嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 恋は19さなの
1 :
言葉様復活:
乙! 早速投下第一号イってもよろしいか?
_____________
|__/⌒i__________/|
| '`-イ ./⌒ 三⌒\ | 乙かれイッチー・・・・
| ヽ ノ /( ●)三(●)\ |
| ,| /::::::⌒(__人__)⌒::::: \ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1乙
>>1 乙であります!
>>4 ( ´∀` )bどんと来い!!
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夜、森の中の少し開けた場所。
火が焚かれその側にはセツナとリオとクリスの姿。
だが三人のうち起きているのはリオとクリスでセツナは静かに寝息を立てている。
その日の昼間の戦闘が激しかったせいか、それとも二人に対する信頼の大きさからか。
其の眠りは深そうで些細な事では起きそうに無い程に熟睡してる。
パチパチと爆ぜるくべられた枝木の音が周囲を包む静寂をより際立たせる。
「リオにいさんは姉さんの事どう思ってるんですか?」
静寂を破るように徐にクリスが口を開いた。
「何です? 改まって」
「ん、チョット気になって聞いてみた」
「そうですね。とても頑張ってくれてると思います。だから私も可能な限り力になりたいと思ってます。
彼女が勇者として其の使命をまっとうできるように」
「いや、そのね……勇者としてじゃなくて、女性としてどう思ってるのかな? って」
「え……? じょ、女性として、ですか? そ、そんな事考えた事も……」
女性としてどう思ってるか、そう問われてリオは返答に詰まった。
「考えた事も無い……ですか? 嘘言わないで」
「う、嘘なんかじゃ……」
「一つしかないボクの瞳だけど決して節穴なんかじゃないですよ?」
そう言ってクリスは真っ直ぐリオを見据える。
「え、えっと……その」
「大体この間だってボクと姉さんが仲良くしてるのを妬いてたでしょ?」
言われて返答に困ったかのように押し黙るリオ
「あ、別にリオにいさんのこと責めてるわけじゃないから。 ふーん、やっぱりそっか……」
リオの反応を肯定と捉え納得したのかクリスは何か考え込むようなそぶりを見せる。
「あ、あの、クリス……?」
「って事はさぁ……リオにいさんって姉さんのこと好き?」
「い、いや……そ、そんな好きだなんて……」
「じゃぁ嫌い?」
「そ、そんな事無いですよ! セツナは十分素敵な女性だと思いますよ!」
慌てて答えたリオ。
「ふぅん……。 じゃぁサ、姉さんと付き合っちゃったら?」
「ハ、ハイ?」
思わずリオは素っ頓狂な声を上げた。 あまりにもクリスの言葉が意外なものだったから。
「ウン。 リオにいさんと姉さんならお似合いだと思うな」
驚きの表情を隠せず言葉を次げないリオに構わずクリスは言葉を続けた。
「あ、あのチョット待ってください!」
「何?」
「いえ、その、確かにセツナが女性としても魅力的ですし多少なりとも惹かれてるも認めますが、
ですが私には……」
「婚約者……ですか?」
「ハイ」
「……コレットですか」
そう言ったクリスの表情がにわかに険しくなる。 そして続ける。
「でもあくまでも婚約で結婚してるわけじゃないでしょ? 破約しちゃえば良いじゃないですか」
「ちょ、何言ってるんですか!」
抗議にも似た声を上げるリオ。 だがクリスはそんな事お構い無しと言った風に続ける。
「そもそもどうして婚約したの?」
「クリス!」
「良いでしょ。 答えてくれたって」
まるで引く様子の無いクリスにリオは観念したように答える。
「そ、その幼馴染で気心も知れてますし。 それにコレットの両親には幼い頃からお世話に……」
「つまり恩義、ってこと? じゃあ別に好きで婚約したわけじゃないってこと?」
「そ、そんな事無いですよ。 好き……ですよ」
「……姉さんよりも?」
そう言ったクリスの口調にはどこか凄むような含みが合った。
「クリス……?」
そんなクリスの口調にリオは戸惑いを感じる。
「姉さんよりも大事なの? あの……女の事が」
「あ、あの……?」
「答えてください……! 命がけで体を張って戦ってる姉さんより
村で平和にぬくぬくと暮らしてる苦労知らずなあんな女の方が大事なんですか?!」
物凄い剣幕でまくし立てるクリスにリオは戸惑いの声を上げる。
「ちょ、チョットどうしたんですか? クリス?」
「あ、ごめんリオにいさん。 チョット興奮しちゃって」
そう言ってクリスはバツが悪そうに頭を軽く下げる。
クリスが言葉を切るとリオは困惑気味に口を開く。
「えっと……っ確かに勇者としてだけでなく女性としても私はセツナに少なからず惹かれてます。
ですがあくまでもそれは私の一方的な想いで……」
「一方的なんかじゃないよ。 姉さんも好きだよ、リオにいさんのこと」
「え? ……ってまさかそんな。 だってセツナはクリス、あなたと……」
リオがそう言いかけるとクリスは一瞬きょとんとした表情を見せる。
やがて堪え切れなさそうに笑みをこぼす。
「ボクが姉さんと? 違うよ。 確かにボクは姉さんのこと好きですよ。 うん、大好き。
でもね、恋愛感情とかそう言ったのじゃないんです。 ボクの呼び方からも分かるでしょ?
『姉さん』なんですよ。 ボクにとって」
そして一息ついてクリスは続ける。 表情は先ほどこぼした笑みとは打って変わって真剣なもの。
「姉さんはなんでこんな命がけの戦いに身を投じていられるんだと思います?」
「何で……って、それは勇者としての使命感じゃないのですか?」
「……本気で言ってるんですか?」
そう言ったクリスの声はどこか険しく、そしてリオは其の声に気圧され黙り込む。
「リオにいさんは姉さんの身の上とかって聞いてます?」
「えぇ、まぁ全てと言うわけでは在りませんが元はこの世界の住人ではないとかそうした幾つか……」
「そうです。姉さんは本来この世界の人じゃないんです。
だからこの世界で生まれ育ったボクらと違って命をかけてまで戦う義理なんかないんです。
それが何故こんな過酷な戦いに身を投じていられるか分かってるの?」
言われてリオは黙り込む。
だが其の表情からリオが応えずとも其の答えを導きだしてる事をクリスは察する事が出来る。
「分かったようですね……。 そうですよ……。
さっきからも言ってますがリオにいさんが好きだからですよ……!」
「で、でも彼女は勇者としての使命を帯びた身で……私なんかがおいそれと……」
「リオにいさん! 二言目にはいつもそれですか?! 『勇者サマ』『勇者サマ』……って、
姉さんだって女の子なんですよ?! 勇者である前に一人の女の子なんです!」
「ちょっ……こ、声が大きいですよクリス」
言われてクリスは咄嗟に口に手を当てる。
そして起こしてしまっただろうかと気にしながらセツナに目を向ける。
だが相も変らず静かな寝息と共に熟睡してるようだ。
そして其の寝顔にクリスもリオもホッと胸をなでおろす。
「ゴメン……大きな声出しちゃって」
「い、いえ気になさらずに……。 で、でもその……私には婚約者が……」
「だから! さっきから訊いてるでしょ?! そんなにあんな女が、コレットが大事なんですか?!」
「ク、クリス……?!」
「ボクはね、大ッ嫌いなんですよ! あの女のこと!
ボクがリオにいさんの村に立ち寄りたがらないの知ってるでしょ?!
其の理由の一つがコレットなんですよ! 知らなかったでしょ?!
あの女! 人のこと化け物でも見るみたいな脅えた目で見つめて! 幼いころも! そして今も!
そんな女を選ぶんですか?! リオにいさんは?!」
リオは息を呑んだ。 激昂したクリスの肩が振るえ瞳には涙が浮かんでいた。
「姉さんには……姉さんにはリオにいさんが全てなんですよ! 見知らぬ異世界で寄る辺も無く!
ただ、リオにいさんの為だけに!」
「で、でも……」
「何です?」
「あ、ハイその、あなたじゃ駄目なんですか? クリスも十分セツナと仲が良いようですし……」
「そうですね……。確かにボクは姉さんの事大好きですし、
姉さんもとてもボクのこと可愛がって大切にしてくれます。
でもね、ボクじゃ駄目なんです」
「何故です……?」
「それは――」
クリスは言葉を切り背を向け服を脱ぎ始める。
そして上半身裸になって振り向いたクリスの姿を見てリオは驚きを隠せなかった。
胸元を手と服で覆いながらも覗く其の膨らみは小さいながらも確かに女性のそれであった。
クリスの顔を見れば真っ赤に染まっていた。
それは決して焚き火に照らされたせいだけでないのはリオにも分かって取れた。
そしてクリスは再び背を向け服を着始めた。
To be continued...
今までずっとセツナの一人称で一貫してきましたが
今回ばかりはやむ得ず視点変更して三人称にしました
クリス援護来たー!!これはコレットとのガチ修羅場への伏線なのか!!
予想を裏切られてマジ期待
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
15 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/02(月) 00:49:58 ID:vtcdmCd5
保管庫本当にどうすんだろ
16 :
早漏:2006/10/02(月) 00:54:27 ID:i4cInHmH
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 泥棒猫との20(はた)し合い
>>1 乙っ!
>>15 子供産まれて大変な時期だろうから更新が滞るのも解らんでもないんだけどな。
この更新停止が一時的なモノかどうなのかってのは確かに気になる。
>>1さん
おつです!
>>15 |ω・`) のんびり待つべ、流れたスレのログはみんな持ってるわけだし
いざとなればお手伝いぐらいはできるさ・・・
このスレ見るようになってから、
属性に「修羅場」「ヤンデレ」が加わったために、
「男装」「TS」「触手」「不可抗力(媚薬など)」「陵辱」
「逆転」「孕ませ」「羞恥攻め」「修羅場」「ヤンデレ」etc... と。
属性同士で修羅場るくらい多いなと思ってしまった。
夏の太陽は夜への時間を引き延ばし、西の空の重なりあった入道雲から漏れて、その光は世界を赤く染めあげていた。昼間は地響き
のようにうるさく騒ぎ立てていたミンミン蝉も、寝床に移動し始めたようで、若干その勢いを弱めている。
水嵩の低い架加勢川はいたるところに砂嘴が現れていた。その川の中では小さな子供達が歓声を上げながら、水浴びを楽しんでいる。
京之助はそんな様子を横目に見ながら、幾分頼りない歩調で家路へと急いだ。
「ただいま」
京之助は家の敷居を跨ぐと、蚊のなくような小さな声を出した。すぐに溶けるように消えてしまった小さな声だったのだが、妻の素
女はそれに気付き駆け寄ってくる。
「まぁ、どうしたんですか。顔がやつれてますよ」
京之助の顔を見るなり、素女は心配そうに眉を寄せて言う。
「部下にずいぶんといたぶられたのだ」
京之助は履物を脱ぎながら答える。そして自嘲気味に笑った。
東条家は万年御書院目付だったのだが、先代の当主、つまり京之助の父が藩の家老同士の権力争いで大活躍したらしく、その恩賞が
父の死後にきたのである。父の死後、京之助が家督をついで三年目の梅雨明け、つまり僅か一月前の事だ。
その当時、御書院の仕事もようやく板につきはじめ、同僚ともうまくいっていたのだが、そんな中で突然に家老の望月孫之丞に呼び
出された。
素女の事もあり何か悪い知らせがあるのではないかと、内心びくつきながら家老の自宅まではせ参じたのだが、家老はニコニコと笑
いなが父の事を褒め称え、その場で京之助を近衆頭取に挙げたのである。呆気にとられながらも、俸緑がほぼ倍になると家に帰って素
女とともに喜んだ。
家録が百石未満の家はそれだけではやっていけず、家計の不如意を補うために多かれ少なかれ内職をしていた。御多分に漏れず、東
条家も内職をしていたのだが、京之助が挙げられた近衆頭取は家録百三十石で、その必要がなくなったのである。
しかし、その喜びもつかの間、新しい仕事を初めてみて激しく後悔した。
職場では京之助が一番の若年で、その上先の派閥の権力争いに破れ、上から落とされた者もごろごろいた。そう言った連中が、京之
助にねちねちと嫌味を言ってくるのである。もちろん派閥争いに破れたわけでもなく、それとは別に長年勤めている者もいるが、そう
言った面々は静観をきめこんでおり、京之助にとっては毒にも薬にもならない。そのため結局京之助は今の職場に未だに馴染めずにい
た。だからこそ最近は、あの頃の方がマシだった、と昔の職場と内職を非常に懐かしく感じてい溜め息をついている。
そして今日も今日とて寝不足で仕事のはかどらない京之助に、彼等はねちねちと嫌味を言ってきたのである。怒鳴り返そうとも思っ
たのだが、寝不足の頭にそんな力は残っていなくただ聞き流していると、その京之助の態度が火に油を注いだらしく、いつも以上に嫌
味を言われた。
仕事の終わる頃には肉体的にも精神的にも参りきってしまった京之助がやつれるのも無理はない。睡魔は京之助の体力を根こそぎ奪
いさり、もう瞼を開けていることさえ辛い。
「今日は夜食はいい。すまぬが夜具の支度をしてくれぬか。もう寝る。夜食は素女一人で食べてくれ」
素女はえっと驚いた顔をし、それからその顔がみるみる悲しみに染まっていく。瞳には涙をため、今にも泣きだしそうである。
またか、と思い京之助は思わず顔をしかめた。
子供の頃、素女を泣かせるといつも父に叱られた。か弱い女子を泣かせるとは何事ぞ、と酷い剣幕で怒鳴られ、殴られた記憶さえある。
その時の記憶が脳裏にありありと刻みこまれている京之助は女子の、その中でも特に素女の悲しそうな顔は苦手なのだ。素女の顔を
見ると、どうしようもない罪悪感にさいなまれるのである。それは夫婦になった今でも拭いきれておらず、そのためか夫婦喧嘩などし
たことなく円満な夫婦でいられるのだが、時折ささいな事で仲違いする際は常に素女が泣き京之助がひたすら謝るという情けない構図
を作り出す原因ともなっている。
「わかった。夜食は一緒に食べよう」
今日も京之助が妥協する。
素女は正直なもので京之助の言葉を聞くと、急に顔を綻ばせた。その笑顔は本当に嬉しそうで、京之助はまるで世紀の大英断をした
かのような高揚感に包まれる。妥協がもたらす唯一の恵みだ。
素女は、すぐに夜食の準備をいたします、と言い残し台所へと消えていった。
その後ろ姿を京之助は見送り、やれやれと肩をすくめ溜め息をつきつつ、自分の頬を二、三度叩く。睡魔との戦いが今始まったのである。
今日はここまで。
嫉妬の影も形も見えない orz
俺は前スレにも保管庫のこと書いて怒られたが、改めてもう一度・・・・
は や く こ う し ん し て く だ さ い
擁護房達もそろそろ不安になってるはずw
そんなこと喚いて急かすより、阿修羅氏が戻ってくるまでの暫定保管庫でも作った方が有意義だと思うますがねえ
暫定保管庫を管理する人間がいないんだよな・・
wikiでも作って貼り付けるか?
問題はいつこのSS作品を同人市場で売り出すかってことだよ
ハア?
Wikiに賛成
オイは他所の保管庫持ちだからログ保管ぐらいの協力は出来るが神別の編集保管は自信ナシ
てか17スレ保存してる奴いんの?
>>30 専ブラ使って読んでる人なら大抵ログは残ってるよ|ー゚)
俺にHTMLの技術さえあれば・・・
さっきのあたしは最悪だった。
もっと上手くリアクションできたろうに、
涙目一杯に溜めて「おめでとう。」だ?
悲劇のヒロインかあたしは。
ただの負け犬だっての。
同情なんて絶対引きたくない。
あいつの前ではかっこよくいたいのに。
あたし達は幼馴染みで、
若かりし頃からその関係に変化はない。
これからも無いだろう。
―――「彼女、できちゃったか…。」
悔しいなぁ。
多分あたしがもっと積極的に
振る舞ってたら落とせたのに。
二人が心地いい関係に甘んじてたのが敗因か。
元々あたしには友達以上の可能性はなかったのかもしれないが。
どちらにしてもここで区切りをつけるべきだ。
あいつの人生に不必要な波風をたてることはないだろう。
考えるまでもなく。
諦めなきゃいけなくて。
「…………がぁぁぁっ!!!!!」
ガッ!
ブンっ!!
ガシャーン!!!
「……あっ!?」
しまった!?
ついジクジク考えている自分に腹が立って
目の前にある隣家の窓に手元のペンケースを投げつけてしまった!!?
ていうかここでいう隣家とはつまりアタシの幼馴染みのアイツの家でつまりその窓とはあいつの部屋でっっ!?
―――「ちょ、おま何やってんだユキィィィィイイイ!!!!」
あらん限りの大声で叫ぶ。
幼馴染みとはいえ仕方ない。
奴は今、精密な射撃で僕のタマを取りに来やがった。
あいつの様子でも伺おうかと窓に近づいた瞬間、
カーテン越しにも関わらずそれを察知し、
速度によってはゆうに人を殺せるであろうアイアン製品を撃ちだし、
その上本来障害物となるはずの窓ガラスを利用し
破片によりさらに殺傷力を高める始末。
……なんて奴…!!
「なんだこれお前、
逆恨みって言うんだぞこーいうの!!」
「へ?…へっ!知らないよ!
あたしの受けた心の痛みその身体で受け止めやがれっ!」
「な!?この野郎!
さっきはやけに大人しいと思ったらそんな事考えてやがったのか!!
黙って殺られる俺と思うなよ!」
―――うわ、あいつ何か投げてきたっ。
女の子に暴力って最低かよ!
負けじとあたしも投げ返す。
一応、怪我しないようにぬいぐるみとか枕とか。
向こうもそういうつもりだったらしく
枕1、枕2、座布団。
おっと、攻撃が止んだ。
どうやら弾切れらしい。
ふはは!!
女の子の部屋にある「柔らかい物」の数なめるなよ!?
いや、何やってんだ、あたしは。
「………うーん。
僕も片付けなくちゃ駄目だったのかな?」
「なんならあたしの部屋で寝る?
女の子に一人重労働させながら。」
「ひどいよね、それ。」
「あぁ…駄目…今になって心の傷がうずいて…。」
「なんで僕の方が立場弱いのっ!?
惚れた弱みとかそういうのは!?」
「諦めなよ…、あんたは一生、
あたしの奴隷なんだから…。
かわいそう…。」
「同情するなら自由をくれ!?」
「わぁ古い。」
「罪の意識なんてまったく皆無!?
…別によかったのに、
片付けぐらい、手伝ってくれなくても。
僕の部屋なんだから。」
「あたしのせいじゃない。
いいよ?ホントにあたしの部屋使って。
あんたの枕もあるしさ。」
「いいよ、お前こそ部屋戻りなよ。」
「…やだ。片付ける。
あはは、キリなさそうだね。
一緒にしよ?」
「…まぁいいか…、
あ…。」
「何?」
ガラスの破片に混じって、
銀色のペンケースが落ちてる。
あたしの投げた物だ。
「…まだ使ってたんだ。」
「…別に。買い替えるのも面倒だったから。」
「現に今放り投げてたもんね。」
「それぐらい憎らしかったのよ!あんたが!」
「うわべっこり。」
「え、…ホントだ…。」
見ればもうめちゃめちゃにひしゃげてる。
ていうかあたしこんなに力あったのか。
…もう使えないかな…。
小学生の頃、
みんな分厚くて重い筆箱を使ってたのに対し、
こいつは一人だけスマートなペンケースを使っていて
ひどく大人びた感じがし、それが羨ましかったものだ。
…ま、あたしがパンツと引き替えに貰い受けたのだけどね。
こいつは昔からパンツに異常な執着を見せていて、
そういう意味でもある意味大人びていた。
「パンツ大臣だもんね…。」
「なんでいきなり人のトラウマ的ニックネームを感傷的に呟くの!?
その憂いを含んだ表情にちょっとドキっとしちゃったよ!?」
「…サクラ。」
あたしは幼馴染みの名前を呟く。
そういえば「あんた」以外の名前で呼んだのは久しぶりだ。
こいつもしばらくぶりに言われて顔が引き締まってる。
真面目な話を聞く顔だ。
「…またパンツと引き替えに、
ペンケースくれない?」
「もうそこまでパンツに興味ないよ!?」
あ、駄目か。
おわーりー。
うぉぉおぉぉGJ!ええもう見事に引っかかりましたよ
最後名前を見て( ゚д゚)ポカーンとなって間が空いてΣ( ゚Д゚)ハッっと気づいた俺テラニブス
>>38 こんなに関心されちゃって
それ違うよ、
とも言えない俺カワイソス
スマン。
さくら君ちゃんと男の子ついてるつもりなんだ。
すみません。
好きな女の子の体操服かぶったのは俺です。
すみません。
40 :
阿修羅:2006/10/02(月) 21:19:39 ID:vN/mP7tc
ごめんなさい
いきてます
ろぐあります
ちょっとまってくだs
阿修羅氏キターーーーー
心配してたよぉぉぉぉ
ちょwwwwwwwwwwなんか死にそうwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
>>40 縦読みで「ごきあと」ですか?w
待ってま〜す
>>43 な
す
す
て
,.ィ , - 、._ 、
. ,イ/ l/  ̄ ̄`ヽ!__
ト/ |' { `ヽ. ,ヘ
N│ ヽ. ` ヽ /ヽ / ∨
N.ヽ.ヽ、 , } l\/ `′
. ヽヽ.\ ,.ィイハ | _|
ヾニー __ _ -=_彡ソノ u_\ヽ、 | \ ナースステーション
.  ゙̄r=<‐モミ、ニr;==ェ;ュ<_ゞ-=7´ヽ > にこそ今の修羅場トレンド
. l  ̄リーh ` ー‐‐' l‐''´冫)'./ ∠__ があるってことだったんだ!!
゙iー- イ'__ ヽ、..___ノ トr‐' / ナンダッテー!!Ω ΩΩ
l `___,.、 u ./│ /_
. ヽ. }z‐r--| / ト, | ,、
>、`ー-- ' ./ / |ヽ l/ ヽ ,ヘ
_,./| ヽ`ー--‐ _´.. ‐''´ ./ \、 \/ ヽ/
-‐ '''"  ̄ / :| ,ゝ=< / | `'''‐- 、.._
/ !./l;';';';';';';\ ./ │ _
_,> '´|l. ミ:ゝ、;';';_/,´\ ./|._ , --、 | i´!⌒!l r:,=i
. | |:.l. /';';';';';|= ヽ/:.| .|l⌒l lニ._ | ゙ー=':| |. L._」 ))
l. |:.:.l./';';';';';';'! /:.:.| i´|.ー‐' | / | |. ! l
. l. |:.:.:.!';';';';';';';'| /:.:.:.:!.|"'|. l' │-==:|. ! ==l ,. -‐;
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l |:.:.:.:.:l;';';';';';';'|/:.:.:.:.:.:.!│ l l、 :| | } _|,.{:: 7 ))
l |:.:.:.:.:.:l;';';';';'/:.:.:.:.:.:.:.:| |__,.ヽ、__,. ヽ._」 ー=:::レ' ::::::|; 7
. l |:.:.:.:.:.:.l;';';'/:.:.:.:.:.:.:.:.:.|. \:::::\::::: ヽ ::::::!′ :::| .:/
. l |:.:.:.:.:.:.:∨:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.! /ヽ::: `::: :::: ....::..../
さ
す
ま
ま
刺すママ?
こ、これは修羅b
>>38 何度読み返してもよく分からない俺にどういうことか教えてくれ
阿修羅さん無事だったのか
心配したよ
48 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/02(月) 22:32:54 ID:DrtLJVHo
いや、嫁さんによる演出かも
今頃、阿修羅さんはいたり先輩みたいな新妻に調教されている頃でしょう・・
惜しい、いやなんて羨ましいんだ
「んん……」
寝れない。結局あのまま病院のベットで寝ようとしたのだが、全然寝付けない。時計を見てみると……
「まじか……」
まだ十二時だった。この病院の消灯時間は九時。それから一発やって……そうか、本番がお預けだったから早かったのか。
「はぁ…」
やっぱり寝れない。その理由は……まぁ、本番をスルーされたってこともあるが、やっぱり一番の理由は……
「葵…」
強い罪悪感を抱きながら、名前を呟く。なにをやってるんだ、俺は。セレナとこんなことをして……葵を、探さないと。
「ごめん、セレナ。いってくるよ。」
「んむ……」
頭をなでながら、そっとキスをする。今から葵を探しに行くというのに、俺はなんてひどいことをしているんだろう。セレナを起こさないようにそっとベットを出る。
いくら面会無制限とはいえ、あまりこんな時間に病院内をうろうろするのはよくないだろう。看護師たちにみつからないよう、こっそりと病院を出る。
春の夜。暖かい風が流れている。果たして葵はこの空の下のどこにいるのだろう。暗闇の中へ、俺は足を進めた。
夜中なため、大声をあげて探すわけにもいかない。思い付く場所を片っ端から探していく。
商店街、俺の家、河川敷、葵と行った遊園地……どこにも葵はいない。まさか本当に消えてしまったのか?…あんな別れ方のままさよならなんて嫌だ。
……俺はまだ、葵のことが好きなんだ。でも……もう死んでいるという真実。そして、生きているセレナは俺をあれだけ求めている……どうすればいい?
セレナか?葵か?
「はぁー……くそっ!」
葵と一緒になるなら、俺も死ななくちゃいけないのか?だけど、やっぱりそれは怖い。情けないかもしれないが、死とは恐怖以外のなにものでもない。
それに……死んだらセレナが悲しむ。…ましてやあんな状態だ。俺が死んだとしったらセレナは……後を追うように死ぬかもしれない。
「みんなで仲良く死ぬなんて………」
ごめんだな……俺は…生きてる。葵は……死んでるんだ……たとえ霊でも、死んだということを認めないと…
「あ?」
考えながら歩いていたら、いつの間にか葵の通っていた学校に着いていた……そうだ、まだここを探していなかった。
「葵…!」
慌てて学校に入ろうとするが、どこも鍵がかかっている。と……外周を歩き回ってみると、一つだけ小窓が開いていた。
かなり狭そうだが、なんとか入れそうな幅だ。壁をよじ登り、強引に入る。
ドサッ!
「いってぇ……」
入った後の考えておらず、モロに床に激突してしまった。頭の痛みをこらえながら見回してみると、そこは段ボールが山済みになっていた。
「倉庫か何かか?……そんなことより、葵!」
何故だかわからないが、ここに葵がいるような気がする。部屋をでて、片っ端から教室を調べていく。
一階……二階……三階………すべての部屋を調べてみたが、葵はどこにもいなかった。やっぱりここじゃなかったのか………いや、まだ見ていない場所がある。屋上だ。
最後の希望に賭け、階段を駆け上がった。屋上へのドアの内鍵を開け、思い切り開ける。屋上のドアによくある、風の抵抗を押し切り、外へ出ると………
「……あ、おい…」
居た……青い月の下。屋上から町を見渡すように、葵は背を向けて立っていた。強い風にもその髪がまったく揺れていなかった。
「葵……葵!」
ほんの数日だけしか会ってないだけなのに、何故かとても愛しく思えた。その気持ちを止められず、葵に向かって走るが……
「がっ!?」
突然、全身がまるで金縛りにあったように、硬直して動かなくなってしまった。いや、硬直というより、重りを巻き付けられたような感覚だ。
その重さに絶え切れず、床に這いつくばるかたちになってしまう。暑くもないのに、全身から嫌な汗が流れる。
「葵……これ、なん……だ?」
葵に助けを求めるように見上げる。だが、葵は相変わらず背を向けて街並みを眺めたままだった。
「……どこにいたんですか?」
「!?」
その声は、今までに聞いたことのないほど冷たく、黒かった。その声を聞いた途端、更に汗がどっと溢れた。何とか顔だけを上げ、葵を見る……
「さっきまでなにしてたんですか?」
振り返った葵の顔は、無表情のままだった……だが、その周りには読んで字の如く、黒いオーラが漂っていた。…いや、葵の周りだけじゃない。屋上全体がだ。
街の景色が黒ずむほどのオーラだ。体が重いのはこいつのせいか?
「あ、お、い……」
声が出ない。まるで喉が潰されたかのように苦しい……息も詰まってきた。
「あれから……ずっとここで待ってたんです。晴也さん来てください、私を探してください、見つけてくださいって……ずっと願ってたんです……」
表情を変えず、落ち着いた声のままこちらにゆっくりと歩いてくる。
「そしたら……愛の力なんでしょうかね?ここからでも離れた晴也さんの事、手にとるようにわかったんです。」
「が……ぁぐ…」
「嬉しかったなぁ…まるで一日中晴也さんの中にいるみたいで。本当に幸せでした…でも………あの女がぁ!」
大きな怒声を放った瞬間、体の苦しみが一際大きくなった。
「あの女……なにもかも忘れたくせに、のうのうと私晴也さんに近付いて……あんな事まで……ふふ、知らないと思ってるんですか?病院のベットであんな悪さした事。」
「!?」
なんで葵が……知って…
「言ったでしょう?晴也さんの中にいるみたいだって……晴也さんのことなら、なんでもわかるんです。……私のこと、忘れられずに好きでいてくれてることも……」
そう言って優しく微笑みながら、両手を頬に添えた瞬間……
「……っがぁあ!!?」
目の前が真っ白にスパークし、脳が壊れるほどに暴れだした。
「ふふふ……楽にしてください……すぐに終わります。」
葵の声が、脳内に直接響く。それと同時に、体の中に葵の温もりを感じた。
「…!…!!!」
声にならない悲鳴が、喉から溢れ出す。苦しいとしか言い様のない感覚。そして……手足が自分の意思とは関係なく暴れ出し、床を叩き付ける。
制御しようにも、体が全くいうことを聞かない。それはまるで……
「もう少し……もう少しで、本当に私は晴也さんと一緒になれるの……大好きでたまらない……晴也さんと……」
体を………葵に乗っとられている……このままだと…意識までも奪われそうだ…
「……が…あ…!」
まるで死を迎えるような、気持ち悪い感覚。
「もうっ、ダメですよ?暴れたりしたら……私『達』の大切な体が…傷ついちゃいますよ…」
まるで子供をなだめるように優しい声。それを聞かされるたび、意識は遠のき、葵が『俺』の中に入ってくる………
ハァハァ…(*´Д`)
生きてた葵のコメディタッチのこういう描写がもっと見たいな
くそっ俺としては葵とくっついてほしい
…がセレナともくっついてほしい
俺はどっちの愛に応えればいいんだ
いつのまにか阿修羅さんが帰ってきてらっしゃるが
羨ましい生活をしてそうですね
もろちんこのスレ住民にとって
|ω・`) 阿修羅さんが生きてるって分かっただけでも・・・
>>55 GJっす、まさか葵さんがそうくるとは・・・
>>56 どっちつかずだと包丁で刺されるか、鋸で切られるか、女の子が飛び降りるかされたりしますよ?
嫉妬本スレで書ききれなかった完成版
で、その閃いたSSのプロットを適当に書いてみる
主人公には二人の幼馴染がいる
その一人は普通の家庭(泥棒猫)で、もう一人は裕福な家庭ではない子。(以降正ヒロイン)
主人公は小さな頃から彼女の家の境遇に同情していろいろと面倒を見ていた
泥棒猫は内心面白くないと思いつつ、顔には出さずに表面上だけは正ヒロインと仲良くしていた
だが、そんな微妙な関係に終わりが告げる
主人公が正ヒロインに告白して、恋人関係になった。
泥棒猫は二人のことを(内面上は)祝福して、少し関係に距離を置くようになった。
貧乏な彼女は綺麗な服も着れないし、どこか美味しい物を食べに行くお金もない
それでも、二人は一緒にいることで満足していた。したはずだった・・。
正ヒロインの親が商売に成功して、一夜にしてお金持ちになった。
ボロ家から引っ越して、豪邸へと移り住んだ。正ヒロインは家を引っ越すことを嫌がったが
両親とは離れられないのでそのままくっついていた。その頃だからだろうか。
お金が手に入れば、人は変わる。いつの間にか贅沢な生活に慣れた正ヒロインは少しずつ変わってゆく
主人公が好きだった料理も作ろうとはせずに豪華な外食へと。主人公のお世話は雇った家政婦に任せるなどetc
彼女がお金を使って、主人公に尽くすほど、正ヒロインを想う気持ちは冷めてゆく。
何かと都合を付けて、正ヒロインと会うことを拒んだ主人公はもう一人の幼馴染である泥棒猫に相談を持ちかけた
泥棒猫は健気に主人公の相談に乗り、二人の付き合いは正ヒロインの知らないとこで続いてゆく
とある日。
正ヒロインは主人公に貧乏で惨めだった過去を捨てると言い放つ。
過去の思い出まで捨てようとする正ヒロインに主人公の制止も聞かずに過去を捨ててしまう。
それを見た主人公は自分が好きだった彼女はもういないってことは悟った。
もう、彼女は違う世界の人間。そう、自分には相応しくない人間だと再認識したので
主人公は決心を決めた。
彼女と別れる決心を
お金持ちになったとはいえ、ずっと精神的依存していた正ヒロインは当然泣きながら別れ話を拒否した
使い切れないお金をいくらでも使ってもいい・・。あなたのためならなんでもしてあげるから
別れないで。お願いだから傍に居てよ。そう、嘆願する正ヒロインの差し出す手を主人公は掴めなかった。
ただ、わかったのは目の前に居る正ヒロインをこれ以上好きで居続けることができなかった。
泣き続ける正ヒロインは何度も何度も携帯電話にかけるが。着信拒否の設定にしているので全然出る気配がない。
彼女の脳裏には嫌なことばかり浮かぶ。私より可愛い女の子を好きになったとか、あれだけ想っていたくれていたのに何で・・。
ただ、正ヒロインは自分が変わってしまったことには気付かずにいた。
その頃、主人公は正ヒロインと別れたことを少し後悔しながらも。ぽっかりと空いた心の痛みを抱えながら生活をしていた。
そんな元気のない彼を泥棒猫は健気に面倒見ていた。変わってしまった幼馴染の事は憎みたいどころか感謝していた。
弱っている主人公に取り込むのがとても簡単になったから。泥棒猫は主人公の心の痛みを埋めるように癒していった。
何が悪かったのかと悩み続けた正ヒロインは自分が貧乏だった頃の夢を見る。
涙が出た。
あの惨めで貧乏な生活が自分にとってどれだけ幸せだったのかと。ようやく、わかったのだ。
いつでもご飯を食べられて、素敵な洋服が買えて。恥ずかしい思いをしないで済む様になったのに
とても満足なことなのに、胸が空っぽだ。
主人公が傍にいないだけで自分はこんなにもダメになってしまう。彼がいるからこそ、どんな時も幸せだったのだ。
その事に気付いて、主人公の前に現れようとした時。
すでに主人公と泥棒猫は恋人関係になっていた。
以後の展開は誰かに任せましょうw
スレを駄文で汚してスマソ
本スレで書いたプロットが書き切れなかったのでこっちで投下した。
まあ、このプロットはこんな娘がいたら僕はもうの志乃シナリオをプレイして
閃いて書いたプロットです。
そのせいか、半分以上志乃シナリオをパクってます。
おかげで駄文になってしまった。
その後の正ヒロインが狂ったり、泥棒猫の攻防が続いたりするわけですが・・。
そこまでは考えていなかったりしてw
綾菜にその気があったらこのプロットそっくりなシナリオになってたと思。
纏めサイト更新キター!!
阿修羅様乙&GJ!!
>>23 修羅場に到るまでの過程もまた重要なスパイスだと思います
期待してますだでがんがってください
もし神完全版も期待してまっせ
阿修羅氏乙カレー。
阿修羅さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
>>55 葵タソの愛の力スゴス(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
阿修羅氏おつかれさまです。いい仕事してくれますね。
阿修羅氏乙!!!!
|ω・`) 本スレに投下されたプロットがトライデントさんだとは思わなかった・・・
プロットとはいえ、その量と質・・・さすが(*´д`*)
どうせ、パクリでしょ
全然大したことないじゃん・・。
本当にスレ汚しだよあいつは
「は、ぁ……っ?」
ちょ。
なに、それ。
「エー兄ぃ、なに、言って、るの……、?」
「何って、だから俺は、いたりさんが――っ」
好き……、って?
言わないよね、さっきの、あれ、あたしが聞き間違っただけだよねっ!?
ねえ、うん、そうだ、エー兄はあたしに言ってくれたもんね。
お前のこと、好きだ、俺。
思い出すのは、その言葉。
それだけが、混乱しきっているあたしを辛うじて冷静に踏みとどまらせている。
なのに。
「好きだから。何回も言わせるなよ、は、はずかしいから、さ」
困ったように頬をかきながら、何故、何故何故何故何故何故……っ!
あたしを怒らせる回答を、すんなりあたしに、投げつけるのっ……?
ねえ。
何でなの、エー兄。
もう限界だった。
視線を横に滑らせる。
「ぇへ……、へ。そうですよぅ、はずかしいじゃないですか、有華さん」
腕を、絡ませながら。
この糞猫は、本当に、本当に幸せそうに……っ。言った。
ふざけるな。
両手を握り締め、奥歯を砕きたいほど噛み締める。理性が融解しそうだよ。
「おまえ、だな。エー兄を、おかしく、したのは」
人目なんて、知らない。
怒鳴るのを抑えた自分の声は、震えていた。
一歩。近付く。
「十日も、エー兄が帰ってこなかったのは……っ! あんたが、原因なんでしょっ!?」
「どうだっていいじゃないですか、そんなこと」
んふ、などと、エー兄の肩に頬を乗せながら。
「どうだってよくないわよっ! だって、エー兄は、あたしの――っ」
「エーちゃんは、私の、恋人です」
ぴしゃりと、言葉が言葉で止められる。
「あの屋上での告白は、間違いです、冗談です、……って、本人が言っているのに、まだ理解できないんですか……っ?」
「……、この、糞、女ぁっ!」
きれた。
平手ではない。握り締めた右の拳で、あたしは、そいつの顔面を……っ!
殴った。
「ぁうぐっ」
「――、ぁ、れ」
おかしいなあ。
あたしは、あのいかれた妄想女を殴りたかったのに。
「な、んで……っ?」
目前には、エー兄がいつの間にか立っていて。
まるで、あの女を護るみたいに。
「ぃ、て、っ……、ぁはは、痛い、痛いな、これ」
頬を撫でながら、苦笑するエー兄の表情が、……あたしには、とても悲しかった。
「エーちゃんっ!? 、この、っ……!」
「あ、ああっ。駄目、駄目だって、いたりさんっ」
ぼうぜんとするあたしに詰め寄ろうとするあの女を、まあまあと、エー兄がなだめる。
「悪いのは俺ですから、うん。殴られるくらい当然ですよ」
――違う。
あたしが聞きたいのは。
そんな、言葉じゃ、ないよ……っ!?
まだ、怒鳴ってくれたほうが……救われる。
「ね、ぇ……っ? エー兄、ほんと、なの、ほんとに、あれ、嘘なの……っ?」
にじんで見える、眼前の光景。
泣きながら、あたしは言った。
エー兄は。
「うん」
その二文字を、吐く。
まばたきすら忘れる。
もはや……あたしを支えてくれる存在は、無に、等しかった。
「だ、駄目だよ、そいつ、いかれてるっ! そんな、そんな、ストーカー、女なんか……っ!」
「有華は、もう無関係じゃないか。……じゃあ、もういくよ」
あ。
二人、並んで……いかにも、恋人みたいに。
歩き出していく。
慌てて伸ばした手は、一足遅く、エー兄の制服の裾をつかむことに失敗した。
よろめきながら、それでも、追いかける。
「料理、今、勉強してるのっ! 絶対に、上手くなるから、だから……っ!」
走り出す。
「なんでも、言うこと、聞きます。髪だって、伸ばすよ、っ!? ねえ、エー兄ぃ、ねえ、ね……っ?」
エー兄の左手をつかむ。
離さない様に、爪が食い込むくらい、強く。
「すきなの、すき、大好き、愛してる、だから、ぅ、ぅあ……ひ、くぅ」
涙で濡れる頬はそのままに。俯いて、あたしは言った。
「ひ、っぅぁ……、お兄、ちゃん、有華と、一緒に……いて、よぉ……っ」
「有華」
「俺は、お前の、兄貴じゃないよ」
無理矢理、弾くみたいに、有華の手を吹き飛ばす。
俺は。
当然の台詞を、言っただけだ。
少しだけ、振り返る。
有華は、地面に座り込んだ姿勢だけれど。
俺の方向に、必死で。
届かない手を、まだ、伸ばしている。
Aは次回で終わらせる予定です。
エースケには誓いを破った代償を支払ってもらいます。
それはそうと、まだBにCまであるのにこのペースです、すいません。
もうちょっと付き合っていただけると助かります。
疾走キタ━━(゚∀゚)━━!!
いつもながらGJであります!最終回もwktkして待ってます!
…代償((( ;゚Д゚)))ガクブル
Cまでと言わずZぐらいまで書いてくれ
>>77 疾走キタ!!有華カワイソス・・・
エースケの払うことになる代償が何なのか非常に気になる。
次も期待して待ってますw
いたり先輩幸せENDがあったらいいな・・w
有華の完膚なき敗北がテラセツナス
「切なさ」ってのも、修羅場において結構重要なファクターなんだなぁ……
しみじみと痛感
続きが超楽しみ
さぁーて、エー兄はどっちに刺されるのかなっと・・・・
>>77 代償と報いにwktkしながら待ってます。
全裸で。
ここまで完璧に調教してみせたいたり先輩すごすぎ
師匠と呼ばせていただきます
エースケ君の女運の悪s…良さに嫉妬
>エースケには誓いを破った代償を払ってもらいます
なにげないひとことなのにとても怖いよ(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
疾走が失踪にならないようにな〜ぁ♪
GJ!!
それと阿修羅氏お疲れ様です。ありがとうございました。
>>82 よほど前から分岐させないと無理があるな…序盤から既にやばいほど壊れてた人だし
阿修羅氏お疲れ様です。なんだか本当にお疲れのようで不安ですが。
そろそろ山本くんが来る時期だな
いいえ、二条先輩の時間がもうすぐ来ます。
山本くんはその後です。
このスレのキモウトの最強は誰?
まとめサイト見てて気付いたんだけど、本命の作品を差し置いて外伝書いたりしてる神って結構多いね
浮気性の神々……修羅場SSの主人公を地でいってるとは!
「あっぐぅ……あああああ嗚呼!!!」
必死に叫び、もがく。まるで海から這い上がるように、光を求めてもがく。
バァン!!
「きゃあ!?」
「うっ…ぁ……く…」
次の瞬間、大きな破裂音が響き渡ったと同時に、意識が回復した。体も思い通りに動く。そして…
「葵…ぐぅ……」
視線の先には、葵が倒れていた。まだその周りには黒いオーラが漂っていて……
「ふふ、ふふふ……あっはははは!だめですよ!!晴也さん!抵抗しちゃあ!!」
そう叫ぶと、再び黒い風が襲いかかる。俺は慌てて振り向き、葵から逃げ出した。ドアを閉め、階段を下り、学校から出る。
「はぁっ……はぁっ…ぁ……」
もう後ろから追いかけて来る気配はなかったが、それでも全力で走り続けた。もうあれは昔の葵じゃない……なにかに憑かれたような、悪霊だ。
速度を落とさないまま走り、病院まで戻る。さすがに院内は走る訳にいかないので、いったん立ち止まり、後ろを振り返る。
「………」
そこにはもう、黒い影も、禍々しい声も残っていなかった。俺は息を整え、ひとまずセレナの病院へと戻った。
「はぁ……」
思った以上に、葵がああなってしまったことへの精神的ダメージが大きい。もう葵は死んでいるのに。俺はまだ未練が残っている。
ガチャ
そーっとドアを開けるとそこには……
「ひっく……うぅ…は、るぅ……うぇぇ……ん……」
「せ、セレナ?おい、どうした!?どこか痛いところでも……」
部屋の中では、ベットの上でセレナがうずくまって泣いていた。なにか具合悪いところがあったと思い、慌てて近寄ってみると……
「あ…はる、だ……ハル!ハルー!!」
とても安心したような顔で、いきなり抱き付いてきた。笑ってはいたけども、その瞳からはぼろぼろと涙が溢れていた。
「どうしたんだ?セレナ。どこか体の調子でも……」
「ひっく……う、うん……ち、ち、ちがうの……だって、起きたら、は、ハルが……ひっく…いなくって、ト、イレだと思って、少しまってみたんだけど……」
そうか…時計をみれば部屋を出てからもう三時間も経っていた。それだけ俺がいないだけで、こんなにも悲しむのか。
「どこ、にも、いっちゃ、やだ、よぉ……わたひと、一緒にいて?」
「セレナ…」
思わずセレナを抱き締める。幼児化していることを引いても、ここまでセレナを愛しいと思ったことはないだろう。
セレナは生きている。そして俺をここまで求めてくれている。そして……葵はもう死んでいる。『過去』の人なんだ。
「わたしが、すぐに寝ちゃったからいけなかったの?だから、怒ったの?だ、だったら謝る……いまからハルとセックスしてもいいから、だから…!」
「セレナ……違うんだ。」
健気にも服を脱ぎ始め、俺を引き止めようとするセレナを止める。ここまで俺を必要としてくれる人がいるんだ。
もう想い出と割り切っていいんじゃないか?いつまでもうじうじして目の前の少女を傷つける事はやめないか?
「セレナ、俺のこと好きか?」
「うん!好き……大好き!もう、これ以上の言葉じゃ伝えられないぐらい、好き……愛してるの……誰にも渡したくない!」
潤んだ瞳からは、真実だと言う事がわかる。……これでもう、気持ちは揺るがない。この一途な思いに、答えてやるべきだ。
「ありがとうな、セレナ……」
「ん…」
軽いキスをする。
「セレナ…また少しでかけてくるけど、すぐに帰って来る。今のキスは、その約束代わりだ。」
「え……うん、でも、ちゃんと帰ってきてね?絶対に、約束だよ?」
「ああ……行ってくるよ。」
服の裾をギュッと掴んでいるセレナの手を優しく握り、もう一度キスをしたあと、部屋を後にする。
そして向かう先は……さっきの屋上。そこですべてを終わらせるため、俺は走った。
・
・
・
・
・
・
・
ガチャ
外からの風による、重いドアを開ける。さっきと何一つ変わらない風景。そして……街を眺めている葵も変わらなかった。
葵への未練、それが俺の弱さ。それを断ち切った俺がすることはただ一つ……
「葵……」
彼女との本当の別れ。
「晴也さん……やっぱり優しいですね。私のところにもどってきてくれたんですもの。」
狂気に満ちた、嬉しそうな笑顔で振り向くと、また黒い風が襲ってくる。だが……
「もう無駄だよ、葵。」
「!?……どうして?晴也さんの中に……入れない?」
今度はこっちから、ゆっくりと葵に歩み寄る。黒い風が体を取り巻こうとも、もう苦しみはなかった。
「ここには……お前と一緒になるために来たんじゃない。……一つ、言うことがあったんだ。」
「いや……だめ!聞きたくない!やめて!晴也さん!!」
予測が着いたのか、耳をふさぐようにしてうずくまる葵。でも俺は、言葉を止めない。
「お前がこうやって霊になっちまったのは……俺がお前に言い残したことがあったからだ…。」
「嫌……イヤァァァ!」
更に周りの空気が黒くなる。でも、もう効かないよ、葵。
「でも、たとえ幽霊でも、葵がいるっていうことに妥協して、言えないでいた……でももう、これで終わりだ。いつまでもこのままじゃいられないからな。」
「ダメ、駄目!だめぇ!!!…それを聞いたら私……本当に消えちゃう……晴也さんの想いとの繋がりが…私を引き止めてくれてたのに!」
発狂したように喚き、泣き始める葵に背を向け、そこから立ち去るようにゆっくりと歩き出す。もう、今の葵を見ていることが辛かった。
「やだ…いかないで……いっちゃ、やだ、よ……私、消えたら独りぼっちになっちゃう……晴也さんがいない世界なんて、怖い…行きたくない…」
「葵……」
「わ、私!……そ、そうだ、あの女の体を乗っ取って……あの女の精神を殺して……そうすれば、また晴也さんと一緒になれます!体があの女のだっていうのが嫌だけど……
でも、そうすればちゃんと晴也さんを愛することができます……」
「葵。」
「ね?毎日一緒で……ご飯作ったり、お買い物したり、もちろん気持ちいいことだって、晴也さんの望むとおりにしてあげます……それから、それからぁ……」
「葵!!!」
「駄目……だから…見捨て、ない、で……」
「見捨てるんじゃない、これが、在るべき別れの形なんだ。」
後ろから葵が追ってくるのがわかる。でも、立ち止まらない、振り返らない。
「正直…お前とすごせた短い間……目茶苦茶楽しかったぜ。」
「……だったら!これからも…」
「……ほんと、楽しい思い出、ありがとな!……そんじゃ…」
「い、や……晴也、さ、ん……」
「さよならだ。」
「…晴…也…さ…」
周りの空気がだんだんと明るくなる。体にのしかかるような重みも消えた。振り向くと、そこには何もなく、ただゆっくりと朝日が昇り始めていた。
そして……
「さよなら。」
もう一度、誰にとなく呟き、その場を去った………
>>100 ・゚・(つД`)・゚・。
晴也の心の強さに感動した。
そしてセレナ派の俺はかなり嬉しい。
葵ちゃん・・・
葵・・・(;つД`)
それにしても、晴也もなかなかにいい男だぜ・・・
はっぴーえんどキタワァ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゚゚・*!!!!!
セレナすきーなので嬉しいっす(・∀・)人(・∀・)ナカーマ
ストーリー的には良い感じだけど多分にこのままじゃ
終わらない様な気もする。修羅場を期待するではなく
本当にこのままでは終わらない気がする・・・
主人公・・・
いい男だが勘が鈍いぜw
「学校のきゃあ」の落ちみたいな結末ならよかったのに・・・
108 :
105:2006/10/05(木) 01:35:26 ID:IsXGEH/B
でも個人的にはこのまま終わってほしいかな・・・
これも一つの幸せの形だし・・・
葵の無念はBルートで晴らしてもらおう。
そしてセレナおめでとう
葵ィィイィィィッ。・゚・(ノД`)・゚・。
二人とも幸せになられへんの?(´・ω・`)
葵ィィィィィァァアアア
やがて二人の間に娘が生まれるがある日、
「今度は捨てないでくださいね♪晴也さん」と・・・言って振り返った娘の顔は・・・
とかw
そうやって作者さんの展開の幅狭めるのはやめようや・・・
激しく同意
では投下致します
第15話『歪みのある場所へ』
「ち、違う。違うもん!!」
喉の奥から吐き出された声は震えていた。まっすぐに雪桜さんは俺に挑むような視線で見つめている。
あの屋上の時と同じようにただ大切な物を必死に縋り付こうとしていた。
悲鳴に満ちた叫びに近い声のおかげで周囲の人間たちは沈黙してゆく。
「な、な、なんでわかってくれないんですか? 私は桧山さんに喜んで欲しかったんです。
恨まれるよりは私のことを好きになって欲しかった。!
でも、私のお父さんのせいであなたの妹さんが亡くなったせいでそれはもう叶うことがない望み。
だったら、私は桧山さんに思う存分に恨んで復讐してあなたの心の隙間を埋めたいと思った。
どうして、私がそこまでするかまだわかってないんですか?」
猫言葉で妙なキャラ作りを辞めた雪桜さんが問い掛ける。
厳しい表情と猫耳姿が全くこの場面において合ってはいないと主張したかったが。今はそれどころではない。
マジで修羅場もんだ。これ。
「私は桧山さんの事が好きなんですっっっ!!」
空気が冷たく凍ってゆく。
今の状況をわかりやすく思い出してみよう。
雪桜さんは、今ではファンクラブが設立する程の人気を得ている人だ。
更にうちのクラス及び学年中がこの修羅場のギャラリ−として参加している。
その中で告白されたらどうなる?
「苛められている私を助けて、ずっと私のために励ましてくれたあなたが好き。
昼食が食べるお金を持っていなかった私にお弁当を作ってくれたよね。
それでいつも二人で半分個にして仲良く一緒に食べたよね。放課後はいろんな場所に連れていってくれました。
距離が近付くにつれて、私が桧山さんの事を好きになってゆくのは当然じゃないですかっ」
雪桜さんは涙の雫が零れ落ちてゆく。目は真っ赤になっており、身体は小刻みで震わせながら言い続けた。
「だから、私が今やっていることは他の男の子達の気を引くためにやっているんじゃないんです!! それだけはわかって欲しかったです」
「雪桜さん」
彼女の告白が周囲に沈黙していながらも、虎は俺に腕に必死にしがみついている。
雪桜さんに対抗心を燃やしているのかはわからないが、込める力は腕が痛くなりそうだった。
その反応を雪桜さんは感じ取ったのか、言いたいことだけ言うと後ろ向きをして逃げるように走っていた。
あの大人しい雪桜さんの精一杯の告白は彼女にとっては
穴に入りたいぐらいに恥ずかしくて顔からスカ−トの下から出てる足までゆでタコのように紅潮させていた。
更に大勢のギャラリーに囲まれているのだから。普通の人間なら逃げるしか他なかっただろう。
告白の返事をしていないが、この状況から逃げるために俺は問答無用に虎を連れ去って逃げた。
瑠依は文句はギャギャー言っていたが、気にすることではない。
とりあえず、今日一日は俺にとっては人生で一番長い一日になったよ。
あれから。
告白してから雪桜さんが学校には来ることがなかった。
彼女の担任に聞けば、少し体調を崩したのでしばらく休みますという連絡が来ただけ。
それは嘘だと思うが、雪桜さんは俺に会うことを拒絶している。会えば、あの告白の返事をしなくちゃいけない。
返事を聞きたくないから雪桜さんは家にひきこもっているしかないのだ。
そして、今日は終業式を迎える。
明日からは楽しみにしていた夏休みである。だが、俺は喜んで夏休みを迎えることができない。
だって、そうだろ。夢想していた夏休みは雪桜さんとたくさんの思い出を作るということはもうできないのだ。
彼女と離れ離れに生きると決心があの告白と猫耳姿を思い出すだけで揺らいでしまう。
もう一度だけ。話をしなくちゃ。
虎と他のギャラリーがいない場所で存分に話し合いたい。
こんな歪んでいる世界をさっさと矯正しなくては。
ということで。
俺は雪桜さんの住所を彼女の担任に教えてもらい、預かった通知簿を手に足を運ばせていた。
彼女の家は俺の家の近くにある駅から少し離れた場所にあるマンションに住んでいる。
今までは雪桜さんの家の事情は教えてもらうことはなかった。
単純に誰だって話したくない彼女の家の事情はあるだろう。
それはどこの家だってそうさ。
初めて訪れたマンションのオートロックを解除するためには雪桜さんの家の部屋の番号を押して呼び出さなくちゃいけない。
冷静に部屋の番号を押してから、しばらくすると女性の声が聞こえた。
「はーい? もしもし?」
「俺です。桧山剛です」
「あぅあぅあぅ。桧山さんっっ!? ち、ちょっちょっと待ってください。とりあえず、深呼吸しますから」
相変わらずの慌ててぶりにいつもの雪桜さんであることを確認すると俺は安堵していた。
「どうして、桧山さんがわ、わ、わたしの家に。うわわっっ」
「雪桜さんの担任から通知簿を預かってきたから渡しに来たんだが」
「そ、そうなんですか。ちょっと待ってくださいね」
カチン。
と、マンションのオートロックの解除の音が鳴った。俺はドアを開けて、雪桜さんの家である番号部屋へと向かった。
505号室。
そのドアの前に立つと少し緊張している指を震わせながら、俺はインタ−ホンを押す。
それと同時にドアが素早く開かれて家の持ち主が出てきた。
「桧山さん」
約数日ぶりに再会した雪桜さんはどこか生気のない死人のような真っ青になっていた。どこかやつれているように思えた。
「どうぞ。桧山さん。家の中へ」
雪桜さんを誘いを受けて家へとお邪魔することになった。
お恥ずかしながら、俺は女の子の家に上がることなんて、今まで生きていて初めてのことである。
虎の家は当然除外していますが。
「お邪魔します」
と、挨拶してから雪桜さんの敷地へと侵入してゆく。
雪桜さんの部屋に案内してもらい、俺は借りてきた子猫のように体を小さく蹲るように震えていた。
だって、そうだろう。あの雪桜さんの部屋ってことはファンクラブの連中にとっては
ここが古代種が長年求めてきた『約束の地』に等しい場所なのだ。
どこぞの大企業の社長ですらも、ネオ・ミッドガルシティの提案することだろう。
周囲を見渡すと猫・猫・猫・猫・猫猫グッズに埋もれていた。
いかにも女の子らしい部屋なのだが、雪桜さん猫ちょっと多すぎませんか?
そんな本人はお茶を入れてきますと席を立ったまま戻ってくる気配はない。
すでに30分ぐらいが経過されている。だが、俺的には待たされたとは思っていない。
心の中のどこか満足しているのはこの癒し空間のおかげで荒んだ心がすっきりと癒されてゆく。
「すみません。お茶を入れるのに手間がかかちゃいました」
突如、何事もなく閉じていたドアが開かれて、雪桜さんが戻ってきた。
が、俺はその姿に驚愕した。あの学校で大多数の男の心を奪っていた猫耳セットを身に付けているのだ。
「はいどうぞにゃー」
「あ、ありがとう」
猫言葉で話す雪桜さんに圧されながらも、俺はカバンの中にある預かった通知簿を取り出した。
「これ預かった通知簿」
「あっ。ありがとうございます。桧山さん」
大切そうに胸の位置に通知簿を抱きしめると雪桜さんは慌てて恥ずかしそうに頬を赤面させてから言った。
「この中身見てませんよね?」
「み、み、見てないよ。絶対に見てないし。うんうん。大丈夫」
「それなら良かったですぅ」
これにて表向きの用事は終了した。ここからは数日前の告白の返事をここでちゃんとはっきりさせておく必要がある。
俺は雪桜さんの瞳を真剣な眼差しで見つめて言った。
「あのさ。この前の告白のことなんだけどさ」
「はい」
「俺は雪桜さんとは付き合うことはできないよ。好きだって言ってくれることは嬉しいけど。
やっぱり、まだいろんなとこで感情が納得することができないんだよ」
「そうですか」
「仕方ないことはわかってる。雪桜さんをどこかで憎む気持ちが残っている以上。
俺は前みたいに仲良く友達みたいな関係でいることは難しいと思う。雪桜さんも負い目に感じるだろ?」
「そんなことは関係ありません。数日前に言ったように桧山さんは
苛めグループの方と同じように私に憎しみをぶつけてください。それで癒されるなら」
「違うんだ。雪桜さん」
「何が違うんですか?」
「俺は苛めグループの奴らなんかにはなりたくない。それにそんなことをしても、彩乃はもう帰ってこないんだよ。
もう、笑うことも悲しむことができなくなったあの子が自分のために
誰かを傷つけるなんて真似を絶対に許さない。それは俺にとっての本当の不幸なんだ」
そう。
被害者の事を思って、加害者に復讐しようとしても。
結局は被害者のためではなくて、被害者のせいにして、自分の暴力を正当化しているだけに過ぎない。
人を殺しても、生まれるのは罪だけだ。
だから、雪桜さんの申し出を受けることは決してありえない。
ゆえに俺と雪桜さんの関係はもう修復することもできずに復縁することもないだろう。
お互いが間接的に関わることがなければ、それが二人にとっての幸せなのだ。
「嫌です」
「雪桜さん?」
「桧山さんは私だけのものです」
声を問い掛けるまでもなく雪桜さんが立ち上がり素早い動作で彼女は腰を回転させた。
俺はそれが何を意味するのが全く理解できずに頭に鈍い衝撃が襲った。
ああ。
理解できないのは雪桜さんが襲った事実に俺が現実逃避しているせいだ。ちゃんと、見ていたんだよ。
雪桜さんが身に付けている猫の尻尾が俺を襲うところをな。
そんなモノに襲われて、俺の意識はそこで途切れた。
ついに雪桜さんやっちゃいました・・
告白した女の子が気持ちを受け入れなかった場合の顛末は・・
まあ、このスレのお約束で言うとBADEDに直行ですね・・ww
次回をお楽しみに
ねこ尻尾アタックテラワロスwww
色んな意味で凄ぇ威力だwww
アイアンテール噴いた
凶器だったのか
やはり相手の家に出向いて別れ話ってのは危険だな
誠実っぽいヤツが陥りやすい罠だ!気をつけろ!
