好きなスレなのに
519 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 21:31:28 ID:UkRvl16x
たまにはage
紹介していただいてまいりました。折角なので投下させてください。
フランス革命期元帥、ジャン・ランヌとその妻ルイーズ・アントワネットの一夜です。
漫画「ナポレオン」のランヌの影響が強いです。
521 :
絹の糸1:2009/04/02(木) 11:22:55 ID:aYWBiJ18
青天は徐々に赤が蝕み、古代紫のヴェールをまとい、やがて濃紺の素肌をさらした。街中に点々と焚かれた
篝火が石畳を妙に幻想的に見せている。
"彼"は、まだ戻っていなかった。結婚して一週間と数日を過ごし、彼は戦場へ帰っていった。初めて送り出した
そのときは、婚礼のときよりも美しく整っていたように思われた。
ルイーズ・アントワネットは徐々に強まる夜風から逃れるように、窓を閉じた。眼が乾く。僅かに走った痛みに
瞼をおろしてみると、涙が溢れてきた。思い切り沁みる。その感覚に慣れた頃、ルイーズはようやく目を開けることができた。
だがその涙が必ずしも肉体の反応でだけ流しているものでないことを、彼女はよく理解していた。それだけではない。
幼い頃から周囲はよく見えていた子供であったし、何処かで背伸びをしているときにはそんな自分にも気づいていた。それを人は澄ましているだとか、聡明だとか、大人びているとか評価する。或いは伯爵家令嬢という枠組みは
十八になったばかりの彼女を少女ではなく一人の女性として映し出すのだ。自意識とのずれを感じたことはない。
ルイーズはさめた、己の白い頬を撫でた。少し乾いている。あとでオイルを与えるべきかもしれない。
既に彼のいないベッドで眠り、数週が過ぎている。
"彼"の姿が、瞼の闇に過ぎった。初めて出会ったときの姿がそこにはある。他の元帥も場にはいたが、ルイーズは
ぴたりと彼に目を留めていた。革命時代によく似合う、三つ編みにされた後ろ髪。厳しげにつりあがった眉の下、
まるで樫の樹のような深い色の眼が並んでいる。力強く、まるで睨み返すようにルイーズと目を合わせたその男は、
じきに口元だけを歪めて手を伸べてきた。
――ジャン・ランヌです
名乗った男の顔はよく灼けていて、傷にまみれていた。足などまだ完治していなかったために、びっこをひいていたのを
おぼえている。不潔そうな感じや、陰険そうな感じはしなかった。ただ、少年らしい青臭さを残しているのに、
どこかでは自分を投げ捨てているような印象が不思議な男だった。ルイーズは直感的に、この男が求婚してくることを悟った。
そしてそれは現実となった。結果、ルイーズは妙に広い二人部屋で、今をもてあましている。既に針子には
飽きてしまったし、編めるものも縫えるものも終えてしまっていた。先ほど使用人を呼び出して湯をすすったものの、
今では冷め切っている。新しいものを遣すよう、頼む元気もなかった。
ルイーズはベッドまで、ふらふらと足を運んだ。よく洗われ、干されたシーツの上に倒れこむ。布団が柔らかく
ルイーズを抱きとめた。深く呼吸すると、陽光のにおいが鼻腔に流れ込む。ルイーズはシーツの海に身を進めながら、
突っかけていた靴を散らした。普段ならばまずしない行為であるが、なぜかこのときだけは投げ出したくなったのだ。
仰向けになり、ルイーズは額に手の甲を預けた。天井からぶら下がる明かりに目を閉じ、再び"彼"を想起する。
初夜のことだ。あまり語らず、しかし黙し続けているわけでもなく、時折体の痛みを気遣いながら、彼はルイーズの中に
入ってきた。破瓜の痛みは徐々に失われたものの、まだ達するには至っていない。少しずつではあるものの、
その感覚に近づきつつはある。しかしその矢先、夫は遠征へと出てしまった。
ルイーズは枕元に手を伸べ、その下にあるものをつかみ出した。リボンだ。彼が眠る前にほどいたものだろう、
置き忘れられているのを昨夜発見した。
少し嗅いでみると、彼のオーデコロンが香った。ずっと布の下にあったから、においは揮発していない。
血は見当たらなかった。
そっと唇を近づけ、ルイーズはリボンをいとおしんだ。瞼を開く。真っ青な、国旗にも用いられているその色は、
彼がいつか語っていた海の色だった。それを拾い上げる自分の指は、波を受け止める砂浜だ。そしてそれを見つめる
ルイーズの眼は、彼の駆る馬の毛色に違いなかった。彼女は仰向けになったまま、リボンをそっと首元、胸元へとのせた。
522 :
絹の糸2:2009/04/02(木) 11:24:12 ID:aYWBiJ18
しばしそうしていると、じわりとそこだけが暖かくなるような心地があった。ルイーズはぴくりと眉をひそめ、
続けて現れた彼の姿を見つめていた。瞼の奥、記憶の彼は表情を引き締めている。真剣な眼差しは、男が兵士であることを
嫌でも思い出させた。戦場では自分が、どうあるべきなのか。多くを語ったわけではない。ただ、どんな兵士こそが
真の兵士たるかを、彼は教えてくれた。ルイーズにとって必要のない知識ではあるかもしれない。だが彼女にとっては
それが、夫を知る手段のひとつであった。彼の過去も、考えも、深くは知らぬうちに結ばれてしまった。その事実が
余計に、若妻の心を苛んでいる。
この楔のように打ち込まれた寂寞が何故起きるのか、ルイーズは既に気づいていた。体の火照りが日に日に、
増している。その焼けつくような痛みは肉体があるからこそ訪れるものなのか、それとも心の中に巣食う何かなのか、
そこまでは特定できなかった。いや、恐らく両方だろう。ルイーズはリボンをつまみあげ、中空に浮かせて見つめた。
リボンの穂先が、大きく開いた胸元をなぞった。くすぐったさに目を細めながら身を起こすと、窓がかすかに
開いていた。蝶番の鳴る音がする。ルイーズはぶらさげたリボンと窓を見比べ、やがて背中のほうに体重を預けた。
肌が徐々に粟立っていることに、ルイーズはすぐ気づいた。リボンが踊り、ゆれるたび、妖しい感覚が表面を
なぞっていく。しばらくそうして遊んでいると、ルイーズの肉体はしかし次の要求を抱いていることに気づいた。
開いた胸が、期待に震えている。恐る恐る、あいている手を膨らみに伸ばした。横になっている分多少流れはしているが、
十分な山がそこにはあった。やわらかく持ち上げてやる。その中心に、服のしわに混じってひときわ高い部分が
見られた。ルイーズは指を伸ばしかけ、しかしそのはしたなさに躊躇った。リボンをきゅうと握り締めると、
彼のにおいが流れてくる。彼の、裸の胸が、ふっと呼び覚まされた。
――気分は、悪くないか
ああ、そうだ。具合を確認する言葉もあった。ルイーズは羞恥のあまり忘れていた彼の台詞を、改めてひとつ
思い出した。答えることができない彼女を彼は決して責めず、ただ慈しむように愛撫を施してくれた。うまい下手は
よくわからないが、できる限り丁寧に扱ってくれているらしいことだけはわかった。そしてそれが、普段
慣れない所作なのだろうことまでは想像がつく手つきだった。たしかに力のある人だから、相当加減がいるのかもしれない。
しかし当のルイーズはただ瞼を硬く閉じ、夫婦ならば誰もが結ぶ"契約"が無事終わることを望み続けるばかりだったのをおぼえている。
今の自分にルイーズは、問いかけてみた。それでいいのか。本当に、ただその行為を享受すればそれで良いのだろうか。
本当に、望んでいるものはないのか。
踊っていたリボンを掌に巻き、唇にあてがった。再び、彼のにおいが訪れる。気づけば、乳房を包んでいた掌に
力がこもっていた。
「……っ……あ……」
体が、反応している。ルイーズはビスチェのほうまで、布をじりじりと下ろした。彼の指づかいを、彼の手つきを、
彼の息遣いを、体が覚えている。記憶の彼は丁寧にリボンやボタンをくつろげ、少しばかり頬を引き攣らせ、
まじまじとルイーズの肌を目でなぞった。それだけで、かすかな刺激に踊らされたルイーズの官能はかっと燃え上がった。
はじめこそ確かめるように遠慮がちだった手つきは、自身でその丸みを楽しむかのような撫で回し方になっている。
今までのルイーズからは、考えられないような技巧がそこにはあった。
ルイーズは決して、もともと好色ではなかった。自身を慰めるなど、経験どころか手を伸べてみたこともない。
知識として全くなかったとはいわないが、触れて確かめてみようと思わなかったこともまた事実だ。
更にいえばルイーズは前述のとおりの賢さで、社交に長けてはいた。が、こと男性関係となると妙なところ晩熟なのだ。
さらりとあしらうところまではいくらでも返せるのだが、本気で好意を持った相手には極端に口数が減る。
相手を退屈させぬよう、強がって喋りはするものの、彼女自身ではいまひとつ調子が乗らないような心地がするのだった。
そしてそれは、"彼"に対してもまた例外ではないのだ。
523 :
絹の糸3:2009/04/02(木) 11:24:51 ID:aYWBiJ18
「くっ、あ……あ、ああ」
簡単に纏め上げた髪が邪魔で、ルイーズは首を振りながらいやいやをするようにシーツへと髪を預けた。ほろほろと
崩れていく。緩やかなウェーブのかかったセミロングが、押しつぶされるように広がった。
だがルイーズは、もう一歩至りきれない自分に気づいていた。快感はあるのだが、違う。彼に触れられた
あの記憶より、もう数段も劣るような鈍い感触なのだ。かといってただ触れている、わけでもない。中途半端な、
どうしようもない歯がゆさにルイーズは唇を開いた。
「……あなた……」
いうと、掌の中で乳首が心地よさを訴えてきた。ぞくぞくと背筋を這い登ってくる感覚。
「あなた……あなた」
ルイーズは鼻を鳴らしながら、むずかるように繰り返した。きいきいと蝶番が啼いている。背筋が自然と反り、
掌に押し付けるような格好になった。
硬く閉じた瞼が、不意に熱くなる。彼の手がほしかった。こんなにも頼りなく、若く、幼い手ではない。
あたたかく、強く、逞しく、すべてを預けても惜しいとは思わなかったあの掌。彼には前妻がいたというが、
ルイーズの純真では到底理解の及ばない感情だった。あの掌以外に身を開くなど、考えただけでも寒気が走る。
