一、
――追っ手が迫っている。
暗い雨の中、太田ともえは男に手を引かれ、必死になって灯台への道をひた走る。
「ともえ早く!捕まっちまうぞ!!」
そう男に促されるものの、和服に下駄履きのともえはこれ以上早く走ることが出来ない。
「はあ、はあ、ま、待ってあなた……私……足が……」
裳裾が絡んでもつれる足を押さえながら、ともえは男に呼び掛ける。
いっそ、男に背負ってでも貰う方が早いのかも知れないが、
彼女の荷物を抱えて走る男に、其処までは頼めまい。
鴇色の着物の袖を翻し、ともえは只々懸命に足を動かす他なかった――
事の起こりは一週間ほど前。月の無い暗い晩の出来事であった。
「また余所者がこの島に?!いったい何者なのお父様?」
「まだ判らん。今からこの俺が直々に取り調べてやる」
夜見島随一の有力者である太田常雄の屋敷。
灯台付近に居たという、その不審な男が連れてこられたのは、家人がもう夕餉を終え、
灯りを落として休む支度をしていた時のことである。
「親父さん」
常雄とともえが余所者を勾留している部屋に向かうと、部屋の前で見張りをしていた漁師の若衆が、
少し困った面持ちで呼び掛けてきた。
「ご苦労。どうだ、奴の様子は?」
「へえ。まあ……一応大人しくはしてるんですが」
「なんだ?何か困ったことでもあるのか?」
「それが………」
と若衆が言いかけた時、部屋の中から大きな笑い声が響いた。
「何事だ?」常雄が襖を開く。
その後ろからともえが覗き込んだ。すると……
「だからよお、俺そいつに言ってやったんだよ。“じゃあ今度は俺がマグロ漁船に乗ってやんよ”ってな」
「あっはっは〜、あーおかしい!いやあだねぇアンタ」
四畳半の部屋では、黒革のジャンパーを着た若い男と太田家の女中が、楽しそうに談笑していた。
男の前には食事の膳が置かれている。
おそらくは、空腹を訴えた余所者に食事を出してやったはいいが、
給仕をしに来た女中が居座って話し込んでしまった。といった処であろうか。
「何をしとるかあっ!」
常雄の怒号が轟く。
女中は、しゃもじを掴んだままびくりと立ち上がった。
「あっ……だっ、旦那様!申し訳ございません!!」
常雄は、食べ終えた膳を片付けてそそくさと去ってゆく女中を見送ると、
今度は部屋の中の余所者を隻眼で睨み付ける。
それは、痩せ犬のような風貌のチンピラ男であった。
「……んだよテメエらはよぉ。俺を、こんなトコ閉じ込めやがって」
チンピラは眉をしかめて睨み返すが、常雄は全く動じない。
「それはこちらの訊く事だ、若造。何が目当てでこの島へやって来た?!」
常雄が部屋へ入ってゆく。その後にともえが付き従った。チンピラの眼がともえに向けられる。
ともえの険のある眼にぶつかると、彼は一瞬だけ微かな笑みを見せた。
それを侮辱と受け取ったともえの表情が、一層険しいものになる。
すると何故か、チンピラは更に相好を崩した。
「何がおかしい?!」
常雄が怒鳴りつけてもニヤケたままの男に、ともえは呆れて「ふん」と眼を逸らす。
――これが、太田ともえと阿部倉司との最初の出逢いであった。
二、
尋問は、日の変わる時刻にまで及んだ。
だが殆ど成果は得られていない。
ともえは自室で床に就くと、梁を巡らした暗い天井を見上げて溜息を吐いた。
『うそじゃねーって!何度も言ってんだろーが!赤い津波が来たんだよぉ!
そんで気が付いたらアソコに居たんだって!!……マジ信じてくれよぉ!!』
……信じられる訳がない。
どれだけ問い詰めても、あのチンピラはそんな与太話を繰り返すばかりであった。
島に来た理由については頑として言おうとしないし、
持ち物をあらためれば『携帯電話』とかいう奇妙な玩具のような、胡散臭いものばかりが出てくる。
挙句の果てに“この夜見島が化け物で溢れかえっていた”などと、とんでもないことを言い出す始末だ。
判った事といえば彼の名前が『阿部倉司』であるという事と、
その言動からして、どうやら根っからの都会者であるらしい。という事だけである。
――都会………
薄い夏蒲団の中、ともえは物思いに耽る。
太田家は、島で最も大きな網元であると共に、島を守る役目を帯びた特別な家系である。
島に古くから存在する禁足地の“封印”を守り、島全体を、海の“穢れ”から守らねばならない。
その太田家の統領娘である自分がこの島から出ることは、決して有り得ない。
父と共に島の為に尽くし、いずれは婿を取って跡取りを産み、育て、
島から一歩も出ることなく死んでゆくのだ。
勿論それは、ともえの望む処でもある。
ともえは自分が生まれ育ったこの夜見島を愛していたし、
島一番の権力を持つ太田家の人間であることを自負し、誇りにも思っていた。
(でも……)
ともえの心の片隅には、常に小さな思いが燻ぶっている。
それは――この小さな島の外にあるはずの広い世界を見てみたい。
という他愛のない、しかし決して叶えられることのない、空しい希望であった。
この外界と断絶された離島において世の中のことを知る為には、
月に二度の船便で届けられる新聞や雑誌、
あるいは、電波の入りの悪い雑音だらけのラジオか、画像の乱れるテレビに依る以外に術は無い。
そして、それらの媒体から垣間見る都会は、とても魅惑的で刺激の満ちていて、
そこに生きる若者達は愉快に毎日を過ごし、義務感や世間体やなどに煩わされることもなく、
皆それぞれに青春を謳歌しているように見えた。
(……いけないわ。余所の土地なんかに心を惑わされるなんて)
ともえは襦袢の襟元を合わせると、固く眼を閉じる。
夜見島の人間、特に太田の統領娘である自分が都会に憧れを抱くなど、絶対に許されるものではない。
三年前に去った余所者たちが島で何をして行ったか、考えてみるがいい。
ともえは、かつて島が穢された悔しさに思いを馳せ、外界への関心を打ち消そうと試みる。
しかし彼女の心のざわめきは、そう易々とは治まりそうになかった。
三、
「朝ごはんよ」
翌朝、ともえは朝食の膳を用意すると、自ら倉司の元へ赴いた。
ともえの姿を見るなり、倉司は短く口笛を吹いた。
「へえ。今日はあんたが飯持って来てくれたんだ?夕べの女の子は?」
「あの子はもうここへ近寄らせないわ……余所者におかしなことを吹き込まれたりしたら、困るもの」
ともえは仏頂面で飯をよそうと、倉司の鼻先にぐい、と茶碗を突きつける。
「へへ、いただきまーす。まあなんだ。あの子のことあんまし怒んねーでやってくれよな。
俺が引き止めて喋ってただけなんだから。暇だったからよ」
そう言うと、倉司は威勢良く白飯をかき込んだ。
ともえはそんな倉司の様子を横目で見ながら、揃えた膝の上で手持ち無沙汰にしゃもじを弄る。
「ねえ……あんたって、東京から来たと言ってたわよね?東京の何処に居たの?」
「ん?新宿だけど」
「し、新宿?!」
大都会ではないか。ともえは、眼を真ん丸く見開いて倉司ににじり寄った。
「それでその……し、新宿では毎日どんなことをして過ごしていたの?!」
「どんなことって……まあ、パチスロやったりゲーセン行ったり」
「ぱちすろ……げーせん……」
聞いたこともない言葉だ。
どうしよう。いったい何なのか物凄く興味があるが、
それを訊ねるのは、自分が田舎者であることを露呈してしまうようで、少し気が引ける。
「今度連れてってあげようか?」突然、倉司がそんなことを言った。
ともえは、ハッとして彼を見返す。
倉司の眼が笑っているのに気付くと、見る見る頬を紅潮させていった。
「か、からかわないで頂戴!あんた……ずうずうしいのよ、余所者の癖に!」
ともえは持っていたしゃもじを力いっぱい倉司の顔に投げ付ける。
そして畳を踏み鳴らし、逃げるようにして部屋を立ち去った。
一日が終わって、ともえは湯殿に入った。
洗い桶を取り、ニ、三度かけ湯をしてから、檜造りの浴槽にゆっくりと躰を浸してゆく。
熱い湯がじわじわと心身の凝りをほぐしてゆく感覚に、ともえはホッと溜息をついた。
『どうやらあの余所者は、金鉱の連中との関わりはないらしい』
倉司の尋問を終えたあとの父の言葉を思い返す。
その言葉は、ともえを少なからず安堵させた。
夜見島から金の鉱脈が発見され、本土から『夜見島金鉱株式会社』と称する輩が
大挙して乗込んで来たのは、今から数年前のことになる。
“島の開発に拠って島民は豊かになり、過疎化にも歯止めが掛かる”などという詭弁の基に、
島から甘い汁を吸い取ろうとした金の亡者共は、
結局、禁足地を荒らして島をめちゃめちゃにしただけであった。
父・常雄を中心とした島民たちの努力と、島に眠るいにしえの力が奴等を退けたものの、
島が負った痛手は計り知れない。
そして、その痛手はともえ自身にも……
ともえは湯船を見下ろす。透明な湯の中で少し歪んで見える白い躰。
未だ硬さが残るものの、膨らみきって蒼い静脈を浮きあがらせた、円い乳房。
ともえの両手が、湯に浮かぶ乳房を下からそっと撫で上げる。
乳首の先からむず痒いような快感が伝わり、
ともえは「ん……」と小さく呻くと、静かに眼を閉じた。
四、
――この躰も、もう二十四歳になってしまった。
湯の中で自分の乳房をまさぐりながら、その胸の内でともえは呟く。
古い因習に囚われた夜見島に於いて、この歳になっても未だ独り身の女は、ともえだけだ。
それというのも、例の夜見島金鉱が島にやって来た時期が、
彼女が適齢期に差し掛かった頃と、ちょうど重なった為である。
島が一丸となって余所者の排除に尽力しているさなか、
父はともえの縁談にまで気を廻せなかったし、何よりともえ自身、結婚の事など考えられなかった。
ようやく島には平和が戻ったものの、残されたのは四鳴山に建てられた禍々しい鉄塔と、
婚期を遅らせてしまった哀れなこの躰のみ……
ともえは、小石のように硬く突起した乳首を、諌めるようにぎゅっと握り潰す。
(エエ、忌々しい……浅ましい)
島一番の良家の子女であるともえは、当然、男を知らない。
少女時代からその器量の良さで島中の男たちに注目されていたし、
その中には勇気を出して彼女に言い寄る者もいた。
しかし気位の高いともえは、それらの男共の求愛をことごとく突っぱねて来たのだ。
自分に思いを寄せる男を邪険にあしらい、その消沈する姿を見て密かに悦に入るような、
そんな残酷な性質が彼女には備わっていた。
それが今や、こうして成熟しきった躰をただ独りで持て余している。
ともえはそれが癪に障ってならない。
彼女にとってこの美しい肉体は、男たちの憧憬の的として存在すべきものであって、
決して、この肉体の方から男を求めるようでは、いけないのだ。
だがしかし――
「ふう……はあ……あ」
乳房を撫で摩っていたともえの手はいつしか下に降り、僅かに開いた内腿を滑って、
湯の底で揺らめく恥毛を梳っていた。
如何に清らかな、男に接吻すら許したことのない生娘の躰であっても、
それが大人のものであるならば、性欲に疼く夜があるのは至極当たり前のことである。
ともえは、その並外れた自尊心と意志の強さ、そして性に対する幾許かの恐怖心から
陰核を弄り廻したり、膣に指を挿れて掻き廻すような、あからさまな自慰行為は行わない。
それでもこうして自分の躰を密やかに愛撫し、恍惚とする感覚を味わうことはあった。
乳房を摩りながら腿をきつく締めて擦り合わせていると、なんとも言えない甘い快感が身内に起こり、
やがてそれが背筋から脳天に突き抜けて、後にぐったりと弛緩する。
幾ら我と我が身を恥じ入ろうともその快味は忘れ難く、
ともえは時々、人目を忍んでひっそりとその行為に耽った。
――こんなことも、結婚してしまえば行わなくなるのだろうか?
陶酔境の中、不意に現実的な思いが頭を過ぎる。
もう島も混乱から立ち直りつつある。
そろそろ父も周囲も、太田の跡取りのことを心配し始めるに違いない。
島のめぼしい若者達は皆すでに所帯を持ってしまっているから、
婿は余所の土地から迎える事になるだろう。
(私が、余所者と結婚を?)
余所者の為に青春を棒に振った自分が、余所者を夫とせねばならない。皮肉な運命だと思った。
でもどうせ、余所者とは言っても、
夜見島の近隣に住む遠縁の親戚筋辺りから適当な者を見繕って来るのだろう。とも思う。
それはそれでつまらない話だ。
どうしても余所者との婚姻が避けられぬのならば、いっそ、うんと垢抜けた都会の男の方がいい――
そこまで考えた処で、ともえはザブンと湯船から立ち上がった。
何故か脳裏に、あの阿部倉司のにやけた顔が浮かんでしまったからだ。
冗談じゃない。
なんで結婚のことを考えている最中に、あんな軟派な余所者のことなんぞを思い出さねばならぬのか?
「……なんなのよっ!」
ともえは湯殿に甲高い声を響かせると、黒い恥毛から湯を滴らせて浴槽を跨いだ。
五、
倉司が太田の屋敷に来て三日ほどが過ぎた。
朝食を運んで来たともえが部屋の襖を開くと、彼はいつに無く神妙な面持ちで新聞と睨み合っていた。
「何か大きな事件でもあった?」
そう話しかけても碌に返事もしない。ともえは、少しむくれた。
「昭和五十一年……か」
膳の用意をするともえの横で、彼はぽつりと呟く。
「そうよ。今は昭和五十一年。少しは頭がはっきりしたみたいね」
初めの頃、倉司は今が昭和八十年だと言って聞かなかった。
他にも言動におかしな処が多く、ともえも常雄も彼の正気を疑い始めていたのだ。
別に倉司に狂人の危うさは感じなかったが、
例えば船の事故などで頭を打ち、少しネジが緩んだり記憶が飛んだりした。
ということは考えられるだろう。
そんな訳で、屋敷での倉司の扱いも“島に仇為すおそれのある危険な余所者”から
“若いのに少々気の毒なことになっている哀れな漂着者”へと変化しつつあった。
「なあ、俺いつまでここに居りゃいいんだよ」
シジミの味噌汁を啜りながら倉司が問いかけてきた。
「えっ?そうねえ……」
倉司に害のないことは、もうおおよそ判っている。
屋敷に監禁しておく理由は無いが、かといって、正体不明の余所者に島をうろつかれるのも困る。
例の金鉱会社の所為で、島民の余所者に対する拒否感は未だに強いのだ。
倉司が表に出れば島中が混乱するのは眼に見えているし、
そもそも倉司にした処で、他に行く当てもないだろう。
ともえがそう話してやると、倉司は腕を組んで黙り込んだ。
「まあ、そんなに気を落とさないで。家の中ぐらいなら自由にしていられるように、
私がお父様にお願いしておいてあげるから」
「ああ……」倉司は頷く。
そして、ふっと眼を上げると、ともえの姿をじっと見詰めた。
「なっなによ?」
「いや……あんた、いっつも着物なんだなぁ。って思ってさ」
「それがなんなの?そんなにおかしい?」
「んなこと言ってねーじゃん。ただ俺、着物の女なんてあんましみたことないからさ」
「そ、そう……」
やはり都会の娘たちは皆、洋装なのだろうか?
洒落たミニスカートやなんかを颯爽と着こなしている垢抜けた女を見慣れたこの男から見れば、
自分は冴えない田舎娘に過ぎないのであろうか?
ともえの気持ちは落ち込みかけたが、気の強い彼女がそれを顕わにすることはなかった。
「ふん。日本人なんだから、着物でいるのが一番いいに決まっているじゃない。
どんなに頑張って洋服を着た処で、外人になれる訳じゃなし。
日本の女は、着物を着ている方がずっと美しいのよ」
「ああ、そうだなぁ」
憎まれ口とも取れるともえの言葉に、倉司は意外にも同意する。
「最初は窮屈そうに見えたけど、見慣れると結構イケてる感じするよ。それに……高いんだろ?それ」
「そうでもないわ」
和服姿を誉められたともえは、一転、誇らしげに胸を張った。
「だけど、これは私のお母様から譲り受けた大切な品なの。だから少々古くなっても、
仕立て直して大事に着ているのよ」
「へえ」倉司が相槌を打つ。
――例の笑い含みの眼をしているが、何故かもう、不快な感じはしなかった。
「あのさ。前から聞きたかったんだけど」
「なあに?」ニッコリ笑ってともえは答える。
「その着物の下って……やっぱ穿いてねーの?ぱ、ぱんつ………」
ぱんっ!と威勢のいい音が鳴り、倉司の頬に綺麗な手形がついた。
六、
次の朝。ともえはいつもの鴇色の紬ではなく、
白地に小さな梅模様を散らした小紋を着て倉司の部屋に現れた。
梅の色が薄いグレーで地味な分、帯は葡萄色の鮮やかなものにしてアクセントをつけた。
そして倉司が一目見るなり嘆声をあげるのを、得意満面で見下ろす。
「おー、なんかすげえな。どっか出掛けんの?」
「う……ちょ、ちょっとね……」
本当は出掛ける予定など何もない。ただ倉司に着物を見せたかっただけなのである。
ともえは倉司に着物を誉められたことで、久方ぶりに華やいだ気持ちになっていた。
あれからすぐに箪笥を浚い、今日着る着物の選定を始めた。
――こんな質素な紬なんかより、もっといい着物だって自分は持っているのだ。
取っておきの京友禅の大振袖を着て驚かせてやろうかとも思ったが、さすがにそれは思い留まった。
「俺さあ、今日からこの家の仕事手伝えとか言われたんだけど」
「あら、そうなの?」
夕べ、ともえが倉司に多少の自由を与えるよう父・常雄に進言すると、父は複雑な表情で押し黙った。
怒ったのかと思い頭を下げたがそうではなかった。
父の言うには、ともえの他にも屋敷の女中たちや部屋の前で見張りをしていた若衆、
更に、何故か庭師の老人までもが、全く同じことを言ってきたのだという。
『あの若造はよほど人に信頼されやすいたちのようだな』
黒い布で左眼の古傷を覆った父は、未だ明いている方の眼で意味深にともえを見据えたものだ。
『馬鹿だからでしょう。あんなヤツに、大それた悪事やなんかが出来るはずないですもの』
『ふん……そうかも知れんな』
『そおうですとも!あんな下品な余所者……みんな可哀想だから同情しているだけ。
私は、あんな汚らしい都会者なんか大っ嫌い』
ことさら憎々しげに言い放つともえであったが、その言葉が本心であるのかそれとも、
心の奥底にある何かを父から隠す為のものであるのか……
本当は彼女自身にも判ってはいなかった。
そんな娘の様子を、父は無言のまま見詰め続けるだけだった――
その後父は『考えておく』とだけ言い、ともえにはっきりした返事を伝えることはしなかった。
(でも、あれから直にこの部屋に来て話をして下さったのね)
ともえは、そんな父の表には出さない優しさに、嬉しい気持ちで一杯になった。
「なんか庭師のおっさんのトコ行けとか言われちゃってさぁ……ま、こんな部屋で
ずーっとヒッキーしてるよりゃマシだけどな」
「本当よ。私のお父様の情けに感謝して、しっかりと働いて頂戴ね」
「はあ?んだよそりゃ?おい!俺ぁ別にお前んちの召し使いになった訳じゃねーんだぞ!」
ともえの言葉に、倉司は少しムッとした様子で言い返した。
当然、ともえは黙っていない。
「お前とはなによ!だいたいあんた、余所者の癖にウチでのうのうとただ飯食らって……
よくもそんな口が利けたものねえ?!」
「てめ……二言目には余所者余所者って!俺は別に好きでここに居ついてんじゃねーっつーの!!
そっちが勝手に俺を閉じ込めやがったんだろうが!ふざけんじゃねーぞこの、タコ!」
倉司はともえに怒鳴り返すと立ち上がり、部屋の襖を力任せに開けて出てゆこうとする。
「ちょっと!何処へ行く気?!」ともえが背中に呼び掛ける。
「だーから庭に行けって言われたんだってぇの……ったく」
倉司はうっとおしそうに舌打ちをする。
そしてともえを振り返り
「幾ら綺麗なきもの着てたって、こう性格悪くっちゃあなあ」と、言い捨てて去って行った。
ともえは言葉を失い、蒼白な表情で唇を震わせる。
――なによばか……
行き場のない感情を抱え、彼女はただ、独り立ち尽くすばかりであった……
七、
夜になって布団に潜り込むと、ともえは朝の言い争いを思い出し、両手で顔を覆った。
(どうしてあんなことになってしまったの……)
あの後ともえは、具合が悪いと言って殆ど部屋に閉じ篭ったまま一日を終えた。
当然、庭仕事に出た倉司とは一度も顔を合わすことはなかった。
(気に留めなければいいんだわ。あんな、くだらない余所者の言うことなんか)
ともえはそう自分に言い聞かせるが、
彼女が心に受けた衝撃は、そうそう受け流してしまえるものではなかった。
あの時の倉司の怒りに満ちた表情、声、そしてその言葉の内容。
それらの全てにともえの心は打ちのめされ、痛んでしまってどうしようもない。
(あいつにあんなことを言われてしまって……私はこれからどうすればいいの)
明日、謝ろう。
両手で眼を塞いだまま、ともえは決意する。
自分に非があると完全に認めた訳ではない。
でも、それでも、このまま倉司と仲たがいをしたままでいるのは、とても耐えられない。
このまま――倉司に嫌われたままでいるなんて……
――私は倉司に嫌われるのを……恐れている?
ともえは、己の考えに混乱した。
いったいこれは、どういうことなのだろう?
彼に嫌われることがこれほどこの身を追いつめるとは。これではまるで……
(いや……そんなことありえないわ。そんなこと……)
ともえが、信じがたい真実に到達しようとしたその時だった。
ミシ………ミシ………
廊下の床板を鳴らす密やかな足音が聞こえる。
こんな遅くに誰だろう?そう思う間もなく、部屋の障子がすうっと開かれる気配を感じた。
ともえは息をつめ、身を堅くして、微かな物音に集中する。
布団の足元に、何者かが蹲っているようだった。
(何………?)
踝の辺りがくすぐったい。
指先で触れられているのだと判った。
ともえは、金縛りにあったように強張る咽喉を意志の力で動かし、大声を上げるために息を吸った。
ところが―――
『ひィ………んむぅっっ?!』
彼女が声を上げようとした瞬間、その口が、大きな男の掌によって塞がれた。
『??!!!』
恐慌状態に陥りかけたともえの視界に、見覚えのある男の顔が飛び込んで来る。
ともえは男の手の上からはみ出した眼を大きく見開いた。
(そ……う……じ………!)
暗闇のなかに浮かび上がった倉司の双眸が、ともえを見下ろし微かに笑った。
八、
『な、何のつもり?!こんなことをして……気でも違ったの?!』
倉司の掌を振りほどいたともえは、眉を吊り上げて倉司に食って掛かった。
そして男から逃れようとするが、重たい躰に圧し掛かられてどうしても身動きが取れない。
倉司は、そんなともえを妙に冷静な眼で見下ろしながら掛布団を跳ね除け、
彼女の寝巻きの襟元を掴むと、グッと両側に押し広げた。
『!!!』
ともえの蒼白い乳房が露わにされる。
まろび出された途端、半球型の慎ましやかな膨らみは硬く張り詰め、
男の視線を感じた小さな乳首は、瞬く間にポツンと隆起した。
『嫌っ!やめなさい!早くその手をお離し……人を呼ぶわよ?!』
『人に見られてもいいのかよ?』
倉司はともえの言葉に怯むことなく言い放つと、曝け出された乳房の頂点に、
ちゅっと音を立てて吸い付いた。
『あ……ぅうっ!』
乳首が、電流の走るような鋭い快感に襲われた。
同時に陰部の辺りが燃え上がるように熱くなり、ともえは男の躰の下で僅かに腿をすり合わせた。
『ああいや、汚らわしい……!あぅん、や、やめて、はぁ……ああんっ』
信じられない位、気持ちがよかった。
倉司の唇が乳首を吸い上げ、舌が、その尖端に微妙な震動を加える度に……
切ないような陶酔が躰の奥底に注ぎ込まれ、
ともえの性器は、かまどに薪がくべられるが如く、熱を増してゆく。
『ああー……あぁぁぁ……』
いつしかきつく擦り合わせている股の間では、ぬめぬめとした淫水が溢れかえっていた。
それは、彼女がもじもじと腿を動かすのに合わせて陰裂から流れ出し、
内腿の付け根から膝に近い部分までをも、しとどに濡れさせてしまった。
生まれて初めて施された男の愛撫に、ともえは激しく興奮した。
倉司の指が、そのぬめりを帯びた内腿の間に滑り込み、
溢れた淫水を肌にすり込むように撫でまわしたが、彼女はもはや抵抗しなかった。
それでも男の手が強引に膝を割り、火照りきった性器へじかに触れようとしてきた時には、
生娘の本能で身を堅くし、腰を引いてそれを避けようとした。
だがその所為で、ともえのはだけられた襦袢の襟が、華奢な撫で肩からするりと落ちて、
彼女の躰を裸同然に剥き出してしまった。
『あっ、だめ……』
ともえは男の眼の前に裸をさらす羞恥に慄いたが、全身が痺れ渡って自由にならず、
裸体を隠すことも出来ずにただ、顔を傾け枕に埋めるだけだった。
ともえが抗うのをやめ、大人しくしているのをいい事に、
倉司の行為は、更に大胆になっていった。
彼はともえのぬかるんだ陰裂を指先でなぞり、ともえの唇から呻き声が漏れる迄そこを弄っていたが、
やがて綻びきった陰唇を両手で寛げ、中心の秘肉を舌で舐め廻し始めた。
『う………うぅ、ぃ……い、ひいぃぃぃ………』
ずん、と下腹に響くような、いっそ死んでしまいたくなるほどの堪らない快感が、
ともえの性器に湧き起こった。
それは彼女の二十四年の人生の中で感じたことのない、法悦ともいうべき凄まじい快楽であった。
『ひ……いぃ……ひっ、ひ……ひぁあああ!』
ともえは悲鳴じみた細い喘ぎ声を絶え間なく上げ続け、脚を、自ら外股に広げると、
カクカクと、まるで壊れた人形のように腰を前後に振りたてて、膣の奥から沸き上がる疼きに耐えた。
九、
(ああ、いい……もっと、もっとして………)
ともえの心の声に応じるかのように、倉司による女陰の玩弄は執拗さを増してゆく。
倉司は、ざらりとした舌でともえの空割れの頂点にある肉の芽を舐め上げながら、
ともえの尻に手を廻して撫で摩ったり、陰門の入口を指の腹で揉みしだいたりした。
ともえは早鐘を打つ胸に自分の手を宛がって、そっと刺激しながら倉司の行為による快感を味わい、
深くそれに酔い痴れた。
寄せては返す波のように、際限のない高まりを揺蕩うともえの瞳は虚ろにぼやけ、
身も心も、蕩けきって半ば麻痺したようになっている。
『あああ………倉司、いいの。私、もう、どうなっても……』
ともえが言葉を発すると、倉司の舌は膨張した陰核の裏側に降りて……
そのすぐ下の、尿道口の辺りを突付き廻した。
すると、快感と共に何か切迫した感じに襲われ、ともえは『うぐっ』と小さく呻いて躰を反らせた。
『あ、あ、あ、だめ……漏っちゃう、も、も、お……おぉぉ』
倉司の舌で小突かれている処から、何か、尿意に近いものが起こるのを感じる。
そして、それは到底堪え切れないほどに強まり、ともえは――――――
「………………あ」
手の甲が畳に打つかる感覚と同時に、ともえは夢から覚めた。
荒い呼吸と激しい鼓動に肩を揺らし、眦に流れた涙を拭う。
いつの間にか眠っていたらしい。
もう夜明けが近いのだろう。何処かから鳩の鳴き声が聞こえていた。
ともえは自分の姿を改めて見直す。なんとも酷い有様だ。
掛け布団が遠くに蹴飛ばされているのは勿論のこと、
寝乱れた襦袢は伊達巻きだけを残し、殆ど脱げたも同然になって背中の下に溜まっているし、
何より、あられもなく剥き出しになっている陰部の汚れ方……
ともえは、横たわったまま股間に手を差し込み、未だ淫夢の余韻に火照るその部分を指で拭ってみた。
粘度の高い淫液と共に、透明な、さらっとしたぬるま湯のような液体が、
じっとりと指先を濡らす。
身を起こして敷布団の上を見てみると、飛び散った体液の飛沫らしきものが点々と染みを作っていて、
それが布団をはみだし畳の上までも濡らしていた。
ともえは、低く笑った。情けなくて言葉も出ない。
(私……どうなってしまったの……?)
不意に、不安と切なさが綯い交ぜになった感情が、胸の内で破裂した。
ともえは、静かに泣いた。
十、
結局、この日もともえは仮病を使い、部屋に篭りきりで過ごすことにした。
父にいらぬ心配をかけてしまうのは心苦しかったが、仕方なかった。
あんな夢を見てしまっては、倉司と合わせる顔がない。
だが部屋でじっとしていると、心に浮かんでくるのは倉司のことばかりであった。
都会から来た余所者。粗野で下品で、不良っぽくて……でも、何故だか憎めない不思議な男。
ともえは、髪に付けた花の髪飾りに触れながら、止め処ない想いを心に巡らせる。
そんな時、廊下から部屋に近付いてくる足音が聞こえた。
夕べの淫夢を思い出してともえは一瞬、心臓を跳ね上がらせたが、
障子に映った人影は、倉司のものではなかった。
「ともえ」
「ああ……お父様」
常雄が娘の居室を訪れるのは珍しいことだった。
部屋に入る父を、ともえは座布団を差し出して迎え入れる。
「具合はどうだ?」
父の問い掛けに、ともえは伏目がちに答える。
「はい。お蔭様で今は大分よくなりました……明日からは、ちゃんと家の事を致します」
「そうか」と言ったきり、父は口を閉ざした。
暫し沈黙の時が続く。
堪り兼ねたともえが何か言おうとした時、意を決した様子で父は言葉を発した。
「ともえ。お前の婿が決まった」
ともえの周囲から、音が消えた。
父が、その“婿”とやらの素性を何か話していたが、ともえの耳には全く入ってこなかった。
――それは、そうよね。
太田の跡取りを産む為の婚姻なのだ。
当然その決定権は、当主である父にある。自分はそれに従うほかない。
たとえそれが……結婚する本人の与り知らぬ処で勝手に決められた縁談であっても、だ。
気が付くと、ともえはすでに日の傾きかけた部屋で、空の座布団を前にして正座をしていた。
あれから父が何を話し、自分がどういう受け答えをしたのか全く覚えていない。
ただ一つ確かであるのは、今まで何処か絵空事のようにしか考えていなかった“結婚”というものが、
突然、灰色の現実となってこの身に突きつけられたのだという事実――
ともえはふらりと立ち上がる。
己の足の向かう先も判らぬまま彼女は歩き、あの部屋に――倉司と出逢ったあの四畳半に辿り着いた。
震える手で襖を開けると、中はもぬけの殻だった。
「……倉司?」
ざわり。と、不吉な予感が身内を走った。
彼が来た日からずっと部屋に敷かれたままになっている布団を見詰め、ともえは立ち尽くした。
「あらぁ、お嬢様ぁ?」背後から長閑な声が聞こえた。
以前、倉司と談笑していた若い女中が廊下を歩いて来る。
「阿部ちゃんに何か御用なんですかあ?」
「あ……ええ、ちょっと……」
「彼もう船着き場へ行きましたよ」
「船着き場?」ともえは眉をひそめる。
「おや、ご存知なかったんですかぁ?旦那様のご命令なんです。
彼氏、もうこの部屋には戻ってきませんよ。
寂しいですよねぇ。アタシは部屋を片すように言われてて……アレお嬢様ぁ?」
最後までは聞かなかった。
茜色の西日に照らされた廊下を駆け抜け、ともえは船着き場へと急いだ。
十一、
船着き場からは、ちょうど漁船が出て行く処であった。
――おそらく、父が倉司を送り出す為に出させたものであろう。
「待って!その船待ってえぇぇ!!」
船を追いかけて、ともえは桟橋を走る。
懸命に声を張り上げて呼び止めようとするも、船は、バタバタとモーター音を響かせながら、
無情に沖へ遠のいて行った。
夕空の下、点のように小さくなった船に向かい、ともえは桟橋の先で叫び続けていたが、
やがて、がっくりとその場にくずおれた。
「倉司………」
ともえの眼から、涙が零れ落ちる。
こうべを垂れて嗚咽を漏らすともえの泣き姿が、夕焼け色に赤く染め上げられていた。
その時、泣いて震えるともえの肩を、急に誰かが叩いた。
「うるさい!触るな!!」ともえはその手を振り払う。
しかし相手は尚もしつこく、ともえの肩を揺さぶり続ける。
ともえは振り向いた。
するとそこには倉司がいた。
夏だというのに見目暑苦しいその革ジャン姿。間違いなく倉司だった。
「何やってんだお前?」
倉司は、呆れ顔でともえを見下ろした。
日が落ちて藤色に翳った路地を、ともえと倉司は連れ立って歩いていた。
「なんか庭師のおっさんが倒れちまったんだよ。でもこの島、医者とかいねえだろ?
本土の病院に運ばなきゃなんねえってんで、船を出すことになってさ。
あんた、ずっと部屋に篭ってたから知らなかったろ?大変だったんだぜえ。
俺も色々手伝わされちまってよ」
倉司の少し後ろで、ともえは俯き加減に彼の言葉を聞いていた。
「だけど失敗したよなあ。本土に出る船なんだから、俺も一緒に乗せてって貰えばよかったんだよな。
バタバタしてて思いつかなかった」
「やはり、島を出て行くのね」
ともえがそう言うと、倉司は立ち止まって笑った。
「お互い清々するよな?やなヤツと別れられてさ」
「………そう。そんな風に思っていたの」ともえは、哀しげに眼を逸らす。
彼女の震える声に、倉司は少し慌てた。
「おいおい、冗談真に受けんなって……たく。お前のキャラはほんっと掴めねーな。
なんかいきなり港で泣いてるし。演歌か?!」
複雑に入り組んだ上り坂の路地を進むと、少し拓けた高台に出た。
眼下には、集落にともる僅かばかりの灯りと、その向こうの、暗く横たわる海が見渡せた。
ともえは石の手すりに寄りかかり、この島の全てとも言えるこの小さな風景を眺めた。
「この島………何にもないでしょう?」ともえの断髪を、ゆるい風がなぶる。
頷く倉司を見上げる彼女の瞳は、不思議な輝きを放っていた。
「だけど、私はこの島だけしか知らないの。外の世界には出られない。
ここで婿さん貰って……子供を産んで。一生この島に居なけりゃならないの」
ともえは、倉司を真正面から見上げた。互いの胸の鼓動が聞き取れそうなくらいに近くで……
倉司は息を飲んでともえを見詰め返す。
「でも私……本当は、この島を出たい。広い世界に触れて、もっと自由に生きてみたいの」
生まれて初めて口に出した秘めたる思い。
感情の昂ぶりから、ともえの眼に真珠の涙がきらめく。
「連れて行って……」ともえの躰が、崩れるように倉司の胸に凭れかかった。
「あなたの住む世界に……私を連れて行って下さい」
「あんた……」
「ともえって呼んで」
ともえは倉司の頸に腕を絡め……震える唇を、彼の唇へと押し付けた。
十二、
その夜。ともえは密かに荷物を纏めると、屋敷の離れに居る倉司のもとを訪れた。
ともえは知らなかったのだが、倉司は昨日から住み込みの庭師と共に、ここで寝泊りしていたのだ。
「あの四畳半、蒸し暑くって夜なんか堪んなかったんだよねー。
そう言ったら庭師のおっさんが、こっち来ていいって言ってくれたからさ」
倉司は屈託なく言って笑ったが、急に真顔になってともえを見た。
「ともえ……お前本当に、俺とこの島を出るつもりなのか?」
ともえは大きく頷いた。
「私は本気です。冗談であんな……接吻したりはしないわ」
ともえは断言するが、倉司の表情は浮かない。
「つーか第一、どうやって島から出る気だよ?絶対に見付かるだろ船なんか出したら」
「大丈夫。灯台から出ればばれないわ」
「灯台?」
「そう……あそこには非常用の小型艇があるの。三逗港ぐらいまでなら、何とかなるはずよ。
幸い今は海も凪いでいるし……」
「マジかよ……そんなんでお前」
「お願い!」
ともえは倉司の膝に手を置き、縋りつくような眼で見詰める。
倉司は、苦々しい顔で溜息をついた。
「ともえ……悪ぃこと言わねえ。やめとけ。……うまくいきっこねーって。
お前みてえなお嬢さん育ちが俺なんかと東京行ったって……大体俺、お前を養ったり出来ねーぞ?」
「大丈夫。私、働きます。東京なら私でもお勤め出来る場所くらい、何処かにあるでしょう?」
「んな簡単なモンじゃねーよ」
頭をボリボリ掻きながら困惑気味に倉司は返す。そんな倉司の様子を、ともえは静かに見詰めた。
そして彼の膝に置いていた手を引き、スッと立ち上がる。
彼女が諦めて帰るものと期待した倉司だったが、そうではなかった。
「と、ともえ……?」
ともえは帯留めを外すと腕を後ろに廻し、しゅうしゅうと帯を解いていった。
鴇の紬が床に落ち、襦袢を締める伊達巻に手が掛かる。
そこで彼女の手はハタと止まった。
前には、半ば唖然とした表情で、自分の肉体に眼を向けている倉司が居る。
その彼の視線の中で自分は着物を脱ぎ、生まれたままの肢体を曝け出そうとしているのだ。
頭がくらくらした。
もしかするとこれは、夕べ見た夢の続きなのではないだろうか?
しかし、あの夢以上に、今の状況には現実感がない。
それでもこうして手が震え、天井にぶら下がる裸電球の灯りを眩しく感じているのは、
やはり夢ではない証拠なのだろう。
ともえは伊達巻を解いた。
もう後は、襦袢を開き、腰にかけた腰巻きをはずしてしまえばいい。
だが再び彼女の手は止まる。
恐ろしいほどの羞恥心で、身も心も竦みあがってしまっているのだ。
本心をいえば、全てを無かったことにして逃げ出してしまいたい。と思うほどに……
「おい、ともえ」
顔を伏せて硬直してしまったともえに、倉司が呼び掛ける。
その声を聞いて、ともえは気を取り直した。
(……えい!ままよ!)
ともえは、我が身に活を入れる。
そして、体を覆っていたものを、全て取り払った。
十三、
「ともえ………」
半分開いた窓から、少し湿り気を帯びた風が入ってくる。
八畳一間の小さな離れでともえは着物を脱ぎ、白い足袋と、花の髪飾りだけを身に付けた裸体で、
倉司の前に立っていた。
倉司は、自分の前で“ヴィーナスの誕生”のように、乳房と陰部を隠して佇む乙女の姿を、
何も言わずにただ見詰めていた。
目線を落とすと彼女の膝はガクガク震えており、その緊張の激しさが如実に表れていた。
これは、ともえが己の本気を示す為に行った一番勝負であり、人生最大の大博打でもあった。
(お願い倉司さん……私を受け入れて!一緒に……連れて行って!)
ともえは涙の滲む眼で、ひしと倉司に訴えかける。
倉司は、ともえの勢いに気圧される思いで呆然とその眼を見返していたが、
やがて立ち上がると、彼女の小さな肩をそっと抱いた。
ともえは、彼の胸の中に顔を埋める。
「倉司……さん」煙草の匂いに包まれながら、彼女は陶然と囁いた。
「今宵わたしを、あなたの妻にして下さい」
窓の磨り硝子に、ひとつに重なる二人の影がぼんやり映し出された。
白熱灯の黄味がかった灯りが、布団に横たわるともえの肌を、暖かい色に浮かび上がらせている。
服を脱いだ倉司がその隣に寝そべると、
彼女の隆起した乳房が、呼吸と共に大きく上下するのがよく見えた。
倉司の手がその乳房に触れる。
「あ………」
ともえの躰が、ピクリと揺れた。
柔らかく揉みほぐし、摩ってくる倉司の掌の熱が乳房に伝わり、ともえの肌を熱く火照らせてゆく。
硬く、少しざらついた指先が乳首に引っかかる感触に、ともえは眉根を寄せて身を捩った。
「ああ、こそばいわ……」
そう言って眼を閉じ顔を背けたが、倉司の手の動作は治まらず、寧ろ、感覚の鋭い乳首の先を、
よりいっそう念入りに刺激する。
ともえは時々薄目を開けて、彼の節くれだった指が己の躰に触れてゆく様を眺めていた。
それはまるで、幻を見ているような心持ちであった。
あの淫夢のような凄まじい快楽ではないものの、
恋しい男に愛情を持って接して貰っているという充足感で、ともえの胸はときめいた。
やがて倉司の手はともえの乳房から滑り降り、薄くあばらの浮いた辺りから、
小さく窪んだ臍の脇を通って、微かに盛り上がり、薄墨のような恥毛に覆われた陰阜へと辿り着く。
ともえは、思わず膝をきゅっと締めて性器への接触を反射的に避けようとした。
すると倉司は、そこから手を引いた。
ともえがぱちりと眼を開くと、彼は彼女の躰の上に跨るようにして覆い被さり、
その首筋に、じゅう、と音の出るくらい強く吸い付く処であった。
「あぅ……う………ううう」
ともえの紅く色づいた唇から、絶えかねたような声音の呻き声が漏れ出でる。
倉司の唇はといえば、首筋から、鎖骨から、ともえの躰のいたる場所に接吻の雨を降らせていた。
そうしながら、倉司は彼女の背中に腕を廻す。
次いで顔を充溢した乳房の勾配の谷間にめり込ませ、頬を摺り寄せた。
肌と肌とが密着し合う感覚は、ともえを単なる性感以上の幸福で満たした。
「ああ……倉司さん………」
ともえは喘ぎながら倉司の名を呼ぶ。
そして、その嫋やかな腕で倉司の頭を掻き擁くと共に、自ら膝を割った。
倉司の下腹部が、その膝の間に分け入って、性器に性器を擦り合わせていった。
十四、
ともえの裂け目は、もうすでに、熱い蜜で溢れかえっていた。
これまでそこには直接の愛撫を受けていないのに……
倉司は己の勃えきった陰茎を手で支え、ともえのぬめり震える陰裂に、
その灼熱の強張りをぐりぐりと擦りつけた。
ともえはそこを破られることを覚悟し、堅く眼を瞑ったが、そうではなかった。
倉司は陰茎でともえの陰唇を分け、秘肉を抉るように掻き回すだけであった。
膣口の辺りを少し突いたかと思えば、そこから陰核に向けてぐい、と擦り上げ、
陰核を、弾力に富んだ切っ先でくりくりと転がす。
反り返った茎部で、割れ目全体をなぞるように刺激する。
「あ……あぁ………は、ああぁ……」
もどかしいような快感に、ともえは悩ましい声を上げた。
(男の……男の人のものが、私を………!)
なんとも堪らない気持ちであった。恥ずかしさの中に、被虐的な悦楽があった。
ともえの柔肌は、心身の昂ぶりによってじんわりと汗ばみ、
色も、湯に火照ったような桃色に染め上げられて、眼の覚めるほどの美しさだ。
今まさにおんなの花開かんとする悦びが、全身に満ち溢れて輝いていた。
ともえの陰部が充血しきり、したたり脈打つ秘肉がぴくぴく蠢いて、
倉司の陰茎を自ら締め付け刺激するまでになった頃、
彼は乳房に埋めていた顔を上げ、肘で上体を支えて体勢を立て直した。
――あぁ、いよいよだ……
今度こそ、ともえは覚悟をする。
未知なる行為に不安を覚えるものの、恐い事はさっさと終えてしまいたいという気持ちのほうが勝り、
彼女はかえって積極的に脚を広げて倉司を待つのだった。
倉司は、ともえの漏らした淫液でぬるぬると糸を引いた陰茎を持ち直すと、
彼女の疼きの中心になっている粘膜の孔にぐっと亀頭を押し当て、
そのまま抉り込むようにして圧迫を加えてゆく。
ともえは、布団を覆う敷布をぎゅっと掴み、顔を横向けてきりりとそれを噛んだ。
倉司の強張りは、ともえの内部に順調にめり込んでゆくかに思えたが、
ある地点まで来ると行き止まりに打ち当たったかの如く、先には進めなくなる場所に到達した。
(これが、処女膜に違いない)
二人は同時にそう思った。
倉司は、ともえの腰を抱えて強引に押し入ろうとする。
「………!」
ともえの陰部に、身を裂かれるような痛みが走った。
敷布を噛む力を強めて、ともえはそれに耐える。
更に倉司が進もうとすると、痛みは到底耐えられそうにないほどに強まり、
ともえは思わず、手で以って彼の躰を押し退けようとした。
「痛い!痛い!痛いー!」
「ともえ………!」
ともえの押し返す力をものともせずに、倉司は躰の重みを使い、彼女の胎内にあっけなく入り込んだ。
「ぃぎいっ……!」
ピリッと鋭い激痛がともえの陰部を突き抜けた。
ともえは涙混じりに顔を歪め、苦しみのあまり、倉司の胸板に宛がった指先に力を込める。
倉司の胸は、彼女の爪の先に皮膚を傷付けられて僅かに血を滲ませた。
「うぅっ……」
倉司は呻き声を漏らしたが、それは胸を掻き毟られた痛みの為ではなかった。
瑞々しい初物の陰門にぎっしりと締め上げられ、
その蕩けるような粘膜の熱の心地よさに上がった、快楽の声であった。
十五、
躰を結び合った二人は、そのまま抱き合い、しばらく静止したままでいた。
苦痛に泣き顔を見せていたともえであったが、時間が経つにつれて、
どうやら次第に苦しみから立ち直って来れたようである。
「平気?」
ともえの躰の上から、倉司が声を掛けてくる。
上気した頬に涙の筋を残したともえが、細く眼を開いて頷いた。
倉司は両肘を布団の上に突いたまま、ともえの髪飾りに触れ、切り揃えられた髪にもそっと触れた。
そして、「ロストバージン、おめでとう」と言って笑った。
ともえがつられてクスリと笑うと、彼女の短い前髪の掛かった額に自分の額をぶつけ、
鼻と鼻をくっつけて、更に笑った。
倉司の陰茎を受け入れた膣は、その入口こそ破花の残滓に痛んだが、
内部の方は異物感があるだけで、そう辛いことはなかった。
それでも、倉司の腰が少しずつ動き出し、ともえの膣壁で陰茎の摩擦を始めると、
なんとも言えないきつい違和感に、ともえの表情は歪められるのだった。
「ああー、だめよ、そんなにしては……」
ともえは両脚を倉司の尻に廻し、彼の動きを抑えながら首を振る。
「まだ痛い?」との倉司の問い掛けに、本当はもうそれほどは痛まなかったが、
自分の状態をなんと説明したらよいのか判らないともえは「痛い」と答えることしか出来なかった。
「じゃあ、今日はここまでにしとくか?」
ともえを気遣った倉司の言葉であったが、それを聞いた途端、ともえは拗ねた表情を見せる。
「そんなのイヤ!……もう少し、このままでいて」
「でも痛いんだろ?」
「痛くっても……こうしていたいのよう」
言うなりともえは、倉司の首っ玉に両腕でかじりつく。
彼の尻を挟み込んでいた脚にもぎゅっと力が入り、その拍子に、倉司の陰茎が、
ともえのより深い場所をずんと突付いた。
「うぅ」
倉司とともえが、同時に声を上げる。
「と、ともえっ」
倉司は初交であるともえの躰を気遣い、今まで随分自制していたのだが、
それもそろそろ限界になって来ていた。
ともえの初々しい、それでいて大胆な態度に触発され続け、
尚且つその胎内の、素晴しく甘美な肉襞の蠢動に、陰茎が炙られ続けていたのだ。
倉司はもう、なけなしの理性をかなぐり捨てて、ともえの膣に激しい抽送を加えようとした。
ところが、ともえの両手両脚が彼の躰にしっかと絡み付いているものだから動作が自由にならず、
倉司は、ともえの下半身ごと、ゆさゆさ揺さぶることしか出来なかった。
「うあぁぁぁぁぁぁ!!!」
「あ、あら、あららら……」
獣のような唸り声を上げてガクガク動き始めた倉司に揺すられて、ともえの乳房がふるふる震える。
同時に、名状しがたい微妙な快楽が膣の浅いところで起こり、
ともえの脚はよりいっそうきつく倉司の腰を締め付けた。
「だぁっ!おま、ちょ、は、離せよおっ」
倉司が喚いたが、ともえは聞かない。
倉司の動きは更に激しさを増していくが、それに伴いともえの快感も増していた。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、ああああ………あ!」
ともえの中で徐々に高まっていた快感が、急速にひとつの頂点に達した。
じわん、と痺れ渡るような恍惚感が、
膣の、ちょうど陰核の真裏にあたるくらいの場所を中心にして広がって行き、
ともえは陰部を倉司の躰になすり付けながら、ぐっと上体を仰け反らせた。
十六、
「うおぉ……おうっ」
急激に熱くなり、堅く窄まった膣口に絞られ、倉司の陰茎は破裂しそうになった。
――もうこれ以上は、我慢できない。
倉司は、ともえが弛緩し、力が抜けたのを幸いに、素早く陰茎の抜き差しを始めた。
「む………」
ともえは眼を瞑ったまま少し眉をひそめるものの、ぐったりとして身動き取れずに、
されるがままになっていた。
軽い絶頂を迎えた所為で膣からは大量の淫液が湧き出ており、
陰茎の出し入れが潤滑になっていたので、彼女はさほど苦しまなくて済んだ。
先刻とは打って変わって、人形のように大人しくなったともえの躰に、倉司は激しく陰茎を打ち込む。
荒い息を吐き、熱気を放って汗のしずくを滴らせる倉司の顔を、ともえは薄眼を開けて見詰める。
その野性的な風貌は、彼女の眼に男らしく、頼もしく映っていた。
――ああ、私はやはりこのひとが好きなんだ。
ともえは深い悦びを感じた。
好きな男に抱かれ、貞操を捧げる。
女に生まれて、これ以上に幸福なことが他にあるだろうか?
