メカチンコに格納されてたに決まってる
654 :
マリー書く人:2008/02/12(火) 10:20:23 ID:qmcFgeAp
投下しようと思ったが、スレに収まらない悪寒
とりあえず、前編後編に分けてみて、
収まりきらないなら後編部分を次スレに
ぶち込んでみてはいかかでしょうかサー。
656 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 20:31:11 ID:NPYLFLsY
657 :
マリー書く人:2008/02/13(水) 02:08:53 ID:M3kaya4R
投下できそうなので投下します。
前編、後編に分かれていますので、ご注意。
また、前半はエロが微エロですし、後半は少ししかエロがありません。
そういうのが嫌いな人はマリーでNG指定してください。
また、今回実験的なものなので。
NGワード:女装、寝取り、一人称視点
最後に一言……俺は寝取りもアウトなんだ。
美しき死神、銀髪のマリー様
このたび、『エンジェル』、『ギルド』、両組織と協力し、
力を合わせてダンジョン探求をすることを命じます。
都市部のエネルギーの需要が高まってきています。
このままでは、エネルギーが不足してしまう可能性がでてきております。
それを防ぐために、エネルギーを採取しなさい。
集合場所
オロイアス広場
5月31日14時00分
エンジェル最高位『ハイプリエンス』より
ポストに入っていた手紙の内容は、こんな脅迫とも取れる命令だった。
あまりにも短い内容に、思わず手紙が入っていた封筒の中を覗いてみた……中には空気しか入っていなかった。
「なんという命令口調。よほど自分が偉いと勘違いしているか、真性のサディストか、
はたまた挑発しているのか……日時が当日とか、もっと早く出せというに」
力いっぱい相手を見下している命令に、暗雲たる気持ちでため息を吐いた。
すると、鼻歌まじりで簡単な食事を作ってくれていたサララが、僕の方に振り向いた。
美しい少女だった。肩甲骨の辺りまで伸ばされた黒髪が、
ふわっと流れ、見ていて思わず微笑んでしまいそうな笑顔を僕に向けた。
身に付けている緑色のエプロンが、サララを一段と清廉に見せた。
もちろん、それがなくても十分過ぎるほど美しい。僕の贔屓目かもしれないけど。
「どうしました? 何か気に障ることでも……」
大量のスクランブルエッグとソーセージを乗せた皿を、テーブルに置いたサララは、僕にそう尋ねた。
「サララは気にしなくていいよ。エリート達のお誘いの仕方がマナー違反だったから、ちょっとやる気がなくなっただけ」
「そうですか……それでしたら……いいのですけど……」
ちょっと不安そうな顔で、サララは俯いた。
おや?
サララの不安そうな表情に、僕は疑問を抱いた。
しかし、僕が何か話す前に、サララは俯いていた顔を上げて、輝くような笑顔を見せた。
「それではマリー様、後はスープとパンを焼くだけですので、席に座っていてください」
そして僕の手を取り、サララは椅子を引いて、座る用意をしてくれた。
なんだかくすぐったいような、居心地が悪いような、不思議な思いで腰を下ろした。
サララは僕が座ったのを確認すると、再びキッチンに戻った。手早いその動きから、料理の腕前はかなりのものだろうと推測される。
僕はテーブルに視線を向けた。
テーブルには、綺麗なテーブルクロスがかけられ、美味しそうな料理が並べられていた。手元には、縦に並ばれたナイフとフォークが置いてあった。
キッチンの物は好きに使っていいと言ったけど、わずか10分の間にこれだけの物を用意するとは……サララ、恐ろしい子。
「……………………」
忙しく料理をしているサララの後姿を見つめる。
サララの身体が右に左に移動する度に、華麗に流れる黒髪。動くたびに背中の筋肉が動き、健康的な美しさを見せていた。
それに合わせて、サララの絹のようにみずみずしく張りがある桃尻が左右に揺れる。
そう、サララの姿をはっきり言葉で表すと、裸エプロンだ。声高らかに、裸エプロンだ! 万感の思いを込めて、裸エプロンだ!!
僕は侮っていた。裸エプロンとか、そんなに良いものでもないだろうと。
僕は後悔していた。今まで、こんな素晴らしいものを、蔑ろにしていたことに。
僕は感動した。女性だけがもつ、料理の美しさと、いやらしさに。
そんな僕の思案を他所に、サララは手早く用意を済ませていく。それと同時に、僕の用意も済んでいく。
サララがコンロの火を止めるために身体を横に向ける。それと同時に、サララのお尻がぷりっと弾む。
続いて料理をテーブルに持ってくる。エプロンに浮かぶ、サララの乳首が妙にエロイ。
僕の視線に気づいているのかいないのか、サララはエプロンを付けたまま、椅子に座った。
僕のコップにオレンジジュースを注ぎ、次に自分のコップに注ぐ。そして、じっと僕の顔を見つめる。
おっと、いけない。僕は自分の両手を合わせた。サララも僕に習って両手を合わせる。
「「いただきます」」
僕とサララ、二人の声が重なった。
食事も済み、僕がソファーでくつろいでいると、家事を終えたサララが近づいてきた。
その身体に、エプロンは装着されてなかった。つまり、生まれたままの姿です。
形良く、美乳といってもいい乳房が歩行に合わせて揺れる。裸でいても大丈夫な季節とはいえ、風邪を引いてしまいそうだ。
「……サララ、エプロンは?」
「汚れてしまいましたので、洗濯機に入れてきました」
サララは、裸でいるのもどこ吹く風、まったく気にしているように見えなかった。
「……僕の服でよければ、着ていいよ」
「マリー様のお洋服など、私にはもったいないです。私は普段、裸でも平気です」
「それじゃあ、服を買いに行こう。といっても、ダンジョンで稼いでからだけど。それまでは僕の服で我慢してね」
「いえ、そこまでして頂くわけには……」
遠慮がちに、サララは僕の提案を拒否する。けれども、ずっと裸で居られては、僕の方がたまらない。
このままでは毎日猿のように過ごしてしまいそうだ。僕自身、ばっちこいだけど、サララの身体が持たないだろう。
