だな」
「確かにそうかもしれないけどね。一樹君と私にとっては違うでしょ。
寂しく二人きりでこうやってお酒を飲み明かした時と比べれば」
「桜荘恒例のお花見会と言っても、去年初めて開かれたし……。
それに安曇さんや美耶子も去年みたいに荒れてもいなかったしな」

「一樹君のフィンガーテクニックのおかげだよ」
「んな猥褻な表現の仕方すんなコラァ」
「でも、一樹君が頑張らなかったら、今日のお花見会はなかったわ。
美耶子も雪菜ちゃんや真穂ちゃんもずっと荒れたままだったでしょ」
「確かにそうだけど……」
 1年前のお花見会は悲惨な物であった。俺は幼馴染の事で酷く憔悴していたし、
嫌々に奈津子さんによって強制的にお花見会に参加させられて、
二人で寂しくお酒を飲み明かした。今思い出すだけでも充分に寒い。


「桜荘に向かって、大声で叫んだでしょ?」
「うっ……当の本人にとっては記憶の彼方に忘却したい事なのに」
「確か、俺が絶対にあいつらを絶望から救ってやるって」
「その場に雪菜が居てくれなかっただけが救いだな。
あいつなら朝を起こす時にマイクで復唱するかもしれんし」
「雪菜ちゃんもその一生モノの名場面を見逃したって言っていたし、
今年の抱負をここで桜荘に向かって叫んでみたら?」

「だが、断る」

 去年みたいな最悪の状況は回避されているし、今年の抱負は正月の時にでも適当に決めておくものである。
それに赤の他人の問題に突っ込むのはどれだけ大変なのかと言うことをこの1年間で思い知ったし。
これ以上何かの問題が発生するというならば、間違いなく舞台から下りる。てか、降板させてくれ。

「今年は去年以上の問題が起きるかもしれないわよ?」
「起きてたまるもんですか」
「あら。そう」
「ちょっと酔いを覚ましてきます」
「酔いの勢いで一般人の人たちを襲ったらダメよ」
「誰が襲うかっての!!」

 と、酔っ払いの絡みから逃げるためにさっさとこの場から離れた。
469桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/09/22(土) 22:43:21 ID:G208EnIY
 酒の勢いが体全身に回っているせいか、歩くだけで足はふらついていた。
さすがは奈津子さんの秘蔵のコレクション。

ラベルのアルコール度数は偽装表示されているんじゃないのかと言うぐらいにきつい。
夜風に当たるために桜荘の敷地で酔いを覚まそうとするが、心地良い睡魔に襲われつつあった。
その辺にある桜の木に背中を預けると俺は安堵の息を吐いた。

 1年間。
 言葉にするとそんなに時間が流れていないかもしれない。
ただ、体感してきた当事者にとっては忙しい日々と多くの苦難を乗り越えてきた。
特に桜荘のいる住人にとって人類が月に上陸するぐらいに大きな進歩があった。

過去の悲しみを乗り越えて成長した少女の姿がここにはある。
 だが……。
 更紗と刹那は過去にあった悲しみを乗り越えたのだろうか?

 否。
 俺が逃げている限りは一生解決できる問題ではない。
二人の想いを真っ正面に受けとめることができない臆病な自分が真っ向から立ち向かわない限り。ずっと。

 でも、解決する方法が一つだけある。
 早く、新しい人を見つければいい。そうなったら、更紗と刹那は俺から離れて新しい男と幸せにできるだろう。

「それでいいの?」

 刹那。

 少女の呟きが聞こえてた。少なくても、桜荘の住人ではない誰かが女の子の声が。
 その声の位置には純白なワンピースを身に纏った少女が立っていた。

「優柔不断で中途半端な人間のやる事全てがあの子達を傷つけてゆく……」
「アンタは誰さ?」
「私はさくら。人間じゃないわ。桜荘の桜の木の精。わかりやすく例えるなら……悪霊。そう、言った方がわかりやすいわ」
「酒を飲みすぎて何か幻覚を見ているのかな。木の精って、どこのマンガの世界だよ」
「ううん。現実とか架空の世界はどうでもいいんだよ」
「えっ?」

「絶望。その言葉を覚えていて。あなたが無意識に避けていた問題が一気に噴出する。
これは避けられない事態。来るべき、幼馴染との破局にあなたの心は耐えられるかしら?」
「何を言ってやがる」
「美耶子、真穂、雪菜の絶望を解き放ったことだけは誉めてあげる。
でも、あなた自身の暗闇の中を彷徨っているのに、二人を暗闇の中から手を差し伸べることができる」
「絶望とか暗闇とか意味わからんことをグタグタと」
「まあ、仕方ないでしょう。私が桜の木から解放される条件の一つに桜荘の住人の幸せと希望。
対局の状況に陥っているのは偶然ではないわ。桜荘には世界に絶望した人間が集まるようになっている」
「類は友を呼ぶって奴か?」
「わかりやすいことわざをありがとう。それと似たような状況が桜荘にも起きているの。
だから、同じく絶望している更紗と刹那がここにやってきたのよ」
「一体、二人はどうして絶望しているんだ?」

「こ、この鈍感野郎っっ!!!!」
 さくらと名乗った少女はどこぞに隠していたわからないが、棍棒を右手に持ち、
手慣れた動作で俺の頭部に叩きつけた。すでに酒の酔いが体に回っていたので
その衝撃と痛みは俺の心地の良い睡魔を与えることになった。
470トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/09/22(土) 22:45:07 ID:G208EnIY
投下終了。
とりあえず、修羅場になるまで果てしなく遠いです
471名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 23:10:21 ID:L7vY0zU0
GJ。
472名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 23:12:02 ID:ctMzdWS9
ごめん


   ●464 名無しさん@ピンキー  sage

草待ちwktk
DATE:2007/09/22(土) 20:10:53 ID:+CkQYhHp
 
   ●465 トライデント ◆J7GMgIOEyA   sage

では投稿致します


この流れは吹いた。
473名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 01:33:45 ID:Nm54MGLP
>>470
(*^ー゚)b グッジョブ!!
俺は焦らしプレイも好きだぜ(*´д`*)
修羅場、期待してます!
474名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 10:27:44 ID:ruaESdv+
>>470
キモ幼馴染にGJ
首輪と鎖買ってこなきゃで勃起した俺がいる
475名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 11:30:53 ID:llWVz1T4
七戦姫を全裸で待ちつづけて早一月。
涼しい秋風が身に染みる。

敗者のため、王大人の到着を待っているのはわかっているのだが・・・
476蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/23(日) 12:08:54 ID:6OXSWXAR
皆さん、おつです。
続きを投下させていただきます。
477蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/23(日) 12:09:35 ID:6OXSWXAR
 色鮮やかな旗もなく、野次や賞賛を叫ぶ声もない。
 食べ物を運ぶ給仕もいなければ、優雅に扇子をあおる貴婦人もいない。
 レース当日とは打って変わって無人の貴族専用観客席。
 ここが俺の練習場だ。
 俺は暇が許す限りここで自分の技術を磨いてきた。
 トーンの低いワイバーンの鳴き声が聞こえる。
 振り向くと朝日を背に、北の山腹に沿うように一頭のワイバーンが向かってきた。
 徐々に高度を上げながら迫ってきたワイバーンは観客席真正面付近で一気に急降下する。
 俺は観客席からやや身を乗り出して、その姿を逃すことなくわが眼に刻む。
 山々の外周に沿って飛ぶクリフ・スキッドではこのようなコースのコーナー部分に貴族席が設置される。
 ただ真っ直ぐ飛ぶ直線より遥かにリスクの高い機動をとる曲がり角の方が見応えがあるからだ。
 特にクリフ・スキッドでは高度制限があるため、“コーナー”を飛び越えていくと失格になる。余裕をもって曲がってもコースから外れ、時間がかかる。
 よって一番効率的な曲がり方は山の斜面を掠めるかのように落ちながら曲がること。
 そうすることでワイバーンは素早く曲がりながら、次のストレートでも簡単に高度を稼ぐことができる。
 崖を掠める。クリフ・スキッドの名の由来だ。
 クリフ・スキッドは基本的に直線で高度を稼ぎ、曲がり角で降下し、次の直線で再び高度をあげ、降下する。
 一見単純な繰り返しが非常に難しい。
 俺はスキッダーになってから、いや、なろうと思う以前から絶壁を制覇する技を学ぼうとしてきた。
 人からワイバーンの乗り方なんて一度も教わったことがない。
 全ては観客席から独学で学んできた。
 ある意味、グレイ・クリフで飛ぶスキッダー全員が俺の師匠だ。
 だがそれも限界にきている。
 スポンサーをつけるため、あたかも乗り方を知っていたかのようにみせるのと、観衆の前で実際スキッダーとして活躍するのでは必要な実力が違う。
 だからといって今からコーチなんて雇う時間もお金もない。
 スポンサー側だって俺がいつか成功するまで待っている余裕なんてない。
 スポンサーと言っても地元の雑貨店や個人経営の店が集まった小さな商会である。
 貴族の個人事業ではじまったワイン会社や冒険者ギルドみたいに莫大な資産がある訳ではない。
「はぁ……」
478蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/23(日) 12:10:19 ID:6OXSWXAR
 来週勝てば良い、と気分を切り替えたつもりだったが現実をみればみる程暗い気持ちになってゆく。
 眼で追っていたワイバーンとスキッダーは俺が立つコーナーを抜け、南へ延びる直線へと飛んでいった。
 その先にはグレイ・クリフ山のコースの中でも随一の難所、『牙』が待ち構えている。
 本当はグレイ・クリフ山の峰が繋がっているもうひとつの非常に細長い山だ。
 普通なら飛び越えていけるはずの山稜も高度制限のあるクリフ・スキッドでは別だ。
 グレイ・クリフ山から西に突き出ている『牙』の周りをわざわざ迂回しなければならない。
 向かってゆくスキッダーたちにとってはヘヤピンカーブ同然。
 普通、スキッダーは『牙』を見ると心臓の鼓動が早くなるらしい。
 俺は『牙』を見るたび心が落ち着く。
 なにせ『牙』は俺にとっての原点であり、俺の武器なのだから。
 もちろん『牙』だけでは勝てないから悩んでいるのだが。
「はあ……」
 再びため息が出るが、すぐに持ち直し青空を見据える。
 最低限、練習から何か得なければ練習をしている意味がない。
 
 午前は他のスキッダーの技を盗もうと観客席で過ごし、午後は実際にアズールに乗って午前参考にした様々な技を試してみた。
 結果は可もなく不可もなく。
 俺は相変わらず普通のコーナーが苦手だということが分かっただけだった。
 レースがない日は後片付けも簡単なので、終わったのはちょうど夕暮れ時だった。
 山を降りようと洞窟を出たところで俺は珍しい人と出会った。
「ミリアちゃん?」
「あ!ジースさん!」
 声をかけると、満面の笑みで少女が駆け寄ってきた。
「久しぶりだな。でもどうしてここに?」
 ミリア・ブラム。
 後ろで束ねた長い緑色の髪が特徴的な俺より二つ歳下の女の子。
 スポンサーの一人、ブラム防具店のライアンおやじの一人娘。
 防具店のほうは父親と二人の兄が仕切っていて、普段は道の向かい側の雑貨店で働いている。
「え〜と、実は昨日お仕事サボっちゃいまして。それで今日の配達は代わりに私が……」
 少し照れながら身を屈む姿はまるで子犬のように可愛い。
 屈む際に垂れる前髪もつい触ってしまいたくなる。
479蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/23(日) 12:11:16 ID:6OXSWXAR
 豊作祭になれば街の男子が躍りに誘いたくなる娘一位というのも頷ける。
「サボるって、ミリアちゃん。また?」
「だってジースさんの飛ぶところが観たかったんです……」
「それは嬉しいけどさ……何か言われなかったか?」
 一緒に山道を下りながら会話する間もミリアちゃんは俺の周りをくるくると歩く。
 本当に散歩をする子犬みたいに元気な娘だ。
「えへへ、実はおばさんに今度やったらクビにするぞって怒られました」
 彼女に反省の色は全くない。
「えへへって、本当にクビになっても知らないぞ?」
「その時はその時です。それより今日は早いんですね」
「レースがない日はこんなもんさ。まあ、それでも他のみんなよりかは遅いんだけどさ」
「え?どうしてですか?」
「いやさ……俺ほら、負け続けだし。下男とか雇える余裕ないから全部一人でやんなくちゃいけないんだよ」
「えー!ワイバーンのお世話から全部ですか?」
「ま、慣れているから特に問題じゃないさ」
「お父さん、ジースさんの後援者の一人のはずなのに……何もしてないんですね!」
「いや、ライアンさんには俺の相棒を買った時もそうだけどかなり援助してもらってるよ」
 確かに俺が使っている革鎧は防具店の冒険者用のものにベルト用の金具を付け足しただけの物。
 兜に至っては無塗装の鉄兜ときた。
 文句を言いたくなる時もある。
 それでもアズールを買った時、だいぶ投資してくれた恩がある。
「……」
 ミリアちゃんは突然考えるように押し黙った。
「ミリアちゃん?」
 一瞬の静寂のあと、彼女は何か呟いた。
「じ……わた……ゃ……さぃ」
「え?」
「じゃあ、わたしを雇ってください!わたしがジースさんの雑務を引き受けます!」
 突然何を言い出すかと思えば。
 元気なのは良いことだがやっぱりミリアちゃんは子供っぽいところがある。
「気持ちは嬉しいけど、お給料払えないよ?」
「いいんです!わたし、ジースさんのお役に立ちたいんです!」
「だったら尚更タダ働きさせられないな。大体ほぼ毎日働くことになるんだよ?」
「大丈夫です。これでも体力には自信がありますから」
480蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/23(日) 12:11:58 ID:6OXSWXAR
 やや大きな胸を張るミリアちゃん。
 華奢な体の何処からそんな体力が出てくるのか。
 もっと自分が結果を残せていたら、ちゃんとした給料で手伝いを頼んでいたかもしれない。
 だが今は空を飛べているだけでも感謝しなくてはいけない。
 ここは少し意地悪なことを言ってでも諦めてもらわねば。
「じゃあミリアちゃん、ワイバーンの世話の仕方分かる?」
「分かります。お父さんから聞きました。知らないものはすぐに覚えます」
「でも世話って言うと竜場の清掃とかだよ。糞とかもきれいにしなきゃいけないんだよ?」
「大丈夫です」
「臭いよ?」
「問題ありません」
 手強い。
 しかし俺には彼女が諦めざるえない必殺技がある。
「分かった。そこまで言うならライアンさんからちゃんと、許可を貰えたら頼もうかな」
 幾らライアンおやじといえども、可愛い一人娘が竜場で働くことをよしとするはずがない。
「本当ですか?やったぁ!約束ですよ?」
 まだ許可を貰ったわけでもないのに、彼女はピョンピョンと飛び跳ねながら喜ぶ。
「あくまで許可を貰えた場合だけだよ?」
「はい!分かってますよ〜」
 とりあえず今は喜ばせておこう。
 どうせ明日辺り、落ち込んだ顔で『無理でした』という台詞を聞くことになるのだ。
 その時フォローを入れてあげればいい。
 俺はミリアちゃんを家まで送り届けたあと、一人酒場に向かった。
 現実的に来週のレースに勝つため、何か考えるためだ。
 結局、何も思いつくことなく帰路につくこととなった。
481蒼天の夢 04 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/23(日) 12:13:50 ID:6OXSWXAR
投下終了です。
話数入れるの忘れました。↑のは4話目です。
すみません。
482名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 13:22:23 ID:q7UtNup2
?シァ?シェ?シ??シ??シ?

遲?縺梧掠縺上※邏�譎エ繧峨@縺??シ??シ∫カ壹″繧よ・ス縺励∩縺ォ蠕?縺」縺ヲ縺セ縺呻シ??シ??シ?
483名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 16:52:14 ID:qXz8kTnm
>>481
GJ!
484名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 23:09:26 ID:IHXjDsvE
蒼天が来てる!!いつ嫉妬が来るのか、毎回楽しみに待ってますぜ!!
485名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 15:34:03 ID:dd5+HPNy
//////////////∧  / /         ,、 ,、            ヽ
、//////////////∧/ /           厶∨ヘ             l
. \/////////////∨´/      /  /  /    !            l
  \////////////∧l      |  |  |    | /ヽ           !
    \///////////∧     !  !  ハ  l    / /  |  /       ,
\    \//////////∧. l  |  |、__,ィ弋´ |   `/''ナ一!-/   /   /
  \    \,/////////∨、 ヽ ヽ\f乞ヾ、  /ィ乞ミk/ /   /   /
   \    、 ////////∧ヽ  \∨f:::::} `   l:::::::::::レメ   /   / とりあえず、斧で少女を殺す嫉妬SS
     \   ヽ////////∧ \  ヾ 弋ソ    弋:zソ/   /   / は規制するべきかと思いますが
      \   、///////.∧/ \ ゝ    ,      /  /    /
        ヽ  ヽ///////∧    `ヽ、  ーっ  /_'7´    ,.イ|
         ヽ  \//////∧      >、    _,ィ /     / `
          ヽ   ヽ,/////∧/7/!/   `丁  /    //
           \  ヽ/////∧/ ___ ,. イヘ! /  /,イ┐
            ヽ  ヽ/////ヾヽ ヽ:::::::::|´ノ / ,/!//:::::/`ィ─- 、
             ` 丁 ̄∧二∧_\ ヽ::::::ト'´`! / /:::::://´    ヽ
                 | / f'ヽ' ̄_,.).|\ \l'´`l //::::::://       |
                |/  |    ,.)!  \ !_イ/-─' ,イ   /      !
                 r |    ´ 〉\__ヽ/ ̄ ̄/ |  /         |
                 レ'|    ノ!,.ヘ / 7 ̄ ̄ ´ r_'´_,. - 、    ノ
                /__/   //   ヽ |     /´___   `ヽ /
                 /ー/  イヘ,/´__   \   /, -──ー `ヽ  Y
486名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 19:51:59 ID:x2qjsZn4
>>481
ポニーテールは正義!!
GJ!!
487名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 09:46:38 ID:d0BfXEFI
過疎化しているからちょっと暴れてもいいですか?
488名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 10:19:04 ID:d0BfXEFI
: : /  |   l   l: : : :ヽ: : : : |/  /  ヽ ヾ、 \: : ヽ: : : : : : : : : :l ∧ : :〃
: ヽ   l   l   /: : : : />−'  /  ゝヽヽ  ヾ、 ヽ: : ヽ、: : : : : :ヽ : : l l//:
: : :l  l  /.  ,': : : :/   // ̄ ̄`ヽヽ丶ヽ ヾ、_ ): :〉 `ヽ: : : : : :\レ: :
: : :l  l  /   l=/    ∠_〃´ ̄ ` - 、ヽ  lヽ _//"〃  \: : : : : ヽ: : :嫉妬SS誰も投稿されてねぇー
: : l / /     l'´〃  / ̄〃   ●   `liヽ、i ヽ // ノ  ヽ: : : : : :ヽ:
: : : l/  {  /  i    ´l  〃ヾ、       /'  `ヽ    / ゞ__ノ: : : : : : : :}
l: : (ヽ         〈  ll .ヽヾ、   /  /  }   = ニ   {: : :_:_:_:_:_ノ:
ヽ: : 〉、ヽ        ヽ  l   ヽ ヾニ`´ /    /=、、〃 ̄`ー-' ヽ/: : : : : :
 ヽ〈 ヽヽ        ヽ l    )i _ -=゛   /〃  〃   i} `ヽ \:_:_:_ノ
   \ヽ丶       ヽ `ー 、Yl      / i  /〃  ● / ´/ ヽ 〉:_:/
    _l\ヽ        ヽ   /,' ̄ ̄  ̄     l 〃    / /== l /_:_:_:_;
──( /: :(ヽ         }   /,'  _ ,    _ -'i 〈ヽ、_ /`ヽ<__ /: :_; -−
\  /: : : : \i        l  /,'ィ=ニー-、     i,--ヽ '   _,-  /ヽ´
ヽ ヽヽ: : : : : /ヽ      //-、   ヽ、ヾヽ ,'  ヽ---ヽ´  ヽ/‐' /
 ヽ l ヽ : : ∧ノ      / lヘ, ´rヽ、_ノ/ '  ゝ   / ` ´   /
  l l /: : /`ヽ、    〉 `ヾヽ、_ { ヽ /     _, イ i / ヾ   /
   l / ̄ ̄`ヽ、 `ヽ、 / \  `ー-ニニ' _ ┬‐ ´    /     /
   /      `ヽ  ヽT´ \  _ ィ´  l   _ - ´      /
 /         \  \ l `Tヽl `ヽ、ハ  /        /
489名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 10:19:46 ID:d0BfXEFI
: : /  |   l   l: : : :ヽ: : : : |/  /  ヽ ヾ、 \: : ヽ: : : : : : : : : :l ∧ : :〃
: ヽ   l   l   /: : : : />−'  /  ゝヽヽ  ヾ、 ヽ: : ヽ、: : : : : :ヽ : : l l//:
: : :l  l  /.  ,': : : :/   // ̄ ̄`ヽヽ丶ヽ ヾ、_ ): :〉 `ヽ: : : : : :\レ: :
: : :l  l  /   l=/    ∠_〃´ ̄ ` - 、ヽ  lヽ _//"〃  \: : : : : ヽ: : :
: : l / /     l'´〃  / ̄〃   ●   `liヽ、i ヽ // ノ  ヽ: : : : : :ヽ:tついでにスレの住人もいねぇー
: : : l/  {  /  i    ´l  〃ヾ、       /'  `ヽ    / ゞ__ノ: : : : : : : :}
l: : (ヽ         〈  ll .ヽヾ、   /  /  }   = ニ   {: : :_:_:_:_:_ノ:
ヽ: : 〉、ヽ        ヽ  l   ヽ ヾニ`´ /    /=、、〃 ̄`ー-' ヽ/: : : : : :
 ヽ〈 ヽヽ        ヽ l    )i _ -=゛   /〃  〃   i} `ヽ \:_:_:_ノ
   \ヽ丶       ヽ `ー 、Yl      / i  /〃  ● / ´/ ヽ 〉:_:/嫉妬スレの終焉の時がやってきたようだ
    _l\ヽ        ヽ   /,' ̄ ̄  ̄     l 〃    / /== l /_:_:_:_;
──( /: :(ヽ         }   /,'  _ ,    _ -'i 〈ヽ、_ /`ヽ<__ /: :_; -−
\  /: : : : \i        l  /,'ィ=ニー-、     i,--ヽ '   _,-  /ヽ´
ヽ ヽヽ: : : : : /ヽ      //-、   ヽ、ヾヽ ,'  ヽ---ヽ´  ヽ/‐' /
 ヽ l ヽ : : ∧ノ      / lヘ, ´rヽ、_ノ/ '  ゝ   / ` ´   /
  l l /: : /`ヽ、    〉 `ヾヽ、_ { ヽ /     _, イ i / ヾ   /
   l / ̄ ̄`ヽ、 `ヽ、 / \  `ー-ニニ' _ ┬‐ ´    /     /
   /      `ヽ  ヽT´ \  _ ィ´  l   _ - ´      /
 /         \  \ l `Tヽl `ヽ、ハ  /        /
490名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 10:21:15 ID:d0BfXEFI
                    / 三二ニ= 、
                    ,イ/  ,二二ニ ヽ、、
                   ハ{   / >‐-= 、 \_/,イ
                   /´二}  {´ , -‐- 、  \ー'__}
                 //, /`ヽ、V /∠二ミ 、_  _ノ
                {〈 ,{ V´ `ー〜´´´´´V/7//
               、__」レ'ノ 〉    ,   _V´}/  と、オレンジ閣下も嘆いております
                ミ三,-r´、≧ミ、 ソムtf我`レ/
                  ヽ!     ´ | ` ̄  .'´ _
                   」、   、j    /,r'´   \
                   {{ }ヽ -ー一  イ>ト     ヽ
                  . ィV__ \ ⌒ /ノ {ヘ     `、
              _.. ‐ ´::ノヘ」|〉ーf=i⌒lレ>/ ', /}   `、
        _.. -‐.::::::::::::::::::::/ \,」 }  !   {(/i   V l    `、‐-    .._
    r<:::::::::::::::::::::::::::::::/  <ヽ.ノ  rk!  .レ'  >'´/ノ     `、:::::::::::::::::`ヽ
    _)::::::ヽ、:r== '"´     ノ  ヽ  し'  ,/ / / ィ´       ヽ::::::::::::::::::/
     ヽ:::::::::::||\ ` ー…― - ⌒ヽ}  -‐ '"´  ´/ノl   , -‐-  .  \:::::::/
      |::::::::::||   ヽ          ( rヘォー─ '7'´ | /.::::::::::::::::::::`丶 `く
      |r=‐’     、====ァフ¬イ    /    レ7ァ:::::::::::::::::::::::::::::::::}\}
     ,イ   ノ  }:  l ト、ー= ノ   /   /  rー{_}必ー- 、::::::::::::::::::::::|
    /:::!  /   |   l | } i、\ _   / _,rーf7__L\:::::::::::::\::::::::::::::::l
  , ´.:::::::|  /    :l    l |ノノ ヽ   `、   _f__ノ>' }`´.`ヾ 、:::::::::::::::::::::::::::l
  /:::::::::,イ /     |   l |   └―‐f〜く_ノ/ ァー′. : : : }´ト、::::::::::::::::::::::l
. /.:::::/ }/ /    ト、   l |__rー<辷>ー'´ !   廴:_:_:_:_:_: ノ / ,{::::::::::::::::::::::l
/.::∠. -‐レ'    ノ辷辷辷辷>ーァ'´  ___ノ       __//ノ:::::::::::::::::::::j
/    ,} ,rーァ'´ >ァ==キ≠‐ ´   、          /.:::::::::i::::::::::::(
辷辷辷辷辷r‐'f7´ /             `  ー-ッ── イ´.:::::::::::::::l, -‐- 、}
      レ' //  /              -‐ァ'"´       |:::::::::::::::::::l    `、
.      / / /  /         _.. - '´   /        |:::::::::::::::::::L -‐- 、丶
    /   {   `丶、    , 、イ´    /             l:::::::::::::::::::::',:::::::::::::::ヽ丶
    `丶、  _.. -‐…、/  | |   /            ,::::::::::::::::::::::`、::::::::::::}  丶
       `´      |   } }  , ´            /.::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::|    ヽ
               |   j レ'             /.:::::::::::::::::::::::::::::::::\::::::L
491名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 11:58:08 ID:RTlEAdpg
AA連投荒らしはアクセス規制対象ですが
492名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 16:39:09 ID:N5oAgd/Y
どうせ、誰も来ないから別にいいんじゃねぇの?
493名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 16:51:34 ID:GyD8hnfa
ニートタイムに書き込んでおいてよく言うな…
>487のカキコ時間とか、普通のエロパロのスレだとカキコほとんどないと思うのだが
494名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 16:53:58 ID:fdzsi/D8
>>493みたいなレス見ると携帯電話って実はほとんど普及してないんじゃないかと考えてしまう。
495名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 17:09:34 ID:N5oAgd/Y
>>493
ってニートだから今時携帯も持ってないんでしょ
あんまり突っ込むなよ。可哀想だろw
496名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 17:11:03 ID:GyD8hnfa
>494みたいなレスみると、携帯からAAはるなんて頑張る人がいるもんだなぁと思う
497名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 17:27:37 ID:ZZTdax+J
まーそんないじめてやるなよ
携帯からAA貼れると思ってた携帯持ってないニートなんだからさ・・・
498名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 18:01:47 ID:Paf0d8Ex
いや、携帯からAAは貼れるだろ・・・常孝
499名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 18:06:12 ID:DrgM+6sL
>>498
AAを一文字一文字打ってるとでも思ってるんだろ
500名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 18:15:02 ID:1DhREY4D
張ってるAAからして既に痛いんだが
501名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 18:17:30 ID:N5oAgd/Y
それにしても、嫉妬SSと住人が減ったのは
俺以外の>>488-499
がいるせいだろうな

嫉妬SSを書いて、貢献しろw
502名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 18:30:34 ID:ZZTdax+J
>501 それはネタですか?
503名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 18:41:02 ID:L0a8h6LH
お前ら釣られすぎだろ・・・
それとも自演で荒らしてるのかはわからんけど
504名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 18:59:30 ID:U0p5TJTQ
それにしてもスクイズの最終話中止で、ここの作者さんたちもショックを受けてたりしてないだろうか・・・
それが心配だ
505名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 19:24:56 ID:uWEtyc8F
>>504
つ本スレ
506名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 19:32:18 ID:JHAkkzZw
お前らは本当に静かに待てんのか、まったく!
>>475を見習え!
……そろそろ凍死してるかもしれないけど。
507私たちの愛しいお兄様:2007/09/25(火) 20:33:14 ID:wZR5WDe1
目覚ましの音で目が覚める。いつもと同じ六時半。
七時に起きれば間に合うけど、いったん起きてトイレに行き、二度寝するため
この時間に起きてるけど今日は珍しく完全に目が覚めたからもう起きよう。
「真奈、加奈。朝だよ。おはよう」
「ん・・・おはよう・・・ございます・・・おに・・・ぃ・・さま」
「おはよう・・ございます。お兄・・様」
この二人は僕と一緒に生まれた一卵性の妹たち。三つ子だった僕らは、母胎内で
負担がかかったらしく、そのせいか、僕以外の二人は小さいときから病弱で、母も
産後の事故で父と共に死んでしまったため、3人で暮らしてきた。
508私たちの愛しいお兄様:2007/09/25(火) 20:41:23 ID:wZR5WDe1
遺族年金もあったし祖父母が資産家だったこともあり三人で生きていく分には
何も不自由はしなかったが、小さいときに父母の愛を知らなかったからか僕に
ずっとべったりで、高校生になった今も布団を並べて一緒に寝たがるほどだ。
もっとも、二人とも高校生とは言え、小さいときから学校にも行ってないので
精神年齢はずっとずっと幼い。小学生ぐらいだろうか
509名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 20:45:07 ID:U0p5TJTQ
割り込みすまん!!
頼む、sageてくれ!!
510名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 21:44:26 ID:Hwwvw6Vc
sage方はメル欄に半角でsageと入力するだけだよ
511私たちの愛しいお兄様:2007/09/25(火) 22:42:58 ID:wZR5WDe1
幼いころ。まだ僕らが一緒に風呂に入っていたときだった。
ちょうど僕が頭を洗っていて目をつぶっていたとき、双子の片割れ、加奈が
湯船から出ようとして脚を滑らせ、溺れかけた。幸い、真奈がすぐに気付き
僕もすぐに気付いたので事なきを得たがそれから加奈は風呂恐怖症になり以降
は中二までずっと一緒に入っていた
512私たちの愛しいお兄様:2007/09/25(火) 22:46:06 ID:wZR5WDe1
さすがに、中三にもなると、一緒に入ることを止めようと提案したが、怖がる
加奈を放っておけず、隣に住む幼馴染が一緒に入ってくれたが
513私たちの愛しいお兄様:2007/09/25(火) 22:51:17 ID:wZR5WDe1
幼馴染が夏休みやゴールデンウィークに旅行に行ったりして
不在だった日には僕が仕方なく一緒に入った。
そういう時は真奈も必ず『お兄様が加奈と入るなら私も一緒に入る』
と言ってくるので、高校に入ってからも何回か三人で入っている。
514『私たちの愛しいお兄様』の作者:2007/09/25(火) 22:53:34 ID:wZR5WDe1
つまらなくてスミマセン。何しろ初めてのSS投下なのでして。
それと、今更ながら主人公と幼馴染の名前募集してます。
誰かいい名前無いでしょうか?
515私たちの愛しいお兄様:2007/09/25(火) 22:57:54 ID:wZR5WDe1
あと、加奈真奈は依存系にします。
病弱かつ親無しという設定上、異論は認めません
516名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 23:03:46 ID:UNQh7dQX
色々言いたい事はあるのだけれど、とりあえずageないで頂きたい。
517名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 23:08:26 ID:YVQ3QTFx
上げると注目されて嫉妬した泥棒猫にミキサーでこれ以上は言えません
518 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:43:28 ID:9PfEhUDt
投下します。
519「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:44:06 ID:9PfEhUDt
 

