SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(
http://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
・雑談、エロゲー、アニメetcはなるべく本スレで。ライトノベルは過疎ってるのでラ板にorz
乙
/ ,. -、`r― 、`ヽ、
_,イ ヤ┴┴- 、\ ヒー 、_
r'/ / | ヽ. ヽ∨ ノYi、
{ | | イ / / ヽ イ ソ 修羅場スレを名乗る皆さん、お願いがあります。
i_∨ !(从し ー- ヽ{ソ ソ もっと、嫉妬SSを投稿していただけないでしょうか?
`Kゝ{ ◎ ◎ ! ゝ-イ' ・・・えーと、投稿して欲しかったんですけど、ダメですか?
|| リ⊃ 、_,、_, ⊂⊃イイ‖| じゃあ泥棒猫の方々、皆殺しにして下さい。虐殺です♪
/⌒ヽ|| |ヘ ゝ._) イ/⌒i‖l
\l Y`||yー>、_ イァ/ _ ./ | |
(~ ||//(@) \_/Y /フ i |
`ハ |l ___ __ソ 、__イ | l |
/ ,l|ミl Y `l, {' ||ミ| \
なんか、昨日から面白くもないことずっと言い続けるやつがいるよな……。
なんなんだろう。
/ノ 0ヽ
_|___|_
ヽ( # ゚Д゚)ノ 下がってろウジ虫ども!
| 个 | 訓練教官のハートマン先任軍曹が14をgetする!
ノ| ̄ ̄ヽ
∪⌒∪
>>1 貴様!俺の海兵隊をどうするつもりだ!
>>3 口でクソたれる前と後に「サー」と言え!
>>4 ふざけるな!大声だせ!タマ落としたか!
>>5 貴様には両生動物のクソをかき集めた値打ちしかない!
>>6 アカの手先のおフェラ豚め!
>>7 まるでそびえ立つクソだ!
>>8 タマ切り取ってグズの家系を絶ってやる!
>>9 じじいのファックの方がまだ気合いが入ってる!
>>10 ベトナムに行く前に戦争が終わっちまうぞ、アホ!
>>15-1000お前を見たら嫌になる!現代美術の酷さだ!!
>>1乙。
だがちょっと言わせてくれ。
まず避難所の字が間違っている。
ある意味合っているとも言えるが・・・。
あと「SSスレのお約束」 のテンプレを勝手に改造しないでくれ。
チラ裏のULRの冒頭にhが入っているし、
最後の文の「雑談」は議論中だ。
>>13 手を出しちゃ駄目だ
それはともかく>>1乙!!
>>15 こんなに早く勝手に立てちゃうことで、こいつがどういう奴だかわかるだろ
あら、よく見てなかった
姑息な真似をしてくれるねぇ
いつかはこういう事態が来るとは思っていたが・・・。
>>19 確かに俺は
>>1に注文をつけたが、
テンプレは次スレでまた改めれば良い話じゃないのか?
わざわざもう1つ作らなくても良いだろう・・・。
お前何やってんの
乱立とか荒らしと一緒じゃん
このスレみたいな、荒らしが立てたテンプレ勝手に変えたスレは無視して作り直すって既に何度かやってるじゃん
さあ、荒らしの思惑通りになってきましたよ
最初に神が降りた方が次スレでいいんじゃねえの
>>22 荒らしと決めるのは早計過ぎないか?
荒らしならわざわざサイトの更新とかしないだろ、テンプレも投下の邪魔しない程度にしてくれという意味では?
一部の住人が騒いでるだけじゃね
別にここでいいよ
たかがこれだけでテンプレ改変で削除依頼とか
ピンクchの中の人も大変だな
パクリが好きなおまえらにはお似合いのスレだよ
あらそうかしら
おじょうずなのねうふふ
>>29 エロ「パロ」スレだからなぁ・・・
そう思うならここのスレ全部に書き込んで来い。話はそれからだ。
しかし、携帯で書き込む厨房ってロクな奴がいないですね
。'⌒⌒ヽ パーン
/ノ(リノハリ)) '´ `ヽ
. "'从#゚д゚ノリ (((゙从}. !
⊂彡☆))Д´リ) |
てst
荒らしが立てたスレとか乱立とか言ってる香具師はどうせお得意の自演だろ?
スルーして投下を待とうぜ
ってか、長い歴史に幕を閉じた方が良くないか?
お葬式GJ
最高にお通夜気分ですねwwwwww
貴方を殺して私も死ぬ…か。
このスレにふさわしい死に方だな。
何を言うか
忘れたのかお前たち
もうすぐだぜ?
もうすぐスクイズ発売二周年なんだぜ!?
このスレじゃあたいして関係ないといえばそうだしなぁ
祭りも本スレでやればいいし
だから、このスレ終了見たいな事言ってる奴って同一人物だろ?
もうネタ無くなってそれ位しか書けないんだろうな・・・
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ミ::: ミ )ニー'"tュi三三iミ'"ゞ二≡≡ニニ二二() 嫉妬スレは俺が潰す
ミ::: ''""ヽi i i j'_ノノーi・ ̄二,ミ ミ──’
ミ:: 、 "'''"ミ ̄ヽ └─''"""'''''"
彡:. ヽ:. '"⌒ヽ::::ヽ \"'-,; . : ."''-,,_
ヘ:::.. ノ::.. .:::t-、_::ヽ \:."'-,, . : . :"''-
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ミ::: ミ )ニー'"tュi三三iミ'"ゞ二≡≡ニニ二二() さあ、行くぞ・・荒らし連合!!
ミ::: ''""ヽi i i j'_ノノーi・ ̄二,ミ ミ──’
ミ:: 、 "'''"ミ ̄ヽ └─''"""'''''"
彡:. ヽ:. '"⌒ヽ::::ヽ \"'-,; . : ."''-,,_
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書き込まれたレスには脊髄反射・・・しかもAA付き
荒らしも面白い荒らしならいいんだけどね
しかし神がここまで避難所使わないのは変だな・・・
IP抜かれるのが嫌ってのもあるけどさ
>>45 面白いことを言ってたら荒らしじゃないと思うんだ・・・
だってダミーでデコイだものwww
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ミ::: ミ )ニー'"tュi三三iミ'"ゞ二≡≡ニニ二二() 避難所を使わない理由だと?
ミ::: ''""ヽi i i j'_ノノーi・ ̄二,ミ ミ──’
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2ちゃんねるブラウザと普通の掲示板で投稿する便利さの問題だ
避難所の掲示板の改行作業が死ぬ程めんどくさいが・・
2ちゃんねるブラウザを使えるこちらの方が改行作業は便利いいのだ
ゆえに使いにくい掲示板を避難所を設置した阿修羅氏の責任だ
私は先に言っておいたのだがな・・。使いやすさこそが
避難所の設置に重要だとな
プッwww
>>2ちゃんねるブラウザを使えるこちらの方・・・
釣られてやるがどんな古い2ちゃんねるブラウザ使ってんだ?ww
新板の追加の仕方も出来ないのかよww
つーかスレで避難所の話題出しても荒れるだけでメリット何にもないからやめとけよ
>>52 リンクも貼ってあるし、避難所の存在に気付いてない作者さんも居るかもしれないし別にいいのでは?
結局どっちに投下するかは作者さんの自由なんだしね・・・
>>3ORv0Swe
リンク貼ってあるし散々話題になってるから初見じゃない限り知ってるだろ
お前もいい加減煽りみたいな事やめとけよ
>>54 だから避難所立ってから投下した作者さん自体少ないだろ・・・
そういう風に決め付けるように書かないでくれ
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ミ::: ミ )ニー'"tュi三三iミ'"ゞ二≡≡ニニ二二() ここに投下した神も少ないぞ
ミ::: ''""ヽi i i j'_ノノーi・ ̄二,ミ ミ──’
ミ:: 、 "'''"ミ ̄ヽ └─''"""'''''"
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>>55 それはただこのスレで投下する作者多いだけじゃ?
「作者は避難所のことを知らないから避難所に投下が少ない」と決め付けすぎ
それに春休みが終わって投下のペースも落ちてきてるだろ
投下した人数たいして変わんないじゃんw
釣られたか?
>>57 そうだな・・・正直すまんかった。
ここにしろ避難所にしろ投下が少なくて疑心暗鬼になってたよ・・・
本当にごめん。
どんな場合でも煽りたがりが多いスレは本人達にその気がなくても潰れるぞ
みんなもっと余裕持とうや
61 :
34スレ:2007/04/21(土) 18:56:01 ID:3IvMGrEu
あたしは職人さんの為だけに生まれたのに、職人さんはちっとも来てくれない……
荒らしの所為ね…… あたしから職人さんを奪う気ね!!
許せないわっ!! 汚らしい泥棒猫!!
コ ロ シ テ ヤ ル
34コロシテヤルッ!!
僕は職人さんの為だけのために生まれたのに、
来るのは締まりの悪い粗チンばっか…!
荒らしのせいか!毎日阿部さんと絡みやがって!
ウホッ!ウホッ!!アッー!
や ら な い か
61うおっ!まぶしっ!
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ミ::: ミ )ニー'"tュi三三iミ'"ゞ二≡≡ニニ二二() 社会人なのにSSを書いている
ミ::: ''""ヽi i i j'_ノノーi・ ̄二,ミ ミ──’ 神達のことをたまには思い出してください
ミ:: 、 "'''"ミ ̄ヽ └─''"""'''''"
彡:. ヽ:. '"⌒ヽ::::ヽ \"'-,; . : ."''-,,_
ヘ:::.. ノ::.. .:::t-、_::ヽ \:."'-,, . : . :"''-
/i,,- t -<;;;;、;;;;、,,、,、;;、;;;i_ゝ::::ヽ \:.:.:"'-,,. : .
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>>63 この忙しい中SS書いている作者さんは確かに凄いと思う
まあ投下があるまでまったりと行きましょう
>>63 確かにお前は良い事を言っているが、AAやめろ
「要は投下があればいい」わけなのだよね
SSだけでなく、絵だろうとネタだろうと…職人の存在こそがもっとも強い説得力となる
投下のないSSスレなんて、何も上演されない歌劇場のようなものだ
まあ何にせよ
今みたくぐだぐだ投下以外のレスでスレを進行させちまうよりは、ある程度過疎ってるぐらいが丁度いいんだよう
保守も3日にいっぺんぐらいでスレは十分保つしな
気長に待とうぜー
七戦姫?
>>68 お、すごくいいと思う
……けど真ん中の子の尻のバランスがいくらかおかしいような
>>69 七戦姫。
ケスクだけgifなのは、掲示板の画像容量の上限が120kbだったので、ちょっと画質落としたからです。
とりあえず目標は全員。
>>68 なんという画力・・・この線画だけで一ヶ月は戦える!!
これに彩色なんてされたら俺はどうなるんだ・・・
74 :
甜菜:2007/04/22(日) 00:50:13 ID:jI46rlyA
75 :
73:2007/04/22(日) 01:31:30 ID:t5wWxQNX
>>68 後寝る前に、最近投下なくて色々不安だったがちょっと安心しました(´・ω・`)
>>75 お前の日記帳じゃないんだから寝る前とかでレスすな
ここはSSスレなんだから絵は角煮スレでやるか、避難所でしたほうがいいと思う
いやあ、でも投下こないし 勢いづけってことでいいじゃないか
「お前が、ウィリアム=ケノビラックか?」
強面の屈強そうな男が、俺を見下ろしながらそう尋ねる。その風貌は騎士というよりむしろ傭兵か賊の類に近い。
射抜くような瞳の間に走る刀傷は、それだけで彼が歴戦の戦士であることを証明している。
俺との長身差が大きいせいもあって向き合うだけで威圧感を感じてしまうほどだ。
「あ、はい。本日付で配属になったウィリアム=ケノビラックです。
えと…あぁ、あった。これが異動命令書と身分証明です、どうぞ」
バッグをがさごそと探った末、くしゃくしゃになった紙を男に手渡す。
昔なら睨み付けるような眼光に少したじろぐところだったが、今となってはこの手の顔は正直、師匠で見慣れていた。
あの人、見た目だけで言ったら典型的な悪人だからなぁ…。もう慣れっこだ。
「ちょっと確認させてもらうぜ?」
受け取った書類を更に目を細めて目を通す。………んー。やっぱり悪人面だ。
どう考えてもヤバい仕事とかやってそうで、騎士とは程遠い彼の態度。
遊撃隊というのは他の部隊と一風変わった雰囲気をしていると聞いていたが、このことなのだろうか。
同じ騎士の鎧を身につけていなければ、彼が部隊の人間だと全く気付かないところだった。
だが逆に、それがどうも師匠たちと同じような空気を感じさせたので、俺には却って緊張を和らげる結果になった。
…変に肩肘を張らなくて済みそうだ。
「んん……トレイクネルの家紋も王家の紋章も本物みたいだな……。よし、こっちだ」
書類を確認すると、男はニカッと歯を見せて俺を奥へと案内した。
「いやぁ、スマンなぁ。お前の見た目が相当若かったモンだから、本当に新入りか疑っちまった」
悪ぃ悪ぃ、と付け加えてから「がっはっは」と豪快に笑う。………おもいっきり師匠と同じ匂いがした。
「……いえ。俺もその辺りを考えてから接するべきでした」
どうにも感覚が傭兵をやっていた頃に戻った気がして、脳裡に師匠たちの顔が浮かんだ。
「……ん?」
その先輩騎士に案内される途中、駐屯施設の向こうで馬防柵を組み直してる一団が目に入った。
どうやら暫く使われていない様子で、ちゃんと組みあがっているかチェックしているらしい。
王都では半信半疑だったが――本当にここ最近戦闘らしい戦闘は起きてないようだ。
「あん?どうした?」
「…なんでもありません」
こちらの様子に気付いた先輩騎士が怪訝そうに尋ねるが、俺は視線を戻してかぶりを振った。
―――――とうとう俺が戦姫の部隊に配属される日が来た。
あの後俺は王都を離れ、敵国との国境――戦争の最前線にいる。
マリカは近衛部隊として王都に残り、俺は遊撃隊として戦場に、そしてシャロンちゃんに至ってはどうなったのかのすらも解らない。
師匠たちも何処かの戦場で元気にやっているんだろう。
楽しかった日々は昨日で終わり。この国を取り巻く現状を考えれば、この一ヶ月こそ夢のような時間だった。
皆、それぞれの道へ。俺もそろそろ本来の目的に戻らなければ。
……本来の、目的に。
軽く顎を上げると、視界に灰色の空が一面に広がる。戦場らしい、でも王都とは対照的な、薄ら寒い空だった。
だけど俺にはこれくらい鬱々とした曇り空の方が丁度いい。王都の空だと自分が何のためにそこにいるのか忘れそうだったから。
「おっと、ここだ」
一角にある小屋の前で足を止めたのを合図に、俺は現実に引き戻された。
「……新入り。これから皆に紹介するわけだが……覚悟しとけよ?」
俺に向かってニヤニヤ笑う騎士。
これは解る。何か悪巧みをしている顔だ。師匠に散々酷い目遭わされてきたから嫌でも解った。
「…なんか良からぬこと企んでますね?」
探る視線で先輩騎士の表情を窺うと、彼は俺の眼から逃れるようにそっぽを向いた。
「ははは。いや……企んでることは何もねぇんだが……お嬢が、ちょっと…な」
「……お嬢?」
「まぁ、入ってみりゃ解るからよ。ついてきてくれ」
半ば強引に話を打ち切ると、ゆっくりと小屋の扉が開かれた。
渋々、彼の後について小屋の中に入る。今になって緊張しているのかちょっと息苦しい。
………だけど、入った途端。
「あーーーーーーーッ!!!?」
兵たちの駐屯地にしてはえらく場違いな、可愛らしい声が小屋の中に響いた。
そのせいで気が抜けて、身構えていた感情が一気に霧散する。
「フレッドさんっ!!いったいどういうつもりですかっ!?」
小屋の奥から、銀髪の少女がいかり肩でずんずんとこちらに歩み寄ってくる。
端整な顔立ちと俺よりも更にタッパが低いせいだろうか、怒った表情でも可愛らしさが抜け切っていなかった。
「わたしが迎えに行くとあれほど言ったのに!!どうして勝手にその人を連れてきてるんですか!」
腰に手を当てて、俺をさっき出迎えてくれた騎士――名前はフレッドと言うのだろうか――その彼を見上げる。
「いやぁ。…ですが、お嬢はさっきまで傭兵隊のヤツらと話があったじゃないですかい。
それまで新入りを待たせるよりは手の空いてるオレが迎えに行った方が効率的でしょ。どう考えたって」
悪びれもせず少女に答える。
だが、その回答は彼女の肩をより一層わなわなと奮わせるだけだった。
「効率だとか非効率だとか関係ありません!部隊長命令を無視したんですよっ、あなたは!」
「部隊長命令って…。お嬢…いけませんぜ、職権濫用は」
「ああっ…もうっ!だいたいあなたはいつも―――」
むきーっ!…とか言い出しそうな仕草で両手をぶんぶさせる少女と、それを宥める大柄な騎士。
彼らの態度だけ見れば駄々をこねている子供と、その子供に言い聞かせている父親に見えなくもなかった。
「それよりいいんスか?さっきから新入りが珍妙な顔してこっち見てますが」
「……っ!!
くっ……。フレッドさん、あなたは減給です。少し反省しなさい」
吐き捨てるように最後にそう宣告すると、今度は俺に向き直った。
彼女の後ろから「横暴だ〜」と大の大人が泣き声を上げているが、気にしない。
視線を合わせたらこちらにまで火の粉が降りかかってきそうだったし。
「ウィリアム=ケノビラックさん――ですね?」
柔らかい笑顔で右手を差し出しながら俺に尋ねる。
だけど俺はその声も耳に届かず、ぼけーっと彼女の顔を眺めていた。
いや、別に見惚れていたとか、そんなんじゃない。ただ…彼女は誰なのだろう、と漠然とそんなことを考えていた。
「……?」
「あ、いえ、すいません。
今日から第零遊撃隊に配属になったウィリアム=ケノビラックです。よろしくお願いします」
黙考していた俺を怪訝そうに見ていたので、誤魔化しの苦笑を浮かべて彼女の右手を取った。
「ええ。歓迎しますよ」
にこにこしながら答えてくれるのは嬉しいんだが、そもそもこの子は誰?
鎧を着ている限り騎士なのだろうが……俺と年はそう変わらないっぽいけど……。
同い年だと仮定した場合、彼女は部隊の従者だという可能性が高い。
あ、でもさっきフレッド氏は敬語使ってたし、だいいち従者がこんな質の良さそうな鎧を身につけてるはずないか。…うーん。
「ははははははははっ!!」
俺が首を捻っていると、前方…つまりは銀髪の少女の背後から、男たちの笑い声がこだました。
いつの間に集まっていたのだろう。騎士たちが数人、すぐ近くで俺たちを見物していた。
多分、遊撃隊の面々が何人か様子を見に来たのだろうとは思うが。
「え?……何か可笑しいんですか?」
不安そうな顔で少女が男たちに振り返る。だが、彼らはその発言に益々吹き出すばかりだった。
「はははっ!何か可笑しい…って、なぁ?」
「いや……くくっ。お嬢、自分の自己紹介してませんよ?」
「だから新人がさっきから『あんた誰?』って顔してるんスよ」
男たちが口々に言った。
それを聞いた少女は、合点がいった、と言う風にぱんっと両の掌を叩くと再び俺に向き直る。
「嗚呼すいません!失念していました、私の自己紹介がまだだったんですね。
えっと、私は―――この部隊の隊長を務めさせてもらってます、マリィ=トレイクネルです」
……ああ、部隊長か。
どうりてあの出迎えてくれた騎士が敬語を使っているわけだ。
一般の騎士とはやや形状の違う甲冑を身に纏っているのもそういうことか。
なるほど、なるほど………って。
「……え?」
納得して頷きかけたところでやっと気付いた。
彼女がこの部隊のリーダーを務めている騎士だとするなら、それは同時に――――。
「……ぶ、部隊長ってまさか―――――あなたが…いくさ、ひめ…?」
「え?…ええ、そう呼ぶ人も中にはいるみたいですね」
何食わぬ顔で答える少女の顔をまじまじと眺めた。
……正直、信じられない。
戦姫がこんな小柄な少女だったとは。今まで聞いていた数々の武勇伝から、てっきり見上げるほどの大女だと思っていたのに。
実際には、百戦錬磨の戦姫どころか騎士だということすら耳を疑うほど彼女の腕は細かった。
「あれ…?ということは本当に今まで私が誰か解らなかったんですか?」
「……う。えと、はい。その…すみません」
首を傾げて尋ねる戦姫に、歯切れ悪く答えた。
「………そ、そうですか…。(わ、忘れられてる……。一度戦場で会ったはずなのに…私、忘れられてる……)」
ちょっとショックだったらしく、ブツブツ何かを言いながら項垂れている。
…本当に彼女が戦姫なのか、よりいっそう疑いたくなるような姿だった。
だけどそれもすぐに持ち直したようで、気持ちを切り替えるように小さく咳払いをした。
「んっん。……まぁいいでしょう」
さっきまでとは違う、少し厳しい表情。
それに対面している俺は人知れずゴクリと喉を鳴らした。
「あなたが此処に籍を置くに当たって、ひとつ注意してほしいことがあります。
これからあなたは私の元で戦うことになるわけですが――私が部隊長である以上、甘えは許されません。
あなたは傭兵をしていたようですから問題ないと思いますが、騎士としては新人であることに変わりありません。
これから覚悟しておいてください」
「は…はい」
緊張した面持ちで答えた。少しだけ引き締まった気分だ……ったのだが。
「お〜い、新入りぃ。身構えなくていいぞ〜。お嬢は初めて年下の部下が出来て張り切ってるだけだからな〜」
茶々を入れる声が俺をすぐに脱力させた。……さっき減給を言い渡された、フレッド氏だった。
「フレッドさんッ…!タダ働きしたくないのなら、少し黙っててくださいっ!!」
「それはあんまりですぜ……」
少女に叱られ、項垂れるフレッド氏。
その様子は、どこか傭兵隊の師匠とその娘マローネのやりとりを彷彿とさせた。
……苦労してるんですね、フレッドさん。
騎士団の一部隊にしてはあまりにもかけ離れた雰囲気。
本当に此処がアリマテア王国始まって以来の猛者たちが集う、第零遊撃隊なのだろうか。
とても礼節と義を重んじる正規の王国騎士に似つかわしい――とはお世辞にも言えない。
いやまぁ騎士とはちょっと違う意味で、義に厚そうではあるけど。
とりわけ戦姫の印象の食い違いは筆舌に尽くしがたい。
こんな少女が戦場で上手く立ち回っているというのが不思議でならなかった。
「でも本当のことじゃないですか、お嬢。
今日になって急にお姉さん風に吹かれたみたいに態度を変えて」
「なんですか!そのお姉さんって!
わっ、私はただこれを機に普段からもっと隊長らしくしようと思っただけです!
それとっ!もういい加減"お嬢"はやめてください!!」
「…それ、どっちも今さらって気がしますが」
フレッドと呼ばれた騎士とは別の、彼より少し真面目そうな騎士が呆れ顔で横槍を入れる。
「は、ははは……」
もう、乾いた笑いしか出なかった。
「――もうっ。
えーと……さて、ウィリアムさん?」
「あっ、はい」
急にこちらに振り向かれたせいで、俺は反射的に姿勢を正した。
ふぅ……と気持ちを入れ替えるためらしい、小さなため息。
それを見守りながら、まだ何かあるのだろうかと身を固くしていると。
「―――――改めて、ようこそ。我が部隊に」
そう言って、俺ににっこり微笑んだ。
その表情は戦場を駆ける百戦錬磨の戦姫とはとても思えない、柔らかい笑顔だった。
白い白い、返り血など浴びたことなどないとしか考えられないほど、白い笑顔。
彼女が色素の薄い白い肌をしているからか、俺はそんな印象を受けた。
「――――はい!」
この日。
俺は戦姫と出会い、新人として彼女の側で戦うことになる。
配属後すぐさま大きな戦闘が重なり、俺たちは各地の前線を転々とする血生臭い日々が続く。
その間、俺が王都に帰還できたのは片手で数えられる程度。それも半日も経たない短い滞在だった。
その折マリカと再会することはあったが、どれも二言三言挨拶を交わすのみで、
彼女とちゃんと話をできたのは一年と半年後―――つまり戦争が終わった後になってからだった。
以上です。
副題ミスしてしまいました。今回の副題は
>>81。
大筋の流れとしては次回でラスト。
このタイトル全体としても後三度程の投下で終了となる予定です。
>>80 一部の住人(荒らし?)が乱立したスレだからしょうがない
あれ、結局こっちが残ったんだ。まあ先に立ったほうが残るのはいいとして、テンプレの改定に関しては反対意見も出てたみたいだけど、このままで行くの? それともこのスレの終わりにまた話題にするの?
流石ぶらっどまりぃは面白いな。
>>87 GJであります。
ウィルが男連中と仲良くしてるのにヤキモチするマリィ隊長が目に浮かぶ。
ぶらっどまりぃkitakore
93 :
73:2007/04/22(日) 09:57:39 ID:t5wWxQNX
>>87 めっちゃGJ!!
>>78 ここのSSへの絵だから良いんじゃないか?
角煮はどっちかというと嫉妬漫画を集める所になってる
てっきり任官させたら終わりかとおもっていたが、続くようなので楽しみにしてます
>>96 他のスレでもそこのSSの絵が投下されることは良くあるんだし、
そんなに目くじら立てないで素直に喜ぼうぜ?
荒らしよりも煽り厨房の方が問題だな・・
煽りのせいでスレがメチャクチャになってるしww
逆に角煮に投下すると「誰?」「何の作品?」って分からないかもな
>>51 どうやって避難所を見ているんだ
俺もJaneStyleだけど・・URLを貼り付けても閲覧できないんだが・・
何か設定とかあるんですか?
スレ違いだからよそでやろうね
まぁ落ち着けや
スレ違い・住み分け
これを多用してくるのは、例の粘着荒らしの典型的なやり口だ。非常にわかりやすいぞ。
避難所ができて、住人に心の余裕が出来てきたので、かの人も必死なのだろうさ。
あれやこれや策を巡らせて、人心を分断させようと躍起になってるんだろう。
空回りさせておけ。
で? 結局、閲覧方法のやり方がわからないわけだが・・
神やわからない人たちのためにもどうか教えてくれ・・
テンプレにやり方を追加してくれ
使ってる専ブラのヘルプを見るかDL先くらい見ろよwww低脳
いや、普通外部板を2chブラウザで見る方法なんてのはエロパロ板で聞くことじゃないだろ……
ちったあ開発サイト見るとかググるとかしろよ……
荒らしが必死すぎてワロタwwwwwwww
それぐらいのことを教えてやれよww
(´,_ゝ`)プッ
避難所って荒らすことができないのか? マジで?
>>108 荒らしたら一発でIPさらされるからね・・・
まあ、作者さんがどっちに投下するかは自由だけど
何だかんだ言ってもやっぱりここの人は優しいなぁ・・・
>>107 こいつの煽りが必死すぎて逆にワロタwwwwwwww
だったらお前が教えてやれよww
(´,_ゝ`)プッ
誰か中2病のニートをアク禁止にしてくれ
マジでうざい
115 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/22(日) 22:17:12 ID:9/hpQTuC
去勢したら収まるかもな。
やっちまった。
sage忘れスマソ
フン・・荒らし連合は一体何をやっているんだね・・。
急いで、避難所を破壊してもらわないとここでの工作活動がダメになってしまう・・
彼はこのスレに入り浸っているおかけで私に構ってもらわなくなったから・・
これは復讐なのよ!!
119 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/22(日) 22:57:06 ID:wxkw1ROk
こんにちは。
こういう内容の小説を読んだことがあったら教えて
くれませんか。
よろしくお願いします。
「教育実習中に知り合って関係を持った教え子が後々妹の彼氏になり、
その後も体の相性がいいので関係を持ち続けたが、妹が妊娠してしまった。
妹の彼氏は生活力のないダメ男。このまま二人で逃げようとか言いつつ
セックスしてしまう二人。ダメ男は音楽などのアート関係の夢を持つが才能なし。
主人公には女の恋人がいて、結婚を迫られている。
age厨ウザッ
おい!飽きた
123 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/22(日) 23:50:33 ID:xwZglf5h
スレ違いなjaneの使いかたは教えるくせにSSのことは教えてくれないんですか?
投下します
* * * * *
ヘイカは悩んでいた。
同じ部屋には人間が7人。
大会の商品であるクチナ王子と。
どいつもこいつも人間にしては癖のありそうな6人の女。
下手に動いたら、全員に注目されてしまうそうなこの状況。
どうすればいいのか、悩んでいた。
当初の目的は、既に達成されている。
故に、ここに長居する必要などなく。
さっさと部屋から立ち去って、乱戦の疲れを癒したいところなのだが。
どうしても。
気になってしまうことが、あった。
クチナ王子の隣。
幸せそうに微睡んでいる、角の生えた少女。
(――竜と人の合いの子、か。
何処ぞの馬鹿の不始末かとも思ったが、彼奴は違うな)
馬鹿な竜が野の人間を犯して産ませたものではなく。
おそらく、人間が意図的に“産ませた”合いの子だろう。
偶発的に生まれる合いの子と比べて、妙に体幹がしっかりしているため、
成長の段階で、何らかの調整を受けていたことが伺える。
それに――
(――複数の種族の匂いがする。
雑魚共だけかと思いきや、それなりの奴も含まれているな)
少なくとも3以上。下手したら5〜6種の特性を備えている。
何より――あの、角。
あれだけで、幻想竜のヘイカが警戒するに足りてしまう。
もしあの小娘が、あの角を使いこなすことができるのなら――
(……少なくとも我は、戦いたくはないな)
まだ341歳とはいえ、竜族の中でも戦闘能力に優れる幻想竜のヘイカだが。
少女の“角”から薫る気配には、どうしても背筋が粟立ってしまう。
そんな少女が。
クチナ王子に、べったりと懐ききっている。
それを見ると、どうにも複雑な気分になってしまう。
――あの王子は、そんなに良いモノなのだろうか。
ヘイカの目から見て、外見はギリギリ及第点。
王族として最高級の施しを受けてアレならば、平均以下といえるかもしれない。
身体は虚弱。まともな戦闘どころか運動すら難しそうだ。
気質も全く期待できない。ヘイカを含め6人の女性に見つめられ、生まれたての子鹿のように震えている。
第一印象は、はっきりいってよろしくなかった。
なのに、あの合いの子は。
まるで王子が至上の存在であるかのように、身を任せきっている。
いったい、王子の何があの合いの子を惹き付けているのか。
気になってしまい、ついつい王子も見てしまう。
見てしまうが、見続けるのは難しかった。
何故なら。
「…………う」
ヘイカが王子を見つめると。
右前方の二人の少女が。
これでもか、というくらい、殺気を込めて睨んでくるからである。
剛槍を持つ短髪の護衛と。
木の棒を持つ長髪の女。
顔の作りがよく似ているので、おそらく血縁だろう。
まあ、睨んでくるのは仕方ないとは、思う。
自分は王子の部屋に押し入った不審者であり。
二人の少女と、本気で戦ってしまったのだから――
* * * * *
後頭部に突き付けられた殺気に。
ヘイカはその場を動くことに躊躇した。
突き付けられているのは、ただの棒。
全力で振り回されるのならともかく。
大して距離の空いていない状態で強打されても、致命傷にはほど遠いはず。
しかし、ヘイカの第六感は。
これ以上ないくらい、己が危機に陥っていることを、認識させた。
下手に動いたら――殺される。
(……ふむ。この槍娘が至上の使い手だと思い込んだのが失敗だったな)
今、ヘイカが組み伏せている少女と同格の女。
棒の長さは、空気の匂いから察するに、ヘイカの刀より少々長い。
手足の長さも勘案すると、振り返りざまに斬りつけるのは難しそうだ。
それに――
「……うぐぐ……姉さん……!」
ヘイカの下から、絞り出されたような声が響く。
剛槍を片手で回転させ、あろうことかそれを瞬時に逆回転させてみせた怪力の少女。
この槍娘に勝てたのも、ヘイカとしては幸運としか言い様がない。
少女はヘイカのことを知らなかったのに対し。
ヘイカは、少女の武器と特性を事前に知り得ていた。
故に、少女が強引な攻撃変更を技として組み込んでいることを想像できたのだ。
初見だったら、先程の攻防では負けていた可能性も高い。
背後の女をどうにかしても、再びこの少女と戦って勝利を収めるのは難しい。
最悪、槍娘と棒使いの二人を一度に相手することになるかもしれない。
(……この場合は、多少の負傷は覚悟して逃げるのが最善か。
来た目的は果たされていないが……まあ、やむなしといったところか)
最終手段としては。
この場で竜の姿に戻って皆殺し、という手もあるが。
風の噂で聞いた話によると、今日の昼過ぎに竜騎士がこの城を訪れるとのことである。
そのため、城の内部は少々ごたついていて、ヘイカはその隙を狙って突入したのだったが。
(元の身でも、飛竜を自在に繰る達人が相手では、分が悪いな)
竜騎士の恐ろしさは竜族の間でも広まっている。
まだ年若いヘイカが太刀打ちできるとは思えなかった。
(……さて。では、逃げるにはどうするか)
後頭部に突き付けられた棒。
これがおそらく、女の主力武器だろう。
後頭部に突き付けた状態から相手を殺すにはどうするか。
刹那の時間の中、ヘイカは相手になったつもりで想像する。
瞬間の判断は、ヘイカの最も得意とするところである。
考え得る棒の攻撃手段を想像し終えたところで。
――ヘイカは、動いた。
「……ッ!」
ヘイカの気配を察して、背後の女の気配が変わる。
ただ殺気だけ飛ばしていた状態から――ヘイカを殺すために、攻撃動作に入った。
しかし、それでは遅いとヘイカはほくそ笑む。
致命傷さえ避ければいいのだ。
ならば――頭皮がこそげようとも、問題ない。
ヘイカの動作は、下へ。
膝を落とし、頭を下げる。
重力による下降では速度が足りないため、全身の筋肉を総動員して体を丸める。
これなら、たとえ高速で棒を突き出されようとも、せいぜい頭頂部の皮が髪ごと引き裂かれるだけだ。
そして、空中で反転しながら、背後へ一刀。
有効な攻撃にならなくとも、牽制になればそれで充分。
そう、思ったのだが。
変則的な宙返りの最中。
ヘイカは、背後の女の姿を目視し。
驚愕した。
女は、棒を突き出して、いなかった。
まるで不動の巌の如く。
棒を正面に構えた姿勢のまま、ヘイカのことを見下ろしていた。
とはいえ、ヘイカの方も今更止まることなど不可能だ。
回転の勢いを乗せたまま、刀を振り抜くしか、ない。
得意の抜き打ちではないが、それでもかなりの速さで斬れるはず。
女の突きがどれほどのものかはわからないが、速さだけなら、勝つ自信があった。
間合いの都合上、体を狙うのは難しい。
故に、狙うのは腕。
棒に添えられた左手を、超高速の一閃で斬り払う……!
銀光が閃く。
ヘイカの放った逆さ下段は、一分の狂いもなく、女の腕へと吸い込まれる。
瞬間。
鈍い音が、響いた。
それは、硬質の木材が肉を打つ音だった。
続いて、一人の人間が床に落ちる音。
やや遅れて、壁に金属が当たる音が。
「……ッ!」
床に落ちたヘイカの顔は。
純粋な畏怖で、染められていた。
相手が己より長い得物を振るう場合なら。
ヘイカのように、持ち手、添え手を狙うのは有効な攻め手である。
しかし。
(――此奴、片手の斬り払いに合わせおった!)
回転の勢いが突き、更に棒より短い刀の持ち手を。
寸分違わず、打ち据えてきたのだ。
しかも、握力の抜ける手首の一点を、正確に。
結果、ヘイカの刀はすっぽ抜け、壁の方まで飛ばされてしまった。
短刀や拳で合わせるのとは訳が違う。
己の手を狙う一閃、その持ち手をこうも正確に捉えるとは。
しかし、呆けている場合ではない。
刀を失い、しかも頭から床に落ちた今の姿勢。
逆の立場なら、ヘイカは百回殺せる自信があった。
「……糞ッ!」
舌打ちしながら、床を転がろうとするヘイカ。
「――馬鹿。逃がすわけないじゃない」
膝の下に棒を突き入れられ。
反射的に跳び上がろうとしたヘイカの体重を巧く乗せて。
くるん、と体が回された。
「ぐぎっ!?」
再び背中から床に落ちる。
その反動に合わせるように、女の棒が脇へと滑り込み。
「よくも」
ひっくり返され、顔面から床に叩き付けられる。
咄嗟に手を床に着かせようとしたところで、今度は棒が股の下に。
「ユナハを」
全身を捻られながら、引き寄せられて側頭部を思い切り蹴飛ばされる。
反動で棒がうまい具合に填り込み、股関節が脱臼する。両足から力が抜けるのが自覚できた。
「いじめて」
それでも何とか上半身をしならせて逃げようとし。
こんどは脇腹を強打され、その反動でまたもや体が半回転。
後頭部が床に叩き付けられ、衝撃で硬直した腕が棒で押さえつけられた。
「くれたわね!」
ごきん、と。肘関節の隙間に棒を押し込まれ。右腕があっけなく脱臼させられた。
残った左腕で、懸命にも抵抗を試みるが――
「――ちょっとだけ訂正するわ。
私、殺すのも得意だけど」
嵐のような連打だった。
全身の関節を、寸分違わず狙い打ち、悉く脱臼させてくる。
すでに外された関節にも、何度も打撃を加えてくる。
常人なら、激痛で三度は発狂しているだろう。
それでもなお、女の猛攻は止まらない。
「一番得意なのは、やっぱり生かさず殺さず、かな」
それは、異様な光景だった。
既に全身の関節を外され、ボロキレのようになった小さな女の子を。
棒を持った少女が、楽しそうに乱打していた。
その猛攻は、女の子が血肉袋になるまで続けられるかと思われたが――
「――姉さん!」
響いたのは。
先程まで組み伏せられていた、少女の声だった。
「……なに、ユナハ?」
ぴたり、と。
棒による嵐が収まった。
叩かれていたヘイカはぴくぴくと痙攣するだけで、まともに動く気配はない。
「――私に、やらせて」
ゆっくりと立ち上がった少女の目には。
主人の前で敗北を喫した悔しさが、闘志になって燃え上がっていた。
「……や。んなこといっても、ほれ、この通りだし」
つんつくつん、と棒でヘイカがつつかれる。
それに対し、槍の少女は重い溜息を吐いて。
「……姉さん、趣味悪すぎだよ」
「えー。だってさあ、なんかこう、死んだフリってかなり滑稽じゃない?」
「演技だっていうのがわかってて、それに気付かないふりして叩き続けるのは酷いと思う……」
「なによう、折角カタキをとってあげ――」
「――だああああああっっっ!!!
わかってたのならそう言え小娘どもがあああああああっっっ!!!」
叫びながら。
ヘイカは体を捻り、全身の関節をはめ直しながら立ち上がる。
「お、立った。加減してたとはいえそれなりに叩いたはずなんだけどなあ」
「痛みには鈍い人なのかもしれないよ。
私のさっきの“逆回し”も一撃当たったのに、そのまま極められたから」
「え、嘘!? ユナハ、あれを出したの!?
なのに五体満足ってことは、やっぱしかなりの使い手みたいね。
……ユナハじゃ無理なんじゃない?」
「――うん。そうかもしれないけど……」
槍の少女は、王子の方をちらりと見て。
「絶対に、負けないから」
そう、言った。
「……闘志を燃やすのは勝手だがな」
立ち上がり、間合いを測りつつ、ヘイカは呟いた。
「我の方は、貴様等と戦う気なんて、もう無いぞ?」
「? 逃げるってこと? でも、簡単に逃がす気なんてないわよ」
「いやいや、そうではなくてだな」
仕方ないか、とヘイカは溜息。
王女という立場には興味があったが。
まあ、自分の命には替えられまい。
元の姿に戻って、皆殺しだ。
「――虫螻のように、潰し」
「こんにちわーっ!
王子様、お久しぶりーっ!」
「こらっ! 勝手に入るな!
クチナの部屋に入りたければ、まず私の許可を取ってから……!」
ヘイカが変化を解除しようとしたところで。
二人の女性が、部屋へと飛び込んできた。
一人は、襤褸布を纏った銀髪の少女。
一人は、大剣を担いだ紅髪の少女。
両者とも、部屋に入るなり、その惨状に一瞬だけ呆然として。
「――クチナ王子、大丈夫!?」
銀髪の少女は一足飛びでクチナの側に駆け寄った。
両足をその場に踏みしめた瞬間、雰囲気が激変する。
姿形は同じだが、鉄の塊が据え置かれたかのような重圧感を纏っていた。
そして。
「――貴女。クチナの部屋で、何をしてるの?」
底冷えのする声が響き。
まるでそれに呼応するかの如く。
壊れた窓枠を吹き飛ばして、一匹の飛竜が飛び込んできた。
紅髪の少女はそれに跳び乗り、背中の大剣を抜き放つ。
「奴隷。クチナを護ってなさい。少しばかり、暴れるから」
「うっさいなー。言われなくてもそうしますよ、竜騎士様」
ヘイカぴんち。
そして主人公に全く台詞がありませんでした。
……主人公?
>>68 うあああああああああああああGJ!
ついカッとなって8話書きました
今はユナハを超楽しみに待ちつつ九十九書いてます
>>87 GJ!
マリィかわいいよマリィ
>>134リアルタイム投下キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
GJ!
護衛姉妹の強さが予想以上、となると他の子たちも?
>……主人公?
_, ._
( ^ω^)誰だっけ?
>>134 おお、この戦闘描写の凄さはいいですなぁ・・・
なんにせよGJです。ここからヘイカがどうなるのかwktk!!
>>134 作家同士の馴れ合いキメェ
さっさと九十九投下しろ
>>134 ドラゴン最強かとおもいきや、予想外に力関係が複雑でwktkっす。
>>137 これもそうだがGJだけのレスとか無駄にレス消費するだけだからしないでもらいたいね
>>140 それを作者本人が言うなら納得するが
ただの名無しが言っても説得力に欠けると思う
う〜ん……。
最近の住人の厨っぷりのせいで、どこまでが単発なのか見分けがつかない……。
投下します。
〉体育館の外には夕暮れ空があって、カナカナのもの寂しい鳴き声がこだましていた。九月も中場を過ぎ、秋の息遣いがはっきりと感
じられるようになったのだが、それでもまだ残暑は続いていた。
〉体育館内はシーンと静まり返っている。運動部が残した熱が、まるで熱帯夜のように体にへばりつき、汗がじくじく吹きでて体を流
れる。ここだけ湿度が高いのだ。
〉「……サウナかよ」
〉思わず奏翔(かなで・しょう)は呟いた。
〉ともかく暑い館内は、明らかに外より湿度も気温も高く、体と心を際限なくげんなりさせる。
〉ズボンの右ポケットに手を突っ込むと、そこには一枚のルーズリーフが綺麗に折り畳まれている。翔はそのルーズリーフを取りだし
、折り目を開いた。
〉そして、翔は溜め息をつく。
〉『体育館の部活が終わったら、体育倉庫に来て下さい』
〉ルーズリーフの表面にはそんなメッセージがくっついている。翔はこのメッセージに従って、体育館まできたのだ。
〉もう一度、翔は溜め息をついた。
〉このルーズリーフを見るたびに、翔はたまらなく憂鬱になるのである。この普通のメッセージが孕んだ、おかしな文字に。
〉「普通、新聞の切り抜きなんか使うかよ……」
〉まるで脅迫文書のようなその文字一つ一つを撫でまわしながら、翔は言った。べっとりとへばりついたのりの、のっぺりとした匂い
が鼻の奥を刺激する。
〉そして、翔は三度目の溜め息をついた。
〉この手紙は今朝、下駄箱に入っていたのだ。それを登校時に発見し、泣きそうになった。同時に一瞬でもラブレターだ、と考えて浮
かれた自分が悲しくなった。
〉おそらくは友達のたちの悪い悪戯だと思う。脅迫文を装おって、翔を怖がらせようとでも思っているに違いないのだ。
〉しかし、微妙な学力レベルの私立高に漫画や小説の世界に登場するような不良はいない。もちろん悪ぶるやつも居るにはいるが、そ
いつらはトイレでコソコソ煙草を吸うくらいがせいぜいで、人様に迷惑なんてかけられないだろう。
〉私立は校則が厳しいし、翔が通う高校は大学附属高であるため、そんな馬鹿な事を起こして内申を下げたくないとみんな思っている
はずである。
〉その時はそう確信し、意気揚々と自分のクラスに向かったのだが、そんな気分はすぐに消え失せてしまった。クラスメートは誰もそ
の手紙を知らなかったのである。いかにもそんな下らない事をやりそうな大久保、本田、森の3バカトリオも知らぬ、存ぜぬと犯人扱
いされたためか不機嫌そうな顔で言う。
〉その顔は嘘を言っているようには見えなかった。彼等はかくれんぼで狭い密室に隠れると、なぜか笑い出すタイプである。嘘は下手
くそだ。
〉いつの間にかその差し出し人不明の手紙が怖くなっていた。誰も知らないその手紙には重要な意図が内封されているような気がした
のだ。自分の顔が青くなり、たらたらと冷や汗が出てくるのを、はっきりと自覚した。
〉そんな翔に対し、哀れみを抱いたのか3バカトリオは翔の肩をポンと叩き、何かを手渡してくるのだった。
〉大久保は湿布。ありがとう、役に立ちそうだよ。
〉本田は絆創膏。まぁ、妥当だろう。ありがとう。
〉森はカッターナイフ。森よ、お前は俺に何をさせたいんだ?
〉そうこうするうちに授業は全て終了し、頭を抱え焦っているうちに部活も終わってしまい、今、体育倉庫の前まで来たのである。
〉体育倉庫の鉄製扉は、まるでその奥に魔王でもかくまっているんじゃないかと思うほど重厚で、檜の匂いに混じる鉄の匂いが不安な
気持ちとあいなって場違いな威圧感を漂わせていた。
〉思わずごっくん、と生唾を飲み込む。心臓が早鐘をうち、体からフッと熱が消えた。
〉今なら魔王に戦いを挑む勇者の気持ちが分かる。だが反対に、勇者は翔の気持ちを分からないだろう。翔には仲間も、経験値もない
のだから。
〉たっぷり時間をかけてから、ようやく意を決して、その重厚な扉をノックする。扉の雄大さから比べれば、その音はかなり小さく、
すぐに重厚な鉄に吸い込まれて消えた。
〉返事はない。
〉不気味な静まりの中で、カナカナが鳴いていた。その沈黙が、翔の不安を増大させる。
〉逃げちまおうか、と思う。全てなかった事にして、家に帰って寝ようか、と。
〉しかし、そうもいかない。翔がばっくれたら、中の人がどんな反応を示すか分からないのだ。だから下手に刺激せず、直接会ってう
まく場をおさめる、それがベストだと思う。思う事にした。
〉再び、扉をノックする。
〉やはり返事はない。
〉気味の悪い感覚を撫でるような汗が流れ落ち、心臓は天井知らずに高鳴る。
〉そんな感情も感覚も全て吐きだしたくて、ふぅ〜と大きく息をはく。
〉覚悟を決めた。初めて扉をノックした時使った十倍の勇気を振り絞り、錆びついたむちゃくちゃ重い扉を肩を当てて無理矢理押し開
ける。
〉キィーッと蝶番が軋む嫌な音が、館内に反響した。
〉重い鉄扉は一度勢いがつけば一人出に開いていき、暗い体育倉庫の地面に帯状の光が広がっていく。
〉カビの刺激臭が鼻の奥をつく。
〉倉庫はひっそりと静まり返っていた。暗くて奥がよく見えないが、人の気配は感じられない。中に足を滑らせると、不自然に敷きつ
められたマットの、柔らかい感触があるだけで、それ以外におかしな所は見当たらない。
〉「……誰もいないのか」
〉翔は問いかけるように、そして同時に自分にいい聞かせるように呟く。沈黙が答えだった。
〉やはり誰もいないようだ。
〉安堵の吐息を漏らす。憂鬱な気持ちが胃の中にストンと落ちて、消えたような気がした。と、なれば長居は無用である。
〉「帰るか……」
〉翔が踵を返したその時、
〉「センパイ」
〉人に媚を売る仔猫のような甘い声が背中から聞こえた。驚いて振り返ると、隅の飛び箱の上に少女が座っていた。暗くて顔はよく見
えないが、スラッと伸びる白い足がやけに綺麗で目に残る。
〉「待ってましたよ」
〉そう言って少女は飛び箱から飛び降り、大地を撫でるような柔らかな音と共に着地した。
〉「もう来ないのかなぁ、と思いました」
〉少女は翔の元にゆっくりと、しかし悠然と近付いてくる。
〉翔は思わず身を固くした。
〉この少女が不気味で仕方がなかった。まるで多種多様の果物の中に一つだけ苺が混じっているような異質さ。それは遠くで見るかぎ
りは分からないかもしれないし、実際廊下ですれちがっても分からないだろう。しかしサシになるとその異質性がよく分かる。
〉帯状の光の中に侵入した少女の姿が、下半身からジワジワと写し出されていく。
〉驚いた事に可愛い少女だった。パッチリと大きな瞳はややつり上がり気味だが、その分意思の強さを物言わずに語っている。白く、
高い鼻はツンと気高く、クローバーのように可憐な唇はぷっくりとしていてみずみずしい。
〉彼女が歩を進める度に、肩まで伸びた黒髪が柔らかく空を舞う。胸元の校章が赤い事から、少女が自分より一つ年下の一年生である
ことが分かったが、それ以外は何も分からなかった。もちろん名前も知らないし、見た事もない顔だ。
〉純粋に可愛い娘だとは思う。
〉この少女が美人かどうか、百人に質問すればまず全員が美人と答えるだろう。しかし、それでも彼女の評価は二分されるよう翔には
思えた。すなわち直感的に好きか、嫌いか。
〉現に、翔はこの少女はあまり好きなタイプではない。かわいいとは思うが、それ以上に不快な感じを受ける。そこに確かな理由や裏
付けがあるわけではなく、ただ直感でそう思った。
〉「何のようだい?」
〉固まった表情筋を無理矢理緩めて、翔はやんわりと言葉をつむぐ。
〉少女はふふふと笑った。その笑みがドキリとするほど妖艶に見えた。まるで獲物を見つめる小悪魔のようだ。
〉やがて、少女はゆっくりと翔の脇をすり抜けて行く。柔らかく風に揺られた髪の毛から、甘いシャンプーの香りが鼻孔をくすぐる。
その芳香に頭がくらくらするような高揚感を覚えつつ、その匂いに魅入られたように動けなかった。
〉ズシンと腹の底に響くような重低音を背中で聞いて、ようやく翔は我に返る。背後から照らしていた光が遮断され、鉄格子から真っ
直ぐ伸びる赤い光だけの世界に急転した。鉄扉が口を閉じたのだ。
〉驚くと同時に慌てて振り返ったその時、いきなり首に手を回されそのまま乱暴に押し倒された。
〉もう何がどうなったのか理解できなかった。
〉「セ〜ンパイ」
〉腰の上で馬乗りになった少女が、押し倒された翔の顔左右のマットに手をついて、体を傾けてくる。顔と顔との距離が狭められ、そ
の間にはもう拳一つ分ほどの隙間しかない。彼女の小さくも甘い吐息がいちいち鼻頭をくすぐる。
〉「大好きです」
〉いきなり唇を奪われた。狂った果実のように、どこまでも甘い唇の感触。しかし、その感触はさざ波のようにすぐに消えていった。
顔をあげた彼女の唇に糸が引いていた。
〉頭がくらくらする。夢と現の境界線が曖昧になってしまったような気がした。
〉ふふふ、と少女は満足気に目を細めて、再び唇を合わせてくる。今度は濃厚でむさぼるように彼女の唇が吸い付き、そのまま唾液を
潤滑油にして滑らせるように、柔らかな舌が口内に侵入してきた。
〉彼女の舌がなまめかしく、かつ濃密に翔の舌と絡みつく。いやらしい水音が鼓膜の奥から聞こえた。甘い唾液がじくじくと喉の奥に
流し込まれ、それを嚥下する度に思考が恍惚となっていく。
〉それでも彼女は唇をむさぼる。
〉そのまま右手を滑らせて、翔の下半身へと手を伸ばす。片手で器用にズボンのチャックを下ろし、すっかり隆起したペニスを握りこ
むと、嬉しそうに目を細め口を離した。
〉「ふふ、センパイおっきくなってますよぉ〜」
〉冷たい彼女の指が熱を奪っていく。まるで上半身と下半身が別の体になってしまったかのようで、夢の中を漂う頭とは対照的な股間
の冷たい快楽が直接神経を刺激する。
〉「どうですかぁ、気持ちいいですかぁ〜?」
〉言いつつ少女は右手をゆっくりと動かしはじめた。自分の手では絶対に感じられない快感が、じわじわと神経を刺激する。
〉この少女の手の動きは熟練の域に達していた。竿を激しく扱いたと思ったら、滑るように指先を這わせて亀頭を愛撫する。手の平で
敏感な亀頭を優しく撫で回し、カリ首を指でじらすようにつついた。
〉電撃が走ったような快感にピクン、と翔の体が震える。
〉「センパイ、ここがいいんだぁ〜」
〉鼻にかかるような甘い声を出して、少女はカリ首を執拗に刺激する。雪のように白く細長い指で輪を作り、カリを包んで締め付けて
きて、もどかしい快感が全身を駆け抜けた。
〉「あはっ、やっぱりここがいいんだぁ。ほら、先っぽから我慢汁が出てきましたよ」
〉少女は加虐的快楽を享受し、その目をうっとりととろけさせていた。甘く熱い少女の吐息が激しさをまし、翔の顔にふりかかる。
〉亀頭から漏れたカウパーを人指し指によく馴染ませ、少女はわざといやらしい音を立てつつ、カリに指を滑らせていた。
〉「すごいですよぉ、センパイの我慢汁で手がベトベトです」
〉芯に届く圧倒的快感。しかし、少女は頂には決して昇らせてくれない。少女は絶頂の寸前で指を離したり、見当外れな場所を愛撫す
るのだ。
〉イキたいが、イカしてくれない。そんなもどかしさに耐えかねて、翔は無意識のうちに快感を求めて腰を動かしていた。
〉「あれ、どうしたんですか?センパイ」
〉その動きを感じ取ったのか、少女はしごいていた右手をピタリと止めた。それから翔の耳元に口を持っていき、甘く熱い吐息と共に
少女は囁く。
〉「気持ちよくないんですか?」
〉優しくしごく。
〉「そんなわけありませんよね?ここはもうこんなに大きくなってますし、我慢汁だっていっぱい出てます」
〉頂が見えはじめると、少女の手の動きはピタリと止む。
〉「まさか、もういっちゃいそうなんですか? まだ五分もたってないですよ。もしかしてセンパイって早漏さん?」
〉熱い吐息が耳に絡みつく。脳の中を直接愛撫されているような錯覚に陥り、脳自らがその快楽を求めている。
〉「分かったぁ、童貞さんなんだぁ」
〉にっこりと笑う少女。その唇の隙間から可愛らしい八重歯を覗かせていた。
〉「センパイ、初めてなんですね。ふふふ、嬉しいです」
〉フッと耳元でジンジン響いていた彼女の声が遠くなった。少女は中腰に立ち上がったのだ。
〉その体勢のまま少女は右手でペニスを扱きつつ、左手で器用にパンツを下ろした。スカートをまくし上げた股間の、うっすらと生え
た淫毛の向こうに、ピンクの花が咲き誇っていた。
〉「ほらぁ、ここに入るんですよぉ。入ったら、童貞卒業です」
〉彼女は見せつけるように、両手で花びらを押し広げた。ヒクヒクと脈うつそれは、獲物を待つ食虫植物のように甘い粘液を滴らせて
いる。
〉「じゃあ、食べちゃいますね」
〉と、少女は膝立ちになり自分の花びらに、ペニスを押し当てた。これからもたらされる快感の期待に、翔の体が震える。
〉「いただきます」
〉それを合図に少女はゆっくりと腰を落としていく。翔のペニスが狭い膣を押し広げ、ゆっくりゆっくり奥底へと潜りこんでいく。肉
の花びら一枚一枚が愛液でたっぷりと濡れていて、絡みつくようにまとわりついてくる。
〉やがて、コツン、と最深部に先端が辿りついた。
〉「んあ……、お、奥まできました。ふ、ふふふっ、ど、どうですか? 女の子の中に入った感想は?」
〉そう言って、少女は腰をくねらせた。
〉暖かくて柔らかい膣の感触。びらびらの一枚一枚がまるで舌のように絡み付き、ずっとおあずけを食らっていた翔の肉棒はあっさりと限界に達した。
〉「あん、すごい。ピクピクって、中に出てます」
〉少女は腰を反らして、止めとばかりに膣を絞め上げる。まるで巾着のように、貧欲に精を絞りとる肉の壺を前に、白い快楽で頭が塗
り潰されていく。
〉やがて、全ての快楽を吐き出したときには意識が朦朧としていた。
〉「はははっ、センパイやっぱり早漏さんでしたね。早すぎですよ」
〉屈辱的な言葉は既に遠く、意識が快楽の中に抱かれて薄れていく。
〉そして、翔は意識を失った。
投下終了です。
まさか一日でトリップ変えるはめになるとはorz
>>155 キタワ*・゜゚・*(n‘∀‘)η*・゜゚・*ァ
ここからどうやって修羅場に持っていくのかwktk!!
〉
何か意味があるの?読みにくいぜ
159 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 04:21:58 ID:BIDxJ1GV
>>155 乙
つまらん突っ込みなんだが苺は果物じゃないのか?
>>155 つまんね
途中で終わる匂いがプンプンするw
>>155 GJ!