ルイーズはここにきてようやく、灼けつくような思いを飲み干した。気づいてはいたのだ。だが、受け入れられなかった。
これだけ苛烈に、誰かを想うのははじめてだった。そしてそれゆえに浅ましい目で相手を見てしまうことも、
初めてだったのだ。ルイーズにとりそれは、伯爵家令嬢としてもマダム・ランヌとしても、存在を認めること自体、
許されることのないものなのだ。
「ジャン……ジャン」
指先は正直だった。こりこりと硬くしこった乳首を単調にこすってみる。はじめは痺れるような快楽があったが、
じきに失せてしまった。ルイーズが半泣きになりながら首だけ寝返りをうつと、ベッドからリボンが滑り落ちていく。
あっと声を上げて拾おうと身を起こした。
しかしその瞬間、ルイーズのすべてが停止した。
伸ばした指の先、もう一つの指がリボンを拾い上げている。触れた瞬間、寒気に似た感覚が走った。ごつごつとした、
骨っぽい大きな手。見紛うはずもなかった。何しろ部屋に入れるのはこの男と、自分と、呼び出した場合の侍女や使いだけなのだから。
ジャン・ランヌはかける言葉も特に浮かばないのか、顔色ひとつ変えずにルイーズと目を合わせていた。
彼が持つと可憐とはいえないリボンが、丸まった両指の隙間から垂れ下がっている。ルイーズはようやく手を引っ込め、
身を縮こまらせながら布団を翻した。
「お、おかえりなさい」
ルイーズは激しい動悸に呼吸を乱されながら、寝具に声を吸わせた。彼が今どんな顔をしているのか、確認する術はない。
寝台の膝あたりが軋むのを感じた。どうやら彼もまた、上がったらしい。近づいてくる気配がある。ルイーズは
息を殺し、膝を抱えるように逃れた。
「ただいま」
ふさがれた聴覚では、それだけ聞き取るのが精一杯だった。布同士のこすれあうがさがさと鳴る音が耳にうるさい。
ルイーズは慌てて服の胸元を持ち上げると、寝具の際からそっと目までをさらけだした。十三歳年上の夫は、
顔色ひとつ変えずに自分を見下ろしている。涙で視界は潤み、顔から火が出ているのではないかと錯覚するほど熱かった。
「ど、何処からごらんになりまして」
どうにかそれだけを震える声でいうと、ルイーズは掌に爪を立てた。いつからかわからぬほどに、彼が入ってきていることに
気づかぬほどに、夢中になっていた事実がどうしようもなく恥ずかしくてたまらなかった。今彼が腰にさげたままの
サーベルを引き抜き、自分の咽喉を突きたいほどだ。
夫はなんと答えるべきか、悩んでいる様子だった。それはつまるところ、かなりはじめのほうから彼がいたことの
証明に他ならない。嫁にもらったとはいえ、女に対する礼儀は弁えているのだろう。
「……ごめんなさい」
あまりのことに、ルイーズはついに涙を止められなかった。大粒の雫は彼女の目尻を伝い、耳のほうへと流れ落ちる。
さすがのジャンもこれには参ったようで、微動だにしなかったはずの眼を見開いていた。
「ごめんなさい! 申し訳ありません……あなたさまの装飾品で、このような、破廉恥な」
幾度も繰り返し、ルイーズは唇を噛んだ。
「恋しいあまりとはいえ、許される行為ではありませんわよね」
混乱で舌が滑った。次々にこぼれる響きに、夫は眉をひそめている。これ以上困らせてはいけないとわかっているのに、
ルイーズは強張った指先を震わす以外何もできなかった。
524 :
絹の糸4:2009/04/02(木) 11:25:38 ID:aYWBiJ18
身を焼かれるような羞恥に、ルイーズはいやいやと首を振って瞼を閉じた。以前この無骨な夫は、別の女性と
結ばれていた。その女性は妻であったけれども、彼がエジプトに遠征している頃、密通した上に子を孕んだそうだ。
だからこそ彼はそういった、性的なことに対し敏感なのではないだろうかとルイーズは感じていたのだ。
こんな淫らな女とは思わなかった、離縁する! そう突きつけられたとて、何ひとつ不思議はなかった。ルイーズにとり
ジャン・ランヌとは、そういう人物に映っていたのだ。
しかし訪れたのはあたたかい、少し乾いた感触だった。じわりと熱が伝わってくる。瞳を恐る恐る開くと、
ルイーズの額には彼の掌が乗っていた。
「……私の前でしてみなさい」
妙にかしこまった調子でジャンはいった。普段は自身を俺と呼ぶ人だから、ルイーズにとりそれはひどく珍しいことである。
しかしそれ以上に、驚きが勝っていた。ルイーズは確かめるように唇を開きかけたが、ジャンの言葉はそれを押さえ込んだ。
「それとも、もっと乱暴な言われ方でないと安心できないか」
部下の前、或いは舞踏会で見られるか否か程度の口調の次は、随分と極端な意見だった。勇猛果敢な歴戦の将軍は、
紳士としての立ち振る舞いは見事だが、女の扱いに疎いらしい。無理もない。元々、染物工になるはずだった
平民である。この革命の時代でなければ、ルイーズと出会うこともなかったであろう男だ。そもそもそういったものを、
期待するほうが無粋かもしれない。
だがルイーズはその、無骨な気概に惹かれていた。十以上も年の離れた、しかしどこか子供じみた彼を、
どうしようもなく愛してしまっていたのだ。
ルイーズは指先でそっと涙を拭い、ゆっくりと布団をずらした。まだぐずり続ける鼻をすすって、おずおずと
彼を見上げる。
「……許してくださるの」
語尾を上げ、できるだけ品よく聞こえるようにルイーズは尋ねた。額にあったジャンの手がすべり、髪をゆっくりと
梳きはじめる。
「許すも何も」
夫の目は穏やかだった。そして、静謐だった。まだ彼女の知らない、大人の男が持つ色香だ。
ルイーズは自分の背筋に、かつて彼に抱かれた興奮がよみがえっていることに気づいた。彼の目が、見ている。
そらされることなく、優しく、壊れ物にでも触れるようにだ。その事実だけでルイーズの胸はすぐに満ち、溢れかえってしまった。
気づけば彼女の腕は身を起こすよう力をかけており、その指先はジャンのうなじに伸ばされていた。
「ジャン」
細く華奢な腕がしたたかに、兵士の太い首筋へ絡む。浅く灼けた彼の頬にルイーズは濡れた頬をすり合わせた。
傷痕を湿らせる感触に、ジャンが目を細める。時に一師団を、時にサーベルを、時に銃剣を抱き締めるその腕は、
しかし今は新妻を受け止めていた。
「ジャン……ああ、どうしたらいいのですか、私」
ほどけきったブルネットはやわらかく、ジャンの鼻腔へラベンダーの芳香を運んだ。
それが切欠としか思われなかった。ジャンはことさらに強くルイーズの身を、恐らく呼吸も苦しいほどに
抱き寄せた。ただ目の前の震えた娘が、愛しくてならないようだった。
「どうしたいんだ、おまえは」
感情を滲ませぬようにしながら、ジャンはできるだけ穏やかに口にした。傷だらけで愛想もない顔は戦友からこそ
この上ない信頼を勝ち取るが、女にとっては恐怖の対象でしかないことをよく理解しているのだ。勿論ルイーズは
外見ひとつで評価を変えるような女ではないことも知っている。
だがジャンは、この硝子細工のような女がかわいくて仕方ないのだった。だからこそ、扱いが思い切り
不器用になっているという自覚もあった。
「……いたいです」
ジャンの胸を少しばかり離れ、しがんだままルイーズは目を細めた。
「あなたといたいです、ジャン。心からお慕いしているのです。どうか、どうかご寛恕くださいまし……」
鳶色の眼がゆれるたび、締め付けられる感覚がジャンをざわつかせた。穏やかを決め込もうとしていたはずの
彼の目に、一筋の欲望が走る。
ルイーズはようやく、夫の眼差しを満たすものが理知だけでないことに気づいた。
それからはあっという間だった。ジャンの唇がルイーズのそれを蓋をするように塞ぎ、舌を挿し込み、執拗に
絡めだした。溢れていた唾液を蜜であるかのように彼は次々と吸い上げ、飲み干し、歯列を割って幾度も口内を
抉った。鼻から甘い声を漏らすルイーズの身をベッドへ再び返しながら、ジャンはその上へ跨っていく。まだ
口は離していない。
525 :
絹の糸5:2009/04/02(木) 11:26:28 ID:aYWBiJ18
ぬめぬめとした内壁、頬のかすかな襞をジャンは丁寧になぞった。抑えていたものが彼を、強く突き動かしている。
"何処でも闘える兵士"は、初めてその貪欲な様をさらした。
ようやくルイーズの唇を解放したジャンは、うっとりと飲みきれなかった唾液をこぼす彼女を撫でた。はじめ
この女と、結婚できるとは思わなかった。求婚はしたものの、いくら将であるとはいえ、まだ身分はあちらが
上だったからだ。最終的に結婚を是非と受け入れたのはルイーズ本人だったという。
「ルイーズ」
ジャンの呼びかけに、ルイーズは掌で返した。先ほど彼自身がしたのと同じように頬を撫でたあと、指先で頬の傷を
なぞっている。その手はゆっくりと、ジャンの首筋へ移動していった。そこでとまる。その先を望んでいるのだと、
ルイーズの目は訴えていた。ジャンは自ら制服の前をくつろげ、着やせする厚い胸板をさらした。
「ああ」
半ば陶酔的に、ルイーズは吐息を漏らした。首筋でとまっていた手はジャンの肩へ進み、ふくらみにある銃創へ
触れる。くるくると幾度か形を確かめたあと、胸に走る細かな切り傷を撫でた。
「……怒らないのですね」
その手つき、眼差しにはまだおびえが見られる。遠慮がちで、本当にそんなことが許されるのだろうかと
問うているようだ。ジャンは吐息とも笑みともつかぬ声をふっと漏らし、乳首に到達しようとしていたルイーズの
手を軽く掴んだ。
「くすぐったい」
出会ったときと同じような、口元と頬をゆがめた笑みだった。あのときもそうだったが、下品で野卑な印象が
ないことは本当に不思議でしかない。もし他の男が同じ顔をしたなら、恐らくなんと陰険で気味の悪い男だと
思っただろう。ジャンは取り立てて見目の麗しい部類ではなかったが、ルイーズに不快を抱かせたことは一度も
なかった。髪粉もちゃんとふっているようだし、癖の強い髪を下ろすのはベッド以外で見たことがない。
「ジャン、これは夢なのですか」
ルイーズはまじめに尋ねたのだが、その質問はジャンの硬い表情をついに崩した。破顔するさまを見たのは
初めてかもしれない。
「貴族の夢には温度があるのか」
