1 :
大:
前スレ投下中に、書き込めなくなりました。
512kbを越えた様ですね。
>>1遅くなりましたが、乙です。
チャングム×チョンホ、逃亡編再度投下します。
4 :
鴨緑江の向う側1:2006/08/04(金) 00:25:20 ID:2HLRZVd3
(私?……眠っていたの?……ここはどこ?……)
薄暗い岩屋の中で、チャングムは目を覚ました―――しかし、そこには誰の姿も無い。
唯一つ、蝋燭の灯火だけが岩屋の中を照らしている。
(夢を見ていたの?私……チョンホ様はどこへ?)
もうすぐ日が暮れるのに、一緒に逃げた筈のチョンホの姿は何処にも見当たらない。
探しに行こうか?――そう思ってみたが、疲れ切った体が言う事を聞いてくれない。
夕べ王宮を出た時から、水も食べ物も口にしていなかった事を思い出した。
チャングムは膝を抱え、ぼんやりと蝋燭の炎を眺めていた。
村で聞いた『中宗王崩御』の知らせ―――気がかりだった。
(王様……あれからどうなさったのだろう?安らかな御最後だったのかしら……)
「チャングムさん――目が覚めたのですか?」
いつの間にか、岩屋の入り口にミン・ジョンホは戻って来ていた。
「チョンホ様……どちらへ?」
「今の季節、山の中は寒い。薪を探しに行っていたのです」
「そうだったのですか……私を置いて行かれたのかと思いました……」
ぼんやりと目覚めたばかりのチャングムの言葉に、チョンホは戸惑った。
(捨てられたとでも、思っていたのか?……ほんの少し、側を離れただけのつもりだったのに……)
5 :
鴨緑江の向う側2:2006/08/04(金) 00:26:19 ID:2HLRZVd3
「置いて行くだなんて……チャングムさん、どうしたのですか?あなたを置いて行く筈がないでしょう。
顔色が悪い……送ってくれた内侍に聞きましたよ。夕べから何も食べていないそうですね」
「ええ……そんな気になれなくて……」
「内侍が、そっと教えてくれました。
連れ出された船の上で、最初あなたは激しく抵抗したが、その後は黙ったまま食べも飲みもして下さらないと……
内侍は弱り果てていましたよ」
「動揺していたのです……余りにも急で」
「王様の事が気になるのですね?」
「ええ……皆の事も、王様の事も……主治医として最後までお役目も果たせずに……苦しまずに逝かれたのだろうかと」
岩屋の中から、チャングムは遠くの空を見つめていた―――その空の先には中宗王がいた都がある。
そんなチャングムの姿を見たチョンホは、目を伏せて淋しそうに少しだけ笑った。
(愚か者だな、私は……この人が王の名を口にする度に、心がこうも落ち着かないとは……)
「何か食べませんか?体に毒ですよ」
「ええ……そうですね」
「私はその間に火を熾します。ゆっくり休んで下さい。疲れたでしょう?」
チャングムは、チョンホから渡された食べ物と水を僅かばかり口にした。
余り食欲は感じ無かったが、それを口にすると、少しばかり気が満ちるのを感じた。
火を熾すチョンホの横顔をチャングムは黙って見つめていた。
チョンホ様は、少し痩せた様だ―――慣れない暮らしの所為なのだろうか?そう、自分の為に、この人を犠牲にしてしまった。
それでも、自分への思い故に耐えていたのだろうか?
じっと見つめるチャングムの瞳に、チョンホは戸惑った。
「どうしたのです?私の顔に何かついていますか?」
「いいえ……チョンホ様……少しお痩せになった様だと……」
自分の身を案じるチャングムの言葉に、チョンホは微笑みながら答えた。
「体は至って元気ですよ。元気で過ごさなければ、医女チャングムに叱られてしまうから」
「まあ!フフフ……そんな事を仰るなんて、私は随分、口うるさい女だと思われているのでしょうか?」
「えっ!いいえ、そんなつもりでは……あなたに再び逢える事を信じない訳ではありませんでしたが、本当に再会出来るとは……。
半ば諦めながらも、望みは捨てずにいました―――もう一度、あなたに逢えたらと………
その時、私が元気でいなければ、きっとあなたを心配させてしまうだろうと……そう、思っていました」
「何もかも忘れた―――そう、仰ったのに……チョンホ様は、本当に私の事を忘れようとなさっているのだと思っていました。
私とは、もう逢って下さらないのだと……私も同じです。それでもあなたを諦めきれなかった。
王宮の何処にいても、あなたを探してしまう……書庫へ入っても、あなたの気配を感じてしまう……いるはずも無いのに
……あなたのいない王宮は淋しく、医女の仕事に打ち込む事だけが総てでした」
チョンホのいない王宮での生活――――
チャングムは、どれほど王の寵愛と信頼を得ても、決して心は満たされる事の無かった年月を思い出していた。
医女の仕事―――それが無ければ、自分は生ける屍と何も変わりは無かっただろう。医術だけが心の支えだった。
6 :
鴨緑江の向う側3:2006/08/04(金) 00:27:12 ID:2HLRZVd3
「忘れました―――確かにそう言いましたね。あの時は、そう言うしかありませんでした。
だが、忘れられない……忘れてしまえば、楽になれるのか……いや、苦しみは増すばかりでした。
あなたのノリゲを見る度に、あなたはどうしているのだろうかと……そればかりを考え……
時が経つにつれ、あなたを側室にせず主治医とした王様の心も信じられず……あれ程あなたを愛した王様が、今頃、あなたを
後宮に入れてしまったのではないかと疑った事もありました。
そして、中宗王の様な情け深い立派な方に想いを寄せられて、それに抗う女人がいるであろうかと……
あなたの事さえ、疑ってしまったのです―――あなたが王様の事を口にする度に、いつの間にか嫉妬心に捉われている。
私は、救い様の無い愚か者です……私の告げた一言で、あなたが苦しむ事になるとは……許して下さい。
忘れる事も出来ないクセに、あなたを悲しみに沈めてしまった……」
「チョンホ様――あなたを苦しめたのは、私です。許しを請うのは私の方です」
嫉妬心―――そんな心の弱さを見せるミン・ジョンホの姿を初めて目にした……チャングムは、自分を責めずにいられなかった。
(思いやり深く、優しい方……そう思い、いつまでも甘えていたのは私の方ではなかろうか?)
燃え盛る炎を挟んで、二人は俯いたまま、言葉を失っていた。
離れていた時の流れは、余りにも永く二人を引き裂いた。
失われた空白を埋めるには、今少し、時を待たねばならないのだろうか――チョンホは、そう思っていた。
「覚えていますか?前にもこうして過ごした事がありましたね」
「済州島で?同じ岩屋の中でしたね……よく、覚えています。チョンホ様は、私を助けて下さった」
「いいえ、助けられたのは私の方です。あなたがいなければ、今頃こうしてはいなかったかもしれない。
山を下りる時、私は、二度とあなたの手を離すまいと誓っていました。しかし、里が近づくとあなたは手を離してしまった。
私の立場を思ってくれる気持ちは嬉しくもあり、そして、あなたを守りきれない自分に悲しくもありました。
それでも、心の中で私達の手は繋がれていると……そう信じていました」
「チョンホ様……」
「梨浦の渡しで、再びあなたの手を取る事が出来た――あの時は嬉しかった。済州島でのあの日が蘇る様でした。
しかし、あなたは私の手を離れ、私達は宮中に戻る以外に道は無くなってしまった。
そして、今度はあなたが三水に向う私の手を取ろうとしてくれた。なのに、離すまいと誓った手を三度目に離してしまったのは
私だったのです……」
「あの時はそうするしかなかった……それが、あなたの思いやりだったと解っています」
「チャングムさん、私はもう離しません。あなたの手を離す事は決してありません」
「チョンホ様……私もです。あなたの手を離す事は致しません……決して……」
7 :
鴨緑江の向う側4:2006/08/04(金) 00:27:59 ID:2HLRZVd3
「チャングムさん。一緒に明国へ行っていただけますね?」
「チョンホ様……」
「明国は、この山の下を流れる鴨緑江(アムノクカン)の向こう側にあります」
「チョンホ様、どうしても明国へ行かなければならないのでしょうか?」
「何故です?行くのは嫌なのですか?」
「王様のご命令でも……この国を……朝鮮を捨ててしまわなければならないのでしょうか?皆のいるこの国を……」
「確かに、王様の最後のご命令は、あなたと明国へ逃げる事です。
ですが、王命であっても、王命で無くても、あなたを明にお連れしたい。
明国は、この朝鮮より何倍も広い国です。多くの民族が入り混じり、渡来人も多い。
医術も進んでいる国です。医女を志すあなたには、またと無い修行の場となる事でしょう。
それにこの国に残るには、今はまだ危険すぎます。ほとぼりがさめるまで身を隠した方が安全でしょう。
王様もそう思って、この命令を下されたのでしょう。明へ行く事は、必ずあなたの役に立つと――」
「チョンホ様、解りました。一緒に明国へ参ります」
「そして、また一緒に戻って来ましょう……ここは、私達の生まれた国なのですから」
そこまで話した時、ミン・ジョンホは中宗王の事を想った。
(自分で話してみて、今漸く王様の心が理解出来る―――王様が、どれだけこの人を大事に思っていたのか……
最後の時、どれだけこの人にいて欲しいと思っておられたか……それでも、御一人で逝かれてしまった。
憎い相手であろう私に、この人を託して下さったのだ……)
愚かな嫉妬心を忘れ、チャングムを無事に明国へ連れて行こう―――チョンホは、そう決心した。
「夜が明けたら、明に向かいましょう。手配書が回っているので渡し場は避けた方がいい。
渡し守を雇って鴨緑江を渡れば、誰にも気づかれる事は無い」
「思ったよりも近いのですね。それでも、歩いて渡るには遠いのですか?」
チャングムの質問に、チョンホは微笑みながら答えた。
「歩いて渡りたければ、あなたの父上が母上になさった様に、向こう岸まで『飛び石』でも置きましょうか?」
「飛び石?――チョンホ様が出来ると仰るのなら、反対は致しません」
「えっ!私が言い出した事ですが、それは少々辛いですね……」
「まぁ!辛いのなら、初めからそう仰って下さい。それでは、別の方法をお願い致します」
『別の方法』――そう言われて、チョンホは、チャングムが本当に歩いて川を渡るつもりなのかと思った。
(船を使わずに、行きたいのか?……この人なら、なんでも遣り遂げてしまいそうだ)
8 :
鴨緑江の向う側5:2006/08/04(金) 00:28:45 ID:2HLRZVd3
「チャングムさん……どんな方法を望んでいるのです?」
チャングムは、少し俯いて微笑んだ。そして、俯いたまま、チョンホの問いに答えた。
「あの時の様に……あの雪の中の様に……手を貸していただけませんか?」
「雪の中?一緒に逃げたあの時の事ですか?」
チャングムは立ち上がり、目を伏せたまま、チョンホの後ろ側に来た。
「あの時の様に、私に背中を貸して下さいますか?」
そう言うと、チョンホの背中にそっと凭れた―――
「あっ――!チャングムさん……」
「こんな事をして、迷惑ですか?チョンホ様」
「いいえ……迷惑などと……ただ……」
「ただ?ただ、何でしょう?」
「ただ……少し、重い……」
「まあっ!耐えられない位に重いですか?私……」
『重いですか?』―――そう心配しながら尋ねるチャングムに、チョンホは笑った。
「ウソですよ……重い筈は無い……あなたを背負っていても、雪の中でも、ちゃんと歩いて行けたでしょう?」
「冗談だったのですか?酷い方です……私は、本当に重いのかと」
「あなたが望むなら、背負ってだって鴨緑江を渡りますよ」
「いいえ……やはり、背負っていただかなくても結構です。今の季節、川の水はとても冷たいですから……
こうして、暫くお背中を貸していて下さい。それ以上の望みはありません」
チョンホと別れてから、チャングムは時々夢を見た―――
雪の中、チョンホが自分を背負い、楽しそうに笑いながら歩いて行く……何処までも続く真っ白い雪の中を
そして目が覚め、チョンホの姿は無いのだと……もう、自分の側にはいないのだと……そう気づくと、決まって涙を零した。
だが、それはもう覚めれば消える夢では無い……チョンホの背中は、ここにある。
チョンホは、自分の背中に広がるチャングムの柔らかい感触に少し戸惑っていた―――
その感触は、あの日雪の中で感じたものと同じだった。
それは、もう蘇る事は無い……一度は忘れようとした感触だった。
無理にでも忘れ様としたそれは、自分の背中いっぱいに広がっている。
チョンホは、首に回されたチャングムの手をゆっくりと解くと、チャングムの体を自分の方へ引き寄せた。
向き合った二人は、暫くお互いを見つめ合い……そして、二人の唇は自然に重なった。
永い口づけが終わり、二人の唇が離れた時に、チョンホはチャングムに訊いた。
「あなたは背中を貸すだけで良いと……それ以上の望みは無いと言う……では、私がそれ以上を望んでも構いませんか?」
「チョンホ様。私は、もう主治医のチャングムではありません。あなただけのものです」
離れて暮らした空白の時間を埋める様に、二人の唇は、再び重なった―――
9 :
鴨緑江の向う側6:2006/08/04(金) 00:29:46 ID:2HLRZVd3
炎が岩肌を明るく照らし、二つの影が重なった―――
冷たい岩の褥の上にあっても、二人の体は燃え盛る炎よりも熱くお互いを求め合った。
二人は追われる身である事も忘れ、口づけを交わす度に、初めて逢った日から今日までの年月に想いを馳せた。
お互いの気持ちを自覚しながら、幾度もすれ違い、引き裂かれ、叶わぬ想いと諦めた事もあった。
漸く再会した二人は、もうお互いに離れて生きる事など考えられなかった。
チャングムは目を閉じ、チョンホの愛撫に身を任せた。
体の隅々に伝わる柔らかい感触に、チャングムは小さく喘いだ。
初めて感じる甘い感覚に、チャングムの脳裏は、あの雪の日の様に真っ白になっていった。
チョンホの指先は、チャングムの滑らかな肌の上を滑る様に辿り、幾度も夢に思い描いたものを確かめた。
「あっ……」
鈍い痛みを感じた時、チャングムは、チョンホの総てを受け入れた。
岩肌に映る二つの影は、赤く燃え盛る炎と共に大きく揺らいでいた。
自分の意識が何処か遠くへ行こうとしている……体の奥底に、何か熱い物を感じた……
そのまま、チャングムは意識を失ってしまった―――
岩屋の外から吹く冷たい風が、頬を撫でた―――
頬を撫でる風の冷たさに、チャングムは目を覚ました。
頬は冷たくても、体は温もりに包まれている。
「目が覚めましたか?」
チョンホの腕の中で目覚めたチャングムは、まだ夢の中にいた。
「眠ってしまったのですね……私……」
「寒くは無いですか?外の風は冷たい様だ」
「いいえ……少しも……」
チャングムはチョンホの胸に手を当てると、これが夢では無い事を確かめる為に、そっとチョンホの胸元を撫でてみた。
「チョンホ様……やはり、少しお痩せになったみたい……」
「そうですか?あなたが言うのなら、そうなのかな」
「明へ行ったら、何か美味しい物を作りましょうね。何がお好きですか?
ハン尚宮様が教えてくださったチャプチェは、とても美味しいのです。
串焼きを美味しく焼く方法も、ミン尚宮様が教えて下さいました。それから、チャンイが好きだった……」
水刺間での女官達の事を夢中で話すチャングムを見て、チョンホは思った。
(可哀想に……戻りたくて、堪らないのだろう……どれ程、皆に逢いたい事か……)
チョンホは、チャングムを抱きしめると言った。
「水刺間の女官であったあなたに料理を作ってもらえるなんて、とても嬉しい事です。
それでも、私にはあなたがいれば、それで充分幸せなのですよ」
「チョンホ様……」
「うーーん……でも、美味しい物でも食べて、少し太った方が良いのでしょうか?
痩せて頼りない男になると、あなたから見捨てられてしまうのかな?」
「フフフ……また、そんな意地悪を仰るのですね。決して、私から見捨てる事などありません。
チョンホ様も、ずっと私の側にいると、もう一度約束して下さい」
「約束します………十年先も二十年先も百年先も、ずっとあなたの側にいますよ」
二人は、再び唇を重ね、硬く抱き合った。
そのまま、お互いの温もりに包まれ、深い眠りに落ちていく………
岩屋の外の冷たさを、二人は朝まで感じる事は無かった。
夜明けと共に、鴨緑江の流れに沿って、二人は渡し守が待つ場所へと向った。
岸辺を足早に歩いて行くと、ふいにチャングムは立ち止まり、川の流れを見つめた。
川原にしゃがむと、片手をそっと鴨緑江の緩やかな流れに浸した。
川の水は身を切る様に冷たい……冬は、もうそこまでやって来ている。
「水がとても冷たい……」
「ここは、済州島の様に暖かくはありませんよ。真冬になれば、耐え難い程に寒くなります」
「見て下さい。手がこんなに赤くなって……」
チャングムは、赤くなった右手をチョンホに見せた。
チョンホは微笑みながら、チャングムの右手を握った。
「寒ければ、いつでも私が暖かくしてあげますよ」
その言葉を聞いたチャングムは、夕べの事を思い出し、少し赤くなって俯いた。
二人はそのまま手を繋ぎ、渡しに向って歩いて行った―――
小船が岸を離れ、鴨緑江の向こう側を目指して漕ぎ出した時、チャングムは振り返って三水の岸辺を見つめた。
暫く三水の岸辺を眺めていたが、やがて視線を真直ぐに戻し、明国側の向こう岸を見つめた。
(ここを離れる事はとても辛い……でも、チョンホ様と一緒なら、どこへ行こうとも……)
もう、誰の目を気にする事も無い。そして、決して離れる事も無い。
二人の新しい暮らしは、鴨緑江の向こう側に続いている。
即死回避の為、再度書き込みします。
逃亡生活でとリクを頂きましたが、逃亡生活入り口編になりました。
皇后様〜ハルラ山〜鴨緑江と連投させて頂きましたので、
再度修行して、次回はチャングム×チョンホ以外のキャラでと思っています。
感想をいただき、ありがとうございました。
とても上品な作風ですね。
別キャラ仕立ても期待しています。
チョングムがんば☆
☆内容:ノーマル
☆エロ:なし(エロパロ板にもかかわらず、すみません)
プラトニックラブ(クミョンはチョンホ一筋ですから……)
☆3分割投稿
扱っているのは3話〜18話。本編にほぼ忠実ですが、5話と6話の間の話をメインに書いていますので、一部異なる所もあります。
本編と同じく、チャングムが10歳の時はクミョンは年上、それ以外は同年齢としています。
あと、本編には出てきませんが、チョンホはバツイチという設定にしています。
[作者まえがき]
クミョンがチャングムを憎悪するようになったのは、才能への嫉妬+恋の嫉妬…というのが一般的な見方です。
しかし今回私は、もっと複雑な心理があったのではないか?と、過大妄想をしてクミョンの心理を書いてみました。
面白くないかもしれませんが、このSSがきっかけとなって、このカプの妄想をする人や、二次小説を書く人が増えてくれればいいなと思います。
なお、執筆にあたり、様々なブログ、掲示板の意見を参考にさせて頂きました。ありがとうございました。
[1]
クミョンは見てしまった。
あの方とチャングムが話をしている。
宮中は今、疾病騒ぎで、チョン最高尚宮が突然宮中退出となったり、チェ尚宮が臨時の最高尚宮になったりと落ち着きがない。
きっとナウリは、そのことを気遣っているんだわ。 数分後。クミョンはチョンホに出会った。
チョンホはクミョンの顔を見るなりこう言った。
「もしや……。叔父上は朝鮮人参を大量に取引なさっておいでですか?」
「宮中では疾病が流行っています。私のことは気遣って下さらないのですか?」
「それは失礼しました。大丈夫ですか?」
もう話したくない。クミョンは一礼すると足早に立ち去った。
その日の夜、クミョンは一人で宮中の一角に建っている、あずまやに座って、物思いにふけっていた。空には満月が出ている。
今日のナウリ……あの子への態度と私への態度が全然違っていた。思いだしたくもない。
でも、チャングムはハン尚宮様と一緒に、太平館に派遣されている。良かった。当分、あの偽善的な笑顔を見ずに済む。いっそのこと問題に巻き込まれてくれたらいい。そうすれば二度と水刺間に戻って来ない。もう二度と戻って来ないで。
だって、あなたは私の一番大切なものを奪ったんだから。
あの方は私にとって大切な存在。誰かに話すことも、見ることさえも惜しんでいるくらい大切なもの。
そして、チャングム……。あなたは……あなたは私にとっていったい何なの?
昔……まだ私たちが見習いだった頃。今日みたいな月が照らす夜。あなたは、ちょうどこのあずまやで松の実刺しを練習していた。一生懸命なあなたがいじらしくなって、要領を教えてあげたわ。
私は、他の子たちに、目にもの見せてやりたかったから競技会の時にあんなことになったけど……。あなたは仲間外れになってしまったわね。
でも私はいつも一人だった。だから私はあなたに、もっと近づきたかったの。でも、あなたは「おかしいです。間違ってます」って言ったわね。私に面と向かってはっきりものを言ったのは、あなたが初めてだった。
あなたと初めて出会ったのは、私があの方に別れを告げた夜だった。
宣政殿(ソンジョンデン)の殿閣で、私はひそかに礼をしていた。あなたはヨンセンと一緒に突然現れた。
私が事情を説明したら、ヨンセンは「お姉さん、どうかしてるわよ」って言ったから少し腹が立った。だけどあなたは、憧れのような眼差しを私に向けて、「私たちが見張ってますから」って言ってくれたわね。
チャングム、あなたなら……あの日のことを今も秘密にしてくれてるわよね?
……どうして?
どうして、こんなにあなたのことを思い出すの?憎くて憎くて仕方ないはずなのに……。
クミョンの心に、次から次へと、今日までの記憶がよみがえってきた……。
思いは、まだ幼かった日々へとクミョンをいざなった。
[2]
チョン尚宮が最高尚宮に就任した時……。その祝賀会が催された。
調味料に何を使っているか当ててみるように言われた時。チャングムの「熟した柿です」の一言で、クミョンの誇りは傷つけられた。クミョンは、恥ずかしさと悔しさで涙を流した。
しかし、この一件で、クミョンとチャングムの関係が悪化することはなかった。
何故なら、クミョンはチャングムに対抗心を持っていたが、チャングムはクミョンに全く対抗心を持っていなかったからである。
チャングムにとってクミョンは、一目置ける人、憧れの人であった。真夜中に危険をかえりみず、ひそかに礼をして、好きな人に別れを告げたあの時のクミョンは、チャングムには大人びて、そして美しく見えたのである。
日が経つにつれて、クミョンの心のわだかまりは取れ、再び彼女は、チャングムに関心を寄せるようになった。
クミョンは、柿の一件以来、対抗心を燃やし始めた叔母チェ尚宮の指導のもと、料理の修業に励んだ。
一日の仕事が終わると、ほとんど毎日、水刺間で様々な訓練をした。全ての調味料、薬味、塩辛の味を舌に覚えさせた。また、目を閉じて、その分量を正確に、指先の感覚だけで量るようにした。
チャングムも、ハン尚宮の指導のもとで修業に励んでいたので、二人同時に水刺間(スラッカン)に居合わせることが、しばしばあった。
チャングムは、とても変わったことをしていた。
クミョンは少し気になったので、チャングムに何をしているのか聞いてみた。 チャングムは答えた。
「『裏山へ行って、百日間毎日違う種類の山菜を採ってくるように』とハン尚宮様がおっしゃったので、そのようにしているのです」
クミョンは不思議に思った。何故、ハン尚宮様はチャングムに、普通に料理の練習をさせないのだろう……。変わっているわ。
でも、興味もわいた。その日から、クミョンはチャングムの行動や言葉に注目するようになった。
チャングムとヨンセンはとても仲が良いようだ。クミョンは、話に加わりはしないが、いつも二人の会話に、こっそり聞き耳を立てていた。
ある時は、こんな会話を耳にした。
「最近、ハン尚宮様はどうなの?」
「うーん。優しいんだか、怖いんだか、よく分からないわ。あまり話かけて下さらないし、あまり目を合わせて下さらないし」
「そう……。チョン尚宮様は、おんぶや抱っこもして下さるのに……」
二人の会話を聞いてクミョンは思った。
―――ヨンセン、あなた甘ったれてるわ。だいたい何歳になったのよ。チャングムは……私の叔母様は、気難しい方だけど、ハン尚宮様も同じくらい気難しい方よね……よくやっているわ……―――
クミョンは、チャングムに親近感を覚えた。
[3]
また、こんなこともあった。
チェ一族の料理の訓練は、基礎に忠実で伝統に沿ったものであった。繰り返していく毎日に、クミョンは少し飽き飽きしていた。気が滅入ってきていた。
そんなある日、裏山へ出かけようとするチャングムを見た。叔母のチェ尚宮は、今は近くにいない。
衝動に突き動かされたかのようにクミョンはチャングムの後を追った。
「待って!チャングム!」
驚いて振り返り、立ち止まるチャングム。
「何ですか?お姉さん」
「私も、一緒に行ってもいい?」
さらに驚くチャングム。
「駄目ですよ!そんなことしたら、チェ尚宮様に叱られます」
「叱られるのは私だからいいじゃない。それに、あなたが怒られないように、叔母様に言うから」
チャングムは困った顔をした。
「でも……」
「いいのいいの。ほら!行きましょ」
クミョンは、半ば無理矢理、チャングムの背を押して歩き始めた。仕方なくチャングムは、クミョンを連れて山に入った。
今日は、山の奥の方へ入るらしい。
クミョンは、山に登ったことは今までに何回かあるのだが、いつも大人と一緒だった。子供だけで登ったのはこれが初めてだった。 時は新緑の季節。山は青々としていて、草木の薫りに満ちていた。自分たちが、山に飲み込まれてしまうかのように思えて少し怖かった。
道なき道を登っていく。クミョンは少し疲れてしまい、立ち止まった。チャングムは、全く平気みたいだった。
「お姉さん……。大丈夫ですか?」
心配そうにチャングムは言った。
「はぁ……。チャングム……あなたって……何でそんなに元気なの?」
「……私は、宮中に上がる前は、よく山で遊んでいましたから……。それより、無理しない方がいいですよ。ここで引き返した方が……」
「い、いいえ!」
―――それは私の自尊心が許さないの―――
そうして二人は、どんどん山の奥に分け入って行った。
チャングムが突然立ち止まった。
「ここからは、はぐれないようにして下さいね」
そこは、すごい薮(やぶ)だった。
「ええ?」
クミョンはためらった。いかにも何かが出そうな雰囲気だったからだ。
クミョンが立ち尽くしていると、チャングムは手を差し出した。クミョンはさらにためらった。今までに手を繋いだことがあるのは、両親と、大叔母と、叔母くらい。同年代の子供とは、手を繋いだことは全くなかった。
クミョンが、その手をとろうかどうしようか迷っていると、
「お姉さん、どうしたのですか?さあ……」
さらに手を突き出してきた。
クミョンはチャングムの手をとった。
チャングムはクミョンの手を引いて、薮の中を進んでいく。行く先は、クモの巣が張っていたり、つるがふさいだりもしていたが、チャングムはナタのようなもので、それらをバシバシと分断して、道を作っていった。
クミョンはそんなチャングムを、頼もしいと思った。
二人でたくさん山菜を採って、宮中に戻ったころには、日は沈みかけていた。 水刺間に戻ると、チェ尚宮が怖い顔で仁王立ちで待っていた。隣には、ハン尚宮が心配そうな顔で立っていた。
チェ尚宮はクミョンの姿を見ると、鋭い目でにらみつけ、声を張り上げた。
「クミョン!!!」
―――叔母様に怒られる!―――
クミョンは肩をすくめた。
「黙って出て行くとは!私がどんなにお前を捜したか、分かっているのか!」
「お、お許し下さい尚宮様!どんな罰でも受けますから!でも、チャングムは悪くないんです。私が無理矢理ついて行ったのです。だからチャングムのことは、おとがめなさらないで下さい!」
クミョンは今にも泣き出しそうな顔だった。チェ尚宮は、クミョンとチャングムを交互ににらみつけたが
「……分かったのならもう良い!これからは、出ていく時にはきちんと断ってから出ていくように!」
そう言うと、立ち去った。ハン尚宮の方は、ホッとしたような顔になった。
「え……?もう終わりなの?」
クミョンは意外だった。いつもは厳しい叔母様が……?何故?
「お姉さん、良かったですね」
「ええ……。でも、何でだろう?」
クミョンは、その場に残っているハン尚宮の顔を見た。ハン尚宮は穏やかな笑みを返してきた。
―――叔母様とハン尚宮様は、いったい何を話していたのかしら?―――
それは、ずっと分からずじまいだった。
しかし、その日の出来事は、クミョンにとって忘れられない思い出となった。
[4]
それから季節は巡り……クミョンとチャングムは16歳になった。
二人とも、美しい少女に成長していた。
相変わらず二人は、切磋琢磨しながら料理の修業に励んでいた。
また、クミョンのチャングム観察も続いていた。クミョンは、チャングムの一挙手一投足、言動一つ一つに注目していた。
クミョンは、早くも王の御膳を任されていたので(それは見習い生として異例のことだった)、同年代の者たちと接する機会は少なくなっていた。また、そのことで、他の女官たちの羨望(せんぼう)や嫉妬の的になり、孤立を深めていった。
彼女は、他の人間と親しくなろうとはしなかった。親しくなったところで、どうせ誰も自分のことを友達とは思ってくれていないだろうし……とあきらめていたからだった。近づいてくるのは、ヨンノみたいな、チェ一族の権力と財力のおこぼれに預かろうとする者ばかりだった。
それに、何を考えているのか分からない雰囲気が、ますます他の者を遠ざけた。様々な要因が絡んで、彼女はますます孤立を深めていった。
ところで、あの方、つまりミン・ジョンホは、クミョンがひそかに別れを告げてから、ほどなくして結婚したのであるが……。最近、妻と死別した、ということをクミョンは聞いた。
クミョンは心を痛めたが、同時に、再びあの方が自分の所に帰ってきたように思えた。忘れかけていた想いが、再び募り始めるのだった。
チョンホとは、実家に帰った時にたまたま会って、二、三の言葉を交わしたり、宮中で偶然会って少し話をするだけだった。ただそれだけだった。
それだけであったが、それだけでも胸が高鳴った。
―――でも、私は王の女。私は中人(チュンイン)で、あの方は両班(ヤンバン)。この気持ちを誰にも打ち明けることはできず、誰にも知られるわけにはいかず……―――
自分の内に秘めておくしかなかった。ミン・ジョンホと深い絆を結ぶことなど、到底叶わぬ望みだったのだ。
ある日、クミョンは、料理人カン・ドックが宮中に来ているのを見た。
この男は、仕事をしにきたついでに、装飾品などを女官たちに売りつけて帰って行くのだが、クミョンは、そんなインチキくさいものを買う気はさらさらない。叔母から高級な物をいくらでも、もらえるのだから。
しかし今日は。カン・ドックとハン尚宮の会話が耳に入ってきた。
「先ほどの本はなんですか?」
「ああ、明国のつまらない料理の本です。ハン尚宮様にお見せするほどのものではありません。ハハハ……」
カン・ドックは、急いで荷車を引いてその場を立ち去った。
クミョンの目は輝いた。
―――明国の料理の本?だったら見てみたいわ―――
クミョンは、トックの後を追った。
「あの……」
トックは立ち止まった。
「何ですか?」
「先ほどおっしゃっていた本、見せて頂けますか?」
トックは、ニタッと笑うと、荷車の下の方の引き出しから本を出してきてクミョンに渡した。
クミョンは、本をパラパラとめくると、顔を赤らめて、あわてて本を閉じた。そこには……裸の男女が絡み合う絵が、延々と描かれているではないか!