「あああ……倉司さん………あなた……」
ともえはうっとりと愛する男の名を呼び、彼の躰にかいなを廻す……今度は、邪魔にならぬように。
抽送と共にくちゅくちゅと粘液の音を立てる膣は、摩擦によって熱く燃え盛り、
半ば麻痺したようになってしまっている。
でも倉司が腰を突き上げる度、そこはむずむずと快感に疼き、
いつしか、ともえも倉司と同様、熱い呼吸に胸を弾ませ始めていた。
「はぁ、あああ……ああうぅ」
ともえの咽喉の奥から、引き摺るように長い喘ぎが勝手に漏れ出でる。
その唇に、倉司は唇を被せて甘く吸い上げる。
腰を振りたてる動作はますます激しく、繋がった部分から響く淫液の音も物凄い。
倉司は上半身を起こし、膝立ちになって両脇にともえの脚を抱えあげると、
苦悶するような表情を浮かべながらぱん、ぱん、と肉に肉をぶつけ、陰茎を、狭い膣穴で扱き上げた。
そして―――
「ともえ……出すぞ」
倉司が、熱い吐息の中から告げた。
性の知識に疎いともえではあったが、それでも、彼の言う「出す」というのが
この行為のひとつの決着であることは感じていた。
やがて倉司は「うっ」と短く呻くと、腰の動きを止めた。
ともえの脹脛の当たった彼の臀部が堅く締まり、微かに痙攣したかと思うと、
膣の奥深い処で、何か熱いものがじわりと広がっていくような感覚を覚えた。
その後、しなやかな筋肉を浮き上がらせていた肉体が、がくり。と脱力して
ともえの胸の中に倒れ込んできた。
ともえは、乳房に凭れて苦しげな呼吸に喘ぐ倉司の、頭と躰の重みを肌で感じ、
狂おしいほどの愛おしさを味わった。
そして、彼の陰茎が、余韻を愉しむかのようにゆっくりと上下に動くのにつれ、
何か、耐え難いような昂揚が性器全体に起こる。
「う、あ、あああ……あぁはぁぁぁ……んんん………」
ともえは、叫んだ。
白足袋の中で、足の指が反り返った。
わななく様に躰が震え――どっと噴き出した汗に塗れた四肢が、ぱたんと落ちて、
それきり、しかばねの如く静かに動かなくなった。
十七、
夢ともうつつともつかないまどろみの中から、二人の意識はようやく戻った。
腕を伸ばして大の字に横たわる倉司の、腋の下の辺りに頭を寄せて、
ともえは淑やかに眼を閉じていた。
倉司の咥え煙草から立ち上る紫煙はゆったりと辺りを漂い、天井の灯りをぼんやり霞ませる。
ともえは瞳を上げると、煙を吐き出す倉司の横顔をそっと見上げた。
気付いた倉司が笑いかけてくる。
「……ねえ倉司さん」
「んー?」
「倉司さんって……私を見るといつも笑うのね?」
「そーか?」
「そうよ。最初に逢った時だって、眼が合うなり笑ったわ……何でなの?」
「そりゃともえが可愛かったからだよ」
ともえの頬にぼっと火が点る。
「う、嘘ばっかり!本当は私が都会の娘に比べて不器量だから、おかしくって笑ったんでしょう?」
「はあ?なんだそりゃ?」
倉司は、ぷっと膨れたともえの大きなまなこをチラと見下ろし、いきなり吹き出した。
「ほらあ!また笑ってるわっ!失礼しちゃう!」
「へへ……そりゃおかしいよ。だって、すっげー判りやすいんだもん、お前」
「判りやすい?」ともえは眉をひそめた。
「そーだよ。自分じゃ判んないのかね?お前って感情が即、顔に出るんだよ。
しかも泣いたり怒ったり笑ったり、ローテーションが早いから、
なんだか見てて飽きねーっつーか……」
そう言うと、倉司は枕元にアルミの灰皿を引き寄せて、吸殻を揉み消した。
「最初ン時だってそうだよ。可愛い女の子だなって思って見てたら
なんか意識しちゃって澄ましてるのがマジ笑えるっつーかさ……」
「まあ酷い!」
「怒んなよお。それにさ、いいと思うぜ。そういうの。スレてないっていうか。
真っ直ぐで誤魔化しとかなくて……好きだぜ俺。お前のそういうトコ」
ともえは、ぼおっと逆上せる思いで倉司の言葉を聴いていた。
――今の私は、どんな顔をしているのだろうか?
そればかりが気になってしまう。
それでも倉司は、相変わらずの人懐こい笑顔でともえを見詰めてくれる。
仄々と幸せな気分に浸るともえの唇に、倉司は軽く口づけた。
そんな和やかな時間を過ごす二人の居る離れに、近付いてくる人影があった。
「阿部ちゃあん、未だ起きている?」
ガラリと格子戸が開くと同時に、「ひっ」という女の悲鳴が聞こえてくる。
二人があわてて飛び起きると、離れの入口で、例の若い女中が棒立ちに立ち尽くしていた。
女中の手にした源蔵徳利が地面に転がり落ちる。
ともえが堪え切れず悲鳴を上げると、女中は手で口元を覆い、逃げるように駆け出していった。
ともえは見る見る蒼ざめてゆく。
女中は、部屋の隅に置かれたともえの旅行鞄をしっかり見咎めてから去って行ったのだ。
ということは―――
「大変!倉司さん、急がないと!」
ともえは立ち上がり、眼にもとまらぬ速さでもって、着物を身に着けていった。
十八、
二人が大急ぎで身支度を整えて離れを出ると、いつの間にやら外では雨が降り出していた。
ばしゃばしゃ泥水を跳ねながら屋敷の玄関に向かうと、背後から懐中電灯の光を照らされた。
「貴様等!何処へ行くつもりだ?!」常雄の声だ。ともえはギクリと立ち竦む。
だが倉司の反応は冷静だった。
「おっさん、済まねえっ」と言うが早いか、
懐から大きなナットを取り出して、常雄に向かって投げ付けた。
常雄がナットを避けて転んでいる隙に、彼はともえの手を取って走り出した。
「うぬ……ま、待てい!!誰か!!誰か居ないかあっ?!」
常雄の怒声を背に、二人の逃避行が始まった。
集落の路地は、常雄の命を受けた漁師達によってすぐに封鎖されてしまった。
それでも二人は、ともえの土地勘と、倉司の機転と腕っぷしを頼りに
互いを助け合い、励ましあって灯台を目指した。
「ともえ、こっちだ!」
夜見島港の金鉱会社跡に入り込むと、倉司は、まるでもう勝手は判っているとでも言うように、
てきぱきと道を選んで進んでいった。
「まさか占い女のデンパが、こんなトコで役に立つなんてなあ」
よく判らないことを言う倉司に付き従い、このまま順調に逃げ切れるかと、ともえは期待する。
だが追っ手の追跡は、予想以上に執拗であった。
「あいつら、もうそこまで来てる……灯台に着いたら、すぐ船に乗ってしまいましょう」
真っ暗な地下通路を進みながらともえは言った。
――島さえ出てしまえば、きっと何とかなる。
それだけが、二人の希望であった。
足元が雨でぬかるんで走りづらいし、破花を迎えた直後の躰には未だ痛みが残っていたが、
ともえは心に決めた男との新たな人生に思いを馳せ、苦痛をものともせずに脚を進めた。
そして倉司もまた、そんなともえを労わりながら、彼女の手を引き、懸命になって走るのだ。
やがて、灯台のあかりが近付いて来た。
後はもう、この崖沿いの道をまっすぐ行けば、終着点だ。
息を切らしつつも、二人の顔は安堵の笑顔に綻ぶ。
ところが。
「ここまでだ!!」
灯台の真下まで来た処で、二人の前に黒い人影が立ち塞がった。
「お……父様………!」
ともえは驚愕に眼を見開き、凍りついた。
父の手には、太田家の家宝である日本刀“潮薙”が握り締められていた。
(まさかお父様……あれで、私と倉司さんを?!)
闇夜の中、鈍い光を放つ白刃の闘気に、ともえは怯んで後ずさる。
そのともえを庇うように倉司は立ち、常雄を睨み付けた。
「……どけよおっさん。ともえは、俺と一緒にこの島を出るんだ」
「なんだとぉ?」常雄が、刀を構えた。
「んなモン見せて脅かしたってどうにもなんねーよ。これは……ともえが決めたことだからな」
「貴様……何を抜け抜けと!娘を誑かす忌々しい余所者めがぁっ!!
ともえは、太田の跡取りを産まねばならんのだぞ!!家の為、島の為にだ!」
常雄は刃の切っ先を倉司に突きつける。しかし倉司は引かなかった。
「はあ?家の為ぇ?なーに訳判んねえこと言ってんだよ。ともえが子供産むんだったら、
そりゃともえ自身の為じゃなきゃ駄目に決まってんじゃん。
家の為に子供が欲しいってんならおっさん、あんたが自分で子供作れよな」
「き……貴様ああぁぁ!!」
常雄は怒気を露わにし、刀を振りかぶった。
十九、
ともえが悲鳴を上げた。
だが倉司は、ともえの手を取ったまま、難なく常雄の刀を避けた。
更に、攻撃を空振りした常雄の背中に蹴りを入れる。常雄はよろめいて倒れた。
「お父様!」ともえは思わず声を上げる。
倉司が、ともえの手を引く。
「ともえ、行こう」倉司に促されるも、ともえの足は進まない。
ともえは、泥水の中に倒れ込んだ父の背中を見ていた。
父の言っていることは、正しい。
太田家は、普通の旧家とは違うのだ。
この夜見島には光に追われしモノの潜む、いにしえの封印がある。
太田の家は昔から、それを守る使命を帯びた一族であった。
その為に――封印を、島を守る為に太田家は必要なのだ。決して絶やすことは出来ない。
なのに今、自分は進んでこの太田家と夜見島を見捨てようとしているのだ。
それも、自分ひとりの身勝手のために………
ともえの心に迷いが生じたその時、常雄は水溜りの中から起き上がった。
振り返ったその眼。ともえは見た。
常雄の充血した眼には、涙が滲んでいた。
その涙には、太田の使命も威信も関係ない、ただ、愛娘に裏切られた男親の哀しみだけが満ちていた。
「おい、どうしたんだともえ!早くしねえと……」
ともえは倉司の顔を見上げた。
そのぶっきらぼうな、だけど何処か人懐っこい優しさを秘めた面持ち。
暖かな瞳に見つめられると、愛おしさが泉の如く湧き出してくる。
でも。
「倉司さん……ごめんなさい。私やっぱり行けないわ」
「ともえ?」
「ごめんなさい………」ともえの瞳が潤んで揺れる。
大好きなひと。憧れの都会。でもやっぱり駄目だ。
裏切れる訳がなかった。
自分を育んでくれた島を。島の人々を。
そして――誰よりも深く自分を愛してくれている父親を……
ともえの手が、倉司の手を離れた。
「ともえ………」
倉司が呆然と呟いたその時――倉司とともえの足元が、急に大きく揺らいだ。
「いぃっ?!」「う、うわあああーーーっっ!!!」
脆くなっていた崖沿いの道が崩れ落ちていた。
二人はそのまま落下する……かに思えたが、常雄がともえの腕を引いた。
「倉司さん!」
常雄には、ともえを救うのが精一杯だった。
遥か下にある海面へ、倉司はなす術も無く落ちてゆく。
「倉司さん!倉司さん!倉司さあああああん!!!」
ともえは絶叫した。
常雄に押さえられながらも、目一杯崖から乗り出し――ともえは海に向かって叫び続けた。
その海が、一瞬赤い色に染まっていたことに、彼女が気付くことは無かった……
二十、
また違う世界に来たのだと、すぐに気が付いた。
恋人殺害の汚名を晴らすために来た夜見島。そして赤い津波。
その後、様々な怪異の中を彷徨った果てに、再び津波に飲み込まれて……ともえと出逢った。
あれもまた此処と同じ、少しずれた世界だったのだと思う。
失われた二十九年前の世界。純朴で優しい人々。
古風で意地っ張りで着物の似合う、そんな……女の子の居た場所。
でも、今居る世界には誰も居ない。
「みんな消えちまったのか……?」
誰の存在も感じなかった。
恋人の柳子も、この島に導いた占い女も、おそらくみんな、始めから居ないことになっている。
そんな気がした。
そして勿論、ともえも……
それは、途轍もない喪失感だった。寂しさで……泣けてきた。
海に向かって嗚咽を漏らす倉司の傍らに、何者かが近付いて来た。
島に来ていた小説家の連れていた盲導犬だ。確か、ツカサとかいったか。
彼女は、頼りなげに鼻を鳴らしながら倉司の顔を覗き込んでいる。
倉司はツカサを抱き寄せた。
海に照り映える朝焼けを、一人と一匹で寄り添って眺めた。
「此処にはもう、俺たちしか居ないんだなあ……」
犬の背を撫でながら倉司は呟く。
倉司の孤独が判るのか、ツカサは、倉司の顔をじっと見詰めていた。
そんな彼等の元に、今度は馬鹿に慌ただしい気配が迫っていた。
荒い息を吐き散らし、猛然と駆け寄ってくる、一匹の犬――
ただし、今度のヤツはツカサとは違い、何処と無く野卑な感じのする貧相な駄犬であった。
駄犬はツカサの匂いを嗅ぎまわり、馴れ馴れしくじゃれ付いている。ツカサは少し迷惑そうである。
「こらーっ、ちょっと待ちなさいよあんたー……あ?」
遠くの方から女の声が聞こえた。
倉司が振り返ると、黒いワンピース姿の若い娘が、抜けた首輪と引き綱を手に走ってくる処であった。
その姿を見た途端、倉司は立ち上がって叫んだ。
「と……と、ともえっ?!」
倉司の勢いに、ともえはちょっと面食らった顔をする。
倉司は彼女の姿を見詰めた。どう見てもともえだ。何故、今この世界にともえが居るのだろうか?
だが次の瞬間、ともえはとんでもない言葉を口にした。
「ともえって……あなた、うちのお母さんのこと、知ってるんですか?」
今度は、倉司があっけに取られる番であった。
倉司は、馬鹿犬に首輪を付け直そうと四苦八苦している娘の顔をまじまじと見直した。
明るい色のショートヘア。洋装の所為なのか、何処となく現代的な雰囲気を漂わせている。
でもやっぱり、その顔立ちはともえ其の物にしか見えなかった。
「お母さんって……じゃあ、あんたはともえの娘?!」
「………そりゃあそうでしょ。普通」
呆れたように言い放つ口調も、ともえにそっくりだ。
信じ難い事実ではある。しかし考えてみれば、ともえに逢ってから二十九年経っている訳なのだ。
此処のともえと倉司の逢っていたともえは、同じともえでは無いのかも知れないが――
二十一、
とにかく、二十九年も経てば、結婚してこんな大きな娘がいたとしても、何の不思議も無いだろう。
倉司は多少複雑な気持ちになったが、
そうと判ればその、「お母さん」になったともえに逢ってみたいとも思った。
「な、なあっ、ともえに逢わして貰えねーかな?」
倉司が言うと、娘は少し沈んだ顔になる。
「いいけど……告別式は明日よ。今日は、内輪だけの……」
「コクベツシキ??なんの話?」
「だから、お母さんのお葬式。だってお母さん死んだの、昨日なのよ。私だって未だ信じられな……」
娘は声を詰まらせた。
飼い犬に寄りかかり肩を震わせる彼女を、倉司は愕然とした表情で見ていた―――
「事故だったの。この子の散歩の途中、路地の欄干から転落して………」
少し落ち着きを取り戻した娘は、犬と共に倉司の隣に座ってぽつぽつと語りだした。
「そうか……そりゃ、なんて言っていいのか」
「すっごい元気な人だったから、こんなことになるなんて全然予想してなくて。
結構パニクっちゃってんのよ。お葬式の準備で家ん中ももう大変。
この子の散歩にかこつけて逃げてきちゃったんだぁ、私」
そう言って笑顔を浮かべる娘を、倉司は痛ましい思いで見詰めた。
――顔だけでなく、強がりな処まで母親譲りな子だ。
そんな風に感じながら……
「それにしても、あなたって何者なの?島じゃ見掛けない顔だし。
お母さんの知り合いにしては、随分若いじゃない?多分、私とタメくらいの歳でしょ?」
娘が倉司の顔を覗き込んでいった。
その好奇心丸出しの表情に、倉司はつい笑ってしまう。
「何がおかしいの?」
「いや」一転ムッとする娘を見て、更に笑いながら倉司は答えた。
「俺さ、ともえ……つか、あんたのお母さんに昔、すげえ世話になったんだよ。だから……
なんか俺に出来ることがあったら、言ってくれよ。どうせ暇だからさ」
娘は、不思議そうな面持ちで倉司の横顔を見詰めた。
そして腰の埃を払いながら、ヨイショと立ち上がる。
「うーん。よく判んないけど、あなたって悪い人じゃあないみたいよね。何か、そんな気がする……
いいわ。とにかく家来て。お母さんも、あなたに逢いたがってるかも知れないし」
倉司は立ち上がった。ツカサも行儀良くついてくる。
ただ一行の中で、例の駄犬だけが落ち着かず、
好き勝手にそこいらの草むらに鼻を突っ込んだりして、飼い主のリードを無視していた。
「ソウジ!早くこっちいらっしゃい!!」
業を煮やした娘の声。倉司はきょとんとした顔で娘に「あ?」と返事をする。
「え?ヤダ、この子を呼んだのよ?ソウジっていうの。お母さんがつけた名前なの。ふふ。
お母さんったらこの子の顔を見た途端、名前はソウジだって聞かなかったのよぉ……ね、ソウジ!」
判っているのかいないのか、ソウジはいきなり遠吠えを始めた。
そして倉司の足元に寄って来たかと思うと、片足を上げて倉司の脚にマーキングをした。
その後、倉司の顔を見上げ、目を細めてにまっと笑い顔をする。
「………」
倉司は言葉も無くそれを見下ろしていた。
倉司とソウジは、暫しそうやって互いを見詰め合い続けた。
【了】
GJ
ソウジ萌え
24 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 19:20:24 ID:SDyTRKcg
GJ
もうともえは殺せないよwww
長編GJ!!
古風娘萌え
GJです! ともえタン可愛いよ〜。
阿部ちゃんとのやり取りに、凄く萌えました。
GJ!
サイレン2のヒロインは誰がなんと言おうとともえタン
次は百合(キャラ名の方)ですか?
28 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 01:17:05 ID:znQ2hOCd
馬鹿じゃねーの?キモッ
何を今更
前スレの埋めの為に何とか短めの話をやっつけて書いておいたので、
スレが奈落に落ちる前に見てくださるとうれしいかもです。
次は百合を苛めたいと思っています。
百合カプじゃないけど。うーん判りづらい。
あとともえたんの話、気付いている方もいるかも知れませんが、
以前どこかのキャラスレで書かれていた小ネタを妄想により大幅に広げたものなのです。
勝手に使用してすいませんでした。
いまさらですけど……
一樹の出番のなさにワラタ
そろそろ出るんジャマイカ
まだ書かれてないのはキバヤシと靴べら王子と美浜・・・ぐらいか。
一樹と木船の絡みがここまで無いのがすごぇ
一樹×人間ともえが見たい
いや、ゲームの流れから行くと絶対無理だけどさ…
しかしここまで一人の神職人によって支えられてるスレもないな
今いる職人さんとはまた違う毛色の職人さんも欲しいなぁ、なんて贅沢な望みも出てきちゃうんだよね
3が出ればまた職人さんも潤うのだろうがな。
2発売の直後はスレに活気が出たし。
マニアックス発売で活気づい……たりはしないかぁ。
掃除してたら
お蔵入りさせた八尾と知子のエロ出てきたからさ
なんかネタかぶってそうなんだけど、ほかの職人待ってる間にってことで。
「怖かったでしょう。知子ちゃん、良い子だったね」
優しい声で呼ばれて顔をあげる。
求道女は慈悲深い笑みでうずくまる自分を見下ろしている。
掠れた声で搾り出したのは、御免なさいの一言だった。
再度言葉にした謝罪は涙と鼻水に邪魔された。
一言目はいなくなれと願った八尾へ。
二言目はいなくなれと願った牧野へ。
役場勤務の父は村人の輪に積極的に溶け込む必要があったのだろう、
歳若いながら老人達に混じって熱心に教会へと足を運んでいた。
信仰だの儀式だの、知子にはよく分からない。
にも関わらず彼女が毎週父について退屈な祈りの時を過ごしたのは、
ひとえに牧野がいたからだ。
柔和で物静かで同い年の男の子とは全然違うお兄さん。
祭壇に立つ姿をただ眺めているだけで満足する知子のありふれた『特別』。
日記帳はあっという間に彼の名前で埋まった。
だから願った。
求道女がいなくなりますように。
いつも当たり前に一緒にいる美しい彼女が、
死んで目の前から消えてしまいますように。
牧野に会えて舞い上がった。
この怖ろしい村で唯一、求道師なら助けてくれそうな気がした。
彼は憧れだったのだから。いっとき、知子の世界では神様のような存在だったのだから。
家出なんかしなければよかったと涙でぐしゃぐしゃになりながら、
それでも引き上げられた大きな手に淡い夢の続きを見た気がした。
直ぐ後ろを走って程なく夢は覚める。彼が見ているのは己だけだ。
私のことなど、いないも同然に振舞う男。八尾の影を探す子供のような大人。
震える身体と黒い服の裾に、心細さや彼への怒りはいや増すばかりだった。
だから、願った。
求道師がいなくなりますように。
早く誰かが私達を見つけて、このやり場のなさから、逃れられますように。
本当にいなくなることなんて、ないのに。
つないだ手が空しく離れ、ひとり無我夢中で走りまわった。
やっと八尾に出会ったときは赤い求道服に震える身体をすりよせるので精一杯だった。
そんな自分を抱いて、お母さんやお父さんのところに連れて行ってくれると、
求道師様も一緒だと、彼女はそういったのだ。
だから──だから。心細くても言われたとおり廃屋で待っていた。
倉庫の影で、あの得体の知れないモノに見つからないよう隠れて。
御免なさい、御免なさいと口の中で呟いて膝を抱きただひたすら救いを待っていた。
(──!)
刹那、あざがつく勢いで腕をつかまれた。
そのまま湿った木の倉庫の中へ押し込められる。扉が閉められた。
野良道具に引っ掛けられたかび臭い布団に押し付けられる。
求道女様、と呼ぼうとして口をふさがれた。
「しっ──」
扉の隙間から屍人がゆっくりと歩いて来るのが見える。胸の鼓動が痛い。
彼女は自分を守ってくれたのか。屍人が去るのを確認した知子は,
八尾の手の中でほっと溜息をつく。
「求道女様、ありが……」
「知子ちゃんは、お母さんやお父さんに会いたいのよね」
耳元でささやく求道女の声は、何故か後ろ暗さを含んでいた。
ジャージの下から彼女の冷たい手がへそのあたりに触れた。
思わずおなかがへこんだ。そのまま手はすべらかな肌をなぞりゆっくりと上っていく。
「求道女、様?」
くすぐったい。何かの悪戯かと思った。
それくらい彼女のしようとしていることは不可解だった。
「答えてちょうだい」
「あ……会いたい、です」
冷たい。暗い倉庫の中で、薄い胸を冷えた指で揉みしだかれる。
どうして?どうして?自分の身に何が起ころうとしているのか、理解できない。
彼女の指にまだ小さい乳頭が固くなる。
──怖い。
身をくねらせて逃れようとするが、狭い倉庫ではそれも叶わなかった。
「それじゃあ、もうひとつ聞くわね」
ジャージのファスナーを下げられ体操服のすそを持ち上げられて、
お気に入りの苺柄のブラが露になった。
突然のことに硬直していた知子は今になってようやくかぶさる八尾を押しのけようとする。
「やだ、やだ、求道女様……」
嫌悪を感じても、外の異形に知られることを恐れて退けることも声をあげることも出来ない。
求道女の手によって知子は上にブラをのけられ、小ぶりの胸をさらけ出した。
「求道師様のこと、好きでしょう?」
右の突起を口にくわえられた。中で転がされる。
「あ──あ」
ぴち、と、小さな水音がした。
左手でもう片方の膨らみを執拗に撫でられた。
汚い。気持ち悪い。赤ちゃんみたい。そう感じると同時に、下半身に妙なうずきを感じた。
理解できない行為と、ひくつき始める身体の反応に追い詰められて、
知子は彼女に聞かれたことを反芻する余裕もなくなる。
「ねえ、好き?」
「──私、私、求道女様──」
何で、知っているんだろう。そんなこと云うんだろう。何で──
「──死ね、って?」
知子の身体中、毛穴がぞろりと開いた。
求道女は優しい。怒ってなどいない。むしろ私を哀れんで、慈しんで
そして、私を、裸にして舐め回している。
しなやかな指が知子のジャージとブルマを下ろした。
ブラとおそろいの下着が勢いでずれて知子は恥ずかしくなる。
手でずり上げようとするが、求道女に強い力で両腕を止められ
後ろにまわされた。
「水ばかり、あまりがぶがぶ飲ませるわけにいかないものね」
どこから取り出したのか、細い紐が手にかけられる。
「殺されて『なる』よりはましだもの」
意味の分からない独白は、求道女自身の後ろめたさへのいいわけに聞こえる。締められた手首が痛い。求道女の唾液でてらついた乳首と、膝までジャージを下げられ、幼い印象の下着をさらけだした痛々しい格好で、知子は戒められた。
「少しでも奥に入るように、ちゃんと濡らしてあげる」
これは何だ。求道女の皮をかぶった化物ではないのか。喰われようとしているのは私だ。
「だから、答えて? 求道師様のこと──慶のこと、好き? 好きなら──」
あのひとがするように、してあげるから。
一度、たった一度だけ、牧野を恐ろしいと思ったことがある。
小雨がうっとうしい日だった。
急にお腹が痛くなって2時間目で早引けした。
こんな日に限って両親は遠出していなかった。
宮田医院で薬をもらって一人家で寝ていたら、お腹は楽になったけど、
どうしようもなく寂しくなった。
(教会、いこうかな)
一人で留守番しているより、そっちのほうが両親も安心するはずだ。
何より心細い今こそ、牧野の顔が見たい。そう考えてジャージのまま家を出た。
教会は施錠の習慣が無い。談話室に荷物を置いてうろついたが、
牧野も八尾もどこにもいなかった。
出かけているのかと落胆していると、
廊下の奥、地下に下りる階段から、何かが呻く声がした。
確か、あの先は小さな洞窟になっていて、古びた祭壇がひとつあるだけだ。
──昏い。
危ないから近づかないようにね。求道女様がそう言ったのを覚えている。
──近づかないほうがいい。
その通りだ。頭で警告が響く。足がそちらに向いた。ゆっくりと暗闇へ向かう。
湿気を吸って朽ちる木の臭い。古い床板が鳴く。
声は少しずつ耳にはっきりと届くようになった。
岩肌がむき出している床に足をつくと、目の前は直ぐ祈りの場だ。
(女のひと──求道女様?)
求道女が苦しそうに呻いている声だと思った。
何か落ちている。赤いべール。彼女のもの。
扉が半開きになっている。部屋から、今度は男が囁く。
求道師のそれに似ているが、別人のような気もした。
闇の狭間で白い何かがうごめいた。まるで押さえつけられてもがく魚のようだった。
求道女の鳴きごえが、ひときわ高くあがった。
扉の隙間から覗き込んで見たのは、
祭壇の奥の穴に、腐臭のする肉の塊。その肉に埋め込まれて、知子を見る何百の目。
──がたん。
扉が開いた。心臓が跳ねた。暗所から男が飛び出してきた。
(宮田……せん、せ……?)
さっき病院にいたはずの宮田先生が何で、と一瞬思った。
それが髪を下ろした牧野だと知っても、何故かいつもの安心感はなかった。
「……なんで、知子ちゃん、学校は……?」
血走って見開いた眼。青白い顔。だらしなく皺のよったいつもの服。
目頭が痙攣し、指は神経質に震えている。おぼつかない足でこちらへ寄ってきた。
知子は後ずさった。
──誰。こんな人、知らない。
風が吹く。奥の闇は煽られた扉にばったんと音を立て封じられる。
「あ……わ、私…早引けして……家に、誰もいなくてそ、それで……」
これがあの求道師だと云うのなら、どうしていつものように笑ってくれないのだろう。
どうしてそんな怯えた顔で私をにらみつけるんだろう。
やがて彼は頬をゆるめた。顔の筋肉が不自然に引き攣れ、「求道師様」を作る瞬間を見た。
「そう、だけどここは危ないから──」
来ちゃ駄目だよ。彼はそういった。
祭壇の奥の目を背にして。
そうして知子の目前で茫洋と立つ、牧野になりかけの男が
心底、怖かった。
(──に、逃げなきゃ)
突然自分を縛って、殺すだのと口にする求道女を、
もう正常だと知子は思わなかった。
どうして今まで忘れていたのか。あの目と、普通じゃない牧野と、今の八尾は同じだ。
一気に下着を脱がされた。茂みともいえない薄いそこはあっけなく剥き出しになった。
ブルマとズボンと一緒に足首まで下ろされると、
足を自由に動かすことは出来なくなった。
「駄目、知子ちゃん。じっとしてて」
生えかけた陰毛を軽く彼女は引っ張った。
その痛さに知子の心はすぐ萎縮した。
暗い倉庫に白い自分の身体がもぞもぞと動いている。
祭壇の肉のようだ、と思った。恥ずかしいとも今は思わない。ただ、怖い。
倉庫の天井から目が離せない。
求道女の指が知子の秘裂をなぞった。
胸を嬲られたときの股間に感じるじんじんしたところを刺激されて、腰がはねた。
眉間に皺をよせて、抑えきれない声を漏らす。
擦り付けられる指の腹は的確に少女の弱さを捉えた。
耐えかねて、首を振ったらお下げが頬にかかった。
太ももを閉じれば、求道女の指がもっと強く自身を苛むだけだった。
「や、やめて下さい、やめて、下さい」
口づけられ、歯を割られてなめくじのような感触が侵入してきた。
「うんっ……」
自身の舌の上を求道女の舌が撫でる。同時に足の間をなぞっていた指が少し奥に差し込まれた。衝撃と息が出来ないのが辛くて、涙が溢れた。
「こうやって、求道師様はするの」
埋められた指をさらに深められる。わずか十四歳の細い肢体はヘビのようにくねった。
痛いのに反して大きくなる身体の痙攣に、知子は耐えるしかなかった。
「ね、だから、知子ちゃん、あのひととするのと一緒なのよ」
突っ込んだ指をいきなり抜き差しし始めた。
逃げたくて尻を浮かせたら余計に八尾の指が奥に潜った。
放って置かれた胸の勃ちあがった部分は、苦痛と快楽にあわせてますますしこる。
土をかぶった敷布団が少女の肌を汚した。
苦しい。
もう偶像ですらない、あの求道師の卑しさを、自身の卑しさに重ねられることが、何より一番苦しい。
涙が何筋も頬を伝って落ちた。
「も、嫌だ、嫌、だ、お母さ……」
頭が動いた。彼女の唇が知子のおなかを通って下に降り、
秘肉にわずか触れた。
「知子ちゃん、ここ、ちゃんとさっきより濡れてるわ」
何も言えなかった。話しかけられると彼女の息で薄い毛が揺れた。
足首を拘束していたズボンをはずされて、そのまま広げられると、
新たな恐怖がわきあがる。
「あ、駄目、駄目っ」
さっき口を侵した舌が、今度はそこの柔らかい肉をなぞり始める。
気持ち悪い感触は直ぐに何かが出てしまうような快感へと変わった。
強い力で後ろの尻を押さえつけられ、容赦なく追い詰められる。
いつか自分が恐れて引き返した覚えのある快楽の波を、引き出そうとされていることを知った。
卑猥な音はうごめく屍にも聞こえるのではと思うほど、
ぐちゅぐちゅと騒がしく思える。幼い肢体は、それを聞いてさらに熱くほてった。
(したの)
牧野が八尾にしたことを、してあげると彼女は言った。
求道女は口を汚しながら、手を知子の胸に再度這わせ、こね回した。
知子の全ては刺激に忠実に反応した。足に引っかかった苺柄の下着が揺れた。手首の紐がぎしぎしと食い込んだ。
(こんな、いやらしいこと、ずっとしてた……)
忘れていた。祭壇の牧野が与えた恐怖は、あれは──絶望とも云うのだった。
飽きたなんて嘘。ぜぇんぶ、嘘。
本当に馬鹿だなあ知子は。知らないふりをして。
朽ちた木材の匂いがする倉庫に自分の漏らした声と
八尾が秘部を舐める音が響く。
地下に漏れた求道女の声は、同じ様に辛そうで……甘かった。
黒髪を振り乱した求道女。裸の。胸をふるふると揺らしている。
扉の隙間で彼女がのけぞる。
無数の目の直ぐ下で、そのもがく肉を抱えて撫で回していたのは
揺れる彼女に、すがりついて泣くのは、
知っている見たよきっときっとやめてやめてやめてやめてやめて──
だから、願った。いなくなればいい。この化物ども。
舌先に見えない突起をつぶされた。強すぎる刺激にのけぞって、かすれた悲鳴をあげた。
「求道女様、おっきいの、きちゃう、きちゃうよ……」
涎をたらしてかくかくと身体をゆらす。
得体の知れない悲しみがわきあがって涙をぼろぼろこぼした。
きゅっと軽く胸の勃ちあがったところをつねられる。
しゃぶられているそこから切ないものが立ち上る。
「あ、あ、いやあ、……んあああっ」
びくん、びくん、と大きくはじけた。
何度も来るそれに嬲られた部分は翻弄されるしかなかった。
収まると力が抜けて八尾にもたれる。力は抜けているのに、心臓がどきどきした。
求道女が知子を優しく抱きしめて背中を撫でた。
「ごめんね、酷いことして」
知子はするすると泣いた。
解りたくないことを解らされた痛みが知子を締めつけた。
ただ悲しくてたまらなかった。
「泣かないで、知子ちゃん、泣かないで」
私、どうしたらいいか、分からなくなっちゃう。
あやす八尾のほうが余程心細そうに知子の頭を抱く。
「だってね、知子ちゃん」
知子は求道女の顔を見上げた。その顔は痛ましくゆがんでいた。
八尾は彼女が来たままだった体操着の上を、頭を通して後ろの腕にひっかける。
少女はほとんど全裸になった。
そのまま、倉庫の扉を開ける。
縛られた細い肢体を、外へと突き飛ばした。
「もっと、酷いこと、貴方にしなくちゃいけないの」
知子の絶望に満ちた眼に、徘徊していた数人の屍人が寄って来るのが映った。
腕は後ろ手で組まれたままだ。
裂け目がさらけ出されるのもかまわず、自由になる足を広げて立ち上がろうとした。
背中に衝撃が走る。一人にのしかかられたのだと知った。
肩を抑える手の冷たさと異臭が知子をますます混乱させた。
「あ──ぁあ」
身体が仰向けにひっくり返される。他の屍人に足を抑えられた。
目の前に覆いかぶさる屍人の顔に身覚えがあった。
(隣の──)
いつも教会に通う知子に、あまり美味しくない干菓子をくれていた、
隣に住むおじいさんだった。
しかし眼から血の涙を流しへらへら笑う蒼ざめた表情に、あの日の面影はもうない。
感情がはじけた。絞め殺される直前の家畜のような悲鳴を挙げた。
何をされるのかうっすらと分かることが余計に知子を恐慌状態に陥れた。
「いやあああ! お母さぁぁん! お父さぁぁぁん! 助けて、たすけてえええ!」
無駄だと知っていても、動かない四肢の代わりに身体をくねらせて逃れようとした。
かまわず肌に屍人となった彼等の手が這い回る。
血まみれの生ける屍に体中まさぐられて、全身が紅く色づいた。
「求道女様、求道女……様」
分かっていても、助けを求める。彼女はそれでも立ち尽くす。
「知子ちゃん……楽園に、一緒に行こうね」
片足ずつを屍人に持たれ、開かされた。太ももをしつこく撫でられた。
開いた部分に堅いものをあてがわれて背筋に悪寒が走った。
自身の体液と八尾の唾液で、濡れそぼったそこはあっさりと、
屍人となった村人の猛りをくわえ込もうとする。
知子を犯そうとする屍人は、スカートめくりをするとき率先して知子を狙っていた少年だった。
求道女様。求道女様。許してください。お願いです。求道師様が好きでした、
ちゃんと言うから、言うから。帰して、お家に帰して。
それが深く差し込まれるまで、混乱のあまり支離滅裂な知子の懇願は続いた。
「い──っ!」
うがたれた瞬間、痛みで気が狂いそうになる。冷たい杭は知子を思うままに蹂躙した。
腹の奥で波打ち蠢いているものに、わずかに知子の肢体が疼いたが、
それは何の救いにもならなかった。
犯している屍人は知子の耳元で呻いた。心なしか、自分の名前を呼んでいるような気がした。
揺れる肉体を化物の舌がまさぐる。
他の屍人に胸のとがりを吸われると一層敏感に反応した。八尾の舌とは違って、氷を押し付けられたように感じた。
「あ、あ、うああああ」
何かを咥えさせられた。薄目を開けると、登校する道ですれ違う、いつも本を読んで歩いていた男の子の肉棒だった。
おぞましさに舌が触れないようにしても、それは激しく口内を荒らした。
喉につかえて吐き気がした。
屍人となった彼はかまわず知子の頭を抱えて腰を振った。
やがて口の中に出された冷たい液にむせると、それは、紅い血の色をしていた。
下のほうをを引き抜かれたらどろりと自分の性器から、屍人の、やはり紅い体液が尻を伝って漏れた。
自分の血も混じっているかもしれないな、薄ぼんやりとそう思った。
休む暇もなく次ぎの屍人が知子に差し込む。さっきよりも乱暴に揺らされた。
ぴちゃぴちゃと、自分の頬を舐めまわす音がした。
八尾に慣らされた身体が反応するのが恨めしかった。
穿たれた股間が痛みとは別に熱くなるのを感じる。
おさげはとうにほつれて知子の蒼白の顔に絡んだ。
抵抗する気力など、とうに萎えていた。
ひっくり返される。もう一度やってくる。終わればまた表に返して、永遠に揺らされる。
求道女様はどこに行ってしまったんだろう。
ぼんやりと思ったが、それすらもうどうでもいい。
屍人の一人が顔を近づけた。口に触れられると思ったが、
鼻の先で止まって、白目をむいたそれはにやりと笑った。
蒼白の顔。見開き血走った眼と、涙。乱れた服。おぼつかない足元と引きつった笑み。
落ちているべールにすら気づかなかった愚鈍さ。なんだ、そうか。
──あの日の牧野は、屍人だったのか。
無数の目に囲まれている。それならここも祭壇だ。そうだお願いしよう。
何がいいかな。
ふふ、思いつかないな。
青ざめた顔に耳朶を舐められた。楽になりたくて笑ってみた。
目を閉じてキスを待った。八尾はきっとこうしただろうと想像しながら。
……そこまでは狂えなくて、知子はまた泣いた。
九人目の屍人が紅い精を知子の体内に放出したとき、今日で何度も口にした「お母さん」をまた呟いた。
流した涙は血の色に、禍々しく色づき始めていた。
あ、11で終わりだった。長々と邪魔してすいません。
GJ!GJ!!
すんばらしくエロ怖かったです!!!
ナイッスー!!GJ神!
ここで見る牧野はみんないい味出してエロ師だよなウラヤマシス
GJーーーーーー!!!!!!!!!!!!
知子ちゃんの哀れさと八尾のエロさがたまらん
>>40-50この切れ味、このプレッシャー。只者ではないですね。
言葉のチョイスがいちいち美しくてそそられました。GJという他ないです。
というわけで一樹・永井×百合持って来ました。
次は流れ的には一樹郁子ですが……なんでももうすぐ2のマニアックスがでるそうなので
マニアックスを入手してから書きたいので今しばらく御待ちください。
郁子に関してはちょっと、確認したいことがあるもので。
それ以外でネタ振りされているのでどれを書くべきかまだ迷っておりますが、
まあ、何かしら書きます。では。
一、
夜の遊園地は寂しい。
それが打ち捨てられ、廃墟と化した遊園地であるなら尚の事――――
闇夜に雨が降りしきる。
錆び付いた観覧車のきしむ音が、風雨に乗って聞こえてくる。
若き自衛官は花壇の陰に身を潜め、標的が接近するのをじっと待っていた。
雨の中89式小銃を胸に抱き、闇に溶け込んで待機しつつも、
彼の心はずっと、ある一つの感情に囚われていた。
それは、戸惑い。
――――なんで俺、こんな事やってんだろう……
だがそんな彼の戸惑いも、微かな気配を察知すると同時に霧散する。
彼は小銃のスコープを覗き、近付いて来る標的の姿を確認した。
引き摺る様な足取りで、低い階段を下りてくるロングブーツの女。
赤いカーディガンを羽織った彼女のスカートは、引き裂かれてその布地の殆どが失われており、
彼女が足を運ぶ度、雪白のなまめかしい腿が、その付け根の辺りまで露わにされていた。
彼は、その白く浮かび上がる太腿に、銃の照準を合わせて引き金を引いた。
甲高い悲鳴と共に女の躰が転倒する。彼は立ち上がった。
「おい、やったな!」
脇の茂みの陰に隠れていたもう一人の男が、嬉しそうに飛び出して来た。
切れかけた電燈のチラチラと明滅する光を眼鏡に映し、男は自衛官の肩を叩く。
二人の男は、倒れた女の傍に駆け寄った。
「見ろよこの格好……くくく。ざまあ無いな」
眼鏡の男は込み上げる笑いを手で押さえ、光る眼鏡で悶絶する女を眺め廻している。
自衛官はそんな眼鏡の様子に、呆れ返って肩を竦めた。
「はあ。あんたの言う通りにやったけど……どうすんだ?やるのかよマジで」
「当たり前じゃないか」
自衛官の言葉に笑って答える眼鏡。二人のやり取りを、激痛に身悶えながら聞く女。
眼鏡は女の、泥水に塗れて妖しくうねる肢体を見下ろし、言い放った。
「姦る」
というわけで一樹・永井×百合持って来ました。
次は流れ的には一樹郁子ですが……なんでももうすぐ2のマニアックスがでるそうなので
マニアックスを入手してから書きたいので今しばらく御待ちください。
郁子に関してはちょっと、確認したいことがあるもので。
それ以外でネタ振りされているのでどれを書くべきかまだ迷っておりますが、
まあ、何かしら書きます。では。
二、
自衛隊の演習中、ヘリの故障によって不時着したこの無人島には、
廃墟と徘徊する死者の群れ以外には何も無かった。
新米自衛官の永井頼人は、上官の三沢と共に座礁した客船に迷い込み、
そこで、岸田百合と名乗る美しい娘に出逢ったのだった。
上官とは逸れたものの、永井はなんとか彼女を連れて船からの脱出に成功した。
そして二人で森に辿り着いた時――――
「あなたは、私を信じてくれる?助けてくれる?」
百合の華奢で柔らかな手が、永井の頬を覆っていた。
黒く潤んだ瞳が、永井の眼を縋る様に見詰め、言葉と共に発せられる甘い吐息が、
彼の嗅覚に不思議な刺激を与えていた。
「え……あぁ……」
百合の美しい瞳に吸い寄せられ、永井はぼんやりと返事をする。
百合の躰が、ふわりと永井の胸に凭れ掛かって来た。
雨に濡れた黒髪が放つ芳香に、彼の心は妖しく惑う。
嫋やかな肢体が摺り寄せられ、白い手が、優しく愛撫するかの如く、男の胸元を摩っている。
永井は、いつの間にか百合の柳腰に腕を廻していた。
「ずっと待ってた……あなたが来てくれるのを」
百合の紅い唇がそっと窄められる。永井はその唇を見詰めた。
もう、抑える事は不可能だった。
思考力を失ったまま永井は百合の唇にむしゃぶり付き、力一杯吸い上げた。
強く抱き締める腕の中、百合の唇は、舌は、永井のそれにねっとりと絡み付き、
脳髄までも蕩かそうとする様に、淫靡な動きで接吻を返した。
舌の上を舌で辿り、口蓋を押す様になぞったかと思うと、舌の裏側に潜り込んで舐め廻す。
永井は、百合になされるがままだった。
彼女の唇が糸を引いて離れた時も、口の端から流れ出た唾液を拭い取る事すらせずに、
ただ呆然と百合が舌なめずりするのを眺めているだけだった。
三、
「硬くなってる……」
百合の小さな声と共に、永井の股間に甘い快感が走った。
迷彩服のズボンの上を白魚の指が蠢き、くすぐる様に中の強張りを刺激しているのだ。
永井の呼吸が荒くなる。
百合はふわりとしゃがみ込んだ。
「あ………」
永井が気付いて見下ろすと、既にズボンの前が開けられ、
痛いほどに圧迫されていた陰茎が、バネ仕掛けの様に中から飛び出し反り返っている処であった。
百合はその、血管の浮き出た硬い幹に指を添えると、
勃ち上がった裏側の、引き絞られた様な縫い目に、静かに接吻をした。
次いでその、ピンと張り詰めた筋を舌先でチロチロと舐め上げ、
そのまま亀頭の縁に舌を絡めて、ちゅうっと吸い込んだ。
永井は喘ぐ様に顔を仰け反らせると、後ろにあった太い木に寄り掛かり、百合の吸茎に酔い痴れた。
しっとりとした唇でしゃぶり廻される亀頭は大きく膨れ上がり、
茎部が、両手で擦り上げられる毎にずっきんずっきん脈打って硬度を増し、
永井の性器は瞬く間に激しい射精感に襲われた。
ところが、もう一息の処で百合は永井の陰茎から唇を離してしまった。
百合の唾液と自身の先走り汁でぬらぬらと濡れそぼち、
切なげにピクピク蠢いている陰茎を見遣りながら、百合は言った。
「これ以上は駄目……今は、お母さんの処に行かないと」
「こ、此処までしてそんな」
「お願い」
百合は、上目遣いに永井を見詰めて訴え掛ける。
「お願い………私のお母さんを助けて。お母さん、この島に閉じ込められてて……
誰も助けてくれないの。私にはもう、あなただけしか……」
百合の哀願に、永井は困惑の溜息を吐いた。
「そりゃあ、自分は自衛官だから。君も君のお母さんも助けるさ。それが仕事だし。だけど………」
永井は腰を落とすと百合の肩を掴み、その躰を濡れた草の上に押し倒した。
そして、じっと見上げる百合の眼を負けじと見返して言った。
「カッコ悪いけど俺もう……限界なんだ。なあ、頼むよ。このまま最後まで……
終わったら絶対、君のお母さんを助けに行くから………」
永井は、百合に接吻しようとした。しかし百合は顔を背けて永井の唇を避ける。
「駄目………」
永井は焦れる思いで服の上から百合の躰をまさぐった。
百合はその永井の手から逃れようとするが、永井はそれを許さなかった。
必死で食い下がりながら彼女の躰に圧し掛かり、
その白いフレアースカートの中に手を差し入れようとする――――
「いやっ、やめて!」急に百合が暴れだした。
予想以上の抵抗を示す百合に対し、永井は段々、怒りにも似た狂暴な衝動が湧き起こるのを感じた。
「お、大人しくしろって!何だよ自分から誘っておいて……うっ?!」
突然、白い光が地面の二人を照らし出した。
一瞬永井が怯んだ隙に、百合は彼の下から抜け出し、光を避けるように顔に手をかざした。
永井はパッと身を起こすと咄嗟に銃を構え、光の方に眩んだ眼を向ける。
そこには、眼鏡を掛けた長身の青年が、険しい表情で立ち尽くしていた。
四、
「………何してんだよ」
眼鏡の男は、怒りを抑えた掠れ声で永井に問い質した。
男の眼が忌々しげに永井の下腹部に向けられる。永井の陰茎は、未だ露出したままである。
永井は銃を置くと慌ててそれをズボンの中に仕舞った。
そうしながら永井は、この眼の前の男がついさっき逢ったばかりの人物である事に気が付いた。
――――初めて百合を見掛けた時、一緒に居たのは確かこいつだった。
言い様の無い気まずさを覚え、永井は顔を伏せる。
その時。永井から逃れて眼鏡の男の元へと帰った百合が、とんでもない事を言い出した。
「助けて。この人無理やり私を」
永井は驚いて百合を見た。
彼女は、先程までの哀れに取り縋る様子とは打って変わった、まるで汚い物でも見る様な冷たい眼で、
永井を見下ろしていた。
「可哀想に……酷い目に合ったね。もう大丈夫だから」
眼鏡の男の腕が、労わる様に百合の肩を抱く。
「な……んだよそれ?!」
永井は、屈辱と怒りで全身がカッと燃え上がるのを感じた。
「じょ、冗談じゃねえぞ?!お、じ、自分は、君を助けようとして……」
「その代償に躰を要求したって訳か?最低だな、あんた」
「な、こ、この………!」
眼鏡の言葉に、永井は見る見る顔を紅潮させていく。
「行こう。此処に居たら危ない。あの人、銃持ってるし」
百合の言葉が追い討ちを掛ける。永井は唇を戦慄かせ、小銃を取った。
「ふ、ふざけんじゃねえぞ、てめえら………」
眼鏡と百合は、永井の殺気に恐れをなして後ずさる。
そして、走り出した。
「待ちやがれ!」
永井は、鬼気迫る形相で彼等を追った。
百合に裏切られた悔しさや、満たされなかった肉の疼き。
それら全てが破壊衝動となって、永井を駆り立てた。
陰気な雨はいっそう激しく、暗い森を駆け抜ける三人の男女の躰を、
ねぶる様にじっとり打ち続けていた。
五、
「何とか撒いたみたいだな」
一樹守は、百合と二人で朽ち果てた遊園地跡に入り込んでいた。
雨を避ける場所を求め、すぐ近くにあったコーヒーカップの乗り物の屋根の下に向かう。
「此処に座ろう」
もう動くことの無い、褪せたピンクのコ−ヒーカップに百合を促し、並んで腰掛けた。
一樹の隣に座る百合は、少し顔色が蒼ざめてはいるものの、
未だ心身共にそれほどの痛手は負っていない様に見えた。
一樹は、とりあえずホッとする。
それと同時にあの自衛隊員に対し、むらむらと怒りが込み上げてきた。
些細な行き違いで百合と離れ離れになってから、一樹はずっと彼女の身を案じ、捜し続けていた。
女性一人でこんな島をうろつくのはあまりに危険だと思ったし、
何より、彼女に去られた後の喪失感が、尋常ではなかった。
一樹は百合を見下ろす。
この神秘的なまでに美しい娘が自分の元に帰ってきた事に、一樹は心から安堵し満足を覚えていた。
――――もう、絶対に手放したりしない……
彼女の美しさには、どうしようもなく男の所有欲を掻き立てる何かがあった。
だからこそ。
自分の物である百合の躰に、無断で触れたあの自衛官の所業は腹に据えかねた。
一樹の眼の下、百合の肩に掛かったショールが少しずれ落ち、黒髪の下から細い首筋を覗かせている。
その眩しいまでの白さは、下に続いているはずの裸身の白さを想像させて、
一樹の欲情を激しく煽り立てた。
――――あの野郎、俺より先にこの躰を組み敷いて……アレまで出して……
あいつは一体、百合にどこまでしていたんだろうか?