気持ちのよい、まさしく"笑顔"でジャンは返した。それは何より無邪気で、ルイーズの胸にあった不安や恐怖を
簡単に一掃してしまった。
続けて、嵐のような激情が体中をめぐった。瞬間的に、炎へ油を浴びせかけたように、ルイーズの全身をそれは
走り抜けた。この男がほしい。この男に、触れたい。ルイーズは直感にも似た本能の囁きに、もはや抗おうとはしなかった。
再び訪れた接吻には自らも舌を差し出し、彼から流れてくる唾液を飲み干し、あいた手は懸命に彼の背を撫でた。
少しでも彼が心地よいと感じてくれるように、少しでも彼が離れたがらないように。媚びていると思われるかもしれない。
ただここに幸福があるのだと伝えたかった。ルイーズの幸福をどうか少しでも、夫に与えたかったのだ。
ジャンの手はそれに応じるように、ルイーズの体へふれた。肌掛けを邪魔そうにどけ、白くさらけた乳房を
乱暴に鷲掴みにする。ルイーズが身を捩じらすと僅かに力が緩んで、やわやわともったいぶる手つきへ変化した。
ようやく口が離れると、粘ついた糸が二人の舌をつないだ。
ルイーズはあれほどに待ち望んだ彼の掌へ押し付けるように体をゆすった。少しばかり顔を傾け、視線だけは
しっかりとジャンをとらえたまま、浅ましい欲求を仄かに差し出している。夫は妻の媚態に目を細め、首筋へ頭を
沈めた。白くくぼんだ鎖骨の陰を強く吸い、そこをかわいがるように舌先でつついては嘗め回す。快楽に直結する
愛撫ではなかったが、ルイーズはぞくぞくと這い登る背徳的なよろこびに目を細めた。
「ジャ……ン」
うつろな目で追いかけた夫の姿は、豊かに上下する乳房の前へ降りていた。妻の声にジャンはまたかすかな笑みを
浮かべ、度重なる蹂躙ですっかり勃ち上がっていた乳首へ指をかけた。
「あっ、あ」
ジャンの股座の下、ルイーズの身が跳ねた。きゅっと小刻みにひねりあげるたび、甘い悲鳴が上がる。今までより
力加減は巧みになっている。慣れたのか、無遠慮になっただけかはわからない。ジャンは妻の狂態を観賞するかのように
指をおどらせた。
「さっきこうしていたな」
彼の問いに、再びルイーズは激しく紅潮した。それまでジャンを支えていた白い小さな手は顔を覆い、唇を
かみ締めていやいやと首を振る。否定ではない。まださほど長くはない夫婦生活だが、そのくらいは把握できた。
526 :
絹の糸6:2009/04/02(木) 11:27:04 ID:aYWBiJ18
「俺のを見て、おぼえたのか」
あくまでジャンの問いかけはやわらかいものだった。血気盛んで喧嘩っ早い、あの男と同一人物と誰が思うだろう。
「他に、誰がいるのですか」
ルイーズは夫のする細かな意地悪にようやく反論した。返す言葉を失ったジャンは彼女の胸に顔をうずめ、
頬を摺り寄せてから乳首をひねりあげた。
「それもそうだ。悪かった」
詫びのかわりに、と口にしたわけではない。ジャンはつまみあげた蕾を含むと、乳暈までを吸い上げて弄んだ。
舌先で小さな穴を抉りながら、口づけと同じように幾度も食みなおす。今までルイーズに披露したことのなかった
性技は見事に彼女を堕落させた。背をのけぞらし、鼻を鳴らして彼女は快楽に打ち震えている。彼と比べれば
ずっと小さな手がシーツを切なげに掴んだ。
ジャンは乳房から離れると、そのままへそへ指を伝わせ、肌着をこじ開けてルイーズを探り出す。ぷっくりと
肉のついた恥丘には立派な茂みが呼吸のたびそよいでいる。わざとこすり、音をたててやった。
「や、やめてくだ……」
「駄目だ」
身を縮こめて逃れようとするルイーズの太ももを強引に押し広げ、ジャンはついに彼女の左脚を裸にした。
揺れる灯篭のあかりに女肉が浮き彫りになる。既にしっとりと濡れたそこはまだ閉じているが、ジャンを待ち望んで
赤く染まっていた。
半分だけ着衣の乱れた妻はどうしようもなくいやらしかった。まだ花びらに触れてもいないのに膚は上気し、
薔薇色にその頬や体を染めている。少しウェーブのかかった黒髪は乱れ、その中で小さなかわいらしい顔が恥らっていた。
しかし先程の、ただ泣いていた乙女とはわけが違う。
その上、ジャンからすれば暫時であった会えない時間の切なさがそこへ加わり、ルイーズはまるで色気を
もう五年分は足したような魅力を放っていた。抱けば抱くほど、いい女になる。ジャンは己の熱が、力が増していくのを感じた。
ジャンの変化に気づき、ルイーズは目を見張った。恥ずかしいといって一度も見ようとしてこなかった夫の股間が、
布をきつそうに押し上げている。やはり一度は目を泳がせてしまったものの、二度目に視界へみとめたときは
はずせなくなっていた。
ルイーズはシーツを掴んでいた手をほどくと、ジャンの膝へ乗せた。意図がわからないのだろう夫はその手を
ちらと見やり、もぞもぞと身を動かした。
「……重いか」
かけられていたジャンの体重が少し軽くなる。ルイーズは慌てて、彼を呼び止めた。
「あっいえ、そうでは……なくて」
鳶色の眼が誘っていることに、彼女自身でさえ気づいていなかった。しかしルイーズの真意といえばまさしく
その通りであったし、肝心なところで鈍感さを発揮したジャンにでも感づけるほどである。驚きに強張った顔が
徐々に険しくなり、厳しく大きな目が細められた。
「……何をするか、わかっているのか」
その声は諭す響きを含んでいた。ルイーズはその姿にはっとして、指を噛んで顔を背ける。嫌われてしまっただろうか、
はしたない女だと思われただろうか。だが、ここで目を背けては以前と何も変わらない。ルイーズは頼りなく
丸まっていた指をぎゅっと握り締めた。
「わかりません、でも」
続けたまま、ジャンを振り返る。
「教えてくだされば、できます」
少女の面影がまだ浅く残ったその貌は、彼が思っていたよりずっと成長が早いようだった。ジャンの肌蹴た制服の
すそを掴み、うっとりと顔を上げている。唇はぽってりと熱を持って紅く主張し、頬は涙と汗で艶めいて美しかった。
ジャンは咽喉を鳴らしそうになり、童貞のようだと自身に苦笑した。その笑みをルイーズがどう受け取ったかは
わからないが、様子をうかがうように覗き込んだ眼差しは前と違って感じられる。それは彼女が一線を取り払った
証であり、ジャンが本当の意味で妻を抱ける日が訪れたということだった。
早速というべきか、ジャンは完全に自身をさらけだした。他の場所はあまり目立たないが、ここだけは際立って
濃い体毛がびっしりと股間を覆っている。太ももに向かって不自然に薄くなっているのは行軍のため、擦り切れて
しまったのだろう。
それはルイーズの知る限り、何にも似ていなかった。どうしても何かにたとえろといわれたなら、砲筒と
答えるだろう。色はそこまで黒くはないが、ジャンの素肌よりも濃いのは確かだ。直線的な形を成したそれは、
根元からすると九十度ほどまで屹立している。彼の大きな掌くらい長さのあるそれが大きいのかルイーズに判断は
つかなかったが、それが自分の中に入ってきていたのだと思うと胸が妙に熱くなった。
527 :
絹の糸7:2009/04/02(木) 11:27:59 ID:aYWBiJ18
「やめるか」
怖気づいたように見えたのか、ジャンはそのままの声音で尋ねた。ルイーズはしかしふるふると首を振って、
まるで熱に浮かされたように指先を伸ばしている。
ジャンはその手首をとって、自らの武器へ導いてやった。熱く脈打ったそれはルイーズに鼓動を伝え、彼の唇から
溜息を誘い出す。
血管の這い回る一物はある意味グロテスクですらあったが、今の彼女にはそう思われなかった。愛する夫の、
力そのもの。自ら触れたのは初めてであったが、幾度もこれに貫かれた記憶は残っている。反射のように媚肉が
濡れるのを感じた。
「少しずつ、擦るんだ」
ルイーズがそれをどう扱ってよいものかと考えあぐねていると、じきにランヌが口を開いた。若妻の無知を
よくわかっているらしい。たしかにルイーズが幼い頃から受けてきた教育の中に、性に関するものはない。
男性に触れること自体そうそう許される身分でも、機会もなかった。
彼の言葉に従い、ルイーズの白い手が上下した。くすぐるかのように生やさしいその刺激は、ランヌの目に
情熱を燃やす。勃ちあがりきっていたと思われた男根はもう少しその首をルイーズの顔に近づけた。
ルイーズははしたないことだと知りながら、その様を観察せずにいられなかった。濃いピンク色をした先端には
小さな、かわいらしいとすらいえる穴が開いている。親指でそのくぼみにそって少し擦ると、ランヌの太ももに
かすかな緊張が走った。思わず心配そうに見上げたルイーズに、彼は苦笑して呼吸を整えている。
「痛いわけじゃない」
たしかにその頬を引き攣らせているのは痛みではないようだ。ルイーズは指の腹を相変わらず慎重に夫の鈴穴へ
這わせ、くるくると円を描き、時折キスするようにつついた。ジャンの目に切なさがちらつく。確かで、深い思いを
感じさせるその眼差しに、ルイーズは少しずつ手の動きを変えていく。
砲身を握った手を丁寧にスライドさせると、ジャンの反応はまた違った色を映した。どうやら、擦るのは気持ちが
いいようだ。ルイーズはついに身の位置をあらため、両手を使って愛撫しはじめた。
ふっくらと包み込むように、自分の頬を洗うときのように、砲身の側面を撫でていく。その緩慢でしかない動作に
ジャンが焦れているのを感じ、ルイーズは顔だけを起こした。彼の呼吸に合わせ、徐々に手の動きを早めていく。
どのようにすれば"それ"がよろこぶのか、実感し始めていた。
だがルイーズの愛撫が速度を増そうとしたそのとき、手首が不意に掴まれた。ジャンの目はすっかり熱を帯びて、
戦場とも日常ともつかぬ色に染まっている。呼吸は幾分か、荒い。
「……もっと、いい方法を、教えてやる」
ジャンはそれだけいってルイーズの手を離した。そのまま自分は彼女の開いた股間へと手を伸ばし、上半身までもを
そこへずらして、茂みの向こうから目を合わせる。夫にさせるがままとなっている自身が急にまた恥ずかしく
思われて、ルイーズは赤面しながら唇を噛んだ。
「や、そんなところで……」
彼は答えなかった。ルイーズの濡れそぼった花弁へと遠慮なくその指を引っ掛けていく。ぐっとこじ開け、