そういえばカナカナってヒグラシの愛称だよね?
ええと。
SSを投下しようかな、と思っているのですが・・・よろしいでしょうか?
隔離都市。
そう呼ばれる場所がある。
それは内部の者に言わせればありとあらゆる狂気の宝庫にして罪状の陳列棚、
およそ考え得る限りの犯罪者と狂人と変質者の展覧会場の名前だ。
社会の底辺でさえない、むしろその底辺自体を鼻歌交じりにぶち抜いて社会そのものから逸脱してしまったかのような、
異常を異質を異端を異色を異形を異様を異例を極めに極めて通り過ぎた、それでいて唯一絶対の共通項を抱えた異物の集う片隅の異界。
臭いものには蓋をしろ。朱に交わるな、赤くなるぞ。汚水は方円の器じゃなくて檻の形に従わせろ。
そんな精神のもとに作られた“塀の向こう側”が、隔離都市だ。
文字通り、見たまんま、犯罪者や異常者は危ないから物理的に危険を及ぼせない所にいてね、
カウンセラーとか付けちゃうし出来たら更正してくれると嬉しいな、
という考えを達筆な字で書いて貼っつけるくらいに露骨で露悪で無骨で無遠慮な鉄の要塞。
腐臭の漂うものだけを詰め込んで遮断した林檎箱である。
もっとも、他人事みたいに語りつつ、
そんな異常者のすくつだが魔窟だかわからない場所が僕の現住所だったりするから笑えない。
どころか、仮にとは言えここの住人達を裁く側の人間を目指していたという過去を持つあたりユニーク・・・もとい皮肉な話だ。
隔離都市で迎える僕の朝は早い。
ということもないのだけれど、大体6時から7時の間には起きているのだから健康的だと自分では思っている。
今日も習慣通り、朝の爽やかな空気を伝って扉越しに聞こえてくるリズミカルな包丁の音
────でない時は耳元で唸る刃物・銃弾の擦過音とか────で目を覚ました。
「朝、か。ぅん・・・っと」
上体を起こしてから伸びをして体を解し、ベッドを降りて掛けてある時計を確認しながら部屋を出る。
少し冷たい床の感触を味わいながら廊下を歩き、
次いで、聞こえてくる包丁の音に何となく似た軽い足音と共に階段を下りると良い匂いが鼻腔をくすぐった。
我ながらどうかと思うが、一足先に起きているだろう同居人が作る朝食の出来栄えを感じさせる香に、
起き抜けにも関わらず食欲をそそられる。これもいつものことだが。
「うっ」
で、これまたいつも通りに我が胃袋は睡眠欲の次はオレの番だろテメェたっぷり寝たんだから早くしやがれオラオラオラ走れ走るんだ急ぎ
やがれハリィ、ハリィ、アイムハングリィイイイイ! とせっつき、
それなりの真人間としては当然に抗い難い三大欲求の1つに従ってさっさと外のポストに投函された新聞を取ってから食卓に向かう。
いつの間にか包丁の音は止んでおり、
とはいえまだ朝食が出来るには早いはずなので朝刊を食卓に置いてから時間を潰すためテレビのリモコンを取ると、
「おはよう・・・兄様」
奥の方から同居人が姿を現した。
「ああ。おはよう、夜宵(やよい)ちゃん」
今時の女性が着用するにしては珍しい、黒を基調とする和服に純白の前掛け(エプロンとは似て非なる)。
その装いの対比に倣う様な、腰にまで伸びる艶のある黒い髪と同色の瞳に、透き通るほど白い肌。
男性としては平均かそれに+-数cmの僕よりずっと身長は低く、
加えて肌の色と相まって偶に心配になってしまうくらいに細い体躯は、見ているとよく出来た可愛らしい人形のような印象を受ける。
そっち方面の趣味がなくてもつい頭を撫でたりしたくなるし、
どちらかと言えば保護欲をそそられるタイプだが年の近い相手にはモテること間違いない。
こちらも、人形のように表情を動かさないでいることが多いのが玉に瑕ではあるけど。
僕としてはもうちょっと感情を顔に出してくれた方が可愛いし人間関係全般も上手くいくはず、
などと兄心を出してみたりもするけど、実は夜宵ちゃんとの間に血の繋がりは無いし、戸籍などを見ても完全無血、
ではなく完全無欠に赤の他人である。無論、名字も異なる。
にも関わらず彼女が僕を兄様と呼ぶのは、まあ彼女なりの理由があるらしい。
聞いても理由を教えてくれないのは悲しかったりする。
とにかく。
そんな、僕のここでの同居人こと否光(いなびかり) 夜宵ちゃんは、
朝一番の挨拶と共に分かる人には分かる微かな笑みを僕に向けてくれたのだった。
花開くようなとでも言おうか、本当にこれを稀にしか見せてくれないのは勿体ない。
が、残念なことに貴重なそれはすぐに収められ、彼女独特のどこかぼんやりした光を湛える黒瞳が僕を見つめる。
「少し待ってて・・・・・・朝ご飯は、まだ出来てないから。でも・・・ちょうどよかった」
「ん?」
小さな口からぽそぽそと紡がれる、外見に似合った可愛らしいけど控えめな声量に対して僕が何が、
と言いながら一度は下げた腰を上げきる前に、つぅ、と流れるような動きで傍に寄って来る。
その静かさに反した速度で横まで来ると、腰を折って両手を差し出してきた。
上には薄めた茶色のような液体が入った小皿を載せている。
移動に伴い、中身は零れるどころか波打ってもいない。階段を下りながら嗅いだ匂いが、より濃く鼻腔を突いた。
「・・・お味噌汁。味を、みて欲しい」
「わかった」
受け取り、軽く傾けて中身を舌に、そして口内に向けて流し込む。嗅覚、味覚共に心地良い刺激が通り抜けた。
温かさと共に、少し塩分の入った日本の朝食に欠かせない伝統の味噌の味が口から喉へと通って行く。
僕は味噌汁に関しては微妙に薄味を好むのだが、
同居している間に夜宵ちゃんが試行錯誤しながら作り出したそれは、僕の理想の再現と言える程に絶妙だった。
危うく、さっきから五月蝿く騒いでいる空腹が音となって出そうになる。
「うん。美味しいよ。具の入ったこれが待ち遠しい」
「ん。じゃあ、頑張る」
正直な感想と皿を返すと、彼女には珍しく意気込むように言ってから下がった。
奥────台所の方に戻ると、調理を再開したらしい気配を伝えてくる。
朝食の完成を待ちながら、僕はテレビを点けた。
「やり方が下手」
出来上がった朝食を2人向かい合って雑談交じりに食べながら、男1人と女3人が痴情のもつれで殺し殺されて全員刺殺体になった、
という最近よくあるニュースを見ての我が同居人の一言。
概ね、いつも通りの朝だった。
今回分はここまでです。
やはり睡眠は大事だなとか前途多難過ぎるとかもう私の顔面恥辱まみれですが、
何かあるなら(あるに決まってますが)ご指摘など頂けたらなと思います。
頭冷やしてSSの勉強してきます。これだけの量に3〜4時間かかりました。
まだ修羅場も嫉妬もなんもなひ・・・
>>167 こういう献身的なヒロイン良いなぁ・・・
後、なんか色々と裏がありそうな話なので頑張ってください!!
荒らしはスルーの方向で
>>167 最初は『甘獄と青』っぽいって言うか、
ロボさんが新しく監獄シリーズでもやったのかと思った
でもGJ!
ヒロインが良い感じに可愛いし、先が楽しみだ
>>167 ぶっちゃけ微妙
初めてならこれからに期待ということでマジレスしとく
荒らしはスルーの方向で
>>172 作者が厳しい意見を聞きたそうだったからレスしただけ
いつもならスルーしてROMってるよ
って釣られた?
171 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 18:20:07 ID:kaDdEObh
>>167 ぶっちゃけ微妙
初めてならこれからに期待ということでマジレスしとく
173 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 18:32:14 ID:kaDdEObh
>>172 作者が厳しい意見を聞きたそうだったからレスしただけ
いつもならスルーしてROMってるよ
って釣られた?
(゚Д゚)ハァ?
スルーするつもりだったのが・・この書き込みを見るとちょっと絶句したw
一体、どの辺がぶっちゃけ微妙なのかと具体的に指摘もないのに
>作者が厳しい意見を聞きたそうだったからレスしただけ
どの辺が厳しい意見なのかわかりやすく解説してくれないか?
最低でも批評なら3-4行ぐらいは書けよ
もちろんチラシの裏にだよな
>>スレは作品を評価する場ではありません
荒らしはスルーの方向で
おもしろかった
多少表現がくどいけどソレも良い味出してた
GJ
>>168 ありがとうございます。
とは言え、献身的なタイプ程・・・というのがこのスレ特有のアレですから。
私は、楓ちゃんスキーなので。
裏は・・・ぶっちゃけますと、上のを書いてから詳細を決めました。
今は書いては消してを繰り返しております。
>>170 まとめとヤンデレの方は一通り読んだので、書いてて「ヤバイ・・・訴えられそう」と思ったり。
いえ、ヤンデレの方のアレもですが、私如きにあのクオリティはとてもとても。
監獄都市、と書いてから気付いて急いで隔離都市に書き換えたのは2人だけの秘密です。
>>171>>173 そうですか。一応、2ちゃんにSSを投下するのは初めてなので。
未熟の程は・・・自身、書いていて痛感するところにございます。
名前とか・・・滑ったかなあ。とはいえ、コテが変名(へんな)おじさんなので。
>>174 そして私は早々に続きを書かねば・・・orz
>>178 多少なりとも気に入っていただければ幸い。あ、くどいのは仕様です。私の嗜好ですね。
名前とか、夜宵ちゃんみたいに人名辞典に確実にない捏造姓名「しか」出す予定がないので。
>>ALL
続きは、早ければ明日にでも。
頑張る新人と言うのは歓迎するし応援したいと思う
話もヒロインの同行も期待がもてるし頑張って欲しい
ただ、俺も書き手なので気持は分かるが投下以外の書き込みとか
全レスとかは控えた方が良いかも
作品一回の投下が短いから貯めてからの投下が望ましい。
全レスは良い習慣。気持ちが良い。
嫉妬する女の子ってどうして狂うのか未だにわからない
だって、キチガイでしょ? リアルキチガイでも引くのに
どうして萌え要素になるんだ
>>182 とりあえず、まとめサイトのSSを順に読んでいくんだ!!
明日の朝には嫉妬に駆られた少女の良さに目覚めるはず・・・!!
投下します。
いつもの帰り道、家へと向かう足取りがやけに重たい。
姉さんが立ち去った後、僕の胸の大部分を占領していたのは『後悔』の二文字。
もっと言葉を選んだほうが良かったのではないか?
ちょっとした憤りに任せてあんな言い方してしまったけれど、
きちんと誠意を持って話せば姉さんだってわかってくれたんじゃないだろうか?
もしも―――
なんて都合のいいことありはしないのに―――。
こんなに家に帰りたくないのも久しぶりだと思う。
昔はしょっちゅうこんな気分で家に帰っていたような気もするけれど、ここ数年はそんな事は無くなっていた。
もう二度とそんな日が来ることはないと信じ込み、油断という言葉すら頭の中に無かった。
それだけ僕にとってあの家は安らげる場所になっていたのだろう。
そうじゃなくなってようやく気付いた。
けれど、もう遅い―――だから『後悔』って言うのだろう。
すっかり暗くなった視界の先に見慣れた家を捉える。
意識しないで歩いていても、二人の待つ家にちゃんとたどり着いてしまっていた。
嫌だと思っていても自然と辿り着いているということは、ここにしか僕の居場所はないのだろう。
三人で帰るときと家の様子は何も変わらない。
外観はいつもどおりの僕らの家。
中身は―――よくわからない。
唯一違うところがあるとすれば………
正面から見て二階の右手側、蛍光灯が姉さんの部屋に淡い明かりを灯していた。
正直、心の準備なんて出来ていない。
でも僕は歩みを止めたりはしなかった。
止まってしまえば、もう踏みだせなくなる。
胸の奥に居座る迷いが僕の足を引っ張る。
けれど、振り切ろう。
きっとどれだけ時間があっても準備が完璧なることなんかありはしないのだろうから。
僕は玄関のドアノブに手を伸ばした。
「ただいま」
「おかえりなさい、兄さん」
玄関先、部屋着姿の雨音ちゃんが道を塞ぐように立っていた。
「おなか減ったでしょう? 早く食事にしましょう。私、ずっと待ってたんですよ」
雨音ちゃんに制服の袖を掴まれ僕はリビングへと引きずり込まれてしまう。
「あの、ちょっと!」
話す時間も与えられないまま、雨音ちゃんに引きずられて僕はリビングに足を踏み入れる。
食卓の上には綺麗に並べられた食事の数々が鎮座しているが、一膳分箸が足りていない。
「姉さんの分は?」
「姉さんは呼んでも部屋から出てきません」
予想通り姉さんは部屋で僕が謝りに来るを待っているのだろう。
先ほどの様子ではご飯に釣られて出てくる事もなさそうだ。
雨音ちゃんはお腹が空いているらしいので、これ以上僕の都合で待たせるわけにもいかない。
「じゃあ、先に二人で食べちゃおうか?」
「そうしましょう」
先に僕が座ると、雨音ちゃんは左側ではなく僕の正面に座った。
姉さんがいないからそれでも構わないのだけれど―――なんというか落ち着かない。
正面の雨音ちゃんは腹ペコだと言う割には、特に食事に手を出す様子もなくこちらを見ている。
せっかくの料理が冷めてしまっても仕方がない。
二人で手を合わせ『いただきます』をして料理に箸をつける。
今日は雨音ちゃんが一人で作ったのだろう。
料理が僕の口に入るまで雨音ちゃんはずっとこちらを見守っていた。
何か隠し味でも入っているのだろうか?
「どうですか?」
「うん。おいしいよ」
雨音ちゃんは一瞬だけ嬉しそうな顔をすると、
「当然です」
小さな声で呟いた。
それから僕らは声を発することも無く、食事を堪能する。
姉さんが居ないので二人の口数はあまり多くはならない。
けれどそれは気まずい静寂ではなく、のんびりとした心地よい時間。
ゆっくりとした緩やかな時間が流れてゆく。
なにかいい雰囲気。
雨音ちゃんが普段どおり接してくれたという安心感もあるのだろう。
これから雨音ちゃんには話さなくてはならないことがあるのに、心がすっかり和んでしまっている。
この状況は姉さんのときよりもずっとやりづらい。
「ねえ、雨音ちゃん―――姉さんは何か言っていた?」
食事中の何気ない会話。
できるだけ自然に雨音ちゃんに尋ねたつもり。
けれど、雨音ちゃんの箸はピタリと止まっていた。
「―――いいえ、何も聞いていません」
無理に冷静を装った声音。
おそらく知っていて、知らない振りをしてくれていたのだろう。
「そっか……」
どういう意図で雨音ちゃんが嘘を吐いていたのかわからないわけでもない。
けれど、その思いに反して僕は始めから話すことにした。
「電話で大事な話があるって言ったよね。
あの後、すぐに姉さんに会ったから姉さんには先に伝えたんだけど―――」
鈍い打撃音。
雨音ちゃんが拳をテーブルに叩きつけて僕の話を遮る。
「嫌です。その先は一切聞きたくありません」
先ほどまでの和やかな空気が一瞬で凍りついた。
「いったいどうしてそんなこと言うんですか!?
私、何か兄さんの気に障るような事をしましたか!?
気に入らないところがあるなら言ってください! すぐに直しますから!
それとも昔のことですか!?
それなら私の事を痛めつけてください!
兄さんの気の済むまでめちゃくちゃにしてくれて構いません!
私はどうされてもいいから!!
だから―――
だから―――私から離れたいなんて言わないで下さい!! お願いですから、私を置いて行かないで!!」
雨音ちゃんの瞳が僕を捉えて離さない。
二人の間にテーブルさえなければ雨音ちゃんは僕に縋り付いていただろう。
それくらい今にも掴みかかりそうな剣幕。
テーブルひとつ分、ギリギリの距離感が僕を救ってくれている。
僕は―――何も言えなかった。
今の雨音ちゃんの言動、これではまるで依存症だ。
二人が必要以上に僕に優しいのは、二人が僕に対して罪悪感を感じているからだと思っていた。
だから僕は二人が必要以上に甘えてきたり、世話を焼いてくれるのを断ることはしなかった。
二人の罪の意識が多少なりとも和らぐならそれでもいいと思ってきた。
けれど、その結果がこの状態。
認識が甘かった。
二人の罪悪感はカタチを変えて、もう歪んだ依存に刷り替わっている。
僕が自分を悔いている間、重苦しい沈黙が続く。
それも長くは続かない。
ずっと黙り込んでいた雨音ちゃんの唇が動いた。
「兄さんは本当は私の事が嫌いなんでしょう?
だから私がどんなに兄さんのことを想っているか知っているくせにそんなこと言うんですよね!!
どんなに兄さんと共に過ごしたいか知っているくせにあんな女といっしょにいるところを見せ付けるんですよね!!
私が兄さんと触れ合おうとすると家族なんて便利な言葉ではぐらかしているんですよね!!
優しさを与えるだけ与えておいて、平気な顔して放り出すんですよね!!
そんなことされたら私が絶対に生きていけないのを知っていて、あえて置いて行こうとするんですよね!?」
「そんなこと絶対に考えていないから、落ち着いて」
「だったら、私の事を愛してるって言ってくださいよ!!」
「何言ってるんだよ! そんなこと言っていたら本当に彼氏も出来なくなっちゃうよ。
雨音ちゃんならもっといい人が見つかる。今からだって遅くないよ」
「もっといい人なんて興味ありません!! 私は兄さんがいいんです!! 兄さん以外の男なんて絶対に嫌です!!」
「な、なんで?」
それが混乱した頭で僕が精一杯の労力を使って捻り出した陳腐な言葉。
「なんで?―――いい加減にしないと襲いますよ、兄さん」
「だって……僕らは兄妹だろう?
いつも二人は僕のことを『本当の兄弟じゃないくせに』って………
だから僕は二人の本当の兄弟になろうって………それなのに………どうして………」
「兄さんは何を勘違いしているんですか?
兄さんと私の間には血の繋がりなんか無いんですよ。遺伝子的にも惹かれあって当たり前なんですよ。
そっか、兄さんはずっと勘違いしてきたんだね。
ごめんなさい兄さん。
これから私が兄さんの目を覚ましてあげますね」
目の前の少女はどこか頼りない様子で立ち上がると、
「兄さん……」
僕の名を呼びながらこちらへ手を伸ばす。
でも、届かない。
二人の間をテーブルが遮っている。
ギリギリまで伸ばされた手が僕の目の前で空を切って、雨音ちゃんはテーブルの上に突っ伏してしまう。
「邪魔……」
雨音ちゃんがテーブルを忌々しそうに押しのけて一歩踏み出す。
これで二人の間の空間は埋まってしまった。
まるで見えない手に全身を押さえつけられているような感覚。
どうして僕は逃げていないのだろう?
手遅れになってからそんな疑問が思い浮かんだ。
「にいさん……」
鳥肌が立ってしまうような囁き声。
雨音ちゃんの瞳に僕以外のものが映っていない。
次第に近づいてくる髪から甘いリンスの香りが広がる。
もう息遣いが聞こえる。
何かを求める指先が僕の顔にたどり着いた瞬間―――
「ごめんなさい―――兄さん」
呼吸が遮られた。
雨音ちゃんの唇が重ねられている。
柔らかい。
僕の空っぽな頭の中を雨音ちゃんの唇の感触が染め上げてゆく。
僕の始めてのキス。
それが妹と思っていた少女に奪われていた。
「………凄い……こんなに幸せなのは初めて………」
恍惚の表情を浮かべ、雨音ちゃんが自分の唇をチロッと舐める。
まるで味を確かめるように。
「ねぇ……もう一度……」
飢えた瞳が餌を捉える。
透き通った鏡のような濡れた漆黒の瞳に、僕と同じ顔が映りこんでいる。
その瞬間―――心の中で何かが軋んだ。
「だ、だめだよ!!」
咄嗟に雨音ちゃんを押し返すと、雨音ちゃんが力なく仰向けに倒れて動かなくなった。
心配になって様子を窺うと小さな身体が糸の切れた人形のようにぐったりとしている。
けれどその眼は爛々と輝いてこちらを捉えて離さない。
やがて雨音ちゃんは静かに身体を起こすと、再びこちらへ迫ってくる。
「もう一度……もう一度だけでいいんです……」
嘘だ。
きっと、もう一度だけでは止まらない。
少なくとも今の雨音ちゃんが本人の意思でブレーキを掛けられるようには見えない。
「わかってよ!! こんな事したら駄目に決まってるだろ!!」
「でも、もう一回だけ………………次はもう離したりしませんから………」
これはもう僕の知っている雨音ちゃんじゃない。
いったい何がどうなってる?
混乱している間も雨音ちゃんはゆっくり迫ってくる。
―――とりあえず考えるのは後回し、今は雨音ちゃんが冷静になるのを待つしかない。
頭を切り替えて、踏み込んで駆け出すその刹那―――気が付けば僕は雨音ちゃんに押し倒されていた。
「怖がらないで……大丈夫。
わかってるんです。私は兄さんに相応しくないって。
でもね、過去にあれだけのことをしておいて本当は打ち明けてはいけない言葉かもしれないけれど、
私は兄さんを愛しているの。
許されない想いかもしれないけれど、兄さんを愛しています。
兄さんは私が混乱しておかしくなったと思っていますか?
残念ですけれどそれは違いますよ。
これが私の本当の姿。
妹を演じ続けてきた女の子の本当の姿。
兄さんが扉を開いてくれたんですよ。折角鍵まで掛けておいたのに兄さんが開けてしまったの。
兄さんがあんなこと言わなければ、兄さんが望むように私達は家族でいられたんです。
私はもう少しだけ長く、自分を押さえ込んでいられたかも知れません。
けれど―――もう無理。
私の身体が、心が兄さんを求めてる。
ねぇ、聞こえませんか?
『兄さんが欲しい』『兄さんが欲しい』って心臓が脈打つ毎に訴えかけてくるの。
信号が血液といっしょに全身を廻って指先から足先、細胞一つ一つまで兄さんを求めてくるの。
体中が熱くて融けてしまいそう。
もぅ、触れるだけのキスなんかじゃ足りません。
もっと、もっと兄さんを摂らないと栄養不足で死んでしまいそう。
兄さんなんですよ。こんな私にしたのは………。
だから、兄さんには責任を取ってもらいます。
兄さん―――私達、“本当の”家族になろうよ」
また、唇を奪われた。
今度は先ほどのような優しいキスではない。
まさしく奪うという表現が似つかわしい荒々しいキス。
『次はもう離したりしませんから………』
先ほど雨音ちゃんの言葉が頭の中で反響する。
いったいいつまで続くのだろう?
妙に覚めた意識はすでに抵抗する意思を忘れている。
永遠に続くかと思われた長い捕食は、突如終わった。
「ご馳走様、兄さん。デザートはまた後でね。
兄さんはお部屋でゆっくりしててください。後片付けは私がやっておきますから」
まだ食べかけの食事や食器が散乱するリビング。
雨音ちゃんは鼻歌でも歌いだしそうな様子でそれらを片付け始める。
長年の習慣からか手伝おうなんて気が一瞬顔を覗かせるが、すぐにそんな気は失せた。
今は雨音ちゃんとはいっしょにいられない。
「………デザートなんていらないから」
置いてゆくようにそれだけ言い残して、僕は急いでこの場から逃げ出す。
まさに片足がリビングから抜け出す瞬間、背中越しに声が聞こえた。
「―――頭の悪い女」
その言葉は誰に向けたものだろう?
姉さん? それとも………。
そんなもの僕にわかるわけない。
なら振り返ればいいのに、それを確認する勇気も無い。
意識の吹っ飛んだまま、僕は自分の部屋に戻るとすぐに部屋の鍵を掛ける。
自分の部屋の床の上なのに足がもつれて、倒れこむように僕はベットに伏せた。
真っ暗な僕の部屋。
一人になると急に心苦しくなって、まるで言い訳をするように僕の頭は思考を吐き出す。
ずっと、僕らはおかしいと思ってきた。
でも、今までは誤魔化してきた。
今日、僕らはおかしいと思われていることを知った。
だから少しだけ二人との距離を変ええようとしただけ。
修正しようとしただけ。
その結果は―――僕の想像とはかけ離れていた。
口の中にはまだ雨音ちゃんの味が残ってる。
明日から僕はどう接すればいいのだろう?
「姉さんは………どうしよう………」
まだ、僕がやってくるのを部屋で待ってるのだろうか?
残っている気力を掻き集めてみるものの上手く考えがまとまらない。
それもそうだろう。
今日はいろいろな事がありすぎた。
もう休みたい。
考えることを放棄して、僕は眼を閉じる。
目蓋の裏にちらつく二人の顔を振り払い、僕は眠りに落ちた。
まるで底の無い沼に沈んでゆく感覚。
今はそれがとても心地よかった。
>>180 >ただ、俺も書き手なので
これは笑うところ?
ここまでです。
最近は個人的多忙のため十分な時間が取れ無い状態です。
申し訳ありませんが、しばらくは更新が遅れると思います。
「だ、だめだよ!!」
咄嗟に雨音ちゃんを押し返すと、雨音ちゃんが力なく仰向けに倒れて動かなくなった。
心配になって様子を窺うと小さな身体が糸の切れた人形のようにぐったりとしている。
けれどその眼は爛々と輝いてこちらを捉えて離さない。
やがて雨音ちゃんは静かに身体を起こすと、再びこちらへ迫ってくる。
「もう一度……もう一度だけでいいんです……」
嘘だ。
きっと、もう一度だけでは止まらない。
少なくとも今の雨音ちゃんが本人の意思でブレーキを掛けられるようには見えない。
「わかってよ!! こんな事したら駄目に決まってるだろ!!」
「でも、もう一回だけ………………次はもう離したりしませんから………」
これはもう僕の知っている雨音ちゃんじゃない。
いったい何がどうなってる?
混乱している間も雨音ちゃんはゆっくり迫ってくる。
―――とりあえず考えるのは後回し、今は雨音ちゃんが冷静になるのを待つしかない。
頭を切り替えて、踏み込んで駆け出すその刹那―――気が付けば僕は雨音ちゃんに押し倒されていた。
「怖がらないで……大丈夫。
わかってるんです。私は兄さんに相応しくないって。
でもね、過去にあれだけのことをしておいて本当は打ち明けてはいけない言葉かもしれないけれど、
私は兄さんを愛しているの。
許されない想いかもしれないけれど、兄さんを愛しています。
兄さんは私が混乱しておかしくなったと思っていますか?
残念ですけれどそれは違いますよ。
これが私の本当の姿。
妹を演じ続けてきた女の子の本当の姿。
兄さんが扉を開いてくれたんですよ。折角鍵まで掛けておいたのに兄さんが開けてしまったの。
兄さんがあんなこと言わなければ、兄さんが望むように私達は家族でいられたんです。
私はもう少しだけ長く、自分を押さえ込んでいられたかも知れません。
けれど―――もう無理。
私の身体が、心が兄さんを求めてる。
ねぇ、聞こえませんか?
『兄さんが欲しい』『兄さんが欲しい』って心臓が脈打つ毎に訴えかけてくるの。
信号が血液といっしょに全身を廻って指先から足先、細胞一つ一つまで兄さんを求めてくるの。
体中が熱くて融けてしまいそう。
もぅ、触れるだけのキスなんかじゃ足りません。
もっと、もっと兄さんを摂らないと栄養不足で死んでしまいそう。
兄さんなんですよ。こんな私にしたのは………。
だから、兄さんには責任を取ってもらいます。
兄さん―――私達、“本当の”家族になろうよ」
荒らしはスルー
荒らしはスルー
>>193 >もっと、もっと兄さんを摂らないと栄養不足で死んでしまいそう。
キモイな、ただのヤンデレじゃねーか
>>193 つまんね、避難所かヤンデレに投下しろよ
>>193 ずっと待ってましたよ!!
他の女に取られそうになってからの姉妹の変化が良い感じですなぁ
次の投下も期待してます!!
>>193 GJ、待ってたよ。
本格的に話が加速して来て楽しみ。
>>193 GJ!! いい具合にドロめいてきたなー
いまだに心情が語られていない姉ちゃんがどういったアクションを起こすのか…
GJ!!!遂に転帰予報の続き来た!!!
遂に一歩を踏み出した雨音ちゃん
妹好きの俺としては心の底からエールを送りたい
雨音ちゃん頑張れ 超頑張れ
更新遅くても続けてください どこまでもついていきます
GJ
姉がどんな行動に出て、どんな嗜好を持っているのかが
楽しみですねw
職人は雑音など気にするな
俺らのように裸で正座しながらモニターの前でwktkしてる馬鹿が居ることを忘れるなよ
Sだと待ち殺しにしたくなるな
>>193 転記予報キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
雨音の怒涛の攻勢ktkr!
依存症な子って可愛いです(*´Д`)ハァハァ
更新遅くなるのは残念ですがゆっくり待ってますとも
>>208 >俺らのように裸で正座しながらモニターの前でwktkしてる馬鹿が居ることを忘れるなよ
俺らじゃなくて俺じゃないか?
>>203からはお前のジエン公国だろw
こういう信者がいるから嫌なんだよ
自演というだけで荒らしだと分かる件
>>212 最近じゃあ荒らしというだけで荒らしだと分かる件
>>207は煽り君だということが判明
スルー推奨
つID:YvZOVpAm
更新はいくらでも遅くてもいいけど文書量は多くして欲しい。
>>211>>212 SSってのは『誰に向けて書くのか』が重要なんじゃないの?
『誰も読まないSS』『誰からも感想がもらえないSS』…そんなものに価値はない
つまりそう…『いいと言ってくれる他人』が居なきゃダメだってこと…
わかる?自演なんてしてもしょうがないんだよ
『他人』を期待する場所に『自分』を持ち込んでどうするの?まるで支離滅裂じゃない
自分が誰なのか自分にすらわからないような病人もどきさんなら別でしょうけど
大体いつもすぐそうやって自演とかつまらないとか言って、何様のつもり?
何が気に食わないの?誰かに恨みでも?もしかしたら何かトラウマでもあるの?
こんな小さなスレを荒らして何になるのかしら?反応もひどく凡庸でつまらないでしょうに
せめて愉快犯なら、もっと大きな場所を狙えばいいと思うのだけど…そんな度胸も器量もないのね、きっと
自分が一番偉そうにできる場所を求めているだけの、つまらない人間
あんたに構う人なんて一人も居ない…その証拠に、書き手の方々は皆あんたをスルーしてらっしゃるわ
それが何故なのか、『自演』と『見栄っ張り』が当たり前のあんたにはわからないでしょうけど
ああ、自己嫌悪ね…こんなつまらないものに関わってつまらないことを言ってしまうなんて
いいえ、関わるだけじゃない、目に入れること自体、認識すること自体が屈辱的だわ
でもね、ただ飛び回るしか能がない蝿でも目障りには違いないの
お願いだから消えてくれる?あんたの存在なんて誰も求めてないんだから
そう…今すぐこの世から消えてなくなる、それが一番いいわ…今すぐ死になさい
首吊りでも飛び込みでもいいけど、その時がきっとあんたのくだらない人生で一番輝く瞬間ね
これ以上誰もあんたの煩わしい羽音に悩まされなくて済むんだから
そうなったら私は拍手してあげる。喜びなさい。あんたが生まれて初めてもらう本当の歓喜の拍手よ。
↑気持ち悪いよ…
>>217 「お姉ちゃんやめて、僕たち姉弟なんだよ!?それに僕には好きな人が…」
「あんな雌豚に渡さない!私が…私があなたの子供を産むんだからっ!!」
まで読んだ。キモ姉は人類の至宝です。
しかし、荒らしは本当に痛いな
避難所まで現れているよね・・あちらに要望や削除などのスレを建てるしかないかな・・
>>193 久しぶりに転帰予報がキタァー(゜∀゜)ーー!!!!
過疎化していた嫉妬スレに投稿する人間は神ですよ
雨音ちゃんのキモウト化、次は姉がどういう風に変貌するかですね
次回を楽しみに待っておきます
>>193 GJ!!
姉ちゃんがどうすんのか超期待
一体どんなことを考えているのやら
今日も朝から信者の自演GJが沸いてますねwww
朝の出勤時に嫉妬SSが投稿されて
夜の帰宅時に嫉妬SSが投稿されている
これはなんていい理想なスレなんだ・・・
読むのは休日に纏めて読んでいる
>>193 雨音ちゃんはブラコン依存症GJ
姉はどういう属性なのか知りたくなる
まあ、嫉妬スレでは姉が寂しがり屋で甘えん坊というギャップの設定の
ヒロインはあんまりいないからな・・w 妹にも嫉妬深い設定かな?
信者が居るのっていいことじゃねえかw
>>217 それだけ文章力があるなら SS 書 か な い か ?
228 :
212:2007/04/24(火) 12:25:03 ID:ibHQsZq7
>>217 そんだけ長文書く余裕あるならSS投稿しろw
キモ姉系は大好物なのでね
名前欄は気にしないでくれ
>>193 GJ
知らない間に転帰予報がキタァー(゜∀゜)ーー!!!!
>もっと、もっと兄さんを摂らないと栄養不足で死んでしまいそう。
このキモウトぶりがもうたまらないですよ
何回信者はGJって言うんだ?
レスの無駄だしそろそろやめとけ
>>231 まあ、頬っておくと荒らしの煽るレス量の方が多くなるからね。
スルーは大事なんだが、これも人の性って奴か・・・。
>>193 仕事から帰ってきて久しぶりに嫉妬スレを除いたら
転帰予報キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
キモウトは萌えるが・・姉が姉が・・・
マジで早く更新頑張ってくださいね♪
20代のころとスレの空気が違いすぎて鼻血でた
間が空きましたが、「両手に嫉妬の華を」を投下します。
沈黙……ただ沈黙が広がっていく。
小鳥の囀りも、風が草木を揺らす音も、人が砂利を踏み締める音も、何も聞こえてこない。
重苦しいほどの静寂の中に、俺と佐藤早苗の二人だけが取り残されたように佇んでいる。
さっきまで佑子さんと至福の時間を共有していた場所とは到底思えないほど、今のこの空間には
言い表し様のない圧迫感が存在している。
おかしい……何かがおかしい。
正直俺の予想とは百八十度真逆側に滞在していると言っても過言ではない今の状況に、俺は生唾
を飲み込んでしまった。
俺の予想図としては、俺の告白を受けて佐藤早苗が更に俺と佑子さんの関係に興味を持ち、それ
について色々訊かれ、俺が表面上は嫌々を装いながら一つ一つ答えるという図式が存在していた。
そうでなくても、少なくとも今のように黙り込むなんて事は考えもしなかった光景だ。
もしかして他人の惚気話なんか全く興味なかったのかなと心配になってくる。
人は他人の恋愛話には特別に関心を抱くものだと思っていたが、佐藤早苗はモテる女だ。
自分の日常そのものが一つの恋愛話と言っても過言じゃない状況に慣れて、その手の話に飽きた
とか言ってきても十分納得出来る、そんな女だ。
どう切り返そうか何パターンか頭の中で構想を練っていると、突然妙な笑い声が聞こえてきた。
「あっ、はっ、はっ、はっ……っ」
その声の主が佐藤早苗だと気付いたのは、声のした方向を向いた先に”ぎこちなく”笑っている
佐藤早苗を確認したからだ。
妙だと思ったのは、その笑い声が本当に”ぎこちなかった”からだ。
普通に笑うのではなく、お嬢様のように気品を漂せながら慎ましく笑うのでもなく、遠慮なしに
大声を上げて下品に笑うのでもなく、露骨に『作為感』を感じさせるように笑っているのだ。
無理をしているなというのが痛々しいほど分かる。
だからこそ、その理由に皆目見当がつかないことが非常に歯痒い。
俺の言葉を受けて佐藤早苗が笑顔を作っているのならば、彼女に無理をさせているのは俺だ。
故意的でないにしろ、俺の言葉に何か佐藤早苗を不快にさせるようなニュアンスがあったのかも
しれない。
だが、どれだけ模索しても「好きな人がいる」という言葉のどこに、聞かされた人間の気持ちを
害する要素があるのか全く分からない。
もし佐藤早苗が本当に他人の恋愛に興味のない人間だったとしても、それならはっきり興味ない
と言ってくれるはずだ。
さすがに、興味ないのに俺を気遣いそれを素直に言い出せないだなんて他人行儀な態度を取って
くるほど、俺と佐藤早苗の関係は疎遠なものではないと信じたい。
佐藤早苗にとって俺は、義理とはいえバレンタインにチョコをあげた内の一人なのだからな。
危うく悩み過ぎて本当に首を捻りかけた時、佐藤早苗が聞いているほうが恥ずかしくなるような
下手な作り笑いを止めた。
一瞬再び浸透しかけた静寂を阻止せんとばかりに、佐藤早苗はすぐに口を開いた。
「面白いね……。”詳しく”聞かせてくれない?」
その言葉を聞いて、安心と困惑、対極に位置する二つの感情が格闘を始めてしまった。
人の心をかき回すのが上手いなと佐藤早苗の話術を賞賛しながら、俺は慎重に目線を流す。
佐藤早苗は「面白い」と言いながら、能面のように表情が固まっていた。
それを見て、微かに見え隠れしていた安心が瞬間的に打ちのめされてしまう。
佐藤早苗の発言は当初俺が考えていた、”佐藤早苗が俺と佑子さんの関係について興味を持つ”
というシナリオ通りの展開の中に組み込まれている一コマである。
だから俺は安心感を感じたが、その台詞もまだ自身の感情を隠しているように聞こえた。
沈んだような声で言われたら、気持ちと言葉が一致しているだなんて誰も信じらる訳がない。
そしてさっき見た感情が感じられない無表情が確信させる、まだ佐藤早苗が無理していると。
理由が分からないのに罪悪感を感じるというかなり気持ち悪い感情下に今の俺はいる。
どうせなら何も包み隠さず正直に言って欲しい。
心の蟠りを取る為、そして佐藤早苗との友達としての絆の証明の為にも。
「分かった……」
だからとりあえず、俺も包み隠さず全てを言うことにした。
「駄目だよ……仲川、あんた頭おかしくなっちゃったんじゃないの? あたしが凄くいい精神科医
を紹介してあげるから一度診てもらおうよ。うん、それがいい。それじゃ早く」
「勝手に話を進めるな。後、俺は異常者なんかじゃない。成績以外なら常識を持ち合わせている、
その辺に五万と転がっている平凡な一般人と全く同じだ」
何でお前が凄腕の精神科医なんか知っているんだというツッコミをあえて引っ込め、俺は自分で
言っておきながら少し悲しくなるような事実で、全く量が減っていないコーヒーの入ったカップの
中身を一心に凝視している佐藤早苗を説得する。
カップを持った手は何故か小刻みに震えていて、コーヒーの表面がその動きに連動して揺れる。
下を向いている為表情は読み取れないが、コーヒーを見つめながら震えている姿は、バラエティ
番組でゲームに負け一人だけ料理を食べさせてもらえず指を咥えているアイドルのように見えた。
他の出演者が笑顔で料理を頬張っている時にそれを恨めしそうに見つめる、そんな姿に。
容姿も相まって、不謹慎ながらも素直に可愛いなと思ってしまう。
別に未練がある訳ではないが、かつて自分が恋した少女としては充分過ぎるほど納得できる。
男にモテる女が他の女たちの醜い嫉妬から仲間外れにされるなんて話は良く目にしたりするが、
寧ろ佐藤早苗は女子から憧れの対象にされているし、女子全員が友達と言っても過言ではない。
容姿端麗で人望は厚い、おまけに定期テストでの順位は一桁以外ありえない――完璧過ぎる。
”神は二物を与えず”とか言うがどんなことにも必ず例外はあるもんだなと勝手に納得しつつ、
完璧さ故に生じる疑問を俺は頭の中に抱えていた。
「だって、会ってまだ二日なんでしょ? 相手は……佑子さんだっけ? 彼女はあんたのこと何も
知らないのに付き合ってくれる訳がないじゃない。やめときなよ、叶わない恋なんて意味ないよ」
”俺が佑子さんを好きだということに意味があるんだよ”、意味が傲慢にも謙虚にも転がれそう
な歯の浮いたそんな台詞を言いかけて俺は慌てて下唇を噛み締める。
またまた明らかに論点がずれたことを言い出す佐藤早苗を説得するのが先決だ。
『説得』というのが何かというと、それは数十分前に遡る。
土手で佐藤早苗の奇妙な笑いに若干不信感を覚えつつ、罪滅ぼしの意味も込めて俺は彼女に全て
を話す為、適当に近くの喫茶店に寄った。
勿論代金は俺持ち、男として当然だ。
彼女じゃないにしろ初めて女の子を店に誘い、飯――コーヒーだけどな――を奢るなんて夢体験
を前にして、明日とことんクラスメートに自慢してやろうなんて考えつつ席に着くと、佐藤早苗は
速攻で本題へと話を切り替えてきた。
案外せっかちなのと、そんなに早く聞きたいと思うほど佐藤早苗は恋愛沙汰に興味津々だという
ことに驚きながら、どんなに特別に可愛くても中身はやはり普通の女の子だなと俺は安心した。
少なくともその時の俺の頭の中には、土手での会話中に感じた異様な空気は存在してなかった。
というより記憶の隅の隅、とことん隅の方に追いやられていた。
だから俺は考えもなしに、大したことのない豆知識をいかにも自分が第一発見者なんだと言わん
ばかりに力説するうんちく野郎のように、恥ずかし気もなく説明してやった。
佑子さんとの出会いや佑子さんの魅力について、テストの解答でも絶対書かないような小難しい
言い回しを多用して、噂話好きのおばさんのように早口で捲くし立てていった。
そういう類の人間が喋る理由が喋ることが好きだからという単純なものであることと同様、俺も
ただ佑子さんのことについて喋っているという事実が嬉しかったからか、つい会話とはとても言い
難いような一人喋り場を展開してしまった。
小学校の頃とかに、自分に好きな子ができたことを「絶対に言うなよ?」と前置きを置いた上で
やたら自慢したがるような奴がいて、当時の俺は「バラされたくないなら話さなきゃいいだろ」と
結構真っ当なことを常々思っていたのだが、今ならそういう奴らの気持ちが物凄く分かる。
要は、好きな子について話すことは普通に楽しいのだ。
話している間は自分の頭の物語における主人公は自分で、ヒロインは好きな子にできるからな。
好きな子と少しでも近づけたというような妄想に入り浸ることができるのだ。
勿論そんなことは計算せずに、俺は佐藤早苗に自分の惚気話をひたすら刷り込んでいった。
俺が正しく”自分だけの世界”から店員が、居場所を失って何とかどっかの集団に入ろうと努力
しているか弱い女の子のような寂し気な視線を向けて注文を取ってきて、休憩がてら長旅から帰還
した後佐藤早苗の言葉を待っていると、第一声は予想していないものだった。
――「『駄目』」
その後から、今度は佐藤早苗の一方的な話が始まった。
俺は最初、誰が見ても不機嫌だと明白な佐藤早苗の笑顔を保とうとしている痛々しい表情を見て
”またしても”利己的な欲望の捌け口に彼女を利用したことで彼女を傷付けてしまったと思った。
――”佑子さんのことを話す”のは佐藤早苗への『贖罪』の意も勿論あったが、俺が佑子さんと
親しい仲にあると感じる為の手段でもあったのだ。
それは、チョコを蹴飛ばしたという行為を利用して佐藤早苗を叱ることで”佑子さんの為に怒る
資格のある人間”だと自分のことを過大評価しようとした放課後と全く同じ行為だ。
自惚れなんかじゃなく、佑子さんの言動や行動からいって俺は佑子さんと親しくなることを許可
されたようなものだから、そのことに浮かれてちょっと箍が緩んでいたんだろう。
そう、よくよく考えれば、俺が佑子さんに認められようがそれは佐藤早苗には関係ないことだ。
たとえ佑子さんから距離を縮めることを許されたという事実が佑子さんの為に感情的になっても
いいという理由になっても、”佑子さんの為に感情的になる”為に佐藤早苗を利用していいという
理由には決してなりえない。
そんなことを失念するほど、どうやら俺は浮かれていたようだ。
まずはそのことについて土下座する覚悟で謝らなければならないな……――
こんな風に俺は考えた。
しかし、どうも俺の予想は”またしても”外れていたようだ。
俺の考えから推測すれば、佐藤早苗は俺が自分を利用して自己満足に浸ろうとしてたということ
に気付いていなければならないはずなのだ。
”それ故に”怒り、その矛先を俺に向けてくるというのであれば単純で分かりやすい。
だが確信して言える――”佐藤早苗は『そのこと』に気付いていない”。
佐藤早苗の発言は表現が多種多様で且つ、一見して論理的に話を進めているように見える。
しかし、注意深く聞くと、その発言の全てに”一つの『共通点』”がある。
――『仲川と”あの子”が付き合うのは絶対に”間違っている”』
それはどの発言に於いても、佐藤早苗が”俺と佑子さんが付き合うこと”を止めようとしている
ニュアンスが含まれているということだ。
しかも、”俺が佑子さんと付き合うことはない確固たる『自信』”を前提に諭してくるのだ。
それは俺に腹を立ててやった反抗とでも取ればそれで解決してしまうのだが、どうも佐藤早苗が
俺に対して向けてくる表情に悪意は欠片も感じられず、むしろ俺のことを本気で心配するように眉
を歪ませているのだ。
佐藤早苗が俺を心配するような態度を取るということは、少なくとも俺に嫌悪感を抱いていると
いうのは絶対にありえない。
嫌いな相手を気遣うほど、佐藤早苗が馬鹿だとは思えない。
だとしたら、佐藤早苗が自身が俺に利用されただなんて気付いていることはない。
自分が利用されていただなんて知って「はいそういですか」で済ませる奴、いる訳ないからだ。
そして、その事実を知らないのだとしたら――どうして佐藤早苗が俺が佑子さんに告白すること
を頑なに禁止しようとしているのかが全く分からない。
確かに会って間もないような相手にいきなり告白だなんて無謀なことではあるが、俺と佑子さん
の間には確かな絆がある、そう信じたい。
それに、それだけの理由で俺の希望を潰そうとしているというのも何だか納得がいかない。
大体、”俺と佑子さんが付き合うことはない”という絶対の自信は一体どこから湧いて出てきた
ものなのかも、聞いては口篭るだけで教えてはくれない。
最後に、俺は佑子さんが好きだとは言ったが、別に告白するだんて一言も発していない。
それなのに、佐藤早苗はどうやら自分の頭の中で勝手に話を脚色して進めているようだ。
俺が佑子さんを好きなことを伝えるだけで「駄目」の一言で全てを終わらせようとしてくる。
全く話が噛み合わない。
正直言って、佐藤早苗の話には腑に落ちない点が多過ぎるのだ。
「大体、仲川の話に腑に落ちない点があるんだけど」
依然として態度を改めない佐藤早苗が、唐突に質問してきた。
それはこっちの台詞だと言いたくなったが、とりあえず何故佐藤早苗が腑に落ちないような話を
してくるのか、その一因が分かるかもしれないという一縷の願いを胸に秘めながら返事をする。
「何が、腑に落ちないんだよ?」
「仲川はさ、昨日あの子が土手で泣いているの見て、それで持ってたクッキーを渡したって言った
よね? でも、あんたは昨日学校休んでたんじゃん。泣いているとはいえ、怪我してる訳でもない
人にいきなり近づくのも変だし、クッキーって何の為の物よ? ねぇ、仲川聞いてるの?」
佐藤早苗が俺の深層心理の奥の奥を覗き込もうとするように目線を合わせてくる。
だが俺は、真正面に学校一の美少女の顔があるという嬉し恥ずかなシチュエーションを前にして
いるのに、喜ぶ余裕をなくしていた。
今、俺は『大馬鹿者』の烙印を自らに押した。
それくらいしないと体の隅々にまで染み渡った馬鹿さを浄化できないような気がしたから。
――俺は、佐藤早苗が口にした疑問視していることを一つも説明していなかった。
佐藤早苗への『贖罪』だとか格好つけておきながら、佑子さんに関するの惚気話に花を咲かせて
伝えるべき”最も重要なこと”を言っていなかった。
俺がどうして佑子さんを好きになったのか、その理由をぼかしてしまっていた。
それが分からない以上、佐藤早苗は俺が佑子さんを好きになった理由を、『一目惚れ』だとか、
『同情』といったものに脳内補完して話を進めていたのだろう。
それならば確かに、そんな弱い理由では付き合うことに納得がいかないというのも頷ける。
佐藤早苗の一連のおかしな発言の理由を理解し心の底からすっきりとしたと同時に、俺は今日で
三度目となる自己嫌悪に陥る。
何故、俺が佐藤早苗に”伝えるべきこと”を忘れてしまっていたのか――その答えは簡単だ。
俺は佑子さんを好きになった最大の理由である『同族視』の過程にある、佐藤早苗にフラれたと
いう苦い事実を思い出したくなかったから、無意識の内に俺はその記憶を封印していたんだ。
佑子さんとの”これから”に集中することで、佐藤早苗によって付けられた傷の要因となった、
『過去』から目を背けていたんだ。
確かに俺の佑子さんへの想いは、嘘偽りの一切ない正真正銘本物だ。
だが、その想いすらも『利用』して自分の傷をなかったことにしようとするだなんて、どうやら
この二日で俺は人間として腐るところまで腐ってしまったようだ。
失恋で人は変わるだなんて良く聞くが、俺は間違いなくマイナス方面にそれが働いているな。
このままでは俺は人としての最低限の尊厳すら失いかねない。
だが、佐藤早苗が気付かせてくれたんだ。
俺の中で徐々に肥大化し、且つ自分でも気付けないほどにまで巧妙に隠れていた『愚かさ』を。
俺が他人を『利用』して自分だけ楽になろうとしている、典型的なクズだということを。
しかもその他人というのは、元・自分が好きだった人と、現・自分が好きだった人のことだ。
そんな特別といっていい人たちを物のように扱おうとした俺は、『クズ』を三乗しても足りない
くらいの最低野郎だ。
このままどん底まで堕ちていくのか俺は……、そんなの絶対に拒否させてもらう。
さっきまでは自覚のないタチの悪い『クズ』だったが、今俺ははっきりと深い闇の落とし穴から
吊るされた一本の『綱』の在り処を知っている。
にも関わらず、その『綱』を掴む度胸すらないんじゃ、最早俺は人を愛す資格なんてない。
俺の佑子さんへの想いだけは、死んでも嘘なんかにはしたくない。
何より、こんな俺の為にわざわざ『綱』を垂らしてくれた佐藤早苗に対して申し訳が立たない。
俺にだってプライドはある。
このまま佑子さんと佐藤早苗、二人の気持ちを利用するだなんて暗闇の深層に心を堕としていく
ような真似をして、自尊心を傷付けるだなんて馬鹿なことはしたくない、してはならない。
結局俺は相手に自覚がないにしろ、佐藤早苗を傷付けた上彼女に『道』を示してもらったのだ。
何て図々しいんだろうという自己嫌悪と、佐藤早苗への感謝の意が混ざり合っていく。
しかし、今すべきことは、後者の気持ちを素直に伝えることだ。
そうしなければ、俺は『クズ』のままだ。
「悪かった。言い忘れてたな」
俺は意を決すと、今まで背けていた目線を佐藤早苗一直線へと向ける。
「まぁなんだ、結果から言えばお前がくれた『義理チョコ』が俺と佑子さんを――」
「”義理”チョコッ!?」
突如、佐藤早苗のはちきれんばかりの声が、穏やかな店の空気を切り裂いた。
その大声を後押しするように、佐藤早苗が立ち上がるやいなや叩いたテーブルから鈍い音が店内
に響き渡った。
重苦しい沈黙が一瞬だけ店内を支配した後、俺は自身の状況に思わず声を漏らしてしまった。
「マジかよ!」
周りの客の「空気読めよ」と言わんばかりの視線が痛いが、俺がこう言うのも納得して欲しい。
何せ佐藤早苗がテーブルを叩いたせいで、まだ一口も手をつけていない彼女のコーヒーのカップ
が派手にひっくり返って、その中身のほとんどが俺の制服に掛かってしまったのだからな。
「あっ! 仲川ごめん……」
「気にすんな、ちょっと店員さんに雑巾でも貸してもらうから」
そう言いながら、コーヒーが戦争で優勢な軍が劣勢な軍の領地に攻め込んでいる様子を地図上で
眺めたように確実に制服に染み渡る光景を見て、俺は慌てて席を立った。
当然制服から雫が滴り落ちるのでそれを止めようとハンカチがないか探したが、ポケットに手を
突っ込んでも中には何も入っていなかった。
俺は余程のことがない限りハンカチを使わないから入れたままになってると思っていたが、残念
ながらその推測は大外れだった。
この時ばかりは、自分の怠慢な管理状況を呪った。
安っぽさそうに派手に光る店の床を汚している雫の点々を尻目に、俺は適当に店員を捕まえる。
事実を伝えると、店員は心底申し訳なさそうに頭を下げながら謝罪し、急ぎ足で俺を誘導した。
明らかに俺の過失なのに、客という立場を前にするとペコペコしてなきゃならないなんて、随分
ストレスの溜まるアルバイトに就いたなと店員を哀れみながら俺は店員の後に続く。
案内されたカウンターで手渡された真っ白なタオルを、制服の染みの部分に押さえつける。
たちまち純白のタオルが茶色に汚されていくのを眺めながら、クリーニングをどうしようかなと
俺は、どうでもよさそうで結構重要なことを思った。
母親に見つかれば大目玉だし、ここはまた転んでズボンを破ってしまった時に愚痴を溢しながら
渋々それを縫ってくれた姉にでも頼むとするかな。
それよりも気になるのは、さっきの佐藤早苗の驚き様だ。
俺の説明を中断して思わずテーブルを叩いてしまうほど、佐藤早苗を動揺させてしまった要因は
一体何なんだ……?
言ったことを振り返ってみても、何かおかしな点があったとも思えない。
となると、俺は何か重大な”何か”を見落としているのか……。
「馬鹿馬鹿しい」
俺は考えることを止め、すっかり茶色に染まったタオルを店員に返した。
黒の学ランだということが幸いして、染みは目だっていなかった。
後は、半径十メートル以内なら多分感知できるであろうコーヒーの匂いだけが懸案事項だなと、
不幸中の幸いに心から感謝しながら俺は佐藤早苗を待たせているテーブルへと向かった。
歩きながら、多分罪悪感に表情を曇らせているだろう佐藤早苗にどういった対応をしてやろうか
ということを面白半分に考えながら、テーブルを見据えた。
そして驚愕した。
「はぁ……はぁ……」
俺の目線の先にいたのは、肩を落としている人物でなければ、俺が来たことを察知するとすぐに
また謝ってくるような常識的な人物でもなかった。
そこにいたのは、目を大きく見開かせ、しきりに何かブツブツ呟きながら息遣いを荒々しくして
いる、『獣』という形容がぴったりな空気を纏っている佐藤早苗だった。
一瞬その非現実さに言い様のない恐怖を覚えた。
いつも笑顔を絶やさない少女が、数分の後にホラー映画に出てきそうな女幽霊のような雰囲気を
醸し出しているんだから、当然のことだ。
しかし俺は佐藤早苗が凝視している先にある物を見て、瞬間的に俊敏な動きで彼女に近づく。
「お前……ッ! 何してるんだよ!?」
俺の覇気溢れる声に圧倒されたからかは分からないが、表情に恐怖の色を滲ませながら俺に子犬
のような弱々しい視線を向けてくる佐藤早苗を無視して、俺は彼女の手にあるものを取り上げる。
それは俺の『携帯電話』と、そして――佑子さんの気持ちを凝縮しているであろう、彼女の携帯
電話のメールアドレスの書かれた紙だ。
佐藤早苗がこの二つで何をやっていたのか思考する間も惜しく、俺はすぐに携帯の中を覗く。
『愛』と妙な自体で書かれた自分でもセンスを疑う待ち受け画像が表示されるはずの画面上にて
俺を待っていたのは、何故か『メールアドレス入力欄』だった。
そこに記されているのは見慣れないアドレスの途中までだったが、佐藤早苗が持っていた”もう
一つの物”のことを考えれば、そのアドレスの主が一体誰のものなのか容易に想像ついた。
念の為佐藤早苗から奪った紙に記されているものと比較して、確信を得る。
佐藤早苗が、俺が近づいているのにも気付かず一心不乱に打ち込んでいた文字列は、”佑子さん
のメールアドレス”だということを。
しかし、それだけでは当然その真意が分からないので、俺は一つだけ画面を前に戻した。
――そして表示されたのは、『着信拒否設定』の六文字だった。
何してやがるんだ、と短絡的に佐藤早苗に言おうとした俺の怒りを無理矢理制止したのは、俺の
携帯電話の着信音だった。
マナーモードは解除されていた為、マックスの音量でうるさ過ぎる着メロが店内に響く。
羞恥心混じりのビクつきで俺は慌ててボタンを押してその音を止める。
寸秒耳を煩わせた大音量がなくなり、またしても店内に急な沈黙が広がる。
その冷たい空気の中で、俺は着信音を鳴らした根源のメールの本文を見て、凍りついた。
『ごめんなさい仲川さん私が悪かったですですから許して下さい本当にごめんなさいこれからは
なるべく話しかけませんから許して下さいどうしたら許してくれますか私何でもしますからどうか
会わないというのだけはやめて下さいお願いしますごめんなさいどうしてもお話したいので私土手
で待ってますから来て下さいお願いします二度と馴れ馴れしくなんかしませんからごめんなさい』
投下終了です。
>>193 雨音が可愛過ぎる……!
個人的にかなり好きな話なので、更新頑張って下さい。
勿論無理のない範囲で。
これはヤバい。
wktkが止まらない。
>>243 待ってたぜーーーーーーーー!!