もう、キスぐらいはしてしまったのかもしれない。
百合が未だ服を着ていたのだから、それ以上の行為には進んでいなかったものと思いたいが……
その時、百合の肉体を辿っていた一樹の目線が、彼女のスカートの破れ目に気が付いた。
一樹はハッと息を飲む。
森で木の枝にでも引っ掛けたものか、白いスカートの前の部分がぱっくりと裂けてしまっている。
しかも。その破れ目は半分近く捲れて、百合の膝のずっと上のほうまで――――
パンティーに達する辺りまでをも、一樹の眼の前に晒していた。
一樹は思わずそこを、壊れかけの眼鏡で凝視した。
「いやっ」
一樹の熱視線に気付いた百合がスカートを押さえた。
百合の悲鳴で我に返った一樹は、自分が着ていた格子柄のシャツを脱いで彼女の膝に掛けてやった。
――――あの自衛官のようなケダモノだと、百合に思われたくはない。
そんな気持ちが欲望に勝った。だがしかし。
「………………」
今度は百合が一樹の股間を見詰めているので、彼は何事かと己の躰を見下ろした。
………あからさまに勃起していた。
上着を脱いでしまった事が仇となり、彼の、ジーンズの前の不自然な膨らみが、丸見えになっていた。
「!!」
一樹はあわてて前屈みになって誤魔化そうとする。しかし百合はそこから眼を離そうとはしない。
一樹の額に、じわりと脂汗が滲んだ。
「あの………っ?」
雰囲気を変える為に何か話そうと一樹が口を開いたのと、百合が一樹の膝に手を置いたのは、
全く同時であった。
百合は一樹の膝から腿にかけて、ゆっくりと撫で摩っていた。
そうしながら、黒い瞳で真っ直ぐに一樹の眼を見据える。
一樹は、息苦しい様な気持ちに陥った。
「ねえ……あなただけは私を信じてくれるよね?」
濡れた唇が囁く。
百合の指先が、一樹のジーンズのファスナーにそっと宛がわれた。
六、
「う………」
百合の指先は、一樹の硬く腫れた部分に焦らす様な刺激を与えていた。
ジーンズの分厚い生地越しの接触ではあったが、
すでに張り裂けそうなほど昂っていた一樹の局部に快感を与えるには、充分だった。
「百……合………っ」
一樹は感極まった声音で百合の名を呼んだ。
百合はジッと彼の顔を見上げたまま、腰をずらしてそのTシャツの胸にすり寄って、凭れ掛かった。
一樹は興奮に肩で息をしながら、百合の躰を抱き寄せる。
そうして暫くの間、ジーンズ越しに陰茎を撫で廻されながら、
百合の細くしなやかな二の腕を摩っていたが、やがて、意を決した様にその手を彼女の腋に差し込み、
赤いカーディガンの上から豊かに張り詰めた乳房を触った。
すると、百合の手が止まった。
「駄目………」
百合は乳房を包む一樹の手をやんわりと外し、彼自身の膝の上に置いた。
一樹の懇願する眼を静かに見返すと、今度は彼のジーンズのポケットの中に手を入れた。
「ねえ、見て」
百合の手には花の髪飾りが握られていた。
それは一樹が道中拾って、なんとなく持ち歩いていたものである。
百合は一樹から少し離れると、スッと片膝を上げた。
滑らかな内腿と共に、その上にある女陰を覆ったパンティーまでもがチラリと覗く。
一樹は言われるまま、生唾を飲み込んで其処を注視する。
百合は一樹に見せ付けながら、髪飾りの髪に挿す方の尖った部分を
肉が食い込むほど強く内腿に押し当て、それをグッと引いた。
白い肌に、赤い筋が痛々しく浮き上がる。一樹は少し眉を曇らせた。
「此処は姿をとどめようとする世界」
傷口を晒したまま、百合は淡々と語り始める。
「早くしないと戻ってしまうの。逆戻り……虚無の混沌に」
一樹は眼を見開いた。
百合の赤い傷口が瞬く間に塞がって、元通りの眞白い健康な肌を取り戻してゆく。
一樹は、驚愕の面持ちで百合の顔と、もう傷の片鱗すら残されていない内腿とを見比べた。
しかし、驚きはしたが妙に腑に落ちる部分もあった。
一樹は夜見島に渡ってからというもの、甦った死者どもに随分と痛め付けられて来たが、
その傷は今、全く残っていない。
銃で撃たれた傷でさえ、ほんの僅かな時間で消え去ってしまうのである。
一樹は恐る恐る百合の内腿に手を伸ばし、
細身ながらもむっちりと脂の乗った、柔らかな皮膚に触れてみた。
………しっとりと吸いつく様な、瑞々しい感触があるばかりであった。
「私を信じて……お母さんの処に、連れて行って……」
一樹は百合の内腿をまさぐりながら、黙って頷いた。
百合の制止がないのをいい事に、内腿から鼠蹊部の辺りにまで指を這わせていった。
そして指先がパンティーの縁に触れた時……百合が、微かな吐息を漏らした様な気がした。
「百合……」
一樹はその反応に力を得た思いで彼女のおとがいに指を添え、顔を仰向かせた。
百合の瞳はぼんやりと輝き、眼の際が、酔ったみたいに赤みが差して見える。
もう引く事は考えられない。
一樹は百合の誘う様な半開きの唇を見詰めると、其処に自分の唇を重ねようと顔を近づけていく――
だが二人の唇の先が触れた途端、一樹の耳元を、轟音と共に銃弾が掠めた。
二人はビクリと振り向いた。
コーヒーカップから少し離れたベンチの横、凍て付く様に冷たい眼が光っている。
それは、嫉妬と怒りに満ちた暗い光だ。
一樹に百合を奪われた男――――永井が、憎しみを込めた銃口を二人に向けていた。
七、
一樹が倒されるのに、たいした時間は掛からなかった。
――――あれではもう生きてはいまい。
百合は雨に打たれながら、ただ呆然と、噴水広場に落下した一樹の背中を見下ろしていた。
その彼女の背後から一樹を倒した男……永井が、ゆっくりと歩いて来る。
百合に、迷いは無かった。
「助けて!」
百合は永井の傍に駆け寄ると、脇目も振らずにその胸の中に飛び込んだ。
永井は面食らった様子で百合の頭を見詰める。
「な……ふざけんなよお前!俺の事、あんな風に裏切っといて」
「仕方なかったの……怖かったのよ、あの人が………」
百合は、濡れ光る瞳を永井に向けた。
永井の全身から発せられていた殺気が消え、打って変わった戸惑いの色が、
その少年の面影を残した顔に表れていた。
――――あっちが駄目になった以上、もうこの人を連れて行くしかない。
百合は、必死になっていた。
全ては母親の為である。
永きに渡りこの島に閉じ込められている母親。救い出す為には、どうしても男手が必要なのだ。
だから彼女は、男を得る為には手段を選ばなかった。
彼女は、生まれながらに男を惹き付ける力を母から与えられていたが、
それだけで不充分であると見れば、その肉体を使う事さえ厭わぬよう、母から命じられていた。
いや――命令、というより、それはもう本能に近い。
百合は眼の前の男に、全身全霊を懸けた媚態を示して、その魂を籠絡しようと勤しんだ。
別に、騙してやろう。などという悪意がある訳ではない。
かといって、この童顔の男に何か特別な感情がある訳でもない。
誰であっても構いはしないのだ。
共に冥府の門を開き、母と、その現し身である自分とひとつになると
約束してくれる男でさえあれば――――
「ずっとずっと寂しかった……」
百合は、冷え切った頬を男の胸板に摺り寄せて甘く囁いた。
雨の雫を湛えた睫毛を上げると、男は、じっと彼女の顔を見詰めていた。
百合は、男の眼の中の感情を瞬時に読み取る。
女の肌の柔らかさ、温かさに触れて男の心が確実に揺れ動いているのが判った。
が、未だ完全ではない。彼の瞳には迷いと困惑の色が混じっている。
その心を手に入れる為には、やはり、この身を捧げる以外に無いようだ………
ずきん。
百合の中に、奇妙な痛みが走った。
彼女は混乱する。何だろう。何か胸の奥が苦しくなる様な………
心の中の小さなわだかまりに当惑する彼女の耳に、銃が地面に落ちる硬い音が聞こえた。
背中に男の掌を感じた。と、思う間も無く、百合の躰は男の腕に巻き付かれ、
息が苦しくなるほど強く、抱きすくめられている処であった。
彼女は反射的に、男の腰に手を廻す。
「お願い。私とひとつになって」そんな言葉が、唇から勝手に紡ぎ出されていた。
その唇が、性急な唇に塞がれる。下腹部に男の強張った意思を感じた。
もう、逃げる訳にはいかないだろう。
男の情欲に満ちた接吻に応えながら、百合はますます重苦しくなってゆく心を、
普段の空ろな状態に戻そうと腐心していた。
母の為。母の復活の為。ただそれだけを、心に念じながら――――
八、
その時、背後から低い笑い声が響いた。
永井が「あっ」と小さな声と共に顔を上げる。
振り向くと、一樹がよろめきながら階段を上がって来るのが見えた。
百合は瞬きもせずにその姿を見詰めた。
一瞬、永井も百合も、一樹が生ける屍となって甦ったものと考えたがそうではなかった。
一樹は辛うじて、生きていた。
その表情は暗く血の気も失せていたが、あの人外の者達とは違い、眼に生者の光があった。
ただしそれは、負の情念による光であったが――――
「……全部聞かせてもらったよ」
一樹は寄り添い合う二人の傍まで来ると、百合だけ見据えて吐き棄てる様に言った。
「結局、誰でもよかったんだな。助けてさえ貰えれば、君は……誰でもよかったんだ」
静かな口調の中に、沸々と湧き上がる憎しみが込められている。
百合は怯えた表情で永井の背に隠れようとした。
しかし、その百合の躰を永井は押し退けた。百合の躰はよろめき倒れ、濡れた地面にくずおれた。
百合は信じられない思いで永井を見上げた。
永井は、まるで魔法が解けたように冷静な面持ちで百合を見据えていた。
「そういうことか」と、口の中で呟いている。
百合は、全てが破綻した事を悟った。
――――この人達はもう、私を助けてはくれない。
ささくれ立った二人の男を前に、百合は、座り込んだままジリジリと後ずさった。
そんな彼女に、男達はゆっくりと迫ってゆく。
観覧車の支柱まで追い詰められた処で、百合は素早く立ち上がり、駆け出した。
スカートが支柱の何処かに引っ掛かって破けたが、構わず走った。
追い縋る男の怒号と銃声。
それらを背にして走りながら、百合は、歯噛みしたくなる程のもどかしさに打ち震えていた。
――――あとちょっとで、お母さんの処に帰れるのに
もう、すぐ近くまで来ているのに――――――
男達は、ひとしきり狩りを楽しんだ後に百合を捕獲した。
永井の銃弾に倒された百合は、ずぶ濡れの地面に横たわり、苦しげに呻いていた。
腿に受けた傷から流れ出す血を雨に洗われ、蒼白さを増した皮膚を男達に晒しながら彼女は、
彼等が自分の躰を姦す事で、復讐を遂げるつもりでいるのだと知った。
――――復讐?
何の為の復讐であるのか?
自分が彼等に復讐されねばならぬ謂れが、いったい何処にあるというのだろう?
(私はただ……お母さんの処に帰りたかっただけなのに)
そんな百合の思いを余所に、一人の男の手が、その痛手を負った肢体に伸ばされた。
「そら見ろ。もう血が止まっている」
一樹の声だ。彼は百合の傷口を指で突付いた。
百合の躰が痛みに縮こまる。
「やめろよ……あんまり乱暴にすると、姦る前に死んじまうぞ」
百合を仕留めた当の本人である永井は、一樹ほど積極的ではなかった。
若干、躊躇している様子の永井とは対照的に、一樹は上機嫌で笑っている。
「くっく……平気だよ。何しろ此処は“元の姿をとどめようとする世界”だからな。
少々手荒な真似をしたって死にはしない………な、そうだったよな?」
一樹は百合の長い髪を引っ掴むと、その顔を上向かせた。
そして、百合の怯えた眼を、眼鏡の奥から覗き込む。
一樹はその脂ぎった光を放つ眼を細め、冷たく笑った。
九、
百合の躰は、男達の手によって広場の花壇の上に抱え上げられていた。
ピンクのウサギのオブジェの前に、仰臥する百合の赤いカーディガン姿を、
二人の男が持つ懐中電灯の光が、ゆらゆら照らし出している。
百合は、彼等に灯りを向けられる度に、ひいひいと甲高く掠れた悲鳴を漏らし続けた。
灯りを避けようにも、彼女の両手はショールで縛られ、
頭の上の方で、ウサギの前の小さな柵に結わえられているので、どうする事も出来ないのだ。
「お願い……やめて………何をされてもいいけど、眩しくするのだけは……」
弱々しい声で訴える百合に、永井は怪訝そうな顔をする。
「この子、何でこんなに光を嫌がるんだろうなぁ?」
「さあ?狂犬病患者は光を嫌うっていうけどな。彼女がそうだとは思えないし……
あと考えられるのは………吸血鬼、とか」
「まさか!」
「有り得なくは無いんじゃないかな」
一樹は百合の、破れてぼろきれと化したスカートを引き千切りながら、永井に答える。
「この島は狂ってる。死んだ人間が甦って襲い掛かって来るぐらいなんだから、
吸血鬼が居たって不思議はないだろう?それに。ふふ……
彼女のイメージにぴったりじゃないか。女吸血鬼カーミラ、とかさ」
一樹は百合のスカートを剥ぎ取ってしまうと、懐中電灯の光を彼女の薄いパンティーに当てた。
百合は、其処に触れられた訳でもないのにビクンと腰を震わせ、
脚を突っ張らせて光の陵辱に耐えた。
一樹はその反応を面白そうに眺め、彼女の股間にいっそう懐中電灯を近づけた。
「ああ許して」
百合は怪我をしていない方の脚の膝を立て、苦しそうに身を捩った。
その姿態の妖艶さに、一樹と永井は固唾を呑む。
「………吸血鬼は異性を誘惑し、誑かすんだ。やっぱ……ぴったりだよ」
一樹は、咽喉に絡まる声で言い切った。
「じゃあ吸血鬼退治といこうか」
一樹は花壇に上がり、百合のカーディガンの釦を一つずつ外していった。
百合は眉根を寄せて顔を背けたが、それは服を脱がされる羞恥心からではなく、
横から永井に当てられているライトの眩しさの所為だった。
カーディガンを開き、中のキャミソールの釦も取って乳房を露わにしてしまうと、
百合は掠れた悲鳴を上げた。
「ああー……当てないで………当てないで」
素肌に光を当てられるのが余程辛いのか、百合は子供の様な啼き声を上げて身悶える。
男達は、百合のその憐情を起こさせる様子と、透ける様な肌の美しさに激しい欲望を覚えた。
「おい、見てみろよ」
百合の乳房に夢中でライトを当てていた永井へ、一樹が呼び掛ける。
一樹は百合のパンティーを指し示していた。
永井がパンティーのクロッチ部分へライトを移動させる。
其処は、小水でも漏らしたかの様に、ぐっしょりと濡れ通っていた。
「何だよこれ……何でこんな風になってるんだ?」
愉快そうに問い質す一樹の声。百合は不快感も露わに一樹から目を逸らした。
「答えろよ」と一樹は声を荒げ、百合の顎を掴んで振り向かせる。
すると百合は、今まで見せたことの無いような険悪な表情を見せ……一樹の顔に、唾を吐きかけた。
百合の予想外の反抗に、永井は思わず「あっ」と声を上げる。
彼女の吐いた唾は、一樹の眼鏡から鼻筋の辺りまでべっとりと掛かっていた。
一樹はくぐもった笑い声と共に眼鏡を外し、鼻の上を手の甲で拭った。
そして百合を睨み付け、力任せにその頬を打った。
十、
頬がジン、と熱を持って腫れ上がるのを感じながら、百合は、自分が取った行動を
ぼんやりと反芻していた。
――――どうしてあんなことをしたの?
それは、自問であると同時に、母親の詰問の言葉でもある。
母の元へ帰還し、母を救い出す為に百合は存在していた。
百合には他に沢山の姉妹がいたが、百合はその中でも一番母親に忠実な、母親に近い、
寧ろ、母親と同体であるともいうべき娘であった。
彼女の中には常に母親の意思があり、その言動の全ては母の導きによるものである、と言っていい。
母に命じられれば、百合はどんな事でもやった。
母を裏切った妹をその手で殺めたし、母の居るこの島へ渡るため、港の漁師を操った。
そして今、彼女の前には二人の男が居る。
若く健常で、自分らで進むべき道を切り拓く、知性と行動力を併せ持った――
母の処へ連れてゆくに相応しい、頼もしい男達。
――――彼等を虜にするがいい。そして二人を争わせ、勝ったほうに冥府の門を開かせよ。
心の中に母の声が響く。
それは、百合にとっては容易い仕事である。
本当は最初にこの二人がかち合ってしまった時に、そう仕向ける事だって出来たのだ。
だが百合は、敢えてそれをしなかった。
それは何故?
何かが彼女を躊躇わせた。彼女の胸の片隅で疼く、何かが――――
「未だ自分の立場が判ってないみたいだな」
一樹が百合の顎を乱暴に掴み、その顔を睨み据える。
頬を腫らし、唇の端から血を流した百合は、それでも美しかった。
半裸で縛り上げられた姿の痛々しさとも相まって、その様子は、男の嗜虐心をそそって止まない。
「妖しい女め」
一樹は、憎々しげに吐き捨てた。
「その顔で、いったい今まで何人の男を騙して来た?憐れみを誘う素振りを見せて……
お前は、何の目的でこの俺までをも誑かそうとしたんだ?!」
女の顎を掴む手に力が篭る。
百合の瞳が揺らいだ。「助けて」と、唇が勝手に救いを求める。
しかし、一樹の意志は堅牢だった。
「無駄だ。もう騙されないぞ。
俺はお前に利用されたりはしない。お前の企みなんか全て打ち砕いてやるぞ……この、躰もろともな」
百合のパンティーに掛かった一樹の手が翻り、その頼りない布切れを毟り取った。
ビリッ、と布の裂ける音と共に現れる、艶めいた黒い若草。
後ろで見ていた永井が嘆声を上げた。
一樹が百合の閉ざされた脚をグッと広げ、永井が露出した女の肉のあわせ目にライトを当てる。
百合の絹を裂く様な悲鳴に構わず、二人の男は曝け出された場所を覗き込んだ。
非情なライトの下、露わにされた桃色の陰唇は、すでにぬるぬると濡れ光っていた。
百合が身をくねらせるのに伴い、そのひらひらした肉の扉がひとりでに開いて、
その奥の、一際紅くぬめり輝く粘膜が見え隠れする。
百合の粘膜は、光に反応して淫らがましくヒクつき、とろみを帯びた蜜が、
膣穴からタラタラと滴り落ちて、尻の方までべっとりと濡らしているように見えた。
「すげえな……絶対感じてるよな、これ」
永井は、興奮に慄く声音で言った。横でうなずく一樹の呼吸も荒い。
「だめ……ひかり………だめ………………」
喘ぎ混じりの、うわ言のような百合の声。
百合は、最も敏感な性器を明るく照らされる度に、全身が弛緩し、
躰の中心部から、ドロドロと溶解してゆくような恍惚感を覚えていた。
実は、彼女にとって光は苦痛ではなかった。寧ろ強い、余りにも強すぎる快感なのであった。
十一、
「ああぁぁ………あぁ……はぁぁぁん……うぅん」
一樹と永井は、それぞれの持つ懐中電灯で百合の躰の至る処を嬲り廻した。
光の輪の中、百合の蒼白かった肌は幽かに血の気が差し、
もはや自ら広げて誇示している股の間の女性器に至っては、深紅に近い鮮やかな色味に染まって、
雑草だらけの荒涼とした花壇から、ぽっかりと浮き上がっていた。
永井は、百合の快楽に蕩け切ったようになっている性器の裂け目の上に、
白い光を上下動させて眺めていたが、やがて其処に指を宛がい、膣口を探ると、
思い切った様にぶっすりと指を挿し入れた。
「あああっ!」
百合の腰がキュッと反り返る。
熱しきった胎内の臓物めいた感触を暫し味わってから、永井は指を二本に増やして更に掻き回し、
その指を、膣の中で開いた。
「い………ひぃいいぃぃぃいいいいい!」
百合の躰が、感電したかのように跳ね上がった。
乳房に、光で円を描いていた一樹が、百合の性器に眼を移す。
永井の指で無理やり広げられた膣口の中に、まばゆい光が這入り込んでいた。
性器に接触するほどに近づけられた懐中電灯の所為で、寛げられた膣穴の状態は判り辛かったが、
顔を傾けて注意深く見ると、膣のぎざぎざした縁肉から、
火山の火口を思わせる入口の肉襞の凄い色が、僅かに覗えるのだった。
「い……ぎぃぃい………いああああああああぁぁぁ…………」
断末魔の叫びを上げ、百合が果てた。
半ば白目を剥き、口の端から泡を吹いたその表情は狂気じみていて、
あの謎めいた美しさは跡形もなく消え去っている。
それでも尚、彼女の淫悦に満ちた姿は、男達の劣情を煽りたてていた。
永井は、百合の膣口とその胎内の激しい蠢動に指を締め上げられ、息を震わせていたが、
その内「うっ」と短く呻いて、がっくりと花壇の下にへたり込んだ。
「もしかして……もう出ちゃったとか?なあ?」
「………………うるせえ」
からかうように問い掛ける一樹に、永井は俯き、肩で息をしながら返した。
「ふふ、じゃあ俺が先に姦っちゃって構わないな?」
一樹はTシャツとジーンズを脱ぎ捨てた。
百合が薄く眼を開くと、眼の前には、勃ちあがった灼熱の兇器を握り締め、
覆い被さって来る一樹の姿があった。
「ああいや」
百合は、絶頂の余韻を残す性器を庇うように脚を窄めたが、
腿の隙間に滑り込んだ一樹の両手が、強引に其処を割った。
そして百合の耳元に顔を寄せ――まるで恋人に囁くような優しい声音で、言った。
「この島でお前とめぐり合い、こうする事になったのはきっと偶然ではない……必然だ」
一樹の陰茎は、百合の膣に深く潜り込んでいった。
「あ………」
一樹の硬いものに姦された百合の膣は、一瞬ひくり、と痙攣し、
中のぶよぶよした肉襞で、陰茎に絡み付いていった。
百合の胎内はまるで、温かい海にいるような安らぎのある快感を一樹に与える。
一樹は、満ち足りた気持ちで溜息をついた。
百合は自分を姦す男の姿を、トロンとした眼で見上げていた。
自分の中の一番空ろな部分が、一樹の熱く猛り立つものに埋め尽くされる感覚は、何故か、
百合の心を奇妙なまでに揺れ動かした。
――――これは何?私……どうしてこんな気持ちになってるの?
それは、百合に取って全く未知の、不可解な感情であった。
しかし百合のその戸惑いが表面に現れることは無く、当然それに気付かない一樹は、
花壇の土に膝を突いて、百合の膣に攻撃を与え始めた。
十二、
「あ……あぁっ!」
ずん、と陰茎が膣を突いた途端、思わず快楽の声を漏らしたのは一樹の方であった。
百合の粘膜の感触が、あまりに甘美過ぎたのだ。
どこまでも柔らかく、ぬらぬらと蕩ける襞の一つ一つが、
それぞれに意思を持った小さな触手のように陰茎全体を舐り、くすぐってくる。
背筋をぞわりぞわりと這い上がる快感に耐え切れず、一樹は瞬く間に精を漏らしてしまった。
「早っえーの」
花壇の縁に凭れて一樹の性交の様子を見物していた永井が、鼻で笑った。
「はぁ、はぁ………ゆ、指挿れただけで終わっちまう誰かさんには、言われたくないな……」
一樹は脱力し、百合の躰の上に倒れこみながらも、減らず口を叩く。
二人のやり取りを、百合は遠い処で聞いていた。
膨れ上がり、その身を震わせながら、熱い精液をほとばしらせた陰茎を膣の中に抱いたまま、
百合の感覚は不思議な陶酔に包まれ微睡んでいた。
胎内が、男の放ったもので温かく満たされ、まるで母の海の中にいるみたいだと思った。
そして、その温かさは彼女の胸の中にまで満ちて――――
「よし。じゃあ次はあんたが姦りなよ」
上に圧し掛かっていた重たい躰が離れ、膣に埋め込まれていたものが、ずるりと抜けていくのを感じた。
百合から下りた一樹が、永井に百合との性交を促している処であった。
のろのろと現実に還った百合の意識が、足元に居る永井に向けられる。
「え……いや、俺は……」
永井は、余り乗り気ではないようだった。彼は一度射精して、少し理性を取り戻していた。
醒めた頭で考えてみれば、自分の加担している行為が酷く理不尽な、
馬鹿馬鹿しい蛮行であるのが明らかであったし、
一樹に姦され、彼の精液に塗れた女性器に己の陰茎を挿入するのは、汚らしくて嫌だった。
永井は百合の股間を覗き、半開きの陰唇の奥から、白い液体をごぼごぼと溢れさせる百合の性器に、
しり込みするような視線を送る。
永井のためらいは、百合の横に立つ一樹にも伝わっていた。
一樹は「あれえ?」と笑い混じりの声を上げた。
「あんた達みたいな人種は、こういうのが好きなんじゃないのか?戦争にはレイプがつき物だろ」
「ざけんなよ……そんなの偏見じゃん。大体、自衛隊は戦争屋じゃねーし」
「あっそ。まあいいや。じゃ、あんたは横で照明係でもやっててくれ」
一樹は百合の両手を縛っているショールを掴み、柵から外した。
それを持って百合の躰を引き上げ、立たせる。
未だ腿の痛手が治りきらない百合はよろけて倒れかけたが、一樹は乱暴にその腕を引き、
ウサギの後ろに立てられた時計の柱に、彼女の手を縛り付けた。
百合は細い支柱に少し前屈みでしがみ付き、しなやかな曲線を描く魅惑的な尻を、
男に突き出す形を取らされる。
――――これからまた、この男に姦されるのだ
百合は、虚ろな心で背後の男から目を逸らす。
手を縛られて眼を伏せた彼女の佇まいは、あたかも、可哀想な囚われの姫君といった風情であった。
一樹はそんな百合の髪を撫ぜ、優しく語り掛けた。
「………そんな顔しないでくれよ。そんな哀れを誘う顔……そういう君を見ていると俺は………」
指先が濡れた髪の毛から滑り降りて、赤いカーディガンを引っ掛けた背中を辿る。
そして耳元で継がれる言葉。
「余計に苛めたくなってくる」
労わる指先にぐっと力が込められて、百合の、赤い衣が毟られた。
十三、
一樹にカーディガンを取り払われた百合の背中に、生ぬるい雨が降りかかる。
もはや、膝丈のブーツ以外に何も身に着けてはいない百合の肢体は、
暗い雨の中、蛍のように白く発光して見えた。
「ほら、ライト」と、一樹が呼び掛けると同時に、永井の懐中電灯がその白い裸体を照りつける。
百合は、苦しげに呻いて顔を背けた。
「光には弱いって訳だ……色んな意味で。くくく……くくくくく」
一樹は薄気味悪い笑い声を漏らしつつ、剥き出された百合の背中から腰にある二つの窪み、
そして、柔らかく盛り上がった尻たぶの肉へと乱雑に手指を這わせていった。
一樹に躰をまさぐられ、無遠慮な光の動きに翻弄されて、百合は惨めに啼き喚く。
永井は、百合の細い肢体をライトで舐めながら、複雑な心境だった。
彼はこの、眼の前で妖しく身をくねらせて嬌声を上げ続ける女が、普通の人間では無いと
薄々理解し始めていた。
この島の異状も、あるいは彼女の存在が元凶になっているのやも知れない―――と。
しかし、こうして厭らしく百合の肉体をいじくり廻す一樹を見ていると、
一体どちらが化け物であるのか判らなくなってしまう。
だがそれでいて、この淫らな宴を自ら進んで終わらせようという気にもなれないのだ。
どっちつかずの中途半端な気持ちのまま、永井は懐中電灯を使い、
百合の躰の曲線が織り成す光と影とを、腑抜けた顔で眺めるだけであった。
一樹は百合の背中に被さり、後ろから一息に陰茎を突き挿そうと構えたが、
ふと思い直したようにその動きを止めて、百合の尻の前に屈みこんだ。
「ふ、うぅっ」
百合の咽喉が仰け反る。
一樹の手が百合の尻たぶを掴み、それを思い切りわっしと両側に広げた為だ。
永井が、すかさずそこに光を当てる。
いきなり開帳された尻肉の中心の肛門が、開く力に抗うようにキュッと窄んだ。
「意外と毛深いんだな。こんな処にまで、毛が生えてる」
一樹は百合の、陰裂を縁取りながら徐々にまばらになってゆく草むらを、指でなぞりながら言った。
その黒い毛は、薄く判りにくくなりながらも、尻の割れ目に沿って三角形を象っており、
触ると微かに、さりさりとした違和感を指先に与えた。
「あっやめて……」
恥ずかしい毛の所在をことさらに指摘され、百合がくたりと身を折り曲げた。
そして開かれた尻たぶを閉ざそうとして力を込めるも、一樹はそれを許さない。
一樹に押し広げられた尻肉が収縮し、少し盛り上がった肛門の皺までがひくひく蠢く様は、
おぞましいほどに淫猥だ。
一樹は束の間、百合の尻を揉みほぐし、中心の菊状模様を親指で摩ったりしていたが、
そのうち尻の谷間に顔を埋めて、肛門に、吸い付いた。
「うあっ?!あぁ、あああぁぁぁぁぁ……」
猫背になっていた百合の背筋が、逆向きに、弓のように反りかえる。
一樹の舌が、肛門の皺を掘り起こすように突き廻し、
あまつさえ、その皺の内部にまで這入り込もうとしているのだ。
不自然な感覚。しかし、それでいてぞくぞくするような快感を孕んでもいる――――
背中を反らせ、尻を突き出して舐められている百合の姿に、
永井は再び血が滾り出すのを感じていた。
彼はいつの間にか花壇に上がり、至近でライトをかざしながら、
百合の躰のあちこちを手で撫で廻し始めていた。
先程までの白けきった気持ちが、嘘の様だった。
這入りたい。この躰の中に、根元まで這入って掻き廻したい………
自分がこの呪われた島の瘴気にあてられ、おかしくなっているのだとしても、構わない。
(毒喰らわば皿まで、だ。ちくしょう)
永井は半ばヤケクソになって、己の中の拘りを捨て去ろうと決意した。
十四、
「……っはあっ、はぁ、ははは……ちょっと酸っぱいな」
百合の尻から顔を離し、一樹は口の周りを拭った。
「お、おい代われよ」永井は待ち兼ねた様子で一樹に呼び掛けた。
「はあ?あんた、姦らないんじゃなかったのか?」
「気が変わった。……いいだろ別に。頼むからそこ退いてくれ」
一樹は、永井の懇願する姿を面白そうに見上げた。
「人にものを頼む時は、お願いしますって言うべきだろ?」
「うっわこいつ性格悪……」
「へえ、そういう態度?じゃあ駄目だね」一樹は立ち上がる。
そして百合の腰を抱え、永井に見せ付けるように、陰茎を尻に押し当てた。
「うっ………くうぅぅぅ」
百合の押し殺すような声に、一樹の満足そうな溜息が被さる。
獣の姿勢で繋がった二人の姿に、永井は妬ましい思いでライトを向けた。
「あーっ、きつい、狭い……」
小刻みに腰を揺すりながら一樹はひとりごちる。
一樹の動きに合わせ、俯いた百合の口から唸るような呻き声が漏れ、
ぶら下がった乳房が、重たそうにゆさゆさ揺れる。
眉間に皺を寄せてその姿を見守っている永井を一瞥し、一樹はニヤリと笑った。
「なあ、今どうなってると思う?」
そう言うと、永井の返事を待たずに少し屈み、百合の片方の膝の裏に腕を廻して、
彼女の片脚をガバッと広げて持ち上げた。
「うぁぁぁあああああああぁああ!」
百合の叫びが辺りに木霊する。永井は、息を飲んだ。
片脚を上げられ、犬の小便のポーズを取らされた百合は、
永井のライトに向かって、何もかもを曝け出していた。
全開になった股座の中の淫汁まみれの陰門、そして――――陰茎をずっぽりと嵌め込まれた肛門。
「な……ケツに挿れちまったのかよ?!」
永井は驚きを隠せない面持ちで二人の結合部分に見入った。
あの可愛らしく窄んでいた百合の肛門の穴が、今、目一杯に広がって、
一樹の硬く怒張しきったものを飲み込んでいる。
穿たれた箇所をまともに照らし出され、百合は「うぅ」と苦悶の呻きと共に身を捩った。
白い光の中で、百合の肛門は、前から流れ伝ってくる淫水にぬめり輝き、
真っ赤に充血した表皮が、陰茎の出入りに伴い、引っ張られ、押し込まれしつつ、
ねちゃねちゃと湿った音を立てて蠢いた。
そして、その肛門の前でぱっくりと割れた女性器はといえば、
肛門への抽送による苦痛なのか、快感なのか、とにかく何らかの刺激を感じているらしく、
ひとりでに、咀嚼するかの如くもごもごと収縮を繰り返している。
永井がそのがら空きになっている桃色の菱形に、ぐっ、とライトを近づけると、
引き絞られた悲鳴と共に、そこは夥しい量の体液を放出し、全体を激しく蠢動させながら、
膣穴の内側の真っ赤な疣々のついた縁肉を晒した。
そこまでが、永井の限界だった。
蠢動する膣穴から、長く糸を引いた淫液が、蜘蛛の糸のように草の上に零れ落ちるのを見た瞬間、
永井の中で何かが破裂した。
「うぁああああ!!」「きゃっ?!やああっ」「うわっ?!」
三人の叫び声が交錯する。
永井は、百合の上体を無理な姿勢に捻じ曲げ、彼女の紅く溶け崩れた熱い粘膜に、
掴み出した鋭利な陰茎を突き立て、子宮に届けとばかりに勢い込んで貫いた。
「あ………………」
胎の底にまで響く衝撃に、百合の意識が、高い処へ弾けとんだ。
十五、
悲鳴を上げていた、と思う。
重力の感覚が怪しくなり、立って居られない。このままでは倒れてしまう。
と、百合は身をもがいたが、どういう訳だか倒れてしまう事は無かった。
奇妙な浮遊感は、前後から男に躰を支えられている為であった。
いつの間にか両手の縛めはほどけてしまい、だらんと垂れた手首の下に溜まって落ちていた。
それでも彼女は自由になれない。
肛門と陰門に深く陰茎を打ち込まれていては、どうすることも出来なかった。
「あぁっ、何だこれ……くそっ」
永井は、ガクガクと躰を揺さぶりながら、切羽詰った形相で呟く。
百合の内部の襞のざわめきに、彼は総毛立つほどの刺激を覚えていた。
快感は、繊毛となって永井の陰茎の先から体内へと潜り込み、彼を内側から侵食し、
支配しようとしているみたいだ。
「どうした?もう出ちゃいそうか?」
永井が与える震動に持ちこたえ、逆にそれを押し返すように抽送しながら一樹は言った。
だが、そううそぶく一樹の声も、微かに震えている。
百合の二つ目の性器には、表門のような複雑なうねりや、
意思を持って陰茎に纏わり付く小触手などは存在していなかったが、
縦に襞の寄った、温かい、ぎっしりとした筋肉の筒が、嫌というほど彼を締めつけ、
精管の奥の精液を無理やり搾り出そうとしている感じがした。
それでも、彼等の受けている悦楽による責め苦など、
百合の受けているそれに比べれば、ささやかなものといって過言ではない。
男達の自分勝手な動作に翻弄される百合の躰は、嵐の中の葦だった。
彼女は、女であれば絶対に秘すべき二つの門を、無情にこじ開けられ、
中の秘肉が抉り出されそうなくらい、激しく擦り立てられて続けていた。
一樹が、彼女の肛門をぴりりと裂きながら、その内部に侵入して来た時点で、
百合の受けた打撃は充分過ぎるほどであったのに、
更に永井までもが踊りかかって百合の深い部分を暴き、凶暴な力でもって其処を蹂躙してゆく。
しかも、彼等の攻撃が彼女に与えるのは、単なる苦痛だけではない。
ごしごしと扱き上げられる直腸や膣壁から、ぬめりを帯びた快感が、内臓にずしんずしんと響き渡る。
強く掴まれ揉みしだかれる尻肉からも、捻り上げられる乳房からも、
痛みと一緒くたになった快美感が伝わり、百合の躰を陶酔境から開放しない。
半開きの唇からは、絶えず淫蕩なうめきが漏れ続け、
全身が、一樹と永井の間を振り子のように行き来する。
「何か言ってるな」尻に挿している方の男が言う。
「ああ……助けて、とか、許して、とか言ってるんじゃないのか?」
「かもな。呂律が廻ってないから、全然判んないけど」
男達の会話を聞いて、百合は初めて自分が言葉を発していたことに気付いた。
でもそれはもう、彼女にとって大した問題では無かった。
今や彼女の感覚は、肛門と陰門のみに集中し、支配されているのである。
――――突いて突いて。もっと突いて。ぶち込んで。掻き回して。
許しを請う言葉とは裏腹に、淫らな肉の穴と化した百合の躰は、更なる快楽を求めて、
男達の間を揺れ動くのであった。
十六、
「うああぁぁぁっ!ああぁ、はあああぁあぁぁぁん………」
貪欲な快楽の虜と成り果てた百合の躰は、
常に性悦の高みの上にあり、それが醒めてしまう事は無かった。
ここが絶頂か。と思えばもっと上位の悦楽が現れ、
それがやっと静まったかと思えば、後ろから更に大きな波に飲まれた。
「う……っくぅ!」
突然、背後から百合の躰を支えていた一樹の力が抜け、百合の背中に体重を掛けてしがみ付いてきた。
バランスを崩した三人の躰が、花壇の上に折り重なって倒れる。
「うぉ、な、何だコラ!!」
百合と一樹の下敷きになった永井が、ひっくり返りつつ喚いた。
その永井の陰嚢に流れ伝ってくるものがある。百合の肛門から溢れ出た、一樹の精液であった。
「うへえ………」
げんなりしている永井の上で、百合と一樹はわななき、ぐったりと崩れ落ちた。
「おい二人で乗んなよ!苦しいだろ!」
一樹は百合の中から抜け出して、永井の横にごろんと寝転んだ。
しかしすぐに起き上がり、懐中電灯を持って後ろに廻り、百合の肛門に灯りを向けた。
百合の肛門は、一樹に広げられた名残を残し、窄み切れずにポツリと黒い穴を晒していた。
その黒い穴は、白い精液をたらたらとだらしなく垂れ流し、
彼女の瞳同様うつろであり、尚且つ、扇情的でもあった。
「いぃ………ひぃぃぃ……い」
広がった穴に弱点の光を当てられ、百合は感極まったように叫ぶと、
下に居る永井の恥骨に自分の恥骨を擦り付けて、もう何度目かも判らない絶頂を迎えた。
それにつられて、永井の陰茎も百合の胎内に精液を放つ。
永井と百合は重なり合ったまま、しばし荒い息遣いを繰り返した。
「休んでる場合じゃないぞ」
永井の胸に凭れ掛かる百合の髪が、上から引っ張られた。
無理やり躰を起こされた百合の鼻先に、一樹の項垂れかけた陰茎が突き付けられていた。
「ちゃんと綺麗にして貰わないとな」
と、いう台詞と共に、淫液まみれの異臭を放つ陰茎が、百合の口の中にねじ込まれた。
百合は一樹の賜物に、優しく従順に舌を絡める。
それは生臭く、酸味と苦味が混じった嫌な味がしたが、少しだけ、甘ったるい芳香が鼻に抜けた。
「きちんと全部舐め取るんだ。そう……下の方も」
百合の舌は、陰茎の包皮の境目から括れ目の周り、裏側の筋の脇まで丁寧に這い廻り、
毛むくじゃらの陰嚢まで咥え込み、頬を窄めて吸い取った。
そうしている内に、一樹の陰茎は脈を打ち始め、再び硬く勃ち上がる。
百合の口は、もはや掃拭の為の動きではなく、性感を与えるための愛撫を行っていた。
そして、仁王立ちする一樹の陰茎に手を添えて、横向きでしゃぶり廻しながらも、
腰は茶臼を挽くように螺旋状に廻し、下に居る永井の陰茎に刺激を与えていた。
永井は下から腰を突き上げて応じつつ、百合の陰茎に吸い付く横顔や、
腰の動きに合わせて大きく上下に揺れ動く乳房を、幻惑される思いで見詰めていた。
二人の男に輪姦され、躰中の穴という穴を精液で汚された、雌犬同然の女だというのに、
それでも彼女は、美しかった。
いや寧ろ、汚され痛めつけられたからこそ――――
その月下美人のような密やかな美しさが、余計に際立っているのかも知れない。そんな気もした。
程無くして、一樹が百合の頭を掴み、前後にガクガクと動かし始めた。
「うごっ……ぐうぅぅ………」
百合の眉間が寄り、深い皺が彫り込まれた。
乱れた髪、苦しげにむせ返る咽喉。永井は眼を凝らす。
いたぶられる彼女が、何故だか笑っているように見えたのだ――――――
十七、
欲情の嵐の中で、ずっと視線を感じていた。
ひやりと突き刺すような、侮蔑と憎悪に満ちた視線。それは彼女の中にいる……母親の視線だ。
母は彼女に問い質す。
―――何故、彼等に為されるがままになっているのか?
母は怒っていた。
娘の裏切りを。
勤めを果たさずに、敵である光の者共を受け入れ始めている百合の心変わりを。
はるか昔。世界に光が生まれて母は冥府へと追いやられた。
母は光を畏れて自ら闇に閉ざされ、時折、現世に“鳩”を飛ばすことに拠って、
世界を取り戻す足がかりを掴もうとしていた。
しかし、光を畏れつつも光に強く心惹かれ、憧れてさえいた母の分身である“鳩”達は、
光の世界に触れ、その暖かさを知ってしまうと直ぐ光に打ち解けてしまい、
もう、闇の世界に戻って来る事はなかった。
そして母はついに、その身を裂いて百合を生み出し、現世へと送り込むことにした。
他の“鳩”とは違い、母そのものである百合は限りなく母に忠実であり、
光になびいて母を裏切るなど、決して有り得ない事である――――はずであった。
「あうぅ……っ」
一樹の陰茎がグッと咽喉の奥に挿し込まれたかと思うと、太い幹が律動し、
熱い液体をどくどく注ぎ込んで来た。
百合は激しく咳き込み、飲みきれなかった精液を、口と鼻から溢れさせながら涙ぐんだ。
「きったねえな」
迷彩服の胸元に体液を吐き出され、永井は不快感も露わに百合の頭をはたく。
「こういう時は全部飲むのが礼儀だろう。たく……空気読めよ」
一樹も冷淡に言い募る。そして百合の髪を掴み、その肢体を仰向けに引き倒した。
百合は永井の陰茎を嵌められたまま、精液まみれの顔で仰臥する。
永井は、その百合の躰を追うように起き上がり、彼女の両膝を抱えあげて猛烈に腰を打ち付け始めた。
ラストスパートを駆ける永井に躰を揺すられながら、
百合は、傍らに座って額の汗を拭っている一樹の姿を見ていた。
その、大人しそうな面差しと大柄な体躯――――
己を虐げ、辱めを与えた男の姿に、百合は不思議な親しみと懐かしさを覚えていた。
百合の視線に気付いた一樹が、彼女を見下ろして笑う。
「酷い顔だ」
一樹は百合の顔に手を伸ばし、指先で、百合の顔中にこびり付いている精液の汚れを拭った。
不意に、百合の脳裏にある映像が浮かんだ。
それは暖かい木漏れ日の中、この男と手を繋いで歩いている自分の姿だった。
幸せそうに笑い合い、光に怯えることも無く――――――
「あぁ……あああぁぁぁぁぁ………」
百合の性器に強い快感が起こった。
快感は痙攣の発作となって膣の奥底から湧き上がり、腰から伝わって、
彼女の全身をビクンビクンと打ち震わせた。
百合の断末魔の動作に引き摺られ、永井も唸り声を上げて射精する。
自分の胸に縋り付く永井の肩を抱きながらも、百合は、頬を辿る一樹の指先に手を添え、接吻をした。
十七、
欲情の嵐の中で、ずっと視線を感じていた。
ひやりと突き刺すような、侮蔑と憎悪に満ちた視線。それは彼女の中にいる……母親の視線だ。
母は彼女に問い質す。
―――何故、彼等に為されるがままになっているのか?
母は怒っていた。
娘の裏切りを。
勤めを果たさずに、敵である光の者共を受け入れ始めている百合の心変わりを。
はるか昔。世界に光が生まれて母は冥府へと追いやられた。
母は光を畏れて自ら闇に閉ざされ、時折、現世に“鳩”を飛ばすことに拠って、
世界を取り戻す足がかりを掴もうとしていた。
しかし、光を畏れつつも光に強く心惹かれ、憧れてさえいた母の分身である“鳩”達は、
光の世界に触れ、その暖かさを知ってしまうと直ぐ光に打ち解けてしまい、
もう、闇の世界に戻って来る事はなかった。
そして母はついに、その身を裂いて百合を生み出し、現世へと送り込むことにした。
他の“鳩”とは違い、母そのものである百合は限りなく母に忠実であり、
光になびいて母を裏切るなど、決して有り得ない事である――――はずであった。
「あうぅ……っ」
一樹の陰茎がグッと咽喉の奥に挿し込まれたかと思うと、太い幹が律動し、
熱い液体をどくどく注ぎ込んで来た。
百合は激しく咳き込み、飲みきれなかった精液を、口と鼻から溢れさせながら涙ぐんだ。
「きったねえな」
迷彩服の胸元に体液を吐き出され、永井は不快感も露わに百合の頭をはたく。
「こういう時は全部飲むのが礼儀だろう。たく……空気読めよ」
一樹も冷淡に言い募る。そして百合の髪を掴み、その肢体を仰向けに引き倒した。
百合は永井の陰茎を嵌められたまま、精液まみれの顔で仰臥する。
永井は、その百合の躰を追うように起き上がり、彼女の両膝を抱えあげて猛烈に腰を打ち付け始めた。
ラストスパートを駆ける永井に躰を揺すられながら、
百合は、傍らに座って額の汗を拭っている一樹の姿を見ていた。
その、大人しそうな面差しと大柄な体躯――――
己を虐げ、辱めを与えた男の姿に、百合は不思議な親しみと懐かしさを覚えていた。
百合の視線に気付いた一樹が、彼女を見下ろして笑う。
「酷い顔だ」
一樹は百合の顔に手を伸ばし、指先で、百合の顔中にこびり付いている精液の汚れを拭った。
不意に、百合の脳裏にある映像が浮かんだ。
それは暖かい木漏れ日の中、この男と手を繋いで歩いている自分の姿だった。
幸せそうに笑い合い、光に怯えることも無く――――――
「あぁ……あああぁぁぁぁぁ………」
百合の性器に強い快感が起こった。
快感は痙攣の発作となって膣の奥底から湧き上がり、腰から伝わって、
彼女の全身をビクンビクンと打ち震わせた。
百合の断末魔の動作に引き摺られ、永井も唸り声を上げて射精する。
自分の胸に縋り付く永井の肩を抱きながらも、百合は、頬を辿る一樹の指先に手を添え、接吻をした。
十八、
「随分と良さそうだったな……ふふ。じゃあ今度は、彼のも綺麗にしてやれよ」
一樹の命令を聞いて、百合は永井の下から這いずり出た。
そして仰向けに寝返りを打った永井の、産まれたばかりの陰茎に躙り寄り、舌を這わせる。
「わっやめ………いいよもう!放っといてくれよ!!」
永井は、しつこく陰茎に舐りついてくる百合を引き剥がして押し遣った。
紅く腫れ上がった陰部を剥き出したまま、花壇の端にひっくり返った百合を眺め、
永井は躰の後ろで両腕を突くと、くたびれた様子で溜息をついた。
「もう降参か?」
膝まで下ろしていたズボンを上げ、身じまいしている永井に、一樹は声を掛けた。
「つーか、もう充分だろ……あんたまさか、まだ姦るつもりなのかよ」
「まあな」
「どうかしてる。正気じゃねえ」永井は呆れ果てて頭を振った。
「でも、そろそろ何か変化が欲しいかな。一通りの事はやっちゃったし。
エロゲーとかだと、どうしてたかな?こういう時は………」
一樹は裸のまま、顎を捻って思案に耽る。永井は、うんざりして一樹から眼を背けた。
花壇の端では、ぐったりと弛緩した百合の躰が、蒼白いしかばねの様に雨ざらしになっていた――――
――――お母さん、ごめんね。私……帰れそうにない。
曖昧な眠りの中、百合は、切ない思いで母に詫び続けていた。
これほどまでに酷い仕打ちを受けたというのに、何故こんな気持ちになってしまったのか、
それは、彼女自身にもはっきりとは判っていない。
今にして思えば、こうなる事は初めから決まっていたのではないか?という気もする。
あの資材倉庫の中で彼に出逢った時、反射的に縋り付き、彼の保護欲を掻き立てながらも、
その胸の奥で何か、それまでに感じたことの無かった不可思議な感情が疼いた。
或いはそれも、こうなる事の予兆であったのかも知れない―――と。
こうして彼に陵辱され、全身に彼の精液の洗礼を受けた今、
あの時起こった不可思議な感情は、より明確なものとなって彼女の心を満たしていた。
――――これが、光の者達の呼ぶ“情”というものなのだろうか?