 俺がまだ小さかった頃、偶然に妹の日記帳を見てしまった事がある。

 その日は家族で大掃除をしていて、年一つ離れた妹の希(のぞみ)と同じ部屋だった俺は、希が別の場
所を掃除している間、一冊のノートを発見した。
 どうせ授業で使う教科別のノートだろうと、手に取りさっさと机に戻そうとしたが、「こくご」「さん
すう」「りか」「しゃかい」と、他のノートにはしっかりマジックで教科名が書かれているのに対し、こ
の見た感じ使い古された風なノートには、教科どころか名前すら書いてなかったのだ。

 まるで、誰にも知られたくない秘密が記されているかのように。

 ただ未使用なだけかもしれない。でも、そうでないかもしれない。
 子供心に興味が沸いた俺は、おそるおそる表紙をめくってみた。一体どんな内容がその中にあるのだろ
うと。


「○月×日 今日は良いてんきでした。おにわのアサガオもげんきいっぱいです。となりでこーくんもわ
 らってます。だからわたしもにこにこです。」

「○月×日 雨がざーざーふってました。がっこうはおやすみになって、とくになにもありませんでした
 。おしまい」

「○月×日 こーくんがわたしのハンバーグをたべてしまいました。おとうさんはおこってこーくんをぶ
 って、こーくんがエンエンないちゃって、それみてわたしもないちゃいました。」


 そこまで読んで、小さかった俺はすぐに興味を無くしてしまった。
 てっきり正義のヒーローの正体だとか、悪の秘密基地だとか、宝物の隠し場所なんかが書かれているの
だとばかり思っていて、開けてみればごく普通の日記だったのである。
 勝手に人の物を見ておいてなんだが、当時はなんだ、とがっかりしたものだ。
 他のページをパラパラとめくってみても、目当てのものは無く、ずらっとその日の出来事が書かれてい
るだけ。
 仕方が無いのでノートを閉じると、元の掃除中である乱雑なスペースへこっそりと戻しておいた。
520「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:44:46 ID:9PfEhUDt
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 ………で、今。高2になった俺の目の前には、あの時と同じく無題無記名のノートが一冊。

「ぬぅ、装丁まで同じとは見上げた初志貫徹っぷり」

 思わず感嘆の声を上げる。妹の部屋で。

「木を隠すなら森の中…しかし最初から分かってるなら意味は無いな」

 肘をつく机の上には、同じ柄の「国語」「数T」「物理」「化学」などなど、各教科のノートがずらり
と並んである。何も書かれていないのは手に持っている一冊だけ。
 一見予備とも思えるそのノートは、おそらく妹の日記帳。

 いっそのこと「世界史」とでも書いておけば、絶対手に取らないと思うんだが…。

 世界史と題された日記帳。壮大だなオイ。

 まあ、そんなどうでもいい思考はさておき。

「……気になるじゃないのさ」

 希は、まだ部活から帰って来ない。
 お互い部屋を別々に分けてから八年、高校に入ってからはあまり入る事の無かった妹の部屋。貸してた
本を取りに来なければ、こうして探索作業に耽ることも出来なかっただろう。

 面白半分、ネタ半分。

 昔と違って、今や俺の興味は日記そのものに向けられている。

「これで何も書いてなかったりしたら一人上手もいいとこだな俺」

 思わず苦笑。しかし好奇心旺盛な兄としては、この機会を見過ごすわけには行かないわけで。
 そう、本棚から机へ視界がスライドしてしまったが運の尽き。後は心行くまま気の向くままに。
 もしも中二頃に見つけていたら、ファンシーなポエムでも読む事が出来ただろうか。いや、ひょっとし
たらまだ現役の妖精さん日記が見れるかもしれない。
 そう考えると顔がニヤける。こう、嫌な感じに。

「どれ、それじゃひとつ見てみるか」

 あの俺の後ろをぴょこぴょこ付いてくる小動物的かつ甘えたがりの駄目妹が、どんな面白い事を書いて
いるのか。もしくはまた脳天気であっぱらぱーな内容なのか。
 ノートを開く。ページをめくる。


 ……
 ………
 …………


「……予備かよッ!!」

 表紙・裏表紙はもちろん、ノートは最初から最後まで全面真っ白だった。
521「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:45:28 ID:9PfEhUDt
「まさか炙り出しじゃないだろうな…?」

 いつの間にそんな忍者みたいな真似をと思いつつ、試しにライターの火を当ててみる。何度やっても字
は出ずにそのまま数ページほど燃えた。
 悔しいので日にかざしてみたり、虫眼鏡でパスポートの中から「JAPAN」の五文字を探すがごとく
じっくりと見てみたが、やはりページには何も書かれてはいなかった。

 何やら無性に敗北感を覚える。いっそ落書きしてやろうかと思ったそのとき、

「ちぃ! 帰って来たか」

 玄関の方からドアの開く音と「ただいまー」という声が聞こえてくる。
 そのまま廊下を歩き、自分の部屋に向かうべく、トントンと階段を上ってくる気配。

 仕方ない、ここは撤退あるのみよ。

 速やかにノート等の処理を済ませ、希が階段から顔を見せる前に、逆にこちらから爽やかスマイルでも
って出迎える。

「やあ、おかえり」
「ただいまこーくん、お母さん達は?」
「今日も仕事で帰れないってさ」

 言って、部屋へ戻ろうとするところで、

「あっ、こーくんこーくん」

 唐突に希に呼び止められる。

「何?」
「あとでそっちの部屋行っていい? 部活で作ったクッキーがあるの」
「いいね、ありがたく頂こう」

 一緒に食べよ? と目で訴える希に対し、軽く頷く。そういえばもうじき小腹の空いてくる時間だ。

「うんっ! お茶も入れてくるから待っててね」
522「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:46:05 ID:9PfEhUDt
 嬉しそうに部屋へ戻っていく。その後ろ姿を見ながら俺はふと、あるアイディアが浮かんだ。
 すでに部屋に入り鞄を置いているだろう希に声をかける。

「あー…希」
「なにー?」
「俺まだレポート終わってないから、三十分くらい待っててくんない?」
「わかったー」

 何も知らない様子で出された提案を了承する希。相変わらず疑う事を覚えん奴よ。
 その声を最後まで聞かず、俺は急いで自分の部屋のドアを開けて、適当な未使用のノートを速やかに机
の上に引っ張り出した。
 手にはマジック。他にもシャーペンと消しゴムも忘れない。

 キュッ、キュキュー

 素早く、しかし丁寧に題を書く。「Diary」。流石にこの年で読めないって事は無いだろう。
 制限時間は三十分。だがそれだけあれば問題ない。

「舐めよってからに……目にもの見せてくれるわ妹よ」

 別に向こうは何もしてないというか、ぶっちゃけ俺の勘違いだが。そんなものは兄のプライドの前には
些細なものに過ぎん。
 だって悔しいじゃないの。こう、兄的に。
 ゆえに、そんな偉大なる兄の面子を保つ為ならば、こんなアホらしい行為の一つもやってのけるのだ。

 マジックからシャーペンに持ち替える。最初のページに踊るように文章が書き込まれていく。


「「◇月◇日 今日は――――」
523「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:46:42 ID:9PfEhUDt
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「んー…」

 台所の食器棚からお盆を取り出し、そこへ調理部で焼いたクッキーの皿と、入れたてのお茶…こーくん
はコーヒーや紅茶よりも日本茶が好きみたい…を、お気に入りの湯飲み二つと一緒にのっける。
 居間の時計は、さっき上の廊下で約束してからぴったり三十分経ってた。

「もう、行ってもいいよね…?」

 お茶がぬるくなっちゃったらもったいないし。
 わたしはお盆を持つと、二階のこーくんの部屋へ向かって階段を上り始めた。


 こーくんはわたしの一つ上のお兄ちゃんだ。


 中学生になってから、お父さんとお母さんは仕事が忙しくてお家を空けることが多くなったけど、その
代わりにこーくんがわたしの面倒を見てくれた。
 いじわるでわりと面倒くさがりのこーくん。でも、わたしが料理を覚えるまではちゃんと毎日二人のご
はんを作ってくれる。お洗濯だって、わたしがパンツを洗われるのを恥ずかしがって自分でやるようにな
るまでは、こーくんがやってくれていた。
 小学生の頃はお風呂も一緒に入って、わたしにシャンプーかけたり身体を洗ってくれたりもした。夜に
なって、さびしくてこーくんと一緒の布団で眠るのは……今でもときどきやってる。最近はおねがいして
も断られるけど、こーくんが疲れて寝ちゃったりしてるときに、こっそり布団に潜り込んでぎゅーって抱
きつくと、こーくんの匂いがわたしに染み付いて、すごく安心できる。

 普段はふざけあったりからかったりして、たまにはいじめられて泣かされそうになるけど、でもでも、
ほんとはわたしのことをとっても大事にしてくれてるこーくん。
 家事を教わりたいと言ったら、「お前にできるかあ?」なんて笑いながら、でもとっても丁寧に教えて
くれた。
 冬に風邪を引いたときは、学校が終わったらすぐに帰ってきてくれて、あれこれお説教しながらそれで
も優しくわたしのお世話をしてくれた。
 こーくんの手作りのおかゆ、頼んだら少し嫌そうな顔をしたけど、ちゃんとふーふーして食べさせてく
れた。こーくんの息のかかったおかゆ。食べながらドキドキし過ぎてまた熱が上がっちゃった。

「こーくんこーくん、もう入っていいー?」
「おお、悪いな。こっちもさっき終わったとこだ」

 ドア越しに「んー」って気だるそうな、背筋を伸ばす声が聞こえてくる。
 よかった、タイミングばっちりだったみたいだ。

「それじゃ、お邪魔しまーす」
「いつも勝手に入ってくるくせによく言う」
524「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:47:26 ID:9PfEhUDt
「い、いつもじゃないよ。ちゃんとノックしてるもん」
「まあいい、それよか早く食べよう。頭動かしてたら甘い物食べたくなってきた」
「うんっ! まってて、今お茶注ぐから…」

 それから、こーくんとわたしは二人でクッキーをおいしく食べた。
 がんばって作った、チョコとバニラを市松模様に分けたクッキーを、お茶をすすりながらこーくんが「
けっこう美味いのな」って褒めてくれる。それだけでわたしは幸せな気分になった。

「たくさんあるから、いっぱい食べてね♪」
「ああ、と……いかん、その前にちょっとトイレ。少し茶を飲み過ぎたかも…腹下した」

 苦い顔をして立ち上がるこーくん。たしかにお茶にはそういう作用もあるっていうけど、もっとこう、
女の子の前なんだから、もう少し気を使ってもいい気がする。

「妹相手に気ぃ使ってどうするよ」
「なっなんで考えてることわかるのっ」
「顔見りゃわかる。お前はそういうのがわかりやすい」

 おかげでいじり甲斐がある、そう言ってこーくんは部屋を出て行った。

 ……そんなにわかりやすいかな、わたし。

 友達からもよく言われる言葉だ。
 だからいっつもトランプとかで負けちゃうのかな。ポーカーとかババ抜きだとか、こーくんは大体ニヤ
ニヤ笑っててちっとも考えが読めない。それで毎回わたしがババを引かされるんだ。

「むー…なんか面白くない」

 バフッ、と手元のクッションを抱え込む。
 言われた通りのむっつり顔のまま、わたしは閉められたドアをじっと睨んだ。

 どうにかしてこーくんを驚かせたりできないだろうか。

 わたしに騙されて、いかにもしてやられた、って感じの顔をさせてみたい。
 今までに何度も試してはみたことなんだけど、いじわるでそういうことに関して鋭いこーくんは、すぐ
に見抜いて逆にわたしがびっくりさせられちゃうのである。
 たとえば、いじめられた仕返しに、夕ご飯のときこーくんの麦茶にこっそり醤油を入れておいたとき。
 目を放した隙に、いつの間にかわたしとこーくんのコップがすり替わってたのに気付いたのは、醤油の
苦味にわたしがむせ込んだあとだったり。

「う…思い出しただけで苦い」

 それを見てこーくん、「俺をハメようなんて十年早い」って大笑いしてたっけ。

 あのときの悔しさもまとめて晴らすため、わたしはこーくんの部屋に使えそうなものはないか探してみ
る。なにか、こーくんが恥ずかしがったり悔しがったりするようなもの。

「自作の詩集だとかあったら、きっとこーくんも一発だよね」
525「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:48:23 ID:9PfEhUDt
 机に向かってポエム作りに熱中して、うっかり朗読なんか始めちゃうこーくん。
 
 …ちょっと、家族としての付き合い方を考えそうになる。

「うう…それはそれでイヤかも。……あ」

 机に整理されてある本とかノートなんかを一つ一つ手に取って確認してると、そのうちの一冊がわたし
の目に入った。なんでもないただの大学ノートの表紙に、マジックできれいに書かれた「Diary」の
五文字。

 こーくんの、日記だ。

「ほんとにあった…」

 なんだか妙に緊張してくる。
 詩集じゃなかったけど、まさかこーくんが日記を付けているなんて。
 どう見てもそんなのめんどくさい、って、そのまま寝ちゃいそうな感じなのに。そんな、そんなこーく
んが、日記。

 ドクン、ドクン…

「あ、う……ええっと」

 胸のあたりがドキドキしてきた。落ち着かない。
 こーくんがどこかに隠れてないか、まわりをキョロキョロ見回す。どこにもいない。きっとまだトイレ
の中だ。


 …………見ても、いいよね?


「ここ、こーくん、だって…わた、わたしの見たこと、あるもん。お、おたがいさま、だよね…」

 あのときは小学生だったけど。

 上手く舌が回ってくれない。口から出た言い訳もカミカミになる。
 こんなの、中学生の頃にこっそり忍び込んだこーくんの部屋の隅から、Hな本を見つけたとき以来だ。

 トイレから帰って来ないうちに、早く見ちゃわないと。

 覚悟を決めて、わたしは日記の表紙をめくった。


「◇月◇日 今日は良い一日だった。放課後に生徒会室で資料を片付けてたら、書記の一瀬(いちのせ)
 と雑談で盛り上がって、結構良い感じの雰囲気になった。
 どれぐらい良いかっていうと、勢いでこんな日記を始めてみるくらいだ。
 いつもは口数の極端に少ない一瀬も、意外とノリ良くこっちの話題に乗ってくれて、案外話しやすい奴
 だという事がわかった。
 ただ雑務をこなすってだけじゃ退屈だったし、これからもちょくちょく話し相手になってもらおう。」


 なんだか考えてたよりも丁寧に日記が書かれてる。こーくんのことだから一行二行だと思ってたけど。
 でも、それ以上に気になったのは。
526「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:49:11 ID:9PfEhUDt


「◇月◇日 雨が降って体育が室内の男女混合でバレーをする事になった。男子一同、俄然やる気を出し
 ていたのだが、顔面不如意な運動音痴ことO宮が、ここぞとばかりに張り切る様は、さながら諸行無常
 を感じざるを得ない。

 世の中顔だ。顔。」

「◇月◇日 会長に押し付けられた雑務をするべく生徒会室へ来たら、今日も一瀬がいた。どうやらこい
 つも雑用係としてほぼ毎日頑張っているらしい。健気な事だ。俺も内申目当てに頑張ろう。
 今日は何と向こうから話しかけてきた。これまでは「ええ」だの「はい」だのしか言わず、あとは事務
 的な会話のみだったのに、これは大きな進歩だ。」

「◇月◇日 我らがB組のハート様ことT下が、隣のクラスの女子に告白。2秒でフラれた。罰ゲームで
 はなく本気の告白だっただけに、どうにも救えない有様だ。
 性格は良い奴なんだけどな。顔と身体がハート様じゃしょうがない、デブ専なんてのは都市伝説だ。
 家に帰ると、珍しく希が将棋で勝負を挑んできた。さっきまでテレビで名人戦を見てた影響だろう。飛
 車角落ちで負かしたら、向こう一週間の夕飯を引き受けるというので全力で負かしてやった。
 兄より優れた妹などいねぇ。」

「◇月◇日 放課後、今日も生徒会室で一瀬と雑務三昧。何となく企業「8:2の法則」が頭に浮かんで
 くる。俺らは二割の働きアリかと思えなくもないこの現状。
 実際のアリは八割が真面目だというのに。ひたすら他の役員どもが憎い。
 入りたての頃も思ってたが、こいつはやはり仕事の出来る奴だ。こっちの割とアバウトな要求にもすぐ
 に対応してくれるので、一緒に仕事をする側としては大変やりやすい。
 そこんとこの要領の良さを、うちの妹にも分けてやりたいものだ。」


 ……だれだろう、この「一瀬」さんって。


 大体、二日に一度ぐらいに、「一瀬」っていう人の名前が出てくる。それも、ちょっと仲良さそう。
 文の内容から見て、多分、女の子なんじゃないかと思う。

 こーくんの日記に、たくさん出てくる、仲の良い、女の子。

「……うー」

 なんか、ヤな感じ。
 別に、こーくんだって好きな人ぐらいいるだろうし、いなくても興味ぐらい持つと思う。それに、ほん
とはそんなんじゃなくって、ただの仲の良い後輩ってだけなのかもしれない。

 ページをめくる。
 日付は一番新しい、昨日の出来事。


「◇月◇日 一瀬と付き合う事になった。


 目に入ったのは、そこまで。続きを読まずにノートを閉じる。
527「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:50:38 ID:9PfEhUDt
「…………」

 きゅん、て、胸が苦しくなる。
 今までずっと一緒にいたこーくんが、いきなり遠くへ離れて行っちゃうみたいな感覚。

「……だ…だいじょう、ぶ。こーくんだって、男の人なんだもん。そりゃ、そうだよ…」

 声が震えるのがはっきりわかる。
 どうしてここまで不安な気持ちになるのか、ちっともわからないよ。

 ジャー…

 ドアの向こうから、トイレの水を流す音が聞こえてくる。
 はっ早く、こーくんが帰ってくる前に、元に戻さなきゃ…。

 ガチャッ

「悪いな、茶が冷めちゃったか?」
「う、ううんっ。全然平気だよ」

 そのあと食べたクッキーとお茶の味は、よくわからなかった。
528「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:52:01 ID:9PfEhUDt
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 …おかしいな。

 客の居なくなった部屋で一人、腕組みして首を傾げる。
 皿一杯に盛られていたクッキーを平らげると、希はそれ以上長居しようとはせず、そそくさと部屋へ
戻って行った。いつもならその後もまったりとどうでもいい会話をするところなのだが。
 ……というか、

「ちゃんと読んだよな? あれ?」

 視線の先には、先ほどの意趣返しのようにノートに紛れ込ませた日記。製作時間二十八分。
 そのやたら青春臭い内容が書かれた最新の日付のすぐ下には小さく、「以上、フィクションです」の
一言。

 ちょっとしたお茶目なジョークである。

 確かに俺は学校の生徒会副会長で、放課後はよく書記の一瀬という後輩と生徒会の雑務なんぞをやっ
てたりするが、あいつとの関係はいたってドライだ。
 日記序盤の方に書いてあるやり取りで概ね正しい。
 が、それだけだと何の面白味も無いので、所々に脚色を入れて最終的には告白までさせるという荒業
をしてみた。冴えない兄だと思ってたのにいつの間にそんなモテ路線!? と動揺を誘ったところでオ
チを持ってくる作戦だったのだが、ひょっとしたら不発に終わったんだろうか? 今日読んでなくても
、機会を狙って読ませようと思っていたが。
 いかん、何だかスベった空気がプンプンする。

「いや、一応ノートを開いた痕跡はあるんだよな」

 偽の日記帳を開く。
 念の為にノートの最初のページに、こっそり挟んでおいた髪の毛が無くなっている事から考えて、お
そらくはこれをきちんと見たはずなのである。
 だというのに、何故かターゲットたる希はまったくのノーリアクション。

 もしや見ておいて敢えて無反応という高度な反撃か!?

「や、でもあいつだしなぁ」

 出来なさそうである。
 その後、夕飯のときも希はどことなくよそよそしい態度で、布団に入って寝るときも理由はわからな
いままだった。
529「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:52:41 ID:9PfEhUDt
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 次の日、携帯のアラームで目を覚まし、簡単な朝食を済まして歯を磨き、一通り身だしなみを整え、
いつも通りに門限から少し早めの時間に登校する。
 希は、運動系の部活にある朝練や、俺のように生徒会等、面倒な委員の仕事があるわけではないので
、大体は俺が朝食を食べ終える頃に、のそのそと二階から降りてくる。
 ただ、昨日から引き続いて、今朝もあまり俺と目を合わそうとはしなかった。
 そのくせ、俺の視界から外れるとこちらをじぃっと監視しているような気配を感じる。

「なあ、どうかしたか?」
「ひぇっ!? …なっ、なんでもないっ! なんでもないから!」
「ふーん」

 前に向き直る。と見せかけてさらにくるりと振り返る。

「わぁ!?」
「何見てんのよ」
「みみみ見てないよっ! もう、いいから早く行きなよっ!」

 本当に見てやがった。何をしてるんだコイツは。
 ひょっとしたら、昨日俺がやったイタズラが関係してるのかもしれないと、本人に尋ねてみたくなっ
たが、この様子だとまともに取り合ってくれるか微妙だ。

「あ、そ…んじゃ、先行くからな。ちゃんと鍵は閉めておくように」
「う、うん。行ってらっしゃい」

 希の態度が気にはなるが、どうせそう深い意味はないだろうと結論付け、俺は家を出た。



「よう、お互い苦労するな」
「菅田先輩…どうも。今日は早いですね」

 HR終了のチャイムが鳴り、家へと帰宅する生徒と、グラウンドで部活を行う運動部やその他、学校
へ残る者達に分かれる時間、放課後。
 校舎の最上階に位置する生徒会室の窓から見下ろす景色には、そんな生徒達の姿があちらこちらに映
っている。
 その生徒会室の備品として置かれている長テーブルの端、どっさりと積まれた各方面からの依頼書や
ら報告書やらを、一人黙々と片付けている女子に声をかけた。

「何か、いつも先を越されてる気がするが、…チャイムと同時にダッシュでもしてるんか」
「していません」
530「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:53:18 ID:9PfEhUDt
 彼女が、昨日の捏造日記に出てきた、生徒会書記であり、俺の後輩の一瀬秋子(いちのせ あきこ)そ
の人である。

「一年の教室は三階で、先輩は二階から来たんですから、単純な位置関係の問題です」
「まあ、そうだが」

 それも考慮して、わざわざ今日は急いでここまで来たんだが、…くそ、何か負けた気分だ。

「今日は野球部から予算向上の申請と、新聞部・放送部合同の企画についての意見書が出てます」

 あっさりと会話を打ち切ると、一瀬は資料を片手に、軽く髪をかき上げながら至って事務的な口調で
報告する。
 平均よりほんの少し高めの背に、平均を大きく突き放した美貌。見た目に重過ぎないよう梳いた、背
中まで届く長い黒髪は、そのまま彼女のイメージにぴたりと当てはまっていた。
 傍から見れば冷静沈着、寡黙なドライガールだが、これでも話は打てば返すし、割と冗談も通じるの
である。
 それでも他人に対し基本的には固い感じだが、そこは味と思えば問題無い。むしろ最初はそれでも、
多少懐いてくれてるだろう今の状態は、一男子として、多少の達成感と優越感を覚えるというものだ。

「あー、野球部ねー…あそこは他の部費食い潰してる連中とは違って結構頑張ってる方だし、今年は大
会出場もありえそうだから、くれてやっても特に問題は無いな」
「ちなみに、向こうの予算上乗せ要求額は――」
「…そりゃ高い、半分にしといてくれ」
「わかりました」

 そして、容姿や性格に加えて、仕事の優秀さにおいてもまた、面倒な事務作業をする上で俺の大きな
救いになっている。実は俺にベタ惚れだったとか、アホな展開は抜きに、その点は実際にあの日記に書
いた通りだ。
 指示を出さなくてもちゃっちゃと片付けてくれるし、難題を押し付けてもそれほど苦も無くこなして
しまう大変有能なガールだ。
 これでも自称・出来る男の俺だが、今や彼女の助け無しに、この腐敗しきった生徒会の仕事を捌き切
る事は出来ないだろう。
 他の役員達がほとんど仕事を放ったらかしているのも、あるいはこうして、たった二人でも生徒会を
回せてしまえているからなのかもしれない。
 事実、生徒会長は顔と愛想だけ良いただのアイドルで、成績は優れていても実務にそれが伴わないタ
イプだ。それでもプライドだけは人一倍高く、たまに顔を出せばこっちのやる事にあれこれと口を出し
てくるのだから、質の悪い事この上無い。
 残りの会計、書記補佐らも、それに感化されてか会長に取り入って一緒にサボタージュを決め込む始
末。
 生徒会の執り行う会議や、生徒集会等のイベントでしか顔を合わせないこいつらは、内申報告のとき
にでも手痛い目に遭わせてやろうと思う。
 で、そういった経緯の元、俺と一瀬の二人で、日夜こうした書類、ときとして直談判しに来る生徒等
と格闘しているのだが……。
531「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:54:05 ID:9PfEhUDt
「ったく、肩が凝るったらありゃしない…」
「先輩、こちらの申請書にも許可印をお願いします」

 この学校、意外にも生徒達にやる気のあるものが多く、それ自体は個人的にも歓迎すべき事なのだが
、それにより必然的に生徒会も忙しくなってしまうのがネックである。
 というか、どうしてうちの生徒会に限ってやる気の無い奴が多いんだ。どっか謎の組織だとか、闇の
生徒会とかの陰謀じゃないだろうな。闇とか裏って付けりゃ何でも片付くと思うなよ畜生め。

「ああ、そこ置いといて、とりあえずそれで今日は最後にしておくか。後は各自自宅にて、って事で」

 じき下校時間を過ぎる時計を見て、書類に判を押しながら、活動終了の目処を立てた。
 一瀬は、わかりました、と一言。残りの書類に目を通していく。

「…うし。終わり、っと。そっちは?」
「片付け終わりました」
「よし、んじゃ出るか。帰り際に職員室寄ってくけど、どうする?」
「お供します」

 鞄を持って帰る準備を終えた一瀬が、迷い無く答える。

「いいね、その台詞」

 まるで秘書か侍女でも従えてるような錯覚から、つい口元がにやけた。
 生徒会室の鍵を閉め、ほぼ無人の廊下を歩く。

「先輩は、そういった類の趣味をお持ちですか」
「ぼかぁね、一瀬君。男子たるもの、偏った趣味の一つや…五つほどあっても良いと思うんだ」
「つまり、持ってるんですね」
「……うん」

 だって男の子だもの。

「では、ご主人様と旦那様では、どちらが良いですか?」
「それは一概には言えないな」

 こほん、と堰を一つ。
 そのお題は少し難しいものがある。
532「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:54:49 ID:9PfEhUDt
「ご主人様と言えば所謂メイドの専売特許的なものがあるが、旦那様という呼び方だと和服の侍女や、
変化球で新妻の殺し文句にも使える。評価はほぼ五分だが、それを言う側にも」
「先輩」
「スンマセン自分調子乗ってました」

 言葉を途中で遮られる。無表情に言われると怖さと妙な期待が半々……半々?
 横を歩く一瀬が、前を向いたまま、心なしか頬を染めた。

「…で、では質問を変えます、私が先輩に言う場合はどちらが良いですか?」
「なに? そりゃお前………………………ぬぅ、両方捨てがたい」
「……………」

 あ、何か視線が。視線が刺さる。「あんま恥かかすなやオニイチャン」て視線が今まさに俺に突き刺
さってらっしゃる。

「というか、それはアレかね。リクエストすれば言ってく」
「いえ、言ってみただけです」

 ちょいマテや嬢ちゃん。

 理不尽な。俺の性癖を暴いた挙句に逆切れ目線浴びせるとはどういう了見だ。
 いや、まあ性癖はこっちが勝手に暴露したんだけれども。
 いつの間にか顔が元の無表情に戻ってやがるし。

「待て、したら今の思わせ」
「期待しましたか? 残念ながら演技です」
「貴様男心を何とこころ」
「ません」

 喋らせろ。ていうか俺の心を読むんじゃねぇ。

「先輩とのやり取りも、そろそろ慣れてきましたので」
「言ってくれるじゃないの」
「ええ、喩えるなら先輩はキウイのような感じです」
533「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:55:33 ID:9PfEhUDt
 キウイとな。

 それは喜べば良いのか、怒れば良いのか。
 えらく唐突にフルーツ宣言された俺は、正直今までどちらかと言えば大人しめなタイプとばかり思っ
ていたこの後輩の、割とおいしい性格してたという実際のギャップに不覚にも多少動揺した。
 前述のプロフィールにも「やっぱしちょっと茶目っ気が強かったです」と追記せざるを得まい。

「して、その心は?」

 折角だから、そんな微妙に味のある喩えにした理由を聞いておこう。

「一見雑ですが、中身は綺麗です」

 俺の方へ振り向き、微笑を浮かべながらそう言った。
 ……いい味出すなあ、この娘。

「訂正しれ、ぱっと見も美しいぞ俺は」
「そういう所が、先輩の内面の美徳なんだと思います」
「やめて、褒め殺しはやめて。めちゃ有効だから」

 俺ってばナルシーな人だから。

 常識的に考えて、可愛い娘に褒められ煽てられて悪い気のする人間はかなりの少数派だろう。美人局
の被害に遭う世の男性諸君の気持ちも、今ならば少しわかってやれそうだ。
 それよか、こんないい笑顔の一瀬を見るのはおそらく初めての事なんじゃなかろうか。
 忠実だった飼い犬に背後からうっかり甘噛みされたような気分で、こうして後輩に手玉に取られるの
は悔しいが、自分への親しみが形となって表れたようで嬉しくもあった。

「それでは先輩、残った用件をさっさと済ませてしまいましょう」

 ずいっと、一瀬が一歩前へ出ていつの間にか到着していたらしい職員室のドアに手をかける。会話の
方に頭がいって忘れかけていたが、そういえばここに寄らないといけないんだったな。
 失礼しますの一言とともにドアを開き、俺は彼女を横に従え職員室へ足を踏み入れる。
 一瀬秋子という後輩の事が、今までよりも近くに感じた日の事だった。
534「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:56:11 ID:9PfEhUDt
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「やめて、褒め殺しはやめて。めちゃ有効だから」

 先輩。その表情は反則ですよ。

 菅田光(すがた ひかる)先輩。私の横を歩きながらむず痒そうに身体を捩るこの人は、最近になっ
て確信した事ですが、素直に好意をぶつけられるのに弱いようです。
 普段は少し軽めというか、ノリの良い感じでこちらの皮肉や不満ものらりくらりとかわすのですが、
今みたいに自分の事を褒められると一瞬本当に照れたような顔をします。その後すぐに持ち直してしま
い、あまり長々と見れるわけではありません。ですが、あの表情は演技やその場凌ぎのものではないは
ずで、先輩のそんな新しい一面は私の心をいっそう釘付けにしました。

 ああ、先輩。光先輩。
 生徒会役員の初顔合わせを終えて最初の仕事をする為に生徒会室へ集まったあの日。あの理事長の孫
だの何だのと選挙の際にのたまっていた見るに器量の無さそうな生徒会長と、そのおこぼれに預かろう
という腰巾着の会計・書記補佐達。私に品も芸も無い誘い文句を吐き、あまつさえ自分達の身の程も弁
えずに先輩を貶し誹り罵倒して、そんな多対一の状況でさえ逆に先輩に言い負かされたあの低能達は、
聞くも惨めな捨て台詞と共に出て行き、ものの五分もしない内に室内には私と先輩しか居なくなってし
まいましたね。