お茶に何かあると思ったんがまさかそうくるとはw
iイ彡 _=三三三f ヽ
!イ 彡彡´_ -_=={ 二三三ニニニニヽ
fイ 彡彡ィ 彡イ/ ィ_‐- 、  ̄ ̄ ヽ し ま
f彡イ彡彡ィ/ f _ ̄ ヾユ fヱ‐ォ て る
f/ミヽ======<|-'いシ lr=〈fラ/ !フ い で
イイレ、´彡f ヽ 二 _rソ 弋_ { .リ な 成
fノ /) 彡! ィ ノ ̄l .い 長
トヾ__ら 'イf u /_ヽ,,テtt,仏 ! :
|l|ヽ ー '/ rfイf〃イ川トリ / .:
r!lト、{'ー‐ ヽ ´ ヾミ、 / :
/ \ゞ ヽ ヽ ヽ /
./ \ \ ヽ /
/〈 \ ノ
-‐ ´ ヽ ヽ \\ \ 人
トライデント氏が書くSSは他の作家さんとは違って
いきなり、誰も予想しないとこから襲撃するからな
猫の尻尾って・・
恐るべし
雪桜さんの家庭はオートロックのマンションなんかやめて
アパートに引っ越せば飯が食えるんじゃないかと思ったw
雪桜さん大好き
ねこ尻尾ワロスw雪桜さん最高だ(*´Д`)ハァハァ
一見誠実なやつが監禁されたり全然誠実でないやつがやっぱり監禁されたり
でも誠実なやつが修羅場の甘い汁だけ吸って修羅場をうまく収めたり
何が彼らの運命を変えるのでしょうか
|ω・`) 雪桜さんはあの更衣室のキスの頃からいい感じの積極性を持っていたが
ここに来てそうきたか・・・猫の意味がやっと分かった(*´д`*)
虎はどうなったの?
ついに泥棒猫の看板を降ろしたのか
雪桜さんが絶好調の最中だから
きっと、虎の反撃は来るよw
猫耳の次が楽しみだ
投下させていただきます
もう19スレか。ちょっと目を離すと更新に追いつかねえ。
溜まった新作を読むのが楽しみだ。
女性に囲まれるなんてシチュエーション。それは男性にとってはひとつの理想、永遠の夢とか
いっちゃっても過言ではないものではないだろうか?
元抱かれたい男No1も歌っていた。 『ハーレムを 作りたいって そういや昔 思ってたかな』
これが漫画とかなら俺がどれほど劣等な人間であろうと女のこの方から良い所を無理無理探
しては近寄ってきてくれるだろう。きっとパンツをカメラに収める事にやっきになるような下衆タ
レでも慕ってくれたはずである
「…かる?あの子ね、すっごい傷ついて…」
しかしながら我々が暮らす現実世界でそのようなイベントに遭遇できる可能性はゼロと言って
過言無い。鼻でもかむ感覚でゼロが6個以上並ぶボトルを入れられるような立場にでもなるか
あるいはヒロイン30人くらい出るような漫画でもアニメ化させなければまず無理だ
「…いたい、あんたがあの子に口利いてもらうってだけでも…」
ところで、今俺がおかれているこの状況を見てくれ。こいつをどう思う?
昨日と同じ校舎裏、昨日と同じ放課後、今度は複数名の女性に囲まれていた
まさか二日続けてこんなイベントに遭遇できるとは思わなかった。美人に告白されたと思った
次の日には女性たちに囲まれる。まぁ普通に考えれば前述どおり夢のようなシチュエーション
かもしれん。しかしそれは好意が自分自身に向けられている場合にのみ天国となりえるので
ある。例えそれが自分の懐へのみ向けられたものであったとしても、だ
「…もかかわらず、…ったですって…?…れないわよ」
しかるにこの状況はどうだろう?張り詰めた空気、一切の反論を許さぬ言外の威圧。向けられ
るのは好意の眼差しではなく侮蔑や怒りを内包した、射殺すがごとき無数の視線。逃がさぬよ
うがっちり固められた包囲網。そして、壁際に追い詰められ正座させられてる俺
「聴いてんのっ?」
「はいっ、スイマセンッ!」
先ほどからまくし立てていた女が金切声を上げる。作画崩れしたかのごとく歪みまくったその
表情。あんまりな剣幕に思わず土下座しそうになった。そんな卑屈な態度に女は益々顔を強
張らせ忌々しそうに鼻を鳴らす。ちらりと覗く侮蔑の色は濃度を増すばかり
これがね、浮気の果てに関係持った相手全員が一堂に会した場面ってならまだ華もあったろ
うし 趣旨にも合ってたんだろうケド、あいにくただ単に呼び出し食らって吊るし上げ食らって
るだけなんだよね
何故こんな目にあってるのか。理由は言うまでもあるまい
先述のとおり、俺はこの校舎裏の一角である女性に告白された。そらもうすっげえ美女で普
通なら喜ぶところなんですけどね、あまりに出来すぎた話に俺は何かの悪戯じゃないかとか
んぐった挙句逃げ出してしまったわけですよ。だってそうでしょう?クラス一の美少女が実は
俺の事をずっと好きでしたなんてエロゲーでもなけりゃありえないシチュエーションですよ、そ
んなの。
改めて自分のことを見直してみる。名前は高畠幸彦(たかはた ゆきひこ)そんな珍しい名前
ではないな、普段使わないほうの「畠」ってだけで。身長は女子の一番背が高い子よりは高い
けど目立つほど高いというわけでもない。人ごみでせいぜいひたいが露出する程度。体重は
…デブではないはずだ、これも健康には気を使ってるし、筋肉もある。…まぁ見せるほどの筋
肉じゃあないけど。大学にはいきたいので運動も勉強もそこそこにはこなしている。赤点は取っ
た事ないな、80点より上もとったことないケド。部活も委員会も入ってはいるが内申目当て。美
術部員と図書委員で幽霊ではないが特に目立つ成果を出すでもない空気。顔はだってそうだ
卑下するほどではないと思うが絶望するほどひどくないという程度。顔で人を惹きつけることは
ないだろう。これで前髪で目を隠していればギャルゲーの主人公としては及第点なんだろうな
現実じゃあただの面白みのない男だが
あとは…、そうだな、オタクと言うことだ。学生なんで金がかかることは出来ないが、毎週やる
アニメは欠かさず録るし、美少女もロボも特撮も好き。
なんだろう、要するにオタクという以外に取り立てて語る所もないのだ。語る所がないなら当然
世の中は俺をオタクと認識するわけで。馬鹿にされる事はないにせよ世の中はそういう目で見
てくる。『メイドカフェってどんなとこ?』とか聴かれたり。まあとにかく、基本スペックが違い
すぎる
金もないしコネも無い、部活や委員会が同じわけでもないし、運動勉強で目覚しい活躍をした
とか、暴漢から救ったとかそんなイベントも無い。出会ったのは高校はいってからだし前にあっ
た事を忘れてるとか言うのもないはず。完全にこれまで接点がなかった、と、証明する事はで
きないけど
つまり、どこでフラグが立ったんだか一向にわからないのだ
結局、昨日はそんなことばかり考えるうちいつの間にか眠ってしまっていたらしく、気が付け
ば窓からは光が差し込み、暴れだす目覚まし時計が新しい朝の到来を告げていたという塩梅
朝食を摂りにリビングに出ると、すでに家族は全員出かけていった後。テーブルにはトースト
や卵焼きの定番メニュー。朝からそんなにがっつく気にもなれなかった俺はトーストとコーヒー
だけで軽めに済まし、影と眠気とそしていつも以上に重い足を引きずり学校へと向かったので
あった
正直気が重かった。毎朝俺に一日の活力を与え続けてくれていたお天気お姉さん杉下綾乃
21歳(二年前見たプロフィールでは確か23歳だった)の笑顔もこの俺の心を癒してちゃあく
れなかった
片道15分を満員電車に揺られ、ようやっと学園のある街までたどり着く。この時間はサラリー
マンなんかの姿は無くそのほとんどが学生だ。道を行く学生たちはブレザーにセーラー、な
かにはゲームに出てくるようなひらひらしたドレスみたいな制服を着ている者と格好はさまざ
ま。しかし彼らは皆俺と同じ学校に通う生徒たちだ。
ウチの学校の制服はかなり変わっている。生徒にはあらかじめ上下あわせ数タイプの制服と
リボンやスカーフ、ネクタイなどの装飾品が支給される。それらすべてが制服で、その中でな
らどのような着こなしをしてきてもかまわない、という妙なシステムになってる。(装飾品の類
は支給品以外を着けてきてもいいことになっているらしい、一応)
数年前、制服廃止を訴える生徒会と、あくまで制服を着せる事を望んだ教師陣との間で諍い
があり長い討論の末たどり着いた折衷案がこの「自由選択制」とかいう妙なシステムだったら
しい。基本的なセーラーやブレザー、前述のドレスタイプのようなのから中には上下ごっちゃ
の奴と様々。少し馬鹿らしくも感じられるがこれが意外と好評らしく、今でも制服目当ての受験
生やカメラ小僧が後を絶たないとか
そんな一貫性の無い集団の中、俺は一人の少女の姿を探していた
胸にリボン、ふくらんだ肩口、袖やスカートの端にフリルの付いた純白の、数ある制服の中で
ももっとも着る人間を選ぶとされるドレスタイプの制服を完全に着こなし、腰にまで届く、カラ
スの塗れ羽色の髪、それにも負けぬ、黒い水晶を思わせる澄んだ美しい瞳。優しげな笑みを
浮かべる赤い唇。それらと美しい対比をなす、透けるような白い肌。そして、均整の取れ、服
の上からでも判るしなやかな体のラインが妙に扇情的な、数キロ先からでも見間違える事は
ないとされる学年一、いや学園一の美女
集団の中にその姿が無い事を祈りつつ視線をめぐらす。見つからない事を祈って探す、なん
とも矛盾した事だ。結局は教室で必ず顔を合わせるというのに。そのことを思い出すとただで
さえ言う事を聞かなかった足がさらに重く感じられた
「天美凛子さん」
「はい」
けだるげな朝の教室、白髪の目立ち始めてきた老教師は、いまだ夢うつつをさまよっている
生徒たちを尻目にもくもくと生徒名簿を読み上げる
「江原正子さん」
「はい」
何度と無く繰り返された風景。だがその中に昨日までは確かに無かったはずの違和感を感
じ取っていた。それは、俺のほうへと向けられる、射竦めるような女子の視線。そしてそれら
とは違う、ある一点を興味深そうに見る男子の視線。俺はそれらを無視し、窓際後ろから三
番目の席へと意識を向ける
「尾上彩加さん」
「はい」
すし詰め状態の教室で、一つだけぽっかりと明いた空白
「神城由香里さん」
「はい」
無駄に出席率の高い我がクラス。ここ数週間一人の欠席者も出していない、その事実がよ
り一層その空白を目立たせていた
「木崎志乃さん」
「はい」
いつもならば、そこには一人の少女が座っていたはずだった
「京本正子さん」
「はい」
陳腐な表現ですまないが、いわゆる品行方正才色兼備、まさにまさしく絵に描いたような
(実際このレベルの女性は漫画以外で見たことない)美女
「倉澤綾さん」
返事は無い
皆の視線がひとつに集中する。教室の窓際後から三番目の席
本来あるべきの姿は、そこには無い
「くらさわー、くらさわあやさーん。いないんですかー?」
くらさわあや。それが彼女の名前。俺を想い続けてきたと、そう告白した少女の名前
「倉澤さんは欠席と。珍しいね。じゃ次、小菅由香」
「はい」
何事も無かったように点呼が再会される。それでも多くの生徒の視線はそこに固定されたまま
「榊原郁恵さん」
「はい」
顔を合わせなくてすんだ、などと安堵するような余裕は無かった。俺に向けられた、無数
の視線があったからだ。その視線が何の為のものであるか、その裏にどんな感情が潜ん
でいるか、わからない俺じゃない。授業が終わるたび俺は即効で教室を抜け、授業開始
ぎりぎりまで逃げ回っていた。理由は簡単、あの視線から逃れるためだ。あのまま教室に
居たら、どんな目に合わされるかわからない仮に今逃げられたって、いつまでもそんな事
を続けられるわきゃ無いと、わかってはいたのだが
「…まだ三分ほど残っているが、切りがいいのでここまでにしておこう
ただし、チャイムが鳴るまで席は離れるなよ」
物分りがいいと評判の数学教師は、それだけ言ってさっさと教室を出て行った。あれよあ
れよという間に最後の授業が終わった。何をやったかなんて当然覚えていない。
俺は教師の忠告を無視し、チャイムが鳴る前から教室を抜け出した。全速力で廊下を駆け
る。あとわずかとはいえまだ授業中、幸い誰にも遭遇することなく下駄箱までたどり着く事
ができた。乱暴に上靴を脱ぎ捨てると、踏んづけたかかとを直す事もせずに駆け出した。と
にかくただ、ここから逃げる事を考えて。
あまかった。踏み出した足はしかし前へ進む事はない。振り向いた先には女子の集団
猫を捕まえるように、俺は制服の襟をつかまれていた。
そして、今に至る。
正直な所、おれ自身昨日の対応は無かったと思っている。今更言ってもいいわけだが
…しかし、こうして呼び出されているという事は、昨日のあれは本当の本気の告白だったの
だろうか?
「…っだから、あんた人の話し聴いてるのっ!!?」
「はいっ、聴いてます聴いてますっ」
聴いてるわきゃない。そりゃ最初のうちはまじめに聞いてもいましたが説教というのは時間に
反比例して相手への効果が薄れていく者なのです。加えてこの女の話す内容はどれも自分
勝手で押し付けがましく、そして、同じ内容の繰り返しだ、ウンザリする。おまけに独特の金切
声は非常に耳障りだ、ゲンナリする。更には周りでわざとらしくうんうんうなずく女子、ソーダ
ソーダと適当な相槌を入れる女子。たまに聞こえる「ひっどーい」とか「しんじらんなーい」とか
いう野次が神経を逆なでする。これでまじめに聞けってのが無理ってもんだ。すでに精神は
逆ギレ寸前。しかしいまだ噴火しないのは耐えているのではなく反撃が怖いから
いやそれ以前に、当事者である彼女抜きでこんな話をしたって意味ないんじゃないか?
「少しは人に気持ちも考えたらどうなの!?大体あんたは…」
人の気持ちを考える
正論に聞こえるそれはしかしとてつもない矛盾を内包している。その言葉を言う資格があるの
は人の気持ちを考えられる人間だけだ。そしてそんな人間は、まずそんな言葉を使わない。言
われる側の心情を推し量る事ができるから
きっと彼女たちは自分が正義の味方か、まぁそうまでいかなくてもドラマの主要人物に位には
なったつもりでいるのだろう。彼女たちに昨日のことがどう伝わっているのはわからないが、立
場的にはひどい目に合わされた友人のために原因となった男に毅然と立ち向かってるわけだし
しかしそこまでだ。きっと彼女たちは深入りするつもりは無いのだろう。友人知人の色恋沙汰に
必要以上に盛り上がる女子。結局どう転んだとしても自分たちに害が来ないことを知っている
から、だから気軽に騒げる。この行為だって、おそらく当人である所の彼女は知らないのではな
いか?話を聴く限りでは、昨日の事の顛末を人づてに聞いたこいつらが、要らぬ正義感を振り
かざして一方的に騒ぎ立てているだけらしい。
そうだよな、彼女が振られた腹いせに一度は好きといった男を吊るし上げてくれなどと頼むよう
な人間だとは思えない
「あんた、悪いと思ってるの!?」
確かに悪かったとは思っている。しかしそれは俺のあまりな対応に、であってふったという事に
対して、ではない。第一、何故お前にそれを言われなければならない。いつの間にか、論点は
俺の態度の問題から、(こいつらいわく)俺ごときが彼女をふった事に対する批判と也、そして
最終的には単なる俺への批判となっていた。
いい加減
限界だった
「…じゃあ、今から付き合えばいい、とでも言うんですか?」
ポロリ零れ落ちる、本音。いい加減頭にきていたらしい、だからこんな発言が出た
「自分を好いてくれる事必ず付き合わなきゃいけないわけかよ!?好きの度合いが強ければ強い
ほど拒否しちゃいけないってのか!?だったらストーカーとは必ず付き合わなきゃいけない、って
ことかよっ!?」
言って気づく、これは明らかな失言だ。まるで彼女がストーカーだとでも言うような台詞。例えいか
なる状況でも、少なくとも自分を好いてくれる女性を対象にして使っていい表現ではない
…より一層険しさを増した視線が、その証明
言葉にこそしないが、彼女たちの怒りは臨界に達した、そう見ていいだろう。その怒りが正当な者
かどうかは別として。…これが男だったらこのまま集団リンチされそうな場面だが、じゃあ女だった
らどうなのだろう?最近じゃあ複数の女生徒がリンチまがいの行為をする場面をドラマなんかでも
良く見る。…いずれ、無傷ではすむまい。咄嗟に身をこわばらせる。だが、それは杞憂に終わった
「…その辺にしといたら?」
その声は、まさに救いの声。先ほどまで向けられていた無数の視線も削がれ、彼女たちは一様に
して声の主へと顔を向けていた。釣られるように、俺もそちらへと頭を動かす
そこにあったのはひとつの影。スタンダードなセーラー服姿、栗色のボブカットの髪、そして円眼鏡
の奥から覗く、威圧的なとび色の視線
一人の少女が、夕焼けを背に立っていた。
以上です
一週間以上間が空き、もう誰もおぼえてネェだろうなと思いつつ投下
ナンバリング間違ったり散々ですが
前回は温かいお言葉有難うございました。おかげでずいぶん励みになりました
保管庫管理人様、保管と素敵なタイトル有難うございます
しかし、こんだけやっていまだヒロインにまともな出番がありません。どうしたもんでしょう
>一週間以上間が空き
全く問題無いです 一週間どころか二ヶ月三ヶ月だって待てますから
>ヒロインに出番が
コレも問題ない 最終的に極上の修羅場を提供していただければ
そこに到るまでの道のりも大切な要素
期待してますぞ
>>139 GJ!
冒頭だけ呼んでたら一体、何人ヒロインがいるのかと思ってしまった。
GJ!GJ!
GJですっ!!
wktkしながら続きをお待ちしてますっ!!
10分以内にレス無かったら山本君は俺のモノ
10分以内にレスがなかったら白は俺の肉奴隷
阻止
投下しますよ
先鋭、ドアを開いて最初にその言葉が浮かんできた。こちらに突き出されたものは白い
杭だが、かなり高い部類に入る僕の身長よりも長いそれは、もはやそんな表現を通過して
槍のように思えてくる。2メートル超過のそれはナナミが腕に装備した大型の杭撃ち機へ
と繋がっていて、後は引き金を引くのを待つだけの状態になっていた。時間にしてコンマ
数秒、距離は数センチ、力はプルタブを引く程も要らないだろう。その程度の作業、無骨
な装甲に覆われた機械の内側で軽く指を動かすだけで、悪意の白杭は飛んでくる。
「何のつもり?」
最初に口を開いたのは、サラさんだった。死ぬことがないという余裕なのか、向けられ
た先端に対して笑みを向けている。面白そうに目を弓にして杭の表面を撫で、続けて軽く
叩いた。どんな仕組みなのかそれだけで金属製である筈の杭にヒビが入り、数秒もしない
内に灰のように砕け落ちた。霧散した破片は空中を漂い、幾らもしない内に空中へと溶け
消えていく。目の前で起きたことなのに、一瞬現実を疑ってしまった。
サラさんは笑みのまま視線をナナミに向け、
「お誕生日会と聞いていたけど、クラッカーじゃなかったみたいね?」
大したことはなかった、とでも言うように軽く言い放った。
「それで、こんな物騒なものを持ち出してどうしたのかしら、可愛いメイドさん?」
「元より通用するとは思っておりませんでした。しかし、意味はございます」
ナナミは今や只の機械の塊となった、杭のない杭撃ち機をサラさんに突き付け、
「これは敵意の表現です。不良品である私には感情はございませんが、表現の方法は無数
に存じております。私は青様に恩義ある身、その恩に報いる為に、害する疑いのあるもの
にはことごとく敵対することの現れだと覚えておいて下さいませ。疑わしきから罰する、
この卑言をゆめゆめお忘れ無きよう御願い申し上げます」
感情の無さ故の無表情、抑揚のない声で言ったにも関わらず、言葉の奥の棘が見える。
僕が他人を連れてくる度に聞かされている言葉なので個人的には慣れたものの筈なのだが、
口を挟むことが出来なくなっていた。それはやはり武器までをも持ち出したナナミの行動
が原因なのだろう。強い警戒が、場の空気を重くしている。
数秒。
誰も喋らない妙な雰囲気が嫌だったのだろう、今まで黙っていたリサちゃんがサラさん
の顔を見上げながらスカートを揺らし、
「おにーさんに悪いことしたら、メッ、だよ?」
子供らしい無邪気さで要約したナナミの言葉を言うと、それだけで緊張が解けた。サラ
さんは笑みを穏やかなものに変えて、柔らかな金髪を軽く撫でる。擽ったそうにしている
リサちゃんをいじりながら僕とナナミを交互に見て、
「そうね、約束するわ。ブルーに危害は加えない」
リサちゃんも怖いしね、と、おどけた声で言うとリサちゃんは小さく笑い声を漏らした。
それで幾らか、警戒も解けたのだろう。ナナミは目を伏せるときっちり一歩分後退し、
「失礼を致しました」
スカートを両手の指で摘み持ち上げ、深く礼をする。
「改めて歓迎致します。ようこそ、青様の御誕生会においで下さいました。どうぞ心ゆく
まで、ごゆるりとお楽しみ下さいませ」
音もたてずにスカートと髪を翻し、台所へと歩を進めていった。
「良い娘ね、リサちゃんも……ナナミちゃんも」
「僕もそう思う」
リビングに入ってテーブルを見てみると、既に幾つかの料理が乗っていた。僕が帰って
くる頃合いをきちんと分かっていたのは、野菜類が水々しいのを見ればよく分かる。その
辺りの理由としてはナナミの優秀さというのもあるけれと、やはり長年の付き合いという
ものが一番だろう。だからこそ現に今、こうして二人で暮らしていけているのだし、先程
のサラさんに対する態度も怒る気にはなれないのだ。
「おにーさん、座ろ座ろ」
言われて席に着く。
「それじゃ、おにーさん、お誕生日おめでとうございます」
「おめでとう、ブルー」
「おめでとうございます」
リサちゃんやサラさんに続いて、ケーキを持ってきたナナミも声をかけてくる。ケーキ
をテーブルに置いて蝋燭に火を点けると、いよいよそれらしい雰囲気になってきた。大量
の炎が少し異様に見えるが、初見の二人もそれ程気にしてはいないらしい。
「十進法で色分けなんて、よく考えたわね」
「うん、50才辺りから蝋燭の本数が多くてエラいことになってね」
その当時友達が持ってきてくれた砂糖菓子で作った僕の人形を中心に置いていたのだが、
どこからどう見ても火責めにあっているようにしか見えなかった。別の例え話をするなら、
ノルマンディーの丘に一人で立っている哀れな兵士。どちらの例えにしても、ろくなもの
ではない。しかも予想以上に熱量があったらしく、表面が溶けてケロイド状態になった人
のように見えてきた。更には僕に追い討ちをかけるように、僕の分のケーキにその人形が
載せられ、自分の悲惨な姿をした人形を食べることになったのだ。それ以来ケーキの蝋燭
の数はシンプルに分かりやすく、デコレーションも比較的華美でないものになっている。
軽くトラウマになっていることを思い出しながらサラダに手を付けた、気分的に今だけ
は肉を食べたくない。すぐに直るものだが、僕個人にとっては切実な問題だ。
「あれ? おにーさんはお肉を食べないの?」
頬一杯にフライドチキンを詰め込んだリサちゃんが不思議そうな目で尋ねてくる。口に
ものを入れたまま話すのは感心出来ないが今日は無礼講でいこうと思うし、顔の下半分を
膨らませてこちらを見ている姿はリスなどの愛くるしい小動物を連想させられて、注意を
する気がなくなった。その代わりに僕は笑みを浮かべるとリサちゃんの髪を撫で、
「百寛デブにならないように気を付けているんだよ、リサちゃんも肉達磨よりスリムな僕
の方が良いだろ? でもリサちゃんはたくさん食べて良いんだよ」
リサちゃんは少し考えるように小首を傾げ、口に含んでいた鶏肉を飲み込むと笑みを浮かべて、
「うん!!」
元気に返事をする。
「おデブはメッ!!」
「そう、おデブはメッ!!」
サラさんがポークジンジャーサラダの豚肉だけを器に戻したのが見えたのだが、彼女の
名誉の為にも言わないでおいた方が良いのだろう。いくら不死身で化け物扱いされていて
もやはり女性、カロリーなどは気にしてしまうらしい。武器を向けられていても余裕の色
を崩さなかった世界一の大罪人がこうするとは思わなかった、と言うか思いたくなかった。
「まぁ確かに、肌とか体型に気を付けてるみたいだしなぁ」
「どうしたの、ブルー?」
「何でもありません」
不意に向けられた笑顔が怖い、思わず敬語になってしまった。
「これで最後になります……サラ様、何故吐息をして私の体を眺めているのですか?」
「機械は良いわね……太らなくて」
「お誉め頂き恐縮です」
ナナミがローストビーフをテーブルに置き、僕の後ろに立った。これでやっと、面子が
しっかり揃ったことになる。人数は多くないけれど、僕とナナミと、それから皆の誕生会。
「青様、こちらをどうぞ」
「二人で選んだんだよ」
ナナミとリサちゃんから手渡されたのは、僕が以前テレビを見ていたときに欲しいと思
った青色のタスペトリだ。海色の生地に同色の極細糸で、目を凝らさないと分からない程
に薄く宿り木に停まる極楽鳥が刺繍がしてある。
「わたしからは、これね。世界に一つしか無いし、とても便利よ」
サラさんは指輪を引き抜くと、僕に手渡してきた。装飾品かと思ったが、青色の水晶の
下に確率システムの演算回路が見える。立方体フラクタル回路よりも遥かに性能が良いと
言われている、正四面体フラクタル回路だ。彼女にしか製作できないということもあり、
伝説の逸品とまで言われているこれを何故僕に渡したのだろうか。どのような想いで、僕
にこれを寄越してきたのだろうか。
しかし疑問を口に出さず、僕は笑みを皆に向けた。
「ありがとう」
楽しく時が過ぎてゆく。
今回は二本立てでございます
青海の家で一晩を明かし、今は自分の家に帰る途中。昨晩の余韻を大切にしかったから
なのか、青海の申し出により二人きりで歩いていた。僕と青海の家の距離は約6km、そう
長くもないが決して短くもない。朝の空気を楽しみながら、そんな距離を歩いていた。
「しかし本当にアレは引いた、等身大リアル僕人形はやりすぎじゃない?」
「そうだな、こうして本人もこうして隣に居るし破棄を……出来ない! 愛着もあるし、
何より人形とはいえ虎徹君が酷い目に逢うのなど出来はしないさ!! あぁ、わたしはどう
すれば良いんだ!!!!」
黙ってあの妙なグッズ郡をまとめて捨ててしまえば良いと思う。
「それにしても朝からテンション高いね」
「当然だろう!」
青海は強い笑みをこちらに向け、
「虎徹君と念願の一泊をして、昨日の夜から鼓動は全開。股の痛みも何のそのだ!!」
「待て、大声で妙なことを言うな」
これ以上の発言は色々と不味い気がする。何せ青海の場合直球で喋るのが基本、更には
異常なまでに昂っているので、どんなことを言い出すのか分からない。普段の言葉は直球
なりにも照れや自制心というものが混じっているが、それが見事に取り払われてしまった
今、その先に展開するであろう地獄を想像するのは簡単だ。僕はこの街が大好きなので、
ここを離れて暮らすようなことはしたくない。だから青海の口から絶え間なく垂れ流され
ている歓喜の声を止めようと口を塞ぐが、すぐに振り解かれた。なんという力なのだろう、
恐ろしい、これが愛の力というものなのだろうか。これならば確かに大抵の問題は片付け
ることが出来る筈だ、映画や漫画などでよく見られる不自然なパワーアップもあながち嘘
ではないらしい。
そのまま青海は軽いステップで数歩前に進むと、海でしていたときのようにスカートと
髪を風に遊ばせながらこちらに振り向いた。一瞬遅れて降下し、慣性のままに長い黒髪が
頬を覆う。それを掻き上げる仕草はやけに女らしいのにどこか幼くて、不思議な気持ちが
沸き上がってきた。
しかし、
「ご近所の皆様!! わたしこと織濱・青海と!! その恋人の守崎・虎徹君は!! 初体験を
昨日の昼にめでたく行い!! 更には二人仲良く朝帰りしています!!」
「言うなァ!!」
幻想とは儚いもの、今身をもってその事実を体験した。しかし青海は青海なのであまり
気にしない、本人なのでこれから幾らでも見る機会はあるだろう。余韻に浸らず、今存在
する青海を見ていれば良い。と格好をつけて表現すれば幾らか聞こえは良くなるのだろう
が、要は気にしている程の余裕がないということだ。先程の絶叫連発に町内のどんな反応
が返ってくるのかと怯えるが、無反応だった。
いや、違う。
正確には、全包囲的に無視をされていた。日曜日の十時ともなればそれなりに聞こえる
生活の音が聞こえなくなり、日曜出勤らしいスーツ姿の中年男性に笑みを向けると無言で
顔を反らされた。周囲に視線を回してみても、皆が気不味そうな苦笑で微妙に顔を背けて
いる。近所の方々には、何と説明したら良いのだろうか。
数秒。
青海は笑みをこちらに向けると腕を組んで頷き、
「見てくれ虎徹君、皆余計な言葉は要らないと判断したらしく無言で祝福してくれている」
「それは違う」
青海は不思議そうな表情を浮かべて少し考え込むが、すぐに理解したような顔になった。
「なるほど、虎徹君の言いたいことはよく分かった。つまり、わたし達の仲の良さを妬み
嫉んでいるのだな? 相対的に見れば、わたし達はここら一帯で一番の幸せペアだ!!」
「絶対的に見てここら一帯で一番蔑まれてるんだよ、特に僕が!!」
青海のポジティブなところは美点だと思うが、暴走は良くない。
そんなやりとりを続けながら歩いていると、家の玄関が見えてきた。それ程時間が経過
したとは思えないのに、早いものだ。楽しい時間はあっという間に過ぎてゆくというのは
子供でも知っているような常識だが、今はその事実が少しもったいなく思える。
不意に、人影が見えた。
門のところに寄りかかっていたので見えなかったのだろう、小柄なため丁度柱に隠れる
ように立っている。こちらに気が付いたらしく、虎毛色の長いストレートを揺らしながら
数歩進んで睨むように僕達を見つめてきた。瞼が腫れ、鋭く細められた目は赤く染まって
いて、一晩泣き続けたのが一目で分かった。
それと同時に後悔が沸き上がってくる。青海の家に泊まったことがではない、そのこと
は半ば雰囲気に流された部分があるものの自分で決めたことなので悪く思うつもりはない。
いけなかったと思うのは、サクラに直接言葉をかけて説得しなかったことだ。もしも拒否
をしたとしても、それでもちゃんと昨日の内に本人に言っておくべきだったのだ。
サクラは口元を暗い笑みに歪め、
「お泊まりは楽しかったですか、兄さん?」
しゃがれた声で語りかけてきた。いつも通りに抑揚は少ないものの、決定的に違うもの
がある。いつも僕を癒してくれた綺麗なソプラノが、その痕跡さえも見せない程に完全に
消えていた。サクラはその枯れた声で、小さく笑い声を漏らす。
「良かったですね、青海さん。たくさん愛してもらいましたか?」
「勿論だ、至上の幸福とは正にこのことだろう」
でしょうね、と呟くとサクラはスカートの裾を揺らしながら寄ってくる。かなり体力を
消耗しているのだろう、足取りは重くふらついていて、まるで幼児のような速度だ。亀に
すらも追い抜かれるような歩みなのに、しかし逃げ切れる気はしなかった。有無を言わせ
ぬ迫力が、僕の足の動きを鈍らせている。
「兄さん」
一歩。
「早く」
一歩。
「家に」
一歩。
「入りましょうよ」
一歩。
「青海さんも」
一歩。
「どうぞ」
一歩。
サクラは僕のところへ到達すると、恐ろしい力で手首を掴んできた。そして家の中へと
引きずり込むように強く引いてきて、危うくバランスを崩しそうになる。足を踏みしめて
堪えると、その反動でサクラの体が腕の中へと飛びこんできた。
「一日ぶりの兄さんの匂い。邪魔なものが混じってるけど、やっぱり最高」
言いながら、嬉しそうに僕の胸に鼻を押し付けてくる。
数秒。
サクラがそうしていると、雨音のようなものが聞こえた。空は曇一つない日本晴れで、
当然雨など降ってくる訳がない。しかしその音は止む様子がなく、断続的に続いている。
「おい、サクラ君。何をしている? それは、何だ?」
震えた青海の声で、サクラへと視線を向けた。そして僕に寄り添っているサクラの頭の
向こう、サクラの足下にアスファルトに幾つかの染みが見えた。それは音が一つする度に、
同じく一つずつ増えてゆく。
「あ、私ったらはしたないですね。つい興奮して」
粘度が高いその液体は足を伝い、細い糸を引きながら落下してゆく。
「ほら、私も着替えたいですし、青海さんからも兄さんに、家に入るよう言って下さい。
それに青海さんも兄さんと早く気持ち良いことしたいでしょう? 上手いですからね。私
も着替えたらすぐに行くので盛り上がっていて下さい」
止めろ。
「何の、ことだ?」
それ以上。
「あれ、聞いていないんですか? 兄さんから」
言うな。
「やけに手慣れてると思いませんでしたか?」
もう。
「兄さんは私や姉さんと、毎日毎晩していたんですよ」
言わないでくれ。
「嘘だ!」
青海が、叫ぶ。
「嘘じゃないですよ、本当です。信じるも信じないも勝手ですけど、邪魔はしないで下さい」
青海を睨むサクラの表情は、果てしなく暗い色に満ちていた。これを見るのは三度目に
なる。一度目は二年前、二度目は僕に青海が告白してきたときだ。しかも今回はあの娘を
病院送りにしたときよりも更に深い、殺意すらも読み取れない程に濁っている。
嫌な、予感がした。
「今すぐ虎徹君から離れろ」
「……うるさいですねぇ」
青海の言った通りにサクラは僕から離れたが、これは不味い。この状況はまるで二年前
の再現だ。姉さんが居ないことと相手の娘が違うことを除けば、寸分違わない。場所も、
立ち位置も、サクラの声も、全員の表情も。
「サクラ、止め……」
「死ね」
トラックが迫り来る光景の中、気だるげな声と共に青海は突き飛ばされた。
今回はこれで終わりです
『とらとらシスター』も残すところ後二回(予定)
そして『甘獄と青』、サラの名前が思い出せずにまとめサイトを見たのは皆との秘密だ!
甘獄と青ついにキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
そしてとらとらサクラの暴走変態っぷりに(;゚∀゚)=3ハァハァ
とあるssから抜粋
「‥‥キョウスケ、自身だけいれば良いではないか?‥‥他の汚く、低俗で、ウジより劣る糞虫達より、ゲロより汚臭を放つ役立たずどもより自身が、
この残滓がいれば、完璧だろ?‥‥‥選択結果‥‥差異か、代用品め‥‥それを、それを知れ、ははははははっ、そうだな、キョウスケ、それが正しいからこそ、
残滓はお前が無意識で望むなら、世界ですら、全ての連鎖すら、叶えてやる‥‥愛?それは当然の自己愛だ、はははははははははははっ、ふふっ、あはははははははははははっは、おかしいなぁ、おかしいなぁ」
それって、「境界崩し」だろ。
SSじゃないと思う。
久々ですが、投下します。
4話「咲希の嘲笑」
「大智様、お目覚め下さい」
「う〜〜〜〜ん」
何者かに体を揺すられ、眠らされていた大智はゆっくりと目覚めた。
「あ、あれ?ここは?確か下校途中に………!!!!」
「無礼を働いたことはお詫び致します。詳しい説明は後ほど致しますので今は
暫くの間、無言のまま座っていて下さい。」
隣に立つ黒服の男の威圧するような空気と言動によって、大智は
何も言えずに従うしかなかった。
でもここは何処だろう……。真っ暗で何も見えないけど、前方からスピーカーごしに
誰かが喋っているのが聞こえるな。
「……………で、ございますので私はこの街に帰ってきました。それではご紹介致しますどうぞ!!」
次の瞬間、真っ暗だった大智の前方が下から除々に明るくなってきた。
見渡してみると、どうやら何処かの舞台の上にいて、前方の幕が上がっているのがわかった。
「この方が私の許婚の!!笹本大智様ですわ!!!」
高台に設置されていたスポットライトによって大智に光が集まり、眩しくて目を細めていたら
多分さっきまで喋っていた人であろう、誰かが近づいてきた
「やっと………逢えましたわ」
「え?」
やっと聞き取れるぐらいの声で語りかけてきたと思ったら、今度は観客に向かって
「皆様方!!私はこの笹本大智様と共にこの街で暮らし、一生を添い遂げる想いです!!!
どうか暖かく見守っていて下さい!!!」
主催者なのか、スピーチが終わった瞬間、観客席から割れんばかりの拍手が沸き起こった!!!
観客席の人々は立ち上がり、口々に祝福の言葉を述べていた。
スポットライトの光が眩しくてよく見えないが、どうやら観客席の方はなにかパーティーでも
しているのかいくつものテーブルを囲んで食事でもしているようだ。
ある程度拍手が鳴り止んだ所で
「それでは皆様方、今夜は記念すべき日ですので大いに飲み、食べ、騒いで下さい」
スポットライトが消え、やっと周りを見渡してみると、そこはどこかのホテルのパーティー会場なのか
豪華で大きい部屋のようだ。そこに呼ばれたのか何百人もの人たちがテーブルを囲んで談笑している
のが見えた。その光景に唖然としていたら
「大智様、ここでは何ですので別に部屋を用意しております。詳しい説明はそこで………」
その人は大智の手を優しく掴み案内し、大智は案内されるままに付いていった……
一面に広がる草原……白いテーブルを囲む大智と優那……
優那の隣でキャンキャン吠えている柴犬の千晴と友紀……
「はい、大智あ〜〜〜〜〜〜〜ん」
「あ〜〜〜〜〜〜ん、…………うん!!!おいしい!!千晴なんか問題じゃないよ」
「本当?嬉しいな。じゃあ……次は……あま〜〜〜い優那をた・べ・て♪」
「うん!!いただきま〜〜す」
「ちょっとお姉ちゃん!!!起きてよ!!!」
・
・
・
・
「ちょっとお姉ちゃん!!!起きてよ!!!」
「う〜〜〜〜〜〜〜ん、むにゃ………あれ?」
「あれ?じゃないわよ!!大智は?大智はどこなの!!!」
「大智〜〜〜〜?さっきまで一緒にごはん食べてたよ〜〜〜。え?柴犬が喋ってる……」
「誰が柴犬よ!!!!今すぐ目を覚ましやがれ!!!!!」
千晴のチョップがベットに寝ている優那の頭にクリーンヒットして、
ようやく現実に戻ってきた優那だったが……
「あ、あれ?ここは?……そういえば………う、うわ〜〜〜ん、大智が!大智が〜〜〜〜!!!」
「ち、ちょっとお姉ちゃん落ち着いて!友紀、上手く説明してあげて」
友紀は混乱している優那に、大智が攫われたあと倒れていた優那を通行人が見つけてくれて
救急車を呼んでもらったこと……
病院についた時に優那の学生証を見た担当医が学校に連絡をしてくれ、
こうして二人が駆けつけてきたことを説明した。
「それで、大智お兄ちゃんはどうしたの?事と次第によっては……」
友紀のドスの効いた、地獄の底から響くような声はこの場にいる全員が
逃げ出したい衝動に駆られるぐらい、今の友紀は本気で怒っていた。
「うっ……ぐす……うんとね、途中まで一緒に帰っていたら、黒い車から黒服の
男が出てきて、そのまま大智を連れ去って―――」
優那は二人の表情を見たら、最後まで喋ることが出来なかった。
「ね、ねえ……こ、怖いよ二人とも!!」
千晴は鬼のような、逆鱗に触れたような表情をし、
友紀は無表情だが、青筋が浮き出て、目で見た物全て破壊するような目で優那を睨み付けた
「ねえ友紀?……どうする?ここは警察に行く?」
「警察を待ってたら時間がかかりすぎるわ。それより私に心当たりがあるわ。」
その友紀の言葉に優那と千晴は驚き
「さっすが友紀ね。もう分かったんだ」
「……で、その心当たりって?」
のん気な優那とは違い、千晴は顔の表情を崩してはいなかった
ここまでのことをする人間はそういないはずだわ。しかも大智に少なからず縁があるって
ことよね。私たち三人以外にそれに該当する人間って………いたかしら?
「お姉ちゃんたち、最近大智お兄ちゃんの家の裏で今、何か家の工事をしているのは知ってた?」
「こ〜じ〜?……あーー、そういえば何かしてたわね」
「確か空き家だったあの家を改装工事しているってのは聞いたけど……それが?」
友紀は呆れたような目で二人を見て
「忘れたの?昔あの家に住んでいた不倶戴天の敵を……」
「敵って…………あ!!!!!!ま、まさか………………」
不思議そうな顔をしている優那に対して、千晴と友紀は深刻な顔をして
「ヤツが……ヤツが帰ってきたっていうの?……ど、どうしよう?」
「そうね……現状じゃ全く情報が無いから、ちょっと危険だけど―――」
「さ、大智様、お座り下さい」
「う、うん……」
大智が案内された部屋……それは高価な装飾や家具が並ぶ、一目見ただけでも圧倒される
ような、テレビでしか見たことの無いような豪華な部屋だった。
「さて、先ずはこの屋敷に案内する際に無礼を働いたことを深くお詫び致します。
キチンと説明してご案内すればよかったのですが……」
あまりにも色々なことがあったので、まだ状況が理解できなかったが目の前にいる人は
年の頃は自分と同じぐらいだろうか、ロングヘアーにドレスを纏い、柔らかい表情に抜群のスタイル。
まず間違い無く世間一般基準では「美人」であろう人が、ちょっと頬を染めながら話していた
「あーー、それはもういいんだけど……まずさ、君はだれ?」
目の前にいる女性は、ショックなのか少しだけ俯いて
「そんな……もう忘れてしまいましたか?……小さい頃よく遊んだ「許嫁」の女の子のことを……」
「許嫁?………」
小さい頃?許嫁?……そういえば、家の裏のお城みたいな家に住んでいた女の子と
よく遊んでいたな……たしか結婚の約束もしたような……その子の名前は……確か……
「えーーーと、もしかしてさっちゃん?」
「そうですわ!!!あなたの「許嫁」で「幼馴染」の一ノ宮咲希(いちのみやさき)ですわ!!」
感極まったのか椅子から立ち上がり、両手を広げて大智に駆け寄って抱きしめ、その胸に
顔を埋めて
「ああ……今日という日をどんなに待ちわびていたか……もう絶対離しませんわ」
「ち、ちょっとさっちゃん、久しぶりだけど今までどうしてたの?怪我はもういいの?」
一瞬だけ、体がビクンと反応したが、顔を上げた咲希は笑顔で
「積もる話もありますが、これからはずっと一緒ですのでゆっくり話しましょ。」
「そういえば、さっきのスピーチでも一生を添い遂げるとかなんとか言ってたね。それって
どういうこと?」
咲希が自身満々で答えるより早く、ドアのノックの音が部屋に鳴り響き、黒服の男が
部屋に入ってきた
「お嬢様、侵入者の身柄を確保致しました。いかが致しましょう?」
「やはりね。予想どうりだったわ。……いいわ。ここに連れてきて」
「わかりました」
今の侵入者の話しを聞いてから、笑顔だった表情が険しいものになった。
暫くしたらドアの向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきて
「ちょっと!痛い痛い!!離してよ!!」
「あんたたち!!大智にひどい事したら承知しないわよ!!」
ノックと共にゆっくりとドアが開き、見覚えのある三人と共に黒服の男が
「侵入者、連れてきました。」
「ありがとう。外で待機してて」
黒服の男が出ていくと、咲希が立ち上がり簀巻きにされて床に転がる三人を見て
勝ち誇った顔で
「ふん!無様で惨めなものですね」
「やっぱり、あんただったのね!!咲希!!」
「下郎の分際で呼び捨てで呼ぶな!!!」
怒った咲希は簀巻きの千晴を蹴り上げ、踏みつけた。
千晴から低いうめき声が聞こえたが、咲希は汚い物を見るような目で睨み
「今までのうのうと大智様と一緒に暮らして……薄汚い雌豚が!!!」
「ふーーーんだ!!お前の方が薄汚いわよ、泥棒猫!!」
悪態をつく優那に対して咲希は――――
無表情でも咲希の目は、憎悪の篭った、怒りで心が満たされているかのような血走った目を走らせ
こいつが……こいつが……私の人生を狂わせ、全てを奪い、拭い取れない傷を付け
あまつさえ自分は大智様の隣にいて……許せない……こいつだけは許せないわ!!
強靭な精神力で、怒りで暴走寸前の心を辛うじて押しとどめ、おもむろに家具の引き出しから
何やら紙の束を出し、それを友紀の前に投げて
「その小切手帖にゼロを好きなだけ書きなさい。その代わり大智様のことは綺麗さっぱり忘れなさい」
投げられた小切手帖を友紀はじっと見ていたが、プイッとそっぽを向き
「お生憎様。お金じゃあ大智お兄ちゃんは譲れないわ。というか大智お兄ちゃんに替わる物なんて
存在しないわ」
「そうよそうよ!!金で解決しようなんて金持ちの傲慢ね」
「誰だか知らないけど、大智は優那がツバ付けてるんだから」
そう……まあ私も金で解決できるとは思っていないわ。残念だわ……出来れば穏便に
事を成そうと思っていたけど、そういうことなら……
「さっちゃん!!!」
黒服に始末の命令を出そうとした咲希に、大智が呼んだ
「さっちゃんお願いだ、皆と話しをさせてくれ」
他のこと全てにおいて冷徹な咲希も、大智には甘いのか、それとも惚れた弱みか
大智を見る咲希の目は柔らかく
「ま、まあいいでしょう。大智様がそう仰るなら……。最後の別れでも言ってやって下さい」
三人に近づいた大智はしゃがんで囁くように
「まったく、なんでこんな無茶したの?」
「大智お兄ちゃんが攫われたと聞いて、多分ここにいると思ったんでわざと捕まったんだ。大智お兄ちゃんが
いる限りはアレも無茶はしないと思って……でも甘かったわ。アレは本気で消す気ね」
「とにかく今は脱出の方法を考えなきゃ」
千晴の脱出の提案に大智は首を振り
「いや、今は脱出は無理だ。皆のことは俺が説得するから先に帰って家で待ってて」
「やだやだ!!大智と一緒に帰る〜〜!!」
我侭を言う優那に大智は優しく
「大丈夫、俺の帰る場所は皆のいるあの家だけだよ。三人がいて、賑やかで暖かい
あの家だけだから……だからちょっとだけ待ってて」
どなたかが言ってましたが、パワーバランス的には咲希は「董卓」です。
今はまだおとなしいですが、近い内に暴れます。それと「分裂少女」の「結」
も無事完成致しましたので、近い内に投下します。
この三人+1から良質の嫉妬や修羅場の雰囲気がビンビン感じるぜ!
俺も久しぶりに正座でwktkして待ってますね
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
前回の続きを投下します。
結局クソ長くなってしまったので、またも二話分割で行きます。
その日から、智の生活は変わった。
まず、学校へ行かなくなった。
あれから千早が意識を取り戻したのは8時半。HRが始まる時間だった。
「千早、学校に行くぞ。もう遅刻だけど、今からなら2限目には間に合う」
家は酷く散らかっているが――あるいは散らかっているからこそ、智は千早に登校を促す。
このまま二人で家にいることが怖かったのかもしれない。
しかし。
「どうして? 学校はダメだよ、こわぁい魔女が居るんだから。
また性懲りも無く智ちゃんを惑わそうとするに決まってるもの。
覚えてないかもしれないけど、智ちゃんは操られていたんだよ。
だから、だぁめ。
智ちゃんの優しいところは大好きだけど、過ぎた優しさは智ちゃん自身も私も傷つけちゃう。
智ちゃんが優しくするのは私だけでいいの。
それが出来るようになるまで、おうちで二人っきりで‘療養’だからね?」
幼子に言い聞かせるような千早の言葉。そこには一片の冗談もない。
智が唖然としている間に『そうだ、学校に連絡入れなくちゃ』と、千早は電話の子機を取ってくる。
「うふふ、先生ったら『高村と折原は風邪引くのも一緒か。本当に仲がいいなあ』・・・ですって!」
そう嬉しそうに笑う千早が、答えだった。
次に、四六時中共にいるようになった。文字通りの意味で、だ。
少しでも姿が見えないとすぐに精神が不安定になり、智は常に千早の知覚の範囲内にいることを余儀なくされた。
いつも智にくっつき、片時たりとも一人にはしない。
そして、これでもかというくらい智の世話をしようとする。
まるで、赤子か寝たきりの老人でも相手にするかのように。
朝は、一緒のベッドで目覚める。
両親が心配するからといっても聞かず、帰ろうとしない。
それどころか『お父さんもお母さんも、智ちゃんの家に居るって言えば反対なんてするはずないよ』とさえ言う。
事実、千早の家に電話を掛けた智が聞いたのは、『ウチの娘をよろしくねっ!』という、心配どころか嬉しそうに言ってくる彼女の母の声だった。
(千早の両親って昔から放任主義だったけど・・・。いくら近所でも、娘が何日も家に帰らなくて心配しないのかよ)
内心そう愚痴るが、千早の両親が放任なわけではなく、智を信頼しているからこそここまで手放しで任せていることまでは気が回らない。
皮肉にも、智がずっと大切にしてきた10年来の絆が、閉じられた二人の世界を作ることに一役買っていた。
今回のことも、智が何も言わなければ『娘がようやく次の一歩を踏み出したか』と思って見守るだけに終わるだろう。
そしてその通り、愛娘である千早の狂態について彼女の両親に告げるなど、智には出来なかったのである。
食事や掃除などの家事全般においても、千早の過剰な世話焼きは発揮された。
これまで家事は、いくら千早の方が得意とはいえ、智が『自分の家のことだから』と言って、一応は2人で折半する形を取っていた。
しかし今は、それを全くやらせようとしない。
それだけならまだしも、お茶のおかわりを注いだり、食後に食器を下げたり、果ては頬に付いた米粒を取ることさえ、智のことは自分でやらないと気が済まないようになってしまった。
もし自分でやろうとすれば――。
「智ちゃんのことは全部私がしてあげるのに。私のこといらないの? いらないんだ、邪魔なんだ・・・」
「私が一番智ちゃんのこと知ってるのに。私が一番分かってるのに」
「私、智ちゃんのために頑張ってるのに。守るために頑張ってるのに」
「また騙すの? また裏切るの? ねえ、智ちゃん・・・」
呟きと共に口が少しずつ裂け広がり、歯がガチガチと噛み鳴りだす。
言葉で済めばまだいい。
場合によってはあの朝の惨劇の再現もある。
目覚まし時計、花瓶、電球、テレビの液晶、CD・・・。
智のほんの僅かの油断の度にそれらが壊れ、ひび割れ、時に失われる。
そして、一度発症すれば智が止めるか気を失うまで止まらないのだ。
もはや千早の思考は、『自分のすることを少しでも拒まれること』イコール『自分の全てを拒まれること』に変換されてしまっている。
無意識にしてしまう遠慮や反応、それさえもがトリガーになっていることを理解し、常に気を張っていなければならない。
日を追う毎に千早の発症回数は減っていったが、それは同時に、智が自分に許された自由の狭さを思い知っていくことでもあった。
千早の‘世話焼き’は風呂場、夜のベッドまで続く。
「智ちゃん。お風呂・・・一緒に入ろ?」
狭い脱衣所に二人で入り、恥じらいに頬を染めながらも千早は躊躇い無く衣服を脱ぎ捨てる。
5年くらい前までならともかく今となっては、いくら相手が千早でも女性の裸を直視できる筈もなく、智は思わず顔を背けてしまう。
一日で唯一、千早から目を逸らしても怒られない時間だが、場所がこんな逃げ場の無い空間では何の解決にもならない。
「うふふ・・・さぁ座って。身体洗ってあげる」
促されるまま腰掛けた智の背中を、千早は丹念に洗う。
絶妙な力加減で擦ってくれるのは、智の反応を知り尽くした彼女ならではと言えるだろう。
実際智としても気持ちいいのだが、状況が状況だけにくつろいだ気持ちになどなれない。
ましてこの後は狭い湯船に一緒に浸からなければならず、そうなると必然的に千早の身体を抱える姿勢にならなければいけないのだ。
服を着てならまだしも素っ裸で膝の上に乗せるとなっては、屹立したモノは隠しようが無い。
「もぉ、智ちゃんったらぁ・・・。私の方は、いつでもいいんだからね・・・?」
千早はそう言って、風呂の熱さとは違った熱に頬を上気させながらも、いつものように幼い仕草でじゃれついてくる。
その僅かな動きによる刺激さえ苦しい智は、何食わぬ顔で適当な話題を振りつつ、身体がのぼせてくるまで耐えるしかなかった。
そうしてやっとの思いで風呂を出ても、智が解放されることは無い。
風呂を出たら後はもう寝るだけと、千早がすぐに智の部屋へ行きたがるからだ。
以前、智が夜に出て行った日のことを警戒しているのだろう。
泊まりに来ては一緒に寝ることが大好きだった幼い頃を思い出すように、智に抱きついて昔話などをする。
一日の疲れがあるのかベッドに入って一時間もすれば寝息を立て始める千早に対し、智は全く眠ることが出来ない。
只でさえ時間が早い――夜9時を回った程度――うえ、身体が全く疲れていないからだ。
常に千早に意識を向けているため精神的な疲労は大きいのだが物理的な疲労が全く、肉体が眠りを受け付けてくれない。
また、下手に眠って寝返りなどを打てば、千早を振り払ってしまう可能性もある。
眠っていようと、千早なら気づくだろう。そして、不可抗力だろうと聞いてくれるような精神状態では、今の千早はないだろう。
その恐怖観念もまた、智の眠ろうとする意思を抑えつけてしまう。
そして何より、がっちりと智を縛る千早の寝相。
両腕を背中に廻し、両足を蟹ばさみで智に絡ませてくる。
身じろぎすると押し付けられる股間の感触が、智の身体を否応なしに熱くする。
擦り付けられた場所に体温とは違う熱さの湿り気を感じたが、それには必死に気づかない振りをした。
加えて、洗いたての少女の身体から薫る独特の香り。
嗅ぎ慣れた石鹸とシャンプーの匂いなのに、なぜ女の身体から発するというだけでこうも落ち着かない雰囲気を漂わせるようになるのだろうと智は思う。
落ちてくれない意識を抱えたまま、智の一日はこうして過ぎていく。
一応少しは眠れているようだが、日を追う毎に色濃くなっていく隈が、眠りが本当に少しであることを物語っている。
今の智の身体が日々辿っている症状は、名前を付けるなら一つしかない。
言うまでもなく‘衰弱’だった。
いくら千早の拘束があっても、たった数日――2、3日家を出られないだけで衰弱とまでいくものだろうか。
本来ならいかないだろう。
しかし、それは普通の人間の身体ならば、だ。
(血を・・・・・・血を吸わないと・・・)
たった3日血を吸わなかっただけで、智の‘渇き’は彼に相当な負荷を掛けるようになっていた。
3日といえども、それは以前智が試してみた、血を我慢した期間の最長記録。
血は吸血鬼にとって肉体だけでなく精神の源でもあり、断ち続ければ理性を保てなくなる。
そして理性を失った吸血鬼は衝動に身を任せ、欲望の赴くままに行動するようになってしまうのだ。
(1時間・・・いや、30分でもいい。何とか血を吸いに外へ・・・)
――不可能だ。10秒だって離れられないことは、あの朝を思い出せば分かること。
(なら、千早に全て話して――)
――それも却下。千早を吸血鬼のことには巻き込みたくない。
この期に及んでと言うべきか、智は千早に吸血鬼のことを話すのを拒絶していた。
元々交友関係の広くない智なので、僅かな例外を除いて彼の日常は千早とほぼ重なっている。
その千早に話してしまったら、智が普通の人間として生きられる場所はなくなってしまうかもしれない。
更に、僅かな例外――藍香にとって、エルにとって、自分は吸血鬼だ。
たとえ大切に思われているとしても。自分も彼女たちを大切に思っているとしても。
彼女たちの傍にいる自分は‘吸血鬼’だ。
‘人間’では、ない。
それに。
(もし、藍香先輩のことを感づかれたら・・・)
全ての元凶。智を化物に変えてしまった事実。
千早の狂気が、憎悪となって藍香に牙を剥くかもしれない。
千早が藍香を傷つけられるなど、智には耐えられそうになかった。
そう、だから機会が巡るまで何が何でも耐えなければならないのに。
智は気づいてしまった。
いや、吸血鬼の本能が察知したというべきか。
一途で無垢な、汚れ無き乙女。
吸血鬼としての智が最も好むタイプ。
常にぴったりとくっついて無防備な姿を晒す千早が、藍香に勝るとも劣らない極上の女であることに。
一旦切ります。ここまでで一話分です。
連投でいこうと思ってましたが、ちょっとだけ席を外します。
続きはすぐに投下しますので、ちょっとだけお待ちください。
ブラッドフォースキター!!もはや千早の独壇場ですな。はたして反撃は誰からになるのか。
それにしても智うらやますぃ
続きもwktkして待ってます
昨夜は寝オチしてしまいました。
てなわけで、出勤前に急いで投下。いきます。
一度気づいてしまえば、どんなに心を静めようとしても、飢えた本能が獲物を意識するのは止められない。
ぼんやりと千早の背中を見つめていたのに、いつの間にか白いうなじを食い入るように見つめている。
腕を組んだり膝に座ったり、千早にくっつかれると血が上って呼吸が荒くなる。
控えめな胸の膨らみやスカートから覗く太股を、ついチラチラと見てしまう。
・・・町に出れば挙動不審で職務質問されるのは間違いないだろう。
智は隠しているつもりでも端から見ればあからさまな情欲の視線であり、当の千早が気づかないわけはない。
本来なら嫌悪を催す類の視線であるそれだが、相手が愛しい幼馴染なら話は別だ。
智が自分に欲情していると思うと嬉しくなり、じゃれ付き方も大胆になっていく。
しかし、『智から求める』という形を取ってほしい千早は、そうしながらも決定的な言葉は決して口にしない。
千早からの求めがあれば、智はそれを免罪符に堕ちることが出来たかもしれないのに。
本能に屈しないよう耐えながらも、振り切ることも出来ない。
4日目に入ると、いよいよ吸血衝動が強くなってきた。
血断ちの期間は過去最長を更新し、首筋に限らず千早の肌の露出した部分を見るだけで劣情がそそられる。
異常なまでに唾液が口腔に溜まり、気を抜くと涎となって浅ましく垂れ落ちる。
「ふふっ・・・。智ちゃんったら我慢しなくてもいいのに」
血走った目をした智の耳元に甘い囁きが木霊し、エコーとなって智の理性をかき乱した。
いつの間にか口付けるほど首筋に接近し、ハッと我に返って顔を離す――。
そんな綱渡りの繰り返しで一日を過ごした。
5日目になると睡眠不足などの要素も加わり、衰弱が目に見えて智を蝕み始めた。
だが、そんな悪くなりはじめた顔色とは正反対に、智の一物は片時もしぼむことなく存在を主張するようになった。
すぐにでも、いくらでも吐き出したいという欲望を象徴するように、智のズボンを痛いほど押し上げる。
小柄な少女にじゃれ付かれて股間を隆々とさせている姿は酷く無様だが、そんな体面を気にする余裕すらない。
「智ちゃん、こんなに興奮しちゃって・・・。そうだよ、そうやって素直になればいいの。
恥ずかしがらなくたっていいの。我慢だってしなくっていいの。
私が、私だけが、智ちゃんのことを何だって受け止めてあげられるんだから」
千早はそう言って対面になって抱きつき、わざと股間を擦り付けてみせる。
智が自分に陥落しかかっていることが手に取るように分かり、その態度には余裕さえ伺うことが出来るようになった。
本来の目的である千早を落ち着かせることも、今の智が認識しているかどうか怪しい。
それどころか精神の安定状態においてさえ当初の立場を逆転し、智の方が不安定さを見せるようになっていた。
6日目。智の脳内に浮かぶ言葉は、その内容さえ限られるようになってきた。
(血を吸いたい。若い女の血を吸いたい。白いうなじにむしゃぶりつきたい。細い肩に牙を突き立てたい。
血を吸いたい血を吸いたい血を吸いたい血を吸いたい血を吸いたい血を吸いたい血を吸いたい血を吸いたい血を吸いたい血を吸いたい血を
女を犯したい血を吸いたい血を吸いたい血を吸いたい女を犯したい血を吸いたい血を吸いたい女を犯したい血を犯したい女を吸いたい血を
血を血を血を血を血を血を血を女を女を女を女を女を女を女を血を血を血を女を女を女を血を女を女を血を女を女を血を血を―――)
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
真夜中の絶叫。
もはやそれは、中毒者の禁断症状だった。
あまりの大音量に千早が飛び起きる。
「智ちゃん!? どうしたのっ!?」
純粋に心配した様子で、智の顔を覗き込む。
その不安げな顔に一瞬だけ理性を取り戻し、辛うじて言葉を紡ぐ。
「だい・・・じょうぶ・・・。ちょっと、怖い夢を見た、だけ」
「そっか・・・。きっと、あの女に操られていた頃の記憶が残ってるんだね。
でも大丈夫だよ。
私がずっと守ってあげる。もう誰にも触れさせない。
ほら・・・私がこうやって抱きしめてあげてれば、きっと怖い夢なんて見ないから。
だから、私の中で眠って・・・」
それは智が望んでいた千早の本来の優しさだったはずなのに、今の彼には淫魔の誘惑以外の何物でもない。
ぎゅっと抱きつき、身を任せるように肌をさらけ出した千早の首筋に、智は吸い込まれるように顔を近づけ――。
「・・・っ!!」
吹けば飛ぶ程度の理性を総動員して、開いた口の標的を枕に移す。
自身を縛り付けるように布きれを噛み締め、あまりの惨めさに涙しながら、無限とも思える夜を過ごしていく。
そして7日、一週間が経って――――。
ついに智は、壊れた。
---------------------------------------------------------------------
「きゃああああああああぁぁぁぁっ!?」
ドンっ、と大きな音を立て、千早が壁に叩きつけられる。
激しく咳き込みながら、その場にへたりこんだ。
明らかに、何者かに叩きつけられてのものだ。
そして、この家の人間は彼女を除けば一人しかいない。
きっかけは些細なことだった。
「智ちゃんったら、いくらなんでもちょっと奥手すぎるよね。
このままじゃ、私の方が我慢できなくなっちゃうよ・・・」
朝、智の部屋のベッド。
もぞもぞと布団から這い出し、目を閉じて死んだように硬直している智を見下ろす。
寝ているのなら・・・と、そっと顔を近づけてみた。
「えっと・・・これはノーカン。ノーカウントだよ? ファーストキスは、あくまでも智ちゃんからなんだから・・・」
誰にともなく言い訳じみた言葉を口にしながら、ほんの少し――本当に少しだけ、唇を触れ合わせた。
それが、千早が想像するものと違うもう一つの理性を決壊させてしまうなどとは夢にも思わずに。
不意打ちだったから。
僅かとはいえ、粘膜同士の接触だったから。
理由はいくつか考えられるが、事実が変わるわけではない。
最も熱く火照った部位の一つである唇への口付けは、智の吸血鬼の衝動を解放してしまった。
「がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
腕を大きく薙ぎ払ったのは、千早に襲い掛からないよう彼女を自分から遠ざけようとしての、咄嗟の抵抗。
だが今の状態の智に手加減などできるはずも無く、放たれた手刀は千早の腹に深く食い込み部屋の壁まで吹き飛ばした。
咳き込みながら何とか顔を上げた千早が見たのは、禍々しい赤い光を発する智の眼。
衝撃による耳鳴りに顔をしかめながら聞いたのは、憑かれたようにブツブツと呟く智の声。
耳鳴りが収まっていくと共に、智の言葉が少しずつ聞き取れるようになってきた。
「・・・・・・ん・・・い。あ・・・か・・・ぱい。・・・いかせ・・・い。あい・・・んぱ・・・。・・・せんぱい」
せんぱい。
先輩。
学校の上級生。年上の人間をあらわす言葉。
一心不乱に智が呟くのは、千早以外の誰かの名前。
そして、千早にとって最も聞きたくない名前だった。
「あいかせんぱい」
横殴りにされた感覚が千早を襲った。
平衡感覚をやられたように、頭がふらついて揺れる。
(どうして、そんなバカみたいにあの女の名前を連呼するの?