サララはきっと顔に出すことなく、僕を受け入れてくれるだろうけど。でも、そういうのは嫌いだ。どうせなら、お互いが楽しく、幸せに過ごしたいし。
しかし、どうしたらいいかな。下手に言っても、サララを傷つけてしまいそうだし、かといって、裸のままでいさせるのは可哀想だ。
僕はサララの裸身を、黙って見つめた。
すると、何を勘違いしたのか、サララがポーズをとり始めた。
小ぶりの乳房を見せ付けるように背を逸らしたり、腰をくねくねと左右に捻る。サララのまろやかなお尻の肉付きがチラリと姿を現し、隠れる。
油断すると、すぐセックスアピールしてくるのか。僕自身、やりたい盛りのお年頃だけど、
それでも一日中盛るのは良くないことくらい分かっているので、止めてほしい。
……ちょっと待て、逆に考えれば、これを逆手に取ればいいだけの話だ。試しに言ってみよう、脱がす楽しみを奪うのか……と。
「脱がす楽しみを、僕から奪うというの?」
「分かりました、直ちに着てきます」
「いや、そんな急がなくていいよ」
効果は抜群だった。というより、前言撤回するの早くない? もしかして、僕が喜ぶことなら何でもしてくれるのかな……してくれそうだな。
僕は苦笑して、サララを軽く手招きして呼んだ。サララは嬉しそうにソファーに腰を下ろした。そして、僕の腕を抱きしめた。
僕の衣服の上から、柔らかい乳房の弾力と、温かい体温が伝わってくる。
生地の薄いワンピースを身に付けていたせいで、余計ダイレクトに感じる体温。
僕とサララの背丈は同じくらいなので、自然とサララの横顔が僕の顔に近づく。
艶のある黒髪、太すぎず、細すぎることのない眉に、少し細長い両目。ツンと伸びた鼻筋、リップクリームを塗っているわけでもないのに、
光を反射する魅惑的な唇。貴族の娘と言われたら信じてしまいそうな程だ。
そして……僕はサララの裸身に視線を下げた。
娼婦という仕事を長くやっていたのもあるけど、幼少の頃から受けていた性的暴力によって出来た、
サララの全身に散らばっていた、大小の傷跡は綺麗に無くなっていた。
朝、サララとヘビのように絡まりながらのセックスを楽しんだ後、魔術を使ってサララの傷跡を消したからだ。
やっぱり、どれだけ気にしていない素振りを見せても、女の子だ。心のどこかで、傷跡のことを気にしているだろうと思ったからだ。
作業自体は数分で事が済んだ。こんなときでも、強化された魔力は便利だ。
そして、サララの手を引いて、部屋に置いてある大きな鏡の前に立たせて、はいご対面。
サララも涙を流して喜んでくれた。うんうん、やってよかったと思っている。
そんな万感の思いでサララの裸身を見下ろしていると、視界の端で、サララの顔が僕の瞳に近づいてくる。
「んーー……ちゅ」
……今朝の出来事をつらつらと思い返して、呆けていた僕は、サララにキスをされた。
そして、にっこり笑顔。その表情は幸せいっぱいだった。
むう、もしかしたら、傷跡を消したのが原因で、一種の興奮状態になっているのかもしれない。
それならば、ちょっとしたお願いくらいなら、聞いてくれるかも。
「あのさ、サララ……できれば敬語はあまりしないでほしいな、なんて。気軽にマリーちゃん、マリー、マリマリって呼んでくれたら嬉しいなあって」
「ダメです、却下です、拒否します。私はマリー様の奴隷です、ご主人様に生意気な口を聞いたら、エッチなお仕置きされます。それに、これでも砕いた話し方なんです」
僕のフレンドリーなお願いは一瞬で却下された。一緒に過ごしてから、一日かそこらしか経っていないけど、なんとなく断られるのは分かっていたので、気にしない。
「ご主人様って……だしかにそうだけど、あと、エッチなお仕置きってあんた」
「………してくれないんですか?」
そう呟くと、サララは抱きしめている僕の手を取って、薄っすらと湿っている秘所にあてがった。
指先に感じる女の感触と、手のひらに感じる僅かな恥毛の感触。そして、肩にかかるサララの吐息が、性の芽吹きを見せ始めていた。
なんという、なんというお誘い! 時間が許すならば今すぐ押し倒したい! けれど無理なんだよね……だってお呼ばれされているから。
断腸の思いでサララの秘所から手を外す。僕はサララの腕を優しく外して、ソファーから立ち上がった。
「サララ、ちょっと出かけなきゃいけないから、僕の部屋に置いてある剣を持ってきて。
鞘と柄の部分が豪華に装飾されているやつだから、すぐに分かるよ。あと、傍にドレスが置いてあると思うから、それもね」
「は、はい。分かりました。剣ですね? すぐにお持ちいたします」
残念そうに目じりを下げていたサララは、僕の命令を受けると、急いでリビングを駆け抜けていった。
「……やっぱり裸で居てもらおうかな……いやいやいやいや、それはいけないよね」
丁度真後ろからサララの裸身を拝見していたおかげで、思いがけない桃源郷を覗き見る結果になった。
裸のまま走るので、お尻がプルンと弾むのを拝見できただけでなく、太ももと尻肉の隙間からチラリと見えたサララの陰唇が……裸って素晴らしい。
出る前に一度抜いておこうかと悩んでいると、サララが小走りに戻ってきた。
胸に高そうな剣を抱え、その上に被せるようにドレスを持っていた。
「はい、マリー様、これですか?」
「うん、これだよ。ありがとう、重かった?」
「全然重くありませんでした。羽根のように軽くて、持っている気がしませんでした」
手早くパパッとワンピースを脱ぎ捨てる。サララから、薄く発光しているドレスを受け取り、着る。
ダンジョンから持ってきたこのドレスは、来ているだけであらゆる状態異常を軽減してくれる優れものだ。
そして、剣を受け取って、それを腰に括り付ける。これもダンジョンから持ってきたもので、
見た目はサーベルのように細くて頼りないけど、実際は数十キロもある重量剣を受け止めることが可能なくらい頑丈なのだ。
切れ味も申し分ない。腕さえよければ、鋼鉄の柱もバームクーヘンのように切ることが出来る程だ。
といっても、僕自身は剣を使うより、自らの四肢を使った方がはるかに殺傷能力が高いのだけど。
