嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 修羅場の28
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(
ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
6 :
とーしろROM専:2007/02/06(火) 11:27:05 ID:4gutmNEn
「ふふふ・・・うふふふふふふふふふふ・・・」
孤独に笑っている女性が一人。白い純白の肌をむき出しにして一人笑っている。
「これで・・・これで父様(ととさま)がこちらを振り向いてくださる・・・」
昔、ある所に一人の男と娘たちがいた。娘たちは男に買われ今の住処に住んでいるのだ。
男は当然のように娘に自分のものである印を刻み込み、娘たちもそれを受け入れるどころか感謝さえした。
(嗚呼・・・あの頃はほんに幸せでした・・・)
父様・・・男は毎晩のように娘を蹂躙した。娘を一人選ぶと一月(ひとつき)やそこらはずっとその娘が蹂躙され続けた。
そして、選ばれた娘はどこかに消え、また一人選ばれる。
(お姉様達は・・・ずるいです)
選ばれた姉の誇らしげな、幸せの絶頂のような表情を見るたび次は私、次こそは私と思い続けたが結局最後の一人になってしまった。
そこまでは良かった。最後になってしまったということは男は、父様は後生大事に自分を染めてくださるのだろうから。
しかして絶望は訪れた。男が新しい娘を一人買ってきたからだ。その娘は異人であり、その白い肌、黒々とした髪の美しさは娘には太刀打ちできないように感じた。
そして男も新しく買った娘を選んだ・・・。
(一月の辛抱、それが過ぎれば父様が・・・。)
一月が過ぎ、二月が過ぎ、三月が過ぎた。
男は来ない。自分を選んでくださらない。一人孤独に待ち続けている自分に目を向けてくださらない。
あの娘が、あの娘が来てからおかしくなった・・・。自分にとっての世界である父様が変わってしまった・・・。
(許せない・・・許せない許せない許せない許せない許せない許せないっ!!!!)
狂気とは、孤独から訪れるものである。
娘は狂い、終に・・・異人の娘を。
「これで・・・これで父様(ととさま)がこちらを振り向いてくださる・・・」
7 :
とーしろROM専:2007/02/06(火) 11:28:45 ID:4gutmNEn
「あれ、すっげぇ荒れてんなぁ・・・・」
パソコンの画面を見つつ男は呟いた。
その男は所謂職人、神と呼ばれる人種であった。
ずっとノートに溜め込んできたネタをある掲示板に貼った所大絶賛を受けた。
褒められる事は新しいアイデアを出す一番のチャンスだ。
男は良作がどんどん思いついた。そしてそれを書き込みさらに褒められた。
だが明くる日、その掲示板が荒れに荒れていた。
いつもの職人への催促と、それに対する注意ではなく、なんと次スレの題名で論戦がされていた。
「むぅ・・・投下できる雰囲気じゃねぇや・・・」
荒れているところに投下したら投下した作品まで罵倒されかねん。男は投下を諦めた。
「久々にノートに書き込むかなぁ・・・」
男は引き出しから一冊のノートを取り出した。まだ名前だけしか書かれていない純白のノートを。
「よく見たらこれラスト一冊じゃん。大事に書かんとなー」
後に残されたのは次スレの題名で荒れている修羅場嫉妬すれのみ・・・・。
お粗末。
今の状況を見て生まれて始めてのSSを書いてみた反省はしていない。
つまり荒れるのは嫉妬に狂ったノートの陰謀なんだっ!!!!
なかなか面白いと思ふ是
前スレ
>>684乙
主人公が被っているってのは個人的には好みだ。
これからどう修羅場に発展していくか楽しみ。
>>6-7俺こういうss結構好き。新スレ初のgj!
今日も兄さんは私をかまってくれない。
「うはwwwwおねえちゃんテラモエス」
お茶を持って部屋に行っても、兄さんは気づいてくれない。
いつものように兄さんはモニターを凝視して、私を見てはくれない。
こんなにも慕っているのに、こんなにも愛しているのに、 どうして兄さんは……
「好きです……兄さん」
「実妹?ねーよwwwww」
どうして!血のつながりなんて、愛の前には些細な問題でしょう!
「ちょwww三次元wwwwキモスwwww」
いつものやりとり。私が想いを打ち明けても、真面目に応じてはくれない。
どうして、どうして兄さんは私を愛してくれないの……
薄っぺらなくせに!触れることさえ出来ないくせに!
子供だって産めないくせに!兄さんの想いに応えやしないくせに!
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!
怒りにまかせて破り捨てても、ヤツらはいくらでも湧いてくる。
押し入れから、ベッドの下から、兄さんのプリンターから、害虫のように増殖する!
兄さんの寵愛をうける娼婦たち!
私から兄さんを掠めとる泥棒猫!
「言葉様ハァハァ……」
そしてまた、新しい雌犬が……
とうとう耐えきれなくなった私は、女狐どもを全て駆除することを決意した。
兄さんが眠っている間に、害獣どもを産み落とす売女であり、諸悪の根源であるパンドラの箱、ぴーしーと呼ばれる端末に入ってる雌豚たちを殺すのだ。
彼女らの情報を全て消去してしまえば、兄さんは私を見てくれる。兄さんを惑わす魔女たちが全ていなくなりさえすれば、兄さんは私を愛してくれるのだ。
「修羅場系総合SSすれ?」
Dどらいぶの初期化を終えて、息抜きに兄さんのお気に入りを調べていた際、誤って開いてしまったのがそれだった。
名無しさん@ピンキー sage 2108/02/06(火) 15:13:28 ID:kOtonOha
おねえちゃんテラモエス
「これ、兄さんが昼間いってた……」
たらり、と、唇から血液が流れる。気が付いたら噛みきっていた。
下へスクロールしていくと、同じような句や単語が並んでいるのに気付く。
彼らは一様になにかを賞賛しているらしい。
「この連中が、この連中が……」
だが、そんなことはどうでもいい。
私が考えるのはただ一つ、この連中が――
「私から兄さんをとったんだ……!」
この連中が淫らに兄さんを誘惑するから、兄さんは私を見てくれないんだ!
怒りに任せ、出鱈目に更新ボタンを連打する。
連中はなにかを待ち望んでいるらしい。
SSと呼ばれる悪女――SSとは、なにかの暗号だろうか?
きっとそいつが連中の首領なのであろう。
その雌猿は有象無象の名無しどもを指揮して、兄さんを誘惑しているのだ。
このまま見逃してやるほど、私は愚かではない。
やつの姿を突き止めて、二度と兄さんに色目を使えないようにしないと……
「これは?」
しばらくするとなにやら小説らしき長文が表示され、そこには――
ちゅんちゅんと、小鳥のさえずりが聞こえる。
小鳥たちもきっと、私たち兄妹を祝福してくれてるのだろう。
兄さんの寝顔を眺める。
体を揺すって口をむにゅむにゅと動かすのは、兄さんが目覚めるときの癖だ。
――私は悟ったのだ。愛は待つものではなく、勝ち取ることだと。
あのSSは、私にとって正に福音であり、真の愛への天啓だったのだ。
「ちょwwwウゴケナスwwww」
「手足をロープで固定させてもらいました。兄さんはずっと私にこうされることを望んでたんですね。
安心してください。三種の神器のうち、媚薬以外は揃っています。
さぁ、心置きなく監禁生活を楽しみましょうね」
「おまwww監禁wwww」
「さぁ、これから二人っきりで、淫靡で背徳的な爛れた日々を送りましょう!」
「ちょwwwwらめぇwwwwwアッー――――」
「お兄ちゃん……ずっといっしょにいようね」
「人生オワタ\(^o^)/」
>>7を読んで思いついた。今は反省している。
ちょwwww!
テラGJ!!!
ワロタwww 妹のピントずれてるwwwwww
しかし、実生活でもこんな喋り方をするキモイ兄の何処に惚れたんだよw
理屈じゃないんだよ!!
監禁は、フィーリングで行うもんだ!!
2108年吹いたwwwwwwwwwwwwwwww
母親と娘の嫉妬修羅場合戦みたいなSSってあるのかしら
こ れ は 萌 え た
>前スレ684の続きです。
その一。
グレイスが帰ってきた。
聞いた話では、かなりの手傷を戦場で負ったそうだ。
妹のヘレンは、心配で胸が張り裂けそうだった。
聞いたところによると、命に別状は無いという話だったが、そんな事は自分の目で見るまで当てにはならない。
ヘレンは、侍女たちを突き飛ばし、長いスカートを捲り上げ、実に数年ぶりに全速力で、兄の部屋まで駆け通した。
貴族の令嬢としての典礼作法を学び始めてからは、走るなどという、そんなはしたない行為はした事も無かったが、その時の彼女には“無作法”などという単語は、頭を掠めることすら無かった。
「お兄様っ!!」
兄の部屋に飛び込んで、ベッドまで駆け寄る。
クリムゾン家かかりつけの白魔道士に医者。兄の従者である騎士見習いたち。そして、ひたすらおろおろする母と、その母ををなだめる末の妹。
これらの人々を掻き分け、ヘレンは枕元までにじり寄る。
彼女の兄、グレイス=クリムゾンは、いた。
「よう。ヘレン」
「おにい、さ、ま……!」
半年振りに見る兄。
半年前と変わらぬ、その屈託の無い笑顔。
しかし、全身包帯まみれのその姿には――左膝の下からが無かった。
「ちょいと、しくじっちまってな。ブザマなこったよ全く……」
「……」
「何だよ、そんな不景気なツラすんじゃねえよ。別に足一本で死にゃしねえさ」
グレイスは半分むくれたような、半分照れているような、それでいて何となく面目無さげな、要するにイタズラの現場を押さえられた子供のような顔をしていた。
ヘレンは、そんな兄の顔を見て、安堵と同時に苦々しい怒りが込み上げてくるのを抑え切れなくなっていた。
「あの、あなたたちには申し訳ないけれど、……少しお席を外して下さいません?」
「えっ……あの?」
「ヘレンお嬢様、宜しいのですか?」
「先生方、もう、取り立てて命の危険は無いのでございましょう? 父もそろそろ下城する時間ですし、騎士団の方々もお疲れでございましょう? 階下でお食事など用意させて頂きますので……少し、家族だけで話をさせて頂けません?」
そう言って彼女は兄の部屋からメイドや医者、騎士見習いたちを追い出した。
本当は、母や妹も追い出して、二人きりでたっぷり説教してあげたかったのだが……。
「お兄様、これやっぱり、アイツにやられたの……?」
「あいつ?」
「例の、グリフォンに……」
「……まあな」
「……」
例のグリフォンというのは、最近、街道沿いのボラン峠に出没するという、鷲頭獣身の幻獣の事だ。
元来グリフォンは、ドラゴンやフェニックス、ガルーダやハヌマーンのような高位の霊獣に並ぶ存在で、その知能、魔力、そして、その巨大な肉体が有する破壊力は、もとより人間の及ぶところではない。
と言うより、そんな幻獣は人前に姿を現す事すら稀であり、さらに街道で人や荷車を襲うなど、前代未聞と言ってもよかった。
グレイスの直属の百人隊が、そのグリフォン討伐の任を帯び、ボラン峠に出立したのが二週間前。
そして、一週間前に峠と街道を封鎖し、およそ四日間にわたって繰り広げられた大激戦は、完膚なきまでの騎士団の敗北で幕を閉じた。
軍勢はその半数までが殺され、指揮官である彼が、片足を食い千切られながらも残兵をまとめ、撤退して来たのだという。
ぽつりぽつりと、言い訳のように、そんな話をその場にいる家族に聞かせるグレイス。
しかし、その表情は、命拾いした安堵ではなく、幻獣への恐怖でもなく、戦に負けた悔しさのみに覆われていた。
ヘレンは、そんな兄の頬を、張り飛ばしてやりたくて仕方が無かった。
グレイス=クリムゾンの名は高名だ。
王宮近衛騎士団の百人長の一人として、また、名門貴族・クリムゾン家の嫡男として、そして、我が国で十指に数え上げられる練達の剣士の一人として。
いつもは、彼の身を心配する妹の胸のうちなど、まるで鼻にもかけず、国内国外を問わずに戦場を飛び回る。そんな兄。
いい加減落ち着いてクリムゾンの家を継げ、という父の意見を、天下は未だ定かならず。今は誰もが陛下のために剣を取らねばならない時代だと一蹴し、休暇の時でも、騎士団の詰め所から滅多に帰ってこない。そんな兄。
例え、屋敷に帰ってきても、父や母への挨拶もそこそこに、すぐに離れの道場で独り、夜中まで剣の練習にこもってしまう。そんな兄。
でも、妹たちに対しては、この世の誰よりも優しい。そんな兄。
ヘレンは、そんな兄が大好きだった。
恐らく、その想いは、兄に対する妹の思慕という範疇からは、とっくの昔にはみ出してしまっているはずだった。
「だから! だから言うたのじゃ! グレイス!! 由緒あるクリムゾン家の後継ぎが、調子に乗って戦場などに飛び出して…いつかはこうなると、この母が口が酸っぱくなるまで言うていたであろうが!!」
半分泣き喚きながら母が叫ぶ。
「落ち着いてよ母上様。そんなに耳元で叫ばなくとも聞こえてるよ」
末の妹のマリアが、母を慰めながらもたしなめる。
「まあな」
彼も、苦笑しながら、目線でマリアに礼を言う。
だが、マリアは、そんな気安い兄の視線を再度跳ね返した。
「でもね、兄上様、父上様も母上様も姉上様も、そして当然ボクだって、みんなみんな兄上様のことが心配なんだよ。だからもう、これを機に騎士団を引退して、大人しく家を継ぐべきだよ」
マリアは、呼び方こそ丁寧だが、口の利き方は基本的にタメ口だ。
だが、その物言いは、ヒステリックな母とは違い、聞き手に違和感を感じさせない冷静さがある。彼女は父であるクリムゾン侯爵でさえ、一目を置く利発な少女だった。
ちなみにヘレンは、この妹にチェスで勝った事が無い。
しかし兄は、そんな末妹の眼光を、更に弾き返した。
「それは、できない」
「グレイス!!」
「お兄様っ!!」
「兄上様っ!!」
ヘレンと母、そしてマリアが同時に叫ぶ。
しかし、彼の表情は頑なだった。
「アイツはオレの獲物だ。誰にも渡しゃしねえ」
「何を言ってるのお兄様っ!? エモノも何も、エサにされそうになったのはお兄様の方じゃないの!?」
「大体、片足食い千切られて、騎士も何もないだろう!? もう馬にだって乗れないじゃないかっ!?」
「何故じゃグレイス!? 何故そこまで己の命を粗末にするのじゃ!? この母にあてつけたい事でもあると申すかっ!?」
口々に叫ぶ女たちの声を聞き流し、彼はヘレンに振り向いた。
「ヘレン」
「何よっ!」
「お前、十年前の事、覚えてるか?」
「十年前?」
「これだよ」
そう言って、振り向いた彼の横顔には、凄まじいまでの傷痕があった。
そう、グレイスの左の横顔は、一面の火傷に覆われている。
その火傷さえなければ、母親似の彼の容貌は、美形と言ってもいいほどに整ったものであり、雪のように白い肌が、その容色を一層見栄えするものに仕上げるはずなのだが、この火傷のせいで、その全てが逆効果となっていた。
その容貌が端整であるほどに、その肌が色白であるほどに、その傷の醜さは倍増され、初めてグレイスと顔を合わせる者たちは、その大半が眼を逸らす。
無論、彼は、そんな事を毛ほども気にしていないようではある。
何故なら、この傷こそは、十年前にヘレンを庇って出来た傷なのだから。
傷を気にする素振りを見せるほどに、妹の小さな胸の内を苦しめる事になる。彼は兄として、それくらいの配慮は出来る男だった。
だから、彼の口から傷の事が語られる事は、これまで絶えてなかったはずだった。
その彼が……。
「十年前、オレのツラをお化けにしてくれた、あの化物……アイツだよ。あのグリフォンこそが、あの時の化物だ。間違いねえ」
「お兄様……」
「ようやく逢えたんだよ、長年待ち焦がれた“恋人”にな。……くくくく、最初の一目で分かったよ。ああ、コイツだ。こんなところにいやがったんだ、ってな」
「でも、でも兄上様――」
「あのクソ野郎を仕留めるのは、天下に唯一人、このグレイス=クリムゾンを置いて、他にゃアいねえ……!」
淡々とそう語るグレイス。
全身包帯だらけの半裸の肉体。しかも片足を食い千切られたその重傷。
しかし、その爛々たる輝きを帯びた眼光。さらに、宿敵との再会を喜ぶ歓喜交じりの絶大なる闘志は、彼が国内屈指の戦士である事を、家族たちに思い出させるのに充分だった。
「幸い、持ってかれたのは足一本だ。しかも膝の関節は無事だから、後は義足をつけりゃあ何とかなる。母上、お手数ですが、早速に職人を手配して頂けませんか?」
「……グレイス、お前」
母は絶句した。
同じく、妹たちも。
しかし、ヘレンはもう理解していた。
(あの眼をした時のお兄様は、もう何を言っても聞いてもらえない……)
兄の、あの歓喜に震える眼差しは、家族と共に過ごすどんな瞬間でも出現する事は無い。
例外があるとすれば、それは戦場の思い出話をする時だけ。
いつも自分たち妹を、いたわりと優しさに満ちた眼で見つめる彼の瞳が、本当の意味で輝くのは、ヘレンたちが決して行く事の出来ない、戦場の空気と記憶に包まれている瞬間だけなのだ。
常に兄のことを考え、兄の身を心配しているヘレンにとって、それは何という残酷な事実であったろうか。
「……そんなに、死にたいのですか……?」
「ヘレン?」
「お姉様?」
ぽたり、ぽたり、――。
ヘレンは哀しかった。ただ無性に哀しかった。
涙が零れ落ちるのも構わずに兄を睨みつける。
「おい、ヘレン、何で…お前が泣いてんだよ…?」
「そんなに、そんなに、死にたいんなら! もう死んじゃえバカァァ!!」
「オイ、待てって! 待てよヘレン!!」
しかし、そんな兄の声も届かず、彼女はグレイスの部屋を飛び出していた。
そのまま階下へ駆け下り、呆気に取られる侍女やメイドたちを突き飛ばし、彼女は中庭の雑木林まで走り続けた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……ぐすっ! んっ、うっ、ううっ……」
涙は止まらなかった。
取り敢えずハンカチで顔を拭う。
兄には、自分の心など分からない。いや、理解しようとすらしていない。
彼が出征している間、この家で独り、兄を待つ自分がどれほど不安と寂寥に心痛めていることか。そして、ようやく半死半生の身で帰ってきたと思ったら、またもや心を戦場に飛ばし、自分たちの想いなど、まるで歯牙にかけない。
「おにいさま……」
ヘレンには、もう分かっていた。
兄――グレイスにとって戦以外の事など、まるで眼中に無いのだという事が。
無論、ヘレンが彼の妹である以上、兄と結ばれる事など、法律上でも道徳上でも有り得る事ではない。
それはいい。その覚悟はもう出来ている。
しかし、それ以上に、兄は自分の事など、口うるさい家族の一人くらいにしか認識していない。
その事実が、ヘレンの心を何より哀しませるのだ。
気が付いた時には、小雨が降っていた。
ヘレンは、しかし屋敷に帰る気にはなれなかった。
少し歩けば、池に出る。
そこには東屋があり、ちょっと座れるようなベンチもある。
そこまで移動しよう。
そう思って足を進めた彼女は、その瞬間、自分の背後に気配を感じた。
「誰っ!?」
反射的に振り向いたその先に立っていたのは、腰まで伸びた金髪の女だった。
「そんなにアニキが欲しいのかい?」
「なっ、何を言い出すのっ!?」
「しっかり、見させてもらったよ。一部始終をね」
「なっ、何ですってぇ!?」
女にそう言われて、ヘレンは思わず耳まで真っ赤になる。
「そうだよねえ。泣くほど恋しい男でも、そいつが実のアニキだって事なら、話は別だ。人としては諦めるしかない。人としてはねえ……」
女はそう言いながら、輝くようなプラチナブロンドをかきあげる。
前髪の下から現れた顔は、彼女がこれまでの生涯で見た事が無いほどの美女だった。
「あなた、誰なの……?」
少なくとも、この屋敷に仕える女ではない。しかし、いくら怪しい女だといっても、ただそれだけで取り乱し、大声をあげて騒ぐつもりは無い。
そんな事はヘレンの気位が許さなかった。
「お答えなさい。あなたは一体誰なの?」
「そんな事を訊いてどうするんだい?」
「ここは、我がクリムゾン侯爵家の敷地内です。素姓の知れない者がうろうろしていい場所ではありません。さっきの無礼は許してあげます。さっさとここから立ち去りなさい!!」
「はっはっはっはっはっ! すごいすごい、さっきまでの恋する女が、まるで別人だよ!」
「何が可笑しいのです!!」
恥辱に顔を赤らめさせながらヘレンが叫ぶ。
「安心しなよ、お嬢ちゃん。あたしゃ、あんたの敵じゃない。むしろ味方さ。恐らくはこの世でたった一人のねぇ」
――味方?
「どういう意味? 味方って、一体あなた何を言ってるの……?」
「だァから、あんたの愛しのアニキ様との想いを叶えてやるって言ってるのさ。このあたしがねぇ」
なっ……なんですってぇ……!!??
女の言い出した内容の、あまりの無茶苦茶さに、唖然としてしまう。
そんなヘレンを横目に見ながら、女はニヤリと笑った。
「あたしの名はハブロー。ハブロー=アイアコス。覚えておいで」
今回はここまでです。
時系列では前回の方が後?童貞騎士が主人公なのか。
では投下致します
第20話『復讐の音羽』
それから、数日後。
俺は体調を元通りに治して、その病院を退院することにした。
あの後、すぐにナースコールで看護士さん達を呼び、音羽を連行して病室から追い出してもらった。
ついでに俺は音羽を精神科で診察するように看護士達に大げさに強調して言っておいた。
俺が入院している間に誰も見舞いにやって来なかった事は病院の厳重な警備の元で誰一人も近付けさせなかったことだろうか。
音羽の過去、いや、おれに対する復讐宣言については何とも思ってもいない。
よく考えてくれ。
子供が書いた連帯保証人の書類が法的に有効になるはずがないだろうが。
法的に未成年が保護者で無断で結んだ契約は後々と撤廃することができるとどこぞの法律特集番組でやっていたような気がする。
ゆえに俺と音羽には何の責任もないはずである。
音羽の謀略に乗せられる程、俺の頭はバカではない。
復讐は口実であり、俺に近付くための手段である。
それを武器にして、音羽は俺に弱みを握っているつもりである。いや、同情を誘っているのであろう。
両親を失ってしまったのは子供の頃の過ちのせい。その責任は音羽と俺。
双方に罪悪感を強く抱かせるのが音羽の策だろう。復讐という言葉を借りて、
音羽は今まで以上に俺の心の奥深くまで土足で入り込んでくる。
これは前兆だ。
今、現在で問題になっている嫉妬や修羅場の果てに発狂する女性たちの精神の異常はおかしな言動や行動から始まる。
刺殺事件、バラバラ殺人事件、空鍋事件、鮮血ENDの加害者である女性たちは寝取られた男性の事を
真剣に愛していたのだろう。だが、結局は想いが大好きな人に届かないと知ると、愛は憎悪へと変わる。
いや、殺人者達にとっては憎悪ではなくて、これも愛情表現の一つなのかもしれない。
愛する男性はともかく、寝取った同性に対しては何度でも殺したい憎悪の炎に燃えている。
このような、社会現象になっている女性たちの精神的な病の総称を政府は重い腰を上げて正式に発表する事にした。
『ヤンデレ症候群』と。
その病に侵された女性たちは従来の医学でも治療は難しく、一度発症してしまうと二度と元に戻ることができない。
想っている男性をストーキングし、ただ女の子と喋っているだけで嫉妬し、振り向いてくれないと理解すると凶器を振り落として殺す。
それを回避する事はまず難しい。ただ、発症しない事を祈るだけであった。
そして、音羽はその病に侵されてしまったのではないかと。
正常な思考が働いているならば、昨日みたいに何の伏線もなく復讐を宣言するような馬鹿な真似はしない。
最後に虚ろな瞳で狂気な笑みを浮かべた姿を見て、俺は確信を持って言えることができよう。
彼女はヤンデレ症候群にかかってしまったと。
だが、面白い。
想い人である俺は最後に殺害されるという確定された未来が約束されているというのに不思議と笑みを零してしまう。
殺される人間と狩る者。互いが狐の騙し合いを行い、白熱したやり取りが待っている。
これだけのスリルをゲーセンやつまらない学校生活で味わえることができるのか。
否。この国は危険だという可能性だけで何でもかんでも排除してしまった。
人間は争い勝つ事で進歩が生まれ、進化することができるのだ。
いいだろう。
音羽が愛情を求めて俺に近付いてくるならば、俺はそれを受け止めてやろう。
そして、俺がその上を行く。
1ヵ月ぶりの学校は中間テストや文化祭と言った学生にとっては大行事が控えているせいか、
他の生徒たちが忙しく駆け回っているようだ。俺は入院していたおかげで文化祭の行事の役割は特に決まっていない。
休んでいた間のノートを友達に借りて必死に自分のノートに移す作業に追われているので、誰かを手伝う余裕がない。
その役割は俺の精神的負担を減らすにはちょうど良かったのだ。
昼休みをお知らせるチャイムが鳴ると生徒たちは慌ただしく動きだす。
購買へと出掛ける生徒の他に、文化祭の作業をする生徒がいるからだ。
俺は昼食を食べずにノートを移そうとしたが、背中を優しく叩かれたので後ろを振り返ると。
音羽がそこにいた。
「月ちゃん。月ちゃん。お昼一緒に食べようよ。あの五月蝿い小姑どもが来る前に」
「いや、俺は……」
「私は月ちゃんのせいで両親が自殺……はぐぅ」
クラスメイト達の前で音羽の両親が自殺した原因が俺にあると叫ばれる前に俺は音羽の口を両手で塞いだ。
「わかった。一緒に食べるから、過去の話を教室で語らないでくれ。頼むからっ!!」
「えへへ。じゃあ、誰も邪魔されない屋上で食べましょうねっ!! うふふっ。今日も頑張って早起きして作ってきたんだよ」
俺は音羽の手を握って誘うようにせっせと歩く。
音羽が何かを言い出す前に教室から連れ出して、慌ただしく屋上へと向かった。
屋上に吹く風はとても心地よくて気持ちいいのだが、音羽が作ってきたお弁当の中身を見ただけで外の景色を楽しみながら
食べる余裕は一気に消え失せた。存外、以前に作ってきた稲荷寿司なのだが、更にあれよりも進化を続けていた。
審査員花山田忠夫を一発でノックアウトした程の破壊力を持つ稲荷寿司に一般人だと思っている俺の胃袋ではどう太刀打ちできようか。
「月ちゃん。たくさんあるから一杯食べてよね」
音羽はせかすように稲荷寿司を箸に挟んで天使のような笑みを浮かべながら迫ってくるのだ。
俺は背中に冷汗を感じながら、覚悟を決める。
口を入れた稲荷寿司の味は水澄姉妹に匹敵する強烈な不味さと苦みの二重の味に襲われる。
まるで殺虫剤のスプレーを一晩注ぎ込んだような感じがするのだ。
更に口の中を無理矢理飲み込んでしまうと体が異物を追い出すために吐き気が襲ってくる。
胃液と食べた稲荷寿司が喉の所まで逆流しそうになったが、俺は何とか堪えた。
「月ちゃん。どうしたの? 顔色が悪いよ」
「お、音羽さん。何か俺に恨みとかあります?」
「恨みはないけど。月ちゃんに復讐する気はあるよ」
この稲荷寿司を食べさせる辺りが復讐じゃないのかと問い詰めたくなったが、今は下手に体を動かすと吐いてしまうのでやめた。
「と、とりあえず。今は病み上がりだから。稲荷寿司はもういいわ。ちょっとだけ休ませてくれたら調子も元に戻るから」
「こ〜ん。病み上がりだから仕方ないよね。月ちゃんが元気になったら、
私が作った稲荷寿司をいっぱ〜〜〜〜い食べさせてあげることにするよ」
「あっははっ……それは楽しみに待ってるよ」
待っているはずはないが。
痛めた胃袋を手で抑えて、俺は落下阻止にあるフェンスに背を向けて預けた。音羽は傍で笑顔を絶やさずに居てくれている。
だから、病院で宣言した復讐の真意をふと無意識に尋ねた。
「あのさ。病院で言った俺に復讐する宣言はあれは本当なのか?」
「本当だよ」
躊躇なく病院で見せた虚ろな瞳で俺を真っすぐに見つめた。
それはヤンデレ症候群の前触れかはそっち系の専門家ではないのでよくわからないが。
目の前にいる音羽が普通じゃないってことは確かだ。
「月ちゃんが悪いんだよ」
音羽は立ち上がって、くるりと一回転してスカートをなびかせる。
揺れる髪に見えそうになったパンチラに見惚れることはないが、何かの演出らしき物を感じた。
「月ちゃんが姉妹に追われているからと言って、私の家を逃げ込む場所にするのが間違いだったんだもん。
私は両親が自殺してからずっとずっと一人ぼっちだった。
多額の借金を背負って借金取りが来るたびに夜逃げしていたから、どの土地も馴染むことがなかったの。
でも、お父さんとお母さんが居てくれたから私は何とか笑ってこれた。本当にどんな辛い目に遭っても平気だったんだよ。
でもね。私が少ないお小遣いを貯めたお金で二人の結婚記念日のためにプレゼントを買って、家に帰ったら。
お父さんとお母さんは首吊り自殺していたんだよ。
あっはっははっはははははっは。笑うでしょ? 笑いたくなるでしょう?」
狂気の笑みを浮かべて、音羽は顔を歪ませて笑う。
「でもね……本当に独りぼっちになっちゃうと私は毎日毎日が寂しかった。
一人で生活をしているとさ。昔、私が仲良くしていた男の子を思い出したの。
その子は私よりも不幸で両親を交通事故で亡くした男の子。
私が子供だった頃に大好きだった男の子が今は何をやっているのか知りたくて、この土地に引っ越して来たの」
「それでうちの学園に転校してきたのか」
「うん」
と、音羽は首を下に向けて頷いた。
「思い出したのは男の子の事だけじゃなくて。私と月ちゃんにとっては大切な約束の事を思い出したの。
そう、その約束を思い出しただけで私の胸に熱くなったんだよ。
約束したよね?