「……あ、あの…これは?」
動揺しているクミョンを見て、トックは察した。
「もしかして……春画をごらんになるのは初めてで?」
「話には聞いていましたが……見たことがなかったもので……」
「ほほう。今からでも遅くありませんよ。しっかり勉強して下さい。いつ殿下のお召しがあっても良いように。男と女の愛のむつび合いを知らずして、王の女とはいえませんからね。この本は、初心者向けですから、ちょうど、あなたのような方にピッタリですよ。いかがです?」
トックは本を差し出した。
クミョンは顔を真っ赤にして
「い、いいえ!結構です!」
逃げるようにして立ち去った。
「うぶな子だな〜」
トックは、ニコニコしてクミョンの後ろ姿を見ていた。
[5]
夜になってもクミョンはドキドキしていた。あの春画の絵が、頭から離れなかった。
―――殿下のお召し?男と女の愛のむつび合い?―――
王様とあの方の顔が思い浮かんでグルグル回る。ああ……もう訳が分からない!
叔母チェ尚宮が部屋に入ってきた。
―――どうしよう。叔母様なら何でも知っておられるだろうけど……。でも聞きにくいわ……。でも……他には聞ける人がいないし……―――
意を決して聞いてみた。
「……叔母様……。殿下のお召しを受けるとは、どういうことなのですか?」
「は?」
「いえ……その……あの……男と女がむつび合うということとは……」
チェ尚宮は、突然こんなことを言い出した姪に驚いたが、穏やかに受け答えた。
「何故、急にそんなことを聞くのか分からないけど……。そうか、お前には、料理のことばかり教えていて、そのことは全然教えていなかったわね」
そう言って、チェ尚宮は立ち上がると、押し入れを開けて奥の方をゴソゴソ探った。そして、本を何冊か出して机の上…クミョンの目の前に置いた。
それは、性の手ほどき本だった。
「お、叔母様までこのような本をっ!」
顔を赤くしてクミョンは言った。
笑いながらチェ尚宮は言った。
「だってお前。何も知らずして、どうやって殿下のお相手ができるというの?女官は一度はこのことを勉強するのよ」
「はあ……」
チェ尚宮は、本を見せながら、こんこんと詳しく丁寧に説明した。クミョンは黙って聞いているだけで精一杯だった。
一通り説明が終わるとチェ尚宮は言った。
「どうであったか?」
クミョンはうつむいて答えた。
「どうって……ただただ恥ずかしい限りでございます」
「そうでしょうね。お前は真面目だから…」
「……叔母様。男と女が愛し合う時、皆がこのようなことをするのですか?」
「まあ、そうね。でも、愛し合っていなくてもする者もたくさんいるけど……」
「でも、普通は愛し合っている者同士がするのですよね?」
「普通はね。……最近、また女官が不義密通で、死刑になった。相手の男も一緒に死刑になった……。お前、まさか好きな男がいるんじゃないでしょうね?」
―――痛!図星だわ―――
「ま、まさか!いませんよ」
「なら、いいけど」
「……叔母様。王以外の人と愛を育むことができないとは……女官とは哀しいものですね」
「……それが女官の定めよ」
「……王の御寵愛を受けられなかった女官は、一生寂しい人生を送るのみ……」
「……そうね。だから対食(テシク)をする女官もいるのよね。対食だと、見つかっても百回叩かれるだけで済むから……」
「対食?何です、それは」
「同性愛のことよ」
「ど、同性愛!!!」
クミョンの声が裏返った。
「で、では……御寵愛を受けられなかった叔母様も、そのような経験がおありで?」
チェ尚宮は少し不機嫌になった。
「そのような言い方をするでない。私には一族のために最高尚宮になる義務がある。だから、殿下のお目に留まらないように気を使っていたのだ。それに……そんな経験があるのか、なんて。お前には繊細な心遣いというものはないの?」
「も、申し訳ありません……」
それきりチェ尚宮は何も言わなかった。
そんなことがあってから、クミョンはしばらくの間、チョンホと話をするどころか、姿を見ることさえもできなかった。チョンホを見ると、あの絵が脳裏に浮かんでくるのだ。
そのたびに思いを打ち消そうとして苦しみ、後で罪悪感にさいなまれた。
―――私って、なんてふしだらな女……―――
あの方のことを考えるのは、しばらくやめようとクミョンは思った。
[6]
それから数日後。
仕事を終えたクミョンは、いつものように水刺間で料理の練習に励んでいた。他の者と一緒の時もあったが、一番熱心に遅くまで練習していたのはクミョンとチャングムだけだったので、二人きりになることもよくあった。
包丁で食材を切りながら、クミョンは考え事をしていた。先日の叔母との会話を思い出す。
―――『対食をする女官もいるのよね』
………対食、同性愛……。叔母様も経験がないわけでもないみたいだし……。女官って、いったい……。でも、私には、あの方しかいないの。でも、女官は王の女……。うーん……―――
バタバタバタ。
チャングムがせわしなくクミョンの前を走って行く。
―――やめてよ!ほこりが上がるわ、気が散るわ―――
―――だいたい、あなたって人は………―――
あなたは、ハン尚宮様に水を調べるようにと言われて、いろいろな水を調べているわよね。お米のとぎ汁や鉱泉水とか、いろいろな水の味をみたり、料理に使ったりしているわよね。
この前は、私にも、水がいかに大切かを力説してくれたわね。ハン尚宮様の『水を持ってきなさい』の話は面白かったわ。そこまでは良かったんだけど……。
あなたは、怪しげな水を差し出して、
「クミョン、あなたも味をみてみて」
「え、ええ……。でも、この水、大丈夫?」
次の日、私はお腹をこわして寝込んでしまった。
あなたは、お見舞いに来て
「大丈夫?ごめんね。私が昨日……」
「ううん、あなたは平気なのね」
「私は体が頑丈だから……というより鈍感?アハハ」
アハハじゃないわよ!
それから、あなたは料理の時に使う薪を調べていたわよね。いつだったか忘れたけど、私がなんか煙くさいなと思って見に行ったら、何かに火が燃え移っていた。
「ちょ、ちょっと!何やってるの?大変!!」
「クミョン!ちょっと手伝って!」
二人でなんとか火事は防いで、叔母様にもバレなかったけど……。
―――あなたって、はっきり言って迷惑な人―――
そう思ったクミョンだったが、一つのことに気がついた。
―――私、毎日あなたの姿を目で追いかけている―――
16歳にして、やっと気がついたのだ。
―――でも、あなたは私とって競争相手。遠過ぎれば寂しいけど、近過ぎればうっとうしい。あなたは私にとって、そんな存在。まあ、見ていたら面白くて飽きないんだけど―――
[7]
そんなことをゴチャゴチャ考えていたら
「痛っ!」包丁で軽く指を切ってしまった。
―――私としたことが。えーと、布きれ布きれ……。ない!血が垂れてくる!服で拭くのは嫌だし。どうしよう?―――
「クミョン、大丈夫?」 いつの間にかチャングムが側にいた。
チャングムは、クミョンの手をとると、傷ついた指先を自分の口にくわえた。
―――え?―――
予想外、突然のことにクミョンは呆然とした。
チャングムは、何でもないといった感じでクミョンの指先の血をなめとると、布きれでくるりと巻いた。 「はい!」
「……あ、ありがとう……」
クミョンが我に帰った時には、もうチャングムはそこにはいなかった。
―――何なの?この胸のドキドキは……―――
その日以来、クミョンはチャングムのことを意識するようになった。
別の日。
クミョンを見たチャングムは
「あ、クミョン。チョゴリの結びひもが緩んでいるわよ」
「あ、本当」
―――またもや私としたことが―――
クミョンが直そうとするよりも早く、チャングムはサッと手を延ばして、ギュッギュッとひもを締め直してくれた。
―――え?え?何であなたが直してくれるの?―――
「……ありがとう……」
クミョンが我に帰った時には、もうチャングムはそこにはいなかった。
―――やっぱりドキドキする。いったい何で?―――
また別の日。
水刺間で二人はいつものように料理の練習をしていた。他には誰もいない。
―――ああ……。なんか、かったるいわ……。今日はチャングムは普通だし、つまらない。……………こんなことを思う私って、どうかしている……―――
そんなことを考えていたら、チャングムが寄って来た。お菓子が盛られた器を持っている。
「見て見てクミョン。ヨンセンから栗菓子もらったの。食べない?」
―――ヨンセンかぁ。まあいいわ―――
「ええ、ありがとう」
クミョンは手を差し出したが
―――あれ?―――
チャングムは栗菓子をひとつ、差し出している……クミョンの口元に。
「クミョン、あーんして」
―――は?な、何?―――
「ほらぁ〜。早くぅ〜」
―――………チャングムあなたって人は……――― クミョンは戸惑いながら口を開けた。
モグモグ。
―――何故だか味が分からない。それより、この説明できない気持ちは何?…………でも……少し楽しいかも……―――
次の瞬間、クミョンは栗菓子をひとつ、つまんでいた。
「じゃあ、チャングム。次はあなたね。あーんして」
―――わ…私はいったい…何をやっているの。でも、やめられない…―――
徐々に、クミョンのチャングムに対する気持ちは、変わり始めていた。
今までは、お互いが認め合う競争相手、遠過ぎず近過ぎずが心地良い、そんな存在だった。今までは話をしても触れられても、何でもなかった。それが変わり始めている。
対食、同性愛、という言葉がクミョンの頭をよぎる。
―――まさか……。これが……。いいえ違うわ!私には、あの方しかいないの!こんなことを考えてしまう、ふしだらな私をお許し下さい、ナウリ!!―――
クミョンは、その葛藤で悶々(もんもん)とするようになった。あの方が遠くに行ってしまう夢を何回も見た。やっと春画のことが頭から離れかけたのに、また、違う罪悪感に悩まされることになった。
水刺間でチャングムを見るたびに、クミョンは思った。
―――チャングム、あなたのせいよ……―――
何故、彼女はこれほど意識過剰なのか。それは、彼女には友達らしい友達がおらず、無邪気に接してくるのはチャングムだけだった。彼女はそれにどう対応していいのか分からなかったのである。だが、本人はまだ、そのことに気付いていない。
[8]
意識過剰なクミョンに対して、チャングムはクミョンのことをどう思っていたのか。
チャングムにとって、クミョンは普通の友達だった。もちろん、ハン尚宮とチェ尚宮という対立し合う派閥に属していたのであるが、チャングムにはあまりそのことは関係なかった。対抗心は全くなく、お互いが実力を認め合う「同志」のような関係だと思っていた。
そして、チャングムは、クミョンの内に秘めたような、はかなげな雰囲気が好きだった。それは、ヨンセンとはまた違う魅力だと思っていた。クミョンの口数が少ない所は全く気にならず、むしろ、そこがまた良いと思っていた。
一方、クミョンは、もともと丈夫でなかった胃の調子が悪くなるほど悩んだ。さすがに何とかしなければ……と思った。でも誰に相談すればいいのか。
夜、部屋で鬱々(うつうつ)と悩んでいると、叔母チェ尚宮が戻ってきた。
「……あの……叔母様……対食とは……いったいどのようなものなのでしょうか……?」
なんだかんだ言っても、結局相談できるのは叔母だけだったのだ。
[9]
チェ尚宮は、眉間にシワを寄せて言った。
「は?……最近お前は突然変な質問ばかりするわね。いったいどうしたの?」
クミョンはうつむく。
「いえ……あの……」
「まあ、いいわ」
そう言って、チェ尚宮は押し入れを開けて、奥の方から例の本を取り出そうとした。クミョンは、それを見て慌てた。
「あ!あの、違うんです。そういうことではなく……」
「そういうことではない?じゃ、どういうこと?」 訳が分からない、といった顔のチェ尚宮。
クミョンは、ボソボソ言った。
「ですから……そちらのほうじゃなくて、気持ち?そう、気持ちの問題なのです。例えば……例えばですよ?その人のことをもっとよく知りたい、とか、もっと近づきたい、とか、そばにいたい、とか、一緒にいるとドキドキするとか……。こんな気持ちって、対食なんですか?」
チェ尚宮はクミョンの顔をしばらく眺めた後、押し入れを閉めて座って、考えていた。しばらくして言った。
「それは少し違うわね。お前くらいの年頃の女子(おなご)は、そんな気持ちを持つのは普通のことだ。それは成長過程における自然なことだ。対食というよりは……あこがれとか?」
「そう!そんな感じです!」
「まあ、友情が発展した強い感情ね」
それを聞いて、クミョンの目は輝いた。
「ゆ…友情の発展!では…それでは…対食ではないんですね!」
「そうよ。でも、そこから対食に発展する人もいるけどね」
「で…でも、対食ではないんですよね!」
「だから、さっきから違うと言っているではないか。それにしてもお前、何でそんなに、うれしそうなの?」
「フフフ……」
クミョンは笑ってごまかした。
[10]
翌日からクミョンは元に戻った。再び、あの方の姿を目で追いかけるようになったし、思い出しては、清く正しい乙女的妄想にふけった。あの方を見かけると、何かと理由をつけて話しかけた。
また、あの方が勤務している内禁衛(ネグミ)の執務室に、差し入れを届けたりもした。しかし、何も進展はしなかった。
ある日、見習い生の競技会が開催された。成績は、クミョンが一位、わずかな差でチャングムが二位だった。
クミョンは、チャングムがめきめきと腕を上げ、自分の地位を脅かす存在になり始めたことに、焦りを感じていた。
でも、悪い気はしなかった。いや、むしろ歓迎した。張り合う相手がいてこそ修業に精が出るというもの。そうでなければ、どんなに退屈な毎日だっただろう。
たまたまクミョンが、水刺間の見習い生の仕事場に入ると、競技会の話で盛り上がっていた。チャングムは皆に囲まれていた。クミョンはチャングムに話しかけたかったが、輪に入っていけなかった。
思えばチャングムは、いつも人に囲まれていた。ヨンセンはもちろん、チャンイやチョバンやミン尚宮や、悪口ばかり言うヨンノまで。
―――何だかんだあっても、チャングムって、みんなから好かれているのね―――
仕方なく、少し離れた場所で皆の会話を聞くことにした。
「チャングム。あなたってすごいわ!クミョンにわずかな差よ!」
―――これはヨンセン。……でもヨンセン、いつもチャングムのことを褒めているけど、本当に彼女のすごさを分かっているの?チャングムの実力を本当に理解できているのは、私だけよ―――
「まぐれよ!まぐれ!クミョンは力を温存してるのよ!ね!クミョン」
クミョンは無視した。
―――ヨンノ……。あなたのお世辞ばかり言う所が嫌い。それに、いつもあなたはチャングムのことを『卑しい生まれ』とかいうけど、卑しいのは、あなたの心よ―――
「ちょっとヨンノ!あなた、自分の成績が悪かったからそんなこと言うんでしょう?」
―――ヨンセンね。それは私が言いたかった台詞だわ―――
「ねえチャングム。今度はクミョンに勝ってね。ね?」
ヨンセンはそう言ったが、チャングムは視線を遠くにやりながら、
「私は……そんなつもりじゃないわ。ただ料理がうまくなりたいだけ」
と答えた。
チャングムとクミョンの目が合った。
チャングムはニコッと微笑むと、視線を元に戻した。
―――何?さっきの笑いは……。私への当て付け?きっとそうよ。……………でも………そんな風には見えなかった。ただただ真っすぐな、純粋な、そんな笑顔だった……―――
その日はチャングムと直接話をする機会はなかった。だが、その笑顔はクミョンの思いに焼き付いた。
クミョンの心の中で、チャングムの存在は大きくなり始めていた。
―――私は……他の人達の偽善的な態度が嫌だった。私はいつもチェ一族の一員であり、チェ・ソングムの姪であり、誰も私個人を見ようとはしてくれなかった。だから私は、傷つかなように誰とも深く関わらないようにした。
だけど……チャングム、あなたは、これ見よがしの親切さではなく、同情でもなく、へつらいでもなく……。真っ白な心で私に接してくれる。私はそれがとてもうれしかった。
だから私は……あなたのことをもっとよく知りたい。あなたにもっと近づきたい―――
[11]
月の輝くある晩、クミョンは気分転換に宮中を散歩していた。最近行事が続いてその準備で忙しく、精神的に疲れていたのだ。
クミョンは夜が好きだ。夜は一人になれる時間が多いし、本当の自分に戻れるような気がするから。
ふと見ると、チャングムが、あずまや(昔、チャングムが松の実刺しをしていた場所)に座っていた。
他には誰もいない。チャングム一人だ。真っすぐにクミョンは近づいて行って、黙って隣に座った。
「ああ、クミョン」
「何してるの?こんな夜ふけに」
「ハン尚宮様が怒ってらっしゃるの。だから怖くて部屋に戻れなくて……。お休みになられた頃に戻ろうかと思って」
「それでここで時間をつぶしているのね」
「そうなの。エヘヘ」
チャングムは無邪気に笑った。
「クミョンはどうしたの?」
「うん……。ちょっと気分転換にね」
「そう。最近忙しそうだったからね。お疲れ様」
「いいえ、どういたしまして」
「ところで最近チェ尚宮様とはうまくやってるの?」
クミョンは少し考えてから言った。
「叔母様が私に求めることは、一族の伝統を守ることと、基礎に忠実なこと。もちろん、それも大切なんだけれど……。でも、それだけでは駄目だと思うの。だから、叔母様に反発したくなる時があるし……。それに時々、あなたのやっていることが、うらやましくなるわ」
「……そうなのかなあ。みんな、変わっているって言うけれど……」
「自信を持って。ハン尚宮様のなさっていることは、間違っていないと思うわ」
「……そんなこと言うのは、あなたが初めてよ。ありがとう♪」
チャングムは屈託のない笑顔を返してきた。
それからしばらく二人は、黙って月を眺めていた。 クミョンは思った。
―――でも、最近思う。あなたのご両親は亡くなったと聞いたことがある。それなのに何故、あなたは、いつも前向きで明るくて、こんなきれいな笑顔が見せられるの……?―――
「ねえチャングム。……こんなこと聞いていいのかどうか分からないけど……。あなたは何の後ろ盾もなく、この宮中に上がって、辛いことがたくさんあっただろうけど……。何というか……支えになってくれるものが、何かあったの?」
チャングムは、しばらく考えてから言った。
「うーん。……私にはハン尚宮様がおられるし、ヨンセンがいるし……それに、あなたもいるし」
―――あなた=私ってこと?私も一応入ってるんだ……―――
「クミョン、あなたの支えになってくれているものは何?」
「え?わ、私?」
「うん。そう」
クミョンはうろたえた。
―――こちらに質問を振ってくるなんて予想外!どうしよう。何て答えよう。私は王の女。だから、あの方のことを話すわけにはいかない。誰にも知られてはいけない……―――
―――でも……―――
クミョンはチャングムの顔を見る。視線を戻して再び月を見る。
「私は……」
―――どう思われるか分からないけど……できるだけ自分の思っていることを言おう―――
[12]
「私は……一族の期待を背負って宮中に上がったの。私にはそれがとても重荷だった。
みんなは、神童だとか天才だとかいろいろな褒め言葉を私に送ったけれど、かえってその言葉は私を縛り付けた。
叔母様はいつも私に、『お前が私のあとを継ぐのだ』とばかりおっしゃって……。息が詰まりそうな毎日だった。逃げ出したいと思ったことは、何百回もあったわ。
だけど、私には一つだけ、心の支えになってくれるものがあったの。それは…………」
あれ?チャングムは黙ったままだ。あいづちさえ返してこない?
「ねえ、ちょっとチャングム。聞いてる?」
クミョンが隣のチャングムを見ようとした途端、右肩が突然重くなった。チャングムが、もたれかかってきていた。どうやら眠ってしまったようだ。
クミョンはそれを見て、腹が立つやらあきれるやら……。
―――チャングム、あなたって人は。人がせっかく一大決心をして話をしているのに!しかも質問を振ったのはあなたよ。失礼ね!―――
チャングムはクミョンの肩を枕にして、平和な顔をして眠っている。
それを見ていたら、苦々しく思う気持ちが失せてしまった。
―――憎めないわね……―――
起こそうと思ったが、やめた。しばらく眠らせておくことにした。
ゆっくりと二人だけの時間が流れる。
クミョンは再び月を眺めた。そして自分の世界に入った。
―――私は王の女。あの方に想いを寄せることは許されない。だけど、あの方に会えるから、退屈で辛い宮中暮らしも耐えられた。いつも、あの方のことを想っては自分の心を癒した。
………でも………私がどれだけ想っても、あの方にとっては、私はただの一人の女官に過ぎず、チェ・パンスルの姪でしかない……―――
―――私は月のような人間。夜になれば、本当の自分に戻れる気がするの。
私にとって、チャングム、あなたは……まぶし過ぎる存在。
あなたの天真爛漫さ、私と違ってみんなに好かれる所、型にはまらない斬新な発想。前向きな所、力強さ、行動力。
あなたは、私にないものをたくさん持っていて、それがうらやましくもあり、時には嫉妬したこともある。
だけど、あなたは私の退屈な日常を変えてくれた。
あなたと一緒にいると、腹が立つこともあるけれど面白い。
あなたと一緒にいると、私は変われるような気がするの。
何年か前、あなたと一緒に裏山に行ったことがあったわね。あなたは私の手を引いて、薄暗い薮を分け入って行った。そんなあなたが頼もしかった。
あなたは……私を新しい世界へ導いてくれる。そんな気がするの―――
―――……もしかして……あなたも……私の心の支えになっているの?―――
クミョンは、肩で眠っているチャングムの顔を見た。ミン・ジョンホナウリに抱く深い感情と同じ感情が……戸惑いを感じるくらい……湧き上がってきた。
あの方に望んでいる事と同じ事を、チャングムにも望んでいる自分がいた。
もっと自分を見て欲しい、自分の側にいて欲しい、自分を受け止めて欲しい……。
慌ててクミョンは視線をそらした。
―――いいえ。それは認めない。認められない。私の心の支えは、あの方しかいないの―――
クミョンは認めたくなかった。認めたら、ミン・ジョンホへの想いが、一途なものではなくなってしまうような気がしたから……。
―――でも……これだけは言える。私は、あなたと……あなたとは、真正面から向き合いたい―――
しばらくクミョンは、眠っているチャングムに寄り添うようにして月を見ていた。
[13]
それからというもの、クミョンは以前にも増して、チャングムに話しかけるようになった。それは、ヨンセンやチャンイたちが近くにいない時に限ってのことであったが。
クミョンの変化をいち早く察したのは、ヨンセンだった。
「ねえチャングム。最近クミョンと仲が良過ぎるんじゃないの?」
「あら、仲良くしちゃいけないの?」
「そうじゃなくて……私のことも、もっと気にして欲しいの!」
「ええ?いつも気にしてるわよ?」
「……もう、いい!」
あなたとは真正面から向き合いたい……そう思ったクミョンだったが、ストレートに感情表現するヨンセンに比べたら、不器用極まりないものだった。
彼女は、チャングムとヨンセンを見て、こんなことを思っていた。
―――ヨンセンって、いつもチャングムにまとわり付いている。しょっちゅう手を繋いだり、肩組んで歩いたりしているし、この前は抱きついていたし。しょっちゅう『あなたが側にいてくれて良かった』とか言っているし。
私にはできないわ。ヨンセンみたいなベタベタした付き合い方は嫌なの――――
本当は、クミョンは、できることならチャングムにベタベタしたかったのだ。
―――でも、このままではヨンセンに負けてしまう。チャングムに私の気持ちを伝えるには、どうしたらいい?―――
クミョンは、夜、部屋に戻るといろいろ考えた。
―――今度は叔母様には聞けないし……―――
何故だか分からないが、この前ミン・ジョンホに差し入れを届けた時の光景が、脳裏によみがえってきた。
―――そうだわ!料理よ!―――
[14]
しかし、あることに気づいた。
―――でも、私、まだチャングムの好物を知らない………―――
―――どうしよう。直接本人に聞くのは、風情がないわね。じゃあ、誰に聞こう?ヨンセンなら絶対知っているけど、絶対聞きたくない。カン・ドックさん?でも、この前の春画のことがあるから嫌だわ。
う〜ん……ハン尚宮様?でも、あの方、そんな細かい事まで、あの子のこと知っているのかしら……?―――
次の日。王の御膳を準備する時に、クミョンはたまたまハン尚宮と一緒に仕事をすることになった。この機会を逃してはならない。折を見て話しかけた。
しかし、チャングムのことだけ聞くのも変なので、無難な雑談をしつつ、核心に迫っていくことにした。
二人とも口下手なので、会話を続けるのに難航したが、何とか聞き出すことに成功した。
チャングムの好物は、コッカムサム(干し柿でクルミを巻いた菓子)だった。
その日の夕方。クミョンは、チェ尚宮の台所で、こっそりコッカムサムを作っていた。それだけでは寂しいので、栗の甘露煮やナツメ菓子も作ることにした。
料理を作りながら、またもやクミョンは自分の気持ちに戸惑っていた。
―――何故?何故こんなに胸がときめくの?まるで、あの方のために料理を作っている時と同じ?―――
出来上がった菓子を眺めてクミョンは思った。
―――このお菓子で、私の思いがチャングムに伝わりますように―――
お菓子を器に入れて水刺間に行くと、チャングムは一人で何か調べていた。
「チャングム……。遅いのに頑張っているのね。はい、これ……」
クミョンはもじもじしながら、お菓子が入った器を差し出した。
「え?私に?」
チャングムは、受け取るとフタを開けた。
「わぁ♪私の好きなコッカムサムがある!クミョン、もしかして、あなたが作ってくれたの?」
「ええ……」
「ありがとう♪でも、突然どうして?」
「え…。あなたのために……。あっ!(汗)い、一緒に食べようと思って」
「わざわざ作ったの?なんか申し訳ないわ。じゃ、私、先に頂くわね」
チャングムは、干し柿を取ると器をクミョンに渡してから食べ始めた。
「うん、おいしい♪」
嬉しそうに満面の笑顔で、干し柿を食べるチャングムを見ていると、クミョンは幸せな気分になった。
クミョンは、お菓子を食べながら思った。
―――私が時々ナウリに差し入れをお持ちすると、あの方は少し戸惑ったような笑みを浮かべて受け取られる。でも、あの方が私の料理を食べているお姿を、一度も見たことはない。私はすぐ戻らなければならないから……。
それに、私にとって料理とは、自分を束縛するものでもあった。私は、常に他人に勝たなければならなかったから……。
だけど、チャングム。嬉しそうに私の料理を食べてくれるあなたを見て分かったの。料理は人を喜ばせるものなのね。作る人も、食べる人も―――
―――そして、料理人は、食べる人の幸せを願うの―――
クミョンは、微笑みを浮かべてチャングムを見つめていた。
[15]
さて、その日、就寝前のこと。クミョンは、叔母チェ尚宮に話しかけられた。
「クミョン……。最近、チャングムと仲がいいみたいだけど……」
―――え、今日の一部始終を見られたのかしら?―――
「それが何か?」
「……深入りするのは、やめときなさい」
「対食はしていませんが」
「違う。感情的に深入りするのをやめなさいと言っているのだ」
「………おっしゃっていることの意味がよく分かりません」
「心を分かち合うような、支え合うような仲にはなってはならぬ、ということだ」
「何故それがいけないのですか?」
「いずれ、それは、お前を苦しめることになるからだ……」
「……叔母様……。しかし、この閉ざされた宮中で生きる女官は、女官同士、分かち合い、支え合ってこそ生きていけるのではありませんか?叔母様だって、昔はそのようなお友達がおられたのでしょう……?」
「……忌まわしい思い出だ……。友……?そんなものは、いらぬ」
吐き捨てるようにチェ尚宮は言った。
クミョンはチェ尚宮をにらんだ。負けじとチェ尚宮もクミョンをにらみつけ、ゆっくりと言った。
「……その絆が、己(おのれ)を苦しめることになったのだ。友などと!我が一族にとっては、そんなものは足かせにしかならぬ!」
「叔母様!いったいどうなさったのですか?」
チェ尚宮は何も答えなかった。
二人は、しばらくにらみ合っていたが、やがてチェ尚宮は、横になると布団を頭までかぶって寝てしまった。
その夜、クミョンは、何かにうなされている叔母を見た。
[16]
・・・・・・・・・・・
あの見習い時代の頃が、私にとって一番幸せな時だったのかもしれない。
でも、あの時、叔母様が言われたことは間違いではなかった。
私が、叔母様の言う通りにしておけば、こんなに痛みを感じることはなかったのかもしれない。
あれから二年後。私たちが18歳になった時。
私は、明国の使者が持って来た錦鶏の世話を任された。でも、私の不手際で錦鶏を逃がしてしまった。
そんな時、助けてくれたのは、あなただった。けれども、あなたは約束の時間に戻って来られず……菜園に追放処分になってしまった。
ハン尚宮様とチョン最高尚宮様が、三年間の俸禄を返上したと聞いたわ。料理試験が近かったので、ヨンセンは、講義の内容を一生懸命手帳に書いていたわ。私は……ヨンセンが書いたその手帳を、あなたに渡す役目だった。
私もあなたを助けようと努力したの。だって、私の責任だから。必死に叔母様にお願いしたわ。
でも……。「それはお前だけの問題ではなく、一族全体に関わる不祥事だ。事を荒立てるな」とか、「お前のその、チャングムを思う気持ちが一族を危機にさらすのだ」とか言われた。
私は、何も言い返せなかった……。
だけど、あなたは菜園でキバナオウギの栽培に成功して、水刺間に戻ってきた。何もできなかった私に対して、あなたは自分の力で逆境を乗り越えた。本当に、たいした人だわ。
料理試験の時、あなたはスンチェで饅頭を作って、皇太后様のお褒めの言葉を受けた。
決められた材料を使っていないのに…と少し不満に思ったし、あなたの底知れぬ才能に脅威を感じたわ。
でも、もしあなたが落第したら、錦鶏の事があるから私にも責任があるし、それに……あなたがいないと、張り合う相手がいなくなってしまうわ。あなたが合格して良かったと思った。
呪いの札……。あの事件は、忌まわしい思い出だわ。
私は必死で叔母様に抵抗した。私は、才能と努力を兼備えていれば、最高尚宮の座を射止めることが出来ると思っていた。でも、それを真っ向から否定された。私の自尊心は傷ついた。私は、一族の宿命を受け入れるしかなかった。
あなたは、退膳間(テソンカン)で何をしていたのか分からないけど、あなたに濡れ衣がかぶせられた。
ヨンセンの証言で、私もあなたと一緒に蔵に閉じ込められた。
「クミョン……。あなたがやったの?」
「いいえ。やっていないわ。あなたでしょ」
その瞬間から、私はあなたと真正面から向き合えなくなった……。もうそんな資格は、私にはない。そう思った。
蔵から出された時、衰弱し切ったあなたは、ハン尚宮様に背負われていた。
あなたの側には、愛してくれる人がいる。私は、とても寂しく思った。
[17]
叔母様とハン尚宮様の競い合いが始まった時は、少し嬉しかったの。競い合い……料理という舞台の上でだけは、まだ、あなたと対等に向き合える……そう思ったの。
だから、あなたの味覚麻痺が治った時は、心から喜んだ。
呪いの札事件以来、私は自信を無くしていた。あなたと真正面から向き合えなくなった私には、もうあの方しかいなかった。
ナウリに硯をお渡しした時、励ましの言葉を頂いたの。
「ある人がこんなことを言っていました。『料理する時、食べる人の顔に笑みが広がればと願いながら作る』と……。料理は相手をいかに喜ばせるかを考えて作るというのです。チェ内人はそのような仕事をしているのです。自信を持って下さい」
ナウリのその言葉は、忘れかけていた気持ちを思い出させてくれたの。
私はその言葉を胸に抱いて、ソルロンタンを作ったわ。そして、あなたに勝った。
それでも私は、心苦しかった。苦しさに耐え切れず、癒しを求めて、ナウリに会いに行ったわ。真心を込めて作った料理を持って、雲岩寺(ウナム寺)へ……。
そして、あなたと一緒にいるナウリを見た。
あなたを見つめるナウリの顔。あなたのために、小筆を買い求めるナウリの顔。
私には一度も見せたことのない顔だった。温かくて、愛情に満ち溢れる表情だった。
料理は人を喜ばせるもの?料理は人の幸せを願うもの?料理は真心?そんな言葉は虚言よ!建前にしか過ぎないわ!