抉るような視線を与えた。彼の眼差しに女肉はとろとろと蜜を垂らす。ジャンの指は次々と溢れるその蜜を充血した
陰核へ塗りまぶしはじめた。パールピンクのそれへ力を軽くこめるたび、激しくルイーズの体がのけぞる。
「あっ、は、やっ」
太ももが閉じそうになるが、許しはしなかった。ジャンは肘を使って股を開かせたまま、面白がるように肉芽を
いたぶり続ける。ぐりぐりと指先で押しつぶし、くるくると周辺をなぞりあげ、愛液の分泌を促した。ルイーズは
小刻みに、しかし大きな悲鳴に似た嬌声をあげ、やがてぐずりだした。
「あっ、あん、あぁ、そこ、いやあ」
子犬のように妻は息を荒げ、必死にシーツを掴んで耐えている様子だった。薄っすら桃色に上気した頬が美しい。
ジャンは口角をわずかに吊り上げ、ついにルイーズの秘所へと顔を落とした。
チーズのようなにおいとはよくいったものだが、若妻のそれはあまりそう感じられなかった。勿論これだろうかと
思われる部分はある。こんな比べ方をするのはなんだが、彼の前妻とは全く違っていた。
528 :
絹の糸8:2009/04/02(木) 11:28:56 ID:aYWBiJ18
ジャンは尻を抱えるように支えながら、尖りきった陰芯に口付けた。続けて舌でねぶりあげる。
「くひいっ」
こらえようとして抗いきれなかった、ルイーズの声がした。甘い悲鳴はジャンの舌の動きによって断続的に起こり、
肉体はぶるぶると快美に震えている。幾度かこじあけた女穴へも舌を差し込んでみると、うねっているのがわかった。
引き抜いてからまた、陰核へと戻っていく。水音が立つほど吸い上げると、ルイーズからひときわ強い声が上がった。
ジャンはしかし、そろそろ自身の欲望を抑えきれなくなっていた。剛直の勢いに自分で気づいている。秘所から
顔を上げ、口内にあった唾液を飲み干してから、ルイーズを抱き起こした。
彼女の眼差しは既にとろけきっていて、ジャンと男根を交互に見比べていた。白く細い指先が、ジャンの股間へと
伸びる。触ることに躊躇いやおびえは、もう感じられなかった。
「怒らないでくださいね……」
声が艶を帯びている。ルイーズはそれだけいって、頭をゆっくりと下げた。だらりと長いブルネットが落ちる。
そのまま彼女はジャンの、屹立したそこへ顔を近づけた。
「おい」
「こうするのが気持ちいい、ということでしょう」
呼びかけに妻はそういった。ジャンは思わぬ申し出を制止しようと試みたが、ルイーズが雁首へ口付けるほうが早かった。
「……嫌だろう、に」
ぽつりとジャンはいった。前妻とするとき、相手は知識があるようだったが、オーラル・セックスは一度も
しなかった記憶がある。ジャンが施すことはあったが、遊び好きであった前妻には物足りなかったらしい。また、
ぶちあけた話、彼は雰囲気を作るのが下手だ。いわゆる"俗っぽさ"を持った前妻とは、そこが合わなかったのかもしれない。
「何故ですか、夫のものでしょう」
口を離したルイーズがいった。彼女にとっては問題にならないらしい。彼女はすっかりジャンに夢中な様子で、
熱心に愛撫らしきものを施している。慣れこそないが、懸命なことだけはひしひしと伝わってきた。啄ばむように、
先端をちろちろと含んでは形にそって丁寧になぞっていく。その口がちゅっと音を立て、再び離れた。
「あなただって……してくださったのに」
もじもじといじらしくルイーズはいい、その羞恥を打ち消すかのように股間へと顔をうずめた。ジャンはじわじわと
こみあげてくる感情を言葉にすることもできず、ただ、ルイーズから送られてくるたどたどしい快楽に拳を
握ることしかできなかった。
もしこの女を取り上げられたら、自分はどうなるのだろうか。
今まで、どの女といたときも考えたことはなかった。だがもしもこの女がいなくなってしまったら、他の誰かに
とられてしまったら。そう思うと急に、わけもない怒りと悲しみが溢れてくる。存在を確かめるようにルイーズの髪を撫でた。
彼女は両手でジャン自身を支えながら、半分ほどまでを口に含んでいる。長すぎて全部は入りきらないようだ。
後ろの袋も、きちんと撫で転がしていた。決してうまい奉仕ではないが、様子をうかがうようにちらちらと上目遣いに
見上げてくるのがかわいらしい。ジャンはまた少しだけほほ笑んで、心地よいことを伝えた。
きゅう、と音が鳴った。強く吸い上げ始めたのだ。さすがにジャンもこれには呻き、ルイーズの髪をやわく掴んだ。
「そろそろ、いい」
呼吸が一方向で止まっていたのだろう、合図で離れたルイーズは大きく息を荒げている。笑いながらも、ジャンは
彼女の身を引き寄せた。深く腰掛けなおし、ルイーズの尻を持ち上げて引き寄せる。膝をつかせ、またがる格好にさせた。
「入れるぞ」
ジャンはできるだけやさしくいって、ルイーズの薔薇色に染まった頬を撫でた。飲みきれずにいたらしい
唾液をたらしている。まっすぐに見つめる瞳はしかし白痴などではなく、夫に対する愛に満ちていた。
「あっ、あ、ああ」
何かいいたいらしい。慣れない動作に顎が痛んだのかもしれない。背中をさすってやり、落ち着くのを待った。
ルイーズはジャンの逞しい両肩に手をそえて、ぎゅっと身を寄せた。
「こ、この格好で、大丈夫なんですか」
肌蹴た衣服がはらりと落ち、言葉とともにジャンへかぶさった。肩から滑ってきた手は後ろで落ち着き、布が
彼の大きな背中を隠した。座位でするのは初めてだ。不安なのかもしれない。
「好きなんだ」
ルイーズは少し顔を離し、ジャンと目を合わせた。つぶやくようにいった言葉に首を傾げる。
「この格好も、おまえも」
こぼすようにいったジャンはしかし、ルイーズの返事を待たなかった。腰骨にそわせた手に力をこめ、一気に貫く。
529 :
絹の糸9:2009/04/02(木) 11:29:27 ID:aYWBiJ18
よく濡らしてあったために痛みと、抵抗はない。だがルイーズの秘所はジャンの一物を待ち焦がれていたようだ。
「あ、あああっ」
悲鳴と同時にぎゅうっと締め付けが起こり、続けて搾りあげるようにうねりだす。呻かずにいられないほど、
ルイーズのそこはよく動いた。ジャンはしばらくその感触を楽しみ、ぴくぴくと緊張する彼女の唇を深く貪った。
予告もなく腰を動かしはじめる。寝台のばねを利用しながら、ルイーズの支えてある腰を上下させた。塞いだままの
唇からくぐもった嬌声が漏れる。はじめこそゆったりとした調子であったが、やがてジャンは制御を忘れた。
後方へ妻を押し倒し、赴くままに腰をゆすりだす。
「ルイーズ」
半ばうわごとのように名を呼び、ジャンは奥を奥をと彼女を犯した。今までに一度もしたことがない、強く、
深いストロークでだ。汗ばんだ肌がぶつかりあうたびに乾いた音をたて、枕に後頭部をすりつけながらルイーズは
女の悲鳴を上げた。
「ジャン、あ、い、いっ」
彼女の眼からは次々と涙が溢れていたが、それが決して苦痛や恐怖からのものでないと心から悟ることができた。
それは彼女自身も実感しているもので、ただ目の前の夫がいとおしくてならなかった。自分を心から、愛してくれている。
自分だけを、見つめてくれている。鳶色の眼と鷹色の眼が交錯していた。より奥底で溶け合い、交わりながら、
二人は激しく愛し合った。
意識が白みはじめる。ルイーズはジャンのおさげを頼った。弱々しく掴まれたリボンが片方、ほどける。
癖の強い、根元からくくられていた硬い髪がふわりとボリュームを増した。湿った体にへばりつき、ジャンの背中を改めて覆う。
「ああ、ルイーズ、出るぞ」
それが箍であったかのように彼はいった。腰からこみ上げてくる感覚はルイーズも同じで、幾度も首を振ってジャンを望んだ。
「き、きて、きてっ、ジャン、きて」
ついにそのときは訪れた。ルイーズは真っ白な、すべての情景が失せる場所を見た。瞬間、ジャンの熱が奥深くまで
挿さってくる。すべてなくなったそこでも、愛する夫はそこにいた。
「ルイー……ズ、ああっ」
ジャンはより深く妻へかぶさり、迸る白濁を奥へ与えた。どくどくと音がしそうな量だと、体で感じる。彼女の
肉体は決してそれをこぼさぬよう、媚肉を縮めて受け入れた。
二人の呼吸だけがしばし、空間を渡った。傍らにおいてあった蝋燭のあかりが弱くなっている。そろそろ消えそうだ。
ジャンは指先でその火を叩き消し、煤を吹いて妻から起き上がった。絡みついた粘膜の力はまだ少し残って感じるが、
引き抜けないほどではない。ルイーズの体はまだ弛緩しつづけている。
ひゅうひゅうと咽喉が鳴っていた。目は霞んでいるように見える。ジャンは燭台の乗った引き出しから布を取り出し、
まずルイーズの秘所へあてがった。清潔なものだ。続いて自分のものを拭う。それから倒れたままの彼女の傍らへ
移動すると、身を乗り出すように腕で頭を支えた。
「大丈夫か」
ルイーズの目がようやく動き、ジャンを見てゆっくりとまばたきした。無事を伝えているのだ。それからゆっくりと
手が伸び、ジャンの頬を撫でる。傷をなぞり、首筋を辿って、ぱたりと落ちた。
「無理するな」
ジャンが問うと、ルイーズは少し悪戯っぽい笑みを浮かべた。どうやら体力の問題らしい。肩を支え、胸板へ
抱き寄せる。ジャンの太い指先はルイーズの髪を引っ掛け、耳へ預けた。
彼女の額は汗でしっとりとしてはいたものの、まだ熱を持っていた。髪は冷えている。風邪をひいてはならないとばかりに、
ジャンは首筋をあたためた。
「ありが、とう」
瞼を閉じるルイーズ。眠ったのだろうか。ジャンが枕へ寝かせてやろうかと思ったとき、不意に腕が絡みついてくる。
耳元にルイーズの唇があった。
「私も、好きです、ジャン」
戒めをほどいた妻は、満足げに微笑んでいた。ジャンに身を任せ、今度こそ力を抜ききった。
眠ってくれてよかった、とジャンは思った。囁かれた耳が熱い。大きな右手でも隠し切れない、思わず緩む頬を
見られずに済みそうだったからだ。
530 :
520:2009/04/02(木) 11:30:12 ID:aYWBiJ18
以上で終了です。
お目汚し、失礼いたしました。
凄く好みの作品でした
普通にファンになりそうだよ
GJ
素晴らしかった
よかったよ
登場人物にも興味が湧いたぜ
GJGJ!!