もし、この広い世界で再会する事ができたなら、私をお嫁さんにもらってくれるって」
問い詰めか?
それは音羽と再会する前に見た夢の一部分に俺と音羽の間に約束した事を覚えていたが、
具体的な内容までは思い出すことができなかったが。その内容とは子供らしい約束だったとは。
「月ちゃんと共同生活を送って……。私は月ちゃんがいるだけで寂しさを忘れる事ができる。
月ちゃんが傍にいれば幸せな気分になれる。
もう、独りぼっちでご飯を食べるなんて嫌。誰かに朝起きたらおはよう、寝るときにはお休みなさいって言って欲しいよっっ!!」
音羽が温もりを求めるかのように抱きついてきた。俺は拒絶の反応を見せることなく、ただ頭を優しく撫でていた。
覚えがあるのだ。独りぼっちになった恐怖は今でも忘れる事ができない。
両親が交通事故になった出来事は俺の立派なトラウマになっている。
だから、音羽の独りぼっちの孤独に耐えられないのは理解できるのだ。
「それが俺に復讐する理由なのか……」
「うん。そうだよ」
気持ち良さそうに撫でられている音羽が幸せそうな恍惚な表情を浮かべていた。
俺に甘えるように頬を擦り付けている。
この弱々しい音羽を俺は奈落に突き落とさなきゃならないんだ。
ヤンデレ症候群の発症した女性に脅されて付き合った男性は自ら破滅の道を選択する。
激しい独占欲を持っている発症者の女の子に随時メールや電話などの連絡を求められる。
一緒にいる事を強制され、外に出ている時に他の女の子をちらっと見るだけで想像できない拷問が待っているのだ。
更に周囲にも迷惑がかかる。俺みたいに家族に女の子がいるとなると憎悪の対象がそちらに行く可能性がある。
だから、乱暴に音羽の抱き締めている腕を乱暴に振りほどいた。
胃の中身が吐き出すの衝撃が襲ってくるが気にしている余裕がない。
ここは断固と厳しい態度を取らないと俺が後々に火の粉を被ることになる。
「ど、ど、ど、どうして……?」
まるで信じられないように音羽は目の瞳孔をパチパチと開かせている。
依存していた相手から一方的に突き離された現実に彼女自身の思考能力が追いついていない。
「それは恋じゃないだろ? そんな大昔に約束した事なんて現在に関係ないだろ?」
「つ、つ、つ、月ちゃん……?」
「だから、約束を破棄させてもらう……。俺に復讐したいなら勝手にやってくれ」
「ま、待ってよ。つ、月ちゃん。幼い頃にした約束を勝手に破棄すると大変な事になるんだよ。
そ、そう、私達の元に魔物がやってくるんだよ。私達を引き裂こうと魔物が来るの。
昔みたいに一緒に協力しないと魔物は倒せないんだよ。
だから、一緒にいようよ。そうしないと魔物に喰い殺されるんだからっっっ!!」
「さようなら」
音羽の悲痛な叫びを無視して、俺は屋上に降りる階段を目指していた。
もう、茶番に付き合えないから。
黒音羽全開・・
月の明日は? 明日を待てw
とりあえず
23話まで毎日更新頑張ってみようと思います
まあ、今現在書いているお話がすでに30話まで書き上げているので
そろそろ、消化しないといけませんからねw
いつもいつもGJです
別に他の人急かすつもり無いけど、
筆の速い神はありがたい・・・・・
魔物の元ネタって・・
産みの苦しみってのも分かってあげないといけないぜ、遅くても投下してくれるだけでGJだ
それにしても月に死亡フラグが…
負けじと、投下ー。
保健室のベットの上で、わたしは湧き上がる殺意を必死に抑えていた。
殴られた頬が痛い。口の中が、鉄の味に染まる。せっかく、先輩の汁の味にまみれていたというのに。
最悪です。折角今日の夜は眠れなくなりそう、と考えていたのに!
しかし、ざまあみろ、です。あの雌豚の醜い顔を見た先輩の表情は、何とも形容しがたいものでした。侮蔑の色に染まっている先輩の瞳に射抜かれて死ねばいいんです。
しかし、本当に腹立たしい。先輩に殴られていいのは、このわたしだけだと言うのに。あのアバズレは、一体どれだけわたしに精神的苦痛を当てれば気が済むのでしょう。
わたしを殴っていいのは先輩だけ。先輩が殴っていいのはわたしだけ。これは決定事項だというのに。あの雌豚め。忌々しい。
先輩も先輩です。あの雌豚は全身細菌まみれなのですよ? 先輩の清らかな手が雑菌にまみれては、一大事です。今すぐにでもアルコール消毒をしてほしいです。
と、物思いに耽っていると、突然眼前に女性の顔が現れました。というか、顔近いです。
「やあやあ。調子はどうだい?」
「調子は最高に最低です、佐々木先生」
保健室の主である、佐々木 希沙々先生は、かけている黒縁のメガネの奥に潜ませている猫の瞳に酷似した目で、わたしの瞳をとらえる。
にこり、と言うよりはにやり、と妖艶に微笑む佐々木先生。本当、この先生は猫に似ています。少し、苦手です。
べろり、と長い舌を自分の唇に這わせる先生。なんでしょう。この獲物を見つけた豹のような目は。と言うか、先生との顔が本当に近いです。何故か妙に息が荒いです先生。
「ふふふっ。椎名ちゃんは、本当美味しそうだねぇ」
「あい?」
「やあやあ。独り言だよ。ふふ。あー先生我慢できそうにないにゃー」
何でしょう、この先生本当に職員で大丈夫なのでしょうか? そう言えば、やけに佐々木先生のファンの女子が多い気がしていましたが……。
いや、変な考えは止めておきましょう。わたしの体は先輩だけのものです。何があろうと汚してはいけません。汚していいのは、もちろん先輩だけ。
いえ、別に先生が同性愛者かどうかなんて、たいした問題ではありません。むしろ、先輩……と言うか男に興味がないので非常に好感触です。どこぞの慰安婦とは違います。さすが先生です。
と、話が逸れました。そもそも、何の話をしていたんでしたっけ。ああそうだ、あの忌々しい精液搾取豚の事でした。
ああ、また苛立ちが蘇ります。こう言う時は、先ほど嗅ぎに嗅いだ先輩の匂いで自慰に耽るのが最適です。先輩大好き。ふふ。
「先生、すいません。少しトイレに行ってもいいですか?」
「うん? やあやあ。オナヌーでもするのかな?」
一体この保険医の脳内構造はどうなっているのでしょう。恐らくピンク色に染まっている事に間違い無さそうです。
しかしわたしも隠すのが面倒ですし、ここで嘘をついてやけに長いトイレ時間に不信感を持たれるのもなんなので。
「そうです。大好き、いえ愛している先輩の匂いで精根尽き果てるまで自慰に耽りたい所存なのです」
「おおぅ! 随分直球で返してきたね。なら先生はオナニングしている椎名タンをオカズにオナヌーしてもいいかな?」
「ダメです」
「何故ッ!? 生殺しはいけないよ! 現に先生すでに濡れ濡れなんだよ! 今日はノーパン・デイだからスカートがぐちょぐちょなんですけど!ハァハァしたいんですけど!」
本当、校長の人事能力には疑問の念を持たざるおえません。
「なんなら先生としよう! そうだそれがいいよ! 椎名タンもスッキリ出来るし、先生もスッキリ出来るよ! 我ながらナイスアイディア! 希沙々グッジョブ!」
「ダメです。わたしの体を好きにしていいのは先輩だけですので」
「SHIT! でも、今先生とヤると、おっぱい大きくなるよ?」
「先輩はわたしの貧乳に射精するのに病みつきなので、遠慮しておきます」
「じゃあパンツ頂戴」
「……」
「やあやあ。そんな人を哀れむような目で見ないでおくれ。感じちゃうじゃないか」
「では、失礼します」
このままだと、本格的に食べられてしまいそうなので、わたしは足早に保健室を出るとトイレへと向かう。
……何やら保健室から変な声が聞こえたのは、多分気のせいでしょう。
今は六時間目の途中の為、トイレには誰もいない。念のために一番奥の個室に入ると、わたしは鍵を閉める。急いで下着を脱ぐと、すでに濡れている。
鼻の奥で香る先輩の匂い。体育後の汗の匂い。何か、獣を連想させる、匂い。
ふと、性交渉を終えた時の事が脳裏をよぎる。先輩の匂いを一番近くで嗅げる。それを想像しただけで、軽くイってしまいます。
ああ、先輩。わたしを汚してください。その白濁色の先輩の液体を、わたしの中に注ぎこんでください。先輩の精液で、わたしを溺死させてください。
自分の右手の中指を、濡れに濡れている秘部めがけ、一気につっこむ。背筋を、甘い痺れが駆け巡る。膝がガクガクと震え、腰が淫乱に蠢く。
「あ、は、先輩、先輩先輩先輩ッ! あっ! や、先輩、音、出しちゃ、や、は、ん、んぅ!」
舌をはしたなく突き出し、まるで何かを欲すかのように唾液で唇は濡れている。口の端からは止め処無く唾液が溢れ返る。気持ちよすぎて、宙に浮いているような錯覚を起す。
乳首は充血し、硬くなっている。擦れるたび、先輩に愛撫されているような感覚に陥り、絶頂を迎えてしまいます。もっと壊して下さい、先輩。
「にゃっ! はぅ、あ、あ、先輩、せん、あ、はっ、先輩、出、あうぁ、出ちゃう、ダ、メッ! あ、あ、我慢でき、あ、やぁ、んんっ! あぅっ!」
勢い良く潮を吹く。ビシャビシャと、まるで滝のように何度も何度も。その度に訪れる快楽の津波に、わたしは体を震わせる。
それでも、指のピストン運動は止められない。もはや、わたしの意思は関係なく、ひたすらに快楽を貪る指。その快楽に、わたしは身も心も支配されてしまいます。
舌から滴り落ちる唾液が、制服を濡らす。もはや胸の辺りは唾液でベトベトに濡れています。後の事なんて、考える余裕がない。
奥へ。さらに奥へ。指が奥深くを求める。先輩の、性器も、わたしの最奥部を求めて、ここを何度も擦り上げてくれるのでしょうか。
先輩なら、何度でも、好きなだけ弄ってください。わたしの、その最奥部にある子宮に、直に精液を注ぎ込んでください。
注ぎこまれる感触に、わたしは何度も絶頂を迎えるのでしょう。先輩、愛しています、先輩。
わたしの子宮も卵子も口内も胃も肛門も穴と言う穴、性器と言う性器、全てを先輩に捧げたい。先輩と、全てを溶かして、交わりたいのです。
この、成長する素振りを見せない肢体を、好きなように、乱暴に扱ってください。先輩のその手で、わたしの首に、先輩のものである証しを、嵌めてください。
先輩。先輩先輩。全身を、先輩の匂いで犯してください。わたしの脳髄を、先輩の匂いで支配してください。わたしの子宮を、先輩の精液で満たしてください。
そうでなければ、わたしの体は、永遠に完成しないのです。満足しえないのです。生きる価値が、見出せないのです。
この身を焦がして。先輩の物だと言う烙印を刻んで。わたしは、葵 椎名は、先輩の犬だとわたしの耳元で囁いてください。
それこそが、喜び。それこそが、絶頂。それこそが、世界の完結。
ああ! ああ! 愛しています、先輩。
「は、あ、ま、た、イク……あは、気持ち、いいれふ、せんぱい、あぅ、あ、あ、あっあっ! や、は、んぅ!」
最早何度目の絶頂か分からない。腕は自ら吹いた潮で濡れ、指はすでにふやけている。目の前が、霞んできている。こんなにイったのは、初めてです。
鼻孔をくすぐる、先輩の匂いが強くなった気がして、わたしはまただらしなく愛液でトイレの床を汚す。先輩は、そんなわたしを笑顔で叱ってくれている。
『愛しているよ。ずっと、俺の犬として、犯してあげるから』
視界に現れた先輩の台詞に、わたしは今日一番の絶頂を迎えた。
取り合えずここまで。残りは明日にでも。しかし、オナヌー書くのって難しいな。
あと、こんな変態な後輩が欲しいです。
45 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 02:00:14 ID:DA3O/MB5
しかしまた変人が。正直同性愛ネタはひくんだよな。
妄想にふける女の子ほど萌えるものはないなw
GJ!Mっ子後輩かわいいよ後輩
>>27 恋敵は妹と母なのか、それとも逆に味方と言った女なのか注目
>>35 月ちゃんのこのGJな行動で音羽のヤンデレ症候群が悪化するな
ふと思った
ヤンデレ症候群で男性が減る→つまり夫婦の数が減り少子化に拍車がかかる→政府は緊急の措置として一夫多妻制を導入
まぁそれが吉と出るか凶と出るかはこのスレ的に色々とアレですがw
トライデント氏の作品はやってることや言ってることはいいんだけど描写とか主人公の思考とかがいちいち大げさで萎える
それがいい
君という華を読むと胸が苦しくなるから困る。
つまり俺が言いたい事はもうらめぇ〜!ってことでGJってことだ!!!(意味不
>>51 同意だ
確かに日本語がおかしいトライデント氏の最近の投稿は
さすがに目を瞑ることができない程に酷くなってきている
他の神々様は嫉妬と修羅場を書いているのに
彼一人だけ何か違うものを書いているような気がする
最近の展開も先が読めるし、どうでもいい描写や
主人公の脳内妄言がうざくなっていることは確かだよ
スレの住人ですらも誰もトライデント氏に感想を書いてないのが
その証拠だw
誰も感想を1レスも書かなかった時はちょっと吹いたけどなw
いい加減にこいつ追放しようぜ
また現れたよ
>>32 「私は月ちゃんのせいで両親が自殺……」
のセリフは、正直ちょっと不謹慎だと思った。修羅場どうこう以前に、人として。
シリアス調の物語ならともかくコメディ系の物語だし。主人公もそのことを特に気にしてないし。
「雪桜〜」の時も似たようなテーマがあったけど、その時は心理描写とかしっかりしてたから、今回は特に感じた。
せっかう全体的にGJなのだから、そのあたりもう少し考えてほしいと思う。
もちろん54に同意する気はこれっぽっちもないですけど。
トライデント氏の作品があまり面白くないのは同意だけど、追放するほどのことではない。
氏の作品が異質なのはヤンデレにおけるデレの比重が多すぎてヤン(病ん)が
ただのコミカルな性格になってしまってることと、別作品からの引用・パロディが
多すぎてそちらの描写に重点が置かれてしまってるから。
でも
>>1のテンプレに浅いヤキモチからと書いてある以上、スレの趣旨にはあっているため
嫌いな人は見ないだけでいい。
>>58も追放しろと言っているじゃないか・・wwww
つまらない作品に無駄なレスを消費させる必要はないだろ
かろうじて、スレの趣旨にあっている程度ではいてもいなくても同じ
ようするにトライデントに投稿されるのは皆迷惑だと思っているんだろ
いい加減にこんな便所の落書きの住人どもに相手してもらえると思ったら
大間違いだぞwwwwwww
他の神々もびしびしとこれからはきつく行くからな
覚悟をしておけよ
>>でも
>>1のテンプレに浅いヤキモチからと書いてある以上、スレの趣旨にはあっているため
>>嫌いな人は見ないだけでいい。
そうだな
>1のテンプレに浅いヤキモチの部分を削除すれば
トライデントはここに投稿することができない
何故なら、スレ外になるからなw
安心しろお前ら
嫉妬スレ住人代表として俺が次スレを立てて
テンプレを排除してやります
面白くない作品は叩かれて当たり前
追放されるのは当然ですからね
>>59 誰も追放賛成とは言ってません。
あなたは無駄口叩く前に日本語の読解力を身につけましょう。
大臣の失言でいろんな風に解釈されて過熱報道される世の中で
あなたの書き込みが悪意に取られる可能性が高いよ
客観的に見ると
あまり面白くないのは同意だけど
嫌いな人は見ないだけでいい
=
トライデントうざくない?
って言っている同意だぞwww
このgdgdな流れが割と好きな俺ガイル
「追放するほどのことではない」や「スレの趣旨にはあっている」が抜けている。
悪意もなにもそうやってトリミングして主張を捻じ曲げるのは客観的とは言いません。
>>60の書き込みがデスノのキラみたいで普通に笑った。
仮に新スレ立てたとしても末路が見えた気がして更に笑った。
言っておくが俺は荒らしではない
>>51が大いに煽ったおかげで荒れたということを皆に認識して欲しいです
トライデント叩きは彼が成長するために必要な事だw
プロの野球選手やプロサッカー選手は地元のホームグランドで物をぶつけられたり
叩かれたりして選手の器を広げてゆくものだ。公共の場において作品を投下するならば
それなりに覚悟がある人間じゃないとこの嫉妬スレでは生きてはいけない
嫉妬スレ作家ランキングでは
トライデントは遥かに最下位を争っている
ゆえに彼が毎日更新と寝ぼけたことを書き込んでいたので
私は思いました
身 の 程 を 知 れ と
>>66 悪い部分を指摘せずただ追放を叫ぶあなたは立派な荒らしです。
トライデント氏のことを思うのなら「ここはこうしたほうがいい」など
改善点を指摘してあげましょう。
>>66 つまらない人間だね。
生きてて楽しいことないでしょ。
死を軽く扱うのはやめとけ。
>>67 改善点を指摘だと・・
していいのか俺は厳しいからな
1・日本語がおかしい箇所が多すぎる
小学校の国語からやり直しましょう。文章の基本的な部分からアウト
2・パロネタは禁止
パロネタを使うというのは自分に面白い話を作る基礎能力がないと断言しているの同じです
3・話の展開が読めるのでもう少しストーリーを捻って考えましょう
伏線を張っているつもりだが、誰もそんなとこまで覚えていない
4・ヒロイン層が薄い
このスレの住人すらもヒロインの名前を覚えられていない=
ヒロインの魅力が読んでいても全然通じてこない
描写不足であり、登場人物が増える度に他のキャラクターの描写がいい加減に
5・描写力がないに等しい
誰がどこでいつ何をするのかという基本が全く出来ていない
主人公視点だが、キャラクター達がどこにいるのか読者側には伝わらない
6・スレの住人から嫌われている
スレの住人と馴れ合うような態度がまずうざい。文章だけでいい
トライデントの書き込み一つ一つが他人を不愉快にしている
以上だ
反論があるならいつでもどうぞ
俺は大歓迎だぜ
山田優が弟と同居していると聞いて、キモ姉じゃないかと期待した俺は末期です。
俺はトラさんのコミカル嫉妬好きだけどな。
こういう奴らなど気にせずどんどん投下してください。
とりあえずは、マターリ仲良く修羅場はゲームかssの中で。
>>73 姉ちゃんと暮らしてるだけで弟が羨ましいぜ、これで弟が修羅場を起こしてくれたら弟はこのスレの現人神
千の理屈より一つの感謝、俺はトライデントさん風の作品が好きです。お気にせずどんどん投下しちゃってください。
オレもトライデント氏の作品が好きだし面白いと思うので
うんこ臭い荒らしは気にしないでほしい。
よーし、釣られちゃうぞ
>>72 1.第一声がそれだといつもの荒らしと勘違いされて
レス自体の価値をさげるからやめとけ。
具体的にどこかを言え、違和感を覚える人が少なければスルー出来る範囲だ。
あと5でも同じ事言ってるね、自分の書いたことくらい覚えておこう
2.これは概ね同意。元ネタがわからない人にはつまらないから。
かと言って禁止する必要はない。
3.覚えてないのは君の記憶力の問題。
先が読めるのは先を匂わす伏線のおかげ。
4.ヒロインに魅力を感じるかは各個人の嗜好によるから君がとやかく言うことじゃない。
あと覚えてないのは君の記憶力のm(ry
5.統計を取ったわけではない以上「読者側に」ではなく「君に」。
そして伝わらないのは君の読解力の問題。
6.統計を取っt(ry
不愉快ならスルー。そういった取捨選択は2chの基本(と、釣られながら書くことじゃないがw)
自分の主観をスレ住人全員が受ける印象にすり替えすぎです、もっと頑張りましょう
意見は色々あるだろうが、トラ氏のような週刊誌があるからスレが維持できるという事実を忘れないほうがいい
何よりスレタイで揉めるよりマシ
スルーが一番だが、いつもいつものことなので、いい加減うざい。
この人って、その昔ヤンデレスレでスカトロSSを貼って荒らしてた人と同一人物なんでしょ?
二次スレの鼻つまみ者、『ググル君』とも同一人物くさい。
系統スレで一番のゴミだから、もうテンプレに要注意として挙げておいてもいいと思うんだけど。
『日本語がおかしい』『追放』と言っている人は、自分の日本語と頭の方がおかしい荒しさんです。
スルーを推奨します。
と入れておくことを提言したいのだが、どうか? どうせいつまでも粘着してるに決まってるし。
ただそのままスルーするだけでは、新規の住人に対して職人さんの名誉を守れなくなってしまう。
これならテンプレをポップアップするだけで、あとは全く構う必要がなくなる。
あぁいや、一般論ではなくて、『日本語クン』を名指しで荒し認定してもいい時期だと思ってさ。
>>3があったとしても、こういう流れにならざるを得ないのが口惜しいのだ。
おいおい荒れているな
また、トライデント氏が謹慎なんて言い出した日には
お前ら誰か責任取れよマジで
こういう事件が起きると連鎖して神々が呆れて投稿しなくなったら
このスレは終りだぞマジで
そんなに見たくなきゃNG指定でもすればいいじゃん。
トラ氏は気にせず投下してください。wktkしながらまってます。
粘着される職人様は本当に気の毒だし
何もしてあげられないのが申し訳なくて歯痒いけど
2chじゃこうゆう粘着荒らしに絡まれる危険性はどうしたってあるし
悪意あるレスにめげないで頑張ってほしいな。
これは凄い荒れ方だ
晴れのち修羅場 ところにより流血
これテンプレ追加しようぜ
・「日本語」「追放」をNGワード指定推奨
荒らしは一種の病んデレだと思えばよろしおす
趣向に合わないものは読まなきゃいいだけのこと、俺はそうしてる
大量投下キタ━(゚∀゚)━!!!