百合にはよく判らなかった。
一つだけ理解できた事といえば、今まで戻って来なかった他の姉妹達の気持ち。
彼女達は皆、今自分が感じているのと同じ気持ちに従って、
光の下に飛んで行ってしまったのだ――――――
「おい起きろ!」
ピシャピシャと頬を打たれる感覚が、百合の意識を急速に現実へと引き戻した。
ぼんやりと上げた眼に、一樹の薄笑いが映りこむ。
その、横に傾いた視界に、百合は、自分が横臥させられている事を知った。
「………?」
起き上がろうとする腕の力が窮屈に押さえ込まれる。
両腕が、肘を曲げた形でぎっちりと後ろに縛められているのだった。
どういう風に縛っているのか知らないが、そのきつさは最初に縛られた時の比ではなく、
どんなに引っ張っても、抜け出せそうには無かった。
更に彼女は、周囲の違和感にも気が付いた。
――――あれが無い。
彼女に竦み上がる様な恐怖と苦痛、
そして、ジンジンと身に沁みて、焼け焦げる様な快楽を与え続けていたあれが――――光が、無い。
百合は、何か不吉な予感に襲われて辺りを見廻す。
そんな彼女の様子を見て、一樹は、小さくほくそ笑んでいた。
十九、
「たいした女だよ君は。正直驚いた。くくく……なあ、ひょっとして未だ気付いてない?」
一樹の言葉を聞いて、百合は、己の身に何かが起きている事を察知した。
ふと下腹部を見下ろすと、何か粘着力のある包帯のような長い絆創膏が、
股の間をくぐってT字に、ふんどし状に巻き付いているのが判った。
そのふんどしの下の辺りが、不自然に膨らんでいる。
百合は「ひっ」と、短い悲鳴を上げた。
百合の股間からは、永井の持っていたL字型ライトの根元が覗いていた。
それだけではない。
後ろの方にも何か異物感がある。それはおそらく、一樹の持っていた懐中電灯であろう。
彼等の二つの得物は、百合の胎内に挿れるには余りに巨大過ぎていた。
それらは、ただ息をするだけでも百合の内部をギシギシ軋ませ、その苦しいほどの充溢に、
彼女は身動きすらもままならなかった。
「しっかし。よくこんな事思い付くよなあ」
振り返ることさえ出来ない彼女の後ろで、永井の呆れた声が言う。
「ふっ、そんなに誉めるなよ」
「いや、別に誉めてないし………」
男達は呑気に話しているが、百合はそれどころではない。
これから何が起こるのか……彼女は既に悟っていた。
「どうしたの?そんな顔して。言ったじゃないか。
俺は君のそういう顔を見ると……物凄く苛めたくなって来るんだよ」
「やめてこんな………馬鹿な事、やめてよ!」
「へーえ。さすがだね。俺が何するつもりなのか、ちゃんともう判ってるんだ?」
一樹は、嬉しそうに百合の尻を撫で廻す。
「くくく……君も嬉しいだろ。嬉しいよな?
この淫乱な躰を、もっともっと気持ち良くして貰えるんだからさ………女冥利に尽きるってもんだ」
「馬鹿じゃないの……?この、変態!気違い!!」
百合は眉を吊り上げ、口角泡飛ばして一樹を罵った。
「ふははっ、そういう顔もまたいいね。屈服させたいって気分を盛り上げてくれるよ。
………さてと。じゃあそろそろ始めようか?君の此処も、待ちくたびれてるみたいだからな」
一樹は、勝手に女としての反応を示してぬめりを帯びている、広がりきった陰裂に、
包帯の脇から指を挿れてなぞった。
そして、そのまま指を、ライトの根元から内部に這わせると、スイッチを、オンにした。
二十、
「――――――――――!!―――――――――――――――――!!!!!!!!」
この世の物とも思えないような絶叫が、辺り一帯の空気を震わせた。
耳をつんざくそれは、何処か、壊れたサイレンの響きを髣髴とさせた。
胎内の奥深い場所に光を注ぎ込まれた百合は、熱した油の中に落とされた水滴のように、
激しく跳ね廻り、滅茶苦茶に暴れ廻った。
「うっ、おっ、おぉっ、おあぁああぁっ」
百合の、その名の通り百合の花の様に清楚な美貌は醜く歪み、
狂った叫び声からは、人間らしさが全く感じられなかった。
彼女は何とかしてこの恐ろしい地獄から開放されようと身悶え、膣からライトをひり出そうと息むが、
膣が硬直してしまっている上、絆創膏がライトを上から押さえ付けている為に、
どうやっても抜け出てくれそうには無かった。
「これ……死んじゃうんじゃねーの?」永井が、呆然と気圧された体で呟いている。
「ふん!この女がこれ位で死ぬタマかよ。大丈夫さ……なあ、そうだよな?」
一樹は、永井とは対照的に、至って冷静な面持ちで百合に呼び掛けた。
百合は、がに股で仰臥し、地面に両足を突いたまま、激しく腰を上下させて、
苦悶の叫びを上げ続けていた。
歯を食いしばり、白目を剥いて首を振り立てるその顔は、まさに鬼気迫る。といった風情である。
百合の物凄い形相に、永井はすっかり怯んでしまったが、
一樹は全く臆せずに、寧ろ、愛しげな様子で彼女を見下ろし、
その涙と涎と鼻水で汚れた顔から、ほつれてこびり付いた髪の毛の束を掬い取ってやるのであった。
「L字型ライトだからな」一樹の愉快そうな声。
「ちょうどこの上の辺り……Gスポットだっけ?アソコら辺が、刺激されてるんじゃないか?
いや、アレはもうちょっと下にあるんだったっけ?ほら、こうすれば………」
と言ってライトに指を添え、根元をぐりぐりと揺するように動かす。
「ふぎぃ……!い………いひぃいぃぃいいいぃぃぃぃぃっ!!!」
百合の両脚がいっそう大きく広げられた……と思う間も無く、
その股間から、大量の小便が、噴水の如く噴き出した。
それは勢い良く噴き出たものの、股間をくぐる絆創膏の所為で行き先が二手に分かれ、
内腿から膝の裏、ふくらはぎからくるぶしを通って、足の裏の地面に染みていった。
「すげえ………」
一樹は、感嘆の声を上げた。
漏れた小便は、ライトを支える一樹の手指は勿論の事、腕や膝まで汚していたが、
彼はそれを拭おうとさえしなかった。
そして、更に激しくライトに震動を加える。
「いぃ、ぎゃあああぁぁぁ、ああ、あがぁあああああぁあぁぁ……」
一樹の攻撃に百合の腰は跳ね廻り、開いた股座の鼠蹊部の筋はぴくぴく痙攣して、
尿道からの残りの小便と共に、こってりと濁った淫液が、膣からどくどく溢れ出していた。
「うぅぅ……うあぁうぅ………」
百合は、涙に濡れて赤く充血した眼を一樹に向けていた。
その眼に込められているのはおそらく、懇願だろう。
――――やめて。これ以上は無理。お願い。お願いします。
言葉を紡ぐゆとりも失くし、百合はもう、瞳で訴えかける事しか出来ずにいた。
一樹は百合の懇願をきちんと理解していた。
蠢動を続ける会陰部をそっと撫でながら彼は「大丈夫。判ってる。判ってるから」と、
幼子をあやす様に言い聞かせた。
微かに落ち着きを取り戻した百合に、彼は言った。
「もっと欲しいんだろ?判ってるよ………ほら」
一樹の指が、肛門に這入ったライトを、点灯した。
二十一、
「い、ぎぅ………ぎゃあああぁああぁああぁぁぁぁああああああぁあああああああ!!!!」
百合の躰が、海老反りに仰け反った。
前も後ろも無慈悲な光に姦された百合は、花壇から転落し、
ぬかるんだ地面の上を泥まみれで転げ廻った。
白い裸身をくねらせ、捩り、尺取虫のように躙りながら這いずり廻った。
彼女は、内臓を明るく照らされる事により、ヒリヒリと痛痒い快感に襲われ続けていた。
それは生皮を剥がれる様に辛い―――でも脳天を直撃するそれは、紛れも無く快感なのだ。
「何処へ行く気だ?」
淫欲地獄にのたうつ白蛇と化した百合は、ずるずると這い蹲って広場の出口へと向かっていた。
此処から離れても、光の陵辱から逃げられる訳ではないのに―――
一樹は含み笑いと共にゆっくり後を追った。
永井はウサギのオブジェに凭れ、眼だけで二人の様子を追っていたが、
不意に立ち上がって、高く掲げられた百合の尻を見据えた。
心なしか、其処から白い煙が立ち昇っているように見えたのだ。
(……気の所為か?)
永井が眼を擦って確認し直している内に、百合は肩を躙らせ、ようやく出口の階段へと到達した。
しかし百合が階段に肩を掛けようとした途端、横から一樹が、彼女の躰を蹴り飛ばした。
「ぎゃっ」と叫び声を上げて、百合の躰は傍らの案内板の下へ横転する。
百合が更に甲高く叫ぶ。
案内板の上からは、電燈の仄白い光が降り注いでいるのだ。
「うあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
一際大きな悲鳴と共に、百合の白桃の様な尻が、ぶるん!とひとつ震え、
それきり彼女は、動かなくなった。
「……心配ない。伸びてるだけだ」
慌てて駆け寄ってきた永井に、一樹は静かに伝えた。
一樹は、気絶した百合の尻を抱え、巻き付けていた絆創膏を剥がした。
肛門からは、何の抵抗も無く、懐中電灯がズルリと抜け出てきたが、
膣のL字ライトはその形状の為か、嵌まったままで動く気配すら無かった。
一樹はそれを、小刻みに動かしながら丁寧に引き抜いていった。
L字の突起部分が窮屈そうに膣口から顔を出した途端、
穴の奥から白濁した体液がドバッと溢れ出た。
そして、それにつられる様に、ぽっかり開ききった肛門の穴から、黄色い腸液の様なものが滲み出す。
一樹は、百合の中から取り出したライトを地面に放ったまま、
尻越しに彼女の二つの空洞を眺めて、溜息をついた。
永井は、一樹の膝の上に上体を乗せて横たわっている百合の、
少し眉根を寄せた気高い寝顔を、ぼんやり見詰めていた。
暗雨のもたらす湿度の中、辺りには百合の漏らした体液の匂いが、むせ返るほど濃く立ち籠めている。
畜生の様に卑しく這い蹲っていた女。
男を誑かそうとして失敗し、淫らな責め苦に喘いで気を失った愚かな女。
なのに、こうして眠りに就いているその姿が、相も変わらず美しいというのが、とても不可解だった。
そして永井は、百合を責め続ける一樹に対しても、言い知れぬ不可解さを感じていた。
百合の肉体に執着し、憑かれた様に玩弄し続ける彼は、やはり、百合に惹かれているのだろう。
そして多分、それを見続けている自分も――――
この淫逸劇の行き着く先の判らぬまま、永井は、一樹と百合の雨に濡れる裸体の傍で、
じっと棒立ちになっていた――――――
二十二、
――――ごめん……ごめんね………
自分と同じ顔の娘が泣いていた。
エプロンを掛け、髪を束ねたその姿には、生活臭が纏わり付いていた。
殺してしまう前に聞いておけば良かった。と彼女は思う。
――――どうすれば、男の人と幸せに暮らせるようになれるの?
頭上に一樹の顔があった。
厚い胸板と咽喉仏の出た首の上に―――自分が、彼の膝に頭を抱かれていたのだと気付く。
周囲に漂う空気から、彼女はもう、自分が母の元へは帰れなくなっている事を悟った。
もう手遅れだ。時間が―――その証拠に脳裏から、あの冷ややかな母の気配が消えていた。
――――自由?
この心許無い、己の存在が危うくなってしまった様なこれが、自由というものなのか。
余りの心細さから、彼女は、一樹の躰に縋り付いた。
一樹は何か言おうとしていたが、その言葉は、彼女の唇によって塞がれた。
彼女は、真摯な思いで一樹の舌を吸い込んだ。
一樹が躰を抱いてそれに応えてくれると、胸一杯に嬉しさが込み上げて来た。
――――受け入れて貰えたのだ。これで私も、光の下で生きていける……
だがその接吻は、相手の男の手によって強引に遮られた。
彼は百合の躰を裏返し、背後から圧し掛かってくる。
「……意外と緩くならないもんだな」
一樹が、感心した様に呟いている。
彼のものは、百合の陰門に深々と嵌まり込んでいた。
未だ硬くなりきらないそれは、百合の内部に溶け込んでしまいそうだった。
百合は、微かに甘い吐息を漏らした。
一樹は百合の背筋に口付けながら躰を揺らし、彼女の膣の奥まった箇所に、微妙な刺激を与えていく。
すると、膣の中の彼の陰茎は徐々に硬く、熱く膨張してゆき、
百合の内部をどくどくと脈動させ、百合を、蕩ける様な快美感に巻き込んでいった。
百合の吐息が荒くなり、それが明確なよがり声へと変わる頃、
一樹の小刻みな抽送は、次第に大きな動作へと変わっていった。
腰をぐうっと引き、外れそうになる刹那、またずうんと挿し込む。
摩擦を繰り返されて肥大した小陰唇が、陰茎を抱き締めるように纏いつき、
その奥の触手群も、灼熱の鉄槌の攻勢にザワザワと忙しなく蠢き、絡み合う。
「あ………………」
一樹が腰を引き過ぎたのか、陰茎が、膣からスポンと抜けてしまった。
百合は、もどかしい気持ちで後ろに手を廻し、陰茎を嵌め直そうとしたが、
一樹はそれを制して、今度は彼女の肛門を貫いた。
「あぁん!」
脊髄に響く様な衝撃。きつい場所をずるずると擦られ、百合の声の色が変化する。
「ああ、ああ、うあああああ……」
上半身を地べたにすり付け、百合は、肛門で達しそうになる。
その時、膣に指が挿れられた。
二本、三本、四本。
ぐちゃぐちゃと掻き混ぜられて、百合は、訳も判らず快楽の頂点へと引き上げられた。
「ううぅっ」と咽喉の奥から喜悦の声を上げて、百合は内腿の筋肉を突っ張らせる。
そして百合の乳房が背後からぎゅっと鷲掴まれ、肛門の中の怒張が、大きく震えて飛沫を上げた。
二十三、
「ああ、さすがに疲れたかな……」
地面に突っ伏した百合から離れると、一樹は、後ろに立つ永井を振り向いた。
「じゃあ、後頼む」
百合を指してそう言い、一樹は階段に掛けた。
「まだ姦るのかよ……つーか、いい加減彼女が持たないだろう」
永井は、うつ伏せになったまま微動だにしない百合の背に眼をくれて、難色を示す。
「いいんだよそれで」一樹が爽やかに微笑んだ。
「だって……殺す為に姦ってんだもん」
「………………は?」
何かの聞き違いかと思い、永井は問い返した。
一樹は、にこにこと明るい笑みを浮かべたまま永井の顔を見た。
「殺すんだよ。決まってんじゃん。だってそうだろ?あんな風にコケにされて……
生かしておけないじゃん。何だよ、あんたもそのつもりで協力してくれてたんじゃないの?」
「あんた正気かよ!?」
永井は、ぞおっと怖気を震いながら叫んだ。
確かに、自分の心を玩び、踏み躙った百合は酷い女だと思った。
強い怒りを覚え――だから一樹が彼女に一矢報いる事を提案して来た時、激情に任せて話しに乗った。
だが、此処まで大変な事を仕出かすつもりは無かったのだ。
ましてや、殺そうなどとは―――
「今更何言ってんだ」
一樹の笑顔が、刷く様に消える。
「じゃあ、あんたは一体どういうつもりで彼女を姦したんだ?レイプは犯罪なんだぞ?
幾ら異常事態だからって、それは変わらない……後腐れを無くす為には、殺すしかないだろう?
なあに気に病むことは無い。相手は人間じゃないんだ。あの化け物共と同じ、ただの敵さ。
敵を殺すのは犯罪とは違う。だから、彼女を死ぬまで姦し続ける事は、
この状況下至極真っ当な、理に適った行為なんだ………」
素っ裸で滔々と捲し立てる一樹を前に、永井は彼の狂気を―――
延いてはこの島の狂気を、ありありと眼にする思いであった。
――――いっそ、このまま逃げ出してしまおうか?
永井の心に、一瞬そんな思いが過ぎる。
しかしその時、対峙する彼等の傍らで、百合がふらりと復活して起き上がった。
彼女は、永井と一樹を順に見遣ると、一樹の方を選んで這い寄って行った。
そして彼の膝から上り、首に腕を廻すと、蕩ける様な笑みを浮かべた。
「もっとぉ……」
ねっとり舐りつく様な接吻。腰を蠢かせているのは、一樹の膝小僧に性器を擦り付けている為か。
――――百合?
永井は、彼女の態度に違和感を覚えた。百合はあんな風に笑う女だっただろうか?
あれではまるで、幼児にでも戻った様な―――
「おい!」
永井は百合の傍へ行き、接吻に酔い痴れる彼女の肩を掴んで振り向かせた。
百合は、唇の端から唾液の糸をぶらぶらさせながら不服そうな表情を浮かべていたが、
やがてまたニッコリ微笑んで、今度は永井の首っ玉にかじり付いた。
「うわぁっ?!」
いきなり百合に飛び付かれ、永井は百合もろとも後ろへひっくり返った。
永井を組み伏せ、彼の口の周りをべろべろ舐めまくる百合は、何だか人懐っこい大型犬の様だ。
でも犬は、人のズボンのファスナーを開けて、中の陰茎を手淫したりはしない―――
「どうやら躰より先に、心が壊れちゃったみたいだなぁ」
のんびりとした一樹の声が聞こえる。
壊れた百合は壊れた笑みを漏らしつつ、永井の躰に跨って、理性の欠片も無い所作で、
一方的な性交を始めた。
二十四、
ああ、いい、気持ちいい。気持ちいいの好き。もっと。もっとしたいの。
おちんぽが、おちんぽがいっぱい。
私のなか、おちんぽでいっぱいになって、ずこずこされて。
ああ、ああ、ああ、いい。光、いい。
明るくされるの、すごい。ああ、けむり噴きそう。
感じる。感じるの。
もっと照らして。明るくして。光よ。もっと。
私もう、帰れない。
戻れないの。戻るとこ、ないの。
おかあさんに、捨てられちゃったから。切られちゃったの。もう駄目なんだって。
光に魅せられた鳩は、箱舟には戻れないから。
オリーブの葉を咥えても、舟には乗せてもらえない。
そうよ。どうせ咥えるのなら私、おちんぽの方がいい。これ好き。いいにおい。
ああ、光のにおい。
あっ。私のなかで、精液でてる。
わかる。わかるよ。
ああ。熱い。熱い。あん、あん、漏れちゃう。そんなにされたら、精液漏れちゃう。
ああ。塞いでくれるの?その懐中電灯で蓋をするのね。
すごい。やっぱりあなた頭がいいのね。好きよ。
あああああ。点けないで。駄目なのそれ。飛んじゃうから。勝手に、ひくひくなっちゃうの。
だめ。だめ。だめだめだめだめ。
あああああああああああああああああああああ。
はあ、はあ、そ、そうよね。私だけ気持ちよくなってたら、駄目だよね。
うんわかった。ちゃんと彼にもしてあげる。
いっぱいしゃぶって、気持ちよくしてあげるの。
だから――――――
あなたも、して。
私、あなたとしたい。
あなたとするのがいいから私――――帰れなくなったんだもん。ね。ちゃんと、責任とって。
お願い。どこでも、どこでもいいから。全部好きだから。
お口も、お尻も、おまんこも。
あなたの好きな処に、して。
痛くしてもいい。ちょっとぐらい、壊れたって構わないから。
もういいの。もう――――――
今はもう、あなただけを感じていたいから。
ああっ!
こんな――――こんな風にもできるの?
ああー、すごい、私、浮いてる!きゃあ!ああ!ああん!!
うふふ。ああ、私、飛んでる。光の中を飛んでる。すてき。わかったわ。
他の子たちもきっと、こうやって飛んだのね。
これじゃあ帰ってなんかこない。帰るはずないよ。こんなにいいんだもん。あああああ――――
飛ーベー飛ーべー使い鳥ー
錦の腰帯振り解きー 土を求めて羽ばたかんー
二十五、
「はあー………」
永井はぐったりと電動ライドの横のベンチに座り込んだ。
百合に搾り取られ、もう刀折れ矢尽きた。といった気分だ。
永井の眼の前では、一樹が百合の躰を抱え上げ、駅弁売りの様な格好で交接を行っていた。
「しっかし、二人共よくやるよ……」
すっかり壊れてしまった百合はともかく、一樹の凄まじい持続力には呆れるのを通り越し、
寧ろ尊敬の念すら覚える。
一樹だってもう、相当に疲れている筈なのだ。
舞ーえー舞ーえー巫ー
あーまの衣で舞い踊りー ふーねを背にして踊りゃんせー
さっきから百合は、奇妙なわらべ歌を歌い続けていた。
喘ぎ混じりのその歌声は狂気じみて凄まじく、その顔に浮かんだだらしない笑顔と相まって、
永井は何か、胸を締め付けられる様な気持ちにさせられた。
――――今やってるアレが終わったら、もう止めさせよう。
一樹は彼女を殺すなどと言ったが、彼が百合を抱いている姿を見ると、
それは彼の本心では無いように思えてきた。
――――彼は普通に、彼女の事が好きなんじゃないのか。
こんな状況で、そんな牧歌的な考えを抱くのもまた、正気の沙汰では無いのかも知れないが、
案外それが、真理だったりするのではないか。
とにかく永井は、この島からの撤収に、一樹と百合も伴って行く事を決意していた。
百合は壊れてしまったし、一樹も同意する保障は無いが。
何だったら、銃で威し付けて連れて行ったっていい。
戦闘力では、圧倒的にこちらが勝っているのだから――――――
「ああ、あああああ、あああーあああああぁぁぁぁ……」
百合が一際大きな、絶え入る様な嬌声を上げた。
どうやら、けりが付いたらしい。永井は立ち上がった。
二人に近寄りかけて―――ある異変に気が付き、立ち止まった。
二十六、
「………何だ?」
百合の絶頂の渦を陰茎で味わっていた一樹は、百合の様子に異変が起こっている事に気付いた。
宙に抱え上げた彼女の全身から、しゅうしゅうと白い煙が立ち昇っているのだ。
一樹は、肩にしがみ付いていた百合の躰を引き剥がし、その顔を見た。
百合は、笑っていた。
今しがたまで浮かべていた、あの狂った笑顔とは違う清々しい―――
寧ろ、神々しい程に美しい、慈母の微笑み。
彼女は一樹の腕に抱えられながら、彼の頬にそっと両手を添えた。
その指先が、腕の中の肉体が一瞬、脆く感じた気がした次の瞬間―――
ザアアッ、という水音が起こり、百合の躰が、消えた。
一樹は、彼女を抱いた形で両腕を掲げながら暫し、怪訝な顔でその腕を見詰めた。
「………………百合?」
彼の躰は雨水と違う、生ぬるい液体で濡れていた。
ザッと小さな音が足元から聞こえたので見ると、
下に落ちた百合のブーツの片方がくたりと折れて、中に溜まった水が流れ出ている処であった。
一樹は眼を見開いたまま、地面にへたり込んでそのブーツを手に取った。
ブーツには百合の体温や匂いが、未だはっきりと残っていた。
「百合……百合……ゆり………」
呪文の様に彼女を呼び、ブーツを胸に抱き締める。そしてそのまま、ひれ伏すように地面に蹲った。
永井は、いつの間にかライドの前に座り込んで空を見上げていた。
――――赤い。
空は真っ赤だった。こんな異様な朝焼けは見たことが無い。
やはりこの島は狂っている。そう思った。
百合が消えたのだって、きっとその所為だ。一樹や自分、ましてや、百合の所為なんかでは無い。
島の呪い。そうだ。そうに違いない。
一樹の漏らす嗚咽を耳の片隅で聞きながら、顔を上げ、永井は明けゆく空に眼をくれていた。
百合が何故消失してしまったか、永井には知る由も無い。
けれど永井は不思議に納得し、落ち着いた気持ちでこれを受け入れていた。
そりゃあそうだ。と彼は考える。
――――彼女は、月下美人だったんだ。
月下美人は、夜が明けたら、凋むんだ――――――
【終了条件未遂。】
はい。十七がひとつ多かったですね。
それと一に余計な文が入り込んでしまいました。
ただでさえ糞長いアレを余計読みづらくしてしまって本当にごめんなさい。
よし!ラスボス撃破だぜ!
GJ!!本当にこのスレクオリティ高いな
誰か書いてたけど保管庫あるといいのに
そしてこの百合とともえたんも同じ仕様だったりするんだろうか
いくらなんでも一樹のキャラが違いすぎるwww
撃たれても即死なないのが一樹クオリティか
ともえより復活速度が速いです
屍人知子×晴海キボン
郁子はまだ書かないと言ったのに郁子を書いてしまいました。
しかも特にネタフリがされてない既出のネタです。
しかもまだ完成したいません。
でももうタイムアップなので、とりあえず落とさせていただきます。
すいません。今回10レスです。では。
一
木船郁子は地獄にいた。
怪異に見舞われた夜見島。
郁子はその夜見島で、怪異と、呪われた自身の運命に決着をつける為に、
島で出逢った雑誌編集者、一樹守と共に鉄塔を登った。
そして―――その果てに辿り着いたのがこの世界。
荒涼とした岩場の上空に広がる赤い海。全ての元凶である、化け物どもの“母胎”。
――――化け物なんかに……負けない!
郁子は一樹と助け合い、勇敢に戦った。
彼女が持つ特別な能力に拠って母胎の動きを封じ、その隙に一樹が攻撃を加える。
いかに強大な敵であっても、この地道な攻勢を繰り返して行くことで、いずれ必ず活路が拓ける筈。
彼等はそう信じ、懸命に自分の力を出して戦い続けていた――――――
ところが。
「あ………あぁー……」
悲鳴と共に、郁子の手から刀が零れ落ちる。
彼女の眼の前には崖から落下し、首を有り得ない方向に捻じ曲げて横たわる、一樹の姿があった。
「やだ……うそでしょう?ねえ……ちょっと!」
郁子は震える指先を伸ばし、彼の肩を揺さぶった。
だが、一樹は何も答えはしなかった。
その瞳はすでに光を失い、伏した躰の下からは濃い赤色の血液がじわじわ広がって、
地面に大きな血溜まりを作りつつあった。
―――― 死 ん で る ………
郁子は眼の前が真っ暗になるような絶望感を覚え、一樹の屍の前にガックリと膝をついた。
こうなって初めて、郁子は、自分が如何に一樹を頼りにしていたのかを思い知った。
そして自分の中で、彼の存在がどれ程かけがえの無い、大きなものになっていたのかを――――――
しかし今の郁子に、悲しみに浸るゆとりなど無かった。
「きゃあぁっ」
跪いていた郁子の躰は背後からの衝撃で吹っ飛ばされ、前面の岩場に強く打ちつけられた。
痛みをこらえて起き上がる郁子の前に、大きな影が立ち塞がる。
「あ………」
郁子の胴ほどもある、巨大な女の顔が笑っている。
その顔立ちは飽くまでも端整で美しく―――だからこそ、余計に禍々しく不気味である。
巨大な顔の下には、異様に長い首から連なるこれもまた巨大な躰が、ぞろりと伸びている。
それは、上半身は人に近く、下半身は薄桃色の鱗に覆われた魚の様な形をしていた。
――――気持ち悪い……
郁子は、間近で見る母胎の姿のおぞましさに、思わず眼を覆った。
その、邪悪な人魚とでもいうべき醜い姿――――――
《 や っ と 還 っ て き た の ね 》
響き渡る母胎の声が、郁子の全身を電撃のように痺れさせ、竦み上がらせた。
郁子は死を覚悟し、苦しげに瞼を閉ざす。
そんな郁子を見遣りながら、母胎はゆっくりその身を起こし、にじり寄っていく――――――
二
――――ちくしょう!あとちょっと……あとちょっとで、全てを終わらせることが出来たのに!!
郁子は、力及ばず、母胎に敗れ去ろうとしている口惜しさに呻き声を上げる。
その彼女の両肩に、ふいに、重く生臭い何かが圧し掛かってきた。
気味の悪い感触に驚いて郁子が眼を開けると、
彼女の肩には、母胎の、鉤爪のついた大きな手が乗せられていた。
《 お 帰 り な さ い 愛 し い 娘 よ 》
ぬるりとした顔にいびつな笑みを浮かべ、母胎は、まさしく母としての言葉を郁子に投げ掛ける。
でも郁子には判っていた。
母胎の優しげに見える態度の裏に、全く別の真っ黒な感情が渦巻いていることを―――
(怒りと憎しみ……ますます強くなって………)
超常の力で他者の心を読み取る事の出来る郁子は、母胎の激しい悪感情にあてられて眩暈すら覚えた。
母胎が現世侵略の懸け橋とする筈であった鉄塔。
しかしそれは、一樹と郁子がその頂上へと到達するのとほぼ同時に、
原因不明の爆発と共に瓦解してしまった。
母胎はそれを、郁子達が起こしたものと考えているのである。
《 娘 よ 》
もうこれで、どうあがいても、母胎が現世に甦ることは叶わない。
一樹が倒れた今、母胎の怒りの矛先は、郁子ただ一人に向けられていた。
「う………るさいうるさいうるさいうるさい!!」
郁子が、自棄になって喚き立てる。
「娘むすめ言わないでよっ!私には、ちゃんとしたお母さんがいるんだから……
あんたみたいな化け物、お母さんじゃないっ!!」
郁子は妙な苛立ちを覚えていた。
何故この化け物は、自分のことを“娘”などと呼ぶのだろうか?
そしてそう呼ばれることに対し、自分が何処か納得し、
受け入れるような気持ちになっているのは一体――――――
母胎は郁子の肩を掴んだまま、ぬらぬらとした笑い顔を浮かべ続けていた。
それは、郁子の恐怖心や苛立ちを嘲笑うかの様な、いやらしい笑みだ。
母胎は笑いながら、郁子の肩にぎりりと爪を立てた。
「うぅっ……あ……ああぁっ!!」
タンクトップの下の柔らかい皮膚が裂かれ、傷口から鮮血が滴り落ちる。
――――あぁー。私、今から殺されるんだ……
恐ろしかった。しかしもう、半ば諦めはついていた。
(死んじゃったら……もう一度、あいつに逢えるのかなぁ………)
郁子は、母胎の後ろに横たわっている一樹の死体に、そっと視線を送る。
クソ真面目で、ちょっと天然入ってたあいつ。
思えば、彼には随分と酷い事ばかり言ってしまったような気がする。
(こうなっちゃう前に……ちゃんと謝りたかったな………)
郁子は幾許かの切なさを胸に、そっと俯いた。
三
その時、郁子の肩を傷付けていた母胎の手が、フッと力を抜いた。
「……?」
顔を上げると、宙を漂う母胎の腹部が眼の前にあった。
卵を孕んだ魚の様に膨らんだその腹が、微かに震えたかと思うと―――
いきなり、胸の辺りまでバッと開いた。
「ひゃああぁぁぁぁぁっ?!」
郁子は驚きの声を上げる。
母胎の躰の中は、夥しい数の触手状の物で、びっしり埋め尽くされていた。
触手は、それぞれが独立した複雑な動作をしていて、
郁子の眼には、あたかも沢山の蛇が腹の中から飛び出て来た様に映った。
「き、気持ち悪………」
口を押さえる郁子に向かい、ざわざわ蠢いていた触手の一部が、鞭のように飛び掛って来る。
そして彼女の、鳥肌の立った細い腕に、ぐるぐると巻き付いた。
脚にも。
抵抗する間も無かった。
気付いたときにはもう、絡め取られた四肢が凄い力で引き上げられ、
郁子の躰は、母胎の顔のある辺りまで、高々と吊り上げられていた。
「あっ……ああーっ」
両手足を]字にピンと引っ張られ、母胎の顔と真正面から向き合わされる。
母胎の濁った眼が郁子を見据え―――
裂ける様に笑う口元から這い出た舌が、郁子の首筋から頬にかけて、ベロリと舐め上げた。
「いぃっ?!ひいぃぃぃっ!」
長く尖った舌のナメクジの様な感触に、郁子は思わず引き攣れた悲鳴を漏らす。
その反り上がった白い咽喉に、母胎は更に舌を這わせ、ぬらぬらとしつこく舐め廻した。
「ううぅ……うぁああぁぁぁ………」
咽喉から耳元、耳孔にまで舌を差し入れられて、郁子はブルっと身を震わせる。
更に。
母胎の腹から溢れ出た触手の群れが、郁子の足元からゆっくりと、
探る様な動きで華奢な肢体に這い登りつつあった。
気付いた郁子が「ヒッ」と小さく息を吸う。
触手は、女の指にも似た繊細な動作で器用に郁子の下肢をまさぐり、
腰に張り付いているジーンズのベルトを外して、ファスナーまでも下ろしてしまう。
「わっ?!や、駄目ぇっ!!」
広げられたジーンズのファスナーの中からは、なだらかな下腹部と、
汗に濡れた薄いショーツが見え隠れしている。
そのショーツを狙う様に、無数の触手が束になって寄り集まり、
郁子のジーンズの中に這入りこんで来る。
ずるり。
湿り気を帯びた生温かい触手が、柔肌に触れた。
その、しなやかな肉質と微かに脈動する感触には、何処か覚えがあるような気がした。
何の感触であったか―――彼女は一瞬考える。
――――こ、これって、まさか……
しかし、郁子のその思考が形になることは無かった。
蠢く触手群がジーンズの中に、そして、ショーツの中にまで潜り込んで、這い廻り始めたのである。
郁子は甲高い悲鳴を上げた。
ぴったりとしたジーンズの内部が、みちみちと触手に埋め尽くされてゆく。
無尽蔵に這入りこんで来る触手の質量に耐え切れず、
ジーンズは、縫い目から破けて床に落下してゆく。
ショーツも同様である。
「ああっ!駄目っ!だめえぇぇーっ!!」
下半身を剥き出しにされた郁子の、羞恥と屈辱にまみれた悲痛な叫びが、赤い海面に響き渡った。
四
腰から下を覆うものを全て取り払われた郁子の両脚は、
ひときわ太い触手によって、真横に、真一文字に広げられた。
そうすることにより、当然、脚と脚の中心部にある赤みがかった性器も全開にされる。
郁子は「くっ」と、苦しげに声を殺した。
《 面 白 い 形 を し て い る 》
郁子の性器を眼の高さに掲げ、母胎が笑い混じりの声で言った。
「な、何よ馬鹿っ……うあぁ………」
気丈に振舞おうとする郁子であったが、
二本の触手に開ききった大陰唇の上をずるりとなぞり上げられると、切ない声と共に脱力してしまう。
母胎が薄く微笑んだ。
そして、郁子の躰に更に多くの触手を巻き付かせ、本格的に嬲り廻し始めた。
「やだぁぁ……やめてぇぇぇぇ……いやぁぁ」
郁子は縛められながらも、腰をひねって苦しそうに身をよじる。
触手達はそれぞれが独立した動きを取り、
明らかな目的を持って郁子の肢体に刺激を与えているようだ。
あるものは性器の周りをじんわり撫で上げ、またあるものはスニーカーを取り去って、
足の裏や指の股をくすぐり、扱き上げる。
ふくらはぎから膝の裏、内腿を辿って尻の谷間へとねっとりと摩り上げられる。
おぞましさと綯い交ぜになった悦虐に、郁子の呼吸は次第に荒く、切なくなってゆく――――――
「ああ、あっあ、やだ……気持ち悪いよお」
魔の触手は郁子の下半身ばかりでなく、
黄色いタンクトップの下で息づいている丸い乳房にまで、攻撃の矛先を向けつつあった。
服の中、潜り込んだ大量の細い触手が、ぞわぞわと乳房全体をくすぐりながら、
小粒な乳頭にくるりと巻きついて、柔らかく締め上げているのだ。
郁子の躰が、ビクンと震えた。
《 此 処 に 印 が あ る 》
母胎の嬉しそうな声。
郁子の眼が、キッ、とつり上がった。
「何言ってんの?そんなもの……私、人間なんだから!ってか、私を殺すんじゃないの?
だったらいつまでもこんな馬鹿げた事してないで、さっさと殺せばいいじゃん!!」
母胎の触手の動きが止まった。
息を飲む郁子に、母胎は一瞬、凍りつく様な視線を送る。
でもそれは、本当に一瞬のことであった。
《 殺 さ な い 》
歪んだ笑顔と共に、母胎は優しげな声音で言った。
《 お 前 は 殺 さ な い お 前 は 私 と 一 緒 に な る の だ よ 》
一緒に?と、問い掛ける間も無く、
郁子は、全身に絡みついている触手の群れに、異変が生じているのを感じた。
しなやかだった先端が硬く強張り、大きく膨れ上がっている様なのだ。
(な、何?!何なの?!!)
郁子の顎の下で首筋を舐っていた触手に眼を遣ると、
硬くなった先端に、微かな亀裂が入っているのが見えた。
その亀裂が僅かに開いた――――と思った瞬間。
郁子の顔に、大量の白濁液が飛び掛って来た。
五
「ぶっ?!いっ………やぁっ!」
顔面に放出された液体はどろりと生臭く、べっとり纏わり付いて郁子の視界を霞ませた。
顔だけではない。
郁子の躰中に巻き付いている夥しい数の触手群の全てから、次々と同様の液体が射出されていった。
腕に。脚に。下腹部に。乳房に。
白く濁った液体を一身に受けて、郁子の躰は見る見るうちに白く汚されてゆく。
(あああ嫌だ……)
触手の放つ薄気味悪い液体に包まれて、郁子は激しい不快感に苛まれる。
だがそれは、郁子の、これから始まる受難の幕開けに過ぎなかった。
「う……あ、あぁ?」
全身を白濁させた郁子の様子が、おかしい。
手足を縛められながらも、落ち着き無く、もじもじと躰を蠢かせている。
粘度の高い液体の中の皮膚が、無性にむず痒くなって来たのだ。
それを待っていたかの様に、躰を縛り上げる触手達が活動を再開した。
「うう……うぅううう………」
触手の刺激は、痒みを癒してくれる様でもあり、更に液体をまぶしてしまっている様でもある。
母胎が、どういうつもりでこんな風にしているのかは判らないが、
郁子にはそれを訝しがる余裕はもう無い―――痒みが、耐え難いほど酷いのだ。
(ああぁ……もっと……もっとぉ)
いつしか郁子は這い廻る触手を受け入れ、その動きに呼応するかの様に腰をよじり始めていた。
触手にずるずる擦って貰う事で、痒みを緩和することが出来るからだ。
そして、そのほっとする感覚が、郁子の中で快感へと変わるのに、そう時間は掛からなかった。
「あぁぁ……うあ、だめぇ……んん」
郁子の躰にこびり付いた液体は、擦られる毎に少しずつ透明になってゆき、
その下からは、上気して桜色に色づいた肌が現れる。
《 何 故 赤 く な っ て い る ? 》
触手を盛り上がった尻の割れ目に滑らせながら、面白そうに母胎が問い掛ける。
「うう……し、知らないよぉ………う、うぁあっ」
突然、綿棒くらいの細さに窄まった触手の先が、
郁子の尻肉の奥に鎮座する皺の寄せ集まった小さな肛門に、ずぶりと挿し入れられた。
触手も肛門も、充分ぬめりを帯びていたので痛みは無かった―――だが。
「あっはあああぁぁっ……いや、いやこれ……あああああああああああんんっ!!」
触手はずるずると、ただひたすらにずるずると郁子の直腸内を進み、
通常ならば触れる事など叶わない内臓の奥にまで、這入り込もうとしていた。
あまりにも不自然な感覚―――なのに、郁子の過敏になった肉体は、
それすらも快感として受け取っていた。
「いぃぃ、いぁ……ああぁぁぁぁ……あぁぁ」
郁子は、半開きになった口の端からだらだらと涎を垂れ流し、
白目を剥いて触手の侵食を味わっている。
大きく広げられた股の間では、ぱっくり割れた瑞々しい陰門がピクリピクリと痙攣し、
ぽつんと開いた膣口から、上の口と同じように透明な体液を溢れ出させていた。
郁子の性器は、これまで全く触れられていないにも関わらず、
ひとりでに快感の頂点へと達してしまっていた――――――
六
「はぁぁ……あぁぅ………うああぁぁぁ、あっああっああああああああーっ……」
あれから―――どの位の時間が過ぎ去ったのであろうか。
郁子は母胎に躰を吊り上げられたまま、際限ない絶頂を繰り返していた。
肛門に侵入した触手は、中で、その先端を更に細く分裂させ、
細く枝分かれしたそれぞれが、別々に直腸や腸壁をくすぐっていた。
体内を触手で嬲られる度に、郁子の尻肉はひくひく、ぶるぶると痙攣し、
前方にある陰門も、それに合わせて快感の発作を迎え、いやらしく収縮してしまう。
そして、達したばかりの性器の両脇を、触手にずるりと擦り上げられると、
治まりかけた快感がぶり返し、郁子は、喘ぎ声と共に、勝手に腰を蠢かせてしまうのだ。
「ああ、ああ、あ………」
上空の赤い海を仰ぎ見ながら、郁子自身は悦楽の海を漂っていた。
しかし、彼女の感じている性悦は完全ではない。
何故なら触手達は、郁子の躰のいたる処を這いずり廻り、
舐める様に彼女の官能を責め立てながらも、たった一箇所―――
女の快楽の源泉である肉の裂け目、紅く熟しきった陰門にだけは、一切触れようとはしないのである。
《 ふ ふ あ は は あ は は は は は は は は は 》
先ほどから母胎は、何処か淫猥な笑い声と共に、躰の下から白い化け物を産み出し続けている。
だが今の郁子に取って、それはもう、どうでもいいことだった。
「う……うぅ………あ」
火照った躰を、汗と母胎の粘液、そして自分の出した淫液でべとべとに汚し、
郁子は潤んだ眼を触手に向ける。
《 ど う し た の 》
母胎がねっとりとした声音で問い掛ける。
その声に郁子は、幾分かの正気を取り戻し、触手からパッと目線を逸らした。
それでも、丸出しにされた陰部の方は正直で、触手が近付いて来る度に、
何かを期待する様に穴をパクつかせ、夥しい量の淫汁を溢れ出させてしまうのだ。
――――ああ、もう………
これで何度目かも判らない、曖昧な絶頂に打ち震えながら郁子は、
膣穴の奥のどうしようもない疼きに脳髄が痺れ、理性をかなぐり捨て、
母胎に、膣への刺激を懇願したい衝動に駆られた。
――――どうせ……どうせもう殺されちゃうんだから……いっその事……
激し過ぎる快楽に責め立てられて、郁子の心身はすでに陥落寸前である。
しかし、郁子が屈服の言葉を口にしようとしたその時、突如として触手の動きが止まった。
――――へ?
涙の滲んだ眼を見開いて、郁子は自分を絡め取っている触手を見下ろす。
と。急に手足に巻き付いていた触手の力が抜け、するするほどけて郁子の躰を開放した。
「え?あ、ああああぁーーーーっ!!」
支えを失った郁子の躰は、真下の地面に落下する―――
が、硬い岩場に叩き付けられる衝撃を覚悟した郁子を迎え入れたのは、
冷たく柔らかい、奇妙な感触であった。
「?!」
全身が、ぶよぶよとした何かに包み込まれ、揉みくちゃにされている。
何だろう?