この場合土手に行こうが行くまいが死亡フラグが立つ気がするのは気のせい?
続きも期待してます!!
>>243 相変わらず面白かったーー
作者GJ!!!
なんか主人公はヘタレばっかだな。
おまえらヘタレ製造メーカーかってのか?
しねよ
>>243 ヒロインがふたりともすでにだいぶ頭逝っちゃってるなw
次回は血をみることになりそうでwktk
ヤベェ、修羅場にも程があるぜ!
もうドキドキが止まらねぇw
>>193 いやぁ、キモウトって本当にいいものですね。
それに比べて姉が謎過ぎるわけですが。
本当に主人公が好きなのか、何を企んでいるのか、実は妹狙いなのかもわからんしね。
投下します。
〉「おーい、翔」
〉休み時間の喧騒に溶けこむような目立たない声で自分の名前が呼ばれた。翔は談笑を中断し、声のした教室のドアに目をやる。
〉そこにはクラスメートの箕輪がぶすっとした顔で立っていた。箕輪は翔の顔が向けられると、
〉「お客さんだ」
〉箕輪はどこか投げやりに言いつつ、親指でドアの陰を指した。
〉「誰?」
〉窓に体を預けていた中野早苗が、眉をひそめた。
〉「知らん」
〉「心当たりは?」
〉翔の前の席で、後ろ前逆に椅子に座った寺田宏樹が問いかけてくる。
〉「心当たりねぇ……」
〉考える。しかし、いくら考えても何にも浮かび上がらない。
〉「ないな」
〉はっきりと言い切った。しかし言い切ったそばから、唐突に昨日の少女の事を思い出した。表情はあくまで平静を装いつつ、慌てて
昨日のぼやけた記憶をたどる。
〉昨日、あの少女に告白されたような気がしてきた。記憶が曖昧で鮮明には思い出せないが、返事をした覚えはないから、あの少女が
返事を聞きに来たのかも知れない、と思う。
〉しかし、仮にそうだとすれば行きたくなかった。昨日はいきなり襲われたわけだし、どう対応すればいいのか分からないのだ。それ
に不本意ながらも、肉体的関係を持った相手と顔を合わせるのは恥ずかしい。
〉しばらく思い悩んでいると、中野がいきなり腕を掴み、もの凄い力で翔を引っ張り立たせた。翔は中野を睨みつけ、
〉「何しやがる」
〉「何って、お客さんが来てんでしょ? 早く行ってあげなさいよ」
〉中野は怯まない。逆に、鋭い視線で睨み返され、翔がたじろいでしまった。
〉「い、いや、そうだけど。行きたくないんだよ」
〉「はぁ? 何でよ? 誰だか分からないんじゃないの?」
〉「あ、そ、そうだけど」
〉「じゃあ、さっさと行きなさいよ」
〉ドンと、背中を押された。恨めしげに中野を振り返ると、彼女は無然とした表情で直立していて、あらゆる抗議を無言のままはね返
している。
〉翔は溜め息をついた。渋々ドアの方にに行くと、箕輪が悔しそうに舌うちをして悪態をつく。
〉「ケッ、彼女なんか作りやがってよぉ」
〉ああ、と思う。たった今予感が確信へと変わってしまった。最悪だ、嘘だと言ってよバーニィ……。
〉「それじゃあ、ごゆっくり」
〉嫌味ったらしく箕輪は言うと、不機嫌そうに足音荒く自分の机に帰っていった。そして、その代わりに、一人の少女がドアの陰から
顔を出す。昨日の少女だった。
〉その瞬間、目の前から色素が消えて、世界が真っ白になった。同時に足下の地面が崩れ落ちたような錯覚に襲われ、立ちくらみがし
た。
〉「セ〜ンパイ、会いに来ましたよ」
〉真っ白な頭の中に、少女の声が風のように流れていく。ニコニコと笑う彼女はご機嫌な様子であった。
〉たっぷり十秒の時間を消費し、真っ白になった頭を立て直す。それからようやく翔は口を開いた。
〉「え〜と、なぜここに?」
〉声が裏返っていた。
〉「なぜって、私達付き合ってるんですよ。会いにくるのは当然じゃないですか」
〉少し不機嫌そうに唇を尖らせて、少女は言う。
〉彼女の声は透明感に溢れ、休み時間の喧騒をすり抜けてカーンと響いた。教室中の視線が自分に集まるのを、翔は感じた。冷や汗が
ふきでる。
〉集中した視線の中でも、背中に突き刺さる誰かさんの視線が一番痛い。もし視線に質量が伴っていたら、自分は蓮根のように穴だら
けになってしまうに違いない。
〉しかしその視線の痛みが、翔の思考をある程度回復させていた。
〉そして、彼女のとある言動に思い至る。
〉「ん?付き合って、る?」
〉はて、と思う。告白に頷いた覚えはなかった。
〉「そうですよ。忘れちゃったんですかぁ?昨日、体育そ」
〉何か、とてつもなく嫌な予感がした。
放っておくと、恐ろしい事を口にしそうな気配。
〉その気配を敏感に感じ取った翔は、慌てて彼女の肩に手を置き、
〉「そうだった。うっかりしてたよ、すまん」
〉その先を言わせない。言わせるわけにはいかない。
〉「はい。もう忘れないで下さいね」
〉少女は満足そうに笑った。
>>193に対する自演GJがいい加減ウザくなってきた
〉そんな笑顔を見せ付けられ、何だかドッと疲れた。翔は溜め息をつきつつ、
〉「で、何の用?」
〉「あっ、え〜と。伝言があるんです」
〉「伝言?」
〉「はい。今日も昨日と同じ時刻に同じ場所に来て下さい。私、待ってますから」
〉は? と聞きなおすのが精一杯だった。
〉「昨日と同じ時刻に、同じ場所に来て下さい」
〉少女は繰り返した。そして彼女は自分の体を乱暴に揺らして、肩に置かれた翔の手を振り払う。それから、
〉「待ってますから、絶対に来て下さいね」
〉と言い残し、踵を返して颯爽と廊下を駆けて行った。
〉抗議も質問もする暇がなかった。
〉「な、何だったんだ?」
〉風と共に去っていった彼女の幻影を廊下に見つつ、翔は呟いた。
〉ところが、翔の苦難はこれからであった。
〉長い魅了の時間から我に返り、翔が教室に入ろうと反転した瞬間、中野が怖い顔でズカズカと近よってきて、ネクタイをしめあげて
きたのである。
〉「何? あの娘? 彼女?付き合ってどれくらいたつの?」
〉「わ、悪い。俺は聖徳太子じゃないんだ質問はひとつにしてくれ」
〉「奏、翔くんは、あの娘と、付き合ってるん、ですか?」
〉彼女はひとつひとつの単語にそれぞれアクセントをつけ、さらにアクセントの度にネクタイを強く絞めあげてくる。キリキリと首が
痛む。
〉「ぐあ、そ、そんなに青筋立てると可愛いい顔が台無しだぞ」
〉「茶化さないでちょうだい。今は私が質問してるの」
〉そう言いながら、ネクタイを今まで以上に締め付ける中野。いい加減苦しくなってきた。
〉「さぁ、答えなさい。あの娘とは付き合っているの?いないの?」
〉「い、一応付き合っている事になってる……らしい、ぞ」
〉「はぁ?何それ?」
〉わけがわからない、と言った表情を浮かべる中野。そのとき、ネクタイを絞め上げる中野の手が微かにゆるんだ。その隙に翔はネク
タイを外すと、ギャーギャー喚く中野を無視して、息もたえだえに自分の席に戻る。
〉翔が自分の席に座ろうとした時、難しい顔をして腕を組みをしている寺田に気付いた。何かを考え込んでいるようだった。
〉「あれ?寺田、何考え込んでいるだ?」
〉「翔は、さっきの娘と付き合っているのか?」
〉間髪入れずに、寺田は言葉を被せてきた。てっきり名前も知らない少女について、茶化してくるものと思っていた翔は、思いの外静
かな寺田の声に面食らった。
〉「まぁそうみたい、だけど。それよりお前、どうしたんだ?急に真面目な顔して。何か、悪いもんでも食ったのか?」
〉「いや、違う」
〉寺田は大きく息をついた。その姿は決心を固めているように見えた。やがて、覚悟を決めたのか寺田が口を開いた。
〉「実は……」寺田が何かを告白しようとしたその瞬間、やかましい声が寺田の声を打ち消す。「翔、さっきのってどう言う意味?」
〉再びの中野。翔の肩が掴まれ、凄い力で反転させられる。その手には翔のネクタイが握られていた。
〉「あんたがあんな可愛いい娘と付き合えるなんて、何か弱味でも握ってるの?」
〉「しょ、それは違う。むしろ弱味を握られてる方だ」
〉「弱味?何それ?」
〉中野がキョトンとした顔になる。翔はようやく自分の失言に気付いて、
〉「い、いや、それは言葉の綾と言うやつで。と、ともかく、本当に俺にも付き合ってるのか分からないんだよ。だいたい彼女の名前
すら知らないし」
〉「……スミカ」
〉ゴトリと石のような声が翔と中野の間に入った。口を開いたのは寺田である。
〉「藤宮澄香(ふじみやすみか)って言うんだよ。彼女」
〉「何であんたが彼女の事知ってんのよ」
〉中野は翔の肩から手を離し、至極全うな疑問を寺田にぶつける。翔も再び寺田に向き直った。
〉「藤宮とは中学が一緒だったから」
〉「中学が一緒?」
〉「ああ、だからってわけじゃないけどな。あの娘は、藤宮はウチの中学ではちょっとした有名人だったんだよ」
>
これいい加減うぜーよ
〉「へぇ〜有名人ね。校庭にけったいなミステリーサークルでも書いたのか?」
〉翔はおどけて見せたが、寺田はゆっくりと首を振る。気味が悪いほど真面目な顔だった。
〉「藤宮はさ、その、ホテルって呼ばれてたんだ」
〉「ホテル?何それ、意味分かんない」
〉中野はそう言って肩をすくめたが、その意味が翔には分かった。
〉寺田は観察するように中野、そして翔の瞳を覗きこんでくる。そして、その瞳は翔を真っ直ぐ見たまま固まった。その瞳は告げてい
る、言っていいのか、と。
〉その無言の問いに翔は静かに頷いた。どうせいずれ知れる事になるだろうから、今言われても構わないと思った。
〉それを確認したのか寺田は小さく頷き、再び中野に向き直り静かに口を開いた。
〉「誰でも泊まれる。つまり誰とでも寝る女、って意味だよ」
〉翔が自分の席に座ろうとした時、難しい顔をして腕を組みをしている寺田に気付いた。何かを考え込んでいるようだった。
〉「あれ?寺田、何考え込んでいるだ?」
〉「翔は、さっきの娘と付き合っているのか?」
〉間髪入れずに、寺田は言葉を被せてきた。てっきり名前も知らない少女について、茶化してくるものと思っていた翔は、思いの外静
かな寺田の声に面食らった。
〉「まぁそうみたい、だけど。それよりお前、どうしたんだ?急に真面目な顔して。何か、悪いもんでも食ったのか?」
〉「いや、違う」
〉寺田は大きく息をついた。その姿は決心を固めているように見えた。やがて、覚悟を決めたのか寺田が口を開いた。
〉「実は……」寺田が何かを告白しようとしたその瞬間、やかましい声が寺田の声を打ち消す。「翔、さっきのってどう言う意味?」
〉再びの中野。翔の肩が掴まれ、凄い力で反転させられる。その手には翔のネクタイが握られていた。
〉「あんたがあんな可愛いい娘と付き合えるなんて、何か弱味でも握ってるの?」
〉「しょ、それは違う。むしろ弱味を握られてる方だ」
〉「弱味?何それ?」
〉中野がキョトンとした顔になる。翔はようやく自分の失言に気付いて、
〉「い、いや、それは言葉の綾と言うやつで。と、ともかく、本当に俺にも付き合ってるのか分からないんだよ。だいたい彼女の名前
すら知らないし」
〉「……スミカ」
〉ゴトリと石のような声が翔と中野の間に入った。口を開いたのは寺田である。
〉「藤宮澄香(ふじみやすみか)って言うんだよ。彼女」
〉「何であんたが彼女の事知ってんのよ」
〉中野は翔の肩から手を離し、至極全うな疑問を寺田にぶつける。翔も再び寺田に向き直った。
〉「藤宮とは中学が一緒だったから」
〉「中学が一緒?」
〉「ああ、だからってわけじゃないけどな。あの娘は、藤宮はウチの中学ではちょっとした有名人だったんだよ」
投下終了です。
>>260 寺田の言いかけた言葉が気になりますな。
中野がどういう風に嫉妬するのかwktkしてます。
あと、確かに > は見づらいので消した方がいいかも・・・
携帯からだと、空白が勝手に埋まってしまうんです。。。
一文字空かないと、段落の変わりが分かりづらいかなぁと思ったんですが、〉不要っぽいですね。
荒らしがニートでひきこもりだということがよくわかった・・
働けよお前
毎日毎日一人芝居してピエロすぎだぜ
しかも、空回りしているのがワロスwwwwwww
神は避難所かこっちでどちらでも投下できるんだけどねww
まあ、避難所に書き込みするとすぐに削除できるだろうに
自演のGJばっかか
>>269 ひきこもり乙です
早く、お外に出ないんですか? 早くしないと貴方の人生が終了致しますよwww
>>269 ニート兼ひきこもりは働かなくて楽ですねww
本当にいいご身分だね
問題は
>>243 >>『ごめんなさい仲川さん私が悪かったですですから許して下さい本当にごめんなさいこれからは
>>なるべく話しかけませんから許して下さいどうしたら許してくれますか私何でもしますからどうか
>>会わないというのだけはやめて下さいお願いしますごめんなさいどうしてもお話したいので私土手
>>で待ってますから来て下さいお願いします二度と馴れ馴れしくなんかしませんからごめんなさい』
↑こういう女の子はどこに行ったら拾えるんですか?
まずは積極的に人助けをしてみましょう
>>274 人を助ける→勘違いで惚れられる→黒化した女のストーカー行為→
女、熱を出す。主人公はお見舞いに行ったら監禁される→数々の洗脳(マナマナの数倍の洗脳攻撃を受ける)
→主人公の調教完了、女と主人公はいつまでも幸せな家庭を築きました
って黄金パターンですか?
まあ、嫉妬の要素はないがなw
>>273 地球からおよそ6万光年彼方、銀河の正反対に存在する惑星、シュラバ星に彼女たちは居る。
さぁ、一緒にグローバリー3世号に乗ろうじゃないかね…
>>275 そこにどう嫉妬成分をうまく抽入するかがSS作家の手腕の見所ですな
>>276 デルタ宇宙域に修羅場っ娘が生息していると
ようしワープ9だ
>>279 どんだけ類似スレ立てるんだよ・・・
>>275 その理論は男がイケメンか、女がろくに男に優しくされたことがないブサでないと成立しなくね?w
281 :
#:2007/04/25(水) 21:09:30 ID:q7k8G/YH
投下します
私の弟は引き篭もりである。
人生の落伍者、現代社会に巣食う癌細胞、人間の屑などと世間で好き勝手にいわれている引き篭もりである。
学校にも行かず、カーテンを閉め切った薄暗い部屋で四六時中パソコンとにらめっこしている、極々スタンダードな引き篭もりである。
モニターの前で卑屈な笑い声を上げて、アニメキャラクターの名を叫びつつ自慰をするという、いわゆるオタクと呼ばれる人種でもある。
自室から風呂と用足し以外では出ようとせず、稀に外出することもあるがその理由はゲーム購入のためだという、随分と都合のいい引き篭もりさんだ。
そんな駄目人間である弟の食事は、彼の姉である私が用意することになっている。
ドアの前に夕食を乗せたお盆を置いて、思春期の息子に接する母親宜しく声をかけるのだ。
「ひろくん。晩ご飯、ここに置いとくね」
「フヒヒヒwwwwwサーセンwwwwwwwwww」
弟から奇妙な返答が帰ってきた。大方、またインターネットでみたものに影響されたのであろう。
だが、心なしか今日の弟はいつもより機嫌が良いように思える。普段ならこの手の呼びかけは無視するか、適当にあしらうような返事をするはずだ。
それならばと、勇気を出して再び話しかける。
「ねえ、ひろくん。たまにはさ、お姉ちゃんと一緒にご飯、食べない?」
「実姉?あるあ……ねーよwwww」
間髪いれずに帰ってくる拒絶。取り付くしまもない。
はぁ、とため息を吐いて扉を後にする。
今日も一人で夕食かと考えると憂鬱になった。
引き篭もる以前は二人仲良く食卓を囲んでいたのに、今は顔さえみせてもらえない。
どれだけ私が献身しても、かえってくるのは素気無い拒絶。
怒るでも怒鳴るでもなく、ただ単に面倒ごとをあしらうかのように、私の問いかけに対して無関心であるかのような振る舞い。
テレビドラマの引き篭もり少年のように怒鳴り散らしてくれたらどんなに気持ちが楽になるだろう。
好きの反対は嫌いではなく無関心だという話を思い出すと悲しくなった。
弟は変わってしまった。昔はあんなに私を慕ってくれた弟は、あの日以来文字通り人が変わってしまったのだ。
三ヶ月前までの弟は、今のようにアレな性格ではなかった。
整った顔立ちと学年上位の学力。部活動は陸上部に所属していて、それなりの成績も残していた。
人当たりがよく友人も多い、どこに出しても恥ずかしくない、姉想いのいい弟だった。
そんな弟がなぜ今のような引き篭もりになったのか、私には解らない。
世間的に恵まれた人種であった弟が、引き篭もる原因になりそうなものは私には思い当たらなかった。
あの日の弟に不信な挙動は何もなく、いつも通りに登校していつも通りに帰宅した。
そして帰宅した弟は突然、私に向かっていったのだ。
「姉ちゃん。俺、今日から引き篭もるから」
「はぁ?」
そのときの私はどんな表情をしてたのだろう。脈絡も何もあったものじゃない弟の引き篭もり宣言に、私は間抜けに口を開いたままその場に突っ立っていた。
「ちょ、ちょっとまってよひろくん!どういうことなの?」
弟は私の言葉を無視してすたすたと自室へ歩いていき、音を立てて扉を閉める。
「ねぇ、なに?引き篭もるってどういうこと?」
私はすぐさま弟を追いかけ、扉を叩きながら問いかける。
「ひろくん!返事して!お姉ちゃんを無視しないで!」
何度もがんがんと扉を叩くが、一向に返事が返ってくる気配はない。
ドアノブに手をかけてみるが、鍵をかけているらしく全く回ろうとしない。
生まれて初めて弟に無視された私は不安と恐慌に駆られて何度も扉に叫び続ける。
こんなこと、今まで一度もなかった。ひろくんが私を無視するなんて、絶対にありえないと考えていた。
叫ぶことでその事実を否定できると思ったのか、私は何度も何度も大声で問いかけ続けた。
「ちょっと!お願いだから返事して!ドアを開けてよ!」
嗄れ声が私の体を出て冷たい廊下に反響する。半ば殴りつけるような動作で扉は叩かれ、その振動で弟のネームプレートがかたかたと揺れた。
私の声は本当に弟に聞こえているのだろうか。もしかしたら弟は部屋の中などにいなくて、私の後ろから現れてごめんね姉ちゃんといって悪ふざけのネタ晴らしをしてくれるのではないかと、在りもしない希望に縋った。
しかし、現実は非情である。
時計が翌日を指しても、私は扉を叩き続けていた。
頬が濡れているのに気付いた私は、慌ててそれを手で拭った。
あの日の出来事を思い出したときはいつもこうだ。弟に拒絶されたという事実が私を打ちのめし、涙腺を緩ませる。
結局のところ、弟は何も私に話してくれなかった。引き篭もりになった理由も、姉でありたった一人の肉親である私を拒絶した理由も、私は何も知ることができなかった。
床に散らばった洗濯物をたたみなおし、立ち上がって弟の部屋へと歩き出す。夕食の食器を回収するためだ。
あの日私が叩き続けた木製の扉の表面は、私の心情を表すかのようにささくれ立っている。
ひろくんの部屋とかわいらしい書体で描かれたプレートは床に落ちたままだが、私にはそれを再び掛け直す勇気が無い。
「ご飯、ちゃんと食べてくれたんだ……」
皿に載せられたハンバーグは、ちゃんと平らげてくれたようだ。食べてくれたことが嬉しくて、調子付いた私は言葉を続ける。
「あ、でもブロッコリー残しちゃってるね。嫌いなものがあるならいってくれればいいのに……」
「はいはいわろすわろす」
会話が成り立たない。弟は私が話しかけようとするといつもこういってはぐらかす。
こうなってしまってはお手上げだ。久しぶりに弟と面と向かって話せるという希望は叶わなかった。
下心が見え見えの台詞がいけなかったのだろうか。
私は再び話しかけることも出来ず、お盆を持って立ち去った。
硬く冷たい静寂に満ちた台所。家族の温もりは、あの日以来失われたままだ。
食器はもう洗った。溜まっていた洗濯も済ませた。私に課せられた仕事はもう無い。
一人ぼっちで椅子に座り、対面の、弟が腰掛けることのなくなった背もたれを眺め続ける。
弟は、私に何も語ってはくれない。私を頼ってはくれない。
弟に私は必要とされていないのかと考え、頭を振る。
今のような引き篭もり生活を続けるには、食事や被服の世話をする人間が必要だ。
私がいなかったら弟はきっと餓死してしまうだろう。私の献身があるからこそ、弟は生きていられるのだ。
そう、私はひろくんにまだ必要とされている。
このとき、私の意識の底で忌まわしくも甘美な想念が、弟の生殺与奪を握っているという唾棄すべき傲慢ともいえる思想が鎌首を擡げ始めた。
その想念はとても心地よく私の胸へと染み込み、暗い喜びをもたらしてくれる。
弟は、私がいなきゃ生きていけないのだ。
心のどこかで、この生活がいつまでも続けばいいのにと、声が聞こえた。
終わりかな?
以上です。
引きこもり云々についてはいろいろとごめんなさい。
…グッド
>>286 GJです。
この、最後の姉の仄暗い感じがなんとも。
続きに期待。
そして私はメモ帳と格闘中・・・orz
290 :
変名おじさん:2007/04/25(水) 21:50:41 ID:WGFF1Vxa
>>289 そうでしたね。ご指摘、ありがとうございます。
以後気をつけるように致しますので。
>>290 トリ付けんなってのはコテ使って自己主張すんなってことなんだけどな・・・・・・
投下してくれるのは嬉しいけどそこら辺キッチリしないと馴れ合いとかで叩かれるよ
神は空気読んでいるからな・・
住人に対しては全然レスを返していない・・荒れるのがわかっているからね
住人の誰かが絵を描いてうpして、御礼のレスぐらいしか書き込んでいない
それが暗黙の了解になっていたはずなんだけど・・
本当にここの住人のレベルは下がったと自分でも思うよ
>>292 最後の一文はいらん波風立てるだけだぜ。
最後の一文は当然スルーと思っていたのだが・・
スルーのスキルぐらい身に付けておけ・・社会に出るとパートのおばさんとか
お局様の無意味な悪意のある世間話を聞き流すようにしておかないと・・
精神的に辛くなるぞ
>>295 一言だけ言っておく。それは君の台詞ではない。
投下します。。
「誰でも泊まれる。つまり、誰とでも寝る女、って意味だよ」
中野は絶句した。翔も黙りこむ。その沈黙の中を静かに流れる寺田の言葉。
「俺もひとづてに聞いた話だから、詳しい事は分からないし、実のところ藤宮と寝た男の話も聞いた事がない。だけど、ウチの中学
ではそう呼ばれてたって事は事実だ。だけど、まさかウチの高校に入ってるとは知らなかったよ、新入生名簿にはなかったし」
一気に場の空気が重くなった気がした。それなのに無邪気に響く休み時間の喧騒がやけに白々しかった。
「……誰とでも寝る女、か」
しばらくして翔はつぶやく。少し残念な気もしたが、ようやく多くの疑問がふに落ちた気がした。
だいたい翔は取り分け格好いいわけではない、と自認している。そのうえ、部活をやっているわけでもないし、勉強が出来るわけで
もない。いわば長所も短所もないのだ。そんな男に惚れる女などそうそういるもんではない、と思う。
彼女にしてみても、翔と寝た理由は特にないのだろう。彼女は翔の事が好きだから翔と寝たのではなく、男と寝る事が好きだから翔
と寝たのだ。
「……不潔」
そんな翔の思考を遮り、いきなり中野はそう吐き捨てた。それから翔に視線を写しかえ、まるで敵兵の死体でも見るような目で、
「あんたも寝たの? 藤宮さんと」
ドキリ、と一際強く心臓が脈うつ。
中野の言葉は身も蓋もない故に、的確に翔の動揺を誘う。思わず言葉につまってしまうと、彼女の瞳の色がみるみる変わり、
「最っ低」
もう一度、中野は氷のように冷たく吐き捨てた。それから、中野は持っていたネクタイを翔の顔面に投げつると、踵を返して自分の
席に戻っていった。翔は、それを呆然と見送る。
中野が自分の席に着いたところで、寺田がいきなり口を開いた。その口ぶりはいつの間にかいつもの寺田に戻っていた。
「どうするんだよ、怒らしちまったぞ」
うひひひひ、と笑う寺田はなぜか嬉しそうだった。野次馬を決めこんでいるようである。
「俺のせい、なのか?」
「いや、それはまだ分かんねーけどさ。翔に原因の一端があるのは確かだぜ、まぁ、いいけどな。そんな事よりさ、お前本当に藤宮と付き合ってるのか?」
「いいや、そんなつもりはないんだよ。別に彼女が好きってわけでもないし。ただ……」
「ただ?」
「拒絶しようとも思えないんだよ。自分でも理由はよく分からないんだけど、何となくしちゃいけない気がするんだ」
寺田は肩をすくめ、
「好きじゃないけど、別れたくない? 意味が分からん」
「いや、別れようとは思ってるんだよ。だってさ、何か、彼女の纏う雰囲気が苦手でさ」
寺田は両手を叩いて、
「あ〜〜、それ分かるわ。俺も駄目。顔は可愛いいんだけど、なんつ〜か、年下のくせに腐った大人みたいなんだよなぁ。一緒にいるとこっちまでおかしくなりそうな」
言い回しがすっきりしないが、寺田の言いたい事はなんとなく分かったので、
「そうそう、そんな感じそんな感じ」
あははと空笑いをひとしきりした後、翔は一息ついてから、自分の思う事を素直に告白した。
「ともかく今日別れようと思う」
「そうか。でも、出来んのか?」
「ああ、最大限頑張ってみるよ」
力なく翔は笑った。
投下終了です。
やはり〉はない方がいいでしょうか?
おkおk
逆に〉がなかっために新しい投稿だと思ってしまったのは私だけじゃあないはずだ!!
>>301 ないほうが読みやすいですな。
〉がうっとしくて今まで読み飛ばしていたのですが、改めて読んでみて読み飛ばしていたのを
軽く後悔した、これからも頑張って下さい。
>>301 俺も
>>304と同じだったが、改めて読ませてもらった。
かなり好みの作品だったわ、これからは楽しみに読ませていただきます。
306 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/26(木) 01:08:58 ID:holJT3OF
処女じゃないのが残念・・・!
〉は付いてても付いてなくてもいいけど、もう少し溜めてから投下してくれい
>ついててうざかって読み飛ばしてたけど
あらためて読んだら、別に読まなくてもいい作品だった。
もう投下しなくていいよ
>なくなったから読もうと思ったけど
306の書き込み見て読むのやめた!
処女厨のキモさは五大陸に響き渡るで
>>301 なぜかすみかに会うとヤバクなる予感が・・・
>がなくなったおかげでずいぶん見やすいです。このまま頑張って!!
313 :
276:2007/04/26(木) 19:39:02 ID:6Q4nzcbS
>>278 遅レスだが276の設定はゾイドなんだ…
そして今俺の脳内では、シュラバ星人が嫉妬生命体JEALOUSYDS(ジェラシード)を使い
恋敵との全面戦争を行っているんだ。
そして地球からの移民船グローバリー3世号が不時着したことにより、それまでは不幸の手紙を
送るとか靴に画鋲を入れるとかだった戦いが包丁や日本刀、フライパンを用いたり戦術も監禁や
悪党に恋敵を襲わせるとかに激しくなったりしているんだ。
まあなんだ・・・
その妄想をSSにしないか?
ストライプブルーがモロこのスレ向け展開で死球吹いた
いつか書いてみたいな
アッー坊刺殺エンドで
ここも廃れてきたな
一時期が異常だっただけで少しくらいスレの進行が遅くないと読むのが追いつかない
まぁ何事にも黄昏は付き物、さ
ゆく河の水は絶えずして、しかももとの水にあらず…
いつまた激動の時代が来るともわからんよ
アブリルの新曲って女の嫉妬の歌じゃないか?
>>319 「アブリアルの新曲って女の嫉妬の歌じゃないか?」に見えた。
機動時空爆雷(ホクサス)を撃ち込まれて逝ってくる。
あとラフィールの世間知らずさはキモ姫の素質が充分あると思います。
アブリアルって何だ?
星界の紋章シリーズのことだろ
原作には修羅場どころか嫉妬すらろくに出てこない(はず)なので注意
二次創作なら以前読んだことあるから興味あれば探すのもあり
投下します
「で、結局、ダラダラきちまったわけだな」
向かい合って座った寺田が呆れたような溜め息を一つつき、わざとらしく肩をすくめて言った。
「面目ない」
翔は小さくなる。
結局、藤宮との別れの決意を寺田に話してから一週間が経過していた。あれから幾度となく別れるチャンスはあったのだが、その度
に藤宮のペースに流され続けて、別れ話を切り出せなかったのだ。
「まぁ、俺は部外者だしぃ、翔が誰と付き合っても構わんよ。ただなぁ」
そう言って寺田は右手に持った箸で、中野を指した。そこで中野は女子と談笑しながら弁当を囲っていた。楽しそうに笑っているが、
その笑みはどこか空回りしているような気がした。
「最近中野の元気がないんだよねぇ。俺は翔と中野のやり取りが好きだったんだけどなぁ」
寺田は遠い昔を思い出しているような目で呟く。翔は返答に困り、弁当箱から玉子焼きをつまみあげ口に投げ入れた。
寺田の言うように、最近の中野に元気がないのは事実である。いつもつっかかってきた休み時間も、最近では自分の席に座りただぼ
んやりと頬杖をついている時間が多くなった。翔以外の誰かに話しかけられれば、返事こそはするが、それも気持ちが篭っていないた
めか会話に繋がらない。だから中野は休み時間の間中、ずっとたそがれているのだ。
翔から話しかけようにも、避けられた理由が理由なだけに、何を話しかけたらいいか分からなかいし、またその理由の根本を正して
いないので話しかける権利がないような気もした。だから仕方なくそっとしておいたのだが、逆にどんどんアンニュイになっていって
しまっている気もする。ともかくどうしたらいいのか分からない、お手上げなのだ。
「どう話かけたらいいか分からないんだよなぁ」
無意識に翔は本音をこぼした。すると寺田はその無意識をめざとく拾いあげ、心外といった顔で、
「どうって言われても、気持ちを正直に伝えればいいんじゃん?」
「へぇ〜、具体的に何て言えばいいんだい?是非教えて頂きたいね」
「俺はお前の事が好きだ、とか」
寺田は真面目な顔で言うが、翔は大きな溜め息を返した。
「あのな、誤解しているようだから言っとくが俺は別に中野が好きなわけじゃないんだぜ?そりゃ確かに藤宮といるより中野と話し
ている時間の方が楽しいよ、それは認める。だけど、だからといって中野と付き合いたいとは思っていない」
「でも、中野は翔の事好きなんだと思う。だから藤宮がお前に会いに来るたび不機嫌になるんだよ。それに、俺はお前ら二人お似合
いだと思うけどなぁ」
やたらと中野の肩をもつ寺田に、翔はうんざりした気分になる。もちろん中野が嫌いなわけではないが、そういう類の話は気乗りし
ない。
「いい加減にしてくれ。仮に寺田の話が事実だとしても、それでも俺は中野と付き合おうとは思えないよ」
いささか乱暴に言って、翔は黙々と箸を進める。まだ何か言いたげだった寺田も、かたくなな翔の様子に観念したのか、やれやれと
ばかりに弁当の中身を静かに口に運びはじめた。会話が途切れると、不思議と空気がどんよりと曇りだす。
自分が作り出した空気なのに、それがたまらなく居心地が悪い。気まずい雰囲気は苦手なのだ。だからその空気をなんとか打破しよ
うと、翔は辺りをキョロキョロ見渡して話のネタを探した。
その時である。たまたま目が移った教室のドアの陰から、こちらを黙って見つめる人影と目が合い、翔は石のように固まった。その
人影の主こそ、翔を悩ます藤宮澄香であったのだ。
藤宮は翔と目が合うと、ニコリと笑いそのまま悠然と翔の方向に歩き始めた。あまりに悠然としていたため、上級生の教室に侵入し
た下級生に誰も気付かなかった。例外は先程目の合った翔と、槍のような鋭い視線を突き刺す中野だけである。もちろん寺田も気付い
てない。彼は気まずそうに箸を口へ運んでいるだけだ。
やがて、藤宮は翔の前に堂々と立つ。その時にはひたすら弁当を食らっていた寺田も、さすがに彼女の存在に気付き、馬鹿みたい
に口をあんぐりあけて彼女の姿を眺めていた。しかし、そんな視線も彼女の愛くるしい顔は平然と受けとめ、ニコニコと気味が悪い満
面の笑みを浮かべている。何か、とてつもなく嫌な予感がした。
「センパイ、今日家に泊まりに来ませんか?」
藤宮は当たり障りのない導入の話もせずに、いきなり本題を口にした。ロベカルの左足ばりの威力をほこる彼女の言葉に、寺田は箸
を落とし、翔は凍りついた。
「今日は金曜で、明日は休みです。だから今日家に泊まりに来てください」
玩具を買ってもらった子供のように嬉しそうに言う藤宮。話の順序を無視したうえ、まったくもの汚じしない彼女のもの言いに、空
気が凍ったように固まり、翔と寺田もまた凍ったように固まっていた。
そのとき、まるでその空気をかき乱すように、何かが乱暴に倒れる音が響いた。空気を切り裂くようなその音の大きさに、教室の喧
騒が嘘のように静まり返り、同時にようやく翔は我にかえった。
藤宮と寺田が音のした方をみやる。それにならい翔もそこに目をやった。
中野が先程まで座っていた椅子が豪快に倒れている。机の上に寂しげに広がっている弁当箱はまだ半分ほど残っていたが、肝心の主
の姿はすでになく、中野と共に箸を進めていた女子達は魂が抜かれたような顔でその空席を見たまま固まっていた。何かとてつもない
事が起きたようである。
しかし、それでも藤宮は何事もなかったかのように翔に視線を移し、話を再開する。
「では、今日の帰りに迎えにきますから待っててくださいね」
そう言うと藤宮は踵を返す。 早くも帰ろうとする藤宮に、翔は慌てて話を割り込ませた。
「ちょ、ちょっと待った」
彼女が肩越しに振り返る。その間僅か零コンマ数秒、翔は頭の中でくるくる回る言葉を必死にまとめていた。このままでは藤宮の話
がまかり通ってしまう。そうなると、寺田を介してクラスでもおかしな噂が煙のように立ち上がってしまうに違いない。だから翔はそ
の負の流れを止めようとしたのだが、
「あのさ、きょ、今日は部活があるんだけど」
ようやく出てきた言葉は情けないくらい単純な嘘だった。
「センパイ、帰宅部じゃないですか」
藤宮はあっさりと嘘を看破しニコリと笑う。
「そ、そうだった。で、でもさ、実は今日深夜にスカパーでサッカーを見たいんだ。だからさ、今日は」
「安心して下さい。家の人がサッカー好きでスカパーありますから」
「えっ? ああ、そうか、それはよかった。で、でも、家の人に心配されないか? ほら、俺も一応男だし」
「大丈夫です。センパイを連れてくるようにと言ったのは、家の人ですから」
まるで底無し沼のように、もがけばもがくほど深みにはまっていく。
「だ、だけど、だけどだよ、着替えとか歯ブラシとかはどうするんだ?ほら、いきなりだと……」
「安心してください。それも準備してあります」
弾切れ。
「では、センパイ。放課後迎えにきますから、帰っちゃ駄目ですよ」
さんざん和やかな空気をかき乱してくれた藤宮はそう言うと、駆け足で教室から出ていった。結局、また彼女のペースに飲み込まれ
てしまったのだ。翔は何とも情けない敗北感を胸に、彼女の残像に魅了されていた。
「愛されてんだなぁ」
藤宮が去ってしばらくして、彼女の前では案山子となっていた寺田がしみじみと呟く。それから寺田は思い出したように喉を鳴らし
て笑いだした。翔はムッとする。
「何がおかしいんだよ」
「え?ああ、悪い悪い」
ひとしきり笑った後、寺田は急にかしこまったように姿勢をただし、さて、と息をついた。
「で? どうするんだ?」
「行くしかないかな? やっぱ」
「違う違う、その話じゃなくてあれ」
寺田は顎を指した。その先にはもぬけの空となった中野の席。相変わらず寺田は中野の話を持ってくる。さっきの藤宮の話はどうで
もいいようだった。
「怒ってるぜ、かなり」
「あいつは潔癖お嬢様だから、性的な匂いのする話が耐えられなかっただけだろ」
翔が答えると寺田は心の底から呆れかえったような顔で、
「お前、さっきの俺の話を聞いていなかったのか?」
「いや、聞いてたよ」
「じゃあ、質問を変える。それは本気で言ってんのか?」
「ああ」と答え、翔は疲れた笑みを浮かべつつ「半分な」と言ってやった。
そして、翔は藤宮の家にお泊まりすることにあいなった。
以上投下終わりです。
まだまだ書き留めがある分、気は楽。
GW中にはその部分を全て投下したいなぁ。
うむ、正統系ヘタレ。
実に修羅場が待ち遠しい
家の人って言い回しが気になる
両親は既におらず妹か姉がいるとか……
中野がどうでるか非常に気になる。そして書きためがあると聞いて思わずにんまりな俺www
作者さんGJ
GJ!
主人公の一挙一動に死亡フラグが立ってるな
自演のGJ乙であります
流されやすい主人公は(修羅場系)王道だなw
wktkして待ってるぜ。
今回のは違うと思うが...
強いて言うなら>336が反応しての?だけど
ほっとけ
まぁ、マターリ行こうや。
340 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/28(土) 23:34:57 ID:EzSM+SIo
ただまぁ、俺の舌に合わないのは全部駄作!ってのもどうかと思うけどね
別に
>>599を非難してる訳ではなく
確かに読者に合わせるのも当然だけ思うけど個性を伸ばしていくってのも必要だと思うよ俺は
それを気に入ってる読者も居る訳だし
341 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/28(土) 23:37:10 ID:cNx+XrXp
スマン、スレ間違えた……
342 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/28(土) 23:37:42 ID:cNx+XrXp
ちなみに>340な……
なんというage荒らし
うふ〜ん
うふ〜ん
うふ〜ん
うふ〜ん
redpepperの続きが読みたくて胸がモヤモヤだっぜっ
荒らしのおかげで誰も投稿しなくなって過疎っていますwwww
1月に比べたらかなり投稿がなくなりましたねw
ダメだなこりゃ・4日も投稿が来ないなんて・・荒らしのせいだな完璧に
なんていうか、スルー出来なさすぎるこいつら…
荒らしだけじゃなくて単純に作者のネタ切れもあるだろ
34スレも来たら当然じゃね?
仕方ないageてやるよ!!
>>356 (゚Д゚)ハァ?
荒らしのおかげでスレの雰囲気が悪くなっただけだよ
何を言っているんだ?
とりあえず356は何がしたかったんだ?
避難所のリンク貼ったり、削除板のレスの貼り方も前のまんまじゃねーか
>>358 上のレス見て察してやれ・・・構ってたら喜ぶぞ
それに類似スレも増えたし、しょうがない
>>358 2〜3月のほうがよっぽど悪かった
避難所はあまりにも過疎ってたから貼った
削除板のレスは削除厨のスルーにワロタからだよ、もう少し考えて貼らないと削除されるわけが無い
今まで削除されたのコピペSSぐらいじゃん
とりあえずお前はワロタのかもしれんが、晒すのはやめておけ・・・荒らしに見えるから
あと、そう何でも否定ばっかりしないでこのスレで何か書いてみないか?
>>362 はただの荒らしだろう・・どうでもいい雑談は本スレでやってくれ・・
恐らく、7月辺りに再び作者が描き始めるかもしれんな・・
女神が再降臨するぞ
俺にはそんな才能ないorz
確かに荒らしのせいで連載中の作品がぶった切られたのは事実だし
削除は客観的にみて明らかに荒らしと思われるものじゃないと削除されにくいから、そこを考えて欲しいかっただけ
運営に言えココで言うなカス
削除依頼出す人間にもう少し考えてから出さないと削除されない、って意味なんだ
勘違いさせて悪かったね
削除依頼のうんぬんの前に他のエロパロスレのように過疎化している現在は
俺達の行動は無意味じゃないのか・・
一度、荒れたり、作品を貶されると誰も二度と投稿したくなるもんかと
ここに近寄らなくなるのがオチだ・・
いいか・・そうやって格闘ゲーは衰退して行ったんだ
>>368 そうだ、例えば鉄拳 初心者狩りがあるから人口が増えないんだ。
K.O.Fだって不良が負けたことに逆上して騒ぐからあぁなったんだ。
メルブラRe.Actだって、
どこぞのシオンが永久なんぞ使うから(ry
という典型的なスレッチハマー。
さて、何人に叩かれるかな。
ずっと以前言われていたように、「過疎だ過疎だ」喚き回る奴が出るほどスレは過疎化してくんだよハゲ
そういう愚痴呟いてるぐらいなら黙って待ってろや頼むから
現在、非常に遅筆ですが執筆中です。
ちょっと、最初書こうとしていたものが書けなくなり、
全然別の話を書こうと今日一日・・・orz
ところで皆様に質問ですが、
ヒロインにキモウトが一人でもいたらそっちのスレに行かねばならないのでしょうか?
それとも、キモウト・キモ姉オンリーでなければ此方でもおK?
それによって何処で書くかが決まるので・・・教えていただけると助かります。
>>371 そんなことはないんじゃないスかね。キモ系キャラの有無にかかわらず、
三角関係や修羅場といった要素があるのなら、ぜひここに書いてくださいな
>>371 嫉妬・三角関係・修羅場、この成分がちょっとでも入ってるならお願いします!!
もう禁断症状で死にそうで死にそうで・・・(´;ω;`)
>>372>>373 一回の分量で嫉妬する段階までもっていけるかはわかりませんが、
そういうことなら真に微力ながら頑張らさせていただきます。
量は激少でしょうが。
何とか。
何とか、夜明けまでには。
嫉妬深いキモ姉とキモ姉では種類が全く違うぞ・・
個人的にはヤキモチ焼きの姉妹に飢えていますよ・・
ダ・カーポ2の朝倉姉妹以上のヤキモチ姉妹を読みたいところです
(主人公に彼女がいるのに、嫉妬してしまう姉妹)
嫉妬する姉と妹で萌えるような話を作ろうとするならば
絶対にヤンデレ化させずに狂わせることをせずに・・
黒くなって主人公にデレツンするだけでOK?
嫉妬する姉妹 このスレ
キモ姉&キモウトを極めたい方は あっち
姉妹をヤンデレ化させたいならば・・ヤンデレスレ
・・・・・
いい加減に統一しないか?
荒らし対策のために立てられたどうかは知らんが・・
この3つのスレを読むだけで俺の精神が狂いそうなんですけどwww
ヤンデレスレはもう保管庫も出来てるからしょうがないにしても
キモ姉&ストーカースレは次スレ立てずに統一したほうがいいな、テンプレもここのまんまだし
>>376 ようは物は言いようって事だよ
まとめのSS見れば分かるがキモ姉とか言われているのも元々嫉妬とかが原因
それが今では名前だけ一人歩きしている状態
結局主人公独占したいというキモ〜は嫉妬・三角関係・修羅場に帰属する
夜明けには間に合った・・・。
もう眠気で色々不安ですが、予告通り投下します。
何故こんなことになってしまったのか。
体内に潜り込んでくる硬質で冷たい感触とそれに反する焼け付くような熱を感じながら、ふと思い出すようにオレは思った。
本来、こんなことは有り得なかった筈だ。
当たり前に自分の暮らす家で、いつも空を見上げていた屋上で、あの病院の一室で、
オレは変わらない日常を送っていたはずなのに。
それは決して脆いものではなく、ましてや懐かしいなんて感じるはずもないものなのに。
今、手の届かない過去のように、忘れてしまった夢の記憶のようにそれを遠く感じるのはどうしてだろうか。
此処に来るまでにも散々考えたはずなのに、此処に来てもまだ答えは出ない。
オレが、愚かなせいなのだろうか。
何が誤りだったのか、何処で違えてしまったのか、何時間違えてしまったのか、それさえもオレにはわからない。
ただ。
この瞬間のオレに理解できることは、自分の胸に刃が突き立てられていること。
そして、今なすべきことだけだった────。
オレの名前は蒼間 灯(そうま とう)。
私立三角(みつかど)学園の高等部に通う二年生だ。
アイデンティティの形成に苦しむ思春期まっさかりの人間としてはどうかと思うが、
自己紹介で特技や特徴を述べよとか言われてもちょっと困るタイプの、まあ自分に自信があるとかは別にして際立った個性のない人間。
学力は平均、運動はまあまあ得意、部活を止めた今では特に趣味も無く、
しかし暇に任せて反社会的な迷惑行為や危険なことをしたりもしない程度には常識人。
真面目と言うのは言い過ぎだが、不良と言うにはちと足りない。
そんな何時でも何処にでもいる、誰にでも代替可能な一学生。それがオレ。
の、はずである。
私立三角学園の有する広大な敷地面積においてその一角を占める高等部校舎に、どこか間の抜けた音が響き渡る。
正午より少し遅れて鳴らされたそれは校舎の隅々と内部に存在する生徒一人一人にまで授業の終了と昼食の始まりを告げ、
余韻を残しながら消えていった。
黒板の上部に備え付けられた、たった今役目を果たしたばかりのスピーカーの横の時計を見ると、
長身と短針がそれぞれ12と8を差していた。自分の腕にはめているデジタルの時計を見ると、表示は12:40。
「・・・では今日はここまでとする。各自、しっかりと復習をこなしておくように」
そろそろ頭髪とか腰とかが心配になってきた年齢の男性教師がオレと同じ動作をした後に授業終了の旨を告げると、
さっと教材を纏めて出て行った。
残された生徒たちはその背を見送ると共に席を立ち上がり、ある者は学食や購買へ疾走を始め、
ある者は友人と駄弁るために移動を開始し、またある者は動かずに弁当やコンビにのパンを机の上に広げたりと、
それぞれが思い思いに行動を開始する。
昼休み。学生にとっては一・二を争う人気タイムの始まりだった。
行き先は購買でも学食でも自販機前でもないが、オレも毎日の習慣に倣い、弁当の包みを持って席を立つ。
「今日も愛妻弁当を持って愛人候補の下へ直行とは、相変わらず修羅場の下準備に余念がないな、同志よ」
「モテる男は辛いね、灯君? いひひ。行ってらっさーい」
「だから違うっての。ま、行ってくるわ」
声をかけてくる級友2人に軽く返し、
教室の後ろ側にあるロッカー付近で立ち話をしている女子のグループを避けて廊下へ。
学食や購買へ突撃する連中が過ぎ去った廊下では人がまばらで、
立ち止まってちょっとした会話を楽しんでる連中がいたり、
どんな裏技を使ったのか既に購買でパンと勝利をもぎ取ってきた奴がほくほく顔で歩いていたりする。
それらを避けてリノリウムの床を歩いて行き、階の中央部で各階を繋ぐ階段を上って行く。
階を上がるにつれて擦れ違う生徒も減り、その数が0になると同時に目の前に鉄の扉が現れた。
最上階の更に一つ上。学生が昼休みを過ごすポイントとしてはベタな場所だ。
呼吸一つ。ノブを捻って強めに引くと、立て付けの悪い扉が重い音と共に開く。
「うっ・・・」
今日は良く晴れているせいか、一歩屋上に踏み出すと、
採光用の窓の代わりに階段に設置された薄暗い人工灯に慣れた目を強めの日光が射す。
堪らず目を細めること十数秒、視界には見慣れた光景が映っていた。
教室2つ分くらいの奥行きと幅があるコンクリートの地面に、
全体を取り囲む転落防止用の柵とそれ越しに見える他の校舎や施設、町の風景に様々な形の雲が点在する蒼穹。
今時は屋上を開放しない学校もあるそうだが、我が校は比較的自由な校風故か、
生徒の利用を前提にわざわざベンチまで置かれている。
もっとも、その割には専ら告白か番長対決に使われるらしく、今は誰も腰掛けていないが。
後にはコンクリートにはめこまれた扉がある。
一通り見回してみたが、どうやら誰もいないらしい。
「・・・て、おい。それは変だろ」
いや、それはおかしい。
今オレがここにいるのはオレの自由意志だが、
それも人と会う約束────厳密には昼食を共にする────があるからだ。
その相手が約束の場所、つまり屋上にいないのはおかしい。
待ち合わせの相手はオレより一つ学年が下であり、
学年が上に来るほど在籍する教室の階が一階の購買や学食に近くなる我が校においては、
授業が同時に終わるなら相手の方が屋上には早く来れるはずなのだが。
と言うより、相手がオレより遅れてきたことなんて今まで一度もない────、
「先輩、こっちっすよー!」
横から声。振り向くと、今閉じた扉のはめこまれたコンクリの壁で遮られている死角部分から首と手がにょっきりと生えている。
こんな真昼間から新手の学校妖怪かと反射的に身構えるオレだったが、すぐに隠れている部分が出て来た。
見知った、と言うよりそいつこそが約束の相手なので緊張を解くと、相手も弁当片手に近寄ってくる。
「いつも通りベンチに座ってないからどうしたのかと思ったぞ?
驚かすなよ、小戌(こいぬ)」
「いやあ、すいませんっす。先輩とうちの間もそろそろ倦怠期と言うかマンネリと言うか関係の進展が欲しいと言うか、
まあそんな現状を打開するためにここはささやかな変化を演出」
「んなことせんでよろしいっ!」
「きゃいん!」
ちょうどいい位置にある頭に拳骨をお見舞いする。
腐れ縁と言うのは違う気がするが、少なくともコイツとマンネリや倦怠期を迎えるような関係になったつもりはない。
「うぅ・・・先輩の愛は痛いっす。でもいつかはこれも新しい快感に」
「なってたまるかっ! 今のは躾だ躾。ふざけたことを言う後輩に対する鉄拳制裁。ったく、何ならもう一発いくぞ?」
「流石にそれは勘弁、つーか普通に痛いっすよ・・・」
殴られた位置を両手で抑えて、こちらを咎めるような上向きの視線を向けてくる。
たが、小柄なせいなのかどうかは知らないがイマイチ迫力が無い。
むしろ飼い主に叱られた子犬のように見えた。
大神 小戌(おおがみ こいぬ)。
私立三角学園高等部一年・・・何組だったっけ? まあいい。
取り敢えず、年はオレより一つ下。性別は♀。
オレより軽く頭2つ分は小柄で、
本人曰く癖毛という、野良犬みたいにごわごわでぼさぼさの赤髪と、少しだけ犬歯が長いのが特徴。瞳は茶色。
制服の覆いきれない部分から覗く部活で引き締められた細い手足は実にエネルギッシュで、
それを表すかのように性格は活発で落ち着きがなく、
懐いているかと思えばあっさりどこかへ行ったり、
大勢で騒ぐのが好きかと思えばふらりと一人でどこかへ行ったりと、狼と子犬を足して割ったような奴だ。
懐かない相手には噛み付くし・・・実際、オレも噛まれた事がある。
ちょっとした事故というか縁のおかげで昼食を共にする間柄だが、まあ未だに読めない奴である。
女臭さがないのは、付き合い易く────変な意味ではない────もあるのだが。
ちなみに、オレが先輩と呼ばれるのは学年の違いのせいもあるが、
主に以前籍を置いていた部活のせいだ。その時の後輩の一人がコイツである。
「うー。痛い。痛い、マジに痛いっす。先輩、幾ら何でも年下相手に拳骨はないっすよー」
オレからすればコイツの上目遣いは飼い主に甘える子犬っぽく見えてしょうがないんだが、本人はそうでもないらしい。
不満たらたらな様子でぶちぶちと抗議の声を上げている。
所属が運動系の部なのでどつき合いには慣れていそうなものだが、コイツは正当な理由の無い暴力とかには結構五月蝿い。
「悪い悪い。この通り、謝るから許してくれ。すまなかった」
ので、素直に謝るついでに殴った場所を撫でてやる。
時に子犬オーラを発揮するせいなのかはわからんが、
コイツが文句を言い出したときにはこうやって宥めるのが、部の女性先輩方のお約束だった。
人付き合いは苦手ではないが、それでも不思議に人気のあった小戌である。
「むぅ。分かればいいっす。あ、あとそこをもうちょっと右に・・・そう、そこを撫でて欲しいっす」
あっさりと謝罪を受け入れ、態度から険が消える。
と同時に撫でる場所を要求され、やけに侵入を阻む髪を分けてお望みの場所を撫でてやる。
「ふむぅ・・・やっぱ先輩に撫でられるのはいいっすね。女の先輩達とはまた違った手つきが、こう?
これは愛全(あいぜん)先輩に匹敵する気持ちよさっすよ・・・くぅん」
あの先輩と比較されるのはそこはかとなくおぞましいと言うか、
学園でも悪名高い、あの歩く高機動官能小説にコイツが撫でられるのは汚されたような気がするのは何でだろうな。
まあいいか。本人は喜んでいるんだし。
さっき文句を言っていたのとはうってかわって、今は何ともふにゃけた顔をしている。
つーか撫でる手を掴んで頬とか鼻とか擦り付けるなよ。無意識か? マーキングなのか?
やはりコイツは子犬とか小動物っぽいな。
撫でるとか、構ってやったらすぐに機嫌直すあたり。
まあ、この切り替えの速さと言うか素直さと言うか、後に引き摺らないさっぱりした感じは正直助かる────
「────あぐっ」
「って、痛ててててて手痛ぇえ!?」
と思ったら噛まれた。つーか噛み付かれた。
いきなり首を後ろに振ったかと思ったら、急な動きについていけず外されたオレの右手(の中指)に犬歯を突き立てやがった!?
「あぐっ、ぐるるるるるるるぅ!」
「ちょ、おま、何しやがる! 放せ、はーなーせーっ!」
「ぐぅ。ぺろぺろ」
「舐めるな! つか痛いホント痛い痛いから放せって!」
「うぁ」
余りの痛さに、反射的に手を引っ込めようとするも逆に食い込み、
何か痛みとは別の熱を持った柔らかな舌のくすぐったい感触に反応する余裕も無い。
鮫の場合は引かずに押し込んだ方がいいと言うが、この場合はどうか分からないので殆ど無我夢中で引っ張っていると、
小戌がこれまた急に顎を開いて開放する。
「ぅ、ぅぉぉおおおおお、痛ったー・・・うわ、何か唾液ついてるし。じゃなくて!
おい小戌、いきなり何しや」
「先輩、今うちのことを動物っぽくて単純とか思ったっすね?」
「ぉ・・・おう」
メチャクチャ痛かったので思わず怒鳴りつけようとするが、相手の剣幕と予想外の反応に思わず頷いてしまう。
つーか小戌さん、目が据わってるんですが。
「動物っぽいとはよく言われるのでうちも気にしないっすが、撫でれば機嫌直すとか単純とか思われるのは心外っす。
先輩には、これからはそこら辺に注意して欲しいっすね」
「りょ、了解。でもどうしてわかったんだ?」
いや本当、言葉にもしてないのにどうしてわかるんだよ。
実は学園を護るエスパーとかいうオチか。
「乙女の勘────まあ、そういう匂いがしたってことっす」
「勘・・・つーか匂いってお前」
心理状態でホルモンの分泌量とかは変わるらしいが、嗅覚でそれが分かるのか?
