男主人・女従者の主従エロ小説

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1名無しさん@ピンキー
男主人・女従者の主従関係ものを扱うスレです。

・英明な王に公私共に仕える美貌の女宰相
・ぼんくら閣下と美人の副官
・屋敷の坊ちゃまとイケナイ関係になる女家庭教師(ガヴァネス)

などなど身分の違いから階級による違い、雇用関係など主従なら何でもあり。
純愛鬼畜陵辱ハーレムなんでも可。エロなしSSでも主従萌えできるなら全然おけ。
“妖魔と主従の契り”とか“俺様魔法使いとドジッ娘使い魔”とか人外ものもドンと来い。

ちなみに一番オーソドックスと思われる“ご主人様とメイドさん”はこっちでもいいけど
専用スレあるので投下は好きなほうにドゾー。

主従SS投下と主従萌え雑談でマターリ楽しくやっていきましょうや。
2名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 21:11:05 ID:2kveqcBj
◇姉妹スレ◇

【従者】主従でエロ小説【お嬢様】 第二章
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1156941126/

↑こちらは女が主人で男が従者(時と場合により女従者)の主従を扱うスレです。
双子のようなもんで、そっくりですが性質は全く違います。
仲良く棲みわけましょー。
3名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 21:11:47 ID:2kveqcBj
◇その他関連スレ◇

【ご主人様】メイドさんでSS【朝ですよ】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1141580448/

男装少女萌え【8】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1163153417/

◆◆ファンタジー世界の女兵士総合スレpart3◆◆
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1163919665/

●中世ファンタジー世界総合エロパロスレ●
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1145096995/
4名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 21:16:34 ID:9tEKgFjY
あ、なんかツボなスレが立った。
とりあえず、プロットを練りはじめましょう


……いや、プロッタだけで書き上がっていない作品は、数々ありますがw
51:2006/11/22(水) 21:18:31 ID:2kveqcBj
>>2
良かった。立てた甲斐があった(*´∀`*)
投下楽しみにしてるよー。

これを機会に書き上げてくれw
6名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 21:33:00 ID:fXPXGQic
ヤバイ、>>1の例がドツボだわw
期待期待!!
7名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 22:31:49 ID:rBfk7LDD
これだけはNGっていうプレイはありますか?
8名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 22:48:15 ID:F6vvl5gQ
>>1
超乙です!
>>7
SSの最初に注意書きしとくとか。
9名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 02:16:03 ID:/JDJJ2X+
>>1
>ぼんくら閣下と美人の副官
を書こうと思ったんだけど気がついたら美貌の閣下と無表情な副官になっていた。
即死回避がてら投下します。エロはなし。
10ユリシスとイリス1:2006/11/23(木) 02:19:47 ID:/JDJJ2X+
「辺境地域統括司令部長官などと聞こえはいいが単なる厄介払いではないか」
憮然として語る上官をイリスは声を低く窘める。
「そのようなことを申されますな、閣下。誰の耳に入るとも知れません」
「ふん。聞かれたところでかまうものか」
「よいではありませぬか。これもまた閣下に課せられた試練と思いますれば」
「よいものか。向こう三年は王都を離れねばならんのだぞ」
ユリシスは右手に握られた鞭で落ち着きなく軽く左手を打つ。
うろうろと室内を歩き回るユリシスの姿をイリスは微動だにせず眺めている。
「しかし、閣下。元を辿ればあなたの素行の悪さが原因ではありませぬか」
ぴたりとユリシスの動きが止まり、整った顔を歪めてイリスを睨みつける。
「閣下は悪ふざけがすぎます。遊ぶならば相手をお選びくださいませ」
「男なら誰でも通る道だ。そうだろう?」
「自分は女ですので同意しかねます」
ユリシスは手にした鞭をイリスに向かって振り下ろす。
顔に触れる少し手前で鞭はぴたりと止まった。
「まったく、お前は本当につまらん奴だ」
眉一つ動かさぬイリスにユリシスは舌打ちをする。
「イリス」
イリスの傍らに置かれた椅子にユリシスは腰掛けた。
流れるような黒髪、育ちの良さを感じさせるきめ細やかな肌、神経質そうな眉。
醸し出す雰囲気が冷酷さを感じさせるがそれを差し引いてもあまりあるほどにユリシスは美しかった。
母譲りの美貌をもったユリシスはその気になればいくらでも冷酷さを押し隠して人好きのする雰囲気を作り出すことが可能だ。
専らそれは女性相手に活用されるわけだが。
「辺境の地にも美人はいるものか?」
「実際に見たわけではありませんので断言はできかねますが王都とはまた違う趣の美女ならばあるいは」
「洗練された美しさはなくとも素朴な美しさがあるかも知れないということか」
一人で納得し、ユリシスはにやりと笑う。
他人が見れば判別はつかないだろうが、イリスはほんの僅かに呆れたように眉を寄せた。
イリスは一見すると男性と見間違うような外見をしていた。
短く切り揃えられた髪は陽の色に似ており、肌は褐色に近く、軍服をきっちりと着込んでいる。
ユリシスはイリスを見上げて、くつくつと笑う。
「呆れたか?」
「少し。懲りないお方ですね」
「諦めろ。男の性だ」
11ユリシスとイリス2:2006/11/23(木) 02:21:06 ID:/JDJJ2X+
ぐいっとイリスの腕を引き、ユリシスは彼女を抱き寄せる。
バランスを崩したイリスはユリシスに覆い被さるようにして彼の上に倒れ込んだ。
「閣下!」
「望む女が手に入らぬのだ。他で間に合わせるしかあるまい」
至近距離で見つめ合えばユリシスの美しさにイリスは目を奪われる。
「閣下が手にできぬ女などおりますまい」
「ふん。そうならば楽なんだがな」
ユリシスの指がイリスの唇をなぞる。
「私の愛する女は私を嫌っているのだ」
イリスは困惑に瞳を揺らす。
「お前が動揺するところを初めて見たぞ」
「このような戯れはおやめください」
腕を掴むユリシスの手が離れるや否やイリスは立ち上がって呼吸を整える。
「今度の恋のお相手がどこのどなたかは存じませぬが相手にされないからといって自分に八つ当たりをするのはやめてください」
イリスがきっぱり言い切ればユリシスは声を上げて笑い出す。
「何がおかしいのですか」
「いや、我ながら難儀な女に惚れたものだと思ってな」
訝しげに眉を寄せるイリスを横目に、ユリシスは笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を指で拭った。
「まあいいさ。いずれにせよ、私の側からは離れられんのだからな」
髪をかきあげ、ユリシスは嫣然と笑んだ。


おわり


12名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 03:05:28 ID:RUS/6D/C
GJ!
好みなスレを見つけたと思ったら既に作品投下されてて
二度萌えますた。

>>9
これオリジナル?エロ有りもあれば是非とも読んでみたいです。
二人のビジュアルを妄想して更にウマーでした
13名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 03:09:39 ID:66pnQwnm
>>9氏GJ!

女主男従スレも好きで見てるが、常々逆パターンも好きなことを実感してたからここは嬉しい。
昼行灯だが実は切れ者の上官と苦労人の副官っつう組み合わせとかはベタだが好きだ。
141:2006/11/23(木) 10:55:27 ID:JoQB3JeJ
長文スマソ。これ書いた後は名無しに戻るので。

>>6
いいでしょw 女主男従パターンの主従も大好きなんだけど
このパターンも大好きなので立てた。

>>7
ないよ。好きに書いて投下しておくれ。
ただ、スカとか近親相姦とかグロとか(多分ここの住人ではグロはないと思うけど…)は
一応最初に>>8が言ってるみたいに注意事項を書いてくれると
苦手な人が避けられるから良いかと。

>>9氏超GJ!!!!!!
おおお超萌えた! 良ければ是非この二人のエロを……。

>>13
>昼行灯だが実は切れ者の上官と苦労人の副官
いい!ものすごくいい!! ぜひともSSにしてplz

あと>>1に書き忘れてて、質問がでそうな事を↓に追加しておきます。
・上記の通り、特殊っぽいものは投下前に注意事項として記述推奨。
(スカ・近親・グロ等。自分で注意が必要と思えば輪姦、陵辱等も)
・オリシチュ、二次は問いません。二次はネタ元を書いてくれると
元ネタ知らない住人が主従ものを発掘できて二重に楽しいかも。
・自分が書いたSSが主従ものか迷ったらとりあえず投下しちゃえ!
完璧にスレ違いなら、適した誘導先を教えてもらえると思う。

ではでは……みなさん、楽しくやって下さい。
15名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 13:06:23 ID:Aa4Na+Iy
良スレのヨカーン

>>9もそうだけど、俺様系の権力実力有りの自信家男と
表面上冷たい美人の女って凄い好みだ。
あ、でも俺様系男と
しとやかで控えめな女(でも夜は過激な娼婦)もいいな…
16名無しさん@ピンキー:2006/11/24(金) 01:10:35 ID:JhF0NK2F
>>9です。
エロないし短い小ネタだったけど萌えてもらえてよかった。
エロありはネタ考えついたら書くよ。


>>12
完全オリジナルですよ。
エロは上に同じくです。
17名無しさん@ピンキー:2006/11/25(土) 01:48:48 ID:LLIq5gxX
坊ちゃまとメイド投下します。
エロは雰囲気だけ。短めです。
18シリウスとメル1:2006/11/25(土) 01:50:48 ID:LLIq5gxX
部屋の主は先日爵位を継いだばかりの友人とその一行に連れられて狩りに出かけてしまった。
メルは安堵の吐息をついて部屋へ足を踏み入れた。
狩りに出たということは当分戻ってこないということだ。
今のうちに部屋の掃除を済ませてしまおうとメルは手にした掃除用具を握りしめて決意した。
掃除を始めて一時間。
最近は早く部屋から出ようと急ぐあまりに少々手抜き気味だったおかげで普段は目に入らぬような隅々に僅かながら埃が溜まりはじめていた。
それらをすべて取り除き、ふと壁に掛けられた時計を眺めるとそんなにも時は過ぎていた。
しかし、たかだか一時間やそこらで狩りが終わるはずはない。
そうは思えどなぜだか悪い予感がし、メルはそそくさと掃除用具の片づけを始めるのだった。
掃除用具をすべて仕舞い終え、メルは仕上げとばかりに花瓶に花を生けていた。
庭に咲いている白百合だ。
「綺麗だね。ミュラが育てた花かい?」
唐突にかけられた声にメルの体は文字通り跳ね上がった。
おそるおそる声の方へ顔を向けると狩りに出たはずの部屋の主がそこにいた。
「狩りに行かれたのでは……?」
「つまらなかったから早めに抜けてきたよ。狩猟は僕の得意分野じゃない」
少し長めの髪はそれでも清潔感は損なわれておらず、狩りをしていたためかちょこんとリボンで括られていた。
穏やかな笑みをたたえた瞳は髪とともに黒色。
部屋の主の名はシリウス・アスター。
アスター家の次期当主となるべく定められた御仁だ。
「僕は狩りをするよりも僕の白百合を愛でている方が好きなんだ」
対するメルはアスター家に仕えるメイド。
栗色の髪は仕事の邪魔にならぬようにきっちりと編み上げられ、小柄な体はメイド服に包まれている。
顔立ちはまだ少し幼さが残り、本人はとても気にしているのだがそばかすがある。
「いい香りだね」
シリウスはメルの傍らへと近づき、彼女の髪へ顔を近づける。
「食べてしまいたくなるよ」
メルの髪を留めていたいくつかのピンをシリウスは引き抜いた。
「し、シリウス様!」
メルが僅かに身を引くと髪が波打って解けた。
「僕は下ろしている方が好きだ」
「それでは仕事になりません」
「僕の目を楽しませることは重要ではないと?」
「私の仕事はシリウス様を楽しませることではありません」
ぎゅっと拳を握りしめ、メルはうつむいて靴の爪先を眺める。
シリウスと見つめ合っていてはまともに反論など出来ないからだ。
19シリウスとメル2:2006/11/25(土) 01:53:39 ID:LLIq5gxX
「そう。つれないね」
メルが離れた分だけシリウスは彼女に近づき、髪を一房手に取った。
「けれど、そんなところも魅力的だよ。僕の白百合」
髪に口づけられ、メルは体を強ばらせる。
「メル」
顎を掴まれ、上向かされる。
「僕のことが嫌いかい?」
「……いいえ」
「よかった。では、キスしてもかまわないかな」
メルが答えられずにいるとシリウスは質問を変える。
「僕にキスされるのはいや?」
少し迷ってからメルは小さく首を振る。
嬉しそうに微笑んだシリウスはメルの唇に唇を重ねた。
「んっ……」
シリウスの舌がメルの唇をなぞる。
反射的に唇を開いたメルの咥内へシリウスは舌を差し込んだ。
上顎を舐め、舌を絡ませて、溢れた唾液を飲み下す。
思うままに堪能してから、シリウスは唇を離した。
二人の唇を銀の橋が伝う。
「可愛い」
抱き寄せられ、メルはシリウスの胸に顔を押しつけられる。
「愛しているよ、僕のメル」
真っ直ぐに愛情をぶつけられるのは今日が初めてではない。
二人きりの時はいつも、場合によっては他人がいようとお構いなしにシリウスはメルに愛を囁く。
身分違いも甚だしいとメルは戸惑うのだが、シリウスは身分の差など気にしていないようだ。
そして、拒みながらもメルは最終的には彼の行為を受け入れてしまう。
拒みきれない自分が嫌でメルはシリウスを避けるのだが、彼はそのことに気がついていないかのようにメルを追いかけ回す。
「唇だけじゃ足りないな」
「あ、あのっ」
「もっと欲しい」
シリウスの手が背中を伝い、メルの腰を撫でる。
びくりとメルの体が跳ねた。
いつもそうだ。
メルの唇を易々と奪い、誰の邪魔も入らないと確信したシリウスはメル自身を欲しがる。
20シリウスとメル3:2006/11/25(土) 01:55:11 ID:LLIq5gxX
「だ、ダメです。お掃除が、まだ……あんっ」
「後で僕も手伝ってあげるよ」
「やっ、あ……シリウス様っ! ああっ」
器用に服を脱がせ、シリウスはメルの肌に直に触れてくる。
メルは抵抗しようと彼の胸を押したがまったく効果はない。
それどころか腕を掴まれて、再び唇を奪われる。
舌を吸われ、衣装を剥ぎ取られ、体の自由を奪われたメルはやがて諦めたように体の力を抜いた。
「愛してるよ。君が欲しくてたまらないんだ」
熱っぽく囁かれればメルにはもう抵抗できない。
結局のところ、メルもシリウスを憎からず思っているのだから。
「シリウス様、わたし……んっ」
「大丈夫。全部僕に任せてくれればいい」
今日もまた、メルはシリウスに求められるままに愛を交わすことになるのであった。


おわり

21名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 01:11:56 ID:2bp8R+Kr
GJ!
メル萌える。やっぱメイドさんはいいね!
気が向いたら続きをよろしく。是非読みたい。
22名無しさん@ピンキー:2006/11/28(火) 17:45:34 ID:KsrvLJj0
GJ
やっぱメイドさんは良いなぁ
23名無しさん@ピンキー:2006/11/29(水) 15:33:52 ID:naFzgeKG
ユリシスとイリスのエロ投下します。
あまりエロくなくてすまん。
24ユリシスとイリス(閣下の願望編)1:2006/11/29(水) 15:36:51 ID:naFzgeKG
「……イリス?」
自慢の副官が眼前で裸体を披露しようとしている。
現在進行形で脱いでいる。
上着を脱ぎ捨て、ベルトを外し、スラックスに手をかけたところでユリシスは慌てて椅子から立ち上がった。
ご自慢の美貌は焦っていても変わらない。
「イリス!」
「なんでしょうか、閣下」
「ちょっとこちらへ来い」
手招きをされ、イリスはユリシスへ近づいた。
黄石のような瞳は相変わらず無表情でユリシスを圧倒する。
「何をしているんだ貴様は」
「閣下が申されたのではありませぬか」
「確かにそうだが……お前はいいのか」
「愚問ですね。あなたは肌を合わせる前にいつもそのようにしつこく確認なさるのですか」
ユリシスは呻いた。
確かに「女遊びを控えさせたいならお前が相手をしろ」といったのはユリシスだ。
しかしそれは「ご冗談を」といつものように軽く受け流されると思ったから口にしたにすぎず、よもや快諾したあげくに脱ぎ出すとは予想外も予想外。
「やはり自分のような女が相手では興が乗らぬと仰るのであれば」
「そんなことがあるものか!」
ユリシスはイリスをぎゅっと抱きしめる。
「抱いてもいいのか?」
「かまいませんと申し上げています。自分は閣下にすべてを捧げる覚悟でお側近くに仕えております。この体が慰めになると仰るのなら自分に何の否やがございましょうか」
そういう意味で訊いているのではないとユリシスは思うが、このまま問答を続けたところで期待する答えが得られるとは思えない。
きつく抱きしめたイリスの体は女とも男とも違う。
女にはない引き締まった筋肉と男にはない脂肪の丸みの共存する体。
一生触れることはかなわないのだと思っていた体。
愛のない行為など虚しいだけだとわかってはいるが、焦がれる思いにはかなわない。
それでもいいから触れていたいのだ。
「私が脱がせてやろう」
「は。恐縮です」
体を離してイリスの服を脱がせはじめる。
シャツのボタンを外す指が知らず震えてしまう。
震える指ではなかなか思うようにいかず、ユリシスはたっぷりと時間をかけてイリスを裸にした。
裸体を晒しても一向に動じないイリスとは対照的にユリシスは息を飲んで彼女の姿を見つめる。
「綺麗だな。イリス、お前は美しいよ。アルステアの女神ですらお前の美しさの前では霞んで見える」
ユリシスの漏らした感嘆の吐息にイリスが初めて表情を変えた。
25ユリシスとイリス(閣下の願望編)2:2006/11/29(水) 15:38:28 ID:naFzgeKG
美女ならば飽きるほど見てきているであろうユリシスが本気でそう思っているのだ。
ユリシスの目を見ればイリスにはわかる。
自分の体に女性としての美しさなどないと知っているイリスは困惑した。
傷跡だらけの体のどこが美しいのかと。
「おいで」
ユリシスは椅子に深々と腰掛けてイリスに腕を差し出す。
請われるままにユリシスに近づいたイリスは彼の腿を挟むように膝をついて彼の肩に手を置いた。
自然とユリシスの目の前にイリスの乳房が晒される。
「思っていたよりも大きいな」
イリスの乳房は小振りなものだったが、平らに近いのかと思っていたユリシスにはそれでも大きく見えた。
そっと手のひらで包み込み、すくいあげるようにしてユリシスは揉みはじめた。
「キスしてくれ」
ユリシスがねだるとイリスは身を屈めて口づけてくる。
触れるだけの口づけに焦れたユリシスは舌を差し入れて口づけを深める。
ユリシスの手の中で敏感な頂が自己主張するように固くなっていく。
「……あっ」
唇を離し、その頂を唇に含むとイリスが甘い声を漏らした。
すぐさま口を閉ざしたところをみると声をあげることに抵抗があるようだ。
舌で転がし、甘噛みする。
ユリシスは片方の手を下腹部へおろした。
おそらく未だ誰も触れたことがないだろう秘裂に指を這わせる。
優しくなぞれば僅かながら蜜が溢れはじめる。
劣情に襲われているというのに不思議と焦りはなかった。
このまま挿入せずともイリスに快感を与えられればそれでいいと思う。
「……っ、ん……ふっ」
頂が赤く腫れ上がるほどに執拗に愛撫を続ける。
イリスの口からは熱っぽい吐息が堪えきれずに漏れている。
既にユリシスの指が二本、彼女の中を解すように蹂躙している。
溢れた蜜はユリシスの指を濡らし、太股を伝い落ちていく。
「……閣下」
唇を離してイリスを見上げる。
「もう、これ以上は……ぅあっ」
びくりとイリスの体が震えた。
膣が収縮してユリシスの指を締め付ける度にイリスが快感を覚えているのだと思えばそれがユリシスの悦びとなる。
「まだ十分ではない」
「閣下を…お慰めするのが、自分の役目、です……最低限の、準備のみで」
「寂しいことをいうな。どうせならともに果てたい」
「閣下……!」
切れ切れに言葉を発するイリスの強い眼差しに押され、ユリシスは仕方なく指を引き抜いた。
そのまま着衣を乱していきり立つ欲望を露わにする。
頭上のイリスが息を飲むのを感じた。
26ユリシスとイリス(閣下の願望編)3:2006/11/29(水) 15:40:08 ID:naFzgeKG
「私が支えていてやるから、ゆっくり腰を下ろすといい」
こくりと頷き、イリスが腰を落とす。
イリスは頭をユリシスの肩に埋め、彼の腕をぎゅっと掴んでいる。
先端が割れ目に当たり、イリスの動きが止まった。
「大丈夫か?」
励ますようにユリシスはイリスの髪に口づける。
大きく呼吸を繰り返し、イリスは覚悟を決めて再び腰を下ろしはじめた。
ゆっくりとイリスの中に潜り込んでいく。
狭くきつい場所に飲み込まれていく快感よりもイリスと結ばれた感動の方が大きかった。
イリスがぴたりと腰を下ろしきるとユリシスは感極まって彼女をきつく抱きしめた。
「イリス、ああ、イリス!」
少しだけ体を離し、彼女の唇を奪う。
情熱的な口づけを交わした後、ユリシスは気遣わしげに問うた。
「体は平気か? 痛くはないか?」
「はい、思っていたほどではありません。この程度ならば行為に支障はないかと」
「そうか」
「自分が動くべきでしょうか?」
ユリシスが答えるよりも早くイリスが腰を揺らす。
「乗馬のような要領ですか?」
イリスが動く度に奥で粘膜が擦れてユリシスに強い快感を与える。
絞り出すようなきつい締め付けも、耳元で繰り返されるイリスの熱のこもった呼吸も、肌から立ち上る甘い香りも、すべてがユリシスの性感を刺激する。
愛した女との交わりはこんなにもよいものなのかとユリシスは驚愕する。
今まで自分が経験してきたことは本当に戯れにすぎなかったのだ、と。
いつしかユリシスは夢中で腰を突き上げていた。
溢れた蜜を絡ませてすべりのよくなった内部をユリシスのものが激しく行き来する。
どちらからともなく舌を絡ませあい、腰を振りたて、獣のように貪りあう。
何度も何度もユリシスは最奥を抉るように叩きつけた。
そして、頂点は思いの外近かった。
イリスの心地よい締め付けの中でユリシスは欲望の滾りを迸らせた。
深々と挿し入れたまま、ユリシスは最後の一滴まで絞り尽くす。
すべてを吐き出してしまったユリシスは脱力して、イリスの胸に顔を預ける。
甘い香りと柔らかな感触、イリスが優しく髪を撫でてくれる。
ユリシスは至福に包まれ囁いた。
「愛してる。イリス、愛している」
切実な告白にイリスが答えてくれたような気がした。
27ユリシスとイリス(閣下の願望編)4:2006/11/29(水) 15:41:16 ID:naFzgeKG
しかし、その甘やかな声は別の声にかき消されていく。
気だるさはそのままにユリシスを包み込む温もりだけが消えていく。
「──っか、閣下」
鋭く自分を呼ぶ声にユリシスは顔を上げた。
「起きましたね。うたた寝などしている場合ですか。いくら辺境の地とはいえ、やることはいくらでもあるのですよ」
ぼんやりとご立腹な副官を眺めながらユリシスは深々と溜め息をついた。
「……そんなことではないかと思っていたのだ。通りで話がうますぎるわけだ」
ぼやくユリシスをイリスは眉を寄せて見下ろす。
「何の話ですか」
「夢の話だよ。お前が邪魔をしなければアルステアの女神に負けず劣らぬ美女から愛の告白を受けていたところだったのに泡と消えてしまった」
呆れ果てた様子のイリスにおどけて答えながらもユリシスは心底残念に思うのだった。
どうせ夢ならば愛の一つでも囁いてくれればよかったのに、と。


おわり


28名無しさん@ピンキー:2006/11/29(水) 17:32:40 ID:BbnXqZXv
ユリシス、カワイス
& カワイソス

29名無しさん@ピンキー:2006/11/29(水) 18:44:11 ID:v386DcNi
夢落ちかよwwwユリシステラカワイソスwwwwww

クールなイリスたんと、
アホな事言うユリシスに萌えさせて貰いました。超GJ!
30名無しさん@ピンキー:2006/11/29(水) 18:59:05 ID:vO98DoS2
タイトルでまさか…と思ったらやっぱり夢オチww
GJ!
31名無しさん@ピンキー:2006/11/30(木) 01:24:17 ID:/qdl7r1r
むしろ夢でよかった。
じりじりと進むであろう今後の二人に期待。
そして心からGJ!
32名無しさん@ピンキー:2006/11/30(木) 15:11:37 ID:4ou0HRfg
しっかりハァハァしました(*´Д')
ユリシスガンガレ!
33名無しさん@ピンキー:2006/12/01(金) 11:39:42 ID:YwP7jm/o
ユリシス、君は最高だww
もうこの報われなさにGJ!
ユリシス頑張ってくれー




個人的に、ユリシスとイリスの関係って鋼の錬金術師のロイとホークアイに似てると思った。
自分がロイアイ好きだからだろうか。


まぁそんなこと抜きでユリシスとイリス好きだけどww
34名無しさん@ピンキー:2006/12/02(土) 00:24:32 ID:YAEUCfO0
>>33
ノシ

でも、報われないユリシスが堪んない!
続きwktk
35名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 01:11:19 ID:LTpyIdF4
人いないのか…?

保守
36名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 20:22:04 ID:E9F6UnbM
>35
いるよー。

とりあえず書き上げたので投下。
元・幼馴染で今は主従っつー関係で書いてみた。
ちと暗くてクドイかも。エロは和姦のような陵辱のような。
37比翼の鳥1:2006/12/06(水) 20:23:48 ID:E9F6UnbM
灯りの消えた薄暗い部屋に、諍うような声が響いた。
若い男が、険しい顔で目の前の相手の腕を乱暴に掴んでいる。
腕を掴まれている人物は、黒髪を男のように短く切りそろえ、男物の服を身につけていたが
やわらかな輪郭や、線の細さからまぎれもなく女だと窺い知る事ができた。
長いまつげに縁取られた瞳に強い光を浮かべて男を睨みつけている。

「お離しください殿下。口さがない者どもにこの場を見られればどのように噂されることか」

その言葉に、殿下と呼ばれた男はぎりりと奥歯を噛み締めた。闇に光を弾く金髪がかすかに揺れる。
彼の名はルドヴィクといい、このドゥルーク帝国の皇子であった。
強大な帝国の皇子という誰もがひれ伏す立場の存在でありながら、どこかその立場に
そぐわない雰囲気を持った彼は、まなじりをつりあげると叫ぶようにして言った。

「アディリア、俺の話はまだ終わっていない。……いいか、二度とあんな真似はするな!」

そう言うなりルドヴィクは彼女の肩に目をむけた。彼の瞳に暗い陰りがちらつく。
アディリアの肩の辺りは服がやや裂け、肩章が欠けていた。
彼の表情にアディリアは思わずといった様子でため息をつく。

*******

それは数刻前の事だった。宮廷内にもかかわらず、どこから入り込んだのか
皇子の命を狙う不埒者がルドヴィクに刃を振りかざし、襲い掛かってきたのだ。
武芸のたしなみはあるものの、背後からの襲撃にルドヴィクの動きは一瞬だが
一瞬の攻撃には致命的なまでに遅れた。
だが、その場にいた誰もが凍りついた次の瞬間、彼の代わりに凶刃を受けたのは
彼の従者、アディリアであった。
38比翼の鳥2:2006/12/06(水) 20:24:43 ID:E9F6UnbM
ルドヴィクはその姿に思わず息をのんだ。
彼をかばう形で飛び出したアディリアの体が傾ぐのを目を見開いたまま見つめる。
そして手を伸ばして彼女の体を受け止めようとしたルドヴィクだったが、
重臣の一人がそれをさせじと抱きとめて押さえる。
「アディリア―――ッ!!」
バランスを崩して床に倒れこんだアディリアの姿にルドヴィクは血相を変えて叫んだ。

一方、標的をしとめ損ねた襲撃者はといえば、皇子を守る兵たちの槍に
囲まれながら不敵に笑っていた。

「……言え!、誰の命を受けて殿下のお命を狙ったのだ」

その問いにも答えることはない。そしてその様子にその場の者達がひるんだ
一瞬をつき、襲撃を仕掛けた男はぐいっと歯を食いしばり、そのままその場に倒れこんだ。
ざわめきが広がっていく。男は、暗殺者によくあるやり方で、奥歯にしこんだ毒をあおって
絶命したのだ。秘密を漏らさぬうちに。

何者が自分の命をプロフェッショナルを雇ってまで狙ったのか。
……異母兄弟か、あるいは妾妃たちのうちの誰かかそれとも自分以外の皇子を
陣営の御旗にかかげる大臣か。

ルドヴィクには敵が多すぎて何者がその企みを謀ったのかは分からなかった。
だが、今の彼にはそんな事はどうでも良いことであった。

自分をかばい倒れた従者、アディリアの姿だけをルドヴィクは必死に見つめていた。
周りの者がアディリアの体をゆっくりと抱き起こす。彼女は手に小刀を握っていた。
それで襲撃者の一閃をからくも弾いたらしい。肩章を切り裂かれただけですんだのは
奇跡だと誰もが感じていた。

それを見やったルドヴィクは、思わず力が抜けたようにがくりとその場に膝をついた。

*******

場が落ち着きしばらく経った後、アディリアはルドヴィクの私室へと呼び出された。
そして、何故あのようなかばい方をしたのかという詰問をされていたのだ。
ルドヴィクの言葉にアディリアは困ったように眉根を寄せた。
39比翼の鳥3:2006/12/06(水) 20:25:13 ID:E9F6UnbM
「そう仰られましても。わたしは貴方の従者ですから。
いざという時には体を張って御身をお守りするのが使命です」
「俺は……、お前にかばってもらう気なんざ、さらさらない。お前に何かあったら
天園(ヴァルハラ)のグウェンドゥルにどう申し開きをすればいいんだ」
彼が口にしたその名に、アディリアは一瞬顔をしかめてみせた。

「……父は死の直前にも貴方のことを案じていました。だからわたしは
父の墓前に誓ったんです。――貴方の事を、この身に代えても守ると。
女としての自分はあの日に、……父の死と共に捨てました。
今のわたしは男として、従者として、貴方にお仕えする者です。
ですから貴方にどう思われようと、わたしはわたしのやり方で貴方を守ります」

その表情には一筋の迷いもない。ルドヴィクはこめかみを押さえ首を振った。
そして顔を上げると、真摯な瞳でアディリアを見つめた。

「俺がお前を従者にしたのは、ただ、お前に昔のように傍にいて欲しかっただけだ。
そんな事は望んでいない。……頼むから、俺を俺のままでいさせてくれ。
お前だけは俺をこの国の皇子だとかいうふざけた枷にはめ込まないでくれ」

その言葉と彼の視線にアディリアはしばし瞳に迷いの色を浮かべていたが、
ふいにそれらを受け止めかねたように目をそらした。
そして、苦いものを噛み締めるような表情で言う。

「……殿下、こぼれた水がもう元には戻らないように時間は過去には戻りません。
死者も、天園からは戻りません。そしてわたしも……もう、あの日の時のようには戻れません。
それ以外のご命令でしたら何でもお聞きします。ですから……」

その続きがアディリアの唇から零れることはなかった。
ルドヴィクが唇で彼女の口をふさいだからだ。
40比翼の鳥4:2006/12/06(水) 20:25:44 ID:E9F6UnbM
突然で唐突な行動にアディリアは狼狽していた。
彼の腕から逃れようと必死に暴れるが、ルドヴィクは彼女が暴れれば暴れるほど強く
その細身の体を自分の腕の中に抱き寄せた。
「うっ……んん……」
ルドヴィクの舌は執拗に中へと押し進みアディリアの口内を蹂躙していく。
部屋の扉から入る、かすかな光が二人の影をぴったりと重ねさせていた。
それこそがルドヴィクが求めるものであるかのように、彼はなお強くアディリアの体を抱きしめた。

その、当のアディリアは熱い感触にうろたえ、戸惑っていたが、そのままルドヴィクの背に
腕をまわしそうになっている自分に気がつき、愕然とした。
強い口付けは火酒のようにアディリアを酔わせ、彼女の仮面を引き剥がして素顔をさらさせてしまう。

アディリアは意志の力を総動員すると、ルドヴィクの胸へと手を動かし、
彼を突き飛ばすようにして彼から体を離した。
ルドヴィクが傷ついたように顔をゆがめてアディリアを眺める。
そして困ったような笑みを見せた。
「そんなに俺が嫌なのか」
「…………」
その問いにアディリアはあえて答えずにいた。今口を開けば、何を口走るか分からなかったからだ。
こみ上げる涙を流さずにこらえる。じん、と鼻の頭が痛んだ。
黙しているのを拒絶ととったのか、ルドヴィクは表情を曇らせた。

「そうか……分かった、もういい。……悪かったよ、変な真似をして。もう下がれ」
「殿下……」
「それから……なんだ、何と言ったらいいか……。正直、俺はもう……今の
お前を見ているのは……辛い。だから、俺の傍からは外す。
だが故郷に戻ってもそれなりの職を得るよう取り計らうから安心しろ」
アディリアは耳を疑った。思わずルドヴィクにくってかかる。
「いやです! わたしは貴方の傍を離れる気など毛頭ありません。
お考え直しください、殿下!」
「殿下と呼ぶな! ……お前なぁ……っ、俺にどうしろというんだ。
俺の傍にいれば、お前はどうしたって俺をかばおうとするんだろう!?
そんなのはご免だ。お前が死ぬかもしれない目にあう所を黙って見てろというのか?
お前は故郷に戻って、グウェンドゥルの菩提を弔ってやれ」
41比翼の鳥5:2006/12/06(水) 20:26:54 ID:E9F6UnbM
「父の墓ならば守る者があります。それよりわたしにはすべき事がある。
あなたをお守りする。そのためなら、わたしの身などどうなったって構いません!
そう何度も申し上げたはずです。……どうか殿下、わたしにお構いますな。
もう貴方とわたしの立つ場所は違うのですから」
瞬間、ルドヴィクの瞳に稲光のようにかすめたのは純然たる怒りであった。
ふと俯いたかと思うと顔を上げ、アディリアの腕を掴んで強引に引っぱりながら歩き始めた。
そして低く、呟くように言う。
「来い」
「なにを……」
ルドヴィクが向かう先には寝台があった。
彼が何を考えているかを悟ってアディリアは思わず顔色を変えた。
「殿下! 馬鹿な考えはおよしください!」
「うるさい。……殿下という呼び名は嫌いだ」
ルドヴィクは低く呟くと、アディリアの体を寝台へと引き倒した。
したたかに背中から倒れこんだアディリアは一瞬息をつまらせると、
そのままルドヴィクに肩をつかまれ、仰向けに押さえ込まれた。
そしてルドヴィクは膝を立てて寝台のアディリアへとのしかかる。ぎしり、ときしんだ音が響いた。
「殿下……」
身動きのとれないままにアディリアはルドヴィクの強張った顔を見上げた。
幼い頃から知っているその顔は今は別人のようだった。途方にくれた迷い子のような顔だ。
「……それほどまでにお前が『殿下』と言い張るなら俺にも考えがある。
お前は俺の従者だと。『昔のままに』という命令以外なら何でも聞くと言ったな」
「ええ」
ルドヴィクの問いにアディリアはただ頷いた。それが気に入らないのかルドヴィクは
眉根を寄せて更に表情を強張らせた。そしてしばらく逡巡していたかと思うと
重々しく口を開いた。
「……俺に抱かれろ、と命令すればお前は言うことを聞くのか?
どうしても故郷へ帰らず俺の傍で仕えるというのなら、お前には俺の慰み者になってもらうが」
思わぬ言葉にアディリアは思わず目を見開いた。その驚いた様子にルドヴィク自身も
うろたえたようだった。だが、アディリアはルドヴィクが自分の言葉と行動に
迷わぬうちに、答えをためらう事なく口にした。
「それが命令なのでしたら。……どうぞわたしをお好きになさいませ」

ルドヴィクはそれを聞くと喉の奥でくっと笑ったようだった。
そういう笑い方は好きではない、と言いかけてアディリアは唇を引き結んだ。
ルドヴィクの長い指が彼女の胸元を探る。
42比翼の鳥5:2006/12/06(水) 20:28:01 ID:E9F6UnbM
最初は一つ一つ服のボタンを律儀に外していたルドヴィクだったが、面倒くさくなったのか
次に進みたかったのか、それとも彼女を辱めたかったのか、ルドヴィクはアディリアの
ブラウスを掴むと勢い良くそれを引き裂いた。
「…………ッ!」
布の裂ける音にアディリアは思わず目をつむった。自分で好きにしろと言いはしたものの、
強引な行為である事をまざまざと見せ付けられるのはいい気分ではない。
下着を引き出され、胸元を夜気にさらされるとその気持ちは更に大きくなった。
「ふ……」
ルドヴィクはこぼれおちる果実を受けるような手つきでアディリアの乳房を掴んだ。
柔らかな感触を確かめるようにもみしだく。親指の腹で乳首をなぞるとアディリアが
声を殺してあえいだ。
「我慢せずに声を出せ。反応が薄いのでは楽しみが半減する」
刺々しい声でルドヴィクがそう要求した。だが、わざと意地の悪い言い方をしようとして
言っているのがアディリアにとっては丸分かりで、どう反応していいものやらアディリアは悩んだ。
だが、そのままルドヴィクが彼女の下穿きに手をかけてずりおろし、下腹部にそっと唇を寄せられると
素の反応で声をあげてしまった。
「やっ……」
ルドヴィクはそのまま段々下方へと口付けを繰り返していく。
「ちょ……、いやっ」
「まだ何もしていない」
アディリアの声にルドヴィクは思わず苦笑した。だが、彼女はそもそも内腿が敏感らしく
そこに舌を這わせるとこらえようもない、甘い吐息が唇から零れた。
ずっと触れてみたかったアディリアの肢体。ルドヴィクは夢中になって彼女の体を貪った。
「う……んぅ…」
だが、メインディッシュは最後とばかりにルドヴィクは肝心の部分には手を触れず、
まずアディリアの敏感な部分だけを責め立てていた。
乳首をつまみあげ、刺激しながら腿への口付けを繰り返す。
「あ……ぁっ、………あぅっ」
びくっ、と体を震わせアディリアは声をあげた。執拗な口付けから逃れようとするその体を
ルドヴィクは自らの体で押さえつけた。そして秘匿されていたアディリアの女唇へと指を押し当てる。
43名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 20:28:11 ID:MlO8jwU8
本日もパクリ乙
44比翼の鳥7:2006/12/06(水) 20:29:19 ID:E9F6UnbM
「や、嫌ぁ……」
「嫌? 本当にそうか?」
ルドヴィクはアディリアの秘裂の、谷の部分に指を添えるとゆっくり刺激しながら何度も前後に動かした。
ざらついた指の感触が、アディリアの快楽の源を刺激して、少しずつ雫となってにじみ始める。
「あ……うぅ……ふぁっ」
「気持ちがいいんだろう?」
「や…っ、そんなこと言わないで、くださ………」
くちゅ、ちゅ、と卑猥な音が聞こえ始める頃にはルドヴィクは指を増やしては
更に深くえぐり、アディリアを嬲っていた。

「あ、あ、あ、……んんっ、殿、下……殿下っ! もうお許しを……」
足を抱えあげられ、花びらを大きく開かされた状態で指淫を受けていたアディリアは
限界を迎え始めていた。追い込まれるものの、あと少しという所でルドヴィクがそれを
止めるからであった。
「楽になりたいのか」
「あっ、おね……がい…」
頬を紅潮させ、首を振りながら訴えるアディリアの耳朶にルドヴィクはそっと触れた。
「ならば、殿下という呼び名をやめろ」
「そ……んな……
「せめて今だけでも昔のように名前で呼んで欲しい。そうしたら楽にしてやる」
「できません……ああっ、んんん……いじわるしないでっ」
刺激をもとめてひくつく女芯をルドヴィクは執拗に指で弄った。
「……お前も、死んだお前の親父も……なんでころっと態度を変えるんだ。
帝国の皇子だなんて、くそくらえだ。俺は、何も変わらない……」
ルドヴィクは独り言のようにぽつりと呟いた。彼はただ瞳を見開いているだけだったが
アディリアは、彼が泣いているのだと思った。
なぜなら彼女の耳には、見渡す限り敵ばかりの地位に押しやられ悲鳴をあげている
彼の声が、しっかりと届いていたからだった。
45比翼の鳥8:2006/12/06(水) 20:30:48 ID:E9F6UnbM
ルドヴィクはアディリアの足を抱えあげたままゆっくりと彼女の中へと挿入していった。
「ああ、あ―――」
のけぞったまま声をあげたアディリアの腰を掴み、ルドヴィクは自身を中でゆっくりと
動かしていく。生暖かく、きついしめつけがルドヴィクを狂わせていった。

「ひっ、ああっ、ああん……やぁっ、あっあっ」
ルドヴィクに更に深いつながりを求められ、腰を打ちつけられたアディリアは意味をなさない言葉を
何度も叫んでいた。ルドヴィクとアディリアの境目も、過去も、思い出も、どうなるのか
分からない未来でさえ全てが混沌となって彼らを溶け合わせていた。

理性はとうに溶けてなくなり、アディリアは本能のままにルドヴィクの牡を受け入れていた。
彼に応じるように腰を動かしていく。肉と肉がぶつかり合う音と淫靡な水音が薄暗い部屋に響いていた。

アディリアは奥の弱い部分を更に強く突き入れられ、たまらず彼の体にしがみついた。
そして思わずといった様子で叫ぶ。
「あ、ああぁっ、ルドヴィク……ルドヴィク!」
「!!」
久しく呼ばれることのなかった呼び方で自分の名を繰り返すアディリアの声は
ぞくりとルドヴィクの快楽の源を刺激した。
「アディリア、アディリア……」
同じように何度も名を呼び、ルドヴィクは深く体を埋めていきながら彼女の頬に口付けた。
そして快感に総毛立つような吐精感を覚え、そのままアディリアの中へと勢い良く注ぎ込む。
それを全身で受け止めたアディリアは、一瞬体を強張らせて足を突っ張らせていたが
深く息を吐くとそのまま全身から力を抜いた。
痺れるような余韻に浸っていたルドヴィクもアディリアの隣へと倒れこむように横になった。
46比翼の鳥9:2006/12/06(水) 20:32:35 ID:E9F6UnbM
*******

情を交わした二人であったが、甘い睦言を交わすこともなく背を合わせて共寝をしていた。
ルドヴィクが眠った気配を感じると、それまで彼に背を向けていたアディリアは、そっと
彼を起こさぬように向きを変え、ルドヴィクの裸の背中を見つめた。

右の肩に傷がある。昔、彼が調子に乗って木登りをした時に落ちてできた傷だ。
尾てい骨の上にはほくろが二つ。幼い頃に一緒に水浴びをしたから知っている。
ルドヴィクの事なら全て、こんな風な関係になる前から知っていた。
ふと、アディリアのまなじりにじわりと涙が浮かぶ。

感傷を捨て去るようにぎゅっと目をつぶると、アディリアは寝台を抜け出した。
目を開け、上着を着るとアディリアは身支度を整えた。
そして、ルドヴィクの姿をあえて見ないようにしてアディリアは彼の部屋からそっと出て行った。

――その事にルドヴィクは気がついていた。

アディリアが自分の気配を探っていたので彼は眠った振りをしていたのだった。
一人になって広くなった寝台の上で、ごろりと仰向けになるとルドヴィクは
情交の中で見た、アディリアの泣き顔を思い出す。

(……あんな風に泣かせるつもりではなかった)

自分がしたことは間違いなく陵辱だ。どういったつもりであんな事をしたのか
ルドヴィクも自分で自分の事が分からなくなっており、戸惑いを感じていた。

アディリアの決意は固い。これから先どうあっても臣下として
自分との間に距離を置こうとするだろう。
だからこそルドヴィクは、せめてアディリアの体だけでも自分のものにして
彼女を傍に感じていたいという欲求をとめられずにいた。

それがますます自分たちの間に溝を作ることだと分かってはいても。

(不毛だな、まったく……)
腕を目に押し当てながらルドヴィクは心の中で独りごちた。

夜が明けるまでには、未だしばしの時がある。

*******
終わり
47比翼の鳥:2006/12/06(水) 20:41:46 ID:E9F6UnbM
おお、なんかパクリ疑惑かかってる。
でもパクったならエロシーンをもっと上手く書いてるよ…。

って自分で言ってorz

ちなみに名前は人名事典系のから取ったので色んなものに
かぶってるかもしれん。
48名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 21:26:18 ID:7Y/VyxBn
GJです!
パクリと言ったって、太古からやってきた事は同じなんだから、
パクリっちゃあ皆パクリ。

「不毛だな‥。」という思いは基本的にエロくて良い。
思いが「愛」に結実するのか、見たい気もするが
続編は作者氏の思うままに。エロスと切なさの余韻が良いです!
49名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 21:42:38 ID:C+UrxVg7
投下キターーー!!

GJ!イイ!
すごく好みだよ(*´Д`*)エロ切ねぇぇ

正直パクりうんぬんのレスは犬に噛まれたとでも
思って作者さんは気にしないが吉だと思うよ。
50名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 21:57:51 ID:hziL5KEw

ヘ○ヘ
   |∧   gj!!!
  /
51名無しさん@ピンキー:2006/12/07(木) 20:05:10 ID:Xw/8Zfur
おおおお悶える!!
くそ、堪らんな、おい!ハァハァ
52名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 23:52:02 ID:baXOYB+e
こういうの大好き
主従は切ないのがおいしいな
53名無しさん@ピンキー:2006/12/12(火) 08:12:10 ID:wbsCXR/l
続き・新作待ちあげ
54名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 11:29:57 ID:ONtRosRE
ほしゅ。

過疎ってるねぇ…セツナス
55名無しさん@ピンキー:2006/12/17(日) 16:11:05 ID:ndKK9s1P
だれか SS たのむ
56名無しさん@ピンキー:2006/12/17(日) 23:04:58 ID:Giaiyitf
かゆ

うま
57名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 17:31:55 ID:yYvW7RhB
ちょw
バイオハザードかよw
58名無しさん@ピンキー:2006/12/19(火) 08:17:00 ID:o1uhCnkx
他スレでもここでも人が少ないのは
冬のせいか年末のアレのせいか

気分を変えてサンタさんにおねだり
ファンタジーかビクトリア朝な世界観で
小生意気な少年とそこんちの先生
という主従ものがみたいな。
59名無しさん@ピンキー:2006/12/19(火) 23:01:58 ID:hvcNlz0i
むしろ若サンタ×女トナカイで誰か頼む
60名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 01:12:08 ID:yILWuHzi
>>59
その発想力に完敗だぜ、ベイビー。
61名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 16:07:16 ID:Ats2H/EM
サンタ×トナカイ(ヒトガタで女)というと…

「さてクリスマスもあと五日になりました」
「そうですね」
「よい子のサンタである僕とそのトナカイである君はプレゼントをくそ寒い中配らねばなりません」
「マスター嫌みが混じってませんか?」
「気のせいですよ」
「…聞き流しておきますね」
「君はいいトナカイです」
「で、わたしは訊ねてもいいでしょうか?」
「どうぞご自由に」
「どうしてわたしは床に押し倒されて、マスターはのし掛かっているのですか?」
「いつも頑張ってくれる君にプレゼントですよ」
「そんなのプレゼントじゃありませんから」
「じゃあ君が僕のプレゼントで」
「え?や、ま、マスター?!どこ触って、」
「神様プレゼントをありがとうございます。では早速、」
「い、いやぁぁぁぁぁ!!」


…みたいな?
62名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 16:55:07 ID:+Nne7nJs
>>59

「こちら極東支部。新人トナカイ着任の件、無事到着しました。はい…はい。本当ですか?
 トナカイパワーの強い変種だから1人でソリを…いえ、嬉しいですが。いえ決して変な意味
 では無く…引退した老トナカイ達の働かないっぷりにはいい加減うんざり……はい了解
 しました。はい。ではまた。」

僕――昨年から極東支部に勤める若き希望に溢れるサンタクロース――は本部との通信を
きって改めて彼女に向き直った。

「……で、マリアだっけ、名前」
「はい、セント・ニコラス」
「その呼び方やめてくれないかなぁ」
「ですが本部の教育プログラムではこうお呼びしろと」

サンタになるのは簡単だ。神様にお願いすればいい。僕だってどんなイカサマか表向きは
会社勤めだ。盆には実家に帰る。だがトナカイはそうも行かない。本部で人に変化する術を
覚え、サンタの事務処理を手伝うために言葉を覚え字を覚え空を飛ぶ訓練をして地図を読める
ようになり、そうして全てをクリアした一部エリートのみがサンタ配属のトナカイになれる。

「一応本名が健太だから普段はそっちで呼んでよ。外勤務の時はセントでいいから」
「仕方ない…ですね。では健太様」

………ぉおぉ!?いったい誰が様付けで呼べと!?こんな美人トナカイ耳の女の子に
様付けで呼ばれる日がくるとは。人生何があるかわからない。

「メス…いや女の子ってのは珍しいね」
「そうですね。角が無いので敬遠されるみたいです。それと変化を解くのを嫌がって
 本部勤務を希望する子が多くて」

眉をしかめながら知性派トナカイは大切なことを言った。そうだ。失念していた。
人に変化したって基本は裸。人と同じ衣服を身に付けているだけなのだ。当然トナカイの
姿に戻る前には…全裸に………いけない妄想が膨らんでしまった。

「まぁ私は本部が実験的に送り込んだものなので」
「実験的?」
「ええ……その、サンタ職は独身男性が多いので…本部の方でも配慮が必要なのではという話
 になって…やはり寂しいだろうとか…反対意見もありましたがやはり男のさがだろうと…」

なんか口ごもってるんですけど。さっきの妄想も相まって変な期待が膨らんでしまうんですけど。
顔真っ赤ですよマリアさん?

「その……よ…夜のお相手なども…」

目の前が幸せピンク色に染まった。生きてて良かったよ。ナイス本部の皆さん。
裸が拝めるどころか食べちゃってですか。


63名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 16:57:25 ID:+Nne7nJs
「ほほ本当に!?」
「無論冗談です」

変わらぬ満面の笑みでマリアは答えた。

「本部の方がこう言ってからかってやれと。まさか健太様が本気になさるとは思いません
 でしたわ。面白い方なんですね」

青くなったり赤くなったりして最終的に落ち込んだ僕の肩に手をおいてマリアは
こうのたまった。

「さあお仕事しましょう。健太様。ところで一つお聞きしたいのですが夜のお相手って
なんのことでしょう?本部の方は教えてくださらなくて…」


……こんな感じ?って>>61の人がすでにもっと萌えるもの書いてる…orz
64名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 17:30:50 ID:PS9VJj+C
>>59の若サンタ×女トナカイ書いてきたら既に>>61>>62が投下していたorz
二人ともGJです!
でも、せっかくだから投下しとく。
65サンタ×トナカイ 1/2:2006/12/20(水) 17:34:48 ID:PS9VJj+C
子どもたちへのプレゼントをそりへ積み込み、ベルはほっと息をついた。
ベルに荷物の積み込みを命じたきり現れぬ主人のことを案じながら、ベルはそりにちょこんと腰掛けた。
ベルが動く度にチョーカーについた鈴がしゃらんと鳴る。
ベルがいるのは家の横に設けられたそりを収納する倉庫。
倉庫の回りは夕暮れ時から降り始めた雪が新たな層を作り出し、固くなり始めた雪を柔らかな雪が覆っていた。
ざくざくと雪の上を歩く音がし、ベルは立ち上がって開け放した倉庫の入り口へ駆け出した。
「お待たせ、ベル。遅くなってすまないね」
真っ赤な衣装に身を包み、笑顔で謝るのはベルの主人であるクロスだ。
彼はまだ若いが、一昨年サンタ試験に合格した立派なサンタクロースである。
今日は二人がペアを組んで三度目のクリスマス。
「君が寒くないようにこれをとってきたんだよ」
クロスが差し出したマフラーを首に巻いてもらい、ベルははにかむように微笑んだ。
「今日も頑張ろうね、ベル」
「はい、頑張ります!」
「頼もしいな。よろしく頼むよ」
ベルよりも頭二つ分ほど大きなクロスを見上げながら元気よく返事を返す。
優しい主人がベルは何よりも好きだった。
いそいそとそりへ近づき、ベルは小さく体を震わせる。
ゆっくりとベルの体が人型から獣へと変化を遂げる。
すっかり人の形態を外れたベルはトナカイへと変化した。
クロスはベルの背を愛おしげに撫で、そりへと繋いだ。
「さあ、行こうか。子どもたちが待ってる」
二人の仕事はこれから始まるのである。



66サンタ×トナカイ 2/2:2006/12/20(水) 17:35:57 ID:PS9VJj+C
二人が家に戻ったのは東の空が黒から紫へと色を変え始めた頃だった。
人型に戻ったベルはクロスの後について赤々と光る暖炉の側へ移動する。
クロス専用揺り椅子の足元に敷かれた絨毯に寝転び、ベルは小さくあくびをする。
キッチンにこもったクロスはコーヒーとホットミルクを用意している。
暖炉の火にあたり、ベルはうとうとと微睡み始める。
「ベル。僕から君にプレゼントがあるんだ」
キッチンから戻ったクロスの言葉にベルはがばっと起き上がる。
「よ、よいのですか?」
ホットミルクのカップを受け取り、ベルは頬を紅潮させてクロスを見上げる。
揺り椅子に腰掛け、クロスは傍らのテーブルにコーヒーのカップを置いた。
「ああ。今日はクリスマスだし、君にはいつも世話になってるし」
ごそごそとポケットから袋を取り出し、クロスはそれをベルへと放り投げた。
小さな袋を受け取ったベルは大切そうにそれを抱きしめる。
「あけてごらん」
クロスに促され、ベルは袋を開けた。
中に入っていたのは新しいチョーカーだった。
「それならいつもつけていられるだろう?」
大きく頷きベルはクロスへと近づく。
立ち上がったベルと座ったままのクロスの視線がかち合う。
「つ、つけてください」
クロスの手にチョーカーを握らせ、ベルはクロスに背を向ける。
短い髪の間から覗く耳が赤く染まっているのを見つけ、クロスは嬉しそうに笑った。
「もう少し近くにおいで」
ベルの腹に腕を回して引き寄せる。
クロスの膝に座らされ、ベルはぎゅっと目を閉じた。
首筋に息がかかる。
クロスがこういうことをしはじめるのは大概ベルを欲しがる前兆だ。
しゃらんと鈴が鳴り、古いチョーカーが外されて新しいものに変わる。
これはベルがクロスのものだという証に見えるとベルは思った。
「僕もほしいものがあるんだ」
再びクロスの手が腹に回り、優しく抱きしめられる。
「ベル」
耳朶を噛まれ、ベルは小さく啼いた。
「君がほしい」
クロスの手が胸を包み込み、首筋に唇が触れる。
どくどくと高鳴る心臓と飛んでいってしまいそうな意識を必死で抑え、ベルは上半身を捻ってクロスと視線を合わせる。
「あ、あの……クロスさんが大好きです」
「うん。僕も好きだよ、ベル」
優しく重ねられた唇が少しずつ熱を増していくのを感じながら、ベルはクロスへの愛おしさと幸せで胸をいっぱいにするのだった。


おわり

67名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 18:05:34 ID:c0HtHtYu
投下者さん全員グッドでゴッドなジョブ!
トナカイさん可愛いよハァハァ
つか皆書くの早ぇえなw
自分も若サンタ×おにゃのこトナカイ途中まで書いたので終わったら投下しにきます。

でわでわ投下してくれたサンタさん'sに幸あれ〜!
68名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 18:11:01 ID:yILWuHzi
なんつーか、おまいら最高だなw
69名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 18:18:54 ID:iD8tIeS+
ここはクリスマスに真っ白な夢が広がる良いインターネットですね
70名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 18:28:52 ID:+LQEgGDN
>>61>>62>>64>>67
冗談半分で書いたのに本当に投下がくるとは
お前ら最高だwww
71名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 19:12:01 ID:kf4yNRgI
http://ja.wikipedia.org/wiki/トナカイ
>トナカイはオスとメス共に角をもつ。オスは夏に、メスは冬に角を生やしており、

というわけで、サンタクロースのトナカイはメスで良いかと



自分もサンタ×トナカイ
もしゃもしゃしてやった
反省してない

***

「真っ赤なおっしっりっの〜♪」
「ご主人さま〜。それ歌詞ちがいますよぉ〜」

ぱしっ
「きゃぅ〜ん」

「トナカイさっんっは〜♪」

ぱしっ
「あぁぁ〜ん。……ムチでおしりたたくのやめてくださいよぉ。けっこう痛いんですぅ」

「うるさいよ。お前は」
ぐいっ
「いゃぁ〜ん。……首輪ひっぱるのもやめてくださ〜ぃ。
トナカイへの虐待は国際サンタクロース協会によって禁じられていまーす」

「ほおぉ。こぉ〜んなに恥ずかしいところを赤くして、よだれ垂らしてよがっているのに、虐待ねぇ。
じゃあ、やめちゃおうかな」

「だって、だって、ご主人さま〜。……って、んっ、あっ。
あぁぁぁん。なにつっこんだんですかぁ〜」

「プレゼント」
「プレゼントは、くつしたにつっこむものですよぉ。
やだ! これうごく! ああ、やぁあん、はあぁぁん、あん、あん。
きっ、きもちイイ! あ、もっと、もっと。
イッちゃう! イッちゃう!」

「行くの? そうだな、そろそろ子供たちにプレゼントを届けに行こうか」
「あっ、ぬかないでぇ〜」
「続きは仕事の後でね」
「そっ、そぉんなぁ〜」
72名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 19:36:31 ID:+Nne7nJs
>>71
不勉強でしたorz完全にイメージで殴り書いたんだっごめんよサンタ!
7367:2006/12/20(水) 21:33:14 ID:PLjqr0Xc
>>71
トナカイってメスにも角あるんだ。勉強になった。
そしてSS、エロくてグッジョブ! 鬼畜なご主人様は嫌いじゃない。むしろ好きだ。

でもって>>67で予告したとおり投下します。
ネタだし細かい事はあんまキニスンナ!
74サンタクロースは準備中(1/3):2006/12/20(水) 21:34:02 ID:PLjqr0Xc
火がはぜる音をたてている暖炉の前に、まだ少年にも見える若い男が
あぐらをかいて座っていた。傍らには山積みのカードが置かれている。
それらに書かれている宛先はみな同じで、一様にこう書かれていた。

『サンタクロースさんへ』

男は少しくせのある金髪をかきむしると、一番上に置かれたカードを
手に取って音読した。
「ええと、次は二丁目三番地、ヘンリー・アボット……なになに、
『いもうとか、おとうとがほしい』。そんなもんは親に直接言え! くそっ」
叫ぶなり、ルーカスはばしっと床にカードを叩きつけた。
すると、彼の背後からその行動をたしなめるように声がかかった。
「ちょっとルーカス、子どものカードに八つ当たりしないで。
そんな暇ないはずでしょ。もうクリスマスまで一週間もないんだから、早くしないと」
艶やかな声の主は、背の高い赤毛の女だった。
ペールグレーのセーターにモノトーンのスカートが良く似合っている。
眉を寄せて言い聞かせるような口調は姉のような響きを持っていた。
実際、彼女はルーカスよりも三つ程は年上のようであった。
もっとも張り出た胸は年齢以上といった感じではあったが。

「アニエス……」
ルーカスはちっと舌打ちをして名前を呟くと、そのままじろりと女を睨んだ。
「そんな顔したってダメ。明日までにはこのカード分は処理してもらいますから」
「わかってる! いちいちうるさく繰り返すな! やればいいんだろう、やれば」
ルーカスはばっと無作為にカードの一つを掴み上げるとそれを読み、
祈るように目をつむった。すると彼の手元に光が浮かび上がったかと思うと、
玉のように丸くなっていき淡く輝きを放っていた。光は段々収縮していき
一つの形を表し始めていく。
それは、一つのくまの縫いぐるみだった。
それが形をもった瞬間ルーカスが読んだカードの、『テディベアが欲しい』という
部分に『Finished』の印が書き込まれた。

「おみごと」
アニエスはくすっと笑って唇を持ち上げた。
「なんだよ。」
「やればできるじゃないってこと。その調子で頑張って。
全部終わったらイイコトしてあげるから」
瞬間ぴくりとルーカスの耳が動いた。そして黙々と欲しいものが書かれたカードを
めくってはクリスマスプレゼントとして次々と出していく。
あまりにも判りやすいその行動にアニエスは笑いを噛み殺した。
75サンタクロースは準備中(2/3):2006/12/20(水) 21:35:02 ID:PLjqr0Xc
魔法の力で世界中の子供達のプレゼントを具現化するのは、サンタクロース一族の力であった。
今年からプレゼントを配るサンタの一人として選ばれたルーカスは、まだ若さゆえか
大役のためか不安が大きいのか、最初のうちはプレゼントの具現化が上手くいかない事も多々あった。
そんな彼を補佐するためにつけられたのが、サンタクロースのしもべでもあるトナカイ一族の娘、
アニエスであった。彼女はルーカスの祖父にも仕えていた優秀なトナカイだ。

良きサンタクロースとして初仕事をこなせるように、ルーカスを上手く導いていくだろう
というのが一族の考えであり、そのためにアニエスがルーカスの元にやってきたのだが、
トナカイとはいえアニエスは、人型をとれば美しい若い女だ。
そのアニエスと夜に昼にと生活を共にして、ルーカスがどういった感情を彼女に
抱くかという事を、サンタクロース一族の長老たちはそっちの方面に枯れた老人ばかり
だったために、考えもしていなかった。

*******

ハーブティーの入ったカップに唇を当てていたアニエスは背後から名前を呼ばれ振り向いた。
そこにはルーカスがふんとばかりに息巻いて腰に手を当てて立っている。
「全部終わったぞ。これでいいんだろ」
その言葉にアニエスは思わず「あらまぁ」と目を見開いた。
「え、もう終わったの? ずい分早いじゃない。
私は別に明日までに終われば良いと思ってたんだけど……」
「明日はクリスマス準備もお休みだ。明日の朝は遅く起きるかもしれないし……」
そう言いながらアニエスに近づくと、ルーカスは彼女の赤い髪をかきあげて耳朶に口付けた。

「ちょっと、ルーカス!」
「終わったら、って言っただろう?」
心外といったような表情でルーカスはアニエスの顔を見た。

「それはまさか終わるとは思ってなかった……」
思わず本音を漏らしそうになったアニエスは、ぱっと慌てたように口を手のひらでふさいだ。
ルーカスは一瞬眉を上げたが、すぐに思いなおしたようにアニエスの服に手をかける。

「だ、だめだめだめっ、プレゼント用意するだけが準備じゃないんだから!
ソリも用意しなくちゃいけないし、こんな事してる場合じゃないのよ」
「こんな事って?」
「ちょっ……あ―――っ」
ルーカスの手がアニエスの下着をずらしてその内部を指で探り始めていた。
彼を押し返そうとする手の力が抜けていく。そのままゆっくりと口付けを交し合い
二人はすぐ傍のソファにもたれ掛かるようにして倒れこんだ。
76サンタクロースは準備中(3/3):2006/12/20(水) 21:36:25 ID:PLjqr0Xc
「もう、しょうがないんだから……っ」
唇を尖らせて言うアニエスに、ルーカスは満面の笑みを向けた。
「サンタクロースとトナカイは一心同体。だからクリスマスの前に
俺たちも気持ちと、それから体を一緒にしておかないと」

*******

「あっ、あああっ……ルーカスっ、そんなに強くしないで……!」
豊満な乳房を揺さぶりながらルーカスが腰を動かしていく。
快楽がルーカスの理性を揺るがし、彼は本能のままにアニエスを求めていた。
腰を高々と掲げさせ、入りやすくしたアニエスの後ろからルーカスは自らの肉棒で
彼女の入り口へと押し入った。既に愛液とルーカスの精液でぬめぬめと濡れたそこは
容易に彼自身を受け入れた。
「アニエス、アニエス……!!」
名を呼びながら先端を彼女の敏感な部分にこすりつけるようにすると、声なき声で
震えながらアニエスが達するのが震動となってルーカスにも伝わってきた。
そのたわみが、ぎゅっと柔らかく、しかし逃がさない強さでルーカスを掴みあげる。
彼もまた白い白濁を、解放するようにその場所へと勢いよく放った。

*******

ルーカスの裸の胸にそっと触れながら、アニエスはそっと彼に問うた。
「……何を考えてるの?」
「別に」
「やっぱり不安? 初仕事は」
慈母のような微笑を浮かべて聞いたアニエスの言葉にルーカスは何かを言いかけるように
していたが、言うべき言葉が見つからなかったのか困ったようにそのまま唇を引き結んだ
「大丈夫よ、あなたは偉大なサンタクロース一族の一人なんだから。自信をもって!」
「いてっ」
べちっと胸をはたかれてルーカスは思わず声をあげた。アニエスの顔を見返せば
彼女は先ほどと同じように柔らかく微笑んでいた。その笑顔をルーカスは眩しそうに見つめた。
そしてしばらく口ごもっていたが、意を決したように口を開いた。
「……やっぱ……不安がないって言ったら嘘になる。だけど……」
するとルーカスはがばっと身を起こし突然アニエスの体を強く抱きしめた。
当のアニエスは、突然の彼の行動に目を白黒させている。
「俺、お前がいれば何でもできる気がする。俺にとってお前はこの世で最高のトナカイなんだ。
だから、絶対大丈夫だって思ってる。アニエス、信じててくれ。
きっと今年のクリスマスは素晴らしいものにしてみせる!」

抱きしめる手に力がかかり、その力強さをアニエスは体で感じていた。
そして楽しげに唇を上げた。
「……ばかねぇ。あなたは子供のためのサンタクロースなのよ。
自分のトナカイに、一番素敵なプレゼントを贈ってどうするのよ」

アニエスは自分からもぎゅっとルーカスを抱きしめると、彼の頬に
手を当ててそっと彼の唇に自分の唇を重ねた。アニエスは、光を宿した
ルーカスの瞳が瞬きするのを聖夜に星が瞬くようだと、そう思った。

*******
終わり
77名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 21:59:05 ID:rNQewwRM
>>74-76
GJ!
なにこの神SS投下の嵐。俺たちへのクリスマスプレゼント?
78名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 23:00:30 ID:rB3TxPOm
偶然?
また、いいタイミングで
男主/女従 のスレが立ったものだね!

ピッタリシチュに、良SSが流れ星みたいだ!
7961:2006/12/21(木) 00:32:13 ID:LqbI7dwp

Σ気がつけば神々の更新が…!!
GJ…!!萌えた!





なんだか一番最初にあんな文にもならんのを放置してすまそorz
時間あったら真面目に書いてくるよ…!!
8074-76 :2006/12/22(金) 01:16:32 ID:ClBx2xmN
どもども。ルーカスとアニエスのB面みたいな感じのSSを
女主人の主従スレに投下してきやした。良かったら見てねー。

>79
リテイクバージョン、楽しみにしてる!!!

そして新作SSもカモン鴨ん。
81名無しさん@ピンキー:2006/12/22(金) 12:07:57 ID:98owbj3E
このスレはみごとにクリスマス色に満ち溢れてるな!