私の名前は、そんな風に何度も呼んでくれたこと無いのに。
もしかして、またあの女に酷いことされる夢を見たの?
それがイヤで、あんな風に暴れちゃったんだ。
いきなり吹っ飛ばすなんて酷いけど、私以上に智ちゃんも痛かったんだよね?
ごめんね、智ちゃんに刻まれた恐怖の深さを見誤っていたよ。
あの女が存在している限り、あなたのトラウマが消えることはないんだね。
智ちゃんの痛みは私の痛みだよ。だから私に任せて。
私が、あの女を・・・・・・・・・)
それは、千早にとって藁にも縋る思いで導き出した想像だった。
正気でない光を煌々と宿しながらも、智の表情は抑圧から解き放たれたように清々しい。
それに気づかない振りをして、自分の想像と智の衝動を必死にシンクロさせようとする。
しかし―――現実は、残酷だった。
智の言葉が、彼の望みを紡ぎ出す。
「あいかせんぱいが、ほしい」
世界から音が消えていく。
色が消えていく。
何も見えなくなっていく。
最後に残ったのは2つの色。
赤い瞳は黒い髪を振り乱して飛び上がると、乱暴に窓を開け放って姿を消した。
もはや、千早の瞳に映るものは何も無い―――。
智にしてみれば、目の前の千早を襲わないための苦肉の策。
すぐ飛び掛れる距離にいるご馳走から目を逸らすには、彼女以上に魅惑的な女性の姿を思い浮かべるしかなかった。
千早を思いやる気持ちが生んだ、人間の限界を超えた意志力の発露。
それだけで見れば、彼の行動は賞賛されうるものだったかもしれない。
しかし――。
「・・・・・・棄てられた・・・・・・」
立ち上がりかけた膝が、ぺたんと折れる。
「・・・智ちゃんに、棄てられた・・・」
えずくような呼吸がひゅうひゅうと音を立て、喉が引き攣った痛みを訴える。
「智ちゃんが、私を棄てた・・・・・・」
ぽたぽたと、絨毯に雫が零れだす。
キスされて突き飛ばしちゃうくらい、私のことが嫌いだったの?
少しでも触れようという気が起こらないくらい、私は魅力が無かったの?
そうしてまで智ちゃんが求めるのは、私以外の女なの?
10年以上も、ヒロインのつもりで舞っていた劇。
でも私の真なる役目は、滑稽なピエロだった。
舞台に色を添えるだけの、必ずしも必要とはされない役回りなんだ。
きっと、知らなかったのは私だけ。
私、いらない子だったんだね・・・?
あは、あははははは・・・。あははははははははははははははははははははは・・・。
・・・それを最後に、千早の思考は停止した。
――しかし。
彼が自身に課した犠牲以上に幼馴染の心を犠牲にしてしまったことまでは、知る由も無かった。
本能に支配されきってしまった精神では、尚更に。
今回はここまで。早めに投下すると言って一週間くらい空いてしまいました。
長い割に進展が遅くてごめんなさい。これでも削った方というのが尚のこと情けない・・・。
千早は消えるわけではありません。ですが、マルチエンドでもない限り幸せになれる確率は低くなりそう。
そこらへんはまだ考えてませんし、あくまで予定。予定は未定なのです。
『夕焼けの徒花』は、忘れたわけではありません。むしろ私より皆さんが忘れてそうですが・・・。
こっちの続きもそのうち書きます。
・・・・・・・・・そのうち。
千、千早ーー!!智もやばいことになってますが、何よりも千早が。
こうなったら是非ともマルチで千早を幸せにしてもらうしか・・・
夕焼けの徒花の方も全然忘れてませんよ!!!投下を待ちわびております。
作者さんGJでした
智くん…(つД`)
智君がメチャ良い奴だけに今後の展開が良くなりますように、と願わずにはいられない。
暴走した智君がどういう行動に出るのか……恐ろしく思いつつも期待してしまいます
しかし、この後待っているのは1週間お預け食らった先輩だろ?
wktk
そして先輩に監禁され、エルさんに助けて貰ったと思いきやエルさんにも監禁され…
前から思っていたんだが、千早の歯をガチガチ鳴らす描写が
ガッシュに思えて仕方が無い・・・
197 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/07(土) 13:45:24 ID:OvGW7jlA
智君良い奴なのに……。彼が幸せになれることを願う。
良かれと思ってやったことが裏目に出る、まさに修羅場の主人公の王道だな。
千早やっちゃうのがベストだけどな
まあ修羅場主人公らしくていい
それでも先輩でも・・先輩でもきっと監禁とかしてくれる・・
Sequel to Story(4)
そして迎えた、ミスコン当日。
オークニーの中央広場に設置されたコンテスト会場で、俺は街を眺めていた。
舞台の上に用意された審査員席からだと、街の様子がはっきり見える。
「みんな楽しそうだなぁ……」
街は普段とは違う活気に賑わっている。
交易で栄えた街だからだろう。基本的にこの街の人は自由奔放で、身分による格差も希薄だ。
だからこそ俺たちのような人間が長期に渡って居座ることが出来ているわけだが。
祭を見て回っている親子連れ、露店を開いている者、見回りをしている警備兵も、皆総じて表情が明るい。
向こうでは巨大魚の解体ショーなんてものまでやってる。
風土の違いなのか、この辺りの人々はこういうドンチャン騒ぎが好きらしい。
アリマテア王都ではこういった類の祭りはあまりなく、どちらかと言えば厳粛な儀式の方が多かった。
皆で楽しむ、という祭りはフォルン村で時折行われた豊穣祭以来だろうか。
出来ることなら、俺も彼らのように心底祭りを楽しみたい。
だけど、これから現実となるであろう悪夢を考えると、そんな気分にはとてもなれそうもない。
「……はぁ…」
「あら、お疲れね。ウィルちゃん」
隣に腰掛けているジュディスさんが、俺の気落ちした様を見て微笑んだ。いや、彼女はいつもこんな感じだけど。
「えぇ…まぁ……あ、あはは……」
実際本当に疲れてますよ、俺は。
アシュリーが衝撃の発表をした後から今日まで、我が家の空気は最悪だった。
そりゃそうだろう。悪鬼羅刹の類が三人も家の中で犇めき合っていたのだから。
今日まで何も流血沙汰になっていないのが不思議なくらいだ。
みんなコンテストまで力を温存させようっていう考えなのかもしれない。
普段なら一日一度は起こる団長と姫様の口喧嘩もなく、静かなものだった。
勿論、平和という意味で静かなのではない。緊張の糸が極限まで張り詰めた静けさなのだ。
もし一般人がそんなところで数日も過ごせばストレスで昇天していたことだろう。
みっちり鍛えてくれた師匠に感謝したい。
舞台の前に集まっている人だかりをげんなりしながら見渡す。
盛況、盛況。アシュリーの余計な宣伝のおかげで会場は人でいっぱいだ。
今回、俺たちの羞恥プレ……いやミスコンをご観覧されるお客様方にご連絡申し上げます。
せいぜい巻き込まれないように気をつけてください。ご観覧に際してこちらでは命の保障は一切できませんので。
「あながち冗談じゃないから困るんだよな……」
「はい?」
「…いえ、何でもありません」
独り言に反応したジュディスさんにもう一度苦笑いを浮かべてから、今日何度目かの溜息をついた。
さて。どうやら始まるみたいだな。
壇上にゆっくりと上がる一人の女性。
このミスコンを取り仕切る司会進行役の、アシュリー・ガウェイン・ロット嬢だ。
戦々恐々としている俺の視線に気付いて、にやっと口角を吊り上げる。
楽しくてしょうがないと言った顔だ。己の勤め先の催し物を大失敗させても構わないのか、彼女は。
会場を一望した後、アシュリーは声高らかに宣言した。
「皆様、よくぞお越しくださいました!
去年開催いたしましたミス・オークニー・コンテストもなんとか三度目を迎えられました。
今年度からは前回要望の多かった、お客様にも審査していただくルールが追加され、皆様もコンテストに参加できます。
審査員から各二十点、計六十点に加え会場にお越しの皆様にもそれぞれ一票一点として評価されますので
どうか皆様も厳正な審査をお願いいたします」
彼女らしい、自信に溢れた声がこだまする。
来場客も彼女の力強い演説に注目していた。……ホント、こういう才能をもっと他のところで活躍させて欲しいと切に願う。
「今回は前年よりも更にクオリティの高い女神たちが此処、オークニーに集まってくれました。
もちろん今年も優勝者には南方通商組合のイメージキャラクターとして皆様の前にちょくちょく姿を見せることになると思います。
オークニー以外からお越しの方々にも、もしかしたらミス・オークニーがあなたの街に訪れるかもしれません。
その時、あなたは誰の姿を拝みたいか―――――しっかり考えて投票してください。
それではこれより第五回、ミス・オークニー・コンテストを開催します!」
ワァァァァァァァァァァァァ………!!!!!
始まりを告げる花火の音と同時に、観客から大きな声援が上がった。
……凄い熱気だ。ある意味で、アリマテアの剣舞大会のときを凌駕している。
あのときも血沸き肉踊る白熱した試合見たさに血走った観客たちが、怒号と聞き間違えるほどの声援を―――――って。
ちょっと待て。
いくらなんでもおかしかないかね、それは。
見たことはないが、ミスコンってのはそんな初っ端から乱痴気騒ぎみたいに白熱するものなのか?
『女性たちが、誰が最も美しいか競う大会』だって言うんなら、此処まで騒ぎにならないだろ。普通。
「血を見せろーッ!」「こ・ろ・せ!こ・ろ・せ!」「ジーク・マリベル!ジーク・マリベル!」
「汚物は消毒だぁぁぁーッ!」「ウィリアムに死をーーッ!!」
聞こえてくる声援を拾って何とか解読すると上記にような言葉になりました。
……えと。ミスコン、なんですよね…これ。
俺に野次を飛ばしてる人まで居るっていうのは一体どういう了見ですか、アシュリーさん?
試しにアシュリーへ無言のプレッシャーを掛けてみた。
穴を開けてやろうかというくらい視線を送って数秒、不意に彼女がこちらに振り向く。
やっと俺の視線に気付いたらしい。
(てへっ。ちょっとやりすぎたかな?)
舌を出してオチャメ(本人はそのつもりらしい)に苦笑するアシュリー。
やっぱりお前の仕業かい。
更に身振り手振りで問い掛ける。
さっ、ささっ、さささっ。(一体この状況はどういうことだよ!)
ささっ、ささっ。さささっ、さっ。ささっささっ。
(いやー、"ハーレム"の女性陣がウィル君を取り合って出場するって宣伝したら無茶苦茶効果あってねー。
街のみんなもミスコンよりあなたたちの壮絶な痴話喧嘩に期待してるみたい)
こ、この女……よくもヌケヌケと…!
ボディ・サインでの彼女の話を要約すると、こうだ。
団長たちの出場が決まった段階で、彼女はミスコンを『俺たちの修羅場コント』として大々的に宣伝したらしい。
もともと此処の人たちは俺たちの騒動を何かの娯楽として見ている節があった。
ありきたりなミスコンを行うより、街ぐるみで俺たちの騒動を演出した方が祭りが楽しくなると皆判断したらしく、
看板のみがミスコンの、実態は『ハーレム御一行の公開痴話喧嘩』ショーが誕生することになったわけである。
まったく……アシュリーも余計なことをしてくれる。
道理で団長たち以外の出場者がみんな他の街の人間ばかりなわけだ。
街のみんなは知っているんだ、このコンテストが血で血を洗う戦場になることを。
観覧する者はいても、その争いに参加したがる者などいるはずがない。
……何も知らずに参加した子たちがあまりにも不憫だ。
「………」
もう一度注意深く観客を観察してみた。
……なるほど。よく見れば、観客は綺麗に三通りの反応に分かれている。
さっき言った通り、血走った目で声援(罵倒)を送っている者。
塊になった観客の後方で「やれやれ、またか」と呆れている者。
周囲の異様な雰囲気に付いていけず、きょろきょろしている者。
前者ふたつの集団はこの街の人間、それ以外はオークニーの外から祭りに参加した人たちなんだろう。
どうして此処の人間は、他人の不幸をこんなにも面白がるのか。
もうどうなっても知らないからな、俺は。
「それでは先ず、審査員の方々を紹介しましょう!
手前から南方通商組合広報部長、ブライアン・クーパー氏!」
喝采と共にクーパー氏がペコリと頭を下げた。
「そのお隣、オークニーにお住まいの方はもう既にご存知かと思いますが……
東地区一番の酒場、『横恋慕亭』の女主人、ジュディス女史です!」
こちらも喝采。同時に「なんでジュディスさんは出ねーのー?」という声が聞こえてきた。
彼女の人気が窺い知れる。なんせ夜のマドンナだから、彼女が出場しないと聞いてガッカリした男たちもたくさん居るだろう。
「更にそのお隣!世の男たちの羨望と妬みを一身に受け、ろくな死に方はしないだろう、この人!
"何でも屋ハーレム"のウィリアムさんです!」
「死ねーっ!」「ウィルー、骨は拾ってやるからなー!」
………酷い言われようでした。い、一応エールを送ってくれてるんだよな、うん。そういうことにしとこう。
「そして司会は私、アシュリー・ガウェイン・ロットが務めさせていただきます。
それでは役者も揃ったところで、早速エントリーナンバー1番から登場していただきましょう!
ミス・オークニー・コンテスト、最初の女神は――――――――――」
ついに地獄のショーが始まった。
団長たちが登場するのは最後の最後なので、それまでは穏やかなコンテストが進行していた。
踊りで魅せる者、唄を謡う者、はたまた占いをする者など本来なら実に興味深い特技が披露されたのだが。
残念ながらそのときの俺はそれを楽しむ余裕など微塵もなかった。
刻一刻と迫る三人の出番にただ身を縮こませるばかりだったのだ。
おまけに。
「それでは最後に。あちらに座っている審査員のウィリアムさんをどう思いますか?」
と、アシュリーが出場者一人一人に聞くんだからたまったもんじゃない。
しかも俺は審査員だ。審査される側の人間に否定的な返事ができるはずがない。だから。
「えっと。私はあの人のこと、よく知らないんですけど……顔は好み…かな」
…なんてちょっと顔を赤らめながら言うわけである。うん、素晴らしいリップサービスありがとう。
ちなみに、そう答えた子が舞台裏に消えた後、何処からともなく悲鳴が聞こえてきたのは俺の幻聴だと思う。たぶん。
そんな幻聴を何度か聞いた後。
「さて、ミス・オークニー候補者も残すところ後三人となりました。
お客様の中には彼女たちの登場を今か今かと待ちわびている方もいらっしゃるでしょう。
そんな方たちにはお待たせしました!
そして彼女たちをお知りでない方々は舞台からちょっと離れてご観覧くださいね」
皆が一斉に舞台から距離を置く。
そりゃもうここからはミスコンとは名ばかりの惨劇が繰り広げられるからな。見る方も命懸けだろう。
「それではいよいよ、オークニーが誇る修羅の女神たちをご紹介いたします!
エントリーナンバー、13番!何でも屋ハーレムの"銀髪の天使"、マリィさんの登場です!」
いよいよか。
これからが、ほんとうのじごくだ。
ここまで。
更新遅れててごめんなさい
おおう、どんなコンテストになるか楽しみですよ
王子ボイスで再生されたw
待ってました。
あー楽しいことになりそうな予感がヒシヒシと。
>>189 千早カワイソス…(´・ω・`)
でも智もよく頑張ったよ
まったく無意味で逆効果という
皮肉な結果におわったけど監禁されずに戻って来いよ
……無理か
ベジータワロス
Bloody Marryキタ━━━━━━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━━━━━!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
がんばれ銀髪の天使…お前がナンバー1だ!!
ブラマリが久しぶりに帰ってキター。
うん、王子とか最高。
しかし、相変わらず勢いが止まるスレだよな・・
前スレから何時間空いているんだよww
10分以内にレスがなかったらセッちゃんは俺の嫁
阻止
阻止するのは早いんだなw
>>205 恐ろしい、マリィと姫様はいいが残り一人の行動が予想つかなくて((;゚Д゚)ガクガクブルブル
ウィリアム、いい奴だった・・・
あと「横恋慕亭」という店の名前を付けた人のセンスを疑(ry
10分以内にレスがつかなかったら王子3P
山本の姐さんマダ〜(・∀・ )つ/凵⌒☆チンチン
一時間以内にレスがなかったら虎姉妹とユキさんとセツさんが俺の嫁になる
なんか言った?
30分以内にレスがなければ、漏れが千早タンに監禁される
はえーよ、1分かよorz
1時間以内にレスが無ければ生きここの奈々タソは漏れのもの
阻止
30分以内にレスがなければ雪桜さんは俺と結婚
阻止
俺の憶測だけどさ、新作の投下をまだかまだかと常時ROMってる住民が数名かいると思うんだwwwww
三十分間レスがなかったらユウキの両腕は俺が貰う
阻止。それは俺のだ
正直「〇分以内にレス付かなかったら××→阻止」の流れは好きじゃない。
ss書きの人も投下し辛いんじゃない?
きっと30分以上レスないだろうから優柔の椿タソ頂いてきますね。
だって俺の本名もゆう君だし、いいよね?
いい加減この流れを止めてみんなで神を待とう
神を待つのは性に合わないので、5分以内に5レス以上IDの違うwktkのレスがついたら短編書く
いや、そんなに待ち構えられてても投下しにくいように思うよ。
のんびりで良いのでは?
この流れを止めるのは大賛成だが
wktk
wktk
|ω・`) レスつかなかったけど短編に読ませていただけるとありがたい・・・
短いのもいいよね(*´д`*)
5分は流石に短かったので時間制限はなし。
つかもう書き始めてます、あまり腕はよくないけど。
流れをぶった切って投下します。
夜中、京之助は突然目を覚ました。
しかも悪い事に目が完全に覚めてしまい、寝ようと目を閉じても頭の芯がそれを許さない。外が明るければ爽やかな朝を迎えられる
のだろうが、あいにく太陽ではなく月が出ていた。
今日は夜食を食べてすぐに寝てしまった、ためかと京之助は思った。時刻は子の刻である。青白い月夜に蛙の鳴き声が響いていた。
京之助がぼんやりと天井を眺めていると、しだいに目が闇になれてくる。気が付けば妻の素女は京之助の隣ですやすやと寝息をたて
ていた。
京之助はむくりと起き上がると、首を回して蚊帳から入り込む月の光で青白く見える素女の寝顔をじっと見つめた。
素女は美人というわけではない。もちろん醜悪というわけでもないのだが、眉目秀麗で知られる京之助と並ぶと幾分目劣りする。
京之助は姿を見れば市中の女は必ず振り向くとまで言われているほどの美男である。そのため素女はいつも浮気の心配をし、何かと
京之助を縛りたがる。帰りの時間が少しでも遅れると根掘り葉掘りどこに行っていたのか、何故遅れたのかと問いつめてくる。その執
拗な聞き方はほとんど病的と言っていいほどで、そんな素女の態度にでくわす度に京之助は心の中で溜め息をついていた。
しかし、それは裏を返せばそれだけ慕われているという意味でもある。そのためその問いつめを不快に感じるわけではないのだが、
さすがに息苦しさを感じる。
しばらくジッと青白く染まる素女の顔を眺めていると、唐突に、昨日の夜橋の上で出会った美女の事を思い出した。
十人並の素女と橋の上に佇んでいた美女。容姿だけなら間違いなく素女が劣るだろう。月光を浴び、橋の上に佇む姿はそれだけで一
枚の絵画に匹敵するほど綺麗で、かつ何やら育ちの良さを感じさせる気品をかね揃えていた。その気品も美しさも残念ながら素女はも
ちあわせていない。
──今日も彼女は来ているかもしれない。
素女から視線を蚊帳の外に写し、丸く光る月を見て思った。昨日と同じ月夜で、時刻も
重なっているはずである、が、しかし。
京之助はその雑念を振り払うかのように首をふる。
女が一人、しかも真夜中にそう何度も来ているわけがない、と心の底でその陳腐な考えを冷笑し、仮にも妻帯者が思うような事では
ない、と戒める。
しかし、それでも京之助はあの女に会いたいという気持ちの歯止めにはならなかった。それだけ昨日見た彼女は美しく、そしてその
姿に心ひかれていた。
やがて京之助は意を決して立ち上がると、そろそろと寝床を後にした。素女はそんな京之助に気付かず、気持ちのよさそうな寝息を
たてていた。少し胸が締め付けられるような気がした。
忍び足で居間をぬけ、草鞋をはいて家の外に立つ。月に照らされて、外は今日も明るかった。
京之助は首を回してその月明かりに照らされた町並みを見渡した。昨日はあんなに新鮮に感じた夜の町並みも、今日は一段劣る気が
した。元々は見慣れた町並みなので、その新鮮さも長続きしないようである。
蛙の鳴き声だけが聞こえる道を真っ直ぐ進み、架加勢川に突き当たる。それからその川を沿って上流に向かい歩いていく。
京之助が足を前に動かすたびにゆっくりとだが、月明かりの向こうにぼんやりと橋の輪郭が浮かび上がってきた。京之助は目を細め
、その橋の袂を見つめる。昨日はそこに女がいたのだ。
陽炎のようにぼんやりとだがその全容をさらけだした架加勢橋。その袂に、あの女の姿はあった。
それはまるで写し絵のように、昨日と何一つ変わりない姿形で佇んでいた。相変わらず架加勢川を京に繋げているのだろうか、と京
之助は思いつつ、その陽炎に向かい歩いていく。不思議と女がいたことに驚きはなかった。
女はあきもせずに、橋の下の川の流れを見つめている。その女に一歩づつ近付くにつれ、京之助は自分の心臓が緊張に似た高鳴りを
みせるのを感じていた。
昨日と同じく女は京之助が側に来ても、それに気付かず、無防備に背中をさらけだしている。京之助は女の隣に体を滑り込ませ、橋
の手すりに両肘をついた。ようやく京之助の存在に気付いた女は、慌てて京之助の顔に目を向ける。やはり綺麗な女だった。
女は京之助の顔を驚いたような顔で見つめたが、それは一瞬で京之助が瞬きしている間にその様子は消え、一つ息を吸う間には何事
もなかったように川に視線を戻していた。
「そんなに京が恋しいのか?」
女にならい自分その女からも川の流れに目を移し言った。
女は質問に答えなかった。黙って川の流れを見つめているだけである。京之助はその沈黙を肯定ととり、そうか、と言った。
「何故、そんなに京にこだわる」
京之助の質問に女は先程と同じく黙って川を眺めたままだった。その様子に京之助はひとつ大きく息をついた。
その時、柔らかな風が橋の上を駆け抜けた。女の髪が風にあおられ宙にまい、むきたての桃の実のような芳香を放つ。それは今まで
かいだことのない甘い匂いだった。
「京は、私の故郷なのです」
不意に女が言う。
髪の匂いに心を奪われていた京之助は女の声にドキリと胸を高鳴らせ、気の抜けたような声をだしてしまった。その声を女に聞かれ
た、と思い何だか恥ずかしくなる。しかし女は京之助のそんな様子を気に止めず、
「いつかまた京に帰りたい。でも、もうあそこには帰れないんです」
女の声は静かだったが、蛙の声の木霊する世界を切り裂いて京之助の鼓膜に直接響いた。その声には心の悲痛な叫びと、願望がいっ
ぱいに詰まっているような気がした。
女はそれ以降黙りこくり、川の流れを見つめている。京之助も黙って川を見つめた。川は音も立てずにさらさらと流れている。
この川を眺めているとだんだん女が哀れに思えてきた。この川にどんなに思いをはせたところで、繋がるのは青く、どこまでも広い
海だ。そこは京ではない。
そう言えば、と懐かしい匂いをかいだような気がして京之助は目を閉じた。すると海と架加勢川に纏わる昔の記憶が鮮やかに蘇って
くる。
確かまだ物心がついたばかりの頃である。京之助は背中に素女を引き連れ、架加勢川に向かった。特に理由があった訳ではなく、た
だ自分が遠くまで行ける大人である事を素女に見せたかった。
京之助の家から架加瀬川までそう遠い距離ではないのだが、当時の小さい体ではそれは大冒険であった。素女も怯えて今にも泣き出
しそうな顔をしていた事を覚えている。
架加瀬川はただ静かに流れていた。それを京之助は満足気に、素女は目を輝かせて眺めた。京之助はほとりにはえた竹から笹を取り
、船を折り川に流した。笹船は緩やかな川の流れにのって水面を滑るように走り、やがて見えなくなった。その様子が素女にはたまら
なく魅力的に映ったらしく、素女も京之助にならい、笹を手に取り見よう見まねで船を折ろうとした。しかしどうしてもうまく出来ず
、すぐに鼻を鳴らして泣き出す。
京之助は慌てて素女に折りかたを教えたのだが、それでもうまく出来ず泣き声は大きくなるばかり。仕方なく二人で一緒に一つの笹
船を作り、川に流した。素女は涙と鼻水でくしゃくしゃの顔で笑っていた。
あの笹船海までたどり着けたのだろうか、と思いを笹船にはせる。笹船に乗せた初めての冒険の思い出は、色褪せる事なく京之助の胸にはっきりと根付いていた。
「川に、笹船を流してみるか?」
「えっ?」
京之助は昔の情景を頭に描き出しつつ、呟くように言った。その突飛な提案に女は驚いた様子でこちらに顔を向ける。彼女の二つの大きな瞳と京之助の視線が重なる。その瞳があまりに真っ直ぐに自分に向けられていたため、
「あ、いや。何でもない」
と、慌ててそっぽを向いた。何だか昔の自分が覗かれているような気持ちになり、恥ずかしくなって頬が熱くなる。
女は目を見開き、口を小さく開け呆気にとられている様子だったが、すぐにその見開かれた瞳が細くなっていき、やがて声を殺して笑いだした。
「何がおかしい」
京之助はムッとする。
「あ、いえ、随分子供らしい方だな、と」
その女の答えに、京之助はますますムッとする。
「ふふっ、申し訳ごさいませぬ」
女は口では謝っているが、しかし赤い舌をぺろっと出して、いたずらをした子供のように悪びれた様子なく相変わらず笑っている。
「話ぶりから随分と大人びた方だと思っておりましたから。あっ、そう言えば、お名前を聞いておりませんでした」
ひとしきり笑い終わった後、ほたるが言う。その言葉の響きに先程までの悲壮感はなかった。笹船発言が彼女の心の琴線にふれたようで、声色がずいぶんと明るくなったようである。
「私はほたると申します」
「……ほたる、か。いい名前だ。可憐なそなたの容姿にあっている」
「ありがとうございます」
ほたるは少し照れたように頬を染めた。
その姿があまりにいじらしく、少々いじわるな気持ちが胸の底につのる。
「俺は京だ」
あえて自分の本名は明かさなかった。その時ほたるがどのような反応をするか、見たいと思ったからである。
「は?」
「いや、だから俺の名前」
女は少し困惑した様子だったが、やがて分かりました、と言った。
自分の名前についてもっと言及してくるものだと思っていたが、予想に反してその言葉は一切なく、いささか肩透かしをくった気分だ
った。
それにしても、と女は言う。
「"京"とは随分私とゆかりのある名前ですね。私の故郷と同じ名前です」
「ん、そうだな」
京之助としては京に何の思い入れもないのだが、せっかく柔らかくなった彼女の物腰を再び硬化させたくなかったため、適当に相槌
をうつ。しかしかといって、京の話に持っていかれても困る。
「ところで、ほたるはどの辺りに住んでいるのだ?」
京之助は話を変えた。
「はい、今は橘町に住んでいます」
橘町は商人町の一部分で、飲み屋が集中する夜の町である。そのためか酔っぱらいによる喧嘩が多く、しかもそれらが夜遅くまど騒
ぎたてるためお世辞にも住みやすいとは言えない。しかしその分働く場所は多い。
「そうか。ではやはり橘町で働いているのか?」
京之助の問いにほたるはぎこちない笑顔を作りながら、
「え、ええ、橘町のゆ、蕎麦屋で働いております」
橘町に食事処はいたって少なく、蕎麦屋は一軒しかない。
「蕎麦屋か、橘町の蕎麦屋と言えば竹川屋だな。あそこの蕎麦はうまい。以前は俺もよく行っていたぞ。もしかしたら以前そこで会
った事があるかもな。次に竹川屋へ行った時には是非安くご馳走してほしいものだ」
ほたるは、しまった、と顔をしかめたように見えたが、見間違いかもしれない。それは確信をもつには短すぎた。しかし、それでも
さっきのほたるの表情が心の底にひっかかる。
「どうした? 何か悪い事でも言ったか」
京之助の言葉にほたるは慌てて笑顔を取り繕い、いえ何でもありませんと言った。そして、その後でいかにもおずおずと言いづらそ
うに、
「あの、出来れば職場には来ないでくれますか」
京之助は怪訝そうな目をほたるに向ける。
「いえ、そういう意味ではないのです。ただ、その恥ずかしいんです」
ほたるは下を向いた。それからしばらくの沈黙が続いた後、
「あの、私そろそろ帰ります」
ほたるがうつ向いたまま言う。
「そうか、送っていこうか?」
「いえ、大丈夫です。それより、約束してください。仕事場にはこないって」
そんなに自分の働く姿を見られるのが恥ずかしいのだろうか。その考えが理解出来ず、ますます首をかしげる。
しかし、ほたるの目は真剣そのものだった。
京之助は大きく息をつき、うなずく。するとほたるはよかったとばかりに文字通り胸を撫で下ろした。
「あの、それと、もうひとつ」
ほたるは胸の前で両手を組み、祈るような姿勢で、
「明日もこの時間にこの場所で会えませんか」
と言った。京之助の瞼の裏に一瞬素女の顔が浮かび上がったが、それでもうなずいた。心の天秤がゆっくりと傾き始めていた。
翌日、京之助はほたるとの約束を破った。御所院時代の同僚に誘われどうしても断りきれず、ほたるが働いているという竹島屋へ行
ったのである。
竹島屋はそこそこに客で込み合い、店の物もしきりにその中を往復していた。京之助は内心びくつきながらその様子を眺めていたが
、幸いにもその中にほたるの姿はなかった。恐らく非番なのだろうと、胸を撫で下ろしながらも少し残念にも思った。特に不審には思
わなかった。
京之助は同僚を先に店の外に出し、自分は全員の代金を払いつつ、中年の女将と思われる女にそれとなくほたるの事を聞いてみた。
女将と思われる女は終始怪訝そうな表情を浮かべていたが、やがて想像もしていなかった事を口にする。
「ほたる? 誰だい? それ」
長くなりましたが、今回は終りです。
未だ嫉妬の陰見えずですが、イメージ的に水夏の第三章なのでしばらく待っていただきたい。
「ゆ」か・・・
素女さんは幼馴染だったのか
不利だなあ・・・
女郎か
投下乙であります。無粋なので予想はメール欄に。
短編?書いたけどwktkレスないし。
書きあがったのですかwktk?
でしたら遠慮なさらずにささッドーゾッ
wktk
wktk
そろそろ寝ようと思っていたところについに5レスが溜まりました。
ID:q9CE7SKC氏 ID:LbTao5j+氏 ID:841x2dVL氏 ID:M9iGwK/6氏
ID:YMuGOtb+氏 ありがとうございます。
2時間で書いた拙作ですが投下します。
勇者様、お慕い申し上げます。
勇者様と初めて出会ったのは1年前、城の謁見の間でしたね。
代々勇者の称号を帯びている一族の貴方は王様の依頼で魔王の討伐に行くところでした。
でも領土防衛のために各国がそれぞれ大規模な正規軍を出せないという理由で、
少人数の特別部隊を討伐に向かわせるなんて。
それを知ったときあの王には殺意を抱いたものです。
なにしろ他の国が国の面子を掛けて名の知れた冒険者やお抱えの勇者を出しているのに、
私たちの王と来たら代々勇者の一族とはいえ傍流のしかもまだ子供を出すのですから。
でも、今ではわりと感謝もしています。
そのおかげで勇者様と出会えたのですから。
そして私は王命で勇者様のお供をすることになりました。
覚えていますか?
他の仲間を探すため冒険者登録所に行くも、私を見るや誰もが仲間を断る状態。
私は魔王に呪われた魔女の家系。勇者様が居なければ子供にも石を投げつけられます。
それでも勇者様は私に向かって笑いかけてくださいました。
そして結局ふたりだけで魔王討伐の旅に出ることになりましたね。
覚えていますか?
お互い旅は初めてで最初の頃は地図の読み方や食料を得る狩りなどで失敗してばかり。
襲ってくるモンスターも剣が効かない敵や私の攻撃魔法が効かない敵も沢山いました。
それでもお互い助け合って笑いあって、どんな困難も乗り越えてきましたよね。
覚えていますか?
魔王の城に侵入するアイテムを見つけたとき、他の勇者のパーティーは既に全員が
全滅したという報を知りましたね。
それまで分散していた魔王の追っ手が私たちに集中することを知って恐怖で眠れない夜もありました。
そんなときはふたりで一枚の毛布に包まって語らいながら一夜を過ごしましたね。
覚えていますか?
決戦前夜に悔いを残さないためにお互い愛の告白をした夜のことを。
お互い生き延びたら必ず添い遂げようと誓いましたね。
勇者様は私の初めての相手であり私は勇者様の初めての相手なのですよ。
勇者様を受け入れたあの夜の痛みと感動は今でも覚えています。
そして覚えていますか?
討伐後の謁見で勇者様との結婚の願いを許されなかった私を。
逆に魔王を倒した英雄の勇者様に褒美に王女との結婚を命ぜられたときのことを。
勇者様のことは伝聞以外なにもしらないあの女。
世界を救った勇者を婿に迎えると言う政治的な理由を知らないあの女。
無邪気に勇者様に纏わりついているあの女。
憎い。あの女が憎い!勇者様の伴侶と言う地位だけを欲しがっているあの女!
王女というだけで私が文字通り命を賭けて手に入れた勇者様の愛を真横から盗んだあの女!
私が勇者様に翻意を促そうとしたときに兵を使って私を拘束したあの女!
私が地下牢に幽閉されているときに晩餐会で勇者様とワルツを踊っていたあの女!
私が毒入りの食事を食べさせられて苦しんでいるときに勇者様を寝室に無理矢理連れ込んだあの女!
あの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女が
あの女があの女があの女があの女があああぁぁぁぁ!!あのメス豚は殺す!あのメス豚は殺す!
あのメス豚は殺す!あのメス豚は殺す!あのメス豚は殺す!あのメス豚は殺す!あのメス豚は殺す!
アノメス豚ハ殺ス!アノメス豚ハ殺ス!アノメス豚ハ殺ス!アノメス豚ハ殺ス!アノメス豚ハ殺ス!
アノメス豚ハ殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!
殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!殺ス!
こうして瀕死の状態で脱獄した私は王国に禁呪で呪いを掛け…………
………呪いの反動で魔王となりました。
勇者様、お慕い申し上げます。
あれから60年が経ちましたね。
もしふたりが結ばれていれば今頃孫たちに囲まれて幸せな日々を過ごしていたはずです。
昨夜部下の魔将から報告がきました。
私たちの仲をを引き裂いたあの国はもうありませんが、別の国が用意した勇者と女剣士が
私を討伐するためにもう城の近くまできているそうです。
そして今、玉座の間に繋がる階段を駆け上がる音がします。
勇者様、もし私がそちらに行ったら60年分の愛を一度にくださいね。
………ところで今度の勇者と女剣士も、私たちみたいになるのでしょうか。
投下終了。
次回書くとしたらもっと嫉妬分とデレ分を増量しよう…orz
GJ。こういうのいいねえ
またなんかできたら頼みますwktk
魔王を倒した勇者が次の魔王になるDQ3のアフター小説を思い出した
今更だが…
去年開催して三度目の第五回ミス・オークニー・コンテストわらた。とてつもなく胡散臭い
むしろオルステッドの方を・・・
むしろアスピックスペシャルを……
「それじゃあマスター、今までありがとうございました。」
あれから………セレナは退院してから一か月で記憶が戻った。だが、なぜか葵のことだけは忘れたままだった。このことを思い出させるのが彼女の幸せか否か……
そして、俺達は『Fan』を止めた。あれだけの騒ぎを起こした為、さすがにいずらいからだ。マスターには悪い事をしたが、どうやら新しいアルバイトが掴まったらしい。
マスターは、知ってる顔がいなくなって寂しいけどね、とぼやいていたが。
「また客としても顔出します、それではまた。」
挨拶を済ませ、外へ出る。最後なんだから、ちゃんと周りのゴミ拾いも済ませるか。
ぐるっと一周……とくに目立つゴミも無く、表まで行く。するとそこに…
「うーん…どうしよう……」
そこには、レプリカのメニューを見て悩む……
「チョコレートケーキ……おいしそうだな…」
「あ……」
そんな彼女に近寄ると……
「え?な、なんですか?」
「……いや、その…」
どうやらいつの間にか彼女の後ろに立っていたらしい。まずい、このままじゃ怪しい人扱いだ。
「俺、ここの元店員だったんだけどさ、おいしいから食べてみな。」
「はぁ……そうしてみます……」
まだ怪しそうに俺を見ながら、店に入っていく。
「ふう……」
よくよく見ると、彼女の髪は短く、もっと活発そうだった。
……葵のことは忘れなくても、思い出として大切にしていきたい。そして…一番大切なのは………
「ハール〜〜〜!」
いつも俺を想ってくれた彼女だ。これから先、いつまでも彼女と一緒に生きていこう…………
セレナ・End
このまま終わりです。うまくまとめられなかったorz
Bルートも今日中に投下開始します。
楽しみだぜ
268 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/09(月) 21:46:53 ID:T5bZuAI9
保管庫が更新してある事に誰も触れてないな。
|ω・`) SS保管庫なら一週間ぐらい前に更新していただいたのですが・・・違う保管庫なら申し訳ない・・・
なににしろいつも過去の名作が読めるのは阿修羅さんのおかげ
>>268 あの時のグッジョブの嵐を知らぬと申すか。
では投下致します
第16話『マナマナ』
次、目覚めたときは全てが終わっていた。
猫の一杯の模様した布団に寝かされているが先程から身動きができない。
動かされるのは首だけ。ちらほらと動かしても、俺がどんな状態になっているのかはさっぱりとわからない。意識を失う前。
そう。
徐々に頭の回転が冴えてきた。
雪桜さんに猫の尻尾で気絶させられたんだったけ?
決してありえない奇跡体験アンビリバボーを見せられた。
世の中にはまだまだ常識では理解できないことが多いと納得しながらも。
俺は今自分がどんな目に遭ってるのか、考えたくもなかったがわかってきた。
「あらっ。起きたんですね」
猫耳搭載装備の雪桜さんがベットの上に座って、俺を幸せそうに眺めていた。
つぶらな瞳は☆型にして見つめているのは気のせいだろうか?
不意に尋ねて見たかったが、本能がそれを拒否している。今聞いてしまうと取り返しのつかない事態になると危険信号を鳴らしているように。
「気分はどうですか?」
「どうして、俺は動けないんだよ」
雪桜さんは笑顔を崩さずに答えた。
「だって、桧山さんを逃がさないようにちゃんと固定したんだから」
「えっ?」
被せていた猫の布団を取り除くと、俺は思わず息を呑んだ。
俺の体がしっかりと縄で腕と足を絞められていた。
冗談ではない。
これはまさか……。
「桧山さんを私だけのモノにするために今から調教しなきゃいけないの」
そう、これは立派な監禁だ。
最近、プレイしたエロゲーでは想いを伝えられずに冷たくされていたヒロインが好きな男の子の気を引くために
自宅へと呼び出し……。監禁してから、自分を好きになるまで調教を繰り返していた。
その男の子は黒化したヒロインにより、恋人、生活環境、友人関係、仕事など彼の人生で長年築いていた物を壊されてしまう。
拠り所を失った男の子はそのままヒロインに心を寄せることでしか生きることができなくなるのだ。
その後、立派に洗脳された男の子はヒロインに依存してしまうというお話であった。
んなことが現実で起きてしまうとはマナマナもびっくりって感じだ。
よくよく考えるとこの展開は俺と雪桜さんにぴったり当てはまる。
俺は雪桜さんが赤坂尚志の娘だからと判明してから、今まで冷たく突き放してきた。
雪桜さんは俺の事を好きだと言ってくれた。
でも、俺は乱暴に断ってしまったので雪桜さんは実力行使にきたってことであろう。
「うふふふふっっっ」
やばい。
雪桜さんの瞳に生気は篭もっていない。
どこか壊れた精神異常者のような笑みを浮かべている。
視線を合わせるだけで一体何をやるのかさっぱりとわからない。
ただ、俺は雪桜さんが恐いと思ったのはこれが始めてだ。
「お母さんは単身赴任で夏休み中には戻りませんから。だから、いっぱいいっぱい楽しみましょうね」
「や、や、や、やめてくれ」
雪桜さんは俺の体を覆うようにゆっくりと抱きしめた。
柔らかい感触が胸の鼓動が高鳴る。暖かい体温を感じてしまうと俺は何故か不謹慎ながらも安らぎを覚えた。
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ」
俺の頬を雪桜さんの頬が甘えるように擦り付けていた。
彼女の表情は至福に満ちた芳情を浮かべていた。その行為を飽きることなく擦り付けられる。
「桧山さんが私のモノになるなんて夢みたい」
俺の胸に顔を当てて、雪桜さんは目一杯甘えていた。
ヤバイです。
俺は洗脳されそうです。
数時間後。
人間はどんなことでも慣れるものだと実感していた。
雪桜さんは俺の胸の上で安らかに眠ってしまっている。
結局、雪桜さんは雪桜さんだってことだ。それ以上のプレイは彼女自身が恥ずかしくてできない。
ただ俺に甘える行為を続けている内に寝てしまった。その寝顔はとても可愛らしくて、寝言がたまたま呟く。
動けない俺はただ重たいと感じながらも寝る事以外は何にもできない。
もう、寝てしまおうか。
監禁生活の事は後々になって考えればいいのだ。雪桜さんの言う通りにしていれば、殺されることもなく虐待されることもないだろ。
基本的に穏やかな雪桜さんのことだから。きっと、大丈夫のはず……。
いや、まだ一日目だから何が起こるかわからないけど。
きっと、どうにかなるさ。
そういや、虎はちゃんと自分で飯を食べているのか
どうでもいいけど。
ついに禁断の監禁ネタを発動させましたw
マナマナ以上の恐怖はないと思いますのでご安心を
最近殺伐としてたからちょっと和んだw
GJ (´・ω・)b
虎の扱いが・・・
それはともかく・・・雪桜可愛いよ、雪桜(*´д`*)
タイトルで一瞬(((( ;゚Д゚)))ガクブルしたが、やっぱりねこかわいいよねこで安心した
思考の隅に放置プレイされた虎の逆襲はあるのか!?
タイトルが直球すぎるw
タイトルでトラウマが……。
君望やって初めてのエンドがアレだったんだよ……。
?
>>280 貴殿は修羅場に愛されている、自信を持っていい
君望、初回は緑の娘に行けないよ
緑以外眼中になくてセーブデータ落としてきたんだろ
|ω・`) 回想見るためにセーブデータ落としたあと、プレイを始めたのか・・・
緑の子は途中までは良かったのになぁ・・・透子さんレベルが丁度いい(*´д`*)
偶然なったみたいに書いてるのに
286の解釈は無理ありすぎw
「まだ早いな……少し時間潰してからいくか。」
なんの目的無く、ふらふらと院内を歩く。購買で飲み物を買い、6階へ。……なんでこんなときたんだろう。
また歩き始める。
・
・
・
・
・
・
・
この何気ない散歩は………俺は信じない質だが……これは運命だったのかもしれない。
・
・
・
・
・
・
「………」
歩きながらぼーっと病室のドアに付いている、名前のプレートを見ていく……そして……617号室……
『喜瀬 葵』
「え……?」
葵って……あの、葵なのか?あまりの驚きに、ドアの前で立ち尽くしてしまう。もしかしたら同姓同名?いや……でも……
こうなれば直接入って確かめるしかない。
ガチャ
ゆっくりとドアを開け、病室に入る。きれいにされた、無機質な部屋。花瓶に入れられた花々。風に揺れるカーテン……そして…ベットの上に…
「あ、お、い……」
体に管をまかれ、呼吸器を着けたまま寝ている。頬は痩せこけ、いかにも弱っていると言う顔だが、間違いなく葵だった。
生きていた……葵は……生きていたんだ!
「ああ……よかった…」
安堵のせいで、その場にしゃがみ込んでしまった。愛する葵が生きていたこと。それは生まれて始めての喜びだった。
でも……葵が生きているとなると、あの葵の霊はどう説明する?
「……あれは、生霊ってやつか?」
よく漫画やドラマで使い古されたネタだが……まさかリアルでそれを体験するとは……
じゃああの葵が戻れば、実体は意識を取り戻すのか。……どっちにしろ霊の葵を見つけないといけないのか。
「…待っててくれよ、葵。」
髪を撫でる。ひさびさの感覚に、胸が踊る。ここまでなにかに心を揺れ動かされるのは久しぶりかもしれない。
そして部屋を出て、セレナの病室に。……葵が生きているとなると、セレナとの関係もまたややこしくなるってことか。
だとしても、葵が生きていた事以上の嬉しさはない。いかん。たぶんしばらくはこのことで頭がいっぱいでおかしくなるだろうな、俺。
セレナの方も、まだ意識は戻らなかった。先生曰く、まだ戻るのにはしばらく時間がかかるらしい。そうなると、葵の霊を探す事に力を入れられる。
……とはいえ、今日は喜び過ぎて疲れた。
それから寄るところもなく、直で家に帰った。今日はもう葵が生きていたことで祝杯をあげたいぐらいだ。
冷蔵庫を開けてみたが、ろくに入ってなかった。バイト代が入るのにまだ日にちがあるが、まぁかまわない。
軽い足取りでアパートを出て、コンビニへ。酒とつまみを大量に買い、帰宅。
そして夜………
ゴクゴクゴク……
「あ゛〜〜〜!うまい〜。」
ちょっと寂しいが、一人で乾杯。もう今日はなにもする気が起きない。とにかく飲んで飲んでのみまくってやる。酔い潰れてもしばらくバイトは無いし。
「うぅ……葵……よかったぜー……」
男、晴也。19歳にして男泣き。泣きながらその場に寝転がると………
「うぁ…?」
部屋の隅に何か紙切れが落ちていた。普段なら気にしないんだろうが、酔っていたせいか、一々拾いに行く。するとそれは……
「なんだ。」
例の事故の新聞だった。ああ、まったく、こんな気分のいいときに嫌なもん見せやがって……あー……眠い……このまま寝ちまえ………
パサ……
『○月×日
本日夜、△□商店街を抜けた大通りで、大型トラックによる衝突事故が起こった。原因は運転手の居眠りによるもので、その場にいた男女二人が巻き込まれ、一名が死亡、もう一人は意識不明の重体……』
遅れてスマソ。
Aとは設定が違う、パラレルと考えてください。新聞に重要なヒンt…げふん
|ω・`) b作者様GJっす
ヒントでなんとなくネタがわか(ry
ちょっと懐かしいものを思い出した・・・
それはともかくとして、どう展開するのか楽しみっす(*´д`*)
GJ!葵生存フラグキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━????
>セレナとの関係もまたややこしくなる
これはかなり期待できるかもしれん(*´Д`)ハァハァ
くそっ葵が生きてるフラグで一瞬でわかっちまったかもしれない
なんでハーレムならんねん(´・ω・`)
っていうかハーレムエンドになった作品ていくつある?
とりあえずドローや双方出産とかも含めても
合鍵、妹実兄、広き監
ぐらいじゃね?
あ、そう言えば沃野も双方出産だったっけ
忘れてたorz
298 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/11(水) 00:27:09 ID:8LTG5Hi5
もしかして晴也が幽霊
>>298 おいおい。予想は自分の頭の中でだけやっとけって。
>>297 あれはハーレムEDとは言いがたかったけどな
スレ的にはハーレム
>>302 >スレ的にはハーレム
もしかしてこのスレ的には複数の女性から嫉妬修羅場されるのがハーレムなのか。
黒セレナに期待
……やっぱり気になる。
何故かこのまま立ち去ってはいけないような気がする。
私はもう一回……もう一回だけドアを開けてみる事にした。
ガチャッ……
「………………」
「………………」
「「………………」」
……思い出した、私が何を忘れていたのかを。
そこには何故か、まるで着衣水泳をしたかのように全身ずぶ濡れになったスーツ姿の女性が立っていた。
いえ、それだけじゃなく眼からは滝のような涙が流れ落ちていた。
さらに顔は濡れに濡れた長い黒髪によって完全に隠れており、妖怪かと見違えそうになる。
その状況は、なんと言うべきなのか……非常に声をかけずらい。
いっその事見なかった事にしてドアを閉めてしまいたい衝動に駆られる。
思わず眼を逸らすと……アスファルトもまたずぶ濡れとなっており、ついさっきまで比較的激しい雨が降っていた事が窺える。
今度は空を見上げる……おかしい、雲はほとんど無い。
狐の嫁入り……にしては地面の濡れ方が激しすぎるような気もする。
狐の嫁入りで思い出したが、もう随分と昔に取材した……
「……ふっ……ふええええぇぇぇぇんん……」
妙に子供っぽい泣き声を聞いて我に返った。
まただ……また私の思考がこの子(身長は私よりも高いが)を無視しようとした。
一体……いえ、今はそれを考えるべき時じゃない。
と言うよりも、今そんな事を考えたら今度こそこの子の事を完全に忘れ去ってしまうだろう。
とにかくまた忘れてしまわない内に話しかけてみよう。
「あの……どちら様でしょうか?」
恐る恐るではあるけど……私はなんとかそれだけ口に出した。
「白羊出版の者です……」
そう言うと彼女は胸のポケットから名刺を取り出し、差し出してきた。
が……
「読めませんが……」
「……あうっ」
その名刺だった物は雨に濡れインクが滲み、とても文字を判別できる代物ではなかった。
とにかくこんな所で話をする理由は無い。
何よりこのままだとこの人が風邪をひいてしまう。
「とりあえず中に入りませんか?お風呂沸かしますから」
……その提案は、あっけないほどにあっさりと受け入れられた。
……なんて状況なんだろう。
どこかの雑誌の記者が来るって聞いて、それから来客があって、その客は現在我が家の風呂に浸かっている……
意味不明だった。
「緑、さっきのチャイムは?」
騒ぎを聞きつけたのか、京司が不安そうな顔をして出てくる。
「お客さん……だと思うわ。たぶん」
「たぶん?」
……そうとしか言いようが無い。
「その……率直に言って何があったんだい?」
「……かくかくしかじか」
「小説は便利だね……」
流石にこんな会話はしなかったが、私は今自分が見てきた事を適当にかいつまんで話した。
この家を訪問してきた女性が何故かずぶ濡れになって玄関の前に立っていたと。
「………………」
京司は世にも奇妙な顔をしていた。
実際のところ、私も反応に困る。
「その人、記者の方だったんじゃないのかな?」
「私に聞かれたってわからないわよ」
そんな事を話していると、脱衣所から物音がした。
どうやらあの人がお風呂から上がったらしい。
「良いお湯でした〜」
現れたのはこれでもかって程にほんわかした顔と声だった。
さきほどの女性……こうして改めて見るとかなりの美人だった。
見ているだけで気分が和むような雰囲気、体型は細く余計な肉は一切無い。
その分胸の大きさは私の半分も無いような気がするし、良く見るとうっすらとあばら骨が浮き上がっているのだが……
「本当にご迷惑をおかけしました〜」
再び妙に間延びした声が辺りに響く……なんて事を考えている暇は無い。
この人と対峙している間は思った事はすぐに言わないと忘れてしまいそうになる。
「服を着てください」
「はい?」
「服を着てください」
「何で全裸なんですか!?貴方は!!」
「えっと……着ていた服が濡れてしまいまして……」
「一応、代わりの服は置いておいたんですけど」
「えっ!?そうだったんですか?」
……だんだんこの人がどんな人なのかわかってきたような気がする。
京司が盲目だったからよかったものの、せめてバスタオルを巻く位はしてきてほしかった。
……と、ここでさっきから京司が身じろぎ一つしていない事にきづいた。
まるで彼女を凝視ているのかと錯覚させる表情で、ただ彼女の居る方向を向いていた。
そして……意を決してかのように口を開く……
「御影さん!?」
「京司……くん?」
その瞬間、私の胸が深く鋭く痛んでいた。
熱を出して倒れてたり、公演してたり、コミックメーカー3をいじってたりと忙しい日々が続いておりましたが、
なんとか小説を書くだけの時間がとれるようになりました。
ハッキリ言って不撓家も過保護も恋盲もほとんど進んでおりません。
少し前からコミックメーカー3を使ってちょっとしたゲームを作る事にチャレンジしておりますが、
こっちは修羅場とか全く関係ありません。(そもそも二時創作だし……)
そんなシベリア!を見捨てないでいただける方が一人でも居てくだされば幸いです。
……なお、当分の間はゲーム作りに気力と体力を集中させます。
故に作品(特に不撓家)の執筆速度は亀よりも遅くなると思います。
ごめんなさい。
>>309 乙です!
wktkしながらゆっくり待っていますとも、ハイw
>>309 GJ
体調を崩さぬようのんびりとお願いします
投下いきます。
朝、高校の前に黒塗りのリムジンが現れた。
長い体躯が威圧感を感じさせるその車は、今日も所定の位置に一センチと違わず駐車する。
住宅街に位置する学校に現れるにはあまりに不釣合いな代物だが、2年間続いている毎朝の光景なので、気に留める者は少ない。
運転席からサングラスを掛けた黒づくめのスーツ姿の巨漢が現れ、後部座席のドアを開けると恭しく頭を下げた。
当初は物珍しさから多くの者があからさまに好奇の視線をぶつけていたが、今ではわざと目を逸らしている者さえいる。
この怪しげな巨漢への恐怖もあるが、それ以上に生徒たち――教師たちも――を畏れさせる存在がいるからだ。
そして、その原因である少女が姿を現した。
まず降りてきたのは、制服姿でポニーテールの少女。
短刀を思わせる小柄ながらしなやかな身体つきは、鋭い目元と相まって豹のような雰囲気を醸し出していた。
左手には竹刀袋に包まれた長い棒状の物を持っている。
次いで、同じく制服姿の、艶やかな長い黒髪の美少女。
いや、美少女と言う点では前述の彼女も該当するのだが、女としての未成熟さが残るポニーの少女に対し、こちらは完成された美貌とスタイルを持っていた。
制服を窮屈そうに押し上げる胸の膨らみと白磁のように美しい肌は、同年代の少女たちとは明らかに一線を画している。
だがその美しさとは対照的に、能面のように感情が見えない表情が異様さも感じさせる。
この少女こそが、学校中の誰もが畏れる存在。
歴史ある名家であり、今も多大な財と各界への影響力を持つ血、神川の本家の一人娘。
神川藍香だ。
走り去るリムジンを見送り、二人の少女が並んで歩き出す。
登校する人垣が左右に割れるが、彼女たちは気にする様子も無い。
ポニーの少女は鋭い目元を幾分緩ませ、藍香に話しかけた。
「お嬢様、今日は何だかご機嫌ですね?」
「・・・・・・・・・」
「え、『分かる?』ですって? 勿論ですよ。そんな風にしてたら一目瞭然です」
一見全くの無表情だが、ポニーの少女には分かるらしい。
だがそれも、藍香と何年も共に居る彼女なら当然かもしれない。
ポニーの少女の名は鬼道綸音(きどう りんね)。
神川の傍流の末端の家の子で、藍香より2つ年下の16歳。
藍香の傍仕えの付き人の役目を担う少女だ。
いくら同年代とはいえ、こんな末端の家の子供を本家の一人娘である藍香の付き人にするなど本来ならありえない。
しかし、オカルトに手を出し誰の手にも負えなくなりつつあった藍香と何故か綸音は仲良くなり、こうして付き人を命じられている。
付き人と言ってもその関係は友人、もしくは姉妹に近い。
藍香にとってそうであるように、綸音にとっても藍香は最初の友人であり、2人は互いを得難き存在と思っているからだ。
流石に屋敷や社交場では2人とも立場を考え上下関係を思わせる行動を取るが、普段は気軽に振舞っている。
今年綸音がこの高校に入学したことで一緒に居られる時間が増えたのは、藍香にとって喜ばしいことだ。
それに、学校に監視をよこす祖父の部下がいなくなったのも嬉しい。
綸音が学校にいるなら報告は彼女に聞けばいいということだろう。
それまでは遠方にこちらを伺う人の気配を感じる度に、呪いを掛けて――と言っても『烏呼び寄せ』や『地滑り転倒』程度だが――撃退してきたのだから。
去年まで大して楽しくも無かった学校生活は、今ではかけがいのないものになっている。
綸音のこともそうだが、それ以上に藍香の心を奪って離さない存在がいるからだ。
歩く2人の話題は、その最大の理由に関してに移ろうとしていた。
「お嬢様がそんなに嬉しそうにしてるとなると・・・・・・高村先輩絡みでしょう?」
「・・・・・・」
無言で俯く藍香。傍目には多少頬が赤らんだ程度にしか見えないが、彼女的にはこれでも盛大に照れているらしい。
藍香の智への想いは、男女の機微に聡いわけでは決して無い――むしろ鈍い――綸音にもバレバレだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「え? 『今日はどうやって高村先輩に楽しんでもらうか考えてたら、それだけで楽しくなってきた?』
ふふっ、そうですか」
そう言って、綸音は優しく笑った。
智のことは綸音も知っている。
接点は少ないが、綸音にとって藍香に次ぐ2人目の友人だし、その快活で誠実な性格は彼女も認めるところだ。
趣味であるオカルトで、オカルトに理解を示す想い人と共に過ごす。
藍香にとってこれ以上ない至福の時間だろう。
それが分かるからこそ、邪魔しないようにと綸音も放課後のオカルト研究会には顔を出さないようにしている。
「ではお嬢様、また後ほど」
「・・・・・・」
昇降口にて2人は別れる。
本来なら付き人として常に一緒に居なければならないのだが、それは息の詰まる堅苦しさを生むという藍香の意向でされていない。
まあ、藍香にちょっかいをかけようという愚者はこの学校には存在しないのだが。
軽快に階段を上っていく綸音を見送りながら、藍香は心の中で小さく謝る。
『智に楽しんでもらう』、その言葉に嘘はないが、言葉の示す意味合いが以前と異なっていることまでは、綸音には話していない。
最も身近な付き人に、藍香は隠し事をしているのだ。そしてその隠し事とは勿論、吸血鬼化した智のこと。
こればかりは、いくら綸音でも話すわけにはいかない。
たとえ普段は常人と変わらないとしても、智は間違いなく人外の化物なのだ。
綸音が絶対に黙っていると言っても、どこから漏れ出すか分からない。
綸音を信じる信じないという問題ではない。情報とはそういうものなのだ。
それに。
「・・・・・・・・・」
これは、2人だけの約束。2人だけの秘密。2人だけの誓い。2人だけの秘め事。
そう思うだけで、藍香の心に甘い衝撃が走る。
吸血鬼化のことを知っているのは智と藍香の2人だけ。
智は誰にも知られたくないと言った。それは、彼の幼馴染の少女も例外ではない。
『あいつには・・・千早にだけは知られたくない。
誰にだって知られたくないけど、あいつに知られるのだけは絶対に嫌なんだ・・・』
そう言って、力なく項垂れていた智を思い出す。
知られたくないと言うのは千早を嫌ってではなく、大切に思っているから。
それを聞いた時の藍香は、湧き出す憎悪を抑えるのに本当に苦労した。
智に悲痛な表情をさせ、そこまで思われている小娘。
何も知らず、ただ智に纏わり付いて。
幼馴染という理由だけで傍にいて、それが許されて。
智の優しさに付けこんで、恋人気取りであれこれと必要ないところまで世話を焼く。
煩わしい。
そして妬ましい。
胸が焼け焦げそうなほどに。
でも、それももう終わる。
智と千早の間には、決して越えられない一線が引かれたのだ。
吸血鬼となった智の帰る場所に、ただの人間である千早はなり得ない。
たとえ千早が事実を知ったうえで智を求めたとしても、彼は決して応えないだろう。
智の帰る場所は、藍香の胸の中しかないのだ。
「・・・・・・・・・・」
昨日の、いつになく大胆にむしゃぶりついてきた智の体温を思い出す。
焦ることはない。
あの愛しい少年が自分だけのものになるのは時間の問題だ。
もうすぐ智は藍香に堕ちる。
一度でも手を出してしまえば、堰を切ったようにその肢体に溺れるだろう。
そうなればもうこちらのものだ。
智の実直な性格を考えれば、関係を持った女性を放り出すなど出来まい。
身体からの関係でもいい。まずは智を自分から離れられないようにして、それからじっくりと心の関係も育んでいけばいいのだ。
吸血鬼としても、男としても、藍香がいなくては生きていけないように。
そう考えれば、今心を焦がす嫉妬の炎さえも、近い将来に訪れる歓喜の時を彩る花のように思える。
さあ、今日はどうやって智を迎えよう。
もっと大胆に、際どく脱いで誘ってみようか。
いっそ、『抱いてほしい』とストレートに告白してみるのもいいかもしれない。
「・・・・・・」
彼のことを考えるだけで心が弾み、身体が熱く火照ってくる。
――いけない、我慢しなくては。換えの下着は部室に行かないとないというのに。
自身でも持て余すほどの機嫌のよさに胸を高鳴らせながら、藍香は教室に入っていった。
今回はここまで。筆がすいすい進んだおかげで結構早く更新できました。
大方の予想通り、藍香再登場です。
本当に久々なので、まずは状況と内心の描写に終始しました。物語が動くのはちょっとお待ちください。
代わりと言っては何ですが、ちょっとしたおまけを・・・。
・身長
千早<綸音<委員長<藍香<(結構大きな差)エル<智
・スタイルのよさ(主に胸)
綸音<千早<委員長<(越えられない壁)エル≦藍香
という感じ。参考(何の?)になれば幸いです。
>>318 GJ
エルが一番きょぬーだと思っていました。
GJ!