玄関に向かうと、サララも一歩下がったところから付いてくる。どうやら見送りしてくれるみたいだ。
手早くブーツを履く。途中で解けないように、強く縛る。
「それじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ、マリー様のご無事をお祈りしているです」
サララに見送られ、僕は玄関のドアを開けようとして、止めた。
振り返ると、サララがキョトンと目を瞬かせている。
「その前に、ちょっとこれ静めてくれない?」
僕はワンピースの腰の部分を指差した。見なくても分かっていたけど、その部分は内側から盛り上がっていた。
僕の言葉に、サララはクスリと笑みをこぼして、嬉しそうに、楽しそうに、盛り上がっている部分に手を伸ばし、膝立ちになった。
そして僕は、指定された場所に到着した。
探求大都市「東京」の中でも最大級の面積を誇る公園、オロイアス広場。地面をくり抜いて形で作られた、人工の公園だ。
一定間隔で木が植えられ、公園の一端には花壇が、もう一端には開園記念の銅像が立てられている。
中央には大きな噴水が設置され、涼しげな雰囲気をかもし出していた。
オロイアス広場は、昼間は家族連れや、お年寄り達の憩いの場、同時に子供たちの遊び場として使われているが、夜になるとそれがガラリと変わる。
昼間は子供たちのはしゃぐ声で騒がしい公園も、夜になると恋人たちのデートスポットに変わるのだ。
設置された電灯が、噴水や花壇をささやかに照らし、幻想的な輝きを映し出す絶景は、若い恋人たちの間で大人気なのだ。
しかし、いつもなら子供たちの騒音で騒がしい園内も、この日は違った。
公園内には子供の姿は一人も居らず、変わりに屈強な者達が二手に分かれていた。
一端には、鎧を着込んだ男性やローブに身を包んだ女性、武道の達人とも見える美少女から、
場違いではなかろうかと思える貧弱そうな男性まで。多種多様な人達……ダンジョン探求者達が終結していた。
もう片方には、磨かれて輝く白銀の鎧を身に付けた初老の男性や、細部まで細か装飾されたローブを身に付け、
魔力が込められているロッドを携えた魔術師。魔法のネックレスを付けている者など、一見するだけで普通の探求者には見えない集団だった。
通称『エンジェル』、国家の支援を受けた、探求者のスペシャリストともいえる集団の姿であった。
その二つの集団から数十メートル離れ、木の陰に隠れるように、一人の少女が居た。
その少女を見たものは、例外なく驚き、次に夢でも見ているのか? と我が目を疑うであろう外見だった。
少女はそれほどに美しかった。背丈は小さく150cm前後で、髪は腰を覆い隠すほど長く、月の光を凝縮したかのような光沢ある銀髪。
前髪は中心から横に綺麗に分けられ、開かれた額を細い眉毛が飾るように生え、その下には勝気な印象を与えるアーモンド形の吊り目。
一本ずつ丁寧に細工されたような睫毛に、すっ、と小さくも高い鼻、薔薇を思わせるような唇が付けられ、さらに病的にも、
生命力溢れるようにも見える雪のような肌が、幻想的な美しさを少女に与えている。少女が身に纏っているドレスはフリルが
多く付けられていると同時に、細かく刺繍が施され、小さな宝石も装飾されている。
小さな背丈と相まって、何処かの国のお姫様、と言われても、この少女なら誰もが納得するだろう。
そして、中身は男だとは、誰一人考えも付かないだろう。
「天が知る、地が知る、僕が知る、あの日あの時あの場所で、銀髪のマリー・アレクサンドリア、誰にも見付からないようにコッソリ参上!」
美少女、マリー・アレクサンドリア(中身は男)は、フリルの沢山付いたドレスを翻して、さらにコンクリートの壁に隠れた。
予想以上に人数が集まっていることに驚いた僕は、人前に出るのは嫌いだから隠れることにした。
集合場所は公園内の端、しかも、その場所は上に登るための階段が無いだけでなく、誤っての落下防止のため、コークリートの段差が作られているのだ。
僕が到着したとき、既に集合時間が過ぎていたのもあって、既に召集命令を受けていた人達は全員集まっていた。
いまさらノコノコ行くのも格好悪いと思った僕は、上手い具合に隠れるのに適したコンクリートの段差に身を隠して、上から探求者達の集団を見下ろしていたのだ。
「ふはは、見ろ、人が小人のようだ…………止めよう……」
というかね、多い、本当に多いよ……何なの、あの人数は。
探求者の集団を見下ろす。一塊のグループになっている所もあれば、バラバラに別れている所もある。
見たところ、片方がエンジェルで、片方がギルドと、フリーの探求者達か……それにしても、数が多いな。
乗り出していた身体を段差に隠しながら、一人疑問を覚えた。
突発に集められるダンジョン探求の命令は、本来、緊急の意味合いがある場合が多い。
大抵は、何か災害が発生して、それを修復するためにエネルギーが必要になった場合か、何か事件が起きて必要になった場合のどちらかだ。
視線を再び探求者の集団に向ける。強化された身体能力は、視力などの目に関する部分も例外ではない。
その気になれば、汗をかいているかどうかも見極められることも可能なのだ。
そうして段差から身を乗り出して、上方から眺めていると、妙に密集している集団を発見した。
「あれは……エンジェルの人達か。なんであんなに密集して集まっているんだ
さらに目を凝らしてみる。人と人の隙間から、ほんの一瞬だけだけど、集団の中心の人物を発見することができた。
そして愕然とした。
だって、その人物の顔は、探求者の間では知らぬ人はいないと名声高い、静かなる妖精『ロベルダ・イアリス』だったのだ。
僕は思わず息を呑んで、そしてあわてて段差に隠れた。
「妖精のロベルダが居るってことは、よほど大掛かりの仕事なのかな……」
ダンジョン探求の命令って普通、数人くらいのチームを組んで行動するのが普通なのだ。
まず、一人〜数人のチームを組んで、少数精鋭でダンジョン探求を行うチーム。
少数精鋭の一番の利点は、個々が最大限の力を発揮しやすいということ。人数も少ないから連携も取りやすいし、自由に戦えるということだ。