って思ってwktkした俺が馬鹿だった。
>>94 ナカーマw
一言いわせてもらうと何も書かない奴がケチをつけるもんじゃない、これだけだ。
96 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 17:14:22 ID:wuXShMA2
アメリカ・NASA発の新ジャンルが発表されたぞ。
『宇宙で修羅場』
オムツはいて泥棒猫を追い掛け回すなんてさすが国の機関は違うな
>>96 ああ、拉致未遂かw
つーか、文句あるなら読まなくていいだろ。
こんな雰囲気だから投下もされなくなってくるし
まあ、言いたいことはノントロマダー?ってことだけだな
ノントロはあれだけ面白そうな伏線張りまくってwktkが最高潮に達し
いよいよ本格的に修羅場突入かって時にこれはキツイ。
100 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 18:58:58 ID:UwXUParz
なんていうか…ここのスレは書き手も読み手もレベル高すぎて、新参者には敷居が高すぎるな…
>>98-99 まあ、限界まで膨らませた風船にこれから針を突きたてようとしたもんだからなw
体が疼いてしょうがないぜ
(♯()ω()♯) ダマレッ!!
>>100俺もこの道に目覚めたばかりの頃はそう考えていました。
今では立派な修羅場ジャンキーです。
まあ、他のスレと同じよ。
荒らし以外はみんなウェルカム。俺と一緒にいたり先輩にフライパンで殴られようぜ!
修羅場モノはワンパターンに陥りやすいのがネック、とか思ってた俺も
このスレ来ていろいろと目から鱗な発見をしてすっかりハマった
どんなものでもハマると奥が深いな
>>96 まさかNASAから新しいジャンルが出てくるとは・・・イカスぜ
ノントロの最後の投下が17日だから
もう監禁されて20日以上立ってるな。
もう調教され終わってるかもしれんな。
わんわん
もうノントロないから餓死しそうだ
111 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 21:02:58 ID:UwXUParz
ageたりsageたりせわしない奴だな
おまえら落ち着け
つ 旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦
流たん(;゚∀゚)=3ハァハァ
>>114 一杯貰って行くか・・・・・・
_、_
( ,_ノ` )旦
>>114 傍観者だが貰ってもいいかい?
媚薬とか入ってないよね?
前スレの終わりの方で『バッドラック樋口』を投下したものです。
あれで終わりにしようと思ったんですが、続きが浮かんだんで書きました。2話目。
前回よりは長いです。
「ごめんね、ごめんね、私あの時何が何だか分かんなくなっちゃって…。
樋口君が憎かったとか、そういうことじゃないの!他にどうすればいいか分かんなくて!」
ベッドに手を置き、詰め寄りながら梅村さんは必死に語りかけてくる。
片手で彼女の肩を押しとどめつつ、残る手で僕は小さなホワイトボードに文字を書いた。
『もう大丈夫だから』
書いた言葉を梅村さんの前に示す。
それを見て、彼女は少し落ち着いたようでまた椅子に腰を戻した。
もう何回繰り返しているのか分からないが、そういった繰り返しに僕は慣れていたので、
あまり苦にはならなかった。
ここでは本を読むかテレビを見るくらいしかやることがないので、
梅村さんとこういう押し問答をやってるのも暇が潰れていいかな、と思えるほどだ。
頭頂部に綺麗な一撃を食らった僕は、そのまま机に沈み顎を叩き付けられて気絶した。
昼下がりの教室で起こった突然の凶行に、その場が騒然としないはずはない。
行動が早い人がすぐに先生を呼びに行き、僕は救急車で病院に運ばれ、彼女は職員室に連れ込まれた。
高校から逮捕者が!真昼の学校で起きた惨劇!という形でワイドショーに報道されちゃってもおかしくない事態だった。
が、彼女の父親が県の議員らしく、すぐに学校に手を回したのと、
問題を大きくされると困るらしい学校が緘口令を敷いたおかげで、大騒ぎにはならなかった。
緘口令も何も、梅村さんは泣くばかり、僕は病院に担ぎ込まれて手術中という状況で、
誰も詳しく事件の原因やらなにやらを知っている人はいないのだが。
意識を取り戻した僕は自分の不幸を有耶無耶にされたわけで、
本来なら梅村さんちや学校に怒鳴り込んでもいいはずだった。(今は怒鳴れないが)
ただ、一応剣道部員という身でありながら、同じ部員とはいえ彼女の一撃を外すことすらできなかったとか、
「他人の修羅場に巻き込まれる」という非常に説明しづらい事情だったこととか、
彼女の父親から治療費&多額の見舞金を僕の親が既にもらっちゃったこととか、
いろんなことが重なって、騒ぎ立てることはしないことに決めたんだ。
それに、目の前の彼女はこうして誠心誠意謝ってるわけだから。
「うう…本当に、ごめんね。」
湧き出す涙をハンカチで押さえながら、また僕に詫びる。
実は、彼女がこうして1人で僕に謝りに来ていることは意外なことだった。
梅村さんは僕が知る限り寝ても覚めても部長部長、といった感じで、
彼に勘違いされることは悲しくても僕を怪我させたことは大して心に留めていないんじゃないかと思っていたからだ。
梅村さんにとってはひどい認識かもしれないが、実際僕は消し去られそうになったわけだし。
しかし、そうでもなかったらしい。僕は彼女にとって謝る価値ぐらいはある人間だったようだ。
「樋口君は私の話をずっと聞いてくれてたのに、傷つけるようなことしちゃって…。
私、本当に反省してるの。もう二度とあんなことしないから…。私に出来ることなら、何でも言って!」
再び僕の方に詰め寄ってきた梅村さんが、僕の両手をひっしと掴んで叫ぶ。
想像して欲しい。
目の前に、綺麗な黒髪をたたえ目筋の整った顔をした美少女が、
長いまつ毛を持った目に涙をいっぱい浮かべて迫ってくるんだ。
僕は健康な男子だし、病院に長く留め置かれていたわけだし、
こういう状況は嬉しくはあるけど、とても始末に悪いものだろう?
僕はすぐにその手を振り解こうとした。口で「離してくれ」といえば良さそうなものだが、今の僕にそれはできない。
顎は打ちつけたせいでひびが入ってしまったらしく、ガチガチに止められているのだ。
栄養補給は点滴のみという有様で、明瞭な言語を発することなどできはしない。
「な、何で暴れるの?駄目なの?やっぱり許してもらえないのッ?」
何も言わず振りほどこうとする僕の態度は、彼女には否定の姿勢に見えたらしい。
より強い力で僕の腕を掴んで離さない。
困ったな…ボードにもペンにも手が伸ばせないので、打開する手立てがない。
そのまましばらく「ごめんね」を連発するだけの梅村さんと
振りほどこうとする僕、という構図が続いた後、病室をノックする音が響いた。
返事をする暇もなく(できないが)開けられたドアから姿を見せたのは、部長だった。
「よー樋口、見舞いにきてやったぞー。っと…梅村?
…ごめん、何か取り込んでたのかな…また、後で来るわ。」
よりにもよって、何で貴方なんですか?部長。
こちらに弁解の一言を与える暇もなく、ドアから顔だけ出して悪魔の矢を放って。
そんなに僕を殺したいんですか?僕が貴方に何かしましたか?
部長に対する怒りが心に湧いたものの、それは一瞬で吹き飛んだ。
パターンだ。良くあることだ。
僕がしなければならないのは、生存に向けて行動を起こすことだけだ。
目の前の梅村さんを見ると、顔を下げて何かに耐えるようにふるふると震えている。
今度こそ、僕という存在をこの世から消し去るつもりだろう。
今度は何が使われる?辺りを見回す。とりあえず、彼女が座っている椅子ぐらいにめぼしい凶器は…。
いや、あった。母親がりんごを切ってくれた時に片付け忘れたナイフだ。
積まれた本の上に皿とともに無造作に置かれている。
ああ、神は僕を見放したのか?前世に何か悪行を重ねたのだろうか。
頭の中で不吉の鐘がけたたましく鳴り響く。このまま手をこまねいていたら間違いなく死ぬ。
どうするか。
説得?無理だ。筆記している暇なんてない。
先にナイフを取る?これも駄目だ。
彼女に手を掴まれている状態では、彼女がナイフに手を伸ばす方が僕が振り解いて手を伸ばすより速い。
助けを呼ぶ?僕は叫べない。運の悪いことに大怪我だった僕は個室にいるので相室の患者もいない。
ナースコールを押しても看護婦が来る前に僕は死ぬ。
こうなったら…目の前の彼女を押し倒すしかない!
そうすればとりあえず彼女が攻撃してくることは防げるし、大騒ぎになれば誰か駆けつけてくれるだろう。
「入院患者の男が見舞いに来てくれた女性を襲う!」というセンセーショナルな記事になるかもしれないが、
命には代えられない。
僕の生存本能が僕の背中をプッシュして、彼女を押し倒そうとする。その瞬間に。
梅村さんが、ばっと突然顔を上げた。
てっきりまたこの世の終わりのような泣き顔だと思っていたら、意外にも笑顔だった。
その目から涙はこぼれていたが、長い雨が今終わったと告げているような、さばさばした笑顔だった。
「私が、また君を襲うと思った?…あの時は、ごめんね。
でもね、もういいの。部長とのことは、終わったの。」
これまで聞いたことのある彼女のどんな声よりも明るい声で、梅村さんは言った。
そこからは、また長い話だった。
時折涙を浮かべる梅村さんを慰めつつ、また話が戻り、と行きつ戻りつ聞き出した事情は次のようなものだった。
部長にアプローチしていた女と部長は、もう随分前から付き合いだしていたらしい。
僕らにも交際しているという事実は伏せていたので、分からなかったのだ。
僕が怪我をして入院している間に、梅村さんはそれを他の部員から教えてもらった。
すごく悩んで、相手の女を殺そうかとまで考えて、父親の力を借りてでも…とまで思いつめたらしい。
しかし、そうやって暴力で解決しようとする姿勢が、樋口敬太という何の罪もない一般男子高校生を
死の淵を経て入院生活に叩き込んだのだ、と彼女は自覚した。
それで、部長とのことは縁がなかったんだ、と諦める気になった、というんだ。
全て話し終わった彼女は、涙を拭いて笑顔を浮かべた。
「人を殴る前に、こんなこと気づくのが普通だよね。
でも私馬鹿だから…樋口君をこんなにするまで分からなかった。
君のおかげで気づいたの。ありがとう、樋口君。」
真摯な目を向ける彼女に、僕は何を言ってあげたらいいか分からなかった。
とりあえず、
『僕は何もしてないよ 梅村さんが自分で気がついたんだよ』
と事実をありのままに書いておいた。
「ありがとう。君はやっぱり、優しいね。」
にっこり笑って、照れることを言ってくれた。
「今日は私もう行くね。また、必ずお見舞いに来るから。その、私のこと、嫌わないでね…。それじゃあ。」
手を振って病室から出て行く梅村さんを、僕も手を振って見送る。
何も悪くない僕がこんな痛い目を見るなんて、世の中は理不尽だ、神なんかどこにもいないんだ、
とまで思っていた僕だったが、今の僕の心には一陣の涼風が吹き抜けていた。
1人の女の子が、人の道を踏み外しかけたものの、何とかギリギリの線で押し留まって、
これから正しい道を歩んでいこうとしているのだ。素晴らしいじゃないか。
僕の怪我には、それだけの意味があったんだ。
特に何か能動的にしたわけではないが、それでも何かを成し遂げたような達成感に包まれた。
久しぶりに、「幸せ」という感情を味わっていた僕の耳に、またノックの音が聞こえた。
ガラガラとドアを引いて現れたのは、活発そうな茶色の髪の女の子だった。
山下和美。現在の僕の彼女だ。
「お人よし」「ヘタレ」「いつか人に騙される」「いや殺されるね!」といわれ続けた情けない僕の性根を、
「そのずば抜けたお人よしぶりに惚れたの!これからは私が守ってあげるから!」
とか何とかおっとこ前に言いのけてくれて以来付き合っている。
入院以来、一度もお見舞いに来てくれなかったので、とうとう愛想を尽かされたと覚悟していた。
その彼女が、会いに来てくれたんだ。今日はとても幸運な日だと思った。
浮かれていた僕は、彼女が沈み込んだ表情をしていることに、気づかなかったのだ。
「今のが、敬太の浮気相手?」
彼女の口から発せられたのは、思いもかけない一言だった。
浮気?何を言っているんだろう。まったく意味が分からない。
僕は完全に混乱している状態で、彼女の方を見ることしかできない。
「学校で噂になってるよ。敬太が学校一の美女に別れ話を持ち出して、殺されそうになったって。」
きっと和美がこちらを見据える。
大体事情は飲み込めた。学校の敷いた緘口令は、事実を捻じ曲げて人口に膾炙させる結果になったようだ。
僕が梅村さんに別れ話を持ち出して、結果椅子で殴られた。
非常に分かりやすい構図だ。くそっ、一般大衆の思考回路が憎い!
とりあえず、目の前の和美の誤解を解かなければ。こんな誤解で愛しい恋人を失いたくない。
慌ててペンを探す僕を尻目に、和美は言葉を続ける。
「でも、別れるのはやめたんだよね?…だって出てきた彼女笑ってたもん。
あの娘を許して、付き合うんでしょ?」
しまった。和美は病室から出てきた梅村さんと出くわしたのか。
そういえば最初の一言は「今のが」、だったっけ…まずい、まずいぞ。
彼女のあのさっぱりした笑顔から、和美は悪い方向に想像を膨らませたようだ。
転がっていたペンを見つけ、僕は必死で弁解の言葉を考える。
『違うんだ 彼女が好きなのは部長で 僕はその話を聞いていただけで
聞いていたら突然その当人である部長が 』
ううっ、長いな。単純な話だが書くとなるとそこそこの分量がある。
必死でペンを走らせる僕は、彼女が間合いを詰めているのに気づかなかった。
気づいたときには、目の前に和美が迫っている。
「私はどうなるの?あの娘のかわりに私が捨てられるの?
そうだよね、あの娘綺麗だもんね。
お節介で煩いだけの私より、ああいう綺麗で大人しそうな女の方がいいんだよね。
私を捨てて、二人で仲良く学園生活送るんでしょ?同じクラスだしね。
…何か言ってよッ!そんなことないとか何とか、言ってよ!!
何で何も言わないの?もしかして本当に本当なの?私を捨てるの?私の何がいけなかったの?
私に不満なんて一言も言わなかったじゃない!!
あんたが変えろって言うなら、私どんな風にでもしたのにッ!!
何がいけなかったのよ!!もうあの女を抱いたの?抱かせてくれる子のほうが良かったっていうの?
言われれば、私だってあんたになら、って思ってたのに!!
…ねぇ、何か言ってよぉ!!!」
和美が泣きながら叫ぶ。恋人が誤解で泣いているのを見るのはつらい。
言わないんじゃなく、言えないんだ。その一言すら伝えられない。
まずその一言を書くべきだった。それを書こうとする僕を無視して、彼女はナイフを手に取った。
そう、あのナイフ。さっき僕が生命の危機を感じて、対処しようとしていたナイフだ。
防いだと思ったのに。こうして僕の目の前に凶器として戻ってくるとは。
既に般若の形相になっていた彼女が、ナイフを腰だめに構える。
「私を捨てるなんて、許さないよ…。私は、あんたのことが好きなんだから。
あんな女と付き合って、私を捨てるなんて、ずるいよ…。」
静かになった和美の口調は、決意を感じさせた。
僕は、書くのをやめた。諦めた。今何を示しても彼女は分かってくれないだろう。
助けを呼べないのは先刻検討したとおり。
どうしようもないな、こりゃあ。神様は、やっぱり僕に死ねと言ってるらしい。
「大丈夫、あんただけ殺したりしないから。私もすぐに死ぬからね。
守るって、約束したでしょ?死んだ後も、ずっと一緒にいて守ってあげるからね?」
涙を流しながら、にこっと和美は笑った。
綺麗な笑顔だ。さっきの吹っ切った梅村さんの浮かべた表情に似ている。
つまり、和美も何かを吹っ切ってしまったんだろう。
彼女の足を動かして僕の方に迫ってくる。ナイフを構えながら。その光景が、ゆっくりと見えた。
死ぬ直前にアドレナリンがどうとかって奴かな。二度も味わうとは思わなかったや。
もしもあの世が本当にあるのなら、そこで和美に事情を話さなきゃ。
「あんたがお人よしだから、私まで死んじゃったじゃない!」
とか何とかいうかな。和美は。ごめんな、和美。好きだよ。
これで終わりです。投下してる最中に気づいたんですが、この話エロがないですね。すいません。
>>125 それでもGJ
エロく無くても個人的に好きだな。
GJ!
このスレの住人は嫉妬で(*´Д`)ハァハァできるからモーマンタイだぜ
>>125 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
こ、これは是非この後が読みたいですぜ!!
さすが修羅場スレ。スピードは桁違い。
というわけでたぶん3日ぶりに投下します
早百合は早足で歩きながら、住宅街を抜け、十字路を曲がり良樹のマンションまでやってくる。
良樹の住むマンション、『メゾンドロンリ』は名前は聞こえはいいが(いや、よくないか)実際は学生や単身赴任のサラリーマンなど、一人暮らしの人用の集団住宅だ。
マンションと言う名前だが、アパートと言ったほうがいいくらいである。ただ、階数はやたら多く最上階にいけばほとんどの周りのマンションを見下ろすことができるくらいである。
なんというかバランスの悪いマンションだ。縦に長く伸びた部屋の列はまるでジェンガを連想させる。
早百合はそんなジェンガのようなマンションの玄関を入ると、エレベーターは使わず階段を昇り良樹の部屋の前まで来た。
階段を昇る運動と良樹の部屋の前と言う理由で動悸が荒くなっていたが、胸に手のひらを押さえてそれを落ち着かせる。
がちゃりがちゃり。
早百合はドアノブを回すが当たり前のように鍵がかけられていた。
「ふん」
しかし、いまの早百合にはなにも問題は無い。
大事に握っていた、八年間まったく使う機会の無かった鍵を取り出すと、それを銀色のドアノブの鍵穴に差し込む。
もし、この8年。良樹が鍵を変えてたのなら……この鍵はゴミ同然と成り下がる。しかし鍵はするすると穴の中へ差し込まれていき奥まですべて飲み込まれた。
ごくりと鳴る早百合の喉。
息を止めて鍵を回す。ぐるりと手の甲をひねり、回す指に力を加えてゆく。刹那、
がちゃっ。
何かが引っ込んだ音。静かに作業を進めていたからか、想像以上に鳴った音に早百合はすこし驚いた。
「……開いた」
呟く。ドアノブをもう一度掴むと今度はゆっくりとひねる。
抵抗無く緩んでゆく扉。限界までひねると早百合はゆっくりと扉を引いた。きぃぃと静かな音を立ててドアが開いた。
開いたドアにするりと体をひねらせて、中に入る。後ろ手で静かにドアを閉めた。
良樹の部屋は1LDKで玄関の土足スペースの横には鍋と皿が何枚、タオルの上に裏向きで置かれてあった。一人暮らしだと言うのに清潔感漂うキッチンである。
早百合は時刻を確認する。六時一○分。良樹の生活ペースはあまり掴めていないが、自分と良樹が出会う時間まではかなり間がある。まだ寝ている時間だろう。
一応台所を通ってひとつしかない部屋へ行ってみることにする。
早百合はゆっくりと足を滑らす。今の自分の行動は完璧に不法侵入である。あまり音も立てられないし、目立った行動もできない。というか見つかったら大目玉食らうことになるだろう。しかしそのドキドキ感が逆にたまらなくて早百合の脳にドーパミンを分泌させていく。
良樹の姿を確認しようとしたが、台所と部屋を仕切る引き戸が遮っている。引き戸は閉められていた。
音を立てないようにしのび足で歩くと、早百合は引き戸を少しだけ開けた。すすすと静かな音を鳴らしてスライドする戸。ちょうど三センチほど開けた所でとめた。
中を覗いてみる。カーテンが閉められてよくわからないが、意外と広めの八畳ほどの部屋だ。大きなベッドと勉強机とクローゼットとテレビデオが見える。壁には銀行のカレンダーが掛けられていて、その横に押入れがあり少しだけ押入れの戸が開いていた。
男の一人ぐらしといえば散らかり放題というのが定説で、ちゃぶ台にはカップラーメンの容器が箸と一緒においてあったり床にマジックザギャザリングのカードがばら撒かれていたり、ゴミ箱があふれ出ていたりとするものだが、良樹の部屋は綺麗に片付いていた。
良樹の性格だろうか。いつも綺麗にしているのだろう。意外と綺麗好きなのだな。早百合は思う。
大きなベッドには毛布がかけられていて、こんもりと山になって膨らんでいた。
「寝てる……」
りぃん
進入したついでに下着の一枚でも持って帰ろうと思っていたのに。
りぃん
まぁいい。みやげ物はいつでも持ち帰れる。
なんたって、今の私には八年間封印されていたこの鍵があるのだから。一回使ったら粉々になってしまうおぼろ丸の錆びた鍵とは違う。何回でも使える万能の鍵。
ここまで考えて、早百合は自分はこんなキャラだったか? と自問する。いままで感じていた罪悪感というものがだんだん薄れているような気がしていた。
普通なら、鍵を見つけたのなら良樹に返却するか、一応報告だけしておいて予備の鍵として持っておく。そうだろう? 少なくとも、こんな不法侵入のために使うか?
しかし、そんな自問をしても。早百合は二秒で忘れる。鈴のせいか、それとも早百合の屈強な意思か。罪悪感という鎖縄はもはや早百合には効かない。鎖鎌なら装備する。
早百合は台所をぐるりと見渡す。
彼女はある場所を探していた。手ごろな場所。ちょうどこの台所と扉一枚向こうの良樹の部屋での良樹の声が録音できるような場所が……。
あった。ちょうど引き戸の上に湘南の海のイラストのジクソーパズルが飾られている。椅子に登ってその裏を覗いてみると、埃が積もっていた。どうやら飾ってあるだけでほとんど動かしてないようだ。
ちょうどいい。
にやりと口元が緩む。早百合はあることを考えていた。
早百合は半年前、母親から中古のICレコーダーをもらっていた。もともと母親が自分用に使っていたレコーダーだが、最新式に買い換えた時に頂いたヤツである。早百合はもらってから一切使ってなかった。
たしかフル使用で二十時間はいけた気がする。そのICレコーダーをここに配置するのだ。
朝、ここに装着して録音を開始する。そのままフルで使用して昼と夜をまたぎ、次の日の早朝に合鍵で侵入して回収する。時間の関係上、深夜の数時間ほど空きができてしまうが、この方法ならほぼ一日の良樹の家での会話が盗聴可能である。
ただ、充電と回収した後の音声チェックのために盗聴するのは一日おきではないといけないのが弱点だが……。
「これで、良樹の家での行動を監視できるわ」
早百合は魔女と決別して以来(魔女はいまだに早百合のことは親友と言っている。けっ、反吐が出る)、早百合はどうすれば魔女にアドバンテージを持てるか考えていた。
今の状態で早百合が良樹に告白すれば多少は良樹の心を揺さぶることはできるだろうが、最終的には良樹は魔女のところに行くだろう。当たり前だ、いままで自分は何のアクションも起こしてないのだ。成功は絶対しない。
しかし今告白しなければ、魔女は良樹と恋人関係のままどんどん濃密になって行く。あの魔女のことだ、同棲や結婚、それに子作り。私ら女の子が躊躇するようなことも、ほとんど考えることなく自分のセンスと本能で思い立ったら即座に実行してしまうことだろう。
そうなると、良樹に好かれるのも良樹を奪うのもどんどん難しくなってゆく。
早百合はこう考えていた。
「遅くても、一週間以内には魔女から良樹を離さなければならない」
一週間。七日間。
これは戦争だ。早百合は思う。
目標、良樹の奪還。魔女と破局させて、良樹を自分のものとする。魔女と良樹の間を離れさせて最終的にはコミュニケーションを停止する状態まで持ち込む。
早百合はこの七日間で実行に移さなければならないことをひとつひとつ考えていた。それこそ戦争のように選択肢をいくつも広げて考えた。
良樹に気持ちを伝えるか、アピールし振り向いてもらうか、魔女に良樹を嫌いになってもらうか、良樹に魔女を嫌いになってもらうか、
りぃん
魔女を排除するか。
この五つか。
一週間という数字に根拠は無いが、一応一区切りと言う意味で早百合はこれを期限とした。まぁ、後から思えばこれはとてつもなく認識の甘かった数字だったのだが。
早百合は時刻を確認する。携帯電話のディスプレイには午前六時二〇分と表示されていた。
そろそろ逃げたほうがいいかもしれない。
早百合は、作業は十五分までと決めていた。それこそ、どこかの泥棒猫のように愛する男の下着についた汗といろんな匂いに時間を忘れて夢中になって最終的に本人に見つかって嫌われてしまったら、すべてが水の泡だ。
まぁ早百合の場合はその吸うモノ自体が無いのだが。
早百合は持ってきていたICレコーダーを取り出す。携帯電話より一回り小さい黒く光るボディ。早百合はフルモード設定にし、録音ボタンを押した。録音マークが赤く二・三度点滅
し録音を開始する。
音のチェックは……やってなかったがたぶん大丈夫だろう。
ジクソーパズルの後ろに置く。なんとか置くことができた。不意に動かさない限り、落ちることは無いだろう。
「……作業完了」
早百合は口で手袋を脱ごうとしたが、そもそも手袋などしてなかった。なに片平なぎさを気取っているのだ自分は。
早百合は椅子を戻し音を立てずに台所を歩くと玄関に戻る。
もう一度台所を見渡す。
綺麗に片付けられた台所。綺麗に片付けられすぎている気もしないでもない。
しかし、今はそんなことは考えないでおく。良樹に気付かれることなくこの部屋を出ることが大事だ。家に帰るまでが遠足だし、外へ脱出するまでが侵入。語呂はどちらも良い。
扉を開ける。廊下に誰も居ないことを確認した後。早百合はするりと扉の間を抜けて外に出た。身長に扉を閉める。
ガチャリ。
鍵をかける音が大きく響いたような気がして、早百合のからだから汗が吹き出た。
しかし、これでミッションは終了だ。早百合は満足げに笑う。
早百合はニヤつく顔を抑えながら、廊下を歩きマンションから脱出した。
「明日の録音内容が楽しみ」
そう呟いて。早百合はマンションを見上げる。
長く縦に伸びたマンション。
ジェンガ。
以前までジャンガのように崩れてしまいそうな心。しかし、今は違う。早百合は胸ポケットの上からぎゅっと鈴を握り締めた。握った手から自分の胸の荒々しい鼓動がどくんどくんと伝わってくる。
ここは落ち着いて対処したほうが得策か……。
早百合は良樹が出てくるまで待って一緒に登校するつもりだったが、ここは離れておこう。いくら時間が無いとは言ってもがっついたら事を仕損じる。
走って十字路を曲がり、バス停まで行くとまた今日もいいタイミングでバスが来ていた。乗り込むんで開いていた席に着く。
早百合は「もし指紋取られたら終わりかしら?」と馬鹿なことも考えながらバスの中揺られ学校へと向かっていく。
りぃん。
早百合が出ていって数分たったぐらい。
良樹の部屋の閉められた窓枠のカーテンから
布団がもぞもぞと動く音。毛布で頭までかぶっていた体がだるそうに起き上がる。
立ち上がると、部屋の寒さにおおうと身震いした。腕で自分の体を抱き、寒さを逃がさないように体をあっためる。
「布団が違うとなかなか寝にくいものなのだなぁ……」
早百合は良樹がまるまって寝ているとばかり思っていた布団。そこで寝ていたのは実は良樹では無く、魔女こと紅行院しずるだったのである。
(続く)
執筆中、迷走しかけましたがなんとか修正できる流れを作れそうです。
すかさずGJ
さゆりんのストーカー全開の行動にwktkが収まりきらないぜ
ラストのしずるさんの状況を知ってどういう行動にでるのか
ていうか良樹はドコニネテンダwww
次に流行るのは『鎖銃』だな。
(元ネタは双葉)
早百合―――!!布団布団!!