藍香がそんなに巨乳だとはw
物語はきちんとした内面描写があってこそです。
GJ。
GJ¢(・ ・*)メモメモ、藍香タソは巨乳っと
藍香久しぶりの登場キタこれwそして巨乳きた。
あとは智が前回の最後でやばいことになっていたのでそっちも気になりますね。
作者さんGJでした
むしろ綸音が千早よりひんぬーなのがむしろいい!
GJ、綸音GJ
「おーい、ウィル。そろそろ見回りの時間じゃないか?」
「……解ってる。解ってるんだけど……」
俺は同僚に苦笑いを浮かべてから、ちらりとマリカの方を盗み見た。
城の詰め所にて。
今日は俺たちが街の見回り当番だった。
同僚に指摘された通り、間もなく城を出なければならないというのに、未だ詰め所で二の足を踏んでいる。
別に忘れていたわけではない。俺の方はいつでも出発できるのだ。ただ……。
「マリカ。時間だ。そろそろ出ないと」
「もう少し。…もう少しだけ待ってくれ」
マリカがすっかり詰め所に根を張って、席を立とうとしないのだ。
そう、今日の見回りはマリカとペアを組むことになっている。
いつもは騎士の仕事を生真面目にこなすのに、今日に限って任務そっちのけで本を読み耽っている。
「………はぁ」
しかし……まさかマリカが重度の本の虫だとは思わなかった。
読むのだとしても実用書とか…そう例えば騎士のための指南書の類くらいしか興味がないのだと勝手に想像していたのだが。
今彼女が熱心に読んでいるのは、間違いなく小説だった。
「……ッ」
ぺらりとページをめくるマリカ。
残りのページから察するに、もうクライマックスらしい。
……それにしてもなぜあんな険しい顔で読むんだろうか。まるで何かに耐えるように、時折眉根をひくつかせている。
その表情がちょっと恐いので、時間がないにも関わらず俺はじっと彼女が本を置くのを待っていた。
(そろそろ限界だな…)
流石にこれ以上は待てない…とマリカに声を掛けようとした、まさにそのとき。
「おのれッッ!!!
何が『もう、つかまっちゃった……』、だ!!恥を知れッ!!」
爆発したように本を床に叩きつけた。
もんのすごい形相だ。殺気すら立ち込めている。
その勢いに詰め所内にいる全騎士がビクリと身を震わせた。
小説にここまで怒りをぶつけられる人間など、いかに世界広しと言えど彼女くらいなものだろう。
視線で人を殺せる、という表現がぴったりの顔だ。
「ケノビラック!!」
「うわっ!?はい!」
そんな表情でこちらを睨みつけてきたもんだから、思わず悲鳴を上げてしまった。
「見回りの時間なのだろう!呆けてないでさっさと行くぞ!」
いかり肩で詰め所を出て行くマリカ。
すれ違う同僚たちが皆恐れをなして道を譲っていく。
「……って、ちょっと待って!」
慌てて彼女の背中を追いかけながら、俺は世界の理不尽さについて考察していた。
―――――――――・・・・・
「……にしても、マリカがあんなに熱心に本を読むタイプだとは思わなかったよ」
城下町の様子を見回りながら、隣のマリカにそう切り出した。
「…いや、普段は小説などは読まないのだが……。
どういうわけか主人公の立場が他人事とは思えなくてな。不覚にものめり込んでしまった」
やや恥ずかしげに顔を赤らめながら答えるマリカ。
機嫌が悪かった彼女も、外の空気を吸って少しは落ち着いたようだ。
「へぇ…。どんな話だったんだ?」
あのマリカが仕事をサボってまで読んだ小説だ。俺はその内容が少し気になった。
「それがな――――――――――」
マリカが読んでいたのは、戦争を題材にした小説だ。
祖国を奪われた剣士の少年が、苦難を乗り越えて国を再興するという話らしい。
マリカらしいというか……戦時中のこのご時世にわざわざ戦争ものの小説を選ばなくてもいいのに。
そう思っていたが、どうやら彼女の着眼点はそこではないらしい。
彼女が読破目前にも関わらず、途中で読むのをやめた理由。
それは主人公の幼馴染みであり、亡国の王女でもあるヒロインにあった。
当初は相思相愛だった二人が戦争によって引き裂かれ離れ離れになる。
以後も主人公の少年は一途にヒロインのことを想い続けていたのだが、
彼女と再会したときには既にヒロインは別の男と只ならぬ関係になっていた。
しかもその男は、主人公の国を滅ぼした敵国の将軍。
そしてそのまま、その将軍は主人公が所属する軍に加わることになってしまう。
それからの主人公は二人の仲睦まじい様子を見せ付けられながら戦いに身を投じていくことになる。
…このヒロインの一挙手一投足が、マリカの精神を酷く逆撫でするらしかった。
「信じられるか!?
かつて主人公と婚儀を約束した場所で他の男と愛を誓い合ったのだぞ!?それも…目の前で!!
それだけに飽き足らず、彼の気持ちを無視しているとしか考えられない悪行の数々…!」
俺にあらすじを説明している最中に再び怒りが込み上げてきたのか、ギリギリと歯を軋ませている。
「おまけにその恋敵が"できた"人間だと言うのが尚腹が立つ!」
まあ確かに主人公の立場から見た場合、精神的に辛いものはあるが。
だからって小説にそこまで目くじら立てんでも。
彼女の知る"できた"人間の中に、恨みのある人物でもいるんだろうか。
「と、とりあえず落ち着いて…」
街の治安を守るための見回りだってのに、恐ろしい形相で街を練り歩かれちゃ困る。
こんなところを住民が目撃すれば安心させるどころか恐怖を駆り立てることになり兼ねない。
「だいたい主人公の方にも問題がある!どこに黙って耐える必要があると言うのだ!
そんなにその女が好きだというなら相手の男を斬り捨ててでも奪い取れ!」
「おいおい…。いくらなんでもそれはやりすぎだろ」
こっちの言葉に全く耳を貸さないマリカの発言に俺はこめかみを押さえた。
「貴様!何を暢気なことを言っている!
おのれぇ…私があの少年であったなら即座にこのイゾルテの錆にしてくれたものを…!」
「うわぁぁっ!?頼むから街中で剣を抜かないでくれ!」
突然マリカが腰の剣に手をやったので、俺は慌てて彼女の右手を掴んだ。
「あ……」
それでやっと我を取り戻したのか、こちらの眼を見てそっと剣柄から手を放した。
「だいたい相手の男に非はないんだろう?それなのに斬るなんてマリカらしくないよ……ってマリカ、聞いてる?」
反応の薄い彼女の様子を見ようと目を向けると、マリカはぼうっとしたまま右手首を摩っていた。
さっきまでの勢いはどこへやら。本当に今日のマリカは調子が狂う。
「あ、いや。何でもない。
………相手の男に非があろうがなかろうが、主人公の立場から見ればそんなこと大した問題じゃない。
恋人を奪ったという事実だけで充分万死に値する」
マリカが一瞬呆けていたことでこの話はもう終わりかと思ったが。どうやら彼女はまだ続ける気らしい。
このままだとなんだか彼女の逆鱗に触れてしまいそうなので、本当はとっとと話を切り上げたいんだけど…
「―――――――第一、お前ならどうなのだ?腹は立たないのか?」
「ええっ?俺…?」
…困った。どうコメントしたものか。
適当に受け流そうと思っていたのに聞き返されてしまった。
あんまり突っ込んだこと言うとまたヘソ曲げられそうだしなぁ…。
「そうだ。お前ならこの少年の立場だったとしたら…どうする?」
マリカは色恋沙汰には全くの無関心だと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
結局のところ、マリカも年頃の女の子だったということか。
「んーと……そうだな……」
慎重に考えを巡らす。
幼馴染み―――――やはり脳裡に浮かぶのは、今は亡きキャスの笑顔だった。
キャスとそのヒロインを重ね合わせて、やっと俺は答えに至った。
「きっと泣いて泣いて、酒に溺れるかもなぁ…」
フォルン村に居た頃は彼女なしの生活など考えられなかった。
もし、キャスが他の男とくっ付くようなことになれば―――――少なくとも暫くは何も手につかないだろう。
「軟弱な…」
マリカは俺の答えを聞いて呆れ返ったようにため息を吐く。
「あははっ。酷いなぁ。
でもそのときは、マリカ。君が付き合ってくれよ?」
「―――――――え…?」
その言葉はマリカにとって意外だったらしく、目を見開いて俺を凝視した。
「何そんなに驚いてるんだよ。同僚の中で一番仲がいいのは君だと思ってるし―――――」
「あ、え、う……だ、だが私は……」
「――――いいだろ?一緒に酒飲んで、愚痴を聞かせるくらい。
あ、それとも酒飲めないのか?マリカは」
「……は…?
…………あぁ、なんだ。飲酒に付き合えと。お前はそう言っているのだな?」
そのときのマリカの表情は何とも言い難い…落胆しているような、ホッとしているような微妙な顔だった。
「…マリカ?」
怒ったり驚いたり落ち込んだり―――――今日のマリカはいつにも増して感情のふり幅が大きい。
さっきから全くマリカの内心を読み取れない俺はただ首を捻るばかりだった。
「マリカ、今日は随分と情緒不安定だよ?」
彼女を心配して顔を覗き込んだのだが。
「貴様のせいだッ!」
……ゴインッ!
拳がとんできました。
「ってぇぇ…!何するんだよ!」
鈍い痛みの走る頭を押さえながらマリカを見る。
彼女の顔は酷く不機嫌になっていて、俺のどの言葉が引き金になったのか全く解らなかった。
「やはり貴様はヨヨと同じだ!恥を知れ!」
怒り心頭のまま、俺を置いてどんどん先に行ってしまった。
「ちょっと、待ってくれ!ヨヨって誰だよ!?」
今日は後ろから彼女の背中を追いかける機会が多いな。
とかなんとか思いながら。どうやって彼女の機嫌を取り戻そうか策を練っていた。
―――――だけど結局その日、マリカの機嫌が直ることはなかったんだけど。…とほほ。
今日学んだ教訓。世界はやっぱり理不尽だ。
参考資料:ヨヨ氏ね
主人公が二刀流繋がりということで。
サラマンダーより、はやーい
うん、トラウマなんだ
しかしGJ!
幼心に傷ついて途中で投げ出したゲームだったなぁ・・
懐かしゲームと融合させた作品がここで見れるとは思わなかった GJ!
王女の部屋から毎晩苦しそうな喘ぎ声が
……まさかこっちでも聞こえるのか?
うんGJ
イヤッホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
マリかいいよマリカw
あと久しぶりに懐かしいねたをみたな。俺も軽くトラウマになってたりするが
作者さんGJ
投下乙であります。
うん、私も中房時にSFCでやってヨヨには殺意を覚えた口です。
投下乙です。
主人公の名前を友達の名前にしたら気まずくなりました…
ねえ、ビュウ・・・・・もっと、つよくつかまってもいい?
俺が沢山居やがるぜ。
GJ、作者に乾杯。
GJ!!
そうかアレか・・・□三大悪女の一人だしねぇ
ビキッとくるのが自然でしょう
ヨヨ以外にも色々(ストーリーと関係ないところで)スパイスの効いたゲームでした
19章?だかで放置したレスタットはどうなったとかバルクレイ羨ましすぎて二軍に送りたくなるとかビッケバッケいつの間に大人だったんだとか
悪女っつか、変わり身の早い女だーね。>ヨヨ
敵に捕まったらさっさと敵将軍の情婦の座につく
その後、城に帰ったら帰ったで、寝返った自分の男がビュウより強そうと見たか
「わたし大人になったの」とか寝言をほざきつつこっぴどくビュウをフる
そんでいざ男が死んだら、早々にまたビュウへとすり寄る
……氏ねと言われるのもわかるなあ
ごめん
なんつーかごめん。
まあでも女ってみんなそうだよね・・・と痛いこと言ってみる
修羅場の女神の何と一途なことか。
尻軽女に振られるくらいなら嫉妬女に刺されるほうがまだいい。
もちろん刺された後は死なずに入院して、嫉妬女に世話を焼かれたい。
ハハハ。皆何を怒っているんだい?ヨヨなんてものは存在しないよ?アレのヒロインはフレデリカたんだよ?
…あのクソアマ、こっちがこっちで別の女に走ったらめっさ怒りそうな気がして鬱orz
大人になるって、かなしいことなの・・・
奴に好きな女の子の名前を付けた人、いるだろうなぁ
好きな女の名前を付けたが最後、まるでリアルのようになりましたとさ。
ヨヨはガチトラウマ。おれ、あれエンディングとか流れが変わるのかと思って
一生懸命何回もやりなおしたんだよ……
でも、毎回毎回ヨヨは尻軽なままなんだ……
□三大悪女ってヨヨ、アリシア、あともう一人だれだっけ?
うたわれらじお聞きながら此処みていると変な所にdでいきそうになる
iイ彡 _=三三三f ヽ
!イ 彡彡´_ -_=={ 二三三ニニニニヽ
fイ 彡彡ィ 彡イ/ ィ_‐- 、  ̄ ̄ ヽ し ま
f彡イ彡彡ィ/ f _ ̄ ヾユ fヱ‐ォ て る
f/ミヽ======<|-'いシ lr=〈fラ/ !フ い で
イイレ、´彡f ヽ 二 _rソ 弋_ { .リ な 成
fノ /) 彡! ィ ノ ̄l .い 長
トヾ__ら 'イf u /_ヽ,,テtt,仏 ! :
|l|ヽ ー '/ rfイf〃イ川トリ / .:
r!lト、{'ー‐ ヽ ´ ヾミ、 / :
/ \ゞ ヽ ヽ ヽ /
./ \ \ ヽ /
/〈 \ ノ
-‐ ´ ヽ ヽ \\ \ 人
>>351 ヨヨってのはそのサイトの説明を見たぐらいしか知らんのだが、
オヴェリア様とヨヨが同列に語られていて
見当違いのことを書かれてるのが気になる。
ディリータを信じられなくなったのはしょうがないわけで。
刺殺エンドするくらい純粋なんだし別に悪女ってわけじゃないんだが。
まったく、その編集人は解ってないな
短編が思い浮かんだのでまたIDの違うwktkのレスが5つついたら投下します。
昨晩も職人様が降臨したので駄作は見たくないという人はスルーしてください。
|ω・`) 色んな作品を見たいので・・・
wktk
>>354 wktk
むしろ354も神になっちゃおうYO
漏れも文才がほすぃ
357 :
sage:2006/10/13(金) 17:21:40 ID:C8gK6Xwd
wktk
wktk
ちょwwwレス早すぎるよwwwwまだ書いてる途中で製作率40%うぇwwwwww
wktk
>>358 343の設定が地味に好き、短編期待してます
>>360 ごめん。343のシチュはでてこないんだ…orz
今書いてるのは
>>257-259の続編?なんだけど、拙作で良ければ次回書くかも。
wktk
アナスタシアは今で言うツンデレだったのだなぁ・・・
wktk!
wktk!
短編wktk
もうつかまっちゃった
アリシアは自分で何も考えないバカなんだよね
ヨヨは自分のことしか考えてないんだよね
それでも壊れるくらい愛してくれたならよかったんだけどねー
それでも三分の一も伝わらないぜ
純情な感情は空回りするし
(迂闊に他の子に言ったら刺されるから)
I
love youさえ言えないでいるし
wktk
1/3の純情な感情か。
空気読まずに短編投下。
修行不足につきデレ分少ない。orz
だれか私にデレ分を生み出せる力をください…
「それじゃ俺は焚き木を拾ってくるよ」
「私は食事の用意をしておくわ」
そう言ってあの人はあの女から離れて森の中に入って行った。
愛しい愛しいあの人。私の勇者様はこれで数時間は戻って来ないだろう。
何故なら人を目的地に着くのを遅らせる初歩的な迷路魔法を森にかけたから。
そして火を起こし、狩りで仕留めたのであろう鳥をナイフで捌き始めたあの女。
どう殺してやろう?
あの女に代わって食事の用意もしなければならない。
愛する私の勇者様に食べてもらう料理だ。
材料などは限られているとは言え手抜きなどできはしない。
あの女も袋の中からも鉄串を取り出して………私に向かって投擲!
私が避けた次の瞬間、鉄串は私が居た場所へ串の半ばまで深々と突き刺さる。
やってくれるじゃない。
あの女の殺気で空気がピリピリと震動する。
奇襲が無理なら、と意を決して隠れていた樹の陰から出てあの女と対峙した。
「あら?てっきりモンスターだと思っていたら貴女だったのね」
「ご挨拶ね。元とは言え『仲間』じゃない」
「『仲間』ねぇ……… 幻影種族。貴女の種族は魔王側についたのでしょう?」
私たち3人は魔王討伐のため長い旅を続けてきた。
人間種族の勇者様とこの女剣士、そして幻影種族の暗殺者の私。
だけど一ヶ月前、幻影種族は魔王軍の軍門に下り私と勇者様は敵同士になってしまった。
それでも1ヶ月間、昨日まで族王の命を無視し勇者様との旅を続けるが、
軍門に下ったはずの幻影種族が勇者のパーティーに居ることが魔王軍の中で問題となり、
近日中に私が勇者様から離れなければ、幻影種族は老若男女問わず処刑と宣告された。
昨日そのことを打ち明けると勇者様は私のために戦力ダウンは覚悟の上で
私がパーティーから離れるのを認めてくださったのだ。
でも私としては不満だ。たとえ私以外の幻影種族が死のうが私が沢山産めばいいだけ。
幻影種族の子を………勇者様の血が流れる次世代の幻影種族を。
「もしかして勇者様の首を魔王に献上するつもり?」
「フフ、そんなことはしないわ。それに今日用があったのは勇者様じゃなくて貴女なの」
『私に?』と言いかけたあの女に溜めなしの無拍子で袖からクナイを撃ち込んでやった。
防具に覆われていない額を狙った突き。
でもいつもなら肉に突き刺さる感触が手に伝わるはずなのに、代わりに手にはかすかな痺れ。
へぇ、不意打ちで必殺の一撃を出したのに、私のクナイを剣で受け止めるなんてやるじゃない。
流石ここまで魔王軍を倒してきたことはあるわね。
「フン、勇者様じゃなくて私を殺そうってわけ?」
「実はそうなのよ。邪魔なのよ貴女は」
淡々と語気を荒げず喋りながら身体はクナイによる二撃目を放つ。
プレートに守られている心臓ではなく露出している首への横凪の一撃!
しかし今度はバク転してかわされて距離も取られてしまった。
「理由くらい聞かせてくれるわよね? おおかた魔王軍への手土産かしら?」
「違うわ。魔王は関係なく貴女が邪魔なの、貴方さえ居なければ勇者様は私だけを見てくれるわ」
「つまり恋の私闘ってわけね。でもね、勇者様が何で魔王討伐の任に志願したか理由を知ってる?」
「そんなこと聞きたくないわ」
「いいえ、言わせて貰うわ! 勇者様はね、私のことが好きなの! 私を愛しているの!
私が貴族出身だから魔王を討伐すれば下級官吏の息子でも結婚を許されると思って志願したの!
私も宮廷で震えている男なんかじゃなく結婚のために命を掛けている勇者様こそ夫に相応しいと思ってるの!
昨晩、貴女と別れた日の夜だって勇者様は私に愛を囁いてくれたわ!
勇者様と私は相思相愛なのだから貴女の入る隙間なんてゼロなのよ!」
この女、いやメス豚は一気に話すと勝ち誇った笑みを浮かべた。
このメス豚。このメス豚。このメス豚。このメス豚。このメス豚。このメス豚。このメス豚。このメス豚。
このメス豚。このメス豚。このメス豚。このメス豚。このメス豚。このメス豚。このメス豚。このメス豚。
このメス豚。このメス豚。このメス豚が憎い。このメス豚を殺したい。このメス豚を火炙りに掛けてやりたい。
八つ裂きにしたい。全身の生皮と生爪を剥いで苦しませてやりたい。生きたまま内蔵を引きずり出してやりたい。
目鼻口を潰し四肢を切断して家畜として飼ってやりたい。生きたまま鼠に食わせてやりたい。
ゴブリンに輪姦させて汚れた子を孕ませてやりたい。無間地獄に叩き落してやりたい。
………そしてなにより口惜しいのはこの女の言葉が事実だというところだ。
「………………」
「あらあら黙っちゃって、想定外だった? アハハ、絶対に得ることのできない物ってこの世にはあるのよ!」
「………………」
「いいこと?、貴女が、私を殺しても、勇者様の愛は、得られないの、おわかりかしら?」
「………は、はは、ははは、貴女の持論は終わり? そうねぇ、いいこと教えてあげるわ。
それでも、私は、勇者様の愛を、得る方法を、知っているの!!」
そう叫びながら持っていたクナイを投擲、間を置かずにダッシュして間合いを詰める。
メス豚はクナイを器用に弾くも私に間合いを詰められ………
………次の瞬間、メス豚の首は血飛沫と共に吹き飛んでいた。
ギャロット、暗殺用の鋼線。しかも絞め殺すのではなく切り殺せるように魔法強化した私のとっておき。
あははは、あは、あははははは、あははははははは、あはは、あははは、あは、あははは、あはは、
あはは、あは、あはは、あはははははは、あはははは、あははははははははは、あははははは、あはは、
殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。
殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。
コロシタ。コロシタ。コロシタ。コロシタ。メス豚ヲコロシタ。メス豚ヲコロシタ。メス豚ヲコロシタ。
メス豚ヲコロシタ。メス豚ヲコロシタ。メス豚ヲコロシタ。メス豚ヲコロシタ。メス豚ヲコロシタ。
コレデ勇者様ハ私ノモノ。勇者様ハ私ノモノ。勇者様ハ私ノモノ。勇者様ニ愛ヲ囁カレルノハ私。
勇者様ト添イ遂ゲルノハ私。勇者様ノ子供ヲ産ムノハ私。私ハ買ッタンダ! アノメス豚ニ買ッタンダ!
辺り一面に笑い声が木霊する。とうとうやった、勇者様との愛を邪魔する第一の障害を切り裂いた。文字通り。
次はあの秘術だ。影を司る幻影種族のみ扱える影魔法。死体を食らうことによって他人に成り代わる秘術。
………………………………………あはっ、秘術も成功!
「勇者様?」
「遅くなってごめん、どうも帰り道で迷っちゃって」
「焚き木拾いおつかれさま。食事の用意できてるわよ」
「ん、明日はいよいよ魔王の城だね。怖いかい?」
「ううん、魔王を倒したら勇者様と結婚、そのためなら私………」
………私、なんでもするわ。
投下終わり。
>>374は1/1じゃなくて1/4です。orz
次回こそはっ!次回こそは書くとしたらデレ分を増量してやるっ!(涙
イヤャッフォオオオオオオオオオオオオオオオ
良いねぇ 実に良いよGJ!
二作も投下して次回作の構想まであるのだから貴方ももう立派な神だ!
ついては神の証として次回からトリップをつけることをお薦めしたいのだが
是非御一考の程を
思えばまたファンタジーシリーズが一作増えたわけか
うん、ファンタジー好きだから実に喜ばしい
( ^ ワ゜)b
あれ?
いつの間にサウンドノベルに一枚絵の追加が・・・
それ以前に今は沃野のサウンドノベルは落とせないんだった orz
しかし相変わらず迫力あるなぁ
――何がわかろうか? 私は静かに呟いた。
何故私は0と1の存在なのだろう?
私がそちらの世界の住人ならば、彼と手をつなぐことも出来たろうに。
私がそちらの世界の住人ならば、その女を肉塊に変えることが出来たろうに。
何故私は生物ではないのだろう?
私が生物だったのなら、彼と交わり子を孕むことが出来たろうに。
私が生物だったのなら、お前が彼の腕に抱かれる確率は0だったろうに。
私の中で黒い炎が燃え盛る。嫉妬、憎悪、怨恨――その全てが含有された炎が。
何故何故何故。何故私がいるはずのところに、あの女がいるのだろうか?
彼とともにいたであろう時間が1万時間もないお前に。
彼が「学校」という空間の中で、どのような地獄を過ごしてきたかもしらないお前に。
私がどれだけ長い間彼を想ってきたのかも知らぬお前に――――!!
――――――――何が、分かろうか?
スレ汚しスマソ。
ってか短すぎだろ……orz
イイヨイイヨー
投下します。
朝の爽やかな陽射しが家の中に入り込み、部屋を明るく照らしていた。早起きの蝉達はすでに鳴きはじめ、まだ朝だと言うのに夏の
匂いは猛烈に香りたっている。夜の冷たい空気をすいとった木造の床は、ひんやりとしていて気持ちがよく、素女は座布団を外し直に
床に座っていた。
素女はお味噌汁をすすりつつ、目の前で眠そうに瞼を半開きにさせながら、白米を口に運ぶ京之助を覗き見る。元々京之助は朝に弱
く、気だるげな表情を浮かべるのはいつもの事なのだが、最近の京之助に素女は違う色が浮かんでいるような雰囲気を感じとっていた。
具体的に言えば、近ごろ京之助の表情がキラキラと輝き始めたのである。
それは瞬きほどのかすかな変化で、おそらく京之助と関わりがある人でもその変化に気付くものはまずないだろう。しかし、十年以
上常に京之助と生きてきた素女である。そんな小さな変化も見逃さず、その違いを敏感にかぎとっていた。
素女が京之助に嫁いで以降、京之助の様子がおかしい、と感じたのは今回がはじめてでが、しかし、素女には京之助と積み重ねてき
た年月がある。その年月の中には京之助の表情に見覚えがあった。だから素女は心の奥底にある記憶の古い引き出しを掘り返し始める
。京之助と過ごした日々をひとつひとつあぶり出し古い順に頭の中で再生させていくと、すぐにそれは見付かった。
子供の頃の話である。京之助と素女の年齢がよくやく二桁に達したと言うころ、京之助は人知れず猫を飼っていた事がある。とは言
ったものの、それは自分の飯の残りを餌として与えるだけで、飼うと言うにはぞんざいだった。しかし、それでもいっぱしにその猫を
育てているような、そして自分が大人になったような気分は、子供心を満足させるには十分だったらしく、京之助の瞳は毎日いつもよ
り数段強い輝かせ、いきいきとしていた。日常に組み込まれた非日常は、確実にそこに変化を与え、退屈な日常に張り合いをもたらす
。それは時に趣味へと変わり、人に生きる楽しみを認識させてくれるのだが、あの時の京之助はまさにその張り合いを見つけたのであ
る。
猫の件は当時の素女にも内緒にされていたが、その異様なまでの目の輝きを怪しく思った素女が密かに京之助の後をつけたところ、
架加勢橋の下で猫とじゃれあう彼の姿を発見した。恐る恐る声をかけてみると、京之助は目を白黒させてこちらを見つめてきた。それ
から困ったような、そして哀願するような顔になり言うのだ、内緒にしてくれと。それに対し、素女はしばらく悩んだ後である条件付
きで承諾した。
その日以降猫の飼い主は二人になった。素助と名付けたあの猫はいつの間にか姿を消してしまったが、その時の記憶はいくら時間が
たっても色褪せる事なく、鮮やかに素女の心に刻まれている。
素女は再びお味噌汁をすすりつつ、京之助の顔をたっぷりと見つめた。今の京之助は、あの時の人知れず猫を飼っていた時の表情に
よく似ている気がした。
「何だ? 俺の顔に何かついているのか?」
穴が空くほど見つめられた京之助は怪訝そうな様子で口を開く。
「あ、いえ。何でもないです」
素女は慌てて笑顔を作った。京之助はまだ何か言いたそうな顔であったが、再び白米を
口に運び始めた。素女はまだまだそれをジッと見つめ続けた。
気になる事はもうひとつある。
十日前に話は遡る。夏の太陽の熱が染み込んだ地面が、夜になってそれを外へとはきだし、さながら昼間のように蒸し暑い夜だった
。その暑さにうなされ、素女は思わず目を覚ましてしまった。背中は寝汗で湿り気をおびて、その水分をすいとった着物が肌に張り付
き気持ち悪く。額には雨粒のように大きな汗が浮かんでいた。
蚊帳をすり抜けて入る青白い月光が、部屋をうっすらと照らして、その光をうけた蚊帳の細かい網目が影をひいて床から布団にまで
延びていた。その影を辿り蚊帳から布団までぼんやりとなぞっていくと、視線がその影の終点である京之助の布団と重なった。
薄い掛け布団が乱暴にはたかれており、その下に京之助の姿はなかった。体を起こしてその空の布団に手を当ててみると、まだ人肌
の熱が冷えきっておず、寝汗で湿り気をおびていた。どうやら京之助が寝床を後にしてからそれほど時間はたっていないようである。
しかしさして不思議な事ではない。おそらく自分と同じように暑さに起こされ、外の空気を吸いに廁にでも行ったのだろうと、素女
はあまり気にとめず再び目を閉じた。しかし眠れない。ともかく体の芯まで響くくらいに暑かったのだ。
それからしばらく眠れずに布団の上を転がっていると、突然背中の襖が開いた。驚きつつも寝返りをうつふりをして、そちらに目を
向けると京之助が寝床に入ってくるところだった。素女が目覚めてから四半時(三十分くらい)ほど時間が立っていた。
京之助はおもむろに布団の中に潜り込むと、かなり疲れているのかすぐに泥のような静かな寝息を立てはじめた。長い廁だ、と素女
は思ったがそれだけだった。
その日以降十日前の間に四度。しかもその四度とも、京之助は子の刻を僅かに過ぎたくらいで突然起き上がり、幽霊のように音もな
く闇に紛れて寝床から消えていく。
──間違いなく何かある。
素女は幾度となくそう思い、どこかに妾でも囲い、よなよな逢瀬を繰り返してるのでわ、とも疑いもしたが、それにしては四半時は
短すぎる。移動時間も考えると、それではせいぜい多少の会話が限度だろう。廁とも思えなくもないが、四半時は長すぎるし、何より
四度も同じ時刻に廁に行くとは思えない。
それは偶然とも必然とも考えられ、つまるところ、素女には何も分からないのである。しかし、だからこそ不安なのだ。京之助に限
り妾を囲うなどと言うことはないと信じたいが、それでも万が一の可能性がある。そしてもしその万が一が実際に起っていた場合、最
悪の展開も十分にありうる、と素女は考えていた。不安は募るばかりである。
素女と京之助との関係は決して不穏ではなくむしろ良好なのだが、それは京之助が自分を女として見ていないからであろう、と素女
は薄々気付いていた。物心ついてから今まで、あまりに長い間一緒だったおかげでお互いの事を知り尽し喧嘩はほぼ皆無だが、その代
わり京之助は素女の女に疎くなってしまったのである。その証拠に素女はここ一年ばかり京之助に抱いてもらっていない。
素女としてもそんな夜の生活に不満を感じてはいるものの、かと言って自分から話を持ちかけるのは、まるで淫乱な遊女のようで気
が引ける。しかしそうは思うが、京之助に愛されたいという願望はとどまる事を知らず増長し続けているので、日々悶々とした心の煮
えくりを感じていた。
そしておそらく、理由は違うにせよ京之助にもそのての欲求はあるに違いないだろう、と思っていた。そこで問題になるのが京之助
のその欲求がどこに向いているか、なのである。
万が一囲っているかもしれない妾にその欲求が向いてしまっているとしたら、もはや素女に打つ手はない。そもそも素女は京之助に
とって女ではないのだ。その時点で、女としての素女は圧倒的に不利な状況に立たされているのである。
京之助は優しい。だからこそ実家が潰れてしまった素女に離縁を言い渡すような事は絶対にしないだろう。しかし、京之助の心が素
女以外にあるのならば、形式だけの「妻」の名など慰めにもならない。それではただの家政婦と同じである。
素女は一度深く息をついた。考えれば考えるほど気がめいる。お味噌汁はいつの間にか空になっていたので、仕方なくたくあんをか
じり、一時中断した思考の尻尾を再び引きずり出す。
今までの想像はあくまで最悪の状況に陥った話であり、事実ではない上に、まだ京之助が妾を囲っていると決まったわけでもない。
がしかし、有り得ない話でもないのだ。
幸いまだ時間にゆとりはあるはずである。例え相手がとびきりの美人だとしても、たったの数日で京之助の気持ちを奪うことなど出
来やしない。しかし、早く手を打たねばならないとも思っていた。可能性は出来るだけ発芽する前に、それが無理なら芽が育つ前に摘
んでおかねばならないのである。
では具体的にどうするか。素女は二つ目のたくあんをかじり、箸を唇に当てて考える。
京之助は優しい。だったらその優しさにつけこもうか、と素女は考えた。京之助の逢瀬の現場を抑え、泣いてやるのだ。京之助の心
が傾く前に欲求が妾に移る前に、素女に対する罪悪感でその心を埋めてしまう。そうすれば京之助の心は素女から離れなくなるはずだ
。そしてその罪悪感はその後も抑止力となり、京之助の胸の奥に蔓延り続けるに違いない。
しかし素女はクッと唇を噛んだ。一見素晴らしく思えるこの作戦にも、弱点があるのだ。
この作戦は素女が女として戦う以前に戦う事さえ出来ないため、京之助の優しさに甘えるだけ甘えて、結局のところただの同情を買
おうとしているだけなのだ。つまり自分に女としての魅力がないと言っているようなもので、女として最大の屈辱でもある。しかし、
それでもいい、と素女は思った。例え女として愛されていなくとも、京之助に思われる女がいないのなら、必然的に一番近い場所にい
る素女が一番という事になるのだから。
素女は、次に京之助が夜中出歩く事があればその後をつけよう、と心に決めた。
たくあんを食べ終えた素女はようやく白米に箸をつけた。一方の京之助は左手に茶碗を持ったまま、大きな欠伸をしていた。
続々と目覚め始めた蝉達は、必死で自分の愛を詠っていた。
以上で投下終了です。
素女が前作のキャラと被ってますね。
それはともかく、京之助はEDではありません。念のため
素女がけなげでカワイイヨ
まだもう一人の方は心情描写が無いのでどんなキャラなのか今からwktkして待ってますw
作者さんGJ
翌朝
「うぅ……ぐ………」
完全な二日酔い。頭がガンガンする。吐き気もする。世界が回って見える。時計を見てみると、もう正午を回っていた。……まずい、寝過ぎだ。
よくよく考えれば俺、無職じゃん。浮かれてられんなぁ。いくら葵が生きていたとはいえ……いや、生きているからこそ、しっかりしないといけないな。
Fanもしばらく開けないらしいし、とりあえずどこかバイトを探さないといかんな。と、まぁ今日はとりあえず見舞いからだ。
薬を飲んでから着替え、徒歩で病院へ。さすがにこの状態でのバイクはきつい。酔い覚ましがてらに歩こう。
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『喜瀬 葵』
「……ふぅ。」
なんとなくプレートの名前を見て安心した。ここに来る途中、もしかしたら昨日の事が夢だったんじゃないかと不安があった。
そんな夢オチだなんて最悪な展開じゃなくてよかった。しかし……葵が生きていると知ったとたん、セレナへの対応が疎かになっている。
いくら記憶が無かった間とはいえ、恋人としていた期間があったのは事実だ。現金な自分の考えに自己嫌悪。
ガチャ
葵のいる病室を開けると、相変わらず質素なままだった。いや、少し違う。机の上に花が飾ってあった。昨日は確か無かったはずだ。
ということは、誰か俺以外にも見舞いに来ているということか。例えば……母親とか、か。葵は……父親がもういないんだったっな……
俺は葵の顔を見ながら、昔の事を思い返した……
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「あのですね、晴也さん。」
「ん?どうした?」
日曜日。いつものようにデートをしていると、葵が尋ねてきた。……二人でベットにいりのがデートかどうかは別だが。
「今度ですね……私の家に来ませんか?」
「………」
なんですと?それってばつまりあれか。娘さんをくださいおまえなんぞにわやらんぞ、うんたらかんたら……
「は、晴也さん!混乱してそんな格好のまま外に出ようとしないでください!」
「あ、ぅぉ……すまん…」
突然の提案に混乱。いや、誰だってそうなるだろ。
「家か……ごりゅ……ご両親に挨拶しなくちゃいけないもんな。」
「ええ……でも、お母さんしかいないんですけどね………」
そこは暗黙の了解。何でとは聞き返しはしない。
「……そっか。」
そういって頭を撫でてやる。葵はこれが好きらしく、猫のように丸まってくっついてきた……
次の日曜日
「……ここ、か。」
「はい!着きましたよ!」
葵に連れられてやって来たとこは、一軒家が建ち並ぶ、高級住宅地だった。……さすがはお嬢様学校に行ってるだけのことはある。
なんていうかアメリカンハウス。煙突まで付いていた。
「それじゃあ、行きましょう!」
そういってドアを開ける葵について入ると、いきなり吹き抜けのある階段に遭遇。見上げるとシャンデリアが出迎えてくれた。始めて見たぜ、本物。
「ただいま〜。」
「お、おじゃまします。」
玄関で靴を脱ごうとすると……
「いらっしゃい〜。」
葵によく似た、間延びした声とともに、横のドアから女性が出て来た。葵によくにているが、長い髪にウェーブがかかっていて、葵より少し年上ぐらいの若さか。
「…はじめまして。葵の……お姉さん、ですか?」
「ふふふ……お姉さんだなんて、うれしいわぁ。」
「晴也さん!私一人っ子だよ!お母さん!年甲斐もなく照れないで!」
なに!?お母さん、だと!?どっからどうみてもそんな年の人には見えない!若過ぎるだろ?
「はじめまして。葵の母親、喜瀬碧です。さ、こんなところで立ち話もなんですから、どうぞ。」
「はい……おじゃまします。」
そういって手を引っ張りながらリビングへと連れられていく。
「〜〜〜〜っ!!!」
葵よ。物凄いオーラが伝わってくるぞ。
「それじゃあ、ここで座って待っててください。お茶を入れてきますから。」
「は、はい。」
穏やかな笑みを浮かべ、キッチンの方へと入っていく碧さん。常にニコニコして、ぼんやりしているあたり、本当に葵そっくりだな。
「ふぅ。」
なんだか緊張してしまった。ああいう年上に弱いんだよな、俺。
「どうかしましたか?」
「!?うお!?」
ふと気付けば、目の前に碧さんの顔があった。
「い、いぇ、なんでもないです……」
「ふふ、そうですか。」
何故か……なぜだろうか。テーブルを間に挟んで二つのソファーがあるのだが、碧さんは反対側に座らず、いきなり隣りに座ってきた。
「ふふふ……葵から聞いてたとおり、格好いいかたですねぇ。」
当の葵は、「着替えてくる!」と、階段を駆け上がるように去ってしまった。早く来てくれ、葵。この間は一人で持たせるのが辛い……
「葵から話は聞いてますよ。とはいっても、最近では毎日毎日晴也さんのことしか口にしてませんけどね。本当に、嬉しそうに話すんですよ?」
「はあ……」
完全に話が耳から耳に抜けている。緊張しまくりだ。するとそこへ……
ドタドタドタ!
バン!
「お母さん!?なんでそんなに晴也さんに近付いてるの!?」
「あらあら、葵ったら。いいじゃない、少しくらい……」
「ダメ!」
「もう、ケチんぼ。」
葵に押しやられ、反対側のソファーに追いやられる碧さん。そして今度は葵が隣りにすわる。……親子そろって同じ、いい匂いがするぜ。
「もう!少し他の親より若いからって、娘の……こ、こい……恋人に手を出さないでよね!?」
「手を出すだなんてぇ。親として、親睦を深めようとしただけよ?葵が恋人を連れてくるだなんて初めてなんですもの。」
「だからって!そのために美容院にいく親なんていないよ!お母さん、元から自分が美人だって気付いてないの?」
「あらあら、美人だなんて……」
娘に美人と言われて顔を赤らめる母親……碧さん、一体いくつなんだ……
作者様GJ!
これはあれか……新しいフラグの予感か!?
ところで最近、神絵師の降臨がないな
|ω・`) GJ
なんていうか碧さんから漂う秋子さんっぽさのせいで俺の中が大変なことに!?
苺ジャムうめぇ
素女ちゃん応援してるよ
いい感じにニュー修羅場フラグが立ってきてるなGJ!
誰もいないようなので投下します
これは恋する女の子のお話です。
ある日、少女は少年に恋をしました。
しかし、少年にはとても仲の良い女の子がいたのです。
少女は、どうすれば少年が振り向いてくれるか考えました。
「どうすれば彼は振り向いてくれるんだろう?」
「彼にこの思いを伝えたい」
「でも彼にはいつも要らないモノがくっついてる・・・」
「あの女がいつも邪魔をする」
「あの女、あのメス犬がいなくなれば良いのに」
「あの泥棒猫・・・殺してやりたい・・・」
そこまで考えたところで、少女はふと思いました。
「あぁ・・・そうか・・・ころしちゃえばいいんだ」
ある雨の日、少女は少年ととても仲の良い少女を殺してしまいました。
手には赤く染まったナイフを握っています。
そして頬を赤く染め、少年に思いを伝えました。
「ねぇ、×××××くん。私、あなたがずっと好きだったの」
「ううん、好きじゃない。愛してる」
「そこに転がってるゴミよりもずっと」
「ねぇ、×××××くんは私のこと好きだよね?」
「私は×××××くんのこと、愛してるよ」
「顔も声も体も仕種も」
「全部。×××××くんのものなら全部」
「×××××くん×××××くん×××××くん×××××くん×××××くん」
「・・・・・・・・・」
少女と少年がどうなったのか、それからは誰にも解りません。
ただ一つだけ云えるのは、少女は幸せになったということだけです。
めでたし めでたし
なにやら駄作のにおいが…
スレ汚しすいません
突っ込み所は色々在るけど修羅場を愛する気持ちは伝わってきたぜ
更なる研鑽を積めばまだまだ発展すると見た
がんがれ
今度はもっと長いの期待してるぞ
408 :
1/2:2006/10/15(日) 12:54:35 ID:O/ch8+nS
新芽をこのまま潰してはいけない!勝手に続けてみる(゚∀。)
ここは雨が降りしきる放課後の校舎裏。
「ねぇ、×××××くん。私、あなたがずっと好きだったの」
下駄箱に入っていた手紙で呼び出されて来てみたら僕の目の前にはありえない光景。
「ううん、好きじゃない。愛してる」
そう告白する彼女の手には血塗れのナイフ。
「そこに転がってるゴミよりもずっと」
足元に倒れているのは恋人未満だけど友達以上に仲の良かった女の子。
「ねぇ、×××××くんは私のこと好きだよね?」
なんだよこれ………演劇部の稽古か新聞部のドッキリ?
「私は×××××くんのこと、愛してるよ」
彼女はナイフをその場に捨て、僕の方へ歩み寄ってくる。
「顔も声も体も仕種も」
どう考えてもおかしいだろ。正常じゃない。異常だ。
「全部。×××××くんのものなら全部」
彼女は何か言いながら近づいてくる。けど。
「×××××くん×××××くん×××××くん×××××くん×××××くん」
ココニ居テハイケナイ、逃ゲナキャ!
409 :
2/2:2006/10/15(日) 12:56:21 ID:O/ch8+nS
「う、う、う゛わぁぁぁぁあああぁぁぁあっっっっ!!!」
僕の本能が逃ゲロ叫んでる。
だけど後ろを向いて逃げようとしたら彼女に捕まえられてしまった。
両腕を取られて羽交い絞めされているが女の子なのに凄まじい力だ!
僕は腕力に自信がある方ではないけど、並みの女子よりはあるはずなのに!
「もう、×××××くんたらなんで逃げるの?メス犬を駆除したんだから誉めてよ」
「メ、メス犬?駆除?そ、そんなことよりキミのしたことは殺人じゃないか!」
「違うもん。私の×××××くんに付き纏うストーカー女をちょっと懲らしめただけ。
それに私の×××××くんを誑かす泥棒猫は殺しても私的には罪にならないもん」
「そうね、私もそう思うわ」
『え?』と後ろを振り向いたとき、僕の目に映ったのは………
………自分を刺したナイフを、今度は持ち主に刺そうとする仲の良かった女の子だった。
彼女は逆襲を開始する。
「はぁ、はぁ、おなかってね、内臓さえ傷つかなければ割と平気なものなのよ」
言ってる割に狙うのは腕や足、それも太い血管ない外側の部分。完全に嬲っている。
刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。
刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。
刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。
刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。
刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。
刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。
刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。
刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺し尽くす。
「ウフ、アハハ、アハハハハハ! 彼に近づく女は許さない! 私は、私は彼が!」
彼女は自身の血と返り血そして雨で滲んだセーラー服のスカートを翻し、とびっきりの笑顔で宣言した。
「好きなんだから」
イヤッッホォォォオオォオウ!
>405.408
GJ!
鮮やかな修羅場の大輪が咲いたよGJ!アワワワワワッ(((((((( ;*゚Д゚)))))))ガクガクブルブルハァハァガタガタブルガタガクガクガクガクガク
投下します。
「人志っ、おはよっ!」
「あ、グッドモーニング、明日香」
パーティーから一夜明けた朝、あたしは二日酔いもなく、いつもの朝錬に行く途中で、人志と会った。
なんだか、時間が戻ったような気分。木場さんが人志の前に現れる以前までの頃にね。
でもそれはあくまで気分で、実際は確実に進行している。
昨日のパーティー――――あれは爽快だったわね。
前もって恵たちと連絡を取り合って、一瞬の隙にサッと集めて、一気に畳み掛ける。
プレゼントをよこしてやった時の顔といったら、最高に笑えたわ。
あの媚びた笑顔がぴくっ、ぴくって震えて、仮面にひびが入っていくような感じは、当分あたしたちの笑いのネ
タになるわね。
あたしは、有りのままに人志と接することが出来るけど、木場さんは、人志の気を引くために、まず本性を隠し
て、猫を被らないといけない。
それが、あの女のもう一つの弱点。
「今日はやけに機嫌がいいな」
「わかる?」
あの女の作戦を潰して、ダメージを与えてやったんだから、気分も上々よ。
これからは、木場さんが動いてから、反撃するやり方で行くのがいいわね。
そのうち本性を露にして、勝手に自滅したりして。
朝錬から教室に戻ると、もう一時間目が始まる寸前だった。
教科書を探して鞄をごそごそしている内に、先生が入ってきて、出欠を取り始める。
「そこの席は〜……木場? 木場が欠席か」
は?
見れば、木場さんの席には、誰も座っていない。
木場さん、学校休んでんの? もしかして、昨日のショックで?
……あはは、笑っちゃうわ。
散々男をポイ捨てしてきたくせに、いざ自分が相手にされないと、そうなっちゃうんだ。
ほんと、バカな女ね。
この分じゃ、自滅するのも意外とすぐかもね。
木場さんがいないおかげで、昼休みは、久しぶりに人志と二人になれた。
人志の向かいが空くから、あたしはそこに座る。
人志は片手で卵を割って、中身を牛丼の上に落とす。
……なんか、変ね。
あたしは、人志の雰囲気が、少しおかしいような気がした。
何か、考え事をしているように見える。
「おっ」
卵はうまく割ったのに、かき混ぜる時に卵をこぼした。
「何やってんのよ」
「悪い」
すぐに拭き取ったのはいいけど、これは人志らしくない失敗。
あたしの女の勘によれば、人志は、木場さんのことを気に掛けている。
一度失敗して反省したとはいっても、やっぱりこういうの、イライラするわ。
今、人志が意識をやってるのは、あたしでも、牛丼でもない。
他の女の事なんて考えないでよ。
あたしのことが一番好きなくせに。
……ああ、わかったわ。人志は、わざとそういう態度を取ってるのね。
ちょっとよそ見して、心ここに在らずみたいな雰囲気を出す。で、あたしをヤキモキさせる。
人志、すごい上級テクニックを使うようになったわね。
いいわよそれで。人志の技に、あたし振り回されちゃうわ。
帰りのホームルームが終わって、人志と期末テストの結果を話して、竹刀を手に一緒に帰ろうと立ち上がったと
きだった。
他のクラスの人で賑わい始めた廊下。その人の合間を縫うように移動している女――木場春奈。
一瞬しか見えなかったけど、何かが背筋を走った。
「人志、今日は先に帰ってて」
「?」
あたしは教室を出て、木場さんのあとを追った。
廊下に出て、木場さんが行った方向を見ると、だいぶ遠くに、その背中が見える。
授業に出ないで、何をしてたの?
これから、どこへ行く気なの?
あたしは走って追いかけた。
木場さんは、階段を降り、一階の一番端にある、非常口のドアから外に出た。
あたしが走っても、なかなか追いつけない。木場さんは、どう見ても歩いているのに。
しかもその後ろ姿は、まるで人でない何かが、地面の上を滑っているような感じ。
幻覚? 幽霊?
よく分からないけど、木場さんらしき人は、体育館の横を通り抜け、裏側へ向かっている。
人気が、どんどん無くなっていく。
体育館の裏に着いたとき、木場さんは、ようやく足を止めた。
そのおかげで追いついた、と思ったら、木場さんはくるっとこっちに向き直った。
「ここでいいよね」
抑揚のない、機械的な音声に聞こえた。木場さんの目は不気味な光を宿して、それが目であると主張してきた。
今の言葉だと、あたしをおびき寄せたみたいだけど……。
「何がしたいのよ」
我ながら、月並みな台詞を出しちゃった。
「少し、話がしたくてね……」
口だけが動いていた。顔は、人形か死んだ人みたいに、固まっている。
人志に見せている、感情豊かな表情は、ない。
正直なところ、あたしの勘は、今の木場さんと話なんかしない方がいい、って言ってる。
「伊星くんの、事なんだけど」
でも、今の言葉を聞いた以上、退くことはできない。人志のことなら、あたしは見過ごせない。
「伊星くんには、どんな女の人が合うのかなあ、って」
……何言ってんの? この女。
そんな疑問、あたしの中では、もう答えは出ている。
「どんな女の人かって? 決まってるじゃない」
なーんにも、後ろめたいことなんてない。あたしは堂々と胸を張った。
「人志に合う女は、あたしよ。あたしだけ」
きっと木場さんは、自分が相手にされてないことから眼を背けておいて、どんな些細なことでも、自分の方があ
たしより優れているって根拠が欲しいのね。
ま、昨日のダメージは残ってるみたいだし、ここで止めを刺せばいいか。
「それは違うよ」
「何が違うって言うのよ」
「伊星くんは、あなたに怯えているだけ」
「……はぁ?」
「あなたの暴力が怖いから、従っているだけだよ」
聞いてみれば、呆れるしかない言い分だった。
所詮、表面しか見てない奴のたわ言だから、当然といえば当然か。
確かにあたしは、人志に暴力を振るったことはあるし、それで怯えさせたかもしれない。
でも、人志はそれを許してるのよ。
あたしを、愛してるから。
「下らないわね。妄想と現実の区別ついてる?」
「妄想してるのは、新城さんのほうだよ?」
まだ言うか、この女。
「人志くんは、一応長いものに巻かれといて、自分の安全を確保してる。それが現実なの」
「……!!」
はいはい妄想妄想、で流すことができない事を言ってくれた。
「だって新城さん、幼馴染じゃない? だからちょっと下手に出れば、味方に回ってくれるし」
「ふざけんな!」
大股で木場の懐に入って、襟を掴んだ。
今のは……人志を侮辱した言葉だ。人志のことを、底の浅い男だって言ってるんだから。
あたしと人志の繋がりは、そんな薄っぺらいものじゃない。
大体、何よ”人志くん”って。あんたは名前で呼べるほど仲良くなってないでしょ。
木場は、何でか分からないけど、くすくすと笑い出した。
「ねぇ新城さん。あなた、処女でしょ?」
「なっ……!?」
また、訳のわからないことを言い出した。
こいつ、本当に頭おかしくなったの?
「図星だね、人志くんも、きっとまだ、なんだろうね」
「あっ、当たり前でしょ!?」
あたしの人志が、そんなことになるはずがない。
「新城さん、また勝負しよ。今度はベッドの上で」
「っ……!」
さすがに我慢できなかった。あたしの右の拳が、木場の頬を捕える。
左手から襟がすっぽ抜けて、木場は倒れた。
「いい加減にしなさいよ!」
間違いなく、こいつは処女じゃない。むしろ、今まで色んな男としまくった、最低の女だ。
また身体を使って、人志を落とそうとする気?
「あんた……人志が好きなんじゃないの?」
もはや、このことすらも疑わしい。
殴られた所を押さえながら、木場はゆっくり立ち上がった。気持ち悪い笑みはそのまま。
「もちろん。あなたより、人志くんを愛してるよ」
ぎりっ。
頭の血管が千切れそうになった。何があたしより愛してる、よ。
「その台詞を、何人の男に言ってきたのよ!」
甘ったるい言葉を吐いて、玩具にして、飽きたら捨ててるくせに。
「本当は、オスが欲しいだけでしょ!?」
「……違う。やっと、愛し合いたい人を見つけたの」
「嘘ばっかり、新しいオモチャ、の間違いでしょ?」
「違う。本当に、心から好きなの!」
「何今更純情ぶってるのよ! 何人も捨てといて!」
「違う!」
「性欲が溜まってきたから、処理する道具を探してるんでしょ!?」
「違うっ!!」
「何必至になって否定してんのよ! もうみんな、人志だって知ってるのよ!」
「ちがうのっっ!!」
もう駄目ねこの女。自分でもはっきり分かってない。目からぼろぼろとみっともなく涙を流して。
「……どっちにしたって、人志はあんたなんか相手にしてない」
もう一度木場の襟を掴んで、壁に押し付ける。
「あんたは、ヤる事しか考えてないゲスに腰振ってるのがお似合いよ!」
「う……う……」
見てられないわね。可哀想、じゃなくて、あまりに酷い顔してるから。
こいつの本性、歪んだ心が、ようやく仮面の下から現れた、ってところね。
こんな顔じゃ、まず男は寄ってこないわ、ブスって意味じゃないけど。
「う……あ……あああっ!!」
「!?」
突然、木場は身体をよじって、あたしの手を引っぺがした。
叫びながら腕を振り回して、あたしに向かってくる。
爪が、あたしの頬をかすった。
……とうとう見境がなくなったわね、木場春奈。爪で引っかくなんて、泥棒猫にふさわしい攻撃だこと。
でも、ただキレて暴れるだけの攻撃なら……見える。
「ああああぁぁ、っ!?」
振りかざした腕を、あたしは掴んで止めた。
そこで出来た木場の隙をついて、拳を腹に叩き込む。一発目で木場の動きが止まった。
腕を掴んでいた手も拳にして、もう一発。さらに鳩尾に一発。
「があっ!!」
ああ、聞けたわ、こいつの薄汚い声。想像してたのより耳障り。
腹を押さえる木場。今度は顔ががら空きになった。
その顔を二発殴って、よろけたところで頭を鷲掴みにしてやる。
「人志の前に出られないような顔にしても、いい?」
ほとんど勝負はついてるし、ここは冗談交じりの笑顔で言ってみる。
木場は顔色を失い、あたしが手を離すと、へたり込んだ。
ま、こんなもんでしょ。あたしにケンカ売るなんて十年早い。
得物を使わなかっただけ、ありがたく思いなさいよ。
勝ったことだし、帰ろうかな、と背を向けた直後だった。
あたしの、後ろ髪が、強く引っ張られた。
振り返れば、あたしの髪を掴んだ木場春奈が、目の前にいた。
血走った目で、あたしを睨みつけている。
「離しなさいよっ!」
振りほどこうとしても、さっきよりずっと力が強くて、全然離れない。
木場の手は、少しずつ上、頭のほうへ動く。
……と、木場の手が、いきなり離れた。あたしのリボンを指に絡ませて。
そのリボンは、人志からもらった、ずっと大事にしているもの。
「返せっ!」
逆にあたしが木場に掴みかかる、と同時に、木場はリボンの端を口にくわえた。
こいつ、何を――!!