その日から、私の料理への思いや志は変わってしまった。部屋に戻って風呂敷包みを投げ出しながら思ったの。
―――料理は、自分の野心を達成する手段でしかない―――
あなたはお寺から戻ってきた時、私に親しげに話しかけてきた。初めてあなたの態度が偽善的に見えた。初めて私のあなたを見る眼差しに、憎悪が宿った。あなたはもう、今までのあなたじゃない。そう思った。
あの日、あなたは、私が長年大切にしてきたものを奪ったの。私の心の支えを奪ったの。私の居場所を奪ったの。 だから、私もあなたが大切にしているものを奪うわ。ええ、奪ってやるわ!
………チャングム………。どうして?どうして他の人ではなく、あなたなの?他の人なら……あなたでなければ……私がこんなにも人を憎むことはなかったのに。
私が、あなたにもっと素直になっていれば良かったのかもしれないわね。
あなたは、私の心の支えだった。あなたは、私の居場所だった。
雲岩寺に行ったあの日、私は心の支えを失った。ミン・ジョンホナウリと、そして、あなたを。
私の居場所はナウリにも、あなたの所にもなかった。
あなたは、たくさんのものを持っているのに、まだ他のものを持つつもり?
あなたはいつも、私より先を進んでいるから、うらやましく思っているし、嫉妬もしている。将来は、私の前に立ちふさがる相手になると思って、恐れを抱いた。
だけど………。同時に、あなたがいれば、いつの日か自分は変われるかもしれない、新しい道を開いていけるかもしれない。そう思っていたの。
私は………幻想を描いていたのかもしれない。あなたがいれば、自分の運命が変えられると。
[18]
クミョンはずっと、うつむいてあずまやに座っていた。
ふと顔を上げると、叔母チェ尚宮がいた。
いったい、いつからいたのかしら?全然気がつかなかった。
チェ尚宮は、何も言わず、クミョンの隣に座った。
二人は黙って月を眺めた。
見習い時代、ここでチャングムと月を眺めたことがあった。
今は、叔母様とこうやって月を眺めている。
結局、私の居場所は一族の中にしかないんだわ。
寂しさがこみ上げてきた。
いつの間にか、背中に叔母の腕が回されて、クミョンは肩を抱き寄せられた。
叔母様が、こんなことをするなんて初めてだわ……。
クミョンは叔母の横顔を見た。どことなく哀しみが漂っていた。
クミョンは、同じ部屋で叔母と寝起きしていた頃のことを思い出した。
夜、叔母はよく何かにうなされていた。跳び起きた所も見たことがある。一度寝言で、ハン尚宮様の名前と、知らない人の名前を呼んでいるのを聞いたことがある。
叔母は前に、「友の絆が己を苦しめる」と言った。
もしかして叔母様も、私と同じような思いをしたことがあるのかしら……?
聞こうしたが、やめた。叔母が自分から話してくれるようになるまでは、そっとしておこうと思った。
クミョンは月を見て思った。
チャングム、やっぱり私は月のような人間。私は、日の光のようなあなたと、共に歩むことはできなかった。あなたの光の前では、私は輝くことはできないの。
いつかあなたと裏山に行った時、あなたは薮を切り開いて進んで行った。あなたは、私と違って、自分で道を切り開いていける人。
そんなあなたがいる限り、私は劣等感にさいなまれ、無力感に悩まされ続けるの。あなたがいる限り、私は輝くことができないの。 だから、私が私であるために、あなたを消し去りたい。
……………。こんな、矛盾だらけの私のことを、今まであなたは、本当に理解してくれていたの……?分かってくれていたの……?
私の心の叫びは、あなたに伝わっていたの……?気付いてくれていたの……?
いいえ、あなたには、私の痛みや孤独は分からない。気付いてもくれなかった。あなたは私と違って、たくさんのものを持っているし、皆に愛されるのだから……。
私がいなくても、きっとあなたは他の誰かと普通に生きていけるでしょう。あなたにとって、私は、ただの大勢いる友人の中の一人にしかすぎないのだから。
でも、私にとってあなたは、そうじゃなかった。
あなたは……私の存在を認めてくれた、たった一人の人だった。
チェ一族の一員としてではなく、チェ・ソングムやチェ・パンスルの姪としてでもなく、ただ一人の、チェ・グミョンという一人の人間として……私、個人として……私を見てくれたのは、あなただけだった。そう、ナウリもしてくれなかったことを、あなたはしてくれたの。
あなたには……あなただけには……こんな私のことを分かってもらいたかった。
私の存在を認めてくれた、あなた……。でも、結局は、私の存在を脅かす人でしかなかった。
だからチャングム……。
私は、あなたを傷つけたい。あなたが私を傷つけた分だけ………。
私も、あなたの大切なものを奪って、あなたにも私と同じ痛みと孤独を味わわせたい。
私は、あなたが好きだった……。大好きだった……。だけど……憎まざるを得ない。
月は、ぼやけて見えなくなった。
クミョンは、チェ尚宮の肩で涙を流した。
[完]
乙です。力作ですね。
可愛さ余って、憎さ百倍というわけですね。嫉妬の構造は恐ろしい・・・
チャングムとクミョンの年齢設定と、チョンホのバツイチ(実際は死別?)は、いらないと思います。
あんまり関係ないみたいだし・・・次回もがんばって下さい。
GJ!
>>1乙
ここ最近良作揃いですね!!職人さんは暑さと台風に負けないでね!!
「オ・ギョモ様も困った方でな…先日は『料亭を改造して床が鏡張りの部屋を作り、
そこに内人や尚宮や医女の服を着せた芸者を呼んで肉鍋の給仕をさせろ』と…」
「……鏡と芸者の服と肉鍋とどう関係があるのでしょうか?」
「わしにもさっぱり分からん」
「まさか…………兄上はそれをなさったとか?」
「いや、服と肉鍋はともかくとして、床が鏡では危ないとお伝えしたのだが
オ・ギョモ様がどうしてもときかぬのだ…まったく…」
>>12 互いに思いやる気持ちが、伝わってきました。次の作品をお待ちしています。
>>37 コスプレ肉鍋。 しかし尚宮服ってw もしかして濃緑の方?
>>40 これですか?N○Kでカットされた所?
萌えました〜〜アリガト
保守
44 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 10:04:23 ID:NuUc7VaC
だれか尚宮様ものかいてくれぃ
尚宮様とはどの方のこと? また、どんな内容で?
46 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 11:41:26 ID:0a055dNj
よくこんな作品でマンコクチュクチュオナニーできますねぇ…(失笑
47 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 15:52:15 ID:Sc37fqPo
特にハン尚宮ネタ激しくキボン!
誰とカポーでもかまわない。ハン尚宮タソいてくれたら何でもいい〜〜
保守
はんさんぐんさまとちぇさんぐんさまのお話が読みたいです!ミョンイが絡んでくると最高です。
少女チャングムの夢で八○一
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1152969300/l100 11 :風と木の名無しさん :2006/07/20(木) 18:23:10 ID:AR3D0Eu7
王様×ジョンホ←スロ
これ基本形だよね?
第一話の「おまえがいるだろう」を見てから目が離せなくなったアニメだw
14 :風と木の名無しさん :2006/07/26(水) 23:46:51 ID:JXQ6wA1h
第一話だったか?で、狩りに出た王様が、ミン・ジョンホに
「今宵は、そなたと二人きりで夜を明かそう」と、なにやら妖しく
誘うようにのたもうたので、思わず茶を吹いてしまった。
まさに、想定外の事態。
51 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 09:08:06 ID:lJxsEew4
チョンホ×チャングム
王様×チャングム
王様×ヨンセン
王様×皇后
が読みたいです。
52 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 23:26:33 ID:ZsLDqUcV
チェ×ハンあげ
このスレはとにかくハン尚宮様受の需要が多いということがわかった
54 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/13(水) 10:38:54 ID:yzPVlgr2
保守
55 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/21(木) 00:22:33 ID:AXlyxGwY
保守
test
前スレの すごい文章を書いていた 一参二(?)さん、待ってます
58 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/24(日) 00:31:47 ID:ZdJnSTjZ
漏れも待ってる
59 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/24(日) 21:15:41 ID:NCBwBppf
0/9 壱参弐 柵
内容:ノーマル ほぼエロ描写のみ(陵辱に近い、痛々しい場面あり) 萌えなし
*今までの私の作品とは全く傾向が異なります かなりキャラを汚します
1/9 壱参弐 柵
目の前に食卓が並べられ、私は横の席に座らされた。ややして、殿下は上座にご着座に
なった。
至密の女官が酒を注いで捧げ、次いで私の杯にも注ぎ入れる。
「ヨンセンといったな。そちも」
杯を……震える手で持ち上げ、口に運んだ。堪えた涙の味が交じり、少し苦い。心を落ち
着かせようとしても、これまでのことが頭の中を巡るばかり。
泣いても泣いても、次の日もその次の日も、涙があふれ続ける。
ひとりでいた犬を撫でて、想うのはあなたのことばかり。
奴婢に落とされてしまったチャングム……。奴婢の扱いは宮中の女官とは比べ物になら
ないという。せめて傍にいるならば、命を賭してでも守りたいけれど……声も、手も届か
ない。あの笑顔を見ることもできない。あの日まであんなに近くにいて、時々腕を絡ませ
ることもできたのに……安否すら判らないなんて。
たとえ私がどうなろうとも、あなたさえ無事ならば、これ以上の幸せはないのに。
……どうしてあの時後を追わなかったのだろう。どうしてミン尚宮さまに押し止められ
るまま、何も言えずにいたのだろう。私のせい。全部私のせい。そして何もできないばか
りか、チャンイまで辛い目に遭わせてしまった。
何度もここを追われ、そのたびに戻ってきたけれど……カン・トックおじさんすら、諦
め顔だったけれど……。諦めることなんてできない。
「そなた、何をしておる!」
女官長の言葉に顔を上げると、ご尊顔がそこにあった。その瞬間、私の身体はかちかちに
凍り付いた。問われても、どうお答えしていいのか。ただ、じっと立ち尽くすだけ。
それから後……ミン尚宮さまにはすごく怒られるし……また、へまをしてしまった。
部屋に戻っても、思い出すたびに震える。珍しくヨンノが慰めてくれたけれど……。
そんな時、至密尚宮に呼び出されて、きつく叱られるのだとばかり……でも……訳の
わからぬままこの、宮中のどこにあるのかもよく知らない部屋にいる。
そうして、よく判らぬままこうして酒を口にしている。
「なぜ泣いておったのだ」
料理をお口元に運ばれながら、お聞きになる。ご尊顔を間近に見るのは初めてのこと……。
杯が空になると、傍にいた女官が酒を注ぎ足した。
優しくお声をかけられても、昨日のことを思い浮かべると、身体も口もいうことを利かない。
箸を止められ、殿下は立ち上がられた。私も続くよう、尚宮さまに言われた。
隣の部屋に閨はあった。そこには一組の柔らかそうな、大きな布団が敷かれていた……。
殿下は立ったまま、女官たちにお召し物を解かれている。私も同じように……恥ずかしくて
後ろを向いてしまい、尚宮さまに睨まれてしまったが。
覚悟を決めて……殿下の隣に座る。
殿下は私の顔を撫で、お口をお寄せになった。男の方にこうして髭を押し付けられるのは、
遠い昔の時以来。お父さまのお髭を触って遊んでいたっけ。でも今は、髭が頬にあたって
少しくすぐったい。ちくちくと唇に刺さって痛い。
痛み……それを感じたのはこの時が初めてだったが……でも、これはほんの始まりに過ぎ
なかった。自分の部屋に戻った後も、ずっと感じることになろうとは。
2/9 壱参弐 柵
髭の間から柔らかく湿ったものが伸びてきて、私の唇を嘗め回す。気色悪い。犬のべろは
可愛いのに。
柔らかかったそれは、先を尖らせ唇の間に突き立てられた。私は思わず歯を食い縛った。
つと殿下の手が頤にあてがわれ、優しくさすられる、ふっと力が抜けた時、口の中に差し
込まれた。それは口の中をいっぱいに塞ぎ、喉まで圧迫される気がして、息をするのも苦
しい。けれど吐息が、口の端から漏れ出てしまう。殿下は舌を引っ込められると、再び唇を
嘗め回し、また口の中に差し込まれる。
そのうち、私の舌は絡み取られ、表や裏や先から奥まで……ざらついた感触が嘗め回す。
逃げようとしたが、かえって強く……痛いぐらいに吸い上げられる。
ややして私の身体は押し倒された。
殿下は口元を徐々に下の方に向けられ、うなじや胸元へ……その間、絶えず胸を揉みし
だかれる。でも、硬い手のひらで触られるたびに痛くなるだけ。
それに足……脛にある毛が逆立ってゴワゴワと私の腿を刺激する。
ただじっと我慢した。拒んではいけない、声を上げてもいけないといわれていたから。
殿下が覆いかぶさってきた。大きな胸……けれど、どこも触るところのない平べったい
胸。なぜ多くの女官たちは殿方に憧れを持つのだろう? 女人の方がずっと魅力的なのに。
チョン尚宮さまに抱っこされて、眠った夜の安らかさ……あなたを隣に感じて……その
ふくらみに触れた時、心地よい暖かさが手のひら一杯に感じられたのに。
あなたが、たぶん……触っていたハン尚宮さまの胸も、きっと柔らかくて温かかったの
でしょうね。
でも今、感じさせられているこの胸は、大きくて硬い。それが身体に圧し掛かり、自分の
胸も押し潰されている。
あんなことがなければ、チョン尚宮さまも、もっと安心してお送りできたのに。そして
ハン尚宮さまの下で、今でもあなたと水剌間で料理を作っていたはずなのに。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。どうして私は、一人、ここにいるのだ
ろう。
殿下は私の下の方を指で触られると、眉をぴくっと動かされた。
尚宮さまが小声で合図を送るのが聞こえた。今まで気が付かなかったけれど、部屋の
四隅に尚宮さまと内人が控えて、私たちを静かに見守っている。ずっと見られて
いたのか……。急に恥ずかしさがこみ上げ、身体中が火照りだす。
一人が近付き、私の下の毛を掻き分け、自分でも触ったことのない場所を開け広げる。
何か香油のようなヌルリとした冷たい液体を手に取ると、下腹に……指で、お小水が出る
ところのあたりを塗りたくられて……ただただ気持ち悪い。
ここに来る前に身支度を整えられた時も、女官たちは臆することなく私の体の隅々に触
れた。同じ内人でも、こんなことをしている人がいたなんて。だけど全く、何も話しては
くれなかった。皆、黙々と身体を清め、髪をくしけずり、紅白粉を刷けいた。
塗り終わると、殿下は再び私を引き寄せられる。
いきなり私の脚を開かれたものだから、驚いて殿下を見て……その時気付いた。見た
こともない赤黒いものが、下腹から迫り出している。その熱さが、腿にぶつかった。
私は男と女の交わりというものを、あまり知らない。面白がってヨンノが見せようと
するのだけれど、興味はないし……興味があったのはあなたのことだけだったから……
それに、まさかお召しがあるとは思ってもみなかった。
でも、無理やり見せられた本で、あのようなものを見たことがある。あるけれども、
目の前のそれはもっと生々しく、不気味にすら思える。殿方のその下腹には、あんな
ものが隠れているなんて。
3/9 壱参弐 柵
殿下は、開いた脚の間の……私の下腹に、それを押し付けられた。怖くなったが、それ
以上閉じることはできない。
そして指のような、いや指以上に太く熱い感触をぶつけてこられる。その感触は股の
間を行き来し、その熱を分け与えた。
私は怯えて、いっそう身体を硬くした。
その様子を見ていたのだろうか、女官たちがこちらに近付いてきた。殿下にこうされて
いるのも恥ずかしいのに、こんなに傍で見られるなんて。私の身体はますます硬くなった。
と、女官たちは両脇に位置取り肘を押さえ付けた。そして片手で私の胸をもみ始める……
柔らかい手のひら……やはり女人の手は違う……。そして胸の敏感なところ……頂を指の
腹で転がしたり、挟んだりする。
「っん」
慌てて声を押し殺す。
そうしている内に、腰の下には枕が押し当てられ、脚がより大きく広げられて、女官
たちに支えられた。
身動きが取れなくなった……唯一自由になる手は……敷布か、もしかしたら女官のチマ
かもしれないが、指先に触れた布地を握り締めた。
殿下が、再び圧し掛かってきた…… あっ ……腰の間に圧力がかかる。
痛い! チャングム……。助けてチャングム、助けてチョン尚宮さま。
ぐりぐりと押し付けられる硬いもの。遠慮なく私の身体をこじ開け、拒んでも無理やり
捻じ込まれる。
お腹が痛い……あぁ……。
「入っていくのが判るか」
答えられるはずもない。怯えしか感じない。
「ううむ」
低い声で唸られ、力を込められる。
胸のあたりの刺激が増した。女官たちは相変わらず、私の胸をほぐしている。他の人の
手で触れられる感触にぞっと……でも少しだけ……心地……いい。
おかげで、身体の上半分は幾分楽になった。
他の者に一糸まとわぬ姿を見られるのも、こうやって触られるのにも徐々に慣れてきた。
というか、もう諦めてしまった。でも、 ズンッ!
「あぅ!」
押し付けられたまま、じっとされている。しばらくの時を置いて、ゆるりと引き抜かれても、
「あぁ」
声が出てしまう。またしばらく離して、股の間を擦り付けておられたが、 ズヌッ!
「いっ!」
玉体が、私の脚の間にぴったりと合わさっている。身体の中に、あの塊が押し込まれた
のだ……。
手足は抑えられたままだった。私も力が入り、女官たちも力を込めて押さえていたから
あちこちが痛いし、すっかり痺れている。
それから女官たちは、私の手を殿下の首へ回し、脚を持ち上げて腰に絡めた。そして、
また部屋の四隅に下がった。
「このままでいるように」
尚宮さまが発した冷たい声が、かろうじて耳に届いた。だから必死でそのまま、まるで
ぶら下がるような格好だ。こんなに近くにご尊顔があるのに、よく見えない。
殿下の胸の、腹の、腰の重みを感じて、息苦しくなった。上からだけではない、内側
からも強い圧迫が、腰を中心に繰り返し与えられる。圧迫は胃まで達し、戻しそうな気分
すら感じる。
そして……ご尊顔が上下に動かれるごとに、塊を押し付けられた部分の痛覚が、堪えよ
うも無く襲ってくる。
重い、苦しい、痛い……我慢しなきゃ……。
4/9 壱参弐 柵
でも……こんなに辛いのを耐えなくてはならないのか。もう水剌間には戻れないのか。
料理を作るのが好きだったのに…………。
思わず涙があふれてきた。
「また泣いておるのか」
硬い胸板と熱い塊に、上から押しつぶされ中から抉られ続けながら、お声を聞いた。
そして ……くちゅ…じゅる…ずにゅ… 身体の中から音が響く。
早く終わって欲しい。ああ、早く、もうやめて……やめて……あ。
更に力が入り、腰は重みを増して私の腰ごと揺さぶられた。
「そちの中は暖かいのう」
先ほどは圧迫と痛みだけだった。今は痛いけれども、その動きが……相変わらず
気持ちのいいものではないけれども、中で何かが動いている。
「うーむ。そちの泣き顔はそそるのう」
痛みは相変わらずだが、少しは気持ちが落ち着いてきた。
「そちは、どうだ」
ご寵愛を望んではいなかった。けれど今では誰の助けもなく、宮中でミン尚宮さまや
チャンイと、辛い部署に追い遣られている。そこから抜け出るためには今はただ、殿下に
嫌われることの無いようにしなくては……。
「ご承恩を賜り、身に余る光栄にございます」
声を振り絞った。
「そうか。では」
殿下の口元が私の胸に下り、塊に貫かれたまま、乳房の頂を吸われた。
下の痛みは相変わらずだが……女官たちにほぐされてから……その手際のせいか、
触れられると変な……うずくような感覚が……するようになっていた。
「柔らかい乳をしておる。この色合い、頂の色艶も初々しい。だが、もっと張りを
増して、桜色に染めてやろうぞ」
さらに揉みながら、大きく飲み込まれた。でも強くされると、やはり痛くて縮み上がっ
てしまう。
「尖り具合がたまらぬ」
そう言われると激しく腰を動かし、脚の間に打ち付けられる。あまりの激しさに、巻き
付けていた脚の力も抜けようとした頃、突然、両の脚を強く掴まれて開き、押さえ込まれ、
深く強く押し当てられる。
「ふー、はっ……う」
ぶるっと震えて、玉体は、私に預けられた。
何が起こったのか全くわからなかった。しばらく、殿下から流れる汗を頬や胸に感じて
いたが……女官たちが進み出で、殿下を私から引き離し、玉体を拭っている。
私も脇で、身体を清められ……下の方に布が当てられた時、赤い色に染まるのが見えた。
……血? あれだけ痛かったのは、そういうわけだったのか……。
その間に、敷布が変えられた。きっとそこにも付いてしまったのだろう。粗相をして
しまった……。女官たちの働きを眺め、ぼんやりしていると、
「案ずることはない。初めての者にはよくあること」
尚宮さまが言う。そして私のそこに、軟膏のような薬を塗ってくれた。
「血止めだ。少しは楽になる……さ」
新しく整えられた布団に促された。
そして殿下は私の手を、そこに……導かれた。それは、先ほどの熱はなく、萎んだ朝顔
のようにぶら下がっている。どうしていいのか判らず、とにかく手をあてがう。
「さすりなさい」
見かねたのか、尚宮さまが言われた。さする? 恐る恐る手を動かしてみる。それは、
ただ左右にゆらゆらと動くだけだった……。困って、尚宮さまの方を見た。
5/9 壱参弐 柵
尚宮さまが目で女官に合図を送る。一人が歩みより、私の手をどけると、包むように
手を動かし始める。しばらくすると、少し頭をもたげはじめた。
「気にするな。おぼつかぬのも、また乙なもの」
殿下の言葉に、女官は私の手を取って、手のひらに包みこませた。見真似で手を動かす
と、少し張りが出てきた。熱くもなってきた。初めてお見かけしたのと同じような形に
変わっていく……。
「舐めよ」
立ち上がられると、私の顔の前にそれを差し出された。また恐る恐る口を近付ける。
「これが、お前の身体の中に入っていたのだ。こんな風にな」
唇にあてがわれた。しばらく軽くついばむように、唇を突っつき、左右に動かされる。
「そちは、なかなか受け入れてくれなんだが、この口はどうかな」
殿下の手が私の顎を掴んで下に押し下げられる。口はだらしなく開いた。
「歯を立てぬように、大きく開け」
尚宮さまの声に、頑張って大きく開けると……腰を突き出され、それは……口の中に
静かに納まっていった。……苦しい、大きくて、そして熱い。ほんのり生臭い。
腰が前後に動き、その動きに合わせて口内を、短く出入りする。
「もっと近こう寄りなさい」
傍にいた女官に手を取られて……両手で、殿下の腰回りを抱えさせられた。
殿下は私の頭を掴んで、さらに強く押し込まれる。
口の周りを、髭とは違うけれど、同じようにゴワゴワしたものが撫で回す。その感触と、
むっとするような匂い……これが殿方の匂いなのだろうか……今まで宮中では感じた
ことはなかったけれど。
押し込まれたそれが、喉に突き立てられ、むせそうになった。
「その顔がよい」
また、涙がこぼれそうになる。なのに、こんな顔がいいなんて……。
なぜ皆、こんなことに憧れるのだろう。痛くて苦しいばかり。
あなたがハン尚宮さまのところから帰ってきた晩は、とても嬉しそうな顔をしていた
のに。身体からも心なしか良い香りが漂い、頬もほんのり上気して。元々きれいな子だっ
たけれどますます美しく、艶めかしさすら感じた。
あなたも、最初はこんなに辛かったのだろうか? いいえ。きっと二人は、もっと優し
く、もっと柔らかく、もっといい匂いの中でお互いを感じ合い、愛し合っていたのだろう。
あなたは、幸せにあふれた空気を纏わり付かせたまま、戻ってきては部屋中に広げた。
私もちょっぴり、楽しい気分をお裾分けしてもらったっけ。
そんなあなたを眺めるのが、とても好きだった……。
引き離されるなんて思ってもみなかったから……こんなことになるなら、無理をして
でも、あなたの温もりを感じておけばよかった……。
殿下は私にかまわず、しばらく出し入れされ、引き抜いては唇を撫で回し、また深く
突き入れられた。何度もそうされて、口の周りがべたべたになる。顎がだるくて仕方が
ない。それに、徐々に苦いような渋いような味がする。
やっと解放された。顔の前にあるそれを、思わずまじまじと見つめてしまった。咥える
前よりも太く赤黒くなっている。こんなものが口の中や……身体に入っていたなんて……。
つーっ 透明な液が先から糸を引いて滴り、私の胸をつたう。
「涎を垂らしておるわ」
液を光らせながら、それをまた口に含ませられ、口の中で舌に擦り付けられた。
また女官たちが現れ、うつ伏せ、かと思ったら腰を引き上げられて四つん這いにさせら
れた。殿下は私の後ろに座っておられる。
「先ほどよりは瑞々しくなってきたな。そろそろ、そちも欲しいか」
恥ずかしい。誰にも見せたことのないお尻まで見られるなんて。
それに、欲しいか、だなんて。あんなに痛いものが、また刺さるのか。恐ろしさに、
震えているのが自分でも判る。
6/9 壱参弐 柵
「こじる味わいも悪くないが……柔らかく絡み付くのも捨てがたい」
殿下はただ眺めておられるご様子だ。
女官の冷たい指が、身体中を撫で擦り始めた。指が動くたび、気色悪さの中に、妙な
感覚が芽生え始める。股の間に置かれた指は……油を塗られた時は外側だけだったけれど
……殿下が入っていたところ……身体の中にまで侵入してきた。……腰がガクガクと
動いた。崩れ落ちそうになると抱え上げられ、また四つん這いにさせられる。
弄る指は、私の……反応を見ながら……敏感な場所を捉えると、そこを中心に攻めたて
るから……だんだん腿のあたりが痺れだして……変な気分……気持ち悪いのは相変わらず
だけど……あふっ……攻められているところから、お湯のような熱い液体が湧き……うぅ
……熱を帯びた液体が身体の中に染みていく……。
別の女官は胸を揉み、頂を摘む。胸からもお湯のような感覚が生じ、その波と……
下からの波とがぶつかって……腰が、もぞもぞとくねった。
「感じておるのか。その姿もまた愛い。あの血止めには、淫薬が入っておってな。
おなごを心地よくするそうな」
淫薬? そんなものがあるのか? でも確かに、こうやって身体の中に指が出入り
しても、痛いというよりもむずむずした感じだ。
殿下が立ち上がられると、女官たちは退いた。そうして私の腰を掴まれ、脚を押し
広げて、後ろから、
「ひい!」
いきなり塊が、あの大きなものが、一気に私の中を熱く満たした。また圧迫感がお腹の
中を抉りだす。
「今度はずいぶん楽に受け入れてくれたな。では、口でしたように」
腰を押し付け深く差し込まれる。そしてゆっくり引き抜き、縁を撫で回すとまた押し付
けられる。抜いては押し付け、抜いては押し付け。
押し付けたまま、ぐりぐりと腰を回される。また抜いては押し付け。
「そちは犬を撫でていたな。犬の交尾というものを見たことがあるか」
首を振った。
「こうやって四つん這いで、後ろから」
そう言われると、さっと抜かれる。身体を満たしていたものがなくなり、強い虚脱感を
残す。 そして、ざくっ 差し込まれては満たされ さっ ざくっ さっ ざくっ さっ
引き抜かれては虚脱を感じ……。
女官に弄られた時と似たような感覚が、いや、もっと……深い場所からじくじくとした
感覚が……お腹の奥の方から広がってきた。
「ふぅ。 あっ」
また、声がでてしまう。
「犬のようにされて、よくなってきたか。では鳴け。余が許す」
こね回され、差し込まれ、引き抜かれ……。許すと言われても、はしたないことはでき
ない。唇を噛み締めた。
っと、殿下の指が腰からお尻に移り、真ん中の方を玩び始められた。
「あう!」
お尻がすぼまる。
「ねっとりと締め付けているのが判るか。そちが余を食べているのだぞ」
さらに真ん中を弄くられる。
「尻たぶまで桜色に染まっておる。柔らかく張りがあり、叩くもよし撫でるもよし」
軽くぺちぺちと叩かれた。そのたび、恐れと恥ずかしさで、ますますキュッとすぼまっ
てしまう。
と同時に、ずっと圧迫感しか判らなかったそれだったが、出し入れされるたびに、その
形……口で感じたように、先のふくらみ、少しすぼまって引っ掛かるようなところの形が、
なんとなく身体の中を動いているのが感じられた。
時々中でつっかえ、微かな抵抗を感じ、思わずお尻をすぼめると、それは更にはっきり
と形を成した。
7/9 壱参弐 柵
「そちはどれがいい。先ほどのような格好か、このようにするのか」
答えられようはずもない。そのまましばらく、私のお尻に腰を打ち付けられた。沈黙の
中、乾いた音だけが響く。
殿下はそれを引き抜かれると、仰向けに寝られて、私を引き寄せられた。
「上に乗れ」
玉体の上に座るなんて、そんなこと。しかし顎で促される。畏れ多いことながら、
静かに身体を下ろした。
「そうではない。この上に跨るのじゃ」
熱いものを、お尻にぴたぴたと当てながら言われた。
「先のような形では、そちはよく判らなかっただろう。だから見させてやる。余を飲み
込む様を、じっくりとな」
言われるままに、腰を沈めた。またあの塊が、今度は自分の重みで身体の中に侵入して
いく。先が股の間に埋まり、すぼまりを捉え、そして長い部分も全部、納まっていく。
「腰を動かせ」
どうしていいのやら……もぞもぞと前後に揺すってみる。と、また女官たちが現れて、
私の肩や腰を掴み引上げ、下に落とした。
「そちがいいように動いてみよ」
そう言われて、必死で動いていると、殿下の両の手で乳房を揉みしだかれる。
「うっ」
「ここがいいのか。締め付けてくるわい。いいぞ」
両胸を手のひらで押し潰し、指先で尖りをいじられ……また腰のあたりが、ずきずきと
してくる。身体の上からも下からも、熱い波が押し寄せ始めた。
……その内、なんとなくその感覚をもっと味わいたくなって、夢中で上げ下げを続けた。
歯を食い縛ったが……吐息が漏れる。
繋がっているところに目をやると、ぬめりと光るものが私の動きに合わせて……
私を貪っているのか、あるいは……私が貪っているのか。
殿下は繋がった部分に手を入れられ、敏感な部分……女官たちが油を塗った時のように
襞をたどり、広げて軽く摘まれる。触られると、じんじんとした痺れが奔った。
「余の尻が塗れておる。全てそちの蜜じゃ」
粘りのある液体をすくい取られ、その指を私の口に差し入れられた。
「どんな味がする。あふれるほど出しよって」
味、と言われても困ってしまう。……ちょっと塩辛いような…汗のような、ちょっと
酸っぱいような。苦いような。
でも確かに、さっきから股の間がひんやりとして、ぬちゃぬちゃと、湿った音が聞こえ
ている……。
「酒を持て」
殿下は、動きを制するように、私の腰に手を当ててから言われた。
酒器が運ばれてきた。
「まずはそちから」
杯を渡されて、玉体の上で、繋がったままの形でふた口ほど戴いた。
「余にも飲ませてくれぬか」
戸惑った。どうやって? 女官を見ると、目でお前が飲めと言う。少し含む。
殿下は私を引き寄せ、唇を合わせられた。漏れないよう大きく口を開き、口内の酒を
唇ごと求められる。
「何をしてもいちいち、驚く面立ちをするのが愉快でたまらん。はなから手管を披露し
て、余を誑しこもうとする奴にはうんざりしていたのだ」
耳元で、小声で話された。
「もうひと口」
同じように、唇を合わせた。酒がなくなると舌を軽く吸われる。私の舌は、殿下に飲み
込まれた……酒の味や微かな酔いも相まってか、初めて口を合わせた時より、ずっと柔ら
かく感じた。
「どうじゃ。下の口で繋がり、上の口でも合わさっている心地は」
そう言われると、また口をお寄せになる。私も、こうされるのが、それほど嫌ではなく
なってきた。しばらくそのまま、温もりを感じた。
8/9 壱参弐 柵
「もうひと口、ゆっくり温めよ。そちの唾も含味したいゆえ」
今度は大目に含み、しばらく噛み締めた後、捧げた。私の口で温めた酒と、吸われ続け
られるまま、そっと注ぎいれた唾液を、おいしそうに飲み干された。
飲まれた時の柔らかな、その表情を愛おしく感じて……自ら舌を差し入れてしまった。
殿下は拒まれず、私の頼りない動きに合わせるかのように、優しく舌を撫で回される。
……暖かい。殿下も私の中で、同じように感じておられるのだろうか……。
ご尊顔に、こんなに近付くことができるのは、高官であってもあり得ないこと。そんな
巡り合わせに生まれたならば、それを受け入れ、王様に心からお仕えしよう……。
口付けを交わしながら、そう思った……。
殿下は私の唇から離れられると、耳に口を寄せられ、耳たぶの表も裏も中も舐められる。
初めは何をされても身の毛がよだったが、今は蠢くたびに、心地よい痺れが走る。痺れる
たびに自分のそこが、締め付けを繰り返す……。締め付けるたびに、身体の中の塊が
力強さを増していく……。
殿下の腕が私の腰を掴み、激しく揺さぶられた。私も手の動きに合わせて、腰を上下さ
せる。
「ああっ あぅっ あぅっ あぅっ ひっ あぅっ いぃ あぅっ はっ ああっ……」
もうたまらない。声が勝手に湧いて出る。
「愛い声で鳴く」
私のうなじに張り付いた後れ毛を掻き揚げられながら、更に強く下から突き上げられる。
「ふんっ ふんっ ふんっ」
塊は私の奥にぶつかって、胃のあたりまで突き上げる。
ご尊顔に汗が浮かび上がっている。密着している脚もじっとりとして、肌が強く
擦れ合った。動くのが少し辛くなってきた。
と、殿下は私を下に組み敷かれ、最初の形にさせられた。私は自ら腕や脚を絡めて、
その重みを全身で受け止めた。
あの時は重さも圧迫感も、嫌でたまらなかった。でも今は……愛おしく感じてからは
……心地よく、力強く、頼もしい。
そして上から何度も何度も、腰を打ち付けられる。時折腰をぴったり合わせて円を描く
ように掻き回され、その動きにまた、はしたなく声を洩らした。
なんだかお小水が漏れ出しそうな……今まで味わったことのない不思議な心地。
……訳が判らなくなってきた。自分の身体が痺れるような甘いような、やっぱり少し
痛いような。でも……今は、この身を任せ、存分に味わってもらうだけ……。
何度も出し入れされ、塊は私をこすり上げては、打ち付ける。
玉体から汗が滴り、身体中が密着する。触れ合う肌に感じる温もりが、とても熱く思え、
何より繋がっている部分は、もっと熱を帯びている。
うにゅ ずちょ くちゅ ぬちょ
今にも、どろどろと溶け出しそうな音がした。
音と共に、私の喘ぎ声が……もう抑えられず、突き上げられる動きに合わせて、
恥じらいを忘れて喘いでしまった……。
動きがいっそう早くなり……、
「……余の子を孕め……」
ご尊顔が、微かに歪んだ。強く抱き締められ、ぐっと腰が押し付けられ、塊がもっと
身体の奥に入り込むのを感じる。塊は、はじけるように少し大きくなって、私の身体の
内側を強く圧迫した。
……ぶるっと、玉体も、塊も、小刻みに動いた。奥の方で、塊とは別の圧力がかかる
のを感じて、思わず、何度も締め付けた。
9/9 壱参弐 柵
しばらくすると、塊だったものは柔らかくなり、私の中で小さく溶けて漂っていた。
可愛い……最初から、これぐらいだったら良かったのに。そう思うと可笑しくなって、
何度か自分の身体で軽く握り締めていたが、やがて……ずるりと抜け落ちた。
あたりには汗の匂いが……汗だけではない、殿下と私の交じり合った匂いが立ち込めて
いる。
終わった。
私はしばらく、そのままの姿勢を取らされた。
殿下の方はさっさと身支度を整えて、お帰りになった。
その後で私も身体を清められ、やっと自分の部屋へ戻ることを許された。
帰る道すがら、尚宮さまが言われた。
「世話のやける……王の女なのだから、少しは嗜みを持つべきものを。お前が付いた
尚宮は、手解きもしていないのか」
悲しくなった。
部屋に入ると、ヨンノは起きて待っていた。
「おめでとう」
そう言ってくれたけれど、恥ずかしくてまともに顔を見ることができない。
「どうだった」
聞かれても、この部屋から連れ出された時のように、やっぱり何も答えることはできな
かった。
布団に潜りこむと、涙がまたあふれた。
夢中になって、あまり感じなかったけれど……あそこに、ズキンズキンとした痛みが
戻ってきた。節々が痛い。髭で擦り付けられた頬も、脚が触れ合った腿もひりひりする。
それなのに身体は熱く火照り続け、女官にまで触られた胸や、抉られたあの場所が……
痛みと共にもどかしいような、あの妙な感覚が身体を包む。強く吸われ、差し入れて
優しく絡ませた……溶け合う快さも、舌の上に残っている。
でも股の間からは、絶えず何かが流れ出てきてべとつく。憚りへ行こうかと考えたが、
また赤いものが付いていたらと思うと、怖くなった。
私はどうなったのだろう……どこもかしこも、自分の身体ではないような気がする。
痛みと火照りを堪えながら眠りについた。枕を抱いて、ただあなたの笑顔を思い出して、
心を慰めた。
この部屋で眠るのも今日が最後。あなたとこの部屋で過ごした日々は、本当に楽しかっ
た。……あなたがたとえ戻って来れても、ここに迎えることはできなくなってしまった。
でも、きっと喜んでくれるわよね、チャングム……あなたの苦しみを思えば……。
何もしてあげられなかったんですもの。
我慢しなくては。そうしていつの日か、あのことを殿下に申し上げて、あなたの無念を
晴らそう……。
たとえ会えなくても、あなたのことを想うと気持ちが和らいでいく……。
―――終―――
いやーGJでしたよ!