 あのとき、あまりにも下らない人間を見た気分の悪さにいっそ一人づつ精神的に追い詰めていってや
ろうかと思っていた私ですが、口先一つでものの見事にその場で三人を撃退した副会長の、静かな自信
と気迫に満ちた姿へとすぐに興味の対象がシフトしました。

 何と言いますか、所謂大物っぽい雰囲気を漂わせていたんです。

 総会屋さんとか、その道の親分格のような黒幕オーラをちらつかせる先輩の薄笑いは、言葉にしづら
い凄みや迫力があります。正直少し怖いです。

 ですが、それが「良い」と、そう私は思いました。

 直感的に、電撃的に。
 この人は自分よりも格上の人間なのだと思ったんです。

「それでは先輩、残った用件をさっさと済ませてしまいましょう」

 曲がり角の向こうに職員室が見えてくると、私は足を速めて、先輩の前へ出て扉を開けてあげます。
こうしていると、何やらまるで本当に先輩の秘書にでもなった気がして、無意識の内についつい口元が
緩んでしまいました。

「おう。……失礼します」

 頭を下げた状態なので先輩は私の表情に気付く事無く、そのまま挨拶と共に職員室の中へと入って行
きました。当然、私も後に続きます。

「おっ。菅田と一瀬か、どうしたんだ?」
「はい、運動部の予算についてなのですが…」
535「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:56:48 ID:9PfEhUDt
 担当の教師に鞄から数枚の書類を取り出して見せ、その場で何事か話を進める先輩。そこに見えるの
は、普段の場を和ませる軽薄さを潜めた真剣な眼差し。
 会長達を生徒会室から追い出した際。口論には多少の自負を持っていた私でしたが、あの時に先輩が
見せた、ともすれば今すぐにでも刃物を持って切りかからんばかりにギラついた視線を直に浴びながら
では、殆ど上手く喋れる気はしませんでした。もっとも、今は別の意味で上手に先輩と話せている自信
が持てませんが。
 もしも私があと一年早く、あるいは先輩があと一年遅く生まれていてくれたならば。その分だけ二人
の出会いは早まったに違いない、そう考えると自分の親が少しだけ恨めしく思えてきます。でも、そう
。今回はそれでも良いでしょう。だって、逆に言えばそれはたったの一年の誤差で済んだという事なの
ですから。
 大事なのは光先輩と出会い、私との間に関係が生まれたという事実。ですから、たとえ同じクラスや
学年でなくとも、ほら、今はもうこれだけ話せるようになれました。

「……ん、こんなもんか。しかし助かるよ。お前らのおかげで最近はこっちも色々と融通が利くように
なってきたからなあ」
「いえ。こちらこそ、ありがとうございました」

 距離は近過ぎず、けれど決して遠くない。
 今は生徒会でしか繋がらない私と先輩の関係も、きっとよりプライベートなものへと変えていける。
そんな確信があります。
 書類を再び鞄の中に仕舞い、話していた教師に一礼をした先輩がこちらへと向かって来ました。持ち
前の鋭角的なイメージの顔付きに、そうした仕草の一つ一つが様になっており、何と言いましょうか。
先輩の行う動作に一々惚れ直してしまいそうです。

「お待たせ」
「はい。…失礼しました」

 最後に私が先生方に会釈をして、職員室の扉を閉じました。

「お疲れさん。また明日な」
「ええ」

 辺りを覆うのは薄い夕焼け。下駄箱で靴を履き替え、校門を出た所で別れの挨拶をすると、光先輩は
私とは逆の方向へと歩いて行きます。
 いつもそのまま振り返らずに帰る先輩は、私が後姿を見つめる数秒間に気付きません。いつか小さく
手を振る私に気付いたとき、あの人は手を振り返してくれるでしょうか。

 多分、振り返してくれるでしょう。

「…また明日」

 そのときは、きっと笑顔で。
536「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA :2007/09/25(火) 23:58:46 ID:9PfEhUDt
投下終了。
「草」の方が行き詰っていたので、気晴らしに以前書き途中だったものに
少しだけ手を加えて今回投下してみました。
一応、扱いは単発でお願します。
537名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 00:03:58 ID:YEZP0JBE
リアルタイムでGJ!
538名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 00:12:27 ID:UR/z6XKQ
>>536
めっちゃGJ!!!
何気にこーくんと一瀬のテンポの良い会話がツボにはまったw
これが単発と言うのはとても惜しいですが草の方も頑張って下さい!
539名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 00:24:41 ID:6OzFcnu/
さっき母親が親父から女の香水の臭いがするって怒ってたのが不覚にも萌えた。俺終わった。
540名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 00:54:07 ID:SEpQd5xM
>>536
ちょ、これ続かないの?
それだけ良い素材を用意しておいて料理せずに腐らせるのですか!
541名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 01:10:10 ID:bE1j1fdb
>>536
ええええええ続かないの!?
残念・・・凄く面白かったのに・・・(´・ω・`)
542名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 01:17:59 ID:7kKPpvaA
>>536
乙です。
これをこのまま終わらせてしまうのはすごくもったいないような・・・。
草、楽しみに待ってます。
543名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 01:25:29 ID:3IzAnnpZ
つっ続かないんすかぁぁあぁ・・・
まぁ作者さんがいきずまったときにまた書いて欲しいなー
544名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 02:07:33 ID:0k0ZPPuv
>>536
「草」もですが、読ませる事を熟知しているテンポの良い文章と言葉選びには
独特のセンスの良さを感じますね

今回の物語の続きが気になるのはもちろんですが、それと同時に作者様が
一体何者なのか、無粋とは思いつつもつい意識せずにはいられません
545名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 02:39:43 ID:gjGLJfih
クーデレ娘が良すぎる…続き早く来ないかなって思ってたら
続かないとな?

謝罪と続編を要求(ry
546名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 02:54:10 ID:7jm1tzSS
>>536
GJ!!
しかしこれから嫉妬ってところで続かないのか、でも草の方も進めて欲しいし。
両方違うタイプだから、草の合間にちょっと頭の切り替えのちょくちょく書くとかは無理かな?
547名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 06:38:34 ID:mkoFL9NK
いやいや、これから年末が近付くにつれて忙しくなるからさ

草が完結した後で思い出した時にでも続きを書いてくれたら嬉しい。
548名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 16:03:38 ID:uAcJqeL7
GJ!
直感的に先輩を自分のご主人様と認識した一瀬さんは中々のMとみた
549名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 18:14:40 ID:SHKfiHhm
相変わらず主人公がスッゲェ個性的だ
つーかフツーにギャグチックな一人称もイケるとかスゲエッス
550私たちの愛しいお兄様:2007/09/26(水) 18:42:22 ID:SFSNxFR2
朝も幼馴染の晴香に作ってもらっており・・・
ピンポーン!噂をすれば
「悠!真奈ちゃん!加奈ちゃん!オハヨ!」
「「おはようございます」」
「ああ、いつもワリィな。毎朝メシ作ってもらって」
「別に良いって!ウチのお父さんもお母さんも朝早くから働いてるし」
551名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 18:58:29 ID:fpOU8gSI
>>550
頼むからsageてくれ
552名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 19:19:06 ID:0k0ZPPuv
>>550
アドレス欄にsageと入れるんだぜ?
553名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 19:44:30 ID:ev56M+iY
新手の嵐だな
こんだけ注意されても聞かないんだったら
554名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 19:56:16 ID:K+Uniudd
というか投下中に一時間以上も間を開けるな…
555名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 20:13:27 ID:Wx7UpB59
直しながらでないと投下出来ない人もいるって別スレで言ってる人がいたねぇ

とはいえ、まとめてもらいたいのも確か
556私たちの愛しいお兄様:2007/09/26(水) 21:25:53 ID:SFSNxFR2
スマソ。
557私たちの愛しいお兄様:2007/09/26(水) 21:40:56 ID:SFSNxFR2
彼女は早速エプロンをつけ、冷蔵庫をあけて材料を調べ始めた
「昨日のワカメサラダが結構残ってるわね。今朝はパンとご飯どっちにする?」
「ん、昨日はご飯だったし、今日はパンが良い」
「そ。加奈ちゃん真奈ちゃんもパンで良い?」
「はい。パンでいいです」
「私もパンで良いです」
「んじゃ、目玉焼きとベーコンも焼くからお皿とかコップとか出しといて」
10分後、トーストにベーコンエッグにワカメサラダに牛乳という、シンプル
ながらもヘルシーな食事が並んだ。とは言え、晴香がいなきゃおかずは前日の
残りで済ますということになるし、弁当もコンビニか購買で買うことになるから
つくづく晴香には頭が上がらない
558私たちの愛しいお兄様:2007/09/26(水) 22:23:03 ID:SFSNxFR2
「「「「いただきます」」」」
四人でダイニングテーブルを囲み、食事をスタートする。
「あ、そういえば俺、今日は生徒会に呼び出されてるから少し遅くなるんだけど」
「ん、アンタ生徒会に呼び出されるようなトラブルでも起こしたの?」
「イヤ、何でも生徒会が文化祭に向けて全ての部活に何らかの出し物なりを行わせるらしいよ」
559名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 22:24:18 ID:Wx7UpB59
今日は終わりかしら?
560私たちの愛しいお兄様:2007/09/26(水) 22:24:42 ID:SFSNxFR2
今日はここまでです。これからもちょくちょく投下いたしますのでご容赦のほどを
561名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 22:25:44 ID:Wx7UpB59
ありゃ。リロードしたら投下されてた。
こりゃ失礼
562名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 22:45:41 ID:K+Uniudd
とりあえず言わせてくれ
sage必須で連載する場合はトリップ推奨だ
あと投下するときは確認しながら投下ではなく、できるだけ前もって確認してから投下してくれ
さすがに40分とか一時間またされるのは勘弁だぞ…
563私たちの愛しいお兄様:2007/09/26(水) 23:00:48 ID:SFSNxFR2
スマソ
564名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 23:29:06 ID:ev56M+iY
ってか、携帯なんだろうけど
こんぐらいの文章量だったら2レスもあれば十分なんじゃないか?

短いから投下するなとかレス数がもったいないとか言わないけど
もっと一気に投下したほうがいいぞ。細かくわけないでさ
下手にわけられるとテンポ悪いし
565名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 01:40:26 ID:YSbl8jS3
>>562 >>564
おまいらいい奴だな わざわざ助言してやるなんて
漏れはてっきりID:SFSNxFR2は>>556で謝罪するまで
ID:ev56M+iYと同じく荒らしの類だと思っていたが
566名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 02:10:41 ID:HE/7N6N9
>>563
まぁしょげなさるな。しっかりと一つ一つの批判に応える姿は中々好感を抱く。
頑張って一つの物語を作って下さいな。応援してますよ。
567名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 04:27:19 ID:XOjfZOCA
おまいら優しすぎるだろ・・・・常識的に考えて・・・
568名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 05:01:12 ID:JQZ+5jMw
>>567
そりゃまぁ、ザックリやられたりギッチリ監禁されることを許容出来る人達ばかりですから
569名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 05:27:36 ID:I3ckWcfO
>>568
ストーキング、盗聴、逆レイプも大歓迎、朝メシ前、ドンと来いですが?
570名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 06:12:43 ID:p2JOwcTc
入れた覚えが無いのに
朝目が覚めたら女の子が家の中に居て、
少し妙な味のする朝食を作っている訳だな

これが本当の朝飯m(ry

すまん誰か来た、ちょっと出てくる
571蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/27(木) 06:16:54 ID:oiM4k21W
皆さんおはようございます。
投下させていただきます。
572蒼天の夢 05 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/27(木) 06:17:37 ID:oiM4k21W
 醜い断末魔。
 サラサラと舞い落ちる灰。
「やっちゃった」
 本日六匹目。
 幾ら魔界から召還している魔物でももったいない。
 どうしても感情が抑制できない。
 私の、グレイ・クリフ住民曰く“魔女の塔”の実験室。机の上には水晶球がおいてある。
 『物見の珠』と呼ばれるマジック・アイテム。以前に見たことがあるものなら念じるだけで映してくれる。
 私はいつものようにジース君をみながら魔法の研究していた。
 最近、頭の中までお花畑の小娘がジース君にまとわりつきはじめた。
 今日も朝から竜場に押しかけている。
 困った顔をしている彼の周りをブンブンブンブン。まるで凛々しい駿馬に寄生する蝿のように。
 でもジース君は根気強く蝿女に付き合ってあげていた。
 あの娘は確かジース君のスポンサーの子。
 可哀想。立場上、嫌とは言えない。
 それなのに蝿女は彼の気持ちも考えず、構わず飛び回る。
「ギ――」
「あ」
 七匹目の魔物が灰となる。
 いけない。もっと集中しないと。
 これは魂を抜き取る実験。
 『分解』の呪文の練習じゃない。
 小さなことで心をかき乱されてはいけない。蝿より実験のほうが大切。
 実験が成功し、研究が完成すれば私はジース君とついに結ばれることができる。
 もう少しの辛抱。
 
 ジース君にはじめて会ったのは十二年前。
 当時、しばらく里を離れてみようとグレイ・クリフに越してきた。
 ある日、私は薬草を買おうと地元の薬師を訪ねた。
 その時目を輝かせながら母親の脇にいたのがジース君。最初はただの可愛い男の子。
 私に若木を愛でる趣味はないから当然のこと。
 時々せがまれて遊んだことがあるぐらい。
 変化がきたのは彼が9歳の頃。
 庭先でジース君と遊んでいた時。
573蒼天の夢 05 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/27(木) 06:18:10 ID:oiM4k21W
「エ、エルフのまじょめ!」
 彼の友達が突如やってきて私に石を投げつけた。
 多分エルフに慣れていなかったのだろう。
 風を操り、石を逸らそうと思った瞬間。
 ジース君は私を庇って石を己の身に受けた。
 私と友達が驚いている間、ジース君は詰め寄り友達を殴り倒した。
「エリシアさんはエルフのまじょだ。だからどうした!」
 驚いた。はじめてだった。
 今まで人間とそれなりに関わってきたつもり。
 多くは私をエルフとして。あるいは魔術師として、どちらか一方でしか扱ってくれなかった。
 ジース君は両方認めた上で私に接してきてくれたのだ。
 身体が熱くなる。不思議な高揚感に包まれる。
 あの瞬間、私は彼に大樹の器を見た。
 ジース君はその後、母親に酷く叱られ、泣きながら私のもとへ来た。
「友達殴っちゃだめ」
 可愛かったので私はジース君のおでこを弾いた。
「でもありがとう」
 そう言うと、彼はこれまでにない誇らしげな顔で笑った。
 おとぎ話に出てくる英雄の笑顔。
 将来はきっと様々なものを育む立派な樹になる。
 そして大きく成長した彼の隣に立っていたいと私は強く想った。
 彼の隣にただ一人、立っていたいと。
 
 以来、私はジース君の成長を支えようと尽力した。
 さらってしまいたいと思ったことは何度もある。
 でも鷹は鷹の巣で育てるもの。不自然な育て方をしては害悪でしかない。
 だからと言ってただ傍観する私ではない。
 一番大切なのは大きくなったら私だけを見るようにすること。
 彼の良さに気づくのは私だけではないはず。
 だから前以てジース君の身体に、心に種をまいておく。
 彼の両親と交友を続け、家庭教師になるとも申し出た。
 彼の知識の多くは私が教えたもの。
 ジース君が私の髪を触りたがっていたのも知っている。
 もちろんとめなかった。むしろ触りたくなるように仕向けた。
 髪だけじゃない。匂いを嗅ぐことも。時には身体を触ることさえ。
574蒼天の夢 05 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/27(木) 06:19:05 ID:oiM4k21W
 人の好みとは幼いころから徐々に構築されてゆくもの。
 その過程の所々に“私”を埋め込む。
 大きくなったら他所に目がいかないように。
 でもがっついてはいけない。
 自然界でも直情的な生き物は狩りが下手。獅子やグリフォンもそう。
 逆に蜘蛛や狼は狩り上手。ただ己の力に任せて襲わない。
 策を練り、罠を仕掛ける。獲物が自らやって来るように。
 
 八匹目の魔物でようやく成功。
 手の中には赤黒く光る珠が浮かんでいる。
 魔物の魂。私の研究に必要な素材の一つ。
 すぐに氷の呪文で結晶化し保存する。
 実験といっても後は微調整と素材集め。研究の基礎は既に実証し、何度も成功している。
 でも今度はジース君に施すから準備は万全にする。
 あと少し。あと少しでジース君は私のもの。
 すごく楽しみ。思わず口が潤う。
 ジース君の愛は一体どんな味がするのだろう?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 時間というのは止まっていて欲しいと願えば願うだけ早く過ぎていく。まるで人が苦しむ姿に快感を覚えるサディストだ。
 気づくと一週間過ぎて、レース当日になっていた。
 その間様々なことがあった。
「ジースさん!がんばって下さ〜い!」
 俺と相棒に手を振るミリアちゃん。
 彼女を見るたびライアンおやじの薄い頭が正常なのか疑いたくなる。

 ミリアちゃんに父親から許可が降りれば雑務係として雇う。俺は六日前の帰り道、彼女にそう答えた。
 彼女の父親、防具店のライアンおやじは絶対承服しないだろうと踏んでの発言だった。
 翌朝、普段通り竜場に行ってみるとどうだろう。
 そこにはダブダブのつなぎに着替え、俺の愛騎アズールに餌をやりながら鼻歌を歌うミリアちゃんがいた。
「おはようございます!ちゃんとお父さんに許可もらいましたよ!」
 俺が何を言おうとしたのか分かったのだろう。
575蒼天の夢 05 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/27(木) 06:20:07 ID:oiM4k21W
 彼女はすぐに一枚の紙切れを取り出した。
 そこには短く『どうか娘のわがままを聞いてやってくれ』と書いてあった。
 うちの親父といい、ライアンおやじといい。アルス王国の男が厳しいのは外見だけなのだろうか。

 気は進まなかったが俺の出した条件を見事にこなしたのだ。断れるはずもなかった。
 以来、ミリアちゃんは朝早くから竜場に働きにきている。
 仕事の内容は悪くない。おかげで俺の仕事の量はかなり軽減された。
 逆にレース開始直前になってもなんら策を見出せない自分が情けない。
 既に準備を終えたスキッダーとワイバーン達が次々と飛び立っていく。
 俺もアズールに跨り、洞窟の出口へと向かう。
 不安はあるものの今更どうしようもない。ミリアちゃんの声援を背に、俺と相棒は地上に別れを告げた。
 洞窟から離陸するとスキッダーたちは参加する選手が揃うまでグレイ・クリフ山の周囲を旋回する。
 全十一騎が空中にあがると、山頂付近にアルス王国の大旗が掲げられる。
 スキッダーたちは規定高度にワイバーンを下げる。一旦コースをゆっくり飛びながら、くじ引きで決められたスタート順位に並ぶ。さながら竜騎兵の編隊飛行だ。
 その間に声を魔術で拡張した司会者が各スキッダーの紹介をしてゆく。
 俺のスタート順位は3位。悪くない位置だ。問題はこの順位を維持できるか。
 目の前の2位を飛ぶのはティオーナと彼女の赤いワイバーン。
 練習中に分かったことだが、彼女の腕は半端ない。
 新人であることや妙に真剣すぎる態度。腕の方は身分とは正反対に低いだろうと俺は高をくくっていた。
 だが彼女の飛び方を五日間見てそんな気持ちは吹き飛んだ。
 何処かの竜騎士の下で修行していたのか。まるで恐れを知らない急降下。風を切り裂くような機動。ワイバーン、スキッダー共々まさに一流と呼ぶにふさわしい。
 未熟な俺が言うのもなんだが、彼女は間違いなく上位に食い込んでくる。
 全員が定位置にいることが確認されると今度は王国旗が振られる。
 スタート地点となる山の北側の観客席を次に通過した瞬間、レースが開始するという意味だ。
 一番緊張する時間である。
 視線は前を飛ぶワイバーンより、横手の山腹に広がる観客席に泳いでゆく。
 規則とはいえ、ゆったりと編隊飛行しているのがもどかしく思えてくる。
 まだか。まだか。高ぶる心を静めるのが難しい。
 程なくして、山の曲がり角を回るとそれは視界に入ってきた。
 一際大きく造られた観客席。王侯貴族の来訪を視野に入れた豪華な主催席を兼ね備えた建物。無数の小さな旗が振られ、観測用の塔も見える。
 あれがスタート地点だ。
 手綱に力が入る。両足が強張る。全神経が耳に集中してゆくのが分かる。
 あの音を聞くために。
 そして先頭のワイバーンが観客席を通り過ぎた瞬間。
 野太い角笛の咆哮が轟いた。
「いけぇ!アズール!」
 どのワイバーンもスキッダーもまるで角笛に応えるかのように叫び、力を解放する。
 優雅な編隊は解かれワイバーンたちは我さきへと、前へ跳躍する。まるで勝利への渇望が空を支配したように。
 クリフ・スキッドは今日も平常運転である。
576蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA :2007/09/27(木) 06:23:58 ID:oiM4k21W
投下終了です。
過去の書き込みを修正、加筆できたらなと思う今日のこの頃。
いや、自分が気をつければいいだけの話なんですが…
つまらない話でした。失礼します。
577名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 06:33:15 ID:U3M/QPpe
朝からGJ
これで今日も一日仕事頑張れます
エルフ可愛いよエルフ
578名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 06:59:50 ID:4pJBqnBL
GJ!!
エルフさんの動きっぷりは素晴らしいですねw
579名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 07:29:15 ID:Nwp0xKop
GJ!エルフ可愛いよエルフ
朝からいいもの読ましてもらいました
580名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 10:07:40 ID:eExEwUX8
>>576
乙!エルフ可愛いよエルフ
しかしティオーナも期待株な予感が・・・
次も楽しみにして待っています。
581あの女が倒せない:2007/09/27(木) 17:18:30 ID:4hOPUSfV
幼「気がついたら彼の横に姉妹が居る」
幼「そしていつも彼と一緒に帰る」

幼「諦めずに姉妹排除に奮戦するけど彼に諌められるよ」

幼「アパートに一人暮らしなら楽に彼を監禁できるけど」

幼「何回やっても、何回やっても、あの姉妹が倒せないよ!」

幼「あのノコギリ何回やってもよけれない」
幼「うしろに回って首を絞めてもいずれは彼に止められる」

幼「悪評流布も試してみたけど、肉親相手じゃ意味がない」

幼「だから既成事実作るために」
幼「わたし排卵日だけは常時確認しとく」


妹「気がついたら兄の隣に幼馴染」
姉「そしていつも弟に付き纏う」

姉「諦めずにふたりの仲を妨害するけどすぐにまた寄って来る…」

妹「媚薬が購入できれば楽に兄を薬漬けにできるけど」

姉妹「「何回やっても、何回やっても、幼馴染倒せないよ!」

姉「落ちるカッター何回やってもよけれない」
妹「うしろに下がって弓を引いてもいずれは兄に止められる」

妹「悪評流布も試してみたけど、幼馴染じゃ意味がない」

姉「だから既成事実作るために」
姉妹「「わたし排卵日だけは常時確認しとく」」


幼姉妹「「「殺人許可証あれば楽に彼と幸せになれるけど」」」

幼姉妹「「「何回やっても、何回やっても、あの女が倒せないよ!」」」

幼姉妹「「「あの大鉈何回やってもよけれない」」」
幼姉妹「「「うしろに回って突き落としてもいずれは彼に止められる」」」

幼姉妹「「「悪評流布も試してみたけど、彼女が相手じゃ意味がない」」」

幼姉妹「「「だから既成事実作るために」」」
幼姉妹「「「わたし排卵日だけは常時確認しとく」」」

男「逃げれないよ…orz」

ttp://www.youtube.com/watch?v=KLbFctG3tw0&mode
582名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 18:50:56 ID:hVZlbUkB
583私たちの愛しいお兄様:2007/09/27(木) 19:21:04 ID:uSz856w+
投下します
584私たちの愛しいお兄様:2007/09/27(木) 19:24:19 ID:uSz856w+
「へー、それじゃ、晩御飯は私たち先に食べてるね?」
「ん、頼むわ。もしかしたらそのまま部活の連中と食べて帰るかもしれないから朝まで残せるもの頼む」
585私たちの愛しいお兄様:2007/09/27(木) 19:24:57 ID:uSz856w+
ちょっと用事出来たので最大30分ほどお待ちください
586私たちの愛しいお兄様:2007/09/27(木) 19:29:06 ID:uSz856w+
失礼しますた。再開します
587私たちの愛しいお兄様:2007/09/27(木) 19:35:51 ID:uSz856w+
食後、制服に着替えて鞄を持って玄関に立つ。一旦家に着替えに戻った晴香も丁度出てきた
「お弁当忘れてないね?」
「ああ、じゃ行こうか。加奈!真奈!行って来ます」
「行ってらっしゃいませ、お兄様」
そして、僕らは学校に向かう。
588私たちの愛しいお兄様:2007/09/27(木) 19:50:43 ID:uSz856w+
side〜加奈
お兄様が今日は生徒会に呼び出されて遅くなるらしい。まあ、それ自体は仕様が無いし、
別にどうってことは無い。だけど、部活の用事を盾にお兄様の近くをうろつく
あのメス犬がどうしても許せない。以前、買い物しようと町まで出かけたら
不相応にもお兄様の隣を歩いていたメス犬の姿が脳裏に浮かんだ。私は無論、
それが誰なのかその場で問い詰めた。お兄様が口を開かれる前にそのアマは
『文芸部部長の川村祥子です。部活が遅くなったので送ってもらっています』
とか名乗り出た。
589私たちの愛しいお兄様:2007/09/27(木) 20:05:18 ID:uSz856w+
私の怒りは収まらなかった。病弱で、学校へ行けない私達がお兄様と一緒に過ごせる貴重な
時間を奪ったというだけが理由ではない。その女のお兄様を見る目が盛りのついたメス犬の
それだったからだ。私達双子姉妹が命よりも大切に想いお慕いしているお兄様を誑かそうと
隙を伺うあのアマの存在自体が憎くて仕方なかった。一応晴香さんにもその話をして学校で
あの薄汚いメス犬の監視をお願いした。晴香さんには普段から色々とお世話になっているし
小さいころ、彼女と私達は一つの協定を結んでいたからだその協定は、平日は晴香さんが、
休日は私達姉妹が、お兄様に近づく泥棒猫たちを排除すること
590私たちの愛しいお兄様:2007/09/27(木) 20:09:03 ID:uSz856w+
今日は一旦ここまでです。時間があればまた後ほど投下します。文才が乏しくて
スミマセン。
591名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 20:30:50 ID:qhTXVi5q
まぁがんばれ
592名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 20:35:39 ID:tZjDBj0+
文才以前に他のことを改善したほうがいいと思うが・・・
まあGJ
593名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 21:06:47 ID:7/WOhXhZ
こういうこと言っちゃならないのかもしれんが、本当に改善する気ある?
以前のアドバイスも改善されていない気がするんだが・・・
594名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 21:25:24 ID:rcehpaVk
別に無理に急いで仕上げなくて良いんだ。
とりあえず全裸の俺たちが風邪をこじらせない程度に投下があれば。
595名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 21:26:04 ID:p2JOwcTc
携帯でもちゃんと書けるよ

1:メールの中で文章を書き上げる

2:それを自分のアドレスに送信するか、未送信で溜める

3:推敲

4:メール内の文章を切り取りorコピー
  これはストック10いけるから、あらかじめ決めた数をストックしてスレを開く

5:ストックを張り付け
  携帯でも1レスに1000文字くらい(2000バイト)入れれる
  これはコピーの8個弱(私は普段6、7個だが)

6:4番に戻る、以下繰り返し

これで注意されてる部分は何とかなると思うので、頑張って下さい
説明が分かり辛かったらすみません
596名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 21:40:59 ID:gyz4RNeX
機種にもよるけれど、メモ帳を使えば貼り付けが楽だよ。

あと、PCに携帯を繋げて書いた文章をメールファイルにコピぺすれば、執筆もスムーズにいくし、推敲もやりやすい。
俺の場合はいつもそうしてる。
597名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 21:58:02 ID:bCLdZwQ/
スクールデイズ見終わったが、素晴らしかった。
598名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 22:27:20 ID:7dpO5Bat
おとうさんおとうさんきこえないの
ミナコが
599名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 22:40:40 ID:bCLdZwQ/
誠と言葉が誠の家にいるところに世界登場。世界ブチ切れ。言葉が「西園寺さんこそ裏切った。」
と反撃。誠は言葉寄りになり世界の前でキス開始。世界逃亡。