時間たってからすいません。130-131の間が落丁していました。
コレの間に
「
顔は見えないが良樹だろう。冬場なので布団を目深にかぶってまるまって寝ている。その様子が可愛くて早百合は寝顔を見たくなる。しかし、すぐさまふるふるとその欲望を振り払うかのように頭を振ると、音を立てずに引き戸を閉めた。
今は中に入るのは止めておいたほうがいい。時計は微妙な時間でいつ起きるかわからない。早百合は今の自分は不法侵入者と言い聞かせる。まぁ見つかってもいくらでも言い訳はできるが……、今は避けとくべきだ。
早百合は戸をしめて振り返る。台所スペースには流し台と電気コンロが通常設備として用意されている。床には一人用の冷蔵庫がある。その上の棚には電機ジャーが置いてあった。
コードは抜かれている。電気代節約のために保温せず、その都度炊くようだ。電気代はこちらのほうがお得。よく実践している。
しかし、本当に綺麗にされている。三角コーナーは生ゴミが一切無いし、ゴミ箱は全て新しいビニール袋に変えられている。
洗濯物を入れる籠を発見するが、中身は空。昨日のうちにすべて近くのコインランドリーでメリーゴーランドしたらしい。ということは全ての衣服は戸一枚隔てた隣の部屋のクローゼットにしまわれてるのが濃厚だ。
早百合は内心舌打ちをしたい気分だった。やろうとしたときには全て片付けられている。孝行したいときに親は無しと言ったフレーズと似てるが、意味は違う。
くっ、タイミングが悪い。悪すぎる。せっかく、せっかく、
」
を挿入してください。
あと、すいません。鎖鎌の元ネタはわかりません(汗
投下します
名無しさん@ピンキー sage 2007/02/07(水) 19:22:22
投下ラッシュktkr!!!
神々よGJ!!!
「やっぱり修羅場はいいな!」
そうパソコンに一人語りかける男、つまりは俺、永山 茂はエロパロ板修羅場スレの住人である。
まだ二十歳を過ぎてない(高2)けど、そこら辺は精神年齢でカバーだ!
それはそうと、今日も修羅場スレで神々の作品にGJを送っていた。
コンコン
誰かがノックをしてきて、慌てて修羅場スレを閉じる。
「だ、誰だ!」
焦って、思わず声を荒げてしまった。
「何よ!そんな言い方ないじゃない!」
そう怒りながら部屋に入ってきたのは幼馴染みの音子(ねね)だった。
音子は、誰もがハッとするような美少女だ。
去年は学祭のミスコンで優勝したし、まさに誰もが認める美少女だろう。
だが、如何せん性格が…
「なんだ、音子か…」
「なんだ、って何よ!
せっかく幼馴染みの音子様が来てやったってのにお茶も出してくれないの?」
「へいへい…」
渋々お茶を淹れに行く俺。
はぁ、音子は何でああなったんだ?
小学生まではもっと素直で可愛かったのになぁ…。
今の音子はツンデレ…いや、ツンツンツンツンツンツンツンツン………デレだ。
これじゃあ修羅場にならないな…。
音子は俺の事好きじゃなさそうだし。
おっと!考え込んでる内に結構時間が経ってしまった。
あぁまた音子にどやされる…。
そもそも、何でウチに来たんだよ…。
お盆にお茶と茶菓子を載せ、部屋の前に立つ。
すると、部屋の中から不審な音が…。
『…カタカタカタ…』
なんだこの音?
も、もしかして…キーボードか!
「ね、音子!お前なに勝手に人のパソコンさw……」
キーボードの音を聞き、思わず部屋に飛び込んだ。
そこには、虚ろな目で画面を見つめ、激しくキーボードを叩く音子がいた。
音子ってブラインドタッチできたの?
いや、そんな事考えてる場合じゃないって俺!
「ね、音子!なにやって……ぁ」
後ろから画面を覗き込むと、そこには見慣れた修羅場スレが…。
「ちょ、止めろって」
音子は反応しない。
画面をもう一度よくみると、音子は何か書き込んでいるようだった。
なになに…『なんなの?あなた達。
あなた達のせいで、ウチの茂が私に構ってくれないの!
いい加減にしろ!この雌豚ども!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね……』
このような文章が10レスぐらい続いている。
ちょ、どういうこと?
いや、修羅場スレのみんなはネタだと思ってくれるだろうが、さすがにこれ以上は迷惑だろう。
「音子!いい加減にしろ!」
すると音子はキーボードを打つのを止め、ゆっくりと振り向いた。
機械的な、人形のような笑みを顔にはりつけて。
音子って、ヤンデレ?
「何で庇うの?こんな雌豚共を」
背筋がゾクッとした。
恐怖と、少しの、されど濃密な歓びに。
「め、迷惑だろ?」
「雌豚共を気遣う必要なんてない!」
段々心拍数が上がっていく。
これは、俺が望むモノ?
「あたし、ずっと待ってた…。
茂が、あたしを茂のモノにする事を。
今日だってそう、でも、分かった。
茂には、あたしだけだって自覚して貰わないといけないって。
もう、待てない、から」
そう言って音子は、部屋の隅に置いてある鉄バットを掴み、振り上げ、パソコンに向けて振り下ろした。
ガキッ!と音を出し、パソコンは粉砕された。
「音子!やめ…グッ」
思わず止めようとした俺のボディに音子の一撃が入った。
「しげる?おとなしくまってて。
これがおわったら、ふたりで、ひとつだってこと、おしえてあげる。
ちょっといたいけど、がまんしてね?」
そう言って振り下ろされた鉄バットは俺の頭を捉えた。
それっきり、俺の意識はブラックアウトした。
以上です。
要望があれば続きを書きたいとおもってます。
言うまでもない
wktk
\ /_ / ヽ / } レ,' / ̄ ̄ ̄ ̄\
|`l`ヽ /ヽ/ <´`ヽ u ∨ u i レ' /
└l> ̄ !i´-) |\ `、 ヽ), />/ / 地 ほ こ
!´ヽ、 ヽ ( _ U !、 ヽ。ヽ/,レ,。7´/-┬―┬―┬./ 獄 ん れ
_|_/;:;:;7ヽ-ヽ、 '') ""'''`` ‐'"='-'" / ! ! / だ. と か
| |;:;:;:{ U u ̄|| u u ,..、_ -> /`i ! ! \ :. う ら
| |;:;:;:;i\ iヽ、 i {++-`7, /| i ! ! <_ の が
__i ヽ;:;:;ヽ `、 i ヽ、  ̄ ̄/ =、_i_ ! ! /
ヽ ヽ;:;:;:\ `ヽ、i /,ゝ_/| i  ̄ヽヽ ! ! ,, -'\
ヽ、\;:;:;:;:`ー、`ー'´ ̄/;:;ノ ノ ヽ| / ,、-''´ \/ ̄ ̄ ̄ ̄
ちょっと会社休んで幼なじみの旅に出てくるわ…
気をつけろよ、最近は幼馴染み詐欺ってのがあるらしいから。
詐欺から生まれる修羅場も、世界にはあるかもしれんが。
続きwktk
しかし、実際このスレにあんな書き込みされたら住人はびっくりだ。
俺は、ネタでもマジでもあんな書き込みは歓迎だがな!!
便乗wktk
俺もそんな書き込みがあったら色んな意味でwktkするだろうな。
>>133 日本語おかしくないか? むしろ、文章そのものがおかしいよ
荒 ら し キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
>>153 先生!正しい日本語とうまい文章を馬鹿な僕に教えてください!!
「え〜、『十一月十五日――スケキヨが帰ってきてから丁度半月。金田一耕助がやってきて、そろそろひと月になろうかという十一月半ばの日。
この日こそは犬神家の一族の間に、最初の血が流された日であり、悪魔がいよいよ行動開始した日であったが、しかし、ここでは、その殺人事件に言及する前に――』
つまり、この段落ではやな……」
普段だったら、とても退屈な現国の授業。
相も変わらず眠気を誘う、初老の先生の教科書の朗読が教室に響く。
でも今日は、それどころじゃない。居眠りなんかしてる場合じゃない。
といってもそれは、あくまで授業に集中しているって意味じゃない。
結論から言うと、ボクは、いつも以上に先生の声なんか聞いちゃいなかった。
ボクが耳を澄ませて聞いていたのは、
――ぶぶぶ、ぶぶぶぶ、――うぃん、うぃん、うぃん、うぃん……。
という、無気味な振動音と、
「……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……ぁぁぁぁ……くぅぅぅ……!」
という、歯を食いしばって何かをこらえる呼吸音。
音の発信源は、このボク――落合静香の一つ前の席。そこで震えながらも腰を降ろす一人の男子生徒。そのアナルで凶暴なサンバを踊り続けるパールローター。
彼の名は柴田遼太郎――遼くん。
ボクの幼馴染みにして、親友にして、義兄にして、恋人にして、婚約者にして、そして命よりも可愛いボクの……奴隷クン。
ここは席替えの際、クラスメートに小銭を払ってまで獲得した、彼の真後ろの席。
ボクは今、吐く息すら彼の背にかかるその席で、遼くんに“罰”を与えていたんだ。
罪状は、姦通罪。
早い話が、浮気。
だってしょうがないじゃない。自業自得だよ、遼くんのさ。
ボク以外の女子生徒との接触を、厳しく厳しく禁止してあるにもかかわらず、遼くんったら、それを守れなかったんだから。
それも、よりによってあの女と……!
ああ、いま思い出しても、身震いがしてくるよ、全く!
ボクが、このクラスで一番キライな、それこそ吐き気のするほど大嫌いな、あの女……山口由利。
よりによって、そんな女と……!!
確かに、一瞬でも遼くんから眼を離したボクだって、全くの無責任とは思わないよ。
でも、ボクだって仮にも女子高生なんだから、友達と行くトイレって行為が、人間関係を保つ上で、どれだけの意味があるか、遼くんだって、分かってくれるよね?
それなのに、ちょっとボクがいない隙に、ボク以外の女と……それも、それもよりによって、あの、ヤマグチなんかと……!!
許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!!
そう思った瞬間、ボクは無意識にリモコンのつまみを最強にひねってしまっていたんだ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
びくんびくんびくん!
遼くんの身体が、まるで魚みたいに痙攣する。
机にがばりと伏せ、声を出さないように学ランの袖口を噛みしめる。
やがて遼くんは、精根尽き果てたように脱力し、それまでの机にしがみつくような前傾姿勢から、くたりと椅子に崩れ落ちた。
ボクはそれに合わせて、リモコンの電源を切り、背中越しに遼くんの耳元に囁いた。
「イっちゃたの遼くん?」
次の瞬間、耳まで真っ赤になった遼くんがボクを振り返るけど、やがて、眼を伏せ、俯いて前を向いた。
「違うよ」
と、呟いて。
でも、嘘だ。
ボクには分かる。
遼くんはイったんだ。
それも授業中に、ズボンとパンツの中で、おもらししちゃったんだ。
うふふふふ……恥かしいね遼くん。
仮にも学級委員長のキミが、授業中にこんな事をしているなんて、クラスのみんなが知ったら、ホントどう思うんだろうねえ?
誰も知らないキミの素顔を、このクラスで知っているのはボクだけなんだ……。
「――!」
あっ、いっけない、そんな事考えたら今、一瞬軽くイキそうになっちゃった……。
んふふふふ……すっごいな、ボク。遼くんの事を考えるだけで、こんなに気持ちよくなれちゃうなんて。我ながら信じられないよ。
こんなボクたちが結婚なんかしたら――。
毎日毎日、こんな気分が味わえるんだとしたら――。
あああ、すごい……ひょっとしたらボク、幸せ過ぎて狂っちゃうかもしれない……。
でもね、遼くん、まだまだだよ。
ボクはキミを、まだまだ許してられあげない。
「遼くん」
もう一回、彼の耳元で囁く。ちょうどボクの吐息が遼くんのうなじをくすぐるように。
「……何?」
遼くんが青ざめた表情で、おそるおそる振り向く。
そんなに恐がらなくてもいいのに。
「気持ちよかった?」
「……」
顔面蒼白だった遼くんが、たちまち真っ赤になる。
彼は俯いて何も言わなかったけれど、ボクにとって答えとしては、それで充分だった。
「じゃあ、遼くん、これが済んだら終わりにしてあげるよ」
その瞬間、遼くんの表情がまたまた青くなった。
「……まだ、やるの?」
「え〜、では次の段落ですが――」
その時になって、先生はようやく、一人ひっそりと挙手している遼くんの事に気がついたみたいだった。
「ん、どうした柴田?」
「あ、その、いえ……」
「次の段落、読んでくれるんか?」
「あ……はい」
「ふ〜ん。どういう風の吹き回しや?」
「……」
「ま、ええわ。ほなら、読んでもらおか。105ページの3行目から」
もそもそと、遼くんが立ち、教科書をひらく。
「『十一月十六日。――その朝、金田一耕助はいつになく朝寝坊をして、十時だというのに、まだ寝床の中でモゾモゾしていた。――』……うっ……!」
「ん? どないした?」
「あ――いえ……。『耕助がそんなに朝寝坊をしたというのは、昨夜……んんんっ……』」
うぃん、うぃん、うぃん、うぃん、うぃん、……。
ポケットの中の、リモコンの電源を再びオンにする。
遼くんのアナルでローターがまたもや、ビートを刻み始める。
強、中、弱、中、弱、強、最強、オフ、最強、弱、……。
前の席だけに、遼くんのお尻と背中が小刻みに揺れているのが、手に取るように分かる。
いま、遼くんの全神経を支配しているのは、ボクの指先一つなんだ……!
くちゅり。
ああ、だめ。
そんな事考えたら、あそこが疼いて疼いて、もう我慢出来ない。
もう、指が……我慢出来ない。
んんんんんんっっっっ!!!!!
……ああ……まただ、……また、ちょっと触っただけで、イっちゃいそうになるっ!!
いやっ! ひとりでっ! ひとりでなんてイキたくないっ!!
遼くんっ、 助けてっ!
「『昨日、那須神社で……ぐううぅぅっ……はぁっ、はぁっ、はぁっ、……スケキヨの手形を……んぐっ!!……手に……入れた……ぁぁぁぁ……、あの、奇妙な仮面を被ったお、と、こ、に……ぅぅぅぅぅ……!!』」
んふふふ……遼くんも、またまたイキそうになってるよぉ。
一緒にイこっ!
ボクと一緒にイっちゃおっ!!
『イク時は一緒に』
それが、ボクが制定した“遼くん刑法”の第5条だもんねっ?
ああああ……もう、限界ぎりぎり……っ!
じゃあ、じゃあ、いくよっっ!!
ボクは、リモコンのつまみを最強にした。
遼くんは、膝から崩れ落ちた。
のけぞり返り、一瞬天を仰いだ遼くんは、教科書を取り落とし、そのまま脱力して床に膝をついた。
「おい柴田、どないしたんや? オイ! しっかりせえ!?」
嬉しい……。遼くんも……イってくれたんだね……。
ボクもイったよ。そんな、美しいまでにブザマなキミの姿で、あそこが音を立てるくらい感じて、……そのままイっちゃったよぅ……。
「……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……」
「おいシバ遼、マジで大丈夫か?」
「体調悪かったの、お前!?」
まずい。
遼くんがいきなりぶっ倒れたもんだから、先生やクラスのみんなが、騒ぎ始めた。
「先生、柴田君を保健室まで連れて行きます」
そう言うや否や、つかつかと寄ってきて、遼くんに肩を貸そうとする女。
おい、ちょっと、アンタ、――何やってんのよ!? ヤマグチィィィィ!!!!
「山口? お前確か……?」
「はい、この組の保健委員です。あたしが柴田君を保健室に連れて行きます」
ヤマグチィィィィ!! 何ボクの遼くんに勝手に触ってんのよぉぉぉ!!!!
「そやな。ほんならちょっと、頼んでええか?」
「分かりました。――じゃ、行きましょう柴田君」
そう言ってヤマグチの不潔な手が遼くんに触れた瞬間、彼はびくりと身体を震わせ、ボクを見た。おそるおそると。
「……柴田君?」
遼くんのその怯えた眼を見た瞬間、ボクは一目でわかったんだ。
ああ、遼くんは‘正気’に戻ったって。
そうだよ。
そうだよね、遼くん。
キミだってイヤなんだよね? こんな腐れゾーキンみたいな女の手を借りて立ち上がるなんて。そんなのキミのプライドが許さないよね?
分かってる。
キミがどれだけ誇り高い人か、そんな事はボクが一番分かってる。
だってキミは、もうボクのものなんだもの。
いくらヤマグチが“元カノ”だっていっても、今じゃ単なるベンジョムシ。そんなムシケラに触られるのは、耐えられないよね、遼くん?
「ヤマグチさん」
「……なに、落合さん?」
「柴田君はボクが連れて行くよ。委員長を助けるのは、副委員長のボクの役割だからね」
そう言ってボクが手を差し出すと……遼くんは俯きながら、その手を取ってくれたんだ。
ぎりっ!!
その瞬間、ヤマグチの歯ぎしりの音が聞こえた気がした。
だけど、無視。
ムシケラだけに無視。
んふふふ、だめだよ、そんな物凄い眼でこっちを睨んでも。
ばかだなぁ。ボクと遼くんの間には、もう1ミクロンも隙間なんか無いっていうのに。
ボクは、勝利の微笑みでヤマグチを軽くいなすと、遼くんを連れて教室を出た。
「いい子になったね、遼くん。……ご褒美はなにがいい?」
「……」
「んふふふふ……遼くんは本当に遠慮深いなぁ。それじゃあ、これから人気の無いところで、たっぷり可愛がってあげる。それでいいかい?」
「……うん」
「じゃあ、せめて場所くらい選ばせてあげる。どこがいい? 体育倉庫? 旧校舎裏? 音楽準備室? それとも屋上?」
(続)
時代はMか・・・。
続きwktk!
こ、これは新感覚の予感!!それはともかくGJ!!
やばいこれはやばいGJ
GJ!
関係ないがシバ遼って・・・某国民作家?
アッー!と叫びたくなるような始まりだった
こりゃ遼の命より肛門のほうが心配な展開だ、だがGJ!
超GJ! なんか怯えた男にすぐにでも逃げられそうw 今からwktk
では投下致します
第21話『迷子の迷子の狐さん。あなたのお家はどこですか?』
階段から降りてゆく駆け足は思っている以上に軽い。
俺は溢れだしそうになる笑いを両手で抑えるので大変であった。
恋する女の子は好きな異性から冷たい素振りを見せると自分が捨てられてしまうような感覚を受けると聞く。
ヤンデレ症候群の女の子は常人よりも想っている人に依存している傾向にあるから、音羽は今頃屋上の方で泣いているのであろう。
これも計画の内だ。
音羽の武器であった復讐はあっけなく効果はなくなり、秘密兵器であった『約束』も俺の勝手で破棄させてもらった。
これで俺と音羽の繋ぐ糸は完璧に消え去った。恋する女の子は一方的に想い人から傷つけられて、自暴自棄に動きだす事になる。
単純に言えば、ヤンデレ症候群の進行速度が進み、精神的異常が見られる。
下手をすれば、狂気を振りかざす可能性もある。火加減を間違えばこちらも火傷を負うが俺は音羽の優しい心を信じる事にする。
独りぼっちになった俺に声をかけてくれた音羽。
別れる時に泣きそうになっても、その純粋な心はどんな物よりも美しかった。
放課後になると文化祭の作業のために机は隅の方に運ばれて、皆は作業に没頭する。
うちのクラスの出し物はただ単にポスターを提示するという。
そのポスターは市販で売っている皆の自慢のポスターを教室内にあちこち張るだけという文化祭の行事としてはとても楽な作業である。
花山田がエロゲーやアダルト関連のポスターを持ち込んだ時は女子全員からブーイングを受けたりしたが、
最終的にはアニメやゲームやアイドルと言った普通のモノに収まったらしい。
(花山田はロッカーに監禁されているが)俺は出し物が上手く進んでいるのを確認して、休んでいた時のノートを移し作業を辞めて。
ある程度完成しているノートを提出しようと教室の外に出た。
廊下に沢山の書類の山を抱えた見慣れた人物が頼りない左右に足を取られていたので俺は心配になって声をかけた。
「紗桜。大丈夫か?」
「に、兄さん」
ツインテールの髪を左右にふわりと揺らして、不自然な足取りで紗桜は頼りなさそうな足腰で立ち止まってくれた。
病院で入院している間に文化祭実行委員という役職を友達の代わりに任命された紗桜と最近話す機会が少なくなっていた。
思わず、俺は呼び止めてしまったが、特に用はなかった。
でも、小柄な姿で頑張っている紗桜を見てると俺はつい手助けしたくなるのだ。
「どこに持っていくんだ。半分ぐらい運んでもいいぞ」
「職員室です」
「よし、目的地は同じだ。一緒に突入するぜ」
「兄さんも職員室に用があるんですか。今度は一体何をやらかしたことやら」
「人を問題児のように扱うなっての。休んでいた間に溜まっているノートを提出して点数を稼いでおかないと。後々、大変な事に」
「兄さんも頑張っているんですね。別に手伝わなくてもいいですよ。私は自分の任務を全うするために全力を尽くしますから」
とはいえ、抱えている書類の山が視界を遮っているせいなのか足元に余裕はない。
一生懸命に背伸びして頑張っていても見ているこっちとしては紗桜は何だか頼りなかった。
強引に書類の山を奪おうとして、紗桜の身体に触れた時であった。
パチン。
ボタンが大きく弾ける音が聞こえてきたのだ。
「まさか……」
「ううっ……兄さん。ブラが取れちゃった」
顔を紅潮させて冷静を装っていた紗桜が激しく動揺している。
俺は女の子の事はよく理解できないが、今が紗桜に関する緊急事態ということはわかる。
どうする?
「に、に、に、兄さん」
「ちょっと落ち着け紗桜」
落ち着くのは紗桜だけど、俺自身に同じ事を言ってやりたい。
「うぇぇ〜〜ん。兄さん付け直してよ」
「女のブラジャーの付け方なんか男の俺が知っているとでも」
「あぅあぅあぅあぅあぅあぅ……」
書類を片手に紗桜が今にも泣きだしそうな表情を浮かべて狼狽えていた。許せ。紗桜よ。兄でもできないことがあるんだ。
混乱していい策も考えられないまま時間が過ぎ去って行く。紗桜のブラが外れたぐらいで俺はとんだ騒動に巻き込まれたもんだ。
だが、救いの手というものはどうやら俺達に存在していたらしい。
「月君。紗桜ちゃん。こんなとこで何しているの?」
この学園最高上級生の証である紺色の胸のリボンを身に付けている、水澄家で最も頼りになる虹葉姉が何事かと心配そうに尋ねてきた。
「お姉ちゃん。お姉ちゃん」
「虹葉姉」
役に立たない男よりも数段頼りになる虹葉姉がやってきたら事態は大きく変わる。
女の子のブラが取れようが、そんな事は別に大したことでもないだろう。
「ブラが取れちゃったの。女の子もいろいろと大変だからね。
ここはお姉ちゃんに任せなさい。月君は紗桜ちゃんが持っていくはずだった書類を持ってあげてね」
「わかった」
「ありがとう。お姉ちゃん」
緊急事態を迅速に行動し冷静に判断を下せる虹葉姉は、俺達の立派な姉だった。
だが、
パチン。
「うにゅ。月君。お姉ちゃんのブラも外れちゃった。どうしよう……」
真性のアホだ。こいつ。
昔、憧れていた虹葉姉も今となってはただのドジっ子に成り下がってしまった。
羞恥。
その二文字の言葉通りにブラを外れた虹葉姉と紗桜の制服を半分ぐらい脱がせて、
男の俺が慣れないブラのホックを付ける作業は長年顔を合わせている家族だとはいえ、女の子の柔らかい体に触るのはとても恥ずかしかった。
さすがの虹葉姉と紗桜も顔から下まで赤くなって、双方とも恥ずかしい時間を過ごしてしまった。
放課後の時間を過ぎ去ると陽が沈み時間が早くなってきたのか、校内が真っ暗に変わってきた。
廊下の上にある蛍光灯が電気の明かりを照らしている。
とはいえ、夜の校舎は思っている以上に不気味で学園七不思議が実際に起こりだす雰囲気になっている。
俺は教室で学友達が文化祭の作業に没頭している間に、借りてきたノートを移す作業が大体終わったのでいい加減に家に帰ろうと思っていた。
下駄箱までやってくると俺は思わず絶句してしまう。
薄暗い電灯が照らす下駄箱に女子生徒が立っていた。
立っている場所は俺の下駄箱の目の前だ。
しかも、その顔は今日の昼休みに奈落の底に突き落としたはずの音羽だというので俺は驚愕していた。
「月ちゃん。私は月ちゃんが帰ってくるのをずっと待っていたんだよ。さあ、帰ろうよ。私達の家に」
「うわっ……」
思わず小さな悲鳴が俺の口から漏れる。
ヤンデレ症候群に感染された音羽の行動は間違っていない。
自然な事だ。だが、その症状の進行速度は俺の想像を遥かに超えていた。
このストーカーと同じ行動を取るのは俺の考えていた計画より断然に早かった。
更に驚愕する理由は……。
音羽の右手にしっかり握られているのは、サバイバルナイフであった。
キャンプ用で使うあのライトのせいで捕まった条例違反のナイフである。
「きゃはははは……。ねぇ……早く一緒に帰ろう。そして、今度は絶対に月ちゃんをあの家から出さないようにするから。
一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒に寝ましょう。それが私達にとって、とても幸せな事なんだよ」
「ちょっと待て。音羽」
「欝陶しい虹葉さんや紗桜ちゃんが邪魔ならこのナイフでメチャクチャに刻んであげる。
月ちゃんを拘束する鎖なんて私が切り裂いてあげるから。ねえ、一緒に」
狂気に犯された者に俺の言葉は通じない。何かを言う前に音羽は俺に向かって突進してきた。
ナイフを両手で持ち、突き刺すように俺の腹部を狙っている。
こういう事態は予測できたが、まだ準備は全然やっていなかった。
舐めていた。ヤンデレ症候群をただの女性が発狂する程度の病にしか思ってなかった。
そんなもんに殺されるのは間抜けかただのアホだと見下していた。だが、この病の恐ろしさを理解してしまうと以前のように笑えない。
これでは殺されるはずだ。
「どうして、避けるの? 私のことを嫌いなんですか? こ〜ん。嫌いなの」
「ナイフで突き刺して来たら、普通は逃げるっての」
「ダメです。今日は絶対に月ちゃんを連れて帰るんだから」
ナイフを水平に構えて、今度は身軽に左右前後にステップを取り出した。
音羽はタイミング狂わせて、俺が読み間違えることを誘っている。
距離は音羽のナイフの間合い並みに離れているがこれ以上無駄な動きをすると音羽に余計な隙を与えることになる。
ウチの担任も別れた奥さんにこんな風に殺されてしまったのだろうか。全国で犠牲になっている奴も無残に女の子に殺されたのか。
切れ味のいいナイフが薄暗い明かりに照らされて銀色に光りだす。
見惚れるわけはないが、音羽が俺を殺そうとする現実をどこかで認めたくなかった。
「やめるんだ。音羽」
「月ちゃんと一緒。ずっと、一緒なんだから」
そう、僕らはずっと一緒だった。
というわけで第21話終了です
次回は明日。明後日に23話で音羽編は一応終了する予定です
上の方で私が投稿した事が原因で荒れてしまったり
神々が投稿できない雰囲気を作ってしまい申し訳ありませんでした。
前にもこんなことがありましたが、今回も粘着な荒らしに気がちょっと参ります
私の作品が面白くない又は不愉快な気分にさせてしまっていると言うならば
今現在連載している水澄の蒼い空を打ち切りする事も考えていますが
どうでしょうか?