けれども少数精鋭の弱点は、やはり人員の少なさだろう。こういったチームの場合、一人が負傷した時点で戦力が大幅に落ちる。
冗談ではなく、一人が軽い怪我を負っただけで引き返すチームもいるくらいだ。
つまり、それだけ一人の担う役割が大きく、負担も大きいのだ。
それとは逆に、十数人〜数十人以上の大人数のチームの場合だと、話しは変わる。
少数精鋭のチームと違い、一人二人負傷したくらいでは全く戦力は落ちない。まあ、主力の人が負傷した場合は別として。
大人数の利点は、なんといっても人員の豊富さだ。人員が多いということは、それだけあらゆる事態に対処しやすいのだ。
一つの事態に、2人〜3人程度の人員を割けることができるというのが最大の利点だ。例えば、怪我を負わせる罠に数人、
身体異常の罠に数人、罠を解除する人に数人、最前線で戦う人を数人、後方支援をする人を数人、といった具合だ。
しかし裏を返せば、その大人数が短所になる。なぜならば、人数を増やしてしまえば、それだけ統率を執るのが大変だからだ。
全員がバラバラに行動すれば、多人数の利点がなくなってしまうだけでなく、下手すれば、同士討ちの場合もありえてしまう。
だからといって、大人数が良いというわけでも、少数精鋭が良いというわけでもない。ここらへんは、そのとき、そのときの運が決める話だ。
僕がそんなことでウンウン唸っていると、下の広場から怒鳴り声と、罵倒する声が響き渡った。
恐る恐る身を乗り出して広場を見下ろす。そこで繰り広げられていたのは、『エンジェル』と『フリー』がお互いを罵り合っている光景だった。
見分けが付くのは簡単だった。『エンジェル』は装飾が施された、特別な装備を身に付けている人が多い。国家の支援を受けているから資金は豊富だからだ。
『フリー』、正式には『フリーランス』と呼ばれる人達。『エンジェル』にも『ギルド』にも属さない人達だ。実力が無いか、よほど協調性が無いか、大抵はそのどちらかだ。
ちなみに、僕は『フリー』。休日は毎日自宅に引きこもって寝ている、彼女いない=年齢の協調性ゼロの男でした……今は違うけど。けれども、今も協調性はゼロだけど。
「なにさ、いきなり僕に話しかけるなよ……緊張しているだけなんだから、もっと話しかけてよ…………」
思わず漏れ出た心の汗を拭い、再び眼下の騒動を見守る。レザープレートを身に付けた小太りのオッサンが、
特殊金属を編みこまれた戦闘服を着て、背中に大剣を背負った20歳そこそこの青年の胸倉を掴んで罵倒していた。
頬どころか首のあたりまで真っ赤になって、青年を口汚く罵っているが、青年の方は、まるで堪えた様子はなかった。
その隣で、細かな装飾が施された青色のローブを着ている眼鏡の女性が、青年の腕を引いて止めようとしている。
「てめえ! いくら『エンジェル』だからって、調子に乗ってるんじゃねー!」
「何を言っているのか、俺には分からないな。ただ、本当のことを言っただけの話だろ?」
「カズマ、なんでそんな酷いこと言うの!? 早く謝ってあげて、揉め事を起こすの止めましょう」
女性が必死になって青年の腕を引っ張るが、青年は彼女の言い分を無視して、さらにオッサンを挑発する。
「なに言っているんだよ、マーティ、こんなクズを庇うのか?」
「何だと、糞ガキが!」
「もう止めて、カズマ!」
青年は、掴まれた胸倉を面倒くさそうに払って、嘲笑をオッサンに向けた。
「フリーの探求者なんて、生きていても仕方ないゴロツキでしかない……ってね。事実でしょう?」
「こ、こ、この、この野郎…………!」
オッサンは我慢ならない表情で、拳を振るわせ始めた。
どうやら『エンジェル』が『フリー』の人達をバカにしたのが原因らしい。
というか、あのカズマって男、随分酷いこと言うな。あのオッサンが怒る気持ちもよく分かる。
もし僕があのオッサンの立場だったら、間違いなくカズマとかいう男を殴り飛ばしているだろう……と思う。
でも、僕だったら聞こえなかったことにしてやり過ごすかもしれないけど。
それにしても、本当に『エンジェル』は『ギルド』と『フリー』を見下しているな……プライドが高いというか、なんというか。
マリーとして生まれ変わる前の日々が脳裏に甦ってくる。
そういえば、ダンジョンで見つけたアイテムも横取りされたことあったっけ……あれ、それなりに高く売れるのに……今の僕には安いアイテムだけど。
けれども、あのときは悔しくて幾日も枕を涙で濡らしたっけ。
ちょっと懐かしくも、ほろ苦い思い出を懐古していると、白銀と黄金の鎧を身にまとい、
腰の部分には裁縫が編みこまれたスカートをはいている妖精『ロベルタ・イアリス』が騒動を聞きつけ、近寄って来ていた。
腰まで伸びて、輝くような長い金髪、青色の瞳に、整った目鼻、落ち着いた物腰に、鎧の上からでも分かるスタイルの良さ。まさしく、妖精だった。
「お前たち、ここで何をしている!」
女性でありながら、迫力があるロベルタの一喝に、カズマとマーティという女性が姿勢を正した。
オッサンは、ロベルタが来たことに一瞬驚いた素振りをみせたが、すぐに怒りで鼻息を荒くした。
「どうしたもこうしたもねえ! このガキがふざけた事を言いやがるから俺が怒鳴ったんだよ! それを聞いたこのガキはどうだ?
当たり前のことを言ったに過ぎないと抜かしやがる! は、そんなにエンジェルってやつは偉いのか!」
おっさんが唾を飛ばしながら、ロベルダに食って掛かる。ロベルダは、オッサンの言葉に眉をしかめた。
「カズマ……話は本当か?」
「……………………」
カズマはその質問に答えず、ただじっと明後日の方向に目をやっている。
名指しか……ということは、あのカズマという男、相当に腕が立つということか。
「カズマ、聞いているのか!?」
「あ、あの、すみません! すみません! すみません!」
カズマの隣で、涙目で仲裁していた女性、マーティが、遂に涙を溢して謝りだした。
むう……なんだか、やけにカズマの肩を持つな。もしかしたら、マーティはカズマの恋人なのだろうか?
