嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 31テーな女

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1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSS及び、
他様々な展開の修羅場プロット・妄想を扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その30
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1172454585/

■まとめサイト
2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html

■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第17章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1169657507/
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板 その2
http://book4.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1172035731/
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレin角煮板2nd
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1167959218/
誘導用
【モテモテ】ハーレムな小説を書くスレ【エロエロ】7P
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1168178299/
ヤンデレの小説を書こう!Part4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1172332198/
ほのぼの純愛 9スレ目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171372657/
●●寝取り・寝取られ総合スレ4●●
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1164867401/
2名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 16:15:27 ID:tzmzN3Vk
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
3 ◆DxKRIZG..E :2007/03/08(木) 17:22:05 ID:Up9AjLsr
白無垢処女のようにまっさらなスレに喜びを感じつつ、
「幼馴染と義妹で奏でるカルテット」第4話を投下。
4幼馴染と義妹で奏でるカルテット:2007/03/08(木) 17:23:43 ID:Up9AjLsr
【視点人物:鳴瀬正紀】

坂木がこの家に来て3日が経っていた。
あいつの表情や声色は不機嫌なのがデフォルトのようで、
最初はどう対応したらいいのか戸惑っていたが、
必要な会話は応じてくれるので、良しとしよう。
家事については今のところ自分のことは自分でやる、という不文律。
まあ俺が坂木の下着を洗濯したり部屋を掃除するわけにはいかないので、
当たり前だろうが。
だがあいつは俺が作った食事を食べたことはあったが、
俺はまだあいつの作ったものを食べたことはまだない。
さらに言えば坂木が料理をしている姿も見たことがない。
明日はどうするんだろうな、あいつ。

週末の朝、俺はいつもより早めに起きて弁当用の料理をしていた。
なんでも今日は学校にパンや弁当を売りに来る業者の都合で、
購買で昼飯を買うことができないらしい。
そしてこの家から学校までは一本道で10数分なのだが、
食料調達のためにコンビニを経由しようとすると、
1時間以上もかかってしまうという位置だ。
前日に適当なパンでも買っておいても良いが、
どうせなら余っている冷凍食品を使い切ろうとしただけだ。
俺が弁当を詰め終えて、朝食のトーストが焼けたとき、
坂木が起きてきた。
「おはようさん」
「朝から料理かと思えば、今日はお弁当?」
この言葉、もしかしてこいつは忘れているのではないのか。
「あー、坂木。今日は学校の購買部が休みだってこと、知ってたか?」
「え?」
驚き半分、焦り半分といった表情。
「ついでに言うと、ここからコンビニを経由して学校に行くと、
 俺の足でも軽く1時間はかかるぞ」
「うそ!」
「悪いが本当だ。うむ、だが俺も鬼ではない。
 幸いにして冷蔵庫にはまだ冷食とかが残っているから、
 可哀想な我が義妹に進呈しても吝かではない」
「……てよ」
「ん? なんと言った」
「どうせならあんたが作ってよ」
うーむ、この女はツン(ツンデレかツンツンかは未確認)だと思っていたが、
女王様属性的高慢さも持ち合わせていたとは。
「残念だが、俺にM男くん属性はないからな。自分でやってくれ。
 どうしてもと言うなら『お兄ちゃん、お・ね・が・い』とウル目で懇願を」
「誰があんたなんかに……」
大きくため息をついた坂木は冷蔵庫を物色し始めた。
ふむ、せめてもの情けに弁当の容器くらい準備してやるか。
5幼馴染と義妹で奏でるカルテット:2007/03/08(木) 17:24:28 ID:Up9AjLsr
それから数分後、電子レンジの音を聞きながら、
俺は久しぶりにミノムシロの朝グサッ!を見ていた。
坂木がいると必ずシャープシンに変えられるからな。
朝グサッ!は痴情のもつれによる事件を優先的に報道してくれる。
今日のトピックは『わたしだけのご主人様、監禁調教』、
『お兄ちゃんクサ〜イ、泥棒猫の臭い』、
『血溜りの中に沈んだ第2ボタン』か。
今日もどこかで誰かが誰かを苦しめている。
下世話な好奇心を満たしていると、画面が切り替わって、
『今朝のワンニャン占い☆』になってしまった。
くそっ、もう作り終えやがったか。
どこかのディレクターが適当にコメントを書いた予言を見て何が楽しいのやら。
無言でじっと占いを見ながらもすごい速さで朝食を口に入れる坂木は、
占いコーナーが終わるとすぐに席を立った。
よく噛まないと消化に悪いぞ。
坂木がいつものように一足先に出たのでチャンネルを切り替えたが、
既に朝グサッ!は政治談議をしていた。

「おはようさん、ユカネエ、アキボー」
家を出るとお馴染みの二人がそこにいる。
坂木が来た翌日は彼女を加えることになるのかと思ったが、
あいつはいつも早めに家を出る。
朝練でもあるのだろうか? そういえば部活をしているのか?
「おはようまーくん。昨日は何もなかった?」
「あの女に何かされたのならいつでも言ってね」
変化といえば、2人から坂木の話題が出ることだ。
まだギクシャクとしている俺と坂木のことを心配しているのだろう。
「何にもないよ。家族と言っても気が合わなければ他人よりも遠いっていうじゃん?
 そういう意味では俺にとってユカネエとアキボーの方がよっぽど身近だよ」
「「ホントに? 嬉しい!」」
2人が両側からひっついてくる。
もう1つの変化といえば、なんかやたらと密着されたりすることが増えてないか?
そりゃあ、異性に触れて嬉しくないわけがないが。
「ねえ、ま〜くん。明日の予定空いてるかな?」
「あたしたちのショッピングに付き合って欲しいの」
ん? 今年になってからは初めてのお誘いだな。
アキボーが高校生になったらいつも2人で行っていたのに。
でも、断る理由はない。
「3人で出掛けるのは久しぶりだしな。いいよ、行こうか」
そう言うと、再び抱きついてくる。
やめてくれ。そろそろ周囲の視線が痛くなってきた。
6幼馴染と義妹で奏でるカルテット:2007/03/08(木) 17:25:07 ID:Up9AjLsr
このところ変化と気苦労が増している私生活と比べて、
学校内ではさして変わりがない。
日常という意味のありがたさを噛み締めつつ、
居眠りをしたり馬鹿話をしたりする。
さて次の音楽の授業も睡眠にあてるかな、と思いながら教室移動をしていると、
階段の下から大きなダンボール箱を抱えた女子がのぼってきていた。
上方は見えていないだろうし、足元も大丈夫だろうかと見ていると、
その女子が足を踏み外して転びそうになった。
「おっと、危ない、な?」
事前の観察のおかげで、右手で箱を押さえ、左手で女子の肩を支える。
と、俺はその女子の顔を見て固まってしまった。
「……ありがとう」
今朝も顔を合わせた憶えのあるそいつは、坂木舞、我が義妹である。
ここで、脳内エンジンをハイテンションにして高速演算。
こいつは見知らぬ同級生だ、同級生。
1つ屋根の下で寝食を共にするとかそういう関係ではない。
さあそういうロールが与えられたとき、俺はどうプレイングをするべきだ。
「1人で運ぶのは大変だろう? 運んでいってやるよ」
と、坂木が両脇に抱えている荷物を奪い取って階段を昇り始める。
大丈夫だよな? たまたま助けた同級生の手伝いをするぐらいは、
見知らぬ関係でも許せる範疇だろう。
坂木の方は振り返らずにスタスタと元来た階段を昇り、
以前聞いた坂木の所属する2年4組の前までもっていく。
そこで坂木に無言で渡した。
「……あたしの教室、知っていたんだね」
あ、しまった。見知らぬ同級生がどこのクラスかなんて知るはずがない。
「ヤマカンだ」
言い訳にもならない言葉を吐いてそそくさと逃げた。
多少の失敗はあっただろうけど、セーフだよな。
あれを横からみている奴がいても、俺と坂木の関係がばれることはないだろう。
え? わざわざ荷物を運ぶ必要はなかっただって?
考えてみよう。もしあそこで坂木を見捨てていたら、帰って何を言われるかを。
まだ手伝った方が言い訳がきくだろうよ。
7幼馴染と義妹で奏でるカルテット:2007/03/08(木) 17:26:31 ID:Up9AjLsr
さて、ミステリー小説を読み込んだ人のためにも、
ここで伏線は回収しておくにこしたことはない。
俺の今日の昼飯は散々だった。
解凍しきれていない唐揚げを口の中で溶かしたり、
生のブロッコリーにマヨネーズが塗られていたり、
噛んだらバリバリと歯ごたえのある卵焼きなど、
俺は作った記憶がない。
くそう、坂木め。俺の弁当を間違えてもっていったのか。
それとも同じ容器を準備した俺の責任か?
わざとではないだろうとそこだけは坂木の良心を信じよう。
あー今ごろ、坂木は俺の特製アスパラのベーコン巻きを食べているんだろうな。

(to be continued...)
8 ◆DxKRIZG..E :2007/03/08(木) 17:28:24 ID:Up9AjLsr
投下終了。坂木舞が嫉妬したり、修羅場になるのはまだ先。
嫉妬するには好意を抱くきっかけの話が必要なのだよ、と言い訳しつつ。
9名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 17:31:07 ID:tzmzN3Vk
>>8
GJ!
ここからどうやって修羅場に持ち込んでいくのかが楽しみだ!
10雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/08(木) 17:38:14 ID:rlcUE/mn
投下します。
11雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/08(木) 17:39:24 ID:rlcUE/mn
 雨の音 第二回

 響が清涼院の屋敷に来た翌朝。
起きてしばらく、響は自分がどこに居るのか解らなかった。
天井が高い。
部屋が広い。
しばらくぼんやりしていたが、左腕の鈍い痛みで意識が立ち上がってきた。

 そうか、僕は幸一おじさんのお屋敷でお世話になる事になったんだっけ。

 そして、左腕の痛みからシヲンとの出会いを思い出した。
あの女の子、キライだ。
あんなに可愛いけど、性格はサイアクじゃないか。
昨日、逃げるように部屋から出て行った自分に腹が立ってきた。
よし、今日、シヲンに会ったら謝らせてやる!
胸に決意を秘め、部屋のドアを開けようとすると、

「おそいわよ!ヒビキ!!」
シヲンが入ってきた。

「イソウロウの癖に、アルジより遅起きだなんて、いいミブンね!」
嬉しそうにそう叫ぶと、右手に持っていた三十センチ定規で、響を
思いっきり叩いた。
「オシオキよ!オシオキ!」
全くの無邪気な笑顔でシヲンは響を叩き続ける。

12雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/08(木) 17:41:15 ID:rlcUE/mn
「この、やめろよ、バカッ!」
定規を持つシヲンの手をとめ、シヲンを睨みつけ、突き放した。
キャッ、と悲鳴を上げ、尻餅をつくシヲン。

 さらに、シヲンの手から落ちた定規を拾い上げ、彼女を叩こうと、
定規を振り上げた瞬間、
「追い出すわよ」
シヲンが涙目で響を睨みながら、言った。

 その一言で、響は定規を振り下ろせなくなった。

「…もういい。出てってよ」
定規を放り投げると、響はシヲンに背を向けた。

「ダメよ。イソウロウの分際で私を叩こうとしたおバカさんに
 おしおきしなくっちゃ。
 …そうね。
 あなた、朝御飯抜き。
 メイド達には私から言っといてあげる」
それだけ言うと、シヲンは響の部屋から出て行った。

 部屋に一人きりになると、響は着替えるためにパジャマを脱ぎだした。
シャツだけになると、体中に叩かれた後が残っていた。
これから先、この屋敷から出られる位の大人になるまで、あの女の子に
いじめられ続けるんだろうか。 
 そう思うと、起きたばかりだと言うのに、疲れた気がしてきた。 

13雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/08(木) 17:43:41 ID:rlcUE/mn
投下終わり。
次回、メイドさんが登場します。
ヒロイン、初嫉妬までいけるかと思います。
今回も嫉妬無くてごめんなさい。
14名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 18:24:57 ID:tzmzN3Vk
>>13
ここまで嫌いなヒロインも初めてだw
メイドさんへの嫉妬に期待してる!
15名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 18:25:01 ID:YEBWFVGD
>>3 >>10
焦らせば焦らすほど嫉妬は輝くもの。
二人ともGJ!!
続きをwktkして待ってます。
16名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 19:07:25 ID:LTTe4ZWz
S系のヒロイン増えてきたなぁ。しかし俺は美少女が主人公に特に理由もなく惚れるより
最初はこういう扱いした方が好きなので頑張って欲しい。
17名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 19:17:27 ID:sQq+B+Mu
高慢な主にメイドとは、ゼロの使い魔チックだな。
俺的には大好物なのでどんとこいですが。

…メイドもSだったら凄いけど。
18名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 19:21:37 ID:PcGdNxPb
雨の音のIDなんか見覚えあると思えば合鍵の人?
赤色の続きは?
19名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 19:49:01 ID:F+drag62
>>10
ゼロの使い間思い出した
20名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 21:43:34 ID:AtcMDjXo
>>13
シヲン単純に嫌な奴だな…w
これからの嫉妬が楽しみでしょうがない
21名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 21:56:59 ID:Bg/cZREG
多分愛とか恋愛感情じゃなくてペットにちょっかい出したとかそういうレベルの嫉妬から始まるんだろうなあl
22華麗なる獲物たち:2007/03/08(木) 22:07:37 ID:XufCfQgu
サクラ散っても春は終わらない、まだ四月だしな

俺は大学三年となり、山手線の田町にあるキャンパスへと足を運んでいた
近くは企業のビルばかりでおおよそ学生の学び舎が有る場所とは俺は思えない

とはいえ、俺としては留年せずに見事にここのキャンパスに来れた事がとても有難い

経済学部に在籍してはいるマクロ経済学など分かるほど緻密な知能を有してはいないので
留年しそうになったわけだ
しかし、何故留年しなかったかと言うと一人の同じ学部、しかもサークルも一緒の奴が居たからさ


誰か?まぁ先程から一応隣りにいらっしゃる女性、高村佳織がその人だ
「さっきからボーっとしてどうしちゃったの?」
「う〜ム、ちゃんと三年になれたのだなぁ、と感慨に耽っていたのさ」
「本当にぃ?高橋君は色々と余所見ばっかしてるからなぁ」

いや敢えて言うなら今の俺の発言は事実だぞ、それと申し遅れたが俺の名前は高橋亮介だ。
宜しく諸君。

とりあえず俺は佳織の言葉に優しさフェロモン120%(当社比)で答える

「俺は常に君の瞳しか見てないSA!」
「ならさっき電車の中で、お天気ニュースのお姉さんを凝視してたのは何でかなぁ?」
急に佳織の声が柔らかくなる!
シット!こいつはやばいぜ!

確かにお天気お姉さんの顔見て「癒される〜」なんて思ってはいたが
ボクハカオリサンシカミテナイヨ?ホントウデスヨ?
「まぁそんなの何時もの事か…」
「ソウダネ」

俺は彼女の問いにデーブ・ス○クター様な完璧な日本語を喋れることを目指してる外人の真似をする
だってこいつ怒ると怖いもん、グスン
23華麗なる獲物たち:2007/03/08(木) 22:27:08 ID:XufCfQgu
「でもまぁ一々そんな事言うのもオカシイしね、別に彼女じゃ無いし」
「ムゥ、ハタシテソレハドウデショウカ?アナタニハオンガアリスギマスカラ
ツキアッテテモオカシクナイデショウ」

良い加減この喋り方止めるべきだろう、正直言ってる俺が自分に対してキモイと感じてるし
「そうね。先ずはノートのコピーに、昼の食事代貸したり、飲み屋の足りない金額分を奢ってあげたり、それに…」
「あぁ〜、それ以上言うな!耳がイタイ!」

ふっ、聞くだけで耳が痛いぜ。確かに借りが多過ぎて困るな!
これじゃこいつの命令には従順になって当然だ
ならこのパターンで行くか、こいつが恩着せがましくなったときの常套手段だが

「今日の夕飯は何が食いたい」
「奢ってくれるのぉ?」
こいつはこんな時だけ猫みたいに可愛い声だしやがる、ウザ
なんて思いません、思えないのが事実だ


「ならお寿司が食べたいなぁ〜♪」
「俺が慢性金欠で、更に昨日焼肉奢ったの忘れてないか」
「えっ?そんな事あったけぇ?」
佳織は目を逸らしてハハハっと笑ってみせる
こやつ!曲者でござる
24華麗なる獲物たち:2007/03/08(木) 22:46:07 ID:XufCfQgu
因みに昨日もこいつに焼肉奢ってやった訳だ
佳織は「貴方にしてあげた事への対価」と言うのが言い分だ

しかしまぁ何故ここまで負い目が有るのかと、そう聞かれたら答えは一つのみだ



「それより、先月も含めて今月の家賃が未納だってママが言ってたなぁ」
「うっ」

そうこいつは俺の住むアパートの大家の娘さんなのだ
因みに高校生活時代から、家族の事情でこいつのアパートに住んでいる。
それゆえ実際は大学入る以前から佳織とは仲が良い

「家賃滞納するなら」
「分かった!行こう、寿司なら何だって奢るぞぉ!」
「本当?ありがとう?」

ふっ、財布の中身は一円すら残らぬは!ハハハハハハ
今、俺の涙は血が混ざってるだろう、そうとしか思えない

そんなこんなでビルの合間の小道を通り抜け、キャンパスへと近付く
ちょっと吹いた小風が思いのほか寒く

俺の財布事情を表してる気がした
25赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/08(木) 23:11:54 ID:3nblSO3A
もしかしたら書きながら投稿していますか?
テキストにまとめて投下しないと、他の人が書き込めません。
それと、投稿する際は「投下はじめ」と「投下おわり」を書かなければGJも出せませんので注意をお願いします。

新作をUPしたいのですがよろしいでしょうか?
26名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 23:21:39 ID:XrZqB8ii
>>25
前スレがまだ419KBなので、そちらに投下した方がよろしいかと…。
27赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/08(木) 23:23:29 ID:3nblSO3A
了解です。では前スレに投下しましょう。
28名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 15:43:54 ID:Na9Ojbpy
保守
29名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 19:39:20 ID:XbLX9urH
そろそろこっちに書き込んでいいかな?
30名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 19:48:29 ID:hWSXdwnk
31スレが始まるに当たって数多の職人さんたちに一言。



新作もいいけど続きもね。
31名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 20:53:38 ID:VHVFqtud
何様だあんた^^
32名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:04:18 ID:FUpO/QMX
>>30
禿同
33名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:04:49 ID:Am5/ABFC
>>30
禿同!

34名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:05:30 ID:DihsGBus
>>30
禿同!!

35名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:08:13 ID:e2aWzTDd
>>30
ハゲシク同意
36名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:10:16 ID:QDSTpmYz
>>30
ハゲシクドウイ

37名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:11:58 ID:inthaLUK
>>30
激しく同意
38名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:12:50 ID:duqKGnKU
>>30
禿同!!11
39名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:13:33 ID:iLnpB0c8
>>30
禿げ同
40名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:14:58 ID:n4oUgQc/
>>30
禿げ同!

41名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:17:50 ID:CFJhbET9
何この流れ
42名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:18:53 ID:VHVFqtud
きっといつもの発作だよ
気の毒に
43 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/09(金) 21:20:09 ID:PFZfjNjo
えっと……あの……
投下してもよろしいでしょう……か?
それとも今はやめたほうがいいでしょうか?
44名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:20:21 ID:rCvfS7Ar
また、荒らしか
45名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:22:22 ID:rCvfS7Ar
投下してくださいお願いします!!
46名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:22:24 ID:rKaH1kLS
>>43
気にせず投下してください、お願いします
47名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:23:02 ID:As1vNLsl
前スレに投下してくれ
48名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:25:48 ID:tzq8bknA
>>30
正論
49 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/09(金) 21:28:35 ID:PFZfjNjo
じゃ、投下行きます
前スレは他の職人さんの埋めネタの投下を楽しみに待ちたいと思います
50白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/09(金) 21:31:20 ID:PFZfjNjo
<div align="center">+     +     +     +<div align="left">


 時刻は夜更け。 ほとんどのものが寝静まるそんな時間。
 村の外れの森。 その奥、村人達でさえ滅多に立ち入らぬ奥深い場所にコレットはいた。
 そしてコレットを中心に取り巻くように集まった人影。 十数人はいるだろうか。
 彼らの多くは見るからに屈強な体躯の持ち主。
 おそらくは雇兵や冒険者、そして破落戸やならず者のようなカタギには見えない
そんな人間まで見受けられる。

「皆さんよく集まってくださいました」
 其の連中に向かってコレットは軽く会釈すると語りかけた。
 そして傍らに立つメイドに向かって目配せするとメイドは手にしてた紙を配り始める。
 集まった全ての者たちに配り終わったのを確認するとコレットは口を開く。
「では皆さんにお願いするお仕事に付いて説明させて頂きますわね
お手元の紙に描かれた人相書きをご覧になって下さい」
 コレットは配った紙に目を通すように促す。
 配られた紙に描かれたもの――それはセツナ達の人相書きだった。
 そして用件を伝え始める。

 そう。 コレットはリオを取り戻すため形振り構ってられないと行動に出た。
 自分の出来るやりかた、自分のもつ力、すなわち村一番裕福な財力に頼ってでも、と。
 その財力で持って彼女は人を雇ったのだ。
 金さえ積めば何でも行ってくれる、そんな者達を。
 そしてそんな輩に頼り自分から愛しき人を奪った憎い泥棒猫から奪い返そうと。
 そう結論を下し行動に移したのだ。

「――黒髪の女は確実に殺してくだ……いえ」
 言いかけてコレットは口をつぐみ何か考えるそぶりを見せ、再び口を開く。
「いえ、出来れば生かしたまま捉えてください。 そのさい……、
必要とあらば手足の一本や二本切り落として下さって構いません」
 そう言ったコレットの瞳は狂気に染まり口元はいびつに歪んでいた。
(うふふ……。 そうよ。 私から大事なリオを奪った罪!!
死ぬ程度でなんか償えるようなものじゃ無いのよ?!
だからね……地獄を味合わせてあげるわ。 ふふ……)
 そしてコレットの口からは彼女自身も気付かぬうちに薄笑いが漏れていた。

「あの……雇い主殿?」
 其の様子に場に集まった男の一人が怪訝そうに声を発した。
 そして其の声に引き戻されたようにコレットは再び口を開く。
「あ、失礼しました。 話を続けさせて頂きますね。 また、隻眼も同じ様に任せますわ。
ただし、金髪碧眼の青年には一切手出ししないようお願いいたし……、いえ。
脚の腱を切り落とすなどして歩けないようしてくださいませ」

 そう。 セツナ達を排除して、それで終りではない。
 自分の目の届かない所に旅に出た先で再び妙な泥棒猫に目をつけられないとも限らない。
 その為には冒険になど、旅になど行かせない。 行かせてなるものか。
 だから旅になど出れないように、歩けないようにしてしまえばいいのだ。
 そうコレットは結論を下したのだ。

「ですがそれ以上の怪我は負わせないで下さいね。
特に、顔には決して傷を負わせぬようお願いいたします」
 そう言い終わったコレットはにっこりと微笑んだ。
 花が咲いたようなその笑顔だった。
 そんな笑顔もこの場にそぐわないこの状況ではかえって異質ですらあった。

51白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/09(金) 21:33:38 ID:PFZfjNjo
「……つくづく、見下げ果てた女だな」
 その時闇の中から声が響いた。
「誰?!」
 コレットは声のした方を振り返った。
 そして視線を向けた先からすがたを表したのはクリスだった。
「い、い、何時から……」
「一部始終聞かせてもらいましたよ」
 聞かれてしまった。 其の事実にコレットは狼狽の色を隠せない。

「村の外れに妙な気配が集まってると思ってきてみれば……。
ま、こんな事じゃないかと思ってたけどね」
 そう言ったクリスの声は呆れや嘲りの色を含んでいたような声だった。
 其の言葉を耳にしたコレットの表情に脅えにも似た色が浮かぶ。
 だが――。

「ふふ……。 それで? 得意げに勝ち誇っちゃってそれでどうするつもり?」
 直ぐに其の色は消え、変わりに浮かぶは狂気染みた笑み。
「リオとセツナに言いつけに行くの? 行けるとでも思ってるの?
この! 人数相手に! 逃げられるとでも思ってるの?!」
 そしてクリスに向かって言い放った。
 そして其の言葉に応えるように集まった男達も身構えた。

「ふん。 逃げるつもりなんて無いよ。 そっちこそこの程度の三下集めたぐらいで
ボクと姉さんをどうにかできるとでも思ってるなら随分おめでたい頭してるもんだね」
 だがそんなコレットの言葉にも集まった屈強な男達にもクリスは全く動じる様子は無い。
 悠然と身構えもせず言い放った。

「てめぇこの糞餓鬼! 嘗めた口叩いていきがってるんじゃねェぞゴルァ!?」
 年端もいかぬ相手に三下呼ばわりされたのが気に障ったのか、男のうちの一人が声を荒げ、
クリスに向かい殴りかかった。
 岩の塊のような拳がクリスの頭部に打ち込まれ――
「うがああぁぁぁぁぁっっ!!」
 次の瞬間悲鳴声を挙げたのは殴りつけた男の方だった。
 男はそのままうずくまり拳を押さえながらうめき声をあげる。

「な、何しやがったぁ?!」
 そんな状況に別の男が声を上げた。
「別に。 単にコイツの拳がボクの頭より脆かった。 それだけさ」
 クリスは自分の額を指でとんとんと突付きながら淡々と話した。
 実際には事はその様に単純ではない。
 インパクトの――力が乗り切る直前にクリスは頭突きを食らわせるように踏み込んだのだ。
 もっともその様な芸当もタイミングもクリスの並外れた運動神経、
そして数多の死線をくぐりぬけ鍛え抜かれた頑強な体なればこそ。
「この野郎!」
 続いて突き出される先ほどの男にも劣らぬ巨漢の拳。
 其の拳をクリスは正面から受け止めいとも簡単に握り潰した。
 まるで生卵でもつぶす様にあっさりと。
52名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:35:25 ID:qyc/Ryfp
>>30
正論なのに荒らし扱いする住人w本当に民度低いな
53白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/09(金) 21:35:54 ID:PFZfjNjo
 瞬く間に二人の仲間を一蹴され、ココに来て男達は認識を改めざるをえなかった。
 目の前にいるのが単なる少年(実際には少女だが)ではないことを。
 そして一斉に武器を手に襲い掛かる。 だが、何れもクリスの敵ではなかった。
 迫り来る武器を何れも苦も無くかわし、クリスが拳を、蹴りを叩き込む度に
破落戸どもは飛ばされ、或いは地に倒れ伏せる。
 当然であろう。
 人間よりはるかに強靭なモンスター相手に命がけの戦いを常としてるクリス。
 そんな彼女にしてみればこのような破落戸程度の相手、赤子の手を捻るように容易い。
 得意の得物であるギガンティスグレイブも手元に無い。
 それすらハンデにならない、それほどまでに実力差に開きがあった。
 圧倒的な力量差でもって向かって来る男達を蹴散らすクリス。
 そんなクリスの姿にコレットの表情は蒼ざめる。 折角大枚はたいて雇ったと言うのに
それがまるでなす統べなく目の前で蹴散らされてるのだから。
 それだけではない。 雇った男達が全て打ち倒されたなら其の後には――。

 その時コレットの傍らに立っていたメイドがクリスに向かい素早く腕を振りぬいた。
 まるで何かを投げつけるように。 いや、実際"何か"を投擲したのだろう。
 其の動きからクリスは軌跡を読み投げつけられた"何か"を首を僅かに横に紙一重で――
いや、大きく身を伏せてかわした。
 数多の死線を潜り抜けてきたクリスの直感が考えるより先に体を動かした。
 ――"それ"を紙一重かわすのは危険だと――。
 瞬間クリスの頭上で悲鳴が上がり鮮血が舞う。 クリスにかわされ目標を見失ったそれは
結果代わりにクリスに斬り掛からんとしていた男に牙をむいた。
 鮮血を散らしながら男の太い腕が転がり落ちる。
其の断面は鋭利な刃物で切断されたかの様。
 咄嗟に危機を感じ大きく身をかわさねば今頃クリスの首がこうなっていたかもしれない。

 クリスは身を起こすとメイドを見据えた。
 そしてメイドもそれに応えるように視線を返すとコレットはすぐさまメイドから離れた。
 メイドなどではなかった。 彼女が前掛けやスカートを脱ぐと
その下からは全身を余す事無く漆黒の衣で身を包んだ姿が表れる。
 そう――メイドなどではなくメイドに扮したアサシンだった。
 コレットが今回セツナたちを消すために雇った切り札だった。
54名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:36:07 ID:u6UEcAWw
30スレに池
55名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:36:20 ID:r1B9Kkpp
単発じゃ無くなったら荒らし扱いしないであげるよ。
56名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:37:06 ID:u+opdTcI
戦闘シーンはいらないから嫉妬を書けよ
57名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:38:37 ID:QYmr55BW
>>55
煽られないゾw
58白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/09(金) 21:39:48 ID:PFZfjNjo
 アサシンは懐から黒塗りの仮面を取り出し被る。
 目の周りと、そして呼吸の為であろうか、口元の周りに無数の小さな穴が明けられた、
それだけのシンプルなつくりの面。
 だが其のシンプルさが逆に殺人機械のような無機質で不気味な雰囲気を放つ。

 距離を保ったまま対峙してたアサシンが先ほどと同じ様に腕を振りぬいた。
 同時にクリスは地面から素早く剣――倒した男達が使ってたもの――を拾い上げ、
其の動きは武器を払ったり防ぐと言うより、まるで何かを絡めるような――。
 次の瞬間"ビィィンッッ"と張り詰めたような甲高い音が響き、
アサシンが踏ん張るような姿勢をとる。

「――やっぱり、裂鋼糸か……」
 呟いたのはクリスだった。
 そう。 髪の毛より細く、そして恐るべき切れ味を持った鍛え抜かれた金属線。
 文字通り鋼をも裂く恐るべき兇器。
 クリスの手に握られた剣も悲鳴をあげ始め数秒もすればバラバラになるだろう。
 だが、そうなるより先にクリスは手を放した。
 瞬間力の均衡が破れアサシンがバランスを崩す。
 其の隙を突くようにクリスは地面を蹴り一気に距離を詰め懐に潜りこもうとする。
 まるで突風のような鋭い踏み込む。

 しかしアサシンもそれを容易く許しはしない。
 剣が絡みついた裂鋼糸を放り捨てると代わりにすぐさま袖口から短剣が現れる。
 そして短剣を飛び込んで来たクリスにカウンターで切り裂――けなかった。
 クリスとて相手の武器が裂鋼糸だけとは思っていなかった。
 だから懐に飛び込むと見せかけ寸前で急ブレーキを掛けた。

 裏をかかれたアサシンの短剣は空を切り、バランスが崩れそうになる体は
かろうじて踏みとどまる。
 そしてバランスを立て直そうとするアサシンは腹部の上のほうに何か触れるのを感じ、
そう感じたか感じないかの次の瞬間形容しがたいほどの激痛が貫いた。
 急ブレーキを掛けたクリスはアサシンの水月に向かい手を伸ばした。
 それはまるで砂時計の砂の落ちるが如き緩やかで流れる様な、
先程の突風のような踏み込みと比べればまるで停まってるかのような。
 だがその指は触れた瞬間アサシンの体に深々とめり込み胃袋を突き破った。
59白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/09(金) 21:41:31 ID:PFZfjNjo
 クリスは戦士であって武闘家ではない。
 だが超重量のグレイブを操る筋力と強靭な指先は決して武闘家にも引けを取らない。
 だからこそ可能な回避も防御もほぼ不可能な射程ゼロからの貫手だった。

 アサシンの体が胃袋を破られた激痛で痙攣する。
 黒塗り仮面を被った顔が壊れかけた機械のようにぎこちなくクリスに向けられる。
 仮面の奥の瞳は苦悶に染まっている。
 胃袋が破られたのだ。
 口から血を吐き散らし、のた打ち回ってもおかしくないほどの激痛だろう。
 そして其の瞳がグニャリと歪んだ。 弦月の様に――嗤ってるかのごとく。
 次の瞬間、仮面の口元の幾つもの穴から無数の針が射出された。
「しまっ……!」
 咄嗟にクリスは横に跳び、だが全てをかわしきれなかった。
 受けた針はほんの一・二本。 傷自体はダメージにもならぬ程度のもの。
 だが――。

「くっ……、毒、か……」
 如何に屈強な肉体とは言え毒が相手となると話は別。
 膝をつき崩れ落ちるクリス。
 だがアサシンもまた胃袋を突き破られてこれ以上の戦闘継続は不可能だった。
 仮面に隠した毒針が切り札にして最後の力を振り絞っての一撃だったのだろう。
 クリスが飛び退いた直後仮面の隙間から大量の血を溢れさせながら崩れ落ちた。

 毒に意識と肉体の自由を奪われ、遠のく意識の中クリスの目に映ったもの。
 それは狂気染みた嗤を顔に浮かべ見下ろすコレットの姿だった。


To be continued...
60名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:42:16 ID:PFZfjNjo
以上で今回の分投下完了です
61名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:43:23 ID:CFJhbET9

わけわからん奴は気にしないでください
62名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:44:44 ID:tDfhxjEN
>>60
GJ。鉄拳チンミにこんな敵出てきたなぁ
63名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:56:17 ID:B9rDKSkI
>>55
投下に割り込んでまであおるなんてな
64名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 21:57:33 ID:yTnytFv/
>>60
乙です。
クリスが戦うたびに無事を祈ってしまう。
65名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 22:13:25 ID:Jj+++sXu
>>60
GJです
駄目だ・・・おれ完全にクリス派だわ。
66名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 22:31:41 ID:qneWdZdC
>>60
GJです
駄目だ・・・おれ完全にコレット派だわ。
67名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 22:32:31 ID:rCvfS7Ar
>>60
GJです

しかし、投稿している最中に割り込む連中は新参者か荒らしかな
圧倒的に後者だと思うけど
68名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 22:34:28 ID:FUpO/QMX
>>60
GJです
駄目だ・・・おれ完全にセツナ派だわ。
69名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 22:35:28 ID:WE54fonv
>>60
GJです
駄目だ・・・おれ完全にメイド派だわ。
70名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 22:36:13 ID:otx/DpuW
>>60
GJです
駄目だ・・・おれ完全にアサシン派だわ。
71名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 22:38:48 ID:4OJ9P0rq
>>60
チンミのパクリじゃねーかw
72名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 22:39:57 ID:rKaH1kLS
>>60
乙です。コレット派なんで彼女がどこまでがんばるか楽しみにしてるわ

>>67
ここんとこの単発IDで延々レスをする奴は全員同一人物っつーか荒らしかと。
73名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 23:16:15 ID:VHVFqtud
嫉妬のあまり一人遊びに没頭しているサイ娘さんに違いない
74名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 23:26:15 ID:2ylhDNdH
なんで荒らしのことをスルー出来ない香具師ばっかなんだ
75 ◆6xSmO/z5xE :2007/03/10(土) 01:45:07 ID:/WcFBIky
投下行きます。
76ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/03/10(土) 01:47:45 ID:/WcFBIky
 ゆっくりと目を開き、何度も瞬きする。
 30秒もして目が暗闇に慣れてくる頃になって、智はようやく自分が久々に『目覚めた』ことを認識した。
 まずは深呼吸をしようとするが、息を吸った瞬間喉に激痛を感じて思い切りむせてしまう。
 首に手をやってみると、首全体に凸凹した感触があった。

(エルさんに絞められた痕、まだ残ってるのか。ま、本当に死ぬ寸前までいったし。吸血鬼じゃなかったら間違いなく死んでたな・・・)

 実際、首には手が沈み込んだ痕がくっきりと残っており、文字通り潰れる寸前だったことを示している。
 そんなとんでもない内容の事実を、智は酷く冷静な意識で受け止めていた。
 その冷静さで、ここ最近のことを少しずつ思い出していく。


 千早を傷つけ、逃げ出したこと。
 藍香を強姦し、精神的に狂わせたこと。
 綸音に連れ出され、刺されたこと。
 そして、自分を生かす為にエルが何人もの女性の命を奪ったこと。
 全て覚えている。


 智は思う、どうしてこんなことになったのだろうと。
 誰も傷つけないようにとやってきたつもりだった。
 今までの生活を守りつつ、吸血鬼としての生き方を学び、いつか元の身体に戻れる日まで耐える。
 千早、エル、藍香と綸音。支えてくれる人々に恵まれ、彼女たちに応えようと頑張ってきたつもりだった。
 それが今はどうだ。その誰をも傷つけ、何もかも滅茶苦茶になってしまった。


 
 今の智には、怒り悲しみも、憎しみも恐怖も無い。

 なぜまだ生きているのか。
 なぜ今更になって目覚めるのか。

 あるのはただ後悔ばかりだった。





77ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/03/10(土) 01:52:05 ID:/WcFBIky
 今頃になって目覚めた理由。これは言うまでも無い。
 エルが千早を殺すと言ったからだ。
 聞こえたわけではない。だが確信があった。
 首に残る感触が、漂う瘴気が、自分の中の血が、間違いないと警告を発していた。
 そして、それを止めろと強く強く頭を揺さぶったのだ。

 次に智が今まで目覚めなかった理由、それは智が生きようとする意志を放棄していたからだ。
 吸血には、単純に血液を補給するという物理的な面と、精気を吸収するという精神的な面がある。
 智はその内の後者を拒否した。精神面の作用が大きい分、吸血者自身に精気を望む気持ちがなければいくら血を飲んでも意味はない。
 精気が少なければ吸血鬼は意識を保てず、智が目覚めなかった理由もそこにあった。
 そして、もし精気が完全に尽きた場合、その吸血鬼の末路は―――全身の壊死。
 通常、銀などの弱点となる物の影響を受けない限り起こらない現象が、身体の内部から自然発生するようになる。
 言い換えると、吸血鬼の弱点=精気を失わせるもの、でありそれを補うために血を吸っているのである。
 いくら十分な血液で肉体を健康に保っていても、精気が尽きれば血は澱み、肉は腐り落ちていく。
 綸音に刺された智が今まともな状態で生きているのは、エルが大量の血を捧げたことで僅かながらも精気を受けられたからだといえるだろう。



 では、そもそも生きる意志を放棄したのは何故か。今の智には、それがはっきりと分かった。
 辛かったから。『強い智』でいることに疲れてしまったからだ。

 信頼の瞳で無防備に接してくる千早や藍香の手前で、彼女たちに抱く劣情を押し隠しながら何でもないように振る舞う。
 こそこそと夜の街に出かけ、何の関わりもない女性を相手に犯罪者同然の行為を繰り返す。
 そんな生活が続く中でも、自分を信じる少女たちの為という思いが智を支えていた。
 何より、自分の弱さに負けたくないという意地が挫ける事を許さないでいた。

 だが―――屈するのが自分の弱さに対してでなかったらどうだ?
 例えば、化物の存在を許さないと言って彼に牙を剥く相手に襲われたなら。
 その者の手に掛かり『やむなく』倒れることになったなら。
 それは仕方ないのではないだろうか?
 自分の所為ではないのだから。


 あの日、綸音に刺された時。智が一番に感じていたのは、驚きでも諦めでもなかった。

(安堵、だ・・・。もう苦しまなくていいって。カッコ悪い負け方じゃなく、膝を折ることが出来るって・・・)

 銀の痛みがいっそ心地よくすらあった。まるで心の痛みを塗り潰してくれているようで。
 終わりを与えてくれた綸音に、感謝の気持ちさえ抱いた。そんな風に思うことが、本当は何より格好悪いというのに。

(俺は、卑怯だ・・・)

78ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/03/10(土) 01:55:00 ID:/WcFBIky
 千早がずっと抱いてきた想い、藍香が尽くしてくれた献身、エルと重ねた身体の温もり。
 そのどれをも中途半端に受け取り、しかし誰にも心から応えようとはしなかった。
 吸血鬼として生きていくだけの覚悟は無く、さりとて人間としての己を貫くだけの意志力も無かった。
 そんな中途半端さが招いたのは、大切な人たちを狂わせただけでなく、何の罪も無い人々の命までもを失わせたという事実。
 実際に殺すという行為をしたのがエルだとしても。そもそもの原因として、智を吸血鬼に変えたのが藍香だったとしても。
 悲劇を防ぐ為の道筋を弱さゆえに誤ったのは他の誰でもない、智自身だ。

 その報いが今の自分。
 鎖に繋がれ、寝たきりの老人のように倒れ臥し、己の無力を嘆きながら、エルが千早を殺して戻るのを待つことしかできない。
 何もかも、もう取り返しはつかないのだ。





(―――本当にそうか? 本当にそれでいいのか?)

 智にとって、もはや彼女たちは簡単に諦めるには余りに大きな存在だった。
 だから再度、智は自分に問いかけてみる。
 エルは半ば衝動的に出て行っただけで、まっすぐ千早の元に辿り着けたとは考え難い。
 今もまだ、殺すべき少女の気配を探して彷徨っているかもしれないのだ。

(そうだ、まだ手遅れだと決まったわけじゃない。
 でも俺が何もしなければ、本当に取り返しがつかないことになる。
 ・・・そこまで分かってて、まだグズグズと座り込んでるつもりか俺は?)


 狂ったもの、失われたものはもう戻らない。
 それでも、まだ出来ることはある。
 そうでなければ―――そうだと信じる心が無ければ、今更目覚めはしなかったはずだ。

 千早を死なせたくない。
 エルにこれ以上人を殺させたくない。
 もう二度と、後悔はしたくない。

 自分が強くないことは、たった今痛烈に思い知らされた。
 でも、これだけの思いがあっても尚立ち上がれないほどには弱くないはずだと―――。


 念じるように思った瞬間、智はベッドから出て立ち上がっていた。



79ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/03/10(土) 01:57:21 ID:/WcFBIky
 久しぶりに自分の足で立つ感覚に、頭は立ちくらみを起こし、足は頼りなく震える。
 加えて精気が尽きかけていることもあり、一歩踏み出すたびに痛みと動悸が襲い掛かった。
 それでも少しずつ、止まることなく智は足を進めていく。

 だが歩き出して数歩で、引っ張られる感覚と共につんのめる。
 左手首に結ばれた鎖がベッドのパイプに繋がれ、ピンと伸びていた。
 手首とパイプ、鎖はどちらもがんじがらめに硬く縛りつけている。
 目覚めたばかりで手先の感覚はおぼつかず、解くことは出来そうにない。
 ベッドは地面に固定されているわけではないので引きずることは可能だったが、流石にそのまま出て行くことは出来ないだろう。

「まいったな・・・」

 そう言いながら周りを見回す智の目に、壁際に立てかけられたある物が飛び込んできた。 
 暗闇の中でも失われない白い輝きを発するそれに、智は吸い寄せられるように近づいていく。
 取ろうと手を伸ばしたが、チリッとした痛みを受けて反射的に手を引っ込めた。
 その感覚に、智は目の前の物の正体を悟る。

(銀の剣だ。綸音ちゃんのか・・・)

 綸音が智を刺した銀の刃。それが目の前にあった。柄は赤黒く汚れ、夜の暗さとは違う闇に染まっている。
 これがどういう道を辿ってこんな場所にあるのか、智にその細かい成り行きまでは分からない。
 だが一つだけ、剣の本来の持ち主がどうなったのかは何となく分かる気がした。

(綸音ちゃん・・・)

 後輩の少女の、強い意志を宿した真っ直ぐな瞳を思い出す。
 綸音はどんな思いを宿してこの剣を自分に向けたのだろう。
 もう知ることは叶わないが、彼女は自分の為を思ってあの凶行に及んだのだと、何故か智には信じられた。
 それが愚か者の都合の良い解釈だったとしても、今もまだ綸音を好ましい友人だと思えることを、智は嬉しく思う。

 もう一度剣に手を伸ばした。
 柄を握った瞬間胸がむかつくような不快感を覚えたが、何とか飲み込んで深呼吸を一つする。
 まだ喉は痛むが、今度はむせなかった。

80ブラッド・フォース ◆6xSmO/z5xE :2007/03/10(土) 02:00:39 ID:/WcFBIky

「よし・・・」

 左腕を水平に伸ばしてベッドのパイプをきつく握り、一つ呟く。
 自然と手が震え出すが、パイプを握る手に更に力を込めることで震えを打ち消した。

(小さい頃、注射を射つために医者に腕を差し出した時もこんな気持ちだったっけ。
 待ってる間に覚悟を決めようとしても、いざ自分の番が来ると結局怖い気持ちがぶり返してきたんだよな・・・)

 覚悟なんて、決められない時は一生掛かっても決められないものなんだと智は思う。
 だが、そんな今更なことを考えてもどうしようもない。今必要なのは、後先を考えない行動力だ。
 瞑っていた目をカッと見開くと、右手に持った剣を勢いよく振り上げる。


「・・・ふっ!!!」

 一瞬の逡巡の後、智は歯を食いしばって右腕を真っ直ぐ振り下ろした。
 真っ直ぐ伸びた、己の左腕目掛けて。

                         ・
                         ・
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                         ・
                         ・
   
「・・・ま、こんなもんだろ。と言っても、こんなんじゃ応急処置にもならないけどな・・・」

 左手にベッドシーツをグルグル巻きにして無理矢理流血を止めると、智は改めて立ち上がった。
 布で先端が不恰好に膨らんだ左腕は、二の腕から先が無い。鎖の拘束を解く為に、自ら斬り落としていた。

 もしかしたら、自分はとても馬鹿なことをしたのかもしれないと智は思う。もっと他のまともな方法があったかもしれないのに。
 それでも、この愚かだが一番手っ取り早い方法で稼げる時間の価値を思えば、腕の一つくらい惜しくは無かった。

 一時の後悔と永遠に失われる片腕を天秤に架け、前者を選んだ自分。
 つまらない意地を張ったかもしれない。
 でもそのつまらない意地さえ張れなくなってしまったら、自分は本当につまらない存在で終わってしまう。
 それだけは、絶対に嫌だった。




「さ・・・行くか」 

 千早にも、エルにも、そして自分にも、もう時間は残されていない。
 エルに遅れること数時間。
 か細い呟きの中に並々ならぬ決意を込めて、銀の剣を片手に智も外へと飛び出していった。
81 ◆6xSmO/z5xE :2007/03/10(土) 02:02:21 ID:/WcFBIky
 今回はここまで。ただでさえ修羅場分の少ない話なのに、女性キャラが全く登場しない回になってしまいました・・・。
 その分次回に頑張るので勘弁してください。
 智の思考はどう見ても17才の高校生ではないですが、そこは主人公補正と人外補正ということで。
 あと2、3回で完結の予定です。



 前回指摘のあったエルの腕ですが、切れたままです。再生なんぞしてません。
 あれは完全に私のミスです。すみませんでした。
82名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:18:38 ID:NizGoSe4
>>81
次回に期待

83転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/10(土) 02:21:40 ID:52wN4fBD
投下します。
84転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/10(土) 02:22:41 ID:52wN4fBD
 紅茶二杯で3時間近い時間を潰してしまった僕らは、早々に店を出た。
「今日はほんとにごめんね。ただでさえ遅れてるっていうのに」
「いえ、いいんです。それに天野君がいなければおそらくそんなに進んでいなかったでしょうし、
 今日の遅れはバイト返上で取り返してもらいますから」
 ちょうど学園祭までのスケジュールがほとんどキャンセルになっていた。
 このまま何もすることがないなら僕は確実に凹んでいたに違いない。
「まぁ―――がんばってみるよ」
「ええ、がんばってください。」
 出来なかった買出しを明日にまわして、僕らは商店街で別れる。

 しきりに手を振る山岡さんの小さな背中が見えなくなると急に決心が鈍りそうになった。
 まったく、僕は臆病者だ。

 もうそろそろ姉さんや雨音ちゃんが店に来てもおかしくない時間だったので、携帯から家に電話を掛ける。
 数コールしても二人は出ない。
 コール音が一つ増える毎に、次第にほっとしている僕がいる。
 これ以上先延ばしにしてもしょうがない事はわかっているのに、心の中にまだ恐れている僕の欠片があった。
 電源ボタンに触れている親指に力が入らないように、ただひたすら待つ。

 もう二人が家を出てしまった光景を思い浮かべ始めた頃、電話の向こうから声が聞こえた。

『はい、こちら天野です』

 どうやら電話を取ったのは雨音ちゃんのようだ。
「もしもし、雨音ちゃん? 僕だけど」
『兄さん? 今はまだバイト中のはずじゃ……』
「いろいろ事情があって今日は早引けなんだ。もう少ししたら帰るから、今日は家で待っててよ。
 姉さんにもそう伝えておいて」
『はい、わかりました。ですが、姉さんはまだ学校から帰ってきてませんよ』
「帰ってきてない? どうして?」
『さぁ? 連絡が無いのでわかりませんが、おそらく学園祭の準備か受験の話でしょう』
「わかった。とにかく姉さんが帰ってきたらそう伝えておいて」
『わかりました』
85名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:23:13 ID:CqH2ToPl
この話は少なめにした方がよかった
86転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/10(土) 02:23:17 ID:52wN4fBD
 これで用事はおしまい。
 でも、僕にはもう一つだけ言っておかなくてはならないことがあった。

「それとね―――今日は大事な話があるんだ。電話ではなんだから、僕が帰ったら伝えるよ」
『―――は、はい』

 電話の向こう側の声が動揺している。
 いきなりこんな事を言われれば、それもそうだろう。

「それじゃあ、切るね」
『に、兄さん!』
「何?」
『………今日は早く帰ってきてくださいね』

 雨音ちゃんがちいさな声で何かつぶやく。
 でも、よく聞き取れなくて―――

「え? ごめん、よく聞こえない。なんて言った―――の?」

 携帯の画面を見ると通話が切れてしまっていた。
 電波が悪かったわけでもないので向こうから切ったのだろう。
 何か言いたい事があったみたいだけれど、これから二人に伝える事を考えると掛けなおすのも気が引ける。
 気にならないわけではないけれど、僕はともかく家に帰ることにした。


87転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/10(土) 02:24:52 ID:52wN4fBD
 商店街から家の方角に歩き始めてすぐ、僕は今一番気まずい相手に出会ってしまう。
「あれ、八雲ちゃん? アルバイトはど〜したの?」
 制服姿の姉さんがこちらへ駆け寄ってくる。
 どうやら学校から直接喫茶店へ向かっていたらしい。
「ああ! わかった!! お姉ちゃんに会いたくてバイトを抜け出してきたんでしょう!!」
 不意を突かれた反動か否定したいのに口が回らない。
 こちらが動揺しているうちに、姉さんは徐々に距離を詰めてくる。
「駄目だよ八雲ちゃん。でも、お姉ちゃんは許しちゃうぞ」
 姉さんが僕の右手を取って歩き出そうとする。
「そうだ! 商店街も近いことだし、お姉ちゃんと二人でちょっとお茶して帰ろうか?
 家でお留守番中の雨音ちゃんにはナイショだからね」
 気が付けば握られてしまった右の掌が汗ばむ。
 姉さんの手がスルスルと伸びて僕の腕に絡みつくその瞬間に、僕は姉さんから手を離した。
「姉さんよく聞いて」
「ん? なぁに?」
「僕らは―――もう少し距離を取ったほうがいいよ」
「八雲ちゃん? なに言ってるの?」
「僕らはもう少し距離を取ったほうがいいって、言ったんだ」

 そう、言ってしまった。
 思っていたよりもすんなりと出てきたので、僕自身驚いている。
 僕の言葉を聞いた姉さんは呆気に取られたような顔をした後、クスクスと笑い始めた。

「―――どうしたの? そろそろ言っていいよ」
「言っていいって、なにを………」
「ほら、この前言っていたじゃない。『な〜んちゃって!』って」
「え?」
「早く言いなさい。お姉ちゃん待っててあげるから」
 笑顔の姉さんの裏側、脅迫じみた暗い瞳が僕を睨んでいる。
「―――今回は言わないよ」
 精一杯の虚勢と意地で踏みとどまる。
「嘘。お姉ちゃんびっくりは嫌いじゃないけど、今回のは度が過ぎてるよ。
 お姉ちゃんが怒る前にどんな言葉でもいいから訂正しなさい」

「……嫌だ」
88転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/10(土) 02:25:27 ID:52wN4fBD
「ふぅん。そういう態度取るんだ。―――あの女から何か言われたんでしょう?」
「あの女?」
「そう、最近八雲ちゃんの周りをウロチョロしてる――あの女よ」
「違うよ。山岡さんは関係ない」
「嘘ね。だって八雲ちゃんが自分からそんなこと言うこと絶対にないもの」

 絶対にない―――そう、姉さんは言い切った。
 そう、絶対に無かったと思う。
 でも、それを見透かされていたと思うと悔しくて、久しぶりに腹が立った。

「違うって言ってるだろ! 山岡さんは関係ない。これは僕の意思だよ!
 今日僕はバイトで謹慎処分になった。姉さんたちが来たあの日の事でだよ。
 きっと僕の対応も間違ってたから、別にそのことでどうこう言うつもりは無いけど、
 今日の事で姉さんたちとの接し方を考えさせられた。
 前々から思ってたけど、姉さんたちの僕に対する態度は少しおかしいよ。
 あれはたぶん兄弟のすることなんかじゃない。
 姉さんたちは僕に兄弟以上の優しさで接してくれる。
 ―――まるで、恋人にするように。
 でも、その行動が昔の罪悪感からきてるなら、もうそんなの気にする必要ないよ。
 もうそんなものに縛られる必要性なんか無いよ。正直、そうゆうのは迷惑だよ!
 僕だって、もう高校生なんだよ。
 少しは自分を認めて貰いたいし、いつまでも姉さん達に頼っている風に見られたくない。
 二人が彼氏を作ったりしないのは僕が原因だって陰口を言われてるのを知って恥ずかしくなった。
 僕は――僕は二人の足枷なんかじゃない。
 姉さんは姉さんの人生を進んでいいんだ。
 好きな友達と遊んで、好きな部活に入って、好きな男の人と付き合って、
 わざわざ僕の顔色を窺う必要なんか無いよ。僕は二人の邪魔になんかなりたくない!
 だから僕は―――」
89転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/10(土) 02:26:12 ID:52wN4fBD

「うるさいよ―――本当の兄弟じゃないくせに」

 静かに響いた声音、僕は停止せざるを得ない。
 数年ぶりに聞いた呪いの言葉は、僕の魂に容赦なく爪を立ててゆく。
 精神は肉体よりも脆弱で、見えない爪痕が空気に触れるたび抑えきれない痛みが身体中を這いずり回る。
 食いしばった歯の向こう側、今にも悲鳴が漏れそうだった。

 姉さんはつまらなさそうな顔で僕の顔が歪んでいるのを観察する。
 姉さんの顔がいつかの少女の顔に変わっていた。

「いいわ。少し頭を冷やしなさい八雲ちゃん。
 八雲ちゃんはお姉ちゃんや雨音ちゃんがいないと何も出来ないって事を身に沁みて感じるといいよ。
 どうせ数日も経たないうちに謝りに来るんだから、お姉ちゃんは部屋で待っててあげる。
 そのときは―――たっぷりとお仕置きしてあげなきゃね」

 姉さんはどこか虚ろな瞳で微笑むと、踵を返して歩き始める。
 呼び止めなくてならない。
 でも―――僕の足の裏は地面深く根を下ろし、一歩も動いてくれない。
      口を開こうにも、何を言っていいか分からない。

 結局、僕は遠ざかってゆく姉さんの背中を見送るだけ。
 怖気づいてしまった僕を残して、姉さんの長い黒髪が夜の闇に溶けていった。


90名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:27:02 ID:AlmxP4xP
>転帰予報
つまんないからブログでも作って勝手にやってくれないか?
スレ住人もそう思ってるよ、テンプレにあるから文句言わないだけで

91転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/10(土) 02:27:34 ID:52wN4fBD
 姉さんの気配が消えると、急に胸に熱いモノがこみ上げてきた。
 僕と姉さんと雨音ちゃん。
 いびつで壊れやすいとわかっていたから大事にしてきた関係。
 周りから見れば不自然かもしれなかったけれど、楽しかった日々。

 姉さんの言うとおりだった。
 いろいろあったけれど、二人が喜んでくれるから僕はがんばってこれた。
 二人とまた殺伐とした雰囲気になると思うと、不覚だけれど泣いてしまいそうだ。
 僕の日常から二人がいなくなるなんて、想像するだけで吐き気がする。
 理由はどうあれ、僕は二人に依存してきたのだ。

 さっさと軍門に下ってしまいたい。
 今までだってそうしてきた。
 過去を顧みれば決して出来ない我慢じゃない。


 ―――でも、やはりそこには違和感があった。


 つまらない自尊心や見栄ではなく、何かが違う気がする。
 今はまだ言葉が見つからないけれど、大切な何かを見落としているような気がするのだ。

 今頃はきっと姉さんが雨音ちゃんと話をしている頃だろう。
 家に帰れば、おそらく僕は再び後悔してしまう。
 ついさっきまで在った日常はおそらくそこには無いから。
 自分でそれを手放したから。
 また二人に酷い思いをさせられるかもしれない。
 無視されるかもしれない。
 最悪、あの家を叩き出されるかもしれない。

 でも、あそこはまだ僕の帰る家なのだ。

 覚悟なんて大それた言葉は無いけれど、僕は歩き出してみることにした。
92名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:28:16 ID:c8FkzInS
>>90
いや、面白いよ
93名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:29:07 ID:xLbcRNEW
>>90
消えろよ、荒らし
94名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:29:56 ID:Fv9K9byU
>>90
半年ROMってろ
95転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/10(土) 02:30:53 ID:52wN4fBD
ここまでです。

>81
クライマックスですね。GJです。
96名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:32:20 ID:ZiePD9vW
この展開は新しい、GJ
97クワトロ大尉 ◆vL7xCB9lAs :2007/03/10(土) 02:32:58 ID:SfERjAR2
転帰予報はつまらんよ
特に白き牙やブラッド・フォースが投下された直後にはますますそう感じてしまう
98名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:34:11 ID:jFnM2+ZI
>>95=>>96
作者自演すな
9996:2007/03/10(土) 02:35:09 ID:lfbd7ANx
自演じゃねーよ
100名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:36:42 ID:ZiePD9vW
>>99
お前誰だよw
101名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:41:30 ID:Cz8YwAdb
>>95=>>100
自演するな
102名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:43:54 ID:pC/mvbPE
GJ!
どの作品も良いところで終わっていて生殺し状態ですよ。続きをハァハァしながら待ってます。
103名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:52:23 ID:Cz8YwAdb
>>102
自演GJやめろよ
104名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 02:53:45 ID:5/QrBGi2
投下ラッシュktkr
105名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 03:02:12 ID:ZiePD9vW
普通にGJ言っても荒らし認定されるこんな世の中じゃ
106名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 03:06:29 ID:5/QrBGi2
ジェラシー
107名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 06:32:45 ID:vJvlI5bV
自分が途中で話投げ出したのを棚に上げて妬いてるんだよ。
108名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 08:18:32 ID:THygvXcP
暫く見ないうちに立派な糞スレになってら
109名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 08:19:00 ID:96ekVIo6
つ【みんな仲良く、修羅場はssの中で】
110名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 10:23:02 ID:Xj5OvZlj
本当に効果があると信じてやってんだろうか、自演荒らし
111名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 10:31:50 ID:GC/UF6yz
自作自演荒らし以前に

八雲ちゃんのおしおきが気になるのは俺だけか!!

あえて、酷評するならばデレ度がもう少しだけ欲しいかもww
112名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 10:35:06 ID:NizGoSe4
何でもかんでも自演と決め付けるなよ
113緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/03/10(土) 11:06:46 ID:rd2B09R0
投下します
114九十九の想い 1−12 ◆gPbPvQ478E :2007/03/10(土) 11:07:59 ID:rd2B09R0

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 外は命の芽吹く春。
 しかし、さゆは外に出ることを許されず。
 今日も今日とて、肉を切る。
 
 さゆにとっての四季とは、過ごしやすいかどうか、それだけだ。
 故に春は熱くもなければ寒くもなく、虫もそれほど湧いてこない時期なので、
 さゆは四季の中では春が一番好きだった。
 
 塩漬けにされた肉は時期を問わずして硬いのだが、
 熟成されるのも早くなるので、鋸を使わずに包丁だけで済む日も多い。
 
 今日も、包丁で済んだ日だった。
 
 こりこり、と骨と筋を繋ぐ部分を刃元で断つ。
 べり、と筋張った肉を引き剥がし、そのまま水を張った壷へ入れる。
 塩抜きが済んだら、あとは切り刻んで薫製にするだけなので、
 今の時期で一番大変なのは骨と肉を分離する作業だけである。
 難しい作業が少ないので、失敗することも滅多になく、
 義父に歯が折れるまで殴られることもない。
 冬の終わり頃に殴られたとき、とうとう前歯が全部無くなってしまったので、
 これ以上折れてしまっては食事すらままならなくなってしまう。
 
 春はいいなあ、と。
 さゆは肉を引き剥がしながら、そう思った。
 
 
 そのとき。
 
 背後の扉が、荒々しく引き開けられた。
 
 義父だった。
 食事の準備は既に半ばを終えている。
 今日は折檻されずに済みそうだ、と気を抜いた瞬間、頬を張られた。
 義父は、帰宅後すぐに食べたい気分だったらしい。運が悪かった。
 頬に居座る痺れを我慢しながら、さゆは急いで夕餉の支度を進める。
 
 と。
 義父が、今日の“獲物”を手にぶら下げていた。
 今回のは大物だな、とさゆは思った。
 いつもは自分と同じくらいの大きさなのに、
 今日のは義父と同じくらいの大きさだった。
 これならしばらくは食料に困ることはなさそうだ、と。
 
 
 さゆは、義父の担ぐ死体を見て、そう思った。


115九十九の想い 1−12 ◆gPbPvQ478E :2007/03/10(土) 11:08:47 ID:rd2B09R0

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 
「……ッ!?」
 
 跳ね起きた。
 心臓が早鐘を打っている。
 冷たい汗が止まらない。
 
 夢の記憶は鮮明で、男が抱えていたものも即座に思い出せた。
 
 ――人間の、死体。
 
 少女の置かれていた環境も、特殊と言って差し支えないが、
 何より、少女が死体を“食料”だと認識していたことに、俺は驚きを隠せなかった。
 
 ……何なんだよ、この夢は……。
 
 頭を抱えてそう思うが、実のところ、大体の想像は付いている。
 この夢を見るとき、決まって、俺の隣に特定の奴が寝ているからだ。
 
 
 茅女。
 
 
 包丁の付喪神で、齢500に達する大妖怪。
 その過去は一度も聞いたことはないが、
 きっと、俺の見ている夢は、こいつの記憶が元になっているのだろう。
 房中術で心を繋げた結果、茅女の想いも俺の中へと流れ込むようになっている。
 その中に紛れ込むように、茅女の過去が見えているのかもしれない。
 ということは、夢の少女が持っていた包丁が茅女なのかもしれない。
 では、あの少女は、茅女と一体どんな関係なのか。
 義父に虐げられ、人肉を調理する少女。
 己の境遇に疑念を挟むことなく、ただひたすら作業をこなす。
 その道具のひとつが、茅女ということなのだろうか。
 しかし、その内容の鮮明さから鑑みるに、ただの持ち主と道具の関係だったとは思えない。
 茅女から夢という形で伝わってきている想いは、とても強い。
 数百年の時を経ても未だに薄まらない想い。
 
 ――憎き憎き卜部の家よ。
 ――ヌシ等に復讐せんが為に、
 ――妾は長き時を生き延びてきたのだからな!
 