>>171 気にするな
一人の粘着があらしてるだけだから。
とりあえずあなたもNGワードを登録することをオススメする。
神が減るのは全裸で待っている俺にはきつい仕打ち
音羽((((((((*´Д`)))))))ガクガクハァハァブルブルハァハァガタガタブルハァハァガタガク
トライデントさんに非は無く粘着荒らしが全部悪いのですから、気に病む必要はありませんよ
それにこの作品が打ち切られたら楽しみにしている俺が物凄く悲しむ(´・ω・`)
おまいら荒らしは
>>3の対応でいこうぜ
テンプレも読めない連中は華麗にスルーでお願いします。
水澄は個人的に気に入ってるのでぜひ続けて下さい。
GJ
この一言で全てが伝わるはずだ・・・
だめぇ・・・ずっと一緒にいてくれなきゃ・・ヒック・・・いやだもん・・・
この状況ですらこんな考えしか浮ばないのは俺だけでいい。
GJ。そういえばトラさんって、濡れ場書かないよねーと、さりげなくお願いしてみる。
荒らしはスルー。これは読み手も書き手も共通事項です。無視無視!
>>171 GJ
作者の皆様が気に病むことじゃないさね。
それよりもヒロインを病ませて欲しいさね。
>>171 続けるかやめるかはトライデント氏自身で決めてほしいと思う。
かまってちゃんだと思われるでしょうし。
けど、ほとんどのスレ住民の気持ちは同じだと思います
>>171 叩かれるのは有名税ですよ。
逆にどこの世界でも叩かれない奴なんて存在しないし。
叩き=テロですんで屈しないでください。
打ち切ったら他の神に矛先を向けるだけですし。
フォォォォォォォォ!GJです、続き期待してます!
>>171 トライデント氏GJです!やめるなんて言わないで下さい!
全裸の俺には厳しすぎます!
おまいがssを投下してくれるかぎりGJの支援は惜しまんぜ。
てか、マジでやめて打ち切りなんて俺のwktkを奪わないで。
とはいえ、無理はなさらぬように。
誘い受けも控えめにね…。
>トライデント氏
今更ここで反応するとかちっとは空気嫁よ
この流れで煽りかますとか、お前が空気嫁よ
有名税、ね・・・w
まあ続けたけりゃ続ければいいんでない
>>185 自分のせいじゃなくても荒れると凹むのはしょうがないよ
トライデントさん、一人のせいで大勢が悲しむ決断になることは辛いことだよ・・・
教えてくれ、ゼロ。今年のバレンタインはどれだけ血が流れるのか
ヽヽ:::::::::::::ヽ_ヽ
_ -----、 \ヽ::::::::::::::::ヾ
// / `ヽ、 ヽヽ::::::::::::::
/フ/ ., ' }::\ ヽヽ:::::::::::: 全力でバレンタインの悲劇を未然に防ぐために
/:::::/{ / l:::::::ヽ、 ',. }:::::::::::: 我々、黒の騎士団は活動する
//::::::::l l f /:::/::::イ | |:::::::::::
. //::::::::::l { |ヽ /::://:::::| | |:::::::::::君達に委ねられる選択は一つ
. //::::::::::::l ! l、::\ /::::/ノ:::r-‐フ ,' |:::::::::::
l/::::::::::::::| | !ヽ::::`ー―r―´r‐ニ-:´::::::::::::::/ / /::::::::::
|{:::::::::::::::l l 、」ヽ=.ァ::::::::::::::::}「:::::::::::::::::::::/ / /::::::::::: 私と生きるか:
ll::::::::::::::::〉l \:::::::::l {:::::::::::::://::::::::::::::::::/ _ -.ノ /::::::::::::::
ヾ::::::::::::::ヽヽ \_::::`ヽ 、 /::::::::::::::::::∠ -‐´ /./::::::::::::::::::/
\::::::::::::ヽヽ ヽ::::::::::::::::::::::r-、::::/ //:::::::::::::::::::/
\:::::::::ヽヾー―――?>-‐-ノフ´ ∧lミ-ニ ´- ´:::::::::::_ -―<― 私と死ぬかだ!!
`ヽ:::::::\ヽ くイ | | / | ゝニ‐":::::-=‐" -―: ̄:::>
ヽー、 \::::\ヽ、 // | L/- ニ-‐´:::::::/:::::/::::::::/:::::/:::::
ヽfニニ‐ゝ、_::`ヽニムト-ニニ‐ ´:::::_::/:::::::::::::::::::://:::::::/:::::::::::
-} lヽ\^―――― ´:::::::::::::/ヘ ヽー―‐ ´ , '::::::::::〃::::::::::::::
/´::::::::l l:::\丶::::::::::::::::::::::::::::://:::::::`ヽ―― ¨:::::::::::::::/::::::::::::::::::
/::::::::::::::l l:::::::ヽ ` ー---‐ ´ ‐"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::
↑誰? さっぱりわからん
バレンタインに貰ったチョコの数で男の格は決まる訳ではない。だが貰った数に比例して修羅場フラグ上がるものだと鉄郎は思うのだ。
メーテルは何も言わない。
この状況なら、しっとマスクのAAの方がしっくりくる気がするな。
>>189はガンダムWのゼロシステムだと思ったんだが違うのか?
なんか電球ジョークができそうなお題だな。
答え・一人
生方先輩から義理チョコを貰ったのを勘違いされたエースケが、フライパンと糸鋸の餌食になるため。
なんかいまいちだ。オチが無い。
チョコいっぱい貰って嫉妬されたいぉ
脇をしめて・・・
_ (⌒_
'´/ ,、ヽ '´^`ヽヽ ?
i (ノノ"))i ハ((ソ从 〉}
___ li l|゚ ヮ゚ノl| |l、ヮ゚ !)リ)
|l,、,、,、,、l|lリ./)允i ) ⊂i允(つ
((゙く/_lj〉)) 〈|_ヽ>
じフ しヽ.)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
えぐりだすように・・・
_ (⌒_
'´/ ,、ヽ '´^`ヽヽ !!
i (ノノ"))i ハ((ソ从 〉}
li l|゚ ヮ゚ノl| ___ |l、ヮ゚ !)リ)
リ./)允iつ =l|l,、,、,、,、l}⊂i允(つ
((゙く/_lj〉)) 〈|_ヽ>
じフ しヽ.)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
引くべし!!?
~,;`
キャハハハハハ♪ (⌒_ **'
_ '´^`ヽヽ **''
´/ ,、ヽ ハ((ソ从 〉},* **'
i (ノノ"))i |l、Д゚ !)リ)*;:~,;`
i l| "ワノl|__ "*'★';**' *”*:
リ./)⊂l|l,、,、,、,、l} ミ”*;:⊂i允⊂
(( く/_lj〉 ;* 〈|_ヽ>
じフ ・゚' しヽ.)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
バレンタインには血の雨が降る
このように
>>194 ひとり、だと?
ふ、ふ、ふざけるな!たったひとりしか死なないのか今年のバレンタインは!
よろしい!ならば私が2/14にチョコを貰えない男同盟の盟主として、
大量虐殺を約束しようではないか!うぉぉぉぉぉぉ、モテ男に死を!
>>198 あ、あなたはまさかあの女装の似合うと評判のうわなにすr(ry
DOKUMEGU氏 GJ!!!!!!!!!!
流石神…GJ…
204 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 01:02:35 ID:+B6YULmd
モテ男に死を!!!
普通に同人誌原作で嫉妬スレの作品は売れる夢を見てしまうわけだが
絵は癒されるぅぅぅぅぜ
合鍵は俺のバイブル
このスレの住人は全員
バレンタインデーに刺されて死んでしまえばいいんだ!!
(その日は誰にも修羅場フラグが立つ日です)
発狂した女の子に背中から包丁を突き刺される瞬間を俺達は待っているぜぇ!!
「他の女の子からチョコをもらわないでよぉ」
こんな感じで死んだら本望だろ
俺は自殺願望も自傷願望もないんでな。
自分にばれない様に着々と暗躍する黒い女の子を傍目から見守りたいぜ。
気持ちはわからんではないがな。男女の割合は基本1:1なわけで。
そのシチュの最低ラインが男一人につき女の子二人であることを考えれば、男の半分は余りになるわけで。
さらに世の中はそれよりも風当たりが厳しいわけで。
まあつまり、俺が言いたいのは今年は諦めて、来年男の人口が半分になってからのんびり刺されようぜ、ということだ。
まあ、俺は一度も彼女を作ったことないが
他人の修羅場を見ているだけでそれなりに満足している
第三者はどんな発言しても責任取らなくてもいいから気が楽だよ
「……なあ、なんか今日皆ソワソワしてないか?」
「バレンタインデーだからじゃない?」
「……あぁ、そっか。まぁ、なんだな。俺には縁のないイベントだな」
「……そうでもないよ」
「え? なんか言った?」
「んーん。何にも言ってないよ?」
「ふうん? どうでもいいけど、何でお前のカバン、そんなにチョコ入ってるんだ?」
「え? あ、あはは! こ、これはその、祥太郎くんの下駄箱に入っていたゴミっていうか、その、え、えへへ。そ、それより、祥太郎くん、はい」
「んぁ? おーサンキュー。悪いなー毎年こんな冴えない幼馴染みの為にいつも作ってくれて」
「いいよ、えへへ。祥太郎くんが美味しく食べてくれるだけで、私幸せだから」
「……日向子?」
「あ、いや、あはは! じゃ、じゃあまた放課後ね!」
「おーじゃあなー」
放課後。
「うーし。帰るか……しかし、今年も日向子一人にしか貰えないとは、相変わらず寂しい人生だなぁ」
「い、石橋祥太郎君!」
「あい? あれ、委員長。どうかした?」
「そ、その! こここ、これ! き、今日友達にあげる為に作ったら余っちゃって、す、捨てるのもバチが当たりそうだし、だ、だからその、よ、よかったら食べて欲しいなって……べ、別に変な意味はないからね!? い、言うなら義理チョコだから!」
「いや、あ、うん。ありがとう」
「か、感謝しなくてもいいわよ! 捨てるのが勿体ないだけだから!」
「わ、わかったよ。でも、やっぱりありがとう。美味しく食べさせていただきます」
「あ、う、うん……じゃ、じゃあまた明日!」
「おーまたなー」
「……今の、誰?」
「うぉ!? ひ、日向子! びっくりさせるなよ」
「……折角、祥太郎くん宛てのチョコ全部回収したのに」
「え? 何?」
「ううん。何でもないよ?えへへ。ね、ね、今日祥太郎くんの家に行っていい?」
「え? あ、ああ。いいよ」
「えへへ。今日祥太郎くんに美味しいチョコの食べ方教えてあげる!」
「そんなのあるのか?」
「うん。えへへ。祥太郎くんきっと夢中でむしゃぶりついてくるんじゃないかな? えへへ」
「むしゃぶりつくって……?」
「秘密! えへへ。きっと祥太郎くん気に入ってくれるよーえへへ。楽しみー!」
「何でお前が楽しみなんだよ。ほら、帰るぞ」
「うん。えへへ」
「……あれ? うわぁ。誰だよゴミ箱にこんなチョコ捨てるやつは。なんて贅沢なやつだ!」
「……えへへ。そうだね」
こんか学園生活を送りたかったぜ……!
215 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 16:52:17 ID:+B6YULmd
言うな・・・。
人生真っ暗闇・・・orz。
>>214の妄想の影には、淘汰された数知れない男子生徒の屍があるわけだから…。
>>214 最後の1行邪魔じゃい!!素直にSSとして楽しみ、続きにwktkしたかったぜ。
>>217 メモ帳にコピペして最後の行を削ればあらびっくり
220 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/09(金) 18:34:20 ID:z9ZkKNUy
こんか学園生活を送りたかったぜ……!
↑はつまり「こんか学園」での生活を今後も送りたかったが、
願い叶わず無理心中食らったって意味じゃないのか?
>>210 それは少し違う。
あくまで嫉妬に狂った女の子に「殺される」事に憧れているんだ。
俺は刺殺より馬乗りで絞殺されたい…。
222 :
214:2007/02/09(金) 18:57:18 ID:y9l1fDqz
うむ。なんか怒られた。いや、違う。これは期待されているのだ。だから俺は書く。携帯からだけど書くぜ!
『「……えへへ。そうだね」』
『こんか学園生活を送りたかったぜ……!』
おっと、"こんか"じゃない"こんな"だ。
「あれ?山田君ノートになに書いてるの?」
ノートの誤字を消しながら顔を上げると同じ文芸部に所属する鈴木さんが覗き込んでいた。
「うん、ちょっと小説をね」
「見せて見せて…へぇ、嫉妬に狂った女の子が男の子のチョコをねぇ」
そう言って首を傾げる鈴木さん。今部室にいるのは俺たち2人だけだ。
入部したときは他にも沢山いたが、何故かみんな最近は顔を出していない。
おかげで親しい友人の間には俺たちは付き合っているという噂まで流れている。
「ところで最後は幼馴染と委員長、どっちとくっつくの?」
「まだ決めてないな」
「でもこれだと幼馴染が断然有利だよね。オッズで言うと100対1くらい」
「え?なんでそうなるの?」
「だってほら幼馴染は委員長の顔を覚えちゃったじゃない」
「…それだけで?」
「そうよ、殺す相手を間違えないために雌豚の顔を覚えるのは必要だもの」
ゾクリ。と背筋が凍る。
思わず鈴木さんの顔を見ると能面のように表情が消え、その瞳は虚ろに濁っていた。
ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。心臓が警鐘を鳴らしている。ここにいるのは不味――!
「ところで山田君、今日の昼休みに妹さんを文芸部に誘ってたけど、どういうことかな?」
224 :
223:2007/02/09(金) 19:00:53 ID:I7uedTft
勝手に電波を受信した。
>>214氏が続きを書くらしいので黒歴史としてスルーして欲しい。
もちろん反省はこれっぽっちもしていない!
>>214 ってレス番号は狙っているのか
>>214=2/14=2月14日=バレンタインデーの悲劇
狙いすぎだろ!!
227 :
223:2007/02/09(金) 19:20:42 ID:I7uedTft
>>225 『ところで山田君、今日の昼休みに妹さんを文芸部に誘ってたけど、どういうことかな?』
「えーと『文芸部員が少ないから妹を――
「あれ?渡辺君ノートになに書いてるの?」
以下、エンドレスワルツ
嫉妬 駆除 独占ってか
230 :
225:2007/02/09(金) 19:40:07 ID:bd9FPAv6
誰が上手い事を… 。・ ゚・。* 。 +゚。・.。* ゚ + 。・゚・(ノД`)
では投下致します
第22話『今宵の月は黒い』
鷺森音羽と出会ったのは、俺が両親を亡くして水澄家に引き取られてから1ヵ月後ぐらいであった。
虹葉姉と紗桜が男の子らに苛められて少し男性恐怖症だった頃は、俺はいつも一人で孤独な時間を過ごしていた。
両親を失った悲しみを味わった俺は同じ年頃の男の子達と無邪気に遊ぶことも出来なかったし、一人でいる時間を日々増やしていく。
そんなある日。隣の家に住んでいる女の子がずっと俺の事を見つめていたのだ。
水澄家と鷺森家の付き合いは余りにも希薄で俺も隣には誰かが住んでいるなぁ程度の認識しか持っていなかった。
だが、俺と同じ年頃の女の子が隣にいたなんて言うのは初耳である。
その女の子は俺が玄関に入ろうとする姿を不思議そうに眺めていた。無理もないだろう。
俺が隣の家に女の子がいる事を今知ったばかりってことは、あちらの女の子もお隣に男の子がいると初めて知ったはずだ。
お互いの視線が合うと、その女の子は初対面の相手にこう言った。
「あなたも暇なの? じゃあ、私と一緒に遊ぼうよ」
それが天草月と鷺森音羽の出会いであった。
単純に誰かと遊ぶというのは両親が死んでから。水澄家に引き取られてから。
初めての事であった。音羽の無邪気な笑みに救われていた。
知らぬ内に俺は周囲から孤独する事もなく、音羽経由でたくさんの友達ができた。
落ち込んで沈んでいる時間よりも笑っている時間が多くなった。
それは音羽と俺がずっと一緒にいた時間があったおかげなのだ。
だから……。
音羽に本当に感謝している。過去の自分は音羽が必要であり、現在においては特に必要ではない。
俺は音羽以外の人間を、護りたいと思っているから。音羽の気持ちを受け取る事ができない。
果たされる約束を破棄しなくちゃいけない。
ヤンデレ症候群に感染した音羽の凶行を俺は過去の彼女の思い出を汚されないために止める。
迫ってくるナイフの刃が銀色の輝きを照らして、その軌道は真っすぐに俺の腹部を狙う。
俺は下駄箱という足場が悪い場所に離れようと無意識的に後方に移動するが、廊下との段差に足が引っ掛かって転倒してしまう。
襲いかかる音羽はこれが機会だと倒れ込むようにナイフを下手に握って、俺を刺す。
「くっ……」
思わずのとこで音羽のナイフを避けると、俺は彼女の腹底に蹴りを放つ。
自分の命の危機的状況で数回彼女の腹を蹴り続けた。音羽が女の子だという事も忘れて、俺は手加減なしに蹴ってしまった。
「きゃあ……」
鈍い声が聞こえてきたが、俺は音羽の声を無視して距離を取ろうと必死であった。
殺されるという状況下では冷静な判断もできずに頭の回転もいつもより鈍る。
精神的に追い詰められると人間という生物は本性が表れると言う。
そう、俺は無様なことにヤンデレ化した音羽に怯えていた。あの純粋な瞳が純粋すぎる想い、純粋な心が何もかもが恐い。
いや、恐すぎるのだ。かつて、俺はヤンデレ症候群に感染した女の子と命懸けの戦いができると胸を踊らせていた。
だが、現実は親しい人間に凶器を振りかざしただけで俺は震えてしまっていたのだ。
「はぁはぁ……」
胸の呼吸が激しく乱れていたので、俺は必死に落ち着こうとしていた。
今まで計算された策で相手を翻弄してきた。必ず最後には勝利してきた。
今度も俺が望む勝利を手に入れるために音羽を。音羽を……。
視線を音羽に向けると彼女は腹部を抑えて嗚咽を漏らしていた。
先程、無意識に蹴ってしまった事を俺はだんだんと思い出して行く。
「い、痛いよ。つ、月ちゃん。た、助けて……」
「音羽……。音羽っっっっーー!!」
「お、お腹が痛いの。お願いだからつ、月ちゃん助けてよ」
俺が音羽に暴力を振るってしまった。立派なDVだ。
だが、立派な正当防衛だ。ナイフで俺に襲いかかろうとしたから。
仕方なくその過程で俺は音羽を傷つけてしまった。
もし、体のどこかに一生物の傷を負わせてしまったなら、俺はきちんとした責任を取る必要がある。
慌てて、俺は音羽の元に駆け付けた。殺さそうになった事を忘れて、俺は音羽の体を抱き起こそうと背中に手を回した瞬間。
「なっ……」
舌が痺れた。口が痺れた。手足が痺れてゆく。何か体中に電気が走ってゆく。
俺が音羽の体に触ろうとした瞬間に起きた事を冷静に分析しようとするが、頭の芯の奥まで痺れは行き届いていた。
何が起きたのかわからないまま、俺は音羽を見た。彼女の冷たい笑みを浮かべた途端に俺は12の可能性に辿り着いたが。
もう、遅い。体中が倦怠感に襲われて満足に動くすらできやしない。
「月ちゃん。女の子のねぇ。体に暴力を振るちゃダメなんだよぉ」
彼女のスカートのポケットから取り出していたスタンガンをしっかりと右手に握る。
倒れこんでいるフリをして俺が近付いた時にスイッチONにして、襲いかかる。
俺が音羽の苦しんでいる姿を見れば、どういう状況に陥っても心配になって駆け付けてしまう俺の心理を彼女は上手く読み取った。
俺は最初から最後までヤンデレ化した黒音羽に敗北の二文字を味わってしまった。
「最初からスタンガンを使っておけば良かったよ。月ちゃんを傷つけるつもりはなかったし。
でも、月ちゃんの顔を見たら、私は思わず興奮してすっかりと忘れてたよ。えへへ」
虚ろ瞳をして、俺の瞳に訴えるように真っすぐに音羽を見つめる。
「これからはずっと一緒だよ。死ぬほど嬉しいよ。月ちゃんが独占できる日がやってくるなんて。
うふふふ。ちゃんと可愛がってあげるから。今は優しく眠りについてね」
また、どこに仕込んでいたのかわからないが。音羽はスプレーらしきものを俺の鼻に向けて撒く。
それは、痴漢撃退用防犯スプレー。
その名も『親父の靴下の匂い』。
あまりの臭さに俺は更に意識が遠くなってゆくのがわかる。
最後に言える事はただ一つ。
せめて、クロロホルムで気絶させて欲しかった。
ぐふっ。
次回音羽編は一応終了の予定
終了後は姉妹編に突入します
皆様の声援の書き込みはどうもありがとうございます
その書き込みを見て、これからも頑張ろうという気力が沸いてきました
今後は荒らしに関する事は全てスルーすることにします
>>214 GJ
下駄箱に入っていたチョコレートは幼馴染回収しているのに吹いたww
リアル更新ktkr!!そしてGJ!!
投下乙であります。
音羽とは今までデレ分が強かったので、今回のスタンガンは素晴らしい病みの一撃を感じました。
やはり刃物や鈍器もいいけど、スタンガンも王道ですなぁ。ハァハァ
237 :
214:2007/02/09(金) 20:29:37 ID:y9l1fDqz
「えへへ。お邪魔しまーす」
「いらっしゃいましぇー。あ、そうだ日向子。ものはついでなんだけど、飯作ってくれー美味い飯が食いたいんだよー」
「んもー仕方ないなぁ祥太郎くんは! えへへ。いいよ。冷蔵庫の余り物で作るけど、いい?」
「おーサンキュー! んじゃ俺その間に風呂入っとくわ」
「ふぇ!?」
「ん? 何?」
「う、ううん! 何でもないよ! し、祥太郎くんがおおおお風呂入ってる間にパパっ! て作っとくから、す、好きなだけお風呂入ってて!」
「……? んじゃ飯よろしくなー」
「り、了解でありますよー!……行っちゃった。えへへ。も、もしかしてき、今日チョコのお返しで……!?
そ、そんな祥太郎くん! だ、ダメだよ心の準備が! で、でも祥太郎くんがどうしてもっていうなら、その、い……いよ?
えへへ。うわぁーうわぁーどうしよ!? 一応勝負下着だから、だ、大丈夫だよね? えへ、えへへ。た、楽しみだよ。えへへ。
で、でもまずはご飯作らなくちゃ! よ、よーし頑張らなくちゃ! えへへ。えーと、まずは冷蔵庫には何が入ってる……あれ? このチョコ……確か帰り際にもらってた……」
「ふぁー暑ちぃー……あれ? 日向子?」
「んー? なあに?」
「何だいるなら返事してくれよ」
「えへへ。ごめんなさぁい。あ、ご飯ね、チャーハンだけどいい?」
「お、サンキュー。どれど……」
「ね、ね、美味しそうに出来てるでしょ?」
「な、なぁ日向子。チャーハンってこんな色してたっけ?」
「……そだよ?」
「そ、そうか。最近のチャーハンは赤いのか。そうかそうか」
「……食べたくないのなら、はっきり言ってよ」
「い、いや! わざわざ日向子に作ってもらったんだ!残さず食うよ!」
「……えへへ。嬉しいなぁ……ねぇ、祥太郎くん。今日のあの女、誰?」
「え、あ、えーと、委員長?」
「……仲、いいの?」
「ん、んー? ふ、普通かな?」
「普通……普通な子にチョコあげたりするかな?」
「わ、わかんないな、俺。で、でも日向子が作ってくれたチョコが一番美味いな! ひ、日向子は料理上手いもんな!」
「……そう?」
「おう! 最高だよ! 是非嫁にしたいくらいだよ!」
「……本当に? ほんとのほんとに?」
「あ、ああもちろん!」
「えへ、えへへ。うれしいなぁうれしいなぁ。えへへ」
「……な、なぁ日向子? お前顔色悪くないか……?」
「えへへ。ちょっと、手首切っただけだよぅ。大丈夫大丈夫!」
「無理すんなよ……手首?」
「えへ、えへへ。し、祥太郎くんがいけないんだよ? あ、あんな女と楽しそうに話してさ! わ、私の事無視した! 無視した! 無視した!