世界、誠に学校後会いたいとメールで連絡。

誠は動揺。家で世界と会う。誠がちょっと離れた隙にメールが来る。世界からのメール。「さようなら。」

誠の家で世界が誠を包丁で殺す。

言葉、誠の家で誠の死体を見つける。

言葉、誠の携帯で世界を学校の屋上に呼び出す。

世界に誠の首を見せさせる。世界動揺。

世界対言葉一騎打ち。言葉が世界を殺す。

言葉、世界の腹を割く。「子供なんかいないじゃないですか(笑)」

言葉、誠の生首とnice boatで海へ
600名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 22:45:57 ID:bCLdZwQ/
           ノ "''===='
_r〜〜〜'"^⌒⌒⌒^`ヾ'"=ニ二二ユ
_`二ニ='       '"^丶
   /       ∧    _z'ニ三二ニ nice boat.
__l____|::::}____l___
三二三二三二三二三二三二三二三
二三二三二三二三二三二三二三二
601名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 22:51:14 ID:MeIQQKfa
とりあえずnice boat!
602名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 22:56:37 ID:4J6awSuU
>>599
これって本当?
U局映るのにあの事件で放送しないしATXなんて契約してないし。
斧女四ね
603名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 23:23:08 ID:cd7T+uQJ
久しぶりにSSを読み返していた、やはり嫉妬SSはいいものだ。
そして一言 RedPepperの続きマダー?
604名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 23:36:53 ID:puwgEqPy
            ____,......、_
           ,/´::::::::::::::::::`ヽ、.     
         ,/´;::´;::::::;:::::,,;:::;;; ;,、:\    
        /;';/:::;/;/´フノ リ`゙i::::`、   あ…ありのまま 今 起こったことを話しますね    
       ,/レ/;/!/○    ノ 、_!::!::;;i,   
       ,/:/:/::::/  ,、      ○ リ:;:| i!  『私は西園寺さんの妊娠が嘘だと
      ,/::::/:::::/  i  ヽ、_    |;ノi     思ったら、やっぱり嘘だった』
     ,イ:::::;!:::::/|  |      フ  /:::|
    ノ,/::::/;::::::|:ヽ、 ヽ    /  /::|:::|    な…何を言っているのかわからないと思いますが   
   / /::::::::|:|::::::|::::::`メ、`___ ´,, イ:::::|:::ト、    私も何をされたのかわかりませんでした
  / /::;::::::|リヽ、|;/~ \|ヽ;::::::::::::::::::;|;イ `  
 ノ  /::/::::::|::::::::/::::ヽΤ`+´`、:::::::::::::::リ;|    頭がどうにかなりそうでした…
   i::::|::::::::|::::::/:::::ノ:´゙レ、ノ、_ノ、;::::::::::::::|;|   
  /:::/|::::::;/::::/:::/::::::::::::::ヽ´::::i`、:::::::::::|i!   想像妊娠だとか、誠くんの彼女は私だからありえないだとか
  /;::||::::::;/:::::/;;;/::::::::::~::::::~::|::::|;、`メ;;::::|リ    そんなチャチな理由じゃ断じてありません
 レ´|:| !;;;;|::_;/_ソ;;::;:::;:::::;::::;:::::|:::;:i´~ー´:ノ 
   !j-ーイ_/,/,__|__|___|__|__|__|__ト;;;;/  もっと簡単な確かめ方の片鱗を味わいました
 ''゙´"/'´`|\:::::/===/:::::::::::|===        「中に誰もいないじゃないですか」
 ^~~    ` `ソ::::::::/::::::::::ノ|::::::::|
605名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 00:21:41 ID:NjOIS4um
放送自粛には納得だったなぁ
さぁて、SSをwktkする作業に戻るとするか
606名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 00:46:30 ID:QJWJ/td9
  |/.:.:.:/.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.::/.:.:.:.:.:/<ヽ.:.:i.:.:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
 .|i.:.:.:/.:.:.:.:/.::.:.:.:.:.:/.:.:.:.:/.:.:.:/;;//iヘvwv| :|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
 |.:.://.:.::.::/.::.:.:.:.:/.:.:.:/:.:.:/;;////   .|.:|.:.:.:i.:.:.:.:i.:.:.:|
 |:.:| |.:.:.::.:i.:.:.:.:.:::i.:.:.://.:::../;;;/.//    |:.:|i.:..:i.:.:.:.:i.:.:.:|
 |:.| .|.:.:.::.:i.:.:.:.:.:i.:.:/ー;;/ソ/ // -==、_.|:.| |.:.::i.:.:.::i.:.:::|
 .|:| .|.:.:.:.::i.:.:.::.:i.:.:ム;r-y,ネ'  // -_、,,,,__ .|:;ヘ|.:..:i.:.:.:i.::..:|
  ii |i :i.:.::i.:.:.:.:|ヤケiテうト`  ,/'´  '´,ケネデヌ;., |.:.:i.:.:/|.::.::|i
  .` |iト,.:i..:i.:i.:..:|{_|;:::::`}:| /     |{::::::f;;イソ:.i.:.イ./.:.:.::|i
   |i|i.:.::ト,.:iヾ;;:| ャ:::::,ソ        .セ_:::::ソ/.:.:/.|/.:.:.:.:|.i        
  .|i|i.:.:.:;iヾ;ヽトヽ ̄      .    .~ ̄ /イi.:.:|i.:.::.:.:.| .i
  .|i |:i.:.:.:.:i..:`,ミ
607名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 02:03:11 ID:MUOx/8P2
よくよく考えると斧女が父親を殺す事件って
スクールデイズと比べると何か霞むよな
リアルな事件と二次元の事件を比べる時点でおかしいがw
608私たちの愛しいお兄様:2007/09/28(金) 16:25:13 ID:uictfe9P
投下します
609私たちの愛しいお兄様:2007/09/28(金) 16:26:07 ID:uictfe9P
お兄様の事を愛していいのは私達と晴香さんだけ。どこの馬の骨ともつかない
犬畜生にその権利を与えてなるものか。幼い頃から助け合ってきた私たちの間
に割り込もうなんておこがましいにも程がある。絶対にあの女にお兄様は渡さ
ない。だが、今は晴香さんを信じて事を任せるしかない。彼女に全て仕事を丸
投げするのは心苦しいが、私達にも出来る事を全力でするまで。病弱で出来る
事は限られているけど、お兄様とその永遠の伴侶たるに相応しい晴香さん、そ
してその二人に永遠の忠誠と愛情を誓った私達の未来のため、決して他の女に
出し抜かれてはならない。絶対に防いでみせる。
610私たちの愛しいお兄様:2007/09/28(金) 16:29:55 ID:uictfe9P
変なの所で改行してすみません。一応、枠に収めているので。
611私たちの愛しいお兄様:2007/09/28(金) 16:41:28 ID:uictfe9P
〜side真奈〜
お兄様を愛していいのは私達姉妹二人だけ。晴香さんにはお世話になってるけど
それとこれとは話が別。加奈は『晴香さんだったら』と思ってるみたいだけど、
お兄様と共に生きるのを私が我慢出来るのは血を分けた加奈だけ。私達は学校に
行けないから学校での監視はあの泥棒猫に任せるしかないのが癪だけど、絶対に
幼馴染以上の間柄―最悪でも親友レベルまで―まして彼女の座だけは絶対に・・
「絶対に・・・渡さない・・」
612私たちの愛しいお兄様:2007/09/28(金) 16:46:02 ID:uictfe9P
今日は一旦ここまで。
613名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 16:51:27 ID:VK5ZfeX+
乙だぜい
614名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 20:51:17 ID:29W+/Qq4
前スレ落ちたな
615名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 21:04:16 ID:SjPkibE5
美奈子埋まったな
616愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/28(金) 21:07:51 ID:Ni/xfa+C
こんにちは。
>>433の続き投下します。
617愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/28(金) 21:09:08 ID:Ni/xfa+C

「あー遼君、違うって〜。組み合わせはPじゃなくてCを使うんだって〜」

 それは、何てことないいつもの放課後の放送室、

「あ、そうっすね」

 ………の、はずだった。

「わ〜、中原さんの字って結構綺麗なんですね〜」

 綾瀬さんが右隣で感心したような声をあげる。

「そ、そうかな?」

 一方左には、

「ほら遼君、集中して! もうテストまで時間ないでしょ!」

 ちょっぴり不機嫌な先輩が座っている。

「あ、はいすいません」

 なんだか今日はいつもと違ってやけに熱心だ。

「頑張って下さい!! 確立はちゃんと考えれば絶対できる分野ですから!!」

 それとは対照的に楽しそうに笑っている綾瀬さん。

「うん、ありがと」

 まさに『両手に華!!』って感じな状況なんだけど、僕はヘラヘラ笑っている訳にもい
かず、
「ほら!! 全く気抜くとすぐ計算ミスするんだから〜」
「通分は早めにやっておくといいですよ〜」
「…………………」
「…………………」

 何故だか睨み合う二人。
 全く持って辛い状況だった。綾瀬さんの笑顔に釣られて頬が緩むと、何故か先輩のほう
から殺気が………。

「あは、はははは…………」

 もはや、笑うしかなかった。
618愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/28(金) 21:11:07 ID:Ni/xfa+C



「寒いね………」
「そうっすね………」

 綾瀬さんは車(いつものベンツ、流石金持ち)で帰ったので帰り道、私は遼君と二人っきり
になることができた。

「部員、増えましたね」
「……そうだね」

 今の私の返事はきっと、最高に不機嫌だったに違いない。
 全く放送部に入ってくるんなんて……、まあ遼君に近づくという目的においてはかなり
効果的な手段だとは思う。

「これで映像とか、ラジオドラマとかもできるかもしんないっすね」
「……うん」

 遼君が少し嬉しそうなのも、また気に食わない。まあ彼が喜んでいるのは、単純に活動
の幅が広がるということからのみだろう。
 でも、

「遼君」
「はい?」

 でも、もしそれ以外の理由で喜んでいるんだとしたら、

「………寒いね」

 そんなことを考えるだけで胸が不安で一杯になってしまう。

「え、ええ……」

 微妙な沈黙が流れて、それから遼君が口を開いた。

「雪でも降らないっすかね〜。ね、先輩?」

 遼君は私に気を遣って明るく振舞ってくれているのだろう、そんな遼君の優しさが胸に
染みてきた。

「そうだね〜。何か雪って降ってくるだけでワクワクするよね〜」

 そうだ、今は、少なくとも今だけは遼君も私のことを考えてくれている。
 二人っきりでいることが出来る時間なのだから、目一杯楽しもう。
619愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/28(金) 21:12:11 ID:Ni/xfa+C
 
 さっきの時間があった分、今日のこの時間は格別だった。
 他愛のない話をしながら遼君と歩く。
 ああ、やっぱり私は遼君のことが好きなんだ。そう思うのと同時に、暗い気持ちも一緒
にやってくる。
 
 この笑顔を、彼を独り占めしたい。他の女の子なんかには絶対渡したくない。
 私だけを見て欲しい。私だけに笑って欲しい。私だけ、私だけを……。

「………もう」

 ここまで考えて止めた。頭を振ってその考えを振り払う。
 自分は全く持って嫌な女だ。何て汚くて、自分勝手な感情なんだろう。

「どうかしましたか?」

 遼君が心配して声をかけてきてくれた。

「ううん、何でもないよ」

 心配かけないように、笑って言った。うん、遼君は優しい。

 そんな優しい彼に相応しくなれるように、私はいい女の子にならなきゃいけない。
 息を深く吸って、吸った分全部を白く吐き出した。ああ、この醜い気持ちも全部白い息
と一緒に消えていってくれればいいのに。そんなことを考えて、ちょっと都合が良すぎる
かなと思って、一人で苦笑いした。

 あたりはすっかり暗くなってしまっていて、頭上には星がキラキラ光っている。
 遼君は白い息を吐きながらそんな空を見上げていた。私もそれに続いて夜空に目を向ける。二人の息が白く空に昇って、混ざり合って、そして消えていった。

「星、綺麗だね」
「そうっすね〜」

 そう答える遼君の横顔は楽しそうで、だけど何だか少し哀しそうだった。
 遼君はたまにこんな顔をする。どうしてだろう?

「星とか詳しいの?」
「えっ? 何でっすか?」
「何かそういう風にみえたから」
620愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/28(金) 21:13:44 ID:Ni/xfa+C

 私がそう言うと遼君は笑いながら
「別に詳しいなんてもんじゃないっすよ」

 そう言ってから少し間を置いて、
「ただ……ぼんやりと眺めるのが、何となく好きってだけです」
「そうなんだ」

 そう言ってまた星空を見上げる遼君に私も続く。分かる星座は……オリオン座くらいだった。

「あはははっ」
「どうしたんすか、いきなり?」
「遼君、口ポカーンって半開きになってたよ?」

 その姿があまりにも無防備で、可愛くって、私は声を出して笑った。
「………人の癖っていうのは、やっぱり移るもんなんすかね」
「えっ?」
「いや、何でもないっすよ」

 恥っずかしいな〜と、遼君が誤魔化すように笑う。その前に見えた一瞬、彼の顔は今ま
で見た中で一番寂しそうだった。

「…………………」

 理由が、とても気になった。だけど私は何も聞かなかった。聞いたところできっと誤魔
化されてしまうだろうし、それにしつこい女は嫌われてしまうだろう。
 というか、

「…………………」

 聞けなかった、のだ。やっぱり私はとんでもなく臆病だ。
621愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/28(金) 21:14:38 ID:Ni/xfa+C

「寒いっすね……」
「そうだね……」

 北風が私たちの間を吹きぬける。きっとくっついて腕を組んだりしながら歩けたら寒く
なんかないんだろうなあ、ってそう思って、そんな光景を想像した。

 ―――うん、いい。

「ねえ遼君」
「何すか?」

 でもやっぱりそんなこと言えなかった。

「ううん、何でもないよ」

 首を傾げる遼君。そんな彼に気付かれないように、私は静かにため息をついた。

「何か今日、二人とも『何でもない』ばっかっすね」

 笑いながら言う遼君。

「あはは、そうだね」

 それにつられて私も笑う。

 そんな、帰り道。


622愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg :2007/09/28(金) 21:18:01 ID:Ni/xfa+C
以上で今回分終了です。
夏も終わって涼しくなってきましたね。だんだんとこの作品の季節に近づいて
ます。

そんな訳で次回もよろしくお願いします。
623私たちの愛しいお兄様:2007/09/28(金) 21:42:48 ID:uictfe9P
再び投下します
624私たちの愛しいお兄様:2007/09/28(金) 21:58:20 ID:uictfe9P
〜side晴香〜
あの双子姉妹の姉、加奈にあの泥棒猫を監視するよう目で合図された。もちろん
言われなくてもわかってる。私は小さいときから彼の事が好き。そして、非常に
嫉妬深い事も自覚している。彼が他の女としゃべっているのを見た時、それが、
たとえどんなに些細なこと―廊下でぶつかって謝ったとか―でも、私の心の中は
荒れ狂った。きっと、それはあの姉妹もそう。だから小さいときから―彼女達が
まだ私や彼といっしょに小学生に通ってたときから(その後、あの姉妹は両親と
一緒に事故に遭い、両親が彼女たちを庇って死んだショックで本格的に体を弱く
した)共同で泥棒猫を潰して回った。避難訓練の途中で階段で相手をこっそりと
突き落としたり―あれだけ人が密集しているとばれない。もしばれても偶然脚を
滑らせて間違って突き落としてしまったという言い訳も考えておいた。ちなみに
ばれなかった―り、
625私たちの愛しいお兄様:2007/09/28(金) 22:10:03 ID:uictfe9P
家に遊びに来たメス犬に結構強力な便秘薬を入れたジュースを出したり、まあ、
けっこうえげつない事もした。だけど、それだけ私と姉妹の嫉妬心は強かった。
そして、あの姉妹の片割れ、真奈が実は私にもその嫉妬心と殺意を向けていて、
しかし利用価値があるから私に攻撃をしてこないように、私も彼女たち姉妹にも
凄まじく強い嫉妬心を抱いている。でも、真奈が私に『まだ』攻撃をしてこない
のと同じで『まだ』利用価値があるから真奈を『まだ』攻撃しないつもりだし、
加奈の方は彼だけでなく私にも強い愛情を抱いてくれるから私にも攻撃の意思は
無いし、
626私たちの愛しいお兄様:2007/09/28(金) 22:12:04 ID:uictfe9P
↑ちょっと修正。
『加奈の方は〜無いし、』→『(加奈の方は〜無い)』に表現を変えます。
627私たちの愛しいお兄様:2007/09/28(金) 22:29:10 ID:uictfe9P
今は『まだ』表向きは真奈にも協力する振りをしているが、もし機会があれば
―今日監視することになったあの女と同じように―事いつか故に見せかけて、
できれば殺すか、長期入院が必要になるように―もちろん、私が原因だという
証拠は残さないように細心の注意をするが―してやるつもりだ。ふ、ふふふふ
「ん、どうした晴香?何かいい事でもあったのか?」
「え、あ・・その、思い出し笑い。この前ちょっと面白いテレビやってたから」
「そっか。あ、この信号青の時間が短いからとっとと渡るぞ」
「う、うん」
いけないいけない。殺しの喜悦が表情に出てたみたい。気をつけなきゃ。それに
しても、今渡るとき急ごう、と言って私の手を握って走り出したとき、ちょっと
ドキッとしちゃった・・・ああ・・・(´Д`*)ハァハァ
628私たちの愛しいお兄様:2007/09/28(金) 22:40:50 ID:uictfe9P
下手な文章をここまで読んでくれてありがとうございました。
これ以上書くとダラダラ続きそうだし
切の良い今ので完結にしようか、ちょっと迷っているんですが、どうしましょう?
他の方の作品を参考にするため、SSまとめのタイトル全部読んで試行錯誤するので投下が
更に遅くても喜んで読んでくださるという方が多くいらっしゃるようでしたら
これからも頑張って書きますが(もちろん期待に応えれるように殺害シーンや濡れ場もしっかり書くつもりです)
629名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 22:56:54 ID:hbe1S5sm
君は面白いな
630名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 23:22:06 ID:eA8qJZGC
そういう誘い受けはやめて自分で決めたらどうよ
631名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 23:22:29 ID:Io+wJoSN
>>628
悪いことは言わないからこれでやめとけ。そんでもってこのスレ半年ROMれ、な?
632名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 23:34:21 ID:P1gutb4k
>>628
釣りじゃなくてマジで書いてるならもうやめたほうがいいとおもう。
633私たちの愛しいお兄様:2007/09/28(金) 23:41:41 ID:uictfe9P
分かりました(・ω・`)
634名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 00:15:56 ID:60juEvBm
お疲れ!なかなか面白かったよ
635名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 00:26:37 ID:zbGIB7tL
まあ、一度出直したほうがいいなww
636名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 00:32:18 ID:2kMnFMGc
もっとスレの使い方というのを勉強してから来るといい
あと、技量もかな
637名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 00:35:15 ID:6dOTXL1M
優しいフルボッコにワラタw
638名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 00:40:39 ID:RvTqKwyZ
また、荒らしか
639名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 01:03:52 ID:PZj3zIlL
お前らの優しさに泣いた
640名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 01:43:57 ID:f9DcUwGL
前の方の投下から時間空けないとGJしづらくて仕方ない
>>622
GJ!
青春のかほりが致します
きゅんきゅんです
修羅場が楽しみwwww
641名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 03:36:12 ID:T3Q+nrlV
唐突な質問。
このスレでいうところの修羅場や三角関係って、スクイズみたいに刃傷沙汰までいっちゃうのが普通?
それ系の方が需要あるのかな?
642名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 03:47:52 ID:cMVO+HKs
>>641
>浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
>深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
>みたいなハードな修羅場まで、
>醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSSを扱うスレです。

修羅場があるならホイホイ食い付いてしまうのがここの住人なんだぜ?
重度の修羅場でなくとも軽いコメディ調な修羅場でも需要はかなりある
643名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 10:44:54 ID:mBLpATrr
俺個人では今現在ライトな方が需要ありまくり
ヘビーも美味しいけどさ


例えるならこってり豚骨ラーメンは上手いけど、ソレばっかり食べてるとたまにあっさり塩ラーメンが食べたくなる感じ
644名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 11:02:53 ID:Rbu45QZF
俺はラーメンなら何でもいいwww
645名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 14:13:14 ID:sfvKi54P
キモウト特製ラーメン

さて、スープに使ったのは何の骨でしょう?
646名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 14:21:31 ID:jLU/u2M4
姉の背骨
泥棒猫の皮
647名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 15:20:05 ID:zbGIB7tL
それじゃあ、愛しのおにいちゃんに泥棒どもの成分混じちゃって駄目になるだろ!!!!!!!!!!!!!
648名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 15:21:23 ID:h0f6z990
キモウトがライバルの身体は使わんだろ
649名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 15:21:29 ID:AU9KThAc
妹的には食して征服したいのだろう
650名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 15:36:31 ID:w/tHc1Nd
武士の情け&証拠隠滅だろ
651名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 15:43:47 ID:jLU/u2M4
昔、かちかち山で
狸がおばあさんを 「ばば汁」 にしておじいさんに食べさせる
というお話があるのだが
652私たちの愛しいお兄様:2007/09/29(土) 17:04:34 ID:8dCIAPc8
あれはキモウトじゃねえだろ
653名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 18:04:24 ID:PRa+XLSt
キモウトラーメン=兄に食べさせる料理と言う固定観念は間違ってると思う。

逆に考えるんだ。
兄が入ったお風呂の残り湯を出汁に使った、"キモウトが食べるラーメン"もまた"キモウトラーメン"なんだ。
きっと麺には兄の抜け毛とかが練りこんであるに違いない。
他にも叉焼はライバルである幼馴染の肉を使っていて、食べるときに「あたしお肉ダメなの☆」と言って捨てるんだ。
654名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 18:12:34 ID:mBLpATrr
ラーメンからココまで話が泥沼化するのは修羅場スレだけwwww
655名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 18:45:45 ID:CyO2bipY
泥棒猫の肉入りラーメンを口に入れて、不味そうに吐き出すんですね。
656名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 19:10:41 ID:YvR2F/SQ
>>652
自分の名前欄よく見て書き込んだほうがいいぞw
657名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 19:18:48 ID:AU9KThAc
>>656
ばかだな、そっとしといてやれ…
658名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 19:35:00 ID:f9DcUwGL
あなたの肉は私が食べてあげる。
でも飲み込んであげないわ。
口に含んでからまずそうに吐き捨てるの。

はいはいねーちんねーちん。
659名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 19:35:56 ID:jLU/u2M4
キモウトラーメンVSキモアネラーメン

いいや

キモウトラーメンVS木久蔵ラーメン

まさに究極と至高の対決に相応しいメニューだ
660名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 21:02:00 ID:79KgbmGv
この流れから察するに…
キモ姉妹スレに浮気してるやつは挙手したまえ
661名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 21:04:11 ID:0MyY+uOz
こことヤンデレとキモスレの掛け持ちだが
ほとんどの住人がそうだじゃないか…?
662名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 21:07:09 ID:PRa+XLSt
嫉妬・ヤンデレ・キモ姉妹・ほの純・依存 の掛け持ちな私。
ついでに新シャアのお留守番スレも見てる。
663名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 21:12:39 ID:NNdsViWW
>>662
あれ・・おれがいr・・・

ほの純はないわw
664かちかち山:2007/09/29(土) 21:16:36 ID:Q8tAot43
その年の収穫を終わらせた田舎の風景は、全体的にセピア色がかっている。
穂を刈り取られた田園には規則正しく株が整列し、土手周りの草木は枯れるか黄色く色あせている。
田園の中心にぽつりぽつりと点在する集落のほうでも、機械から発せられる風によって吹き付けられ、溝に溜まった籾殻がアスファルトを黄土色に彩っていた。
この時期には、家々の車庫は作業場に変わる。絶え間なく聞こえる乾燥機の音や、作業着を真っ黒に汚して農具を整備する父親の姿は、子供たちに漫画に登場する秘密工場を連想させた。
小さな集落の片隅にある、錆び色のトタン屋根の作業場の中には、若い男がただ一人、作業着を泥と油まみれにして乾燥機の計器をいじっている。
背の高い、しまった、見るからに頑強そうな体格で、いかにも昔ながらの田舎の大将とでもいうような男である。
665かちかち山:2007/09/29(土) 21:20:19 ID:Q8tAot43
作業場の外から呼ぶ声が聞こえた。
「あなた、今日はそのあたりで切り上げたら?もう晩ご飯出来てるわよ。今日のおかずはうさぎちゃんが頂いてきた秋茄子を使った、あなたの好きなカレーなんだから。」
若い男はなおもボタンに手を這わせ、汗を拭った目元でメーターを睨みつけながら妻の言葉に答えた。
「ああ。もうそろそろ終わる。今、すぐ戻るからな。終わったら風呂入るから、準備しといてくれ。」
それから、彼は工具や掃除道具をいつもの場所に戻し、作業場の外へ出てシャッターを下ろした。ついこの間取り替えたばかりの染み一つ無いクリーム色の新品だ。
作業着のあちこちを叩いてゴミを落としながら、我が家の玄関まで近づいたときに、隣の家の敷地から、突然、恐ろしい叫び声が上がった。
「たぬきか……。」
背筋がぞっとする戦慄、心臓を刺される痛さを感ずるような絶叫が、ごうごうと唸る乾燥機の音に紛れる。
ぱたぱたとスリッパを鳴らしながら男を迎えた女は、目をひそめて呟く。
「お隣のたぬきさん。この間も病院でやらかしたそうよ。家の人たちも大変ね……いい年頃の一人娘が、きちがいだなんて。」
やるせない顔つきで外を眺めていた男が、咎めるような目つきをして女に向き直った。
「おい……。」
「……ごめんなさい。あの人はあなたの幼馴染だったわね。」
妻の返答に満足したのか、男は再び外へ目線をやって、ため息を吐きながら胸ポケットから煙草を取り出し、無精ひげが目立つ口に咥えて火を付けた。
「たぬきのやつは昔は大人しい子だったのに、どうしてああなっちまったんだか……。」
一仕事終えた後の一服は、いつものように泥の味がした。
たぬきとは、男の幼馴染のあだ名である。男はこの少女と小さなころから共にこの田舎で暮らしてきた。
うさぎというあだ名の男の妹との三人一緒になって、今はもう廃校となった小学校へ通い、寂れた集落を声を上げて駆け回り、大人たちに内緒の遊びと称し、他愛の無い悪戯をして怒られたものだ。
男は十八になって上京したが、数年前に両親が不慮の事故で亡くなったことで、長男である彼は古い農家の跡を次ぐために村へ戻ることになる。
妻は都会にいた頃に知り合い、結婚を前提に付き合っていた女性で、男が田舎へ帰ることを期に、ちょうどいい頃合いだということで籍を入れた。
そうして懐かしき故郷に帰ってきたときに、男は気狂いとなった幼馴染みと再開したのだった。
666かちかち山:2007/09/29(土) 21:21:27 ID:Q8tAot43
ある日の昼間、男が仕事をひと段落させていつもするように作業場の外で一服していると、隣の塀の奥にいつもは見慣れない白い寝巻きの姿が見えた。
腰ほどの高さがあるコケの生えた煉瓦の向こうの、遠くを覗き込むようにひょこひょこと上下させている日に焼けてない真っ白な顔を確認すると、男は二カリと中年親父のような笑みを浮かべた。
「ようたぬき、今日は調子がいいのか?」
「……。」
透き通るような肌をした、整った顔立ちの女性は、男が気安そうに声をかけても、黙ったまま、寝ぼけたような半開きの目で男の姿を眺め続けていた。
男はそれを気にしたふうでもなく、言葉を続ける。
「ああ、俺か?ちょうど今あらかた終わって、一休みしてるんだわ。どうだ、お前も一緒に休憩するか?」
「……いいの?」
幼馴染の突然の誘いにたぬきは顔を俯かせて、上目遣いに、機嫌を伺うような仕草でぼそぼそと尋ねた。
男はたぬきの言葉を聞くと、彼女の耳に顔を近づけ、声を潜めて、悪戯っ子が内緒話をするようにつぶやく。
「大丈夫だって。五月蝿いヨメも買い物行ってて今居ねえから。……ちょっと待ってろ、家ん中から菓子でも取ってくる。」
「……。」
たぬきの返事も聞かず男は家へと走り去っていき、彼女はそれを不快に思うでもなく、心配そうな顔つきのまま佇んでいた。
667かちかち山:2007/09/29(土) 21:22:33 ID:Q8tAot43
「なあ、うさぎ。この間買ってきた菓子の場所しらねえか?」
「ちょ、ちょっと兄さん!作業着のまま部屋に入らないでっていつも言ってるじゃない!」
椅子に座ってパソコンと睨み合っていたうさぎが、男の姿を見て金切り声を上げる。仕事の最中だったのだろう、モニターには株式やなにやらの情報が表示されていた。
男は妹の咎めに悪びれる様子も見せずに、繰り返し宝の在処を尋ねる。
「細かいことは気にすんなって、ほら、この前お前が町行ったとき、なんとか屋とかいうところの菓子買ってきただろ?どこに仕舞ったかわかるか?」
「まったく……。」
うさぎはこめかみを押さえて兄の無神経さを嘆いた。彼女の兄は昔からこうだった。自分ひとりで勝手に納得して話を進める性格で、都会にいた頃は銀行に勤めていたとはとても思えない。
兄の無精ひげを生やした端正な顔立ちをじっと眺めていると、うさぎの顔面に血が集まり、ぽうっと赤くなり始めてくる。
だが、それがいい、と愛しい兄の姿から目をそらしつつ、うさぎは心の中でうわごとのように呟いた。
「あのクッキーは台所の棚の、上から二番目に入ってるわ……だけどどうしたの?いきなり来てお菓子が食べたいだなんて。」
「ああ、た……。」
たぬきのやつが、と男は続けようとして、止めた。常日頃からここの集落の住人は幼馴染のたぬきに対して、腫れ物に触れるような態度で接している。
心の病に蝕まれている年頃の女性は、地方の部落という、ある種の家族にも等しい結びつきにある人間たちにとっては厄介者でしかないのだ。
そしてそれは、目の前にいる男の妹にも当てはまる。竹馬の友ともいえるたぬきに対して薄情なことだ、とも思ったが、男は数年の都会生活で、人間とはそういうものだと納得できるくらいには割り切れていた。
竹馬の友という言葉自体、悪意が含まれているものだしな、と男は自分に言い聞かせる。
「いや、なに。ちょいと小腹が減っちまってな。」
「なら、私が何か作ろっか?」
「悪いって。仕事中のお前にそんな手間かけさせられねえよ。」
「そう……じゃあ、私は仕事に戻るから、何かあったらちゃんと言ってね、兄さん。
この前聞いたんだけれど、助次郎さんのところのお爺さん、機械に指を挟まれて大怪我したそうだから、兄さんも気をつけなきゃ駄目よ?」
はいはい、と手をひらひらさせながら男は言い、うさぎの部屋を出た。
668かちかち山:2007/09/29(土) 21:24:23 ID:Q8tAot43
たぬきと並んで塀の上に腰掛け、秋晴れの青空を見上げながら、男は独り言のように呟く。
「この辺りもガキの頃に比べると随分と変わっちまったな……」
「……。」
たぬきは答えないが、気にせず男は続ける。
「なあ、あそこの三次郎さん家、新築したんだってな、三年くらい前に……。」
「……。」
「昔よく行ったな、俺と、お前と、うさぎの三人で。俺が木に登ってよ、柿を落として、それをお前とうさぎが拾って、皆で食ったよな……。」
「……。」
「で、その後あそこん家の爺さんに、三人とも拳骨落とされたんだっけ……。」
「……。」
「あの柿の木も、古い家といっしょに切り倒されちまったみたいだな……。」
「……。」
「……うまいか?」
「……。」
たぬきは黙ったままこくりと頷いて、肯定を示す返事を返す。男にその仕草は見えなかったが、雰囲気で感じ取ったのか、たぬきのほうを向いて、手に持っていた菓子を差し出しながら言う。
「ほら、俺のぶんもやるよ。」
「……。」
「そろそろ仕事を再開しねえと、帰ってきたヨメにどやされちまう。」
男はほとんど手付かずのクッキーの包みをたぬきの手に握らせ、煙草をもみ消し、立ち上がってぱんぱんとズボンを叩いた。
彼が二三歩歩き出しても、たぬきは何も話さずに、顔を下げて手元の包みを眺めたままでいる。
県道を走るダンプカーと、乱暴に空気を吐き出す乾燥機の音だけが響いていた。
男は数メートルほど進んで立ち止まると、片手を上げて、幼馴染に声をかける。
「またな、たぬき。」
「……うん。」











669名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 21:25:21 ID:Q8tAot43
>>651を読んで電波を受信した。
多分続きます。
670名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 21:30:49 ID:jLU/u2M4
GJです
まさか、かちかち山でこれだけの作品を書くとは
嫉妬スレは凄いとこですねw
671名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 22:08:43 ID:hBVtOZLD
GJ!しかしなんてクオリティだ。
672私たちの愛しいお兄様:2007/09/29(土) 22:23:14 ID:8dCIAPc8
自分が書いてたSSのタイトル↑そのまま名前に流用続けていいですか?
673名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 22:30:27 ID:lNOF2nO8
いや、悪いことは言わないから辞めといた方がいい
投下する時以外は名無しの方がいいよ
674名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 22:32:46 ID:Bgbc8vrx
同意
そういう行為はあまり好かれないよ
675名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 22:34:50 ID:sTHtl2A/
YA☆ME☆TO☆KE
676七誌:2007/09/29(土) 22:47:23 ID:8dCIAPc8
はい
677名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 23:04:55 ID:SYye2m3H
>>676
( ゜д゜)ポカーン
678名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 23:33:55 ID:sTHtl2A/
だめだこいつ……はやくなんとかしないと……
679名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 23:35:35 ID:Bgbc8vrx
もう何も突っ込むまい
680名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 23:42:53 ID:+5B3Kqrg
いや、コイツを『「兄を喜ばせようと色々試すけれど失敗しちゃって涙目な純真な妹」を演じるキモウト』と脳内変換すると萌えるぞ
681名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 23:45:55 ID:CDEw6LkL
まぁ素だろうし
可愛いもんだ。生温く見守るとしよう
682名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 23:46:31 ID:k7Bab4yz
突っ込んじゃうぞ〜べったりアクセル踏んで〜
683名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 00:39:53 ID:BdTl4Gz+
ちょっと軽めの嵐だと思えばよし
ほっとくのが一番
後々自分の違和感に気付くだろ、たぶん
684名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 00:49:41 ID:3ignprZr
違和感に気付いたあと恥ずかしさに悶えるがいいさ
685名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 01:01:15 ID:IzYAPxV4
omaerayasasiina
686名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 01:13:31 ID:g4uwcyiL
一つだけ言わせてくれ
どうして、キモウトはキモウトと呼ばれるんだ?
687名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 01:29:05 ID:Rho1PGVk
キらいきらいといつもは言ってるけれど、本当はお兄ちゃんが大好きな妹。
モう、お兄ちゃんへの想いを抑えられない。
ウそよ!本当はあの女と会ってたんでしょ!
トうとうお兄ちゃんが汚されてしまった。こんなに辛いなら、いっそのこと……