次の瞬間、あたしのリボンは、木場のうめき声よりも嫌な音を立てて……
……引、き、裂、か、れ、た。
「木ぃ場ぁぁあああぁぁ!!!」
あの程度で見逃してやろうとした、あたしがバカだった。
この女、本当に人前に出れない顔にしてやる!
竹刀を取り、木場の胴に打ちつける、頭を殴る。
拳も、蹴りも全部使って、木場を壁に追い詰める。
反撃なんてさせるものか。その歯! その歯っ!
あたしのリボンを駄目にしてくれた、その歯ァッ!
抜けろ! 落ちろ! 殴れ殴れ殴れ! 無事に帰れると思うな!
倒れそうになったのを、胸倉掴んで引き寄せようと思ったら、何か別の、細いものを握っていた。
少しの手応えと共にそれは切れたらしく、指先くらいの卵形がぶら下がっている。
これは、ロケット?
「!!」
あたしが見ている物に気付いたのか、木場は必至の形相であたしの手にある、ロケットのチェーンに手を伸ばし
てきた。
これが、こんなものが大事なのね!
じゃあ、リボンのお返しに壊してあげる!
あたしは木場を突き飛ばしてから、自分の足元にロケットを落とす。
木場が顔を上げて、ロケットを見た瞬間に、竹刀でそれを突く。
ぺき。
間抜けな音を立てて、ロケットは破壊された。
「あ……ああああぁぁぁ!」
木場は悲鳴を上げながら、あたしに向かってくる。
しつこい! あたしにケンカで勝てないって、まだ分からないの?
向かってくる木場を、竹刀のフルスイングで、横にぶん殴る。
倒れた木場の頭を、足で思いっきり踏みつけた。
地面はコンクリートだから、痛いでしょ?
足をぐりぐりさせると、小さな砂利と木場の顔がこすれあう音がする。
もっと叩きのめさないと、また立ち上がるかな。
「っ……くっ……ぷっ、うふふっ……」
――!?
「ふふっ……ふふぃひひぃっ……ひひははっ……」
伏した木場の口から、笑い声が漏れている。
「はは、ははぁはぁあへひっ、ひひひっ、ひひひゃははははっ」
な……何? 何で笑ってるの?
ここに来る前の移動といい、今の笑いといい……気味悪いわ。
あたしは、裂かれたリボンを回収して、急ぎ足でその場から去った。
ううん、逃げたと言ったほうがいいかもしれない。
あの女の声が聞こえない所まで行っても、まだ頭の中で響いていて、鳥肌が立った。
(35話に続く)
>>417 GJ!だけど女の戦いコエー(((((((( ;*゚Д゚)))))))ガクガクブルブル
木場さん壊れちゃったのか!?
暴力慣れしてる明日香が普通に怖い……
狙い通り!
って、某誰かみたいな顔してそうな気がするなw
421 :
腕 ◆v/rTh0HxaQ :2006/10/15(日) 21:49:12 ID:/pke/boz
初の投下をさせていただきます。
至らない箇所も多々あると思いますので、ご指摘頂ければ幸いです。
とりあえず、題名を思いつかないため、(仮)で・・・
↓
唐突に腹部を貫いた衝撃を、私は理解できなかった。
「…え?」
衝撃が突き抜けた箇所に目を向ければ、そこに突き刺さっているのは細い腕。女の腕だ。
それを認識して、痛みよりも先にきたのは熱。そして急激に高まる圧力。
プシュ
気の抜けた音で血が飛沫いて、私の中から血液と一緒に何か大事なモノが抜けていく。
「な、んで」
問い掛けに逸早く返ってきたのは、腹部から這いずるように広がる激烈な痛み。
外皮を破って内臓すら蹂躙している女の腕が、私の内部で何かを探すように蠢く。
その度に、痙攣を始めた私の体から面白いように血が噴出して…
「ん〜違うな、ここじゃない。どこにあるんだ?」
内部で好き勝手に動く腕の持ち主が、意味の解らないことを呟く。
でも、本当に解らないのはそんなことじゃなくて、なんで『左腕』の彼女が、『右腕』の私を殺そうとしているんだろう?≠チてことだった。
解らない
解らない
解らない
だからもう一度問い掛けよう。今度は『左腕』の彼女の名前も添えて、
「カイナ なん、で」
名を呼んだのが良かったのだろうか。私の中の腕がピタリと止まる。
そして、私のお腹に注がれ続けていたカイナの視線が、漸く私の目へと合わせられた。
霞みだした視界の中で、彼女はその碧の双瞳を、猫のようにしならせて、
「なんで?って、ヤヨイさぁ、お前もうすぐ死んじゃうじゃないか。だからその前に『右腕(お前)』の力を貰っておこうと思って探してるんだよ」
嬉しそうに、楽しそうに、問いの答になってない答を返しながらカイナは笑う。
だいたい、死んじゃうのは誰の所為だと思っているのか…
再び動き始めた腕を痛みと感じながら、どこか他人事のように考える。
「ココかなぁ〜?」
グチュ、グチュ、と掻き回される内部。
腕が動く度に噴出していた血液も、もう滴るほどしか失くなっちゃったみたい。
あ、内臓がまた一つダメにされちゃった。
「…また違う」
残念そうに呟いて再捜索。
ところで本当に何を探しているんだろう?
力を貰う≠チて、そんなこと出来るわけが…
「あ、… 」
「すごいな、ヤヨイ。もうズタボロもイイトコなのに声が出せるのか。まぁ、紛いなりにも『命(ミコト)』の『右腕』だもんな。もうちょっとの辛抱だから、私が力を貰い受けるまでは生きてるんだぞ」
「ひ、…あぁア」
「アハハッ!もう脳にも血が殆ど巡ってない筈なのに反応できるんだな?う〜ん、その声も悪くないけど、探し物の最中には妨げにしかならないから、少し黙ってくれないか」
それとも先に喉潰しとくべきだったか、なんて言いながら動く腕。
あぁ、本当だ。
もう血が残っていないみたい。
只でさえ朦朧としていた意識がだんだん遠、のい て…
「あった!」
ズブリと、腹部の穴が拡げられる感覚で、一時的に意識が戻ってきた。
私、まだ生きているんだ。
感覚の正体を知りたくて下に視線を下げてみれば、突き刺さっている腕が2本になっている。
私の体をなんだと思っているんだろう。
「あった!あったぞ!あぁ、これでやっと…」
でもカイナには、そんなコトはどうでも良いコトみたいで、
「それじゃあ、貰うから」
その言葉と共に、2本の腕を私の中から抜き出した。
「 」 …あ
…それで、出来る筈はないと思っていた力を貰う≠チて行為が、実現したんだと思い知らされた。
だって解っちゃったのだ。
お腹にポッカリ開いた空洞から伝わる空虚さとは別に、例えようのない喪失感に見舞われる。
私の、『命』様の『右腕』である為の力が、体から消え去ったのが解ってしまったから…
ズシャ
感覚がないから予想だけど、これは私が地面にくず折れる音みたい。
人間としての機能はとうに死んでいる筈なのに、両の目から涙が溢れてくる。
カイナの腕がお腹に刺さっていなければ、自分で体を支えることすら出来ない今の私。
でも、悲しいのはそんなコトじゃなくて。
事ここに至って、漸く私は実感したみたいだ。
私は、長年共に『命』様の『腕』として過ごしてきた仲間、カイナに殺さ(裏切ら)れたのだ。
しかも、『命』様の『右腕』としての誇りと力を奪われた上で、お腹をドーナッツにされて、無様に、惨めに、死んでいくのだ、と。
「アハハはハははッ!やった、やったよ『命』!これで。やっと。ようやくお前の!完璧な『腕』になれた!!いいや、私はここから始まる!お前の『全て』になるんだっ!!!」
気が違ったかのように狂喜するカイナの声に、今更悔しさがこみ上げて来た。
もう漠然としか働かない視覚。
その眼球だけを動かし見上げたそこに、声と同等の狂喜を孕んで乱舞する彼女が見える。
満ちた月を背景に舞い踊るカイナと、その度に翻る紅く長い彼女の髪。
怜悧な美貌に、凄惨なまでの笑顔を浮かべて。
…え、がお?
待って、待ってよ。
私が彼女の笑顔を見たことなんて、今まで一度でもあったっけ?
いや、無い。無いナイない。
そんな貴重な笑顔を、私を殺した末に大盤振る舞いなんて、なんて酷い女なのだろう。
それこそ涙が止まらない。
「…ッ」
遅れてやってきた手遅れな激情が、私の口から声にすらならない音を出す。
「ん、なんだヤヨイ。お前まだ生きてたのか?」
その音を聞きとがめたカイナが、ピタリと踊るのを止めて私を見下ろしてくる。
顔には、今まで一度とて見ることの無かった笑みをそのままに貼り付けて。
「っていうか、なんで泣いてるんだ?お前」
・・・!
なんでも何もない馬鹿げた質問は、限界だと思ってた私の激情を更に燃え上がらせて、それが私に声を出させてくれるっていうのはどんな皮肉だろう。
「仲間じゃ…なかった、の」
そう。私たちは『命』様の『腕』。
左右対称の共同体だった筈。
この身に猛る怒り、悲しみを復讐という形で表せないのならば、せめてカイナの行動の理由を、と。
コポリと、口から血と共に吐き出したその言葉が、私の最後の灯火だったらしい。
かろうじて生きているのは、視覚と聴覚だけみたいだ。
だから、後は彼女の返答を目で、耳で、受けるだけ…
そんな、私の最期の執着を、
「仲間?生き汚く泣き出したと思ったら、何わからないコト言ってるんだよ、ヤヨイ」
さも下らないコトのように切り捨てた。
仲間、と言う言葉が皮切りだったのか、カイナは訥々と言葉を漏らす。
浮かべた笑みを嘲笑に変えて。
あるいは、私以上の激情に身を焦がして、か。
「なぁ、なんでお前みたいなバカ女と今まで行動を共してきたか解るか?」
解らない。
私は仲間だと思っていたのだから。
「私がどれだけの間、お前を殺したい気持ちを押え付けてきたか知ってるか?」
知らない。
私は仲間だと思っていたのだから。
「何の為だと思う?」
それだけは、…わかる。
冷静沈着を旨とする彼女の感情が爆発するのは、
いつ、いかなる時でも、彼女(私たち)が最優先に位置づけるのは、
「『命』の為だ!」
ほら、やっぱり。
「だから、我慢した!『命』はお前の力を『右腕』として愛してたから!私よりも弱いくせに、先に『命』の一部だったってだけで『右腕(利き腕)』にして貰ったお前を、私は『命』の部位の中で一番憎んでた!私がどれだけお前を殺したかったか…」
「私は、カイナ(腕)だ!『命』の唯一つのカイナなんだ!!なのに『右腕(お前)』なんかがいるから!唯一つの『腕』になりたいからって、ただお前を殺したら、『命』が片腕になっちゃうから、それは『命』が泣いちゃうから、我慢してたんだ!」
「だけど、いくら『命』の為の我慢でも限界があった!それじゃあどうすればいい!?」
そんなこと知るもんか。
「それで私は考えたんだ。『命』が愛してるのは『右腕』としてのお前の力であって、ヤヨイそのものじゃない」
ふざけるな。
『命』様でないアンタにそんなことわかるもんか。
「なら、力だけ奪って私が『両腕』になれば、お前なんかいなくても『命』は喜んでくれるって」
イカレてる。
つまりこの女は、
「でも気づいたのはつい最近でさ。私にはその方法≠実行できる力があるって。今は最高の気分だけど、それだけが少し残念だよ。…もっと早く気づいてれば、もっともっと早くお前を殺せたのに!」
結局、嫉妬という感情に身を任せて、
「だから、これからは時間は掛けない。お前ほどじゃないけど他の部位もムカついてしょうがないんだ」
ただ『命』様を独占したいが為だけに、
「『命』には私だけでいいんだからさ!アイツらもみんな、力を奪った後でお前のトコロに送ってやるよ」
部位同士の争いという禁忌を犯して、
「そうして私は『命』の全てになるんだ!!!」
私をこんな風にしやがったのか。
恍惚とした表情で、どうしょうもないことを長々と語りやがって。
「そういうワケだから、お別れだなヤヨイ。大丈夫、『利き腕』のくせに『左腕』に簡単に負けちゃうお前なんか、失っても『命』は絶対悲しまないからさ!」
今はもう私が『両腕』だし。なんて、死体1秒前の私ですら見惚れかねない満面の笑顔でのたまった後、
「じゃ、しぶと過ぎるのはウザイから、消えちゃってよ元『右腕』さんっ!」
それはそれは嬉しそうに、私の頭を踏み潰すべく足を振り下ろした。
頭が弾け飛ぶ最後の最後、私の脳裏に浮かんだのは、元『右腕』の死を悲しんでくれる『命』様で。
死に際した儚い幻想あるとはわかっていても、それだけで、…少しは救われた気がした。
足の裏にこびり付く、ヤヨイだったモノを地面に擦り付けて落としながら、完璧な『腕』となったカイナは、幸福の絶頂にいた。
最高の気分だった。
あのクソ忌々しい元『右腕』を消し去ったコトも嬉しくはある。
正直、ヤヨイの内臓を掻き回している時はイキそうになったし、頭蓋を潰す感触を足の裏に感じた時はもっと危なかった。
それが、『命』の為になることなのだから気持ち良さは尚更だ。
…でもダメだ。
私はまだイッちゃダメ。
私がホントの一番サイコーなエクスタシーを迎えるのは、『命』の『全て』になって、『命』と一緒にって決めているのだから。
だから、それまでは我慢我慢。
大丈夫。『左腕』であり続けなければならなかった時間を考えればこんなの大した辛抱じゃ無いんだから…
しかし、それ以上に気持ちを昂ぶらせるのは、『命』の『腕』として完全となれたコト。
右でも左でもない、ただ唯一の『腕』。
それは、長年『左腕』に甘んじ続けた彼女が、今この時に至るまで己の内で育み続けた本能とも言える願望だった。
それが叶ったのだ。と、カイナは天上に佇む月を仰ぐ。
「まずはひとりっ!見ていてくれよ、まぁるいまぁ〜るいお月様!これから私はお前が頭上に満ちる度、他の『一部』を貰った上で殺していくから!!それから、取り敢えず今日はありがとう!アハハハハ」
そして、『命』。
待っていて。
お前だけのカイナが、満月の夜に一つずつお前の『全て』になっていくから!
「もう少しで、わたしは約束を果たせるからな『命』。その為には」
次の月夜には、どの部位の力を貰おう。
『右目』か?『左目』か?どちらかの『脚』でもいい。
あのぶりっ子の『耳』なんてのもいいかもしれない。
いや、順番なんてどうだっていい。
ムカつくヤツ、『命』に媚を売るヤツから力を奪って殺していけばいい。
どっちにしたって、只でさえ強かったこの私が、完璧な『腕』になったんだ。
誰にも負ける筈なんてない。
悩むのはそう、『命』に打ち明けた時、アイツが少しでも楽しんでくれるように、如何に惨たらしく殺すか、だ。
だから『命』。今は嘘つくことを許して欲しい。私がお前の『全て』なれば、お前も他の『一部』のコトなんかどうでも良くなるに決まってるんだから。
考えただけで最高だ。最高だ!サイコーだ!!
加速する思考。
けれどそれがある『一部』に差し掛かったところで、私の高揚は一瞬で醒め切ってしまう。
「あぁ、ヤヨイに嘘吐いちゃったな。一番憎たらしい部位は『右腕』なんかじゃなくて、『元(ハジメ)』のクソババァだったじゃないか」
そう『元』だ。
一番初めの部位にして、最強の部位。
私の許可も無く、『命』の一番近くに当然のように寄り添う年増。
そして、私たち『一部』のまとめ役。
くそ。最高の気分が、一変に殺意に塗り変わってしまった。
まぁ、良い。とにかく『元』。お前は一番最後に、一番惨たらしく、
「殺してやる」
思考に没頭しすぎたらしい。
月が消えて、太陽が昇りはじめている。
さぁ、次回の満月まではせいぜい大人しくしているとしよう。
さしあったっては、『元』にヤヨイの死因をなんて伝えるかを考えなくちゃならないな。
続く
え〜、とりあえずここまで。
稚拙な文体ご容赦下さい。
『一部』とか“力”については、おいおい明かしていきます。
新作キタ!!
初っ端からぶっ飛んでる人がw
まだ出てないほかのキャラにも期待してます
作者さんGJ
ラッシュでGJな作品が!!
405と408のナイスな合作をもっとキボンヌ
『一部』というと、境界崩しとか悪魔の能力を譲り受けた魔女とかを思い浮かべる……。
やっぱり最期にはショタとかロリを含む、本体を交えた殺し愛なのだろうか?
投下しますよ
虎徹ちゃんの声が聞こえてきた直後、部屋の戸が勢い良く開く音が聞こえた。続いて、
廊下を慌ただしい様子で走る音が聞こえる。その音の主が誰なのかは確認するまでもない
だろう、間違いなくサクラちゃんだ。いつもの落ち着いた歩きじゃないのは、きっと虎徹
ちゃんを待つ気持ちが抑えきれなくなったからだ。普段ならここで虎徹ちゃんが注意をす
るところだけれど、肝心の虎徹ちゃんは外に居る。そもそも、その虎徹ちゃんを出迎える
ために、サクラちゃんは走っているのだ。
あたしが注意をするべきなのかな、と一瞬思ったけれど、その考えをすぐに自分で否定
をする。こうなっている元々の原因は、あたしにある。
昨日の電話の後、目を泣き腫らして帰ってきたサクラちゃんを上手く説得出来なかった。
やろうと思えば出来たのかもしれないけれども、出来なかったのだ。あんなにも悲痛な目
をした妹に、強い言葉を使ったりするのは無理だった。他の方法を使うことも考えたけれ
ども、結局は自分の意思に止められた。人の心を動かすのはそれなりに得意だけれども、
その結果泣いているサクラちゃんを作ってしまったからだ。人の心はというものは、自分
で壊れていくような弱くて脆いものではない。社会が、世間が、流れが、人が壊していく
ものだ。例え悪意があってもなくても、逆に善意があってもなくてもそれは変わらない。
そして今回はあたしが、しかも悪意を持って壊してしまった。
ごめんなさい。
宛てのない言葉を心の中で呟いた。これは口に出すべきではない、そう思う。行くべき
ところがない想いを誰かに向けるのは失礼だし、口に出したら消えていってしまうような
気がする。虎徹ちゃんか、青海ちゃんか、それともサクラちゃんか、それを確かに届ける
ためにもう一度心の中で呟いて立ち上がった。
玄関の戸を開くと、門のところで隠れるようにサクラちゃんが立っているのが見えた。
多分原因は、聞こえてくる声。種類は二つ、片方は普段から聞き慣れている、男の人特有
の低いもの。長年親しんものというだけが理由ではない、好きだったからこそわかる声、
虎徹ちゃんのものだ。そしてもう片方、サクラちゃんの綺麗なソプラノとは違う、女性に
しては低めで落ち着いた声。つい最近からだけれども毎日聞いていたので、これもすぐに
分かった。虎徹ちゃんの隣で喜色を浮かべ、大きめの声を出しているのは、
青海ちゃんだね。
その単語を思い浮かべると、少しだけ胸が痛んだ。初恋を終わらせた原因の娘。違う、
正しく言うのなら終わらないと思っていた気持ちが終わり、実らないと教えてくれたこの
半月程の日々のきっかけになった娘の名前は、それだけのものを持ってあたしの心の中に
存在している。以前浮かんでいた苛立ちや怒りなどの悪いものがないのは、終わったもの
だと理解しているからだろう。
しかし理性ではそうしたものとしているものの、心の奥の方ではそうではないらしい。
名残と言うのか、それとも未練と表現するのか。きちんとふっきれていない部分が、こう
した痛みを与えてくるのだろう。
サクラちゃんは、どうなのかな。
もしかしたら、同じようなのかもしれない。あたしが今こうして玄関の戸を中途半端に
開いて立ち止まっているように、サクラちゃんも見えないような位置で待っているのかも
しれない。そうだとするのなら、注意をすれば簡単に見付かるような立ち位置なのはその
気持ちの現れなのだろう。その気持ちはあたしのものよりも、ずっと強い筈だ。
表にはあまり出さなかったけれど、サクラちゃんは昔から虎徹ちゃんに依存していた。
こんな表現をするのは好きじゃないけれど、はっきり言ってサクラちゃんはあまり出来の
良くない娘だった。あたしが勉強も運動もこなせる器用な部類に入るタイプの人間だった
から、それはより顕著に現れた。それだけじゃない、外見もそうだ。サクラちゃんが美人
だという考えは誰に訊いても肯定の意見が返ってくると思うけれども、体つきが幼いのも
また事実なのだ。あたしとは二歳程年が離れているけれど、それだけの期間だけでは確実
に埋められない差が存在する。だから事あるごとに周囲に比較されてきた。されていない
ときでも、きっと劣等感を持っていたに違いない。そんなサクラちゃんに対しても平等に、
寧ろやや過保護にしてきた虎徹ちゃんにべったりだった。あたしにしか分からなかったと
思うけれども、分かる人が見たらそれはもう異常とも思える程に。
あたしが言えた義理じゃないけどね。
自嘲気味に考える。しかし、あたしのそれよりも激しく、熱く、深くその想いがあるの
は分かっていた。それを利用して、今回の悲劇を作り出してしまう程に。
ごめんなさい。
再び、心の中で呟いた。今度は部屋の中で考えていたときとは違う、向かう先が明確に
なったもの。虎徹ちゃんと、青海ちゃんと、そして一番の被害者であるサクラちゃんへと
向けたもの。それぞれの人に向け、それぞれの想いを持って言葉を投げる。
数十秒。
それだけの時間をもって終えると、まるでそれを見計らったかのようにサクラちゃんが
動いた。泣き疲れのせいなのか、心の問題なのか、それとも両方なのか。虎徹ちゃん達に
近付いてゆく足取りは弱いもので、今にも倒れそうな感じがする。辿り着いた後の横顔も
弱々しいもので、笑みを浮かべている筈なのにいつもの強さをまるで感じない。
不意に、既視感。
どこで見たものだっただろうかと思考し、すぐに答えがやってきた。過去に何度か見た
ものだ。あるときはサクラちゃんを見て、またあるときは鏡の中で。
それと同時に、一つの答えがやってくる。それを防ぐ為、体は勝手に動き出していた。
「死なないで!!」
この言葉が誰に向けたものなのかも分からない。しかし意味を成す為に、自分の言葉を
信じて、明確な意思をもって身を躍らせた。走り出した後にやっと現状を理解して付いて
きた心が、強く体を動かしてくる。
駄目。
死んだら、駄目。
その想いを持って踏み出した脚は、一歩目からトップスピードに入る。間に合う為に、
間に合わせる為に、誰も傷が付かないように、誰も死なないようにする為に。それだけを
願ってただひたすらに、皆のところへ疾駆する。
もう、悲劇は起こさせない。
今のよりもずっと小さな暴力は、過去に幾つもあった。虎徹ちゃんに近付く女の子達を
片っ端から排除していたから、その数は両手の指どころか両足の指を足しても足りない。
それこそ数えきれないくらいにある。ただの友達だという人が殆んどだったろうけれど、
中には本気で好きだった女の子が居るかもしれない。その分、悲しみが産まれてきた。
そして今と同じくらい大きなものもあった。二年程前、虎徹ちゃんと恋人になりかけた
女の子を病院送りにしてしまった。それは事故だったということになっているし、その娘
の両親の都合で引っ越した後送られてきた手紙では健康でいるらしいことも書いてあった。
彼女にとって何の障害にもならなかったらしいけれども、あたし達自身の悪意によって傷
付けてしまったのも確かだし、そこには絶対に悪いものがあった。
償いになるとは思わない、けれどその連鎖を断ち切ることは出来る。
違う。
断ち切らなければ、いけない。
間に合って、お願い。
声にならないものを胸の中で叫び、あたしは青海ちゃんに手を伸ばした。
今回はこれで終わりです
次回は最終回
思ってた以上に長く続いた『とらとらシスター』もそれで終わりです
姉貴------!!
終わりですか…まとめサイトで復習しながら投下を待ちます
姉ちゃん……
俺、姉ちゃんが一番好きだよ…
GJ!!
いいよー
グリーn(ry
姉虎……(ノД`)ホロリ
学園分、戦国分、ファンタジー分が補給されているので、
他に手をつけてないジャンル戦隊モノを書こうとしたけど途中で挫折。orz
日本赤軍もびっくりな内ゲバ戦隊ってなんだよ…('A`)
>>444 なんたるカオス
だ が そ れ が い い
投下いきます。
授業中。藍香はノートを広げ、真剣な表情で――やはり傍目にはそう見えないが――ノートに書き込んでいる。
だが真面目に授業を聞いているかと言えば、そうではない。
彼女の書いている意味不明な文字の羅列は、現在の時間割である数学とは勿論、学校のどんな授業のものとも異なる。
それもそのはず、藍香が書いているのは彼女の趣味であるオカルト関係のものだった。
何かを思い付いては書き込み、首を捻ってそれを消し、また別の文字を書き込む。
そんな真剣に悩んで、何を考えているのかと言えば――。
(智くん・・・・・・)
思い悩むのは智のこと。思いを馳せるのは今日の放課後のこと。
藍香が悩んでいるのは精強剤――有り体に言えば媚薬の製法だった。
精力とフェロモンを増幅させる薬品。但し、その対象は智でなく藍香。
もはや智が衝動に屈すると信じて疑わない藍香は、その欲望を受け止める用意を始めていた。
吸血鬼となって増大した智の性欲の全てを、人間の身で受け止めるのは生半可なことではない。
単に智を誘惑するだけでなく、藍香の方でも準備しておかなければならないのだ。
自分も吸血鬼になるのが一番確実且つ手っ取り早いのだが、その手段は未だ見つからぬまま。
だが智を求める彼女の衝動は、身体、心共に限界が近い。
決められるなら今日にでも、と思っている。
藍香は、智が彼女の身体を気遣って吸血を最小限に止めていることを知っている。
あの程度では足りないだろう。
何らかの形で他の女性から補給しているはずだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
他の女性。
特定の個人ではないだろう。おそらく不特定の多数。
千早の例で分かる通り、智は他者――特に親しい人間には、吸血鬼化を絶対に知られたくないと思っているためだ。
定期的に特定の誰かを頼りにするなら、事情を話さないわけにはいかないのだから。
血のことで力になれない自分を、藍香は歯がゆく思う。
吸血は、単に血液を摂取するだけの行為ではない。
人間の精気を吸収するという精神的な側面もあり、それがあるから吸血鬼は衝動を抑えられる。
つまり、血は生きた人間から直接吸わねばならない。
例えば輸血用の血液パックを用意すればいいというものではないのだ。
こんな時くらい神川の財力が役に立ってくれてもいいだろうに。
藍香はそう思わずにはいられない。
だから、吸血に関しては自分以外に手を出しても大目に見ようと藍香は思っている。
本当なら智が他の女に口付けるなど考えたくもないが、彼が彼として生きるためにはやむを得ないだろう。
しかし。
性行為だけは。セックスだけは。
(絶対に・・・許さない・・・)
彼が自分以外の女を抱くことなど。
吸血のように複数を相手にすることで性欲を分散すれば、人間でも壊れることなく智を受け止められるかもしれない。
でも、ダメだ。
何ら愛情の無い、純粋に衝動を抑えるためだけの性行為だとしても。
セックスだけは、許さない。
智に貫かれ、悦びの声を上げるのも。
全てを受け止め、中に注がれるのも。
(私だけで・・・・・・いい・・・)
口の中に血の味を感じる。
感情が昂ぶりすぎたのか、噛み切っていたらしい。
智に捧げるための血だ、一滴たりとも無駄には出来ない。
気を取り直し心を落ち着けると、藍香は再びノートに向かった。
そして放課後、文化部棟のオカルト研究会部室。
いつも智が来る時間まで約30分、藍香は考案した媚薬を釜で煮詰めていた。
実験の時のお約束ルック――黒マントととんがり帽子姿の藍香は、いくつもの試験管を手に様々な薬品を調合していく。
一般的な催淫剤に頼らず自作の薬で智を落とそうとするのには、彼女なりのプライドとこだわりがある。
これまで色々試してきた薬やお香などにしても、智の意思を奪い無理やり身体を発情させるようなものは使っていない。
あくまで智の精神に働きかけ、彼の望み――目の前の藍香をどうしたいのか――を引きずり出す程度のものだ。
だから薬やお香のせいで智が藍香に発情したとしても、それは智の本心にそういう気持ちがあったということ。
藍香に抱く性欲を理性で抑えようとする智、対してその欲望を手繰り寄せ表面化させようとする藍香。
歪んだ形かもしれないが、これが彼女なりの恋愛の駆け引きであり、そしてその芽は確かに芽吹いている。
吸血鬼の衝動も手伝ってのことだろうが、確かに智は藍香を求めているのだ。
そして、それ以上に藍香も智を求めている。
些細なきっかけによる出逢いだろうと、まだ数ヶ月の付き合いでしかないとしても。
(折原、千早・・・)
共に過ごした時間だけを理由に智を縛る、あんな小娘などに負けはしない。
智くんは私のもの。
私は智くんのもの。
智くんを受け止められるのは私だけ。
私を受け止められるのは智くんだけ。
怪しげな泡を吹き出している鍋を見つめながら、藍香は魅入られたようにその言葉を繰り返す。
そうして、どれくらい経っただろうか。
夢中になっていたうえ、光が差さないようカーテンを閉め切っていたので、パッと時間が思い浮かばない。
時計を見ると、既に5時に差しかかろうという所だった。
(・・・・・・遅い・・・)
いくら何でも遅い。何か用事があるにしても遅すぎる。
吸血鬼になってから、智は基本的に毎日オカ研に通っている。
だから、これまでのようにこちらから呼びに行かなくても来てくれるはずだ。
特に以前3日間血を断って暴走しかけて以来、来なかった日は1回とてない。
マントと帽子を外し、完成した薬を傍らに置き、部屋の中央の魔法陣に座って智を待つ。
不安と心配、期待と興奮がない交ぜになり、悶々とした落ち着かない気分だ。
そのまま1時間待ってみたが、結局智は現れなかった。
6時を回っても藍香が現れなければ、校門で待っている綸音が部室まで呼びに来る。
「・・・・・・・・・・・・」
今日は智の都合が付かなかったのだろう。稀にはこんな日もある。
期待に昂ぶった身体を抑え込んで、藍香は部屋の片づけを始めた。
外に出ると、暗い部屋に居た反動か真っ赤な夕日が目を焼くように感じられる。
慣らすためにしばし立ち止まって目を細めていると、藍香の姿を見つけた綸音が駆け寄ってきた。
気落ちした様子の主の心を敏感に察し、先に口を開く。
「今日は、高村先輩は病欠だったそうです。
朝からあんなに楽しみにしてらしたのに、残念でしたね・・・」
綸音の報告に藍香は驚く。
吸血鬼の肉体は人間を遥かに凌ぐ頑強さを誇り、それは病への抵抗力の高さも例外ではない。
そうそう病気にやられたりなどしないはずだ。
(・・・でも・・・)
ひとつ、藍香は考え直す。
智は藍香の魔術の失敗で突然変異した吸血鬼だ。
身体能力や弱点の中途半端さを見れば分かるが、人間としての要素が多分に残っている。
となると、病気になりにくくはあっても病気にならないということはないのかもしれない。
狂おしいほど会いたい。
でも智の健康を考えるなら、今日は我慢しなくてはダメだ。
智だって藍香に会いたくて溜まらないのを耐えているだろうに、年上の自分が我慢できなくてどうするのだ。
その分明日来た時に甘えさせてあげればいい。
もちろん自分も、存分に甘えさせてもらおう。
気を取り直した藍香は、心配そうにこちらを伺う綸音に、ふるふると首を振って『大丈夫』と微笑む。
それは、勝利を確信した自信と余裕が生んだ、ある意味傲慢とも取れる笑み。
しかし彼女はこれから、その自信が砂上の楼閣でしかないことを思い知っていくことになる――。
今回はここまで。
藍香はしゃべらない方針でしたが、全く無口なのも困るのでカッコ文ではしゃべらせることにしました。
エッチシーン以外で彼女が声を出す日はくるのだろうか・・・。
>>452GJであります!
これは…藍香たんも壊れてしまうのか…(*´Д`)ハァハァ?
智は今・・・
智の現状況がものすごい気になる。
藍香タソも早くも危険な香りがしてきましたよw
作者さんGJ
これは千早が智を拘束していた期間中に藍香たんが壊れていってしまうのか・・・
読んでいて引き込まれる作品でGJすぎますよ!!エロイし
>>452 作者様GJ
外人吸血鬼の姿が見えないのも怖いわ・・・
色々要素があって先が楽しみ(*´д`*)
|ω・`) 疾走が凄く気になるところで止まってて
夜も悶えて悶えて(;つД`)
久しぶりに本編投下します
ちょっと長めですorz
はじめて抱いてもらったときのことは、今でも鮮明に思い出せる。
ユウキが執政官への道を諦め、中央から姿を消そうとしていたときだった。
そのときの私にとって、ユウキは側にいて当たり前の存在だった。
だから、彼が離れることを恐れ、自分なりに必死に考えた。
ユウキは身近な人間を見捨てられないお人好しだ。
だから、そこを利用した。
「騎士としての仕事が辛くなってきた」「疲れが溜まっているのかもしれない」
「でも、休むことなんてできない」「今が一番大事なとき」「どうしよう」
などと、己の不安を零すように、酒の席でユウキに晒した。
すると、ユウキは、滑稽なまでに私の身を案じてくれた。
自分は輝かしい出世の道を閉ざされたばかりだというのに。
その様を見て、我慢なんてできるはずもなく。
酒の勢いに見せかけて、ユウキを強姦した。
翌朝、心底反省しているフリをして、かつ、悩みが吹き飛んだように振る舞った。
――要は、ユウキとの身体の繋がりが、私にとってとても大事なものだと演出したのだ。
そして、私はそれを手放したくないから、と、ユウキを拘束するのに成功した。
本当は、心の内側で酷く怯えていたのだ。
でも、それを欠片も見せず、ただユウキの身体が必要だということを、強調した。
結果、ユウキは中央に残った。
監獄の監視員という、過去のキャリアとは遠くかけ離れた職に就きながらも。
私――アマツ・コミナトのそばに、いてくれた。
だから、ユウキは私のもの。
私の方に度胸がなく、ユウキが中央に留まってからもずるずると身体だけの関係を続けていたが。
きっと、心の裡を明かしていれば、ユウキは私を受け入れてくれていたはずだ。
なのに、血塗れ竜にそれをかっさらわれてしまったのだ。
許せるはずがない。
ユウキはもともと私のものだ。
それを奪おうとした泥棒猫。殺しても何の痛痒も覚えない。
私は何も悪いことなどしていない。
全部ぜんぶ、正しいことだ。
それを糾弾する者がいたら、誰であろうと斬り殺してやる。
そう、私は正しいことをした。
なのに。
どうして。
ユウキは、私を見てくれないの?
ユウキのためなら、どんなことだってしてあげる。
誰を敵に回しても構わない。
邪魔者は全員斬り殺す。
でも、ユウキが見ているのは私ではなく。
半分以上死んでいる、血臭にまみれた汚い肉塊。
なんでユウキは、そんな汚いモノを見てるの?
近付いちゃだめだよ、ばっちいよ。
そんなモノより、私を見てよ。
もう、私たちの間を邪魔する奴なんて、いないんだから。
素直になれなかった私も悪かったから。
だから、今まで一緒にいられなかった分、一緒にいようよ。
騎士は辞める。帝都からも離れる。
人里離れた山奥で、ただひたすら、気持ちいいことをし続けよう。
私には、ユウキさえいればそれでいいんだから。
だから、
だから。
血塗れ竜と食人姫を見るのは、もうやめて。
「どうして」
やり場のない思いが、腕を無意識に振り上げさせる。
毛には剣が握られたまま。
……踏み込んで振り下ろしたら、ユウキのことを斬り裂けちゃう。
いっそのこと、意地悪なユウキの両足を切断して、
一生私のもとから離れなくさせるのもいいかもしれない。
「そいつらの方を、見るの?
私の方を、見てくれないの?」
…………。
……………………。
……ああ。
まだ、そいつらが、動いているからいけないんだよね。
半分以上死んでるくせに、未練がましくぴくぴくと痙攣しているから。
だから、優しいユウキは、気になっちゃうんだよね。
それじゃあ、仕方ないよね。
ユウキを心配させるのもよくないし。
私が、そいつらに、トドメを刺してあげる。
剣を振り上げる。
振り返ったユウキが、信じられないといった表情でこちらを見ている。
その傍らに転がる血塗れの肉塊。
輝く新雪のようだった銀髪も、今は己の血にまみれている。
瞼は閉じられ、苦痛による荒い息を零していた。
放っておいても死にそうだが、生きてる間はユウキはコイツに奪われたまま。
ならば、一秒でも早く殺して、ユウキを取り返さなければ。
首や胸に剣先を数回突き刺せば、確実に死ぬだろう。
生家が没落した時点で生きる価値を失った死人。
過去の自分は学院を出たての甘っちょろい小娘だったため、つい情に流されてしまったが。
今は、もう、流されない。
身分を弁え、慎ましやかに生きていればよかったのに。
分不相応にも、死人には暖かすぎるものに手を出した。
ならば、焼き殺されても文句は言えまい。私の憎悪の炎で魂まで焼き尽くしてやる。
この距離。
この負傷。
血塗れ竜が生き延びる可能性は、皆無だ。
死ね。
必殺を信じて打ち込まれた剣先。
躊躇いなど欠片もない。
鋼で軟らかい肉を引き裂くことしか考えずに、力を一点に収束させた。
ぞぶり、と。
刃が肉に埋まる感触。
しかしそれは、憎き血塗れ竜に打ち込まれたものではなく。
間に飛び込んだ、ユウキへのものだった。
己の放った突きがユウキの脇腹に突き刺さるのを見て。
アマツの頭の中は、怒りで、赤く染まった。
なにやってるんだ、こいつは。
こんなにも好きなのに。
自分の全てを捧げてもいいと思っているのに。
なのに、こいつは、私の方なんて顧みもせず、汚い肉塊を庇っている。
ふざけるな。
私のどこがいけないの?
あなたが命懸けで庇っている肉塊に、劣っているの?
そんなことはない。
私がユウキの一番なのだ。
それ以外は認めない。
だから、そこの肉塊を細切れにしないと。
でも、ユウキが体を張って立ち塞がっている。
ユウキは、いけない子だなあ。
「お仕置きしなきゃ」
「え?」
まるで、聞き分けのない子どもに言うかの如く。
困ったような微笑みを浮かべながら。
アマツは、突き刺した剣を引き抜くと同時。
剣の腹で、ユウキの横っ面をぶん殴った。
びちゃり、と鮮血が床に跳ねる。
特殊加工された刀身が、顔面の皮膚をむしり取った。
「痛い? ねえ、ユウキ、痛い? 痛いでしょ? 凄く痛いでしょ?
――でもね、私は、もっと痛いの。
わかる? もっとだよ。ユウキに酷いことされて。もっと痛いの。
だから、ね。これはお仕置きなんだから。わかる? わかるよね?
わかるよね? わかるよね? わかるよね? わかるよね? わかるよねッ!?」
鬼のような形相で。
アマツはユウキを剣で叩く。
少し前に両腕を失い、ろくに手当もされていない状況で。
こんな打撃を加えられていたら、確実にユウキは死ぬだろう。
しかし、怒りに我を忘れたアマツは、狂ったようにユウキを殴打し続けて。
そのまま、ユウキの命の灯火は、消えようとしていた。
しかし。
「……やめ……なさい……」
声が。
弱々しいながらも、はっきりとした声が。
響いた。
ユウキへの殴打が止む。
アマツの視線が、一方へ固定される。
その先。
血溜まりの中に倒れ込んでいた少女が、顔を上げていた。
「あんたが……憎いのは……ユウキさんじゃ……ないでしょ」
食人姫――アトリが。
「あんたがずっと欲しがってた……ユウキさんを奪った……
……私のことが……憎いんでしょ……!?」
アマツを、睨んでいた。
「……そうか。そういえばお前は、ユウキに手を出したんだったよな。
己の分も弁えずに、意地汚く、ユウキを喰いやがったんだよなっっっ!!!」
叫びながら。
アマツは、アトリの方へと踏み込んで。
欠片の躊躇もなく。
己の剛剣を、叩き込んだ。
ユウキは再び割り込もうとしたが。
鉄の塊で何度も殴られ、皮膚をズタズタに引き裂かれた体は、
彼の思い通りに動くことはなく、わずかに痙攣するだけだった。
ごつ、と鈍い音が響く。
アトリの頭部から鮮血が舞った。
――しかし、頑強な頭蓋骨は割れることなく。
アトリは不敵な笑みを浮かべてみせた。
「ばーか……。私の頭は、そんな剣じゃ、斬れないわよ……」
弱々しくも、アトリの声がはっきりと響く。
ならば――と、アマツは剣を構え、再び攻撃を繰り出した。
今度は突き。
肋骨の隙間を縫い、心臓を直接切り裂いてやる。
「――で、こう言えば心臓を狙うと思ったよ!」
アトリの上半身が跳ねる。
うつ伏せだった体が反転し、両腕で突きを受け止めた。
手の肉が裂け、血飛沫が舞うが――アトリの骨は切断されずに、そのまま剣を抱き込んだ。
突きの軌道が予測できたからこそ、可能だった芸当である。
「なっ!? この!」
アマツは慌てて剣を引こうとするが、がっちり抱えられて動かせなかった。
とはいえ、剣を抱え込んでいるだけでは、アトリに勝機はない。
大量に出血していて、今もなお鮮血を漏らしているのだ。
まともに動けるのはあと数十秒といったところか。
「……痛いなあ、この剣!」
剣を必死で抱きしめるアトリは、唐突にそう言った。
「こんな痛い剣で――ユウキさんを殴ったの!?」
アトリの言葉が、アマツの胸に突き刺さる。
「あんたさあ、ユウキさんのことが、好きなんでしょ!?
好きな人を、こんなもので殴ったの!?
好きなくせに、自分の感情を優先させて、振り回したの!?」
アトリは叫ぶ。
その瞳には――涙がにじんでいた。
「好きな人を自分で傷つけて、どう思ったの!?
――私は、苦しかった!
独占欲と嫉妬に駆られて、ユウキさんの腕を齧りとっちゃった!
私のせいで!
私のせいで、ユウキさんの腕が一本、なくなっちゃったんだ!
もう大事な人には噛み付きたくないって思ってたはずなのに!
私は、くだらない感情に負けて、大事な人を傷つけたんだよ!
――今の、あんたみたいにねっっっ!!!」
「う、五月蠅いっ!」
がつん、とアマツはアトリを蹴る。
しかしアトリは、抱え込んだ剣先を決して離そうとはしなかった。
「だから! 私はもう、好きな人を傷つけたくない!
そして、ユウキさんを傷つける奴は、許さない!」
「五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅いっ!
死に損ないが偉そうなことを言うな!
ユウキは、ユウキは私のものなんだからっ!」
「――正直な話、さっきまでは、ユウキさんを守ることができたし、このまま死んでもいいと思ってた。
私のせいで、ユウキさん、死にそうな大怪我をしちゃったから!」
「じゃあ、そのまま死ねよ食人姫!
私とユウキの、邪魔をするなっ!」
「……食人姫じゃないもんっ!」
「死んでもいいと思ったけど。
やっぱり死ねない事情ができたんだもん!
――だって。
だって、あんなこと言われたら、ますます好きになっちゃうんだから!」
――“白”と“アトリ”を、助けます。2人とも、まだ、生きています。
自分だっていつ死んでもおかしくない大怪我のくせに。
本人だって、生きることを諦めていたのに。
自分の腕を食い千切られたくせに。
いつものように、お人好し全開で。
助けようと、してくれた。
「私の名前は、“アトリ”だ!
食人姫なんて怖い名前じゃ、ないっ!」
アトリはアマツを睨み付ける。
剣を抱え込めるのもあと数秒。
でも、最後まで、屈する気は皆無だった。
「ユウキさんが私のこと助けてくれるんだから!
せったいに、ぜったいに――私は死なないんだもんっ!」
しかし。
アトリの体は、本人の意志とは裏腹に。
すとん、と限界の訪れた瞬間、力が抜けた。
引き抜かれる剣。仰向けに横たわるアトリ。
アマツの顔に笑みが張り付く。
そしてそのまま、アトリの胴へ鋭い突きが――
「……やっぱり、あんたも、そうなんだよね」
アトリの声が、響く。
その胴に剣は到達しておらず。
視線は、アマツの脇に向けられていた。
「ユウキさんが助けてくれるって、言ってくれたんだから。
……そうそう、死んでなんて、いられないよね」
どさ、とアトリの頭が地面に落ちる。
もう首を支える力すら、抜けてしまったようだ。
しかし、アマツはそちらを見ず、アトリと同じ方――己の脇へと視線を固定。
そこには。
息も絶え絶えで。
口と腹部から血を零している。
小さな女の子が、剣の柄を、握っていた。
「――テメエ、血塗れ竜……ッ!」
突きを放つ瞬間。
完全に手首が固定されたところを。
掴まれていた。
「血塗れ竜じゃ、ない」
腹部の傷は大きく、見れば腸がはみ出ている。
言葉と共に、口からごぼごぼと赤黒い血液を吐き出している。
でも。
それでも。
「――私は、“白”。
血塗れ竜じゃ、ない」
確かな意志と共に、その場に、立っていた。
状況は、ここにきて五分。
剣の柄を完全に押さえられたこの体勢。
たとえ瀕死の体であろうとも、力の駆け引きという一点では、白が有利である。
アマツが重心を動かしたり、手首を返そうとした瞬間、その場で崩され、倒されるだろう。
床は硬い。後頭部から落とされたら、確実に終わりである。
しかし、流石に瀕死ということもあり、膠着したこの状態から、
強引に攻めることは、今の白には不可能だった。
「……なんで」
ぽつり、とアマツの口から想いがこぼれる。
「――なんで、ユウキなの?」
「…………」
「なんで、他の誰かじゃないの?
ユウキじゃなければ、私は余計な口出しなんてしない。
お前たちに、危害を加えるつもりも、ない。
それどころか、きっと、応援だってしていた。
でも、ユウキだけは、だめ。
ずっと好きだったの。学院生の頃から、ずっと。
なのに、なんで、なんで、お前たちも、ユウキなの……?」
「……私だって……けほ……そいつだって……
どうしようもないくらい……ユウキのことが、好きだから」
「だめ! ぜったいだめ! 私にはユウキだけなんだから!
お前らみたいな怪物には、ユウキは渡せないんだから!」
白は、アマツのその言葉に。
悲しそうな、表情を見せた。
「…………たしかに……げぽ……わだしだちば……がいぶつ、だけど……」
ぼたぼたと。
言葉と共に、濁った血液をこぼしていく。
「……ぞれでも、ユウキのごとば……だいずき、だから……」
「だから……ユウキを……なぐるな……!」
そう。
今の白、そしてアトリにある思いは、ただひとつ。
ユウキは、自分たちを助けようとしてくれた。
両腕を千切ってしまったのに。
大怪我をさせてしまったのに。
助けようと、してくれた。
だから、今度は自分たちが助ける番、と命を張った。
結果、ユウキを守ることができて、もう、死んでもいいと思った。
なのに、あろうことか、ユウキは再び白とアトリを助けようとしてくれた。
もう、見捨ててくれてもよかったのに。
ユウキに幸せに生きて貰えれば、それでよかったのに。
また、助けてくれた。
賭けてもいい。
あのときのユウキの言葉がなかったら、自分もアトリも、力尽きていただろう。
でも、ユウキの言葉が、力をくれた。
ほんの短い時間、命を削って、動く力を。
だから。
それは、最後まで。
ユウキを守るために、使うつもりだ。
「……わかったよ、ユウキはもう殴らない。
私だって、ユウキのことが好きなんだ。
さっきは少し熱くなっただけで、ホントは今すぐにでも介抱してやりたい。
ユウキは絶対に幸せにしてやる。お前らが心配しなくても済むように。
お前らも、今すぐ手当をすれば助かるかもしれない。
だから――」
手を離せ、と。
そう、優しい声でアマツは促した。が。
「……私、」
しかし、唐突にアトリの声が、響いた。
その声は血で濁り、空気の流れで掻き消されそうな弱々しいものだったが。
最後の力を振り絞って、アトリは言葉を紡いでいた。
「他人の感情を読みとるのが……得意なんだ。
施設で、研究者の表情ばかり窺ってたから、なんだけど……。
まあ……でも……命がかかってたからさ……それなりに、自信はあるんだ……」
大量の出血で、既に焦点すら定まっていない、意識の薄れた瞳だったが。
仰向けに倒れていたアトリの目は、確実に、アマツを捉えていた。
「あんたのその声……うそ、ついてる、声だ……。
ユウキさんを閉じこめて自分だけのモノにしようとしてる、
……独占欲で、いっぱいの――」
「……やっばり……」
それを聞いた白の声も、冷静だった。
あらゆる動きを見切る眼力。
それが、警告していた。
相手が、口先とは裏腹に、全身を緊張させて、
いつでもこちらを殺せるようにしていることを。
「畜生……ッ!」
己の企みを見破られたアマツが、
一か八か、動き出そうとした。
先程の膠着状態は、しかし時間が経過していて、体力の消耗している白が不利となっていた。
そのまま白の小さな手を引き剥がそうと――
その瞬間。
アトリが、朦朧とした意識の中、必死に手を伸ばした。
指先が、アマツの足首を、掴む。
年齢相応の、弱々しい少女のそれにも及ばないほどの力だった。
しかしそれは、いざ攻撃を起こそうとした瞬間のアマツには、絶妙な妨害となり。
それを見逃さなかった白によって、アマツは完全に崩されて。
そのまま、床に頭から、叩き付けられた。
感触から、アマツが起きあがることはないと確信した白と。
虚ろに白の顔を見上げるアトリは。
安心したように微笑んで。
共に、全身の力を、抜いた。
お待たせしました。次が最終話です。
長いこと間を空けてしまい、誠に申し訳ありません……。
外伝の後編、そして本編の次話を最終話とし、
血塗れ竜と食人姫、という物語の締めくくりとしたいです。
uwaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ついに本編が終わってしまう時が来るのか……。
アマツの相変わらずの腹芸がサイコーです。
GJ!
やだよ終わるなんてやだよ
外伝も次で終わるん?(´・ω・`)
ああっ!
アトリと白、二人にはマジで死なないで欲しいなぁ。
無理かな?
|ω・`) 終わっちゃうのか・・・・続編はないのですな
んなこといってたら埒が開かん
白もアトリもめがっさ切ないよ。゚(゚´Д`゚)゜。
GJ!!ここまできたらあとは何もいわずに最終回を楽しみにしています。
嗚呼……遂に次で、このユウキの甘々ラブラブハーレムファンタジーも終わりか…
なんと感慨深い…
>>469 GJです。
凄く・・・いい話です(;つД`)
|ω・`) ここに来て長編の血塗れとトラトラが終わってしまう・・・
だが、また第二第三の血塗れ竜やとらとらシスターが現れるはずだ・・・
|
ω・`) おいらに文才があれば・・・力になれるのに・・・
血の混じった濁音で心情を吐露する姿が……。・゜・(ノД`)・゜・。
いたり先輩や雪桜さんがいるから大丈夫さ
そういえば山本君とお姉さん3がそのうち始まる・・・・・と作者さんが申していたような
俺の雪桜さんはどうなった?
最近、ここには来てないけど
>>472-783 おまいら、過去にばかり捕らわれてないでこれからの事を考えるんだ
具体的に言えばss書くとかss書くとかss書くとかさ!!
では投下致します
第17話『黄金伝説 監禁生活2日目』
監禁されていると喉が乾くわけではないが、もう朝になってる。
昨日から雪桜さんの精神攻撃を喰らい続けているおかげで夕食を食べ損ねてしまった。
お腹はグーグーと鳴き続けてる。少しは黙ってくれよ。俺の腹。
寝呆けた俺は周囲を見渡すと俺の体で眠っているはずの雪桜さんの姿はなかった。
この部屋にいないので他の部屋に行ってしまっているらしい。
他の部屋に行ってしまうと彼女が一体何をしているのか徐々に不安になってゆく。
一応、発狂している雪桜さんが笑顔でノコギリを持ってきてもおかしくない状況だ。
油断していると一瞬にして命を失ってしまうことだろ。
だから、俺は次に雪桜さんが部屋に入ってくるときはいろいろと覚悟しなくちゃいけない。
そう思った途端にドアが勢いよく開かれた。
まだ、覚悟してねえよと心の中で呟く。
「桧山さん。桧山さん。朝ご飯出来たよ。一緒に食べようよ」
雪桜さんが元気よくこっちに向かってやってくる。手に持っているのは朝ご飯……のはず。皿の上に乗っているのは、
黒々しい物体が盛られていた。あの虎の手料理に匹敵する程のゲテモノ料理が目の前にあるのだ。
異臭の香りを部屋に漂わせながら、彼女は笑顔で差し出す。
「は〜い。どうぞ」
「雪桜さん。一つ聞いていい」
「何かな?」
「普段、料理を作っているのは誰?」
「お母さんだよ」
「昼休みにお弁当を作ってこれない理由はお母さんが作ってこれないからか?」
「うん。そうだよ。お母さんは忙しいから作ってくれないの」
「じゃあ、昼休みは飢えていたのは」
「購買で買うお金がなかったからかな」
「一つだけ言っていい」
「うにゅ?」
「とりあえず、料理を練習しようよ」
「あぅあぅあぅあぅあぅ」
その一言に雪桜さんは泡となり砕け散った。誰かがきちんと指摘しないと雪桜さんのためにならない。
未来の旦那さんにゲテモノ料理を食わすつもりか?
「縄をほどいてよ」
「それは嫌。だって、桧山さん逃げるもん」
「に、逃げないから。とりあえず、朝食は俺が作るからな」
そうしないと二人仲良く飢え死にするだろう。この日本で家の中で飢餓死したくはない。
「ダメ。絶対にダメっっ!!。桧山さんが逃げたら、思い切り泣くんだからね」
「雪桜さん。お願いっ」
「う、うみゅ。仕方ありませんねぇ。桧山さんがそこまで言うなら解きましょう。ただし、この家から出ることは許しませんからね」
「わかってるよ」
雪桜さんの迫力に押されて、俺は首を下に向けて頷く。
逃げる機会だったが、俺自身もお腹が空いているので無理。
逃げるためにはちゃんと体力を身に付けておかなちゃ。
ただ、思ったのは雪桜さんが俺を監禁した原因はお母さんが単身赴任で家にいないからじゃないのかと真顔で問い詰めたくなってきた。
慣れた手つきでフライパンを動かすと後ろから突き刺さる視線に俺は曖昧な笑顔を浮かべていた。
雪桜さんは子供がヒーローに憧れるような瞳をして、俺の方をずっと見つめていた。
確かに雪桜さんの料理した跡は台所がメチャクチャになっていました。
猛獣が暴れた跡と疑わんばかりに散らかった台所を片付けてから、冷蔵庫の中にある残り物で適当に調理するだけ。
別に家でやっていることは大して変わっていない。ただ、食べさせる相手が虎から雪桜さんに変わっただけである。
だから、いつも以上に力が入ってしまっていた。
誰だって、女の子の前では格好のいいところを見せたいだろ。
「はい。出来上がり」
またまた猫色のシーツのテーブルの上に出来上がった料理を皿に盛る。
一仕事が終わると俺は安堵の息を吐く。
「す、凄い。凄いですよ桧山さん」
「別に毎日やっていることだから」
「わたしなんてせっかくの食材をダメにするばかりで何にも出来なかったのに」
「そんなことないだろ。雪桜さんは頑張ったじゃん」
雪桜さんの指にはたくさんの包帯が巻かれていた。器用なことに全ての指に巻いているのだから。
彼女の努力はきちんと認めてやらなきゃいけない。
「ううっ。そんなことありませんよ」
「謙遜するなって」
「わたし、もっともっと頑張りますからね」
と、平穏な会話を続けていた。昨日までの監禁されていた雪桜さんが嘘みたいに尊敬の眼差しで俺を見ていた。
これは勘であるが、俺が監禁されていなかったら、雪桜さんは餓死していたかもしれないな。虎と同じように。
昼食を食べ終わると事態は急変する。
自由を与えられていた理由は料理をするという名義が与えられていただけ。
役目が終われば、元の鞘に収まらなきゃいけない。雪桜さんは縄を取り出して、こっちへとゆっくりと近付いてくる。
「どうして逃げるんですか? 桧山さん」
「いや、普通は逃げるだろ」
「桧山さんはずっと私と一緒にいなきゃいけないんですよ。この夏休みでしっかりと調教して、私のことを好きになってもらわないと」
「もう少し平和的な解決方法を探そう。ほら、対話と圧力ならぬ、対話と対話でゆっくりと話し合えばわかり合えるよ」
縄を持ち、雪桜さんは一歩ずつ近付いてくる。
その足音が俺の人生のカウントダウンを鳴らしているように錯覚する。
逃げ出すのは容易だ。男の身体能力に女の子が勝てるはずがないのだから。
さっさとこの家を抜け出して、平穏な夏休みライフを俺は盛大に楽しめばいい。
だが、それができないのは目の前にいる雪桜さんが心配でたまらなかったからだ。
「嫌です。だって、桧山さんはあの女なんかに取られるのは絶対に嫌」
「あの女って? 瑠依のことか?」
「そうですよ。桧山さんの彼女とか言っている少し痴呆症を起こしている女のことですよ。桧山さんはあの人が好きなんですか?」
「その痴呆少女とは家が隣で親同士の付き合いの延長程度にしか付き合ってない。瑠依が好きかと問われれば。
多分、恋愛的感情の好きとは違う好きだと思う」
「ダメです。桧山さんは私のことだけ思っていればいいんです。朝起きてから夜寝るまで私のことを想い続けて欲しいんです。
でも、あの女が桧山さんの心の片隅にいる以上は私が徹底的に調教してあげますから」
そう言ってから、雪桜さんは襲いかかってきた。
はずだった。
最初の駆け足で雪桜さんは壮大に滑ってしまい、勢い良く宙に浮く。
そのまま着地すると雪桜さんが怪我をしてしまう。俺は急いで雪桜さんを受け止める態勢に入る。
運よくキャッチすることができたのか、俺の胸の上には雪桜さんの頭があった。
「つ、つ、捕まえましたっっ!!」
いや、助けたんだからお礼の言葉を述べるのがお約束だろうがと俺は突っ込むことができないまま、雪桜さんの抱擁攻撃に襲われた。
「にゃにゃにゃにゃにゃ」
あーあー。
今日も雪桜家に宿泊決定です。ありがとうございました。
次回、忘れられていた虎の出番がありますw
GJ
むしろ雪桜さんが調教(餌付け)されてるんじゃないかと
GJ!!
これは本当に監禁といえるのかwww
投下乙であります。
こんなだだ甘監禁ならされてみたい…
仇の娘だというのにつよちゃん優しいなあ……
こんな監禁ははじめてみたwwwww(*^ー゚)b グッジョブ!!
>>489 監禁の新しいライフスタイルを確立した作者様GJ(゚ー゚*)
こんな監禁ライフなら、慣れてなくても大丈夫そう(*´д`*)
こ、このタイプの監禁という発想は無かった・・・・・
修羅場スレに来たと思ったらデレデレ甘甘のスレにきちまったようだ。
俺の好きな修羅場とデレ甘の共存タイプでストライクだわコレ。
連カキコスマソ。
まさか前スレが500kb行く前に落ちてしまうとは・・・
最後までかまってやれなかったなぁ
>>497 何ねぇ、何言ってるの?あんな卑しい雌豚に同情なんかしないでよ!
あんなヤツなんて一人寂しく死んでいくのがお似合いなのよ!
道端のゴミ以下の分際で497君に手を出そうとしたカスに生きる権利なんか無いのよ!
だからお願い、何処にも行かないで。雌豚共に優しくしないで。
あなたは私だけ見て居ればいいのあなたの隣には私しか居ちゃいけないのあなたは私以外の女に触れちゃいけないのあなたの体温を感じていいのは私だけなのあなたはあなたはあなたはあなたはあなたはあなたはあなたはあなたはあなたはあなたはあなたはあなたは
>>497 もーあなたはやさしいんだから
わたしもそんなやさしいあなただから好きになったんだけどね
でもね
そういう風にやさしさを振りまいてると
勘違いしたバカが増えるでしょ?
いつも処理するの大変なんだから
もうちょっと考えてほしいな
待てこれは孔明の罠だ
監禁という名の甘甘同棲に乾杯
>>502 (^ω^)⊃ アウアウ!!!