ここ数年は憂鬱なクリスマスだったが、
なんだか今年はメリーなクリスマスを送れそうな予感だぜ!!
82名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 01:29:10 ID:b1OVToTp
クリスマスネタで盛り上がっているところにごめん。
エセ軍人もので上官と部下の話が書けたので、
ホシュがてらに投下しさせてもらいます。
エロに入るまでが長く、ラブコメ色が強いものなので
苦手な方はスルーよろしく。
83硬派な上官の意外な趣味:2006/12/23(土) 01:29:43 ID:b1OVToTp
 美しい山々に囲まれたエーレンシュタインは300年続く女帝国家である。
 現女王であるアーデルハイネは、長く続いた隣国ディラストとの戦争を終結させ
たことで、その名を知られた才女である。彼女の隣には常に夫であり宰相であるシュ
ヴェールヴァールの姿があり、その仲睦まじさも有名だ。
 そんな彼もまた、女王の円卓の騎士の一人である。
 エーレンシュタインには、女王が優秀な騎士を率いて国を守ったという歴史があり、
今もそれに習い、彼女を補佐する6人の直属の部下を円卓の騎士と呼び崇めている。

「ねえねえ、シュヴァルベ大将軍って恋人が居ないって、本当なの?」
 昼食時、食堂で毎度友人に聞かれる質問に、レオニーはうんざりした顔をした。
 レオニーは亜麻色の長い髪を一つに束ね、大きな青い瞳が特徴的な今年で22歳にな
る新米下士官だ。昨年、無事に士官学校を卒業し、念願叶って軍務に就いた。彼女の
職場は軍務を一手に取り仕切る大本営の、それを取り仕切る大将軍シュヴァルベの副
官だった。
 彼もまた円卓の騎士の一人であり、その中でも未だ独身である事から、女性達の注
目の的である。隣国ディラストとの戦争で多大な功績を挙げた彼は、いかにも軍人と
いう風貌で華やかな噂も無く、その硬派な態度が一部の女性達のハートと掴んでいる
ようだ。とはいえレオニーからすれば、軍務一筋の何の面白みのない男、でしかない
のだが。
 こちらが呆れるぐらいにストイックな彼の生き方は、ある意味尊敬はするが、賞賛
はしない。仕事に関しては何の文句もない副官冥利に尽きる上官かもしれないが、仕
事を抜きにすると、彼と一体何を話せばいいのかレオニーは全く判らないのだ。
 副官というものは、それでもなくとも上官と共にする時間が長い。だから円滑な関
係を結ぶためにも、それなりの信頼関係を作らなくてはならないとレオニーは考えて
いた。
 他愛も無い会話も、世間話も──それなりに必要だろうと、そう考えていた。
 だが、シュヴァルベはそういった類の会話を一切しようとしない。意を決してレオ
ニーからしたとしても「そうか」「分かった」などと短い言葉で済まされてしまう。
 彼の方からすればレオニーとの関係は仕事のみであって、それ以上の関わりを求め
ていないという事なのかもしれない。それはそれで楽かもしれないが、
(「ヴァール兄様なら、こんな風にはしないわ」)
 ヴァールとは、宰相であるシュヴェールヴァールのことである。彼は名門貴族リル
ヴァン家の生まれで、レオニーはその分家の娘に当たり、二人は遠い親戚になる。幼
い頃、遊んでもらったことが何度かあり、レオニーが軍を仕官したのは、彼の影響が
多分にある。
 優しく聡明なシュヴェールヴァールは、レオニーにとって憧れの存在だった。
 だから、レオニーの第一志望は彼の下での勤務だった。士官学校を首席で卒業する
と、宰相の下に配属されるという話を聞き、見事に主席を勝ち取った。だが実際の配
属先はシュヴァルベの下だった。
 どちらもやりがいのある、国にとって重要な職場ではある。だが、レオニーにとっ
ては雲泥の差だった。それを表に出すような真似はしないが、シュヴァルベに対する
彼女の評価が辛いのは、そういう理由もあるのだろう。
84硬派な上官の意外な趣味:2006/12/23(土) 01:34:41 ID:b1OVToTp

 無駄なものが一つも無いシュヴァルベの執務室は、部屋の主の気質をそのまま現し
ているようだった。
「将軍。例のハーシュベルでの一件、報告書が出来上がりました。ご確認をお願いし
ます」
「分かった」
 相手の顔を見ようともせず、シュヴァルベはレオニーからの書類を受け取った。レ
オニーは一礼をすると側にある自分の机に戻る。
 皆、こんな人の何処がいいのかしら──刈り込んだ短い髪に、厳つい身体、まさに
軍人のお手本のようなシュヴァルベの横顔を眺め、レオニーは小さく溜め息をついた。
 副官に就いてから一年経つが、噂通り本当に浮いた話など一つも出てこない。歳を
考えれば、どこぞに愛人の一人や二人いてもおかしくないが、彼に女の影は一切無い
といってもいい。宿舎と大本営を往復する毎日で、趣味らしい趣味もない。一体、休
みの日は何をしているか、見当もつかない。
 こんな息苦しい生活が毎日続くのかと思うと、レオニーはそれだけでげんなりして
くるのだが、皆はそう思わないのだろうか。
「体調でも悪いのか、レオニー」
「え? い、いいえ。そのようなこと、ありません」
「そうか。ならばいい」
 まさかシュヴァルベからそのようなことを尋ねられると思ってもみなかったレオニー
は一瞬面食らったように彼を見てしまった。慌てて軍人らしく背筋を伸ばし、はっき
りとした口調で答えると、彼は顔色一つ変えず、また書類に目を落とした。
 本当によく分からない人──レオニーにとってシュヴァルベは、上官でなければ関
わりたくない、苦手なタイプだった。
85硬派な上官の意外な趣味:2006/12/23(土) 01:36:15 ID:b1OVToTp

 久々の休日、レオニーは街にいた。ずっと見たかった流行のブティック店を一回り
し、戦利品も手にすることができた。そろそろカフェで一休みしようかとお気に入り
の店に向っていると、その向かいの本屋から、一際体格の良い男性が出てきた。とり
たておかしな光景では無かったのだが、出てきた人物をレオニーはよく知っていた。
「ハーシュベル将軍──!?」
 その呼びかけに気付いたのか、相手は足を止めてしまった。マズイとレオニーが思っ
た時には既に遅く、彼はこちらの存在に気付いてしまった。
 後になれば一礼でもして、すたこら逃げてしまえば良かったのだが、その時のレオ
ニーは馬鹿正直に彼がこちらに来るのを待ってしまっていた。
「レオニー。出来ればその呼び方はやめてくれると助かる。……周囲の者達に気を使
わせてしまうのは避けたい」
 はたとそこでようやくレオニーは彼が私服姿である事に気付いた。
「……ええと、閣下。護衛の姿が見当たりませんが……」
「彼らを引き連れて此処には来れないだろう? ああ、安心しろ。護身用の銃は持っ
ている」
 さらりと口にした言葉にレオニーは眩暈がした。軍務を預かる大将軍が護衛もつけ
ずに街をぶらりとしているなど聞いたことがない。
 まあ、確かに軍服を脱いだハーシュベルの姿は、存在だけでディラスト兵を震え上
がらせたといわれる大将軍とは一致しない。そもそも、軍服姿のイメージが強いだけ
に私服姿が似合わないのだ。レオニーが見つけられたのは、普段から傍にいることが
多いからであって、それがなければ判らなかったに違いない。
 確かに今日はハーシュベルも休みであるるから、彼が何処にいようと不思議ではな
いのだが、こんな風に外出するなどとは思ってもみなかったレオニーは、ただただ唖
然として彼を見上げてしまっていた。
 その視線にハーシュベルも気付いたのだろう、困ったように視線を逸らし、
「そう珍しいものを見つけたような顔をしないでくれ」
「あ、ああ、申し訳ありません! そんなつもりでは……」
「そうか? 今の君は、私が買い物をするなどと思いもしなかった顔をしているぞ?」
 悪戯っぽく目を細めて笑うハーシュベルに、レオニーは更に驚いた。普段の冷厳、
厳格、威圧感漂う彼の姿からは、今の子供っぽい彼は想像も出来ない。
 無意識にレオニーはまじまじとハーシュベルを見てしまった。すると彼の手に本が
あることに気付いた。
86硬派な上官の意外な趣味:2006/12/23(土) 01:36:54 ID:b1OVToTp
「閣下は本を買われたのですか? やはり読まれる本というのは、軍務に関わりのあ
る……」
 それとも何かの資料なのだろうか、とレオニーは興味本位で尋ねてしまったのだが、
尋ねられた相手は心底困ったような顔をした。
「そんなご大層なものじゃあない。……気になるのか?」
「えっ? あっ、はい……閣下が読まれる本ならば、私にとっても役に立つのではな
いかと……」
 その言葉にハーシュベルは苦虫を噛み潰したような顔を作り、素っ気無く持ってい
た本をレオニーに差し出した。
 レオニーはそれを有り難く受け取ると、ぱらぱらと中身を確信した。
 そこには、仕官学校時代に読み深けた兵法軍事関係の類の本でもなければ、高名な
作家の歴史書物でもなく──巷に溢れ出ている純文学と呼ばれる本だった。しかも、
どこにでもあるような男女の恋愛もので──そういえば、先日、人気作家が出した恋
愛小説が人気なのだと、同僚女性が騒いでいたような気がする。
「これは誰かに頼まれて、お買いになったのですか?」
「いや。自分のためだ。……言わなくても判っている。顔に似合わず、おかしなもの
を読んでいると思っているのだろう?」
「そ、そんなことは! ただ、意外だなと思いまして……」
 硬派で知られる彼の読む本が、流行の恋愛小説だなんて──誰が思うだろうか。本
を返されたハーシュベルはレオニーに世辞はいいと大きく首を横に振り、
「いや、いいんだ。自覚はしている」
 慣れていると言いだけなハーシュベルは、きっと以前にこのことで、かわかられた
ことがあるのだろう。だが、レオニーは笑うようなことはせず、
「お好きなんですか?」
 そう一言だけ尋ねた。すると彼は一瞬、意外そうな顔で彼女を見下ろし、すぐに照
れくさそうに視線を外してしまった。
「ああ、昔からな。出来れば物書きになりなかったんだが、そういう才能には恵まれ
なかった」
 言い終えてから、らしくないとハーシュベルは苦笑をすると、レオニーに向き直っ
た。そこには普段通りの上官の顔があった。
 その切り替わりの早さが何故かレオニーにとっては残念だった。仕事が恋人と揶揄
されるような大本営での大将軍よりも、好きな小説を楽しそうに語っている彼の方が、
レオニーは好きだった。
 え、今、自分は何を──ハーシュベルのことが好き──? そこまでしてレオニー
は、はっと顔を上げ、彼と見合ってしまった。
「どうかしたのか? レオニー。顔が赤いようだが……」
「い、いいえ、何でもありません! お休みのところを邪魔をしてしまい、申し訳あ
りませんでした。失礼します!!」
 手荷物を大きく揺らして、レオニーは一目散にハーシュベルの下から去った。
87硬派な上官の意外な趣味:2006/12/23(土) 01:38:00 ID:b1OVToTp

 ハーシュベルが彼女に避けられていると気付くのに、そう時間はかからなかった。
 目を合わせることを避け、二人で居ることも極力避けられているような気がする。
とはいえ、彼女は有能な副官であるから、任務に支障はきたすことはなかったが、そ
れでも以前の彼女からは想像も出来ない態度だ。
 原因は──多分、自分にあることはハーシュベルも気付いている。
 そもそも、彼女が自分の下に来ることを望んでいなかったことは知っている。旧友
であるシュヴェールヴァールから彼女のことは聞いていた。そして彼女が旧友を敬愛
していることも気付いていた。ならば、正反対である自分の下で働くなど苦痛に近い
ことだろう。もしかすると、今までやってこれたのは奇跡なのかもしれない。
 今まで彼女はよくやってくれた。これからは彼女の望む場所でその才能を開花させ
た方がいいのかもしれない──ハーシュベルは旧友の執務室に向うことにした。

 それから数日後、ハーシュベルは誰よりも早く執務室に入り政務をしていると、け
たたましい足音が聞こえてきた。一体何事かと顔を上げるのと同時に、扉が開いた。
「私に何か不手際でもあったのですか! 教えて下さらなければ納得できません、ハ
ーシュベル将軍!!」
 そこには、蜂蜜色をした長い髪を一つに束ねたレオニーが仁王立ちしていた。彼女
が怒る姿など見たことのなかったハーシュベルはそちらに気を取られてしまい、返事
をすることを忘れてしまった。それをレオニーははぐらかされたと思ったのだろう、
ずかずかと大股でハーシュベルの机まで歩み寄ると、
「私の移動を願い出たとお聞きしました」
「ああ、シュヴェールヴァールに頼んだ」
「理由をお聞かせ下さい」
「君が私の副官でいることに耐えられなくなったと思ったからだ」
「え……?」
 予想外のハーシュベルの言葉にレオニーは目を瞬かせた。
「君が以前からシュヴェールヴァールの下で働きたいと思っていたことは知っている。
だがあの時は丁度、私の副官が空席の状態で誰かいないかと彼に頼んでいたんだ。そ
の彼の薦めが君だった。彼の言葉通り、君は優秀だった。こんな私の補佐をよくして
くれた。しかし、やはり君は君の望む場所で働くべきだ。その方が良いはずだと、私
が判断した」
 持っていた書類を机上に置くと、ハーシュベルは椅子から立ち上がった。
88硬派な上官の意外な趣味:2006/12/23(土) 01:38:37 ID:b1OVToTp
「君ならば、何処に行っても必要とされる人物になるだろう。自信を持ちたまえ」
 ハーシュベルは自分の肩ほどもない背丈の彼女の向かいに立つと、目の前の光景に
ぎょっとした。
「それは、将軍は……もう私を必要とされていないということなのですか」
 俯いたレオニーの肩は小さく震え、それが泣いているからであることぐらい、ハー
シュベルも気付いた。
「そうは言っていない」
「私の移動を願い出るということは、そういうことです!」
 よかれと思い出た行動が、逆に彼女の自尊心を傷つけてしまったのかもしれない。
「私は君が必要だ。だが、君とってそれが苦痛であるなら、それは良くないことだと
言っているんだ」
「誰が嫌だなんて、言いましたか!」
 涙目のまま、そう言い返したレオニーに、ハーシュベルは咄嗟に言葉が出なかった。
うっすらと涙を滲ませた彼女は儚げで、それでいて気丈なまでに凛としていた。
「しかし……だな。最近の君は私の傍にいることが辛いのではないのか? 目も合わ
ようとはせず、極力、話すことを避けているように私は思うのだが」
 そう指摘され、レオニーは途端に顔を真っ赤にさせた。すると先ほどの勢いは何処
へ言ってしまったのから、しどろもどろになかってしまった。
「そ、それは……将軍の思っているようなことではなく、わ、私個人の……」
「レオニー?」
 意味が判らないと言いだけなハーシュベルの問いかけに、レオニーは意を決して、
「仕方ないじゃありませんか! 私もまさか将軍のことを、こんな好きになると思っ
ていなかったんですから!!」
 そう顔を真っ赤にして言い返してきた彼女に、ハーシュベルは面食らってしまった。
そしてわざとらしく咳をして、
「こんな時に、冗談など言うものではない」
「……だから言いたくなかったんです」
 判りきったハーシュベルの態度にレオニーは力なく答えた。
 偶然にも街で会ってしまった時、普段の厳めしい顔付きの彼とは全く違う一面に心
惹かれてしまった時から、彼が自分に本気になってくれない事は薄々分かっていた。
今まで副官として彼の傍にいたのだ、彼が特定の女性を作るつもりがないことぐらい
知っている。
 それでも好きになってしまった気持ちはレオニーの中で勝手に大きく膨らんでしまっ
ていた。まっすぐにこちらを見るハーシュベルの視線にレオニーは耐えられなかった。
任務の時はそれで割り切ることが出来るのだが、休憩時間、移動時間など、それから
少し離れてしまうと、以前とは別の意味で、彼といることが出来なくなってしまった。
 それを隠し通すことが出来なかった事態が、副官失格と言われればそれまでなのだが。
89硬派な上官の意外な趣味:2006/12/23(土) 01:39:15 ID:b1OVToTp
「……将軍のお気持ちは分かりました。移動の件、了解しました」
 深々と一礼をしたレオニーはくるりと身を翻し、部屋から出て行こうとした。だが、
その腕をハーシュベルは掴んだ。その咄嗟の行動にハーシュベル自身も驚いていた。
一体自分はどうしたいというのか──そんなことは分かりきっていたが、それを素直
に認めることが出来ないでいた。それも当然だろう、誰がこんな面白みのない男に、
歳若く、そして優秀な彼女が惚れると思うのだ。
「離して下さい、将軍。ハーシュベル──」
 続けようとした言葉をレオニーは口にすることが出来なかった。いきなり腕を掴ま
れたかと思ったら、更に強く引っ張られ、気付くと目の前が真っ暗闇だった。それが
ハーシュベルの軍服だと気付いたのは、随分経った頃だった。そこでレオニーはよう
やく自分がハーシュベルの抱きしめられているのだと知った。
「──本当に君は私のことが好きなのか?」
「将軍に嘘を付いて、どうするというんですか」
 おかしなことを聞くと言いだけなレオニーに、それでもハーシュベルの言葉は煮え
切らない。
「だが、私のような軍人としてしか生きられないような男に、君のような魅力的な女
性が好意を寄せるとは到底──」
「私の言うことが嘘だと仰りたいのですか!?」
 告白をした上に断られ、しかもそれに疑問を投げかけるなど追い討ちをかけるよう
なものではないか。レオニーがそう詰め寄ると、ハーシュベルもまた覚悟を決めたよ
うに彼女を見下ろした。
「そんなことは断じてない。──ただ、私は昔からこういうことに不得意でな……。
君を傷つけてしまったのなら謝る。本当に君のために良かれと思ったんだ。それだけ
は信じてくれ。私は……君が必要だ。君以外の副官など、考えられない」
「それは将軍も私のことを好いてくださっているということですか?」
 はぐらかして答えたというのに、単刀直入に聞いてくるレオニーに、ハーシュベル
は一瞬戸惑いつつも、
「ああ、私も君のことが好きだ」
 なんて生きた心地がしないのだろうかとハーシュベルは思った。これならば、戦場
で独り敵陣に突っ込む方が何倍も楽だろう。ならばレオニーは、今まで自分が戦った
どの相手よりも手強いということになるのかもしれない。
 自分よりも10以上も年下の異性の言動など、ハーシュベルが判るはずもない。だか
ら次の瞬間、
「将軍、嬉しい──!」
 心底嬉しそうに言い放ち、目一杯背伸びをして自分に口付けてくるなど、ハーシュ
ベルが判るはずもなかった。
90硬派な上官の意外な趣味:2006/12/23(土) 01:40:15 ID:b1OVToTp

 突然柔らかい感触を味わい、身体全身で喜びを表すレオニーに、ハーシュベルは戸
惑いつつも、愛しさを覚えてしまった。
 自分の前では決して見せない、歳相応の彼女の言動は、ハーシュベルにとって眩し
いものだった。同僚の女性と楽しそうに話している彼女を見た時、あれが彼女の本当
の姿なのだろうと思った。所詮、自分は望んでいない職場の戦うことしか才能のない
つまらない上官でしかないことは気付いていた。それに話したところで、彼女を楽し
ませるような話術も持っていない。どうせ彼女を失望させるぐらいならば、極力係わ
り合いを持たない方が得策だろう。
 そうやって今までやってきたのだ。それをいきなり変える事など、不器用なハーシュ
ベルに出来るはずもない。
 街中で彼女が自分を見つけてきた時は驚いたものだ。よくも自分を見つけられたも
のだと、感心してしまった。だからうっかり話さなくていいことをペラペラと喋って
しまったのだろう。あの日以来、彼女が自分と距離を作るようになってしまったこと
には気付いていた。きっと、『顔に似合わず恋愛小説なんて読んで、変な人』だと感
じたのだろうと思っていた。そう思う方が自然だ。
 こうやって彼女を抱きしめ、口付けている今でも実感が湧かないは、多分それが原
因なのだろう。
 だが、鼻をくすぐるレオニーの甘い香りは酷く心地良かった。まるで上等な酒でも
飲んでいるかのようだった。
「──んっ、……将軍、」
「こんな時に、その呼び方は止めてくれ。……悪い上官が部下を誑かしている気になる」
 そう告げるハーシュベルは心底困ったような顔をするので、レオニーはくすくすと
笑ってしまった。泣く子も黙る大将軍のこんな顔を見れるは、きっと自分だけなので
はないだろうか。そんな優越感がレオニーには嬉しくて堪らない。
「じゃあ、将軍。執務室でこんなことをするのは悪いことじゃないんですか?」
「してきたのは君の方だろう」
「止めましょうか?」
「君は私に犬のようにおあずけをしろというのか」
 少しだけ不貞腐れたようにハーシュベルは言い返すと、それ以上は会話を続けるつ
もりはないのか、レオニーに口を塞いでしまった。歯列をなぞり、舌を絡め取るよう
とに吸い上げられると、レオニーは堪らず身を震わせてしまった。
「性急、すぎます……将軍、」
「仕方なかろう。いつ君の気が変わってしまうかもしれないのだからな」
「そんなことっ、あ、んっ──」
 レオニーの脚を付け根に這い上がるような手つきでハーシュベルはなぞり上げた。
驚くほど器用に彼は、ストッキングを止めていたガーターベルトを留め金を外し、
スカートを捲し上げてしまった。そしてショーツの隙間から指を這わせ、ぴったり
と閉ざされたスリットをこじ開けてしまった。
「やっ、あっ、あっ、ハーシュベル将軍──!」
「その呼び方はしないでくれと言ったはずだ」
 耳元でハーシュベルの低い声で囁かれると、それだけでレオニーは感じてしまう
のか、むずがる子供ように首を横に振ってしまう。そんな姿がまた可愛くて、ハー
シュベルは堪らないとばかりに、その額や頬、首筋に唇を落とした。
91硬派な上官の意外な趣味:2006/12/23(土) 01:40:52 ID:b1OVToTp
 その度にレオニーは甘い声でハーシュベルを誘惑する。もっと乱れる彼女が見た
いとばかりに、ハーシュベルは秘裂をなぞる手に力をこめてしまう。うっすらと指
に絡みつく愛液をそのままに、恥毛に隠れる花芽を包皮の上からやんわりと押して
やるかと思えば、厚くなった花びらの内側をなぞり、もう一つの穴まで、ゆるゆる
と何度も往復する。十分に密壷から愛液が溢れ出ると、ハーシュベルはようやく無
骨な指でその場所を蓋をした。
「──凄い締め付けだな。まるで処女のようだ」
 たった一本の指だというのに、レオニーの膣はぎゅうぎゅうに締め付けてくる。
その言葉にレオニーは息を呑む。その反応にハーシュベルは、もしやと彼女に問い
質した。
「まさか、本当に処女なのか?」
 その問い掛けにレオニーは顔を真っ赤にして顔をそむけるだけだったが、ハーシュ
ベルはそれが肯定であると理解した。場慣れしているとばかり思っていた彼は、予
想もしていない展開に行為もそこそこに彼女を抱き上げしまった。
「ハーシュベル将軍!?」
「狭いが仮眠用のベットがある」
 隣室は主に書庫として使っているが、宿舎に戻るのが面倒な時用などにはハーシュ
ベルはそこで寝泊りをしている。
 このまま行為を続けても、初めての彼女には負担が増すばかりだ。それを知らな
いほどハーシュベルも無知ではない。お世辞にも綺麗な室内とは言えないが、ここ
でするよりはマシだろう。
 ずかずかと大股でレオニーを抱きかかえたまま、ハーシュベルは隣室に向い、粗
末なベットに彼女を寝かせた。そしてまるで天蓋のように彼女の上に覆い被さった。
そして未だにレオニーの胸元が着込んだままなことに気付いた。
「そういえば、まだこちらを拝んではいなかったな」
「将軍。その言い方、オヤジ臭い台詞ですよ?」
「君から見れば十分にオヤジだからな、仕方あるまい」
 皮肉を皮肉で反論するハーシュベルは何故か得意げだ。普段の無口で無愛想な彼
が、これほど口が達者だとは思わないだろう。もう、と頬を赤くするレオニーに頬
に口付けながら、ハーシュベルは勝手知ったる軍服を意図も簡単に脱がしてしまった。
 真っ白なシャツをはだかせ、淡い黄色をしたブラジャーを外すと、形の良い胸が
ぶるりと揺れた。豊満とは程遠い大きさだが、形は良く、肌触りが格別だった。ま
るでマシュマロでも触っているかのように柔らかく、それでいて弾力のある胸に、
ハーシュベルは誘われるように桜色の蕾を口に含んだ。そして舌先でちろちろと叩
き、吸い上げると、レオニーの背中は大きく弓なりに反れた。
 初めて知る快楽に戸惑いつつも、少しずつ艶を見せる彼女の姿にハーシュベルは
目が放せない。レオニーのショーツを脱がし、口に含んでいた突起を解放してやる
と、そのまま彼女の片足を持ち上げ、露になった秘部に顔を近づけた。
「や、そんなところ、汚い──」
「そんなことはない。とても魅惑的だ」
「そ、そこで喋らないで下さい、あっ、ああんっ!」
 濡れた花びらをめいっぱいに広げられ、隠れていた花芽を探り出すと、ハーシュ
ベルはそこに口付けた。
 未開発の女性も感じる場所というだけに、それはレオニーにとっても同じことの
ようだった。下腹部から伝わるむず痒いまでの痺れにレオニーは堪らず逃げようと
するのだが、ハーシュベルの手ががっちりと腰を掴んでおり、それが出来ない。
 一向に手を休めてくれないハーシュベルの行為に、レオニーは堪らず彼の髪を掴
んで抗議してしまう。だが、それでも行為は収まらず、更に包皮を剥かれ、新芽を
触れると、今までの痺れとは比べ物にならない痛みに似た衝撃が、レオニーの身体
を貫いた。
92硬派な上官の意外な趣味:2006/12/23(土) 01:41:31 ID:b1OVToTp
「──レオニー」
 その呼びかけに答えることも出来ないほど、彼女は息を切らせていた。ふとハー
シュベルの指が口元に置かれているのに気付き、彼を見上げると、
「これが君の味だ」
 そこでようやく差し出された指に粘液が絡み付いていることにレオニーは気付い
た。そして、それが自身のものであることも。かあっと羞恥から顔を真っ赤にさせ
た彼女にハーシュベルは一度口付けてから、濡れた指先でレオニーの下唇をなぞった。
「んっ、……変な味……」
 何の躊躇いもなく差し込まれた指を舐めるレオニーに、ハーシュベルは目を細め、
堪らないとばかりに彼女の耳元で囁いた。
「もうこれ以上、我慢が効きそうにない。……君が欲しい」
 酷く熱っぽいハーシュベルの声に、レオニーもまた同じだと告げるように頷いた。

「あ、ああっ──!」
 太い杭のようなものに身体を押し上げられているようだとレオニーは思った。熱く、
それでいて大きなハーシュベルの肉棒に、身体が切り裂かれてしまいそうだった。
「ハーシュベル、将軍……っ、」
「すまない、レオニー。もう少し辛抱してくれ」
 詫びるように汗ばむ額にへばり付いた前髪を払い、そのこめかみにハーシュベル
は口付る。
 苦しいのは、ハーシュベルも同様だった。
 男を知らぬ彼女の内部は、侵入者を受け入れるというよりは、拒絶に近かった。
狭い内部を強引に捻じ込み、広げるように奥に進む度に、獰猛なほど締め上げられ
る。まるで喰いちぎらんばかりの締め付けに、ハーシュベルは眉間に一層のしわを
作った。
 彼女の気を逸らすために唇を重ね、舌を絡めるように激しい口付けをすると、内
部が愛液に満たされていくのが判った。激しい行為よりも、今の彼女はこんな風に
口付けを交わすだけでも十分感じてしまうのだろう。内部の狭さは相変わらずだが、
それでも愛液の量が増えると、動き易くなったことは事実だった。
 そしてゆっくりとハーシュベルはレオニーの狭い肉洞を動き始めた。彼女の感じ
る場所を見つけるような、ゆるゆるとした動きに、苦しいだけだったレオニーの声
も少しずつ艶を帯び始める。すると、ある部分に当たる度に彼女が一際反応するこ
とにハーシュベルは気付いた。確認するように、その場所を重点的に責めると、レ
オニーは堪らず彼の背中に回していた腕に力をこめた。
 ああ、ここが彼女の感じる場所なのか──初めて知る快楽に戸惑うレオニーに、
ハーシュベルは落ち着かせるように抱きしめてやる。
「やっ、ああっ、将軍! わ、私、変な気持ちに──、」
「……そのまま、私に身を委ねるんだ、レオニー。おかしなことなど、何一つない
のだから」
「で、でも、ハーシュベル、将軍──んんっ!」
「名を呼んでくれ、レオニー。こんな時まで、その呼び名を口にしないでくれ」
 強請るようにハーシュベルは彼女の耳元で囁き、震える胸を鷲掴みにした。既に
蕾の突起はピンと立っており、それをハーシュベルは指の腹で押しつぶすと、膣の
締め付けは一際きついものになった。
 その締め付けを押しのけ、ハーシュベルは動くスピードを高めていく。少しずつ
結合部からは淫らな音が奏でられ、それにレオニーの嬌声が重なる。それがハーシュ
ベルを酷く興奮させた。まるで縋るように抱きつくレオニーの姿にも欲情している
ように、甘い声を上げるその唇を塞ぎ、舌を絡め、唾液すら啜り取る。
 酷い男だと自覚しつつも、行為を緩めることも、止めることも出来なかった。
「将軍、ハーシュベル将軍、ハーシュベル──! あっ、あああ──っ!!」
 一際甲高いレオニーの声と共に、肉洞は痙攣するかのように激しくハーシュベル
の肉棒を締め付けた。彼女が達したことを確認すると、ハーシュベルは愛液に濡れ
た自身を強引に抜き、乱暴にそれを扱いた。腰の付け根に溜まったものを吐き出す
ように、先端から白濁液が飛び散り、レオニーのシャツやスカートを汚していった。
93硬派な上官の意外な趣味:2006/12/23(土) 01:42:08 ID:b1OVToTp


 その後、二人は晴れて恋仲になった訳だが、あの日ことをレオニーはあまり思い
出したくない。
 ハーシュベルの精液でべとへどになった軍服など着れるはずもなく、当たり前の
ように執務室などに換えなどあるはずもなく、レオニーどうやって更衣室に戻るか
散々悩まされたのだ。
 結局、『珈琲を服に零してしまった』などという、いかにも嘘臭い言い訳を考え、
ハーシュベルの上着を借りて更衣室まで戻った。だが、そこには運悪く同期の知人
がおり、ハーシュベルの上着を着ている理由を根掘り葉掘り聞かれた。それでも何
とか納得してもらうと、彼女がある事に気付いたのだ。
「あら、レオニー。虫にでも刺されたの? 赤くなってるわ」
 ほらここにと首筋にはっきりと残る赤い跡を指摘され、レオニーは恥かしいのを
通り越して、ハーシュベルに怒りを覚えた。
 いい歳をして、ハーシュベルは何を考えているのだ。
 服を汚したことも問題なのに、その上、こんな跡をつけて、もし周囲に気付かれ
たりしたら何を言われるのか──考えただけでも堪ったものじゃないというのに──!
 だが、そこはレオニーも一端の軍人である。
 しかも、かの大将軍の副官である。──ポーカーフェイスはお手の物だ。
 さらりと珈琲を零した時に火傷をしてしまったのかもしれないと心配そうに鏡を
見入っていると、彼女は不信がるよりも、医務室に行った方が良いと薦めてくれた。
 執務室に戻ってきたレオニーが見るからに怒っていることはハーシュベルも分かっ
たのだが、己の犯した失態までは気付かず、数週間もの間、彼女が口を聞いてくれ
なかったのは言うまでもないことだった。

**おわり**
94名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 01:55:01 ID:7NeUprc5
グジョーブ
かわいいなあ
95名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 01:56:46 ID:LbJ9Sr8W
GJ!
やはり上官副官はいい。
しかし結ばれたその日からまた口利いてもらえないのは辛いなw
96名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 02:07:46 ID:fTD6HLyv
GJ!
だがシュヴァルベはどこに行ったんだ?
シュヴァルベ=ハーシュベル?
9782:2006/12/23(土) 09:14:45 ID:xExSDYGD
反応ありがとう。そして、不親切で、ごめん。
自分の中では勝手に公=シュヴァルベ、私=ハーシュベル
という形で出来上がってた……。
統一した方が読みやすいよね、混乱させて、すまん。
ついでにややこしくなってる原因はレオニーが例の件で
ハーシュベルって言ってることだな……こっちは完全に
自分のミスだ。
有名な地名が名前になってるとでも……無理だなorz
98名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 10:40:58 ID:u5U024cV
>>97
いあいあ、ドンマイですよ。
つか萌える。正直堪らん(;´Д`)ハァハァ
99名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 13:26:57 ID:2x/syitJ
GJ!
普段からは想像できない趣味っていうギャップが好き
アーデルハイネ女王の話も読みたいです
100名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 01:15:27 ID:JYvm0KIj
なんか前半の人物描写や恋に落ちる展開がハーレクインぽくてワロタw
いやばかにするとかじゃなく、にやにやしてしまったというか。
そして後半はもっとにやけまくりですよ!?
あーもうちくしょう、これだから甘々は好きなんだ。GJ!
101名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 12:51:16 ID:R81nocpS
シュヴァルベ、ハーシュベル、シュヴェールヴァール・・・
ちょっと名前が混乱したぞ!舌噛みそうだ。
でも面白かった。
102名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 14:14:40 ID:esDDW5YE
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103名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 18:35:14 ID:SLpRwQhZ
>>102
どっかの部族の隊長(男)と、異国に連れて来られたばかりで
片言の言葉しか喋れない奴隷(女)のほのぼの和姦を念視しました。
104名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 21:50:45 ID:rT2gERUX
>103
それは萌えるな!

そして唐突にトニー(102だから)は女の褐色の肌を割り、己自身を強引にねじこんだ。
「ここか、ここがいいんだろう。この淫乱め」
「twjm……ッ」
女は屈辱に頬を紅潮させていたが
そのオニキスのような瞳に強い光を浮かべて男を睨みつけた。
「いくら罵ってみたところでお前らの言葉は判らん。悪かったな」
だが、トニーはあっさりとそれを鼻で笑ってみせたのだった。

てな感じか。
あれ?なんか自分で書いてみると
あんま…萌えない…(´・ω・`)ションボリ
105名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 21:53:12 ID:rT2gERUX
あ、ごめん。今気付いたけどこれじゃワカンじゃないね…orz
106名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 22:18:43 ID:xxho2C7J
このうっかりさんめ
107sage:2006/12/26(火) 23:21:29 ID:fd0V3LDy
>>103の設定に萌えて書いてみた。
エロ少なめ。甘いのを目指した。
108名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 23:27:03 ID:fd0V3LDy
湯船に浸かり目を閉じているジブリールを横目にラサはせっせと手の中で石鹸を泡立てていた。
ラサの髪よりも少し茶色がかった黒髪に白い肌、今は隠れているが瞳は濃い蒼色をしている。
対するラサは髪も瞳も漆黒で肌は褐色だ。
二人は生まれ育った土地が違う。
違う部族の人間だ。
少し前にラサはジブリールに買われた。
いわゆる奴隷というものだ。
ラサは身も心もすべてジブリールに捧げねばならない。
今現在、ラサは薄い夜着を一枚身につけた状態でジブリールの体を洗う準備をしている。
毎日風呂に入るという習慣はラサにはなかったがジブリールのために風呂に入ることを覚えた。
きめ細やかな泡を作り出すことに成功し、ラサはジブリールの肩をぐいぐいと引いた。
「ジル、できた」
ゆっくりと目を開いたジブリールの前に泡をたっぷり乗せた手のひらを差し出す。
「ん、それはよかったな」
「ジルすわる。ラサあらう」
「あのな、俺はガキではない。自分でやるといっとるだろうが」
不機嫌そうに唸るジブリールの態度はまったく意に介さず、ラサは懲りずに彼の短い髪を引いた。
「ジル、きれいにする」
振り払ってもお構いなしにあちこち引っ張ってくるラサに負け、ジブリールは不服そうに立ち上がり湯船からあがる。
そして、ラサの正面に座り込んだ。
当然ながらジブリールは全裸だ。
鍛え上げられた逞しい体を惜しげもなくさらしている。
嬉々として膝立ちになったラサがジブリールの背後に回り込んで泡にまみれた手のひらを押しつける。
ぐるぐると円を描くようにしてジブリールの体を泡でコーティングしていく。
鼻歌交じりのラサとは対照的にジブリールの眉間の皺が消えることはない。
「そもそも俺はお前を奴隷のように扱うのは嫌なんだ。金で買ったがそれはやむを得ない事情がだな」
ぶつぶつと文句を言ったところでラサは話を聞いていない。
否、聞いているのだが半分も理解できていないのだろう。
言葉の壁とは高く大きいものであるとジブリールは日々思い知らされている。
「聞いているのか、ラサ・ラサラ・サラ」
ジブリールの正面に回り、腕を洗っていたラサがきょとんとした顔でジブリールを見上げる。
ラサは愛らしい顔立ちをしていた。
それに加えて十代後半の瑞々しい爽やかな色気がラサにはある。
なんだかんだで既にジブリールに男を教えられた体は、ラサの意志とはほぼ関係なく魅惑的に彼を誘う。
109奴隷と主人 1/3:2006/12/26(火) 23:28:23 ID:fd0V3LDy
湯船に浸かり目を閉じているジブリールを横目にラサはせっせと手の中で石鹸を泡立てていた。
ラサの髪よりも少し茶色がかった黒髪に白い肌、今は隠れているが瞳は濃い蒼色をしている。
対するラサは髪も瞳も漆黒で肌は褐色だ。
二人は生まれ育った土地が違う。
違う部族の人間だ。
少し前にラサはジブリールに買われた。
いわゆる奴隷というものだ。
ラサは身も心もすべてジブリールに捧げねばならない。
今現在、ラサは薄い夜着を一枚身につけた状態でジブリールの体を洗う準備をしている。
毎日風呂に入るという習慣はラサにはなかったがジブリールのために風呂に入ることを覚えた。
きめ細やかな泡を作り出すことに成功し、ラサはジブリールの肩をぐいぐいと引いた。
「ジル、できた」
ゆっくりと目を開いたジブリールの前に泡をたっぷり乗せた手のひらを差し出す。
「ん、それはよかったな」
「ジルすわる。ラサあらう」
「あのな、俺はガキではない。自分でやるといっとるだろうが」
不機嫌そうに唸るジブリールの態度はまったく意に介さず、ラサは懲りずに彼の短い髪を引いた。
「ジル、きれいにする」
振り払ってもお構いなしにあちこち引っ張ってくるラサに負け、ジブリールは不服そうに立ち上がり湯船からあがる。
そして、ラサの正面に座り込んだ。
当然ながらジブリールは全裸だ。
鍛え上げられた逞しい体を惜しげもなくさらしている。
嬉々として膝立ちになったラサがジブリールの背後に回り込んで泡にまみれた手のひらを押しつける。
ぐるぐると円を描くようにしてジブリールの体を泡でコーティングしていく。
鼻歌交じりのラサとは対照的にジブリールの眉間の皺が消えることはない。
「そもそも俺はお前を奴隷のように扱うのは嫌なんだ。金で買ったがそれはやむを得ない事情がだな」
ぶつぶつと文句を言ったところでラサは話を聞いていない。
否、聞いているのだが半分も理解できていないのだろう。
言葉の壁とは高く大きいものであるとジブリールは日々思い知らされている。
「聞いているのか、ラサ・ラサラ・サラ」
ジブリールの正面に回り、腕を洗っていたラサがきょとんとした顔でジブリールを見上げる。
ラサは愛らしい顔立ちをしていた。
それに加えて十代後半の瑞々しい爽やかな色気がラサにはある。
なんだかんだで既にジブリールに男を教えられた体は、ラサの意志とはほぼ関係なく魅惑的に彼を誘う。
110奴隷と主人 2/3:2006/12/26(火) 23:29:31 ID:fd0V3LDy
背中を覆い隠す黒髪と濡れて肌に張り付いた夜着。
ごくりとジブリールは唾を飲み下した。
言動に態度が伴っていないと自覚しながらも、ラサを魅力的だと感じてしまった瞬間から下半身に熱が集中する。
たちまちの内に臨戦態勢に入ってしまった自身を呪い、ジブリールはラサから顔を背けた。
ジブリールはまだ若いし、ことこちら方面の欲望は一般的な若者よりも強いくらいだった。
「あ……」
自己主張を始めた陰茎に気づき、ラサが僅かに顔を赤くする。
「ジル」
もじもじと泡まみれの手で頬に手を添えたり、意味なく服を引いてみたりしていたラサだが意を決したように頷いた。
濡れた夜着を脱ぎ捨て、ジブリールの顔を両手で掴む。
「だいてあげる」
顔を覗き込み、ジブリールの唇をそっとついばむ。
「ラサ、抱いてあげるは間違ってるぞ」
「ちがわない。ラサはジルをだく」
豊満な胸をジブリールに押し付け、ラサは再び唇を寄せた。
今度は舌を差しだし、ジブリールの咥内を舐める。
口の端から唾液が漏れようとラサは一向に気にしない。
ジブリールが喜ぶようにと熱心に口づけを深める。
初めはラサに任せていたジブリールだが、我慢できなくなったのか浴室の床にラサを押し倒した。
「抱くのは俺だ」
若さ故の荒々しさでジブリールはラサの足を開き、体を割り入れて陰茎を擦りつけた。
「なんだ。キスだけで濡れたのか」
溢れる蜜を絡めてぐいぐいと押しつける。
「ん…きもちいい」
「もっとよくしてやるよ」
「あっ、ジル……はいってくる」
ろくに愛撫もしない内にジブリールはラサの中へと侵入していく。
しかし、ラサの内部は大した抵抗もなく彼を受け入れる。
「ラサ、愛してる。愛してるぞ」
馴染ませるように腰を押しつけ、ジブリールはラサの耳朶を噛む。
愛の意味は教えてあるのだからきっと理解しているはずだと自身に言い聞かせながらジブリールは欲望のままにラサの体を貪り始めるのだった。



111奴隷と主人 3/3:2006/12/26(火) 23:30:34 ID:fd0V3LDy
くったりとしたラサを膝に乗せ、ジブリールは湯船に浸かっていた。
またしても欲望に負けてしまったという後悔が半分とラサへの愛おしさが半分、ジブリールの心を支配している。
愛おしさのままに髪に口づけてみたり、体を撫で回したりしている。
時々愛してると囁くとラサが嬉しそうに頬を染める。
一応報われてはいるのだろうかとジブリールはぼんやりと考える。
「ラサ、俺のこと愛してるか?」
ぱちぱちと瞬きを繰り返し、ラサは口元に手を当てて考える。
そもそもラサが自分の言葉をどの程度理解しているのか、ジブリールにはわからない。
しばらくしてラサがぱぁっと表情を輝かせた。
「ラサはジルのもの。ぜんぶジルのもの。あいしてるもジルのもの」
満足げに微笑むラサを見つめ、ジブリールは脱力する。
言葉の壁とはやはり高く大きいものであるとジブリールは改めて実感させられるのであった。


おわり


名前欄にsage書いたり、二回書き込んだり、すまんかった…orz
112名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 00:49:20 ID:HhOvVT7j
超GJ!
読んでてにやけそうになったw
こういう甘いの好きだ
113名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 00:58:51 ID:MdNwalUH
とても良かった。
ラサの素直さにもジルのもどかしさにもすごく萌える。
書いてくれてありがと。
114名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 03:35:09 ID:0EqoG7Ye
GJ!
ほのぼの甘々で良いな
11582:2006/12/27(水) 22:37:27 ID:YCPF9PgH
書いてみたら、プロポーズするところまでムショーに書きたく
なっちゃって、勢いで書いたので何とか形になったんで投下さ
せてもらいます。
男女の絡みより、野郎同士の絡みの方が多くてアレなんだが……
すまん。ついでもエロも少なくて、ごめん。

荒の目立つ話に感想くれた人、嬉しかった。有り難う。
116硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:39:20 ID:YCPF9PgH
 山々に囲まれたエーレンシュタインは特に抜き出た産業はないが、その代わ
り農業が盛んで食べ物が美味しい。隣国では、この国で作られるワインは高級
品とされ、もてはやされている。
 そのエーレンシュタインを治める女王が住まう宮殿の一角、獅子の間と呼ば
れる間に円卓の騎士達が集まりつつあった。今日はニ月に一度の定例会議の日
なのだ。
 とはいえ、彼らは既に決まっている議案に目を通し、それを承諾するだけだ。
この部屋が慌しくなるのは戦時下であって、平和な現在では形式上集まってい
るだけに過ぎなかった。

「──オレなんていなくても一向に構わんと思うんだがね、全く」
 長い黒髪を乱雑に一つに束ね、無精ヒゲを撫でつつ、グラウドラーは廊下を
歩いていた。
これから半日もの間、拘束されるなどと考えると、それだけで気持ちが滅入る
というものだ。どうにか逃げ出す方法はないものかと考えたが、あの生真面目
なハーシュベルの顔を思い出して、止めた。以前すっぽかした時、耳にタコが
できるかと思うぐらいに説教されたのを思い出したのだ。あれを延々と聞かさ
れるぐらいならば、まだ会議に出た方がマシというものだ。それに、あの男に
は何かと面倒なことを任せてしまっているという罪悪感が、多少なりともグラ
ウドラーにはある。
「お、噂をすれば何とやらだな」
 丁度、先の曲がり角からハーシュベルの姿が見えた。どうやら相手はこちら
に気付いていない様子で、歳若い副官と話しているようだ。
 全く可愛い子と一緒にいるってのに、無愛想な顔をして──そう心の中でグ
ラウドラーは一人ごちる。
 だが部屋に入るとばかり思っていた二人が何故か部屋を通り過ぎ、あろうこ
とか、その先の角を曲がってしまった。一体どうしたのだろうか──むくりと
湧き上がってきた好奇心にグラウドラーは足音を立てずに、そっとそちらを覗
いた。
 そして見てしまった光景に、感嘆の声を上げた。
「しょ、将軍っ! 誰かに見られたりしたら、どうするおつもりなんですか!!」
「今日はもう会えんのだ。これぐらい良かろう?」
「し、知りませんっ! 失礼します!!」
 グラウドラーからでも、彼女が顔を真っ赤にしていることは分かった。硬派
で知られる男が、なかなかやるものだと──グラウドラーは感心した。そもそ
も、もうすぐ40にもなる男に女の噂一つ無い方がおかしいのだ。
 副官が去るのを確認してからグラウドラーは、にやつく顔をそのままに、彼
の名を呼んだ。
「硬派で名高いシュヴァルベ大将軍が、こんな昼間っから可愛い副官といちゃ
ついていいのか? 部下に示しがつかないんじゃないのかあ?」
「グ、グラウドラー殿!? いつの間に! わ、私は貴方のようなことは──」
 予想通り動揺するハーシュベルに、グラウドラーは更に追い討ちをかける。
「そんなことを言っていいのか? ん? いい色がついてるじゃないか」
 その言葉にハーシュベルは慌てて唇を拭った。だが、そこには何の色も付い
ていない。彼女は気を利かせて色の付くような口紅はしていないのだろう。
 だが、それは紛れもなくハーシュベルの失態だ。
 腹を抱えて笑い出すグラウドラーに、ハーシュベルはしてやられたと露骨に
顔を顰めた。
「はははは、本当にお前はこういうことに疎いな。そこが可愛いといえばそう
だが」
「グラウドラー殿!」
「まあそう怒るな、ハーシュベル。オレは感心してるんだ。お前が職場で部下
に手を出すまでに立派に成長するとはな!」
 我が同士よ、とでもいいだけに馴れ馴れしく肩に手を置くグラウドラーに、
ハーシュベルは呆れたように溜め息をついた。
117硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:40:30 ID:YCPF9PgH
 グラウドラーは円卓の騎士の中でも最も年長者であり、ハーシュベルにとっ
ては頭の上がらない存在の一人だ。彼は現女王アーデルハイネの元教師であり、
彼女のご意見番的存在である。政治・軍事の両方に優れ、古い言い方をすれば、
軍師に当てはまるのかもしれない。
 そもそも、大将軍はグラウドラーがなるべき役職だったのだ。
 だがそれを彼は、『自分は、いつ女の恨みでベットの中で死ぬかもしれない。
そんな大将軍の姿など国民に見せてはいけない』などと駄々をごねて、結局ハー
シュベルにお鉢が回ってきたのだ。
 まさかアーデルハイネが許すとは誰も思っていなかったこともある。だが彼
女はあっさりとそれを認め、その代わりにグラウドラーに円卓の騎士の名を授
け、自分の傍に置いた。確かにそうでもしなければ、グラウドラーという男は、
ふらりとどこかに雲隠れしてしまうような性格の持ち主なのだ。

 所詮、口下手な自分が彼に敵うはずもない──ハーシュベルは自分の失態を
恥じた。
「まあ、そんな顔をするなって。オレは嬉しいんだ。お前が誰かを好きになっ
たことがな! あの時以来、お前は傍に誰も寄せ付けなくなっちまったからな」
 そういえば、ことあるごとにグラウドラーが女性を紹介しようとしていたこ
とをハーシュベルは思い出した。彼は口も性格も悪いが、それと同じぐらい仲
間思いのところがある。そういうところがあるからこそ、ハーシュベルは彼を
心底憎めないのだ。
「で、随分とご無沙汰だったんだろ? あっちの方はちゃんと勃ったか? 何
なら、オレが効き目抜群の薬をプレゼントしてやるぞ?」
「グラウドラー殿!」
 その一言余計なのだと言いたげなハーシュベルに、グラウドラーはけらけら
と笑った。


ハーシュベルとレオニーが密かに付き合うようになってから既に半年は経っ
ていた。
 二人は何とか時間をやり繰りし休暇を合わせては、デートを重ねる仲になっ
ていた。とはいえ、その大半がハーシュベルの本探しにレオニーが付き合うと
いうだけものなのだが、二人はそれでも十分楽しかった。
 そして最後にレオニーの好きなカフェに寄り、お茶をして別れるというのが
常だった。
(「本当に私服の将軍って正体がバレないのね……どうしてみんな気付かない
のかしら……不思議」)
 向かいの席で珈琲を飲むハーシュベルを、レオニーはしみじみと見てそう思っ
た。
 変装している訳でもないのに、今まで一度も彼は正体を気づかれたことがな
い。これならば、以前からハーシュベルが一人で街中を歩いていたのも理解出
来る。副官としては、あまり褒められた素行ではないのだが。
118硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:41:33 ID:YCPF9PgH
「君はこれから予定は何かあるのか?」
「いいえ、特にありません。このまま宿舎に戻るつもりです」
「そうか」
 レオニーは現在、家を出て女性士官の独身寮に住んでいる。一応規則で門限
はあるのだが、それは士官学校時代とは比べ物にならないぐらい緩いものだっ
た。だから、よほど遅くないかぎりは何か言われたりはしないだろう。
 珍しく歯切れの悪いハーシュベルにレオニーは首を傾げた。彼が気懸かりと
する用件が分からなかったのだ。執務のことだろうかと、頭の中で瞬時に照ら
し合わせてみたが、特に見当たらなかった。
「ハーシュベル閣下?」
「あ、いや、何だ……君さえ良ければ、私の家に来ないか……と思ってだな……」
 まさか彼がそんなことを考えていたなど思ってもみなかったレオニーは一瞬
唖然としてしまった。そんな彼女の反応に、ハーシュベルは慌てて、
「い、いや、今の言葉は忘れてくれ。独り言だ」
 自分でもらしくないと思ったのか、話の続きを遮るように、空のカップに口
をつけてしまう。
 そんな彼の態度にレオニーはくすりと笑ってしまった。10歳以上年上の男性
に可愛いなんて失礼だと思うが、普段の彼を知っているだけに、そのギャップ
が堪らなく可愛く見えてしまう。
「それなら、私が勝手に閣下の後を追いかけても見逃して下さいますよね?」
 悪戯っぽくそう口にした彼女に、ハーシュベルは思わず持っていたカップを
落としてしまいそうになった。

 ハーシュベルの宿舎は高級住宅の一角にはあったが、大将軍という地位から
すれば小さいであろう一軒家だった。通された室内は驚くほど綺麗で──とい
うよりは必要最低限の家具しかなく、うず高く積まれた足の踏み場もないよう
な本だらけの部屋だけが、ハーシュベルの趣味を表していた。その量に、何度
見てもレオニーは驚いてしまう。
「また量が増えたんじゃありませんか?」
 そもそも電子書籍が普及しているというのに、わざわざかさばる冊子を好む
という事態が珍しいのだ。うず高く積もれた本の山は、少しでも触れば雪崩が
起きてしまいそうだった。
「一度ちゃんと整理した方が良いですよ。……聞いているんですか? 将軍?」
 一向に返事の返ってこないハーシュベルの名を何度も呼んでいると、いきな
り背後から抱きつかれてしまった。
「ちょ、しょ、将軍!!」
「──時間が惜しい」
 まるで待ち焦がれているといいだけな彼の声に、レオニーは顔を真っ赤にさ
せた。
119硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:42:02 ID:YCPF9PgH
 こういう時、不意打ちだとレオニーは思う。
 誰もが抱く堅物の冷血漢のハーシュベルからは、こんな姿は想像できないだ
ろう。そんな彼から全身で求められることは嬉しいのだが、まともに男性と付
き合うのが初めてのレオニーには戸惑いを隠せないのが本音だ。
 面白みの無い仕事一筋のハーシュベルと、こんな風に年下の自分に甘えてく
るハーシュベルが同一人物なんて、誰が思うのだろか。
「で、でも、まだシャワーも……」
 心の準備が欲しいと言いだけなレオニーの唇をハーシュベルは強引に塞ぐと、
思考すら溶けてしまうような深い口付けをしてきた。
 レオニーの背中を大きなハーシュベルの手の平が撫で上げる。それだけでも、
ぞくぞくしてしまうというのに、同時に舌を吸われ絡め取られると、レオニー
の頭の中は真っ白になってしまい、立ってなどいられなくなってしまった。
「早く君が欲しい」
 そんな風に直接的に言わないで欲しい──経験の少ないレオニーが素直にう
んと頷けるはずもない。それでは自分もハーシュベルとしたかったと、厭らし
いことをしたかったと言っているようなものだ。決してハーシュベルとしたく
ない訳ではなくて、厭らしい自分がいるということが恥かしいのだ。
 彼はそうは思わないのだろうか──ちらりと見上げたハーシュベルの顔は真
摯にこちらを見ていて、レオニーは慌ててその視線から逃れた。仕事を抜きに
すると、どうも勝手が違うのか、まとも顔が見れなくなってしまう。
「…………レオニー」
 低い掠れた声でそう名を呼ばれると、レオニーは真っ赤になった顔を見られ
ないように俯き、おずおずとハーシュベルの背中に手を回した。


「いつ見ても君のここは綺麗だな。緋色とはこうものを指すのだろうな」
 ハーシュベルは目の前に移る秘肉をめいっぱいに広げ、滴り落ちる愛液を眺
めていた。当たり前のようにレオニーは止めて欲しいと懇願したが、力の差は
歴然で、逆に彼に見られているということが彼女の羞恥心を煽った。
「やっ、ハーシュベル将軍、あっ、あ、ああ──っ!」
 狭い肉洞を両手で広げると、ハーシュベルはそこに舌を捻じ込んだ。溢れ出
す愛液を啜り、広げた花びらを内側を指の腹で触ってやると、レオニーは堪ら
ず声を上げてしまった。
 嫌がる言葉とは裏腹に、レオニーの肉洞は更なる快楽をハーシュベルに求め
る。十分に潤んでいることを確認すると、ハーシュベルの無骨な指がゆっくり
とそこに入っていった。
 初めての時は指一本ですら無理矢理だったというのに、今はすんなりとハー
シュベルを受け入れてくれる。温んだ肉洞の壁をぐるりと円を描くように撫で
やると、レオニーは背中を大きく反らせて反応した。
 眉を顰め、快楽を耐えている姿はハーシュベルの欲情を更に煽る。もっと自
分を曝け出して与える快楽を素直に受け入れればいうのに、それを出せなのは
彼女の経験が少ないのからなのか、それとも恥かしいからなのか──どちらし
てにも、ハーシュベルはそんな彼女が可愛いと強く思う。
 彼女を大切にしてやりたいと思い、それを壊してしまいたくなる衝動に駆ら
れる。彼女が他の男を見ないように、ただ自分だけを見ていて欲しいと──な
んて醜い嫉妬だろうと、判っているというのに湧き上がる衝動に眩暈を覚える。
 顔を上げると、潤んだ瞳でレオニーはこちらを見つめていた。気恥ずかしそ
うにこちらを見つめる彼女の姿に、どす黒い衝動は押さえ込まれ、愛おしさだ
けがハーシュベルの中に募る。
「将軍、もう、私──。将軍の……下さい……」
 それはハーシュベルにとっても待ち望んでいた言葉だった。
120硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:43:54 ID:YCPF9PgH

「あっ、あ、ああっ──」
 ハーシュベルの赤黒く腫れ上がった太い肉棒を受け入れ、レオニーは思わず
身体を捩じらせた。肉洞は潤ってはいるものの、彼のものはあまりに大きく、
まだレオニーにとっては快楽よりも痛さの方が強い。
 それでもしっかりとハーシュベルに抱きしめられると、それだけで痛さが和
らぐのだから不思議だ。彼の体重もかかり重いというのに、それが酷く安心す
る。縋るようにレオニーがハーシュベルの背中に手を置くと、いきなり抱き上
げられてしまった。
「辛くは?」
「……平気、です。でも……」
「でも?」
「お腹に何かに刺さってるみたいで……変な感じがして……。…………どうし
ましたか、将軍?」
 ふと見ると、ハーシュベルは顔をそむけ、口を手で覆っていた。とろんとし
た目でレオニーが不思議そうに彼の名を呼ぶと、
「……そういう言葉を無意識に口にしないでくれ」
 困っているのが口調からも窺えて、レオニーは首を傾げた。するとハーシュ
ベルはわざとらしく、こほんと咳払いを一つして、
「抑えが効かなくなる」
「何の……?」
「…………自制心が押さえきれなくなると言っているんだ」
 これでも優しくしているつもりなんだと言いたげに、ハーシュベルは恨めし
そうにレオニーを見つめた。
「でも、本当のことです」
「だから、困るんだ」
 もっともっと行為を強請ってしまいたくなるじゃないか──ハーシュベルは
それを口にすることは無かったが、レオニーの唇にやんわりと自分の唇を押し
付けると、ゆっくりと腰を動かし始めた。このまま喋っていたら、それこそ、
どうなるか分かったものではない。
「あっ、やっ、ま、まだ話の途中で──ん、んんっ、」
 ハーシュベルが動く度にレオニーの唇から甘い声が漏れる。必死になって口
を閉ざす彼女の唇をハーシュベルは強引に割ってしまう。それにもレオニーは
嫌がるように顔を叛けそむけるのだが、ハーシュベルはそれを追いかけ、濡れ
た下唇を甘噛みした。
121硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:45:33 ID:YCPF9PgH
 突っぱねようとする彼女を意図も簡単に押さえ込み、徐々に動きを早めてい
く。浅い場所をゆっくりと突付くようにするかと思えば、レオニーの身体が反
動で離れてしまうかと思うぐらい深く突き上げみたり、狭い肉洞に擦り付ける
ように肉棒を押し付けてくる。
 そして、ある場所に当たるとレオニーは息を呑んだ。
「やっ、そ、そこは──」
「分かってる。ここは君が好きな場所だったな」
「ち、違いま──ああんっ!」
 既にレオニーの弱い場所は把握済みだ。ハーシュベルは意地悪く口元を緩め
ると、重点的にその場所を攻めた。その場所に当たる度に、レオニーの身体は
大きく震える。ねっとりと絡みつくような肉洞の動きに、流石のハーシュベル
も顔を顰めてしまう。
 ちりちりとこめかみが痛いほどの締め付けに、ハーシュベルは負けじと動き
を早める。これでもかと言わんばかりにレオニーの奥深くに打ち込むと、彼女
は息を詰まらせ全身を震わせた。そして次の瞬間、がくりとシーツの上に身体
を沈ませる。全身が桜色に染まった彼女の身体はあまりに艶っぽかった。
「…………将軍? えっ、ま、まだ──ちょ、待って──」
 ハーシュベルはぐったりとしたレオニーの身体を反転させると、膝を立たせ
た。それだけでも達したレオニーには堪らないものだというのに、ハーシュベ
ルの肉棒は更に硬さを増しているようにさえ思えた。
 しかも、そんなもので達した後で過敏になっている場所を弄られてしまって
は、レオニーはどうすることもできなかった。ただ、ハーシュベルに与えられ
る快楽をそのまま受け入れてしまうしかない。結果、彼が身体の芯を押し上げ
る度に軽く達してしまった。
 曖昧な意識の中でも、内股を流れ落ちる滴をハーシュベルが掬い取り、めく
れ上がった花びらに塗りたくるように触られると現実に引き戻されてしまい、
レオニーは酷く興奮してしまった。
 更に追い討ちをかけるように、耳元でハーシュベルが囁く。
「恥かしがることなど無い。何度でも逝くといい」
「で、でも、ハーシュベル将軍、」
「何だ、反論する余裕がまだあるのか」
「ち、違い──ああっ、もう、人の話を最後まで聞いて下さい──!」
 がくがくと振り子のようにレオニーは身体を揺らし、シーツをくしゃくしゃ
にするほど掴んだ。一度でも知ってしまった身体は、恐ろしく貪欲に快楽を貪
ろうとする。腰を抑えていたハーシュベルの手が揺れる胸を鷲掴みにし、ぴん
と起き上がった蕾を何度も押しつぶすと、レオニーは顔をシーツに押し付けて、
それを耐えようとした。だが、耐える間も無く激しく腰を突き上げられると、
全身が大きく震えた。
 また逝ってしまう──そう思ったと同時に、ハーシュベルの肉棒もレオニー
の肉洞で大きく弾けた。
 腹に溜まるような熱い精液に、レオニーは戦慄くように甘い声を上げ、シー
ツに沢山の染みを作ってしまった。
122硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:46:13 ID:YCPF9PgH

「レオニー。今日の会議は遅くなるはずだ。定時になっても戻ってこないよう
だったら先に帰ってく構わない」
 必要な書類を彼女から受け取り、ハーシュベルは襟元を直した。頷くレオニー
に小さく微笑むと、足早に執務室を出て行った。見送った後で、レオニーは話
したいことがあったのを思い出した。だが、それは職務には関係ないプライベー
トな話だ。彼が暇な時にでも話せばいい、そう思い直し、書類を整理している
と、インターホンが鳴った。
 ハーシュベルが忘れ物をしたとは到底思えない、誰だろうかと机上のモニタ
で確認すると、レオニーは自分の目を疑った。
 慌てて扉を開けると、
「フロイラン・レオニー。初めまして」
 そこには、にこやかに微笑むグラウドラーが立っていた。

「何か御用でしょうか、グラウドラー閣下。シュヴァルベ将軍ならば、会議で
席を外しておりますが……」
「今日はムサイあいつじゃなくて、君に用事があってきたんだ」
 冷ややかなレオニーなどお構いなしにグラウドラーは扉に寄りかかった。に
こりと微笑む彼にレオニーは一層不信感を抱いてしまう。
 レオニーもグラウドラーの噂は知っている。というよりは、国中で彼のこと
を知らない者はいないであろうぐらい、彼の女癖の悪さは有名なのだ。彼とベッ
トを共にした相手は、エーレンシュタインの山の数ほど多いとか、彼は毎晩別
の女性と夜を共にしているとか──そういう噂にこと欠かない人物なのだ。
 遊ばれてもいいから彼と一夜を共にしたいなどという同僚もいるが、レオニー
は無愛想な男以上に、軽薄な男が嫌いだった。
 どうせハーシュベルの副官ということで、からかっているだけなのだろう。
あまり関わりたくないとレオニーは話を切り上げてしまおうと思っていた。
「ハーシュベルはあれでも私の可愛い同僚なんでね。君はあいつの過去を知っ
ているのかい?」
 そう尋ねられるまでは。
123硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:47:24 ID:YCPF9PgH
 運悪くその日は会議が長引いているらしく、ハーシュベルは定時になっても
執務室に戻ってくることはなかった。定時になると有無を言わせない様子でグ
ラウドラーがやってきてしまい、レオニーは断る理由を失ってしまった。
 いや、それは言い訳だとレオニーは思い直した。ハーシュベルの過去という
言葉に無視出来なかったのだ、自分は。

 遊びなれたグラウドラーらしく、連れていかれたバーは酷く洒落た店だった。
ハーシュベルならば選ばないでろう店に、レオニーは少々戸惑った。こんな大
人びた店は彼女も入ったことがないのだ。
「まずはお近づきになった記念に、これをどうぞ」
 慣れない雰囲気に困惑した様子でレオニーが座っていると、グラウドラーが
手馴れた様子で、カクテルを一杯差し出してくれた。
「おかしなものは入っていないから安心なさい。オレはあいつとサシで決闘す
るほど命知らずじゃないからね」
 それを鵜呑みにするつもりもなかったが、ここまで付いてきて断るというの
も彼の面目を潰すことになってしまうだろう。レオニーは恐る恐るグラスに口
をつけた。
「……美味しい」
「だろう? ここのバーテンダーは天下一品なのさ。いい店だからって、あい
つも連れてきたことがあるんだけどなあ」
 確かにいい店だとは思うが、ハーシュベルは気取って飲むよりも、自宅で手
酌酒をしつつ本でも読んでいる方が好きなのではないかとレオニー思うし、そ
ちらの方が似合っているような気がする。
「で、いきなり本題に入っていい?」
「はあ……」
 まるで友達に話しかけるようなグラウドラーの口調に、レオニーはどう返事
をしていいのか分からなかった。彼といると、うっかり彼のペースにハマって
しまうような気になり、多分それが彼を慕う女性の多さに繋がっているような
気がする。相手の不安感、不信感と取り除くという点に関しては、グラウドラー
の右に出る者はいないのかもしれない。
「あいつ、君に自分のことを何か話したかい?」
「何かというは……どういうことでしょうか」
 レオニーの反応に、グラウドラーは少しだけ顔を顰めた。
「やっぱり何も言っていないのか。そして君は何も知らない……まあ、当然と
いえば当然のことか」
「グラウドラー閣下の仰りたいことが、私には理解できません」
「まあまあ、そんなに焦りなさんな。ちゃんと教えてあげるから。あいつと本
気で付き合うのならば、知っていた方がいいことだろうからね」
 そこで間を置くようにグラウドラーもまた注文したウィスキーで喉を潤し、
「あいつはね、若い頃、手痛い失恋してるのさ。昔から女には奥手だっだが、
それ以来、輪をかけて酷くなった」
「将軍の御歳を考えれば、そういった経験があっても当然だと思いますが」
「まあ、普通ならね。だが、相手が悪い」
「どのようなお相手だったのですか?」
 ハーシュベルは大将軍という地位にはいるが、元々は下級貴族の生まれで、
決して恵まれたものではなかった。レオニー自身は気にしないが、そういった
ことを気にする者が多いのも事実だ。彼の失恋もそういった類なのだろうかと
レオニーは思ったが、グラウドラーが口にした真実はそれを遙かに上回る内容
だった。
124硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:48:22 ID:YCPF9PgH
「あいつはアーデルハイネの最有力婿候補だったのさ」 
「で、ですが、女王陛下とヴァール兄様は恋に落ちて結婚なさったはず……」
 長い戦争で荒廃しきったエーレンシュタインの王位に即位した彼女を影で支
えたのは他ならぬシュヴェールヴァールだ。それはそれは美しい恋物語として、
今も吟遊詩人達のもっぱらのモチーフとされている。レオニーも結婚式での二
人の幸せそうな姿をよく覚えている。
「ああ、そうさ。当の二人はな。だが、家臣達の思惑は違っていた。ディラス
トとの戦争で英雄に祭り上げられたハーシュベルの方が、アーデルハイネの夫
として国民にうけがいいと踏んだのさ。ハーシュベルが夫になったとしても、
あいつには後ろ盾がないしな、いざとなれば御しやすいとでも思ったんだろう」
「でも、ハーシュベル将軍は知ってしまった……」
 それを知ってまで、ハーシュベルが女王との婚姻を望むはずがない。自ら引
いたことぐらい、レオニーも判った。
 彼が今まで浮いた話一つなかったのには、そういう理由があったのだ。それ
と同時にある疑問がレオニーの中に湧き上がった。
「──グラウドラー閣下」
「何か質問でも? フロイライン」
「ハーシュベル将軍は……どうしてそのことを私に黙っているのでしょうか?」
 その問い掛けだけはグラウドラーは答えなかった。
「それは、あいつ自身に聞かなけりゃ判らん質問だろう? オレが答えていい
ような質問じゃ、ないな」
 レオニーは黙って、グラスに映る自分の姿を見つめた。


 それから数週間後、ハーシュベルはシュヴェールヴァールに誘われ、高級士
官専用ラウンジにやってきていた。
 ハーシュベルも酒は好きだが、気取った店内でゆっくり飲むというような習
慣がなく、一人で足を運ぶことは滅多にない。すると、そこに更に珍しい相手
が座っており、こちらに手招きをしていた。
「ここは女性がいないから来る意味がないのでは?」
「昔のこと思い出してネチネチ言うなんて、女に嫌われるぞ? ハーシュベル」
「私は女性に好かれたいと思っておりませんので、気になりません」
「特定の女性からは、どうなんだ、ん?」
「何! ついに好きな女性ができたのか? ハーシュベル」
「グラウドラー殿!」
 聞いていないとばかりにシュヴェールヴァールに詰め寄られ、ハーシュベル
はグラウドラーを睨みつけた。だが、グラウドラーは全く気にしない様子でそ
んな二人のやり取りを面白そうに見ている。
125硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:49:33 ID:YCPF9PgH
「お前もよく知っている相手だよ、ヴァール」
「酷いじゃないか、ハーシュベル。親友だと思っていたのに、そんな大切なこ
とを黙っておくなんて!」
「そう睨みつけるなよ、ハーシュベル。こういうことは何れ知れ渡る。それに、
ヴァールには知る権利があるはずだ。お前に彼女を紹介したのは、こいつなん
だろう?」
 紹介──? シュヴェールヴァールは首を傾げた。そんな相手を自分は紹介
しただろうかと言いだけな彼に、ハーシュベルはグラウドラーの言い分を認め
た。彼の言っていることは間違ってはいない。ただ、方法が手荒いだけなのだ。
「…………レオニーのことだ。シュヴェールヴァール」
「レオニー!? ちょっと待て、彼女と幾つ歳が離れていると思ってるんだ」
「15だ」
「15って、そう当然のように言ってくれるなよ。…………お前、本気なのか?」
 それに迷い無く頷く旧友に、シュヴェールヴァールは喉に出かかった言葉を
飲み込んだ。
「レオニーは歳のわりには、しっかりした子だ。お前たちが真剣に付き合って
いるのなら私は応援するよ、ハーシュベル。お前があの子を泣かすような真似
をしないことは誰よりも私が知っている。…………しかし、なあ……」
 どうしてもシュヴェールヴァールには幼い頃のレオニーの姿が鮮明で、彼女
がハーシュベルと付き合っている光景が想像できないでいた。自分を慕う彼女
はまだ幼く、恋愛など物語の世界の出来事だと思うぐらいの歳だったというの
に。

 しかし、すぐにシュヴェールヴァールはある問題に気付いた。
「だが、レオニーは見合いをする為に実家に戻ったはずだが……」
「見合い──?」
「ああ、レオニーの両親がやたらその気でな、断りきれなかったんだろう。お
前には言っていなかったのか……」
 言い淀む旧友にハーシュベルは内心動揺していた。実際、彼女は先週から実
家に戻らなくてはならないのだと休暇を申し出た。そういえば、あの時の彼女
は珍しく落ち込んでいるようだった。何か思うことがあるのならば、実家でゆっ
くりと休むのも良い機会だろうとハーシュベルは思い許可したのだが、まさか、
そういうことだったとは──。
126硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:50:13 ID:YCPF9PgH
「裏切られたなんて思うなよ、ハーシュベル。それは彼女も同じなんだからな」
 まるでハーシュベルの心の内を見ているかのようなグラウドラーの言葉に、
彼は顔を強張らせた。意味深な発言をする時のグラウドラーは、全てを読み解
いていることをハーシュベルは長い付き合いで知っている。こうやって三人で
いるのも──彼の思惑の一つなのかもしれない。
「まさか、彼女に何か──」
「なかなか感が良くなってきたじゃないか、ハーシュベル。彼女には知る権利
があるだろう? お前とこの先、真剣に付き合うんなら尚更知るべきことだ。
話していないお前が悪い。だが、彼女はお前と本気で付き合う気はないようだ
な。お見合いをするとなると」
「私のことは何を言っても構いません。ですが、レオニーを愚弄するのはグラ
ウドラー殿であっても、見逃すことは出来ません! 一体、何を彼女に吹き込
んだのですか!!」
 いきなり胸座を掴みかかってきたハーシュベルに、グラウドラーは怯むこと
はなかった。全てを悟りきったような冷たい視線で、
「お前の想像していることだよ。そこまで想う相手に、どうして教えてやらな
い。彼女は酷くショックを受けていたぞ? 心から信頼していた相手に、信頼
してもらえていなかったのだと、そんな顔をしていたな」
「それは──」
 かっとなった身体に冷や水を浴びせられたように、ハーシュベルは手を放し
た。その表情は悲痛そのもので、
「あの時の私は愚かだった。上手い話に乗せられて、物事の真実を何一つ見て
いなかった。自分が彼らの手駒の一つだったことにも気付かなかった。──貴
方が教えてくれなれば、私は大きな過ちを犯していたに違いない」
 20代そこそこで英雄ともてはやされた頃、ハーシュベルは何も知らない若造
に過ぎなかった。女王が自分との婚姻を望んでいるという貴族達の言葉を鵜呑
みにし、周りの忠告に聞く耳も持たなかった。
 その時、唯一グラウドラーだけが、ハーシュベルの前に立ち塞がってくれた
のだ。彼が身を挺して説得してくれなければ、ハーシュベルは何も知らにない
まま、女王の夫となっていたに違いない。国も今ように安定せず、戦後の被害
も立て直せず、心から許せる親友を失っていただろう。
「怖いわけだな。愚かな自分を彼女に知られることが」
「当たり前でしょう! 彼女はこの地位に就いてからの私しか知らない!!」
 祖国の英雄、歴戦の勇者、冷厳な大将軍──どれも、ハーシュベルが望んだ
訳ではない。気付ければ勝手にそう呼ばれ、その印象だけで相手はこちらを計っ
てきた。本当の自分は愚かで、付き合い下手な、ただの本が好きなだけの男だ
というのに。
127硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:51:02 ID:YCPF9PgH
 だが、レオニーは違っていた。
 彼女はハーシュベルが恋愛小説が好きであることを知っても、態度を変える
ことはなかった。逆にそちらの方が将軍でいるよりも自然体だと言ってくれた。
そして休暇には嫌がりもせず、楽しそうに自分に付いてきてくれた。そんなこ
とはハーシュベルにとって初めてのことだった。
 だから、想いが強くなればなるほど過去を言い出し難かった。彼女ならばこ
んな自分も受け入れてくれると信じても、最後の最後で臆病な自分が顔を覗か
せてしまう。
 肌を重ねれば重ねるほど、彼女から離れられなくなってしまっているのは、
いい歳である自分の方だった。
「そこまで解かっているなら教えてやる、ハーシュベル。お前がそこから抜け
出さない限り、お前はどんな相手と出会っても先には進めやしない。結局は手
放す羽目になる。女は利口だよ、ハーシュベル。男の嘘を何れ見抜く」
 数多の女性と付き合ってきたグラウドラーだからこそ、その言葉は真実味が
あった。そもそも、彼がハーシュベルをからかうつものでこんな茶番をするこ
となどありえない。ハーシュベルを心配しているからこそ、こんな茶番を演出
したのだろう。

「ハーシュベル、これを」
 シュヴェールヴァールは手元にあった紙にすらすらと何か書くと、それを彼
に差し出した。
「きっとあの子はお前が来てくれるのを待っている」
「ヴァール、ついでに何日かこいつを休暇にしてやってくれ」
「ああ、そうですね。レオニーの実家は郊外ですから、日帰りでは戻って来れ
ませんね」
 本人を無視して勝手に話を進める同僚に、ハーシュベルは旧友を見返してし
まった。
 大本営を取り仕切る大将軍が突然数日も留守にするなど前代未聞だ。しかも
それを宰相が取り成すなど、あってはならないことだ。
128硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:51:44 ID:YCPF9PgH
「私が行かないと言ったらどうするつもりなんだ」
「私の知ってるハーシュベルはそんなことはしないさ」
「オレもそんな風に育てたつもりはないな。ほら、さっさと行け。もう用事は
済んだだろう?」
 グラウドラー殿は放任主義でしょうに──あまりの扱い振りにハーシュベル
は思わず小言が喉にまで出かかったが、それを寸でのところで飲み込んだ。ど
うせ、何を言っても軽くあしらわれるに決まっている。勝負する前から勝敗が
見えている戦いに挑むほど、ハーシュベルも間抜けではない。
 とはいえ、このままホイホイと彼らの策に乗ってしまうのも癪で、ハーシュ
ベルは険しい表情を崩さないままコートを羽織ると、そのまま大股でラウンジ
を出て行った。
 そんな彼の後姿を見つつ、グラウドラーは楽しそうに酒を煽った。
「軍人なんかとっと辞めて、結婚相談所でも開いた方が楽しそうだな」
「グラウドラー殿なら、どんな職業でも成功しますよ。アーデルハイネがそれ
を許すかどうかは分かりませんが」
 珍しく彼が自分の下を訪ねて来て、しかもハーシュベルを誘って連れて来い
などと言った時点で、シュヴェールヴァールも何かあるとは思ったが、まさか
こんなことをだとは思いもしなかった。
 心底、相手にしたくない人だとシュヴェールヴァールは思いつつ、今は親友
の恋の成り行きに思いを馳せた。


 慌しい家の様子にレオニーはうんざりした様子で窓の外を眺めていた。
 両親は古風な人で「女性の幸せは結婚」という考えの持ち主だった。確かに
好きな相手と一緒にいられるのならば、それは幸せかもしれないが、頭ごなし
にそれを求められると、もっと別の世界を見たい気持ちが強くなってしまう。
レオニーが軍人を志したのは、ヴァール兄の影響もあるが、外の世界を見てみ
たいという気持ちも強かった。
129硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:52:26 ID:YCPF9PgH
 母から見合いの話が来た時も断るつもりでいた。
 ハーシュベルにも話し、両親に付き合っていることを教えたいと言うつもり
だった。そうでもしなければ母は引き下がらないことを知っていたし、嘘をつ
くこともしたくなかった。
 だが、母に話せば自分達が付き合っていることは気付かれてしまうだろう。
だからハーシュベルに相談するつもりだったのだが、タイミングが悪いことに、
そんな時グラウドラーに出会ってしまったのだ。そして、彼の過去を聞いてし
まった。
 ハーシュベルの歳を考えれば今まで女性と付き合っていなかった方が不思議
だろうし、その名声から女王の伴侶として名が上がってもおかしくはない。
 レオニーも気にせず予定通り、彼に見合いの話をしても良かったはずだ。だ
が、どうしても言い出せなかった。
 秘密にされていたことが悲しかったのではない。裏切られたなど思ってもい
ない。
 もし周囲に付き合っていることが知られれば、真面目なハーシュベルは嫌で
も自分と結婚を意識してしまうだろう。好きな男女が付き合えば、何れその先
には結婚があるのは当然といえば当然かもしれないが、まだ二人はそういう話
を一度もしたことがない。
 それだというのに、責任を感じて結婚をしてくれたとしてもレオニーは嬉し
くないし、もし今でもハーシュベルがまだ女王のことを想っていたりしたら──
そもそもレオニーを選んでくれるはずがない。
 いや、それも全て言い訳だ──レオニーは思い直した。
 信じられなかったのだ。彼にではなく、自分に。
 ハーシュベルの人柄を誰より知っているはずなのに、最後の最後で彼を信じ
られなかったから、告げられなかったのだ。もしこれがきっかけで、今までの
付き合いが変わってしまったらと──そう考えてしまった。
 ただ好きで、ただ彼の傍にいたいだけだというのに、それだけでレオニーは
十分なのに、どうしてそれだけではいられないのだろう──。

 だがレニーは家に戻ることで一度彼から離れ、自分の気持ちを冷静に見つめ
直すことができた。
 帝都に戻ったら、ハーシュベルにきちんと話そう。きちんと話し、彼の気持
ちを確かめ、これからどうするか二人で考えよう──そう思い至った。
 何より彼に嘘を付き通すことが心苦しい。例え彼がどんな答えを選択にする
にしても、それが彼の出した答えならば、レオニーはそれを受け入れるつもり
だ。彼はきちんと考えた上でレオニーを見て、答えてくれるはずだ。それにレ
オニーは応えたかった。
130硬派な上官の過去:2006/12/27(水) 22:53:08 ID:YCPF9PgH

「……今頃、何をなさってるんだろうな……ハーシュベル将軍」
 執務室で見る険しい表情の上官の横顔を思い出し、レオニーは窓の外を眺め
た。すると、門から一台の黒塗りの車が入ってくるのが見えた。
 見合い相手の車だろうか、それともまた母が呼んだ商人なのだろうか──ど
ちらにしても、レオニーには関係のないことだ。
「お、お嬢様! レオニーお嬢様!!」
 メイドの一人が息を切らせて様子で、ドアを叩いている。何事だろうかとド
アを開けると、
「は、早く玄関まで来て下さいまし! 大変でございます!!」
「どうしたの? そんなに慌てて……」
 だがメイドは早く来て欲しいの一点張りで、レオニーはそんな彼女の様子に
首を傾げた。母に追い立てられているのだろうかと思いつつも、玄関ホールま
でやって来ると、母が父に支えられる格好で呆然と来客と対峙していた。使用
人達も驚いた様子で来客を見ており、レオニーの場所からでは、丁度、来客の
顔を見ることは出来なかった。だが、ちらりと見えた裾は紛れもなく軍が支給
するコートだった。
「奥様、お嬢様をお呼び致しました!」
 その声に来客を取り巻くように見ていた使用人達の波が引く。そこでレオニー
はようやく来客が誰であるか気付いた。
「ハーシュベル将軍!? どうしてこんなところに──」
「レオニー、本当なの? 貴方、本当にシュヴァルベ大将軍とお付き合いなさっ
ているの?」
 顔面蒼白の母に縋るように問い詰められ、レオニーは驚いた。無意識にハー
シュベルを見上げると、
「突然ですまない。ただ、こういうことは早い方が良いと思ってな。ご両親に
君との結婚の許しを頂きに来たんだが……」
「き、聞いていません!」
 寝耳に水の彼の発言に、レオニーは甲高い声で間髪いれずに反論してしまっ
た。
 これでは母でなくとも腰を抜かすはずだ。誰がこんな片田舎に、供も付けず
に大将軍がやってくると思うだろうか。
 しかし、ハーシュベルは彼女の動揺に全く気にする様子もなく生真面目な顔
で、
「ああ、まずは結婚を前提に付き合うことを許してもらう方が先だったか」
 などと言うものだから、レオニーは開いた口が塞がらない。
 だけれども、堅物で冷厳な大将軍──そんな世間のイメージとはかけ離れた、
ちょっと抜けているところがある彼がレオニーには堪らなく好きで、周囲の目
を気にするよりも先に、ハーシュベルに抱き付いてしまった。 


**おしまい**
131名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 23:16:27 ID:I1MVmFfj
リアルタイムGJ!
作者さんの配慮か、重くなりそうな話なのに余計な回り道もなく、
二人の揺れ動く心の動きだけが追えたような気がする。

ただ、改行が少し見にくいのが気になったかな。
132名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 23:30:42 ID:qfEm2mpw
GJーー!!!
ハーシュベルにそんな過去があったとは…
ドキドキしながら読んだよー
133名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 00:52:11 ID:3+NI2MIT
ネ申よありがとう…(つД`).。.:*・°
レオニーかわいいよレオニー!!