ロベルダは、大きくため息を吐くと、オッサンの方に向き直る。
そして、頭を下げた。
「すまない、こいつには私から言っておくから、ここは私の顔に免じて、身を引いてくれないだろうか」
噂に名高いロベルダに頭を下げられたオッサンは、突然の事態にしどろもどろになりつつも、憮然とした表情で答えた。
「いや、俺も悪かったよ。大人気なかったな……だからもう顔を上げてくれ」
オッサンのその言葉に、顔を上げたロベルダは、安心したように笑みを浮かべた。
殺伐とした空気が、少しずつ穏やかになっていく……はずだった。
「っち!」
カズマが、僕の場所からでもはっきり分かるくらい、大きな舌打ちをしなければ。
「「カズマ!」」
ロベルダとマーティの叱責にもどこ吹く風、カズマは口笛を吹いて無視した。
オッサンは、ロベルダとマーティに気の毒そうな目を向けていた。
ロベルダは再び大きくため息を吐くと、疲れたようにマーティに視線を向けた。
「マーティ……私が言うのもなんだが、いい加減カズマを見限ったらどうだ? お前のような良い女が、こんな男の恋人だとは今でも信じられんぞ」
「だ、だって……」
「こいつ、前も浮気したんだろ? 本当にこんな男のどこが良いのか……お前のことを愛しているのかどうかも疑わしい」
「なに言ってるんだよ、俺はマーティのこと愛してるぜ。マーティも謝ったら許してくれたしな」
「だったらなんで浮気するんだ? お前はそういって、何度浮気したことか」
「あ、あの、喧嘩は止めて」
先ほどの剣呑とした雰囲気がガラリと変わった。どうやら事態は治まったみたいだ。
ただの友達同士のおしゃべりみたいな雰囲気に僕も安心して、段差から降りようと、身体を支えている両手に力を込めた。
ツルリ
「…………あ?」
はっきりと、自分の脳裏にこの擬音が響いた。そして、僕の身体はゆっくりと前方に傾いていく。
もちろん、前方に地面はない。あるのは空気だけだ。その空気を切り裂いて、十数メートル下の地面に激突する未来が脳裏に浮かぶ。
「エアイン・ファー!」
即座に体勢を変えると同時に、魔術を行使する。魔力が自らの身体を包んでいき、僕の存在感が希薄になっていく。
エアイン・ファー、この呪文を使用すると、こちらからアクションを起こさないかぎり、万物から気づかれなくなる上級魔術だ。
流れる景色と、猛烈なスピードで近づいてくる地面と人だかりに、思わず涙がこぼれそうになった。
どうか、どうか厄介ごとに巻き込まれませんように。
出来る限り音を立てないように、着地した僕の目の前に、ロベルダの後ろ姿が映った。
「だいたいさ、何をそんなにビクビクしているんだ?」
今しがたまで、口笛を吹いて誤魔化していたカズマが、唐突に尋ねてきた。
いつも思うが、せめて主語を入れろ。私はスカートを軽くはためかせた。
「唐突になんだ? 言いたいことがあるなら、分かりやすく言え」
「だから、何をそんなに慎重になっているんだって聞いてんの。変だぜ、広場に来てから、ずっと周りを気にしているし、どこか上の空じゃねえか」
唇を尖らせている姿に、私はバカを見るような目をカズマに向けた。
「お前……知らないのか、今日の集まりを」
私が全て言い切る前に、遠くの方からスピーカーのハウリングが響き渡り、私の言葉は消されてしまった。
すぐにハウリングは治まり、次いで男性の声で説明が始まった。
内容は聞かなくても分かる。今回のダンジョン探求の目的の説明だ。今回の任務は結局のところ、少数精鋭の少人数チームで攻略するだろうから、聞く必要はない。
それ以前に、もう内容は頭に入っているからな。私は一人、思考をまとめた。
「で、集まりの、なに?」
カズマが再び私に尋ねてきた。視線を横に向けると、マーティも興味深そうに私を見ている。
「今日の集まりにはな……あの銀髪のマリーが来るらしいのだ」
「銀髪のマリー? 美しき男爵のマリーとか、その微笑の前ではオークすらも笑みを返す、マリー姫とか呼ばれている、あの女装野郎の変態マリーか?」
カズマが目をパチクリと瞬きした。
私が聞いたのは、死神マリーなのだが、あえて聞き返さない。どうやらあだ名は一つではないらしい。あと、中身は男であるのは本当なのか?
「本当らしいぜ……ま、変態かどうかは別として、男だってのは確かだ」
話を聞いていたマーティが、カズマの言葉に反論した。
「カズマ、ダメだよ。私、一回見かけたことあるけど、あの人の着ている服って、全部魔法具なんだよ」
「魔法具……その話は本当か?」
マーティの肩を掴んで問い質す。頭を前後にグラグラ揺する。顔色が青ざめて、気持ち悪そうな表情を見せ始めたから、肩から手を外した。
ケホケホ、可愛く咳をして呼吸を整えてから、マーティは質問に答えてくれた。
「うう〜気持ち悪い……魔法具を付けていたのは本当なのね。それとね、あんまり注意してみなかったから、
確かなことは分からないけど、あの人が付けていた魔法具、全部至宝クラスって噂らしいのよ」
至宝クラスだと? それも全部? 至宝クラス、その言葉に、私は耳を疑った。
私の様子に、マーティも無理はないと言葉に出さなくても、目で訴えていた。私の様子をみて、マーティはさらに話を続けた。
「至宝クラス……現在確認されているアイテムだけでも13個しかない、伝説のアイテム。至宝クラスのアイテムは、単価が3000万セクタも
するらしいって話なのに、それを持っているなんて、よほどのお金持ちか、実力者かのどちらかだと思うの。あんまり信じている人いないけど、多分本当なんだと、私は思うの」
マーティがここまで言い切るということは、おそらく本当なのだろう。
背中に括り付けている剣の柄を掴む。手に慣れ親しんだ感触が伝わってきた。
今私が使っている剣は、一月前に買い換えたばかりのものだが、それでもしっかりと私の一部になっている。
値段も20万セクタもした、最高峰の剣だ。それまで使っていた剣よりも、はるかに頑丈で切れ味が鋭く、刃こぼれもない、お気に入りの剣だ。
背中の鞘から剣を抜いて、眼前に持ってくる。錆び一つない銀色の刀身が光を反射して、私の顔を映していた。
それでも至宝クラスの前では霞んでしまう。
「至宝クラスか……一度でいいから、至宝クラスの剣を振ってみたいものだ」
「そうだよね〜、私も至宝クラスのロッドを持ってみたいよ……」
マーティも、しみじみ、ため息をこぼして同意した。
しかし、私とマーティの願いも、カズマの無粋な一言によって、無下にされた。
「変態野郎が、至宝のアイテムなんて持ってる訳ねえだろ。どうせ変態マリーも至宝アイテムっぽいやつを持っているだけだろ」
あまりに酷い悪口に、眉をしかめた。マーティも不快そうにカズマを見ている。
「……カズマ、口が過ぎるぞ。言っていいこと、悪いことの区別も付かんのか」
「そうだよ、カズマ。マリーさんが聞いていたら、怒られちゃうよ」
「怒られたからってなんだ。そんときは逆にぶっ飛ばしてやるよ」
もうため息も出なかった。こいつはバカだ、どうしようもないバカだ。
痛み出した額に手を当てて、マーティに視線を向ける。マーティも額に手を当ててこっちを見ていた。お互いの視線が交差し、疲れた笑みが浮かんだ。
それにしても、カズマのやつ、今でもマーティに好かれていると思っているのか?