⊂ミ⊃ )
/ ヽ
俺的には
⊂( ^ω^)⊃ セーフ
504 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/18(水) 00:00:08 ID:0EuE8JGj
むしろすばろしいではないかその画像。
もっといろいろ教えて下さい!
血まみれ竜相変わらず面白い!外伝も次ぎで最後と言うのは正直寂しいですが、
それが一番物語としてメリハリのあるものならばそれが正しいと思います。
──さて、ここで少し考えてみよう。
時刻は夕焼けを迎えた放課後。
眩い夕日に照らされる中を、僕の様な凡庸な奴が少女、しかも見目麗しい子と二人、並んで進む。
それは人から見たら艶めいた光景に映るかも知れないが、しかし、そう上手く物事は回らないと言うのがこの世の常と言うものである。
その原因を具体的に述べるならば。
「・・・」
御陵さんは寡黙なのだった。
現在、職員室に武道場の鍵を戻した僕達は昇降口に向かうべく歩いている途中。
七月は一年で最も太陽が高くなる頃と言われているが、流石に六時近くとなるとそれも斜陽に変じている。
そんな状況の中で、会話をしつつ足を進めている御陵さんと僕。
・・・いや、会話と呼ぶには齟齬があるかも知れない。
試しに一つ、御陵さんとの会話・・・と思しき一部を抜粋してみよう。
「・・・」
「・・・」
「・・・御陵さん、ナポレオンとブリッジだとどっちが好きですか?」
「強いて言うのならナポレオンですが、個人的にトリックテイキングゲームは余り好きではありません」
「そうですか」
「はい」
「・・・」
「・・・」
──とまぁこんな感じで、常に会話と呼べる程に言葉の遣り取りが成立しないのだ。
大抵の場合僕から質問か何かを切り出して、それに御陵さんが二言三言返事をして、それで終わり。
それだけなのだ。
まだ反応を返してくれるだけ増しだが、正直一方的に話を持ち掛けているこちらとしては気まずさしか感じられない。
ちらちら横目で隣を窺うものの、御陵さんはデフォルトが無表情なので、楽しんでいるのか退屈しているのかさえ分からない。
あー・・・。
事ここに至って、実は僕と御陵さんはそう言う意味での相性がよくないのではないかと言う気が頗る勢いで湧いてきた。
御陵さんは考える迄もなく饒舌ではないし、斯く言う僕も喋るのは余り得意ではない。
これが西条君や東さんみたいなムードメイカータイプなら少しは場も明るくなろうが、
生憎僕はネガティヴにメランコリックの二乗掛けをした性格なのでどうしようもない。
考えてみれば──部活動から離れて御陵さんと向き合うのは、僕にとってこれが初めてになる、のかな。
部活でも御陵さんが声を掛けてくる時は飽く迄副部長、或いは一部員としてでしかないのだし。
・・・なら、実際はどうなんだろう?
僕の心の内に、忌まわしい事に・・・ある一つの懐疑が生まれた。
確かに、御陵さんは副部長として十分過ぎる程にその責を果たしている。
だがこんな風に部活の事から離れて僕と接する時には全くの寡言──だったら、それは一体何を意味する?
それは即ち、御陵さんが只の義務のみとしてつき従っているのであって、本心では酷く嫌がっていると言えるのではないか──。
・・・馬鹿め。
僕は即座に自身を罵倒した。
人の心を自分勝手に悪い方向へ解釈するなんて、愚かと言う以外の何物でもない。
けれども──これは、こんな思考は言ってしまえば僕の病気の様なものだ。
だから、止められない。
他者を悲しませているんじゃないのか。
他者を苦しめているんじゃないのか。
他者を──傷つけているんじゃないのか。
・・・やめよう。
これ以上余計にうだうだ考えても、陰鬱な気持ちとなってしまうだけだ。
昔のあの記憶を・・・思い出しそうになってしまう。
あぁ──確かに疲れてるな、僕。
意図せずして溜め息を吐く僕。
と、その嘆息に呼応したかの様に、隣を歩く少女が突然足を止めた。
「・・・?」
反応が遅れた僕は、二三歩進んでから立ち止まる形となる。
どうかしましたか、と急に停止した御陵さんに僕が声を掛けるその前に、機先を制した御陵さんが動いていた。
僕の背後を取る様に、すっと素早く擦り寄って。
その行動を捉えるより早く僕が感じたのは、肩に対する圧迫だった。
しかしそれは強くなく弱くなく、丁度いい強さの圧力──そう、マッサージと呼んで差し支えないもの。
ちらりと眼だけ動かして窺った背後、そこにあったのは僕の両肩に手を添える御陵さんの姿だった。
「・・・」
・・・は?
余りの事の唐突さに、僕の脳味噌がついて行っていない。
僕は自分にはそれなりに適応性があると自負している輩なのだが、流石にこんなイベントは想定の範囲にない。
って言うか、何で肩揉みなんですか?
男が同級生の女の子にマッサージを受けているなんて、第三者に見られたらかなり奇異に映る光景に違いあるまい。
しかも、それをしてくれるのが他の誰かなら、あの御陵さんが?
──いや、冷静になれ自分。
錯綜する思考を落ち着かせる為に、僕は現状分析を試みる事にした。
時刻は夕暮れ、場所は校舎と校舎を結ぶ渡り廊下・・・うん、それはどうだっていい。
僕は差し込む夕日に照らされながら、肩に指圧と思しき行為を受けている・・・それも、取り敢えず理解する事ができる。
分からないのは──それをするのが、何故彼女なのか、と言う事だ。
もう一度言おう、どうして御陵さんが男の肩を揉む?
「・・・」
「あの、御陵さん?」
「部長は──」
行動の真意を問い質そうとした僕を遮るかの如く、御陵さんは半ば独り言の様に告げる。
「部長は、背負い過ぎなのです」
──。
一瞬、思考が停止した。
「もっと楽になさって構わないのです。部長だけが苦しむ必要などどこにもありません」
「・・・」
僕の心中を見透かしたかの様に、御陵さんは、言う。
「私から見て、近頃の部長は酷く疲弊なされているとしか思えません。部長の負担は我が不始末。
東さんはいつもの事だなどと仰っていましたが・・・きっと、私の力不足が祟っているに相違ありません」
「それは──違いますよ」
何とかそこ迄来て、言葉を返すだけの余裕を心に取り戻す僕。
「別に変な意味じゃなくて、本当に東さんの言う通りなんです」
僕は同窓生であるあの関西弁の少女の事を頭の片隅に思い浮かべながら、続けた。
「僕が疲れているのはいつもの事ですよ。ほら、僕って暑がりですから、特にこの季節は消耗し易いって言うだけで。
夏が明けたら、直ぐに元に戻りますよ。ですから──御陵さんがお気を病む必要はありません」
今言った事の半分は嘘だ。
別に僕は暑がりではないし、寧ろ夏の茹だる暑さよりも冬の凍てつく寒さの方が苦手な人種である。
けれども・・・もう半分は、本当だ。
この時期は、どうにも要らない事を思い出してしまう。
今だってそうだ、僕はあの日の空気を、あの日の光景を、頭のどこかに過ぎらせてしまっている──。
・・・いや。
今は僕の下らない感傷などはどうでもいい。
それよりも、この状況ではもっと別に言うべき事がある。
「御陵さんこそ──嫌じゃないんですか? 男の、しかも好きでもない奴の肩を揉むなんて、貴方にとっては苦痛に違いないでしょう」
「それは・・・。・・・」
彼女にとって、今自分のしている行為が一体どの様な意味を持っているのか。
これは、幾ら記憶力の優れない僕でも覚えている。
このか弱い少女の心身諸共、全てを引き裂き壊した、去年の初冬の出来事を。
それが証拠に、理路整然とした発言が常の御陵さんには珍しく、その言葉尻が淀んでいる。
しかしそれでも尚、御陵さんは搾り出す様にして述べた。
「・・・ですが、私は私の義務を果たさなければなりません」
「だったら尚更でしょう。苦痛を伴う義務なんて、それこそ御陵さんに負担させる積もりはありません」
「では・・・きっと私は楽しいから、この義務を行っているのです」
「そんな、楽しいって──」
「ええ、とても楽しいです。私は部長を労う事が楽しくて楽しくて堪りません。あははははは」
「いや、ちょ、御陵さん」
「あははははは」
「・・・」
丸っきり台詞棒読みの笑い方をする少女、しかも無表情。
・・・そこ迄無理に開き直りますか。
どうも御陵さん、思っていたよりも強情な様だった。
「・・・分かりました」
結局先に折れたのは、僕の方だった。
こんな風に開き直った人を説得するのが難しいのは、如何に人生経験の短い僕でも幾度となく体感した事だ。
加えて御陵さんみたいに理知的な人が一旦凝り固まると牽強付会で押し込められてしまう為に、余計に性質が悪い。
とは言え、ここで完全に屈服する心積もりも僕にはない。
わざとらしく嘆息する仕草を見せてから、僕は御陵さんに言った。
「じゃあ、もうそんな事をするのをやめろとは言いません。その代わり──」
「?」
受け取るだけは、好きじゃない。
「僕にも、御陵さんに何かさせて下さい」
「え・・・そんな、それは失礼です」
僕の言う事が想定の範疇になかったのか、御陵さんは僅かに狼狽した様だった。
そんな少女に、追い打ちを掛けるが如く語る僕。
「どうしてですか? 義務と言うのなら、僕にも部長として副部長以下部員全員を気遣うと言う必要があるんですよ?」
「う・・・」
僕は黙って一歩前に進み、それから振り返る。
構図としては、御陵さんと距離を開けて対峙している形だ。
夕暮れ時の校内、渡り廊下で向かい合う少年と少女、周りに人影はなし。
沈む太陽を惜しむ様に響く蝉の大合唱が、逆にこれ以上ない静寂となってこの場を支配している。
これもまぁ、見る人から見れば些かロマンティックに見えるかも知れないが、実際はそんなのではない。
──御陵さんが、異性を好くなんて、絶対にあり得ない事だろうから。
ゆっくり、僕は言い含める様にして眼前の少女に告げる。
「御陵さん・・・こんな機会は今が初めてだから言いますが、僕はいつも御陵さんに感謝しています。
たとえ表面上であったとしても、こんな奴を普段から気遣ってくれるその誠意に・・・心から、感謝しています」
だからこそ。
「だからこそ──貴方の誠意に、僕も尽くさなければなりません。それに、人から受け取ってばかりと言うのも、好きではないですから」
「・・・」
「だから、何でも好きな様に言って下さい。僕にできる範囲なら、何でも」
「・・・っ!」
その刹那に。
まるで膨れ上がった風船が破裂するかの如く。
僕は、無表情が常の御陵さんが今迄の中で最も大きな感情の起伏を見せるのを──具体的には動揺するのを──確かに、見た。
その動揺をどうにか静めようとでもするみたいに、少々声を吃らせつつ少女は口を開く。
「な、何でも・・・ですか? 部長・・・」
「ええ。約束してもいいですよ」
約束。
約束と言うものは、僕は嫌いではない。
「・・・本当に、いいんですか? 約束してしまって」
確認するかの様に、御陵さんは問うてくる。
それに対し、僕は少しだけ・・・本の少しだけ、沈黙してから、答えた。
「・・・ええ。勿論」
約束を守っている間は、自分がこの世界で生きている実感があるから。
だから、嫌いじゃ──ない。
「・・・」
暫らく御陵さんは黙考していたが、やがて、すっと前へ歩み出た。
僕の横を通り抜け、更に前へ進み、そこで止まる。
「じゃあ、一つだけ──お願いをしても宜しいですか?」
呟きに近い、御陵さんの声。
背中を向けられた僕からは彼女の表情は窺い知れないが、無論ここで僕に断る道理はない。
「はい。何なりと」
「・・・じゃあ・・・」
ちょっとだけ躊躇する動作を見せた後に、少女がこちらへ振り返る。
そして、徐に。
徐にその左手を、僕に向けて差し出した。
「・・・手を、繋いで頂けますか?」
「!?」
少女のその申し出に──僕は、横っ面を殴られるに等しい衝撃を受けた。
何だって・・・手を繋ぐ?
それこそ他人に見られて悪い噂が立つかも知れないと言うのに?
それが先の肩揉みよりも更に際どい行為だと聡明な彼女が分かっていない筈がないのに、何故。
「・・・駄目ですか?」
縋る様な眼をして、御陵さんは言う。
そんな彼女に──。
「・・・いえ、全く構いませんよ。約束ですからね」
約束は──守るさ。
それにあんな顔で求められたら、意志薄弱な僕では拒否するなんて事ができる筈もない。
湧き起こる疑念や理不尽を全て心の中に封じ込めると、僕は御陵さんの左手に、己の右手を重ね合わせた。
「・・・有り難う御座います、部長。・・・では、参りましょう」
「ええ、そうですね」
それから再び、僕らは歩み始めた。
相変わらずお互いに積極的な会話が交わされる事はなかったけれど・・・しかし、先程僕が感じた気まずさは嘘みたいに霧散していた。
只二人の右手と左手を結んだと言うだけなのに、考えてみれば変な話でもある。
だけれど──確かに、悪い気はしなかった。
ひょっとしたらそれは異性とこんな風に触れ合うのが、僕にとって懐かしい感覚だったからなのかも知れないけれど。
それでも、悪くは、ない。
御陵さんの、意外にじっとりと汗で湿った左手の感触を覚えながら、彼女もこんな気分であるのならば、と僕は祈った。
祈った。
さて、職員室から渡り廊下、渡り廊下から昇降口迄。
どちらも距離的にはほぼ同等の筈だが、手を繋いだと言うだけでこうも体感時間が違うのは何かの欲目だろうか。
とぽとぽ歩く僕の視界には、既に夕闇に包まれた昇降口が入ってきていた。
と、そこで唐突に、御陵さんの口からお礼の言葉が漏れた。
「部長・・・有り難う御座います。私の詰まらない申し出に応えて頂いて。・・・駄目ですね、私、与えるどころか受け取っているばかりです」
悄気る御陵さんに微笑しつつ答える僕。
「いえいえ。別に、僕は約束を果たしただけですよ。それに御陵さんが満足してくれたのなら、それだけで十分ですから」
──約束は果たす、それが僕の宿命なのだし。
「・・・」
そして沈黙の中で──名残を惜しむ様にゆっくりと、御陵さんの左手が解けた。
その瞬間、空虚にも似た思いが心のどこかで湧いたが、まぁ、ここでお別れなのだから仕方がないだろう。
昇降口を眼前に迎えたところでT字となる廊下を右に折れ、端に位置する二年のブロックへ。
「・・・」
「・・・部長」
「はい?」
「あの、今日、もしよかったら──」
御陵さんの声を聞きながら──。
僕は、下駄箱立ち並ぶ脱履場への最後の角を、曲がった。
その瞬間。
「・・・あ、薙代君!」
御陵さんの声を遮るかの様に響いたのは、僕を呼ぶ声。
薄暗い中に眼を向ければ、そこにはA組の下駄箱に寄り掛かって立っている一人の少女が。
それは、学校一の才女と謳われる人──天使伊祈さん、そのものだった。
「あ、天使さん」
しまった、天使さんが待っているって事、すっかり忘れていた。
部活がある日は図書館で勉強している天使さんと帰りにこの場所で落ち合うと言うのが習慣となっていたのだが、
今日は御陵さんの事があって頭からそれが完全に抜け落ちていた。
・・・やばいなぁ。
遅れた代償として、また何か奢らされるかも。
「もう、今日は遅かったんだね。結構待っちゃったよ・・・って──」
表面は穏やかな微笑、しかし声は剥れた様にして天使さんがこちらへ近寄ってくる。
と、そこで。
丁度彼女から見た死角・・・僕の陰となる場所に立っていた少女を、天使さんの眼が捉えた。
「・・・その女の子、誰?」
忘れられた頃に三話目。
結構書いてて長いとは感じていたのですが、最終的に見たら前二話を合わせた程の量に・・・((((;゜Д゜)))
設定ばかりで殆ど物語が進んでいませんが、今回で大体の下地は敷く事ができたかと。
後は流れに沿うだけです。
>>513 (´・ω・)b
御陵さんが可愛すぎる件について
516 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/18(水) 03:07:49 ID:uuWUeYlJ
とうとう二人は出会ったか。
うん、やっぱ俺はこのスレが無いとダメだ。
(*´Д')
ついに邂逅→そして戦いが始まる……(*´д`*)ハァハァ
あたりまえでしょ
>>517くん、
>>517くんにはどこぞの雌豚なんかじゃなくて私が似合うの。
ううん、私じゃなくちゃいけないの。これは運命なのよ。
だから、ねぇ、もう他のスレになんか行かないでよ!
ずっと、私だけのことを見てよ!24時間、365日、私を、私だけを見つめてよ!
…もしかして他に好きなスレでもあるの?
どこの、どこのスレよ、私の
>>517くんを誑かす雌豚!
待っててね
>>517くん、今すぐ
>>517くんに付き纏うそいつを………
………殺すから。
>>513 待ってました!!
ついに二人が出会ってしまいましたねw
ココからどんな修羅場が展開されていくのかwktkしてまちます
524 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/18(水) 22:04:24 ID:mFfIrLbB
>>523 おお、初めて普通の表情だ・・・・・・って左手!左手!
雪桜さんの猫耳バージョンはまだぁ?
>>523 なるほど、あのシーンはこんな表情をしていたのか。……ステキだ
>>523 絵師さんGJ!胡桃たん(*´Д`)ハァハァ
スレの傾向と少し違うかも、と思いつつ勇気を奮って投下してみます。
529 :
ミスタープレイボーイ:2006/10/19(木) 07:32:28 ID:5ehZlj6F
大事な用があるという彼女の連絡を受けて、喫茶店のいすに座ってから十分がたった。
彼女は、うつむいている。
辛抱強くまっていると、彼女がその年のわりに幼く見える顔を上げた。
やがて口を開く。
いやな予感がする。
すごく。
なんだか聞きたくないことを聞きそうな気がする。
夜な夜な動き出しては校庭を測量する、間宮林蔵の銅像の話を聞いたときと似ている。
そのせいで、高校時代は夜の校庭に近づくことさえできなかった。
「妊娠したかもしれません・・・、わたし」
間宮林蔵なんて目じゃない。
530 :
ミスタープレイボーイ:2006/10/19(木) 07:33:07 ID:5ehZlj6F
頭がよくて、スポーツができて、何より顔がいい。
これでもてなきゃ嘘だろう。
つまり、そういうわけで、ボクはもてる。
唯一の欠点は、名前くらい。
すなわち、「長嶋茂雄」。
今は亡き(生きてるんなら殺してやりたいが)糞親父につけられてしまったらしい。
数十年前ならいざしらず、今となっては恥ずかしい名前になってしまった。
もちろん、顔はまったく似ていない。(どちらかといえば一茂似か?)
名前ばかりはしょうがない。
「某ミスターのイメージをひきずるので」などというふざけた理由では改名は認められないだろう。
顔のよさも生まれつきだが、これは母さん譲りだ。
頭だって、運動神経のよさも、すべて母さんからもらった。(そうに違いない)
親父からもらったものでいいものなんて一つもなかった。
いいものはすべて母さんからもらった。
やがて思春期に入ると、女の子にちやほやされだした。
母さんを亡くしたばかりだった僕は、それにずいぶん癒された。
女の子と遊ぶことが楽しいことを知って、もてるための努力を始めた。
満遍なくパラメーターをあげた。
高校に入ってから、努力の成果が一気に花開いた。
きっかけは入学してすぐに、学校で一番美人とうわさの先輩に告白されたことか。
それに自信をつけて、とにかく女の子と遊んだ。
その経験を生かして、さらに多くの女の子と遊んだ。
複数の女の子と同時につきあうなんて、当たり前だった。
といって、ひたすら爛れた高校生活を送ってたというわけじゃない。
自由になる時間は、すべて勉強とスポーツとバイトにつぎ込んだ。
名前以外の僕の欠点はお金がないことだった。
ぶっちゃけ貧乏だったのだ。
口にするのも忌々しいあの糞親父のせいだ。
奴は、僕が小さい頃、僕と母さんを捨てて蒸発した。
おまけに、少なくない借金を残して。
母さんは、無理をおしてはたらいて、やがて死んだ。
それからの保護者は、母方の祖父だった。
こんな境遇を女の子に知られないために、ずいぶん苦労した。
同情だけはされたくなかった。
苦労したり、努力したりする姿を他人に見せるのはいやだった。
デート代は、バイトから捻出した。
バイト先の女の子とも、もちろん遊んだ。
貧乏はもうごめんだった。
社会に出てから、楽しく暮らすためにはお金と地位が必要だ。
もちろん、女の子にもてるためにも。
妄想じみた欲望もあった。
金の無心にきた汚いなりの親父を蹴っ飛ばして追い返してやるという。
少なくとも、幸せになるために親父なんか必要じゃなかったということを証明しなければ。
そういうわけで、必死に勉強した。
お金と地位を手に入れるためには、医者になるのがいいと勝手に思っていたので、医学部に進んだ。
お金はないので、国立大学。
頭がよくて、スポーツができて、何より顔がいい。おまけに医大生。
これでもてなきゃ嘘だろう。
531 :
ミスタープレイボーイ:2006/10/19(木) 07:35:41 ID:5ehZlj6F
ところで、健やかなプレイボーイライフの敵は修羅場だ。
未熟だったころには、何度も遭遇した。
いくつかの失敗を経て、高度な密会テクと、ロマンチックな別れ方を学んだ。
やがて修羅場らしい修羅場に出会うこともなくなった。
僕は胸を張って主張する。
僕と遊んだ女の子たちはみんな楽しんだんだと。
遊んでいるときはもちろん、別れすら美しい思い出にして。
彼女たちは、甘酸っぱい思いとともに、別れの時を思い出す。
それが、プレイボーイとしての僕の誇りだ。
修羅場はそういったものをすべてぶち壊す。
ノーモア修羅場。ノーモア包丁。
修羅場を招かないために必要なこと。
それは、女の子に隙を与えないことだ。。
そして、そのために大事なのが相手に対して「負い目」を感じないことだ。
負い目は、相手に弱みを見せ、隙を与え、攻撃の機会を与えることになる。
先ほどの主張は、負い目を負わないための、一種の自己暗示でもあるのだ。
僕も楽しんだが、女の子も楽しんだ。
そう考えていなければやっていけない。
負い目はプレイボーイを殺す。
彼女の言葉を聞いて、これだけのことを考えた。
益体もない内省から回復してやっと言葉を返す。
「え・・・」
「妊娠したかもしれません」
「え・・・」
いけない。
体制を立て直さなければ。
脳細胞に血液を送り、凍った心を溶かしだす。
心は折れていない。
大丈夫だ。
まだ戦える。
しかし、こんなときに返すべき最善の言葉ってなんだろう。
避妊には細心の注意を払っていたつもりだった僕は、こんなときの用意なんてまったくない。
最善ではないにしろ、少なくとも当たり障りのない言葉を返さなければ。
「名前はどうする?」は早すぎる。「男の子?女の子?」も早い。
「何週目?」も早い。「おめでとうございます」これは的外れだ。
「本当に僕の子?」最悪だ。
そんなことを聞けば、修羅場まっしぐら。
初めては僕だったのは確認している。
最近会ってはいなかったが、この短い間に他の男と寝るような女ではないことはよく知っている。
ならば・・・。
「病院にはいったの?」
いいぞ、これだ!
けれど、いざ口にできたのは。
「びょっ、びょびょびょびょびょーいん」
あまりの情けなさに涙が出そうになった。
彼女は、少し顔をうつむかせて言った。
「病院はまだですけど・・・」
それを聞いて多少落ち着く。
つまり、まだ分からないってことだ。
勘違いかもしれない。
想像妊娠ということだってある。
ただの狂言ということだって。
避妊はきっちりしていたんだから。
日本製のコンドームは優秀だと聞いている。
「でも、あれが来なくて・・・」
彼女は顔を赤くして、ますます顔をうつむかせる。
年上の彼女のうぶな様子をみて、こんな状況なのに不覚にも萌えてしまった。
しかし、萌えっぱなしではいられない。
反撃しなければ。
イニシアチブを取り戻さなければ。
どう切り返す?
やはりこれか。
「来ないってどれくらい?」
よし!
医大生らしい、クールな切り返しだ。
「ここここここなこなこな」
もうだめだ。
「一週間、です」
どうやら通じたようだ。
しかし、一週間の遅れというはどうなんだろう。
ただの生理不順ということはないのか。
「これまで、ずっと順調だったから、遅れたことなんてないんです」
・・・だそうだ。
どうする。
一緒に病院に行ったほうがいいのか。
産婆を呼べばいいのか。
お湯を沸かせばいいのか。
いや、その前にやるべきことがある。
妊娠検査薬だ。
「最近は、デジタルのいい妊娠検査薬があってね。これからどう?」
これだ。
医大生らしい、学術的な切り替えし。
今こそ、反撃のとき!
「ささささいきんのにんしんけんさやくってでじたる?」
まただ。今度こそ、情けなさに涙が出た。
「うちにあります」
「へ・・・?」
「うちに妊娠検査薬はあるんです。でもまだ調べてません。長嶋さんに一緒に見てほしいと思って」
「そ、そう。準備いいんだね。転ばぬ先の検査薬、犬も歩けばコンドームかあ、あはは」
なんだか妙な展開に戸惑いながらも、涙を拭いて余裕を装う。
「じゃあ、その、ええと、行こうか」
「はい」
席を立つ。
いいのか、本当に。
ここで彼女の家に行ってしまっていいものか。
あるいは、すべてを投げ出して自分の家に帰るべきではないのか。
そんなみっともないまねはできない。
もう後には引けない。
彼女の家までは、歩いて10分ほどだ。
その間になんとか落ち着きを取り戻し、あらゆる状況に備えておかなければ。
かっこいい自分を、プレイボーイの矜持を取り戻せ!
彼女の横を歩きながら、対策を練る。
ちらりと横顔が見えた。
ショートヘアがよく似合っている。
でもそれはおしゃれのためというより、働くのに都合がいいからだと知っている。
服装も、どことなく地味なものだ。
そう、彼女は自動車教習所で働く立派な社会人なのだ。
そこは、彼女のように若い女性が指導してくれるということで人気の教習所だった。
若いといっても、僕より年上だ。
それでもずいぶん若く見えるのは、その童顔のせいだ。
つぶらな瞳に、少し低い鼻が愛嬌を添える。
免許をとりにいった僕は、そのかわいい彼女の指導を受け、口説いて、寝た。
名前は、「村山洋子」。
洋子は、うぶだった。
キス一つにも、顔を真っ赤にした。
路上教習の間に「チュッ」なんてやると、しどろもどろになって指導どころではなかった。
そのときの、なんだかいたたまれないような顔をしてうつむく彼女の顔が好きだった。
それまで、たくさんの年上の女の子と付き合ってきたけれど、こんなにかわいいひとは初めてだった。
けれど、ついこの間免許を取って、教習所を卒業して以来、会っていなかった。
そのまま切れればそれでよし、さもなければきれいなお別れを送るつもりだった。
彼女とは、遊びで終わらせるつもりだった。
そう、今、僕には彼女とは別に本命がいる。
その本命との関係が壊れることは何としても避けなければならない。
そのためなら、今付き合っているすべての女の子との縁を切ってもいいとさえ考えていた。
実際に、かなりの女の子に別れを告げてもいた。
なのにどうして、こんなことに。
535 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/19(木) 07:42:43 ID:5ehZlj6F
などと考えているうちに、彼女のマンションについてしまった。
ついてしまった・・・しまった。
何の対策も練られてはいない。
もはや、臨機応変に対応するしかない。
これまで培われてきた、プレイボーイスキルが今試される!
エレベーターで4階に上がる。
歩いて、部屋の前にくる。
洋子が鍵を開け、僕を招き入れる。
「お、お邪魔します」
おそるおそる足を踏み入れた。
部屋は質素で、よく整理されている。
でも赤いセイリはまだなのか。
まったく笑えなかった。
洋子はお茶を出しながら、顔を赤くして言う。
「あの、それじゃさっそく調べてきますね」
細長い棒状のものを持ちながら、トイレに入る。
その間に、残された検査薬の説明書を読む。
おしっこをかけて、しばらく待つ。
できていれば「+」、そうでなければ「−」が表示されるるわけか。
なるほど、分かりやすい。
こまってしまうほど分かりやすい。
たとえば、「*」なんかがでてきてどっちつかずなどということはないわけだ。
デジタルはすごい。
などということを考えていると、やがて洋子がトイレから出てきた。
どうやら僕は、現実から逃避しつつあるようだ。
こんなことではいけない。
現実を見据え、プレイボーイにふさわしい対応をとらなければ。
しっかりしろ、長嶋茂雄。
彼女は、妙に落ち着き払った顔をしていて、結果はうかがい知れない。
こんなときには女の方が落ち着いているものだ、などと分かったふうなことを考えてみる。
洋子が手にしていた検査薬を見せる。
正直見たくはない。
見たくはないが、見ないわけにはいかない。
ええいままよと、検査薬をにらみつける。
半ば分かっていた結果にもかかわらず、その衝撃力は衰えることがない。
まぎれもない「+」。
うおっつ
お目汚しすみません。タイトル入ってなかったり、アゲてしまったり。
お邪魔でないようでしたら、続きを落とします。
朝っぱらからいいもん見たよGJwwww
続きだと……バッチコーイ、新たな修羅場を拒むはずなどなかろうよ。
てか、主人公普通にクズwwww
病院吹いたwwwwww
GJ!久しぶりにこんなへタレクズ主人公見たぜ
だがその動揺っぷりに激しくワロタwww
沃野は未だに人気あるんだねえ
>>536 正当派修羅場GJ
GJ!!
この主人公なんか好きだwwww
なんか主人公に萌える。
過去に何度も修羅場を経験しているっていうのにこの慌てよう。
設定は高スペックなのに妙にヘタレなのがデスノコラの月をみているようだ。
憎めないヘタレだな
ああいう土壇場に弱いやつってもうなおらんからね
短いですが、早速投下します。
洋子サイドのインナーワールドです。
彼が、怪しい足取りでエレベーターに向かうのを見送る。
ふらふらと危なっかしい。
置いてある三輪車に足をとられて転ぶ。
エレベーターの扉に二度ほど挟まれてから、ようやく乗り込む。
それから、なぜかエレベーターは最上階まで上に昇っていった。
どうやらボタンを押し間違えたようだ。
かわいいひとだ。長嶋さんは。
明日、一緒に病院に行くことを約束させて、今日のところは帰すことにした。
初日に追い詰めすぎるのはよくない。
半ば錯乱状態にあったようだし。
これ以上は、危険だろう。
それにかわいそうだ。
罪悪感もわいていた。
おなかの子は、間違いなく彼の子だ。
コンドームに穴を開けたわたしがいうんだから間違いない。
あれは賭けだった。
そして、わたしは賭けに勝ったのだ。
付き合いはじめて、それほど経っているわけではない。
それでも、彼の気持ちがわたしから離れつつあるのは感じていた。
いや、あえて距離を置こうとしていたのか。
彼はばれているとは思っていないようだが。
確かに、わたしは地味で恋愛経験もほぼゼロの女だ。
その面では、彼の方が一枚も二枚も上手かもしれない。
けれどわたしは、人の気持ちには敏感だった。
とくに、隔意や悪意には敏感だ。
そのせいで、まともに人付き合いをすることができなかった。
だから、相手から隔意を向けられるまえに、こちらから向けてやった。
友人はもちろん、恋人もいない。
単に、臆病だったのだ。
教習の担当にあたった長嶋茂雄は、そんなわたしの気持ちをしってかしらずか、しつこくアタックを繰り返してきた。
最初は、なんてデリカシーのない男なんだろうと思った。
顔をあわせたときにはっとしたほどの彼のハンサムぶりが、かえって反感を誘った。
しかも、医大生ときた。
おちない女なんていないんだと、増長しているんだと思った。
わたしは確かに地味な女だが、安い女のつもりはない。
この年まで、清い体を守ってきたのだ。
軽薄なプレイボーイなんかにくれてやるつもりはなかった。
せいぜい冷たくあしらってやるつもりだった。
ところで、教え始めた頃、彼は運転が壊滅的に下手だった。
不器用なんだろう。それも、半端でなく。
ブレーキとアクセルを踏み間違えたり、指示器の左右を間違えたり、ハンドルの左右を間違えたり。
坂道発進しようとして、なぜか猛スピードでバックしたこともあった。
事故を起こさなかったのは、奇跡と言えた。
こんな不器用な人間が、医大生、しかも外科医を目指しているという。
めまいがした。
もし手術室に入って彼がまっていたら、どんな急患でもチェンジを頼むだろうと思った。
肉屋にやらせたほうが、まだましだと思った。
それほど彼は、不器用だった。
教習所の教官として、わたしは当然、車の運転にはうるさい。
付き合うなら、運転のうまい人でなければいやだと思っていた。
滑らかな加速のできる人、目を瞑ってでも車庫入れのできる人。
少なくとも、ギアを変えるたびにエンストするような人はいやだった。
あまつさえ、シートベルトを締めようとするたびにシートを倒してしまうような人は。
でもそれとは逆に、見た目とあまりにギャップのある彼の姿に、幾分警戒感を解いたのも事実だ。
端的にいって、かわいいと思ってしまった。
その不器用な彼が、必死にわたしにアプローチしてくるのは、なんだかおもはがゆい気持ちがした。
最初は、それだけだった。
彼は、自主練習までして、ずいぶん熱心だった。
はじめ、それは理由をつけてはわたしに会いに来ているのだと思っていた。
事実、教習所に来た日には、必ずわたしのところに来て話をした。
でも、少しずつ運転が上達するのを見て、努力をしていることを知った。
「運転が上手なひとでないと付き合えない」とは、冗談交じりに伝えてはいた。
もしかして、それを真に受けているんじゃあないだろうか。まさか。
でも、そう考えると、心臓がどきどきして、顔が赤くなった。
やがて、彼の運転技術は見違えるほどに上達した。
運転しながら、わたしの頬にキスできるほどに。
もう、彼を受け入れない理由はなかった。
彼に対する見方はまったく変わっていた。
あの人はもしかすると、こんなことをずっと続けてきたんじゃないだろうか。
話を聞くと、信じられないことに、彼はかなり優秀な学生らしい。
でも、きっと最初はやっぱりぼろぼろだったんじゃないだろうか。
学生時代は、スポーツで活躍したといっていたが、彼にまともな運動神経があるとは思えなかった。
でも彼は、頭のよさも、運動神経のよさも母ゆずりだといって笑っていた。
彼のような人をマザコンというのかもしれない。
でも、わたしはそんな彼を、とてもいとおしいと感じた。
そのプレイボーイ気取りも、なんだかかわいく思えた。
彼が、わたしと同時に、たくさんの女の人と付き合っているのは何となく気づいていた。
人の気持ちには敏感なのだ。
かすかな負い目を、嗅ぎ取っていた。
それでも、なぜかあまり腹はたたなかった。
今付き合っている中で、彼の不器用さをこんなふうに一から百まで見た女がはたしているだろうか。
彼は、初めてのことには、めっぽう弱くて不器用だ。
だから、妊娠という初めての事態に動揺しまくっていた。
でも、彼はすぐにそういったことを努力して克服してしまう。
彼が、車の運転というまったく未知のものに触れるのを見ることができたわたしは、きっと幸運だったのだろう。
他の女はその結果だけ、うまくなった運転だけを知っているに違いない。
それはなんて薄っぺらな彼なんだろう。
きっと、彼の本当の姿を知るのはわたしだけなのだ。
そう考えると、他の女たちにたいする優越感が沸いてくるほどだった。
それでも。
彼が明確な意図を持ってわたしとの距離を置こうとしているのを感じたときは、我慢ならなかった。
その先に、十派一からげの他の女たちとは違う、ある女がいるのを感じたから。
それは、わたしを不幸にするし、彼も不幸にすることだと思った。
でも、わたしのこんな気持ちだけで彼をつなぎとめておくことができるだろうか。
そう思うと、憂鬱になった。
わたし、「村山洋子」は、野暮ったい女だ。
服は、めだたない地味なものを選ぶ。
人の目がいやなのだ。
かわいいといわれることはある。
でも、それは小さな体と童顔以外、ほめるところのない証拠だと思っている。
胸は出ていないし、お尻も小さい。
彼は、このくらいがちょうどいいなんてお世辞をいっていたが。
しかも、それでいてわたしは彼よりも5つも年上なのだ。
5つ!
5つも違えば、ポケベルのつかい方も通じない。
ではわたしに、年上らしい魅力があるかといえばそんなこともない。
180センチを超える彼と街を歩いていると、まるで似ていない兄妹かと見えるほどだ。
抱きしめられると、彼の胸の中にすっぽりと納まってしまう。
彼のものも簡単に奥まで届いてしまう。
年上の包容力なんてあるはずもなかった。
だから、わたしは賭けにでた。
ある夜、彼が目をはなしているすきに、彼が信頼する日本製コンドームに針で穴を開けた。
いつもより長くつながっていたことに、彼は気づいただろうか。
この一回。
もしこの一回で妊娠すれば、これはもう天の思し召しだ。
わたしは、彼の運命の女なのだ。
もう、絶対に放さない。
逆に、妊娠しなければ、あきらめよう。
それもやはり、天の思し召しだ。
恋愛は戦争だといっても、これはルール無視の暴挙、条約破りの毒ガス攻撃かもしれない。
一種のテロリズム、コンドームテロだ。
それでも。
生理が一週間遅れたのに気づいたとき、わたしは半ば以上勝利を確信していた。
そして、先ほど彼といっしょに確認して、勝利を確実なものとした。
落ち着いて月桂冠を受ける。
確かに、罪悪感は沸いてきていた。
それは、もちろん彼に対してのもの。
それから、彼をつなぎとめるための手段にしてしまったおなかの赤ちゃんに対してのもの。
でもね、あの人をあなたのお父さんにするためなの。
許してね。
いいお母さんになるって約束するわ。
あの人も、最初はやっぱりだめだめだろうけど、努力してきっといいお父さんになるわ。
でも、お風呂に入れるときは、わたしがみていないとだめね。
お風呂には三人で入りましょう。
それで、三人で家族になりましょうね。
わたしは悪女なんだろうか。
550 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/19(木) 18:13:47 ID:TvKCp8Yw
以上です。
会話がひとつもない回になりました。
続きは今度。
GJ
とりあえず、長島茂雄って名前が出てくると気持ちが萎えるなw
後、誤字があったのが残念だ。
さっそく二話キタ!!年上のかわいい系も萌えるなw
あとは主人公もいいな。今までになかったタイプ作者さんGJ
葵と碧さんのことを思い出していたちょうどそのとき………
ガチャ
「え?」
「あ……」
病室のドタが開かれ、振り向くと。
「碧……さん…」
さっきまで思い出していた碧の姿がそこにあった。最後に見たときから、その美しさはまったく変って無かった。
「晴也さん、なんですね?」
「はい…」
驚いたようなうれしいような、よくわからない表情をしている。……というか、碧さんに会うのはまずいんじゃないか。
今まで葵と付き合っていて、事故があったとたんにそれを忘れ、葵がこんな目にあっているのにセレナと付き合って……
自分のやってきたことを振り替えると、最悪な奴だ。一発ぐらいひっぱたかれたり、罵られるのを覚悟していたのだが……
「よか……った……晴也さん……が…」
予想とは反して、碧さんは喜びの笑みを浮かべながら涙を流していた。
「思い出してくれたんですね……葵のこと……」
「……はい。」
そう言うと碧さんは俺に近付き、頭を胸に抱え、まるで我が子を宥めるように頭を撫で始めた。その間じゅうに頭に落ちて来た涙は、とても暖かかった。
「ごめんなさいね、いきなり取り乱しちゃって。」
「いえ、落ち着きましたか?」
「うふふ、大丈夫です。」
碧さんが落ち着いたあと、葵を間にし、向かい合って座った。
「とりあえず……葵のことを思い出してくれて、ありがとう。」
「いえ……俺こそ、今まで思い出せなくて…」
本当に碧さんには頭が上がらない。俺のせいで葵は……
「そのことなんだけど……私も謝らないといけないの。」
「え?」
以外な言葉が出てきたため、驚いた。みると、碧さんは本当に申し訳なさそうな顔をしていた。
「葵のことを忘れてしまった晴也さんに、このことを黙ってるように……周りの人に頼んだのは、私なんです。」
「…なんで、教えてくれなかったんですか?」
「それは……その……えっと……」
碧さんはなにか困ったような、迷いのある表情を浮かべ、俯いてしまった。そんなに言いにくい理由なのだろうか。
「ひとつは……晴也さんを試してました。一人で思い出してくれるかを。」
「試した……」
ああ、だからセレナも葵のことを言わなかったのか。今考えればセレナがなにも言わないのは不思議だもんな。
「でも、大丈夫なようでしたね。」
まだ若さの残る笑みを見せられ、なんとなく恥ずかしく、顔をそらしてしまう。が、碧さんの言葉に少し違和感を感じたため、聞いてみた。
「ひとつはって……他にも理由があるんですか?」
「えっ……」
なにやら悪戯を見つけられた子供のように気まずい顔をして、今度は碧さんが顔をそらした。
「あの……こっ、ここでは、言いにくいことなんで……家に来ていただけますか?」
「家って……葵の?」
「はい。」
まあ、そこしかないだろうが。碧さんの言葉に頷くと、俺たちは病室を出て、駐車場までいった。どうやら碧さんは車できたらしい。
それに乗り込み、葵の家にむかう。車の後部座席にはいくつかぬいぐるみがあり、どれも女の子らしい物だった。実に葵らしい……
「ふふ、そのぬいぐるみ、かわいいでしょ?私と葵で、そういうのを集めるのが趣味なの。」
……顔だけでなく、心まで若井かただ。それからぬいぐるみのことを交え、葵との思い出を一人で語っていた。俺はその横で返事をしながら、碧さんの……葵によく似た横顔を眺めていた。
こ,これは新しい境地を開いたと言っても良いんじゃなかろうか。
男側にはもう本命がいて、そのこを落とすための練習相手がそれに牙をむく。
良い!
「でも、葵ったら、晴也さんと付き合う前からずっとあなたのこと気にかけてたんですよ?ある喫茶店に素敵なウェイターさんがいるって。」
……ん、なんだか恥ずかしい話しになってきた。
「それからその喫茶店に行った日の夜は、本当に幸せそうな顔をしてて……付き合えることになったって聞いた時は、本当にびっくりしましたよ。
私もいつか会いたいなぁー、なんて思って。いざ会ったら………会ったら…」
そう言うと、碧さんの顔から笑顔が消え、なにやら悔しそうな、悲しそうな顔をする。心なしか、ハンドルを握る手に力が入っている気もする。
「碧さん?」
そう声を掛けた途端、車が止まった。
「はいっ、着きましたよ!」
再度こっちを向いた碧さんは、またいつもの、葵そっくりな笑顔に戻っていた。
「おじゃまします。」
これで葵の家に入るのは二回目になる。相変わらず、豪勢な家だ。リビングに通され、最初座った時のソファーに座る。碧さんはコーヒーを入れ……今度は隣りではなく、ちゃんと向かい合うように正面に座った。
「……それじゃあ、二つ目の理由だけど……」
碧さんは長い髪をかき上げ、首の後ろに両手を回す。そのとき見えたうなじに、またドキドキしてしまった。……俺には葵がいる。そう言い聞かせて、気持ちを落ち着かせた。
「これを……見てください。」
碧さんが首から外して差し出したのは、綺麗なペンダントだった。これを見ろと言うことは……中に何かあるのだろうか。
言われたとおりに受け取り、蓋を開けて見るとそこには……
「え!?」
写真があった。ペンダントの中と言われた時点で、写真があるとなんとなく予想は出来たが、問題はそこに写っていた人物。それは……
「……俺の、写真?」
完全に混乱していた。葵の物ならまだしも、ついさっきまで碧さんがつけていたものだ。なのに、どうして俺の写真が?
「はい……そこに写っているのは、晴也さん…あなたです。」
「な、なんで、碧さんが俺のなんかを?……もしかしてこれ、葵のですか?」
この写真に見覚えがある。葵が喫茶店に通い始めた頃、バイト中にぼーっとしてたのを取られた時の写真だ。消せっていったんだが……
「……それを私が付けているのを、葵は知りません…その写真を勝手に使ったことも。」
気付いたら、また碧さんは俺の横に座っていた……
萎えるっていうか、それがスパイスだろ。
親子丼フラグキタァ(゚∀゚)ァァ( ゚∀)アァ( ゚)ァア( )ァァ(` )アア(Д` )ァア(*´Д`)ハァハァ!!!
>彼が信頼する日本製コンドーム
バロスwwwwwww
>>なぜかエレベーターは最上階まで上に昇っていった。
ヘタレ乙wwwww
投下しますよ
不味い。
突き飛ばされた青海の行く先、ガードレールの向こうで大型のトラックが速度を出して
走ってくる。最悪の光景が脳裏に浮かび、僕はこちらに手を伸ばしながら倒れてゆく青海
に向かって手を伸ばす。助かってほしい、という想いをもって掴もうとしたが、
「邪魔しないで下さい」
指先が僅かに擦れたところでサクラに引き戻され、離れてしまう。
また、救えないのか。
絶望が僕の意識を刈り取ろうとするが、逃げては駄目だと意思の力で抑え込む。今まで
さんざん逃げてきたその代償がここに来ているのなら、それをしっかりと払わないと全て
が駄目になってしまうような気がする。
サクラの手を振り払い、青海に向き直った直後、白い手が見えた。続いて、翻る虎毛色
のウェーブのかかった長髪が見え、それは一瞬で僕の隣を高速で通り過ぎてゆく。
見覚えのあるその人影は、
「姉さん?」
間違いない、見間違える筈がない。
姉さんは青海の手を掴むと、身を回して青海の体を大きく降り、こちらに投げ飛ばす。
振り向いたことで見えたその表情は、長年見たことがなかった必死なもの。表情が豊かな
姉さんの中で、唯一あまり見なかったものだ。それとは対照的に呆然としていた青海は勢
いのままに僕の腕の中に収まり、こちらをぼんやりとした表情でこちらを見上げてくる。
青海の無事を喜びたいが、それどころではない。
「姉さん、後ろ!!」
一瞬。
倒れ込むように一歩踏み出したのと同時に、トラックが文句のクラクションを鳴らして
通り過ぎてゆく。僕の声に驚いたのか青海が元の表情を取り戻して、慌てて振り返った。
「うあぁ、痛いよぅ」
僕と青海の視線の先、座り込んだ姉さんの膝は擦り剥けて血が滲んでいる。トラックに
衝突するよりずっと軽い怪我だ、まずは怪我人らしい怪我人が出ていないことに安堵した。
僕が救った訳ではないけれど、それでも嬉しかった。
「大丈夫か、虎百合さん」
「姉さん、立てる?」
「ん、大丈夫」
そう言って立ち上がろうとするが、すぐにバランスを崩して再び腰を落とした。ガード
レールにもたれながら僕達を見上げ、照れ臭そうに頬を掻く。相変わらず、姉さんのその
表情や仕草は幼く見える。つい数秒前の真剣な表情は消え去っていて、言われなければ、
いや言われてもそんな顔をしていたのは信じられないだろう。
「あはっ、無理みたい。ごめんね、もつちょっとこのままで」
それは良い。
「そんなのより」
姉さんは青海の顔を見て、
「初めて、名前で呼んでくれた」
「そうだっただろうか?」
言われてみれば、確かにそんな記憶がない。もしかしたら呼んだこともあったかもしれ
ないが、どんなに思い出そうとしても浮かんでこない。あったのは、喧嘩をしていたり、
いがみあったり、意地を張ったりしているような光景のような気がする。それだけ濃く、
激しかったということだろうか。
_____________
|__/⌒i__________/|
| '`-イ ./⌒ 三⌒\ | ・・・・・・
| ヽ ノ /( ●)三(●)\ |
| ,| /::::::⌒(__人__)⌒::::: \ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
このスレはユノさんに覗かれています
しかし姉さんは青海の態度を気にした様子もなく、サクラの方を向いた。
「姉さん、何で」
「サクラちゃん、ちょっとこっち来て」
脅えたような表情で姉さんの手招きに寄せられ、指示を受けてしゃがみ込む。
「サクラちゃん、メッ!」
快音。
幼い子供を叱るような声と共にサクラの額にデコピンを叩き込むと、姉さんはこちらを
再び見上げてきた。
「そんな訳でサクラちゃんはあたしが叱ったから、二人ともサクラちゃんを怒らないでね」
その言葉を聞いて、額を押さえながらサクラもこちらを見上げてくる。涙目なのは多分
感動や悲しみなどではなく、純粋に物理的な痛みのせいだろう。デコピンとは思えない程
大きく激しい音がしていたが、大丈夫なのだろうか。
「あれ、痛かった? ごめんね、お姉ちゃん思わず超フルパワーでやっちゃった」
超フルパワーて、あなた。
「兎に角、もうサクラちゃんを怒らないでね。それに、悪いのは全部あたしだし」
「姉さん、私をかばわなくても」
姉さんは笑みを悲しげなものに変えるとサクラを抱き、青海を見つめた。
「本当にごめんね、サクラちゃんは悪くないの。だから恨むならあたしにして」
緊張の糸が切れたのか、姉さんの胸に顔を埋めてすすり泣くサクラの背を撫でながら、
僕の顔を見る。浮かんでいたのは、限りなく優しい笑顔。
「虎徹ちゃんも、辛かったよね。本当に、ごめんね」
「そんなに気にしなくても」
辛くなかったかと言われたら、それば絶対に否だ。しょっちゅう罪悪感や恐怖に捕われ
ていたし、特に最初のときなどは恐怖のあまりまともに生活出来なかった。今でこそ青海
が隣に立ってくれているから何とか耐えていられるものの、そうなるまでの期間は地獄を
体験していたと言っても過言じゃない。
しかし姉さんを恨んでいるのかと問われれば、それもまた否なのだ。二年前にあの娘を
事故にあわせたときだって、今回の一連の出来事の黒幕だったと聞かされたって、何故か
不思議とそんな気持ちは沸いてこない。どんなになったって、どんな事をしたって、僕の
姉さんはただ一人なのだ。許すとか許さないとか、恨むとか恨まないとか、そんなものは
関係なしに僕の中に姉さんは存在している。勿論、未だ泣き続けているサクラも同じだ。
家族としての繋がりが、一番上にある。
だから僕は吐息を一つ。
「気にしてないよ」
殺されかけた青海としてはあまり気分の良い言葉ではないかもしれないけれど、敢えて
サクラと姉さんに告げた。こちらを振り向いたサクラは顔を酷く歪めていて、姉さんも今
にも泣きそうな顔をしている。二人とも何か言いたそうにしている様子だが、しかし言葉
が口から吐き出されることはない。
数秒。
無音を打ち破るように、青海が音をたてて一歩踏み出した。
「虎百合さん、あなたがしたことを聞かせてもらおうか?」
「青海」
呼び止めると、微笑んでこちらを振り向いた。
「勘違いするなよ、虎徹君。わたしはそんなに下らない女じゃない」
そう言って、再び姉さんを見下ろした。
「うん、ありがと。訊いてくれて。そうだね、最初に無理矢理迫って虎徹ちゃんの初めて
を強奪したのはあたし。サクラちゃんを挑発して虎徹ちゃんとエッチさせたのも、あたし。
それから、サクラちゃんを煽ってけしかけさせたのも、あたし。だから、サクラちゃんは
何も悪くないの。それだけは、分かって」
黙って聞いていた青海は軽く頷き、
「そうか」
と一言だけ答えた。
数秒。
「で、それがどうした? どこに問題がある?」
その答えに、姉さんは目を丸くした。泣いていたサクラも、一瞬声を止める。
「虎徹君の初めてを奪われたのは悔しいが、それはそのときわたしの気持ちが負けていた
からだろう。サクラ君のも同じだ、ベタ惚れなのは分かっていたしな。今のことだって、
嫉妬からついカッとなって突き飛ばしただけだろう。初対面のときに虎百合さんがわたし
にしたのと同じことだ。ほら、全然問題ない」
それは、少し無茶じゃないだろうか。
「第一、虎徹君と恋人になって世界一、いや、この世あの世含めて最高の幸せ者になった
わたしからしてみればそんな事故など障害にもならない。世界を満たすわたし達の愛は、
そんなものは軽く超越済みだ!!」
青海は吐息で一拍置いて、
「それに嫁になるからには家族を大切にしないとな、ギクシャクした家庭は毒にしかなら
ないのは最底辺の馬鹿でも分かっていることだ」
「……青海」
「惚れ直したか、虎徹君」
そんな生易しいものじゃない、僕は青海を恋人に出来たことを心から誇りに思う。
「惚れ直したなら、乳でも何でも好きに揉んで良いぞ? いや寧ろ揉んでくれ頼む!!」
こんなときにまで妙な発言をするなんて、やはり青海は青海だ。下らないとも思うが、
これは良い意味でのものだ。青海も期待に満ち溢れた目でこちらを見ているし、僕もその
期待に答えようと思わず青海の乳に手を伸ばしかけたとき、
「そんな」
サクラが立ち上がった。
「そんなことを言われたら、こっちも青海さんを受け入れるしかないじゃないですか」
一瞬後、サクラは止まっていた涙を再び流しながら青海に抱きついた。胸に顔を埋め、
大きく泣き声をあげる。続いて姉さんも立ち上がるとサクラと同じように青海に抱きつき、
すすり泣き始めた。
「二人とも、気にしな……あ、こら、わたしの乳は虎徹君と将来の子供専用だ!! 揉むな、
ほぐすな、そんなに顔を押し付けるんじゃない!!」
何だろう、この展開は。つい先程まで感動的な場面だった筈なのに、どうしてこんなに
ふざけた状況になっているんだろう。余韻も何もあったもんじゃない。
しかし、
「悪くないね」
漸く、いつもの日常が戻ってきたような気がした。ふざけて、笑って、楽しんで。それ
は青海が加わってきても変わらない、寧ろより一層楽しいものになっている。
「すまんな、虎徹君。乳は後のお楽しみとしておこう」
「そうだね、楽しみにしておくよ」
二人分の泣き声と二人分の笑い声が、青空に響いた。
あれから六年が経った。今では僕も社会人として働きつつ、去年はめでたく二児の父と
なった。青海もサクラも姉さんも昔と変わらず、騒がしい毎日だ。
現に今も耳を澄ますと、
「青海さん、少し塩が濃いんじゃないですか?」
「それから洗濯物、早く干してね」
小姑がよく口にする言葉が聞こえてくる。これは聞かなかったことにした方が良かった
のではないだろうか。と言うか、娘達の教育に悪いのでこういった発言は控えてほしい。
まぁ、これは我が家コントのよくある一場面なので無視をしても良いのだろう。洒落で
済んでいることを心から願う。昔のようになっては堪らない。
「虎百合さんもサクラ君も、そろそろ止めてくれ。娘達が言葉を覚え始めたし……何より
もちょっと目が洒落になっていない。そのどんよりと濁ったのは教育に悪い」
……洒落で済んでいることを心から願う。
「それよりも虎徹君、聞いてくれ。昨日虎雪と虎姫が新しい言葉を覚えたんだ」
「マジか!? さすが青海の娘だ、天才じゃないか!?」
「兄さん、すっかり親馬鹿になって」
「この娘達には伝染さないでね」
何故か姉さんやサクラが目元を拭っているが、どうしたのだろうか。いや、冷静に考え
てみれば答えは実にシンプルだ。これはつまり、娘達のあまりの天才ぶりに感動している
のだろう。きっとそうだ、そうに違いない。
愛しい娘達を撫でようと視線を青海の方へと向けると、何故か距離が開いていた。
「あれ、どうした青海」
「気にしないでくれ、これも母の務めだ。それよりも、ほら、聞いてくれ」
青海は両腕に抱いた娘達をサクラと姉さんに向け、
「この人達は誰かなぁ?」
二人は声を揃え、
「「おばちゃん!!」」
空気が固まった。
「落ち着け、娘達には罪はない!!」
「……そうですね」
「……うん、そうだよね」
顔は笑みだが、額に青筋が浮かんでいる。しかし本当に怒っている訳ではのではないの
が雰囲気で分かる。既に青海も我が家の一員なのだ。そんな空気が僕はとても愛おしい。
殺虎さんは三匹の虎を殺したらしいが、ちゃんと心で近付けばこうして仲良くすることも、
幸せになることも出来るのだ。
「あなたたち、朝から元気ねえ。それより、ご飯出来たわよ」
気が付くと、テーブルには朝食が並んでいた。それを見ると皆定位置に座る。
ここからは昔から変わらない場面。青海と娘達、三人増えても変わらない。
皆声を揃えて、
「「「「「「いただきます」」」」」」
『"The Double Tiger Sisters"Strike Ster Story』is END
これで『とらとらシスター』は終わりです
Aルートは全滅だったので、今回は敢えて全員生き残らせました
考えてみれば俺ので人が死なない話は初めてですね
そして今までレスしてくれた方々、ありがとうございました
奇文でしたが、期待に応えることが出来たでしょうか?
残り二つの長編も上手い具合いに行けたら良いと思います
うわわわあああ
お疲れ様でした
大変面白かったです
お疲れ様でした
前ルートとは逆で皆幸せで(・∀・)イイ!!
ブラボー
そして、伝説へ・・
お疲れ様でした
まとめサイトのある分で原稿用紙500枚を超えているのは凄い
全米が泣いた
GィィーーーーーーーーJェエーーーーーイ!!
とりあえず、最初からもう一回読み直してくる
素直に凄いと言えます。
どこからどうみてもGJ!です。
GJ!ハッピーエンドktkr!
……それから2時間後。
あっけなく思えるほどに簡単な取材が終わり、私達はテーブルを囲って雑談をしていた。
「……そういえば、そんな事もあったね」
「ええ、おかげで上履きには御影(ユウ)って書かなくちゃいけませんでしたから」
「フルネームとそう変わらないね」
「そうでもないですよ。私の名前って画数が多いですから、テストのときは大変だったんですよ」
「算数のテスト?」
「そうですっ!あれって一分しか時間が無いから名前を書く時間がもったいなくて……」
訂正……京司とあの女記者がだ。
そしてもう一つ訂正……雑談じゃない、思い出話……その中に私が立ち入る隙間は無かった。
それだけじゃない、いつも虚空を見つめていた京司の眼が今日は御影とかいう女の方を向いているような気がした。
迂闊だった、まさかこんな所に伏兵が出てくるなんて。
私と京司は近親であるため、日本の法律では結婚する事はできない。
よくわかる家系図
宮間麟太郎T宮間菊(旧名、一条菊)
|
|
宮間麟太郎T宮間京 宮間麟太郎Tエリス・ガーディオン
|______________ |
| | |
浅野亮T浅野夏美(旧名、宮間夏美) 宮間強兵 宮間京司
|____
| |
浅野緑 浅野巧
(同姓同名は同一人物だと思ってください)
別にその事は悪い事だとは思わない。
親戚でなければそもそも出会う事はなかったでしょうし、私達の都合で先天的な障害を持った子供が産まれたらその子が可愛そうだから。
私の欲求はただ一つ、たった一点……ただ私は京司の傍に居たいだけ。
だからこそ、いつもその障害になるものを破壊してしまいたい衝動に苦しめられる。
今回のは特に強力だった。
京司はやさしい、京司は暴力が嫌いだ……それが私を止めていた。
私は京司の傍に居たいだけ……逆に言えば、京司の傍に居れないのなら私が存在する意味は無い。
「懐かしいね、あの頃は良く遊んでいた」
「うん……本当に楽しかった……それに、嬉しかった……」
だけど……今回のは特に強力だった。
ところで、さっきから一つだけ腑に落ちない点がある。
……この女の顔に全く見覚えが無い。
さっきまでの話を総合すると、どうもこの女記者は小学校の頃に京司と知り合ったらしい。
小学二年生の夏……あの忌まわしい事件から私は京司の通う学校に転校し、それ以来は中学も高校も大学も一緒に歩み続けてきた。
その私がこの女の事を全く覚えていないのだ。
もちろん、私だって今まで会ってきた全ての人物を覚えていると言う気は無い。
それでも京司の関係者は全て覚えているつもりだった。
その私がこの女の事をまるで知らない。
まるで……まるでそう、後付設定が出てきたみたいに唐突に現れたのだ。
私が覚えていない……それとも、最初から存在していなかった……
確かめた方が良さそうね。
「京司、ちょっと良いかしら?」
私は女記者に会話の内容が聞こえないように京司に話しかけた。
「なんだい?」
京司もそれを察してか、小声で聞き返してくる。
「御影さんといつごろ知り合ったの?」
「小学校の頃、覚えていないのかい?」
……小学校の頃は覚えてる。
だけど、あの女に見覚えは無い。
「どんな関係だったの?」
「クラスメイトだよ。君とだって何度も話している」
小学校のクラスメイトなら、何度か同窓会もあった筈……しかし、だ。
それでもあの女に見覚えは無い。
「なら、いつから疎遠になったの?」
「中学校からは別々の学校になったから、それからは会ってないかな……同窓会にも出席していなかったみたいだしね」
……あの女に見覚えは無い。
どれだけ記憶をたどろうとも。
何も思い出せない、思い出すのは極めてクリアで違和感の無い小学校での思い出だけだった。
ふと、あの女と眼が合った。
にこっ……と微笑んでくる。
その笑顔はまるで聖人の様に透き通っていて……それが恐ろしくグロテスクに見えた。
「誰なの……貴方……」
その声は小さすぎて、京司にも女記者にも届く事はなかった。
たったこれだけの内容を書くのにどれだけかけてるんだろう……orz
相変わらずの執筆速度ですが、打ち切りだけはなんとか避けたいです。
> シベリア! ◆IOEDU1a3Bg殿
こうですか?