よかったです。
個人的にナポレオン期が好きなのでうれしかったw
登場人物の色気が凄いな
GJ
文章が綺麗だね、上品だし
とても官能的だった
537 :
520:2009/04/03(金) 12:32:39 ID:+ENos6MK
レスくださったかた、コメントありがとうございます。
フランス革命期〜ナポレオン帝政期がとても好きなので、
ご意見がいただけてとてもうれしいです。
別な人物を題材にした小説がもう一本あるのですが、
連続で投下して良いものか迷い……
もしよろしければ、投下させていただけないでしょうか。
ご意見をお聞かせいただければ幸いです。(誘い受けに見えたら申し訳ない)
読ませて貰えると嬉しい
ぜひお願いします
楽しみに待ってる
>もしよろしければ、投下させていただけないでしょうか。
勿論おk
wktk
引き込まれるものがある
もっと読みたい
連投は気にせず投下してくれw過疎スレだから
541 :
520:2009/04/03(金) 21:09:55 ID:+ENos6MK
うれしいレスをたくさん、ありがとうございます。
お言葉に甘えて、投下させていただきますね。
今度は、フランス革命期〜エジプト遠征まで活躍した海軍軍人、ブリュイ提督と
その奥様のお話です。
彼は家族関係の資料・家の資料が少ないもので(軍事的資料はあり)、
奥様のお名前は私が勝手に考えましたが、そういうのがお嫌いな方は申し訳ありません。
542 :
真珠の囁き1:2009/04/03(金) 21:12:06 ID:+ENos6MK
燭台に照らされた料理は湯気こそたっていないが、まだ作られたばかりだった。ようやく食卓へとたどり着いた
ブリュイ=デゲリエ伯爵は、早々にナプキンを広げ祈り、銀器をとった。
「すまん、遅くなった」
テーブルの向かい、妻が涼しい顔で澄ましている。濃いこげ茶の髪をきちんと結い、纏め上げていた。表に出るわけでなし、
流行も嫌いだといって、おかしくない程度にだけ取り繕われている。ブリュイからすれば十分身奇麗だと思うが、
女性には色々あるらしい。
ブリュイが彼女を娶ったのは、三十を過ぎてからだった。晩婚だと自分でもわかっているが、友人には結婚しない
とまで宣言している者もあるくらいだし、あまり気にしてもいなかった。無論それが変わり者であることは
知っていたが、躍起になって気に入らない嫁をもらうこともないだろうと考えていたのだ。
少尉に昇進した頃、母が縁談を持ってきた。二十歳すぎの、この時代としては少々『嫁き遅れ』な娘だ。それでも
ブリュイとは十歳以上の年齢差がある。若く、賢く、笑顔のさわやかなところが眩しい。名をマルグリットという。
新たに国から与えられた屋敷は、二人で住んでもやはり広かった。使用人は互いの家から古参の者を連れてきて
置いた。それでも屋敷はブリュイの実家、またマルグリットの実家よりも、まだ広く思われる。
その天井には鮮やかな絵が彩られていた。聖母が穏やかな笑みを浮かべ、キリストを抱いているものだった。
正直なところブリュイは取り立てて宗教に熱を上げていたわけではないが、神や自然には一定の信仰があった。
また、絵そのものの価値はわからないが、あの画の筆致をブリュイは気に入ってもいた。
「あなた」
肉を切り分ける音だけが響いていた食卓に、妻の声が挟まる。はっとして、ブリュイは天井から彼女へと目を向けた。
「よく首が疲れませんこと」
呆れた様子で彼女がいった。どこか不機嫌そうな物言いだ。ブリュイは少し困ってしまって、皿へ目を落とした。
「すまん」
「何故謝るんですか」
問われ、またブリュイは言葉を詰まらせてしまった。何と答えるべきかあぐねている彼を無視して、彼女はスープを
口に運ぶ。
「理由もなく謝らないでくださいな」
「……すまん」
結局出てきた言葉がそれで、ブリュイは自分の語彙のなさを責めた。彼女のいうことはいちいちもっともで、
まともに口論になどなったことがない。自分の顔を潰すようなことをいう女ではないが、はっきりした性格ではある。
その点も気に入っているのではあるが、今のように窮することもないわけではなかった。
「冷めますよ」
着々と食べ進めている彼女はもうワインすらあけそうになっている。よく食べるが、肥らない。じっと彼女を
見据えていると、視線に気づいたらしく首を傾げられた。
「何ですか」
「いや」
ブリュイはそれだけ返して、食事を再開した。肉が少し冷えて、硬くなり始めている。たっぷりとソースをつけて、
くさみをかき消しながら咀嚼した。旨い。
マルグリットの大きな瞳が、じっとそれを眺めてくる。肘をついて、頬杖にしながら、観察するようにだ。
ブリュイはまるで監視されている気分になって、ちらちらと彼女に目を返した。品がないぞと口にするのもはばかられる。
彼女は十三の頃から海しか知らない自分とは違い、いわゆる『お嬢様学校』に通ってきたはずなのだ。
「……顔に、何かついているか」
ブリュイはただ疑問を返すことしかできず、そこに批難をにおわせるしかなかった。
「いいえ。量は召し上がる割に、一口は小さいのねと思って」
頬杖をやめ、妻はいった。大きなお世話だ、と罵る男もいるかもしれない。しかしブリュイはそれでどうこう
騒ぐほど子供ではなかった。もう三十も半ばのほうに近いのだ。いちいち怒っていたら日が暮れる。
「そうか」
その淡白な返答が気に入らなかったのか、マルグリットは露骨に椅子へとかけなおした。彼女が嫁いできて
まだ数週だが、そのうちの半分からずっとこうだ。わけもない苛立った態度をぶつけてくる。理由が見えていれば
まだ対処のしようもあるのだが、そうでないようだからブリュイは結局黙って頷くか謝るしかなかった。
543 :
真珠の囁き2:2009/04/03(金) 21:12:50 ID:+ENos6MK
プロポーズのときの彼女からは、考えられない態度だった。ブリュイは月明かりの階段、踊り場で、彼女の腕を
掴んだ。帰ろうとする彼女を引き止めたときのことだ。柔らかな体を思い切り抱き寄せ、想いを伝えた。熱に
浮かされたような心持で、なんといったかあまり記憶にないが、とにかく彼女が他の男の手に触れるのを嫌だと
感じた。ブリュイの人生の中で、こと男女関係においては初めての強い衝動だった。
その夜はじめて、マルグリットを抱いた。性格からすると遊んでいておかしくもなかったが、彼女の肉体は
清らかなままだった。できるだけ丁寧にブリュイは愛撫を施し、痛みも極力減らそうと力を緩めた。海軍の職務について
彼は誰より優秀であったが、女性の扱いとなると幼い甥に負けるほどの晩熟だった。
何度かそうして抱いているうち、マルグリットの態度が変化した。まずあまりブリュイと目を合わせなくなった。そして
今のように、追い詰めるように言及することが増えた。何か自分が気に入らないことでもしただろうかと思っては
いるものの、原因はやはりわからない。ただ時折、妙に寂しげな目をしてブリュイを見つめるようになった。それに
胸をちくりと刺される。考えながらブリュイはどうにか、食後の葡萄酒に辿りついた。
「……フランソワ=ポール」
名を呼ばれ、ブリュイは口をつけていた酒をおろした。それにあわせたようにマルグリットが立ち上がり、
背を向ける。
「先に、寝室で休ませていただきます。よろしいですかしら」
白く細い顎先だけが見えた。ブリュイはワインの残りを干し、立ち上がった。
「気分が悪いのか」
マルグリットの顔が、ようやく目元まで見えるほど振り返った。
「構わないでください」
彼女の頬は赤く、眉がたわんでいた。拗ねた子供のような顔をする。何かを我慢しているようでもあった。ブリュイは
さすがにかっときて、眉をたわめて口を開いた。
「妻を心配しない夫が何処にいる」
ブリュイにしては珍しい、きつめの語気だ。しかしそれがおとなげなかった、と気づいたときには遅かった。妻は
まるで今にも泣き出しそうな顔をして、廊下を駆けだした。
ブリュイはまだ首にさがっていたナプキンを脱ぎ捨てると、慌てて彼女を追いかけた。
すんでのところで、妻は部屋に滑り込んでしまった。鍵はあけてもらえそうにない。幾度扉を叩いても
返事はない。名を呼んでも、何をしようと、かわらなかった。ブリュイは扉に額を預け、唇を噛んだ。沈黙する。
目をかたく閉じ、意を決したように瞼を上げた。
「マルグリット、悪かった」
歯列から押し出すように彼はいった。怒りはない。あるとすれば、もっと冷静に話してやればよかったという
後悔だけだ。いくら二十歳を過ぎているとはいえ、まだマルグリットは自分に比べて子供なのだ。爛漫な性格だし、
奔放でもある。
「謝らないでといってるんです」
涙声だった。しゃくりあげている声がする。
「……フランソワ=ポール。私、おかしいの。おかしいのよ」
細い声だった。歌のうまい、弾んだあの声音ではない。
「何がおかしいんだ? 君は君だ」
先ほどまで抱いていた疑問は何処へいったのだろうかと、自分で思うほどの言葉だった。次の瞬間、勢いよく
扉が開かれる。涙に眼をぬらしたマルグリットが、彼の腕を掴んで部屋に引っ張り込んだ。不意打ちだったために、
よろけながら彼は従った。
そこから間もなく、彼女の身が胸の中へ飛び込んできた。薄っすらと脂肪のついた――でなければ海で