ハードなお初でしたが、けなげで良かったです。
…横で見守っている尚宮と内人はもよおさないのか?
72 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/29(金) 23:27:44 ID:T6uqbia1
壱参弐たん、百合もノーマルも書けるのか。
すばらすぃ過ぎて、漏れはいま感動してるよ!
お見事ですね・・・。
好きな人でも初めての時は「え、何?こんななの?全然ロマンチック
じゃない」って思いましたよ。昔は今ほど情報なかったし。
なんかリアルでした。
女子高でお姉さまに憧れてたような子が初めてできた彼氏としたときって
こんな風に感じるかもね。
ハヤカワ文庫の小説を読んだら、王様の寝所を取り囲むように尚宮が配置されてるって書いてあった。
実際こうやってお付の人が指示を出したんだろうか。
晴れて釈放されたミン・ジョンホを迎えに走るチャングム。
ミン・ジョンホも獄舎を出る。
獄舎の前で対面する二人。
チャ「命をかけて私を信じて下さいました」
チョ「獄中にいた間ずっと、無性に後悔していました」
ミン・ジョンホが冗談を言っているものと思い、思わず顔をほころばすチャングム。
だが、次のミン・ジョンホの言葉に、チャングムの瞳から止めどなく涙が溢れる。
チョ「ソ内人が危ない目にあうのではないかと、後悔していました」
チョ「こんな事になるなら、済州島や典医監で、攫ってでも逃げるべきだったと・・・
阻止すべきだったと骨身に染みて後悔しました。そう考えると、どうかなりそうでした」
チャ「ナウリ・・・」
思わずミン・ジョンホに駆け寄り彼を抱きしめるチャングム。
ミン・ジョンホもまた、チャングムを強く抱きしめる。
solcov_b
MBC『大長今』公認ブログ
http://www.terebi.jp/solcov_b
>74
昔の中国の後宮は、その日指名された妃に皇后の許可の院が下されて後、
風呂に突っ込まれ、身支度したら絹の袋に入れられて、
宦官に担がれて寝所にはいる。(廊下で間違いがあるといけないので)
それで、衣服をはぎ取る役の宦官や女官、
精を発するのを記録する係(つまり、その日の交わりの詳細が記録されるのですね)
そして、室内には刺客に備えての護衛などの兵も配され、7〜8人は寝所内にいるのではないですか?
つまり、あの長官様が背後で
「いま、陛下のお召しを外して。
ええい、もっと、そっと気づかれぬように」
などと尚宮たちの耳元で囁いているのではないかと。
>>75 第46話「医局長の遺書」で、
牢から解放されたミンジョンホとチャングムとのシーン
ある日、チャングムは皇后と密会していた。
長今「どんな理由であれ、そのようなことはできませぬ…私にはできませぬ」
皇后「それが私の頼みでも?」
長今「はい」
皇后「お前を生かした私であっても?」
長今「はい」
皇后「お前の命を握っている私であっても?」
長今「はい。私の命は差し上げられても、私の【体】は差し上げることができません。ですから、私の命を差し上げます」
皇后「お前を失いたくないと言ったであろう?いいわ。それでは側にいなさい。それくらいはできるであろう?」
退出し、衝撃覚めやらぬチャングムがヨンセンの部屋に行くと、中宗が待っていた。
中宗「命を絶たれてまでもできぬと申した事とは何だ?答えるのだ!
答えぬのならお前は王を欺いた罪に問われるぞ。
お前と皇后の【関係】を知っているゆえ、余にも思い当たるふしがある。言え……皇后を連れて参ろうか?」
長今「殿下!お答えできませぬ!私を殺して下さい!」
80 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/23(月) 00:17:50 ID:63GHGLJS
81 :
名無しさん:2006/10/24(火) 22:47:04 ID:VUXfDR8y
チャングムとチョンホキボン
ほしゅ
83 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/02(木) 10:29:39 ID:XHzrFJ74
脱いだ医女希望カン・ウォンジュさんですかな?
84 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/05(日) 23:22:35 ID:ZmEEo12a
過疎っちゃイヤ〜ン!!
あとちょっとで最終回ですね
86 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 01:10:45 ID:g+65RJoa
誰かチェ尚宮×ハン尚宮もの書いてくれ〜!皇后×チャングムとか。
皇后の間の職人さん光臨キボン
88 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 22:59:24 ID:VkeK0SEs
チェ×ハンかぁ!!いいねえ〜〜〜ww
いや、ハン×チェで頼む!w
90 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/08(水) 01:36:51 ID:eoYbTJct
チェ×ハンでもハン×チェでもどっちでもおk!
とにかくチェ尚宮とハン尚宮の絡みがみれたらそれでいいw
個人的にチェ×ハンがいいがw
皇后×チャングムもキボンw
91 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/09(木) 22:25:54 ID:fJIQEH4h
神きてくれ〜〜〜〜!!!!(T-T)
92 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 03:35:49 ID:VU7HFj1y
皇后×チャングムネタを書いてみました。
初めて小説なんて書いたのでうまく書けてるかわかりません(x_x;)
ジャンル:百合
内容:本編の39話のワンシーンを少しいじってみました。
微エロ(?)なとこもあります。
まってました! 遠慮せずガンガン行ってください。
94 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 03:46:50 ID:VU7HFj1y
皇后×チャングム
No.1
ある日の夜
医女・チャングムは皇后に呼ばれた。
『女官時代に作ってくれた野苺の砂糖漬けを食べたいから今夜野苺の砂糖漬けを持って皇后殿に来ておくれ』と。
そしてチャングムは野苺の砂糖漬けを持って皇后殿へ向かった。
『チャングム。』
『皇后様、野苺の砂糖漬けをお持ちいたしました。しばらく料理から離れていたので同じ味なのかは自信はございませんが…』
そう言ってチャングムは皇后へ野苺の砂糖漬けを差し出した。
皇后は野苺の砂糖漬けを口へ運んだ。
『うん、美味じゃ
あの頃と同じ味だ
しばらく料理から離れていたのに料理の腕は落ちておらぬな』
『有り難きお言葉です皇后様』
そう言ってチャングムの作った野苺の砂糖漬けを美味しそうに口に運ぶ皇后。
『そちも食べるか?』
『いえ…そんな…』
『近う寄れ』
そう言ってチャングムを自分の近くに引き寄せた。
『もっと…』
チャングムは皇后に肩を引き寄せられた。
皇后は楊枝に刺さっている野苺1粒引き抜きつまんで
チャングムの口元へ運ばせようとした。
『チャングム口をお開け』
チャングムは皇后の持つ野苺を口へ運ばされ、チャングムは野苺を口に含んだ。
95 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 03:50:22 ID:VU7HFj1y
皇后×チャングム
NO.2
『美味か?』
チャングムは少し動揺しながら
『は…はい…皇后様』
と答えた。
皇后はもう一度
楊枝に刺さった野苺を1粒引き抜き
チャングムの口元へ運ばせた。
チャングムももう一度野苺を口に含んだ。
『チャングム…私の指についた野苺の汁をお舐め』
チャングムは動揺したが
チャングムは皇后の爪を甘く咬んで
皇后の野苺の果汁の付いた指先を口に含み
口で一通り舐った。
『そちはいやらしい舐めかたをするな…
その上目使いもそそるな…可愛いな』
そう言って皇后は妖しく微笑んだ。
皇后は人差し指でチャングムの顎をくっと持ち上げ、
親指はチャングムの唇に置き
皇后はチャングムに口づけをした。
『ん……ん……っ』
皇后とチャングムは
口の中で舌を絡ませ合った。
チャングムは口づけを重ねていくごとに
吐息が熱く荒くなっていくのがわかる。
そして皇后の熱い舌も自分の舌で感じる。
しばらく口づけを交わし唇を離した。
チャングムの唇から
皇后と絡ませた唾液が糸を引いた。
チャングムは動揺していた。
『…皇后様…何故いきなり…このような事を?』
96 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 03:57:32 ID:VU7HFj1y
皇后×チャングム
NO.3
『…信頼してる人間であるしそちは…私の愛しい女子(おなご)である…』
チャングムは自分の耳を疑った。
―私を事を愛しい女子…??
『…は?』
『最初見かけたときから私の目に止まっていた。
綺麗な顔、透き通った白い肌、
そちのまっすぐ直向きな瞳、
そちの志に惚れている。
ずっとそちを私のものにしたいと思っていた。』
唐突に自分の事を慕っていると告げれたことと先ほどの接吻したことでチャングムは動揺して何が何だかわからなくなり
暫く冷静に物事を判断できずにいた。
『…私の傍にいておくれチャングム
チャングムの心が欲しい…』
『医女としてお傍にいることはできても…
それは…できません…』
『何故?』
皇后は少し眉間にシワを寄せて言った。
『皇后様に私の命を差し上げることはできても心まで差し上げることはできません…』
『命を差し出しても心は差し上げることはできぬとな?』
『はい…』
チャングムの心の中には今も亡きハン尚宮がいる。
チャングムとハン尚宮は互いを慕いあっていたのだ。
チャングムはいまも亡きハン尚宮を愛しているのだ。
『そちを失いたくないと言っているであろう…?』
97 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 04:02:15 ID:VU7HFj1y
皇后×チャングム
NO.4
『…できません…』
『なら私付きの尚宮になっておくれ…
私はそちと一緒にいたい…
心は欲しくとも愛しい人間の命など欲しくない』
暫く沈黙が続いた。
沈黙の中、チャングムは時が過ぎるのがこんなにも遅いのかと思っていた。
『皇后様、よろしいでしょうか?』
―この声は女官時代同期であり今や最高尚宮となったクミョンの声だった。
『…入りなさい』
皇后は渋々と言った。
『それではまた何かあったらお呼びください
失礼致します』
チャングムはこの場から去ろうとした。
『チャングム…!』
皇后はチャングムの腕を強く掴んだ。
暫くチャングムと皇后は目を合わせていた。
『申し訳ございません皇后様。皇后様のお気持ちに答えられそうにありません…
恐れながら申しあげます…皇后様
私にも慕っているお方がいます…
………失礼致します』
チャングムは自分の心に嘘はつけなかった。
自分の腕を強く掴む皇后の手を優しくほどいた。
チャングムは皇后殿を後にした。
皇后はただその場に立ち尽くすだけだった。
98 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 04:06:03 ID:VU7HFj1y
皇后×チャングム
NO.5
夜食を持ってきたクミョンに皇后は
『…すまないが…そちの作った料理を食べられそうにない…
食べる気分にはなれないのだ…
本当にすまぬ…』
『しかし皇后様…』
『…料理を下げろと言っているではないか!…一人にしておくれ…!』
いつも柔らかな気品を持つ皇后が珍しく声を荒らげた。
『……かしこまりました………』
料理を下げ、クミョンも皇后殿を後にした。
『チャングム…どうしたら…
そちの心を私に向けてくれるのだ…?
ああ…どうしたら…
愛している…チャングム…』
皇后は小さく呟いた。
―皇后の欲しいものは手に入れることはできないとわかっていても皇后は一人の愛しい女に恋焦がれてやまないのだった。
■皇后×チャングム・終
※初めて書いたので本当に自信がないです。
皇后様の片想いという話にさせていただきました。
99 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 18:32:36 ID:VU7HFj1y
NO.3の間違いを見つけましたので訂正させていただきます;;
チャングムの台詞で
『―私を事を〜』
となっていますが
正しくは
『―私の事を〜』です。
すいませんでした。
最高です〜ww
皇后様・・・イイ
その勢いでチェ×ハンも書いてくださいwwww
101 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/12(日) 23:10:46 ID:uOap3ZkG
ぺぎょんタソの心がほすぃw
壱参弐 柵
内容:百合 原作改変 エロ多少 *キャラを少し汚します。
ハン尚宮とチャングムの物資査察に危機感を募らせたオ・ギョモ一派は、チェ・パンスルや
チェ尚宮に、一刻も早く水剌間最高尚宮の座を奪い返すよう命じていた。
ある日、王は療養を兼ねて温泉にお出ましになり、ハン最高尚宮他数名の女官たちも
同行した。ところが・・・。
王は突然発熱し、その原因は温泉地でお出しした食材、わざわざ現地調達したアヒルに
疑いが向けられた。しかし関係者であるハン尚宮他を尋問しても、一向に自白は得られない。
日夜続く激しい取調べに、疑いをかけられた者たちの体力は徐々に消耗し、いずれは
このまま命脈尽きるのではないかと、誰の目にも映る・・・。
とりわけ女官たちの疲労は激しく、それでも口を割ろうとはしない。いくら水を
掛けても気を取り戻さぬ尚宮を、獄吏はやむなく一旦牢屋に連れ戻すこととなった。
[牢屋にて]
「ハン尚宮。ハン尚宮……ペギョン!」
―――名前を呼ぶ声がする……。
あぁ。このように呼ばれるのは何年振りだろう。もう二十年にもなるか……。
あの頃は、お互いを名前で呼び合っていたっけ……。もう誰もそんなことは
し合わないから……きっとミョンイが迎えに来てくれたのね……私も、もうすぐ
あなたのところへ行くのね……」
「ペギョン」
「ミョンイ? ミョンイなの?」
息も絶え絶えのハン尚宮、薄目を開けて声の方向を確かめる。
しかし、そこにあるのは内人姿しか知らぬ懐かしいあの人ではなかった。尚宮服を
着込んだあの者が見下ろしている。
「ペギョン……」
―――チェ尚宮! お前は太平館に禁足したはず……それなのに、いったい何をしにこんな所へ?
あっ! この度のこと、みんなお前の仕業ね。
「ペギョン……」
「お前! ミョンイや私に飽き足らず、チャングムまで」
「言いがかりはよして欲しいわ。あなたたちが悪いのよ」
「なんですって」
「判っていたでしょ。逆らった者がどうなるかって。なのに私たちに楯突こうとするから」
「でも私はチョン尚宮様のお志を」
「そうやって押し込められて、お志とやらを喚いていればいいわ」
「ううっ」
「でも、もう長くは続かないようね」
「じゃあいったい何しにきたの。私をいたぶりにきたの?」
―――なんという言い草。可愛くない。
「嫌がらせに来たのね。競い合いに負けたから」
―――まったく……それを言うか。せっかくこうして会いにきてやったのに。
「お前……」
―――私がさっきペギョンって呼んでやっただろう。なのにずっと"お前"呼ばわりか。
立場を弁えよ……。
「チェ尚宮……お願いだから……」
―――あーあ。やっと"チェ尚宮"どまりかぁ。ふんっ。上役面して。
「お願いだから」
―――お願いだって? 人にものを頼む時は、"チェ尚宮殿"とか"チェ尚宮様"とか言えないの?
「チャングムだけは、助けてやって」
―――何かと思えば。
「あの子は何も知らないの」
「駄目よ」
「どうして? あのことは誰にも言わないわ。あの子はまだ生まれてもいなかった」
―――それが怖いのだ。死んだはずのものが生きていて、生まれるはずの無いものが
あのようにいることが……。しかも……またお前まで、母親と同じように。
「私は黙って逝くから」
「! それは……。私の望みはそんなことではない」
「じゃあ二人とも死ねって言うの?」
「違うわよ。私の望みは……チャングムがいなくなり、お前はこのまま」
―――私はこのまま? いったい何を言いだすの? 私が邪魔じゃないの?
「チャングムは目障りで仕方がないの」
―――ミョンイの子かも知れないけれど、たかが内人でしょ? 何をむきになって
いるのかしら。やっぱり競い合いであの子が勝ったからかしら。
「チャングムはいつもあなたの側にいたし」
―――でもあの子は、今は出納係よ。水剌も久しく作っていないわ。
「打ち合わせと称して毎晩あなたの部屋に遅くまでいるし」
―――???
「まるでかつてのミョンイみたいにね」
―――???
「私が知らないとでも思っているの? あなたたちの関係を」
―――まあ、それはそうだったけれど、でもあなたには関係のない話しじゃない。
「私がどう思っていたか判っているの?」
―――いや、どうとか言われても……。それに、それとこれと何の関係が……。
「あの子が宮にもぐり込んでから、あなたの目はあの子ばかりに向けられていたわ」
―――それは部屋子だから。
「あの子が上手くやっても失敗しても、いっつもあの子ばかりを気にして」
―――弟子ですもの。
「補助の内人を付ける時も、他にも一杯良い子がいたのに、わざわざ味覚を失った
あの子を選んで。尋常じゃない」
「それを補って余りある力があると思ったからよ」
「そうじゃないわ。敢えて不利になるようなことをしたのよ。それはただ、あの子が好き
だったからよ。はっきり言って公私混同よ。あなたは否定していたけれど」
―――実はそうなんだけれど……あの時はただ私の支えが欲しかったからだけど。でも、
何で判ったのかしら。
「私の望みは、お前だけを生かすこと」
「でもチャングムを失ったら、私は抜け殻になってしまう。ミョンイをなくしたときのように」
「それでいいのよ。前のように、黙って私に従っていれば」
「それなら私は今度こそ、チャングムの後を追うわ。そしてお前を地獄に引き摺り込んでやる」
「……」
「お前の一族を呪ってやる」
―――本当にそうしかねないところが怖いわね。
「絶対許さない!」
「仕方ないわね。じゃあこうしましょう。これからいう条件を呑むなら」
「条件ですって? 誰がそんなこと」
「じゃあもう話すことはないようね。あの世でミョンイによろしく言っておいて」
「待って! 待って!」
「言うことを聞くのね」
「……」
「聞くのね。でないとチャングムも」
「聞くわ!」
「ひとつ、最高尚宮を退く。今回の責任を取るという形にすれば丸く収まるわ。
ふたつ、チャングムは別部署に遷すから。太平館あたりにしようかしら。使臣の受けもいいし。
みっつ……」
「何よ? まだあるの」
「みっつ、あなたは水剌間に置いてあげる。それで部屋を私の、つまり最高尚宮の部屋の
隣に宛がうから、私が呼んだらいつでもすぐに来なさい」
―――?
「それと」
「それと?」
「二人きりの時は、ソングムと呼びなさい。昔のようにね」
「それがあなたの望みなの?」
「そうよ。悪い?」
「そんな……今さらそんな言い方」
「私の言うことを聞くの? 聞かないの? どっち?」
「……」
「嫌ならいいわ。どうせあの時から口も利いてくれないし、チャングムとの仲を見せ付け
られるなら、いっそこのまま」
―――このままでは、私たちは長くはない……。
「どうするの。もう時間は無いわよ」
―――不愉快極まりないが……あの子の命が救われるなら……我が身など……。
「無駄だったようね。じゃあミョンイによろし」
「待って。……あなたに従うわ」
「そう、最初からそうしていればいいのよ」
チェ尚宮は、ハン尚宮を信じていた。取り引きといえども、ひとたびこうと決めれば、
余計なことはすまいと。それでオ・ギョモに取り成し、女官たちは直接の関係はないとして
釈放することとした。
オ・ギョモも政敵さえ始末できればそれで良く、面倒な取調べには興味はなかった。
鳥屋など脅せば適当に関連付けできる・・・そうこうする内に按配よく、温泉地を
うろついていた副官も獄死し、一件は幕を閉じた。
しかし幕を閉じないところがあった。
チャングムはハン尚宮に言い含められ、そして従わなければ尚宮様のお命を危うく
することを悟り、とりあえずは身を潜めることにした。そして泣く泣く、太平館へ
旅立って行った。
以来ハン尚宮は・・・。
[チェ最高尚宮の部屋]
「ハン尚宮、いるの」
「はい、ただいま」
「ねえペギョン」
「……」
「ペギョンったら」
「……」
「約束でしょ。それともチャングムを」
「はい」
「ペギョン」
「……」
「ペギョンったら」
「ソ…ソングム」
―――夢にまで見たひととき。あなたにソングムって。もっと聞きたいわね。
「あの、チェ尚宮様」
「そうじゃないでしょ」
「あの、ソングム……」
「何?」
「あの、それでこうやってここに居ればいいのでしょうか」
「そうね、それも趣に欠けるわね」
「では何を?」
「そうね、私は最高尚宮として御膳の時に殿下にお話しを差し上げなければならないわ。
だからあなたが今まで仕入れたお話しを聞かせてちょうだい」
「はあ」
「いいでしょ、ペギョン」
―――くっ。こんな者のために必死で覚えた訳ではないのに。
「嫌なの、じゃあチャ」
「はい、それでは」
「ちょっと待って。もう夜も遅いから、寝支度をするから」
「ええっ?」
「あなたも隣に寝なさい。布団を持ってきて。そうね、これから毎晩ここで寝なさい」
「それは……」
「嫌? じゃあ」
「判りました」
―――ふふっ。そうやって素直に言うことを聞いていればいいのよ。
「尚宮様」
「あらクミョン、どうしたの?」
「いえ、祝宴も近いことですし、段取りについてご相談を」
「そう、でも今日はね……」
「あっ、ハン尚宮様! どうしてこちらへ?」
「……」
「私が命じたのよ。気にしないで」
「いえ、そういう訳には参りません。どのような訳があるにせよ、一つ部屋で床を
同じくされるなんて」
「……」
「私も新しい最高尚宮として、猛勉強しなければならないの。だから徹夜でハン尚宮から
学ぼうとしているの。でもうっかりして風邪でもひいたら大変じゃない。だから」
「だからじゃありません、チェ尚宮様!」
「チェ尚宮殿の言うとおりなの。しっかり殿下に御膳を捧げてもらおうとしているのよ」
「そうなのよ」
―――叔母様はそうおっしゃるけれども、叔母様のご所望、私には判ります……。
「それで、先に祝宴の話しをなさる?」
「いえ。クミョン、明日の夕方いらっしゃい」
―――叔母様、とうとうハン尚宮様と……では私の気持ちはどうすればいいのですか?
「おやすみ、クミョン」
―――しばらく私だけが堪能するけれど、その内あなたも一緒に……ふふ。それまで
おとなしく待ってなさい。
「ハン尚宮様、チェ尚宮様、お休みなさいませ」
「ふぅ。恥ずかしゅうございます、チェ尚宮様」
「私はちっとも恥ずかしくないわよ。あの子は私の気持ちを知っているし」
「気持ち、ですって?」
「そうよ。じゃあそこに横になって、ね」
「……では、お話しを……」
「話しはいいから、こっちへいらっしゃい」
「!」
「ねえ、ペギョン」
「……」
「あなた、ミョンイといつも一緒にいたわよね」
「はい」
「手を繋いだりしていたのかしら?」
「はい」
「寝ている時も?」
「ええ」
「そして、こういう風に触られたりしていたのかしら?」
「チェ尚宮様……お戯れを」
「こんなところも?」
「……あっ」
「黙っていたら判らないわよ! ここは?」
「ソングム、止めて!」
「聞いていることに答えなさい。このあたりとか?」
「うぅっ」
「まあいいわ、身体で教えてもらうから」
「くっ」
「それに……チャングムともこんなことをしていたのかしら?」
「いぇ」
「知っているのよ! 私を追い出して毎晩のようにしてたって」
「うっ」
にゅる ぺちょ
「ひっ」
うにゅ くちゅ
「はぁ」
じゅる ずぼっ
「ああ」
ずずっ ぺろっ
「はぅ」
―――もうペギョンは私のもの。今までできなかった分、こうやって楽しませてもらうわ。
ハン尚宮の苦難の幕は、まさに開けたばかりであった・・・。 ―――終―――
>>103 壱参弐 神様!
∧∧ . ..。:*゚
( '∀') キ
。ノ∧⊃∧ . ..。:*゚
( ( ´∀`) タ
oノ∧つ⊂)
( (n‘∀‘)η ワ ゚・*:・。..
∪(ソ ノ
と__)__) ァ . ..。:☆・゜
アナタ様のは毎回萌えます!
dd!
109 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/14(火) 21:52:28 ID:LcafL7qe
神、降臨キタ〜〜〜〜〜〜〜〜!!
続きっ、続きが禿しくsfjdfjdsしdがをyatayv
いいとこで終わってるぅぅぅ・・・
続き激しくキボン
>―――叔母様、とうとうハン尚宮様と……では私の気持ちはどうすればいいのですか?
>「おやすみ、クミョン」
>―――しばらく私だけが堪能するけれど、その内あなたも一緒に……ふふ。それまで
> おとなしく待ってなさい。
これは3Pってことかな(*´Д`)
112 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 21:33:05 ID:4UxQlzYA
きょうは続きが気になり過ぎて全く仕事にならなかったじょ!!
これからほぼ毎晩、チェ尚宮の夜伽役を務めなければならなくなったハン尚宮は、
きっと、ミョンイやチャングムのことを想って、必死にチェ尚宮との行為に耐えているに違いなひ…
壱参弐たん、続編ヨロ!!
113 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 22:13:08 ID:75l+AUKA
漏れもだーo(´^`)o続きお願いですw
>>壱参弐氏
一読して内容はチェ×ハンぽかったけど、名前欄がずっとハン×チェになってるってことは
これは期待して良いんでしょうか
115 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/17(金) 22:28:41 ID:wsxfUqg7
まだかなまだかなー(〃д〃)ワクワク
116 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/17(金) 23:50:33 ID:AvZOXeWF
受けのハン尚宮さまって、かあいい!!
最終回放送保守
118 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 23:16:58 ID:LagNKAD1
もっかい再放送してほしすぃ〜〜。
そしてまた一話から尚宮萌へしたひ。
再放送は地上波でお願いしまつ。。。
再放送くるの、今度はきっとCSだと思う。
某チャンネルが、堂々と韓流専門チャンネル名乗り始めたし。
CSだとKNTV版を放送するのかなあ
NHKはノーカット無修正版を流す気があるんだろうか
CSうつんないorz
DVDはノーカット版?