ケコーン初夜もみてみたくなってきましたよ!!(´Д`*)ハァハァ
134名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 22:48:44 ID:VeEiQ8ql
GOD GJ!!!(*´Д`)続きがすごい読みたい
135名無しさん@ピンキー:2007/01/02(火) 02:06:29 ID:67pb8SNC
「ユリシスとイリス」の続きが読みたい。
あと、スレチだけど妹の「エステルとゲイル」の続きも読みたい。
職人さんお願いします。
136名無しさん@ピンキー:2007/01/02(火) 02:32:01 ID:gkLuwfdi
>135
・・・お前さん、続きが読みたい気持ちはわかるが頼み方ってものがあるだろ・・・

要求するだけじゃ作家さんに失礼だ
137名無しさん@ピンキー:2007/01/03(水) 08:43:08 ID:0xmzx+Zh
「エステルとゲイル」は違うスレだし。
138名無しさん@ピンキー:2007/01/03(水) 13:23:38 ID:+JJXFFUK
あけましておめでとうございます!

とりあえずage
139名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 22:12:53 ID:lp5gwx+W
保守
140名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 00:18:41 ID:2mtW34oh
主(S)、従(M)の固定概念が抜けない俺イズヒア。
141名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 00:31:44 ID:wLBtfMn5
>>140
よう、俺。
142名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 13:32:39 ID:e0GJIR30
>>140
俺の分身がこんな所に。
143名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 01:36:11 ID:3dN1sy6W
保守
144名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 02:16:20 ID:Lm2wY72K
ろりぃくノ一ものが読みたい…
145名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 20:01:08 ID:NggHDC5e
ユリシスタンマダー?
146名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 21:05:36 ID:3dN1sy6W
まだです
147名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 22:32:13 ID:ok15y1+d
アディリアたんの続きを待ってる

>>140
いつの間に書き込んだんだ俺
148名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 00:38:03 ID:8RuOkUWw
>>135>>145
ユリシスとイリス書いた人です。
話考えてはいるけれど、二人がなかなかエロい関係になってくれないので投下が難しい。エロなしばかり投下するのも気が引けるので。
待っていてくれるのは有り難いが次の投下があるかもわからない状態。すまん。
149名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 04:53:02 ID:/ctO7Hxs
>>148
ぶっちゃけ、エロパロなのにエロ無しでもいいから読みたい。
そう思ってしまうほど、ユリシスとイリスの二人に嵌まった俺がいる(* ゚∀゚)=3

続きいつまでも待ってます。
150名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 14:02:48 ID:GUWfqcoG
>>149に同じく、エロなしでも全然構わないです。
つか、初めてエロパロ板で
職人さんのオリジナルキャラに萌えたよ(;´Д`)ハァハァ
151名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 19:55:39 ID:ThUMj+gx
最終的にエロが入ればいいんじゃない?
エロなしでもどんどん来てください。
152 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:18:53 ID:QHmuisjz
昼行灯な上司×苦労性な部下に突き動かされ、勢いで書いた代物ですが、投下させて頂きます
携帯からなので読み辛かったらスミマセン
153王都騎士団 1 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:20:25 ID:QHmuisjz
 ファムレイユ・ゴードンスは深い溜め息を吐きながら、上官の執務室へと続く螺旋階段を登っていた。
 王都の天気は晴れ。白くそびえ建つ城や騎士団の常駐する棟が、昼の日差しを照り返して眩い程。鍛練を終えた幾人かの騎士達の声に混じって、午後を告げる城の鐘が、王都一帯に響き渡っていた。
 しかしファムレイユの表情は、晴れるどころか今にも霙が降り出しそうな程にしかめられている。
 王都を守護する騎士団の中でも、数少ない女性騎士であるファムレイユを悩ませているのは、向かう先の部屋に居る──居る筈の──上官、デュラハム・ライクリィだった。

 騎士団最高峰の黒旗隊隊長を務めるデュラハムは、当年とって三十八歳。
 歴代、黒旗隊隊長は同時に全ての騎士団を纏める団長も兼任する。その殆んどが四十を越えて就任している事から考えれば、二年前にその地位を得たデュラハムの切者具合いを、多少なりとも想像出来るだろう。
 しかし、ファムレイユにとって、それは何の意味もない事。
 三年前、若干二十三歳にして黒旗団百人隊隊長を任され、尚且、現在は黒旗隊副隊長補佐と言う地位にある彼女にしてみれば、デュラハムが隊長である事自体が、そもそもの謎なのである。

「ヒュー殿がいらっしゃれば……」

 今日になって、何度溜め息を溢した事か。
 最後の一段を登ると同時に吐き出した溜め息は、狭い回廊に消えた。
154王都騎士団 2 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:21:49 ID:QHmuisjz
 ファムレイユ直属の上官であるシルヴァリア・ハリスは、現在任務の為に王都から海を隔てた離島に居る。
 本来ならばファムレイユも同行しなければならないのだが、今回の任務は第二騎士団でもある赤河隊との合同任務。黒旗隊とは違い、女性の入隊不可な赤河隊の任務に、ファムレイユが同行は出来ない。
 代わりに隊長補佐であるヒュー・ゴセックがシルヴァリアの補佐に赴き、入れ替わりにファムレイユがデュラハムの手足となって働いているのだ。
 基本的に隊長であろうと副隊長であろうと、補佐がこなす仕事には大差はない。
 問題があるとすれば、デュラハム自身である。

「隊長、いらっしゃいますか」

 執務室の前で足を止めたファムレイユは、姿勢を正すと規律に従って部屋の扉を三回ノックした。
 返事はない。

「隊長」

 再度ノック。
 しかし扉の向こうからは、ウンともスンとも返事はない。
 苛々とした様子で眉間に皺を刻んだファムレイユは、握り締めた拳に力を込めて、ガツガツガツと激しく扉を叩いた。

「隊長っ!入りますっ!」

 これだけノックをしても返事がないのだ。文句を言われる筋合いはないだろう。
 些か乱暴に扉を開いたファムレイユは、年頃の女性には似つかわしくない荒々しい足取りで部屋に入った。
 簡素な部屋に人気はなく、窓から差し込む陽の光が妙に虚しい。
 予想通りの室内にファムレイユはまた溜め息を溢した。
 執務室にいないとなれば、デュラハムの居場所は一ヶ所しかない。

「隊長、入りますよ」

 声にあからさまな怒気を含みながら、ファムレイユは私室に繋がる扉を開けた。そこに遠慮や躊躇いなど微塵もない。

 執務室と隣接している私室は、普段は隊長補佐と副隊長以外の勝手な入室は禁じられている。
 しかし、ファムレイユが此処に入るのは今回が初めてではない。
 シルヴァリアとヒューが任務に向かう以前から、ファムレイユは頻繁に此処を訪れていた。
 何度も言うが、全てはデュラハムのせいなのである。
155王都騎士団 3 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:23:08 ID:QHmuisjz
 やはり簡素な私室の隅には、作り付けの棚と机と椅子。酒瓶と脱ぎ捨てられたブーツと衣服が、ベッドの脇に転がっていた。
 窓から一番遠い壁際には、古道具屋でも売られていないような古びたベッド。
 其処に倒れるようにして眠っているのは、他でもないデュラハムである。

「……隊長、そろそろ起きませんか?」

 こめかみがピクピクとひくつくのが嫌でも分かる。
 それでも何とか平静な声を装いながら、ファムレイユはベッドに歩み寄った。
 相手の下着姿など、見慣れた今となっては、恥ずかしいとも思わない。

 デュラハムが黒旗隊隊長に就任する以前は、ファムレイユは彼に多少なりとも憧れを持っていた。
 だが、現状はこれである。
 デュラハムが身近な存在になればなる程、ファムレイユの中で憧れは失望と呆れに変わっていった。
 確かに、剣の腕は一流だ。貴族や王族に対しても引けを取らぬ程に弁は立つし、騎士団内で辣腕を奮うのも事実。
 しかし人として、余りにも物事が適当すぎる。

 他の騎士団──現在王都に残る青岳隊や緑雨隊隊長は、今頃はそれぞれ執務をこなしているだろう。
 なのに、それを束ねるべきである黒旗隊隊長の姿ときたら、冴えない宿屋の親父の如き代物。
 酒と煙草の臭いを染み付かせ、無精髭を蓄えて、下着姿でボロベッドに寝転がる。騎士団団長に憧れを持つ多くの女性に見せれば、百年の恋も一気に冷めるであろう姿である。

「……隊長」

 努めて冷静な声を出すファムレイユは、握り締めた拳に力を込めた。
 叩き起こすのは最終手段として取っておきたい。
 この場合「叩き起こす」と言うのは、文字通りの代物である。どちらかと言えば「殴り起こす」と言った方が正しいかも知れない。

「隊長、お昼です」

 枕を抱えるデュラハムの肩を揺する。
 デュラハムは低い唸り声を漏らしたが、まだ目が覚める様子はない。

 常日頃、隊長の手足となって働くのが補佐の仕事であるのだが、これではまるで母親だ。

 ──こんなデカい子どもを持った覚えはないわよ、私は。

 そんな事を考えながら、ファムレイユは更にデュラハムを揺さぶった。
156王都騎士団 4 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:24:19 ID:QHmuisjz
「隊長っ、起きて下さいっ」
「ぅ……ん」
「お昼過ぎてますよ。いつまで寝てるんですか!」
「ん………………ん?」
「起きろって言ってるんです!」

 耳元で怒鳴り付ける事暫し。
 ピクと瞼が動いたかと思うと、ゆるゆるとデュラハムの目が開かれた。

「……ファム?」
「愛称禁止。いつまで寝てるんですか、貴方は」

 冷徹な声でピシャリと言い放ったファムレイユは、デュラハムの肩から手を離すと、呆れたように鼻先に皺を寄せた。

「……何時だ?」
「午後の鐘が鳴りました。お昼の時間は遠に過ぎています」
「そうか」

 くぁ、と大きな欠伸を放ちデュラハムはのっそりと体を起こす。
 鍛え上げられた体躯は大きく、赤茶色の混じる金髪と程良く日に焼けた赤銅色の肌のせいもあってか、冬眠明けの熊を連想させた。

「そうか、じゃなくてっ」
「あんま大声出しなさんな。さっき眠ったばっかりだっての」
「……また夜遊びですか…」

 皮肉たっぷりに告げるファムレイユの言葉に返事もせず、デュラハムはボリボリと頭を掻きながら、再び大きな欠伸を漏らした。
 その有り様にファムレイユの頬がヒクと痙攣する。

「とっとと着替えて下さい。ヒュー殿からの定時連絡まで、余り時間がありませんから」

 低く押し殺した声で済んだのは、日頃の訓練の賜物だろう。
 しかしデュラハムは、ちらりとファムレイユに視線を向けただけで、ベッドを降りる様子はない。それどころか再び布団を掴むと横になろうとする。

「隊長ぉっ!」
「まだ時間はあるんだろ。もう少し寝かせろや」
「そう言う訳にはいきませんっ!ほら、とっとと起きるっ!!」

 完璧母親と化した台詞を紡ぎながら、ファムレイユは布団を引き剥がそうと手を伸ばす。
 だが。

「っ!?」
「そうカリカリしなさんな」

 布団を掴もうとした手はデュラハムによって阻まれ、ファムレイユはデュラハムの上に倒れ込んだ。
 早い話が、手を捕まれ引っ張られたのだ。
 二人分の重みでギギィとベッドが悲鳴を上げた。
157王都騎士団 5 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:26:18 ID:QHmuisjz
「真面目だねぇ、ファムは」
「貴方が不真面目過ぎるだけですっ。て言うか、何してんですかっ!」

 抱き止められファムレイユの心拍数が跳ね上がる。
 だがデュラハムは、素知らぬ表情のまま、チュニックの上からファムレイユの胸元をまさぐり始める。

「ち、ちょっと…!」
「一発抜いたら目ぇ覚めるかもなぁ」
「いっ…っ!?」

 後ろから抱き竦められる格好になったファムレイユは、抵抗しようと試みるが、両腕はがっちりとデュラハムに抱え込まれている。
 手が無理なら足と思っても、足の間にデュラハムの足が滑り込まされた。
 その間にもデュラハムの手の動きは止まらない。
 服の上からでも的確に胸の頂を摘み上げ、首筋に舌を滑らせる。

「ちょ、隊長ぉ…」
「ん〜?」
「こんな事、してる、時間は…っ」
「一回分くらいはあんだろ」
「ぅくっ……!」

 逃げる手立てはいくらでもある。しかしそう出来なかったのは、デュラハムから与えられる刺激のせいだ。

 少なくともファムレイユはそう思っている。

 服の上からでも分かる程に、反応を始めた頂を指先でこねるように弄ぶ。かと思えば胸全体を強く揉まれ、ファムレイユの唇から熱い吐息が漏れた。
 割られた膝の間では、足の付け根を擦るようにしてデュラハムの膝が上下しており、首筋から耳までをねっとりと舌が這い回った。

「…たい…っ……んんっ!」
「お前さんも、たまにはのんびりしろって。な?」
「み、耳元で喋るなぁ…っ!」
「お〜、悪い悪い」

 デュラハムが口を開く度、吐息がファムレイユの耳に降り掛る。
 ぞくりと首筋が粟立つ感覚に思わず抗議の声を上げるが、デュラハムに悪びれた様子はなく、逆に切り揃えられた髪の隙間から見えるファムレイユの耳を咥え込んだ。

「ひぁっ!」

 チュプと水音がダイレクトに響く。舌を捻じ込まれなぶられて、ファムレイユは声を上げた。
 デュラハムは楽しげな笑い声を喉の奥で漏らすと、チュニックをたくし上げてファムレイユの肌を外気に晒す。
 下着代わりに胸に巻き付けている白い布も同時に取り払うと、薄く色付いた白い肌が露わになった。
158王都騎士団 6 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:27:52 ID:QHmuisjz
 桃色に染まった胸の頂はツンと尖り、デュラハムの指の動きに併せて形を変える。
 その度にファムレイユの腰に痺れにも似た感覚が走り、ファムレイユは鼻に掛った声を上げた。

「あぅ…っ、やめ…」
「此処まで来てそりゃないだろ」

 耳から口を離しデュラハムがファムレイユの顔を覗き込む。
 頬に柔らかく噛みついて舌を伸ばすと、デュラハムは片手をファムレイユの腹部へと移動させた。

「分かるだろ、俺のが反応してんのが」
「し…知らないっ…!」

 態とらしい言葉に顔を背けて頬を舐めるデュラハムから逃れようとしたが、ファムレイユははっきりとデュラハムの欲望を感じていた。
 全体重の殆んどを預ける形で、背後からデュラハムに抱えられているのだ。押し付けられなくても腰に当たる感触が、徐々に固さを増しているのが嫌でも分かる。
 それでもファムレイユは身を捻り、デュラハムの腕から逃れようとしていたが、デュラハムは手早くズボンのベルトを緩めると、その中に手を滑らせた。
 耳をなぶるのは諦めてはいたが、肩や首筋に噛みついては吸い痕を残す。その度に不揃いな無精髭が肌を擦り、その刺激にすらファムレイユは快感を覚え始めていた。

「や、ぁあ…っ」

 下着の上から、主張を始めた肉芽に触れられ、ファムレイユは耐えきれず嬌声を上げる。
 手慣れた動きで指先は肉芽を押し潰したかと思うと、胸の頂と全く同じ動きでグリグリとこねまわされた。

「やぅっ…あ…んんっ」

 短くなる呼吸に混じる声は多くなり、それが酷く恥ずかしい。
 しかしデュラハムは手を休める事なく、湿る下着の上から執拗に肉芽を弄ぶ。胸を揉む手は時折腰や腹部へと降りて、徐々にズボンは脱がされていった。

「ファム、ブーツ」

 騎士団から支給されているブーツはズボンを脱がすのには邪魔になる。
 端的な言葉の意図を汲み取りはしたが、ファムレイユはふるふると首を左右に振った。刺激が欲しいと素直になるのは簡単だが、ここで言いなりになるのは癪に触る。
 目の前で青みがかった黒髪が揺れるのを見て、デュラハムは眉を上げた。

「相変わらず素直じゃねぇな、お前さんは」
「う、うるさ…っ…ひゃうぅ!」

 憎まれ口を叩こうとしたファムレイユだったが、言い終わる前に下着の隙間からデュラハムの指が滑り込む。
159王都騎士団 7 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:28:56 ID:QHmuisjz
 充分過ぎる程の潤いを見せる亀裂に太い指が差し込まれ、グチッと粘ついた水音が耳に届いて、ファムレイユは強く目を閉じた。

「いつまで強がってんのかねぇ」
「やぁ…だ、んあぁ…!」

 太股までを剥き出しにされた姿で、下着はそのままに体の中に指を埋め込まれている。

 そんな自分の姿を自覚するだけで、ファムレイユは羞恥心で一杯になるが、それ以上にデュラハムの指の動きに理性が狂わされる。
 二本に増やした指でファムレイユの中を掻き乱しながら、デュラハムは体を反転させてファムレイユを組み敷いた。
 体重を掛けられ逃れる術を失ったファムレイユは、自由にならない体を捻ってデュラハムを見遣った。

「た、たいちょ…」
「おーおー、そんなに目ぇ潤ませて。物足りねぇか?」
「ち…ちが…っ」

 今ならまだ退き下がれる。
 経験上、何とか行為を中断させようとデュラハムに声を掛けたが、デュラハムはニヤリと意地の悪い笑みを見せると、指を引き抜いてファムレイユの下着をずり下ろした。
 重みの無くなった体だったが、逃れる程の力はない。
 それを見越してでもいたのだろう。デュラハムはファムレイユの腰をがっちりと掴むと、高く掲げて濡れそぼった秘部に口を付けた。

「あぁぁぁっ!!」

 思わずシーツを握り締める。
 ジュルリといやらしい音を立てて溢れる蜜を吸い上げたデュラハムは、更に蜜を求めるようにファムレイユの中に舌を差し入れる。
 漏れる呼吸や、触れる無精髭や、指とは違う熱く蠢めく舌の感覚に、ファムレイユの体は本人の意識とは勝手に反応する。

「あっ…やぁぁ、駄目ぇ…っ」

 再び肉芽を弄ばれ、胎内を激しく乱されて、ファムレイユの腰が跳ねた。
160王都騎士団 8 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:30:15 ID:QHmuisjz
 蜜にまみれた指は緩急を付けて的確にファムレイユの熱を高め、舌は溢れる蜜を溢すまいと妖しく蠢めく。
 時折態と聞こえるように水音を立てて秘部を吸い上げると、ファムレイユの体は実に素直にビクビクと震えた。

「まだ止めて欲しいか?」

 あえぐ声に掠れが混じり始めた頃、デュラハムは顔を上げてファムレイユに問掛けた。

 デュラハムとて嫌がる女性を無理矢理抱くような悪い趣味は持ち合わせていない。ならば、今までの行動は何なのかと言われるかも知れないが、其処はそれ。
 仮にも恋仲にある女性が相手で、尚且自分以外の男を知らぬ相手に、多少の無理強いを強いてみたい気持ちは分かって欲しい。

 ファムレイユ自身も、全くその気が無かったと言えば嘘になる。
 ただ生来、色恋沙汰には無器用で、普段から素直に「好き」と口にする事すら難しい彼女が、職務に励むべき時間に淫らな行為に耽るには抵抗があった。

 それを知った上で強いる時点で、デュラハムは充分人が悪いとも言えるが。

 肉芽を弄る手は休めずに、自分は胡坐を掻いて座りながら、ファムレイユの腰を引き寄せる。
 自分の手でファムレイユが乱れる様を感じ続けていたせいで、デュラハムの肉棒ははちきれんばかりに存在を増していた。
 先程よりは幾分与えられる刺激が弱くなったからか、ファムレイユは弱々しくあえぎながら、汗で張り付いた額の髪を乱雑に撫でた。
 その仕草がまたデュラハムの欲望をそそるが、生憎とファムレイユは気付かない。
161王都騎士団 9 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:31:22 ID:QHmuisjz
 肩越しに振り返ったファムレイユは自分を見下ろすデュラハムの眼差しの強さに息を飲んだが、視線を避けるように目を逸らすと、乾いた唇を噛み締めた。

「……っ…う…。……デュー…」

 静かな室内に小さな声が響く。

 愛称を呼ぶ。
 ただそれだけの事なのだが、二人の間ではそれは暗黙の了解だった。

 満足気な笑みを浮かべたデュラハムは肉芽から手を引くと、下着を脱ぐのもそこそこにファムレイユの体を反転させる。
 膝裏に手を掛け大きく足を開かれたかと思うと、次の瞬間、ファムレイユの胎内に熱くたぎったデュラハムの肉棒が埋まった。

「あぁぁっ…や、んぁあ…っ!」

 顔の横でしっかりとシーツを握り締め、一際大きくファムレイユが鳴く。
 石造りの室内に反響した自分の声に、今更ながらファムレイユは甘い色が混じっている事に気付いたが、次の瞬間にはもう、そんな事はどうでも良くなっていた。

 浅く。深く。
 幾度も体を交わらせた事のあるデュラハムの動きに無駄は無く、その度にファムレイユの口からは言葉にならない声が溢れる。
 髪と同じ青みがかった茂みの奥で、ぷっくりとした肉芽が色付いている。デュラハムがそれに手を伸ばすと、彼を包む肉壁がきゅうと締まった。

「はぅっ、あぁ…デュー、やだぁ…っ」
「気持ち良すぎんのか?」
「ぅ、ん…っ」

 デュラハムが抽挿を繰り返しながら肉芽を弄ぶと、強く瞼を閉じたファムレイユは頭を上下に振る。
 態々訊かなくとも自身に返る刺激でファムレイユが感じているのは明らかだ。
 しかしはっきりと態度で示されると──何とも単純な話ではあるが──常日頃素直とは無縁なファムレイユだけに、デュラハムは身も心も文字通り満たされるのだ。

「あっ、はぁ…んっ、ああぁ…っ!」

 纏わり付く締め付けと共に、デュラハムの動きは徐々に早さを増して行く。
 腰が浮くような感覚にファムレイユは必死になって意識を繋ぎ留める。
 デュラハムが膝裏から手を離しファムレイユの顔の横に手を付くと、すがるようにしてファムレイユはデュラハムの背に手を回した。
162王都騎士団 10 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:32:32 ID:QHmuisjz
 蜜にまみれた口許など気にする余裕もなく、ただ欲望に忠実にファムレイユがデュラハムの唇に吸い付く。割り開かれた唇の隙間に舌を差し込み、互いの熱を感じながら舌を絡ませ唾液を交わらせる。
 それを味わおうとデュラハムが腰の動きを緩やかにするが、ファムレイユは自分の腰を押し付けながらデュラハムの舌を貪った。

 ──普段もこんだけ素直なら、いじめる回数も減るんだがな。

 そんな考えがデュラハムの脳裏を掠めたが、直ぐにその考えを振り払う。もしもファムレイユが素直になれば、その分楽しみが減ってしまう。
 人が悪いだとか最低の趣味だとか、ファムレイユに罵倒されても仕方のない楽しみだが、生憎とデュラハムはこの趣味を手放す気はない。少なくとも今の所は。

 混ざり合った唾液を飲み干しながら、腰をくねらせてファムレイユが刺激を求める。
 唇を交す間にも隙間から漏れるファムレイユの声は艶を増し、デュラハムの脳髄に欲望が渦巻く。それを満たそうと唇を離してデュラハムはより深く激しくファムレイユの胎内を擦り上げた。

「んあぁぁっ!…いや、…やぁぁ……っ!!」

 快感と充足感とが入り混じり、ファムレイユの声が啜り泣きにも似た色を帯る。それは限界が近い証で、ファムレイユは背に回した手に力を込めた。

「デュー、……デュー…っ!」

 耳元で懇願するように名を呼ばれ、デュラハムはもう一度軽くファムレイユに口付ける。
 そのままファムレイユの頭を抱き締めると、デュラハムは激しく腰を打ち付けた。

 ジュブジュブと大きな水音を繰り返し、何度も何度も突き動かされて、ファムレイユは天を仰ぐ。
 腕の中で退け反るファムレイユに言葉にならない愛しさを感じながら、デュラハムは最奥を貫く。

 耐えきれぬ欲望が全身を巡り、デュラハムがファムレイユから身を引き抜く。
 それと同時に腹部に巻き散らされた熱い体液を感じながら、ファムレイユの意識は宙に飛んだ。
163王都騎士団 11 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:33:30 ID:QHmuisjz
 ファムレイユが意識を取り戻したのは、それから間も無くの事だった。
 久し振りの──しかも背徳感満載な──情交に乱れきった自分が情けないが、ファムレイユを待ち受けていたのは更に情けない事態だった。
 ベトベトになっていた筈の腹部は、気を失っていた間にデュラハムによって清められ、衣服の乱れも直されている。しかもご丁寧にブーツは脱がされ、掛け布団まで掛けられている始末。
 肝心のデュラハムの姿は見えず、床に散らばっていた筈の彼の衣服も見当たらない。

 執務だ何だと口煩くしていたのは自分なのに、デュラハムと情を交す為に来ただけのような有り様に、ファムレイユは眉間を寄せた。
 慌ててベッドから起き上がり、ブーツを履くのもそこそこに執務室への扉を開ける。
 執務室の机の前では、まるで何事もなかったかのように、デュラハムが執務に向かっている。背後の窓から差し込む陽光に赤茶色混じりの金髪が煌めいて、ファムレイユは思わず目を細めた。

「お〜、起きたか」
「っ!……も、申し訳ありません」

 デュラハムの飄々とした態度に腹が立つが、それは自分のひがみと言う物。
 声を低くし、視線を合わせぬようにして頭を下げると、ファムレイユは平静を取り戻そうと小さな深呼吸を繰り返した。
164王都騎士団 12 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:35:12 ID:QHmuisjz
「ゴードンス補佐官」

 愛称でなく役職で呼ばれ顔を上げる。
 デュラハムは口角を上げた表情で机に頬杖を突いていた。

「何でしょうか」

 こうして──珍しくも──デュラハムが執務に向かっているのだ。ならば自分は、出来得る限り補佐するしかない。
 私情は取り合えず心の棚に預けておいて、ファムレイユは職務用の表情を取り繕った。


 が。


「煙草、買って来てくれ」
「………………はい?」

 能面の如くファムレイユの表情が固まる。ただし、思考回路は正常に稼働している。

 ──…このオッサン…一回締め殺してやろうかしら。

 物騒なファムレイユの考えなど知る筈もなく、デュラハムは笑って手を振った。

「煙草吸わないと頭が働かなくてな〜。仕事が進まないのなんのって」
「買 っ て き ま す !」

 必要以上に語気を強め、くるりと体を反転させる。
 惚れた弱味だとかそれ以前に、執務をまともにこなして貰わない事にはファムレイユにもお叱りが回って来る訳で。

 ──ヒュー殿っ、シルヴァ副隊長っ!早く戻って来て下さいっ!!

 心の中で血の涙を流しながらファムレイユは執務室を後にする。
 そんなファムレイユを見送ったデュラハムは、心底楽しそうに笑いながら窓の外へと視線を投げた。


 王都は今日も平和である。

165 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/07(日) 23:37:06 ID:QHmuisjz
以上です

ツンデレ甘々目指して玉砕…orz
肝心な描写が抜けてる気がしなくもないですが、精進して出直して来ます

長々と失礼しました
年の差上司×部下万歳!
166名無しさん@ピンキー:2007/01/08(月) 00:10:02 ID:71ranfWB
昼行灯上司×ツンデレ副官、最高、GJGJ!!
自分の願望そのままの設定で禿げしく萌えたYo!
167名無しさん@ピンキー:2007/01/08(月) 00:20:53 ID:MpDh5huk
あまあまGJ!
続きが読みたいです…
168名無しさん@ピンキー:2007/01/08(月) 02:18:55 ID:vtqYP7cz
激しくGJ!
甘々の二人にニヤニヤがとまらないよ。
169名無しさん@ピンキー:2007/01/08(月) 23:44:28 ID:KECjfnyy
GJGJ!!
すんごい面白かった!! 上司も副官も可愛いよハァハァ。

日焼けした肌に金髪…今のCMの宇宙人ジョーンズさん? 
とか思ってしまってごめんなさい。
もっと若いですよね。
170名無しさん@ピンキー:2007/01/09(火) 00:06:45 ID:/3r/GnRL
ユリシスとイリス、小ネタ書いてみた。
エロなしだが投下します。
171ユリシスとイリス 1/3:2007/01/09(火) 00:14:24 ID:/3r/GnRL
「次は誰だ」
 地面に剣を突き刺し、周囲の面々にユリシスが問う。
 執務の息抜きに兵士たちに稽古をつけてはどうかとのイリスの提案に素直に従い、ユリシスは久方ぶりに剣を抜いた。
 腕に覚えのある兵士たちが次々に相手を願い出たはいいが、ユリシスに膝をつかせることすらままならない。
 感嘆の吐息があちらこちらから漏れ、その吐息が増える度にイリスは眉根を寄せる。誰一人として名乗りを上げぬところを見て、イリスは苦虫を噛み潰したような──傍目にはいつもとさほど変わりない──顔でユリシスを見た。
「……終わりか」
 剣を鞘に収め、ユリシスはイリスの方へと歩み寄る。
「汗をかいた」
「湯浴みの準備ならば出来ております」
「そうだろうと思った」
 イリスにぽんと剣を放り、ユリシスはにやりと笑った。
 涼しげな顔を見ているとイリスは兵士たちを叱咤したくてたまらなくなる。ユリシスはおそらく汗などかいてはいないのだ。
 すたすたと迷いなく歩む主の背を見送り、イリスは深々と溜め息をついた。
「後は各自鍛錬に励むがよい。閣下の剣さばき、ただぼんやりと眺めていたわけではあるまいな?」
 兵士たちを一喝し、イリスは執務室へと向かうのであった。



 王都とは違い、他国との境に位置するこの場所は緊張感に満ちていた。万が一にも他国が攻めいった場合、ここで侵攻をくい止めねばならないからだ。
 とはいえ、今現在他国との関係は良好であり、その可能性は限りなく低い。同じように国境を守る他国の兵士たちとも馴れ合いとまではいかぬが挨拶を交わすことくらいはある。
 適度な緊張感を保った静かな日々はイリスにとっては王都の騒がしい毎日よりも過ごしやすくあるのだが、兵士たちの中には刺激が足らぬと感じる者も少なからずいるようだった。
 そんな彼らに刺激を与え、尚且つ総司令の威厳を保つためにと設けた場であったが成功したとは言い難い。
 ユリシスが国でも五指に入るであろう剣の使い手であるのは承知していたが、ああまで力の差があるとは思いもよらなかった。
 結局、ユリシスにとっては戯れにもならなかっただろう。
 イリスはそれが非常に気に入らない。
 ユリシスの一挙手一投足が洗練された美しさであるのは衆知の事実だ。それなのに、彼らはユリシスの剣さばきの美しさに見惚れてまともに相手ができていなかった。本来ならばもう少し歯ごたえがあってもおかしくはなかったはずなのに。
172ユリシスとイリス 2/3:2007/01/09(火) 00:15:27 ID:/3r/GnRL
 苛立たしげに吐息をつき、イリスは壁に掛けられた時計をみた。ユリシスが湯浴みに向かって既に一時間が経過している。
(迎えにこいということか)
 いつまでも戻らぬ主人の意図するところを察し、イリスは執務室を後にした。
 扉を出て右へ進めば兵士用の宿舎へ通ずる廊下がある。それとは逆に左へ進むと会議室やら資料室があり、さらに奥へ進むとユリシスの私室がある。
 さすがにまだ風呂ということはないだろうと考え、イリスは迷うことなくユリシスの私室へ向かった。
 扉の前で立ち止まり、三度軽くノックする。
 返事はない。
 今度は先ほどより強く叩いてみた。
「閣下、お迎えにあがりました」
 やはり返事はない。
 イリスは小さく舌打ちをし、扉を開いて私室へと足を踏み入れた。
 長椅子に腰掛け、ユリシスは長い髪から丹念に水気を取っていた。
「閣下」
 その姿を確認し、イリスは憮然として呟いた。返事くらいすればいいのにと思いながら。
「何をしているのですか」
「見てわからんか。髪を乾かしている」
「なぜ返事をなさらなかったのですか」
「お前の怒った顔が見たかったからだ」
 悪びれなくうそぶくユリシスをイリスは冷ややかに睨みつける。激高したりしてはユリシスを喜ばせるだけだと経験上学んでいる。
「まあ、座れ」
 自らの傍らを叩き、ユリシスが微笑む。
「いえ、自分はこのままで」
 断ることなど承知の上だとばかりにユリシスの笑みは変わらない。
「では、私の後ろに回れ」
「お断りします」
「なぜ?」
「後ろに回れば次に閣下はこうおっしゃるのではありませぬか?」
「髪を拭いてくれ」
 イリスよりも先にユリシスが件の台詞を口にする。
 くつくつと笑うユリシスをイリスは呆れ顔で眺めた。
「どうした。やってくれないのか?」
 促されれば嫌とはいえず、ユリシスの手から乾いた布を受け取ってイリスはユリシスの背後に立った。
「イリス、もっと表情は豊かにしろ。今のお前が呆れはてていることに気づくのは私くらいのものだ。だから鉄面皮だのと陰口を叩かれるのだ」
「戯言を申されますな。自分は不自由を感じたことはありませんし、そのような陰口に覚えもありません」
「それはよい上官に恵まれたからだ」
 今日はやけに機嫌がいいのだなと訝しみつつ、イリスはユリシスの髪から少しずつ水分を取り去る。
173ユリシスとイリス 3/3:2007/01/09(火) 00:16:24 ID:/3r/GnRL
 女の髪よりもずっと艶やかで指通りのよい髪。
 肌の滑らかさや体のパーツだけ見ていけば女よりよほど女らしい。それなのにそれらすべてを組み合わせていくと男らしい体になるのだから不思議だ。
 自身の髪の触り心地を思い出し、イリスはその違いに改めて感心する。
 人一倍美意識の高いユリシスは湿り気を残した髪のままで執務に向かうなど考えられないのだろう。
(ある意味、非常に難儀な人だな、この方は)
 側近くに仕えるようになり、幾度となく感じた思いを今日もやはり抱いてしまう。
 気分屋で女好きで我が儘で気位が高くて──欠点はあげればきりがないのに、なぜか憎めない不思議な人。
「お前は視線で人を殺せるな」
「……は?」
「手を抜けば怒るくせに手を抜かなくても怒るのだから困る」
 ユリシスの唐突な言葉にイリスはまたしても渋い顔をする。
「さっきだ」
「あれは、兵のあまりの不甲斐なさに閣下のお手を煩わせるのではなかったと……あのような場を設けた自身に腹が立ち」
「思い悩むな。いい気晴らしになった」
 機嫌がよいのだから嘘ではないのだろうと判断し、イリスは「恐縮です」と小さく答えた。
「たまには武人らしく男らしいところを見せねばな」
「兵に示しがつきませぬか?」
「いや、お前に。見放されたら悲しいじゃないか」
 今更ではないかと思いつつ、機嫌を損ねぬように口を噤み、イリスはユリシスの髪が乾くまで他愛ない会話に付き合い続けるのであった。


おわり

174名無しさん@ピンキー:2007/01/09(火) 00:50:48 ID:tJVfZZNR
GJ!
ユリシスとイリスの話大好きだww
新作マジ嬉しい。ありがとう作者さん!
175名無しさん@ピンキー:2007/01/09(火) 02:27:10 ID:Lz8FIOTR
GJ!!!
ユリシスとイリス(*´Д`)とりあえず寝る前にここきて正解だった!!
176名無しさん@ピンキー:2007/01/09(火) 02:28:41 ID:xGPJFoZe
ユリシスとイリスキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!!
この二人の掛け合い、生き生きとしてて面白いw
GJであります!
177名無しさん@ピンキー:2007/01/09(火) 20:59:04 ID:DfqFiAJY
多分知ってる人もほとんどいないだろうし、いても年がばれるだけだけど、主従って言われると、六道慧の『神の盾レギオン』のソリスとマーニを思い出す。
178名無しさん@ピンキー:2007/01/10(水) 18:06:17 ID:mlMOLV+h
主従でカップルてーと自分はやっぱ自由惑星同盟の
紅茶提督と元副官でその妻サンドイッチ夫人の関係がエバーグリーンヒル。
あのじれったさが堪らなかったな。
179名無しさん@ピンキー:2007/01/10(水) 18:36:27 ID:eRQx7war
>>178
むしろ晴眼帝と侍女出身の皇后だろ
180名無しさん@ピンキー:2007/01/10(水) 20:04:28 ID:PPGMgJ3r
>>178
サンドイッチ夫人ってちょ…おまっ…! ヤン夫人に失礼だろwww
夫人はサンドイッチしか作れないわけじゃない。はさむものが得意なだけだ。
おまけに紅茶とサンドイッチって何気に相性いいじゃないか。

>>179
だれだっけ晴眼帝って…と思ってぐぐったらなんじゃこりゃ。超萌える!
マクシミリアンもいいけど、何よりジークリンデ皇后がいいじゃん。
元は皇帝の皇太子時代の侍女で、強気の美女(推定)で、おまけに
『夫を守るため、常に銃を携帯していたという』ってあたりとか
禿げる程に萌えだ。ガイエだけに。

この二人で誰かにSS書いて欲しいよ。
181名無しさん@ピンキー:2007/01/11(木) 00:24:40 ID:zs4s8WtQ
主従関係って、今に例えるなら職場結婚だよな。
上官部下ものならドンピシャだし。
ガイエの書くカップルって、良くも悪くも手短な相手で済ませてる気が
しないでもないがw

スレ違いスマソ。
182名無しさん@ピンキー:2007/01/11(木) 01:31:37 ID:7NTIoViP
手近な相手とは失礼な。一応ヤン夫人は少女時代にヤンに惚れて、
彼に近づくために頑張って軍に入った積極的な女性ですよ
183名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 00:37:40 ID:Wp5brmoR
>>182
FF4の?
184名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 08:39:28 ID:jw/ne1ga
>>183
(゚ω゚)? 銀英伝だよ。

話題にあがってるのはそれに出てくるフレデリカのこと。
FF4にもそういうおにゃのこいるの?
185名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 10:15:55 ID:KxJjJdCR
舞踏家ヤンの奥さん<ヤン夫人
あいのフライパン でぐぐるべし。
186名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 16:31:07 ID:sJghOw7y
ひょっとして>>183はツッコミ待ちだったのか
気づいてやれんですまんかった
187名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 18:03:09 ID:jw/ne1ga
そうかも。そしたらすごい野暮な返事しちゃったな。
…でももし仮に183が素で間違えてたりしたら、そして183が美少女だったりしたら……。
この気持ちはなんだ。そうか愛か。

>>181
なんかのインタビューでガイエが自分でも言ってたよ。
自分が書くカップルは戦友とか同僚とかばっかりで、いわゆる愛憎関係みたいな
カップルは多分書いてない、だとかなんとか。
……ってそろそろスレ違いかな。

とりあえず愛憎はすごくおいしいと思うのでいっちょ主従で愛憎な話をキボン。
188183:2007/01/12(金) 18:07:12 ID:Wp5brmoR
>>184-187
…ああ、なんつうかこんなことで気をつかわせて申し訳ねぇ。
銀英伝に関しては全く中身を知らないため、素でFF4だと思ってた。
あと>>187、期待に沿えず誠に申し訳ないが想像は尽く外れなので勘弁してくれw
189名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 20:01:36 ID:1LPoklSf
コイツゥ(* ´∀`)σ)∀`*)←183

残念だったな187。だが泣くんじゃないぞ、男だろ。

投下待ちなのでこのスレのSS読み直したりしてみた。
個人的にアディリアの話が特に好きなんで職人さん、気が向いたら
続き投下しておくれ。両思いだけど擦れ違いなのがたまんねぇ。
190 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/12(金) 21:25:20 ID:L9z/d8ql
調子に乗ってデュラハム×ファムレイユの、馴れ染め話を投下
今回はエロ無しの前編となります
相変わらず携帯ですが、ご容赦頂ければ幸い
191王都騎士団【二年前の話・前編】1:2007/01/12(金) 21:26:44 ID:L9z/d8ql

 ファムレイユが百人隊隊長に就任した時、デュラハムは黒旗隊副隊長を務めていた。
 その頃一度だけ、ファムレイユはデュラハムに問うた事があった。
「何故、隊長の地位を望まないのか」と。
 次期隊長候補と噂される程、当時のデュラハムには充分にその素質があった。
 のみならず、先代黒旗隊隊長──つまりは騎士団団長であるミケロ・ハルバードの口癖は「早く隠居したい」と言う、何とも不謹慎極まりない物。デュラハムに対するミケロの信頼も確かで、何度か王家にデュラハムを団長にと願い出ていた事もある。
 しかし、デュラハム自身が団長に就任したいと望んだ事は一度もない。
 ミケロが病気で引退する事となり、デュラハムが騎士団団長を引き継ぐ形にはなったが、ファムレイユの問いにデュラハムはこう答えた。

「人の上に立つには、それなりの責任や重さがついてまわる。俺はその役目にゃあ向いてねぇ」

 しかし、ミケロの目は確かだったようで、デュラハムは団長に就任すると、大掛りな人事移動を行った。

 重装備兵を主体とする赤河隊からシルヴァリアを、弓兵を主体とする緑雨隊からヒューを引き抜き、それぞれを副隊長と隊長補佐に任命。騎馬兵を主体とする青岳隊からはレオン・ギュースタンを引き抜いて彼を百人隊隊長へと任命したのである。

 基本的に──例外はあれど──一度所属した部隊を異動される事は有り得ない。
 だが、デュラハムはそれを行った。
 結果、それぞれの働きは申し分なく、最初は非難を浴びせていた多くの貴族は沈黙するしかなかった。

 適材適所と言う言葉がある。
 デュラハムにはそれを見抜く目と、無駄にしない手腕が備わっていたのである。

192王都騎士団【二年前の話・前編】3:2007/01/12(金) 21:27:49 ID:L9z/d8ql

 そして、デュラハムが団長に就任した年の事。
 年中温暖な気候の続く王国のとある領内は、その年は珍しく気候が荒れた。
 農業や林業で栄えた領内は、不作の影響で数多くの野盗がはびこり、王都にもその被害の様は報告された。
 その討伐に黒旗隊が任命されたのは、恐らく臣下を務める貴族の意向だろう。
 団長に就任したばかりのデュラハムの手腕を図る為、と言う何とも分かりやすい意図を持って告げられたにも関わらず、デュラハムは快く承諾した。

 各々特徴を持つ他の隊とは違い、黒旗隊は規模は小さいながらも全てを兼ね備えた隊である。少数精鋭、と言えば分かりやすいだろうか。
 重装備兵・騎馬兵・弓兵・衛生兵などなど。必要とされる部隊は全て揃っている。
 その中でも短槍と弓の扱いに足けた軽装備兵を編成したデュラハムは、自分を指揮官とした上でファムレイユを副指揮官に任命した。

「隊長自ら出陣する必要はなかったと思うのですが」

 思わずポロと溢した声は、独り言にしては大きすぎた。
 慌てて口を閉じたが、狭い簡易テントの中、ファムレイユの言葉はしっかりとデュラハムに届いていた。
 拠点となる領内の外れ。明日からの野盗討伐に向けて兵士達に指示を終え、一先ず解散となった矢先の事である。
 デュラハムは平然とした様子でテーブルに広げてあった地図を覗き込みながら、ファムレイユの言葉に口許を緩めた。

「ゴードンス、お前さんは今の黒旗隊をどう思う」
「……と申されますと?」
「黒旗隊は騎士団でも有数の兵が揃っている。だが、個々の能力に偏りがある事は否めない」
「……はぁ」
「ヒューやシルヴァには徹底的に其奴らを鍛え上げて貰いたい。だから俺が指揮をとる。これ以上の理由が必要か?」

 ファムレイユに視線を向ける事なく、きっぱりと言いきったデュラハムは、無精髭の残る顎を撫でた。
193王都騎士団【二年前の話・前編】3:2007/01/12(金) 21:29:12 ID:L9z/d8ql

 確かにデュラハムの言葉は一理ある。
 だからと言って、別にデュラハムが指揮をとらなければならない理由にはならない。
 何と無く居心地が悪くなったファムレイユは、小さな吐息を漏らしながら髪を掻き上げた。

「ならばギュースタン殿に指揮を任せてもよろしかったのでは?」

 もう一つの百人隊隊長を務めるレオンの名前を持ち出すと、デュラハムはちらりとファムレイユを見た。

「残念だがそうはいかんね」
「何故です」

 地図から顔を上げたデュラハムは、不敵にも見える笑みを浮かべるとテーブルに手を沿える。

「お貴族様は俺の手並を拝見したいと見える。黙らせるにゃ俺が直接指揮をとるのが一番だろ」
「だからと言って、隊長が王都を留守にするのは問題では──」
「その為の異動なんだよ。シルヴァは俺の知る限りじゃあ最高の教育者だ。ヒューやレオンも、それぞれの隊に所属していた年数は長いしな。実戦の回数だってその分ズバ抜けている」
「……」
「必要なのは知識じゃない、経験だ。あの二人は若いが十二分にそれが備わっている」

 それはファムレイユも良く分かっていた。
 隊は違えど実力を重視する騎士団では、功労者の名前をあちこちで耳にする機会も多い。ヒューは緑雨隊では副隊長補佐を務めていたし、レオンも一兵卒ながら多くの武勇伝を残す猛者である。ファムレイユも、二人の名前を耳にしたのは一度や二度ではない。

「王都に残した奴らは徹底的に鍛えて貰って、任務は俺が完璧にこなす。そうすりゃお貴族様方も、余計な口出しはするまいよ」
「……自信がおありなのですか」
「なけりゃあ、こんな暴挙には出んさ」

 ニヤリと片口角を引き上げて笑うデュラハムに、ファムレイユは半ば諦め混じりの溜め息を溢した。
 今更どうする事も出来ない。何を言っても無駄なのは、黒旗隊に入隊した時に分かっている。

「明日からは余計な事を考えてる暇ぁねぇぞ。早く休め」
「……失礼します」

 話は終りだとでも言うように、デュラハムが指でテーブルを弾く。
 ファムレイユは暫し眉を寄せてはいたが、素直に頭を下げるとテントを後にした。

194王都騎士団【二年前の話・前編】4:2007/01/12(金) 21:30:01 ID:L9z/d8ql

 翌日。
 秋も半ばだと言うのに夏のような日差しが差す中、デュラハムを含めた百人程の部隊は、野盗の出没する山間部へと到着していた。

「北西部にて姿を見掛けたとの報告が。拠点もすぐ近くにあるようです。数は凡そ三十」

 昨日のうちに放った斥候部隊からの報告を告げると、デュラハムは少し眉を持ち上げた。

「弓兵隊を三つに分けろ。三方向から威嚇射撃の後、短槍隊で出て来た奴らを一掃する」
「了解しました」

 デュラハムの言葉に従ってファムレイユが指示を出す。
 デュラハムが煙草を吸い終える頃には、弓兵達は各々持ち場へと向かい、残る短槍兵も命を待つように表情を引き締めていた。

「有能な部下で助かるよ、ゴードンス殿」
「出陣の号をお願いします」

 軽い口調のデュラハムに表情一つ変えずにファムレイユは軽く睨み上げる。
 無駄口を叩いている暇があるならば、早いところ野盗討伐を行って欲しい。内心暑いのは苦手なのだ。
 有無を言わさぬ強い眼差しにデュラハムは苦笑したが、直ぐに「やれやれ」と肩を竦めると、腰に差していた剣を高々と掲げた。

「今より野盗討伐に入る!クレイオン国王の御名に於いて、勝利を得んとせよ!」

195王都騎士団【二年前の話・前編】5:2007/01/12(金) 21:31:04 ID:L9z/d8ql
 野盗とは言っても、その殆んどは隣国から流れてきた難民や仕事を失った傭兵で構成されていたせいか、勝敗は呆気なく決まった。
 数の上でも士気でも、騎士団に敵う筈もない。双方に酷い怪我人が無かったのも、実力の差があっての事だ。
 首領を含めた殆んどの野盗を捕縛し拠点に戻ると、騎士達は帰還に向けて思い思いの時間を過ごしていた。

 そんなファムレイユの元をデュラハムが訪れたのは、陽も落ちきった時刻だった。

「すまんが人払いを頼めるか」

 同じテントに泊まる見習い騎士マリアナ・グレッグをちらりと見る。
 マリアナは物問いたげな視線を寄越したが、ファムレイユが頷くと火の番の様子を見て来ると言って、マントを羽織りテントを後にした。

「すまんな」
「いえ。どうかされたのですか?」

 夜も更けたとあってデュラハムはシャツにズボン、マントのみの軽装で、それはファムレイユも大差ない。
 ただ、討伐の折りに左腕に負傷を負ったので、シャツの袖は捲り上げている。首領を確保する際、抵抗する首領の剣によって傷付けられたのだが、傷自体は浅い。

 神妙な面持ちを見せるデュラハムを不思議に思いながら問掛ける。
 デュラハムは指先で顎の辺りを掻きながら、どう切り出そうかと迷っているようだった。

「何か飲まれますか」
「あぁ」

 一向に用件を告げようとしないデュラハムにファムレイユがそう言うと、デュラハムは手近な椅子に腰を下ろした。
 膝の間で両手を組み、お茶の用意をするファムレイユの背を見つめる。
 その視線を受けながらも、ファムレイユは手際良くお茶を煎れると、カップを一つデュラハムに差し出した。

「お前さん……」

 ファムレイユが向かい合う形で椅子に座ったのを見てデュラハムが口を開く。
 カップに口を付けたままファムレイユがデュラハムを見ると、デュラハムは自分も一口お茶を飲んで続きを口にした。
196王都騎士団【二年前の話・前編】6:2007/01/12(金) 21:32:27 ID:L9z/d8ql
「お前さん、どうして騎士になろうと思った」
「……」

 思わぬ問掛けに、ファムレイユは眉を顰める。
 実力のみを重視する騎士団だからこそ、女性は珍しい存在。
 男尊女卑とまでは行かないが、腕力では女性は男性に敵わない。それ故に、女性が騎士になる事はかなりの覚悟と決意を必要とする事なのだ。

 何度か同じ質問を他の人間からされた事はあるが、デュラハムまでも──と思わずにはいられない。
 ファムレイユの表情にデュラハムは困ったように笑いながら、両手でカップを持ち直した。

「断っとくが、女だからどうのと言い掛かりを付けるつもりはない。純粋に、お前さんの普段の働きぶりを見て、思った事を口にしたまでだ。──何がお前さんをそうさせる」

 穏やかな声音には、いつもの、人をはぐらかすような色はない。ファムレイユは目を伏せ手中のカップを見つめていたが、やがて顔を上げた。

「ニクサス、と言う村をご存じですか」
「……あぁ」
「では、十三年前に起こった事件の事も」
「知っている。人買いの組織がニクサスを拠点にして、子どもを売り飛ばしていた、ってヤツだろ」
「はい」

 デュラハムにとって数少ない、苦い記憶。
 静かに頷くファムレイユを見ながら、デュラハムは記憶の縁に残っていたその事件の事を思い出した。
197王都騎士団【二年前の話・前編】7:2007/01/12(金) 21:33:50 ID:L9z/d8ql
 帝国との国境に程近い北の外れ。ニクサスは、関所も近く越境者で栄えた村だった。
 其処に目を付けたのが大掛りな人身売買の組織である。
 村長を金で抱き込み、領主の目を盗んでは、近隣の街や村から商品とする幼い子どもや女性を拐い、古くから奴隷制度を設けている帝国に売り飛ばしていた。
 人身売買は古くから口減らしの為に、ひっそりと行われていた行為ではあったが、事件性が増しては王国としても黙ってはいられない。幸い良好な関係を築いていた帝国側の協力もあり、騎士団の働きで組織は跡形もなく壊滅となった。

 主に指揮をとっていたのは、斥侯や密偵を主力とする白印隊ではあったが、最終的に壊滅に追い遣ったのはミケロの指揮する黒旗隊であった。
 当時から目を懸けられていたデュラハムは──その時はまだ十人隊隊長だったが──主戦力として現場に駆り出されていた。



「まさかお前さん──」

 ふと思い当たった事にデュラハムが口を開いたが、ファムレイユは微かな笑みを浮かべると、首を左右に振った。

「いえ、隊長が思っておられるような事ではありません。確かに私は当時ニクサスに住んではいましたが、私自身は被害者ではありません」
「じゃあ」
「被害に遭ったのは、私の妹です。当時はまだ八歳でした」

 忌まわしい記憶に変わりはないと言うのに、ファムレイユは笑み顔のまま言葉を続けた。

「妹が帰って来た日の事は、良く覚えています。兵の一人に抱きかかえられ、泣きじゃくっていた妹を、その方は優しい眼差しで見つめていました」
「……」
「そして、出迎えた私達家族にこう言ったんです──」
「──すまなかった、と」

 淡々と話すファムレイユの言葉を遮ったのは、真っ直ぐにファムレイユを見つめるデュラハムだった。
198王都騎士団【二年前の話・前編】8:2007/01/12(金) 21:35:06 ID:L9z/d8ql
 ファムレイユは驚いた様子も見せず、笑みを深めるとお茶を飲み干してカップをテーブルへと戻す。
 パシリと額を叩いたデュラハムは、そのままぐしゃぐしゃと前髪を掻いた。

「まさか……俺のせいだってのか?」

 独り言のように呟くデュラハムだったが、ファムレイユは無言のまま。
 思わず眉根を寄せたデュラハムは、何とも居心地が悪い気がして、ファムレイユから視線を外した。

 助け出せた数は少なくない。それは充分に誉められる事だったが、当時二十三歳だったデュラハムは、己の無力感と不甲斐無さを感じていた。
 助け出せた子どもや女性は、誰もがデュラハム達に感謝をしていたが、それで全てが元通りになる訳ではない。帰らぬ人が居た。その現実は、まだ若いデュラハムにとって酷く重かったのだ。
 幾つかの家に被害者を送り届け、その度に謝罪の言葉を口にする。それで全てが許される訳ではないが、そうするしか出来なかった。
 その一つがファムレイユの家であり、そんなデュラハムを見てファムレイユが騎士を志すきっかけになるとは。
 人生、何処でどうなるやら分からない物である。

「お分かり頂けましたか」
「……あぁ」

 微笑むファムレイユにデュラハムは舌打ちを鳴らした。
 苦い記憶もさる事ながら、ファムレイユの直接の原因が自分にあるなど、デュラハムにしてみれば頭を抱えたくなるような代物だ。
199王都騎士団【二年前の話・前編】9:2007/01/12(金) 21:36:26 ID:L9z/d8ql

「妹を守る。家族を守る。その為に私は騎士になったんです。……その方に憧れ、少しでも近付きたかったと言う気持ちもありますが」

 デュラハムの焦燥感など知らぬ振りで、ファムレイユが席を立つ。
 お茶のお代わりを煎れるファムレイユを視界の隅に捕えながら、手にしたカップの中身が冷めきっているのに気付いて、デュラハムはカップを仰った。

「で、その方に近付いた今はどうだ」

 テーブルにカップを置いたデュラハムが、ファムレイユの背中に問掛ける。
 ファムレイユはお茶を煎れながら振り返らずに、口許に笑みを滲ませた。

「憧れとは、酷く脆く、儚い物ですね」
「……それが現実だ」

 ファムレイユの口調には何処か楽しげな物が含まれてはいたが、素直に取れないのは皮肉が効き過ぎていたせいだろう。
 苦い表情を浮かべたデュラハムは席を立つと、大股で戸口へと向かった。

「邪魔をしたな。腕、自愛しろよ」

 そう言い残してテントを出ようとしたデュラハムだったが、その背にファムレイユの声が掛った。

「隊長」

 振り返ったデュラハムの目に映ったのは、少しはにかんだファムレイユの姿だった。
 日頃のファムレイユからは想像も出来ない表情は、年相応の女性が持つ照れが含まれている。

「現実も……そう、悪くはありません。憧れを抱くより側に遣えていられる方が、私は嬉しいですから」

 一瞬、デュラハムの目が点になったが、ファムレイユはデュラハムに背を向けると、また水場での用事を再開した。

 ──……そりゃ…何か。俺の側に居たいって……。

 そこまで考えたデュラハムは年甲斐もなく頬が熱くなるのを感じ、慌てて思考を遮った。
 「じゃあな」と一言を残し外に出ると、冷たい夜風が頬を刺す。
 見張りとは名ばかりの兵達が、陽気に騒ぐ声が風に乗って届いて来た。

「……全く…一回り下だぞ、相手は」

 しかも今まで意識などした事もない相手だ。
 恋などと言う浮かれた物に自分が一番縁遠いのは、十二分に承知している。

 だが。

「……酒飲んで寝るか」

 ガリガリと頭を掻いたデュラハムの脳裏には、ファムレイユの笑みがしっかりと張り付いていた。

 今夜は眠れそうにもない。
200 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/12(金) 21:38:27 ID:L9z/d8ql
今回はここまで
ナンバリングを間違えてしまいましたが、話は大丈夫かと
次回はエロに持ち込みますので

ファムのツンデレ度が低い気がする…orz
201名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 21:47:14 ID:HXiT0tKq
シーンは無し?
でも、GJ!
202名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 21:58:51 ID:dq7+VxS2
まさか、この二人の馴初編が読めるとは思わなかった。
気になっていただけに嬉しい! 有り難う、続きも楽しみにしてる。
どうやってデューがファムを初床に持ち込むのか今から楽しみだ。
203 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/15(月) 22:41:33 ID:L81ngl63
前後編のつもりだったんですが、思いもよらず長くなってしまったので
途中までですが、投下したいと思います

エロに持ち込むまでが掛り過ぎましたorz
204王都騎士団【二年前の話・中編】1:2007/01/15(月) 22:43:19 ID:L81ngl63
 黒旗隊副隊長であるシルヴァリアは、此処数日隊内に於ける、微妙な雰囲気の変化を感じ取っていた。
 常日頃から──怠惰ではあるが──有能な働きを見せる上官デュラハムが、主な原因である事は分かるのだが、その理由に皆目見当が付かない。
 一回り近い年の差はあるが、古くからの友人として親しいシルヴァリアは、首を捻りながらデュラハムの私室を訪れていた。

「悩みでもあるのか」

 酒を酌み交すには少しばかり早い時刻ではあったが、些細な事と気にする様子もなく、地酒をグラスに注ぎ入れる。
 デュラハムはちらとシルヴァリアを見遣ったが、片目を僅かに細めただけで、何も言わずにグラスを傾けた。

「此処数日のお前の働きに、気味が悪いとゴセックが溢していたぞ」
「……俺が仕事をこなすのが、そんなにおかしいか」
「あぁ、おかしいな。気味が悪いを通り越して、笑える程だ」
「っ。ヒューの野郎め……」

 舌打ちを鳴らす年下の友人を見つめながら、シルヴァリアは顔に笑みを刻んだ。

「先日の野盗の件以来か。何を悩む事がある」
「別に何も。俺ぁいつも通りのつもりだが」
「嘘を言え。いつもなら三日を要する仕事を、二日でこなすなど、お前には有り得ん」

 失礼な事をきっぱりと言い切られるが、デュラハムには返す言葉もない。

 おかしいか、おかしくないか、と訊かれれば、今の自分は相当おかしいだろう。
 頭にちらつく物を消し去ろうと、仕事や酒に没頭しているのだ。
これがおかしくないと言える筈がない。
205王都騎士団【二年前の話・中編】2:2007/01/15(月) 22:44:35 ID:L81ngl63
 薄紅色をしたアルコールを口に含んだシルヴァリアは、最近蓄え始めた顎髭を撫でながら視線を外した。

「まさかとは思うが……女か?」
「ぶっ!!」

 デュラハムは仕事で思い悩むようなタマではない。
 私生活にしても、この年で家族と呼べる人間が居ない以外は、大酒飲みの愛煙家と言う何処にでも居る男だ。多少女癖は悪いが、全て職業婦相手と言う所から見ても、決して悪い男ではない。

 然程考えずとも予想がつく結論を口にすると、デュラハムは口にしたばかりの酒を盛大に吹いた。

「図星か」
「シ、シルヴァ…てめ……」

 あからさまに動揺しきったデュラハムが手の甲で口許を拭う。
 シルヴァリアはにんまりと人の悪い笑みを浮かべながら、顎髭に手を遣ったまま、ギィと椅子を軋ませた。

「惚れた腫れたなど無縁の男だと思っていたが、いやはや中々」
「おい、俺はまだ何も──」

 一人納得したように満足気に笑むシルヴァリアに苦々しい面持ちを向ける。
 二十年来の付き合いを持つこの男に、嘘や言い訳が通用しないのは身に染みているが、だからと言って、おいそれと相談する気にはならない。
 しかしシルヴァリアは、そんなデュラハムの葛藤を見越したかのように、片眉を上げるとアルコールを口にした。

「それだけ動揺しておいて、今更何を言う。娼婦相手に悩むお前でもあるまいし……相手は誰だ?」
「関係ねぇだろ、髭親父」
「髭親父はお互い様だろうが」

 苦々しい面持ちを崩さないデュラハムにシルヴァリアは苦笑する。
 頑なデュラハムの事だ。正攻法で攻めても、口を割る事はないだろう。

「まぁ、別に構いはしないが」
「なら最初から訊くな」
「仕事をこなしてくれるなら、部下としては何ら問題はないが……余り思い詰めると、そのうち爆発するぞ」
「……」

 再びグラスを傾けながら、シルヴァリアが諭す。
 眉間に皺を刻んだままのデュラハムは、手の中のグラスに視線を落とすと、重い溜め息を吐いた。
206王都騎士団【二年前の話・中編】3:2007/01/15(月) 22:45:31 ID:L81ngl63

 そもそも、何故自分が悩む必要があるのか。
 そう自分に問掛けた所で答えは返っては来ない。
 では、今まで一度足りとも意識をした事がないのか、と訊かれれば答えは否だ。
 だがそれは一過性の物で、今回のように持続する程の代物ではなかった。単なる本能の一種と言っても差し支えない。

 ただ言えるのは、あの日、ファムレイユが見せた笑みが、酷く魅力的だと思ったと言う事だけ。

 彼女が黒旗隊に入隊したのは十七歳──デュラハムが二十九歳の時である。
 騎士の数は多く、騎士団内全ての騎士の顔と名前が一致する訳ではない。
 女性騎士は全体的に人数も少ないし、何より黒旗隊にはファムレイユ以外に女性は二人しか居ない。何も彼女だけが特別な訳ではない。
 見習い騎士の頃からを知る彼女に、特別な想いを抱くなど、つい先日まで考えられなかった事だ。

 しかも、たった一度の笑顔だけで。

 ──知った顔相手でも、一目惚れって言うのかねぇ。

 そんな事を考えている自分に気色悪さを覚えるが、胸の中が綻ぶ感触は悪くない。

「いい年した大人が……何やってんだか」

 情けなさ満開で溜め息を吐いて、デュラハムは執務室から覗く窓の外へと視線を遣った。
207王都騎士団【二年前の話・中編】4:2007/01/15(月) 22:47:50 ID:L81ngl63

「団長、最近変じゃない?」

 昼食をとるファムレイユに、そう切り出したのは同僚のヒラリー・クウェンスだった。
 レオンの元で働く彼女はファムレイユの直接の部下ではなかったが、騎士団付属の養成学校で同期と言う事もあってか、休日も共に過ごす程に仲が良い。
 宿舎の食堂はお昼を過ぎているせいか人気も薄く、二人に注意を向ける者はいなかった。