 ひょっとしたら。
 夢の少女が、茅女の復讐心に何かしら関わっているのかもしれない。
 だとすれば。
 過去、茅女と少女の身に、一体何が起こったというのか。


116九十九の想い 1−12 ◆gPbPvQ478E :2007/03/10(土) 11:09:27 ID:rd2B09R0

「……って、茅女のことばっか考えてるな、最近」
 
 横でこちらの想いなど気付いてなさそうに、安らかに眠る付喪神。
 その穏やかな寝顔を見ると、何故だか心が温かくなってしまう。
 
 茅女と初めて身体を重ねてから、俺はその身体に夢中になった。
 猿とは言うなかれ。これでも健全な男子高校生なのだ。
 気持ちいいことを覚えてしまい、しかもその相手もそれを望んでいるのだから、
 性欲の固まりのような青少年に、我慢しろというのは酷な話だろう。
 っていうか我慢できねえよ。
 茅女かわいいし。やわらかいし。
 ……やべ。また勃ってきた。
 寝る前にあれほど酷使したというのにもかかわらず、息子のなんと元気なことか。
 
 我ながら、ここまで深い仲になるとは思ってもいなかった。
 流との固い信頼関係とは違う、なんというか、甘くて暖かい絆のような感覚だ。
 もともとは、流が弄った俺の心を修正するために行われた睦事は。
 今や毎晩茅女が寝室に侵入してきて、ただ純粋に楽しむためのものになっていた。
 嫌というわけではない。
 とても気持ちいいし、回数をこなすたびに、どんどん茅女のことが愛しくなっていく。
 
 でも。
 
 意識の多くが茅女のために費やされるようになってきて。
 ふと、忘れそうになってしまうことがある。
 そもそもこのような状況に至った原因。
 
 ――俺の心を弄った流は、今頃どうしているのだろうか。
 
 聞いた話によると、離れで謹慎中とのことではあるが、
 事件から既に一月近く経過しているのだから、そろそろ解放されてもおかしくない。
 以前は毎日のように親しく接していた相手と、こうも長く離れてしまうとは。
 流のやつ、今頃何をしてい――
 
 きゅ、と指を掴まれた。
 
 視線を落とすと、寝返りを打った茅女が、俺の腕に抱きついてきている。
 その小さな手は、まるで凍えた子どもが暖かいものを離すまいと必死にしがみついているかのようで。
 つい、頬が緩んで頭を撫でてしまう。
 すやすやと寝息を立てている茅女を起こさぬように、起こした体を静かに戻し、目を閉じる。
 
 誰かのことを考えていたような気もするが、
 横の暖かさに眠気を誘われ、そのまま深い眠りへ落ちた。


117九十九の想い 1−12 ◆gPbPvQ478E :2007/03/10(土) 11:10:18 ID:rd2B09R0

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 ――今日で、謹慎が終わる。
 
 先日、浦辺家当主である秋夫より伝えられ、流は今日という日を心待ちにしていた。
 付喪神なので睡眠は要らず、昼夜問わず、常に一人のことを考えていた。
 
 郁夫様。
 
 ――長い間、傍を離れて申し訳ありません。
 ――つい気を高ぶらせて襲ってしまい申し訳ありません。
 ――本能の赴くままに心を弄ってしまって申し訳ありません。
 流は己の所行全てに反省していた。
 その想いは秋夫にも伝わったようで、彼が謹慎終了を渋ることはなかった。
 人にほとんど使われなかった付喪神特有の、一時的な気の迷いだと判断したようである。
 確かに流は反省していたし、己が郁夫に対して不誠実な行いをしてしまったことも認識している。
 
 しかし。
 同時に、このようにも思っていた。
 
 ――もう、二度と離れません。
 ――これからは郁夫様に襲って頂きます。
 ――郁夫様の御心は私がしっかりと管理しますので、ご安心を。
 
 己の刃で郁夫の心を操ることができるのだから。
 郁夫がこの先、どのような泥棒猫に惑わされようとも。
 脇目も振らぬよう、都合のいいように心を操作すればいい。
 そうすれば、郁夫は永遠に自分のもの。
 
 想像するだけで達してしまう。
 流は、郁夫との“幸せな”生活を信じて疑わなかった。
 
 
 謹慎終了といっても、ただ座っていただけで、特に何も課されていないので、
 流は何事もなかったかのように立ち上がり、迎えに来た使用人に会釈をする。
 顔見知りの使用人だったため、向こうも表だって怯えるということはなく、
 のんびりと世間話をしながら、流は母屋の方へ進んでいった。
 時刻は昼を少し回ったところである。
 郁夫の怪我は完治したとのことだから、今は学校のため不在だろう。
 
 流は逸る気持ちを抑えながら、とりあえず普段通りに戻れるように、使用人の手伝いをした。
 流が得意なのは水回りと掃除全般。
 女性の使用人が多いこの屋敷、力仕事のできる流は、特に掃除で頼られていた。
 元が道具の身としては、刀本来の用途ではなくとも、頼られるというのは純粋に嬉しくなる。
 故に、一月の謹慎で少なからず凝り固まっていた感情が、徐々に柔らかくなっていく。
 自然と、他の使用人との雑談も楽しくなっていた。


118九十九の想い 1−12 ◆gPbPvQ478E :2007/03/10(土) 11:11:09 ID:rd2B09R0

 ――ふと。
 一緒に掃き掃除をしていた女性が、こんなことを言った。
 
「最近は、茅女さんも手伝ってくれるのよ」
 
 箒の柄を握り潰しそうになってしまうのを、必死で抑えた。
 ――また、私の居場所を。
 奥歯を噛みしめ、しかし表情は普段のまま。
 ――大丈夫。もう郁夫様には私だけなのだから、それ以外は糞婆に譲ってやっても構わない。
 茅女は流の乱心の際、郁夫を発見した功績がある。
 そのことから、初日の流血沙汰から忌避されていた空気が薄まり、
 この一ヶ月で多くの人間の信用を得てきていた。
 
 みんな騙されている、と流は思った。
 
 茅女はそんな殊勝な輩ではない。
 腹の中はどす黒く、郁夫やその周囲への点数稼ぎしか考えてないに違いない。
 そもそも茅女さえいなければ、自分と郁夫の幸せな生活が邪魔されることなどなかったはずだ。
 もし茅女が自分より年下の弱々しい器物だったら、迷うことなく叩き壊すが。
 生憎なことに、相手は五百年物の付喪神。
 今の流では対抗するには力不足である。
 
 しかし、無理に力で対抗する必要はない。
 今の流には、“刺した者の心を操作する”という能力がある。
 これを上手く活用すれば、あんな切ることしかできない包丁なんて、邪魔者以外の何ものでもない。
 
 茅女に対する歪んだ優越感を抱きながら、
 流は、一月前と同じように、使用人の家事を手伝っていた。
 
 そして、流れるように時間は過ぎ。
 そろそろ郁夫が帰宅するであろう頃合いになると、流は落ち着かなくなってきた。
 そわそわする流を微笑ましいと思った使用人は、流に玄関周りの片付けを頼んでくれた。
 
 足取りも軽く、玄関に向かう流。
 郁夫が帰ってきたら何と声をかけようか。
 久しぶりに流を見た郁夫は、どのような表情をするか。
 酷いことをしてしまった自分だが、絶対に郁夫には嫌われていない自信があった。
 何故なら、郁夫は平等だから。
 人にも者にも全て等しく接する彼は、たとえどのような悪行を働かれようとも、
 それが悪意に基づくものでない限り、必ず許してしまうところがある。
 故に、流は安心して、郁夫を出迎えることができた。
 
 はずなのに。


119九十九の想い 1−12 ◆gPbPvQ478E :2007/03/10(土) 11:11:52 ID:rd2B09R0
 
 
 
 
 
「ただいまー」
 
 流が玄関に辿り着く直前、引き戸の開く音が響き、愛しき相手の声が聞こえた。
 思わず駆け足になり玄関に向かってしまう。
 逸る心は抑えきれず、一月の間会えなかった人の姿を、一秒でも早く見たかった。
 そして、玄関へと辿り着く。
 そこには、靴を脱いでいる学生服の郁夫がいた。
 
「郁夫様っ!」
 
 こちらに背を向け、上がり框に腰を下ろしていた少年は、
 流の声に、ゆっくりと振り向いた。
 
 
 そして、郁夫が、流を、見た。
 
 
 瞬間、流の身体は氷となる。
 感情も思考も凍り付き、指先まで硬直する。
 それは、想像すらしていなかったことだった。
 それは、ありえないはずのことだった。
 今見ているものが信じられなかった。
 
「…………ぅ……ぁ……」
 
 驚愕に全身を支配され、流は何も言うことができない。
 やがて、郁夫が口を開く。
 
「……ひ、久しぶりだな、流」
 
 その表情は、紛う方なき作り笑い。
 ある感情を必死に押し込めているのが容易にわかる。
 それを、流は信じたくなかった。
 郁夫が今、必死に押し隠している感情。
 郁夫が先程、露わにした感情。
 それは、流の喜びを打ち砕くには十分すぎた。
 
 
 嫌悪。
 
 
 郁夫から初めて向けられたそれに、流は立ち竦み、震えていた。


120緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/03/10(土) 11:13:50 ID:rd2B09R0
滅茶苦茶久しぶりな九十九です。
第一部の路線も確定しましたので、あとはひたすら転がって貰います。
今回は台詞が少ないなあ、と書いていて思いました。
次回は絡みが中心になる予定。
121名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 11:23:02 ID:5/QrBGi2
GJ!

なーーーーーーーがーーーーーーれーーーーーー
 〃∩ _, ,_    /)    〃∩ _, ,_    /)
⊂⌒( `Д´)ミ( ⌒ヽつ⊂⌒( `Д´)ミ( ⌒ヽつ
 `ヽ._つ⊂ノ⊂( ,∀、)つ.`ヽ._つ⊂ノ⊂( ,∀、)つ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|     ミ
                            |    〃 ∩  。
                            |   ⊂⌒从ヽ从゜o ザバーン
                            | 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
122名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 11:28:32 ID:xdjCp9ze
>>120
GJ!!
お待ちしていました。
もう来ないのかと・・・
次回もお願いします。
123名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 12:28:58 ID:o5yaAL7R
GJ!!
あーヤバイ
ニヤニヤ笑いが止まらない俺がいるw
124名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 12:37:25 ID:LHZT9wLH
GJ!そしてお帰りなさい
復活からいきなりこの展開でもう色々たまんねぇ
125名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 12:44:45 ID:OnfItCP2
投下ラッシュktkr!
予想できなかった展開でこれからの姉妹の仕打ちにガクブルの転帰予報も
いよいよ終わりが近づいて名残惜しい&エルがんばれのブラッド・フォースも
流タンカワイソスな九十九も
皆様GJ!!!
126名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 12:56:30 ID:UBc+vUip
九十九はやっぱ読み応えがあるなぁ。流が最高だが、
バンコランみたいな能力持ちながらまったく生かせず翻弄されっぱなしの郁夫もおもしろいww
127名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 12:58:51 ID:bx2TvrGm
GJ!!!!!!!!
128名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 13:17:45 ID:y1rDW5vP
天国から地獄に突き落とされて震える流たん愛しす
129名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 13:24:12 ID:vJvlI5bV
うっかりまた新作かと思った俺を許しておくれ。
130名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 14:23:33 ID:8mh4hCTn
流たん最高!
131名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 14:46:52 ID:9tpzWrrM
決心少女の方かと思った俺も許しておくれ。
132名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 16:45:03 ID:vES+TD4e
>>97
誰も突っ込まないでスルーしているのはわかるが
少しだけ俺を荒らしと認識していいから


クワトロ大尉 ◆vL7xCB9lAs

お前、誰?


こいつ、知っている人いますか?
自作自演で荒らしている日本語がおかしいの人か?
133名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 17:04:23 ID:q3FiiEUK
>>132
シャアだろ
134名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 17:10:16 ID:Xj5OvZlj
どうでもいいどうでもいい
       / ̄ `--'  ̄^\
       | (●) ,、 (●) ::|
       |   ノ(,_.)ヽ  .::|   +
       |    -==-   .::| +
       \_ `--' __/    +
 r、     r、/ヾ  ̄ 下ヘ
 ヽヾ 三 |:l1、_ヽ___/__ .ィヽ
  \>ヽ/ |` }      n_n| |
   ヘ lノ `'ソ       l゚ω゚| |
    /´  /        ̄|. |
    \. ィ   ____ |  |
        | ノ       l |  |
      | |        i:|  |
135名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 17:21:15 ID:0Mw9w/gs
>>95
次回、お姉ちゃんとその妹のおしおきの回になるのか
楽しみにしておきますハァハァ
136名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 20:22:10 ID:xdjCp9ze
>>132
おまっ バカだろ!
ながせよ!どうでもいいんだから。
137名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 20:58:32 ID:JCBZwI6n
>>120
九十九キターー!
GJ&乙です。
待ってたんで嬉しい。
138名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 21:04:44 ID:sMuQjg2j
>>95
>>120
Gj&次回が超楽しみだ〜〜!!!!
139名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 22:46:51 ID:0PoQcJ3E
な、何なんだ!?この投下ラッシュは!
久しぶりに来てみれば、
『白き牙』
『ブラッドフォース』
『九十九の想い』
三種の神器のような作品の続きがきてた!
もう全てにGJ!!!
続きの投下も楽しみに待ってます。
140名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 23:03:00 ID:NizGoSe4
ようやく作者が帰ってきてみてくれたみたいでよかった
あとバック、ノントロ、猫、山本君が再開してくれればな
141名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 23:07:08 ID:hUF2WUyA
ブラッドフォースと九十九 キテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!

『常軌を逸した思考パターン』と『人外』って相性が良いよな。
142ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:34:52 ID:V4NUvGB8

『Tomorrow Never Comes(前編)』


「もう聞いている者もいるかも知れんが、ついさっき賊が城内に侵入したという情報が入った。
人数は分かっていないが、西門南門双方の門番が同時に殺害されたのを鑑みると複数であることは間違いない」

 ラモラック部隊長のその言葉に部隊の新米騎士たちは僅かにどよめいた。
隊長の「静かにしろ」という一喝で口々に私語する者は居なくなったものの、それでも皆の顔から不安は消えていない。
他人事のようにそんなことを考えているわたしも、すこしだけ心拍数が上がっているのが自分でもわかった。

「一応城内に詰めていた近衛隊も配備済みだが……まだ拿捕されていないところを考えると保険は掛けておいた方がいい。
そこでお前たちへ、陛下が直々に命じられた」
 一瞬言葉を飲み込む隊長。少し興奮しているようにも見受けられた。

「―――侵入した賊を捕らえよ、とのお達しだ。
お前たちはまだ正式に騎士になったわけではないが、既に教えられることは全て教えたつもりだ。
必ず陛下の御期待に添えられるよう、尽力しろ」

 皆、緊張した面持ちで隊長の言葉に耳を傾けている。
そんな中、わたしは内心歓喜に震えていた。

――なんたる幸運。ここで戦果を挙げれば、もしかすればウィルと同じ遊撃隊に入れるかもしれない。
そんな期待がわたしの心を躍らせていた。

「ここにいるほとんどは賊の捜索にまわってるもらうが、それとは別にこの中から一人、別の任務を与えることになっている。
……陛下の護衛には王の盾以下近衛騎士が多数護衛に回っているが、
非番の騎士が多かったこともあって姫様の護衛にほとんど人員を割けていないのだ。
そこで、誰かに姫様の『王の盾』と共に護衛に付いてもらいたい」

 それを聞いた他の騎士がキョロキョロと視線を彷徨わせた。突然の事で志願すべきかどうか当惑しているのが見て取れる。
だが、わたしからすればまさに打ってつけだ。
隊長の申し出に早速名乗りを上げようとした、まさにそのとき。


「隊長。オレがいきます。……オレにやらせてください」


 わたしより先に声を上げた騎士。
―――それは、エリオット=ジュダスだった。
 隊長は彼の顔を確認して、暫し沈黙したのち僅かに頷いた。
143ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:35:30 ID:V4NUvGB8

「ジュダスか…。そうだな、お前は実戦経験もあるし……よし、行ってくれるか?」

――まずい。快諾されそうだ。
焦ったわたしは、考えるより先に声を上げた。

「お待ちください!
…隊長、訓練部隊は任務中二人一組が原則のはず。わたしも彼に同行させてください」
 叫んだわたしにラモラック卿が少しだけ眉を顰めた。
だが、実際に言葉を口にしたのはジュダスの方が先だった。

「馬鹿ッ!実戦経験のないお前に姫様の護衛が務まるかッ!
オレ独りで充分です。オレだけで行かせてください!」

――そうはいくか。わたしとて、ここで武勲を立ててあいつと同じ部隊に行くのだ。引き下がるわけには行かない。

「隊長!わたしにも同行の許可を…!」
 ラモラック卿は少し悩んでいた様子だったが、やがて。

「トリスタンの言うとおりだな…。よし、わかった。お前も姫様の護衛にまわれ」
「……はい!」
 ラモラック卿の計らいにわたしは内心感謝した。
だが、隊長の言葉に絶句していたのが一人。無論エリオット=ジュダスだ。

「なっ…。たっ隊長ッ!」
「…ジュダス、異論は認めん。部隊長命令は絶対だ、解っているな?」
「……ッ。わ、わかりました……」
 反論する前に隊長に窘められ、ジュダスは苦虫を噛み潰したような顔で頷いた。

「ったく。自分の身は自分で守れよ、トリスタン」
「ふっ。その言葉、そのままお前に返すぞ」
 やっと諦めてくれたのか、憎まれ口を叩くジュダスをわたしは一笑に伏した。


「……ん?」
 ふと。
ウィルが心配そうにこちらを見ているのに気付いた。
……あいつまでわたしを未熟者扱いか。酷いものだ。
 あいつを安心させてやろうと、わたしはウィルに向かって「大丈夫だ」と笑いかけた。


「ではお前たちは姫様の元へ向かい、『王の盾』の指示を仰げ。
――他の者たちは私に続いて城内の捜索だ。必ず二人一組で行動しろ、いいな」


 隊長のその号令を合図に、わたしの小さな初陣は幕を上げた。
144ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:36:04 ID:V4NUvGB8






――――………





「――それで、姫様のご様子は?」
「……困ったものだ。こんな緊急時でも『傍に寄るな』と憤慨して近寄ることすら許してくれん」
 わたしの質問に初老の騎士――『王の盾』は苦い顔で首を振った。
『王の盾』はマメに姫様の部屋に入室して様子を確認するが、何度言っても部屋の中で待機することを断ってるらしい。
護衛ならば常に傍で彼女を守るのが本来の姿なのだが。……姫様の騎士嫌いにも困ったものだ。

「…まぁ、侵入者が此処まで来ることは殆どないだろう。
どうせ奴らの狙いは陛下だろうし、そもそもこれだけ燻りだしに人数を割いているのだから捕まるのは時間の問題だ。
……だが。一応油断はするなよ?トリスタン、ジュダス」

 そう『王の盾』は言うが。
――本当にそうだろうか。
わたしには賊が必ずここまで来るような、そんな確信めいた予感がある。
 王都に敵国の諜報員が侵入したという事例は何度か耳にしたことがあるが、城内となると話は別だ。
まさか何の策もなしに侵入したとは思えないし、非番の多い今日に限って実行されたというのも偶然とは思えない。
第一、前述した王都に潜入していたスパイは、捕らえようとしても必ず逃げられるか自害かして、情報を聞き出すのに成功していない。
幾人も潜んでいた彼らが王都で何をしていたのか全く解っていないのだ。

 戦姫の活躍によって隣国が勝利する戦いがなくなって久しい昨今。敵国がそろそろ焦りを見せてもいいはずだ。
だというのにフォルン平野の大規模な作戦以降、息を潜めるように休戦したまま一月が過ぎたことを考えると。

そのスパイたちはもしかすると、この日のための準備をしていたのではないか。わたしはそう思っている。
戦姫には勝てないを知り、真っ向勝負を避けた敵国がこういう形で攻めて来たのではないかと。

もし陛下の暗殺ならば王国の指揮系統に打撃を。
また、暗殺が陛下より比較的容易な姫様なら兵や民たちの士気に影響を与えることが出来る。効果は微々たるものかもしれないが。

 敵国が負け戦続きで少しでも我々に一矢報いたいと思っているなら、姫様を狙っている可能性は充分に考えられるのだ。
――だからこそ、この任務に志願したのだが。


 ……あれから一時間が過ぎた。
未だ賊を捕らえたという報せは届かず、依然として緊迫した状況が続いている。
あいつは大丈夫だろうか。
…いや。要らぬ心配か。あの男がこの程度で死ぬような人間なら一月前のフォルン平野の戦いを生き延びられたはずがない。


「―――おい、トリスタン」
 ふと。仏頂面で隣に立っていたジュダスが口を開いた。
彼も心なしか緊張しているらしく、今まで殆ど話しかけることはしてこなかったのだが。
一時間も気も遣っているせいで少し緊張の糸が切れかかっているのだろう。
此処に来てわたしに初めて声を掛けた。
145ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:36:50 ID:V4NUvGB8

「…なんだ?」
「あの後、二人でどっか行ってたみたいだけどよ、ウィルの奴と仲直りはできたのか?」
「……何の話だ。別に喧嘩などしていないと言っただろう」
 間の置いたわたしの回答に、ジュダスはため息をひとつ。
それから苦笑しながらこう言った。

「……ま、顔を見る限りなんとなく解るんだけどな」
「…やかましい」
 どうもわたしは嘘や隠し事が下手なタチらしい。
この調子だと部隊の他の連中にもウィルと何があったのか筒抜けだったかもしれない。
彼とのあの一件以来、仲間たちにずっと恥を晒していたのかと考えると―――穴があれば入りたい気分になった。

…まぁ、でも。


「…ジュダス」
「あいよ?」
「…とりあえず礼だけは言っておく」
 彼の顔を見ることなく、なるべく淡々とした口調で謝辞を告げた。

「そりゃどうも」
 彼も抑揚のない口調だった。











「げぁっ!?」
 腿を切り裂かれ、珍妙な格好をしたその男は情けない声と共にその場に尻を着いた。

「はぁ…はぁ……流石にその足じゃ、もう逃げられないだろ」
 肩を上下させながら、そいつを見下ろす。
長時間こいつを追い回したせいですっかり息が上がっていた。気付けば、仲間ともはぐれ、俺ひとりだ。
すっかり深追いしていたが……まぁ捕らえられたし、良しとしよう。

夜も深いこの時間帯だ。相手に逃げられないように戦うのに随分と神経を削られた。
加えて、こいつの格好。……夜闇に紛れ易い黒ずくめと、極力動きやすいように余計なものを省いた服装。
 真正面から戦うことをせず、付かず離れずの戦い方のせいでかなり時間を食ってしまった。
――こいつは間違いなく殺し屋の類だ。大方、陛下暗殺のために寄越したあっちの国の刺客だろう。
こういった煙に巻くような嫌らしい戦い方で相手の体力を奪うスタイルは暗殺者のよくやる手段のひとつだ。

「…この城には後何人いる?」

 腿を抑える男に剣と突きつけながら尋ねる。

「…ッ、こんなガキに一敗喰わされるとはな…」
 ざっくり裂かれた腿の傷を忌々しげに見つめ、男は眉間の皺を一層深くさせた。
146ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:37:27 ID:V4NUvGB8

「――後、何人いる?」
「ッがぁぁぁぁっ…!」
 こちらの質問が聞こえていないらしいそいつの、腿を踏みつけてもう一度尋ねる。
一通り痛みを与えてから俺は足を退けた。

「この城には後何人仲間がいる?」

「ハァッ…!ハァッ…!小僧がッ……オレが吐くと思ってんのか…?」
「…………」
 さっきよりも、強く。
できるだけ右足に体重が乗るように、更に男の腿を踏みつけた。

「ああああああぁぁぁぁぁぁッ!!!」
 男の喚く声が城の一角に響く。………耳障りだ。
醜悪な男の悲鳴を何度も聞いてられるほど時間もないので、次で最後にしよう。
今度は剣をゆっくり振り上げてから同じ質問を口にした。

「最後だ。この城に忍び込んだお前らの仲間は、後何人いる?」
「………」

――駄目か。
この手の暗殺者の類は拷問に耐えられるよう訓練を受けていると聞くけど。
こいつも例に漏れずそうらしい。
……捕らえても口を割ることはなさそうだし、逃げられれでもすれば害悪になるだけだ。さっさと―――

「――まァ、いいか。どうせ今からじゃ間に合わないしな……。
いいぜ、教えてやる。全部で四人だ。……此処に侵入してきたのは…な」
 剣を握る手に力を込めた瞬間、男は意味深に口角を歪め、呟いた。
止血せずに時間が過ぎたせいで顔色からはもう随分血の気が引いていて、それがますます男の顔を不気味にさせている。

「"のは"…?どういう意味だ」
 情報を聞き出せたのは僥倖だった。
俺はとりあえず剣を下ろし、男の気が変わらないうちに重ねて質問することにした。

「お前らは戦姫が居なきゃ、寄って集っても女一人守れないような奴らだってことだよ」
 回答になっていない。戯言で時間を稼ぐ気だろうか。

……いや。
違う。……どうしてか解らないが、違う気がする。
 心臓が、どくん…と一際高鳴った。

「陛下の命が目的じゃないのか……?解るように答えろ」
「はっ…。嫌だね。少しはその足りないオツムで考えたらどうだ?坊や」
 もうそれ以上は話す気がないらしく、俺を嘲るように笑うと傷口を押さえていた手を放した。
147ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:38:12 ID:V4NUvGB8

……こいつのこの余裕。なんだ。
 なぜ『もう間に合わない』んだ?『女一人守れない』ってどういうことなんだ。
この殺し屋たちは国王を殺しに来たのではないか。
そして、どうしてこいつは土壇場で吐く気になった。

―――いやな。
 いやな予感がする。

「ま、せいぜい後で後悔するんだな」
 男に気を配らずに思考を巡らせているのが仇。
そいつは俺が視線を外した隙に懐から短剣を取り出し、そして。

「じゃあな」
 にやっと歪な笑みのまま、自分の喉を切り裂いた。

「やめ――!!」
 今さら気付いたところで間に合うはずがなく、男の喉下から勢いよく鮮血が飛び散る。
俺がヤツの短剣を奪い取ったころには男はとうに絶命していた。

「……っ」
 男の死体を一瞥し、唇を噛む。
男は不気味な笑みを浮かべたまま、事切れていた。

…失態だ。逃げ場を失った暗殺者がその後何をするかは解っていたはずなのに。
全部聞き出す前に、目の前で自害されるのを見過ごすとは。

 軽く舌打ちしながら、俺は剣を収めた。



「…おいっ!ウィル!…大丈夫かよ!?」
 はぐれていた仲間が俺を見つけて駆け寄ってくる音が聞こえる。
けれど俺はそれに返事することもせずに、男が死に際に言った言葉の意味に没頭していた。

「ウィル、お前…これ独りでやったのか…?」
「いや、最期は自害した」
 男の死体を指差す同僚への返事もそこそこに、俺は。

『女一人守れない』。あいつらのターゲットは国王ではない。
そして――もう間に合わない。
城に侵入してきた"のは"と言ったのは、彼ら四人の他にまだ誰かいるのだろうか。


 …くそ。焦りで上手く考えがまとまらない。

「……ウィル?」
「仲間は四人いるって。それだけ聞き出せた」
 訝しげな表情で見つめる同僚に、少し面倒臭い気分でさっき男から聞いた情報を伝える。
戦いが終わっても落ち着かないこの感じ。……胸のあたりのぞわぞわがいつまでも取れない、この感じ。
 ……不快だ。

「とりあえず隊長に報告だな。死んじまったのは残念だけど。
マリカたちもそろそろ集中力が切れる頃だろ。いいかげん何か報告が欲しいところだろうし」

 仲間のその発言が始まりだった。
天啓と言うにはあまりにもお粗末なものだったが、おかげで胸のつっかえが取れたのも事実だ。
148ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:40:20 ID:V4NUvGB8

「…なぁ」
「ん?」
「姫様の護衛って、どのくらいなんだろう」
 ………酷く曖昧だった嫌な予感が確信へと変わっていく。
一瞬だけマリカの顔が脳裡に浮かんだ。


『オレ独りで充分です。オレだけで行かせてください!』
 彼にしては異様に必死だったあの言動が、今さらになって違和感を感じる。


「あー……確か『王の盾』が一人だろ、それから姫様の部屋に続くそれぞれの道に兵が何人かずつ。
後はジュダスとマリカ、これだけじゃないかな」
 思い出すように指折りで数えながら彼は答えた。

 こいつらの目的が陛下暗殺じゃないとするなら。
四人の他に、城内に潜入するのに内側から手引きした者がいるとするなら。
そのうえで俺たちが"女一人守れない"と言われるような目標をターゲットにしているとするなら。

―――まさか。
 そんなことしたって王国の命令系統に大したダメージがない。せいぜいがプライドを傷つけられる程度だ。
だけど。

「じゃあ……今姫様の傍にいるのは、王の盾と――マリカたちしかいないんだな…?」
「…?まぁそうなるな」

 彼がそうだと決め付けるにはあまりにもパーツが足りない。
だけどさして長くもない経験で培った俺の勘が、全力で警鐘を鳴らしていた。

 もしかすると。
彼は、もしかすると。

「…ッておい!ウィル、何処行くんだよ!」

 同僚の声を振り切り、気付けば俺は全力で駆け出していた。
149ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:41:21 ID:V4NUvGB8









 酷く緊張しているのが自分でも解る。
初の実戦だ、無理もない。そう楽観するのは容易いが、そういうわけにもいかない。
ここで絶対に戦果を挙げ、ウィルと同じ部隊に行ってやるのだ。
こんなことでブルついていては戦姫にもウィルにも追い付けない。
……負けて、なるものか。

「肩の力を抜きなさい。トリスタン」

 ずっと鞘に左手を掛けているせいか、すっかり汗ばんでいた掌を拭っていると
隣に居た『王の盾』が優しい声で話しかけてきた。

「は、はい。大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」

 だけど声が震えていた。足が震えていた。
――何をこれしきのことで。
此処は戦場じゃないのに。戦場はもっと過酷なのに。
 自分が情けなくて、歯痒くてたまらなかった。


「………。
マリカお嬢様の噂は常々窺っております。
落ち着いて対応すれば、あなたの実力ならきっと大丈夫。自信をお持ちください」

 わたしの今の状態は危ういと判断したのだろうか。
『王の盾』はわたしを騎士の一人としてではなく、トリスタン家の息女として話しかけていた。

「……はい」

 なんたる屈辱か。
結局此処まで来てもお嬢様扱い。間もなく正式な騎士になろうと言うのにこの有様。
痛みを伴うほどの悔しさで少しだけ目の前が滲む。今なら奥歯を噛み砕けそうな気がするくらい悔しかった。
だけど腹の底でとぐろを巻くその怒りを原動力にしても、未だ手に残る僅かな震えは治まらず。

「あなたが恐れているのと同じだけ、相手も恐れている。
そう思ってください。それだけで随分気が楽になれるでしょう。
本物の戦いは剣の力量より双方の精神状態で結果が左右されることがあります。
ですから、充分な実力を持っているあなたなら気をしっかり持ちさえすれば心配ありません」

 この期に及んでアドバイスを受けるとは。
しかもそれでも身体の緊張がほぐれないのが、たまらなく無様だった。
わたしは、『王の盾』の親身な助言も大して耳に入らないほど緊張していたのだ。
150ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:41:53 ID:V4NUvGB8


「あなたならきっと―――う゛ッ…?」


 そこで。
王の盾の声が途切れた。

 変な呻き声だった。
わたしは最初、何が起こったのかさっぱり把握できず。
だから。わたしはそっと『王の盾』の方を伺った。どうしたのですか、と訊こうと思った。


そしたら。


「さすがの『王の盾』でも不意打ちはどうしようもないらしいな」

 勝手に耳に入ってくる篭るような低い声と共に、彼の胸から鋭く飛び出している剣先が目についた。
見慣れた銀の光沢の刃先を滑るように赤がこびり付いている。
 そして『王の盾』の背後には、同じく見慣れた、同じ部隊の男が冷たい瞳で彼を見ていた。


―――な、に……?


「き、きさ………」
 何か言おうとする『王の盾』を蹴り飛ばして剣を引き抜くジュダス。
どっ、と王の盾の身体は力無く地に伏した。

―――え…? どうしてジュダスが?

「―――さて、と」
 剣を一振りして血を飛ばすと、ジュダスはゆっくり視線をこちらに向けた。

―――ジュダスは、今、何を…した。

「これからオレがやることを黙って見逃すなら、お前に危害を加えるつもりはないけど……どうする?」
 いつものように、ため息をひとつ。だけど彼の表情から気安さは消えていた。

腰が、抜けそうだった。

「こ、これは……何の冗談、だ…?」
 右手を剣柄に掛けたまま訳も分からず尋ねる。
声の震えがさっきよりもっと酷くなっていたのはどうしてだろう。
151ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:42:30 ID:V4NUvGB8

「ははっ。可笑しな事言うなよ、トリスタン。冗談で『王の盾』を殺せるかっての」
 乾いた笑いを浮かべながら、『王の盾』だったものの衣服を手探る。

「な、なんで………いったい、なんで――」
 上手く舌が回らない。
ずっと感じている圧し掛かるような恐怖が、目の前のショックな出来事を引き金にして暴れだそうとしている。

「そんなの訊いてどうする?
オレが裏切り者で、お前の返答次第によっちゃ殺し合わなきゃならない。それは変わらないだろ?」
 話してる内容に比べ、ずいぶん軽い口調だった。
いつもの調子のようにも聞こえるが、その裏側にあるはっきりとした殺意だけは今のわたしでも感じ取ることができる。

 それを解っていながら。わたしはただ棒立ちしていた。
もう右手は剣を掴んでるのに、どんなに力を入れても一向に鞘から引き抜くことが出来ない。

 ジュダスは遺体から何かを見つけると、それを拾い上げ確認した。
……恐らく姫様の部屋へ続く扉の鍵だろう。

「一応言っとくけどな。
命が惜しいなら止めといた方がいい。
これがいつもの稽古ならともかく、今のお前の状態じゃあどう転んだってオレに勝てない」

 何かを願っているような顔だったが。
カチカチ鳴る歯が五月蝿くてジュダスの声が上手く聞き取れない。聞きたくない。

 剣を右手に立ちあがるジュダスから死臭の香りがする。……血の、におい。

「ば、馬鹿にする、な……」
 やっとのことで何とか抜刀する。歯だけでなく抜いたばかりの剣でさえもカタカタと音を立てていた。
いつもは頼もしいはずのその剣が途方もなく重い。
……こんなもの、わたしは今までどうやって振り回していたんだ…?

「お前………その顔で言う台詞かよ…。
まぁ――あのトリスタンが見逃してくれるなんてこと、絶対ないって解ってたけどよ………でも、いいんだな?」

「ふ、ふざけるな……自国の王女を殺そうとしてる人間を見過ごす騎士が何処にいる…?」

 わたしに最後の確認をすると。

「――そうか」

 ジュダスの、目つきが変わった。
152ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:43:10 ID:V4NUvGB8


「ひっ…!?」
 恐れのあまり小さな悲鳴を上げるがもう遅い。
失禁してしまいそうな恐怖が、一気に間合いを詰めてくる。

――ギィィンッ!

「あぐっ!?」
 気を失いそうになりながらも、慌てて斬撃を受け止める。
とりあえず身体は動いてくれたが、それでも腕が折れると錯覚するくらいの衝撃だった。
加えて、本来なら聞きなれているはずの擦れあう刃の音が更にわたしを追い立てる。

「あ……ぅ…」
 どうも腰より下は殆ど力が入ってなかったらしい。
訓練ではもっと重い一撃を受けたことがあるはずなのに、わたしはあっさりとその場に尻餅をついた。

「……なんで――」
 なんで、身体が動かない。
一歩一歩踏みしめるように近づいてくるジュダスから、這うように逃れようとする。
だけど腰から下が神経を切断されたかのようにぐったりしていて、まったく言うことを聞いてくれなかった。

「な、マリカ。言ったとおりだろ?
俺たちは、いつ明日が来なくなってもおかしくないって」

 怪しく光る鈍い光沢が、わたしを捕らえる。

「う………ぁあ……」
 身体が。動かない。
剣を握る手に力が入らない。
一目散で此処から逃げ出したいのに、出来ない。
153ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:44:11 ID:V4NUvGB8

わたしは吸い込まれるような錯覚を感じながら、ゆっくり振り上げられる太刀に見入っていた。


―――――ころされる。
 ころされるころされるころされるころされるころされるころされるころされるころされる。


 怖かった。わたしの手に負えないほど、怖かった。
こんなにこわいなんて。ころしあうことがこんなにこわいものだなんて。
わたしには、むりだ。わたしには、たえられない。

 お笑い種だ。
あれほど口酸っぱくウィルに説教をしていたわたしこそが、本当の意味で騎士を舐めていたのだ。
 その報いがこれ。
無様に腰を抜かし敵前で半べそを掻きながら、見下されるように殺される。
酷く、惨めな最期だ。それが解った途端に。

(……死にたく、ない。死にたくない死にたくない死にたくない!!)

 騎士のプライドも、それまで反骨精神で何とか耐えてきた使命感もかなぐり捨てて、純粋にそう思った。
ただただ、死にたくないと心の中で叫んだ。


「………悪いな」

 薄明かりの中、一瞬煌めく刀身に目が眩む。
極限の恐怖で視界が真っ白に染まる瞬間、脳裡に浮かんだのは。



 困ったように笑う、あいつの顔だった。
154ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/10(土) 23:46:18 ID:V4NUvGB8
以上です。
前話の方は前スレの方に。
後編についても近いうちに投下できるかと思います。
155名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 23:48:01 ID:5/QrBGi2
━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
156赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/11(日) 00:13:37 ID:Uie99jEh
神作品の直後ですが投下させていただきます。
157アンビエイト・ダンス1-2 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/11(日) 00:14:32 ID:Uie99jEh
 ラッテはもともとはこの家の人間ではありません。
 半年前、小川の土手の道端の段ボール箱の中で子猫と一緒に寝ていたところを、散歩中の直さまが発見したのでした。
 トワトワ座と呼ばれる古い映画館の近く、あまり人通りの無い土手のはずれの廃品の山とともに、それはありました。
 ちょうどそのとき、私は直さまの2歩後ろに控えていたのですが、直さまが段ボール箱を指差して「飼いたい!」と言った先に子猫数匹が居るのを発見し、私はすぐさま段ボール箱を川へ投げ捨てようとしました。
女の子も入っていたため、持ち上げることは無理でした。直さまも怖がります。私に。
 捨てられた子猫を拾うことに関して、私は直さまのわくわくした顔にはっきりと「NO」を叩き付けました。もし直さまに猫アレルギーが着いていたら、心配だからです。
 問題は女の子のほうです。
 私は直さまに「飼いたいのですか?」と言って女の子を指さすと、直さまは違う違う、飼わない飼わない、とふるふると首を振りました。
 私はそれを聞いて安心すると、直さまの手をとり、その場から離れようとしました。直さまに止められました。なんででしょうか。
 直さまは女の子が心配なようです。
私も目を凝らしてよく観察してみます。日本だと言うのに、髪の毛は金色、顔立ちから見るに女はイギリス人のようでした。体もおおきく、直さまよりすこし年上……16歳ぐらいの年齢のようです。
来ている服は柄物のワンピースで、そのまま寝ているためかいたるところがしわくちゃです。しかし、不思議と汚れていません。子猫が女の脇に寄り添ってにゃぁにゃぁ鳴いていました。
確かに、こんな段ボール箱の中に女が入っているとは変です。直さまは不安そうに眺めていました。
 しかし、私にとってはこんなもの関係ありません。今日の直さまの夕食の献立を考えるほうが大事です。私は直さまに無視するように忠言しようとしましたが。
「おねぇさんっ。おねぇさん」
 あろうことか、直さまは女の子の肩を揺らしてしまいました。当然のごとく、段ボール箱で眠っていた女は眠りが浅かったためか、目を覚ましてしまいます。女は起き上がると不機嫌そうな顔で直さまを睨みました。
「んー……ん。ふぇ、なによ」
「おねえさん。なにしてるの? ハロー?」
「うっさい。死ねガキ」
 心配そうに聞く直さまに、女は流暢な日本語で暴言を吐くとまたダンボールの中へ寝転がりました。
「あなた、自分の名前はわかりますか?」
 直さまが起こしてしまった以上、無視するわけにもいかなくなります。私は段ボール箱の前の彼女に視線を合わせるように膝を折って屈むと、彼女に質問します。家出少女だったら公安へ連絡しないといけません。
外人で日本語流暢なら珍しいですし、親御さんもすぐ見つかるでしょう。
 しかし、そんな私の考えもこの女の前では無駄でした。
「名前ぇ? さぁね。風にでも聞いて」
 寝転がりながら視線を合わせようともせず、答えます。親の顔が見てみたい典型例ですね。まったく。
「家出ですか? 親御さんが心配していますよ」
「うるさい。親なんて知らないわっ」
「お母さんいないの? お父さんも?」
「どっかいきなさい。ガキ」
 なんとかコミニケーションをとろうとする直さまに女は素っ気無く言い放つと、直さまはしょぼんとなって不安げな表情になられました。
 先ほどの暴言といい、直さまに対する態度といい、私の怒りに触れる行動ばかりですね。できることならこの娘の首根っこを掴みあげて一秒間に16ほどラッシュを入れたいところですが、さすがに直さまの前ではやりません。あと、できません。
 私は直さまの腕をとると、ぐいと引っ張ります。
「直さま。行きましょう。時間の無駄です」
「でも……」
「直さま。そろそろ帰らないとお勉強の時間に間に合いません」
「うん……。わかったよ。じゃあね、おねえさん。猫ちゃん」
 直さまは名残惜しげに、残念そうに言うと立ち上がって、私に片手を引っ張られながら、もう片方の手でばいばいと手を振りました。猫が寂しそうににゃあにゃあと鳴く声がします。
 そんな直さまの表情に私はすこし心がちくりと痛みました。しかたありません、今日は私がネコミミでもつけて直さまをお慰めしようかと思案したそのとき。
「待って!!」
 いきなり、段ボール箱で寝ていたはずの女が物凄い勢いで起き上がりました。ぐしゃぐしゃの金色の髪の毛を振り回し、直さまに掴みかかりました。
「わっ!」
「……!」
158アンビエイト・ダンス1-2 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/11(日) 00:15:19 ID:Uie99jEh
 不意をつかれ、私は即座に反応できませんでした。しかし、すぐに直さまの腕を引っ張ると自分の胸元まで直さまを引き寄せます。女の手が直さまからはずれ、直さまの体が私の力によって引っ張られ、私のエプロンドレスの胸元に直さまの顔が押し付けられました。
「直さまになにをするのですか!!」
 私は直さまに叱るときよりも大きな怒号で叫ぶと、太腿のガーターベルトに隠した警棒を掴み、しゅっと伸ばすと警棒の尖った先を女へ突き出します。
直さまは紅行院家直系の長男で、私がお守りするべき最愛のご主人様。こんなわけの分からない女が簡単に触れていいものではありません!
 しかし、起き上がった女は、何故か次の瞬間。
「お願い!」
 土下座をしていました。アスファルトの地面に頭をこすり付けるように、私たち二人にむかって頭を下げています。
「私を雇って! なんでもするから!!」
 突然のことに、直さまはぽかんと口が開いたままになってしまいました。直さまはもしかしたら土下座というものを初めてみたかもしれません。
 私も、予想外のことに警棒を女に向けたまま「はぁ?」と眉を寄せます。
「あなたたち二人はメイドとどこかの坊ちゃまだよね!? お願い、理由は聞かないであたしを雇って! どんな汚い仕事でもやるから! あたしを雇ってくださいぃぃ!」
 頭を下げた女は私たちの表情が見えないまままくし立てるように喋ります。あまりにも必死。そう、必死すぎます。
「さっきの暴言は謝るわ! このとおり! なんでもするからぁぁぁぁ!」
 必死すぎて、危ない。
私は直さまが段ボール箱を見つけた瞬間に、お姫様抱っこでかついで逃げればよかったと心から後悔しました。
 人通りのまったく無いトワトワ座の前だったということが幸いです。あたりには誰も居ません。私は直さまを抱いたまま逃げようと、後ずさりします。間合いを取って隙を見て脱兎するつもりでした。
 が、
「待って! 待って! お金もいらない! お給金も! ただご飯と……寝るところだけあればいいから! 犬小屋でもいいの! だから、だからぁ! あたしを雇ってよぉ!!」
 私の足を掴むな! 直さまの手前、乱暴に振りほどけないでしょうが! あとうちに犬小屋はありません!
 女にぎゅうっと足を抱かれ、私が対応に困っていると、胸元に顔を押し付けられた直様がぐぅぐぅとくぐもった声を出します。視線を移してみると可愛いお顔が真っ赤です。
 苦しいのでしょうか。私は直さまを抱きしめる腕を緩めてあげました。ぷはっと空気を吸い込むように直さまが顔を上げます。
「直さま、大丈夫ですか?」
 足をつかまれたまま、私は聞きます。
「大丈夫だけど……。ちょっと……」
 私に見つめられた直さまはピンク色の頬をさらに赤く染めてごにょごにょとなにか言いづらそうにします。
「なんですか?」
「お、おっぱいが……」
 そう言うとさらに真っ赤にしてお顔を俯かれました。ふむ。私の胸が直さまの顔に押し付けられていた形は、どうやら直さまには刺激が強かったようです。
「これはこれは、失礼しました」
実はわざとですけど。
「さて、問題はこの女です」
 私の足を掴む女。わめき散らす女に向かって右手を振り上げました。言葉のキャッチボールができない方には拳で会話しましょうということで(警棒ですが)、えぐえぐとえづく女に一撃を喰らわせようと、振り上げた警棒を握り締めました。
「待って! エリィ」
 そのとき、直さまの突然の静止の言葉。私はすでに振り落としていた警棒を女の頭の直前で見事止めてみせます。華麗なる寸止めです。
「なんですか? 直さま」
「雇ってあげようよ。この人……」
 ……なにを言い出すのですか。直さま。
「ほら、かわいそうだし……。こんなに必死な人僕見たこと無いよ?」
「直さま。猫を飼うのと人を雇うのはわけが違います」
「で、でも……」
「同情はいりません。直さま」
「でもさ、メイドさんとして雇うだけだよ! それに、お給料だっていらないって言ってるし!」
「直さま、メイドというものは簡単になれます。大きな家で家政婦を探しているところに派遣されればその方はメイドになれます。他にも秋葉原に行ってカフェで面接を通ればすぐにメイドになって接客ができることでしょう。
しかし、『直さまのメイド』となると話は別です」
「別に僕はかまわないっ」
「ご自分の立場を考えてください」
「立場?」
 女の前で、直さまの立場を明かすことは私にとって好ましくないことですが、何故というように聞き返す直さまを説得するにはきちんと自覚してもらわなければなりません。
159アンビエイト・ダンス1-2 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/11(日) 00:16:23 ID:Uie99jEh
「直さまは紅行院家のご長男様なのです。そのような方にこの素性も分からない女を仕えさすなんてことはできません」
「………」
 俯いて黙りこくる直さま。
「わかりましたか? 直さま」
 私は口調を和らげて、言い聞かします。これでこの話はおしまいにするつもりでした。
「……いつもいつもいつも」
 しかし。直さまは顔をすぐさまあげて、私をキッとにらみつけると……。
「いつもいつもそればっかりだ! 僕が何をしようとしても、エリィはそうやってなんでも僕の行動を制限するんだ!」
 私に向かって、普段出されないような耳を突く大きな大きな声で、叫んだのです。
 いつもはこのまま納得してくださると思っていたところの突然の怒声。……いつもおとなしい直さまが。あろうことに私に向かって罵声を浴びせるとは。
「そんなことありませんっ」
 すぐに私は否定の言葉を口にします。
「私は頭首様より教育係、世話係を仰せつかっております。これは制限ではなく、あくまで直さまのお体を案じての対処とお考えください」
「学校のことだってそうだ! 僕はもう元気なんだよ?! いい加減、学校ぐらい行かせてくれたっていいじゃないか!」
「いいえ、なりません。体調が万全でない限り。直さまにもしものことがあれば、どうするおつもりですか。学校では私は直さまをお助けすることはできないのですよ?」
「かまわないっ! 僕は一人でできるって言ってるんだ!」
「一昨日に突然倒れ、昨日まで起き上がれなかった方が言う台詞ですか。その間、四六時中看病したのは誰だと思っておられるのですか?」
 昨日、私は徹夜で直さまのお傍に着いていましたよ? 寝てらっしゃる間の額のタオルのお水を何度も替えましたよ? おかゆだってふーふーして食べさせてあげましたよ?
 ぐっと、直さまは表情を詰まらせます。これで終わり……。ではありませんでした。
「エリィのわからずや!」
 まるで、ずっとためていた不満をぶちまけるように、これまで聞いたことも無いような大声で訴えかけてきます。
「そのせいで、学校に行けないせいで、僕は一人も友達が居ないじゃないか!」
「私が居ます! 私は直さまのお友達です!」
「違うよ。エリィはただの、ただの『おせっかいな』メイドだろ!」
 ああ、なんてことでしょう。いつも私を「家族」と言って慕ってくださる直さまが、私に向かって「メイド」とはっきりと言い切りました。言い切ってしまわれました。
私を、直さまの未来の奥方を、幼少期の頃からずっとずっとお世話をしてきた母親代わりの私を。ただの下女と、言い切ったのです。
直さまが怒って思わず言ってしまったであろう言葉です。本心ではないことは今では十分わかります。しかしその時の私は直さまに激昂されて言い放たれた瞬間。
 自分でもわけがわからず、私は警棒を握る手を離し、ご本の指をもみじの葉のようにひろげ、

 ピシィッ!
160アンビエイト・ダンス1-2 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/11(日) 00:16:56 ID:Uie99jEh
 気がつけば直さまの頬を、あの可愛らしい頬を、喜んだときは笑窪ができるあの頬を、照れるとはにかんでりんごのように染まる頬を、平手で大きく叩いてしまったのです。
「……っっ!」
 軽い音が響き、直さまのお顔が私の平手が通った方向へ少しだけ向きます。
 ……やってしまった。私はじんじんと響く手のひらの痛みの感触で我に返りました。痛む手。しかし、それよりも痛いのは直さま。直さまの心。
 だって、だって。
 直さまは叩かれる理由が無いのですから。私がただ直さまの言葉に大きく反応してしまって、手を出してしまったのです。
直さまは私に叩かれたことが良く理解できなかったようで、呆然とした表情のまま、腕の中で立っていました。片方の頬が、痛みを伴ってさらに赤く朱色になっていっています。
 直さまにとっては、理不尽な痛み。そうです、私は直さまの本音を受け止めてあげなければならないのに。激昂してしまってはいけないのに。
 すぐさま謝罪しなければならない。私は呆然とする直さまに向かって、
「…………も、もぅし……わ、け、あり……ま、せ、ん、ん、ん……」
 ダメです。声になりません。もう一度、私は心臓を落ち着かせて、
「もうしわけありません」
 直さまに、謝罪の言葉を言います。しかし、直さまは痛む頬の熱さに我に返ったように私に顔を向けました。目元に浮かぶうるうるとした涙。私は後悔の念で胸が張り裂けそうになりました。
「……直さ、ま」
「僕は、僕は駒だろ。わかってるよ。僕は紅行院の家を大きくするだけのただの駒……。友達なんて必要ないよね……」
 直さまはしずかにそれだけ呟くように、その口で自虐の言葉を紡ぐと、私の腕を振り切り、私のそばから走り去ってしまいました。
 土手を降りて、トワトワ座の横を通る道を走っていき……姿が見えなくなります。
 私は、あろうことか。それを追いかけることなく、呆然としたまま走り去る後姿を見ていました。
 十秒もたったころでしょうか。私は急速にあることに気付きます。
「直さま!」
 直さまは、直さまはここから家に帰るまでの道のりはわかるのか? いや、ここは何度も通った散歩道。いくら直さまでもわかるはずだ。
 それよりも家に帰るまでに直さまの身に何かあったら。感情が高ぶりながらわき目も振らず走って、四つ角を横断歩道を飛び出して交通事故にでもあったら。
 サァーっと私の頭から血の気が引いてゆきます。直さまが危ない!!
 私はすぐさま走り出そうとして。

 女に足をつかまれたことを忘れていて見事にコケました。



(続く)
161赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/11(日) 00:17:31 ID:Uie99jEh
第一話を分割して投下しています。今回は1−2です。
修羅場発生までいくらか時間はかかりますが、もうすこしお待ちください。
第一話はこのあとラッテ話・夜と続いて、許婚来襲の第二話へと移行します。
162名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 00:34:09 ID:Y9+K4aRv
>>154GJ!
ウィル早く来て!!!!!
163名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 00:42:36 ID:EOpBEQGQ
凄ぇえ!!!!神の投下ラッシュがヤバ過ぎる!!!!!!
懐かしのぶらっでぃまりぃまでもが来るとは!!!!!!
皆さん、本当にGJです!!!!!!!!!!
164名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 01:16:25 ID:PvsgcR5z
>>154
>>161
共に神作品の投下GJです!!
165 ◆y5NFvYuES6 :2007/03/11(日) 01:23:59 ID:LWcEHyez
やっと出来上がりました。
投下します。
166赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/03/11(日) 01:25:11 ID:LWcEHyez

『やまがみさまのぞう』

本は薄く、表紙には像が描かれている。
そしてその瞳は赤い。

「せっかく借りたんだし、見てみるか…。」
俺はページを開き読み始める。


―――物語はこうだ。

村のある子供が病気をした。その事に頭を悩ませていたおじいさんの元に山神様が降りてきてこう言った。
自分の像を作る代わりに子供の病気を取り払ってあげましょう。それを聞いたおじいさんはさっそく像を作った。
そして出来上がった像に山神様が宿り、約束通り子供の病気は治って2人は末永く幸せに暮らした。

といった話らしい。
…特にピンとくるものもなく、ただの絵本という感想しかない。
「はぁ、やっぱ何もわかるわけないよな。」
元からただの絵本に手がかりなんてあるとは思っていなかったが、それでもほんの少し憂鬱な気分になる。
…手がかりなら、直接本人に聞けばいいだろうけど…。
………俺に出来るだろうか?
あの赤い瞳と対峙した時の事を思い出す。
―――背筋に寒いものが走る。
…正直に言えば怖い。
でも今日桃太と話をして、心の奥底にしまっていた真実を知りたいという気持ちに気づいてしまった。
葵さんは本を貸してくれて、俺の為に山神様の事を教えてくれた。
桃太は俺の為にわざわざ調べてくれている。
…俺だけ何もしないというのは、2人に失礼だ。

携帯を開き、時刻を確認する。
「そろそろ時間…か。」
目を閉じ、覚悟を決める。
立ち上がり、窓へと近づく。
と―――。
167赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/03/11(日) 01:27:13 ID:LWcEHyez


コツ――――


来た。
心臓の音がやけに大きく聞こえる。
俺は大きく深呼吸をし、思いっきり窓を開けた。


以前見た時と同じ、闇に浮かぶ赤い瞳。


心拍数が上がる。
目を逸らしたくなるのを必死で抑え、俺は赤い瞳を見据える。

「チカちゃん…。」
嬉しそうな声で俺を呼ぶ。
「やっと、あけてくれたんだね。」
あいつは微笑んでいるような…気がする。
「…聞きたい事がある。」
「何? 答えられる事なら何でも答えてあげるよ。」
「お前は…何者だ?」
俺はずっと心の奥にしまっていた言葉を口にする。
「どういう事かな…?」
「俺とお前は昔会ってるみたいだけど、俺にはその時の記憶がない…。だからお前が誰なのか、わからないんだ。」
熱い風が部屋に入り込んでくる。
あいつは微動だにしない。何も言ってこない。
もしかして怒らせたか…?
だがそんな俺の予想とは別の反応が返ってきた。
「……そっか……、ごめんね、私…そんな気はなかったのよ…。」
今にも消え入りそうな声であいつは呟いた。
そんなあいつの様子に、俺はほんの少しだけ、胸が痛んだ。
「あ…別にその事を怒ろうなんて思ってるわけじゃないから…。
ただ教えて欲しいんだ、あの時、何があったのか…。」
言った後、少し後悔した。
今の俺に恐ろしい記憶を聞くだけの覚悟があるのかどうか、あまり自信が無い。
でも今更こんな事後悔していても仕方が無い、後の祭りだ。
俺は期待と恐怖で高鳴る胸を抑えるかのように、胸に手を当てる。
「…ごめんね、それは言えない…。」
「言えない事なのか…?」
「うん、言えない。チカちゃんの記憶を消してしまったのに、こんな事言える資格ないけど。」
「そうか……わかった。」
俺はこれ以上追求する事は出来なかった。
多分、あいつは言わないと思うし…。勇気もなかった。
168赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/03/11(日) 01:28:14 ID:LWcEHyez
「じゃあ質問を変える。お前は『山神様』なのか?」
「そうよ。」
即答。
予想していた事だけど、改めて本人の口から言われると…わかっていても驚いてしまう。
「でもすごいね、どうしてわかったの?記憶、ないのに。」
「ある人が教えてくれた。お前の赤い瞳は山神様のものだって…。」
「ふぅん……誰だろうね、そんな余計な事言う人。」
「それは言えない。」
桃太に迷惑をかけるわけにはいかないからな。
「じゃあ当ててあげる。」
「え…?」
当てる?何で…そんな事…。
「須館家の人間でしょ。」
「な……っ…!?」
「当たりみたいね。 …やっぱり、須館家の人間…。」
憎らしい、そんな想いを篭めたかのような、暗く冷たい声が闇に響く。
「チカちゃん、須館家の人間に関わっちゃダメ。あいつ等は…最低の人間。チカちゃんみたいな優しい人は関わっちゃいけないの。」
「お、お前に何がわかるんだよ。変な奴だったけど…でもそんな悪い奴じゃ…。」
「ダメよ!!あいつ等には関わらないで!!!」
いつになくあいつが取り乱している。
何か、須館家とあったのだろうか。
「…どうしてそこまで須館家を嫌うんだ?」
「それは………チカちゃんには関係のない事よ…。」
そう言い、あいつは口を閉ざした。
よくわからないけど、俺が聞きたいのはこんな事じゃない。
「えっと……、話を戻すけど、お前は山神様なんだよな?って事は神様なんだよな?
それなのに何で今ここにいて、俺に執着するんだ?」
「そんなの、簡単よ。 私がチカちゃんを好きで、チカちゃんは私のものだから。だから私はここにいるの。」
俺があいつのもの!?
だからここにいるって、わけがわからないぞ!
「記憶をなくしちゃったから覚えてないかもしれないけどね、チカちゃんは私とずっと一緒にいてくれるって約束してくれたのよ。」
「だ、だからって…何で俺がお前のものに…。」
「だって、チカちゃんは私のものになってくれるって言ってくれたのよ。」
…10年前の俺を殴りたい。これ程自分に憤った事はなかった。
「今こんな事言われても混乱しちゃうよね、でも大丈夫。」
「どういう意味だ?」
169赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6 :2007/03/11(日) 01:32:49 ID:LWcEHyez
「もうすぐ、手に入れるから。貴方を抱きしめる腕も、包み込める身体も、全てを…。
そうしたら、ちゃんと迎えに行く。チカちゃんと私なら上手くやっていけると思うの。」
ふふっと無邪気に、まるで子供のように笑う。
赤い瞳と、その声が対照的で、今まで恐怖の対象でしかなかったあいつが本当はどういう存在なのか、俺にはわからなくなっていた。
でもあいつのものになるわけにはいかない。その気持ちは変わらない。
「…悪いけど、俺はお前のものになるつもりはない。」
「今はそう思っていてもいいよ、だって記憶ないんだもの。」
…全く動じない。
「お、お前だって俺じゃなくても別に……。」
「ううん、チカちゃんじゃないとダメ。私にとってチカちゃんは全てなのよ。」
この言葉を聞くのは今日で二度目だ。
今までモテた事すらないのに何なんだ今日は。
「だから約束して。絶対に…他の女のものになってはダメ…。」
それって、誰とも付き合うなって事か?
冗談じゃない。俺にだって一応恋人欲しいとか、そういう願望はあるんだ。
「そんなの約束出来るわけないだろ。大体、お前に言われる事じゃない。」
「ダメよ、ダメ。 チカちゃんを幸せにできるのは私だけ。他の女なんかが幸せに出来る筈ないわ。」
反論は許さないと言わんばかりの強い口調。
「チカちゃんは必ず私のものにする。絶対に。 邪魔する奴がいたら排除してあげる。
私の存在理由をどこかの雌豚に奪われて堪るものですか。 そんな事絶対許さない………許さない…。」
恐ろしいほどの冷たい声。
俺はその口調に飲まれ、何も言い返すことが出来なかった。
「…じゃあ、また明日も来るからね。待っててチカちゃん。
例え昨日みたいに出てくれなくても、私は来るから…。」
そしてあいつは踵を返し………。
と、こちらを振り返った。
「そうだ。忘れてると思うから言っておく。私の名前――」
「名前…。」
「私は、『鈴』。覚えておいて、チカちゃん。」
そう言い残し、今度は振り返る事なく去っていった。

「鈴…。」
その名前は俺の心の奥を疼かせる。
何かはわからないけど、懐かしいような…怖いような…、でも不思議と不快感はない。
赤い瞳に対する恐怖心が大分薄れてきているのが自分でも解る。
今日話が出来たのはよかったのかもしれない。
まあ毎晩来られるのは迷惑だが…。
「…とりあえず寝るか。明日は遅刻したらやばい。」
携帯を見てみると、もう0時を過ぎている。
明日は早い。考え事は明日だ!

俺は布団に潜り、眠りについた。
170 ◆y5NFvYuES6 :2007/03/11(日) 01:34:35 ID:LWcEHyez
今回はこれで終わりです。
体調不良が重なり、遅くなってしまいました。
申し訳ありません。
うーん、どうも嫉妬修羅場分が足りませんね…。
もう少し頑張ります。
171名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 01:38:17 ID:GGCMOgbd
GJ。けどこえー。この話好きだけど恐怖を想起させるシーンが多すぎ。
それだけおもしろいってことなんだけどサ。
172名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 03:06:42 ID:4YiG2EWi
投下ラッシュktkr!!!!!!!!!!!!1
173名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 03:17:34 ID:AifC7iWH
何だこの投下ラッシュは?
職人の皆様GJです!!
メッチャ嬉しいっす!
174名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 03:47:16 ID:NZ/aPUhr
前スレのぶらっでぃまりぃからとんできました。
所が他の神作品も投下ラッシュ!嬉しすぎる誤算だぜ!
皆さんgod job過ぎます。
ウィルと智がどうするかこれからワクワクです。
コレットと流もどう動くか……
奇しくも同じような転換期を迎えた四天王修羅場作品がどうなるのか。マジ期待です。
175名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 08:29:50 ID:z8GmqdI+
GJ
176名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 08:37:42 ID:CUe0yypB
>>174
長文ウザ
四天王修羅場作品とか勝手にいうなよ、トライデント氏とロボ氏なめんな
177名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 08:45:41 ID:HWr0HEQv
>>176
禿同、何が四天王だ
178名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 08:46:50 ID:Bkoo0Bh5
>>174
こいつ日本語荒らしだろ、この手あの手とうっとおしい香具師だな
179名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 08:47:54 ID:jyNYm1Q+
スルーしろよ
180名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 08:48:56 ID:Tw/eD/4z
NZ/aPUhr

これあぼーん必須
181名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 08:51:44 ID:gkJdCvwT
スルー汁
182名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 08:52:47 ID:y93DAeGj
スルーしろよ
183名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 08:53:55 ID:yYJUDTeK
スルースルー
184名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 08:57:43 ID:BhjelJyv
GodJob!いや…それ以上だ!
 
(*´д`)ハァハァ(*´д`)ハァハァ
鼻血が止まらない
咲夜エロずぎる
 
この世で一番ね誉め言葉があったらそれを使いたいくらいだ!
185名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 09:01:41 ID:BhjelJyv
誤爆スマソ
186名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 09:55:24 ID:BhjelJyv
ageスマソ
187名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 11:45:54 ID:NZ/aPUhr
すげー単発idの荒らしでワロタ。
勝手に四天王とか言ったのは確かに申し訳無いです。他の神々の作品も勿論楽しみにしてますよ
それは誤解しないでいただきたい。
188名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 11:49:36 ID:RxHAe99Q
>>187
日本語君もういいから
さっさと就職先を探しなよ
189名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 14:30:55 ID:La0QzKrc
>>187
自分が悪いくせに勝手に人を荒らし認定するのはどうかと思うよ?
190名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 14:42:18 ID:RxHAe99Q
>>187
またオマエは荒らすつもりか?
191名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 14:55:39 ID:8RhPHvLS
>>187
日本語オバケwww
192名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 14:57:43 ID:czIgPaOr
沃野や妹愛がやってた頃が懐かしいね
193名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 15:04:55 ID:veUyTT6S
‐- 、
               ヽ
              ヘ. ヾ、 /::\
            //:.:.:\}:V:.:.∧ ヽ、
        , -‐ア| /:.:.::.:.:.rV:.::ノ:∧  ト- 、
       /  /: | |>'´/ ,'  :',: :.:∧  ::ヽ \
     /  / .: | ,':/ / :|   .|: :l:.:ハ  :::. ',  \
    く    | : | ,':| ,' : i |   |:. :|:.:.'ハ. :::.::|   /
     \  :| : | |:.| |_」」_|  :. |_ 」L,_:.', : :.::|  /
       \:| : | |ィ´|:从ハ :./|ハ从ハ> : :.',/
        | : | |     V    レ'∧ : ::|   
       /|: :. | |ト. - -‐''    ''ー -‐/イ : ::|\
     / /|ハ:.: |:|トヘ. :::::  `   :::: /j:∧ : :.:|ヽ \ >>211君ちょっとこっち来てくれるかな?
    /  /: || |:. |:|:| ヽ、 ` ´  / // | : :| ヽ  ',
.   /  /:: || |:. |::|ヘ /:ノiー   イi:.: /"  | : :|  ',.  ',
  /  /:::  ||::ヘ:. |::|__`ノ `ー:r‐'' ∨   i| :.:|   |  |
. /  /―‐- |_,-',:.|: | |   /゚ヽ   「`ー/i|:.:/__|  |
 \__/    /i  ヾ:.:| |  / o.∧  | / /:/\   |_/ 
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194名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 15:54:49 ID:IrR26brh
>>188-191
なるほどねぇ・・・。
195名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 15:59:49 ID:33FztAvi
>>194
最近は実に分かりやすくなってきたということね。
196名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 16:38:14 ID:w/MBmEdB
おれは174氏の発言そんなに悪いと思わん
むしろその熱い想いは神々に届いてると思うぞ

個人的に荒らしが住人を叩く姿は
荒らしが神を叩く姿より胸が痛む
あくまでも【みんな仲良く、修羅場はssの中で】
197名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 16:54:48 ID:IrR26brh
>>195-196
このままじゃ俺らも実質荒らしになりかねない。あとは黙って見守ろうぜ。
198名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 17:00:43 ID:va30w9b1
前スレ埋め立て記念


泥棒猫になったら♪
泥棒猫になったら♪
ともだち100人 失った♪
100人で 囲まれる
屋上の端に 詰め寄られ
グッサリ♪ ザックリ♪ バッサリと♪
199名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 17:07:25 ID:1GbYvMTG
つまらぬ
200名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 17:33:24 ID:3ONYv1Ot
でもなんだかんだでスレ内での罵り合いにも慣れてきてしまったなorz
201名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 18:49:39 ID:FooWh56T
なんか最近は埋め段階にならんとスレに平穏が訪れなくなったな
202名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 19:11:55 ID:oFF6iKC2
とりあえず、いたり先輩は俺が頂くってことでoK?
203名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 19:21:40 ID:jtP3KJXH
>>202

これが流行ってた時期は

「何こいつら。マジ、ウザ杉」

と思ってたんだが、久々に見るとなんだか懐かしさでほんわりとした。
204名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 20:12:53 ID:eYJ8T4Zm
嫉妬に狂い泥棒猫を「」しようとする修羅ヒロイン
嫉妬に狂い彼を「」しようとする羅刹ヒロイン

どっちが好き?
205名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 20:18:35 ID:GjQMJSEh
修羅と羅刹とどうちがうの?
206名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 20:24:11 ID:jyNYm1Q+
色w
207名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 20:24:34 ID:HK21NDH5
技w
208名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 20:27:09 ID:eYJ8T4Zm
憎悪の対象

嫉妬に狂いあたり構わず「」しようとするのもありかなー
209名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 21:33:58 ID:jyNYm1Q+
お前の脳内の区別はどうでも良いんだがw
210名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 23:38:51 ID:VKxYCswz
>>204
本スレ池
211名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 00:19:46 ID:ICdgf1Ql
要は雑談禁止でFA?
212名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 00:34:59 ID:1rQ4Nxkh
>>211
そういうわけではないが今回のは本スレで話したほうがいい
213名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 00:39:55 ID:VSHVNkbg
>>161
赤いパパ!!