仮に分かったとしても、それってまさにどうぶ────、
「・・・あー」
いや、わかったオレが悪かったから、頼むから口開けて犬歯を見せ付けるなよ。
数分後。
取り敢えず本来の目的のためにまた小戌を撫でたりしながら、オレ達は持参した包みを解いた。
オレと小戌が学生にとっては貴重なことこの上ない昼休みにわざわざ屋上に来て一緒に果たす約束。
そう、昼食である。
「にしても、相変わらずお前の弁当箱はでかいなあ」
「まあ、陸上部っすからね。体は資本、健啖さは実力の証っすよ。加えて成長期・・・ということで一つ」
小戌の体のどこに収まるのやら。何せ重箱である。
と言っても、重箱の中身全てがコイツの胃袋に消えるわけではない。
一部はオレ用だ。
「じゃあ先輩、どうぞお納め下さいっす」
「おう。サンキュ」
小戌が重箱の蓋を外し、更に一段分を取ってオレとの中間に置く。
その真ん中には仕切りがあり、半分はオレ、半分は小戌の分である。
「じゃ、悪いけど。いつも通り、いただきまーす!」
「うい、どぞっす」
これが、オレとコイツが昼食を共にする理由である。
原因は、二つ。
一つは、オレの側。
オレの両親は今時珍しくない共働きで、しかも職業柄、年中いつでも国の内外を問わず飛び回っており、
加えてオレは料理は食う専門なので、家の台所は必然的に妹────と言っても血の繋がりは無いのだが────が掌握している。
で、この妹。オレには勿体ないくらいに良く出来た奴なのだが、如何せんその性能の高さ故か性格が厳しい。
いや、実は甘えたがりだったりと可愛い所もあるのだが、生活に関わるあれこれ、
特にオレが口にするものに関しては非常にうるさい。妹の料理に不満があるわけではないのだが。
だが、思春期の人間なら偶には敢えてコンビニ弁当やスナック菓子を頬張りたくもなる。
それに、妹は健康のためとかで、余り焼いたり揚げたりしたカロリーの高い物を作ってくれない。
逆に、妹が自作したドレッシングを使ったサラダやら秘伝の調合比のダシによる汁物だの漬物だの、
そういう、こう何と言うか食べたい盛りの人間には辛い内容のことが多いのだ。
そこで、サイフの紐さえ妹に管理されていて外食も厳しいオレに救いを与えてくれるのが小戌である。
原因の二つ目は、小戌側。コイツがかつて起こした事故。
と言っても規模は小さかったし、被害者はオレだけ。部活の片付け中にちょっとミスってしまったという程度のことである。
が、こう見えて責任感と言うか思い込みの強いコイツは責任を感じ、
何か償いが出来ないなら部活を止めるとまで言い出したのを、どうにかこうにかオレが丸め込んだわけだ。
その結果の、互いの妥協の産物が今の状況。
小戌の弁当のオカズをオレが分けてもらっている、
と言うよりもむしろオレのためのオカズを用意してもらっているということだ。
仕切られたこちら側に並ぶ種々様々、色取り取りのインスタントなオカズ達。
一つ辺りの数は少ないが唐揚げやらハンバーグやらシュウマイやら、
特に全国の成長期を控えた少年諸君には垂涎物のオンパレード。
感動ものである。いや本当に。
一つ一つ噛み締めるように口に運び、ゆっくりと咀嚼する。おお、この手作りには無い油っぽさが堪らない。
この幸運を与えてくれる小戌を感謝の面持ちで見遣ると、
「あぐ・・・ぅんっ!」
何故か焼肉を食べていらっしゃった。しかも骨付きカルビを。骨の部分を指で摘んで、肉を犬歯で挟んで噛み千切って。
ワイルド、とだけ言っておこう。少なくとも全国一千万の女子諸君はこんなことはしないと信じている。
と言うか重箱に焼肉かよ。それも学校で食う昼飯で。畜生、自由に使える小遣いをもったブルジョワめ。
「がぅ・・・うん? 先輩、どーかしたっすか? そんなにうちに熱視線を送って。
もしかしてこのお肉が食べたいとか?
だとしたらこれって結構いいお肉使ってるんでうちとしても簡単には答えられないところっすが、
先輩が後輩であるうちのお願いを愛とラブとハートで叶えてくれるんなら考えないでも」
「いやいいよ。気持ちだけ受け取っておく」
「そうっすか? それは残念っす」
言って、あぐあぐと肉を胃袋に送り込み続ける小戌。何だろうな、この敗北感は。
今ならorzの字を体現できる気がする。
「あ、そー言えば先輩。そのオカズの味はどうっすか?
うちのリサーチの結果、先輩の好きなオカズベスト5のものを詰め込んでみたんすけど」
「・・・ああ。いや、色々突っ込みたいセリフはともかく普通に美味いぞ。
人の手じゃ出せないこのレンジでチンのインスタント感が最高」
「いやん、先輩。突っ込むだなんて卑猥っす。オカズだけに」
「おい」
コイツの行動って本当に読めないのな。
抗議の視線を送るが、相手はしれっとしている。
「冗談っすよ。でも正直、うちは先輩の鈍チンぶりにちょっぴり落胆気味っす」
「あ? オレがなん」
「それ、レンジでチンの後にちょっとだけアレンジを加えてるんすけどね」
箸で指され、つい今しがた口に運ぼうと取った唐揚げを見詰める。
アレンジ? なんだろうか。せいぜい、衣が少し水っぽいというかふやけている程度だと思うが。
それは弁当箱の内部で時間が経ったせいだろうし。
「何か変わった所とか、ないっすか?」
探るような視線で見詰められ、促されるように唐揚げを口に放り込んだ。
「む・・・うむ・・・」
良く。注意しながら良く噛んで、丹念に入念に味わってみる。
小戌はふざけることは多々あるが、ああいう言い方をする場合には何かあるはずである。
意味も無くあんな思わせぶりな言い方はしないはずだ。
だから、細心の、馬鹿馬鹿しいまでの注意を以て味わう。
「むぐ・・・うーむ」
「・・・・・・」
横から注がれる視線が痛い。
その何かを期待するような顔には応えたい、のだが。
如何せん、どうにもこの唐揚げは普通の濃い肉と油の味しか────ちょっと待てよ。
「うん?」
違う。いや違わないけど。濃い。そうだ、それは間違いない。
が、味付けが濃いなかに肉や油のものと微妙に違う味がある。
何だこれ?
「えーと、これは。苦味・・・酸味・・・いや、しょっぱい?」
そう。そんな感じなのだが。
「おお! 話を振っておいて何すけど、ぶっちゃけ先輩が気付いてくれるとは思わなかったっす!
じゃあ、見事クイズに正解した先輩には後輩のうちから愛を込めて、
この購買で1日限定三個の超限定激レア珍品『ナバナチョコパン』を────」
この味は。どこか慣れ親しんだ、いや毎日食べている感じさえする味は。
ほぼ毎日、家で口にするサラダのドレッシングや味噌汁や漬物に微妙に入っているこの味は。
「妹が料理に使う隠し味の味だ」
「・・・・・・・・・へ?」
時が、止まった。
やっと終わった・・・最早私の脳内がカオス。空の色も変わり始めてますね。
私はこれから就寝。起きたら、頑張ってキモウトの登場まで書きたいですね。数日中に。
ああ。三人目までヒロインが出そろうのはいつのことやら。刺されて死にたい。
ちなみに、タイトルは適当です。主人公の名前の方が先に決まりました。
GJ!続き待ってます!
妹に期待大
隠し味が何かを想像して興奮した
GJと言わせてくれ
GJじゃよー
やっぱり○○○○○○フードはいいよな!
>>321 アブリアルとは、どこかの言葉で『天照大神』を指す言葉だ。
投下します
驚いた事に、藤宮の降りる駅は翔と同じであった。
寺田の話だと、あと二つ先の駅で降りるはずである。どういう事だろう──、
──そんな事を考えながら、翔は自宅とは反対方向にある碁番目のように整然とした住宅街に入った。駅前の喧騒は背後でからから
と騒ぎ、不安と緊張でざらついた足音がアスファルトに響いている。バブル崩壊と共に急激に寂れた住宅街にはほとんど人影もなく、
アスファルトの上には奏翔と藤宮澄香の二人だけだった。
西の空で、茜色の雲を裂くように飛ぶ烏丸がカァカァとかん高い声で鳴き、どこかでパトカーが忙しく走り回る音が聞こえた。役所
で鐘がなる。赤とんぼのメロディーに合わせて、五時になった事を伝えているのだ。
もう山の向こうに太陽があるのに、急傾斜の日の光は粘土のように体にへばりつき、体がジワジワと焙られて汗が滴り落ちる。その
汗の流れを追うように足下に目を写すと、細長い影がそこまで伸びていた。翔より数歩前を歩く、藤宮のものである。
その藤宮はまるで翔の存在を認知してないように、淡々と歩を進めていた。時折、自分の後をついてきているか確認するように振り
返るだけで、藤宮は無言のまま一人でずんずん先へ先へと歩いていく。そこには沈黙だけがあり、会話らしい会話は、放課後に交した
一言か二言以降途絶えていた。
どこまでも長く続く沈黙。時間をかけてワインのように濃縮されたその空気は、いつの間にかとても重苦しいものへとなっていた。
「……恋人、ね」
ふと、藤宮の告白を思い出し、自虐的な気分で、翔は呟いた。恋人同士を包む空気は、こんなに重苦しく居心地が悪いのだろうか、
と自問する。
「……やっぱり、違うよな」
そう、こんなではないはずなのだ。街で見掛けるカップルはどれも幸せそうで、少なくとも今の鬱屈した空気とはかけ離れているよ
うに思えた。そのような空気を作り出しても平気な藤宮は、やはり翔を快楽を享受するための男と見ているのだろう。そんな事を思う。
沈黙はその実体をはっきりと現さず、そして勝手に空気の密度を上げていくから嫌いだ。だから何とかして、この空気を、沈黙を打
破したいとは思う。しかし話を切り出そうにも、翔は藤宮について何も知らないゆえに、何を話せばいいのか分からなかった。藤宮は
自分の事を話さないし、すぐに別れるつもりだった翔も彼女について積極的に知ろうと思わなかったのだ。そのため彼女について知っ
ている事と言えば、寺田の伝聞だけ。しかも、それはとびきり悪い噂だ。
改めて話題が何も無いことに愕然として、翔は深い溜め息をついた。お手上げた。
ふと藤宮を見ると、翔と同じ空気に包まれているはずの彼女は、相変わらず規則正しく足を動かしていた。その逆光を背負う後ろ姿
からは、彼女の沈黙が作り出した蔭鬱な空気を特に気にしている様子は感じられず、どうやらこの空気を打破出来るのは翔だけのよう
だった。
「あのさ、藤宮……」
思いきって、翔は口を開いた。しかも出来るだけ、明るく。話題は思い付かないが、下らない話で間を持たせようと思った。
すると、終始淀みなく歩いていた藤宮の足が、ピタリと止まった。そして、そのまま電池が切れたように動かなくなる。重かった空
気が瞬間的に固まり、それの孕んでいたものが変化したような気がして、ヒヤリと肝を冷やした。
「ふじ、みや……?」
ピクリとも動かない藤宮に、さすがに心配になって翔が声をかけた、そのとき、
「藤宮ではありませんっ!!!」
いきなりだった。
いきなり藤宮がそう叫んだ。
藤宮はくるりと体を反転させる。
ゾッと、寒気が背中を駆け抜けた。
藤宮は般若のようにつり上がった目で、翔を睨んでいた。
「私は藤宮ではなく、水樹です」
低い声だった。肩を震わせた藤宮が怒りに震える声でそう言ったのだ。その声にも瞳にもヒステリックな色がにじんでいるのを、翔
ははっきりと感じとっていた。
「二度と、二度とその名前で呼ばないで下さい。次にその名前で呼んだら、いくらセンパイでも許しません!!」
藤宮のあまりの形相、迫力に恐怖さえ感じ、翔は頷くしかなかった。そんな翔に、藤宮はひときわ鋭い視線を突き刺し、それから再
び体を反転させて、無言のまま歩き出した。その足音はざらざらしていて、彼女が不機嫌である事をありありと告げている。
意味が分からず、翔は一人取り残されていた。
「……何なんだよ」
何故自分が怒鳴られなければならないのか。そんな不条理に対する怒りがふつふつと沸き上がる。
いつの間にか空気は溶け出し、再び辺りを包んでいた。その余計に重くなった空気はもはや拷問でしかなかった。
永遠に続くかと思われた拷問は、藤宮がふいに立ち止まった事で終わりを告げた。そこには小さな二階建の住宅があり、藤宮はその
垣根を越えていく。
普通の家だった。
すぐに記憶から消されてしまいそうな、没個性的な白い鉄筋の家。同じような家が、通りに幾軒も連なり、それが余計にひとつひと
つの家の個性を消している。ただ、もし再びここに来る事になっても迷う事はないように思えた。この家だけが、強い生活の匂いを感
じさせていて、それが油のように頭にこびりつくのだ。辺りは、もう暗い。それなのに明かりのついている家は少なく、その少ない中
のひとつが、藤宮の家だった。それが翔には少しだけうらやましかった。
「センパイ、こっちです」
久しぶりに、藤宮の声を聞いた気がした。彼女は、玄関の前でこちらを手招きしている。機嫌はすっかり直ったようで、ニコニコし
ていた。しかし、その掌の返しように、先程のヒステリックな形相が、翔の頭をかすめる。
ジワリと、あの理不尽さへの反感が頭の奥でうずくのを感じた。
その感情を無理矢理押し込め、藤宮の所へ行こうとした時、ふと垣根の入口にある郵便受けが目に入った。そして、その上には黒い
石の表札があり、白く『水樹』と繰り抜かれている事に気付いた。
やはり、彼女の苗字は水樹なのだろうか。翔は考える。寺田の話とは食い違いが発生するが、苗字など親の都合で変わる事を知って
いたので大きな驚きはなかった。むしろ、寺田の街ではなく翔の街で藤宮が電車から降りたのも、親の都合でこの街に引っ越してきた
と考えれば辻褄が合うような気がした。しかし、だとしても消化出来ない疑問がひとつ残る。先程のヒスだ。
旧姓で呼ばれる事が、あそこまで取り乱すほど嫌なのだろうか。例えば親が離婚するなどして、苗字が変わっていたとしても、翔な
ら旧姓で呼ばれたくらいでは大した怒りを感じないように思う。それほど、さっきの藤宮は異常だったのだ。藤宮の怒りの原因、その
真相は結局想像の域を脱せないが、いずれにせよ、藤宮に対する疑問は雪のように積もるばかりだった。古い疑問が溶けても、そこに
はまた新しい疑問が降り積もるのである。
翔が玄関前まで行くと、藤宮は力いっぱい扉を開いて、
「ただいまっ」
と言った。それは自分の帰宅を知らせると同時に、人を呼んでいるようだった。その声に遅れる事五秒ほど、家の奥底から「はぁー
ーい」と元気な声が聞こえた。家の奥で微かな物音がした後、スリッパがペタペタと廊下を踏む音が響き、そしてその音が少しづ
つ大きくなっていく。
やがて、藤宮家玄関の上がり段に現れたのは、一人の女性であった。よほど慌てていたのか、もう肩で息をしている。
「おかえりなさい」
息を弾ませながらそう笑いかけてくる女性は、美人だった。とてつもなく美人だった。
「この人が、奏翔さん」
藤宮が、翔を指して言う。すると美人は上品な顔立ちを下世話に崩してニヤニヤと笑い、
「へぇ〜〜、なるほど〜ねぇ〜〜。ふぅ〜〜〜ん、あ〜なたがねぇ〜〜」
その美人は目玉をくるくる回して、舐め回すような視線を翔に向けてくる。その好奇心剥き出しの瞳で見つめられて恥ずかしくなり
、翔は彼女から目を外す。玄関の向こうでクスクスと彼女の笑い声が聞こえた。
「で、この人が由美さん」
楽しそうな美人を指して、藤宮が言う。すると、先程の下世話な表情から一変して、彼女はニッコリと子供のように笑い、
「はじめまして、奏くん」
無邪気さを隠そうとしないその笑顔は、爽やかな魅力に溢れていた。
ややあって、翔は「どうも、はじめまして」と頭を下げ、それから改めて由美の容姿を見る。あまりジロジロ見ると怪しいので、あ
くまでチラチラと。
やはり美人だ、と思う。化粧っけがないが、それでもその肌は少女のようなみずみずしさを保っている。目元や輪郭といったパーツ
は藤宮に似ていたが、そこから受ける印象は大分違った。藤宮のどこか人の不快な部分を刺激するような雰囲気に対し、由美は見てい
るだけで人のテンションを上げるような明るい雰囲気なのだ。だから、藤宮とは違い由美には素直に好感が持てた。
ただ、同時に気になる事がひとつ。由美の年齢はどう見積もっても二十代後半のように見えるのが、頭の先に引っ掛かるのだ。藤宮
とは肉親なのは間違いないだろうが、姉にしては年が離れすぎている気がするし、母親にしては若すぎる。それが意図する意味を翔は
考えてみる。
しかし、そんな翔の思考を遮るように由美は言うのだった。
「立ち話も何だから、中に入って」
投下完了。続きは明日投下します。。。
GJ!!新たなキャラ登場でいったいこれからどんな展開になるのか。
明日も待ってますwww
どうなるかが激しく気になる・・・
wktkしながら待ってるぜ
GJなんだぜ
しかし携帯で打ってるのにどえらい更新速度やのー
携帯男がんばれ。
投下します。
以前聞いた話だ。
人が混乱に陥ったとき、自分よりも混乱している者を見ることで、自然と落ち着きを
取り戻すという。
また、狂っている、という状態は、正気である者と常に比較される。
パニックを外から見て冷静さを得ることが出来るなら。
狂気を前にして正気を得るのは?
「な、に、いって……」
部屋は少しの間、時が止まったかのように静かになり、明日香が最初に口を開く。
「俺を斬って、体を二つに分けるんだ」
「……嫌よ!」
刀を横に振って、拒否の意を見せる。
「半分じゃ駄目。全部欲しいよね」
後ろから木場の声が聞こえた。俺に言ってるのか、明日香に言ってるのか、或いは
自分に言ってるのか……。
「あたしは……人志の体が欲しいんじゃない」
明日香は刀の先を、俺越しに木場のほうへ向けた。
「その女を殺したいのよ!」
意思はまだ変わっていない。だが、少し焦っているような、苛立ちのようなものを
感じる。
もちろん、その意思通りになってはいけない。
「どいて人志!」
俺は退かない。逆に一歩前に出る。明日香の刀の間合いに入った。
また、さっきのように力ずくで叩き出されない内に……。
俺は迷わず手を刀の刃へ伸ばした。
微かに刀が引かれるが、さらに前へ出す。
そして明日香も、木場も反応らしい反応をしないまま、俺は両手で、刃を掴んだ。
「っ……! 放して!」
明日香は言うが、俺はさらに握る手に力を込める。
刃は手の平に食い込んで、もう前か後ろに動かすだけで斬れてしまうだろう。
それが分かっているのか、明日香も力任せに刀を引き抜こうとしない。
「放すのは……お前のほうだ」
俺は手の痛みなど構わず刀を引っ張った。不意打ちのつもりだったが、明日香は刀を
放さず、俺の手だけが刃の上を滑った。
出血し、腕に血が伝わっていく。
「人志……」
「やらないと言うなら、自分でやる」
「違うでしょ! 何がやりたいのよ!? 何で、邪魔するのよぉ!?」
明日香の目から涙が零れた。
……わかっている。明日香だって、必死なんだ。
レイプの復讐のためだけではない、俺のために、木場を斬る、と。
明日香はいつもそうだった。俺のために戦ったり、庇ったり、側に居たり。
だが、木場を殺せば、人を殺せば、明日香はそれを一生背負わなければならない。
明日香が殺しの罪を背負うなど、俺が受けるどんな傷よりも痛い。
俺のために、明日香が痛みを負うのは 嫌だ!
「だあっ!」
もう一度、全力で刀を引っ張る。
次は失敗しない、絶対に刀を取り上げるつもりだった。
明日香の抵抗は思ったより弱く、手ごたえの無いまますっぽ抜けて。
明日香の手から、刀が離れた。
良かった。ひとまず、最悪の事態だけは避けられた。
抜けた刀が勢い余って俺の胸に刺さったのは、事故だから気にしなくていい。
「……!!」
直後、背後で膨れ上がる殺気。
木場が、何かしようとしている……!
「ぐっ!」
立ち上がって、後ろから来たものを背中で受けた。
針のようなもの……ダーツだ。
木場が手に持ったダーツで、多分明日香を刺そうとしたんだ。
その明日香からは、既に狂気も見えず、胸の傷口を見て狼狽するのみ。
結局俺の背中にはダーツが刺さったわけだが、これもただの事故なので気にする必要は
ない。
「はぁ、はぁ……」
痛みと疲れで、立ち上がったのにまたへたり込んでしまった。
胸からの出血は相変わらず。
「救急車!」
木場が声を上げ、床に転がった袋まで駆け出した。
「待った!」
俺も一声上げて木場を止める。大丈夫だ。息も声も、普通に出せる。
刀が刺さったのは、胸は胸でも右胸だし、深さも肋骨で止まっている。
二人は互いに見合うが、何も言わず目線を下で交差させた。
互いを責めることは出来まい。明日香も木場も、得物で傷を与えたから。
「……」
「……」
「……」
待ったをかけたはいいが、こんなときに言うことが何も思いつかない。
二人を落ち着かせるための言葉は……なんかないか。
「……落ち着け」
いや、今一番取り乱しているのは俺かもしれない。
ともかく、二人は正気に戻ったはずだ。もう殺し合いどころではないだろう。
明日香が、フラフラな俺の体を支えて、不意に顔が近くに……。
――――どくん。
……?
今の感じ……って、これはまさか。
「木場、今すぐ救急車!」
やばい。受けた怪我よりやばい。勝手に目線が明日香の唇や、やや前屈みの姿勢から
見える胸元や、木場の脚とかの方へ……。
そしてある一点が熱くなって、代わりに他の身体の部分全てが冷えていくような感じが
して、頭の血がどっと下がる。
意識が、侵食されていく?
「人志! しっかりして人志!」
朦朧とした状態でもわかる、明日香の膝枕の柔らかさ。
すぐ上に見えるその柔らかそうなものを、触り、た、い……。
――
――――
――――――
「あ、起きました?」
気付けば、そこは小刻みに揺れる地面。低い天井、左は壁。
声の主はなぜか屋聞。
「ん〜、ん……?」
何となくだるい頭で見回すと、そこ、救急車の中だった。
胸には布がきつく巻かれているようだ。
「屋聞だな」
「屋聞ですよ」
救急車の中にいるのはいいとして、何故こいつが?
聞いてみると、どうも屋聞は、何かの勘に引っ張られるまま俺の家に向かい、俺が意識を失った直後くらいに着いたらしい。
胡散臭さここに極まる、といった所か。どうせ一人でダラダラしていると思って、
ちょっかいでもかけようと思ったのだろう。
木場とは違い、悪意が少し感じられる。
「……明日香と木場は?」
「ここには居ませんよ」
言い終えた後、屋聞は意味深げに溜息をついた。
(最終話Cに続く)
次回でやっと完結です。
久々にイヤッホオオオオオオオオオオウ!
>>407 GJ!!待ってたかいがあったぜ・・・
しかし、ここからどうなるのかまったく見当が付かん。
もしかして屋聞の一人勝ちかな?
うそ! Cルートがあったんスか。こいつぁ楽しみだ。
お待ちしております。
ベストエンドキター!!!!
めっちゃ楽しみにしてますっ
投下します。
三人で食事を済ませると、リビングでスカパーの海外サッカーを見る事となった。午後九時五十五分に放送開始の、某ダービーマッ
チだ。
いつもはガラガラのスタジアムも今日は満員に膨れ上がり、発煙筒の怪しい光と野太い応援歌が、スタジアムのボルテージをググッ
と上げている。そのスタジアムの興奮が、遠く日本の水樹家のリビングまで伝わってくるようだった。
熱い試合は、スタジアムの熱気が作りだす。今日のスタジアムはそんな雰囲気が匂いたっていて、自然、胸が高鳴る。
しかし、蓋を開けてみるとその雰囲気はあっと言う間に霧散した。
時期が悪かったのかもしれない。シーズンが始まったばかりで、コンディションが上がってなかったに違いない。それに、負けたく
ないという気持ちが空回りしてしまっているようだった。まず、両チームとも無理をしない。勝つ事よりも負けない事に重点を置いて
いるようだ。すると、ディフェンスラインで延々とパス回しとなり、結果、出てくる選手は兄貴と、壁と若禿げばかりであった。とも
かく、最悪のパターンに陥ったのだ。
試合開始当初はテンションの高かったスタジアムもすっかり冷えきり、その空気にあてられたのか実況も解説もうんざりした様子で
下らない事を語りあっている。
そのしらけた空気のまま試合は前半を終え、後半に突入する。あまりのつまらなさゆえか、前半終了と同時に藤宮はリタイアし、一
人でさっさと寝てしまった。見たい、と言った手前、離脱するわけにもいかず、仕方なく翔は試合を見続ける。
由美の様子がおかしいのに気付いたのは、後半の二十分前後で、たまにケロロのティーシャツで登場する眼鏡の実況が仕事を放棄し
、コアなアニメの話を始めたころであった。
由美は隣のソファに座り、顎の下で両手を合わせている。その姿は、何かを考えこんでいるように見えた。試合に飽々していた翔は
彼女が何を考えているのか、少し考えてみる事にする。すると、前半は試合展開にブーブー文句を垂れていたのに、藤宮がいなくなっ
てからはずっとだんまりだった事に思い至った。
「ねぇ、翔くん」
突然、由美が口を開いた。その声は低くそしてずっしりと重く、頭の中に染みるように響いた。
「はい」
「澄香の事なんだけど……」
やっぱりか、と思う。
由美が押し黙ったのは、澄香がいなくなってからだったので、確信に近い予感はあった。
「これから話す事は、すごく重要な事なの。それによって、翔くんと澄香の関係に何らかの変化があるかもしれない。良い変化か、
悪い変化かは私にも分からないわ。でも、あなたは聞かなければならない」
はっきりと、由美は言い切った。それから彼女は二つの瞳で、翔の瞳を真っ直ぐ見据えてくる。翔の覚悟を測っているようだったが
、やがて由美は翔から視線を外し、それからまたややあって言葉を絞りだした。
「実はね、私は澄香の母親じゃないの。もちろん、姉妹でもない。澄香は私の姪なんだ。澄香には、もう両親がいないから」
「……そうですか」
翔は淡々と言う。
「驚かないの?」
「ええ、だいたい察しはついてましたから」
「そっか……。いつ、気付いたの?」
「実は、今日彼女に泊まりにくるよう言われた時には、そんな気がしてました」
「澄香が、直接言ったのかしら?」
「いいえ、違います。ただ、彼女が俺を誘う時に『うちの人が』って言ったんです。そこで、薄々気が付きました。普通そういう時
、父親とか母親とか肉親の略称を出しますから」
なるほど、と由美は呟いた。それから感心したように、鋭いのね、と翔を誉めた。
鋭くなんてない、そんな言葉を翔は飲み込む。よくある話なのだ。そう、よくある話……。
「そこまで分かっているなら話は早いわ」
由美は、深い溜め息と共に言う。
翔は目を剥いた。てっきり話したいのはその事だとばかり思っていて、話の続きを聞く準備がなかったのだ。
「さっき、両親はもういないって言ったけど、本当はちょっと違うの。澄香のお父さんはまだ生きてる。ただ親権が私にあるだけ」
「親権って、どう言う事ですか?」
「澄香のお父さんは刑務所にいるのよ」
刑務所? と翔は顔をしかめた。
「そう刑務所」
「何を、やったんですか?」
「虐待よ。澄香を、ね」
虐待。最近よく聞く言葉だなと翔は思った。しかし、リアリティを感じられず、まるで月の裏の話を聞かされている気分だった。
「ただね、その虐待がちょっと特殊なのよ。彼がやったのは、肉体だけでなく精神までも追い詰める最低最悪の虐待。女の子の尊厳
を全て否定するような、ね」
「えっ?それって……」
それは、つまり──。
戦慄が翔の体を駆け抜け、急に話が現実身を感じさせるようになった。しかし、そこから先は考えられなかった、考えたくなかった
。そこから先の思考は、薄皮一枚に守られた真実は、最悪だ。
しかし、由美は冷酷に薄皮を突き破り、真実を白日のもとに晒す。
「──つまり、性的な虐待よ」
肺が急にせばまった気がした。酸素は十分肺に行き渡っているはずなのに、息苦しい。翔は慌ててワイシャツの裾を引っ張り、元か
ら塞がっていない気道を確保する。もちろんそんな事をしても、息苦しさから逃れられそうもなかった。
「いい人だったのよ。とてもそんな事をする人には見えなかった。だけどね、姉さんが、自分の妻が亡くなって、彼は狂ってしまっ
たのよ」
──もういい、止めてくれ。
これ以上話を聞いたらおかしくなりそうで、翔は慌てて両手で耳を塞いだ。しかし由美の言葉は手の隙間をすり抜けて鼓膜に直接響く。
「澄香が中学に入学する前、小学校の高学年にはもう虐待が始まってたみたいなの。だけど、全然気付かなかった。だって私の前で
の彼は理想の父親で、澄香も幸せそうに笑っていたから。馬鹿な話よね、もっとしっかり澄香を見てれば淀んだ彼女の瞳に気付いたは
ずなのに」
息苦しさは、吐気へと昇華していった。突発的に、胃の中の物が逆流し翔は右手で口を押さえて、それを飲み込んだ。喉が焼けたよ
うに熱くなった。
「気付いたのは、澄香が中学二年になった頃。何で気付いたんだだと思う?」
由美は真っ直ぐ翔を見てくるが、翔は何も答えなかった。答えられなかった。答えたら、胃の中身が再び逆流してしまいしそうな気
がしたのだ。
たっぷり十秒以上の沈黙。その沈黙を破り、やがて由美は答えを口にする。
「お腹がね……膨らみ始めたのよ」
由美の声はどこまでも悲痛に翔の胸に響いた。小学校、お腹が膨らみだした、そんな断片的な言葉が翔の胸に染みるような痛みを残
す。ありえない、という実体のない言葉が翔の頭の中でくるくる回った。ふと、口の中に酸味の強い唾液が溢れはじめている事に気付
いた。
「さすがに私も気付いてね。すぐに彼は逮捕されて、澄香は保護された。そして慌てて子供を降ろしたの。だけど、その時情報を遮
断仕切れなくて、学校でひどいあだ名で呼ばれる事になった、『誰とでも寝る女』って。もうその頃の澄香はね、全然笑わなかったの
。死んだ魚のような目をしていて」
胸がざらざらするような吐気の中で、翔は寺田の言葉を思い出していた。
『誰とでも寝る女って意味だよ』
その真の意味が、今分かった。寺田は誤解していた。『誰とでも寝る女』とは不特定多数の男と寝るという意味ではなく、特定の、
それも人間の倫理外の男と寝ていた、という意味だったのだ。その噂が、いつの間にかねじまがった意味で受けとめられるようになっ
たのだろう。
「だから私、翔くんに感謝している。あなたのおかげで澄香はずいぶんと明るくなったわ」
嘘だ、と思う。翔は流されるだけで、彼女のために何もやっていない。何も知らない。そして、何も知るつもりもなかったのだ。
「あの子ね、いつも翔くんの話ばかりしてたわ。翔くんの周りにはいつもたくさんの人がいるって、その中心で一番楽しそうに笑っ
ているって。貴方と一緒にいると胸がドキドキするって。付き合いはじめた時なんて、一日中のろけていたのよ」
──ああ、そうか。翔は思う。
由美は誤解しているのだ。翔には藤宮と付き合っているつもりはないし、彼女を好きなわけでもない。ただ何となく藤宮に流されて
いただけで、そんな重い話を背負う覚悟なんて、翔にはないのだ。だから、藤宮の過去を知ったところで翔は何も変わらない。
そんないくぶんか身勝手な翔に、由美は真っ直ぐな瞳を向けてくる。
「こんな事言うのはずるいかもしれない。だけど、翔くんお願い。あの子と一緒にいてあげて」
その黒く澄んだ瞳を見て、ようやく翔は悟った。結局、由美はこの部分を言いたかったのだ、と。彼女は意図的に空気を重くして、
良心にナイフをつきつけて、翔に頷かさせたかったのだ。
やられたな、と思う。
こんな話をされては、頷くしかないではないか。今さら藤宮が好きではないなんて、別れたいなんて、言えない。
本当にずるいですよ、と翔は心の中で呟く。
テレビの中では青と黒のチームが、セットプレーで点をとっていた。白けたスタジアムに一瞬の熱狂。その熱をあおるように、ゴー
ルを決めた兄貴が、ユニフォームを振り回して喜びを爆発させている。そして兄貴は二枚目のイエローで退場。翔は猛烈な既視感に襲
われた。
投下完了です。。
前々回、うちの人って言い回しが気になるってレスされた時はかなりビビりました。あなた、鋭いです。
ともかく続きは明日投下します。
面白かった・・・
けどなんか鬱になった・・・
ミス
>>419 これはきっついですな・・・orz
個人的には、ここで翔がすみかを振って泥沼化希望です
無論それでも降るんだろ
何たって嫉妬スレだもの
随分昔に出たプロットで、剣になってしまった主人公の話があったけど、
あれって書いていいのかな?
>剣になってしまった
緑猫氏が梅ネタに投下したお話ですね
426 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 02:43:52 ID:u3oE7Euj
珍テルかよ
マテ公氏ね
マフィアage
>>424 良し悪しは知らんけど
一意見として俺は嫌だと言っておく。
>>424 緑猫氏にお伺いを立ててみたら良いんじゃね?
もう落ちちゃったけれど、他スレで続編ぽいの投下してたから駄目かも知らんけれど。
>>418 これはいい展開!
中野には藤宮のトラウマをえぐっていって欲しい
投下も速くて最高だし
「押しかけ三角、また来て修羅場」の続きはないのか・・・
「ダニーは軍へ行った」が忘れられん・・・
なあ、皆は今まで投下されたものの中で一番好きなのって何?
>>432 強いて上げるなら全部。
と言うよりまた変な空気になるのでやめれ。
避難所潰れてないか?
>>432 そういうことこそアンケートとかやるべきだよね
エロパロ板の一スレでアンケートとか……。
>432
避難所でやってみちゃどうだろう?
でも興味ある反面自分の作品が上げられてなかったら……
そんな事が気になる自分はヘタレorz
ぶらっどまりぃ
まだかよ
>>432 荒らしだと思うが、もしマジだとしたら空気読めなすぎ。
>>432 全部だな。
というかそこらのプロが書いた小説なんかより
ここに投下されてるSSの方が好きだぜ。
はい、荒れる前にこの話はおしまいにしよう。
投下します。
時刻は深夜十二時を回っている。来客用の布団に横になっていたが、頭はすっきりとしていた。
二階にある和室である。澄香の部屋の隣でもある。窓の外には夜があって、濃密な雨の匂いが漂っていた。
部屋の電気は消していたが、街灯のためか外は思いの外明るく、天井の網目の細かい所まで見えた。まるで迷路のような幾科学的な
その模様を目で追いつつ、翔はぼんやりと藤宮について考えていた。
由美は言っていた。藤宮と一緒にいてくれと。あの時は頷いくしかなかったが、本当にそんな事が出来るだろうか。今さら自問する。
考える。
そもそも、自分は藤宮が好きなのか。
考える。
違う。藤宮を好きなわけではない。ただ、流されて一緒にいるだけだ。
考える。
考える。
考える。
やがて思考がぼやけはじめ、意識がまどろみの中に足を踏み入れたそのとき、外の廊下に灯りがついた。引き戸の隙間から光が真っ
直ぐ漏れ入っている。その光に気付いた瞬間、眠気の沼が急に消え去り、不思議と頭がすっきりした。
廊下を軋ませながら、誰かが歩いている気配がした。もちろん顔は見えない。しかしそれが誰か、翔には分かっていた。
やがて、気配は引き戸の前で静止する。
「センパイ、起きてますか?」
戸の向こうで、藤宮の声がした。
「ああ、起きてるよ」
「部屋、入っていいですか?」
「……いいよ」
失礼します、と言うと、藤宮は引き戸を開けた。薄暗い部屋の中に、廊下の光が染み込む。
「わぁ、暗い」
藤宮は呟いた。
そうでもない、と翔は思う。眩しい明かりの中にいると気付かないが、暗い中にいると小さな明かりを目でを拾う事が出来る。そして、
小さな明かりの中で何かを見る事が出来る。それは決して悪い光景ではない。しかし、藤宮はその暗闇が気にいらないようだった。
「電気、つけてもいいですか?」
「ああ」
プラスチックがかち合う音と共に、天井の蛍光灯にジジッと電気が通り、白い明かりが部屋を満たした。こうなるともう、外の明か
りは分からない。
はい、荒れる前にこのSSはおしまいにしよう。
時刻は深夜十二時を回っている。来客用の布団に横になっていたが、頭はすっきりとしていた。
二階にある和室である。澄香の部屋の隣でもある。窓の外には夜があって、濃密な雨の匂いが漂っていた。
部屋の電気は消していたが、街灯のためか外は思いの外明るく、天井の網目の細かい所まで見えた。まるで迷路のような幾科学的な
その模様を目で追いつつ、翔はぼんやりと藤宮について考えていた。
由美は言っていた。藤宮と一緒にいてくれと。あの時は頷いくしかなかったが、本当にそんな事が出来るだろうか。今さら自問する。
考える。
そもそも、自分は藤宮が好きなのか。
考える。
違う。藤宮を好きなわけではない。ただ、流されて一緒にいるだけだ。
考える。
考える。
考える。
やがて思考がぼやけはじめ、意識がまどろみの中に足を踏み入れたそのとき、外の廊下に灯りがついた。引き戸の隙間から光が真っ
直ぐ漏れ入っている。その光に気付いた瞬間、眠気の沼が急に消え去り、不思議と頭がすっきりした。
廊下を軋ませながら、誰かが歩いている気配がした。もちろん顔は見えない。しかしそれが誰か、翔には分かっていた。
やがて、気配は引き戸の前で静止する。
「センパイ、起きてますか?」
戸の向こうで、藤宮の声がした。
「ああ、起きてるよ」
「部屋、入っていいですか?」
「……いいよ」
失礼します、と言うと、藤宮は引き戸を開けた。薄暗い部屋の中に、廊下の光が染み込む。
「わぁ、暗い」
藤宮は呟いた。
そうでもない、と翔は思う。眩しい明かりの中にいると気付かないが、暗い中にいると小さな明かりを目でを拾う事が出来る。そして、
小さな明かりの中で何かを見る事が出来る。それは決して悪い光景ではない。しかし、藤宮はその暗闇が気にいらないようだった。
「電気、つけてもいいですか?」
「ああ」
プラスチックがかち合う音と共に、天井の蛍光灯にジジッと電気が通り、白い明かりが部屋を満たした。こうなるともう、外の明か
りは分からない。
「ふふふっ、セ〜ンパイ」
突然、藤宮はミルクをねだる仔猫のような甘い声を出した。そして、まるで翔を誘うように目を細め、人さし指を舐めつつ言う。
「エッチ、しましょうか」
クスリ、と。
藤宮は妖艶で扇情的な笑みを浮かべている。
翔は布団から起き上がり、考えを巡らせながら藤宮の笑顔を見つめた。
やっぱり嫌な顔だ、と思う。藤宮の笑みが、表情が、そして何より彼女の纏う空気が、翔の心の琴線をざわつかせるのだ。しかし、
その藤宮の正体を言い表す言葉を、翔は持ちあわせていなかった。ただ、確実にその核心へと近付いている実感はあった。
喉元まで来ているのだ。ただ、あと一歩足りない。それが、まるで喉に魚の骨が刺さっているような煩わしさを生み、気持ちが落ち
着かない。
考える。
──由美の言葉。藤宮の過去。
由美は言っていた。藤宮はよく笑うようになった、と。
笑うようになった? ふと、思う。こんな顔でか?自問する。
考える。
彼女は何故笑うんだ? 俺を誘うためか?
そもそも、彼女は何故俺と体を重ねたがるんだ?
その時だった。
──ああ、そうか。
ようやく、核心へと手が届いた。今まで抱いた疑問の全てが腑に落ちた気がして、急に世界が開けたような気さえした。しかし同時に、
大きくなった心の隅で、翔が伝えなくてはならない事が息づいていた。それは、あっと言う間に翔の心を支配し、最優先項目となる。
どうしても今、気付いた事を彼女に伝えなければならないのだ、自分のために、そして藤宮のために。それは、もはや義務だった。
「センパイ、したくないんですかぁ?」
長い沈黙を破って、藤宮が心配そうに口を開いた。
全てが分かった事による奇妙な達成感と、そしてこれからの自分を励ますために、翔はニッコリ笑ってやった。その笑みを肯定と取
ったのか、藤宮は嬉しそうに近付いてくる。
──さぁ言え。
翔は大きく息を吸った。
「あのさ、俺、お前に言わなきゃなんない事があるんだ」
肺に溜った空気を吐き出すように、ゆっくりと間を取りながら言った。
「何ですか?」
「俺さ──」翔は、藤宮に自画辞賛の完璧な笑みを向けて、「──お前の事、大嫌いなんだ」
ピタリと、藤宮の足が止まる。その表情は凄惨に氷りついていた。しかし、翔は言葉を止めない。
「……それでも、するのか?」
沈黙。
後、藤宮は苦虫を噛み潰したような顔で、頷いた。
「何でだ?」
「……センパイが、好きだからです」
「だから、するってわけか。支離滅裂な話だと思わないのか?」
すると彼女は翔の瞳を真っ直ぐ見つめて、逆に問い返してきた。
「……何がです?」
藤宮の瞳は深く重い、錆びた鉄のような濁りをみせ、それは翔の本意を探っているようにも見えた。だったら言ってやる、自分の本
意を。
「だって俺さ、好きでもない人と、無理矢理体を重ねさせられようとしてんだぜ?」
思い至る事があるはずの藤宮は、口をへの字に曲げて押し黙った。唇をきつく結ぶその姿は、翔の話を胸の奥で噛み締めているよう
に見えた。
「ひどい話だよなぁ。嫌だよなぁ。無理矢理肉体関係結ばされんの。だけどさ、お前はそんな俺の気持ちがよく分かるだろ?」
何かを耐えるようにふるふると肩を震わせていた藤宮が、がっくりとうなだれる。ようやく自分の間違いに感付いたのかもしれない
。いや、元々心の奥底で感付いてはいたのだろう。それが表面に浮かび上がらなかっただけで、今ようやく浮上した。しかし、それだ
けでは駄目なのだ。
「由美さんに全部聞いたよ。全部、な。だからこそ、はっきりと言わせてもらう。お前がやっている事はな、お前の大嫌いな親父の
やっていた事と全く同じなんだよ」
強い口調でそう言いきった。話は終結を迎えつつある。しかし、終わりが見えて僅かに翔の気が緩んだ。
あと、一息だ。あと一息で全部終わる。
そんな余裕が心に隙間をもたらしたそのとき、藤宮がうつ向いたまま重い口を開いた。
「ふふふっ、セ〜ンパイ」
突然、藤宮はミルクをねだる仔猫のような甘い声を出した。そして、まるで翔を誘うように目を細め、人さし指を舐めつつ言う。
「エッチ、しましょうか」
クスリ、と。
藤宮は妖艶で扇情的な笑みを浮かべている。
翔は布団から起き上がり、考えを巡らせながら藤宮の笑顔を見つめた。
やっぱり嫌な顔だ、と思う。藤宮の笑みが、表情が、そして何より彼女の纏う空気が、翔の心の琴線をざわつかせるのだ。しかし、
その藤宮の正体を言い表す言葉を、翔は持ちあわせていなかった。ただ、確実にその核心へと近付いている実感はあった。
喉元まで来ているのだ。ただ、あと一歩足りない。それが、まるで喉に魚の骨が刺さっているような煩わしさを生み、気持ちが落ち
着かない。
考える。
──由美の言葉。藤宮の過去。
由美は言っていた。藤宮はよく笑うようになった、と。
笑うようになった? ふと、思う。こんな顔でか?自問する。
考える。
彼女は何故笑うんだ? 俺を誘うためか?
そもそも、彼女は何故俺と体を重ねたがるんだ?
その時だった。
──ああ、そうか。
ようやく、核心へと手が届いた。今まで抱いた疑問の全てが腑に落ちた気がして、急に世界が開けたような気さえした。しかし同時に、
大きくなった心の隅で、翔が伝えなくてはならない事が息づいていた。それは、あっと言う間に翔の心を支配し、最優先項目となる。
どうしても今、気付いた事を彼女に伝えなければならないのだ、自分のために、そして藤宮のために。それは、もはや義務だった。
「センパイ、したくないんですかぁ?」
長い沈黙を破って、藤宮が心配そうに口を開いた。
全てが分かった事による奇妙な達成感と、そしてこれからの自分を励ますために、翔はニッコリ笑ってやった。その笑みを肯定と取
ったのか、藤宮は嬉しそうに近付いてくる。
──さぁ言え。
翔は大きく息を吸った。
「あのさ、俺、お前に言わなきゃなんない事があるんだ」
肺に溜った空気を吐き出すように、ゆっくりと間を取りながら言った。
「何ですか?」
「俺さ──」翔は、藤宮に自画辞賛の完璧な笑みを向けて、「──お前の事、大嫌いなんだ」
ピタリと、藤宮の足が止まる。その表情は凄惨に氷りついていた。しかし、翔は言葉を止めない。
「……それでも、するのか?」
沈黙。
後、藤宮は苦虫を噛み潰したような顔で、頷いた。
「何でだ?」
「……センパイが、好きだからです」
「だから、するってわけか。支離滅裂な話だと思わないのか?」
すると彼女は翔の瞳を真っ直ぐ見つめて、逆に問い返してきた。
「……何がです?」
藤宮の瞳は深く重い、錆びた鉄のような濁りをみせ、それは翔の本意を探っているようにも見えた。だったら言ってやる、自分の本
意を。
「だって俺さ、好きでもない人と、無理矢理体を重ねさせられようとしてんだぜ?」
思い至る事があるはずの藤宮は、口をへの字に曲げて押し黙った。唇をきつく結ぶその姿は、翔の話を胸の奥で噛み締めているよう
に見えた。
「ひどい話だよなぁ。嫌だよなぁ。無理矢理肉体関係結ばされんの。だけどさ、お前はそんな俺の気持ちがよく分かるだろ?」
何かを耐えるようにふるふると肩を震わせていた藤宮が、がっくりとうなだれる。ようやく自分の間違いに感付いたのかもしれない
。いや、元々心の奥底で感付いてはいたのだろう。それが表面に浮かび上がらなかっただけで、今ようやく浮上した。しかし、それだ
けでは駄目なのだ。
「由美さんに全部聞いたよ。全部、な。だからこそ、はっきりと言わせてもらう。お前がやっている事はな、お前の大嫌いな親父の
やっていた事と全く同じなんだよ」
強い口調でそう言いきった。話は終結を迎えつつある。しかし、終わりが見えて僅かに翔の気が緩んだ。
あと、一息だ。あと一息で全部終わる。
そんな余裕が心に隙間をもたらしたそのとき、藤宮がうつ向いたまま重い口を開いた。
「……もん」
消えるように呟いた藤宮の声は、雨音に溶けて消えていった。不意に口を開いた藤宮に、翔が今まで積み上げたペースが揺らぎ一瞬
の空白を作り出す。
そして、その空白を打ち破ったのは藤宮であった。
「だって、どうすればいいのか分からないんだもんっ!!」
藤宮が、髪を振り乱して叫んだ。その拍子に、彼女の瞳から涙が宙に飛び散り硝子の欠片のようにピカピカ光った。
「センパイが、どうしたら私の事を好きになってくれるか分からないんだもんっ!!どうやって自分の気持ちを証明したらいいのか
分からないんだもんっ!!」
まるでダダをこねる子供のように狂乱する藤宮。呆気に取られる翔。
しかしその狂気も栓の抜けた風船のように萎んでいくのが分かった。やがて全ての狂気を吐き出した藤宮は、糸の切れたマリオネッ
トのように膝から崩れ落ち、両手で顔を隠してその場でむせび泣きはじめた。
その涙声に交じり、「嫌いにならないで」と言う声が聞こえて胸がチクりと痛み、翔は我に返る。そして気付いた。
いつの間にか、藤宮の事が嫌いではなくなっていた。もちろん好きなわけではないが、嗚咽をもらす彼女からは、あの嫌な雰囲気は
微塵も感じられなかったのだ。まるで眼から鱗が落ちたように、藤宮が普通の少女に見えていた。
──以前、藤宮に感じた嫌な雰囲気の正体。
それは、彼女の行動と感情のずれだった。そのずれは藤宮が嫌悪している父親の影響を、一番近くにいたゆえに受けてしまった皮肉
であるように翔は思えた。人間の人格が形成されていく過程を、全て父親に黒く塗り潰された結果なのだろう。
今までの藤宮は自分がされて嫌な事、嫌だった事──無理矢理体を重ねたり、強引に人を連れだしたり──を実行にうつしていたく
せに、彼女の奥底は自らの行動を嫌悪していた。だから、藤宮の行動の中でにじみ出る感情にギャップが生じ、それがまるで自分で自
分を騙しているように見え、翔は気に入らなかったのだ。
しかし、そのギャップはまるで空気のように実態のないものだった。だから、誰もがそのギャップに気付くわけではない。現に由美
は気付かなく、矯正する事ができなかった。たまたま翔はそれに気付き、藤宮に悪印象を抱いたのだ。しかし、その空気に気付いたか
らこそ、翔は空気が変わった事にも気付けた。
もう藤宮は大丈夫だと思う。無意識の嫌悪を意識にまで引き上げた。これからは感情と行動にギャップが生まれる事はない。
鎖は解き放たれたのだ。あとは藤宮次第である。
翔の最後の仕事は藤宮の背中を押してやる事。そこから先は考えていない。
──これから、考えていけばいいのだから。
「俺さ、ひとつだけ嘘ついたわ」
翔は照れ隠しに頭をかいた。
「俺、お前の事嫌いじゃないよ」
えっ、と驚いて顔をあげた藤宮の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。それでも、翔は可愛いと思えた。
「もちろん、好きってわけじゃないけど……。だからもう一度だけ、今度はゆっくり始めよう」
それは同情と、由美の言葉が生み出した結論である。
甘い、とは思う。しかし不思議と後悔はない。
やり直そう。ひとまず、手をつなぐところから。
──これから、澄香と一緒に。
「エッチ、しましょうか」
しかし、そのギャップはまるで空気のように実態のないものだった。だから、誰もがそのギャップに気付くわけではない。現に由美
は気付かなく、矯正する事ができなかった。たまたま翔はそれに気付き、藤宮に悪印象を抱いたのだ。しかし、その空気に気付いたか
らこそ、翔は空気が変わった事にも気付けた。
もう藤宮は大丈夫だと思う。無意識の嫌悪を意識にまで引き上げた。これからは感情と行動にギャップが生まれる事はない。
鎖は解き放たれたのだ。あとは藤宮次第である。
翔の最後の仕事は藤宮の背中を押してやる事。そこから先は考えていない。
──これから、考えていけばいいのだから。
「俺さ、ひとつだけ嘘ついたわ」
翔は照れ隠しに頭をかいた。
「俺、お前の事嫌いじゃないよ」
えっ、と驚いて顔をあげた藤宮の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。それでも、翔は可愛いと思えた。
「もちろん、好きってわけじゃないけど……。だからもう一度だけ、今度はゆっくり始めよう」
それは同情と、由美の言葉が生み出した結論である。
甘い、とは思う。しかし不思議と後悔はない。
やり直そう。ひとまず、手をつなぐところから。
──これから、澄香と一緒に。
──エピローグ
間の抜けたチャイムが鳴り響き、四時間目の授業がようやく終わった。その瞬間に、クラスの空気は糸が切れたように弛緩する。折
り返し地点の長い休息に、みな一息つくのだ。
もちろん翔も例外ではなく、
「ようやく、飯だぁ〜〜」
と、午前の授業を終えた達成感と、それによる疲労とがいりまじった吐息をはいた。
だれた空気のまま、クラスが日本史の先生を送り出すと、人がのそのそ動きはじめる。学食に行く者、購買にパンを買いに行く者、
そして気の置けない友人達と教室で弁当をつつく者。
翔の前の席に座る寺田は弁当派であった。その寺田はいつものように椅子を反転させて、翔の机に弁当を置き、
「一緒に食おうぜ」
と、言った。しかし、今日の翔は顔をしかめる。
「今日からそれは駄目なんだ」
翔が言うと、寺田は眉をひそめた。意味が分からない、といった顔だった。
「セーンパイ、来ましたよ」
その時、元気一杯の澄んだ声が教室に響き渡り、翔はその声のした方に顔を向ける。そこには澄香がいた。
再び寺田に視線を写し、ニィと笑う。
「悪いな、寺田。そういうわけだ」
翔は寺田の肩を軽く叩き、立ち上がった。すると、寺田が驚いたようにそれでいて不思議そうに口を開く。
「なぁ、翔。藤宮ってあんなに可愛かったっけ?」
寺田は眩しそうに目を細め、澄香を見ていた。意外な言葉に、翔は少し戸惑う。しかし、すぐにある考えに思い至った。
寺田は気付いていたのだ。以前、澄香を包んでいた空気を、そしてその不快さを。だからこそ、寺田は澄香の変化に気付いたのだろう。
ニヤリと胸の奥の喜びを隠すように笑い、翔は言ってやった。
「そうだよ。知らなかったのか?」
「……もん」
消えるように呟いた藤宮の声は、雨音に溶けて消えていった。不意に口を開いた藤宮に、翔が今まで積み上げたペースが揺らぎ一瞬
の空白を作り出す。
そして、その空白を打ち破ったのは藤宮であった。
「だって、どうすればいいのか分からないんだもんっ!!」
藤宮が、髪を振り乱して叫んだ。その拍子に、彼女の瞳から涙が宙に飛び散り硝子の欠片のようにピカピカ光った。
「センパイが、どうしたら私の事を好きになってくれるか分からないんだもんっ!!どうやって自分の気持ちを証明したらいいのか
分からないんだもんっ!!」
まるでダダをこねる子供のように狂乱する藤宮。呆気に取られる翔。
しかしその狂気も栓の抜けた風船のように萎んでいくのが分かった。やがて全ての狂気を吐き出した藤宮は、糸の切れたマリオネッ
トのように膝から崩れ落ち、両手で顔を隠してその場でむせび泣きはじめた。
その涙声に交じり、「嫌いにならないで」と言う声が聞こえて胸がチクりと痛み、翔は我に返る。そして気付いた。
いつの間にか、藤宮の事が嫌いではなくなっていた。もちろん好きなわけではないが、嗚咽をもらす彼女からは、あの嫌な雰囲気は
微塵も感じられなかったのだ。まるで眼から鱗が落ちたように、藤宮が普通の少女に見えていた。
──以前、藤宮に感じた嫌な雰囲気の正体。
それは、彼女の行動と感情のずれだった。そのずれは藤宮が嫌悪している父親の影響を、一番近くにいたゆえに受けてしまった皮肉
であるように翔は思えた。人間の人格が形成されていく過程を、全て父親に黒く塗り潰された結果なのだろう。
今までの藤宮は自分がされて嫌な事、嫌だった事──無理矢理体を重ねたり、強引に人を連れだしたり──を実行にうつしていたく
せに、彼女の奥底は自らの行動を嫌悪していた。だから、藤宮の行動の中でにじみ出る感情にギャップが生じ、それがまるで自分で自
分を騙しているように見え、翔は気に入らなかったのだ。
「エッチ、しましょうか」
グェッェェェェ
投下完了です。
純愛スレならこれで終わりですが、ここは嫉妬スレ。
今までのはコンビニに置かれた食玩ガンダムについたラムネみたいなもの。だけど、あの小さなラムネが、
コンビニのお菓子売り場に置かれたガンダムをプラモデルではなく、食玩にしているのです。
と言うわけで、次回から第二章。
明日投下出来るように、今から頑張ります。
>>459 リアルタイムGJ!!
え・・・と想うような終わり方だったけど第二章があるんですか!?
恐らく次から三角関係突入だと想うのでwktkしてます。
あと、間の可愛そうな人は気にしないで頑張ってください!!
461 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/03(木) 01:28:14 ID:3Zi1l/zG
>>459 GJ!!!おもしろかったよ
なんかハエがウロチョロしてたけど
>>459 GJ!
中野がどういう風に絡んでくるのかwktkしながら待ってます。
>>459 GJ!
これが序章とは恐れ入る。二章待ってます
>>459 エピローグってきて、一瞬orzになったが、ラムネだったとは・・・
とにかくGJ!!
ってか投下スピードも内容も神すぎるwww
しばらくぶりに
>>1を見返して思ったんだが
>浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
この傾向の作品って無いな……
ならばまず先陣切って君が書いてはどうか
>>466 比較的「うじひめ!」はそれに入ると思うんだが・・・ただ最後が(((( ;゚Д゚))))ガクブル
うじって言うのがグロだけどね
>>459 GJ!
今後の展開をニヨニヨしながら期待しております
浅い嫉妬か・・・幼稚園児辺りがそうかな?
男の子一人めぐって女の子二人が何かと勝負する。
で、勝負内容が
・棒倒し
・お菓子作り
・鬼ごっこ
と、子供らしい勝負をするが、結局男の子が間に入ってうやむやになるが
他人から見れば三人とも仲良しのように見える。
需要無いんでないの?
>>466 叩かれるのを承知でいくが。
トライデント氏が最近その傾向の物を書き続けてた。
少し黒いとはいえほとんどネタだとオモフ。
叩かれてもめげずに書き続けてた精神は賞賛に値するよな。
叩く相手を間違えるな、俺じゃないぞ、相手は。
>>473 う〜ん、結局ここは軽いヤキモチじゃ満足できなくなったヤシの集まる所って感じはあるな・・・
>>474 お前さんは別に作者さんを非難するような事は書いてないから叩かないよ
トラ氏はコンスタントに投下してたけど最近は忙しいのかな(・ω・)
小恋物とか軽いヤキモチっぽくなかった?