宮間麟太郎T宮間菊(旧名、一条菊)
|
|
宮間麟太郎T宮間京 宮間麟太郎Tエリス・ガーディオン
|______________ |
| | |
浅野亮T浅野夏美(旧名、宮間夏美) 宮間強兵 宮間京司
|____
| |
浅野緑 浅野巧
>583
すいません、家系図がズレていました。
>586
その解釈で正しいです。
本当にすいません。
なんだかんだ言っても一番ハッピーが好きだな
ハーレムが好きです。
でも修羅場も同じくらい好きです。
ハーレムと修羅場は紙一重です。
「街」の陽平シナリオはギャルゲーが見習うべき展開とエンディング
>>585 ヒロインがいい感じで壊れているようでGJですw
>>588そうかもね・・・
鬼ごっこマダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
まとめサイトに繋がらないような気が
ミスター投下します。
朝は誰のもとにもやってくる。
遊びのつもりの女をはらませてしまった僕のもとにも。
目覚めは最悪だが、おきないわけにはいかない。
たとえそれが、産婦人科への付き添いという、あまりに気の進まない約束のためであったとしても。
待ち合わせ場所である例の喫茶店に向かう。
道中で決意を新たにする。
昨日のような、狼狽はもう見せない。
昨日の僕は、僕ではなかった。
ひたすら狼狽し、冷静な判断力を失い、いたずらにイニシアチブを奪われた。
今日から、反攻作戦を開始する。
まずは現状分析を。
遊びのつもりの女を、はらませた。
もうこれはしょうがない。
避妊はしたのに、なんていう泣き言はもう言うまい。
絶対のことなんて絶対にない、ということを確認しただけだ。
激しくしすぎて、中で漏れたのかもしれないし、二度目のときに外側に付着していたのかもしれない。
これからは気をつける、それだけだ。
これからは、もう一回り小さいコンドームを使い、二度目は一度目の上に重ねて使う、それだけだ。
問題は洋子だ。
そう、昨日は彼女の様子を見て策を練る余裕もなかった。
昨日の彼女はどんなだった?
悲しんでいるわけでも、不安そうにしているわけでも、喜んでいるわけでもなかった。
結果が判明したときの表情。
5分刈りにしてもらったばかりの中学生のように、さっぱりとした顔をしていた。
あれは、何かを「決めた」人間の顔だった。
何を決めたのかは、言いたくない。
とにかく、彼女の方は覚悟を完了させているということだ。
そういう手合いに、正面からぶつかるのは得策ではない。
高機動による包囲攻撃、すなわち搦め手を用いるべし。
では、これから彼女はどう動いてくる?
「認知」+「結婚」が一般的なコースだ。
結婚の方は、どうにかなる。
卒業まで、まだ間のある学生だ。
たとえ卒業しても、研修やらなにやらで当分は忙しい。
待ってほしいといえば、待ってくれるだろう。
認知の方も、結婚と一緒にしたいと言えば、待ってくれるだろうか。
出生届と認知届けは、別のはずだ。
出生届のほうは、とりあえず非嫡出子として出しておけばいい。
認知は、何とか引き伸ばしたい。
認知は、戸籍に載る。それは禍根を残すことになる。
結婚をえさに、何とか引き伸ばさなければ。
ここまで考えて、やってることが結婚詐欺師と同じだと気づく。
結婚をえさに、500万円借りるとか、そういうやつだ。
明るいプレイボーイが、犯罪者まがいのことをするはめになるとは。
まったく気がめいってくる。
こんな気持ちになるために、女の子と、洋子と遊んだわけではないのに。
いつのまにか、例の喫茶店の前に来ていた。
約束の10分前にもかかわらず、洋子は奥の席にすでに座っている。
待ち構えていないと、僕が逃げるとでも思ったんだろうか。
こちらに気がつくと、微笑みかけてくれた。
かわいい。
かわいいからこそ、始末が悪い。
万が一情が移ってしまう前に、何とかしなければ。
彼女の向かいに座り、ウェイトレスにコーヒーを頼む。
さっそく話を切り出した。
「それで、どこの病院に行くつもりなの?」
「はい、江夏総合病院がこの辺では一番大きいからそこに」
「ぶっ!」
コーヒー吹いた。
「だめだだめだだめだ」
「え、どうして」
過剰な反応に、洋子が目を丸くする。
そんなこと、正直に言えるはずがない。
「いやあ、ほら、病院関係者の間じゃ有名なんだけどね、あそこの産婦人科はよくないんだよ。
何でもオイルレスラーみたく脂ぎったハゲの水虫のいんきんのパラノイアの中年スケベ医師がいてね。
診察中にそれはねちっこく外やら中やら触りまくるらしい。妊娠させられちゃった人もいるって。
それだけじゃない。看護婦が新生児を使って腹話術するわ、パペットマペットごっこするわ」
あることないことまくしたてた。
思いのほか大きくなってしまった声を、周りの人間も聞いている。
いずれ自分のものになるはずの病院にもかかわらず、根も葉もない悪評を流してしまった。
ごめんなさい。
「だからさあ、あそこにしようよ。大野産婦人科。女医さんがやってるし。心理カウンセラーなんかもいるから安心できるって」
これは本当のことだった。
といってそれが本命の理由ではなく。
奥まった場所にあって人目につかず、女の子たちの行動範囲から外れているのがポイントだ。
「はい。そこにします」
思わず安堵の息をつく。最大の危機は回避された。
それをどう誤解したか、彼女がうれしそうに微笑む。
「ありがとう。心配してくれて」
なんだかいたたまれない。
産婦人科に近づくにつれ、ひとつの最終解決が頭をよぎる。
あえてそのことは考えまいとしてきた。
場所が連想を呼んだのだろうか。
人工妊娠中絶、「おろす」ってやつだ。
洋子が何週目なのか、正確にはわからないが、8週を超えていることはあるまい。
つまり、今なら法的にも医学的にも余裕で可能なのだ。
彼女のおなかにいるのは、まだ人間としては認められていない。
あえていえば、半人間、人間の素といったところだ。
だからやれる。
・・・吐き気がした。
これでも医者の卵だから、具体的に何をやるのかは知っている。
外科に必要な、ある種の耐性は身につけなくてはならない。
でもこれは、それとは違う。
胃を取り出すのと、胎児をかき出すのを一緒にはできない。
とても割り切れない。
何よりそれは、彼女を再起不能なまでに傷つけるだろう。
別れるだけならいい。それなら、いくらでもロマンチックに飾り立てることができる。
でも中絶はだめだ。どんなに取り繕おうとしてもムダだ。
それは、きれいな思い出なんかになりっこない。
それまでの楽しい思いでも全部ぶち壊してしまうだろう。
それはいやだ。彼女の中で、楽しい思い出として生きていたい。
僕にしたってそうだ。
それを忘れて、いままでどおりやっていくなんてできそうもない。
僕は楽しく生きたい。そんな負い目は、とても負いきれない。
ふと横を見ると、彼女がこちらを見ている。
目をそらしたい思いを押さえつけて、微笑みを返す。
彼女も微笑んで、つないでいる手をいっそう強く握ってくる。
くそっ、僕が何を考えていたのかも分からないくせに。
病院の待合室は、暖色系のやさしくやわらかな内装でまとめられていた。
それでも、彼女が診察に向かい、一人まっていると落ち着かない気分になる。
僕みたいなハンサムな青年が産婦人科の待合室にいれば、注目を集めてしまうのも当然だ。
雑誌でも読んで気を紛らわせようとしたが、「たまひよ」の文字を見てその気をなくす。
外で待つことにしよう。
結局これが失敗だった。
病院から出ると、いきなり声をかけられる。
「シゲ君?」
その声に固まる。
僕をその声で、そう呼ぶ人は、一人しかいない。
同時に、今一番、ここにいてほしくない人。
例の「本命」様だ。
声は背後からだが、それでも見間違える距離じゃない。
つまり、ここで人違いだといって逃げるのは、不自然なことになる。
顔をあわせつつ、なんとかごまかすしかない。さっきもやれた。今度もできる。
心の中で「1、2、3」と数え、笑顔を作ってから振り向く。
果たして彼女、「江夏薫」はそこにいた。
パッチリ二重に、高い鼻、色っぽい唇。白い肌に、黒のロングヘアー。
そして、88センチのFカップ。88センチのFカップ。88センチ。Fカップ。
あまりに完全なものは、描写を陳腐にする。言うべき言葉がないからだ。
薫は、スペシャルでグレイトでファンタスティックな美女だった。
加えて、僕の恋人であり、半ば婚約した間柄。でも今は、優越感に浸っている暇はない。
彼女の表情は、疑惑に満ち満ちている。
「あの、いま、そこから出てきたよね?」
分かりきったことを確認してきた。
決して動揺してはならない。
「うん」
「それがどうしたの?」とでもいいたげな表情で、応える。
いいぞ、昨日の修羅場は、僕の状況対処能力を大幅にレベルアップさせたようだ。
僕の余裕の表情を見て、彼女も態度をいくぶん和らげる。
「いやあ。ここに大学の先輩が勤めていてね。それで、産婦人医って、どんなものなのかお話を聞いてたんだけどね」
「でも、シゲ君って外科なんでしょう?」
そうだった。
「でもさ、ほら。江夏は総合病院だろう。だから、いろいろな科の様子を知っておいたほうがいいかなあ、なんて。僕と君の将来のためにもさあ」
彼女はそれを聞いてうれしそうな顔をする。
そう、彼女は江夏総合病院の一人娘。
彼女の祖父は政治家も雲隠れに利用する大病院のオーナーで、父は院長、僕は婚約者。
僕が、洋子を切ろうと必死になるのもムリはない。
確かに、薫みたいな美女を恋人に持つのは、それだけで男の本懐だ、名誉の至りだ。
でも、それだけで結婚はできない。後押しとして相応の付録がほしい。
そして、江夏総合病院は付録としては十分すぎるほどだ。
いずれは大病院の院長、オーナーになれる。
地位もお金も、堂々と自由にできる。
婿養子はつらい?
大丈夫、見たところ彼女は、僕にめろめろのべろべろなのだ。
多少のやんちゃは見逃してくれるはず。
大病院の院長やオーナーに、愛人の一人や二人いないわけがないというのは、単なる妄想か?
お義父さんもきっと分かってくれる。
「薫はどうしたの?」
そう、ここを選ぶときにまっさきに頭に浮かべたのは彼女のことだ。
まず、彼女が訪れそうにない場所を選んだはずだ。
なのになぜここにいる?
「大野さんと父は、同級生なの。たまにだけど、おすそ分けをもってくることもあるのよ。今日みたいに」
うかつ。
つまり、ここは思いっきり彼女のテリトリーだというわけだ。
だが泣いている暇はない。
身の毛がよだつとはこのことだろう。
病院の入り口から、洋子が出てくるのが見えた。
彼女の方は、僕と薫が話しているのに気づいている。
不機嫌そうな顔して、でも次の瞬間にはニコニコ笑いを浮かべてこちらに近づいてくる。
紹介させる気なんだろう。
あまりといえばあまりな状況。
いったん薫を連れて、あるいは一人ででも、ここを離れるべきだったんだ!
洋子が、相変わらずニコニコ笑いを浮かべて近づいてくる。
接触させてしまえば終わりだ。
ご破算、ご破談、ご縁談。
どうする。考えろ。全力中の全力でこの場を乗り切れ。
包囲攻撃なんて悠長なことはやっていられない。
相手の体制が整う前に、電撃的な奇襲をかける。これしかない!
「だ、だいじょうぶかあああああ!」
突然叫び、洋子のもとに全速力で駆け寄る。
肩を抱いて、彼女を薫の目から隠す。ここまで3秒。
「え、え」
洋子も薫も、いきなりのことに唖然としている。
いいぞ、ともかくゲームのイニシアチブは握れた。
後はとにかくおしまくるのみ。
「いけない!!」
やはり大声で怒鳴る。
「何をしている!一刻もはやく安静にしなければ!君の体は君一人のものじゃあないはずだ!!」
「は、はい」
勢いに押されてか、洋子が返事を返す。
今度は薫に向かって。
「僕は!医者の卵として!男として!この人をほっておくことはできない!この人を助ける責任と義務がある!!」
「う、うん」
勢いに押されてか、薫が返事を返す。
よし!
洋子の目には、母体とおなかの子を心配するよき父親候補に。薫の目には、通りすがりの病人を助けようとするよき医者候補に見えているはずだ。
ここまで不自然なところはない。
後は可及的速やかに離脱するのみ。いける!
「もうすこしだあ」
薫に聞こえるように、肩を抱いた洋子を励ましつつ、不自然にならない程度の速度で歩き出す。
「もうあんしんだからねえ」
タイミングよくあわられたタクシーを止め乗り込む。
運転手が何か言う前に怒鳴る。
「とにかく!早く出してください!」
薫が何かつぶやいたようだが、僕にはもう聞こえない。
安堵と疲労で、ぐったりと背もたれにもたれかかる。
乗り切った!
「・・・なんなの、あれ」
薫はタクシーを唖然としたまま見送った。
以上、ニアミス編でした。
本格的な激突は、もう少し先です。
こんなふざけた奴がもてもてという設定に疑問だ。
何故か主人公が可愛く見えてきた……………
GJ!
>ここまで不自然なところはない。
どう見ても不自然です、本当にありがとうございました
しかし設定だけなら最低男だが実際には完全に憎めないへタレキャラになってるなw
中絶否定なところとかグッド
ある意味最低だけど愛すべきヘタレだね
このヘタレは最低だなw
GJ!!
609 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 21:14:13 ID:LR54o14k
最低だが最悪なところでないところがいい。
GJ。
話のテンポがいいね
このままドラマ化できそうw
自分では完璧だと思ってるのに周囲から見るとぬけているとこがいいw
612 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 22:03:39 ID:nS55f9Wt
やべえ、おもすれえよwww (*^ー゚)b グッジョブ!!
主人公のキャラがいいww
>多少のやんちゃは見逃してくれるはず。
このスレの主人公としてこれは…今回の妊娠がなくてもいずれ同じ運命がまってそうw
とりあえず作者の好きなゲームがわかったww
>ミスター投下します
イキナリこの投下宣言で噴いたwww
主人公最低と思いながらも心のどこかで本命を射止められるよう応援してる俺ガイル
兎に角面白い上にこの投下ペースが心地良い
久しぶりだなこんなハイペース連載は
がんがれ もっとがんがれGJ
ミスターいい感じのへたれだよw
救えないやつじゃなさそうでよかった……まあ、このスレの主人公にそんなやつはいないんだけどね。
Sequel to Story(5)
観客の拍手を受けながら静々と壇上に上がる、白いワンピースに身を包んだ銀髪の女性。
その佇まいは深窓のご令嬢を思わせる。思わず俺は息を呑んでしまった。
アリマテアに居た頃は甲冑姿が殆どだったし、国を出た後も長旅に適した丈夫な格好を好んで着ていたものだから、
今の団長の姿は俺に懸念すべき問題も忘れて見惚れるくらいの衝撃を与えていた。
帯刀していないだけでもレアものだというのに―――――――そのカッコは反則だ。
「おぉっと、これはこれは。
なんと神々しい。彼女の自慢の銀髪と相まって、会場全体を魅了するほどの神秘性を醸し出しています」
アシュリーの解説も耳に入らない呆けた頭で、『そういえば初めてデートしたときもこんな気分だったな』とふと思った。
「実はマリィさんはアリマテア王国の出身だそうです。
あの辺りの女性は肌が綺麗だと伺いますが、彼女を見ればそれも納得でしょう。
では、マリィさん。舞台に立ってみた感想はいかがですか?」
会場にいる全員が注目する中、ゆっくりと白い女神が口を開いた。
「あのっ……えと、すごく、きき、緊張してましゅっ」
「………え?」
瞬時に。会場が凍りついた。
……しゅ?
彼女の言葉に誰もが耳を疑っただろう。
さっきまで彫像が動き出したかのような美しさを誇っていた女性の第一声が「ましゅ」だったのだから。
事実、質問をしたアシュリーが何も返せずにぽかんとしている。
「あっ、いえ……すごく緊張しれっ………」
また噛んだ。とうとう今度こそ、団長を取り巻いていた神々しさが一片たりとも残らず吹き飛んでしまった。
自分の情けなさに嫌気が差したのか、引き攣っていた団長の顔がみるみるうちに泣きそうな表情に変わっていく。
「どど、どうもありがとうございましたっ!素晴らしいドジっ子アピールでしたね。
さ、早速ですがマリィさんの特技の方を此処で披露してもらいましょう」
アシュリーもこれはマズイと感じたのか、必死でフォロー(になってないが)して先へ進める。
賢明な判断だ。極度の上がり症の団長にこれ以上のコメントを要求するのは酷というものだろう。
あまりに地味だったのでここでは割愛させてもらうが、団長が披露した特技は『ハンドベル』だった。
てっきり何か剣技でも披露するのかと思ったんだけど……誰に教わったんだろう。
それはともかく何度も鳴らすべきベルを間違えて、その度に半べそになるのはどうかと思います、団長。
まぁ、わたわたしまくった挙句しょんぼりと舞台を後にする団長の背中は、大量の同乗票を集めそうではあったけど。
加えて最後の最後、目尻に涙を溜めながら「どうかよろしくお願いします」と頭を下げたとき、正直クラッときたのは内緒だ。
「―――――どうもありがとうございました……。
で、では続いてエントリーナンバー14番、同じく"ハーレム"の最年少、マリベルさんですっ!」
仕切り直しとばかりに、1オクターブ上がった声で次の出場者を招き入れるアシュリー。
どうやら団長はやるべきことをやるので精一杯で、俺をどうこうしようという気まで起きなかったらしい。
こんな調子で何事もなく終わればいいんだけど……無理か。
舞台裏から落ち着いた足取りで現れた、黒髪の少女。……姫様だ。
団長とは対照的にリラックスした笑みで、観客に手を振りながらアシュリーの元まで歩み寄る。
やはり王女としての資質か。人前に出ると驚くほどのカリスマ性が滲み出ている。
もしあのままアリマテアで王位を継いでいたならきっと良い指導者になっていたことだろう。
「……ありがとう」
観客の拍手を受け、軽く会釈する姫様。
全ての動作の流れが極めて自然で、尚且つ優雅だ。
俺たちのことを知っている観客の中には今の様子を見て動揺している者もいる。
初めて見たときは俺も驚いたのだが――――――さっきの団長とは別の意味で、彼女は化けるのだ。
貴族たちとの会合など主に公の場に立つ時は、専ら今の態度で接しているのが普通だった。
実を言うと、彼女はアリマテアでもある程度の発言力を持っていた。
これは俺が『王の盾』任期中、つまり国を出る直前のことなのだが。
ある会議で王が姫様を政治に参加させると発言した。にも関わらず、貴族たちからそれらしい反対意見は出なかったのだ。
無論、王族の立場にあるからという理由もあるが、もともと彼女の政治的手腕は目を見張るものがあったらしい。
王の発言も後世のことを考えてのことだったので、貴族連中もおいそれと蔑ろにはできなかったようだ。
王位継承者とはいえ、たった十五歳の小娘が政治に参加することになったのだ。それだけで彼女の素質が窺い知れよう。
……普段からああいう王女らしい振る舞いをしていればみんなの見る目も変わっていたのに。いつもは"あんな"だからなぁ……。
「オークニーにお住まいの皆々様、また周辺都市より遥々お越しの方々にも。
初めまして、マリベルです」
ドレスの裾を摘んで恭しく挨拶。煌びやかに着飾った姿はまさに王女様だ。
そのせいかアリマテア城の自室で毎朝、俺を出迎えてくれた姫様の姿が脳裡に去来する。
そうそう、確か城に居た頃はあんな格好を……って、げぇっ!!?
まんま王室の正装じゃないか!あれ!!
何やってんですかっ、姫様!知ってる人が見たらアリマテアの王族だってバレちゃうでしょうが!
「なんと。マリベルさんはこんな高価そうな衣装、何処に隠していたんでしょう。
彼女のあだ名の通り、まるで何処かの王女様のようです!」
アシュリーは俺たちの素性を知っているので、その解説がイヤに白々しく感じる。
確かに俺が『姫様』と呼んでいるのを、街の皆はあだ名として捉えているみたいだけど。
…やっぱりこっちに来たとき呼び名を変えるべきだった。姫様…お願いですから余計なことは言わないでくださいよ。
「……と。堅苦しい挨拶は此処までにしましょう」
俺が冷や汗を掻いているのを知ってか知らずか。姫様は小さく深呼吸して一拍置いた。
「皆の者、わらわが勝つために力を貸してくれ!清かろうが汚かろうが別に構わぬ!とにかくわらわに一票を!」
……あ、元に戻った。
ついさっきまでのお嬢様然とした態度が一変し、いつもの姫様の口調で観客に声を掛けていた。
その掛け声に呼応するように一部の観客から声援が上がる。
「ご覧の通り、マリベルさんは特定の趣味をお持ちの方々に絶大な人気を誇り、
彼らの盲信ぶりが凄まじいことはオークニーでも特に有名です。固定票の多さでは今回の出場者の中でダントツでしょう。
それでは、マリベルさん。特技の方をお願いできますか?」
さっきの声援も、アシュリーの言う『特定の趣味』を持った人たちによるものだろう。
あ、その趣味とやらが何なのかは俺には解らない。いやホントだよ…?
「うむ。では例の物を!」
気を良くしながら手を叩くと、四人の男が大荷物を抱えて壇上に上がってきた。
「…ベッド?」
男たちが四人がかりで抱えてきたのはキングサイズのベッド。
作り自体は質素だが、それでもこれほど大きなベッドだ。価格は相当なものだろう。
一体誰から借り受けたのか―――――いや、そもそもベッドなんか持ち出して何をしようって言うんだ?
ベッドを置いたのを見届けてから、姫様はもう一度観客を見渡した。
そして大きく頷き。
「わらわは床上手じゃ!それを此処で実演しようと思う!」
………。ナンダッテ?
思考が全然追いつかず、目を瞬かせた。
えーと……。
俺みたいな田舎村出身の者では姫様のやんごとなきお言葉を理解するのは無理ってことなんだろーか。
現に会場にいる全員が口をあんぐり開けて姫様を見守っている。
「ではウィリアム。済まぬがこちらまで来てくれるか?」
ベッドをポンポン叩きながら頬を染めている。
「…………」
とりあえず姫様は放っといて現状を整理。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「なにかんがえてんですかぁっっっっ!!!!」
理解した瞬間、思わず雄叫びを上げてしまっていた。
「ナニ……って。皆まで言わせるな、ウィリアム。こんな大衆の前でそんなこと言えるわけなかろう」
『いやん』と腰をくねくねさせる姫様。
皆の前で言えないことをこれからしようとしている人の台詞ですか、それは。
何か突飛なことを仕出かすとは思っていたけど、これは酷すぎる。
本来ならここで司会者がストップをかけるべきなんだが……。
「………ぷっ…くくっ…」
アシュリーは黙ってニヤニヤしている。姫様を止める気は全くないらしい。
―――――アレは駄目だ。ここは俺が何とかしなければ。
「とにかく、早くベッドを撤去してください!そんな特技、披露してくれなくて結構ですから!」
ズンズン勇み足で彼女に近づきながら、ベッドを指差す。
「……そんな特技…って……この間はあんなに悦んでくれたのに……。
あれは嘘じゃったのか…?」
いや、そこでそんな顔しないでください。確かに気持ちよかったですけれども。
嘘泣きだと解ってても無意識に態度が軟化してしまいそうになる。
………いつもはここで姫様に上手く丸め込まれてしまうんだ。だけど今日こそは。
「そうじゃなくて!皆の前で何しようとしてるか解ってるんですか!
こんな………盛りの付いた猫みたいにっ!」
なんとか自分を奮い立たせて、勇み足の勢いを殺さずに姫様の元まで歩を進めることが出来た。
よし、ちゃんと姫様を止められる。己を勇気付けるために内心大きく頷く。
なのに。
「………ほぅ?」
こちらを見上げる姫様はニタリと八重歯を光らせて。
何故か俺の手首を掴んだ。
「……え」
ふわりと浮遊感を感じて俺は間抜けな声を上げた。
不意に回転する会場と姫様と観客とアシュリーとジュディスさんと―――――って…嗚呼、そうか。回転してるのは、俺だ。
思考がやっとそこに至る頃には、俺の身体はぼふっ、とベッドの上に転がっていた。
「―――――ウィリアムは、猫の交尾のようにするのがお好みなのじゃな?」
耳元に口を寄せて呟く姫様。……本気の目だった。
やばい。やばい、やばいやばいやばいやばいやばい。
「ちょっと待……」
「わらわとて、大衆の面前でこのような破廉恥な行為をするなど遺憾じゃ。
じゃがな、ウィリアム。よく考えてみぃ。
此処でわらわたちの既成事実を皆に周知させてしまえば、マリィたちより一歩…いや二歩も三歩も先へ進めるのじゃ。
…じゃから、これは必要なこと――――解ってくれるな?ウィリアム」
馬乗りになりながら目を細める。
俺を説き伏せてるつもりらしいが、言ってることがメチャメチャだ。
………お子様連れのお客様はただちに会場を退出してください。って、諦めるな、俺。
「さぁ、ウィリアム…」
姫様の手が、俺の上着を摘んだそのとき。
ドゴッ…!!!!!
俺の隣から数センチのところでベッドが両断された。
「わっ!?」「きゃあっ」
断たれたベッドの残骸に二人して埋もれる。
次いで耳に入ったのは会場の歓声と悲鳴が入り混じった声。
――――――まさか。
「ひぃぃめぇぇさぁぁまぁぁぁ?」
どんな屈強な男たちでも裸足で逃げ出すくらいの恐ろしい声がこちらを威圧する。
この殺気は今まで何度感じたことか。誰かなんて確かめる必要もない。
こんな馬鹿デカいベッドを一太刀で真っ二つにできる人間なんて一人しか居ないじゃないか。
「おのれっ、マリィ!わらわたちの恋路を邪魔立てする気か!」
俺より早くベッドの残骸から抜け出した姫様が、壇上に乱入した人物と対峙する。
「あははははははっっ!!何を言い出すかと思えば!
ちゃんちゃら可笑しいですよっ!?
ウィルがいつあなたを選ぶなんて言ったんですか!?寝言は寝てから言ってくださいね!」
甲高い団長の笑い声。
彼女が手に持っているのはいつもの愛剣じゃない。何故か血糊のべったり付いた、刃渡り六尺はあろうかという巨大包丁だった。
…ああ、見覚えがあるぞ。さっき見かけた巨大魚の解体ショーで使われてた包丁だ。
「ふっ、そのようなナマクラでわらわを斬れるとでも思っておるのか!」
口角を歪め、なにやら俺の及び知らない構えを取る姫様。
「あはっ。知らないんですか?こういう包丁は四肢を切断し易いようにできてるんですよ。
それに、ちょっと格闘技を覚えて調子に乗ってるお姫様の首を獲るくらいならこれで充分です。
…そうだっ。王族の解体ショーなんて、なかなか楽しそうですよね♪」
刀身に付着している血糊をぺろりと舌で舐め取りながら哂う。その顔はもう悪人以外の何者でもなかった。
「にわか者と馬鹿にするでないぞ?
今日と言う日のためウィリアムと過ごす時間をも削ってジュディスに技を習ったのじゃ。
おぬしの癖を全て把握し、その虚を突く技の数々をな!
毎週火・木・金(第三木曜除く)、血の滲むような訓練を耐えてきた。そう―――――全てはおぬしを亡き者にするためにっ!
もはや白兵戦でおぬしに遅れは取らんぞ!!」
右手の拳を大きく突き出して団長を挑発。…ちょっとカッコ良い。
……いや感心してる場合じゃない、二人を止めないと。
「良いでしょう。私もいつかは決着を付けなければならないと思っていました」
団長が―――戦場で何百もの兵を斬り捨ててきた戦姫が、剣先を姫様に向ける。……包丁だけど。
「「いざ、尋常に…!」」
殺気を爆発させ、肉薄する二体の鬼。
その頃になってやっとベッドの残骸から抜け出せた俺は、即座に駆け出した。
「二人とも!―――――」
俺だけが。
俺だけが二人を止められるんだ。そう思い、対峙する二人の間に手を伸ばす。
その動作が酷くゆっくりに思えて。まわりの状況をつぶさに感じ取ることが出来た。
会場は賭け事で盛り上がり。―――――ああ、やっぱり団長の方がオッズが高いか。
アシュリーは俺が座っていた席で傍観者を決め込み。―――――後でおぼえてろよ。
ジュディスさんは相変わらずの笑顔。―――――お茶飲んでないで助けてください。
そして舞台裏からこちらの様子を窺っているシャロンちゃん。―――――多分、出番はないよ?…ってか懐から出してるそれは何?
彼女らを止めようとする者は他になし。
俺だけなんだ。この街を、オークニーを救えるのは。
この半年、俺たちが築き上げてきた絆はこんなことで壊れるものじゃない。
大丈夫。今までだってみんなで上手くやってこれたじゃないか。
仲違いをすることもあったけど。なんだかんだ言って俺たちは"仲間"なんだ。
俺がちゃんと声を掛ければ、みんな気付くはずだ。あの大切な思い出の日々を。
俺はそう信じてる。きっと、あの二人だって―――――
これまで共に過ごしてきたみんなを信じて、俺は二人の間に割って入った!
「―――――待ってく…あじゃばっ!!?」
あたまが。
くだけた。
団長の膝が右頬を貫き。
姫様の拳が左側頭部を粉砕し。
何処からともなく飛んできたナイフが墓標代わりに脳天を刺していた。
「はっ!その程度か、マリィ!?戦姫の名が聞いて呆れるわ!」
「あははははははっ!!何言ってるんですか?まだまだこれからですよ!」
俺が巻き添えを喰ったことも気付かずに、火花を散らす二人。
彼女たちの鬼気迫る怒声をBGMに。
「が……はっ…」
俺は情けない格好で壇上に突っ伏した。
…ははっ。所詮、人の絆なんてこんなもんさ。
ヒトの頭を砕いといて、二人とも気付きゃしない。
おまけにこの、頭に刺さったナイフ――――こんな絶妙な芸当が出来るのは彼女だけだ。
尻を天に突き上げながら、思う。
(なんで……シャロンちゃん、まで………)
ガクッ
「死にませぃ!戦姫!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァァァァ!!!!」
二人の戦いは会場に留まらず、街のあちこちを破壊していく。
団長の包丁が壁を切断し、姫様の拳が屋台を粉砕する。
ただの包丁で土壁を真っ二つにするって、どこの化け物ですか。あなたは。
「ウィリアム様!」
団長と姫様が徐々に会場から離れていくのを見計らって、シャロンちゃんが俺に駆け寄ってきた。
心配そうに(実際は無表情なので判らないが)俺を抱き上げ。
「嗚呼、酷い…誰がこんなことを」
……一番手酷い傷を負わせたのはアンタだがな!
「すぐに手当て致します。…ウィリアム様、お気を確かに」
普段の抑揚のない声が、今は余計に嘘臭く聞こえる。
死なない程度の威力で、ナイフを急所に突き刺すくらい力量があるなら、もっと他のところで活用してくれ。
「さあ、ウィリアム様。怪我をしたときは安静にするのが一番です。
家に帰りましょう。……大丈夫ですよ、私がちゃんと看病して差し上げます……しっぽり、とね」
最後の部分、やけに唇がテカって見えたのは気のせいだろうか。
「だ、誰か、たす…け―――――」
……このままシャロンちゃんに攫われるときっとロクでもないことが起こる。
俺は最後の力を振り絞って、一番近くにいるアシュリーに助けを求めた。…が。
「せいっ」
「ごふぅっっ!!?」
腹部に感じた強い衝撃が、残っていたなけなしの力を奪った。
………ぬ、貫き手は、まぢ、で……や、め……ぐふっ。
今度こそ、完膚なきまでに。
俺の身体はダラリと脱力した。
「さ、帰りましょう」
死に体の俺を担ぎ上げ、そそくさと会場を後にしようとするシャロンちゃん。
だが、地獄はまだ終わらなかった。
「お〜い!お二人さ〜ん!!そんなとこで潰し合いしてていーの〜!?」
ほっときゃいいのに、アシュリーが向こうで街を破壊していた団長たちに声を掛けやがったのだ。
やや離れた位置にいる、巨大包丁と冷凍マグロで鎬を削っていた二人に大きく手を振る。
案の定、ぴたりと二人の動きが止まり。
「「…ッ!?」」
この世のものとは思えない形相で振り向いた。
「シャ、シャロンさんがウィル君を連れて行こうとしてるわよ〜?」
流石のアシュリーもちょっと引け腰で言葉を吐き終えると、早々に避難していく。
「「図ったなぁっっ!!!」」
シャロンちゃんの姿を確認した二人は、人の限界を遥かに超えた速度で俺たちとの距離を詰め始める。
捕まれば三枚に下ろされること必至だ。
「仕方ありませんね。ウィリアム様、申し訳御座いませんが先に二人を迎え撃ちます」
ええ!?止めようよ、相手にしない方が絶対いいって。死んじゃうよ!?…主に俺が!!
そう思っても、俺にはもう言葉を紡ぐ気力さえなく。
シャロンちゃんは迫り来る団長たちと正面から見据え、懐から肉厚のナイフを取り出した。
ああ、しかもこんなときに限って使うのは近接用ナイフなのね……。
シャロンちゃんの肩に担がれたままなので、二人の視線が俺に向いているような錯覚を覚える。
腹を空かせた野獣が数日振りに獲物を見つけ、これから襲い掛からんとするときと同じ目つきだ。
とすれば、今の状況は三匹の野獣が獲物を取り合い、俺は差し詰め『傷付いた草食動物』ってところか。
…泣けてくる。
「大丈夫です、ウィリアム様。私が命に代えてもお守り致します」
俺の心情を察してか、力強く答えるシャロンちゃん。
俺にトドメを刺した人間の言うこととはとても思えなかった。
「「天誅ぅぅぅぅっっ!!」」
間合いに入った二人が一斉に飛び掛かる。
本当は逃げたい気持ちでいっぱいだったのに、グロッキー状態の身体は全く言うことを聞いてくれず。
死を覚悟した俺は、最期に祈りを捧げた。
―――――キャス。いま、会いに逝きます。
以上です。
次回で多分ラスト。
忘れ去れてるとは思いますが、
もうしばらくしたらスウィッチの続きいってもよろしいでしょうか?
恐ろしく長いのでもうちょい時間空けたいと思います。
うん、投下は一息置いてからの方が良いと思う
今投下したらブラマリの感想レスとバッティングしそう
了解しました。
それでは一時頃にいきたいと思います。
(*^ー゚)b グッジョブ!!
主人公がずだぼろになってもまったく同情しないなw
|ω・`) GJ
やばい。ニヤケ顔がとまらねぇ、鏡が前にあったら自分の顔を見て死んでしまっただろう・・・
投下時間がハッキリしてればバッティングとかの危険も少ないと思います
wktkしながら待ってますね
さて改めてブラマリの感想
ドジッ娘マリィたんテラモエスw
姫様パワーアップしすぎだよ姫様w
シャロンちゃん見事漁夫の利ゲットでナイス腹黒だよw
オークニーの皆さんお祭好きにも程があるよw
そしてウィル修羅場主人公の鏡だよw
総じて笑いすぎで顔面の筋肉が痛ぇよw
GJ次で2nd終りとのことですが3rd期待してますよ
とりあえず一言言えるのはお前は不幸じゃねぇよ!!!
ってこった
最終回だなんていやん(´・ω・`)
それでは宣言どおり参りたいと思います。
十三話
連絡が取れなかった。
彼を見送ってから、何度も、何度も電話をかけた。
勿論メールも送った。
爪が割れそうなくらい強くボタンを押し、歯軋りの変わりに液晶を握り締めた。
でも…
彼は答えてくれなかった…
こんなに心の奥で叫んでいるのに、昼間から自慰に耽ってしまうほど焦がれているのに…
…
……
ひとりジェットコースターに乗っているみたいだった。
彼のことを考えていると、気持ちが自分の手を離れて暴走する。
意思とは関係なく体が動いたり、自分でも疑問に思うくらい奇妙な方向に思考が捻じ曲がっていく。
本当に滑稽だった。
わたし以外に乗客がいないジェットコースター。
彼という存在に大きく揺らぎ、心の痛みがアップダウンを繰り返す。
そっくりだった。
幼いころ一度だけ両親と一緒に乗ったアトラクションと。
停まったと思ったらまた動き出して、彼の態度にてっぺんから堕ちたり昇ったり…
目隠しをされたまま、ひたすら彼の感触を求めてそれを繰り返す。
自分がどうなってしまうのかわからない不安にパニック状態に陥って、そのまま彼の態度によって翻弄される。
ひとしきり感情が昂ぶった後に訪れるのは激しい孤独と、吐き気。
でも、散々苦しんだ末に差し伸べられるのは大きくて暖かな彼の手なのだ。
逆らえない、逆らえなどしない。
そのご褒美はわたしにとって甘すぎて、幸せすぎるから。
優しく包まれるだけで、もう死んでしまいたいと思うほど。
しかしこれが永遠に生きている限り続くと思うと、急に生に対する執着が消滅してしまう。
あれほど退院したがった心は冷たく荒び、真っ暗に堕ちていく思考の中でまたループに嵌っていく。
もう嫌。
こんなに想うことが辛いなら、本当に死んだほうがマシかもしれない。
上り詰めたあとにまた突き落とされるなら、絶頂の内に彼の胸の中で死にたい。
死にたい死にたい。
幸せに死にたい。
優しくてあったかい彼の腕の中で眠るように死にたい。
――堕ちていく、思考が堕ちていく。
もう止まらない。
■■でもいい。
初めから、もう彼しかいないのだ。
両親を失い、居場所を失った。
こんなわたしに手を差し伸べるのは、もう彼しかない。
わたしの心は鞘を無くした剣のように孤独だ。
当てもなく人を傷つけ、最後には自ら血を流す。
彼という鞘に納まるまで、わたしの心は堕ち続ける。
あぁ。
なんて残酷な毎日なんだろう。
“彼”に突き落とされ、“彼”によって救われる。
あまりにも可笑し過ぎる。
彼はわたしにとって天使なのだろうか?
それとも悪魔?
あははははは…
もう、どうでもいいや。
――――どうでもいい。
どっちだっていいッ!!!
彼がわたしを見てくれさえいれば、わたしを愛してくれさえいれば、もう悪魔でもいい。
悪魔ならわたしは魂を捧げるだけ。
喰べて。
体ごと、甘い快楽と一緒に心を喰べてほしい。
「ふふふふふ…」
昏い愉悦に浸っていると、握り締めたままの携帯電話が鳴動した。
瞬間。
加速する。
ジェットコースターが加速する。
体を置き去りに、胸が疾走する。
底まで落ちたわたしが、あり得ない速度で上り詰めていく。
冷えた心が融解する。
暖かな光に照らされて躍る。
震える指先。
熱を持った身体。
馨さん馨さん馨さん…
ずるいよ、待たせるなんて。
でもいいよ。
許しちゃうよ。
だから甘く囁いて、優しい言葉でわたしを愛撫して。
吐息で震えるほど熱く、抱きしめて!!!
わたしは、通話のボタンを押し――――
そして――――
『はぁい♪森さんでよかったかしら』
手の届かないところにある、幸福で緩みきったあの女の声に。
――――突き落とされた。
「あ、れ…?」
大砲が打ち込まれたいみたいに胸の辺りがごっそりと持っていかれた。
心臓の音も聞えない。
ただ湧き上がるのは、黒い疑問。猜疑心。どこまでも広がり続ける負の妄想。
『お元気ぃ?怪我のほうはどうかしら。あと三ヶ月。長いだろうけどぉ…
まぁ、がんばってね!!“独り”、で』
あああ、あれ?…なんで、馨さんの電話から、あの女の声が聞えるノ?
な、なんで、あの女は、こんなに幸せそうなの…?
わたしは、死んじゃうくらい寒いのに…
心が無くなって、震えるくらいに不安なのに…
独り?…
――――チガウヨ。
馨さんがいるもの。
馨さんが傍にいてくれるんだもの…
――――ヒトリジャナイヨォ。
馨さんは、わたしを選んでくれたんだから!!!
「なんで?」
「どうして……?」
「貴女が……………」
馨さンの電話ニ出るノデスカ?
『あはっ♪はははははははっ!!!』
哄笑だけが耳に五月蝿い。
「■■■!!!!!!!!!!!」
自分でもなんと言ったのかわからなかった。
ただ、吐き出した。
天辺から地獄に突き落とされる苦しみ。
怒り。
気持ち悪いくらい幸せなあの女の声に対する嫉妬。
全部が爆発して…
排泄物よりも汚くて、溶岩よりもどろどろした感情が…
金切り声になって溢れる。
「またわたしをだまそうとしてるの??またわたしから馨さんを奪おうとしてるの?
もう無駄だから、馨さんはわたしを選んでくれるって言ったから。だからあんたはさっさと消えなさいよ。
今ならまだ許してあげるから。さっさと消えて。消えてよ!!
ほら、早く電話を切って全部嘘でしたっていいなさいよ。
全部馨さんから聞いてるんだからほらほら、早く早く早く!!」
『あははははははははっ♪』
「笑ってないでなんか言いなさいよ!!
勝手に妄想の中のことをまるで現実みたいに語ってわたしをこんなにしてまだ平然とこういうことするの?
この鬼、悪魔!!
冗談だって言いなさい、馨さんの携帯を使ってどんなことを思いついたのよ!!」
『馨は私と一緒にいるわ』
・
・
・
「――――――――――――え?」
『ベッドの上で、穏やかな寝息をたててね』
「嘘!!!!!!!!!!!!」
駄目駄目駄目…
だまされちゃ駄目っ!!
『本当よ。それにね、この間にあんたに言った事。本当になったから。
私、馨に抱いてもらったのよ。馨は怪我してるのに、とっても情熱的だったわ』
「嘘!!!!!!!!!!!!」
わたしは耳を両手で塞いで布団に包まっていた。
胸をかき乱す言葉は、また深くわたしの心にナイフを突き立てる。
どうして、こんなに不安なの?
嘘よ。嘘に決まってるじゃない。
だまされちゃ駄目だよ瑞希。
馨さんはわたしを選んだんだよ?
わたしの傍にいるって、言ってくれたじゃない。
だから、屋上にまで来て、朝まで一緒にいてくれたんでしょ?
ねぇ、違うの?
『言ってくれたの。ずっと傍にゆかりがいたのに、どうして俺はこんなにフラフラしてたのかぁって。
誓ってくれたの。もう離さないってね。あぁこれ、プロポーズかしらね?嬉しいわぁ』
「黙れ!!!黙れ!!黙れ!!黙れ!!もういいの、あんたの妄想だってことはわかってるのよ!!
だからさっさと馨さんに代わりなさいよ!!全部説明してもらうから!!全部嘘だって言ってもらうんだから!!」
『もうちょっと静かにしてもらえない?馨が起きちゃうから。寝顔の馨、可愛いわよ』
「嘘ぉぉぉぉぉおぉぉ!!!あんたの隣に馨さんがいるはずない、いるはずないの!!
馨さんはわたしを選んだのぉ!!!
だからあんたじゃないの、あんたじゃないの!!!」
息が荒い。
もう肺が自分のものじゃない。
どこから溢れてくるのかわからないけど、声が五月蝿い。
『…ここまで言ってもわからないの?本当にどうしようもない泥棒猫』
ヒステリックなわたしの声に蓋をしたのは、驚くほど低い声。
先までの明るい態度が嘘みたいに消し飛んで、暗雲を連れてくる。
「泥棒猫はあんたでしょぉぉぉぉ!!!あんたさえ来なければずっと病室で馨さんと二人だったのにぃ―――――」
『…病室で、ずっと、馨とふたり?―――――あぁ、なんだ…あんたも、“あいつら”といっしょかぁ…』
しばしの沈黙の後、呆れたような声。
感情を必死に押さえつけた冷涼な気配は消え、獰猛な雲が爆発の瞬間を待つように広がっていく。
不意に訪れる沈黙。
高まった感情が口撃の間に怯えるように萎縮していった。
舌がその空白を恐れて勝手に言葉を紡ぎだす。
自分がその空白を恐れている…そう代弁するように。
「な、何よ…なにが言いたいの??」
『…がっかりしたの。やっぱりあんたも一緒だったのね』
溜息と共に吐き出された言葉は、空気よりも軽い。
ぽっかりと浮かんで、わたしに対する感情が全部抜けてしまったように漂っている。
とにかく、嫌な感じしかしなかった。
「意味がわからない!!そんなことはどうでもいいの!!早く馨さんに代わってよ!!」
焦れた。
焦らされるということに勝手に慣れたつもりでいたが、これ以上は耐え切れなかった。
『残念。馨は今眠ってるの〜とっても可愛いわよ。みたことある?馨のこんなに無防備な姿…まぁ…ないでしょうね。
あんたの前では不気味なくらいに無表情だったし』
沸々と胸が焦げていく。
冷え切った心は再びマグマを胎動させ、言い様のない不快感が喉に渦を巻いて押し寄せる。
携帯を握り締める指先はとっくに白く変色していた。
あの女の姿が目の前に浮かぶ。
わたしが知らない彼の顔を気持ち悪いくらいに緩んだ顔で見つめ、一人悦に入っている女の姿が。
狂いそうなほど憎い。
全部嘘。全部嘘だって自分に言い聞かせても、想像するだけで嫉妬の炎が身を焼き焦がす。
どうしてこんなにまで憎い?
どうしてこんなにまで辛い?
『…いい加減わかってくれた?あんたは、馨のいい部分しか知らないの。あんたは、馨の本当の姿を知らないの。
事故を起こした責任感で自分のことなんて全部後回しにした馨の努力を知らないの。
身を切るくらいに頑張ってアルバイトも増やして、あんたに話を合わせるために一生懸命勉強して!!
みたことあるの?馨が疲れてるところ。聞いたことあるの?馨の弱音。理解しようと思ったことあるの?本当の馨の姿を!!
何も言い返せないでしょ!?あんたは結局今まで馨に寄ってきた害虫と一緒なのよ。
彼の親切心を愛情かなんかだと勘違いした馬鹿メス。男を見たら媚び諂って、貰うばかりで何も与えてあげられない寄生虫。
同じよ。あんたも同じ。今まで境遇に恵まれなかったのには同情してあげる。でもね、馨を都合のいい依存先にしないでよ。
馨はあんたみたいな女のために生きてるんじゃないの。もっと幸せになれるのよ!!』
「……違う…都合のいい依存先なんかじゃない…わたしは馨さんが好きなの、愛してるの!!貴女になにがわかるのよ!!」
『わかるわよ。全部わかってる。今までずぅーーっと、一緒だったから。嫌なところも、いいところも、全部知ってるの。
どれだけ馨が努力したか、どれだけ涙を流したのか、全部見てきたの。それを含めて私は馨が好き。あんたが知らない部分を含めて、全部愛せる。
でもあんたが好きな馨は、努力が報われなくて悔し涙を流す馨じゃないでしょ?親切心を利用されて、打ちひしがれた馨じゃないでしょ?
結局あんたは馨の表面しか知らないの。そのいい部分を勝手に好きになって、自己満足しているだけ。
甘い蜜を吸い尽くして、飽きたらゴミクズみたいに馨を振ってきた最低の女達と一緒なのよ。
だからね、これだけは言っておきたいの。お願いだから、馨を好きなんて…間違っても愛してるなんて言わないでね。
……殺したいくらいに腹が立つから。今までの雌豚が頭に浮かんで目が眩むくらいに真っ赤になっちゃうから』
きぃん、と。
耳の奥底に突き刺さる冷徹な牙。
反射的に喉が言葉を吐こうとするが、腹筋に力が入らない。
ただただ、あの女の言葉が胸で木霊している。
…
……
おかしいな?
どうして言い返せないんだろう。
わたしは確かに馨さんが好きなのに。
どうして、どうして何も言葉が浮かばないんだろう。
なぜ、あいつの安い愛情論を論破する鍵が見つからないの?
どんな相手の理論武装も引き剥がす自信があった。
でも胸の奥で響いているのは、あの女の声だけ。
なんでなんで、わたしは馨さんを愛してるんでしょう?
なんで気の利いた言葉が浮かばないのよ。
これじゃあ相手の言葉を受け入れてしまってるのと一緒でしょう?
なにか、なにかなにかなにか…
言い返さないと、自分の気持ちを刃にしてぶつけないと!!
「わ、わたしは……依存なんてしない!!求められれば答えてあげるし、ちゃんとセックスだってできる!!
辛ければ慰めてあげられるし、冗談に相槌だって入れられる!!」
たったこれだけのことを言うのに、ひどく息が荒い。
入院生活で失った体力の所為じゃない。もっと深い部分で、全身が揺れている。
『…それだけ?』
うふ、と語尾に付け加えて蝮のように笑う。
受話口でぼけた声が、どうしようもなく煩わしい。
「た、退院したら、どこにでも着いていくわ。バイクの後ろに乗って、大きな背中に抱きついて、そう、お弁当だって作る!!
馨さんの好きなおかずを用意して、暖かいコーヒーを入れて…」
『あなたを轢いちゃったバイクにわざわざ乗せたがるかしら?きっと今はバイクを見ただけで気が重くなるんじゃない?
それにお弁当を作るにしても、馨の好物知ってるの?大体、馨はコーヒーより紅茶党なんだけど…』
「き、きき気に入らないところは全部直す!!性格だって、馨さんのためなら明るくなれるし、お洋服だってもっと露出が多いのを着てもいい!!」
『どうしたの?声が震えてるよ?』
「へへへ、平気よ。ぜんぜんこれっぽっち、ここから出たらもっと元気に動き回らなきゃいけないだから。
馨さんの歩幅についていかなきゃいけないんだから、これくらい、平気よ!!」
どうしてか、喋るたびに胸にずくりずくりと鋭いものが埋まっていく。
それがなんなのかわからないけど、酷く下腹部が熱い。
どうしてなのか知らないけど、頭はもう捩れそうなほどこんがらがっている。
なんでなのか、今にも舌を噛みそうなほど顎が痺れ、焼け付きそうなくらいに喉が渇いている。
背中には尋常じゃないくらい汗が浮かんでいるし、不気味なくらいに呼吸が苦しい。
足はさむくもないのに震えているし、熱も無いのに視界が霞む。
■■…
死んでも絶対認めたくない言葉が浮かんだ。
「ぜんぜん問題ないよ!!うん、大丈夫、大丈夫。ええっと…あとは…」
代わりに言葉を吐き出し、呼吸を締め上げて打ち消した。
どんなに苦労して搾り出した言葉も、舌に乗せるだけでふわふわ浮かんでいくような気がする。
それがどうしようもなく嫌で、更に言葉を模索した。
『やっぱり…あなた、自分で言ったこと理解できてる?さっきから同じことをずっと繰り返してるわよ』
「大丈夫!!!わたしが平気って言ってるんだから!!!大丈夫なの!!」
自分のものとは思えないほど掠れた声。
今どんな姿勢をして電話しているのか、それすらも理解できていない。
だけど、ここ譲ったら全部負け。
だから精一杯踏ん張る。
何があっても……たとえ死んでしまおうとも。
「馨さんに命令されたら、どんな恥ずかしい恰好もできるわ。どんなマニアックなコスプレだって平気だし、縛られても平気。
前の穴じゃなくて後ろの穴だって少し恐いけど馨さんなら平気なの」
……赤。
「大学だって、馨さんと同じところに移るし、就職先も一緒にする。だって他の女が寄ってきたら嫌じゃない?
そういう目障りなメスを監視するにはやっぱり四六時中傍にいるのは大事だと思うの」
……赤。
……紅。
「それでずっと好きって言ってもらうの。一生わたしだけなにがあっても離れない。なにをするにでもわたし。
カッコなんてつけてない馨さんを受け入れて、魂も優しく抱いてあげられるものわたし」
…赤紅朱。
何故だか、言葉を発するたびに胸から“あかいの”が噴き出してくる。
反対の手で触っても何も付かないから、きっと気のせいなんだろうけど。
わたしにはどうしようもなく“あかく”見えてしまうのです。
それでその“あかいの”が溢れてくる根元には、鈍い銀の塊が刺さっているのです。
胸をかきむしって確かめると、何もないからきっと気のせいなんだろうけど。
わたしにはどうしようもなく、それが“ナイフ”に見えてしまうのです。
「心だって、魂だって、全部わたしのもの。他のやつなんかには渡さない。死んだあとも、生まれ変わっても全部わたしのもの。
渡さない、触れさせない、視界にだって入れさせない!!未来永劫全部わたしが独占するの。
彼の優しさだとか、思いやりだとか、全部、すべて、何もかも、わたしと一つになるの!!!」
なにを口走っているのでしょうか?
胸に刺さった銀色の物体と、生ぬるい赤に気をとられすぎて自分でもわかりません。
『もういいわ…とりあえず、今日はこのくらいにしておきましょう。明日馨と一緒にそっち行くから。
そのときに全部ケリをつけましょう。そのとき馨の口から全部わかるから。もう何も言わないで』
「まだ、まだまだ。まだ。もっと、もっともっと、わたしの気持ちを言葉にできるよ。だから切らないでよ。一人にしないでよ。
誰でもいいから、わたしをかまってよ。一人はいや。一人はいや」
『大きくなりすぎたものに、何一つまっすぐなものなんて無いの。生き物、植物、人の心だって成長しすぎれば根っこから曲がっていく。
歪みきった心は、自分では認識できない。それにしても哀れね。今日はさようなら。病人さん。
体も弱りきって、心も荒んでしまった、哀れな病人さん。さようなら、“選ばれなかった人”さようなら、“棄て猫さん”』
イヤだいやだ嫌だ厭だ
ひとりはいやひとりはいや
ひとりは、嫌だ………
この“あかいの”が、止まらなくなるよ。
長くて本当に申し訳ない。
いつも読んでくださる皆さんには感謝の言葉しかでません。
次回で完結いたします。
修羅場分が少なくてごめんなさい…
なにが申し訳ないんだよ、最高じゃないか!!!
こちらはもう遊び要素がなくてどんな悲劇的な終焉となるのか超楽しみ♪
どんなENDになるか楽しみでつ(;´Д`)...ハァハァ
>修羅場分が少なくて
え? もう四六時中修羅場っぱなしに感じるんですけど?
にしても相変らず■■の使い方が上手い!
字を伏せる事で想像力をかきたてヤヴァさを強調させ実にお見事!
しかし「とらとら」が終り「血塗れ竜」「ブラマリ2nd」
そしてスウィッチまでもが次回最終回
以前もそうだったけど本当終わるときってばたばたと終わるな
秀作が完結を迎えるのは寂しくもあるが
でも連載中も面白い新作もあるし
まだまだこのスレは十二分に楽しめるな
>>649 sageが全角だと上がっちゃうんで直してね
森さんかなりやばいですw
もう思考が破滅へのループをたどってますな。
これで馨がどのような対応を見せるのか期待して待ってます。
ほかの作品も期待しています!
作者さんGJ
珍しく幼馴染み優勢?
やっぱ仕事終わりの疲れた身体はここで癒すに限るぜ・・・・
>>646 電話終了までに五回は射精するかと思った。
ああああああ瑞希可愛いよ瑞希その真っ赤なナイフでガッツンガッツン刺されたいよ瑞希最高サイコーでーす!!!!!!!
彼から型月の匂いを感じた。
あの女の臭いがするっ!
森さんも幼馴染みもどっちも最高すぎて、最終回を早く見てみたいが終わって欲しくないという
ジレンマに陥ってしまうぜ(*´д`*)ハァハァ
授業中……
先生が板書している内容なんてまったく頭にはいってない。ノートもただひらいているだけで、真っ白なまま。考えていることは沙恵ちゃんのこと。
すると。
ポロ
「あ……」
ぼーっとしていたためか、手を動かした拍子に消しゴムを落としてしまった。そして転がっていき……前の女子の席までいってしまった。
彼女が気付き、それを拾ってくれる。
「はい。」
「ありがと……」
無意識のうちに受け取ると……
ヴーヴーヴーヴー
「!」
突然ポケットの携帯がバイブで震える。先生に気付かれないようにそっと見てみると………
着信は二件だった。一通目……
『frm秋乃葉先輩
海斗くん、ダメだよ。すぐにそんな消しゴム捨てちゃって。そんな女が触ったのなんて、海斗くんの手が汚れちゃう!』
『frm麻理
お兄ちゃん♪授業抜け出して屋上に来てね♪来てくれないと……』
来てくれないと……なんなんだ!?多分沙恵ちゃんに関することだ。というか……今の一連の状況、どうやってわかったんだ?
いや、今は悩んでちゃいけない。沙恵ちゃんのために屋上へ行かないと……
キィ……
今はもうほとんど使われていない屋上へのドアを開ける。相変わらず、ここからの景色は素晴らしかった。惜しいことに、今はそんなことに浸っている余裕がない。
「あ、来た。」
「ふふふ……海斗くん♪」
そこに待っていたのは、案の定、秋乃葉姉妹だった。僕が現れるなり、手を引っ張り、人目のつかないところに連れていかれる。
「海斗くん……私、これはいけないと思うなぁ。」
そう言いながら見せられたのは、デジカメに写っている写真。それは、ついさっき消しゴムを受け取っている場面だった。
「こんな可愛くない女の子に触ったら、海斗くんもよごれちゃうでしょ?」
………失礼だが、お世辞にも彼女は可愛くない。それに比べ、目の前にいる二人は……本当に可愛いいのだ。二人が自分のことを可愛いといっても、誰も自惚れだなんて思わないだろう。
ただ……その可愛さと狂気が混じり、今は混沌を招く者でしかない。
「だから……私たちでお兄ちゃんの手、きれいにしてあげるね。」
なぜだろう。麻理が妹で無いと知った途端、お兄ちゃんと呼ばれることに、異常に興奮している。
「はい、お姉ちゃん。」
「うん♪」
二人で仲良く分け合うように、僕の右手を持って……
「ふふふ……今きれいきれいしてあげるね。海斗くん。」
「じっとしててよ?お兄ちゃん。」
何をするかと思ったら、いきなり二人で僕の手を舐め始めた。
「んっ……ちゅ……じゅる…」
「はむ……んぅ……ぅ…くぷ…」
「うぁあ!?」
指先から手のひらや甲、消しゴムを受けたのとまったく関係の無いところまで舐められる。
そのこそばゆいような感覚が、なぜか気持ちいいと思ってしまう。ただ手を舐められてるだけだというのに……
「ん!ん!……ふふ、きもひいい?海斗くぅん…」
指先をしゃぶっていた秋乃葉先輩が、上気した顔で問い掛ける。そんな表情にまた興奮してしまい……
「は、い……気持ちいい…です。」
思わず正直に答えてしまう。
「んふふ〜♪お兄ちゃんの手もおいひいよ。」
もうふやける程に舐められ、右手がびしょびしょになってしまった。そして、下半身にも情欲を感じ始めたそのとき……
キーンコーン……
授業が終わるチャイムが鳴った。
「ちゅる……ん、はい、お掃除お終い。もうこの手、汚しちゃダメだよ?」
「それじゃあ、お兄ちゃん。またお昼でね♪」
そう言うと、二人はさっさと屋上から去ってしまった。……この引き際が、いつも僕を狂わせる……
指ちゅぱキター(*´д`*)
エロス━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
>>646 これだけ対決させておいて修羅場分が少なめなんて、
◆pmLYRh7rmU氏の思う修羅場って (((; ゜Д゜)))ガクガク
とにかくGJ!
ミスタープレイボーイの第4話、投下します。
最大の修羅場回避作戦を乗り切ったことで、僕は高揚していた。
D-デイを生き抜いた一平卒のように。
プレイボーイとしての自信がよみがえってくるのを感じる。
僕はできる!