私を見てよ! あんな女より、私を見てよ! わ、私は祥太郎くんがいないと死んじゃうの! だからず、ずっと一緒にいてよ!」
「お、おい日向子、お前血が!」
「やだやだやだ! 祥太郎くん一緒にいてよ! さ、寒いよ祥太郎くん。わ、私のチョコだけ食べてよ……祥太郎」
「わかったからしゃべるな! あぁ、クソッ! 血が止まらないってやりすぎなんだよ!」
「えへ、えへへ。祥太郎……大好き。だ、誰にも渡さないから」
「もういいから、じっとしとけって! 死ぬんじゃねぇよ日向子!」
「えへ、えへへ。ね、ね、祥太郎。何で今日はバレンタインデーって言うか知ってる?」
「あ? 今は関係ないだろ!」
「今日はね……バレンタインさんが愛のために死んだ日なんだよ……悲しいね。えへへ」
「救急車呼んだからな! お前に死なれたら困るんだよ!」
「えへへ。う、うれしいなぁ」
「おい……起き……目……なん…クソッ……救急車…ひ……なこ…………日向子!」
そこで、私の意識は途絶えた。
238 :
214:2007/02/09(金) 20:31:39 ID:y9l1fDqz
そして最終回は2月十四日までお預けだ!
やべえ!
やべえよ!
ちょっと、投稿してねえ間に、
使おうと思ったネタや小道具が使われちまってるよ!
またプロット組み直しやんか!
でもGJ!
GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOODJOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOB!!!!!!!!
241 :
225:2007/02/09(金) 21:15:27 ID:bd9FPAv6
>>214 何だよお前!!俺の事好きだろ?GJ―――!!
続き待ってる!ずっと待ってる!
>>222 携帯で小説投稿!?
その粋や好し!応援してるぜ!!
ときに修羅場スレには、外部のおすすめネット小説リンク集、みたいのは無いんだよね?
ヤンデレスレ、ハーレムスレ、あたりのを便利に使わせてもらったんで、気になったのだけど。
本日、二月の十四日。
二百六十九年にヴァレンティヌスが殉教した日だ。
一説によれば絞首刑らしい。
そんな彼の殉教の日をどこの誰が勝手に男女の愛の誓いの日としやがったのだろう。
理解に苦しむ。
などとさておき、本日はつまりバレンタインデーである。
世界各地で色んな愛が交錯したり衝突したり許容したり、たぶんそんな感じの日だ。
そんな感じの日だったが、彼、古市四有は露ほども今日という日の意味を意識せずに、
飄飄と一日の授業を消化してから放課後、いつものように学校の図書室で読書にいそしんでいた。
時刻は五時。元元大して人がいなかった図書室の静寂がさらに強まったころあいである。
「せんぱぁ――いっ」
やかましい女の声が室内に響いたのは。
委員の眼鏡の女子がびくりとおどろいて震える。遠慮を忘れた力強い足音が四有の背中にちかづく。
「ああ、やあ、鶴見さん」
ふりかえると見慣れたウエーブのセミロング。
にぱっ。という擬音が極上に適しているだろう、ひまわりを想起する笑顔。
高一だけれど平たい胸板が今日も四有に哀愁の念を懐かせる。
そんな彼女の名前は鶴見芽衣子。
四月に図書室でしりあってから、なにかと四有に前後の脈絡がない話をふっかけてくるけったいな女子である。
まあとにかく、しりあいだ。後輩だ。
特徴としてやたらと生傷が絶えない。
「あれ。左手、怪我したの?」
みれば、彼女の左手は包帯でぐるぐるに覆われている。
「ほんとう、よく怪我するよね……転んだとか?」
「あははっ。いえいえ、これは転んだとか、そんなどじを踏んだ結果とかじゃないですよ。
そうですね、愛が故の負傷って感じですかねっ。あは、あははっ」
左手を右手でなでつつ、芽衣子は快活に笑った。
芽衣子はよく笑う。四有がわからない場面では特に。
「愛が故の……ふうん。かっこいいね」
「やだなあ。先輩ほどではありませんよぅ」
「そんなことより図書室ではしずかにし――っ」
「ところで先輩今日は二月の十四日ですよ十四日ですよ」
にこにこ笑顔で四有の言を遮る芽衣子。
「いや、知ってるし別に訊いてないけど……なんかかお近いよ鶴見さん」
「近いと駄目ですか。駄目なんですか先輩」
「笑顔で接近されると妙な迫力が……、な、なに、どうしたのさ」
「ところで先輩の鞄はそれですよね鞄はそれですよね」
吐息すら感じる距離もそのまま、芽衣子が質問してくる。
なんだかくすぐったい。
「それだけど……、って、ちょっと、あ、ああ……っ」
「ふんふ――ん、ふんふふ――んっ」
陽気な鼻歌を披露しながら、鶴見芽衣子は躊躇の意識を欠片も交えずに、先輩の鞄を開けて、右手をつっこむ。
当然のような物色。
鶴見さんはほんとうによくわからない……極めて温厚な四有は特に叱咤はせず、そのまま見守る。
彼女との会話がまともに進展した経験は皆無なのだ。話題はしょっちゅう変わるし、いきなり黙るし、笑うし。
そんな芽衣子にはなしかけられて表情を歪めないのは、この学校で、四有だけなのかもしれない。
などとは、四有はおもわないが。
「ふんふふんふふ――んっ。……ぉ。先輩、なんですかこれはなんですかこれは」
「え……っ」
いいつつ芽衣子が鞄から取り出したモノに、四有はとまどった。
それは紺の紙で包装された四角い箱だった。
可愛らしいピンクのリボン。箱にはシールで手紙が固定されている。
昼に鞄から弁当箱を取り出したときには、そんなモノは鞄にはなかった。
誰かにもらったわけでもない。ほんとうに知らない。
「誰にもらったんですか」
「いや、しらない。……ほんとうに僕の鞄にはいってたの?」
「それはもう先輩の鞄の奥底にまるで封印するようにおしこまれていました」
「へえ……あっ。手紙だ」
四有がようやくきづいて、手紙に手をのばす。
「ふんふふんふんふ――んっ」
「あ」
指先が届く寸前、芽衣子がそれをかっさらう。
「鶴見さん、こらこら、ちょっとそれ渡しなさい」
「ふんふふんふ――ん、ふふふんふふ――ん」
にこにこしながら、鼻歌を交えながら。
「えいっ」
鶴見芽衣子は、手紙を破った。
左手で手紙を固定して、右手で千切る。
その動作に、ためらいはない。
四有はぽかんと、半口をまぬけにあけたまま、みていた。
「とりゃりゃりゃりゃりゃあっ!」
「ぁ、あ……あっ」
何度も千切る。千切る。千切る。
そのまま窓際に移動して――。
「アリーヴェデルチっ」
手紙の欠片と紺の箱をなげすてた。
紙片は雪が宙を舞うみたいにひらひら地面にむかってゆっくりとすすみ。
箱はかなりの速度で地面に接吻した。たぶんつぶれた。
ふう。そんな吐息を一つ、芽衣子がふりかえる。
「あはは――っ。えへへ」
「なにしてんのきみは……」
「ごみの処理ですよぅ」
「そうなの? 僕は中身みてないんだけど、あれはごみなの?」
「ごみです」
「そっか……僕、手紙が添付されたごみってはじめてだなあ」
「あははっ」
「でもちゃんと次からはごみばこに捨てようね」
「はぁ――いっ。ごめんなさい」
まあなげすてられてしまったモノはしょうがない。四有はこれにも特に叱咤は与えない。
しかしあの紺の箱の中身はなんだったんだろう。
「じゃあ僕はそろそろ帰るから、鶴見さんもあんまり晩くならないよう――っ」
「あっ――! 先輩ちょっとまってくださいよ先輩先輩先輩先輩先輩」
連呼しながら芽衣子は四有の腕にだきつく。
「そんなに何回もいわなくても待つよ。なに?」
「こ、これです。これをうけとってくださいっ」
突き出されたのは、赤の紙で包装された箱だった。
可愛らしいピンクのリボン。
これは……っ。
「ごみ?」
「違いまあ――すぅっ!」
「さっき鶴見さんがなげすてたのに似てるから……」
「あれは真実ごみですけどこれは違うんですわたしのいわゆる愛の結晶なんですっ」
「愛の結晶……かっこいいね」
「まじめに聞いてくださあ――いっ! これはチョコですっ」
「チョコ。なるほど……ん? それ僕にくれるの?」
「もちろんですっ」
「……あれ? 僕チョコ食べたいなんていったっけ?」
四有がすごく眠たそうな表情で首をかしげた。はて。
「きょうは二月の十四日ですっ」
「しってるよ」
「つまりバレンタインデーなんですっ」
「……っ! ああ、そっか、忘れてた」
「うきゃ――っ!?」
芽衣子が昔の漫画みたいにこけた。
「大丈夫?」
「そっくりそのままその台詞を先輩にかえしますっ!」
「僕は大丈夫だ」
「それは錯覚ですっ!」
「そっか……じゃあ僕は大丈夫じゃないよっ」
「いばらないでくださいっ!」
はあ、はあっ……。
あまりのつっこみの連続に、芽衣子の呼吸が調わない。
「つまり、わたしは先輩がだいすきだからどうかこのチョコをだまってうけとりやがれっ!」
「そういうことならありがたくいただくよっ。……え? 僕のことがすき?」
「だいすきですっ」
「つまり、つきあってください、ってこと?」
「違いますっ! 結婚してくださいっ!」
大事なステップを何個もぶっとばした告白だった。
「返事はまた今度で結構ですっ! それじゃあ失礼します失礼しますっ」
そしてそのまま、鶴見芽衣子は去った。
遠慮を忘れた力強い足音がとおざかる。
手には、赤い箱。
委員の眼鏡の女子を、四有はみた。彼女もぼうぜんとしている。
「プロポーズされてしまいました……」
「……は、はあ……っ」
なんだこいつら。
彼女の感想はその一言に尽きた。
箱の中身は、六個の四角いチョコレート。
四有は自宅の自室で、それをひとつつまみ、口内にいれる。
かむ。
もちろん甘かった。
なにか、果物の果肉の破片みたいなモノがはいっている。
それもかむ。
「……、む?」
なんだろうこれは。
この感じは……経験が、あるような。
そう。
それをかんだとき。
古びた十円玉をなめたような、妙な錯覚を起こした。
「ふんふふんふ――ん、ふふふんふふ――ん」
バスルームには鼻歌と、打つ水の音が響いている。
芽衣子は上機嫌だった。
ただ全身に水をあびながら……。
包帯から解放された、おのれの左手を、みつめる。
「先輩、先輩、四有先輩四有先輩しうしうしうしうしう先輩先輩先輩先輩先輩っ」
嬉しい。
先輩の内側にはいれたことが。
これでわたしは先輩の一部だ。確固たるつながりを感じる。
右手には、ナイフをにぎっていた。
待つだけだ、あとは、待つだけだった。
三月の十四日。
「ふんふ――ん、ふんふふ――んっ。……ああ楽しみ、楽しみ、楽しみ」
この鈍痛さえもいまは愛おしい。
痛み在ってこそ、先輩とつながっていると、そのことの証明。
「あははっ。あは、あはは、あははっ」
うっとりと。
芽衣子はずっと、みていた。
第二関節から先が欠落している小指を、ずっと。
ずっと。
ここでおしまいです。
ところでぼくの少ない自慢のひとつに、お母さん以外からバレンタインデーに
チョコをもらったことがない、というのがあります。
ありがとう母さん……っ。
そしてあびゃばばばっ! カップルしねっ! げへへ……。
奇遇だねw
やべえ、ヴァレンタインネタなんてカケラも用意して無かったよ。
流れ切っちまって、叩かれねえかな……。
>>160の続きです。
柴田君が、落合さんと教室を出てもう、30分近く経ちます。
保健委員として名乗りをあげた時、はっきり言って私は、今度こそ彼と仲直りをしよう、そう思っていたんです。
でも、でも、やっぱり、柴田君が選んだのは、保健委員の私ではなく、副委員長の落合静香さんでした。
今頃、どこで何やってるんだろう……。
あの落合さんが、柴田君を保健室まで連れていって、素直にUターンして帰ってくるなんて、絶対に有り得ません。
やっぱり、二人で……あんな事や、こんな事なんかも……。
ああああ、何でこんな事になっちゃったんだろう!!
分かりません! 分かりません!!
たった一ヶ月前までは、私と柴田君は、誰はばかる事の無い彼氏彼女でした。
朝は迎えに来てくれて、おしゃべりしながら登校して、ついでに手なんか握ったりして、
休み時間にもおしゃべりして、お昼休みに私の作ったお弁当食を一緒に食べて、
授業が終われば、おしゃべりしながら下校して、やっぱり手なんかつないだりして、そのまま少し遠回りして私を家まで送ってくれる、
そんな、高校生にしてはちょっぴり奥手な、でもどこにでもいる、そんな普通のカップルだったはずなのです。
幸せでした。
その頃の私は、確実に、とてもとても幸せでした。
でも今は違います。
今の柴田君は、もう、私に近寄りさえしてくれません。
さっきもそうでしたが、私が話しかけても、怯えた眼をしてすぐに行ってしまいます。
ああ、あの眼!
何故、柴田君は私をあんな眼で見るのでしょう!?
あんな…恐怖に染まった、私と会話している事すら、誰にも見られたくないかのような拒絶反応!
――死にたい。
そう思います。
でも、今死ぬわけにはいかないのです。
今、私が死んだら、一番喜ぶのは他でもない、あの落合さんだからです。
柴田君は、少しは悲しんでくれるとは思いますが……。
あの落合さんを喜ばせるような事は、何一つしたくはない、それが今の私の、紛れも無い心境なのです。
私が彼女に対して、ここまで害意を持つなど、以前では考えられませんでした。
落合さんは一時期、私のもっとも仲のよい友達だったのですから。
正直言うと、今でも、この現実と、自分の心が信じられません。
でも、でも……!!
それでは、この私――山口由利――が、何故ここまでの心境を持つに至ったか、その過程を、順を追って、皆様にお話してゆきたいと思います。
そもそも私は、この1−Bというクラスに友達がいませんでした。
ここは中高一貫教育の、名門大学の付属学校。
高校受験の段階で途中編入してきた私にとって、周囲のクラスメートたちは、かなり敷居の高いものに思えました。
私にとっては初対面でも、他の人たちは(特に女子は)、すでに4年目の学園生活という事になり、かなりの範囲で、それぞれの人間関係を確立させておられます。
そんな中に、私のような地味で内気で、人見知りの癖がある女子生徒が入り込むのは、かなりの勇気がいる事でした。
案の定、四隣の席の誰とも友達になれず、気が付けば、4月も後半になってしまっていたのです。
そんな時、私に話しかけてくれたのが、その当時私の前の席に座っておられた落合さんだったのです。
落合さんは、結構クラスでも目立つ側の女子だったので、名前は覚えていましたが、実際お話したのは、その日が初めてでした。
――というより、“スポーツ万能の元気なボクっ娘”である彼女は、実はかなりのオタク女子であった私にとって、とても気になる存在であり、一度は会話してみたかったクラスメートの筆頭だったのです。
彼女は気さくで活発で世話好きな、でも少し単純な、本当にいい方でした。
内気で、地味で、家に帰ればBLモノのマンガなんか描いたり読んだりしている私と、陽気で、元気で、運動神経抜群であちこちの体育会系部に助っ人に行ったりしている彼女。
そんな私たちが、何故あれほど波長が合ったのか、今から思えば不可解なほどでした。二言三言お喋りをして、さらに休み時間に、軽口を叩き合っただけで、まるで百年の知己のように打ち解け、胸襟を開き合う事が出来たのですから。
その日のうちに彼女は、私を自分のお弁当グループに紹介してくださり、その集団の一員として快く私を歓迎してくださいました。
そして私は、その集団の方々を端緒として、クラスの他の女子グループの人々とも、会話をするようになり、結果として見れば、落合さんのおかげで、私は大して苛められもせずにクラスの中に溶け込めるようになったのです。
私に対する、今の落合さんの態度から考えれば、あの頃がまるで嘘のようです。
しかし、あの頃の私には、落合静香という人間は、紛れも無く“親友”と呼んでいい存在でした。
そんな“親友”が“仇敵”と呼ぶべき、今の関係に変化していく発端となった日。
眼をつむれば、今でも思い出せます。
即ち、彼女の幼馴染みにして、義兄である彼――柴田遼太郎――を紹介された、あの日。
あの日こそ、私の学園生活を根底から引っくり返した、運命の始まりの日でした。
小、中学校の9年間こそ、ありふれた公立の出身でしたが、はっきり言うと、私は男子という存在が苦手でした。
その悩みは、歳が長じてからも解決はされず、むしろ、同年齢の男子生徒の、女子に対する下心満載の視線やら態度に、苦手意識は更に増幅されていきました。
とある休日。
その悩みを落合さんの部屋で打ち明けた時、けらけら笑って彼女は言いました。
「それは、キミが男の子を理解しようとしていないからだよ」と。
さらに彼女はこうも言いました。
「そんな事じゃ、レンアイも満足に出来ないよ。いや、それ以前に、男子を理解していないキミが、“ぼーいずらぶ”だっけ? そんなマンガを描けるのかい」とも。
(この当時、私は“腐女子”である自分を、もはや彼女に隠していませんでした)
私はその言葉に、ぐうの音も出ませんでした。
そんな私を、いたずらっぽい瞳で見ると、
「じゃあさ、ボクがイキのいいのを何人か見繕ってあげるよ。キミだって、このままじゃいけないって、危機感ぐらいはあるんだろう?」
『やらハタ』とか『負け組』などという言葉が横行する現代です。私だって、このまま二次元人とばかりコミュニケーションを取っていてはマズイ、ぐらいの意識はありました。
ちょっと恐いですが、クラスどころか学年単位で男子に顔が利く彼女なら、私の偏見を覆す“紳士”を紹介してくれるかも知れない。そう思ったのです。
その時でした。
落合さんの部屋のドアの向こうから、
「お〜い、しずちゃん、オマエ晩飯の買出し行ったんか?」
彼女は真っ赤になって、
「ちょっと遼くん! 人前では“しずちゃん”って呼ぶなって、あれほど言ったじゃないかぁ!!」
「何言ってんだよオマエ、それは学校行ってる間だけだろ?」
というドア越しの声に、落合さんはさらにイラついたのか、がばっと座椅子から立ち上がり、ドアを開けて怒鳴りつけました。
「だから、学校の友達がいる時も、だよ!!」
部屋のドアは外開きでしたので、彼は、いきなり開いたドアに、マンガみたいに顔面をぶつけて、うんうん唸っていました。
「いや、もうダメ! 怒った! 今日からその呼び名、全面禁止ね! 南海キャンディーズみたいでカッコ悪いから、もう絶対にやめてよね! 分かった!?」
「だって、しずちゃんはしずちゃ――」
「分かったら返事っ!!」
「はい!」
「よぉし、なら行ってよし!」
そう言って、叩きつけるようにドアを閉じた彼女の表情は、依然として耳まで真っ赤でした。
その時、私は数秒ぶりに思い出しました。
落合さんのファーストネームが“静香”であった事を。
(ああ、だから、“しずちゃん”なんだ……)
さらに、ここまで取り乱した彼女を見るのも初めてだという事に。
興奮冷めやらぬのか、まだ肩で息をしている彼女に、私は尋ねました。
今のは誰だと。
彼女は、一瞬あんぐりとしていましたが、
「誰って、キミ、クラスメートの顔も憶えてないの?」
まあ、実を言えば、その当時の私にとって、三次元の男性はまだまだ記号上の存在だったので、クラスの男子の顔と名前などほとんど一致しませんでした。
落合さんは、そんな私を見て、
「重症だね」
と苦笑しました。
私はその日、落合さんの部屋で、初めて彼の個人情報を知る事になったのです。
彼の名は、柴田遼太郎。
彼女の家がある、この分譲マンションの一つ下の階に住む、幼馴染みだそうです。
“幼馴染み”! ああ“幼馴染み”!! 腐女子の琴線をくすぐる、この響き!
さらに柴田君は、落合さんの義理の兄でもあるそうです。
詳しい事情は語ってくれませんでしたが、事故で両親を亡くし、天涯孤独になった彼と、その事故の後遺症で未だに入院中だという妹さんを、落合さんのお父様が、養子として引き取ったんだそうです。
彼としても、階下に自宅があるのですが、養父として、法的にも自分たちの面倒を見る覚悟を決めてくれた、落合家のお父様に対する配慮か、滅多に自宅には帰らないそうです。
で、学年上は一緒でも、誕生日的に柴田君が、落合さんの“兄”になってしまった、と。
“お兄ちゃん”! ああ“お兄ちゃん”!! しかも、しかも非血縁ですよ!!
同級生にして、“幼馴染み”さらに“お兄ちゃん”! そんな人が“ボクっ娘”の家に同居しているなんて!!
まるで、二次元ドリーム文庫の世界じゃないですか!?
すごい。やっぱり落合さんはすごい。
私は素直にそう思いました。
そして当然、私の興味は落合さんに留まらず、柴田君にまで及んでしまったのです。
後から思えば、彼女にとっては、これは計算外の痛恨事だったに違いありませんでした。
私が彼に興味を持った事がきっかけで、柴田君自身も私に興味を抱いてくれる結果となったのですから。
今回は、こんだけです。
>>248GJだぜ!
血の一滴も入って無いチョコは本命チョコとは呼べないよね!
>>255 いいとこで切られた・・・・
だがGJJJJJ
続きが気になる!!!!!
>>255 落合さんはこれから徐々に病んでいくのかな。期待ー。
あとお前らバレンタインデーが近いからって興奮しすぎ。当日までに干涸びるぞwww
それでは投下します
「はぁ〜〜……どーしよ。」
「ダメだよ、海斗君!私たちの愛の……じゃなくて、妹さんの兄離れのためだよ!」
「先輩がこの状況を作ったんですよ?」
「こうでもしないと進展が無いよ。」
放課後。僕はまた部室で溜め息を付いていた。家に帰ってどう言い訳をするか考えるためだ。ぶっちゃけ、なにも思い付かない。僕が悩んでいる間、先輩はずっと何かをスケッチしていた。
「……先輩、何かいてるんですか?」
「えっ?あぁっん、だめぇ!」
ひょいっとスケッチブックを取り上げると、先輩は色っぽい声を出す。ちょっと僕も反応してしまったが、先輩が届かない所に持ち上げる。
「これって……」
「うぅ……」
スケッチブックには、机に座り、頭を抱える男子が描かれていた。……この状況で絵のモデルになるものは……
「先輩、これってもしかしなくても僕ですか?」
「うぅっ……」
先輩は涙目のまま、小さく呻いて頷いた。あー、すっごいかわいい。先輩っていじめ甲斐あるなぁ。もっといじめちゃお。
「先輩、この間も僕を描いてましたよね。なんでですか?」
「え、えと……だって……」
「だって?」
「その……か、海斗君、絵にしやすいから……」
「……はぁ?」
喜んでいいのかわからない答えが返ってきて、少し戸惑う。
「スキありぃ!」
「うわっ!」
返事を考えているうちに、先輩にスケッチブックを取り返されてしまった。先輩をそれを大事に抱えると、僕を睨んできた……睨むといってもかわいいだけだが……
「海斗君!女の子……特に美術部にとって、これは自分の心の中なんだよ!?それを勝手に見るなんて、デリカシーがなさすぎます。」
「……はい。」
人差し指を立て、頬を膨らます。先輩。恐らく、「怒ってますよ」見せたいんだろうけど、やっぱりかわいいだけだ。あー、抱き締めたい。
「ほらほら!早く帰らないと、妹さんに殺されちゃうよ!」
「あっ!やべっ!」
時計を見たら、もうホームルームが終わってから三十分も経っていた。本当に殺され……はしないだろうけど、説教が厳しくなる。
「じゃあっ!先輩さよなら!頑張って説得してみせます!!」
先輩の返事も聞かず、僕は部室を飛び出した。
「ばいばい、海斗君……」
海斗君、走って出ていっちゃた……むぅ、ちゃんと顔を見てさよならしてほしいのに。……妹さんのせいでちゃんと挨拶してくれなかった……
「海斗君……はぁ……」
先程まで海斗君が座っていた椅子に座り、机に顔を伏せる。海斗君のぬくもりがまだ残ってる。机には海斗君の匂いが……
「あん……」
やだ、もう濡れてきちゃった。帰ったら着替えなくちゃダメかな。椅子も拭いて帰らなくちゃ。
自分のスケッチブックを机の上で広げる。最初のページからゆっくりと見ていく。笑ってる海斗君、悩んでいる海斗君、真剣な顔の海斗君、眠そうな顔の海斗君。
たくさんの海斗君がスケッチブックにいる。全部のページに海斗君がいる。もう2、3ページしかない。
「はふぅ〜」
海斗君専用スケッチブックもこれで八冊目。海斗君と出会ってから描き始めた私の宝物だ。これを描いてる途中でオナニーしちゃうからペースが遅いけど。
「あ…ん……」
もうダメだ。我慢出来ない。早く帰って海斗君でオナニーしたい。今日はどの海斗君に犯してもらおうかな……でも、もう想像の海斗君じゃ我慢できないかも……
「まだ帰ってこないの……お兄ちゃん……」
まださっきから時計を見て二分しか経ってない。早く帰って来るように言ったのに、どこで道草を……
「っ!ま、まさか、あの女にぃ……」
今日の昼休みの事をおもいだ思い出してしまった。極力忘れようとしてたのに……
『私、海斗君と付き合ってるんですよ……』
キチ〇イの戯言を真にうけるわけがない。あんな学園一の美人だとが持ち上げられていい気になってる雌に、お兄ちゃんが釣られるわけがない……
「あの……アマ……」
悔しいけど、あの雌は面だけはいい。それを認めるのは癪に障るが、どうせそれだけ。頭の中はお花畑だ。お兄ちゃんならそれを見抜いてくれりはずだ。
「でも……」
実際お兄ちゃんが早く帰って来ないのに、心がざわついている。私はホームルームが終わって、掃除もさぼって帰って来たのに、お兄ちゃんは……
「ああっ!もうっ!あの女がお兄ちゃんをぉぉっ!」
パリン!
また怒りで頭がいっぱいになり、皿を割ってしまった。床中に皿の破片で散らばっている。私の足にも少し刺さっている。
「た、ただいまぁ〜」
「お兄ちゃん!?」
玄関からお兄ちゃんの声が聞こえた。私は喜びと怒りが混じったまま、お兄ちゃんを迎えにいった。
以上です。
相変わらずこのスレはノビが早い。
>>264 鬼ごっこキタ━━(゚∀゚)━━!!