投下します。
九月も終わりに近付くと、今までの暑さが嘘のように気温がグッと下がった。しかし、まだ寒いというわけではなく、むしろ丁度い
い気候と言えた。夏の間、休みなく鳴り響いていた蝉の声もいつの間にか聞こえなくなり、気のはやい鈴虫が立秋を告げている。日の
出ている時間もだんだんと短くなって、午後五時を回るともう薄暗い。
学校の廊下には白い電灯がともっているが、体育館は気味の悪い赤黒に染まっていた。そこは当たり前のように静かで、バスケ部や
バレー部といった体育館を寝城とする運動部の姿もない。週明けの附属高統一テストの準備のため部活は全休部となっているのだ。
日が傾き暗くなった館内には、もう影は伸びない。誰もいない館内に、自分の足音がやけに大きくこだました。
水樹澄香はその事にうっすらとした恐怖を覚える。
誰もいない体育館は、いつもの喧騒を知っている分、その静けさが不気味だった。いつか翔を待っていた時は、胸の高鳴りが先行し
気にもならなかったが、こうして一人で来てみるとその異様さが引き立つようだ。
澄香は夏用の短いスカートのポケットに触れる。そこにはやんわりとした紙の感触。折り畳まれたルーズリーフが一枚入っているの
だ。それは誰かが澄香に寄越した手紙である。そしてその手紙に呼び出されて、澄香は体育倉庫まで行くのだ。しかし、その手紙の送
り主が誰なのか、澄香には分からなかった。下駄箱に入っていたそれを初めて見た時は、翔からの手紙かと思ったのだが、その手紙に
書かれた文字は一目で女性の文字であると分かるもので、明らかに翔の字ではなかった。そうなると、澄香にはもう見当がつかない。
手紙を寄越してくれそうな人は、翔以外一人もいないのだから。
錆び付いた体育倉庫の鉄扉を、肩ごと突っ込んで開く。倉庫の中は、ほとんど真っ暗だった。相変わらずカビ臭いし、ジメジメして
いる。ここに悪い思い出など一つもないのだが、それを塗り潰すほどの気味悪さを感じた。
「待っていたわ、澄香さん」
闇の向こうで、誰かが澄香の名前を呼んだ。暗くて人の姿は見えないが、女の声だと思った。澄香はその暗闇の中を覗きこもうと目
を細める。すると、暗闇の向こうで漆黒の長い髪が揺らいでいるのが見えた。
「誰、ですか?」
澄香は警戒に身を固めながら、慎重に問いかける。すると、闇の中に潜む女が僅かに身をくねらせたのを感じた。
「さぁ?誰だと思う?」
暗闇に紛れた女が嘲るように言った。その話し方が澄香の癪に触る。
「ふざけないでっ!! 呼び出したのは貴方でしょっ!!」
ついつい怒鳴ってしまう。しかし、闇の中の相手はあくまで冷静だった。
「ふざけてなんかいないわ。ただ貴方に名乗るつもりがないだけなの、『藤宮』澄香さん」
瞬間的に、頭の中が沸騰した。
「 そ、その名前で呼ばないで下さいっ!!私は水樹澄香ですっ!!」
あの苗字を聞くと、子供時代の絶望で真っ黒に塗り潰された記憶と共に、生々しい男の感触が鮮明に蘇る。だからあの苗字は、大嫌
いだ。聞くだけで虫酸が走る。
「あら、ごめんなさい。『藤宮』さん」
なおもおどけたように言うこの女に、暴力的な激情が突発的に燃え上がる。思わず殴りかかりそうになって、二、三歩足を踏み出し
てしまった。しかし、その僅かな前進で、闇の中に隠れていた女の姿がぼんやりと照らしだされ、澄香はすんでの所で押しとどまる。
闇から現れた女を、澄香はどこかで見た事がある気がした。しかし、その記憶はまるでピントの合わないレンズを覗きこんでいるかの
ように、ボヤけている。それが気持ち悪くて、澄香は過去へ過去へと記憶を遡り、その女を探してみたが、それでも女の面影の入った
引き出しは見当たらなかった。ただ、しかし確実に記憶にある女だった。
「私はね、貴方にお願いがあって来たの」
女が薄笑いを浮かべつつ言う。やはり、澄香を下に見るような笑みだった。彼女のしゃべり方はいちいち癪に触る。
「……何を、ですか?」
怒りに身を震わせながら、澄香は低い声を出した。すると、女は嘲るような表情を引き締めて、命令するように言う。
「率直に言うわ。翔と別れてほしいの」
その瞬間、澄香は絶句し、同時に思考が完全に停止した。それなのに、口だけが勝手に回る。
「そ、そんなの嫌。嫌です。絶対、絶対嫌ですっ!!」
「あら、どうして?」
「だ、だ、だって、私はセンパイが好きだから。だから、だからセンパイは駄目です、絶対に駄目なんです」
センパイを手放したくない、そんな感情が空回りし、次から次に言葉が飛び出す。しかし、激情に支配された頭では、自分が何を言
っているのか分からなくなっていた。
「ふ〜ん、そうなんだ。でも、翔があなたの事を好きかどうかは分からないんじゃない?」
「そ、そんな事ないですっ。センパイは、センパイはっ」
ふと、思考が感情に追い付いた。そして、澄香は続く言葉を失った。
──翔は、自分を好きなのだろうか。
そんな疑問が、思考に根を生やす。実際のところ、女の言葉に反論できる確固たる自信が、澄香にはない。好きだ、と澄香は口癖の
ように翔に言っている、しかし、逆は一度もなかったのだ。
最近、翔は目に見えて優しくなった。しかし、行動は感情を裏切る事を澄香は知っている。現に、あの男がそうだった。何も知らな
い真っ白な純潔も、無邪気で真っ直ぐな子供心もあの男の不埒な行動で根刮ぎ奪われたのだ。だから行動ではなく言葉で言われないと
、人の気持ちは分からない。好きと翔に言ってもらわないと、澄香は安心出来ない。
「嫌われてるんじゃないの?」
ズキンと。
胸の奥のやわらかい場所がうずくのを感じた。嫌われてる、そんな言葉が痂(かさぶた)の下に隠れた古い記憶を呼び覚ます。
『俺、お前の事大嫌いなんだ』
あの言葉が、気持ちのいい笑顔を浮かべた翔の顔と共に蘇る。澄香は翔に好きと言われた事はない。しかし、嫌いと言われた事はあるのだ。
そう思った途端に女に対する怒りが急速に熱を失い、代わりに真っ黒な不安が心に生まれた。嫌われてるかもしれない、そんな微か
な疑惑が、渦のように澄香を飲み込んでいく。
まとわりつく不安を振り払うように、澄香は必死で言葉をつむいだ。ほとんど叫ぶように大声でその不安を隠そうとした。
「で、でも貴方には関係ないじゃない。それは、わ、私とセンパイの問題ですっ!」
澄香の叫びは暗闇に飲み込まれて消え、代わりに静寂が訪れた。その静寂の中、やがて、女は不敵に笑い、
「関係あるわ」
澄香は息を飲む。そして、女は平然とそして驚くほど静かに言ってのけた。
「だって、私も翔の事が好きなんだもの」
澄香が驚愕に目を剥くと、何の感情が詰まっているのか分からない涙が一粒こぼれ落ちた。
そして同時に、たった今、この女の正体を思い出した。この女は澄香が初めて翔の教室に行った時、楽しそうに彼と話していた女だ
。すると、いきなり不安の雨はその強さを増し、ついに心の堤防の傘を越えた。溢れだした不安が、澄香の足下を洗いはじめる。破滅
は近い。しかし、それでも女は言葉を止めず、澄香を絶望の底へと案内する。
「彼ね、あなたの事が嫌いって言ってたわよ。そして私といる方が楽しいとも、ね」
その瞬間、澄香は世界が色を失うのをはっきりと見た。視界が雪に覆われたように白くなり、世界に散らばったありとあらゆるもの
全てが、存在の意味を失った気さえした。その狂った世界の中で、嫌われているかもしれないという疑惑が、いよいよ現実身を増して
いく。もう、女が嘘を言っている、とも考えられなくなっていた。不安で、怖くて、悲しくて、許容範囲をはるかに越えた感情で心が
爆発しそうになる。
「だから、彼のためにも別れてほしいのよ」
もう限界だった。女の言葉は耳に痛くて、澄香は頭を抱えて震えだす。いつの間にか溢れだしていた涙は、もう止まりそうもない。
しかし、そんな事は気にもならなかった。心は、翔でいっぱいだった。
彼は、自分に安らぎをもたらしてくれる。心の底から楽しませてくれる。そして、胸がいっぱいになる甘い幸福で心を満たしてくれる。
だから、ずっと、ずっと一緒にいたい。たとえ嫌われていたとしても、別れたくない。
別れたくない別れたくない別れたくない別れたくない別れたくない別れたくない別れたくない別れたくない──と、しゃくりあげな
がら、澄香は呪文のように繰り返す。
「──安心して。私も鬼じゃない。無理矢理別れさせるつもりはないわ」
最大級の恐怖に支配された澄香には、女のその言葉がまるで天国へと続く救いの糸のように思えた。
藁をも掴む気持ちで、澄香は慌てて女の顔を覗き見る。暗闇の中の女は勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「賭けをしましょう」
「か、け?」
「そう賭けよ」
女は何かを含んだような笑みを浮かべ、その賭けの内容の説明を始める。
女の提案する賭けとはこんな内容だった。
週明けの月曜日に、澄香は学校を休み家で待機し、メールで彼に助けを呼ぶ。もちろんそれは嘘であるが、彼が心配のあまり学校を
早退し、澄香の元へ駆け付けたら澄香の勝ち。それ以外は、かの女の勝ちとなる。
ルールは大きく分けて三つ。
ひとつ。この賭けの事を翔に匂わせてはいけない。
ひとつ。澄香の送るメールの本文は「助けて」のみ。
ひとつ。賭けに負けた方は翔を諦める事。
「月曜日は統一テストがあるけど、かまわないわよね?」
説明を終えると、最後に女が問いかけてきた。
統一テストとは、附属高内での自分の位置を知るために行われる実力テストだ。附属高でも下位に属する澄香の学校では、他の附属
高とレベルを合わせるためにその結果が内申に響く事もあるが、それは前回の六月のテストであり、今回は単純に実力を計るためだけ
のテストである。
澄香はゆっくりと、しかしはっきりとうなずいた。本来ならこんな賭けを受ける義理はないのだが、混乱した頭はこの賭けを翔の愛
情を受けるための登竜門のように錯覚していた。勝たなければ、翔に好きになってもらえない、と。
澄香は、どうしても翔に愛されたかった。
いつの間にか、涙は止まっていた。
投下完了。
少し駆け足で書いたため、誤字脱字がないかもの凄く不安。でも多分、大丈夫だと思う。
ともかく、これで書き溜めはスッカラカンです。。
量は少なくなりますが、明日か明後日には続きを投下します。
ぜんぜんおもしろくないんだけど
GJ!!
へへっ全裸で待ち続けやすから急がず旦那の満足ゆく品をお作りくだせぇ。
おぉう! 朝からドロドロしい女の子の嫉妬が見れるなんて……
GJッス!
GJ!!これからいよいよ本格的修羅場が展開されそうでwktkがとまらんwww
次回も期待してます
気持ちいぃ、超気持ちいぃ
『ウィル。姫様は騎士が大層お嫌いですから、どんなに邪険にされても腹を立てちゃダメですよ?』
まるで子供に言い聞かすように、前もって俺に注意していたマリィ隊長。
さすがに王家の人間の前で逆ギレするほど俺も短気ではないが、彼女の言葉のおかげで前持って覚悟して挨拶に臨めた。
……のだが。
「戦姫マリィ、そしてその懐刀ウィリアム。そなたたちのおかげでこの国は大した被害もなく勝利を治めることができた。
そなたらがこの二年以上もの間死力を尽くすたびに、他の兵たち、そして我々が何度助けられたことか。
この国を代表して例を言うぞ、マリィ、ウィリアム」
「はっ。我々には勿体無き御言葉」
隊長の動きをマネて、一層深く頭を下げる。
マリカたち訓練部隊が解散し、マリィ隊長の部隊に配属されてからおよそ一年と半年。
二年半に及ぶ隣国との戦争はこちらの大勝利に終わった。無論、それは戦姫マリィの力によるところが大きい。
とくに俺が騎士になった前後からは大陸中に知れ渡るほどの活躍ぶりで、こうして陛下直々に呼び出されるくらい国内では英雄視されている。
戦勝パーティーの最中にいきなりお呼びがかかるのは構わないのだが、何故俺も一緒なんだ。
戦姫の懐刀なんて持て囃されてはいるが、所詮は彼女の腰巾着にすぎない。陛下の言葉を賜るほど、そんな大層な器の人間じゃないんだけど。
それを隊長に言ったら、『私たち二人揃ってこその戦姫ですよ』と笑顔で返された。
……意味はよく解らない。俺が配属される以前から隊長は戦姫と呼ばれていたはずなんだけど…。
「そなたらの噂は国内はおろか近隣諸国まで届いておるぞ。私としてもこのような騎士たちに―――」
陛下の言葉を傅きながら聞いていた俺は内心むちゃくちゃ緊張していた。
この手の畏まった空気は元々苦手な方ではあったが、これほど緊張しているのはそれとは別の理由だ。
(うぅ…。まだこっち見てるよ……)
頭を垂れたまま、心の中で泣き言を呟く。蛇に睨まれた蛙とはこのことだ。
視界の隅からじっとこちらを見つめる視線に身震いを禁じえない。
陛下と謁見始まってから一言も喋らず、ずっとこちらに視線を縫い付けて放さない人物。
陛下の隣に鎮座し、先ほど隊長から『騎士が大嫌い』と聞かされた、アリマテア王国の王位継承者。
マリベル王女が、穴でも開けようかというくらい俺を見ていた。
どうやらマリィ隊長に聞かされていた通り、姫様は本当に騎士を嫌っているらしい。
その証拠に謁見の間中一言も口を開いていないし、表情はさっきからずっと変わってない。
(苦手…なんだよなぁ…)
聞こえないように小さくため息を吐く。
静かに俺を見下ろす、小柄な黒髪の少女―――マリベル・ノブレス・アリマテア。
実際にこうして顔を合わせるのは初めてだったが、俺は以前城内で彼女の姿を見たことがある。
そのときの印象は衝撃的だった。おかげで今でも心の奥では混乱しっぱなしだ。
(やっぱり、似すぎだよ…)
煌びやかなドレス、そして時々チラリと見える八重歯を除けば、王女はキャスに瓜二つだった。
最初に姫様を見たときは夢でも見ているのかと自分の頬を抓ったほどだ。
まるで、キャスが実は生きていて本当は一国の王女でした、ってくらいそっくり。
―――本当にそうだったら、どんなに良かったか。
見る限り似てるのは外見だけらしく、気の強そうな目つきなんかはキャスからは殆ど見覚えのない表情だ。
それでも外見が似てるのいうのは少なからず俺に動揺を与えるようで、彼女の姿が視界に入るだけで息苦しい気分になる。
無理もない。思い出として頭の中で浮かべるしか方法がなかったはずの顔立ちが、今目の前にこうして存在しているのだから。
まぁ、そういう理由で苦手なわけなのだが、そうでなくとも王女に四六時中凝視されれば誰だって戦々恐々とするだろう。
今の俺には、とにかく陛下の有難いんだかどうかも解らない話が早く終わらないかと、地面に目を落としながら祈り続けるしかできなかった。
「―――と、すまんな。気を抜くと話が冗長気味になるのが私の悪い癖のようだ」
俺の願いが通じたのか、国王陛下が少し苦笑いを浮かべて話を切ろうとしていた。
……ありがたい。さっさとこの場を退散して、祝勝パーティーの方へ馳せ参じたいものだ。
「そなたらも早く仲間と共に勝利を分かち合いたいはず。…すまなかったな、私の我侭に付き合わせて。
もう下がってよいぞ」
「はっ。失礼致します」
マリィ隊長の声に倣い、俺も深く傅くと、早々に腰を上げた。
―――やっと解放される。そう胸を撫で下ろそうとしていたとき。
「ま……待たれよ」
初めて聞く、誰かの呼び止める声。キャスによく似た…澄んだ声だった。
「…え?」
「おっ、おぬし、確かウィリアムと申したな」
俺も隊長も、果ては陛下さえも驚きで目を見開く中、姫様が緊張のせいか時々声を詰まらせながら言葉を紡ぐ。
いったい何の冗談か。騎士を毛嫌いしていた姫様が、向こうから俺に話しかけてくるなど。
「せ、せっかく謁見したというのに、わらわは無視か…?あいっ、挨拶くらい、したらどうじゃ」
話に加われなかった怒りの為か、はたまた大嫌いだという騎士に我慢して話しかけたせいか。
姫様の顔は吹き出してしまいそうなくらい真っ赤だった。
「あ、挨拶…ですか?」
当惑する俺に向かってゆっくり手の甲を差し出す。
その手は、微かに震えていた。
――――………
「なんなんですかっ!まったく!」
謁見がやっと終わり。
恐らく隊の、いや騎士団全員が今頃ドンチャン騒ぎしているであろう、中庭へ向かう途中。
何がそんなに腹が立つのか、マリィ隊長が肩を怒らせて俺の隣を歩いている。
「ずっとウィルを見てたかと思えば、『挨拶くらいしたらどうじゃ』?
挨拶のひとつもしなかったのは姫様の方でしょう!
いくら王族で騎士嫌いだからって、非礼にもほどがありますよ!」
……謁見の前は、あんなに姫様をフォローしてたのに、今はどういう風の吹き回しか。
偉くご立腹のようである。……それにしても隊長の姫様のモノマネ、似てないなぁ…。
「…そうでしょうか?俺は思ってたより騎士が嫌いではないように見受けられたんですが」
真っ赤になって必死でこちらに手を伸ばしていた彼女の表情は、一瞬人見知りの激しかったキャスの顔と被った。
だからというわけではないが―――姫様が、城内で噂されるほどの我侭娘ではないように感じられたのだ。
声を掛けられるまでは正直言って怖かったけど。よくよく考えてみれば、見られている間も別に凄い形相で睨まれていたというでもない。
だけど、隊長にとっては俺が姫様の側に立った発言をしたのが気に食わなかったらしい。
「ウィルッ!!あなたは姫様の味方なんですか!?それとも私の味方なんですか!?」
「うわっ!な、何怒ってるんですか、隊長。
俺、なんか悪いことしましたか…?」
「えぇ、しましたよ!しましたともっ!ウィルが全部悪いんですっ!!
―――なによ…もうっ……私だって、キスされたことないのに…」
涙目で俺を非難した挙句、しまいにはそっぽを向いて何やらぶつぶつ文句を言い始めた。
……わからん。この人との付き合いもかれこれ一年半になるが、たまに変なところで怒ったりして俺を困惑させる。
この一年と半年の間、彼女と一番長く共に居たのは恐らく俺だろうが、その俺でも彼女の考えてることはよくわからない。
…"女心と秋の空"とはよく言ったものだ。
「ま、まぁともかく……」
こんなときの俺の対処法と言えばたったひとつ。話を変えることだ。
「早く皆のところに戻りましょう。きっとみんな隊長が居ないから淋しがってますよ」
「私は別にパーティーなんて……って、そうだ!」
苦し紛れの話題転換をする俺に半眼で睨みつけたかと思ったら、突然顔を輝かせて手を叩いた。
「いいこと思いつきました!ウィル、戦勝パーティーはこのままバックレましょう!」
「はい…?」
いきなり何言い出すんだ、この人は。
まさに名案だとでも言いたげに俺の手を取るマリィ隊長。
ぐいぐい腕を引っ張りながら「街に繰り出しましょう」とか言ってる。……もう日は暮れてますが。
断るには忍びないほど満面の笑みだったが………さすがにマズイでしょ、それは。
「隊長〜…お願いですから遊撃隊の長たる人が、堂々と部下にサボるとか言わないでください……」
「そんなこと、どーでもいいから早く行きましょう、これは部隊長命令です!」
「それ、むちゃくちゃ公私混同ですよ…」
たまにハジけたことを言って部下(主に俺)を困らせるのはこの人の悪い癖だ。
祝勝会自体はいつでも退席してかまわないのだが、
国王謁見で呼び出された際、同僚たちに「すぐ戻る」と言った手前このまま帰ってしまうのは彼らに悪い。
それに陛下に失礼がないようにと鎧を着込んでしまったため、このまま城を出れば街の人間は見回りか何かだと思うだろう。
だけど、いくらそう説明してもサボタージュは撤回したくないらしく、街に出ると言って聞いてくれない。
……隊長にも困ったものだ。
だが、以前はもっと固い印象を与える人だったんだそうだ。
開戦当初から部隊に所属していた先輩の話では、戦争が始まった頃はもっと規律に正しい人だったらしい。
加えて壮絶を極めた最前線で戦う部隊だったから、彼女に対して感情を押し殺した冷徹な人物、という印象を持っている者まで居たんだとか。
今の彼女からは想像し難い話ではあるが。
というのも、俺が入隊したときの彼女は新任隊長のような……よく言えば初々しい、悪く言えば頼りなさげな第一印象だった。
一度戦場での彼女の姿を見れば、そんな印象など一瞬で吹き飛んだものの、
それでも俺にとっては冷徹なイメージからはほど遠い人物像だったのは確かだ。
まぁ、確かにあのころは突然「サボる」とか言い出すことはなかったから、規律正しい人ではあったんだろうけど……はは…。
「ほらほらっ、善は急げです!」
「ちっとも善行じゃないですよ、隊長」
うぅむ……痛いくらいに腕を引っ張る、このトレイクネル卿閣下をどうやって説得しようか……。
もしこのまま彼女の言うとおりパーティーをバックレようものなら、後日同僚たちに何言われるか分かったもんじゃない。
『パーティー会場から夜闇に消えた戦姫とその部下、二人っきりで何処へ――』
同僚たちには向こう一週間は暇にならない、格好のネタだ。なんとしてもそれは避けなければ。
俺がからかわれるだけならともかく、免疫のない隊長に矛先が向けられれば一波乱どころでは済まされない。
……やっぱり俺がちゃんと断らないと。隊の同僚たちの命に関わる。
「…オホン。えーとですね、マリィ隊長―――」
本腰を入れて隊長を説得しようと、軽く咳払い。……だが。
「―――ケノビラック」
誰かが、俺を呼び止めた。
背後から声を掛けられたせいか、それとも声の主があまりに懐かしい人物だったからか。
俺は一瞬だけ、姿勢をそのままにして固まっていた。
懐かしい声。
そして騎士になって一年半が経つというのに未だ慣れない姓で俺を呼ぶ者。……それは彼女だけだ。
「…マリカ!」
俺は少し興奮ぎみに振り返った。
そこに立つ、意志の強そうな眼をした女騎士。
俺と同期の、だけど今は近衛隊に所属している次代のホープ。第一近衛部隊所属、マリカ=トリスタン。
彼女と最後に会ったのはいつだったっけ。戦争の後半は殆ど王都にはいなかったから、一年は会ってない気がする。
あの頃に比べて、少し髪が伸びたからだろうか。今の彼女は以前よりも少しだけ大人びて見えた。
「久しぶりじゃないか!元気そうで何よりだよ」
「ああ、お前もな」
……勝ち戦だったとはいえ、やはり戦争が終わっても互いに生き残っているという事実は嬉しかった。
俺自身、この戦争で生き残れるとは思っていなかった。
俺の所属する第零遊撃隊は常に最前線に配備されていたし、何しろ俺の戦い方が無茶極まりないものだったから。
師匠に『死に急いでいる』と何度も注意を受けた単身特攻の戦い方。何度改めようとしても気付けば回りより一歩前に立って戦っていた。
それでも今まで生きてこられたのは、師匠や隊長、仲間たちのフォローがあってこそだ。
俺は、自分のためだけに戦っているというのに。…彼らには感謝してもし尽くせない。
一方のマリカも、近衛隊であるがゆえに戦場に出ることはなかったろうが、何度か王族暗殺の刺客が城内に侵入したという話を聞いたことがある。
彼女もそのたび危険に身を晒していたはずだ。
「一年ぶりくらいかな?見違えたよ、マリカ」
「ふふっ。そういうお前は昔と何も変わってないな。相変わらず弛んだ顔だ」
やはりあの頃とは少し雰囲気が変わった。こんな柔らかい笑みを浮かべられるようになったのか、彼女は。
それに釣られて自然と俺の顔も綻んでいるのを、彼女は見逃さなかった。
「ほら、それだ。どうしてお前は普段からもう少しシャキッと出来ないのか」
「いいんだよ。いちいち眉間に皺寄せてたら肩凝っちゃうだろ。―――そういえば、マリカはここで何を…?」
会場では鎧を脱いだ騎士たちがドンチャン騒ぎの真っ最中だというのに。
今のマリカは甲冑を着込んだ、いつもの騎士のスタイルだ。顔も見る限り、恐らくシラフだろう。
「何を言っている。近衛騎士は今日も通常業務だぞ。いくらめでたいと言っても城中の騎士が騒ぐわけにはいくまい」
「あ、そうか」
「まったく……。まぁいい。私たちは殆ど大事な作戦に参加しなかったからな。こういう貧乏くじくらいは甘んじて引かせてもらおう」
「それこそ、何言ってるんだ、だよ。王都の防衛だって大事な任務じゃないか。たとえ実際に戦闘が起きなくてもね」
「………。ふっ、お前は本当に変わらないな」
まただ。
驚いた表情の後にまた、柔らかい笑顔。
あの事件が彼女にどういう心境の変化を与えたのか分からないが、今の彼女を見るときっと悪い変化ではなかったのだろう。
いつも苛立たしげに俺を叱責していたマリカが、こう何度も笑顔を向けるとは。
「……もういいですか、マリカさん?私たちはこれから会場に向かわなければならないので、そろそろお暇したいのですが」
マリィ隊長がゆっくり俺より前に出てマリカを見つめる。
戦場に居るときのような…と言えば大袈裟だが、それに近い厳しい眼差しだった。
空気が、少し変わった気がした。
――――――なんだろう。ヤケに緊張する。……って、パーティーはバックレるつもりじゃなかったんですか、隊長?
「それは構いませんが。
…ですが、ケノビラックの方は暫くお借りします。少し彼と話したいことがあるので」
隊長に答えるマリカの表情にもきつい眼差しが浮かんでいた。
戦姫相手に一歩も引かないあたり、実に彼女らしい。
「ダメです。ウィルはこれから私とパーティー会場に向かわなければならないと、さっき言ったはずですよ?」
「……しかし祝勝会は退席自由だったはず。つまりこれは騎士としての任務ではなく、飽くまで非番の催し物に過ぎません。
ですから彼が構わないのであれば、いくらあなたが上司でもそれを止める権利はない。違いますか?トレイクネル卿」
挑戦的な微笑みで見返すマリカ。
その表情に隊長はぎりっ、と奥歯を噛み締めていた。
―――――えーと。この二人ってこんな仲悪かったっけ。
マリカの方はともかく、マリィ隊長は特に彼女のことを嫌ってなかったような覚えがあるんだけど。
「ぐぐぐっ……。ダメと言ったらとにかくダメです!ウィルは私と一緒にパーティーに出席するんですっ!これは決定事項なんですから!!」
あ。さっそく隊長がキレた。相変わらず口論になると途端に弱くなるなぁ。
戦場では常勝無敗、鬼神のごとき強さを誇る彼女だが、舌による喧嘩となると幼児化したのかと疑わしくなるくらい発言が幼くなる。
『あなたの方こそ仕事中でしょう?』くらい言えばいいのに。
……。まぁ多分思いついてもいないんだろうな……。戦場での機転は何処へやら。
「…あなたは一体いくつですか。いくらなんでも駄々をこねて可愛らしく見える年ではないでしょう?」
「ぎぎぎぎッ…!」
鋼鉄の剣すら砕けそうな勢いで隊長が歯を軋ませる。
―――――隊のみんなにはいつもからかわれた挙句、可愛い可愛いと弄り倒されているが、
今それを言ってもフォローにはなりそうもないので発言は控えよう。
「隊長、落ち着いて落ち着いて」
「うぅっ…」
で。
最後に隊長を宥めるのはいつも俺の役割だ。これも戦姫の懐刀としての役目なのだ、致し方ない。
「俺もすぐ戻りますから。隊長は先に会場行っててください」
「なっ…!?そんな…!!私を見捨てるんですかっ!?」
いつも思うんだが隊長は一体何のタイミングで駄々をこねたりするんだろ。普段はあんなに楚々としているのに。
大抵は俺が真摯に説明すれば分かってくれるので、それほど困るわけでもないから構わないと言えば構わないんだけど。
「そういうわけじゃないですってば。
彼女とは話す機会もあまりなかったですし…。なるべく早く済ませますから」
「…でも――――」
俺に諭されて勢いは萎んだものの。それでもなおマリカと俺をチラチラ見ながら、胸の前で指を絡ませている。
うーん。今日は引っ張るな。本人は最初の予定では街へ行くつもりだったから、ヘソを曲げているのかもしれない。
……参った。どうしたもんか。
「そうですね。じゃあこうしましょう。確か明後日、城で勝利宣言集会のときに挨拶する予定ですよね?」
「え、ええ、まぁ…」
「そのとき、俺も一緒に隣に立ちます。隊長、前にその方が気が楽だって言ってましたよね?」
実は彼女は、大人数の人前に立って喋るというのが致命的に苦手だ。
第零遊撃隊はもともと少人数だったし割と気心も知れた仲なので、隊長としてみんなに話をするときはどうってことはなかったようなのだが。
騎士団まるまる全体となると話は変わってくる。
来たる明後日、マリィ隊長は戦勝の最大の貢献者として、団員全員の前で挨拶しなければならないのだ。
それが決まったとき、隊長は酷く慌てて俺に助けを求めてきた。自分は人前で挨拶など出来ない、と。
そのときはさすがに諦めてくださいと返したのだが、丁度いい。せめて俺が隣に立てば多少は緊張もほぐれるだろう。
「ッ……。わかりました。それで手を打ちましょう。
…ですがッ! 話が済んだらすぐに会場に戻ってくるように!いいですね!?」
少し悔しげに眉根を寄せた後、本当に仕方なくといった表情で承諾してくれた。
……きっと明後日の挨拶はみんな俺に奇異な視線を向けるだろう。何も用がないくせに壇上に立っているアイツはなんなんだ、って。
でも、ま、しょうがない。これで隊長が手を打ってくれるっていうんだから良しとしよう。
「…と、そういうわけだからさ。マリカ、なんとか了承してもらえたよ」
側から呆れた表情で事の行く末を見守っていたマリカにそう言いながら振り返った。
俺の笑顔に、彼女は深くため息をひとつ。そして。
「……だから、別にお前がその女に――――もごっ」
マリカの発言がまた話をややこしくしそうな気がしたので、彼女の口を慌てて手で塞ぐ。
「……それじゃあ、隊長。俺たちは適当に歩きながらでも話をします。
隊長は『俺は後で行く』と言ってたってみんなに伝えてください」
「わかりました。早く戻ってきてくださいね、ウィル」
彼女の口に手をやったまま、隊長がその場を離れていくのを見送る。
……隊長が見えなくなるまでの間、彼女は八回振り返りこちらに手を振っていた。……今生の別れじゃあるまいに。
彼女が見えなくなってから、俺はため息と共にマリカの口を開放した。
「はぁ…」
「ぶはっ!いきなり何をする!ケノビラック!」
「一言余計だからだよ、マリカ」
久しぶりに聞いた、マリカの怒鳴り声。…まるで、あの頃に戻ったような錯覚。
それは一緒に訓練していた一年半前の、俺の知るマリカそのものだった。
「…何をニヤニヤしている。気色悪い」
「いや…ははっ。変わったって言っても根っこの部分は同じなんだなぁって。やっぱりマリカはマリカだよ、うん。あはは」
腹を抱えて笑う俺をマリカは怪訝そうな顔で首を傾げていた。
「それより……どうする?何処か場所変える?」
「そうだな――――とりあえず見張り台へ。見回りをサボるわけにもいかないし、すまないがそこまで付き合ってくれ」
そう言って隊長が去って行った方向とは反対側を指差した。
ここまで。
思いの外長くなったので前・後編に分割しました。
後編は後日。
乙!
ktkr
まりぃがあれば生きていける
歯軋りする団長が可愛い
>>497 久々の投下GJです。
後日談も期待してるので頑張ってください!!
イィヤッホォゥ!
ぶらまりキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
相変わらず素晴らしき文章力と嫉妬ッス!
心を込めてGJッス!
>>497 GJ〜!
マリィが可愛いすぎwwww
すなわち最高。
>>506 イヤッホ(ryうぜーよ、もっと身のあるレスしろよ
>>497 GJ!!
やっぱりマリィは良い物だ…
後編もwktkしてまってます!
>>497 GJ!
流石俺をこの世界に引きずり込んだ作品だ。
>497
GJ!
隊長ハァハァ
ほ
し
の
監
督
修
行
僧
ぬっぽっぽー!!
最近の嫉妬スレは去年の勢いがないです
監禁されて段々抵抗しなくなってきた主人公みたいなもんか
そろそろ新キャラが必要というわけか
「お兄ちゃんはボクのものだ!誰にも渡すもんか!」
「くっ!やめっ!止めてくれっ!」
「お兄ちゃんのお尻の臭いで興奮していいのはボクだけなんだ!」
「いってぇ!ちぎれる!お前いつから
そんなにチンコでかくなったんだよ!」
「ボクがお兄ちゃんを愛しているからだよ」
「くっ!だからってもうBLはやめろ!もう何回も出しただろ!」
「何勘違いしてるんだ?まだ俺のアナルセックスは終了してないぜ!」
「さぁいくぜ!まず一枚(ry」
OTL
>>525 まあ何だ・・・無理に流行に乗ろうとしたり、変な要素に手を出さない方が良い。
君はそういう大切な事を俺に教えてくれた。
>>525 それブリジットみたいなショタっ娘なら最高だがガチムチ六尺兄貴なら勘弁なんだぜ
投下します。
ある所に、一人の男の子がいました。男の子は優しい両親に囲まれてすくすく育っていきました。だけど、男の子には不思議な事が
あります。男の子のお母さんに顔がないのです。
お母さんは男の子にいつも優しくしてくれますが、それでも男の子にはお母さんの顔が分かりません。友達はその事で男の子をから
かってきます。それが悔しくて、ある日男の子はお父さんに訪ねました。
「どうして、僕にはお母さんがいないの?」
──悪夢はいつもここで終わる。
今日も悪夢は突然終わりを告げ、それと同時に翔は飛び起きた。残夢の寂廖感が心臓の辺りに蔓延っていて、とっさに自分の左胸を
おさえると、心を満たしていたその感覚が、波が引くようにスーッと消えていく。残ったのは、妙な後味の悪さだった。
嫌な夢を見た、と思う。
ふと気づくと、ベッドが寝汗でグッショリと湿っている。体にかけていたはずのタオルケットは、どこかへ蹴飛ばされていた。少し
肌寒い朝である。それでも、開かれた窓からは優しい風と共に暖かい日の光が指しこみ、部屋を少しずつ暖めていた。
改めて、翔は自分の額を抑えて唇を噛む。最悪だった。
昨日翔は夜遅くまで勉強したため、全てを終え床についたのが午前三時。いつもは十二時には寝ているのでただでさえ、いつもより
睡眠時間が短い。それなのにあの悪夢だ。頭の中にモヤモヤした何かが残り、ちっとも寝た気がしない。
慌てて枕元の時計を確認すると、時刻は午前六時を指している。悪いことに、二度寝をする時間はなかった。
翔は起きなければならない。
今日は月曜日で学校がある。そして大切なテストの日でもあった。
学校につくと、今朝の悪夢の事などすっかり忘れ、テストの持つ心がかさつく緊張感にさいなまれた。いつもより早めについた学校
はいつもよりずっと静かだったが、それでも教室には、もう数人の姿があった。
彼等、もしくは彼女等に軽く会釈を交しながら、翔は出席番号順に並び変えられた自分の席につく。それから鞄を机にかけて、改め
て首を回して教室の中を見渡した。
集まった数人が別れ、教室には三つのグループが出来ている。男子のグループがひとつ、女子のグループがひとつ。それらは皆クラ
スでも屈指の優等生であり、いつも朝早くに登校している連中だ。彼等、或は彼女等とは仲が悪いわけではないのだが、自分から積極
的に話しかけるほどの関係ではなかったので、翔はその輪に入っていこうとは思わなかった。
そして、その二つのグループに属さない者が、一人。
「おはよう、翔」
その残った一人に背中から話しかけられた。振り返ると、そこには中野早苗が立っていて、翔は狼狽する。「ああ、おはよう」と、
返事こそしたが、その声は自分でびっくりするほど歯切れが悪い。
そんな翔の様子がよほどおかしかったのか、中野はクスクスと口元を押さえて笑い、
「あんた、鳩が豆鉄砲食った顔してるよ。あ〜、馬鹿みたい」
軽口を叩いた時に見せるどこか高慢な中野の表情を、翔は久しぶりに見た気がした。事実、澄香が初めて教室に来て以降、中野とは
会話がなかった。だからこそ、こうして中野から話しかけられるのは、ただただ驚きである。
「ところでさぁ、翔は土日にしっかり勉強した?」
突然、中野が話を切りだした。
「え、あ、ああ、もちろんしてきたよ」
そう翔が答えると、中野は訝しむ目になって、
「本当にぃ〜、澄香ちゃんとデートしてたんじゃないの?」
心臓が掴まれた、かと思う。
「い、いや、してない、してない」
慌てて否定する。澄香に「土日は一緒に遊ぼう」と誘われはしたが、翔は難くなに断っていた。
「ふ〜ん、じゃあ何でそんなに慌ててんの?」
「そ、それは……」
そこから先は、言葉が繋がらない。
ある意味、中野との関係がギクシャクしだした原因は澄香にあると言えるので、中野の口から当然のように澄香の名前が出てくると
は思わなかったのだ。もちろん、中野に面と向かってそうとは言えない。
しばしの空白の後、やがて中野がその空白をかきけすように明るく口を開いた。
「なーんてね、冗談よ冗談。いくら翔が馬鹿でも、そんな事するわけないわよね?」
翔が答える前に、中野は急にしおらしく身を屈め、翔の瞳を覗きこむようにして、話を続ける。
「でも、翔も大変よね」
真っ直ぐ見据えられ、恥ずかしくて翔は後退る。
「な、何が?」
「だって今日のテスト、翔だけが真面目にやらなくちゃならないんだもん」
なんだ、と思う。そんな事は他の誰より翔が分かっている。今さら言われるまでもない話だ。
「食中毒だっけ? 前回、入院しててテスト受けられなかったんだよね?」
「そうだけど……」
「だから、翔だけ特別に『今回のテストが内申に響くんだよね?』」
「……ああ」
「翔だけだもんね、今日のテストが大事なの」
「……」
「だから、翔は今日頑張らないと駄目なんだからね」
何度も同じような言葉を繰り返す中野に、さすがの翔も疑惑を抱き始めた。中野はまるで翔の記憶に、今日のテストの大切さを改め
て刷りこもうとしているかのようにさえ思えた。「なぜ、何度も同じような言葉を繰り返すのか」それが意図するモノが、疑惑という
抽象的な意識で固められ、翔の中で確実に根を生やしていく。
すると、そんな翔の疑惑を察したのか、中野はあからさまに話題を切り換えた。
「澄香ちゃんっていい娘よね。可愛いいし、素直だし、少し熱くなりやすいようだけど」
「どうしてお前が澄香を知ってるんだよ」
まだ、翔の疑惑は消えない。そのため翔の声はいつもより幾分低かった。
「一度だけ、話したのよ。澄香ちゃんと」
「そう、か……」
しばしの沈黙。
その沈黙を撒くように、翔は窓の外へ視線を移した。そこには透き通るように青い空があって、白い飛行機雲がその空を二つに裂い
ていた。気持ちのいい青空だった。
「ねぇ、翔」
いかにも、緊張した様子の中野の声。
翔は改めて中野に視線を戻した。
「何?」
「え、あ、いや、何でもないわ」
今度は中野が慌てた様子で翔から視線をそらし窓の外に目をやった。それから、彼女はそのままの態勢で、言いにくそうに、
「今日のテストの事さ、澄香ちゃんは知ってるのかな? ほ、ほら、今日のテストが翔にとって大事だ、って事」
甚だしく、意味の分からない質問に、翔は呆れた。それが緊張して言う質問なのか、だいたい中野はそんな事を知って何がしたいの
か。抱いた疑問が、勢いのついた車輪のように思考の奥へ奥へと進んでいく。
「答えて、よ。お願い」
まるで哀願するように、中野は胸の前で両手を合わせ、翔に視線を戻して言った。二人の視線が再び絡み合う。どこか翔の答えを恐
れているようで、それでいて期待しているような中野の瞳。その瞳の魔力に引き込まれたかのように、翔は溜め息をひとつつき、そし
て答える。
「……してないよ」
驚いた顔をする中野に、翔は繰り返す。
「してないよ。無駄に心配してほしくなかったから」
驚いた顔が、次第にほぐれていく。
そして。
中野は嗤った。
ひどく、嬉しそうに。
投下完了。
ひとまずここまでです。
投下します
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
さゆの日常は、季節が幾たび巡ろうとも、変わることはなかった。
外に一度も出ないまま、垢と脂にまみれた風体で。
毎日、まいにち、人肉を調理する。
そこに疑問は挟まれない。
骨からスジを引き剥がし、皮を剥いで脂身をこそぎ、内蔵は水抜きしたあと塩に漬ける。
うまくやれば義父は何もしてこない。
不手際があると、殴られるか犯される。
痛いのは嫌いなさゆなので、失敗しないよう、とにかく頑張る。
それでも、義父の機嫌が悪いときは、頑張りに関係なく罰を与えられるため。
目を瞑って現実逃避するのにも、もう慣れた。
手足の伸びも止まり、あとは娘を産むか、新しい娘がやってくるまで、人肉の調理を続けるだけ。
そんな、ある日のこと。
いつものように、義父の狩ってきた獲物を解体していたさゆに。
ふと、声がかけられた。
『て、いたくないのか?』
突然聞こえてきた声に、さゆは目を白黒させた。
義父の声ではない。そもそも義父は狩りに出ているので、家にはさゆ一人のはず。
なのに。
『いたくないのか? いつもかたくて、たいへんであろう?』
声は、まるでさゆを気遣っているかの如く。
優しく、少女の心に響いてきた。
手元の、包丁から。
『てつだわせて』
幼子のような純粋な声が。
染み渡るように、想いを伝えてくる。
そういえば、と。
さゆは、母の言葉を思い出していた。
――この包丁は、うちの婆がお前くらいの頃からあったものでな。
――大事にせないと、あかんよ。
――きっと、ヌシ様が宿っておるからの。
『さゆのて、あたたかいから、すき』
包丁に宿った神様は。
暖かい想いを、さゆにくれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
苛々する。
廊下を足音荒く突き進み、ようやく辿り着いた自分の部屋。
研修中のがらくたどもが、騒々しく俺を迎えた。
あまりに鬱陶しかったので、蹴り飛ばした。
――手に持つ道具を足蹴にしてはいけない。
彼らは人の手に馴染むために作られた物。
故に、それは存在を否定することにも繋がってしまう。
積み重ねられた想いすら傷つけてしまう、蛮行だ。
なのに。
どうしてか、連中を蹴り飛ばした瞬間。
脳に砂糖が流し込まれたかのような快感に、恍惚とした。
きもちいい。
ああ、そうか。
つまり。
こいつらをぞんざいに扱えば。
俺は、この不快感から解放されるのか。
いや、まて。
ひとつだけ。
ひとりだけ、例外が存在した。
包丁の付喪神、茅女。
彼女だけは、俺に不快感を与えない。
それどころか、幸せな気分にさえ、させてくれる。
茅女さえいれば。
俺は、俺を保っていられる。
彼女の温もりが、彼女の想いが。
俺にとっては、欠かせないものになっていた。
「そうだ」
ふらり、と立ち上がる。
部屋には自分一人。
先程の狼藉に恐れを抱いたのか、付喪神は一匹たりとて残っていない。
「茅女。茅女はどこだ?」
茅女に、会いたかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
包丁の付喪神は。
ひとり、ほくそ笑んでいた。
――先程の、郁夫の流への対応。アレは出来過ぎた。
自分でも驚くほどの仕込み具合。
もはや、郁夫の心の中に、流はいない。
ただの物――否、それ以下になっている。
そして、茅女は――
「は、ははは、あはははははは……!」
堪えきれなかった。
茅女は、手に入れたのだ。
「今度こそ、今度こそ、手放すものか……!」
最初は、気まぐれだった。
房中術を施す直前までは。
純粋に、郁夫のことを気遣い、元通りに戻すだけのつもりだった。
だが。
少しだけ、魔が差してしまった。
ふと、浮かんでしまったのだ。
物を持てなくなってしまった郁夫を見て。
――郁夫が、妾だけを大事にしてくれたら。
だから、少しだけ。
郁夫のモノを受け入れながら。
茅女は、心の片隅で、願ってしまった。
――妾を、一番に。
それは、劇的なまでに効果があった。
目覚めた朝、郁夫が茅女を見つめる瞳は。
茅女を真っ直ぐ、見据えていた。
妖怪を狂わせる魔性の瞳が。
茅女を大事にする想いで、満ちていたのだ。
一度その味を知ってしまうと。
もう、茅女は戻れなかった。
体を重ねるたび。
郁夫の心に、一塗り、一塗りと、重ねていき。
気付いたときには、自分の色に、染めてしまった。
房中術は、性交を通じて心を重ね合わせ、その内実を弄るもの。
最初の頃こそ、性交は男根と女陰を触れさせることのみが性交と思っていた茅女だったが。
郁夫との回数を重ねるごとに、行為の幅は広がっていき。
現時点では、指を絡めるだけで術を為し得るようにまでなった。
つまり。
今の茅女は、郁夫と手を絡めるだけで。
自在に、その心を、弄られるということだ。
先程の流の顔。
アレは、傑作だった。
郁夫が自分のものだと信じていたのに。
それが裏切られ、己の世界を崩しかけていた。
幼い心を露わにして。
信じていた者に報われず。
絶望に身を浸していた。
――何故か、吐き気がした。
「……ッ!
妾はしくじらぬぞ! 郁夫はあれとは違う!
あの心の強さならば、一度決まったことは外圧さえなければ歪まぬはずだ!
――小娘が失敗したのは、その力が己だけのものと想い違えた故じゃ。
妾は二の轍は踏まぬ。細かな修正を重ね、大幅な書き換えはこの身で防ぐ。
幸いなことに、小娘の能力は直接的なもののようだ。
――郁夫に近付いた瞬間、細切れにしてやれば事足りる」
流の能力にさえ気を付ければ。
郁夫の瞳は茅女だけのもの。
――そう、信じていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……茅女……茅女……」
ふらふらと。
裸足で廊下を、彷徨い歩く。
足下が覚束ない。視界が歪んでいる。
茅女に会いたかった。
彼女がいないと、狂ってしまいそうだ。
早く会って、言葉を交わしたかった。
きっとそれだけで、楽になれる。きもちよくなれる。
茅女さえいれば。
あとはいらない。
他は全部邪魔なだけ。
茅女以外の全ての存在は死ねばいい。消えればいい。殺してやる。
――殺す。
ああ、そんな簡単な方法があったんだっけ。
全部ぜんぶ、睨み殺してやればいい。
茅女以外の全てが消滅すれば、世界はきっと素敵になる。
今のような不快感は消え、ずっとずっと、気持ちいいまま。
いいな、それ。
じゃあ、殺すか。
「――ひ、ひひひ、きひひひひひひひひひひヒヒヒッ!」
いけない。
あまりに素晴らしすぎる妄想をしてしまったため、すっかり勃起してしまっていた。
そうだ。
殺そう。
俺には瞳術がある。
不意打ちには最適な、浦辺の業。
ただ見つめることに集中した、全ての存在を揺るがす異端。
逃れられるものはない。
浦辺の瞳に捕らえられたが最後、如何なる怪異も霞と消える。
そうだな。
まずはこの屋敷にいるやつを、皆殺しにするか。
殺す。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す睨み殺してやる――!
「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒィィィイイイイイイイイアアアアアアアアアッッッ!!!」
殺した後のことを考えて、ハイになってしまった。
手足を滅茶苦茶に振り回す。
右手に鋭い痛み。ガラスの割れる音。
いけない。どうやら窓を叩き割ってしまったようだ。
硝子で切れた手の甲から、真っ赤な鮮血が滴り落ちる。
怪我は大したことない。
舐めておけば治るような、小さなものだ。
――そうだ、それなら茅女に舐めてもらおう。
逆に興奮して出血量が増えてしまうかもしれないが。
茅女の小さな舌が、ちろちろと傷口の周りを這う。
……想像するだけで、イッてしまいそうだった。
下着の内側を我慢汁でベトベトにしながら。
とにかく誰かを睨み殺そうと。
血走った目で視線を巡らせ――
ふと。
あるものが。
視界の端に。
「……ッ!?」
その場で盛大にすっ転んだ。
ガンガンと頭が内側から叩かれている。
ミキサーの回転刃でも仕込まれたか、脳がぐちゃぐちゃにかき回されていた。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
茅女。
茅女に会えば、きっと。
「――う、げええええええええええっ……!」
胃の中のものを全て、その場にぶちまけてしまう。
何度も胃がひっくり返り、喉も灼けるように痛かった。
まただ。また、苛々する。
体の内側からガリガリと引っ掻かれていた。
気色悪い痛痒さが、いつまでも外に出られず燻っている。
「……ぐ……が……!」
ぶるぶると全身が震えてしまう。
なんだこれは。
なんだこれは。
わからない。
わからない。
なんで。こんなにも。
こわいのか。
ふらふらと。
何もかもが曖昧なまま。
怖くて。何かが怖くて。
あまりにも怖くて。
何でもいいから睨み殺そうと。
一切制御のかかっていない瞳術を垂れ流しにして。
ふらふらと。
廊下をひとり。
彷徨い歩いていた。
そして。
それを、見た。
体格は自分と同じくらい。
服装もそっくり。
顔つきも、よく知る者だった。
よく知る者なのに。
今は――とても、怖かった。
「……う」
がたがたと全身が震えている。
内側から激しく掻きむしられている。
このままでは。
内側から、得体の知れない何かが。
俺を、破って――
「うあああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
絶叫が喉から捻り出された。
怖かった。
何よりも怖かった。
――“鏡”に映る自分の瞳が。
とても、怖い――
パキン、と。
なにかが、壊れた気が、した。
瞬間。
――世界が、変わった。
ただ見つめられているだけ。
しかしそれは、あらゆる事象を優先しての行為。
たとえ己が殺されようとも、決して逸らされることのない凝視は。
あらゆる不可解すら超越し、全ての歪みを正させる。
めきめきと頭蓋が歪む錯覚。
幾重にも塗りたくられた怪異が、べりべりと引き剥がされていく。
一枚剥ぐごとに、心は元の様相を取り戻し。
瘡蓋を剥がしているかの如く、鋭痛を繰り返し刻み込まれる。
そして。
自分が、狂っていたことに、気が付いた。
何をしていたのか思い出す。
それは主観的な記憶ではなく。
客観的に、自分が何をしていたのか、考えた。
「うわあああああああああああっっっ!!!」
衝動的に。
自分の頬を、全力で殴った。
奥歯が折れ、頬の内側が裂ける。
口いっぱいに鉄錆の味が広がった。
俺は。
何てことを。
してたんだ……!
「――流……っ!」
記憶に、はっきりと残っている。
捨てられた子犬のように。
ぶるぶると震える、付喪神の幼子。
信じていた者に裏切られ。
絶望に、身を浸していた。
「……馬鹿野郎……ッ!」
そんな流に。俺は。何をした!?
蹴り飛ばし、罵倒し、睨み付けた。
ふざけるな。
ただ純粋なだけの、俺を慕う、付喪神。
俺はアイツを、この上なく、傷つけた――
「畜生ッ!」
自省は後だ。
大馬鹿野郎を痛めつけるのは、後で好きなだけやればいい。
今はとにかく。
想いをズタズタに引き裂かれたであろう付喪神の所へ……!
そう思い。
居ても立ってもいられず、駆け出そうとしたところで。
「……郁夫? 今の叫びは如何なることか――」
背中にかけられた声は。
聞き覚えのあるものだった。
お久しぶりです。
そろそろ、佳境です。
楽しんで頂ければ、幸いです。
>>424 全然問題ないです!
というか読んでみたいです。wktkしてお待ちしております!
うおおおおおお
なんという焦らし・・・
これは間違いなくいじめ!
というわけでGJです
>544
GJ
鏡で瞳術が破れるのでヴィドックを思い出した。
出てくるキャラ皆不幸になっていくねぇ…
だが、よし!
>>533 おぉう! 一瞬でも中野が澄香の事を心配したのかと思った俺は愚か者だぜ……むしろ喜んでるし! GJッス!
>>544 修羅場だ修羅場! もう先の展開がこれポッチも読めないよ!
wktkしながら大人しく待つしかねぇ……GJッス!
ん?避難所おかしくないか?
ん?
変なスレが削除されたみたいだが
管理人乙です
>>550 だからweb拍手か、向こうで言えよ
こっちと関係ない場所なんだから
>>533 中野が何を考えているのか怖いぜ・・・
冒頭部分の翔の夢もどういう事なのか不気味
いい負けたすみかがどうなるかwktkしてます!!
>>548 郁夫の今後が滅茶苦茶楽しみです!!
拒絶された流がどういう行動に出るのか・・・
九十九最高!
投下します
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結局コレットとのことを解決しきれないまま私達は村を後にした。
特にリオの気持の沈みようは酷かった。
表面上では私達に心配掛けまいと取り繕ってくれてるものの、
逆にそれが痛々しくもある。
確かにリオは私を選んでくれた。
私の最愛の人は同じ様に私を最愛の人に選んでくれたのだ。
だが、それでもコレットも別の意味でリオに大切な存在だった。
リオにとっては妹のような、家族のような存在なのは覆せない事実なのだ。
本来ならコレットの事なんか知った事ではないのだが、だがそうしなければ
リオは苦しみを悩みを抱え続ける事になる。
だからこの問題からは逃げるわけにはいかないのだ。
でも、本当にどうしたら……。
時間に頼るしか、いや時間を掛けても解決できるのだろうか……。
そんな解決の糸口の見えない問題を抱えながらも私達の旅は続いていく。
冒険を続けていると度々他の冒険者とモンスターとの戦闘に遭遇する。
大体がモンスターに一方的に押され全滅寸前。
私達に会えなければどうなってたやらと言うやつなのだが、今回は少し違ってた。
視線の先では一人の少女がモンスター相手に奮戦してた。
背格好はクリスよりもやや小さく年もおそらくやや下だろう。
そんな少女が手にしてるのは湾曲した内側に刃の着いた異形の剣。
ショーテルなどに見られる所謂S字型曲剣と言うタイプ。
その刀身は象牙にも似た色をしていた。
そして対峙するモンスターはスケイルデーモン。
大熊をも凌駕する上背を持ち其の逞しい両腕の先には刃の如き鋭い爪を備えていた。
そして其の全身を名前の由来でもある鋼の如き硬度を誇る鱗で身を包んだ魔物。
並どころか手練の戦士団すら一匹で全滅させるほどの強敵。
そんなモンスターを相手に其の少女は踏ん張っていた。
確かに押されてはいたがモンスターのレベルを考えればかなり頑張っていたと言えた。
少女の剣がモンスターの隙を突き其の丸太のように太い腕を斬り飛ばした。
斬られた腕から血飛沫を散らしながらデーモンが叫び声を上げる。
これで形勢は優位に傾きこのまま押せば勝てる、おそらく少女はそう思ったのだろう。
だがモンスターとの戦闘と言うのはそんなに甘いものではない。
先ほどデーモンが上げた叫びは腕を斬られた痛みによるものだけではない。
デーモンの叫び――咆哮は大気を歪ませるような、いや――
実際にその咆哮は歪みを生み出していた。
蜃気楼のように歪んだ空間からまるで水の中に墨を流したように闇が染み出す。
そして空間に広がり始めた闇から現れたのはスケイルデーモンの群。
そう。このスケイルデーモン、其の戦闘能力以上に恐ろしいのがこの仲間を呼ぶ能力。
窮地に陥るや空間を捻じ曲げ瞬時に同属を呼び出すのだ。
一瞬でその数が膨れ上がったデーモンの群。
其の様子を目の当たりにした少女は力が抜けたようにその場でへたり込んでしまった。
少女に向かいデーモンが爪を振りかぶる。
このコも頑張ってたけどココまでのようね。
私は駆け寄り手を伸ばし少女の手首を掴み引っ張る。
そしてもう片方の手で少女に向かい振り下ろされたモンスターの爪を迎え撃った。
鮮血を挙げモンスターの指が切れ跳ぶ。
そして私はそのまま返す刃でデーモンを一刀の元に斬り伏せた。
確かに手強いモンスターだが、それは一般的な冒険者が相手にするには、と言う話。
「え……? あ、あの?」
「よく頑張ったわね。 後は私達に任せて」
この少女が自分の力量だけで切り抜けられるようならそのまま静観するつもりだったが、
結果手に余る形。 ならばココからは私達の出番だ。
デーモンの群はすぐさま標的を私達に切り替えると一斉に襲い掛かってきた。
しかし次の瞬間最前列の数体のデーモンたちがまとめて斬り裂かれる。
やったのは勿論クリスのギガンティスグレイブ。
圧倒的な攻撃力の前に屈強なデーモンの肉体が血飛沫を上げ肉塊へと変わり果てる。
超重量の長柄武器を枝葉のように軽々と振り回す其の攻撃は幾多の死線をくぐりぬけ
更なるレべルアップを果たしていた。
その一撃はこんな屈強なデーモンすら苦も無く纏めて斬り裂き、並みのモンスターなら
振り回すその風圧や衝撃波だけで打ち倒してしまうほどに。
一瞬で仲間の半数近くを倒されたデーモンたちは距離をとる。
一体でも一部隊すら相手に出来るほどの屈強なデーモンの群。
そんな強敵の群がこちらに警戒を余儀なくしてる。
そして距離をとったデーモンの群は其の巨大な口を開け灼熱のブレスを吐き出す。
複数のデーモンが一斉に吐き出した灼熱のブレスは、それはさながら地獄の業火。
チョットした城ですら消し炭にしてしまいそうなほど。
だが其の炎の吐息が私達に届く事は無かった。
私達の眼前に無数の巨大な霜柱が出現し炎を遮ってくれたのだ。
この霜柱、言わずもがなリオが発動した魔法によるもの。
役目を終えた霜柱は瞬時に淡雪のように霧散する。
さすが私の頼もしくも愛しき想い人と妹分。 攻撃も防御も文句なし。
二人が頑張ってくれた以上私も私の役割を果たさなきゃね。
私は残ったデーモン達を睨みすえ右手に装備したアルビオンファングに意識を集中する。
純白の刃が其の刀身をより一層輝かせ――私は渾身の力を込めて横薙ぎに一閃した。
放たれた光は刃となり眼前のデーモンの群を斬り裂いた。
目の前の敵の全滅を確認し私は刃を鞘に収める。
うん――。 いい感じだ。
あの日、クリスを助けたい一心で無我夢中で振るい結果引き出した――
アルビオンファングの真の力。
あの時は無我夢中だったが最近やっとコツがつかめてきた。
「あ、あの……」
「ん?」
私は声のした方を向いた。 そこには未だへたり込んだままの剣士の少女の姿。
「もう大丈夫よ。 怪我とかしてな――」
私が言い終わるより早く其の少女は飛びついてきてそして泣き出し始めてしまった。
さっきの戦い振りを見た限りじゃ結構腕は立ってたけど、でもやっぱ怖かったのね。
私は思わず抱きしめそっと撫でた。
――と、次の瞬間"ダンッッ!!"と凄まじい音が響き視界の端を黒い塊が飛んでいった。
それは先ほど倒したばかりのデーモンの生首だった。
一体何事かと視線を廻らせた私の目に飛び込んできたもの。
それはグレイブを振り上げたクリスの姿――って、え?