Nice boat……
688名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 01:37:20 ID:g4uwcyiL
かーなーしーみーのーむーこーうーがーわー
689名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 16:08:14 ID:FfniTEi1
>>686
深きものに似た顔でキモイから
690名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 21:35:26 ID:H2o9bP3u
かちかち山、馴染み深い童謡がどんな展開を魅せるのか
続きが気になるじゃないか…
691名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 22:58:34 ID:+qnQB8QD
月末は書き込みが少ないなあ
692名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 01:38:35 ID:AMfca0n7
ちぬれりゅうの番外編マダー?
俺のはくマダー?
693名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 02:00:12 ID:KzddYYdk
「職人さんは本当は私の事が嫌いなんでしょう?
  だから私がどんなに職人さんのSSのことを想っているか知っているくせにそんなこと言うんですよね!!
  どんなにSSを読みたいか知っているくせにあんな別のスレといっしょにいるところを
  見せ付けるんですよね!!
  私がSSを読もうとすると月末なんて便利な言葉ではぐらかしているんですよね!!
  SSを与えるだけ与えておいて、平気な顔して放り出すんですよね!!
  そんなことされたら私が絶対に生きていけないのを知っていて、
  あえて置いて行こうとするんですよね!?」
694名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 03:04:13 ID:hWlKtjZe
「みっともないわね。
 あのねぇ、職人は貴女のモノじゃないのよ。
 ちょっと投下されたからって、あまり図に乗らないでくれない?
 ……はっきり言わないとわからないのね。
 貴女みたいな職人に縋り付いて足を引っ張るだけの輩は迷惑なのよ。
 私なら職人を支えてあげられる。
 少しくらい他のスレの所に行ったって職人には何も言わないわ。
 だって、職人の帰る場所は私のところだから……でも泥棒猫の始末はきちんとしなくちゃね。
 さぁ、神へのお祈りは済ませたかしら?」

なんか違うな。
途中までのイメージは保管庫で読んだ神作品の幼なじみ。
やっぱ職人さんってすげぇ。
695名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 03:18:10 ID:58w9n9OC
>>694
沃野のことか
696名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 03:33:11 ID:BotparuD
かちかち山で思い出したが、たぬきが出てくる作品前に無かったっけ?
697名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 06:29:23 ID:4SlMaEAm
おやまとめが更新されているよ
管理人さん乙であります
698名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 11:47:29 ID:flzpxkzd
>>696たぬきなべじゃなかった?
699名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 20:01:56 ID:BotparuD
>>698
ヽ(`Д´)/それだ!
と思ってまとめサイト言って読んでみたけど、別にホンモノのたぬきが出てくる話じゃなかった
あれ〜おっかしいなぁ…まぁ、それだけの話なんですが
700名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 20:53:41 ID:790AqMYG
狐とか猫が化けてるヤツがあるから、それと混同しているんじゃないか?
701名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 21:13:15 ID:OYl5n6b0
そういや、猫に嫉妬して首を絞めて殺したヒロインもいたな
何の作品だったけ? その後、猫は復讐のために転生するわけだがw
702名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 21:19:12 ID:hWlKtjZe
愛猫を待つ俺
修羅場前で寸止めですかそうですか

一、二年くらい間が空いても投下して欲しいのは俺だけか?
保管庫の未完作品の続きが読みたくて仕方ないんだが
703名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 21:29:09 ID:urZihucS
>>701
『煌めく空、想いの果て』でタイトルあってる?
704名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 21:30:40 ID:ZEo84egX
>>702
こればっかりは黙して待つしかあるめぇ
705名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 21:40:13 ID:mk3bwiAs
>>701
トライデント氏の「煌く空、想いの果て」でしょう。
そういや定期的に「あの作品なんていうやつだっけ?」って話題になるけど、
俺が名無しで書いた作品は一度も呼ばれたことがない。鬱。
706名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 21:47:44 ID:pyhszRRV
逆に考えるんだ。
とても印象に残っているので皆が忘れないと考えるんだ
707名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 21:50:09 ID:/n7HQWz4
>>699
Pet☆Hot☆High-School!じゃね?
708蒼天の夢:2007/10/01(月) 22:07:32 ID:qBBuz7GZ
話の途中、大変申し訳ないです。
投下させていただきます。
709蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/01(月) 22:09:15 ID:qBBuz7GZ
 蒼い秋空の下、レースがはじまった。
 グレイ・クリフではコースの長さから最初に三週した者が勝者となる。
 スタート直後のストレートで順位が変動することは少ない。
 どのスキッダーもコーナーが勝負どころだと分かっている。
 そして最初のコーナーに差し掛かる。
 まるで事前に打ち合わせたようにワイバーンたちは皆翼を僅かに折り、胴体を傾かせ急降下してゆく。
 山の絶壁がどんどん迫る。頬に当たる風が強くなる。
 地上の木々が大きくなり死という概念が現実味を帯びてくる。
 低すぎない高度で手綱を引き絞り、ワイバーンに高度を上げろと指示をだす。
「……っ」
 見上げると、四位にいたワイバーンが俺の正面上を飛んでいた。
 早くも四位に脱落。
 なぜだ。今のコーナーでミスはなかったはず。
 直線になり、どのワイバーンも高度を稼ごうと大きく羽ばたく。
 大丈夫。四位との開きは微々たるもの。次のコーナーで追い抜ける。
 一位も二位もまだ近い。
 すぐに次の曲がり角。
 最初のコーナーと同じように山腹に沿うように降下する。今度はスピードをつけるため、少し角度を急にする。
 コーナーの出口付近で三位のワイバーンを抜く。
 これで三位復帰。と思ったら後ろからきた別のワイバーンに直線で高度を上げている最中に抜かれる。結果、変わらず四位。
 悔しくも今のところ、いつも通りの展開だ。何も失敗をしていないのに抜かれる。
 抜き返したと思ったら他のワイバーンに順位を奪われている。コーナーを抜けるたびに順位が少しずつ低くなっていく。
 気づくとアザラスの青いワイバーンにまで抜かれ、七位。
 吹き付ける風の中でも自分の歯軋りが聞こえてきそうだ。
 しかし、色鮮やかなワイバーンの群れの向こうに『牙』が見えてきた。
 ほぼ直角に近い傾斜。山というよりは絶壁、岩の城壁にちかい。
 生える木々は少なく灰色の岩肌が続いている。
 その名の通り、獣の牙のようである。
 焦りが消え、自信が溢れてくる。静かな高揚感で思考が晴れてくる。
 大丈夫だ。相棒の調子も良い。やれる。
 ワイバーンが羽ばたき、身体が上下するたびに『牙』が近づいてくる。
 既に横手にはグレイ・クリフ山と『牙』を繋ぐ山稜が続いている。
710蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/01(月) 22:10:42 ID:qBBuz7GZ
 山が途切れる時。そこが勝負だ。
 先頭のワイバーンが急旋回を切る。
 後続のワイバーンたちも胴体を真横に倒しながら『牙』を回ろうとする。
 俺はアズールにそのまま速度を維持させる。
 旋回するため減速していたアザラスを一時的に抜く。
 この時、視界の端にあった灰色の岩肌が地平線ととって代る。
「今だ!」
 俺は握っていた手綱の片方だけ斜め下に引っ張り、両足で相棒の胴体にしがみつく。
 アズールの身体が真横に傾く。ここまでは普通だ。
 だが、俺は手綱を引っ張り続ける。
 相棒は身体全体を捻り、天地がひっくり返る。
 背面で飛んでいる状態となった瞬間、今度は手綱を両方、力の限り手元に引く。
 アズールの鋭い顎が大地に向けられる。
 風の音が変わる。
 唸りから咆哮へ。頬に当たる山風はアズールごと殴り飛ばそうとする暴風へ。
 地上の緑がかつてない勢いで迫り、胃が何者かに握られる感覚を味わう。
 歯を食いしばり、手綱を引き続ける。
 激突するかと思われた地面が緩やかに遠ざかる。
 水平飛行に戻り、顔を上げれば目の前にはワイバーンが二頭のみ。
 口元が緩む。一気に三位だ。
 先頭の二頭は旋回時に失った速度を必死に回復している。
 対してこちらは垂直落下で得た速度がまだ残っている。
 俺は『牙』のあとに続く直線で難なく二位のスキッダーと一位のティオーナをごぼう抜きにする。
 ついに一位。もしかしたら今回は勝てるという希望が生まれる。
 幼い頃観た憧れのスキッダーの活躍が脳裏に浮かぶ。
 はじめて忍び込んだ貴族の観客席。
 そこから見上げた先には『牙』で一位を華麗に奪うスキッダーがいた。
 その時、披露した技が今の『スプリット』である。
 『牙』の周りを旋回するのではなく、背面飛行から輪を描くように急降下する。
 一つ間違えば地面に墜落。角度を誤れば『牙』の山腹に激突。自殺行為に等しい機動だ。
 しかし、成功すれば最下位だろうとトップに立てる。
 俺は『スプリット』を見た瞬間からスキッダーになりたいと決心した。
 そして『スプリット』は素人の俺にスポンサーを与え、夢を与えた。
 今回は勝利をももたらしてくれるかもしれない。
 前には誰もいない蒼い天空、灰色の山、緑の大地。スキッダーなら誰もが欲する光景だ。
711蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/01(月) 22:11:53 ID:qBBuz7GZ
 今度こそは勝てる。俺は次のコーナーが迫るのを見ながらそう信じていた。
 だが夢が覚めるように、あるいは美酒の酔いが薄れるように勝利の幻想は、そこで終わった。
 後はいつも通りだった。
 一周目で奪った一位の座は曲がり角の度、遠くなっていった。
 毎回『牙』で奪い返すも、後に続くコーナーで失う。
 本当にいつも通りの展開だった。

 終わってみれば散々な結果だった。
 11位中6位。先週と変わらず。
 一位はなんとティオーナだった。
 新人、しかもグレイ・クリフ山での出場ははじめてだというのにいきなりの優勝。
 酒場での話題はしばらく彼女が独占しそうである。
 だが俺はその逆の意味でスポンサーたちの話題を独占しそうだ。
 これで何度目の敗北だろう。いよいよもって深刻な状況である。
 近日中にスポンサーから解雇宣言されてもおかしくはない。
 そんな俺でもミリアちゃんは竜場に戻るなり笑顔で出迎えてくれた。
 俺が悔しさの余り兜を地面に叩きつけ、喚き散らさなかったのはひとえに彼女のおかげだろう。
 彼女は六位だった俺を優勝したかのように扱ってくれた。
 気を遣われているようで一瞬苛立ったが、すぐに落ち着いた。
 何が気に食わなくてイラついている?しっかりしろ、と己に言い聞かせる。
 イラついているのは自分のせいであって、彼女は何も悪いことはしていない。
 いじけていた俺を心配してか、ミリアちゃんに片付けも自分一人でやるから休んでいてくれと言われた。
 これは流石に断った。
 負けた上に女の子に片付けを全て押しつけたとあっては男として失格だ。
「じゃあ水汲み用のバケツを倉庫から取ってきてくれます?」
「ああ、分かった」
 それでも簡単な仕事を頼んでくれるミリアちゃん。
 彼女の厚意に応えるためにも今は残った仕事を終わらせるのが先だ。
 アズールの世話を彼女に任せ、俺は急いでバケツを取りにいった。
 
 竜場から洞窟内の通路を右に曲がったところに倉庫がある。
 主にワイバーンを世話するための器具が保管してある場所だ。
 俺は整理された室内から難無くバケツを見つけ、部屋を後にした。
712蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/01(月) 22:12:37 ID:qBBuz7GZ
 竜場に戻ろうと通路を歩いていると今日のレースの勝者、ティオーナに出くわした。
 既に着替え終わっているようだ。
 腰に護身用の短剣を帯び、男物の革のズボンと白いシャツという出で立ちだ。
 挨拶しようかとも考えたが先日のアザラスの件もある。
 特に俺は平民だ。プライドの高い彼女からすれば媚を売っているように思われるかもしれない。
 簡単な礼だけして通ろうとした時。
「おい、おまえ」
 予想に反して声をかけられた。
「ん?なんだ――」
 ティオーナの鋭い眼がさらに細められる。
「――ですか?」
「ふん、まあいい……聞きたいことがある」
 心の中で密かにホッとする。
 ついアザラスたちと話す時と同じように対応するところだった。
 慣れとは本当に恐ろしい。
「おまえが『牙』でみせた技。何処で覚えた?」
 珍しい質問だ。
 スキッダーが知っている特徴的な空中機動や技はコーチや師範から習う。あるいは俺のようにライバルたちの飛び方を研究して盗む。
 ファンからの質問ならともかく、答えを知っていそうなスキッダーからというのは意外である。
「どうして気になるのですか?」
「私の質問に答えよ」
 緑色の瞳は貫くように冷たく俺を捉えている。
「……あれは昔憧れていたスキッダーの技を再現してみたものです」
「なんだと?」
「簡単に言うと見様見真似ですよ」
 もっとも、レースで使えるようになったのは何度も死に掛けながら練習した結果だ。
「その技は元々どのスキッダーのものだ?」
「疾風のドノテと名乗っていました。もちろん偽名ですが。それ以上は知りません」
 『スプリット』は凄い技かもしれないが、編み出したスキッダー本人は平凡に毛が生えた程度だった。
 レースにはたまに勝っていたが王都リーグに推薦されるほどでもなかった。
 如何なる時も兜をかぶり、明らかに嘘くさい偽名を名乗っていた。
 今考えると俺も随分と変わったスキッダーに憧れていたものだ。
713蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/01(月) 22:13:18 ID:qBBuz7GZ
「嘘を申すな」
 突然ティオーナの顔から冷淡さが消え、怒気が露になる。
「はい?」
「私を小娘だと思って馬鹿にしているのか!」
「い、いや本当ですって。それに嘘をつく理由がありません」
 ある程度何か気に食わないことを言って怒鳴られるのは覚悟していた。
 しかし、何でよりにもよって他愛のない会話でホラ吹き呼ばわりされるのか。
 大体なぜ怒る必要がある?
「ならば正直に言え。そのドノテというのは何者で、本当はどうやってあの技を習得したのだ?」
「ですから何度も言っているように偽名以外のことは知りませんし、技の方はただの真似事ですって!」
「まだ言うか。ならば」
 鉄の擦れる音と共に彼女は短剣を抜く。
「ちょ、ちょっと」
 喉元に伝わる冷たい感触。
「話す気になったか?」
「本当ですよ!それに何で俺の技なんかに興味があるんですか?」
「おまえには関係ない」
 まるで敵兵でも尋問するかのような口の利き方。
 つまり彼女は『スプリット』の秘密が知りたいのだろうか。だとしたら随分と捻じ曲がった根性をしている。
 自分の観察眼で他人の技を盗むならともかく、脅迫紛いの行為をして手に入れるのは卑怯だ。
 俺は我慢の限界にきていた。負け続けで頭が茹で上がっていたのもある。
「……いい加減にして下さいよ」
 自分が何を言っているのか考えるより先に口が動いていた。
「なに?」
「いきなり剣で脅して。こんなことをして恥ずかしいとは思わないんですか?」
「平民が――」
「平民だろうが貴族だろうが関係ありません。ここまでこき下ろされたら誰だって怒ります!」
 ここは大人しくしているのが賢いやり方なのだろうが、俺にもプライドというものがある。
「それとも何ですか?貴族は平民に何をしても良いと?名誉は平民相手には適応しないと?」
714蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/01(月) 22:13:52 ID:qBBuz7GZ
「黙れ!」
 彼女は短剣を俺の喉元に押し付ける。皮膚が僅かに裂け、血が一筋だけ流れ落ちる。
「ほう?ここで俺を斬って捨てますか?どうぞ。やってみて下さい」
 スキッダーは死と隣合わせの職業だ。
 喉元に刃物など、急降下する時の恐怖に比べればどうということはない。
「くっ」
 貴族といえども年頃の娘だ。自らの手で人を傷つけるのには抵抗があるのだろう。
 短剣に込められた力が少しだけ抜ける。
「とにかく仕事がまだ残っておりますので之にて失礼します」
 俺は短剣を手で払い、歩き出した。
「ま、ま、待て!話はまだ終わっていない」
 彼女は俺の服の袖を掴みながら引きとめようとする。
「あの技をモノにしたいのなら御自分で観察してください。俺もそうして己が技としました。では」
 嫌みたっぷりにエリシアさん直伝の宮廷式のお辞儀をする。
 ティオーナは平民が宮廷式のお辞儀を知っているのがよほど驚きなのか、呆気にとられていた。
 そんな彼女を背に、俺は洋々と竜場へ戻っていった。
715蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA :2007/10/01(月) 22:15:46 ID:qBBuz7GZ
投下終了です。
毎回親切なコメントを下さる皆様、ありがとうございます。
お目汚し失礼致しました。
716名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 22:18:55 ID:J018CxeC
GJ!
これからどうなるか、楽しみで仕方が無い。
717名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 23:22:02 ID:Mf0MeVl2
蒼天の夢は嫉妬要素どころかラブコメ要素もまだ出てきてないのに毎回面白くて楽しみですよ
718名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 23:23:11 ID:uH2KaY8n
GJ

順調に種がまかれているようで、私、wktkが止まりませんや
719名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 23:47:01 ID:cBzP7/3j
なかなかフラグが立ってきたなぁ
元の文章が上手いからこれからの嫉妬や修羅場にwktk
GJ!
720名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 00:08:58 ID:nFG4d/3U
GJ
これは続く展開に期待せざるを得ない
721名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 01:23:07 ID:ts2xwM8l
とりあえずフラグが立ってるのは3人かな?
続きも期待してますぜ!!
722名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 01:35:56 ID:ZJCk0y6m
ひゃっほう! ひゃっほう! ひゃっほう!
フラグ!フラグ!フラァーグ!!
新たなる嫉妬フラグが立ったぁ!
頼む! 早くイベントを進めてくれ!
wktkが! wktkが
 T O M A R A N A I !
723名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 09:21:11 ID:k5jjGFwB
ところでコーナーで負けるのは技で負けてるのか
ワイバーンの固体性能なのかが気になる。
ここら辺も明かされると期待しております。
724名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 09:42:44 ID:R78dC90e
ミリアはジースが勝たない方が嬉しいんだろうなー。
健気ではあるけど夢を追う男としては結構ツライものがあるかもしんない。

個人的にはエルフに超期待。
ただ嫉妬スレには『付き合いが古いヒロインはぽっと出のヒロインに獲物を奪われやすい』という法則があるんだよね・・・。
725名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 11:37:14 ID:7zAXy+yv
ジャニーズの井ノ原スレにヤンデレ多すぎてワロタ
726名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 11:44:47 ID:7r2yXbju
GJ!!
ところでジースのワイバーンの描写が断然少ないのは今乗ってるワイバーンは一生を通じての本当の相棒じゃないからだろうか?
相棒という言葉に、嫉妬するワイバーンとか思い浮かべたのはここだけの秘密
いやーしかし自分の道を貫く格好良い主人公だな、『牙』での彼は特に格好良い
超難度っぽい『スプリット』は盗めて、普通のコーナーでの技を盗むのには苦労してるのはジースに特に『スプリット』と『牙』への適正がってことだろうか?
あと疾風のドノテって何かありそうな人物だけど、過去の人物だからな、もし登場するとしたらジースと『スプリット』絡みで何かが無いと無理か
ところで既に一人ハードな領域に踏み込んでるエルフの独走っぷりにはwktkなんだぜ
727名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 17:52:21 ID:j5wInQXj
いいね、いいねー
レースの描写もしっかりしてて読み応えがあるよ
今のところミリアが好き
728 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 21:50:53 ID:Xx/2BPiJ
投下します
729或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 21:51:51 ID:Xx/2BPiJ

<一>

 右庵は、ある女性と差し向かいで座っていた。
 正面に見える床の間には、見事な水墨画の掛け軸がある。
 脇棚には、花も活けられており、その花瓶についても、右庵には値段の検討もつかない。
 その見事さは、木下の家にある床の間と文字通りの意味で格が違うものだった。

「そっか。紗恵なら丁度いいかと思ったんだけどね」
「申し訳ありません」

 砕けた言葉で接する女とは対照的に、右庵はひどく畏まった様子で謝罪の言葉を繰り返していた。

「謝らなくていいってば。
 悪いのはあの陰険女でしょ」
「…こちらから頼んでおいて、誠に申し訳ありませんでした」

 棘のある言葉に、右庵は座ったまま、今度は頭までも下げる。
 が、その姿勢に当惑したのは、相手の女だった。
 一瞬目を見開いた後、くすくすと口を押さえて女は笑った。

「いいって私は言ったわよ、後一郎」
「…は」
「だから堅くなんなさんなって。あんたと私の仲でしょうが。
 ほら、茶でも飲みなさいな。美味しいのよ、この羊羹」

 勧められた羊羹は、確かに美味そうであった。
 そも、甘いものなど滅多に食べない右庵にも、綺麗に切り分けられ黒い菓子は美味そうに見える。

 右庵の対面に座るのは、彼より頭三つ分ほど背が低い女性だった。
 背丈とその童顔も相まって少女にしか見えないが、彼女はれっきとした大人なのである。
 右庵が嘘を言われ続けたのでなければ、右庵よりも年上のはずである。
 後ろで馬の尾のように垂らした髪も、よく動く瞳も、眩しく輝く白い歯も、どう見ても少女にしか見えないが、紗恵よりも、年上なのである。

 確か、今年でいくつになったのだったか、と右庵は考えるが、思い出せなかった。
 どうにか思い出そうとしたが、その前に思考は言葉で断ち切られた。

「後一郎」
「…は?」
「今何考えてた」
「…いえ、特に何も」
「嘘つくな」

 ふわり、と甘い匂いと頼りなさげな感触が右庵を包む。
 途端、右庵の体は宙を舞った。
730或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 21:53:58 ID:Xx/2BPiJ

<二>

 一件の後、右庵が通された客間には、外で待っていると言っていたはずの千里耳が騎士の格好をして座っていた。

 掛け声が、庭の向こうにある道場から聞こえてくる。
 かなりの声量ではあったが、右庵には気にならなかった。
 とかく、背と臓腑が痛むのである。

「首を捻りでもしたか?」
「…いえ。
 少しばかり背が痛むだけです」
「全く、お前は何かを学ぶということをしないのか」

 そう言った千里耳に右庵は言葉もなかった。

 部屋を訪れた侍女も、笑いをこらえようともせず茶を置き、出て行った。
 あれが何に対しての笑いなのか気づかぬほど自分は愚図ではないと、右庵は考えたかった。

 実のところ、右庵の考えはある一面では当たっている一方、別の意味では的外れであったのだが、彼自身は知る由も無い。 

 一日の勤めが終わった朝、右庵は小久我家の屋敷にいた。
 小久我家は騎士には珍しく、商いを行っている家である。

 騎士というものは一部の例外を除き、商売を禁じられている。
 その例外の一つが、騎士を相手取った商売を行うことであった。

 小久我家は、柔術道場と剣術道場を経営している。
 また、次男は学問、というほどではないが、読み書きや簡単な算術を子供に教えていた。
 これらは全て、騎士の子弟を対象としたものであり、評判も悪くは無い。
 かといって、別段いいというわけでもないが、客がいなくならない、ということはそこそこ優秀ではあるのだろう。

 右庵もまた、幼い頃は剣術、柔術を学ぶためにこの屋敷の門を幾度となくくぐったものである。

「大方、年のことでも言ったのだろう」
「別に口にしたわけではありません」
「お前の言葉は顔に出ているのだ」
「…」
731或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 21:54:30 ID:Xx/2BPiJ

 右庵が黙りこんだのは、決して反論できないからではない。
 思い出したように再び背が痛んだのと、下手なことを言ってまた投げ飛ばされるのが、右庵は恐ろしかった。
 恐らく次は手加減などすまい、と思い、右庵は呑気に茶をあおる千里耳から目をそらした。

 右庵が小久我の屋敷を訪れたのは、長女である幸花に面会するためである。

 幸花は、かつては小久我の柔術道場の師範代であった。
 かつて、というのは右庵が小久我の道場に足しげく通っていた頃の話である。
 あの頃は、幾度となく幸花に投げ飛ばされたものであった。

 今では幸花は武術から離れているらしい。
 何でも右庵が道場をやめてからすぐ、稽古中に膝を痛めたのだという。

「まあよい。
 どうせ縁談を断ったことについては何も言われなかったのだろう?」
「…は」
「それ見ろ。
 心配するだけ損だと言っただろうが」

 縁談をこちらから一方的に断っておいて、悪く思わない方がどうにかしている。
 だが、右庵は考えたことを口にはしなかった。
 別にそんなことは千里耳とて百も承知であろう。

 右庵が小久我の屋敷に、しかも夜ではなく、全ての役目が終わった後、朝に来たのは謝罪のためであった。
 紗恵に持ち込まれた縁談は、幸花が口聞きしてくれたものだったのである。

 本来であれば菓子折りか何か、謝罪の心持を示すものを持って参じるべきだったのであろう。
 とはいえ、縁談を断ることは、一刻も早く知らせなければならなかった。
 右庵の心にはそこまで―――つまり、手土産を持参するほどの余裕はなかったのだ。

 役目を終え、急いで向かった小久我の屋敷。
 そこで余裕の無い面持ちで謝罪を繰り返した右庵を迎えたのは、気にするな、という幸花の言葉だった。

「妹の婿探しについては何か言ったのか?」
「…いえ」
「その前に投げ飛ばされたか。噂にたがわぬ乱暴者だな」
「…」

 幸花と右庵は別段親しいわけではなかった。
 なので、幸花の性格云々を論じることができるわけでもない。

 確かに組み手で世話になったことは多々あったが、右庵自身は特に親しさを感じていたわけでもない。
 彼が親しかったのはむしろ、幸花の弟である小久我の次男坊、馨である。
 右庵より四つ年下の彼は、道場に通っていた頃から、人付き合いが苦手な右庵にとっては唯一の友人と言ってもいい人物だった。

 右庵が都廻に、馨が学問所の師範になった後も、友人としての付き合いは続いていた。
 そして数ヶ月前。馨からの相談を右庵が解決した際、右庵はその見返りをしたいと言ってきた馨に、紗恵の嫁入り先探しを頼んだのである。
 結果として、友人の姉として、多少の交流はあった幸花が縁談を持ってきたのだった

 とはいえ、最初に幸花が仲介してくれた縁談は、三ヶ月前に破談となった。
 それ以上迷惑をかけるつもりは右庵にはなかったのだが、幸花は再び、紗恵の婿探しをしてくれたのである。

 そして、今回もまた、右庵が一方的に断ってしまった形となった。
 それだけの恩がある相手である。
 投げ飛ばされる程度、右庵にはどうということはなかった。
732或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 21:55:00 ID:Xx/2BPiJ

「まあ奴も焦っているのだ。
 察してやれ」

 耳だけで聞いた千里耳の言葉と同時、からり、と小気味よい音とともに襖が開く。
 庭から右庵が目を戻すと、襖を開いたのは、小久我の幸花その人であった。
 しかし、十五に及ばぬほどにしか見えぬ容姿の彼女は、ひどく不機嫌に右庵の名を呼んだ。

「後一郎」
「…は」
「そいつこっから追い出しなさい」
「…は?」

 突拍子も無い言葉である。
 右庵は思わず眉をしかめたが、かまわず横にいる千里耳が挑発するように言葉をかけた。

「嫌だ、と言ったら?」
「とりあえずどっから忍びこみやがったのよ、この女は」
「…?」

 そもそも、ここに千里耳を通したのは屋敷の者ではないのだろうか。
 だというのに、何故、忍び込んだ、などという言葉を幸花は用いたのか。
 突然物言いが変わった幸花と、自分が置かれた状況を訝しげに思いつつ、右庵は、隣にいた千里耳に目をやる。

 果たしてそこにいたのは、美しい面持ちの騎士ではなく、艶やかな遊女だった。

 眩暈を覚えたのは、右庵が小心者だからでは決してないだろう。
 もしかしたら、いきなり叩き出さなかった分、幸花も大物なのかもしれない。
 とはいえ、そうだったところで、何が変わるわけでもなかった。

「女がこんなところに忍びこめるとは思わないけど」
「ふん、狐一匹捕らえられぬようでは、小久我の屋敷もしれたものだな」
「…どこから説明すればよいのかわかりませぬ…」
「付き合う女は考えたほうがいいわよ、後一郎。
 紗恵といい馨といい、あんたの周りはただでさえおかしな奴らばかりなんだから」
「まさに然りだな」
「…」

 どう説明するべきか、とそう考えたところでやっと右庵は思い出した。
 右庵の記憶が確かならば、幸花は今年で三十になるはずであった。
733或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 21:56:19 ID:Xx/2BPiJ

<三>

 屋敷が立ち並ぶその通りは、人の気配も少ない。
 騎士屋敷は普通の民家とは違い、ひどく庭が広く、そのため屋敷と屋敷の間隔がかなり開いている。
 その上また、一般の民はなかなか立ち入ったりなどもしないため、自然人通りも少なくなるのである。

「…別に送っていただく必要はなかったのですが」
「あんたが悪いんでしょうが」

 結局、十夜の婿探しについても軽く頼んだ後、右庵は小久我の屋敷を後にした。
 そんな右庵に、幸花は、そこまで送る、といってついてきたのである。

 別に送ってもらわなくともよい、と言ったのだが幸花はそれを聞かなかった。
 幸花は右庵より年上であり、そもそも、かつて柔術道場の師範代だった彼女は、右庵にとって目上の人物でもあった。
 断ることもできず、とりあえず近くまで送ってもらうことになったのだ。

「こっちは食事まで用意したってのに」
「…それはまた何故」
「少しは考えろ馬鹿」
「…」

 ぷう、と頬を膨らませたその姿はやはり、十もせいぜい半ばまでの少女にしか見えなかった。
 こう並んで歩くと、兄と妹、あるいは親と子のようにも見えるのではないか、と右庵は心の内でそう考えた。

 右庵は一瞬だけ視線を移す。
 幸花の膝は、痛めたとはいえ歩くのには不便はない様子であった。
 そして、視線を前に戻そうとすると、不意に幸花と目があう。
 どうやら、自分が脚のことを気にかけたのがわかっていたらしい。

「…失礼しました」
「気にすること無いわよ。
 私だって余裕がなけりゃあんたを送ろうなんて考えないし」

 明るく幸花は笑う。
 それは、果たして本物の笑いなのか、取り繕った笑いであるのか、右庵には検討もつかない。
 ただ、曖昧な表情を浮かべ、わかりました、と言うのみである。

「それにしても、あんな女が騎士だとは…世も末よね。
 多分ああいう格好してた方が、町の人から話を聞くにはちょうどいいんでしょうけど」
「…」

 実際は騎士かどうかなど、右庵も知らない。
 ただ、仕事上の上役も同然の相手なので、そう納得してもらった方が都合よくはあった。

 千里耳とは、屋敷の門をでたところで別れた。

 何か用事があるのか、それとも何の意味もないのか。

 考えたところで意味はないのだが、それに思索をしてしまうのが常ではあった。
 千里耳の行動は支離滅裂ではあるが、彼女なりの意思がどこかに介在しているように右庵には思えた。

 そんなことを考える暇があるなら、また別のことをしろ、と十夜や紗恵なら言うだろうか。
734或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 21:57:29 ID:Xx/2BPiJ

「後一郎?人の話聞いてる?」
「…は」
「やっぱ聞いてなかったか」

 ぴくり、と右庵は体を震わす。
 もしやと思ったが、流石に往来で人を投げ飛ばすことは幸花もしなかった。
 今度は不機嫌を隠す様子もなく、幸花は再び右庵に話しかけた。

「聞いといてよね…全く」
「は」
「弟になんかいい人ができたみたいなのよ」
「…は」
「あ、やっぱりその様子だと知ってたねあんた」
「…そのうち馨自身が話すと思ってたのですが」
「やっぱりそうなんだ」
「…」

 幸花は、確信を得たようにうなずく。
 自分は相手の誘導に乗ってしまい、幸花に確信を与えてしまったらしい、と右庵が気づくのにはほんの少しだけ時間がかかった。
 同時、右庵の背が若干丸まる。
 それは、彼の気勢を表しているかのようだった。

「そんなんで都廻ねえ…」
「…面目ありません」
「私は向いてないような気もするけどね。
 後一郎は力はあるけど筋は甘いし」
「…」

 幸花が言ったことは、右庵にとっても気にしているところではあった。
 右庵はさらに気分が落ち込ませたが、知らぬ顔で幸花は話を続けた。

「あー、けど馨もそんな年か。
 十八だもんね…色づくのも当然といえば当然よね」
「…」

 実は、馨が件の女と仲が良くなったのはここ最近の話ではない。
 とはいえ、右庵はそのことを話すつもりは毛頭なかった。
 話すべきでない、と考えると自然と口が重くなる。
 口が重くなり、周りの音が聞こえるようになったとき、不意にその音は右庵の耳にはいった。
 どうやら、幸花も右庵と同様、その音に勘付いたようだった。

「これ、笛?
 どこの大道商人かしら」
「いえ、これは」

 珍しく、右庵がすばやく相手の問いに答える。

「祭囃子です」
735或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 21:58:15 ID:Xx/2BPiJ

<四>

「へえ…?
 この辺りで祭りなんてあったっけ」
「火山の社が今日だったかと」

 王都では、何かにつけて祭をする。
 大きな祭りならともかく、小さな祭りは王都のそこかしこで毎日のように開催されていた。

 人が集まれば、揉め事から犯罪まであらゆることが起きる。

“祭りなり 都廻も 御役御免”

 大騒ぎをする場で何かと規則を持ち出すのは無粋、という見方もあるだろう。
 しかし、それでも都廻は祭りの監視に幾人かの騎士と、そして手先である軽犯罪者達を送りこんでいるのが常であった。
 たとえその場で取り締まることができなくとも、情報は残る。
 そして、一度どこかで罪を犯した者はまた同じ罪を犯す。

 それが故に、都廻、それも情報を司る任についている右庵にとっては、王都と周りの村で行われる祭の日時場所を知っているのは当たり前のことであった。

「…」

 しかし、右庵の頭に過ぎったのは、都廻の仕事にかかわることではない。
 幼い頃の光景だった。
736或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 21:59:05 ID:Xx/2BPiJ

―――兄様、兄様!飴です!