冒頭の文章は世界観を位置づけるための設定を消化したり
主人公やヒロインなどの描写したりと使われるもんですよ

作品の独特の世界観を読者に伝わらせる重要な場面に
手を抜いてたりしたら、さすがの読む側の読者も付いていけないぞ!!

だいたい、メイドモノをやるんだから・・それなりの世界観を構築しておけよ
拾われたラッテの存在は2話以降で登場させるのが普通だ・・

いきなり、登場させたおかげで主人公やエリィの内面描写が
影のように薄くなってるぞ


とりあえず、ここを見て勉行してください
ttp://www.raitonoveru.jp/howto/m.html
214名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 00:41:58 ID:VSHVNkbg
>とりあえず、ここを見て勉行してください
○勉強
×勉行


おっと、変換ミススマソ
215名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 01:14:06 ID:sIaQZnii
わかりやすいすい日本語くん
せっかく勉強してきた所悪いけど

「〜が普通だ」とか「〜するものだ」とかのそういう「ただのセオリー」を押し付けるのはやめようね
エリィの一人称なのに内面描写が薄いとかありえないからね
216名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 02:09:53 ID:WNPL6AjF
セオリーはあくまでセオリー
文章作法のように決まった答えはない
つーか世界観て、ファンタジーでもないのに説明する必要がない
どうみても漫画やSSでは一般的な少し変わった日本です。本当にありがとうございました。
217名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 02:22:17 ID:bhYFZqEz
>>213
また日本語おかしいよwww
218名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 03:42:55 ID:xv9bwr50
>>213
とりあえずお前の文章に点数つけたら0点だな。

全ての段落に間違いがあるのには恐れ入ったよ。
219名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 07:44:43 ID:/dSkN6Aa
>>213
もはやわざとやっているとしか思えないな。
220名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 08:51:38 ID:3mYhsRoa
>>213
の言うことはわからないことでもないけどな

Who
誰が

What
何を

When
いつ

Where
どこで

Why
なぜ(どんな目的で)

How
どうやって

が作品内を探しても見当たらないってことですね
221名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 09:34:17 ID:2YMSMgN8
連続で煽り叩きをする>>217-220の日本語君たちは一体なんなんだ?
222名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 09:46:36 ID:KAI+sgy2
実は>>213がいつもの日本語がおかしい荒らしではなくて
>>215-216
はまともな意見を述べているの対して
>>217-219
煽っている荒らし


という構図である事は明らか

>>213>>2のテンプレには触れてはいない

彼が口出しているのは赤いパパ氏の作品の世界観と描写
ちゃんと親切に文章鍛錬サイトのリンクを張っている


私もちょっと文章構成を練り直した方がいいと思うけどね
まあ、SSに口を挟む真似はしないので強くは言わないけど
223名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 09:48:01 ID:cm7NO+rz
つか>>213は赤いパパ氏に対してのものだから住人が反応する必要は無い
224名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 11:01:12 ID:HlLf8dBN
単発IDばかりでわらった
225名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 11:07:34 ID:CkEGe1Gh
ま、愉快犯の荒らしも過剰反応する進歩しない住人もスルーで
226名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 13:01:15 ID:bhYFZqEz
>>224
じゃあ単発じゃないことを証明しておこう

それに>>213は日本語君だろ
文章の癖が一緒
長文を書けば他人には真似できない癖は必ず出る
227名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 13:19:39 ID:Z4UBIVqE
なんで赤いパパ氏がこんなにいるの?w
228名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 13:28:19 ID:bcfkV9ey
ID:bhYFZqEz

おまいが単発であろうと無かろうと関係ないと思うんだよ。
基本的に、日本語荒らしはスルーしようぜ。
229名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 13:32:34 ID:4qVIZ/PS
そもそもここ文章力鍛える場所じゃないからねぇ
230『嫉妬プログラム』 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/12(月) 13:41:13 ID:C3xCkq7r
投下します
231『嫉妬プログラム』 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/12(月) 13:42:06 ID:C3xCkq7r
「……クーちゃん、人物照合できる?」
「はい、依頼人から送られてきたの写真と同一人物です。間違いありません。」
 かなり大きな音で飛び込んだというのに、こんなにのうのうと寝てるなんて大した奴だ。服を見ると、どこかの学校の制服を着ている。
 確かこの付近の学校の物だったはずだ。ずいぶんと泥で汚れているようだが。
「うぅ……ん…」
「お?起きるか?」
「くか〜……」
「………」
「………」
「クーちゃん、俺は女の子に手を出せない。だから代わりに叩き起こしてくれ。」
「了解。」
ゴン!
「ぐぁ!」
 言ったと同時に、クーちゃんのゲンコツが少女の頭に落ちる。可愛らしい顔には似合わない呻き声を発し、頭を抱えてうずくまっている。
「いてぇ〜……うぅ、誰だよぉ、人がせっかく気持ちよく寝てるってのに……ん?誰!?」
「………」
 あまりの口の悪さに、しばらく意識がとんでいた。ふと気付くと、目の前に彩音がこちらを見上げるように睨んでいた。
 肩まで伸びた黒い髪はボサボサになっており、顔にも所々泥が付いている。そんなみっともない格好でも可愛らしい。
232『嫉妬プログラム』 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/12(月) 13:44:16 ID:C3xCkq7r
 おそらく綺麗にしたらもっと可愛いのだろう。いやいや、今はそんなことを考えてるんじゃなくて。
「北原彩音だな?」
「……違うわよ。」
「は?」
「マスター、彼女が北原彩音であることは間違いないはずですが……」
「私は北原、彩音じゃない!佐伯彩音よ!」
「あぁ?」
 いまいち言いたい事がわからない。なんで苗字だけ嘘を吐くんだ?
『マスター、彼女の母親が佐伯という苗字のようです。』
『母親?なんだって母親の苗字を?』
『北原清三は複数の女性と付き合い、子供も腹違いで多数いるようです。』
 ……北原清三が憎いからそんな事を言い張るわけだ。
「あーあ、それにしても、もう見つかっちゃうなんて。ちょっと甘く見過ぎてたかなぁ。」
「見つかった?……って、おい、お前は誘拐され……」
『マスター、少し話が違うようです。ここは彼女に合わせてください。』
「……あ、ああ。そうだ、やっと見つけたぞ。ほら、早く家に帰るぞ。」
「……ふん、どうせ私なんてどうでもいいんでしょ!?こいつが無事ならさ!!」
 そう叫んで、彩音は何かを投げ付けてきた。
233『嫉妬プログラム』 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/12(月) 13:47:27 ID:C3xCkq7r
「ん?なんだこれ?」
 投げ渡されたのは一枚のCDの入ったケースだった。ラベルには何も書かれておらず、内容はわからない。
「どうせあの男、私が誘拐された〜とかほざいて探すよう頼んだんでしょ。」
「………」
俺の理解出来ないところで話が勝手に進んでいる。どういうことだ?
「……マスター?如何なさいますか?」
「うん……いったん事務所に連れて帰ろうか。どうやら誘拐ってのは狂言みたいだったし。」
「あれ、アンドロイド?」
 クーちゃんを指差して『あれ』呼ばわり。ちょっとイラッとする。俺はクーちゃんを『一人』として見たい。まぁ、アンドロイドのことを好きなんだというと世間から異端視されるから口には出さないけど。
「そう。クーちゃん。俺の仕事のパートナー。」
「ふーん、そりゃそうよね。アンドロイドなら給料いらないし。」
 このアマ、本当にムカつくな。
「ったく、さっさとここからでるぞ!一人で勝手にいなくなってこんな臭いとこまで探したんだからな。……依頼料、値上げしてやる……」
 そう言って彩音を掴もうとした瞬間。
ガッ
「マスター、彼女は私が連れていきますから。」
「……はい。」
 クーちゃんが俺の腕をつかみ、阻止していた。そして彩音をヒョイと軽く持ち上げる。
「あっ!こら!はーなーしーやーがーれー!!一人で歩けるって!!」
 彩音はジタバタと暴れながら、結局事務所まで運ばれていった……
234『嫉妬プログラム』 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/12(月) 13:48:44 ID:C3xCkq7r
以上です。
235名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:00:14 ID:ZyVQhXjB
>>234
GJ
236名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:10:21 ID:CIkBurpx
恐らく忘れ去られているだろう者です

今から投下するのはこれの続きです
ttp://dorobouneko.web.fc2.com/SS/20061112_1.html

では、以下から
237記憶:2007/03/12(月) 14:13:19 ID:CIkBurpx
 心なし早く教室に着いた僕は自分の席に座って先輩から薦められた小説を読んでいた。
 内容は一人の男性を三人の女性が取り合うという三角関係ならぬ四角関係の修羅場がテーマのドロドロした恋愛物である。
 好きな人の為に尽くしたりするのは解るが、これに書いてあるのは嫉妬に狂って恋敵を殺したり、愛し過ぎて殺しそうになったり、と

いうものでその辺はよく理解出来ない。
 しかし、怖いながらも結局は読んでしまい、今もスラスラと読み進めている。
 ストーリーも悪くはないし、登場人物も特徴的で全体的に入り込みやすく、先輩が薦めたのも解る気がした。
「朝から……読書……?」
 そんな読書に集中している最中、本を置いている机が声を発した。

 ……なんて怪奇現象が朝から起こることはなく、クラスメイトの黒野さんが机に手を引っ掛けて丁度目が合うのを本で遮られた

位置でしゃがんでいる。
 本を倒し、目を合わせると、目を丸くしてこんな事を言った。
「に……今日も先輩と?」
「うん、そうだけど」
 明後日の方向に目を向けて少し考える黒野さん。
「たまにはあたしと登校するのも……あり?」
 うにゃ、と首を傾げてきたが、僕と一緒に登校しても楽しくはないのは確かである。
 ここはうっすら、やんわり断るべきだろう。
「いや、聞かれても」
「……なし?」
 眉毛がハの字になって、しゅんとする黒野さん。
 あぁ、何か可愛いけど、どうしよう。
「いや、うーん、なしって訳でもないけど」
 猫のような愛くるしさに負けて思わず言ってしまった。
「みみ! なら、明日迎えに行く……家何処?」
 黒野さんは大きな瞳を輝かせて言った。暗闇を照らせるくらいの勢いである。
 朝から僕と一緒になるのは期待しない方が良いと思うのだが……何故こんなに嬉しそうなんだろう。
 本気で僕と学校に行くつもりなのだろうか。
「本当に一緒に行くの?」
「やっぱりなし……?」
「いや別に僕は良いんだけど」
 既に断る気など消えていた。
「なら、良い……早く教えて」
 ここで軽く教えてしまっても良いのだろうか。誰かに教えるなと警告されているような気がする。
 そんな声、聞こえるはずないんだけど。
「早く」
 黒野さんが急かしてこう言ったからか、丸い目を輝かせたからか、僕は聞こえもしない警告を無視することにした。何だかんだ言っ

て朝から女の子と登校するということに僕は少なからず期待しているのだ。
 だからこそ、マタニティブルーのような不安によって教えるなという空耳が聞こえたのだろう。
「うん」
 何処から用意したのか分からないが、僕は机の上に乗ったメモにまあいいかとペンを走らせた。
 しかし、住所を書くより地図を描いた方が分かりやすいと思うけど……。公立だから家は必然的に近いし。
 そんな疑問を浮かべながら、住所を書いた紙を黒野さんに渡した。
「明日から……よろしく」
 僕が返答するのも待たず、黒野さんは八重歯を見せて自分の席に行ってしまった。
 僕はチラリと見えた八重歯を記憶に残し、担任が入ってきたところで思考を止めることにした。
238記憶:2007/03/12(月) 14:14:26 ID:CIkBurpx


 そして今は午前の授業中。僕は先輩の事を考えている。
 朝の先輩は何処かおかしかった。いつも先輩を見ている僕だから、いや、誰が見てもおかしいと思ったはずだ。
 あの豹変振りは別人になったのかと思わせるくらいだった。
 でもその瞬間は一瞬で終わり、すぐにいつもの先輩に戻った。
 何が原因だったのだろう。水色の少女? それとも僕?
 どうして先輩はあんな怖い目を僕に向けたのか。解らない。
 放課後の文芸部室で訊いてみようとは思うが、きっと無理だ。今日の先輩に喋りかける勇気など僕にはない。
 それに訊くほどのことではない。そう決めつけたい。あんな先輩は今日だけだ。
 そう、決めつけたい。
 自分の席から見える窓の外では、冬の始まりを知らせる枯れ葉がひらひらと舞っていた。


 昼休み。珍しく先輩が僕を訪ねてきた。
 他の学年の生徒が他の学年の教室に入ってくることは別段珍しい事ではない。クラスメイト達は特に先輩に注目することもなく、

各々昼食に集中したり、恋のお話でお茶を濁しまくったりしていた。
 しかし、僕はというと突然の来訪に少し驚いている。朝の事で怯えてる訳ではない。
 カチューシャを付けた文芸部の先輩が僕を訪ねてくることは今までなかったのだ。全く、一度も。
 それなのに何故?
「ちょっと話があるんだけど、良い?」
 僕の席までやって来た先輩は、座っている僕を見下ろし、そう言った。
 別に断る理由はない。しかし、若干の恐怖感がある。
「話って何ですか?」
「たまには昼休みから綺雪君と話しても良いかなって」
 ね? とウィンクする先輩。今気付いたが、手には焼きそばパンと牛乳を持っている。
 昼食で焼きそばパンってベタ……。しかも、牛乳って。
 いや、もしかして。もしかすると、今日は僕の家に来てたせいで弁当を作れなかったとか。
 もしそうだとすると、悪いことしちゃったな。
「そうですか。良いですけど、先輩今日だけ弁当じゃないって事はないですよね?」 
「え? 何でわかったの? そうなのよ、今日だけ行ったこともない購買部でお昼を買ってきたの」
 やっぱりそうだったか――!
「それって今日朝からわざわざ僕の家に来たからですよね?
 すいません。お金出します」
「え、え? 違うの、アレは私がしたくてしたことだから良いの。気にしないで」
「いや、でも……」
「後輩はそんなに気にしなくて良いの。さぁ、屋上にでも行きましょ」
「え」
 何も言えず、先輩に手を引っ張られながら僕は教室を後にした。背中に寒気を感じた気がしたが、きっと気のせいだろう。

「あの女――」

239記憶:2007/03/12(月) 14:15:02 ID:CIkBurpx
 屋上に連れて来られたのは良いが、何の話をするつもりなんだろう。
 先輩は僕に背を向けて焼きそばパンを頬張っている。話があるのに背を向けては意味がないような気がするが、意図的にやって

いるのだろうか。
「あの……先輩?」
 黙秘権を行使し続ける背中に問い掛けてみる。
「……」
 もぐもぐと咀嚼している様子だけが僕には伝わった。要するに先輩は僕を連れてきておきながら、僕を無視しているのだ。
 一体何がしたいんだ?
「よし、ごちそうさま」
 急に先輩がくるりと振り返って手を合わせた。表情はにこやかである。
 屋上に来てから初めて発した先輩の言葉に思わず僕は問う。
「何で食べ終わるまで喋らなかったんですか?」
「だって食べながら口を開けたら汚いじゃない。そういうの綺雪君には見られたくないの」
 頬を朱に染めながらそんなことを言った先輩を見て僕は驚いた。今まで無視してきた先輩の女性らしさを感じてしまったのだ。
 先輩がいきなりお淑やかになられるとまずい。僕はそれを頭の中心に置いておくことにした。
「は、はぁ……」
「でも、全く喋らないのは変だよね。ごめん」
「そういう意図があるなら別に良いですが」
「じゃあ、どんな意図なら悪かった?」
「そうですね。屋上に呼び出して決闘するという伏線の為とかなら悪いです」
 女性としての先輩を無理矢理頭から追い出す為に冗談めいたことを言う。
 意識するな。いつもの先輩だ。そう、文芸部の先輩だ。
「じゃあ、愛の告白なら?」
 さっきより頬を朱くして先輩は訊く。
 いや、まさか。先輩が僕に告白なんて有り得ない。何せ先輩は男っ気がないし、じゃなくて、男に興味がないはずで……アレ?
 意識するな。意識してはダメだ。
「あ、ありえませんよ。そんなこと」
 狼狽えて声が上擦ってしまった。今の僕の声を録音していた人がいるなら、宇宙の果てまで追いかけることになるだろう。
 ていうか、顔が熱い。もしかして顔が朱くなってるかもしれない。変な汗も出てるし。
「イフ、イフの話よ。もしそうだとしたらそれは良いの? 悪いの?」
 接近。先輩が顔を近づけてくる。ゆっくりゆっくり、獲物を逃さんとする肉食獣のように。
 息もかかりそうなくらい近い。心なし先輩が野性的な顔つきになってきてるような……。
 いや、妖美な艶美な――。
「う、え、えへへ?」
 訳が解らなくなっていた。変な笑い声を出して誤魔化すことしか僕には出来ない。
 僕は先輩が好きなのか? 好きではないのか?  そんな形式上簡単な質問に答えられない。
 どうして。
「イフよ。イフの話。早く答えなさい」
 目がマジです、先輩。良いって言えば、このあとキスでもしそうな勢いです。
 僕はぐるぐると回り出した視界に危機を感じつつ、更に顔が朱くなるのを感じた。


マイペースに続きよるんですわ
240名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:17:25 ID:CIkBurpx
あっ、自動改行オフにしてからコピペするの忘れてた!
読みにくいですね。すみません
241名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:22:50 ID:Z4+Cy5Hi
>>240
つまんね、誰も期待していないからブログでも借りて勝手にやってくれる?

242名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:23:54 ID:A0ObzG61
>>240
マジ、神の投下ラッシュのあとだとキツイから勘弁してくれよ
243名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:25:04 ID:dXfRDCXT
>>241-242
意外に正論
244名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:46:01 ID:5+qlSbs+
>>241>>242
禿同
245名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:47:23 ID:SeVhkHR/
>>242
確かに目劣りはする
246名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:48:08 ID:RQ8Tpx1N
>>242
痛いとこ突き杉w
247名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:48:51 ID:RQ8Tpx1N
>>241
むしろmixiでやって信者でも集めさせたらw

248名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:49:05 ID:kmZzsVNW
つまんないと思ってカキコしてる奴はどっか借りて自分でSS書けば?才能がない時間がない等の理由で無理ならグーグルって便利な物があるから探せば?
2chが好きで移動したくないならスレ立てちゃいなw不味いor好みじゃない料理食べて、文句は知性が感じられないよ?食べなくていい(読まなきゃいい、スルーの事。)もんは口出し無用。
249名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:51:44 ID:fuBzWKSa
>>246-247
爆藁www
250名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 14:52:56 ID:bhYFZqEz
>>248
日本語オバケは日本語が理解できないから言っても無駄

朝鮮半島出身なんでしょ
251名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:12:38 ID:iloQouy8
>>250
ほかのスレでこんなことかいてる香具師に説得力無いだろ
>280 :名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 02:16:50 ID:kmZzsVNW
>>277
マジ潰すからなw
具体的にはうんこ改変してホモSSにしたやつをあちこちに貼りまくってやるw
幸い今日は休みなんで一日中監視して相手してやるからw
覚悟しとけよ?
あと投下をずらしても同じこと
自宅と出先の携帯で常にチェックしてるからw

俺と戦争する気があるならどうぞw
荒れるのわかってて投下するやつは荒らしだからな?
いいか?
警告はしたからな?
252名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:18:11 ID:0hIE2Klt
なんという単発ID…
253名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:19:41 ID:tqrsHdez
いい歳した大人なんだからそろそろやめない?
254名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:20:38 ID:lmwKcn8k
>>251
意味わからん
誰か説明してくれ・・

255名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:22:21 ID:9ptoP0ak
真実
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1165332406/

280 名無しさん@ピンキー 2007/03/11(日) 02:16:50 ID:icz68Ky4 ←
>>277
マジ潰すからなw
具体的にはうんこ改変してホモSSにしたやつをあちこちに貼りまくってやるw
幸い今日は休みなんで一日中監視して相手してやるからw
覚悟しとけよ?
あと投下をずらしても同じこと
自宅と出先の携帯で常にチェックしてるからw

俺と戦争する気があるならどうぞw
荒れるのわかってて投下するやつは荒らしだからな?
いいか?
警告はしたからな?


>>251
和風美少女スレを荒らしてたのも、やっぱりお前か。
春休みで弾けたいのは分かるが、全体的にそろそろやりすぎだと思うが…
256名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:23:47 ID:lmwKcn8k
そういえば、ヒロインが和風美少女というのは嫉妬スレではいなかったな
257名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:27:54 ID:lmwKcn8k
282 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/03/11(日) 02:18:20 ID:icz68Ky4
完全制圧完成記念w
























大勝利確定記念age


ID:kmZzsVNW 哀れ
258名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:28:05 ID:en5DgO3x
荒らし云々はともかく
和風美少女スレなんてものを教えてくれた>>255にGJ

>>237
続き期待してた。
ゆっくりで問題ないんで投下お待ちしてる
259名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:28:07 ID:4qVIZ/PS
そっか……春休みなのか('A`)
それはともかく先輩可愛いわぁ
260名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:30:24 ID:xv9bwr50
その場合の得物は刀か薙刀か包丁か?

このスレではお馴染みのうえぽんだな
261名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:32:02 ID:en5DgO3x
着物の袖からS&W M19が火を噴くのももありかもしれん
262名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:38:27 ID:7ZrjPewe
297 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/11(日) 12:40:35 ID:VhDNDOwL
>>295
>荒らしの手口をわざわざ教えてあげる荒らしがどこにいるよ?
それがお前の手だからな
作者「SS投下するよ」
お前「投下したら荒らすからw」
お前「ほら作者さん、荒らされるからSS投下しないで」
作者さんがSS投下
住人A「GJ」
住人B「面白いよ」
お前「住人A、Bは作者の自演だからw」
お前「自演するなよ…」
お前「これつまんね…」
お前が荒らす
お前「ほら作者さん、荒らされるからSS投下しないで」
勿論お前は全部ID変えてる。これがお前の手です

>>277は「SSを投下する」というエロパロ板の目的に従った行動をしようとしています
何で「正当な行為」をしちゃいけないんですか?


これが荒らしの手口か・・
>>240-248

春の季節は出会いと別れと厨房の季節だった・・
ってか、2月頃から頻繁に現れてきたから
大学生かな・・?

263名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:43:46 ID:7ZrjPewe
まだ、12月頃は変な自作自演の荒らしはいなかったし
1月もそれなりにスレはまともに稼動していたと思うけど
2月になったら、神を叩く自作自演バカが目立つようになった

日本語おかしいの人はニートなんだろうけど

3月もこのスレや他のスレにいるんだろうかね

4月になれば少しは落ち着くかな
264名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:44:10 ID:tGCy0uxb
なんでもかんでも自演と騒ぐこのスレの住人は民度低いなw
265名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:45:27 ID:xv9bwr50
きっとダブったんだろ。その腹いせじゃね?
266名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:47:09 ID:7ZrjPewe
固定IPと動的IPのプロバを使い分けて自演しているだけの、荒らしとの同一人物がいる
ということをテンプレに改めて付け加えておくことが大切だね・・

神はスルーして雑草魂で作品を投稿してくれ
俺は世界の果てからGJを連発するよ
267名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:50:31 ID:tGCy0uxb
もういい加減スルー覚えとけよ、俺ももうROMる
268名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 15:51:11 ID:bcfkV9ey
ID:7ZrjPewe

とりあえず、頼むから、黙っててくれ。
269名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 16:14:08 ID:0Iy3Oezy
っていうか、あんまり叩きすぎると神々が怒って移住してしまうぞ。
270名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 16:17:12 ID:F1ZVQcSv
>>234
GJです。嫉妬だけでなく物語としても普通に続きが楽しみだ。


ただひとつ、主人公の性格というか人物像がつかみづらいのがちょっと難かも。
意識してそうしてるならともかく、そうでないならもうちょっとそこらへん意識してほしいかなと思う。

続き期待してます
271名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 16:17:39 ID:tGCy0uxb
>>269
だから書き込まずスルーしろ
272名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 16:43:13 ID:Z7o99c55
まとめサイト見れないの俺だけ?
273名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 17:00:28 ID:Wbz5QGSS
>>272
普通に見れる

>>270
また趣向を変えてきたのか?日本語くん
274名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 17:01:53 ID:5u1/DDbk
手口
・ひたすら単発IDで住人同士の会話を装う
・他人のレスの改変コピペGJ
・スレはもう終わり、SS書きに見放された、住人の質が落ちたと煽る
・荒れるから黙ってろ、GJ禁止
・特定職人の誹謗中傷

大した問題じゃない(SSは投下されてる)ので住人は気にすんな。
275名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 17:03:58 ID:Wbz5QGSS
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1165332406/465-473

これみると3番目はあたってると思ってしまう
276名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 17:43:25 ID:F1ZVQcSv
>>273
普通のGJと感想さえ否定する荒み具合に絶望した!


こんなだからノントロの作家さんとか来なくなるんだよ。


三十路越えてこのスレもババアになっちまったな。


もうヤンデレスレ行こ


277名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 18:04:46 ID:dM76wiRh
>>234
新参なんで初めて作品をお見かけしたが、GJ
実質叩いてるのは一人だと思うんで気にせず続けてくだされ。
278名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 18:14:35 ID:9AxzTSTb
>>276
作者をヤンデレスレに必死に勧誘してたやつか
お前の筋書き通りになったぞorz
279名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 18:55:33 ID:sIaQZnii
AA連投って普通に削除のちアク禁じゃなかったっけ
280名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 20:22:33 ID:GWShECxi
>>240-248
単発ID
281トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/03/12(月) 20:29:50 ID:5J5O1hXM
では投下致します
282水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/03/12(月) 20:33:44 ID:5J5O1hXM
 第29話『三人の距離』

 花山田の人脈で合コンをするために学園内の男子生徒の勧誘や他高の生徒まで声をかけるが
参加しようとする命知らずは存在していなかった。参加者はたった二人。
目的の相手側の女子もそれなりに男子生徒の数が集まらないと参加したいとは思わないだろう。
問題は、花山田忠夫が若気の至りで暴走するのを俺だけでは止めることができないと彼女たちの
賢明な判断により、今回の合コンは中止になりつつあるのであった。

 天草月の野望はあっけなく潰えてしまっていた。
 
 センター試験に落ちた受験生が重い足腰で顔を真っ青に力なく自宅に帰ろうとする俺と花山田の前に
商店街で買物をしていた冬子さんとたまたま遭遇した。
この人と出会うと刑事ドラマ並の事件の遭遇率があり、俺は大抵巻き込まれてしまうわけだが。
 その冬子さんはそんな生気のない二人を心配して優しい声をかけた。
「どうしたんですか? 二人とも元気がありませんね」
「な、なんでもありませんよ」
「そうです。どうかしたんです。月のおばさんっっ!!」

 その瞬間に見えざる手刀が花山田の後頭部に物凄い速さで炸裂した。
手加減なしの必殺の一撃を受けるとさすがの不死身の彼も音もなく倒れていった。
主婦なのにどこぞの特殊部隊の技能と能力を掛け合わせた人間離れしている冬子さんを俺は怯えた瞳で見つめた。
女性を傷つける言葉は絶対に禁句だと思いながら、冬子さんは冷笑を浮かべて、優しい声で俺に尋ねてくる。

「で、一体どうしたんですか? 月さん」
 襲いかかってくる重圧に俺は残念ながら耐えることができない。ここで素直に白状していたら、痛い目に遭うことはないと思うのだが。

「恋人を作るために合コンを開こうかなぁと思ったんですけど。何か皆は都合が悪くて人が全然集まらなくて……
中学校の知り合いにも声をかけたんですが。思っていた以上に人が集まらないんです」
「それはとても残念ですね。できれば、私も後五才ぐらい若ければ合コンに参加できたんですけど」
「いや、しなくていいっ!!」

 いくら童顔だからと言って、年齢不詳の分際で合コンに参加するのは正直に痛い。
実際に今の年齢のまま合コンに参加しても男子生徒を誘惑(脅迫と恫喝と恐喝)するのは容易に違いないだろう。

「うっ……そんな強調してツッコミを入れなくても」
「何となくです」
 がくんと落ち込んでしまった冬子さんはその場に座り込んで『の』の字をアスファルトの地面にひたすら書いていた。
そんなに合コンに参加したかったのかよ。
 だが、数秒後に何かを思いついたのか、どこからか人のやる気を下げるような鈍い効果音が鳴り、冬子さんは瞳を輝かせて立ち上がった。

「ホームパーティーをしましょう!!」
「はい?」
「虹葉ちゃんと紗桜ちゃんと月さんと私でホームパーティをするんです。そうすれば、ヤンデレ症候群関連の報道に
飽きて退屈だった私の気晴らしになるかもしれません。うん。私なんていいアイデアを提案しましたね」
「俺は恋人を作るために合コンという出会いの広場にですね……」
「やります。やらなきゃ、月さんの遺産は私が勝手に使い込みますよ。それでいいなら、北極や南極や魔界でも行ってくださいね」

 そのホームパーティの資金が俺の両親が俺のために残した大切な遺産を
勝手に横領して使われてそうなのは俺の気のせいだろうか。
冬子さんの壮絶なる脅しタネのおかげで事態はややこしい方向へと走りだした。

「じゃあ……。先に帰って、虹葉さんと紗桜ちゃんに教えなきゃ」

 年齢不祥の冬子さんが嬉しそうにスキップで水澄家に向かう。
俺は茫然と立ち尽くしながら、今年のクリスマスに恋人と過ごす他の方法をまた改めて考える必要がありそうだ。
 俺は冬子さんによって倒されてしまった花山田を当然のように放置して、水澄家の方向に向かって、できるだけゆっくりと歩きだした。
283水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/03/12(月) 20:36:39 ID:5J5O1hXM
 水澄家に帰宅するとドアの前に天使の笑顔を浮かべた虹葉姉と紗桜が俺の帰りを待っていた。
脳裏に嫌な予感がよぎるが、俺は何とか平静を保っていた。

「もう、月君ったら。冬子さんからちゃんと聞いたよ。本当は私達と一緒にパーティするのが楽しみで楽しみでたまらないって。嬉しいよ」
「兄さんったら。本当に私達がいないとダメなんですね。もう、仕方ありませんね。えへへ」

 納豆ダイエットの並の捏造事件が現在進行中に行なわれているが、
その捏造した人物を問い詰めたり記者会見で罵声を浴びたりする気もなくて、いつものように嘆息するしかできない。
自宅の玄関で俺は靴を脱ぐと虹葉姉と紗桜が俺の両腕に絡まってきて、リビングにまで連行される。
 リビングには冬子さんがソファーに座ってまたまた液晶テレビで何かを鑑賞しているようだが、
俺は悪い予感がするのでその中身には一切触れないでおこう。
 そっちに気を向ける余裕が俺にはなかった。

「お姉ちゃんねぇ。盗聴器で月君が花山田君と合コンを企画するって聞いたときは、
今日家に帰ったらどんなことをしてでも説得しなくちゃいけないって思ってた。
だって、他の女の子たちと一緒に喋ったり遊んだりするのよ。そんな、とても不潔だよ」

「むしろ、俺は弟に盗聴器でプライベートの会話を聞いていた事をとことん問い詰めたいんですが」
「盗聴器は女の子の必須品ですからいいんです!!」
 よくねぇよ。犯罪だろっ……。
「でもね。冬子さんが月君の奢りでホームパーティを開くんだって聞いた時ねぇ。
月君はどうでもいい赤の他人の女の子よりも家族である私達を選んでくれたんだ。嬉しいよ」
「いやいや、待て。虹葉姉。それは誤解の誤解の誤解だ」

 全ては合コンに参加できない年齢不祥女の嫉みと嫉妬と嫌がらせに思いついた企画であって、
俺がクリスマスまでに恋人を作る宣言を撤回したとは一言も言っていない。
と、高らかに説明したかったが、虹葉姉の潤んでいる瞳を見てしまうと何も言わない。

「もう、兄さんったら。恥ずかしがり屋さんなんですから」
 紗桜が俺の隣にやって来て嬉しそうに腕を組む。その時に柔らかい感触が感じてしまうが、今の俺は幸せの味に浸っている場合ではないのだ。
恐ろしい肉食の猛獣である虎と狼の手からいい加減に逃れたいと思っているというのに。
「むぅ……紗桜ちゃん。ちょっと月君にべったりとくっつきすぎじゃないのかな?」
「お姉ちゃん。大好きなお兄ちゃんに甘えるのは妹の特権ですよ。
腕を組むぐらいで、人を石化するような睨んだ視線で見つめないでください」
「そ、そんなことしてないもん」
「いいえ。していいました」

 仲が良かったはずの姉妹が今にもお互いが隠し持っている日本刀の鞘から真剣を抜き出して、
襲おうとする重い雰囲気が俺にまでしっかりと感じていた。
 これはただの姉妹の喧嘩ではない。そう、憎き相手をこの世から討滅させるぐらいの迫力がある。
284水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/03/12(月) 20:39:21 ID:5J5O1hXM
「だったら、そろそろ紗桜ちゃんは月君から離れないと苦しそうだよ」
「いいえ。そんなことないですよ。兄さんは心の奥深くでメチャクチャ喜んでますから」「にゃあぁぁ……」
「わんわん……」
 知らない内に険悪になっている虹葉姉と紗桜は睨み付けるような視線で何かをぶつかり合っていた。
「二人とも。もしかして、喧嘩とかしているのか」
 恐る恐ると俺は虹葉姉と紗桜に尋ねた。
「してないよっっっ!!」
 二人は息の呼吸がぴったりと合わせたように声をハモらせて言った。
二人とも何だか不機嫌な状態を隠せずにいられない。
ホームパーティをするんだと玄関で待っていた時はいつもの水澄姉妹だったが、紗桜が俺の腕を組んでしまった時から。
 そこからおかしくなったような……。
 まあいいか。
「さてと着替えるからホームパーティーの事は後で話そうな」
 俺は乱暴に紗桜が組んでいる腕を払って、早足で自分の部屋に向かう。
階段を昇ろうとするが後ろから虹葉姉と紗桜が捨てられた子犬と子猫の表情を浮かべて、後を追い掛けてくる。
俺は無視して部屋に入ると制服の上着を脱いで、上半身が裸になっている状態にノータイムに部屋のドアを開かれた。
「うにゅ……」
「く〜ん」
「何で着替えるって言っているのに部屋に入ってくるかな」
 これで性別が逆だったら俺の黄色い声が隣の家に響き渡る悲鳴が聞こえているだろう。
上半身裸体の状態でいると姉妹の見つめている視線はそちらに向けられているのはわかっている。
全く、痴漢や覗きに遭う被害女性が犯人を刑事告訴する理由が少しだけわかるかもしれない。虹葉姉と紗桜に犯されているような感じがする。
「紗桜ちゃんが月君に甘えていた分だけお姉ちゃんも甘える権利はあると思うんです」
「あるか。そんなもん」
「私は兄さんに今度の期末テストでわからない箇所を教えてもらおうと来たんです」
「学年150位を常に彷徨っている俺と一年生で学年トップ10位の成績を保ち続けている紗桜に教えることがあるとでも」
 それに俺が着替えている最中に部屋を訪問する理由になっていないし。
「とりあえず、数秒以内に出ていってくれ。俺は公開ストリップショーをやる趣味はないんだけどな」
「お姉ちゃんは全然気にしてないから。どうぞ。着替えてよ」
「そうですよ。赤の他人の男性の着替え姿はともかく。兄さんは家族じゃないですか」
「その論法にちょっと無理があると思うが」
「月君って、しばらく見ないうちに体付きが立派になってきたよね。お姉ちゃんと最後にお風呂を入っていたのは
月君が小学生の高学年の時ですから。結構年数が経っているよ」
「わ、わた、私も兄さんにお風呂を入って。後ろから背中を流したことがあるもん」
「うにゅ……私も流してもらったことがあるもん」

「えいっ」
 この話題に危険な孕ませているので俺は虹葉姉と紗桜を騙させるために頭部に優しくチョップする。
「にゃあっ!」
「あぅっ……!」
「いい加減にしなさいっっ!! もういい加減に俺の部屋から出ていけ」
「うわっん。月君がお姉ちゃんに暴力を振るったよ」
「兄さん。そんな乱暴に追い出さないで」
 強制的に部屋を追い出すと俺は嘆息の息を吐いた。
虹葉姉と紗桜とは異性として認識しないように心の距離は離していた。
いや、そのつもりであったが。だが、二人が積極的に迫ってくるなら、俺は抑えていた理性が暴走してしまう恐れがある。
彼女たちは大切な家族であり、女の子であって女の子ではないもの。実の姉や妹に恋心を抱いて許されるのは

エロゲーやアニメやドラマや嫉妬スレで許される行為である。現実はそんなに甘くはない。
世間から俺と水澄姉妹の同居は奇異な視線で見られている。血の繋がらない男と年頃の女が共同生活を送っているのだ。
誰の目から見ても、いつ問題が起こってしまってもおかしくない状況だ。
保護者代理の冬子さんは俺と虹葉姉と紗桜がそういう関係になることを勧めているが、
俺は俺が大切にしている家族を自分の性欲のために築き上げていた家族の絆を壊したくはないのだ。
 それに。俺は誓ったのだ。
 おじさんやおばさんの墓の前で残された虹葉姉と紗桜を守っていく事を。
 二人の幸せを見守って行くのが俺の仕事だと。俺の幸せは後回しでいい。
 それが俺を引き取ってくれたおじさん夫婦の恩返しだ。

 だが。天草月よ。
 ・・・虹葉姉と紗桜の健気な想いを、お前は嬉しいと思わなかったのか?
285トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/03/12(月) 20:42:15 ID:5J5O1hXM
以上で第29話終了です

新作の方は頑張って書き上げていますが
2話分を書き終えたとこで原稿用紙54枚か
ここに投稿される日は果てしなく遠いですね
286名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 21:05:15 ID:dM76wiRh
GJ!
>>「盗聴器は女の子の必須品」
ンッン〜 名言だな これは
287名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 21:54:33 ID:psGqri4Z
>>285
GJ!!!!!!!!!!!!!1
どうせこの後には荒らしや日本語のおかしい人が来ると思いますが、
そんなものはスルーして、雑草魂で頑張って下さい!
288名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 22:00:25 ID:9AxzTSTb
なんでわざわざ煽るようなことかくんだ?
289トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/03/12(月) 23:51:53 ID:0B3Lc1d6
では投下致します

290雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2007/03/12(月) 23:54:08 ID:0B3Lc1d6
 第24話『静かな終焉』

 私こと雪桜志穂は桧山さんの事がとてもとても好きで好きでたまらないんです。
もう、彼の顔を見るだけで真っ白なご飯二杯は軽く小さな胃に入り込むことが出来ます。
初めての出会いは苛められた私を桧山さんが助けるというどこぞの恋愛小説のお約束な主人公のように登場して、
そこから私と桧山さんの交流が始まりました。
 始めは、桧山さんを私の苛めグループから狙われないために彼を拒否し離れて欲しいと思いました。
そんな、私の想いの裏腹に桧山さんはどんな時も傍に居ようとしてくれました。
誰もが殺人犯の娘だという理由で私を嫌悪し、無視して、何の理由もないのに暴力を振るっていたのに。
桧山さんだけは……違ったんです。私に人として大切な温もりをくれました。
 だからでしょうか?
 私は桧山さんにどんどんと惹かれていきました。
 男と女に友情はありえないというどこぞの名言通りに友情よりも桧山さんに愛情を持つようになりました。
彼を想うだけで胸の中はとても温かいです。
 でも、そんな日々は今日で終わりです。

 桧山さんのために猫耳コスプレ姿をして、大勢の生徒たちの前で告白してしまいました。
 桧山さんのことが好きです。大好きです。心からあなたことを愛してます。
 と。
 愛の告白は桧山さんの心には届かなかった。
 それも当然です。
 私は桧山さんにとっては大切な妹を無残に殺した殺人犯の娘なんですから。
私の存在を認識するだけで憎悪は私の方まで向けられます。それは今までの被害者と同じです。
私を憎き父親と同視されて嫌われる。これまでと何も変わらない事。

 でも。でも。

 桧山さんには嫌われたくないよぉ。ねぇ。どうして?
 妹さんの事と私は何の関係もないんだよぉ。桧山さんは何のために私に優しくしたんですか? 
その優しさはいつも孤独だった私にとっては猛毒ですよ。その禁断の果実の味を知ってしまったら、常に求めてしまうんだから。
悲しい時は桧山さんの差し出される温もりが欲しくなる。寂しい時は桧山さんに一緒にいて欲しいと身勝手に思ってしまうから。

 だから、こんな現実は嘘なんです。

 桧山さんから憎まれて、告白しても桧山さんから嫌がられるなんてことは。
 桧山さんには東大寺瑠依という可愛い彼女さんが居て。二人ともお似合いなカップルです。
どうして、桧山さんの隣にわたしがいないんでしょうか?

 私の問いに答えてくれる人は誰もいません。

 きっと、これからも

 そして……。
291雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2007/03/12(月) 23:57:32 ID:0B3Lc1d6
「あなたの懺悔は終わりましたか? 雪桜志穂さん」
 天使の微笑を浮かべているのは、先程運悪く知り合った何の縁もない女性。
その彼女は私のこれまでの話をきちんと最初から最後まで聞いてくれました。今時、珍しいいい人です。
「はい。終わりました」
 桧山さんに愛の告白をして見事に振られてしまった私は公園のベンチで泣いていると彼女が何事かと声をかけてきたのがきっかけです。
何で泣いているのか理由を教えて欲しいと私に気遣う表情を浮かべてくれました。だから、話そうと思いました。
 桧山さんと私のことを。
「その桧山さんって人は貴女を憎んでいるの?」
「わかりません。ただ、私が殺人犯の娘だとわかると避けるようになりました」
 あの氷のような冷たい瞳で睨まれるだけで私は桧山さんが徹底的に雪桜志穂という個人の存在を嫌っていると思いました。
いつもは優しそうに微笑んで隣に居てくれようとするのに。
「この際は貴女の父親が殺人犯ということは置いておきましょう。世間の皆様が殺された被害者の遺族の方々から向けられるのは……
確かな雪桜志穂に対する憎悪なのです。
 人は誰かを憎むことで自分に起きた悲しみを忘れようとする。誰かを失った悲しみを癒すためには適度な時間が過ぎ去る事。
そして、抑圧された精神を解放するために第三者を標的にした哀れな山羊狩り」
「うにゃ……?」
「貴女が苛められている理由もそこに存在しています。被害者の遺族という立場を利用して悲劇の出来事を忘れようとする裏腹に
絶対的な弱者を追い詰めることで快楽を得ているのです。親が勝手に犯した罪を志穂さんが最初から最後まで背負う必要はない。
ましてや、誰からも嫌われる必要はないのです」
「あ、あの……あなたは一体誰なんですか?」
 饒舌な口調で語っている女性は私には全くわからない話をしている。
ただ、何者かわからない人に自分自身の生い立ちを話すことを私は少しだけ後悔した。
「もう、そんなに警戒しなくていいんですよ。少し社会的な話題になると不思議に喋り方がコロコロと変わってしまうだけなんですから。
 一応、名前を名乗っておきましょう。私は藤宮アリスと言います」
「アリス?」
「某有名な絵本の主人公とは無関係ですから」
「そ、そ、そうですよね?」
 藤宮アリスさんが冗談じみたことを言ってくれたおかげで私は警戒心をあっさりと解きました。
真面目な話になると少し口調が変わる以外は変哲な所は見当らない。
それに泣いていた私の話を真剣に聞いて、自分の考えが及ばなかった事も言葉にしてくれたアリスさんは悪い人じゃありません。

「で、話を元に戻しますけど。その桧山さんって人は志穂さんを痛め付けて快楽に浸っている私が最も嫌う最低人間じゃあないでしょうね?」
「い、いいえ。絶対に違います。桧山さんは私のことを憎んでいますけど。
私を傷つけたくないから……私から離れようとしたんです!!」
 これだけは間違えようのない事実です。桧山さんは私を気遣うために離れようとしていたんです。
あの東大寺瑠依が途中で現われさえしなければ、桧山さんの真意を確かめる術があったというのに。
「だったら、その桧山さんって人がどれだけ距離を離そうとしても志穂さんは何も恐れずに立ち向かって行きなさい。
女の子はどんな時でも『行動力』で相手を射止めるの!!」
「は、はいっ!! わ、わかりましたっっ!!」
 私はアリスさんの迫力に圧されて、勢いのままに返事をした。
不思議と誰かに応援されると心の中が暖かくなってゆく。
私はベンチから降りると蔓延なる笑顔を浮かべて、アリスさんに一礼する。感謝をたっぷりと込めて。
「じゃあ、桧山さんの所に行ってきます!!」

「頑張れ恋する女の子」

 手を振って見送るアリスさんに軽く手を振り返して、私は公園を立ち去った。




「志穂さんには、絶望と裏切りの日々を。彼には、安らかな死を」

 誰もが容赦なく運命に翻弄されることであろう。
292トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/03/13(火) 00:04:07 ID:OU3wkMEu
雪桜の舞う時に☆埋めネタから派生した
雪桜の舞う時に★没ネタをようやく投稿することができました

水澄の蒼い空の執筆に専念している間にこっちは書く暇がありませんでしたw
随分と長い間待たせて申し訳ありません。
とりあえず、新作の合間に少しずつ頑張って投稿しようと思います。
最終回までプロットネタを考えたんですが・・書いている時間はあるのであろうかw


ちなみにタイトルは全然変わっていません

最初は、雪桜の舞う時に 反逆の虎

と、考えていたのですが・・さすがにヤバイのでやめました。

とりあえず、通常のタイトルのままで『雪桜の舞う時に』でやっていこうと思います
それでは。


293名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 00:13:57 ID:SXJqHvzZ
投下しますよ
294『花束』五本目:2007/03/13(火) 00:15:19 ID:SXJqHvzZ
 電子音。
「イっちゃん、今日はどっち?」
「学食、お母さんもボクも寝坊しちゃってさ」
 目が覚めたら、ミズホとの待ち合わせの時間の十分前だった。お母さんが寝坊したのは
お父さんと張り切ったからだったらしい、何で良い年をして夜遅くまであんなことをして
いたのか分からない。そのせいで、声が聞こえてきたせいでボクも全然眠れなかったし、
それに、その、何だかエロい夢を見てしまった。うぁ、思い出すのも恥ずかしい。
 何故かミズホにちんこが生えていて、ボクはそれを突き立てられて喘いでいた。ビデオ
で見たのよりも、昔にお父さんのを見たよりも、事故で虎徹君のものを見てしまったとき
よりも、そのどれよりも生々しかった。実際には生えている筈なんてないのにミズホのは
とても自然に見えて、朝に思わず確かめたくなった程だった。実際やる気は無いし、元々
そんな度胸も無いけれど、でも夢を見たってことは少しだけ興味があるかもしれない。
「どうしたの、イっちゃん。顔が赤いよ?」
「な、何でもないよ!?」
 夢の中に出てきたときのように至近距離で見つめられ、心臓が早鐘を打つ。ボクと違い
女の子らしい可愛い顔が、こんなにも近くにある。昨日はもっと凄いことをやっちゃった
訳だけど、慣れるもんじゃない。顔は熱く耳は燃えているように熱い。きっと茹でダコの
ようになっているんだろう。それなのに、顔とは逆に頭の中が真っ白になる。
「が、学食行こ!!」
 不思議そうにしているミズホの手を取り、駆け出した。
295『花束』五本目:2007/03/13(火) 00:16:16 ID:SXJqHvzZ
 それのお陰か分からないけれど、学食はまだ混んでいなかった。食券の自販機でミズホ
は葱トロ丼を、ボクはカツカレーを頼む。カロリー? 何ですかソレ、そんな単語はボク
初めて聞きました。それよりも見て下さいよ奥さん、この肉厚なカツが美味しそうでしょ、
噛んだ瞬間に大量のお汁が溢れてくるんです。それが特製のカレーと混ざって絶品のタレ
になり、また美味しく頂けるんです。
 なんて下らないことを考えながら、席を探す。出来れば人が少ない方が良い。男の子に
見られた場合カツカレーを豪快に貪る女子だと思われて敬遠の度合いが増してしまいそう
だし、女の子が居たら何だかキモいことになりそうな気がする。今日もボクの下駄箱の中
には大量のラブレターやお菓子が入っていたのだ。因みにそれは、別腹が満タンになる程
に美味しく頂きました。え? 二の腕? 脇腹? 何の話?
「イっちゃん、どこに……」
「センパァーイ!! ウェルカーム!!」
「イツキ君!! 早く来たまえ!!」
 声に振り向けば、サオリ先輩とチヨリちゃんが満面の笑みで手を振っていた。少し複雑
と言うか、公では表現し辛い性格の二人の周囲には人が少なかった。サオリ先輩もチヨリ
ちゃんも友達は少なくない筈だけど、今日は珍しく学食らしい。
「ミズホ」
「イっちゃん、どこに座る?」
「え?」
296『花束』五本目:2007/03/13(火) 00:18:01 ID:SXJqHvzZ
 どこに、と言われても座れる場所は少なくなってきている。元々広い学食だけど、それ
は生徒数が非常に多いからだ。食堂を埋め尽くす勢いで増してくる生徒数は、もう数える
のも無理な状態になっていた。それにここで無視をするのは、わざわざ席を取っておいて
くれているサオリ先輩やチヨリちゃんにも何だか悪い気がする。
 ミズホの手を取って歩き出すと、心の底から不満そうな顔をしながらも渋々着いてくる。
そして席に着くと、いきなり葱トロ丼を掻き込み始めた。いつもの穏やかで明るく可愛い
らしい姿とは架け離れた、飢えた野獣のような食べっぷりだった。
「ミズホ君、大丈夫かね? 早メシも芸の内だが、その、肥えるぞ?」
「良いんです」
 低く響く音をたてて、丼をテーブルに叩き付けるように置くとサオリ先輩を睨んだ。
「例えデブになっても、イっちゃんは私を愛してくれますから」
「そうなんですか!?」
 チヨリちゃんが驚いたような目で見てくる。どうしようかと思ったけれど、それは事実
なので頷いた。うぁ、恥ずかしい、カミングアウトって結構精神的に来るものがあるな。
教室で持った熱が蘇って、また耳が熱くなる。
 でも、すんなりと告白出来たのは、きっとミズホのお陰だと思う。虎徹君のことが頭に
浮かんだけれど、手紙を読んだときのような辛さが沸いてこない。それは吹っ切れたから
だと思うし、その吹っ切れた理由はミズホがボクを支えてくれたからだと思う。だから、
恥ずかしいけれど悪い気分にはならなかった。
297『花束』五本目:2007/03/13(火) 00:19:05 ID:SXJqHvzZ
「本当かね、イツキ君?」
「はい、その、ラヴです」
 途端に、周囲から黄色い叫びが聞こえてきた。見覚えのある女の子達、物好きにもボク
のファンクラブを結成した初期メンバーだった。ボクも同性愛者の仲間入りをしたと告白
してしまったのが悪かったのだろうか、何だかこちらを見る瞳がやけに輝いているような
気がする。これは人前で迂濶に話さない方が良かったかもしれない。
「分かった? だから、二人ともイっちゃんのことは諦めて」
「諦めませんよ」
 珍しく小さな声で、チヨリちゃんが呟いた。掌から落ちたスプーンがオムライスの皿に
落ちて、硬質な音を響かせる。しかしチヨリちゃんの声はその音よりも冷たく、硬い。
「諦めれる訳、無いですよ」
 俯いていた顔を上げる。
 目には焼けるような強い情念の炎が宿っていて、冷たかった声は呼応をするように熱を
帯びていた。綺麗な髪をまとめたポニーテールの先が小刻みに震える肩に合わせ、静かに
揺れている。昔に見たサクラちゃんの怒り方に、似ていると思った。胸の奥から吹き出る
炎に揺さぶられているような、静かだけど激情にまみれた状態だ。
「初恋、なんです。初恋は実らないとか言いますけど、そんな簡単な問題じゃないんです」
 その言葉の意味は、ボクもよく分かっている。虎徹君が彼女が出来たと手紙を寄越して
くれたとき、ボクは泣いた。泣きに泣いて、泣きまくった。一生に一度の大切なものなの
だから、それを無くしてしまうのは本当に辛いのだ。
298『花束』五本目:2007/03/13(火) 00:20:04 ID:SXJqHvzZ
 ミズホに視線を向けると、少し気不味そうな顔をしていた。ミズホはボクが初恋の相手
だと言っていたから、チヨリちゃんとは正反対の立場に居ることになる。初恋が実って、
ボクの隣に居る訳だから。だから何を言っても心が乗らないと分かっているから、こんな
顔をして黙っているのだろう。
「あのね、チヨリちゃん」
「分かってます、あたしは女なのに、センパイを好きになるのは変だって。でも、それは
ミズホ先輩も同じじゃないですか!! あたしの何処が駄目なんですか!? チビだから!? 
胸が小さいから!? 馬鹿だから!? 発言が下品だからですか!?」
 その辺りの自覚はあるんだ、と冷静な部分が嫌な考えをする。でも自覚があったという
ことは、きっとワザとやっていたんだろう。冗談だと思わせる為なのか、それともボクに
振られたときに少しでも楽になる為なのか、ボクはチヨリちゃんじゃないから分からない。
「そんなに、そんなにミズホ先輩が良いんですか!?」
「うん」
 チヨリちゃんには悪いけれど、ボクは頷いた。これは紛れもない事実。ボクが一番大変
なときに隣に居て慰めてくれた存在、それがミズホだった。ボクの初恋の話を聞いてて、
辛かった筈なのにボクを励ましてくれた。
 だから、その気持ちは裏切れない。
「ミズホ先輩、幼馴染みってだけで!!」
「うるさいわね、さっきから。イっちゃんは……」
「落ち着きたまえ」
 二人の声を打ち消すように、サオリ先輩が言った。
299ロボ ◆JypZpjo0ig :2007/03/13(火) 00:23:14 ID:SXJqHvzZ
今回はこれで終わりです

久し振りの『花束』でした
マイルドでコミカルな話にしようと思っていたのに、
何だか書いている内に修羅場になりました
いや、スレの主旨とは合ってるんでしょうが
300名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 00:23:35 ID:n9TrBmWE
穂x不
301名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 00:31:19 ID:3ozwlHRb
なんかトラ氏が現れたらロボ氏も現れるね
302名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 00:42:06 ID:j7lUojHF
たまたまかぶるだけだろ
ロボ氏は大体投下する時間帯が決まってるしさあ
下世話な勘ぐり気持ち悪いからやめようや

>>294
>事故で虎徹君のものを見てしまったとき
( ゚д゚)

( ゚д゚ )
303名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 00:43:43 ID:3ozwlHRb
いや、あえて合わせてやってるのかと
304赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/13(火) 01:05:58 ID:c0/bPUja
1-3。投下します。
305アンビエイト・ダンス1-3 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/13(火) 01:06:56 ID:c0/bPUja
 不覚です。私がこんな情けないコケかたをするとは。足を見ると、相変わらず金髪の女が私の足を掴んで離そうとしていませんでした。
 これでは直さまの後を追えません。女に向かって声を荒げます。
「邪魔です。離しなさい!」
「嫌だね!」
 先ほどの土下座のような勢いとはうってかわって、女は足をさらに強く握り締め、高圧的な目線で私を見据えています。
 そうやって足止めされている間に、直さまはどんどんと離れていっているのです。私は直さまが居なくなったので、足を大きく振り出して女を振り落とそうとします。地面へ女を叩きつけますがそれでも離しません。
「あたしを雇うと言うまで、絶対離さないよ!」
「雇いません!」
「じゃあ離してたまるか!」
 私は落とした警棒を掴みとると、女の首の下をめがけて振り落とします。ぴしりっと鋭い音がしました。
「離しなさい! 離せ!」
 ぴしりっぴしりっと川原土手に響く警棒の音。
 ダメージは届いているはずなのに、女は痛みを受けたような表情を一切作らず、必死な形相のまま私の足に喰らいついている。やっぱり、ここまで必死な女は危険だった。
「雇え! 雇ってさ!」
「くぅぅ…!!」
 何度も叩きますが、女は「雇え」という一点張り。
ふと気付きます。この現場を公安に見られたら私は正当防衛で済まされるのでしょうか。いや、済まされないですね。警棒しばきもやりすぎると人間を死に至らしめます。
 私は警棒を振る腕を止め、しゅるっと胸元に隠します。将来、直さまに前科持った妻が居るとなると後の障害に繋がりますものね。
「あたしを雇う気になったのかしら?」
 違う。こうなったら泣かぬなら泣かせてみようホトトギス。力づくで離さないのでしたら、離させてやりましょう。私は足をつかまれ倒れた体を大きく反らせます。
 てぃっと掛け声を上げて、私は体の伸びの力だけで立ち上がりました。ちょうど中学生体育の授業でもやったと思われます。ネックスプリングというやつです。
「うわっと」
 女は私の身体能力に慌てたように声を上げますが、手はゆるむことなく私の足に掴まれています。執念深い女です。
 私は女に足を引っ付けたまま、
「直さま!」
「きゃあっ」
 直さまの後を追って、全速力で走り出したのです。
「ちょ、ちょちょちょ! 無茶無茶無茶!!」
 ずりずりと引きずられている女は視界や意識から完全にシャットアウトします。女の叫び声など聞こえてきません。本当です。
 女一人分の体重が増えた足を動かして、トワトワ座の横を走り抜けます。ぼうぼうと雑草が生えた空き地を抜けて、住宅地の道路へとでてきました。
 ブロック塀が建ち並ぶ住宅街。アスファルトで舗装された道路。ここは直さまのお家から100メートル離れたところにある中流住宅街です。あたりを見渡しますが、直さまのお姿は見られません。
 もし私が犬ならば、直さまの芳醇な匂いをたどっていくことができるのに。私はとりあえず、あっちのほうに居ると見当つけて、また走り出します。
「直さまっ。直さまっ!」
 私はうわ言のように直さまのお名前を呼びながらお姿を探していました。
「ねぇ、あんた!」
 足から声が聞こえますが、無視です。聞こえません。聞こえていますが、聞こえていません。
「あんたは、あの子に仕える一番偉いメイドじゃないの?」
 察しがいい女も嫌いです。なるべく掴まれている右足を電信柱や壁にかするようにして私は直さまを探します。
「無視ぃ? ふふん、あたしはこれを離さないよ。と、いうよりあんた!」
 右を見て、左を見て、もしくは空!? 私は首をぐるぐる回します。
「あの子にはあたしが必要だってことに気付かないのかしら?」
 ぴくり。
 何故か。私は女のその言葉で、足を止めてしまいました。
 足元を睨みつけると……泥だらけで顔や腕は擦り傷、しかししっかりと私の足に腕を巻きつけた女が、にたぁと笑ってこちらを見ていました。
 何故笑う? 嫌悪感が湧きそうな笑い方に、私は思わず身じろぎしてしまいます。無視すればよいのに、私は聞き返してしまいました。
「……あなたが必要?」
「ふふん。そうよ。あの子は友達がいないんでしょ? じゃあ私がその友達になってあげるって言ってるの」
「直さまのお友達は私です」
「いや、あんたがどう思っているか知らないけど、あの子の言うとおり、あんたは友達じゃないわ。友達にもなれないわ」
「何故!」
306アンビエイト・ダンス1-3 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/13(火) 01:07:37 ID:c0/bPUja
「だってあなたの目は……迷子になった子供を捕まえて太らせて食べようとしている魔女の目と同じだもの」
 突然の威圧感。私を見据える女の目が鈍く光る。蛇のような目。じとりと私の額に汗が落ちた。
「そんなことありません……!」
「そんなわけない。私にはわかるわ。あなたは、あの子を大事そうにしながら、あの子のためといいながら……自分に都合の良くなるように育てているでしょう?」
「そんなこと……!」
「自覚はしているはずよ」
「くっ……」
 戯言だ! そんなのはただのくだらない戯言です! 私はそう言い切ろうとするが、言葉が出ない。口から出したい文章が、口元で止まってしまっている。
 ……この女はただの家出少女ではない。こんな日本の誰も居ない人通りの中、このような綺麗な身だしなみを残した外国人が倒れている時点で、警戒すべきだったのに……!
泥だらけの汚いダンボールの中で寝ていたような女に、私は今。心を見透かされる。
直さまに「友達ではない」と言い切られた自分。直さまが感情が高ぶった上での言葉ですが。その言葉の中には直さまの本音が滲み出ているのです。
 それを、今ここで接触したばかりの女に悟られた……?
「ふふふ」
 くっ、この女を蹴りたい。しかし、できない。
「そこで、私を雇ってみないかしら?」
「どうして、そこに話が行き着くのです」
「私なら、あなたと違ってあの子と友達になれるもの」
「……」
「私なら、あなたの思惑と関係なく、あの子と接することができるわ。あの子ともあなたとも初対面だから。ゼロだから。」
 ぺろりと女が唇を舐める。
「もし私を雇ってくれたら、私はメイドだけどあの子と同等の立場で接してあげるわ。あなたと違って」
 そう言って、女は目を細め、もう一度私を強くまるで挑発するように見据えました。自分の言葉に自信を持って言っている……そう感じ取ることができます。
 こいつは……、何者なのでしょうか。私がもう走り出さないと踏んだのか、女は私の足から腕を離します。私は女を置いて逃げ出すことはしませんでした。女は地面にはいつくばったまま、私ににたにたとした笑顔を向けます。
「……あなた、名前は?」
「お、いいわね。食いついてきたわね」
「……名前を言いなさい」
「そうね……。じゃあラッテで」
「じゃあ?」
「いろいろと複雑なの。別の名前でもあたしは構わないのよ。」
 女と私の視線が交錯します。
 素性か分からない女。しかし、私は秒針が数周回ったほどの数分の時間で、この女の本質を見抜かされました。
「……分かりました。では、ラッテ。あなたは直さまに忠誠を誓いますか?」
 私が他人にこの言葉を使うのは初めてです。メイドの誓い。
「ええ、誓うわよ」
 女はあっさりと頷きます。
「お給金はいっさい出しませんがよいのですか?」
「かまわないわ。最低限の食事と寝床で十分生きていけるわ」
「直さまのためなら命を投げ出す覚悟もおありですか?」
「あるわ。命なんていつ無くなってもいいもの」
「直さまのかけがえの無いお友達として、節度ある関係を保てますか?」
「やってやるわよ。もしできなかったらその時は捨ててくれてもいい」
「直さまのために……」
「ねぇあんた、友達って言うのは相手に尽くしてあげるだけじゃないのよ。私が直さまのために働くように、直さまも私のために行動してこそ……友達じゃない?」
「……それはメイドとして失格ですね」
「あら、ご主人様の寂しさを紛らわせてあげるのもメイドのお仕事では?」
「……ふん」
 私はラッテに向かって手を伸ばします。ラッテは差し出した私の手をじっと見つめました。
「なに?」
「掴みなさい」
「掴むとどうなるってわけ?」
 この女は私の口から『雇う』という言葉が出るまで、自分から動かないつもりのようです。空気をあえて読んで返答しない。確実なところまで上げる。
まったく、家出のクセに手代です。……ふん。まあ、いいでしょう。言ってあげましょう。
「先ほど言った条件を全てクリアできるなら……」
 一拍置いて、ラッテの瞳の奥の脳に伝えるように。
「あなたを雇いましょう」
「できるに決まっているわ」
 そう言うと、ラッテはすぐに私の手を掴みかかるように握りました。冷たい手でした。 私は倒れていたラッテを起こします。
307アンビエイト・ダンス1-3 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/13(火) 01:08:09 ID:c0/bPUja
 ラッテは引きずられ擦り切れた洋服をパッパッと手で払います。そんな様子を見ながら、私はこの女に最後の質問を放ちました。
「友達になれますか? 直さまと、直さまのお心をあなたが癒すことはできるのですか?」
「少なくとも、あんたよりかはできるわ」
 ……。生意気な口をききます。しかし、そうかもしれません。私は静かに口を開きました。
「あなたは今から私の部下です。上司である私をあんた呼ばわりすることは許しません」
「じゃあエリィでいいわね」
「呼び捨てですか……」
「エリィさん」
「……いいでしょう」
 この生意気な女は一度、その捻くれた性根を正してメイドとしての教えを教育する必要がありますね。私を呼び捨てしていいのは直さまだけです。
 直さまの見えないところでラッテにムチを振るう(二つの意味で)自分を想像して、私はすこし笑みがこぼれてしまいます。私の秘蔵の生皮ムチがついに3年の沈黙を破り封印がとかれる日が来るかもしれません……。
「なに笑ってんの?」
 自分のほくそ笑みを目ざとく見つけたラッテに、呆れたように言われ、私はいまだにたにた笑っているラッテをきつく睨みつけました。ラッテがおお怖いと言いたそうに肩をすくめました。
 思考が別の方向へ行っていましたが、私は頭を振ると最初の目的を思い出します。直さまです。
 この女のせいで時間を喰ってしまいました。もし遠くに行って迷子になっていたら……。責任はラッテにとってもらいます。それはもう残酷な方法でね。生皮ムチ。
「直さまをお探ししなければなりません。ラッテ、最初の仕事です。直さまを捜索しなさい」
「あの子なら家に帰ってるわ。家に案内してよ」
 何故断言できるのですか……?
「ふん。勘よ勘」
 そういってまたにたにたと笑うラッテに私は嫌悪感を覚えながらも、走り出す足は自らのお家へ向かっていました。

 悔しいですがラッテの勘は見事的中しました。
 直さまはご自分のお家の前で鍵が無くて入れなず、玄関の前で体育座りをして不貞腐れていました。
 私が慰めようと直さまに近づこうとすると、それよりも早くラッテが大きな声を出して直さまに駆け寄りました。

「おっす、直やん!」

 段ボール箱の中の時とは、まるで180度違う明るく友好的でなおかつ煌びやかな声。
 ラッテと直さまのお年は私よりも近く、まるで本当に仲の良い幼馴染のよう。
ラッテの物言いはメイドとはまったく違う上下関係の無いものでした。ずっと私のような忠実で実直なるメイドに囲まれた直さまにとって、家族以外で対等の立場で話してくださる他人というものはとても新鮮であったのでしょう。
 たちまち直さまの沈んでいたお顔に笑顔が戻ってきました。爽やかなで煌びやかで心の感情をすべて顔と言う窓から開放したような、素敵な笑顔。

 ……私がいままで見たことの無い、素直な笑顔……。

 私がいままで直さまに受けた笑顔はすべて、すべて感謝の笑顔でした。こんな自分にかまって奉仕してくれると言う、後ろ向きな感謝。ネガティブである喜び。
 私はその笑顔だけを見ていて、直さまの全てを知った気になっていたのですね。
その分、直さまが自分の情けなさに悩まされると言うのに……。直さまの本音を押さえつけている原因な筈なのに……。

 友達。

 住宅地のなにも変哲の無い玄関の前で、直さまとラッテの会話の花が咲き誇っていました。
 それを傍でじっと眺めながら、一人で自問します。
 私は、直さまの母親代わりであり、直さまの一番の忠実なるメイドである私は、そして、秘密の婚約者である私は、直さまの友達と言う立場にはなれないのでしょうか?