「ちょ、クリス一体何やって――」
クリスは振り上げたグレイブを地面に転がるデーモンの死体の首筋めがけて打ち下ろした。
デーモンの首が血飛沫を上げて斬れ飛ぶ。
「デーモンの生命力ってのは侮れないからね。
だからこうしてシッカリ止どめをさしておかないと、ね?」
そう言って振り向いてにっこり笑ったクリスの笑顔。
でもそれは何か違和感を感じずにはいられない――あれ?
何だろう。 何か前にもこう言う事あったような……??
「そ、そうね。 油断は禁物よね……」
私がそう言い終わらぬうちにクリスは再びデーモンの首を落とし始めていた。
ギガンティスグレイブを打ち下ろす度にデーモンの首が血飛沫を上げ斬れ飛ぶ。
ど、どうしちゃったんだろクリス……?
そりゃ確かに油断は禁物だけど、でもどう見たってくたばってるのに止どめなんて……。
しかも何て言うか、えらく鬼気迫るものが……。
そしてクリスは最後の一体に、首筋ではなく、え?
頭に直に突き刺しそのまま力任せに引き千切ったぁ?!
う〜ん、相変らず超常的なと言うか、頼もしいと言うか、凄い腕っ節よね。
「姉さんもお疲れ様」
私がその豪力に改めて驚き感心してると全ての屍の首を落とし終えたクリスがやって来た。
「ええ、クリスもお疲れ様」
ってクリスのグレイブ、デーモンの生首刺さったままなんだけど……。
「そう言う訳だからあなたもそろそろ離れてください、ね?」
そしてクリスは私にしがみついてた少女に話し掛けた。
だが少女は尚私にしがみついたままで、そして其の様子にクリスは其の表情をしかめ……?
「聞こえませんでした?」
「クリス……?」
私はクリスの発した声色がいつもと違ってたのに戸惑いを感じずにいられなかった。
そして尚もしがみついてる少女。
「ちょ、ちょっとクリス!? 私なら大丈夫だから。
それにこのコも大変な目に会ったばかりなんだし」
私がそう言うとクリスは其の表情に不満の様な色を浮かべそのまま背を向けてしまった。
一体どうしちゃったんだろ……?
そして――。
「ありがとう……ございました。 アタシ……思い上がってました。
今まで結構色んなモンスター退治したりしてて、自信あるつもりでした……。
でも……」
「気にしなくていいわよ。でも確かにスケイルデーモンを相手にするには無茶だったかな」
「はい。あそこで助けていただけなったら……。 本当にありがとう御座いました。
あ、そう言えば助けていただいたのに名前も名乗ってませんでしたね。
アタシ、アンナって言います」
「私はセツナ。 そしてこの二人は私の大切な仲間リオとクリスよ」
「セツナ様……。 とても素敵な名前ですね。 あ、あの……」
「何?」
「セツナお姉さまって呼んでも良いですか?」
次の瞬間”どごっっ!!”と言う音が響いた。
見れば地面には大きなくぼみが出来、其の先には
クリスのグレイブに刺さっていたデーモンの頭が転がっていた。
「あんた……。 初対面でそれはあまりにも馴れ馴れしすぎるんじゃ――」
あからさまに不機嫌なトーンのクリスの声を遮るように私は慌てて口を開く。
「あ、ありがとうね。 そこまで慕ってくれるのは嬉しいけど、
でも気持だけ受け取っておくわ。 そう呼ばれるのチョットこそばゆいしね?」
私は慌てて言葉を紡いだ。 そうしなければクリスがキレそうな、そう感じたから。
そしてそっとクリスのほうを見れば――、どうにか押さえてくれてる、そんな表情。
で、少女――アンナの方はと言うと、残念そうな顔をしてたのだった。
――その日の夜。
「お疲れ様です。 しかし、あなたも大変ですね」
リオの言葉に私は苦笑いを浮かべ応える。
今、私達は森の中の開けた場所で交代で火の番をしている。
今は私とリオが起きて、睡眠をとってるのはクリスと、そしてアンナ。
結局あの後このコ――アンナを送り届ける事になり、
また彼女のお礼がしたいという希望もあって彼女の家に向かうことになった。
睡眠をとってるとは言っても二人の寝姿は対照的だった。
クリスは眠ってるとは言っても其の姿はグレイブを其の身に抱え私に背中を預け、
いやむしろ其の姿は私の背後を護ってくれてるよう。
実際クリスの直感は睡眠状態であっても誰よりも早く異変を察知する。
思い起こせば何度助けられてきただろう、この愛しくも頼もしい妹分に。
そしてアンナはと言うと私の膝ですやすやと寝息を立てている。
まぁ、昼間あんな目に会ってたし腕が立つとは言っても、
それでも私達には及ばないのだから仕方が無い。
そう。 仲間に迎えるには力不足なこのコだが、しかし悪い感触ではなかった。
私のことを慕って懐いてくれててと言うのもあるが何と言うかこのコからは、
上手く言葉に出来ないけど不思議な親近感みたいなのを感じるのだ。
そんな不思議な親しみを抱かせるこのコはリオともそれなりに上手くやってくれてた。
だが、クリスとの仲は決して良好とはいえなかった。
ウマが合わないのか相性が悪いのかとても険悪なムード。
どうしてこのコ達仲良く出来ないのかしら。 正直頭が痛い……。
「ハァ……」
そんな事考えながら二人の寝顔を見比べた私の口から思わず溜息が漏れる。
そんな私の頬にリオの優しい掌が触れる。
「セツナももう休んでください。 後は私に任せて」
リオの優しい掌の感触と言葉が私の心を安らいだ気持にしてくれる。
私はそのままリオに肩を預けもたれかかるとそっと抱きしめてくれた。
「ありがとう。 でも未だ大丈夫よ」
そして私は僅かに顔をあげると私達は互いの瞳を見つめそっと唇を重ねた。
「う……ん……」
その時膝元からの声に私達は思わず顔を離した。
アンナを起こしてしまっただろうか、キスしてるところを見られただろうか。
いや、別に隠してないから見られても平気なんだけど突然だと気恥ずかしいし。
でも、どうやら只の寝言だったみたい。
私達はほっと胸を撫でおろし、そして互いに顔を見合わせると思わず笑みがこぼれる。
「しかし彼女の剣……」
「エクリュエルタスク、って言ってたっけ。 珍しい形してるわよね」
そう。 彼女はあのあと自分のことを色々と話してくれたのだ。
その時この変わった形の剣の名前も教えてくれた。
そして何故かリオはこの剣の事が気になってたみたい。
「はい。 実は以前書物に記されてたのを見た事があるんです。
それは伝説の武器等の伝承を記した書でした」
「え? って事はこの剣も伝説の一刀ってこと?」
「確かにこの剣が其の書物に記されたものであるならば使い手である彼女も……
伝説の武器と勇者は常に対の存在と言われてます。
ただ記載されてたページは破損も激しかったですし……。
それに彼女の剣は確かにかなりの攻撃力でしたが……」
「まぁ良いじゃない。 アンナが何者だろうと彼女の剣が何だろうと」
確かに不思議な親近感を抱かせるこのコなら仲間にしても良いかなと思える。
でもそうするには色々問題が無いわけじゃない。
特に何故かクリスと仲が険悪なのは無視できない問題だし。
それに私達のパーティーは今のままが戦力バランス共に良好な状態。
だから名残惜しさが無いわけじゃないけど送り届けてお別れでしょうね。
To be continued...
>>544GJ!!
郁夫が正気を取り戻した事で流に挽回のチャンスはやってくるのかwktkしてます
新キャラ……ってことは新たな修羅場の予感!
作者さんがんばれ。最近不穏続きだったけど
それはそうと、最近solaにハマってる俺がいる。あの姉ちゃんこえぇ
前回のまとめ更新から一ヶ月くらいになるけど大体更新周期ってどれくらい?
wktkが止まらんのだが、俺みたいなのは更新が結構遅めなまとめみるよかスレ見てた方がいいのかな・・・
避難所放置するから怒ってしまったんだろ。
だから向こうに書き込めと言ったんだよ俺は。
プっww
触れちゃいけないってのは分かってるつもりだけれど……これは酷い。
既婚者は色々忙しいんだよ。
仕事とか夜とか
避難所やまとめサイトのことはsそれぞれの掲示板でどーぞ
さーんれーんちゃーん
572 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 20:20:59 ID:GcCGfogk
ttp
遅レスだ 来てるとは思わなかった!
九十九 GJ!!
やっぱおもしろい!俺の中では最高だ!
今度は茅女が拒絶されるのか? 流に笑顔が戻るのか? はたまた違う第3者が?
楽しみだ 早く続きを頼む。
ロボ氏分が不足してきた…
半竜でも良いし花束でも良いし鬱な短編でも良いから、
ロボ氏の書いた濃厚なSSが読みたい
雨の音マダー?
お、俺は貯めて貯めて一気に読む派なんだ・・っ!!
まるで週刊誌を纏め買いするかのごとく・・・どんな作品だって読む・・・
皆が皆が(´神`)なんだ・・・だからだから・・・・・
保管庫更新きぼんぬ〜!!
>>577 web拍手なりメールなり出すとかBBSや避難所に書き込めよ
どっちにしてもこのスレで書くことじゃない
>>578 いや、この場合お前さんの気に触っただけで別に変な事書いてない様に見えるんだが・・・
>>576 お前は何を言っているんだ?
触るな危険
>>580 そうだな、最近は平和だったからつい・・・すまん
投下しますよ
鬱展注意
583 :
病院倶楽部:2007/05/08(火) 13:54:54 ID:uRPc1hpX
「ねぇ、ご飯早く食べさせて。私、とてもお腹が空いているの」
「はしたないですよ、お嬢様。後一時間もすれば診察の結果も出ます、もう少しの辛抱を」
足をばたばたとさせて頬を膨らませる少女を見て、私は誰にも聞こえないように小さく
溜め息を吐いた。もう15歳にもなり、来年はエレベーター式とはいえ高校生にもなるのだ。
それなのに今のように、子供のように我儘を言っては私を困らせる。なるべく娘の好きに
してやりたいという旦那様の指示に従ってきた、というのは言い訳だとは分かっている。
甘やかしてきたのが悪いとは思っているが、きっと今回も私が折れてしまうのだろう。
「早く早く、お腹が空いたわ。餓死寸前よ」
「それだけ元気があれば大丈夫でしょう」
ぺちぺちと私の太股を叩く力は、とても弱い。だが逆らうことも出来ず、私はお嬢様の
方を改めて向いた。そしてポケットから彼女の大好物である安物のチョコバーを取り出し
袋を剥いてやると、途端に嬉しそうな声をあげた。現金なものだ。しかも普段からこんな
駄菓子よりもよほど良いものを食べているのに、舌が庶民感覚らしいお嬢様は私の指まで
をも食べてしまいそうな勢いでかぶり付いてくる。体温で少し溶けていたチョコレートで
口の回りを黒く汚し、拭いてやってもまた汚す。
「慌てなくても、これは逃げませんよ」
「ザクロと一緒に食べれるのは、今だけだもの。それにザクロが好きな食べ物は、あたし
の特別だわ。それを他の人に盗られでもしたら、そう考えると我慢出来なくて」
無垢な表情を浮かべ、お嬢は言う。それにしても懐かれているとは思っていたけれど、
ここまでだったのか。私は特別チョコバーが好きな訳ではない。安くて携帯に便利なので
仕事の合間に小腹が空いたときに食べたり、忙しいときのカロリー補充の為に頻繁に口に
しているだけなのだが、お嬢様には特別なものに見えていたらしい。そんな部分も随分と
幼い、普段は毅然としているのに妙にアンバランスな部分があるのだ。
584 :
病院倶楽部:2007/05/08(火) 13:56:50 ID:uRPc1hpX
一本目を食べ終えると、こちらの裾を引いてくる。
「もう無いの?」
「ありません」
本当はまだポケットに数本入っているが、屋敷に帰って少し休めばすぐに昼食だ。ただ
甘やかしているのではない。これだけしておいて何を今更、と言われるかもしれないが、
私は私の中のルールを守っているのだ。例えば、チョコバーは一日に五本までとか。
残念そうにお嬢様は肩を落としたが、すぐに笑みを浮かべると次の話題を振ってきた。
切り替えが早いのは、お嬢様の数ある良い部分の一つだ。頭も良いので、会話をするだけ
でも楽しい。そう出来るのは、才能の一つだろう。
『織濱さん、織濱識織さん』
予想よりは早く診察の結果が出たらしく45分程で名前を呼ばれた。診断結果の書かれた
紙を受け取り、いつも通りに異常無しだと言われて安堵をしながら席に戻り、
「はい、行きますよ」
「うん」
お嬢様が立ち上がろうとした瞬間、バランスを崩した。私はその細い体を抱いて、その
重さが偏った感覚に目を伏せた。お嬢様が産まれてきてから15年間、毎日欠かさずに見て
きているのに慣れることが出来ないのは私が弱い人間だからなのだろう。弱さ故にお嬢様
を甘やかしてしまうし、チョコバーにかぶり付いても注意もせずに口を拭ってやる。
「どうしたの?」
「いえ、早く帰りましょう。皆が心配します」
「そうね。本当はもっと二人きりで居たいのだけれど」
私は差し出された『左手』を握ると、歩幅の狭い彼女に合わせてゆっくりと歩き出す。
病院の扉をくぐり、夏の陽射しに目を細めるお嬢様に帽子を被せた。
「ありがとう、やっぱりザクロはあたしの『右腕』ね」
彼女の姿を見たら、皮肉にも聞こえるであろうその台詞。それに無理矢理作った笑みを
向けて、頷いた。小さな掌をしっかりと握って、止めていた足の動きを再開する。
右の肩からその下が無い、彼女の体を案じながら。
585 :
病院倶楽部:2007/05/08(火) 13:57:51 ID:uRPc1hpX
◇ ◇ ◇
今日も私は病院に来ていた。しかし昨日とは違い、個人的な理由によるものだ。私の体
が病んだ訳でもなければ、お嬢様の診断結果が気になった訳でもない。約束をしている娘
が居たから、と言えば聞えは良くなるかもしれないが、残念ながら色っぽい話では無い。
そもそも色恋沙汰などは私とは無縁、自分のことながら言っていて悲しくなる。三十手前
にもなって浮いた話の一つも無いというのは、どうなのだろうか。
「いや、まだ希望が!! それに私には仕事が……」
「ザクロさん、急に叫んでどうしたんですか?」
背後からかけられた声に我に帰り、振り向いた。そこに立っていたのは杖を突いて歩く、
目を閉ざした少女。年頃はお嬢様と同じくらいだろうが、詳しく聞いていないので外見で
判断するしかない。あまり良くない身近な例としてお嬢様のような存在を基準にしたなら、
もう少し年上かもしれない。だとすれば、高校2年生くらいか。最近の子供は発育が良く
体が大きいので判断が難しい。これが世代の違いというものか、と軽くショックを受けた。
「で、ヒヨリちゃん。いつから?」
「ついさっきです。色恋沙汰がどうとかの辺りから」
全部聞かれていたのか、恥ずかしい。
「そう言えば、ザクロさんって男の人なんですか? あ、やっぱり言わなくても良いです。
正体不明の謎の人との密かな交流、何だかロマンチックじゃありませんか。そう考えると
私のこの目も捨てたものじゃないですね、少し感謝ですよ。感謝感謝」
久し振りに会ったからなのか、よく喋る。この娘が私の約束の相手、ヒヨリちゃんだ。
名字を名乗らなかったし、今の台詞から考えるとヒヨリという名前も本当のことか怪しい
けれど、それ以外は至って元気で分かりやすい良い娘だ。最初にヒヨリちゃんと出会った
のは半年前、お嬢様の定期診断の待ち時間のときだった。
586 :
病院倶楽部:2007/05/08(火) 13:59:04 ID:uRPc1hpX
お医者様に診察をして頂いているとき、少し時間が開いたので病院の中を散歩していた
私は、廊下で豪快に転んでいる彼女を見付けたのだ。今でこそ閉ざされた視界を補う為に
発達したらしい抜群の記憶力を駆使して病院の中を好き放題に歩いては、看護婦さん達を
困らせているらしい。だが当時院内の構造があやふやだったらしいヒヨリちゃんは、壁に
ぶつかるわ階段で転びそうになるわの酷さだった。それを見かねて案内したことから次第
に中が良くなり、今では年齢の差を越えた友人となっているのだ。
「今日はどのくらいお話出来ますか?」
「あと二時間くらいかな、お嬢様を迎えに行かなきゃいけないから」
あまり長い時間ではないが、それでも娯楽の少ない彼女にとっては嬉しいものらしい。
短い時間を補うよう、いつものマシンガントークで様々な話題を振ってくる。最近あった
面白いこと、病院食の味付けが変わり美味しくなってきたこと、ラジオで聞いた気になる
ニュース、患者の間で密やかに流れている幽霊の噂、新しく入ってきた面白いお医者様の
奇行など取り留めのないものばかりだが、聞いていて飽きない。そのような部分は、少し
お嬢様に似ていると思う。私によく懐いてくるところなどもそっくりだ。
「あぁ、私もお金持ちの家に産まれたかったですよ。ザクロさんみたいな人が居たなら、
きっと毎日退屈しないでしょうね。そのお嬢様が羨ましい」
じゃれて腕にもたれかかってくるヒヨリちゃんの頭を撫でたとき、
「ザクロ!!」
お嬢様の声が、強く響いた。
「お嬢様、学校は?」
「ザクロに会いたくなったから、早退してきたわ。でも帰って来たら、ザクロは病院だと
ユキが言うから。どうしたの、どこか悪いの? 任せて、最高のお医者様を……」
「いや、大丈夫ですから」
ちらりとヒヨリちゃんに目をやると、小さく笑みを浮かべて立ち上がる。
「それじゃ、私はここで退散しますね」
そう言って杖を突いて去るヒヨリちゃんの後ろ姿、盲目の少女の背中をお嬢様は今まで
見たこともない、鬼のような形相で睨み付けていた。
587 :
病院倶楽部:2007/05/08(火) 14:00:58 ID:uRPc1hpX
◇ ◇ ◇
織濱識織は、一人で病院へと来ていた。学校に居るときを除いては常に自分の傍らへと
寄せているザクロは、今は居ない。それについては寂しいと僅かに思ったが、今からする
ことを見られてはいけないという理由での、苦渋の判断だ。帰ったら思いきり甘えようと、
そうした決意を胸に足を前へと進めてゆく。向かう先は573号室、中館・日和という盲目
の少女が入院している病室だ。個室なのは幸いだった、と笑みを浮かべる。
普段は入らない病棟を歩くが、注目する者は殆んど居ない。この病院は祖父が経営して
いるものの一つなので職員は全員識織の顔を覚えているし、産まれたときから毎月通って
いるので大抵の患者も彼女の顔を覚えていた。自慢の従者であるザクロを見せびらかす為、
『泥棒猫』に自分のものだと見せ付ける為にしょっちゅう院内を連れて歩いていた効果も
ある。中には傍らにザクロが居ないことを疑問に思う視線や言葉も有るが、そのような者
には学校で浮かべているような凜とした笑みを返して何事もなく進んでゆく。
着いた。
滅多に見舞いに来ないという家族が居ないことを窓から確認すると、識織は数度ノック。
唇の端を先程他の患者に向けていたものとは違う意味で歪めると、返事も待たずにドアを
開いた。驚きの表情を向けてくる日和に構わず、中へと入ってゆく。
「初めまして、では無いのかしら。こんにちは、中館・日和さん」
「あら、貴方は先日の」
「そう、織濱・識織。ザクロの主人よ」
カルテを見せて貰っていたので自分の姿が見えないことは分かっていたが、識織は己を
誇示するように薄い胸を反らした。安堵したような表情を浮かべた日和の顔を見て小さく
鼻を鳴らし、来客用の椅子にどかりと腰を降ろす。
「あの、学校は?」
「そんなものサボったわ、貴方への用事に比べたら取るに足らないことだもの」
588 :
病院倶楽部:2007/05/08(火) 14:03:21 ID:uRPc1hpX
ザクロの部屋からくすねてきたチョコバーの袋を歯で噛んで剥くと、小気味の良い音を
たてながら食べてゆく。二本目を食べ終えたところで口の周りをハンカチで拭い、三本目
を日和へと差し出した。唇に触れさせたところで、日和もそれを口に含む。
「美味しいでしょう?」
「はい」
「当然よ、ザクロがいつも食べてるものだもの。そしてザクロの特別はあたしの特別」
四本目を、今度は自分で食べる。これで識織が食べたのは三本目、ザクロは一日に五本
までしかくれないので、残りは二本になる。日和に与えたものもカウントに入れてしまう
ならば、残りは一本だ。この数分間で、一気に数が少なくなった。
「辛いのよ、その特別が減るのは。ザクロは一人しか居ないから尚更だわ。こんな駄菓子
は正直幾らでも買えるけれど、ザクロは絶対に買うことが出来ないし」
言いながら五本目をさくり、これで今日の分は無くなった。
「あの、何を?」
言っている意味が分からない、といった表情を浮かべている日和を冷たい笑みで見ると、
識織は立ち上がった。わざとらしく踵を鳴らして近寄ると日和の頬を撫でて、至近距離で
顔を覗き込む。見えないだろうが、これだけの近さなら存在が分かる。
「今日は、貴方にお願いがあって来たの。さっきのは、そのお駄賃よ」
一拍。
「あのね、もうザクロに近寄らないで頂戴。迷惑なのよ、とっても。『貴方なんか』に、
『あたしの』大切なザクロが構うのが嫌で嫌で堪らないのよ。分かるわよね?」
一部を強調するように言い放ち、距離を取る。
「貴方、目が見えないのでしょう? 気持ち悪い」
吐き棄てるように出たその一言で、日和は目尻に涙を浮かべた。
589 :
病院倶楽部:2007/05/08(火) 14:05:28 ID:uRPc1hpX
目が見えない日和は気付かない、気付くことも出来ない。外見で言うならば、識織の方
が余程体が奇形だということも、その彼女がどれだけ醜い表情を浮かべているかも。体に
何の障害も無い者が見たのなら、最初に嫌悪感を抱くのは、間違いなく識織の方だろう。
腕の有る無しを抜きにしても、それは変わらない。目を閉じてはいるけれど日和は誰より
美しい少女だ。どちらを取るかと言われたら、間違い無く誰もが日和の方を選ぶ。だが姿
を映像として捕えることが不可能な少女は、それすらも認識することが出来ずに、ただ唇
を噛んだ。膝の上で拳を握り込み、震わせている姿を見て、識織は愉悦の笑みを浮かべた。
「ザクロがどんな表情をしていたか分からないでしょう?」
容赦無く識織の言葉は続く。
「とても、辛そうだったわ。見ているあたしが泣きたくなるくらいに」
嘘だ、笑みを浮かべていたのを識織は見ていた。泣きたくなったのは同情からではなく、
自分以外にザクロの笑みが向けられていたという事実から。立場を抜きにして向けられた
笑みに嫉妬と羨望が沸いてきたからからだった。自分に向けられている笑みが偽物でない
ことは分かっていたが、たまに無理をしているのも理解していた。それが一切無いザクロ
の表情を見て、どうしようもない気持ちになったのだ。
もしも日和のようにもっと美しく産まれていたなら、もしもきちんと両腕がある状態で
産まれてきたのなら。その願いは歪んだ想いを生み出して、結果、最悪の形で露呈した。
醜く歪んだ意地の塊の、残酷な嘘の言葉。
それが決定打になったのか、堪えきれずに日和の頬を雫が伝った。
「これに懲りたら、もう二度とザクロに会わないことね」
泣き続ける日和を一蔑すると、識織はステップを踏むように軽い足取りで部屋を出た。
◇ ◇ ◇
ヒヨリちゃんが死んだ。
聞かされたとき最初に覚えたのは、大きな喪失感だった。
「残念だわ、せっかくお友達になれたのに」
学校をサボったり、勝手に私の部屋からチョコバーを盗んだことを叱ろうと思っていた
のだが、それが一気に失せてしまった。きっと、お嬢様なりのコミュニケーションだった
のだろう。二人で仲良く会話をして、私のことを話しながら菓子を食べる。普通の女の子
のような日常を与えようとしていたのかもしれないし、お嬢様自身も腕のコンプレックス
を気にせずに付き合える相手として嬉しかったのかもしれない。目が見えないということ
を使った逃げだと思う人が居るかもしれないが、対等な付き合いが出来ることには変わり
無いだろう。それでも良いと、私は思う。
なのに、その矢先の出来事だ。
私の友人が死んだという事実とお嬢様の友人が死んだという事実とが混ざり、どうにも
いたたまれない気持ちになる。何故、彼女は死ななければいけなかったのだろうか。
「自殺、だったらしいわ。悪いけど少し周りの人に少しお話を聞いたら、彼女結構悩んで
いたみたい。家族もあまりお見舞いに来なかったらしいし、体にコンプレックスもあった
みたいだし。あたしにはザクロが居るけど、彼女には」
それ以上は言えなくなったのか、胸に顔を埋めてきた。
何故、気付けなかったのか。
ヒヨリちゃんがあの元気な顔の下に、それだけ重いものを持っていたことに。どれだけ
辛い思いをしていたのか、それを知ろうともせずに、お喋りばかりしていた愚かな自分が
恨めしい。お嬢様も同じ気持ちなのか、片腕だけの弱い力でも精一杯に私を抱いてくる。
「ねぇ、ザクロ。あたしをもっと大切にしてね」
「勿論です、命に代えても」
我儘でいつも私を困らせてばかりの娘だが、長年共に生きてきた大切な人だ。家族など
言うのは恐れ多いかもしれないが、誰よりも大切に思っている。絶対に、生涯大切にして
いこうと、甘えるように抱きついてくる小さな体温を感じながら、私は固く誓った。
これで終わりです
>>591 ロボ氏新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
これは短編で続きはないんでしょうか?ザクロと識織の馴れ初めなんかも見てみたいです!!
次の投下も期待してますぜ!!
GJ!!!
欲を言えば日和には死んでほしくなかった…orz
594 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/08(火) 18:52:26 ID:sfXDMzZd
GJ!!
鬱展開注意と書いてあって、ハラハラしながら読んでたけどヒロインがレイプ
されなくて、ホットしている俺は鬼畜ですか?ヒロイン死んじゃったってのに・・・
>>595 わざと自分から話題を振りまくとはサイテーだな
そういえば、ロボって有名人なのか?
>>591 日和ちゃんカワイソス。(つд`)
救いをorz
最後までザクロは女だと勘違いしていた
男が出ねーなとか思ってた
>>602 同一IDと書くこと覚えたみたいだなw
ちょっとレベルアップしたのか
>>602 ある程度は対象を絞り込むようになったようだしな。
まあ、前が無差別すぎただけなんだが、良い傾向だ。
>>602 これぐらいで叩きって、マジで思ってるのかねぇ
どんだけ心弱いんだよ
投下します。
中野の嗤いを翔が眺めていた丁度そのころ、水樹澄香は自分の家の玄関先に、膝を抱いてうずくまっていた。冷たいフローリングの
感触が、夏用制服の薄いスカート越しにひんやりと尻に伝わる。家の中は薄暗く、そして静かで、居間の時計の針が時間を刻む音さえ
耳に届いていた。
右手に握られた携帯は開かれたままであり、そこは送信メール作成のページで固定されている。白い画面は既に節電されて光を失い
、それが長い間携帯を操作していない事を物語っていた。
送信メールの宛名は、奏翔。本文は「たすけて」の四文字のみ。それ以上は何もなく、また何もしてはいけない。それがあの女と交
わした賭けのルールなのである。そして、もうすぐ負けの許されない、大事な賭けが始まるのだ。
そのとき、ズキリと、胸の奥が鈍い痛みを放った。澄香は膝を抱く両腕に力をいれる。膝小僧が胸に食い込み、僅かに痛みがまぎれ
た。
あの日、あの女の賭けを受けて以降、時折はりさけそうに胸が痛むのだ。その痛みは食事中でも、学校の授業中でも果てはベットの
中でさえ、悪夢のようにいきなり襲ってきて、澄香の精神を疲弊させ、そして澄香の頭に不安を残してゆっくりと消えていくのだ。
その不安の正体は、もちろん翔の事である。結局、澄香には翔の気持ちは分からなかった。その気持ちが知りたくて、土日もデート
に誘ったのにやんわりと断わられた。デートが無理な理由さえも教えてくれなかった。だから、怖いのだ。怖くてたまらない。もしか
したら、翔はあの女と逢瀬をしているのではないか。いや、もしかしたら他の女との可能性もある。そうなると自分は捨てられてしま
うのかもしれない。いつの間にか疑心暗鬼の沼に首までどっぷりつかり、澄香はこの三日間ほとんど眠れていなかった。
そのため慢性化した寝不足でかさついた頬肌がヒリヒリとうずいているが、たいして気にならない。それより疲弊しきった精神が崩
壊しかけ、意識がくしゃくしゃになりそうな事の方が問題だった。そうなったら自分が自分でなくなり、発狂してしまいそうな気さえ
していた。
だから、澄香は意識を手放さないように思考し続けている。最近急激に増えた楽しい思い出をテープが擦りきれるまで、何度も頭の
中で再生する。しかし、澄香の思い出に、楽しい事は悲しいほど少なかった。
あの男さえいなかったら。そして、思考が行き着く答えはいつもここだ。
あの男さえいなかったら、もっと翔に愛されていたかもしれない。初めてを翔に捧げる事も出来たし、翔だけに染められる事も出来
た。それに、傷つく事もなかったのだ。
そう思うと、澄香はたまらなくなり、自分の体を強く抱き締めた。爪が肩にめり込み鋭い痛みを残すが、構いはしなかった。いくら
痛くてもいい。この汚れた体が、澄香は大嫌いだった。
ふと気付くと、賭けのスタートを告げるメールの発信の時刻まで五分を切っていた。携帯の時計はいつも音もなく時間を削っていく。
澄香のやる事は携帯の送信ボタンを押すだけだ。後は、待つだけ。彼が、この嘘のメールを、澄香を信じてくれるか否かが、つまる
ところ賭けの勝敗を左右するのだ。
大丈夫、きっと翔は来てくれる。
そもそも今日のテストなどどうでもいいはずだ。内申に響くテストは前回だし、今回は只の実力テストである。だからきっと、翔は
自分を選んでくれる、自分の元に来てくれる。そして、その時に言ってもらおう、彼の気持ちを。染め直して貰おう、心も体も。
そんな確信のない燃料と、実体のない温かい妄想で心を暖めながら、静かに時を待つ。
ぼんやりと、携帯のディスプレイに写し出された文字を眺めながら澄香は思う。この嘘の「たすけて」。あながち嘘ではないかもし
れない、と。
送信までの時間はもう三分を切っている。
まとめサイトがなかなか更新されないな。
∩___∩ |
| ノ\ ヽ |
/ ●゛ ● | |
| ∪ ( _●_) ミ j
彡、 |∪| | J
/ ∩ノ ⊃ ヽ
>>595-596 ( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
短いですが、ここまでです。
続きは明日投下します。
>>611 投下乙です!!
なるほど、前回の中野の問いはこういうことだったのか・・・
真相を知らないすみか(´・ω・`) テラカワイソス
これから翔がどう行動するのかwktkしてます!!
こんなに投下が来てる!
皆GJ!俺はおまいらの投下があるから仕事を頑張れるといっても過言ではない
だから保管庫更新お願いします><
>>613 保管庫にはweb拍手やBBSがあるんだからそこで言えばいいじゃん
そっちの方が確実に見るし、web拍手は励みにもなる
つうかBBSが絵のUP程度ぐらいしか使われてないし
>>614 TOPから管理人室に移ったからweb拍手の場所知らないんじゃない?
>>611 フェアでない賭けというべきか、まだそこまでの繋がりがないことによる失敗と言うべきか・・・
どっちにしてもまんまと嵌められてるすみかカワイソス
5 名前:みるく:2007/05/04 23:21 ID:EIOlnZY9h2
>>2,3
直接的(死ね、殺すなど)
間接的(氏ね、頃すなど)
卑猥(ちんことか)
の言葉(キーワード)の数をカウントしてポイントを割り出してます。
間接的誹謗中傷よりも直接的誹謗中傷の方がポイント高いです。
で、1レスの中にある一定量のキーワードが含まれると(コピペとみなして)
カウント対象から外しています。
機械的にカウントをしているだけなのでスレの流れとか煽りとかは全く考慮できてません。
エロパロスレにそれ使っても意味ないっての分かっててやってる……んだろうな。
早く新しい趣味見つけろよ。
触るな危険
気を悪くさせたようだなスマソ
そもそも泥棒猫を排除するために相手を非難したり殺害までするヒロインがメインのこのスレで
>>617とか当たり前だろ、常識的に考えて・・・
投下、大丈夫ですか?
どぞ
コンコン
「あ、待ってください。今開けますね。」
ノックするとほぼ同時に、姫野の声が聞こえる。何気なくドアを見てみると、趣味の悪い王冠の絵が掘ってあった。そういえば翔子の部屋にもなんか書いてあったな。
俺の部屋にも書いてあっただろうか。
ガチャ
「どうぞ、お入りください。」
促されて部屋に入ると、これまた趣味の悪いインテリアで飾られた部屋だった。翔子や俺の部屋とは少し違うようだが、何か意味はあるのだろうか。
「ここに座ってください。コーヒーはここに。」
そう言ってイスを引き、俺からコーヒーを受け取って置く姫野。その細い指には、シンプルな指輪がついていた。
「大きい手ですね。男の人らしい、逞しい手です。」
「そうか?まぁ、他の奴等よりは少し大きかったからな。」
実は自分の指が少し長いというのは自慢だった。しかし結婚指輪は外しておいてよかったな。こうやって指を見られてるし。
……しばらくスキを見せられない攻防(俺だけだが)が続くとなると少し鬱になりそうだ。
「どうしました?座らないんですか?」
「あ、ああ。座るよ。」
「それにしても……本当に、大変なことになってしまいましたね。」
「ああ、なにか出る方法でも見つかったか?」
「いえ、この部屋も調べてみましたけど、隠し通路みたいなものもありませんし……」
「ああ……」
姫野の話を聞くフリをしながら、横目で部屋の様子を探る。ざっと見た感じ、彼女の荷物といえるのは、ベットの上にある学生鞄だけのようだ。
次にテレビの下にある、ビデオデッキを見る。電源は点いておらず、ビデオが入っているマークもついていない。あのビデオ……人の心を壊すビデオは、恐らく全員分あるのだろう。
俺は鞄があったから鞄の中に。翔子は手荷物がなかったため、あらかじめデッキの中に入っていた。となると、姫野のビデオは鞄の中にあるはずだ。
内容は……大体予想はできる、俺と姫野の関係、俺が結婚していること。直接は言わなくても、暈したように伝えるだろう。こんな精神状況でそんなことを知れば……もし、姫野が子供のころから変わってなければ……
「………みたいなんですけど……って、聞いてますか?祐吾さん?」
「んん?あ、あぁ、隠し通路はないんだろ?」
「それ、最初に言った事です。やっぱり聞いてない。いいですか?ダイニングに……」
今度はちゃんと姫野の話を聞きながら、昔のことを思い出していた。霧の昔……あれは、今思い出しても恐ろしい……。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「お兄さまー!お帰りなさぁい!」
「ただいま、霧。」
あれはまだ霧と離れ離れになる前のことだった。霧は風邪をひき母と留守番を。俺は父と買い物に出かけた。風邪をひいた霧のため、なにかお土産を買おうとした。
もらったばかりのお小遣いで、熊……だかパンダだかの縫いぐるみを買ったんだ。たかが子供の小遣い。小さな手のひらサイズの縫いぐるみだった。
でも、それを霧に渡すと……
「お兄さま……本当にありがとう……絶対、大切にするからね!」
と、予想以上に喜んでくれた。その時はまだ、霧のその笑顔を見て、俺も素直に嬉しかったのだが……
変異はその一週間後……霧の風邪が治り、いつものように家の庭で遊んでいた時のことだった。霧は、「お兄さまがくれたから。」という理由で、縫いぐるみを常に持って遊んでいたのだ。
どうぞお。
当時ウチでは、犬を飼っていた。霧が飼いたいといって買った雑種犬だ。その日も俺と霧、犬の二人と一匹で遊んでいた。だが、霧がはしゃぎ過ぎて縫いぐるみを落とした時……
バウッバウッ!!
犬がその縫いぐるみに噛み付いた。きっと目の前に落ちてきて驚いたのだろう、
「お兄さまからもらった縫いぐるみ!!なにするのっ!!やめてぇっ!!」
霧は泣きながら縫いぐるみを取り返そうそうとしたが、犬の噛む力の方が強く、なかなか取れなかった。結局俺と二人がかりで取り返したのだが、すでに縫いぐるみはボロボロ。中の綿は飛び出していた。
「お兄さまの縫いぐるみ……うぅ…うぅ……ひっく……」
その時の霧の悲しみ様は見ていられるものではなく、なんとか慰めようとしたが全く泣きやまなかった。父が代わりの縫いぐるみを買え与えても、全然喜ばなかった。そして………それから、どれ程してからだろうか
・
・
・
・
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・
・
・
・
犬は、消えた
以上です
>>630 GJ!!
霧KOEEEEEEEEEEEEEEE
あとさっきのは荒らすつもりはなかった
>>630 めっちゃGJ!!
兄に貰った物を傷つけた者は許さない霧がかわええ・・・
これからも、このまま頑張ってください!!
>>631 >>621でも書いてるしもう水に流そうぜ?
お前さんも悪気があってしたんじゃないだろうしさ
なんでもかんでも殺せばいいと思ってるのか
まあ、そういう展開楽だよねー
, ── 、 __ i |-||
/ ヽ / ヽ (|| | /^ヽ <スクールデイズの世界に行ってくる
/ /)ノ)ノ // \∧/ ノ /ヽノ
| ///⌒ヽ / , ─/ ̄ ̄`─ ´ / ______/
ヽ /)─| ミ| / / ,-─ ′ ─────/
∠ (| |. ヽ__ノ> ( ̄ノ/ / −、 /
∠_ / ` /^\__ >  ̄ |─── |─┬┘ |───/
ノ (__ ヽ___ノ─┴ 、__ノ ̄ ̄/
/ ̄ ̄\┌─ ′ /^−、 -、_/ /_____ /
/ ̄ ̄ ̄⌒ヽ ( 丿 / | /─────/
\ / ̄/ (__ノ ̄ ̄ // /
\/ / 「やめなさい!」
投下します
妖しく光る瞳を縁取る細められた目元。粉を吹いたように赤く染まる頬。そして、含みを持ちつつ歪んだ唇。その中野早苗の嗤いの
正体を、奏翔は計りかねていた。
何が、そんなに嬉しいのか。今日のテストの重要性を澄香が知らない事が、それほど有益な情報なのか。そして、何故『嗤う』のか
。疑問が音もなく、雪のように降り積もっていく。
「そっか、よかった」
やがて中野が消えるように呟いた。
「何が、よかったんだ?」
消えていく中野の言葉に、翔が疑問を被せた。すると、彼女は小さく首をふりつつ、
「何でもない」
それから今度は喜びを噛み締めるように、声を殺して笑う。
「ただ、ちょっとだけいい事を思い出してね」
彼女の唇の両端がつり上がり、その隙間から白い歯が覗いた。
「いい事? 何だそれ?」
「簡単よ。賭けに勝ったの、まだ確実とはいかないけど、八割方ね」
賭け? と聞き返そうと口を開こうとしたそのとき、ズボンのポケットに入った携帯が激しい振動と共に、一昔前の歌をくちずさん
だ。その歌はもう活動を休止してしまったバンドの、翔の一番好きな歌である。
「電話?」
中野は少しだけ緊張した様子で尋ねる。
「いや、多分メールだと思う」
そして、この着うたが流れる相手は、澄香だけである。澄香だけがこの歌が流れるように設定してあるのだ。
悪い、と中野に会釈をして、翔はポケットから携帯を取り出し、ディスプレイを開いた。ミランの22番が両手を空に掲げている後ろ
姿、その壁紙の下の方で、「未読メールが一件あります」の文字と共にメールの着信を告げるアイコンが浮かび上がっている。そのア
イコンをクリックすると、予想通り水樹澄香の名前がメールボックスの一番上に現れた。
「誰?」
中野は僅かに身を乗り出したようだった。
「ああ、澄香から」
特に気にすることなく、そのまま事実を口にする。そのとき、中野が息を飲んだような気がしたが、それは気のせいに違いなかった。
メールの本文を開き、そして、翔は眉を潜める。本文はたった四文字だった。
『たすけて』
これだけである。
そこには絵文字や顔文字もなく、シンプルな活字だけが並んでいる。添付や、タイトルもなかった。非常にシンプルなメールだが、
逆にシンプル過ぎて、その意図が翔にはよく分からなかった。
澄香はこの四文字で何をしたいんだろう、と首を捻る。額面通りにこれを受け取れば、澄香が何らかの危機に陥っているのだろう
が、これだけでは信じるに足らない。むしろ悪戯の可能性の方がずっと高い、と思う。だいたいにおいて、それほど緊急を要するなら
ば、翔にメールを打っている時間などないはずなのだ。
しかし、それでも万が一にこのメールが額面通りの意味ならば、と考える。いきなり心臓発作を起こし、最後の力を振り絞って助け
を求めたのが、たまたま翔であった可能性もなきにしもあらず。もし本当にそうであれば、早く澄香の元へ駆け付けるべきなのだろう
。
澄香に何かあってからでは遅いのだ。
それに、澄香は……。
「ねぇ、翔?どうしたの?」
突然、自分の名前が呼ばれて、翔は我に返った。
「あ、いや、何?」
「聞きたいのは私の方よ。何か考えこんでるようだけど──」
そして中野はジッと翔の瞳を睨みつけ、ポツリとこう言った。
「──何か、悪い内容のメールだったの?」
ドキリ、と心臓が一際強く脈うつ。心の中を覗かれたような気分だった。
「い、いや、そんなんじゃないんだ」
慌てて翔が弁明しても、中野は、ふ〜ん、と探るような瞳で翔を見てくるので、動悸が一向に収まらない。やがて中野は溜め息を一
つつき、子供に言い聞かせる保母の口調で言った。
「あのね、翔。何があったか知らないけど、今日は頑張らなくちゃ駄目なんだよ。あんたはあんまり成績よくないんだから、今回の
テストの成績が悪かったら、大学に行けなくなるわ。だから、今日は死ぬ気で頑張りなさい。少しくらい体調が悪くても、気合いと根
性で乗り切るのよ」
そうだった。今日のテストは重大な意味を持っているのだ、と改めて気付く。のこのこと澄香の元に駆け付け、結果悪戯でした、で
はすまないのだ。そこに待っているのは、大学進学絶望という最悪の事態であり、また翔の人生を大きく狂わす事にもなりかねない。
だから、悪戯の可能性を考慮に入れると、澄香の元に駆け付けるのは、あまりにリスクが高すぎるのである。今は安易な行動は、出来
る限り慎むべきなのだ。
「分かってるよ。体調が悪かろうが、最後まで頑張るさ」
翔が薄く笑みを浮かべつつ、小さなガッツポーズを作りつつ言うと、中野は満足そうに、それでいて安心したようにニッコリと笑い
頷いた。その中野の笑みを見ると、彼女は自分を心配してくれているのだろう、とふと思う。いつも口うるさく、何かとちょっかいを
出してくる中野に心配されるのは、心の底にむず痒い何かが染みこんでくるような不思議な感じたが、それは決して悪い気分ではなく
、むしろ嬉しかった。
しかし、それでも澄香を思考から完全に除去する事はできなかった。だから翔は、ひとまず様子を見ようと思っている。もう少し情
報を収集してから判断しても遅くはないだろうというのが、納得できる妥協点だった。
中野に「返信するから」と告げ翔は改めて携帯に向き直り、「どうした?具合でも悪いのか?」とメールを打つ。一時間後に、再び
携帯を確認し、そこで判断する事にしたのである。
「じゃあ、翔。私、自分の席に戻るけど、試験頑張ってね」
文字を打っている最中に、中野のそんな声が聞こえた。翔は顔をあげずに、生返事を返した。だから、そのときの中野が、どういう
表情をしていたのか知らない。だけど、多分嗤っていたのだろう。
まばらだった人の姿も、今では大幅に増え、ほとんどのクラスメートが登校してきている。
もうすぐホームルールが始まる。そして、その先では大口を開けたテストが静かに自分の出番を待っている。
投下完了です。
中野・・・恐ろしい子・・・!
641 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/10(木) 07:32:14 ID:c0ZGUpfl
中野UZEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!
こいつレイプされればいいのに
>>639 毎日の投下お疲れ様です。
ここまで念入りに中野に釘を刺されて翔がどうするのかwktk!!
新規の嫉妬スレ参入者による利権争いの最中に起きる
彼が嫉妬スレにハマって私に構ってくれない彼女が
彼を刺す展開はマダァ?
ここでこういうのはどうだろうか。
幼馴染男女。男は女が大好き。でも女にとって男はただの友達でしかない。
↓
ある友人の男ができる。すぐに3人で仲良くなる。
↓
女、友男に惚れる。男、引き止めるも女は男を振る。
↓
実は友男は女で男に惚れていた。男、女にそれを言おうとする。
↓
友男は男に、信じるわけがない、そもそも彼女は君を幼馴染以上に見てないのは事実と言う。
↓
男、友男(友女)と付き合う。その事は女には知られないものの、いつの間にか友女に振られている女。
↓
女、今更男の元に戻る事すらできなくなっている。絶望。
赤いパパ氏がハーレムスレに投下してた(4日前)。
だが、このスレにはアンビエイト・ダンスの続きを書いて下さらない。
これは一体どういう事だ!?
>>646 いや、生存が確認できただけでも良しとしよう
>>644 すごく・・・読みたいです・・・
男装の麗人とかもうね(´Д`;)ハアハア
>>645 最後の絶望からじゃないか?
>>644 なんか俺が今書いてる奴と微妙に似てる
話書くの初めてだからなかなか進まないけど
(嫉妬って、萌えるよなぁ!) (ちょっと、またやってみようかな・・・)
。o○ 。o○
,;r―レ、 ,r=-、
/;;;;;;;;;;;;;;;ヽ ,ィミミ;;;;;;ヽ
fr=-、;;;r、;;ノ ftミ三r,、;;丶
_lイ Vソィ' ゙j・´ 6);;;;;)
ヽ.ノ_ ,/7ヽ、 丶ノ_ノ;rヘ
r−'''"~´i! /{Vフ"/ ヽr‐'''"~´ i! fミy'ァ''"^ヽ
l! l! l l! r:ゝ l l! Lf〈 l__,j
l! l! _」~i:|__i‐┬l!! ,.+-、l_,}__」 ̄l
l! (三ヽ--┴'''" ,j l! l! `i彡___/
にエニニニゝニ-‐--i---'''" lUミエニニニニコl_,,,ィ'
>>645 プロットをよく上げている人の中に
嫉妬よりも
「自分勝手な女が自業自得で酷い目に合う」属性の方が
強いという人が混ざっていると見る俺ガイル
まぁ嫉妬する女って多かれ少なかれ自分勝手なところはあるからそう見えるのは仕方ない気がする
>>644 そのアイディア貰っても良いですか?
微妙に中身がずれるかもしれませんけど
>>652 世間一般で嫉妬とか女の情念って言ったら、極妻とか大奥とかその辺だからなぁ。
だがこのスレの場合は基本的に真逆だ。どちらかと言うと心根は純すぎる傾向が強い。
故に、極端から極端に振れるものが多く、軽いやきもち系は投下され辛いのだ。
>>655 OKで〜す。ちなみにプロットのイメージとしては、
女は友男が女だとは知らない。そして男と友男(女)の交際も知らない、
ただ友男に何故か振られ、男は他の見知らぬ人と付き合っていたっていう、
女からみれば何が何だかわからないって展開がよし。
最後に全ての真実に気付くか、気付かないままで終わるかはまかせますw
でも、これって客観的にみれば女が何か悪い事をしたわけじゃないんですよねぇ。
女視点からすれば単に選択肢を謝っただけで度壷に嵌ってしまった感じで。
>>655 頑張って下さい!!
陰ながら応援してますNE☆
処女作投下します。
短編、300行程度です。
660 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/11(金) 01:23:38 ID:hqXhAmRG
でもなぁ・・・女が主人公以外の奴を好きになるのはなんかやだな・・・女にだけど・・・
ハイ、独占欲が強いですどうもすいません
一日目
あの女が死んでから十数日が経った。愛しい愛しいあの人の家に行くと、あの人
はまるで魂が抜けたようにベッドの上に横になっていた。悲しいことだ。いくら
あの女がただの害虫といえど、唯一の家族だ。だから彼が悲しむのも当然と言え
るだろう。少し、いやかなり苛立たしいけれど。
でも、そんな女狐ももういない。死んだんだ。……あくまでそれは事故。駅の
ホームにいるあの女にちょっとよろけて手を付いたりしたけど、誰もそれを知ら
ないからそれは事故として処理された。殺人事件な筈がない。事故よ事故、あは
は。
こうやって日記を書いていると、知らず知らずの内ににやにやと笑っている自
分に気が付いた。キーボードの上で指を踊らせながらモニターの前で笑う私は傍
目からはきっと変に見えるのだろう。でもいいの。これであの人に纏わりつく害
虫は誰もいなくなったのだから。うふふふふ。
今日のことを書こう。葬式などの面倒な事柄が終わり、あの人の家にもようや
く静けさが戻ってきたところだ。あの人はきっと傷ついているだろうから、ここ
で私が出て行って慰める。完璧な作戦だ。
私がノックをして部屋に入っても、全く反応を返さないあの人。その姿に胸が
ちくりと痛むとともに、半端な心の傷を残して死んだあの女に対する恨みが湧き
上がってきた。もっと早いうちにに『よろければ』よかったなあ。
ベッドの上で死んだように呆けているあの人を、私は優しく撫でつづけた。い
きなり強く押してはいけない。邪魔者はもういないのだから、少しずつゆっくり
と慰めていけばいいんだ。そうして、今日一日は終わっていった。
あの人は帰り際に、少しだけ私のことを意識してくれた。少しだけ名残惜しそ
うな声を発したのだ。それだけで私は天にも登る気持ちだ。あの時の表情を思い
出すと今でも胸に快感が走る。……これを書き終わったら少しだけ自分を慰める
ことにしよう。
二日目
今日は嬉しいことと憎らしいことが同時に起きた。
昨日と同じようにあの人の部屋に行くと、あの人は大分落ち着きを取り戻した
ようだった。私のことを見ると、どこか安心したような表情をしてくれた。私を
頼ってくれている、そう思うと私も頑張らなくちゃいけないと思えてきた。彼の
想いは私の原動力だ。
今日も昨日と同じようにあの人を撫で続け、慰めの言葉をかけてあげた。そう
して暫くすると、急に何かが唸るような音が聞こえてきた。どうやらあの人のお
腹が鳴ったらしく、あの人は頬を赤らめながら頭を掻いていた。その子供らしい
可愛らしい仕草に、思わずその身体を抱きしめ唇を貪り股をすりつけあの人のモ
ノを咥え……たくなって必死に自制しなければならなくなったほどだ。
話を戻そう。どうやらあの女が家事の一切を取り仕切っていたらしく、あの人
は料理が出来ないらしい。これはチャンスと言わんばかりに、私は自らの腕をふ
るうことにした。
そして出来あがった私の料理を食べた彼は、とても満足そうな表情を浮かべた。
当然だ。ずっと昔から私はいつか愛する人に食べてもらう為にと料理の腕を磨き
続けてきたのだから。
だけど、次の瞬間私をとても苛々させることが起きた。料理を食べていた彼が
ふとその手を止め、遠くを見るようなさびしそうな眼で
「また、お姉ちゃんの料理食べたかったなぁ……」
と洩らしたのだ。その後すぐに済まなそうに謝り食事を再開したのだが、私の心
に一瞬にして妬みの炎が黒々と燃え上がってしまった。
あの女、どこまでこの人の心に巣食えば気が済むのよ……! 邪魔者の癖に、
死人の癖に、血の繋がった姉の癖に……!
だけど、私はその想いを表に出さないよう必死でこらえた。私にとって彼女は
『愛する人のお姉さん』で『不慮の事故で亡くなってしまった可哀想な人』なの
だから。間違っても『憎い女狐』や『邪魔者』ではない。
怒りを必死に内側に押し殺しながら、食事は終わり、今日は帰ることになった。
焦ってはいけない。いくらあの人の心に巣食っていようと、もうあの女は死ん
だんだ。だから、ゆっくり確実にあの人を私の物にすればいい。
まだ、始まったばかりだ。
三日目
嬉しい! あの人が私の名前を呼んで、微笑みかけてくれた!
いつものようにあの人の家に行き、あの人の部屋のドアを開けた。あの人が私
の姿を見ると、ぱぁっと花が咲くような笑顔を見せてくれた。その笑顔はとても
眩しく、性欲とかそういうものではない、もっと純粋に『この人を愛していきた
い』と想わせるような輝きを秘めていた。ああ、可愛い、可愛いよ……。
あの人も大分落ち着いてきたようで、以前のように微笑み、笑いかけてくれる。
さりげなくあの人のすぐ隣に座り、その可愛らしい仕草の一つ一つを目に刻みつ
けた。あの人の匂い、あの人の身体つき、あの人の髪の柔らかさ……。
全身であの人を感じていると、ふいにあの人が話しかけてきた。
「ねぇ、なんで君はこんなに僕に優しくしてくれるの……?」
愚問だ。全くこの愛い子はにぶちんだなぁ、そこが可愛いのだけど。疑問を持つ
あの人に、優しく語り掛けるように離しかけた。
「それはね、私にとってあなたがとても、とっても大切な人だから。大切な人が
悲しんでいたら助けてあげたいと思うのが当然でしょう? だからいいの。私が
いつでも守ってあげるからね」
そう言い放つと、あの人は少し戸惑っていたけど、でもとても嬉しそうに
「うん、ありがとう……」
と返してくれた。その一言は私の股間を刺激するには充分過ぎる威力で、家に着
いた後の私を全力で慰めさせたのは言うまでもない。
今日は撫でることはせず、一緒にお話をしたり、お掃除をしたりご飯を作って
あげたりした。これって、よく考えれば『通い妻』ってやつだよね……?
あはっ、あははは! 嬉しいなぁ、やっぱりあの人には私が一番ふさわしいも
のね! あんな女じゃない、私が一番なのよ! 私ならあの人をずっと愛してい
られる、私ならなんでも出来る、そう、子作りだって……。姉で死人なあの女に
は何一つ出来ないでしょうけどね。あはは。
そうだ、今度食事にお薬でも混ぜてみようかしら。あの人がいくらまだ幼くて
も、いくら女の子のような可愛い顔をしているとしてもれっきとした男だし、外
堀から少しずつ埋めていけばきっと私のことを身体で愛してくれるはず……。あ
の人が望むならちょっと変態ちっくな、縛られたりお尻の穴を使ったりとかもし
てあげちゃう、私の身体はあの人の物だから……。
あは、あはははは! 夢が膨らむなぁ。それも殆ど実現したようなものだし。
さぁ、明日は何をしてあげましょうか。
四日目
いつも通り家に行くと、今日はあの人はベッドで眠っていた。その可愛い寝顔
をひとしきり堪能したあと、私は部屋の掃除をすることにした。昨日はキッチン
やお風呂場だったから、今日のあの人の部屋を掃除しようと思ったのだ。
あの人が寝ているから音の出る掃除機はまだかけられないので、軽く物を整理
しようと思ったときのことだ。机の上の本棚に、妙に分厚いタイトルの無い本が
あった。手にとって見てみるとそれは日記のようで、今日と昨日の境目にしおり
が挟んであった。
あの人の日記。もしかして私のことが書いてあって、嬉しいなありがたいなと
か書いてあるのかなもしかしたら私のこと好きってああそんな訳無い好きはまだ
もう少し先だでももしかしたら……なんてのんきなことを日記を手に取ったとき
は考えていた。
しおりのあるところを開くと、日付から昨日の事が書いてあると分かった。内
容は……ああ! 思い出しても苛々する! あの女、あの女……! この苛々を
忘れない為にも、日記の内容をここに書き出しておくことにしよう、内容は、一
字一句余すことなく頭に入っている。
今日も頼子さんが家に来てくれました。毎日家に来て、昨日はご飯まで作って
くれました。すごくありがたいけど、どうしてそこまでしてくれるのでしょうか。
彼女にとって僕はちょっと不幸なただの子供だというのに。気になったので、聞
いてみることにしました。
すると、頼子さんは僕のことがとても大切な人だと言って、優しくほほえみか
けてくれました。それは嬉しいことなのだけど、お姉ちゃんのことを思い出して
しまって少しさみしいです。
お姉ちゃんも、生前は僕のことを「とても大切な人だから、お姉ちゃんがずっ
と守ってあげるからね」と言ってくれてたから、やっぱり思い出さずにはいられ
ません。嬉しいけれど、さみしい。
ずっと守っていてくれるって言ったのに、なんで、なんで先に行っちゃうんだ
よぉ……! お姉ちゃん……さみしいよぉ……!