「そうかな?」
「気付いてないの?レオン隊長の話だと朝早くに自主鍛練してるって話よ。ファム、知らない?」
「……初耳」

 ズズとスープを啜るファムレイユの横で、褐色の肌を惜しげもなく晒したヒラリーは、黒く丸い目を細めた。

「ま、あたしは良いけど〜。団長が汗を流すお姿を、近くで見られる機会なんて、そうそうあるモンじゃないし」

 ──普段は物臭だもんね、あの人。

 逞しい男が好きと豪語して止まないヒラリーにとって、常日頃汗を掻く事を嫌う──正確には、そのあとの湯浴みが面倒だと言って憚らない──デュラハムが、汗にまみれる姿は貴重なのだろう。
 浮かれ気分の同僚の言葉に内心呟きを漏らしたファムレイユだが、その言葉はスープと共に喉の奥に流し込んだ。

 変化の理由におおよその察しが付くだけに、下手な事が言えないと言うのも理由の一つではあったが。

208王都騎士団【二年前の話・中編】5:2007/01/15(月) 22:48:41 ID:L81ngl63
 サラダを頬張ったヒラリーを横目で見ながら、ファムレイユはスプーンを置くと、残っていたパンの欠片を口に運んだ。

「仕事をしてくれるなら、私には関係ない話よ。ヒル、こないだの鍛練の報告書、早くヒュー殿に提出してね」

 態と冷ややかな視線を投げ掛けると、ヒラリーは口一杯にサラダを頬張ったまま恨めし気な目付きでファムレイユを見つめた。

「もほ〜、いひあうっ」
「食べるか喋るか、どっちかにしてよ。意地悪じゃなく、上官命令」
「そほ言ふとほろがっ、意地悪だって言うの〜」

 何とか口の中の物を飲み下しヒラリーが唇を尖らせる。
 子ども染みた行動だが、不思議と憎めないのはヒラリーに似合っているせいだろう。
 無言の威圧に近い眼差しを向けたあと席を立つファムレイユを見上げ、ヒラリーは大袈裟に肩を竦めて見せた。

「了解致しました、ゴードンス隊長殿。──そんな堅苦しい事ばっか言ってると、恋人出来ないよ?」
「……生憎、そんな暇は御座いません」

 ピラピラとフォークを揺らすヒラリーに呆れ混じりの溜め息を漏らし、ファムレイユはトレイを手にして返却口へと向かう。
 そんな彼女を見送ったヒラリーは、サクとサラダを突付いて頬杖を突いた。

「良い女なのにね〜。ファムって」

209王都騎士団【二年前の話・中編】6:2007/01/15(月) 22:49:35 ID:L81ngl63

 憧れと現実は違う。
 その差異に気付けば気付く程、ファムレイユは心の中で膨らむ感情に苛立ちを感じていた。

 記憶の中の騎士は礼儀正しく、真摯で、ファムレイユにとっては大きな存在だった。
 しかし現実に直面した今は違う。
 確かに執務をこなす手腕には目を見張る物があるが、それ以外の部分は余りにも酷い。
 酒も煙草も、所構わずと言った風情があるし、夜の街で女性と共に薄暗がりに姿を消すデュラハムの姿を見た、と言う話を耳にしたのも一度や二度ではない。

 なのに。

 ──憎めないのよね……。

 午後の執務を終え自室に戻ったファムレイユは、もう何度となく溢した溜め息を吐いた。

──恋愛は綺麗事だけでは済まない。

 かつてヒラリーが告げた言葉を今になって実感するとは。

 デュラハムに抱いている感情は、最早憧れではない。
 彼の欠点を知った上で、それでも焦れてしまうのだ。
 日頃余り感情を露わにする事がないからか、その事に気付いている者は居なかったが、ファムレイユ自身が気付いているのだ。
 自分に言い訳をしてみても、それは余計に気持ちを確かめるだけにしかならない。

「……下手な事言うんじゃなかった」

 先日、あのテントの中で最後に告げた言葉に嘘はない。
 だからこそ己の軽率さが恨めしい。

 しかし、一度告げてしまった言葉は取り消せない。

 今はただ、時が全てを洗い流してくれるのを待つしかない。

 そう考えたファムレイユだったが、現実は彼女の思いも因らぬ方向へと進んでいた。
210王都騎士団【二年前の話・中編】7:2007/01/15(月) 22:51:22 ID:L81ngl63
 数日後。
 騎士団では盛大な宴が催されていた。
 元々お祭り好きな風潮があるのか、誰もが飲み、歌い、踊る。
 夜が更けてもそれは静まる事はなく、主賓であるファムレイユは一足先に私室へと戻っていた。


 長らく空席だった、黒旗隊副隊長補佐への就任。
寝耳に水とは正にこの事だ。


 元々副隊長補佐は、騎士団内では然程重要な役職ではない。
 隊長、副隊長、隊長補佐の三職で構成される隊が殆んどで、場合に因っては隊長補佐が複数人任命される。
 だが、黒旗隊だけは例外であった。
 騎士団団長を兼任する隊長は多忙を極め、その為、副隊長はしばしば隊長代行を務めねばならない。それ故に副隊長補佐は隊長補佐と同等の能力と責任を要されるのである。
 デュラハムが副隊長を務めていた六年余りの間、その補佐官となる人物はいなかったのだが、それだけデュラハムが有能だったとも言える。
 また、武官でありながら文官と同等の能力を必要とされるので、成り手が少ないのも理由と言えるだろう。

 そんな補佐官に任命されたファムレイユは、就任が決まってからと言う物、胸に不安を抱き続けていた。

 補佐官に任命されると、隊長や副隊長と同じく個別の執務室を与えられ、その隣室は私室として使う事を許される。
 馴染めない私室に戻ったファムレイユは、側遣えの侍女を下がらせると、深い溜め息を吐きながらマントを外した。
 祭典用の礼服から部屋着に着替えベッドに腰を下ろす。
 その間もファムレイユの口から漏れるのは、溜め息ばかりである。

「……何を考えてんのよ、隊長は」

 憎らしいと思うのは、自分を補佐官に任命したデュラハムの事。
 通達の為、騎士団の議会に呼んだデュラハムだったが、その表情は始終堅苦しい物で、いつもの飄々とした雰囲気ではなかった。
 その事が余計にファムレイユの表情を曇らせていたのだが、それよりも補佐官としての責務の方が荷が重い。

 ベッドに腰を下ろしたファムレイユは、尽きぬ溜め息を吐きながら窓の外へと視線を投げた。
211王都騎士団【二年前の話・中編】8:2007/01/15(月) 22:52:37 ID:L81ngl63
外からはまだ、賑やかな声が聞こえている。
 と、それに混じって、不意に扉のノックの音が耳に届いた。

「はい」
「俺だ」
「…隊長?」

 扉を見遣るが開く様子はない。
 重い足取りで扉へと向かったファムレイユは、最後に一つ大きな溜め息を吐くと扉を開いた。

「どうかされましたか」
「いや、ちょいとな」

 一度私室に戻ったのか、デュラハムもシャツにズボンと言った軽装だった。
 こんな時間に、と思いはしたが、それなりに理由があるのだろう。
 言葉を濁すデュラハムを暫し見つめたファムレイユだったが、取り合えず部屋の中へと招き入れた。

「浮かない顔してんな、と思ってな」

 促されるままに椅子に腰を下ろしたデュラハムの言葉に、ファムレイユは眉を寄せながらベッドに腰を下ろした。
 私室は長年使用される事が無かった為、まだ客人を向かえられる程の設備は整っていない。

「誰のせいだと思ってんですか」

 つい咎めるような口調になったが、それが本心だ。
 そっぽを向いたファムレイユの様子に、デュラハムは困ったように頭を掻いたが、直ぐにその手を下ろすとファムレイユに向き直った。

「まぁ、そう言うな。補佐官ってのは、お前さんが考えてる程、辛い職務じゃねぇよ」
「……ですが」
「いや、ホントに。補佐官の責任は全て上官の責任だ」

 いつになく真摯な言葉に、ファムレイユは視線を向けた。
 デュラハムの持つ空気はいつもと同じだったが、その眼は真っ直ぐにファムレイユに向けられていた。

「補佐官ってのはその名の通り上官の補佐が仕事だ。その代わり、補佐を受ける上官は、補佐官の仕事全てに責任を負わなきゃならん」
「……はぁ」
「俺が補佐官を置かなかったのは、他人の尻拭いが出来る器じゃねぇと、俺が判断したからだ。だが俺の補佐ならいざ知らず、お前さんはシルヴァの補佐だ。お前さんの尻拭いが出来ねぇ程、あいつは無能じゃないと思うが?」
「…それは…確かにそうですけど」

 何気に失礼な事を認めているのだが、ファムレイユは気付かない。
 デュラハムは苦笑混じりに笑いながら、ペチと己の頬を叩いた。
212王都騎士団【二年前の話・中編】9:2007/01/15(月) 22:53:44 ID:L81ngl63
「なら、そう思い悩む事もないだろ。シルヴァを信用してやれ。お前さんなら大丈夫だと、太鼓判を押したのはシルヴァなんだ。その責任分ぐらいシルヴァに迷惑を掛けても問題はねぇだろ」

 隊長らしからぬ言葉を紡ぐデュラハムだったが、その言葉は酷く素直にファムレイユの胸に届いた。
 それは長年副隊長を務め、またシルヴァリアを副隊長に任命したデュラハムだからこそ、言える言葉でもある。
 そう気付いたファムレイユは、知らず頬を緩めていた。

「全く…貴方と言う人は……」

 呆れにも似た言葉だったが、笑い含みの呟きにデュラハムは片口端を引き上げた。

「やっと笑ったな」
「……え?」

 思わぬ言葉に、次の瞬間ファムレイユの顔から笑みが消える。
 言われてみれば此処数日、笑みを浮かべる事はなかったのだが、日頃から執務で笑みを見せる事の方が少ない。
 疑問を顔に乗せたファムレイユは、意味が分からずデュラハムの言葉に眉を顰めた。

「そんなに、しかめっ面ばかりでしたか?私」
「いや、そう言う意味でなくてだな」

 ヒラヒラと片手を振ったデュラハムが重い腰を上げ立ち上がる。
 矢張意味が分からずファムレイユは益々眉間に皺を刻んだが、次の瞬間、思考回路が停止した。

 視界が陰ったかと思うと、デュラハムの腕が回される。
 抱き締められていると気付くのに、ファムレイユは暫しの時間を要した。

 起こった事が理解出来ないファムレイユだったが、デュラハムの腕は僅かに力を込めてファムレイユを抱き締めた。

「人が散々悩んでたってぇのに…全く」
「……え?」

 普段よりも格段に近い場所から聞こえる声に、ファムレイユは身動き一つ出来ない。
 大柄なデュラハムにファムレイユはすっぽりと収まる程で、デュラハムが思っているよりも、ファムレイユは小さかった。

「た、たいちょ──」
「好きだっつったら、迷惑か?」

 何とか事態を把握したファムレイユだったが、その声を遮るようにしてデュラハムの腕に力が篭った。
213王都騎士団【二年前の話・中編】10:2007/01/15(月) 22:54:51 ID:L81ngl63
 胸許に押さえ付けられているせいで、デュラハムの声は頭に直接響いてくるようだった。

「情けない話、こないだからお前さんの顔がチラついて堪んねぇんだわ」
「へ?」
「この年になって、恋もへったくれもねぇとは思ったんだがな。……ファムが好きだ。自覚しちまったら、しょうがねぇわ」

 他人事のような軽い口調だが、腕の力は緩まない。
 ついぞ聞いた事のない優しい声音に、ファムレイユは再び硬直した。

 ──好き…って。……え…?……誰が…誰を…?

「え…っと」

 いまだ呆けたような声しか出せないファムレイユは、必死になって思考回路を動かす。
 断片的に聞こえた言葉を繋げ、その意味を理解すると、不意に頬が熱くなった。

「た…いちょう」
「迷惑だってんなら今すぐ離れる。んでもって、この事は忘れろ。俺とお前は、ただの上官と部下だ」
「っ……!」

 頭とは裏腹に口は上手く回らない。
 どう答えるべきかと悩むファムレイユだったが、静かに告げられた言葉は、ファムレイユが思っていた以上に、ファムレイユの胸に突き刺さった。

 ただの上官と部下。

 言われてみれば、確かにその通り。
 今まで抱いていた憧れや密かに焦がれていた想いを別にすれば、デュラハムとファムレイユはそれだけの関係でしかない。
 実際、側から見ていても、それ以上でもそれ以下でもなかったのだが。

「……嫌…です」
「……ファム?」

 その関係を認めると言う事は、今まで抱いていた想いを否定すると言う事。
 気付けばファムレイユは、デュラハムの背に腕を回していた。
214王都騎士団【二年前の話・中編】11:2007/01/15(月) 22:55:57 ID:L81ngl63

「それだけの関係なんて、私は嫌です」

 シャツを握る手に力を込めて、ファムレイユは胸の内に秘めていた想いを必死になって絞り出した。

「……そっか」

 デュラハムの言葉が安堵の色に染まっていたのは、決して気のせいではなかっただろう。

 デュラハム自身も──気にしていたとは言え──別に想いを告げるつもりは無かった。
 しかし、ここ数日塞ぎ込んでいるようにも見えたファムレイユが、僅かとは言え見せた笑みに、半ば衝動的に抱き締めてしまった。
 冗談で済ませてしまえば良かったのかも知れないが、そう出来なかったのは、それだけファムレイユを意識してしまっていたからに他ならない。

 抱き締めた腕の力を緩めたデュラハムは、ファムレイユの顔を覗き込むように少し体を屈めた。
 頬を撫で耳に触れる。
 ファムレイユの頬は熱かったが、デュハムの向ける眼差しをしっかりと捉えていた。

「それは、俺の事が好きだって自惚れても構わねぇんだよな?」
「っ……嫌いなら、今すぐ突き飛ばしてます」

 素直に言葉にしないファムレイユだったが、見せる表情は酷く可愛らしい。
 恥ずかしさのあまり拗ねたような顔付きだったが、デュラハムにとっては充分過ぎる程の答えだった。

215 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/15(月) 22:57:52 ID:L81ngl63
今回は此処まで
明日には後編を投下出来るかと

エロを望んでいた方々、展開がトロくてスミマセン
216名無しさん@ピンキー:2007/01/15(月) 23:03:00 ID:1WEUvsfd
ここは夢一杯のインターネッツですね
217名無しさん@ピンキー:2007/01/15(月) 23:44:06 ID:1oMfBGjT
デュラハムの純情っぷり、GJ(*´д`)b
よくよく考えると、二年間もデュラハムはファムとイチャイチャ
しているのか……この果報者めェ!
218 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/17(水) 01:35:48 ID:FoogOAhJ
遅れましたが後編を投下します

甘々ツンデレ…前回よりはそれらしくなったかと
219王都騎士団【二年前の話・後編】1:2007/01/17(水) 01:37:24 ID:FoogOAhJ
「さて、ゴードンス君」
「……何ですか」

 満足気な表情のデュラハムが芝居掛った口調で問掛ける。
 ファムレイユは依然変わらぬ拗ねた子どものような表情だったが、デュラハムはにんまりと笑い掛けると、ファムレイユの耳元に唇を寄せた。

「お前さんが今座っているのは何処だ?」
「……!」

 ついぞ聞いた事のない声音と紡がれた言葉に、ファムレイユの目が見開かれた。
 態々訊かずとも分かる事を訊く辺り、デュラハムの人の悪さが伺えるのだが、今のファムレイユにはその事に気付ける余裕がない。
 だが、言われた意味を理解するのは簡単で、ファムレイユはパクパクと口を動かした。

「ち、た、たいち──」
「ま、嫌だとは言わせる気はねぇけどな。悠長に構えてられる程、俺はお前さんみたく若くねぇんだ」

 低く意識して艶のある声を出せるのも、年を重ねた賜物であるが故。
 ファムレイユの制止の言葉にも耳を貸さず、デュラハムはファムレイユを押し倒すと、その唇を奪い取った。

 強く吸い上げられファムレイユの手に力が篭る。
 シャツを握られる感触を受けながらも、デュラハムは舌先でファムレイユの歯列をなぞると、更に先へと舌を捻じ込ませた。
 上顎を擦ると、重ねられた唇の隙間からくぐもった声が漏れた。

「ふ、ん…んん…っ」

 舌を絡め吸い上げられて、ファムレイユの頭はぼんやりと霞が掛る。
 苦い筈の舌は触れる度に甘い刺激をファムレイユにもたらす。
 デュラハムの思うがままに口の中を侵されて、ファムレイユの体からは徐々に力が抜けていく。
 やがて唇が離れると、混ざり合った唾液が糸を引いて垂れた。

「た…いちょ…」
「こう言う時は名前で呼ぶもんだ」

 ファムレイユの額に掛る髪を払い、再びデュラハムが唇を落とす。
 頬と言わず瞼と言わず落とされる感触に、ファムレイユがくすぐったさと気恥ずかしさを感じていると、やがてデュラハムの唇は首筋へと移動した。
220王都騎士団【二年前の話・後編】2:2007/01/17(水) 01:38:47 ID:FoogOAhJ
 少し開いた唇の隙間から舌先を這わせ、時折吸い付かれ、ファムレイユの喉が震える。
 力を無くした手がベッドに落ち、デュラハムは指を絡めてその手を握り締めた。

「ファム」

 耳元で名前を呼ばれ、恥ずかしさで顔を背ける。
 そんな姿を愛しく思いながら、デュラハムは首筋を舐め上げる。

 繋いだ手はそのままに、反対側の手がファムレイユのシャツの中へと差し込まれる。
 その感触に強く目を閉じたファムレイユだったが、余計に刺激を意識するだけにしかならない。
 いつもならば胸を押さえる為に巻き付けていた布も、部屋着に着替えた今は無く、デュラハムの手は簡単にファムレイユの胸を捕えた。

「ん、や…あぁ」

 やんわりと、しかし的確な動きでデュラハムの手がファムレイユの熱を高めていく。

 しかし。

 自分ではない誰かを、同じように愛した事がある。

 デュラハムの手が巧みであればある程、その事を思い知らされて、ファムレイユは唇を噛み締めた。

 不意に止んだファムレイユの声に気付き、デュラハムが顔を上げた。

「……そんなに嫌だったか?」

 性急過ぎたか、と不安に駆られたデュラハムだったが、ファムレイユは口を閉ざしたまま、首を左右に振る。繋いだ手もそのままで、振り払う様子はない。
 唐突とも言えるファムレイユの変化に戸惑うデュラハムは、どうする事も出来ずファムレイユを見下ろす。

 その眼差しに耐えきれず、ファムレイユは繋いでいる手に力を込めた。

「……何でもないんです」
「……何でもって…」

 そんな筈はないだろう、と問い詰めたい気持ちに駆られるが、デュラハムはぐっと言葉を飲み込む。
 その気配を察したか、ファムレイユはきゅっと下唇を噛んだ。

「ただ…不安なだけで…」
「不安…?」

 辛抱強く自分を待つデュラハムに、どう言えば良いのか。
 何を言っても傷付けてしまう気がして、ファムレイユは泣きたくなったが、何とかその気持ちを押し込めて、途切れ途切れに呟いた。

「隊長は……女の人を、知ってるから…。…だから……」

 ざわざわと外の喧騒が聞こえる。
 しかし、そんな物はどうでも良い。
 眉根を寄せ固く瞼を閉じたファムレイユの言葉を、脳裏で反芻したデュラハムは、やがてその意味を理解すると、苦い笑みを浮かべながらファムレイユのシャツから手を引いた。
221王都騎士団【二年前の話・後編】3:2007/01/17(水) 01:40:15 ID:FoogOAhJ

「それを言われると、反論しようがねぇんだが」
「……すみません」
「いや。お前さんが謝る事じゃない」

 躊躇いがちに、ファムレイユの頬に唇が落とされる。
 ただ、繋いだ手から伝わる温もりだけに励まされ、デュラハムは何度もファムレイユに口付けた。

「だがな、ファム」

 ポツリと、デュラハムが呟く。
 薄く瞼を開いたファムレイユの目に映ったのは、見知らぬ男の笑みだった。

「俺だって、不安だ」
「……ぇ」

 デュラハムが弱々しい笑みを浮かべる姿など、一度たりとも見た事がない。
 意外な言葉にファムレイユが顔を向けると、その瞼に唇が落とされた。

「まさか十二も離れた女に、本気になるとは思ってなかったからな……。こうしていても、お前さんが他の野郎の方を向くんじゃねぇかって…不安な訳だ」
「……隊長…」

 頬と言わず額と言わず、ついばむような口付けを繰り返しながら告げられて、ファムレイユは息を飲む。
 デュラハムは眉尻を下げた笑みを向けると、そっとファムレイユの頭を抱き、髪に口付けた。

「それからもう一つ」
「……?」
「名前で呼んで貰えねぇのも不安だな」
「あ…」
「俺ばっかり好きなんじゃねぇかってさ」

 くしゃりとファムレイユの髪を乱し、笑い含みの吐息を漏らす。
 自分よりも遥かに年上の筈なのに、そんなデュラハムをファムレイユは可愛いと思った。

「……………デュー…?」

 おずおずと、デュラハムの腕の中で顔を上げ、そっと呟く。
 デュラハムは一瞬、瞬きも忘れてファムレイユを見つめたが、直ぐに頬を緩めるとファムレイユの唇に口付けた。
222王都騎士団【二年前の話・後編】4:2007/01/17(水) 01:41:19 ID:FoogOAhJ
 先程までの激しさは成りを顰め、穏やかで優しいキスが繰り返される。
 その度に、胸の奥にわだかまっていた物が薄れて行く。
 シャツのボタンに手が掛っても、もうファムレイユは辛いとは思わなかった。

 ボタンが外され胸が大きな手に包まれる。
 僅かに反応を始めた頂を指でなぞりながら、胸全体を優しく揉まれ、深まる口付けの隙間から甘い声が漏れる。
 唇を離したデュラハムは、首筋から鎖骨へと唇を滑らせる。強く吸い付くと、白い肌に赤い印が散った。

 一度繋いだ手を離し、体を起こしてデュラハムがシャツを脱ぐ。
 その間にファムレイユも体を起こすと、もそもそと自分のシャツを脱いだ。

 その動きが初々しさを感じさせデュラハムの頬が緩むが、それを告げればファムレイユはまたむくれるに違いない。またあの気まずい雰囲気になっては堪らないと、デュラハムは緩んだ頬を見られぬようにベッドから降りた。
 壁に掲げてある蝋燭を吹き消し、テーブルに残った燭台を手にベッドへと戻る。
 光源は窓からの月明かりとベッドサイドに置いた燭台だけとなったが、薄暗い部屋の中、ファムレイユの肌は白く浮き上がって見えた。

「待った無しな」
「……自信ありません」

 態と明るい声で告げるデュラハムとは違い、ファムレイユは照れ臭いのか、少し唇を尖らせる。
 その様子に益々デュラハムは頬を緩めたが、それを見られる前にファムレイユの腕がデュラハムの体に伸びた。

 秋の夜は肌寒いが、直接触れる互いの熱が心地良い。
 肌の感触を確かめるように撫で、唇で触れる。
 ファムレイユの髪を撫でながら、デュラハムはゆっくりと彼女を横たわらせた。
 どちらからともなく唇を求め、熱を交す。
 伸ばされたファムレイユの手を握り締め、もう片方の手で肌を撫でる。鎖骨の窪みを撫で胸へと下ろすと、頂は固く反応していた。
223王都騎士団【二年前の話・後編】5:2007/01/17(水) 01:42:12 ID:FoogOAhJ
 デュラハムの唇が首筋を沿い、ゆっくりと胸へと降りて行く。
 背骨の辺りがぞわぞわとざわめき、ファムレイユは唇を結ぶ。
 その舌先が頂に触れ、思わず小さく息を飲むと、デュラハムは目を細めて頂を口に含んだ。

「んっ…あ、ああ」

 片方の胸は手で揉まれ、時折頂を摘まれる。デュラハムは舌で頂を転がすと、軽く歯を立て引っ張った。

「やあ、…あんん」
「良い声だな、ファム」
「やだ…言わないで…っ」

 胸の間から顔を上げたデュラハムが楽しそうに笑う。
 薄く目を開けデュラハムを見たファムレイユは、恥ずかしくなって首を左右に振った。

 刺激を与えられる度、ファムレイユの体がピクと反応する。自分でも制御出来ないその体に、ファムレイユは甘い声を漏らしてしまう。
 頂を吸われ、指でこね回され、初めての感覚にファムレイユは息も出来ない。

 やがてデュラハムの手は脇腹を通り腹部へと降り、ファムレイユのズボンに掛けられた。
 部屋着にベルトは必要ない。膝を擦り合わせ微かな抵抗を試みたが、デュラハムはあっさりとボタンを外すと、ファムレイユの腰を抱えズボンをずらした。
 繋いでいた手を離し、下着ごとズボンが下ろされる。
 膝を合わせたせいでスルリとズボンは脱がされて、潤いを見せる秘所が露わになった。

「や…だめぇ…」
「待った無し」

 両手でデュラハムの手を遮ろうとするファムレイユだったが、耳に届くのは楽しげな色を含んだデュラハムの声。
 あらがい様もなく膝を大きく割り開かれ、その間に体を滑り込ませたデュラハムは、腹部に顔を近付けた。
224王都騎士団【二年前の話・後編】6:2007/01/17(水) 01:43:31 ID:FoogOAhJ
 腹部にから恥丘、足の付け根を通って太股へと、デュラハムの唇が滑らされる。
 日頃の鍛練の賜物かファムレイユの体は引き締まってはいたが、女性特有の柔らかさがデュラハムの手に心地良い。
 絹に触れるように内股を撫で、ふくらはぎを持ち上げると、僅かな灯りの下でもファムレイユの秘所が潤いを帯びているのが見て取れた。

「や、やだぁ…隊長っ…」

 恥ずかしさの余り両手で顔を覆うファムレイユだったが、デュラハムは楽しそうに笑むだけで、持ち上げた足に唇を這わせる。
 柔らかな噛み痕をふくらはぎへと残し、くるぶしから甲、指の間までを攻められ、その度にファムレイユの喉がひくひくと震える。

「や…ああ、んっ」

 ぴちゃぴちゃと態と音を立てるデュラハムは、指をしゃぶるとまた唇を滑らせる。
 薄い内太股に赤い印を付けると、必死になって閉じようとしていた、もう片方の足を持ち上げて、矢張同じように丹念に舐めて行く。

 食べられるような錯覚に、ファムレイユの視界は滲みを見せ、抑え切れない声が手の隙間から耐えず漏れる。

 左右に首を振る仕草は子どものようだったが、同時に酷く煽情的で、デュラハムは目を細めるとそっと肉芽に指を伸ばした。
 茂みの奥で膨らみを見せる肉芽に触れると、ファムレイユの口から一際高い声が漏れる。
 更にいたずらに転がしながら、足を下ろしたデュラハムは、割り開いた足の隙間に居場所を定めて、そっと肉芽に吸い付いた。

「やぁ…あああ…っ」

 ぴったりと閉じた花びらを指でなぞる。
 湿り気を帯びた其処を開くと、粘ついた蜜がデュラハムの指に絡み付く。
 何度か上下に指を滑らせ、その度にファムレイユの口から矯声が漏れるが、顔を覆う手は外れない。

「ファム、顔見せろよ」
「っ…やだ、あぁ…」

 頑に拒むのは恥ずかしさからか。
 漏れ出る声すらも抑え付けるように、ファムレイユは唇を噛んだが、デュラハムから与えられる刺激にそれも敵わない。
 秘所をなぞる指をゆっくりと胎内へと沈めると、ざらりとした肉壁が指を吐き出すように収縮した。

「狭そうだな、ここ」

 態と意地悪く笑いながら肉壁を擦る。
 ファムレイユは喉を震わせたが、憎まれ口を叩く余裕もない。
225王都騎士団【二年前の話・後編】7:2007/01/17(水) 01:44:35 ID:FoogOAhJ
 再び肉芽に唇を寄せ、舌先で弄びながら指を埋める。
 肉芽を唇で挟み吸い上げると、それに呼応するかのように肉壁が蠢めいた。

 じゅぷじゅぷと指の動きに併せ水音が二人の耳を打つ。それに混じって名前を呼ばれた気がして、デュラハムは指の動きを止めて顔を上げた。

「……デュー」

 蜜にまみれた指を舐めながらファムレイユに顔を近付ける。
 何処か嬉しそうに見える笑み顔に、ファムレイユは益々恥ずかしさを感じたが、デュラハムの首筋に腕を回すと、耳元に唇を寄せた。

「もう…良いから…」

 抱きつくファムレイユの言葉の意図する事が分かり、デュラハムは笑い含みの吐息を漏らす。
 唾液と蜜にまみれた指でファムレイユの頬を撫でたデュラハムは、軽く口付けるともう片方の手で己のズボンを脱ぎ捨てた。

「初めて…だよな?」

 念のため。
 そうであって欲しいと望むデュラハムの期待を裏切らず、抱きつくファムレイユが小さく頷く。
 張り詰めた欲望を制御しなければならないのは残念だが、それよりもファムレイユの最初の──そして出来る物なら最後の──男である方が嬉しかった。

「力、抜いとけよ」
「…ん」

 質量を増した肉棒に手を沿えながら、ファムレイユの入り口にそれを這わせる。
 熱くぬめった蜜を絡めるように、二度三度秘所を擦ると、ファムレイユの体がひくりと跳ねた。

「止めて欲しくなったら、いつでも言って構わねぇから」
「……ん」

 期待。喜び。不安。
 それらが入り混じりファムレイユの腕に力が篭る。
 デュラハムはファムレイユの額に唇を落とすと、ゆっくりと胎内に体を沈めた。

「っ……んんっ」

 途端、ファムレイユの眉間に皺が寄る。
 異質な物を吐き出そうと肉壁は収縮を繰り返し、デュラハムの肉棒に圧力が掛る。
 思っていたよりも狭い胎内にデュラハムは熱い吐息を吐いたが、動きを止めようとはしなかった。
226王都騎士団【二年前の話・後編】8:2007/01/17(水) 01:46:10 ID:FoogOAhJ
 ファムレイユも、唇を噛み締めデュラハムにしがみつく腕に力を込める。
 文字通り身を裂かれるような痛みだったが、不思議と止めて欲しいとは思わなかった。

 苦渋の色に染まったファムレイユの顔を見下ろして、デュラハムは口付けを繰り返す。
 感じる刺激は心地良く、快楽と呼んでも良いのだが、反面、滅茶苦茶に壊してしまいたいと言う欲望に駆られるのだが、その欲望を抑え付ける。
 デュラハムはファムレイユを気遣うように髪を撫で、なるべくゆっくりと体を進めた。

「っ…入った…」
「う、…ん」

 やがて、熱い胎内に包み込まれデュラハムが息を吐いた。
 しっかりとしがみついたファムレイユは、荒い呼吸を繰り返している。

 鈍痛と鋭い痛みが断続的にファムレイユを襲うが、それは決して苦痛ではない。
 痛みすらも喜びになるのだと、ぼんやりとした頭で考えながら、ファムレイユは落とされる唇に応える。

 暫し抱き合い熱を確かめる。
 回された腕の心地良さと全身を包むデュラハムの匂いに、ファムレイユは何故か泣きたくなった。

「…デュー…?」
「ん?」
「……もう、良いから…」

 収縮を繰り返す胎内では、デュラハムの欲望が今か今かと時を待つ。
 それを察していた訳ではないが、顔を上げたファムレイユが小さな声で呟いた。

「……デューが気持ち良かったら…嬉しいから」
227王都騎士団【二年前の話・後編】9:2007/01/17(水) 01:47:24 ID:FoogOAhJ
 目を伏せたまま告げた言葉に、デュラハムの目が見開かれる。
 表情の変化に気付き、ファムレイユは不思議そうに眉を下げたが、デュラハムは抱き締める腕に力を込めると、ファムレイユの肩に顔を埋めた。

「お前さん…そう言う事言っちゃ駄目だろ。人が我慢してんの、台無しじゃねぇか」
「…え」

 肩に噛みつかれ甘い痺れが首筋に昇る。
 顔を上げたデュラハムの表情は、困惑混じりの笑み満たされていた。

「無自覚ってぇのがタチ悪ぃな、ホント」
「え…えっと…」
「まぁ、良いけど。…もう、止めらんねぇからな」

 訳が分からず戸惑うファムレイユだったが、デュラハムは抱き締めた腕に力を込めて、ゆっくりと抽挿を開始した。

「うぁ…あ、ああっ」

 ずるりと体の中が引きずり出されたかと思うと、固い異物が内臓をえぐる。
 その感覚は決して気持ちの良い物ではなかったが、それは確かに快感と呼べた。

 痛みと共に繰り返される不思議な感覚。
 息吐く暇も無い動きに、ファムレイユは呼吸を荒げ、デュラハムの存在を確かめる為に、回した腕に力を込める。
 デュラハムも熱く纏わりつく肉壁に頭の芯が熱くなるのを感じながら、腕の中のファムレイユの存在に意識を集中させた。

 ゆっくりとした律動は徐々に早さを増してファムレイユの体を揺らす。
 動きに併せ喉を震わせるファムレイユは、薄く目を開けてデュラハムを見上げた。
 引き締まった筋肉や、額に浮かぶ汗や、皺の刻まれた眉間や、そう言った全ての物がファムレイユに刻まれる。
 いつの日かこの行為が快楽を得るようになったとしても、これは決して忘れないだろう。

「っ…ファム、もう…」
「う、ん…っ」

 軋むベッドの音に混じり、デュラハムがファムレイユの名前を呼ぶ。
 痛みが収まる事はなかったが、それ以上の幸福を感じていたファムレイユが頷くと、デュラハムは胎内から肉棒を引き抜き、ファムレイユの腹へと熱い欲望を撒き散らした。

228王都騎士団【二年前の話・後編】10:2007/01/17(水) 01:48:31 ID:FoogOAhJ


 破瓜の血量は然程酷くはなかったが、蜜に混じり点々とシーツに染みを作っていた。
 体に毛布を巻き付けて椅子に座るファムレイユの前で、デュラハムはシーツを引き剥がすと、その様を見て眉を下げた。

「どう説明すっかな…」

 側遣えの侍女に対してだろう。不自然な染みは明らかに情交の痕を残しており、怪しまれないのは難しい。
 しかしデュラハムは、直ぐに考えるのを止めたように、シーツをぐしゃぐしゃと丸めると、床にそれを放り出した。

「ま、良いか。俺のモンでもねぇしな」
「隊長!」

 まるっきり他人事のような口振りで言われ、ファムレイユの眉が寄せられる。
 振り返ったデュラハムは、いまだ体の痛みで身動きの出来ないファムレイユを見ると、人の悪い笑みを見せた。

「お前さんなら大丈夫だろ。怪しまれない言い訳を期待してるぜ」
「……誰のせいだと思ってるんですかっ!」
「そう怒りなさんな。お前さんだって、気持ち良さそうにあえいでたじゃねぇか」
「く…っ!」

 憎らしさと恥ずかしさでファムレイユの頬が真っ赤に染まる。
 歩み寄ったデュラハムは毛布ごとファムレイユを抱き締めると、耳に口付けて囁いた。

「好きだっつってくれたら、俺が責任とっても構わねぇけどな」
「…っ!?」

 言われてみれば、自分は一言足りとも言葉にしていない。
 其処を突かれては返す言葉もなく、ファムレイユは恨めし気にデュラハムを睨み付けた。

「まぁ、何年でも待つけど。気は長い方なんでな」
「……死ぬまで待ってて下さい」

 悔し紛れに憎まれ口を叩いたファムレイユに喉の奥で笑いを殺し、デュラハムは回した腕に力を込めた。


229 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/17(水) 01:51:17 ID:FoogOAhJ
以上です

長くなってしまいましたが、これにて終了
前回感想を頂いた方々、有り難う御座いました
230名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 07:08:21 ID:f6jFmXdc
GJ!!!!
続き楽しみにしておりました。
ファム可愛すぎ!!
この二人の話もっと読みたい…。
231名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 07:24:08 ID:4ysu8ict
こじろう死ねorzバシバシ
ttp://www.livly.com/mypage.php?uid=28Yz&s=5
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● 名 前 ふ み (女性)
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● 名 前 なんちゃって 美弥 (女性)
現住所 宮崎県
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● 名 前 ☆ どさ兄 ☆ (男性)
現住所 北海道上川郡
誕生日 10月11日
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● 名 前 田頭 隆司 (男性)
現住所 大阪府大阪市
誕生日 10月13日
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● 名 前 ゆに☆彡 多代 (女性)
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● 名 前 こ じろう (男性)
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● 名 前 にこ りん坊 (女性)
現住所 埼玉県
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● 名 前 とう ちゃん (男性)
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232名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 17:32:49 ID:3wU6Si9L
ファムかわいいよファム
超GJ!
233名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 22:38:46 ID:FPn4Twm0
ここの保管庫ってないの?
234名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 23:25:39 ID:i2N9K9vB
姉妹スレの保管庫はあるが……、管理人さんお忙しいようだしなあ
235名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 00:55:10 ID:d+KrZEpX
このスレ、会社の先輩後輩みたいな作品はスレ違いかな?
236名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 08:30:42 ID:0EIiS/Sh
微妙だな。

上下関係もある意味主従とはいえ、先輩後輩っつー上下関係はちょっと違う気もするだ。

ただ例えばの話、学生時代は先輩後輩で、今は社長とその秘書とかならセーフかも。
237名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 12:31:44 ID:d+KrZEpX
ありがとう
もう少しスレを探してみるよ
238名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 18:15:05 ID:HQwJRjR/
>>234トンクス
そうなんだよ。姉妹スレの保管庫更新されてないんだよね。
良作があるからまとめサイトがあるとよいとオモたが。
239名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 19:42:39 ID:hgDt4lOc
wikiだと一人の負担がかからなくていいんだけど
どこかいいアダルト鯖ないかなぁ……。
240名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 19:43:52 ID:hgDt4lOc
ごめん。連投しちゃうけどlivedoor wikiにアダルトカテゴリがあるわ…。作ってみる
241名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 20:17:51 ID:HQwJRjR/
>>240
うぉっ!
ネ申よ。
242240:2007/01/19(金) 20:50:30 ID:hgDt4lOc
http://wiki.livedoor.jp/slavematome/d/
たてますた。ルールやtopページは追々。
姉妹スレと共同のwikiにする予定だけどそれでもいいよね?
243名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 21:56:58 ID:hBEPa53X
>240
乙です。

姉妹スレの方はどうなんだろうね。
関連ssとかもあるし、あっちの2スレ目が保管庫に全然収納されてないみたいだから、
自分はいいと思うんだけど、あっちの人にも聞いてみたら?
244240:2007/01/20(土) 11:53:27 ID:lpRsAFeD
姉妹スレからのおkでますた。

ので、これからwikiのtopだけ作ってきます。
245名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 14:03:17 ID:z2uKW7MF
>>244
乙!
応援汁!
246名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 00:36:23 ID:BAm0DJxi
保管庫の人乙!

さて、新作期待age
247名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 06:25:47 ID:C8Nyao0G
ベタベタな関係の電波受信しちまった
248名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 08:35:33 ID:QkPHDYLD
>>247
ぜひ送信してくれ
249 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/25(木) 16:19:37 ID:su4KWZlL
保守代わりにデュー×ファムを
またもエロ無しでごめんなさい
250王都騎士団 【風邪っぴき】1:2007/01/25(木) 16:22:22 ID:su4KWZlL
 ベッドの中で、ファムレイユはひっそりと溜め息を吐いた。
 昨日からどうにも体調が優れず、執務に向かえば上官であるシルヴァリアにあっさりと看破され、抵抗も虚しく私室へと強制送還。
 加えて現在はシルヴァリアが隊長代行を務めている現状。代行を任せたデュラハムはと言うと、隊長補佐のヒューを含めた数人を供に、
十日程前から王都から離れた公領地での祭典に出席している。帰還は明日の予定だが、それまでにシルヴァリアの仕事が片付くかどうかも
怪しい。
 デュラハムが真面目に執務をこなしていれば、シルヴァリアの仕事も然程の量ではなかったのだが。
 医師の診断では軽い風邪。
 根が真面目なだけに、忙しい時に病に臥せってしまった、自己管理不足が情けなかった。

 ベッドに臥せり二度目の夕刻。
 側遣えの侍女はあれこれと世話を焼いてくれるのだが、寝ているだけの自分を相手に、然程仕事があるとも思えない。薬を飲んでうつら
うつらするだけのファムレイユは、早々に侍女を下がらせた。
 窓から差し込む西日が目に痛い。室内は茜色に染まり、外からは鍛練を終えた騎士達の賑やかな声が聞こえている。

 レオンに鍛練の指示をし、シルヴァリアの報告書を貴族評議会に提出。
 そんな明日の予定を鈍い頭で考えながら、ファムレイユは微睡みに身を委ねた。
251王都騎士団 【風邪っぴき】2:2007/01/25(木) 16:23:52 ID:su4KWZlL

 寝ては起き、起きては寝て。
 ふと気付くと、窓の外はもう真っ暗で、空には星が瞬いている。
 酷く喉が乾いている事に気付き体を起こすと、ベッドサイドに置かれてある水差しからグラスへと水を注ぎ、一息に飲み干す。
 薬が効いているのか熱っぽさは昨日よりは下がり、気怠さも然程酷くはない。もう一眠りすれば、朝にはそれもなくなっているだろう。
 僅かに汗ばんだ夜着が疎ましいが、着替えるのも億劫で、ファムレイユは再び布団の中へと潜り込んだ。
 目を閉じるが、そう睡魔が訪れる筈もなく。
 寝返りを打ったファムレイユの耳に、微かにノックの音が届いたのは、それから間もなくの事だった。

 扉を見つめるが物音はない。しかし人の気配は微かにだが感じる。
 私室の扉は一つしかなく、続くのは執務室のみ。何かの間違い、などと言う事もないだろう。

「誰…?」

 僅かに体を起こしたファムレイユは、ベッドサイドの引き出しに手を掛けながら口を開く。
 中には短刀が入っている。いつ何時、賊が訪れるとも知れないからだ。

 しかし返ってきた答えは、意外な人物の物だった。

「俺だ」
「! …隊長?」

 まさかと思いながらも、扉が開かれる。
 礼服姿のデュラハムは、マントすらも身に着けたままで、部屋に入ると微笑んで見せた。

「起こしたか?」
「いえ。…ですが何故」

 当然の疑問だ。
 デュラハムの帰還は明日の昼過ぎ。こんな──少なくとも夜半に帰って来るなど、予想外にも程がある。
 しかしデュラハムは、マントを外すと備え付けの椅子に掛け、大股でベッドへと歩み寄った。

「シルヴァからの連絡でな。お前さんが風邪をひいったっつーから。先に馬を飛ばして来た」
「祭典は?」
「執務にゃ支障ねぇ。今日──もう昨日か。無事終らせて来たよ。まぁ、そのせいで、こんな時間になっちまったがな」

252王都騎士団 【風邪っぴき】3:2007/01/25(木) 16:25:37 ID:su4KWZlL
 ファムレイユの髪を撫でながらデュラハムがベッドに腰を下ろす。
 意外な成り行きにいまだ目を瞬かせているファムレイユに、デュラハムは小さく笑い掛けた。

「体調は?」
「あ…いえ。…明日には執務に掛かれるかと…」
「そうか。最近お前さん、休み無しだったからな。……今の仕事が終わったら、暫く休みにするか」

 デュラハムの声は酷く優しい。
 眼差しも、手も、ファムレイユを慈しんでいるかのようで、ファムレイユは思わず頬を赤らめる。
 日頃は勝手気儘な男なだけに、こうも優しくされると調子が狂ってしまう。
 柄にもなく、素直になりそうな自分に気付き、ファムレイユは唇を噛んだ。

「……隊長」
「ん? ──っと」

 恥ずかしさがない訳ではない。
 しかし、この胸の内に溢れた想いは手に余る。
 意を決して──と言うと大袈裟だが、ファムレイユにしてみればかなりの覚悟を決めて──デュラハムに寄り添うと、デュラハムは驚い
たようにファムレイユを見下ろしたが、直ぐにふんわりとファムレイユを抱き締めた。

「どうしたよ」
「いえ……何と無く」

 いつもとは違うファムレイユの様子に、デュラハムは苦い笑みを浮かべる。問掛けても、拗ねたような物言いで、デュラハムは笑みを深
めた。

 いつものようにからかおうか、と思いもするが。まぁ良いか、と思い直す気持ちもない訳ではない。
 結局は後者の思いに従って、デュラハムはぽすぽすとファムレイユの頭を撫でた。

 それが益々ファムレイユの混乱を冗長させる。

 自分の為に、態々馬を飛ばして来たデュラハムの好意は嬉しい。それを素直に受け止めると、今度はその胸に体を預けたいと思ってしま
った。
 そうなったらなったで、更にデュラハムは優しく自分を包み込む。いつものように──例えば、冗談混じりに「寂しかったのか」と問わ
れれば、彼を張り倒して布団に潜り込める物を。

 なのに今、自分の想いとは裏腹に、デュラハムはただただ優しい。
 それが物足りないと思ってしまう自分にファムレイユは戸惑う。

253王都騎士団 【風邪っぴき】4:2007/01/25(木) 16:26:57 ID:su4KWZlL

 だが、いつまでも沈黙を続けていられる筈もなく。
 先に口を開いたのは、現状を楽しんでいたデュラハムではなく、混乱を抱えたままのファムレイユだった。

「あの……」
「何だ」
「あとの事は…」

 こんな時でも仕事の話しか思い浮かばない自分が憎らしいが、そうでもないと余計な事を口走ってしまいそうだ。
 僅かに視線だけでデュラハムを見上げると、デュラハムはファムレイユを撫でたまま笑みを浮かべた。

「ヒューに任せて来た。嫌味も言われたな。『そんなにゴードンスが心配なら、騎士などお辞めになられては如何ですか』って」
「ヒュー殿が?」
「まぁ本心じゃねぇだろう。満面の笑みを向けやがったからな、あの野郎」

 デュラハムが勝てない人物は世の中に三人居る。
 想い人であるファムレイユと二十年来の友人であるシルヴァリア、そして補佐官のヒュー。
 冷静で氷の心を持つとあだ名されるヒューだが、根はなかなかにお茶目な人物である。二人の事を知りながら、それをネタにデュラハム
の尻を叩くのが日課となっている男の事だ。その嫌味も、ファムレイユに向けた物ではない事は、充分に想像が出来る。

 デュラハムの腕の中で思わずくすくすと笑いを溢すと、デュラハムは困ったように眉を寄せて、ファムレイユを見下ろした。

「笑い事じゃねぇっての。お前さんのせいだろ」
「帰還を決めたのは隊長御自身ですよ? ……知らせたシルヴァ副隊長にも、多少の責任はあるかも知れませんけど」
「……お前さん、日に日に図太くなってないか?」
「良い見本が目の前にいますから」

 態と人の悪い笑みを向けると、デュラハムは大袈裟とも思える落胆の溜め息を吐いた。
254王都騎士団 【風邪っぴき】5:2007/01/25(木) 16:28:34 ID:su4KWZlL
 その様子が可笑しくて、ファムレイユは益々肩を震わせる。

 我ながら情けないと思わないでもなかったが、デュラハムは抱き締める腕に力を込めると、そのままファムレイユをベッドに押し倒した。

「っ!?」
「あんま笑うな」

 不意の出来事に目を丸くしたファムレイユを軽く睨みつけ、唇を落とす。
 僅かに乾燥している唇を舌で舐めると、デュラハムの腕の中でファムレイユが身じろぎした。
 舌を侵入させる事はせず、カサカサになっていた唇を丹念に舐める。
 口を引き結んだファムレイユは、強く目を閉じるとデュラハムの服を握り締めた。

「んっ…んん」

 ゆっくりと時間を掛けて唇を舐め、顔を上げる。
 口付けた訳でもないのにファムレイユの顔が蒸気しているのは、呼吸も止めていたせいだろう。
 そんな姿に、引き出しにしまった筈の悪戯心がデュラハムの中で首をもたげた。

「あ、あの」
「ん?」
「その……」

 何か言いたげな唇に舌を差し出す。ペロリと舐めるとファムレイユは反射的に目を閉じたが、直ぐに瞼を開くと口の中でごにょごにょと
呟いた。

「あの…風邪が……うつるので」

 だから、行為を止めて欲しい。
 いつものファムレイユならばきっぱりと告げたに違いないが、今日は矢張様子がおかしい。
 見下ろすデュラハムの眼差しに耐えきれず、視線を外したファムレイユは、服を掴む手に力を込めた。

「……だから…その…」

 言い淀む姿が可愛らしい。
 唐突に体を寄せられた時は驚きもしたが、病気のせいで心細さもあったのだろう。
 そんな風に思うデュラハムの考えは、あながち間違いではなかった。
255王都騎士団 【風邪っぴき】6:2007/01/25(木) 16:29:55 ID:su4KWZlL

 はっきりと言葉に出来ないもどかしさはある物の、ファムレイユの中を占めるのは、もう少しだけ側に居て欲しいと言う想い。
 同じ隊とは言え、そう毎日毎日顔を合わせていた訳ではないのだから、十日程度の別れは大した事はないのだが。
 病気での心細さが無かったと言えば嘘になる。
 それに加えデュラハムの優しさが、ファムレイユの調子を狂わせている事も否めない。

 もう少しだけ。

 控え目と言えなくもないが、自分がデュラハムに対して執着心を持っている事自体、ファムレイユにとっては大きな出来事だ。
 いつもなら素直になる事すら難しいが、今のデュラハムならば、少しぐらいの我が儘も許されるような気がして、ファムレイユはそっと
デュラハムの口端に口付けた。

「っ!?」
「続きは…次回と言う事で…」

 だから、恥ずかしさの余りデュラハムの肩に顔を埋めたファムレイユは、デュラハムの表情の変化に気付かなかった。

 不意打ちを食らわせるのは自分ばかりだと考えていたデュラハムだけに、ファムレイユの行動は動揺を呼び起こす。
 言われた意味もさる事ながら、今までどれだけデュラハムが望んでも頬に口付け一つ落とさなかったファムレイユが──僅かに唇を外し
ていたとは言え──自分の意思で口付けたのだ。
 芽生えたばかりの悪戯心はあっと言う間に霧散して、デュラハムは心底動揺していた。

256王都騎士団 【風邪っぴき】7:2007/01/25(木) 16:31:50 ID:su4KWZlL

 徐々に思考が繋がり始め、次に思うのは告げられた言葉。
 デュラハムにしてみても、態々馬を飛ばして来たのはファムレイユを純粋に心配しての事だったし、病み上がりの彼女を相手に無理を強
いるつもりはなかった。

 もっとも場合に因っては、性欲と悪戯心に負けて事に及んだ可能性も皆無ではないが。
 それはそれで良しと気楽に構えていた辺り、デュラハムの気性が伺える。

 それはさておき。
 ファムレイユと事を構える仲になって早半年。今まで抱いた数は両手の指に足りるかどうか。
 全てはファムレイユの性格故なのだが、それを今更言っても始まらない。職業婦を相手にする事はなかったが、一度その味を知ってしま
ったデュラハムが、悶々と夜を過ごした事は少なくない。
 そして今まで、ファムレイユから次の約束を取りつけた事も一度足りとてない。
 私室を訪れるのは決まって我慢に耐えきれなくなったデュラハムばかりだったし、事が終れば早々にファムレイユに部屋から追い出され
た事もある。

 ──……どう言う心境の変化だ…此奴。

 恥ずかしそうに顔を埋めるファムレイユを見つめ思うも、猜疑心は欠片もない。
 狂言や嘘を嫌う性格を熟知しているからこそ、驚きが隠せないのだ。

 ちなみに、自分の行動がファムレイユを変えている、などと言う考えは毛頭ない。

 しかし。

 ──まぁ良いか。

 直ぐに思考を切り替えられるのも、デュラハムの長所と言えば長所だろう。
 いつまでも戸惑っていても仕方がないし、ファムレイユが次を望むのならば、自分は純粋にそれを喜べば良いだけの話。ここで申し出を
断れば、禁欲生活を強いられるのは目に見えている。

 一人頭の中で結論付けたデュラハムは、頬を緩めるとぐしゃぐしゃとファムレイユの頭を撫でた。

「分かった。楽しみにしとく」
257王都騎士団 【風邪っぴき】8:2007/01/25(木) 16:34:02 ID:su4KWZlL
 デュラハムの言葉にファムレイユは息を吐く。
 内心どんな答えが返ってくるのかと不安でいっぱいだったのだが。デュラハムが約束を手違た事はない。
 ファムレイユはデュラハムの肩から顔を上げると、服を掴んでいた手を離した。

「じゃあ…」
「けど、このまんま戻るってのもな」
「………え?」

 コン、と何かが床に落ちた音がする。
 何が起こっているのか分からないファムレイユだったが、デュラハムは心底嬉しそうに笑うとファムレイユの額に口付けた。

「何もしねぇから、構わないだろ?」
「……へ?」

 先程よりも間抜けな声を出すファムレイユを尻目に、デュラハムはもそもそと布団に潜り込む。
 堅苦しい礼服の上着を脱ぎ捨て床に落とし、ついでにベルトも緩めて放り投げる。

 先程の音はブーツの音か、などとファムレイユの頭の片隅で冷静に呟くもう一人の自分が居たが、ベッドに横たわるファムレイユはそれ
どころではない。

「た、隊長!?」
「一人寝は寂しくてなぁ。……たまにゃ、こう言うのも悪かないだろ」

 思わず硬直するファムレイユだったが、デュラハムはファムレイユの頭と枕の間に枕を差し込み、彼女の背中をあやすように優しく叩く。
 その心地好さと僅かな汗と日の匂いに包まれ、ファムレイユは目を閉じ、そろそろとデュラハムの腰に手を回した。

「……本当に、何もしませんよね?」
「あぁ」
「絶対?」
「約束する」

 疑っている訳ではないが、何度も訊いてしまうのは照れ隠しだ。
 デュラハムもそれを分かっているのか、微かな笑みを浮かべて目を閉じる。
 ファムレイユは少し腕に力を込めると、ぴったりとデュラハムに寄り添った。
 心音と暖かさがゆっくりと睡魔をもたらして来る。

「……おやすみなさい」
「おやすみ、ファム」

 ファムレイユの髪に口付けたデュラハムは、そっと目を開けると腕の中の様子を伺った。
 安心したように目を閉じるファムレイユの姿を確認し、自分もじわじわと訪れる睡魔に身を委ねる。

 朝になれば侍女に見付かるかも知れない。だが、それはその時考えれば良いだろう。
 戻って来ていると分かれば、シルヴァリアに執務を任されもするだろうが、それもこの際忘れてしまおう。

 ただ今は、腕の中の彼女だけに想いを馳せ、デュラハムはゆっくりと眠りに就いた。
258 ◆KK1/GhBRzM :2007/01/25(木) 16:35:26 ID:su4KWZlL
今回はこれにて

書くたびにバカップル度数が増してますねorz
259名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:11:31 ID:E4jarF2f
……GJ! !
ファムかわいいよーぉ
260名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:28:40 ID:9dpnD5Pt
この甘さがたまらないw
GJ!!
261名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 21:30:40 ID:mT5FE4/r
姉妹スレから来た。すごいいい話...楽しみだ!
262名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 23:47:21 ID:J5tvP5IO
お、ひさしぶりに覗いてみれば新作がきてるじゃないか。
このスレの話はどれもいい。他のも新作が読みたい。
263名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 13:45:18 ID:qQfMFgIR
国王陛下と側近。
短いけれど保守代わりにさわりだけ投下する。
264陛下と側近:2007/02/01(木) 13:46:50 ID:qQfMFgIR
陶器のように白い肌、深い色をした黒髪は緩く波打ち、澄んだ切れ長の瞳は蒼く輝く。
眼差しは常に物憂げで、怠惰な印象を抱かせる。
けれど、真正面から蒼眸に射抜かれてしまえば人は皆その美しさに魅了される。
人在らざる者と称されるのはその美貌と国一つ滅ぼしてなお表情を変えぬ冷酷さからだ。
美貌の国王陛下が紫煙をくゆらせる様を眺め、神という者が居たならばそれは恐ろしく気まぐれなものだろうと考える。
すべてを手にした彼は神に愛されているのか、はたまた疎まれているのか。
なぜあんなにもすべてにおいて無関心でいられるのだろう。
少女は国王に気づかれぬ程度に小さく溜め息をこぼす。
少女の名はシルヴァリア・イルマ。
父は先々王、先王の側近として仕えていた。
晩婚な上に男子に恵まれなかった父により、少女は幼い頃より世継ぎとなるべく男子さながらに厳しく育てられた。
数ヶ月前に前国王が退位するとともに父も隠居し、少女は僅か十八で家督を継ぐこととなった。
そして、家督を継いだ報告の為に謁見した際に現国王から側近く仕えることを許された。
噂には聞いていたが、実際に国王を目にした時はその美しさに言葉をなくしたものだ。
今でもシルヴァリアは国王の美しさに慣れない。
蒼い瞳がシルヴァリアを映し出せば赤面し、低い艶めいた声が名を呼べば体が震える。
だから、シルヴァリアは女性であることを意識せぬように心がけた。
長かった髪を切り、ドレスの類は一切身につけない。
国王の側に仕える際も適度な距離を保ち、近づくことは極力避けた。
努力の甲斐あってか、シルヴァリアは国王の前で悲鳴を上げるような失態は片手で足りるほどしか犯していない。
ごく稀に、国王の機嫌がすこぶるいい時に彼は音もなくシルヴァリアの背後に立ち、耳元に低い声を落とす。
そうして、シルヴァリアがわなわなと震えて座り込む様を楽しげに眺めるのだ。
そういう行動をとるのだから国王はシルヴァリアに親しみを覚えているのかもしれないが、シルヴァリアはそこまで頭が回らない。
今日も今日とてシルヴァリアは国王の物憂げな表情を五歩は離れた場所から心配そうに眺めるのであった。


おわり

265名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 02:42:00 ID:1hXYr1bv
保守
266名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 10:45:05 ID:JFPRkxY6
>>264
GJ!
陛下のイタズライイヨイイヨー。次も期待してます
267名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 01:37:52 ID:al87YLUa
陛下がこちらにも降臨とは意表をつかれた。
茶目っ気のあるSな陛下のエピソードを、また是非お願いします。
268名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 03:07:45 ID:PjwVJrFp
>>267
陛下を書くのはこれが初めてだったんだけど、どこかで似たような陛下がいたのかな?
269名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 03:09:19 ID:PjwVJrFp
>>267
こちらにも降臨って、この陛下を書くのはここが初めてだったんだけど、どこかに似たような陛下がいたのかな?


陛下とシルヴァリアの話、また書いたから投下する。
270陛下と側近:2007/02/03(土) 03:12:11 ID:PjwVJrFp
苦虫を噛み潰したとはこの顔か。
鏡に映る私の顔はひどいものだった。
不機嫌そのものである。
こんな顔で陛下に会うわけにもいかないだろう。
冷たい水で顔を洗えば、多少は気持ちが引き締まった。
年若いというのはそれだけで反感を買うとわかっていたつもりだが、あからさまな敵意を向けられるのはいつまでも慣れない。
色小姓だと蔑まれる度に唇を噛みしめてしまう。
父ならばもっとうまく立ち回るのだろうと思えば気分が沈む。
けれど、陛下がごく稀に見せる笑顔がある限り私は陛下の為に働こうと思える。
柔らかな布で顔を拭き、ぺしりと両頬を叩く。
あの陛下に人の心配をするという感覚があるとは思えないが、万が一にも心配をかけてはいけない。
鏡に向かい笑顔の確認をする。
「よし、行くか」



鋏を握りしめた手が汗ばむ。
艶やかな黒髪に触れては離し、また触れる。
どんな気まぐれだというのだろう。
みっしりとつまったスケジュールの中、昼食後の僅かな休息を陛下はとんでもないことに使われる。
唐突に髪を切れと言われても私にそんな技術があるはずがない。
「陛下、やはりお考え直された方が」
ためらいがちに伝えると陛下は振り向いて眉をしかめる。
そんな顔をされても困っているのは私の方だ。
「あまりにもひどいようなら手直しさせる」
それなら初めから私に切らせなければいいのに。
それ以上反抗したところで私の意見が聞き届けられるとも思えず、私は意を決して陛下の長い髪に鋏を入れた。
シャキンという音とともに陛下の髪が散った。
一度鋏を入れてしまえば勢いにのっていける。
シャキシャキと鋏を動かす度に陛下の足元には髪が溜まっていった。
好きなようにと言われたけれどこんなに切ってしまってよかったのだろうか。
陛下は顔立ちが嫌になる程良いからどんな髪型でも似合ってしまうのだろうけど。
時々大きな姿見で出来映えを確認しながら私は陛下の髪を切った。
一時間ほど時間をかけて、なんとか見られる形ができた。
肩を越えるほど長かった髪が結ぶことができないほどに短くなった。
まじまじと姿見で自分の姿を確認する陛下から数歩下がって反応をうかがう。
さして感慨もない様子に安堵すべきか戸惑ってしまう。
「……どうでしょうか?」
髪に触れ、姿見越しに陛下の口角が上がったのが見えた。
271陛下と側近:2007/02/03(土) 03:14:02 ID:PjwVJrFp
「お前はどう思う?」
謙遜しては陛下の姿を貶しているようにもとらえられかねない。
自画自賛と思われるかもしれないが、私は思い切って素直な感想を述べる。
「とてもよくお似合いです。短い方が凛々しく見えます」
「そうか」
「陛下はお気に召しませんか?」
くるりと振り返り、陛下は僅かに首を傾ける。
「母上が亡くなられ、これからだと思っていたのだろう」
「……は?」
「あやつらは私が思うようにならぬのが気に入らんのだ。だから、お前に辛くあたる」
私はよほど間の抜けた顔をしていたのだろう。
陛下が一歩近づいて、私の顎を指で持ち上げる。
「私の意図をしっかり理解しているか?」
鮮やかな蒼が私の瞳を射抜く。
全身の力が抜けてしまいそうなのを、拳を思いきり握りしめることで抑える。
「まあいい」
陛下の指が離れ、私に背を向けて歩き出す。
「どこぞの使者が謁見にくる時間ではないのか」
指摘されてはたと気づく。
言われてみれば約束の時間はもうまもなくだ。
慌てて陛下に続き、足早に歩き出す。
結局、陛下は気に入って下さったのだろうか。
もやもやと胸の奥に巣くう疑問を口にしかねていると陛下が不意に振り向いた。
「シルヴァリア」
「はい」
「頭が軽くなった。短くするのも悪くない」
微かに浮かぶ笑みに心臓が跳ねる。
陛下はすぐさま正面を向いてしまったけれど、久方ぶりに拝見する微笑は脳裏に焼き付いてしまっていた。
どくどくと早鐘を打つ心臓と熱く火照る頬。
やはり陛下のお顔は嫌になる程麗しい。
謁見の間へ移動する間中、私は心臓の高鳴りを止めることができないままでいたのだった。


おわり


最初に二回書き込んですまんかった。
272名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 22:52:56 ID:N+8nbbwS
デュー×ファム可愛くて好きだ。次も期待してる
273シルヴァリア:2007/02/05(月) 01:49:59 ID:lRpkqLXD
こちらから他国に攻め入ったことはない。
私が即位して間もない頃に隣国が宣戦布告を叩きつけてきた。
戦は長引くこともなく、自国の勝利で幕を閉じた。
結果として領土は広がり、他国に対する牽制にもなったのだから良しとすべきか。
戦は好きではない。
最後の後始末とばかりに王家の人間を残らず冥府に送るとき、胸の奥に何か不愉快な感情が湧き上がる。
シルヴァリアの悲しげな顔もまた見たくはなかった。
シルヴァリアは戦を嫌う。
敵であろうと味方であろうと人が命を落とすことに心を痛めて泣く。
私の側近としてはあまりに甘く未熟であると思うが、人としては優しい娘だと思う。
初めて会いに来たときは父に伴われ、だがしかし毅然とした態度で私の前に跪いた。
今は肩より少し上で切り揃えられている金髪もあの頃は長かったし、深い青のドレスもよく似合っていた。
フレデリク・イルマの働きぶりはよく知っていたし、その娘ならばとフレデリクの申し出を受けた。
側近くに置いて気がついたが、シルヴァリアには幼い面が多々あった。
感情表現が豊かなのだ。
恐れ、驚き、喜び、疑問、何を考えてもすぐに顔に出る。
私の周りにはあんなに感情を露わにする人間は一人も居なかっただけにシルヴァリアは目に楽しかった。
しかし、一年も立てば学ぶようで近頃はポーカーフェイスの真似事くらいはできるようになってきた。
とはいえそれは他の人間の前でだけであり、私の前では相変わらずというのが心を許してくれているようで少し嬉しかった。
そして、シルヴァリアは男に慣れていないようで私の顔を見れば頬を染め、戯れに近付けば小さく悲鳴を上げた。
長かった髪を切り、男装を始めた時は思わず笑ったものだ。
シルヴァリアは可愛い。
今まで手に入れたものの中では飛び抜けて素晴らしい。
手放したくないと思ったものはシルヴァリアが初めてだ。
だからだろうか。
今、向かいの廊下でセレスと楽しげに話すシルヴァリアを見つけて苛立っているのは。
これ以上見ているのは私の精神衛生上よろしくない。
私は彼らに背を向けて、執務室へと急いだ。



274国王陛下とシルヴァリア2:2007/02/05(月) 01:51:35 ID:lRpkqLXD
「シルヴァリア」
耳近くで囁けば、びくりと体が跳ねる。
書架に向かって手を上げていたシルヴァリアが前にも後ろにも動けずに体を強ばらせた。
前に動けば書架にぶつかり、後ろに動けば私にぶつかる。
上げた腕すら下げられず、シルヴァリアが困惑しているのがよくわかる。
「今日は何か変わったことはなかったか?」
小さく顔を横に振る。
自国の国王に対する態度ではないが、今はそれどころではないのだろう。
「本当か?」
今度は首を縦に振る。
それが事実ならばセレスとはいつもあのように親しげにしているということか。
それとも、奴と交わした会話は公務に関することではなくプライベートな話題であったから私には話したくないということか。
どちらにせよ、好ましい返事ではない。
「……シルヴァリア。お前はもう男を知っているのか?」
セレスは手が早い。
既に抱かれていたらと思うと気分が悪い。
素直な疑問を口にするとシルヴァリアが飛び上がって首だけで振り向いた。
その碧い瞳に浮かぶ驚愕と困惑が私の質問を否定する。
「まだ処女か」
安堵の吐息をつけばシルヴァリアが私から離れようと身じろぐ。
「逃げるな」
肩を掴んで振り向かせ、真正面から目を合わせる。
「陛下、あの、何の冗談なのですか」
僅かに瞳が潤んでいる。
小動物のような態度に嗜虐心がかきたてられる。
このまま押し倒してすべてを奪いたくなる。
「セレスに抱かれるくらいなら私に抱かれた方がいい」
「ど、どうしてセレスティン将軍の名前が出てくるのですか!?」
身を屈めて耳朶を噛むとシルヴァリアがぺたりと床に座り込む。
「な、なっ」
耳を隠し、真っ赤な顔で言葉もなく口を開閉する。
私もシルヴァリアの目の前にしゃがみこんだ。
ちょっと触れただけでこうなのだから、初な娘だ。
「口づけもしていないのか」
「陛下!」
私を呼ぶ声はほとんど悲鳴だ。
「セレスと親しげにしていただろう」
「え?」
「心当たりはないのか」
考え込むシルヴァリアの頬に触れると、それ以上下がりようもないのに後ずさろうとして書架に頭をぶつけた。
「もしかして、昼間のことですか?」
ようやく思い至ったようでシルヴァリアが小首を傾げて言った。
「あれは、あの、陛下のことでいくつか助言をいただいただけで」
怪訝そうな顔をしていたのだろう、シルヴァリアが慌てて顔の前で手を振る。
「た、たいしたことではないのです!」
「例えば、どのような?」
275国王陛下とシルヴァリア3:2007/02/05(月) 01:53:09 ID:lRpkqLXD
「陛下は女性嫌いだとか」
女が嫌いだといった覚えはない。
申しつけた覚えもない夜伽の女を寝所の外に放り出したことなら何度もあるが、あれは女が嫌いだからというわけではない。
「他には」
「本当にたいしたことではないのです! だから、あの」
許してほしいとシルヴァリアの目が語る。
後でセレスに子細を尋ねることに決め、私は立ち上がった。
「私は女が嫌いなわくではない。お前だって女だろう」
そう呟けばシルヴァリアは目を白黒させて首を傾げる。
私は思わず溜め息をつく。
鈍感なのも考え物だと思う。
「わからないならいい」
それでも、久々に触れたシルヴァリアの感触に頬が緩むのを私は感じていた。


おわり


276セレスティン将軍とシルヴァリア:2007/02/05(月) 01:54:01 ID:lRpkqLXD
胸の奥がもやもやする。
陛下のお年を考えれば当然のことだ。
未だ独身であることの方がおかしい。
けれど、陛下は女性嫌いだとセレスティン将軍が言っていた。
腕に抱えた王妃候補の資料がやけに重たく感じる。
陛下に手渡さねばならないのだと思うと気が滅入る。
気がつけば私は陛下の元ではなく、将軍の元へ足を運んでいたのだった。
「いいか、お嬢ちゃん」
将軍は陛下の知己であり、信頼の篤い部下でもある。
「俺の部屋へ入ったなんてあいつには死んでも言うなよ」
執務室の隣にある仮眠用の部屋へ入りながら将軍は言う。
ぼさぼさの髪と無精髭。
シャツの胸元は開かれ、逞しい胸板が覗く。
人差し指で頬をかき、眉をしかめて溜め息をつく。
一見するといかにも軍人という厳つい男性だが、これでも髪を整えて髭を剃って正装すると五歳は若く見えるのだ。
「それでなくても近頃風当たりがきついんだ」
促されるままに寝台に腰掛ける。
そして、将軍は私の足元に座り込んだ。
「で、話って?」
抱えている資料に視線を落とすと将軍の視線も資料に向いた。
私はおずおずと将軍に資料を差し出す。
ぱらぱらと資料をめくり、将軍が不思議そうな顔で私を見る。
「これがどうした」
「陛下のお妃候補です」
「アホ。そんなもんは見りゃわかる。そうじゃなくて、はっきり言え」
視線を落とすと靴の爪先が目に入る。
はっきり言えと言われてもそれが言えないから困っているのに。
「大国の姫君と婚姻を結び、縁続きになるのは悪いことじゃない。王族の義務だな」
わざわざ言われなくてもそんなことは私にもわかる。
「この中からよりよい良縁を選ぶわけか」
将軍の言葉に悪意を感じる。
「さすがに育ちのいい姫君方とあって高貴な顔立ちだこと。美人揃いじゃねえか」
ぎゅっと唇を噛みしめる。
「あいつがとっとと妃娶って世継ぎこさえてくれりゃあ国も安泰だ。なあ、イルマのお嬢ちゃん?」
そんなことはわかってる。
わかっているのに胸が苦しい。
胸の奥が痛くて苦しい。
「……あのな」
ぽとりと握りしめた手に涙が落ちる。
「泣くなよ。俺がいじめたみたいじゃないか」
爪先から視線を上げると困ったような呆れたような顔をした将軍と目が合った。
「す、すみません」
ごしごしと瞼をこする。
「あんな冷血漢のどこがいいんだかね」
将軍の無骨な指が頬に触れて涙の痕を拭う。
277セレスティン将軍とシルヴァリア2:2007/02/05(月) 01:54:53 ID:lRpkqLXD
どこと言われても困る。
綺麗な顔も低い声も大きな手も他人に対して容赦ない性格も何を考えているのかわからないところも意地悪なところも優しいところも全部好きだ。
強いて言うならば、たまに見せてくれる意地悪で優しくて甘い微笑がどうにかなりそうなくらいに好きで好きでたまらない。
「顔がいいからそうは見えんが、すこぶる性格の悪い奴だぞ」
「はい。でも、優しい方です。セレスティン将軍もご存知でしょう?」
「それはお嬢ちゃんにだけだぜ。俺に優しかったことなんかねえよ」
苦虫を噛み潰した顔をする将軍に私は笑いかける。
「いいえ。将軍とご一緒の陛下はいつもより柔らかい雰囲気を纏っておられますから」
思い当たる節があるのか将軍は複雑な顔で押し黙る。
私は目尻に溜まった涙を手の甲で拭った。
将軍と話していたらなんだか少し落ち着いてきたような気がする。
「俺から渡してやろうか」
膝に置いた資料をぽんぽんと叩きながら将軍は言う。
「そういうわけにもいきません。私が仰せつかった仕事ですから」
「渡したくなくて泣いたくせに」
「そ、それでもです!」
にやにやと笑う将軍は意地が悪い。
「どうせ即座に屑籠行きだろ。もしくは、引き出しの奥に眠らされるか」
「そうでしょうか」
「王太子時代からあいつはいつもそうだよ」
ほっと安堵の息をつき、胸を撫でおろす。
「いっそ泣いてみたらどうだ」
「はあ?」
「私以外の人と結婚するなんて嫌です! なんてよ」
笑う将軍を睨みつけると笑い声がさらに増した。
「まあ、それもいいと思うけどね」
「よくありません」
「たまには素直になりゃいいんだよ。まだまだ親父さんに頼ってるとはいえ、イルマ家継いだんだろ。身分違いってこともねえさ」
立ち上がって私の膝に資料を放り投げて将軍は私の頭を撫でた。
大きくて温かな手はとても心地良くて、将軍の言葉を素直に受け止めることができた。
家を継いだとはいえ、まだまだ父に頼りきりでとても当主とは名乗れないような私だけれど、それでも陛下の隣に並んで遜色はないのだろうか。
淡い期待を胸に抱き、けれども膝にはそれ以上に大きな不安材料を乗せたまま、私は陛下の大好きな微笑を思い浮かべるのだった。