壱参弐 柵
内容:百合 原作改変 エロ微妙 *キャラを少し汚します。
いつもご感想をいただき、ありがとうございます。
各作品においていただいたレスでは、私が知らなかったことを教えていただきました。
一つお詫びしなければなりません。これを投下するに際し、他スレに誤爆いたしました。当該スレの皆様、本スレの皆様、ご迷惑をおかけして済みませんでした。
「もう私でなければ、我慢できない身体に……」
「嫌ぁっ……」
こんな姿を見たら、ミョンイはどう思うだろう。いくらチャングムの為とはいえ……。
ごめんなさい。仕方ないのよ、こうするしか……。
そう思い目を閉じて堪えていると、まさぐる手の動きが鈍るような。目を開いてみると、
あの者の瞼は徐々に重くなり、眼光も薄れてきている。そしてついに私の胸に頭を持たれ
掛けさせて、寝息を立て始めてしまった。
あれ、さっきの意気込みはどうしたの。もうこれで終わり? ちょっと触り抱き締められ、
ちょっと耳に口を寄せて舐めただけ? ミョンイに助けを求める必要もないみたい。
しばらく様子を伺っていたが、起きる気配もないので、寝巻きを整えてやり、布団に押
し込み掛け布団をかぶせた。
どうしようか考えたが、好き好んで並んで寝ることもあるまい。布団をまた持って、
自室に戻る。布団を抱え廊下をうろうろ。情けない。こんな姿こそミョンイに見られたく
ない……。
次の日も呼び付けられた。昨日は何で部屋に戻ったのかと口を尖らせて聞くから、お疲
れのご様子でしたので休んでいただかないとお体に差し障ります、とか、さも身を案じる
ように言うと、納得顔をする。……単純なものだ。そういえばこの子は昔から単純だった。
嬉しい時は喜び、悲しい時は涙を流し、気に入らないことがあると、すぐ顔に出たものだ。
それだけあしらいやすいということだ。
けれど、この者の叔母の先代の最高尚宮殿が病気になられてからは、この者は小さな
両肩で一族の重圧とやらを受け止めてきたのだろう。その頃から感情をあまり表に出さな
くなったが……しかし私に比べれば、考えを伏せる術はまだまだ。よく知らぬ者は、
この立ち居振る舞いに威圧されたりもするようだが、なんの、はったりに過ぎぬ。
その後も、私、あるいはあの者が水剌間の夜当番の日を除いては、同じように呼び付け
られ、物語をせがまれ、身体に触れてくる。
だが、本当に疲れているのだろう。最高尚宮の仕事だけでなく、どうせ悪事に奔走して
いるのだろうから、さぞや大変なはず。すぐにうつらうつら始める。私が話してやって
いるのだから、ちゃーんと話しを聞け! そんな態度で覚えられるのか! と腹立たしく
なり肩を揺さ振ったことも一度や二度ではない。そうするとはっと目を開けるけれど、
やっぱり寝込んでしまう。その度に、布団を敷いて押し込み、自分の部屋に戻る。
……なんだ、これならもう一々、布団を持ち込む必要はなさそうだ。
そうと判ってからは、先に寝かしつけ、ただ隣に寄り添って物語を聞かせてやりながら
……手など繋いでやればにこにこし、背中をさすってやれば上機嫌で……それを眠るまで
続ける。
これじゃあ、単なる子守……。こんな姿をチャングムに知られたくない。あの子にも
したことがないというのに……知ったらさぞや僻むだろう……まだ激しく抱かれて耐えて
いる方が、格好がつく……そういうことにしておこう。
寝顔を見ていると、安らかに寝息をたてるこの者を殺め、私も自害してしまおうかと
何度も衝動に駆られたが……いや、そんなことをしたらチャングムが無事で済む訳はない。
そう、今や私は己のことだけを考えていればいいのではないのだ。
お前が生かされているのは、チャングムのお陰だと思え。心の中でそう呟いた。
ふた月ほどして、ようやく新しい職責にも馴れてきたのか、そしてしばらく非番が
続いたので疲れも取れたのだろう、いつもより生気を取り戻したようだ。
また呼び付けられる。相変わらず顔を見るのも不愉快だ。しかし不愉快な顔も、見慣れて
くるものらしい。
身体を摺り寄せてくる。
あー、またいつもの。だ・か・ら……私はお前なんて欲しくないし、触られたくもない。
だが、まあ私もチャングムと引き離されてだいぶ経つ。ここはちょっと気晴らしに、
相手をしてあげることとするか。
何せこういったことも、たゆまぬ修練が必要なのは料理と同じ。この者でいろいろ試して、
またチャングムと会えた暁には……。それも一興やも知れぬ。
それにミョンイとどんなことをしていたのか聞きだして、今度あの子に会ったら、責め
てやろう。ふふ。それもいいわね。まさか私がこの者から聞きだすなんて思ってもみなかっ
たでしょうね。驚く顔が見てみたいわ。
だから今日はちょっと我慢しよう。機嫌を損ねる訳にもいかないのだから。
そして私にはやるべきことが……。それまで時を待つのよ、ペギョン。
「ねえペギョン」
「なあに、ソングム?」
「ずっと放ったらかしにしておいて、ごめんなさいね」
「いいのよ、お疲れのご様子だったから」
「今日はちゃんと起きてるから」
「そう」
「今日はちゃんと抱いてあげるから」
「そう」
「ねえ、嫌なの」
「別に」
「昔っからちっとも私とは」
「だってあの頃は」
ミョンイがいたし、って言えば、また嫉妬に引き攣るだろう。それは後の楽しみに取って
おこう。
「そういわれればそうね」
「今までいろいろごめんなさいね」
心の中にこみ上げるものが……怒り……を抑える。
「でも私だって本当は嫌だったの」
お前! 私が苦しむ様を見て、ほくそ笑んでいたではないか。どの口がそれを言うか!
「でもああするしか」
いかに捉われの身とはいえ、私にも誇りというものがある。すぐに許してはならない。
しばらく仏頂面を見せておく。
「でも私の家って、名門でしょ。だから」
仏頂面。
「でも全部が私のせいでもないのよ。それだけは判ってね」
仏頂面。
「本当はあなたに会えなくて、寂しかったの……」
身勝手な。仏頂面に磨きをかける。
「だって醤庫でもめったに会えないのに、あんなところへ追いやるなんて。いてもたっても
いられなくて」
「最初に私を太平館にお送りになったのは、チェ尚宮様でした」
「あの時は、大事な使臣が来るから、あなた以外には無理だったの。それ以外の理由なんて
ないわ」
仏頂面。
「あなたを信じていたのよ」
にこりともせぬ私に、さすがに心配げな顔をする。脇の物入れを開けて、何か取り出して
いる。
「ねえ、これあげる」
「翡翠の指輪じゃない……別にいいわよ」
「貰ってちょうだい」
「でも」
じゃあ早速カン熟手に渡して、これからお使いをお願いする時の手間賃にしてもらう
かしら。
「時々つけてちょうだいね」
「私には不相応だわ」
いけない、しばらく持っていよう。
「そんなことないわ。あなたならとても映えると思うの」
胃の中にこみ上げるものが……えずき……を抑える。今日はお夕食を控えておいてよ
かった……。
「それにあなた最近、見違えるほど立派になって。ますます素敵」
背の中に走るものが……みみず……を堪える。ミョンイ助けて、こそばゆくって仕方
ないわ。
牢屋に来た時はさんざん凄んでいたくせに、私がこうやっておとなしくしていると、
もう自分のものになったつもりでいるようだ。座を脅かされる心配も無くなったからか、
親しげに擦り寄ってくる。
身体に触れるのも、初めは、辱めるためと思っていたが、今までのことを振り返り考えて
みると、どうやらこの者は私のことを本気で好いているらしい。そして私に振り向いて
欲しくてたまらないらしい。
それにしても……私の何がいいのか。理由を聞いたとして、理由など無いわ、とさらっと
言ってくれればいいが、素敵だとか憧れていたとか料理が上手いとか昔からとかチャングム
ばかり見てとかいうのだろう。私も知りたい訳ではないし、聞くだけ無駄だ。
でも、そんなに媚びなくても。そうやって歓心を買おうとしたところで私の気持ちが
変わる訳は無いのに。私の欲しいもの、それは高価な飾り物などではない!
頭の中にこみ上げるものが……憤怒……。いけない。今日は我慢して、まともに相手を
しようと決めたのだから。
そしてもっと冷静に観察するのよ、ペギョン。この者が何を考えているのか、どこが
弱みなのか。敵を知ること。それにチャングムとそして私の行く末がかかっているのだから。
「ねえ、機嫌を直してよ。まだ怒ってるの?」
「いいえ、特には」
単純というより、自分がやってきたことの重さすら判らず、平気でこんなことが言える。
怒ったって仕方がないのかも知れない。この者を懲らしめるには、良心とやらに訴えかけ
て反省を促しても無理なのかも知れない。ということは、もっと実質的な懲罰、見えない
真綿でじわじわと首を絞めるしかないのだろう。
「じゃあこっちにいらっしゃい」
「はい」
はたから見れば、私はチェ尚宮の手の中にある。とは言え、簡単になびいたのでは面白
くない。この者の性格からしても、容易に従う者は好まぬ様子だ。ということは駆け引きが
大事だということ。付かず離れず、最初は戸惑い、与えられる好意と行為に嫌がるそぶり
を見せつつも、徐々に惹かれていき、そしてついには離れられない仲になる。よし、頭の
中に台本はできた。
「あなたとこうして過ごせるなんて、信じられないわ」
「しかしあまりに親密すぎるのも、あらぬ噂をたてられる元かと。もうすこし御配意され
ませんと」
「いいのよ。私は前任者から引継ぎを受けているだけって」
もう三月も経つのにまだ終わらないなんて、お互いどれだけ無能と思われるか。つまら
ない理由を付けられては、私の方が迷惑だ。
「特に物語はとても大切だからって、皆に言ってあるの」
そう思うならしっかり聞け。聞いたことを書きとめよ。お前は単に寝物語を聞きたいだ
けでしょ。
「そうですね。ではしばらく間が空いておりましたが、この前の続きから……」
またいつものように寄り添って、語り聞かせてやる。
先程の私の心の中の声が聞こえたのか、今日は身体を触りもせず熱心に聞き入っている。
そう、その態度ならいいのよ。お陰で普段より多く話すことができたから、私も満足だ。
それで、これからどうするのかしら? こっちを見ている。
「本当にあなたって語り口がお上手ね」
またお世辞か。よしてよ。みみずでなくて虫唾が走るから。
「どうしたらあなたのようにお話しできるのかしら。私も頑張っているのだけれど、王様は
今ひとつ面白そうなご様子でもないのよね」
それはあなたのことだから、きっと、こんな話しもできるのよ、私はこんなに知ってい
るのよ、などと自慢げにしているからでしょう。そうじゃなくて、本当に相手のことを思い
やり、決して自分は前に出ないこと、言ってみれば謙虚さかしら。それがあなたにはないのよ。
「私って駄目ね。あなたのようにはなかなかできないわ」
あれあれ、妙にしおらしくして。ちょっと哀れにも思えてくる。それにここまで誉めら
れると、少し嬉しい。ちょっとおだててみよう。
「いいえ、そんなことはないわ。ソングムならきっとできるわ。私は信じているから」
顔がパッと輝く。……やっぱり単純。
「あなたとこうして過ごして、もっとペギョンのようになりたいの。もっと深く知りたいの」
そう話しが進むか……どうやら、ついにその時がやってきたようだ。しかし、しばらく
焦らせてから……。
「ねえ、もっとあなたを感じさせて」
「そんな畏れ多いことでございます、最高尚宮様」
「そんな風に呼ばないでよ、お願いだから」
「私のようなものにお求めいただいても、あなたのお気持ちにお応え出来るか自信がござ
いません」
「もう私を受け入れるしかないのよ。それはあなたの気持ちとは関係がないの。判って
いるでしょ」
ふふ。ちょっといらいらしてきたようね。
「それとも、また嫌って言うのかしら?」
「いいえ…………ソングムのお気持ちのまま」
「じゃあ」
抱きついてきた。仕方ない。しぶしぶ……背中を撫でてやる。内人時代なら戯れで済むが、
いい歳をして、しかもそこそこの立場についているもの同志が、何をやっているんだろう。
「ねえ、私を見てよ」
すがるような目を向けてくる。こうして見れば、昔から美形ではあった。
「とても、お美しいと思います」
「ほ、本当! 本当にそう思ってくれるの?」
思った通りだ。腕の中で喜びを爆発させている。その様子に、笑いをこらえるのに苦労する。
そして、案外こんな関係もいいかも知れない。表向きは私はチェ尚宮に無理強いをされて
苦労していると思わせておいて、実は私がこの者を……私の糸繰りでこの者がどのように
動くのか、そっと見守っていればいい。
ただし、それは単に面白いだけ、に過ぎない。本当の狙いはそのような頼りない糸で
操ることじゃないのよ……。だけど今しばらく、重い鎖をあなたに付けるまでは、こうして
付き合ってあげるわ。
「ええ。昔から私などとは"家柄"もたいそう開きがあり、とてもお近付きにはなれない
と思っておりました」
「そのことはもう言わないでよ」
「いえ、やはり宮中においてはそういった"格の高さ"も重要なことかと存じます」
「やっぱり怒っているの?」
「いいえ。でもあの時ご指摘いただきまして、目が覚めた思いでございます」
「お願い、その話しはやめて。私、あなたと普通にお話ししたいの」
そうできると思っているところが何とも。私にはついていけない感覚。
「ねえ、もっと強く抱き締めて」
はいはい。じゃ、ちょっとだけ。
「ねえ……」
上目遣いで訴えかけている。何をして欲しいか判るけれど、ぷいっと顔を背ける。
「そんな態度でいるなら、私にも考えがあるわよ。自分の立場が判っているの?」
脅すか財力でしか、人の心を向けられぬのか……。この者は、そういうやり方しか知ら
ぬのか。そう考えれば哀れなものよ。
「申し訳ございません」
仕方ない。いよいよ覚悟を決める時のようね。そう思った時、うなじに唇の触れるのを感じた。
「ううっ」
ため息を漏らして、やる。
熱い接点が徐々に大きくなり、湿り気も帯びてくる。そしてそれは少しづつ這い上がり、
おとがいにしばらく留まった後、またゆっくり這い上がり、私の口に割って入った。
いきなり口をふさがれて、その感触に溺れそう……にはならないのよ。もうそこでちょっと、
タメ、を作らなきゃ。急ぎ過ぎって言うか。
そしてぬめりは私の舌を捉えようと、更に這い回る。……這い回るとか言うと、蟲みた
いね。それにしても不思議なものね、この物体は。時には甘く感じたり、時には痛いほど
だったり。自分とは違う違和感を覚えたり、またある時は他の者の身体なのに、あたかも
我が身と一つになるような架け橋だったり。
それで、今感じているのは蟲だなんて。いっそ噛み潰してやろうかしら。さぞや驚くで
しょうね。そうそう、舌と言えば、チャングムのペラペラと無駄に動く舌を、なんどちょん
切ってしまおうかと思ったことか。
ふっ。お前といるのに、頭の中はあの子で満たされているのよ。
しかし……私が逃げ回るばかりで、一向絡みつかせないことにまたいらいらしている。
そういう時はね、喉元をさすって力を抜いてやるとか、強く吸上げるとかするのよ。今度
教えてあげるわ……機会があったらね。
しばらく足掻いていたが、疲れたのか身を離してきた。そして私を押し倒し、圧し掛かっ
てくる。
「力を抜いて……」
そしてまた口を近付けてくる。あのー、力が入っているのはあなたの方だと思います。
私はさっきから自然体よ。でも仕方ないわね。
舌先を少しだけ絡めてやった。それだけで嬉しそうにむしゃぶりついてくる。しかし
こんな調子で進められたら、最後までいくのに夜が明けてしまうわ。いくらなんでも朝まで
つき合わされるのも嫌だ。なるべくさっさと終わらせて欲しい。さりげなく胸元をはだけてみる。
「ああっ、あなたの肌って本当にきれい」
お世辞でも嬉しい。顔を胸元にすり寄せてくる。そうそう、その調子よ。首筋に腕を
回し、さりげなく胸のふくらみに誘導する。初めて見る私の胸に、興奮しているのか?
少し震えているようだ。さあ、もう私は心を決めたのよ。早くなさい。
「いいの?」
この期に及んでいいの、とは。あなた一体何がしたいの? しかし、しおらしく……。
「はい。もう身を委ねる覚悟はできております。私はそうなる運命だったのです」
なんということを言ってしまったのだろう。私としたことが。
「あなたの身体、桜色に染まっているわ」
それはあんなことを口にした、自分が恥ずかしいからよ。しばらく何も考えないでおこう。
これ以上、自分で自分を苛まないために……。
それから、とりあえず一通りのことは……私が溶けるまではされた。が、思い悩むほどの
ことはなかった。
あの者の行為は一方的なものであり、特に私に触らせようとか、例えば私があの者の
身体に唇を寄せるとか、身体の奥に指を入れるとか、どうとかは求めてこなかったからだ。
たぶん、私は、それはしない方だと思い込んでいるのだろう。あるいはひょっとしたら、
昔ミョンイから聞いていたのかも知れない。でも人は変わっていくのよ、ソングム。
今の私は昔とは違う。もし私が本気を出せば、お前などすぐに離れられないくらい、
いかせることも出来る。
でも、今以上になつかれて、これ以上奉仕させられるのもいい迷惑。触られている分
には、されるままにいればいいのだから楽なものだ。不愉快ではあるが、こちらからする
よりはまだいい。
しばらくそんな日々が続いた。今夜もまた……身体をまさぐられながら。
「私たち、こんなに側にいるのよ。ぴったりあなたにくっついて、飽きもせずあなたを見て
いるのよ」
私は早く離れたいのですが。
「もうあの子のことは忘れて。ミョンイのことも」
それはできない相談ですね。でも、ちょっと苦悶の表情を浮べてみる。と、慌てて、
「でも馴染めばもっと良くなってくるから。私が忘れさせてあげるから」
お手並み拝見させていただきます。期待薄ですが。
「もっと感じて。私を感じてよ。そしていいって言って」
振りをするのはともかく、そこまではねぇ。また恥ずかしさに身体が染まりそうで、
それが怖い……。
また次の日も……。
「私に従っていればいい。私だけを見ていればいいの。そうすれば私はあなたを守って
あげる」
別に私を守ってなんか欲しくないわ。私はいいから、チャングムさえ無事ならそれで。
「いつまでもこうして私の側においてあげる」
「ありがとうございます。ご恩に深く感謝いたします」
とりあえず、そう言っておこう。内心でもてあそぶのは良いとしても、本当に怒らせる
訳にはいかないのだから。
それからもしばらく触られながら……。
「ねえ、ミョンイとどっちがいい?」
比べ物にはならないから、聞かない方がいいと思います。
「チャングムとは?」
それもまた比較にならない。ミョンイにはミョンイの、あの子にはあの子の良さがある。
ミョンイは、まだ私が何も知らなかった頃、あの心地良さを教え込まれた。教えられる
一方だった。そしていつも、自分がどうなっていくのか判らぬまま、全く未知の領域に連れて
行かれる不安を感じていた。でもこの人ならそうなってもいいと、身を委ねる安心感もあった。
不安と安心の混じり合った複雑な感情だったわね。
チャングムは、私の方が教え、それに応えていくあの子の姿にときめいた。
けれど身体を重ねる毎に密度も深まり、あの子も技を覚えると、それからはあの子の指先の
動きひとつひとつに、激しく火を着けられた。そして次第に私たちの関係は変わり、その時だけは
師匠でもない弟子でもない、共に、同じ時間同じ心地で過ごすことができた。不安というものは
全く無かった。
こうして考えてみれば面白い。同い年のミョンイには教えられるだけだった。なのに年下の
チャングムとは同じ目線で語り合えるのだから。
でも、お前も決して悪くはないのよ。何がいいかと言えば、こうして冷めた目で眺める
術を学べたこと。今まで心と身体は一つだったけれど、身体は身体として応えながらも、
頭は冷ややかにお前の仕草を観察している。
「ねえ、どっちがいいの」
もちろんこんなこと、正直に言えようはずも無い。はぐらかすには……。
「はぁ……ひぃ……ふぅ……へぇ……ほっ」
どうやら自分が一番だと思い込み、満足したようだ。
そうしてしばらく、私はそこそこ喘がされ、あの身に私の身体が馴染むまで、様々なこと
をされた。
しかし、チェ尚宮の行為は大人しいものだった。噂では様々な道具やら秘薬やらを持っ
ていると聞いていたのだが……。それならそれを手に入れて、今度チャングムを新しい
やり方で……などと考えていたが、あてが外れた。
この者は、そうするよりも物語を聞かせ、背中を撫で、ただ抱き寄せて眠る方が嬉しい
ようだった。私をいかせようとする時は、緊張に満ちた顔をしているが、子守をしていると
満ち足りた顔で眠りについた。見たくも無い寝顔だが、先に寝入り瞼が閉じられると、
ついその方を見てしまう。寝顔だけは天女様ね。
この者にとっても、あの行為は本心からの望みではないのかも知れない。自分の下に置き、
自らの動きに従い、喘ぐ私を見たかっただけなのかも知れない。そうだとしたら哀れね。
本当に心を寄せ合うことを知らないなんて。
触れられている時、お前のことなど感じたくもないし心を通い合わせたくもない、そう
思いながらも、何度も身を重ねていると、それはそれで馴染んでもくるものだ。思い出す
のは、何十年振りかで感じる、この子の体温。子供の頃は寒い冬など、よく皆とくっつき
合っていたっけ。今感じさせられている快感とは全然違うけれど、でも自然な愛しさがあった。
同じ時に入った者たちも、今やお互い手を握り合うこともできない。そうでなくても
孤独な宮中。何か一つでも相手と繋がっているという気持ちを求めて、皆さまよっている
のだろうか。それが権力であったり、金の力であったり。そうやって縛り合うことで、
自分が皆から離れていないという気持ちを確かめるしかないのだろうか。私とチャングム
のように信じあうという関わり合いは、それほど難しいことなのだろうか。
……しかし。私とて、信じた挙句があの有り様。チャングムまで巻き添えにしかねない
ところだったではないか。やはり難しいのでしょうね……。
それから後も、度々聞かされたのは……。
「あなたを離したくない。誰にも渡したくない。ずっとこのまま私の側にいて……」
そうまで言われれば、さすがの私の気持ちも緩みそうになってしまう。
考えてみればこの子も不憫だ。
名家の生まれで器量よし。宮に送られることがなければ、今頃どこかの奥方として
かしずかれ、気ままな暮らしを送れたであろう。こんな風に権謀術数の片棒を担がずに
済んだであろう。
それよりも……、この子も幼くして親元を引き離されたのだ。
どれほど寂しかっただろうか。それに少しづつ語ってくれる子供時代は、冷たい水に
晒されながら大根の薄剥きを何十本とさせられたりといった話しばかり。ひたすら、料理の
練習に明け暮れたそうで、決して楽しそうには思えない。
私はミョンイに誘われ、ただあの子についてきただけで、親元を離れることを特に何とも
思わなかった。父の顔も知らず、もちろん母は愛してくれたし、一緒に楽しく料理を作ったし
その反対を振り切ってきたことは申し訳ない。けれどもそれでも今にして思えば、ここで
こうしていることが母にとっても誉れ高く、結局は良かったのだろうと思う。あのまま
いても、やはり母と同じような立場にしか置かれず、客の両班に好きにされるのを耐え
なくてはならぬのも、私も嫌だが母としても堪えようのない辛さを感じさせたであろうから。
まあそう思えば、同じように身体を触られるにしても……それは私のような境遇の者に
とっては、正に定めかも知れぬが、しかしなんら省みられずに辱めを受けるか、こうして
とりあえずは尚宮としていられて、一定の敬意を持ってこの者に愛しまれているか、その
違いは大きい……。
そしてこの子も友といえば、ミョンイぐらいだったっけ。あの件以来、ますます周りは
この子を避けるようになっていたから。自業自得とは思うけれど、やはりこの子にとって
も辛いことだったろう。
それが身に染み、消せない心の傷となって残っているのだろう。
私とのあれこれがあるまでは、その記憶を封じておけたのかも知れない。けれど私が
投獄され、再び別れを目の当たりにして、私が向けた恨みの目に恐怖が蘇ってきたのだろう。
もう二度と愛しい人との別れを味わいたくないと。その気持ちは私にも判る。
そんな風に気持ちが変わったのは、この子のうわ言を聞いた時からだ。
「許して、お願いだからそんな目で見ないで」
この子は……。あの時のミョンイの絶望的な目を夢に見ているのか。確かに私もぞっとした。
友に裏切られ、友に毒を注ぎ込まれたのだから。
私はまだ、微かな希望を持てたし、別れの手紙も書くことができたけれど。この子は
そんな事情も知らずにいたから。
だからこの子は牢屋での私の目に心底怯えたのだろう。そして、地獄から引き戻した
私を離すまいとするのか、あれからも、あれやこれや高価なかんざしなどを私にくれる。
そうでもして、私の気持ちを少しでも宥めたいのかも知れない。そんな行いもまた
いじらしく、哀れさを募らせる。心の中では、今までのことを詫びているのだろう。そう
信じておこうか。
だが……ソングム。お前には申し訳ないけれど、私はそんなに甘くはないのよ。こうやっ
て耐えているのも、ただひたすらお前を見返すため。ただ、真っ正直なだけでは駄目だっ
て悟ったの。
私は今までのように、黙ってはいないわ。そしてその為には"手段"は選ばない。
お前に呼び付けられ、同じ部屋に出入りするのが当たり前のようになって、逆に良かっ
たのかも知れない。お前はいろいろ会議にも出るし、いつも一緒に水剌間にいる訳ではない。
打ち合わせのため、と称すれば、下働きも取り立てて不信の目を向けてこぬ。それに本当に
資料を整理していたから、怪しまれることは無かった。お前も次第に従順になり、文句も
言わず夜伽を努める私を見て、満足そうだ。そうしてじっと機会を伺った。
ところでクミョンのことだが、チェ尚宮が夜当番のある時、部屋に尋ねてきた。
そして、瞳をうるうるさせている。ああ、ここにも人との安らぎを切り離された哀れな
子がさまよっているのか。
だから何もいわず、ただ抱き締めてやった。そしてどうしたものか、思案した。抱き締
めただけで震えているところを見ると、こうされるのも初めてなのか? 叔母様!
ちゃんと教えてやりなさい。……私も人のことは言えないか。
しかし、何も知らないなら教えがいもあるというもの。
とりあえず、お料理のことなど少しだけ教える。また尊敬の目を向けてくる。これだけで
もう充分かも知れぬが、もう一押し。もう一度抱き締めて、口付けをした。驚いた顔を
していたが、拒む腕には力が入っていない。好きにしていいってことね?
まず唇を軽く触れさせ、柔らかさを感じさせる。それから唇に触れるか触れないか程度に
優しく一回り、二周り舌で舐める。そうすると硬く閉じられた唇が徐々に緩み始め、すかさず
舌をするっと中に潜りこませる。あの子はどうしていいのか判らぬ様子で、ただ私の舌が
出入りするのを口の中をこわばらせたままにしている。
私はもちろんあの子の首筋に手をやり、優しくなで続けた。そうしながら舌を尖らせて、
あの子の舌を優しくつついてやる。すると、それは少しづつ動き出し、私に応えて包み
込もうとする。そして、もうしっかり目をつぶって、蕩けている。ふふ。それでいいのよ。
あなたには、叔母様にもして差し上げたことのないような濃厚な味わいを与えてあげる。
いずれ、私の中にも入れさせてあげるけど、もうちょっと後でね。もっとよく躾けてから……。
あとはちょっとだけ、服の上から胸を触らせてやる、それだけで、私の胸に頭をもたれ
掛け、すーすー寝息を立て始めた。叔母様とそっくりじゃないの。それとも二人揃って
そんなにお疲れのことをしているの?
それにしても、なんておぼこい子なんだろう。まだまだ味を知らないと見える。だから
お前の料理には深みがないのよ。
時代が変わったというのだろうか。昔の私たちの方が、もっと激しく求め合っていたのに。
時折聞こえる内人たちの喘ぎ声が乾いた夜空に消え、くぐもった声は布団を頭から被っても
響いてきたというのに。
それより、ちょっと料理を教えてやろうと言ったら、途端に目を輝かせて私に付いて来る。
そうか、お前には寝物語よりもこちらの方がいいのか。
でもこの前うっかりしてチェ尚宮に見られた時は、クミョンを怒鳴りつける声がこの
部屋まで聞こえてきた。あとで呼ばれて行ったら一晩中ぶちぶち、うじうじ拗ねていた。
やれやれ、何が気に入らなかったのか。宥めるのに苦労した。だから、それからはお互い
用心している。
そして今日は、チェ尚宮は宮を離れて二日ほど戻らない。
クミョンに声を掛けると、嬉しそうについてくる。それで……まあ、ある程度教えてあげた。
この子に才能があることは間違いない。そしていずれはこの水剌間を担うのだろう。たとえ
チェ尚宮の手の者としても、誰しも腕を伸ばしていかねば。
それにこの子の素直さは、心打たれるものがある。思えばチャングムのお転婆には、
楽しませてもらったけれど、心臓に悪かった。この子なら落ち着いて懸命に修練しようと
するだろう。こういう子もまた、いいかも知れない。だけど、あなたはチャングムとは違うのよ。
そしてこの子の心を引き寄せることができれば、チェ尚宮と少しでも引き離すことが
できるかも知れない。あらゆる手を打っておこう。
ところで私も、チェ尚宮やクミョンだけにかかずらっていたのではない。
事態を打開するためには、同志を集めなければ。ミン尚宮たちには料理の合間に、
そしてミン従事官とも連絡は取っていた。直接会うと怪しまれるので、カン熟手夫妻を
通じてだったが。
今日はチャングムに手紙を書いて、届けてくれるようにお願いをしておいた。
「 チャングムへ
ずいぶん長いこと会えないけれど、無事にやっているかしら。
私のことは心配しないで。もしかしたらいろいろ聞いているかも知れないわね。でも
大丈夫よ。
それよりお前が心配です。あなたのことだから、そちらに居られる尚宮殿を、少し頼り
ないと思うかも知れない。でもちょっと自分ができるからと言って、驕るようなものの
言い方をしてはいけないわよ。あの方にはお前に判らない深みがあるのよ。
これからも、いろんな方と一緒にお料理をしていくのだから、今のお仕事を軽々に
考えては駄目よ。
今はこうやってお話しすることも、ままならないけれど、いつかまた共にお料理を作る
日が来ることを信じているわ。
何か相談があったら、カン熟手に手紙を渡してください。お前のおじ様もとても心配さ
れて、これからも時々様子を見に行ってくれるとおっしゃっていたわ。
だから安心して。お料理の精進を忘れないでね。
ハン・ペギョン 」
とは言え、いったいいつまでこんな生活が続くのだろう。それは私にも判らない。でも
私が希望を持たなければ、あの子だって光を見失うだろう。そうよ、未来は必ず開けると
信じるのよ。
―――終―――
132 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/21(火) 22:28:59 ID:SD+4up3C
壱参弐たんへ、
きみは本当に、本物のBBS職人なんだな。
本気でそうオモタ…。
一週間期待して待った甲斐があったYO!!そして漏れの知らないペギョンたんを発見した感じ。
トンクス!!
ペギョンの手のひらの上で転がされるチェ一族ワロス
134 :
予想内人:2006/11/22(水) 00:13:57 ID:GuZaI9Cj
携帯からなので、少しずつしかあげれませんが、よろしくお願いします。
チョンホ×チャングムの、初夜です。
最終回で二人で逃亡するところ辺りの、話ですね。
135 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 05:18:03 ID:+def8BY3
ハン尚宮様が小悪魔みたいになってるwww
こうしてみるとチェ尚宮様がすんごく可愛く見えてきたwww
136 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 23:28:52 ID:2I/RADAH
クミョンもかわええ…
138 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 17:08:28 ID:gDeBHnrJ
>>134 チャングムさんと旦那の…
期待してまつ
しかしこんなスレがあったんですねぇ
139 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 20:51:57 ID:0oedN8UT
壱参弐様
チェ一族を手玉に取るハン尚宮様を
チャングムと再会させてあげて下さいませ。
140 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 20:54:53 ID:uHyJkPsd
私も上の方と同じです。
壱参弐様、ハン尚宮様をチャングムと再会させてあげてください!
