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>>26 靄(もや)のかかる視界。
誰かの声が聞こえる。
翠星石の視界から靄が取り払われる。
誰かの顔が自分の顔を覗き込んでくるのが判る。
ああ、この視線は、この香りは、この暖かさは・・・
(やっと起きたね、翠星石)
んん、蒼星石・・・もう朝ですか?
(なに言ってるのさ くすくす)
・・・ああ、そうでした、私、蒼星石の膝枕でお昼寝してたんでしたね。
(そうだよ、お姫様。まだ目が覚めていないようだね?)
そうですよ・・・だからちゃんと・・・目覚めさせて欲しいです。
(もぅ・・・しょうがないなぁ くすっ)
私は目をつむりながら蒼星石の首すじに手を回す。
蒼星石は私の身体を優しく抱いてくれる。
そして微笑みながら目をつむり、私と唇を重ねてくれる。
私の舌が蒼星石の口の中で彼女を探し、彼女も私を探し答えてくれる。
目覚めの陶酔に導こうとする彼女の舌と、甘美な陶酔に酔いしれたい私の舌。
でもいつも私の負け。
私の誘いを上手く交わして、私を目覚めに誘い出す。
そう・・・いつも私の口内から・・・私から・・・上手くさよならして行くんですから・・・
(・・・ぷぁ・・・さぁ、目を覚まして。僕の大事なお姫様・・・)
はふぅ・・・いつもそんなことばっかり言って・・・ずるいですよ。
そして私達は、庭園の薔薇の手入れをしながら話をする。
幸せです・・・この時間がずっと続けばいいのに。
(そういう訳にもいかないよ。もう少ししたら僕達も、このフィールドを後にしなくちゃならないんだから)
もぅ!ラプラスの言う事なんかほっとけばいいんです!
(だけど・・・金糸雀や水銀燈・・・それにこの前誕生したって言う子はもう・・・出てるんだよ?)
お前は心配しすぎなのですよ。目覚めや出会いが全て重ならない限り、アリスゲームは始まらないのですから。
(・・・姉さんは、翠星石はお父様に逢いたくはないの?)
もちろん逢いたいですよ?でも今は・・・この時間を大事にしたいです。
(・・・ふふっ、翠星石らしいね)
それに、誰があの子達を最後まで見送ってやれるですか?最後にここを出るのは私達でいいのですよ。
(翠星石・・・優しいね、君は本当に)
な、何言うですかこの子は・・・
(ふふ。 さぁ、手入れも終わったし、部屋に戻ろう。真紅と雛苺が待ってるよ)
そうですね・・・あの子はほんとお茶の時間にうるさいですから♪
(早くしないとアフタヌーンティーのお茶菓子、全部雛苺に食べられちゃうものね♪)
騒がしくも楽しいお茶のひと時。
こうしてると、いずれ私達が争わなければいけないなんて・・・とても思えなくなる。
そして私達はお茶の時間を終えて、それぞれの時間を過ごし始める。
窓から下の広い庭園には、私と蒼星石が手がけた色とりどりの薔薇達が、
優しい風にそよがれて、楽しそうに揺れているのが見える。
こうして見てると、本当に薔薇達が活き活きしてるのが良く分かるですねぇ。
(姉さんの如雨露と、僕の鋏であの子達を手入れしてあげてるから、それに答えてくれてるんだよ)
あの薔薇全てに囲まれて・・・幸せな日々を暮らせれば、みんな争うことなんて・・・
(・・・!そうだ。待ってて、翠星石はここに居ててね!)
そういうと蒼星石は私を窓辺に残して居なくなる。
その言葉どおりしばらく待っていても、あの子は戻ってこない。
少し不安になってあの子の名前を呼ぼうとした時、頭の中に声が響いてきた。
私と蒼星石が鏡映しの双子だからだろうか、時々こういう事が出来る。
(翠星石・・・お待たせ)
!どこです、蒼星石?!姿を見せるです。
(そこから廊下に出て。・・・そう、そのまま真っ直ぐ。その部屋に入って・・・)
もう・・・姉をからかうですか?入ったけど、ここはラプラスが趣味で集めた油絵のキャンパスしかない部屋ですー!
(そう怒らないで、僕のお姫様。じゃあ、その窓のカーテンを開けて、窓から下を覗いてみて)
まったく、急に居なくなったと思ったら何を一体企んでるのですか・・・ ・・・!!?
その窓の下には・・・
私の視界には・・・
色とりどりの薔薇達が・・・
庭園一面を埋め尽くしている薔薇達が・・・
私の瞳に映りこんできた・・・
その中心には・・・
私の妹が・・・
蒼星石が・・・
笑顔で両手を広げ・・・
私を見つめてくれていた・・・
こ・・・これは?・・・なんでこんなに・・・
(僕からのプレゼントだよ、翠星石・・・薔薇達にお願いして集まってもらったんだ)
なんで・・・急にこんな事を・・・
(これが僕の今の気持ちさ、翠星石。 僕は君が大好き・・・君の優しさが大好き・・・)
蒼星 石・・・
(だから、百万本の薔薇の花を・・・貴女に捧げます。 枯れる事のない貴女の優しさに・・・薔薇の花を捧げます)
そ ぅ 蒼星・・・石・・・
(いつまでも・・・いつまでも一緒だよ翠星石。 僕が争いから守ってあげる・・・)
蒼星石っ!
私は窓から身を乗り出し、蒼星石に抱きついた。
フィールドの浮遊力が柔らかく私の身体を蒼星石の身体まで送り届け・・・
蒼星石は私の身体を優しく包み込んでくれた・・・
涙が溢れる。嗚咽が洩れる。
私の妹は、これほどまで私を愛してくれて・・・包み込んでくれる。
蒼星石 蒼星石っ!・・・わ、わたしも・・・私も 大好き っ・・・で す ぅ・・・
(僕もだよ・・・姉さん・・・僕の大好きな・・・翠星石 僕が守りたい・・・お姫様)
私の視界が再び靄に包まれる。
この時間が再び・・・閉じられる。
私の想いが・・・閉じられてゆく・・・