カズマに視線を向けると、あたりをキョロキョロと見渡していた。
たしかにカズマは美男だ。背も180cm近くと、高すぎるわけでもなく、低いわけでもない。
茶髪に、キリリと鋭い目じり、高い鼻に、すっきりとした顔の形。
その甘いフェイスで微笑まれたら、大抵の女はカズマに恋をするだろう。
そして、横で眼鏡の位置を直しているマーティにチラリと目をやる。
全体的に、美人よりも可愛いといった顔立ちに、いつも優しげに笑みを浮かべている口元が清楚な印象を与える女性。
10人中、9人が可愛い美女と答えるだろう。だが、彼女の本当の魅力はそれだけではない。
そのまま視線を彼女の身に付けているローブに向ける。
ゆったりとしたローブからは想像も付かないくらいの、むっちりした肉体の持ち主なのだ。先日、一緒に新しい服を買ったときに改めて思い知った。
剣を持っていない方の手を、胸の辺りに当てる。鎧が邪魔して冷たい感触しか伝わってこないが、私だってそれなりに自信が持てる大きさだ。
しかしそれも、彼女の胸に比べれば、見劣りするだろう。
彼女の乳房は、私の両手では到底収まりがつかないくらいに大きく、柔らかいうえに、肌触りも素晴らしいものだったのだから。
さらには、ただ大きいだけではない。大きさに比べて小さい乳輪、薄く色づく桃色の乳首、お椀形の乳房は、全く垂れる気配は見せない。
好奇心にかられて、両手でムニュムニュっと揉みしだいたことがある。すぐさま後悔した。
力を込めれば込めるだけ沈んでいく柔らかさ、その分だけしっかり押し返してくる弾力、濡れた絹のようにしっとりとした肌触り。
その全てに、完膚なき敗北を悟ったのを、今でもはっきり覚えている。
胸だけではない。揉み応えのあるむっちりとした肉尻もまた、彼女の隠された魅力なのだ。
しかし、それを唯一知るカズマも、その肉体を味わうことも最近はめっきり少なくなったらしい。らしいというのも、マーティがカズマの求めを断っているからだ。
なぜそれを私が知っているかというと、私がそうするよう仕向けたからだ。
「なんなら、今から変態マリーを連れてきて化けの皮剥いでやろうか? きっとビービー泣いて謝ってくるぜ」
過去への回帰が、あの日の出来事まで差し掛かったとき、カズマの声が私を現実に引き戻した。
カズマに視線を向けると、マーティに何やら話しかけていた。どうやら、マーティに良いところを見せて気を引きたいみたいだ。
バカな男。
もう、マーティの気持ちはとっくにお前から離れてしまっているのに、何をいまさら足もがいているのか……既に手遅れで、原因は全てお前だというのに。
いいかげんその口を黙らせようと、カズマに向かって一歩踏み出した。
その瞬間だった……私の後方から声を掛けられたのは。
「ほう……だったら剥がしてみるかい、力ずくで……」
振り返った場所に居たのは、一人の少女だった。
まるで絵画から抜け出てきたかのような、美しい少女だった。
そして同時に気づいた。気づいてしまった。目の前の少女……少年が、死神マリーであるということに。
目の前の人物が、私なんかが足元にも及ばないくらい強いということに、私は気づいてしまった。
マリー・アレクサンドリア……自らのこらえ性の無さに、思わず罵倒したくなってしまうよ……このバカ。
どうして、どうして我慢できなかったんだ。我慢してやり過ごせば、目立つこともなかったのに。
目の前のロベルダ・イアリスも僕を見ている。ロベルダよりも少し向こうにいる、カズマとかいう男と、マーティとかいう女性も僕を見ていた。
目立たないように、エアイン・ファーを唱えて存在感を消したのに、自分から話しかけてしまったから、効果が消えてしまった。これでは意味がない。
「さて……そこのモテそうな青年。僕に何か用があるみたいだね……」
けれども、さすがに我慢の限界というものだ。
自然と力が篭っていく両手から意識的に力を抜いて、自然体になる。
ゆっくりと体内の魔力を練り上げ、全身の身体能力を極限まで強化してやる。今ならダイヤモンドを紙のように引き伸ばせると思う。
それ以上に、体中に蓄積していく怒りが、僕の心を燃え上がらせていく。
カズマめ……いくら女性にモテそうな顔立ちだからって、言っていいことと悪いことがあるだろうに。
精神年齢はやつより年上の大人としては、やつのためにもお灸を添える必要がありそうだ。
一歩、足をカズマに向かって踏み出す。
ズドンと鈍い音がした。
あまりに肉体能力を強化してしまったおかげで、ただ地面に足を置くという行動が、硬い地面を踏み砕いてしまうという結果を残したからだ。
漲ってくる怒りを、ありったけ視線に込める。それだけで、常人なら気絶してしまうほどの迫力だろう。
視線の先、意中の人物のカズマは、真っ青な顔色で言葉を無くしている。僕のあまりの迫力に、思考が停止しているのかもしれない。
視線を下げると、見てて面白いくらい、両足を震えさせていた。まったく気の毒には思えなかった。
さらに一歩踏み出す。すると、目の前に女性が立ち塞がったので、視線を上げた。
ロベルダ・イアリスだった。彼女は剣を構えていた。僕がさらに一歩を踏み出すと、一筋の閃光が眼前に迫った。
今まで見てきてきた探求者達の中で、最も速い太刀筋だった……が、僕にとっては遅すぎて欠伸がでそうなスピードだった。
迫ってくるロベルダの刀身を、人差し指と中指を使って挟む。力を込めると、それだけで剣は動きを止めた。
「――――!!! な、なん……だと……」
呆然とした表情で、刀身を止めている指と、僕の顔を交互に見るロベルダ。その表情は、驚愕に染まっていた。
「いきなり剣を向けるなんて酷いことするじゃない。怪我したらどうするの?」
チラリと、ロベルダの行動を非難する。が、ロベルダはニコリと笑い返してきた。
「……貴方がそれを言いますか。太刀を素手で止められるとは思ってもみませんでした……お強いですね、驚嘆いたしました」
そんなロベルダの様子に笑みを返し、カズマの横に視線を向ける。
そこにはロッドを構え、いつでも魔法を放てる体勢に身構えているマーティがいた。僕は、マーティにもニッコリ笑みを向けた。
「そんな身構えなくてもいいよ、お嬢さん。もう何もしないから」
じっと僕の挙動を見ていたマーティは、僕の言葉を信じてくれたのだろう。搾り出すようなため息を吐いて、ロッドを下ろしてくれた。
とうとう、地面に座り込んでしまったカズマに目をやると、歯をカチカチと鳴らし始めていた。
うん……これだけやれば、もういいよね。魔力を体内に抑えて、辺りに放っていた圧力を封じ込める。そして、既に力が込められていない刀身から、ゆっくりと指を離した。
パキン、乾いた音を立てて、ロベルダの剣が真ん中から折れた。
…………あれ? やっちゃった、僕?