郁子は息苦しさにもがく。
とにかく自分を取り込んでいる奇妙なものから顔を出し、そして―――慄然とした。
七
赤い海に照らし出された赤い世界にあって、郁子の周囲だけが生白く浮き上がっている。
上空から落下した彼女を受け止めたのは、ぬるりと白い、手足の無い化け物の大群であった。
化け物達は一箇所にひしめき合い、一様に郁子を狙って集まっているのだ。
郁子は絶叫した。
母胎から産まれ落ちた、闇の世界の住人達。
あるモノは脇腹に噛み付いて、未だ上半身に張り付いていた黄色いタンクトップを引き千切り、
またあるモノは、その白く忌まわしい躰を押し付けて、郁子の肢体を押しこくる。
「あぁあ……」
おぞましいまでの嫌悪感、そしてその奥底に潜んでいる、疼く様な快感に、
郁子の精神は錯乱し、崩壊寸前まで追い詰められる――――――
母胎が、上空から眺めて笑っていた。
《 お 前 の 兄 弟 達 だ よ 》
半裸で気を失いかけている郁子の躰に、母胎の声が降り注ぐ。
《 仲 良 く し て お や り そ し た ら 今 度 は お 母 さ ん が 》
と、言い掛けた処で、母胎は郁子の後方に眼を遣り、ゾッとする笑みを浮かべた。
同時に、白い化け物の群れに取り込まれつつあった郁子の腕が、強い力で引き上げられた。
「ああっ?!」
腕を引いた人影は、そのまま郁子を地面に転がし、ただ黙って見下ろしている。
郁子はうつ伏せに転がったまま、首だけを曲げてその人影を見た。
彼は、赤い服を着ていた。
赤い服の上に見える、白塗りにした様な不自然な顔。
その顔が、ガクンと真横に傾く―――おそらく、首が折れている所為だろう。
『ちょっとガタが来過ぎだよ、この殻』
そう言って彼は、ニヤリと笑う。
郁子は、恐怖と絶望に眼を見開き、唇から、声にならない悲鳴を漏らした。
郁子を救い上げたのは、かつて一樹守であったモノ―――
正確には、一樹の死体に白い化け物が乗り移り、半ば融合して生まれた新たな怪物だ。
『どうしたの?そんな格好して』
そいつは一樹そっくりの口調で、一樹そっくりの微笑みと共に郁子に語り掛ける。
しかし、その不気味なまでに真っ白い顔色や濁った眼、
そして、何処か邪悪さを感じさせる異様な雰囲気は、本来の一樹には絶対に無いものであった。
「いや………嫌ぁっ!」
郁子は肘を突き、地面を這って彼の傍から離れようとする。
だが一樹はそれを許さず、足首を掴んで彼女の躰を引き戻した。
『そんな、逃げることないじゃん。はあ……まだ信用して貰えてないのかな、俺』
気落ちした様な一樹の声。溜息を吐きながら―――それでも、郁子の足首を掴む力は緩めない。
郁子は彼の腕から逃れんとして、必死に脚をバタつかせる。
一樹はそんな郁子の姿を、背後からまじまじと眺めていた。
郁子の膝が動く度、量感のある二つの尻の山がもくりもくりと揺れ動き、
その扇情的な様子は例えようも無いものである。
《 吾 が 子 よ 》
不意に、頭上から母胎の声が響いた。
一樹がそちらを仰ぎ見る。親愛の情を込めたその顔――――
やはり彼はもう、一樹守では無い。
闇の眷属に成り下がった、一介の化け物に過ぎなかった。
八
ゆっくりと降下して来る母胎を迎え入れる様に、白い化け物共が後ろへ下がってゆく。
母胎は一樹の近くまで降りて来ると、慈愛、と言ってもいい様な、優しげな表情を見せる。
そして一樹が捕らえている郁子を指さして、言った。
《 そ の 娘 の 望 ん で い る も の を 与 え て お や り 》
『望んでいるもの?』
一樹は傾く頭を戻しつつ復唱し、郁子に眼を向けた。
背を向けた郁子の躰は、未だ触手の出した粘液に湿っており、全体的にぬらぬらと濡れ光っている。
一樹はその、輝く背筋に手を触れた。
「いやぁっ!」
郁子は胸を押さえて振り向くと、空いた手で一樹の手を引っ叩いた。
『痛ぇ……』
一樹は手の甲を摩りながら一人ごちる。
その口調も仕草も、生前の一樹そのままだ。郁子は泣きたい気持ちになった。
だが一樹の方はそんな感傷とは無縁のようで、
起き上がりかけた郁子の頭を地べたに押さえ付けると、乱暴な動作で背中に馬乗りになった。
「ぐっ……ちょっ!な、何すんの?!早く降りてよ重いでしょっ!!」
郁子は思わず、いつもの調子で一樹に文句をつける。
すると一樹は、悲しそうな顔で郁子から眼を逸らした。
『何だよ……君の力になりたいと思ってやってることなのに』
「バッカじゃないの?!意味判んないし!大体あんたは……もう………」
『もう………何?』
一樹の血糊がこびり付いた眼とぶつかり、郁子の表情が強張る。
『そんな……化け物見るような眼で見ないでくれよ』
少し自嘲気味な一樹の声。
しかし次の瞬間。
一樹は背後から郁子の髪の毛を掴んで引っ張り―――無理やりに、郁子の頭を持ち上げた。
『なあ、君の欲しがってるものって、何?』
一樹は郁子の顔を覗き込み、黒っぽく変色した唇で問い掛ける。
郁子は横目で彼を睨み付けたが、それを意に介さず、一樹は、彼女の尻に手を伸ばした。
「はっ……ぁあぁっ!!」
一樹に後ろ手で尻肉を抓り上げられて、郁子は裏返った叫び声を上げる。
尻を掴んだ一樹の指先は、その割れ目の中に這入り込んで、淫液にぬらついた肛門に触れていた。
『何かすっごい……濡れてない?』
「触るなバカ………」
郁子は堅く眼を閉ざす。一樹にそんな場所を触れられることに、耐え難い羞恥の念を感じた。
それは、母胎に触手を挿入された時以上の恥ずかしさだ。
一樹は、暫しそうして郁子の髪を掴んだまま、蠢く肛門の皺を指で嬲っていたが、
その指を徐々に前の方に移動させていった。
「あっ、あぁっ……や、やだぁっ!!」
会陰の辺りを軽く押された途端、郁子の尻がビクン!と震える。
そして膣口が蠢き出す―――まるで、一樹の指を飲み込もうとする様に――――――
『濡れてるだけじゃない。此処、こんな風にヒクヒクさせて……ちょっとショックだな。
まさか君が、こんな淫乱女だったなんて』
「なっ!ち、違………うああっ!!」
一樹の指が、ぬめる会陰部から滑り落ちるように膣口に這入り込んだ。
ずっとずっと焦らされ続けていた郁子の秘所が、悦びにわなないてそれを飲み込む。
頭の芯を閃光が走った。
「あ……はぁあぁぁああぁあああああぁぁぁぁああぁあぁあぁ」
郁子は全身をガクガク揺らし、一樹の指に与えられた絶頂の快感に嬌声を上げた。
九
「あぁ……あはぁ……はぁ………」
なかなか収まらなかった性器の痙攣がようやく一段落し、郁子はガックリと全身を弛緩させる。
一樹が彼女の髪の毛を離すと、そのまま地面に倒れ込んだ。
一樹は、膣に這入った指を引き抜いて、指の股にまで纏わり付いた水飴状の淫液を見詰める。
『凄いな』
彼は郁子の背中から降りると後ろに廻り、締まった足首を掴んで思い切り脚を広げさせた。
抵抗する力を失っている郁子の股はすんなりと開き、
肛門と、未だ絶頂の余韻に蠢き続ける陰門とを、一樹の眼の前に曝け出した。
淫液でテラテラ光るその部分からは、甘酸っぱいような女の匂いが漂っている。
高く盛り上がった白い臀部のなまめかしさとも相まって、それは、一樹の男の部分を激しく挑発した。
『イッた?』
「………………」
一樹の問いかけに、郁子は反応せず黙り込んだ。
『こんなすぐイッちゃう女の子って、初めて見たよ……敏感、って言うか何て言うか』
「………………………」
『何とか言ったら?せっかく人が気持ちよくしてあげたのに』
「うるさいバカッ!!」
振り返った郁子は泣いていた。
悔しいのでは無い。悲しかった。
こんな時に、こんな形で、こんな状態の一樹に触れられたことが。
せめて、これがもっとまともな、普通の世界でなされたことであったなら――――――
郁子の泣き顔を見た一樹は、少しばかり困惑した表情を浮かべる。
でもそれは、すぐに消えた。
『ああもしかして……今のじゃ物足りなかったのかな?仕方ないか。指挿れただけだし。
でも、ちゃんと満足させるとなると……』
一樹は顎に手を添えて考え込むそぶりを見せる。初めて出会った時と、同じように。
郁子は嗚咽を漏らした。そんな一樹を見ていることが、彼女には居たたまれなかったのだ。
「……殺してよ」
震える声で、郁子は言った。
「どうせ、最後には殺すんでしょう?だったらこれ以上……恥ずかしい思い、させないで……」
『ええっ?何だって?!』一樹は驚愕の声を上げた。
『どうして?そんなこと……勝手に出来る訳無いじゃないか!命令に背くことになっちゃうし』
その言葉を聞いた途端、郁子の平手は一樹の頬を打っていた。
共に戦った仲間。その彼から、こんな言葉だけは聞きたくなかった――――――
一樹は、そんな郁子の思いを余所に、ぶたれた勢いでぐるんと廻った首を直して、郁子の躰に躙り寄る。
『今のはちょっと……効いたかな。首、完全に外れちまったらしい』
喋る度にガクガク動く頭を押さえ、一樹は、じっと郁子を見据えた。
そして、蒼ざめる郁子の背にゆっくりと覆い被さってゆく。
「やだ……やめてよ」
一樹の下から這い出そうとする郁子であったが、その腰をしっかり押さえ付けられてしまう。
一樹はそのまま郁子の尻を抱え上げ、血に染まったジーンズを穿いた股間を、
尻たぶの間にぐりぐりと押し付けた。
「いやっ!やめ……やめて!駄目!駄目えぇっ!!」
郁子が大声で叫ぶと、一樹の動きが止まった。
『やだな、それ』と、独り言のように呟きを漏らす。
『嫌がる女の子に無理強いするのって、趣味じゃないんだ。どうしようか………そうだ。こうしよう』
一樹は郁子の躰を仰向けにひっくり返した。
乳房を隠そうとする彼女の腕を脇に押さえ付け、露わになった小さな乳首に、冷たい唇を押し付ける。
郁子の肩が微かに跳ねた。
その反応に、一樹は嬉しそうに眼を細める。そして、言った。
『じゃあこれから、君が素直になれるように色々やってあげるから。
君が本当に望んでいる事を、俺に言ってくれるまで……』
十
一樹は、郁子の乳首に強く吸い付いた。
チュウッと音を立てて吸いながら、もう一方の乳首を指で摘まんで、クリクリと揉み込み、押し潰す。
じわりと沁み込む快感に、郁子はつい、甘い吐息を漏らしてしまった。
暫くの間そうして乳首を責められている内に、郁子は性器がむずむずして来て、
だんだんと腰がくねり、尻が動き出すのを押さえきれなくなってしまう。
「うっ……あ、あっ、あ………」
漏れ出る吐息に、時おり甲高い声が混じるようになった頃、
一樹は、乳首を弄る指先をするすると下ろし―――
慎ましやかな草むらの奥の、熱くたぎった部分をそっと刺激し始めた。
「うぁ……だ、めぇっ………!」
コチコチに硬くなっていた陰核を冷たい指先でそろりとなぞられると、
郁子はそれだけで背筋にぞわりと快感が駆け抜け、自然に脚を広げて応じてしまう。
『やっぱ、ここが一番いいみたいだね』
一樹は、濡れそぼった陰核の裏つらを優しく撫で摩る。郁子は、喘ぎと共に大きく身を反らせた。
眉根を寄せた恍惚の表情を隠すように顔を横に向け、今にも絶頂の呻きを上げそうになる――――――
と、そこで、一樹は指を離した。
郁子は瞼を開き、彼の指先に涙の滲んだ眼を向ける。
『どうかな?どうして欲しいか、ちゃんと言えるようになったかな?』
淫液をまぶした指先を示し、柔らかな口調で一樹は訊ねる。
郁子は唇を引き結び、黙って眼を背けた。
『まだ駄目か……』
落胆したように一樹は肩を落とす。そして躰をずらし、郁子の股座を覗き込んだ。
『ねえ、此処凄いよ……真っ赤に充血して汁まみれになってる。
それに、穴も開ききってピクピク動いてるよ』
「いや………」
一樹に性器の状態を指摘されると、郁子は羞恥に耳まで赤くして顔を横向けた。
そんな郁子の表情を上目遣いに見ながら、一樹は開ききった小陰唇の奥の桃色の粘膜に、
ふっと息を吹き掛ける。
「あっ、ああぁんっ」
その刺激で郁子の膣口が僅かに蠢き、そこから、じいんと痺れ渡る恍惚感が広がって、郁子は思わず、
大きく脚を開いて、その部分を、一樹の眼の前にグッと突き出す様に腰を掲げてしまった。
『何やってんの?』半笑いで一樹が言う。
『こんなトコ、こんなに突き出しちゃって……どうにかして欲しい訳?』
「あ……くうぅ………」
『はっきり言いなよ。その方が、きっと楽になれると思うんだ』
言いながら、一樹はがに股に突き出された郁子の性器の周囲を、
指先でつうっ、つうっ、と、焦らす様に辿る。
郁子の顔が、苦しげに歪んだ。
「………………して」
郁子の唇が、微かに動いた。
『何?』と一樹が聞き返す。『今、何て言ったの?』
紅くのぼせ上がった顔の、滴る様に潤んだ瞳の奥から、哀願と、蕩けそうな媚態を示した郁子からは、
もう羞恥心も、拘りも、人間らしい何もかもが消え失せてしまったように見えた。
「……して。お願い………」
発情した雌の獣が、掠れた声で呟く。
『何をして欲しいの?何でも言ってよ。俺に出来ることだったら……』
追い討ちをかける、一樹の優しげな声。
「お願い、して。私もう………」
『何をすればいいんだ?』
「………セックス」
小さいが確かな声音で、郁子は言った。
「セックス……して!私の此処に、あなたの……おちんちんで………してええぇっ!!」
今回此処までです。
続きは多分、一週間後になります。
申し訳ありませんが、今しばらくお待ちください……
郁子「また闇人とやるんスかwwwww」
なんなんだよ・・・・・保守してくれよ・・・
俺が……俺が(続きを)やらなければ!
という訳で書きました。でも書いてよかったのかどうか……
注意事項:ふたなり・鬱展開
ではよろしく。
十一
『本当にはっきり言ったね』
一樹は、少々呆れ気味に言い放った。
そして膝立ちになり、血で汚れたジーンズのベルトを外して、引き下ろした。
蒼白な下半身は、固まった血で所々どす黒く醜く変色しており―――
その中心部には、一際どす黒い、禍々しい塔の様な陰茎が、上向きになって屹立していた。
『しおらしくなって……これがツンデレの“デレ”状態ってやつか』
一樹は、元々はチェック柄だった赤いシャツと、
その下の、やはり元は白地であった赤いTシャツを脱ぎながら、愉快そうに笑う。
郁子は、彼の裸体をぼんやりと見上げていた。
蒼白な膚は、耳孔から胸元、下腹にかけて黒く変色した血にまみれ、
その色合いは変死体そのものである。
それでも郁子は、その変死体の股間でそそり立っている邪悪な陰茎を欲した。
気持ち悪い。恥ずかしい。悔しい。
そんな感情も、焦らされ続けた肉の疼きの前では、全く無効化されていた。
「は、はやく……お願いぃ……」
郁子は開ききって淫汁を垂れ流し続ける膣口を、自らの指で押し広げて一樹に乞うた。
『じゃあ四つん這いになってよ』
一樹は立ったまま、郁子を見下ろして命じる。
郁子は一樹の陰茎に眼を遣りながら、おずおずと後ろ向きになった。
そして、胸を地べたに着けたまま、尻を持ち上げて彼の前に示した。
『そうそう……君はこの格好が一番いい。鉄塔を登っている時からずっとそう思ってたんだ。
このでかいケツを、バックから突き上げたら気分いいだろうなぁって』
一樹は身を屈めると、郁子の大きく後ろに突き出た尻たぶを両手に掴み、
その割れ目から背筋の窪みまでをツッ、と舐め上げた。
郁子はくぐもった声を漏らして顔を伏せる。
『ねえ、君ってアナルでしたことある?ちょっと試してみたいとか思わない?』
不意に、一樹がそんな問い掛けをして来た。
郁子は両腕で隠した顔を、左右に振って否定する。
『そっか。まあ、そうだよな……あ、ところで君って処女?だったら少しは優しくするけど』
「いいから早くしてよぉっ!」
いい加減焦れた郁子が怒鳴った。
一樹は肩を竦め『判ったよ』と尻を抱え込む。
そうして、硬く尖った得物を郁子の蕩けきった箇所に宛がい―――
『……でもあれだな。この体勢、膝が痛くなりそうだな』
郁子は、一樹の方を振り向いた。
――――こいつ、ワザと焦らして遊んでる………
彼の締まりの無い笑い顔を見上げ、郁子は言いようの無い苛立ちに胸をむかつかせた。
苛立ちは怒りに変わり、へし折られ、屈服させられた彼女の闘争本能を再び奮い立たせる。
――――このままヤラれっぱなしだなんて、耐えられない!
郁子はギュッと眼を閉じた。
眉間に皺を寄せ、意識を集中しているようだ。一樹が訝しげにその顔を見る。
『何だ?いったい何を………』
一樹は疑問の言葉を言い掛けたが―――急に押し黙り、立ち上がって歩き出した。
歩き、自分が絶命した崖の下まで来ると、落とした拳銃を拾い上げる。
そしてその銃口を、宙に浮いて様子を見ていた母胎へと向け、引き金を引いた。
十二
一樹は弾倉が空になるまで拳銃を撃ち続けた後、ハッと我に帰って手の中の銃身を見詰めた。
と、同時に郁子は眼を開き、まるで全力疾走をした後のように肩で息をする。
一樹は、物凄い眼をして郁子を振り返った。
『……お前がやったのか?』
振り向いた途端、折れた首がガクンと傾いたが、まるで気に留めることなく郁子を問い詰める。
郁子は、地べたを這って一樹から離れようとしている処であった。
『この……!』
一樹は難なく彼女に追いつき、その躰を捕らえた。
再度郁子の背に馬乗りになると、脱いだジーンズの中から予備の弾を出してリロードし、
銃口を、彼女のこめかみに突き付けた。
《 お や め 》
九発もの銃弾を受けながら、大して応えてもいない様子の母胎が舞い降りて来て、一樹を制した。
郁子は、相変わらずの冷たい、能面のような母胎の笑顔を睨み上げる。
郁子の怒りは一樹にではなく、一樹を利用して自分を玩ぶ母胎に対して向けられていたのだ。
これでもう、自分は確実に殺されるのだろう。
だが母胎に最期の一撃を加え、ほんの僅かではあるが溜飲を下げることが出来た。
――――負けちゃったけど……精一杯やったんだ……
打ちのめされ、疲れ果てながらも郁子は、不思議と清々しい気持ちに満たされていた。
母胎はそんな郁子の姿を見て、徐々に顔を歪めていった。
笑い顔が消え、醜い憎しみの表情が露わになってゆく。
《 気 に 入 ら ぬ 》
濁った瞳に異様な光を湛え、怒気を孕んだ声音で母胎は言った。
《 お 前 は 苦 し む 事 を 諦 め て し ま っ た 》
母胎の腹から、一本の触手が伸びて来る。
《 そ れ で は 駄 目 だ お 前 は も っ と 苦 し ま ね ば な ら ぬ 》
触手は郁子の唇に押し当てられた。
どうやら、口の中に這入り込もうとしているらしい。
郁子は口を閉ざして抗ったが、一樹に鼻を抓まれてしまい結局、侵入を許してしまった。
触手を咽喉の奥までずるりと差し込まれ、郁子はむせ返り、嘔吐しそうになる。
《 そ う だ 苦 し め も っ と 苦 し め 苦 し め 苦 し め
苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め
苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 苦 し め 》
母胎の声が凄みを増していく毎に、咽喉の奥底まで届いた触手が蠢動し、膨れ上がるのを感じた。
咽喉が張り裂けそうなほどの大きさになり、苦しさも限界へと差し掛かった頃―――
それはぶるんと身を震わせ、大量の粘液を放出した。
郁子は大きく咳き込んでそれを吐き出す。しかし大部分は飲み下してしまったようだった。
気持ちの悪さと共に、胸の焼けつくような感覚が郁子を苛む。
郁子は苦しげに呼吸を荒げ、蒼ざめた顔で地面に突っ伏した。
しかし、これで終わりでは無かった。母胎が郁子に与えんとする苦痛は、ここから始まるのだ―――
十三
「うっ?………あ、あぁー……」
郁子は、己の躰の内部から沸き起こる例えようの無い違和感に眉をひそめた。
――――躰が、熱い。
全身が、どん、どん、と脈打ち、まるで酒に酔った時のように熱く火照り始める。
脈動は次第に躰の中の一部分―――下腹部から、陰核の辺りを中心に、激しく、強くなっていき、
それが耐え難い疼きを生じて郁子は思わず、股間を押さえて身悶えをした。
「ああっ!あっ、あぁ……あっ!……うあぁぁ………」
郁子は背中から一樹を振り落とし、両手で股座を押さえながらバタバタと身をくねらせた。
――――熱い、熱い、熱い!
火傷しそうな程の熱と共に、尿道から陰核にかけて、何かが迸り出そうな感覚に襲われる。
郁子は「くぅぅ」と呻きながら震え、そこを手で押さえつけた。
だがそれは、押さえようも無く郁子の体内から突き上げて来る。
もう駄目だ。限界だ。そう思った時――――――
「うっ……あぁぁあ!あああぁああああぁぁぁあああぁぁあっ!!」
郁子は股間を押さえたままビクンと痙攣し、腰を仰け反らせた。
その途端。
極限まで勃起し陰裂からはみ出して反り返っていた陰核の根元が、もっこりと盛り上がり―――
それがずるりと伸びて、肉の槍のかたちを模った。
郁子は、絶叫した。
股間から陰核の先端までが、今までの人生で感じたことの無い、鋭く射抜くような快感に貫かれ、
同時に、腰の奥深い部分から、何か熱い塊が、勢いよく射出されるのを感じた。
郁子の脳髄を、眩い閃光が駆け抜ける。
「あぁぁ……はぁ、あぁ……ぁ………」
快楽の余韻に霞む眼を開くと、陰核の先から、先ほど触手が出したものによく似た白い液体が、
どろどろと止め処無く溢れ出しているのが眼に入った。
いや。
それはもう、陰核などでは無い。
赤銅色にそそり勃ち、幹に血管を這わせてビクンビクンと蠢いて鎌首もたげるその姿。
大きく膨れ上がった鈴口には縦長の亀裂が入り、未だ白い粘液の残滓を滴らせ続けている。
「あああ……嫌………いやあぁぁ……」
郁子は、自分の臍にまで届いてぶつかっているその忌まわしい―――大陰茎を見詰め、
戦慄の声を漏らした。
『凄いなぁ……俺のより、全然でかい……』
一樹が驚き、呆気に取られた面持ちで呟いている。
しかし郁子はそれどころでは無かった。
彼女は躰を起こし、白濁液にまみれ、未だ勃ち上がったままの巨根を、両手の平で握り締めた。
そして、低く息を吐きながら上下に手を動かし、硬直しきった幹を擦り上げる。
一樹と、その後方で爬虫類めいた瞳を向けてくる母胎とが見守る中、
郁子の手の動きは見る見る速度を増して行き、
程なくして、甲高い嬌声と共に、紅い亀頭から白い恥液をびゅっ、びゅっ、と、飛び散らせた。
十四
「あはぁ……は、はぁ……はぁあ……」
白い体液を射精した郁子の陰茎は僅かに項垂れ、郁子も満足した様子で溜息をついている―――
だがそれは、本当に僅かな休息に過ぎなかった。
欲望のたぎりを出し切り、静かに横たわりかけていた郁子の陰茎は、
郁子の呼吸に合わせ、再び、空気を吹き込まれたかの如く形を成し、
恐ろしげな威容を取り戻してゆく。
郁子はまたそれを握り締め、「うぅー」と子供のような泣き声を上げて摩擦を始めた。
『まるでオナニーを教え込まれた猿だな』
侮蔑交じりの一樹の言葉に耳を赤らめつつも、郁子の手が止まることは無かった。
郁子の感覚は、母胎の恐るべき力によって生やされた陰茎に、全てが支配されていた。
自らの手でそれを扱き上げる度、郁子は心の内で嫌悪の情に苛まれるが、
どうにもならない陰茎の疼きに突き動かされ、どうしても手淫の手を止める事が出来ずにいた。
そして―――
手指のもたらす刺激により陰茎の快感は高まり、彼女の亀頭の割れ目は、三度目の射精の時を迎えた。
「あー……出るぅぅ……」
擦り上げる肉の棹がぶるんと跳ね躍り、その尖端から粘った白濁が弾け飛ぶ。
――――こ、今度こそ……終わり………
ぜいぜいと肩で息をしながら郁子は眩んだ眼を閉ざし、その場に蹲って残りの淫液を搾り出し、
宥めるように亀頭を摩る。
ところが彼女の陰茎は、また勃起をしていた。
「あぁー……いやぁ……なんで!なんでよおぉぉ!!」
腰の奥のもやもやした感じがぶり返し、郁子は癇癪を起こした様に喚き出した。
《 無 駄 だ 何 回 出 し た 処 で 其 れ が 治 ま る 事 は 無 い 》
母胎が、勝ち誇った声で宣告する。
《 お 前 は 此 処 で 永 久 に 苦 し み 続 け る の だ よ
こ の 私 が 冥 府 に 閉 ざ さ れ 苦 し み 続 け た 様 に 》
奇怪なサイレンにも似た音が辺りに響き渡る。
それは母胎の咆哮―――否。高らかな、哄笑であった。
耳をつんざくサイレンに取り囲まれて、郁子も絶望の声を上げる。
でも彼女の声は、サイレンにかき消されて無きに等しい。
郁子にはもう、何の手立ても残されてはいなかった。
母胎を倒す事も、此処から逃げ出す事も叶わない。
ただひたすらに陰茎を擦り続け、射精を繰り返す以外に、出来ることは何も無い。
郁子はがっくりと頽おれる。
しかしその手の中では、熱く猛り狂った陰茎を握り締め、
苦悩から逃れる為に、虚しい快楽へと没頭してゆくのだった――――――
十五
それから郁子は、独り延々と自慰行為を続けていた。
「はっ、はっ、あはぁっ、はぁうっ、はぅっ」
リズミカルな喘ぎ声と共に陰茎を擦り、淫らに撫で廻す郁子の周囲は、
自身の吐き出した淫液でドロドロとぬめり、異臭を放っている。
「うっ……くうぅっ!」
郁子の陰茎の先から、白い飛沫が飛び散った。
これで何回精を漏らしたのか―――彼女自身にすら、もう判らなくなっていた。
なのに、放出される精液の量は初めの頃と全く変わらないのだ。
手淫を繰り返す郁子の消耗は激しく、眼の下は濃い隈で翳り、
瑞々しかった肌も、何処かパサついて干からびている印象を与えていた。
それでも、郁子の射精欲が治まることは無かった。
とろみを帯びた体液を、陰茎の割れ目から、つうっ、と滴らせ、郁子はふらりと立ち上がる。
五本の指に余る程の大きさを持った陰茎をゆっくりと撫でながら、
覚束ない足取りで辺りを徘徊し始めた。
歩いている内に、何か光るものが視界の隅に入ってきた。
郁子は眼を向ける。それは、鉄塔で手に入れた日本刀だった。
陰茎を扱きつつ、それを拾い上げてみた。
鋭い切っ先。白い刃。郁子は魅入られた様にそれを見詰め――――
『それ、切っても無駄だぞ。また同じのが生えてくるだけだ』
いつの間にか背後に立っていた一樹が、郁子の陰茎を覗き込んで言った。
『それとも自殺でもするつもりだった?それはもっと無駄だよ。どうせ、俺みたいになるだけだし』
郁子は一樹を振り向いた。
一樹や自分の周りには、母胎の産み出した白い化け物達が、そこら中好き勝手にうろつき廻っている。
彼の言う通りであった。
何をした処で、この淫欲地獄から逃れる術は無いのだろう。
郁子は力無く刀を落とし、腫れ上がった亀頭をぎゅっと手で掴んだ。
『そう。悪あがきしたって、駄目なものは駄目なんだから……いっそ思い切り、楽しんだ方が得だよ』
そう言うと一樹は、郁子を床に押し倒した。
悲鳴を上げる暇も無く、彼女は大きく股を割られ、
巨大な陰茎に下に隠れていた濡れそぼつ陰門に、指を挿し入れられていた。
熱く蕩け崩れていた其処は、吸い取るように一樹の指を受け入れる。
郁子はか細い声を上げ―――亀頭の先から、びゅくびゅくと精液を射出した。
陰茎の律動につられ、指を飲み込んだ陰門の方も淫らに蠢き、痙攣をする。
一樹が更に深く指先を挿し込むと、郁子はわななく淫声と共に躰を反らし、鼠蹊部をヒクつかせた。
『ちゃんと女の部分も残ってたんだな。安心したよ。
あんなにして貰いたがってたんだから、してあげないと可哀想だもんな。君の、此処が』
一樹は、郁子の膣から指を引き抜いて彼女の躰を裏返した。
尻を抱え上げ、陰門に陰茎の尖端を宛がうと、今度は焦らすこと無く深く潜り込ませていった。
「はあぅ……!ううぅ……うああああああ……」
背筋をぐっと反り上げて、郁子は歓喜にむせび泣く。
一樹が素早く抜き挿しを始めると、彼女は地べたに肩を着け、
乳房と陰茎を手で刺激して、自らの性感を高めていった――――――
十六
「あはぁあああ……い……くぅっ……!」
床に這いつくばった郁子が、また絶頂を迎えていた。
彼女の女陰と陰茎は感覚が繋がっているらしく、
陰茎の方が射精をすれば、その下の女の部分の方でも痙攣が起こり、
膣の快感はそのまま陰茎を刺激して、射精の快感をも強めていく。この繰り返しであった。
『あぁっ!俺も……出るぞ………!』
一樹もまた、郁子の胎内の温かさと狭窄感に幻惑されて、
強い快感と共に大量の射精を繰り返していた。
膣から溢れた一樹の精液は、郁子の尻の谷間をぬらぬらと濡らし、陰門を伝って陰茎まで垂れ落ちる。
郁子の陰茎の表面は、一樹の精液と自身が出した精液とが混じり合い、
指を動かす度にぐちゃぐちゃ、ねちゃねちゃといやらしい音を奏でて二人の淫欲を掻き立てた。
彼らの営みには際限が無かった。
生ける屍である一樹にはそもそも体力の概念が無かったし、
母胎の呪いで生やされた郁子の陰茎も、枯れることを知らずに精液を出し続ける。
「うああああ……いい、いいぃもっとおぉぉぉ………」
郁子は、あまりの恍惚に半ば正気を失いかけていた。
先程からその虚ろな目線は、眼の前をうろうろしている白い化け物の後姿に注がれていた。
彼女は己の陰茎を扱く手を離し、落ちていた刀を取って、
一樹に嵌められたまま、四つん這いで化け物ににじり寄って行く。
充分に近付いてから膝立ちになり―――切りつけはせずに、背後から組み伏せた。
暴れて跳ね廻る化け物に圧し掛かった郁子は刀を振り上げ、化け物の胴体に、
致命傷にならない程度の切り傷をつけた。
化け物は悲鳴を上げるが、傷口の方は瞬く間に塞がってゆく。
郁子は、その傷の治りきらない内に陰茎を突き立て、化け物の体内に素早く自身を埋没させた。
化け物の悲痛な叫びと、郁子の陶酔の声が重なり合う。
郁子の目論見は成功した。
化け物の柔らかくぬめぬめとした肉の切れ目は、
侵入する異物を排除しようとして窄まり、凄まじい力で押し返そうとする。
結果、郁子の陰茎を強烈に締め上げ、
絡みつく生肉の蠢動を、これでもかと郁子に感じさせるのであった。
「うっ、はっ、あぁっ、ああぁっ!」
郁子は、化け物に跨ってカクカクと腰を揺すり、化け物の傷口をえぐり返す。
ずっと手淫の快楽しか味わってこなかった郁子の陰茎は、
この新しい行為に酔い痴れて、あっという間に快感の頂点を極めてしまう。
しかし、この快楽もそう長くは続かなかった。
郁子に傷口を掘り起こされ、陵辱されていた化け物が、
熾烈な攻勢に耐え切れずに煙を噴いて蒸発してしまったからだ。
郁子は落胆したのも束の間、刀を拾い上げ、別の獲物を求めて再び這いずり始めた。
背後の一樹は激しい振動に首が外れ、顔を真後ろにぶら下げて、
それを肩甲骨の辺りでがくがく揺らしながら、郁子に付き従っていた。
一樹は笑っていた。郁子もまた同様だ。
彼に膣を姦されながら、郁子自身は化け物共を陵辱して廻る。
別に、化け物共を殲滅しようという義務感などは無かった。
それはただ、自分の陰茎を満足させたいが為の、獣の行為に過ぎないのである。
この浅ましい光景を、母胎は赤い海の中から見守っていた。
娘の堕落した姿に、彼女は深い満足を覚える。
そして、海の中からずるりと這い出し―――郁子の許へ、ゆっくり舞い降りていった――――――
十七
何匹目かの化け物を消滅させた処で、郁子は手足に何かが巻き付いて来るのを感じた。
同時に躰が、後ろに張り付いている一樹ごと高い処に引き上げられる。
引き上げたのは、母胎の触手であった。
これまで散々郁子の躰を嬲り、責め苛んで来た触手であったが、今はもう虐げてくる事は無く、
寧ろ優しく抱き締めるように郁子を包み、無数の手によってその肉体を取り込もうとしていた。
郁子はその慈しみ深いかいなの中で、かつて無い安らぎと、悦びとを感じていた。
――――私、還れるんだ……
何故かそんな、ほっとする様な気持ちに心が満たされる。
触手の中で、郁子の陰茎は小さな触手に絡みつかれ、玄妙な動作で摩擦されていた。
恍惚と開かれた唇の中にも何本かの触手が這入り、舌や口蓋の裏側をくすぐり、甘く刺激する。
肛門の中にも。
そして、一樹の陰茎に満たされている陰門の中にまで、脇から潜り込んで来る。
触手達は、這入る場所によって細くなったり太くなったりしながら、郁子の躰の内側を侵食してゆく。
口の中の触手は胃の腑に到達して胃壁をザワザワと掻き廻し、
肛門からは腸壁を刺激しながら更に奥まで侵入しようとするものがある。
膣から這入ったものは子宮頚管を通り抜け、子宮の内部を舐めるように這い廻った。
郁子はもう、声を上げることも無かった。
郁子の躰は一樹と重なり合ったまま、触手と共に少しずつ、少しずつ母胎の胎の中に
取り込まれようとしていたが、
触手の中で触手に侵食されてゆく彼女の自我の方は、すでに母胎に取り込まれてしまっていた。
度を超えた闇の陵辱によって、脆く、弱くなっていた郁子の自我に、
母胎の侵略を拒む力は残されていなかったのである。
母胎は、郁子達を胎の中に完全にしまい込むと、もう一度あのサイレンのような声を鳴り響かせた。
それは、凱歌であった。
己に仇成す憎い怨敵。裏切り者。愛しい娘。
愛憎の入り混じった複雑で奇怪な想いの対象であった郁子を、
完璧に屈服させ、自分の胎内に飲み込んだ。
例えようの無い充実感。歓び。
母胎はサイレンと共に、更に多くの化け物達をぼとぼとぼとぼと、数限りなく産み出していった。
――――白い化け物の群れは辺り一帯に満ち溢れ、
上空の赤い海と対を成す、白い世界を築き上げつつあった――――――
十八
郁子は赤い海の中を揺蕩っていた。
拡散しそうになる思念の欠片を手繰り寄せ、彼女は“自己”を確立し、取り戻そうと試みる。
母胎に取り込まれた処までは辛うじて記憶にあった。
一樹と共に触手の中に引きずり込まれ――――それから?
此処が何処なのか、何故自分が此処に居るのか、どうしても判らない。
――――そういえば……あいつは?
一樹の存在を求め、郁子は意識を巡らした。
だが海中は広く、中々他者の存在を見付けられない。
唐突に、ぽつんと誰かの意識が呼応するのを感じた。
――――誰?
一樹では無かった。
もっと別の、これは―――子供?
――――だいじょうぶだよ
子供の声が言う。
――――とおいところから おにいちゃん きてくれる きて みんな おわらせてくれる
お兄ちゃん?みんな、終わらせてくれる?
言葉を反芻する郁子の意識が、次第に混濁し始める。
自分の存在が曖昧になり、赤い水の中に溶け込んでしまいそうな感覚に捕らわれた。
抗いようもないまま彼女の意識は遠ざかり、全ては、赤い世界に吸収された。
――――おやすみなさい おねえちゃん
赤い海の中に 幼子の声だけが 響いて 消えた――――――
十九
有り得ない気配を感じ、母胎は海中から地上を見下ろした。
《 何 か が 起 こ っ て い る 》
地に満ち溢れていた筈の子供達が、その姿を減らしているように見える。
母胎は海を出て地上に降り立った。
その途端、背後から凄まじい衝撃を受け、母胎の躰は岩に叩き付けられた。
母胎は眼を見開き、攻撃を加えてきた何者かを振り返った。
そこには、一人の少年の姿があった。
右手に日本刀、左手には、何か忌まわしい光を放つ小さな呪具を持っている。
攻撃は、その呪具によって行われたようであった。
彼を包囲する子供達は次々と刀で切り裂かれ、どんどんその数を減らしてゆく。
母胎が身をもたげた。
最後の子供を切り捨てた少年は、母胎に向き直り、決然とした様子で母胎を睨み付けた。
青く燃え上がる闘気を纏った刀を掲げ、凛と通る声で言い放つ。
お前らみたいなのがいる限り、俺は、何度でも現れる――――――
【終了条件未遂。】
保守
GJ 実にシリアス
すげえ面白!
それにSDKかっこいいな!
都会ってどんなところですか?
120 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 21:44:36 ID:oEVpUQKg
穢れた所
GJ、ひとつのゲームオーバーのあり方だな
凄い面白い。締めもSDKと実にSIRENらしいな
投下しまーす!
求導師×高遠
注意事項:特に無いかと。でも変な話かも。
ではよろしく。
一
春海ちゃんが居なくなった。
夕闇迫る山道。高遠玲子はただ独り、血まなこになって捜し歩く。
「春海ちゃん……春海ちゃーん!」
もうじき日が暮れる。
玲子は汗ばむ額を手の甲で拭い、十歳の少女の姿を求めて草木を掻き分け、道なき道を彷徨っていた。
――――ウゥ―……
夕刻を知らせる役場のサイレンが、少女の名を呼び続ける玲子の声を掻き消す様に鳴り響く。
(駄目だわ……これ以上は、私一人の力では)
玲子は山を降り、村の消防団の手を借りる決意をする。
道を戻ろうとして薄闇の中を振り返ると―――
鬱蒼と生えた木々の向こう側に、闇に沈んだ三角屋根の建物が眼に入った。
(……教会?)
玲子は一瞬、狐につままれた様な気持ちになった。
いつの間に自分は、こんな場所に来ていたのだろうか?
しかし今はそんな事に頓着している場合では無い。これは寧ろ、好都合と考えるべきだろう。
「すいません!電話……電話を貸して下さい!」
両開きの扉を押し開け、玲子は大声で呼び掛ける。
礼拝堂は無人であった。
灯りの消えた暗い堂内を見渡し、玲子はおずおずと中に脚を踏み入れる。
教会が留守になっているのは珍しい。
この時間ならばまだ、教会の人間が居る筈であるのに―――――
その時玲子は、ふと奥の祭壇の方に眼を留めた。
(あら?)
赤い布を掛けられた祭壇の上には、細長い台の上に設えられたマナ字架が立っている。
その後ろは剥き出しの岩壁になっており、中央に、直径一メートル足らずの岩穴が穿たれている。
岩穴はいつも頑強な鉄格子によって封じられているのだが―――その鉄格子が、開いていた。
玲子は訝しげに黒い口を開いている岩穴を見詰めた。
鳩尾の高さにある岩穴は、半円形の窓の様な形をしている。
この奥に何があるのか―――熱心な信者ではない玲子はよく知らない。
(噂では、眞魚教のご本尊が祀られているって話だけど)
恐る恐る覗いて見るも、中の様子は杳として知れない。
奥から流れてくるひんやりと湿った空気から、何処か深い洞窟に繋がっている様子が覗えるが――――
と。
岩穴を満たす暗闇の中から、小さな光が揺らめきながら近付いて来るのがチラリと見えた。
玲子は驚きビクリと肩を震わせる。そして、岩穴から離れて大きく後ずさった。
離れてしまえば微かな光はもう見えず、玲子は一瞬、自分が錯覚していたのかと考える。
だがその時――――黒い穴の中から、怪しげな物音が聞こえて来た。
ハッとして耳を澄ますと、奥から這いずって来る何モノかの気配を感じる。
玲子は怯えた面持ちで、更に二、三歩後ずさる。
こんな、祭壇の奥に封じられた禁断の場所から這い出ようとする存在が、まともであるとは思えない。
――――何だか、此処に居てはいけない気がする。
立ち去ろう。玲子はそう思う。
なのに、何故だか足が竦んでしまって一歩も動くことが出来ない。
玲子が立ち尽くして見守る中、岩穴の漆黒が膨れ上がった。
そして――――――
闇の穴から産まれ出た様な黒い影法師がズルリと抜け出し、床の上に降り立った。
「きゃあああっ?!」
玲子は思わず悲鳴を上げた。
宵闇に包まれた空間に突如として出現した黒いひとがた。
それは―――黒い法衣を身に纏った教会の主、牧野慶求導師、その人であった。
二
「き、求導師、様……?」
腰を抜かさんばかりに驚いている玲子を前に、求導師は平然としていた。
彼は玲子の姿にチラリと眼をくれたきり、淡々と衣服の埃を払い、乱れた髪をかき上げている。
「何か御用でしょうか?」
身づくろいを終えた処で求導師は、問い掛ける言葉と共に鋭い眼光を玲子に浴びせた。
まだ驚きの覚めやらぬ玲子が言いよどんでいる間に、彼はきびきびとした動作で祭壇に向かい、
燭台の上の蝋燭に火を灯す。
暗い室内を幽し光がぼんやりと照らし、求導師の姿やその表情を、下から煽る様に映し出した。
玲子は、思わぬ事態に居合わせてしまって少々面食らっていた。
教会に関しては疎い玲子だったが、
祭壇の後ろにある岩穴が畏れ多い場所である事ぐらいは承知している。
みだりに近寄ることさえ憚られる聖域―――
其処に、幾ら求導師であるとはいえ、大胆にも土足で踏み込むとは。
それに。
玲子は求導師の常にない異様な雰囲気にも圧倒されていた。
彼女の知る限りこの牧野求導師は、生白い顔色の、大人しく気弱な男であった筈だ。
だが今眼の前に立っているこの男は何処か猛々しく、まるで刃物の様な鋭利さを玲子に感じさせる。
不可解な威圧感―――その凍て付く瞳に見据えられると、何故だか緊張で躰が強張った。
「貴女は確か……小学校の新しい先生でしたね?」
求導師の声で、玲子は我に帰る。
彼の目線は相変わらず鋭いが、その口調や物腰は穏健で紳士的であった。玲子は取りあえず安堵する。
「あ、はい。高遠玲子です。この春から折部の分校に……」
「余所の土地から?」
「いいえ。私、元々この村の人間なんです。結婚して村を離れてたんですけど……」
「まあお掛けなさい」求導師は手前の木の長椅子に玲子を促す。
玲子は言われるままに座り掛けたが―――自分が此処へ来た目的を思い出して立ち上がった。
「あの!そ、それどころじゃ無いんです!春海ちゃんが……
う、うちの教え子が、山で行方知れずになってしまってそれで」
「……いいから座って」
求導師は玲子の両肩に手を置いて、宥める様に腰を下ろさせた。
「あの……早く捜しに行かないと。もう暗いですし……山で万が一のことでもあったら」
身を堅くして訴えかける玲子を見下ろしつつ、求導師はその背後に廻る。
そして椅子の背もたれ越しに彼女の肩を抱き、労わりを籠めて撫で摩った。
「こういう時にはまず落ち着くものです。貴女が冷静さを失くしてしまったら、
見付かるものも見付かりませんよ」
頭の上から柔らかな声で言い含められると、何となくその通りであるような気がして来る。
玲子は曖昧に頷き、少しずつ躰の緊張を解いていった。
「行方不明になった女の子というのは?」
求導師が静かに問う。俯きながら、玲子は答える。
「四方田春海ちゃん……四年生の子です。
放課後に一人で山に向かっているのを見掛けたから、後を追って……声を掛けたら逃げられて……
子供一人じゃ危ないし、保護しなきゃって思ったんですけど、見失っちゃって……」
「何処で見失ったんですか?」
――――何処で?
玲子は首を傾げた。
日の傾きかけた山道で、懸命になって少女の背中を追いかけたのは覚えている。
でもその場所は――――――
玲子は、ただ少女の姿を追う事ばかりに集中していて、
自分が何処に居たのかを全く把握していなかったのに気付き、顔色を失った。
動揺し、求導師に救いを求めて振り返ろうとした時―――首の後ろを虫に刺された。
「どうされました?」
チクリと痛んだうなじを押さえて辺りを見廻す玲子に、笑い混じりの声音で求導師が訊ねる。
「今、虫に………………」
と、言い掛けた処で、玲子の意識はガクンと躰の奥底に沈んだ。
三
眼下に青い海原が広がっていた。
波の中、二人の子供を抱えて泳ぐ女の姿―――そしてその遥か沖、ぽつんと漂う一人の幼児の姿。
玲子は上空から、声を限りに喚き立てる。
――――そんな子達はいいから!めぐみを……めぐみを助けなさい!
世界が明確なかたちを取り戻してゆく。
気が付くと玲子は、高い天井と対峙していた。視界の片隅に、例の岩壁と古びたマナ字架が入る。
どうやら、いつの間にか祭壇の上に寝かされていたようであった。
(私、貧血でも起こしたのかな?)
ぼんやりとした頭で考える。
(だけど、こんな処に寝てしまってもいいのかしら? マナ字架も下に降ろしちゃってるし……)
玲子は祭壇から降りようとした―――が、何故だかそれが出来なかった。
別に躰を縛り付けられている訳でもないし、起きようと思えば起き上がれる筈なのに―――――
まるで躰の動かし方を忘れてしまったかの様に、玲子は祭壇から離れる事が出来無くなっていた。
「では始めましょうか」
不意に横から求導師の声がした。
眼だけを動かしそちらを見上げる。
蝋燭のぼんやりとした灯りの中、求導師は静かに微笑んでいた。
(始めるって……何を?)
玲子は戸惑いの表情を浮かべる。
「贖罪の儀式ですよ。貴女はその為に教会へやって来たんじゃないですか。高遠さん」
玲子の感情を読み取った様に求導師は答えた。
――――贖罪の儀式?
そう―――だっただろうか?
確か自分が此処へ来たのは、もっと火急の用件があったからだったような気がするのだが――――――
「高遠さん……あんたは二年前、海で高波に飲まれた娘のめぐみちゃんを救う事が出来なかった。
娘さんを助けに行ったのに、途中で見付けた余所の子供の救出の方を優先してしまったからだ。
その為、めぐみちゃんは発見が遅れて命を失った……」
求導師が冷徹な口調で言い放つ。
玲子の顔が苦しげに歪んだ。
「仕方、なかったの………」
彼女は唇から、震える声で弁明の言葉を漏らす。
「あの子達、もう意識を失くしてて……放って置いたら、きっと死んでしまうって……だから私」
「だからめぐみちゃんを見捨てた?」
「違います!」
玲子は叫ぶ様に言った。
「だが結果的にはそうなった。
貴女が違う判断をしていれば、めぐみちゃんの命は助かっていたのかも知れないのに」
「………」
求導師の言う通りだと思った。めぐみが死んでしまったのは、自分の所為だ。
自責の念に苛まれ、玲子は苦い涙を飲んだ。
「貴女は、贖罪せねばならない」
求導師の光る眼が見下ろす。
「罪を洗い流すのですよ。そうすれば貴女の魂は救われる。そして、めぐみちゃんの魂も」
「罪を……洗い流す?」
玲子は呆けたように繰り返す。
確かに、求導師の言い分は正しいような気がした。
最愛の娘の命を守れなかった罪。それは、どう言い逃れをしようと決して消えるものでは無い。
それこそもう、神に赦しを乞う以外に道は残されていないのかも――――――
四
「全てを神に委ねなさい。神の御前に身を捧げるのです」
蝋燭の光が揺らめく礼拝堂に、求導師の声が厳かに響き渡る。
それはまるで、求導師の躰に乗り移った神の声でもあるかのように、玲子の躰に沁みてゆく。
己の思考が酷く短絡化しているという自覚はあった。
自分の中の、何か肝心な部分が麻痺して機能しなくなっている事も。
だが今の彼女にとって、それは些細な問題だった。
とにかく。自分はめぐみを死なせてしまった罪を償わなくてはならない。
玲子の心はその事のみに占められていた。
何しろ、求導師様がそうせよと言っているのだから。間違っている筈が無い――――――
「私の身を……? 求導師様、でも、どうやって」
問い掛ける玲子の声は、何処か夢見る様な調子を帯びている。
「大丈夫です。私の言う通りにすればいい」
求導師の手が玲子の頬に触れた。優しく撫で上げられる感覚。そして、耳元に囁かれる言葉。
「起きて着ている物を脱ぎなさい」
玲子の躰が、すっと起き上がった。
彼女は少なからず驚きを覚える。さっきまで、どうやっても身動きが取れなかったのに―――
更に。
玲子の手は自然に動き、カーディガンの釦を外そうとしていた。
(こんな場所で? こんな……求導師様の見ている前で)
しかし、躊躇する心は何処か上滑りだ。
それがおかしな行為である事は判っているのに、まるで羞恥心を感じない。
玲子は、部屋で着替えをする時みたいに無感動な心のままカーディガンを脱ぎ、
カットソー、靴、パンツも脱いでしまう。
無論、下着も――――――
求導師は、玲子が脱いだ物を几帳面に折り畳んで傍らに重ねていく様を、興味深げに眺めていた。
そして祭壇の上の彼女が腰を上げてショーツを脱ぎ去り、衣服の上に置いた処までを見届けると、
それらを全て後ろの長椅子の上に移した。
祭壇には、生まれたままの姿になった玲子だけが取り残される。
彼女は膝に両手を乗せ、背筋を伸ばし、脚を真っ直ぐに下ろして求導師の指示を待っていた。
求導師は、彫像の様に静かな玲子の居住まいを、暫し無言で見詰めていた。
すらりと引き締まった肢体は禁欲的で、穢れを寄せ付けない潔癖さを感じさせる。
だがそれでいて何か頼り無げで、まるで霞にでも包まれている様な儚さを漂わせてもいた。
「貴女は……離婚して村に戻られたんでしたね?」
玲子の真正面に立ち、乳房の膨らみを見下ろしながら求導師は問う。
「再婚の意思は? 今付き合っている男性はいるんですか?」
玲子は眼を伏せ「いいえ」と、首を横に振った。
「そういった事は考えられないんです。今はまだ……」
「最後に性交をしたのは?」
玲子は眉を寄せ、小首を傾げて考え込む。
「海水浴の前の筈だから……多分、二年以上前になるかと」
「それ以来一度も? 自慰行為はなさっていますか?」
「いいえ」これには即答出来た。
玲子はもうすぐ二十代の終わりを迎えようとしていたが、この歳になって未だ自慰の経験が無かった。
「本当に?」と重ねて訊ねられても、静かに頷くのみである。
求導師の質問の数々に答えながら、玲子は奇妙な感覚を味わっていた。
これほど不躾な事ばかり訊ねられているというのに、何ら不快感や羞恥心を覚えないのは、
一体どういう訳なのだろうか?
聖職者とはいえ、殆ど面識の無い若い男性が相手だというのに―――
求導師の訊き様が、まるで医者の問診の如く無機的で無感情だから?
いや、それだけでは無い。本当は判っていた。
快感なのだ。求導師の言いなりになって、洗いざらい喋ってしまう事が。
仄暗い祭壇の上で、玲子の理性は完全に眠っていた。
何かの抗い難い力によって彼女は今、その躰同様、心までも裸になろうとしていた。
五
「……セックスは、あくまでパートナーとの信頼関係を築く為のコミュニケーションの手段。
そんな風に考えています。だから、それ自体にこだわる必要はあまり無いように思うんです………」
祭壇上の玲子の告白は未だ続いている。
彼女は今までに誰にも話した事の無い、己の性体験の全てを求導師の前に明らかにしていた。
そして、性に対する彼女なりの認識についても――――――
「なるほど。よく判りましたよ、高遠さん」求導師は玲子の話を聞き、大きく頷いた。
「要するに……あんたはまだ判っていないんだ。本当の、女の悦びを」
――――女の悦び?