308アンビエイト・ダンス1-3 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/13(火) 01:09:56 ID:c0/bPUja


 そんなラッテも半年経った今はこの家を我が物顔で闊歩し、直さまに対しては常にタメ語。態度も極悪で面倒くさがり、あげくには上司である私を何度となく脅すという最悪な使用人になってしまいました。
 もともと、何不自由ない家庭で育ち家事もしたことが無い我侭少女だったのでしょう。地はきついものがあります。
 それ以前に。このラッテと言う女が一体どこの誰なのか。私も直さまも知りません。 それでも私はこのラッテと言う女を評価していました。メイドとしては落第生ですが、直さまの友達としては彼女はとても優秀でした。
 彼女は私に約束しました。友達以上の関係には絶対にならない。

 しかし。そんなの、いつでも破れる約束です。

 私は今、恐れていることがあります。
 彼女と私の間でかわされた約束なんて、所詮口約束。すぐにでも破棄してしまえる、所詮ちり紙ほど薄さの契約書。
 そのせいでしょうか。ラッテと楽しそうに喋る直さまを見ていると、私の心の中で直さまがラッテに恋をしてしまうという可能性をいつも考えてしまうのです。

 ですから、私は毎朝目を覚まし仕事を始めようとするラッテに、いつも脅しのような忠告をしていました。

「もし万が一、直さまに手を出したら、私はお前に対して、髪の毛を一本一本ゴムの糸で引き抜きながら、瞼を拘束し瞳には一切の瞬きを与えまず。同時に口からは煮え湯を注ぎ、
 体中には胸・腹・下腹部にいたるまで害虫の好きな腐乱食材を塗りたくり常に害虫を這わせ、耳元にはトランジスタラジオほどの音声クオリティのスピーカーでピアノ曲『ヴェクサシオン』を延々と流し、
 その状態のあなたの尻にフランスパンを挟み淹れ、左手にボクシンググローブをつけさせて右手の指は鼻の穴に差し込みます。
 そしてこのまま、秘密の聖地である木崎湖の船着場に放置しあなたが口で『命を大事に』と2万回言えるまで続ける罰を施行します。わかっていますね? ラッテ」

 私は若い芽を摘み取るほどの嫉妬深い女のようです。



(続く)
309赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/13(火) 01:10:49 ID:c0/bPUja
若干番外編風味ですが、アンビエイトダンス1-3でした。
次回で第一話は終わりです。

修羅場を愛する人同士、まったりといきましょう。
310名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 01:26:00 ID:btwi1Vl9
いつもの3バカの投下がきましたよw
311名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 01:35:24 ID:encblDl/
まさか木崎湖がくるとは……
GJ
312名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 01:40:41 ID:aw6BAVLY
このエリィ、容赦せん!!とでも言わんばかりに恐ろしぃ・・・

  そだ  |------、`⌒ー--、
  れが  |ハ{{ }} )))ヽ、l l ハ
  が   |、{ ハリノノノノノノ)、 l l
  い   |ヽヽー、彡彡ノノノ}  に
  い   |ヾヾヾヾヾヽ彡彡}  や
  !!    /:.:.:.ヾヾヾヾヽ彡彡} l っ
\__/{ l ii | l|} ハ、ヾ} ミ彡ト
彡シ ,ェ、、、ヾ{{ヽ} l|l ィェ=リ、シ} |l
lミ{ ゙イシモ'テ、ミヽ}シィ=ラ'ァ、 }ミ}} l
ヾミ    ̄~'ィ''': |゙:ー. ̄   lノ/l | |
ヾヾ   "  : : !、  `  lイノ l| |
 >l゙、    ー、,'ソ     /.|}、 l| |
:.lヽ ヽ   ー_ ‐-‐ァ'  /::ノl ト、
:.:.:.:\ヽ     二"  /::// /:.:.l:.:.
:.:.:.:.:.::ヽ:\     /::://:.:,':.:..:l:.:.
;.;.;.;.;;.:.:.:.\`ー-- '" //:.:.:;l:.:.:.:l:.:


GJ!
313名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 01:54:34 ID:FToPy3+h
GJ
314名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 01:56:03 ID:KVMhR7tI
GJ
315名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 01:56:57 ID:yq9r0YNR
gj
316名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 03:24:03 ID:/Cx28Djl
職人の皆様GJ&乙です。

>>309
エリィは怖いけど、何かコミカルでいいな。
個人的にメイド物ってあまり好きじゃないんだけど
これは好きになれそうだ。
317名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 06:50:50 ID:OTEU6Pj4
グルグル吹いた
318名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 10:19:48 ID:2QCzuMqu
gj
319名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 10:21:19 ID:0DuBnrH5
gj
320名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 11:36:31 ID:j8PQLckp
□□□□□□□□□□□□□□□□
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□□□□□□□□□□□□□□□□
321名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 12:54:18 ID:tTD4jSpc
>>292
とりあえず、雪桜さんは俺が貰っていきますねw
322名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 13:54:19 ID:2dCVCQ+E
>>gj
323名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 14:01:59 ID:ueCCETmO
GJ
324名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 14:08:29 ID:V8f9zwei
GJ!
325名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 15:44:44 ID:j8PQLckp
>>321
残念それは雪風だ
326名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 16:03:01 ID:yKN7+mgX
ならば、いたり先輩に監禁されるてくる
327名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 16:15:40 ID:1AdoVCLQ
ネタキモイからやめたほうが良いと思う
328名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 16:55:10 ID:Bdc7x62D
まあ、そういわない。んなこと言えば嫉妬・修羅場で大興奮する俺らなんか確実にキモイんだぜ。
だからといってやめる気が毛頭ないんだが……とにかく、GJ!!
329名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 17:07:24 ID:j7lUojHF
雑談に繋がってgdgdになるから控えた方がいいよ、やっぱり
330 ◆DxKRIZG..E :2007/03/13(火) 17:32:10 ID:gf2hRk2z
投下します。1話完結ネタです。
グロい描写があるので注意してください。
331かすかな彼女:2007/03/13(火) 17:33:07 ID:gf2hRk2z
誰にもできない。
香素花(かすか)と俺の仲を裂くことは。


「好きです……私、ずっと先輩のことが好きでしたっ!
 私と付き合ってください!」
大切な話があるから屋上に来て欲しいというベタな手紙をもらったときに、
こうなるかもしれないと予想していたけど。
待っていた紫乃(しの)ゆかりちゃんの顔を見たときに確信したけれど。
俺の返事は決まりきっている。ずっと前から。香素花(かすか)と身体を重ねたときから。
「悪いけど、俺は君とは付き合えないよ、ごめん」
申し訳なさそうに言ったが、胸中はひどく冷めている。
俺が香素花と一緒にいることは、始終つきまとっているこの娘ならわかっていたはずだ。
「それはやはり……香素花さんを想っているからですか?」
「当たり前だろ。大体、俺が香素花と別れて君と付き合って、君は本当に満足するのかい?
 誰か別の女に告白されたからって、ほいほい乗り換える男は誠実じゃないし、
 俺がそういう奴だったら、君と付き合ったとしても、また別の女に告白されたらそいつに
 乗り換えることも有り得るんだよ?」
まくし立てる俺から紫乃ゆかりは目を逸らして俯いている。
何かを耐え忍んでいるかの表情。少し言い過ぎてしまったか。
「とにかく、そういうわけだから。これからもう話しかけるな、とまでは言わない。
 だけど俺の方から声を掛けることは控えるよ。変に期待させる気はないから」
それだけ言うと俺は足早に屋上をあとにした。
332かすかな彼女:2007/03/13(火) 17:33:42 ID:gf2hRk2z
予想していたこととはいえ、できるだけ相手を傷つけずに事を済ませるのは骨が折れる。
やや早くなった鼓動を抑えながら階段を下り、人気の無い特別教室を探して入る。
そこで数分、気持ちを落ち着けたとき、唐突に彼女があらわれた。
「ねえ、あんな子は適当にあしらっておけば良かったんじゃないの?」
ひどく冷ややかな口調で言い切る香素花。
先ほどの屋上での会話を聞いていなければ出てこないはずの言葉だが、
俺に関係する出来事の一部始終を香素花が知っていることは、もはや当たり前だ。
だから俺は驚くことなく返答する。
「八方美人を自認する俺としては、あれが精一杯だな。
 それに俺が香素花以外の女を受け入れるわけが無いだろう?
 まあ、もしさっき俺が少しでも気のある素振りを見せたら、香素花は割って入ってきただろうが」
「当然よ、そんなこと。大体、あなたが気を抜くからあんな奴に告白を許すのよ」
「香素花の基準で気を張っていたら俺はもたないよ。
 今でも十分に香素花を第1に行動しているつもりだが」
「だったらあいつはこれから無視して」
「あー、まあ、明日から向こうが話しかけてこなければいいなあ」
「違う! あなたが相手にしなければいいの!」
香素花のお決まりの説教を頭に入れながら、俺は教室へと戻っていった。


放課後になって帰り道。当然、香素花も一緒だ。
「今日はなんだか機嫌が良いね」
「当たり前じゃない。昨日まではあの紫乃紫とかいう回文じみた名前の女がいたのよ」
「ふーん、そうだったのか。何も喋らないから、わからなかったよ」
「あなたからあの女を追い払うのを待っていたの。
 あたしのアイコンタクトが通じなかったようね」
香素花が珍しく冗談を言う。
「面白いね、それは。俺に通じていたら超能力だよ」
「愛のテレパシーは通じるのにね」
「ああ、それはそうだな」
こうして香素花といる日常。ささやかだが幸せなことだ。
333かすかな彼女:2007/03/13(火) 17:34:17 ID:gf2hRk2z
翌日、俺がいつものように香素花と会話をしながら登校していると、
途中の交差点で声をかけられた。
「おはようございます、先輩」
俺に好意を寄せているという紫乃ゆかり。
昨日、屋上で俺が拒絶したときの表情を微塵も見せてない笑顔。
「ああ、おはよう」
ついさっきまで饒舌に話していた香素花が途端に押し黙る。
仕方がないか。香素花と話すためにはゆかりちゃんを無視しなければならないし、
ゆかりちゃんと話すと香素花の相手ができなくなる。
後からまた香素花に怒られるだろうが。
俺はなんとなく手で転がしていたケータイをしまう。
「あの……ごめんなさい。先輩は香素花さんと話していたんですよね……?」
上目で気をつかい、訊いてくる。
「うん、そう。あんまり君と話していると後から香素花に怒られるのは俺」
「そう、なんですか……。えっと……先輩は今日、病院に行かれるのですか?」
「なんで俺が病院に?」
「え、でも香素花さんはまだ具合が悪いんですよね?」
ああ、ゆかりちゃんは香素花が入院していた頃の事を知っているのか。
「香素花が病院にいたのは3週間前のことだよ。
 一時帰宅を許されて、それからはもう病院に行く必要がなくなったんだ」
「そう、だったんですか。その……香素花さんは大丈夫なのですか?
 いえ、ただ香素花さんが家出をして行不明だと聞いたので……」
ゆかりちゃんが『行方不明』と言ったとき、
「ちょっとアンタねえ! 勝手に人を失踪扱いしないでよ!
 あたしはちゃんとここにいるじゃないの!」
ついに堪らず香素花がゆかりちゃんに食って掛かった。
突然の出来事にゆかりちゃんは目を丸くし、周囲の通行人も訝しげにこっちを見てくる。
「まったくふざけるのもいい加減にしてよね、この泥棒猫!
 アンタは昨日とっくに振られたのよ。
 なのに今日も朝から尻尾を振りに来て、往生際が悪いったらないわ」
香素花の剣幕にゆかりちゃんは顔を蒼白にしつつある。
さすがに不味いと感じた俺は香素花を制止した。
「もういいだろ、その辺で。俺はゆかりちゃんのことは何とも思っていない。
 俺が好きなのは香素花だけだ。ゆかりちゃん、君もわかっただろう?
 俺と香素花の間には誰も割り込めないんだ」
すっかり言葉を失っているゆかりちゃんを置き去りにしていく。
俺は香素花の機嫌をなおすように弁明しながら登校するはめになった。
334かすかな彼女:2007/03/13(火) 17:34:48 ID:gf2hRk2z
朝の一件が尾を引き、放課後になっても香素花の機嫌が悪いままだった。
このままではまずいと思い、帰り道で俺はどうにか香素花をなだめようとする。
「なあ、香素花。いい加減、機嫌をなおしてくれよ。
 もうゆかりちゃんが話しかけてくることはないと思うんだ」
「あら、機嫌ならもうとっくに元通りよ。
 だけど今日は帰ったら、いつもの調教メニューをするからね」
「げっ、またあれをやるのか。くそう、この季節は少しきついぜ」
「あなたに拒否権は無いの。嫌なら私と別れてあの子の元へ向かう?」
「ったく、仕方ねえな。わかったよ、2時間だけだぜ」
「ええ、たっぷり私を気持ちよくしてね」
今日は帰ってから『あのメニュー』をこなすことが決まったそのとき、
背後から俺を呼ぶ後輩がいた。
「待ってください! 先輩」
ああ……、せっかく香素花の機嫌がなおったのに、どうしてまだ俺に関わろうとするのか。
無口になった香素花だが、胸中はゆかりちゃんへの憎悪で満ちているに違いない。
「君もしつこいね。また香素花に怒鳴られたいの?
 今にも君を襲いたがっているよ」
「先輩、病院に行きましょう」
「は? 何を急に言うんだ。朝も言っただろ、香素花はもう病院に行く必要はないんだ」
俺もいい加減にうんざりしてきているが、
ゆかりちゃんはいつになく必死な顔で俺の袖を引っ張ってくる。
「ダメです。すぐに行かないと先輩の人生が手遅れになってしまいます!」
ぐいぐいと俺の身体にゆかりちゃんが触れてきたとき、
堪忍袋の緒が切れたのか、香素花が出てきてゆかりちゃんの首を絞めつけた。
「アンタは今すぐここで死ぬ? 泥棒猫は夜の裏道でお尻を突き出していたらいいのよ。
 下郎からマワされる公衆便所がお似合いだわ」
ゆかりちゃんの顔が鬱血してきたところで、さすがに止める。
手が離れた首筋には、しっかりと赤い手形が残っていた。
ゲホゲホと空気を補給するゆかりちゃんの目には、絶望と恐怖の色。
「ゆかりちゃん。もうこれが最後の警告だと思いなよ。
 次に関わってきたときは、間違いなく香素花が君を殺す」
そう言うと、呼吸を調えたゆかりちゃんは嗚咽を漏らし始めた。
多少の罪悪感を抱くが仕方が無い。
俺が香素花と一緒にいることは、誰にも裂くことができないのだから。
「さあ、帰りましょう。『メニュー』は2倍にするわ」
「ああ、仕方ないな、それは」
ゆかりちゃんの乱入で香素花は朝よりも機嫌を損ねてしまっていた。
335かすかな彼女:2007/03/13(火) 17:37:21 ID:gf2hRk2z
香素花と一緒に自宅に帰り着き、部屋へと急ぐ。
ドアの施錠を確認するとカーテンを閉め、手袋をはめる。
「1週間ぶりね。まだ綺麗かしら、私」
「処置はきちんとしたんだ。大丈夫のはずだ」
押入れを開け、毛布で覆った特大のクーラーボックスを引きずり出す。
冷凍マグロが数匹は入るであろう特注品。
今も電源はコンセントに繋がれて稼動している。
香素花が病院から一時帰宅したときに密かに購入してきたものだ。
俺は慎重に金具を取り外してボックスの蓋を開ける。
中には裸の『香素花』が横たわっている。
心停止直後に血液を抜き取り、防腐剤を塗った香素花の顔は、
今もかたちを崩すことなく留まっている。
閉じていた瞼を開くと、濁った瞳の香素花が俺を見る。
香素花とこうしてアイコンタクトを交わすことで、
3週間前の記憶が鮮明に浮かび上がってくる。
不治の病に冒されて助かる見込みの無くなった香素花が、
この世に留まるために俺に行った最後の処置。
それが俺の中に香素花の人格を植えつけるということ。
全身の自由を奪われ、不眠不休の極限状態になった俺は、
耳元で繰り返し香素花の人生を聞かされながら、
目は香素花の身体の隅々まで見せられ、
鼻は香素花の全身の体臭で呼吸をし、
口は香素花の頭から足先までの味を覚え、
肌は香素花の感触においてのみ性的興奮を得るようになった。
「さあ、早く私を抱いて。今日は10回射精するまで許さないわ」
頭の中から香素花の命令が聞こえてくる。
だが香素花に言われるよりも前に俺は欲望の証をたぎらせ、
彼女の中へと進入を果たしていた。

香素花と俺はいつも一緒だ。これからも、ずっと。


          (了)


かすか……有るか無いかはっきりしない様子。『幽か』と表記。
336 ◆DxKRIZG..E :2007/03/13(火) 17:39:48 ID:gf2hRk2z
投下終了です。
337名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 17:39:52 ID:Gu3p9Oz9
なんか違う
338名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 17:42:13 ID:i0/jJAyJ
話としては面白い。とても面白い・・・が・・・・・
339名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 18:27:32 ID:1AdoVCLQ
嫉妬ではない
スレ違いとはっきりいってもいいと思うけど
340名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 18:37:44 ID:j7lUojHF
まあ内容どちらかというとヤンデレスレ向けだな
ともあれ、投下があるのはよいことだ
GJGJ!
341名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 18:56:36 ID:EbyZyv66
>>340
スレ違いの作品にGJはアレだろ。
342名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:00:08 ID:k8fIMq/X
明日はホワイトデー。
ホワイトデーが発端の話を書きたかったという事で投下します。
343両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/13(火) 19:02:59 ID:k8fIMq/X
「うぅ…寒ッ………」
 曇り空の下、独りきりの見慣れない土手の砂利をを踏みしめながら、正面から吹きつける冷たい風に身震いして思わず声を漏らす。
 いつもの通学路とは違う道だからかは分からないが周りには俺以外誰もいない、しかし今は独りになりたいという俺の心境からすれば、
 風の音だけが虚しく空回りしより一層寂寥感を沁み込ませているこの空気は非常に心地良い…というのは単なる強がりでしかない。
 …ふと横目で自分の左右を確認し、”望んだ姿”がそこにはいない事を理解して大袈裟に肩を落とす。
 肩を落とした事に関して人目を気にする必要がないという安心感と、人目がないとする意味がないだろという呆れた自覚が歪に頭の中で混ざり合った…
 その二つの感情が格闘する事寸秒、『援軍』の助けもあり後者によって前者は打ち消された。
 『援軍』というのは要は今俺は自分に呆れているという事だ…何故なら俺が”左右を確認した”というのは一度ではない、つまり自分で独りになる道を選んでおきながら独りだという事を認めたくなく、
 何度も何度もキョロキョロしているからだ。
 溜息混じりの吐息を溢しながら重い足取りで自宅までの帰路を歩んで行く。
 両手に持っているいかにも女の子が喜びそうな可愛らしい装飾の施された袋の存在が、それを渡せなかった自分への後悔の引き金になるが、不貞腐れた今の自分にはそれ程強く心に響かなかった。
「どうせフラレたよ、俺は………」
 そう呟きながらもその袋を土手のすぐ傍に細長く横たわっている川に捨て去る事が出来ない未練たらたらな自分に自己嫌悪を感じた。

 今思い起こせば明らかにおかしい事だった、そんな事に何で気付けなかったのかと自分の頭の悪さを呪った。
 何があったかというと、生まれてから交友関係にあるのは男友達だけで小学生の頃から続けている野球でも目立った活躍は出来ない、
 そんな極々普通な俺が今日から一ヶ月前の二月十四日、つまりバレンタインの日に学園一の美人であると目される佐藤早苗に男にとっては勝利者の証、『チョコ』を貰ったのだ。
 当然”チョコ貰ったない暦=年齢”尚且つ自分が平凡を絵に描いたような男だという自覚があった故、貰った当初は何かの悪戯かと疑ったが、
 家に帰って箱の中身を開けてみてだらしなく頬が緩んでしまった…そのチョコの中央には『To Singo Nakagawa』、つまり俺の名前が書かれていたのだ。
 箱の中身は冷やかしの手紙でも入っているのかと思っていた、心の隅では義理チョコである事を期待した、そんな俺の予想を二重にも飛び越えて本命チョコをもらえたという事実に俺は飛び上がりたくなる程喜んだ。
 その日は興奮と熱気に魘されて一睡も出来なかった。
 佐藤早苗とは面識がなかったが容姿端麗なその外見故彼女を知らない者はいない、当然俺も知っていた。
 その上同じクラスだった事もあって、毎日アイドルを見る時のような憧れに近い感情を宿した目線で彼女を見続けていた。
 若干茶味がかったショートヘアー、ガラス玉のように透き通った黒い瞳、どこにも文句の付けようのない整った顔立ち、何もかもが人を魅了するには足る、『人間美』という形容がぴったりな存在だった。
 そのあまりの美貌が眩し過ぎ、恋心を抱く事はなかったが時々目線が合った時なんかは顔を真っ赤にして喜んだ。
 そんな彼女からの告白とも取れる行為、それによって彼女が遠過ぎる存在から一気に自分の手の届く射程圏内の存在となり、柄にもなく淡い恋心を募らせた。
 それはそうだ、今まで女の子に興味を持った事は幾度となくあるがそれは全て自分とは違うという事への好奇心に近い感情であって、具体的に特定の一人の女の子を好きだと感じたのはこの時が初めてなのだ。
 だからこの恋を何としてでも成就する為に、俺は一ヵ月後のホワイトデーに”正式に”彼女に告白する事を決意した。
 皆無の経験と貧相な想像力を駆使して必死に当日何をお返ししようか考え、結局近くのデパートのホワイトデープレゼントコーナーとかいうところでわざわざ一番高いクッキーを購入した。
 本当は手作りな物を渡したかったが当然料理や刺繍なんて出来ない、そんな男からの出来損ないの品物を貰ったって喜ぶはずがない事は目に見えていたので最大の譲歩をした。
 ホワイトデー前日は告白に何を言おうかなとか雑念が頭の中を支配し、バレンタインの時のように一睡も出来なかった。
 意気揚々とクッキーを入れた子袋を大事に抱えながらうかれていたホワイトデー当日、俺はようやく自分の『勘違い』に気付いた。
344両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/13(火) 19:04:03 ID:k8fIMq/X
 最初は目を疑った、だって彼女がチョコを与えたのは俺だけのはず、だから彼女が今日『お返し』を受け取れるのは俺からだけのはず…なのに何で?
 もしかしたら普通にホワイトデーとか関係なしに物を貰っているだけなのかもしれないとも思った、
 彼女は当然男を始め女からも好かれるから別に物を貰うなんて日常茶飯事だ、一年近くクラスメートだった俺が言うんだから間違いない。
 しかし、彼女がそのクラスメートからの物を”当たり前のように”受け取っている様を見て、一気に気持ちが沈んだ。
 それは、彼女がそのクラスメートにもチョコを与えた、だからお返しがくるのは当然なんだという何よりの証明だった。
 そこでようやく理解した、彼女は、”佐藤早苗は俺に好意なんて欠片もない”という事を。
 きっとクラスが同じだったという些細な理由で渡したんだと思う、その行為が俺の恋心に火を点けたなんて事知る由もなく。
 俺が呆然としている中他のクラスメートも寄って掛かって彼女を取り囲み『お返し』を譲渡している、
 その光景を見て一ヶ月も彼女が俺の事を好きだと勘違いしていた事を恥ずかしく思い顔面が紅潮するのを感じ、同時にやり場のない怒りが込み上げた。
 それは明らかに不当な怒りだ、だって俺が勝手に勘違いして勝手に現実をつきつけられて傷付いているだけ、要は俺の一人相撲だった訳だ。
 だからこんな事思うのは悪い事なんだとは思いつつ、彼女が俺の事を見ていないのを確認して俺は思い切り彼女を扉の傍から睨みつけ、心の中で罵ってしまった、「”あんな事”されたら勘違いしちまうだろ」と。
 口には出せない臆病な自分の心を悟りそれが更に今の怒りに油を注いでしまったからなのだろうけど、俺はそのまま教室の扉を閉め学校を飛び出した。
 無我夢中で走った、耐え難い現実の重みを少しでも軽減したくて、直視したくない現実から逃げるように息を荒げながら走った。
 学生服の男が登校時間に学校側とは反対に逆走している、その不自然な光景に周りから奇異なものを見るような視線で見られているのが横目で確認出来たが全く気にならなかった。
 目的地もないまま息が切れるまで走り続けた。
 本当に夢中で走っていたからだろうが、普段とは違う見慣れない土手の麓に俺は立っていた。
 そこには人っ子一人いなく、その静寂が俺の心に沁み渡り、同時に非常な現実を再確認させるには十分過ぎる程の孤独感を突きつけてきた。
 こうして俺の初恋は俺の空回りで幕を閉じた。

 呆気なさ過ぎる俺の初恋に反して、視界に広がる土手は何にも遮られる事なく無駄に長い。
 その奔放さが羨ましく憎らしく、転がっている小石を微かな抵抗の意思として爪先で蹴飛ばした。
 こんな事しても虚しくなるだけなのに…つくづく自分の馬鹿さに呆れてしまう。
 それでもやはり見てしまう…何度も思い描いた光景、本当ならば今自分の隣には佐藤早苗がいて、お互いに楽しく語らう光景への望みを捨て切る事が出来ず。
 今日何度目か分からない溜息をつきながら、今度こそ決心を付けたい一心でもう一度川の方向を眺めてみる。
 どうせ捨てるなんて出来る訳ないと手に持っている袋を握り締めながら半ば諦め気味に視線を向けると、そこにはさっきまでの土手には確認出来なかった一つの『存在』があった。
 その姿はちっぽけなもので、目を瞑ろうと思えば”いなかった”事に出来る程微量なものだった、それでも俺が目を背ける事が出来なかったのはその『存在』から僅かに発せられる姿同様消え入りそうな程小さな嗚咽を聞いてしまったからだろう。
 今の状況を一言で表せば、”女の子が泣いている”。 
345名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:04:42 ID:xj/y+766
>>343
GJ
346両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/13(火) 19:04:48 ID:k8fIMq/X
 女の子だと分かったのは、今はその子が体育座りをしている為その長い黒髪が地面に接しているからだ。
 制服を着ている事から学生であると推測出来る。
 遠くからでも肩の震えが察知出来る、それ程彼女は悲嘆に頬を濡らしているのだろう。
 一瞬見過ごそうかと思ったが、俺と同じく学校をサボってまで悲しみに浸って目の前で泣かれている女の子を放っておける程俺は酷い人間ではないと思っている。
 それに彼女は慟哭している、俺は呆然としている、『仕方』こそ違えどお互い今悲しんでいるという共通点がある。
 同類意識とまではいかなくても彼女に興味を持つには十分過ぎる理由だ、それに話し掛ける際の自然な理由にもなる。
 少々キツい斜面を勢い良く下り降り、川に近い方にいる彼女へと獲物を狙う捕食者のように気付かれないよう近付いて行く。
 彼女の背に近付くにつれて、微かだった嘆声が現実味を帯びて俺に訴えかけるようにはっきりと聞こえてくる。
 それを聞いて微妙に声を掛ける事が憚れたが、どうせ後戻り出来ないし、何か罵られてももう嫌という程傷付いているので今更心が揺れるような事はないだろうと防衛線を張っておき、俺は彼女の肩を自分でも驚く程馴れ馴れしく叩いた。
「ひぇ!?」
「え!?す、すみませんっ!」
 驚かれるとは予想していたが、悲鳴に近い声から滲み出る驚き様に、思わず俺は彼女に頭を下げて謝った。
 頭を上げると首だけこちらへと振り向いている彼女の顔が眼前にあった。
 垂れ気味の瞳が、赤く染め上げられている頬が、今は涙でびちょびちょに濡れていた。
 それでも長い黒髪が全体的に整っている小顔全体を包容している様を見て、素直に可愛いと俺は思った。
 未だに虚ろな目線を向けながら状況を必死に整理しようとしているように見える彼女を直視しないように遠方へと目線を逸らせながら訊いた。
「泣いてるからつい………何かあったんですか?」
 俺の言葉の意味を理解したのか、視線を俺へと向ける彼女、相変わらずその表情には悲しみが露骨に沁み込んでいる。
 しかし表情とは相反し黒々と濡れている瞳は何かを媚びるように生き生きとしている。
 そんな瞳に俺が目も心も奪われる中、彼女が初めて俺に口を開いた。
「…聞いて、下さるんですか…?」
 疑問形だが明らかに聞いて欲しそうな口調だ。
 余計なお世話だよと拒絶される事を多少恐怖していたが、それはいらぬ心配だったようだ。
 悲しみに明け暮れている彼女を前にして当初の目的を達成出来る不謹慎事に不謹慎ながらも喜びながら、俺は彼女と目線を合わせるように座り込んだ。
「聞かせて下さい」
 その一言で、笑顔ではないが彼女の口元が僅かに柔らかく緩むのを感じた。
 数秒俯いた後、再び視線を俺の方に戻した彼女の目からは、既に涙は流れていなかった。
「ありがとうございます…」
 そう言うと彼女は俺と顔を合わせたまま目を泳がせていた。
 口元から微かに漏れる躊躇の意思を感じさせる声から、彼女がまだ勇気を振り絞りきれない事を悟った俺はそれを後押しする。
「安心して下さい、聞いても馬鹿にしないし、話している間は何も言いませんから」
 勿論それは俺自身が彼女が”何について”悲しんでいるのか知りたい興味本位から出た言葉だが、同時に素直に彼女を可愛いと思い、そんな彼女を気遣いたいと思う下心とも取れる俺の本心の表れだ。
 そんな俺の言葉に救われたように初めて彼女は俺にぎこちない笑顔を向けてきた、無理をしている事が分かるから心の奥底で棘が刺さったような痛々しい感情を覚えた。
 俺の心中を察してか、彼女はとうとうその重い口を開いた。
「本当はこんな事無関係の方に話すのは失礼だとは思うんですけど………今日、私フラレたんですよ…」
347名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:05:20 ID:xj/y+766
>>344
GJ
348両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/13(火) 19:05:30 ID:k8fIMq/X
 もし”何も言わない”と彼女と約束していなかったら俺は速攻で驚きの声を張り上げていただろう。
 彼女は確かに言った、”フラレた”と………それは同じ、俺の悲しみの根源と全く同じだったから。
 驚く俺をよそに話を続けようとしている彼女を横目で見て、慌てて彼女の言葉に耳を傾ける。
「私、好きな男の人がいたんですよ。
 その人は私がマネージャーを務めている部活の同級生なんですけど、ドジで失敗ばかりする私に優しく微笑んでくれました。
 時々デートに誘ったりもしてくれましたし、…一度ですが、その………キ、キスもしてくれたんですよ。
 だから私、本当に恥ずかしいんですが…てっきり彼が私の事好きなんじゃないかと『勘違い』しちゃったんですよね、はは…。
 自分で言うのも変ですが引っ込み思案な性格でしたので、男の人とは遊ぶのは彼が初めてでして、だからこれが初恋だったんですよ…。
 初めてこんなにも異性を想う事の出来る悦びを知ったんですよ…。
 何とかこの恋を実らせたくて、とうとう一ヶ月前のバレンタインの日に告白したんです。
 わざわざ手作りまでして作って浮かれていたのに、渡した時面と向かうのが恥ずかしくて結論を今日まで先延ばししてもらったんです。
 当然了承してくれると信じていました、だから今日『付き合えない』ってはっきり言われて相当ショックを受けたんです…。
 キスまでしてくれたのに何故かって訊いたら、『キス位で勘違いするな』って怒られてしまって…。
 多分バレンタインの日に言われたならまだ良かったんですが、一ヶ月間ずっと彼との幸せな日々の事で頭が一杯だった分、現実を思い知った時のショックがかなり響いたというか………。
 もうどうしたらいいか分からず学校抜けてきちゃったんですよ………勝手に勘違いしといて、私馬鹿ですよね?
 話したら随分楽になりました、本当にありがとうございます。
 もう好きなだけ馬鹿にして下さい、そうでもしないと懲りないと思いますので………」
「…馬鹿じゃないですよ………」
「え?」
「全ッ然ッ!馬鹿なんかじゃないですよっ!!!」
 思わず彼女に向かって叫んだ叫び声が、静寂を切り裂いて土手に響き渡った。
 突然大声を出した俺に彼女は一瞬肩をビクつかせて、驚きを隠せない、隠そうともしない目線で俺の事を見上げてきた。
 でも叫んだ事に羞恥心もなければ欠片の後悔もない、叫びでもしなければ気が済まない。
 だって、細かい事を抜きにして考えると、彼女の置かれている立場は俺と全く同じなのだ。
 相手に好意を模したような態度を取られ、勘違い”させられ”、心を打ち砕かれた、同じ種類の傷を背負った者同士なのだ。
 彼女の話は自暴自棄に陥っていた俺を冷静に事態を客観視させるに至った、そして同時にさっきまで『不当』だと思っていた怒りが筋の通ったものだという事を気付かせる事にまで導いてくれた。
 今感じている彼女の悲劇に対しての怒りは、同時に俺の悲劇への怒りにも繋がるものなのだ。
 心の奥底で燻られていた本心を掘り起こしてくれた彼女に心から感謝し、俺は有りっ丈の思いをぶつけた。
「だってそうでしょ!?勘違いしたのは確かに俺たちの責任かもしれませんけど、するような態度を取ってきたのはあいつらですよ!?
 好意がないなら優しくしてくるなって話ですよ!そうすれば傷付く事もなかったのにっ!!!」
 息を荒げながら感情的になる自分を抑え切れずにいる、そんな俺を彼女が不思議そうな目線で見つめてくる。
 俺何かおかしな事言ったかなと自分の言葉を整理しようとした刹那、ひたすら俺の叫び声に圧倒させられていた彼女が俺に顔を近付けてきた。
 まじまじと見ると気恥ずかしくなり、思わず目を伏せた俺に彼女が言い放った。
「『あいつ”ら”』って…どういう事ですか?」
「あ…」
 俺は情けない声を漏らしてしまった。
349名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:06:01 ID:xj/y+766
>>346
GJ
350両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/13(火) 19:06:30 ID:k8fIMq/X
 一瞬誤魔化そうかと思ったが、彼女の真剣な眼差しが言うべきだと俺に決断させた。
 彼女になら、俺と同じ傷を抱えた彼女になら言っても恥ずかしくなんかない、そう思った。
「つまり、俺も似たようなもんっていうか…要は俺も今日フラレちまったんですよ。
 簡単に説明すると、バレンタインの日にある女の子からチョコ貰ったんですよ、俺。
 最初は悪戯かなと疑っていたんですが、そのチョコには俺の名前が綺麗な字で書かれていたんですよ。
 普通好きでもない人間に手作りで名前まで書いてチョコをあげると思いますか?
 だから俺その子が俺を好きなんじゃないかと思ってしまって、今日告白しようと思ったんですよ。
 でもその子は俺以外の人にもチョコ渡しているって事を知ってしまって………。
 そりゃ勘違いする俺も悪いですけど…」
「いえ」
「はい?」
「私は恋愛経験が浅いですけど、普通手作りしてまで渡すチョコは本命だってのが暗黙の了解ですよ。
 勘違い”させられ”るのが当然だと思います、あなたは何も悪くありません。根拠はありませんが絶対ですよ!」
 彼女の確固たる口調を前にして、俺は喜びに打ち震えていた。
 自分の”今までの”悲しみを理解し、共に癒し合える存在に俺は嬉しくなった。
 見てみると、彼女の顔には既に悲しみの色は見えなかった、多分俺の顔もこんな感じなんだと思った。
「すいません、あなたの話聞くはずだったのにいつの間に俺の愚痴になってしまって…」
「いえ、全然問題ありません。逆に感謝している位ですよ、同じ痛みを持った人がいるって分かって…」
 そう言うと、彼女はまた瞳を潤わせながら俺の事を伺うように横目で見つめてきた。
 その目は子犬が主人に媚びる時のような目で、でも全く不快感を感じないものだった。
 胸の鼓動が速くなるのを、思考回路がおかしくなるのを、心の中で何か熱いものが込み上げるのを感じながら、俺は自然な手つきでさっきまで握っていた事すら忘れていた袋を彼女の胸に押し付けた。
 俺が何をしたいのか分からない様子なので言ってやった。
「”これ”、あげます」
 そう言っても尚状況を呑み込めていないのは何故かと考えて、この袋の事を説明していない事に気付いた。
 本当に俺は馬鹿だなと呆れながら、目線を彼女の方から逸らす。
「本当は”その子”にあげる物だったんですよ、いや冷やかしって訳じゃありませんよ!?
 これは何というか…感謝の印です。あなたに会えて、柄にもなくうじうじしてたんですけど吹っ切る事が出来ました。
 だから、受け取って下さい!」
 俺が適当な想いで渡していると勘違いされないように慎重に言葉を選んで言ったつもりだ。
 いつの間にか寂しい場所だとは到底思えなくなった土手の中央で彼女からの反応を待つ事数秒、彼女は微笑んでくれた。
「ありがとうございます…!」
 その笑顔は決して取繕ったものではない、自然な笑顔。
 その笑顔を見て、俺の中の微妙な隙間に散らばっていた蟠りは完全に風化していった。
 言葉には出さなかったが、俺も心の中で何度も彼女にお礼を言った、今日彼女に会えて本当に良かった。
「あ、あの、私、佑子っていいます!お名前は?」
 顔を真っ赤にしながらそれでもしがみつくように俺から視線を外さない佑子さんの顔を直視し、俺まで赤面してしまう。
「な、仲川信悟っていいます!じゃっ!」
 その表情を悟られたくなくて俺は早口で伝えた後佑子さんに背を向け、一目散に走り去っていった。
 また走っている、でも朝の時とは違う、汗がこんなに爽快なものだなんて佑子さんと会わなかったら分からなかった。
 俺の心と同じく、暗雲垂れ込めていた空模様は既に太陽の照りつける快晴になっていた。
351名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:06:37 ID:xj/y+766
>>348
GJ
352両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/13(火) 19:07:16 ID:k8fIMq/X


          ―――――――――――――――――――――――――          

「仲川くん…」
 あぁ…何て心地良い響きなんでしょう…。
「仲川くん…仲川くん…仲川くん………」
 その名前を聞く度に、あの笑顔が脳裏に刻まれていきます…。
「仲川くん仲川くん仲川くん仲川くん仲川くん仲川くん仲川くん仲川くん仲川くん仲川くん」
 私はその名前を忘れないよう、何度も口ずさみました。

          ―――――――――――――――――――――――――          


353名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:07:22 ID:xj/y+766
>>350
GJ
354名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:08:02 ID:xj/y+766
>>352
GJ
355 ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/13(火) 19:08:07 ID:k8fIMq/X
投下終了、続きます。
356名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:08:32 ID:xj/y+766
とても面白い作品なのd
357名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:09:14 ID:xj/y+766
送信ミス
とても面白い作品なので興奮しました
358名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:23:53 ID:xj/y+766
◆kNPkZ2h.ro神の誕生ですね
359名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:27:45 ID:o1WKr3z4
話に割り込んでまでのGJ荒らしとは。恥さらしめ。
360名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:28:34 ID:gi1WgJ5O
負け犬同盟って感じでスタートしたな
好みかもしれない
361名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:31:02 ID:qdza+ijh
>>359
それだけツボにはまったんだろ
362名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:32:02 ID:wM/jAHNC
あぁ、俺ヤンデレ属性ないわw
363名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:33:45 ID:qXyspW3E
>>362
俺も無いんだよね
最近ヤンデレ系が多くて困る
364名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:34:51 ID:CEpL/XIW
何か荒らしが必死に自作自演しているのは気のせいか?

俺にはヤンデレ属性はない?
自分のメモ帳にも書いておけ
365名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:34:57 ID:i2mZSfta
作者自体もヤンデレスレにいっちまったしね
なんか過疎ってるね
366名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:36:53 ID:n6DfdhTQ
>>364
お前角煮でちらしの裏ってうるさい香具師だろ?
雑談ぐらいいいじゃん
367名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:39:18 ID:CEpL/XIW
>>364
雑談はいいがてめえの好みまではどうでもいいから
表に出すなよ・・
368名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:43:34 ID:jEr7c6XZ
357 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/13(火) 19:09:14 ID:xj/y+766
送信ミス
とても面白い作品なので興奮しまし


天然の嫉妬バカ晒しage
369名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:45:23 ID:CkJXo3JR
雑談が始まったら雑談ヤメロか
ワンパターンワロスwww
370名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:56:50 ID:iP+lJVVu
いい加減にタチの悪いアホは書き込むのはやめて欲しいもんだね
371名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:59:53 ID:y7lHiDzD
>>370
禿同
住人の質の低下はSSの質の低下につながる
372名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 20:16:31 ID:WcaWyq/d
量も低下するしな

帰ってきての楽しみが減るのは悲しい
373名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 20:17:59 ID:X7lQWh/f
>>355
GJ。アイデアはすごくおもしろいと思う。時期にも合うし。
でも、おもしろいからすごく注文を付けたくて仕方がない!聞いて!
なんかな、一文が長いんだ。それと、主人公の心理描写の部分と行動の部分の違いが分かりづらい。
句点じゃなく読点を使うべきところはきっちり読点を使うとか、
主人公が思っていることから行動するところに変わるところでは一行空白を空けるとか

このように。そうするともっと読みやすいんじゃないかと思う。
374名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 20:18:00 ID:60RkQ8GM
スルーを覚えようか
375名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 20:24:46 ID:kiEKIwzq
>>355
GJ

でも、ヒロインは相手の男にキスされているので
すでに寝取られている状態か・・

今時、キスされてそのままヤっちゃうのが主流だからな
376名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 20:25:51 ID://YrLMfD
>>373
俺も感じてた

作者様全員に言いたいのだけど制限ギリギリまで入れられると非常に見にくいので勘弁して欲しい
377名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 20:27:28 ID:4i4yRZ/G
一文の長さって、どれぐらいがいいのかな?

>>348
>俺何かおかしな事言ったかなと自分の言葉を整理しようとした刹那、ひたすら俺の叫び声に圧倒させられていた彼女が俺に顔を近付けてきた。
は、

>俺何かおかしな事言ったかなと自分の言葉を整理しようとした刹那、
ひたすら俺の叫び声に圧倒させられていた彼女が俺に顔を近付けてきた。

って改行したほうがいいのか?

それとも皆あんまり気にしないのか?
378名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 20:29:34 ID:kiEKIwzq
>>377

長文の場合は段落とかに気を遣わないといけないからね
読みやすくしようと思ったら、適度に切ることが大切だが・・

379名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 20:30:07 ID:o9BhovnM
>>355
GJ
380名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 20:40:19 ID:X7lQWh/f
>>377
そういう意味の長さもあるんだが、なんというか…。
こう、ブワーッと早口でまくしたてられてるような気がするんだよな。
もうちょっとブレスを挟んでくれないと聞き取れないっちゅーか…。
それだけ描写を丁寧に書こうとしてるってことでもあるんだろうけど。

ごめんね、俺もまともな文章書けるわけじゃないのにごめんね。
でもほら、これは愛の鞭だから!
381名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 20:48:59 ID:4i4yRZ/G
>>380
場面を変えるときや会話・行動の区切りとして改行を上手く使ってくれ。ということか。
まとめサイトで読み直すと読みやすいんだけど、スレ上で読みにくいっていうのはあるわな。


本来こういう話題はSS書きの控え室でやるもんだな。スレの皆、すまん。
382名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 21:33:22 ID:gi1WgJ5O
行自体の長さは専ブラだと大抵一行に収まってるから気にならんなあ
一文一文は適度に切るべし、っていうのは、文章のセオリーとしてよく聞くが
383名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 21:38:17 ID:Bdc7x62D
ま、そろそろこの辺にしないか?
あんまり、こういう話しが続くと新規参入の神も投降しにくくなるかもしれんし。
384名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 21:50:14 ID:j7lUojHF

>>3
385名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 21:51:44 ID:xrcMfhlA
ブラッティマリィってもう続きないの?
あれ個人的にすごい神な作品だけど・・・
386名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 22:15:07 ID:cjyP0USn
まぁSSスレだし書くなといってもある程度の(まともな)感想&批評があるのはしょうがないからね
あんまり意固地にテンプレとか言わないほうが逆に荒れないと・・・
それぐらいで居なくなる作者は長続きしないかな〜、なんて思ったり
387名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 22:41:07 ID:j7lUojHF
別にここはSS作家を育てるスレじゃないんだ
テンプレはその「長続きしない作家」を長続きさせるための配慮なわけで
批評批判はチラシの裏、っていうスタイルが20スレくらいまでは保たれていたから今まであまり荒れなかった
そういうバランスが崩れてきたから日本語くんが生まれ、自演が追随してきて今の状況
388名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 22:48:14 ID:j7lUojHF
だからどうってわけでもないけど
389名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 23:10:56 ID:ZzN4ONWP
じゃあ黙れよ
390名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 23:18:10 ID:nyflA4zk
しゃぶれだぁ?テメェがしゃぶれよ!
391名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 23:24:56 ID:37Q3En/0
ワロタwwwwwwwwwwwwwwww
392名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 23:31:36 ID:cjyP0USn
いや、つまんないよ
393名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 23:46:29 ID:6/TmJ73P
>>355
GJ!ちょっと読みずらいけどお話的にかなり期待してるのでがんばってくだされ!
>>375
キスで寝取られってどんだけ潔癖なんだよww
394名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 23:49:53 ID:kCn5d45+
>>355
読みにくさを無くせ、話はそれからだ
395名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 00:46:22 ID:KnRuOMjl
>>309
婚約者が来るのをwktkしながら待ってます
赤いパパ氏は書くのも速いのでいつも楽しみです

>>355
傷の舐めあいから発展していく感じがいい感じです
初めにチョコをくれた娘がどう絡んでいくのか、とても楽しみです
396名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 01:26:56 ID:ConynqHN
初めて投稿します。よろしくお願いします。
397名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 01:36:13 ID:ConynqHN
『スリップ、ストラップ、ラップ』
第一章『戦いの始まりのはじまり』



主人公は赤井守。教室で命はいった。
「キモ、なぜ同じストラップなの。ぶっ潰してやる」
だいじなものを壊されてはたまらない。せっかくなので彼女は逃げ出した!置いてけぼりにされた命は不安だと思った。どうしてぼくがこ

んな目に会うのか。本当は守のことが好きで好きでたまらないのに。ひとりで校門に立って待つ。
だが目の前から車が向かってきた。キキキーーーー!!!さて彼女はひかれたのだろうか。瞬間で走馬灯はこれまでの守との思い
出を初めから再生していたから、その時間は無限にながくなった。助けてきたのは生の手だ。



ライバルでもあるそれに助けられた命はからがら立ち上がった。どうしてぼくはここにいるのだろうか。そうだ!守と一緒に帰りたかった

からだ。でもっ子に来たのは、生。
「バカあいつをどこにやったのよこのチビ」
「知りません。ひどいと思います」命と生はライバル関係だと思っている。互いに殺しあう仲だ。勝ったら守を手に入れる。
憐れだと彼女は思う。わたしが手さきを間違わなければあの世に行けたのに。勝つのは私だ。それはどちらも思っている。
398名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 01:40:50 ID:ConynqHN
「あ、うわ、すげえ! 出るぞ、出る、あああ!!」
ドクドクドク・・・・・・
「許さん。エロ本をみるな!」
守を見る生は地団太を蹴った。今すぐ部屋に入って守るの珍棒を差し込みたいと思う。だがまだ早い。結構の日はすぐに来る。






好きなのすきなのスキナノすきなの。殺したいころしてやるコロシテヤルーーーー!ベッドでもだえた生は自分の下に手をいじりながらし

ていた。
オナニーをはじめてからずっと考えている。バーナーを準備していつでも燃やせるようにし、これをもってあはははははアハ、アハ、アハ

。一緒になろう。でもだめだ。あいつを殺して死なせてバラバラにしたい。これをして全てが終わり、はじまる。そのときが私の生の瞬間

だ。
399名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 01:40:52 ID:Af+rjaeO
せめてさげてよ・・・
しかしプロットか?
400名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 01:42:13 ID:xoaOVkkb
>398
ageんな
明らかに荒らしじゃねーか
401名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 01:43:49 ID:xoaOVkkb
>>398
つうかヤンデレスレに池、いや本気で
あそこならその破綻した文章も「病んでるw」って喜んでもらえるゾ?
402名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 01:57:12 ID:ConynqHN

守るは異界から与えられた特殊技術をもっている。だがまだ覚醒していないので、自分自身でも気付いていない。命は見抜いていたのでど

うしても守の力が欲しい。なぜなら命は同じ異界からやってきたからだった。邪魔ものは生だ。そのことは一目で理解していたので、お互

いにライバルとしてちかっていたのだ。余裕である。命ごときに止められるものではない。
そして夜はすぎようとしていたのだった。
403名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 02:07:40 ID:ConynqHN
sage忘れてすみませんでした。まだ序盤ですが頑張って最後まで書こうと思います。
それから>>2に書いてあることをするのはやめましょう。
スレを荒らしているのはあなた達です。
404名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 02:40:19 ID:IP06W82s
阿修羅氏
まとめ更新乙です。
自分のテキトーな埋めまでまとめてくださって…ありがたいです。
405名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 02:42:19 ID:9l7SaNz6
>>403が言ってることは間違っちゃいないかもしれんがムカつくのはなぜだろうな・・・
406名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 02:45:39 ID:g4tajja6
日本語から勉強してこい。マジで
これなら今話題の携帯小説の方がマシだ

つーか日本語くんの新しい荒らしの手だと言われても違和感ない
407名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 02:53:55 ID:hjLmm2n6
>>406
いや、普通に荒らしでしょ。
408名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 03:14:41 ID:9/7CDRyP
先生…日本語で書かれたSSが読みたいです…
409雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/14(水) 04:52:46 ID:clUT3GHX
投下します
410雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/14(水) 04:53:32 ID:clUT3GHX
 雨の音  第三回

 響が屋敷に来てから一週間がたった。
響の体には、無数の痣があった。
それらは全て、シオンが付けたものだった。

 まだ痛む傷跡に触れないように気をつけながら、パジャマから
普段着に着替えると、響はバイオリンケースを手に取り、部屋から出た。

 今朝もまた、シヲンに叩かれた。
何故ぶたれたかは解らなかった。色々とシヲンは言っていたが、結局は響を痛めつける事が
好きなだけなんだろう。
 それだけでなく、今日は朝御飯も抜かれた。

気分はサイアクだったが、バイオリンの練習は日課だったし、こんな時こそ、
バイオリンを弾く事で気分を紛らわせたかった。

 幸一から、離れにあるホールはいつでも使っていいと言われていたので、そこに向かおうと
思っていたが、庭を歩いている内に気分が変わった。 
 今日はぽかぽかと暖かく、久しぶりに春が近づいてきたことを実感できる日だ。
こんな日は、外で演奏したい。

 どこかいい場所は無いかな、そう思ってあたりをキョロキョロ見る。
すると、少し離れた所に日当たりの良さそうな、花壇に囲まれた大きな木があった。
あそこにしよう、そう思い、木の下に向うと―――――

 すでに、先客が気持ち良さそうに寝ていた。
 
411雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/14(水) 04:54:51 ID:clUT3GHX

 その先客は、メイド服を着ていた。
と、言う事は、この女の人はメイドさんなんだろうか。
だが、他のメイドさん達は皆忙しそうに働いていた。
……サボってるのかな、この人?
だったら、起こした方がイイのかなあ…

……けど、ホントに気持ち良さそうに寝ている。
起こしたら悪いな、そう思って、立ち去ろうとしたが、その拍子に落ちてた
枯れ枝を踏み、パキンッ!と音を立ててしまった。

「あああああっ!いえ、違うんです!サボってません!寝てません!
 決して、洗濯物干してる途中で陽気に誘われてお昼寝してる訳じゃあ…!!」
早口でまくし立てながら、そのメイドさんは起き上がった。
「そういう訳ですので、お給料カットはやめて…
 ……って、あれ?」
目の前に居るのが、同僚でも、清涼院家の人間でもない事に気が付き
怪訝そうな顔をするメイドさん。
「…ええと、君、誰?」
「…あ、はい、僕は、先週からこの屋敷でお世話になる事になった…」
そこまで響が言うと、
「ああ!聞いてる聞いてる!
 たしか、響君、だよね。
 私はね、このお屋敷でメイドやってる清華ちゃんって言うから。
 ヨロシクねー」
ポヤポヤした笑顔で、自己紹介する清華。

「ところで…ここに私が居た事、言っちゃあ嫌よ。
 OK?]
「…やっぱ、さやかさん、サボってたの?」
「シャラップ!
 ……ほら、これあげるからさ」
そういって、襟首から手を突っ込み、ごそごそと胸元をまさぐると、
そこからシュークリーム二つ取り出し、一つを響に渡した。
「あたしのおやつ。
 十時と三時に食べるつもりだったけど、あげる」

 美味しそうなシュークリームを見ると、急にお腹が減ってきた。
シヲンが朝御飯を食べさしてくれなかったので、起きてからまだ何も
食べていないのだ。
 貪るようにして、シュークリームを食べた。
 
412雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/14(水) 04:55:32 ID:clUT3GHX
 シュークリームを食べ終わり、清華にお礼を言う。
そして、手に付いたクリームを舐め、ハンカチで手を綺麗にし、バイオリンをケースから出す。
バイオリンを構え、呼吸を整え、いざ弾こう…

としても、清華からの視線が気になった。
「…そんなにじろじろ見ないでください」
少し照れながら、響が言った。
「いーじゃん、気にしないでよ」
「…働かなくて、いいの?」
「ばれなきゃいいのよ。 
 それに、観客が気になるようじゃあ、大成しないわよ。
 さ、早く弾いてよ。リクエストは、穏やかな曲で」
  
 どうせ、途中で寝るんじゃないか。そう思っていたが、清華は最後まで聴いてくれ、
さらには演奏が終わると拍手までしてくれた。
 
「ねえ、ヒビ君。君、明日もここで練習するの?」
スカートに付いた埃を払いながら、清華が尋ねた。
「んー。べつに、決めてないけど?」
バイオリンを仕舞いながら、響は答える。
「じゃあ、明日もここに来てよ。  
 また、バイオリン聴きたいな。
 そうだ。ちゃんとお菓子も用意しといたげるから」
 ニコニコとした笑顔で清華は響を見つめた。

明日も、木の下で会うことを約束して清華は仕事に戻っていった。


 
413雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/14(水) 04:58:25 ID:clUT3GHX
練習も終わり、庭を後にし、部屋に戻る。
自分の部屋に続く階段の途中、降りてきたシオンとばったり出会ってしまった。
シヲンは一瞬驚いた顔を見せ、ついで不機嫌な顔になった。
 嫌な予感がした響は、そ知らぬ顔で通り過ぎ様としたが、

 「まちなさい、ヒビキ」
薄く笑ったシヲンに呼び止められた。
 
 また、叩かれるのか。
ウンザリしながら振り返り、これから来る痛みに備えて響は身を硬くした。
 
 が、シヲンがとった行動は予想に反するものだった。
シオンは両手で響の頬を挟み、まるでキスをするかの様に、顔を近づけてきた。
 何をされているのか解らないまま、響が眼を白黒させていると、

ぺろ。
 
 響の唇の端にシヲンの舌があたる。

「…甘い……
 ねえ、何なのかしら、これ?」
舌の上に、白いものを付けたまま、シヲンが尋ねた。
シュークリームの中身だ。

「私言ったわよねえ?朝御飯抜きだって?
 それなのに何?何か食べたの?」
「…それは、その…」
「言いなさい!誰にもらったの!」

この様子では、自分だけでなく、さやかさんにまでとばっちりが行くかも。
響はだんまりを決め込んだ。
 反抗しなければ、すぐに飽きて、やり過ごせるだろう。

 だが、今回のいじめは異様にしつこかった。
何時も楽しみながら響を叩いていたが、今回は本気で怒っている様だった。
散々に叩き、爪で引っ掻き、響が座り込むとさらに足まで使って来た。
「言いなさい!誰にもらったの!
 今まで誰と居たの!」

これほど痛めつけても、響は何も言わない。
そのことがさらにシヲンをいらだたせる。
そもそも、響が自分の言いつけを守らなかった事が腹立たしい。
しかも今回は、誰かが勝手に響に餌を与えていた。
誰かが響に優しくしてやっている。
そのことが頭が熱くなるほどに気に食わなかった。
 
疲れるほどに響を叩いても、不快感は取れなかった。
ああ、そうか、と気づく。
この不快感は、ヒビキに餌を与えた奴にもぶつけてやらなくちゃいけないのね。
何処のどいつだろうか。うちの屋敷の者には間違いない。
いいわ。見つけてやる。
待ってなさい。
414雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/14(水) 04:59:44 ID:clUT3GHX
投下終わりです。
415名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 05:05:28 ID:FANeiU53
>>414
GJ!
微かに見え隠れする捩り曲がった独占欲が……実にいい。
416スリップ・ストラップ・ラップ:2007/03/14(水) 05:18:42 ID:ConynqHN
投下します。
417スリップ・ストラップ・ラップ:2007/03/14(水) 05:21:49 ID:ConynqHN
主人公の朝は日常であるが、毎日が特別だった。
なぜなら彼が守だったからだ。だから毎朝の心がけを忘れない。
彼にもそれくらいの力はあったのだから。
だがしかし遠くからみつめている瞳もまたある。
愛すべきもの、愛されるものは等しくこの地上にいる。
太陽と星がかなたにある限り。
「何だなんだナンダ今日はいつもと違う気がするぞ・・・?。」
ズゴーンと頭を撃ち抜いてくる視線。
気付いていなかったことには、そのがこそ秘めた能力が覚醒を開始したかもしれ

なかった。


生はチッと舌打ちをした。
どうして気付かれた!!!???
完璧に気配を殺していたはずだった。
人間であれば気付かないはずだ。不覚をとってしまった!
敵に気付かれた異常は、退散しなけれなばならない。
悔しい口惜しいきゃしいーーー!!!
血を流しながら、生は逃げたのだった。


「まさか、こんなに早く発せいするとは・・・。」
「驚いたな・・・。だがこれも、面白い・・・。」
影の中で話す男女。その姿を見たものはいない。
418スリップ・ストラップ・ラップ:2007/03/14(水) 05:24:18 ID:ConynqHN
覚醒に近付いた守は今日も疲れ果て、眠りについたのである。
「うん、あ、お早う守」と真顔で言う生
。だが守はまだ眠っていた。
「起きてよ、ペ○スしごくよ」と言って股間に手をあてる。
かちんかちんになっていたそこは、簡単に生の中に入った。
生は100センチメートルオーバーの縛乳を出している。
「ああん・あん・あ・あ・いい・気持ちいい」
そしてやがてオッパイを顔にあてて精液を出した。
ド、ド、ドピューー!!
「い、い、いくーーーーー!!」
ドピュードピューー!!!
電流が走ったような快楽をえた生は激しくいった。
生の蜜がまだペニスを締め付けて精液を吸いだそうとした。
夢精をしている守は眠って失神しているのだった。

で、さらに守は命からも同時に侵されている。
「ふん、私もイキたいのよ」
クチュクチュクッチュ・・・・
すぐに全裸になった彼女の胸は生よりもさらに上をいく超巨乳であった。
馬乗りになってパイズリをし、「ドクドクドク」と精液を搾る。
「ああん・もっと・飲みたい」
さらにきつく絞って男を立たせる。
「これで逝くわ」
ペニスを奥まで貫いて動かした。
「ドクドクドピュ〜〜!!」
命は笑いながら昇天したように見える。

快楽による二人の勝負はまだ終わらない。









419名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 05:28:11 ID:ConynqHN
投下しました。

和服美少女スレに書き込んだ人は、>>2の日本語が理解できないのですか?
これ以上、荒らすのはやめてください。
420名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 05:50:39 ID:KnRuOMjl
>>414
いいよいいよ〜!!
歪な独占欲をもっと発揮してほしいです
実は1話目からかなり期待していた作品なので
これからの展開にwktkがとまらない
421名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 06:20:08 ID:Yw0Vxh56
阿修羅さん、更新乙です

阿修羅さんとこがスパム攻撃にあっているらしいな
粘着ID荒しめ、遂に犯罪行為にまで手を染め始めたか・・・
422名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 06:36:33 ID:Mh4nddu+
>>414
GJ!
良い感じで嫉妬成分が出てきましたな。
これからの展開に期待大です。
423名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 07:14:25 ID:2/LGKRjl
>>355
いくつか指摘させてもらいます
>>それに彼女は慟哭している
慟哭は叫ぶ意味を含むのでそぐわないかと
>>彼女へと獲物を狙う捕食者のように
この表現は何か下心がある様な感じになる気が
>>何か罵られてももう嫌という
いいやの間違いかと

自分からは以上です、重箱の隅を突付く様ですいません
424名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 08:09:42 ID:rzLH3rsr
>>419

俺は日本語がおかしい粘着荒らしではないのだが・・
貴方は文章構成と内容がちょっとおかしいような気もする

この程度で文章力でトライデント氏とロボ氏を侮辱するとは
お前こそ日本語勉強しろと言いたくなる
425名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 09:22:14 ID:xoaOVkkb
>ConynqHN
また下がったらageるんだろ?
426名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 09:44:28 ID:RoHwrvRx
>>419
う〜ん、なんていうか・・・・・読みにくい。この一言に尽きる。
「」文はちゃんと改行したほうがいいと思うし、ドピューとかの変な擬音は使わないほうがいいと思う。
427名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 10:16:02 ID:jRQzkL46
>>419はどこかのSSのコピペか?
もしそうだったとしてもひどい内容だけど。
428名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 10:27:10 ID:fZ3Y9ZZ8


スルーするしかない。そうだろ。

429名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 11:10:34 ID:ZZ0ZtEka
新手のSS荒らしか

今のところこれぐらいかな
日本語
自演
煽り
SS
430名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 11:48:04 ID:Bz2T3I0j
>>355
両手に嫉妬の華を

ってことはもう一人の嫉妬キャラがいるのかな・・w
俺的の直感からするとチョコをくれた女の子と
たまたま失恋で慰めてくれた女の子による

ガチの嫉妬バトルが展開されるんだろうか・w

続きが気になる♪


ちなみに後者の女の子は
勘違い系の思い込み激しい属性ですね
あれ系は黒化したら後が恐い・・

リアルでもなww
431名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 12:15:37 ID:SfeNKM24
>リアルでもなww
kwsk語ってもらおうか。
432名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 14:14:28 ID:a8CUYfrr
>>419
う〜ん…。あんまり言いたくないけれど(荒らしとか色々このスレ内であるから)あえて指摘?します。
この先生きのこる。ネタに見えるでしょうが、わかりやすい例えだと思います。あと登場人物の名前さえ読み返したりしないとわからないくらいなので、人物紹介の導入部あたりは入れた方がいいと思う文章構成だと感じました。
貶すつもりはありませんが、一読者としての感想です。
433名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 14:51:38 ID:W7ks/7hA
>>432
日本語おかしい人乙
434名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 15:23:39 ID:5qWbQSh2
書き手に対して言ってるんだから、反応するなよ。
435名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 15:27:38 ID:bvkJudwy
>>432
日本語君は一生オナってろ
436名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 15:37:05 ID:xXm0X8D/
>>419
誤字脱字が多すぎ、投稿前に推敲した方がいい。
本気で続けるつもりならトリップつけれ
437名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 15:37:35 ID:JEIqU7a0
まとめサイト更新されてる〜
阿修羅様お疲れ様です
438名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 15:39:48 ID:bvkJudwy
>>436
作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
439名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 15:45:06 ID:xXm0X8D/
>>438
最後だけじゃなくて一個目も読もうw
誤字脱字の指摘は一応OKだ。

というか評価なんか一切してないつもりなんだが
440名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 16:41:48 ID:3EYLep2M
ID:ConynqHNは荒らしでOK?