おわり


278名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 02:46:15 ID:aH2Gf93B
超GJ
シルヴァリアと陛下シリーズ好きだ。
279セレスティン将軍:2007/02/05(月) 13:39:30 ID:lRpkqLXD
あんなに嬉しそうな顔もするのかと安心した。
あの冷血漢にも人並みの情ってもんがあるんだと。
初めて会ったのはあいつが五つの時だった。
大人びた顔をするガキだと思った。
我が儘一つ言わずに母親の意見に従い、その代わりに笑いも泣きもしない。
かわいげのないガキだった。
──あれがシルヴァリア・イルマ。フレデリクの娘だ。
遠巻きに見えた金髪を目を細めてみていた。
あいつがあんな顔で女を見るとは想像もできなかった。
二十年ばかり側にいて初めて見る顔だった。
どんな女なのかと近づいてみれば、年相応の可愛らしいお嬢ちゃんだった。
そして、何よりもあいつに惚れていた。
陛下を一番近くで守りたいのだと頬を染めて言われた時は見ているこっちが照れくさくてたまらなかったものだ。
思い合っているんだからとっととくっつきゃいいのに、お互いに相手の気持ちに気づかないんだから鈍感というかなんというか。
お嬢ちゃんはあの性格だから側にいられればそれでいいなんて言うし、あいつはあいつで何かを言えば命令になるからと口をつぐんだまま。
だから、あの資料はいい起爆剤になるんじゃないかと思う。
お嬢ちゃんがあいつの前で泣くとは思えんが、やきもち妬いてますって態度が少しでも出てれば目敏いあいつが気づかないはずがない。
これがきっかけでくっついてくれりゃあ長年の寂しい生活から解放されるだろ。
人並みの幸せってやつをあいつにも知ってほしい。
それに、あいつがバカ面さらしてのろけるとこも見てみたいじゃねえか。
まあ、あれでだめなら早々に次の手考えなきゃなんねえんだけど。
まったく人の恋路に世話やくなんて俺も焼きが回ったもんだぜ。


おわり


>>278
ありがとう。

エロなしばかりじゃあれなんで次あたりエロをいれたいと思ってる。
280陛下とシルヴァリア:2007/02/05(月) 23:57:42 ID:lRpkqLXD
目が覚めてすぐに、肌触りのよいシーツを体に巻き付けた。
触れた感触が心地よくて思わずそうしてしまったのだ。
まだ半分夢の中にいるようなひどく心地よい感覚。
起きてしまうのが惜しくて私は枕に顔を埋める。
……あれ?
僅かに感じた違和感の正体を探ろうと鼻を動かす。
枕から私の部屋と違う香りがする。
この香りは──
一気に眠りから覚めて、私は勢いよく起きあがった。
目の前に現れたのは国王陛下の顔。
悲鳴を上げそうになるのを必死に飲み込む。
「おはよう」
いつもより少し低めの、けれどとても甘い声。
愛おしさすら感じる眼差しに心が溶けてしまいそうだ。
「おはよう、ございます」
小さく頭を下げると陛下の唇がこめかみに触れた。
そして、私の目には露わになった太股が。
慌てて自分の姿を確認して、今度は悲鳴を飲み込むことに失敗した。
「シルヴァリア?」
シーツを引き上げて体に巻き付け、陛下に背中を向けた。
どうして全裸なんだろう。
どうして、どうして。
一生懸命考えて、すぐさま答えに思い当たる。
そうか、私、夕べ陛下と……。
体温が一気に上昇する。
枕から陛下の香りがするのも寝台に陛下がいるのも裸なのも、理由はすべて理解した。
ここは陛下の寝室なのだ。
「シルヴァリア」
ぎゅっと陛下の腕が腰に回される。
肩に顔を埋めて、陛下が私の名前を呼ぶ。
どうしよう。
胸がドキドキする。
幸せすぎて死にそう。
「後悔しているのか?」
不安げな声にぎょっとする。
そうか、こういう態度をとるとそう思われるのか。
でも、だけど、でも。
面と向かって顔を合わせるのは恥ずかしすぎる。
それでも、せめて誤解は解きたいと私は必死に首を振った。
安堵の吐息が首にかかる。
「では、顔を見せてくれ」
だから、それは無理なんです。
同じように首を振ると陛下が困ったように大きく息を吐いた。
「シルヴァリア?」
「へ、変な顔をしてます。寝起きだから髪もぼさぼさだし」
「それは私も同じだ」
違う。断じて違う。
陛下は寝起きでも美しいけれど、私は陛下のように人並み外れた美貌は持ち合わせていないのだ。
「陛下は……お綺麗です。さっき見ましたけど変なところなんて一つもありませんでした」
「お前も可愛かった」
腰に回されていた陛下の手が太股を撫でる。
唇が項に当たり、陛下が喋る度に吐息がかかる。
281陛下とシルヴァリア2:2007/02/05(月) 23:58:34 ID:lRpkqLXD
「夢ではないかと疑いながら寝顔を眺めていた。昨夜のお前を何度も何度も思い出した。例え夢だとしても忘れたりしないように」
夕べ教えられたばかりの不思議な感覚が全身を這い回る。
「お前の顔も体も声も例えようもないほどに素晴らしかった。お前の声が好きだ。私を信頼しきった瞳が好きだ。何の躊躇いもなく私に捧げてくれる心が愛おしい」
「あっ…や、待って」
太股に触れていた陛下の手が内へ滑り込む。
自分でもなんとなくわかってはいたけれど、触れられては隠しようがない。
陛下の指をすっかり濡らしてしまっているのだと思うと恥ずかしさで頭がどうにかなりそうだ。
「お前のすべてが愛おしい」
すっかりシーツを剥ぎ取られ、陛下の手が私の胸に触れる。
先の方がじんじんと痺れているようで、早く陛下に触れてほしくてたまらない。
陛下の指が軽く摘んだだけで、体がびりびりと痺れた。
私の体がまるで私のものではないみたいになる。
体が痺れる度に陛下の指を締め付ける。
苦しい。苦しくて心地いい。
噛みしめた唇からは私のものとは思えない声が堪えきれずに漏れる。
陛下の指が引き抜かれて、安堵する間もなく体重をかけて倒される。
うつ伏せになってシーツを掴み、呼吸を整える。
けれど、その間も陛下は私の背中に舌を這わせ、休ませてはくれない。
声が出る。
こんな声を出して、はしたない女だと陛下に思われはしないだろうか。
でも、声がいいと陛下は仰った。
でも、やっぱり声をあげるのは恥ずかしい。
陛下の唇が離れ、ぐいっと腰を引かれた。
282陛下とシルヴァリア3:2007/02/05(月) 23:59:41 ID:lRpkqLXD
「ああっ!!」
慌てて唇を噛みしめようとしたけれど間に合わなかった。
体がまるで半分に引き裂かれるような、体の奥深くまで杭を穿たれたような、慣れない感覚。
どちらかというと不愉快な感覚だけれど、昨夜は何度も繰り返す内に不快感は薄れていった。
それに、今日は昨日よりは大丈夫そうだ。
深い呼吸を繰り返していく内に、中に留まっている陛下の陰茎に体が馴染んでいく。
私の背中と陛下の腹がぴたりと合わさり、優しく私の腹を撫でてくれる。
そうしながら、もう片方の手は乳房を弄る。
「平気か?」
「ん……は、はい」
「動いても大丈夫か?」
陛下が動くということは夕べのようにわけのわからない感覚に飲み込まれていくということだ。
もうしばらくこのままでいたいような、また陛下だけが導いて下さる場所へ連れて行ってほしいような、私は私の感情を持て余して曖昧に小さく呻いた。
「……正直に言うと私はもう限界だ」
緩やかに陛下の腰が引き、同じ速度で潜り込む。
不愉快だった感覚が僅かに色を変える。
何度も何度も陛下はもどかしいまでに緩やかな動きを繰り返した。
だんだんとその動きに慣れていくと少しばかり物足りなさを感じる。
たまらずに首だけで振り返って陛下を見上げると突き上げるスピードが増した。
シーツに爪を立て、唇からは意味をなさない言葉が漏れる。
陛下の動きは巧みに私を追い詰める。
気がつけば私は押し寄せる波に抵抗することもなく、簡単に身を投げ出していたのだった。


おわり

283名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 00:54:28 ID:OYxxU0pj
なんという神作……
この私がGJしか言えなくなるとは

GJ!!
284名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 07:41:28 ID:eqcKnc07
シルヴァリア可愛い(*´д`)
陛下の甘さもたまらん
285名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 13:27:25 ID:lTr/ya6F
やっぱ美形男子はいいなぁ・・・
もちろんシルたまもGJ
286 ◆KK1/GhBRzM :2007/02/06(火) 19:41:57 ID:eqcKnc07
デュー×ファム投下

上官と部下と言うより、単なる年の差カップル…orz
287王都騎士団【妬きもち】1:2007/02/06(火) 19:43:44 ID:eqcKnc07
 純粋に実力のみを重視する騎士団に於いて、出自や家名は何の意味も持たない。
 例え爵位を持つ家柄の出であっても、見習いとして入団した時には王家に──一時的にではあるが──名前を返還しなければならない。
 だから、と言う訳ではないだろうが、極々庶民の出であるデュラハムは、貴族達の事を快く思っていないようだった。

 しかし、そんなデュラハムでも懇意にしている貴族が居る。
 その中の一つとして、ハリス侯爵家が挙げられるだろう。

 ハリス侯爵は、デュラハムの部下であり、ファムレイユの上官でもある、シルヴァリアの従兄弟に当たる。
 年齢で言えばデュラハムとシルヴァリアのちょうど中間。シルヴァリアと乳母を同じくするせいか、兄弟同然の間柄。
 自然、シルヴァリアと──ハリス侯爵とはまた違った意味で──兄弟のようなデュラハムとも、個人的な付き合いを交している。

 ファムレイユがそれを知った時は驚きもしたのだが。



 バルコニーに出たファムレイユは、酔った頬に触れる夜風に目を細めた。
 丘陵に立つ此処からは、王都が一望出来る。ちらちらと営みの灯りが眼下に広がり、空には僅かに膨らんだ月と満天の星。眺めが良い。
 後方のサロンからは賑やかな声が聞こえているが、ファムレイユはどうにも馴染めず、其処を抜け出して来たのだ。

 ハリス侯爵の息子の婚約披露とあって、多くの貴族や王家からの使者が集っている。
 しかし一介の騎士に過ぎない自分には、何処か遠い世界の事のようにも思える。
 「一人で行くのは先方に対し失礼だ」と、デュラハムに──半ば無理矢理──引っ張り出されたのだが、当のデュラハムはと言うと、ハリス家の面々と和やかに談笑している。
 デュラハムはデュラハムで年嵩故の付き合いもあり、話を持ちかけたシルヴァリアも、ハリス家分家の出自と言う事もあり、それなりに顔は広い。
 しかしファムレイユは、まだ年若く庶民の出。見知らぬ人ばかり、と言う訳でもないのだが、執務以外で付き合いのある人物、となるとファムレイユには皆無に等しい。
 結果、こうして一人バルコニーに出たのだが、疎外感は拭えなかった。

288王都騎士団【妬きもち】2:2007/02/06(火) 19:44:50 ID:eqcKnc07

「……窮屈だわ、本当に」

 淡いブルーのドレスはデュラハムの見立て。
 ファムレイユとて、私物の礼服を持っていない訳ではなかったのだが、デュラハムが頑として利かなかったので、態々仕立てて貰ったのだ。
 ただし、仕事が忙しかった為に採寸は仕事の合間に行い、デザインに関してはファムレイユは一切関知していない。デュラハムが口煩く仕立て家に口出ししていた、と言う事もファムレイユの預かり知らぬ所である。
 ドレスを着るために普段は着けぬビスチェを下に着けているのだが、コルセットの役割も果たしていてそれが窮屈さを増す。

 溜め息を溢したファムレイユは、手摺に頬杖をついて王都を眺めた。

「お嬢さん、お一人ですか?」

 不意に掛った声に後ろを振り向くと、フロックコートに身を包んだヒューが居た。
 先程まではサロンに居なかったのだから、恐らく遅れて来たのだろう。

「見ての通り」

 ファムレイユが肩を竦めて向き直ると、ヒューはフと微かな笑みを浮かべてファムレイユの隣に立った。

「これを機会に貴族評議会に顔を売るのも、執務のうちです。まぁ、俺も窮屈なのは苦手だが」
「聞いてたの?」
「あぁ。憂い顔もしっかりと」

 しれっと言いきったヒューを軽く睨みつけたファムレイユだったが、直ぐに視線を外すと口先を尖らせて大仰な溜め息を吐いた。

「相変わらず人が悪いわ、ヒュー殿は」
「油断する君が悪い。俺だって、聞きたくて聞いた訳じゃないさ」

 そっぽを向いたファムレイユだったが、ヒューは意に介する様子もなく、手摺に背中を預けてサロンの方へと目を向けた。
289王都騎士団【妬きもち】3:2007/02/06(火) 19:45:38 ID:eqcKnc07

 隊長補佐であるヒューは立場としてはファムレイユの上官に当たるのだが、口調が砕けた物になるのはヒューのお陰だ。執務以外で敬語を使われる事を嫌うのだ。
 ファムレイユよりも五歳程年上だが、見た目が若いせいかファムレイユと然程変わらないように見えるので、ファムレイユもそう気を使わなくて済むのが有り難かった。

「ゴードンスの浮かない顔の原因は、隊長殿ですか?」
「別に。あの人が誰と話そうと、私には関係ないわ」
「ほぉ」
「……何よ、その目は」

 ヒューの声にチラリと其方を向くと、ヒューは目を細めて口許を緩めている。
 思わず咎めるような口調で突っ掛ると、ヒューは顎でサロンを示した。

「いや、なに。君はそうかも知れないが、隊長は君を気にしているようなのでね」
「え?」

 つられてサロンを振り返ると、其処では相も変わらず談笑を繰り広げる人々の姿。
 背の高いデュラハムの姿は直ぐに目に止まったが、此方を気にしている様子はない。

「そう…?」
「あぁ。時折視線が泳いでる。君を探しているんだろう」
「……目が良いのね」

 暫くデュラハムの様子を観察したが、ヒューが言っているようには思えない。
 仮にそうだとしても、のこのこと顔を出してまた疎外感を感じたくはなかった。
290王都騎士団【妬きもち】4:2007/02/06(火) 19:46:30 ID:eqcKnc07

「行かないのか?」
「……そのうち戻るわよ」

 頑に拒むファムレイユを視線だけで見下ろしたヒューは、小さな吐息を漏らすと腕を組んでまたサロンへと目を向けた。

「隊長殿も……もう少し気を使う事を覚えた方が良いな」
「……どう言う意味」
「君のドレス姿なんて、そう見られる物じゃない。あれだけ人にノロケ話を聞かせておいて、結果がこれじゃあな」
「……」
「まぁ、あの人が無粋なのは今に始まった事じゃない。気に病むだけ損ですよ」

 からかいめいた口調にファムレイユは再びサロンに背を向ける。
 態々言われなくともファムレイユにだって分かっている。

 今の自分は、単に拗ねているだけだと言うのが。

 だからと言って、今更デュラハムの元に顔を出しても、居心地が良くなる訳でもなく。社交的な場で笑顔を振り撒けるほど器用ならば、とっくの昔にそうしている。
 気後れする以上に無器用な自分が腹立たしいが、こればかりは直ぐに何とかなる問題でもない。

「ヒュー殿は戻らないの?」
「俺か。さて…目的のご婦人はいらっしゃいようだし──それに、子守りも悪くない」
「……すみませんね、お子様で」

 眉間に皺を寄せたファムレイユの姿に、ヒューは僅かに肩を震わせる。


 春の夜風は冷たかったが、デュラハムがバルコニーに気付くまで、二人は他愛もない話を続けていた。
291王都騎士団【妬きもち】5:2007/02/06(火) 19:47:28 ID:eqcKnc07
 帰りの道はハリス侯爵が手配した馬車。カタコトと揺れながら、馬車は騎士団の宿舎へと向かう。
 幾人かで乗り合わせていたが、その中にはヒューや青岳隊隊長のギデオン・ランバートもおり、二人きりになれたのは黒旗隊の棟に戻る回廊でだった。

 ヒューも黒旗隊の棟に私室を持つのだが、飲み直すと言って兵卒の宿舎がある棟へと向かい、その気の使い方が益々ファムレイユを無口にさせたのだが、デュラハムは苦い表情のままヒューを見送った。

 先を歩くファムレイユの姿が、廊下に点る蝋燭の灯りで揺らぐ。
 無言の威圧、とでも言おうか。始終無言の訳を感じていたデュラハムは、矢張無言でその後ろを歩いていた。

「では隊長、おやすみなさい」

 ピタリと足を止めたのは、ファムレイユの執務室。
 振り返ったファムレイユに表情はなく、デュラハムは内心舌打ちを鳴らしながら首筋を掻いた。

「そう邪険にしなさんな」
「……おやすみなさい」
「おいおい…弁解の余地もねぇってか?」

 語気を強めるファムレイユに、デュラハムは情けない様子で溜め息を吐く。

 視線も合わせず口も利かず、ハリス家から此処まで来てしまっている。
 冷たい眼差しどころか、完璧に壁を作られては、デュラハムとてやりきれない。

「おやすみなさい」

 頑に同じ言葉を繰り返すファムレイユを見下ろして、デュラハムは眉間に皺を刻んだ。

「こら、子どもかお前さんは」
「……十二歳も離れてますから」
292王都騎士団【妬きもち】6:2007/02/06(火) 19:48:35 ID:eqcKnc07

 可愛いげのない態度にデュラハムは舌打ちを鳴らすと、不意にファムレイユの腕を掴んで執務室に続く扉を開けた。

「ちょ、隊長っ!」
「拗ねるのはしゃあねぇが、俺だってお前さんに言いたい事があるんだよ」
「な…っ!」

 勝手知ったる何とやら。
 更に私室へと足を運んだデュラハムは、ファムレイユをベッドに放り投げると、両腕を押さえ付けるようにして乗し掛った。

「隊長っ!」
「ヒューと何を話してたんだ」
「……え?」

 灯りも点さぬ室内は暗く、窓からの僅かな月明かりが光源。
 腕を押さえられ身動き出来ないファムレイユだったが、デュラハムはいつになく真面目な顔付きで、ファムレイユを見下ろしていた。

「……何って…別に」
「別に?」
「下らない雑談です。隊長が勘繰るような事は、これっぽっちもありません」

 言われのない罪を着せられては敵わない。

 この状況に、デュラハムの問いに、怒りが込み上げたファムレイユは、キッとデュラハムを睨みつけた。


 睨み合う事暫し。


 先に口を開いたのは、深い溜め息を吐いたデュラハムだった。

「分かった。……いや、分かってた」

 呟かれファムレイユは眉を顰める。
 しかしデュラハムは唐突に腕を掴む手を離すと、ファムレイユを抱き締めた。

「…っ」
「……大人げねぇのは俺の方だったな。悪い」
「…隊長?」

 目の前で赤茶色混じりの金髪が揺れる。
 力強さと暖かさに目を白黒させるファムレイユに、デュラハムは自嘲染みた口調で呟いた。

「テメェが蒔いた種なのに、みっともねぇ嫉妬してやがる。……情けねぇ」
「……」
「仕事だ何だってのは言い訳だ。それについちゃ、申し訳ねぇと思ってる。……だからって、お前さんとヒューを疑うのはお角違いってもんだよな」
「隊長……?」

 ファムレイユが首を捻りデュラハムを見ると、それに気付いたデュラハムが顔を上げた。
 いつか見た、気弱な笑みが浮かんでいる。

「悪かったな、あんな場所に連れ出して」
「……え…っと」

 デュラハムの腕の中で、ファムレイユは戸惑いを隠しきれない。
 デュラハムはフと笑みを深めると、僅かに抱く腕に力を込めて、ファムレイユの肩に顔を埋めた。
293王都騎士団【妬きもち】7:2007/02/06(火) 19:49:54 ID:eqcKnc07

「嫉妬。妬きもち。好きに呼べ。お前さんが考えてる以上に、俺はファムが好きなんだ」

 耳元で淡々と告げられてファムレイユの思考回路が止まる。
 その言葉はじわじわとファムレイユの胸の奥に染み込んで、暖かな気持ちで満たされる。

 もとより、ファムレイユはデュラハムに対して怒っていた訳ではない。
 ヒューとの事を疑われた瞬間は、それは腹も立ったのだが、それ以前に自分に対して怒っていたのだ。

 デュラハムにはデュラハムの世界がある。
 疎外感を感じたのは自分の都合で、デュラハムの世界に歩み寄ろうとさえしなかった。
 子どものような態度だと分かってはいたが、素直になれなかった自分が悪い。
 口を開けば責任転嫁をしてしまいそうで、それがいっそう腹立たしかったのだ。

「……すみません」

 後悔の念に駆られながら、そっとデュラハムの背に手を回す。
 デュラハムは視線だけでファムレイユを見たが、頬を緩めるとファムレイユの髪に手を伸ばした。

「言葉より、態度で示しちゃくれねぇか?」

 髪を撫でるその口調は先程の笑みと同様、力がない。
 デュラハムの意図する事が分かり、ファムレイユは寸間考えるように眉を寄せたが、小さな吐息を漏らすとデュラハムの頬に己の頬を擦り寄せた。

 その動きにデュラハムの口許に笑みが滲む。
 ファムレイユに対し、心底申し訳ないと思っていたのは事実だ。
 自分の身勝手であの場に引っ張り出し、要らぬ疑いを持った自分が情けない。

 が、それとこれとは話が別。
 誤解が解ければ、あとに残るのはただファムレイユが可愛いと、愛しいと言う想いだけ。
 それと同時に首をもたげるのは、僅かな悪戯心。

 そう言えば、と。ふと考えたデュラハムは、そろりと片手をファムレイユの背に回す。
 我慢の利かぬ自分に苦笑するが、止められるならば最初から誤解を解こうなどと思いはしない。

 背で結い上げている形のドレスの組紐が手に触れる。
 僅かに晒された首筋から腰までをゆっくりと撫でながら、デュラハムは徐々に組紐を解いて行く。

 頬を擦り寄せたファムレイユが気付いた頃には、ドレスは完全に緩められ、淡いブルーは二人の間でするりとずれた。
294王都騎士団【妬きもち】8:2007/02/06(火) 19:51:18 ID:eqcKnc07

「! たい…んっ!」

 抗議の声を上げようとしたファムレイユの唇を塞ぎ、デュラハムは更にファムレイユのドレスに手を掛ける。
 優しくも執拗に、ファムレイユの甘い声ごと唇を味わいながら、ドレスを腰まで脱がせると、今度は太股に手を掛ける。

 息つく暇もない甘い刺激に、ファムレイユは必死になってデュラハムにしがみつく。
 止めて欲しいとは言えない。
 罪滅ぼしと言えば大袈裟だが、多少なりとも負い目がある。それに何より、デュラハムの事を愛しいと自覚している。

 それでも、残る理性は羞恥心を呼び起こし、無意識に微かな抵抗を試みる。
 膝を割るデュラハムの手を押さえ付けようと、足に力が篭るが、デュラハムは難無くファムレイユの足の間に居場所を定める。
 ドレスごと太股を撫でられ、ファムレイユの肌が震えた。

「……お前さん」

 ドレスをたくし上げる手を止めたデュラハムが唇を離す。
 二人の間で糸を引いた唾液がファムレイユの濡れた唇に落ち、ファムレイユは慌てて手の甲で拭う。
 いつもなら、変わらず初々しい仕草だとからかうデュラハムだったが、今日ばかりは違った。

「反則…っ」
「え? あ、きゃっ!」

 何かに耐え切れなくなった。
 そんな強さを持ちながら呟かれた言葉に、意味が分からず眉を顰めたファムレイユだったが、デュラハムは体を起こすと強引にファムレイユの膝裏を持ち上げる。
 絹擦れの音をたてファムレイユの腰にドレスが落ちるが、デュラハムはそれに目を遣る事もせずファムレイユの足に──正確には太股に目を向けた。

「ちょ…や、やだっ!」

 漸く事の次第を察したファムレイユは、恥ずかしさの余り思わず両手を突き出すが、抵抗にもならぬ抵抗に気付き腕を抱く。
 デュラハムは無遠慮な視線を其処に送ると、ニヤリと人の悪い笑みでファムレイユを見下ろした。

 先程までの気落ちしていた男とは、同一人物だとは思えない底意地の悪さである。

「ガーターベルトなんて持ってたんだな」
「やっ、言うな馬鹿っ!」

 顔を真っ赤にしたファムレイユがジタバタと足をバタつかせる。その弾みにヒールが脱げて、石造りの床へと明後日の方角へと飛んで行った。
295王都騎士団【妬きもち】9:2007/02/06(火) 19:52:50 ID:eqcKnc07
 太股までを覆う純白のタイツ。それを繋ぐように腰から続く同色の真っ白なベルト。細やかな細工の施されたガーターの下には、やはり純白の下着の姿。

 常日頃、堅苦しい騎士団の制服姿が多いだけに、ドレス姿を見た時には感嘆の吐息を漏らしたデュラハムだったが。

 ──これはこれで…中々。

 思考回路が親父臭いのは、今更言う間でもない。

「態々買ったのか?」
「ちがっ…ドレスに、付いて来てたからっ」
「で、ちゃんと着けたって訳か」
「っ…」

 羞恥と怒りで耳までを真っ赤にしたファムレイユは言葉もない。
 唇を噛み締め半ば本気で睨む眼差しすら、デュラハムの欲情を仰って仕方ない。

「やらしいな、コレ」
「卑猥ですよ、その顔!」
「何を今更」

 バタバタと暴れる足を胸許に押し付け、下着の上から唇を押し付ける。
 いつもより乱暴に、強く其処を吸い上げると、途端にファムレイユは喉を震わせ足の動きを止めた。

 下着の上からでも分かる程、膨らみ潤った秘所に舌を押し付け、いつもよりも乱暴に其処を攻める。
 ヒクヒクと腹部が震える度、溜ったドレスが揺れる。
 デュラハムは指先で器用にタイツとガーターを繋ぐベルトを外すと、足から手を離して、ズボンのベルトを緩める。
 その間も秘所に舌は這わせたままで、ファムレイユの足は力無くベッドへと落ちた。

 肉棒を露わにしたデュラハムは、体を起こすとファムレイユの腰に手を掛けて引き寄せる。
 勢いのままに下着を下ろすと、秘所から溢れた蜜が糸を引いていた。
296王都騎士団【妬きもち】10:2007/02/06(火) 19:53:38 ID:eqcKnc07

「や、待…っ! デュ──」
「待てねぇ」
「ん、あぁっ! やぁぁっ!」

 性急さに制止を掛けるファムレイユの言葉を遮って、デュラハムは躊躇いなく肉棒をファムレイユの胎内へと埋める。
 退け反ったファムレイユの口から、甲高い喘ぎが漏れた。

「は、うぁ、ふああっ」

 激しく腰を打ち付ける度、ファムレイユの喉が震え体が軋む。
 快感と満たされた想いが渦を巻き、熱く甘い欲望がデュラハムの脳髄へと走る。
 ビスチェの前をはだけさせると、窮屈な下着から解放された胸が動きに併せ揺れる。
 其処に手を伸ばし、欲心のまま貪るようにして頂を口に含むと、一際激しくファムレイユの腰が跳ねた。

「んぁ、や…も、ああっ!」

 果てのない何処かへと飛びそうになる意識を繋ぎ止めようと、ファムレイユの手がデュラハムの頭を掻き抱く。
 デュラハムは思う存分胸を味わうと、顔を上げてファムレイユに口付けた。

「ふ…ん、んうぅ…っ!」

 欲望の果てを誘う声が互いの唇の隙間から漏れる。

 やがてその色も泣き声にも似た声へと代わり、デュラハムを包む快感が強くなり。
 デュラハムは腰を引くと滞っていた欲望をファムレイユの秘所へと吐き出した。
297王都騎士団【妬きもち】11:2007/02/06(火) 19:54:47 ID:eqcKnc07


 毛布に包まったまま、ファムレイユはデュラハムに背を向けていた。
 あれから立て続けに二回、事に及んだ結果はファムレイユにとっては、余り嬉しくない事態を招いていた。

 久方ぶりの──これに関しては、八割がた自分のせいなので強くは言えないが──激しい情交は腰の痛みをもたらしているし、買ったばかりのドレスは体液に塗れてしまった。
 今はもう夜着に着替えているのだが、粘ついた感触のせいで着替えるのも一苦労。
 そして何故か、いたくガーターベルトを気に入ってしまったデュラハムが、外すのを拒んでしまったせいで、タイツやガーターにも白い液が染み付いていた。

「……機嫌直せって」
「知りませんっ」

 すっぽりと体を包み込んだファムレイユは、これ以上指一本触れさせないとばかりにデュラハムの手を拒む。
 隣に横たわったデュラハムは、取り付く島もないファムレイユの姿に、眉を下げて苦い笑みを浮かべるしか出来ない。

 だが内心。
 仕立て屋の親父に金弾まなきゃな、等と考えている辺り、反省の色は殆んど無いと言えよう。

「悪かったって。……今度は、ちゃんと脱がすからよ」
「……っ! 馬鹿っ!」

 失言。
 そう気付いた時には遅かった。
 ファムレイユは毛布に頭まで包まって芋虫状態。
 完全に機嫌を損ねてしまったファムレイユを見つめ、デュラハムは深い溜め息を吐いた。

 こうなってしまっては、今はもう何を言っても無駄だろう。
 諦め半分。それでも愛しさには敵わず、毛布の芋虫を抱き寄せたデュラハムは、疲労と半分に減った満足感の中、訪れた睡魔に目を閉じた。

 だから。

「……そんなに好きなら、ガーターベルトと結婚でもすれば良いんだわ」

 毛布の中でファムレイユが呟いた言葉など、デュラハムが知る由もなかった。


298 ◆KK1/GhBRzM :2007/02/06(火) 19:55:57 ID:eqcKnc07
以上です

単にガーターとヒューが書きたかっただけなんで…
相変わらず、無駄に長くてスマソosz
299名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 20:27:59 ID:NV2Of9Dn
ちょwwwただのエロオヤジGJwww
300名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 02:27:32 ID:60GgEOrk
急に頭にアンスピレーションが来たんで書いてみました
久しぶりの文章なんで、ちょっとしたミスは笑ってスルーしてください
個人的にツボな、グータラ君主+振り回される部下です
301名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 02:29:03 ID:60GgEOrk

「王、王〜!!」
一人の女性が声をあげながら、王宮を歩いている。
女というにはまだ年が若いが、少女では年下過ぎてしまう、そのくらいの年齢だ。
彼女の着ている服は派手さはないが上品なもので、鮮やかな紋章が縫いこまれている。
この国の人間なら当然知っている、代々宰相を出している家の当主の証だ。
しかし今着ているのは彼女の体には大きいサイズの服の様で、どうにも歩きにくそうだ。
案の定、ズボンの裾を踏んでしまい、転んでしまう。
「まったく、なんで私がこのような目に…」
ぶつぶつと言いながら立ち上がる彼女に対して、更にげんなりさせる言葉が飛んでくる。
「宰相様、大丈夫でしょうか?」
彼女はうんざり、といった表情を浮かべながら声をかけてきた下人に対して答える。
「宰相はやめてもらえる?私はただ、父の代理を一時的にしているだけなのだから」
「え、でも王様はもう正式決定だと仰っていましたが」
「本人が納得もしていないのに決まるわけがないじゃない!」
「ひぃっ」
「大体、私がこんな格好しなくちゃいけないのも父が病気になったからだし、父が病気になったのも過労のせいだし、父が過労になったのも王が政務を放り投げるからじゃないの!」
「は、はぁ…」
「しかも父がちょっと体調を崩しただけで隠居を申し渡して、娘に後を継がせろって、無茶苦茶にも程があるわよ!」
「あ、あの…」
「そのうえ父もハイハイとその場で従ってしまって、私の意思も何もないじゃない!」
「お、王様は…」
「そりゃ宰相家の人間だし、いつかは重役を担うことは有るだろうとはおもっていたけど、仕官学校出てすぐの人間にやらせることじゃないわよ!」
「…」
「服だって父の服を借りてるから、着にくいったらありゃしない!…で、王は?」
「あ、え、はい、馬場のほうです…」
「また政務もやらずに…!」
彼女は怒りながらそこへと向かう。下人に目もくれずに。
下人はただ呆と見送る。
『ああ、自分はただ愚痴られる為だけにあるのだな』と思いながら。
目線の先にある彼女は遠くから見ても怒りのオーラが出ている。
そんな得体のしれない力を出しながら彼女は、また転んだ。
302名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 02:30:09 ID:60GgEOrk
「王!!」
「ん〜」
彼女のたどり着いた場所、馬場には男が居た。
青年というには若くなく、壮年というにはまだ早いといったような姿だ。
遠目から見れば武人のような簡素な衣装だが、近くで見ると彼の姿格好が只者ではないと証明している。
馬に乗りながら、何かを考えているよな表情。
部下が明らかに怒っているのも、気にもしていないといった態度だ。
「王、政務もなさらず、ここでなにをなさっておいでですか?」
「ああ、空を見ていた」
「空を?」
「ああ、空だ。宰相、知っているか?空には無数の星があり、そこには我々と同じような人間が住んでいるそうだ」
「それは天文学者とかいう、奇人たちの言い分でしょう?王、そんなことが政務より大切なのですか?第一私は宰相代理です。まだ当主は父のままです」
そろそろ限界なのか、彼女は顔を引きつらせる
「あれ?そうだったっけ?んじゃ今この場で任命する、おまえさんは宰相ね。はい、これで大丈夫、あとの政務は任せたよ」
そう言いながら男は馬を走らせ、王宮から出て行く。
「王!お待ちください!」
「はっはっは、頑張ってくれ宰相様!」
徒歩と馬では到底追いつくことも出来ず、王は城から出て行ってしまう。
おそらく、いつものように狩りにいくのであろう。
「はぁ…」
取り残されてしまった彼女は溜められていく政務をほうっておくことなどできず、とぼとぼと執務室へと向かうのであった。
今まで愚痴として、適当に聞いていた父の苦労を今更ながらに味わいつつ…。
303名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 02:32:09 ID:60GgEOrk
ここまでです
なんか脳からの垂れ流しだったんで、ちょっとカタチになっていませんね
エロを絡めたいと思ったけれど、難しいですね
304名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 06:16:20 ID:yspAx9hL
GJGJGJ!
ただ、普通はガーターベルトを先に着けてから下着、の順だと思う
ファムがいつもは着ないもんだから知らなかったとかそんな設定だったらスマソ
305 ◆KK1/GhBRzM :2007/02/07(水) 07:14:30 ID:6n6sRi5n
>>304
ご指摘ありがとうございます! 素で間違えてましたorz

そうだよな…トイレに行けないよな…
306名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 09:49:51 ID:90GdlZ0Z
ガーターとショーツの付け方はどっちでも正解だよー
現代はガータ→ショーツが常識になってるけど、昔は
反対だった時もあるみたいだし。
ネタとしてそーゆー付け方をしてるのは、その手の商売の人
だというのもあって、俺は別の意味で萌えた。

デューはどんどんエロオヤジ化すれるといい
それでファムに拗ねられればいいさw

新作も増えて、早めのバレンタインデーみたいで夢
見ているみたいだ。
307名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 11:40:07 ID:6HmSzFY7
>>301
うむぅ、呼称が気になった。
臣下からの呼びかけは「王」じゃなくて「陛下」だと思う。
あとこれはグータラ主の嫌がらせかもしれないんで
何とも言えないが、宰相に様付けも違和感あるかな?

しかし中身は激しく好みだ。
自分もこの手の組み合わせがツボなので、是非続き書いて欲しい。
つぅか宰相萌え。
308 ◆KK1/GhBRzM :2007/02/07(水) 16:37:36 ID:6n6sRi5n
>>306
なるほど。あながち間違いでもないんですね。
参考になりました、ありがとう。

長々とスマソ。名無しに戻ります。
309名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 04:55:21 ID:kRpf/TLd
304です
自分の思い込みで発言して申し訳なかったorz
もう余計な事言わずに神々を待ってる
310名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 16:37:19 ID:fyuKO3U0
陛下がどういうふうにシルヴァリアを初床に持ち込んだのか…
気になって眠れない。
311名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 19:06:00 ID:VgqQNVAY
同じく
312名無しさん@ピンキー:2007/02/10(土) 20:11:14 ID:aahagbvy
初床に持ち込むまでのやり取りを想像して(;´Д`)ハァハァ
313名無しさん@ピンキー:2007/02/13(火) 21:58:43 ID:2SdUGVVq
さて、明日はバレンタインな訳だが
314名無しさん@ピンキー:2007/02/13(火) 23:27:43 ID:ZccIcg9y
明日は煮干の日だぞ
315名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 00:18:37 ID:WTTulBvb
急に過疎りだしたな…

職人様方の復活を心より願う!
頼んます…
316名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 00:57:14 ID:D/n8ehyV
犬「信号青だから信号渡れるね」のガイドライン
ttp://ex20.2ch.net/test/read.cgi/gline/1167188557/447-455

この元奴隷×女王に激しく萌えた……。
317名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 07:08:39 ID:dTOStX22
これはいいもの
318名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 15:33:51 ID:/vkrgJlx
>>316
む、オレは似たような話を知っているな。
その話だと、姫救出後、元奴隷は戦いの傷で死んじゃうんだけどな。
319名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 19:19:27 ID:oD8DP3p8
ペットと飼い主のような関係の研究者×亜人。
人外苦手な方はスルーして下さい。
320グランとエス1:2007/02/20(火) 19:21:03 ID:oD8DP3p8
 夢から覚めたばかりのエスは小さく身震いする。
 辺りを見渡してみるが主人の姿はない。
 椅子にかけてあった薄汚れた白衣を羽織ると寒さが少しだけ和らぎ、主人の香りに包まれることで安心感を覚えた。

 エスが生まれたのは大きな森の小さな村だ。
 ある日森で遊んでいたエスが村へ帰ると村はなくなっていた。
 厳密にいうと村はなくなっていない。そこにあった当たり前の日常が消えていたのだ。
 気がつけばエスはたくさんの人の前に立たされていた。薄暗い室内でエスにだけスポットライトが当たる。ちりちりと首輪に繋がれた鎖が鳴った。
 自分の置かれた立場がエスにはよくわからない。
 けれど、最悪の状態だということはわかる。
 何も考えないようにして耐えてきたが、もう怖い思いをするのは嫌だった。
 しかし、逃げ出したくても隣には屈強な男が鞭を片手に待機している。あれで打たれると肌が裂けて体が動かなくなることをエスは知っていた。
 周りの人たちは皆エスを見て密やかに会話を交わす。
 一人の男が声を上げたのを皮切りにあちこちで同じように声がする。
 声はだんだんと数を減らし、痩せた男の声を最後に辺りがしんと静まる。
 エスの隣にいた男が鎖を引いた。
 引かれるままに歩き、エスは光の当たる場所から引き下ろされる。
 ふと振り返ると自分と同じ格好をした少年が同じように光を当てられていた。
 とぼとぼと歩き、男が立ち止まったのに合わせてエスも止まる。
 目の前には先ほどの痩せた男がいた。
 白に近い金色の髪とアイスブルーの瞳。エスは自分よりずっと背の高い男を見上げた。
「おいで」
 首輪から鎖が外されて、男がエスに右手を差し出す。
「おいで。怖くないから」
 村を出てから外の人が自分たちの言葉を話すのをエスは初めて聞いた。
 おそるおそる右手を掴むと男はエスを担ぎ上げた。男の腕に腰掛けるようにして抱かれ、エスは驚いて男の首にしがみついた。
 それがエスの主人──グラン・L・エシェンバードとの出逢いだった。

 エスは白衣を大事そうに撫で、再び寝台に横たわる。寝台といっても小さな病院にあるような簡素なものだ。エスがいるのはグランの研究室に隣接した仮眠室。
 しばらくうつらうつらと微睡んでいたら研究室側の扉が開いた。
 勢いよく起き上がり、エスはぱたぱたと尻尾を振る。
「マスタ」
 眼鏡を外して胸ポケットにしまいながら、グランはエスに視線を落とす。
321グランとエス2:2007/02/20(火) 19:22:34 ID:oD8DP3p8
「おはよう、お寝坊さん。私の白衣の着心地はいかがかな」
「あ、ごめんなさい」
 もぞもぞと動いて白衣を脱ごうとする。
 はだけた肩にグランが手を置いた。
「いいよ。着ていなさい。裸では寒いだろう」
 慈しむようにグランの手はエスの頬を撫でてから白衣を引き上げた。
「わたしの服は?」
「洗濯中だ。君はすぐに汚してしまうから洗っても洗ってもきりがないよ。また新しい服を買いに行かなければいけないね」
 隣に腰掛けたグランの膝によじ登り、エスは嬉しそうに頬を胸に擦りつける。
「マスタ。しっぽダメ」
 勢いよく振られた尻尾を撫ではじめたグランの手から逃れようとエスは尻尾を動かす。
「どうして? 気持ちよくなるからかな」
 ぞわぞわと背筋をかけのぼる感覚にエスはきつく目を閉じる。
「ダメ、うずうずする」
 グランの息が耳にかかる。
「気持ちいいのは嫌いかい?」
 優しく撫でるように触れられると全身の力が抜けていく。そして、体の奥から甘さを伴った熱が湧き上がってくる。
 エスは小さく体を震わせてグランのシャツを掴んだ。
「だめ?」
 白衣の合わせ目から手を差し入れて、グランはエスを裸にしようとする。
「嫌ならやめるけど」
 羽根が触れるような口づけを額に落とされる。
 エスは目を開けてグランを見上げた。
「や、じゃない」
 恥ずかしさですぐに俯きながら呟くと、グランがにっこり笑った。
「あ、んッ……」
 寝台に押し倒され、鎖骨に唇が触れる。乳房をすくい上げるようにして揉みし抱き、肌の甘さを味わう。
「ここをきゅっと摘まれるのが好き?」
 ぷっくりと膨らんだ頂をグランが指で摘む。エスの体が跳ね、甘い声を漏らした。
「それとも、舐めてもらう方がいいかな」
 ぐりぐりとこね回され、大きな刺激に涙を浮かべる。
 グランの唇が片方の頂を啄み、唾液をまぶすようにして舌で押し潰す。
 両方の乳房から快感が押し寄せてくる。とても気持ちがいいのにそれだけでは足りないとエスの体が訴える。
 もぞもぞと太股を擦り合わせているエスに気づき、グランは顔を上げた。
「どうして欲しいのかな」
 切なげなエスの表情を眺めて、グランは意地悪く問う。
「さわって、ほしい」
「どこに?」
 恥ずかしそうに躊躇しているエスを促すためにグランは赤く腫れた頂を指で弾いた。
322グランとエス3:2007/02/20(火) 19:23:49 ID:oD8DP3p8
「どこに触ってほしいの?」
 ふさふさとした尻尾がグランの右手に巻き付き、そのまま腿の付け根へと導いていく。
「ここ、ここさわって」
 グランの指がエスの中に潜り込む。
「あッ」
 小さく声を上げてからは小刻みに体を震わせてグランの与える快感に身を任せてしまう。
「気持ちいいんだね、エス」
 穏やかな表情とは裏腹にグランの指や舌はエスの性感帯をこれでもかというほどに刺激する。
 挿入も果たしていないというのに、エスはグランに導かれて絶頂へと達してしまっていた。
 そこから先は夢と現の間をさまようような微睡みの中でグランの熱く滾る欲望を何度となく受け入れ、意識を失いかけるまで相手の与える感覚を互いに貪りあうのであった。

 汗ばんだ体のままでエスはグランの背中を眺めていた。
 白衣を着たグランは細身の眼鏡をかけて椅子に座り、エスにはよくわからない研究の為の資料を読んでいる。難しいことは何もわからないし、エスは読み書きを始めたばかりだ。
 研究者の顔をしているグランも嫌いではない。けれど、いつもの優しいグランの方がエスは好きだ。
 振り向いて「おはよう。汗をかいたからそのままでは風邪をひいてしまうね。お風呂に入っておいで」といつものように声をかけてほしい。わしゃわしゃと頭を撫でてほしい。
 グランが気がつくまでこのままでいようと決め、エスは薄い毛布を体に巻き付けた。


おわり

323名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 20:08:23 ID:l/NnjIVo
(;´Д`)ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
GJGJGJGJGJGJGJGJッッ!!!
324名無しさん@ピンキー:2007/02/22(木) 12:57:05 ID:LuFqcaNJ
GJ!!!!
神よ、ありがとう……!
エス可愛いよエス。
325名無しさん@ピンキー:2007/02/23(金) 22:00:52 ID:fekUnWx5
グラエスキタァアアアアアアア!!!!。

……姉妹スレの某カポとクロスオーバー…なんてないよね。
326319:2007/02/23(金) 23:43:40 ID:/zpQpiL4
グランとエス気に入ってもらえてよかった。
GJくれた方、ありがとう。


>>325
実は姉妹スレの研究者とは兄弟という設定なんだ。
気づく方がいるなんて驚いたけど嬉しい。
327名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 11:21:02 ID:kN31n6gt
>>326
325じゃないけど気づくさ〜(*´∀`*)/~
エシェンバードだもん。あっちのエシェンバードとお嬢さまで
いっちょお願いしますお。でもそれだとある意味NTRになっちゃうから
職人的には微妙なのかな?
328名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 13:14:54 ID:kN31n6gt
あと恒例の圧縮くるらしい。保守で雑談してた方がいいかも。

姉妹スレと同じようにこっちも「自分の好きな男主人女従者の
主従関係」あげる遊びでもしとく? とりあえず言いだしっぺから。

アリスソフトのエロゲ『ランスシリーズ』からランスとシィル。
もこもこ可愛いよもこもこ
329名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 13:30:13 ID:nFnMfJMC
もう圧縮きたよ
330名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 21:24:01 ID:1PV7YHrD
>>328
ど、ドンマイ・・・・・・
331名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 22:35:15 ID:FegSiUJo
しかし、投下も話題もないよりはマシ

男主女従で思い出すのは「不思議の海のナディア」のネモ船長とエレクトラ
切ない関係が子ども心にキタ二人だ
332名無しさん@ピンキー:2007/02/27(火) 16:05:27 ID:1/FRrQHr
保守あげ
333名無しさん@ピンキー:2007/02/27(火) 18:38:15 ID:ElU3M7O8
>>330
ありがd。しかもとっくに圧縮きた後だったみたい。
ちょとハズカシス(´・ω・`;)
だいぶ色んなスレ落ちたね。ここは無事でよかった。

>ネモ船長とエレクトラ
あれは確かにいい主従。愛憎関係てのは禿萌える。

主従とはちょっと違うけど銀英伝のロイエンタールとエルフリーデの関係とか素晴らしく愛憎でいい。
334名無しさん@ピンキー:2007/02/27(火) 19:06:04 ID:JrPnQB0r
チェオクの剣とか…どうだろうか。
設定はいいのだが、いかんせんドラマが面白くないので見続けられない。

335名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 19:05:59 ID:xF3dZtoN
>>334
だって韓ドラだし。展開的には日本のp(ry

それはさておき、ちょっとネタ垂れ流し。

(中世的なへたれ)皇子とその従者の(ゴッツイ男勝りの)女戦士
皇子は「魔皇」というまがまがしいモノになってしまうのろいのかかってて
・通常は力量も能力も女戦士>皇子。
・異形になったときだけ皇子が上回る
とか考えてたらいつぞやの変身ヒーローかよ……というところで思考停止。

ごめんね逆転パターン大好きな変態で。
336名無しさん@ピンキー:2007/03/04(日) 19:07:05 ID:Hq2zoQgq
>>335
なんだそのおそろしいほどの萌えは
あんたが変態なら俺も変態だ
337名無しさん@ピンキー:2007/03/04(日) 21:27:11 ID:MCBHup78
>>335
同胞がいると聞いて馳せ参じました。
338名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 16:51:57 ID:C5sszxXT
 自分の理想の男主人×女従者と言うと
ラングリッサー3のアルテミュラー×ファーナ。
 これのお陰でそれまで筋肉系の野郎が好みだったのに
末生り瓢箪な野郎も好きになってしまい、ジルオールの
おさげ兄さんとかジャスティス学園の双子兄さんとかで
妄想が湧いてしまってもうね。
339名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 23:07:57 ID:47BU8qw+
新作期待AGE











(゚д゚)
340名無しさん@ピンキー:2007/03/07(水) 00:45:47 ID:GGWiI8a4

「陛下!…陛下!」
腰まで届く絹のような黒髪が、歩みと共にふわりと浮く。
真紅の絨毯を忙しく駆ける彼女こそは、この国の宰相閣下である。
「んあ?リースだ」
ひょっこり現れたのは、彼女より年下の国王・レン。「陛下、この様な所に!あれほど執務室から出ないでくれと…!」
端正な、傾国の美しさと称えられる顔。しかしその眉間には、この若き国王の奔放さに振り回されることによる皺が刻まれていた。
「まーまー、落ち着け。折角の美貌が…」
「話を聞きなさい!…隣国の要人が接見に参っています。早く…って逃げるなぁ!!」
…今日も城では、二人の鬼ごっこが繰り広げられています。

…みたいな。
貧困な想像力では、男女主従といえばこれしか。
341名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 00:49:04 ID:0ew7pPKV
ユリシスイリス読みたいよ(´・ω・`)
342名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 00:50:26 ID:0ew7pPKV
sage間違えた。逝ってくるorz
343名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 20:19:43 ID:POpBoeAt
まだ進展がないだけに、ユリシス×イリスカポーが気になります。
いつになったら報われるんでしょう?
せまるムンムン上司を軽くいなすイリス萌え。

鎮座してお待ちしております!
344名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 20:30:01 ID:Y3LUviUM
鎮座ワラタw
345335:2007/03/11(日) 04:11:41 ID:xM/aaGPi
小説を書こうと思ってどんどん書き込んでいったら、
エロシーンの前にグロシーンに入ってしまった

ていうか男主人のほうなんて、もう化け物だし……。

読みたいですか……?;
346名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 05:25:35 ID:SKmjau5m
そういう風に言われると読みたくなくなる人が少なからずいるのを覚えておいた方がいい
347名無しさん@ピンキー:2007/03/11(日) 23:52:23 ID:+rGsv/5X
最初にグロの注意書き入れればスレ違いな物じゃなけりゃたいてい大丈夫じゃないかなと。
348名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 18:56:25 ID:oaliTbjF
>>345
俺は読みたい
そういうの好きだ
349名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 19:06:57 ID:bkMKZbnL
むしろ俺が書く
350名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 22:05:09 ID:EYKWHKl6
最近投下ないし、なんかネタないかと考えてて思いついた、使用人のトップというべき執事×新米メイドというカプ。
こういうカプは投下するとスレ違いになるかな?一応上下関係にあるんだけど同じ使用人だから判断に迷ってしまった。
内容は、若様に性教育を施す執事。テキスト見ながらあれこれ説明した後で実際に見てみましょうかと半ば騙す形で連れてきたメイドを若様の目の前で…という話。若様絡めた3Pチックにしようと思ってる。
だめなら他のネタ考える。
351名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 00:19:44 ID:V5hFYL+n
是非投下を!
個人的には若君が絡んだ時点で主従だと思う
352名無しさん@ピンキー:2007/03/19(月) 00:58:10 ID:KYjt/T/S
新作期待age
353351:2007/03/22(木) 13:49:07 ID:lJYtlOuq
351です。
執事とメイド、大丈夫そうなんで投下する。
354執事とメイドと若様と 1:2007/03/22(木) 13:50:06 ID:lJYtlOuq
 酒々井が唇を離すと粘度を伴った蜜が糸を引いた。体を起こした酒々井は口周りにまとわりつくそれを手の甲で拭う。
 体全部で呼吸しようとしているかのように若葉は胸を大きく上下させて呼吸を繰り返している。
 十七という年相応に普段はあどけない笑顔で酒々井を見上げる若葉だが、今ばかりは女の色香を交えて酒々井を見つめた。
「酒々井、さま……も、ください」
 口唇と指での愛撫だけでは足りないと若葉は切なげに呻く。
「こんな……もう、や…です」
 力なく小さく首を振る若葉を見下ろし、酒々井は彼女の髪を優しく撫でる。
 今までに数回若葉は酒々井に裸体を晒したが、いつも若葉ばかりが達してしまい酒々井が若葉の前で乱れることはない。口唇と指での愛撫ばかりで熱い楔で貫かれたことは未だにないのだ。
 それを若葉は切なく思い、いつも半分泣きながらねだる。
「……欲しいか?」
 妥協とばかりに口唇での奉仕は許されていた。今日もそれで終わりなのだろうか、そんなのはもう嫌だと若葉は思う。
「ほしい、です……しすいさまぁ」
 羽根が触れるように優しく酒々井の唇が若葉のこめかみや額、頬に口づけを落とす。
 若葉は力の入らない手を一生懸命上げて酒々井の肩にしがみついた。
「抱いて、ください」
 酒々井に向かって何かをねだるなど恐れ多いと常日頃から甘えることをしない若葉もこの時ばかりは必死にねだる。
 欲しくて欲しくてたまらなかった。自分が欲しいと感じているのと同じだけ、若葉は酒々井にも求めて欲しかった。
「すき…すきです」
 唇が重なり、若葉は自ら舌を絡めて懸命に口づけを深めていく。
 酒々井は若葉の体を抱き起こし、膝に座らせて宥めるように背を撫でる。
「わかった」
 唇が離れると酒々井はそう呟いた。
「だが、準備が必要だ。少し待て」
 若葉を置いて、酒々井は立ち上がる。
 寝台に残された若葉は切なげに酒々井を見上げる。
「すぐ戻る」
 啄むような口づけを落として、酒々井は部屋から出ていってしまった。
 若葉は不満たっぷりに溜め息を吐いて寝台に横たわる。肌触りのよいシーツを引き上げてそれにくるまると火照った体が冷やされて気持ちよかった。
(酒々井さまの意地悪)
 くるまったシーツは酒々井の香りがする。酒々井はいつもここで休むのだ。そう思えば、こうしているのも悪くない気がする。
355執事とメイドと若様と 2:2007/03/22(木) 13:51:51 ID:lJYtlOuq
 酒々井の部屋で寝台に横たわっていられるのは自分だけの特権だと若葉は信じていた。冷血漢だの鉄面皮だのと称される酒々井が実はとても優しい人だと知っているのは若葉だけ。それが若葉にとっての幸せなのだ。
 気だるさと心地よさに眠気を覚え、うつらうつらしていると扉が開いて酒々井が現れた。
「若葉。手を」
 上体を起こし、若葉は酒々井に両手を差し出す。
 すると、酒々井は大きくて赤いリボンで若葉の両手を縛り始めた。肌触りのよい、絹のリボンが柔らかくけれどけして解けぬように若葉の手首を戒めた。
「あ、あの……」
 若葉とて知らぬわけではない。世の中にはこういう類の性癖を持った人間もいる。とはいえ、酒々井にその気があるとは考えたこともなかった。
「嫌か?」
 見上げる酒々井の顔には嫌ならやめると書いてある。やめるとは戒めばかりでなく行為すべてをやめるということだろう。
 若葉はこくりと唾を飲み下す。
「大丈夫、です」
 酒々井になら何をされても我慢できる。それに、耐えきれないほど嫌なことはきっと強いられたりしないはずだ。
 軽く肩を押され、若葉は寝台に横たわる。
「宗一郎様」
 扉に向かい、酒々井が声をかける。
「え? ……坊ちゃま」
 扉の開く音がする。
 どくんと若葉の心臓が跳ねる。
「どうされました。お入りください」
「うん。酒々井、本当に大丈夫なのか?」
「ええ、宗一郎様が心配されることはありません。若葉も宗一郎様の役に立てるのであればと健気にも申しておりますので」
 目の前で交わされる会話の意味が若葉にはわからない。正確にはわからないのでなく、脳が理解することを拒んでいる。
「酒々井、さま……?」
 何が起こっているのかわからず、若葉は探るように酒々井を見上げる。しかし、酒々井の表情は常と変わらぬものであり、そこから感情を読みとることは不可能だ。
「宗一郎様に女を教えて差し上げようと思ってな。教材ではよくわからぬと申される。百聞は一見に如かずというだろう?」
 つまり、酒々井は宗一郎の為に若葉の体を教材にしようというのだ。
 若葉は怯えきった表情で酒々井を見つめた。いくら酒々井の頼みとはいえ、男を知らぬ若葉にはその役目を果たせというのは酷な話だ。
「心配せずとも宗一郎様にお前を抱かせはせんよ」
 酒々井は安心させるように頭を撫でてくる。
「さあ、宗一郎様。お近くへ」
 ぎしりと寝台が軋み、宗一郎が寝台の端にかけた。
356執事とメイドと若様と 3:2007/03/22(木) 13:53:18 ID:lJYtlOuq
 横たわる若葉の肢体をまじまじと眺め、宗一郎は溜め息混じりに呟く。
「若葉、お前はきれいだね」
 羞恥に肌を染め、若葉はきつく目を閉じた。
「よろしいですか、宗一郎様。まずは体の構造から」
 淡々と語る酒々井の言葉に耳を傾け、宗一郎は時折質問を交えながら知識を深めていく。
 学校の授業のようなやりとりを聞きながら、若葉は早く終わることだけを祈って目を閉じていた。
「さあ、じっくりご覧ください」
 膝を掴まれて、大きく開かされる。
「ぁ……やっ」
 反射的に開こうとした足は酒々井が支えていて動かすことができなかった。
「変な形だ」
 宗一郎の声に若葉の肌がより赤く染まる。
「手本を見せましょう」
 膝から手が離れ、ほっとしたのも束の間、酒々井の唇が太股に触れたのだ。
「やっ! ああっ」
 そして、舌が秘裂を舐める。
「舐めてあげるの?」
「ええ。こうして受け入れる為の準備をします」
 暫く見ているようにと酒々井は宗一郎に告げ、若葉への愛撫に専念する。
 指で皮を剥き、露わになった陰核を舌でつつく。ねっとりと唾液を絡ませて、舐めたり啜ったりと刺激を繰り返す。
 宗一郎の視線を感じる分、いつもよりも敏感に酒々井からの刺激を感じてしまう。
「あ、ん……ひ、いやっ…あッ」
 羞恥と快楽の狭間で若葉は揺れる。恥ずかしくて死んでしまいそうなのに、もっと刺激が欲しいと思ってしまう。
 はしたなくもだらだらと蜜を溢れさせ、若葉は酒々井からの愛撫を楽しんでしまっていた。
「ん……は、ぁ…あッ、ああっ」
 若葉の性感帯を熟知している酒々井はあっという間に若葉を絶頂へと追いつめていく。しかし、酒々井は若葉が上り詰める手前で唇を離した。
「触れてみますか?」
 唾を飲み下し、宗一郎は小さく頷いた。
 酒々井の隣に腰を下ろし、若葉の秘裂に手を触れる。
「ぬるぬるしてる」
「男を受け入れる為には女はそうして潤っていなければなりません」
 宗一郎の手に手を添え、酒々井は指で割れ目をなぞる。
「ここに穴があるのがおわかりになりますか?」
 くちゅりと音を立て、宗一郎の指が中へと差し込まれた。
 若葉の体が強張り、宗一郎の指を締め付ける。
「ここに男根を沈めて交わるのですよ」
 ぱちぱちと瞬きを繰り返して宗一郎は己の指を飲み込んだ不可思議な女体を真剣に見つめた。
357執事とメイドと若様と 4:2007/03/22(木) 13:54:06 ID:lJYtlOuq
「熱くて、すごく窮屈だ。本当に入るの?」
「入りますよ。女の体は存外丈夫にできておりますから」
 酒々井が親指で陰核を押しつぶすようにして触れる。
「ああッ!!」
 びくびくと若葉の体が震え、宗一郎は興味深そうに酒々井の指の動きを追う。
「ここがいいの?」
「一番敏感な部分ですから」
 酒々井が手を離すと宗一郎が拙い様子で若葉を愛撫する。指で秘裂をなぞり、蜜を絡めた指で陰核を撫でる。
 酒々井の指ではないとわかっているのに、目を開けば酒々井の艶めいた瞳が若葉に向けられている。酒々井に見つめられているだけで若葉は感じてしまう自分を抑えることができない。
「すごい。どんどん溢れてくるよ」
 宗一郎は夢中になって秘裂を弄る。濡れた音が響く度に若葉は嬌声をあげて仰け反った。
「若葉、欲しいか?」
 耳元に顔を寄せ、酒々井が声低く囁く。
「しすい…さま……あ、んんっ……しすい、さま」
 若葉は譫言のように呟いて酒々井の腕をぎゅっと掴む。
 唇を重ね、酒々井は若葉の手に手を絡める。下唇を噛み、舌を差し入れて咥内を弄る。
「酒々井」
 宗一郎に呼ばれ、酒々井は体を起こした。
「そろそろよいでしょう。宗一郎様」
 秘裂から手を離し、宗一郎が僅かに身を引く。酒々井は若葉の足を大きく開かせてその間に膝をついた。
「酒々井のは僕のと少し違うね」
 前をくつろげて酒々井が取り出した陰茎をまじまじと眺め、宗一郎が不思議そうに首を傾げた。
「宗一郎様も大人になればこうなります」
 逞しく屹立した陰茎に手を添えて、秘裂へ擦りつけるように何度も動かす。
「このようにして蜜を絡めると挿入しやすくなります」
 酒々井の陰茎が触れている。朦朧とした意識の中で、若葉はその感覚に意識を集中させた。この異常な状態を受け入れてしまえるほどに若葉は酒々井を愛している。
「あ……っ」
 十分に潤っているとはいえ狭くきつい場所をかき分けて陰茎が中へと沈んでいく。
 その強烈な違和感に若葉はぐっと唇を噛み締めた。
「大丈夫か?」
 腰を押しつけて、すべて収まりきったことを伝えながら酒々井が若葉を気遣う。
「は、はい」
 まるで中のものをなぞるように下腹部を撫でられ、若葉の内部が陰茎をきつく締め付ける。
 若葉の表情を探るよう見下ろしていた酒々井は若葉の言葉に嘘がないと感じたのか、緩やかに馴染ませるよう腰を引いて再び収めることを繰り返す。
358執事とメイドと若様と 5:2007/03/22(木) 13:54:54 ID:lJYtlOuq
「ん、ふっ……あッ」
 そうしながら酒々井は手を伸ばして、若葉の戒めを解いた。
 膣壁を擦りあげ、奥を突き、酒々井は若葉の柔肉を味わう。時間をかけて準備を整えたせいか若葉が痛みを感じている様子はない。酒々井は僅かに安堵した表情を見せ、若葉の腰を引いて最奥を穿つ。
「あッ……や、だ…やッ……あ、ああッ」
 唇に拳を当て、もう片方ではシーツを掴み、若葉は湧き上がる感覚を必死に逃がそうと試みている。夢にまで見た酒々井との交合は想像していたよりもずっと刺激的だった。
「気持ちいいのか、若葉」
 常よりも心なしか熱を含んだ低温が若葉の名を呼ぶ。若葉は首を縦に幾度も振って、その問いに答えた。
 酒々井は若葉の中を不規則に動き、敏感な場所を探る。浅く上部を擦りあげた時、若葉の体が強張った。
「だ、だめ……あっ、あああッ」
 心得たとばかりに酒々井は同じ動作を幾度となく繰り返す。頭を振って逃げ出そうとする若葉をやんわりと押さえつけ、酒々井は弱い部分を責め立てる。
 ほどなくして若葉は背を仰け反らせて、陰茎を喰いちぎらんばかりに締め付けた。絶頂に達したのだ。
「ふっ…あ……は、ぁ」
 酒々井は動きを止め、若葉の荒々しい息が整うよう体を撫でる。
 そうしながら視線を脇に逸らして宗一郎の姿をとらえる。
 食い入るようにこちらを見つめ、宗一郎は張り詰めて盛り上がった股間を両手で覆い隠している。
 くすりと酒々井は小さく笑う。
「宗一郎様」
 酒々井に呼びかけられ、宗一郎の体が小さく跳ねた。
「苦しいのでしたら若葉に奉仕させましょう」
 射精を迎えていない陰茎は未だ隆々と聳える。それを若葉から引き抜き、酒々井は若葉を四つん這いにさせた。
「しす…さま……んッ」
 腰を突き出すような形にさせ、酒々井は躊躇うことなく再び若葉を貫いた。
「さあ、宗一郎様。若葉の前に」
 のろのろした動作で宗一郎は若葉の前に座り込む。
「若葉」
 ゆるりと腰を引き、同じ速度で押しつける。
 胡乱な目をした若葉は宗一郎の前をくつろげ、まだ若い陰茎を取り出した。
「あ、若葉……」
 酒々井は緩やかに腰を揺らし続け、若葉は苦悶に顔を歪めながら宗一郎の陰茎に指を這わせた。
 だらだら先走りを零すそれに舌を這わせ、おもむろに口に含む。苦みばしった味が咥内に広がったが、若葉は嫌悪感よりも興奮を覚えた。
359執事とメイドと若様と 6:2007/03/22(木) 13:55:43 ID:lJYtlOuq
「うあっ」
 初めての感覚に宗一郎が呻く。ともすれば早々に射精してしまいそうなほどに宗一郎は高ぶっている。
 酒々井が突き上げる振動が若葉を通して宗一郎に伝わる。咥内の熱さと相まって、まるで自身が若葉を犯しているように宗一郎に錯覚させる。
 技巧も何もない。若葉はくわえて扱いているだけだ。けれど宗一郎の性感は徐々に高まり、激しい尿意に似た感覚が全身を支配する。
 出したい──若葉の口中に滾った熱をすべて吐き出してしまいたい。汚してしまいたい。宗一郎はもうそれしか考えられなくなる。
「若葉ッ、う…く、ああッ」
 ふつりと糸が切れるように限界は突然だ。
 咥内に吐き出された白濁を飲み下すことができず若葉は咳き込む。
「あッ!! あ、あっ…ん、はッ……ああッ」
 宗一郎が腰を引いたのを確認次第酒々井の腰の動きが変わる。深く強く、腰ごと奥へ打ちつけていく。
 口を閉じることもできず若葉は唾液を垂れ流しながらシーツを掴んで頭を振った。精液の染み込んだシーツからは青臭い香りが立ち上る。
「若葉…若葉……」
 酒々井の声からも余裕はだいぶなくなっていることがうかがえる。
 欲望のままに腰を振りたて、酒々井は頂点へと駆け上っていく。
「あ……あ、ああああッ」
 若葉の腰を掴んで引きよせ、酒々井は一際強く打ち付ける。膣内の激しい収縮から若葉が絶頂に達したことを悟りつつ、酒々井は勢いよく若葉の中から陰茎を引き抜く。
「……ッ、はぁ」
 抜き出してすぐに扱き、若葉の尻に白濁を散らした。
 若葉が力なく寝台に倒れ伏すと酒々井は精液や唾液、涙で汚れた顔をシーツで拭ってやる。
「しすい、さま……」
 既に意識はないようでぐったりしながらも若葉はか細い声で酒々井を呼んだ。
 酒々井は応えるように若葉の頬に口づけて髪を撫でる。
「酒々井。終わった、のか?」
 表情を引き締めて宗一郎に向き直り、酒々井は淡々と答える。
「ええ。本来ならば後戯に及ぶべきですが、如何せん若葉が限界ですから」
 後戯とは何ぞやと宗一郎にこと細かに説明し、酒々井は満足げに息をつく。
360執事とメイドと若様と 7:2007/03/22(木) 13:57:23 ID:lJYtlOuq
「これは」
 破瓜の血の混じった白濁を見て、宗一郎は首を傾げる。
「どうしてここに出したの?」
 中に出したくないのかと宗一郎は問う。
「子ができますから、夫婦になるまでは我慢しなければなりません」
 そういうものかと宗一郎が眉根を寄せる様を酒々井はほんの少しだけ困ったような顔で眺めた。
「宗一郎様。一つ忘れてはいけないことがあります」
 きょとんとした顔の宗一郎に酒々井は微笑んで囁く。
「若葉を抱いてよいのは私だけです。実践されるときは他の女でお試し下さい」
 滅多に見ることのできない微笑を前にしては、素直に頷くこと以外宗一郎にできようはずもなかった。
 頷く宗一郎を確認し、酒々井は慈しみを込めて傍らに投げ出された若葉の手を優しく撫でてやるのだった。


おわり


361名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 14:20:40 ID:4g+oHj79
これはGJではなかろうか?
最後の台詞がいいね。
362名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 15:53:17 ID:rY3FknaM
GJ!
執事とメイドものも(・∀・)イイ!!なぁ
ごちそうさまでした
363名無しさん@ピンキー:2007/03/22(木) 16:30:03 ID:ghUjhUTj
GJ!
いいなあ愛のある3P
364名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 01:00:44 ID:TnxC+EHp
ハイテンション系の子を書いて見ました。
関係は王の従兄弟と宰相の娘です。
非エロ
365名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 01:01:34 ID:TnxC+EHp
夕暮れ時も近づく中僕ことリュート・フェルト・ウェルスは執務室において簡単な雑務に励んでいた。
「リューくん、まとめるのは出来たから確認してよ」
「あっ、うん。わかったよ」
「それで最後だから、がんばってねリューくん」
「あっ、うん。がんばるよ、って……」
「どうかしたのリューくん?」
「さっきから僕を『リューくん』って呼んでいるように聞こえるんだけど」
「うん、呼んでいるけど、どうかしたのリューくん?」
 僕の目の前で彼女ティースハ・マナフィスは悪びれる様子も無く心から不思議そうな顔を僕に向けた。
「ねえティア、ここはどこで何処で僕達は何をしてるんだっけ?」
「ここはお城の中の執務室の一つで、リューくんは農作物の収穫量の確認で私はそのお手伝い」
「そうだよね。だったら僕が次に何を言いたいかわかるよね」
「お城の中では『リューくん』って呼ばないで、でしょ」
 ティアは背中まで伸びた金色の髪を揺らし、僅かに微笑みながら僕が望む正確な
回答を告げると表情を隠すように俯きながら言葉を続ける。
「でもね、リューくんは『二人きりの時は小さい時の呼び方で呼んで欲しい』って言ったよね。
その後……初めてで痛くて泣き叫ぶ私に優しくしてくれて……いっぱい幸せにしてくれたよね」
顔を覗き込もうとするも彼女は背中を向けてしまっていたためそれは適わなかった。
「…………リュート・フェルト・ウェルス王従兄弟殿下。殿下はあの時ご自身の口から私、ティースハ・マナフィスを
 好んでいると仰り、私も幼少の頃より殿下の事をずっとお慕いしておりますと申しそして……契りを交わし……」
「ティア……」
 僕は彼女の肩に手を回し背中から抱きしめ、右の手を頬へと運ぶ。
366名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 01:02:09 ID:TnxC+EHp
指先で目元を撫で濡れていないかを確認してからティアの温かく柔らかい頬を軽く抓る。
「いたっ! ちょっと何するのリューくん」
「それは僕の台詞」
「私の頬を抓ったんだからそれぐらい、いいじゃない。せっかくいい所だったのにさ」
「なんであんなことを言い出したの? しかも、わざわざ人前でも使わないような丁寧な言葉遣いで」
「ひどいな、人前でも使わないようなって。いくらリューくんの言葉でも傷つくよ。
それとも、リューくんもお父様と同じように宰相家に属する元として相応しい言葉遣いとかって言い出すの」
 最後の方を呟くように言った彼女の顔は先程以上に曇りが見えた。
「そんなつもりは無いし……」
「あはは……隙ありっ!」
「いた、いたぃって……」
「リューくんはもう少し用心深くなった方が良いかな」
 僕が戸窓った少しの間にティアの両手が僕の両頬を掴んだまま一回転する。
「まったく、ティアは……っと!」
「私は? 何かなリューくん?」
「可愛い」
 飛びつくように抱きついて来た彼女に言おうとした事より思った言葉が漏れてしまう。
「えへへ、嬉しいよ。ねえリューくん暫くこのままでいても良い?」
「うん」
「ありがとう。やっぱり、あったかいなリューくんの身体」
 その後、僕とティアは互いに満足するまで抱擁を交わし続けた。


おわり
367名無しさん@ピンキー:2007/03/25(日) 08:46:20 ID:smmSFewB
好きな主従ずっと考えててようやく思いついた。
るろ剣の志々雄×由美。志々雄編のラストはすごくよかった。
同作の蒼紫×操もけっこう好きだ。
368softbank221062140055.bbtec.net:2007/03/25(日) 11:13:15 ID:/ghFuIlk
syosinsya
369(つД`)↑:2007/03/25(日) 23:41:18 ID:lWYZGq0D
370名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 00:36:18 ID:NO2O9Vep
神スレ発見! 一度は書いてみたかったエロパロ投下してみようかな〜?