もう枕を濡らしたくなんか無いのに、今日もまた夜に泣いてしまいました。
あの女狐! 飼い殺しにしてた癖にずっと守るだなんてふざけたことをあの人
に吹きこんで! あの人を一番大切に思ってるのはお前じゃない! 私だ!
しかも、ページの下の方には水滴が数滴落ちて、ページを滲ませていた。きっ
とあの人は日記を書きながら泣いていたんだ。あの女、あの女、あの女……!
あの人もひどいよ! 私が一生懸命尽くしてるのに、まださみしいの? もっ
ともっとしてあげないとだめなの? 朝も、昼も、夜もずっと側にいてあげれば
いいの? もっと、もっと、もっと!
一ページを読んだところであの人が眼を覚ましかけたので、急いで本を本棚に
しまい、掃除を再開することにした。
その日はいまいち気分が乗らないまま一日が過ぎて行った。どうすればあの人
の心から女狐を取り除くことが出来るだろうか。どうすればあの人に私だけを見
てもらえるのだろうか……。
五日目
苛々する。すごく苛々する。あの女、あの女、あの女! あの人に何を、何を!
死体の癖に、女狐の癖に! 許せない! 許さない! なんであの女なのよ!
私じゃなくて!
……落ち着け、落ち着くんだ私。日記にやつ当たりしても仕方がない。落ち着
いて今日あったことを書こう。今日もちょっと早めにあの人の家に行って、日記
を読むことにした。昨日は一ページしか読むことが出来なかったから、今日はも
他のページも読んでみよう、と。
今日は頼子さんが来てくれて、なんとご飯まで作ってくれた。お姉ちゃんが死
んでから、本当に適当な物しか食べてなかったからすごく助かった。でも、人の
手で作られた食べ物を食べると、やっぱりお姉ちゃんのことを思い出してしまう。
ああ、お姉ちゃんの作ったご飯がまた食べたかったなぁ……。お姉ちゃん特製
のシチュー。お姉ちゃんが生地から作ったパン。お姉ちゃんが……。
ここまで考えたところで、頼子さんがすごく暗い顔をしてるのに気がついた。
もしかして声に出てたのかな……。そうだとしたら、作ってくれた本人の前で違
う人の作る料理の事を考えていたのだからとても失礼なことだ。悪いことをして
しまったなぁ。
ご飯を食べ終わり、頼子さんは家に帰っていった。その後、お姉ちゃんのこと
を思い出してまた泣いてしまいました。ああ、僕は情けないなぁ。
今日は目が覚めると、頼子さんがもう家にいました。どうせもう僕しかいない
しわざわざ鍵をかけるのも面倒だったから入れて当然だけど、ちょっとだけびっ
くりしました。
なんだか頼子さんは気分がよくないみたいで、一日中暗い表情をしてました。
やっぱり本当は僕の家に来るのは面倒なんじゃないのかな……? 最近は毎日来
てるし……やっぱり大変なんだろうなぁ。
頼子さんの、そして何よりお姉ちゃんのためにも早く元気になら……なれ……
やっぱり無理だよ……お姉ちゃんはもういないのに……。
思わず泣いちゃったけど、雫が日記に落ちなくてよかった。これでお姉ちゃん
が死んでから毎日泣いてるなぁ……あはは……。
ああ! あの人は私に隠れて毎日泣いていたのだ! もういない姉を思い起こ
して! 早く忘れればいいのに、早く私だけを見ればいいのに!
どうしても我慢できなかったから、眼を覚ましたあの人に少し説教をすること
にした。今思い出してもすごくすごく苛々する!
「ねぇ、お姉さんがいなくなってさみしい?」
「ど、どうしたの? 頼子さん、いきなり」
「寝顔をちょっと見てたけど、泣いてたよ……?」
「え? そ、そうかな?」
「早く忘れて、元気になりなよ……。お姉さんもきっと早く元気になって欲しい
と思ってるよ。例えお姉さんを忘れることになっても、幸せになってと思ってる
筈よ」
「……」
「ね? そうだ、今日はどこか外へ行ってご飯食べましょうか。私美味しい店い
くつか知ってるよ? それにお買い物もしましょうよ。いっしょに明日のご飯の
材料を買おう?」
「……お姉ちゃんはそんなこと言わなかった」
「……え……?」
「いつもお姉ちゃんは、『もし私がいなくなっても、ずっと私のことを覚えてて
ね、私のことを忘れないでね』って言ってた……。だから……そんなにすぐ元気
にはなれないよ」
「そ、そうよね……ごめんなさい……。私急用思い出しちゃったから、今日のご
飯作ったら、今日は行くね」
「うん、ごめんね……頼子さん」
「いいのよ、私が悪かったんだから、ね?」
「うん……」
「それじゃ」
ああ、悔しい、悔しいなぁ! それに憎い! あの女、死んでまであの人を縛
り続けるなんて! 死んだら早く消えなさいよ! 死んで灰になって埋葬された
癖に! あの女狐、何よ、何よ、何よ! もう私に譲りなさいよ! 生前何年も
あの人を縛り続けたんだから!
もう我慢出来ない。このまま放っておいたらいつまでたってもあの人は女狐の
幻影を追い続けることになるかもしれない。今の内に私の物にすべきだ。早急に、
即急に、今すぐに。
私の部屋の本棚の上の鍵付き宝箱の底敷きの裏にしまってある、インターネッ
トの怪しいサイトで購入した秘蔵の薬を使おう。あれを明日の夕食に混ぜれば、
きっとあの人も獣になる。それを私が受け止めて中に出してもらえば、もう既成
事実だ。ちょっと自分で慰める時に使ったけど、まだ充分に余っている。
あの人は、私の物だ。
むいかめ
あああああああのひとに拒否されたああああああ
くすりを混ぜて、あの人が苦しそうにして、わたしももう我慢出来ないからそっ
と横に座って、瞳を潤ませるあのひとの顔に、我慢できなくて、おしたおしたら
拒否されて、お姉ちゃん助けてって! 僕の身体はお姉ちゃんだけのものだって
あああああああああなんであの女実の姉の癖に肉体関係をあの人を抱いてあの人
に抱かれてあああああああなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで私じゃないんだなんであのめぎつ
ねなのよおおおおおああああああなんでわたしじゃないのわたしとあいつのどこ
がどこがちがうのよぉぉおおおおおおおおおおおおおなんでなんでなんでなんで
なんでわたしじゃないのあのおんなよりやさしくしててあのおんなよりきれいで
スタイルもよくてわがままもいわなくてなによりあなたをこんなにあいしている
のになんでわたしじゃないのわたしじゃだめなのわたしのどこがいけないn
……ああ、そうか。何が違うのか分かった。私は勘違いをしていたようだ。そ
ういえばとある漫画にもそんな台詞があったなぁ、あはは。そうと決まれば早速
準備をしに行こう。あの人の待つお家へ。
夜が明けた。私は目前にいる、軽く縛られたあの人の柔肌を眺めながらちょう
ど十回目の絶頂を迎えたところだ。本当ならあの人の身体を使いたいが、無理に
動かしてあの人を起こしてはいけない。
「ん……う……」
あの人が眼を覚ましそうだ。ずり下がった下着を直し、ベッドの前に置かれた椅
子に座りなおした。
「ほら、もう起きて、朝だよ」
彼に手をかけることはせず、優しく呼びかける。暫くもぞもぞと動いた後、あの
人は目を覚ました。
「ん……あれ? 頼子さん? どうしたのこんな早……あれ? これ何?」
「うふふ、おはよう。今日はとても重要なお話があってきたの」
「え? そ、それはいいけど、この縄何? なんで僕縛られてるの?」
「それは大丈夫、ちょっと緩めに縛ったから三十分くらいあれば自分でほどける
わ」
「え? これ頼子さんがやったの? なんで? え?」
「……なんで私が選ばれなかったのか、私とどこが違うのか……。これだけ貴方
を愛しているのに、なんで報われないのか。その答えは、死は終わりじゃないっ
てことよ。人が死ねば、その人は思い出となり美化されて永遠に記憶に残る。
『生きていれば、いろんな欠点も見えてくるだろう。でも死人は無敵だ』ってね。
それを知らなかった私が愚かだった。だから、だからね……」
用意した包丁を手に取る。それがあの人の目に入った途端、あの人は表情を一変
させた。ああ、驚いたその表情も可愛いなぁ。
「え……? ね、ねぇ頼子さん! その包丁で何をするの! だ、だめだよやめ
てよ!」
「私も死ねばいいのよね」
包丁で、腹部を切り裂いた。
「うわああああああああ!」
あの人の悲痛な叫び声が聞こえてくる。これで私のことはあの人の心に一生刻み
付けられる筈だ。無理矢理監禁して私の物にするという手もあったが、私は心が
欲しいんだ。勿論身体だって欲しいけれど、一番重要なのは心だ。あの人に無理
矢理ひどいことをして嫌われたら死んでも死にきれない。だから、これであの人
の心の中に一生住み続ける。あの人は、一生私のことを想いながら生きていくん
だ。こんなに嬉しいことはない。
「うふふ、うふ……ごふっ、ああ、痛い、痛いなぁ」
「頼子さん! 頼子さん! これほどいてよ! 救急車呼ぶから! だから死な
ないでよ! 止めてよ! なんでこんな、こんなことするんだよ!」
「あなたを愛しているからですよ……げふっ、私は、あなたを、こんなに愛して
いるのに……あなたは私を見てくれない……だか、ら、げほっ……あなたが見続
けている人のいる所に、私が、がはっ、代わりに、行けば、私を見て……くれま
す……よね……」
口とお腹から漏れた血が周囲に広がり、部屋はしだいに赤く染まって行った。
「頼子さん好きだから! 僕も頼子さんのこと愛してるから! だから死なない
でよ! 死んじゃ嫌だああああああ!」
「ごほっ、わた、しのこと、だけ、を、あいして、くれます、か?」
「愛してる! 頼子さんだけを愛すから早くこの縄を、救急車を呼んでよ!」
「あ、あはっ……うれ、しい、うれし、い、なぁ……あはっ、あはは、あは……」
「頼子さん! 早く、早く救急車を、頼子さん!」
「ね、ねぇ……さい、ごに、き、す、して、も……げふっ、いい、です、か……」
「いいよ! キスだっていくらでもしてあげる! 元気になったらキスもするよ、
一緒に住んでもいいよ、セックスだってするよ! だから止めてよ! 死なない
でよ! 最後だなんて言わないで!」
「あはぁ……うれ、しい……」
目もかすみ意識も薄れてきたが、必死にあの人の元へ這い寄る。あの人は私に説
得を続けながら、未だに必死の形相で縄を外そうとしている。かわいいなぁ。そ
んなあの人の唇に、そっとキスをした。口から漏れた血があの人の唇に付き、美
しく深紅に唇を染め上げた。
「う、ふふ、わた、し、の、ふぁーすと、きす……だい、じに、して、いきて、
くだ……さ……い……ね……」
そろそろ限界のようだ。姿勢を維持することが出来ず、ベッドの脇にべちゃりと
崩れ落ちた。
「頼子さん? ねぇ、しっかりしてよ! 頼子さん! 頼子さん!」
「わた……し……は……ずっ……と……ずっ……と……あな、た……だけを……
あいし……て……いま……」
「頼子さん! 頼子さん! 返事してよ! 死んじゃ嫌だよ! ねぇ頼子さん!」
大好きなあの人が私を呼び続けるる様を体で感じながら、私の一生は幕を閉じた。
以上です。読んでくれてありがとうございました。
頭で妄想することはあっても実際にSSを投下するのは初めてなので、
ここの描写が薄い! とかここがおかしい! とかあれば遠慮無く言ってください。
次回書くときの参考にするかもしれません(`・ω・´)
674 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/11(金) 01:40:21 ID:hqXhAmRG
>>673 GJ!!
これで初めてってすごいなwwおもしろかったよ
>>673 GJ
自分も一作目を書いてる途中なのでえらいことは言えませんが、視点の切り替えで混乱することがあったように思います
あとエピローグとして少年のその後の事を書けばよかったような気がします
>>673 うわぁ・・・なんというか壮絶な話ですな・・・
それはともかく初投下乙です。是非これからもここに投下してください。
余談ですが、改行する際には区切りの良い所でした方がいいかもしれません。
>>674 とりあえずsageようぜ?
あと
>>660見た限りじゃお前さんも嫉妬の才能があるかもな
>>673 GJ!!!
初めてとは思えない素晴らしい作品をありがとう。
次は長編にも挑戦して下さると嬉しいです!!
>>655です
まぁ、俺ですけどスイマセン
書き終えた後にプロット作者さんのレスを見て、
うわ俺と全然違うじゃんと申し訳なくなりました
鬱・援交・NTR・レイプ苦手な人はスルーして下さい
健康的な肉付きの太股を大胆に見せるようにミニスカートの裾を翻し、顔に満面の笑み
を浮かべながら遥は振り返った。もう十何年も見ているその表情は、俺に安らぎを与えて
くると同時に、胸を高鳴らせる。今時珍しい黒く長い髪も、三日月型の唇から僅かに覗く
白い歯も、どれもこれもが愛おしい。
「ねぇ、これなんかどうかな?」
「そうだなぁ」
だが悲しいことに。
「聖君、どんなのが好みなのかなぁ?」
それは俺に向けられたものでは無いのである。
俺こと椿・征夫は幼馴染みの西・遥と買い物に来ていた。もしこれがデートだったなら
どれだけ楽しかっただろうか。しかし遥の熱の向かう先は最近出来た友達の高橋・聖へと
向いているのだ。今だって、無理矢理に約束したデート用の勝負服を買いに来ているのだ。
俺がここで遥の服選びを手伝っているのも、当の聖と一番仲が良いからである。ヘタレと
言うこと無かれ、例え荷物持ちだとしても好いている相手と出掛ける機会があれば喜んで
着いてゆくのが男という生き物なのだ。
「脈はあると思うのよ、いつも距離を置こうとするし。照れてるんだわ、絶対」
「その自信はどこから来るんだ?」
「だって、あたしにだけよそよそしいんだもの。これは間違い無いわね」
間違いだ、と言ってやることが出来たらどれだけ良いのだろうか。聖に嫉妬を覚えると
同時に、心が重く沈んでゆく。こいつは何も知らない、俺の気持ちも、聖のことも。
だから、こんなに眩しい笑顔が出来るのだ。
時計を見て時間の確認、もう店に入ってから一時間以上も経過している。元から買い物
の時間は長いタイプだったが、恋に目覚めた今では更に伸びている。俺も随分と我慢強い
ものだと思う。時間もそうだが、何より辛いのは遥が聖のことを喋り通していることだ。
その愛情の一欠片でも貰えることが出来たら、そんな細やかな願いさえ消し飛んでしまう
恋する乙女トーク。それを延々と聞かされていても笑顔を浮かべていることが出来るのは、
マンモス校である織濱第二高校の中でも俺くらいのものだろう。
「どうしたの?」
無邪気な顔だ、それが何とも恨めしい。
「何でもない」
そうなんだ、と大した注意もせずに下着のコーナーに向かってくれたのは幸か不幸か。
羨ましい、俺だって下着姿の遥を見たいさ。しかしそれを見ることが出来るのは、聖だけ
なのだろう。本人の意思を除けば、の話になるけれど。
「これなんか、男の目から見たらグッと来る?」
何だ、その下着は。生地が少ないという以前に、殆んど裸だ。只でさえ布面積が少ない
というのに殆んどがレース地で作られたそれは、もはや下着の機能を放棄しているように
見える。こんなものを見せ付けられたら、鋼の精神を持つ侍でも一気に獣になるだろう。
いかん、下半身に血液が集まってきた。
「落ち着け俺、集中するんだ」
遥は尚も際どい下着を物色し、こちらに見せ付けてくる。これはエロい、もう布と言う
よりも紐じゃねぇか。これで隠すことが出来るのか、いや出来ないだろう。
「聖君、どんな反応するのかなぁ」
遥が気合いを入れれば入れる程、俺の心は重くなる。
本当のことを言ったら、こいつはどんな反応をするのだろうか。落ち込むか、泣くか、
それとも俺を裏切り者となじるのか。聖自身も只では済まないだろう。下手をしたら人生
そのものに傷が付くかもしれない。俺の人生も、聖の人生も。
そして、遥の人生も。
「よっし、決めた。これしか無いわね」
うきうきとレジに向かう眩しい横顔を見て、誰にも聞こえないように溜息を吐いた。
◇ ◇ ◇
「振ったよ、完璧に」
その言葉を聞いて、俺は動きを止めた。
「後で悲しむよりは良いだろう?」
はは、と場違いに明るく笑いながら聖は腰の動きを再開する。
平凡なラブホテルの安い一室、俺と聖は交わっていた。俺は別にゲイでも両刀でもない、
聖は紛うことなく女なのだ。普段は家庭の事情らしく男の格好をしているし、その姿だけ
見ていれば間違っても女だとは思わないだろう。だが今の聖は、どうしようもなく女だ。
俺の上で淫らに腰を跳ねさせて、いやらしく踊る。胸は平均よりも小さいが体のバランス
は良く、潤んでこちらを見下ろしてくる瞳も情欲を煽る。
「私は君が好きだ、今はそれだけで良い」
唇を重ね、舌を吸ってくる。無味の筈なのに何故か感じる甘味が思考を溶かし、うねる
膣内の感触が理性を削ってくる。たっぷり数分を持ってお互いの口内を味わい、漸く顔が
離れると透明な橋が唇にかかった。聖はそれを手指で拭うと、美味そうに指をしゃぶる。
「ほら、中で更に大きくなった。それに第一、征夫も満更じゃないから私とこんなことを
続けているのだろう? 非難される曰れは無いよ。共犯だよ、共犯」
奥まで飲み込み、グラインドをせずに腰を回してきた。抜き差しをするときとは別の、
ひだでカリ首をえぐられる感触。固い子宮口が鈴口を擦ってくるのも良い。細くしなやか
な指先がからかうように喉を軽く付いてきたが、それすらも快い。
「後悔、してるかい?」
「してるよ」
それなのに。
「嘘だね」
聖の言葉を聞いていると、どうでも良くなってくる。
強く突き上げると、濃い紅色の唇から甘い声が溢れた。
「背徳の字にある北は、背を向け合う姿勢らしいよ。正に今の征夫と遥君じゃないか」
俺の突き上げに応えるように深く腰を落とし、聖は唇の端を歪めた。尻の肉が腰骨の上
で潰れて密着し、女という生き物のいやらしさを伝えてくる。尻たぶを揉み、菊座に指を
伸ばすと、眉根を寄せて小さく背を震わせた。
「そっちの方もしてみたいのかい?」
「いや。エロかったから、つい」
「そんな正直な部分も好きだよ。もっと私に溺れてくれ」
完全に溺れることが出来たら、どんなに良いことか。
腰を掴んで一旦竿を引き抜くと、うつ伏せ状態になるよう細い体を投げた。バックの方
が深く入っていくので、俺はこちらが好きだ。それに騎乗位は聖が楽しむ要素が強いが、
こちらは俺の方が楽しい。猫のように気ままなこいつを征服している、その思考が背筋を
震わせる。俺の好きに犯されているこいつを見ると、堪らなく興奮するのだ。
溺れろ、と聖は言った。
ならば、言葉通りに溺れてやるだけだ。
何もかもを忘れる為に、俺は背徳の道を歩んでやる。俺を幼馴染みとしか見ない遥も、
そんな遥に好意を寄せられ、しかし振ったという聖も、意識の外に置いてやる。逃避だと
言われても構わない、今は気持ちの良いこいつの体のことだけで充分だ。
根本まで竿をねじ込むと、軽く達したのか顔をシーツに埋めた。だが俺は構うことなく
腰の動きを続け、膣内の感触を楽しんだ。緩急を付け、捻りを加え、思うがままに俺の下
で悶えている『女』の体を貪ってゆく。
「そう、もっと激しく。私を壊してくれ」
体ごと潰すように密着して乱暴に乳房を揉み、腰を強く打ち付ける。接合部から粘着質
な水音が響き、それを楽しむように聖は獣のような声で歌う。互いに理性の歯止めが利か
なくなってきたのが分かる、俺も聖も体を止めることなど出来ない。
「今日は安全な日だ、思う存分吐き出してくれ」
子宮口に先端を押し付けながら、俺は全てをぶちまけた。
◇ ◇ ◇
「はぁ、気持ち良いよ」
あたしは気持ち悪い。
「おじさん、もう少し色を着けちゃう」
どうでも良い、早く終わって。
何で、こんなことになったんだろう。
あたしの初恋は、見事に振られるという形で終わった。今日のデートの為に服も気合い
を入れて新しいものにしてみたし、髪だってばっちりキメていた。それなのに待ち合わせ
の場所で言われた最初の言葉は、他に好きな人が居る、だったのだ。その一言を告げた後
立ち去る背中を見て、無様なことに全く動けなかった。尾を引かない、なんて格好の良い
大人の女みたいな行動じゃない。動くことすら出来ずに、立ち尽くしていただけだ。
そこから先は、あまり覚えていない。
悲しいまま歩いて、この中年親父に声をかけられて、気付けばベッドの上に居た。抵抗
する気も起きず、自分のことなのにどうでも良くて、こんな下らない話で処女が消えた。
こうならなかったら、誰に捧げていたんだろうか。聖君か、他の誰かか、もしかしたらの
話だけれど征夫にあげていたかもしれない。今となっては遅いけれど。
「あれ、ノッてない? まぁ処女だったし、仕方ないか」
脂ぎった掌が、いやらしく胸を揉んでくる。気持ち悪い。その変態みたいな目も止めて、
吐き気がしてくるから。あそこも痛い、そんなに乱暴にしないで。初めてなのに、そんな
乱暴にしたら壊れちゃう。いや、そんなに繋がってるところ見ないで、恥ずかしい。
頭の中には言葉は浮かぶのに体は動かない。それでも中年親父は楽しいらしく、あたし
の脚を持ったり体の向きを変えたりして、醜く太った体を揺らしながら何度も突いてくる。
抱き合うような姿勢になったとき蛍光灯の光が禿げた頭に反射しているのが見えて、つい
目を反らしてしまった。こんなのに抱かれてるあたしは、何なんだろう。
「はぁ、もう出るよ。出すよ、遥ちゃん」
下品な吐息と共に、中年親父は中に大量にぶちまけた。熱くどろどろしたものがお腹の
中に流れ込んでくるのが分かる。今日は危険日じゃなくて良かった、とぼんやり思った。
「それじゃ一旦シャワー浴びてくるよ」
「はい、ごゆっくりどうぞ」
ティッシュであそこを拭きながら何気無く窓の外へと視線を向けると、見慣れた人影が
あった。それも二人分、片方は間違い無く征夫だ。彼女は居ないと言っていたのに、割と
上手くやっているみたいだ。さっき少しだけ意識してしまっただけに、相手の娘に対して
軽く嫉妬してしまう。今までは幼馴染みぐらいとしか思ってなかったけれど、実は征夫の
こと、結構好きだったのかもしれない。今になって気付くなんて、馬鹿だ。
それにしても相手の娘、見覚えはあるような気がするけれど誰だっただろうか。あたし
と征夫の交遊関係は殆んど被っているし、それなりの間だから覚えている筈なのに。
直後。
こちらを向いた彼女を見て、目眩を感じた。
お化粧もしているし、スカートも穿いているけれど、間違い無く聖君だ。今となっては
聖ちゃんと言えば良いのか、頭が混乱して上手く考えがまとまらない。
だが、その中で妙に冷静な部分がある。
聖ちゃんは、好きな人が居ると言った。一緒にホテルから出てきたということは、その
好きだという相手は征夫で、二人の慣れた様子から見るとそれなりの回数をこなしている
というのも何となく分かる。つまり、聖ちゃんはあたしから征夫を盗っていったんだ。
「許せない」
そして、あたしを笑って。
「許せない」
陰では、征夫とイチャ付いて。
「この、泥棒猫!!!!」
絶対に、許せない。
◇ ◇ ◇
目の前で惨めにもがく聖ちやんを見て、つい笑いが溢れてしまった。
「どういうつもりだ!?」
それはあたしの台詞。
「本当にやっちゃって良いのかい? 何だか抵抗してるみたいだけど」
「そういうプレイです。非処女なので遠慮は要らないですよ」
そう言うと、中年親父達は喜んで服を剥き始めた。名前は覚えていないけれど、あの日
あたしを買った奴が薄い胸にむしゃぶり付く。二人目は股間に顔を埋め、三人目は変態的
な趣味が有るのか足の指を丹念に舐めていた。騒ぐ聖ちやんに堪えかねてか、もう我慢が
出来なくなったのか、両腕を押さえている四人目が竿を無理矢理に口の中にねじ込んだ。
聖ちゃん低い声を漏らして頭を振るけれど、それが逆に気持ち良いのか恍惚としたうめき
声を垂れ流している。まるで豚の性交のようだけれど、泥棒猫にはお似合いだ。
「最低だ!!」
「あ、悪いとは思ってるわよ。勝手に征夫の携帯借りたし」
「そんな話じゃ」
再び口に肉棒をねじ込まれ、煩い声が静かになった。
最低、ね。
「征夫を盗って、どっちが最低かな? あたしを騙したのも、征夫とくっつかないように
する為じゃないの? 本当、汚い女。今の格好の方が幾らか素敵よ」
悔しそうな表情をしているけれど、一瞬動きが止まった。最後の問掛けは適当に言った
だけなのに、まさか本当だったなんて。ますます汚い存在に見えてくる。どうして征夫も
こんなに汚い雌豚に騙されちゃったんだろう。そうか、征夫は悪くない。この淫売が純な
征夫を騙したんだ。可哀想な征夫、後であたしが綺麗にしてあげないと。
「わ、儂、もう我慢ならん」
二人目がズボンを降ろし、固くなった竿を割れ目に突っ込んだ。唾液塗れになっている
けれど、あまり濡れていなかったらしい。おまけに信じられない程の大きさだ、聖ちゃん
は挿入された瞬間に白眼を剥いて悶絶した。腰を震わせ、ブリッヂの姿勢になる。
「あー、前は駄目か。口はツキさんが使ってるから、俺はこっちだな」
涙目で暴れる聖ちゃんの体を押さえ着けると、一人目の中年が尻に竿の先端を当てた。
ふ、という吐息と共に腰を付き出すと、大粒の雫が頬を伝う。後ろは処女だったらしく、
太股を赤い液体が伝った。そのまま中年が前後に腰が動かすと、瞳孔が大きく開いた。
「おぉぅ、良い締まりだぁ」
「太股も柔らかくて良いですよ」
「タカさん、好きだねぇ」
「二本だと更に締まって良いですな」
何て惨め、何と無様なのだろう。でも仕方ない、これはあたしから征夫を奪った泥棒猫
への正式な罰だ。今まで放っておいたあたしも少しは悪いかもしれないけれど、だからと
言って盗るのは駄目。それに、これからは今までの分を埋めるように征夫を愛するから、
何の問題も無い。きっと征夫もそれを望んでいる筈だ。
改めて思う。
あたしは本当は、本当に、征夫のことが好きだったんだ、と。
「うぁ、出るぞ」
「儂も」
「俺もだ」
「俺も」
四人は一斉に白濁液を放出した。
だがまだまだ足りないらしい、出したばかりだというのに固さを失わず、寧ろ先程より
大きいようにすら見える。そして四人は位置を変えると、再び聖ちゃんを犯し始めた。
二時間後。
「お、もうこんな時間か。アリガト遥ちゃん、楽しかったよ」 口々にお礼を言いながら中年達が出てゆき、部屋にはあたしと聖ちゃんだけが残った。
どれだけ出されたのだろうか、聖ちゃんは全身余すところなく精液がこびり付き、口や
前後の穴からも白い粘液が溢れていた。最初に浮かんでいた強気な表情も今は消え失せ、
光の無い虚ろな瞳が天井を見つめている。ゆきお、という言葉を時たま吐くけれど、その
呟きは口の中で跳ねる精液の音で殆んど掻き消されていた。
◇ ◇ ◇
聖が死んだ、自殺だったらしい。
体だけの関係の筈だったのに、気が付けば号泣している自分が居た。僕を好きだと言い、
こちらの悩みを知りながらも近付いてきた聖。恨めしくあった、憎いとさえ思えることも
何度もあった。いっそ全てを駄目にしてやろうと、そう思うときすらあった。俺を背徳の
道へと誘い、それを続けてきた、酷い女だ。二人きりのときは性悪で自分勝手で、しかし
誰よりも俺に近付いてきた存在。心の奥まで踏み込み、そこを住み家としていた悪女だ。
悪い部分は幾つも思い浮かぶ、とてもじゃないが誉められたような女じゃない。
だが、誰よりも尽してくれた。
愛するのは体だけでも良いと言い、汚い方法ではあるが慰めてくれた。
いつの間にか、あいつは大きな存在になっていたらしい。
「聖君のこと、やっぱり辛いんだね」
「まぁな」
こいつは知らないだろう。聖が女だったことも、俺が聖とどんなことをしていたのかも。
それを抜きにしても、何も言えない。振ったと言っていたけれど、好いていた存在の嘘を
ここでばらす訳にはいかない。ここで真実を知ってしまったら、傷口に塩だ。だから曖昧
に答えを返すしかない、これが俺の精一杯の気遣いだ。遥も、うん、と言葉を返して俺に
もたれてかかってくる。そっと腕を絡め、手を握るのは寂しさからか。
「仲、良かったもんね」
「あいつは、良い奴だった」
本当に。
思い出すのも辛いのか、顔には笑みが浮かんでいるものの、手を握る力が強くなった。
爪が皮膚に食い込み鋭い痛みを与えてくるが、口には出さない。さっきの僅かな気遣いと
同じ、俺に出来る小さな善意だ。
「あたしね、振られたんだ」
「そうか」
知らないふり、心の痛みも知らないふりだ。
無言。
この空気をどこか快いと感じてしまうのは、失礼だろうか。俺を好きだと言ってくれた
聖にも、恐らく俺以上に傷付いているだろう遥にも、だ。
「大変だよな、お互い」
呟くと、遥が位置を変えた。
先程までの背中合わせから、互いに向き合う位置へ。
「大丈夫だよ。すぐに気持ちが切り替わる訳じゃないけど、ずっとあたしが隣に居るから。
征夫も、ずっとあたしの隣に居てくれるよね? 今までみたいに、ずっとずっと、さ」
遥が隣に居てくれる。
望んでいたことの筈だ、願って止まないことだった。それなのに何故か、手放しで喜ぶ
ことが出来ない。嬉しい、という気持ちもある。小学校に入る前から恋焦がれ、十年越し
の片想いを貫き続けてきた相手だ。そんな存在が、手の中に入る。それは喜ばしいことだ、
初恋の実りという念願も叶うかもしれないし、それこそ文句を言う部分も無い筈だ。
なのに、心に黒い点が落ちた。
どこか違和感がある。
「安心して、これからも邪魔者が出てきてもあたしが排除するから」
違和感の正体に気付いた。
こいつは、こんなに濁った目をしていただろうか。こんなに暗い笑みを浮かべるタイプ
だっただろうか。粘っこく体に絡み付き、媚びた視線を送る奴だっただろうか。俺の好き
だった女は、こんなにも汚い雰囲気を出していただろうか。まるで溝鼠のような、淀んだ
空気を纏っていただろうか。そんな女だっただろうか。
違う、違うけれど。
「征夫、大好きよ。最近、やっと分かったの。愛してる」
「俺も、お前のことが、昔から、好きだった」
もう、どうでも良い。
唇を重ねてくる幼馴染みに身を任せ、俺は意識を腐泥の底へと落とした。
これで終わりです
途中まで名前入れ忘れたorz
最初からクライマックスだとは思いもしなかったぜ…
正直微妙だわ、すぐ死に過ぎじゃないか? しかも復讐も他力本願時だし…
レイプとか抜きにしてもっと修羅場嫉妬的に面白いやり方があったと思う、もったいない
あと、ぶっちゃけ言うとはっきり言って修羅場SSというより親父エンコーアンドレイプ物語ってだけ
聖なんか嫉妬する前に死んでるし、そこらへんが修羅場SSとして致命的、短い時間で書いてくれるのはありがたい
でも練り上げが足りないような感じがする、何回もスマンが
GJ!
……なんだが何をするでもなく死なせてしまうのは確かに惜しいな。
キャラはいいだけに凄く惜しい。別ルートとかあれば見てみたい。
エンコーしてオヤジとやって中に出されるような描写はいらんかったな。
これだけでビッチに思えるもん。何を今更って。
単にまわす際のコネがほしいならもっと他の描写が描ける筈。
まあ、正直素材が悪かったんだな。変なプロット出してスマンかった。
こっちも描いてもらうのなら詳しくシチュエーションの説明をすればよかった。
>>673 それでは適当な独り言なんぞを……
頼子が腹を割いてからが惜しいかなと。傷の大きさを示す為として腸が抜け落ちる感触やら
音なんかもあって良かったかも。それとトラウマを植えつけるならもっと派手にする事を考えさせてもOKか。
歩み寄りつつ指落とすとか肺を刺すとか。血溜まりを踏む音とか感触とか。
腹割いただけで血が食道を登るかなぁ?とは思った。
男の反応もあと一歩細かく書いてあれば現実味が増したかも。
それと最後。ベッドの傍に倒れるよりは男の顔を抱きしめつつ自分の頚動脈を切断。
うふふ私の色が彼の瞳を埋めていく私は彼を手に入れたとか。
中盤までの心理描写はOKでつ。緩急が良い。台詞も良いと思う。
漏れも一発目は猟奇ですた。ナツカシス……
感性は尖ってると思われるので今後も精進されたし。
>>689 ネタに詰まった作者がプロットに手を出しても失敗するいい見本だNE☆
聖に対するレイプはほぼ趣味だよなぁと思いつつも面白かったので満足
プロットを出した人として、ロボ氏に個人的な感想を述べておく。長文なので読みにくい人はスルーで。
自分が予想していた話だと、友が男に惚れて女に嫉妬し、女を蹴落とす為に自分の男装姿を利用する、
そして友にも男にも振られた何も知らずに再起不能になって女を見て完全勝利を喜ぶ友という話でした。
つまり真のヒロインは友だったと。それなら女がエンコーしようとも、堕ちた事を描写できてるからいいです。
それをネタに友が、女はやっぱりそんな馬鹿な奴なんだと男に告げて喜ぶという描写もできますから。
逆に女をヒロインとするならエンコーなんて描写は正直不要だったと思います。
そもそも友に振られた後、なんでエンコーに走る前に男の下に戻ろうとしなかったのか。
少なくとも友にも振られ、男に彼女ができて結果的に振られた後ならまだしも、
まだ男に彼女がいる事も知らず振られてもいないのに即他の男とセックスするのはどうでしょうか。
エンコーの前ならまだ男はフリーだと思っているのだから男の下へ戻る余地はあった筈です。
女の精神崩壊を描きたいのか、友を凌辱するコネを作ろうとしたのかはわからないけど、
少なくともそれなら、セックスする寸前で友に気付き、自分の代わりにオヤジに友を勧める話もできます。
つまり、両方のエンディングの相性の悪い部分を引き抜いてしまったみたいですね。
まあ、ここまで書いておいてなんですがロボ氏だけ一方的に叩くつもりはありません。
プロットを出した自分も原因ですから。もう少し、予めここらの話をしておけばよかったと反省してます。
文章書けない奴が偉そうだけど、こちらも説明不足ですみませんでした。
>>689 投下乙です。
ん〜、今回は
>>700さんと同じように予想していた話と全く違っていました。
無理に短編にするのではなく長編で出会いの場面から初めて欲しかったです。(あと援交はちょっと・・・)
できればもう一度同じプロットで書かれてはどうでしょうか?
恐らく原案者も住民も納得していないと思うので・・・
>>696 どんだけリアル志向なんだよw
いや良い意味でだけどさ
あ、ロボ氏に余裕さえあれば、私も書き直しは希望します。
私はロボ氏の描いた作品が悪いと言いたいのではなく、
遥が落ちるシーンと遥が聖から征夫を取り戻すシーンの同居が問題だと言いたいだけですから。
別々に見ればいい描写ですので、期待できます。鬱陶しくてすみません。
3 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 03:26:44 ID:zh573g32
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(
http://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
・雑談、エロゲー、アニメetcはなるべく本スレで。ライトノベルは過疎ってるのでラ板にorz
↑を守れていない人間は大人しく書き込みをやめてくれ
自分が思っていたのと違うってタダをこねて、書き直しを要求するなんて
人としておかしいだろw
文句があるなら自分で書け・・
プロットを提供して作品化した後も私は
作者には口出ししなかったけどね
失敗作はそれとして受け止めておいて、いつまでも縛られることはないよ。
>>673 作品的に楽しめたけど
視点の切り換えの時はレス毎に分けた方が見栄え良くて
読者側もわかりやすいと思うよ
>>793 すまん・・・、思ってるのと違うから書き直せなんて事じゃなく、
描写やストーリーがまずいけど、提案したプロットもまずかったのかなと。
書き直せってのは、作品自体を否定するのではなく、文章はよかったから見直したいって事で。
まあ、結果的にやり直しを強制してる形になってるか。すまね。
ここでいうプロットって、あくまでアイディアの刺激、喚起であって
原作として、他人が、そいつの脳内ストーリーを
思い通りに形にしてくれるわけじゃないと思うんだ
そんな事、今更言われたって……。
分かってないやつなんていないだろwww
……え?いない……よな?
>>706 の対応は
プロットを書き込みした所だけは何の問題もないが
叩かれる理由
プロット作品→作品化したけど
自分の思い通りな展開じゃない
>エンコーしてオヤジとやって中に出されるような描写はいらんかったな。
>単にまわす際のコネがほしいならもっと他の描写が描ける筈。
> まあ、正直素材が悪かったんだな。変なプロット出してスマンかった。
>あ、ロボ氏に余裕さえあれば、私も書き直しは希望します。
>まあ、結果的にやり直しを強制してる形になってるか。
↑こんなDQNな発言されると誰だって叩かれるよ
特にプロット化したロボさんに何のお礼の言葉を言わずに
非難ばっかりしているのって人間としてはどうかと思うよ
ロボ氏が作品をわざわざプロットを文章化してくれたこと、そのことはGJに値するけど内容はGJとは言えないな
レイプ欝要素あっても俺はいくらか耐性あるから修羅場と嫉妬さえあればおkって感じなんだけどそれが薄いからな…
上に書かれてる通り聖はただレイプされて死ぬだけの要員みたいな感じだし、修羅場的要素が薄い
それで中途半端な作品になってしまっただけに残念でしょうがない
うーん…それ以前に君らさ、
「スレは作品を評価する場ではありません」
って言葉の本当の意味を考えてみたことはないのかい?
よくよく書き手の立場に立ってみるといい。
受け入れられるかどうか不安。スルーされはしないか、罵倒されはしないかという不安。
俺は書き手じゃねぇ、って奴も、何か一つ、発表の席に立ったことくらいあるだろ?
誰でも知っているはずだ。人の注目を集めるのは心底恐ろしいことでもある、って。
だからやめとこうぜ。
ツッコミしか来ないような場所で、誰が書き手になろうなんて思うもんか。
>>709 別に
>>706はどっちのヒロインが残ろうともかまわないようだが。
ろくに書き込みを読まず自分の思い通りな展開じゃないから気に食わないんだっていうのは思い込みが激しいんじゃないのか?
ま、確かに援交シーンはいらんかったな。
これじゃ征夫を取り戻したいというより、今まで自分を騙した恨みの理由に征夫を使ってるだけに見える。
プロットと違うから書き直せ?馬鹿じゃねーの
それなら自分で文章にしろよ
つかプロットの時点で嫉妬成分ろくに入ってないし、プロットがそんなんじゃあロボ氏の作品も駄目にもなる
>>713 プロットと違うから書き直せなんて誰も書いてないだろw 妄想かよ。
書いてあるのは、気に食わないから書き直せ、だよ。
>>713 そこまで攻撃的に書かなくてもいいだろ・・・
希望してるだけであって命令なんてしてないし、他の誰かが書いてくれるかもしれないしな
どちらかと言うと
>>700氏のプロットは最後の所から修羅場が始まると思うぜ?
プロットってこれ書いてくれ、ってリクすることだったのか?
作者にネタを提供してやることだと思ってたわ
>>644見る限りじゃネタを書いて、それを気に入った作者がSS書くって感じじゃないか?
>>716 妄想を文章に出来ない香具師がここに書いて文章化してもらうみたいな感じ
まぁ、リクの要素が無いわけでもないが文句付けたり書き直しを要求するのは失礼だと思う
>>715 >最後の所から修羅場が始まると思うぜ?
それはお前の考えだろ
肝心な修羅場の部分が書いてないんじゃあ意味ないだろ
泥棒猫や邪魔者を排除するという要素はあると思うけどな。
ここは嫉妬以外にも三角関係や修羅場を書く場所だし、無理に嫉妬って考えなくてもいいんじゃないか?
単純にロボの作品がつまらなかったから文句付けてるなじゃね?
面白かったら多少違っててもここまでギャーギャ−言わないじゃん
NTR耐性無い奴が拒絶反応起してるだけに見えるんだけど
ツンツンした焼餅程度でも十分なはずだったが
いつの間にかどんどんハードルが上がっていっちゃったな
荒らし目的じゃない議論だったら避難所でして欲しい。
>>722 拒絶反応ってよりは、フられたから援交するヒロインのビッチさが・・・
それはそれで長編化して欲しい
今までにプロット提供したやつがここまでグダグダいうことがあったかね。
ロボ氏カワイソス
そう言えばロボ氏のハンドルの由来って
やっぱり機械人形から来てるのか?
それとも意表ついてシートンの狼王だったりして?
このまま行くと誰か別の職人が
書いてもいいか?とか聞いてきそうだな
てか、お前らは作者が光臨していない時はばんばんとプロットとか投下しろよ
すみませんでした。
私は別にプロット通りにならなくても、採用されるだけで嬉しいです。
ただ、それとは別に描写に少し不満があったので指摘したのですが、
>>713さんのいうとおり、私の書いたプロットにも原因があったのだろうといいたいのです。
ですので、話自体がつまらないと全否定するわけではありません。むしろ面白くできてると思います。
その事を意味して、問題を解消した話がもう一度見たいと希望したのですが、
確かに気に食わないから書き直せといってる事になりましたね。
もし書き直すなら楽しみにしてると言えばよかったのでしょう?それも書き直しを前提としてますから拙いですね。
ですが確かに
>>709さんの言うとおり、プロットを作品にしてもらったのに礼を言わない私に問題があります。
ロボ氏には例も言わずに不満を口にした事について深くお詫びするとともに、作品の投下に感謝します。
そしてスレも皆さんも、私の浅はかな書き込みのためにスレが荒れる結果となって申し訳ございませんでした。
これ以上スレが荒れるのも問題ですので、これで失礼します。
ここから通常営業
少し付け足します。
私の書いたプロットにも問題はありました。
プロットだけでは嫉妬分を感じられないというのがありました。
私は三角関係と邪魔者の排除に重きを置いたつもりなのですが、
嫉妬がないという面ではわかりにくい内容でした。すみません。
うわぁ……。
何こいつ。
スマソ。
誤爆スレに書き込むつもりが、間違えてこっちに書き込んじまった。
上の発言はこのスレとは関係ないものだから、無視して。
>>730 >>もし書き直すなら楽しみにしてると言えばよかったのでしょう?それも書き直しを前提としてますから拙いですね。
ロボ氏、ありがとうございました
の一文だけで後は目を瞑れば荒れなかったんだけどね
ようするに空気を読めなかったことが原因
去るものを叩いても不毛
>>732 プロットの問題ではない・・
おまえ自身の社会のマナー、掲示板のマナー、このスレのマナーを
守らなかったのが原因だ・・。
ロボ氏の書いた作品は充分に素晴らしい
普通に真似が出来るレベルじゃないってことは読めばわかるだろうに
しかし、姉妹日記やスウィッチブレイド・ナイフを書いたプロットの人は
プロット投下後には作品の展開に口を出さなかったのにね・・
>>738 そこは本当にすみません。
プロットを採用された人は、それだけでありがたいのですから口出しするべきではありませんでした。
スレでも普通に問題点の指摘はあったので大丈夫だと思ってしまいましたが、空気が読めていませんでした。
ID:48rTl3l1
さっさとあぼーんしろよ、後お前ももうROMっとけ
>>737 短編だからしょうがないけど唐突に終わって不完全燃焼な感じがするよ、仕方ないのかもしれないけど
あと、俺が特殊なのかもしれないけど泥棒猫視ねな修羅場じゃなく、一方的な逆恨みの復讐にしか感じなかった
何をいったって無駄だろ
プロットは原作みたいなもん
原作と全く違ったら文句付けて当然だろ
信者がロボ氏を擁護したい気持ちも分かるが原因はロボ氏にもある
うるせー
批判していいスレじゃないが
議論していいスレでもねえぞ
>>743 プロットを依頼したわけでもないのに
プロット通りに書いている人間なんかプロでもいるわけないだろうがw
>>743 事前に展開が少し違うとはロボ氏もいってたからもういいだろ
ただその展開がNTRと逆恨みってことで拒否反応がでた奴も居るという事だけだ
そろそろ、通常の流れに戻らないか?
全裸で投稿を待っています
賛成。流石に疲れてきた。
空気読まずに言うがなんか最近普通の嫉妬じゃ抜けなくなってきた
>>749 ここのSSでも駄目ならもうリアル修羅場しかないな
プロット通りに書けなかったロボ氏にも責任あると思う
プロット書いた奴は謝ったんだからロボ氏も謝罪するべき
安易に〜するべきなどと言うことばを使うものではありませんよ。
いつまで引っ張るつもりなのかねェwwID:48rTl3l1の人気に嫉妬
>>751 ですので、私はプロット通りに書く書かないについては言及するつもりはありません。
お願いします。スレがこれ以上荒れるのは問題なので、この辺にしてください。
てか、いい加減にスルーすることを覚えて欲しいもんだけど・・
今日は神の投稿する雰囲気じゃないな
>>754 素直にROMっとけ書き込めば書き込むほど単発IDの思う壺だからさ
荒れるのが目的なら別だが・・・・
携帯厨が増えてからロクなことがないな
メガンテ
759 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/11(金) 19:08:42 ID:tk/eAlkS
糞スレage
ID:48rTl3l1をNGにしろ空気が悪くなってる
ロボ信者必死www
触るな危険
煽るな危険
|.:.:.i.:.::.:i /i.:.i i.:.:.:.:.:.:/ .//: |:|.|.:.:.:.:.:i.:.:.:.:|
.|.:.:.:i.:..:.:i.:.:._i_i:ir'~^.i~:.::/ .//: '''''''ーェ/. |.:.:.:.:.:i.:.:.:.:.|
|ヽ,:.i:.i:.:.ir'´i:::||::::ー::ォト /'´: :r:=‐-;/ `.|..:.:.:.://.:.i.:::| もう、○○さんったら
|.:.:.:ヽト,i.:.:|.:.:|r=(.f"::"j'ト /:: ´ r'f"ヲ:ォ;;j|.:.://.:.:..i.:.::|
/.:i.:.:i.:.ヽ,ト:.:.ヾ:i::::`''"~´::: .: ''"`''-''::xリ,ィ:.:/.::i.:.::i.::.:.:ト, 私に構って欲しいから他の女の子と
.:.:i.:.:i.:.:.::トi`'ト、:.ミ、_ .:i .r''´;::'.|/:.:.i..:.:i.:.:.:.:i.:|
:.|.:.:i.:.:.:.:i.:.::\ト'ト=,,__ ::" :,'.:.:.:.:/.::.:i.:.i:.:.:.ト,|手を繋いで歩いたりしてるんですよね?
.|.:.:i.:.::.:.:i.:.:.::i.:.:´.ト、:::: ''' ‐.'' /.:.:.::/..:.:.:.i.:.:i.:.:.:.:iヾ、
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.:.:.:.i.:.:.:.:.:i.:.:.:.:i.:.:.:.:i.:/ー|`‐ 、__ r ´.|^`.V.:.:.:/.:.:.:.::..:i.:.:.:.:i.:.:.:.:i ヾ,
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._,/` ,,,i{!゙‐'''''゚'i、 .}" ゙ヽ,,| .,!| ,/l゙.,l} ,!|`,i´ │ `'-,,"゙''―-,,,,_
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ヽ,,|_,,,,j,′ .|゙l.| .リ、゙''┘.|! ゙゙”|゙゙゙゙゙I'ヘ ゙l
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.,,/` { `'-、 .| ` ゙lヽ、 ,,,,_、 ,/l゙ レ''\、
/ | `'-,. ,! .゙l.`'-, ̄._,,,-‐" .l゙ | `'i、
../ .| `'く、 ヽ `゙^ l゙ .l゙ \
'" _,,―''.| ゙'‐,、 ヽ l゙ .| \
_,,-'"゛ ._,-| \、 .\ ._,,,,-''゙l ゙l ヽ
,/ ,/゛ ゙l `'i、 ゙'("゙^ │ ヽ 'ヽ、
,/ _, | `'-,、\ ゙l、 \ `''i、
さあ、私が泥棒猫を殺したら直行でラブホテルで私とあなたの愛を確かめましょう!!
そしてラブホから出てきたところを第二の泥棒猫に目撃される、と
ド濃い修羅場もいいけど、微笑ましいレベルの嫉妬・三角関係もいいなぁ。
「沃野」の序盤とか最高だ。終盤も好きだけどね。
スレ外だが・・
ま(ryに心が襲われている最中を目撃して凶器で頭を殴りつけた後
言葉様がま(ryに心にはもう近付かないで下さいと言う場面において
刹那と分かれた途端に顔を真っ赤になって心を餌にま(ryに近付く
言葉様の女性心理について教えて欲しい
あれほどデレデレして可愛い女の子的な行動も珍しい
てか、実の妹が襲われているのに軟化しすぎですw
流石にそれは本スレで聞いてきた方がいいぞ
73 名前 名無し猫@鋸準備中 2007/05/11 (金) 17:28:07 ID = f51579cf95
28分頃に単発IDが来たら笑う
75 名前 名無し猫@鋸準備中 2007/05/11 (金) 17:38:14 ID = f51579cf95
相変わらず4分ルールを守ってるなw
76 名前 名無し猫@鋸準備中 2007/05/11 (金) 18:51:00 ID = f51579cf95
プロット通りに書けなかったロボ氏にも責任あると思うニダ
プロット書いた奴は謝ったんだからロボ氏も謝罪するべきニダ
・・・腹が痛てwwwww
避難所が酷い有様
だからなんだよ
避難所の話は避難所でしれ
昔のエロゲで、第二次世界大戦時に最終兵器として冷凍睡眠していた
強化人間が、現代に蘇るってのがあった。
これ、改造できねぇかな?
主人公は強化人間で、現代まで眠るまでは原作の通り。
ヒロインが(事故か偶然か)主人公を蘇らせ、最初は手取り足取り現代について
学習させるが、その内恋愛感情に変わっていく。
何日か経った後に、別の場所で強化人間(女)が蘇る。
実はこの強化人間(女)は主人公のつがいであり、本来の目的を思い出させようと
主人公を連れ出そうとする。
しかし主人公は、ヒロインと離れたくないと思い始め、強化人間(女)を否定する。
強化人間(女)は、ヒロインが原因で主人公が狂ったと思い、抹殺&強奪を試みる。
果たして、ヒロインと主人公の運命は?
もしかして、そのゲームはヒロインA、B、Cが遺伝子的に同一人物だった……ってオチのやつか?
>>773 スマン、よくわかんね。
かなりうろ覚えなんだわ。
ゲームの主人公が、ヒロインの曽祖父に似ているってのは覚えている。
後は・・・、同じような強化人間が出てきてバトル展開が始まるってのもあったような・・・。
蝉丸さんが出てきたやつだな、多分
白髪頭で頬に傷があるナイスガイだった気がする
あとメインヒロインがスパッツだとか、良い乳をしたお姉さんが居たりとか
では久々に投稿致します
プロロ−グ
また、俺はあの悪夢を見ている。
夢。
否応にも半強制的に流し続けられる映像は俺の心が引き裂ける。
待っているのは、大切にしていた幼馴染の泣き顔。
俺、深山一樹が二人の少女を傷つけた高校生時代の過ちが夢として何度も再現される。
どんなに苦しくても辛くても、人間は逃げることができずに永遠にその過ちに追われることとなる。
ゆえに、俺は今も悪夢から解放されずに自責の念に押し潰されている。
「カズちゃんカズちゃんカズちゃんっっっ!!」
可愛らしい声と同時に俺の背中を叩きまくる容赦のない幼馴染が俺の惰眠を防ごうとするのは少し殺意を感じるが、
俺は学園の昼休みという短い時間で疲れを癒したいために懲りない抵抗を続けるつもりであったが……。
「もう、更紗ちゃんたったら。カズ君を殴るんだったら業務用エクスカリバーで頭から足まで真っ二つにしないと起きないよ」
「それもそうだね……。刹那ちゃんの提案どおりにカズちゃんの肉体をバラバラに引き裂いて
ミキサーに粉々にでもしないと起きてくれなさそうだね」
「そんなことやったら間違いなく死ぬわぁぁぁーー!! アホですかあんたらは」
貴重な眠りから現実世界に帰還すると自分の机の周囲に集まっている幼馴染たちを一蹴する。
放っておけば何をやるのかわからない一般常識概念から少し外れた女の子たちだからな。
注意深く警戒しておかないと外国に売られそうで恐いぞ。
「カズちゃん。ようやく、起きたんですね。良かった」
「良くないわ。昼休みという勤勉に励んでいる生徒の安らぎの時間を奪われて、俺は一体何を楽しみに生きればいいんだ」
「カズ君。授業中もたっぷりと寝てたのに。まだ、眠たいの?」
「どうせ、私たちのいやらしい裸を想像して寝られなかったんじゃないの。カ・ズ・ち・ゃ・ん・」
「どこでそんな言葉を覚えてきやがった。更紗」
「カズ君が隠してあった秘蔵のお宝本を燃やすときに中身をちらりと確認した時じゃないのかな?」
「な、な、なんですと……!?」
俺に何の断りもなしに癒される本を躊躇なく捨てやがったのか。
幼馴染っておーそーろーしーいー。
「そんな事はどうでもいいんだよ。カズちゃんを起こしたのは……。ほらっ」
更紗が刹那の方を向くと彼女は照れ恥ずかしいそうに頬を手で抑えていた。
「刹那ちゃんが希望の大学を推薦入学で受かったんだよ」
「本当に?」
「裏口入学じゃないよぉ〜カズ君。正真正銘に受かったんだからっっ!!」
刹那の甲高い声を上げながら、ポカポカと俺の頭を叩いてくる。嬉しそうにその光景を見つめている刹那。
そして、サンドバックのように殴られている俺と彼女達はずっと一緒に過ごしていた幼馴染だ。
家は隣同士で小中高と一緒で幼馴染の関係は腐れ縁のように続いていた。
思春期の男女の気まずい関係を通り越してべったりとくっついて離れようとしない二人の幼馴染に嘆息しながらも、
仕方なく頼りのない二人の面倒は辛抱強くみていた。それは互いの両親から任されているし、
使命を放棄して帰れば俺の親父の鉄拳の制裁を受けることになっているからな。
拒否権も行使できない俺は二人の幼馴染と青春の日々を過ごすと言えば、
恋人がいない男性からナイフで背後を刺されるかもしれないが、
女の子二人と一緒に過ごすのはとーーてーーも神経を使って思わず胃炎になるぐらい大変である。
この……二人は両親や俺以外の他人には全く心を開こうとしなかったからだ。
白鳥更紗(しらとり さらさ)
長い髪を黄色いリボンに纏めて、中学生のような童顔の顔立ちをした女の子。
俺と接する時は天然で少しおっとりして少しだけ騒動しいのだが……。
いざ、他人、クラスメイトの前になると借りてきた猫のように大人しくなる。
人付き合いが苦手な更紗は怖怖しい態度でボソボソと呟いた声でしか話かけることができない。
俺のことを、『カズちゃん』と呼ぶ。その呼び方はやめてくれと頼んでも一向にやめる気配を見せない。
進藤刹那(しんどう せつな)
栗色の長い髪を真っ二つに分けて紐かゴムで結んでいて、
顔立ちは同世代の少女の平均的な容姿を上回っているような顔立ち。
小柄な体で精一杯に動く姿は可愛いと評される女の子。
心を許した相手にはとことん懐いてしまうが、そうではない赤の他人の前では適度な距離を置いてそれ以上近付けさせない。
気が弱くて引っ込み思案の彼女は他人に物事をあまり強く言えないという短所もある。
俺のことを、『カズ君』と呼ぶ。まだ、カズちゃんよりは少しまともな程度だ。
その二人が学園生活を暮らすために俺の依存度は皆様のご想像でお考えください。
ともあれ、刹那が見事に希望していた大学を推薦入学したことは俺と更紗にとっては祝うべきことであり、
大学の受験を控えている俺と更紗にとっては羨ましい限りであった。
だが、今まで幼馴染としてずっと一緒に居た俺達は離れ離れになって互いの進路を行くことを意味していた。
俺に依存していた刹那と更紗の学力は俺が希望する3流大学なんて余裕で行ける程の高い学力を持っていたので、
教師や親や、そして、俺の強い勧めで互いの学力に合った大学を受けさせることにした。
何も言わないと、更紗と刹那は進学先の第一希望を、俺が受ける大学に決めるかもしれないからな。
これは二人にとって、俺なしで生きるために乗り越えないと行けない壁であった。
刹那の推薦合格が決まってから数日後。
学園の放課後の屋上に俺は呼び出しを喰らっていた。
本当なら面倒臭いので無断キャンセルをするところだが、珍しくというか初めて手紙で時間と場所を指定された物を貰った。
いつもと違った様子が気になったのか、俺の足は自然と屋上への階段を上っていた。
屋上に着くと茜色に染まった空がどこまでも果てしなく広がっていた。
フェンス越しに手紙の差出人が肌寒い風にスカートの裾を揺らしながら待っていた。
「もう……。来ないって思ってたよカズちゃん」
「どうしたんだ。いきなり、こんな物を貰ったからびっくりしたぞ」
猫の肉球の模様が付いている手紙をわざとらしく取り出して俺は更紗が必死に書いたであろう左右に動かした。
「カズちゃんが来てくれるように必死に想いを込めて書いたんだから」
「で、何の用だ。わざわざ手紙まで書いて呼び出したんだから。何かあるんだろうな」
「もう、カズちゃん。少しは女心をというものに気を遣ってください」
刹那は真っ赤な夕日のように顔色を真っ赤にして、俺を真剣な眼差しで見つめていた。
「刹那ちゃんが推薦で大学に受かちゃったね。今まで仲良しだった幼馴染が離れ離れになるんだよ。ちょっと寂しいです」
「確かに離れ離れになるかもしれないけど、幼馴染の腐れ縁がなくなるわけじゃないんだぞ。
会おうと思ったら、家は隣同士なんだからいつでも会えるじゃないか」
「そういう問題じゃないんだよ……カズちゃん」
「どういう問題」
「私はもっとカズちゃんの傍にいたい。今の幼馴染の関係よりも深い絆で結ばれたいって思ってるの……。
カズちゃん。
私はあなたのことが小さな頃からずっと好きです。
ずっと、カズちゃんの事を想っています。だから、私と付き合ってくださいっっ!!」
「えっ……更紗?」
突如、更紗から告白されたと脳が物事を理解するまで軽く間を空けてしまう。
それほど、俺にとっては更紗の告白は唐突で予想できなかったのだ。
「恋人同士になりたいと思っています。だから、ちゃんと答えを聞かせてください」
これ以上顔色が朱に染まった更紗が恥ずかしさのあまりに俺から視線を向ける。
幼馴染としての認識から一人の女の子へと意識すると告白されている側も照れ恥ずかしい。
「俺は……」
ずっと、幼馴染として隣にいた更紗。いつも傍で笑顔を絶やさずにいた少女を。
俺は一体どういう風に思っているのか?