先輩も妹も可愛すぎ(*´Д`)ハァハァ
おお鬼ごっこの続きが来た!
GJ
鬼ごっこキタァー(゜∀゜)ーー!!!!
というわけで投下を致します
第23話『果たされる約束』
「月ちゃんと一緒。ずっと、一緒。一緒にいようね」
音羽は蔓延なる笑顔を浮かべて幸せそうにその言葉を呟いている。
俺は『親父の靴下の匂い』で気絶させられてから時間はそれなりに経っている。
周囲を見渡せば見慣れた我が学園の体育館倉庫のマットに俺は両腕両足を拘束されて仰向けに倒されている。
その上に音羽がしっかりと抑え込むように体重をかけて抱き締められていた。
どうやら、気絶した俺を運ぶのは女の子の力ではここに運ぶ事が限界だったのだろうか。
学園内に俺は音羽によって閉じこめられている。彼女は少しだけ俺を独占できる状態にして必死に甘えている。
俺は反抗することもできずに、ただこの屈辱を絶えていた。
「う、嬉しいよ。嬉しすぎるよ。つ、月ちゃん月ちゃん」
何が嬉しいのか全くわからない。音羽の行動はすでに異常を遥かに通り越して、常人には全く理解できない世界へと飛んでいる。
俺はただ心が音羽の狂気に呑み込まれないように絶えることしか出来ない。
「つ、月ちゃん。好き。大好き。誰よりも好きなの。だから、いいよね?」
何がだ。
その言葉の返事を待たずに音羽は俺の頬を舐め始めた。
彼女の柔らかい舌の感触が俺の頬に感じるのは生暖かさと貞操が襲われる危険だった。
だが、音羽は狂ったように自分の唾液のついた舌を俺の頬に付けることで自分の所有物だと主張する。
それがどんなに身勝手でも狂った人間には何の関係もない。ただ自然に相手をどこまでも依存できる気持ちが
上回っているので正常な思考はすでに失われて、本能に忠実に動いていた。
天草月を自分のモノにする。
天草月に好きになって欲しい。
天草月に愛されたい。
天草月に抱かれたい。
そのためには音羽は自分が月にご奉仕する事で得ようと考えているのだ。
やがて、両方の頬が音羽の舌で濡れてしまうと今度は俺の唇を躊躇なく奪う。
それはキスと呼ばれる行為なのだろう。欲情に満ちた瞳が極上の喜びのように輝いている。
問答無用に口内に彼女の舌が侵入してくる。そこに快楽という言葉が待っていた。
頭を痺れさせる甘美な感覚が体を全体を襲う。このまま、音羽に全てを捧げたく気持ちになるが、俺は寸前の所で理性を抑える。
これは単に恋愛や純粋な行為ではない。
立派な凌辱だ。これ。
音羽の唇が俺の唇を離れるとその間に唾液の糸が繋がって落ちる。
音羽はその光景が嬉しいのか、優しく微笑する。
「月ちゃん。夜は長いんだよ。一晩あれば月ちゃんを私のことだけしか考えられない体にしてあげる。
誰よりも私のことを想ってくれる人になって。今まで寂しいかった日々は今日で終わるんだから。
これからは月ちゃんとずっと一緒だよ」
ヤンデレ症候群に感染した女の子は大好きな男性を同性から遠く引き離して男性を洗脳するというのを聞いたことがある。
段階的に徐々に進行速度は早まっているが、俺が音羽に拒絶した時に殺されなくて良かった。
この病名の症状は医学界で発表された論文って全くアテにならん。責任者出てこいー。
だが、付け入る隙はきっと存在しているのだ。俺が音羽に殺されなかった理由は偶然に
俺が音羽を心配して気遣ったところを見せてしまったのが原因じゃないかと。
恋する女の子は思い込みが激しい。とことん激しいのだ。
それはあらゆる意味で精神的な病を患っているのに等しい。
ならば、いくらでも手はある。
「お、音羽。俺に蹴られたお腹は大丈夫か?」
「こん?」
今まで行為に夢中になっていた音羽が俺の声に反応してぴたりと止める。
俺の顔を見つめながら、心配してくれた事が嬉しいのか優しく微笑して言った。
「月ちゃんの体に触れているから、そんなことは忘れちゃったよ。ありがとう。私のことを気遣ってくれて」
「本当にごめんな。傷つけてしまって」
「そんな。そんなことないですぅ。月ちゃんを襲おうとした私が悪いんです。月ちゃんは何にも悪くないの」
「いや、俺が……」
「月ちゃんに復讐するって宣言した天罰なんですよ。きっと。月ちゃんにいくらでも暴力を振るわれてもいい。
どんなに酷い目に遭わせられても、月ちゃんになら平気。平気ですから。
だから、私の傍にいてください。どんな時でも。お願いします!!」
悲痛な叫びと共に抱き締められている腕の力が強く込められた。音羽は涙目になって、俺は純粋な眼差しで見つめている。
「もう、独りぼっちは嫌なの」
独りぼっち。
その言葉が俺の胸に深く突き刺さった。
両親が俺の誕生日プレゼントを買いに行った時に交通事故を起こした夜の事を思い出した。
ただ、両親の帰りを待つために独りぼっちの夜を過ごした。恐怖と不安。寂しさが今でもトラウマになっている。
だから、音羽の気持ちは理解できる。
けど。
「だったら、放してくれないか。俺も音羽が一人じゃないよと抱きしめてあげたい」
「月ちゃんっっ!!」
音羽が歓喜の声を上げる。急いで俺の体から離れて、拘束した両足両腕に結ばれた縄を解いた。
音羽は完全に俺が心を許したのと勘違いしていたかもしれない。
少し甘い声を出して、音羽を気遣う言葉をかけるだけで彼女は油断してしまっていた。
拘束を解かれると俺は音羽を突き放して体育館倉庫の扉に向かって走る。
急いで、ドアを開けると音羽の泣き叫ぶ声が響いた。
「月ちゃん。月ちゃん。行かないでぇぇぇっぇーー!!」
「ごめんな。俺はお前のモノになれないんだよ」
そう言い残すと俺はYダッシュで駆ける。
決着はこの月夜が輝く場所こそが相応しい。その居場所に誘導するために後方から追い掛けてくる音羽の足に合わせて、
俺は屋上に向かって校舎の中に入った。
月は虚空にて夜の暗闇を打ち消すように明かりを照らしている。今宵の月はとても綺麗に輝いているように見えた。
屋上は夜風が気持ち良く吹いている。もう、季節は夏から秋へと移り変わっていたのだ。
少し肌寒さを感じるものの、俺は屋上に続く階段から足音が聞こえてくる追跡者を待つ。
準備に怠りはない。
今日という一日でヒントをいくつか掴んでいる。
この事態を通り過ごす自信は今の俺にあった。
「つーきーちゃーん。つーきーちゃーん」
ようやく、屋上に登ってきた音羽は息を切らして俺の名前を叫ぶ。
虚ろ瞳をして、先程の天使の笑みが嘘のように今は怒りの表情を浮かべている。
「私を騙していたの? 私の心を玩んでいた。そうなんでしょう」
ナイフを右手に、左手にスタンガン。隠し持っている武器『親父の靴下の匂い』と完全装備している音羽が喋ると同時に近付いてくる。
入り口は音羽の後方にあり、俺の背後にあるのはフェンスだけ。すでに逃げ場所はない。
俺を殺そうとする殺意が少し距離が離れていても敏感に感じることができる。
ついにヤンデレ症候群の最終的段階まで症状は進んでいるのであろう。
女の子は想いを受け取ってくれない男の子が自分のモノにならないと認識すると殺してしまう傾向にある。泥
棒猫を優先的に殺すのだが、最終的に想い人を殺してしまう。
惨劇は神様が楽しむために用意されている。その不幸の最後は天草月の死で未来は確定されているのであろう。
だが、そうは行かない。
「俺は誰かを好きになったことがないんだ。でも、こんな風に人と人が一緒になるのは間違っていると思うんだ。
音羽が両親を失ってから孤独の人生を送っていたのは痛い程わかった。
俺も独りぼっちだったから。余計にな」
「そうだよ。独りぼっちは寂しいんだから。とってもぉぉ!!」
「音羽の想いを受け取れない。鷺森音羽だけの天草月にはなれない。
いくら、幼なじみ同士でも踏み入れてはいけないとこに触れちゃいけないんだ」
「どうしてぇ……。どうしてなのよ。そんなに水澄虹葉や紗桜ちゃんがいいってこと?
幼い頃のあなたを無視して苦しませた連中が私よりもいいってことなの!?」
「虹葉姉や紗桜は俺にとっては大切な人なんだ。どちらがいいなんて天秤に測る真似はしたくないし、音羽も同じぐらいに大切に想っている。
でも、答えなんて決められない。ただ、今流行のヤンデレ症候群に感染して自分のモノに入らないからって、
身勝手に相手を殺すのは俺の一番大嫌いな事なんだよ。
命の大切さは誰よりもわかっているつもりだから。音羽だって両親を亡くしたらわかるはずだろ。
大切な人が消えてしまうのはとても簡単なんだよ!! 誰かを失った痛みをどうして理解しようとしないんだ!!」
久しぶりにキレて俺は音羽に思い切り怒鳴ってしまっていた。さすがの音羽も尋常のない俺のキレ方に驚いて怯えていた。
そうか。俺はヤンデレ症候群の感染者がとても大嫌いだったんだ。
語っていく言葉でその事がはっきりとわかってしまったんだ。
「うふふっっっ。月ちゃんがそこまで私を否定するなら月ちゃんを私の一部にしてあげるよ」
狼狽えているのは数秒だけ。音羽は俺に向かって走りだした。ナイフとスタンガンの二刀流の凶器を躱すことはさすがの俺でも難しい。
ただ、相手の攻撃を防御するだけで勝つ事ができない。
攻撃こそ最大の防御。
俺も音羽に向かって駆け出す。彼女は俺の奇抜な行動を予想していなかったのか、
少しだけ動揺していた。その数秒が勝負の明暗を明けた。
俺は更に加速して、音羽へ向かう。
今日は恥辱を受けた。
紗桜と虹葉姉のブラが外れた騒動を思い出す。もし、その騒動に巻き込まれてなかったら、こんな技を生み出すことはなかっただろう。
音羽の正面を軽く通り抜けて、背後の背中を狙う。
「秘儀 ブラジャー外し!!」
右手の手刀が見事に音羽の背中に炸裂する。
パチン。
音羽のブラジャーのホックが外れる音が暗闇の中に響き渡ったのだ。
「はぅぅぅぅ」
虚ろな瞳からすっかりと正常な音羽の瞳の輝きを取り戻して、顔を真っ赤にしていた。
「何するんだよ月ちゃん。ブラが……取れちゃったよ」
「ふふふ……。俺の完全勝利」
「うううっ……今すぐ付け直して。早くしてよっぉぉぉ」
「いや、付け方知らないし」
「は、恥ずかしいんだからね。特に好きな男の子の前じゃあ」
いや、それは知らなかったが。音羽は羞恥心一杯で頬を朱に染めながら正常心を失っていた。
ヤンデレ症候群に感染したのと関係なく、女の子にはいろいろあることを想い人に知られるのはかなり恥ずかしいという心理が優先されるらしい。
「じゃあ、これを見て」
俺は制服のズボンから取り出したのは紐を通した5円玉であった。それを宙に釣らすと振り子のように動かした。
「み、見るわよぉぉ」
「よし、ちゃんと5円玉の動きをよ〜く見てろよ。音羽はだんだんと眠たくなる。きっと、眠たくなる。必ず、眠たくなるなる」
「こ〜ん」
TVの特集番組で見た催眠術をそのまま音羽に仕掛ける。
ヤンデレ感染症候群に感染した女の子は思い込みがとことん激しい。
その習性を利用して、俺は音羽に催眠術で全てを解決する。
「あなたはヤンデレ症候群に感染した患者じゃない。病院で復讐宣言した出来事から今度目覚めたときはすっかりと忘れること。
後、両親を失った悲しみも忘れる
はいっ。」
手と手を叩いて、5円玉を揺らすのをやめた。これで今まで起きた事は綺麗さっぱりと忘れている。
「月ちゃん。私はどうしてここに」
よし、催眠術が見事に成功した。心の中でガッツポーズを取ると俺は何事もなかったように言った。
「ほらっ。今まで俺達の昔話をしていたんだよ。音羽は途中で文化祭の準備の疲れでしばらく寝ていたんだからな」
「そういえば、そうだったような気も」
よし、上手く誤魔化せた。催眠術が思わない所で本当に役に立ってくれた。
俺は音羽の頭を優しく撫でると音羽は嬉しそうに微笑んで言った。
「月ちゃん。私、月ちゃんと約束した事があるんですけど。月ちゃんは一緒に居てくれますよね?」
初めに戻る。以降、エンドレスですか?
ヤンデレ症候群が再発したら、また催眠術を使おう。
俺は心に堅く誓った。
音羽ED 『エンドレスヤンデレ』
NEXT STAGE 『水澄姉妹シナリオ』
というわけで音羽編は無事に終了しましたっ
てか、かなり中途半場な所で終わってしまいましたが、
月の謀略で屋上から飛び降り自殺偽装で死ぬよりは
後々に思わぬところで使い道があるかもしれませんね
次回からは一応『水澄姉妹シナリオ』を予定しております
更新は『水澄の蒼い空』を書き終えた時にしようと思います
ようやく、今書いている分から数えて
後、5話で『水澄の蒼い空』で書き終わる予定のはずです
一日一話で書き終えたら良しw
それから、新作の着手に入る予定です
後、このエロパロスレって性的描写はどこまで許されていましたったけ?
念のために聞いておきます
>>264 鬼ごっこキタ━━(゚∀゚)━━!!
私は先輩大好き派ですw
>>273 お!?濡れ場欲しいって書いてみるもんスね。無茶なグロ描写が無ければライトからヘビーまでドンと来いー。
276 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 02:27:35 ID:31uF1T3S
なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?
音羽編の結末はそうきたかぁっ!(ドロドロEDだと思ってた)
脱力したがGJ!!
投下ラッシュキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
神々の皆さんテラGJ!です
>>273 そりゃもう18禁(20禁だっけ?)なのですから、嫉妬修羅場による鮮血の嵐から
激しいエロスまでほとんどおkですよ
音羽が独占欲をキープしたままほのぼのとした雰囲気で結末を迎えて良かった
>>264 鬼ごっこキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
キモウト可愛いよキモウト
ブラジャーには突っ込み入れないのかよww
___ \ 全世界のもてない男たちを / / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/L, | \ \ 救済するため作り上げた / /⌒ヽ | バレンタインとは
./ ト、└L, | jJヽ \ 秘密結社!! /:: | ▽| ∠ そもそも
ハ | \ しlv┘/|! \ その名もステキ /:: ノ⌒ヽ/ | なんであるか
| 'ゝ\__> l / ノ| \ 『 し っ と 団 』 / , -/ , 、_ `‐-‐、 | 杉野!!
/| '⌒〜-イl、`ー ´(| \ /::: / '''´ { 、 ヽ \______
/ .| ,' `¨⌒/ ∧∧∧∧∧ :::: ノ ヾ | ,ハ`''"〈
/ |ヽ. ,' ∠-―- 、 < し >:::: ( 人 } イト、 )
/ ||\__,/__, <__ >ー< 予 っ >::::::::: ヽ、ヽ| j ハ 〈
──────────────<. と >───────────────────
,人,ノヽ 〈与えねばなるまい< 感 団 > ゝ しイ \ そう!!これは
人ノ ,. ! 〉 アベックどもに ..< > ___|__ _) て <天に代わって悪を討つ
,ノ' / | (| \ 天罰を!! <. !!!. の > || 'っ h ´__ / 正義のわざ!
,/,/l ! ム|  ̄`――――/ ∨∨∨∨∨ \ ||l l l \咢)P!  ̄|/\/\/\/\/
/,/ / | (_,| / ワレらの \ / ,ゝ__r┘ < 決して私怨から
/゚ / / /| / 目標わ!! \ 」 )‐<\ < でわない!!
´三:"/ フ| / バレンタイン2月14日! \ 厂丁ト、l_ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨∨
 ̄ ̄ <, | / 悪のアベックどもに \ 〉 | | |::ト、 _|\/\/\/\
へ(⌒ヽ厂 | /正義の鉄槌を下し 根だやしにすること!!\ } } ハ 〉{_7、\ 聖 戦 だ ! !
ヤンデレと嫉妬の境界がわからなくなってきた俺には関係なく楽しめるぜ。
さて、ヤンデレスレにイラストが大量投下されたわけだが
うらやましいっ!!!!!!!!!!!!
ヤンデレ=女が嫉妬に至る過程
嫉妬=修羅場
ほのぼの純愛=嫉妬女に屈した主人公の末路
時系列ではヤンデレ→嫉妬→ほのぼの純愛となるのかな
嫉妬スレも絵師が欲しいよな
毒メグ氏が居るじゃあないか。
あの人の修羅場好きっぷりは異常
無論ファンですか
絵師って全部で何人だ?
画廊見たら6〜7人ぐらい?
ヤンデレスレは大繁盛ですねww
ここはついに寂れてきた・・終焉がやってきたのじゃあ!!
『終わりだ』宣言も、もはやここの名物になってきた悪寒。
>>287 今は投下ラッシュ後の休憩時間中ですが、なにか?
投下ラッシュすらなくなったよ
嫉妬よりも時代はヤンデレだぜ
はいはい、NGNG
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー、荒らしの相手をする人も荒らしさんの仲間入りです
※特に『日本語がおかしい』『追放』『終焉』と言っている人は、
自分の日本語と頭の方がおかしい荒らしさんです。必ずNG登録かスルーしましょう。
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(
ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
テンプレの荒らしの所を修正してみた、次回からこれでよろ
ヤンデレスレも嫉妬スレも両方楽しむのが普通だろ・・
常識的に考えて・・
SSスレのお約束
NG登録推奨作家一覧(彼らは日本語おかしいからスレの住人から追放処分を受けた)
◆AsuynEsIqA
赤いパパ
トライデント
ロボ
◆n6LQPM.CMA
◆U9DQeTtJII
幼馴染
◆6xSmO/z5xE
◆zIIME6i97I
◆y5NFvYuES6
◆pmLYRh7rmU
◆/wR0eG5/sc
◆wGJXSLA5ys
◆XAsJoDwS3o
◆U9DQeTtJII
◆/qHTzufVAQ
◆gPbPvQ478E
ロボ
◆jSNxKO6uRM
◆8BVPwsPs7s
◆YH6IINt2zM
◆tVzTTTyvm.
シベリア!
◆j6xIfCOdTc
◆AuUbGwIC0s
◆RiG2nuDSvM
◆z9ikoecMcM
◆SNU1m8PwXY
◆rgG2t.iTew
◆yjUbNj66VQ
くるっく
◆yjUbNj66VQ
◆rgG2t.iTew
◆I3oq5KsoMI
ID:wqENW/Bk
◆gPbPvQ478E
◆855esSIgqY
その他たくさんです
スルーだろ
>>294 面白い作品を書いてる人の一覧をあげてくれるとは、なんて親切な奴だ。
保管庫行った時の参考になるな。
298 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 19:50:28 ID:Z5xkxkbD
泥棒猫を確実に始末するための準備期間なんだよ。
もうすぐバレンタインだから雌猫が寄り付かないようにしなくちゃいけないし。
>>294 という訳で貴様の役割は終わった。
以後このスレに立ち寄る事を禁ずる。
口に銃口咥えるか尻をフォモに差し出すか好きな処分を選べ。
いちいち反応されるのもイヤだしそっとしておいてやれよ。
シベリア!さんをリスペクトしていますので、早くシベリアさんが投下し易い雰囲気に戻って欲しい。
あとリストは保存庫のコピぺだろ?重複してるぞ
>>282 いや、ヤンデレはあくまでキャラクターに依存する性格の属性。
修羅場は作品の一場面を形作るシチュエーション。
でないか。
病んでなくても修羅場は発生するし
ライバルがいなくても病むヒロインはいるね
確かに重なることが多いけど
日本語おかしいお化けの彼は、まさか本気で効果があると思って毎日毎日やっているんだろうか
視野狭搾とかマジヤンデレだわ
>>304 デレってない、デレってないってば!(汗
あれはただの病気。
アク禁って出来ないんですか?
愉快犯のつもりなんだろうね、きっと
愉快そうな脳みそ持ってるみたいだし
リアルで頭がおかしくなった男の事なんて考えたくない。
恋愛で頭がおかしくなった女の事を考えていたい。
RedPepperまだかな・・・
二月の中頃ぐらいに投下出来るかもって最近言ってたろ
週末に投下することが多いから気持ちはわかるが
311 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 23:07:22 ID:YssC75FR
俺は気づいた。いつもいつもトライデント氏やら誰やらを誹謗中傷し、嫉妬スレから追い出そうとしているヤツの目的を。
あれだ。いつだったか、嫉妬スレじゃなくて、ヤンデレスレに投下すればいい、なんてことを言っていた。
つまり――
彼、あるいは彼女、あるいはナニカは、嫉妬スレに嫉妬するヤンデレスレの住人、あるいはヤンデレスレそのものだったんだよ!
やべ、俺天才じゃね? これはもう、正か……む、誰か、き
>>311 正解に近いけどハズレだよ……クス
私はナナシ君のことがずぅっとずぅっと好きでいつも後ろから見てるのに…
ナナシ君たら修羅場ちゃんやヤンデレちゃんばかり見てるんだもの……
だから2人にはちょっとお仕置きを……ね。
313 :
309:2007/02/10(土) 23:27:42 ID:t4S60V2H
>>310 マジか!!こりゃ二月中旬までは死んでも氏に切れんな!
314 :
2月10日:2007/02/10(土) 23:31:54 ID:9lvngL9x
>>313 何で2月中盤じゃなきゃ駄目なの?何で私じゃ駄目なの?
みんなそう…2月14日は特別な日とか言って私なんか目にも留めない。
だけど、あなたは違うと思ったのに…私を愛してくれると思ってたのに…
愛してくれないなら、私を貴方にとって一番「特別な日」にしてあげる…。
その換算で行くと365人のヒロインと付き合うことになるな。
ちなみに2月10日ちゃんは左利きで、ニット帽が目印。好きな食べ物はふきのとうで、
趣味はキタノタケシ監督作品の観覧と、布団にもぐる事。海の安全を常に祈っているらしい。
316 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 00:11:41 ID:fR7UUWKX
365人・・・、命がいくつ有っても足りないぜ!(366個?)
2月29日ちゃんは、恐ろしいまでのレアキャラであり、むしろ全てにおいて頂点にたつ、嫉妬キャラの原点とも呼ぶべき存在――すなわち、神。
>>317 うおぉぉぉおおお!!
2月29日萌え!!!!!
>>316 つまり4年に一度、最強の嫉妬少女366日が現れるんですね!?
逆に1月1日は、常に他の日付少女よりも前に出て彼のハートを掻っ攫うまさに泥棒猫的な存在。
2月29日ちゃんも2月14日ちゃんも気になるけども、
4月1日ちゃんや12月24日ちゃんや、俺の誕生日の11月27日ちゃんの方が気になる。
しまった一人に選べてn
しかし、そんな366人もの少女を引き連れるに相応しい真の猛者は何者だろう。
きっと日付の神だ!各日付各日付に行事を決める日付の神様だ!
4月29日「ねえ、日付の神様・・・、どういうこと・・・!?
なんで私、みどりの日なんて名前になってるわけ?
私のこと、いつも天皇誕生日って呼んでくれたじゃない!
何で12月23日の事を天皇誕生日って呼ぶのよ!
その呼び方はずっと、ずぅぅぅっっっと私だけのものなのよ!!
殺してやる・・・。12月23日の泥棒猫!コロシテヤル!!
駄文すまね。
>>323 まあ、そうともいう。別名カレンダーの神という事で。うん、間をとろう。
>>315 泥棒猫には手を滑らせてハシリドコロを……
日めくりカレンダーだと伝説の間違えて多くめくるというものが・・・
そんなSSがあった場合、主人公の誕生日の女の子は最強だなwww
あの……皆様お楽しみのところ、流れブチ切って申し訳ないんですが、投稿します。
一応、時系列順に言うと
ヤマグチ編:山口と柴リョウとの出会い〜告白
柴リョウ編:告白、交際開始〜静香による拉致監禁
静ちゃん編:監禁、調教〜その後もろもろ
という順番になります。
混乱されたらゴメンナサイ。
山口さんに告白された。
「好きです。私と付き合って下さい」と。
学校の帰りに寄ったファミレスで。
最初は、またドッキリかと思った。
こんな地味な顔して、頬を赤らめて、それでいて、またドッキリ?
おいおいオマエら、何度同じ手口を使うつもりだよ。
もう、中等部時代から数えて2回目…あ、いや、これで3回目、かな?
まあ、んな事はどっちだっていい。
ってことは、あそこのカウンターで、さりげにメシ食ってるアイツもギャラリー? あっちのボックス席の窓から外を見てる、あのOLも野次馬?
いやいや、そういう事じゃないんだ。
問題はそこじゃない。
何で君なんだ。
他の奴らなら、まだ分かる。
でも、でも……、何でよりによって、君なんだ。
オレは、オレは、……結構、かなり、割と、大分、君のことが……。
そんな君まで、あいつらと一緒になって、オレをからかうのか……!!
そう思ったら、涙が出そうになった。
無論、屈辱と憤怒と、悲哀でだ。
いや、被害妄想なんかじゃない。
実際問題、オレはこの手のドッキリに関しちゃあ、ベテランだ。
勿論、騙す方じゃなくて、騙される側なんだが。
2度目の時のドッキリ(当時中三)なんか、そりゃあひどいもんだった。
有頂天になってラブレターに返事を書き、指定の場所に置いて、その手紙を取りに来る子を今か今かと張り込んでいる姿を、迂闊にも4台ものデジカメで同時に撮影されてしまっていたのだ。
さらに、女の子の1分後に現れたインタヴュアーに“マイク・パフォーマンス”ならぬ“負け犬パフォーマンス”を要求され、ブチ切れたあまり、そいつをブン殴ったら停学になってしまった。
とどめに、停学中に、オレの女の子張り込み映像(編集バージョン)がネットで公開され、停学明けにまたそのインタヴュアー野郎をブチのめしたら、今度は高等部進学がやばいぞと、担任に釘を刺され、急ぎ頭を丸めて八方謝罪に回らされる始末。
当然、怒りに震えるコブシを握り締めながら、である。
いや、話がそれたが、実際何が言いたいかといえば要するに、“女は信用できん”という事なんだ。
レイプ被害者の女性が、男性不信から立ち直れないというのは、オレにとっては他人事じゃない。
力ずくでプライドを蹂躙された人間が、他者に対して、どれだけ臆病にならざるを得ないか、オレにはハッキリと実感できる。
とにかく、オレは、これ以上付き合っていられるかという気分だったので、きっぱり断って、立ち去ろうと思ったのだが、
(――はて?)