そういえば此方の神作品は純愛でラブラブな感じですが、もう少し無理やり〜な感じでも良いのかしら?
371名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 01:59:00 ID:BzbkgIdL
>>370
>>1も読めないのか
それとあなたのその口調(書き方)どうにかしてください
正直キモイです
372名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 05:50:15 ID:8/c/BA1G
>>371
荒らしで文盲のお前がキモイです
373名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 09:15:52 ID:NO2O9Vep
ガフッ! 申し訳ない。しっかりと見過ごしてました(汗
口調(書き方)をどうこう言われてしまうと、ここでは書けないですな(涙
374名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 09:35:02 ID:s2A6/CZZ
>>373
真面目に忠告
ここの板に書く人の控え室スレがあるから見に行くといいよまとめサイトもあるとても参考になる
375名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 09:59:11 ID:lbB9FCyu
釣りだろ
376名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 15:15:32 ID:sPJzwvXm
「執事とメイドと若様と」!
超イイですね!続編あればいいなぁ…。
和物にクラッときます。
377名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 18:34:35 ID:Jfi9wX9z
つ「茶」
まま、おまいらマターリ汁
378名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 00:10:39 ID:lvQS1XuQ
そんな事より作品投下しようぜ
379tugunai1:2007/03/29(木) 00:30:25 ID:qWN23jXU
3年前のその日は、塾の帰りだった。
横断歩道を渡っていた私は、突然真横からの光に覆われた。
キキー!!
暗闇に鳴り響く車の急ブレーキの後、
顔をそちらに向ける前に、誰かに後ろから強く腕を引っ張られ、振り子のように大きく後方に振られた。
体が浮き上がった後、地面に腰を打ちつけた衝撃と、目の前の車、鈍い衝撃音。

ドンッ!!!

一体何が起こったのか。
今さっきまで、自分がいたはずの位置にうつ伏せに少年が倒れていた。
だんだんと地面が赤く染まっていく・・・。

「い・・・、いやあああああああああぁ!!」




目覚めたのは、布団の上だった。
ただし自分の物ではない。

「大丈夫か?うなされてたぞ。」
机で勉強でもしていたのか、この部屋の持ち主はこちらを見ずに言った。
端正な横顔は、大人になりきってはいないが少年というには大人びている。

「・・・事故の夢を見てたの。」

「事故?」
ああ、と彼は唇を歪めて哂った。
「俺が、誰かさんを庇ったせいで再起不能になったアレね。」
クックッと自重するような笑い方。
以前の彼なら、そんな笑い方はしなかった。
いつもスポーツマンらしいさわやかな笑顔で明るくてムードメーカーだった。
サッカーの神童といわれてスポーツ推薦で高校に入るくらい才能があって、自分には遠い世界の人だったのに。


彼と私はかつて、いわゆる幼馴染というやつだった。
泣き虫の私は、いつも彼にいじめられてて。
でも、いつも後をついてまわってた。
いつも一緒にいるのが当たり前で、だけどそれは中学に入ったときから変り始めた。

彼は、サッカーを始めてぐんぐん背が伸びだして格好良くなった。
神童と言われるまでになって、ファンクラブとかも出来て。
性格も明るくて、社交的だったから彼の周りには常に人だかりが出来てた。

私をからかってた幼馴染は遠い人になってしまった。

側に居られなくなって初めて、私は彼が好きだったことに気付いた。


中学3年生の時には、お互いもうほとんど会話をすることもなくなったし
高校はスポーツに力を入れてるところに推薦が決まったって言ってた。

高校生になってから、たまに街で見かける事はあったけど
物凄く格好良くなってて、いつも誰かと一緒だから気軽に声なんてかけられるわけもなかった。

私はこっそり試合を見に行ったりして、遠くから見てるだけで満足だった。
380tugunai2:2007/03/29(木) 00:31:04 ID:qWN23jXU

偶然。
本当に偶然だったのだ。
あの日、たまたま塾の帰りだった私の後ろに彼が通りかかって。
突然。
私に居眠り運転の車が突っ込んできたから。
何年も口を利いてなかった幼馴染でも、優しい彼は、放っておけなかったんだろう。


私が、壊してしまった。
彼の人生のすべてを。


あの事故のせいで両足を骨折した彼は、普通の運動なら問題ないが元のようにサッカーは出来ないと医者に宣告された。

私を庇ったせいで、私の命と引き換えに彼はサッカーを失ったのだ。
これからだった彼の人生を。


「腹が減った、さっさと飯を作ってくれ。」
事務的な命令口調に、現実に引き戻される。
もう、いじめっ子だった幼馴染も私の憧れだったスポーツ少年もいないのだ。
布団から起き上がると、ひやりとした朝の空気が素肌に触れた。
行為のとき以外に目をあわせてもくれない彼は、私のことを憎んでいる。
「わかりました、ご主人様。」
それでも、側に居て償いたいと望んだのは自分。

今はもう、幼い日の友情など跡形もなく


――あるのは、ご主人様と従順な奴隷という主従関係のみ――
381SS修行中:2007/03/29(木) 00:34:35 ID:qWN23jXU
>379・380
序章だけ書いてみたので投下。
SS初なので文章が微妙・・・。
382名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 00:40:40 ID:i02q/7+E
こういう主従関係もいいな
続き期待
383名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 00:46:52 ID:r9Xm7SQ7
何つーか……、自分の意志で庇ったんなら恨むなよ、と思う。
それで黙って離れていくならともかく、わざわざ犯罪まがいの主従関係とかあり得ないし。
自分の人生をカタに彼女の人生を潰すのはそもそも主従じゃないし。
384SS修行中:2007/03/29(木) 01:20:16 ID:qWN23jXU
>383
スマン。くどく説明するのもどうかと思ったんで、書かなかったんだが・・・彼女の一人称なので恨まれてるってのは彼女の勝手な勘違い。
以下、男サイドの大体の流れとネタバレなので苦手な方はスルーして下さい。
やはり、SSは難しいな・・・。続きは書かないと思うので、気になる人は脳内補完で。

男は、実はずっと前から彼女のことが好きだったが、中学時代に彼女とその友人達の話を立ち聞きしてしまい彼女は別の男が好きだと勘違いする。
その思いを昇華するためにサッカーにのめり込み、諦める為に違う高校にも入ったが、塾の帰りの彼女に偶然会ってからは時間を合わせて夜道で危険が無いように見守っていた。
というか、彼女に会いたいだけだったのだが・・・。

そして、事故がおこる。
両親は嘆いたが、サッカーよりも彼女の方が大事だった彼はその結果に満足していた。
しかし男は、彼女の性格を知っており自分を責めるであろう事は予想できたので、わざと冷たくあしらう。
「いますぐ俺の目の前から消えてくれ。二度と顔を見せるな。」
男は、彼女に好きな人がおり付き合っていると勘違いしていた為にサッカーが出来なくなった自分に同情で側に居て欲しくなかった。
彼女は普段気弱だが、責任感が強く、ここぞというときには頑固な性質だった。
なかなか引かない彼女に諦めさせるべく、
「じゃあ、選べ。今すぐ俺の前から消えるか。俺に絶対服従の奴隷になるかだ。」
と言ったのだが、なんと彼女は承諾してしまう。

引くに引けなくなった男は、彼女への思いも強い為に誘惑に負ける。
同情でもせめて体だけでも繋ぎ止めておきたいと思うが、罪悪感のあまり普段はまともに彼女の顔を見ることが出来ない。
サッカーしかとりえの無かった自分に、彼女に好かれる価値も自信も見出せず性格も少しずつ歪みやさぐれてしまう。

ここまでが、導入。
385名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 01:47:12 ID:vaZrM+dY
ネタバレも何も
どうせなら書いておくれ
386名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 01:52:33 ID:4fGD9SIz
と言うか、この程度の裏は普通に読めるだろ。
387SS修行中:2007/03/29(木) 02:05:09 ID:qWN23jXU
>385
スマン。SSは書けないが、最後までの流れなら書けるので投下してみる。
ベタベタの王道だが。

その後、男は彼女の思い人と思い込んでいた奴と出会う。
自分への償いの為に別れたのだと思っていた男は、話しているうちに「彼女に告白したがすぐに好きな人がいる、と振られた。」と言うことを知る。
ならば彼女の好きな人とは一体誰か?

一方、彼女の方も友人との話で好きな人がいるが、相手にセフレとしか思われていないと言う悩みを聞きだされていた(内容は誤魔化して脚色している)。
他の女の影が無いのは怪しい、ひょっとして両思いでは?と友人に言われる。
そんなはずは無いと思いながらも少し期待を持ってしまう。

二人の関係が微妙に変化しかけるが、そんな矢先に彼女は自分が妊娠していることを知る。
絶対に彼におろせと言われると思っている彼女は、彼から逃げ出し理由も告げず友人のところにかくまってもらう。両親にばれると幼馴染の彼にもばれるので、安定期に入り落ち着いてから報告しようと思っていた。まさか、彼が自分を探そうとするとは思いもよらずに。

彼は、突然いなくなった彼女を必死で探す。
彼女の両親、友人のところなどを探し回るが、練習試合をよく見に来ていたとか、それぞれの場所で話を聞くうちに彼女が好きだったというのはもしかして自分では?という確証が起こる。

更に1ヶ月が経過し、彼女は、天気の良い日に俺と良く遊んだ公園のブランコに座っていた。
昔を回想する彼女の前に、(しつこく彼女の大学の友人の下に通い、拝み倒し彼女の場所を聞いた)現実の彼が現れる。
まさか憎んでいる自分を探そうとするとは思わなかった彼女は、あわてて逃げ出そうとするが彼に捕まる。
どうして逃げたのかと問いただす彼に、無言の彼女。
しばらくの沈黙の後に、彼は思い切って彼女に聞いた。俺のことが好きだったのか、と。
彼女は、秘めていた思いを知られたことに混乱し妊娠したからもう側に居られないと告げる。
しかし、次の瞬間「じゃあ、結婚しよう」と抱きすくめられ「ずっと好きだった」と言われる。

長い間、すれ違い平行線をたどっていた二人だったが、やっと両思いになったところでEND
388名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 04:23:02 ID:FneLvmCM
好みそうな話っぽいので、せっかく序章まで書いたんだし、
ネタばれもったいないので読んでないが文の長さから、
あらすじもすでにだいぶ固まってるっぽいし、
せっかくなので最後までSS化してみてほしいと思う俺。
389名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 09:39:21 ID:n5xEFYb3
初めてならなおさら、最後まで全部書いて、
頭から読みなおし矛盾を排除、
推敲に推敲を重ねて投下してほしい。
序章だけ書いてあとは書けません、が読み手にとって一番辛い展開だ。
あらすじ語る前に、言いたい事はSSに込めろ。
とりあえず↑に出ている書き手控室を数日ROMれ
390名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 22:59:38 ID:hD+dTBfn
せっかくの良SSなのに勿体ない(・ω・`)
391名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 01:23:32 ID:BkZSnY+c
^^;
392名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 02:11:24 ID:H9FzfLOt
>>379-380は好みの設定だっただけに
こういう形になってしまって残念だ
393 ◆KK1/GhBRzM :2007/03/30(金) 16:34:36 ID:1B0//uXR
流れを変えて、デュー×ファム投下。
長くなったので前後編に。
前編はただ、イチャイチャしてるだけですが。

携帯からの投下なので、読み辛いでしょうが、ご了承下さい。
394王都騎士団【一緒にお風呂・前編】1:2007/03/30(金) 16:36:15 ID:1B0//uXR
 本来、重要な役職に就く者同士の休暇が、重なる事はない。
 では二人が恋仲であった場合、如何にして、二人きりの時間を得るのか。

 簡単な話ではあるが、実行に移す者は、まず居ないだろう。
 しかし、それを実行してしまうのが、デュラハムと言う男なのだ。




 ──職権乱用よね、これって。

 簡易宿舎の中、湯につかりながら、ファムレイユはひっそりと溜め息を吐いた。

 王都から西へ二日。山岳地帯に程近い、公領地イルグスである。

 さて。
 この冬、新しく入団した騎士団員見習いは、総勢十八名。その中の四名が女性騎士である。
 見習いとして入団し、まず最初に行われるのは、適正試験を兼ねた演習である。
 付属養成所からの推薦状が出る為、殆んどの場合、どの隊に配属されるかは、入団時に決められているのだが、この演習の本来の目的はそこではない。
 養成所に講師として出向する騎士団員だけでなく、隊長格の人間が、見習い騎士達の資質を、直接確認する為に行われるのだ。

 そして今年に限って、騎士団長であるデュラハム自らが、その任を請け負った。
 勿論、騎士団としては、これに勝る適任者は居ない。
 総勢五千を越える騎士団なのだ。幾等デュラハムが有能とは言え、その一人一人に目が行く訳ではない。
 だからこそ、こう言った機会は大切にしなければならない。

 見習い騎士達の為にも、誰か一人は女性騎士が必要であり、白羽の矢が立ったのが、ファムレイユだった。

 別にファムレイユで無くとも、百人隊隊長格の人間ならば構わない。
 しかし、

「人の上に立つなら、下の人間がどんな奴らなのか、見ておくのも仕事だ」

 そうきっぱりと言われれば、断る理由などない。
 王都を出発する前日の、ヒューの呆れ顔とシルヴァリアの複雑な笑みさえなければ、ファムレイユも素直に頷けただろう。

 だが、それが大義名分だとファムレイユが知ったのは、王都を出て二日目の事だった。

395王都騎士団【一緒にお風呂・前編】2:2007/03/30(金) 16:37:19 ID:1B0//uXR

 演習初日。
 無事に一日の予定も終り、流石に男女同衾と言う訳にも行かず、見習い騎士達は、イルグス公から用意された男性宿舎と女性宿舎に分かれた。
 隊長であるデュラハムも、個別に宿舎を得ている。
 ファムレイユも、女性宿舎に向かおうと思いきや。

「ゴードンス補佐官、ちょっと待て」

 見習いに混じり、宿舎に向かおうとしたファムレイユの腕を掴んだのは、デュラハムであった。

「悪いが打ち合わせだ。ちょいと時間をくれ」
「……了解しました」

 そう言われれば、頷くしかない。
 打ち合わせと言っても名ばかりで、恐らくは酒の相手でもさせられるのだろう。

 そう思いはしたが、見習い騎士達の手前、断る訳にも行かない。
 了承したファムレイユに薄い笑みを向けたデュラハムは、一足先に建物へと向かった。



 そして。



 今に至るのである。



 こう言う時のデュラハムの行動力を、ファムレイユは甘く見過ぎていた。
 二人きりになれるチャンスを、みすみす逃すデュラハムではない。
 わざわざファムレイユを副隊長に指名したのも、この機会を狙っていたとしか思えない。

「……エロ親父」
「何か言ったか?」
「いえ、何も」

 狭い浴室の中である。

 いくつかの宿舎には、中に浴室が設けられている。
 イルグス公の計らいにより、今回使用する宿舎はどれも、浴室が設置されている物ばかり。
 最初ぐらいは甘やかしても良いだろうと、デュラハムが笑っていた事すら、今になれば計略とすら思える。

 否。
 事実そうなのだが、知らぬが仏と言うやつである。

 浴槽の中、体を縮込めて膝を抱えているファムレイユと違い、デュラハムは嬉々として汗を洗い流していた。
396王都騎士団【一緒にお風呂・前編】3:2007/03/30(金) 16:38:37 ID:1B0//uXR
 壁に設けられている燭台の明かりは、狭い浴室でも十分に光源の役割を果たしている。
 デュラハムの体のあちこちにある傷跡すらも、見て取れる程である。

 近くに源泉があるのか、思いの外存分に湯を使えるのは嬉しいが、この状況はどうした物か。
 とつとつと流れ込む湯に視線を向けながら、ファムレイユはゆるゆると頭を振った。

 どうしようもない。

 例によって、あれよあれよと言う間に浴室に連れ込まれ、湯につかる羽目になった現状は、何とも不本意だ。
 第一、不謹慎極まりない。
 手本を示すべきである上の者が、こうもあっさりと風紀を乱すなど言語道断。

 だが。

「お前さん、体洗わなくて良いのかー?」

 ハッと我に返ると、いつの間にやら体を洗い終えたデュラハムが、浴槽に入ろうと立ち上がって居た。
 当たり前の事だが、素っ裸である。

「ち、や、わっ!」

 慌てて目を逸らすファムレイユに、デュラハムはクツクツと笑いながら、ざんぶと湯を溢しつつ浴槽に体を沈める。

「なーにを今更。さんざ目にしてるだろ?」
「ば、うううるさいっ!!」

 浴室が狭いと浴槽も狭い。
 自然、肌が触れる形になるのだが、ファムレイユは浴槽に張り付かんばかりに体を寄せ、ますます体を縮込まらせた。
 そんな姿に、デュラハムの顔は緩みっぱなし。
 浴槽から湯が溢れるのも構わず手足を伸ばし、膝を抱えるファムレイユを引き寄せる。

「ひゃっ!」
「色気のない声を出しなさんな」

 足の上にファムレイユを座らせて、デュラハムはその首筋に顔を埋めた。
 両手はしっかりとファムレイユの腰に回されて、ファムレイユは体を強張らせる。
 湯の膜があるとは言え、直接触れる肌の感触に、動悸が激しくなる。

「た、隊長…」
「んー?」
「あの、その……」

 しっかりとファムレイユを抱き寄せたまま、デュラハムは首筋から顔を上げようとはしない。
 濡れてくたりとなった赤茶色混じりの金髪からは、石鹸の香りがふんわりと漂う。

「どうした?」
「い、いえ……あの……」

 くぐもった声で尋ねられ、ファムレイユは視線を外す。
397王都騎士団【一緒にお風呂・前編】4:2007/03/30(金) 16:40:09 ID:1B0//uXR

 恋仲になって早二年。
 体を重ねた事はあっても、共に風呂に入るなど初めての事で、どうすれば良いか分からない。

 極端な話。恋仲と言っても、執務以外で二人きりで何処かへ出掛けた事もなく、布団の中で睦言を交すだけの方が断然多い。
 仕方のない事とは言え、今まで誰かと付き合った事のないファムレイユには、改めて恋人らしい事をされると、喜びよりも戸惑いが先に立ってしまうのだ。

 それが例え、後に情交が待っていたとしても、である。

「緊張してんのか?」
「や、別に…そう言う訳じゃ……」

 顔を上げたデュラハムは、気持良さそうに目を細めている。
 その顔は何処か嬉しそうで、ファムレイユは口を閉ざして、デュラハムの肩に手を置いた。

「体、洗いますから」

 これ以上側に居たら、おかしくなってしまいそうで、ファムレイユは手に力を込めて立ち上がる。
 恥じらいが無い訳ではないが、このまま抱き締められているよりは数段マシだ。

 デュラハムはあっさりと組んでいた手を解くと、浴槽を出るファムレイユに視線を向けた。

「手伝ってやろうか?」
「だ、大丈夫ですっ! 隊長はゆっくりしていて下さいっ!!」

 必要以上に語気を強め、ファムレイユは慌ててデュラハムに背を向ける。
 背後で笑うデュラハムの声を聞きながら、ファムレイユは真っ赤になりながら手桶を取り上げた。

 浴室内に流れる湯を掬い取り、石鹸を泡立てて体を洗う。
 その間も、デュラハムは浴槽の縁に顎を乗せて、楽しそうにファムレイユの様子を眺めていた。

「あれ」

 不意にデュラハムが声を上げる。
 体を洗いながらチラリと視線を其方に向けると、デュラハムはまじまじとファムレイユを凝視していた。

「ファム、その傷、どうした?」
「え?」

 視線の先を辿ると二の腕に行き着く。
 薄く腫れ上がったみみず腫れは、まだ真新しい。
398王都騎士団【一緒にお風呂・前編】5:2007/03/30(金) 16:41:25 ID:1B0//uXR

「今日の演習で。……引っ掛けただけかと、思っていました」

 特に山林での演習では、こう言った事は珍しくない。
 普段ならば作る事のなかった傷は、見習い騎士達に混じり演習を行っていたせいもある。

 デュラハムは、ふうんと小さく頷くと、ゆったりと浴槽に体を沈めた。

「気を付けろよ。お前さんも女なんだから」

 デュラハムは、決して、女性を軽んじて言っている訳ではない。
 それが分かるファムレイユは、特に返事らしい返事もせずに、黙々と泡を流そうとしたが、デュラハムはあっさりと言葉を続けた。

「まぁ、傷物にしちまった俺が言うのも何だがな〜」

 ガヅッ

 思わず手桶を取り落とす。
 やけに大きく響いたその音に、デュラハムは再びファムレイユに視線を向けた。

「た、たたたいちょぉッ!」
「本当の事だろ?」

 一体何度動揺させれば気が済むのだろうか。
 ニヤニヤと笑うデュラハムを睨みつけながら、ファムレイユは考える。

「まぁ、俺以外の奴に傷物にされんなっつー話だ。気を付けろ」
「っ……は、はい」

 震える手で手桶を拾い、体の泡を洗い流す。
 排水溝へと流れる泡を眺めながら、ファムレイユはまたもやひっそりと溜め息を溢した。

「なぁ、ファム」
「……何ですか」

 声に知らず険が含まれる。
 しかしデュラハムは、気にした様子もなく、浴槽の縁に手を掛けて身を乗り出した。

「頭、洗わせてくんねぇか」
「……はい?」

 また何を言い出すのだろうか。
 思わずデュラハムを見つめ返すと、デュラハムは至って穏やかな表情で、言葉を続けた。

「こんな機会でもなきゃ、出来ねぇだろ。ホレ、そっち向いてろ」

 躊躇いなく立ち上がったデュラハムから、ファムレイユは慌てて視線を外す。
 まだ了承してもいないのに、と思うが、言った所でデュラハムが諦めるとは思えない。
 俯き加減に体を固くしていると、手桶を拾ったデュラハムが背後に回った。
399王都騎士団【一緒にお風呂・前編】6:2007/03/30(金) 16:42:32 ID:1B0//uXR
 デュラハムの目に映るのは、曲線を描く首筋や、窪みを見せる肩甲骨。すっと伸びた背骨から骨盤までもが、目の前に晒されている。
 薄暗い部屋で幾度も目にしたそれを、明るい場所で目にした事は数えるほどもない。
 常ならば白い肌は、長時間湯に浸っていたせいで、ほんのりと色付き、デュラハムは、ふつふつと情欲の湧く己に気付いたが、取り合えず心の棚へと預けて置く。
 事に及ぶのはいつでも出来る。しかし、共に風呂に入るなど、王都では今の所不可能に近い。
 ならば、今しか出来ない事を優先させるべきだろう。

 元々そのつもりで、ファムレイユを連れ込んだのだから。

「ちゃんと口閉じてろよ」
「……はい」

 ざばりと湯を浴びせられ、ファムレイユは口を閉じる。
 濡れて頬に張り付いた髪を優しく撫でられて、その感触に思わず体を震わせる。

「頭上げて」

 声に従って顔を上げると、デュラハムの手が髪に触れた。
 石鹸を泡立てた手が地肌に触れ、優しく頭皮を揉まれる。
 時折髪の隙間に指を滑らせるデュラハムからは、機嫌の良さそうな鼻唄が漏れた。

「……隊長?」
「んー?」
「楽しいですか?」
「あぁ」

 チラチラと視線だけでデュラハムの様子を伺う物の、沈黙に耐えきれず尋ねれば、あっさりと即答。
 再び鼻唄を歌うデュラハムの手は、頭頂から後頭部、こめかみから額へと、余す所なくファムレイユの頭を洗っていく。

 その心地良さは胸の奥をムズムズさせて、ファムレイユは所在無さげに両手を組んだり離したり。
 裸を晒している事もそうだが、慣れない状況が余計にそうさせている。
 嬉しくない訳ではない。しかし、この気恥ずかしさは、事に及ぶよりも面映ゆい。

 デュラハムはデュラハムで、子どものようにされるがままのファムレイユに、言い様もない愛しさを感じていた。
 泡に塗れた髪は柔らかく、指を滑らせるとその柔らかさがいっそう実感出来る。
 今まで他人の髪を洗った事などないが、相手がファムレイユだと思うだけで、その行為が酷く大切に思える。
 壊れ物を扱うように髪を梳き丁寧に扱いながらも、情欲は益々募る。

 泡が首筋を伝い肩に落ちる頃、デュラハムは頭から手を離して、再び手桶を手に取った。
400王都騎士団【一緒にお風呂・前編】7:2007/03/30(金) 16:43:36 ID:1B0//uXR

「目ぇ閉じてろよ」

 ぎゅっと瞼を閉じていると、額から頭頂に掛けて、後ろに流すように湯が掛けられ、デュラハムの手が濡れた髪を掬い、泡が流される。
 二度三度、そうやって髪を湯に潜らされると、やがてカタリと音が聞こえた。

「ホイ、終り」

 声に目を開けると、床に置かれた空の手桶が視界の隅に映る。

「あ、ありがとう…ございます」
「どう致しまして」

 僅かに首を捻って言うと、不意にデュラハムの腕がファムレイユの体を包んだ。
 優しく抱き締められ、ファムレイユは再び身を固くする。
 背に感じる固い胸板も、腰に回された太い腕も、いつもと何一つ変わらないはずなのに、この状況はやはりいつもより胸を高鳴らせる。

「ファム」
「……はい?」
「取り合えず、一回ヤらせてくんねぇか」
「な…ッ!?」

 声は酷く穏やかにも関わらず、余りにストレートな物言いに、ファムレイユは目を丸くする。
 首を捻った先のデュラハムは、目を細めてファムレイユの首筋に唇を這わせた。

「ちょ、た、たい──」
「いや、ベッドまで我慢しようと思ったんだが……まぁ、遅いか早いかの違いって事で」
「け、結局ヤるんですか!」

 ベロリと首筋を舐められ背筋が粟立つ。
 慌てて身を捻ろうとすると、デュラハムは床に腰を下ろしてファムレイユを引き寄せた。

「ひゃっ!」
「当たり前だ。このまま帰せる訳がねぇだろ」

 トスンと腰掛けから引きずり下ろされ、石造りの床に尻餅をつく。
 腰掛けに足を持ち上げられた体勢に、ファムレイユ思うように力が入らない。
 その様子に、デュラハムはニンマリと笑うと、ファムレイユの耳朶を咥えて吸い付いた。

「ふぁっ!」

 耳に舌を差し込まれ、ぐちゅりと湿った音が脳裏に響く。
 抱き締めた腕の力は緩んでいたが、両の手は下から胸を掬い上げるようにして揉みしだく。
 湯に浸っていた時とは違う、全身を駆け巡るような熱に、ファムレイユは喘ぐような呼吸を繰り返す。

 固く反応を始めた頂に指が這う。
 転がすように弄られたかと思うと、きゅっと強く摘まれて、ファムレイユの背が反った。
401 ◆KK1/GhBRzM :2007/03/30(金) 16:44:29 ID:1B0//uXR
前編はここまで。
後編はただひたすら、ヤってるだけの予定。

日曜には後編を投下に参りますので。
402名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 16:48:38 ID:6k/82t8a
こんな時間にキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
後編期待してます!
403名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 16:58:30 ID:BkZSnY+c
>>401
GJ!!
ファムからもエロ親父扱いとはww
404SS修行中:2007/03/30(金) 23:22:48 ID:OSZEMMb+
>388-392
大変申し訳ない;
序章のみなど気軽な気持ちで書き込んだことを反省し、出直してくる。
405名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 23:48:31 ID:xCEBioSc
>>403
そんな隊長に萌えを感じる。ファムうらやましす。

>>404
まぁまぁ、時期が時期だ品。
練習スレもあるみたいだからエロパロ板の他スレも見学してくればいいとおも。
腕積んだら投下よろ。
406 ◆KK1/GhBRzM :2007/03/31(土) 21:35:15 ID:h99VjYd2
予定より一日早いですが、後編を投下。
エロ度三割増を目指してみました。
407王都騎士団【一緒にお風呂・後編】1:2007/03/31(土) 21:36:59 ID:h99VjYd2

 耳を味わうように舐め尽し、デュラハムの唇が首筋に触れる。
 微かに舌に感じる石鹸の味と、洗い立ての肌の香りに更に情欲を刺激され、デュラハムの行為は勢いを増す。

 左手は絶えず胸を弄り、右手で腰を引き寄せると、弾みでファムレイユの片足が、腰掛けから落ちる。
 その隙を縫って、デュラハムの右手が滑り込む。
 肉芽を探り当てると同時に強く押し潰され、痛みと快感にファムレイユの口から悲鳴にも似た声が漏れた。

「やあ、あぁっ!」

 デュラハムの指先は、反応を始めたばかりの肉芽を剥き出しにし、指の腹でゆるゆるとそれを撫でて行く。
 肉芽は緩急を付けて刺激され、胸は痛みを感じるギリギリの強さで揉まれ、ファムレイユの体から力が抜ける。
 元より体勢のせいで、力のなかったファムレイユの体は、デュラハムの胸に預けられる。
 背後に反応を始めたデュラハムの物が感じられるが、身を捻る事も出来ない。

 ぴったりと閉じた割れ目を指が沿い、熱く粘ついた蜜が絡められる。
 その指で更に肉芽を擦られて、ファムレイユの腰がビクと浮いた。

「あ、あっ、あっ!」
「お、ドロドロ。また洗わなきゃな」
「やぅっ! や、駄目…っ!」

 胸を揉んでいた左手が下に降り、大きく足を開かれる。
 蜜の溢れる入り口に指が差し込まれ、焦らすようにくちくちと掻き回される。
 その指の付け根は肉芽を押し潰して、耐えずファムレイユに刺激を与える。

 すがる物もなく床に手を突き、刺激を受ける度に指先に力が篭る。
 肩を。首を。優しく噛まれ、強く吸われ。下腹部に感じる甘い刺激に、ファムレイユの思考は白く濁る。
 湯気に覆われたこの浴室のようだと、霞が掛る頭の片隅でぼんやりと思った。
408王都騎士団【一緒にお風呂・後編】2:2007/03/31(土) 21:38:13 ID:h99VjYd2

 デュラハムの指が中程まで埋め込まれ、ファムレイユの喉が震える。
 いっそう音を増した水音は卑猥で、浴室に反響しファムレイユの耳を打つ。

「や、ああっ!」

 デュラハムの肩に頭を擦り付けるように首を捻るが、デュラハムの指は数を増して更に胎内へと潜り込んだ。

「ひあぁっ! や、デュ…あんっ! あああっ」
「良い声……欲情しちまうな」

 目を細めてファムレイユを見つめるデュラハムは、掠れる声で呟きながら、胎内に埋めた指で激しく抜き差しを始める。
 熱い胎内を擦る度、昂まる快感にファムレイユの体が震えた。
 完全に力を無くしたファムレイユは、されるがまま。普段よりも響く浴室内いっぱいに甘い声を響かせ、流れ込む湯の音も卑猥な水音も、その声に掻き消される。

「ファム」

 ずるりと指を引き抜いたデュラハムが、蜜に塗れた手でファムレイユの体を抱える。

 熱に浮かされ、焦点の定まらぬ眼差しのファムレイユは、それでも何とか体を捻ってデュラハムの方を振り返った。

「上に乗るのと後ろからと、どっちが良い?」
「……え?」

 直ぐには言われた意味が分からず、眉を寄せたファムレイユに、デュラハムは小さく笑いながら言葉を続けた。

「普通にヤったら痛いだろ? 好きな方、選ばせてやるよ」

 散々になった思考回路を必死になって寄せ集め、脳裏で告げられた言葉を反芻する事暫し。
 ようやく意味を理解したファムレイユは、今までにないほどに狼狽した。
409王都騎士団【一緒にお風呂・後編】3:2007/03/31(土) 21:39:17 ID:h99VjYd2

「ど、どっちって……」
「ちなみに、今からベッドってのは無しな。そこまでもたねぇ」

 意地悪く目を細めたデュラハムが、答えを促すようにファムレイユの体に手を伸ばす。
 腹部から腰、胸へと手が這わされる。
 一度昂ぶりを見せた体は、そう簡単に冷めはしない。デュラハムもそれを分かっているのか、焦らすようにファムレイユの肌を撫でながら、じっと答えを待つ。

「そ、れは…」
「んー?」
「あ、……あの…」

 人が悪いとは思ってはいたが、まさかこの場でそれを実感する事になろうとは。

「た、隊長の好きな方って言うのは……駄目ですか?」

 恥ずかしさの余り、もごもごと口の中で呟くと、デュラハムは暫し考える素振りを見せた。
 ただし手は未だ、ファムレイユの体に這わせたままである。

「じゃあ、上に乗るか? 支えててやるから」
「ひゃっ」

 きゅっと脇腹を摘まれ、小さな悲鳴を上げたファムレイユだったが、答えを得られた事に内心安堵しながらコクコクと頷く。
 腰掛けに乗せたままだった足を下ろし、デュラハムの手を借りて腰を上げる。
 向かい合わせに向き直ると、既に固く勃ち上がったデュラハムの物が視界に入り、思わず視線を外してしまう。
 二年も付き合っているのだから、一通りの行為は済ませている。とは言え、やはり恥ずかしい物は恥ずかしい。

「手、添えて。なるべく力抜いて、お前さんのやりやすいように入れてみ」
「……ん」

 床に片肘を突き、反対の手で腰を持ち上げられれば、流石に視線を外してばかりもいられない。
 デュラハムを跨ぐ形で膝立ちになり、筋張った肉棒に手を添えて握ると、ピクンとそれが反応した。
410王都騎士団【一緒にお風呂・後編】4:2007/03/31(土) 21:40:40 ID:h99VjYd2
 ぬちゃり、と先端を秘所に当てがう。
 固い感触を受けただけで、下半身はずくりと疼く。
 見られている羞恥心もあったが、それよりもこの疼きを何とかしたくて、ファムレイユは目を閉じるとゆっくりと腰を沈めた。

 強い圧迫感は、それに比例して強い快感をもたらす。
 眉根を寄せ熱い吐息を漏らしながら、デュラハムで体の中をいっぱいにする。
 肉壁を擦られ、膝も腰も震えが来るほどに力が入らないが、デュラハムの手を借り、ゆっくりと根元までを咥える。

「あ〜、溶けちまいそう……」

 繋がった箇所に無遠慮な視線を投げながら、デュラハムも吐息を漏らす。
 久方振りの情交に加え、少なくともこの場では、誰にも何の気兼もいらない。
 ファムレイユの動きは緩慢でじれったいが、自ら進んで事に及ぶ事のない彼女が──半強制的にとは言え──体を開いたのだ。
 それだけで、もうデュラハムは強い射精感を覚えたが、奥歯を噛んで遣り過ごす。

 デュラハムの胸に手を突いて、ファムレイユの腰がゆっくりと動く。
 円を描くように動かせば、胎内の至る所を擦られて、半開きになった唇から熱い吐息が漏れる。
 腰を揺らす度に、胸はふると震え、繋がった部分からはぐちゅぐちゅと粘ついた水音が聞こえる。
 淫靡な動きに、繋がった部分を見つめるデュラハムは、揺れる胸へと手を伸ばした。

「ひぅっ! あ、ぅんんっ!」
「あぁ…良い声だ……」
「やぁ…う、あああっ!」

 決して大きくはない胸が、デュラハムの手にすっぽりと収まり、やわやわと揉みしだかれる。
 もどかしいぐらいに優しい動きは、それでも背筋から腰へと疼くような刺激を伝え、ファムレイユは肉棒を咥えた腰をぐぃとデュラハムに押し付けた。
 デュラハムの恥骨が肉芽に当たり、より強い刺激が全身に走る。
 しかし、それだけでは物足りない。
 膝はガクガクと震え、体を揺さぶるので精一杯で、思うように動けない。

「や、ああ……デュー…っ!」
「どうした?」

 涙が滲み始めたファムレイユを見つめ、デュラハムの手が腰へと回る。
 それと同時に、ファムレイユは体を屈めてデュラハムの胸に倒れ込むと、荒い呼吸を繰り返しながら、首筋にすがり付いた。
411王都騎士団【一緒にお風呂・後編】5:2007/03/31(土) 21:41:50 ID:h99VjYd2

「やぁ、…あ、やだぁ」
「ン?」
「……っ、デューも…して…」

 啜り泣くような声で哀願され、デュラハムの首筋がぞわりと粟立つ。
 滅茶苦茶にしてやりたい。好きだからこそ、いじめて、焦らして、泣かせたい。
 加虐心に火が点いて、デュラハムはファムレイユのお尻を両手で掴むと、躊躇う事なくズンと腰を打ち付けた。

「ひぁあっ!」

 一度。胎内に埋められた熱が、更に先を求めるように、体の奥にぶつけられる。
 喉を逸らしたファムレイユの口から、甲高い悲鳴が上がった。

「ああ…あぁぁっ」
「もっとか?」

 態と意地悪く尋ねられ、ファムレイユは声を無くして小さく頷く。
 その表情に羞恥の色はなく、ただ貪欲なまでに、快楽を渇望する眼差しがあった。
 その様子にデュラハムは益々笑みを深めると、体を起こしてファムレイユを抱き締めた。
 深く繋がったまま、突き上げるように腰を揺らす。

「ひっ! あ、あぁっ!」

 体の芯を揺さぶられ、奥深くをえぐられるような錯覚に、ファムレイユはデュラハムにしがみつく。
 濡れた髪が頬に纏わり付くが、もはやそれを払う余裕も無い。
 胎内を突き上げられる度、閉じた瞼の裏で白い閃光が瞬いて、頭の中がぐらぐらする。
 急速に高みへと追い遣られ、声を殺す事も出来ないファムレイユだったが。

 不意に、デュラハムが動きを止めた。

「はぅ…あ……デュー…?」

 重い瞼を無理矢理開けて、デュラハムを見上げる。
 デュラハムは舌を差し出すと、誘うようにファムレイユの唇をなぞる。
 甘く擽られ、ファムレイユも舌を差し出し、デュラハムの舌を追うように絡めていく。

 一度はギリギリまで持ち上げられた熱は、徐々にではあるが引いていく。
 それが酷く歯痒くて、強請るようにファムレイユは腰を揺らす。
 だが、デュラハムの手はしっかりと腰を支えて、思うように動けない。
 じりじりと焦がされるような想いに、ファムレイユは舌を絡める事で訴えた。
412王都騎士団【一緒にお風呂・後編】6:2007/03/31(土) 21:43:10 ID:h99VjYd2

 途端。

「ふうぁっ!!」

 一際強く体を突かれ、絡んだ舌が離れる。
 かと思うと、またデュラハムは動きを止めて、ついばむような口付けをファムレイユに与えた。

「ん、んん…や、だぁ…っ」
「んー?」
「も……やあ…」

 腰を抱き、胸へと手を伸ばしたデュラハムに、ファムレイユは力無い動きで首を振る。
 湯か涙か。長い睫は露に濡れ、真っ赤に色付く唇を噛み締める。

 この期に及んで言葉に出来ないのは矜持のせいばかりではない。
 ぐらつく思考。掠れる喉。焦がされる本能。
 それら全てが原因で、ファムレイユはデュラハムの腕を掴む。

「欲しいか」

 尋ねるデュラハムの声にも余裕はない。
 しかしファムレイユはそれには気付かず、喉をヒクつかせながら頷いた。

 デュラハムが足を持ち上げて、繋がったまま向きを反転させられる。
 その動きで、胎内に埋め込まれた肉棒が肉壁をグズリと擦るが、体を震わせて声を耐える。
 背を向け座り込む体勢は、先ほどとは違い体の中の敏感な部分に、最も太い部分が当たり、それだけできゅうと秘部が縮込まる。

「よっ…と」
「ひあぁっ!」

 急に腰を持ち上げられ、ファムレイユは腰掛けにしがみ付く。
 膝立ちの姿勢を取らされると、デュラハムがゆっくりと腰を引く。
 かと思えば、深くえぐるように貫かれて、ファムレイユの体が跳ねた。

「ひっ! うぅ、あああ!」

 容赦ない深いストロークに、体の熱は一気に昂ぶりを取り戻す。
 鳴き声に混じり結合部からは、ぐぢゅぐぢゅと淫猥な水音が響き、ファムレイユの太股を蜜が伝う。

 突き動かされるまま、まるでリズムを刻んでいるかのように唇からは声が漏れ、腰掛けにしがみ付いた指先は、力が篭り白くなる。

「こんな、姿……彼奴らに、見せ、らんねぇな」
「ひゃうぅっ! やあ……やだあ…ぁっ!」

 貪るようにファムレイユの熱を味わうデュラハムの言葉に、ファムレイユの思考が一瞬我に返る。
 しかし、言われた意味を理解した瞬間、襲う羞恥は快感へと擦り変わる。

「デュ…も、駄目…い、いっちゃ…」
「ん。俺も、もう、限界っ」

 張り詰めた肉棒が肉壁を擦り、最奥の壁をズンと突く。
 全身が痺れるような振動に、目の前が真っ白に染まる。
 それでもデュラハムの動きは止まらない。

 膨れ上がった快感が一気に弾けた瞬間、ファムレイユは意識を手放し、真っ白な世界に落ちた。


413王都騎士団【一緒にお風呂・後編】7:2007/03/31(土) 21:44:11 ID:h99VjYd2


 真っ更なシーツの上。
 気怠い体を起こそうとしたファムレイユを、デュラハムが抱き締めた。

「何処行くんだ」
「……部屋に」
「もう良いだろ。今日は泊まってけよ」

 背後から抱き絞めるデュラハムの手が、もぞもぞと胸を這う。
 その感触に、再び熱を取り戻しそうになる体に気付いて、ファムレイユは慌ててデュラハムの手を掴んだ。

「ちょ、四回もやって、まだ足りないつもりですか!?」
「そう怒りなさんな。良いじゃねぇか、減るモンじゃなし」
「睡眠時間と体力は、間違いなく削られますっ!」

 悪びれないデュラハムの手をきつく握ると、耳元で大きな溜め息が聞こえた。
 それでも、ギリギリと骨が軋む程に力を込めていると、ようやく諦めたかデュラハムの手から力が抜ける。

「まったく……なんて体力してんですか、あなたは」
「惚れた女相手に、出し惜しみなんざ出来ねぇからな」

 胸をまさぐるのは諦めたが、体を離そうとはしない。
 今度はしっかりと腰を引き寄せられて、ファムレイユが深々と溜め息を吐くと、デュラハムは笑い含みに言い切った。

「何せエロ親父だからな」
「……っ!?」
「期待に応えなきゃ悪ぃだろ?」
「こ、応えなくて良いですっ!!」

 しっかりと己の呟きを聞かれていた事に、ファムレイユはまたも狼狽する。

 これから先もきっと、こうやってからかわれるのかと思うと、酷くもの悲しくなって、ファムレイユは溜め息を吐きながら目を閉じた。




 翌日。

 見習い騎士達の間で、既に二人の関係が知れ渡っていたのは、また別の話である。

414 ◆KK1/GhBRzM :2007/03/31(土) 21:46:12 ID:h99VjYd2
以上です。

前編、デューに萌えた人が居て
内心小踊りしたりしなかったり

ファムはどうやらM女っぽいが、デューはSになりきれないヘタレなので
これぐらいが精一杯ですた
415名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 23:43:44 ID:+5pJ7yaT
GJ!
おっきした
416名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 00:39:46 ID:nJZAEAr8
どこぞの美女と同衾しているところをイリスに見られて慌てふためくユリシスと極めて冷静なイリスなんとのを読んでみたいと思った。
作者さんはもう来ないのかな?
417名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 02:01:13 ID:V/67+NMP
ヘタレだからこそイイと言ってみる。エロ親父、GJ!

4回やっても物足りないのは、きっととんでもなく御預けを
食らったんだろうな……我慢してたんだな(つд`)
でも原因は自業自得そうだがw
418名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 08:04:11 ID:C1ImFyiz
エロくていいぜ!
ぐっちょぐっちょに乱れてるファム(;´Д`)ハァハァ
419名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 00:35:42 ID:a5wWpljI
いちゃいちゃえろえろ最高!GJ!!
残り3回分も読みたい・・・
420名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 22:42:58 ID:RULcv74l
こ、このバカップルめ!



(お預けされてたから仕方ないとはいえ)
絶倫の上、イケ面エロ親父。大好きですw
まだまだぎこちなくて翻弄されてるファムに(;´Д`)ハァハァ

ところで、どうして知れ渡っちゃったのな?その辺詳しく・・・
421名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 03:21:58 ID:3ArtqqgJ
良スレage
422名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 23:35:14 ID:3m2ctuiL
ほしゅ
423名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 01:45:46 ID:IEHH1PFc
過疎りだしたな。

職人様求ム!!エロを!!SSを!!主従を!!!!

ってことでage
424名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 09:26:42 ID:GQmJvRk0
職人待ちの保守だけじゃさびしいから【好きな主従DE古今東西】の続きやったらいいかもしれない。
しかしぱっと思い浮かぶ主従がない罠orz
みんなの好きな主従教えてくれ。
425名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 14:30:09 ID:Us6103iF
Zガンダムのヘンケン艦長×エマさん
主従というか上官と部下だし、ヘンケン艦長が一方的に惚れ込んでるだけで
エマさんの方はスルー気味なんだけど
ヘンケン艦長の一生懸命っぷりが可愛いんだ
新訳では更に強調されてて良かった
426名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 00:03:48 ID:GZek+yh+
保守age
427名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 13:55:36 ID:gv2ltB0+
自分は最近のしか知らないな〜

>>425
ヘンケン艦長でぐぐってみた。正直ガンダム興味なかったけど
萌えた。wiki見て泣いたけど

ちょくらビデオ借りてくるわ
428名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 17:46:56 ID:48s434eL
ツンデレ男主人×母性系従者に萌える
429名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 07:33:29 ID:gO7+v8Ku
ネウロのX×アイ
連続殺人犯とその助手だから「共犯者」なのかもしれないけど
こないだ原作のほうでアイがXを「主人」っつってたから主従でいいと思う

アイの前でだけボケるXとツッコミ入れるアイがたまらんのよ
430名無しさん@ピンキー:2007/04/22(日) 23:12:35 ID:nwz2xT8a
とりあえず保守
431名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 01:45:36 ID:V5jhjsrL
もう終わった漫画だが、
「こわしや我聞」の我聞×陽奈
高校生社長で朴念仁で不器用だけど決める時は決める我聞と
女子高生秘書でツンデレで我聞に小言を言いながらサポートに回る陽奈、
この2人の関係がとても萌え
始めは我聞を頼りないお飾り社長として見てた陽奈が
だんだんと我聞の魅力に惹かれていく描写が丁寧に描かれてたのも良い
432名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 03:46:38 ID:yWfb9yXY
このスレと姉妹スレの職人さんでサイト持ちいる?
個人的にファムの人がサイト持ちだと嬉しい。
知ってる人いたら教えてくれ。
433名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 22:48:37 ID:YBvZf7vi
>>432
マルチ乙
434名無しさん@ピンキー:2007/04/25(水) 13:41:43 ID:GrxXyf/6
もうひと月近く投下ないんだな(´・ω・`)
435名無しさん@ピンキー:2007/04/28(土) 09:49:23 ID:8XkvnIMP
ほっしゅ
436名無しさん@ピンキー:2007/04/28(土) 22:46:17 ID:GSNwkBaA
一応あげとく
437名無しさん@ピンキー:2007/04/29(日) 23:59:44 ID:kvzacUJB
期待age
438名無しさん@ピンキー:2007/05/02(水) 23:57:01 ID:Wa8jon1t
保守しとくか
439名無しさん@ピンキー:2007/05/03(木) 22:52:05 ID:pBTbGoVD
保守
440名無しさん@ピンキー:2007/05/08(火) 13:53:22 ID:QksBprNx
未完の作者さんが続きを書きにきてくれますよーに。
441名無しさん@ピンキー:2007/05/09(水) 01:03:36 ID:NsojihlH
なら俺はシルヴァリアと陛下の初床を希望する
442名無しさん@ピンキー:2007/05/10(木) 17:55:42 ID:ag+d0zEW
>>441
でじゃぶ
443名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 09:46:32 ID:3pvK78ca
クールなメイドに惚れてる坊ちゃんとか
(口説いても迫っても冷静に「身分違いますから」といなされる)
悪大臣に命を狙われてる王子と年上で美人な女護衛との逃避行とか

色々ネタはあるんだけどSSにすんのって難しいね
444名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 12:51:58 ID:6zmmcG2a
>>443
どっちもイイ……
クールメイド萌え
少年主と美女従者の組み合わせって好きだ
445名無しさん@ピンキー:2007/05/14(月) 14:28:46 ID:qE2LO3z0
クールなメイドさん萌え!!想像しただけで禿萌えた!!!!!
ぜひ書いてくれ
446名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 00:42:39 ID:DQAf/944
ほしゅ 
447443:2007/05/20(日) 23:20:19 ID:4UlmPWdv
クールメイドがんばったんだけど駄目だったよー…。
gdgdだけどとりあえず保守代わりに。エロなし。
膨らませてちゃんと書けたら出直します。
448クールメイド(仮):2007/05/20(日) 23:22:26 ID:4UlmPWdv

「旦那さま、失礼いたします」

耳に心地よいアルトを響かせて部屋の扉を開けたのは、この屋敷に仕えている
メイドのハリエットであった。
切れ長の目をしたなかなかの美人で、彼女が身につけていると飾り気のない
お仕着せも魅力的に映る。
しなやかな両手をスカートの前で揃えると、ハリエットはつつましく主人の反応を待っていた。

彼女の雇用主の名はサー・ドミトリアス・マクレーガー。
ややくせのある茶色い髪をした紳士で、どこか老成したような雰囲気を持っているのだが
良く見れば眼鏡をかけたその顔はまだ若いように見えた。
ぎこちなく微笑むとドミトリアスはハリエットを手招きする。
しずしずと主人の傍にやってきたハリエットはあくまで冷静な表情で尋ねた。
「なんのご用でしょうか」
「……ああ。ええと、その……」

ハリエットの視線にドミトリアスはなぜかたじろいだ様子を見せた。
そしてどうにも落ちつかなげにみじろぎをする。
目線を落とし、しばらくの間唇を薄く開いたまま、ああ、とかううとか
意味のない呻き声をあげながら何やら迷っているようだった。
その様子にハリエットはぴんときた。
ここの所、彼が自分を呼びつけてこういった様子を見せる時は必ず
“ある事”を言い出し始めるのだ。

ハリエットは黒い瞳をひた、と主人にすえて彼を見つめる。
その視線をまともに受けたドミトリアスは一瞬あせった様に身じろぎをしたが
思い切ったように彼女の手を引き掴むと勢い込んで叫んだ。

「わ、わたしと結婚してくれないか!?」
449クールメイド(仮):2007/05/20(日) 23:23:49 ID:4UlmPWdv

ハリエットはその突然の、しかも唐突な申し出にも関わらず驚きを見せることはしなかった。

彼女はメイドだ。特に名のある家の出という事は全く無い。単なる使用人だ。
反対にドミトリアスは、サーの称号が示すとおり貴族である。
明らかに彼女とは身分の隔たりがあり、ドミトリアスがハリエットに求婚するというのは
普通に考えてまず考えられないことであった。

だが、ハリエットの表情には驚愕も狼狽の色もない。
彼がこんな事を言い出すのは初めてではなかったからだ。ハリエットは穏やかな微笑を浮かべた。
「……旦那さまったらいけませんわ。そのお話なら何度もお断りしているじゃありませんの」
「もうこれで五度目だね……」
ドミトリアスはその返事にしょんぼりとうなだれたまま呟いた。
くす、と小さく笑い声をあげながらハリエットはドミトリアスの手から自らの手を引き抜いた。

「お茶の支度をいたしましょうか? 熱い紅茶を召し上がったら気持ちも変わられますわ」
とりつくしまもないハリエットの態度にドミトリアスは眼鏡を曇らせる。
「……なぜイエスといってもらえないのか聞いてもいいかい?」
「身分が違います」
胸をはり、良く通る声でハリエットは言う。その答えにドミトリアスは妙な顔をする。

「身分……? そんなことを気にしているのかい? ハリエット。
君のことはわたしが守る。約束するよ!」
ドミトリアスはハリエットに懇願していた。その姿にハリエットはため息をついた。

彼が自分に求婚する理由に、ハリエットは思い当たる節があるのだ。
一度ハリエットは彼と性関係を持った事があるのだ。

その時分、ドミトリアスは心に大きな傷を負っており、ハリエットはお見舞いのつもりで
自らの体を提供したのだ。彼の事を好きだという気持ちはもちろんある。
そうでなければさすがにハリエットも関係を持つ気分にはならなかった。
だが、男爵夫人になってやろうとかそういう事を考えたことなどハリエットは一度もなかった。
450クールメイド(仮):2007/05/20(日) 23:24:59 ID:4UlmPWdv

彼女は自らの主がずい分初心な性質だということは理解していたが、使用人に手を出す貴族が
珍しくないこと身をもって知っているハリエットとしては、使用人の自分に手を出したからといって
妻にする、というドミトリアスの申し出に一番初めはずいぶんと驚いたものだった。

「わたしは……君にあんなことをして……。どうかしてたんだ、一生を賭けて償う。
だからハリエット、イエスと言ってくれ」

(償うといわれましてもねぇ……)

見れば、ドミトリアスは子犬のような瞳で彼女を見上げている。
ハリエットはほだされ、うっかりうなずかない様にするために神経を集中させた。

(旦那さまは別に私の事が好きで好きでたまらないから求婚なさってるわけでもないのだし)

そう考えるとハリエットは妙に胸のあたりがチリチリするのだが、
あえてその理由を深く考えずに済ませた。

(私が誘ったようなものなのだから、責任を感じる必要もないのにおかしな方)

ぎゅっと拳を握ったまま、ハリエットは声を張り上げる。

「あの日のことは、旦那さまが責任をお感じになることではありません。
別にわたくしの一生を左右することではないと思いますので。
……他に御用がなければ失礼いたしますが旦那さま。お茶のご用意は必要ですか?」
「……頼むよ」

サー・ドミトリアスはがくりとうな垂れたまま返事を返し、彼のメイドは
スカートを翻しながら午後のお茶の用意をするために部屋から出て行った。

(終わり)

451名無しさん@ピンキー:2007/05/20(日) 23:30:00 ID:3lC6iLxc
いいじゃないかもっともっと
452名無しさん@ピンキー:2007/05/21(月) 14:39:25 ID:MKA5LKEX
うおーじりじりするぜ!
良かったら続きも書いてくれ
453名無しさん@ピンキー:2007/05/23(水) 00:14:37 ID:coNVyOtF
続きに期待age
454名無しさん@ピンキー:2007/05/26(土) 16:51:39 ID:q6mk1mRj
sageてんじゃねえかw
455名無しさん@ピンキー:2007/05/28(月) 23:06:54 ID:eOs8niHg
保守
456名無しさん@ピンキー:2007/05/29(火) 14:48:31 ID:t0DBZD1j
GJ
ご主人の内心も気になるところだ。

ただ一つ言わせてくれ
サー = ナイトORバロネット
    ≠ 男爵
    ≠ 貴族
男爵で卿つけで呼ばれてたら、それはサーではなくロードなんだ
457名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 22:30:18 ID:7fP2vyrQ
補足
目上の方への呼びかけ方(ヴィクトリア時代)

女王:Your/Her Majesty

公爵:Duke(自分がジェントリ以上*後述)
    Your Grade(自分がジェントリ以下)

侯爵、伯爵:My Load又はLoad of 地名

男爵:Load+地名

準男爵、勲爵士:Sir+洗礼名+姓

*公爵〜男爵までは貴族
 準男爵、勲爵士、スクワイアはジェントリ
 それ以下はジェントルマン

458名無しさん@ピンキー:2007/05/30(水) 22:53:35 ID:HbSM5kAC
>>457
×Grade
○Grace

×Load
○Lord

* 男爵の爵位名は地名より姓に由来することが多い
459クールメイド投下者:2007/06/02(土) 19:33:20 ID:iRhIWQcm
ども。レスつけてくれた人ありがとー。嬉しかったよ。

>>456
あれっ、そーだったっけと使ってた資料系サイトみにいってorz
わはは思っきし見間違えてたわ。指摘d。

もし続き書けそうな時は旦那さまを準男爵に直そうかな。

これだけだと何なので妄想した男主女従ネタでも置いていこう。

主従っつか師弟関係なんだけど
名探偵(昼あんどん型でも自信満々型でも可)とその助手で押しかけ弟子少女とかどうよ。

誰か具現化しておくれ
460名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 00:25:40 ID:ARcYv2JD
>>459
名探偵と助手…



「やだ! 先生ったら服脱ぎっぱなしなんだから」
 八階建てビルの三階に位置する探偵事務所では今日も今日とてくたびれた格好の男性とブレザー姿の女子高生が戯れている。
「ん? ああ、だからさ、僕の部屋に勝手に入るの禁止だって」
 がさりと新聞をおろすとぼさぼさの頭が現れる。男は面倒くさそうに少女に顔を向けた。
「そんなこと言われたって。ほっといたら異臭騒ぎ起こしかねないでしょ、先生。カビ生えますからね、カビっ!」
 シャツやら靴下やらを放り込んだカゴを抱え、少女は頬を膨らませる。彼女の背後の扉が開いていることから、扉の先が男の私室であることがわかる。自宅兼事務所だ。
「そんなだから依頼人が全ッ然来ないんですよ」
 男は懐から煙草を取り出し、ポケットをごそごそとあさる。
「君が来るまではここまで閑古鳥鳴いてなかったけどね」
 ライターを探り当て、彼は煙草に火をつけた。一口吸い、吐き出す。
「やっぱりご近所さんから怪しまれてるんだよ。女子高生連れ込んでいかがわしいってさ」
 少女を非難するように男は深々と溜め息を吐く。
「そんなこと言われても、私、辞めませんから」
 カゴを握る手に僅かばかり力を込めて、少女はぎゅっと唇を噛む。
 少女が探偵事務所に助手(自称)として通うようになって早三ヶ月。男は何も言わずに少女を側に置いてくれた。
「い、今さら出ていけなんて……」
 はっきりと面と向かって拒絶されたら、少女がどんなに拒んだところで出ていかざるを得ないことはわかっている。だからこそ、今の男の態度は少女を深く不安にさせる。
「なんてね」
 さも楽しげに男は口角を上げた。
「本当は年がら年中こんな感じ」
「せ、先生っ!!」
 からかわれたのだと知るなり、ほっとするやら腹立たしいやらで体中から力が抜ける。
「もう! そうだと思ったんです。先生のやる気のなさが閑古鳥の原因なんですから」
 それでも、精いっぱい虚勢を張って仕返しとばかりに早口に責め立てる。
「……でも、ご近所さんから怪しまれてるのはまるきり嘘ってわけじゃないかも」
 ぽつりと男が呟いた台詞は聞こえない振りをして。



こうですか!?わかりません!
461名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 01:47:31 ID:Q15JfvPH
GJ!!
462名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 10:58:33 ID:FkF5Wdqf
>>460
いいぞ、もっともっと
463名無しさん@ピンキー:2007/06/03(日) 18:27:01 ID:vCnKyGKh
>>460
おお早速具現化!!しかもいい感じだ。

女子高生!女子高生!おっぱ(ry)
先生はもっといかがわしいことをすればいいのに(゚∀゚)
464460:2007/06/05(火) 17:36:00 ID:lZSxc9rx
即興で書いたけどああいうのでよかったのか。
探偵と助手のエロパート書いてきたから投下する。
きっかけも脈絡も何もないエロシーンだけ。
465探偵×助手 1/4:2007/06/05(火) 17:37:16 ID:lZSxc9rx
「や、せんせ……だめっ」
 思い切りよくがばりと体を起こし、千鶴(ちづ)は腕に絡みついたシャツを腕ごと体に寄せた。
「だめ?」
 千鶴の足下に座り込み、彼女の膝に手を置いた状態で縫(ぬい)は首を傾げる。
 順調に愛撫を続け、仕上げとばかりに潤った秘所に口づけかけた矢先に唐突に拒絶された。
 縫は真っ赤になった千鶴の顔をのぞきこむ。
「千鶴くん?」
 先ほどまでの情事の名残で彼女の息は僅かに乱れ、瞳は潤んでいた。
 まず間違いなく彼女も欲情している。縫は小さく安堵の息を吐く。
「千鶴さん? ちーちゃん? 千鶴?」
 答えない彼女に何度となく呼びかけ、それに飽きた縫はぱくりと左耳たぶをくわえた。
「ぁ、んっ」
 可愛い。震える彼女を見ていると素直にそう思える。
 どうして駄目なんていうんだろう。口だけなら無視するが、体ごと拒絶されたとなると話は別だ。
 軽い愛撫を続けながらぼんやりと考え、縫はようやく一つの結論に達した。
 欲望という名のフィルターがかかった思考は普段の半分も働かない。
「昔の彼はああいうことしてくれなかったの?」
 途端に虚ろだった彼女の瞳に色が戻り、耳まで赤く染めてうつむいた。
(ん? あれ?)
 どうにもうぶな反応に縫は首を傾げる。
 誘いをかけたのは千鶴の方。処女ではないと躍起になるから信じたが、見栄を張っただけなのか。
「千鶴くん、もしかし」
「違いますっ! は、初めてじゃないです」
(そうムキになられると逆にねえ)
「違うったら違います! だから、こんなこともしちゃうんですからっ」
 自棄になったか、千鶴は無理矢理縫をベッドに押し倒す。
「こんなこと?」
 ごくりと千鶴の喉が動き、縫のズボンへ手をかける。
 おそるおそる布越しに陰茎へ触れてみると堅く張りつめたとまではいわないが、僅かにズボンを押し上げはじめているのがわかった。
「ぁ……おっきくなってる」
 ぽつりと呟き、千鶴は何度もそこを撫でる。
 そのもどかしい動きに焦れながらも、縫は黙って千鶴の愛撫を受け入れる。
「先生……」
 意を決したように千鶴はチャックを開き、ズボンを少しだけ下げた。
 そして、下着も同じように下げる。
「すごい間抜けじゃない、僕の格好?」
 縫の苦笑混じりの呟きは千鶴の耳には入らない。彼女の意識は現れた陰茎だけに集中していた。
「うそ、おっきい……こんな、なの」
 呆然とした千鶴の声。
466探偵×助手 2/4:2007/06/05(火) 17:38:27 ID:lZSxc9rx
「まだ大きくなるよ、それ。半勃ちだし」
 淡々とした縫の声。
「それと、僕のはたぶんそんなに大きくない」
 千鶴の手が陰茎に触れる。僅かな温度差に驚いたのか、陰茎は千鶴の手の中でぴくりと動いた。
「きゃっ……動いた」
 まったく聞いていない千鶴に話しかけるのを諦め、縫は深々と息を吐いて体から力を抜いた。
(うーん、なるようになれってか。……辛抱きくかな、俺)
 力加減がわからないのだろう。千鶴の触れ方は羽根が触れるように軽やかで焦れったい。それでも、数度上下に扱くだけで縫のそれは見る間に堅く勃ち上がる。
「先生、気持ちいいですか?」
 不安げな目で見つめられては頷くしかあるまい。
「もっと気持ちよくしてあげます」
 安堵の息を吐き、千鶴が姿勢を低くする。
 縫が期待半分不安半分で目を閉じて待っていると、千鶴は肩より少し長いストレートの黒髪を耳にかけて陰茎の先端に啄む口づけを落とした。
「こういうの好きなんですよね、男の人」
 千鶴の頭では雑誌に載っていたセックス特集でも展開されているのだろうかと縫は思う。今日日のティーン雑誌ならフェラチオの仕方くらい事細かく載っていそうだ、末恐ろしいが。
「口で出したら飲んであげます」
 むんっとめいっぱい自分を奮い立たせて千鶴は言う。
「あのね、千鶴くん」
 精液ってすごく不味いんだぞ──言いかけた台詞は陰茎を包む生温さで消えた。
(う、わあ……これはマズい。あんまりもたないかも)
 先端をくわえ、舌先で鈴口をつつく。その間にやはり焦れったい動作で幹部分を扱く。
 どう贔屓目にみても不慣れな動作ながら、それが惚れた女となると得られる快感は格別というもので。
 鼻にかかった吐息と稚拙な愛撫。ちろちろと舌を動かし、時折思いついたように吸いつく。
「っ……ちょっ……ちづく、ん」
 最後に出したのいつだっけなどと暢気に考える余裕などないくせに脳裏に浮かぶのは十日前の自慰行為。
(そうか。十日も出してないのか、俺は……って、違う! そうじゃなくて)
 思わず上体を起こしたのがまずかった。
「っ、あ……」
 一心不乱に奉仕する千鶴を脳が認識した瞬間に欲望は最高潮に達し、呆気なく果てた。
「きゃっ!!」
 何の前触れもなく吐き出された精は千鶴の顔と髪と素肌を容赦なく汚す。
「ごめん。大丈夫?」
 頬を伝う白濁を指で拭い、千鶴はそれをじっと見つめる。
467探偵×助手 3/4:2007/06/05(火) 17:39:18 ID:lZSxc9rx
「待って、いまティッシュ……って、千鶴くん!」
 そして、ぺろりと、それこそ指についた生クリームでも舐めるように舌ですくいとった。
「ま、不味いでしょ」
 枕元のティッシュを二三枚取り出して、千鶴の髪についた精液を拭う。
「ん。変な味」
 眉根を寄せて、千鶴は舌を出す。
「ほら、拭いたげるから目つぶって」
 素直に従う彼女の顔から精液を取り去る。
「でも、嬉しい」
 ティッシュをゴミ箱に放って太股で止まったズボンを脱いでいた縫はその言葉につられて千鶴の表情をうかがう。
「嬉しい?」
 こくんと千鶴は頷く。
 縫はシャツのボタンを外しながら、不思議そうな顔をした。
「変わってるね、千鶴くん」
(ぶっかけられて喜ぶなんて。AV女優じゃあるまいし)
 裸になると縫は千鶴を引き寄せて、軽い口づけを落とす。
「我慢できないんだけど、していい?」
 頬を染め、千鶴は小さく頷いた。
 枕元に視線を向け、交わる為に必要なものを確認する。
「先生、もっと……もっと、ください」
 そっと横たえ、彼女の準備を確かめるように全身に触れていく。そうしながら、手早く自身の準備も完了させる。
「可愛いよ、千鶴くん」
 秘所が十分に潤っていることを確認し、縫は彼女の両足を掴んで開かせる。
「力、抜いて」
 体を割り込ませ、陰茎を掴んで秘所に押し当てる。数回擦りつけて濡らし、遠慮なく先端を入り込ませた。
「……っ、あっ!」
 膝裏に手を添えて腰を進める。
(ああ、やっぱりキツいな)
 初めてか、それでなくても経験が浅いのだろう。千鶴の中は陰茎を強く圧迫する。
 狭くきつい襞に覆われた内部に、浅い抜き差しを繰り返しながら進んでいく。
「ふ…ぁ、んっ」
 息が詰まったように、千鶴は苦しげに表情を歪める。
「痛い?」
 問いかければ瞑っていた目を開いて首を振る。
「痛く、ない……思ってたより、まし…………けど、息、しづらい、です」
「ちょっと休憩する?」
 頷かれると困るほどに張りつめてはいるのだが、挿入前に一度出しているのだから我慢できないこともない。
「大丈夫、です。平気だ、から……続けて」
 手を伸ばして、千鶴は縫の腕に触れる。
 千鶴の健気さに甘え、縫は挿入を再開する。
 ともすれば欲望のままに腰を振ってしまいかねない自身を制御し、縫はできうる限り優しく腰を揺する。深く緩やかな律動はそれだけでも十分すぎるほどの快感を縫に与えてくれた。
468探偵×助手 4/4:2007/06/05(火) 17:40:14 ID:lZSxc9rx
 唇に手の甲を押し当て、千鶴は喘ぎが漏れないよう必死になっている。
「あっ……ふ、ぁ…………ッ、んぅ」
 それでも、堪えきれずに時折甘い声がこぼれだす。それがたまらなく可愛かった。
「千鶴、くん……千鶴」
 手を伸ばし、揺れる乳房を包み込むようにして揉む。
「せんせ……やぁっ」
 潤んだ目。我慢できないと胸を押し返す力のこもらない腕。弱々しく振られる首。滲む汗。甘くかすれた声。時折絡める舌と交わしあう唾液。結合部から響く淫靡な音。
 五感で得られる情報のすべてが快感に直結する。
「千鶴く……も、ヤバい」
 ぐいっと腰を引きつけ、逃れられないように抱え込む。そうして頂点へ向けて思い切り駆け抜ける。
 一気に頂点へ辿り着き、一瞬の間、そして後は転がり落ちていく。
 頂点に辿り着くより少し前、千鶴の体がほんの僅かに強ばったのを確認したようなしないような。
「すき……だいすき……」
 余韻が背筋を落ちていく感覚の中、虚ろな呟きを聞いた気がしていた。
(あー、やっちゃった。ヤバいかなあ、マズいよなあ。でも、やっぱり千鶴くんは可愛い)
 千鶴の上に倒れ込んで荒い呼吸を整えながら、縫は現実逃避するかのごとく睡魔の甘い誘惑と戦うのだった。


おわり


469名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 18:39:23 ID:c5Md3Rka
ぬぉぉGJ!
心の中じゃ「俺」なんだね、先生。
千鶴の健気さが可愛いです。
470名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 18:51:56 ID:ygdbNq6Q
GJです!
馴れ初めとか日常シーンも、もっと見たいと思うわけです
471名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 01:12:54 ID:/aCv8IuB
よっこらしょ…「ほしゅ」
472名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 10:14:14 ID:u6BGSurk
ぬおおおお萌えた!!
千鶴くん可愛いよ千鶴くん
473名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 23:48:31 ID:XQT4y1G+
GJくれた方々ありがとう。
千鶴気に入ってもらえて嬉しい。