明らかにも住人を煽っているようにしか思えない
441名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 16:59:54 ID:dIS48zOp
>>430
勘違い系の思い込みの激しい女の子ってあれだよね・・

友人の義理の付き合いで誕生日プレゼントとか贈ったりすると
自分に気があるんじゃないのかと勝手に誤解して・・

彼はきっと私の事は大好きなのよ!!

都合よく解釈されてそれ以降、そのA君が
他の女のこと喋っているだけで勝手に嫉妬したりと不機嫌になったりする

ってな感じかな・・

現実でもいるんじゃないのかな・・
リアルはただ痛い女の子だけどね

442名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 17:05:50 ID:K4AqQhYV
どう考えても荒らしだとは思うが
前スレの最後でもSSのようなプロットをage&書きながらレスしてた香具師がいたからそいつの気もするがね
443名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 17:08:40 ID:VHLc4H7F
>>441
勘違いも更に酷くなり
家に帰宅するとその女の子は勝手に同棲する準備を始めていた

鍵はどうしたの? 何で、俺の家知っているの? ってか、何だその荷物とベットは?


ってなことはこの嫉妬スレで日常茶飯事だがな

444名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 17:19:07 ID:0tmjBaOu
>>430の流れで雑談してる人たちは本スレでどーぞ
445名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 17:28:29 ID:bvkJudwy
>>440
ホモ荒らしの亜種だな
446名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 17:45:45 ID:fZ3Y9ZZ8
荒らしだと思ったならスルーしろ
447名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 19:04:56 ID:8GXUXtU2
やや地獄な彼女や君という華の作者はもう来ないのか?
やっぱりこのあれ具合を見てここを去ったのか?
448名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 19:22:40 ID:ConynqHN
>>424 私はトライデント氏、ロボ氏を侮辱したことはありません。おふたりの文はうまいと思います。

>>425 これからはきちんとsageますよ。

>>426 これからはそうします。ご指摘ありがとうございました。

>>427 へたくそですみません。でもそういうとき、どうするのでしょう?

>>429 私は荒らす意図はまったくありません。ただSSが書きたいだけです。

>>432 人物紹介の導入部ですね。わかりました。頑張ります。ありがとうございます。

>>436 これからは誤字脱字がないようにみなおします。・・トリップをつける?

>>442 私とは別人ですよ。
449名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 19:25:58 ID:bvkJudwy
>>448
トリップてのは名前#なんでもいい
見たいな感じのやつ
450名無し ◆SEJXcW.57k :2007/03/14(水) 19:26:48 ID:bvkJudwy
>>448
たとえば↑をみればわかるように#をつければできる
451名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 20:25:08 ID:/t6rgaq1
#は半角ね
452名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 20:28:35 ID:bvkJudwy
>>451
スマソ
453 ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/14(水) 21:25:19 ID:LYiizQi3
>>423
>>>>それに彼女は慟哭している
>>慟哭は叫ぶ意味を含むのでそぐわないかと
叫ぶという意味が含まれている事を失念していました。
その通りです。

>>>>彼女へと獲物を狙う捕食者のように
>>この表現は何か下心がある様な感じになる気が
静かに近付く感じを表現したかったのですが、そう取られましたか。
今後の反省材料にします。

>>>>何か罵られてももう嫌という
>>いいやの間違いかと
これは「もう嫌という程傷付いた〜」と繋がるので間違っていません。
「罵られても」と「もう嫌」の間に読点を入れるべきでした。失礼。

多くの方に「読みづらい」という意見を頂きましたのでスレ内でも見やすいように配慮しました。
文章上の読みにくさがまだありましたら指摘して下さい。
それでは投下します。
454両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/14(水) 21:26:11 ID:LYiizQi3
「”今朝も”何ニヤついてるの? 気持ち悪い子ねぇ」
「気にすんなって。それよりおかわりっ!」
 母の悪態を軽く受け流し、代わりに少々ご飯粒が付着している茶碗を差し出す。
 朝は滅法弱い俺が自分より早く起きていたという奇跡を不審に思ってか、
 母は複雑な表情を浮かべながら渋々茶碗を受け取った。
 そんな露骨過ぎる母の態度も今の俺には全く気に掛からない。
 昨日の事を思い起こせばどんな事も取るに足らない、そう思える程今の俺の心中は穏やかだ。

 昨日佑子さんと別れた後、俺の心臓はしばらく音をたてるのを止めてくれなかった。
 人は自分と共通点を持つ者に惹かれるというが、それは本当だったようだ。
 俺と同じ傷みを味わった彼女の存在は、淡い初恋への未練をかき消すには十分過ぎた。
 簡単に気持ちを捨てられるなんて結局その程度の想いだったに過ぎないと落ち込みかけたが、
 彼女への想いが初恋を越える程大きかったのだと都合良く解釈した。
 ”同病相憐れむ”、ふとそんな言葉が浮かんだがそれは俺の本心を表し切ってはいない。
 確かに昨日俺は彼女との対話を通じて、傷の舐め合いに近い狭窄的な快楽を覚えた。
 同じ傷の傷みを分かち合いたいと内向的な欲望を微かに感じたのも事実だ。
 しかし、それ以上に俺の中では彼女の傷を癒してやりたいという一歩的な欲求の方が強かった。
 決して”俺だけが理解してやれる”という歪んだ自己満足に浸る為の手段としてではない。
 純粋に彼女を一人の女性として意識し、守ってあげたいという庇護欲が俺を支配した。
 そしてそこまで認識してようやく気付いた、”俺が佑子さんを好きになっている”という事に。
 それを知って、もう彼女とは会えないという事に多少悔しさが込み上げた。
 時間としては短いが、反比例するようにその想いは初恋以上に肥大化していたから当然だ。
 それでも今日清々しい朝を迎える事が出来たのは、昨晩見た夢が原因だろう。
 その夢は、”俺と佑子さんが話し合っている”、ただそれだけの内容だった。
 しかし、微かに残る佑子さんとの楽しい空気が、俺に今までに感じた事のない安らぎを与えた。
 その安らぎが俺を吹っ切れさせたからこそ、この体験と思い出は大切に胸にしまっておこうと、
 柄にもない事を俺に考えさせるに至ったのだ。

「ごちそうさんっ! んじゃ行って来るわ!」
 久しぶりに心から美味いと思える朝食を食べ終えた俺は、そのまま椅子の背凭れに掛けてあった
 鞄を持ち意気揚々と玄関へと向かった。
 鼻歌を歌いながら革靴を履いている最中に、母が遠くから大声で訊ねてきた。
「あんた、何か良い事でもあったの?」
 靴を履き終え玄関の扉を半開きにした状態で、俺は振り向き満面の笑みで答えた。
「まぁな! 行って来まぁ〜すっ!」
 扉を開けると、その先には雲ひとつない青空が広がっていた。
 今日は何だか良い事が起こりそうな予感がした。
455両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/14(水) 21:26:49 ID:LYiizQi3
「お早うっ!」
 俺は教室の扉を勢い良く開け、いつもは友達にしか言わない挨拶を教室全体に響かせた。
 皆一瞬驚いたそぶりを見せ俺に注目し、その後友人の数人が俺の方へと歩み寄って来た。
「お前昨日何で休んだんだよ?」
 そして予想していた質問が最初にきた。
 正直この質問をしてくれると、自然と昨日の情景が思い浮かばれるから嬉しい。
 勿論あの思い出は俺の心の中だけの宝物にしようと決めているので、ちょっと困ったフリを
 しながら友人を軽くあしらう。
「男には、誰にも侵入させまいとする『砦』ってもんがあるだろ?」
 自分でもその意味が分からない意味不明な応対、当然友人も神妙な面持ちで首を傾けている。
 勿論わざわざ痛い人だと思われたいが為にそんな事を言った訳じゃない。
 こんな何かを感じさせる言葉を言われたら誰だってするであろう対応を期待しているのだ。
「意味わかんねぇよ、詳しく教えろよ!」
 友人が期待通りの反応をしてくれた事に、相手を手の内で弄んでいるような優越感を感じる。
 つまり俺は、”言うともりはないが訊かれはしたい”、という事なのだ。
 訊かれる度に自分に関心を持ってくれている人がいるという安心感を味わえるし、
 何より昨日の思い出を一人占めしているという奇妙な満足感を覚えるのだ。
「まぁまぁ、落ち着きなよ?」
 俺は昼食の為に用意しておいたメロンパンを鞄から取り出し、悠々と席へと向かう。
 メロンパンを口に咥えながら椅子に座ろうした瞬間、変な違和感を感じた。
 幾ら腰を下ろしても体全体に安定感を感じないのだ。
 何だか嫌な予感がした…と思ったその時には既に遅かった。
 俺は豪快な音と共に、間抜けに地面に尻餅をついてしまったのだ。
「痛ッ…」
 尻を擦りながら何でこんな事になってしまったのかと冷静に分析しようと周りを見渡す。
 そして後ろを振り向き理解した、座る直前まで確認出来た椅子が今は後ろに引かれているのだ。
 何もない空間に腰を下ろしたのだから、地面に無様に座り込んでしまうのは当然の結果だ。
 問題はこの椅子を”誰が”引いたかという事だ。
 俺は低い視線を持ち上げ、引いた椅子の両脇を掴んでいる人物を見上げる。
 そして一瞬目を疑った、その人物は俺が予想だにしなかった人物だったのだ。
「ヤッホー、仲川信悟”くん”」
「随分な挨拶だな、佐藤早苗”さん”?」
 相変わらず透き通った黒い瞳で俺を見下ろしてきたのは、佐藤早苗だった。
 昨日までの俺なら悪態をつきながらも頬が緩むのを止められなかっただろう。
 事実今もその”美貌には”目線が奪われそうになるが、昨日の行動を考えれば逆に
 目を逸らしたくなった。
 この状況でそれは佐藤早苗に対する敗北のような気がしたので、しっかりと目線は離さないが。
「さて、まずこの行動の真意について訊こうか…」
「それについてはあたしからの質問に答えてくれたら答えるから」
 有無を言わさぬ口調でそう言うと、彼女は座り込んでいる俺の手を強引に引っ張り上げ、
 そのままほとんど拉致に近い状態で俺は連れて行かれた。
 周りから聞こえてくる冷やかしの声はとりあえず無視しておこう。
456両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/14(水) 21:27:26 ID:LYiizQi3

「ここでいいかな」
 佐藤早苗は辺りを見渡し、他に誰もいない事に満足したのか笑顔を浮かべている。
 他の男子生徒が見たら発狂するであろう殺人スマイルを向けられても俺の心が微動だにしない
 事に、自分の事を思わず褒めたくなった。
 佑子さんへの想いの強さを再確認させてくれた佐藤早苗に密かに感謝する。
 今この場にいるのは俺と佐藤早苗だけだから、彼女以外の事を考えるのは失礼かもしれないが、
 それは昨日彼女が俺にしてきた事と同義だから別に構わないと高を括った。

 俺たちがいるのは飼育小屋の裏だ。
 学校で飼っている動物に餌を与える時には飼育係の生徒数名が立ち入る事はあるが、
 その時以外は動物本体から発せられる不快な野生の臭いを毛嫌いし誰も立ち入らない。
 俺が咥えたままのメロンパンの味も台無しになってしまう程酷い臭いだが、
 その分他の人間が立ち寄ってこないという確証はどこよりも強い。

「さて、お前の質問とやらは何だ?」
 正直早くこの場から立ち退きたかったので俺は早急に話を切り上げる為先手を取った。
 もう吹っ切ったとはいえ、やはり彼女を見ていると微かにだが胸の傷が沁みる。
 昨日感じた絶望的なまでの生々しい痛みが蒸しかえそうになる。
 男は過去を引きずる生き物だと勝手に解釈をしつつ、彼女と目線を合わせたまま返答を待つ。
「あたし、君に一ヶ月前何してあげたかなぁ?ん?」
 その言葉を聞いて思わず眉間に皺を寄せてしまった事を感じる。
 わざわざ思い出したくない事を強制的に脳裏に焼き付けようとするとは、
 可愛い顔して中身は腹黒いなと怒りが先行しそうになった。
 このまま怒りに任せて胸の内のモヤモヤをぶつけてやりたかったが、貰った時は嬉しかったし、
 ”一時的には”いい思いをさせてもらった事を考え踏み止まる。
 それに、ここで感情的になっては彼女に過去の自分の想いに気付かれてしまう。
 それは避けたかったので、余計な事は言わない事にした。
「チョコを下さりましたね」
「だよね?」
 佐藤早苗は言葉同様、確認を要するように俺を見つめてくる。
 俺の瞳の奥にある思考を盗み見するように、じっくりねっとりと見つめてくる。
 その瞳は異様に厭らしく濡れており、何かを懇願するようにすら見えた。
 正直不快に思った。
 こんな視線を佑子さんにも向けられたが、する人間が違うとこうも感じ方が違うのかと驚いた。
 そんな俺の心中を察そうともせず、佐藤早苗は俺に視線を向けたまま続ける。
「で、昨日が何の日だったか知ってる?」
「知ってるさ。『ホワイトデー』だろ?」
「大正解ィ〜!」
 彼女は笑いながら嬉しそうに手をパチパチと叩いた。
 俺がこの誘導尋問に医等苛ついている事も知らずに呑気なものだなと溜息をつきたくなった。
「それじゃ、その日が何をする日かは知ってる?」
 徐々に彼女の術中に嵌っている事に気付きながらも、俺は受けて立つと言わんばかりに続ける。
「バレンタインの勝利者が、勝利するまでに導いてくれた案内屋にお礼を返す日だ」
「そこまで分かってるなら、あたしが何でこんな事訊いてるのか分かるよね?」
 さっきから佐藤早苗が俺に尋ねてばかりだという現状からいい加減逃げ出したくなった。
 だから俺は、敢えて彼女が期待しているであろう言葉で答えてやった。
「『お返し』だろ?」
457両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/14(水) 21:28:02 ID:LYiizQi3
「分かってんじゃん!」
 満面の笑みの佐藤早苗。
 本当は昨日その笑顔が見たかった、そうすれば今の俺の心境も百八十度変わっていただろう。
 まぁ彼女の行動が佑子さんと俺を引き合わせる助け舟になったと思えば、感謝すべきではある。
 とはいってもやはりちょっと憎い。
 自覚がないにしろ、人の事傷付けておいてその上見返りを求めるんだから当然だ。
 だから、俺は彼女の下へと歩み寄りながら少々皮肉めいた口調で言ってのけた。
「”綺麗な『義理チョコ』”、ありがとよ。ほれ」
 そして口に咥えていたメロンパンを口から離すと、勢い良く彼女の口へと押し込んでやった。
 俺の言葉に一瞬「え?」と一声漏らした瞬間に開いた僅かな口の隙間を俺は見逃さなかった。
「ふぇ?」
 佐藤早苗は俺の食いかけのメロンパンを咥えたまま間の抜けた声を漏らした。
 てっきり俺の悪戯に反抗してくるものと思っていたから、何故かは分からないが彼女が
 顔を真っ赤にさせながら口を動かしているのを見てドキっとしてしまった。
 その表情は俺を誘導尋問していた時の裏に何かあるような図ったものではない。
 全く取繕う事なく、無防備に晒された純真な素顔…そんな気がした。
 心の中で頭を振りその思いを断ち切る。
 一瞬でも佐藤早苗に、自分を裏切った相手に心臓が高鳴った事に自己嫌悪しつつ、
 俺は踵を返して彼女に背を向けたまま手を振った。
「じゃあな」
 そう言い残し、そろそろ馴れてきた悪臭漂う飼育小屋を俺は後にした。
 走り去って行く途中、結局彼女の一方的な質問攻めに遭っただけでここに来た意味がない事に
 今更ながら気付いた。
 勿論振り向きはしなかったが。

「じゃあな」
 俺は友人にそう言い残し教室を後にした。
 今は下校時間、廊下には生徒たちの談笑が響き渡っている。
 その中を俺は縫うように歩いて行き、下駄箱を目指す。
 下駄箱につき、やっと長い一日が終わったなと安堵しロッカーを開けようとした瞬間、
 誰かに肩を掴まれている感触を覚えた。
 反射的に後ろを振り向くと、そこには佐藤早苗の姿があった。
 朝別れる直前に見た赤く染まったままの顔で、俺の事を伺うように見つめてくる。
「何か用?」
 その視線を見続ける事に耐えられなくなり、俺は素っ気無く話題を切り出した。
 なのに彼女は視線を泳がせたまま何か言おうとしてそれを躊躇っている。
 そのはっきりとしない態度を不審には思いつつ、彼女といるのは辛いので置いていこうとする。
「あっ、待って!」
 靴を履き替え、校舎内を出て行こうとする俺に向かって佐藤早苗が声を張り上げてくる。
 廊下内だったのでその声は反響し、何度も俺に言い聞かせるように耳に焼き付けてきた。
 人前という事もあって恥ずかしくなった俺は、一応振り向き彼女を手招きする。
 「ごめん」と手を合わせながら靴を履き替える彼女を見てとりあえず安心した俺は、
 再び視線を校舎外へと向けた。
 そこで俺は信じ難い姿を見つけた。
「ごめんね!ちょっと確認したい事があって………仲川?」
 佐藤早苗が何か言っているような気がしたが、そんな事よりも俺は何十メートルか先にいる
 揺れるシルエットに目も心も奪われていた。
「あっ、仲川く〜ん!」
 笑顔で手を振りながらその長い黒髪を揺らす可憐な少女…見間違える訳がない。
「ゆ、佑子さん!?」
 その姿を見て心の底から熱い感動が込み上げてきた。
 どうやら、朝感じた『予感』は的中していたようだ。
458 ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/14(水) 21:28:50 ID:LYiizQi3
投下終了です。続きます。
459名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 21:50:27 ID:QctG6V4V
>>458
GJ!!!続きが激しく気になる!!
460名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 21:51:09 ID:BgpE8k4k
なんというwktk
間違いなく次回に期待。
461名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:04:48 ID:yLukl/79
>>460
激しく同意。続きが楽しみです。
462名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:07:21 ID:5qWbQSh2
wktk!!!!!!!!!!!!!!!!!
463 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/14(水) 22:11:59 ID:1/BcZ9e+
投下します
464名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:12:42 ID:RoHwrvRx
なんて生殺し・・・・・!修羅場フラグにwktkして待ってまふ!!
465 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/14(水) 22:16:15 ID:1/BcZ9e+
※今回は一部凄惨な描写があるので其の点ご了承ください
466白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/14(水) 22:17:12 ID:1/BcZ9e+
 薄暗くカビ臭い地下牢のような場所。
 固い床の上、毒で未だ意識の戻らないクリスが横たわって――いや、無造作に転がされていた。
 それを見下ろすはコレットと、そして先ほどクリスに一蹴された男達の中で
比較的ダメージの軽かったものたち。
 男達はおのおの手には斧や大ぶりの剣が握られている。
 コレットが指示を出すと其の中のうちから特に屈強そうな4人が
クリスを囲むように歩み出、いっせいに武器を振り上げる。

 そしてコレットは歪な笑みを口元に浮かべ腕を掲げ、合図を出すように
其の腕を振り下ろした。
 次の瞬間男達の武器がいっせいに振り下ろされ鮮血が舞った。


「があああっっ?!!」
 信じ難いほどの激痛にクリスは無理矢理意識を引き摺り戻される形になる。
 一体何が起こったのかと激痛の源たる手足に目をやれば――
肘と膝の先が切断されおびただしい血を溢れさせていた。
 自分の手足が喪失してる事にクリスは最初自分の状況が飲み込めず、
やがて其の顔に絶望の色が浮かぶ。

「キャハハハハハハハハハ! いい様ね!」
 その時クリスの頭上から甲高い笑い声が響く。
 声の主は誰あろう、コレットだった。
「き、貴様ぁ……」
 クリスはうめくように声を洩らし睨みつける。
 だがコレットは怯みもせず睨み返す。
「あら、怖い顔。 でもね、いくらそんな顔したって怖くも何とも無いわよ。
だって、そんな姿じゃ何も出来やしないものね! キャハハハハハハッ!
それでね、ここにあの泥棒猫を呼んでやったらどうなると思う?」
「な、何だと……」
「今のあんたの姿見せたらどんな顔するかしらね?」
「ふざけるな! そんな真似――がはぁっ?!」
 叫び返そうとしたクリスは重たい一撃を打ち込まれ言葉を遮られる。
「吠えてんじゃねぇぞ、糞餓鬼が」
 男の一人が棍棒で力任せに殴りつけたのだった。
 万全の状態であればものともしないはずの打撃。
 だが手足を斬られ、出血も激しく、床に転がされた状態では堪えるものだった。
 それを皮切りに他の男達もいっせいにクリスに殴る蹴るなどの暴行を加え始める。
 なす統べなく蹂躙されるクリスの姿にコレットは其の顔に益々狂喜の色を深める。
 そして切り落とされた手を拾い、男の一人に何かを命じた。
 命じられた男は腕を持って外へと出て行った。
467白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/14(水) 22:18:13 ID:1/BcZ9e+
 そして男が戻ってき、それからほんの僅かに間を置いて扉が乱暴に開け放たれる。
「キャハハハハハハハ! 来たわね、この泥棒猫が!」
 そう言ってコレットは扉を開けた人物――セツナに向かって語りかけた。

 扉を開けて入ってきたセツナは呆然と立ち尽くしていた。
 己の目に映る光景が信じられないと言った風に其の顔に絶望の色を浮かべ。
 そう、彼女の目に飛び込んできたもの。
 それは彼女にとって命にも等しいほどかけがえが無く、大切で、愛しい妹分――
クリスの無残な姿。
 両手両足を無残にも切断され、血に塗れ、男達に嬲られ蹂躙される見るに耐えない姿。
 そんなクリスの姿に呆然とするセツナに向かい男の一人が鉄の槍を打ち下ろし殴りつけた。
 クリスの無残な姿に釘付けになり放心してたセツナはまともに其の一撃を受けた。
 殴られた頭部からは血がほとばしる。
 そして他の男達もそれに続くようにいっせいに鈍器を手に殴りかかった。
 鉄や硬い木の鈍器が肉や骨を打ちつける鈍い音が響き渡る。

「キャハハハハハハハハハハハ!! やった! やったわ!!
遂にあの泥棒猫に鉄槌を下してやったわ!! これで! これで邪魔者はいなくなる!!
これでリオは私のところに戻ってくる!! キャハハハハハハハハハハハハハハハ――
?!!」
 勝ち誇ったかのように狂ったように笑っていたコレットの笑が止まった。
 セツナを殴りつけていた男達が突然血飛沫を上げバラバラの肉片になリ崩れ落ち、
其の様子にコレットは何が起こったのか理解できず動きを止めずにいられなかった。
 そして驚きから意識も戻らぬうちに次にはクリスを嬲っていた男達が肉片に変わり果てた。
 目の前で起こった事が理解できずにいたコレットは突然足元の力が抜け床に崩れる。
 コレットは直ぐに自分の身に起きた異変を理解できなかった。
 足元の力が抜けたのではない。 足が切断され、それで崩れ落ちたのだった。
468白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/14(水) 22:22:40 ID:1/BcZ9e+


<div align="center">+     +     +     +<div align="left">


「クリス! クリス!! ねぇしっかりしてクリス!!」
 私はクリスの体を抱き起こすと喉が張り裂けんばかりに叫び、声を上げた。
「姉……さん……」
「うあああああああっ! 何で! 何であんたがこんな酷い目にあわなくちゃいけないのよ!」
「泣か……ない、で……」
 クリスが私の頬を濡らす涙を拭おうと手を伸ばそうとするもそれは叶わない。
 何故ならその腕には肘から先がなくなっていたのだから。
「いやああぁぁぁぁ!! どうして?!! どうしてよ?!!」
「ゴメ……ン。 こん……な体に……なっちゃって……」
「クリス!!」
「もっと……一杯……姉さんと旅……したかった……けど……」
「やめて! そんな……お別れみたいな事言わないで!!」
「分か……るんだ……。 ボクは……もう、駄目だ……って」
「そんな! そんな事……!!」
 ――そんな事無い。 そう言いたかった。 でも言葉が出てこなかった。
 クリスの肌の色が、辺りを染める血の量が……徐々に冷たくなっていく体が
それらが物語っているから……。
「最……後に、おね……がい……。 キス……して……」
 力なく微笑むクリスの唇に私は唇を重ねる。
 重ねた唇から体温が、命が失われなくなっていくのが分かる。
 私がそっと唇を離すとクリスは力なく口を開く。

「大……好き……だよ。 姉……さ……」

 それがクリスの最後の言葉だった。

「クリスーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 私はクリスの体を――亡骸を抱きかかえたまま慟哭した。
 耐えがたいほどの悲しみと喪失感だけが次から次へと広がっていく。
 心が軋みバラバラに砕け散ってしまったかのように痛い。
 まるで自分の体を切り刻まれ引き裂かれたかのよう。
 失われた命。 戻らない時間。 喪失した未来。
 計り知れない絶望と悲しみにその身を苛まされながら
尽きる事の無い涙が私の頬をとめどなく零れ落ちる。
 絶望と悲しみで潰れそうなまま私は泣き叫び続けた。

 その私の耳に微かに届いた這い蹲る様な物音とうめき声。
 首を廻らせ滲む眼で音のした方を見れば、そこにいたのは――。

「許……さない……」
 私はコレットを睨みつけながら言葉を吐き出す。
「よく……も、よくも……私の、大……切なクリスを……こんな……!
こんな目にあわせてくれたわね……!!」
 私に睨まれたコレットは脅え、這い蹲りながら無様な姿をさらし逃げようとする。
 私はそんなコレットに向かって刃を振り下ろした。
 コレットの手が切れ飛び血が噴出し、口からは悲鳴声が漏れ出す。
「痛い……? 苦しい……? でもね……でもね……クリスと! クリスを失った私は!
私はもっと辛いのよ?!!」
 私は感情のままに刃を振り回す。 其のたびに鮮血が舞い肉片が切れ飛び悲鳴声が響き渡る。

 そして――。
 気が付いた時にはコレットは原形を留めぬ程バラバラに切り刻まれた肉片に変わり果てていた。
469白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/14(水) 22:26:36 ID:1/BcZ9e+
 それからのことは良く憶えていない。
 只々辛かった。 クリスがいないことが。
 クリスがいない旅を続けることが。 それが、苦痛で辛くてたまらなかった。
 何をしててもクリスを失った辛さは、クリスがいない寂しさは埋まらなかった。
 まるで心に大きな穴があいてしまったかのような、
生きながら体の半身をもぎ取られてしまったかのような喪失感。
 それはモンスターとの死と隣り合わせの戦いに身を投じようとも紛れる事は無かった。
 リオと肌を重ね合わせても、その寂しさが埋まることは無かった。
 何をしても私の心にあいた穴を、喪失感を埋めてはくれなかった。
 癒してくれる事は無かった。
 いや、拒んでいたのかもしれない――癒される事を。
 癒されてしまえば――癒される事でクリスのことを忘れてしまいそうで。
 其の方がよっぽど辛いから。 其の事が余計に私の胸を苛んだ。

 だから――死にたかった。 死んでしまいたかった。
 死んでこの苦しみから逃れてしまいたかった。
 でも、死ねなかった。
 リオがいたから。
 リオを残して死ねなかったから。
 私が死んでしまえば魔王を倒す術は失われる。
 それでもリオは旅を、戦いを止めないだろう。
 それはリオを死地に向かわせる事になる。
 それだけは出来なかった。
 私が死んだせいで其の後リオが命を落とすなんて耐えられなかったから。
 其の想いだけが、私をかろうじてこの世に踏みとどまらせてた。
 でもそれは言い換えれば――。




470白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/14(水) 22:28:41 ID:1/BcZ9e+
 数限りない死闘の果てに今私達はこの世界に君臨する最強のモンスターと戦っていた。
 すなわち――魔王。
 そして今、其のピリオドが打たれる。
 傷だらけになり、自身の血と魔王の返り血に塗れながら私は止めの一撃を叩き込む。
 断末魔の悲鳴が上がる。 刃越しに伝わってくる。 確実に魔王の心臓を刺し貫いたのが。
 其の魔王が心臓を貫かれながらも其の巨大で鋭い爪を振りかざす。
 それは蝋燭が最後の一瞬一際激しく燃え上がるのにも似た、そんな最後の足掻き。
 傷を負ってる身とは言え私の身体能力なら十分かわせる一撃。 だが――。

 私は目を閉じた。

 もう、いいよね?
 私、頑張ったよね?
 クリス――。 あなたのところに逝ってもいいよね?

 そして振り下ろされる魔王の爪によって私の命が幕を閉じる――そう感じる直前。

 ――声が聞こえた。 クリスの声が――

 それは幻聴だったのかもしれない。 でも――。
 私はその場を跳び退き魔王の攻撃をかわした。
 最後の一撃をかわされた魔王は其のまま崩れ落ちる。

「セツナ!!」
 その時リオの声が耳に飛び込んできた。
「魔王が倒れた事でこの城は間もなく崩れ落ちます! 早く脱出しましょう」
 そして私達は崩れ去る城から脱出した。

「終わり……ましたね」
 城を脱出した後、崩れ去った魔王城の跡を見つめる私の耳にリオの言葉が届く。
「リオ……」
「最後までおつかれさまでした。 そして――」
 リオは私の体を優しく抱きしめ言葉を継ぐ。
「よく無事生きていてくれました」
 優しくそう囁いてくれたリオの顔には安堵の色と、瞳には涙が浮かんでいた。
「ずっと、心配してたんです。 クリスが……あんな事になってしまってからと言うもの
あなたはまるで死に急いでいるように見えましたから……いえ、
先ほどの最後の戦いで死のうとしてませんでしたか?」
 私は応えられなかった。 其の通りだったのだから。
「いいのですよ。 実際にはこうして生きていてくれたのですから」
 そう言ったリオの顔は優しく私を慰めるように微笑んでいた。

「あのね……リオ。 確かに私あなたが言った通りこの戦いで死ぬつもりだった……。
けどね、声が聞こえたの」
「声……ですか?」
「うん。 クリスの……声が。 空耳かも、幻聴かもしれない……。
でも、確かに聞こえた気がしたの。
『生きて』って」
 私がそう言うとリオは優しく微笑んだまま頷き口を開く。
「信じますよ。 あなたがそう言うのなら、きっとそうなのでしょう」
「ありがとう。 それにね……」
「それに?」
「ううん……何でもない」

 私の耳に届いたクリスの声。 それは『生きて』そして――
『また逢えるよ』
 後日私はその言葉の意味を知ることになる。
471白き牙 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/14(水) 22:32:08 ID:1/BcZ9e+






 魔王を倒した事で世界から魔物の脅威が去り、世界の様相は平和なものへと変わっていた。
 人々の顔には笑顔が戻り、復興した町並み等が時の流れを感じさせる。
 そして、気が付けばあれから十ヶ月近い時間が流れていた。
 そんなある穏やかな昼下がり。

「セツナ。 調子はどうです?」
「えぇ、とっても良好よ。 私も、そしてお腹の子も」
 私は大きくなったお腹を愛しげに撫でながら応えた。
「触ってみる?」
 私が声を掛けるとリオはそっと私のおなかに手を触れる。
 私の体に新たな命は宿ってたのに気付いたのは魔王を倒した其の直後の事だった。

「あ、今動きました?」
 リオが驚きと嬉しさを含んだような声を発した。
「分かる? うん。 この子とっても元気で今みたいにしょっちゅう動き回るの」
 私は微笑んで答えた。
 臨月を向かえお腹の子は順調に育ち数日中にも生まれてくるだろう。

「そう言えば名前は決まりましたか?」
 リオが顔を上げ私に問い開けてくる。
 そう。 私は産まれてくる子の名前は自分に付けせてくれと頼んでいたのだ。
「ええ。 実はね、ずっと前から決めてたの。 この子がおなかに宿ったのが分かった時から……。
この子の名前は――」

 あの日耳に届いた声―― 
『また逢えるよ』
 そして直後分かった懐妊。
 だから私には思えてならないのだ。
 この子は私にとって誰よりもかけがえの無かったあのコの。
 いつも私を支えてくれてたあのコの生まれ変わりだと。
 そして私は其の名前を口にする。

「――クリス。 それが生まれてくるこの子の名前よ」


the end
472 ◆tVzTTTyvm. :2007/03/14(水) 22:34:58 ID:1/BcZ9e+
投下完了です 近い内またお逢いしましょう

>>458
物凄く良い所で終わってますね
正統派学園モノは大好きなので続き楽しみにしてます
473 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 22:38:43 ID:PwW34IBz
さて、それでは投下します。
474名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:39:04 ID:uVUSdyXr
リアルタイムで乙です。
なんかこう、長い小説を読み終えた後のようなこう・・・

クリス・・・(つД`)・゚・
475修羅サンタ「白い日編」 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 22:41:04 ID:PwW34IBz
「流血のバレンタインデー」から20日後……

最後まで入院していた卓也は、晴れて今日退院した。
久々の外の空気を胸一杯吸うと、入院中の騒動が嘘のような静けさだった。

とはいえもうここには入院できないだろうなあ……

卓也より一足先に、美紗と三択は退院したが退院した翌日から「お見舞い」
と称して毎日卓也の元に来ていた。

しかし来る度に


ある時は、診察に来た看護師(♀)に美紗が木刀を構えて威嚇したり
またある時は、三択が卓也に食べさせようとノルウェー名物「シュールストレミング」を病室で開けて大騒ぎになったり

そして極め付けは―――



退院まで後数日のある日。体の調子もほぼ問題無くなり病院内を歩けるぐらい回復したそんな時―――

いつものように先に退院した美紗が差し入れにリンゴを持ってきた時のことだった。

「はいお兄ちゃん、あ―――ん♪」
「おいおい、自分で食べれるよ……」
「ダメ!!お兄ちゃんはまだ病み上がりなんだから!!だから私が食べさせてあげるの!!」

卓也の寝ているベットの脇で、剥いたリンゴをフォークに刺して卓也の口に運ぼうとしている。
そんな美紗の甲斐甲斐しい姿に卓也は苦笑しつつも

「わかったよ。……もぐもぐ……うん、美味いよ」
「美味しい?良かった……お兄ちゃんにもしものことがあったら……私……」

卓也が倒れた原因が半分は自分にあることを医者から聞いた美紗は、酷く落ち込み

「自分のせいでお兄ちゃんが……」

と自分を責めていたが、卓也は笑って許した

「何だ?まだ気にしてるのか?もう終わったことだ。そんなに落ち込むな。それよりもリンゴくれ」
476修羅サンタ「白い日編」 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 22:42:34 ID:PwW34IBz
俯いている美紗の頭を卓也は優しく撫でると、美紗は嬉しそうな顔をして

「お兄ちゃんはやっぱり優しいね。この優しさは誰にも渡さない……」
「ん?何か言ったか?」
「ううん、何でもない」

ああ……幸せだわ。
私の人生の中でベスト5に入るぐらい幸せだわ!!
ず―――っと、ず―――っとこうしていたい……


だったら治らなきゃ…………


それは余りにも衝撃的だった。
悪魔の囁きにも似たこの甘い言葉に、一瞬眩暈を覚えたがすぐに頭から振り払い

バカバカ!!私のバカ!!
そんなこと一瞬でも考えちゃダメよ!!
大体そんなことになったら登下校は私1人で……
遊びも外出も1人で……
夜、ベットで1人で寝て……


イヤーーーーーーー!!!!

「おおおお兄ちゃん!!早く、早く治して退院して!!」
「あ、ああ……。」

そんな他愛無い話をしていたら、突然館内放送が流れた。

「お見舞いに来院されている皆様。まもなく終了のお時間になります。
また明日来院して下さい。繰り返します……」

病院内に響き渡るお見舞い時間終了の放送により、帰らなきゃならないが案の定美紗は愚図り始めて

「……やだ……やだよ……グスッ、お兄ちゃんが居ない家になんか帰りたくないよ……」
477修羅サンタ「白い日編」 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 22:45:56 ID:PwW34IBz
「美紗……」

どう慰めようか卓也が考えていた時、急に美紗が額を押さえながら苦悶の表情を浮かべて

「いたっ!!痛い……来たわね!!!」

バンッ!!

勢いよく扉を開け、部屋に飛び込んできたのは無駄に大きい胸を持ち、ミニスカートをこよなく愛する
自称サンタクロースこと三択その人だった。
しかもなぜか真っ赤なナース服を着て、でっかい注射まで持っていた。

「はーーーーい!!愛する卓也元気??まあ元気が無くても私が元気にしてあ・げ・る♪」
「ちょっとアンタ!!何でナース服なんか着てんのよ!!しかも色が変!!」
「卓也を看病する為に着て来たのよ。色は問題ないわ」

はあ?!こいつバッカじゃないの?
ナース服着たからってナースになったつもりなの?
自称サンタクロースだから頭の中毎日クリスマスパーティーでもしてんのかしら。

美紗が人を小馬鹿にしたような表情で三択を見ていたら、
逆に三択も美紗を小馬鹿にしたような表情で見ていた。

「……何よ」
「いや〜〜、べっつに〜〜。ま、「見舞い」に来たアンタはさっさと帰れば?
「ナース」の私は卓也と一緒にいるから」
「馬鹿なこと言わないで!!そんなこと出来るわけないでしょ!!
大体アンタはナースじゃなくて教師じゃない!!それとも何?
ナース服着たらナースだって言い張るつもり?」
「そうよ。今の私は「教師の三択」じゃなくて「ナースの三択」なんだから」


あまりにもムチャクチャな理屈にさすがの美紗も開いた口が塞がらなかった。

「さ、それじゃお薬飲んで安静にしてね。あ、見舞いの人は早く帰って。シッシッ。
後は私が……ね。うふっ」

美紗はぎりぎりと歯軋りし、プルプル震える手から血が滲むぐらい拳を握り締め
478名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:47:18 ID:0Iy7+7ua
GJ
479修羅サンタ「白い日編」 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 22:47:36 ID:PwW34IBz
こいつ、あくまでもナースで押し通すつもりね。
こんなアホにお兄ちゃんを看病させたらどんな改造されるか……
お兄ちゃんは私だけの……私だけのお兄ちゃんなんだから!!!

「あ、そうそう。座薬持ってきたからズボン脱いでお尻出してね」
「え?!そ、それは遠慮します……うわっ!!三択さん、ズボン引っ張らないで!!」





ブチッ




「お兄ちゃんに……お兄ちゃんに…………」

卓也の隣のベットを鷲掴みにした美紗は一息に頭上に持ち上げ、
ターゲットを三択に定めて

「その汚い手で触るな――――――――!!!!」
「きゃあああああああああ!!!!」
「何で俺まで!!!!!!」







その後のことは、卓也は思い出したくなかった。
何しろ窓を突き破ってベットは外に投げ出され、部屋は台風が通り過ぎたのかと
思うぐらい荒れ果てていた。
そして卓也は入院日数が延びたのだった……
480名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:48:39 ID:LgTo3vHH
GJ
481名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:49:28 ID:CiLUjpHn
クリスマスネタ秋田
482修羅サンタ「白い日編」 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 22:49:42 ID:PwW34IBz
「ま、まあこうして無事退院できたし、二人とも悪気は無かったんだしな。
っとそろそろ迎えが来るかな?」

退院の日には三択と美紗の二人が、「「迎えに行くから!!」」
と言っていたので、卓也はこうして病院の正門前で待っていたのだ。

と、そこへ

「お兄―――ちゃ―――ん!!!」

遠くから聞き慣れた声がしたので見てみると、美紗がブンブンと手を振りながら走ってきた。

「おう、ここだよ」

卓也もつられて手を振った。
そこでふと卓也は、美紗の後ろからこちらに向かって爆走してくるスポーツカーに気付いた。

ああああああああ!!!!すげ――――!!!
あれ、フェラーリの「612 Scaglietti」だ!!
かっこい――――!!誰乗ってるんだ?

だが様子がおかしかった。
スピードを緩めるどころかどんどん加速し、真っ直ぐ美紗に向かって―――

「美紗――――!!!!」


卓也が美紗の元に走ったのと同時に、美紗は空に投げ出された。

鈍い音と共に木の葉のように空を舞った美紗はそのまま地面に激突し、真っ赤な血溜まりを作り
美紗を跳ねたフェラーリは卓也と美紗の間に割り込んで止まり、その車の運転席に居たのは―――
483名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:50:18 ID:xQhB8S3Z
>>481
禿同
484名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:51:18 ID:ArwHYI1B
3月なのにサンタとか言われても意味不明w
485修羅サンタ「白い日編」 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 22:51:22 ID:PwW34IBz
「た〜〜くや♪迎えに来たよ。さ、乗った乗った」
「三択さん?!何で!!どうして美紗を!!」

卓也は大混乱に陥っていた。
何で?!何で三択さんが美紗を?!
いくら仲が悪くてもそこまではしないと思っていたのに……
あ、そんなことより美紗を病院に!!!

美紗に駆け寄ろうとした卓也だったが、三択に腕を掴まれて

「あいつなら大丈夫よ。そんなの放っといてデートでもしよ♪」
「ふざけないで下さい!!大丈夫なわけないでしょう!!」
「……あれでも?」
「え?」

見ると、血の海に沈んでいた美紗だったが、フラフラしながらも
ゆっくりと立ち上がった。

ちっ……、手ごたえはあったのに。

「美紗!!美紗――――!!!」

卓也の必死の呼びかけに対して美紗は―――


くそっ……、血が目に入って何も見えないわ。
それにしてもあんのクソババアが!!車で跳ね飛ばしやがって!!
一瞬早く額の傷が疼いて身を捻ったから致命傷にはならなかったけど
殺る気マンマンってことね。
でもさすがに車とぶつかったから無事ってわけでもないわね。
体のあちこちから激痛がするし、特に頭がハンマーで殴られたように痛むわ。
ああ……、お兄ちゃん、どこ……、どこに居るの……

「……紗!!……紗!!!」

あ!!お兄ちゃんの声だ!!どこ?どこにいるの??

血が目に入っているため本来は見えるはずはなかった。だが美紗には三択が車に卓也を押し込め
Uターンしていくのがハッキリと視えた。

「そこか――――――!!!!!!!!!!」





486名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:52:27 ID:1SyGpTtp
確かに季節感は無いwww
487修羅サンタ「白い日編」 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 22:52:58 ID:PwW34IBz
「さって、退院祝いにどこか遊びに行こうか」
「遊びって……そんなことより戻って下さい!!美紗が大怪我してるんですよ!!!」

卓也の抗議に対して、フェラーリを運転している三択は面白くないのか

「ふん!!あんなブラコン死ねばいいのよ!!!貴方達もそう思うわよね」
「そ〜よそ〜よ。あんなゴミはどっかのゴミ処分場で燃やしちゃえ――!!」
「姉さん、それはダメよ。燃やしたらダイオキシンが発生しちゃうかもしれないわ」

後部座席から声がしたので振り向くと、小さい女の子が二人ちょこんと座っていた。

「三択さん、後ろの女の子は?」
「ああ、紹介するわ。トナカイの―――」
「姉のミサイルといいま――す。よろしくね、卓也さん♪」
「私は、妹のロケットと申します。姉さん共々これからも宜しくお願い致します」

顔が瓜二つで見分けがつかないが、どうやら髪が長くて馴れ馴れしい方が姉で、短くて
丁寧な言葉使いの方が妹のようだ。しかし……

「トナカイって……俺には人間に見えるんですけど……」
「ああ、サンタのトナカイは変身出来るのよ……って渋滞か……」

見ると、前方は病院の出入りする車で渋滞が起きていた。
美紗からは数百メートルしか離れていないため、これではすぐ追いつかれる距離なはずだが、
三択は余裕顔をしていた。

ふふん、あれだけの怪我なら今頃は病院送りね。本当なら霊安室送りにしたかったけど
再起不能にしただけで良しとするか。
それよりもこれからどこに行こうかしら。
「あ〜〜ん、道間違えた〜〜」
ってとぼけてラブホに入って女の武器を使うのも手なんだけど、
さすがにそれは「まだ」出来ないわね。

あれこれ行き先を考えていたら、バックミラーを見ていたミサイルが

「三択さま〜〜、後からさっき轢き殺しかけたアイツが追ってきてるんですけど〜〜」
「え?!うそ!!そんなはずが……」

驚いた三択だったが、バックミラー越しに写った流血で顔を真っ赤にして走ってくる美紗を
見るや否や驚きは収まり、代わりに心の奥底から沸々と怒りが込み上げて来た。

死にぞこないが!!あのまま大人しくくたばってればいいのよ!!
488名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:53:34 ID:XnetMEGS
書くのが遅すぎなんだよ
てっきり逃げたかとオモタwww
489修羅サンタ「白い日編」 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 22:54:47 ID:PwW34IBz
「きゃああああ!!!」
「ち、ちょっと三択さん!!もうちょっと安全運転を……うわあああ!!」

公道だということを忘れてドリフトなどのテクニックを駆使して威嚇した三択だったが―――

「あ〜〜ん、お兄ちゃ〜〜ん、怖〜〜い♪」
「三択さん!!美紗が怖がってるじゃないですか!!ここはレース場じゃないんですから
安全運転して下さいよ!!」

卓也の膝の上で鼻息を荒げ、わざとらしくガタガタ震えている美紗を卓也は優しく
頭を摩ってあげていた。

何よ何よ何よ!!そんなに妹の方が大事なの?
こいつもこいつで、この時とばかりにベタベタ甘えやがって!!
今に見てなさいよ!!

羨ましそうに美紗を見ていた三択だったが、ふと目が合うと美紗は


あっかんべー


「姉さん、三択様ハンドル齧って唸り声上げてますけど、どうしましょう?」
「し―――、喋っちゃダメよロケットちゃん。関わっちゃうと怪我するわ」





490名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:54:52 ID:2IOrExuV
>>488
いや、逃げたんだけどたまたまネタ思いついたから投下したんだろw
よく見かける光景だよ
491名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:55:35 ID:x2ZVXGtD
山本君の作者のことかーーーーw
492名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:56:17 ID:5fR1xcfY
>>491
ワロタw
493名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:56:20 ID:9l7SaNz6
いや、今度はホワイトデーネタで行くって前に宣言してたぞ
494修羅サンタ「白い日編」 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 22:56:51 ID:PwW34IBz
そしてホワイトデ―当日

放課後、バレンタインデーのお返しにと、あちこちで可愛い包みを持った
男子生徒が歩いている光景を尻目に、美紗は廊下を歩いていた。

う〜〜ん、お兄ちゃんったら急に屋上に呼び出したりして、何か話しでもあるのかな?
それとも今日はホワイトデーだから、バレンタインデーのお返しをくれるのかしら。
んもうお兄ちゃんったらそんなに気を使うこと無いのに……
ちょっと手でも握って愛を語ってくれればそれだけでもう……
お兄ちゃん待っててね〜〜、今行くから〜〜♪♪

上機嫌でスキップしながら廊下を歩き、屋上に続く階段の入り口まで来た時―――

「むっ!!」
「……何睨んでんのよ」

反対側の廊下から三択も同じ様にスキップしながら階段に近づいてきた。

ちっ、嫌な奴に遭っちゃったわ。
おっと、こんな奴の相手なんかしてられないわ。早くお兄ちゃんに逢って……グフフ♪

階段を上る美紗。その後ろからついてくる三択。

「……何でついて来るんですか?」
「それはこっちのセリフよ」
「ついてこないで!!」

少し早足になる美紗。ついて来る三択。
さらに早足になる美紗。まだついて来る三択。

最後には猛ダッシュで走り、三択もダッシュしていた。
屋上に出れる扉まで来た時には二人同時に着き、同時に出ようとしたために出口で
引っかかってしまい

「ちょっと邪魔!!私が先よ!!」
「アンタこそその無駄にデカイ胸を何とかしろ!!」

出口で押し合いへし合いして暴れていたら、出口で挟まっていた
これもまた無駄にデカイ三択の尻が外れ

「きゃ!!!」
「いたた……やっと屋上に出れたわ」
「二人とも何してるんですか……」
495名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:57:26 ID:I0Nh39SW
>>493
サンタとホワイトデー関係なくね?
まぁ読んでないからどうでもいいけど
496修羅サンタ「白い日編」 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 22:58:37 ID:PwW34IBz
声がしたので、二人して見て見ると卓也が呆れ顔して立っていた。

「お兄ちゃん!!……んもう愛の告白なら家の方が……」
「さて、妄想に浸ってる妹は放って置いて……どうしたの?急に呼び出したりして」

むっとした美紗を無視して話しを進める三択に対して、卓也は

「今日はホワイトデーじゃないですか。だからはい、プレゼント」

卓也は手に持っていた包みを二人に渡した。
ちょっと驚いた二人だったが、直ぐに笑顔で

「あ……ありがとうお兄ちゃん……ちぇ、告白じゃないのか……」
「あら、ありがとう卓也。開けて見てもいい?」
「ええ、どうぞ」

三択は、卓也から貰った小さな包みを開けた。中には―――

「へぇ〜〜いいじゃない。気に入ったわ。ありがとう」

それは真紅に染まったハイソックスだった。

「三択さん、いつもミニスカートじゃないですか。だから似合うかな……と思って」
「お、お兄ちゃん!!わ、私も見て良い?」
「もちろん」
497名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:58:51 ID:EFz1ypf2
>>495
そんなこといったらサンタと嫉妬なんて全然関係ないだろ
498修羅サンタ「白い日編」 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 23:00:11 ID:PwW34IBz
あいつがハイソックスなら私は何だろう?
まあお兄ちゃんからのプレゼントだったらどんな物でも嬉しいんだけどね。
美紗も続いて袋を開けた。すると―――

「え?!これってまさか……」

それは漆黒に染まったハイソックスだった。

「ね、ねえお兄ちゃん……一応確認するけど、このハイソックスってもしかして……」
「そう、三択さんのハイソックスとお揃いだよ」

それを聞いた瞬間、美紗は握っていたハイソックスを本能で屋上から投げてしまうのを、辛うじて
理性で押し留めた。
如何なる物であろうとも、愛しい兄からプレゼントされた物は美紗にとって宝物なのだ。だが―――

「お、お、お、お兄ちゃん!!!何で!!どうしてよりによってこのクソババアと
お揃いの物なのよ!!」
「ふん!!それはこっちのセリフよ」

睨み合っている二人の視線の間に卓也は割り込み、優しく美紗の手を握り締めて

「お兄ちゃん……」
「いいかい美紗、三択さんが来てからというもの喧嘩ばかりしてるだろ?
つい先日も車に轢かれて大怪我したじゃないか。このままだと取り返しのつかない事態に
なるんじゃないかって心配なんだ」
「う、うん……」
「だから、手遅れにならないうちに三択さんと仲良くなってもらおうと思って
このプレゼントを買ったんだ。三択さんも美紗と仲良くしてもらえますか?」

横で冷ややかな目つきで聞いていた三択は、暫く考えて

「まあ……私は異存ないわよ。だって将来私の「妹」になるんですもの」
「そんなことは未来永劫ありません!!!」
「三択さん!!そうやって美紗を怒らせるから喧嘩になっちゃうんですよ。
さ、握手して仲直りして下さい」
「「え―――…………」」

露骨にイヤな顔をした二人だったが、真剣な表情の卓也を見てとりあえずこの場を収めるため、
二人は渋々握手をした。

(卓也の手を握ったこんな手、潰れろ!!)
(お兄ちゃんに近付くこの魔の手を捻り潰してやる!!)






修羅サンタ「白い日編」   完
499名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:00:58 ID:aFiRppXe
>>497
確かにw
でもほとんどのSSが嫉妬と関係ない、って話になるよwww
500名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:02:40 ID:yWYECI+B
>>493
サンタと銘打っている以上サンタネタ行くべきだろ
ホワイトデーネタなんてネタが無い証拠じゃねーの?
501名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:03:34 ID:RoHwrvRx
まぁなんと単発IDが多いこと・・・

>>498
GJ。明るめの作品も好きだよ。
502名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:04:53 ID:RUnUhm4g
>>500
年に2回しか投下できなくなるだろ。

とマジレスしてみる。
503名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:04:54 ID:9xRJtjzX
ちょいとのぞいたら投下ラッシュktkr
生殺しの両手、完結の白き牙、久々の修羅サンタ全て堪能させてもらいました。
各作者様そろってGJ!
504 ◆n6LQPM.CMA :2007/03/14(水) 23:04:59 ID:PwW34IBz
それでは投下終わります。
505名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:05:57 ID:g44BCR/8
>>458
GJ!あんた、できる子だなぁ…。
ルールを破って指摘した俺のことなんて荒らし扱いしてくれても良かったのに、
ちゃんと書き方見直してくれたんだね。

>>472
お疲れ様です。
完結しましたねー…。長い作品が終わる時って感慨深いです。
506名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:06:07 ID:RUnUhm4g
つか俺を含めて皆割り込みすぎ
投下終了のレスがあるまでROMらないと駄目だろ
507名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:08:14 ID:l5Q97dsk
>>478
>>480
>>483
>>484
>>486
>>488
>>490
>>491
>>492



自作自演 (´,_ゝ`)プッ
日本語がおかしいですよ

>>448
負けず嫌いの典型的なパターンか・・
レスを返す意味もないのに返す
ただの荒らしか・・。

こんな幼稚な荒らしごときで嫉妬SSを
止められると本気に思っているんだろうか?
508名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:08:48 ID:4ri2So7D
>>472
GJ!楽しませてもらいました。
次回作も期待してます、お疲れ様でした!!
509名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:09:08 ID:8GXUXtU2
割り込んだ奴は単発IDの荒らしだろ。


修羅サンタの人GJでした。
510名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:09:32 ID:RoHwrvRx
>>504
割り込んでスマソ
511名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:25:40 ID:NbFTSyZk
割り込む奴は普通に荒らしだろうに
お前は箸の持ち方も知らない奴らだな
512名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:31:10 ID:X21+t8uv
GJ!
やっぱり修羅サンタは面白いな
次回も期待しています
513512:2007/03/14(水) 23:31:42 ID:X21+t8uv
ageてスマソ
514名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:34:34 ID:lYwHWJva
◆n6LQPM.CMA 氏、投下乙!
記憶あいまいだけど、修羅サンタシリーズをホワイトデーに投下すると
予告していたような希ガス。有限実行の魂に感服したよ。
515名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:42:26 ID:akXb/a2y
嫉妬SSを読むと心が癒されてゆくのはなぜなのだろうか・・
女の子の嫉妬がここまで俺の心を清らかにするとは・

ぜひ、女の子に監禁されて甘い生活を送ってみたいです
516名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:43:12 ID:eJ4KdshV
>>458
これは休みだからホワイトデーのお返しを
していない俺の未来か・・・
続きを激しく期待っ

>>472
完結お疲れ様です
次の作品も期待します

>>504
投下GJです
次は長編の方の更新を是非にー
517名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 23:44:18 ID:fZ3Y9ZZ8
反応する馬鹿も含めて「荒らし」です
518名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 00:17:05 ID:XLJ/KlSu
>>472
お疲れ様でした。
クリス好きにとってかなり辛い結末で……(つД`)
519名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 00:49:53 ID:Sa00cIhr
サンタの人と白い牙の人両方乙です
ホワイトデーの次は花見かな? とにかく次回投下も期待してます
520緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/03/15(木) 00:54:01 ID:1bv1Oo8w
『決心少女の戦う日』
改め
『七戦姫』
を投下します。
521七戦姫 2話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/15(木) 00:56:00 ID:1bv1Oo8w

 時刻はそろそろ正午に達しようかという頃。
 近衛隊隊長と王子護衛隊隊長は、王城の中庭で日課の訓練をこなしていた。
 姉の近衛隊隊長イクハは、足下から胸元までの長さの棒を。
 妹の王子護衛隊隊長ユナハは、己の身長を遙かに超える長大な剛槍を。
 それぞれ手にし、模擬戦闘を行っていた。
 
 模擬戦闘といっても、実戦形式で行うわけではなく、
 予め決めた型を、申し合わせたタイミングで繰り返すといったもので、
 それぞれの技のキレを目で確認し、相互に指摘する作業に近かった。
 
 姉は杖術、妹は槍術。
 それぞれが扱う武器は異なれど、その熟練度は他の兵士を圧倒する。
 昼の休憩時間に行われるそれは、城の名物と化しているため、
 部下の兵士や王直属の臣下らの目を、常に惹き付けていた。
 
 と。
 
「――姉さん」
 
 姉と訓練中だったユナハが、中空を見つめて動きを止めた。
 イクハも妹の行動の意味を悟り、重い溜息をその場で吐く。
 
「……来たのね」
「うん。山間を越えたところだと思う。すぐに着くよね」
「まあ、あのトカゲ女が寄り道するとも思えないし、一直線でしょ」
 
 イクハはやれやれと肩を竦めながら棒を収める。
 相手は、名目上は賓客のため、正装で出迎えなければならない。
 それがたとえ訓練中であろうとも、王の護衛であるイクハは、
 他の全ての用事を切り上げ、王の元へ馳せ参じなければならない。
 普段なら、前もって連絡が寄越されるため、イクハも前もって準備できるのだが――
 
「昨日、大会のことを知って、早朝飛び出したってとこかしら」
「私たちも昨日知ったばかりなのに……」
「伝達の“竜”が来てないってことは、それこそ唐突に飛び立ったってことよね」
「ま、頑張ってね。姉さん、行ってらっしゃい」
「? ユナハはクチナ様のところに行かなくていいの?」
「私はほら、休憩時間中だし」
「トカゲ女がクチナ様のところに寄らないわけがないじゃない」
「んー、でも今はツノニさんがいるし」
「……ああ、あのメイドね。っていうかユナハ、あんたあいつを信用しすぎ。
 もうちょっと危機感を持った方が――」
「ほらほら姉さん、早く準備しないと主国の竜騎士様が着いちゃうよー?」
「ああもう! わかってるわよ! また後でね!」


522七戦姫 2話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/15(木) 00:56:57 ID:1bv1Oo8w

 むくー、と頬を膨らませながら、イクハは城の中へと駆けていった。
 それを見送り、再度空へと視線を向けるユナハ。
 しばしぼんやりと見つめた後、おもむろに重い溜息を吐いた。
 
「あの人にも、勝たなきゃいけないんだよね……」
 
 
 * * * * *
 
 
 王子クチナの朝は遅い。
 常人より睡眠が必要な体質で、起きた後の数刻はまともに思考が働かないことも多い。
 故に、活動を始める時間は、下手すれば正午近くになることも多々あり、
 城に住む他者とは生活サイクルが違うのが常である。
 
 今日もそんな一日だった。
 起床直後にいつも通りの挨拶をユナハと済ませた後、
 ベッドの上で体を起こして、一刻ほどぼんやりしていた。
 
「ご主人様、朝食の準備が出来ましたよ。そろそろ食べられそうですかー?」
 
 と、そんなクチナに明るい声がかけられる。
 ゆっくりとした動作で声のした方に振り返ると、そこには見慣れた顔があった。
 身を包んでいるのはメイド服。年の頃は17、8といったところか。
 黒髪を後頭部で束ねていて、動くたび元気そうに跳ねている。
 にこにこ笑顔で銀盆を手にしている女性は、クチナ専属のメイドだった。
 
「……ありがとう、ツノニ。……うん、そろそろ食べられそうだ」
「はいはいっと、んじゃ早速――」
「……自分で食べられるよ」
 
 いそいそと食事の準備を進める女性に、クチナは予め断りの言葉を発しておく。
 しかし、メイドのツノニは全くめげず、メイドにあるまじき黒めの笑みをにやりと浮かべ、
 
「そう言って粗相したのは何日前でしたっけ?」
 
 そう、言った。
 それに対しクチナは反論を許されない。
 
「……うぅ」
「もう、最近は特に朝が弱いんですから、無理しないで甘えてくださいよう」
「……でも、やっぱり恥ずかしいし……」
 
 呟き、頬を赤く染めて俯くクチナ。
 それを見て、ツノニは黒い笑みをにへらと緩ませる。


523七戦姫 2話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/15(木) 00:58:03 ID:1bv1Oo8w

「ああもう! くっちーったら可愛いなあ!
 誘ってるとしか思えないわー! 頬ずりしちゃうんだからっ!」
 
 ひゃっほう、とクチナに飛び掛かるツノニ。
 使用人の身分では許されない、無礼な振る舞いだが、クチナが叱責することはなかった。
 ただ、おろおろと狼狽えて、辺りを気にするだけである。
 
「ちょ、駄目だってばツノニ! 誰かが見てたらどうするんだよ!?」
「へーきへーき。ユナちゃんはお昼の訓練中だし、
 他のメイドにはこっち来ないようにお願いしてあるし。
 あー、くっちーの肌ってすべすべで気持ちいいにゃー。すりすり」
「で、でも……」
「文句言わずにすりすりされてよう。
 人がいるときはちゃんとメイドのフリする代わりに、
 二人きりのときは好きなだけ甘えていいってくっちー言ったじゃない」
「そ、そうだけど……その」
「んー? それともアレかなー?
 女の子の柔らかいとこが当たって、えっちな気分になっちゃうのかなー?」
「……ち、違うよ」
「ああもう! 真っ赤になっちゃって可愛いんだか――」
 
 クチナの反応に気をよくしたツノニは、
 更にくっつこうとベッドに乗り込もうとして、唐突にその動きをぴたりと止めた。
 
「……ツノニ?」
 
 停滞は一瞬。
 メイドらしからぬ俊敏な動きで、ツノニは寝具や衣類の乱れを直した。
 
「――今日来るって連絡はなかったのに……。
 何か急な用事なのかな? はあ、せっかくの和み時間が……」
 
 ぶつぶつと愚痴を漏らしている。
 誰か来るのかな、とクチナは首を傾げた。
 そして少々の時が流れた後。
 こんこん、とノックの音が部屋に響いた。


524七戦姫 2話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/15(木) 00:59:03 ID:1bv1Oo8w

 どうぞ、と返事をすると、ゆっくりと扉が開かれていき、
 
「し、失礼するわ……」
 
 やや震えた声の少女が、クチナの寝室へと入ってきた。
 深紅の長髪に、蒼い鎧を着込んだ少女。
 クチナにとっては馴染みの深い相手だった。
 
「――ケスク様!? 本日いらっしゃる予定だったのですか!?
 も、申し訳ありません! このような格好で……!」
 
 主国の貴族に、慌てて居住まいを正して頭を下げるクチナ。
 それを見て、少女――ケスクはわたわたと手を振って、
 
「ち、違うのクチナ! 今日は私がいきなり来ちゃっただけだから!
 その、えっと、クチナはちっとも悪くないのよ! だから、頭を上げなさい!」
 
 己の髪よりも赤い顔で、クチナに対して捲し立てた。
 ケスクは「いきなり来てごめんね」「気を遣わせちゃってごめんね」と謝罪を繰り返し、
 クチナとケスクが何度も頭を下げ合った後、ようやく落ち着いて話し合う下地が整えられた。
 
 ちなみにそれらの様子を、後ろに控えていたツノニは、
「またかよ……」といった表情で呆れながら眺めていた。
 まあそれはそれとして。
 
 
「それで、本日はどのようなご用件でいらっしゃったのですか?」
 
 クチナのその問いに、ケスクは赤い顔でもじもじした後、
 
「……その、お見舞いに来たの」
「え? 別に最近は倒れたりはしてませんが──」
「そ、そうじゃなくて! 聞いたの、大会の話!」
「大会? それがお見舞いと何か関係が……?」
「だ、だって、お嫁さん募集するってことは、体の調子も悪くないってことでしょ!?
 だから、その、話を聞いて、えっと、すごく嬉しくなっちゃって……!」
 
 なるほど、とクチナは頷いた。
 要するにケスクは、こちらの体調が芳しいことを祝いに来てくれたのか。
 クチナにとってそれはとても嬉しい気遣いで。
 つい昔の口調で、幼なじみの貴族に微笑みかけていた。
 
「ありがとう、ケスク。とっても嬉しいよ」
 
 ぷしゅー、とケスクの頭から湯気が噴いた。
 各国に勇名を馳せる“竜騎士”も、これではただの少女だな、とクチナは思った。


525七戦姫 2話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/15(木) 00:59:45 ID:1bv1Oo8w

 ──竜騎士。
 
 それは主国の貴族の中で、剣技と騎乗に優れた者に与えられる称号である。
 
 クチナたちの国から、やや離れたところにあるゴジ山脈。
 そこに生息している、飼育しやすい種族の飛竜を、
 主国の貴族は軍事用に躾ているのは、周辺諸国の間でも有名な話である。
 ケスクはその竜騎士の中でも随一の若さと血筋を誇る若手騎士だ。
 
 属国の王子でしかないケスクの身分では、目通りすら叶わないはずの存在なのだが、
 彼女の父がクチナの国の管理担当であることが大きな要因となり、
 属国としては例外的に、クチナとケスクの交友関係は認められていた。
 
 特殊な肉体と不可解な能力を持つ竜を飼育する技術は、各国で様々な研究が進められているが。
 竜騎士はその中でも特に軍事に特化された存在で、称号を与えられることにも、
 高貴な血筋と圧倒的な剣技が求められるようになっている。
 つまり。
 この、クチナの前で赤面してもじもじしている貴族令嬢は。
 外見とは裏腹に、常識外れの戦闘能力を有しているということである。
 
 そんな彼女がどうして自分に執心なのか、全く以て理解できないクチナだったが、
 何はともあれ心配して貰えるのは悪い気分ではなく、
 いけないこととは理解しつつも、昔のように馴れ馴れしい態度で礼を言ってしまった。
 
 
「そそそ、それでね!」
 
 顔を真っ赤にさせて俯いていたケスクだが、
 おもむろに顔を上げて、クチナの方を真剣な表情で見つめてきた。
「な、何でしょうか……?」
 少女の気迫に、思わず一歩引いて応対してしまうクチナ。
 そこへずずいと顔を寄せて、鼻息荒くケスクは宣言した。
 
 
「──わ、私も大会に出場するから!」
 
 
 え? とクチナに首を傾げさせる隙もなく。
 ケスクは真剣な表情で捲し立てた。
 
「さっき、メイラ王に確認してきたけど、全然問題ないって!
 お父様にも剣を使って朝一で了承を貰ったから、クチナが心配することなんて無いんだよ!
 ──あ、別に不正をするつもりはないからね?
 正々堂々お邪魔虫たちをやっつけて、私がクチナのお、お、お嫁さんになるから!」


526七戦姫 2話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/15(木) 01:00:30 ID:1bv1Oo8w

 そこまで言ってから、息を整えるために口を閉じるケスク。
 その目はとても真剣で、有無を言わせぬ迫力があった。
 もともと竜騎士として活躍している剛の者である。
 クチナがその眼力に対抗できるはずはなく、間抜けそうに口を開いて、
 こくこくとカラクリ仕掛けの人形のように頷くだけであった。
 
「……く、クチナは、私がお嫁さんになるのは、いや?」
 
 恐る恐る、ケスクが訊ねてくる。
 そこでようやく、クチナは冷静に考える機会を得た。
 
 ──竜騎士ケスクが大会に優勝し、自分の妃になる。
 
 彼女の実力からいって、出場するとなればまず間違いなく勝ち上がるだろう。
 国同士の利害関係はさておくとして、純粋に個人としてのケスクは、
 クチナにとっても親しみ深い幼なじみなので、結婚することに抵抗は覚えない。
 むしろ、剣に打ち込む実直さと、こちらに向けてくれる純粋な好意は、
 嘘偽りのないもので、とても微笑ましく思っている。
 国同士のいざこざから、素直に祝福はされないであろう組み合わせだが、
 主国を楽しませるための催しにて決まった婚約なら、文句を言う輩も少なくなるだろう。
 
(……あれ?
 これって結構悪くないんじゃ……?)
 