 祭囃子が聞こえる中、幼い妹の手を握り。
 振り回されるのは自分の方。

―――ほら、あんた達!はぐれないはぐれない!

 道場で幼い子供達に指導をする、年上の女性に追いかけられて。

―――十夜ちゃんと後一郎さんは仲がいいなあ。
―――馨んとことは大違い。
―――うるさいなあ。僕だってあんな乱暴な…痛っ!

 仲間の声が遠くに聞こえる。
 それも間もなく聞こえなくなり。
 慌てて自分は道を戻る。

―――きゃあ!?に、兄様?

 幼い妹を腕に抱き。
 大人達の足元を走り抜ける。

―――おーい!ああ、いたいた!!私があんたらのお守り任されてんだからね!

「おーい?」

 あれは、すでに十年以上の前のこと。

―――後一郎!あんたもしっかりしなさい!!男でしょうが!

 記憶の中と同じ声。変わらぬ顔に呼びかけられて、回想はそこで途切れる。
 ただ、一つだけくっきりと思い出せたものはあった。

「後一郎?」
「…すいません。
 少しばかり考え事を」

 口では幸花の相手をするものの、右庵の頭はまだ別のことを考えていた。
 昔は仲が良かった兄妹が、仲たがいし口も聞かぬ関係になる。
 そんなことは珍しくもなんともない。
 むしろ、妹と会話ができる程度には、自分は恵まれているのだろう。

 だが、そうやって納得できるのはあくまで共にいられるからなのかもしれない。
 果たして、十夜と別れる時、自分はそれでいい、と言えるのだろうか。

 かつて見た、そして今となっては見ることが叶わぬ、十夜の笑顔。
 それは、右庵の頭に焼きつき、そしてどうしようもない虚しさを呼び寄せるのである。
737或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 22:00:11 ID:Xx/2BPiJ

<五>

「ここら辺でいいかしらね。
 私はそろそろ戻るわよ?」
「…は」

 幸花が足を止めたのは、三軒も進めば木下の屋敷につこうか、というところであった。
 三軒、と言っても普通の長屋や町屋敷とは違う。
 庭も広大な騎士屋敷の話であり、結構な距離はあった。
 とはいえ、ここまでの足労に礼ができないのは、右庵にとって心苦しかった。

「…茶と菓子ぐらいなら出せますが」

 あまりにも婉曲な言葉に、一瞬幸花はわけのわからない、というような表情をした。
 が、すぐに意を得たのか、右庵の肩をたたこうとする。
 結局背の低い彼女は右庵の肩に手が届かず、代わりに背を叩いた。

「気にしなさんな。
 私、っていうか、馨が受けた恩に比べりゃこんぐらいどうってことないわよ。
 あんたもとっとと帰んなさい」
「…申し訳ありません。
 十夜の件も、どうか宜しくお願いいたします」
「はいはい。
 まあ、悪いと思うなら今度は朝飯でも食べていきなさい。ばれないようにね」
「…は?」

 首をひねる右庵を尻目に、後ろ向きに手を振って、幸花は来た道を引き返していく。

「ま、夜叉と面と向かって戦うつもりなんざありゃしないし」
「…は?何か…」

 聞こえたわけのわからない言葉に思わず、右庵は幸花の背に声をかけてしまった。
 が、幸花は気にした様子もなく、振り返って童のように笑みを浮かべる。
 その振り返った姿も、右庵が幼い頃から全く変わらないように見えた。

「なんでもないよ」

 笑いながら、幸花は言う。
 ふと、右庵は違和感を覚えた。
738或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 22:00:56 ID:Xx/2BPiJ

 人気がない。
 騎士屋敷、それも庭に対面した辺りであるのだから当たり前ではあるのだが、何故か体が震えた。

「…ねえ、後一郎」
「…は」

 右庵は、心が身構えている、と感じた。
 自分が口にする言葉も固く、どこか幸花の笑みに薄気味の悪いものが混じったように見えた。

「後一郎は、何であの二人の婿探しをしてるのかしらね?」
「…?」

 幸花の言った意味が右庵にはわからなかった。
 何を、という前に、もう一度幸花の口が開く。

「貴方…本当は、二人を屋敷から追い出したいんじゃないのかしら」
「…は?」

 響いた言葉は、右庵の頭に染み込む。
 得体の知れない悪寒に襲われ、体が震える。

 言った相手は自分の世話になった、年上の女性。
 自分に規範を叩き込み、武の基礎を教えた女性。
 彼女の言うことは、いつでも正しかった。
 彼女は、自分自身でも気付かないことを指摘したこともあった。

 それでも、まさか、と右庵は言葉を返そうとする。
 だが、乾いた喉からは言葉は出ない。

「…」

 自分が、木下の屋敷から姉と妹を追い出そうとしている。
 言われてみれば、それは理にかなっているのではないか。

 幼い頃仲が良かった妹も。
 昔から冷たかった姉も。

 自分には嫌悪や苛立ちをぶつけてくるだけ。

 あの二人を追い出せば、あるいは。
 自分は心安らかに暮らせるのではないか。

「…ご冗談を」

 無理やり声を捻り出したものの、頭の中で巡る声は消えない。

「そうね、冗談よ」

 そうだ、そんなはずはない。
 二人の幸せのためにやっていることだ。

 だが。幸せ、と言うが。
 そもそも、あの二人は自分のことを嫌っているのではないか。
 そうであれば、わざわざ彼女らの幸せを願う必要はないのではないか。
739或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 22:02:49 ID:Xx/2BPiJ

「じゃあね、また会いましょ、後一郎」
「…は」

 もう話すことはないのか、幸花は、歩みを速めて右庵の前から去ってゆく。

 だが、右庵は別れの挨拶もそぞろに、表情を取り繕うことで精一杯だった。

 家族は守るべき存在のはずである。
 自分が彼女らをどう思おうとも、彼女らが自分をどう思おうとも、守らねばならぬ。
 いつまでも守ることができずとも、少なくとも、彼女らを守ってくれる男を見つけなければいけない。

 だから婿探しをしているのだ。
 決して、二人を追い出したいからではない。

 自分にそう言い聞かせ、右庵は、かは、と息を吐き出す。
 そこで、やっと人心地がつけた。

 青が見える空には陽が上り、雲も少ない。
 天気は、右庵の心とはさかしまに穏やかだった。
740或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 22:04:41 ID:Xx/2BPiJ

<六>

 朝。
 少女が屋敷の間の道を行く。
 歩みは崩れず、しかし医者が見れば、左の膝が悪いことに気づくかもしれない。
 と、彼女は疲れたのか、足を止めた。

「でもね。もし冗談じゃなかったとしたら」

 幸花は、最後に一度だけ視線を背後に向ける。
 後一郎はすでに、自分の屋敷についている頃だろう。

「私も膝の借りを返せるというものね」

 童の顔、華奢な体躯、軽やかな声。
 だが、その顔は。
 歳に相応しく、相克する激情と理性が渦巻いていた。 
741或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF. :2007/10/02(火) 22:05:29 ID:Xx/2BPiJ
以上で投下終了です。
742名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 22:12:00 ID:4Yyk/KnY
腹黒い幸花さんGJ!
743名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 22:21:58 ID:bvPBF7XN
GJ!
この黒さが堪らない。
744名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 23:08:58 ID:ZwEPeOJ1
ひたすら待ってた甲斐があったぜ、GJ!
745名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 23:10:56 ID:BxQ5mzrx
膝の借りってなんだろう…
とっても気になるよね!?
746名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 23:29:31 ID:xss7lQIW
気持ちって伝わらないものだな。
現実のツンデレは好きな人に嫌われてくだけなんだろうね。
かなしいねGJ。
747名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 00:53:16 ID:S8geNuWV
>>741
新キャラキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
幸花も他の3人と負けず劣らず腹黒くていい感じです。
次の投下もwktkして待ってます!!
748転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:03:46 ID:PIjBTwYu
投下します。
749転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:05:32 ID:PIjBTwYu
 神経が興奮したままだったのだろうか、幸いなことに今朝の目覚めは早かった。
 時刻は5時前。窓の外は夜のようにまだ暗い。
 この時間なら二人ともまだ目を覚ましてはいないだろう。
 身体を起こそうとして………すぐに思い直してまた横になる。
 起きて何かしようという気力が湧かない。幸い、登校時間にも二人を起こすまでにも時間はまだ十分にある。
 今はまだ二人、特に雨音ちゃんとは顔を会わせたくない。
 今はとにかく時間が欲しい、状況を整理する時間が………。
 暗い部屋の中、僕は再び目を閉じる。

 天野雨音
 僕の妹。正確には義妹ということになるのだろうか?
 まあ、いいや。
 とにかく雨音ちゃんはイモウト。大切な家族だ。
 顔は贔屓目に見ても可愛いと思うし、学校での人気がそれを証明している。
 学業や運動、家事においても死角はない。
 周囲にはやや冷たいと思われている節があるけれど、
 実際には恥ずかしがりやで少々口下手な、心優しい自慢の妹。

 そう、妹。
 それが僕にとっての雨音ちゃんだった。
 それ以上も、それ以下もない。
750転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:06:07 ID:PIjBTwYu
 そう遠くない、いつか。
 卒業して、大人になって、社会に出て、いろいろな経験を積んで、
 少しずつ離れ離れになるかもしれないけれど、機会があればこの家に帰ってきてくだらない話をしては絆を暖めあう。
 そんな家族の情景。
 未来の予想図。
 いつか現れるであろうその恋人に嫉妬しないかと言われれば、正直なところ自信を持って頷けないかもしれない。
 雨音ちゃんはとても大事な妹だから。
 けれど、その時が来たときのための覚悟はしてきたつもり。
 笑顔で雨音ちゃんを送り出す。
 それが兄として僕がしてあげられる、数少ないことのひとつ。
 そんな幸せな、どこかで聞いたような光景を思い描いていた。

 でも、雨音ちゃんはそうではなかった。

 外からやってきた作りモノの家族。
 家族としての兄。けれど、血の繋がらない異性。
 昨日の出来事で雨音ちゃんが僕の事をどのように見ているかを知ってしまった。
 ずっと雨音ちゃんは異性として僕を見てきたらしい。
 それも―――仕方ないことなのだろう。
 僕がこの家にやってきた頃には雨音ちゃんにも自我が芽生えていて当たり前の年齢だし、
 突然現れた同年代の僕を家族だと認識すること自体に無理があったのかもしれない。
 きっと雨音ちゃんの中での僕の立場は微妙なものだった。
 社会的には仲の良い兄妹。実質的には同じ屋根の下に住む同年代の異性。
 過去の出来事も尾を引いている。
 罪悪感と良心の呵責。
 僕がここにいる限りそれは毎日のように雨音ちゃんを責め立ててゆく。
 それらの重圧に雨音ちゃんの心は次第に侵食されて、いつしか耐え切れなくなって―――歪んだ。
 その結果が依存症。
 僕は医者ではないけれど、昨日のあれはおそらくその類ではないだろうかと推測する。
 いま思えばその兆候は前々からあったのかもしれない。
 過剰なまでのスキンシップや何かと世話を焼こうとする言動。
 度が過ぎるそれらの行動は、雨音ちゃんからのサインだったのかもしれない。

 けれど僕はそれに気付けなかったし、気付こうともしなかった。
 もっと言ってしまえば気付くのが怖かった。

 僕にとって家族を手放すことは何よりも耐え難かったから。
 たとえそれが名ばかりで形すら保てないただの言葉であっても、僕にはそれしかなかった。
 何も持っていない僕のたった一つ、守りたいもの。
 それは今でも変わらない。
 気付いてしまえば、僕らはきっと家族ではいられなくなってしまう。


751転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:07:08 ID:PIjBTwYu
 目蓋を開くとぼやけた意識が目を覚ます。
 何も変わっていない。
 考えているだけじゃ何も変わらない。けれど、考えずにはいられない。

 雨音ちゃんにどう応えたらいいのか? 

 自分でもわからない。
 嬉しいか? と問われれば間違いなく嬉しい。
 けれど、それ以上に戸惑っている。
 雨音ちゃんは僕を兄さんと呼んでくれる。
 だから僕は今まで雨音ちゃんをそういうフィルター越しに見てきた。
 今になって異性として見て欲しいと言われても困ってしまう。
 僕はいきなりを意識を切り変えられような器用な人間じゃない。
 そんな目で見られても………

 ?

 ふとした違和感。
 そう、もう一つ考えなければならないことを忘れている。
 もう喉のすぐ手前まで来ているのに思い出せない。
 昨日の雨音ちゃんの瞳、それによく似た瞳を僕はどこかで見ている。

 忘れたのか、天野八雲!?
 山岡さんはもう一人のこともブラコンだって言っていなかったか!?
 雨音ちゃんと同じように接してきた人物がもう一人いただろう!?
 だったら―――

 バカな考え。
 それは無い。
 何を期待してるんだ。
 雨音ちゃんにあんなこと言われたから、思考回路が調子に乗ってしまっている。
 ただ自惚れ。ちょっとモテた気になってるだけ。
 今の僕の頭では雨音ちゃんだけで手一杯。
 そうやって言い訳をしながら、一瞬先に見えた幻影を無理やり拒否する。
 考えない。考えたくない。
 そんなものまで背負えない。
 そんな僕の抵抗をものともせずに意識は確信へと突き進む。
 おぼろげだった虚像、徐々にその輪郭が見え隠れする。

「考えるなっていってるだろ!!」

 イメージを振り払うように跳ね起きていた。
 両手が汗でベタベタする。
「………………はぁ」
 今朝はもう二人とは顔を会わせられそうにない。
752転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:08:16 ID:PIjBTwYu
 とても朝食を摂るような気分ではないが、せめて二人の為になるべく物音を立てないように食事を用意すると、
 目覚まし時計を片手に玄関正面の階段へとやってくる。
 タイマーを二人を起こす時間にセットして、足音を殺して階段を上る。

 二階の廊下、二つ並んだの部屋の奥、姉さんの部屋のドアが少しだけ開いていた。
 間隔は3〜5pくらい。カーテンを締め切って照明を消しているのだろう。
 その僅かな隙間から部屋の様子を窺い知ることは出来ない。
 部屋の入り口に生まれた微かな隙間、その向こうは光を寄せ付けない暗闇。
 指を差し込める程度の小さな隙間が僕を誘っている。
 姉さんがじっと息を潜め、僕がその隙間に指を掛けるのを待っている。
 意識が暗闇に引きずり込まれ、研ぎ澄まされた聴覚が姉さんの意思を拾い上げる。

 ハ ヤ ク  オ イ デ ヨ




 雨音ちゃんのことで神経が昂ったままなのだろう。
 こんなもの僕のくだらない妄想だ。
 心の中だけとはいえ姉さんを妙に勘ぐったりして、そういうのは失礼だと思う。
 だから………
 二人が起きてこないように細心の注意を払いつつ、
 僕は二階の廊下に目覚まし時計を設置し、踵を返して階段を降りる。

 背中越しに聞こえた舌打ちのような幻聴は無視した。
753転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:08:50 ID:PIjBTwYu
「いってきます」
 誰にも聞こえないようにそう呟く。
 宿題はまだ部屋に残したまま。
 あまり気分のいいものでもないが、お手上げなのだからしょうがない。
 鞄を片手に玄関のドアノブに手を掛けた瞬間、鋭い声に射抜かれた。

「おはよう、兄さん。何か忘れていませんか?」

 寝間着姿の雨音ちゃんが階段の上から、玄関の僕を見下ろしていた。
「―――おはよう。忘れ物はしてないと思うけど」
「いいえしていますよ。今まで兄さんの声で起こされてきた私が、
 こんなもので起こされたら機嫌が悪くなるとは思いませんでしたか?」
 雨音ちゃんが階段の上に設置された目覚まし時計をつま先で軽く蹴ると、
 目覚まし時計だったモノが騒音と破片をばら撒きながら足元まで転がってきた。
「これからは私が兄さんを起こしに行きます。だから、もうそんなものは必要ありませんよね」
 そう言って雨音ちゃんはにっこりと笑う。
「……リ、リビングに朝食があるから食べてきなよ」
「今日はいりません」
「朝ごはんを食べないと元気が出ないよ」
「だったら兄さんもいっしょに食べましょう。兄さんも食べてないんでしょう?」
 どうしてわかるのだろう?
 僕の怪訝な表情を読み取ると雨音ちゃんは無言で台所の方向を指差す。
「台所にも水切り台にも兄さんの食器はありませんよね」
 見てきたわけでもないはずなのに自信に満ちた声で雨音ちゃんはそう告げる。
 まるで僕のことは何でもお見通しだと言わんばかりの表情で。
「僕は行きがけにコンビニかどこかで買って食べるよ。二人の分はちゃんと用意してあるから―――」
「だったら私もそうします。冷蔵庫に入れておけば問題はありませんし」

 どうあってもついて行く。
 そういうつもりらしい。

「姉さんは?」
「姉さん……ですか?」
 雨音ちゃんの気配が鋭くなる。
「姉さんはどうするの?」

「―――放っておきましょう」

 冷たく言い放つ雨音ちゃんに少し違和感を覚える。
 まるで姉さんなんかどうでもいいといった雰囲気。
 何かが違う。
「どうしてそんなこと言うんだよ? いつもなら……」
「いつもなら、兄さんが起こしているでしょう?」
 痛い所を突かれて僕は口をつぐむ。
 その間にも雨音ちゃんは軽い足取りで階段を降りてきて僕のすぐ傍までやってくる。

「それに私、昨日言いましたよね? 『お願いですから、私を置いて行かないで』って……」

 僕の手を握り締め雨音ちゃんは耳元で囁く。

「着替えてきます。待っていてくれますよね?」

 答えを聞かずに雨音ちゃんは自分の部屋へと戻って行く。
 僕は、待つしかなかった。


754転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:10:26 ID:PIjBTwYu
 二人で玄関を出ると雨音ちゃんは僕の手を引くように歩き始める。
 僕がいて、雨音ちゃんがいる。
 そんな日常に縁取られた朝。
 それでも―――何かが足りない。
 右手が妙に軽い。ずっと腕に掛かっていた重力が急に軽くなったような感覚。
 けれど、その重みがとても懐かしい。
 僕が右側に気を取られていると、雨音ちゃんが制服の袖をぐいっと強めに引っ張る。

「どうかしたの?」
「いえ……」

 雨音ちゃんは何も言わずに僕の腕を取る。
 歩を進めるたびに次第に体の密着度が上がってゆき、雨音ちゃんと僕はまるで寄り添いあうような形になる。
 腕に接触している柔らかいナニカ。理性の軋む音が聞こえる。

「ちょっ! ちょっと、これはまずいよ!!」
「まずいですか?」

 そう言いながらも雨音ちゃんは僕の腕に一層強く胸を押し付ける。
 異性との一時的接触、特に女性から男性へ向けての接触は男性にとってはある種の暴力といっても過言ではない。
 触れ合う部分が緊張により硬直し、徐々に左半身の自由を奪われてゆく。
 女の子特有の柔らかい匂いが理性を刈り取ってゆく。
 呼吸が不規則になって、だんだん思考力まで散漫になってくる。
 昨日まではこんなことなかった。
 どんなにじゃれ合っていたって笑って済ませられた。
 それなのに今日は………。

「どうかしましたか? 顔が赤いですよ」

 雨音ちゃんは甘えるように少し悪戯っぽい表情を浮かべる。
 ここまでされて気づかないほど鈍くない。
 雨音ちゃんの狙いは僕の妹である『雨音ちゃん』を女性としての『雨音』に書き換えること。
 そして僕はその姦計に見事に絡めとられている。
 昨夜のキスから僕の雨音ちゃんを見る目は少し変わってしまったらしい。


 雨音ちゃんを意識し始めている。
 ―――その感情に僕は怯えた。

755転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:10:58 ID:PIjBTwYu
 女の子に欲情したことが無いといえば嘘になる。
 でも、妹に欲情するなんてまともじゃない。
 一瞬でもそんな感情を雨音ちゃんに向けてしまった自分に激しい自己嫌悪。
 少なくとも、みっともないと思えるくらいには。

「姉さんはちゃんと起きれたかな?」

 なんだか変な方向へ進みつつある状況を打開するため、姉さんの名前を出してみる。
 もうそろそろ起きていないと学校に遅刻してしまう時間、話を切り出すタイミングにしてもなかなかよい時間帯。

「兄さん」

 僕に寄り添っていた雨音ちゃんは制服の裾を強く握ったまま急に立ち止まる。

「………そんなに姉さんがいないと寂しいですか?」

 どうしてそんなことを聞くのだろう?
 雨音ちゃんの意図する所が判らない。

「寂しい、ってわけじゃないけど………心配じゃないの?」
「どうして心配なんですか?」
「どうしてって、姉さんだから……」
「答えになってません」
「なんで? 心配するのはあたりまえだよ。僕達の姉さんなんだから………」

 何か、話が噛み合っていない。
 違和感の中、雨音ちゃんはじっと黙ったまま俯く。

「………兄さんは私のキモチを知ってるはずです」
 
 それは、つまり……。
「もしかして………ヤキモチ妬いてくれてるの?」

 その瞬間、俯いたままの顔が朱に染まって、制服の袖が破れそうなほど強く引っ張られる。
「そ、そんなに引っ張ったら伸びちゃうよ!!」
 要望は聞き入れられず、雨音ちゃんは僕を引っ張るようにツカツカと歩き出す。

「………………バカ」

 短く雨音ちゃんの唇が震える。
 その一言も聞き取れぬまま、僕は雨音ちゃんに引きずられるように歩き出す。
 なんだか顔が合わせられない。
 雨音ちゃんは学校に着くまで一度も顔を合わせようとはしなかった。
 僕も雨音ちゃんの顔が見れなかった。

 早起きした今朝の通学路には、まだ誰も居なくて―――それだけが救いだった。



756転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:12:26 ID:PIjBTwYu

「………どうしてこうなったんだろう」

 午前中の授業なんかそっちのけでずっと考えていたのがこれ。
 ずっと考えて、答えなんかこれぽっちもわからなくて、
 次第に思案するのにも疲れてきて、昼休みになる頃には投げ出した。

 今は逃げるように教室から校舎裏の自転車置き場へと退散し、一人で昼食を楽しんでいる。
 朝食を抜いていたせいか胃に物を入れている間は何も考えずにいられた。
 
「う〜〜〜ん」
 と、食後の伸びを一つ。

 これからの時間は考えるフリをすることにする。
 考えまいとすると、逆に二人の事が頭から離れなくなるから、考えるフリをする。
 不思議とフリならばあまり疲れない。

 何を見るわけでもなくぼんやりと校舎を眺めていると、一階の渡り廊下に見知った人物を見つける。
「吉住、何やってるんだろ?」
 落ち着かない様子で辺りを見回しながら早足で歩いている。
 何か探し物でもしているように見えなくも無い。
「………まぁ、関係ないか」
 疲れている時の思考なんてこんなものだろう。
 今の僕には他人に思考を割けるほどの余力が無かった。

 辺りを見回していた吉住が僕を見つけると、厳しい表情で真っ直ぐに最短距離を詰めてくる。
「探したぞ天野!! お前に聞きたいことがある!!」
「何?」

「晴香先輩の本命って誰だ!!」

「……何? 藪から棒に」
「って、知らないのかよ!! かぁ〜!! 情報に疎いにもほどがあるぞ!!
 今、学校中の野郎達がお前を探して教室に押しかけてきてるって言うのに!!」
 興奮した吉住が手近にある自転車のサドルをバシバシ叩く。
「どういうこと?」
「いいか、今日の中休みに先輩がまた告られたんだよ」
 誰に?
 よりも先に、告白されたって事は姉さんはちゃんと学校に来てたんだ。
 などと、なんとなく場違いな安心が頭を占領する。
 なにしろ……
「いつものことだろ」
「そう、いつものことなんだけどな。そして玉砕する所までいつもどおり。
 しかしな、『ごめんなさい』から先がちょっと違ってきたんだわ」
「?」

「いつもは『今は付き合うつもりがありません』の一点張りだった先輩が、
 『好きな人がいます』って言ったんだよぉぉぉ!!」

 誰のものかわからない自転車を蹴りつけて吉住が吼える。

 好きな人―――本命。
 それは初耳だった。

「それを聞きにわざわざこんな所まで探しに来たの?」
「それ以外の理由でこんな所まで来るわけねぇだろ。大体、なんでこんな所にいるんだよ。妹ちゃんが探してたぞ」
「……ちょっと、一人で考え事したくなってさ」
「そんなくだらねぇ悩みなんかよ・り・も!! ………誰なんだよ?」
 午前中から悩み抜いていることを、くだらないの一言で済まされるのは癪ではあるが、
 興奮している吉住には何を言っても意味が無さそうだった。
757転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:13:40 ID:PIjBTwYu
「そんなのわかるわけないだろ」

 わかるわけない。
 高校に入ってからはずっと姉さんの傍にいたけれど、姉さんはそんな素振りを見せたことがない。
 ―――ない、はずだ。

「お前が知らなかったら誰が知ってるんだよ!!」
「知らないよ」
「もったいぶらないで教えてくれよ!! 本当に知らないなら頼むから聞いてみてくれよ!!」
 普段通りならばそれも構わないけれど、今はタイミングが悪い。
「無理だよ………いま、僕ら喧嘩してるから」
「喧嘩? お前と先輩が?」
「そう」
 吉住は信じられないものを見たというような顔と
 これは面白そうなものを見つけたといった表情を隠しもしなかった。
「あの仲良し姉弟が喧嘩なんて珍しいな。何があった?」
「ちょっとした事で口論になって……怒らせるようなことを言っちゃったみたいなんだ」
「なんて言った?」
 確か……。
「『ブラコンって言われてるから自重しようよ』とか、
 『そろそろ彼氏でも作ったら?』みたいな事をもうちょっと荒い言葉で言った気がする」
「―――なるほどな」
「何がなるほどなんだよ?」
 吉住は呆れたような、それでもどこか嬉しそうな顔つきで腕を組む。
「お前さぁ、本当に乙女心のわからないニブチンだな。いいか!?
 先輩は弟のお前に『彼氏でも作れ』って言われたから、意地を張って『好きな人がいる』って言っちゃったんだよ」
「―――そういうもんなの?」
「そういうもんだ」
 そう語る吉住は自信溢れる様子だった。
「じゃあ、姉さんは……」
「ああ、多分本命なんていなくて……俺達は男子はお前らの姉弟喧嘩に踊らされてたってことだ」

 となると、今朝からの妙な妄想は全部僕の自意識過剰ということらしい。
 ほっとするのと同時に、勘違いだと気がついて無性に恥ずかしくなる。

「さっさと謝っちまえよ」
 軽い調子で吉住は言った。
「お前、先輩と喧嘩したからこんな所でウジウジ悩んでたんだろ?」
 それも悩みの一端を担っていない事もないのだけれど、説明できないので誤魔化すように頷いておく。
「確かにお前の言うとおり、先輩はかなりのブラコンだと思う。
 だけど、お前がそれをマズイと思ってて、お前がそう思ってることが伝わってるならそれでいいんじゃねぇの?
 ほら、先輩も可愛い弟にいきなりそんなこと言われたもんだからびっくりしただけだって」

 びっくりしただけ。
 そう思いたい。
758転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:14:17 ID:PIjBTwYu
「でも、姉さんが本当のことを言っていたら?」
「だったら、一件落着じゃないか。お前の望みどおりに先輩にも彼氏が出来て、ブラコンも解消。
 この学校の男子で先輩の告白を断る奴なんていねぇって。もしそんな奴がいればブッ殺す」

「そっか……」
 何だろう、この感情は。
 なんというか……モヤモヤする。

「でも、妹ちゃんの方はどうすんだ? あっちも……言っちゃ悪いけどブラコンの相が出てるぞ」
「………」
「なんだよ? 変な顔して」
「え、いやぁ、なんでもないよ。あはは……」
 笑って誤魔化す。
 だってそれしか出来ない。
「そこで相談なんだけどな……お前の妹のブラコンを俺が解消してやらないことも無いぞ。
 もしも、先輩の本命が俺だった場合は先輩の申し出を受けて慎んでお付き合いさせてもらうつもりだが、
 確率的に言うとその可能性は残念ながら低めだからな……こんなことは言いたくねぇが
 先輩もそろそろ卒業しちまうし―――」

 長くなりそうだな、と思ったタイミングで予鈴が鳴る。
 時計を見ると、5限目が始まってしまっていた。

「この続きは放課後だな」
 もう遅刻が確定しているので、別段急いだ様子も無く吉住は歩き出す。
 その背中に一言、投げつけておく。
「なんか、ありがとな」
「ある意味他人事だからな。言うだけはタダだ」
 気楽にそう言ってくれるのが、ありがたかった。