求導師の言葉に言い様の無い苛立ちを覚え、玲子は頬を強張らせる。
赤の他人の、しかも男性からそんな風に言われる事は、
何か酷く理不尽な仕打ちを受けているような感じがして、不愉快だった。
「高遠さんは、不感症なんでしょう?」
蔑みを帯びた求導師の台詞。玲子の顔が更に強張る。
「……違うと思います」返答の声に、思わず怒気が篭る。
「本当にそうでしょうか?」
求導師は更に言い募る。そして、いきなり彼女の乳房を掌で包んだ。
「どうです? 何も感じないでしょう?」
玲子は無表情のまま、黙って乳房を揉まれている。
彼の言う通りであった。
乳房を撫で上げられ、乳首をキュッと摘ままれて―――
それでも全くといっていい程に、何も感じない。玲子は焦燥感から微かに蒼ざめた。
「これも神罰なんですよ」
求導師が至近から玲子に言い放つ。
――――神罰……
空恐ろしい響きに、玲子の肌が粟立つ。彼女は必死の思いで乳房に全神経を集中する――――――
でも駄目だった。
どれ程努力しても彼女の乳房は、求導師の指先から触感以上のものを得る事が出来なかった。
痛ましく表情を曇らせる玲子の乳房から手を離し、求導師は彼女のおとがいを指で支えた。
「そう心配しなさんな……私が、神との仲介に力をお貸ししますから」
玲子の心許無げな眼を見詰め、求導師は優しく慰める。
俯きがちな顔を仰向かせ―――化粧気の無い唇に、己の唇を重ねた。
玲子は温かい弾力を唇に感じて微かに動揺する。
それでも裸の背を大きな掌で抱かれ、唇を唇で揉まれている内に、
なんとなく、全てがどうでもいいような気持ちになっていた。
ぐったりと脱力しつつある玲子の、その唇の上に求導師は言葉を乗せる。
「私が唇を離すと同時に、貴女の躰は神の赦しを得ます……
貴女はそれを自身の指先で確かめなさい。最後まで……私が、いいと言うまで」
求導師の唇がスッと離された。
玲子は、暫し呆然と遠くを見詰め続けていたが―――次第にその瞳を潤ませ始めた。
気持ち蒼ざめていた肌が徐々に紅く色づき、呼吸を繰り返す毎に膨れ上がる乳房のてっぺんで、
充血した乳首が硬く張り詰め、上向いてゆく。
玲子は、その尖った釦を掌で押さえた。
「あ………………」
快い電流が、躰の中心を駆け抜けた。
さっき求導師に触れられた時とは大違いだ。
硬くなった乳首を指先で押し潰し、小刻みな震動を与えてみる。もっといい。
玲子は眼を閉じ、己の両乳首を摘まみ上げて、くるくると刺激しだした。
痺れる様な快楽が、乳首から全身へと広がってゆく。
「あぁ………」
じわじわと沁み渡る快楽に支配され、玲子は半開きの唇から、小さな溜息を漏らした。
六
「あぁ……ん………はぁん………………」
自らの乳首を弄り、乳房を撫で廻しながら玲子は、無意識の内に腰を揺すり、
ぴっちり合わせていた膝を少しずつ開きつつあった。
求導師は玲子の崩れていく姿態を―――隙間の出来た膝の間から僅かに覗く女の部分を、
ジッと見詰めていた。
「下の方も触って御覧なさい」
不意に彼は命じる。
玲子は片方の手を隆起した乳房から下ろし、
平らな腹部を辿って、瑞々しい草むらの内部にスウッと滑り込ませた。
其処はもう、滴らんばかりに濡れそぼっていた。
――――ああ……こんなになってる………
熱くぬめりを帯びた感触が、玲子の心を異様に昂ぶらせる。
玲子は大きく息を吐きながら、やわやわとほどけた陰唇の上部に埋もれている、
小豆大の陰核にもそっと触れてみた。
「あっ……ああぁっ!」
鋭く突き抜ける快感に襲われ、玲子の躰はビクンと仰け反ってしまう。
乳房がプルンと震え―――同時に、膝が動いて大きく脚が開かれた。
濡れ光る陰裂が、薄灯りの中に紅く浮かび上がった。
玲子の指先は膨張した陰核の表面を滑り、震え、尖った先を押し潰した。
堪らない快感で玲子の肢体はわななき、もう起き上がっていることすら儘ならず、
仰向けに倒れ込んでしまった。
「初めてにしては上手に出来るじゃないか」
上から求導師の声がする。
脚を下ろし、陰部を突き出すように倒れた玲子に被さるようにして、彼は声を掛けてくる。
しかし玲子は今、それどころではない。
陰核から伝えられる快感で膣の奥が蕩かされ、どうしようもない程の疼きが彼女を追い詰める。
――――ああ欲しい、もっと、もっと……
その指先は陰核を嬲り廻しながら、時折その下に―――
熱い淫液を止め処なく沸き立たせ、物欲しげにヒクヒクと蠢き続けている膣口の周囲を、
逡巡する様に辿っていた。
玲子の雌の本能は、煮えたぎった膣の奥深い処への愛撫を望んでいた。
だが未だ若干残っている彼女の理性が、己の指を膣に挿入して掻き廻す様な、
あからさまな行為を躊躇させていた。それはあまりにも肉欲的な、飢えた行為に思われたからだ。
「陰核を弄るだけではもの足りないでしょう? 膣に指を挿れたらどうですか?」
玲子の心中を見透かした様に、求導師は言う。
玲子は、陶然と閉ざしていた眼を開いて求導師の顔を見遣り、そして、すぐに逸らした。
「陰核だけでも達する事は可能でしょうが、やはり膣の内部まで刺激した方が
より深いオルガスムスに到達する事が出来る。別に躊躇する必要もないでしょう。
処女だとでもいうんならともかく、高遠さん、あんたは子供まで産んだ女なんだから」
「で、でも、私……」
「そうしたいんでしょう? 本当は。したくて堪らない筈だ。第一、そうしなければ
あんたはイクことが出来ない」
――――指を挿れなければ、イクことが出来ない……
求導師の一言は、玲子の心の最後のくびきを取り払った。
玲子は乳房を押さえていた手を素早く股間に下ろし―――
陰核を弄りながら、探る様な動きで中指を膣口に埋没させていった――――――
七
初めて触れる膣の内部は、その熱といいぬめりといい、全く蔵物そのものだと思った。
ぬるぬるした襞の絡みつく感覚や、脈打ちながら締め付けられる感覚の生々しさに多少辟易しつつも、玲子は思い切って、指をグッと根元まで挿し入れてみた。
「うぅぅ……」
求導師の言葉は正しかった。
苦しいほどに疼いていた肉の穴の内側に直に触れる行為は、玲子の官能をいたく刺激した。
挿し入れた指先で中をまさぐり、陰核を強く揉み解す毎に湧き上がってくる快感に、
玲子は絶え間なくよがり声を上げ続ける。
「どうですか?」
求導師が耳元で問い掛けてきた。
「外側だけを弄るよりずっといいでしょう? それもその筈……女の胎内は神の洞窟に繋がっている」
「神の……洞窟………」
玲子は自分の頭の上に開いている岩穴を思った。
「そうです。羽生蛇村の人間に取っては、神に等しい方々の眠る場所……
殉教者達の墓場。神に捧げられなかった方の実の、成れの果ての棲む処……」
求導師の詠う様な声を聞きながら、玲子は自分の性器が快楽の限界に迫っているのを感じていた。
もう絶頂は間近い、手の届く処にあった。
その気になりさえすれば―――いつでも、幾らでもやって来る。そんな気がした。
「求導師様……」
玲子は虚ろに霞んだ瞳を求導師に向けた。
「求導師様………私……このままイキたくありません」
「何故?」
求導師の精悍な面立ちが、玲子を見下ろす。
何故? と、改めて聞かれると、その理由を述べるのはためらわれた。
それでも玲子は、弾けそうになる性感の高まりを堪え、躰の声を伝えない訳にはいかなかった。
それ程までに―――彼女の欲求は強かったのだ。
「指では……奥まで届かないんです。………だから」
「だから?」
「………………お願いします。求導師様………」
言ってしまった。
玲子は自慰の手を止め、気恥ずかしい思いで顔を反対側に背ける。
求導師の低い笑い声が響いた。
「お願いします。だって?
それはつまり、あんたがオルガスムスを得る為に、この俺の手を煩わせようということなのか?」
はっきりと言い切られ、玲子の耳朶が紅く染まった。
自分の要求がどれほど恥知らずな物であるのかは、判っていた。
――――でも……
玲子は両手で自らの陰部をギュッと押さえる。
「このままじゃ、おかしくなりそうなんです……躰の奥が……もう、我慢、出来なくて……」
切なく震える声が哀願する。
祭壇の赤い掛け布に顔を埋める玲子の髪を、求導師は優しく梳った。
「ふ……無理もないか。二年以上も孤閨を守ってきた躰が、より深い快楽を求めるのは……な」
求導師は丈の長い法衣の裾を捲り上げ、その下のズボンの釦を外した。
そして、陰部を覆っていた玲子の手の片方が取られ、開けられた股間に導かれる。
其処には、熱く脈動する硬い幹があった。
玲子は顔を伏せたまま息を飲む。手を離そうとするも、それは叶わなかった。
手を押さえ付けられていた訳ではない。彼女の手の方が、陰茎に吸い寄せられてしまったのだ。
もう久しく忘れていた感触に―――玲子の汗ばんだ掌は魅入られ、恍惚と酔い痴れた。
八
玲子の手指は求導師の陰茎を裏側からそっと包み、くすぐるように撫で廻していた。
張った陰嚢から、裏筋から、鈴口の割れ目までも、その指先で辿ってゆく。
玲子の指の中で求導師の陰茎は更に大きく、硬く勃ち上がる。
玲子は首を傾け、その強張りに眼を向ける。
求導師の黒い衣服の中から覗く、鎌首もたげる蛇の様に邪悪なその姿。
だが今の玲子に取ってそれは、この上なく崇高な、いとおしい神の化身に思われた。
「ああ………」
思わず玲子は首を伸ばし、艶々と輝く亀頭に口付け、丸ごとずっぽりと咥え込んだ。
口の中一杯に求導師の鈴口の弾む感触を味わい、舌を絡ませ、強く吸い込む。
「ふん……命令もせんのに此処までするとはな………あんたを本格的に仕込むのも面白そうだ。
そんな風に思えてきたよ。高遠さん……くっくっ………」
求導師は己の陰茎を、暫し玲子がしゃぶり廻すのに任せていたが、やがて強引に口から引き抜いた。
唾液と先走りでぬめり糸を引いた陰茎を手に持ち、玲子の開いた脚の間に這入り込む。
玲子は自ら陰唇を寛げ、膣口を指で開いて求導師の侵入を待った。
全てを剥き出しにした女教師のあられもないその姿―――
求導師は、玲子の上に覆い被さり陰茎の尖端を彼女の女陰に突きつけた。
割れ目を二、三度擦り上げ、淫水に塗れた小陰唇を纏いつかせた雁首を、熟した穴に潜り込ませる。
そこで、求導師は動きを止めた。
「自分で挿れるんだ、玲子。欲しがっているのはお前なんだからな」
求導師の鋭く響く声に呼応し、玲子の躰は動き出す。
仰臥したまま腰をにじらせ、片足を床に着いて突っ張ると、そのままグイ、と腰を持ち上げる。
「あ………ああああぁぁぁぁ……」
玲子の溶け崩れた陰門は、求導師の剛直をグズグズと飲み込んだ。
飢えた女陰は待ち焦がれたものを受け入れ、歓喜にむせんでわななき震える。
床に着いた脚もガクガク揺れて、足首の腱やふくらはぎの筋肉を浮き立たせた。
そして。
いきなり求導師は、眼一杯に腰を浮かせて反り返る玲子の躰を、祭壇上に押し付けた。
「あぁ!………ああぁぁぁ………………」
真上から覆い被さる様にして、求導師は玲子の躰に圧し掛かる。
その拍子に、求導師の陰茎は玲子の一番奥深い場所に―――
子宮頚管と、そこから微かにはみ出た小さな舌に、強くぶつかった。
「う……あぁぁぁぁぁ!」
臓物の奥底を激しく打ちつけられた玲子の快美感は、至上のものであった。
強い快感に、玲子は危うく気を失いかける――――――
だが、そんな玲子の肉体を、求導師は尚も責め立てる。
求導師は玲子の腰にピッタリと己の腰を重ね、膣の中の陰茎を奥へ、更に奥へと抉り込む。
子宮に間近い場所を上下左右に陰茎の先で舐られる度に、玲子の喘ぎは凄まじく、
火照った肌も求導師の黒衣の下でじっとり汗ばみ、祭壇の掛け布を湿らせた。
「玲子……今お前を抱いているのは、誰だ?」
玲子の灼熱の肉穴に、引けを取らないくらいに熱せられた肉の杭を穿ちながら、求導師は問うてきた。
玲子は、顎から目頭の辺りまでを求導師の掛けているマナ字架で嬲られつつ答えた。
「あああ……きゅ、きゅう、どう、し、さま……で、す………」
振動と恍惚に揺さぶられる咽喉から搾り出す言葉を聞き、求導師は小さく笑う。
玲子は、彼の笑い声の中に自嘲の気配を感じ取り、少し奇妙に思った。
でもそれは、ほんの僅かな間に過ぎなかった。
突然、子宮口を大きく突き上げられた玲子の躰に、強烈な絶頂の波が襲い掛かってきたからだ。
彼女の思考は眩い閃光と共に躰の外に吹き飛ばされ、
きつく締まった陰門から流れ出る淫水となって、どくどくどくどく、祭壇の上に溢れ返った。
九
「うぁ……はぁぁあぁぁぁぁ………あああっ……あぁ……」
玲子の絶頂の叫びは、切れ切れに、彼是一分近くも続いていた。
それはもう、永きに渡り塞き止められていたダムを決壊させたようなもので、
生半なことでは収まりようも無かった。
求導師もまた、玲子に食い締められながら、腰を素早く動かし陰茎を擦り上げ、
最後の仕上げに取り掛かる。
そして、キュウキュウと蠢動する膣壁の中、上下動する彼の亀頭は大きく膨れ上がり、
やがて、ぶるん、と一つ身震いし、精を漏らした。
呻き声と共に求導師の躰は玲子の上に倒れ込む。
「あ……!い………ああああああああああああっ!!!」
玲子は、子宮口に熱い精液をたっぷりと撃ち込まれた衝撃で、収まり掛けていた波が再びぶり返し、
求導師の肩にかじり付いて、再度、深い絶頂感を迎え入れた――――――
遠く霞みゆく意識の中に、低い詠唱の声が這入り込む。
それは大きくなり小さくなり、波状の響きでもって玲子の鼓膜を震わせていた。
――――求導師様?
節のついた祈祷の声は、ふだん求導師が発しているものとは少し異なっているように感じられた。
いや―――声が違うというよりも、声を出している人数が多いのだと気が付いた。
玲子は、祭壇上に掲げられた自分の躰が、大勢の人間に取り囲まれている感覚に囚われていた。
――――まるで、生贄にでもなったみたい……
すなわちこれが、贖罪をするという事なのであろうか。
この肉体を供物とし、神に赦しを乞う儀式。
昔は村で、実際にそんな儀式が執り行なわれていた。そういう話を聞いた事がある。
確かそれには理由があった筈だ。村の誰かが禁忌を犯したとか何とか――――――
祈りの声は次第に歪み、殆ど動物の唸り声の如く、取り止めの無いものに変化しつつあった。
それは忘我の境地へと向かいながら、玲子の周囲をぐるぐる廻り、
尚且つ、すぐ傍にまで迫って来ている様子であった。
全く動かなくなってしまった玲子の躰に、湿った冷気が忍び寄る。
腐臭を伴うその気配には、生者の息吹が全く感じられない。
玲子の心が、微かな恐怖に萎縮する。
急に、左の乳房がドロッとした感触に包まれた。
細長い何本かに枝分かれした、これは―――人の指?
怖気を振るう暇も無く、躰のあちこちがその薄気味悪い感触に覆われてゆく。
玲子は悲鳴を漏らし掛け―――ふと思い止まった。
――――仕方が無いんだ。これが、贖罪なのだから………
そうなのだ。
この生ける屍達に取り込まれ、一体となる事こそが自分の罪滅ぼしであり、救いの道なのだ。
判ってしまえばどうと言うことも無い。
玲子は力を抜き、半ば溶解しかけた肉隗達が取り込むのに身を任せてしまう。
暗闇の中、半円形の光の窓が見える。
――――もうあっち側は遠い。
遠ざかる光を見詰め、玲子は諦めとも安らぎともつかない、不思議な感覚を味わっていた――――
十
「あのぅ……大丈夫、ですか?」
気弱な声と共に肩を揺すられ、玲子は眠りから醒めた。
明るく電燈の灯った礼拝堂。
二列に並んだ木の長椅子の一つに、玲子は横たわっていたようだ。
「あれ……私、何で此処に?」
記憶がどうもはっきりしない。玲子は頭を振り、救いを求めるように眼の前の求導師を見詰めた。
若い求導師は、困惑混じりの笑みを浮かべている。
「山で姿が見えなくなったって生徒さん……四方田春海ちゃん、でしたっけ?
確認しましたけど……もう家に戻ってるそうですよ」
「そう……ですか」
曖昧に返事をしながら玲子は、祭壇の奥の岩穴に眼を遣る。
鉄格子は、しっかりと施錠されていた。
「どうされました?」
ぼんやりとした面持ちの玲子に、求導師は心配げに声を掛ける。
玲子は何処か虚ろな心のまま、気の抜けた返事を返した。
求導師に面倒を掛けた詫びを言って教会を出ると、外はすっかり夜になっていた。
躰が妙な酩酊感に包まれている。
踏みしめる地面には現実味が無く、まるで雲の上を歩いてでもいるようだ。
教会で眠っている時、何か印象的な夢を見ていたのは、判っている。
でもそれがどんな内容だったのか―――思い出そうとすると、余計に頭がぼんやりする。
(……いけない)
足がふらつき転びかけるのを堪え、玲子は傍の樹の幹に手を着いた。
(ちょっと……疲れてるのかも知れないわね)
ひんやりとした夜の空気を吸い込んで、玲子は星空を仰いだ。
降る様な星座群に見下ろされ、玲子は何故か、深い満足感に充たされていた。
久しく忘れ去っていた安らぎ―――これは、教会を訪れたから?
よく判らないまま、玲子は再び歩き出す。
無理な姿勢で眠っていた所為か、躰はぐったりと重く、倦怠感も酷い。
それでも玲子の心は、めぐみを喪って以来、感じた事の無い清々しさでいっぱいだった。
胸のつかえが下りた様な―――冴え冴えと洗い流された様な。例えるなら、そんな気分だ。
誰にとも無く感謝の言葉を述べたい気持ちに包まれながら、
玲子は棚田の畦道を一人ゆっくりと歩いて行った――――――
十一
医院の表玄関を閉め、恩田美奈は診療室に戻った。
ドアを開けるのとほぼ同時に、院長の宮田司郎が電話の受話器を置いた。
「何処に掛けてたんですか?」
宮田は答えなかった。
美奈に背を見せたまま机に向かい、医学書を開いて何か調べ物をしているようだ。
「ねえ、先生……」
美奈は、宮田の気を引く様に、媚を含んだ甘え声を出して白衣の背中にすり寄った。
「今忙しい」宮田は、美奈を振り返りもせずにピシリと言い放つ。
「未だ仕事が残っているのか? そうでないんなら、今日はもう上がっていいぞ」
「………」
美奈は、全く取り付く島の無い宮田の後ろ姿を暫く見詰めていたが、やがて諦めた風に溜息を吐いた。
そして「お先に失礼します」と、険のある声で挨拶し、
ナースシューズの踵を打ち鳴らして診療室から立ち去った。
美奈はここ数日、宮田の態度に違和感を覚えて無性に苛立っていた。
(先生は何か隠し事をしている)
美奈はそう確信していた。それも、おそらくは―――女だろう。
確信はあるのに、確証が無い。
その事実が、余計に美奈を苛立たせる。
更衣室の鏡の前でナース服を脱ぎ、美奈は自分の小ぶりな乳房を握り締めた。
――――私の躰、もう何週間も先生に抱かれてない……
鏡に映る自分の姿を見ながら、美奈はブラジャーも、ショーツも取り去った全裸になる。
そして床に座り込み、大股を開くとヤケクソの様に膣口に指を挿し入れ、
激しい抜き挿しを繰り返す、乱暴な自慰行為に耽り始めた――――――
十二
八時を少し廻った頃、ようやく美奈が病院から出て行った。
(やはり、少し遅めの時間を指定して置いて正解だったようだな)
宮田は腕時計から眼を離し、椅子に凭れて眉間を押さえた。
(美奈は……勘付いているんだろうな、きっと)
若い看護婦の、去り際の拗ねた態度を思い出し、宮田は片頬だけを上げて微かに笑った。
無論、宮田には、美奈に言えない秘密があった。
村の暗部を一身に背負う“宮田医院”の院長として―――
村の支配者である神代家の秘密。そして、村の信仰の拠り処である教会の秘密。
病院そのものにだって秘密があるのだ。
しかし、そのどれよりも今の宮田には重大な秘密があった。
教会と神代家の境にあるあの遂道で、自分が何を行っているか―――
――――誰かに知られてしまったら、俺はもう生きてはいけん。
立場がまずくなる、などという問題では無い。それは彼の、人としての尊厳が掛かっていた。
決して他者に知られてはならない劣等感の発露。
薬物の使用という卑怯な手段によって、ほんの僅かな時間だけあの人に成り代わる。
我ながらくだらない行為だとは承知していた。
おそろしく子供じみた、おそろしく、滑稽な――――――
宮田の意識が心の暗闇に落ち込みかけたその時、廊下から密やかな足音が響いて来た。
宮田は背中越しにその気配を感じ取る。
禁じられた遊びのさなか、偶然見つけた宝物。或いは、無意味なガラクタ。
どちらでも構わないと思う。
宮田に取ってそれは、今の処最も歓心を引く事象であり、寧ろ癒しといってもいい対象なのだから。
そして、彼の背後でドアが開く。
宮田は椅子を廻して振り返る。「どうされました?」
そこにはショートカットにスラリとした長身の女性が佇んでいる。
凛と背筋を伸ばし―――だがその瞳は、何処か虚ろで夢見がちな雰囲気だ。
(まあ、催眠状態であるのだから、仕方が無いといえばそれまでだが)
夢遊病者の様に心許無い女の足取りを眺め、宮田はそっと一人ごちる。
そんな宮田の様子にはまるで頓着せずに、女はうっとりとした表情で歩き出す。
「求導師様」
女はフラリと宮田に近付き、ぼんやりと、夢見る様な声で訴えかけた。
「あの子が……春海ちゃんが、居ないんです」
【了】
135 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 01:50:15 ID:gp4Yhts7
市子はいずこや
市子キボンヌ
137 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 13:02:29 ID:N/kWpUi/
み〜なきぼんぬ
138 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 15:42:38 ID:W3X5HQ5H
市子市子市子
二個
140 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 17:57:42 ID:W3X5HQ5H
依子と多聞でもいいや
141 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 18:08:34 ID:fnrKtEXc
女性陣で出てないのって美浜だけだっけか
加奈江も一応出てない。
>>93-115 まとめWIKIで読んだが最近の投下だったとは!
シリアスでおもしろかったけど「ツンデレのデレ状態ってやつか?」で腹筋割れたwww
( ) イラナイ殻ヲ
( )
| |
ヽ('A`)ノ 脱ギステル!
( )
ノω|
>>56百合や郁子とか
これスレのキバヤシはやたら楽しそうでいいなw
永井も市ちゃんとヤリまくれてうらやましいお( ^ω^)
キバヤシ×ともえまだー?チンチン
市子きぼんぬ
加奈江と脩(幼少)は?
加奈江にはともえだろう
154 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 19:57:56 ID:cDPtvPtX
漁師たちにレイプされる加奈江
>>90 亀だけど乙
ついでに漁師達×加奈江にイピョーウ
>>155 どうもです。でも今回は加奈江じゃないです。
市子・知子・美耶子×恭也
注意事項:ごちゃごちゃします。
あと長いので一旦途中で切ります。今回14レス。
次回は多分また再来週くらいです。ではよろしく。
一
サイレンが聞こえる。
(ああ……またかよ、くっそ)
俺は横になって眼を閉じたまま、耳を塞いだ。
この音だけはどうにも馴染めない。
つーか、馴染めないのはサイレンだけじゃないんだけど。
この村はマジ、普通じゃない。
深夜に森の中でやってた変な儀式に始まって、いきなり発砲してくるゾンビコップ。
頭ん中に入り込んでくる他人の視界。真っ赤な水を湛えた田んぼ。廃墟。
そして―――あの、変な女の子。
(そういえば、あの子は?)
部屋の中から女の子の気配が消えていることに気付き、俺はもそもそと起き上がった。
高校が夏休みで暇してた俺――こと須田恭也は、行きつけのネット掲示板から拾ったネタを頼りに、
この山奥の村へ愛車(マウンテンバイク)で乗り込んだ訳だ。
そしたら村は化け物だらけだし、水は赤くて飲めねーし、
途中知り合った眼の見えない女の子は、ちょー生意気で可愛げねーし―――
とにかく。疲れ果てた俺と、その、美耶子って女の子は一旦休憩する為、
このぼろぼろの民家に這入り込み、ひたすら眠りこけていたのだが――――――
「あの子、眼ぇ見えない癖に、一人で何処行ったんだよ?」
俺は焦りつつも眼を閉じ、意識をゆっくり周囲に巡らせてみた。
これをやると、ある程度近くにいる人間(人間じゃない場合の方が多いけど……)
の、視界を盗み見ることが出来る。
はっきり言ってキモいし、あんまりやってると頭痛と3D酔いで吐きそうになるけど、
まあ、便利っちゃ便利だ。
何故俺にこんな能力が備わったのか。
美耶子に言わせるとそれは『この村が狂っている』からだそうで、それじゃ説明になってないじゃん!
とか思いつつ、村が狂っている件に関しては激しく同意する他無い訳で、えーと―――
「あっ?!」
と、思わず俺は声を上げる。
急にラジオのチューニングが合う様に、明瞭に視界が開けたのだ。
……誰だこれ?
盲目の美耶子の視界なら、真っ暗闇じゃなきゃならない筈なのに―――
「くそっ!」
俺は更に意識を巡らし、美耶子の気配を捜す。
美耶子の視界は、すぐ見付かった。
真っ暗な中の微かな息遣い。幸い、まだ無事らしい。
でもそれもいつまで持つか……
どうやらこの廃屋の何処かに、俺と美耶子以外の何物かが居るようなのだ。
それも、二人。しかもこの状況下、そいつ等が人間である可能性は、相当低いだろう。
俺は傍の火掻き棒を手に取ると、台所の勝手口へと向かった。
美耶子も、その他の奴等も、多分庭に居る。
(美耶子……ばかやろ、無事でいろよ!)
幾ら生意気な女の子でも、やっぱ死んで欲しくは無い。
祈るような気持ちで、俺は勝手口の戸を開けた――――――
二
「知子ちゃん、ここ入れるみたい」
市子ちゃんに言われて、私は廃屋の離れの玄関に足を踏み入れました。
私の名前は前田知子。羽生蛇村中学校の二年生です。
私は昨日、親と喧嘩をして家を飛び出しました。
行く当てなんて無かったけれど、とにかくお父さんお母さんと一緒に居るのが、嫌になったんです。
でもそれが間違いでした。
夜になり私が途方に暮れていると、突然大地震が起こりました。
それ以来、村はメチャクチャになってしまったのです。
まず、村中の水が全部、血のように真っ赤に変わってしまいました。
そして、それを飲んだ村人達は眼から血の涙を流し、
みんなお化けみたいになって襲って来るようになったのです。
お化けに殺された人達はしばらくすると起き上がり、新しいお化けになって襲って来ます。
そうやって、村人はどんどんお化けに変わっていくのです。
そんな中、家を出ていた私は、お父さんお母さんと離れ離れになったまま、
一人きりでお化けから逃げなければならなくなったのでした。
「知子ちゃん大丈夫?」
ぼろぼろにふやけた畳の上に座り込んだ私に、市子ちゃんが心配そうに話しかけて来ます。
私は疲れていたので、黙って頷くことしかできませんでした。
市子ちゃんは村の子ではありません。
住んでいる処や学校を聞いたけれど、私の全然知らない場所でした。
市子ちゃんは最初、フェリーに乗っていたのだそうです。
それが何故、この山に囲まれた村にたどり着いたのか―――
それは、市子ちゃん自身にも判らないらしいです。
市子ちゃんとは、ゆうべ私が一人で村を逃げ廻っていた時、暗い山道の真ん中で出逢いました。
市子ちゃんはお巡りさんに連れられて真っ暗な迷路みたいな処に入り、でも途中ではぐれ、
手探りで何とかおもてに出てさまよっていたら、いつの間にかここにいたのだと言いました。
もっと他にも色々あった気がするけれど、なんだか頭がぼぉっとして、
記憶が曖昧になってるみたいだ、とも言いました。
きっとそれも地震のせいです。
私はそんな市子ちゃんを可哀想に思い、一緒にいることにしました。
……本当は、私も一人ぼっちで心細かったのです。
それから私達は、ずっと一緒に村の中で、お化けから逃げ廻りました。
途中何度も挫けそうになったり、泣いちゃったりもしたけれど、
市子ちゃんと一緒だったから何とか耐えられました。
市子ちゃんはとっても明るい元気な子で、私と違い、お化けに襲われそうになったら
武器を取って立ち向かうこともできる、強い子でもありました。
「元気だして知子ちゃん!知子ちゃんのお父さんお母さんも、無事に決まってるって!
大丈夫だよ、きっと逢える……そう信じよう?ね?」
市子ちゃんは、ずっとこの調子で私を励まし続けてくれました。
市子ちゃんだって本当は、怖くて不安なはずなのに……
「ここにはあの化け物はいないみたいだから。
一休みして元気になったら、知子ちゃんのお母さん達をもう一回捜しに行こう」
なんだか涙が出そうになって、私は俯いたまま「うん」とだけ返事をしました。
三
市子ちゃんと並んで壁にもたれている内に、私は少し眠っていたようでした。
ふと気が付くと、体育座りしていたはずの私は、部屋の真ん中で仰向けに寝転んでいました。
(市子ちゃん?)
薄く眼を開けると、私の横で寝息を立てていた市子ちゃんが、起きて私の顔を覗き込んでいます。
どうしたんだろう?
そう思って市子ちゃんに声を掛けようとして―――私はある事に気が付きました。
私の赤いジャージの前が開けられて、何故か、下に着ていた体操着のシャツまでが、
中央から開いています。
見ると、シャツは何かの刃物で前を裂かれ、広げられているのでした。
何を使って裂かれたのかは、すぐに判りました。
振り上げられた市子ちゃんの右手。市子ちゃんが、化け物を追い払うのに使っていたナイフ――――
私が驚いて固まっていると、市子ちゃんはナイフを私の胸元に当てて、
ブラを真ん中からプツンと切り取ってしまいました。
私は躰をびくっとさせて、市子ちゃんの顔を見上げました。
市子ちゃんは、笑っていました。
その笑顔はさっきまでと同じで優しい、可愛らしい笑顔でした。
それなのに何かが―――何かが違います。
ツインテールに結い上げた髪の毛も、この辺では見かけない白いセーラー服も、
全然変わっていないのに―――――
――――知らない。私……こんな子、知らない!
今眼の前にいる女の子は、外で遭ったお化けなんかよりもっと、ずっと怖いような気がして、
私は、躰が勝手にガタガタ震え出すのを押さえ切れません。
そうやって震える私を見下ろして、市子ちゃんは相変わらずニヤニヤと笑い続けています。
市子ちゃんは笑いながら、手に持ったナイフを、私の震える唇にそっと押し当てて来ました。
ヒヤリと硬い感触に、私は思わず眼を閉じました。
すると、市子ちゃんはクスクスと笑い声を上げ―――今度はそのナイフを、
私の……おっぱいの先っぽに宛がいました。
「う………」
私は、怖さとこそばゆいような感覚に、つい小さな声を出してしまいました。
市子ちゃんは、ナイフで乳首を傷つけたりこそしませんでしたが、
寝かせた刃の腹で、乳首のてっぺんをクニクニと押し潰し、ゆっくりと捏ねまわしました。
そうされている内に―――私はなんだかアソコの辺りがムズムズする様な、
変な感じに襲われていました。
息が荒くなり、眼に涙が溜まって来るのは、怖さの所為だけでは無いみたいです。
「知子ちゃん……乳首とんがってるよ? ふふ、ふふふ………」
市子ちゃんの言う通りでした。
弄くられている私の乳首は、凄く硬く起き上がっていて、
ナイフの腹をピンピンと押し返しているようでした。
市子ちゃんは、暫くそうやって私の乳首を交互にナイフで悪戯していましたが、
やがて、何を思ったのか空いてる方の乳首に唇を近付け、チュウッ、と音を立てて吸い上げました。
「あっ?! やぁん!」
乳首からアソコにかけて熱っぽい感覚が伝わって、私は思わず甲高い声をあげていました。
市子ちゃんは、音を立てながら尚も私の乳首を吸い続けます。
強く吸われる乳首は痛いけれど、なんだか逆らえないような―――
堪らない気持ちよさも、同時に感じてしまいます。
私の乳首を吸っている市子ちゃんの呼吸も凄く荒くなっていて、
首筋の辺りを生温かい風でくすぐります。
なんかゴソゴソ音がするのでそっと見下ろすと、
市子ちゃんは空いた左手を自分のセーラー服の上着の下に差し入れ、
自分のおっぱいを弄っているみたいでした。
四
その時、市子ちゃんの眼がパッと上目遣いに私を見ました。
ばっちり眼が合ってしまった―――と、思う間も無く市子ちゃんのナイフが私の躰の上で翻りました。
――――殺される……!
私は、反射的に眼をつぶりました。
胸の谷間にビリッとした痛み。私は咽喉の奥で「くっ」とくぐもった呻き声を押し殺しました。
眼を開けると、私の胸の谷間に一本の赤い筋が引かれています。
市子ちゃんがナイフで肌の表面を切り裂いたのです。
そして、市子ちゃんは僅かに血の滲んだ傷跡に唇を寄せ―――ベロベロと舐め廻し始めました。
「ひっ?! うぅぅっ」
熱くてヌルヌルとした舌が這い廻る感触に、私は悲鳴を上げました。
――――市子ちゃん……なんでこんなことするの?
私は今にも泣き出しそうになっていました。
それは、自分が酷い事されているからとか怖いからとかいうより、
こんな風に人が変わってしまった市子ちゃんを見ているのが、辛かったからです。
でも市子ちゃんは私とは反対に、凄く楽しそうに見えます。
「あぁ……知子ちゃん……知子ちゃんの血、綺麗……美味しい………ふふ、ふふふふふ……」
そんな事を言って笑っています。
更に、市子ちゃんは私の躰のあちこちに浅い傷をつけては、そこから滲み出る血を舐め続けました。
私の胸元は幾筋もの傷跡で赤く染まり、市子ちゃんの唾液でテラテラと濡れ光っています。
下の方からクチュクチュと音が聞こえたので眼を遣ると、
市子ちゃんの空いた手が、彼女自身の紺のプリーツスカートの中に潜り込み、
その下で―――アソコを悪戯しているのが見えました。
白いパンツの中で指が忙しげに蠢くのを見ていると、何だか私の方が恥ずかしくなってしまいます。
「知子ちゃん」
急に、市子ちゃんがユラリと膝立ちに起き上がりました。
ナイフを持ったまま、もどかしそうにパンツを脱いでいます。
何をするんだろう―――そう思って見ている私を見下ろし、市子ちゃんはナイフを握り直します。
「知子ちゃんの血……もっと見たい……綺麗な血、ピューッて噴き出る処………」
市子ちゃんは、ゾッとするような笑顔でそう言うと、ナイフを高く振りかざしました。
――――あぁ……殺される………!
逃げなければ殺される。
そう思うのに、私の躰はまるで金縛りにでもあったかのように、ピクリとも動きません。
そして――――――
五
いきなり、頭がズキンと痛んだ。
呻いて頭を抱え込む私の掌から、何かが落っこちた。
――――ナイフ?
変に思う間も無く、頭の中に暗い視界が広がった。
場所は、この廃屋の入口の門の辺り。息遣いの感じからすると、女みたい。
「……誰か居るね?」
私は横にいる知子ちゃんに声を掛けた。
知子ちゃんは、私に背を向けてゴソゴソと服の乱れを直していた。
私が肩を叩くと、座ったまんまピョコン、と真上に飛び跳ねた。
「市子、ちゃん? ……市子ちゃん、だよね? あぁ、よかったぁ……」
……なんか意味分かんない事言ってる。大丈夫かな? この子。
「市子ちゃん。もしかしてこれ、化け物が入ってきたんじゃ……」
「わ、分かんないよぉ」
私達がダベッていると、外から雨音に混じって当のご本人の足音が聞こえてきた。
「ねえ市子ちゃん……こっちに来るんじゃない?」
「かもね」
「ど、どうしよう……」
「どうしようって言われても……」
此処に隠れられそうな場所は無い。
でも、足音はどんどん此処に近付いて来てる。
私達は、とりあえず玄関脇の壁の裏側に身を潜めることにした。
此処だったら、入っていきなり見付かることだけはないし。
私は、落としたナイフをスカートのポッケに突っ込むと、窓側の壁を背にして、
知子ちゃんとピッタリ身を寄せ合ってしゃがみこんだ。
「知子ちゃん知子ちゃん。此処に来る人……まさかこの家の人、なんて事はないよねぇ?」
「そ、それはないんじゃないかなぁ……此処、どう見ても空き家だし……
でもよかった。市子ちゃんが、元通りになって」
「元通り?」
と、私が言いかけた処で、玄関の戸がガラリと開く音が響いた。
私と知子ちゃんは、ビクッとなって縮こまる。
(ヤバイ。絶対、見付かるよぉ……)
入口からは見えなくっても、中に入られたらアウトだもん。
私達は、震えながら抱き合った。
そのヒトは、戸を開けたまま玄関のトコに立ち尽くしてるみたいだった。
このまんまどっか行ってくれたら。なんて、淡い期待をしてみる。
だけど――――――
「……居るんでしょう? 出てきなさいよ」
若い女の人の声が言った。
私達は凍りつく。 ……でも声の調子からして、少なくとも化け物で無いのは分かった。
私と市子ちゃんは顔を見合わせた。
――――出てくしかないか。
お互いの眼が頷く。そして立ち上がろうとしたその時――――――
六
「お前も生きてたんだ」
離れの玄関から、少し後ろの方で女の子の声がした。
――――もう一人居たの?
私は咄嗟に意識を巡らし、玄関先に居る方の人の視界を盗み見した。
暗闇の中から、ゆっくりと近付いて来る人影が見える。
それは、私達と同い年くらいの綺麗な女の子だった。
腰まで届く長い黒髪に、黒いワンピース。真っ白な肌に整った顔立ちが、何処か日本人形を思わせる。
私は先に来てた女の人の顔も見ようと思い、お人形っぽい女の子の視界に意識を移そうとした―――
けれど、捕らえた視界は何故か、真っ暗闇だった。
(あれ?)
これ……どういうこと?
私が不思議がっているのと関係なく、女の子は玄関に向かって来た。
そして、先に居た女の人を押し退けるようにして中に入り、私達の居る壁の真裏にドンと凭れ掛かる。
二人は、そうして暫くの間、無言で向き合っているようだった。
「……あんただけ消えればよかったのに」
沈黙を破ったのは、先に居た女の人の方だった。
低く押し殺した声。でも次の瞬間。
「何でこんな事になるのよ!」
壁越しに、ガンッ、と衝撃が襲って来た。
私達の躰がビクン! と震える。
女の人が、持っていた草刈り鎌を壁に突き立てたのだ。
私の鼻先には、壁から突き抜けた鎌の先っぽが飛び出していて、私は思わず顔が引きつってしまった。
こっちはこんなにビビッてるというのに、
顔の真横に鎌を突き立てられた女の子の方は、全然余裕みたいだった。
醒めた声でボソッと何かを言い返している。
私も知子ちゃんも、なんか生きた心地がしない。
そんな二人の言い争いが本格的になり掛けた処で、突然何処かで大きなサイレンが鳴り出した。
「……あんたはさっさと生贄の羊になりなさいよ!」
サイレンの中、女の人の立ち去る気配がした。
「やっぱりね……何も判って無い」
やかましいサイレンの中、壁越しに、妙にはっきりと女の子の独り言が伝わって来る。
もう隠れている必要はなさそう。そう思うんだけど―――
(うあぁ………)
私と知子ちゃんは、この変なサイレンの音が嫌で、向き合ったまま頭を抱え込んでしまっていた。
苦しいさなか、ふと眼を上げると、すぐそこに鎌の切っ先が見える。
その向こう側に、耳を塞いで喘いでいる知子ちゃんの姿。
頭ん中でぐるんぐるん廻ってるみたいなサイレンと共に、赤いジャージがぼんやり滲んで―――
どくん。
躰の奥底で、何か、熱いものが疼いた。
――――やだ、何? これ………
その感覚は、サイレンの音に引き摺られるように段々大きく、段々激しくなっていく。
しゃがんでいる脚の付け根が―――ううん。もっと奥の方にあるあれが―――アソコが、熱い。
全身が脈打って、ガクンガクン揺れている。
何かの衝動が大きくなって―――あああ駄目。もう、我慢できない――――――
揺れて、滲んで、ぐるぐる廻る視界と音に包まれながら、
私は、眼の前に居る赤い女の子の躰にゆっくりと手を伸ばした――――――
七
突然、耳を押さえていた私の腕が、後ろからグイッと引っ張り上げられました。
「きゃっ」と悲鳴を上げて振り向くと、
何と、例の髪の長い女の子が、壁越しに身を乗り出して私の腕を掴んでいるのです。
「早く来い! そいつから逃げろ!」
女の子は、そう言って壁際にしゃがんでいる市子ちゃんから、私を引き離そうとします。
私は、市子ちゃんを見ました。
市子ちゃんは、ギョロっとした上目遣いの眼で私を見上げていました。
異様に白目の目立つその瞳はギラギラ輝いていて―――まるで、凶暴な野犬のようです。
私は、ついさっきまでのおかしくなった市子ちゃんの様子を思い出し、
サッと血の気が引くのを感じました。
私は髪の長い女の子と手を取り合い、離れの玄関を飛び出しました。
振り返ると、市子ちゃんがクスクス笑いながら私達を追って来ています。
手に、さっきのナイフを持って――――――
「早く逃げないと!」
女の子が、私の袖を引っ張ります。私は、戸惑いながら駆け出しました。
今の市子ちゃんは、確かに変になっています。
でも、もしかしたらまた元に戻ってくれるかも……そんな微かな期待が、私の足を遅くしていました。
「こっち!勝手口から中に入って!」
敷地内をぐるっと廻った後、門をくぐって廃屋から逃げ出そうとする私を引き留めて、
女の子は母屋に入るように促します。
「でも……お勝手には鍵が掛かって入れないよ?」
「それは、私達が内鍵を掛けてたから。今は入れる。あいつに追いつかれる前に、急いで!」
「私、達? 他にも誰か……きゃあぁっ?!」
お勝手の真ん前に立っていた私に向かい、勢いよく扉が開かれました。
「お前……!」
「み、美耶、子……!」
戸に押されてよろめいている私を余所に、
髪の長い女の子は、中から出てきた男の子と呼び合っています。
私は、眼を瞬いてその男の子を見ました。
この男の子も、村では見掛けない人です。
歳は私と同じぐらいか、少し上。
格好とか雰囲気が垢抜けてる感じがするので、都会から来た人なのかも知れません。
彼の着ているモスグリーンのシャツの左胸には、銃で撃たれた痕が赤黒く残っていて、
かなり危ない状況を乗り越えて来たことが判ります。
「……君は?」
男の子が私に眼を向けました。
私が、何と返事をしようかと迷っていると、
背後から市子ちゃんの「居たぁ!」という声が響いて来ました。
私と髪の長い女の子は、怯えて後ずさりました。
男の子は、近付いて来る市子ちゃんを怪訝そうに見詰めていましたが、
彼女の手に握られているナイフを見付けると、ただ事ではないのが判ったらしく、
私達を伴い、勝手口に入って鍵を掛けました。
ホッと息を吐いたのも束の間、市子ちゃんは、表からお勝手の戸をバンバン叩いています。
私は、ビックリしました。
市子ちゃんの戸を叩く力は、あの細身からは想像もつかない位に強く、激しいものだったからです。
――――このままでは、戸が壊されてしまうかも。
私達三人は、半ば呆然としたまま衝撃に震える戸を見詰めていました―――――
八
俺達三人は、二階の階段に近い部屋に入り、戸を閉めた。
「何なんだ、あの子は……」
誰にとも無く問い掛ける言葉が、口から漏れる。
勿論、二人の女の子達にだってそんなの判る筈もないんだけど。
あのツインテールのセーラー服は、とうの昔に勝手口のドアをぶち破り、廃屋内に侵入していた。
ヤツの視界を見てみると、なんか歌ったり、意味不明な独り言を呟いたりしながら、
ひたすら一階をうろついてるっぽい。
その行動パターンは、まんま化け物のそれと同じだ。
「市子ちゃんは……化け物なんかじゃ、ないよ………」
悲しげな声で言うのは、前田知子ちゃん。この村で暮らしてた、ごく普通の中二の女の子だ。
この村に来てからというもの、美耶子も含め、どーも一風変わった連中とばかり関わって来たので、
こういう普通少女を見ると正直、ほっとする。
知子ちゃんの言うには、あの市子ちゃんって子は最初はまともだったのが、
いきなり何の脈絡も無く、あんな風に豹変してしまったのだそうな。
確かに、彼女は例の化け物達みたく血の涙を流している訳でもないのだが。
「今鳴ってる変な音……この音が、きっかけになったのかも知れない」
美耶子が、俯いたままポツリと呟く。
俺と知子ちゃんは、言葉も無く顔を見合わせた。
「……市子ちゃん、可哀想。何とか元通りにして上げられないのかなぁ………」
知子ちゃんはそう言うが、彼女を正気に戻す方法も判らないんじゃあ、どうしようもないだろう。
かといって、このままにして置いていいものかどうか――――――
考え込んだら、なんか頭がクラクラして来た。俺は、頭を抱えて畳に座り込んでしまう。
「須田君! ……大丈夫?」
「あぁ平気……ちょい疲れてるだけだから」
……そうは言ったものの、実はさっきっから俺は、自分の躰がだいぶテンパってるのを感じていた。
気力体力共にレッドゾーンっつーか。とにかく力が出ない。
GW明けの、五時間目の古文の授業の100乗。例えるなら、そんな感じ。
「知子ちゃあん……一緒に遊ぼうよぉ………」
階段の下から、市子ちゃんの声が聞こえて来る。知子ちゃんの顔が強張った。
市子ちゃんの狙いは、初めから知子ちゃん一人に絞られているらしい。
なら知子ちゃんだけ此処に残して俺と美耶子は逃げちまえば……なんて悪魔の囁きが脳内で聞こえる。
いかんいかん。
なんとかして知子ちゃんも、そして、出来れば市子ちゃんも助けられる方法を、考えなければ。
でもそんな事、今の俺の力で可能なのか?
悩む時間は、すぐに終わりを告げた。
一階に知子ちゃんが居ない事を理解した市子ちゃんが、階段を上り始めたからだ。
俺は、火掻き棒を握り直して立ち上がる。
知子ちゃんが、不安な顔で俺を見た。
――――市子ちゃんに、酷い事しないで……。
そんな風に訴え掛けてるように見える。俺は、あえてそれをスルーした。
最悪の場合―――俺は、あの子を倒さなきゃならないだろう。
いや寧ろ。
もっと最悪な場合―――倒されるのは、俺の方かも……。
不安と迷いを振り払う様に俺は、火掻き棒を構えて扉の前に立ち塞がった。
小さな足音とクスクス笑う声が近付いて来る。
そして、扉が開かれた。
九
引き戸を開けた途端、細い棒みたいので頭をバチンと叩かれた。
痛っ! ひっどーい。
私はちょっと舌打ちした後、相手の男の子に反撃した。
シュッ、と風を切る音と共に、男の子の首筋が切り裂かれる。うふ。カ・イ・カ・ン。
だけど急所を外しちゃったみたい。血がちょっとしか出ないの。
つまんなーい。
私はもっと血が見たかったから、更に男の子を切りつけようとした―――
なのに、私のナイフは宙で空振りをした。
男の子の躰が、床にくず折れてしまったからだ。
……何こいつ。
たった一撃で倒れちゃう訳? だっらしないの。
私は、男の子の躰を蹴飛ばした。
呻き声を漏らし、彼は後ろの座卓んトコまで吹っ飛ばされる。
部屋の片隅で悲鳴が上がった。 ……居た。知子ちゃんだ。
「あぁ……知子ちゃあん」
私は嬉しくなって、ニッコリと笑った。
傍に居た黒ワンピースの女の子を突き飛ばし、知子ちゃんを押さえ付けて、馬乗りになった。
ふふふ……やーっと、捕まえたぁ。
私は、知子ちゃんの顔を両手で挟み込んで、顔中にキスしまくった。
「ふふ。知子ちゃーん。ねぇ。さっきの続き、しよおぉ……」
震える知子ちゃんの可愛い顔を見ながら、私は、彼女のジャージのジッパーを下ろした。
知子ちゃんのジャージの中には、裸のおっぱいがあった。
私が破いた体操着もブラも、離れに捨ててきちゃったのかな。
それにしても―――ジャージの下が裸って、なんかやらしー感じ。
私は、両手で知子ちゃんのおっぱいを鷲掴み、強く揉みしだいた。
「あぁっ……痛い、いたぁい」
知子ちゃんが、辛そうな顔で首を左右に振る。
ぞくっ。
知子ちゃんの反応に、私は思わず感じてしまう。
あぁ……こうなの? こうすると痛いの? こうすると……もっと可愛い声で鳴くの?
知子ちゃんのおっぱいを苛める毎に、私のアソコはどんどん熱くなってくる。
私は、離れでパンツを脱いでいたので、今ノーパンだ。
だから、知子ちゃんに馬乗りになっている私のアソコは、
知子ちゃんのお腹に直にくっついていて―――
腰をグリグリ動かすと、アソコがモロに刺激されちゃって―――あぁー………………
そんないい処で、私の躰は横から突き倒された。
見るとあの男の子が、私を退かして知子ちゃんを助け起こそうとしていた。
てめ、ふざけんじゃねーよっ!