浮かないからだ――胸板に、マルグリットの熱い涙が沁みていく。あまりの流れの唐突さに、ブリュイは戸惑った。
どうしていいものか迷い、腰に手をやる。髪を撫でて、彼女が落ち着くのを待った。
「どうして何もいってくださらないの」
マルグリットがようやく顔を上げた。その質問の意図を察することができずに、ブリュイは首を傾げた。
「……たしかに私はあまりその、喋るのは得意でないが」
「違います」
首を振り、マルグリットは少し身を離した。
「私が何も知らないと思っているのね」
やましいことがなくとも、こういう言われ方をするとどきりとするものだ。ブリュイはしかし自分が彼女に対して
偽りなどないことを信じて、言葉を待った。
544 :
真珠の囁き3:2009/04/03(金) 21:13:25 ID:+ENos6MK
「……腕を見せてください」
僅かな沈黙の中に呼吸が混じり、それが落ち着いた頃に彼女はいった。ブリュイはやはりわけがわからなかったが、
いわれるがまま上着を脱いだ。シャツの袖を捲り上げる。数ヶ月前、ようやく糸の抜けた傷痕があった。海賊相手に
サーベルを振り上げたところで、二方向から切りかかられてしまったのだ。身を翻してかわしたが、
縫う必要のある怪我がふたつできた。それが、これだった。
「一緒に、劇場へいったことがありましたわね」
よくおぼえている。結婚前、女性を何処に誘ってよいものかわからず、華やかそうだからという理由で連れて行った。
ブリュイの記憶ではそれをいたく気に入ったように見えていたが、あれと腕がどう関係するのだろうか。
「あなたはまだ、この傷が癒えていなかった」
たしかにそうだ。普通に服を着られるほどには回復していたが、包帯は巻いていたし傷も痛かった。膿むことは
なかったが、しばらく傷がふさがらず糸がとれなかったのだ。
「あのとき、あなた」
ぐっ、とマルグリットの呼吸が詰まった。涙が次々とこぼれおちる。
「その腕で、私をお連れになったのよ。お忘れではないでしょう」
いわれてようやく、そのときのことを思い返した。そうだ。ブリュイは当然のこととして折り曲げた腕を差し出し、
彼女の掌を受け入れた。だが思わず、痛みに呻いてしまったのだ。一度、ほんの一瞬ではあったが、それが
顔に出た。何でもありませんと彼女の遠慮を振りほどいたのをおぼえている。
「後から、お医者様に聞きましたわ。傷がふさがるまでに時間がかかった、とも」
「それは」
「私のせいです」
「それは違う」
ブリュイは首を振り、俯く妻の両肩を掴んだ。
「ちょうど、傷は……ほら、この曲がるところにあるだろう。だからなかなかふさがらなかったんだ。化膿もしなかったし、
きれいに治ったろう」
実際、傷はもうだいぶ白くなりはじめている。中に残っていた血の塊が、徐々に流れて消えていっている証拠だった。
「……あなたの」
ようやくマルグリットの顔が、少々持ち上がった。
「あなたの足手まといになるくらいなら、私、離縁していただいたほうがいいと思いましたの」
化粧らしい化粧をする女ではないが、顔に塗っていた粉が多少落ちているのがわかった。涙の筋ですっかり
くしゃくしゃになって、元の健康的な白さが見えている。紅はさしていないようだ。ブリュイはじっと返事を待った。
「私はあなたの妻です。あなたのつらいとき、苦しいとき、支えるために結婚しました。喜びは二人で、より沢山
かみ締めるためにここにいるのです。それなのにあなたは、私に何も言ってくださらない。きっと口にされると
もっとつらくなるから、そういうこともあるのでしょう。けれど、私は、もっとあなたに頼ってほしい」
彼女は自分の両頬に手をやり、更に続けた。
「私が若くて幼くて、頼りないからだと思いました。だからもっと毅然として、強く、冷静に振舞えばいいと。
けれどあなたの顔が、私の心を揺さぶるのです」
唇をふるわせ、妻はどうにか言葉を発している。ブリュイは目をそらさず、深く何度も頷いた。
「ねえ、本当はどうすればいいのですか。あなたの笑顔が私は好きです。でも、あなたが一人で苦しんでいるのを、
ただ我慢させるのは嫌」
細々と搾り出した彼女は、ついに顔を覆って泣き出してしまった。
ここまで考えさせていたのか、とブリュイは思った。勝手にとはいえ、彼女は思いつめている。そしてそれは、
自分への思いやりがそうさせたのだ。自分を愛する思いをコントロールできずに、そうなっていってしまったのだ。
ブリュイは失いかけていた熱が、再びじわじわとこみ上げてくるのを感じていた。
「それに」
ひとしきり泣いたあと、彼女が顔を上げた。自嘲的な笑みが浮かんでいる。
「あなたにとって、私は魅力的でないようだから」
それが何をさしているのか、じきにぴんときた。上気した頬、どこか体に落ち着きがない。
だがここで強引に手をかける、ことには躊躇いがあった。相手は弱りきっている。本当は口付けて、このまま
めちゃくちゃに犯してしまいたいほどの衝動があった。何度でも、好きだと囁きたかった。しかしそれをとどめて
いるのは、彼女がまだブリュイにとって『清らかな娘』であるからだ。彼女が、ブリュイを遠ざけようとして
いるからだ。だからこそ、おっかなびっくり、壊れ物を扱うように抱くことしかできなかった。
いいわけだ。ブリュイは自分を叱咤した。本当は、怖いのだ。妻が自分の手から離れてしまうことが、
恐ろしくてならない。
545 :
真珠の囁き4:2009/04/03(金) 21:14:24 ID:+ENos6MK
「それとも、あなたの勇猛さは海だけなのかしら」
マルグリットにとっては、ただの冗談だったのだろう。当然ブリュイはそれもわかっている。しかし気づけば、
腕に力をこめていた。髪の毛に指をさしいれ、深々と口付けをおとした。逃れようとする彼女の身をしたたかに
固定したまま、抉るように口付けを繰り返す。息継ぎの必要はなかった。慣れている。長い接吻で軽い酸欠になった
彼女の体から力が抜けた。そのまま寝台へ導き、押し倒す。
「君は、私のものだ」
前あわせの彼女の服に手をかけ、左右に引っ張った。ボタンがはじけとび、シルクの下着が飛び込んでくる。
うっすらとすける彼女の乳房は、ブリュイの掌でも余るほど大きい。
「他の、他の誰にも渡さない」
声が今にも上ずりそうだった。それでも力で抑えつける。彼女の瞳にうつった自分の目は、欲望に満ちていた。
わかっていても、もはや遅い。誰にも止めることなどできなかった。ブリュイは抵抗する力を失った妻の両腕を
簡単に片手でおさえつけ、乱暴に下着を剥いた。豊かな乳房の中心で、乳首が尖りたっている。すくうように掴むと、
指の先でぐりぐりとひねりつぶすようにこねた。腕が跳ねる。悲鳴のような声が上がった。
「我慢しろ」
昏い欲望が、すっかりブリュイを変えていた。戦で血が滾っているとき、ちょうどこの錯覚を得る。ただ、
征服すべき対象が敵でも海でもなく、愛しくてかわいくてならない妻だというだけだ。まるで脳が沸騰して
しまっているような熱が、ブリュイを突き動かしていた。
妻の腕から徐々に力が抜けていくのを感じる。ようやく手を離してはやったものの、乳房をいたぶる手が増えた
だけの話だ。乱暴にもみこまれるたび形を変える乳房は、これまで見たこともない赤みを持ち始めていた。まるで
おもちゃのように、乳首も奔放に遊ぶ。あえて陥没させてもすぐに飛び出してくるそれをあざ笑うように、先端を
爪で軽く引っかきまわしてやった。腰を浮かせ、激しく首をくねらせながらマルグリットは踊った。何度も嬌声を上げ、
髪を振り乱し、喜悦とも苦痛ともとれる涙を散らせている。
いやだ、という言葉はない。抵抗もない。なんだ、こうすればよかったのか。どこかに一抹の理性を残していたが、
ブリュイは妙に頭がさえていくのを感じた。戦も、女も同じだ。恐る恐る進んでは踏み込まれる。一気に攻め入って、
陥落させればいい。ブリュイはふっと、自分の迷いが断ち切れるのを感じた。
「君を、ずっとこうしたかった」
ブリュイはようやく、今自分がどんな顔をしているのか気づいた。
笑っている。
今、自分は笑っているのだ。
彼女は子供ではない。
女なのだ。
そんなごく当たり前のことに、今まで気がつかなかった。
ブリュイは涙を滲ませる彼女の首元をまたいだ。下布をくつろげる。ぼろりと一物がまろびでた。半勃ちになった
それは長く、マルグリットの口におさめるには少々大きさが過ぎる。においも、先日まで生娘だったような女には
きついかもしれない。それでもブリュイは、それを基準にしようとしていた。
「嫌なのか」
問いかけると、びくんと体が震えた。どれだけ残酷なことを強いているか、彼女の顔を見ればわかる。その顔すら
いやらしく、美しい。それだけでブリュイの剛直は勃ち上がっていく。
海軍の訓練は、陸軍の訓練とは違う。力は勿論、持久力、柔軟さ、精神力も桁違いに求められる。走る、泳ぐ、
漕ぐ、戦う、すべての動作ができなければならない。また、海という自然を相手にするため、眼も養う必要がある。それには
知識と、経験と、何より努力が必要だった。
彼は海兵だ。今もなおその職務に明け暮れている以上、そのすべてを兼ね備えていることになる。そんな人間に、
何も知らない箱入りで育った令嬢がかなうはずもなかった。
「あな、た……」