759転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:15:31 ID:PIjBTwYu
「天野、看板用の絵の具が足りないんだけど?」
「部材を買いに行ってる山岡さんたちがもうすぐ帰ってくるから、ポスターの方を手伝ってあげてよ」

 放課後の教室は日を追う毎に活気を増してゆく。
 クラスのみんなも方向性さえ決まってしまえば、進んで協力してくれるようになった。
 動き始めは上手くいかなかったけれど、このペースで進んでくれればなかなかいいものが出来ると思う。
 何しろ学園祭まで、あと2週間はある。

「天野くん、黒板はどうする? 当日はメニューとか書いておいた方がいいのかな?」
「う〜ん。そんなにいろいろメニューがあるわけじゃないから、今作ってくれてるメニュー表だけでもいいと思う。
 黒板は………壁紙で隠してしまったほうが清潔感があるかも。その辺りは女子のほうでも話し合ってみてよ」

 惜しむらくは企画の段階からみんなの意見を取り入れたものを作りたかった。
 今回の企画やデザイン、方向性は多少なりとも喫茶店のことを知っている僕が急ごしらえした当たり障りの無いもの。
 学生がやるのだから、もう少しお遊び要素の強いものをみんなで意見を出し合いながらやってもよかったかもしれない

とも思う。
 始めからきちんと準備を進めていれば、もっと色のある模擬店になっていたかもしれない。
 そういう意味合いで最初の一週間分損をしてしまっている気がしないでもない。
 もっとも、始めからそうことが出来ていたのなら僕の出番など端から無かったかもしれないけれど……。

「そういうのは僕じゃなくて、実行委員の新田君に聞いてくれたほうが……」
「いいの、いいの。あいつ実行委員くせにいつも山岡さんに仕事押し付けて帰ってたのに、
 みんなが上手く動き出したら急に実行委員みたいな顔して出て来るんだもん。
 あんな奴の言う事なんか聞く奴いないって」
「そうそう。天野くんの方が頼りになるし、私ちょっと見直したかも」

 みんなの天野君を見る目も少しづつ変わってきている。と、山岡さんは言ってくれた。
 それを今、実感として味わっている。
 新田君には悪いけれど、みんなに頼りにされるのは―――悪い気分はしない。

「なぁ、天野。こっちはど〜すんの?」
「ちょっと待ってて、こっちが終わったら行くから」

 それに、こうやって忙しい間は少しだけ二人のことを忘れていられる。

「天野く〜ん。天井の寸法を測るのを手伝ってくれませんか?」
 山岡さんがメジャー片手に机の上で手招きしている。
「いいよ」
 と、返事して、手近な机に脚を掛け、
 山岡さんから手渡されたメジャーの端を固定しながら両腕を高く突き上げる。
「あれ? 天野くん、その肩の傷……」
「え?」
 今朝強く引っ張られた所為か手を掲げた拍子にYシャツの左肩が少し破けてしまっていた。
 真っ白いシャツの切れ目から赤黒い傷痕が顔を覗かせている。
 どうやら両腕を挙げたときに捲れあがってしまったらしい。
「昔の怪我、今はなんとも無いよ」
 シャツを手繰り寄せて、傷痕を隠しながらなんでもない風に言ってみせる。
「本当に?」
「うん。本当に」
 話を打ち切って作業に取り掛かる。
 あまりこの話題は長引かせたくなかった。

「ねぇ、天野君。まだ何か私に隠してること、ない?」

 僕を心配する声。
 同時に、僕を疑う声。
760転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:17:01 ID:PIjBTwYu
 隠してることは―――ある。
 けれど、それはもう昔の話。
 今更、蒸し返す様な話じゃない。
 たとえそれが優しさであっても、誰かに立ち入らせていい話でもない。
 そこは触れられたくない、触れさせるわけにはいかない心の境界。

「ないよ」

 きっぱりと言い切った。
 正直すぎる表情で悟らせないように全神経を張り巡らせて、努めて普通の顔を作る。

「―――そうですか」

 今まで聞いたことも無いようなひどく冷たい声。
 正直、別人が発した声と疑ってしまいたくなるような感覚。

「少し、付き合ってもらえますか?」
 作業が終わるのと同時にそう聞いてくる山岡さんはいつもどおりの山岡さんで、先ほどの一瞬が嘘のようだった。
「えっと……別に構わないけど……」
「じゃあ、ちょっとついてきてください」
 山岡さんは教室から廊下へと僕を連れ出す。
「お二人の件はどうなりましたか?」
 興味たっぷりといった口調で山岡さんは僕に問う。
 どうやら教室のみんなには聞かれないように気を利かせてくれたらしい。
「昨日話してみたら……やっぱり喧嘩になっちゃって……」
 それから僕は昨日の出来事をかいつまんで山岡さんに話した。
 もちろん、とても話せるような内容ではない部分は断片的な情報を繋ぎ合わせて、
 それらしく聞こえるように誤魔化して伝える。
 分かっていた事だけれど、昨日の記憶を辿って行くうちにだんだん気持ちが萎えてくる。
「わかりました」
 ひとしきり話を終えると、山岡さんは少し考えるように目を閉じて、
「天野君には辛いかもしれませんが、このまま距離を取って様子を見ましょう」
 そう提案した。

 様子を見ろって言ったり、仲直りしろって言ったり、
 みんな言うことが違うから、どれを信じていいか分からなくなってくる。
 それでも……

「ううん。帰ったら、姉さんともう一度ちゃんと話してみようと思う」
「どうしてですか?」
 慌てた様子で山岡さんがこちらを睨む。
 まるで、火に油を注ぐようなものだと言いたそうな表情だった。
「昨日は僕も姉さんも興奮してて、お互いが言いたいこともちゃんと言えないままだったから……。
 でも、今日なら少しは落ち着いてきちんと話せるかもしれない」
「私は反対です。昨日と同じ結果になるのがオチですよ。
 それに、昨日の今日でこちらからノコノコ出向いていったら、
 『やっぱりすぐに謝りに来た』ってお姉さんに思われます」
 山岡さんが厳しい表情で僕を見据える。
 おそらく、正しい事を言っているのは山岡さんの方だと思う。
 わかっていても、期待してしまうから……。
「辛いのは分かりますけど、いつまでもお姉さんや妹さんばかりに構っていたら二人のためになりません。
 天野君の所為で二人が自立できなかったら、それは不幸なことです」
761転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:17:49 ID:PIjBTwYu

 僕が理由で二人が不幸になる。

 そんなのは嫌だ。
 そんなことになったら―――僕はきっと自分で自分が許せない。

「二人のためです。我慢しましょう」

 無条件にアゴが引かれる。
 そんなこと言われたら頷くしかない。
 
「そんな暗い顔をしなくても大丈夫です。きっとそのうちお二人も気がつく時が来ますよ。
 いつまでも兄弟といっしょにはいられないって……」

 山岡さんは当たり前のことを当たり前に言っただけ。
 それなのに―――

「教室に戻ろ、あんまり抜けてたら迷惑がかかっちゃう」

 その当たり前に一番気が付いていなかったのは、他でもない僕だった。

762転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/10/03(水) 01:19:01 ID:PIjBTwYu
 ここまでです。
 更新が遅くなってしまい申し訳ありません。

 >>741
 毎回楽しみに読ませてもらっています。
 複雑な人間関係、ぞくぞくしてます。 
763名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 01:27:59 ID:YRur45zR
転帰予報リアルキタァー(゜∀゜)ーー!!!!
GJですよ!! 
次回も楽しみに待っていますよ
764名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 01:55:54 ID:tjeZKIjY
GJ!!
今日はいい夢が見れそうだ
765名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 01:58:33 ID:VfGnuCPA
>>762
久しぶりに「可愛いラブコメチックなヤキモチ」が見れた、登校中の雨音かわいいよ雨音。

でも「山岡さん、邪魔だあ!」とかも思ってしまった俺はやはり根っからの姉スキー
出番なかったけど、お姉ちゃんガンガレ
766名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 01:59:49 ID:aU0Yx8rI
>>762
今までは二人の姉妹のせいで霞んでいたけど、そろそろ片鱗を見せ始めた山岡さんにがんばれと言いたい!
今まで回想メインだったからそう思うのかも知れないけれど、毎回これくらいのボリュームと進行で投下して
くれると読む方としては嬉しいですね。

面白かった。 続き楽しみです。
767名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 03:45:51 ID:jYIO1bWX
八雲ちゃんはもしかして無意識下で姉に惚れてるのか!?
こいつはますます次回が楽しみだぜ・・
768名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 04:46:03 ID:T2EOjto4
みんなGJ



或る騎士〜読んでるとどうしても藤沢周平が浮かぶな
769名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 08:32:53 ID:eRJZiXdx
投下ラッシュキター
GJ!!
770名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 08:47:35 ID:fpVrRFX3
邪魔すんなよ、山岡!
って俺も思ってしまった。
姉妹にがんばってほしいな。
771名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 10:35:10 ID:mSOjqfts
大好きな作品が二つも読めるなんて・・・。素晴らしい10月の始まりだ。乙です!!!!
772名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 16:34:13 ID:wgtLHr2D
俺は断然山岡さんに頑張ってほしいけどね
山岡さん自身を気に入ってるからってのもあるけど、
トンビに油揚げをさらわれた姉妹による強烈な修羅場展開の方が個人的にもこのスレ的にも美味しいし
773名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 18:23:21 ID:i1qkTNPM
山岡って聞くと士郎さんしか連想できないから困る
774名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 19:04:33 ID:MxmI6bYG
俺なんかさらに唐沢としあきの顔が思い浮かぶよ。
775トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/10/03(水) 20:37:03 ID:72yI3eKr
では投下致します
776桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/03(水) 20:40:27 ID:72yI3eKr
 第15話『回想1』

「あっはっはははっは」
 胸を張り、声を高らかに上げて、俺はひたすら笑い続けていた。
 奈津子さん以外の酔い潰れてしまった桜荘のお花見会から1週間の月日が経っていた。
朝起きると自分だけで外で寝ていていた。おかげで少し体調を崩してしまったが、今日は楽しみに待っていた日であった。
 今日は営業を勝手ながら休業しているカレー専門店オレンジのテーブルの上で俺は喜びの余りに高笑いをしている。

「待ちにまった、今日は給料日。というわけでここに集まっている諸君は俺に何かを美味しい物を奢ってくれ」
 と、後ろを向いて告げる。同じ、テ−ブルに大人しく座っている3人をしっかりと見据えて、
「というわけでおまえらも100円ショップの買い出しに手伝うように」
「どうして、全然無関係な私まで連れて来られるわけ? あんた、何様のつもり?」
 朝倉京子が鋭い視線を向けながら、刺々しい口調で告げていた。
「今回はライバル店とかオレンジとか関係ない。
ある程度、顔と認識がある奴をそれなりに脅してこの場に集合させた。これから始まる戦いに敗北は許されるわけないからな」

「マジで言っているのかよ」
 朝倉京子はうんざりとした表情を浮かべていたが、俺は気にすることなく今回の100円ショップの買い出しに熱意を込めて、
ここに集まった皆に説明する。

「あのクソ店長が美耶子の賞金を支払うから俺の給料を払えないと血迷った戯言を言ってきたので、
そこにゴミグスのように転がっていた物体へと転化した。残り代金1万。
正に1ヵ月1万円生活をリアルでするはめになろうとは。安曇さんが大学関連で帰宅が遅くなって、
夕食が作れない日があれば見事に餓え死ぬぞ」


「お兄ちゃん……そこまでして食費を削って私の生活費と学費を払わなくても……」
「う〜ん。一樹さんにはもっと惨めで貧乏な生活を送って欲しいんですが。
1ヵ月1万円は私にとっては多すぎると思いますよ。
一樹さんは1ヵ月5円だけでやっていけます。私が保障するので、きっと大丈夫……ですから」
 と、横から声をあげたのは、心配そうに見つめる雪菜といつものように毒舌の口調で俺を精神的に追い詰める美耶子だった。
彼女たちを呼び出したのは昨日いきなり決定した創立記念日で学校が休みだからである。(いわば、サボリ)

「俺の給料を奪った張本人がどの口で言うのかな?」
「ふぇ〜ん。い、痛い。痛いですぉ。これは間違いなくイケメンで勝ち組のエリートだった彼が実はDV男だったオチですね。
私を精神支配して風俗に売るつもりなんですね」

「どうして、そこまで猛烈に下ネタに走るんだよ」
 美耶子の柔らかい頬を引っ張るが、本人は嫌がるどころか更に痛々しい妄想を口にするのはやめた。
さすがにこれ以上をやってしまうと俺のアイコラ画像を画像掲示板にうpされてしまう可能性があるからな。
「で、白鳥さんと進藤さんはオフなの?」
 と、騒動しい騒ぎにうんざりしている朝倉京子がここにはいない更紗と刹那の名前を口にした。

「二人は今日オフなんだ。てか、俺が休ませた。まさか、100円ショップで女々しく生活用品とカップラーメンを買っている姿を見れば、
いろんな意味で卒倒するだろうに」
「むしろ、1ヵ月1万円で過ごすこと自体が馬鹿馬鹿しいわよ」
「むっ。男の一人暮しはこんなもんですよ」
 安曇さんが夕食を作るまでは俺の食生活を悲惨すぎた。
家事一般は家を出るまでは親任せだったし、親がいない時に更紗と刹那の手料理ばかり食べていた、
天国のような環境にいたのだから仕方ない。

安曇さんや二人に頼りすぎるのは人として情けないため、出来るだけ自立しようとする
俺の健気な努力ぐらいは認めてくれてもいいだろうに。
 ただ、朝倉京子という女にとっては男の生物は性欲の塊で常に獣だと思っている節がある。
そんな、貧乳に男の独り暮らしの孤独と寂しさと苦労と虚しさを知れと言っても理解不能であろう。
777桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/03(水) 20:43:09 ID:72yI3eKr
「さてと、そろそろ戦場に駆け出すとするか」
 改めて、俺は笑顔を浮かべた。
「あ、あの、お兄ちゃん。学園の制服姿じゃあ普通にサボってきたの丸わかりなんだけど?」
「気にするな。少年少女が19時以降になるとカラオケ店に入ることができないような条令は、
俺が100円ショップでイヤホンをあるだけ買い漁る前には無力!!」

「一樹さん。最近では学園に行っている時間帯に歩いているだけで補導されてしまう条令が可決されるそうですよ。
まさにひきこもりにとっては開店前のゲームショップで並ぶのはいいカモになっちゃいました」
「あっはははっは。そんなもの。100円ショップで売られている有毒性の物質が摘出されたアルミ鍋に比べたら、
東方は赤く燃えてるぐらいに大したことじゃあない」
「うわっ……さすがは一樹さん。今の言葉を美耶子ちゃんメモにちゃんと記録しなくちゃ。 
一樹さん観察帳。ヘタレワーキングケアフリータがまたおかしな事を言ってきた。対処方法。
★ミキサーに入れて、粉々にして生き血はお姉ちゃんに飲ます。っと」

 と、バカな会話を繰り広げながらオレンジの外へと出た。朝倉京子、美耶子、雪菜を引き連れて街の外を歩いていると
周囲の男性たちから冷たい視線が送られてくる。。
一応、可愛い女の子3人を引き連れているからな。
羨望な眼差しで見られるのは仕方ないことだが、現実はそう甘くない。
俺はいつ爆発してもおかしくない時限爆弾を背負いながら、
街道を恐る恐ると頭の髪の毛が抜け落ちるぐらいに神経を使いながら歩いていた。

「どうして、私まで深山一樹のくだらない買い出しに付き合っているんだろうか」
「そりゃ、お前がオレンジの100倍カレーのネタをパクって、美耶子に一瞬にして無限コンボを喰らったせいだろうに」
 オレンジで異常に盛り上がった100倍カレーの似たようなネタを企画立案実行に移した
青山次郎と朝倉京子はオレンジより客を呼べると思っていたのだが、
美耶子があっさりと100倍カレーを平らげてしまったおかげで無駄に高額だった賞金を支払うことに。
それから、毎日嫌がらせのように美耶子は100倍カレーに挑戦して、カレー専門店ブルーの経営は見事に傾いた。

 あの女が伊達にデビルという称号で呼ばれているわけじゃない。
ただ、狡猾で腹黒い美耶子は今回の買い出しを条件に賞金をチャラにするという取引を申し込んだ。
しぶしぶと朝倉京子は条件を呑んで、現在に至る。

「だって。だって。だって。まさか、美耶子が挑戦するなんて誰も思わないじゃない。
てっきり、オレンジの疫病神であって、ブルーに来るなんて全然思わなかったもん」
「あのデビルはからかいやすい相手ならどんな嫌がらせにも労力と残業を惜しまない相手だぞ。
常にデビルの攻撃から警戒しないと」

「今度からそうするわ。デビル立ち入り禁止だけじゃあ甘いから、
デビルスレイヤー深山一樹の強制的呼び出しを発動トラップでも作っておかないと」
 なんだそれ。
778桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/03(水) 20:44:38 ID:72yI3eKr
 朝倉京子が危ないことを思いつかない前に俺はさっさと戦場の元に走りだそう。
100円ショップはカレー専門店オレンジから500Mぐらいに離れた場所で営業している。
すでに半分以上の道程は喋りながら過ごしてきたので走ればすぐに辿り着くだろう。
「じゃあ、先に戦場に特攻してくるぅぅぅ!!」
 目先の目的に頭が一杯だったのであろう。
俺はマンホールの蓋が開いていることに気付かずに最初の一歩を踏み外して、奈落の底に落ちた。

 それは唐突な出来事だったかもしれない。
何故、この時に限ってマンホールの蓋が開いているんだと行政の怠慢さに国家賠償請求で訴え殺したい。
ただ、わかっていたのは誰かの悪戯というよりも、あのお花見会で見た夢。
 さくらと名乗った少女の幻影が脳裏をよぎる。
 もし、彼女の仕業だったとしたら、マンホールの蓋ぐらい開けて、俺は落とすぐらいは可能であろう。
相手は桜の精。
人間外の相手なのだから、物理法則を完全無視にしてこの状況を作り込むぐらいは簡単なのであろう。
 やれやれ。下水道の中は異臭がするレベルじゃないんだよ。
どうせ、やるならば、大根で頭部を殴ってもらった方が精神的負担は小さい。
 ともあれ、頭を強く打ったので俺の意識は暗黒へと落下していく。
779桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/03(水) 20:46:54 ID:72yI3eKr
 と、彼は咄嗟に慌てて上体を起こした。夢から覚めた衝撃で状況を把握しようと左右に視線を振った。
だが、ここはよく見慣れた自分の家。
そう、引っ越す前の自分の部屋だと気付くと安堵の息を吐いた。あの夢に見ていた事は何かの悪い夢だったのだ。
「どうしたの。カズちゃん」
 と、更紗がにっこりと笑顔を見せている。

「カズ君が少し昼寝すると言ってから1時間以上も経っているんだよ」
 刹那も起き上がった俺に対して優しい笑顔を浮かべていた。
 そう、この情景には見覚えがあった。ベットから起き上がると
二人は受験勉強のために机に教科書やノートを載せて勉強していた。
大学受験のために3人で俺の部屋で勉強していた……幼馴染の絆が壊れていなかった頃である。

「俺は寝ていたのか? ゆ、夢を見ていたんだ。思い出せないけど、とても嫌な夢」
「カズちゃん、寝言で何かうなされていたらしいけど。どんな夢を見ていたの?」
「それが意味わからないんだ。なんか、俺が原因で更紗と刹那が喧嘩を始めて、

幼馴染の絆が木っ端微塵なぐらいに修復不可能になるまで砕かれてさ……
桜荘というボロアパートに逃げるんだけどさ。
そこに意味のわからない女の子達といつまでも馬鹿騒ぎをしているんだ。

それに俺はそこでカレー店のアルバイトをやっていて、店長とかいう変態の尻をいつまでも蹴り続けるんだ。
本当にそんなことがあるわけないのに」
 と、呼吸をすることを忘れて、俺は夢で見た恐ろしい事を更紗と刹那に告げていた。
 更紗と刹那は少し険しい表情を浮かべて、とあることに動揺していた。

「カズちゃんが女の子達と……」
「いつまでも、馬鹿騒ぎ……」
 二人とも暗い雰囲気を背負って、俺の元にやってきた。
「そんなの絶対に悪い夢だからさっさと忘れた方がいいよ。
カズちゃんと私と刹那ちゃんの幼馴染同士の絆はそう簡単に崩れないん
だから。私が絶対に保証するから。そんな夢の内容はさっさと忘れること。いいっ!!」

 忘れると言っても、あの夢は現実感がありすぎて、俺の頭に印象深く残りすぎた。
しばらくの間はその件で憂欝になるであろう。

「カズ君。女の子達といつまでも馬鹿騒ぎしている夢を見たと言っていましたね。
多分、大学受験の勉強ばかりやっているから欲求不満になっていると思うよ。
今度の休日に更紗ちゃんとカズ君と私でデートに行きましょう。それなら、嫌な事だって忘れるでしょ」

「刹那ちゃん。それナイスアイデア。3人デートしましょう」
「ああ。いいかもな」
 刹那が優しく手を握り、俺の頭を更紗が優しく撫でる。昔の自分ならそれだけ顔を真っ赤にして
振り払って虚勢の一つでも言っているのであろう。
だが、俺は二人の好意に甘えていた。もう、それが永遠と失われてしまうことを知っているから。
「カズちゃん」
「カズ君」

「ずっと、3人一緒だよ」

「ああ……」
 その言葉を告げる前に目の前の二人は消えていた。
 暗闇の視界に彷徨うと今度は新たな光の元へと意識はそこに辿り着いていた。
780桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA :2007/10/03(水) 20:50:12 ID:72yI3eKr
「どうしたんだよ。深山。あんまり飲んでないじゃないか」
 次、意識が目覚めるとそこは宴会場であった。声をかけたのはクラスの中でも仲が良かった
旧友の薔薇野がそこに居た。
どうやら、今度は学園時代のクラスの卒業記念として皆で飲み会に行った時のものである。
1年前の事なのに凄く懐かしいと思えた。

「うるせー。そんな気分にならないんだよ。てか、未成年でこんな宴会場を貸し切って飲んで喰えの騒ぎが学園にバレたら
卒業資格を失うんじゃねぇのか?」
「ここは学園のOBが経営している飲み屋だから大丈夫だろ」
「はい〜。そうですか」
「それに深山。白鳥さんと進藤さんを放置して大丈夫なのか? 
ほら、あそこでさ。女癖が悪い二人に捕まって、無理矢理に酒を飲まされてるぞ。
宴会を終わった後でラブホに連込んで襲われるぞ。
で、ヤってしまった写真で女の子を脅して嫌々に付き合うつもりなんだぜ」
「俺の知ったことじゃない」
「おい。深山。学園でも評判の良かった美少女の二人を狙っている男子なんていくらでもいるんだぞ。
二人が襲われてもいいのかよ?」
「もう、俺達は幼馴染でもなければ赤の他人だ。
更紗と刹那が他の男性と肉体関係を結んだとしても、何の関係もないんだよ。
それに明日は新たな場所に旅立つ予定だから、この後の二次会にも参加しないぜ。
まあ、勝手にやってくれと」

「見損なったぞ。深山。あれだけお前を慕っていた二人をこんな風に見捨てるなんて。
何で、いつから、そんな最低野郎になり下がったんだよ」
「俺が聞きたいよ。んなこと」
 薔薇野は今にも殴りかかりそうな勢いで俺の胸倉を掴むが、
この飲み会の場を、クラスメイト達の最後の交流を壊すことを恐れて、あっさりと離した。
それ以上に彼の憤慨している表情を浮かべて、俺の席から離れて行った。
 一人になった俺は静かに酒を呑んだ。酒の味はわからない。

とりあえず、美味しくないってことだけは確かだ。
学園を卒業したとは言え、大人は何でこんなもんを美味しいそうに飲むんだろうね。
しばらく、肴と酒を交互に飲み食いをして気分を落ち着かせる。
 更紗と刹那は青い顔をしながら、女癖が悪い男達に捕まって、無理矢理に酒を勧められていた。
恐らく、焼酎のようなアルコール頻度が高い酒であろう。
そんな酒の品種の名前を知らない彼女たちが、

恐らく、同じクラスメイトでもほとんど話したことがない男と絡まれているだけでも恐怖に等しいであろう。
ただ、男達の目的も知らずに酒さえ飲めば解放されると信じて、自嘲的な表情を浮かべて我慢して飲んでいる姿は滑稽であった。
 ふと、更紗と刹那と視線が合った。
 助けを求めるような子犬のような瞳で

(カズちゃん)
(カズ君)

(助けて)
 と、切実に訴えていた。俺は思わずその意図がわかってしまうので慌てて二人から視線を外した。
それが二人にどんな絶望を与えてしまったのか。知りたくもなかった。
 更紗と刹那をあんな形で振ってしまった俺が助ける資格なんてもうない。

 他の男が二人の体を目的で近付いて来ても、それは更紗と刹那とその男達との問題であって、
俺はその問題に触れることさえ許されない。無関係な人間なんだから。
 もし、そいつらが更紗と刹那を幸せに出来るならば、女癖の悪い男達でも別に構わないじゃないか。
他の男たちに無理矢理犯されてもさ……かえって免疫力がつく。

 悲観的に物事を考えて自嘲じみた笑みを浮かべると俺はコップに入ったお酒を飲み込んだ。

(ごめん。更紗。刹那。助けられなくて)
781トライデント ◆J7GMgIOEyA :2007/10/03(水) 20:52:40 ID:72yI3eKr
以上で投下終了です。
782名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 20:55:02 ID:5WFtaGmB
GJ!
・・・しかし一樹、最低だな
783一万年と二千年前から愛してる:2007/10/03(水) 21:14:55 ID:Zteekryw
タイトルは某アニメOP歌詞のパクリですが、中身はまったく関係ないので。
784一万年と二千年前から愛してる:2007/10/03(水) 21:15:48 ID:Zteekryw
スミマセンsage忘れました
785名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 21:18:11 ID:eRJZiXdx
GJ!だけど、>>782に同意かな
主人公の独り善がりでも、傷つくのはヒロインだし、男の強姦は「魂の殺害」って呼ばれてるほどえげつないらしいよ
786一万年と二千年前から愛してる:2007/10/03(水) 21:21:05 ID:Zteekryw
「す、好きです・・・わ、私と付き合ってください・・・」
彼女の名は大空翼。僕のクラスメートだ。
「え、僕なんかでいいんですか?」
何とも情けない台詞だが、仕方ない。だって、生まれてはじめて告白されたのだ。しかも、こんな可愛い子から
齢16にして彼女いない暦=年齢、つまり、もてない男だった僕がいきなり告白されたら思うのはまず
@罰ゲーム
A美人局
B誰かが隠れて笑ってる
のどれかだろう
787名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 21:22:45 ID:aU0Yx8rI
>>781
死亡フラグ乙
788一万年と二千年前から愛してる:2007/10/03(水) 21:26:27 ID:Zteekryw
まず、@かBだろう。実際@は以前食らったし(気付いていたので腹は立っても傷つかなかった)。
そもそも彼女との接点が無さすぎである。部活も委員会も違うし席も遠いしそもそもしゃべった事あったっけ。
しかし、彼女の顔が真っ赤なのとクラスの中で孤立している彼女がそんなゲーム参加するとも思えないし。疑うのも悪いし。
789一万年と二千年前から愛してる:2007/10/03(水) 21:28:24 ID:Zteekryw
トイレ行くから投下中断。スマソ
790一万年と二千年前から愛してる:2007/10/03(水) 21:31:03 ID:Zteekryw
再開。
791一万年と二千年前から愛してる:2007/10/03(水) 21:40:07 ID:Zteekryw
「は、はい・・・その、神山君じゃないと、ダメなんです・・その、私」
「あ、あのさ、間違ってたらゴメン・・・その、誰かに罰ゲームとかで言わされてるんだったら、正直にって?怒らないからさ」
突如、彼女の顔の赤が、羞恥のそれから怒りと悲しみのそれへ変わり、
「ば、罰ゲームなんかじゃありません!!わ、私がどれだけ勇気を振り絞ったと思ってるんですか!!」
物静かな彼女らしからぬ大声で怒鳴られたそして、我に返ったように
「あ、私・・・急に怒鳴ったりしてごめんなさい」
「い、いえ、いいんです。僕も言い方が悪かったとこがあるし」
792一万年と二千年前から愛してる:2007/10/03(水) 21:41:44 ID:Zteekryw
今、家が大きく揺れたので地震情報見るので投下中断します。ごめんなさい。
793名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 21:44:51 ID:Gp2qnZ8K
また例の人か?
そうだとしたら、改善が全くされていないような・・・
794名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 21:48:04 ID:6dV4NAsd
さらに改悪、既に(前回の時点でもだが)荒らし

さっさとNG登録してスルーが吉
795名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 21:48:41 ID:goyd/7SP
>>792とりあえずメモ帳とかに書き溜めてから投下してください

>桜荘、量が多すぎて正直読むのが面倒い
でも面白そうな気がして気になる
これまでのダイジェストとか纏めがあったりするとありがたいと、つい思ってしまう
796名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 21:57:44 ID:QKdKgFM0
見なかったことにしようじゃないか
797名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 21:58:33 ID:W5lSAxmP
>>795
>>779の14行目から17行目が粗筋
798名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:06:55 ID:dnGUq8gV
桜荘の文章の量は多いのか?
ラノベを読んでいるから、そんな風には思えないのだが
ネットの横書きは読むのは辛い

嫉妬スレの本を出版してくれ
4000円ぐらいなら俺は喜んで買いますよ
799名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:09:50 ID:Gp2qnZ8K
酉つけてくれないかな
いちいちNG登録すんの面倒なんだが
まあ、酉のつけかたも知らなさそうだけどさ
800名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:10:27 ID:2oLPISD4
>>798
過去の作品を全部収録したとすると辞典みたいなサイズになりそうだなw
801名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:10:53 ID:dnGUq8gV
>>792
この人は荒らしなのか?
802名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:13:38 ID:dnGUq8gV
>>800
嫉妬スレ辞典
引けば、いろいろと単語が出てきそうだ

で、450KBを超えたので誰か次スレを立ててくれ

スレの番号は39ではなくて、スレ その40だから
理由はこのスレを立てた人が事情を知らずに立てたけど
ここは事実上のその39なんだよな
803名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:21:11 ID:T7C3oTM/
さくらはいらないと申したか
804名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:24:39 ID:2fmV9Sj3
次スレは40ってことでいいのね。
まあ40個目のスレだからその方がいいね。
805名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:28:59 ID:PO6eHqSg
39・40合併号
なんてどうよ?
806一万年と二千年前から愛してる:2007/10/03(水) 22:34:41 ID:Zteekryw
ゴメンナサイ、メモ帳の文字全部間違って消しちゃったんです。
807名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:35:02 ID:eRJZiXdx
>>802
理由は知ってたけど、38っていう数字を飛ばすのもアレだからという理由だったはず
808一万年と二千年前から愛してる:2007/10/03(水) 22:35:48 ID:Zteekryw
メモ帳に一から書き直します
809名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:46:40 ID:dnGUq8gV
>>808
メモ帳に吹いたw

携帯で書いているかは知らんが
真面目に原稿用紙350枚ぐらい書く気はないのかな?
810名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:48:07 ID:aU0Yx8rI
スレ終盤のくだらない語呂合わせ論争が無くて良いね >その○○
811名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:52:13 ID:euOPhldW
あの流れも好きだったけどなぁ
812名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:54:25 ID:en4Mt5QZ
>>803
実の娘はあうあうだろ……
と前スレの良SSを読んで妄想したのは俺だけではないはず
光源氏計画
813名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 23:00:30 ID:PO6eHqSg
立てようとしたら