ロベルダに視線を向けると、持っている刀身と、折れて地面に横たわっている刃先を、交互に視線を向けていた。
さっきまでカズマの横にいたマーティも、近寄って刃先を拾い上げ、言葉無く剣を見つめている。
……これは不味いんじゃないかしら。これからダンジョンに向かうというのに、肝心の得物が使い物にならないなんで、洒落にもならない。
考える時間は無かった。
気づいたら、自分の腰に括り付けている剣を取り外して、ロベルダに差し出していた。
どうか、これで許してくれますように。
「………………え?」
呆然としていたロベルダが、僕が差し出した剣に気づいた。
「ごめんなさい……そういうつもりじゃなかったけど、ロベルダの剣……折ってしまったみたいだね」
「え……いえ、これは私が……」
「貴方の剣には見劣ると思うけど、代わりにこれあげる。好きに使っていいから、売るなりなんなりしてね」
「え、あ、い、ええ、あ、あの、これって」
「本当にごめんね! いつか弁償するから、今はこれで許してください」
有無を言わせない勢いで、自分の剣をロベルダの顔面に突きつける。
ここで初めて気づいたけど、ロベルダもマーティも、僕より身長が高い。ロベルダは僕より20cmくらいで、マーティは15cmくらい高い。
……僕の身長、150cmだから、僕が低すぎるだけか。
ノロノロ伸ばされたロベルダの手に、僕の剣の鞘を握らせる。ロベルダが持っている折れた剣は、マーティに手渡された。
「……ぬ、抜いてみていいですか、これ?」
「好きに使ってかまわないよ。それはロベルダにあげたものだから」
妙に掠れた声で聞いてくるので、僕は申し訳なさそうに言った。マジで、申し訳ない。
恐る恐る、ロベルダが僕の物だった剣を鞘から抜く。ゆっくりと、僅かに光を放つ刀身が姿を現し始め、そして外界に開放された。
たった今抜いた剣を、ロベルダは瞬きすることなく見つめている。マーティも呼吸を忘れてしまったみたいに、じっと見ていた。
しばらく、無言の時が流れてから、ギ、ギ、ギ、と壊れたブリキの玩具みたいに、コマ送りで僕に顔を向ける二人。
「ほ、ほ、ほ、ほん、ほんん、本当、にこりぇでいいいいい!!」
「しししししししし、しほ、至宝クラスーーーーーー!!!」
突然あげた奇声に、驚いて彼女たちを見つめた。周りの人達も、遠巻きながら僕たちの動向を見ていた。ギロリと周りを見渡すと、全員が顔を逸らした。
「こここ、これ、こえ、こえええ、もら、もあらって!!!」
「うわ、うわああ、うわあああ、本物、本物だあああ!!!」
突如、ロベルダとイアリスが僕の肩を両方から掴んだ。混乱しすぎて、呂律も回ってないみたいだ。そんなに珍しい剣だったのかな?
「もちろんさ、それはもう貴女の物だと言ったでしょう。遠慮なく貰ってください。
それに、僕は剣を使うより、素手で戦う方が性に合っているの。だから……ね」
僕の言葉を、やっと理解したみたいだ。ロベルダとマーティ、二人は抱き合って喜んでくれた。
はあ……どうやら許してくれそうだ。
ふと、座り込んでいたカズマに目をやると、まだ地面に座ったままだった。
あいつも早く立ち上がればいいのに、何をしているんだろうか?
手を貸そうと思ったけど、止めた。また話がこじれそうな予感がしたからだ。
ダンジョン探究命令から一カ月。その日の仕事を終えた僕はいつもどおり、サララが待っている自宅に帰路についていた。
「あ〜ん………気持ちいいよ〜……カズ君〜……」
「俺もだよ、ケディ。お前の中は最高に気持ちいいぜ」
空に浮かぶ夕焼けがあんまりにも美しかった。だからだろう、ちょっと寄り道しようと思ったのは。
家でサララが美味しいシチューを作って待っていますと釘を刺されたが、今日だけは聞いてなかったことにした。
「そういえばここに来るのは、マリーになってから初めてだっけ。思えば懐かしいな……あ、あそこのベンチ、まだ残ってる」
何度も通っていたお気に入りの公園は、都心からちょっと離れているので、間に合うかどうか微妙だったが太陽が沈む前に公園に到着することができた。
人通りはまったく無かった。僕はさっそく草むらの中に入り、仰向けになって空を見た。こうすると、リアルタイムで星の動きと、空の変化の過程を観察することができるのだ。
「もっと、もっと突いて〜、アソコが燃えちゃう〜」
「うう……締まる……お前のマンコはヌルヌルで熱い……」
僕がいつも使っていた場所は、ちょうど回りから死角になっていて、近くまでこなければ見付からないスポットなのだ。
だれにも邪魔されることなく、ゆっくりと一人の時間を楽しめる場所として、当時はよく通ったものだ。
僕だけのプラネタリウム。僕だけの貸切であり、僕だけの空だった。
「もう駄目、もう駄目〜………アソコがイキそう〜!」
「そうか、イケ、イクんだ! 俺も、もう……」
そんな僕の感慨深い思い出も、男女の情事の嬌声が台無しにする。
……いったい何回するんだよ……もうかれこれ2時間ですぜ?