新作投下待ちの保守代わりにでも。
探偵×助手で初エッチ後の小ネタ投下します。
474探偵×助手 1/3:2007/06/08(金) 23:53:01 ID:XQT4y1G+
「なんなら体で払ってくれてもいいわよ」
 キッチンからリビングへ続く扉に手をかけようとしていた体が凍りつく。
「未払い分もあわせて……そうねぇ」
 わなわなと怒りで体が震えだす。
「何言ってるんですか!? いやらしい!」
 勢いよく扉を開くと、椅子に腰掛けた縫と机に腰掛けた女が目に飛び込んできた。
「……あ、千鶴くん」
「いやね、これだから空気の読めないお子さまは」
 これ見よがしに溜め息をつき、女は縫に伸ばしていた手を引いた。
「さっさと机からどいてください。邪魔です。っていうか早く帰ってください」
 手にした盆を応接セットに置き、千鶴は挑戦的に女を睨んだ。
 千鶴に睨まれた女の名は玲(あきら)。薄手のセーターにスラックスというラフな格好も彼女が着ればセクシーな衣装に早変わり。すらりとした長身、常日頃から管理を怠らない美貌とスタイル。彼女は誰が見ても文句なしの美人だ。
「あら、邪魔なのはどっちかしら。私はあなたの雇い主に呼ばれてきたのよ。大事なお客様にとる態度かしら、それ」
 圧倒的優位に立っている玲は余裕の微笑で千鶴を攻め、千鶴はやり場のない怒りを込めた視線を縫にぶつけた。
「あんまり千鶴くんをいじめな
475探偵×助手 2/3:2007/06/08(金) 23:55:30 ID:XQT4y1G+
 心の中で縫を罵ったところで虚しくなる一方だ。そもそも先日の情事は千鶴がきっかけを作ったのだから縫は据え膳を遠慮なく戴いただけであり、無理矢理奪われたわけではない。
(やっぱりエッチしたくらいじゃ彼女にはなれないのかな)
 子ども扱いされたくなくて、一人前として見てほしくて、悩みに悩んだ結果体を重ねたが、縫は以前と何も変わらない。
 千鶴はじわりとこみ上げる涙を堪えるようにきつく枕を抱きしめる。
「……千鶴くん」
 ぎしりとベッドが沈む。追いかけてきた縫が千鶴の背後に出来たスペースに腰掛けたのだ。
「彼女がああなのはいつものことじゃない」
 縫の指が頭に触れ、優しく髪を梳いてくれる。
「拗ねたりしないで顔上げて」
 髪を梳いていた指が耳に触れ、緩やかに首筋をたどる。
 ぞくり、と。何か得体の知れない感覚が体の奥から溢れだしそうになる。
(やだ、なに?)
 縫の指は執拗に耳や首に触れる。
「……ぁ、ん」
 吐息混じりの声が漏れ、千鶴は慌てて顔を枕に押しつける。
「千鶴くん、こっち向いて」
 千鶴は首を横に振り、縫の手から逃れるように体を奥へと進める。
「そう」
 縫の手が離れ、寂しそうな声が耳に残る。
「そんなに僕が嫌いなら仕方ないね。そうだよね。いくら言われても髪はぼさぼさだし、すぐ無精ひげ生やすし、シャツはよれよれだし。千鶴くんは僕が嫌いなんだよね」
 わざとらしい溜め息を疑いもせず、千鶴は驚いて体を反転させる。
「違っ!」
 立ち上がりかけた縫の手を思わず握りしめる。
「違います。違うの……わた、私がやきもちやきだから……嫌いじゃないの。違うの」
 ぐずぐずと鼻をすすりはじめた千鶴を嬉しそうに眺め、縫はその顔を見られる前に腕を引いて千鶴を抱きしめる。
「わがままいってごめんなさい。だって、嫌なの。他の女の人とこんなことしちゃいや」
 宥めるように背を撫で、縫は千鶴の額やこめかみに口づける。千鶴はぎゅうっと縫の背に手を回し、甘えるように胸に顔をすりつける。
「大丈夫。しないよ。千鶴くんだけ」
「ほんとに?」
「うん、本当に」
 少しばかり疑いの目を向けながらも千鶴は優しげな縫の表情を見て安堵の息を漏らす。
(よかった。私だけ)
 千鶴は縫のぬくもりを感じながら幸せに浸る。
(先生が私のこと好きじゃなくてもいいや。私だけなら、それでいい)
476探偵×助手 3/3:2007/06/08(金) 23:57:06 ID:XQT4y1G+
 しかし、背を撫でていた手が腰を越えてさらに下を撫ではじめた瞬間、千鶴は体ごと跳ねた。
「や、先生、おしりっ」
「可愛いよ、千鶴くん」
 肩に頭を預け、千鶴は縫のシャツを握りしめる。
「あっ、ん……ああッ」
 耳朶を噛み、舌を差し入れながら、縫はゆっくりとシャツの中へ手を差し入れる。
 ブラジャーのホックを外され、千鶴は観念して体の力を抜いた。
 ベッドに横たえられ、シャツのボタンを外されながら、千鶴はぼんやりと縫を見上げる。
(でも、私とだけエッチするなら、先生、ちょっとは私のこと好きなのかなあ)
 重ねられた唇と絡められた舌に意識は奪われ、朦朧とした頭のままで千鶴は再び縫と体を重ねるのだった。


おわり


>>460で八階建てビルって書いたとこマンションに変更して読んでくれ。
477探偵×助手 1/3:2007/06/09(土) 00:00:50 ID:XQT4y1G+
ごめん。1/3からこれが抜けてた。



「あんまり千鶴くんをいじめないでくれよ。機嫌直すの大変なんだぞ」
 溜め息混じりに玲を見上げ、縫はそう呟いた。
「まあいいわ。今日は帰ります。報酬、忘れないでよね」
 縫にウィンクを投げかけ、玲は千鶴の隣をすり抜けて出口へと消えていった。
 パタンと扉が閉まったのを見届け、千鶴はつかつかと縫に歩み寄る。その目には僅かながら涙の膜が張られつつあった。
「先生!」
「な、なに?」
「私、私たち……あの、この前……その…………しました、よね」
 言いながら照れてきたのかごにょごにょと千鶴は口ごもる。語尾なんて消え入りそうに小さい。
「なに?」
 思わず首を傾げて聞き返す縫を睨みつけ、千鶴は机をバンと叩いた。
「もう、いいです! 先生のバカっ!! えっち!! 変態!!」
 呆然とした縫を置いて千鶴はくるりと背を向けた。縫の部屋とは反対側の扉を開き、部屋の中に逃げ込む。
 千鶴は何度も寝泊まりを繰り返している来客用ベッドへ飛び込み、枕をぎゅっと抱いた。
(先生のバカ! 私の初めて奪ったくせに! 他の女の人に鼻の下伸ばしたりして)
478名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 23:53:12 ID:rstjTbAg
続きGJ!
微笑ましいなあ
479名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 00:25:18 ID:0aGoDvbq
エロ分が足りない…
480名無しさん@ピンキー:2007/06/11(月) 08:48:40 ID:CoTz+o1B
GJですた!
悩む千鶴が可愛いす。
先生のエロ親父加減ワロスw
481名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 03:06:20 ID:H+NXYt2J
二人の出会いが読みたいです。瑛と先生の関係も知りたいです。
482名無しさん@ピンキー:2007/06/12(火) 03:07:23 ID:H+NXYt2J
すいません。瑛じゃなくて玲でしたorz
483名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 03:25:58 ID:9+RAlpjO
484名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 03:27:15 ID:9+RAlpjO
485名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 03:28:09 ID:9+RAlpjO
486長くなったが保守:2007/06/16(土) 03:05:32 ID:m3X8f+/p
 すうすうと響く寝息にあわせて、毛布の固まりが上下する。
 ベッドの傍らに立ち尽くし、少女は思い詰めた表情でその動きを見下ろしていた。
 ネグリジェだけを身につけた少女は生まれて初めての行為に緊張のあまり泣き出しそうになっている。
 彼女にとって寝台に横たわる毛布の固まり──この館の主は頼りにすべき保護者であり、仕えるべき主人だ。その男の寝台にあらぬ姿で潜り込もうとしているのにはわけがある。
 先日、男の知人が少女に会いに来た。
 知人とは男より幾らか年下で少女より幾らか年上の女性だ。常日頃から男が彼女と健全とはいいがたい関係を結んでいるのは知っていたが、男の生理というものだと少女は知らぬふりをしていた。
 その彼女が唐突に少女が予想もしていなかった言葉を口にしたのだ。

 ──私が彼と一緒になったらちゃんと『奥様』って呼ぶのよ。

 彼女の勝ち誇った顔が今も頭から離れない。
 本当は、気付いたときから嫌だった。男が女を求めて深夜にそっと屋敷を出ていくこと。知らぬふりをして眠っていることしかできないのが歯がゆかった。
 大人になるまでと思っていたけれど、考えてみれば男を受け入れることに何の問題もない体に成長しているではないか。
 少女は一つの決心をして、男の寝室に足を踏み入れたのだ。
 女の言葉を思い出し、少女は泣き出しそうになっていた心を落ち着ける。
(大丈夫。旦那様なら怖くない)
 ぎし。少女が膝を乗せると寝台が微かに音を立てる。
 この日のために書物で男女の睦事について学んできた。
 毛布に手をかけ、向けられた背中を越えて頬へ唇をよせる。
「旦那様……」
 どきどきと胸が高鳴る。
 毛布をはぎ取ろうとした瞬間、背を向けていた男が体を反転させた。
「……何をしている」
 黒い瞳に射抜かれて、少女は固まったように動きを止めた。
「夜分遅くにそのような格好で主人の寝所へ忍ぶなど……感心せんな」
「も、申し訳ありません」
「謝るくらいならするな」
 普段はきっちりと後ろに撫でつけてある髪が今ははらりと顔にかかる。横たわったまま、ぞんざいに髪をかきあげて男は不機嫌そうに少女を見上げた。
 少女は両手をぎゅっと握り、真剣な眼差しで男を見返した。
「わ、私ではだめですか」
 男の眉間に皺が寄る。
「何の話だ?」
「私では旦那様をお慰めすることはできませんか?」
 不機嫌に細められていた男の目がぱちりと開く。
487長くなったが保守:2007/06/16(土) 03:07:01 ID:m3X8f+/p
「私だって女です」
 意を決して男の手を取り、少女は胸に引き寄せた。男の手のひらを胸に押しあてる。
「いつまでも、子どもではありません」
 拒絶されたときのことを思うと息が止まってしまいそうになる。だから、今は何も考えない。男への想いだけで心を埋める。
「……どうした?」
 声音は驚くほどに優しい。
「何かあったのか」
 ゆっくりと上体を起こし、男は立てた膝に肘をついて顔を預ける。
 少女が大事そうに掴んだ手は胸に触れたまま微動だにしない。
「お前は莫迦ではない。何かきっかけがなければこのようなことはするまい」
 話せと目が訴える。
 少女はしばらく躊躇した後、ぽつりぽつりと話し出す。
 女の一言。それ以前から嫉妬していたこと。
 胸の内のすべてを男にさらけだす。
「ふむ」
 少女が話終えると、男はそれきり押し黙ってしまった。
 言ってしまってすっきりしたような、けれど男の一言を待つのは死刑判決を待つように苦しい。
 目を閉じて俯いていた少女の耳に唇がよせられる。ふっと息を吹きかけられ、少女の体はびくりと跳ねた。
「え、あっ……旦那、さま?」
 胸に当たっていた手のひらがやわやわと動き出す。
「いつの間にか女になっていたのだな」
 心底感心したように言い、少女の耳朶を噛む。
「ひゃっ」
「色気のない声だな。まあ、そんなところも愛らしい」
 ぐっと腰を抱き寄せられ、少女は男の胸に顔を押し付ける。
「あ、あの……っ」
 わけがわからず、少女は困惑して男を見上げる。
「もう他の女で発散せずともよいのだろう?」
 男の問いかけに少女はかあっと頬を赤く染める。
 それは、つまり──
「あの人より、私がいいのですか?」
「愚問だ。訊くまでもない」
 肩を押されて、寝台に縫い止められる。
 男が自分を選んでくれた。それだけで少女の心は天にも昇る心地だ。
「お前に勝るものなどあるはずがない」
 唇を塞がれ、舌が優しく唇をなぞる。生まれて初めての口づけに少女は感嘆の吐息を漏らした。
「好きです……だいすき」
 首に手を回してしがみつくと、大きな手のひらが髪と背を撫でる。
 ほっと安堵の息を吐き、男の温もりに包まれていると急速に体から力が抜けていく。
 うつらうつらし始めた少女に男は眉を寄せて声をかける。
 しかし、少女は答えずに瞼を閉じた。
「……仕方のない奴め」
 男は少女から手を離し、そっと隣に横たわる。
488長くなったが保守:2007/06/16(土) 03:08:53 ID:m3X8f+/p
「ここで眠るとはまだ子どもではないか」
 唇を指でなぞり、頬を手の甲で撫でる。
 そうして存分に寝顔を楽しみ、男は少女と自身に毛布をかけた。
「まあいいさ。今夜はゆっくり眠るといい」
 眠る少女の額に口づけ、男はゆっくりと瞼を閉じた。


 ── 保 守 ──


489名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 03:41:28 ID:cOYzQtvF
>>488
こんな時間にGJ!
490名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 14:01:15 ID:drTAM5ZG
>>488
つ、続きをっ、神っっ!!!
491名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 20:10:18 ID:zoBO2CRT
毒電波を受信しました

というわけで、こんなシュチュエーションを思いついたのだが・・・(´・ω・`)
江戸時代っぽい世界観で「寡黙な師匠と男装の弟子」
ドラクエみたいな世界観で「陽気な盗賊とそれにくっ付いてる精霊」
・・・現在、必死に文にしようと頑張っています
もし、文に出来たら公開することも在るかも・・・
492名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 21:12:53 ID:s6/OYFDh
>>488
これはよい嫉妬
続き期待してる
493名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 22:36:29 ID:iB+s7z7K
>>486
萌 え た
いつか続きをよろしくお願いします神よ
494名無しさん@ピンキー:2007/06/16(土) 23:01:04 ID:mV1+fisZ
>>488
これが保守なんてもったいない!
出来れば続きを読みたい。

>>491
公開される日を待ってるよ。
マイペースで構わないから、是非書いてくれ! いや、書いて下さい!
495488:2007/06/18(月) 01:51:31 ID:kJnviy+d
保守投下のつもりだったのに、GJ等々ありがとう。
過去話でよければ年の差萌えのスレに落としてきたのでよかったら見てきてくれ。
496名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 00:44:01 ID:2ghEQuRw
つ 保守
497名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 09:26:12 ID:Y5MoQ58Z
保守ついでに質問でつ

このスレ的に立場逆転はアリ?
権力者で男で、立場上と思ってた主人が軽い気持で
従者を食っちまおうと思ったら、
従者の従順さや純真に想われてた点に気が付き
己の不順さ故に逆に振り回される、みたいな
498名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 20:48:48 ID:t/tGG/8R
なに、その萌える設定
499名無しさん@ピンキー:2007/06/26(火) 05:30:16 ID:EWD7A8r2
正直ツボなんだぜ?
ぜひとも書いてほしい。
500吸血鬼モノ:2007/07/01(日) 22:03:36 ID:QzfGEWUx
保守ついでに投下

・姉妹スレの吸血鬼モノに触発されて書いた吸血鬼×その僕(になる少女)
・エロなし
・ソフトだけど吸血表現あり



 月の綺麗な夜だった。
 吸血鬼セルヴィムは、週に一度の食事を終えて屋敷に帰る途中だった。
 腹は適度に朽ちて、夜の空気は冷たいながらも凛として澄み切っている。身体を預けた翼竜も今晩は好みの獲物が見つかったらしく上機嫌で、僅かな手綱の動きに素早く反応しては悠々と空を駆ける。
 実にいい夜、気分のいい夜だった。
 だからこんな夜でもなければ、街を抜けてしばらく飛んだ先、深い森の中に感じた小さな気配に気づき、あまつさえその傍らに降りたってみようなどとは、きっと考えもつかなかったに違いない。

 その場に残された数々の状況から察するに、野犬にでも襲われたのだろう。
 ひとところ木々の並びが途切れ、僅かに開けた草地のあちこちには、格子を組んだ馬車の残骸と、かつては人間であったものと人間の一部であったもの、それからおびただしい量の血液が飛び散っていた。
 吸血鬼の自分でさえここに降り立つまで匂いをほとんど感じなかったのも当然だ。下草にこびり付いた血液は真夜中の冷気に凍りはじめており、考えずともこの惨状は起きてからだいぶ時間が経ったのものだと察せられた。
「…奴隷商人か。こんな夜更けに、何を考えたのだか」
 その殆どが年若い娘のものである死体の中、唯一まともな衣服をまとった男は、でっぷりと肥えた胸から腹にかけてをざっくりと切り裂かれて絶命していた。
 夜の闇に乗じて街を抜け出し、馬車の檻に娘たちをつめ込んで、一体どこへ行くつもりだったのか。
 今となってはそれもわからないが、このように夜逃げまがいの強行軍を行おうとするからには、まともでない事情があったのだろうということは想像に難くない。
「…可哀想に」
 栄養状態が悪く痩せこけていたとしても、野犬や狼の類が狙うのはこのような男ではなく若い娘だったであろう。
 セルヴィムは形良い眉を痛ましげにひそめると、男の傍ら、胸から下を無惨に食い散らかされた娘の身体に向かって手をかざした。
 一瞬の間を置いて、娘の身体が勢い良く燃え上がる。
 人間の力では作り出せないであろう高温の火は、たちまちその身体を燃やし尽くし灰に変えるとひとりでに収まった。蛋白質が焼ける匂いに、セルヴィムの傍らに控えていた竜が喉を鳴らす。
 そうしてセルヴィムは、あちこちに散った惨状の残骸を、男の死体をも含めひとつひとつ灰にしていった。
 普段であればこんなことはしないが、きっかけが何であろうと一旦このような現場に出くわしたのだ。夜を統べるものとして、全てを焼き尽くす炎をもって哀れな人間たちを土に返してやることぐらいは。
 しかし、草地の端、最後のひとりの前に足を進めたセルヴィムは、そもそも自分がここへ降りたった気配に思い当たり、その目を微かに見張った。
「…息がある」
501吸血鬼モノ:2007/07/01(日) 22:05:22 ID:QzfGEWUx
 最後のひとり、この寒い中地面に倒れ伏した少女は、身体のあちこちに傷を負い、ぼろきれのようになりながらもまだ呼吸をしていた。
 明るい月の光の下、血と泥にまみれながらもその素肌は見たこともないほどに白く、顔の周りを縁取る髪も、汚れていてはっきりとはわからないが綺麗な白金色のようだった。
 自分たち吸血鬼とは違う、白いながらも血の通った肌の色に興味を惹かれ、セルヴィムはしばしそこに佇んだまま少女を見つめていた。
(だが…長くはないだろう)
 少女が息絶えた後、この肌の色は自分たちと同じような青く無機質な色に変わってしまうのだろうか。もしそうだとしたら、折角美しいものが残念なことだ。何の気なしにそんなことを考えて。
 しかし。直に呼吸が止まるだろうと思われた少女の指先が、見つめるセルヴィムの足元でひくりと動いた。
 驚くセルヴィムの眼前で、少女は弱々しく拳を握り、喉をひゅうひゅうと鳴らし…そして、ゆっくりとその瞳を開いた。
「……!」
 長い睫毛に縁取られた両の瞳は、まさに先程セルヴィムが糧としてきたばかりの、鮮やかな血の色。思わず息を呑むほどの、深い緋色をしていた。
(…白子か…!)
 吸血鬼の中でも突然変異の部類に入るセルヴィムの瞳は、他の吸血鬼のような真紅ではなく、底光りする銀色をしている。
 それをなかなか気に入っているセルヴィムは、特に周りと違う自分を恥ずかしく思うでもなく、仲間の瞳の色を羨ましがるでもなく過ごしていた。
 だがそのように思っていたはずの彼は吸血鬼になってからの長い人生の中ではじめて、このような色の瞳を持つことができなかったことを悔やんだ。
 それほどまでに、この瀕死の少女の瞳は、美しいものだった。

 だから、そのまま彼女の脇に膝をついたのは、半ば無意識下での行動だった。
 死の淵に瀕していても尚深いきらめきを宿す瞳に見入られ、その色を失いたくはないと思い、セルヴィムは少女に声をかけた。

「生きたいか?」
 少女は答えない。ただ、髪と同じく限りなく白に違い色をした睫毛を微かに震わせた。
「このままだとお前は半刻もせず死ぬだろう。だが…お前が望むのならば、俺の僕としてその命、長らえさせよう」
 銀と赤、ふたつの視線が絡まりあう。
「代償は他ならぬお前の血。吸血鬼セルヴィムの僕となりこれより数百年を生きるか、さもなくばここで死を待つか。選ぶがいい」
 時間にすれば、ほんの数秒だったろう。セルヴィムが見つめる彼女の瞳が徐々に揺らめき…そこから、一筋の涙が薄汚れた頬を伝った。
「…ぁ……」
 声どころか吐息にすらならない、喉から空気が漏れる音。だがセルヴィムには、それで充分だった。
 セルヴィムは、まるで恋人にするように少女の身体を抱き寄せると、その首筋の汚れを丁寧に舐めとり――柔らかな肌に、鋭い牙を突き立てた。
502吸血鬼モノ:2007/07/01(日) 22:07:51 ID:QzfGEWUx
 ぶつり、という肉が裂ける音と共に、少女の甘く、熱い血潮がセルヴィムの口内に流れ込む。
「…ぁ…っ!」
 その途端、ぐったりと力を失っていた肢体が、セルヴィムの腕の中でびくりと跳ねた。
 セルヴィムはそんな少女の身体を愛おしげに撫で回しながら、流れ出る血に舌鼓を打ち、喉を鳴らす。
「……っ!」
 そして、少女が弓なりに身体を反らし、絶頂にも似た衝撃に身悶える頃になってようやく、セルヴィムはその首筋から顔を上げた。
 見下ろせば腕の中の少女は、媚薬に似た成分を含む吸血鬼の唾液によって呼び起こされる快楽に赤い瞳を潤ませ、全身を桃色に上気させていた。
 胸の中心、熟れた果実のように赤く染まって勃ち上がった突起が愛らしい。
 彼はそんな少女を見つめて満足げな笑みを浮かべると、彼女を片手で抱き、血にまみれた牙を今度は己の手首へと突き刺した。
 そして自らの血液を口に含むと、セルヴィムは少女の頬を優しく撫で、紅色をした唇にそっと口付けると、彼女の喉へと契約の証をそそぎ込んだのだった。


 確かに、しばらく前から僕が欲しいとは思っていた。
 徐々に増える研究資料を整理させるも、いまいち料理のセンスがない執事の代わりに厨房に立たせるも、いくらでも使い道はあるのだ。
 だが、こんな簡単に決めてしまうのではなく、しかるべきところからしかるべき人間を迎え入れるのだと考えていたのに。

 要するにこれは、後から考えてみると、いわゆる一目惚れ、というものだったのかもしれない。

「…主…さま…」
 だがこの時、その一言だけを呟いて意識を失った少女を抱くセルヴィムは、そんなことは欠片も考えつかなかったのだ。
 ましてや、この僕が後に自分の人生において欠かせない存在になり、果ては伴侶にまでなろうなどということは。
 全く、思いもよらなかったのだ。





以上です
このふたりでエロ書き進めてるところなんで、皆さんがよければまた投下しにきます
ありがとうございました
503名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 23:26:37 ID:RPAontjE
おお、これは非常に期待。
待ってます。
504名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 00:44:32 ID:fJbt+gzA
うわ、これ早く続き読みたい!
頑張ってくれ。待ってる。
505名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 18:06:12 ID:FLAobAE1
萌え投稿GJ!!
続き楽しみにしてます
506名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 10:20:57 ID:q88mq2o9
はよう続きをよこしてくりゃれ
507吸血鬼の恋:2007/07/03(火) 22:10:37 ID:YDsa796l
どうも、吸血鬼ネタ書いた奴です
皆さんのレスに勇気付けられて同シリーズもの投下します
無駄に長いです、ごめんなさい

・中世風?ファンタジーな吸血鬼×その僕
・吸血表現はなし
・エロは4/10から

ではドゾー
508吸血鬼の恋 1/10:2007/07/03(火) 22:11:47 ID:YDsa796l

 ラーラの「夜」は早い。

 夜を統べる吸血鬼の僕として、昼間は休み夜に活動する彼女は、沈みかけの太陽が空を赤く染める頃から起き出して、主人のためにパンの生地をこねる。
 死の淵に瀕していたところをひとりの吸血鬼によって助けられ、この屋敷で彼の僕として過ごすようになってから早半年。
 日に二度の食事の支度をはじめ、この屋敷での家事全般を任されたラーラの、これが日課になっていた。
 西日が差す厨房で手早くパン生地をまとめあげると、布巾をかけてしばらく寝かせる。そしてその間に、時間をかけて目覚めのお茶の支度をするのだ。
 ラーラの主人が好む茶葉は、時間をかけて抽出しないと独特の風味が出ない上に、彼は猫舌だ。
 主人が起きてくるまでにはまだ時間があったが、この半年で積み重ねた経験で、お茶の支度はこのタイミングがベストだとラーラは知ったのだった。
 薬缶に水を入れ火にかけようとし、そういえば昨日で茶葉を使いきったことを思い出す。
 地下室まで取りにいかなくては。ラーラは、水を入れた薬缶をひとまず調理台に置くと厨房の入り口のほうを振り向いた。

「……っ?!」
「お早う、ラーラ」
 と、その入り口に身体をもたせかけた主人に気づき、思わず声にならない悲鳴をあげた。
 いつからそこにいたのやら、この屋敷の主人であるセルヴィムは、ゆったりとしたローブ一枚という起き抜けの姿のままでこちらを見つめていた。
「…そんなに驚くこともなかろう。悪かったよ」
 胸元を押さえて立ち尽くすラーラを宥めるかのように笑みを浮かべながら、セルヴィムが厨房へと足を踏み入れる。
 窓から差し込む西日に目を細めつつあくびをするところからしても、やはりまだ起きたばかりなのだろう。いつもは凛々しげな目元も、心なしか潤んで眠たげだ。
「…ごめんなさい。…主さま、今日はお早いので、驚いたです」
「いやな、単に目が冴えてしまっただけだ。茶を煎れてくれ」
「はい。今…葉、取りいきます。地下室」
 手近にあった椅子に腰を下ろしたセルヴィムに一礼し、ラーラは厨房を出ると地下室へと駆け降りた。
 早く主人にお茶を飲んで欲しい一心で、廊下に響く足音もいつもより早いものになる。
 そうして茶葉の包みを胸に戻ると、セルヴィムは薬缶を火にかけてその前で新聞を読んでいた。 ラーラの足音を耳にしたのだろう、視線は下に向けたままで「急がなくともいいぞ」と彼女に優しく告げる。
 それでもラーラは手早く道具を整えると、金の匙で茶葉をすくってポットに入れ、セルヴィムの起こした火のおかげであっという間に沸いたお湯を注いだ。
 薬缶がたてる微かな蒸気の音と共に、柔らかな香りが厨房に満ちる。
 いい香りだ、と呟くセルヴィムの傍らで、ラーラはお湯の量や茶葉の開き具合を慎重に確かめ、問題ないことを確認すると、パン生地の様子を見に行った。
 寝かせておいた生地は案の定膨らみ具合が丁度良い頃合いだったので、セルヴィムに一言断ってからパンの成形に入った。
 今日は急いでいることもあって、丸くまとめるだけのシンプルな形にする。いくつかに分けられた生地を天板に並べ、温めておいたオーブンに入れた。
509吸血鬼の恋 2/10:2007/07/03(火) 22:12:29 ID:YDsa796l
 そこまで終わらせてからようやく一息ついたラーラを、セルヴィムは新聞を読む傍ら興味深そうに眺めていたが、何かに気付いた様子でちょいちょいと手招きをした。
「はい」
「お前はずいぶん楽しそうに料理をするのだな。あやつとは大違いだ…ほら、夢中になりすぎて粉がついている」
 手をのばしてラーラの頬についた粉を拭ってやりながら、そんな感想を漏らす。
 その言葉に、ラーラは白い睫毛を瞬かせてセルヴィムの顔を見返した。しばし考えてから、つたない言葉で返事をする。
「料理、心こめるとおいしくできます。おいしくできると、主さま喜ぶです。ラーラ嬉しい、パンも、嬉しい」
 赤い瞳をきらきらと輝かせて、満面の笑みと共にそんなことを言うラーラは、身内の贔屓目を差し引いても実に可愛らしかった。
「……」
 ラーラの頬に手を添えたまま、セルヴィムは口をつぐんで彼女を見つめる。
 その手が白い頬を、とくとくと脈を打つうなじをなぞり、ふわふわとした前髪を梳き――
「あ!」
 後頭部に手をかけ、その唇を捕まえようとしたところで、お茶の時間を思い出したらしいラーラがくるりと身を翻した。
 その拍子に、後頭部でひとつにまとめた髪が石鹸の残り香と共にセルヴィムの指先をかすめていく。
「主さま。お茶できます」
「……」
(…こいつは…)
 ラーラはセルヴィムに背を向け、お茶をカップに注いでいる。セルヴィムはしばしその後姿を見つめていたが、読みかけの新聞を脇に置くと椅子から立ち上がった。
 今度は意識的に気配を殺さずに近寄り、後ろからラーラを抱きしめる。
「…主さま?」
「ラーラは俺よりも茶のほうが気になるらしい」
 からかうように言って、むき出しの首筋に口づける。
 彼女が身にまとう衣服は典型的な貴族仕えのメードのものだが、その襟元が大きく開いているのは、ひとえに彼女が仕える主人の「食事」のためだ。
「ん…っ、主さま、怒る…?」
「…いや。怒ってはいないが、茶に負けたとなると悔しくはあるな」
「…ごめん、なさい」
「すまなく思うのなら、少しじっとしていろ?」
 ラーラは血を吸われるのかと思ったようだが、血液は昨日貰ったばかりだ。
 なので牙を突き刺すことはせず、柔らかい肌を吸い上げ、戯れに甘噛みする。ゆるゆると与えられる刺激に、ラーラが時折喉を鳴らした。
「主…さま」
「ん?」
 唇は未だ首筋に埋めつつ、空いている両手で尻から腿にかけてゆっくりと撫で回す。
 さすがにここまで来るとセルヴィムのしたいことがわかってきたらしく、ラーラがセルヴィムの腕の中で咎めるような声を出した。
510吸血鬼の恋 3/10:2007/07/03(火) 22:13:46 ID:YDsa796l
「…主さま、はしたない」
 セルヴィムは可愛らしいお叱りにくすりと笑みを漏らしつつも、彼女の身体に這わす手を止めようとはしない。
 思えばこの屋敷に来た頃は、このように寝台以外の場所で事に及ぼうとすると、ラーラは咎めるどころか自ら服を脱ぎだしてセルヴィムをびっくりさせたものだった。
 それは以前奴隷として飼われていた屋敷での経験から来るものらしい。
 聞くところによると、横暴な主人は昼夜どころか場所も、時には人目すらも厭わずにラーラの身体を好き放題にしたという。
 彼女はそのような非道の人間によって処女を散らされ、あまつさえ満足な言葉まで奪われた。
 しかしそんな環境に慣れてしまっていたラーラは、求められれば即座に、男の手を煩わせることなく応じなければいけないと思っていたらしい。
(…まったく。情緒もへったくれもあったものではない)
 そのほかにも色々常人とずれた価値観を持っていたラーラに、新しい主人であるセルヴィムは執事とふたりがかりで、どうにか世間一般でいう「常識」というものを教え込んだのだった。

「ベッドでないところでするは、はしたないです。カルズスさま言った」
 その甲斐あってまともに文句のひとつも言うようにはなったが、この状況で他の男の名前を出すようではまだまだである。
 セルヴィムはそんなラーラの顎に手を添えて顔を巡らせると、不満げに引き結ばれた唇を塞いだ。
 軽く幾度か吸い上げてやれば、力を失って緩み出す。開いた隙間から舌を差し入れてやると、ラーラは教えられた通りに己のそれを絡ませてきた。
「…寝台以外の場所、だろうと……ラーラが嫌でなければ…いい、んだ」
 深い口づけの合間に、そんな詭弁でもって言い含めてやる。
「ん…ふ、ぁ…」
「それとも…嫌か?」
 我ながら小賢しい質問だ。
 自らの腕の中で執事の名前を出されたことに意外なほどの不快感を覚えていたセルヴィムは、己の幼稚さに呆れながらもラーラに問いかけた。
「…嫌ないです。主さま、お優しいから」
 そう問いかければ、ラーラが笑顔と共にこう答えるのは、わかりきっていたことなのだから。
「……」
(まあ、よしとしよう)
 限りなく誘導尋問に近い形だったとしても、了承は取ったのだ。
 セルヴィムは床上手と評される吸血鬼のプライドにかけて俄然やる気を出すと、エプロンとワンピースの間に手を差し入れた。
511吸血鬼の恋 4/10:2007/07/03(火) 22:15:11 ID:YDsa796l
 布をまさぐってワンピースの釦を手探りで外し、エプロンはそのままに胸元を割り開く。
 コルセットを嫌うセルヴィムの命で、ラーラは下半身にしか下着をつけていない。
 エプロンの下でむき出しになった乳房を、セルヴィムは確かめるようにゆっくりと撫で回した。
「ふむ…だいぶ肉がついたな」
 小振りだが柔らかく確かな感触に、セルヴィムは満足そうに呟く。
 拾った時にはがりがりで色気の欠片もなかったのを、童話の人食い鳥よろしく毎日たらふく食べさせてここまで育てたのだ。
 まだいささか貧相ではあるが、ようやく年頃の娘らしくなってきた膨らみをゆるゆると刺激すると、ラーラが甘い声をあげた。
「あ…っ…」
「気持ちいいのか?」
 耳元で息を吹き込むように囁くと、ラーラは身体をびくりと震わせてからこくこくと首を振った。
 その反応に満足したセルヴィムは、耳たぶを食みながらぷっくりと膨れた先端をつまみ、指の腹で転がすように刺激してやった。
「ふぁ…あ…っ」
 成長途上で敏感になっているそこを弄ばれ、ラーラはいやいやをするように身悶えた。
「…まだ少し小さいな。早く大きくなれ」
「ん…っ…は、い…」
 手のひらで円を描くように転がされたり、指の間に挟んで震わせられたり。果ては大きな手で乳房全体を掴まれ、こねくり回されたり。
 次々と変わる手指の動きに朦朧としつつも、ラーラは懸命に返事をした。
 セルヴィムはその答えに満足したように喉を鳴らすと、片手でワンピースの裾をたくし上げ、我慢できないとばかりに蠢いていた腰をなで上げた。
「あっ…主、さまぁ…」
 腿の内側から脚の付け根に指を滑らせると、案の定そこは下履きの上からもわかるほどに熱く湿っていた。
「いい反応だ」
「…ぁ…あっ!」
 布越しに指先を押し付けると、ラーラは小さな叫びと共に身体を震わせた。
 その拍子に、彼女がすがりついていたテーブルの上でティーカップが硬質な音を立てた。
512吸血鬼の恋 5/10:2007/07/03(火) 22:16:26 ID:YDsa796l
「あ…」
 はっと我に返ったように、ラーラが顔を上げる。
 その視線がカップを捉える前に、セルヴィムは彼女を抱き上げるとテーブルと反対側の調理台に座らせ、そのまま押し倒した。
「主さま、カップ…」
「いい。気にするな」
 奥行きが足りずにずり落ちそうになる下半身を、脚の間に身体を入れて支える。
 布越しだとはいえ互いの秘部が触れ合う余りにもあからさまな体勢に、仕事熱心なラーラもぱっと頬を染めてセルヴィムを見上げた。
「今は…俺のことだけ考えていろ」
 ラーラが直接的な言葉に弱いとわかって、身体を屈め至近距離で瞳をのぞき込みながら言い切った。
 小さく息を呑んだ唇に己のそれをぶつけるように重ね、腰まわりに纏わりついていたスカートをのけると、下着の紐を手早くほどく。
「ふ、んぅ…っ」
 ラーラの細い手がおずおずと伸ばされ、セルヴィムの首を、肩を愛おしげになぞる。
「…っ、ラーラ…」
 セルヴィムはその愛撫のお返しとばかりに、程なくして露わになった彼女の秘所に指を差し入れた。
「ん、あ…っ…!」
 これ以上の愛撫は不必要なほどに濡れそぼった箇所はいとも簡単にセルヴィムの指を呑み込み、ラーラは白い喉を反らせて喘いだ。
「あ…やぁ…主さまも…っ」
「ん?」
 長い指で内部を刺激される快感に、しかしラーラは首を振って抵抗する素振りを見せた。情欲に潤んだ赤い瞳が、訴えるようにセルヴィムを見つめる。
「主さまも…っ、気持ちよく、なる…!」
 先ほど触れた時点でラーラにもはっきりとわかるほど張りつめていたセルヴィムの下半身は、今や薄手のガウンを持ち上げるほどに膨れ上がっていた。
 その高ぶりをどうにかしようと、ラーラが健気にセルヴィムの腕を引く。
「……」
 自分の快楽より男を優先しようとするその様子。
 それは否が応でも、彼女がかつて男の欲望を処理する役目を与えられていたことを思い出させて、セルヴィムを少しだけ悲しくさせた。
 また同時にそれは、自分より前に彼女と身体を繋げてきた男の存在を意識することでもあった。
(…今日の俺は、どうかしている)
 茶だけでは飽きたらず、過去の男、それもおそらくはろくに親しくもなかっただろう男に焼餅など。
513吸血鬼の恋 6/10:2007/07/03(火) 22:17:32 ID:YDsa796l
「…ラーラ」
 しかしセルヴィムは、およそ自分らしくない暗い独占欲が胸のうちに広がっていくことを止めることもできず、低い声でラーラに問いかけた。
「俺が、欲しいか?」
 彼女の視線を真正面から捉えたまま、内部をかき回す指を一本増やす。
「欲しいなら、挿れてやる」
 充血した肉芽を、親指でぐりぐりと押しつぶす。
「そうしたら、俺も気持ちよくなれるな」
「…あ…っ」
 その言葉に、ラーラの内部がきゅう、と締め付けを増した。
 こう言えば、ラーラは己の欲望のためではなく、主である自分を悦ばせようと考えて、その言葉を口にするだろう。
 それは自分が望んだ響きを宿してはいないだろう。だがそれでも、セルヴィムは彼女の口から聞きたかった。
「さあ、ラーラ」
 偽りの言葉でも身体を重ねる度に口にしていたら、彼女もいつかはそれを己の願望だと錯覚してくれるかもしれないだろうから。

「ほしい…ください…っ」
 セルヴィムは、彼女の中に沈めていた指を引き抜いて。
「主さまぁ…っ!」
 細い腰を両手でしっかりと掴むと、猛り立った自身でその胎内を一気に貫いた。

「…ぁ…っ!!」
 ラーラが身体を弓なりに反らせ、声にならない声をあげる。
「く…ぅ…っ」
 熱く濡れそぼった肉の壁に締め付けられる感触に、セルヴィムもまた押し殺した喘ぎを漏らすと、強い快感をこらえながら腰を打ちつけはじめた。
「あ…っ…主さま…主さま…」
 弱い箇所を張り出した先端で執拗に責め立てられ、ラーラがうわごとのように繰り返しセルヴィムを呼んだ。
 抱えられた腿の先、乱れることなく残されたままの絹靴下と踝丈のブーツに包まれた脚が、セルヴィムの突き上げに合わせて力なく揺れる。
「主さま…!」
514吸血鬼の恋 7/10:2007/07/03(火) 22:19:05 ID:YDsa796l
 耳を塞ぎたくなるほどの厭らしい水音はどんどん大きくなり、それに合わせてふたりの荒い息も速くなってゆく。
「あ…んぁ…あ…っ」
 勢いをつけて最奥まで貫き、ゆっくりとぎりぎりまで引き抜く。再び根本まで埋め込むと、内壁に沿ってぐるりと腰を回す。
 セルヴィムは緩急をつけてラーラの内部を突き上げながら、その胸元に手を掛けると乱れていたそこを無造作に押し広げた。
 先天的に色素をほとんど持たないラーラの身体は、皮膚の下に血の色を透けさせて既に淡い桃色に染まっている。
 その中でもふたつの胸の先端は一段と濃く色づいており、熟れた果実か咲く寸前のばらの蕾を思わせた。
 これに喰らいついたら、どれほど甘美な味がするのだろうか。食感は、匂いはどうだろうか。
(…美味そう、だ)
 吸血鬼としての本能が心の奥底で鎌首をもたげ、セルヴィムの背筋をぞくりと震わせる。
 セルヴィムは半ば無意識のまま固く勃ちあがったそこに手を伸ばし、腰の動きに合わせて刺激してやった。
「ふあ…っ…あぁん…っ」
 その途端、我慢できないとばかりに細い腰がくねり出す。一片たりとも快感を逃さないとでもいわんばかりのその動きに、セルヴィムは心から酔いしれた。
「主、さま…ぁ」
 熱にうかされたような声で、ラーラがセルヴィムを呼ぶ。同時に、双丘を揉みしだくセルヴィムの両手に彼女の手がそっと添えられた。
「主、さま、気持ちいい…?」
 掴んだ胸のその奥から、速い鼓動が伝わってくる。
「…ああ、最高だ」
「ほん、と…?」
 赤い瞳がとろん、と潤み、心から誇らしげに、幸せそうに細められて。
 ふっくらとした唇から、甘い、甘い声が紡ぎ出された。

「うれ、しい」

 その声と表情に、思わずセルヴィムの両手に力が入った。その刺激にラーラは最早すっかりかすれた声しか出せずに、それでも鳴く。
「主さまが、嬉しいの、ラーラも、うれ、しい…」
「っ…は…」
「主さま…主、さま」
「く…ぅ…っ、ラーラ…っ!」

 そして遂に激しい衝動に耐え切れなくなったセルヴィムは、暗い欲望に突き動かされるまま、掴みあげた乳房に噛みついた。
「…ぁ…ああぁっ!!」
 そして快楽に浸りきったラーラの身体はその鈍い痛みをも快感と捉え、ラーラは細い悲鳴を漏らして絶頂を迎えた。
 それとほぼ同時に、自分の最奥まで穿たれた肉棒がびくびくと脈打つのを感じながら、ラーラは熱く潤んだ瞳をゆっくりと閉じた。
515吸血鬼の恋 8/10:2007/07/03(火) 22:20:26 ID:YDsa796l

 どちらのものともつかない荒い呼吸音の向こうで、微かに梟の声が聞こえる。
 共に絶頂を迎えたふたりは、暗闇の中で調理台の上に倒れ込んでいた。
「…ラーラ」
 先に口を開いたのは、セルヴィムだった。快楽の余韻に低い声がかすれ、それが何とも言えず退廃的な色気を漂わせている。
「はい」
「…痛く、なかったか」
 どこがだろう、とぼんやりする頭で考え、微かに身動きしたラーラだったが、その瞬間に胸元に走った痛みに思わず顔をしかめた。
「……っ」
「すまない…」
 未だ下半身は繋がったまま、セルヴィムが半身を起こし、赤く腫れてきている傷に舌を這わせた。
 吸血鬼の歯や顎はあくまでも血を吸うためのもので、人の肉を食べるものではない。歯型をした傷跡は、血こそにじんでいたもののそう深くはないようだった。
 それでももしピンポイントで乳首に噛みつかれでもしていたら、それこそ転げ落ちていたかもしれない。
(……)
 その想像は、何というかあまりにも、ぞっとしない。
「…よし、これで幾らか治りが早くなるだろう」
 思わず恐ろしい想像をめぐらせてしまったラーラの胸元から、セルヴィムがそう言って顔を上げる。
 見下ろすと、にじんでいた血は綺麗に舐めとられ、傷口もそこまで目立たないものになっていた。
 吸血鬼の唾液には傷の治りを促進する成分が含まれているというから、これも直に消えるだろう。 
「本当にすまなかった。…その、なんだ」
 ラーラの乱れた衣服を一通り整えてやりながら、セルヴィムはばつの悪そうな顔で口ごもる。
「?」
 ラーラはいつになく歯切れの悪い主の様子に首をかしげた。そんなラーラと目が合うと、セルヴィムはためらいつつも口を開こうとして――
「「…あ」」
 その口から出た声が、ラーラのものと見事に合わさった。

 ふたりの嗅覚が同時に捉えたもの。
 それは、オーブンの中で焼かれすぎたパンの、香ばしいを通り越して既に焦げ臭くなった香りだった。
516吸血鬼の恋 9/10:2007/07/03(火) 22:21:10 ID:YDsa796l
「パン…っ、あっ」
「…っ」
 咄嗟に調理台から降りようとしたラーラだったが、動いた拍子に未だ体内に入れられていたもので内部を刺激され、小さく悲鳴をあげて硬直する。
「主さま…っ、抜いてっ」
「す、すまん」
 力を失っても尚十分な存在感のあるものがずるりと引き抜かれ、内部からどちらのものともつかない体液が流れ落ちる。
 その感触にラーラは一瞬身震いしたもの、たくし上げられていたスカートを下ろすと、慌ててオーブンに駆け寄った。
「ラー…」
 声をかけようとしたセルヴィムのことはそっちのけだ。
「……」
 伸ばした手が、むなしく虚空をさまよう。
「…まったく」
 セルヴィムはその手を額に当てると、大きなため息をついて首を振った。

(本当に、どうかしている)
 夜も更けきらぬうちから事に及ぶのも、ラーラがたしなめたように寝台以外でいたすのも、本来はそのどちらも好きではない。
 あまつさえ行為中に血を吸うのならまだしも、子供でもあるまいに乳房に思い切り噛みついた。
 たとえ僕と言えども対等的な関係を重んじ、常に紳士たることを美徳とする吸血鬼にとっては、穴があったら入りたいほどの失態だった。
(最近の俺は、ずっと変だ)
 ラーラが必要以上に従順なのが、執事を師として慕うのが、年齢にしてはやたらと床上手なのが、面白くない。
 そのどれもが、よい僕には欠かせない要素といっても間違いではないのに。
517吸血鬼の恋 10/10:2007/07/03(火) 22:22:45 ID:YDsa796l
(……)
 セルヴィムは、こぼれて少し量が減った上にすっかり冷めてしまったお茶をすすりながら、この不可解な心境について考えた。
「……わからん」
 が、数十秒で諦めた。
 まあいい。数百年の寿命を持つ吸血鬼には、考える時間は腐るほどあるのだ。
 カップの底に残っていたお茶を一気に飲み干すと、難しい問題はさておきひとまず汗を流そうとラーラを呼んだ。
「ラーラ、風呂に行くぞ。お前も来い」
 その声に、完全に駄目になる前にパンを救出できたらしいラーラが振り返った。情交のなごりとオーブンの熱気とで赤く染まった顔で、にっこりと微笑む。
「はい、主さま」
 何とも無邪気で無防備なその笑顔は、セルヴィムの突き当たった「難しい問題」を、少しだけ軽くしてくれるような気がした。


 齢百二十七にしてはじめて僕を得た吸血鬼が、この気持ちを恋と気付くのは、まだ少し先のことだった。
518吸血鬼の恋:2007/07/03(火) 22:24:40 ID:YDsa796l
以上です
ホントは裸エプロンがやりたかったんだが力及ばずうまく書けなかった…
誤字脱字変な表現あったら遠慮なくツッコミください

また書けたら投下しにきます
ありがとうございました
519名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 00:34:24 ID:YUmGqwgR
一番槍GJ
自分の気持ちに戸惑うセルヴィムに萌えた。

ところで普通の食事をするとはずいぶん人間ぽい吸血鬼ですね。
水に入れて、寿命もあるということは一般的な吸血鬼よりもナマモノに近いんでしょうか。
520名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 22:40:07 ID:l3q540M1
gj!!
俺は吸血鬼のことは詳しくないが、設定も面白いし、エロも良かった!!
続編wktk
521名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 23:58:01 ID:qkpqGrFc
吸血鬼も主従も両方好きな者としては凄く萌える話でした!
GJです!!
522吸血鬼作者:2007/07/05(木) 02:24:10 ID:pHPZIzS9
みなさんGJありがとうございます

>>519
割とナマモノです モンスターってか亜人種って感じで書いてます
いわゆる普通の吸血鬼だとエロ的に不自由なこともあるんでw


ちょっと異色?な吸血鬼モノですが、見守ってくれると嬉しいです
主従萌えをうまく表現できたらいいな〜と思いつつまた続き書いてきますノシ
523名無しさん@ピンキー:2007/07/09(月) 22:51:44 ID:adECqWt0
ほす

探偵も吸血鬼も続編楽しみにしとります
524名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 00:42:55 ID:URqdAj/D
(・∀・)ニヤニヤ
525ユリシスとイリス:2007/07/11(水) 01:08:40 ID:ZAHt4stx
ユリシスとイリス投下します。
今までの二人と雰囲気が少し変わっていますので我儘な閣下とそれを諌める副官のほのぼのが読みたい方はご注意を。
526ユリシスとイリス 1:2007/07/11(水) 01:11:05 ID:ZAHt4stx
 久方振りの王都は出ていった時のままでユリシスを迎えてくれた。
 風呂上がりにローブ一枚で長椅子に腰掛け、自分付きの女官に髪を乾かしてもらう。これもあちらへ行くまでは日常的に行われていたことだ。
「よいご身分ですね、閣下」
 呆れた顔の副官に蔑みを含んだ眼差しを向けられても今のユリシスはめげない。
「それで、お前の衣装は決まったのか?」
 途端にイリスのこめかみがぴくりと動いた。
「正装は軍服と決まっております」
 ユリシスはわざとらしく大袈裟に驚きを表した。
「私に恥をかかせる気か?」
「ならば、自分ではなく見目麗しき女性を伴えばよいではありませぬか」
「駄目だ。お前を連れていく」
 向こう三年は戻れぬはずのユリシスが王都の門を開くことができたのは、末の妹が婚約披露パーティーを開くこととなったからだ。兄として妹の晴れ舞台を拝まぬ訳にはいかないと、祝いの書簡一つですませようとしたイリスにさんざん駄々をこねて長期休暇を取ったのだ。
「大体、貴様とて休暇中だろう。軍服ばかりでは味気ないぞ」
「閣下の付き添いをするのであれば、それは任務と同じこと。閣下に合わせて休暇は取りましたが、自分は休暇だと思っておりません」
 イリスにしてみれば正直な気持ちを述べたのだが、ユリシスはそれが気に入らないようで一気に気分が落ち込んだように見て取れる。
「そうか」
 ひらひらと手を振り、お付きの女官を退室させる。
 扉が閉まったのを確認し、ユリシスは立ち上がった。
「イリス」
 窓際に立っていた副官の手前まで近づき、その頬に触れる。
「どうしても嫌か?」
 褐色の肌を撫で、短く刈られた髪に触れる。憂いを帯びた眼差しと相まって官能的ですらあるユリシスの動作にもイリスは眉一つ動かさない。
「嫌ですね。どうせ休暇をいただけるのであれば旧友と酒でも酌み交わした方がよほど有意義かと」
527ユリシスとイリス 2:2007/07/11(水) 01:13:48 ID:ZAHt4stx
 ユリシスの手が首の後ろに添えられ、ゆっくりと引き寄せられる。
「どうしていつもつれない? 私が嫌いか?」
 切なげに見つめれば、イリスは不思議そうな顔をする。
「自分は閣下を尊敬しています。人間としては引っかかりを覚える部分もありますが、軍人としては尊敬に値する人物でしょう」
「男としては?」
 イリスは深々と溜め息をつき、ユリシスの胸を押した。けれど、ユリシスはイリスを離さない。
「年下は嫌いか?」
「そういう問題ではありません」
「整った顔は嫌か?」
「そういう問題でもありません」
 イリスの返答に焦れたユリシスは聞きたくないと言わんばかりに唇を重ねた。
 突き離すでも噛みつくでもなくイリスは微動だにしない。ユリシスの舌が唇をなぞろうと構いもしない。無反応というものだ。
「……イリス」
 まったく反応を返さないイリスを悲しげに見つめ、ユリシスは小さく頭を振った。
「望むものなら何でも与える。お前の望みなら何でもする。私はお前が欲しい。側にいてはもらえぬか」
 イリスの手を取り、その手のひらを頬によせる。温もりを確かめ、手のひらに口づける。
 愛おしさがこみ上げて、ユリシスは頭がどうにかなりそうだった。
 思えば、一目惚れというものだった。ふと訪れた訓練場で見たイリスの立ち居振る舞いに心惹かれた。
情報や評判を聞き集めた結果、必要とあらば上官すら諌める生真面目な人柄に好感を持った。裏から手を回し自分の隊に異動させることに成功したときは喜びに震えた。
 初めは近くで見ていられればそれで満足だった。なぜだか知らぬが彼女の姿を目にするだけで胸が熱くなれたから。
「私では駄目か」
 けれど、人は欲深い。だんだんと見ているだけでは満足できなくなる。触れたい。愛したい。愛されたい。
 ほんの少しでいい。ユリシスは愛情のこもった眼差しをイリスに向けてもらいたいのだ。
「……あなたは悔しいのです、手に入らないものがあることが。だから、あなたは私を求める。手に入れば途端に魅力をなくすでしょう。ユリシス様、今一度ご自身の心とよく向かい合ってみることですね」
 真剣に応えてくれているのはよくわかる。軍人としてのイリスではなく、一人の女として応えてくれている。それはユリシスにもよくわかる。
528ユリシスとイリス 3:2007/07/11(水) 01:15:16 ID:ZAHt4stx
「私は卑怯な男に成り下がりたくはない」
 だが、理解するのと納得するのでは話が違う。
「今一度問うが、お前の意志で選んではくれぬのか?」
 ユリシスの懇願するような声音と瞳に陰る暗い色にイリスは絶句する。
 目の前の男を愛してやれない自分に罪悪感を覚え、次の瞬間には彼の言葉の意味を思い嫌悪した。
「自分の気持ちを偽ることは出来かねます」
「……後悔するぞ」
「あなたに対して自分を偽ることはできません。初めこそ不満はありましたが、私は……今はあなたの部下として働けることに誇りを持っていますから」
 今度はユリシスが絶句する番だった。
 なぜ部下としてのイリスでは満足できないのかと欲深い自身を呪う。
 沈黙が数分続き、ユリシスはイリスから手を離し、深々と溜め息をついた。
「少し一人になりたい」
 頷き、イリスは部屋を後にする。
 残されたユリシスは力ない足取りで長椅子まで歩き、倒れ込むように腰を下ろす。
「それでも、私は――」
 イリスの真摯な眼差しを思い出し、ユリシスは一人葛藤するのであった。


おわり


529名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 01:31:13 ID:rf/+bvY8
ユリシスキター!!!
530名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 02:40:00 ID:k/kPVd5W
うわー切ねえ…
どうかラブラブになりますように!
531名無しさん@ピンキー:2007/07/11(水) 17:58:35 ID:HBLLNrTd
待ってました!
切ないのも好きだが早く幸せになってほしい…
続き楽しみにしてます
532ユリシスとリカルド:2007/07/12(木) 00:58:43 ID:dxT4L/AN
待っててくれた方々ありがとう。


今回はユリシスだけの登場です。
それと、今回はユリシスとユリシス兄の語らいなのでご注意ください。
533ユリシスとリカルド 1:2007/07/12(木) 01:00:59 ID:dxT4L/AN
「珍しいな」
 ふと声をかけられ、ユリシスは窓の外に向けていた視線をそちらへ向けた。
「皆が心配していたぞ。今日のユリシス様には覇気がない、とな」
「リカルド……?」
「考えごとか?」
 ユリシスより少しばかり背が高く、父譲りの勝ち気そうな目は細身の眼鏡で和らぎ、全体的に柔和な印象を与える顔立ちだ。久方振りに会った兄の姿をまじまじと眺め、ユリシスはふっと表情を和らげた。
「放蕩息子のご帰還か?」
「我らが姫君を拐かした強者の顔を拝みにきたんだよ」
 兄弟は互いに顔を見合わせて笑った。
「それで、エステルの晴れ舞台に浮かない顔をしているのは妹離れできないせいばかりではないな」
 改めて問われては誤魔化すわけにもいかず、ユリシスは苦笑を浮かべた。
「どうしようかと考えていただけだ。家を潰すこともできるし……居場所をなくそうと思えば簡単だ。簡単に孤立させられる」
「物騒だな。復讐か?」
「いや、傷を負わせて、弱りきった獣を私が保護したい。傷ついたまま、檻の中に閉じこめてしまいたい。もう、自由に野山は駆け回れないように」
 どこか遠くを眺めるようなユリシスを見て、リカルドは考えるように間を置いた。
「それはまた、さぞかし美しい獣なんだろうな」
「しなやかで、したたかで、とても気高い」
「なるほど。重症だ」
 こと女に関してここまで弱い男もいないだろうというのがリカルドのユリシスへの評価であったが、やはりこの男は弱いと実感する。
 物心ついた頃からユリシスは異性の羨望の的だった。顔が良く、頭も悪くないし、家柄は抜群だ。年頃になれば年上年下と問わず、女性からの誘いが途切れることはなかった。当然ユリシスがその誘いを断ることもなく、かといって誰か一人にいれこむこともない。
 あれではまともに恋をしたこともなかろうとリカルドは少し心配していたのだが、女性経験豊富な弟は今更初恋を経験しているらしい。
「まあ、なんだ。あまり思いつめるな」
 ユリシスがここまで思いつめているのだから相手に拒まれた後だろう。ユリシスを拒むとはなかなかに見所のある女だとリカルドは思う。なんといっても御三家の一つハインツの跡取り息子だ。愛がなくても欲があれば拒みはしないだろう。
534ユリシスとリカルド 2:2007/07/12(木) 01:05:07 ID:dxT4L/AN
「私は策を練っているだけだ」
「それを人は思いつめるというんだ」
(恋愛ゲームには慣れてるようだが、本気になると弱いか。難儀な奴だよ、お前は)
「よし。今日は兄さんがお前に上手な振られ方を教えてやろう」
 にこりと笑うリカルドをユリシスは胡散臭そうに眺めた。
「…………遠慮する」
 しかし、リカルドはユリシスの肩を抱き、強引に自室へと向かいだす。
「たまには溺れるほど飲むのもいい。秘蔵のワインにでも手をつけるか? 大丈夫。今日の父さんはすこぶる機嫌がいい。なんとか誤魔化せる」
「リカルド! 私は――」
「いいか、ユリシス。振られた時はとりあえず飲め。吐くまで飲め。泣いてもいい。体裁など気にするな。私はお前の兄だ。恥をかくことなどない」
 諦めさせるのは無理かもしれないが、落ちた思考を浮上させる手助けぐらいはしてやろうとリカルドは考える。それが兄として自分にできる唯一のことだから。
「なに、お前はいい男だ。私が保証する。一度振られたくらいで自棄になることはない」
 半ば引きずるようにユリシスを連れ歩きながら、リカルドは優しく弟を励ます。
 ユリシスは文句を言いながらもリカルドの腕を振り払わない。
「だから」
 ふと声を潜め、リカルドは僅かに間を置く。
「だから、あんな悲しいことは言うな。私はお前に後悔してほしくない」
 ユリシスは口をつぐみ、それきり文句を口にはしなかった。
「お前の気の済むまで付き合ってやるから、遠慮はするなよ」
 自室の扉を開き、リカルドはユリシスの頭をぐしゃぐしゃと撫で回したのであった。


おわり


一応、次の投下で一区切りつけようと思ってます。
事故がない限り明日には投下しますので、今しばらくお付き合いを。
535名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 01:15:33 ID:fdNey4Ss
おお、エステルも婚約したのか。
536名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 14:19:04 ID:KHDBAyi9
エステル「も」っていうか、エステル「が」婚約をしたんじゃ……。
リカルドとユリシスの妹がエステル、婚約者がゲイル。
スレチながら婚約おめでとう。

初登場の長兄イイ。兄弟ほほえましくていいなぁ。
今日の続きが待ちきれないぜ。
537ユリシスとイリス:2007/07/13(金) 03:45:37 ID:C7e/Bj6P
ユリシスとイリス投下します。



>>536
その通り、エステルが婚約しました。
長兄気に入ってもらえて嬉しい。彼は家も継がずに我が道を行く放蕩息子だが弟妹には優しいんだ。
538ユリシスとイリス 1:2007/07/13(金) 03:50:28 ID:C7e/Bj6P
 濃い色のドレスを見つめ、イリスはそっと指でなぜる。しっとりと肌に馴染む素材は質の良さを感じさせてくれた。
 知らず口をついて出た溜め息にイリスは我ながら呆れる。
 ユリシスとはもう三日も顔を合わせていない。これは驚愕に値する事実である。ユリシスの元へ配属されて以来長期休暇は取れず、たまの休みにも図ったようにユリシスが顔を見せていたからだ。
 そのユリシスが会いにも来なければ、イリスを呼び出しもしない。傷つけてしまったのだと思わずにはいられない。
 ユリシスと仲違いして別れた日、自宅には今目の前にあるドレスと一揃いの装飾品が届いていた。小さなカードに書かれたメッセージはおよそユリシスが考えたとは思いもつかないほど簡素なもので、だからこそイリスは目頭を熱くした。
 しかし、その一方では脅迫めいた言葉を口にするユリシスの直情さに呆れ、短慮さに憤慨した。彼らしからぬ行動に腹が立って仕方がなかったのだ。
 また一つ、イリスの口から溜め息がこぼれる。
(これで異動は確実。下手をすれば除籍。その気になれば軍に私の居場所はなくなる、か。軍人以外の職など考えたこともなかったが)
 ドレスから視線を外し、ユリシスのことを考えるのはやめて今後の身の振り方を考える。
 思いつく限りの職業を思い浮かべ、それに従事する自身を想像する。そういえば昔はパン屋になりたかったなどと幼き頃に思いを馳せ始めた頃、部屋の扉を叩く音がした。



 まだ少し頭が痛かった。
 日がな一日浴びるように酒を飲んだせいで、一日休んだ今も酒が体に残っているような気がしていた。
 気を取り直そうと手にした花に顔を近づけると甘い香りに心が和んだ。
(まずは非礼を詫びねば)
 ともすれば暴走しかねない自身を落ち着けるためにユリシスは深く呼吸をして自分で定めた取り決めを思い出す。
 早く顔が見たいと思う反面、会うのが怖くもあった。一度は拒絶された身だ。不安にもなろう。
 けれども、不安に負けるわけにはいかない。ユリシスはイリスと友好的な関係を築くためにここへきたのだから。
 気合いを入れ直したユリシスの耳に扉を開く音が聞こえた。



539ユリシスとイリス 2:2007/07/13(金) 03:51:37 ID:C7e/Bj6P
 中で待つようにと勧めたのだが頑として聞き入れなかったと弟は言っていた。
 上官を玄関先で待たせるなど無礼極まりない行為だ。敢えて玄関先で待とうというのはきっとユリシスなりの配慮なのだろうが、どうにも的を外れている。
 イリスはシャツとパンツという自分のラフな格好を見て顔をしかめたが、休暇中なのだからかまわないだろうと思い直して玄関へと向かった。
(最後通牒でもつきつけにきたか、あるいは――)



 扉が開き、姿を現したのはイリスだった。ユリシスの心臓はその姿を認めた途端に大きく跳ねる。
「軍服ではないな。ああ、久しぶりだ。変わりはないか?」
「休暇中ですから。久しぶりと仰いますがまだ三日しか経っていませんので何も。自分は変わりありません」
 イリスが抱えた花束を一瞥したのに気づき、ユリシスはそれを彼女に差し出した。
「ありがとうございます。……よい香りですね」
 素直に花束を受け取り、イリスは香りを楽しむように花に顔を近づけた。
 イリスは白い花を好む。それを知っていたから、ユリシスは淡い緑で縁取られた白薔薇を持ってきた。
 満更でもないイリスの様子にユリシスは安堵の息を吐く。気に入ってもらえたならば素直に嬉しい。
「イリス…………その、すまなかった」
 花に向けていた視線をユリシスに戻し、心底すまなそうな顔をイリスは意外そうに眺めた。
「何に対して謝罪しておられますか、閣下」
 ユリシスは一旦口をつぐみ、けれどすぐにイリスに答える。
「無理矢理唇を奪ったことと、その」
 口ごもり、ユリシスは少しだけ躊躇う。
「私が浅はかであったと思う。お前を苦しめた」
 随分と殊勝なものだとイリスは拍子抜けした。
「今日は随分と素直ですね。どういう風の吹き回しですか」
「……本気で反省している」
「それは自分にもわかります」
「では、許してくれるか?」
 イリスが一言許すと告げるまで、ユリシスはこうして頭を下げるのだろう。それがなぜだかおかしくてイリスは堪えきれずに吹き出した。
「どうした? 私は真面目に話をしている」
「いえ、すみません……ふっ、その、ははは」
 呼吸を整えてからイリスはもう一度謝罪して小さく咳を払う。
「こちらとしましては職を追われ、下手をすれば家まで危うくなるのではないかと考えていたもので」
 決まりが悪そうなユリシスの顔を見て、あながち外れてはいなかったのだとイリスは確信する。
540ユリシスとイリス 3:2007/07/13(金) 03:53:39 ID:C7e/Bj6P
「閣下が謝罪にくるなど、思いもよらぬ結果に気が抜けまして。気分を害したのであればすみません」
 ユリシスの手がイリスの頬に触れる。
「いや、いい。実際お前の予想は当たらずとも遠からずだ。先日まではそうしようかと思い悩んでいた」
 先日のように指は髪に触れ、耳に触れる。
「だが、それは間違っていると兄上に諭された。実際その通りだ。お前を檻に閉じこめたところで虚しいだけ。私の欲しいものは永遠に手の届かぬ場所に消えてしまう」
 イリスは微動だにせず、ユリシスの指先を受け入れる。
「抜け殻が欲しいわけではないからな。欲しいのはお前だ。感情を殺したお前はお前ではない」
 ユリシスの指が唇をなぞり、名残惜しそうにしながらも離れた。
「私はお前を愛している」
 イリスの瞳が揺れる。
「今もそれは変わらない。おそらく、私はお前を諦めることはできないだろう」
 ユリシスが悲しげに微笑みながら首を傾ける。
「けれど、もう無理強いはしない。無論、お前の気持ちが私に傾くよう努力はするが、無茶は言わない。約束する」
 花束を握る手に僅かに力を込め、イリスは困ったような呆れたような表情でユリシスを見上げた。
「あなたが本気だというのはよくわかりました。先日は生意気なことを言いましたから、さぞや気分を害されたことでしょうね。その点は申し訳なく思います」
「いや、そうでもない。ああ思われても仕方がないと思う」
「それはそれとして。それでも諦めなさいと言ったところできかないのでしょうね、あなたは」
「想うのは自由だ。私の気持ちは私のものだからな。例えお前だろうと止める権利はない」
「下手に出ているようで相変わらずの我儘ぶりですね。本当に、あなたにはかないません」
 くすりとイリスが笑みをこぼす。
「好きになさい。でも、私はそう簡単には落ちませんよ。あなたの恋人になれば苦労が絶えないでしょうし、まだまだその気にはなれませんから」
 ユリシスがそっと身を屈めてイリスの腰を抱く。
「イリス、キスがしたい」
「言った端からそれですか。舌の根も乾かぬ内に約束を――」
 イリスの言葉を遮り、ユリシスは唇を重ねる。唇を数秒重ね、啄む口づけを二度落とす。
「ユリシス様」
 イリスは眉根を寄せて窘める。
「仲直りのキスだ」
 悪びれなくユリシスは言い、簡単に許すのではなかったとイリスは早くも後悔を始める。
541ユリシスとイリス 4:2007/07/13(金) 03:54:33 ID:C7e/Bj6P
「実は、許してもらえたらお前に頼みごとをしようと思ってきた」
 イリスの髪を弄びながらユリシスは言う。
「明日のパーティーに一緒に出てほしい」
 頼みごとをするときばかり捨てられた犬のような目をするのかとイリスは呆れを含んだ眼差しをユリシスに向ける。
「お断りします――――と言いたいところですが上官に恥をかかせるわけにもいきませんし、今回限りと約束してくださるならいいでしょう」
 目に見えて機嫌のよくなるユリシスを諌めようとイリスは慌てて付け加える。
「部下として同伴するのですからね。部下として。それはお忘れなきようお願いします」
 嬉しそうにイリスの手を取り、甲に口づけるユリシスを見て、イリスは早々と頭を抱える羽目になるのであった。


おわり


542ユリシスとイリス:2007/07/13(金) 03:58:31 ID:C7e/Bj6P
今まで続きを待っていて下さった方々ありがとうございました。
ユリシスとイリスはこれで一応一段落ついた形になります。
初代スレが埋まる前に書けてよかった。
543名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 09:19:27 ID:O3ra4jT1
なんかこう、遠回りしてようやく
「お友達から始めましょう」レベルの初々しさが堪りませんなw
お疲れ様でした〜
544名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 10:06:50 ID:46Q488Sd
久しぶりにこのスレ覗いて見て良かった〜
すごい夢心地。胸いっぱい。


一区切りと言うことで、お疲れ様でした。
続編できれば期待しています!
545名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 14:04:51 ID:omoAjBBn
まさに胸キュンキュン。正座のまま萌え転がってしまいそう。
やっと堂々と口説けるスタート地点に立った感じ。
でも、だからといって早々簡単に落ちてほしくないイリスファン。ああジレンマ。

お疲れ様でした。続編期待していいのかな?
546名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 23:31:32 ID:JrSsFNxH
ユリシスとイリスの続きも読みたいけどディートリヒとウ゛ェロニカの続きにも期待したい
547名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 03:01:07 ID:cAWKpPiE
それまで見下してきた男があるとき突然、武功をたてるなりして出世し
主人になってしまった。
めちゃめちゃプライド高いが立場上下僕な女部下と、それをおもしろ
がっている男主人なシチュとかアリだと思う。
548名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 07:56:17 ID:xFmBOEy1
>>547
女部下は貴族出身で、男の方は平民出身だったりするのかな。
そういうのも下克上的な香りが漂ってていいねえ。
549名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 15:57:38 ID:wZvGFpn6
斜陽貴族のお嬢さんがやむを得ず成り上がり者の娘の家庭教師になる。
野蛮で教養のないオヤジに散々もてあそばれるのもいいし、
オヤジの親族の青年にもっとねっとりと仕込まれても楽しい。
こんな関係は嫌なのに姉と慕ってくれる病弱な娘を見捨てられないし、
前払いの給料は使ってしまった。
そのままズルズルとはしたなく毎晩可愛がられるお嬢さん。
最近こんな妄想ばっかりしている。
550名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 18:12:59 ID:tn+vwhm5
>>549
こんな感じ? 凌辱風味なんで注意


「そうだ、だいぶ上手くなってきたなぁ、見込みがあったのか。わしの目は確かだった」
 下卑た笑いを浮かべながら大きな石を嵌め込んだ指輪を幾つも付けた手で、
艶やかな彼女の長い髪を梳きあげる。
「ちゅば、んむ、……はぁ、むちゅ、…ちゅぱっ……」
 嫌なのに、……こんな成り上がりの男に体を奪われ毎晩弄ばれる。
 口の奥まで差し込まれ息苦しさで涙目になりながら、離してはもらえない。
 右手で男の肉棒を撫でながら左手で袋から裏筋をそっとさすり上げつつ、
舌で鈴口を何度もつつき、しゃぶった。
 既に一度精を放たれて、その端正な顔や黒髪、雪のように白いはだけた胸元にまで
点々と欲望の痕がどろりと垂れている。
 彼女の細く美しい指先は、精液と肉棒にまみれた男の先走りや自らの唾液で、ねっとりと糸を引くほどに汚されている。
 「気持ちいいぞう、お前も気持ちいいだろう、わかるぞ」
 ……嫌、違う……っ。この体の熱さは、違う……、声に出せない抗議を繰り返す。
「ふっ、…むちゅう、ちゅ、くぷ…、ぬちゅ……っ」
 少しでも早く解放されるために、匂いや感触の気持ち悪さにむせそうになりながら、指と舌を動かした。
「俺が確かめましょうか、そら、」
 椅子に掛けた男の前に座り込んで股間をしゃぶる彼女を、黙って後ろで見ていた青年は
スカートをまくりあげると柔らかい尻を持ち上げて、乱暴に下着をずり下げた。
 無遠慮に秘所を探るとあられもない水音がぐちゃぐちゃと響き、青年の無骨な指には瞬く間に愛液が滴った。
「感じまくりですよ、触られてもいないのに、しゃぶるだけでドロドロにイきそうですよ」
「そうか、やはりなんて淫乱な娘さんだろうな」
「んっ、……ん、……んぁ、ぁっ!」
 違います!私は、淫乱な女じゃありません。ただ、そうなるようにされてしまっただけで……
 聞き届けられない抵抗は下から襲ってくる快楽の波に流される。
 青年は彼女の感じる場所や手順を熟知していて、みるみる彼女を追いつめていく。
「家庭教師としても優秀だし、給金だけの礼では申し訳ない。これは、せめてもの心尽くしなのだよ。
床上手な女なら欲しがる男は多い。行き遅れて、家族共々路頭に迷うこともない」
 尚もハハハと野蛮な笑みを繰り返して彼女の髪を撫でる。
 何も知らない無垢な瞳でお姉さま、と慕ってくれる可愛いお嬢様、父を亡くし病弱な母と弟妹は自分の働きだけが頼りだ。
お父さまが生きていれば……、それだけは封じていた言葉がもやのかかる頭をよぎる。
「ほら、上のクチがおろそかになっておる、まだまだわしは元気だ」
 頭を抱えて奥までねじ込まれる。吐き気にこらえながら赤黒く硬い脈動をくわえ込み、舐め上げる。
「ぬぷぅ…っ、く、ちゅう…、にゅぷ、ん、……ちゅば、ぁ……」
「そうだ、やれば出来る。いいぞう」
「では、俺も失礼しますよ」
 指を引き抜かれて混濁しかけた意識が戻り、びくっと体を震わせた。
安堵と中途半端に高められた快感でたまらなく奥が疼いて、がくがくと腰を揺らした。
「下も欲しいですか、欲張りですね」
 ガーターベルトを残したままの彼女の腰は、指より硬く熱いモノで突き上げられ、
背筋を駆け上がる電流に一瞬意識を失った。
「んんんっ、はぁん、んちゅ、ちゅば、ぁんっ、あふっ、じゅぶ、」
 突かれる動きに合わせて両手で握った肉棒を擦り上げながら先を吸う。
「おお、これは、いい、イクぞ、なんてはしたない娘だ!」
「毎日受け入れながら未だに処女のようにきゅうきゅうに締め付けてきますよ、なんていやらしい!」
 ……いやいやいや、誰か、助け、て、いや、あああぁぁ、ああああっっ!!……
 声にならない願いは悦楽の嵐の中へあえなく消えて、上と下からの激しいほとばしりと共に彼女は絶頂を迎えた。
そして、今夜も諦めと悔しさと快感の涙を流しながら意識を失っていった。
 
551名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 18:20:11 ID:tn+vwhm5
スレ的には三人目の相手として連れてこられた男と恋に落ちるとか、妄想してみたり
(寄宿生活をしていた成り上がりの息子とか)
552549:2007/07/17(火) 23:35:51 ID:Zpg8inUo
550
551の両氏にGJ!!
自分の妄想を形にしてもらい感動してます。
狸オヤジと狐に虐められる清純な仔ウサギが見えたよ。
ハッピーエンドになる第三の男はワンコ系か。
なんかすげぇ満足した。いい夢見れそうだ。
553名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 01:48:42 ID:7vd9i+XS
ユリシスの作者さんのサイト閉鎖してたけど新しいサイト見つけた人いる?
554名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 02:00:02 ID:Jec6grNE
マルチ乙。大抵の住人はセットで見ているだろうから、どっちかだけに書けばいいんジャマイカ。

ところでそう詮索されるのが嫌だから閉鎖したんじゃないかと邪推。
個人サイトの特定は荒れる元だから、そんなに執拗に追いかけない方がよさげ。

履歴が残っているのなら、ヒントつ【めものブクマ】
555名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 02:31:41 ID:yLWuqGpk
他のスレだけど、ここにも当てはまりそうな大作が完結してた。
やっぱ主従っていいなぁ
556名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 02:46:12 ID:ABa3OZlq
>>555
何処だ!
せめてヒントを!
557名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 07:36:07 ID:jCShYoq3
>>555
もしかしてあそこか?
558名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 09:58:35 ID:QymWhnyh
たしかに上司と副官だけど、ここのとはちょっと違う気がするなぁ。
559名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 11:13:41 ID:/oRK3u+5
どこだ!
気になる!
ここはマタリで房もいなさそうだし、そちらも似たようなら教えてほしいぜ……
荒れなさそうだったら是非

心あたりは
ヒメ と 中世 と ヘイシ だが
560556:2007/07/21(土) 12:26:50 ID:ABa3OZlq
>>558
のおかげで解決した。
確かに主従ではないなぁ。でも教官だけに焦点を絞れば主従っぽいかも。

>>559
つ『貧乳』
561名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 15:38:38 ID:QX9WjRxT
ジャマイ!カン、カナ、カンパニー!ネタで誰か書いてくれないかな

もち、総督はヘタレで
562名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 21:08:46 ID:wBvaEuVR
保管庫ってある?
563名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 21:31:14 ID:NHHsWECo
スレ内のレスくらい読もうぜ…。
姉妹スレと共通の保管庫があるよ
564名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 03:38:01 ID:0B5kjykq
>>554
履歴ってなに?お気に入りには入れてたけど閉鎖文しかないぞ
565名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 09:27:32 ID:DS9Encs0
個人サイトの特定は荒れる元。迷惑がかかる。
保管庫あるんだからいいじゃまいか。
566名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 12:50:18 ID:z4kQa40u
>549
青年の方が病弱な娘さんの許嫁で、
娘さん共々弄ばれたあげく絡み合わされるとかもどうか。

>550
そしてGJ。
567名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 13:39:32 ID:0B5kjykq
>>565
スレに投下してないシリーズが読みたい
568名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 16:40:06 ID:iydwt8N/
そんなのおまいのワガママでしかないじゃんか

自分で妄想して小説投稿してみたらどうだ
569名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 21:11:09 ID:fZYtDfYn
話豚切りですみませんが。
夏ですね。坊の季節ですねって湯婆がいってた。でも7月も終わりですね。
明日から祭り囃子の練習があるので、書きたい物をかいておこうかと。

>>550の続きを書いてみました。(勝手にゴチになりました)
570名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 21:12:25 ID:fZYtDfYn
「先生、顔色悪いよ?まるで具合の悪いときの私みたいよ?」
目の前で生徒にくすくす笑われてしまい、つい、私は顔を赤らめてしまっていた。
昨晩は散々激しく犯され、いつものようにごわごわしたベットの上で目を覚ました
私は今こみ上げてきている気持ちをこらえ、ほほえんでみせる
「ちょっとね、調べ物してたら夜更かししてしまったのよ」
「ええ?先生でも分からないことがあるの?」
「当たり前よ。たとえば…」

そういって彼女に、天文学のことについて、出来るだけかみ砕いて説明した。

彼女が熱心に話を聞くその顔を見たら、少し元気が出たと想う。
逆に、彼女と「彼」の顔が見れなくなったら、窓から飛び降りているかもしれない。

みるみるうちに時は過ぎていき、私の昼の講義は終わった。
571名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 21:22:14 ID:fZYtDfYn
「ありがとうございました。又明日、よろしくおねがいしますね」
「ええ。…ああ、先週教えたフェルドレイジアム文型の課題、明日までだけど」
「大丈夫です!昨日徹夜して完成しましたから」
ほがらかに笑ってる彼女を前に、私の顔が真っ青になる
「ダメじゃない!夜更かしは厳禁だってあれほどクレデス様に言われていたでしょう?」
「だって〜。授業とっても面白いんですもの」
「あなたが勉強熱心なのは分かるけど……今度からは無理そうだったら先生に言ってね。約束よ」
「はい。分かりました。気をつけます」
そういって少し落ち込んだ彼女の目を見ながら、私は精一杯の笑顔を見せる
そして、静かに彼女の部屋を出た。
572名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 21:23:50 ID:fZYtDfYn
そんなこんなで、やっと自由な時間を得た私は
昨晩に消耗した体力を少しでも回復させようと、自室のベットで横になる
幼少時代と比べたらとても質素であるが、それでも目覚めたあの場所よりはずっとマシだ。
明かりだけがある真っ白な天井を見つめ、私はため息をついた。

「あぁ……クレデス……」

決して呼び捨てでは呼べない「彼」の名を私はぽそりとつぶやいた。
この貴族家の長男で、医師の卵の中ではもっとも優秀な存在であるという彼は
妹の病を治すために地下の研究室に籠もっている。
昼は学院、夜は研究室。彼を目にするのは、妹の様子を見るときと薬を持ってきた時ぐらい。
やや中性的なその顔を見ると、私の胸は焼けそうだった。
あんな主人でなければ、あの子だって。もう少し……良い方向に……。

そんなこと考えても、何もかわらないのに。

「……クレデス……」
彼の姿と昨晩の記憶を混ぜ合わせて、私は淡々と自墜を始めた。
573名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 21:50:07 ID:fZYtDfYn
誤字脱字はスイマセン、推古足りないかもしれませんが。
栄養分になれば幸いです。
574名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 00:16:04 ID:yxIJgdcU
>>570-572 GJ!