改めて、考えてみる。
少し一般常識から外れている天然なところもあるが、人付き合いがあまり上手ではない女の子。
もし、更紗と付き合えば、残りの学園生活も楽しく過ごせることであろう。
ただ、脳裏をよぎってしまったのは……もう一人の幼馴染の存在。
刹那。
もし、あの気が弱くて引っ込み思案な少女は俺と更紗の仲を応援してくれるのか?
だが、不思議なことに俺の勝手な想像では泣き顔を浮かべている刹那がいた。
それに、3人の幼馴染の関係は両者のどちらかと付き合ってしまえば……
もう今までの関係じゃあ居られなくなってしまう。
幼少の頃から続く3人の関係。
それは、深山一樹の人生の大半を過ごしていた大切な思い出を全て壊してしまうという意味である。
それは、考えるだけで自分の心が引き裂かれそうになった。
更紗の告白を受けるまで考えたこともなかったが、それはなんて恐ろしい事であろうか。
付き合ってしまうとこれまでの日常が壊れる。
だとしたら、俺ができる事は一つだけであった。
「ごめん。更紗とは付き合うことができないんだよ」
喉から必至に声を振り絞って俺は精一杯の答えを出した。
だが、更紗は紅潮していた頬からどんどん生気がなくなってゆく。
「う、う、嘘でしょ? カズちゃん。私のことは嫌いなの? もしかして、カズちゃんはカズちゃんはっっ!!」
「少し落ち着け。更紗っ!!」
「刹那ちゃんのことが大好きなの!?」
俺の胸倉を掴んで瞳が潤んでいる更紗が必死に叫んでいた。その事実を否定するかのように。
俺にとっては幼馴染二人のどちらかを選べるはずもなく、問題を先送りすることしかできない。
「俺は……」
口篭もる俺に、問い詰めようとしている更紗。
その間にもう一人の人物が乱入してきた。
「ふ、二人とも何をやっているんですかっっ?」
屋上の扉の付近に見てはいけない物を見てしまった表情を浮かべていた刹那がそこに居た。
予想すらしてなかった人物に俺と更紗は思わず驚愕する。
「カズ君と更紗ちゃんの姿が見えなかったから。もしやと思って来てみれば……
酷いよ更紗ちゃん。約束を破るなんて本当に酷すぎるよぉ!!」
「約束?」
「カズ君に告白するときは一緒に告白しようと約束したでしょう。
どうして、更紗ちゃんは抜け駆けしてカズ君に告白しているの?」
「刹那ちゃんにだけはカズちゃんを取られたくなかったんだよっっ!!」
その言葉に刹那は更紗の方に近付いて、彼女の頬を平手で叩いた。
普段大人しいはずの刹那が更紗の頬を叩くという尋常ではない光景に俺は一言も言葉を出すことができなかった。
「私だってカズ君のことが好き。
誰よりも好きなんだよ……。
その気持ちがお互いにわかっているはずなのに。
私だって更紗ちゃんにカズ君を取られるのは嫌だもんっ!!」
刹那の瞳から涙が頬を伝って零れ落ちて行く。
二人とも目を真っ赤になって、言葉のならない言葉をお互いにぶつけ合っていた。
「カズちゃんは……私と刹那ちゃん。どっちが好きなのかここで答えてよぉぉ!!」
「そうだよっ!! カズ君は私たちのどちらを選ぶんですか?」
更紗と刹那が迫り来るように重圧と何かを期待する視線を向けられる。
この修羅場の迫力に圧されて俺は正常に思考することができない。
ただ、恋をする乙女に対する怯えとここから一秒から逃れたいという気持ちで一杯であった。
「俺は……」
「二人とも付き合わない。だって、俺達は幼馴染なんだからな。付き合うとかそういう気持ちになれるはずがないだろ。
幼少の頃からずっと一緒に居るんだ。一人の女の子として今更見れるはずもないし……。
俺だって気になる人がいるんだよね。
そ、そ、そう。C組の英津子さんみたいな物静かで清らかな人がいいんだよ……。
だから、更紗と刹那のどちらかを選べと言われても困るんだよなぁ」
本当の想いとは逆の言葉が俺の口から出て行く。これが俺なりに考えた大切な日常を、
大切な幼馴染の関係が壊さない唯一の方法だった。思いつくばかりの更紗と刹那を振る言い訳を饒舌に語って行く。
考えるだけで精一杯だったのか、二人のどういう顔を浮かべているのか全く気付いてなかった。
長々と語り終わってから更紗と刹那の異変に気付くがもう遅かった。
「あっはっははは……カズちゃん?」
「ぐすぐすっっん。カズくん」
顔色を真っ青にして刹那と更紗は乾いた笑みで浮かべていた。虚ろな瞳は焦点を合わせずに瞳から涙が流れてゆく。
壊れてしまった二人を見て、俺は悟ったんだ。
自分が守るはずだった幼馴染の関係は木っ端微塵に壊してしまったこと。
それがもう取り返しのつかない事であると。
その日を境にして俺は更紗と刹那を徹底的に避けることにした。
クラスメイト達は俺にべったりな彼女たちと俺の関係が唐突に変わってしまった事を聞きたがるが無視した。
親や更紗と刹那のおじさん達から詳しいことを教えて欲しいと頼まれたが、教えることなんてできなかった。
だって、そうだろう。二人が勇気を振り絞った告白をあんな風に断って更紗と刹那を……傷つけてしまったのだから。言えるはずがない。
それでも学園の平凡な日々が続く。
ただ、更紗と刹那の本質がそう簡単に変われるはずもなくて、休み時間になる度に俺の席にやってきて、
カズちゃんカズ君の好きな人と結ばれるようにお手伝いしてあげる、と俺の事で何かと接点を持とうする。
だが、俺は更紗と刹那をいないように扱った。彼女たちが近付いても無視して二人を引き離すように教室の外に出る。
昼休みや平凡な休日すらも追いかけてくる二人を避けて避けまくった。
そうしないと俺はあの日の事を思い出して、更紗と刹那の泣き顔を思い出してしまい。罪悪感に胸を潰されてしまうからだ。
決めてしまった進路も俺は無理矢理に変更して。故郷の地から遠く離れた大学に進学することを決めた。
そこなら学生が借りられるアパートを探して、二人の距離を遠く離すことができると思ったからだ。
高校の卒業式後、更紗と刹那に別れを告げずに。
大学の合格発表後に俺は進学する先の場所で移り住む場所へと逃げるように引っ越してしまった。
それから、更紗と刹那とは会っていない。
せっかく入った大学も半年を通うこともなく中退した。それからは無気力にフリーターを続けている。
大切な物を失ってしまった俺は何かをやろうとする気力がすっかりとなくなってしまった。
日々生きるための糧を手に入れる程度の労力を行使することができても、真っ当な仕事に就こうとは思わない。
現在の俺の存在価値はただ生きているだけである。
もう、それは仕方ないことだと思う。
大切な物を無くして始めて更紗と刹那が傍にいない寂しさに気が付いてしまったから。 確かに思い出は美しい。
人が生きるためには思い出だけでは弱かった。
逃げてしまった臆病な自分が憎く思いながらも、重くのしかかる現実を俺は受け入れるしかなかった。
そして、運命の歯車は回りだす。
離れ離れになってしまった幼馴染たちと再び交わるのは俺が桜荘に移り住んでから1年の月日が経つ頃であった。
プロローグ 完
久々の投下です。
今回はようやく新作を投稿することが出来ました。
改めて、初心に戻って頑張ろうと思います。
ただ、現在も忙しいので投下ペースは断然に落ちると
思いますが・・。とりあえず、まったりとやっていきます。
それでは。
>>782 久しぶりの投下乙です!!
これ位のコメディーチックな修羅場も大好物ですよ〜。
トラ氏のペースでゆっくり頑張ってください。
>>770 もしかしてよく削除スレとかをコピペしてくるのもお前か?
そんなの火種蒔くだけだから止めとけよ。
>ただ、現在も忙しいので投下ペースは断然に落ちると
んな殺生な。
待つしかないのね。
すごく続きが気になる・・・。
>>782 GJ!久々ですね
再開したときの泥沼が楽しみだわ
>>782 投下GJ
そして久しぶりに相当なクズ主人公の予感
まあ修羅場を作るのには最適ですがw
>カズちゃんカズ君の好きな人と結ばれるようにお手伝いしてあげる
↑いい壊れようですGJ
この主人公にハッピーエンドは似合わんね。
愛憎の果てに苦しみ抜いて欲しいと思う。
次回楽しみにしておりますw
さすがに主人公がへたれでクズすぎてムカムカするけど
キモ幼馴染がいい感じなのでgood!
そんなに主人公って酷いか?
二股かけてるわけでもなし、今までの関係を続けていきたかっただけだろうに。
ここで両方と付き合うのは論外だし、片方だけ選んでも禍根を残すぞ。
むしろ大切なものを守ろうとして裏目に出た憐れな奴とは思うが。
そんなわけでトラさんGJです。
初めてかここは? 力抜けよ
このスレでの「へたれ」や「クズ」は主人公へのほめ言葉なんだぜ?
「クズ系主人公」とカテゴライズされる事が最上級の褒めちぎりなんだ。
>>782 新人さんか…と思ったらあんたか!!
おいおい、あんたもうこれで何本目だよ…。しっかり推敲しなさい。
ところどころに「てにをは」の使い方がおかしいところがあるから読んでいて気持ちが悪い。
例えば、
>それは、考えるだけで自分の心が引き裂かれそうになった。
この場合、
>それ「を」考えるだけで自分の心「は」引き裂かれそうになった。
にするべき。
あと、書く順番がおかしかったり説明が抜けてて意味が分かりにくくなってる文章も散見される。例えば
>猫の肉球の模様が付いている手紙をわざとらしく取り出して俺は更紗が必死に書いたであろう左右に動かした。
「手紙の説明」と「俺の動作」が一つの文章の中でごっちゃになっとる!
>更紗が必死に書いたであろう猫の肉球の模様が付いている手紙を、俺はわざとらしく取り出して左右に動かした。
このように、ちゃんと区別するべき。
ID:NLs2exri
NG用
文章指摘されただけで荒らし扱いするのはよくない事だと思う
トライデントさんの文章構成がおかしいのは事実なんだから
ちゃんと叩かないと新人さんの成長を妨げることになるよ
そうだね。プロテインだね。
叩くは違う
でも
>>794の言ってることはおかしくない
>>793 ここはお前のオナニー評論もどきを書くスレじゃない。早く巣に帰りな?もし書きたかったらきちんとしたプロになって指導してやれ。ここに書き込みしてる神は金貰って書いてる訳じゃないんだ?
あと、日本語ってのはな、前後の文で「てにをは」が間違っててもある程度読むことが出来るんだが、お前は出来ない程に頭固いのか?
指摘の前にもっと本を読んでこい。この程度の違いで頭にくるくらいだったら他人と会話出来ないぞ?
ID:NLs2exriさんは荒らしじゃないと思うよ
文章がおかしい所をちゃんと指摘しているので
新人のトライデント氏もこのアドバイスを読んで
推敲に力を入れるべきだと思います
叩いてるわけじゃないさ。指摘してるんだ。
それに文章の展開がおかしいと批判してるわけじゃない。
「である」とか「であった」が多すぎるようにも思うけど、それはトライデントさんの持ち味だと思うし。
ただ、どう考えてもミスとしか思えない部分については、
「誤字脱字」に近いと思うから指摘してもいいようにも思うんだけどな。
トライデントさん自身、おかしい点には気づいた方が有益だよ。文章を書く機会はここだけじゃないだろうし。
SSに何求めてるんだよおまいら?wwwwwww
お前らwwwww
もしかして、お気に入りの理想郷がID表示になったからこっちに流れてきたんかwwwwww
所詮SSだからどうでもいいじゃないか、という考え方は寂しいよ。
書いてるほうからしたら一個の作品だ。より多くの人に楽しく心地よく読んでもらいたいはず。
トライデントさんはせっかく筆が早いのに、文法のミスで読みにくくなるのは勿体無い。
>>804 >>793の書き方を見てたらあんたはただ煽ってるようにしか見えない
実際それだけ文句が言えるってことはそれに値するSSが当然書けるんだよな?
>>805 ああ、確かに書き方は悪かったかな。それについてはスレの皆様とトライデントさんにお詫びを言います。
すいません。
>>806 べつに指摘してはいけないとは言わない。
ただもう少しオブラートに包んで間違った所の要点を書いてくれたらいいと思う。
そうしないと後で弁解しようにも全ていい訳に聞こえる。
もうお前さんも謝ったしこれで終わりにしよう。
作者に対する批評なんだから死ねとかつまんねとかじゃなったらスルーしとけばいいのに
ID:NLs2exri
ID:7fhpnZtG
NG用
っていうか、投稿したばかりの新人さんを叩きすぎだと思うんですが?
初めて投稿でここまで言われたらさすがに落ち込むぞ
新人さん?エッ?
ひじりクライシスだけど、ロボ氏はトリップ付けてもらえまいか
タイトルだけじゃNGに出来ないじゃないか
ID:NLs2exri
ぶっちゃけ、昨日のプロットを書いてロボに文句を言っていた人でしょ
妙に長文と嫌味的な物の言い方は酷似している
昨日から信者過剰反応し過ぎでウゼェ
荒らしと決め付けたり謝ったから許してやろう、みたいな上からの態度とかもう駄目
今一番スレ荒らしてんのコイツらじゃねーか
物は言い様だな。ファン=信者
結局何をしても文句をつけるならスルーしろよ
過剰反応する香具師もスルーできない香具師も悪い
確かに・・・しかし殆どが単発なんだよな・・・orz
77 名前 名無し猫@鋸準備中 2007/05/12 (土) 09:46:25 ID = d3f491f7b4
リアルタイムでコピペ分を本スレで書き込んだら
さらに炎上するからここに書き込んでるんだよね
避難所では書き込めないからね単発IDクンはwww
78 名前 名無し猫@鋸準備中 2007/05/12 (土) 16:03:03 ID = 75b5ee185b
今度は常連を『新人』扱いかwwww
新しい攻手のつもりかも知らんが、露骨過ぎて逆に笑えて来るわwwww
79 名前 名無し猫@鋸準備中 2007/05/12 (土) 16:24:56 ID = d3f491f7b4
今北産業
面白すぎww
80 名前 名無し猫@鋸準備中 2007/05/12 (土) 16:27:11 ID = d3f491f7b4
単発IDの無駄議論大杉
本スレで議論せずこっちおいでよw
81 名前 名無し猫@鋸準備中 2007/05/12 (土) 17:06:34 ID = d3f491f7b4
ID:7fhpnZtG ID:OD9yRXWY
>>新人のトライデント氏
どう見ても住人装ってますなw
82 名前 名無し猫@鋸準備中 2007/05/12 (土) 17:10:38 ID = 75b5ee185b
いや、新人と連呼する事が嫌味になるとでも思ってるんだろwww
83 名前 名無し猫@鋸準備中 2007/05/12 (土) 17:12:30 ID = d3f491f7b4
だれか指摘してやれよ
本人IDはもうでないだろうけどw
84 名前 名無し猫@鋸準備中 2007/05/12 (土) 17:28:18 ID = d3f491f7b4
よくって2回、単発IDを挟むともう居ない
短期間に単発IDが集中する
4分ルールは指摘したら今日はやってないなw
避難所が荒らされてる
で?
避難所の話は避難所でしなよ
だから他のスレのコピペをここに貼るなと何度(ry
「そんなスレなんかより私を見て!」っていう嫉妬娘の自己主張さ
喧騒が遠くから聞こえるものの、人の気配が少ない回廊を二人並んで歩き出す。
時折、鎧が擦れる金属音だけが近くから響き、俺の耳に浸透する。
歩き方の癖なんかが影響しているのだろうか。その音がマリカの放つものだとすぐ解る。
――――本当に懐かしい。
こうしていると、あの頃二人で街の見回りに出ていたことを思い出す。
『民に見られているのだから、もっと威厳を持った顔で歩け!』……マリカにはいつもそう叱られていた。
たった一年半前のことだというのに、酷く昔のように感じる。
「……それにしても、大変だな」
「…え?」
隣を歩くマリカが、顔は回廊の先に向けたまま口を開いた。
その声で俺も現実に引き戻される。
「大変って、何が?」
「城の連中がいつもお前の話をしているぞ。
"戦場であの戦姫に唯一付いて行ける男"。
"戦姫が常に側に置き、騎士団内で彼女に絶対の信頼を寄せられている、ただひとりの騎士"。
それ故に戦姫の身の回りの世話をする従者のようでもある、とな」
少し遠くを眺めているような目線で、俺に言う。
マリカもこうして二人で並んで歩いていることに懐かしさを感じているんだろうか。
どこか懐古しているような、望郷しているような―――そんな何ともいえない表情をしていた。
「ははっ。そりゃ違うよ、マリカ。
俺が隊長に付いて行けてるんじゃなくて、無茶する俺の面倒を見てくれてるんだよ。ほんとは」
同じ隊の先輩たちからは"戦姫よりも前に出る命知らず"とよくからかわれたものだ。
実際、戦場での記憶を紐解くと危なくなったときいつも背後から隊長の助けが入っていた。
隊長にしてみれば無鉄砲な部下に面倒事を増やされ、さぞ迷惑していたに違いない。
……多分、その様子を見ていた隊外の騎士や傭兵が『俺が戦姫に付いて行っている』と勘違いしたのだろう。
「だいたい、あの人とまともにやって勝てる人間なんていないよ」
そうマリカに肩を竦めてみせる。
隊長のそばで戦ったこの一年半。彼女を上回る腕を持つ兵はおろか、同じ土俵で戦える者すら見たことがない。
なにしろ、一瞬の目測で矢はおろか、マスケット銃の弾道すら読むような人だ。
俺程度の腕では到底彼女には追いつけないだろう。
「―――ずいぶんと、あの女のことを買っているのだな」
マリカの声が、少し低くなった。
……気にしすぎだろうか。彼女の表情がさっきより僅かに険しくなっているように感じるのは。
「そりゃあ……あれだけのもの見せ付けられたら…ね」
隊長はその圧倒的な強さだけでなく一風変わった人望――彼女を知らぬ者にはカリスマ性、知る者にはマスコット的な……って感じか――
も持っていたことから、騎士団の内外を問わず彼女のシンパは結構多い。
……自負するつもりはないが、俺も恐らくそのうちの一人なんだろう。
これでも、彼女に出会う以前は噂を聞いても大して興味が沸かなかったクチなのだが。
あれほどの強さなのだ。実際に戦場での彼女を目にすれば興味を持たない兵などいないだろう。
「…………」
今まで特等席で見てきた彼女の武勇譚を思い出し、羨望する。
「……って、なに?」
黙って俺の顔を見ていたマリカに気付き、眉根を顰めた。
それはマリカにとっても無意識のうちの行動だったのか、俺に指摘されて慌てたように首を振った。
「あ、いや…すまん。この一年半の間にお前も遠い存在になったのかも知れないな、と思ってな…。
あのころと変わらないのは見た目だけで、本当はもうわたしよりもずっと先に行っている――そんな気がしただけだ」
少し淋しそうに微笑むと、バツが悪そうに俺から目を離した。
「そんなこと言って……マリカだって凄いじゃないか」
「わたし……? 何がだ?」
「聞いたよ。王都に幾度も忍び込んできた敵国の刺客を、マリカが全部始末したって。
それが評価されて次の『王の盾』になるんじゃないかって専らの噂だぞ?」
「…ああ。そのことか」
俺が持ち出した話題に、どういうわけかウンザリしたように深くため息をつく。
口元にも呆れたような笑みを浮かべていた。
『どう答えるべきか』と首を捻った挙句、俺に涼しげな顔を向けてこう答えてきた。
「確かにそういう打診はあったが………断った」
「えぇっ!?なんで!?」
あまりにもあっさりと言うので、思わず身を乗り出して詰問してしまった。
「なっ、何をそんなに驚く?」
「そりゃぁ…」
マリカは人一倍、騎士という職業に憧れていた。少なくとも俺たち同期の中ではそういう想いが一番強かったはずだ。
そして、『王の盾』は騎士の誉れ。騎士団とは独立した権限を与えられ、王族の勅命によって動く騎士の中の騎士だ。
だから真の騎士を目指していたマリカがその『王の盾』の座を蹴る理由が全く理解できなかった。
「わたしは、あの程度のことで王の盾になれるとは思っていない。
実際、この一年半を振り返ればわたしなどより他に相応しい人間はいくらでもいるはずだ。……例えばお前とか、な」
意地悪そうに口を歪めて、俺の顔を指差す。
その指を遮るように、慌てて「ないない」と手を振った。
「なんでだよ。俺こそ王の盾になれるわけないじゃないか。平民出の俺に―――あっ」
そこまで声に出してやっと気付いた。
平民出の俺は『王の盾』になれない。…じゃあ、マリカは?マリカの出身はどこだ?
それが理由だとするなら、彼女が最も忌み嫌う理由で『王の盾』に就くことになる。
「そう。だからきっと、親の七光りなのだろうな。わたしに『王の盾』の椅子が回ってきたのは。
そもそも……刺客を退治したのだって、元を正せば王都に侵入を許すほど警備がザルだったということだ。
その責を問われることはあっても、誉れを賜るべきではない」
そう言って最後に「これは一騎士の身を弁えぬ発言だがな」と付け加えた。
二人してゆっくりと狭い螺旋階段を登る。
この先は城でも一番高い見張り台だ。そこからなら下で祝杯をあげながら騒いでいる同僚たちもよく見えることだろう。
マリカと同じ部隊にいたころは何度も来たことがあったが、マリィ隊長のところに配属されてから此処を登るのは初めてだ。
「……それにな、ウィル」
螺旋階段は、その狭さもあって他の場所より数段暗い。
階段に沿って松明が灯されているものの、それでもマリカの表情を確認できるほどの明かりを俺に与えてはくれなかった。
「今のわたしは、騎士がどうの…というのは正直どうでもよくなってきているのだ」
「…どういう意味だ…?」
顔が見えないせいでどう口にすべきか迷う。
声には喜びも嘲りも感じない、淡々とした旋律しか含まれていなかった。
「目的と手段が入れ替わったとでも言うのかな。
酷く曖昧なイメージの『騎士』という偶像を追って、そのためにお前と何度も剣を交えてきたつもりだったのが……。
いつからか知らんが、曖昧なイメージしかないそんなものより、はっきりと目の前に存在するお前の方を目標にしていたらしい」
「……俺は―――」
目標にされるような人間じゃない。
俺が今までやってきたことは全てキャスたちの仇を討ちたいがため。全部自己満足のためだ。
自分のためだけに剣を覚え、自分のためだけに騎士になり、自分のためだけに戦争に参加した。
王国騎士の中で俺ほど騎士の品位を落としてる人間はいないだろう。……だから。
「と。…着いたな」
俺が吐露するのを許さぬように、見張り台に続く最後の扉が開かれる。
ぎぃ、と軋む音と共に涼しげな一陣が、湿った螺旋階段を吹き抜けた。
そのおかげで俺の鬱屈していた感情も一緒に洗い流されていく。
「先に申し送りを済ませるから、悪いが少し待ってくれ」
マリカの言葉に黙って頷きながら扉を抜けると、さっきまでとは打って変わって広い空が真っ先に目に入った。
松明のせいで星はよく見えなかったが、雲ひとつない夜空だった。
「あ、先輩。交代ですか?」
マリカの後輩だろうか。
見張り台にいた一人の騎士がマリカに歩み寄り二言三言会話すると、なぜか鼻息を荒くしながら俺に敬礼して階段を降りて行った。
「……?」
彼の異様に興奮した表情に寒気を感じつつ、俺は首を捻った。
「ふ、ふふふっ……」
その仕草が余程可笑しかったらしい。
かみ殺すような笑いを零しながら、マリカがこっちに戻ってきた。
「……なんだよ」
「す、すまない……ふふっ。お前の反応があまりに面妖だったものだから、つい……っ。
いや、さっきの彼な。今年入団した新人なんだが……実はお前に憧れて騎士になったらしいんだ」
さっきの熱い眼差しはそういう意味か。
戦姫ならともかく、俺に……とは珍しい人間も居たものだ。
「わたしたちも知らぬ間に"先輩"になったということだな…ふふっ」
俺を茶化すようにまた笑うマリカ。
その後輩が消えていった方にもう一度目をやる。少し居た堪れない気分だった。
「俺に憧れて―――ね」
そういう人間が出てくるくらい俺は有名になってしまったんだろうか。
『戦姫の懐刀』としての俺の名前だけが一人歩きしてるような気がして、喜びよりもむしろ不安しか感じなかった。
――隊長が以前、戦姫の噂に難色を示していたのはこういうわけだったのか。
「……『迷惑だ』といった顔だな」
「そこまでは言わないけど……」
俺はまだ仇討ちを諦めていない。
あるツテを使って仇の居所を探ってもらってるし、もし見つかれば迷わず殺しに行くつもりだ。
そのとき、戦争中だという大義名分はもう存在しない。繕いようもない私怨のみで殺すのだ。
それでもなお、あのマリカの後輩は俺に幻滅しないだろうか……と不安に駆られる。
そんな後ろめたさが顔に出ていたんだろう。マリカがふっ、と浅く嘆息した。
「まったく……。どうしてわたしもこんなヤツを目標にしたのだろうな」
マリカは、見張り台から見える遥か向こう―――あちらは西の方角か―――に目を向け、風にそよぐ髪を梳いた。
咎めるような声だったが、その表情は少しだけ笑っていた。
どうしたんだろう?……と彼女の一挙手一投足を見守る中。
「……ウィル。わたしは暫くこの国を離れようと思う」
突然の告白だった。
脈絡がなかったせいだろうか。
マリカの言葉を数瞬の間、まったく理解できなかった。
何度か前髪が風に揺れるのを感じてから、俺は動揺を堪えながら口を開いた。
「なっ、なんで…?」
「言ったはずだ。お前を目標にしていると。
だというのにこの一年半、お前との差は広まるばかりだ。
お前はいくつもの戦場を駆け巡っている間、わたしは平穏無事な王都でぬくぬくと過ごしていた。
差が開くのも当然といえば当然だが…。それを一気に取り戻したい」
「取り戻す……ってどういうことだよ」
俺の質問に僅かに目を細める。
視線は依然西の果てへと向けられ、遠くを見つめるためにそうしたのか風の強さのせいなのか俺には計りかねた。
「西に行けば小国同士の小競り合いが今も絶えない。戦争には事欠かないだろう。
そこでお前と同じように傭兵として、戦場とはどんなところなのか経験するつもりだ」
「何もわざわざ自分から戦争してるところに行かなくても…」
「それくらいしなければお前には追いつけないからな。……で、だ」
ようやく視線を戻し、彼女らしい自信に溢れた両の瞳に俺の姿が映った。
「お前にひとつ、頼みたいことがある」
「―――?」
少し…ほんの少し。今、一瞬だけマリカの瞳が揺らいだ。
「半年か一年か、それともそれ以上か―――どれくらい国を離れるか解らないのだが……。
それを終えて此処に帰ってきたとき、もう一度勝負をして欲しいのだ」
「それはいいけど……なんでそこまでして―――」
探る瞳と、揺るぎない瞳が交差する。
はっきり言えば、俺は彼女の考えには反対したかった。
自分とは全く関係のない戦争にわざわざ出掛け、己の命を危険に晒そうというのだ。当然のことだろう。
「………」
だけど同時に。
ちょうど今のマリカのような顔をしているときは何を言っても無駄だと言うことも知っていた。
今のマリカは俺が騎士になる直前、所属していた傭兵隊の妹分が"ある決意"を打ち明けたときとよく似た表情をしている。
あのとき、いくら彼女に反対しても聞き入れてくれなかった。…だから。
「はぁ…。 ……わかったよ。約束する」
結局半ばで説得の言葉を飲み込み、仕方なしに頷いた。
「そ、そうか!」
安堵の表情と歓喜の声。
表情には出さなくとも、俺に断られやしないか内心不安だったらしい。
文字通り凝り固まっていた肩がストンと落ちていた。
「絶対だぞ?約束したぞ?」
俺の気が変わらないうちに――とでも考えたのだろうか。
すかさず右手をこちらに差し出す。
「はいはい……」
なぜこうも俺との勝負に拘るのだろう、とか考えながら。
彼女のその挑戦状――差し出された右手を受け取った。
「本当に、絶対だぞ?」
「……ホント、マリカはしつこいなぁ……」
握手する手にぐっと力を込めて念を押す彼女に、微笑みながら皮肉る。
それに釣られるようにマリカも破顔。
二人してこうやって笑いあう機会など殆どなかったはずなのに。
憂いの混じった笑みをする彼女を見ていると、どうしてだか懐かしい気持ちになった。
「あ、そうだ。それなら――」
ひとしきり笑ったあと。
"あること"を思いついた俺は頬が緩みそうになるのを堪えながら、空いてる左手でマリカを手招き。
「なんだ……?」
『おかしなヤツだ』と眉を顰めながら面倒臭そうにこちらに一歩、歩み寄って来る。
マリカが手の届く位置まで来たのを見計らって。
「な…なななななななっ!?」
彼女の背中に手を回した。
そのとき身体が石みたいに固まっているのが手に取るように解って、思わず吹き出しそうになった。
「う…ウィル、おまえ……」
狼狽を露わにしているマリカの声を無視しながら一息吐く。
……そして。
「―――貴公に、ヨセフの加護があらんことを」
いつかの言葉を、彼女に返した。
「は……?」
「……あのときのお返しだよ、マリカ」
勝手に吊りあがりそうになる頬に力を込めながら、横目でマリカを盗み見る。
さっきまで湯でも沸かすのかってくらい真っ赤だった顔が、今はぽかんと目を丸くしていた。
それを目にして俺はとうとうガマンできず。
「くっ……ははははっ!」
「……か、からかったな」
笑い声を聞いてやっとその意図が判ったのだろう。
唇を尖らせて、悔しげに半眼で俺を睨み付けてきた。
「戦争は終わったけど、まだやらなきゃならないことがいっぱい残ってるんだ。
だから会えるうちにしておこうと思ってね」
彼女の背に回していた腕を解き、残り笑いを堪えながらそう告げた。
国としてもまだ戦後処理が残っている。
そして俺個人としても、まだ成し遂げるべきことは何一つ終わっていない。
いつなんどき、また王都を離れることになってもおかしくないのだ。
「なんだ。見送りはしてくれないのか?」
静かにマリカはそう言ったが、責めているような口調ではなかった。
「ごめ――」
「いや、すまない。さっきのはわたしの独り言だ」
謝罪しようとする俺の声を遮り、マリカはかぶりを振った。
「まだ村のこと……済んでいないのだろう?
それを圧してまで見送りしろと言うほど、わたしも無粋ではないつもりだ」
「……マリカ」
「ただし」
ちょっと重くなりそうだった空気を払拭するように、マリカが一回り大きな声で付け足す。
「帰ってきたら、たっぷり付き合ってもらうからな?」
「………ああ、わかったよ」
その後は、積もる話もそこそこに見張り台を離れた。
本当は……もう少し彼女と話していたかったけど。
近いうちにまた会う機会もあるだろうと、このときはそれほど気にも留めなかった。
「そのときこそ…絶対に。
隣に立つのは―――ではなく、――――――と証明してやる」
彼女の最後の言葉はよく聞き取れないほど小さい声だったというのに、端々に滲み出る意志の固さだけはハッキリと感じた。
――だけど結局、彼女と会ったのはこの日が最後。
半年後。
『王の盾』になった俺は故郷の事件の真相を知り、団長と姫様の事件を経て王国を去ることになる。
団長にはゲイル=トレイクネル卿殺害の容疑と、俺には姫様誘拐の容疑。どちらも大罪だ。
きっと王国に戻ることはできないだろう。
故郷を捨てたこと自体に後悔はない。
それに代わる得難いものを得られたと思っているし、あのままならきっと俺も団長も破滅していたはずだから。
だけど。
ただひとつ心残りがあるとすれば、彼女のこと。
すまない、と思ってもその言葉を彼女に届けることは叶わず。
彼女が俺を叱責したくとも再会することは恐らく二度とない。
経緯はどうあれ、俺は。
マリカとの約束を果たせなかったんだ。
以上。これでマリカとの絡みは一端終了と相成ります。
さて、この後のことについてですが次タイトルの本編に繋げるお話として
二回に分けて番外編を投下予定です。
そちらは避難所の方にて投下するつもりです。
乙です。新シリーズがあるとは嬉しいかぎりです
しかし再開を約した相手が駆け落ちした挙句ハーレムつくってるなんて報われない女…
作者自身が完璧に絡みが無いと言い切っちゃってるとこが切ねぇ……!
たがGJッス!
久しぶりです。投下します。
oh
直さまの婚約者は川澄葛葉というお名前の十六歳の令嬢です。
紅行院家のとある商業ラインのライバル会社の社長の次女で、噂ではかなりの美貌を持った女だそうで。
私は今後のことを考えながら愛用の車でバイパスを走らせていました。
空港の駐車場で車を止めます。
鍵をかけて、ロビーの待合所へ歩いてゆくと、地方の空港の平日の朝というものはビジネスマンばかりでした。
かっちりと着込んだブランドのスーツをまとった男たちや、くたびれたコートを着込んだ薄い頭の男が右へ左へとスーツケースを滑らせている。少数だがキャリアウーマンも居ました。
そんな中、手荷物も持たずロビーを闊歩するメイド服の私は物凄く浮いていることでしょう。すれ違う人々が奇妙そうな顔で私を一瞥してすぐに視線をそらしていきます。
まぁ、べつに人の目など私は気にしません。これが私の正装なのだから。直さまがご命令しない限り、私はこの服を脱ぐ気はさらさら無いのです。
ロビーを歩き出口の近くへ向かいます。これから私と会う同居人の乗る飛行機はついさきほど空港内へ着陸したようです。変じゃないでしょう。
5番の搭乗口の辺りまで歩き、私は足を止めました。
私以上に浮いている上下運動ジャージの姿をした少女が搭乗口の前のベンチに悠々と腰をかけて雑誌を読んでおられたのです。
スポーティな服装には似合わない長い黒髪、飛び立つ飛行機を眺めニコニコとする顔立ちは丹精に整っておられます。もし、直さまに長髪ウィッグをかぶせたらこのようなお姿になるのでしょうね。
まぁ、似ているのは当然です。
「しずるお嬢様?」
「ん? おおっ。エリィじゃないか。久しぶりだね。2ヶ月ぶりくらいかな?」
しずるお嬢様。紅行院家の唯一の跡取り娘であり、直さまのお姉様です。
私が声をかけると、お嬢様は読んでいた雑誌を閉じて私にいつものお顔で笑いかけました。
「やぁやぁ。来たね。エリィ」
「お久しぶりです」
「そうだねぇ。前に逢ったのが正月のときだったから……おおよそ3ヶ月ぶりかな? あははっ。まったく君は3ヶ月でも1年でもまったく変わっていないなぁ」
けらけらと笑うしずるお嬢様。私の個人的な印象ですが、お嬢様のほうはこころなしか少し垢抜けたように見られます。なにかあったのでしょうか?
「ん? なんだ、聞きたいことがあるのか?」
私の戸惑いを感じたのか、しずるお嬢様はわくわくしたお顔で私を見つめます。口元が猫口です。どうやら聞いて欲しいのですね。
「お嬢様、なにか良いことでもあられたのですか?」
「ほうほう、よくぞ。よくぞ聞いてくれたな! よぉし、そんなに聞きたいなら教えてやろうではないか!」
しずるお嬢様は、雑誌を置いてベンチの上に立ち上がりました。ちょっと迷惑です。ただでさえ、朝の空港でジャージ姿というものも目立つのに、何ゆえベンチの上に立ってまでさらに目立つようにしているのですか。
「お嬢様っ。はしたないですよ」
私が慌てて、下ろそうとしますが、簡単にお嬢様の体をつかんで引きずり下ろすなんてことはできません。しずるお嬢様は大きな声を上げて私に宣言しました。
「この私、紅行院しずるは! なんとついに、恋人を……」
と、そのとき。
「紅行院さんですか?」
しずるお嬢様が目立つように立ったために、探していた相手に見つかったようです。とても嫌なタイミングで入ってきたため、しずるお嬢様はすこし「んっ、んっ」と咳き込んでしまいました。
声をかけた相手を見ます。
ふわふわとした栗色の長い髪をした少女でした。白いセーターとジャケットを着こみ長いロングスカートを翻して、我々の目の前に立っています。上から下まで観察してみても、なんだか籠の中で飼われた文鳥のように、とてもおとなしく静かな印象を受けます。
写真で何度か見た顔です。この女こそ、直さまの婚約者こと、川澄葛葉。
私の全身が一気に逆立ちます。私を差し置いて、直さまと添い遂げることとなった私の敵。敵の中の敵の姿。
年相応の甘い顔立ちでしずるお嬢様や直さまと比べると容姿の差は決定的ですが、着ているものやルージュ等は全てさりげないブランド物で固められていて、何気に令嬢という立場相応の美貌を作り上げています。
できるだけ、感情を殺すことに努め、私は無表情で対応します。まぁ、いつものことです。私を表面しか知らない人は私のことは常時無表情の女としか見ていませんので。
「お、おう。私が紅行院だ」
しずるお嬢様は宣言したときの勢いを殺しきれないまま、すこし焦ったように答えます。
私はそんなお嬢様を横目で見ながら、一応敵であるこの女に頭を下げました。
「はじめまして。川澄葛葉です」
使用人の私には目もくれず、しずるお嬢様に女は頭を下げます。当たり前です。メイドは本来は空気のような存在で居るべきなのですから。
このままこの女が私に目をかけなければ、今後の裏工作もしやすくなってくるのですが……。
「あなたは……?」
しずるお嬢様が紹介する前に私にも直接名前を聞いてきました。ふぅん、直接……ですか。珍しい。
「この娘は紅行院直のお付の使用人だ。これからあなたが住む家ではこいつが周りの全てのことをやってくれる」
お嬢様が軽く私を紹介します。自分より年下の相手に娘と呼ばれるのは少し違和感が残ります。
「エリィでございます」
私はもう一度、頭を下げました。
「はじめまして、これからよろしくお願いします」
女も栗色の長い髪を揺らしてちょこんと頭を下げて私に頭を下ろしました。
……誰にでも丁寧な人なのですね。
正直、やりづらいです。
この「いい人」という性格が私の攻撃を鈍らせてしまいそうな恐れを感じてしまいます。
いっそのことこの善良な瞳の奥に、腹黒い欲望でも抱えてくれれば憎しみを持って潰すことを躊躇らわないのに。
いや、どちらにしろ躊躇ってはいけないのです。
直さまのために、私のために。
この女の性質がどうであれ、潰す以外、私には選択肢は無いのですから。
★
お屋敷に連絡を入れます。
しずるお嬢様がいらっしゃたため、すべての用意を一人分多くするようにとラッテに連絡を入れるとラッテは面倒くさそうに返事をしました。
電話を切って、しずるお嬢様と川澄葛葉を車の中へ迎え入れました。
川澄葛葉の旅行ケースをトランクバッグへ入れると、私はドアを開けて二人を乗車させます。優雅な動作で乗り込む二人を見て、改めてどちらもお嬢様だと思いました。しずるお嬢様はジャージですが。
私は運転席に乗り込み、車を発車させます。空港を出てすぐ高速道路に入って時速100キロで車を走らせたころにバックミラーを調節し、私はできるだけ、すぐ後ろに座っている葛葉様のお顔を見れるように角度を調節しました。
川澄葛葉の表情は、穏やかといえばそうでもなく、硬いかと思えば緊張している様子は無く、表情からあまり感情を読み取れません。ただ、憂いを含んだ表情で窓の外の流れる高速道路の植木を眺めているようでした。それともその先に見える何かを。
時折、しずるお嬢様に耳打ちするようになにかを喋ります。しずるお嬢様はそれをうんうんと聞くとそのまま表情を崩さず、何事かささやき返します。
追い越し車線をびゅんびゅんと通り過ぎる車。この時間は空港へ行く車のほうがまだ多いので、対する私たちが走る道路は空いていました。左車線でもほとんど車を気にせず走ることが出来ます。
ようやく長い長い高速道路を降りますと、市道に入ります。駅前を抜け街を抜け郊外まで走らせ、住宅街の坂道を軽やかにのぼっていきます。
そうして見えてきますのは……
「ここだ。ここが今日から君が住むことになる新居だ」
直様と私のお家です。
「大きなお家ですね」
そんなわけないだろう、と私は心の中でつぶやきました。あなたの屋敷に比べればこんな中流家庭の物件なんて屁でもないはずです。お世辞を言うな。
そんなことはおくびにも出さず、私は車を玄関の前で止めます。シートベルトを外しドアを開け、外へ出ました。そのまま小走りで家の玄関側の後部座席のドアの前まで行き、開きます。
「どうぞ」
「んっ」
まず、しずる様がジャージの上着の裾部分を肩に結んだ格好で降り立ちます。このままドアを閉めて残った人物を乗せたまま走り去りどこか知らないところへ捨てたかったですが、そうもいきません。
「どうぞ」
「はい」
もうひとり、降り立つ川澄葛葉にも下車を促しました。優雅な動作で足を伸ばし、地面へと水面の上へ立つように静かに降り立ちました。
私の手によってきれいにガーデニングで彩られた花壇。ここは私と直様の領域なのに、敵である女が侵入しているのが辛いです。
「さてと、では私の弟を紹介しようではないか」
「はい」
しずる様に手を引かれて、川澄葛葉は玄関までの数段の階段を昇っていきました。一歩一歩、直さまへの距離を縮めていく。これからあの女はこの階段のように直様との距離を縮めていくつもりなのでしょうか。
ふと、ラッテのことを思います。あんなふうに直さまと仲良く振舞うラッテ。私と直さまの絆はラッテより深い。深いはずです。……言い聞かせている自分に腹が立ちます。
しずるお嬢様が玄関のインターフォンを鳴らしました。まもなく、ラッテと直さまの二人があの玄関から出てきてお嬢様と女を笑顔で迎えるのでしょう。
なんだか、二人が初めて出会う場面が見たくなくて。私は車の中へ戻ると、エンジンをふかして車を動かし、車庫に入れるために玄関の前から消えました。
「……あの女はラッテと違います。あの女もどうせ政略結婚のための駒なのです。望まない結婚なんて、誰も祝福はしないのですよ……」
ぶつぶつと自分の口から出る言葉。気がつけば、私は家の周りを意味無く一周していました。
(続く)
スレの容量もあるのでここで止め。
一度展開を見直したのと時間が取れなくなったので、遅くなりました。次回はもう少し早いと思います。
別スレに 浮気はしたけど 心ではは いつも嫉妬スレのことばかりかな (百人一首調)
赤いパパ氏乙。
ハーレムスレ過疎ってるので行ってあげてください。
乙
この作品なんて名前?
名前浸け忘れ…、『アンビエイトダンス 2-1』です。
昔なら450KBを超えると盛り上がっていたのにな・・
一体、どうして寂れてしまったんだ
言葉様は何も教えてくれない
――――倦怠期だよ。
長く連れ添った夫婦には良くある事さ。
えるしってるか
妻の妊娠中こそ浮気する野郎が多い
だからこそ、夫の性欲を満足させる手段を妻が用意しなくてはならない。
あ、これネタになるかな?
「夫の浮気を怖れて妊娠中の妻が昔の百合な後輩に命じて夫の性処理を。しかし何時しか・・・。」
わっふるわっふる
そこでキモウトかキモむすめの出番ですよ
私から兄を奪ったくせに!!!……みたいな?
おお、エリィさんが!!
赤いパパ氏GJ!!!!
あと10kbか
何か梅ネタ書きたいなと思う今日この頃
あ、釣れてるじゃないか。わざわざレス乙〜。
君に興味があるのは、君があまりに低俗で愉快だからだよ。
色々と君みたいのを相手にしてきたケド、ちょっと期待外れ甚だしいな。
話の展開力も無いし、語彙も少ない様だし、残念だな。
やっぱ、そんなモンだったのか。もしや荒し初心者さん?
だとしたら悪かったよ、もう少しいい気分にしてあげれば良かったよね。
君も私を分析した様だけど、その能力に感服したよ。
君の様に洞察・判断力が冴えない方には荒しは難しいと思うよ。
少なくとも荒しを自負、盛り上げている自負があるのなら
他人の文章の特徴や文の構成からもう少し読み解こうな。
荒しは、相手のレスあってこそだし、いかに逆手にとれるかだろ?
もうちょっと頑張ろうね。頑張れば、もっとお話してあげる。
そうそう、出来の悪いのに限って、あれは自己レスだ!とか言い出すんだ。
今どき、そんな荒しいるのかよ・・・というのが率直な感想だよ。
まーったくもう、笑わせないでくれよ。
君が祈った通り、あれは自己レスじゃないんだけどね。
それは当ってたから、誉めてあげる。
御両親に報告するんだよ、僕、人に誉めてもらえたんだ!って。
ブゲラッチョもブギャーも聞き飽きたんだってば。
早くー、なんかやってみせてよ。
人大杉で閑古鳥。僕が構ってあげなきゃ君1人ぼっちになっちゃうだろ?
さて。
また沢山餌を垂らしてあげたからね。好きなモノを好きなだけ食べてごらん。
こういう美味しいの待ってたんだろ?いいよ、遠慮しないで。
あのですね、僕、基本的にあれじゃないですか。かわいい系じゃないですか。
かっこいい系か、かわいい系かで言うとかわいい系に属するタイプじゃないですか。
実年齢よりも下に見られるというか。
修学旅行で夜中パンツ下ろされるタイプじゃないですか。
お前生えてんのかよ〜、とか言われて。
で、生えてるどころか、ずるむけでその後気まずい雰囲気になるタイプじゃないですか。
まあ、むけてはないんですけど。
て言うか、そんな事はどうでもいいんです。
で、この前映画を観に行ったんです。たけひささんご推薦の「弟切草」を。
そしたらその映画、R15指定だったんです。で、なんとそれに引っかかったんです!!!
ビーって鳴ったんです。いや鳴りはしないんだけど。
なんかチケット買う時、受付のお姉さんに、この映画はR15指定でして
年齢確認出来る物の提示をお願いします、とか言われました。いや、マジで。
そんなもん、完全にぶち切れですよ。もう、あったまきて。
アホかと。誰に口きいとんじゃと。
あのな、俺はな、めちゃくちゃ煙草も吸うし、めちゃくちゃ競馬も行くし、
めちゃくちゃ国民年金も払ってるし、言うたら、ぼーぼーなんだよ。
大人なんだよ。大の。大人なめてんじゃねーぞ、コラ。と。
しかも、いくらなんでも中学生はねーだろ?ボケが。
中学っつったらあれだろ、加護とかだろ。
あんなもんと一緒にすんな、ボケが。あんな小動物と俺様を。
あのな言っとくけど、加護なんかな、こちとら10秒で殺せるんだよ。コラ。
なっちなら20秒。後藤なら30秒で殺せる。
保田か、保田は10分だな。10分で俺が殺される。たぶん。なんかそんな感じ。
まあいいや。くだらねー。
蟻や‥‥!
蟻おるわ!!ご っつい数の蟻や!めっちゃ蟻おるやん!蟻や!蟻や!蟻おるわ!
う〜っわ、めっ ちゃ蟻おるやん!こ‥‥れ、めっ‥‥ちゃ、すっ‥‥ご!列をなしとるわ。列をなす蟻や!
これ蟻や!う〜‥‥‥わどないしよ。この蟻どないしよ。見せよか。蟻見せよか。この蟻見せよか。誰かに見せよか。
‥‥誰に見せよ?誰や‥‥誰に見せよか‥‥宮迫‥‥宮迫や。宮迫に蟻見せよか‥‥宮迫‥‥あかん。
宮迫はあかん。あいつ蟻踏みよる。蟻踏みよるわ。あいつめっちゃ蟻踏みよるわ。あかん。‥‥宮迫あかん‥‥
どないしよ‥‥田中‥‥田中や‥‥田中に見せよか‥‥田中‥‥田中はあかん。田中はあかんわ。田中は這わせよる。
蟻這わせよる。 田中蟻這わせよる。体に蟻這わせよる。あかん‥‥それはあかん
‥‥東野‥‥東野に見せよか。東野に蟻見せよか。東野に蟻‥‥あかん。それはあかん。あいつ蟻喰いよる。あいつ蟻喰いよるわ。
あかん。たぶんあいつ蟻は喰いよる。蟻は喰いよる気ぃするわ。あかん。
浜田‥‥浜田に蟻‥‥絶対あかん!浜田はあかん!!浜田はあかんわ。浜田は‥‥恐い。浜田恐いわ。浜田強い。
浜田めっちゃ強いわ。浜田めっちゃ強く叩きよる。わしの背中叩きよる。グ−で叩きよる。痛いわ。痛いねん。浜田痛いねん。
恐い。浜田は恐い。あかんわ。あいつはあかん。
どないしよ。木村。‥‥はあかん。あいつでかい。でかいのあかん。
山崎。山崎に蟻見せよか。山崎‥‥山崎‥‥山崎はあかん。山崎はあかんわ。あいつ生理的にあかん。わしあいつはあかん。あいつアホや。アホはあかん。アホはあかんやろ。
どないしよ。遠藤‥‥遠藤呼ぼか。遠藤‥‥遠藤に蟻‥‥遠藤‥‥
ヘイポー。ヘイポー呼ぼか!ヘイポーに蟻見せよか!! へいぽぉ〜〜〜〜〜!!蟻おるでぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
あれほど言ったのに、まだそんなカキコするですか!もう許さんです!
あんたを許すわけにはいかんです!こんなカキコでレスたくさん付くとでも
思ってるなんて頭おかしーよです!あんたみたいなバカ初めて見たです!
あんたみたいなバカ、ゴキブリ以下です!あんたみたいなバカ、ウジ虫以下です!
死んでほしーです!つーか、死ぬべきです!あんたは絶対に許されないです!
勘違いしたバカを許すわけにはいかんのです!面白半分にいい加減なカキコ
するヤツなど許さんです!キャラメルコーンのピーナッツをケツの穴に詰めて
死ねよです!!!
今まであんたがどんな生き方してきたか知らんけど、どーせひどい生き様
だったと想像出来るです!あんたのカキコから読みとれるです!バカ特有の
匂いがするです!あんたのことが全く理解出来んです!あんたは絶対許さんです!
死んでも許さんです!地獄で苦しめよです!それでも足らんくらいです!
豆腐の角に頭ぶつけて死ねよです!!!
あんたもっと現実を知れよです!いつまでも引きこもってネクラなことしてる
場合じゃないよです!でも、もー手遅れです!あんたは何をやってもダメです!
この世に生まれてきたことを後悔してもダメです!あんたは生まれ変わっても
どうせダメ人間に決まってるです!絞め殺したいけどあんたに触るのが嫌なので
やめるです!でも、あんたみたいなカスは死ねよです!風呂の排水口に吸い込まれて
死ねよです!!!
絶対許さんです!絶対許さんです!絶対許さんです!あんたみたいなヤツは
絶対許さんです!早く消えろです!さっさとこの世からいなくなれよです!!!
いつまでも勘違いしたまま生きていけると思ったら大間違いだよです!この
まま生きててもお前にはいーことなんにもねーよです!何でもいいからさっさと
死ねよです!!!
しないよ派 ─┬─ 肛門ないよ派
│
├─ 肛門あるよ派
│ │
│ ├─ 肛門からは何も出ないよ派
│ │
│ ├─ 肛門から出るものはウンコではないよ派
│ │ │
│ │ └─ 石川の排泄物は本質的にウンコなどではない派
│ │
│ └─ 肛門から出るウンコは石川のウンコではないよ派(過激派)
│
├─ 肛門ではない穴があるよ派
│ │
│ ├─ そこから出るものはウンコとは呼ばない派(穏健的ファンタジー派?)
│ │
│ └─ ピンク色の綺麗なまんこがあるよ派
│
│
└─ 肛門は関係ないよ派
|
├─ 石川はビューティーを紡いだり、奏でたりするよ(ビューティー派=美派、語呂悪、絶滅?)
|
└─ 石川はファイナルビューティー醸し出すよ(美派中道左派)
するよ派 ─┬─ 人並みにするよ派
│
├─ 他の人より大量にするよ派
│
├─ 肛門は無いがウンコはする(中立派)
│ │
│ └─ 肛門じゃない第4の穴からウンコするよ派
│
├─ ファンタジーと呼ばれるものをする派(急進的ファンタジー派) → 急速展開中、危険思想集団?
│ → 一部がジロンド派を自称
│
├─ 石神がその見えざる手により何処へと運び去るんだよ派(穏健的しないよ派?)
│
└─ ウンコをした10^-36秒後に虚数時間の量子宇宙に転移するから「実質的には」しないこととおんなじ派
/ ̄ ̄ ̄ ̄\ 言っておくけど俺はイケテル男だよ。
( 人____) 多分、俺に実際に会ったら、君らは俺を
|ミ/ ー◎-◎-) オタクとは思わないだろうね。
(6 (_ _) ) 俺の友人はけっこうワル入ってる奴ばっかりだし、
_| ∴ ノ 3 ノ 俺もちょっとワルっぽいかもな。
(__/\_____ノ 髪はロン毛だけど、前髪だけ茶色にしてる。
/ ( || || 服は、最近流行のファッションとは一味
[]__| |WALT ヽ 違ってて、独自のスタイルを作ってるぜ!
|[] |__|______) まあ、周りに流されてるだけの馬鹿が
\_(__)三三三[□]三) してるファッションではないわけだ。
/(_)\:::::::::::::::::::::::| サングラスかけて街あるってると、
|Sofmap|::::::::/:::::::/ 友人に、悪党って良く言われるしな。
(_____):::::/::::::/ アメリカの不良みたいな感じだ。
(___[]_[] ロック系とも言うかな?
妹「お兄ちゃんって落ち込んだ時どうする?」
俺「んー、別に何も。寝るかな」
妹「ふーん・・」
俺「どうした?何かあったか?」
俺「ううん、ちょっとね」
俺「何だよ水くさいな、言ってみろよ」
俺「う、うんとさ・・・」
俺「おう」
俺「お兄ちゃん、この間一緒に歩いてた人、彼女?」
俺「・・・は?」
俺「前学校の近くで話してたじゃん」
俺「ああ・・・あいつか。なわけないだろ、ただのクラスメートだよ」
俺「ほんと?」
俺「嘘言ってどうすんだよ」
俺「そっか」
俺「てかそんな話はいいんだよ。落ち込んでたんじゃなかったのか?」
俺「ううん、それならいいんだ!えへへ」
俺「おかしな奴だな」
俺「ふふ♪お兄ちゃんに彼女なんてできるわけないよね、よく考えたら。」
俺「こらこら、失礼だぞ」
これがお前等www
んじゃ、次スレも頑張ろうか
34スレお疲れ
∠/ / -──‐‐ヽ ヽ 〉/}__
. / / ム. -───‐-ヽ Viイム7}
/ / / f !__i l. | L__|_. l K.|〈//
レ1 /l. | lイ±リl| iトlム仕ミ| ト_j||
||| ゝ1!())Vレ:.(()}| |トーソ
ゝ! | ',: ̄ ..::,:.  ̄ / | |ヽ\
| ヽ:::::::t_ァ .:/ i | ト、ヽ ヽ
|.l! | | 丶、::_:// //イ ヽヽ」
|ハ ゝト、トゞ |:::/ /≦.ト、iハ_j