あの後どうなるのか気になります。
141 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/23(木) 22:16:42 ID:BhbeAAGc
確かに、漏れも久々にラブラブなチャングムとハン尚宮たんが見たいw
んが、チェたんがそんな二人を発見した日にゃ、血の嵐が吹き荒れそ〜〜。
可愛さ余って憎さ100倍、チェたんが本領発揮して、油断していたハン尚宮たんは
怒り狂ったチェたんに、今まで以上に色んな意味で苦しめられそうだw
142 :
コミュー:2006/11/27(月) 22:09:10 ID:XVGMp+FU
初めて書いてみました。
チャングム・チョンホの初夜です。
チョンホビジョンになっています。
読んでみてください。
143 :
再会〜情熱1〜:2006/11/27(月) 22:11:29 ID:XVGMp+FU
王様の崩御を耳にし宮中へ戻ると泣き叫ぶチャングムを強引に引きずる様にして山中に逃げ込んでからどれくらいたったのだろうか?
途中、廃村になってから2〜3年位たった集落を見つけその中の一軒に身を寄せた。
王様の崩御を聞いた事とその前からの疲れでチャングムの体力に限界を感じたからだ。
チャングム自身も諦めたのか、うなだれたまま黙って私の後をついて家の中に入ってきた。
チャングムを座らせ疫病か飢饉かなにかで廃村になったであろう家の中を片づけチャングムの方を振り向くと壁に寄りかかって眠っていた。
別れてから何年も経っているのにチャングムは少し痩せた以外はあまり変わっていなかった。
近づいて飽かず見続けていると視界がぼやけて自分が涙していることに気付いた。
再会の喜びもつかの間、さっきのチャングムの取り乱した様子から長い別離の間、王様を愛するようになったのだと感じた。
あの別れの時、追いかけてきてくれたチャングムの手を離してしまったのは私の方なのだから今さら何を思っても仕方のないことなのだが・・・
チャングムが目を覚ますのは直ぐにではないと思いその間に清水を探し汲んでおこうと立ち上がった。
何もせずこのままチャングムを見続ける勇気は今の私にはなかった。
144 :
再会〜情熱2〜:2006/11/27(月) 22:13:32 ID:XVGMp+FU
幸いなことにすぐ近くに小川が流れていたので清水を汲むことが出来た。
長かった配流生活の間で殆どの事を手際よく出来るようになっていたので瓶に水を満たし朽ちた竈を使って湯を沸かした。
目覚めたチャングムに湯を使わせてあげたかったからだ。
チャングムの気持ちが変わっていたとしても、他に方法がなく私といるとしても私の気持ちはあの頃のまま、いや!チャングムが側にいてくれる今はそれ以上にチャングムを求めていた。
気がつくと夕方近くになっていた。
体を動かしたおかげで陰鬱な気分も吹っ切れ、目覚めたチャングムにこれからの事と自分の正直な気持ちを話そうと家に入った。
中にはいると既にチャングムは起きていて私の姿に気付くと安心した表情になった。
「ナウリのお姿が見えないので何処かへ行かれたのかと・・・」
不安そうな、その姿に愛おしさがこみ上げ胸が一杯になる。
たとえチャングムの心が私になくても、それが何だというのだ。今、目の前にいるチャングムが統べてではないか・・・
「私が、あなたを置いて何処に行くと言うのですか・・
さあ、お湯が沸いているので使って下さい気分も良くなるはずです。
私はその間にもう一度、清水を汲んできますので・・」
気兼ねなくお湯を使ってほしかったので何か言いかけたチャングムを残して外に出かけた。
145 :
再会〜情熱3〜:2006/11/27(月) 22:15:26 ID:XVGMp+FU
チャングムの後に湯を使い、三水からもってきていた物で簡単に食事を済ませると辺りはすっかり暗くなっていた。
灯りのした、寄り添って座ると気まずい雰囲気が流れた。
昨夜までは尚冊が居たので2人きりになる事がなかったからだ。
しばらくするとチャングムが遠くの方を見ながら話し始めた。
「先ほどは失礼しました。
配流先を出奔されてまで私の身を案じて下さっているナウリに宮中に戻るなどと我が儘を言いました・・・
主治医としてまだ手だてがあるのに治療をして差し上げられなかったことが心残りで・・・
崩御されたと聞いても信じられなくて・・・」
チャングムの口から王様の話が出るのにこれ程の嫉妬心が沸き起こるとは思
わなかった。
臣下としての自分を情けなく思いその気持ちを吹っ切るように、さっきまで考
えていたことを話し始めた。
「長い間、主治医として王様に接してこられたのです。
あの別れの時、追ってきてくださったあなたの手を離したのは私の方です。
・・たとえ、あなたが王様を愛するようになったとしても私に何か言う権利
はありません・・・
ただ、これだけは聞いてください宮中に戻ることだけはだめです。
絶対に!それだけは許すことは出来ません。
これからは王様の主治医としてではなく私の妻として・・・妻として側にいてくれませんか?」
私の言葉に俯いていたチャングムが驚いたように顔を上げた。
「ナウリは私が王様をお慕いしていると言われるのですか?」
とても信じられないと言ったような顔だ
「あのお別れの時、ナウリにすべて忘れましたと言われましても
私の差し上げたノリゲを握りしめて三水に向かわれた後ろ姿だけが本当の
お気持ちと思い宮中での生活に耐えて参りました。
ナウリのお言葉に従って一生懸命、精進してきました。
王様のことも主治医として心残りなだけで決して慕っているなどと言うことは有りません・・決して・・決して・・」
涙の一杯たまった目で訴えかける瞳に嘘はなかった。
気がつくと私はチャングムをきつく抱きしめていた。
長く孤独な配流生活は私の心に醜い嫉妬心を芽生えさせていたようだ。
自分の愚かさに恥じ入りチャングムにもチャングムを想いたった一人で逝かれ
た王様にも申しわけなく思った。
146 :
再会〜情熱4〜:2006/11/27(月) 22:16:54 ID:XVGMp+FU
チャングムの潤む瞳を見つめてもう一度問いかける。
「これからは人目を避けて生きていかなければなりません。
白丁として生きていくことになります。
それでも私の妻として生涯ともに過ごしてくれますか?」
「はい。それこそが私のただ一つ望むことでございます。」
チャングムは涙声で、それでもはっきりと答えてくれた。
見つめ合うと出会った頃から今までのことが走馬燈のように頭をよぎる・・
どちらからともなく口づけを交わす。
それは2人にとって初めての、そして始まりの口づけだった。
チャングムの唇はとても柔らかく甘美だった。
夢にまで見たことが現実になる喜びに我を忘れそうになる気持ちを抑えた。
初めてであろうチャングムに苦痛を与えたくないと思った。
唇に頬に首筋に口づけていく・・・
チョゴリの紐に手を掛けたとき恥ずかしそうに私の手を押さえるチャングムに
いっそう、愛おしさが募った。
「いいですか?」
恥じらいながらもうなずく仕草に、もう一度くちづけて胸を露わにした。
二つの膨らみに口づけながらチャングムを横たえる。
チマも取り一糸纏わぬ姿を見ながら自分も同じ姿になる。
目をかたく閉じているチャングムを抱きしめ、また最初から口づけていった。
147 :
再会〜情熱5〜:2006/11/27(月) 22:18:09 ID:XVGMp+FU
初めてのことに口づけ触れるたびチャングムは敏感に反応した。
チャングムの喜びの核にそっと手をやると両足に力を入れてくるので、耳元で
囁きながらチャングムの膝に自分の膝を割り込ませて開かせていった。
少しずつ少しずつ結び合わせていったが、それでも辛そうな顔を見るとこれ以
上、進んでもいいものかと思う。
あまりに動かないことに不思議に思ったのか、しっかりと閉じていた目を開け
たチャングムが問いかけるように、不安そうに私を見た。
「辛いかもしれません。大丈夫でしょうか?」
チャングムは握りしめていた手を私の胸の傷にやり自分の唇へとおいた。
その手は震えていた。
その愛らしい仕草に心を決めチャングムの震える体を押さえて一気に中に、入
っていった。
「あっ!!」
「ああぁぁぁ・・」
思わず2人から声が漏れる。
チャングムの手が私の肩を強くつかんだ。
しばらく、じっとしてから動き出したが私のようにチャングムにも喜びを感じ
てほしいと思った。
初めての時を苦痛のまま終わらせたくはないと思った。
148 :
再会〜情熱6〜:2006/11/27(月) 22:19:07 ID:XVGMp+FU
結ばれたまま膝に重心をおき片手でチャングムの膨らみを、もう片方で喜びの
核を刺激する。
「んん・・あっ・あっ・・」
必死で声を抑えようとするチャングムをさらに刺激し続ける。
「あっ・・ああっぁぁ・・」
信じられないことにチャングムが痙攣しているのを感じた。
その感覚に私は我を忘れて激しく強く彼女の一番深いところへと自分を解き放
った。
互いの鼓動がおさまるまで動かずにいたがチャングムが重いのではないかと思
い両肘で体を持ち上げた。
すると目を閉じていたチャングムが目を開けて私を見た。
互いに気恥ずかしさがこみ上げてくる。
ずっとこのままでいたいがチャングムのことを考えるとそうもいかない。
「大丈夫でしたか?体を離すときまた痛むかもしれません。」
チャングムを心配しての言葉だったが、やはり体を離すとき痛みを伴ったよう
だった。
体を離したとき下に敷いていた晒しに赤い染みが付いているのに気が付いた。
辛かったのだろうと思うのと同時に喜びが溢れてきた。
遠回りをしてきたがやはりチャングムは私と結ばれる運命にあったんだと、
誰の手にも触れられていなかったんだと今更ながらに分かったからだ。
149 :
再会〜情熱7〜:2006/11/27(月) 22:20:18 ID:XVGMp+FU
チャングムに自分の着物を掛け、細かく裂いた晒しをぬるくなってしまったお
湯につけてチャングムの側に持っていった。
掛けていた着物を取り彼女の体を拭っていった。
驚き恥ずかしがるチャングムをこれだけは譲れぬと説き伏せ妻となった彼女の
体の全てを崇めるように拭っていった。
目覚めると朝になっていた。
横に眠っているはずのチャングムがいないのに、一瞬ここは三水でまた幸せな
夢を見ていたのかと胸が悪くなった。
しかし廃村の家だと気付き急いで外に出てみた。
そこには私のために髪を結い上げてくれたチャングムがいた。
近づいて口づけると恥ずかしそうに微笑んでくれた。
昨日までの悪夢は昨夜で終わった。
これからは2人何があっても離れずにいこうと誓い合う。
150 :
再会〜情熱8〜:2006/11/27(月) 22:21:31 ID:XVGMp+FU
出発の用意が整い初めて夫婦のちぎりを交わすことが出来た廃村を後にする。
もう二度と訪れることはないだろうがこの場所のことは何時までも忘れな
いだろうと思った。
妻となったばかりのチャングムに手を差し出すと恥ずかしそうに笑ってそれで
もしっかりと手を握り返してくれた。
最後に2人でもう一度だけ廃村を振り返る・・。
それから見つめ合い笑顔で新しい世界へと一歩を踏み出した。
―終―
素晴らしいですね。チョンホの心の繊細な描写がいいですね。
最終回のもやもやがすっきりしました。ぜひ夫婦編も続投願います。
152 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/30(木) 23:44:55 ID:hRPvTv18
壱参弐さん続編お待ちしてます
153 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/01(金) 16:44:55 ID:7txu2yL7
コミューです。
>151様 感想ありがとうございます。
今日までPCを開けることができませんでしたが
元気が出ました。
>153
今日読ませてもらいました。
控えめな描写が、二人の初々しさを引き立てている感じです。
事後の描写を入れる事で、単なる恋人たちではない、
夫婦らしい情愛の深みを感じます。
この先、チャングムが、どう女として開花するのか、
楽しみにしていますよ。
ハン尚宮×チェ尚宮 −企望−
壱参弐 柵
内容:百合 原作改変 エロ濃い目 *キャラを汚します。
分量:これを含め、8レス
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はあっ はあっ」
見れば見るほど愛おしさが募る。
初めは肌を寄せるだけでおののき、時折涙を浮べていたが、この頃は私を抱き締める
腕にも、少しずつ力がこもってきた。良くなってきているようね。それにしてもあなたの
肌、触れるだけで私の身体も火照ってしまう。
どれだけ長く憧れただろう。あの胸に顔を埋めてあなたの鼓動を聞きながら、その鼓動を
昂らせながら、手の中で蕩けていくのを夢に見ただろう。
「ああ。うっ……ミョンイ……許して……はぁはぁ……あぁ……ミョンイ……助けて……」
まだ忘れられないのか。私がこうして愛しんでやっているというのに。
「もうミョンイはいないのよ。あなたが触れるのは私の身体だけ」
「ううぅ……ミョンイィ」
その名を聞くだけでいらいらする。もっと激しく責めてあげる。そして身体で判らせて
あげる。
「ミョンイはいいから! 私を呼びなさい」
「ふぅ、はぁ、はぁ。……ソングム……ああぅ……ソングム……ひっ」
そうそれでいいのよ。
邪魔者は全て始末した。今は何の心置きなく、あなたを味わうことができる。無理も
したしミョンイたちには悪いけれど、でも私は嬉しいわ。
さあ、もっと良くしてあげるから。そして頭の中に巣食う邪魔者も、消してあげる。
時折理性を取り戻そうとするのか、快楽に溺れるのが怖いのか、私の身体を引き離そうと
するけれど、それもまた楽しい。お前の誇り高い顔が、このように溶けていく。その落差が
愛おしい。
でもそろそろ、はっきり判らせてあげなくては。
脇にある姿見の掛け布を引き剥がした。
「見て。あなたを今抱いているのは誰。誰に抱かれて、甘い声を出しているの」
「嫌ぁ」
「目を開けて御覧なさい。ほら」
姿見に写し出される二人の姿。あなたの上気した顔が見えるでしょ。
「なんていやらしい顔をしているんでしょうね」
「ああ、ソングム、私……恥ずかしい」
「そのいやらしいあなたに、私が巻きついているのよ。こうやって舐め、さすり、あなたを
変えているのよ」
望まぬ行為を強いられながら、愛撫一つ一つの動きに身を捩じらせるあなた。
肘を突いた四つん這いの姿に,乳房が揺れている。背後から、腕を回し柔らかな
ふくらみをまさぐっているのは私。
「艶めく肢体の隅々まで、私が味わっているのよ」
背中に舌を走らせると、大きく身悶えする。
「あ、ああっ! い…いやっ……」
「うっとりした顔を見せているのよ。その顔をずっと見続けているのよ」
「うぅ」
「そうよ。判ったでしょ。私が抱き締めているのよ」
そうよ、恥ずかしいことをしているのよ。あなたの中にまで、その全てを……そんな
私を、あなたの身体が包み込んでいるでしょ。
しかしクミョンが……最近、妙にハン尚宮に懐いている様子。気に入らない。
この者の腕が確かなのは認めるが、しかし変に真似するせいで、伝統の味が失われないか
心配になる。
今度よく言い聞かせておかねば。お前が慕う者は、私に全てを奪われ喘がされている
存在に過ぎぬ。尊敬になど値しないということを。唇も胸も腰も、あの大切な場所も、
私の気持ち次第でどうにでもなるのだ。
今もハン尚宮を見下して、喘ぎ声を聞いているのは私なのよ。
ほら、もっとよくしてあげる……。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
しかし、姿見を持ち出してきた時は驚いた。あんな風にしているのか。今度チャングム
にも……っとそれはともかく、身体は振りが出来ても、目はまだ甘い。薄目の間から己の
冷静なまなこが光っていた。この者は私にねっとりとした視線を絡みつかせているという
のに。これから気をつけなければ。さてそろそろ……。
「あああ、ソングム、いいぃ」
はい終わり。
ミョンイを口にすれば口元を歪め、一層愛撫を深めて必死になる。そして私は果てる。
これで満足でしょ?
最近は、行為の後にそのまま朝まで迎えることも多い。ちょうど寒いから、互いに行火
代わりといったところか。
お陰で、だいぶこの部屋の中も判ってきた。どこに何があるのか。大事なものはどこに
しまってあるのか。そして鍵はどこに置いているのか。
ヨンセンにはクミョンやヨンノたちの行動を逐一報告するように言ってある。それが
チャングムの為だと判っているから、真剣にやってくれている。
ミン尚宮には、私が居ないときのチェ尚宮の行動を見晴らせている。
またミン従事官からは、いざとなったらチェ商団を家捜ししてでも、とのお言葉を
いただいた。
そしてカン熟手。いろいろなことを知っているから、いつもあてにしている。
この前、合鍵を作るにはどうしたらいいか尋ねたら、柔らかい飴か、蝋で型を取れば
いいと言って、材料をくれた。早速自分の鍵で試してみたら、なかなかいい感じだ。
それを今こっそり袂(たもと)に忍ばせてあるのよ。
チェ尚宮が深く眠っているのを確かめて、三本ほどの鍵の型を取る。とりあえず、手洗いに
行く振りをして自室に隠す。明日熟手に渡そう。
しかし……。
「尚宮様、蝋燭と言えば、こんな形のものを手に入れたのです」
「なんですか? そのきゅうりのようなものは」
「倭国で野菜の見本と称して売っているらしいのですけれども、実は別の使い方がある
そうで」
「別の?」
「はい。そのー、大きな声では申し上げられませんが、倭国では度々戦が起こり、戦に
出られた旦那様をお待ちの奥方様や、お気の毒なことに軍場で旦那様を亡くされた若い
後家様たちが、そのー、お慰めに」
「はあ?」
「いえ、ほかにもいろいろな形をしたものがございまして、こんな二股とか、くまちゃんが
付いていて可愛いですよー」
「ごくろうさまでした。またお願いしますね」
いつものことながら、どこで見つけてくるのだろう。
それに、あんなものを見せられたら、興味が湧いてくる……しかし、直に買っていろいろ
思われるのも不愉快……ミン尚宮あたりに……。
それはともかく、次にすべきこと、それは……。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
もう二日ほど会えなかったわね。だから今日はいっぱい可愛がってあげた。そしてその
ままあなたの隣で眠りについた。
あなたの寝顔を、時々眺めるの。いつ見ても端整な面立ち。そっと頬に触れてみる。
ずっと憧れていた人を、指先に感じる。
私の物。もう私以外この寝顔を見る者はいない。
だけど……この子は私の愛しみに、反応はする。けれど、いく時は独り……。私にその
昂りを分かち合わせようとはしない……。時々私の胸に手を宛がわせたりしているけれ
ども、それはただ、嫌がる手がそこにあるというだけ。
いや、私にして欲しいのではないのよ。そんなこと、内心嫌っているのは判っている
から、無理にさせてこれ以上嫌になられるのは辛い。
そうじゃなくって、感じてはくれているのだろうけれど……。
この子がミョンイに抱かれていた時は、輝きがあった。心に張りが感じられた。
独りになってからというもの、話しかけても、以前のような手応えはなくなってしまって。
チャングムを得て、再び輝きを取り戻したわね。だけど、私がいくら抱いても、同じ
ように輝かせることはできないようね。
仕方ないのね、こんな関係じゃ。悪いのは私だもの。
ああ、あなたの瞼に写るミョンイやチャングムを消したい。私に抱かれているとき
ですら、あなたはあの子たちに包まれている……。
美しいけれど、鳴きもせぬ鳥。それをただ、籠に閉じ込めておくしかできないのか。
:
:
:
「ソングム、どうしてあんなことをしたの。友達だって信じていたのに」
また私を呼ぶ声がする。ペギョンを抱いてしばらく聞こえてこなかったのに、再び
蘇ってきたのか。
「ソングム……ひどい人、今だって」
お願いだからもう許して。あなたの代わりにペギョンのことを大切にしていくから。
「私から何もかも奪って……」
チャングムは、生かしてあげたじゃない。
「あの子の手紙……」
手紙はまだ置いてあるわ。捨てるのが怖くて。
「手紙……私の手紙……」
大切にしまってあるから。ずっと大切に。
「返して……」
それはできないの。それは……。
「私のものなのよ。チャングムのものなのよ」
だけど今は私のものよ。
「ソングム!」
「だから手箱に。本当に持っているのよ」
「ミョンイ……」
ハッと目が覚めた。背中がぐっしょりと冷たい。寝汗? 私はどうしたのだろう?
今のは夢……誰がミョンイなんて?
ああそうか、昨夜はペギョンと一緒に寝たんだった。それでペギョンはどうしているの
かしら。身を起こして隣を見る。寝ているようね。けれど涙が幾筋も頬を伝っている。
可哀想に。この子も夢を見ていたのか。同じ夢、ミョンイの夢を見ていたのか。
そんなに恋しいのか? 私では満たすことができないのか? これだけよくしてやっても?
これだけ愛しんでも?
でも、もう時の流れには逆らえないのよ。諦めて……ゆっくりお休みなさい。
朝になった。行灯の微弱な光に揺れるあなたの姿は妖艶だけれど、朝日に居住いを
整えるあなたもきれいね。
「おはようございます、チェ尚宮様。今週は夜当番なさいますよね。それに次の週は
お出向きになりますので、しばらくお会いできませんね」
「おはよう、ハン尚宮。当番は、代わってもらうことにしたの」
「そうですか……」
「何よ、残念そうね」
「いえ、そういう訳では」
「だから今晩もいらっしゃい」
しばらく会えない。だから思い残すことのないよう、この数日存分に抱いた……つもり
だが、まだ……。それに……この頃だいぶ良くなってきたのに、会えない間にまた前の
ような冷めた様子に戻って欲しくない。あと七日ほど、その間に少しでも私に気持ちを
向かせたい……。あなたの頭の中から、ミョンイを追い出してやりたい。
でもどうしたものか。いっそクミョンと二人がかりで……いやいや、もうあの身体に
誰も、指一本たりとも触れさせたくないし。
秘薬とやらを医女に調合させて飲ませようか……しかしそれと知れたら、あの子は
激怒するだろうなぁ。脅しても賺しても、もう二度と身を許してはくれないだろうなぁ。
どうしたものやら……。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……ここがいいの?」
「 う、 くふっ 」
「感じているんでしょ」
もうすぐ別れとなるせいか、いつもより激しい。私のちょっとした反応……所詮振りに
過ぎないが……一つの喘ぎも見逃さず、責め立ててくる。
しかし、こうあれこれされてしまうと、私も喘ぎ所というか、調子を合わせるのがなんだか
……面倒だわね。
じゃ、いつものを言って、終わってもらおうかしら。
「ああ、ミョンイィ」
あれ? ぱたっと止めたわ? 着衣を整え、布団をかぶって向こう向きに寝てしまった。
効果はてきめんだったけれど。
でもねえ。途中で止められるのも辛いのよ。
まあ仕方ない。私も寝ましょう。
うつらうつらしていると、背中が生暖かい。何かしら? 顔を向けると、私の背中を
さするソングムと目が合った。寂しそうな顔をして、ちょっと目元が潤んでいる。私が
起きたことを知り、手を止めて慌ててまた布団をかぶってしまった。
私も布団に入り直し、天井を見つめた。しばらく様子を伺うと、寝てはいるようだが
寝息は立てていない。まんじりとしているのだろう。
そのまま朝を迎えた。お互い、ちょっと眠そうな顔をしていて、可笑しい。
その夜も、私はソングムの部屋に行った。一応お決まりごとの物語を聞かせようとした
とき、突然引き寄せられる。そしてしばらくの間、ただ強く抱き締められた。何も言わ
なかった。痛いくらいに抱き締められた。
そして口付けをされながら服を剥ぎ取り、いつものように胸元に唇を寄せてくる。
「ふぅ !」
ため息をあげようとした時、口を塞がれた。塞がれたまま、首筋を舐められ、耳たぶ、
耳の中まで舌を差し入れられる。耳の中に響くぴちゃぬちゃとした音に総毛立ち、本当に
声を出したくても、くぐもった音が出るだけ。
口を塞ぐ手から指が離れ、一本、また一本と中に入れられ舌を蹂躙する。声に解き放て
ない気持ち……たぶんそれは不快感が強かった……が身体の中にこもり、動悸が徐々に
高まっていく。指を出すとその代わりに舌が侵入し、私の舌を絡み取る。そして生暖かな
液体が舌と共に与えられ、顎がだるくても離してくれないから、私はどちらも、ただ
受け入れざるを得ない。そして……ゴクッ……飲み込まざるを得なかった。
胸の尖りを触られた時も、喘ごうとすると同じように口を塞がれた。だから今日は、
この者が身体を嘗め回す音と、口で吸う響き、ときおり脱いだ衣類に身体が当たる音しか
しない。
「ちょっと、ねえソングム、止めてってば!」
身体を引き離そうとしても、強い力で抑え付けられられる。手のひらを合わせて、指の
股をさすられる。その内、徐々に力が抜けていった。けれど時折、本気で抵抗したし、
足を無理に開かせようとしたときも拒もうとした。けれどいつものように、力を抜いて
くれない。どうやら今日は……甘えるでもなく、機嫌を取ろうとするのでもなく、凄む
でもなく。強い……意志と力で押さえ付けようと。そして、ただ愛撫を繰り返した。私は、
やはり口を塞がれたまま……昇りつめた。
また今夜も呼ばれるのだろうか。水剌間で思った。
ちょっと嫌だ。昨日かなり強く触られ、手の甲に引っかき傷までできて、少しひりひり
する。
それに胸を、何度も強く吸われてしまい、鈍く痛い。
あんなに最初から最後まで、激しくされたこと……なかった。ミョンイは、気持ちが
昂ってから、少し激しくなることはあったけれど。
やはり呼び付けられる。
話もそこそこに、私の身体を求めてくる。そして強く吸いつかれる。苦痛に、振りでは
なくて顔をしかめても、甘噛みに変えようとはせず、激しく責める。ずっとそれが続く。
そうしてただ快楽を植えつけられていく……。拒むことも、自分の思うように導くことも
一切許されない。この者の思うままに、本当に思うままに、私を果てさせていく。
言葉を掛けてもくれず、ただ黙々と一方的に私を愛していく。
……私は……喘ぎ、羞恥にのたうち、痛がり、そして感じさせられた。
身勝手な一方的な感情。身体の上を嵐が吹き荒れ通り過ぎていく。私は収まるまでじっと
待っているだけ。
その後は私を横に置いて、激しい行為を詫びるかのように、優しく背中を撫でる。そして
最後に、本当に愛おしそうにそっと、私の背中に口付けた。
汚らわしい、お前なんかに。不実の世界にいる者に、触れられるだけで嫌だ。終わった
のならそれ以上触らないでほしい。
けれど……私だけがたった一つの宝物であるかのように、こうして背中を撫でて……
私を慈しんでいる。それだけは確かなことだ。
この者の心には私しかいないのか。それは、誠の心と思っていいのか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
身体中をまさぐり、舐め回し、喘がせる。
お前を抱けるのも、今日明日まで。
どれだけ気を遣っても……最初の頃は抱きたいのを我慢していたのに。お前の嫌がる
様子に、無理強いはしたくなかったから。
だからまず私に馴れてもらいたくて、なるべく優しくしてきたのに。思うようにさせて
きたのに。
私に抱かれる姿を見せたって、あなたはその現実を受け入れてはくれない。
どうしたって応えてくれないなら、もう私の好きにするしかないじゃないの。どうせ
言うことを聞いてくれぬなら、羽を毟って、二度と飛べないようにしてしまいたい。
その痛みに、泣き叫べ。怒りでも悲しみでも何でもいいから、私に感情をぶつけてよ。
ミョンイが見ていようとチャングムのことを考えていようと、抱いているのは私。
今あなたを感じさせているのは私なのだから。
果ててぐったりした身体を、優しく抱き締める。お願いだから、せめて今だけは私を見て。
でもごめんなさい。辛かったでしょう。
心の中で詫びながら、背中にそっと唇を寄せた。
次の日。
今日が最後か。
悦びの声、果てる直前のあなたの顔、官能を刺激する女の匂い。
……ミョンイが夢中になったのも判る気がする。こうしていると本当にかわいい。
きれいな身体。誰にも触れさせたくない。そしてずっと感じていたい。離れたくない。
しばらく会えないから、今晩は起き上がれなくなるぐらい愛したい。
「ミョン…」
それは駄目よ。そう言っている限り、あなたの思いはあの子の元に飛んでいくのだから。
そうよ、だいぶ息が荒くなってきたわね。もっと身体を密着させてあげる。私を感じて、
ほら、いいでしょ。気持ち良くなってきたんでしょ。
そろそろね……身体が少し震えてきたようね。いくときは抱き締めてあげるから。
あれ? 今日はなんだか……様子が違う……さっきから、私の方が抱き締められて……
私の動き一つ一つに強く応えて……ああ、いったのか……いつもより息が深い感じ……
身体の震えもずいぶん長いし……喘ぎながら口付けまで! 求めてくる……。
それに私のうなじや背中を、さっきから撫で回している。これって、ひょっとして?
いつものように背中を撫でてやりたかった。そして、聞いてみたかった。今日はいつもと
違うんじゃないかって。
けれども、明日は朝当番とのことで、終わるとペギョンは自室に戻っていった。
私も出立の用意をしなければならず、引き止めることができなかった。
次の日、立つ前にハン尚宮を呼び付ける。こうしていると、昨夜の醜態はどこへやら、
いつもの端正なあなたがいる。
「これから出かけるわ。後のことはよろしくね。また帰ってきたら来なさい」
「はい。それでお戻りになったら間もなく、宮でも翁主様たちの誕生祝が続きますので、
しばらくこの部屋の資料など、拝見させていただいてよろしいでしょうか?」
「いいわよ。しっかり考えておいて」
聞きたい。昨日のことを。ひょっとしてあの時あの場所には、私とあなただけだったの?
じっと見つめていたが、答えは判らない。口に出して聞くこともできない。
昼間はそのような話しは、部屋の中であっても一切しないこととしていたから。出入り
する下働きたちの耳に入るやも知れぬ。
最高尚宮とすぐ下の尚宮があらぬ仲であるなど、許されるものではない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
チェ尚宮はしばらく帰ってこない。その間、水剌間の仕事は、私が代行することになって
いた。周りの者は、二人の関係を知らない。一時は座を巡り争った間柄。なのに、素直に
従う私を大したものだと思う者もいれば、それが宮仕えなのだと言う者もいた。
その、どちらでもないのよ。
今しばらくは代行として、献立作りの振りをしながら、私は頻繁に最高尚宮の部屋に
向かった。
この窮状から脱するためには、あれを取り戻すしかない。
ヨンセンは、チャンイやヨンノから聞いた話として、クミョンの部屋には特に何も
なさそうだと言っていた。
念のため、私からも直接クミョンに聞いてみたいと何度も思ったけれど、やはりどれだけ
懐いていても、この話しだけは別だろう。聞くとしても、あくまでも最後の手段だ。
とりあえず見当のつく場所を調べようと思うが、ミョンイみたいに用心深く隠して
いたら困るけど。
ミン従事官にたまたまお会いしたとき、探し物の方法を教えていただいた。本格的に
調べる場合、天井裏をぶち抜いたり、壁を壊したりもしなくてはならないらしい。
さすがにそれは私一人では無理だ。しかし取りあえずは、できることからやっていこう。
まず押入れをくまなく探し、手箱とやら……ああ、きっとこれだ。少し大きめの物入れ
を見つけ出した。
カン熟手に渡された鍵を差し込む。 開いた!