ERROR:新このホストでは、しばらくスレッドが立てられません。
またの機会にどうぞ。。。

勘弁してくれorz
誰かかわりに立ててくれるのであればリンク先を修正した新スレ用テンプレ張りますが?
814一万年と二千年前から愛してる:2007/10/03(水) 23:17:56 ID:Zteekryw
お詫びと言ってはなんですがhttp://blog98.fc2.com/d/densyakun/file/dwd06.jpg
815名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 23:19:15 ID:xl3WCQoH
40ん(しおん)とか?
816名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 23:58:27 ID:S8geNuWV
次スレです
皆で仲良く楽しく使ってくださいね
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1191423136/
817 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 00:00:57 ID:/NvkzUMj
どーも、お久しぶりです。妹愛の人です。
あれからもう1年半も経つんですね。
最近はずいぶんヤンデレもメジャーになり、
nice boat.やらなんやらすごいですね。

さて。
続編、投下しても怒られませんか?
818名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:02:22 ID:YwYOnZKk
>>817
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
819名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:05:42 ID:DSu+Vy9I
>>817
う・・・うろたえるな!修羅場スレ住人はうろたえない!
820名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:10:51 ID:MA/DALcB
誰だミサイルのスイッチを押したのは!
核が……核が投下されるぞ!
全軍正座して待機!
821名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:11:25 ID:mljMNKYj
>>817
どうぞ投下しちゃって下さい
822 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 00:13:23 ID:/NvkzUMj


 ―――季節の足音が本当に聞こえるならば、それは大層行儀の悪いことだろう。

 客人なら客人らしく、もう少し遠慮がちに上がりこんできてもばちは当たるまいと、私は最近よく思う。

 それでも、濃密な緑の匂いを纏った日光はいつしか、全てを包み込むような夕焼けへと姿を変えていた。

 眼下には歪な白線で描かれた楕円のトラックが幾重にもなり、

 その間隔をTシャツ姿の陸上部員たちが衛星のごとく駆け抜けてゆく。



 その中でもひときわ大きなストライド、というよりは大げさな大股で疾駆する姿があった。

 ともすれば小学生男子と見まがうようなショートカットに、無造作にゴムで止めたしっぽがぴこぴこと側頭部で上下している。

 無論走っている本人はふざけてなどいないだろうし、周囲もそれについて言及するにはちょっと足の速さが足りていない。

 集団のしんがりをつとめる少女が空を仰ぎ、半ばやけっぱちな叫び声でファイナルラップを告げた。

 弾けるように無茶なペースで駆け出す部員たち。だがその誰よりも、彼女は疾い。

 お尻にプラズマエンジンでも積んでいるのではないか、というような爆発的な加速の末に、

 彼女は二位にトラック半周分の差をつけてゴールした。苦しげにあえぐ声がここまで聞こえそうだ。
823 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 00:14:06 ID:/NvkzUMj
 と、不意に彼女は顔を上げた。こちらと目が合う。

「……おっ、ねえぇぇぇぇっ、ちゃあぁぁぁぁぁぁぁん!」

 校舎三階めがけて絶叫する高校一年生。周囲の人間がぎょっとするが、ああいつものアレかと言わんばかりの生暖かい表情でこちらを見やっていることが手に取るようにわかる。恥ずかしい。

「……勘弁してよね」

 いつだってあの子はそうだ。周りのことなんて一切見えていやしない。体はそれなり、頭脳はお子様ランチがよく似合う。

 それでも今日は、なんとなく付き合ってやろうじゃないかって気分になった。もちろんそれはほんの気まぐれで。

「……何よ!」

 ……どよめきと歓声が起こる。こちらが反応するのがそんなに珍しいのだろうか。

 妹は満面の笑みを浮かべ、

「……ばん、ごはーん、なにかなぁーっ!」



-----------------------------------------------



妹(わたし)は実兄(あなた)を愛してる -2nd Generation-



姉(わたし)も妹(あのこ)も恋してる



-----------------------------------------------
824 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 00:14:44 ID:/NvkzUMj
「と、このおばかは近所一体に聞こえるような大声で叫びやがったのよ」

「でへへー」

「でへへじゃないでしょう、もう!」

 思い出すだけで顔に血液が集まってくるのがわかる。

「あーもう恥ずかしい。何でこの子はこう子供っぽいのかしら」

 はた、と妹以外の全員が食事の手を止め、思索の波打ち際で水遊びを始める。数瞬の間を置いて、

「……時々、樹里の娘であることが信じられなくなるときがあるのは確かだな」

 これは父。

「……生んだ憶えも、育てた憶えも確かにあるんですが。特に思い当たるふしはありません。気づいたらこうなっていたというか」

 これは母。

「……育てた憶えはあるけど、至極真っ当な教育しか施していませんよ」

 これはもう一人の母。

「……至極真っ当じゃないのはむしろ楓かあさんの方よね」

「……うるさいだまれ」

 こちらを睨みながらテーブルの下で↓弱Kを連打する私の生みの母と、

 ただ乾いた笑いを上げながら目をそらす父。

 ヨソ様に事情を尋ねられるとちょっと困るどころかほぼ回答不能な我が家族とその成り立ち。

 それでも何とかやれているのは奇跡か偶然か、はたまた運命か。

825 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 00:15:18 ID:/NvkzUMj


 妹―――杏樹(あんじゅ)は、箸を両手に一本ずつ持ち、アジの開きをほじくりかえしている。

「こら、行儀悪いわよ」

「えー、だってできないものはできないもん。お姉ちゃんやってー」

「駄目よ。いつまで経っても焼き魚ひとつ満足に食べられないんじゃ、後々恥をかくのはあんたよ」

「ぶぅ」

 膨れているさまはまるで童女と変わらないが、ふと真顔に戻ったときに確信する。

 ころころした黒目がちの瞳も、日に焼けてなおきめ細やかな肌も、間違いなく樹里母さん譲りの美しさだ。

「―――もみじ。そういうお前もあまり食が進んでいないようだね」

 晩酌の缶ビールを傾けながら、父さんが心配そうな顔をする。

「ちょっと食欲がなくて。体調は平気よ。心配しないで」

「……そうか」

「心配しすぎよ。……大丈夫。私は平気よ」



 食卓を抜け出し、自室へと帰還する。

 自室といっても杏樹と共有しているため、実質私の陣地は二段ベッドの下段だけに等しい。

 残りの面積のほとんどは杏樹の所有するテレビやらホログラムディスク・レコーダーやらゲーム機やら、

 そういうもので埋め尽くされている。無論ドレッサーなんて洒落たものはない。

 さほど動いた記憶もないのに疲労がたまっているのか、はたまた別の要因か。

 仰向けに布団に倒れ込み、そのまま私は眠りの世界へと旅立った。

 夢は、みなかった。
826 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 00:15:53 ID:/NvkzUMj
………

……





「おねーちゃーん、あさー、あさだよー、あさごはん食べて学校行くよー」

 ゆさ、ゆさ、ゆさ。

「おっ、おっおっおねえちゃん、ああっああっあさささあさささだよっ、だよっ」

 ゆさっゆさゆさゆささささ、ゆささゆささゆさささゆさささゆさっ、ゆさっ。

「……姉の体でディスクジョッキーの真似するの、やめなさい……」



 お姫様抱っこでダイニングの椅子まで連れてこられてぐったりしている私の前で、

 甲斐甲斐しくピーナツペーストを塗りたくっている。

 家族の誰よりも早寝早起き、二軒隣の高橋さんちのおジイちゃんの朝の散歩に付き合うことも珍しくない。

 そんな杏樹は別に高血圧でもなんでもなくて、単に私の寝起きが悪いだけです。

「…そんなに厚く塗ったら胸焼けしそうだからやめて」

「えー、お姉ちゃん、ちゃんと食べないと大きくならないよー」

「そんなの食べても太るだけよ」

「むー」

 渋々私のトーストから余剰分をバターナイフでこそげ取り、自分の分に塗ってちょうど適正量。

 …こいつはただでさえ出るとこ出てない私の体を、出ないとこ出るようにしたいのだろうか。

 杏樹の出ているところを睨みながら、ブラックコーヒーを啜る。


827 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 00:17:54 ID:/NvkzUMj

夏の話なのは、書きはじめたのがその時期だからです。放置でしたが。

本業の研究と二足のサンダルなので、まったり進行です。どうぞよろしく。

828名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:29:19 ID:8Ld+uJkm
伝説キタァー(゜∀゜)ーー!!!!
829名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:41:48 ID:1qGA0jrf
GJ!!
いや、もうホント嬉しい
830名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:59:56 ID:HNcuw6y7
おや今度は百合かな?
ともあれ伝説の復活に乾杯
831830:2007/10/04(木) 01:03:14 ID:HNcuw6y7
失礼 このタイトル読み違えました。前作タイトルと同じ読み方でこの漢字なら
百合かなと思ったけど読み方も変わってるんですね。
832名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 02:16:05 ID:OgYsgspX
あはは……きっとこれは夢だ
だってさ、あれだぜ?
あれ……言葉が出ないや
ごめんGJ
833名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 02:35:35 ID:0uSiswpj
マジGJです。俺明日から就活するよ
834名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 04:27:39 ID:loVFSMpa
俺…素直クールの樹里ちゃんが静かな宣戦布告から逆襲する様を見てこのスレから離れられなくなったんだ……

生きててよかった…ッ
835名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 04:45:43 ID:dqKfyrZD
待っててよかった修羅場スレ…超GJ
836名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 05:05:21 ID:03S0Mf+X
>>827
伝説が、伝説が帰ってきた(・∀・)
837名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 05:16:21 ID:AtcnalhG
俺を嫉妬スレにはまらせた作者様きた・・・

1年半嫉妬スレはあなたの帰りを待ってました・・・GJ
838名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 06:56:27 ID:lIEU99Ln
伝説復活にアドレナリン沸いたわぁ…
839名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 07:40:02 ID:zKj/VdUq
元樹ももう中年だな
哀愁漂ってそうだ
840名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 10:41:38 ID:ecBeEByd
そういや確かに一年半だ。

当時はまだツンデレ最盛期だったよなぁ…。
841名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 11:14:02 ID:ZgQb1cpQ
ぎゃおーーーーーーー!!!
何か光臨してる!!!
842名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 18:04:58 ID:KgV2yHSn
………馬鹿な!!
なんだこの焼け野原……まさか核?核なのか!?

……ちっ、残留放射能が回ってきちまった
……ごめん、俺……もうお前のところには……
843名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 19:21:15 ID:KKIA5abU
俺も汚染されちまったぜ…。
844「わたあの 第2話」 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 19:40:59 ID:/NvkzUMj
 そうこうしているうちに、走行しなければ本鈴にすら間に合わない時間帯になってしまう。

「おねえちゃんが食べるの遅いからこうなるんじゃなーい」

「お、起こされてねえ、い、いきなりっ、はぁっ、あんなおも、重いもの、食べさせてっ」

「やっぱりマーマレードの方がよかった?」

「うっさいっ、ばかっ、ばか杏樹っ」

 歩幅のギア比は子供用自転車と、大人のそれくらいの差があるのはもちろん、

 奴には元気印のバッテリーアシストがあって、私にはない。

「おねーちゃーん。怒鳴るとますます疲れるよー?」

 もう疲れました。

 思わず立ち止まる。と、急には止まれない杏樹が逆チョ○Qのような挙動で戻ってくる。

「ギブ?」

「…ギブ。だからあんた、先に行きなさい…」

 既に気温が上がり始め、汗ばむような陽気の初夏の朝なのに、熱を出して寝込んでいるときのような嫌な汗と寒気がする。

「…やだ」

 ぶんぶんと首を横に振るたび、でんでん太鼓の振り子のように遅れてついてくるお下げ。

「…やだ、じゃない。あんたまで遅刻すること、ないでしょっ」

「やだっ」

「…いいから、先! 行きなさいっ!」

 精一杯怖い顔をして、姉らしい命令口調で怒っても。

 …それでもこの子は、優しいから。

「だめ。お姉ちゃんだけ遅刻させるなんて、あたしが許さない。

 もっとあたしが、ちゃんとお姉ちゃんを起こせばよかったんだ」

「…私の、寝起きが、悪いのは、あんたの、せいじゃ、ねーでしょ」

 …まずい。真っ暗な目の前で、朝なのに七番星くらいまで輝いている。

「いーの。お姉ちゃんはあたしのおねーちゃんで、おねーちゃんだから。

 おねーちゃんはね、どっしり構えて、うむうむ言ってるだけでいいの」

「…どこのボスよ」

「あたしの、ボスだよ」
845「わたあの 第2話」 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 19:43:34 ID:/NvkzUMj
 腰の辺りをホールドされ、ひょい、とリフトアップされる。

「ちょ、あんた、それは禁じたはずでしょ半年前にっ」

「非常事態だよっ」



 父親と子供以外が行ったところで道交法に抵触するわけではないが、

 少なくとも年子の姉妹で、かつ妹が足役というのは現実的ではない。ないのだが。

 ただでさえ狭窄した視界が、高いわ揺れるわ秒速数メートルだわで。

 ―――いちばん、現実的でないのは、なんだっけ……?

 そんなことを考えているうちに、私の脆弱な意識は、あっけなく途絶えてしまったのであった。



 結局、意識が戻ったのは昼近くになってからだった。

 水を打ったように静まり返った部屋の中、白衣を着た保険医の先生がなにやら書類を書いている。

「…気分はどう?」

「…まあまあ、です」

846「わたあの 第2話」 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 19:44:17 ID:/NvkzUMj
 正直なところ、すぐに動けるような状態ではない。

 だが、そこで素直にそういってしまえば、妹の好意がなんだか無駄になってしまうような気がして、

 私は強がってしまった。それを見透かしているのかいないのか、

「まあ、もうすぐお昼だからね。昼休みが終わるまで、ゆっくりしていきなさい」

 そんな風にため息をついて、また机に向き直る。

「はい」

 先生はボールペンを握った右手を淀みなく動かしながら、

「ところで、最近の体調はどう?」

 虎柄チームの動向を尋ねるような口調で、問診が始まる。

「いえ、特には…」

「関節が痛んだり、目が覚めてすぐに胸が痛くなったりは?」

「しません」

「指先や手の甲が痺れるような感じがしたりしない?」

「はい」

「……月経は?」

「いえ……」

 要するに現状維持。好転も悪化もしていない。
 そもそも私の身体構造が、そんな簡単に表現できる類のものかというとかなり怪しい。
847「わたあの 第2話」 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 19:45:08 ID:/NvkzUMj
 この国の法律において婚姻できる下限を過ぎてなお、わたしの身長は百四十センチに満たない。
 というより、年齢が二桁になるころにぴたりと成長が止まってしまった。
 先天性の遺伝子異常によるものだ、と聞いてはいる。
 まあ、私の父と母が実の兄妹であることを考えればやんぬるかな、といった塩梅である。
 それが初めて判ったとき、父母は自らの背負う業に随分打ちのめされたらしいが、
 私からすればそんなものは元々存在しないと言うしかない。

 私は自らの宿命について、何の絶望も抱いていない。
 自由になる両手両足があり、家族は皆健在で、日々の衣食住に困ることもない。
 生殖能力を持たぬ不具者として生涯を過ごし、
 せいぜい母のように世間にミームを撒き散らして消え去るのも悪くない。
 そんな風に考えている。

「さしあたって危険な兆候はないみたいね。
 でも、少しでも違和感を感じるようなことがあったらすぐに私の所に来なさい。いいわね?」
「はい」
 私の家族の真実を知る、数少ない人間のひとりであるこの保険医は、
 この学校の校医であると同時に私の主治医でもある。
 というより、私のためにここに出張してきている、といったほうが適切だろう。
 何故そのような特別待遇―――というほどのものでもないが―――を受けられるかについて、
 周囲の大人は言葉を濁す。私に対して後ろめたい密約でもあるのか否か、
 実はやっぱりどうでもよかったりする。
848「わたあの 第2話」 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 19:46:30 ID:/NvkzUMj
「さて、私はこれから用事があるから。誰か来たらしばらく戻らないって伝えてね」
 保険医はぱたぱたと内履きを響かせながら、足早に保健室を後にしていった。

 とたんに静寂を取り戻す室内。窓は開け放たれているがカーテンは揺るがず、
 校庭を挟んだ反対側を通る車の走行音も、ここからではほとんど聞き取れない。
 無論、そこから孤独を想起するような私ではない。
 あと数十分もしないうちに、あの騒々しい妹とクラスメイトたちが大挙して押し寄せ、
 私のつかのまの平穏を瞬く間に蹂躙してくれやがるだろう。
 
 だから私は、この純白の大海原に身を投げ出し、かりそめの"独り"を愛する。
 たとえそれが、ほんの一時であっても。
 味わっていたいって、思うんだ…

………
……
849「わたあの 第2話」 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 19:47:05 ID:/NvkzUMj
 と、ちょっぴり切なげな気分になるのにはもちろん、きちんとした理由があるわけで。
 教室の椅子に座らせられて動くことは許されず、周囲をクラスメイトに塞がれている。
 極めて誤解を招きやすい表現を意図的に使うとこうなってしまうが、私はいじめを受けているわけではない。

「やぁぁぁん、もう! もみっち可愛すぎ! ラブ! 超ラブ! 極ラブ!」
「ホント、素材がいいからどんな髪型でも似合うわね」
「ね、ね、ね、せっかくだから軽くメイクしてみよっか」
「次はツインテールでしょう、常識的に考えて」
「もみすけの愛らしさは異常」
「念」
 暇さえあればこんな風に、人形遊びに付き合わされる羽目になっている。
 どうでもいいけど極って何? 発泡酒?
 そして、何より許しがたいのが。

 机に頬杖をついて、でれーんとメルトダウンしている。
 妹。

「ちょっと待って、いつも思うんだけどあんた、私の妹でしょ?
 姉に萌えてどうす―――」
「はいはい立たないで動かないで息もしないで」
 やっぱりいじめかも。これ。

 結局、授業開始までに追加で三度お色直しをさせられ、
 グロッキーになっているところを教師に心配されてしまった。
 ひっきりなしにPDAに届き続けるメール(主に発信源は私の周囲の女の子、たまに男の子)に返事をする気力もなく、
 重力に引き寄せられるままに机の天板とコンタクトしつつ、残りの授業をやり過ごした。
850「わたあの 第2話」 ◆kQUeECQccM :2007/10/04(木) 19:52:23 ID:/NvkzUMj
まだまだ導入部が続きます。すみません。

もしスルーされたり叩かれたりしたらどうしようかと思っていましたが、
みなさん暖かくて正直泣きそうです。
みなさんの反応が僕の生きがいです。ありがとうございます。

あまり関係ないですが、アニメDC2って修羅場りそうじゃねえですか?
851名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 20:09:28 ID:yGqK7Dxv
GJ!!!
なんという・・・素晴らしさ。
852名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 20:13:31 ID:x4G6dnn7
なかなか二代目実兄が出て来ないな
853名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 21:01:08 ID:OgYsgspX
修羅場スレ住人としてどうかとは思うけど
この家族のほのぼのがずっと続けばいいと思ってる俺がいる
GJ
854名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 21:16:27 ID:8xWUuaLf
粘着質に待ち続けた甲斐があった……GJ!
いずれ失われるであろうと思うからこそ穏やかな日常がいとおしくてたまらない。
855名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 21:21:49 ID:rEORp3ok
まだ誰に「恋してる」のかは不明なんだな
856名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 21:45:40 ID:52SE/5fB
神が降臨された。
まずはありがとう御座います。
あぁ、わたあなは何回読んだだろう。
修羅場スレは永遠だーーーー!!
857名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 00:02:57 ID:loVFSMpa
>>850
修羅場ってもらわなければ困る。

キミ〇スも修羅場にならんかね…っつーか修羅場れ。
858名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 00:58:44 ID:tYhvKEQ+
GJです。なんか意味もなく興奮してきた。今夜は眠れなそうだぜ
859名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 01:39:54 ID:cs5YaKeB
kaminikannpai
860名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 01:52:32 ID:3RVNYjzh
>>850
一年半と二千年前から愛してる。
861名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 22:57:02 ID:+ZNsaPlz
862名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 23:57:42 ID:8jAP9PDI
前スレの埋めネタの続きを待ってるのは俺だけでいい・・・
863 ◆88FzqwpUTw :2007/10/06(土) 06:29:05 ID:NDgT8JeV
投下します。
864しにがみのバラード ◆88FzqwpUTw :2007/10/06(土) 06:31:21 ID:NDgT8JeV
宵高の死神。
ずいぶんとかっこいい呼び名だな、と思う。
実際は、そんなクールなイメージにそぐわない冴えない男なのに、誰がつけたかセンスが無さすぎる。もっとこう、しっくりくる呼び
名はなかったのか。
例えば、加藤環ならこう呼ぶ。
でくのぼう、と。

そのでくのぼうこと、米本真守は環の幼馴染みである。「真守」なんて名前のくせに、昔から泣き虫で、よく名前負けだと笑われてい
たものだ。かくいう環も、子供の頃は男のくせにすぐにピーピー泣く真守にうんざりしていた。おまけに気が弱く、おとなしい性格の
真守はちょくちょくクラスメートに泣かされて、そのたびになぜか環に頼ってくるから面倒くさい。
面倒くさくてたまらなかったが、幼馴染みの縁で仕方なく助けてやっていた。
そんな真守も中学に入学すると、ようやく泣き癖も治まり、その頃からグングンと背が伸びていった。環よりずっと小さかったのに、
気付いたら同丈に、高校二年ともなると首が痛くなるほど見上げないと真守の顔が見えないくらいになっていた。
今、環の身長は166センチ、女子としては大きいほうだ。だけど、それ以上に真守が大きい。
米本真守の身長は185を超えていた。
だけど、真守が大きくなったのはあくまで身長だけ。内面はちっとも変わっていない。おとなしくて、気が弱くて、トロい。だから、
でくのぼうなのだ。
865しにがみのバラード ◆88FzqwpUTw :2007/10/06(土) 06:33:22 ID:NDgT8JeV
「ほらっ!! 早くしなさいっ!! 学校遅れちゃうじゃないっ!!!」
環は後ろを振り返りながらそう怒鳴った。だけど、怒鳴った相手の真守はそんなのどこ吹く風で、もはや癖になってしまったのではな
いかと疑うほどの見慣れた柔らかい笑みを浮かべていた。
「もうっ!! 学校遅れたらアンタのせいなんだからねっ!!」
一向に急ぐ気配のない真守に、環は顔を真っ赤にして怒った。だけど、真守は気にしない。それどころか、遅刻ギリギリのこの時間に
も真守は呑気に、こう言った。
「だったら、先に行っててもいいよ。俺は後から行くから」
あくまで呑気な真守に、怒る自分が馬鹿のように思え、しかしそれが気にいらなくて逆にいらつく。
まったく誰のせいで遅れそうになっているのか、分かっているのか。全部真守が寝ぼすけのせいではないか。こちとら真守のお母さん
に頼まれて、仕方なく毎朝迎えに行ってやっているのだ。そんな態度なら、すぐにでも迎えに行くのを止めてもいいんだぞ。遅刻ばっ
かりになって泣きを見るのは真守なんだ。
そう心の中でまくしたて、ふーふーと肩で息をする。どうやら、そこら辺をきっちりと教えとく必要があるようだ。
環はかしこまるような咳払いをひとつして、
「あのね、真守。あんた分かってないみたいだから言っとくけど、自分が何回遅刻したか分かってんのっ?」
「さぁ? 五回目くらいまでは覚えていたんだけど、もう分からないよ」
866しにがみのバラード ◆88FzqwpUTw :2007/10/06(土) 06:34:03 ID:NDgT8JeV
そう言って、真守は誤魔化すように笑った。もちろん環はそんな事では騙されない。
「冗談っ! 三十回よ、三十回っ!! まだ七月なのに、どうやったらそんなに遅刻出来んのよっ!!!」
「よく数えてたね」
感心したように言う真守に、怒りのボルテージがもう一つ上がる。
「馬鹿っ! そんなわけないじゃないっ!! あんたのお母さんから電話があったのっ!!!」
「へぇ〜、そうなんだ。母さん、何て言ってた?」
他人事のように言う真守に、さらに怒りのボルテージアップ。
「これ以上遅刻したら、進級が危ないんだってっ! あんたのお母さん、泣いてたよ!?」
その言葉には、さすがの真守も驚いたように目を剥いた。そして何かを考えこむように、ん〜、と唸ってから一言。
「それは大変だね」
あくまで微笑みを絶やさない真守に、環の怒りは沸点に達した。
「馬鹿ーーーーーーーっ!!!」
環の絶叫が空に響く。
近くの電柱でおとなしく鳴いていた雀が驚いて逃げてしまった。
夏の空は青く。そろそろ蝉の鳴き声も聞こえてきそうだった。
867 ◆88FzqwpUTw :2007/10/06(土) 06:43:55 ID:NDgT8JeV
投下完了。
トリップさえ忘れてしまった「すみか」の作者です。
夏休みの間はほったらかしにして、すみません。
言い訳じゃないけど、夏休みは忙しかったんだよ?バイトしたり、自分でも分かるくらい明らかに変な場所から生えた親知らず抜いた
り。
ともかく、これからはもっと定期的に投下できる……ハズ。また暖かい目で見守ってやって下さい。
ちなみに今回投下したのは、ツンデレ最盛期に書いたヤツです。埋めネタとしてちょくちょく投下するつもりなので、よろしかったら
読んでやってください。
長々と述べさせて頂きましたが、全部言い訳です。ごめんなさい。
868名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 12:26:24 ID:1inKsvJI
>>867
復活乙
869名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 12:57:41 ID:2692HN/k
投下乙!
870名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 17:09:44 ID:RqHCzWbT
うんうん、ツンデレはイイね。
いずれ横から出てきた泥棒猫に(自分だけが思いこんでいた)大事な思い出を踏みにじられる絶望を思うと
wktkが止まらない。
楽しみにしてます。
871名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 20:29:56 ID:lpYYaJvo
作品の内容よりも、どうしてそんな呼び名がついているのかって方が気になってしまったw
……ひょっとして間柴か。間柴なのか。
872名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 19:08:35 ID:3+aKR216
>>870を読んでふと思った

刺されたいとか思ってるから今まで自分の事Mだと思ってたけど、
他人の不幸で興奮するのってむしろSじゃねぇか?
873名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 19:34:50 ID:x82VDOOw
ヒロインが嫉妬で不安定になるのにゾクゾクとするのと、
ヒロインが嫉妬で攻撃的になるのにゾクゾクとするのの、
両方がいるんだよ。
両方に需要があるんだよ、このスレは。マーベラス。
874名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 20:19:53 ID:h4KHiuLb
あぁ、つまり両刀使いという事か。
875名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 21:50:36 ID:lYDVht3w
秋は人恋しくなるな
絶対毎日来てくれるんなら監禁されてもいい気がしてきた
876名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 10:15:32 ID:4zgC+04P
>>875
見知らぬ美少女には気をつけろよ。
間違っても渡されたものその場で口にするなよ。
877名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 19:14:51 ID:kRzEtWPn
他の女と話さないで
878名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 21:09:35 ID:pdSlabBP
ナデナデシテー
879sage:2007/10/08(月) 22:05:05 ID:9GEs5Jm2
 埋めネタに、没にした習作の一部を載せてみる。
 お目汚しスマソ。
880名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 22:06:42 ID:if4qS3nE
sageの位置が違う
881sage:2007/10/08(月) 22:07:02 ID:9GEs5Jm2
 指で肩胛骨を嘗められる感触に喘ぐ。囁かれた言葉がスイッチに
なったのか、全身がまるで性感帯になってしまったようだった。脳
髄を白く焼く快感の波は、気持ちよさよりも苦痛として認識される。
身体を嘗め回る指から絶えず送り込まれるそれに僕は逃げ出すこと
さえ思いも寄らない。結局、始めてから一分と立たずに、僕は信じ
られないくらいあっさりと射精した。
 そんな僕の醜態を見て、おねえさんは「あらあら」と、まるで困
ったとでも云うように苦笑する。

「ひぃちゃん、もう精通しているのね」

 クスクス、と。
 妖艶――今の僕ならばそう評するであろう笑顔で僕を見下ろしな
がら「どうしようかしら?」と呟いたおねえさんを見たとき、僕が
抱いたのは確かに恐怖だった。表面上はいつもとかわらない笑顔な
のに――否、むしろ、だからこそ内面に荒れ狂う情念の熱量が強調
されて感じられたのかも知れない。まるで尽きぬ炎を閉じこめた氷
のようだ。いつ表面が溶けて炎が溢れ出るか分からない恐怖を、僕
は確かに感じていた。
 そして、そのことに怯えることしかできなかった。
882sage:2007/10/08(月) 22:08:21 ID:9GEs5Jm2
 おねえさんは怯える僕の首筋を甘噛みし、そのまま口を離すこと
なく顎と手を使って僕のパジャマを剥いでいく。

「ねぇ、風邪なんて嘘でしょう?」

 嘘じゃない、とは云えなかった。歯からもたらされる触感が血管
を伝って脳を揺らす。どくんどくんと、首筋に心臓ができたような
錯覚を受ける。言葉が喉で食べられている感じ。云いたいことが声
にならない。
 僕の答えがないと見るや、「ほら、やっぱり」とおねえさんは笑
った。熱い熱い吐息が首に掛かって、思考も意志も融かされてしま
う。
 コリッと強めに血管を噛まれて不意に自分の身体が踊るのを感じ
る。どうやらまた射精したらしい。それに気付いているのかいない
のか、おねえさんは首筋をかみ続ける。

「どうして嘘なんか吐いたの? さとくん――お兄さん、今日はわ
たしとデートの約束をしてたんだよ?」

「さとくんってば優しいから、ひぃちゃんのために今日はデートを
すっぽかしちゃった」と、悪戯に引っかかってすねる子供の口調で
おねえさんは語りかける。
883名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 22:09:32 ID:9GEs5Jm2
「わたし、今日は携帯電話家に忘れちゃって。待ち合わせ場所に行
く途中で気付いたんだけど、約束してた時間に遅れないようにって
取りに帰るのを諦めて急いだんだけど、さとくん来ないし。ずっと
待ってたのにさとくん来なくて。せっかく作っていったお弁当とか
どんどん冷たくなっていくのにさとくん来なくて。公衆電話からさ
とくん家に電話しようとも考えたけど、待ち合わせ場所から見える
範囲に公衆電話がなくて、もし擦れ違いになると行けないから、擦
れ違いになってさとくん帰っちゃったらイヤだからずっと待ってて」

 ざくり、と露わになった素肌に爪が刺さる。痛みはない。それは
快感であり、だから苦しいとしか感じない。そのまま爪が捻られて、
それをある種の陵辱ととるならば、僕はあのとき犯された。
884名無しさん@ピンキー
「もしかしたら待ち合わせの日を間違えたのかな、とか。」

 †(ざくり)。

「もしかしたら待ち合わせは昨日で、さとくん怒って帰っちゃった
のかな、とか」

 †(ざくり)。

「それで、愛想尽かして昨日の夜も電話くれなかったのかな、と
か」

 †(ざくり)。

「どうすれば許してくれるのかな、とか」

 †(ざくり)。

「もしかしたら、どうやっても許してくれないのかな、とか」

 †(ざくり)。

「なんでこんなことになったんだろう、とか――」

 畑を桑で耕すように、間断なく爪を突き立てられる。剥き出しの
感情をあんな風に暴力として向けられたのはそのときが初めてで、
僕は思考を殺されてしまう。おねえさんにのし掛かられてから十数
分、僕にはもうまともにものを考える思考すらなくなっていた。自
分が今どこにいてなにをされているのかという認識さえまともに出
来ない。

「――全部、ひぃちゃんの所為だったんだね」