どうも、様子がおかしい。
彼女の緊張が、どうやらリアル過ぎるのだ。
そうだ、考えてみれば、おかしな話だ。
これが、本当にドッキリなら、下級生なり、先輩なり、高等部以来の編入生なり、オレと面識の無い“面の割れてない奴”を使うべきなのに、この彼女は……、
周囲を見渡す。
周りの客が、とりたててこっちを窺っている様子もない。
「山口さん」
「はっ、はいっ!?」
緊張の余り、声が上ずってやがる。
「これ、マジでドッキリじゃないの」
「ドッ……、ドッキリっ!??」
きょとんとしてやがる。
そうだ。
そうだよ。
おれはこの子を、山口さんを知ってる。
この子は、そんなキャラじゃない。
人の思いを踏みにじって、くすくす笑えるような、そんな人外外道であるはずがない。
という事は、山口さんは本当に、本当の本当に、このオレの事を……?
そう思ったら、オレはまたまた涙が出そうになった。
無論、今度はさっきとは違う。
喜悦と感動でだ。
しかし、だからといって、その感動を支えている情報が希望的観測である事は否めない。
オレは、彼女を試してみる事にした。
「山口さん」
「はっ……は、い、……」
今度は、上ずるどころか震えちゃってる。
(これが演技だったら、オスカー賞モンだな)
オレはひたすらクールになろうとした。
慎重であるに越した事は無い。
何故ならこの手のドッキリは、標的にとって、告白者に対する思い入れが、あればあるほど効果を発揮するからだ。
オレがさっき、ドッキリならば面が割れていない奴を使うべきだといったが、あくまで作戦自体の成功率を高めたいならば、標的の意中の人物を使った方がいいに決まっている。
オレは、希望的観測を心底から願いつつ、あくまでクールを装い、背筋を正した。
「山口さんの気持ちは、すごく、すごく嬉しいです」
「……あの、じゃあ!?」
「でも、その、あの、……オレ」
「……」
「オレ……好きな人がいるんです」
たっぷり1分は沈黙があった、と思う。
山口さんは、みるみるうちに茫然自失な顔になったが、その表情をキュッと無理やり引き締め、そのまま俯き、さらに顔を上げるまで、の所要時間。
彼女は笑っていた。
勿論、可笑しくて笑っていたワケではないだろう。
何故なら、その明らかに無理に作ったであろう笑顔には、大粒の涙が光っており、肩も小刻みに震え、何より全身から発散される絶望のオーラが、いかに彼女の失望が巨大なものであったかを、如実に示していたからだ。
「そうですか」
「……」
「柴田君、好きな人がいたんですか」
「……」
「そうですよね。やっぱり、そうですよね?」
そう言うと、ハンカチを取り出して涙を拭き、ついでに鼻をすすり、その笑顔をさらに無理やり明るくさせて、
「やっぱり、あれですか? あの人ですか? 落合さん。ですよね? 幼馴染みですし、妹さんですし、同居人ですし、同級生ですし、あれ? スゴイ! 萌え要素4冠王ですよ!ここまで来たら、くっついちゃうしかないですよね?
そうですよね? うん、こうなったら、私も応援しますよ。是非とも頑張ってくださいね!」
「……」
「あれ、……ぐすっ……どうしたんだろ……? かっ、覚悟は、ふられる覚悟は充分できてたはずなのに……、何で、何でこんなに、……震えが……あ、あれぇ……おかしいなぁ……なんでこんなに、……な、み、だ、が……」
もう充分だった。
もうこれ以上見たくは無かった。
彼女は、泣きながら笑っていた。
笑いながら、泣いていた。
人はこんなにも哀しい顔ができるのか。
人はこんなにも切ない表情が可能なのか。
オレは、自分を絞め殺してやりたくなった。
彼女にそんな顔をさせたのは、オレのせいなのだ。
オレの不誠実極まりない返答が、この少女をここまでの悲しみの淵に蹴りこんだのだ。
山口さんは伝票を握り締めると、
「あ、あの……ぐすっ……ごめん、私行きますね? ――ははっ、うん、すみませんっ、明日にはいつもの、いつもの山口さんに戻ってますから、ですから、ですから気まずくなったりとかは、うん、無しにしましょう! ねっ! そうですよ、その方がいいですよね?」
そう言いながら、足早に立ち去ろうとする彼女の肩を、オレは思わず掴んだ。
「待ってっ、待ってよっ!」
「離してくださいっ!」
「最後まで、聞いてよっ!」
「聞きたくありませんっ!!」
「オレはまだ、ノーって言ってないだろっ!!」
山口さんが凍りついたようにオレの方を見ている。
その顔には、もはや微塵の笑みも無く、涙と鼻水でぐしゃぐしゃに歪んでいたが、オレはちっとも、彼女を醜いとは思わなかった。
「オレには、確かに、好きな人がいる」
「……」
「その人は、その、いつも静かで、上品で、優しくて、けど本当はとても情熱的で、だから、その、――」
「……」
「君なんだ」
「……」
「オレが好きなのは、その、山口さん――」
「……」
「君なんだ」
「……」
山口さんの瞳から、再び大粒の涙がこぼれおちた。
一滴、二滴。
「山口……さん?」
その瞬間だった。
彼女がオレの胸に、いきなり飛び込んできたのは。
「ぐすっ……ぁぁぁぁ……あぁぁぁ……!!」
そこから先は大号泣だった。
もはや人語すら話そうとせず、そのくせオレの服を離そうともせず、彼女はたっぷり3分は泣き喚いた。
オレは、そんな彼女を、とてもとても愛しいと思った。
柴リョウ編、今日はここまでです。
明日以降に静ちゃん編を投稿します。
教室で、柴リョウがバイブかまされて、いぢられて泣かされた続きからか、
それとも、監禁初日から改めて書くか、今まだ迷ってますが。
いじめられっこだった経緯が、M気質への階段になってしまったのだろうか。
悲しい主人公になりそうです。
GJ!
だが1ヵ月後には柴遼は調教されてしまう罠
>334氏
GJです!
どういった過程で遼が調教されていくのか楽しみにしています。
では投下させていただきます。
「どうしましょう。…お勧め……う〜ん……。」
葵さんは腰を屈めて、難しそうな本が詰め込まれた本棚と睨めっこをしている。
「ああ…別にそんな真剣に選ばなくても……。」
「気にしないでください。 こうして選んでる時間も楽しいですから。」
人気の少ない図書館で2人で本を探す。なんて幸せな状況なんだ…。
5分程前、普段本なんか読まない俺はどんな本を借りればいいのか解らず、図書館をウロウロしていた。
もちろん葵さんが見える場所で。
葵さんはそんな俺を見かねて、「お勧めの一冊を見つけてあげる」と受付を同僚の人に任せてわざわざ来てくれたのだ。
「あの、葵さん。」
「何ですか?」
腰を屈めたまま俺を見、眼鏡から覗く瞳に心を射抜かれる。
葵さんの上目遣い……なんて可愛いんだ……。
「七原さん…?」
「えっ、あ、ごめんなさい!」
「どうかしたんですか?変ですよ?」
クスッと笑う。
「すみません………。 えっと、葵さんは俺の相手なんかしててもいいんですか…?」
「と、いいますと?」
「仕事中なのに……何だか申し訳なくて…。」
確かにこの状況は物凄く嬉しい。
だが葵さんは仕事中だ。俺に構っていて上司に叱られるなんて事があったら……、俺は葵さんに顔向けできなくなってしまう。
そんな俺の心を知ってか知らずか、ふふっと笑った後。
「心配には及びません。 この図書館ってあまり人来ないし、それに案内するのも仕事の1つなんですよ。」
柔らかく微笑み、本棚に視線を戻した。
「…ありがとうございます。」
優しい人だ。 好きになって良かった、心からそう思う。
リョウ…、お前は俺かW
「で、七原さんはどういう本が好きなんですか?」
「え?」
「本ですよ。 このまま闇雲に探していたら日が暮れちゃいます。」
俺としては葵さんと一緒に居られればそれでもいいのだが。
「実は俺、本はあまり読まないんです。 だから葵さんが好きな本を読んでみたいなと…。」
「私の好きな本ですか?」
「葵さんはどういったものが好きなんですか?」
「そうですね…。」
人差し指を口元に当てて、少し間を置いて続ける。
「一番好きなものっていうと、色々あって難しいけど。
思い入れのある本なら…ありますよ。」
「あ、そういうの良いですね! どんな本なんですか?」
「七原さんのお気にめすようなものじゃないかもしれないですよ?」
「いや!俺は葵さんの好きなものが見たいんです!」
葵さんが好きなものなら例え官能小説でも経済本でも何だっていい!
真剣な俺の言葉を聞き、葵さんはどう受け取っていいのか困った様子で頬を軽く染めて目を逸らし。
「じゃ、じゃあ…。」
コホンと咳払いし、気を取り直して続ける。
「私、元々山鈴村の人間じゃないんです。小学生の頃に引越ししてきて、最初は全然馴染めなかったんです。
あの村じゃ私は余所者だったし、遊んでくれる子も居なくて…。」
懐かしそうにぽつぽつ言葉を続けて。
「でもそんな時に、輪と若菜が私に話しかけてくれて…。」
その時の事を思い出したのだろう、嬉しそうに微笑む
「でね、私が本が好きだって聞くと、輪が絵本をプレゼントしてくれたの。」
「絵本ですか。」
「山鈴村に伝わる神様のお話なんです。 私にとってその本は宝物。今も大事にとってあるんですよ。」
「へぇ…。それ、是非見てみたいです。」
「良いんですか?」
「はい、葵さんの思い出の本なんですから文句なんて全然ありません!」
「そ、そうですか…。 じゃあ絵本コーナーに行きましょうか。」
葵さんは困惑と恥ずかしさが混じった複雑な顔で微笑み、絵本コーナーへと足早に歩き出す。
絵本コーナーだというのに子供の姿はあまりなく、葵さんの言った「人があまり来ない」という言葉は気を遣ったわけではなく、本当の事だったようだ。
本がある場所を熟知しているのだろう、葵さんはある本棚の前で腰を屈めて目当ての本を探す。
だがその顔は見る見る内に沈んだものになっていった。
「…うーん…?」
「どうしたんですか?」
「無い…みたいです。借りられちゃったのかな…。」
残念そうな表情で「ごめんなさい。」と言った後、すぐに何かに気づいたかのような顔に変わり。
「もしかしたら…。」
「?」
不思議顔の俺ににっこり微笑み。
「ちょっとこちらに来てください。」
「あ、はい。」
言われるまま、俺は葵さんの後についていく。
本棚には古そうな本が並び、窓際だというのに薄暗い。
葵さんは何かを探している様子でキョロキョロ周りを見渡している。
と、薄暗い場所だというのに窓際に図書館でお馴染みの机が。
それだけなら別に普通の図書館の風景なのだが、その机の上には本が散乱し、1人の男が机に突っ伏して眠っている。
「あ、居た!」
葵さんはその男に駆け寄り、体を揺さぶって起こそうとする。
…う、羨ましい…! 葵さんに起こしてもらえるなんて幸せ過ぎる!!
俺だってあんな風に可愛らしく起こされてみたい!
『朝ですよ、起きてください。』
とか言いながら可愛い手で俺を揺さぶるんだろうな…。そして中々起きない俺に痺れを切らして。
『起きないんでしたら……こうですよ。』
とか言いながら俺の唇にその柔らかい唇を…………。
「七原さん? どうしました?」
甘い妄想に浸っていた俺は葵さんの声で現実に引き戻される。
顔を覗き込まれ、今まで浸っていた妄想を誤魔化すかのように慌てて目を逸らす。
「ご、ごめんなさい!」
「はい?」
こんな可愛い葵さんを妄想の道具に使ってしまうとは…俺はなんて罰当たりなんだ!!
「とにかくごめん!!」
「えっと……、何が…?」
なにがなんだかといった様子で困った笑みを浮かべている。
そんな葵さんの様子に気づいて、やっと俺は我に返った。
「あ……すみません……少し取り乱しました…。」
「い、いえいえ、気にしてませんから…。 大丈夫ですか?」
「はい…、大丈夫です…。」
「それならいいんですけど。」
「…あのさ、人の事起こしておいて放置はないんじゃないか?」
葵さんの背後から不機嫌そうな男の声が聞こえた。
先程葵さんに起こされていた羨ましい男が起きたようだ。
歳は同じ位だと思うが不健康そうな顔に不機嫌なオーラを身に纏い、背が高いのも相まって他人を寄せ付けないかのような男だ。
メガネを指でかけ直して俺達…主に俺をジロジロ見ている。
「寝てたのにごめんねぇ…。」
「あっ…すみません。」
その男の雰囲気にのまれ、俺もつい謝ってしまう。
男は口元をニヤッと緩め、意味深な目で葵さんを見つめ。
「ふーん……、やっと彼氏が出来たみたいだな。」
「「はぁ!?」」
男のとんでもない発言に俺と葵さんは揃って声を上げ、顔を真っ赤にする。
いきなり何だこの男は!?
い、いや、葵さんとそう見えたのは物凄く嬉しいが…。
「こら!人をからかって遊ばないの!」
真っ赤になりながらも葵さんはその男に反論する。
「違ったか?」
俺達の反応を見て解るだろうに、男はわざとらしく言う。
「あ、当たり前でしょ!私達はただのお友達なんだから!」
…お友達………わかってはいたが、そうハッキリ言われると…へこむなぁ…。
「友達ねぇ…、見ない顔だけど…。」
「村の外から来た人だから。」
「ふーん、君も物好きだねぇ。あんな何も無い所に来るなんてさ。」
物珍しそうに俺をジロジロ見ている。
女の子に見られるのなら良いが、男にジロジロ見られるのは複雑な気分だ。
「親戚の家に遊びに来たんですよ。 物好きで結構です。」
男の態度に、つい棘のある言い方をしてしまったが、気にしないようにしよう。
「あーはいはい、悪かったよ。別に悪い意味で言ったんじゃねぇから。」
「桃くんが誤解されるような言い方するからいけないんだよ。」
葵さんは男に指を突きたてて釘を刺す。
「七原くん、ごめんね。」
「いいえ!葵さんが謝る事では…。」
「ありがとう。この人も悪気があるわけじゃないから。 ただこういう人なだけで…。」
困ったような顔をして微笑みながら「だからあまり怒らないであげてくださいね。」と、付け加える。
「おいおい、黙って聞いてれば散々な言われ様だな。」
「本当の事でしょ? 桃くんはいつもいっつもそうなんだから。」
男に注意する葵さんはまるでお母さんのようだ。
「ふぅ…。 じゃあ改めて紹介するね。 この人は『須館桃太』くん。一応これでも山鈴村の村長の息子さんなんだけど……。」
とても村長の息子とは思えない。
「けどって何だ、けどって。」
不満そうか声で言うが、事実その通りだ。
「えっと、よろしく…。七原ちかです。」
と、俺の名前を聞くと須館はなにやら怪訝そうな顔をする。
「七原ちか…。」
俺の名前を呟きながら何かを考えているようだ。
「俺が何か?」
「…君さ、以前山鈴村に来なかった?」
「? 昔…遊びに行った事はある。あまり覚えてないけど。」
「やっぱり…そうか…!」
そう言うと須館は嬉しそうな顔でいきなり俺に抱きついてきた。
「!!?!??!?」
男に抱きつかれるなんて気持ち悪い!しかも葵さんの前で…。
葵さんを見ると、頬を染め目を見開いて驚きながら固まっている。
ああ…葵さんに誤解されてしまう!
「元気だったかチカ!! 立派になったなぁ!」
「は、はぁ!? わけわかんない事言ってないでさっさと離れろーー!」
肩を掴んでぐいーっと離そうとするが、須館はがっしりしがみ付いて離れない。
「おいおい、折角親友と再開出来たっていうのにつれないじゃないか。」
「誰が親友だ!俺はお前なんか知らないぞ!」
須館は「はぁ。」と溜息をついてやっと離れてくれた。
「記憶が無いっていうのは本当だったんだな。」
「な、何でそんな事知って…!?」
「これでも一応村長の息子だからな。それにお前とはよく遊んでたし、俺も色々調べたんだよ。」
どうやらふざけているわけでも、からかっているわけでもなさそうだ。
須館が俺の過去を知っている事に若干の驚きを覚える。だが次の言葉で俺は更に驚く事になる。
「赤い瞳のせい、なんだろ? 記憶がないの。」
何故…そんな事を…!?
俺は驚きのあまり言葉を発する事が出来なかった。
だってその事は誰にも言っていない筈。
昔村の大人達やおばさん、母親に何があったのか聞かれたが、俺はあの赤い瞳の事は何も言わなかった。
言葉にするのが恐ろしかったから…だから誰にも言っていない筈…。
それなのに何故こいつは知っているんだ?
何も言えずに固まっている俺を見て、須館は確信したように頷き。
「図星、みたいだな。」
「な、何で……。」
「ん?」
「何でお前がそんな事………誰にも言ってない筈なのに…。」
「極少数の奴等なら知ってる事だ。 お前、発見された時「赤い瞳…。」って何度も呟いてたらしいぞ。」
そうだったのか…。それなら知っていてもおかしくはない。
「だからお前の記憶が無い事は『山神様の仕業だ。』って、年寄り連中は言ってたな。 まあそう考えるのも無理は無いけどな。」
「山神様? 何だそれ?」
「山鈴村の神様みたいなもんだよ。 村の神社で祀ってるのが山神様だ。」
あいつが…神様だっていうのか…?
毎晩来るあいつはとてもじゃないが神様には見えない。
「でも山神様っていうのと赤い瞳、何の関係があるって言うんだよ…。」
「山神様はな、赤い瞳をしていて、村に災いをもたらす者を祟るって言い伝えられてるんだよ。」
「赤い…瞳……なのか…?」
「ああ、村にあった文献を読んでも、年寄り連中の話を聞いても、必ず山神様は赤い瞳なんだ。」
ただの偶然にしては出来すぎているし…、須館の言う事は正しい…のか?
でも俺には解らない。神様だとしたら何で俺にあんなストーカー紛いの事をしたり、俺の記憶を奪ったりしたのだろうか。
言い伝え通りに俺が村に災いをもたらすからなのか?
でも最初に被害に合ったのは7歳の頃だ。ただの子供に災いなんて起こせる筈ない。
「まあ…あまり1人で考え込むなよ。 何なら俺が調べるの手伝ってやるから。」
そう言って肩に手を置き、不健康そうな顔とは不釣合いな力強い瞳で頷く。
その姿に懐かしさを覚え、考え込んでいた心が軽くなったような気がした。
「…須館…、頼む。ありがとう…。」
「気にすんなって。俺も個人的に調べてた事でもあるし、ついでってやつだ。」
感謝の言葉が照れくさかったのだろうか。はにかみながら笑う。
「それと、俺の事は須館じゃなくて昔みたいに『桃太』って呼んでくれよ。」
「あ、ああ。解った。」
「よしっ、それでこそ俺の親友だ。」
満足そうに頷く。
「―――あのぉ……、話が見えてこないんですけど…。」
俺達の話をずっと黙って聞いていた葵さんが申し訳なそうに口を開く。
俺は話に夢中になって葵さんの事をすっかり忘れていたのだ。
「ご、ごめんなさい!」
とりあえず謝るしかない。
「あ、気にしないでください。 私こそ話の腰を折っちゃって…ごめんなさい。」
「そんな事ありません!話はもう終わりました!」
「そ、そう?」
「はい! だから葵さんにもちゃんと説明します!」
葵さんになら言ってもいいだろう。別に隠すような事でもないしな。
俺達は葵さんに事情を説明した。
俺が7歳の頃村に来て記憶を失った事。
その時に覚えていたのが赤い瞳だけだった事。
―――今現在起こっている事を除いて、全てを…。
今起こっている事を話してしまったら2人にも危害が及ぶかもしれない。
相手は神様と呼ばれるような奴だ。何をするか解らない。
目的は俺なのだし…、出来る限り、自分で何とかしないといけないんだと思う。
「そっかぁ……七原くん、そんな事があったんだね。」
「はい。でも気にしないでください。 別に今困っているとか、そういうんじゃないんで。」
葵さんを安心させる為に笑う。巻き込むわけにはいかない…、そう思いながら。
「とにかく、何でお前がそんな目に合ったのか調べないとな。」
桃太は顎手を当てて。
「記憶が無いんだから、もちろん何も覚えてない…。となると……まず調べるべき事は、山神様の事だよな。」
「桃太、頼めるか?」
「もちろん。良い機会だから徹底的に調べてやる。」
「でも俺山神様がどういう神様なのかよく知らないんだよな。」
「あ、それなら…。」
葵さんは本が散乱している机を探して、一冊の本を俺に手渡した。
「これ、私がお勧めした本。子供用だから解りやすいと思う。」
『やまがみさまのぞう』
可愛らしい絵が表紙の絵本だ。
「桃くん、本は読んだらちゃんと元の場所に戻してね。」
「悪い悪い、すっかり忘れてた。」
あははっと笑う桃太を、葵さんはしょうがないなといった表情で見つめて溜息をつき。
「これは子供向けだから、あまり役に立ちそうなものは書いてないと思うけど…。」
「いえ!例えそうだとしてもちゃんと読みます!葵さんが薦めてくれたものですから!」
「う、うん…。」
困ったような顔で頬を染める葵さん。
そんな葵さんに見惚れながら本を受け取ろうと手を伸ばし、本を掴んだのはいいのだが……葵さんの手と俺の手が触れた。
触れた瞬間、俺達は茹蛸のように真っ赤になって急いで手を離す。
だが2人同時に手を離せば当然本は下に落ちる。
「「あ…。」」
「そこ、いちゃつくなら他でやれよ。」
「いちゃついてなんかいないわよ!」
「いちゃついてない!」
声を重ね、真っ赤な顔で俺たちは反論する。
桃太はニヤっと笑い。
「はいはい、わかったわかった。 じゃあストロベリってる、に変えてやる。」
俺と葵さんはは更に顔を赤くし、何度も反論する。
俺達はそんなやりとりを葵さんが仕事に戻るまで何度も続けていた。
がらんとしたバスには俺と葵さんと桃太しか乗っていない。
乗った時はそれなりに人はいたのだが、すぐに皆降りてしまった。
だが寂しくはない。
葵さんと桃太が居る…。
あいつの事も…1人ではない。毎晩来ている事は言えないが、今までのように1人というわけではない。
そう思うと夜も怖くはない。改めて2人には感謝したい。
そんな事を考えながら、バスは止まった。
俺達はバスを降り、オレンジ色に染まった世界に足を踏み入れる。
「2人とも、今日はありがとな。」
「ううん、こっちこそ図書館に来てくれてありがとう。またお話しようね。」
「親友の頼みを聞くのが男だからな。当然の事だ。」
「うん…。」
「明日も俺は図書館に行くが、お前はどうする?」
答えは決まっている。あいつの事も知りたいし…なにより葵さんがいるのなら。
「行く。必ず。」
「よしっ、じゃあ頑張って調べてくるか!」
「ああ、頼むな。」
「任せとけ。 じゃあな、2人とも。」
「うん、じゃあまた明日。」
「また明日な。」
俺と葵さんに手を振り、桃太は帰っていった。
「じゃあ…私はこれで。また明日。」
葵さんはそう言って微笑み、歩き出す。
「あ………、葵さん!!」
突然大きな声で呼び止める俺に驚きながら振り返り。
「どうしたんですか?」
同じ図書館に行くのなら………。
「あの……、明日、一緒に行きませんか!」
「え?」
「明日、一緒に図書館に行きましょう!」
「あ……えっと………。」
このオレンジ色の世界でもわかる程、葵さんの顔は赤く染まっている。
何やら挙動不審に「えっと…えっと…。」という言葉を繰り替えす。
「も、もし嫌なら…別にいいので…。」
「あっ、いえ、そういうわけじゃ…。」
葵さんは俯いて、そして顔をあげて。
「…わ、わかりました。 明日、一緒に行きましょう。」
その言葉で俺の心と体は一気に軽くなる。
「は、はい!!!是非!!」
「待ち合わせは…ここに8時でいいですか? 私、その位の時間にここに着くので。」
「わかりました!絶対遅れないようにします!」
「じゃ、じゃあ……また明日、ここで…。」
「はい!おやすみなさい!」
小さく手を振って、葵さんは今度こそ帰っていった。
俺は1人、幸せを噛み締めていた。
だってあの葵さんとあんなに仲良くなれて…お勧めの本まで貸してもらえて…しかも明日は一緒に図書館に行く約束まで!
幸せすぎる……。頬を抓ってみる。
…痛い。これは現実だ。夢でも妄想でもない。
「葵さん…。」
俺は愛しい人の名前を呟いた。
その時、背後から視線を感じて俺は現実へと引き戻された。
「ちーちゃん………こんな時間まで何してたの…。」
思わずぞっとするような冷たい声に驚き、俺は後ろを振り返る。
夕日の逆行で表情はよく見えないが。
綺麗な栗色の髪はぼさぼさで、よく見ると右の拳からは血が滲み、それを気にする様子もなく立ち尽くす若菜が居た。
「わ、若菜か。驚かすなよ…。」
若菜だという事に安堵するが、若菜の様子に違和感を感じる。
靴を…履いていないのだ。
「お、おい、靴忘れてるぞ。 もしかして裸足でここまで来たのか!?」
だが若菜は答えない。
「若菜…?」
沈黙が過ぎ、やっと若菜が口を開いた。
「どこに…行ってたの?」
どこまでも冷ややかで冷たい声がオレンジ色の世界に響き渡った。
最初の投下で題名入れるのを忘れてしまいました…申し訳ありません。
それにしても、やはり投下に一週間はかかってしまいますね。
筆が早く、それでいてクオリティの高いトライデント氏や赤いパパ氏には尊敬の念を抱いてしまいます。
という事で次は若菜の問い詰めが始まります。
もしかしたらしばらく赤い瞳の子は影が薄いかもしれませんが、その分若菜が頑張ります。
これからの問い詰めにwktk
おっしゃああ若菜キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
GJ!
ボキャ貧でこの賛美しか言えない俺を許してくれ!