けれど肝心の物はなかなか見当たらない。
物入れの引き出しを全部抜く。慎重に、一つ一つ、中身をそのままの形で取り出して。
箱の奥も、側面も見てみた。引き出しの横や後ろ、裏まで見る。
ない。
これではなかったのか。手箱って、私の聞き違えだろうか。それとも他にあるのか。
出て行くとき、そんなに大きな荷物は抱えていなかったけれど。
時間があるとは言え、そうゆっくりもしていられない。
ふと、引き出しの厚みを見比べてみた。一つだけ底が浅いような気がする。よく見ると
端に目打ちで開けたような小さな穴があった。自室の裁縫箱から目打ちを取ってきて、
引っ掛けてみる。と、意外と簡単に板がはずれた。
あった! 証文のような紙と一緒に、あれがしまってあった。
献立用に用意した紙に、ちょっとしたことを書いて、と。それを代わりに……。
また元のように一つ一つ中身をしまって。
全てが終わった。
後はチェ尚宮の帰りを待つばかり。
もうこれであの者に抱かれることもない。
もうこれでチャングムと引き裂かれることもない。
もうこれであの者に、無理やりあの者のことを思わされることもない。
もうこれでいつでも、自分の好きにミョンイとチャングムを思うことができる。
そういえばチャングムからも手紙が来ていた。元気そうで、料理の研究も怠って
いないと書いてきた。私は精進しろと書いたのであって、研究はそこそこにして欲しい
のだけれど。
あの子のことだから、さぞや尚宮様のお手を煩わせているだろう。けれど、あのような
比較的自由な中で今一度、時間をかけて料理に向き合うのもいい経験になる。なんでも
良い方に考えなくては。
私のことをずいぶん心配しているようだったが、チェ尚宮との関係については、何も
知らないようだ。ある意味、側にいないのが幸いだ。近くにいて、気付かぬはずは
ないから……。
その大切なものは、早速カン熟手にお願いしてミン従事官へ託した。ナウリからは、
念のため御実家とはまた別の御邸宅にて保管した旨、言伝てを戴いた。これで安心だ。
それから後も、本当に宴の準備のために、何度も最高尚宮の部屋に出入りした。最初の
頃はチェ尚宮の残り香がしていたが、だいぶ薄まってきたようだ。
思えばここは……歴代の最高尚宮様たちが居られた場所。
ミョンイを殺めた先代のチェ尚宮様もいた。
そしてチョン尚宮様とお別れを告げたのもこの場所だった。
チョン尚宮様、私は結局役目を果たすことができませんでした。お骨折りいただいた
のに……申し訳ございません。けれど私は諦めたわけではないのです。今一度、お志を
果たそうと考えているのです。どうかお見守りください。
それから私が座り、そしてチャングムと共に過ごしたっけ。あの頃は良かった。手近に
あの子を置き、チェ尚宮は追いやり、何の気遣いもなく愛しみ合えた。
なのに……私が不甲斐無いばかりに、あの子にも苦労をかけてしまった。
今はチェ尚宮がこの座にいて、私を籠の鳥にしている。意に沿わぬ交わりを強いられ、
私の大切なものを心の中からも奪い取ろうとする……あんな不愉快な思いなど、お前を
ここから追いやれば……すぐにでも終わる。
偽りとはいえ、どれだけこの天井を見上げて、喘いでやっただろう。お前だって、
もう充分でしょ。
けれど……。
いつもあの者が腕を置く肘掛に手を置いてみる……表面は冷たく、あの温もりは残って
いない。
ふと、一尺ほどの髪の毛を一本見つけた。そっとつまんで、手のひらに乗せてみる。
なぜだか……あの者の舌が私をまさぐる感触を……両の乳房に思い浮かべた。そして、
終わった後の背中への優しい口付け。背中に痺れが迸る。
「ソングム」
小さな声であの名を口にした。
拭えるものなら拭い去りたい……けれど甘美な記憶……でもある。それが忌々しい。
しばらくたたずんだ後、髪の毛を書付に挟み込み、自分の部屋に戻った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――終――――
あぁぁぁぁ…ハン尚宮様のお気持ちに変化が!
う、嬉しい・゚・(つД`)・゚・ byソングムファン
うっひよー、とっても良かったぁ。
GJ、GJですっ!
あぁ、チェ尚宮さま(ほろり)
うっひよー、とっても良かったぁ。
GJ、GJですっ!
あぁ、チェ尚宮さま(ほろり)
げっ、二重カキコ(汗)
申し訳ないです。あぁ、流刑は堪忍して〜
167 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/02(土) 13:05:05 ID:lBMkyWU1
ソングム様が哀れで愛おしい…
壱参弐様
続きも期待しております。
トックおじさんの「くまちゃん」ワロス
壱参弐様
有難うございます!
ソングムとペギョン。
それぞれに哀しみがあって泣けてきました。
続きお待ちしてます!
170 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 21:37:07 ID:2mJ7M4RJ
萌へて、萌へて、泣いたorz…
171 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 22:37:56 ID:l9TFFboX
もう、泣くのは およし。
172 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 23:16:33 ID:mvVJONz3
涙を拭いて、歩き出すのよ。
173 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 23:28:14 ID:1G/47k5R
尚宮さま〜 ( p_q)エ-ン 私もうダメです。
いつかミョンイ×ペギョンもヨロデス。
175 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/04(月) 13:16:04 ID:IXc/QpPj
確かにミョンイ×ペギョンも読んでみたいw
176 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/04(月) 23:56:02 ID:MX/taBxl
もう漏れはペギョンたんがそこにいるだけで幸せだぁぁぁぁぁ11
177 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 09:30:12 ID:SRWphyUq
コミューです。
初めての文章に感想ありがとうございました。
再会〜情熱〜の続きを書いてみました。
チョンホビジョンになっています。
よかったら読んでください。
178 :
あれから1:2006/12/06(水) 09:32:11 ID:SRWphyUq
口づけながら手で足を開かせ結び合わせると
それに応えていたチャングムの動きが止まる。
チャングムが耐えられなくなるまで動き続け
ふいに止めると残念そうに甘い吐息を洩らした。
そのままチャングムの足を肩にのせ更に深く深く結び合わせる。
ゆっくり・浅く・深く・はやく動き続けると今までこらえていたチャングムの声が息づかいと共に大きくなる。
「あっ・・あっ・・ナウリ・・ナウリ・・」
私につかまる手にも次第に力が入ってくる。
「・・ナウリー!!」
最後に私の名を大きく呼ぶとチャングムの背中が一瞬、浮き上がった。
その姿と切なげな声を聞いてから私もチャングムの後を追った・・
チャングムは気付いているのだろうか恍惚の中『ナウリ』と言い続けることを
その声が私をどれほど酔わせているかを・・
鼓動が収まるとチャングムに口づけ反転して彼女の頭を肩にのせる。
何時からかこうするのが習慣になっていた。
あれから5ヶ月が経っていた。
終わりの見えない逃亡生活の始まりの中でこの村に落ち着くことが出来たのは
チャングムの医術のおかげだった。
廃村を後にして10日後、私たちはまだ山の中にいた。
尚冊からかなりの路銀を受け取ってはいたが里に下りることは避けた。
手配書が既に出回っていると思ったからだ。
険しいが山中は追っ手の心配が少ないだけ安心して進めた。
女人の足では辛い道のりだがチャングムは辛抱強く黙って付いてきてくれた。
しかし廃村で一夜をゆっくり過ごしてから後は納屋や荒れ寺、洞穴などで過ごした事で、もはやチャングムの体力の限界はとうに超えているようだった。
私はチャングムが倒れてしまう前に、もっと寒くなる迄に落ち着くところを探さなくてはと気ばかりが焦っていた。
そんな中、川が流れているところに辿り着いた。
川を前に手を引いていたチャングムを振り返る
同じ事を思っているのだろう久しぶりに子どものような笑顔を見せてくれた。
雪の積もっていたあの時と違いチャングムの父上のした様に石を置いて行き
彼女の手をしっかり握りしめながら川を渡った。
これほどの川があるということは近くに村もあるはずだ。
疲れ果てているチャングムの為にも村を見つけ一夜の宿をと急いだ。
179 :
あれから2:2006/12/06(水) 09:33:12 ID:SRWphyUq
村はすぐに見つかったが、何やらひどく慌ただしい様子だった。
丁度、一人の若者が血相を変えて村を飛び出してきたところに出くわした。
聞くと父親が牛の角に刺されたので医者を呼びに行くところだという。
私を見るチャングムに頷いてみせると自分は医女だと名乗り、
疲れ切っている筈なのに若者と村の中に走っていった。
チャングムの見立てでは肋は折れているが内蔵は傷ついておらず
ちゃんと手当をしていけば2ヶ月程で完治するだろうと言うことだった。
私たちの様子から駆け落ち者と思ったのか村長達は、お礼を受け取らないならせめて怪我人が良くなるまで村に居てもらえないかと申し出てくれた。
私はチャングムの体調を考えその申し出をありがたく受けることにした。
長い逃亡の旅は思った以上にチャングムの体力を消耗させていた。
それでもチャングムは怪我人を献身的に看病した。
若者と怪我をした父親はコッシン作りを生業としていた。
私はこれからの生活のことも考え、村にいる間に若者を手伝い仕事を覚えることにした。
若者は父親より年上である私に丁寧にコッシン作りを教えてくれた。
2ヶ月もするとチャングムの見立て通り父親は元気になった。
村長や村人はチャングムの医女としての腕や私たちの人となりを見てくれたのかこのまま住んではどうかと再び申し出てくれた。
私は今だ体調のすぐれないチャングムの希望もあり、そうさせて貰うことにした。
180 :
あれから3:2006/12/06(水) 09:34:09 ID:SRWphyUq
「書房様?何を考えていらっしゃるのですか?」
私の肩に頭をのせていたチャングムがもの憂げに聞いてきた。
この村に住むようになって3ヶ月くらいは逃亡の疲れもあり
三水で再会した頃より更に痩せてしまっていたチャングムだったがここ2ヶ月の間体力と一緒に元来の明るさも取り戻していた。
「あなたのことを考えていました。ここに来た頃はかなり痩せて心配しましたが、ここ最近はふっくらとされて輝くばかりだと・・・そう思っていました。」
「それは書房様と一緒にいることが出来て幸せだからです。・・この様な日々が送れる様になるとは半年前には思っても見ませんでした。時々夢ではないかと怖くなります。」
それは私も同じだった。
今ではチャングムのいない生活は考えられなかった。
よく数年もチャングムに会わずに生きてこられたとも思う。
追われる身とはいえ夫婦になれたことを天に感謝した。
肩におもみを感じてチャングムを見ると既に眠っていた・・
眠るチャングムに口づけ離さぬようこの手に抱きしめ私も眠りについた。
181 :
あれから4:2006/12/06(水) 09:34:59 ID:SRWphyUq
村の朝は早い、チャングムの用意してくれた朝餉を食べ仕事に行く
しかし何時も見送ってくれるチャングムが青い顔をして
座っているのに気が付いた。
「どうしたのですか?具合でも悪いのですか?」
体調が良くなったばかりなので心配になる。
最近ではチャングムの噂を聞いて余所の村からも病人が来ることが多くなっていた。
何事にも真剣に立ち向かうチャングムのこと疲れが出たのだろうか・・
仕事に行くのを少し遅らせようかとも思ったが、それもチャングムが心配すると思い今日は一日ゆっくりするように言ってから出かけた。
怪我が良くなった父親はとても人情に厚い人物で生活の糧になるよう色々なコッシンの作り方や、どの里が一番よく売れるかなど更に教えてくれた。
その姿は内医院のウンベク殿を思わせた。
この村に本格的な冬が来る前に落ち着けたことは幸運な事だった。
冬も乗り切れ何より生活の糧を得るためのコッシン作りを覚えることが出来た。
若者や父親のような村人達がいることも分かったが、春になり暖かくなった今、
追っ手のことも考え、あまり長くは居ない方がいいと考えていた。
チャングムと長くいる為には自分が用心深くなる必要があった。
今夜にでも村を移ろうと思っていることをチャングムに話さなければ!
182 :
あれから5:2006/12/06(水) 09:36:23 ID:SRWphyUq
心配していたが家に戻るとチャングムは元気になっていた。
私の言うことを聞いて一日ゆっくりしてくれた様だ。
夕餉を食べた後、私は家移りの件をチャングムに話し始めた。
「季候も良くなって来ましたし、あなたも元気になってずいぶん経ったので、もう少ししたらこの村から他へ移ろうと思っています。患者さんのこともあるでしょうから、あなたの都合が良くなったら教えてくれませんか?」
「えっ!!この村を出るのですか?」
突然のことに驚いたようだ。
「はい。いきなり追っ手が来て慌てるよりその方が
私たちや村の方たちにも良いと思うのです。」
「・・・・2ヶ月くらい先ではいけないでしょうか?」
「そんなに?・・長患いの方がいらっしゃるのですか?」
チャングムの返事に逆に私の方が驚いた。
チャングムの患者のことはよく聞かされていたが、その様な人がいるのは
聞いた憶えがなかった。
見るとチャングムが緊張しているのが分かる。
「何かわけが・・・・あるのですね。」
一体どうしたのか!こんなチャングムを見るのは初めてだ。
訝る私の視線に耐えられない様子でチャングムが俯く
「話せないことなのですか?」
もう一度尋ねる。
「実は・・・子どもを身籠もっているのです。」
消え入りそうな声で答えた。
「!!」
聞き違いかとも思ったがチャングムの様子からそうではないことが分かった。
「何時わかったのですか?それで今朝、辛そうだったのですね。」
自分の迂闊さになかば呆れながら急にチャングムの体のことが心配になった。
自分が人の親になる・・・
しかも愛するチャングムとの子ども・・・
チャングムと夫婦になれたとはいえ子どものことは全く想像すらしていなかった。
暫く何も考えることが出来ずにいたが。
次の瞬間には喜びが溢れてきた。
余りの嬉しさに、いまだ俯いているチャングムには全く気付かなかった。
183 :
あれから6:2006/12/06(水) 09:41:10 ID:SRWphyUq
それにしても、あと2ヶ月でチャングムの体調が安定するとは思えなかった。
「体調が良くないのでしょう?今朝気付いたのなら二月ぐらいなのでしょうか? 知らなかったとは言え、あなたを抱いていたとは・・
昨夜もあんなに・・大丈夫なのでしょうか?」
チャングムを乱暴に扱った事など無かったが
子どもに良いこととも思えなかった。
「それは大丈夫です。書房様・・あの・・2ヶ月ではなく
もうすぐ5ヶ月になるのです・・・。」
チャングムがいたたまれないように言った。
「!!・・・あなたの体はどこも以前と変わっていないではないですかお腹もふくらんでいないし・・」
すぐには信じられなかった。
「そうではないかと思ったのは村の方々に引き留められた時で
それから直ぐに、はっきりしました。」
「それでこの村に居たいと言ったのですね・・・だから体調も悪かったのですね?それなら何故もっと早く・・」
「余りはやくお話ししても流れてしまうこともあるので・・・それに活人署に勤務していた時、何人もの妊娠された方を診て流れる時はどの様な症状が表れるか知っていました。・・それのどれにも当てはまらなかったので・・」
最初はそうでもその後、何故私に言えなかったのかチャングムの気持ちを考える余裕もなかった。
二人にとって、こんなに大切なことも言わないチャングムに腹が立った。
「その様なことではなく、子どもは勿論のことあなたに何かあったらどうするのです。私を何だと思っているのですか?知っていたらあなたを抱いたりはしなかったのに!!」
チャングムは俯いたままだ。
「今日、分からなかったら何時言うつもりだったのですか?
言い分があるのなら言ってみてください。」
余りのことに、つい口調がきつくなる。
「・・そう言われると・・そう言われると思って言い出せませんでした。」
小さくなっていたチャングムは更に小さくなってそう言った。
「書房様が初めて抱いて下さった時は夢のようでしたが・・
村に落ち着くまでと落ち着いてからも私を心配して余り抱いては下さいませんでした・・
流産の心配が無くなってからは子どものことも言えば一緒に喜んでいただけるのは解っていましたが・・今日は言おう明日は必ずと思っていたら言いそびれてしまって・・」
泣いているのか声も震えている。
顔を上げないチャングムの顔を上げさせ見ると、その目は涙で濡れていた。
腹立たしさはもう消えていた。
チャングムを膝に抱き上げ子どもをあやすように背中をたたいた。
184 :
あれから7:2006/12/06(水) 09:42:12 ID:SRWphyUq
「私に言えなかったのは、あなたを抱かなくなると?そう思ったのですか?」
チャングムは私の胸に顔を埋めたまま頷いた。
「子どもはあの時出来たのですね。」
私はチャングムと夫婦になれた廃村でのことを思った。
夢のようなあの出来事が現実となって今チャングムの中に息づいていると思うと神聖な気持ちになった。
「それでは、もうすぐ5ヶ月になるのですね?」
「・・はい。」
「体の方は本当に大丈夫だったのですか?」
「・・はい。」
「でも2ヶ月先の方がもっと大丈夫なのでしょう?」
「・・はい。」
「では、私もあなたを抱くのは2ヶ月我慢するので、あなたも我慢できますね?」
「えっ?・・・はい。」
チャングムは素直に頷いた。
「これは初めての夫婦げんかになるのでしょうか。」
チャングムに聞く
「・・・まだ怒っていらっしゃいますか?」
「・・はい・・怒っています直ぐあなたを許してしまう自分を・・・」
「書房様・・・」
「それよりあなたにお礼を言わなくては・・」
「えっ?何のですか。」
「私の子どもを身籠もって下さったことです。本当に嬉しいです。
先ほどはきつい事を言いましたが気付かなかった私も悪いのです・・・・ それでも、今度からこんな事は無しにして下さいますね?」
泣きやんでいたチャングムの瞳がまた涙で潤んでいた
「はい・・書房様それはもう・・絶対に・・」
後は言葉にならず頷くだけだった。
結局無理をさせるよりは子どもが産まれてチャングムが元気になるまでは
この村に住むのが一番いい事のように思えた。
それでも、いつ何があってもいいようにチャングムと子どものために
移れるほかの村を2つ位見付けておくことを心に決めた。
185 :
あれから8:2006/12/06(水) 09:44:17 ID:SRWphyUq
季節は夏になっていた。
チャングムのお腹もそれと分かるほど大きくなっていた。
体調も順調なようで毎日診察の傍ら子どもの肌着を縫ったりしていた。
夜も遅くなり眠りにつく前、二人で寄り添い座る
「書房様あれから2ヶ月経ちました・・・お約束を憶えておられますか?」
「何の約束でしょう?」
すこし惚けてみせる。
「えっ!・・あの・・」
困って口ごもる姿も可愛らしい
「嘘です。憶えています忘れるわけがないでしょう?
あなたとの大切な約束なのに・・・・」
「えっ!からかわれたのですか?」
「そうです。この前のお返しです。はははは」
笑うとチャングムは拗ねてしまった。
拗ねて嫌がるチャングムを横向きに膝の上に抱き上げる。
186 :
あれから9:2006/12/06(水) 09:45:06 ID:SRWphyUq
「私もそろそろ限界です。
あなたが私を『ナウリ』と呼ぶ声も聞きたいことですし・・」
「えっ!!私が『ナウリ』と?」
拗ねていたことは忘れたようだ。
「ふふっ」
やはりチャングムは気付いていない
「そうです。書房様ではなくナウリと呼んでくれます。」
「いつですか?」
「私があなたを夢中させている時です。」
「!!」
真っ赤になって俯いてしまった
余り恥ずかしすぎると何も喋れなくなるところも可愛らしい
「そんなに、恥ずかしがらなくてもいいのです。
私はその声を聞くのが好きなのですから・・」
チャングムをのぞき込むように口づける、さらに舌を絡ませながら長く
口づけて行く
目を開けるとそこには私しか知らないチャングムがいた。
「こんなにお腹が大きくなってしまって・・・無理なのでは・・」
ふくらんだお腹をさすりながらチャングムが不安そうに言う。
その手に私は自分の手を重ねてチャングムと子どもを感じた
「大丈夫です。私と一緒に一番よい方法を見つければいいのです。」
「書房様と一緒に?」
「そうです。私と一緒に・・・」
私はそう言うと、チャングムのうなじに口づけながらチョゴリの紐を解いていった。
――終――
ありがとうございます!ほのぼのしました。
チョンホ×チャングム大好きです。
ぜひまたこのカップルで書いてください。
携帯から乙
別バージョンも書きんしゃい
190 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 19:14:08 ID:OwWJg0oF
“エロ”パロじゃなきゃダメだ!
よって、ここが好きだ!w
192 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 21:33:27 ID:jBQ4NQgt
>>198 漏れはそこの亜季亜さんのファンだ
ちょっと百合っぽくてイイw
193 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 21:36:16 ID:jBQ4NQgt
194 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 22:35:35 ID:AJVAxgZN
雪華ってのが、結構エロいよ。
195 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 22:38:08 ID:AJVAxgZN
いじめられて、最新のは削除になってたけど。
みんな文化人だの作家だのと思って書いてるらしい。
管理人はたぶん、あれだな。
196 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 12:08:59 ID:pZZtCNgt
確実に林葉直子がいるような気がする。
マルチうぜー
200 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/11(月) 01:20:56 ID:LRvgK33/
壱参弐さん、コミューさん、続編楽しみに待ってます(*^_^*)
201 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/11(月) 20:57:57 ID:LRvgK33/
漏れも待ってますw
202 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/13(水) 04:52:49 ID:RqgCkD4Z
コミューです。
いつも暖かい感想をありがとうございます。
〜あれから〜の続きを書いてみました。
よかったら読んでください。
203 :
〜もっと・・ずっと〜1:2006/12/13(水) 04:55:53 ID:RqgCkD4Z
まだ夏のなごりを残す初秋、チャングムは可愛い女の子を産み落とした。
チャングムの年令のこともあり陣痛が始まり産まれるまでは、いてもたっても居られなかったが母子共に無事で産まれた知らせを聞いた時には安堵のため息を洩らした。
しかし一日以上もかかったお産が安産だというのには驚いた。
普通はもう少しかかるものなのだと言う。
「丈夫なだけが取り柄なのです。」
明るく笑うチャングムだったが疲労の色は隠せないようだった。
初めての我が子との対面は、ただ只、驚きの一言だった。
産まれたばかりの赤子とはこんなにも小さいものなのかと余りの小ささに驚いた。
私の両の手の平にすっぽりと収まるほどの大きさで足の裏などは私の親指ほどもないのだ・・・よくぞ無事に産まれて来てくれたと
不覚にも目頭が熱くなった。
名前は色々と考えていたが我が子を見たとたん全て忘れてしまった。
結局、あの廃村での一軒でお互い気持ちに素直になり結ばれて授かることが出来たのだからソホン(素軒)と名付ける事にした。優しい音の響きも決め手となった。
チャングムは名前の由来を私から聞いたときは顔を赤らめたがそれでも気に入ってくれた様でソホンの顔を見るたび触れるたび『ソホン・ソホン』と呼びかけていた。
チャングムの床上げは安産だったこともあり思ったより早かった。
「気候が良かったので体の戻りも早かったのです。
ソホンは本当に良い時期に産まれて来てくれました。」
ソホンに乳を飲ませながら話すチャングムは一段と美しさを増して眩しいほどだった。
204 :
〜もっと・・ずっと〜2:2006/12/13(水) 04:56:49 ID:RqgCkD4Z
一月もするとチャングムは殆ど体調が元に戻ってソホンの世話は勿論、家の用事も出来るまでになってくれた。
それまでは私がチャングムとソホンの面倒を見ていたが村の女将さん達も困ったときはお互い様だからと親身になってくれたお陰で何の不自由もなかった。
医術の方は赤子もいるので再会していなかったが、ソホンが産まれてチャングムがある程度、回復してからもソホンを見に来ることや怪我の治療は有っても病で訪れる人はいなかった。
村人達は情に厚く、皆が助け合い生きている。
この村でチャングムがソホンを産むことが出来て本当に良かったと思う。何時かは去らねばならぬ日も来ると思うが、その日が出来る限り遅くなることを願わずにはいられなかった。
チャングムが少し良くなった頃から、私はまたコッシン作りを本格的に始めた。
仕事の合間には、もうすぐ来る厳しい冬に備えて冬越しの準備も怠らなかった。
チャングムは体も元に戻ったからもう大丈夫だと色々手伝う私を気遣ってくれたが、ソホンの懐妊に気付かないでチャングムに辛い思いもさせたこともあって、もう暫くは体を労るように言い聞かせた。
その頃から時々チャングムの視線を感じる様になった。
気付かぬ振りをして様子を伺うとずっと私を見ていることもある。
何か気恥ずかしい雰囲気も手伝いチャングムにその事を問うのは憚られた。
205 :
〜もっと・・ずっと〜3:2006/12/13(水) 04:57:59 ID:RqgCkD4Z
秋も深まる頃にはソホンの足は私の親指よりも大分大きくなっていた。
ますますチャングムに似てくる我が子が愛おしく夜泣きの時なども
起きてあやすのが一つも苦になる事はなかった。
今夜も泣き出したソホンをあやしていたらチャングムが目を覚ました。
「お腹がすいているのでしょう。」
チャングムが私からソホンを抱き取り乳を飲ませ始める。
その姿を眺めているとチャングムが話し出した。
「夫婦になってソホンまで、もうけておいて今更、言うのも恥ずかしいのですが最近、書房様のお姿を見るだけで胸がドキドキします・・。
こんなに素敵な方と添うことが出来るなんて何て幸運なのだろうと・・
思えば宮女であった時、済州島に流された時、また医女になってからも書房様が私を大切に想い守って下さったからこそ今の幸せが有るのだと思って・・・」
ソホンの顔を見ながら話していたチャングムが真っ直ぐに私を見た。
「私は今まではっきり書房様に自分の気持ちを言っていないのに気が付いたのです。・・書房様・・お慕いしています。
たぶん宮女であった頃からそしてこれからもずっと・・・
今は追われる身ではありますが以前のように陰謀も妬みもない・・
ただ書房様に守られ愛されてソホンと三人で暮らせるこの生活に安らぎを感じます・・」
206 :
〜もっと・・ずっと〜4:2006/12/13(水) 04:58:56 ID:RqgCkD4Z
そう言って微笑むチャングムの頬はうっすらと赤みを帯びていた。
「お顔が赤いですね。赤いと熱症が考えられるのですよね?」
二人とも済州の海岸での出来事を思い出していた。
「はい。熱症なら持っています・・・」
チャングムがあの時の私の言葉通りにしゃべる。
「私もです。私もずっと以前から治らない熱症を持っています・・」
私はソホンに乳を飲ませるチャングムの肩を抱き頬に口づけた。
「あなたからそんなことを言われると嬉しいです。とっくにご存じでしょうが私もあなたをとても愛しく思っています。それこそ自分で自覚する前から愛していたんだと思います。
あなたは私と添えて幸運だと言って下さいましたが私の方がもっとずっと幸運なのです。
ずっと愛し守ってきたあなたが、私の思いを受け入れて下さって、こうして夫婦にまでなれてソホンまで授かることが出来たのですから。」
207 :
〜もっと・・ずっと〜5:2006/12/13(水) 04:59:58 ID:RqgCkD4Z
二人して宝であるソホンを見るといつの間にかチャングムの腕の中で眠ってし
まっていた。可愛い口元には母乳がひと雫ついている。
ソホンの可愛らしさにチャングムと顔を見合わせ微笑み合う。
もう逢えないと思っていたチャングムと再会でき夫婦にまでなることが出来た
のだから、何時か親子三人で漢陽に戻る日も来るかもしれない・・
しかしこのまま白丁として生きていくことも其れならそれで良いことの様に思
えた。
私にとってチャングムが幸せでチャングムと共にあることが一番重要なことで
今はソホンもいる。
それこそが幸せそのものだと思えた。
チャングムは眠ってしまったソホンをたてに抱いて背中をぽんぽんと軽くたた
き、襁褓を換え布団に寝かせた。
「乳を飲んだのでソホンは当分眠っていてくれるのではないですか?」
私の意としたことが判ったのかそう聞くと嬉しそうにチャングムは頷いた。
私は自分の膝をかるく二度たたいてここへ来るよう誘った。
208 :
〜もっと・・ずっと〜6:2006/12/13(水) 05:01:02 ID:RqgCkD4Z
はにかむチャングムの手を取り膝の上に抱き上げ強く抱きしめる。
チャングムも私にしがみつくように抱きついてきた。
「もう体の方は大丈夫なのでしょう?」
頷くチャングムと見つめ合う。
口づけて舌を絡ませながらチョゴリの紐を解いていった。
久しぶりに見るチャングムの胸は以前とはかなり変わっていた。
「女人の体とは不思議なものですね。
あなたは今、母親の体をしています・・・」
「えっ?」
「こんなに胸が大きくなって・・・驚きました。」
両手で持ち上げるように触る。
交互に口に含んでみると母乳の味がした。
「あっ・・ん・・」
チャングムが悩ましい声を洩らす。
チャングムを横たえ一糸纏わぬ姿にしていく・・・
艶めかしい唇・・大きくなった乳房・・ソホンを産んで平らになった腹部を
中指でゆっくりとなぞっていって最後に臍の周りを円を描くようにして止めた。
チャングムを見ると潤んだ瞳で花が開くように体を開いて私を誘ってきた・・
209 :
〜もっと・・ずっと〜7:2006/12/13(水) 05:02:06 ID:RqgCkD4Z
初めてチャングムを抱いた時の様に唇から首すじ乳房へと口づけていく・・
そして今夜はさらにその下へと口づける・・・
「ナウリ?・・・何を・・なにをされるのですか?・・」
チャングムが言葉と手で私を止めようとするがその手を動かぬように
指で絡めて押さえ込み進んで行く・・
「あぁ・・あっ・・」
チャングムの一番敏感な場所に優しく口づけ舌で刺激してはまた口づける・・
さらにその下の泉も同じようにするとチャングムの指に力が入っていくのが分
かった。
チャングムのすすり泣くような声が続き暫くすると体が小刻みに震えだした。
私は、しっかり互いを結び合わせてからそのまま一緒に
チャングムの体を抱き起こす。
するとチャングムが夢中になって私に口づけてきた。
初めてチャングムの方から舌を絡ませてくる・・・
私はそのままチャングムのしたいようにさせてみる。
チャングムが名残惜しげに唇をはなすと、その視線を捉えながら
焦らすようにゆっくりと動く。
しばらくするとチャングムが催促するように自分から動き出した。
「あっ・・あっ・・あっ・・」
私の首に掴まって動く度ねだるように悩ましい声で呻く・・
その悩ましい声に、淫らな動きに、私の方が耐えきれなくなって
強く激し速く動き出した。
最後にソホンを起こさぬようにチャングムの叫び声を口づけで塞ぎながら
チャングムの後を追った・・・
210 :
〜もっと・・ずっと〜8:2006/12/13(水) 05:03:07 ID:RqgCkD4Z
気だるい雰囲気が立ちこめる部屋の中・・
結ばれたままの姿でチャングムが話しかけてきた。
「書房様・・なぜ、あの様に口づけたのですか?・・・」
消え入りそうな声で聞いてくる。
チャングムの可愛らしい鼻に小さく口づけ答える。
「以前から、して差し上げたかったのですが・・我慢していたのです。
身籠もっていたあなたを余り驚かせてはと思って・・
今晩あなたを久しぶりに抱いて『あぁ・・此処からソホンを産んでくれたんだ』と思うと口づけていました。いや・・でしたか?」
チャングムは微かに首を横に振った。
「とても・・」
「とても?」
「素敵でした・・死んでしまうかと思うくらい・・
それから・・私も同じ様にして差し上げたいと・・・・・」
可愛いことをいってくれる。
「無理をしなくてもいいのですよ。」
「無理だなんて・・・」
体を動かしてイヤイヤをする。
その動きが結ばれたままの私を刺激するのが判らないのだろうか?・・
「そんなに動いたらあなたは眠ることが出来なくなってしまいますが・・」
「えっ?」
「私たちはまだ結ばれたままなのですよ。」
その意味に気付いたのかチャングムは真っ赤になって俯いた。
なんど体を重ねても何時までも恥じらいを失わないチャングムをさらに愛しく
思った・・
211 :
〜もっと・・ずっと〜9:2006/12/13(水) 06:07:18 ID:RqgCkD4Z
「・・・ナウリ・・」
顔を上げ潤んだ瞳でチャングムが私を見る・・
「はい?」
「私がナウリと呼ぶのが好きだと仰って下さいましたね?」
「はい。」
「ナウリー・・もう一度・・もう一度、私を夢中にさせて下さいませんか?・・・」
「・・・」
「ねっ・・ねっ・・ナウリ・・」
その愛らしい問いかけと体の動きに私の体も再び熱くなる。
「では、先ほどよりも、もっとずっと時間をかけましょう・・
ソホンは夢の中で秋の夜はまだまだ長いのですから。」
そう言うと私はチャングムを再び愛し始めた・・・
愛し合う両親の側で幸せな夢を見ているのかソホンの口元が微かに
笑うように動いた。
――終――
212 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/13(水) 06:08:27 ID:RqgCkD4Z
このお話はこれで一応終わりです。
こんなに続けて書くことが出来たのはリクのおかげです・・
チョンホ×チャングムが好きなのでまた書いてしまうかもしれませんが
色々とまた勉強してきます。拙い文章を読んでいただいて
ありがとうございました。(u_u)
214 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/13(水) 18:25:58 ID:FNQODuVR
ん? これをどうするの?