投下行きます。
師弟なので厳密には主従と違うかも。

今日は途中まで。エロなし。
575エルヴェとツィラ 1:2007/07/27(金) 00:17:16 ID:yxIJgdcU
 マスター、と呼ぶ小さな声に反応し、美貌の魔法使いは読書を中断して顔を上げた。
 薬草やらまじない道具やらを胸に抱えた弟子が、相変わらずの無表情で目の前に立っていた。
 気配なく人に近づいて驚かれるのは、この無口な弟子の特技だ。
 心臓に悪いからやめなさいと幾度注意をしても、自覚のない弟子には師匠の意図など伝わらない。
「……出かけるの?」
「はい」
「今日も、アンディくんのおうち?」
 少し間をおいて、彼女はこくんと頷いた。
 その拍子に後ろにまとめた長く黒い髪が、ゆらりと踊った。
「デボラさんの風邪、まだよくならないの?」
「はい」
「アンディくんは家にいるんでしょ?」
「はい」
「じゃあ、ツィラが行く必要ないと思うけど?」
「……………………」
 ふるふると首を左右に振った後、ツィラはじっと魔法使いを見つめた。
 当の師匠は、瞳を半分閉じて、咎めるような視線をツィラに向ける。

 弟子との睨めっこはいつも長くは続かない。
 ツィラは沈黙が気にならない。
 エルヴェが行動を起こさないかぎり、この膠着状態は何時までも続く。
 諦めてエルヴェは溜め息を一つついた。
「今日は行ってはいけないよ」
「……ご用事ですか?」
 おや、とエルヴェは思った。

 表情も感情も読みにくいツィラではあるが、思考は割と態度で判る。
 いつもなら素直にはいと返事をする場面だ。
 質問で返したということはよっぽどアンディの家に行きたいらしい。
「まぁ、用事と言えば用事。はいこれ」
 ぽんと、今しがたまで読んでいた本をツィラに差し出した。
 ツィラは微動だにせずエルヴェを見つめている。
「全部読んだ後に三章までの魔法律を暗唱。出来たらアンディくんちに行ってもいいよ」
 それはツィラには難しすぎる内容で、優秀な弟子でも読むだけでまず三日はかかるだろう。
 魔法書を読むと言う行為は只文字を追うだけではいけない、と普段から教えている。
 従順なツィラはおそらくその教えに従い、すべてを理解しようと努力をするだろうし、三章までを暗唱するには更にその倍の時間がかかるに違いない。
 ツィラにも時間の計算は出来ているはずだ。
 ひょいと弟子の抱えた包みを取り上げて、空いた腕の中に分厚い魔法書を持たせた。

576エルヴェとツィラ 2:2007/07/27(金) 00:18:15 ID:yxIJgdcU
 相当不満と疑問を抱いているはずなのに、ツィラは何も口にしない。
 文句をぶつけてきたのなら言いくるめる自信もあるのだが何も喋らぬ相手と討論は成り立たない。
 かといって素直に従う訳でもない。
 彼女なりにこの理不尽な状況を享受しようと何か考えているか、もしくは思考を停止しているか。
 どちらかは判らないが、エルヴェはぽんとツィラの頭に手を置いた。
「デボラさんの事は心配しなくていいよ。今日は特別にこの大魔法使いエルヴェが診察に行くからね」
 やっと顔を見せたツィラの瞳に、安堵の色がともる。
 頭に乗せた手で、くしゃりと前髪を撫でてエルヴェは優しく微笑んだ。
「じゃあ行ってくるよ。ついでに買い物をしてくるから少し遅くなるかもしれない。
 ツィラは外に出ないように」
「……はい、マスター」
 小さく頷いた弟子に見送られ、自称大魔法使いは扉を開けた。


*

 夕暮れの足音が聞こえ始めた頃に魔法使いが帰宅をすると、弟子は食卓でちゃんと分厚い魔法書と向き合っていた。
 お帰りなさい、と振り向かずに言った弟子の背筋はきちんと伸びていて、いつもながら感心する。
「ただいま」
 穏やかに言葉を紡ぎ、ぴんと伸びた背中に近づく。
 魔法書は三分の一ほど読み進められていた。
 予想よりも早いペースだ。
 そんなにアンディがいいのかなと目を細めたエルヴェが、ツィラの細い指を見てため息を落とす。
 ページを繰る右の人差し指と中指が、痛々しく真っ赤に腫れ上がっている。
「ツィラ」
 怒りを含めて名を呼ぶ。
 弟子は怯えも驚きもせずただ、はい、とだけ言った。

 出掛けに魔法陣を施しておいた。
 中に居るものがそこから出ようとすれば、その身が焼かれるといったごく単純なものだ。
 ツィラが少し頑張れば、解除は可能だったはずだ。
 今彼女が読んでいる魔法書の第一章八項目が正に解除の方法に関する魔法律だからだ。
 ツィラは指を軽く焼いて、魔法陣に気が付いたが突破はしなかった。
 更にその回りに施された魔法陣の存在――こちらは格段に高度で、陣に触れた者を眠らせるという罠めいた術だ――に気が付いたためかは判らない。
 ダミーの陣は突破しなかったが、禁じた外出はしようとしたのだ。
 ツィラらしからぬ行動に、エルヴェは怒りをよりも戸惑いを強くする。
 命を破ってまで、アンディに会いたいのだ。
577エルヴェとツィラ 3:2007/07/27(金) 00:19:16 ID:yxIJgdcU
「ツィラ」
「…………」
 ツィラの真横に立って、痛々しく腫れ上がる指に触れる。
 痛みのためかツィラの細い肩がぴくりと揺れた。
 残酷な響きを込めて、エルヴェは通告する。
「引越しだよ」
「はい」
「決行は今夜。今すぐ準備を始めなさい。理由は判っているね?」
「……親しく、なりすぎました」
「そうだ。ここは気候もよく野菜も美味しかったんだけどね、残念だ」
 返事がないのは承知で、次はもっと北の方へいこうと告げる。
 珍しく泣くか反抗をするかと弟子の横顔を見やるが、相変わらずの無表情を多少青白くさせているのみだった。
「さ、準備だ。その前に」
 ツィラの手首を握って、赤い指先を自分の胸もとまで持ち上げる。
「治さないとね」
 治癒の呪文を唱えようと口を開いたところで、ツィラがぎゅっと指を握りこむ。
 立ち上がって、ふるふると首を左右に揺らした。
「ツィラ?」
「治さないで下さい」
「痛いでしょ。それに早くしないと痕になる」
「罰を」
「僕は罰するために魔方陣を敷いたわけじゃないよ……今日のお前はどうも様子が可笑しいね」
 エルヴェから視線を外し、また首を左右に振る。
 自分は間違っていないのに、ツィラに酷い仕打ちを与えている錯覚に、魔法使いは陥った。
「何か言いたい事は?」
「……、半刻だけ、時間をください」
「何故?」
「デボラさん」
 ツィラの表情が動いた。
 眉根を寄せて、泣き出しそうなのを堪えるかのような表情だ。
 だけどそれは一瞬で、すぐにいつもの仮面のような顔に戻る。
「彼女なら大丈夫だよ。明日には起き上がれる。三日後には全快だ」
「マスター。お願いします」
 ぺこりと頭を垂れた弟子に、魔法使いは嘆息する。
 普段従順なくせに、言い出したらこの上なく頑固だ。
 今日だって、無理矢理に閉じ込めるような真似をしたからツィラは怪我を負ったのだ。
「お別れでも言うつもり? ヘタな事をすれば騒ぎになるよ」
「約束をしました。また明日、と」
「それだけ?」
「はい」
 三たび魔法使いはため息を落とす。
 諦めて好きにさせてやる事に決めた。
 無造作に椅子にかかっていたローブを、弟子の肩にかけてやる。
「必ず一刻以内に戻りなさい。不用意な発言は控えるように」
 ぱっと顔を上げたツィラの顔が、心なしか嬉しそうだ。
 この表情を見られただけでも、許可を下ろした価値はあったかもしれない。
 フードを目深にかぶせて頭を撫で、今度は師匠が弟子を見送った。
 
578エルヴェとツィラ 4:2007/07/27(金) 00:20:27 ID:yxIJgdcU
*

「ツィラ! 来てくれたのかい?」
 デボラはベッドの上で大歓迎をしてくれた。
 この風邪ですっかり痩せた――それでもツィラの倍ほどはありそうな身幅を起こそうと上体を持ち上げたので、ツィラが慌てて静止する。
 大人しく横になったデボラに、半人前の魔法使いは優しくブランケットを掛け直した。
「さっきあんたの先生が、今日は来られないって言ってたから心配したんだよ」
「ごめんなさい」
「いいんだよ。何ともないなら、それでいいんだ」
「はい。お身体は?」
「あぁ、あんたの先生は本当に立派だね。さっき貰った薬を飲んだらずいぶん楽になったよ」
 よかった、と安堵のため息をツィラがもらす。
 デボラの暖かい手が伸びて、そっと彼女の頬を指の背で撫でた。
「今日は、何だか元気がないね」
 デボラの鋭い言葉に驚いたが、もちろん表情には出ない。
 小さく首を横に振って、静かに微笑んだ。
「何か辛い事でもあるんじゃないかい? アタシに話してごらん?」
 頬を撫でた手が、ふわりと髪を撫でる。
 まるで幼子にするかのようにあまりに優しい。
 ツィラは慌てて身を離した。
 このまま撫でられ続けたら、もっと甘えていたくなってしまう。
 代わりに、大きくて少し荒れたその手をぎゅっと握った。
「魔法の修行ってどんな事するのか知らないけどねェ……アタシにはあんたが不憫に見えて仕方ないよ」
 じっとツィラを見つめるデボラは憐憫の情を込めた眼差しだが、決して見下しているわけではない。
 デボラの言わんとすることはよく判る。
 まだ少女にも見えるツィラが、親元を離れて年若い魔法使いに師事するのはとても不自然だ。
 息子のアンディと同じぐらいの年のツィラを、娘のように思ってくれていることもよく知っている。
 でもツィラは、エルヴェに頼って生きてきたのだ。
 師に不満を抱いたことも、現状を不幸だと思った事も一度もない。
「あんたがうちの娘だったらいいのにねぇ……」
 アンディだって、と続けたデボラの言葉を遮るように、勢いよく当のアンディが飛び込んできた。
「ツィラ!」
 まるで甘い菓子を与えられた子供のように、満面の笑みを浮かべてデボラからツィラの手を奪う。
 強引に握り締めて、悦びを全身で表現するかのごとくぶんぶんと振り回した。
「来てくれたんだな! 心配してたんだぞ!」
 ぎゅっと握られた指先がずくんと痛んで、思わず眉を寄せて手を引いた。
 その様子に気がついたアンディが視線を落とした後に、見る見る顔を険しくする。
「ツィラ。ちょっと来い」
 手首を握りなおし、ぐいと引かれて身体がよろめく。
 アンディは振り返ることもなくツィラを引っ張ってデボラの寝室を出ようとする。
 ツィラは慌てて振り返り、デボラに小さく微笑みかけた。
「早くよくなって」
 アンディに引きずられながら、やっとそれだけを伝える。
 デボラはああ、と言った後、また来ておくれねと言葉を続けた。

 もう会えない、と事実を告げ、強く抱き締めてもらいたくなる衝動を何とか抑えて、ツィラはデボラに手を振った。
 エルヴェの命令は絶対だ。
 二度と、落胆させるようなことはあってはならない。
579エルヴェとツィラ 5:2007/07/27(金) 00:22:19 ID:yxIJgdcU
*

「これ、どうした?」
 何故か裏の畑までツィラを引きずってきたアンディは明らかに不機嫌だ。
 乱暴に目の前に自分の手を突き出されて、ツィラは痛い、と言おうかと思ったがやめておくことにした。
「やけど」
「そんなの見れば判る。どうしてこんなに酷く火傷をしたかって聞いてるんだ!」
「修行中に」
「…………ツィラ」
 少年、というには精悍で、青年というには幼さが残るその顔を歪めて、悲痛ともいえる声音でアンディが名を呼んだ。
 なぜアンディがそんな顔をするのか判らず、ツィラは小首をかしげた。
「もう、魔法使いなんて止めちまえよ」
 ――どうしてそんなことをいうの?
 ツィラが心に浮かんだ言葉を口にする前に、アンディに肩を引かれて強く抱き締められた。
 息苦しさに小さく暴れたが、腕が緩む気配はない。
「ツィラ。結婚しよう。まだ若すぎるかも知れないけど、
 父さんも母さんもツィラのこと気に入ってるし何の問題もない」
「…………?」
「あんな得体の知れない男の所に、ツィラを置いておけねぇよ。
 とりあえず荷物を纏めてウチに来い。話はそれからだ」
 アンディの言っている意味が判らない。
 意味は判るのだけど、何故そんなことを言い出すのかが判らない。
「俺と一緒に畑を耕して、子供を産んで、育てて、平凡に生きるんだ。
 それがツィラの幸せだ。そうだろ?」
 背に回った腕に力を込められて背中が軋んだ。
 ツィラはぐいとアンディの胸を押し返す。
 意外にもあっさりと、青年は少女を解放した。
 だけど首を左右に振った少女に、顔色を変える。
「なんか、弱みでも握られてんのか?」
 もう一度、否定を込めて横に首を振る。
「どうしてもアイツから離れられない理由があるとか?」
 少し迷って、無表情のまま首を左右に。
 その拍子にフードがはらりと落ちる。
 はっとアンディが息を呑むのが判った。
「……ツィラ」
 掴んだ肩をぐいと引かれて、身を捩る間もなくくちびるを塞がれた。
 びくりとツィラの身体が震えたのち、急に大人しくなる。
 数度触れるだけの口付けを繰り返して、名残惜しげにくちびるを甘く噛んでアンディが離れた。
 動揺を抑えて息を整える暇もなく再び細い身体を抱き寄せられて、アンディの指がさらさらと揺れる髪の感触を確かめるように、ゆっくりと側頭部を撫でる。
580エルヴェとツィラ 6:2007/07/27(金) 00:22:50 ID:yxIJgdcU
 青年の声がすぐ近くで響く。
「……エルヴェさんに言われたよ。ツィラにこれ以上近づくなって。
 これは警告だ、だってさ。あいつ、ツィラの何なんだ?」
「マスター」
「師匠? 父親? それとも主人?」
「ぜんぶ」
「全部?」
「そう。マスターは私のすべて」
 ツィラからは見えないが、アンディは眉根をきつく寄せて不快を露わにする。
「ツィラ」
 なに、と言う代わりに、ツィラが身を捩った。
「昨日も、俺たちキスしたよな?」
 こくんとツィラは頷いた。
「その時、お前、何て言った?」
「あなたに会えてよかった」
 うんうん、と首を縦にふったアンディが、ふと思いついてツィラに問いかける。
「どうして?」
「デボラさんに会えた」
 あなたがすきだから、と言った類の甘い言葉を期待していたアンディは見事に打ちのめされる。
「……俺と、エルヴェさん、どっちが大事なんだ?」
 アンディは肩を掴んで、白い顔を睨むように見つめながら聞く。
 ツィラが、すっと視線を逸らした。
「いいから、言ってくれ」
「比べられない」
 彼ははほっと安堵するが、すぐにそれはかき消された。
「マスターだけが、私の生きる意味」
 比べられないのではなく、比べる必要もない、と無口な美少女は言いたかったのだと即座に理解して、青年の胸に嫉妬の炎が灯る。
「じゃあアイツがいなくなれば、次は俺がツィラのすべて?」
「アンディ?」
「ツィラ、愛しているんだ」
 アンディの瞳が、黒く濁った。
 気がついたときには遅かった。
 今度は荒々しくくちびるを奪われ、息苦しさに身を捩っても許しては貰えず身を硬くする。
 抗議の意を込めて、どんとアンディの胸板を叩いたけれどすぐにその手首もさらわれてしまった。
 心地の悪いくちづけが続く。
 もう帰らなければ約束の一刻に間に合わない。
 ずいぶんと長いこと抵抗を繰り替えし、やっとアンディのくちびるが離れた時にはツィラの息はすっかり上がっていた。
 どうしてと聞く代わりに、走り去ろうとしたが、握られた手を強く引かれた。
 アンディの眼は黒くからっぽで、目の前のツィラを写してはいない。
「アンディ!」
 呼びかけに答えず、くるりと踵を返してアンディが、またツィラの手を乱暴に引いて歩き出す。
「行こう」
 どこへと問いかけても返答はなく、ただツィラはアンディに引かれるままに歩いた。

581エルヴェとツィラ 7:2007/07/27(金) 00:23:26 ID:yxIJgdcU

*

「お帰り、ツィラ」
 珍客に動じることもなく、魔法使いは穏やかに二人を出迎えた。
 気に入りの椅子に深々と腰をかけ、足を組んでにこやかに微笑む師匠に、ツィラの背筋がぞわりと冷えた。
 前にいるアンディは何も感じないのだろうか?
「アンディくんはなんの用事? これから忙しくなるから手短にね」
「この村から出て行ってくれ」
 ほう、とエルヴェは楽しげに目を細めた。
「雨が足りない。このままでは不作になる。あんた、何か知ってるんじゃないのか?」
「…………どういう意味かな」
「根無しの魔法使いは災厄を連れてくる。あんたが、日照りも病気も呼んでいるんだろう?
 母さんが倒れて気がついたよ。誰も、あんたとツィラがいつからここにいるのか思い出せないんだ」
「それで?」
「ツィラを置いて出て行け」
 喉の奥で、エルヴェがくくっと笑った。
「百歩譲って出て行けという結論は理解しよう。どうしてツィラを置いて、となるのかな」
「ツィラはお前に騙されている。本当は俺といたいのに、呪われてそう言えないんだ」 
「アンディ」
 くいとアンディの服を引くが、彼は振り向かずに大丈夫というだけだった。
 違う。
 このまま続ければ、大丈夫でないのはアンディのほうだ。
「ツィラは魔女だよ。騙されているのは君のほう」
「違う、ツィラは俺を騙したりしない。俺といるのが、ツィラの幸せだ。
 どうしても出て行かないんだったら力ずくだぜ。もうすぐ、父さんたちもここへ来る」
 アンディはもうツィラを見ていない。
 ただ「ツィラを手に入れる」という目的に取り付かれている。
 やれやれ、と魔法使いは呟いて、ゆっくりと立ち上がった。
 アンディがかばうようにその身を隠している弟子に向かって、低く名を呼ぶ。
「…………ツィラ」
「はい」
「面倒なことになったね」
「申し訳ありません」
「おいで」
 唐突なエルヴェの声と同時に、ツィラが勢いよくアンディの腕を振り払って駆け出した。
 はっと気がついたアンディが追いつくより前に、エルヴェの腕の中に飛び込んでしまう。
 たったそれだけの間に、魔法使いは詠唱を完成させて杖を振り上げる。
 目がくらむほどのまばゆい光に襲われて、アンディはぐらりと身体を揺らす。

 次に目を開いたときに彼は鬱蒼と茂る森の中にたった一人で膝をついていた。
 誰かと対峙していたはずなのに、どうしてもその相手が思い出せず苦悶する。
 それよりも、愛しい少女は確かに自分の後ろにいたはずなのにいつの間にか掻き消えていて、アンディは少女の名を呼びながら森を駆け回った。
 その後森に入ってきた村の男たちに、ツィラはと聞いても誰もがそんな名前は知らないと首をひねるのだった。


582エルヴェとツィラ :2007/07/27(金) 00:24:49 ID:yxIJgdcU
今日はここまで。
続きは明日か明後日ぐらいに投下しにきます。
細切れごめんなさい。
583エルヴェとツィラ 8:2007/07/28(土) 00:50:47 ID:NXr5H9SZ
続き投下いきます。

*

 急に室温が下がり、魔法使いは予め決めた経緯に無事移動を完了したと理解する。
 腕の中の少女は、大人しく抱かれたままぽつりと呟いた。
「申し訳ありません」
「間に合ったからもういいよ。……これで判った?」
 腕の中で、ツィラが小さく頷いたのが判った。

 人は魔術に魅せられる。
 美しいものに強い魔力が宿るからだ。
 魔女が望まなくても、勝手に人は囚われる。
 付き合いは慎重に、と普段から口を酸っぱくして教えていたのに。
 今まで上手くやってきていたツィラが、ついに失敗をした。
「アンディくんは少し気の毒だけどね」
「記憶は」
「時間が足りなかった」
 一度魅せられたものは、いつまでも魔女を追い続ける。
 焦がれて焦がれて、悪くすると気が狂れてしまうかもしれない。
 村の者は誰も覚えていないツィラの名を、アンディはしばらく呼び続けるだろう。
「警告、してあげたのにね」
 その警告がアンディを煽った自覚も多少はある。
 しばらくしたら、アンディの記憶を消しに行ってやってもいい。
 これであの村の事件は万事解決だ。

 さてこの頑固な弟子はどうしようかと腕を緩めると、珍しい光景にぎょっとする。
 その大きな瞳から、音もなくぽろぽろと珠のような涙を溢している。
 眉根を寄せるでもなく、嗚咽をあげるわけでもなく、ただ雫を頬が伝うだけだ。
 すっと指を伸ばして頬を拭い、エルヴェは優しく問いかける。
「せめて穏やかな別れができたらよかったのにね」
「…………はい」
「アンディくんが、好きだったの?」
 返答をよこさぬツィラに、かっと胸が熱くなる。
 
 もしもツィラが頷いたらどうするか。そんな事も決められないまま、口がすべっていた。
 ずいぶん前から、己の抱く不自然な愛情に気がついていた。
 いや、あの日、ツィラに初めて出会った日から、もうそれは始まっていたのかもしれない。
 ツィラが大人になるまでは、よき師であり、よき父親で、よき兄であろうと誓ったのに、あんな小僧に嫉妬して、見苦しい事この上ない。

 アンディにくれてやるつもりはない。
 だけどこの籠の中にツィラを閉じ込めている己が、笑顔を封じてしまっているのだったら。
 鍵を開けて、出してやるべきなのか。
584エルヴェとツィラ 9:2007/07/28(土) 00:51:39 ID:NXr5H9SZ
「僕は余計な事をしたのかな」
 ツィラの濡れた双眸が、真っ直ぐにエルヴェを見上げる。
「ずっとあそこにいたかった?」
 今ツィラが首を横に振ったのは、本心からか、建前なのか。
 ただ涙を流すのみの表情から弟子の真意は読めない。
「修行なんて、もう止める? 普通の女の子のような穏やかな幸せを、ツィラは選ぶ事だってできる。そうするかい?」
「……そうせよと、仰るなら」
「ツィラの気持ちを聞いている。自分で選べない人間が魔術を扱うべきではないよ」
「私は、」
 くちびるを薄く開いたまま、ツィラは動きを止める。
 しばらくそうしてツィラを待ったが、ぽろぽろと涙を流すだけでツィラが話し始める気配はない。
 エルヴェはそっと、弟子の頭を撫でた。
「…………お前は、もう少し自己主張を覚えたほうがいいね。
 欲しいものを欲しい、嫌なものは嫌だとはっきり言うのは、悪いことじゃないよ」
 おずおずとエルヴェを見上げたツィラの瞳が、丸く見開かれる。
 少し迷うようなそぶりを見せて、ツィラはぎゅっとエルヴェの胸元を握った。
「………………疎ましく、お思いですか?」
「何を?」
「私を」
「……またびっくりする様な事を言うね。そんなわけないだろう」
 ローブをゆるく握る少女の手が、小刻みに震えているのに気がついた。
 ひょいと軽い身体を横抱きに持ち上げて、そのまま柔らかいソファに腰を下ろす。
 数年前、ツィラがここへ来た日。
 あの日も同じように、理由も言わずただこんな風に泣き出した。
 その時と同じように膝に乗せ、ぎゅっと首にかじりついたツィラの背を、エルヴェは優しく撫でる。
「ツィラは優秀な弟子だ。手放したいはずがないよ」
「でしたら何故、選べと仰るのですか?」
「当然の権利だからだよ。誰もが幸せになる権利がある」
「マスターの仰る、普通の幸せとは何ですか?」
「うーん。愛する人と一緒になって、子供を産んで、育てることかな」
「どうしてここでは、それが手に入らないのですか?」
「ここには僕とツィラしかいない。元来魔法使いとは孤独なものだよ」
「孤独でなければ、魔法使いにはなれませんか?」
「一概にそうとは言い切れないけどね……いつかツィラも一人前になってここから出て行くだろう?」
「出て行かなければ、いけませんか?」
「一人前になったらね」
「では生涯見習いでいることは、可能ですか?」
「ツィラ?」
「……お願いです。どうか出て行けなどと仰らないでください」
 首の後ろに回された細い腕に、力がこもる。
 美貌の魔法使いは逡巡した。
 ツィラの願いが、自分それと同質なのか判別がつかない。
 父親や母親を愛するように、漠然とずっとそばにいたいという子供の抱く情愛ではないか。
 親のないツィラが、やっと手に入れた家族のぬくもりに縋りたいだけではないか。
 エルヴェは迷う。
 第一、ツィラはまだ子供なのだ。
 恋や愛などを理解した上での発言とは、到底思えない。
 相応しい返答が見つからず、沈黙が続く。
 エルヴェの手は戸惑いがちに、だけどこの上なく優しくツィラの背を撫でる。
 弟子の真意も読めないようでは師匠失格だなとエルヴェは苦々しく思う。 
585エルヴェとツィラ 10:2007/07/28(土) 00:52:56 ID:NXr5H9SZ
「マスター」
 いつものように小さく呼ばれて顔を上げれば、ツィラの端正な顔がそこにあった。
 濃い碧眼が、今までにないぐらい間近に迫り魔法使いは珍しく動揺する。
「ツィラ?」
「愛しています」 
 愛? と聞き返すまもなく、小さなくちびるが重ねられる。
 戸惑いがちに触れた暖かいそれに、魔法使いはくらりと酔った。

 欲しがれ、と言ったのはエルヴェのほうだった。
 ツィラは欲しがった。他でもないエルヴェを。

 背に回した手にぐっと力をこめて、それはもう官能的にツィラのくちびるを貪った。
「…………ぅ、」
 息苦しさからか腕の中でツィラが身をよじるが、エルヴェはそれを許さない。
 逃れようと小さくもがくくちびるを執拗に追いかけて、舌を割り入れ蹂躙する。
 徐々に抵抗は弱々しくなり、ついには腕の中でぐったりとしたところでくちびるを開放する。
 潤んだ眼差しを向けるツィラの身体を、ぎゅっと抱き寄せた。
 後頭部を撫でながら艶やかな髪を留める紐を解いた。
 さらりと髪が肩に落ちて、ふわりとツィラの香りがエルヴェの鼻腔をくすぐった。
 酔い痴れてエルヴェは、もうどうなっても構わないと理性を飛ばした。
「……僕の愛は、ツィラのとは違うよ」
「どう、違うのですか?」
「教えてあげてもいいけど、後戻りはできない。途中で止めることも。……どうする?」
「教えて、ください、あ」
 みなまで言い切る前に、エルヴェはツィラを抱いたまま立ち上がる。
 冷静にツィラは師匠の首にすがりつく。
 にっこりとエルヴェは微笑んで、そのまますたすたと歩き出した。
 ドアの前まで歩めば、自動的にその扉は開く。
 一歩部屋から出れば、元来廊下があるはずのそこはもうエルヴェの寝室だ。
 力の無駄遣いだと自覚はあるが、両手が塞がっているのだ、仕方がない。
 こういうとき、魔法使いでよかったと心底思う。
 生成りのシーツの上に、そっとツィラを横たえる。
 その顔を覗き込めば、瞳は濡れているがいつもの無表情だ。
 少しぐらい不安な顔をして見せればものを。
 だけど身体を重ねればこの無表情がどう動くのか、期待にエルヴェの心は愉快になる。
「マスター?」
 くびもとに、音を立てて吸い付く。
 ツィラの身体がぴくりと震えた。
 きつく痕が残るように吸い上げて、ぺろりとくびすじから順に耳朶までをなぞった。
 びくびくと面白いほどにツィラの身体がエルヴェの舌に応え、ぎゅっとローブを握るその様子に愛しさで胸が熱くなる。
586エルヴェとツィラ 11:2007/07/28(土) 00:53:45 ID:NXr5H9SZ
 ずるずるとした二枚のローブを床に落とし、簡素な洋服の腰紐を解く。
 むき出しになった白い肩は、細いながらも女性らしいなだらかな曲線を描き始めていた。
 いつまでも子供だと思っていたが、それはただのエルヴェの希望でしかなかったのかもしれない。
 そっと撫でると、胸元を引いてツィラが意識を呼ぶ。
「私は、どうすればよいのですか?」
「どうもしなくていいよ。力を抜いて。嫌だったらそう言えばいい」
 嫌だなんて、という表情を見せるツィラのくちびるを塞ぎ、衣服を剥ぎ取る。
 つつましい下着のみの白い身体が、薄闇に浮かびあがった。
 肌馴染みの良いふとももを撫でて開かせ、強引に細い足の間にエルヴェは身体を割りいれた。
 首筋から鎖骨、対のふくらみまで、ゆっくりと撫で下ろす。
 片手に収まってしまうほどの大きさでしかない乳房だが、つんと可愛らしく上を向き、まるでエルヴェを誘っているようですらある。
 やわやわと揉みしだきながら、淡く色づく突起に甘く歯を立てる。
「……あ、ぅ」
 控えめに声を上げて、すぐにツィラはくちびるを引き結ぶ。
 さらにくちびるで挟み刺激を与えると、ツィラの細い腰が誘うようにくねった。
 構わず吸い上げて、ずるりと逃げるように身を滑らせた少女の背に手を回して抱き寄せた。
 息のかかる距離で顔を覗き込んで額を撫でる。
「寒くない?」
「いいえ、むしろ熱くて……なぜですか? 何か術をお使いに?」
「そうだね、似たようなものかな」
 冷えの厳しい地に引っ越したばかりで抱き合うのは、暖を取れて合理的かも知れない。
 魔法よりも簡単に、だけど確実に身体を内側から燃やす快楽に、ツィラが溺れればいい。
 確かに火照る身体を撫で回しながら、下肢に手を伸ばす。
 下着を剥ぎ取って秘部に触れると、そこはうっすらと湿り気を帯びていた。
 控えめに膨らみを見せるそれを、指の腹で撫でて蜜を絡ませる。
 先程のてのひらと同じラインを、くちびると舌でつっと撫でる。
 胸から腹へ。腹からついには下股へと舌を這わすと、初めてツィラがはっきりとした拒否を荒わに身を引いた。
「あの、マスター。どうしてそんなことを?」
 どうしてって言われても困るな、などと思いつつ、ぐっと腰を引き寄せてまだ潤いが足りそうになりそこを舌でなぞった。
「あっ、だ、めです……んんっ」
 構わずにぷっくりと悦びを露にする突起に吸い付いた。
 力の入った細い足が、びくびくと震える。
 初めての快楽に、ツィラの背中が弓なりに反れた。
 自分の指にもたっぷりと唾液を含ませて、身を硬くするツィラの内部へと侵入をさせる。
「え…あぁっ!」
 そこはやはり異物を排しようと頑なだ。
 この小さな身体が受ける痛みを少しでも軽減できればとは思うものの、さして太くないエルヴェの指でも自由に中を動けない。
587エルヴェとツィラ 12:2007/07/28(土) 00:54:34 ID:NXr5H9SZ
 時間をかけてゆっくりと、エルヴェはそこをほぐしていく。
 頬を朱に染め、不安と悦びと、少々の怯えを入り混ぜた複雑な表情をツィラが見せている。
 こんな顔をするのだ、とエルヴェは知った。
 この顔が、他にはどんな風に快楽に歪むのか、もっと見てみたいと強く思った。
 悲鳴にも似た吐息を吐きながら、苦しげに首をゆるゆると振るツィラを容赦なく追い詰めた。
 身をよじってぽろぽろとただ涙をこぼしていたツィラが、果てのない快感についに懇願をする。
「ぅんっ、マスター……あ、やっ、も…いや、です……」
「……いや?」
「どうにか…なって、しまいそうで、あっ」
 どうにでもなればいい。
 そうは言っても最初から激しくして、嫌われてしまっては元も子もない。
 時間はたっぷりある。
 ゆっくりと、教えていけばいい。
 さし当たって今日は、肌を合わせることの心地よさだけでも知ってもらえればいいかと、苦笑いを落とし、指を引き抜いて身体を起こした。
 膝裏を抱えて、大きく足を開かせる。
 羞恥にぴくりとツィラの身体が震えるが、抵抗する様子はない。
「力を抜いて。痛かったら言うんだよ」
 ちいさくツィラが頷くのを確認して、自身を蜜に絡ませる。
 ぐっと腰を進めると、あつい秘部がエルヴェを受け入れる。
「あぁっ」
 大きく半身を仰け反らせて、白い喉を露にする。
 柳眉がきつく中央に寄り、ツィラの苦痛を十分すぎるほどに表している。
「痛い? やめる?」
 固く瞳を閉じたまま、ツィラが首を左右に降る。
「や、めない……戻れない、って、ぅ……」
 細い吐息の合間に、ツィラが懇願を繰り返す。
 頷いてゆっくりと、その身を侵入させた。
 無意識に逃げ出そうと身体をずりあげる細い肩をぎゅっと抱いて、汗が張り付く額を撫でる。
「ツィラ、愛しているよ」
 ぴくりと、エルヴェを受け入れているそこが収縮した。
 熱に浮かされた瞳を開いて、真っ直ぐにエルヴェを見つめる。
「愛している」
 戸惑いがちにツィラは腕を伸ばして、エルヴェの首に回した。
「マスター、あっ……あ、んっ」
 ツィラもきっと愛の言葉を囁いて見たかったのだろう。
 だがエルヴェはお構いなしにゆるやかな律動を繰り返した。
 無粋なお喋りの時間はもう終わりなのだ。


588エルヴェとツィラ 13:2007/07/28(土) 00:55:20 ID:NXr5H9SZ
*

 物を落としたかのように木の床が軋んで、けだるいまどろみに身を預けていたエルヴェは目を開く。
 見ればそこにいたはずのツィラが、裸体にローブを巻きつけてつめたい床に座り込んでいた。
「……どうしたの」
「自分の部屋に戻ろうと思ったのですが」
 何故足に力が入らないのか判らない、と振り返った無表情が語っている。
 エルヴェはくすりと笑って、ツィラの身体をベッドに引き上げて腕の中に閉じ込めた。
「情緒のない子だね。こういう時は同じベッドで朝まで過ごすものだよ」
 はいと返事をするツィラの頭に鼻を埋めて、柔らかな髪の指通りを楽しむ。
「身体は? 大丈夫?」
「はい。多少痛みますが、起き上がれない程ではありません」
 その割には力が入れられないと認識できないのは、把握とコントロールができていないのか、まだ痩せ我慢をしているのか。
 徐々に変わっていければいいのだけれど。
 ふとエルヴェは思い出す。痩せ我慢といえば指先の火傷だ。
 ぐいとツィラの細い手を握り、その腫れあがった指を確認する。
 あかく腫れた指先がその小さな手に不似合いだ。
 すっと魔法使いがその手を撫でると、傷跡は綺麗になくなる。
 あ、とツィラが小さく声を上げた。続いて控えめに、ありがとうございます、と。
「痛かっただろう?」
「いえ」
「そこまでして会いたかったのかな」
 非難めいた口調になった。
 本当に、あのアンディという小僧は気に入らない。
 一見するとツィラとお似合いに見えるその風体からして気に入らなかったのだ。
 狭く見苦しい内心を隠すかのように、ツィラの頬をそっと撫でる。
「…………母に、似ていました」
 アンディくんが? と言いかけて、冷静に思い直す。
 そんなはずはない。
「デボラさん?」
「はい」
 デボラとツィラは似ても似つかない。
 髪の色も違うし、細い線も全く合わさることもない。
 どうやったらデボラからツィラのような子供が生まれてくるのか。
 よっぽど父親似なのか、と勘繰ったエルヴェの思考を読むように、ツィラが言葉を続けた。
「生みの母ではなく、育ての母に。修道院のシスターです」
「あぁ、成る程ね」
 ツィラを引き合わせたあのシスターになら、似ている気がしなくもない。
「いい人だったよね。でもツィラをアンディくんの嫁にとかなんとかちょっとしつこかったな」
「そんなことを」
「何度か言われたよ。そういえばツィラ」
「はい」
「アンディくんと、キスしてたね」
「…………………………」
「三回」
589エルヴェとツィラ 14:2007/07/28(土) 00:56:28 ID:NXr5H9SZ
「……やはり、ご覧になっていたのですね」
「昨日はたまたま。今日は、まぁ、必要に迫られて。なんか言い訳してみる?」
 少し迷いを見せた後、ぽつり、ぽつりと弟子は語り始める。

 昨日の別れ際にいきなりくちづけをされたこと。
 挨拶かと思ったが前後の言動が繋がらないので、本を読んでみた。
 あまいあまい恋物語は、充分な教科書だった。
 ああ、あれは愛の告白だったのかと知ると同時に、自分の返答がまるでアンディの愛に応えたかのように思えて頭を抱えた(それでもきっと無表情だっただろう)。
 エルヴェに相談するわけには行かなかった。
 何があってもエルヴェだけには知られてはならないと、漠然と強く思った。
 そうだこっそりアンディの記憶を消してしまおう、半人前の弟子はそう決めた。
 だから今日、アンディに会いにいきたかった。
 引越しだと聞いて、アンディの記憶は心配しなくてよくなったけど、最後にどうしてもデボラに会いたくなった。
 アンディと顔を合わせないように、もし会ったら適当に誤魔化して逃げてこようと軽く考えていたけど失敗した。
 逃げる暇もなく裏庭に連れられ、こうなったらどうにか記憶を消してしまおうと術をかけたけど、それも上手くいかなかった。
 アンディに引きずられるようにして帰ってきたら、エルヴェがものすごく怒っていて、ついに自分は追い出されるのかと、恐ろしくて悲しかった。
 罰を与えられたほうが、何倍にも気が楽だ。受けさえすれば、またここにいられる。

 要約されすぎたツィラの発言を解説すると、こういった事だった。

「うーん、不可抗力かな。でもツィラに非がないわけじゃない。まぁ、次からは気をつけるように」
「はい、マスター」
「それから、肌も顔も出来るだけ見せないこと」
「はい」
「他の誰ともキスしないこと」
「はい」
 従順にうなずくツィラに、エルヴェは気をよくする。
 早くこうすればよかったのだ。
 ぐずぐずと迷ったりせずに、欲しいものはさっさと手に入れて、籠の中に閉じ込めておけば、こんな風にどす黒い感情に囚われずにすんだのだ。
 腕のなかでツィラが上体だけ振り返って、エルヴェの顔を仰いだ。
「…………あの、お聞きしても?」
「何だい?」
「マスターの仰る愛とは肉欲ですか?」
「………………」
 まったく情緒のない事を。
 エルヴェは嘆息する。
「先ほどのは男女の営みでしたか?」
「……そうだね、よくご存じで」
「いえ、知識はありましたが、経験は初めてでした」
「知識ってどこで?」
 ぴくりと、腕の中のツィラが震えた。
590エルヴェとツィラ 15:2007/07/28(土) 00:57:06 ID:NXr5H9SZ
 もぞもぞと身を丸めて、肌掛けに鼻をうずめる。
 珍しく動揺を見せるその様子が可愛らしく、さらに強く抱き寄せて耳元で低く訪ねる。
「怒らないから言ってごらん?」
「……あの……書斎で、」
「僕の?」
「はい」
「………………………………えーと、隠してあったよね?」
「ええ。まじないが施されていましたので、密書のたぐいかと好奇心から」
 申し訳ありません、と、ちっとも申し訳なくなさそうにツィラが言う。
 もしや軽蔑されたのかもしれない。
「禁書だったらどうするの」
「それにしては術式が簡素すぎました」
 お見事な判断である。
 まったくその通りで、エルヴェは自分のうかつさに頭痛を覚えた。
「マスター?」
 ダークブルーの瞳がこちらを窺っている。
 甘かったのは自分だし、怒らないと約束した手前何も言う事が出来ず、とりあえずあかいくちびるにそっと触れた。
「どの本でも好きに読んでいい言ったのは僕だしね……もういいよ。
 ところでさっきの愛と肉欲の話だけど」
「はい」
「……肉欲は、一部だけれど全部じゃない。知るには時間がかかるものだよ。
 ツィラの考える愛って何だい?」
「昨日読んだ本には、『相手のすべてを受け入れ、自分のすべてを捧げる事である』とありました」
「ふぅん?」
 すべてを受け入れ、捧げる?
 また極端な発想で、一体何の本を読んだのかと疑問になる。

 ――マスターは、私のすべて。

 ――マスターだけが、私の生きる意味。

 ふと、ツィラの凛とした声音が耳の中に甦る。

 あぁ、そういうことか。

 エルヴェは一人納得する。
 弟子と師匠の愛は、案外剥離していないのかも知れない。

「お喋りはお終いだよ。今日は疲れただろうから、このまま眠るといい。
 明日も、朝から忙しいからね」
「はい、マスター」

 小さなぬくもりは幸せと等しい。
 しっかりと幸福を腕に掻き抱いて、魔法使いとその弟子はゆるやかな眠りにつくのだった。
591エルヴェとツィラ:2007/07/28(土) 00:59:09 ID:NXr5H9SZ
以上です。

主従のつもりで書いていたのに微妙に違う? と思い始めてしまって、
投下先をどこにしようか色々悩んだのですが、
やっぱり大好きなここへ投下させてもらいました。

微妙にスレチ? と思われた方、ごめんなさい。

お付き合いありがとうございました。
592名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 03:22:15 ID:AKEuQ7q8
幸せなお話をありがとう。
GJでした。
593名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 06:22:58 ID:45ET97F/
師匠と弟子という取り合わせも大好物なんで
おいしくいただきましたよ。GJ!!
594名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 22:38:11 ID:mZTYUcoA
容量が480KB超えたからそろそろかなと思って次スレ立てました。

男主人・女従者の主従エロ小説 第二章
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1185629493/

早漏だったらゴメンゴ
595名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 22:42:10 ID:H1o/blrY
まさか、このスレが圧縮の引き金を引くことになろうとは……。
596名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:34:06 ID:oaMjn62S
>>591
いや、スレチどころがどストライク
597名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:49:21 ID:mZTYUcoA
>>595
まさか800スレ目とは。うわぁぁあぁ!(AA略)って感じだ。

あと住人に頼む。こっちに書いたらその後でいいから次スレにも
何か(とりあえず保守でいいから)書き込みしてくれー。
新スレ即死の恐怖に怯えてるんだよぅ(;ω;)
598名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:57:06 ID:MbNchYeI
おつ!
599名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 01:01:08 ID:YjP0dEN0
>591
GJ!!!!!!サイコーです!
めちゃくちゃ上手いっす。続きがあればぜひ読みたい!
600名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 19:20:58 ID:KMCpV5IB
>>541の続きは期待していいのか?
601名無しさん@ピンキー:2007/08/02(木) 13:03:37 ID:g+klaKPW
うめ
602名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 01:22:50 ID:JkjnUAhc
>>600
俺が書いてやろうか?
603名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 08:21:03 ID:W0k2vbA8
それは職人本人に聞いた方が。
604名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 21:30:22 ID:JkjnUAhc
前の人のキャラと設定借りて書くってよくある話じゃん。
作者が書かなくて続き読みたいやつがいるなら他のやつが続き書いてもいいんじゃね?
605名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 21:54:10 ID:Qeq6EUbh
>>591
いがったGJ
ツィラかわいいよ
606名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 22:27:13 ID:KTt5GaSo
>>604
よくある事かどうかは知らないが、職人に無断で続きを書くのは失礼だろ。
もしかしたら続きを考えてるかも知れないし、訊いてからの方が良い。
607名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 04:09:35 ID:DsoLfsfL
>>604
商業作品の二次と違って、掲示板でオリジナルに書いてるお話を別人が二次展開するのは
「猫耳少女と召使い」スレ以外ではあんまり賛成できないなあ
608名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 10:22:38 ID:54+7vAMw
そもそも「よくある話」なのか?
609名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 18:20:39 ID:pxMlOZHE
中性的でシャイな男
90年代中頃でしたでしょうか、「フェミ男」などという言葉が流行りだした頃から、ちょっと中性的でシャイな男がモテるようになりました。
私自身は古い人間ですので、男はちょっと強引なくらいが好みです。
が、最近は特に、女性が年上のカップルも増え、可愛い男、シャイな男が好みだという御姉様方も多いようです。
シャイな男というのは、自ら果敢に攻めるということがないため、気が強くてちょっとわがままな女性や、しっかり者でリーダーシップのとれる年上の女性と付き合うことが多いようです。
ただし、私について来いと言わんばかりの強引なだけの女はNG。いくらシャイでも男は男ですから、弱さや可愛らしさという女の「隙」がなければ恋愛には発展しにくいものです。

俺様系の強引男
俺様系の強引男というのは、男としてのプライドが高く、どちらかと言えば女性を卑下する傾向も強いのが特徴です。
女に対しては綺麗でか弱いという幻想を抱いていることも少なくありませんですので、自分より有能そうなバリキャリの女性や、男勝りで女らしさに欠ける女性などは敬遠しがち。
しかし、じつは俺様系を前面に出している男性こそ、内面は意外と繊細で脆いものです。
弱い犬ほどよく吠える、というアレですね。人間関係で躓いたり、仕事で失敗した時などは、つべこべ言わず優しく側にいてくれる、癒し系の女性に惚れやすいでしょう。
普段は自分が主導権を握っていても、いざという時は女性に甘えるのが俺様系の強引男です。
610名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 20:19:11 ID:PmHry1pF
当人が自発的に「キャラつかってOK」と言い出さない限り、すべきではないと思う。

ってか、オリジナルである以上、ご本人が書くキャラ以外は偽者になる。
別人が書いた話など、どんなに出来がよくても見たくない。
611名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 13:17:20 ID:lFbaV+2L
人のキャラ使って勝手に続き書くとか
VIPでやれ

まぁ、どうせオリジナル設定の作品なんて考えられない
文才のないやつの発想だろうけど
612名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 19:51:49 ID:h6kWDAPP
作者だって二次書いてんだからだめとはいわんだろ。
ま、ここまでいわれたらいまさら書く気しないけどな。
書くかどうかもわからん作者の続きでもずっと待ってろよww
613名無しさん@ピンキー:2007/08/08(水) 00:38:14 ID:gCGA1XMM
厨臭い捨てゼリフだな
程度が知れるぞ
614名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 04:26:12 ID:pTPjgNr6
ume
615名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 05:26:29 ID:RU6Rxazv
>>612
何その遠吠え

オリジナルだろうと二次だろうと
「リレー」と銘打ってたり「キャラ・設定使って下さい」と名言されてたりしない限り
勝手に続き(と称する紛い物)書くなよ
616名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 11:52:20 ID:qgxyfo0e
まぁ喧嘩はいいからさ、そんな暇あんなら自分で書けよw
617名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 12:50:23 ID:KVcKIZ8O
>>612
真性の馬鹿発見

作者が既存の作品を使う(二次創作)と
三次創作をを混同すんな
618名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 20:00:45 ID:TOaNk8N+
ユリシスとイリスを書くなら二次だろ。なんで三次になるんだよ?
619名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 20:23:54 ID:Z8deZ8q1
いいからもう来るなよお前
620埋めねた:2007/08/10(金) 22:31:15 ID:sXZzeJaX
 男は一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。
耳元にかかる規則的な吐息。自分がうつ伏せで下敷きにしている柔らかい何か。
そして、自分のものを包む、温かい肌。

 「……っ!」
 彼は慌てて身を起こした。しまった、なんて事を。行為の最中に寝こけるなんて、いくらなんでも失礼だ。
しかし寝起きに咄嗟のことで、謝辞を言おうにもうまく頭が回らない。もごもごと見っとも無く口を動かす
男の体の下で、少女はふんわりと笑いかけた。
 「お目覚めになりましたか、ご主人様。」

 その笑顔と見つめ合うこと数十秒。縺れた口が、独りでに動きだす。
 「……私はどのくらい寝ていた?」
まず他に言うことがあるだろう。言ってからそう思うが、既に口から出た言葉は取り消せない。しかし少女は、
優しい笑顔のまま、静かに主の問いに答えた。

 「ほんの十五分ほどですよ。」
 「そうか。…いや、そうではなく……その、済まなかった。」
 「とんでもありません。ご主人様に安らいで頂けて、私も光栄です。」
そうはっきりといい切る少女の笑顔に、翳りは全く見られなかった。

 男は片手で少女の髪を梳いてやる。すると、彼女はうっとりと目を閉じた。重かったろう、と言うと、
その小さな頭は、彼の手の中で横に振れた。
 「そんなことありません。今だって、もっと体を預けて下さっていいんですよ。」
そう言うと、彼女はすっと両手を回して、男の胸で自らの体を押し潰した。

 潰れた膨らみ越しに、少女の息遣いが伝わってくる。しかし、男が体をずらそうとすると、彼女は
再び首を振った。
 少女が言った。「お疲れなのでしょう。」
 「そうだな。いや、こんな事は言い訳にもなら無いが、スレでちょっとした諍いがあって。」
 「差し出がましく思われるかもしれませんが、ご主人様はきっと気を遣われ過ぎるのです。」
背中に回された小さな手に、ほんの少しだけ力が篭る。

 「もう新スレが立ったと聞きました。」
 「ああ、無事即死も免れて、投下も始まったよ。」
 「なら、ご主人様もそちらに移られていいのでは。」
621埋めねた:2007/08/10(金) 22:33:41 ID:sXZzeJaX
いっとき、間が空いた。少女の息が、緊張からか、はっと詰まる。しかし男はゆっくり身を起こすと、
そんな彼女に一つ接吻して、安心させるように囁いた。
 「そうだね、君の言うとおりだ。」
 「申し訳ありません。出過ぎたことを。」
 「いいんだって。正しいのは君なんだから。」
そう言って、男は娘の背に腕をまわすと、彼女ごと起き上がってベッドに座った。入ったままの男のものが、
体奥を突いて少女に小さな嬌声を上げさせる。脱ぎかけの服から零れた乳房が、重力に引かれて
たわわに実った。

 「沢山の名作が生まれた初代スレだから、どうしても期待してしまうんだ。最後にまた、ってね。」
言いながら、顔にかかった少女の黒髪を払う。瞑られた目尻には、うっすらと涙が染み出していた。
 「だが、確かに潮時だ。そうだな、もう私が埋めにかかるよ。」

 少女が目を開ける。男は頬に手を当て、目尻の涙と唇を吸ってやった。
 「おかげで踏ん切りがついた。すぐにかかる。」
 「では、今日はもうお休みに?」

 腕の中から、上目遣いに少女が見上げる。その視線を受け止め、男は笑って娘の胸に手を伸ばした。
 「いや。今日のもやもやをすっきりさせたいんだ。手伝ってくれるかい?」
 「っ…はい、喜んで。」

 やっと戻った少女の笑顔に、男は引っ掛かっていた心のしこりが、すっと抜けるのを感じる。そして、
折角のこの笑顔を崩すのは勿体無いと思いつつ、手の中の柔らかな膨らみに、そっと指を沈め始めた。
622名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 22:47:39 ID:sXZzeJaX
あんまり埋まらんかったorz

とりあえず以上です。というわけで、ご主人の皆々様、仲良く移行致しましょうw
623名無しさん@ピンキー:2007/08/11(土) 12:47:09 ID:511B3+sQ
これはいい梅だ、GJ!
624名無しさん@ピンキー:2007/08/13(月) 01:48:14 ID:hUdeHxlr
GJ!!新スレでもヨロ。
625名無しさん@ピンキー:2007/08/17(金) 02:27:30 ID:wXah+pR0
626名無しさん@ピンキー:2007/08/17(金) 02:28:07 ID:wXah+pR0
UME
627名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 08:35:22 ID:5jLv0VkJ
こっちは埋まったのか?
628名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 17:34:53 ID:+3XtCR5S
まだか。
妄想を垂れ流してみるか。



「エリィ!今日こそうんって言ってもらうよ!」
「はぁ、坊ちゃま」
「坊ちゃまじゃない、テオだ」
「はいはい、テオドールさま。これからお洗濯なのでそこどいてくださいねー」
「だからテオだって言ってるだろ。
 ね、僕と結婚すればさ、もう洗濯も掃除もしなくていいんだよ。なんでダメなのさ」
「テオさまと私では身分が違いすぎます。それに、年が五つも上ですわ」
「僕は気にしない」
「私が気にします。旦那さまと、奥さまも」
「そんな障害、二人で乗り越えていけばいいじゃないか」
「世の中ってそんな甘いものじゃございませんのよ、お坊ちゃま」
 ごめんあそばせ、と軽く流して脇をすり抜けようとしたエリィの二の腕を、テオドールが掴む。
 大きな洗濯籠を持った腕を引かれて、身動きが取れないでいるところへずいとテオドールがその小さな身体を近づける。
 大きな瞳で顔を覗き込まれて、エリィの胸がどくんと疼く。
「ね、エリィ。僕のこと、嫌い?」
 息がかかるほど顔が近い。
 母親譲りの端正な顔と、不思議な色にきらめく瞳に見つめられると、エリィの心臓はとても落ち着いてはいられない。
 とっさに顔を背けて、じっと廊下のじゅうたんを見つめる。
 うつむいても帽子に綺麗にまとめて入れてしまった髪はもちろんほつれて落ちてきてなどくれず、あつくほてる顔を隠すこともままならない。
「………………き、らいです」
「ほんとうに?」
「ええ」
「僕の顔見てはっきり言ってよ。諦められるように」
 ぐっと息を呑んで、エリィより低い位置にあるその顔に向き直る。
 くちびるを開くより早く、テオドールが背伸びをして自分のくちびるをぶつけてきた。
 どさっと盛大な音をたてて洗濯籠が床に転がった。
 慌てて身を引いて、エリィは己のくちびるを両手で覆う。
「ぼっ……!」
「これでエリィお嫁にいけないね。諦めて僕と結婚しようよ」
 折った両腕ごとテオドールにぎゅっと抱きしめられて、エリィは身動きが取れない。
 やっと14になったばかりのテオドールを、エリィは産まれたときから知っている。
 テオドールはそれはそれは可愛らしい赤ん坊で、まるで天使かと、幼いながらにうっとりしたものだ。
 わがままで、やんちゃで、寂しがりやで、甘えん坊で、でも優しくて頭がよくて、朗らかで、周りを優しい気持ちにさせるテオドール。
 弟みたいな坊ちゃまを、嫌いなはずがなかった。
 だけど、とエリィは思う。
 テオドールの甘い言葉に夢を見て、現実から目を背けるには大人になりすぎた自分は、もうテオドールに相応しくない。
629名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 17:36:14 ID:+3XtCR5S
 彼の言うとおりに乗り越えるべく障害にぶつかりながらも薄い望みにかけるなんて、失業が怖くてとてもとても出来るわけがない。
 産まれてからずっとお世話になっているこのお屋敷で、生涯勤めるのがエリィの大きな目標だ。
 万が一追い出されでもしたら。
 運よく新しい屋敷に就職できたとしても、そこで上手くやれなかったらまた路頭に迷う。
 霞を食べては生きていけないのだ。
 エリィはもう大人だ。冒険など、する歳ではない。
「キスぐらい、差し上げますわ。テオドールさま」
「エリィ?」
 身をよじって、身体に巻きつく腕を緩めて、とんとテオドールを押し返した。
「わがままな坊ちゃまは嫌いです」
「…………怒った?」
「いいえ、怒っていません。でもね、本当に無理なんです。どうにもならないことって、世の中には、たくさん、たくさん、あるんです」
 淡々と話しながら、床に散らばった洗濯物を拾い集める。
 一枚ずつ、丁寧に、丁寧に、籠に収めていく。
「そうだ、坊ちゃま。もしも坊ちゃまにお子さまが産まれたら、ベビーシッターはぜひ私にお申し付けくださいましね」
 その提案はとても素晴らしいもののように思えた。
 可愛いテオドールの子供!
 きっととっても可愛いだろう。
「…………僕に子供が生まれるとしたら、エリィ、君が産むんだよ」
「坊ちゃま……!」
「僕さ、次男だからきっと大丈夫だよ! まず父さまにお願いしてみるね。
 命令されて結婚するの嫌だろうなーと思って先にエリィに聞いてたんだけど、
 こんなに頑固なら仕方ないよね。当主命令になっちゃっても怒らないでね」
 一瞬口元だけで笑った笑みが、すぐにさわやかないつもの快活な笑顔になる。
 エリィは己の見間違いかと思った。
「駄目だよ、エリィ。僕、欲しいものは欲しいんだ」
 テオドールはくすくすと笑いながら、腰を折って最後の一枚を拾い上げる。
 すっと差し出された白いネッカチーフをこわごわ受け取る。
 何か、見てはいけないものを見てしまったような気分だ。
「エリィ。覚悟しておいてね」
 恐る恐る伸ばした手首をまた引かれて、今度は柔らかいくちびるが頬に触れた。
 どさっと盛大な音を立てて、せっかく集めた洗濯物は再び床に散らばった。


 エリィが彼の本気を知ったのは、それからたった一週間後のことだった。
630名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 17:37:56 ID:+3XtCR5S
埋まったかな?

うめ
うめ
631名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 00:43:55 ID:a03IKdsc
さらりとした長い髪が白い背中へ落ちた。艶めいた淡く白い輝きがヴォルテールは気に入っているのだと語っていた。
「それで、貴様はのこのこと逃げ帰ってきたわけだ」
クロウに語りかけながらヴォルテールは椅子に腰掛けた。
一糸纏わぬヴォルテールの姿は月の女神のように麗しい。男なら情欲を刺激されずにはいられない裸身を前にしても、クロウは跪いたまま微動だにしない。
「情けない。貴様、それでも男か」
主人の叱咤に従者は低く謝罪する。
「敗者には罰を与えねばな。そうだろう?」
ヴォルテールの爪先が跪いたクロウの顎を押し上げる。
「なあ、クロウ」
嫣然と笑むヴォルテールと真正面から見つめ合い、クロウはごくりと唾を飲み込んだ――

「――という夢を見た」
目の前の主人はあっけらかんとそう言った。
「実は続きもあるんだが聞きたいかい?」
ヴォルテールは一生懸命に頭を振って否定する。
「あ、あの、わた、私はそんなっ、旦那様にそんなっ!」
半分泣きながら必死に否定するヴォルテールが愛らしくてクロウは笑う。
「女王様な君もよかったよ。意外とマゾっ気あるのかな、僕」
「旦那様っ!」
「冗談だよ。冗談」
ふっと耳朶に吐息がかかり、ヴォルテールはびくりと震えた。
「君は苛められる方が好きなんだもんね」
腕を引かれ、胸に抱き止められる。
とくんとくんと血液の流れが速まる。
「僕も君の困った顔を見ている方が楽しい」
唇が触れ、腰に腕が回される。
「ここで抱いてしまうと君は困るかな」
「こ、困ります。人が、来ますから」
慌ててクロウの胸を押すが、彼はより強くヴォルテールを抱きしめる。おまけに唇が項に触れてきた。
官能がじわりじわりとヴォルテールを支配していく。
「だめだよ。僕の話をちゃんときかなきゃ」
壁に押しつけられ、スカートの中へ手が差し入れられる。それは緩やかにヴォルテールの太股を撫ではじめた。
「君の困った顔を見るのが好きだって言ったばかりなのに」
くつくつと笑う主人の顔を見上げ、ヴォルテールは観念したように目を閉じて愛撫を受け入れ始めるのであった。



埋まったかな?
632名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 00:47:51 ID:a03IKdsc
埋まってないか。なかなか埋まらんね。
633名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 01:22:39 ID:27QaGH6x
GJだがひとつ言わせてくれ。
ヴォルテールは男の名前だ……。
妖しい雰囲気でドキドキしたり愛らしさに萌えるべきところで
数学者や二軍兵の冴えない顔連想して笑っちゃうじゃないか。
634名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 01:27:15 ID:muEc078t
外人の名前って決めるのむずいよな、、、
音の響きだけできめると男名になる事あるし

まぁ、日本でいうアキラとかトオルとかカオルとか男に女っぽい名前、女に男っぽい名前をつけたっていう事でいんじゃね?
635名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 01:44:24 ID:wM8xWAJd
ほしゅ
636名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 01:45:29 ID:wM8xWAJd
ありゃ、埋め、って入れようとしてついクセで。

すみません。
ってことで、埋め
637名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 01:50:34 ID:a03IKdsc
>>633
ごめん、敢えて男名つけた。そういうのもありかなと思って。
カミーユが男の名前で何が悪いんだよの逆バージョンみたいな。
638名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 09:15:35 ID:VKen/FQ0
アンリやアントワーヌやシャルルが男の名前ってのも不思議だよね。

テオもクロウもGJ! よい梅ご馳走様でした。
639名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 11:24:49 ID:geHqtTxT
ゾフィーは女性名、ユリアンは男性名と聞いた事がある。
ウルトラマンにおいては逆だが。

とはいえどちらもGJ!続き希望。
640名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 12:44:34 ID:ewJFM8QK
>>638
アンリはヘンリーの仏語(確か)読みじゃなかったっけ?サッカー選手にいた。
641名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 15:14:29 ID:KK4LVFn0
シャルルもカールと同じだからね。
高校世界史でやったろ?カール大帝とシャルルマーニュは同一人物。

これで埋まるのも妙な気分だw
642名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 16:16:33 ID:VKen/FQ0
そろそろ埋まるかなぁ? 最後にageなきゃ。

このスレの途中まで保管したんだけど、そろそろタイムリミット…。
途中やりでごめんよ。
そしておかしいところとかあったらごめん。
は、初めてだったから、上手く出来なくって……!
変なとこ見つけたら、治してくれると嬉しいです。
643名無しさん@ピンキー:2007/08/29(水) 05:17:10 ID:tfHgwz3O
埋まった?
644名無しさん@ピンキー:2007/08/29(水) 05:17:46 ID:tfHgwz3O
うめ
645名無しさん@ピンキー
まだいけるかな?

このスレのSSは全て保管済み。
漏れ、ミスなどあったら、ご指摘もしくは修正をお願いです。

それでは次章でも、職人さんたち、読者さんたち、よろしくお願いします!