私は、男の子の脚を引っ張って引き倒してやった。
「うあっ!」
無様にひっくり返った男の子に圧し掛かり、私は思いっ切り首を締め上げる。
傍らで、黒ワンピースが叫んだ。
男の子は苦しげに顔を歪め、私の両腕を掴んで引き剥がそうとしている。
ふふん。そんなんじゃ無理無理。ほらね。ビクともしないでしょ?
私は締め上げる手にもっと力を込め、笑ってやった。
十
「やめて……市子ちゃん、やめてぇ………」
知子ちゃんが、泣きべそを掻いて私に縋り付いて来た。
私は、ちょっとだけ腕の力を緩めて知子ちゃんを振り向いた。
「だぁってぇー。こいつ、私から知子ちゃん取ろうとすんだもん。許せないよぉ。だから殺す」
「だ、駄目だよそんなの……ねぇ、お願い。正気に戻って。お願い」
知子ちゃんの泣き顔を暫く眺めた後、私は男の子を解放してやった。
彼はげほげほ咳き込みながら私から逃げ、後ずさる。
黒ワンピースが心配そうにその背中に手を置いて、すぐに離した。
「……市子ちゃん」
知子ちゃんが、確かめるような眼で私を見詰める。
私は立ち上がった。
知子ちゃん達三人は、まるでお化けでも見るような顔で私を仰ぐ。
そんな皆を見ている内に、私は何だか、むらむらと悪戯心が湧いて来るのを感じていた。
この子達に血を流させるのは、いつでも出来る。
それよりも―――
「ね。あんた達って、付き合ってんの?」
私のとーとつな質問に、男の子と黒ワンピースは面食らった顔をした。
一瞬二人で顔を見合わせ―――ぱっと逸らしてしまう。
……ふーん。
お互い気にはなってるけど、まだそんなに深いカンケーじゃない。みたいな?
「……んなの、今は関係ねーだろ」
案の定、男の子はぶっきらぼうに言い捨てる。
へーんだ。カンケーないならカンケーして貰うもんねーだ。
「でもさー。あんた、この子としてみたいって思ってんでしょ? ……スケベな事」
「何言ってんだよ」
強がって見せる彼に、私はふふふ、と笑い掛ける。
「して見せてよ。今、此処で」
男の子は、ぽかんと口を開けて私を見た。言ってる意味が分かんない、って顔。
私は、更に言い募った。
「だ・か・らぁ。此処でその子と、えっちして見せてって言ってんの。了解?」
男の子は固まったまんま、黙りこくって私を見詰め続けた。
「………何言ってんだよ」
男の子は、さっきの言葉をリピートする。もう。他に言うことないのかよ。
「早く言う通りにして。でないと……殺すよ」
スマイルして私は言った。
「言う通りにすれば、本当に殺さない?」
男の子の後ろから、黒ワンピースが聞いて来た。男の子は、ビックリしたように彼女を振り返る。
笑いながら私は頷いた。もちろん、嘘だけどね。
「判った」
黒ワンピースは、私の方に何処か虚ろな眼を向けて、立ち上がった。
えっ、てカンジで彼女を見る男の子の前で、ワンピースの下に両手を突っ込み―――
中のパンツを、ずるりと下ろした。
男の子と知子ちゃんの、息を飲む気配。
実は、私もちょっと驚いていた。まさか、こんな簡単にコトが運ぶなんて……ね。
そんな私達の驚きを余所に、黒ワンピースはしゃがんで、男の子の方ににじり寄っていく。
そして、仰け反る彼の躰をぎこちなく手で探り、ジーパンのチャックに、手を掛けた――――――
十一
「な……み、美耶子?!」
俺は焦りまくって声を上げた。……冗談じゃねーぞ、おい!
こんな―――今此処で姦れとか、とんでもないコト言い出す市子もアレだが、
それに大人しく従う美耶子もいかがなものか。
俺は美耶子の肩を掴んだ。
「や、やめろよ、こんな……おかしいだろ、こんなの!」
抗う俺に、美耶子は静かな瞳を向ける。
「ううん……こうした方がいいの。お前、もう随分血を流しちゃってるし。これ以上は」
……言ってる意味がよく判らない。
「なっさけないなぁ。女の子の方がこんーな積極的になってんのに」
市子の奴が、後ろから余計な事を言ってきやがる。
「とっとと姦っちゃいなよ! 私も手伝ってあげるからさっ。うふっ……」
市子は俺に背を向けてドスンと跨った。
そして、ジーンズのファスナーを引き下ろし、中のパンツごと、脱がせた。
「きゃあーーーーっ!!!」
市子の黄色い声が部屋に響く。
完全にむき出しにされた俺の……アレを見て、市子が大喜びしているらしい。
俺はなんかもう、死にたくなった。
こんな中坊のガキにされるがまま、こんな―――こんな、屈辱的な姿に。
それも市子や美耶子だけならともかく、知子ちゃんにまで見られて――――――
俺が部屋の奥に眼を向けると、知子ちゃんの気まずそうな眼と合ってしまった。……くそ。
し、しかしあれだほら。この部屋暗いし、懐中電灯一つじゃ、そうはっきりとは見えないに違いない。
それだけが、心の支え―――
「知子ちゃん知子ちゃん! 懐中電灯貸して!
あ、ついでにそこにあるこいつが落とした懐中電灯も取って!! 」
………………。
結局、俺の周りには計三本の懐中電灯が置かれる事となった。
幾ら部屋が真っ暗でも、こうなると結構な明るさだ。
しかも。
きゃーきゃー言いながら俺のを視姦している市子は、俺の胸の上でやたらと跳ねて躰を折り曲げ、
そのたんびにその……奴の、スカートの中身が、丸見えになるのだ。
見ないように見ないようにと思うんだけど、どうあがいても眼がソコに吸い寄せられて―――
あーっ!!! くそ! 何でこいつ……ノーパンなんだよっ???!!!
「あぁー?! なんか、おっきくなってるぅー!!」
市子が、馬鹿でかい声で言う。
「わっ、わっ、やだぁ……ほらほら、知子ちゃんも見てみなよぉ」
更に市子は余計な事を言う。つーか知子ちゃん。何も馬鹿正直に見に来なくていいんだよ……。
「わー、うっそー……見て見てこれ……なんか、脈打ってない? ぴくぴくって。
段々赤くなってきてる………あっ! 起き上がった!! ……凄い。こんなに……
ほら、まだまだ大きくなって………やだぁ……怖ぁい……………」
市子の生々しい実況で、俺はなんだか……妙な気分になってしまう。
見れば知子ちゃんも、いつの間にかえらく神妙な顔で、食い入るように俺のアソコを見詰めている。
美耶子は一見興味なさげだが、俺には判っていた。
中空を彷徨う虚ろな視線は、二人の女の子のどちらかの視界をホールドしているのに違いない。
つまり俺は―――三人の女の子の視界に、恥ずかしい部分を曝け出している訳だ。
あああああ……。
十二
「ね。触ってみたら?」
市子の言葉に、俺(の一部分)は、ビクンと震える。(性的な意味で)
促された美耶子は、ぼんやりと宙を見詰めたまま―――でもしっかりと、俺のアレに手を伸ばした。
「う……」
市子が邪魔で見えないが、どうやら先っぽを、ちょん、と指先で触れられたらしい。
その途端、三人の女の子達が「わっ」と声を上げる。
「今……動いたよね! ね?!」
市子の言葉に、他の二人はうんうんと頷いている。怪奇現象か俺の○○○は。
「わ、私もやってみよ」
言うなり、市子が俺のを両手で掴む。あ………。
ギュッと握り締められる快感に、俺は思わず呻き、眼を閉じる。
市子は、握ったサオをそのままゴシゴシと擦り始めた。なんか……手馴れてる気がする。
こ、こいつ……初めてじゃねーなコラ。と、思ったら。
「なんか……あんまし引っ張ると皮剥けそうだね……」
不安そうな声でこんな事を言う。扱く度に皮が上下に動くのが、珍しいみたいだ。
いや、寧ろそれでいいんだ……なんて言う訳にもいかず、俺はただ、息を潜めて刺激に耐える。
「ねえ、どぉ?気持ちいい?」
いきなり市子が振り返る。俺はとっさに眼を逸らした。
「よくねーよ……もうやめろ」
精一杯、冷静な声を出して言い放つ。
すると市子は、ムキになったように速度を増して扱き始めた。あ、それは………。
市子に激しく手コキをされて、俺は、息が荒くなるのを隠せなくなってきた。
彼女のケツの乗った胸板が上下し、おそらく顔も、赤くなってんだろう。
なんか段々、この気持ちよさに引き摺られるまんま、
どうにかなってしまってもいいような気持ちになってくる。
――――市子が姦れって言い出したんだし……美耶子も、姦るって言ってんだし……。
そんな俺の理性を辛うじて繋ぎとめているのは、知子ちゃんの存在だ。
知子ちゃんは他の二人とは違う。ごくごく普通の、いたいけな女の子なんだ。
――――知子ちゃんを、こんな生々しい、アレな事に巻き込んじゃいけない。
そうだ。人間、辛抱しなきゃならん時がある。
俺は、頭の中で2次関数の数式を思い出すことによって、やり過ごそうと思った。
しかし、何一つとして思い出すことは出来なかった。
「あ……なんか、出てきてる」
掠れた声で言っているのは、知子ちゃんだった。
三人が、俺の股間にグッと顔を近付ける。俺は舌打ちしたい気分だ。
俺の自制の努力にも関わらず、俺の躰は、勝手に事態を先に進めてしまっていた。
市子の柔らかい手で扱き上げられ―――剥き出された先端部分には、女の子達の吐息が降り掛かる。
うわぁ………。
「知子ちゃんも、やってみる?」
市子が、手を上下に動かしながら、知子ちゃんに呼び掛ける。
アホか! 知子ちゃんがそんな事する訳ないじゃん! と、俺が言おうとした時――――――
十三
「う……知子、ちゃん?」
知子ちゃんは、ぼんやりとした面持ちで俺の股間に手を差し伸べていた。
市子が握っている処より少し下―――
ちょうどタマとサオの境目辺りに、遠慮がちな指先が添えられていた。
(と、知子ちゃん!)
俺は混乱を覚え、身を捩ってその手を避けようとした。しかし、市子がそれを許さない。
市子は、知子ちゃんの指先にそっと自分の指を重ねると、
そのまま彼女の手を取って、俺のモノを握らせた。
「うぅ……や、め………」
知子ちゃんの手の動きは緩慢で、擦るというより撫でるといった感じの触れ方だった。
それはまるで、俺を焦らしているようであり、そのもどかしい感覚に、俺は……俺は…………。
「もうちょっと強くして大丈夫みたいだよ」
市子が知子ちゃんの手を上から押さえ付け、強く、激しく扱かせる。
あぁ、と俺は、喘ぐような声を漏らしてしまう。
市子の肩が軽く揺れている。……微かに、笑っているみたいだ。
市子は知子ちゃんにサオの方を任せ、
手を下に滑らせると、毛の中のタマをもにょもにょと弄くり出した。
「袋の中でぐるぐる逃げるのが面白い」なんつって、そこを揉みしだいている。
俺は、「はっ、はっ」と、犬のように息を弾ませた。
全身の血が茹って逆流する感覚に、頭は霞み、視界はぼやける。も、もう、駄目だ……。
膨れ上がった先端から、ツッ、とぬめる液体が零れ落ちるのを感じた。
垂れた我慢汁は茎まで濡らし、彼女が手を動かす度にグチュグチュ恥ずかしい音を立てる。
知子ちゃんはといえば、俺の漏らしたもので手が汚れるのも構わずに、
恐ろしく真剣な眼差しで俺のを見ながら、懸命に擦り続けていた。
その時だった。
汁でぬかるんだ俺の先端に、冷たい指先が舞い降りた。
美耶子だった。
他の二人がする事をずっと黙って傍観していた美耶子が、ぬるぬるになった俺の亀頭に指を這わせ、
掌で包み、ぬるぬるを亀頭にまぶすようにしながら撫で廻している。
亀頭から、ジリジリと焼け付くような快感が根元へ―――そして、腰全体にまで伝わった。
三本もの手が、細い指先が、俺を、堪らなく、メチャクチャに――――――
「うっ……あああっ………!」
真っ白な閃光の塊が、弾けて、飛んだ。
女の子達の甲高い悲鳴と、俺の、くぐもった声が入り交じり―――
同時に、濃くて濁った熱い飛沫が、せり上がるように躰の奥底から押し出され、
ビュッ、ビュッ、と、勢いよく飛び散った。
溢れ出る快感はしぶとく後を引き、俺は眼が廻り、意識が遠退きそうになってしまう。
「……出ちゃったね」
知子ちゃんの、何処かのんびりとしたコメントを聞きながら、
俺は、屈辱に満ちた射精の余韻に深く、深く、沈み込んでいった――――――
……あら13レスでした。ごめん。
あんたは俺にこの悶々とした状態で週末を過ごせとおっしゃるか。
くそぅ!裸でまってるからな!!GJ!
ここのSSはどれもSIRENっぽさを再現しようとしててよいね。
173 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 04:03:41 ID:0KxrmO3u
お前らもうすぐマニアクス発売ですよ
2のマニアックスのカバーは青いらしいけど、2自体はどっちかというと赤いイメージなんだよね。
無印よりも赤いイメージ。
無印は2に比べるともっと渋い、モノトーンなイメージがある。
終わるまでまだかかりそうなんで切りのいい処で一旦投下〜
……次の投下で確実に終わらせるので堪えてつかぁさい!
今回12レス〜。
十四
須田君の出した白い液体は、すごい勢いで天井の方まで飛んで行きました。
私は呆然となり、私の手の中で未だに液体を溢れ出させ、
真っ白に染まっていく須田君のおちんちんを眺めていました。
白い液体はなんだか青臭い、変な臭いを振りまきながら、私や美耶子ちゃんの掌を汚しましたが、
私達は初めて間近で見た男の人の“射精”のすごさに圧倒されていて、全然気にしていませんでした。
「くっそ」と、小さな声が聞こえたので見ると、須田君は、両手で顔を覆っています。
一瞬、泣いてるのかな? と思ってドキッとしましたが、そうではないようです。
けれど、すごい落ち込んでいるのだという事は、なんとなく判ります。
そんな須田君の様子を見て、私は自分が酷い事しちゃったのに気付き、胸が痛みました。
「やーん。前髪に付いちゃったぁ」
市子ちゃんは、相変わらず須田君の上に乗っかったまま、
自分の髪の毛に飛び散った白いのを気にしているようでした。
「知子ちゃんの手も汚れちゃったねー」
市子ちゃんは私の手を取って言います。どうするんだろう? と思っていたら、
いきなりグイッと私の手を引っ張り、汚れた掌を、須田君の顔にくっつけてしまいました。
「きゃあっ?!」
「……っ! やめろ!!」
私と須田君は同時に叫びました。
「お前が出したものだろ? ……こんなに知子ちゃんの手をドロドロにさせて。
知子ちゃんが、可哀想だと思わないの?」
市子ちゃんは私の掌を、須田君の頬っぺたや口元にグリグリとなすり付けながら言いました。
私は市子ちゃんの腕を振り払おうとするのですが、
市子ちゃんの力が途轍もなく強過ぎて、どうしようもないのです。
「駄目ぇ……市子ちゃん、やめてぇ」
私はもがきながら言いました。だって、これでは須田君があまりに可哀想過ぎます。
私が必死になって言った所為か、市子ちゃんは、私の手を離してくれました。
でもその代わり……今度は私の躰に圧し掛かり、首に手を廻して、締め上げて来るのです。
「おい、やめろ! 知子ちゃんを放せ!」
慌てて起き上がった須田君が、市子ちゃんの肩を掴みます。
市子ちゃんは、鼻で笑って言いました。
「ふん。そーんなちんちん丸出しで、なぁにカッコつけてんだか。
大体さぁ、なんで勝手に精子出しちゃうわけぇ? 出していいとも言ってないのに……ソーロー!」
「なっ……! んだとコラ! お、お前があんな事するから……」
「とにかく。ちゃあんとすることはして貰うからねっ」
そう言うと市子ちゃんは、美耶子ちゃんの方にぐるりと眼を向けました。
私から降りて美耶子ちゃんの傍に行き、まじまじとその姿を見詰めています。
「……あんたってホント、めっちゃんこ綺麗だね。
なんかガラスケースにでも入れて飾っておきたい、ってカンジ」
そう言いながら市子ちゃんは、美耶子ちゃんのサラサラした髪の毛を弄りました。ところが―――――
「うるさい馬鹿。触るな化け物」
……美耶子ちゃんの一言で、部屋の中の空気は凍りつきました。
市子ちゃんは少しの間黙り込みましたが、じきに、ニッコリと微笑みました。
けどその笑いはすぐに消え―――美耶子ちゃんの胸倉を、グッと掴み上げました。
私と須田君は焦りましたが、美耶子ちゃんはすごく落ち着いています。
「……私はこれから、あいつと契りを結ばなくちゃならないの。邪魔するな」
美耶子ちゃんは、須田君を指して言いました。
私も驚いたけど、これには、さすがの市子ちゃんも言葉を失ったようです。
でもやっぱり、一番驚いたのは須田君だったと思います。
眼を真ん丸くしている須田君の傍に、美耶子ちゃんは、ゆっくりと近付いていきます――――――
十五
いつの間にか、サイレンは止んでいた。
美耶子が彼氏の傍に跪くと、彼はちょっと物怖じした風に後ずさった。
どーすんのかなー?って見ていても、どーにもならないカンジ。
二人とも、モジモジしちゃってて進展がないの。
あーっっっ! なんかもー、こっちの方がイライラしちゃう!!
私、思わずプッツンきちゃったから、美耶子の後ろに廻って黒いワンピースの裾を掴むと、
バッ、と胸の上まで捲り上げてやった。
美耶子は「うわぁっ」とかなんとか声出してたけど、私は容赦なく、
そのまんまワンピースを引っ張り上げて、バナナの皮でも剥くみたいに、彼女を裸にしてやった。
真っ白な躰が現れたのを見て、彼は、ハッとしたように眼を伏せた。
「なーにビビッてんだよ。これからこの子とえっちするんでしょー? ちゃぁんと見てあげないと」
私は後ろから美耶子のおっぱいを握って、グイッと見せ付けるように持ち上げる。
「あぁ! やだ、やめて……!」
美耶子が暴れる。けど私、許してあげない。
彼女の、小さめだけど形の整った、カッコいいおっぱいを掴んで、揉みしだく。
私の掌の中、花の蕾のように硬いおっぱいが惨めにひしゃげ、ぐにゃぐにゃと変形し続ける。
美耶子は、咽喉の奥で微かに呻いて俯いた。
長い髪の毛が彼女の顔も躰も隠そうとしてたから、私はそれをバッと後ろに払って顔を上向かせた。
私の方を睨んだ美耶子の瞳は、生意気っぽいけどちょっと困ってるみたいな、
おどおどしたカンジにも見える。
私は、そんな美耶子の顎を持って、紅い唇にキスをした。
美耶子は「んっ」と声を上げて、しかめっ面でキスから逃げる。
ついでに私の腕からも逃げようとしたけれど、それは私が許さなかった。
片手で美耶子のおっぱいを捻り上げ、もう片方の手でナイフを出して、
それを彼女の咽喉元に突き付けた。
「だぁめ、大人しくしてなくちゃ……」
私は後ろから抱きかかえた美耶子の膝の間に、自分の両足を突っ込んだ。
そのまんま、脚を両側にパカッと広げる。彼氏が、息を飲んで美耶子の脚の間を見詰めた。
「いや……見るな………」
大事な部分を曝け出された美耶子の辛そうな声。
でも私がナイフを突き付けてるから、背筋を伸ばしたまんま、動く事は出来ない。
私はそんな美耶子がおかしくて、なんか笑っちゃう。
くすくすと笑いながら、私は美耶子の開いた脚の間に手を伸ばした。
丸出しになってるアソコに触れると、美耶子の全身がピクッと震えた。
私は、後ろからソコを覗き込む。
……暗いからあんまし見えなかった。
「知子ちゃん、懐中電灯こっち向けて」
知子ちゃんは、私の言いなりになって懐中電灯で美耶子を照らしてくれた。
相変わらず暗いけど。ていうか、位置的に薄っすら繁ったアレくらいしか眼に入らなかった。
ま、いっか。
私は美耶子の、まだ生え始めって感じのアレの下の、ぴっちり閉ざされた割れ目ちゃんに
指を二本添えて、パクッと広げて見せた。
彼氏は「うわぁ」とか言って眼を真ん丸くする。きっと、すんごい光景が広がってんだろーな。
私は、広げた割れ目の間をちょんっ、と指で突っついた。
柔らかい肉の感触。まだあんまし濡れてない。
そろそろと指を動かして、上の方にある、ちっちゃいお豆を探り当てた。
わ。本当に、ちっちゃい。
この子って、オナニーとかしないのかな? なんか、そんな気がする。
そういうケガレなき美少女にえっちぃ事しちゃうのって、ちょっとドキドキかも。
私は、ひっそりと笑いながら指先を少し舐め、
美耶子のちっちゃいクリちゃんを、そおっと撫で始めた――――――
十六
「うあぁあ……やだ……いやぁぁ」
私が絡めた脚の中で、美耶子の腰が小刻みに震えた。
私の広げたアソコに、彼女の柔らかいお尻の肉がぐりぐり押し付けられちゃって、なんか変な感じ。
「あぁ……や、やめろ……痛い……」
美耶子はぎゅっと眼を瞑って言った。
「痛いー? うっそぉ。ホーントぉ?」
ちっちゃなクリちゃんを指先で押し潰しながら私は聞いてみる。
……ふふっ。でもホントは分かってるんだ。
この子はマジで痛がってる訳じゃない。初めて感じるえっちな気持ちよさに、戸惑ってるだけなんだ。
だから私、ナイフを持ってる方の手を動かして、乳首を指の甲で弾いてやった。
そうしながら、クリちゃんを優ぁしくもみもみして上げるの。
こうすると、すっごく気持ちいい筈。私がオナニーする時も……こんな風にすると、いいの。
暫くそうやってあげてる内に、美耶子の躰から、段々と力が抜けてくるのが分かった。
ぐったりとした上半身が私に凭れ掛かってきて、抵抗感が無くなってる。
もう、暴れたりもしない。
切なそうに息をするたんびに肩が揺れるのと、
私がクリちゃんを刺激するのに合わせて、ピクッ、ピクッと内腿が痙攣する。
今の彼女の動きは、それだけだ。
これだったらもう、ナイフの必要は無いかな。私は、邪魔になったナイフを畳に突き立てた。
私が武器を手放したっていうのに、誰も私に歯向かっては来なかった。
例の彼氏は勿論の事、知子ちゃんまでもが、美耶子のえっちな姿に夢中だ。
私は、ちょっぴりもどかしかった。
だって、私だけが美耶子のアソコ、見れてないんだもん。
その時、顔を赤くしてこっちを見ていた知子ちゃんと眼が合った。
知子ちゃんは、恥ずかしそうに眼を逸らす。
同時に、ふと気が付いた―――あ。そっか。知子ちゃんの眼で見ればいいんだ、って。
眼を閉じて意識を巡らすと、すぐに美耶子の白い躰が真正面から見えた。
どうやら知子ちゃんでなくて彼氏の方の目線みたい。ま、別にいっか。
彼氏の目線から見る美耶子の姿は、想像以上にヤラシかった。
真っ白な華奢な躰の上の方で、プックリと膨らんだおっぱい。唇より少し色見の薄い、小粒な乳首。
そんで、それとは逆に唇よりも濃い紅色に充血している……えっちなアソコ。
私、思わず「あぁ」って、溜息吐いちゃった。えっちぃのは、美耶子の躰だけじゃなかったの。
美耶子の後ろからおっぱいとアソコに手を伸ばして、指で弄くり廻している私の姿。
彼女の細くて長い脚に、私の白いソックスの脚が絡まって………
私は、美耶子の乳首をくりくりと摘まんで、揉んでいた指を彼女の股間の方に動かすと、
桃色のビラビラの両側をパクッ、っと大きく広げて、
最初に比べると倍近く大きく硬く勃起して、コリコリになってるクリちゃんの裏側を、
くい、くい、って指先で押し震わせてあげた。
そしたら美耶子ったら「あはぁ……んん」って、ビックリするくらい、色っぽい声出すの。
その途端。
美耶子のアソコの割れ目の下の方が、キラッ、て光ったかと思ったら、
とろりとした透明な液体が、紅く染まった会陰の方へ、つつぅっ、と零れ落ちた。
「うふっ。濡れちゃったね?」
鼻先で美耶子の髪を掻き分けて、耳元で囁いた。
美耶子は何も答えず、か細い喘ぎ声だけを漏らし続けてる。
私は両手の指で、美耶子のぬるぬるの部分を弄くった。
そのぬるぬるを、彼女の乳首と、クリちゃんに塗りつける。
美耶子の声が裏返り、アソコ全体がヒクヒクッ、と痙攣した。
耳の奥で、獣の唸り声みたいな荒々しい呼吸音が響いてくる。彼の、呼吸音だ。
彼の視界いっぱいに広がっている美耶子のアソコが、恥らうようにヒクリと蠢いた――――――
十七
美耶子のアソコがヒクリと大きく蠢くを見た途端、俺のアソコもビクンと震えるのを感じた。
さっき、あれほど盛大に射精したというのに、俺のはもうすっかり回復し、
前屈みに押さえている腹の下で、ズッキンズッキン脈打っている。
美耶子は市子に背後から絡みつかれ、壊れた人形のようにその身を投げ出していた。
ただ本当の人形と違うのは、市子の悪戯に対し、いちいち躰が反応を示しているトコだろう。
市子が手馴れた手つきで美耶子の躰をまさぐる度、美耶子の内腿の筋はクッと浮き上がり、
紅く血の気が差したアソコも、なんか物欲しげな感じにいやらしく痙攣し続ける。
「あぁっ……い……いやぁ……あぁ、ん」
美耶子の半開きの唇からは、子猫の鳴き声にも似た微かな喘ぎ声が、絶え間なく漏れ、
潤んだ瞳は虚ろに宙を彷徨っていた。
美耶子の紅潮した顔は、これまでのちょっと冷たそうな、生意気っぽい印象とのギャップもあり
かなり色っぽく感じたが、
やっぱそれより何より、全開にさせられてるアソコのエロさが半端ない。
市子に乳首とクリトリスをもにょもにょと弄り倒された所為で、
美耶子のアソコはすっかり濡れてしまっていた。
透明な蜜のような液体で中の粘膜はグチャグチャで、ビラビラも、割れ目の下の方も濡れ光って見える。
溢れ出た汁は糸を引いて零れ落ち、畳の上に十円玉くらいの小さな水溜りを作っていた。
――――超すげぇ……。
市子は、美耶子のアソコから湧き出す汁を指先で掬い上げ、
ひたすらそれをクリトリスに塗りつけ続けていた。
美耶子の後ろから腕を廻してアソコを弄り廻しているその様子は、
二人羽織のオナニーバージョンっつー感じ。
美耶子の髪の影からチラ見えする市子の頬も赤く、その眼はうっとりと閉ざされているっぽい。
やっぱ、こいつが自分でオナる時もこんな風にやってるんだろうか?
……なんて迂闊な妄想をした所為で、余計に興奮してしまった。ま、まずい――――
俺が迂闊な性欲を持て余している眼の前に、美耶子の桃色のアレが迫っていた。
脱力した美耶子の躰がずり下がっているからだ。
俺は、誘われるように美耶子のその部分に手を伸ばし―――そうになったのだが。
「うんしょっ……と」
市子は掛け声と共に、前にずり下がりつつあった美耶子の腰を両手で掴んで引き戻した。
それだけじゃない。
市子は美耶子の細い腰を抱え上げると、美耶子を自分の膝の上に座らせてしまった。
そんで今度は、市子の方が躰をずり下げた。
すると、今まで美耶子の後ろに隠れていた市子の下半身が、前に突き出された。
紺のスカートが捲くれ上り―――市子の、生々しい感じのするアソコが丸出しになる。
俺は、呆気に取られた気持ちでソコをガン見してしまう。
市子のアソコは、美耶子のと比べるとちょっとだけ毛の量が多い気がする。
ビラビラも大き目で色も濃い感じで―――なんていうか、美耶子よりも女臭い……みたいな。
しかも、ソコはずうっと脚を広げていた所為なのか知らないが、
すでにくぱぁっ、と、割れていて、中身が剥き出しになっている。
白っぽく泡立った汁が、ぬめぬめと糸を引いている中身が、だ。
――――こ、これは……。
俺の手は、ほぼ反射的に股間を握り締めていた。
美耶子のだけでも相当ダメージを与えられていたというのに、ここに来てこの二段攻撃はキツ過ぎる。
上下に重なった二人のアレを突きつけられ、俺の思考回路は、ショート寸前になっていた――――――
十八
「ねーえ……私のと美耶子の、どっちがイーイ?」
いきなり、市子が俺に話を振って来た。
市子は殆ど仰向けになった躰を肘で支えて起こし、美耶子の脇腹の横から傾けた顔を覗かせている。
手を廻し、自分のと美耶子のを、同時にパックリと指で広げて見せた。
二人のアソコは勢いよく豪快に広げられた所為で、
今まで柔らかな粘膜に埋もれてはっきりとは見えてなかった、その……穴の部分が、
微かにポツンと開いて見えた。
俺は……ちょっと出てしまった。
「ねえったらあん。どっちがいいのぉ? ちゃんと答えてよぉう」
カチンコチンな上に我慢汁まで出してしまったアレを、Tシャツの裾で必死に隠している俺に、
市子はさらに聞いてくる。
「いや、どっちがいいとか、聞かれても……」
「やっぱこっちのがいい訳ぇ?」
そう言うと市子は、美耶子のクリトリスをデコピンするみたいに指先で弾いた。
美耶子は「ひっ」と悲鳴を漏らし、腰を跳ね上げる。
その拍子に浮いたお尻の中心部の*がチラッと見えてしまい、俺は、なんだか眩暈がした。
「こぉんなトコまで綺麗なんだもんねぇ……なんか、憎らしくなっちゃう」
市子は、更に美耶子のクリを責め立てながら言った。
乱暴に根元からギュッと捻り上げ、ついでに乳首も押し潰す。
「あ……あ、あ…………」
市子の攻撃を受けて、美耶子の腰が、妖しくうねり始めた。
「あれぇ? 乱暴にされる方が感じるんだ? あんたって、SMぽいの好きな人?」
クリを捏ね廻しながら市子は笑う。
美耶子は何も答えなかったけど、堅く眼を閉じた顔が、見る見る赤くなっていった。
アソコの方も―――腿の付け根の辺りまでが充血し、
ビラビラも紅く、心なしか、始めの頃より膨れ上がってるように見える。
市子は脇から顔を出し、美耶子の乳首に歯を立てた。
「うっ……ああっ!」
「ふふっ……やっぱり、ちょっと痛いくらいの方がいいんだぁ。面白―い」
「や……違…………あぁあっ!!」
市子の中指の先が、美耶子の、中に潜り込んでいた。
そのまま親指でクリトリスを揉み、空いてる手はおっぱいを鷲掴みにしている。
こうすると、美耶子のアソコは市子の掌で覆われて殆ど見えなくなってしまうが、
それが逆に市子の手の中の状況を想像させて、余計やらしい感じに思えた。
「……ね。気付いてる? あんたの彼、ずうーっと見てるんだよ? あんたの、えっちな姿……」
市子が、美耶子の耳元で囁いている。
そんなん言われた俺は、焦って奴等の痴態から眼を逸らした。
……が、今さらそんな事しても遅かった。
振り向いた時に、内股でぼんやりと座り込んでいる知子ちゃんと眼が合って、
気まずくなっただけだった。
十九
「ほら……こぉんな恥ずかしいカッコして……クリちゃん勃起させて、
おまんこぐちょぐちょにしちゃってる処も……ぜぇんぶ見られちゃってるんだよ………」
「あぁ、いや…………」
美耶子は、市子の言葉責めに激しく反応しているみたいだ。
市子の腹の上で、しきりにくねらせている尻の動きが大きくなっている。
「ふふふ………もうイキそうなんでしょ? このままイッちゃう?
皆に見られながら、ぐちょ濡れおまんこ丸出しで、イッちゃいたい?」
「いや……いやあぁ…………」
美耶子の切なげな顔が、左右に振られる。
紅く染まった首筋が脈打ち、弾む呼吸で胸が揺れている。
不意に、市子の手が美耶子の股間から離れた。
蜜の粘りついた指先を美耶子の陰毛で拭い、市子は俺を見た。
「お前が、イカせてあげたら?」
唐突な言葉に、一瞬、思考が止まった。
眼の前には、紅く濡れきった美耶子の粘膜が俺を誘うように蠢き、全開になっていて――――――
――――いや、そんなの駄目だ!
俺は欲望を押さえつけようと躍起になった―――が、ふと思い直す。
美耶子はさっき確か、俺と契りを結ぶと言ってなかったか?
それってつまり――――してもいい……って事なんじゃないのか?
気が付くと俺は、ふらりと膝立ちになっていた。
Tシャツの下から青筋立ったものが覗いたが、俺はそれを気に留めなかった。
「お前………」
美耶子が、虚ろに輝く瞳を俺に向ける。
眉を寄せた表情がまたエロいなあ、とかぼんやり思いつつ、
俺は、おずおずと美耶子の胸に手を伸ばした。
「あ………」
触れた途端、美耶子は小さく声を漏らした。
いや、もしかするとそれは、俺の声だったのかも知れない。
美耶子の胸は、見た目に反して結構硬い感触だった。硬い、っつーか、張り詰めてるっつーか。
コリコリと芯のある膨らみを、俺は押し潰さないようにそおっと揉んで見る。
「乳首も弄ってあげなよ。胸だけ揉まれたって、大して気持ちいくないんだよ?」
……判ってるっつーの!
俺は、心の中で市子に言い返しつつおっぱいを持ち上げ、
その先端の薄紅色に色づいた突起に、チュウッ、と吸い付いた。
弾力に富んだ小粒な乳首を口の中に入れ、その先っちょをチロリと舐めてやると、
美耶子は「あぁーっ」と、か細く泣くような声を上げる。
市子が、後ろでクスクスと笑った。
二十
美耶子の乳を吸いながら、俺の手は美耶子の腰のくびれを辿り、一番大事な場所に滑り落ちてゆく。
ぽわぽわした感触の毛を探り、更にその下へ指を這わせると、
柔らかい肉と、その中心の硬くしこった突起にすぐ打ち当たった。
美耶子の汗ばんだ熱い躰が硬直する。
「あ……あぁ、あああ」
俺の指が、蕩け崩れたようになっている美耶子の裂け目に落ち込んで―――
灼熱の感触と共に、奥まった部分の粘膜に、勝手にグイグイ吸い込まれてしまう。
美耶子の匂いと熱気、そして、俺自身の興奮で、視界が蜃気楼みたいに揺らめいて感じる中、
俺は、さっき市子がやっていたように、親指でクリトリスを揉んで見た。
「あっ、あっ、あ………」
美耶子の強張った肢体がワナワナと震え出す。
でもすぐにその震えは止まり、美耶子の躰から、フッと力が抜ける気配を感じた。
そして、紅い唇から感極まった息を吐いた次の瞬間。
「あ…………ああぁあぁ……ああ、あぁぁぁぁあぁぁ………っ!!」
叫び声と共に、美耶子の長い脚がピンと伸び、上体も、市子の躰の上で眼一杯に反り返った。
アソコの穴から脚の付け根にかけて物凄い痙攣が起こり、
俺の指先をモグモグと、まるで歯の無い口のように咀嚼し、飲み込もうとしている。
同時に、その中からは温かい液体がドッと溢れ出て、俺の指から掌までもをビショビショにした。
つまり――――美耶子は、イッたんだ。
「わぁ、すっごいヒクヒクしてるねぇ。それに、ぬるぬるが、お尻の方まで垂れちゃって……
あぁん、私のクリちゃんの上に掛かってるう……
あーっ、美耶子のマン汁で私のおまんこが濡れちゃうぅ」
市子は、未だ絶頂の痙攣に肩を震わせている美耶子のアソコに指を這わせ、
俺の指の周りやら、膨張したビラビラの辺りやらを、ぬるぬるすりすり弄くり廻した。
「うぅ……」
美耶子のイッたばかりのアソコは、市子に嬲られてまた、ヒクつき始めた。
俺は、美耶子のざらざらとぬめる肉襞の中で喰い締められ続け、鬱血してしまった指を抜き取った。
ずるりと糸を引く指で、今度は、俺自身のモノの亀頭を包み、ゆっくりと撫で廻す。
「美耶子……」
呼吸が乱れるのを堪え、俺は、確かめるように美耶子に呼び掛けた。
美耶子は肩で息をしながら、トロンとした眼を少しだけ開き、また閉じて、そして、小さく頷いた。
――――姦 れ る 。
俺の血液も、理性も、みんな俺の勃起したブツに吸収されちまったようだった。
決して、今が非常事態だって事を忘れている訳ではない。
こんな……こんな場合じゃないって事は判ってるんだ。
だけどもう、俺は――――――
俺は、硬直したサオを持ち添えて、美耶子の、開かれた部分にそっと宛がった。
市子が下から手を廻して美耶子の肉の扉を寛げ、中に分け入る手助けをしてくる。
美耶子の入口は、さっきまでの行為の余韻もあってか、柔らかく俺を包み込んできた。
俺は息を吐き、そのまま少しずつ体重を掛け、じわじわと美耶子の中に押し入ろうとした。
二十一
ところが、亀頭の半分ほども入りきらないというのに、美耶子の顔が苦痛に歪んだ。
途中に、凄く堅い窄まりが邪魔してて―――幾ら濡れてても、これじゃあ簡単には入らないっぽい。
「痛いの?」
美耶子の躰を下から支えている市子が、ちょっと心配そうな声で美耶子に問い掛ける。
「………痛くない」
美耶子はそう言うが、その表情は明らかに苦痛を訴えている。
「うそばっか。あんたバージンなんでしょ? 処女膜なんて張ってるから痛いんだよ。だっさーい」
市子は、小馬鹿にした口調で言い放つ。
その態度に、美耶子はちょっとカチンと来たらしい。
横目で市子を睨み付け―――次いで、何故か俺の事まで凶悪な眼で見据える。
「痛くなんかないったら! ……お前、早くしろ……下手くそ!」
……今度は俺がカチンと来た。
同時に、なんだか異様な興奮も覚える。それは何というか――――ある種の破壊衝動というか。
昨日の朝に出逢ってからというもの俺は、
この美耶子から、どんだけこの手の罵声を浴びせられた事だろう?
色々と思い出し、なんか急激に腹が立ってきた。
俺の殺気立った雰囲気に気付いたのか、美耶子の顔が、僅かに怯えの色を見せる。
思わず俺は身震いした。
何故ならその顔が、今まで美耶子が見せた中で、一番綺麗な顔に見えたからだ。
俺は勢いに任せ、美耶子の躰を上からグッと押さえ付けた。
「きゃっ?!」という悲鳴と共に、美耶子は床に押し倒される。
当然、後ろにいた市子は蛙のように押し潰されているみたいだが、ぶっちゃけどうでもいい。
上から見下ろす美耶子の姿は、ますます綺麗で、いたいけな感じだ。
さっきまでとはまた違った興奮に逆上せながら俺は、
下半身を落とし、美耶子の入口をこじ開ける作業を続けた。
「……うぅ!」
呻きと共に、美耶子の表情がくしゃりと崩れる。
脚が気持ち閉ざされ、細い腕が、俺を押し退けようとして突っ張る。
……どうやら、相当痛いらしい。
ちょっぴり可哀想な気がしないでもないが―――でも、今さら後には引けねーし。
「何暴れてんのぉ? 痛くないんでしょー?」
抵抗する美耶子の腕を取り押さえて市子が言う。
窄まった脚も、下から脚を絡めて挟み込み、無理やり大きく開かせる。
美耶子が苦しげに呻いた。
……これってなんか、市子と俺の二人がかりで美耶子を犯しているみたい。
「ちょ、ちょっと、我慢、しろ、よ」
複雑な心境になりつつも、先っぽがムズムズする感覚に耐え切れず、俺はそのまんま腰を押し進めた。
思い切ってググッと突き入れると、唐突に、ラムネの玉押しが瓶の中に落ち込むように、
俺の亀頭が、美耶子の狭い肉壁を貫いた。
「痛……っ! う……うぁあああぁぁぁああぁ……あぁ……ああぁーっ!!」
真っ赤な顔に涙の筋を浮かべ、美耶子が、絶叫した。
全身がヒクヒクと痙攣しているが、これはさっきまでとは違い、激しい苦痛に因るものだろう。
「きゃ、入った? ねえねえ、入ったの?!」
テンション高く訊ねてくる市子の声を聞きながら、
俺は深く、更に深く、美耶子の中に潜り込んでいく――――――
二十二
私の上で、美耶子は堪らない悲鳴を上げ、躰を強張らせた。
彼女の、まさに身を刺し貫かれた苦痛が、密着している私の躰にも伝わってくる。
……なんかまるで、私までがバージン奪われたみたい。
私が押さえ付けてる美耶子の躰は、汗だくで火のように熱い。
私も凄い汗掻いてるから、もう制服がグッショグショ……蒸れちゃってて、もう限界。
そこに持ってきて、彼の躰まで圧し掛かって来るんだもん。
だ・け・ど。
「わっ、わっ、うわぁっ! 本当に入っちゃってるぅー!! やだ、スッゴーイ!!
信じらんなーい!!!」
私は腕を伸ばし、二人の結合部分を触って見た。
美耶子の、薄く引き延ばされた感じの穴の内側。彼のビックリするくらい硬いモノは、
根っこ近くまで埋まっているみたいだった。
私が弄くったからか、二人は共にくぐもった声を上げる。
「……触んなよ」
「何それ。別にいーじゃーん。手伝って上げてんだからさぁ、ちょっとぐらい」
と、文句を言う彼に言い返しつつ、私は、自分の指先に眼をやる。
思った通り、赤い血が、ベットリくっ付いていた。
私がその血をペロペロ舐めていると、突然激しい震動に襲われた。
慌てて見上げると、彼が、物凄い勢いで腰を動かし始めた処だった。
美耶子が「うぎぃ」とかなんとか、変な呻き声を出してもがき始めたから、
私はまた彼女の躰を押さえ込まなくっちゃならない。
彼の方はといえば、こんな私の苦労も知らないで、
美耶子のアソコをおちんちんでズコズコするのに、夢中みたいだった。
「うぐっ……うっ……うぁ、も、もっと、ゆっくり…………」
私の上でガックンガックン揺すられながら、美耶子は、息も絶え絶えにお願いしている。
だけど彼は美耶子の言う事を全く聞かず、自分勝手に、殆ど暴力的に腰を動かし続けた。
「はっ、はっ……あぁっ、はぁっ………」
彼は、マラソンでもしてるみたいな苦しげな呼吸を繰り返しながら、美耶子を姦している。
時折、気持ちよさそうに目を閉じながら―――
グイグイと腰を押し付けるたんびに、彼の額やこめかみからは汗の雫が滴り落ち、
美耶子の白い胸元や、私の腕にまで降り掛かってきた。
眉間に皺を寄せたその必死な表情を見て、私は何故か、カッコいい……なんて思ってしまった。
無性にモヤモヤした気分を吹き飛ばす為、私は美耶子に、初体験の感想を聞いてみる事にした。
「ね、ね、ね! どんな感じ? どんな感じ??? ……痛いだけなの? それとも……
なんか他の感じとかも、あるの?」
でも美耶子ったら、なぁんにも答えてくれないの。
私の言葉なんか全然聞こえないみたいにシカトぶっこいて、
変な喘ぎ声出して顔を皺くちゃにしてるだけ。
「ちょっとーなんとか言えよー。シカトかよー?」
私、ムカついたから美耶子の乳首、ギューッとつねって苛めてやったの。
なのに彼女―――全然、反応しなかった。
反応しないっていうか、なんだか、それどこじゃないってカンジなのかな?
(痛い筈なのに……乳首の痛みなんか気にならないくらい、えっちがキツイって事なのかなぁ?)
そんな風に考えて、私は――――――
美耶子の苦痛を思い、ゾクゾクするような興奮を覚えた。
二十三
やたらと騒がしく茶々を入れてくる市子をガン無視し、俺はひたすら美耶子を姦す。
美耶子の中に納まった時、俺のアレは、ちょっとだけ引き攣れるような痛みを感じたが、
完全に埋没させてしまうともう全然気にならなくなった。
というか、美耶子の感じてる痛みに比べれば、こんなもんは物の数じゃない気もするし。
美耶子の内部の感触を、言葉で表すのは難しい。
まず、物凄く、熱い。
そんで、なんか、中の粘膜が、文字通り、粘りついて来るような―――
それでいて、すげえザラザラしてて、それが、堪らなくこそばゆいような――――――
とにかくそれは、ジッとしていられない焦燥感を俺に催させ、
俺は、殆ど追い立てられるような気持ちで腰を動かし、ソコを摩擦していった。
「あぐ……うぅ…………ううぅっ……くっ」
美耶子は俺に組み敷かれ、痛みに涙を流しながらも、ほぼ無抵抗なまま呻き、
俺に、されるがままに姦され続けている。
下から市子が押さえ付けている所為でもあるんだろうけど――――
やっぱ口じゃ色々言っても、この子は……か弱い女の子なんだ。心底、そう思った。
美耶子は苦しい息の中、俺に、もっとゆっくり動くようにと訴え掛けて来る。
けど俺は、ペースを落とさなかった。
早く終わらせて、美耶子を苦痛から解放してあげた方がいいと思ったからだ。
つーかぶっちゃけ、そんな努力無しでも早々に終了しそうではあったけど。
こんな異常な状況での初セックス。
美耶子の声、匂い、熱、肌触り、そして、そして――――――
気が付くと俺は美耶子の胸に顔を埋め、メチャクチャな抜き差しを繰り返していた。
「…………………………!」
美耶子は最早声も無く、まるで断末魔のように全身を痙攣させていた。
熱を持ったアソコの中は硬直して、俺を、激しく締め上げて――――
特にキツさを増した美耶子の入口に、喰いちぎられそうな感覚に襲われた。
ケツの辺りから、ぞぞぞっと寒気が起こり、アレの根元から、堪えきれない快感が――――――
「う………美……耶…………っ!」
ドバッ、と膨れ上がって、弾ける感覚。
ぬるぬると、それでいて硬く引き絞られた熱い穴に、俺の中から迸り出るものが溢れて零れ出す。
「あぅ……あ………………ぁ」
美耶子の掠れ声が聞こえる。
俺は堅く眼を閉じ、美耶子の腰のくびれに腕を廻して、力いっぱい抱き締めた。
ドクンドクンと、アソコから、頭の芯まで閃光が貫いて――――――
眼が廻るほどの快感に打ち震える俺の肩に、美耶子の嫋やかな手が、やんわりと乗せられた。
彼女も俺と同じく荒い呼吸をしながら―――
でもその呼吸を抑え、何か、独り言を小さく呟いている。
(何を喋ってるんだ?)
眼を閉じて、美耶子の肌に頬をくっつけたまま、俺はその言葉を聞き取ろうとして集中した――――
その拍子に、俺の意識は、後ろにいる知子ちゃんの視界を捉えてしまった。
セックスした後の、俺の後ろ姿。
畳に蹲るような格好で突き出された俺のケツの両脇から、
二人の女の子の白い脚が四本、真っ直ぐにはみ出して見える。
知子ちゃんの視線は、ガックリと脱力した俺の下半身の辺りを、ぼんやりと彷徨っていた――――――
二十四
激しい震動と呻き声が収まり、部屋には再び静けさが戻りました。
でも私の躰は、自分の鼓動と乱れた息遣いとで、未だに揺れ動いています。
美耶子ちゃんが二人にアソコを弄られてイカされ、そのアソコに、須田君がおちんちんを挿れて、
美耶子ちゃんの……処女を奪う様子を、ずっと、ずっと、余りに熱心に見続けていた所為で、
私は……すっかり逆上せてしまっていたのです。
「これは、私の血の盃……」
不意に、大きく息をしていた美耶子ちゃんの唇が、微かに動きだしました。
何か、おまじないの言葉を言っているようです。
――――何て言ってるんだろう?