 と、クチナが思ったところで。
 
 
「お話の途中申し訳ありません」
 
 
 いつの間にか。
 メイドのツノニが、すぐ近くまで歩み寄っていた。
 普段のケスクだったら、属国の使用人が話を遮るなど許さなかっただろうが、
 クチナに対して多分な照れを抱いていたのと、
 ツノニが接近する気配を感じ取れなかったことにより、
 大人しく、割り込んできた使用人の言葉を待っていた。
 
「御竜騎士様。ご主人様は朝の服薬を済ませておりません故、
 宜しければ後ほど改めてお時間を取って頂けないでしょうか?」
 
 要は「話に花を咲かせるのは後にしろ」ということである。
 属国の使用人が主国の貴族に言うには無礼すぎる言葉だった。
 しかし、クチナの身体の事情をよく理解しているケスクは、
 はっとした表情を見せた後、クチナに対して申し訳なさそうに、
 
「ご、ごめんねクチナ……。
 私ってば、興奮しちゃってクチナのことも考えなくて……。
 ま、また今度、ちゃんとしたお見舞いの品を持って来るから!
 今日のところはこれで失礼するね! さよならっ!」
 
 そう言うなり、身を翻して部屋から飛び出ていった。
 返事を言いそびれたクチナは、ぼんやりとケスクが出て行った扉を見つめるのみ。
 
 
 
527七戦姫 2話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/15(木) 01:02:09 ID:1bv1Oo8w
 
 
 
 ──と。
 
「ご主人様」
 
 気のせいだろうか。
 少し部屋の温度が下がった気がして、クチナは身を震わせた。
 
「少々お伺いしたいことがあるのですが」
 
 気のせいだろうか。
 寒気の出所は、すぐ近くのメイドから発せられているように感じた。
 
「──“お嫁さん”って、どういうことですか?
 あと、さっきの問いに『悪くないかも』って思いましたよね?」
 
 何故だろう。
 クチナは、ツノニの方を見ることができなかった。
 見たら、なんというか、とても怖い思いをしそうだった。
 しかし、そんなクチナの思いなどお構いなしに。
 ツノニは再び、ベッドの上に乗り込んできた。
 
「……結婚しちゃうの?」
 
 そう問うツノニの瞳は甘く濡れていた。
 そこに、忠実なメイドの面影は欠片もなく。
 主を愛しく思う一人の少女が、其処にいた。
 
「……貴方が結婚しちゃったら、あの約束は破棄することになっちゃうよね?」
「そ、それは……その……」
「そうなったら……貴方は私のご主人様じゃなくなっちゃうよね?」
「ま、まあ、言葉通りになるんだったら、、確かに続けるのは無理になるけど」
 
「そんなの、いやだ」
 
 呟く少女の瞳は暗く、どこか虚空を見据えていた。
 
「──『私は、クチナ王子の“女”でいる限り、クチナ王子を殺さない』」
 
 昔交わした約束を、一言一句違わずに、ツノニは口にした。
 クチナもはっきりと覚えている。
 5年前、自分を殺しに来た他国の暗殺者。
 約束を守るために祖国を抜け、クチナのメイドとなった少女。
 
「貴方のお嫁さんにはなれなくてもいい。
 でも、貴方が他の女のものになってしまうのは、嫌」
 
 こちらの胸に顔を埋め、染みこませるように呟く少女に。
 クチナは何と返していいかわからず、気まずい沈黙が部屋に残った。


528緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/03/15(木) 01:03:28 ID:1bv1Oo8w
略称がどうもしっくりこないので改題しました。もうシンプルに。
今回はケスクの紹介と新キャラを少々。
これで4人。あと3人。
今作『七戦姫』は、血塗れ竜よりファンタジー度はやや高めになります。
ので、残り3人もかなりアレなキャラになりそうです。
どうして自分はこう、特殊な環境に育ったヒロインが好きなのか……。

>>458
ドキドキします。GJ!
こんな暖かい修羅場を私も書いてみたいです。
続きがとても楽しみ。というか衝突がとても楽しみ。

>>472
完結乙です! GJ!
白き牙ではクリスがお気に入りだっただけに、ラストには思わず涙してしまいました。
血塗れ竜を連載していた頃は数少ないファンタジーの同士として少なからず励まされていました。
本当にお疲れ様でした。

>>504
ホワイトデーGJ!
軽快なノリでとても楽しませて頂きました。
次は四月馬鹿か黄金週間か。
何にしろ楽しみにサンタさんがやってくるのを待たせて頂きます。
529名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 01:07:37 ID:Sa00cIhr
>>528
投下GJです!
ヒロインが多い分描写も大変だろうけど頑張ってください
530名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 02:01:39 ID:Egwa3ey/
>>528
おお、待ってましたよ!
ケスクが良いなぁ
531名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 02:02:23 ID:ricYjhMU
>>472
長い間お疲れ様でした。
クリスはかなしかったけど最後に救いらしきものがありましたので…
532名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 02:26:16 ID:a/aEom0S
>>472
つまらない作品は最後までつまらないんだね
533雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/15(木) 03:37:52 ID:jNLdVqvK
投下します
534雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/15(木) 03:39:11 ID:jNLdVqvK
  雨の音  第4回
 
「…専属メイド?ヒビキに?
 ……必要ないわね。却下よ」
朝、髪を整えにやってきたメイドから、響に専属のメイドがつくことになった事を聞いた
シオンは、強い口調でそう言った。
「でも、お嬢様、これはだんな様がおしゃられた事ですので…」
「お父様が?
 …そう」
ぎっり、と爪を噛む。
お父様の意見じゃ、変えられないわね…

 シオンの頭に思い浮かんだのは、今自分がされているように、メイドに甲斐甲斐しく
髪のセットをされている響だった。
猛烈に気に入らない。
響も、想像の中の響の専属メイドも気に入らなかった。

「…へ?専属メイド?僕に?
要らないよそんなの」
クッキーをほうばりながら、響は答えた。
「でもねー、これ、旦那様の言いつけなのよ。
 君はうちの大事な客人なんだから、最上級のおもてなしを、だって」
清華はお茶を煎れながら返事をする。

 二人が話をしてるのは、清涼院宅の庭の片隅。
響のバイオリンの時間に合わせて、清華はお菓子を持って現れる。
そしてバイオリンの練習が時間が終わると、二人で喋りながらお菓子を食べる。
持って来てくれるお菓子はいつも手作りのようだ。おいしい。

「良いじゃない。折角だからつけて貰いなさいよ。
 きっといい気分よー。
 ああ、でも、いくらうちのメイドさん達、皆可愛い子だからって、手を付けちゃあダメよー?」
ニヤニヤと、清華。
しかし響は、
「……?テヲツケル?
 ……って、何」
「あはは、その内わかるよ」

535雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/15(木) 03:40:05 ID:jNLdVqvK
その後、しばらく談笑した後、清華は仕事に戻り、響は部屋に戻る。
自分の部屋に戻るまで、響はさっきの話を思い返していた。
最高のおもてなし、か…
それならメイドをつけるより、シヲンのほうをどうにかして欲しかった。


その日の夕方。
久しぶりに屋敷に幸一が帰ってきた。
幸一とシヲンと響、三人で夕食をとり、寝るために自室に戻ろうとする響に、
「ああ、待ってくれ。ちょっと話があるんだ」
と声をかけた。

「そろそろ、新しい年度に入るからね。響君も新しい学校にいく事になるんだが…
 まあ、そのための手続きやら何やらをしなくちゃ駄目なんだがね、本来なら保護者になった
 私がそう言ったことをすべきなんだが、悪いんだが、今研究所の方が立て込んでてね。
 そこで、そう言ったことを任せれる、君用の使用人をつけることにしたんだ」

響の専属メイドの話とわかると、それまで眠そうにソファー寄りかかっていたシヲンの顔が急に曇った。
それに気が付いた響は、「あんたの面倒を見させるために、メイドを雇ってるんじゃない!」
とか言って突っかかってくるんだろうな、と思い、気分が重くなった。

「おおい!こっち来てくれ!響君に挨拶してくれ」
幸一が声を上げると、ドアの向こうから返事が聞こえた。
その声に、聞き覚えがあった。
…ひょっとして…

「では、改めて自己紹介させて頂きます。
 わたくし、本日付で響様の専属メイドに任命された、清華、でございます。
 至らぬ所も多く、ご迷惑をお掛けしてしまうと思いますが、何卒、宜しくお願いいたします」
そういって、ニコリと営業スマイルを響に向ける。
何時ものテキト−な様子とは違い、何処に出しても恥ずかしくない振る舞いだった。

ポカンと響がしていると、
「だんな様。
 響様は、どうやらもう眠気が来ているようです。
 よろしければ、もうお部屋の方にお連れしときますが?」
きびきびした様子で幸一に尋ねる。
「ん、そうか。すまなかったね、響君。
 じゃあ、清華、響君を頼む」

おやすみなさい、と幸一に言って、リビングを出、清華の後ろについていく。
静々と歩く様子も何時とちがう。
どうしちゃったんだろ、と思っていると、部屋の前に着く。
清華がドアを開けてくれ、中に入るように促す。
響が部屋に入った後、清華も入り、ドアを閉める。

その瞬間、
「はー――、肩こった」
と、清華はズルズルとその場に座り込んだ。


536雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/15(木) 03:40:47 ID:jNLdVqvK
「…で、なんであのメイドが専属になった訳?」
響がリビングを後にしてすぐ、シヲンも自室に引き上げた。
そこで、自分の専属メイドを呼び出し、清華がどういった経緯で響の専属メイドに
選ばれたのか問いただしていた。

シヲンは響と清華が毎日会っている事は知らなかったが、もし響からの要請というのなら
許せない、と思った。
「いえ、私たちメイドが集まって、誰がいいかと話し合っていたんですけど、そのとき清華が
 立候補したもので」
「立候補!?……自分から言い出したの?」
…あのメイド、どういうつもり?
専属になる、という事は四六時中、主と一緒にいる、という事だ。
それを、自分から希望したなんて…

我知らず、シヲンは爪を噛んでいた。

「…まあ、清華が言うには、お給料が増やしたいから、といってましたが」
 専属になれば、手当てがつきますから…」
シヲンの機嫌が悪くなっている事に気が付いたメイドが、恐る恐る、といった感じでつけたした。
「…それ、本当?」

…だとしたら、特に他意は無いのかしら?
……それもそうよね。誰が、ヒビキなんかに構おうって言うのかしら。
そんなオロカモノ、いるはずが無いじゃない。

そう思えば、胸にあったイラつきが少し減った。
だが、皆無にはならなかった。


「まあ、専属手当てが欲しかった、てのもあるけど…」
ベッドの横に座って、清華は話していた。
「実はね、私、弟がいるのよ」
そういって、清華は彼女の弟の写真をみせてくれた。
「ほら、君と年も近いの。
 だからかな、なんとなく、君を可愛がってあげたいの」
そういって、清華は優しく響の頭を撫でてくれた。

どうして、専属になってくれたのか?
そう尋ねたら、清華はこう答えてくれた。
撫でてもらった頭に、まだ暖かさが残っている気がする。
清華のことを考えると、なんだか暖かくなってくる。

その想いが、初恋であった事に気が付くのは、響がもう少し成長したときだった。
537雨の音  ◆tTXEpFaQTE :2007/03/15(木) 03:44:39 ID:jNLdVqvK
投下終了。
538名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 03:53:39 ID:qzEp/iqH
今回もGJ!!!
次回にwktk
539名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 03:57:28 ID:9sC1SHs9
GJすぎる!!
今1番楽しみにしてる作品なので続きもwktkして待ってるよ!!
540名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 04:41:16 ID:TY1pEv2w
好きな作品ばかり投下されてる!!
今日はいい日になりそうだな
541名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 04:43:47 ID:Y/vMHShF
こう立て続けだとうざくもある
なに対抗心むき出しにしてるのかと
ちゃんと完結させてから投下しろよ
542名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 05:31:23 ID:x3GdKjVO
お二人ともGJ!
続きを全裸で待ってます
543名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 08:18:01 ID:M2tX/VXn
>>541
自分が完結できなかったからって僻んでんじゃねーよ。
このSS職人のなり損ないが。お前の正体はわかってんだぞ。
544名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 09:13:22 ID:6dmXoNg8
亀レスだが・・
>>511
俺は>504の前に割り込んだから謝罪したんだ。
>506がいってるだろ?投下終了レスがでるまでROMは基本だと。
545名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 10:13:54 ID:y8LZ23rV
>>544
昔ならそんなことを言われなくても当たり前に出来たことなんだけど
嫉妬豚辺りが作者に誹謗中傷や叩いたり、投下途中のマナーを守らないからな

俺もいい加減に粘着荒らしにスルーをすることを覚えることにするよ
荒らしに無駄な気力を使う必要がないとことを悟った。

更にレスを返すと荒れてしまうので、神が嫉妬スレから離れるという悪循環を生み出している

俺達の嫉妬SSを読むことで荒波の激しい人生をなんとか生きている仲間じゃないか。
嫉妬SSが読めない日々を想像してくれ・・人生最大の娯楽を失うことになる。

マジで禁断症状が出そうだ
546名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 10:28:29 ID:qndGHR4+
俺は住人同士の嫉妬・修羅場を見るためにここに来ているわけじゃないんだがな。
547名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 11:24:15 ID:IK9pvdEk
>>528
全方位を凶器娘たちに囲まれてドキドキですね。
すでに流血沙汰は避けられない!っていう感じの雰囲気が素敵です。

あと今のところは恋する竜騎士のケスクさんがお気に入りです、優勝候補
の一角というポジション上、キツイ状況に追い込まれてしまいそうな気はし
ますがそれもまた楽しみであります。
548名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 11:39:38 ID:a/aEom0S
>>545
長文ウゼ
549名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 12:48:25 ID:C0w8rqaw
どんな内容だろうが、スレ内で他人を煽る奴は間違いなく荒らし
550名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 13:20:43 ID:Y3X9ObZz
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 |  次でボケて!!!   |
 |________|
    ∧∧ ||
    ( ゚д゚)||
    / づΦ
551名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 13:22:31 ID:E90H+GKQ
   ` ー- .__ ,. 7′          _ .. -┴‐- 、
            / /|   _ -― ァ-‐  ̄          l
           /   / ! ! / |     |  /    _ .. -‐.、 |    /
        /  / / | |.!    / /| {   ,∠三三ミ. ヽ | /   -
         /   ! ! {_||  /{ /=!   {‐   ̄ `ヽヽ } |/ / _  全力で
      /    | | | /|  { ヽ._j_ -  } \、   `ハ/ 三三三
      _../   | | ! .|/l | \ ー‐ ,ィー\、 ト.      ̄ `‐z 三  >>548の人気に嫉妬しろ!!
  ,. ‐, -/      l  l |  ! !|′ ` ̄ ヾ 逝jヽトl         `>z
// イ       |  !| /  ! !     ヽ\  ト| V|    //
r'  /|  ⌒ヽ. |  ||V  | |         ` ̄、 ヽ.| /' /イ __ ノ
  /  |     } } !  |! V | !           ヽ、{z_/≦三テ/..-
 /  |   ノ//  }| V | l             /^辷'ノ/´
/  / |rー '/ _/ ノー、 V|.|  , <丶        /   /
  /  j   /ヽ/  ハ-V!V{′ \\  r--   イ
     く   /  /  /    Vト、    }`¨> .イ´ /
      ヽ |   /  /  /  ハ-へ ___/z</ /
        l |  ′  { /    >ミ_ /‐  イ  ̄
       | |    r__ュ  __ / -‐_.. ‐ ´ j
552名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 13:30:19 ID:6z0tUkvw
>>551
AA荒らしウザス
553名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 13:31:04 ID:JGeTIbFZ
うっせえオレンジ
ギアス荒らしは引っ込んでろ
554名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 13:41:32 ID:uHOtDNSl
>>551
AA荒らし氏ね
555名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 14:05:29 ID:OZvBFYTw
>>551
AA荒らし市ね
556名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 14:06:00 ID:PhF/47FN
>>551
AA荒らしキエロ
557名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 14:06:40 ID:E90Q8xFV
>>551
AA荒らし誌ね
558名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 14:07:34 ID:t5dTmyCg
>>551
AA荒らし士ね
559名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 14:09:23 ID:zMiCvrUQ
560名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 16:00:02 ID:qzEp/iqH
仲良くしようよ
561名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 16:13:06 ID:WQwaa4R4
単発IDが荒らしている
この時間帯に書いているってことはひきこもりか
562名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 16:26:13 ID:JGeTIbFZ
まあ、何回かAA荒らしは来てるよね
563名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 16:38:48 ID:MdjVnROB
どう見ても自作自演です。
時間の感覚も短すぎ
564名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 16:55:21 ID:WQwaa4R4
別に荒らしはどうでもいいから
嫉妬関連の話題をして、空気を元に戻さないか?
565名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 17:45:38 ID:TLmIUSJe
>>537
超GJ!!
良い感じでツボを心得てますな。
これからの展開がますます楽しみです。
566名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 17:45:55 ID:ths5clox
>>528
暗殺者キャラは絶対に寡黙で無表情だと思ってたのでこれには意表を突かれた


つーかツノニ萌え
567名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 18:08:00 ID:qRwqLdzX
まぁageてる香具師は確実に荒らしだけどね
568名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 19:00:16 ID:YckCGaox
>>528
マジGJ!
乙!
569名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 19:51:20 ID:4HI4i0Cw
【海外/英国】トライデント級にかわる 核ミサイル搭載可能な潜水艦新建造 下院で承認
http://news22.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1173935805/

トライデント氏、実は有名人?
570名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 20:21:25 ID:kdEkh1Yr
>>472
遅ればせながらGJ
でも、ある意味NTRよりきついわ……
571ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/15(木) 20:44:02 ID:1r2NJ1q+

『Tomorrow Never Comes(後編)』


 最初に目に付いたのは、立ち尽くしている一人の騎士。
足元に転がるそれを呆然と見つめ、何をするでもなくただ立っていた。
まるで夢遊病者だ。
細部の確認までできなかったが、腕をダラリと下げて、握っていたであろう剣は床に取り落としていた。

 足元に転がっているのは――なんだ。
全力で走っているせいで、視界がぶれて確認できない。

 だけど、立っている騎士がマリカだったことだけは辛うじて分かった。
彼女は虚ろな瞳でそこに立っていた。いつもなら銀の光沢を放つはずの鎧に、真紅の斑点を作って。


「マリカッ…!!」
 俺は慌ててマリカに駆け寄った。
 バクバクと悲鳴を上げる心臓の音が耳障りだった。
焦燥感に乗じて気分の悪さがより一層酷くなる。

「おいっ!?マリカ、しっかりしろ!
ケガは…っ!?ケガはないか!?」

 魂が抜けたように膝を付いている彼女の肩を、何度も揺さぶる。
本当に怪我をしているなら決してすべきことではなかったが、俺もすっかり気が動転してしまっていた。

「―――?
ああ、ウィルか。
わたしは、だいじょうぶだ」

 カラクリ人形みたいな動きで俺に焦点を合わせ、呟くように答えるマリカ。
声色にも魂が篭っていなかった。
 が、とりあえず目立ったところに傷を負っているわけではないらしい。

「本当だな…?
……ああ、よかっ―――――ッ!?」
 ひとまず安堵のため息を吐こうとマリカから視線を外したとき、俺は戦慄した。

 やや離れたところと、足元に転がる二体の遺体。
老いた方の騎士は――生前の顔は知らないが、恐らく姫様の王の盾だ。
胸を一突きにされ、絶命している。多分、不意打ちか何かで一瞬で殺されたんだろう。剣が鞘に収まったままだった。
 そして、もう一体。
そっちは俺のよく知る顔だった。
血だまりの中に、その身をうずめている若い騎士。
その死体が身につけていたのは、訓練部隊に支給される専用の軽鎧だった。

「……エ、エリオット…」
 彼の瞳が、じっとこちらを凝視している。
エリオットは首の肉を半ばほどまで切り裂く斬撃で頚動脈を切断され、己の血の中に沈んでいた。
572ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/15(木) 20:44:55 ID:1r2NJ1q+

「……エリオットに、襲われたんだな?」
 じっと床から視線を離さないマリカを覗き込んで、ゆっくり尋ねた。
「…そうだ」
 ぼそりと。
瞳を動かせることなく、彼女は呟いた。

「…わたしが、ころした。わたしが、ジュダスを、ころした。わたしが…こ、ころし…ころ…」

「わかった。わかったから。もう言わなくていい」
 カタカタと身を震わせ始めるマリカの背中を、軽く叩いて落ち着かせようと試みる。
「こわかった……しぬかと、おもった」
 恐怖からくる震えなのか。それとも泣いているからなのか。
どちらにせよ、正常な反応だ。彼女は今日、初めて実戦で人を殺したのだ。
しかもその相手が同僚なのであれば、彼女の心中を察するの容易い。

「…そうだね。だけど、今は大丈夫。マリカは……生きてるよ」
 肩を振るわせ続けるマリカの背中を、俺はしばらく擦り続けていた。





―――――――――・・・・・




 酷く寒い。
だが、いくら身を縮こまらせても、筋肉が硬直せずちっとも温かくならなかった。
鎧はもう脱いだはずなのに、まだ身体が重い。
血の匂いも未だに鼻について吐いてしまいそうだ。


 これほどの挫折を味わったのは初めてだ。
身体中の筋肉が脱力しきって、何もする気が起きない。視線を移すことすらも億劫だった。
 今なお残る、右手の感触。剣の重さと肉を切り裂く感覚が、掌にへばりついて取れない。
それを拭いたくなる気さえ起きないあたり、自分でも相当ショックだったんだと余計に分かった。

 ウィルに続いて皆が駆けつけた頃には、わたしの涙はすっかり乾いていた。
ラモラック卿や騎士団長に全ての事情を話すと、彼らに「今日はもう帰っていい」と言われ、そのまま寮の自室に戻ってきた。
今はその自室で、腑抜けのように縮こまっている。
 時間が経てば少しはこのショックも和らぐと思ったが……。
どうやら浅はかな願いだったらしい。
 彼と交わした最後の言葉が今も頭の中で反芻して、睡眠を取るどころではなかった。

『な、マリカ。言ったとおりだろ?俺たちは、いつ明日が来なくなってもおかしくないって』

 そう言って剣を振り上げていたときのジュダスの瞳は、酷くすまなそうにしていた。
彼を斬った瞬間飛んできた飛沫の温かさが、今も頬に残っている。
 
「――――おのれ」
 ぎり、と歯を食いしばる……気も起きなかった。身体をすっかり疲れ果てているというのに、心が休息を許してくれない。
573ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/15(木) 20:45:32 ID:1r2NJ1q+

 わたしが打ちひしがれている理由は、二つだ。
 先ずひとつ。初めて人を殺して、これほどまでに参っている自分に失望していること。
そしてもうひとつは、それ故にウィルとわたしとの間を隔てている壁は予想よりも遥かに分厚かったことだ。

 騎士を志した幼いころから、わたしは何れこうなることを覚悟していたつもりだ。
もし仮にそれが同僚だったとしても、わたしは騎士としての責務を果たす。そのつもりだった。
だがジュダスの裏切りは予想以上にわたしの精神を蝕んでいた。いや、正確には彼の裏切りはきっかけにすぎない。
 人を斬る感触があれほど生々しいとは。ついさっきまで笑っていた同僚が、こうも簡単に骸に成れ果てるとは。
殺し合うことの恐さが今もなおわたしをを苛む。
 
殺し殺される恐怖で無様に震え、この体たらくだ。これ以上の失望はない。

 そして、それよりも。
以前まで近くにいると思っていたウィルが、今は果てしなく遠い存在に感じるのが一番堪えた。
実戦経験があるのとないのとでは、こうも違うものなのか。
ウィルとわたしとでは、こんなにも差があるというのか。
 たとえ彼がわたしよりも先を歩いているのだとしても、走れば追いつくものだとばかり思っていたのに。
自覚はなかったが、『今期一番のホープ』と言われ自惚れていたのかもしれない。彼と一番近いところにいるのは、わたしなのだと。

 だが、実際はどうだ。
すぐ近くどころか、住む世界すらも違うではないか。
たとえ剣の腕がいかに優れていようが、敵前で恐怖する者など使いものにならない。新兵以下だ。
ウィルが――――果てはあの戦姫も通ってきた道だというのに。わたしは、身を縮こまらせて震えている。
 彼らは、今までこんなにも恐ろしい体験を耐えてきたのか。
戦場という、わたしが感じたそれとは比べ物にならない体験を。
殺す恐怖と殺される恐怖が連鎖する場所を、幾度も潜り抜けてきたというのか…彼らは。
たった一度だけで、こんなにも。
わたしはこんなにも心が引き裂かれそうだと言うのに。

 結局のところ、戦姫とウィルは"あちら"側の人間なのだ。
わたしとはまるで違う。追い付く追い越す以前に、鼻っから出来が違うのだ。それを今日、徹底的に思い知った。
 わたしが安全な近衛隊に幽閉され、ウィルは戦姫と同じ遊撃隊に配属される。
理に適った転属ではないか。使いものにならないわたしなど、騎士にしておくのすら危険だ。

「なんで――――」
 勝手に涙が溢れてくる。
ついさっきまで、浮かれてウィルと同じ配属先にしてもらおうと自惚れていた自分が恥ずかしい。

剣を交え、同じ部隊にいたわたしよりも……たった一度出会っただけの、
しかもその一度すらも覚えていないマリィ=トレイクネルの方がよっぽど近い存在なのだ、ウィルにとっては。

 悔しさよりも、絶望。

 わたしより先に『騎士』としての名声を勝ち取っていたあの女は、彼さえもわたしから奪おうと言うのか。
同じ騎士の名家に生まれた筈なのに、あの女は当然のように騎士になり、皆から尊敬され。それに比べわたしは―――。
同じように幼い頃から訓練に励んできた筈なのに、あの女は建国以来最強の騎士と謳われ。それに比べわたしは―――。

 妬ましさよりも、諦め。

 父の言うとおり、わたしが血眼になってやってきたことはただのママゴトだったのだ。
剣の才にもまわりの環境にも恵まれた戦姫。多くを失い、確固たる覚悟を持って戦場に立つウィル。
 だがわたしには、あの女ほどの才能も、ウィルほどの覚悟すらもない。


――――所詮わたしは。
『騎士』というお遊びに夢中になっていた、何も知らぬお嬢様だったのだ。
そんなわたしが、どうして彼の隣で共に戦うことができよう。
574ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/15(木) 20:46:26 ID:1r2NJ1q+


「………ッ……ぅ……」
 胸が苦しい。呼吸が上手くできない。四肢がバラバラになりそうだ。
この無能め。無能め。無能め。無能め。無能め。無能め。
お前如きがウィルの傍で戦いたいなど――身の程もわきまえぬ愚か者が。

「無能……め。無能、め。……む、のう――――」



 昏い昏い闇に沈んでいく。
とうとう心の方も根を上げ始めたらしい。急速に瞼が重くなってくるのを感じる。
それすらも情けなく思いながら。
わたしはぽっかり空いた胸を抱いて、目を閉じた。






『えと、それじゃぁ……よろしく』
 そう言って剣を構える、わたしと同年代の少年。
彼と――最初に交わした言葉だ。確か、それに対するわたしの返事は「ふんっ」と鼻で笑うだけだったと覚えている。
それが最初。訓練合宿で剣を初めて交えた、あの瞬間がわたしと彼との関係の始まりだった。

 実を言うとそのときわたしは、他の者と同じく彼を快く思っていなかった。
従者として付き従う期間をすっ飛ばし、飛び入りでわたしたちと同じ部隊に所属した、元傭兵。
なぜ、こんな男が我々と肩を並べなければならないのか。
『騎士』という存在はそんな軽いものではない。誰かの目に止まっただけでなれるものではない。
そう憤慨して、彼を無視していた。
 今思えば単なる嫉妬だったのかもしれない。
わたしが何年もかけて歩いてきた道のりを、たった一跨ぎで追い付いてきた少年に。
こんなヘラヘラした少年に騎士など務まるはずがないと馬鹿にしていた。

 だから、此処で完膚無きまでに叩きのめしてやろうと思った。
騎士というものがいかに辛い道か教えてやろうと思った。お前が思っているほど軽いものではない、と。
 だけど実際は。

『ぐ……っ!?』
 とてつもなく重い一撃だった。
彼が使っている剣は我々より刀身が短かったというのに、肩の関節が抜けようかと錯覚するほどの重い一撃。
信じられない現象にわたしは目を瞬かせていた。

『…!?』
 更に追い討ちをかけられるように、わたしは恐怖した。
かまいたちの如く襲い掛かってくる斬撃を必死で受け止める中、彼の瞳が見えたからだ。

――なんて冷たい眼。

 視線だけで人を殺せてしまいそうな、身も凍る瞳。
さっきまでの彼の印象をガラリと変えるに足る、戦士の目だった。
彼にしてみれば、それでも本気ではなかったのだろう。
だが、わたしは騎士の厳しさを教えるどころか、戦場で戦うことの恐ろしさを見せ付けられたような気がした。

 あのとき。
もっとその意味をよく考えていれば。
575ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/15(木) 20:47:00 ID:1r2NJ1q+






「――ん…」
 体の気だるさに呻きながら、わたしは目を醒ました。
どうも夢を見ていたらしい。とりわけ悪い夢というほどでもなかったが、かと言っていい夢でもなかった。

「あ、ごめん。起こしちゃったかな」
「――ぁ?」
 徐々に覚醒する思考。極限まで眠れなかったせいか、体の節々が痛い。
それを鬱陶しく感じながら、わたしは上体を起こした。

……ん?ちょっと待て。
今、誰かの声がしたような……。

 まだ本調子ではない頭を振って、部屋の中を確認する……前に。

「大丈夫?すごい寝汗だったけど」
 ウィルの覗き込む瞳が、眼前いっぱいに現れた。

「きゃあっ!?」
 驚いて飛びのく。
恥ずかしくなって慌ててシーツを身体に巻いた。素っ裸というわけでもないのに。

「…きゃあ?」
「あ……いっいや、それより何故ここに?」
「何故って。心配だから見に来たんだよ、ほら」
 絞った手ぬぐいをこちらに見せるウィル。
よく考えれば、泥のように眠っていたわりには顔のまわりがさっぱりしていた。

「…さすがに服を脱がして身体まで…ってワケにはいかないからね。
顔と首まわりだけだったけど、それで勘弁してほしい」
 あはは、と照れたように笑うウィルにつられて、わたしも顔が熱くなるのを感じた。

「そっ、そうか。…済まない、面倒をかけたな」
 俯いてぼそぼそと答える。……酷くわたしらしくない。
「相当汗掻いてたみたいだから、飲んどいた方がいいよ?」
 そう言ってベッドの脇に座り、わたしに珈琲を手渡してくれた。
カップから伝わる温かさがじんわりとわたしの心に染み渡る。

「で。どう?少しは落ちついた?」

「………」
 答えられない。
正直に言えば、今まともにウィルと話をできていることすら不思議なほどだ。

「…やっぱり、か」
 わたしが返答できないのをある程度予測していたらしく、軽く嘆息する。
「やっぱり…?」
 だけどわたしには彼の反応こそが予想外で、思わず聞き返してしまった。
576ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/15(木) 20:47:58 ID:1r2NJ1q+


「仕方ないよ。人を斬ったのは初めて…だろ?」
「…っ」
 ざくりと胸を抉る一言。
本人からその言葉を聞かされて、なお彼との距離をより遠くに感じた。

「どんなに覚悟していたって、最初はそんなもんだよ。
――逆に、そうならなかったときの方が危ない。……って、これは師匠から聞いた話だけどね」
 ずずっ、と珈琲に口をつけながらウィルは少し遠い目で語り始めた。

「俺もさ。最初はそうだったんだ」
「――え?」

「怖かったんだ、俺も」

 ウィルも……同じ…?
ウィルも、最初は恐かった…?

 狐に抓まれたような顔で見上げるわたしを、彼は苦い顔で笑いかけた。

「俺が初めて戦場に出たのは……だいたい十ヶ月くらい前かな?
そのときは師匠にくっついて戦場に出たわけだけど……震えが止まらなかった」

 傭兵隊にいたころの話だろう。
フォルン村の事件が確か一年ほど前だから、剣を覚え始めてたったニ、三ヶ月で実戦を経験したのか。

「マリカも知ってる通り、俺はフォルン村の生まれで……その仇討ちのために傭兵になったんだけど。
例の事件で完全に血が上っていたはずなのに、いざ戦場に出てみたら恐くてすっかりブルってた」

 歯痒そうに唇を噛む。まるでそのときの震えを押さえ込むように、左手で右腕を強く掴んでいた。

「ほんとならもっとやれるはずなんだ、あいつらを殺すことなんか何とも思っちゃいないんだ、って。
……そう言い聞かせたのに、全然身体は動いてくれなかった。
――で、棒立ちのまま殺されそうになって、師匠に怒鳴られてからやっと身体が言うこと聞いてくれたんだ」

 争いごととは無縁の小さな村の少年が、僅か数ヶ月で熾烈を極める戦場に出たのだ。
しかも故郷の村――当時の彼にとっては"世界"そのものだったろう――を滅ぼされたばかりで心の整理もついていなかったはずだ。
その壮絶さはわたしの知るところではない。

「師匠の話だと、そうやって新兵が初陣で命を落とすことはよくあるらしい。
俺も危うくその仲間入りしそうだったところを師匠に助けてもらって…そこからやっとまともに戦えるようになったんだよ」

 そこで一度小さくため息をつきながら、わたしの方に視線を戻した。

「だから。それを一人で成し遂げた君は凄いと思う。
殺しの才能なんて、あっても喜ぶべきじゃないんだろうけど…」


「わたしは……」
 己の両手を広げ、見つめる。震えはとうに治まっていた。
――本当にそうなのだろうか。
これでもまだわたしは、騎士になれるのだろうか。まだ剣を握れるのだろうか。
わたしは……彼の隣で戦えるのだろうか。
577ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/15(木) 20:48:35 ID:1r2NJ1q+

「もし、これからどうするのか迷ってるなら…」
 そうやって一人悩むわたしを置いて、ウィルはゆっくり腰を上げた。

「…結局それを決めるのはマリカだよ。
この時期の騎士なんて、やってることはどう取り繕っても人殺しだ。辞めるならそれも悪くないかも知れない。
だけど………」

 空になったコップを机に置き、そして。

「マリカなら。『騎士』をあんなに目指してたマリカなら。
俺はきっと大丈夫だと思う。この程度の躓きで諦めるなんてもったいない……そう思ってる」

 そう言ってわたしに笑いかけた。
…お前に何がわかる――いつもならそう返しただろうが……なぜだろう。
まるで何かの魔法のように、鉛のように重かった身体が軽くなっていくのを感じていた。

「俺の太鼓判なんて要らないだろうけど」と苦笑しながら付け加えるウィルの顔を眺めながら。

「…ケノビラック」
「ん?」

「――ありがとう」
 自然と。気が付いたときには自然とその言葉が口から出ていた。

 ウィルは少しだけ優しい表情をすると、
「……じゃあ俺はもう戻るけど、何かあったら呼んでくれてかまわないから」
 最後にそう告げて、部屋を退室して行った。



「………」
 彼が出て行った後、眠りに落ちる前と同じ静寂が自室の中を支配し始める。
昨日はその静けさがあんなに重苦しく感じていたのに、今は気分は落ち着ける役割を果たしてくれているような気がした。

『騎士をあんなに目指していたマリカなら、俺はきっと大丈夫だと思う』

 脳裡に反芻する彼の言葉が、すぅっと脱力していた身体に染み込んでくる。
かつてない挫折で再起不能だと思っていた己の身体が、たったその一言で回復していく。……自分でも現金な奴だと呆れるほどだ。
……だけど。

――あいつが。他でもない、あいつがそう言ってくれたのだ。ならば。

「失望させるわけには……いかないな」

 己の掌を眺めてから、拳を作る。しっかりと。
以前と同様――いや、それ以上に力強く拳を握れることを確認して、わたしは。


 窓から差し込む朝日を受け、早くもある目標を立てつつあった。
578ぶらっでぃ☆まりぃ ◆XAsJoDwS3o :2007/03/15(木) 20:50:42 ID:1r2NJ1q+
以上です。
これで前々回の投下から続く流れは一区切りになります。

(おまけ)
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579名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 21:24:53 ID:8pSPTYXL
>>578
これはGKとしかいいようがない
580名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 22:04:52 ID:Hg2OZWU8
白き牙終わっちゃった……遅いレスですけど、感想を。
本当に面白かったです。連載当初から追いかけてきましたが、全く飽きる事がありませんでした。
修羅場スレ作品にありながら女同士で愛情を交わし関係を保ったセツナとクリスは衝撃的でした。
レズ嫌いな私もこの二人の描写はしっとりと見つめられました。
最後にクリスが死んでしまったのは残念ですが、きっとお母さんを取り合ってお父さんと
修羅場を繰り広げるでしょう!

直近に移って。ぶらまりもGJでっす。相変わらずのクオリティの高さ!このお嬢様が
唯一まだ権力を使える位置にいるので、これからどういう風に三人と競い合うのかが
楽しみです。本編に出てこないとかはイヤン
581名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 22:26:16 ID:ikUgXTQU
>>578
前回の引きが引きだけに冒頭でビクビクしたけど……実にGJ
いまひとつ報われない立場ながら彼女なりに決然として凛々しい
流れからしてまだ続くみたいですし、次回も期待しております

にしてもNスク使えてSS書けて絵も描けるとは多芸なお方ですな
582名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 22:44:42 ID:P7vu+3fc
>>578
GJです。
マリカはフツーに死ぬと思ってたからな・・・
次の話しに期待
583名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 22:45:50 ID:P7vu+3fc
話しじゃなくて話だったな
584名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 23:12:07 ID:n846IJ0Z
とりあえず、ネタが浮かんだのでカキコ

主人公憎悪系による女の子の嫉妬はどうよ

主人公と女の子が過去に起きた事件で疎遠になり、
たまたま街中で会うと女の子は主人公が嫌いです近付かないでってみたいな態度をとってくる

実は主人公と仲直りしたいのだが、素直になれずに主人公にきつく当たってしまう



って感じはどうです?
585名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 23:17:42 ID:WlFlAOq4
どうです?
とか言われてもそんなのつまらん、なんてこっちは言えませんから。
一々お伺いたてる必要なんて無いんだから書きたきゃ書け
586名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 23:25:24 ID:d48/9gFR
>>584
つまらん!!
以上だ
587名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 23:43:14 ID:Brtg+xtf
>>584
それはツンデレスレ向けのネタだな。
少なくとも、その文章だけを読んだら嫉妬SSスレ向きとは思えん。
588名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 23:57:56 ID:Mh3Kkmec
それで泥棒猫が絡んで、主人公を嫌っているヒロイン像を木っ端微塵に壊されて
主人公から泥棒猫に近づけさせないために、自分の領域を侵してまで

主人公と仲直りするみたいな感じだったら

嫉妬スレ向けになる。

ツンデレ系の女性じゃなくて、言葉様系の大人しい女の子(キレたら恐いが、デレモードに入れば凄い)
ならば、OKを貰えるぞw

589名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 00:17:38 ID:SNsh6J/y
なんかマジレスすると長いSSはいいが、長い感想もチラシの裏で頼む
あと最近sage進行守れない香具師多すぎ、荒らしなのかも知れんが
590名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 00:21:38 ID:HC+R2XwS
長い感想なんてあったかな?1レス内に収まる感想なら別にいい気がするが。
591名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 00:21:44 ID:odt0OjyU
>>588
つまり、

主人公と幼馴染は、ある事件のせいで仲が悪くなった。
幼馴染は仲直りしたいと思っているが正直になれない。

仲直りしようとして主人公の家に行ったら、恋人とまぐわっているときの声を聞いてしまう。

幼馴染、主人公を監禁。
「あんたと仲直りしたいの!」とか言いながら調教。

調教が成功。
主人公と幼馴染が仲直り。

ということか?
592名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 00:24:58 ID:U9KQ4uYW
>>591
そのプロットなら想像するだけで面白くなってきたけどな

まあ、一番美味しい場面は主人公憎悪系の女の子が
主人公に対する恋心が→愛情に変わる時の心情が一番読み応えがあるところなんだよ
593名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 00:34:58 ID:IonmkZ+C
憎悪系だったら、ツンデレとか軽いのじゃなくて愛憎劇みたいのが見たいかな。
594名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 01:34:51 ID:FNILlXY5
>>591までいくとヤンデレに入るんじゃないかと思ったがどうなんだろう。
ほんと線引きが難しいな。
595名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 01:38:12 ID:PXl+3QU2
つまらんネタですが自分もひとつ提供します。

主人公 現在高校2年生。小さい頃に両親を亡くし、今は姉と二人で暮らしている。
    
 姉  主人公より1つ年上の高校3年生。
    子供の頃から弟の面倒をよく見ていたが、両親が死んでからは
    それまで以上に弟の世話を焼くようになる。

ヒロイン 主人公と同い年。今、売り出し中のアイドル。
     小さい頃、主人公たちと家が近所だったため、一緒に遊んでいた、いわゆる幼なじみ。
     しかし、主人公たちが引っ越してからは、それきりなんの連絡もない。

ある日、主人公のクラスに、ヒロインが転校してくる。
それを知った姉は、主人公にヒロインと関わるなと命令。
ところが、主人公とヒロインがデートしているところを、週刊誌にスクープされる。
その翌日、ヒロインが記者会見で主人公との交際宣言。
で、姉とヒロインの間で修羅場発生。

こんな流れでどなたか書いてみませんか。
自分には無理ですのでorz
596名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 02:42:07 ID:tL3nye91
>>595

ア、アイドルはねぇだろ……( ̄▽ ̄;)
597名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 02:56:02 ID:EACzunzU
>>596
いや、アリじゃないか?
記者会見で交際宣言、世間が主人公とヒロインの交際を認めるけれど、姉一人頑として認めない。
面白そうじゃない。記者会見ってのは大分設定を生かしてると思うぜ、修羅場スレ的に。
598名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 02:56:49 ID:gu0dNFb2
アイドルはなんか嫌だな・・・
599名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 04:21:13 ID:HF68TQLb
誰かがそれを書かなければ議論するだけ無駄なんだがな
600名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 05:05:01 ID:uBDjl4xr
>>>596
age荒らしに反応すな
601名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 06:09:15 ID:AjYzwHwB
>>594
線引きが難しいんじゃなくて、
愛憎ならヤンデレ化しないと話が成立しない気が。
実際、かぶっているだろ。
602名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 06:16:56 ID:8lCk9j9c
プロットはチラシの裏でやれよ
603名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 06:49:48 ID:odt0OjyU
けど、プロットを見て初めてSSを書き始める人だって居るからね。
作者の人たちもプロットの断片を集めて書いたりするかもしれないし。
604名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 08:10:31 ID:9tji8bHL
そうそう。
このスレはプロット投下もOKだからな
プロット見てても想像(妄想)広がるし
605名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 08:14:22 ID:9tji8bHL
ageてすまん
606名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 09:29:09 ID:OfXRVwGN
元々、このスレって修羅場や嫉妬の妄想をするために本スレから分離されたスレなんでしょ?
いくらなんでも排他的すぎやしないか? もう、少しマターリしようよ。
修羅場スレ住人はもっと紳士な態度で接しないと。
607名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 10:22:25 ID:m9ltZxF5
元々、本スレでは妄想やネタやプロットばかりの話題になって肝心なエロゲーの話題ができなくなったので
おまえら、そんなに妄想を語りたいならSSでも書けということで作られたのがこのスレです

最初はまともな作品は投稿されずに妄想ネタしか書き込みがなかった
まあ、まとめサイトにある合鍵や妹は兄に恋しているとか
過去の神々様が頑張ってくれたおかげでここまで規模が大きくなった事を忘れちゃいけない

608名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 11:36:07 ID:m9ltZxF5
>>595

そのプロットを見て、今日放送されたコードギアスを思い出してしまった。

特にテレビで勝手に発言したりするのが酷似しすぎているww
609名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 12:36:51 ID:kKwCD6zy
>>578
GJ!

次の話も正座して待ってるよ
全裸で
610名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 13:42:20 ID:KKKzGkOD
>>604
あとから謝ればなんでもいいてもんじゃねーだろ
age荒らし乙
611 ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/16(金) 13:44:50 ID:FrrB38ro
「両手に嫉妬の華を」、投下します。
612 ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/16(金) 13:45:31 ID:FrrB38ro
 一瞬目の前に広がっている光景は、俺の彼女への想いが作り出した幻想なのではないかと
 疑ったが、生々しく耳に響く彼女の甘い声が夢に近い現実の何よりの証明だった。
 あの夢の続きが手の届く先に転がっている、その現実に俺は歓喜し叫びたくなった。
 俺は一目散に彼女の下へと駆け寄った。
 何度も口ずさんだはずの彼女の名前が吐息によってかき消される程走り続けた。
 昨日あの夢を見るまで感じていた彼女という大切な存在を取りこぼした事による激しい後悔、
 それが俺の原動力となり二度と同じ過ちは繰り返さないように彼女の両肩を掴んだ。
「佑子さん、どうしてここにいるんですか!?」
「キャッ!」
 一歩後退りし体をビクつかせる佑子さんの怯えた姿に罪悪感を感じすぐに肩を離す。
 肩を離して尚走って来た俺以上に呼吸を荒げている佑子さんを見て、
 男友達がいないという昨日の発言は本当だったんだなと確信した。
「ご、ごめんなさいっ! いきなり肩掴むなんて失礼でしたよね!?」
「いえぇ、わ、私もちょっとビックリし過ぎちゃいましたし…いえいえ!
 決して仲川くんの事を恐いだなんて失礼な事を思っている訳じゃないんですよ!
 本当です! 信じて下さいっ!!!」
 凄い剣幕で迫ってくる佑子さん、しかしその表情を見ても嫌悪感は欠片も湧き上がらない。
 その表情からは必死さが滲み出ていて、こんな例えは何となく気が引けるが、
 おねしょした事を必死に隠そうとしている少女のようないじらしい可愛さがあった。
 その可愛さと俺が無断で肩を掴んでしまった事を許してくれた事も勿論嬉しかった。
 しかし何よりも今の俺の頭の中を支配しているのは、佑子さんの『仲川くん』という一言だ。
 さっき一度聞いたがあの時は遠くにいて、佑子さんの存在を確認するまでにしか至らなかった。
 しかし佑子さんは今、俺という存在を”認識した上で”その名前を呼んでくれた…
 その事実が背筋を気持ち良く伝わった。
 周りの奇異な物を見るような目線と疑問や冷やかし混じりの騒音がなければ、
 俺はこの甘美な現実に一人で浸って感涙していただろう。
「謝るべきは俺なのになんかすみません…。それより、どうしてここに?」
「仲川くんの制服を覚えていたんでここの学校の生徒だと分かったんですよ。
 やっぱり来ては、マズかったですか………?」
 沈み込む佑子さんに慌てて訂正する。
「とんでもありませんよ! 俺佑子さんにまた会いたかったんですよっ!だから…」
 そこまで言って饒舌になっている口を慌てて両手で塞ぎ込む。
 今朝の”思い出を大切に胸にしまっておこう”という自分の決心の脆さへの驚きと、そして
 思わず佑子さんに本音を漏らしてしまった事への羞恥で俺は自分でも分かる位、顔を赤くした。
 若干顔を伏せながら下から佑子さんの顔を覗き込むと、俺と同じように頬を赤く染めながら
 クスクス笑っていた。
 その態度が気品溢れるお嬢様のように見えたのは、口元に添えてある手が原因だろう。
 そんな些細な動作にも反応してしまう程、今の俺は佑子さんに惚れ込んでいるようだ。
 そう自覚すると余計に恥ずかしくなり、無茶苦茶惜しいが佑子さんから視線を外す。
 あたふたしている俺をよそに、低い俺の視線から佑子さんが鞄から何かを取り出すのが見える。
「勝手に来てごめんなさい。今日は『お返し』がしたくて…その………」
 最後の方は発音し切れていない佑子さんが差し出してきたのは、適度なサイズの袋だった。
613両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/16(金) 13:46:17 ID:FrrB38ro
「…、『お返し』?」
 佑子さんその言葉を聞くと、瞬間的に俺の脳内では甘い妄想劇が広がった。
 こういう時だけは想像力豊かになるなと自分の男としての自覚に呆れながらも、
 ”他の”可能性を必死に捻り出そうとしたが全く思い浮かばなかった。
 昨日初めて会った佑子さんが俺に『お返し』と称して何かは分からないが物をくれる理由…。
 笑われてもいい、俺の頭の中には”たった一つ”しか考えられなかった。
「昨日、あたしだけ仲川くんにクッキー貰っちゃったじゃないですか…?
 あっ、クッキーありがとうございますっ!凄くおいしかったです!
 だからという訳ではないのですが…その………『お返し』がしたくて…」
 そう言いながら佑子さんは不器用に揺れる指先で袋を締めている紐を丁寧に解きほぐしていく。
 解いた瞬間その紐を地面に落としてしまった事を無視し、佑子さんは袋の中から
 一回り小さい袋を取り出した。
 その透明な袋の中に収まっている物体を見た瞬間………甘い妄想は現実のものとなった。
「その…一ヶ月と一日遅いですが………受け取ってくれますか?」
 佑子さんが震えながら自分の胸に押さえ込んでいるその袋の中身…見間違えるはずがない。
 それは、昨日遠回しに俺と佑子さんを引き合わせる事になった要因、『絆』の代名詞だ。
「それってまさか…」
「チョコは嫌いでしたか…?」
 今にも壊れそうな表情を浮かべながら見上げてくる佑子さんが握っている袋の中身、
 それは綺麗にハート型に揃えられたチョコレートだった。
 それを見た瞬間、一ヶ月前に佐藤早苗からチョコを貰った時の感動に似たものを感じた。
 しかし今感じている感動の度量が明らかに今の方が大きいのは、貰っている状況が原因だろう。
 佐藤早苗に貰った時も確かに嬉しかったが、その時俺は彼女にまだ恋心を抱いていなかった。
 そして今俺がチョコを貰っているのは、一日間とはいえ本当に恋焦がれている佑子さんからだ。
 二つのケースを比べれば、差は歴然としている。
 この状況に目頭が熱くなるのを堪える事が出来ない自分に驚いた。
「まさかっ! 好きですよ大好きっ! 『超』がつく位大好きです!」
 佑子さんの落ち込みかけの暗い表情を明るくしたい一心でムキになったように言ってしまった事
 に恥ずかしさを覚える。
 見てみると佑子さんも困ったように俯いている。
 子供っぽいって思われたかと不安になる俺をよそに、佑子さんが下を向いたまま袋を差し出す。
 小刻みに震える佑子さんの両手を愛しく思いながら、俺がその袋を受け取った瞬間………
「なっ!?」
 俺の背中に物凄い衝撃が奔った。
 情けない声と共に俺は持っていた袋ごとそのままその場に前のめりに倒れ込んでしまった。
 我ながら何て情けない…そう思う暇もなく袋を持っていた右手に鈍い痛みを感じた。
 右手を確認してみると、その先には何者かの足がある…どうやら蹴られたようだ。
 だがその痛みよりも、俺は何者かによって同時に蹴飛ばされていった袋の方の心配をしていた。
 倒れ込んだ無様な体勢をすぐさま立て直し、俺は袋の蹴飛ばされた方向へと走る。
 若干砂に塗れた袋の中身を確認して、とりあえずチョコが軽く皹が入っているだけで
 済んでいて安心した。
 勿論安心したというのは”蹴られた割には”という話に過ぎず、俺は佑子さんの俺への感謝の印
 をゴミ屑のように蹴飛ばした人物への怒りで頭が一杯だった。
 袋を赤ん坊を抱くように両手で守りながら、視線を後ろへと戻すと、
「勝手に行っちゃうなんて酷いなぁ〜。人の話は最後まで聞くもんだよ?」
 悪びれた様子が欠片もない佐藤早苗の姿があった。
614両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/16(金) 13:46:49 ID:FrrB38ro
 当たり前のように、”何もしてませんよ?”と言わんばかりの白々しい表情に虫唾が奔った。
 俺に対しての暴行の事ではない、佐藤早苗が佑子さんのチョコを蹴飛ばした事に関してだ。
 佐藤早苗とは一年間同じクラスだったが、俺の中での佐藤早苗は少なくとも、
 自分の過失を認めない非常識な人間ではなかったはずだ。
 その微かな記憶を信じ、”蹴飛ばした事に気付いていないだけだ”と自分に言い聞かせる事で
 何とか怒りを抑えながら佐藤早苗を睨みつける。
「おい…”これ”彼女からの物なんだが」
 佑子さんの事を指差しながら依然視線を佐藤早苗に合わせたままにする。
 それを聞くと佐藤早苗は一瞬俺の抱えている袋を流し見した後驚いた素振りを見せてきた。
「あっ、もしかしてあたしが蹴っちゃったのか?」
 その発言を聞いて一安心する。
 彼女は俺の右手を蹴ろうとして間違えて袋も蹴ってしまってそれに”気付かなかった”だけだ。
 そう確認すると俺の心の中の不快感が僅かに失せた。
 しかしその刹那、彼女は手を合わせ言い放った。
「仲川、ごめんねー!」
 この一言が起爆剤となって、溜め込んでいた苛立ちが爆発した。
「ふざけるなっ!!!」
 俺の怒声が校庭内に何度も響き渡った。
 その声の大きさは佐藤早苗だけでなく周りの無関係の人間をもビクつかせる程のものだった。
 勿論そんな事無視して、俺は徐に佐藤早苗の下へと近付く。
 近付いてみると佐藤早苗の目が震えているのが分かったが、そんな事で躊躇する気は起きない。
「佐藤………何で”俺に”謝るんだ?」
「えっ…だって………」
「謝るべきは”彼女へ”だろっ!」
 俺は視線を佐藤早苗から外さないまま佑子さんがいるであろう方向を指差した。
 そう、何で俺がこんなにも激情に駆られているのかといえば、その答えは至極簡単。
 俺は佐藤早苗に佑子さんに謝って欲しかった、でも佐藤早苗が謝ったのは俺だった。
 佐藤早苗がチョコを作ってくれた佑子さんに対して罪悪感を覚えていないから怒ったのだ。
 勿論こんなのは佐藤早苗からしてみれば理不尽な態度なのかもしれない。
 彼女は俺が佑子さんを好きだという事を知らないし、そもそも俺の言葉を聞けば
 誰だってチョコを蹴ってしまった事に対して謝らなければならないと思うはずだ。
 それでも俺が怒りを抑えようとしなかったのは、佐藤早苗が昨日した事を思い出したからだ。
 こんな風に、いつまでも昨日の事を彼女に対して敵意を向ける事を正当化する為の道具として
 使うのには多少なり罪悪感を感じた。
 だから俺は僅かだけ猶予を与えた。
「彼女に…佑子さんに謝れよ」
「え…?」
 俺の一言を聞いて、驚いたような表情を見せてくる佐藤早苗。
 この表情が物語っているのは、”何で謝んなきゃいけないの?”という疑念だけだった。
 それを見て、俺は諦めるように佐藤早苗に背を向ける。
「もういいっ!!!」
 そう吐き捨てると、事態についていけていない様子の佑子さんの下へと歩み寄る。
 自然な動作で肩に手を乗せながら、俺は足早に走り去ろうとする。
「待ってよ仲川っ!」
 後ろから聞こえてくる佐藤早苗の懇願、それは俺の思考のループに入る前に遮られる。
「仲川くん…後ろの人が………」
「いいんです、”あんな奴”放っておいて行きましょう!」
 俺は半ば強引にその場から立ち去って行った。
615両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/16(金) 13:47:22 ID:FrrB38ro

「さっきは失礼しました。嫌な思いさせてしまって…」
 俺は隣に座っている佑子さんに深々と頭を下げた。
「私はいいんです。それより怪我しませんでした?」
 佐藤早苗に蹴られた右手を心配している佑子さんの心遣いに感謝しながら罪悪感に心が軋んだ。

 あの後、俺は佑子さんと共に、昨日佑子さんと出会ったあの土手へと向かった。
 別に意識的に行った訳ではない、無意識下の行動だった。
 土手までは佐藤早苗への怒りで熱くなって冷静さを失っていたが、いざ土手に着いて気付いた。
 何で土手に来てしまったのか、答えは簡単、俺と佑子さんの接点はこの土手しかないからだ。
 それ程なまでに俺たちの関係は浅いという事を理解した瞬間、急速に頭が冷えるのを感じた。
 いや、浅いとか以前の問題として、俺たちの間に『関係』なんて皆無だ。
 俺が佑子さんとの仲を『関係』だと錯覚したのは、俺の佑子さんへの一方的な想いを、”同じ傷
 を持った者同士”という接点を利用して相思相愛に置き換えようとした醜い意識の表れだ。
 それが一人歩きした結果が、先程までの佐藤早苗への怒りだ。
 俺は先程までの怒りを”彼女の為”のものだと思っていたが、本当は”自分の為”なんだ。
 ”彼女の為”に怒っていると思う事で、自分は彼女を想う資格のある人間と信じたかったんだ。
 そんな利己的な欲望の為に佐藤早苗を傷付けてしまった事、そして佑子さんに居心地の悪い想い
 をさせてしまった事、その二つが俺の心を支配しているのだ。

「この右手ですか?蹴られただけで何ともありませんよ」
「そうですか、良かった…」
 右手を佑子さんの眼前でブラブラ振ってやると、佑子さんは安心したように胸に両手を添えた。
 こんな俺の事を心配してくれている佑子さんにこんな醜い心の内を晒せる訳がない。
 佑子さんと会うのは今日が最後だから正直に打ち明けてしまいたいとも思ったが、佑子さんは
 俺に対して少なからず好印象だ。
 でなければ、押し付けに近い形で渡した物へのお礼なんかしてくれるはずがない。
 そんな佑子さんを裏切る事に近い行為は避けなければならない。
 だから、俺はせめてこの場だけでも佑子さんに最善を尽くせるよう心掛ける事にした。
「それより、”これ”今食っていいですか?」
「えぇ!?」
 チョコの入った袋を差し出すと、佑子さんは大袈裟のようにすら思える驚き様を見せた。
 さっきまで安堵の表情を浮かべていた小顔がみるみる内に赤くなっていくのが分かる。
「も、もしかしたら仲川くんのお口に合わないかもしれませんよ!?
 勿論最善は尽くして作ったんですけど仲川くんの好みが分からなかったもので………。
 不味かったら無理しないで下さいね! 市販の物を買ってきますからっ!」
 顔を接近させながら、良く噛まないなと思う位の早口で喋る佑子さん。
 その喋り様からは先程から痛感し続けている俺への気遣いの念を感じた。
 しかし、それよりも俺は今の話の中で一つ不可解な言葉を聞いた気がした。
 空耳の可能性もあるが、確かめておかないとすっきりしないので恥を忍んで佑子さんに訊ねた。
「佑子さん、…今、”作った”って言いました…?」
 俺の言葉を聞いて佑子さんは俺に迫っていた顔を引っ込める。
 数秒の静寂が俺の思考を円滑にしていく。
 様々な憶測が頭の中を流れる事数秒、
「…は、はい…」
 その憶測は決着したが、俺の頭の中では未だに疑問符が消えてくれなかった。
616両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/16(金) 13:48:24 ID:FrrB38ro
 頭の中で昨日の佑子さんの言葉が何度も反響している。

 ―――『手作りしてまで渡すチョコは本命だってのが暗黙の了解ですよ』

 昨日はその言葉が俺に安心を齎したのに、今はその言葉のせいで鼓動音が聞こえそうな程
 心臓が高鳴っている。
 その言葉の適用範囲はあくまでバレンタインの日限定という制約を設ければ、
 それで佑子さんの行動の真意は完結してしまうのかもしれないだろう。
 だけど、佑子さんと俺の共通点を考えれば、そんな事で納得出来る訳がない。
 佑子さんと俺はどちらも”『勘違い』させられた末に傷付いた”者同士だ。
 共に、他人が自分に向ける意味のない好意に対して憎しみを抱いているのだ。
 そんな佑子さんが、俺にを『勘違い』させて傷付けようと思っているだなんて信じられない。
 するとやはりこの手作りチョコに隠れている真意というのは、”俺への好意”と捉える他ない。
 都合のいい解釈をしたいという思いもないという訳ではないのだが、
 それ以上に佑子さんが相手の傷を抉るようなマネするとは到底思えない。
 そう考えるとどうしても選択肢は先の一つしか残らなくなってしまうのだ。

「仲川くん…?」
 心配そうに顔を覗き込みながら声をかけてきた佑子さんに気付きやっと我に返る。
 慌てて袋にかかっている紐を解いていく。
「いえいえ、全然問題ありませんよ! 『手作り』だなんて嬉しいなぁ、なんて………」
 鎌を掛けるように『手作り』の部分だけ大きく発音して佑子さんの顔を横目で確認してみる。
 その顔は相変わらず熱に絆されているのではと思う位耳まで真っ赤に染まってる。
 表情に変化はないので真意は読み取れないが、その瞳は勘違いしてしまいそうな程濡れている。
 胸の高鳴りが一層強くなるのを感じながら、俺は袋の中からハート型のチョコを取り出す。
 佐藤早苗によって蹴られてはしまったが形が崩れてはいない。
「そ、それじゃ…いいですか…?」
 自分でも阿呆らしいと思う位神妙に確認を取る。
 そんな俺の心境が飛び火したように真剣にこちらを見つめてくる佑子さん。
「ど、どうぞ………」
 舞台上の主人公さながらの緊張感に包まれる中、俺は掌サイズのチョコを口に含んだ。
 甘過ぎない独特の風味が口の中に広がっていく。
 その味に俺は驚きを隠し切れなかった。
「これって…ビターチョコですよね?」
「はい…あっ、もしかして苦手でしたか…?」
「とんでもない! 俺の中ではチョコはビターが一番なんですよっ!」
 これは本当の事だ。
 元々甘い物が嫌いって訳じゃないが、やはり普通のチョコは俺の口には甘過ぎて合わない。
 勿論佐藤早苗に貰ったチョコは、貰えた喜びがあったのですんなり完食出来た。
 しかし、時々食べる市販のチョコはやはり甘さ控え目のビターを選ぶ。
 別にそれを理解した上で佑子さんがビターを選んだ訳じゃないのは分かっている。
 これは単なる偶然だ。
 それでも、佑子さんが俺の好みを当てたという事実は素直に嬉しかった。
617両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/16(金) 13:49:12 ID:FrrB38ro
「本当に美味いです!」
 そう言いながらがっつくようにチョコを頬張る。
 かなり汚い食べ方かもしれないがそんな事を気にさせない程美味しかった。
 俺が食べる事に集中していると、佑子さんが立ち上がった。
「今日はありがとうございました。美味しいと言って頂けて本当に良かったです。
 もうそろそろ帰らなければならないので、これで失礼しますね」
 佑子さんの発言を受けて辺りを見渡すと、既に橙色の夕日が沈みかけている時間帯だった。
 その夕日が、立っている佑子さんの黒髪を微妙に真紅に見せている。
 その姿は見惚れてしまう程美しく、同時にもうこの人と会えないという事実に寂しさを覚えた。
 去ってしまう前にチョコの真意を訊きたかったが、はっきり意味がないと断言される事を恐れ
 訊く事は出来ない。
 佐藤早苗との事もあってどうやら俺はかなり恋愛に慎重な性格になってしまったようだ。
 そんな自分に嘆きながら、せめて最後は笑顔で見送ろうと俺は最高の笑顔をしてみせる。
「チョコありがとうございます。それでは」
 俺が佑子さんに礼をしようとした瞬間、何か思い出したように佑子さんが鞄を漁り出した。
 その鞄の中から一枚の紙切れを取り出し、その内容を確認している。
 そして十数秒独り言を呟きながら躊躇うようにその紙切れを前後に動かした後、覚悟を決めた
 感じでその紙切れを俺に差し出してきた。
「い、いらないなら捨てて下さって構いませんので、じゃ!」
 俺と目線を合わせないまま紙切れを俺の手に握らせると佑子さんは一目散に走り去っていった。
 手に残る佑子さんの柔らかく温かい温もりを噛み締めながら、佑子さんの背中を見つめる。
 その姿を見ていると、何だか昨日無性に恥ずかしくなり走り去っていった俺と重なった。
 佑子さんの姿が見えなくなるまでその背中を見送った後、その紙切れを開いてみる。
 その紙切れを読んで、俺の頭の中で何かが弾けた気がした。

 『私のメールアドレスです。よろしければメール下さい。』

 綺麗な字で書かれたその文字一つ一つを凝視しながら、俺は歓喜に打ち震えた。
 佑子さんとの繋がりが途切れていない事に安心感を覚えた。
 そして手作りチョコとこの紙から、俺が彼女を想う資格のある人間になったという確信を得た。
 何でかは分からないがこの際理由なんてどうでもいい。
 ”彼女が俺を好きでいる”、それを口で言われた訳ではないから確かではない。
 それでも俺は、この行為から佑子さんからの精一杯の気持ちを感じ取った。
 男とほとんど付き合った事がないと言っていた佑子さんがこんなに気持ちを示しているんだ。
 後は俺の役目だ。
 俺は決意を胸に秘めながら、佑子さんからのチョコの最後の一欠片を口に放り込んだ。

          ―――――――――――――――――――――――――         

 仲川があたし以外の女に笑顔を向けている…。
 あたしには向けてくれなかったくせに…。
 唇を噛み締めながら、あたしは最後まで”あの女”が何かしないか見守る事しか出来なかった。
 今行ったらまた怒鳴られそうな気がして恐かったから…。
 仲川に何か妙な紙切れを渡して去って行った”あの女”を遠くから睨みつけながら、
 ”あの女”からのチョコを嬉しそうに食べ切った仲川を見て泣きたくなった。
 仲川があたしから以外のチョコを喜んで食べるなんて絶対におかしい…。
 きっと”あの女”が何か吹き込んだんだ。
 あたしがずっと好きでいた仲川に、何をしたんだあの女………。

 でもそれよりまず仲川のとこに行かないと。
 何か誤解しているようだったから、ちゃんと説明してやらないと。
 ついでにあの女についても訊かないとね………。
618両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro :2007/03/16(金) 13:51:33 ID:FrrB38ro
投下終了です。修羅場期待してた人すみません…。
嫉妬成分が出てくるのは次回からです。
619名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 14:21:55 ID:W7nlOdLX
GJ!