剣でも振り回して追っ払おうと思い、腰の辺りに手を伸ばした。そしてすぐに、そこに剣が無いことを思い出した。
そういえば、ロベルダに剣をあげてから一ヶ月か。
基本的に、エンジェルの内情は外部には漏れない。エリート達が集まる重要施設なので、生徒達の安全のためにも閉鎖的なのだ。
ロベルダに、折ってしまった剣の代金を払おうと思っているが、紹介状がなくては内部に入れない。
結局、街中で偶然出会ったときに払うしかないというのが現状なのだ。
「ああ〜〜〜〜、イク〜〜〜〜」
「俺も……で、出る!」
女性の甲高い嬌声と同時に、男の切羽詰った悲鳴が辺りに響く。通算3回目の終焉だ。
二人の男女の荒い呼吸音の横で、一人寂しく見付からないように隠れている僕。
なんだかとても惨めに思えてきた。草むらから躍り出て脅かしてやろうか……止めとこう。
その後の、どうしようもない空気の冷たさを想像するだけで気が重くなる。
「サララ……君のシチューが食べたい。寄り道するんじゃなかった……」
姿を現し始めた月を見て、汗が流れ落ちた。この日の汗はとってもしょっぱかった。
675 :
マリー書く人:2008/02/13(水) 02:44:13 ID:M3kaya4R
前半投下終了します。
スレの容量から考えて、後半を投下してしまうと中途半端にブツ切りしてしまいそうなので、続きは次スレで。
途中、名前のとこがおかしい部分がありましたが、ただの間違いです。
気にしないでください。ハンドル保存のタグのチェック入れ忘れです。
ぬぅ、wktkさせてくれるわっ!
容量的に埋め&次スレの季節かしら?
677 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 04:34:00 ID:GOt1EH0M
GJ
続きが早く読みたい
>>678 ありがとう。なんと気が利く
自分はwikiでなくとも構わないと思うよ。目茶苦茶進行早いスレでもないし
>>675 GJ!
いやあ、日常シーンが楽しすぎ。
裸エプロンとか、もう、ニヤニヤしまくりですにゃ。
しかし、マリー様ってばツッコミっぽく見えてボケ体質なんだよね。
サララと二人だとボケ×ボケで、読み手のこちらがツッコミを
入れたくて仕方がなくなるw
続きめっちゃ読みたいですね。
それでいいと思うんだぜ。
GJ!
しかしマリー様は一体何処まで強いのやら……
埋めるために、ちと好きなシチュでも。
>>632 のカエル腹は好きだったのだけど、
精液が強力な媚薬で、ポテ腹でいるだけでイキまくっちゃう状態に。
更に膣口にストッパーをあてがわれ、
「はずして、これはずして――!!」
みたいに泣き叫ぶのが見たかったw
もがきつづける女の子。でもほうっておかれる、みたいな。
その間アナル攻め、とかでもいいかも。
そういやあアナル攻めってあんまりないのな。
アナルは好き嫌い分かれるからだろ。
俺もどっちかといえば嫌いだし。
687 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 01:11:17 ID:gui1V8Rl
アナルより
マンコだろ重要なの
そりゃそうだよなあ>アナルよりまんこ
後ろにバイブを突っ込みつつの
二穴攻めには燃えるものがあるけど。
おれは好きかな
お尻で感じるなんて、変態になっちゃった…とか、
もうお尻はイヤ、お願いだから前に頂戴!みたいなさ
味付けしだいだよ
ポルチオ(子宮口)性感が一番気持ちいいらしいからまんこかなやっぱり
残り19KB
SSには短し埋めには長し
いや、どうやら極めると後ろが一番気持ちいいらしいぞ。
そっちじゃなくて、女もそうらしい。
後ろから子宮突かれるせいか極めると一番イキが深いんだと。
そうなのかー
つくづく女はうらやましいな
過去ログ見てきました。
マリー書く人さんすごいです!!なんていうか、面白いのに、えろいのに、ちゃんと話が成り立っているっていうか・・・
とにかくすばらしいです!
何か遅いけどマリーさんグッジョーブ!!
グッジョーブ!なんだが…
あれ…マリーさんて人の弱みにつけこんで体を差し出させるようなキャラだったっけ…?
特に善人とかではないけど、そんなみさかいなく積極的に性欲満たす性格では…、て
いや、なんか実は晴美とかと同じパターンなのかもしれんな。そんな気してきた
ん?・・・・晴美?
697 :
マリー書く人:2008/02/21(木) 11:16:03 ID:CIYGXlsQ
>>696 晴美は忘れてくれwww
性格が変わっているのは事情があるんだ。
一度愛用のパソコンが\(^O^)/な事になってな……
不運にもバックアップを取っていなかったから、
途中からは記憶を頼りにプロットを書いたんだ。
だから最初の話と今のやつだと微妙に違う部分がある。
本当に今思い出しても……
最初にの話に出会った頃色々あった的なことあったし後々、晴美を出せば問題ないんじゃ……
微妙レベルの誤差なら読み手の脳内変換なり物語の中で帳尻を合わせれば
いいかと。
PCが\(^O^)/になったのはご愁傷様ですが
これに負けずに頑張ってください。
700 :
696:2008/02/22(金) 09:23:48 ID:IXt89UNb
>>697 結局、元々はマリーがマーティを抱こうとした理由がちゃんとあったけど、
プロット消失→復元の過程で省略されて性格変わったように見えた、ってことなのかな?
てかまあ、性格の変化ってより
弱みを切り口に体を差し出させ、あともろくに考えず依存させるほど徹底的にイきぐるわせる
どっかの悪系超能力者のような妙な自分勝手さがイメージとなんかズレただけなんで、
サララ話での誠実さは単なる俺の思い込み、とかならこっちで脳内修正しときますから
この微妙なところでイメージの固まらないモヤモヤを鶴の一声で適当に打ち消してもらえないでしょーか
個人的には、作品の内容を作品外で語るのはあまり好みじゃないですね。
もしなにかしら対応をするのであれば、
リライトする、というのもありますけど、今後の作品で行動の
理由を書くとか、そういった対応をしてくれると嬉しいなあ。
てか、マリー書く人ってハーレムスレの人だったんですね。気づかなかった…
702 :
名無しさん@ピンキー:
ハーレム?
でも3Pとかないよな?