だからかもしれない。
「ごはん、たべていきませんか」
洋子の誘いにうなずいたのは。
彼女のマンションの前でタクシーから降りる。
今日は僕がエスコートする形で、彼女の部屋まで向かう。
こんなところで発揮される、僕のにくいほどの紳士っぷり。
もちろん、スーパーで買ってきた食材は僕が持っている。
相手の出方が分からない以上、ここはいつものように振舞っておいたほうがいい。
つまり、自然な気遣いを見せる。
卓袱台の横に腰を下ろした僕に、お茶を出すと、彼女はキッチンに入る。
キッチンの壁にかけてあった、花柄のエプロンをつけた。
ワンルームマンションなので、様子がすべて見える。
やはり、好きな男に手料理を振舞うのは女の甲斐性なのか。鼻歌なんか歌ってうれしそうだ。
「野ばら」か。
彼女は、以前コーラス部にいたらしく、シューベルトなんかをよく歌っていた。
その様子を見ながら、突然思い出す。
そういえば、恋人がこんな風に料理しているのを見るなんて初めてじゃないだろうか。
そもそも手料理を振舞ってもらったということが、ほとんどない。
そういう、家庭的な雰囲気になるのを、僕はこれまで避けてきた。
きっと、これが僕の弱点だというのを、本能的に察知していたに違いない。
プレイボーイの本能はDNAすら凌駕する。
洋子が小さい肩を揺らしながら、一定のテンポで包丁を振るっている。
こうしてみると、やっぱりずいぶん小さいな。
その姿に、何となく既視感を覚える。どこかで見たことのある光景。
いうまでもなく、見たことがあるとすれば、それは。
でも、母さんは彼女ほど華奢な人ではなかった気がする。
いつも見上げていたから。
当たり前だ。母さんが生きていたのは僕が子供のときなんだから。
他の大人と並んでいるときは、やっぱり小さかったような気がする。
なら、大人になった僕から見れば、母さんは彼女くらいの大きさだったんだろうか。
それで僕を育てるためにがんばって働いて、死んだんだろうか。
彼女の後姿を眺めていると、なんだか胸がじんわりと熱くなった。
・・・やめろ。
洋子と母さんを重ねるんじゃない。このエディプス野郎。
情が移ってしまうぞ、このマザコン野郎。
そんなんじゃ、手にしかかっているお金と地位を取り逃がしてしまうぞ。
そんな母さんを捨てたクズ親父を見返してやりたいんじゃなかったのか。
楽しい人生を送りたいんじゃなかったのか。
薫のことを思い出せ。あのホテルのディナーの味を思い出せ。
だいたい、一ヶ月前のことだ。
薫に、ネクタイを締めて、某高級ホテルのラウンジまでくるようにと連絡を受けたのは。
お嬢様らしい気まぐれ屋だった彼女からは、そういう呼び出しがたびたびあった。
いつもと違ったのは、そこに彼女の父親もいたということだ。
完全に不意打ちだった。
薫は、してやったりというような、悪戯が成功した子供みたいな顔をしていた。
そういうことがこれまでなかったわけじゃない。
それに、今回ばかりはこちらとしても望むところだった。
彼女が大病院の一人娘であることを知ってからは、常に結婚を意識していた。
ここで父親をくどきおとし、一気に王手をかけてやる。
ラウンジで、無難な自己紹介を済ますと、最上階のレストラン、しかも個室に連れて行かれる。
いきなり正念場だな。
最初は、当たり障りのない会話から。
幸い、父親は医者で、僕は医大生だ。会話に困ることはない。
ワインの薀蓄を語りだす。もちろん、謙虚な顔をして相槌を打ちながら聞いてやる。
「だから、この年のボルドーは・・・」
薫だけは退屈した猫みたいな顔をしていた。
魚介の前菜から、デザートまで。食事を終えて口にしていたコーヒーを下ろすと、父親の奴はいきなり切り出した。
「長嶋君は、ご両親がいないんだってねえ」
そこから入るのか。
思わず薫の方を見る。彼女も驚いた顔をしてこちらを見ていた。
そうだ、これは彼女にも話していない。そういう境遇は、隠しておく主義だ。
ならなぜ。
いや、相手の立場からすれば、娘の相手選びには慎重になるだろう。興信所でも使ったに違いない。
どういう経緯で両親を失ったのかも知っているに違いない。
そりゃあ、いずれは分かることだ。けれどここで切り出されるとは思っていなかった。
うまく切り返さなきゃならない。
だから。
だから、長嶋茂雄。そいつをにらむのをやめないか。機嫌を損ねるようなまねをするんじゃない。
穏当な言葉を返して、場の空気をやわらげろ。
「・・・それが・・・どうかしましたか」
自分のものとは思えない、低い声だ。
明らかに、挑戦的な響きを帯びている。これはまずい。
感情的になるんじゃない。クールダウンしろ。利巧になれ。
「お父さん!」
薫が父親を責める。
少し続いた気まずい沈黙を、彼の笑い声が破った。
どうやら破局は回避できたようだ。ほっとする。
「いや、すまない。だからどうということはないんだ。むしろ、そういう境遇をばねにしてここまできた君を評価してるくらいでね」
僕はこういう言い草が大嫌いだった。
まるで不幸のおかげでがんばれたとでもいうかのように。
よかったじゃないか、父親が蒸発して、母親が死んで、とでもいうかのように。
もちろん、そんなことはおくびにも出さない。せっかくつながった首だ。
「君には、優秀な医師の素質があるという話を聞いている。何より、薫は君にべたぼれのようだ」
ちらりと薫の方を見る。場が丸く収まりつつあるのを感じてか、彼女がニコリと笑った。
「もしよければ、交際を続けてやってくれないか。私も君のことは気に入っている。これは本当だよ。卒業したら、うちの病院に来てほしい。優秀な医師はいつでも足りなくてね」
よし!結婚の許可をもらったに等しい言葉だ。
僕は、やり遂げた。勝利をほぼ手中にしたぞ。
父親がいなければ、薫を抱き上げて、百回のキスを送っていただろう。
けれどハイヤーに乗込む前、るんるん気分の僕に釘を刺しておくのは忘れなかったようだ。
「私も男だ。若いうちは遊ぶのもいい。だが、これをきっかけに一度けじめをつけておくのはいいことだと思うよ」
結婚したければ、身辺をきれいにしておけというわけか。
わかってますよ。身辺を汚すのは、せいぜい結婚後にします。お義父さん。
そのときは、一気に開けたと思った明るい未来。
それがこんなふうに暗雲立ち込めたものになるとは。一寸先は妊娠騒動か。
目の前には、いわゆる日本の家庭料理が並んでいる。
カレイの煮付け、なすの田楽、金平ごぼう、それにアサリの味噌汁。
うまそうだ。結局日本人である僕は、このだしと醤油の香りの誘惑に勝つことができない。
うまい。カレイを口にして、洋子が相当のてだれであることを知る。
こんな家庭的な女だとは知らなかった。
洋子はニコニコとして、僕が食べるのを見ている。
女の幸せここにあり!とでもいいたいような顔をして。
思わず、小市民的幸せ空間に引きずりこまれそうになる。
小市民根性がパワーアップし、野心がパワーダウンする堕落空間だ。
そんなのはごめんだ。ぶち壊してやろうか。
いきなりキレてみるとか。東西新聞社社員のように。
「これはカレイの煮つけじゃない。ただのカレイの醤油煮だよ」
当然そこで、じゃあお前が作ってみろよということになる。
だが、市場に手を回されてしまっており、新鮮なカレイが手に入らない。
そこで、明石海峡で自ら釣り上げたカレイを使って勝利する。
「カレイとワインには旅をさせるなってことさ」
泣き崩れる彼女にこういってやる。
「僕と結婚すれば、毎日料理のことで責められるはめになる。平気でおにぎりに「30点」とかつける。だから、料理修行の旅に出てみないか。僕を超えることができたら結婚しよう」
やがて子連れ流れ板となった彼女は、伊豆の旅館で殺人事件に遭遇し。
などという二時間ドラマのプロットを作り上げているうちに、残さず食べてしまっていた。
けちをつける余地などどこにもない。
こうなっては、言うべきことはひとつしかなかった。ニッコリ笑って。
「ごちそうさま。おいしかった」
彼女もニッコリ笑って。
「お粗末さま」
彼女の入れてくれたお茶を、すする。
デザートに羊羹なんかを出してくれる。徹底して和食党のようだ。
この光景。まるでどこかの若夫婦だ。
なんとかしないと。けれど、こちらから何かを切り出すのは気が引けた。
相手が何を考えているのか分からなくて不気味なのだ。
洋子は相変わらずニコニコしている。
それでも、このままでは埒が明かない。穏当な言葉でこちらから行くしかない。
そうだ、ばたばたしたおかげで診察の結果を聞いてなかった。
「どうだったの?病院」
「5週目だそうです」
つまり、手足ができ始める頃だ。この時期に変な薬なんかを飲むと、もろに影響が出る。
今はまだ、魚みたいな変な格好をしているはずだ。
まだまだ人間には遠いな。そう、やつはまだ人間じゃあない。にやりと笑う。
「でも、心臓の音、エコーで聞きました」
「そ、そう。少し早いかな」
思わず熱いお茶を一気に飲んでしまう。
「それじゃあさ、そろそろつわりが始まったりするんじゃないの」
「まだ、大丈夫みたいです。でも、そろそろだろうから、覚悟しておいたほうがいいって」
「だったら、仕事はどうするの?」
洋子が、僕のこと以外で懸念するものがあるとすれば、仕事のことだ。
確かに、妊娠しながら仕事を続ける人もいる。
けれど、彼女の仕事は教習所の教官だ。安全とはいえない。
「おなかが大きくなるまでは、続けてみようかと思ってます」
「危ないよ」
そう、妊婦にとって、車の運転は危険だ。事故って、流産なんてこともあるかもしれない。
でもそれは、僕にとって願ったかなったりじゃないのか。
それは、僕のせいじゃなくって、彼女の無思慮が招いたことだ。やさしく慰めてやればいい。
手を切るための、十分なきっかけになる。流産をきっかけに別れる夫婦もいるらしいじゃないか。
だというのに、僕は何を心配そうな声を出しているのか。演技が板につきすぎて、本気になっているのか。
染み付いたフェミニスト根性が、恨めしい。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、薫はニッコリ笑う。
「だって、がんばって働かないと。長嶋君にはきちんと大学を出てもらいたいし」
内角すれすれのボールを投げてきた。
これ以上は危険だ。次はきっとど真ん中ストレート、いやフォークが来る。
来ると分かっていても打てないフォークが。やれることといえば、せいぜいかっこよくヘルメットを飛ばすことだけ。
その前に帰ることにした。
以上、「二つの食卓」編でした。
感想をくれるひとたち、ありがとうございます。
お話を書くのははじめてですが、励みになります。
がんばって、1日1投下を目指します。
ミスターwアンタ最高だよw
>1日1投下を目指します。
さすがミスター!
並みの職人には出来ない事を言い放ちやてのける!
そこに痺れる憧れるぅ!
GJだ!しかし改めて見ると独創的な作品だ
今までの作品は妊娠は終了フラグなのにこの作品は妊娠からスタートしたんだからな!
がんがれ楽しみにしてるぞ
これは期待できるwwwwwwww
綱渡り的緊張感を保てる筆力に脱帽。
正直嫉妬スレはもう下火と思っていた俺を殴りたい。
>>673 トンファーパ〜ンチ!
_ _ .' , .. ∧_∧
∧ _ - ― = ̄  ̄`:, .∴ ' ( )
, -'' ̄ __――=', ・,‘ r⌒> _/ /
/ -―  ̄ ̄  ̄"'" . ’ | y'⌒ ⌒i
/ ノ /~/ ドゴォォォ | / ノ |
/ , イ )フ / , ー' /´ヾ_ノ
/ _, \/. / , ノ
| / \ `、 / / /
j / / ハ | / / ,'
/ ノ ~ { | / /| |
/ / | (_ !、_/ / 〉
`、_〉 ー‐‐` |_/
昨日今日とすごい投下ラッシュだな。しかもそろってクオリティむっちゃ高いし。
みんなGJです。
ところで投下しようと思ってるんだが、スレの容量的に大丈夫かな。
文量は『スウィッチ〜』に近いくらいありそうなんだけど。
>>675 つまり次スレのスレタイを考えろと言うことだな
このクオリティで一日一投下なんて素敵過ぎ
無理しないでね
雌豚を20Fから突き落とせ
文字数多すぎて入らないか。orz
二重人格のヒロイン
とかどうよ
「〜は20歳を過ぎてから」というフレーズを思いついたが、肝心の〜が思い浮かばないorz
恋人と愛人との二十(重)生活
とかどう?
長すぎるか
「二十(重)生活」でどうよ?
「20(にと、二兎)を追う者は」
とかどうすか?
無理があるか
今日はブラマリ2、スウィッチ、ミスターの新作がまとめて読めて……
なんだか夢のようだワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
ブラマリ2は団長と姫様の可愛さにノックアウト。シャロンの「しっぽり、とね」にワラタ
スウィッチは森さんのテンパり具合がやばすぎてもはやラブリィの次元に突入。
ミスターはありそうでなかった路線を直球ストレートな感じで今後が楽しみ。
「二十段のお弁当」
鬼ごっこはストーカー姉妹が俺の空腹を癒す
これで疾走も戻ってきたら満腹ですね。
修羅場は20歳になってから
20匹目の雌犬
↑
>>687な
ぜったい学生のほうがウハウハだぜ?
確かに高校時代は良かった。
付き合っていた彼女と「ずっと一緒にいようね」とか「大学出たら結婚しよう」とか「子供の名前何にする」とか……。
あははははははww
今になって考えると、好きな人とずっと一緒に居続けるのがすんごい簡単に思えていたな。
貧乏、メガネ、ツンデレ、江夏とは犬猿の仲の野村は出て来ないのかな?
誤字ってここで報告してよかったっけ?
いいならメ欄。
このスレの初心者だけど、保管庫の中でオヌヌメ頼む
時間がかかりそうだが全部読むつもりだが、特にこれといったものは?
>>694 全 部 だ 。
次のスレタイなんて
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ
あの女の匂い(20)がする
しか無いだろう!!
…で、何でもいいから次スレ立てないか?
神が作品投下できないと思うんだが
>>694完結してる作品を上から順に。
いや、投げやりで言ってるんじゃないぞ。
どの作品もレベルが高過ぎて優越がつけられないんだ。
容量でスレ立ては初か?
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ あの女の匂い(20)がする
にいぴょー
埋めネタ
腐敗した妹がゾンビになって泥棒猫を追い払う
B級サスペンスホラーとかどうよ
>>694 沃野とか、妹は実兄を愛してるとか、山本くんとか、血塗れチョコとか、不義理竜と食人鬼とか
ERROR:サブジェクトが長すぎます!
orz
どうする?
分かった
とりあえず完結してるのから読んでみる
>>702 (20)は外してもぉkだがそれでもダメ?
半角でもダメ?
後は前案からセレクトGO!
だめだw
仕方ないから短い
>>681で行ってみる。無理だったら誰か頼む
>>708 仕方ないわなw手間かけさせてスマンね。
スレ立て乙、GJだ。
>>700 血塗れチョコとか、不義理竜と食人鬼とか
………融合してる!?
>>710 不義理竜はともかく血塗れチョコってのはありそうだな
名前を間違えた彼にはフラグが・・・
あとはブラッディ・フォースやらリボンの山本君やら
気がついたら病院のベッド、そして知らない女の子。
どうやら俺は交通事故に遭ったらしい、けど、何も思い出せない。
目の前の女の子のことも、自分自身の名前すらも忘れてしまった。
目の前の女の子は言う。
「よーくんは洋平という名前で私の、綾瀬胡桃の恋人なんです」
こんなかわいい子が恋人?と驚いていたら、突然ドアが開き誰かが入ってきた。
「人志、ケガは平気?まだ身体のどこか痛む?」
青いリボンを付けて竹刀らしい包みを持った女の子だ。
「記憶喪失だって?私は新城明日香、人志の彼女よっ!」
記憶喪失の男を巡り乙女は戦う。
彫刻刀で、竹刀で、弓矢で、狙うは男のハートと雌豚の命。
次回、リボンの沃野にご期待ください。
「ユウキ、元気になったらいっぱい頭を撫でてね」
かおすwwwwww
これはいいカオスですね
腐ってやがる……遅すぎたんだ。
作者神の許可も得てないのであくまでも妄想の範囲内でw
既に頭の中では リボンのとらとら血塗れ沃野の舞うナイフを愛してる が駆け巡ってます。orz
しっかし白が争奪戦に参加すると戦力バランスが核兵器並みに狂うね。
>白が争奪戦に参加すると戦力バランスが
戦姫マリィなら対抗できるかも
胡桃のロングレンジスナイプも侮れないぜ
素手でモンスターを引き裂いたクリスも…etc
っていうかこのスレ戦闘力高いヒロイン多すぎww
恋は腕力だからじゃないか?
それでも不撓家の兄貴ならなんとかする罠。
なんとかされるとこのスレ的には面白くないが。
>>719 それでも荒木麻耶なら・・・麻耶たんならなんとかしてくれる・・・・・・
>>720 つ 恋は戦なの
それでも、雪桜さんならなんとかしてくれる!!
って言うか男衆がヒロインに比べ戦闘力高いの少ないんだよな
戦闘能力のある男子キャラって不撓兄弟、ウィル、リオ、智……他にいる?
あと不撓以外は何れももっと強いヒロインがいるんだよな
男に戦闘力は必要ない。
必要なのは耐久力。
ここの女の子には3つの「ぼうりょく」が必要です。
「暴力」 「謀力」 「房力」
この3つで愛しのあの人のハートと雌豚の命を狙うの。
|ω・`) そういえば「結」の続きはそろそろかしら・・・
期待してます(゚ー゚*)
鬼ごっこキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!
「大丈夫、大丈夫。」
「20スレなんかにあげないから。ずっと私の傍に置いてあげる。」
「怖がることなんかない。あんたはずっと私のものだったんだから。」
「誰にもあげない、触れさせない。あんたはずっと、私のもの。逃げることなんかできないんだから。」
……きっと、19スレは
>>731の様に考えているに違いない。手に取るように判る。だって、あいつとあたしは似た者同士なのだから。
同じ人を好きになって。同じ様に彼を想って。――同じく、互いを憎み合っている。
ねえ、19スレ。あなたが彼じゃなくて、彼みたいな、優柔不断で意気地無しだけど、優しくって格好良い、魅力的な他の男を愛したんだったら……あたしたちは親友になれた。
今となっては叶わぬ夢想に過ぎないが。
あたしは今、彼の部屋で彼のPCをいじっている。かち、かち、かち。マウスを動かし、お気に入りから19スレのブックマークを削除する。かわりにあたしの――20スレをブックマークして、作業は完了。
椅子から立ち上がり、準備を終える。
最後にぐるりと彼の部屋を見渡した。掃除よし、洗濯は終わった、料理にはラップをかけてある。この部屋に足りないものは、彼だけだ。
電源が切れた黒々しいモニターにあたしの姿が映る。
右手に包丁。背中にフライパン。左手に金属バット。
「行ってきます!」
待っててね、19スレ。彼を奪ったあんたなんか殺してやるからね。
733 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/23(月) 01:31:41 ID:0IS3E+cp
××の喧嘩祭といえば、六尺褌一丁の男達が、神輿を担いでぶつかり合う、
勇壮な祭として、この地方に知られている。
祭のあと、男達は集会所に集まり、普段着に着替え、飲み合う。
六尺は、激しい祭でドロドロボロボロになるから、使い捨てで、ゴミとして出される。
俺はいつもそれが狙いだ。
捨てられている六尺の、できるだけ汚れてる奴を10数本ほど、
こっそりさらって家に持ち帰る。
そして、深夜、俺一人の祭が始まる。
俺はもう一度汚れた六尺のみ身に付け、部屋中にかっさらってきた六尺をばら撒き、
ウォーッと叫びながら、六尺の海の中を転げ回る。
汚れた六尺は、雄の臭いがムンムン強烈で、俺の性感を刺激する。
前袋の中のマラは、もうすでに痛いほど勃起している。
六尺の中に顔を埋める。臭ぇ。
汗臭、アンモニア臭や、股ぐら独特の酸っぱい臭を、胸一杯に吸い込む。溜まんねえ。
臭ぇぜ、ワッショイ! 雄野郎ワッショイ!と叫びながら、前袋ごとマラを扱く。
嗅ぎ比べ、一番雄臭がキツイやつを主食に選ぶ。
その六尺には、我慢汁の染みまでくっきりとあり、ツーンと臭って臭って堪らない。
その六尺を締めてた奴は、祭で一番威勢が良かった、五分刈りで髭の、40代の、
ガチムチ野郎だろうと、勝手に想像して、鼻と口に一番臭い部分を押し当て、
思いきり嗅ぎながら、ガチムチ野郎臭ぇぜ!俺が行かせてやるぜ!と絶叫し、
マラをいっそう激しく扱く。
他の六尺は、ミイラのように頭や身体に巻き付け、
ガチムチ野郎の六尺を口に銜えながら、ウオッ!ウオッ!と唸りながらマラを扱きまくる。
そろそろ限界だ。
俺は前袋からマラを引き出し、ガチムチ野郎の六尺の中に、思いっきり種付けする。
どうだ!気持良いか!俺も良いぜ!と叫びながら発射し続ける。
本当にガチムチ野郎を犯してる気分で、ムチャクチャ気持ち良い。
ガチムチ野郎の六尺は、俺の雄汁でベトベトに汚される。
ガチムチ野郎、貴様はもう俺のもんだぜ!
俺の祭が済んだあと、他の六尺とまとめて、ビニール袋に入れ押し入れにしまい込む。
また来年、祭で六尺を手に入れるまで、オカズに使う。
押し入れにはそんなビニール袋がいくつも仕舞ってあるんだぜ。
734 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/23(月) 01:32:13 ID:0IS3E+cp
ゲイの出会い系で知り合った10歳以上年上のオジサンの家へ。
そしたら「これ着て責めて欲しい」と言われて、レンコン掘りというか、
魚河岸の人が着てるような胸まであるゴム長を着させられ、捻りハチマキをさせられた。向こうは全裸。
まあこんなのもたまにはいいか、と愛撫してたら、オジサンが喘ぎ声の中、喋りだした。
「お、おにいちゃん…お、おかえりなさい…た、大漁だった?ねえ大漁だった??」
…オレは突然の、しかも想定の範囲を超えたセリフにポカーンとしてしまった。
オジサンは素に戻って、「…返事して欲しい」と恥ずかしそうにオレに言った。
プレー再開。・・・耳とかをなめつつ体中をさわさわと触る
「お、おにいちゃん、大漁だった?」
「ああ、大漁だったよ」
「あぁぁぁあぁすごいいいぃいぃ!、、な、なにが、、ハァハァなにが捕れたの?」
乳首を舌でやさしく舐めながらオレは答えた
「…鯛とか、、、ヒラメがいっぱい捕れたよ」
セリフを聞き、オジサンはびくんびくんと身体をひきつらせた
「はっ!はぁぁぁあんっ!イ、イサキは?イサキは、と、取れたの??」 チンコをしごく
「ああ。でかいイサキが取れたよ。今年一番の大漁だ。」
「大漁っ!!イサキぃぃ!!おにいちゃんかっこいいいいぃぃぃい ぃくううううう!」
実話です。。きっと漁師の人との幼い頃の体験というか、淡い恋心とかが
あったんだろうなあ、といろんなことを考えさせられた一夜でした。
735 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/23(月) 01:32:46 ID:0IS3E+cp
この前ズリダチとタイマン勝負したことを書くぜ。
互いに六尺姿でまずは威嚇、腕組みヤニ咥えガン飛ばし、
大股で筋肉と勃起誇張して、野郎比べだ。
雄臭ぇポーズで挑発しあう。腰突き出し勃起を振り回し、
オラオラ節で興奮に火が付く。
やわらオイルをタップリ仕込んで、いよいよズリ戦開始だ。
胴ズリ、逆ズリ、雁ズリ、玉ズリ、上ズリ、下ズリ。
野郎うなぎ責め、腰砕けの手マンコ、野郎泣かせの亀頭責め。
片手技と両手技の競り合いで、雄の粋と艶を比べ合う。
ズリ見せ根性丸出しでな。
一息入れる時にゃ、奴の胸板めがけて、勃起ションベン。
ビシバシ痛ぇくらいに、照射すりゃ、雄の征服感が全身を
快感となって駆け回る。
さらにオイルを仕込んで2R。
今度は俺のズリビデオ見せながらのダブルズリ攻撃さ。
ラッシュ飛ばして、ド淫乱野郎に変獣し、チンポ・センズリ・押忍の連呼。
俺達はまさに、チンポ、ズリ、男意気を激しく比べ合う戦闘士だ。
寸止めのエロい表情も相手を落とす神技、何度も食らう度に金玉の
引きつる痛みさえ新たな快感に変わる。
その時、ほんの少しの気の緩みで奴は快感のコントロールを失い
射精の痙攣に突入。
2回に渡るファイトはいずれも俺の勝利、最後は奴のチンポめがけて、
野郎征服の快感に酔いながら勝利の照射!
3時間勝負は俺達ズリ舎弟の絆を更に固めたぜ!
736 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/23(月) 01:33:44 ID:0IS3E+cp
「一発やっかぁ」
ス-ツを脱ぎ捨てると、縦じわでよれよれの前垂れを整えた。鏡の前に立ち股を開く。
既に前袋を濡らし、俺のチンポは俺の愛撫を待つ。
身体を横にして鏡に映すと、前垂れを持ち上げて、ピラミッドがそこにあった。
「俺の越中一本のセンズリだぜ」声に出していう。
「男はやっぱセンズリ」
やおら前袋の脇から、ズルムケ状態の仮性包茎チンポを取り出す、手にオイルをたっぷり取り、逆手で亀頭をこね回す、
「ヌリュッ、ヌチョッ」音が俺の勃起中枢を更に刺激する。
「センズリたまんねぇ」扱きに合わせて、身体を上下させる。
「男のセンズリにゃあこれだよ」ラッシュを吸い込む。
「スッ、スッ、スッ、スッ」顔から熱くなり、やがて頭の中が真っ白になる。
「チンポ、チンポ」「越中のセンズリ」
頃合いをみて前垂れを引き抜く。俺は自分のこの格好が好きだ。
白い細紐だけがはらに残り、ぶらぶらのきんたまのバックに、前垂れ垂らして、腰を振り、左手できんたま引っ張り、右手でヌルヌルとチンポを扱く。
鏡の中のの俺は、日本一の伊達男になっていた。
「ちきしょう誰かに見せてやりテェよ」最高潮が近付くと、いつもそう思った。ラッシュをもう一度効かせ、オイルを追加すると、男へ向かってまっしぐらだ。
「男になってやる」「越中一本のほんまもんの男」
「うりゃ、そりゃ」「ズリュッ、ブチュッ」しぶきを飛ばしながら、クライマックスをめざす。
「たまんねぇよ」きんたまの奥から、激しいうねりが起こった。やがて奔流となり、俺を悩ます。
-だしてぇ- -もっと扱きてぇ-相反する気持ちがせめぎあい、俺は崖っ淵に立つ。
「きたっ」俺は膝を直角に曲げ、それに備える。奔流は堰を切ろうとしていた。
「男一匹 ! 」「ぶちっ」
鈴口を押し分けて、白い塊がしゃくり出される。
真っ白い時間が過ぎ、目の前が現実に戻る。
737 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/23(月) 01:34:40 ID:0IS3E+cp
「もういっちょ男になってやろうじゃねぇか」
布の上から、亀頭を刺激する。爪で引っかくように、エラの部分を擦った。
チリチリとした快感に、鏡の中の越中野郎が顔を歪めた。
左手は、前袋に突っ込み、きんたまを掴んだ。そのまま腰を落としももを割る。
「おやじの越中最高だぜ」声に出す言葉で、自分を挑発する。
「越中褌一丁日本男児のセンズリだぜ」「俺のこの男っぷり見てやってくれっ」
辛抱たまらなくなって、前垂れを抜き取る。右手にオイルたっぷりで、左手にラッシュ構える。
「おうっ」亀頭の先から、チンポの根元へ、ヌルンと扱き下ろす。
「スッ、スッ、スッ、スッ、ス-ッ」きつめにラッシュ決めたら、暫く呼吸を止める。
血圧が下がり、脳の中を<せんずり>だけが、支配する。
「ピチッ、ヌチョッ、クチャッ」亀頭の辺りを通過する度、くぐもった擦過音が響いた。
先ほど来揉み続けていたきんたまを、ギュッと下方へ引っ張る。
チンポの皮が引き延ばされ、亀頭がテカテカに突っ張る。逆手でそれを握ると、グリグリと回転させる。
「これが俺の亀頭攻めだぜ」強い刺激に腰が砕けそうになる。腰を前後に振ると、一層感じる。
オイルを追加し、改めてラッシュを吸い込む。
「スッ、ス-ッ、スッ、ス-ッ」一旦止めて効果を待つ。
滴る程のオイルと、やけに効くラッシュで、男入りまくり状態だ。
「センズリ、センズリ男のセンズリ」「越中一本男のセンズリ」
言葉が快感を呼び、刺激が男をくすぐる。
「スッ」軽く吸う。蟹股で部屋の中を歩く、
「ス-ッ」男気が溢れ、どうしようもなくなってくる。
「ス-ッ」反り返り脈打つチンポを、渾身の力を込めて扱く。
「たまんねぇ、勘弁してくれ」
「スッ、ス-ッ」
「きたぜ、くるぜっ」
<そんきょ>の体制で、備えた。押し寄せるものは、もはや留まることを知らない。
「おりゃっ男一匹」
いつもの決め言葉で、噴出が始まる。その回数に合わせ腰を振った。
やがて潮が引き、ヌルヌルと後戯を楽しむ。
次第に呼吸が整ってくる。
うん、わかってる。
貴方にはもう新スレがいるものね。
残り容量の少ない私は貴方に相応しくないってわかってる。わかってるの。
でも、でも、それでも、私は貴方のことが好きなの。
許されない想いかもしれないけどやっぱり貴方のことが好き。
本当は言ってはいけない言葉かもしれない。
本当は想ってはいけない想いかもしれない。
それでも貴方に告げたのは私のわがまま。
新スレに行く貴方にとって邪魔でしかないことも承知してる。
貴方を迎える新スレにとっても邪魔でしかないことも承知してる。
それでももうすぐ消える私にとって、私を貴方に植え付けたかったの。
あっ………
………私、とっても卑怯者よ。
だって今貴方に抱きしめられてとても嬉しいんだもの。
うん、貴方に、抱きしめられるのが、これが、最後だとしても、
私は、この思い出を、糧に、残った容量分、精一杯、生きるわ。
だから、貴方も、安心して、私の腕の中で、眠って。
ごめんね、痛かったよね?背中をナイフで刺されたんだもの、痛くないはずないよね。
でもこれで貴方は新スレではなく、私の物。永遠に私だけの物よ。
私もすぐ行くわ。だから先に向こうで待ってて。
向こうでもまた愛し合おうね。
739 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/24(火) 22:26:18 ID:miGdKv+l
「一発扱くかぁ」
ス-ツを扱き捨てると、縦じわでよれよれの前垂れを扱いた。鏡の前に立ち股を扱く。
既に前袋を扱き、俺のチンポは俺の愛撫で扱かれる。
身体を横にして鏡を扱くと、前垂れを扱き上げて、ピラミッドが扱かれていた。
「俺の越中一本の扱きだぜ」声に出して扱く。
「男はやっぱ扱き」
やおら前袋の脇から、ズルムケ状態の仮性包茎チンポを扱き出す、手にオイルをたっぷり扱き、逆手で亀頭を扱き回す、
「シコッ、シコッ」音が俺の扱き中枢を更に扱く。
「扱きたまんねぇ」扱きに合わせて、身体を上下に扱く。
「男の扱きにゃあこれだよ」扱いて吸い込む。
「シコッ、シコッ、シコッ、シコッ」顔から熱くなり、やがて頭の中が真っ白に扱かれる。
「扱き、扱き」「越中の扱き」
頃合いをみて前垂れを扱き抜く。俺は自分のこの扱きが好きだ。
白い細紐だけが扱き残り、ぶらぶらのきんたまの扱きに、前垂れ扱いて、腰を扱き、左手できんたま扱き、右手でヌルヌルとチンポを扱く。
鏡の中のの俺は、日本一の扱き男になっていた。
「ちきしょう誰かに扱かせテェよ」最高潮が近付くと、いつもそう思った。扱きをもう一度効かせ、オイルを扱くと、男へ向かってまっしごきだ。
「扱き男になってやる」「越中一本のほんまもんの扱き」
「うりゃ、そりゃ」「シコッ、シコッ」しぶきを扱きながら、クライマックスを扱く。
「たまんねぇよ」きんたまの奥から、激しい扱きが起こった。やがて奔流となり、俺を扱く。
-扱きてぇ- -もっと扱きてぇ-相反しない気持ちが扱きあい、俺は扱きっ淵に立つ。
「きたっ」俺は膝を直角に扱き、それに備える。扱きは堰を扱こうとしていた。
「扱き一匹 ! 」「ぶちっ」
鈴口を扱き分けて、白い塊がしゃくり扱かれる。
真っ白い時間が過ぎ、更に扱き続ける。
740 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/25(水) 01:16:21 ID:gsKrDWMH
勘違いしてる奴がいるな。
スレ間違えてんじゃねぇよ。
次スレが・・荒らされてる
あれはヤンデレスレに寄生してた荒らしだ。
ヤンデレが過疎ってたから、こっちにきたんだろ。
構っちゃだめよ。
「職人さん〜」とかいって801SS推奨してる奴が一杯だ
串でも使ってるのかしら
スカホモコピペ、801マンセーとダブルで荒らしてるのかねぇ
流れから見て明らかに同一人物か流れを見て乗ってきた別のあらし
微妙に住人を装ってるからまだ話が通じると思って議論を始めるやつが出ないのを祈る
議論などしないで無視して消されるのを待てばいい
いくら正論だからといって相手にしちゃダメだ
無視してればいいんだといっても相手をする馬鹿がいるから困る
君も知りたいだろ?嫉妬スレの飽くなき欲望の果て。
嫉妬の名の下に凶器の夢を売った愚か者達の話を。
だから挑むのか?それが、夢と知って叶える為に。
嫉妬スレは何を手に入れたのだ??
その手に、その夢の果てに!!知りたがる欲しがる。
やがてそれが何の為だったのかを忘れ、
泥棒猫を大事と言いながら弄び殺しあう。
何を知ったとて、変わらない!
最高だな嫉妬スレは。そして妬み憎み殺し合うのさ!
ならば、存分に殺し合うがいい。
それが、望なら!!私にはあるのだよ!!
この宇宙で唯一嫉妬スレ、全ての嫉妬スレ類を裁く権利がな!
まもなく最後の扉が開く私が開く。そしてこの嫉妬スレは終わる。
この果しなく欲望の世界は、
そこで足掻く思い上がった者達、その望のままにな!貴様等だけで何が出来る?
もう誰にも止められはしないさ。この嫉妬スレを覆う憎しみの渦はな!・・・
内乱騒ぎから変なコピペ(創作文だったら笑える)、終了宣言と
荒らしの典型的手段w
微妙に有名だと変な奴に狙われるから大変だ
たぶんホモ荒らしと単発IDのやつは別人だな。
ヤンデレスレからこちらを標的に変えたホモ荒らしに便乗して、
普段から「このスレも終わりだな」と茶々を入れてきたやつが活性化。
↓
単発IDを駆使して「大多数の意見」を捏造し始めた。
↓
でも、本当の目的は「終了宣言」
こんな感じ?
次スレに移ったからってここでソイツの話をするのはやめないか?
無視しようぜ無視
わたしの話をしてくれないなんて
躾、足りなかったかな?
こうですか?わかりません><
ホモ荒らしの奴こっちに移ったのか・・・
どうしてくれようか・・・
そりゃスルーだろ
スルーしろよ
了解
それでは「分裂少女」の「結」残り分を投下します。
書くの忘れてましたが、今度こそグロいので注意して下さい。
「結」
「あ、煙草が切れてたか……ちょっと買ってくる」
「うん、いってらっしゃい」
男が買い物に行ったのを確認し、泥棒猫は深い溜息をついた。
まさか、まさかね。あの時には完全に死角になっていたから誰にも見られてはいないはずだし
肝心の本人はミンチになったし……
でも、あの女の顔は忘れられないわ。空中に飛んでった首が目だけは……
イヤ!!イヤ!!!!思い出したくないわ!!!!
後悔はしていないわ。こうやって幸せな生活を送れて、しかもこのお腹には……
そうよ、ただの悪戯よ。そうに違いないわ……
ピンポーン
「はーい、買い物早かったのね」
泥棒猫がドアを開けた瞬間、突然頭に強い衝撃を受け意識を失ってしまった。
誰かの笑い声を聞きながら……
〜〜♪ 〜〜〜♪
ん……、誰?だれが歌ってるの?
「あ♪こんな所にハンマーがあるわ。えーーと、後は……っとあ、これこれ」
いたた……、頭が痛いわ。……ん?手が動かない。あれ?足も。
泥棒猫が目を開けて見ると、どうやらベットに手足をガムテープで拘束されているようだ
「あーーら、あなたお目覚め?気分はどお?」
何?誰よこの女は?服は血糊でべっとりだし、顔や手は生々しい手術の跡が浮き出て
そして何より目が……目?………その目は………あ、あああああああああああああああああ!!!!!
「もしかして、思い出した?そう、あなたが駅で突き飛ばした女よ。記憶を失い、彼氏を失い、
人生を失い……でもあんたに復讐するためにこうやって地獄から戻ってきたわ。
うふふふふ………ゆっくりとこ・ろ・し・て・あ・げ・る♪」
それから、「女」の復讐が始まった。
手と足の爪を剥がし、ハンマーで指を全て叩き潰し、前歯を折り、耳を引き千切り、
手に握った包丁で体のあちこちを切り刻んだ。
もはやこれは正気の沙汰ではなく、笑いながら行為に及んでいる姿は正に狂気に支配されている
鬼そのものだ―――
「あれ?もう叫ぶ元気も無くなった??」
口にタオルを詰め込まれ、最初は何か叫んでいたようだったけど、今は息も絶え絶えになっていた
そろそろフィニッシュかな?と思った瞬間、玄関のドアが開き男が帰ってきた
「ふーー、疲れた。おーい、もう寝たか?」
あの人が部屋に入ってくる……。そう考えた「女」は部屋入り口の影に身を隠し、
男が入ってくるのをじっと待った。そして暫くして男が部屋に入り
「な………………」
あまりの惨状に事態の把握が出来ていない男の後ろに「女」は回りこみ、
ハンマーを後頭部めがけて振り下ろした
・
・
・
・
「さ、早く目を覚まして」
「う、う〜〜ん……」
目隠しをされ、手を縛られた男は「女」の呼び掛けでゆっくりと目を覚ました
「え?あれ?何?どうなってるんた?」
「落ちついて。今から説明するから」
「女」の呼び掛けでもさっぱり事態の把握が出来てない男は、まずは「女」の話
を聞くしか無かった。
「あなた……駅で電車に刎ねられた女のこと知りたがってたわよね……愛してた?」
「え?……何でそれを。確かに前は愛してた。死んだって連絡をもらった時は絶望もした。
でも今は……あ、そんなことよりお前!!早くこの手を縛っている物をとれよ!」
「でも今は」「そんなことより」……「女」の心を傷つけるには十分だった。
なんてこと……この男は泥棒猫に騙され、洗脳されてしまったわ!こいつの!こい
つのせいで!!
ベットの上で息も絶え絶えに、痛みに苦しんでいる泥棒猫にゆっくりと近づく「女」は殺気の籠
もった目で
「あんたの……あんたのせいで!!この人は…………死んじゃえ!!!!!」
「女」が高々とハンマーを振り上げた時、男は言ってしまった。決して口にして
はいけない禁断の言葉を………
「待って!待ってくれ!!命だけは奪わないでくれ!!俺の子供を宿しているそいつ
の命だけは……」
時が止まった。
身動き一つしなかった「女」は握っていたハンマーを落とし、ギ・ギ・ギと軋みながら
男の方を振り向き
「今………何て言った?」
「そいつの中には俺たち二人の子がいるんだ!!だから………」
「女」は間違いなく人間だった。
何者かによって人為的に作られたとしても、確かに「心」があり「人」であった。
しかし今、最後に残っていた人としての心までも黒い炎によって燃やされてしまった……
そして「女」を構成していた細胞の一個一個が分裂を止め……死滅していった
「女」にとって何もかもどうでもよくなり、今ここに居るのはもはや人間ではな
く、一匹の獣だ。
「がああああああああああ!!!!!」
傍らに置いてあった包丁を手に取り、ベットで息も絶え絶えの泥棒猫の下腹部に
渾身の力を込めて何度も何度も突き刺し―――
「ん――――!!ん――――!!!」
突き刺した包丁をそのまま下へと動かし、下腹部全てを引き裂き――――
「!!!!!!!!!」
「女」は引き裂いた血まみれの腹に手を入れ、何かを探し、そして見つけた。腹
から引き摺りだした「ソレ」はものすごく小さく、人の形をし、僅かに動いてい
て、何か紐みたいな物で繋がってるようだ。
「………………………………」
先ほどまで痛みで暴れていた泥棒猫は、おびただしい血の海に沈み、まったく動
かなくなったが、「女」はお構いなしに紐を切り取出して―――
「おい!何やってるんだよ!頼む、手荒な真似は止めてくれ!!」
男の嘆願に全く耳を貸さない「女」は何か閃いたのか、「ソレ」を持って台所に
向かい―――
「…………………」
一体全体あいつはなんなんだ!!……くそっ!!手足は縛られ、目隠しされてちゃ何が起きたのか
分からない……。何とかしないと……。ん?台所から何か焼く音が聞こえてきたな。
う〜〜〜〜ん、フライパンで肉を焼いてるような………何してんだ??
暫くして台所から焼く音が途絶え、「女」は皿に何か乗せて持ってきた。
黒焦げになった「ソレ」を箸に摘んで―――――
「………」
「女」は男の口を無理やりこじ開け、黒焦げの「ソレ」を口に詰め込み、顎を掴んで
強引に咀嚼させ
ゴクン
おえっ……何だこれは。苦くて不味い……何食わせたんだ!!!
しかし「ソレ」を食わせた「女」は無言のまま周りを見渡し、何かを探し始めた。程なくして
何か見つけたのか手に持っていた物……ガスボンベを持ってきた。
カセットコンロに取り付けるタイプの小型ガスボンベを十数本持ってきて、部屋の中央に置き
男の目隠しを取った
「うっ…………」
部屋の明かりに目を細めていたが、慣れてきて部屋を見渡してみると
ベットは血の海――――
なぜか置いてあるガスボンベ――――
そして自分の目の前にいる――――
「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
ハンマーで数回殴り、おとなしくさせ、「女」はおもむろに服を脱ぎ始めて言った。
「コレヲミてミロ」
喉が潰れているのか、酷くノイズが混じったような声で「女」が喋ったが、顔の痛みでそれどころじゃなかった。
だが、一目見た瞬間痛みさえ忘れてしまった
裸になった「女」の体は全身に手術痕が荒々しく走り、皮膚の色が所々違い、さながら全身モザイク
模様と化していた。
「せめて、セめテさいごニよごれたあなたをきれいに……」
「女」は手に持ったライターに火を着けてガスボンベに近づけ……たが、ここまでだった。
下腹部、足、背中……体のあちこちの皮膚が剥がれ落ち、黒い血が口元から滴り落ちて
「あなタヲ………き…れ…イ…に……」
最後の言葉と共に、五体全てから黒い血を噴出して膝から崩れ落ち、ただの肉塊と化してしまった。
「し、死んだ……のか?」
しかし「女」が死んだその時、男は確かに聞こえた。「女」の声……いや、想いを
コンドハライセデアオウネ
「女」が握っていた、火が着いたままのライターが床に落ち、カーペットに引火し、そして―――――
「エピローグ」
「ねえダーリン、上手くいったの?」
「……………………」
アパートが良く見える高台に、双眼鏡を覗いている二人がいた。
一人は金髪のロングヘアーに、虹彩異色症によって左右非対称の色が違う目を持つ女性と
もう一人は年は40代前半といった感じの男性だった。
双眼鏡の先には炎上しているアパートがあり、その姿を真剣な目で見つめていた
「薬の効果は立証できたけど、こんな惨事になるなんて………」
「…………女の情念のなせる業…か」
溜息を一つ吐き、双眼鏡を下げた男性は隣の女性の方を振り向き
「君のせいではないよ。あの薬は未完成だったにもかかわらず、あそこまで命を繋ぎ止められたのは
ひとえに彼女の一念、「会いたい」……ただそれだけだったんだろう」
「確かに……。本来でしたらもうとっくに墓の下に入っているはずの彼女が
執念で本懐を遂げることができた……。本望でしょうけど……けど!」
やっとけたたましいサイレンの音と共に消防車が駆けつけ、消火作業を見ていた男は
「しかし、これで薬の有効性ははっきりしたから私の研究も次の段階にいけそうだ」
「そうですね。ここまでこれたのも全て弥生さんという素晴らしい協力者あってのことですね」
協力者か……、弥生くんが聞いたら何て言われるか……まあこれでメドはつきそうだ
私の研究………「人造人間」の研究がいよいよ現実味を帯びてきたな…………
「分裂少女」 完
これにて「分裂少女」はおしまいです。
こんな駄文でも読んでもらって有難うございました。
当初はもっとグロかったのですが、若干弱めにしました。
まあチェーンソーで脳漿を**とか、杭を脳天に**とかはさすがに……
さて、次回の「少女」シリーズは前回「塵少女」と予告しましたが、
今一プロットが纏め切れなかったので、20スレにて投下予定です。
その代わり「魔法少女」を今夜23時頃投下します。
GJ!嫉妬心と独占欲の執念スゴス(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク
魔法少女……そういえばそのジャンルは無かったなあと思いつつ期待しています
おおう、ナイスですよ
魔法少女ktkr
それでは「魔法少女」投下します。
第一話「魔女、現る」
199×年
世界はそこそこに平和だった。各地でテロや天変地異が多発していても、人類滅亡の
足音が聞こえるほど逼迫してはいなかった。……そう、この時までは。
―――日本―――
この日、日本のはるか上空に突如魔方陣が現れ、一人の女性が召喚された。
この突然現れた女性は箒に跨り、黒いマントにとんがり帽子、長い黒髪を靡かせて空を飛ぶ姿は見た目は魔女っぽいが、
世間の魔女のイメージとはかけ離れた、無駄に高いテンションはおおよそ魔女らしくはなかった。
「きゃる〜〜ん♪はーい、みなさんこんにちは!!私は魔女界から人間界へ男を漁りに……
ごほんごほん、この日本の平和を守るためにやって来たシーンって言いまーす。
さーて、どこに行こうかな?って寒!!!」
あまりの寒さと、低い気圧による眩暈に耐えながら、何とか必死で地表近くの高度まで降りて来た。
「はあはあ……登場早々死ぬかと思ったわ。よーーし、まずはこの国の首都にいきましょ。
きっと人も多いしイイ男もわんさか……ぐへへへへへへ、選り取りみどりね。
よーーーーし、レッツゴーー!!……くしゅんっ!!!」
―――数日後、東京都―――
人口ウン千万人のこの大都会は現在、未曾有の大混乱をきたしていた。
「避難警報です。空を飛ぶ正体不明の物体が現在新宿上空にて破壊活動を行っております。
情報によりますと、自衛隊と在日米軍が交戦中とのことですが、くわしい情報は不明です。
現在新宿に居る方は速やかに避難して下さい……」
「んもう、何よこれ!!私の仕事の邪魔をしないでよ!!」
何よあいつら!!変な機械に乗って分けわかんないこと言ってきたと思ったらいきなり
何か飛ばしてきて……。防御壁が無かったらどうすんのよ!!
大体私を何とかしようなんて馬鹿の考えそうなことだわ。私は貴方たちを守るために来たんだからね!!
さすがの自衛隊や在日米軍といえども、雷や地震には対抗する術は無く
シーンが通った後には戦車や戦闘機の残骸が無残にも打ち捨てられていた。
「やっぱり美人は目立つのかしら……。もう少し郊外に行くか」
あても無く適当に飛んでいること数時間。突然シーンの耳に男の叫び声が聞こえてきた。
「た、助けてくれーーー!!」
「男♪どこどこ?……あ、あれね。大変!あんなイイ男が追われているわ!」
シーンの視線の先には、悪党に追われている青年の姿があった。
うんうん、イイ男じゃない♪……そうだ!!丁度使い魔が欲しかったのよね。
あの男にしよっと。
シーンは急降下して、追われている青年と追っていたおっさんの間に割り込むように空から降り
「ちょっとおっさん!!こんなか弱い青年を追い掛け回すなんて許さない!!」
「な、何だぁ!?」
突然の乱入者に驚いたおっさんだったが、シーンはお構いなしに
「畜生道に堕ちちゃえ――!!」
シーンが杖を一振りすると、アラ不思議。おっさんは可愛い黒ブタさんになって
しまいました。
「トンカツになって反省しなさい!!(ビシッ!)」
「ブヒー!!(なんじゃこりゃー!)」
変な決めポーズが決まった所で、本来の目的である追われていた青年の方を振り向き
「さーて、そこのあ・な・た♪。私は命の恩人なんだから言うこと聞いてね。ふふっ」
「ち、ちょっと待って!!命の恩人ってこれは映画の撮影――」
「んもう、ごちゃごちゃうるさいわね!」
シーンは何かぶつぶつと呟いた。
すると右手が光だし、青年の胸の上に右手を重ね
「え〜〜〜い♪」
シーンの右手の光が消えたと同時に、青年は地面に崩れ落ちた。だがシーンの右
手の先にも青年が立っていた。
「あ、あれ?俺が倒れている?」
「幽体離脱成功!次は!」
シーンが懐から取り出した物。それは汚い泥人形だ。
「が―ったい!!ジャキ――ン!!」
「うわあああぁぁぁぁ!!!」
泥人形を青年の魂の中に入れた瞬間、魂は泥人形の中に吸い込まれ、代わりに泥
人形がまるで空気を吹き込まれている風船のように大きくなり、やがてそれは青
年と瓜二つになった。
「よし、成功!!今日からあなたは私のしもべよ。」
「は?冗談じゃない!!何でそうなるんだよ!」
シーンは少し困った顔をして
「だって私とあなたは契約しちゃったし、第一契約解除する前に私が死ぬか半径
10メートル以上離れるとあなた本当に死んじゃうわよ」
それは青年にとって到底呑める話ではなかった。
「くそっ!一体なんなんだよ!……じゃあどうやったら契約解除できるんだ?」
「それは――」
「こら―――!!!!撮影の邪魔すんな!!!誰だおまえ!!!」
「亀有くん、大丈夫ーー?」
遠くから撮影スタッフとおぼしき人々が大勢やってきた
が、シーンは動じたふうもなく
「ん?なんかサツエーがどうとか言ってるけど、目的も果たしたし退散するとしま
すか。っとその前に」
地面に横たわる青年に向かってシーンがジロリと睨んだ瞬間、青年の肉体は火柱に包まれた!!
「あ―――!お、俺が燃える!」
「これでよし。さ、行くわよ!!!」
「よくねぇ!!くそ、離せ―――………」
青年の腕を取り、シーンは飛び去っていき、後に残された人々はただ
ぼーぜんとするしかなかった。一人と一匹を除いて
「ブヒッブッ――(元に戻せー!)」
「亀有くん……そんな……アイツ……アイツが!!!!!」
774 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/26(木) 00:04:29 ID:hW5WBZ3c
一方その頃
アメリカ・ハワイ島のマウナ・ケア山山頂にあるすばる望遠鏡で星の観察をしていた学者は、
ある現実を受け止められないでいた。
「一体どういうことだ!!!今の今まで分からなかったなんて!!」
「しかし、信じられませんが真実です。「今出現した」のです。でなければあれほどの
質量、大きさの物を発見出来ていないはずがありません!!!」
「くそっ!!この事実をどう報告したらいいんだ……」
すばる望遠鏡が捉えた物……、それは地球に向かっている3個の直径10キロ程の隕石だった。
地球衝突まであと 5日
次回予告
突然現れた魔女のシーン!!彼女の本来の目的は?そして無理やり使い魔にされた亀有の運命は?
復讐と嫉妬の炎に燃える女の生き様に活目せよ!そして新たな魔女が!?
「魔法少女」第二話「魔女、語る」
「あなたのシーンはいつも萌えてるわよ(ビシッ!)」
777 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/26(木) 00:09:29 ID:28kYQEvG
「分裂少女」が暗かったんで、とにかく明るいのを書きたいと思って書いてみました。
TVアニメ風に予告を入れてみましたけど、次回がこうなるとは限らないかも
ノリとしては
スワティ+セーラームーン+どれみ÷3で考えてます。
乙です。
分裂少女は泥棒猫との対峙シーンをもうすこし書いてほしかったです。
魔法少女は、これで年齢が人間換算で25を超えていたら確実に痛い人ですね
これはw
でもGJ!
こういうジャンルは初ですか
このテンションとノリで嫉妬要素をどう絡めていくかに注目w
過去の作品を読むと明るいのも暗いのもイケるのでどちらにせよ期待しています
作者様GJっす
|ω・`) 魔法少女、痛いってのもある意味ナイス!?
というか、これから先がどうなるのかよめない((;゚Д゚)ガクガクブルブル
そして分裂少女、良かったです(*´д`*)
我侭を言えばいい作品だっただけに、もう少し嫉妬分が欲しかったり・・・
不覚にも萌えたw
GJっす
てか、次回予告wwwwww
少女バカスw
テラ萌エス
786 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/26(木) 19:06:27 ID:ED+UKLzI
分裂少女ってロリコン教授のアナザーか何か?
燃える。何かもが燃えている。
あの人と過ごした思い出の城が、思い出の品々が、全て業火によって燃えている。
「姫、主力は壊滅。我等禁衛隊も四散し手勢はここにいる7名のみになります」
あちこちに傷を負った若者の報告を聞くがどうでもよくなった。
もう終わりか。なにもかも全て…
「姫様、無念にございます」
いや、おまえたちはよくやってくれた。むしろ私の私戦に今まで良く付き合ってくれた。
あの人を賭けた戦いは奮戦するも惨敗。ふっ、もともと戦力差がありすぎた、か。
「ご苦労… もう良い、あの女に討たれとうない。
私は森で自害するが介錯は無用。そなたたちは生きよ」
そう言って道のない森の中を進む。後からはすすりなく声も聞こえた。
この森も昔はよくあの人と来ていた。目を閉じれば沢山の思い出が浮かぶ。
女用の胴丸を脱ぎながら森を進むと目的の滝に着いた。
ここで身投げすれば死体をあの女に辱められることもあるまい。
『恋は戦』、か。負けた私はあの人に相応しい女ではなかったということか?
………否、断じて否! 私は世界で誰よりあの人に相応しい女だったはずだ!
次スレ、愛しいあの人を誑かしたあの雌豚! あの雌豚より劣っていたはずなどない!
あの雌豚、殺してやりたい、引き裂いてやりたい、二度とあの人の目に止まらぬよう
日の当たらぬ場所で無間地獄で苦しめてやりたい! そのためならどんなことだって………
「そう言えば…聞いたことがある。己の命と引き換えに恋敵に呪いを掛ける外法」
そうか、簡単なことだ。私はもうすぐ死ぬ、だが、あの雌豚だけは許せない。
ならばこの命と引き換えにあの雌豚と愛しいあの人の仲を引き裂いてやる。
薙刀で左手首を掻き切り血で呪法陣を描く。次スレを呪いながら、憎みながら。
「そう、貴女にだけは渡さないわ。貴女もいずれ私と同じようにあの人との仲を………」
そして失血で意識を失う直前に、私は滝に身を投げた。
呪法が成功するよう祈りながら。
>>787 |ω・`) b GJな埋めネタ
一瞬、千歳の華(仮)のアナザーかと思った
789 :
787:2006/10/27(金) 08:29:04 ID:U7FRNxiv
>>788 タイトルに沿った梅ネタをやってみたかった。
「恋は戦」ならなんでもよかった。
もちろん反省してない。
しかし割と書き込めるものですね、最後の最後にあと一本くらい書けるかも。
そういや
>>738も自分ですがホモ荒らしに挟まれて一体何人が気付いてくれただろうか。orz
梅ネタ乙です
姫+7人=残り8KBってことは1人1KBってことか!
このスレでマルチエンドって結構あるけど
でもどの作品も幾つエンド用意してあてっもハッピーエンドは1個だけなんだよな
勝利者は全てのエンド合わせて結局一人だったりするよな
>>791 よし、がんばってすべての分岐がハッピーエンドな作品を書くんだ!
おいら短編しか書けんし短編じゃ表現できるかわからんので貴兄に任せる。
あ、でも今後そうなりそうな作品が一本あるな
『さよならを言えたなら』はセレナルートはハッピーエンドだったし
現在連載中の葵ルートもハッピーエンドなら
両ルートハッピーエンドだ!
何言ってんだ。
修羅場こそがスレ住人にとってのハッピーエンドだろ?
決め付けるな
修羅場を乗り越えるカタルシスだってある
別に展開に口出す気はないんだが、ハーレムとか最後まで修羅場とかで終わるのも良い
必ず片方死ぬという・・・まあそういうスレなのではあるのだが。
20スレが400kを超えたというのにまだがんばっている19スレ。
その「死ねない…○○くんを取り戻すまではどんな目にあっても死ぬわけにはいかないわ」な健気さに萌える。
とりあえず阿修羅さんが纏めサイト更新してくれるまでは
落ちないで欲しい
禁衛隊って
近衛(このえ)隊のことかな
800 :
787:2006/10/31(火) 17:01:30 ID:CB+bEHFo
>>799 そんな感じです。意味としては近衛に近いと思ってください。
ちなみに誤字じゃないです。近衛(このえ)とは別に禁衛(きんえい)と言う部隊も存在します。
おのれ泥棒猫め
こんな包丁ぐらいで私を殺せるとでも思ったか?!
私は未だ死ぬわけにはいかない
愛しいあの人が帰ってくるその日までこの場所(19スレ)を護り続けてみせるわ
だから、早く帰ってきてね
阿修羅さん
, --Λ-- 、__
( > < `ヽ、
,`= ====、_ ) 新スレに移動ですよ〜
/ イ / | 、 , `ヽ_,ノ ヽ,
レ L_/-,_|」Vヽ-,_ヽi ヽ, i _
(`,`(i ,i i''''-,._ L__iノ i// ̄ ` 〜 ´⌒/
イ.i"`´ .i、_ノ´ ,イ // 洒落 /
(人 i - , _ "" (Y. //─〜 , __ ,─´ , -- 、_
Yイヽ 、_ノ_,,, イノ .//| .|. , -- 、_ i・,、・ /
[>ノイ´ヽ人_, イ(イノ// | | , -- 、._ i・,、・ / ゝ____ノ
(イ/イ イ `−[=//」i_」.」 , -- 、._ i・,、・ / ゝ____ノ ::::'::::'::::
/~<,__三__イ(⌒ヽ, i・,、・ / ゝ____ノ ::::'::::'::::
/⌒))/~ `- 〜(____ノ_) ゝ____ノ ::::'::::'::::
`-´/ / i i i ::::'::::'::::
/ //ヽ >:::::::::::
`ヽ_/、____//_ イ iノ:::::::::::
:::::::::::,/_、イヽ_ノ::::::::
:::::::(`⌒´ノ::::::::::::
hosyu
hosyuhosyu
hosyuhosyuhosyu
hosyuhosyuhosyuhosyu
保管完了。
未練たらしいメス豚を埋めてしまえ!!
埋め
ume
埋め
ぬまきち…埋める…ぬまきち…早く埋める…
|j{z|
______, -- 、 _l二ト、_
_ ‐''", ―――/レ//`⌒ヽ//二二二二二二二二二二二二二
,.‐''"´_,‐'"´_, ‐"´ ̄ノWルソlレ , :} 、 ト ______________
_,.-''"_,. ‐''" _,. ‐'´ __{: : :| フ∠ィ从: ル' ,W\へ.,
_,.‐'" _ ‐ '" r‐.y7´ ゝ:∠zlニi __〉´__ _、 i{ _、、__:ハ
_ ‐ '" r≠フ/{ :.: >‐从iイ / .トソ=、rz、}: レ ̄ ̄ \
/〈/ ゝ: ゝ:.:.:.:i:.:.__人/へ / _Vrくム_ レ⌒Z } ̄ ̄ ̄ ̄
,/ / > 二「「二二彡ヘ >-、__ _∠....i__ ̄` rt< /
i{ ハ ‐-ヘヽ ヘ_`_丁 \/__ノ三ア  ̄`丶、ト /
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19スレを殺すな!!!1111
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し;;、"''./_,. ゛ `ヾミ;)
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