弱々しく彼女はいった。乳房をすっかり蹂躙され、求められるがまま唇を差し出し、ブリュイの突き出てきた欲望を
受け入れる。不慣れな様子ではあるが、先端を啄ばむ粘着質な愛撫は心地よかった。
不意にマルグリットの口が離れた。ブリュイは眉根を寄せ、彼女の口を楽しんでいたが、なくなった感覚にはたと
意識を向けた。
「フランソワ、ポール」
息継ぎがうまくいかないのか、彼女は息を切らしていった。
「素敵よ、とても素敵……」
うつろな目をした妻は、それだけいって再びブリュイの男根に顔を沈めた。少ない経験の割に色の濃いそこは刺激に
抗うように力をたくわえ、目の前の獲物を食らってやろうと鎌首を擡げている。今にも射精したい衝動をこらえ、
ブリュイは彼女から自身を引き抜いた。
546 :
真珠の囁き5:2009/04/03(金) 21:16:08 ID:+ENos6MK
物欲しげなマルグリットの瞳が愛しくて、ブリュイは両手をその頬にやった。体を後退させ、額に額をあわせる。
「マルグリット。私を愛しているか」
瞼を硬く閉じ、ブリュイは尋ねた。こくん、と妻が唾を飲む音がする。再び彼が目を開くと、潤んだ栗色の瞳が見つめていた。
「ええ。世界中の誰よりも」
あたたかな感触があった。彼女の手が、彼がしているのと同じように、頬を支えていた。
「あなたは世界で一番、勇敢な人。世界で一番、逞しい人。世界で一番、愛しい人よ。だから……」
マルグリットの腕がブリュイの首に絡んだ。耳元に唇が寄せられる。
「もっと、好きにしていいのよ」
ようやくブリュイは、自分の彼女に対する『遠慮』に気がついた。昔から女性の扱いは苦手で、紳士としての
振る舞いと誠実さを己に問うことだけで精一杯だった。それは裏を返せば自分のことで手一杯になっていたということだし、
自己を抑えてばかりで面白みがないと思われても仕方ないだろう。
だがマルグリットは、そんなブリュイの不満にも至らない小さなささくれを、ずっと見抜いていたのだろう。しかしそれを正面から伝えたところで恐らく彼はぴんとこないだろうし、かといって強引に直させる類のものでもない
と思っていたに違いない。ブリュイは心底から湧き上がるじわじわとした温もりと、下半身に直接刺激を与える
彼女の淫靡な表情で気が狂いそうだった。
――このまま、狂ってしまってもいい
彼女を抱いていると、そういう気分にすらなった。
ブリュイはマルグリットの体を起こし、自分がかわりに横たわった。首を傾けて彼女を見やり、重なるよう指示する。
よろよろとマルグリットは従い、ブリュイの肉体へと覆いかぶさった。軽く口付ける。
「顔をそちらに向けなさい」
尻を見せろといっているのだ。今度は台詞がすべることも、上ずることもなかった。ただ、弾けるような興奮は
変わらない。じき、マルグリットの尻が顔の上に訪れた。白い二つの山は、乳房とはまた違った魅力をたたえている。
若い頃は谷間を見ただけでも興奮したものだが――無論、いまだに好きではある――、今は尻のほうが好みだった。
ブリュイはあえて何も命じなかった。ただ、自分は彼女のまるく弧を描く白い尻肉へ、その両手を這わせた。
体が跳ねそうになり、マルグリットの腰がくねる。甘い声があがった。自分の一物に、熱を感じる。口に含もうと
しているのだろう、指がそれをつまむ感触があった。
「だめだ」
だがブリュイは彼女の奉仕を蹴った。蜜の詰まった桃のような、しかし掌に十分な弾力を返してくる尻をもみこみながら、
太ももの内側を舐める。
「指示していないことはするな」
「で、でも」
「好きにしていいんだろう」
彼女の声は熱っぽく、今にも泣き出しそうな色を含んでいた。だが今のブリュイは残酷だった。できる限りこの女を、
陵辱してやりたい。汚しぬいてやりたい。自分の色に染め上げて、他の男になど二度と触れられぬようにしてやりたかった。
ブリュイの視線は喘ぐ彼女の下半身を辿り始めた。尻溝、その谷間の菊座までびっしりと生えた陰毛。ふっと
鼻で笑う声だけがマルグリットに伝わる。拒否する言葉はなかった。ただ、鼻を鳴らす声と、肉棒にかかる熱い吐息が、
彼女の恥じらいと欲情を示していた。
更にその下、きゅっと閉じた花弁へと視線は到達した。かなり色濃く充血したそこは、指で軽く開いただけで
どろりと蜜を垂らした。指で表面をしばらくなぞり、彼女の震える体を楽しむ。ちょうど谷底にあたる部分では
ぱんぱんに膨れた陰核が愛撫を待ち望んでいた。割れ目からの露をたっぷりと塗りこんでやると、マルグリットの
唇からとめどない悲鳴がこぼれた。
「ひいっ、あ、あ、ああ」
彼女の上半身が崩れ、乳房が竿を覆う感覚があった。柔らかなそれをすりつけ、勃ち上がったそれを倒そうと
するかのように身悶えている。奉仕が目的というよりは、腕をついていられなくなったといった風だ。
「身を起こしていろ。やめるぞ」
厳しくブリュイはいった。海で部下に指示を出しているとき、そして自分に対して何かを強いているとき、
ちょうどこのような物言いをしているかもしれない。マルグリットはおびえたような泣き声で、はい、とこたえた。
よくできた、という誉め言葉のかわりに、無遠慮に彼女の秘所へ指をねじ込んだ。どろどろに溶けたそこは熱く、
掻き出しても掻き出しても愛液が尽きることはない。むしろそれは量を増やし、ブリュイの激しい指の抽挿に耐えていた。
547 :
真珠の囁き6:2009/04/03(金) 21:16:41 ID:+ENos6MK
「あっ、あ、フランソワ、あっ、ひっ」
ブリュイの股間に、ぼたぼたとぬるい水が落ちてきた。涎だ。涙もまじっているかもしれない。鼻声になっているあたり、
かなりぐずっているのだろう。顔は見えなくとも、わかる。それだけ自分は彼女を見つめてきたのだ。だからこそ
それが、決して悲しみや裏切りを感じているものでないことも悟ることができた。常日頃鈍感と罵られるブリュイにとって
それは、本当に珍しいことだった。
飢えていた。ブリュイはまだ使い込んでいない花弁を、片手で押し広げた。指を引き抜き、空洞を見据える。
「よく見える」
言葉責めができるほど多弁ではない彼は、とろとろと蜜をこぼす洞穴をじっと見据えることにした。それだけで
マルグリットは身を焼くような恥辱に襲われる。
しばらくそうして彼女の震えを楽しんでいると、その首がブリュイを振り返った。
「あ、あなた、おね、おねがい」
たどたどしく彼女はいった。指を女穴へ差し込み、軽く指を曲げる。がくん、と崩れそうになりながらも彼女は
必死にブリュイを見つめた。
「さ、触らせてください。ご奉仕、させて、ください」
舌が痺れてしまったような調子で続けるマルグリット。ブリュイが先ほど触るなと命じたのは、彼女の口淫の様子からして、
不慣れで味もいいものではないからだろうと考えたせいもあった。しかしそれはかえって、彼女にとって残酷だったらしい。
「……そんなに触りたいのか」
ブリュイは少し考えて、尻溝を撫でながら答えた。
「では、手を使わないでやってみろ。そのくらい、してくれるな」
彼女の経験は、決して多くはない。それは手つきや態度でわかる。しかし、どうにかしてブリュイは彼女に意地悪が
したかった。一度だけでも構わないから、彼女が必死に自分を求めてくる様を見たかった。まるで蝶々のように
ひらひらと、華やかに、自由に舞う彼女を、まるでその羽をむしりとるように堕落させてやりたかったのだ。
マルグリットは意のままに動いた。自慢にもなるだろう大きな乳房でブリュイのものをはさむと、緩慢に
上下させ始める。ブリュイはようやく自分にも訪れた肉体の刺激に、少しばかり目を細めた。
「どんな風に、しているか、説明するんだ」
予想よりも激しく、マルグリットは彼を求めてきた。もうだいぶ『壊れて』きているのかもしれない。ブリュイは
蜜壷をいたぶりながら、彼女の返答を待った。
「あっ、あ……、……おっぱい、で……おっぱいではさんで、います」
「何を」
「あっ、ひ……あなたの……その……おおきくて、かたい」
言葉を詰まらせた。指を差し入れたまま、あいたほうの親指で陰核をぐりりとひねってやる。ひときわ激しい嬌声が
上がった。
「なんというか、知らないわけじゃないだろう」
ぶるぶると麻痺したようにのけぞる彼女を無視して、ブリュイはパールピンクの肉芽をひたすらいたぶりだした。
周囲をくるくると辿っては、中心の丸みをねちねちとつつく。そのたびにマルグリットは獣のような声を上げ、
ブリュイの肉体へしがんだ。
「……ああ、そんなこと、いわせないで……。……おちんちん、です」
これがあの、勝気で、はねっかえりにすら見える、マルグリットなのだろうか。普段の自分――いや、以前の
自分ならば、恐らく疑っただろう。そしてその媚態に生まれるほの暗い欲求も、何を考えているのだと振り払っていたに
違いない。彼女を貶める肉欲など、きっと叩き潰してしまえた。
しかし妻の愛は、彼の欲望を許した。だからこそブリュイは、箍を失ったように彼女を苛んでいるのだ。
マルグリットは恐らく今にも達しそうなのだろう、ブリュイの愛撫に小刻みに痙攣を繰り返しながら、しかし
必死に腕を突っ張って抗っている。乳房をゆらゆらとすりあわせ、突き出た先端を舌先でねぶりあげ、手を使わずに