美耶子ちゃんの言葉を聞き取ろうと思い、私は彼女の方へ、そおっとにじり寄りました。
すると。
「あっ?!」
畳に着いた私の腕を、細い指がギュッと掴んできました。
市子ちゃんです。
市子ちゃんは美耶子ちゃんの下からずるりと這い出し、私の膝元にすり寄って来ました。
「い、市子ちゃん……」
美耶子ちゃんと須田君の下敷きになっていた市子ちゃんは、
まるで、蒸し風呂にでも入っていたみたいに汗まみれになっていました。
結わえていた髪の毛は、ぼさぼさに乱れて、おでこや首筋に張り付いているし、
白いセーラー服の上着も汗でぐっしょり濡れてしまい、
ブラや、赤みの差した肌まで透けて見えるくらいでした。
市子ちゃんの支えを失った美耶子ちゃんの躰は、パタンと音を立てて畳の上に落ちました。
でも美耶子ちゃんも須田君も、そんなことには全く構わずに、
二人だけの世界に入っているみたいでした。
市子ちゃんは、私の膝に躰を凭せ掛けて、私の顔をジッと見上げたまま、
私の脚の間に―――スウッ、と手を伸ばしてきました。
「あぁ…………」
市子ちゃんの指先が、私の、アソコにほんのちょっと触れただけで、ジインと痺れるような、
堪らない気持ちよさがそこに広がりました。
「知子ちゃんのココ、すっごい熱くなってるよ?」
そう言いながら、市子ちゃんの指は私の股間の、柔らかい部分から硬い部分にかけて、
スッ、スッ、と、撫で上げてきます。
――――気持ちいい……もっとやって欲しい……。
私はもう、理性を失くしてしまった状態で、市子ちゃんにされるがまま、
もっと触り易くなるようにと、膝を開いていきました。
市子ちゃんは咽喉の奥で「くっくっ」と笑い、私のアソコをジャージ越しに触ります。
そうしながら私の手を取り、市子ちゃんの―――スカートの中に、導きました。
パンツを穿いていない市子ちゃんのアソコは、びっくりするくらい、濡れていました。
ぬめぬめとした液体は、市子ちゃんの腿の付け根の辺りまでも湿らせています。
私は、自分以外の女の子のそんな処に触れるのは、当然、初めてなので、
違和感と気恥ずかしさで、なんだか居たたまれなくなってしまいます。
でも市子ちゃんは私の手を強引に、自分のアソコに押し付けてきます。
ふっくらと柔らかい、ぬるぬるした割れ目を触らされながら、
私自身の同じ部分は、市子ちゃんの手で弄くられているのです。
私はとても混乱して、訳の判らないほど―――興奮してしまいました。
――――こんなのって……駄目、これじゃあ私達、完全に変態だよ……。
そう思うのに、私の手は止まりません。
市子ちゃんのアソコを割れ目に沿って撫でながら、私の脚は、更に大きく開いてしまいます――――
二十五
「はぁ……あぁ……ああ……ん」「あっ、はっ、はぁう……うぅん」
お互いのアソコを弄り合う内に、私達の息は上がり、やがて、恥ずかしい声が漏れ始めていました。
私の手はもう、市子ちゃんに押さえられている訳ではありませんでしたが、
私は、市子ちゃんのアソコを弄るのをやめはしませんでした。
市子ちゃんは私に凭れ掛かり、横座りの状態で、私のアソコをジャージの上から擦っていましたが、
その手をいきなり、私のジャージのズボンの中に突っ込んできました。
「あぁ………あっ!」
私は、声が裏返ってしまいました。
市子ちゃんの手は、私のジャージの中のパンツの、更に中まで、一気に潜り込んで来たのです。
「わ、すっごい」
市子ちゃんが、驚いた風に言います。
驚くのも仕方ないくらい、私のアソコが濡れて、べっとりとパンツを汚していたからです。
「知子ちゃん、マジですっごいよこれ……信じらんない。知子ちゃんが、こんなに」
市子ちゃんはそんな事を言いつつ、私のジャージのズボンをズルッと下げて、
私の下半身を裸にしてしまいました。
私は反射的に蹲り、アソコをかくそうとしましたが、市子ちゃんはそうさせてはくれません。
強制的に私の脚を開かせ、そして……溢れてしまった部分を、そろそろと撫で廻します。
私は、物凄く恥ずかしくって、逃げ出したいような気持ちになりました。
だけど、市子ちゃんに恥ずかしい事を言われながら、恥ずかしい部分を触られる度に、
私の頭はぼぉっとなり、逆らおうという気は全然起こりませんでした。
そして、私の腰は、市子ちゃんがアソコを悪戯しやすいようにと、勝手に浮き上がってしまうのです。
市子ちゃんの指は、私のアソコの割れ目の下の方の、
ぬるぬるの湧き出ている処をグリグリと掻き廻し、掬い上げたぬるぬるを、
上の方で疼いているクリトリスに、すりすりと塗り付けます
―――さっき、美耶子ちゃんにやっていたのと、おんなじやり方です。
多分これが、市子ちゃんに取って一番気持ちのいいやり方なんだと思います。
判ります。だってこれ……私に取ってもすごく、気持ちいいんです。
穴の処と、クリトリスと、順番に弄られると、すごく、気持ちいいです。すごい、いい、気持ちいい。
気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。ああ。いい。いい。いい――――――
「知子ちゃん。手がお留守になってるよ?」
市子ちゃんに耳元で言われて、私はフッと我に帰りました。
市子ちゃんは赤らんだ顔で微笑むと、膝を立てて脚をM字に開いています。
そうすると、市子ちゃんの真っ白な内腿と、その中心にある、アケビの実みたく割れた、
ピンクのアソコが丸見えです。
「私のも……気持ちよくして…………」
水飴のような液体で割れた中身を光らせながら、市子ちゃんはもじもじとお尻をくねらせて
私を誘います。
「市子ちゃん……」
そんな格好の市子ちゃんを見ている内に、私のアソコは、堪らなく気持ちがよくなってきました。
蕩けるような気持ちよさに耐え切れず、私は眼を閉じ、脚をピンと伸ばして身を仰け反らせました。
「知子ちゃん、もしかして……イッちゃった?」
「はぁ、はぁ……わ、判んない………けど……なんか…………あぁっ」
急激に、私の気持ちのいい部分が、限界を超えた感じになりました。
市子ちゃんが、私のクリトリスを指先でギューッと押し潰したのです。
「ああぁぁぁ……ああ、ああ、あぁー!」
私は咽喉の奥底から独りでに搾り出される声と共に、畳にひっくり返りました。
同時に私のアソコの―――多分、穴の奥から、途轍もない快感を伴った痙攣が起こります。
気付くと私は眼一杯に脚を広げて、アソコを全開にして、全身をビクンビクンと震わせていました。
ぼやけた視線を横に向けると、美耶子ちゃんの黒い靴のベルトと、眩い白さのくるぶしが、
私の鼻先で静かに息づいていました―――――― 【続く】
188 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/03(木) 00:24:51 ID:NLMTfzqv
ほしゅ
二十六
抱き合ったまま、ぐったりと重なり合っている俺と美耶子の後ろから、
女の子達の密やかな気配と、囁き合う声が聞こえてくる。
なんか……お互いに、触りっこを始めたらしい。
(……何やってんだか)
ちょっと呆れたものの、よくよく考えれば、俺だって人のこと言えた義理じゃない。
俺は、美耶子の胸から頭を起こし、その顔を見下ろした。
美耶子はもうすっかり落ち着いた様子で、静かに瞼を閉じている。
一瞬、寝てんのか? と思ったけど、俺の視線を感じたのか、すぐに眼を開いて俺を見上げた。
「…………」「…………」
俺と美耶子は、そのまま暫し無言で向き合った。
「………ごめん」
とりあえず、俺の第一声はこれだった。
ちょっと陳腐な気もしたけれど―――他に言うべき台詞が見当たらなかった。
俺の謝罪に対し、美耶子のリアクションは薄かった。
「何が?」と、そっけなく返し、俺が返答に困っていると、そのままフイッ、と顔を背けてしまった。
俺は気まずくなり、そそくさと美耶子の躰から離れようとした――――――が。
「駄目。もう少し、このままでいて」
俺の肩に置いた手を引き寄せ、美耶子は俺を引き留めた。
「美耶子……」
「このまま躰を合わせるの。私がいいって言うまで。そうしないと、意味が無い」
――――意味?
今ひとつピンと来なかったけど、俺はひとまず、美耶子の言う通りにすることにした。
躰を合わせてはいても、俺のブツは既に小さくなっていて、美耶子の中からとっくに抜け落ちている。
先っぽの部分だけが申し訳程度、美耶子の入口にへばり付いているって感じだ。
トロトロとぬめりを帯びているその入口を、指で探ってみた。
掬い上げた液体を見ると、それは、俺の出した精液だった。
処々赤いものが混じっているのは、おそらく美耶子の血なのだろう……。
「まだ痛い?」
おそるおそる、俺は美耶子に訊いてみる。
美耶子は目を閉ざしたまま、首を左右に振った。
美耶子が顔を動かすと、さらさらと流れる髪が俺の指先をくすぐり、
汗で光る首筋の辺りから、何とも形容し難い“美耶子の匂い”としか言い様の無い香りが漂ってきて、
俺はなんだか、胸が締め付けられるような切ない気持ちに囚われた。
耐え難い衝動に突き動かされ、俺は、美耶子の唇にキスをした。
美耶子は少し驚いたらしく、一瞬、身を堅くしたが、抵抗はしなかった。
そんな美耶子の柔らかな唇をほんの少しだけ味わい、俺は唇を離した。舌は挿れなかった。
そして、美耶子の華奢な肩をギュッと抱き締める。
――――経緯はどうあれ、俺はこの子を……抱いたんだ。
しみじみとした感慨に耽りつつ、俺は美耶子の胸元に頬を寄せた。
しかし、まったりとした時間はそう長くは続かなかった。
美耶子の匂いに包まれて、うとうとしかけてた俺に、美耶子が、とんでもない事を言ってきたからだ。
「……え? み、美耶子? あの、今なんて…………」
思わず聞き返したのは、美耶子の発言があまりにとんでもなかったからだ。
だが美耶子は、その言葉を平然と繰り返した。
「だから。他の二人にも……同じ事をして。さっき私にやったのと、同じ事」
二十七
「ああぁぁぁ……ああ、ああ、あぁー!」
知子ちゃんがえっちぃ声と共にひっくり返ると、開いた脚の間で、
お尻の穴がどくん、どくんと収縮するのが見えた。
多分、アソコがケイレン起こすのに合わせてお尻の穴も引き攣れてんだと思う。
――――あぁ、すごぉい…………。
知子ちゃんのえっち過ぎる姿を見せ付けられて、
私、もうほとんど自動的に、自分のアソコに手を持ってっちゃってた。
だって、知子ちゃんってば私のココ、あんまし触ってくんないんだもん。
私のアソコはもう、ただ事じゃない、って感じの濡れ方だ。
内腿からお尻の割れ目から、びしゃびしゃになっちゃってるその中心の、
とっくに限界を超えた部分を指でクチュクチュやってみるけれど、こんなんじゃ、全然治まんない。
(あーん、もっと気持ちよくなりたいよぉ)
私は制服の上着を捲り上げ、ブラをずらして乳首をクニクニと押し潰した。
そして、アソコの中には、指を……。
今まで、オナニーで指なんか挿れたこと無かったけれど、こーでもしなきゃもう、疼いちゃって……。
知子ちゃんは、紅く染まったアソコを私に見せてひっくり返ったまんま。
両膝を立てて……濡れて光ったビラビラが、だらしなく開いて……。
もう。なんて格好してるんじゃ。
私をこんなに興奮させて……いけない知子ちゃん。お仕置きしなくっちゃ。
私、アソコを弄くりながら、さっき畳に突き立てたナイフを取る為、美耶子と彼氏の傍に這い寄った。
知子ちゃんの血を全身に浴びるの。
だってそうでもしなきゃ私、おかしくなっちゃいそうなの――――――
なのに、ナイフを取ろうとした私の腕を、例の彼氏がいきなり捻り上げた。
「何すんだよっ!」
私は彼の手を振り払おうとした―――けど、一瞬早く彼の膝が、私の脚の間に割り込んだ。
「あ……あぁんっ」
熱くグズグズに蕩けちゃってた部分が、膝に直で刺激される。
それだけじゃない。
彼は私の両手首を真一文字に床に押さえ付け、上から、私の躰に圧し掛かって来る。
……ちょっと。何するつもりなの?
私、なんだか怖くなって、彼の躰を跳ね飛ばそうとした。
でも、駄目だった。
どうしてだか分かんないけれど、彼はさっきまでとは比べ物にならない強い力で、
私の力を押さえ込んでしまっていた。
必死になってもがいて見るんだけど、駄目。彼の事、引き剥がせない。
「大人しくして」
焦る私のおでこに、冷たい掌が、まるで宥める様に置かれた。
いつの間にか起き上がり、私の隣に座っていた美耶子が、どこか虚ろな眼で私を見詰めていた。
「……こうするしかないの。このままだとお前、完全に化け物になっちゃうから」
なんか、意味分かんない事言ってるし。
「な、なあ美耶子。ホントにこれで、こいつ、まともに戻るのか?」
彼氏が、少し戸惑いがちな声で訊いている。
「……判んない。もしかすると、無駄な事なのかも知れない。でも……」
美耶子は私を見詰めたまま、淡々と答える。
「他にどうしようもないから。今は、私の言う通りにこいつと……契りを結んで」
二十八
「契りを結ぶって……何? ……ヤダ、分かんなぁい!」
私は軽くパニクって大声を上げた。何? それって私とこの子で、エッチしろって事?!
ていうか、普通、自分の彼氏にそんな事言う???
なのに彼ったら。美耶子の言いなりになって、私のアソコに、腰を押し付けようとするの。
「あぁ、いやぁ」
私は脚を躰に引き寄せて、彼のお腹にドスドスと蹴りを入れる。
「ぐえ」とか言う呻き声と共に、彼の躰が少し離れる。やったー。
「……いきなりじゃあ、駄目なんじゃないかなぁ」
後ろの方から知子ちゃんの、のーんびりとした声が聞こえて来る。
「あ、あの、さっき美耶子ちゃんにしてあげたみたいに、その……ぜ、前戯とか、ちゃんとした方が」
と、知子ちゃん………………裏切り者ーっ!!!
彼と美耶子は、あーなるほどね。って感じに頷き合ってるし……もぉっ、信じらんないっ!
私、これからどーなっちゃうの…………?
「…………」
今、私の両腕は、二人の女の子にがっちり取り押さえられている。
右手は美耶子。左手は知子ちゃん。
「ごめんね、市子ちゃん」
知子ちゃんが、申し訳なさそうに謝ってる。ふんだ。そう思うんだったら、手ぇ放してよぉ。
「手、放しちゃ駄目だよ。こいつ、きっと暴れ出すから」
美耶子のヤツがいらん事を言う。もー、ほんっと意地悪なんだから。
と。
「………いやっ?!」
やけに胸元がスースーすると思ったら、
女の子達にガン飛ばしてる私の制服の上着を、彼氏がずり上げていた。
ブラジャーもベロンと捲り上げられちゃってて、おっぱいが丸出しにされちゃってる。
いやーん。
「気付くの遅せーよ」
なんて事をのたまいつつ、彼は私の両おっぱいをむんずと鷲掴み、むにゅむにゅと揉みしだいた。
……あ…………んっ。
彼に揉まれるたんびに、胸の谷間を赤いスカーフにさわさわとくすぐられて……なんか、変な感じ。
更に彼は、おっぱいの頂点にある乳首を、親指と人差し指で摘まんで、くりくりと転がした。
「あっあ……やぁ……ん」
おっぱいからアソコに向かって、ビリッと電流が走る。
ポーッと顔に血の気が上って来て、なんだか、力が抜けちゃう。
摘み上げられ、ピインと勃起してしまった乳首に、彼は唇を寄せて、吸い付いた。
まるで、赤ちゃんみたいに。そして、口の中で素早く舌を動かして、チロチロって……。
あぁー……こんなのって…………。
なんだかジッとしていられなくて、私は激しく身を捩った。
「……そろそろ下の方、いいんじゃないかな?」
私が、アソコの疼きに耐え切れなくなってきた辺りで、知子ちゃんが声を掛けてきた。
彼は私のおっぱいから唇を離し、プリーツの裾を持ってスカートを捲った。
あぁ……。
おへそから下全部が、彼の眼の前にマトモに晒される恥ずかしさで、
私のアソコは、勝手にヒクヒクしてしまう。
それがばれちゃったのか、お腹の下の方で、彼の、固唾を呑む気配がした。
そして―――彼の指先が、私の、一番敏感な部分に、そっと差し伸べられた――――――
二十九
「うっ……あぁぁあぁぁぁあぁっ…………!」
彼の指先は、私の尖りきったクリちゃんをギュッと押し潰した。
その途端、私の躰のずーっと奥の方で、何かのスイッチが入っちゃったみたい。
私の眼一杯に広がった両脚は、少し浮いた状態のまま真っ直ぐに伸び、
運動靴の中の足の爪先までが、クッ、と突っ張って、プルプル震えている。
アソコの気持ちよさは、MAXに達していた。
クリから、穴から、腰全体、躰全体にまで恍惚の波が押し寄せて来る。
私はその中で溺れ、喘ぎ、魚の様にのたうち廻った。
「はあー……はあー…………」
「市子ちゃん……イッちゃったの?」
知子ちゃんの問い掛けに返事も出来ず、私はただ、掴まれてる手をギューッと握り返すだけだ。
イッちゃった……確かに、それはその通り。だけど――――――
「あ……ん。も……と…………もっ、とぉ……ん」
私のアソコの奥のウズウズは、未だ全然治まってなんかないんだもん。
溢れ出た液体でぬるぬるするお尻を蠢かせて、私は彼に、続きをおねだりした。
彼は私のクリの感触を確かめるように触れながら、黙って私の躰を見下ろしてるみたいだった。
――――焦らさないで……。
私は脚を伸ばして彼の腰に絡め、彼をもっと引き寄せようとした。
「あっ……お、おい」
私の上に倒れ込みそうになった彼は、慌てて両腕を、私の躰の両脇に突いて持ち堪える。
そして、そのまんま固まった。
何やってんだろうと思って見上げてみたら、彼、なんか気まずそうな顔して美耶子の方を覗ってた。
美耶子に眼を移すと、彼女は彼女で、すごいジト眼をして彼を睨み付けてる。
「み、美耶子……あの」
「……いいから。早くやれば?」
彼のビビリ入った言葉を素っ気なく遮り、美耶子はツンと顔を背けた―――なんじゃそりゃ。
シットなんかすんなら、やらせなければいいのに……。
とは言うものの、ここで止められても、まあ、私が困っちゃうけど…………。
美耶子に軽く苛められつつも、彼は覚悟を決めたようだった。
自分のおちんちんを持ち添えると、もう一方の手で私の濡れたアソコを広げて、そこに、宛がった。
あ……ん。
さっきまで、美耶子のロストバージンを傍観する立場だった私が……こんなこと、されちゃうなんて。
――――ああ、私もとうとう、大人の階段をのぼるのね…………。
なんて感傷に浸る間も無く、彼のおちんちんは、私のアソコにズコッと這入りこんで来た。
「いぃっ?! 痛! 痛たたた……いったーい!!!」
一瞬、何かの間違いじゃないかって思うくらいの痛みが、私の入口を襲った。
痛みで私の脚は窄まり、知子ちゃん達の手を握る力が強くなる。
「我慢して。すごく痛いのは、最初だけだから」
「市子ちゃん! しっかり!!」
美耶子と知子ちゃんが、手を取りながらそれぞれに私を励ましてくれる。
なんか、お産みたいってカンジ。
彼は痛がる私の腰を押さえ、一息に、私の中へと潜り込んで来た。
三十
「うっ……ああぁーんっ!!」
割れ目を引き剥がされる痛みと、なんか、中を圧迫される様な、鈍い違和感が私を苛む。
「うぅう」って、変な呻き声が聞こえると思ったけれど、それは、私が無意識に出している声だった。
彼は、私の股間に腰を押し付けてしまうと、「ふぅっ」と大きく溜息を吐いた。
そして「痛いか?」って、落ち着いた声で訊いてくる。
なーんか、余裕かましちゃってんの。
美耶子ん時は、もっと、すごい勢いでズコズコ姦りまくってた癖にぃ。
私、彼の顔を見上げて、首を横に振ってやった。
ホントは未だちょっぴり痛かったけれど……そう言っちゃうの、なんか悔しい気がして。
そしたら彼ったら。真に受けて、グッと腰を押し付けて、私のアソコ、思い切り突き上げた。
「うあぁっ! ああんっ!!」
ぶっ飛んじゃいそうな衝撃をお腹の奥に受けて、私、思わず悲鳴を上げちゃう。
それほど痛い訳じゃあ無いんだけど……なんか…………。
私は、彼と繋がった部分がどうなってるのか見たくなって、
眼を閉じ、意識を巡らせて彼の視界を覗いて見た―――けど、繋がってる部分は、全然見えなかった。
彼の目線は、私の半開きの口元とか、捲れ上がったセーラー服の下のおっぱいとかの辺りを、
ぼんやり漂っていた。
肝心の部分は見えないけれど、私自身の、紅潮して少し苦しげな顔や、
彼の動きにつられてふるふる震えるおっぱいなんか見ていると、ムショーに変な気分になっちゃう。
――――私、彼の眼からはこんなにエッチく見えるんだ……。
躰の芯が、カァッと熱くなるのを感じたかと思ったら、アソコのぬるぬるの量が急激に増えたみたい。
彼が抜き差しするたんびに、ぐちゅっ、ぐちゅって、ヒワイな音が響いてくる。
「うっ、はっ、はぁっ」
彼は息を弾ませながらリズミカルに腰を動かし、私のアソコにおちんちんを出し挿れする。
私は、なんだかよく分かんないけれど、頭も躰もボオッとなって、
段々と、これ、カイカン? みたいな感覚を、感じつつあった。
その内なんとなくジッとしてるのがもどかしく思えてきて、私は彼の動きに合わせ、
お尻を上下に動かしてみた。
押して。引いて。押して。引いて。
アソコの入口がちょっと傷んだけれど―――こうした方がクリちゃんにも刺激を感じられて……いい。
それにこれ、彼に取っても、イイことみたい。
私が動き出した途端、彼の呼吸は切迫した、切ない感じになってきた。
「はぁっ……あぁん、ね、ねえ、気持ち、いい、のぉ?」
訊ねる私の声、小刻みに震えてる。
だって、私だって、なんだか……ああ。いやぁ、分かんなぁい…………。
三十一
「気持ちいいんでしょ? 私の時より……よさそうな感じの光に見える」
美耶子の冷ややかな声。
「な、なんだよそれ……あっ、くっ……」
彼ははっきり答えないけど、すっごく感じちゃってるんだってのは、その表情や息遣いから分かった。
私も、そんな彼に負けないくらいに大きく息を弾ませながら、
お尻を振って彼のおちんちん、アソコで扱いてあげちゃう。
そうする内に、彼の呼吸はますます激しさを増して、殆ど喘ぐ様な声になって、
その動きも、でたらめな、いっそう乱暴なものになっていった。
そんで、苦しそうに呻きながら、いきなり、ガバッと私の躰に抱きついて来て。
「ああぁっ! あん、あ……あっあっあっ」
「はぁっ、はぁっ、うっ、はぁっ」
私にしがみ付いて、おっぱいに顔を擦り付ける彼に揺さぶられ、私、もう、壊れちゃいそうに、
ああ、ああ、あああああ………。
そして――――――
「うっ……うぅ…………うおぉっ!」
彼は、一際大きな呻き声を上げた。
彼の、意外と逞しい腕が、私をきつく抱き締めて、息が詰まるくらい、強く――――
おっぱいも押し潰されて、あぁん、駄目、そんなにしたら、あばらが折れちゃう――――――
「あ、あ、あ……!」
アソコの奥が、じわっと熱いもので満たされる感覚が広がって、私、気が遠くなりそうに――――――
いつの間にやら自由になってた両腕を彼の背に廻して、私は、思い切りしがみ付いて声を上げた。
ああん、熱い。熱い。アソコの奥が……熱いよおぉっ!
「いやっ……ああぁあああぁあああぁぁぁんんん!!!」
――――ぼんやりとした意識の中、私に挿し込まれた彼のおちんちんがドクンドクンと波打ち、
それが次第に静かに、緩やかに収まっていくのを感じていた――――
気が付くと、私も彼も、荒い息と汗に塗れて、ぐったりと折り重なったままでいた。
「……暫く、そのままでいてね」
暑苦しく動物じみた姿の私達の上から、美耶子の涼しげな声が降り注いでくる。
私は、霞む眼を彼女に向けた。
美耶子は、落ち着いた表情で私と彼とを見下ろしていた。
相変わらず、その目線は何処か虚ろだったけど……。
美耶子はその虚ろな瞳を私に向けたまま、指を伸ばし、私の頬を辿って唇に触れた。
「今、どんな感じ?」
どんな、って訊かれても……。
私、なんだか気恥ずかしかったから、美耶子から眼を逸らして、「分かんない」って答えた。
「未だ、私達を殺したいと思ってる?」
私は宙を見据えたまま、美耶子の言葉を頭の中で反芻した。
アソコのウズウズがなんとなく満たされた所為か、
今、“血を見たい”っていう強い衝動はあんまり感じていない。
――――だけど……。
三十二
はっきり言って、よく分かんなかった。
フェリーの貨物室で、独りぼっちで眼を覚ましてから、
信じらんないくらい、怖い出来事ばかりに遭って来た所為なのか―――
私の感覚はずっと、何処か麻痺しちゃってるみたいなの。
外で襲って来た化け物達と、此処に居る美耶子達とに、大した違いがあるように思えなかったし、
もっと言うと、その生き死にだって、あんま大した問題では無いように思える。
たった今、私がバージンを捧げたこの男の子の命だって…………。
でも私、何でこんな風な気持ちになっちゃったんだろう?
化け物達はともかく、同じ人間である美耶子や、
友達になった知子ちゃんの命の事さえ、何とも思わないなんて――――――
私が考え込んでいると、視界の端に、鈍い光がチラリと差し込んで来た。
何だろう? そう思って首を傾けると、美耶子が、私のナイフを拾って持ち、
それを、自分の口元に向けている処だった。
(……何してんの?)
開いた唇から、ピンク色の舌を少しだけ覗かせると、その先端を、ツッ、と傷付けている。
「美耶子? 何やってんだお前?」
彼が、ビックリした声で美耶子に問い掛ける。そりゃそうだよね。
美耶子は、ピンクの舌先から真っ赤な血を滲ませつつ、彼に顔を向けた。
「お前。もういいから其処を退いて」
美耶子に肩を押されて、彼はゴソゴソと私の上から降りた。
離れる時、私のアソコから抜け出たおちんちんの先から、凄く長い粘液の糸が伸びていた。
白く濁ったそれは、彼のだか私のだか分かんなかったけれど―――
なんかスゴイなぁって、他人事の様に思ってしまった。
離れた彼と入れ替わる様に、裸の美耶子が私の躰に覆い被さって来る。
……何するつもりだろ?
と、不思議に思っていたら、美耶子ってば、いきなり私の……アソコに、顔突っ込んでキスして来た!
「ひぃやぁあ?!」
私、驚いちゃって、悲鳴と共にぴょこんと両脚を上げてしまった。
「な、何、何、何でっ???」
「動かないで」
私のお股の間から、端整な顔を覗かせて美耶子が言う。
「……私だって、こんな事やりたくない。でもやっぱり……
お前には、直接血の盃をあげないと、駄目みたいだから……」
――――血の、サカズキ??
「何それ?」って私は訊いたけど、美耶子はそれっきり口を噤んだ。
っていうか。
彼女のおクチはその、私の股間で、別の作業を始めようとしてて…………。
「あ……っく!」
美耶子の生温かい吐息が、私の半開きのアソコに降りかかる。
――――やぁん。こ、こそばいよぅ……。
私のアソコの入り口は、処女膜破られた痛みを残し、未だジクジクと疼いている。
美耶子の唇は、舌先は、その傷を癒す様に優しく、ひたすらに優しく、舐め廻し始めた。
三十三
「あっ……あぅ………うぅ、ん…………」
美耶子の舌は、私の割れ目を掻き分け、痛みの中心―――多分、処女膜の破れた痕―――
ソコを、丹念に辿っているみたいだった。
彼女が舌を滑らせる度に、痛痒い様な、奇妙な快感が伝わってくる。
それは、さっきのセックスみたいな、躰の中を突き廻される嵐みたいな行為とは正反対の、
労わりと慈しみに満ちた行為に感じられた。
――――ああん、こんな……まさか美耶子が、こんな事するなんて……。
私のその部分は彼との行為の名残を残していて、
流した血やら、愛液やら、彼氏のザーメンやらで、ぐっちょぐちょに汚れてる筈。
そんなバッチイ処を、あの綺麗な美耶子が、舌で……こんな…………。
私、なんだか異様に興奮しちゃって。
「あっ、あっ」って、勝手に出ちゃう声も、さっきの時よりも甲高く、甘える感じになっちゃう。
でも、私にそんな事してる美耶子の方は、冷静なもんだった。
「そうモジモジしないで! 少しジッとしてられないの?」
「だ、だってぇ……あん、あぁん…………」
蕩ける様な舌の這い廻る感覚に、私は酔い痴れてしまい、躰が独りでにくねるのを抑えられやしない。
美耶子の細い指が、私の腰を掴んだ。
しっとりと湿った柔らかな指先は、案外強い力で私の脇腹を抑え、
同時に、舌の動きが素早さを増したような気がした。
――――あっ、駄目……。
それまで、何処か遠慮がちにというか、嫌々舐めてる感じだったのが、
それを機に、一気に大胆且つ、積極的になった。
「あむ……むぅ、んむ……」
アソコんとこから、一所懸命に舐めまくる美耶子の息遣いと、
唇や舌の奏でる隠微な音が聞こえてくる。
私、だんだん躰がフワーッ、としてきちゃって――――――
「あぁん、あん……はぁん…………あぁ、いい、すごい……すごぉい…………」
腰の辺りがザワザワすると思ったら、いつの間にやら美耶子の手が、
私の腰から脇腹の処を、そぉーっと刷く様に撫で廻しているのだった。
ぞわっとサブイボが出る―――でも、堪らなく気持ちよくて――――――
「ああぁぁー…………」
私の腿は、私をこんなにしてしまった憎らしい美耶子の頭を、ギュウッと挟み込んで、締め上げた。
「うぐっ……」
美耶子の小さい顔は、より一層私のアソコに押し付けられる。
せっかく美耶子が舐めてキレイにしてくれたのに、
もう新しいお汁に塗れてしまっているアソコに――――――
すると。
さらさらな前髪の下の切れ長の眼が、一瞬私を見上げたかと思うと、
舌が、私の入口から中に、ずるりと潜り込んできた。
――――あ…………。
えぐる様に、激しく掻き廻して――――
唇に包み込まれて―――鼻の頭が、クリちゃんを、くすぐるみたいに――――――
「あっ、くうぅ……はぁあぁぁ……っん」
躰が仰け反る。ひくひく蠢く。
溶けて流れる蜜のような恍惚に揉まれ、私、喘ぎながら身悶え、感電しちゃったみたいに、
ただひたすらに痙攣を繰り返してた――――――
三十四
美耶子ちゃんが、市子ちゃんのアソコ―――舐めてる。
私はその様子を、ただぼんやりと眺めていました。
私は下を脱いだまま、両手でアソコを隠して座り込んでいました。
……いいえ。本当は、アソコを隠しているのではありません。
私は、美耶子ちゃんに舐められている市子ちゃんの姿を見ながら、
自分でアソコ、弄ってました。
すごく硬くなり、小さなおちんちんみたいに、尖がってしまっているクリトリスを捏ねくり廻し、
その下の、ぬめぬめと溢れかえった部分を、なぞる様に指で悪戯します。
息を殺し、俯いて逆上せた顔を隠しながら――――――
私がそんな風にこっそりと自分を慰めるのは、
私の前で市子ちゃん達を見ている須田君が、気になるからです。
須田君も、私と同じように二人の行為をぼぉっと眺めていて、私の方は見向きもしません。
それを幸いに、私は興奮し、火照ってどうしようもなくなってしまった躰を、
なんとかして鎮めてしまおうと、しきりに指を動かし続けました。
美耶子ちゃんの小さい頭は、市子ちゃんの太腿に巻き付かれ、
無理やり、アソコに押し付けられてるみたいです。
市子ちゃんの白いソックスの脚に、美耶子ちゃんの長い黒髪が絡まって。
その髪の下の真っ白な、剥き出しのお尻が、身悶える様に動きます。
(美耶子ちゃん……息、詰まっちゃうんじゃないの?)
そんな心配が、頭を過ぎります。
でもそんな状態の中、美耶子ちゃんはめげずに市子ちゃんのアソコ、舐め続けてるみたいでした。
そして――――――
「あっ、くうぅ……はぁあぁぁ……っん」
市子ちゃんの一際大きい声と共に、その躰が、グウッと伸びて、反り返りました。
捲り上げたセーラー服の下の乳首がピンと勃ち―――
美耶子ちゃんの頭を締め上げる脚が、わなわなと震えているのが判ります。
(市子ちゃん……すごい感じてるんだ…………)
市子ちゃんが、喘ぎながらびくんびくんと躰を震わせる有様を見ていると、
私のアソコもどんどん気持ちよさが増していくみたいです。
私はもう、内股で、アソコを隠しながらこっそり弄るのでは物足りず、
脚をM字に大きく広げて、思いっきり激しく、クリトリスをまさぐることにしました。
(どうせ誰も見てないんだし……これぐらい)
アソコを眼一杯に広げてオナニーした方が、何故だか気持ちがいいんです。
私は、全部丸出しになっているアソコのびらびらを、更に指で押し広げ、
ずきんずきんと脈打ってる感じがする穴の部分を、指先でぐりぐりと弄り廻しました。
――――あぁっ……いい、気持ちいい、オナニー……気持ちいいよぉっ!
息が乱れてきます。
理性が消し飛んで―――市子ちゃんのいやらしく悶える姿を見ながら、
私は、すごく恥ずかしいオナニーを、すごく恥ずかしい格好でやりまくります――――――
三十五
私が見詰める中、市子ちゃんが、自分の胸を、うっとりと撫で廻し始めました。
乳首を中心に、両手で、優しく――――――
見ている内に、私も乳首の快感が欲しくなってきます。
ジャージの上からコリコリと擦ってみたけど、やっぱり物足りなくて、
私はジャージのファスナーを引き下ろしました。
その時でした。
ファスナーを下ろす、『ジッ!』という音が響いたのでしょうか。
私に背を向けて、美耶子ちゃんのする事を見詰めていた須田君が、私の方を振り返ったのです。
私は、心臓が跳ね上がってしまいました。
須田君も、少し驚いた顔で、私の姿を見ています。
――――ああぁ……知子、オナニー見られちゃったぁ…………。
実は、心の何処かで期待していた事でもありました。
私がオナニーで気持ちよくなっている恥ずかしい姿を……須田君に見られちゃったら。
美耶子ちゃんと市子ちゃんの行為に欲情して、アソコからぬるぬるを滴らせてるってばれちゃったら。
眼の前の女の子達のいやらしい光景以外にも、そんな想像をしながら私は、
オナニーに耽っていたのです。
でも、本当に見付かってしまうなんて――――――
私は恥ずかしい、というのを通り越し、ちょっと怖いような気持ちに襲われていました。
咄嗟に、剥き出しのアソコを両手で覆い隠し―――
でも須田君はそんな私の両手の、下の方に眼をやっています。
私は、須田君の目線を追ってみました。
私のアソコから垂れ流された……愛液が、畳の上に、まるでお漏らしでもしたような、
大きな染みを作っていました。
「ああ…………」
あまりの恥ずかしさに、私は声を上げ、両脚を、クッと引き寄せました。
顔を伏せたまま、それ以上は身動きも出来ません。
そしたら何故か、須田君が「うぁっ?!」て声と共に、私の方に倒れ込んで来ました。
「きゃぁっ???」
須田君に押されて、私はひっくり返ってしまいます。
見ると、美耶子ちゃんの頭を抱え込んでいた市子ちゃんの脚が、快感の為か真っ直ぐに伸び、
須田君が蹴っ飛ばされてしまったようなのでした。
眼を白黒させつつ、なんとか頭だけ起こしたら、
私のお腹の上に顎を乗っけている須田君と、眼が合いました。
「…………」「…………」
私達は言葉もなく、暫し見詰め合いました。
「……あ」
須田君が、小さく声を発しました。
そして少し身を起こした彼の胸元には―――透明な粘液が、べったりとくっ付いていました。
……もちろん、私のアソコから出た粘液、です。
「ご、ごめんね……」
掠れた声で、私は謝りました。
須田君は「いや、いいよ」と、ぶっきらぼうに返します。
なんかもう、合わせる顔もない気持ちで、私は古い畳に顔を擦り付けました。
三十六
すると須田君は、そんな私に這い寄り、上から顔を覗き込んで来ました。
「知子ちゃん」
呼び掛ける声と共に、その指先が、私の頬に添えられます。
「……あのさ。俺、君とも……しなくちゃいけないみたいなんだ」
「…………え?」
私は須田君を、横目で見上げました。
「あの……嫌かも知れないけど……つまりその、そうしないと、皆助からないみたいなんだ。
化け物にならないようにする為には…………俺も、何でだかよく判んないんだけど」
須田君は、チラッと美耶子ちゃんを振り返りました。
(そっか……美耶子ちゃんがそうしろって言ったんだ)
私も、美耶子ちゃんのお尻に眼をやりました。
この異変の事をよく知っているみたいな、美耶子ちゃんの数々の言動を思い出します。
――――美耶子ちゃんって、ひょっとしたら神代の子なんじゃないかな?
神代の家は村の旧家で、大昔は村の神事を司っていたといいます。
よくよく考えて見ると、離れの玄関で美耶子ちゃんと喧嘩をしていたのは、
神代の亜矢子お嬢様だったような気がするし――――――
「知子ちゃん」
須田君が、私の意志を確かめるように声を掛けて来ました。
私は横を向いたまま―――それでも、はっきりと頷きました。
須田君の手が、私のジャージを開き、するりと肩から脱がせてしまいました。
どうして須田君を受け入れる気になったのか、それは、私自身にもよく判りません。
今まで、美耶子ちゃんと市子ちゃんが、それぞれ須田君に処女を破られるのを見てきて―――
私一人が仲間外れにされるのが、嫌だったからなのかも知れないし、
或いは、いつ“あっち側”に逝っちゃうのか判らない危険な状況の今、
処女のままで人生を終えてしまうのは、寂しいって気持ちがあったからかも知れません。
――――でもきっと、本当は、本当の私の気持ちは……。
「あ……ぁ」
須田君が、私の首筋から手を滑らせ、胸の膨らみを、柔らかく揉み始めました。
掠る様に触れられる乳首に、鋭い快感が走って―――
「あっ、うぅ……うぅん…………」
須田君の指先は私の乳首を摘まんで転がしながら、唇は私の鳩尾の辺りからお腹の下まで――――
そして、ついに、私の濡れきった処へと――――――
「あああぁっ?!」
私はビックリして、思わず大声を上げてしまいました。
「あ……だ、駄目だった?」
須田君の、戸惑い怯んだような声。
私は首を、大きく横に振り立て―――脚を、ゆっくりと開いていきました。
――――嫌じゃないよ……して! 美耶子ちゃんが市子ちゃんにしてるみたいに……お願い!!
……なんて事は、さすがに口に出しては言えませんでした。
だけど、須田君には多分、判っていたと思います。
だって私、自分からこんな風に脚を広げて、アソコを見せ付けてしまってるし――――
そのアソコはぬるぬるで、お尻の方まで濡らしてしまっているし――――――
三十七
須田君は、再び私のアソコに口づけました。
私のクリトリスを、吸い上げるように―――そして、吸い上げた唇の中で、舌先を動かし、
チロチロと柔らかく弾きました。
「ああんっ! あっ……う、あぅう」
私の腰は、勝手にカクカク動いてしまいます。
あう、こんな、男の子の指が、舌が、知子を、こんな――――――
頭が真っ白になって、私は、甲高い声で喘ぎ、バタバタと跳ね回ります。
それは市子ちゃんに悪戯されるのと違い、
もっと力強く、殆ど強制的に、私を快楽の高みに引き摺り上げてしまいました。
「あっ、くぅぅ……あぃい……いあぁぁぁ…………」
とろとろと蕩けそうな感覚が、アソコ全体に起こった気がして―――
次の瞬間、物凄い快感が私の入口から、躰中を包み込みました。
あぁ、ドッと濡れてくるのが判ります―――
そして、アソコが勝手に、ギュッ、ギュッ、と収縮を繰り返し――――――
「あ、あ、あはぁぁ……あぁ、あぁあ…………」
全身がジワリと汗ばんで―――ひくひくなりながら私、
ずっと、この瞬間だけが続いたらいいのに、って――――――
でも、その時です。
私の股間に、鈍い痛みと共に、何かが割り込んできました。
須田君でした。
須田君の腰が私の下腹部に押し付けられ、
彼のおちんちんが、私の中にずぶずぶと埋没しようとしているのでした。
「この……ヒクついてる時に挿れちゃえば、あんまし痛くないんじゃないかと思って」
須田君は、そう言いました。
私は痛みと、お腹の底を貫かれる衝撃、そして、違和感とも充実感ともつかない不思議な感覚を、
硬直しながら味わっていました。
「あっ、あぁ、ぁあぁぁああああ……ぅう」
私のお尻は僅かに浮いていて、そのお尻の谷間に、何かの液体が伝って流れてくるのを感じます。
それが血なのかどうか、私には判りません。
でも、とにかくそうやって濡れているおかげで、私のその部分の苦痛は少し和らいでいるかも。
私はそう考えて、自分を励まします。
「……大丈夫?」
須田君は、私の目じりに流れた涙を指先で拭い、問い掛けてきます。
私は、ただ頷くだけです。
「何で……こんな事になっちゃったんだろうなぁ」
「……うん」
須田君の言葉に返事をしながら、私は、彼の顔を見上げてみました。
須田君は、ちょっと照れ臭そうに笑いました。
私も少し、笑いました。
私達は、どちらからともなく、自然にキスをしていました。
三十八
須田君は、私の口の中に舌を挿れ、ぬるりと掻き分けてきました。
そうされると私、なんだかクラッ、としてきて――――――
須田君が動き出し、もたらされる痛みが、何処か甘く、疼く様な感じに思えてきて――――――
キスの合間に喘ぎ声が漏れます。
両手が須田君の背中に廻り、強く、強く抱き締めます。
アソコからは、ぐちゃっ、ぐちゃっ、ぬちゅ、ぬちゅ、と、粘液の掻き廻される音が響き渡り、
その度に―――出たり這入ったりするおちんちんが、私のアソコを震動させて―――――
ああああああああああ――――――
「知子ちゃんって、もしかして……初めてじゃ、ない?」
不意に、須田君がそんな事を訊きます。
「えぇ? 何で?」って私が言うと、須田君は、荒い息の中から、こう答えました。
「いや……何つーか……すごい落ち着いてるっていうか…………それに」
「はぁんっ、あぁ、それ、に?」
「はぁ、何か、すごい、あぁ……気持ち、いいからさ……」
それってつまり―――美耶子ちゃんや市子ちゃんよりもいい……ってこと?
私は、なんだかとても嬉しい気持ちになりました。
セックスの悦びも倍増するみたいで―――私は、痛みをものともせずに腰を上下に揺すり、
須田君と、アソコ同士を揉み合わせます。
「うっ、あっ、あぁん、す、須田く……」
「はっ、うあ……と、知子ちゃん」
須田君が膝を突き、ガッシガッシと私の中を突き廻すので、
私の躰はどんどん後ろにずり下がってしまいます。
お尻が畳に擦れて熱くなりましたが、それより何より、躰の一番奥の、
行き止まりみたいになっている場所が、おちんちんでズンズン突かれるのが、凄過ぎて、
すごい、すごい、ああ、私、わたし――――――
もう、アソコ以外の感覚は失われていました。
視界がぼやけ、耳の奥で、鼓動の音だけがやかましく、
私、もう、須田君に姦されるだけのお人形になってしまったみたいで――――――
「知子……ちゃん、だ、出す、よ…………うぅっ!」
須田君の声が、遠くから聞こえてきます。
お腹の底が温かいお湯で満たされ―――私の意識は、何処か、遠い処へ飛んでいきました――――――
三十九
それから―――どのくらいの時間が経ったのでしょう?
蒼白い世界を揺蕩う私の額に、ひんやりと湿った掌が置かれていました。
(美耶子ちゃん……)
須田君は、私の隣で横たわり、寝息を立てているようです。
少し眼を動かすと、押入れの襖の前で、市子ちゃんが丸くなって寝ているのが見えます。
私は美耶子ちゃんを見上げました。
「今、どんな感じ?」
美耶子ちゃんが、囁くように訊いてきます。
私、躰を起こそうとして―――急に股間に激痛を感じ、「うっ」と呻いて蹲ってしまいました。
してる間は、夢中になっててあまり感じなかったけれど、
やはり私の躰は、初めてのセックスで結構ダメージを受けていたみたいでした。
「大丈夫?」
股間を押さえて顔を歪める私を、美耶子ちゃんは優しく労わってくれます。
脱がされたジャージを肩から掛けて、乱れてくしゃくしゃになった髪を、指でかき上げてくれました。
「美耶子ちゃん」
「知子ちゃん。少し休んで。そしたらきっと、痛いのも治るから」
「うん……」
私は眼を閉じました。
「何も見えなくなっちゃった」
美耶子ちゃんの小さな呟き。そして、私の横に寝そべる気配。
美耶子ちゃんの指先が、私の痛みに疼く場所を辿ります。
「う……」
「あのね……」
呻く私に、美耶子ちゃんが囁きかけます。
「知子ちゃんの痛み……私が、やわらげてあげる」
暗闇の中、美耶子ちゃんが何か動いているようです。
そして、私の傷付いた部分に、柔らかく濡れた粘膜が、まるで薬を塗るみたいに宛がわれ、
ゆっくりと動き出すのを感じました――――――
四十
雨が止んだ。
赤い海から、鉛色の雲を貫くように伸びる、光の柱。
私達はその忌まわしい光景を、言葉もなく見詰めていた。
――――あれが、還って来る。
儀式の前の日、私が壊したはずの“御神体”。
あの、邪悪な“神の首”が、海の向こうから戻ってくるのを感じる。
怖い。嫌だ。絶対、いや。
私の躰は、恐ろしさに震えだした。
「くる……くる……」
「美耶子ちゃん? どうしたの? 来るって、何が?」
知子ちゃんの声だ。
知子ちゃんの眼は、恐怖のあまり、情けないほどに歪んでしまった私の顔を見ている。
「ただいまー……どったの?」
今度は馬鹿でかい、頭の悪そうな声が聞こえてきた。これは、市子。
市子は戦えるから、あいつと二人で、この辺りの化け物達を退治してくれていた。
「何かあったのか? って、うわー、何だあの光?!」
……あいつ。帰って来るなり、光の柱に驚いてる。
「やだ。なんかアレ、やな感じがする……何かが来るよ」
市子はもともと人じゃないから、あの光の邪悪さを、より敏感に感じ取れるようだった。
――――私の血の盃で、人だと思ってる状態に固定できたけど……
でも、本当にこれで良かったのかな…………?
心の眼で、三人の光を感じ取ってみる。
皆、それなりに静かな光―――
少し汚してしまったけれど、これ以上はもう、汚れることのない――――――
「元気だそうぜ」
急に、あいつが私の肩を叩いた。
「一人じゃ駄目かもしんないけど、今は、こんなに仲間が居るんだからさ。きっと何とかなるって」
「そーだよ。コイツ一人じゃ頼りないけどぉ。
私も一緒に、ぐゎんばってあげちゃうからさっ! やるっきゃないよ!」
「んだよ……てめーはいつも一言多いんだよ、この、死語女!」
「げろげろー。何それチョータカビーじゃん! むかつくー……この、バカ恭也!」
「もぉ……やめなよ二人とも」
三人が、どうでもいいような事を言い合っている声が聞こえる。
そんな中、私は、あいつの言葉を心で繰り返していた。
――――仲間。
今まで、私とは無縁だった言葉。
村の贖罪の儀式で捧げられる生贄の羊。神の供物。死ぬ為だけに生まれた。
そう言い続けられて来た、私には――――
「なーに根暗な顔してんの?」市子が私の腕を掴む。
「そろそろ……行こ? 村から出る方法、皆で、探そ?」知子ちゃんの声。
「んじゃぁ、行こう」
ちょっと大き目の手が、私の手を握った。
四十一
「あーっ!! 恭也ったら! やっぱ美耶子が一番好きなんだー」
「なっ! う、うっせーなぁ! しょーがないだろ、美耶子は、ほら、眼が、さ」
市子の言葉に、彼は必死で言い返す。
「……私、幻視で視て歩けるから」
私は、握られた手を離そうとした。
せっかく見つけられた―――仲間。私は、重荷になりたくない。
でも私が離し掛けた手を、彼は強く握り締めた。
「お前……」
「須田恭也、な」
「え?」
ちょっとの間を置いて、彼は言った。
「お前じゃなくて、須田恭也。いい加減、名前呼べよ……もう、他人じゃないんだからさ」
知子ちゃんと市子が、歓声をあげた。
「……きょーや」
恭也は、私の手を引っ張って、ずんずん歩いていく。
「待ってよぉ」「バカ恭也、足速ーい!」
知子ちゃんと市子が、追い縋る様について来る。
恭也に手を引かれて小走りになりながら、私は、ある事を考え続けていた。
この村から逃げる事なんて、もしかしたら無理なのかも知れない―――って。
どうあがいても、絶望。
なのに私は、何故か少しも暗い気持ちになってはいなかった。
――――もう独りじゃないんだ……私には、こんな沢山の仲間が。
私は、間違った事をしたのかも知れない。
命の摂理に反する行為を、私はしたのかも――――――
だけど、少なくとも私はもう、孤独じゃないんだ。私は恭也の手を、ギュッと握り返した。
この先、私達がどうなってしまうのか……私には見当もつかない。だけど――――――
――――今はただ、この手のぬくもりを、信じたい。
そう。これが私の、正直な気持ち。
呪われた躰。穢れた血を持つ私だけれど……人との絆を信じるくらい、許されていい筈。
こうなる事が、運命だったのかも知れないじゃない。
そんな、自分勝手な物思いに耽っていたら、足が縺れて転びかけた。
でも私の躰は、の手に支えられる。
「大丈夫か、美耶子」
「うん。きょうや……ありがと」
私は恭也の腕の中で、笑った。
【終了条件未遂。】
>>204 GJでした。最後まで堪能させていただきました。
というか最後って決め付けちゃったけどもしかして続くのか?だとしたら続編期待してます。乙でした。
206 :
204:2007/05/13(日) 05:31:39 ID:vOSCMEuh
>>205 いえ、これで終わりなんですけど……。
完結してないように見えちゃいましたか? すいませんでした。以後気をつけます。
>>206 いや、もし続くなら楽しみだなぁと思ってレスしただけなんで完結してるのはちゃんとわかってましたよ。
ぜんぜん大丈夫。
屍人「なんか・・・出ますよお・・・」
保守
211 :
名無しさん@ピンキー:
保守アゲ