>>嫉妬成分が出てくるのは次回から
最後の一文だけでwktk
620名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 14:44:05 ID:sL9Wn9E/
>>618
最後の13行だけで今からwktk
これはどっちとの仲も応援したい。
621名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 14:44:43 ID:RMLp33CO
>>618
嫉妬成分0
期待して損した

622名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 14:47:01 ID:KBemDG+q
>>618
嫉妬SSなんだから嫉妬をちょととでも入れるのがここのデフォ
じゃないとノントロみたいなことになる
623名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 14:48:07 ID:VENuJSXI
>>618
GJ
次回にwktk
624名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 14:49:03 ID:vum4d1GC
>>618
これはいいSSになりそうな悪寒w
625名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 14:55:48 ID:xKIB/dEh
>>622
皆、次回に期待とか沙織に嫉妬の片鱗とか書いてたなorz
ホント◆zIIME6i97I神に踊らされてた
626名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 14:56:49 ID:QTwKi0po
>>618
つまんね、さっさと嫉妬書けよ
627名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 14:57:41 ID:OfXRVwGN
ここまで来てまだジラスと……おまいドSだな、GJ!!
ノントロ……続きをwktkしてるんだけどなあ。後、地獄少女もwktkして待ってたりする。
628名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 14:59:14 ID:OSwf6Ojx
wktk!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!1
629名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 15:02:18 ID:sL9Wn9E/
常に谷ばかりじゃないとおもしろくないなんて、
よほど都合のいい人生を歩んできたんだな、オイ。
630名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 15:08:54 ID:aB/hwt55
>>618 GJ!次回にかなり期待。
てか最後の早苗視点だけですでに嫉妬が入ってると思うんだが。
嫉妬ないとか言ってる人たちはどれだけ文盲なんですか?w
631名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 15:23:01 ID:ZXDqwnD1
こういう回がなきゃ嫉妬という谷底が輝かないだろ。
そんなことも分からん621や626は、気に入らないなら自分で書いてオナってろ。
いちいち書き込みにくるな。
632名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 15:23:30 ID:9c9EU2pG
文盲なんじゃなくて、例のID荒しだって
何でもいいから難癖つけて、スレを引っ掻き回して最後に勝利宣言したいだけ
ほっとけ
633名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 15:32:34 ID:UqiLXhkh
文字すら読めない自動巡回botに何言っても無駄だって。
634名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 16:44:11 ID:uHRm7LmJ
投下乙であります。
嫉妬分?最後の数行だけで期待と興奮の脳内麻薬がだだ漏れ中でありますsir!
635名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 16:54:40 ID:cBQX4wSR
この時間帯に居るってことはひきこもりかな?
636名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 17:00:03 ID:BC7NGDKR
例えば接客業なら土日出勤だから代わりに平日に休むだろう
工場とかの夜勤なら昼や夕方に家にいるだろう
自営業なら仕事の隙間を縫って休み時間に投下もできる
想像力を働かせればこの時間に投下できる理由、職種はいくらでも推察できる
637名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 17:13:22 ID:cBQX4wSR
>>636
何でお前はそんなに必死なんだ?
638名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 17:13:34 ID:ysgTud/f
SSと関係ないことを書くのはチラシの裏にしろ
639名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 17:23:53 ID:ZXDqwnD1
作者さんが何者かなんて分かるはずがない。
一つ言えるのは、ここでいい仕事をしている人はリアルでもきっといい仕事をしているということだ。


というわけで
>>618
GJでした。
個人的には祐子派なので、祐子が狂う日を全裸で待ちます。
640名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 17:23:58 ID:EACzunzU
え?チョコ蹴飛ばしたって所からすでに嫉妬はいってりじゃないか
それとも俺のかんちがい?
641名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 17:44:49 ID:GoZewXCQ
妙なこといってるのは単発ID荒らしだな

>>618
最後の13行GJすぎだ!
次回wktk!
642名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 18:50:31 ID:POIW2oqj
リアルで相手にされてないから相手にされようとして言ってるだけだって

>>618
GJですっ
続きに期待!!
643名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 18:59:57 ID:ysgTud/f
スルー出来ない香具師はこちらへ(ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)どうぞ
644名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 19:14:44 ID:VYaFovlg
荒れ放題でワロタ
645名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 19:20:25 ID:odt0OjyU
荒らしなんかこのスレでは飾りです。
646名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 20:20:46 ID:OSwf6Ojx
えらいひとにはそれがわからんのです。
647 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/16(金) 21:09:29 ID:VDqPb/B7
投下します
648 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/16(金) 21:11:26 ID:VDqPb/B7
「……なあ、いい加減答えてくれよ。君が自分で自分を誘拐しただなんて電話したんだね?」
「……しーらないっ。」
「くそぅ……」
 この事務所に着いてからずっとこんな調子。しらばっくれてばかりだ。まともに答えてもくれない。
「マスター、いかがいたしますか?」
「だいたい!あんたたちに私が何をしたかなんて関係ないでしょ?あなたはあの男に私を探すようにいわれただけでじゃない?」
「そーだねー。……君がしたことは犯罪、だからね。俺達じゃなくて警察に任せた方がいいかな。」
「は?なんで?警察なんつ関係な……」
「あります。」
 クーちゃんが彩音の言葉を遮る。
「えっ?」
「たとえ身内が相手だとしても、狂言誘拐により身代金を要求した場合、それは十分に犯罪となります。」
「ちょ、ちょっと……」
「そうだね。俺達は家族の問題に首を突っ込む理由もないし、後の処理は依頼人に……」
「ま、まったぁ!やっぱりだめ、あの男には連絡しないで!」
「マスター、私達は仕事をこなすだけです。早く依頼人にお知らせしましょう。」
「だめ!お願い!」
「マスター!」
649 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/16(金) 21:12:20 ID:VDqPb/B7
 二人にステレオで責められる。確かにさっさと終わらせてお金をもらいたいが……
「そ、そうそう!そのCDの中身見てからでも遅くないから……ね?」
 そう言ってCDケースを渡してくる。……そういえば何が入っているんだろう。ちょっとだけ興味がわき、ドライブに入れてみる。
 さっそくデータを展開し、画面に表示してみると。
「な、なんだ!?これって……」
 マシンガンの砲身……ミサイルの火薬成分……防御機能のためのシールド……何やら物騒なことが書いてあるが、なんなんだ?
 画面をスクロールしていくと、一番下に最悪な文字を見つけてしまった。
『軍用アンドロイドについて』
 軍用アンドロイド……って確か……
「おいおい、アンドロイドを軍事用に改造するのは違法なはずだろ?なんだってこんなデータを……」
 そう自分で言った途端思い出した。北原清三には黒い噂が断たないと聞いた。こんなことをしていても不思議ではないが。
 ちなみに戦闘タイプのゲッケイジュはあくまで護衛用であり、銃や刃物といった危険物を使うのではなく、素手で戦うのだ。
650 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/16(金) 21:14:32 ID:VDqPb/B7
 クーちゃんが事務所のパソコンにアクセスし、データを消そうとするのだが……
「マスター、申し訳ありません。このデータを消すことは不可能です。」
「不可能?なんで?」
「このデータはプロテクトがかかっている上、一度ドライブにいれると、自動的に接続してあるパソコンにデータが書き込まれるようです。」
「はぁっ!?なんだよそれ?ということはもしかして……」
「そ、あなたも犯罪に荷担したってこと。」
 彩音が嫌味ったらしい笑みを浮かべ、机に体を乗り出していた。……やっちまった。こいつにハメられたか。
「お前の親父さん、なんつープログラム作ってんだよ……」
「あの男が作ったのはその戦闘プログラムだけよ。勝手に書き込むデータは私が自分で作ったの。」
「……なんのために?」
「もちろん、こういう時の交渉材料にするためよ。」
「交渉の内容は?」
「そうねぇ、あなた、何でも屋だったわよね。」
 そうだと頷くと、考えるように手を顎に当てる。そして……
「私と、そのCDを護衛する事。決して誰にも渡しちゃいけないわ。報酬は、あなたのパソコンから軍事用データの削除。どう?悪くないでしょ?」
651『嫉妬プログラム』 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/16(金) 21:15:48 ID:VDqPb/B7
「くぅっ……」
「当然、あの男との契約も打ち切る事。」
 せっかくこいつを見つけたってのに、おめおめと金を見逃すのか……でも、もし警察にばれたら一級犯罪だし。
「マスター、先の依頼を優先すべきだと思います。」
「……なんで?」
「理由は…理由は、ありませんが……」
 クーちゃんが理由も考えずに意見するなんて珍しい。こうなるとクーちゃんの意見もアテにならない。
「……あ〜、仕方ない。クーちゃん、契約切替え。手続きお願い……」
「マスター……っ。……北原彩音さん、なぜそこまでマスターを苦しめるのですか?これはあなたの我が儘でしかないのでは?」
「く、クーちゃん?」
 クーちゃんが人間に対して、反抗している。本来アンドロイドは、たとえマスターでなくても、意見はするが問い詰めるなんて事はしない。
「な、なによ。アンドロイドのくせに威張っちゃって。あなたのマスターがいいって言ってるんだからいいでしょ!」
「………」
 俺の名前をだされたからか、うつむいて黙るクーちゃん。ここまで感情を露にするなんて初めてだ。……いったいどうしたんだ?
652『嫉妬プログラム』 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/16(金) 21:17:11 ID:VDqPb/B7
すみません、ミスりました。三つ目のはこれです。





「クーちゃん!この俺のパソコンに入った軍事用データ、早く消して!!跡形もなく!」
「了解しました。マスター。」
 クーちゃんが事務所のパソコンにアクセスし、データを消そうとするのだが……
「マスター、申し訳ありません。このデータを消すことは不可能です。」
「不可能?なんで?」
「このデータはプロテクトがかかっている上、一度ドライブにいれると、自動的に接続してあるパソコンにデータが書き込まれるようです。」
「はぁっ!?なんだよそれ?ということはもしかして……」
「そ、あなたも犯罪に荷担したってこと。」
 彩音が嫌味ったらしい笑みを浮かべ、机に体を乗り出していた。……やっちまった。こいつにハメられたか。
「お前の親父さん、なんつープログラム作ってんだよ……」
「あの男が作ったのはその戦闘プログラムだけよ。勝手に書き込むデータは私が自分で作ったの。」
「……なんのために?」
「もちろん、こういう時の交渉材料にするためよ。」
「交渉の内容は?」
「そうねぇ、あなた、何でも屋だったわよね。」
 そうだと頷くと、考えるように手を顎に当てる。そして……
「私と、そのCDを護衛する事。決して誰にも渡しちゃいけないわ。報酬は、あなたのパソコンから軍事用データの削除。どう?悪くないでしょ?」


653『嫉妬プログラム』 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/16(金) 21:18:37 ID:VDqPb/B7
すみません、ミスりました。三つ目のはこれです。





「クーちゃん!この俺のパソコンに入った軍事用データ、早く消して!!跡形もなく!」
「了解しました。マスター。」
 クーちゃんが事務所のパソコンにアクセスし、データを消そうとするのだが……
「マスター、申し訳ありません。このデータを消すことは不可能です。」
「不可能?なんで?」
「このデータはプロテクトがかかっている上、一度ドライブにいれると、自動的に接続してあるパソコンにデータが書き込まれるようです。」
「はぁっ!?なんだよそれ?ということはもしかして……」
「そ、あなたも犯罪に荷担したってこと。」
 彩音が嫌味ったらしい笑みを浮かべ、机に体を乗り出していた。……やっちまった。こいつにハメられたか。
「お前の親父さん、なんつープログラム作ってんだよ……」
「あの男が作ったのはその戦闘プログラムだけよ。勝手に書き込むデータは私が自分で作ったの。」
「……なんのために?」
「もちろん、こういう時の交渉材料にするためよ。」
「交渉の内容は?」
「そうねぇ、あなた、何でも屋だったわよね。」
 そうだと頷くと、考えるように手を顎に当てる。そして……
「私と、そのCDを護衛する事。決して誰にも渡しちゃいけないわ。報酬は、あなたのパソコンから軍事用データの削除。どう?悪くないでしょ?」
654名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 21:56:22 ID:OSwf6Ojx
終わり?
655 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/16(金) 22:01:36 ID:VDqPb/B7
すみません、終わりです。
656名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 22:05:33 ID:odt0OjyU
えっと、

>>648
>>649
>>653
>>651

っていう順番でいいのかな?
657 ◆EUlOX.LN.2 :2007/03/16(金) 22:12:01 ID:VDqPb/B7
はい、そうです。わかりずらくて本当に申し訳ない…
658名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 22:35:57 ID:WtSrGkIy
>>657
GJです
クーちゃんの独占欲可愛いよクーちゃん(*´Д`)ハァハァ
659名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 22:56:47 ID:CLIHv6jA
随分不公平な取引だなぁ。これならこの場でこの娘を殺すと脅して消させるか、
さっさと依頼主に渡してその場でデータを消させるかした方が楽だな。後者は口封じの危険もあるけど。
660名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 23:58:26 ID:HitP0NmF
何焦ってんだ?
そんなに皆求めてないのに・・・
661名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 00:08:12 ID:OZ7RBc/O
投下しますよ
662『半竜の夢』Sideユマ:2007/03/17(土) 00:09:58 ID:WQGHGD/m
「ただいま帰りましたわ」
 やたらと広い家は、声がよく響く。それが寂しさを強調しているような感じがするので、
私はこの家があまり好きじゃない。どこまでも続くように錯覚させる長い廊下や、今にも
押し潰してきそうに見える壁などは特に嫌いだった。それは私が幼い頃から全く変わって
いない、けれど特に気にすることでもなかった。
 昔はお母様や皆が居て、
「今は、慣れてしまって」
 少し進むとお父様が料理をしていた。後ろ姿はまるで女性、昔は大きく見えていた背中
が小さく見えるのは、私が成長したからという理由だけではないだろう。年甲斐もなく女
の格好をしているお父様は、長年女装をしているだけあって本物の女性よりも女らしい。
その女らしい雰囲気が、より背中を細く小さく見せているのだと思う。
「お父様、何を作ってらっしゃるの?」
「ん? ザックラースって地域のお菓子ですわ。とても体に良いらしいの」
 喋り方もまるで女性、私の喋り方もお父様から引き継いだものだ。顔立ちは昔絵で見た
お母様よりもお父様の方に似ているし、この金髪もお父様から引き継いだもの。殆んどが
お父様から受け継いだもので、逆にお母様に似ている部分は少ない。せいぜい足りない胸
くらいだろう、とお父様は冗談混じりに言う。それ程までに、似てない母子だったらしい。
663『半竜の夢』Sideユマ:2007/03/17(土) 00:11:11 ID:WQGHGD/m
 しかし、愛情は人一倍だったそうだ。お母様とは物心が付く前に死別してしまったので
よく覚えていないけれど、お母様は大層私を可愛がってくれたらしい。だから私は自分に
似ているお父様よりも、全然似ていないお母様に懐いていたそうだ。だからなのだろう、
お父様が女装を始めたのは。はっきりと理由を訊いたことは無いけれど、私が寂しい思い
をしなくても良いように父親であるよりも母親を選んだのだと思う。
 それに、苦笑が浮かんだ。
「どうしました?」
「何でもないです、少し汗を流してきますわ」
 部屋に行き鎧を着て、窓から外に出る。私の部屋は絶壁に面しているので、小さな頃は
見下ろすのも怖かった。しかし今では、良い準備運動の場所になっているから不思議だ。
 空中に身を踊らせながら、暫く風を体で味わう。僅か十秒間にも満たない空中浮遊は、
小さな楽しみとなっていた。竜属と違って私達人間は空を飛ぶことは出来ないけれども、
このようにして束の間の空を楽しめる。これは準備運動でありながら、それと同時に私の
数少ない楽しみの一つでもあった。
「でも、短いものですわね」
 夜の闇の中でも、下方の地面が見えてきた。そろそろ潮時、小さな楽しみが終わること
に寂しさを覚えながら吐息をする。クリヤは憎たらしいけれど、空を飛ぶときは悪くない
と思う。空と風が好きな私が自由に舞うことが出来るのは、今とクリヤの背中に乗るとき
だからだ。それだけは感謝したい。しても良いと思う。
664『半竜の夢』Sideユマ:2007/03/17(土) 00:12:51 ID:WQGHGD/m
「そろそろですわね」
 地上が近付き、私は長杖の先に光の刃を形成した。
 投げる。
 轟音と共に吹き上がる風を受けながら体の向きを調節して、落下の力を殺しながら少し
ずつ降りてゆく。今日は調子が良く、衝撃も殆んど無く着地出来た。
「今日は、土にしましょうか」
 長杖を地面に突き立て、集中する。イメージは巨大な人形、光の刃を形成する応用で地
に魔力を流し込み、立体を作り上げてゆく。数は4つ程、なるべく体は固い方が良い。
 出来た。
 完成と同時に襲いかかってくる土人形から間を置く為に後方に跳躍、一瞬の後には私が
立っていた場所に巨大な土の拳が突き立っていた。調子が良すぎて、土人形の性能も高く
なりすぎているらしい。いつもよりも動作が機敏で、しかも迷いが無い。
「上等ですわ」
 自分で作り出した土人形を相手に何を言っているのかと思うけれど、すぐに思考を切り
変えた。どうせ誰も聞いていないのだから、恥も何もない。
「いきますわよ」
 なるべく土人形の視界に入らないように低い姿勢で駆け、長杖の先に光刃を作り出して
一番近くの足を狙う。砕く必要はない、突き立てるだけでも充分に役目を果たしてくれる。
 光槍によってバランスを崩した土人形は片膝を着き、私はその体を駆け上った。指先に
魔力を集中させて光弾を作ると顔面に撃ち込み、肩に蹴りを当てて即座に飛び退く。次の
瞬間には私を狙った二体目の土人形の拳が、一体目の土人形の顔を砕いていた。
665『半竜の夢』Sideユマ:2007/03/17(土) 00:13:48 ID:WQGHGD/m
 残り、三体。
 着地すると光槍の絵を掴んで、全力で振り回す。巨大な土塊となった土人形を打撃部に
したハンマーは、質量の塊となって二体目の体を打ち砕く。同等の質量と硬度を持つ打撃
を与えられて二つの体は粉々になり、周囲に土砂の雨を降らせた。
 残り、二体。
 土砂に姿を隠しながら、光槍の刃を伸ばしてゆく。出来上がるのは全長10m超過の大剣、
初めてクリヤが竜化をして襲いかかってきたときにも使った、思い入れのある攻撃魔法だ。
刃の光に反応してこちらに向かってきた土人形に向けて、私はそれを全力で振り抜いた。
 手応えは無い。
 破壊力よりも切れ味に重点を置いた刃は、空振りとさえ思える程に抵抗もなく土人形を
両断する。左右対照に分かれた土人形は、地響きをたてながら崩れ落ちた。
 残りは一体、これは余裕だ。
 大剣を光槍に戻すと、体をしならせて撃ち投げる。砲弾よりも鋭く、矢よりも大きな、
大型の杭だ。一点突破の力を持ったそれは、クリヤの竜炎をも貫通する威力を持っている。
光槍は狙い通り吸い込まれるように土人形の顔面に向かい、その役割を果たした。一瞬で
頭部が粉々に砕け、機能を失った巨大な土塊は仰向けに倒れ込む。
 残りは、0。
 思ったよりも短い時間で終わり、笑みが溢れた。やはり昼間のは調子が悪かっただけだ、
今クリヤと勝負をしたら、例え竜の姿で来られても勝てるような気がする。実力はある、
随分と情けない姿を晒してしまったけれど、あれはきっと何かの間違いだったのだ。
666『半竜の夢』Sideユマ:2007/03/17(土) 00:15:20 ID:WQGHGD/m
「それと、お礼を言ってませんでしたわね」
 あのときは意地をつい張ってしまったけれど、クラウンにも詫びないといけない。あの
人は馬鹿だけれど、それなりに良い部分も沢山ある。それに、クリヤ以外で初めて出来た
友達だ。つまらないことで失ってしまうのは、望むところではない。
 軽音。
 枯れ枝を踏む音に振り向けば、暗闇の中に人影が見えた。細かな部分は分からないが、
この辺りで赤く輝く瞳はクラウンだけだ。チャクムとタックムは常に二人で行動している
から違うだろうし、意外と厳しい躾をされているので夜に外には出ないだろう。
 近付いてくる彼にどう話を切り出そうか考え、結局素直に話すことに決めた。少しだけ
照れがあるが、他には誰も居ないので気にはならない。二人きりという状況が僅かに胸を
高鳴らせ、その鼓動が私を後押しさせる。
「あの……」
「伏せろ!!」
 聞き慣れた言葉に体が反応し、私は身を低くした。
「焼けろ、化け物め!!」
 直後。
 言葉の意味を表す熱量の塊が私の上を通過して、クラウンの元へと撃ち込まれる。竜炎
は空間を焼きながら彼へと飛来し、一瞬後には前方を火の海へと変えた。彼は火達磨と化
して苦悶の声をあげながら、低い音をたてて倒れ込む。
「油断しおって、馬鹿者め!!」
「ば、馬鹿は貴方でしょう!? クラウンは確かに馬鹿だけれど、焼け死ぬ程では……」
「あれのどこがクラウンじゃ?」
 炎に照らされて、クラウンだと思っていたものの姿が現れる。人に近い形をしているが、
それは人ではなかった。長い体毛に覆われた筋肉質な体、鋭い爪の生えた巨大な拳。体が
焼けているにも関わらず、瞳は炎とは違う、血のような赤色に輝いていた。
 魔物だった。
「儂が居たから良かったものの、このままでは食い殺されるところじゃったぞ?」
「お、大きなお世話ですわ。この程度、私一人でも」
「武器も無いのにか?」
 溜息を吐きながら、クリヤが長杖を投げ渡してくる。それきり何も言えなくなり、私は
黙り込んでしまった。確かに今のは私の落ち度だ、今だってお礼を言うべきなのだ。
667『半竜の夢』Sideユマ:2007/03/17(土) 00:17:08 ID:WQGHGD/m
 でも、口が動かない。
「ユマよ、無理に礼は言わんでも良い。さっきの言葉も詫びよう。しかし、どうした?」
 何がだろうか。
「普段なら簡単に気付くじゃろうが、まさか、クラウンのことで何か悩んでいたか?」
「まさか」
 本当はクリヤの言う通りだったけれど、つい意地を張ってしまった。そんな自分が少し、
いや、かなり嫌になる。昔からそうだ、つい誰にでも意地を張り、強がりをしてしまう。
無意味に虚勢を張ってしまうのは悪い癖だと分かっているのに、どうしても直せない。
「それに、クラウンにはササが居るでしょう?」
 何故か、少し心が痛んだ。
 分かっている、恋人ではないと当人達は言っているけれど、誰の目から見てもあの二人
は恋人のような関係だ。私が割り込む隙など、どこにも有りはしない。そのくらい強い絆
で結ばれている、まさにお似合いという言葉の具現化のようなものだ。
 割り込む?
 自分で考えたものなのに、急に血が冷たくなったような気がした。先程までクラウンに
対して持っていた気持ちが消え失せて、逆に自己嫌悪のような気持ちが沸いてくる。一体
私は何を考えていたのだろうか、冷たさが増してゆくばかりで、自分の心のことなのに訳
が分からなくなってくる。今までに無かった感情だ、それが上手く理解出来ない。
「クラウン」
 名前を呟き、考える。
「クラウン、クラウン、クラウン」
 何だか胸が、熱くなる。
「ササ」
 この名前を呟いた瞬間、再び心が冷めた。冷たいだけではない、暗く、重く、鋼の質量
と固さで私の心を締め付けてくる。どこかで感じた想い、忘れたことが無い筈なのに思い
出すことが出来ない。いつも心にあるこれを、何と表現するのだったか。
「ユマよ、あまり思い詰めるでないぞ?」
「何の、ことでしょうか?」
 クリヤは私の肩を軽く叩き、歩み去った。
668ロボ ◆JypZpjo0ig :2007/03/17(土) 00:19:29 ID:WQGHGD/m
今回はこれで終わりです
669名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 00:27:47 ID:7ofcf1Km
ロボつまんね
670名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 00:29:59 ID:RLCP+629
>>669
禿同
トライデント神に比べたら糞
671名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 00:32:28 ID:D4WIURVT
>>670
トライデント神早くSS投下してくれないかな
672名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 00:33:14 ID:TfpTVGUr
>>668
GJ!
673名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 00:35:19 ID:56hB0WyD
>>671
蓼食う虫も好き好き、っていうだろ
ロボが好きな香具師だって居るんだからスルーしろよ
674名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 00:36:24 ID:56hB0WyD
>>671>>670
675赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/17(土) 00:55:27 ID:s7mcFkxB
投下させていただきます。
676赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/17(土) 00:56:38 ID:s7mcFkxB
 食事を終えて、リビングにてしらばくの間、直さまのお相手をした後。私は明日の客人のため、仕事を始めました。
ティッシュから蛍光灯、消耗品の在庫の有無。さらにはリビングのソファの位置から玄関に咲く植木鉢の茎の状態に至るまで、家の中の全てをひとつひとつチェックしていきます。
 あるべきものは最高の形へ。ないものは必ずそこにあるべきのように。昨日、一昨日と何度もチェックしましたが、最後にもう一度見回ります。
ぶつぶつと文句を垂れながら、素直に肉の鍋に調味料を足していくラッテを横目に、私は家中を歩き回っていました。
 そんな風にできることを全て片付けていきます。ふと、時間を確認しようと時計を見ると、長針と短針が11のところで重なっていました。そろそろ午後11時を回るところです。
 私は家事を止めて、玄関前の二階へ続く階段を昇りました。
 このお家の二階は直さまのお部屋である八畳の洋室と、しずるお嬢様が来た時のみ使う六畳の和室。そして私が寝泊りをする四畳半の小さな小部屋があります。
直さまのお部屋と私の部屋は隣り合っておりまして、私がお休みのときでも、直さまの身に何かあればいつでもすぐに参上できるようになっています。
 階段を昇りきります。フローリングの廊下をすっすっと音を立てずに歩き、直さまのお部屋の前へ。直さまのお部屋の前にはアルファベットで『NAO』と書かれたドアプレートがかかっています。
 これはラッテが作ったものでした。
 中指で軽く木製のドアをノックします。かつんかつんと鈍い音。
「直さま、起きていますか?」
 私はドア越しに聞く。すぐに返答が返ってきました。
「うん。起きてる」
「お入りになってもよろしいでしょうか?」
 ドアの向こうでごそりと音がしました。
「うん、いいよ」
「失礼します」
 私はドアノブを握ると軽く回し、直さまの部屋をあけました。
 いつもの見慣れたお部屋の中で、直さまはベッドに入り上半身を外に出して文庫本をお読みになっておられました。
 黄色いカバーがつけられた本は、先日駅前の紀伊国屋で私が購入してきたライトノベルでしょう。内容は確認しましたがそれなりに面白いファンタジィアクションでした。
 最近は清純そうなアニメ調の女の子が表紙を飾っているくせに、開いてみれば挿絵で剛直を咥えながらいやんいやんしている成人向け小説が多いのでこういったチェックはかかせません。
 ベッドにつけられた間接照明の明かりで本を読んでいた直さまに私は近づき、ベッドの前でひざまずきます。直さまと私の目線が同じ高さになりました。直さまは開いていた本に青いしおりを挟んで静かに閉じます。
「まだお眠りになってないのですか?」
 普段なら夜11時は直さまがお休みになっているお時間です。
「うん、やっぱり少し眠れなくて……」
 直さまは明日のことがやはり気になっておられるようでした。無理もありません。
「で、本、読んでたよ」
「よっぽど明日が楽しみのようですね」
 直さまが恥ずかしそうに微笑みます。私もつられて直さまに微笑みました。
「ですが、夜更かしは体を壊します。そろそろお休みになられては?」
 そういうと、直さまは素直に頷きました。
「うん、そうだよね。……でもやっぱりなんだか興奮しちゃうなぁ」
「では、私が添い寝して差し上げましょうか?」
「あはは。冗談はよしてよ。ちゃんと眠れるからさ」
 直さまはくすくすと笑いました。私は半分本気でしたが、そこは黙って直さまと笑いあうことにしておきます。
「じゃあ、そろそろ寝よっと……」
「あ、おまちください」
 暖かい羽毛布団に入ろうとした直さまを私は制止します。直さまの青と白のストライブのパジャマの胸元のボタンが外れていました。私は腰を落としたまま、直さまに近づくとボタンに手を伸ばします。
 ちょうど、胸元の鎖骨の下あたりのボタンが外れていました。私は顔を近づけて、小指の先ほどの小さなボタンを穴へ挿し込みいれます。
ふと、私が顔を上げると直さまのお顔が目の前にありました。私の鼻先数センチ向こうに直さまのかわいらしいお顔。押せばくっついてしまうような距離。
いま、私がここで直さまをキスしたら、私の唇と直さまの唇を重ねましたら、直さまはどんな顔をするのでしょうか。
私にキスをされたことを喜ぶお顔?
はにかんでしまって照れたお顔?
あともう15秒で負けたら35連敗というバスケ試合でロングシュートを決めた時のような驚きのお顔?
 私の想像の中の直さまはキスした私を軽蔑しませんが、実際はどうなるのでしょうか。試してみたい。そんな思いが私の胸の中に溢れます。

677名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 00:57:26 ID:R2yhlRQy
>>673
ヒント:最近投下の後は単発IDが湧く
678アンビエイト・ダンス1-4 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/17(土) 00:58:05 ID:s7mcFkxB
「え、えっと。どうしたのエリィ?」
「あ、いえ」
 直さまのお言葉に私は我に返りました。顔を近づけたまましばらく固まっていたようです。妙に顔を赤くしている直さまがぽりぽりと頭を掻きます。
「ボタンを留めさせていただきました」
 私は場を取り繕うように言います。直さまは赤い顔のまま「ありがとう」とおしゃいます。
 そのお礼の言葉を私は笑顔で受け立ち上がります。直さまから読みかけのライトノベルを渡してもらい、学習机に備え付けてある本棚へライトノベルを戻しました。
 シリーズモノでしたので同じ作品列の一番右端におきます。
「それでは、直さま。私はこれで」
「うん」
「おやすみなさいませ。直さま」
「おやすみ。エリィ」
 私は出入り口につけられた蛍光灯のスイッチをOFFにしました。明るい直さまのお部屋の白い明かりが落ちて、消えたと同時に転倒するの夜行ランプがあたりをオレンジ色に染めます。
 直さまが枕に頭を押し付けられたのを確認すると、私は音を立てず静かにドアを閉めました。



 階段を下りて玄関に飾ってあるサボテンの位置を2ミリ横へ修正し、台所へ戻るとラッテは椅子に足を組んで座っていました。私が入ってくるのをにたにたとした顔を向けて見ています。
 鶏肉はできたのですか? と私は視線で聞くと、ラッテははいはいと言った風に頷きます。
「なにが可笑しいのですか?」
 いつもにたにた笑いをやめないラッテですが、付き合いも半年も過ぎれば彼女が普段どおりなのか、それとも本当に笑っているのかわかってきます。
 私が彼女を睨みつけると、彼女は肩をすくめました。
「直やんはどうだった? やっぱり起きてた?」
「ええ」
「ふーん。こんな時間まで起きてるなんて相当明日のことが楽しみなのね」
「ええ」
「……ふん」
 頷首する私に、ラッテは鼻を鳴らして笑います。その態度に私は少し不機嫌になりました。もう一度きつく睨みつけます。
「なにか?」
「エリィさんにとっては面白くない話でしょ?」
「……」
 ラッテは組んでいた足を戻して、椅子から立ち上がりました。彼女のエプロンドレスのスカートがすこし浮き上がります。
「明日は友達なんて来ないじゃない」
「……」
「来るのはあんたの大好きな直やんの『許婚』でしょう?」
 私はラッテの顔面に向けて、拳を突き上げました。その行動を分かっていたのかラッテは軽く首を動かして避けます。にたにた顔を粉砕することはできませんでした。
「……すみません。手元が狂いました」
「ふふん。激昂して手が出た?」
「次は当てますよ?」
「私の身に何かあったら、直やんが許さないわよ?」
 やはり、この女は嫌いです。なまじ直さまと仲が良いだけに家からつまみ出すこともできません。
 この女を傷つけると、直さまは悲しまれる。私は彼女の笑い顔を眺めてストレスをためていくしかありません。
 私は常にラッテを警戒していました。ラッテにはすでにこの家に住む条件としていくつかの誓いを立たせています。
一、『直さまの挨拶はすべて私の後に行うこと』
一、『直さまのお部屋に入らないこと』
一、『直さまと喋るときは私の監督が届いてあるところでのみとする。なお、直さまから話されたときは例外であるが、これも節度を守るものとする』
一、『上記の誓いを直さまに悟られないこと』
 全て、ラッテが必要以上に。私以上に直さまに近づかないようにするため。直さまが、ラッテのような素性の分からない女に全てを信頼させないようにするため。
 ラッテがもしかしたら直さまを狙った暗殺者だという可能性も否定できないのですよ? それを直さまにもわかってほしいと常に思います。
 いまのところラッテは全ての誓いを守っていますが、この誓いを彼女が守ってなかったとしたら、彼女はどんな行動をとるのでしょうか……?
 私は伸ばしていた拳を引っ込めます。しかし、もう一度ラッテの顔を睨みつけます。
 それで話は終わりだというように、私はラッテに向けていた意識を食器乾燥機に移しました。 食器乾燥機を開けて中から直さまのお茶碗を取り出します。
「ねぇ、エリィさん」
「……なんですか?」
 背中で私は返事をします。
「いくらエリィさんが直やんのことを独占したくても、嘘はいけないんじゃないかしら?」
「と、いいますと?」
「とぼけないでよ。直やんに明日来る客が許婚って言ってないでしょう。なに? 『新しいお友達が住みに来る』って」
 そう言ってエリィは立ち上がり、やれやれといった風にもう一度肩をすくめると、まるで何かを私に教えるように呟いて台所を出て行きました。

679アンビエイト・ダンス1-4 ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/17(土) 00:59:34 ID:s7mcFkxB
「直やんも、知りもしない友達がどうしてこの家で住むことになったのか、考えてほしいものよねぇ?」
 そんな捨てセリフを残して。



 私は直さまに明日来る客が、本家頭首様からご命令されて宛がわれた許婚だという事実を隠していました。
 直さまが将来、結婚すべき相手。私のように暗黙の婚約者ではなく。正式な婚約者。その婚約者が明日から、直さま、そして私たちと同じ屋根の下で住む事になっているのです。
 そんなこと、私が認めると思いでしょうか? いえ、私の意見なんて気持ちなんて関係はありません。
 いくら私が一度本家にも認められていた世継ぎだったとはいえ、政治的にも潤う許婚が現れた今では、私は直さまに仕えるただの教育係のいちメイド。発言力なぞ皆無。
 ただ、上の命令に従うだけ。

 そうして、

 私は直さまと許婚の女の交際を心から祝福しなければならない立場になってしまいました。
 直さまと許婚の女の関係を良いものにして、本家の利益となるように動かなければならなくなりました。
 直さまは幼い頃から一緒だった私ではなく、いきなり現れた初対面の許婚を選ぶように……直さまの心を仕向けるという、
 大事な大事な、大儀を……負うことになってしまいました。
 
 それは、とても仕方の無いことです……。

 しかし、
 しかしです。そんな利益だけを追求して、直さまのお気持ちを無視した命令を、私がほいほいと頷いてたまりますかっ!
 直さまはあなたの駒ではありません! 自分で考えて行動できる立派な人間なのです!
 言いたい! あの利益と権力の固持しか考えておらず、直系の孫である直さまを可愛がりもせずこのような庶民の住宅地に押し込める頭首の耳元に向けて、ヤツの鼓膜が千切れるまで叫びたい!
 直さまの幸せを考えろと!
 直さまのお気持ちを考えてくれと!

 直さまを一番大事にしている私は、時代錯誤のまま政略結婚される直さまが不憫で不憫でとても悲しいのです。
 だから、私は抵抗します。
 客を、許婚と呼ばず。ただの友達として紹介して。抵抗します。
 頭首様のご命令に真っ向から抵抗してみせます。
 直さまを汚らしい俗者の手から、全て私がこの身ひとつで守って差し上げます。
 直さまと許婚を添い遂げてやりません。 私の力で、全力で阻止します。

 ……それに、だいいち。

 だいいち、直さまは、直さまはずっと一緒だった私と添い遂げることが直さまにとって一番幸せなのです。
 私は直さまが、怖くて夜中に一人でトイレに行けなかった頃から一緒で、幼少期の頃から現在に至るまで、直さまにずっとずぅっと慕われていた、いわば家族以上の存在。
 そして直さまは私を一番に信頼して下さり、私の全てを受け入れてくださる素晴らしいお方です。
 そんな可愛い可愛い直さまをどこの馬の骨(いや、一応大企業のご令嬢ですが)だかわからない女にむざむざと盗られてたまるものですか。
 直さまは私のものです。 直さまの笑顔も優しさも唇も爪の垢も全て私のものです。
 ポっと出の許婚なんぞ、直さまの髪の毛一本も渡すかっっ!!



「…………」
 一人きりとなった台所。
私は右手で愛用の出刃包丁、『井上』を握り締めて私は決意に燃えていました。
「……直さま」
 明日からこの家は戦場になります。直さまのおそばから、全力で許婚を離してみせます。
 戦争です。まったくもって、これは戦争。
 ……この戦争が終わったら、私は直さまを襲ってもよいですよね……?

(第一話、終わり)
680赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/03/17(土) 01:00:38 ID:s7mcFkxB
赤いパパです。これでとりあえず一区切りです。
コテと名前をつけている以上は職人として、作品を投下するだけだと決めているので、私は投下以外は書き込みはしないようにしています。

最近は私の投下の後で、スレが荒れることが多くなってきたようで……。最近は投下を控えようかなと思う毎日です。
もし自分の作品でスレの雰囲気が悪くなるのならすぐに作品は撤収させていただきます。次回は第二話、許婚来襲です。これも難分割かに分けて投下します。

 最後にコレだけは言わせてください。
『両手に嫉妬の華』の作者の方。めちゃくちゃ面白くて大好きです。私もこんな作品が書きたいと常に思います。
681名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 01:03:13 ID:63DeJQc0
>>680
二段目は書かない方がいい。只でさえ空気があれなんだから
もうちょっと空気読んでくれ
682名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 01:03:13 ID:R2yhlRQy
>>680
割り込んですまなかった…最近と言うか随分粘着してるからあんま気にしない方がいい
あと最後にGJ
683名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 01:45:38 ID:56hB0WyD
>>681
こんどはこういう趣向かい?
684名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 01:56:38 ID:VfQ8CkFf
>>680
いつもGJです。少なくとも、荒らしの数よりは職人さんの作品を心待ちにしている人の方が多いと思いますよ。
だから余り気にせずにいて下さいな。
685名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:16:14 ID:dFHuXAkr
>>680
面白かったよ

あんたの投稿だけじゃなく、最近は誰の投稿のあとでも単発が湧く
キニシナイで投稿してくれまいか
686名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:21:34 ID:63DeJQc0
>>683
どっちの人か知らないけど俺の言葉選びから察してくれ
687名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:25:25 ID:tfngQ5h3
おまいら、疑心暗鬼になっていないか?
688緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/03/17(土) 02:30:53 ID:Tp3B4csx
投下します
689七戦姫 3話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/17(土) 02:32:02 ID:Tp3B4csx

 * * * * *
 
 この世界には、多種多様な獣が存在する。
 特異な能力を持つものも珍しくなく、知能が人並みにある獣すら存在する。
 そんな獣たちの中で、大陸最強を誇るのが“竜”である。
 空を縦横無尽に駆け巡り、長い寿命と強靱な体躯、種族毎の特異な能力。
 どれもが一級品の、最強の獣。
 そんな竜にも、様々な種族が存在する。
 飛行に特化されたもの、耐久力に優れたもの、火炎を操れるもの。
 
 そして、人間の姿に変化できるもの。
 
 幻想竜、と人間達に呼ばれる彼らは、竜族の中でもとりわけ位の高い方であり、
 人の姿に転じても尚、竜族高位の能力を発揮できる。
 
 竜族内での位の高さと、単独での戦闘能力の高さ。
 この2点が相俟って、幻想竜にはとある特異な習性が作り上げられていた。
 
 ――人の世の中を、単独で旅すること。
 
 目的は個体によって様々で、世界中の美味い物を食べるつもりの個体もいれば、
 人生(竜生?)の意味は何なのか探しに行くだなどと考えてしまう個体もいる。
 
 
 幻想竜の年若き雌、ヘイカの場合は。
 婿探し、というあまり大っぴらに言えない目的だったりする。
 
 
 とある小国2つの国境付近。
 長髪を腰で括った一人の少女がいた。その髪は薄い蒼で、年の頃は十代前半。
 一人旅をするには不自然すぎる様相だが、周囲に供の姿は見えなかった。
 
「……この国も駄目だったか……」
 
 険しい山道を一人で踏破しながら、少女――ヘイカは重い溜息を吐いてしまう。
 疲れではない。どちらかといえば呆れの溜息。
 先程まで滞在していた国でも、探し物は見つからなかったからである。
 
 幻想竜は人間との間に子を為すことができるため、婿の対象には当然人間も含まれる。
 人間は竜と違い寿命が短いため、きめ細やかな対応をしてくれると評判なのだ。
 ヘイカの友人も、先日人間の雄を婿に迎え、一族総出で祝っていた。
 最近の幻想竜の若い雌の間では、人間と結婚することが一種のステイタスとなっており、
 人間の婿を手に入れたヘイカの友人は、当然の如く自慢してきた。
 それはもう凄い勢いで。
 ヘイカは悔しかった。
 悔しさのあまり山が半壊するほどの大喧嘩をしてしまったが、まあそれはそれとして。
 自分があんな友人に劣ってるはずはない、とヘイカは思った。
 自分だって、人間の婿を迎えられるはずだ。
 人間で、しかも友人が連れてきた奴より立派な婿を。


690七戦姫 3話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/17(土) 02:32:47 ID:Tp3B4csx

 ヘイカは旅立った。
 素敵な婿を手に入れることを目指して。
 旅を始めてから、もう30年が経つ。
 婿はまだ、見つかっていなかった。
 
 
 ヘイカは現在341歳。
 幻想竜の寿命は長いため、人間の年齢に換算すると13歳程度といったところか。
 まだまだ遊びたい盛りではあるが、そういった欲求は封印して、ひたすら婿探しに励んでいた。
 全ては、友人より立派な婿を手に入れるため。
 具体的な条件を挙げるならば――
 
・容姿端麗であること。
(注:幻想竜のヘイカから見て)
 
・財宝を蓄えていること。
(注:幻想竜は金銀財宝を好む性質がある)
 
・知性に優れていて、気配りが利くこと。
(注:人間を選ぶ醍醐味はここにあるから)
 
・生殖可能な年齢であること。
(注:あくまで子孫を残すための婿選び)
 
・初物であること。
(注:友人の婿は経験者であったため、前の女と比べられた)
(注:幻想竜の雌はそれなりの歳に達していても、人間としての姿は幼く見える)
 
 以上の条件を元に、ヘイカは己に相応しい人間を探して旅を続けていたが、
 既に大陸の半分を探し終えた現段階で、全く以て適合者が見つからない。
 なお、条件に戦闘能力は含まれていない。
 幻想竜のヘイカから見て、人間の戦闘能力など、ほとんどが鼻で笑えるレベルだからである。
 故に、ヘイカの条件を満たす人間は、主に王族や貴族の類に絞られる。
 
「……初物でない者なら幾人かは見かけたが……。
 …………いかんいかん、妥協などしたら、彼奴に笑われるだけだ」
 
 友人の嫌みったらしい鼻笑いを思い浮かべ、
 ついカッとなったヘイカは、腰に手をやる。
 
 手を伸ばした先には、一降りの“刀”が差されていた。
 
 抜刀は一刹那。
 閃光の如き斬撃は、手近な岩を両断した。
 岩が崩れる音が響く頃には、既に刀身は納刀されている。


691七戦姫 3話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/17(土) 02:33:28 ID:Tp3B4csx

 ――刀。
 
 とある小国にて、偶然見つけた片刃の剣。
 小柄な人種が、彼らの非力を補えるように、軽くても硬軟構わず斬られるように作られた武器。
 武器の重量は、竜であるヘイカにとっては特に拘ることではないが、
 その形状から抜き打ちに適しているところが、ヘイカは気に入っていた。
 
 鞘から刀身を引き抜く動作。
 斬撃のために必要な速度を作り上げる動作。
 この2点が、芸術的なまでに複合された、刀独特の攻撃法。
 それが、ヘイカには、とても美しく感じられたので。
 ヘイカは好んで、刀を振り回すようになっていた。
 
 気付けば、竜のくせに人間の剣術を極めてしまっていた。
 刀を手に諸国を旅し、いい男が見つからなければ憂さ晴らしに魔獣退治。
 旅を始めて15年が過ぎる頃には、ヘイカの名前は傭兵業界に強者として広まっていた。
 
「……まあ、このまま旅を続けるのも悪くないがな」
 
 魔獣を倒して英雄扱いされるのも、それはそれで気分が良かった。
 幻想竜の社会は完全な年功序列であるため、年若きヘイカはかなり身分が低かったりする。
 年寄り連中に馬鹿にされてこき使われるより、人間達の中で英雄視されている方が、何倍も気持ちよかった。
 普通の人間に比べて食費は多めにかかるものの、それ以外には頓着しない性格のため、
 ヘイカが生活に困ることはほとんど無かった。
 このままあと50年くらいは旅を続けるのもいいかもしれない。
 その頃には友人の婿もヨボヨボの爺と化しているだろう。
 そこへある程度のレベルの人間を連れて行き、
「我の婿は貴様のとは違ってまだまだ生殖可能だぞフハハ」とでも嗤ってやればいい。
 そもそもよく考えてみたら、婿探しだって友人への対抗意識から始めたもので、
 ヘイカ自身は、べつだん婿が必要とは思っていない。
 
 なんだ、それなら別に、旅の目的は婿探しである必要はなく。
 のんびり気ままに英雄ごっこでもやっていればいい。
 
 
 そう、思っていたのだが。
 
 
 
 
 
692七戦姫 3話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/17(土) 02:34:15 ID:Tp3B4csx

 旅の途中。
 とある大国の属国にて。
 ヘイカは、面白い噂話を聞いた。
 
 ――王子が、武道大会の優勝者を妃として迎え入れるらしい。
 
 なんだそれは、とヘイカは驚いた。
 色々な国を見てきたが、そんな素っ頓狂な方法で妃を決める国なんて、何処にもなかった。
 そして同時に、こう思った。
 
 ――自分が出場して優勝すれば、友人に余裕で自慢できる。
 
 婿入りではなく嫁入りであることが少々癪に障るが、
 王家の財宝と王女という立場が手に入るのなら、我慢してやってもいい。
 そして、年に1度くらい、実家に連れて行って友人に自慢するのだ。
 あとは王城で食っちゃ寝の極楽生活。そして飽きたら適当に姿を眩ませる。
 
 ……いいかもしれない。
 そう思ったヘイカは、早速噂の王子がどのようなものか見に行くことにした。
 
 
 * * * * *
 
 
 ユナハはご機嫌だった。
 今日はぽかぽかお天気で風も弱く、クチナの体調も悪くない。
 そんな日の午後は、クチナはユナハを連れて、テラスで景色を眺めるのが常である。
 日傘の下で、のんびり遠くの山を眺めるクチナ。
 その横顔に何度も見とれながら、幸せな時間を噛みしめるユナハだった。
 
 手には剛槍。すぐ近くの通路には部下が控えている。
 それでも、今この瞬間はクチナと二人きり。
 護衛という立場でも、慕う相手の近くにいられるのは、幸せだった。
 
(……もし、クチナ様のお妃様が決まっちゃったら、
 私みたいな若い女を、近くには置かないよね……)
 
 ユナハは、立場上は一応貴族に分類される。
 妃となる女性が、夫の近くに好意を持つ女が置かれることは望まないだろう。
 クチナもそういうことに配慮して、きっとユナハを他の部署へと“栄転”させるに違いない。
 
 クチナの護衛でなくなるということは。
 今のような、穏やかな時間もなくなってしまう。
 ……想像するだけで、涙がこぼれそうになってしまう。


693七戦姫 3話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/17(土) 02:34:58 ID:Tp3B4csx

 せめて。
 自分が護衛を務めるのを拒まない人が、クチナの妃になるのであれば。
 それなら、身を退いてもいいとさえ、思っている。
 例えば――姉のイクハなら。
 何だかんだと愚痴はこぼそうとも、護衛の任を解くまではしないだろう。
 姉だったら、安心してクチナを任せられる。
 
 しかし――大会には、ケスクも出場する。
 
 大陸最強とも呼ばれる“竜騎士”の称号を持つ少女。
 順当に行けば、優勝するのは彼女だろう。
 イクハもユナハも、常人以上の戦闘能力を誇るが、それでもあの竜騎士には及ばない。
 ケスクだったら、ユナハが近くにいることを許してくれるだろうか。
 否。
 あの女は、決して許さないだろう。
 今でさえ、ユナハがクチナの側にいることを快く思っていないのだ。
 彼女が王妃になったとき、自分がどうなるかは想像に難くない。
 何かにつけては「もっと信用できる護衛を紹介する」などとクチナに提案しているのだ。
 クチナは「ユナハが一番信用できる」と言って断ってくれるのだが、
 そのたびにケスクは、クチナにばれないようにユナハを睨んでくるのだ。
 こちらは毎回、冷や汗を大量にかき、胃が引き絞られるように痛んでしまう。
 ケスクは一見、純情で真摯な貴族令嬢だが、
 実際は、思い込みが激しく執念深いトカゲ女だ。
 
 だめ。
 あんな女に、クチナ様は渡せない。
 
 ――ならば、どうにかして自分か姉が優勝しなければ。
 
(……完全に“何でもあり”だったら、誰もあの人に勝つことはできないよね)
 
 ケスクには“飛竜”がいる。
 竜騎士とは飛竜を使いこなせる騎士のことだ。
 専用の飛竜に乗ったときの戦闘能力は、高位の竜族すら敵ではないといわれている。
 
 では、竜に乗っていないときは?
 これも、勝つのは難しい。
 そもそも竜に乗るには、乗る竜以上の戦闘能力を備えなければならない。
 ケスクは単独でも、竜並みの戦闘能力を持っているのだ。
 その剛剣は頑強な盾すら切断し、阻めるものはこの世にないとまで謳われている。
 技術も生半可なものではなく、木剣を用いた模擬戦闘でも、貴族内では負け無しとのことだ。
 
 対するユナハは、剛槍の使い手と謳われつつも、
 小回りは利かず、技術も未完成な部分が多い。
 ――ケスクに勝つ自信は、はっきりいって皆無だった。
 
(でも、やるしかない。私が頑張って、そして、クチナ様と――)


694七戦姫 3話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/17(土) 02:35:44 ID:Tp3B4csx

 そんな、幸せな妄想に浸ろうとした瞬間。
 
 気付いたときには、身体が動いていた。
 
 石像のように止まっていたのが嘘のように、疾風より速くテラスを駆ける。
 一呼吸にすら満たない時間で、槍を構え、クチナの前へ出た。
 槍と身体で、クチナの急所を全て隠す。
 前方には、テラスの手すりと山の風景。
 目下の林には目もくれず、ユナハは真っ直ぐ、山間の一角を見据えていた。
 
「……ユナハ?」
 
 背後から、クチナの声。
 その声に驚きはない。己がいつ狙われてもおかしくないことを理解しているからだ。
「……敵? 下がった方がいいかな」
「…………いえ。それには及びません」
 冷静な声でユナハは答え、そして――
 
 
 * * * * *
 
 
「――気付かれた!?」
 
 王城から2里は離れた山の中。
 テラスをこっそり覗いていたヘイカは、思わず驚きの声を上げてしまった。
 
 常人なら、テラスの上の人間どころかテラスの位置すら捉えるのが難しい距離。
 竜族故の突出した視力にて、ヘイカは何とか見ることができたが、
 まさか人間に気付かれるとは思ってもみなかった。
 
「……こっちの姿が見えてるわけじゃなさそうだな。
 あくまで盾になって急所を隠してるだけ、か。
 視線を察知したのかね。だとしても、この距離で道具無しに気付くなんて野生の竜並みだ」
 
 呟く唇は、気付かぬうちに笑みの形に歪められていた。
 人間にも、相当できる奴がいるらしい。
 それがわかっただけでも、覗き見た価値はあった。
 
 ――と。


695七戦姫 3話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/17(土) 02:36:29 ID:Tp3B4csx

「ん?」
 
 目を凝らす。
 テラスの上。
 王子の前に立った女の護衛。
 そいつが、身体を捻って、
 
「おいおい、何をするつもり――」
 
 目を疑うも、ヘイカの勘ははっきりと危機を知らせていた。
 背中が見えるくらい護衛の身体が捻られて。
 その手には、身長よりも長い剛槍が握られていて。
 そして、
 
 
「ちょっと、待て」
 
 
 護衛が、
 槍を、
 
 投げた。
 
 
 それは、山なりの軌道を描き――
 
「……って、嘘おおおおおおおおおおおおっっっ!!!!?」
 
 叫びながら、ヘイカは慌てて横に跳んだ。
 瞬間。
 
 一瞬前までヘイカが居たところに。
 轟音を響かせて、長大な槍が“着弾”していた。
 
 
 * * * * *
 
 
 槍を投げ終えた姿勢のまま、ユナハは油断無く前方を見据えていた。
 そして、飛び道具の心配がないと悟ると、後方へ向かって「待機班!」と叫んだ。
 ユナハに呼ばれ、通路に待機していた護衛が、替えの槍を持ってテラスへと出てきた。
 万一の可能性を考えて、ユナハは常に部下を近くに配置しているのが常である。
 彼女の戦法のひとつに射槍術があるため、替えの槍も持たせていた。
 
「隊長! 如何為されましたか!?」
「山に監視が一人。急襲の可能性を考えて、周辺の警備を強化」
「了解しました!」


696七戦姫 3話 ◆gPbPvQ478E :2007/03/17(土) 02:37:24 ID:Tp3B4csx

 指示を受け、部下が城の中へと駆けていく。
 それを見送ってから、クチナは改めて山の方へと向く。
 
「さっきの槍、あの山に向かって投げたんだよね?」
「はい。この距離ですから、こちらを視認できる相手でしたら容易に避けられるとは思いますが」
「牽制、ってこと?」
「その通りです。護衛が私一人でしたら敢えて隙を見せ待ち受けるのも手でしたが、
 護衛隊には優秀な部下が多数いますので、抑止力を発揮すればそれで充分かと」
 
 淡々と“護衛の顔”で会話するユナハ。
 クチナは、そんな彼女の頭を唐突に撫でた。
 
「なるほど。
 ……やっぱり、ユナハは凄いよね。君が護衛で、本当に良かった」
「え……あ……そのようなお言葉、勿体ないです……はう」
 
 不意打ち気味に頭を撫でられたユナハは、真っ赤になってされるがままに。
 これだけで、ユナハは死んでもいいと本気で思った。
 それくらい、クチナに褒められるのは、心地よかった。
 
(……やっぱり、クチナ様のそばにいたいよ……)
 
 優しく頭を撫でられながら。
 ユナハは、己の気持ちを再確認していた。絶対に、譲れない気持ちを。
 
 
 * * * * *
 
 
 獣道を駆けながら、ヘイカは笑いをこぼしていた。
 ――2里は離れたところから、ああも正確に槍を投擲してくるとは。
 あの護衛、只者ではない。
 竜形態ならいざ知らず、人間形態であそこまでの怪力を有する者は、竜族の雄でも珍しい。
 なるほど、王子の護衛は“異能持ち”であったということか。
 だとしても、あの怪力は異能どころの話ではない。
 あれほどの力で突き出された槍を防げるものが、この世にあるのだろうか。
 甲殻竜の鱗すら容易に突き破ることができるだろう。
 あのような護衛が側付いている王子。興味が湧かないはずが、なかった。

 竜の血が久方ぶりに滾っている。
 それは、明らかな欲求を表していた。
 
 ――戦ってみたい。
 
 例の大会に、あの女も出るのだろうか。
 だとすれば――是非とも、出場してやる。
 幻想竜を驚かせたのだ。礼代わりに、殺して喰らってやろうではないか。
 
 今までの旅で感じたことのない感覚に、ヘイカはひとり、身を震わせていた。


697緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/03/17(土) 02:38:13 ID:Tp3B4csx
今回の記録 種目:槍投げ 約8q
ユナハさんすごすぎ。ファンタジー万歳。
一応設定ではユナハが一番力持ちです。

あと、新キャラ一名追加です。
ヘイカ(13歳)です。水色長髪ロリ。そして刀。
これで五人。あと二人。
修羅場の火種仕込みを楽しんでしまってるあたり私はもう駄目ですね。
修羅場万歳!
698名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:38:27 ID:9q67PV/+
九十九投下汁
699名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:39:07 ID:fmp85Uqk
GJです。
ちょうど緑猫氏の投下の後なので。

「こら、白、起きなさい。朝ご飯は抜きにしますよ?」
ttp://bbs9.fc2.com/bbs/img/_166100/166037/full/166037_1174066505.jpg
700名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:39:08 ID:RXbLIej4
セルフパクリ乙
701名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:41:00 ID:kYgGW+Uf
>>697
血塗れ竜のほうが面白かったし、なんかキャラ増やせばいいだろ的な感じがする
九十九を早く完結させてくれないかな?
702名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:42:29 ID:FP3Vnb6a
>>697
>ユナハさんすごすぎ。
自分で作った設定なのに何言ってんだw
なんかトラ氏と同じ匂いがするwwwwwwwww
703緑猫 ◆gPbPvQ478E :2007/03/17(土) 02:43:34 ID:Tp3B4csx
>>699
おお白だ! GJ!
創作意欲が沸いてきました。ありがとうございます!
704名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:45:54 ID:m9mBiAsQ
>>703
SS投下関係以外でレスすな
こっちも穴だらけのSSを批判しないんだからな
705名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:46:37 ID:a6b/JdXp
>>704
禿同
赤いパパ氏を見習え
706名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:51:09 ID:0x9JImTC
>>705
>コテと名前をつけている以上は職人として、作品を投下するだけだと決めているので、私は投下以外は書き込みはしないようにしています。
こういう作家ばかりだったらこのスレももっとマシになるのにね
707名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:52:30 ID:n6IwZ8r6
>>680を全ての作家に見てもらいたいよ
708名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:54:39 ID:5vbohGCe
>>707
新人のくせに生意気だと思ってたが>>680を読んで一気に赤いパパ氏派になったわ
709名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 02:58:06 ID:40UQnp1w
>>680
作者の鑑!GJ!!!
710名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 03:18:18 ID:dFHuXAkr
>>697
GJ
しかし春休みだからか、単発荒らし多いな
711名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 03:24:03 ID:RV5tWvR4
GJ!!!
前回の投下から間も置かずの投下は嬉しい限り
そしてついに比揄ではない本物の人外ーそれも龍が登場!
ロリなのに年上!しかもほぼ不老!何て素晴らしいw

でもユナハも捨てがたいんだよなw
皆魅力的で目移りして困りますw
712名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 03:33:24 ID:peUeOG2g
>>710
単発荒らしとかいうやつも単発なことが多い罠
713名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 03:57:27 ID:tv1vZc10
>>697
いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
714名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 04:05:11 ID:8oVL5/Qw
>>710
SSスレだから単発なのが当たり前な気がするがな
職人以外はGJくらいレスしないだろうに
まあ妄想とかプロットとかもレスしたりするか。



まあ何が言いたいかというと職人さんGJといいことだ。
715名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 04:42:38 ID:PBvUIDMP
>>697
こんどは見た目ロリで人外ですかwなんてツボをついてくるんだwww
あとの二人もどんな設定なのか期待して待ってます。
716名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 05:13:28 ID:yHCHdKHy

ttp://www.geocities.jp/learn0femmy/

↑こいつワロスw
717名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 05:43:29 ID:RyZbFPlw
>>697
GJ!
キャラも揃ってきて続きが楽しみだ。次回楽しみに待ってます!
718名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 06:09:01 ID:Id8uN/b9
>>697
>今回の記録 種目:槍投げ 約8q

無粋を承知ですが・・・

ウィキペディアによると女子やり投げの世界記録は71m70cm。
ちなみに重さ600g、長さ2m20〜30cm。

ユナハたん、強力無双萌え。

(でも怪物姉が好き)
719名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 08:35:07 ID:K0oXbdCj
>>697
・・・畜生、畜生、畜生ッッ!!