首を動かす。中ほどまでくわえ込んでは離し、頬ずりをしては吐息をかけた。
不思議なことに、ブリュイへの奉仕が過熱するたびマルグリットの秘所は濡れそぼった。何も手を加えずとも、
だらだらといやらしい愛液をこぼし続ける。
ブリュイはどうにも彼女の顔が見たくなって、体を起こすよういった。顔を向けさせる。腕を引っ張り、抱き寄せた。
乳房と胸板が触れ合う。重いと思ったのか、身を浮かせようとする彼女を引き止めた。心臓の音がする。かなりの
早鐘だ。汗ばんだ肌に、髪の毛がへばりついている。
ブリュイは愛しげに、妻の額に何度も口づけた。髪を指で梳き、撫で、かわいがった。
548 :
真珠の囁き7:2009/04/03(金) 21:17:41 ID:+ENos6MK
「股を開くんだ」
マルグリットはまるで生まれたばかりの馬や牛のように脚をふるわせ、彼の声に従った。
「いい子だ」
囁いてやると、マルグリットはうれしそうに目を細めた。切なげに体をゆすり、ブリュイの次の言葉を待っている。
彼はマルグリットの尻を抱え、自分のものを反り返らせた上から割れ目を重ね合わせた。陰毛が時折すれ、
くすぐったさがやってくる。粘着質な音は彼女の女陰が原因だった。
「あっ、ああ、そこお」
いやいやをするようにブリュイの胸へ頬をすりつけ、彼女は媚びた。無論そのようなつもりはないのかもしれないが、
それがブリュイにとってはかわいくてならなかった。
マルグリットの陰核が、彼のものをぬらしていく。無尽蔵なのかと思われるほどに分泌される牝の汁は、
彼女の瞳を淫蕩としたものに変化させた。
「ああ、フランソワ、すきよ、すき、すき」
名前のすべても呼べぬほど、彼女の崩壊は進んでいた。ブリュイはそれでもマルグリットを起き上がらせ、膝を
つかせた。天井に向かってすらりと伸びた体へ、重たげな乳房が従う。下から見上げると、改めて色気のある体だと思われた。
ブリュイのほうも、そろそろ限界だった。少し遅漏の気がある彼にしては珍しい。また、我慢することも慣れている。
だが、今彼の脳裏にあるのは、目の前にいる女を犯したいという原初的な欲求だけだった。犯して、狂わせ、
孕ませて、自分のものにしたい。支配欲と嗜虐欲だけが、彼を突き動かしていた。
「君が、悪いんだ」
ぽつりと彼はいった。そのままマルグリットの尻を掴み、ぐんと引き寄せる。一気に貫いた。それを反動にして、
ブリュイは起き上がった。そのまま後方へ押し倒す。
「君が私を壊したんだ」
それは決して、彼女を批難する言葉ではなかった。ただ、事実としていった。それだけのことだ。マルグリットは
薄っすらと笑みを浮かべ、ぴくぴくと唇を震わせている。口の中から、は、は、と短く呼吸が漏れていた。どうやら、
一突きで達してしまったらしい。
「フラン、ソワ、ポー……ル」
彼女のがくがくと揺れる指先が、ブリュイの乳首をきゅっととらえた。反対の手は首筋に絡みつき、荒い呼吸とともに
耳たぶへと言葉がかかる。
「いっしょ、ね」
意図を察することができず、ブリュイは間近に妻の瞳を見つめた。
「わた、しも、あなたに、壊れちゃってる、の」
呼吸のたびにうねる女肉に、彼女の愛しげな声色に、ブリュイの中でまた何かが砕けた。制御する力も心も、
残っていない。まるで錨索を下ろした艦がそうするように、幾度もブリュイは彼女の中へと突き入った。
まだ達して間もない彼女の肉体は度重なる蹂躙に熱を帯び、更なる絶頂へとのぼっていく。ブリュイの背中に
縋るように腕をまわし、自らも腰を揺り動かした。肉のぶつかりあう乾いた、しかし激しい音がする。
嵐のような交合だった。尻に赤く痣を残したいがためにするかのようなストロークに、マルグリットはすっかり
『壊れて』いた。膝を抱え上げられ、何度達しても決して許されることはない。彼が満足するまで、彼がいいというまで、
彼女はただ踊らされる。
それでいい、と思っていたのは互いだった。媚肉は彼の怒張を幾度も受け入れ、液体でその要求にこたえる。
「あ、あ、やっ、だめ」
何度達したのだろうか、ブリュイにはわからなかったが、彼女が突然否定の言葉を吐いた。うわごとのようなそれは
ブリュイに発せられたものではないらしい。構わず体を揺り動かした。
「あっ、あ、でちゃう、もれちゃう、もれちゃうっ」
ひときわ強く腰を打ちつけたとき、それは起きた。ぶしゅっと短い音がして、股間に生暖かい感触が広がる。
「やっ、変、あ、こんな、ごめん、なさい」
潮だった。ブリュイは快楽の度合いを示すそれに、深いよろこびを感じた。この女がすっかり、自分の肉体を
気に入っている証拠だった。ブリュイは深々と、彼女の唇を貪った。
それに伴って、彼の臨界点も訪れた。ぐずぐずとなぶっていた腰を再び、直線的な運動へと戻す。喜悦に踊る
彼女の身もまた、その運動を返す。互いの体が、心が、まじわっていた。
549 :
真珠の囁き8:2009/04/03(金) 21:18:13 ID:+ENos6MK
「ああ、マルグリッ、ト、っく、ぞ」
ブリュイはようやく、己の楔に開放を命じた。一番奥深く、子宮近くまで届くのではないかと思われるほどの場所で、
白濁を吐き出す。歯を軋らせ、瞬間的に全身を駆け巡る快楽に身をゆだねた。
同時にマルグリットが、長く甘い悲鳴を上げた。両脚を腰に絡め、内部の震えと同じように肉体をわななかせる。
顎をそらし、飲みきれなかった唾液を溢れかえらせた。
しばらくそのまま、二人は崩れて動けなかった。荒い呼吸が合っている。男と女の、情交のにおいだけが残った。
先に力を取り戻したブリュイは、妻から己を引き抜いた。
ぐったりと横たわる彼女の股間はぽっかりと口を開いていたが、ブリュイを失うと放屁のような音をたてた。
恥ずかしそうに、マルグリットが腕で目元を覆う。空気が入ったのだろう。息もつかせぬ勢いで彼は犯していた。
当然といえば当然だ。
――や、やってしまった
ようやく本当の意味で冷静になり、ブリュイは我に返った。妻の潤んだ瞳が自分を見上げてくる。水に長く
さらされた藁のようにしなだれたその体を、そっと抱き寄せた。
「……その」
頬をかき、ブリュイは疲弊した体を鼓舞した。
「すまない」
また謝ってしまった、と気づいたときには遅かった。しかし妻はただ、弱々しくくすりと笑うばかりだ。まだ十分に
力が入らないらしい指先が伸びてくる。ブリュイの頬を、愛しげになぞった。
「また、謝る、のね」
それは先ほどきいた言葉とは、まったく意味が異なっていた。マルグリットは額をブリュイの首筋にすりつけ、
瞼を閉じた。
「ずっと」
彼女の髪を撫でていると、不意に言葉が返ってきた。
「ずっと私といてください」
ブリュイはしばし沈黙し、顔を覗き込んだ。様子をうかがうような目をしていたのだろう、マルグリットが呆れたように
眉をたわめる。
「……疑うんですか」
「いや、その」
「じゃあ何です」
会話のうち、彼女は徐々に力を取り戻しはじめたようだ。呼吸は落ち着いている。
「……私もそうあればいいと、思っている」
ブリュイはいって、マルグリットの体を抱き寄せた。瞳を交わす。唇を重ねた。欲望よりも緩慢に、愛着よりも
性急に、貪りあう。指を絡め、互いを確かめあった。
今宵からは、天井画を見なくて済みそうだ。ブリュイは瞼を閉じ、彼女と共に横たわった。
550 :
520:2009/04/03(金) 21:20:59 ID:+ENos6MK
以上で終了です。
愛あるセックスではありますが、「絹の糸」よりはハードめなので、
苦手な方がいらっしゃいましたら申し訳ありませんorz
他にもフランス革命期、ナポレオン帝政期には好きな軍人(夫婦単位)が多いので、
是非またの機会には、投下させていただけたらなと思います。
お読みくださった方、ありがとうございました。
551 :
520:2009/04/03(金) 21:24:12 ID:+ENos6MK
申し訳ありません、補足です。
絹の糸→エジプト遠征よりちょっとあと
真珠の囁き→フランス革命前
です。
「なんで貴族同士がこんな悠々と暮らしてるんだ」と思われた方、
時代がわかりにくくて申しわけありませんでした。
GOODJOB!!
……これはエロい
読後に余韻が残る
大変面白かったです
神が降臨しているとは
GJ
GJ!
読み応えあるな
ご馳走さま
2作ともよかった
貪るように読んでしまったよ
GJ!
ただ欲をいうと
文章が詰まってきつい気がする
素敵な作品でした
う、うめぇ…。
559 :
520:2009/04/07(火) 00:37:41 ID:nWIe6g9O
わああレスがこんなにも……すごくうれしいです。ありがとうございます。
また新たに執筆しておりますので、恐らく今しばらくの時間を頂戴しますが、
いずれ投下させていただけたらと思っています。
>>556 参考にさせていただきたいのですが、具体的にどのようにしたら読みやすいですか?
一文章をもう少し早めに改行するとかでしょうか。よろしければご助言お願いします。
過疎スレが賑わっていてうれしいw
>>559 よかったです。
次回作もwktkで待ってます!
賑わってるな
保守
圧縮に備えて
やっべ、EU2でオナニーMOD作るために登場人物の年齢調べてたら
史上結婚した連中よりもそれっぽい妄想が湧いてきて困るwwwww