ニヤニヤが抑えられん!!
修羅場万歳!!
720名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 09:27:56 ID:fuJnJoEf
>>680
GJ!!!
しかし緑猫氏に単発GJが多すぎてワロタ
721名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 11:18:34 ID:6c2St8jd
しかし、作者叩きを始めると投稿が少なくなるのに何を考えているんだろうか
この嫉妬スレの住人は

神の皆様は1ヶ月ぐらい投稿を自粛した方がいいと思うんだけど
自分の作品を叩かれて貶されてまでここに投稿する意義はあるのかと

自惚れているスレの住人は一度投稿もない寂しげなスレの空気を味わった方がいいよ
722名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 11:39:02 ID:FnMobmUo
人がいなくなったら勝手に勝利宣言するくせに
723名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 11:50:06 ID:QUTyYuJt
まあ、ここは2ちゃんである以上多少の荒らしは避けられないもの。
ちょっとそっとで投下を控えられるとスレが衰退してしまうよ。
簡単にいうと投下をwktkして待ってます、ということ。
724名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 12:12:41 ID:eLZ7Z6DP
>>721
それが狙いなんだろぅ?しかも住人のせいにするな。
そういうことをするのは荒らしぐらいなもんだよ。ってか、お前判ってて言ってんだろ。
725名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 12:31:14 ID:6c2St8jd
>>724
単発ID乙だな・・

>>住人のせいにするな

住人のせいで神が投稿出来づらい雰囲気を作り出したのは事実だよ
それを認めて反省しない限りは神は離れてゆくのは当然だろ
何を言っているんだが
726名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 13:05:57 ID:eLZ7Z6DP
>>725
すぐ何かあれば単発IDか。
その単発IDで荒らししてる奴が作者叩きしてるって気付けよ。
そんな事もわからないなんてお前は馬鹿か?それともお前が荒らしなのか?
727名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 13:08:07 ID:6c2St8jd
単発ID荒らしの流れに乗って煽っている住人もいるだろうに
雰囲気が悪くなれば神は投稿しないよ

現に叩かれた神は投稿の速度が激減しているでしょ
728名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 13:09:30 ID:N0WOBOcc
>>726
あれ、ID変えないのか?
729名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 13:18:41 ID:RyEd3KtH
ここまで多くの職人に恵まれたスレはそうそう無いというのに、内紛で自壊しそうになるとはな
730名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 13:23:52 ID:6c2St8jd
粘着荒らしごときで潰されるとは・・一体どこのどいつなんだ?
731名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 13:28:36 ID:eLZ7Z6DP
>>728
だっておりゃあお前と違って単発IDの荒らしじゃないもん。
732名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 13:30:07 ID:eLZ7Z6DP
>>727
現にも何も、一番多く叩かれたトライデント氏やロボ氏はちゃんと投下していたが?
ろくに叩かれたわけでもなしに消えた人は多いと思うが。
733名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 13:46:52 ID:Adqyl2Kq
仕事じゃないんだから気が乗らなければ消えるのはおかしくないし、リアルで本当に忙しい人だっている。
投下がないからって文句を言うのはお門違いもいいとこだ。
一応18歳以上推奨のスレなんだから、住人はそのくらい察しろ。



書くほうも読むほうも、あくまで好きでやってるんだってことを忘れるな
734名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 13:47:23 ID:2Sn7VTqy
そろそろスルーしとこうぜ
735名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 13:48:22 ID:dBeR4cKf
次スレ立ててくる
736名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 13:58:05 ID:2Sn7VTqy
737名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 14:04:31 ID:dBeR4cKf
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その32
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1174106977/
738名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 14:44:59 ID:eLZ7Z6DP
>>733
まあ、あくまでも個人的要望を入れるなら、一応連絡とか現在の状況を教えて欲しいわな。
スレから完全に消えたのか、あくまでもまだ投下できないのか気になってしょうがない。
739名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 15:12:14 ID:63DeJQc0
次スレとか早すぎだろ常識的に考えて…
740トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/03/17(土) 15:27:50 ID:GIsG8oDV
では投下致します
741水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/03/17(土) 15:29:51 ID:GIsG8oDV
第30話『愛されるよりも愛したいです』

 水澄姉妹を異性として認識するのは俺にとって冥王星が太陽系から剥脱されるという天文学的な歴史が
塗り替えるような偉業的な異変が起こるぐらいにありえない。
例え、虹葉姉と紗桜が俺に接する態度が微妙に変わっていたり、姉妹の仲が少し険悪な雰囲気を漂わせているのは、
すぐにいつものように戻ると単純にそう思っていたからだ。
それが俺にとっては水澄家の日常であり、お日さまが東から西に昇ってくるぐらいに当たり前のことだったのだ。
 現実は俺が全く知らないところで悪い方に進行していたのだ。それは今晩の夕食時にも変化の兆しが感じられていた。

 冬子さんが大型液晶テレビを満足に鑑賞した後に俺達の夕食を食べることなく、
不気味な含み笑いを浮かべながら自分の家に帰宅していった。
一緒に食べると思っていた俺は四人前の夕食の内に冬子さんの分を冷蔵庫に入れて、テーブルに戻ってくると。
 二つの椅子でいっぱいのはずのテーブルの席の間にもう一つ強引に椅子がもう一個だけ追加されている。
上に置かれている夕食のおかずの配置に微妙に変更されている。虹葉姉と紗桜が座っている席以外に中央に空席が作られていた。
 そこに俺が座れでも言いたいのか。
 無言で姉妹が強制的に作った席に座ると少し狭さと窮屈を感じるが、座れないわけではない。
ただ、少しだけ動くと隣にいる水澄姉妹の体に触れるのが唯一の問題だ点。
 その俺の細かい神経を使っているというのに虹葉姉は気にすることなく、俺の手を握った。

「虹葉姉っっ!?」
「うにゅ。どうかしたの?」
「手が……」
「がるる。お姉ちゃんだけ兄さんの体に触れるなんてずるいよ」
 俺側の左にいる紗桜がさっきと同じくべったりと俺の腕を組む。今度は逃げる場所がないために紗桜の体温が温かく感じてしまう。
「そ、その紗桜?」
「もう、兄さんは楽にしていいんですよ」

 楽にするところか、俺の身体全体に硬直と緊張が同時に走った。女の子に触れているだけで心が癒されるというか……。
ううん。ダメだ。天草月。正気を保て。二人の誘惑に負けてはいけない。
俺はクリスマスまでに恋人を作るんだろ? だったら、浅はかな抵抗でもやらなければ。

「俺はご飯を食べたいんだけど」
 その小さな呟きに反応して虹葉姉と紗桜は同時に体から一斉に離れて、俺のためにおかずを箸を摘んでくる。
「ちょっと待て」
「月君月君。はい。あ〜んってして」
「お姉ちゃん。私も兄さんにあ〜んって食べて欲しいのに」
「だって。月君はお姉ちゃんと紗桜ちゃんのどっちのおかずを食べたいの?」
 何。このプチ修羅場?
「そ、そうじゃなくて。食べさせなくていいからっ!!」
「今日は兄さん感謝日ですから、存分に私が兄さんの世話をするんだから」
「ない。とことんないぞ。そんな日は」
「そうだよ。紗桜ちゃん。今日は弟記念日なんだから。お姉ちゃんが月君をにゃあにゃあする日なんですよ」

 なんだよ。にゃあにゃあってのは。

「私の2コ上の先輩の雪桜さんが愛しい彼氏さんを監禁して既成事実を作った時に使った業なんですって。どんな男の子もイチコロなんだって」

 監禁っていう犯罪史上に残る罪悪を平然と使う虹葉姉の先輩に畏怖を覚えながらも、
女の子の積極的なアプローチがここまで来ると男の子の社会的地位は勢いよく落下しているなぁ。

「その雪桜さんはねぇ。彼氏さんから壮絶な告白を受けて本当に涙を流すぐらいに嬉しかったんですって。
自分を選んだことが奇跡に近いことだって。幸せそうに語ってくれたんだから」
「いいお話ですね。奇跡は起きないから、奇跡って言うけれど。恋愛で奇跡って誇らしく言える恋なんて。私も一度でいいから体験してみたいです」
 紗桜が箸におかずに摘みながら、虹葉姉に聞かされた恋愛話に自分なりの想像と妄想を脹らませている。
その話を聞く限りには雪桜さんという女性よりもその彼氏さんの方が同情できそうだ。
「というわけで月君もにゃあにゃあしましょうね」
「じゃあ、私は兄さんをわんわんしてあげます。うふふっ」
 こうして、再開されたは〜い。あ〜んタイムは開始されて俺は虹葉姉と紗桜が持ってくるおかずを半ばヤケになって口をパクパクを開けて食べてやった。
742水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/03/17(土) 15:33:35 ID:GIsG8oDV
 今晩の夕食の味は味覚障害になったかのように味わうことができずに姉妹の怒涛の攻めに俺は常に受けることしかできなかった。
残念ながら虹葉姉と紗桜は競い合うように俺に構ってくるのは仕方ないことだ。
昔を思い出すならば、虹葉姉は妹想いであり、紗桜はお姉ちゃん想いであったはずだ。
こんな風にお互いを敵視して競い合うような事は俺が水澄家に居候してから全くなかったのだ。
男の俺も嫉妬してしまう仲のいい姉妹だった。
 それが今日を境目に何かが変わったような気がする。

 散らかした後の夕食の食器を食器洗い機に押し込んで洗剤を入れてスイッチオンを押して。
ようやく、後片付けが終了である。今日一日で徒労した神経を癒すために俺は浴場に向かった。
 時間帯はすでに22時を過ぎた頃である。虹葉姉と紗桜もすでに入浴を終えている時間であろう。

女の子と同居すると入浴する時間とかにいろいろと気を遣わなければならない。
 水澄家では紗桜か虹葉姉が先に入浴して俺が一番最後と順番は決まっている。

 二人は最初に入れと勧めているが、俺はやらなければいけない家事が残っているので必然と入るのは最後になる。
 二人とも長湯なので待っている時間が遅くなるのはもう仕方ない。一日の疲れを癒すために今日は存分にゆっくりと浸かろう。
 浴槽へと繋がるドアを開くと脱衣室がある。
 そこには、俺が考えてなかった光景がそこに在った。

「に、に、兄さんっっ!?」
 バスタオルで体を隠している紗桜が顔を紅潮させて思わず悲鳴に近い声を挙げていた。
「あぅあぅあぅあぅあぅあぁう……」
 バスタオルでは隠し切れていない裸体の露出部分がはっきりと俺の目に確かに入っている。
 小さな頃と比較すると比べものにならない胸の脹らんだ部分や整っている体。
 細く綺麗な白い足。そして、ツインテールの髪を解いておろしている姿は虹葉姉の雰囲気とよく似ている。

「兄さんのバカぁぁぁぁっっっ!!」

 動揺した紗桜は恥ずかしさのあまりに俺を突き飛ばして。急いで脱衣室から逃亡してしまった。
 俺は謝ることができずに、ただ紗桜の裸体の方をずっと見つめていた。
 やばい。義理の妹の裸体で興奮してどうする?
 性欲の激しい年頃だ。エロ本だけでは満足に発散できない物だってあるさ。

 実際に生身の女の子の裸体を見物するといかにエロ本は陳腐な物だと厳しい現実は教えてくれる。

 待て待て。
 俺は守ると誓った虹葉姉と紗桜を性の対象に見ているなんて。それは俺自身の屈辱に他ならない。
 煩悩を煩悩を消さなくては!!
 まず、お風呂に入ってから俺は水道水を洗面器に溜めて、問答無用に水浴びを決行した。
743水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c :2007/03/17(土) 15:36:09 ID:GIsG8oDV
「ひ、冷えるよぉ……。さ、寒いよぉ。調子に乗りすぎて10回もやってしまった」
 煩悩を発散するために何度も水浴びを繰り返して、紗桜の裸体を記憶上から消去する作業は困難であった。
 お風呂に入ったが、温くもることはできずに、逆に体を冷やしてしまった。
 パジャマに着替えているが、今年の冬の寒さは容赦なく俺を襲いかかっていた。
 自分の部屋に辿り着くと虹葉姉がジト目で俺をしっかりと睨んでいた。
「つ、月君。紗桜ちゃんの裸を覗いたって本当?」
「いいや。ワザとじゃあないんだよ」
「私が自分の部屋にくつろいでいたら、物凄い勢いで裸の紗桜ちゃんが下着も着ずに入り込んだ時は
 ちょっとこの家に住んでいるオオカミが本性を現わしたのかなぁって思ったんです」
 オオカミはお前らの方だろう!! と口が裂けても言えるはずがない。
「紗桜ちゃんが月君に裸を見られた事に思わず動揺して泣きだしたんだよ。
 まさか、心から信頼をしていた月君に覗かれるなんて夢にも思っていなかったようなの」
「神様と嫉妬スレの神に誓って言おう。俺は覗いてなんかいないっっ!!」
「問題はそこじゃあないんだよね」
 どこなんだ?
「紗桜ちゃんの裸を覗いたのに!! どうして、お姉ちゃんの裸を覗かなかったのかってことなの!! 
 私だってお風呂を入っていたのに。もう、月君のスケベエロエロ聖人!!」
 おいおい。
「そういうわけで月君には正座三時間の罰。女の子の裸を覗くって事はそれなりに重い罪になるってことを思い知りなさい!!」
「だから、それは誤解だって言っているのに」
「月君。そこに正座しなさいっっ!!」
 虹葉姉の迫力のある丹に圧されて、俺は自分の部屋の前で大人しく正座していた。
 そのまま、虹葉姉の怒りが収まるまで三時間ずっと正座して足が完全に痺れてしまった。
 冷えた体を温かい布団の中に入り込んだ時には深夜二時になっていた。

 今夜はゆっくりと眠ろう。
 明日も水澄姉妹関連で体を無駄に徒労する日々は続く。ここ最近は特におかしくなっているような気がする。
 二人の行動は積極的で非常識そのものばかりである。
 家族という檻を飛び越え、食べてはいけない禁断の果実を得ることに必死みたいな感じ。
 それは俺にとっては都合の悪いことであった。
 
 トントン。
 ドアをノックする音が聞こえてきた。
 すでに夜が更けている時間に俺の部屋を尋ねてくるのはさっきまで勢い良く俺に説教していた虹葉姉ぐらいだろうか。
 俺は少し震えた声で言った。
「どうぞ」
 ベットの中に入ってしまうと凄まじい睡魔に襲われているが、もう少しぐらいなら相手をしてやってもいい。
 だが、俺が予想した訪問客とは違うことに驚愕する。
 義理の兄に自身の裸を覗かれた紗桜がお気にいりの犬のパジャマを着て、顔を真っ赤に赤面しながら入ってきた。
「兄さん」
 ツインテールの髪は就寝する前に一度解かれて、真っすぐにおろされているストレートの髪は虹葉姉を連想させる。
 改めて二人が姉妹だと認識しながらも、一つの疑問点が浮かぶ。
 こんな夜更けに紗桜が一体どういう用件があってやってきたんだ?
「あのね……」
 両手を胸に抑えて荒くなる呼吸を抑えている。真摯な瞳は真っすぐに俺の瞳に向けられている。
「私、兄さんの事が好きです。大好きです」
 ああ。
 俺は鈍い頭の回転を働かせて、ようやく理解した。
 ついに俺が恐れてしまっていたことがやってきたんだと。
744トライデント ◆mxSuEoo52c :2007/03/17(土) 15:38:11 ID:GIsG8oDV
第31話『暴走姉妹』に続きます
以上投下終了。
745名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 15:43:49 ID:RyZbFPlw
>>744
GJです!ついに異性認定で一線を越えるか!?
746名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 15:46:36 ID:0nirrFGR
>>744
つまんね
>>745
自演乙
747名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 15:47:24 ID:m1vQK03y
>>746
禿同
748名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 15:48:12 ID:6eVDfYsj
>>747
全くトラは自演までして.............
749名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 15:49:10 ID:tKv9CP3C
>>748
GJが最近つかなくなって来てるからしょうがないんじゃない?
750名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 15:50:37 ID:0VGUZgWC
>>749
つまんないからしょうがないだろ、常識的に考えて・・・
751名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 16:09:02 ID:OF4Om5PA
なんというワンパターン……
752名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 16:11:13 ID:uUtFVBGI
そろそろ飽いてきたな、この単発IDのワンパターンも。
どうせ荒らすなら、もっと俺らも楽しめるようなのキボン。
753名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 16:14:37 ID:t3SLb8Ge
>>744
GJです。続きを楽しみにしてます

五月蠅いのはいちいち気にせずによろしく
754名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 16:15:00 ID:asRPCXue
>>752
荒らし依頼乙

って同一人物かw
755名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 16:53:16 ID:z/tRkGzo
でもほんとワンパターンだなw
いつまでも粘着してないでそろそろ違うスレに行ってほしいね。

756名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 16:59:59 ID:yAmB1TZ1
>>774
GJ!!!!!!!!!!!!!!!!!1
757名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 17:27:49 ID:aAIw/jZz
>>744
とりあえず、犬と猫は俺が責任を持って飼います
758名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 17:32:26 ID:waRfT1kk
僕らは勘違いしていた・・

全て、阿修羅氏の妻による自作自演だったんだ!!

759名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 17:50:04 ID:/UXyuv3k
もうさすがに慣れたな、パターンがかわんねぇ…
760転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/17(土) 17:58:42 ID:aWztWI5w
投下します。
761転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/17(土) 17:59:59 ID:aWztWI5w
 ―――side雨音―――


 私はあいつが嫌いでした。


 そこには理由がありませんでした。
 『虫は好きですか?』と聞かれて『嫌いです』と答えるのと同じように、
 そこに明確な理由がありませんでした。
 ただ、大好きな姉さんがあいつは悪い奴だと言っていたので、私はあいつが嫌いだったのです。
 まだ本当に子供だった私にはそれで十分だったのです。
 だってそうでしょう?
 私はまだ子供、善悪の区別は自分でするものではなかった。


 お父さんが出張で二、三日家を空けることになってしまったある日、
 姉さんはあいつを家から追い出そうと言いました。
 昔からお父さんにべったりだった姉さんは
 あいつが来てからお父さんが帰ってこなくなった事が不安だったのでしょう。
 そのことに関しては私にも不安がありました。
 保護者がいない。子供にとってこれほどの不安はありません。
『あいつがいなくなればおとーさんは帰ってくるよ。だからね雨音ちゃん、手伝って』
「うん」
 私は姉さんの言うことを信じて首を縦に振りました。

 その日から、私達は天野家の害虫駆除を始めたのです。

 手始めに私達はあいつを無視することから始めました。
 家の中にあいつという存在がいないことにしたのです。
 私達の様子がおかしいことに気付いたあいつは行動を開始します。
 しきりに話しかけたり、食事を作るなどの家事をしたりするなどして、
 あいつは私達とのコミュニケーションを取ろうと努めました。

 もちろん、私達がそれに応じるはずもありません。
 あいつと同じ食卓に着くことなどありませんでしたし、
 あいつの作った料理は捨てるか近所の犬猫の餌にして処理していました。
 あいつの触れた洋服はすぐに洗濯し、あいつがリビングへやってくれば私達は無言で部屋を出てゆきました。
 あいつの帰る前に帰り着いているときは玄関のドアを閉めて、
 夏でも冬でもインターフォンから聞こえる声は一切無視しました。
 私達はそれがどれだけ残酷な事かを考えることは無く、
 あきらめずに纏わり付いてくるあいつは―――正直、目障りでした。
762転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/17(土) 18:00:37 ID:aWztWI5w
 私達が完全にあいつを無視するようになった頃。
 それでもあいつは平気な顔を保っていました。
 泣くわけでもなく、怒るわけでもなく、恨むわけでもなく、誰に話すわけでもなく、
 嘆かず、騒がず、暴れず、助けを求めず、音を上げず、
 ただひたすら悲しい顔で笑うだけ。
 それは同年代の男の子達からは見たことのない表情。

 次第に私は気味が悪くなってきました。
 あいつがいったい何を考えているのかわからないのです。

 あいつはどうして耐え忍んでいるのか?
 あいつはどうして家を出て行こうとはしないのか?
 あいつはどうして私達から隠れようともしないのか?

 あの笑顔の意味は?

 日増しに強くなるカタチの見えない不安。
 成長するにつれて芽生えてきた罪悪感。
 わけもわからず膨張してゆく焦燥感。

 私があいつのことが恐れるようになるまでにそう時間はかからなかった。
 そして、己の恐怖を暴力へと変換させてゆくことも―――。

 あいつは私達を怨んでいる。いつか大きな仕返しがあるのではないか?
 それが怖くて、あいつを親無しと罵った。

 あいつは私達を怨んでいる。何か企んでいるかもしれない。
 それが怖くて、あいつの持ち物を切り刻んだ。

 あいつは私達を怨んでいる。いつかお父さんに告げ口するに違いない。
 それが怖くて、あいつの指を踏みつけた。

 あいつは私達を怨んでいる。あの笑顔の下で復讐を企んでいる。
 それが怖くて、彫刻刀で突き刺した。

 あいつは私達を怨んでいる―――それが怖くて―――。

 不安は次第に確信へと加速してゆく。
 あいつのカタチをした幻影が私を駆逐してゆく。
 突き放しても、振り払っても、喰らい付いてくる。
 攻撃しているのはこちらのはずなのに、私はいつも追い詰められた。

 私はいつしか、どうしてあいつを殴っているのかすらわからなくなる。
 私の暴力にもはや理由はなく、私を突き動かすのはある衝動。

 あの男を殺さなくては、いつか私は復讐される。

 日を追う毎に強くなる強迫観念に追い立てられ―――私は階段であいつの無防備な背中をそっと押した。






763転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/17(土) 18:01:06 ID:aWztWI5w
 あいつが病院で治療を受けた後日、私は手紙で呼び出しを受けた。

 『先日の事で大事な話があります』

 ついにツケが回ってきた。
 おそらく、私があいつを突き落とす場面を誰かが見てしまった。
 私達があいつに対してやってきたことが先生に、友達に、知り合いに、見知らぬ人に、
 ―――そしてお父さんの前で明るみになる。
 
 今まで自分に対して笑顔で接してきた人々が掌を返すように自分から離れてゆく。
 汚らしいモノを見る様な好奇に満ちた厭らしい瞳が逃げても、逃げても、付き纏う。
 誰にも声を聞いてもらえない、誰にも信じてもらえない、誰にも愛してもらえない。
 自分の存在が許されない世界―――生き地獄。

 そんな想像が脳味噌を貫いた瞬間、私は便所に駆け込み―――胃の中身を吐き出した。




 指定された時間になる頃には、私の喉と内臓はボロボロに焼け付いていた。
 震える足と吐き気を押さえ込み指定された場所へと向かうと、
 見覚えのある女生徒が一人、そこには立っていた。
 彼女は有無を言わさず突然私に掴みかかると叫んだ。
「この泥棒猫!」
 暴れる彼女に無理やり押さえ込まれ、彼女は悔しさを滲ませた表情で私に罵声の雨を浴びせかける。
『彼に色目を使うな!』『二度と彼に近づくな!』『殺してやる!』『あんたさえいなければ!』
 次第に何を言っているのかすら分からなくなってゆく彼女の金切り声の切れ端から推測すると、
 どうやら彼女の彼氏が数日前に私に告白したらしい。
 正直な所、私には彼女の言う彼が誰の事を指しているのかすらわからない。

 くだらない、女の嫉妬。

 たったそれだけ事で惑わされたことが腹立たしくて、私はその女の話を無視することにした。
 彼女はこちらが興味なさそうにしているのを察知すると、
 私の背中を壁に打ちつけながら怒声を挙げて喚き散らす。
 既に九死に一生を得た私には、何をそんなに必死になっているのか興味がなかった。
 私は彼女の事を突き飛ばし、先ほどまでの不安を振り払うかのように鼻で笑ってその場を後にした。
 
764転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/17(土) 18:01:38 ID:aWztWI5w
 明日。

 再びあの女生徒に呼び出された私は7人の女生徒達に囲まれることになる。
 同じ境遇の仲間達を集めたのだろう。
 上級生の姿も見えるその顔ぶれは皆して昨日の女生徒と同じようなものだった。
「何か御用ですか?」
 自分でももうわかっている質問を投げかけると、同じような顔たちが同じように眉間に皺を寄せる。
 こちらの態度が気に入らないのか彼女達は目配せの後、二人がかりで私の両腕を拘束した。
『ちょっと可愛いからって調子に乗ってるんじゃない?』
『痛い目みないと分からないみたいね!』
 どこかで聞いたような汚い言葉で私を罵倒し、こちらが何も言わないでいると嘲笑った。
 彼女達がひとしきり私を貶めた後、昨日の女が私の頬を張る。
 二度、三度。
 それでも私が反抗的な態度で応じると、上級生の一人がハサミを取り出し
 私の制服のスカートにその刃先を当てた。
『止めて欲しかったら、謝りなさい』
 私の耳元であの女が囁く。
 何の因果か彼女達が私にしている事は、あいつに対して私達がしてきた事と同じだった。
 私も同じような冷たい声をあいつに向けていたのだろうか?

「……お断りします」
 
 カシャン。
 乾いた、刃物の擦れる音。
 ただ布を切られるだけ。
 そう思っていたのに、視界が悔しさでぼやけてしまう。
 奥歯を噛み締めて、私は涙がこぼれてしまうのだけは必死に耐えた。
 泣いてしまえば負けてしまう。

 女達が本当に愉快そうな歓声を挙げる中、崩れそうな私の意識を救い上げたのはあいつの叫び声だった。

「止めろ!」

 身体中包帯だらけの制服姿であいつは一人
 私と女生徒達の間に入り込み私の拘束を無理やり引き剥がした。
「何するんだよ!」
 私を拘束していた女の一人があいつに掴みかかると、
 あいつは片手でその手を絞り上げて、女生徒達全員をゆっくりと睨みつけた。

「顔は覚えた。もう、絶対に忘れません。
 もし今後、僕の妹に同じような事をすることがあるなら―――あなた達の顔を壊します。
 今覚えた顔を思い出せないくらいにぶっ壊してやる。例外はありません」

 私達の前では見せたことの無い、凍えてしまいそうな目であいつがそう宣言すると、
 女生徒達は息を呑み、恐怖に引きつった顔を見合わせて散って行きます。

 そして、私とあいつが残りました。
765転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/17(土) 18:02:51 ID:aWztWI5w
「大丈夫?」
 先ほどとは打って変わって、優しい声であいつは私に話しかけます。
「―――ごめんね。間に合わなくて」
 本当にすまなそうな声であいつは言いました。
 私は泣き顔を見せないように俯きます。
 そして、私はあいつの口から何か次の言葉が出る前に逃げ出しました。

 あいつの姿が視界から消えた瞬間から、涙が堰を切ったように溢れ出します。
 罵ってくれた方が何倍も気が楽だった。
 階段から突き落としたのを私だと知っているくせに何も言わずに助けに来て、
 全身打撲で歩くのも辛いくせにそんな素振りすら見せずに私をいたわるあいつを前にすると、
 えらく自分が情けなかった。

 私は自分のスカートに切れ目が入っているのも忘れて、校門を抜けて外へと飛び出しました。
 緩んでしまいそうな目の下の筋肉に無理やり力を込めて、
 好奇の目で私を見る人々の波を掻き分けて、
 有らん限りの力で走り抜けて、
 家へたどり着くと靴を履き捨てて自分の部屋へ駆け込み鍵を閉めます。
 部屋の電気も点けぬまま私は着替えるのも忘れてベットに倒れこむと、
 私は枕に顔を押し付けて泣きました。
「もぅ……いやだよぅ……」
 もう、嫌だった。
 バカが付くほどのお人好しのあいつを痛めつけるのは。
「もぅ……ゆるしてよぅ……」
 これが私の本心。
 でも伝えるのが怖い。許されないのが怖い。傷つけられるのが怖い。
 たった一人の姉である、姉さんを裏切るのが怖い。
 結局、私は弱虫で怯えていただけ。

 それが本当の理由。
766転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/17(土) 18:03:39 ID:aWztWI5w
「……でも……私の事、妹って……言ってくれた」
 今はそれが救い、それにすがるしかない。
 今ならば、まだ間に合うかもしれない。
 優しくどこか情けない顔で微笑むあいつの顔を思い浮かべると胸が熱くなる。
 手を差し伸べてくれた声は暖かな響き。
 きっとあいつは一度だって私達を蔑ろにしたことはなかったはず。
 ただ私達が勝手に作り出した虚像を重ね合わせて、あいつを苦しめていただけ。

「……ごめん……なさい」
 私は無意識のうちに、いないあいつに向けて謝罪の言葉を紡いでいました。
「……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
 溢れ出した『ごめんなさい』が止まらない。
 ここまで来ればもう誤魔化せない。
 
 私は、あいつに謝りたい。

 今日の事だけじゃない、ずいぶんと遅くなってしまったけれど、
 今までのこと全部、全部、全部、謝りたい。

 もう、許してくれなくてもいい。
 もう、姉さんに裏切ったと罵られてもいい。
 もう、限界なんです。
 もう、耐えられません。
 もう、私を許してください……。


 日が傾いて、涙がようやく枯れた。
 鏡の中の私は叱られた後の子供のような顔をしていました。
 思い返してみると、私は初めて男の子に泣かされたのです。

 夕方、急いで帰ってきた姉さんが部屋に飛び込んで来ました。
「雨音ちゃん大丈夫!?」
「うん。もう大丈夫だから」
「本当に? もしも無理やり言わされているならお姉ちゃんが―――」
「姉さん。本当に大丈夫だから―――安心して」
 姉さんは私の言葉が本心であると分かると表情を和らげます。
「わかった。お姉ちゃんはどうすればいい? 何かして欲しいことある?」
「ありがとう姉さん。でも、今日はもう独りにして欲しい」
「そっか……」
 姉さんは立ち上がり部屋のドアまで行くと、取っ手に手をかけて振り返ります。
「ねぇ、もし雨音ちゃんがまだむしゃくしゃしているなら―――」
「ううん。今日は気分じゃないの」
 姉さんが何を言おうとしているのかを察して、私はその先を遮ります。
「そう」
 姉さんはどこか不満気な顔で部屋を去りました。
 きっと、姉さんの中ではまだあいつは憎い相手なのでしょう。
 つい先ほどまで同じ立場にいたはずなのに、
 姉さんが言おうとした事が恐ろしいことだと私は感じるようになっていました。
767転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/17(土) 18:04:55 ID:aWztWI5w



 姉さんが風呂を済ませて自分の部屋に戻ったのを確認すると、私は行動を開始しました。
 基本的にあいつは私達と食事や風呂の時間をずらして、顔を合わせないようしているのが現状です。
 私の見立てが正しければ、今頃あいつは台所にて料理中か既に食事を取っている頃でしょう。
 私は隣の部屋の姉さんに気付かれないように、出来るだけ物音を立てないように部屋を出ました。

 これは、姉さんを裏切る行為。
 けれど、そこにもう後ろめたさはありません。
 むしろあるとすれば、それはあいつへの後ろめたさ。
 私の人生で一番勇気の必要な瞬間。
 意を決してリビングを覗くとあいつが食事を取っていました。
 どこか落ち込んだ様子のあいつはあまり食が進んでいない様子。
 手ぶらで話すのも心もとないので台所を覗いてみると、
 フライパンには野菜炒めの残りがちょうど一人分くらい残っていました。
 おそらく、明日の弁当のおかず用に残しているのでしょう。
 つくりたてとは言えないものの、香ばしい醤油と胡麻油の香りが食欲をそそります。
 そういえば、私はまだ夕食を取っていません。
 私はいい機会だと思いフライパンの残りを皿に盛ると、
 泣き過ぎでボサボサになってしまった髪を手櫛で整えて、深呼吸を一つ。
 あいつのいるリビングへと足を踏み入れます。

 私がリビングに入るのを察知すると、あいつは自然と身構えました。

 私とあいつを隔てる見えない壁。
 私はそれの存在を始めて意識します。
 今まで見えていなかったそれは―――肉体に沁み込んだ恐れ。

 もう、謝って済まされる境界なんてとっくに飛び越えている事を身をもって思い知らされます。

 序盤から折れそうになってしまっている決意を必死に支えながら、私は無言であいつの左側に座りました。
 あいつは赤く腫れてしまった私の目を見て、うなだれてしまいます。

 コトン。

 わざと私は音を鳴らして皿をテーブルに置きます。
 あいつは私の目の前の皿の中身を見つけると、興味があるのか動揺し始めます。
 箸を握った私の手が皿へと近づく毎にチラチラとこちらの様子を窺い、
 口元に豚肉とキャベツを挟んだ箸がいよいよ近づくと、
 あいつは目を皿のようにしてこちらを見守っています。
 あいつの視線を一身に受けて私は躊躇することなく料理を口に放りこみ、咀嚼しました。

「ちょっと、塩辛い……」

 お世辞でもいいから美味いと言えばいいのに、私の口からは皮肉めいた言葉が出ていた。
 別に不味いわけじゃない。むしろその味は私好みで美味しい。
 けれど、まだ素直にそれが伝えられない。
「え、えっと―――ご飯、持ってくるよ!」
 うれしそうな表情のあいつは全身打撲を忘れているような速さで台所へ向かうと
 私の茶碗に山盛りのご飯を乗せて戻ってくる。
768転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/17(土) 18:05:56 ID:aWztWI5w

 その瞳からはポロポロと涙が零れていた。

「どうしたの?」
 あいつは呆気に取られている私を見て首を傾げる。
 その瞬間、頬を伝ってきた涙が茶碗のご飯にポトリと落ちて、跳ねた。
「あ、あれ!? ご、ごめん。すぐに取り替えるよ」
 あいつは腕に巻いてある包帯をハンカチ代わりに目を擦るようにして涙を拭う、
 それでも涙の勢いは止まらなくて、
「すぐに……すぐに……取り……替える……から……」
 次第に言葉を紡げなくなってゆく。
「ご、ごめ…ん、おか……しいから、ちょっと……まってて……」
 私は、もう見ていられなかった。
 きっと、あいつはこんな簡単なものが欲しかった。
 あいつの望みは当たり前の、ささやかな幸せ。
 そんなものですら、私達は彼に与えてこなかった。

 あいつはもう立っていられないのか、膝を折っている。
 どんなに痛めつけられても泣き言一つ言わなかった少年が、
 自分の料理を食べてもらっただけで赤子のように涙を流していた。

 生まれたてのちいさなしあわせ。
 私の心があいつの温かさに触れて、私は初めて恋をした。


「ごめんなさい」


 その日から『あいつ』は私の『兄さん』になった。
769転帰予報 ◆JyN1LsaiM2 :2007/03/17(土) 18:06:28 ID:aWztWI5w
ここまでです。
次回も雨音の視点になります。

今回は文章ばかりの回になってしまいました。
770名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:19:42 ID:qqvz3Et6
>>769
テラツマラナス
771名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:23:43 ID:OF4Om5PA
>>769
GJGJ!!
最初、この独白は姉の方のものかと勘違いしてた俺ガイル
妹の雨音が割と素直に主人公に恋してるのに対して、姉の方は現在も何か腹にイチモツありそうな感じかな?
先の展開が楽しみです。
772名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:23:54 ID:uUtFVBGI
>>770
ハイハイ、単発乙々
773名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:25:54 ID:GntrcA5/
>>769
転機予報キタ━━(゚∀゚)━━!!GJ!
ツンデレな雨音可愛いよ雨音
でもお姉ちゃんにも期待w
774名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:37:42 ID:k3qMWLAU
>>772
荒らし依頼のやつが何言ってんだ?
>どうせ荒らすなら、もっと俺らも楽しめるようなのキボン。
775名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:44:41 ID:J3+8gdZs
ちょっと待て。
転帰予報は個人的に楽しみに待っているんだから
マジで作者をやる気を失うようなことを言わないでくれ

姉妹モノで癒されるのは転帰予報と水澄の蒼い空ぐらいしか
今は投稿されてないからな
仕事で長時間拘束されて彼女なしで一人暮らしの唯一の楽しみを
奪わないでくれ頼む!!

776名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:46:41 ID:k3qMWLAU
そうだな、煽りもスルーすればいいしな
777名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:46:49 ID:2Sn7VTqy
>>769
テラGJ
姉は一癖ありそうだなw
778名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:48:37 ID:CjchEAfN
>>769
GJ
女市は一癖ありそうだね
779名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:50:19 ID:uUtFVBGI
>>774
違うよ。全然違うよ。

俺は荒らし依頼なんてしてないよ。
単発が面白いことできたら「GJ!」を送ろうとおもってただけだよ。
780名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:51:52 ID:/9hiL7zr
>>775
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
作者自演してんじゃねーよ!!!
一瞬まじかと思ったじゃねーか
781名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:53:38 ID:O5tuI11R
>>779
煽ってるつもりが無かったんならもう黙ってROMっとけ
お前のレスは下手にエサを与えるだけだ
782名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:54:50 ID:OF4Om5PA
>>775
>>780
なんというマッチポンプ……
783名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:56:56 ID:O5tuI11R
>>782
いい加減スルーしろよ
わざとやってんの?


784名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:03:07 ID:4TxjHW5p
>>769
GJ!!! 雨音が可愛い過ぎる!
主人公が泣いたところで俺も思わず泣いてしまったよ…(つД`)
次回の投下も楽しみにしています。
785名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:04:52 ID:3naB2WXz
>>769
GJ
姉いいな、次回もwktk
>>783
あんま疑心暗鬼になるな
786名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:06:23 ID:K1WgKFp+
>>769
これはつまらないwww
787名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:07:43 ID:3GkRIO9+
>>769
これはないw
788名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:09:09 ID:/uoYTP1K
>>786>>787
同士発見
789名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:12:26 ID:cYSiavdP

>>786
>>787
>>789


リアルで死んでくれない?
お前なんて誰も相手なんてしてないよ
どうして、生きているの? 必要不可欠でもないのに
このスレに張り込んでいるひきこもり

これがあなたの正体です!!

所詮はリアルでは何もできないチキン野郎でしょ
誰もそんな奴が恐いと思わないよww

(´,_ゝ`)プッ




790名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:13:13 ID:z/tRkGzo
>>769
これはおもすれー( ^ω^)雨音いいね。次回も期待。
791名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:15:44 ID:jH+aFhna
>>769
つまんないからブログでやれよ
792名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:17:43 ID:yAmB1TZ1
>>789
死ねって言ってる対象に自分も入ってるよ。
793名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:31:12 ID:I0tgvACM
この空気で嫌なのはまとまな批判とかも必要以上に叩かれそうなのがな
794名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:38:14 ID:KAWSl2eD
転帰予報がきてる、GJ!
これはまれに見る可愛そうな主人公だな…

>>793
そもそも批判自体スレ違いって>>2に書いてあるよ…
795名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:43:01 ID:T3LIyz/o
荒らしに何言っても無駄なのは周知の事実
796名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:48:03 ID:t3SLb8Ge
過去スレにて嫌なら見るな、
と至って正論を言われたのを根に持った奴が粘着してるんだろう
797名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 19:49:24 ID:I0tgvACM
いやそれでも多少の批判や指摘が出るのはしょうがない
そうやってどんどん作者が育って盛り上がってくるんじゃないのか?
誰も「日本語が変」や「つまんね」をまともな批判だなんて思ってない
798名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 20:09:15 ID:eLZ7Z6DP
>>769
GJ!何だか妹さん受け入れられそうな気がしてきたw

なるほど、雨音がイジメをした理由は、
・姉の言うとおりに従った。
・イジメをしてもへこたれない主人公が怖かった。
本当は主人公を嫌ってるわけでも、あんな歪んだイジメをする子でもなかったんだろうな。

ただ、これだと主人公に突き放された場合どう行動するかが気になるな。
姉と同じ反応をするか、逆の反応をするか。つまり、続きに激しく期待。
799名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 20:25:54 ID:pxQDqSTn
>>798
解説イラネ
新手のパターンか?
800名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 20:27:21 ID:odoXNte9
800げと
801名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 20:35:48 ID:Bi+3c8Eo
◆JyN1LsaiM2氏の転帰予報 と
トライデント氏の水澄の蒼い空

どちらが面白いと答えれば


◆JyN1LsaiM2氏の転帰予報の方が数段に面白い
話の構成や人物描写は素晴らしいと言える


逆にトライデント氏の作品は
文章構成の基本がなっていないし、何を伝えたいのか
どこに向っているのか、読む側の私達にとっては全く理解できない
描写関係も疎かにしているおかげで周囲の状況も見えてこない。


スレの住人の評価としては
◆JyN1LsaiM2氏の方がGJや感想の数が多い

トライデント氏はもう感想は0に近いからね

才能が枯れ始めたってことでしょうね
802名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 20:43:20 ID:6c2St8jd
SS作家ランク表

SS
緑猫 ◆6xSmO/z5xE

S
ロボ ◆tVzTTTyvm. 赤いパパ

A
アビス シベリア! ◆kNPkZ2h.ro

B
◆jSNxKO6uRM ◆/wR0eG5/sc ◆zIIME6i97I

C
◆AsuynEsIqA ◆sF7o7UcWEM
◆AuUbGwIC0s





何でお前ここにいるの?


トライデント ◆RiG2nuDSvM ◆1IgBlOP8QY ◆I3oq5KsoMI
803名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 20:48:29 ID:B/ixwXi1
>>802
◆RiG2nuDSvM
◆1IgBlOP8QY
この二人は完結して、来てないだろ

◆I3oq5KsoMI
愛猫ほったらかしでここにはいないよw
804名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 20:58:32 ID:eLZ7Z6DP
>>799
失礼だなぁw
805名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 20:59:41 ID:eLZ7Z6DP
>>801
感想を評論と履き違えるなよお前。
それで、あれをおもしろいっていう奴は馬鹿だって見下したりして優越感感じるのか?
806名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 21:02:23 ID:j5y4sa62
>>801,802
そんなの自分の日記帳にでも書いておけよカス
807名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 21:03:26 ID:OF4Om5PA
なにこの流れ(;^ω^)
808名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 21:03:38 ID:IX+yJtbn
ID:eLZ7Z6DP
あんた人を煽ってばかりだな、楽しいか?
809名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 21:14:08 ID:qfevl7NR
次スレはいつ立つの?
480Kでっていう話だったよな?
810名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 21:15:02 ID:2Sn7VTqy
もう立ってるぞ
811名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 21:17:30 ID:IX+yJtbn
812名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 21:20:35 ID:eLZ7Z6DP
>>808
鏡を見てものを言えば?
813名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 21:32:03 ID:qfevl7NR
>>810-811
ありがと
814名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 23:18:24 ID:2zNumwic
荒れに荒れているな・・

815名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 00:03:27 ID:OF4Om5PA
世はまさに大修羅場時代
816名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 00:06:08 ID:JhOYdHbA
愛を取り戻せ!!
817名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 00:28:23 ID:+EZCsdC9
今日は煽り嵐もいたから倍荒れた
818 ◆WIhkQEicx2 :2007/03/18(日) 00:43:40 ID:LTP95E05
さぁ埋めよう。投下しよう。
819愛は両腕では足りない:2007/03/18(日) 00:45:52 ID:LTP95E05
「この戦争が終わったら、結婚しよう。」

唐突なその申し出に、僕の心は驚きと喜びに満ちながらも、照れと動揺もあったので
「そ、そういうセリフは戦場では不吉ですよ?隊長。」
とついつい斜めに構えた回答をしてしまった。
もちろん、その後セシル隊長にぶっとばされそうになって、僕は慌ててOKの返事をした。
しかし、ジンクスという奴は本当にあるものなのだ、とその後すぐ思い知らされる。
まさか本当に隊長があの後すぐ戦死してしまうなんて…。
あの日あのプロポーズがあったあと、僕らは魔物たちの前哨基地となっている怪しげな塔に踏み込んだ。
魔法も含めた罠や敵の抵抗で1人また1人と僕ら騎士が倒れていく中、
隊長も敵の魔法にかかって…ぐつぐつ気味の悪い液体が煮えたぎる巨大な壷に落とされてしまった。
怒りに燃える僕ら隊員は敵をなんとか制圧し、その後壷の中身をさらってみたものの、
隊長の体も鎧もその中に見つけることはできなかった。溶けて…しまったのだ。

「どうしたの?…その…まだ駄目?」
愛しいアニーが不安そうな顔で聞いてくる。僕の意識は過去の回想から幸せな今に戻ってきた。
結婚という言葉をアニーから切り出されて、もう一つのプロポーズのことを思い出していたのだ。
「ごめん、ちょっと考え事しただけ。結婚、しよう。アニー。」
言って、裸の彼女をもう一度抱きしめる。
「うん…幸せになろうね、ジュリアン。」
柔らかくて暖かい体を腕の中で感じる。これ以上の幸せはこの世にないとさえ思う。
隊長の死後そう間を置かずにこうして別の女性と深い関係になっていることを、
人は冷血漢だと罵るだろうか?
だが僕には愛した人を一人思い続けて死ぬなんてストイックな男の真似はできない。
飽満な体を持つ美女が精一杯慰めてくれているのに、受け入れない奴がどこにいる?
そういうわけで、慰めてくれた衛生魔術師であるアニーと僕は親身になり、愛し合うようになった。
そして魔界との戦いもひと段落し、こうして僕らは晴れて夫婦になろうとしている。
こんな冷たくて殺風景な砦で愛し合わなければいけない日々ももうすぐ終わる。
小さくて貧乏な領地だが、この娘と二人でなら何とかやっていけるだろう。
明るい未来を描きながら、僕はもう一ラウンドがんばる気になっていた。
彼女の燃えるような赤い髪をかき分け、耳たぶを軽く噛む。
「あん…。」
彼女の喘ぎが少し寒い室内に響き、
「あん、じゃないっ!!この泥棒猫がーーーっ!!!」
この場にまったく似つかわしくない、しかしどこか懐かしい怒声がすぐ後に響いた。
820 ◆BF/SpOqQTQ :2007/03/18(日) 00:46:23 ID:+EZCsdC9
冬の真夜中、こっそり家を出た。家族同居の俺はセンズリ魂に火がついちまって息殺したオナニー
なんかじゃ我慢できねぇとき、真冬だろううが何だろうがハッテン公園にある碑の上で俺のセンズリ舞台キメる。
公園脇の国道走るドライバーども、俺が今から男丸だしで猛々しくいききり勃ったチンポ扱きまくっからよ、
目ひんむいてしっかり見やがれよ!碑の土台脇で潔くジャージを脱ぎ捨て六尺一丁地下足袋姿になると、、
胸の高さほどの土台をよじ登る。ドライバー野郎どもに見せ付けるために国道を正面に腕を組み仁王立ち、
眉間に皺寄せガン飛ばし、たぎるる男に酔いしれる。この碑の上が俺のセンズリ舞台だ。
野郎ぶちかますには最高だぜ!左は土手、後ろは建物だが右はだだっ広い野球場が広ががりズリ姿がまる見えだ。
よっしゃ!始めるぜ!大股開きのポーズをキメると六尺を突き上げてるチンポをゆっくりさすりまわす。
こんな真冬冬の真夜中、六尺一丁野郎のセンズリかましてんだぜ?
しかも周りからは俺の男臭っせぇセンズリ勇姿がまる見えなんだぜ?オラ、見ろや!見見られてもっと俺の男全開にしてぇんだよ。
821 ◆BF/SpOqQTQ :2007/03/18(日) 00:47:52 ID:+EZCsdC9
冬の真夜中、こっそり家を出た。家族同居の俺はセンズリ魂に火がついちまって息殺したオナニー
なんかじゃ我慢できねぇとき、真冬だろううが何だろうがハッテン公園にある碑の上で俺のセンズリ舞台キメる。
公園脇の国道走るドライバーども、俺が今から男丸だしで猛々しくいききり勃ったチンポ扱きまくっからよ、
目ひんむいてしっかり見やがれよ!碑の土台脇で潔くジャージを脱ぎ捨て六尺一丁地下足袋姿になると、、
胸の高さほどの土台をよじ登る。ドライバー野郎どもに見せ付けるために国道を正面に腕を組み仁王立ち、
眉間に皺寄せガン飛ばし、たぎるる男に酔いしれる。この碑の上が俺のセンズリ舞台だ。
野郎ぶちかますには最高だぜ!左は土手、後ろは建物だが右はだだっ広い野球場が広ががりズリ姿がまる見えだ。
よっしゃ!始めるぜ!大股開きのポーズをキメると六尺を突き上げてるチンポをゆっくりさすりまわす。
こんな真冬冬の真夜中、六尺一丁野郎のセンズリかましてんだぜ?
しかも周りからは俺の男臭っせぇセンズリ勇姿がまる見えなんだぜ?オラ、見ろや!見見られてもっと俺の男全開にしてぇんだよ。
822愛は両腕では足りない:2007/03/18(日) 00:48:12 ID:LTP95E05

「きゃああ!!!!」
突然の声に驚き、アニーが悲鳴を上げる。
「なっなっなっ!?誰だ!?」
がばっとベッドから起き上がった僕は、すぐにドアの方向に身を向けた。
さっきの怒鳴り声の主と思われる侵入者が、ドアのところに立っていた。
ボロボロの皮鎧に荒々しく伸びた金髪、そして頭の上に生えている犬のような耳!
どこからどう見ても魔物だ。こんな奴にこんなところまで侵入されるなんて!
まったく油断していた裸の僕だが、それでもアニーだけは守ろうと体で彼女を隠す。
「貴様!何者だ!!」
内心の焦りを必死に隠して、僕は問いかけた。
「ジュリアン…お前、上官に向かってその口の利き方はないだろう?
それとも、まさかそこの女にうつつを抜かして、私の顔を忘れたとは言うまいな?」
その魔物が発した声と口調、怒りを押し殺したような笑顔に、僕の心臓は止まりそうになった。
目の前にいるこの魔物は、セシル隊長だ。間違いない。

「た、隊長?い、いやお前は魔物で。隊長は人間で金髪で恐ろしいけど綺麗な笑顔が…
え?あ、お、お前も同じ顔で同じ笑顔で…あ、あ…や、やっぱり隊長?」
動き出した心臓が脳に血液をまともに送ってくれないのか、僕の思考は完全にパニック状態に陥っている。
ありえない。あの日、隊長は死んだのだ。跡形もなく溶けて…。
「信じられないけど…確かに隊長みたいね。」
僕の腕にしがみついているアニーは、意外に冷静に答えをはじき出した。女ってこういう時強いなぁ。
「そういうお前は、隊の衛生魔術師か…よくも私のいない間に私の下僕…いや、恋人を寝取ってくれたな。」
歯をむき出しにして怒りを露にしている隊長。犬歯がすごく立派で、前以上に迫力がある。
いや、そもそもあんな凶悪なものは人間には生えないはず。
「まぁいい。とりあえず事情を話さなくてはならないようだな。お前ら、服を着ろ。」

隊長に促されてとりあえずそこらに散らばったものを再び着込んだ僕らは、
ベッドの上で正座させられて隊長の知られざる苦労話を聞くことになった。
あの日隊長は死んだのではなかった。確かに体は完全に分解されたが、
あの壷は元々合成魔法の途中だったものを急遽僕らの撃退に転用したものだったらしいのだ。
塔の後始末をそこそこに僕らはその後魔界のさらに奥へと進軍したため、壷は結局そのままになっていた。
放置された壷は、隊長と、その前に魔導師たちが色々溶かし込んでいたものを合成し、
中から今の魔物と見間違う(というか半分は実際魔物だ)隊長が生まれていたというわけだ。
823 ◆hf3W77CNp2 :2007/03/18(日) 00:48:41 ID:+EZCsdC9
「この戦争が終わったら、結婚しよう。」

唐突なその申し出に、僕の心は驚きと喜びに満ちながらも、照れと動揺もあったので
「そ、そういうセリフは戦場では不吉ですよ?隊長。」
とついつい斜めに構えた回答をしてしまった。
もちろん、その後セシル隊長にぶっとばされそうになって、僕は慌ててOKの返事をした。
しかし、ジンクスという奴は本当にあるものなのだ、とその後すぐ思い知らされる。
まさか本当に隊長があの後すぐ戦死してしまうなんて…。
あの日あのプロポーズがあったあと、僕らは魔物たちの前哨基地となっている怪しげな塔に踏み込んだ。
魔法も含めた罠や敵の抵抗で1人また1人と僕ら騎士が倒れていく中、
隊長も敵の魔法にかかって…ぐつぐつ気味の悪い液体が煮えたぎる巨大な壷に落とされてしまった。
怒りに燃える僕ら隊員は敵をなんとか制圧し、その後壷の中身をさらってみたものの、
隊長の体も鎧もその中に見つけることはできなかった。溶けて…しまったのだ。

「どうしたの?…その…まだ駄目?」
愛しいアニーが不安そうな顔で聞いてくる。僕の意識は過去の回想から幸せな今に戻ってきた。
結婚という言葉をアニーから切り出されて、もう一つのプロポーズのことを思い出していたのだ。
「ごめん、ちょっと考え事しただけ。結婚、しよう。アニー。」
言って、裸の彼女をもう一度抱きしめる。
「うん…幸せになろうね、ジュリアン。」
柔らかくて暖かい体を腕の中で感じる。これ以上の幸せはこの世にないとさえ思う。
隊長の死後そう間を置かずにこうして別の女性と深い関係になっていることを、
人は冷血漢だと罵るだろうか?
だが僕には愛した人を一人思い続けて死ぬなんてストイックな男の真似はできない。
飽満な体を持つ美女が精一杯慰めてくれているのに、受け入れない奴がどこにいる?
そういうわけで、慰めてくれた衛生魔術師であるアニーと僕は親身になり、愛し合うようになった。
そして魔界との戦いもひと段落し、こうして僕らは晴れて夫婦になろうとしている。
こんな冷たくて殺風景な砦で愛し合わなければいけない日々ももうすぐ終わる。
小さくて貧乏な領地だが、この娘と二人でなら何とかやっていけるだろう。
明るい未来を描きながら、僕はもう一ラウンドがんばる気になっていた。
彼女の燃えるような赤い髪をかき分け、耳たぶを軽く噛む。
「あん…。」
彼女の喘ぎが少し寒い室内に響き、
「あん、じゃないっ!!この泥棒猫がーーーっ!!!」
この場にまったく似つかわしくない、しかしどこか懐かしい怒声がすぐ後に響いた。
824愛は両腕では足りない:2007/03/18(日) 00:49:23 ID:+EZCsdC9
「この戦争が終わったら、結婚しよう。」

唐突なその申し出に、僕の心は驚きと喜びに満ちながらも、照れと動揺もあったので
「そ、そういうセリフは戦場では不吉ですよ?隊長。」
とついつい斜めに構えた回答をしてしまった。
もちろん、その後セシル隊長にぶっとばされそうになって、僕は慌ててOKの返事をした。
しかし、ジンクスという奴は本当にあるものなのだ、とその後すぐ思い知らされる。
まさか本当に隊長があの後すぐ戦死してしまうなんて…。
あの日あのプロポーズがあったあと、僕らは魔物たちの前哨基地となっている怪しげな塔に踏み込んだ。
魔法も含めた罠や敵の抵抗で1人また1人と僕ら騎士が倒れていく中、
隊長も敵の魔法にかかって…ぐつぐつ気味の悪い液体が煮えたぎる巨大な壷に落とされてしまった。
怒りに燃える僕ら隊員は敵をなんとか制圧し、その後壷の中身をさらってみたものの、
隊長の体も鎧もその中に見つけることはできなかった。溶けて…しまったのだ。

「どうしたの?…その…まだ駄目?」
愛しいアニーが不安そうな顔で聞いてくる。僕の意識は過去の回想から幸せな今に戻ってきた。
結婚という言葉をアニーから切り出されて、もう一つのプロポーズのことを思い出していたのだ。
「ごめん、ちょっと考え事しただけ。結婚、しよう。アニー。」
言って、裸の彼女をもう一度抱きしめる。
「うん…幸せになろうね、ジュリアン。」
柔らかくて暖かい体を腕の中で感じる。これ以上の幸せはこの世にないとさえ思う。
隊長の死後そう間を置かずにこうして別の女性と深い関係になっていることを、
人は冷血漢だと罵るだろうか?
だが僕には愛した人を一人思い続けて死ぬなんてストイックな男の真似はできない。
飽満な体を持つ美女が精一杯慰めてくれているのに、受け入れない奴がどこにいる?
そういうわけで、慰めてくれた衛生魔術師であるアニーと僕は親身になり、愛し合うようになった。
そして魔界との戦いもひと段落し、こうして僕らは晴れて夫婦になろうとしている。
こんな冷たくて殺風景な砦で愛し合わなければいけない日々ももうすぐ終わる。
小さくて貧乏な領地だが、この娘と二人でなら何とかやっていけるだろう。
明るい未来を描きながら、僕はもう一ラウンドがんばる気になっていた。
彼女の燃えるような赤い髪をかき分け、耳たぶを軽く噛む。
「あん…。」
彼女の喘ぎが少し寒い室内に響き、
「あん、じゃないっ!!この泥棒猫がーーーっ!!!」
この場にまったく似つかわしくない、しかしどこか懐かしい怒声がすぐ後に響いた。
825愛は両腕では足りない:2007/03/18(日) 00:50:11 ID:+EZCsdC9
「きゃああ!!!!」
突然の声に驚き、アニーが悲鳴を上げる。
「なっなっなっ!?誰だ!?」
がばっとベッドから起き上がった僕は、すぐにドアの方向に身を向けた。
さっきの怒鳴り声の主と思われる侵入者が、ドアのところに立っていた。
ボロボロの皮鎧に荒々しく伸びた金髪、そして頭の上に生えている犬のような耳!
どこからどう見ても魔物だ。こんな奴にこんなところまで侵入されるなんて!
まったく油断していた裸の僕だが、それでもアニーだけは守ろうと体で彼女を隠す。
「貴様!何者だ!!」
内心の焦りを必死に隠して、僕は問いかけた。
「ジュリアン…お前、上官に向かってその口の利き方はないだろう?
それとも、まさかそこの女にうつつを抜かして、私の顔を忘れたとは言うまいな?」
その魔物が発した声と口調、怒りを押し殺したような笑顔に、僕の心臓は止まりそうになった。
目の前にいるこの魔物は、セシル隊長だ。間違いない。

「た、隊長?い、いやお前は魔物で。隊長は人間で金髪で恐ろしいけど綺麗な笑顔が…
え?あ、お、お前も同じ顔で同じ笑顔で…あ、あ…や、やっぱり隊長?」
動き出した心臓が脳に血液をまともに送ってくれないのか、僕の思考は完全にパニック状態に陥っている。
ありえない。あの日、隊長は死んだのだ。跡形もなく溶けて…。
「信じられないけど…確かに隊長みたいね。」
僕の腕にしがみついているアニーは、意外に冷静に答えをはじき出した。女ってこういう時強いなぁ。
「そういうお前は、隊の衛生魔術師か…よくも私のいない間に私の下僕…いや、恋人を寝取ってくれたな。」
歯をむき出しにして怒りを露にしている隊長。犬歯がすごく立派で、前以上に迫力がある。
いや、そもそもあんな凶悪なものは人間には生えないはず。
「まぁいい。とりあえず事情を話さなくてはならないようだな。お前ら、服を着ろ。」

隊長に促されてとりあえずそこらに散らばったものを再び着込んだ僕らは、
ベッドの上で正座させられて隊長の知られざる苦労話を聞くことになった。
あの日隊長は死んだのではなかった。確かに体は完全に分解されたが、
あの壷は元々合成魔法の途中だったものを急遽僕らの撃退に転用したものだったらしいのだ。
塔の後始末をそこそこに僕らはその後魔界のさらに奥へと進軍したため、壷は結局そのままになっていた。
放置された壷は、隊長と、その前に魔導師たちが色々溶かし込んでいたものを合成し、
中から今の魔物と見間違う(というか半分は実際魔物だ)隊長が生まれていたというわけだ。

826名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 00:51:03 ID:+EZCsdC9
「きゃああ!!!!」
突然の声に驚き、アニーが悲鳴を上げる。
「なっなっなっ!?誰だ!?」
がばっとベッドから起き上がった僕は、すぐにドアの方向に身を向けた。
さっきの怒鳴り声の主と思われる侵入者が、ドアのところに立っていた。
ボロボロの皮鎧に荒々しく伸びた金髪、そして頭の上に生えている犬のような耳!
どこからどう見ても魔物だ。こんな奴にこんなところまで侵入されるなんて!
まったく油断していた裸の僕だが、それでもアニーだけは守ろうと体で彼女を隠す。
「貴様!何者だ!!」
内心の焦りを必死に隠して、僕は問いかけた。
「ジュリアン…お前、上官に向かってその口の利き方はないだろう?
それとも、まさかそこの女にうつつを抜かして、私の顔を忘れたとは言うまいな?」
その魔物が発した声と口調、怒りを押し殺したような笑顔に、僕の心臓は止まりそうになった。
目の前にいるこの魔物は、セシル隊長だ。間違いない。

「た、隊長?い、いやお前は魔物で。隊長は人間で金髪で恐ろしいけど綺麗な笑顔が…
え?あ、お、お前も同じ顔で同じ笑顔で…あ、あ…や、やっぱり隊長?」
動き出した心臓が脳に血液をまともに送ってくれないのか、僕の思考は完全にパニック状態に陥っている。
ありえない。あの日、隊長は死んだのだ。跡形もなく溶けて…。
「信じられないけど…確かに隊長みたいね。」
僕の腕にしがみついているアニーは、意外に冷静に答えをはじき出した。女ってこういう時強いなぁ。
「そういうお前は、隊の衛生魔術師か…よくも私のいない間に私の下僕…いや、恋人を寝取ってくれたな。」
歯をむき出しにして怒りを露にしている隊長。犬歯がすごく立派で、前以上に迫力がある。
いや、そもそもあんな凶悪なものは人間には生えないはず。
「まぁいい。とりあえず事情を話さなくてはならないようだな。お前ら、服を着ろ。」

隊長に促されてとりあえずそこらに散らばったものを再び着込んだ僕らは、
ベッドの上で正座させられて隊長の知られざる苦労話を聞くことになった。
あの日隊長は死んだのではなかった。確かに体は完全に分解されたが、
あの壷は元々合成魔法の途中だったものを急遽僕らの撃退に転用したものだったらしいのだ。
塔の後始末をそこそこに僕らはその後魔界のさらに奥へと進軍したため、壷は結局そのままになっていた。
放置された壷は、隊長と、その前に魔導師たちが色々溶かし込んでいたものを合成し、
中から今の魔物と見間違う(というか半分は実際魔物だ)隊長が生まれていたというわけだ。


827愛は両腕では足りない :2007/03/18(日) 00:51:56 ID:+EZCsdC9
「きゃああ!!!!」
突然の声に驚き、アニーが悲鳴を上げる。
「なっなっなっ!?誰だ!?」
がばっとベッドから起き上がった僕は、すぐにドアの方向に身を向けた。
さっきの怒鳴り声の主と思われる侵入者が、ドアのところに立っていた。
ボロボロの皮鎧に荒々しく伸びた金髪、そして頭の上に生えている犬のような耳!
どこからどう見ても魔物だ。こんな奴にこんなところまで侵入されるなんて!
まったく油断していた裸の僕だが、それでもアニーだけは守ろうと体で彼女を隠す。
「貴様!何者だ!!」
内心の焦りを必死に隠して、僕は問いかけた。
「ジュリアン…お前、上官に向かってその口の利き方はないだろう?
それとも、まさかそこの女にうつつを抜かして、私の顔を忘れたとは言うまいな?」
その魔物が発した声と口調、怒りを押し殺したような笑顔に、僕の心臓は止まりそうになった。
目の前にいるこの魔物は、セシル隊長だ。間違いない。

「た、隊長?い、いやお前は魔物で。隊長は人間で金髪で恐ろしいけど綺麗な笑顔が…
え?あ、お、お前も同じ顔で同じ笑顔で…あ、あ…や、やっぱり隊長?」
動き出した心臓が脳に血液をまともに送ってくれないのか、僕の思考は完全にパニック状態に陥っている。
ありえない。あの日、隊長は死んだのだ。跡形もなく溶けて…。
「信じられないけど…確かに隊長みたいね。」
僕の腕にしがみついているアニーは、意外に冷静に答えをはじき出した。女ってこういう時強いなぁ。
「そういうお前は、隊の衛生魔術師か…よくも私のいない間に私の下僕…いや、恋人を寝取ってくれたな。」
歯をむき出しにして怒りを露にしている隊長。犬歯がすごく立派で、前以上に迫力がある。
いや、そもそもあんな凶悪なものは人間には生えないはず。
「まぁいい。とりあえず事情を話さなくてはならないようだな。お前ら、服を着ろ。」
828愛は両腕では足りない :2007/03/18(日) 00:52:54 ID:+EZCsdC9
test
829愛は両腕では足りない
「きゃああ!!!!」
突然の声に驚き、アニーが悲鳴を上げる。
「なっなっなっ!?誰だ!?」
がばっとベッドから起き上がった僕は、すぐにドアの方向に身を向けた。
さっきの怒鳴り声の主と思われる侵入者が、ドアのところに立っていた。
ボロボロの皮鎧に荒々しく伸びた金髪、そして頭の上に生えている犬のような耳!
どこからどう見ても魔物だ。こんな奴にこんなところまで侵入されるなんて!
まったく油断していた裸の僕だが、それでもアニーだけは守ろうと体で彼女を隠す。
「貴様!何者だ!!」
内心の焦りを必死に隠して、僕は問いかけた。
「ジュリアン…お前、上官に向かってその口の利き方はないだろう?
それとも、まさかそこの女にうつつを抜かして、私の顔を忘れたとは言うまいな?」
その魔物が発した声と口調、怒りを押し殺したような笑顔に、僕の心臓は止まりそうになった。
目の前にいるこの魔物は、セシル隊長だ。間違いない。

「た、隊長?い、いやお前は魔物で。隊長は人間で金髪で恐ろしいけど綺麗な笑顔が…
え?あ、お、お前も同じ顔で同じ笑顔で…あ、あ…や、やっぱり隊長?」
動き出した心臓が脳に血液をまともに送ってくれないのか、僕の思考は完全にパニック状態に陥っている。
ありえない。あの日、隊長は死んだのだ。跡形もなく溶けて…。
「信じられないけど…確かに隊長みたいね。」
僕の腕にしがみついているアニーは、意外に冷静に答えをはじき出した。女ってこういう時強いなぁ。
「そういうお前は、隊の衛生魔術師か…よくも私のいない間に私の下僕…いや、恋人を寝取ってくれたな。」
歯をむき出しにして怒りを露にしている隊長。犬歯がすごく立派で、前以上に迫力がある。
いや、そもそもあんな凶悪なものは人間には生えないはず。
「まぁいい。とりあえず事情を話さなくてはならないようだな。お前ら、服を着ろ。」

隊長に促されてとりあえずそこらに散らばったものを再び着込んだ僕らは、
ベッドの上で正座させられて隊長の知られざる苦労話を聞くことになった。
あの日隊長は死んだのではなかった。確かに体は完全に分解されたが、
あの壷は元々合成魔法の途中だったものを急遽僕らの撃退に転用したものだったらしいのだ。
塔の後始末をそこそこに僕らはその後魔界のさらに奥へと進軍したため、壷は結局そのままになっていた。
放置された壷は、隊長と、その前に魔導師たちが色々溶かし込んでいたものを合成し、
中から今の魔物と見間違う(というか半分は実際魔物だ)隊長が生まれていたというわけだ。