ありがとう。
これで終わりといわずまたぜひ書いてください
可愛いチャングムですね。
217 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 01:16:50 ID:HNloeKxE
ほしゅ
218 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/19(火) 16:53:33 ID:aifbLiTm
保守しときます。
そろそろ圧縮来るらしいから。
220 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/22(金) 21:40:22 ID:FAjs5K6j
壱参弐さん
続き楽しみに待ってます〜
ハン尚宮×チェ尚宮 −想望−
壱参弐 柵
内容:百合 原作改変 エロ延々、soap opera *キャラを汚します。
分量:これを含め、8レス
再び顔を合わせたのは、数日後の昼下がり、打ち合わせの席である。最高尚宮は居並ぶ
尚宮たちにまず、不在の間の労をねぎらった。
事を始める時がきた。
今朝起きがけ、いや昨夜寝入る時からハン尚宮はそう考えていた。
そしてあの者の姿を見た時、高笑いをしてしまうのではないか。
怖れすら、ハン尚宮は感じていた。もうお前に従う必要はないのだから、と。
けれど、いざ顔を合わせると、そんな気持ちは微塵もない。
遠方から帰り、まだ汗も引ききらぬと見えて、やや疲れの見える横顔。
そのうなじに後れ毛が数本。
張り付くのを見た時、ハン尚宮の心中はぞくりとし、震え、時めきすら覚えた。
抱かれていた時、目に映った後れ毛。それを思い出し、甘い痺れが身に蘇る。
仕事は夕方までで上がり、部屋に戻り思いは巡る。
ふしだらな。なんてことを。ハン尚宮は戸惑いを隠せずにいた。
あの者が離れていたしばらくの間、隣の部屋は灯らず呼び付ける声もない。本当に
久しぶりに、ひとりでゆったりと眠ることができた。
されどくつろぎ寝入る脳裏に浮べたのは、あの者の肌。手。唇。絶え間なく続く愛撫。
普段、あの者など見たくも無いと目を固く閉じ、ただ耐えていた。けれど、どれぐらい
させれば満足するか、確かめるべく目を開く時、いつもあの者の鬢の毛が間近に迫る。
初めぼんやり眺めていたそれが、手の動きに遅れてゆらゆらと揺れ動くのが面白く
思えて、ハン尚宮はある時ふと触りたくなった。
指でそっとかき上げると、指先に少し汗ばんだ髪の毛がまとわり付いた。それは柔らかく
頼りなげに、けれども美しく光った。
チェ尚宮に抱かれること、それはハン尚宮にとって初めは嫌悪でしかなく、次は哀れみ
しか感じられなかった。
けれど、あの者の私を求める心に偽りは無い。その心に気付いてから、呼び付けられる
ことに、嫌な気持ちは少しずつ和らいでいたのではなかったか。
あの者は、水剌間では人を求めること、自分の心根をさらけ出すことはできない。けれど
ハン尚宮といる時だけは、逃げる術のない鳥に甘えすがり、求めてくる。
籠に押し込め支配したと、歪なやり方ではあるが思い込み、かりそめではあろうが
安らいでいる。
あの者の身体だけでなく、気持ちまでも受け止めさせられている。
それは"本当に嫌"なことなのだろうか。
そしてかりそめであっても、受け入れているのは私ではないか。受け入れるどころか、
あの者の、今まで見知らぬ一面を、私もまた楽しんでいるのではないだろうか。
哀れみの中に忍び入る、楽しみという別の想い。
ひとり寝る夜の明くる間、度々、己の思いを反芻した。
抱かれる時には常に、冷めた目でいたつもり。
けれどいなくなる前の数日、激しく抱かれ続け、果て、その耐えられぬほどの快感に、
思わずあの者を強く抱き締めたのも拭いようのない事実である。
ハン尚宮の身、はそれを忘れられないでいる。今まで覚えたことのない快さ。
あの者の――決して振り向くことはないと知っていても、一途に求め続けようとする――
手で引き出された悦び。身体の奥から搾り出るような味わい。
もしやあの時、本当に感じたのではなかったか。
あの子を、欲していたのではなかったか。
そう思うたび、ハン尚宮は邪念を打ち消そうと努めてきた。あり得ない。あってはならぬ。
反芻を繰り返すほどに、ハン尚宮の心に少しずつ違う感情が芽生えていた。それを自分
では、黒い光沢のある感情だと感じる。何なのだろう? 判らないけれど漆黒への欲望。
夜になり、書を前にして、ハン尚宮の目は静かに字面を追う。だが頭の中では。
柔らかな女体。目の前を行きつ戻りつするふくよかな乳房。汗ばみまとわり付く張りの
ある腿、光る肌。少し手を伸ばせば、そこに。
いや駄目だ。呼ばれても行くものか。もう行く必要などない。
書物をめくる。
きっぱり断って、あのことを告げてやる。どれだけ驚くか、楽しみ。
ぱらり
まだ部屋に戻らぬ様子、今日は夜当番ではなかったはずだが。打ち合わせでもしているのか。
書物をめくる。
うなじ……。
いいや、いけない。
帰ってきた。
ぱらっ
寝支度も整い、そろそろ声をかけてくる頃。断るのよ。きっぱり。驚く顔が見たいわ。
書物をめくる。
もう飽きたか。それならそれでいい。
ぱらり
今日は呼ばぬつもりか。
ぱらっ
書物をめくる。
ひょっとして気付いたか。
ぱらり
顔を埋めたい。指で、唇で味わいたい。
書物をめくり、声がかかるのを待つ。待ち続ける。
「ハン尚宮、来なさい」
いよいよ。きっぱりと、きっぱりと言うのよ。
ハン尚宮はそう心を決め、立ち上がり隣室に向かった。
「お呼びでございますか」
「ペギョン」
その時、ハン尚宮の目にあの後れ毛が飛び込んだ。
触れてみたい。ああ、なんてことをまた思っているのだろう。私としたことが。
動揺を悟られないように、そしらぬ顔で答える。
「はい」
「久しぶりね。水剌間は大丈夫だった? あなたも元気にしていた?」
「つつがなく過ごしてまいりました」
「今日は私が外で聞いたお話しをしてあげるわ」
チェ尚宮の話しはそこそこ面白く、耳を楽しませるものだった。ここ数ヵ月の特訓
あってか、徐々に話しの要領を掴んできたようだ。けれどハン尚宮がずっと気になって
いたのは、あの後れ毛。熱心に聞き入る振りをして、鬢の毛、そしてうなじを目で追い
続けた。いや愛でていた。
話しが終わるといつものように、チェ尚宮はハン尚宮を抱き寄せる。
前に責めすぎたのを後悔しているのか、やや遠慮がちな手つき。
それに、素直に応じるハン尚宮がいた。
もちろん、この部屋に入るまではきっぱり断るつもりだった。けれど既にその決意は
鈍く潰えている。そんな自分に内心呆れながら、抱き寄せられることがどこか嬉しく
感じた。その嬉しさを隠そうと、自分への言い訳を考える。
あれを見つけた以上、言うことを聞く必要はない。けれどまだ、そのことをチャングムや
ミン尚宮たちに伝えていない。まずしっかり連絡を取り、隙の無いようにしなければなら
ない。動き出すには、今少し時間が必要だ。しばらくは、以前のように振舞う必要がある。
だから今晩は仕方なく。
それにもう何度も抱かれた身。今さら一度や二度、大した違いではない。
そんなことを考えながら、引き寄せられるままハン尚宮はチェ尚宮に身を委ねた。
抱き締められて、撫でられる背中。それだけで、もう。
愛しみが、始まる。
押し付けられる唇の熱さ、蕩けるような舌の動き。
唇を割り、チェ尚宮が舌を割り込ませると、待ち侘びたかのように絡め、受け止める。
羽織っていた上着を解き、少しずつ着物をずらしていく。動き一つ一つが待ち遠しい。
そう感じる自分に、ハン尚宮は内心驚いた。
いつも先に裸身とされるのはハン尚宮で、しばらく玩ばれるのが常だった。
抱き締められるのも口付けられるのも、もちろん愉快ではない。しかしそれはある意味、
対等な係わり合いに思えた。
けれど身にまとう衣を剥がれるとき、これまで獲得してきた何もかもを奪い取られる
ような、寄り縋るものを失うような不安が、衣の代わりに身を包む。
その不安もまた、愛撫によって剥がされ、又代わりの官能の炎が纏わり付いていく。
ハン尚宮は、このひと時が嫌で仕方なかった。
あの者は衣に身と心を守られている。そして自分は肌を晒し、火が付けられ燃え上がるのを
余す所なく眺められている。自分の肌と触れるのはあの者の、時には、かつて自らもまとった
濃緑の上着。この営みが一方的な行為に過ぎぬこと、それが肌から伝わってくる。
懸命に屈辱に堪える時間。
だから大げさに喘いだりした。そして、早くお前も脱いで、と心の中で叫んでいたのだ。
なぜ自分が昂るまで、あの者が衣を離さぬのか。ハン尚宮にもよくは判らなかった。
けれど推し量るに、要は怖いのだ。欲情に溺れ、私の冷ややかな視線が緩むまで、自らも
一糸まとわぬ姿となって、向き合う自信がないのだろう。
しばらくしてからやっと、もう一方も身にまとうものを解く。
素肌で抱き合えば、あの者が肌越しに伝わってくる。そうなれば、共々浅ましい姿。再び
対等に並び、相手の反応を見ながら感じる振りもできる。それに何より、いくばくかの心地
よさがある。
けれど今日は。
いっそ、自ら脱ぎ去りたい。身に絡む布きれを取り、早く、早くあなたの手をこの身に
添わして。
焦るほどの渇望を、ハン尚宮は感じていた。
激しく荒々しく、私への気遣いなど一切なく、欲望を押し付け貪る。それは羞恥と痛み。
同時に、快楽とも手を携えてくる。
心の交わりなんてあるはすもない、
けれど、ひたすらに私を求めるあの熱情が、今は欲しい。
しかしこれでは……自分で描いた台本通りではないか。何ということだ。
ハン尚宮は小さく舌打ちした。
いや違う。決して惹かれてなんていない。ただ身体を、行為を求めているだけに過ぎない
のよ。
脱がせる時、いつも恥じらい嫌がるそぶりを見せるのに、今日はやけに素直ね。
チェ尚宮は訝りながらも、もう諦めが付いたのだろうと思うことにした。まさか相手が、
この時を待ち焦がれていたとは知る由も無い。
既に上気した肌は汗ばみ、滑らす手指にひっかかるほど。驚いてあの場所に指を差し
入れると、既にぬらぬらと潤いあふれ出る。
私の存在に欲情している!
チェ尚宮も、ひと月近くこの肌に触れていない。たまらなくなって慌てて着ているものを
脱いだ。
顕わにされた胸に圧し掛かる、チェ尚宮の柔らかな乳房を感じて、ハン尚宮は腕、脚を
絡ませ、ぐっと締め付けてしまう。まだ昂ってもいないのに。
チェ尚宮はその仕草にふと、嵐のような未来の前触れを感じた。
今離れなければ、深みに嵌り、二度と這い上がれなくなる。そう囁く声が聞こえる。
やめなければならない、今すぐやめなければ。絡まるこの手足を振りほどかねば。
上体をもたげ、しばらく下にある身体を眺める。と、背中に回された手の片方が、前に
来て、乳房にあたる。同時に背中に残る手が、腰を強く押し付ける。
このままこの者を抱けば、良からぬことが起こる。理性を振り絞り、チェ尚宮は行為を
やめようと努めた。けれど、もう離すまいとするかのように、ハン尚宮は更に腕に力を
込め、チェ尚宮の右の手を取ると、自らの胸に乗せゆっくり動かし、愛撫をせがんだ。
もう駄目。
チェ尚宮は沈むように肌を合わせていった。
そして二人。
チェ尚宮は久しぶりに味わうハン尚宮の感触に、我を忘れて貪りついた。ハン尚宮も、
そうしている間中ずっと、名前を……もう口を塞がれる必要はなかった。感じる振りも
しなくてよかった。愛しみに応え、感じたままソングムの名を呼び続けた。
けれど、そのことにすら気付かないほど、チェ尚宮は激しく責め立てる。ハン尚宮も
そうするチェ尚宮の動きを封じるほど、愛しみの一つ一つに応えて、強く抱き締め返す。
今は後ろから、組み敷かれている。
敷布を握り締めるハン尚宮のこぶしに、チェ尚宮の指が重なる。捩れ、ぐちゃぐちゃに
なってしまった敷布のように、あなたの心も乱し捩じらしたい。
そう思いながら、そのこぶしにチェ尚宮の唇が湿り気を与えると、ハン尚宮は身を返し、
もっと湿り気、滑りを求めてその指をチェ尚宮に差し込み舌をもてあそぶ。
チェ尚宮は与えられる指を味わっていった。
かなりの時間、身体を重ねていたが、ようやく一息付く。横に並ぶ身体が、汗でじっとり
と張り付いている。少し引き離し、チェ尚宮は肘を枕にハン尚宮を見下ろした。そして
相手を、もう敏感な部分は避けて、撫でている。
その顔を見つめるハン尚宮の目に、またあの、汗で大きく張り付いた鬢の毛が映った。
ハン尚宮は腕をもたげて、後れ毛に手をやる。
そして指先でしばらくいじくっていた。けれど、それが愛撫のように思われることに
気付き、ごまかそうと手のひらを広げ、なんとなく仕方なく、そうしているだけ、とでも
言いたげに、首筋に腕を巻きつけた。
けれど。巻きつけた二の腕、回した薬指小指に両の耳たぶが触れる。
柔らかな感触だった。もっと触りたい。お前の柔らかさを味わいたい。身体中の柔らか
さを。
巻き付けられた腕に誘われるように、チェ尚宮は愛しい人のおとがいに手を当て、
口付けをする。それからまた再び、身体を合わせる。ハン尚宮もまた、徐々に上り詰め
させられていく。
相変わらず喘ぐ振りは続けている。けれど。さっきは夢中で判らなかったけれど、少し
冷静になって気が付いた。振りじゃない。
本当に? いや。確かに今、心の底から喘いでいる。そして感じている。
どうしてこんなことに。己の行いに戸惑いながら、けれど身体は更なる愛しみを求めて
いるではないか!
戸惑うハン尚宮の身体に、時折、チェ尚宮の解いた髪が落ちた。それはチェ尚宮の動きと
共に、胸を優しくくすぐり、こすりあげる。あの黒髪を、この指にまとわり付かせたい。
ハン尚宮は、こすりあげられるたび、そう思った。
二度目が終わっても、その思いは消えてくれない。もっと……。
しかしもう夜も遅い。今日はかなり疲れているはず。明日また。
そう願う自分に、また驚く。
私は明日を待ち望んでいるというのか。
この思いを気付かれたくは無い。慌ててチェ尚宮の首筋から手を離す。
「ねえ、ペギョン」
なにか、聞きたげな様子である。けれどハン尚宮は黙って、いつものように背中を撫で
られ、背中に口付けを受けた。そしてそのまま寝入るつもりだった。いつものこと。
いつものやり方。これで終わり。
だが、灼熱が延々背中に広がる。
たまらず無言のままくるりと向きを変え、身体を寄せていく。チェ尚宮もそれ以上何も
言わず頭を寄せる。その唇に自らの唇を軽く合わせた。
そして、二人は心地よい眠りに落ちた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
チュンチュンと鳴く雀の声で目が覚める。今日は朝当番だ。急いで水剌間へ行かなければ
ならない。
久しぶりに抱かれ、節々がだるい。しかし爽やかな気分も感じている。
隣のソングムに目をやると、まだ柔らかな表情で眠っている。
「また後でね」
そう声を掛けて、静かに部屋を出た。
夜、呼ばれるのを心待ちにしている自分が恐ろしい。
大きな荷物、資料やら書付けやらを抱えて部屋に向かう。今夜はまず、不在だった間の
引継ぎをしなければならない。これに結構な時間がかかった。
説明しながら、時々お前の顔を見る。
昨日までのことは……お前の外出とかあったからよ。お互い仕事の段取りが大きく
変わって、それでちょっといろいろと気も昂っていたから……。お前に対する気持ち、
憎しみとかは決して変わったわけではないわ。
何事も普段の生活に戻していかねば。それに、昨晩話してくれた様子だと、この者も
ずいぶん語り口がうまくなった。今も真面目に説明を聞いている。とてもいい傾向だ。
そろそろ独り立ちできるだろう。
夜半過ぎ、やっと終わった。
しかしそのまま。
何もしようとはしない。
今日はなしか? そう思い、資料を片付けるお前の後姿を目で追った。
後れ毛が揺れる。
喉がからからに渇く。
そうだったのか。漆黒はお前の髪の色……。触れたくて堪らない。
思わず背中越しにあの後れ毛に手をやり、暫らく撫で付ける。髪の毛に指を絡ませ
何度も掻き揚げる。掻き揚げる指にうなじや耳が触れ、冷たい指に温もりを分け与える。
「何? 何よ?」
いきなり首筋を撫でられ、振り向く。
「こっちへいらっしゃい」
ぐいと引き寄せる。
「何するのよ」
答えず、うなじに口付けた。鼻腔をくすぐる香り。頬に触れる柔らかな髪。触れた時、
自分の身体に火が付くのを感じた。
昼間、水剌間であの者の濃紺の尚宮服を見るだけで、中に納められた身体の線が目に
浮かび、形の良い胸、私に惜しげもなく見せる腿。私だけを見つめるねばっこい眼差し。
御膳を作りながら熱く火照るのを感じていた。
あの者が欲しい。乱れさせたい。そう思っては、掻き消そうと頭を振った。
けれど今、お前を見て、また噴き出した。
襟元を寛げるのももどかしく、首筋に指先を這わせ鎖骨のくぼみに唇をよせる。服の
合間から、立ち上る匂い……熟れた女と微かな香の薫りが混じりあう、生暖かな空気。
私から触れるなんて今までなかったから、ちょっと戸惑っているようだ。手で押し返して
くる。目と目が合った。憎い相手。けれども……。
あのミョンイが……いくら私が嫌そうな顔をしても、離れようとはしなかったお前。
光る汗と後れ毛の見えるうなじ。顔貌に増して、この子の身体はきめ細かく輝いている。
美しい。
手をまた伸ばしてチェ尚宮のうなじに添わせ、もう一度髪をかき上げる。
いやしいのかも知れない。自分でもそう思う。けれど……今この想いを止めることが
できないの。こんなに憎い相手なのに。
いや決して、愛おしい訳ではない。
また心の中で言い訳を考えている自分がいる。
お前を屈服させたい。辱めてやりたい。それだけだから。
そうよ、ただ追い詰めるだけでは面白くない。今までのこと、きっちり落とし前を
付けてもらうわ。こうしてお前の心を苛んでやるのよ……。
両手で頭を抱え、引き寄せ唇を割り、自分の舌を差し入れる。相手にかまわず何度も、
お前の中と自分の中へ交互に、行き来させる。
くふっ
息をするのも辛そうにしている。けれど離さない。
そして、更に深い口付けを交わす。拒むことすら忘れて、ソングムはただその柔らかな
出入りに翻弄されている。吐息は時に甘く、時に生臭いほど漂っている。
離れる時、粘り気が細く糸を引いた。
ゆっくり押し倒し、胸元をはだけていく。たわわな双丘の先端に唇を寄せた。お前の
身体がぶるっと震える。手で肌を捉え、敏感な場所を探り当て、揉みしだく。
もうこの者の言いなりになる必要は無い。いつでも私は、お前から離れられる……。
しかしすぐには、そうしてあげない。私をさんざん辱めた報いを受けさせてやる。私の
耳元でミョンイやチャングムを詰った侘びを入れさせてやる。
それは、繰り返し、葛藤する自分に言い聞かせた理屈だった。でも本当のところは。
この者の胸を目の前に置かれて、時々顔や自分の乳房をさすり通過するそれに、触れて
みたかった。
どんな感触なのだろう。一度でいいから掴み、舐め回してみたい。この指で味わいたい。
そう本能が囁いた。けれどそれを自分に許すと、快楽にはまってしまうことも判っている。
甘い誘惑。
だから今までは、抑えようとしてきた。この者の行為に、冷ややかな視線を向けて
いたのはたぶん、歯止めが無くなりそうな予感があったからだろう。
でも……ソングム。今だけはお前と地獄に落ちてもいい。
偽りではないの。それほどお前は魅力的。色香が私を狂わす……きっと私は狂って
いるのね。
こうしてやると徐々に紅潮していく肌。思えばミョンイといいチャングムといい、
若い肌しか抱いたことはなかった。それはもちろんいいけれど、この手触り。しっとりと
私を包み込んでしまう。
お前と……心を共にすることは、この先もなかろう。それは判っていても、行為だけの
関係、それを求める私がいる。
「して欲しかったんでしょ?」
耳たぶを舐めながら、息を吹き込む。
お前の首筋が粟立った。
ミョンイと同じ部屋になって、しばらくしてそうなって。
なぜ他の女――たぶんソングムだと薄々判っていた――と逢引を続けるのかって聞いた
ことがあった。それまで方々の女を楽しんでいたことは知っていた。でも、あの時は
私だけでいて欲しかったのに。あの子……なかなか答えてくれなかったけれど、ぽつぽつ
語るには、よさがある、と。私と真面目に愛し合うだけでなくて、そのものが楽しいことがある、
というようなことを言っていたっけ。けれどそれは私には理解できない気持ち
だろうから、もうその話しは言いたくないとも。
今になって、あなたの言っていたことが判る気がする……。
乳房に唇を寄せるたび、身を捩って逃れようとする。肩を抱え、逃げまどうそれを更に
頬張る。
その度に身体の中駆け巡る灼熱。
「ちょっと、待っ……って」
激しさを増す私の動きを押し止めるかのように、腕をぎゅっと掴まれる。お前の身体が
小刻みに震えている。腿は鳥肌立っている。もういきそうじゃない。ここで離すなんて。
「待てないわ」
この者を……そうよ、私がされたように同じように、私の前に跪かせたい。
しばらくおへその周りを舐めながら、動きを止めていた手を……身体の奥に差し入れた。
そこは既にしっぽりと濡れている。
「うふぅぅ…はぁぅ…はっぅ…ううー」
身体を仰け反らせ、声。その響きにこちらの頭の中まで、痺れてきそうになる。
私の動きに翻弄され、気を立ち上らせている。
そして、惚けるような顔で、果てた。
向こう向きの身体。しばらくその背中を指で伝う。痺れが蘇っているのね……その度に
身体を丸めて耐えている。私も同じことをされたのよ……。
どう? 無理やりさせられる気分は?
とりあえず、今日はこれぐらいにしておいてあげる。お前に比べれば優しくしたでしょ?
力の抜けた身体に寝支度をさせ、布団に横たえた。
―――終―――
キタァ(゚∀゚)ァァ( ゚∀)アァ( ゚)ァア( )ァァ(` )アア(Д` )ァア(*´Д`)アァン
壱参弐様、素晴らしいです!
ソングム様、やったね。・゚・(ノД`)・゚・。
壱参弐様!
最高です。はんさんぐんさま(・∀・)イイ!
続き楽しみにしています。
231 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 15:38:02 ID:EBK4hp3d
壱参弐様
素敵すぎますヾ(@゜▽゜@)ノ
攻められるチェ尚宮様イイ!!
壱参弐様乙です!
セフレになった2人の、嵐のような未来にもうwktkです。
そして時々はクミョンも可愛がってあげて下さい(・∀・)
233 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 23:42:31 ID:RO3gROvC
壱参弐たんのかくペギョンたんに恋してしまいそうな漏れは…
一体どうすれば…?!
そして、チャン熊がチェたんとの関係を知っちゃった日には一体どうなるんだ?
嫉妬&愛憎渦巻く昼メロのような展開になるのだろうかww
先が気になって仕事にならないYO!!
壱参弐様、あなたは最高ですわ(*´Д`)
乙女ソングムヲタのワタスとしては本当に涙がでるほどうれすぃ…!!!
ペギョン姐サンは相変わらずツンデレでマジ最高です。
これからどんな風にイジメてくれるかすんごい楽しみです。
こちらを読んでからドラマを見たら……
言葉を発するチェ尚宮様の顔を一瞬見て目を伏せるハン尚宮様が、
目を伏せながら、チェ様との行為、感触、匂いなどを思い起こしているようにしか
もう見えないんですけどー!
どうしてくれる!? 壱参弐様!
_、_
( ,_ノ` ) n
 ̄ \ ( E) グッジョブ!!www
フ /ヽ ヽ_//
「鬢の毛」サイコー!!!
しかし、「心を共にすることはないだろう」ってのが切ないわい(;´Д⊂)
ハン尚宮×チェ尚宮 −非望−
壱参弐 柵
内容:百合 原作改変 エロ多少 *キャラを汚します。
分量:これを含め、8レス
−謝辞−
ある板のスレ5、59(氏)にインスパイアされました。深く感謝します。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
またお詫びしなければなりません。再度、他スレに誤爆いたしました。
当該スレの皆様、本スレの皆様、ご迷惑をおかけして済みませんでした。
次回から投下方法を改善いたします。
部屋に戻り、今宵を振り返る。
美味。
身体ももちろん、なにより久々に心が満たされた思いがする。
あの、普段は偉そうに肩で風切る子が、私の意のままに少しの抵抗もできず。もちろん
あれは振りではあるまい。ある意味、意外かも。あんなに抱かれることに弱いなんて。
さて、これからどうしたものか。しばらくすればチャングムにも手紙は届くだろう。
あと数回手紙をやりとりして、ふた月もかからない。それが終わったら動き出す時ね。
そうした暁には、お前は……。二度と這い上がれないように、突き落とす。
囲い者……にしてもいい、と言いたいところだけれど、そう情けをかけてはいられない。
クミョンは……。これは少し対処が難しい。あれだってチェ一族、どう転ぶか安心は
できない。
けれどあの者が外出している時、いろいろ教えてみたけれど、さすがに飲み込みがいい。
将来有望なのは間違いない。
そうね……これからも置いておいた方が水剌間のためにはいいのでしょうね。よく考え
なくては。
ところであの子とは、あれ以来何もしていなかった。というか、叔母様の相手で
精一杯で、正直いって料理以外、夜まで構ってやれなかったというべきか。
あの者が不在だった時ぐらい相手をしてもよかったのかも知れないけれど、私だって
身体を休めたかったし。
だけどクミョンだけは、私たちのことをかなり気付いているようね。時々気の毒そうな
顔を向けてくれた……。まあ、これからはせいぜい叔母様を気の毒に思ってあげてね。
あともう一人いたが、あれは全く駄目。早く口実を見つけて、他にまわそう。大殿
あたりなら、納得するだろう。代わりに、私の意に沿う者を連れてこよう。少しでも
味方を増やしていかないと。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ペギョンが去った後、残された私は布団に丸まり、ただ呆然。
お前が応えてくれることを望んではいた。けれど、まさか襲われてしまうだなんて。
私としたことが、心の準備もできぬままに、好きなようにされてしまった。
やっぱり帰ってきた日の夜、やめておけばよかったのか。いったいあの子はどうしたと
いうのだろう? また、一段と変わった気がする。私がいない間、何かあったのだろうか。
明日早々に、クミョンたちに聞かなくては。
それにしても……気持ちがいいのやら悪いのやら、よく判らない……。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次の日、あの者に水剌間で会う。怯えた目でこちらを見ている。まさか私にされるとは、
考えてもいなかったのだろう。自分がそのような醜態を晒すとは、思ってもみなかったの
だろう。その分衝撃も強かったのだろう。
あの顔を見る度に、昨夜のお前が浮かんできて、ふふ。思い出すたび可笑しくなって
しまう。そしてまた見たくなってしまうじゃないの。どうしましょう。
もちろん私は、あの部屋の中以外では今までと同じように振舞っていた。
水剌間では忙しく料理を作り、下の者たちを教え、仕事の関係であの者とも普通に話しを
していた。あの者は私の上役。だからもちろん、最高尚宮様とお呼びしている。
しかし夜になれば……。
実のところ、この頃から私は、お前に嵌り始めていた。
あれから三日も過ぎたのに。
昨日はお前が夜当番だったし、一昨日はお前の部屋で打ち合わせが長引いていたのは
知っている。その前、私は泊まり番だった。でも今夜は"その日"のはずよ。
ではこちらから伺いましょう。
「チェ尚宮様」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
部屋に入ると、本やら資料や記録やらを広げ、あれこれ見比べている。
***
私はまだ手が空かないの。だから呼んでいないでしょ。
***
仕事が終わっていないようね。それとも、わざと終わらないようにしているの?
***
見ればわかるでしょ。こんなに沢山まとめなければならない資 くぷっ あ
***
何をいまさら。私をさんざん好きなようにしたくせに。近付き唇を奪う、と。
***
「ねえ、ねえってば」
***
「いいじゃない」
***
「ちょっと。これ明日までに終わらせなきゃ」
***
お前の都合なんて、どうでもいいのよ。
***
そうそう思い通りにさせるものか。だいたい私をなんだと思っているのだ。
***
「では終わったあと、手伝わせていただきます。ご心配なく」
***
いゃぁ あぅ
***
私の身体に火をつけた責任を取ってもらいます。ほら、好きにさせればいいの。
***
逃がれようと浮かした腰を抱き引き寄せられ、服を剥ぎ、愛しみのつぶてを投げ
られる。身体の自由を奪われ、後は思うままに料理されていく。
***
指を止め、ただ置くと切ないため息を洩らし、腰を妖しくくねらせながら、もっとと
せがむ。うなじに舌を滑らせて、耳元にお前の熱い吐息を浴びる。
***
あなたがこんなことをするなんて……私はそんなこと……あぅ、口が回らない。
***
床の上では本当に従順ね。いつもこうしていればいい子なのに。
私もこんな風にされていたの? そんなことないわよね。ここまで溺れていなかった
はずよ。
ミョンイはどうだったっけ? あまりあの子を抱いたことはなかったから、よく判らない。
チャングム? 素直ではあるけれど、でもどこかに芯が残っていた。というかあの子も、
どちらかと言えば私を抱きたがったっけ。
ということは……私にとっての初めての、好きにできる相手ということね。
***
何か言おうとする度に、あなたの動きに頭の中まで支配され、自分でも信じられない
声しか出てこない。あなたと目が合うと、怖いぐらいの愉悦の目で見下ろしている。
おもちゃ……にされている。私はあなたに縛り付けられいく。
***
心地よさにただ浸り、愛しみを……時折、長い睫毛をふるふる震わせて受け止めている。
ミョンイが……たぶん同じように感じたのでしょうね。こんなにいい身体だったなんて。
***
だめ、そこは……ああ
***
お前など、決して受け入れたくはない。けれど押さえ付けのた打ち回らせ、感情を全て
支配する歓びが、添うてはならぬ者と知りつつも身を交わす……劣情……の炎に油を注ぐ。
***
恥ずかしさに悶える私の脚を押さえ、あなたは敏感なところへ……。舌まで差し入れ、
痺れさせていく。腰に衝撃が奔る。
***
普段はそれほど色香を感じない、女官は皆そう躾けられているけれど、こうすると急に
別物ね。お前は何か鼻の奥、いいや、頭の中までくすぐるような香りを発する。
私の指がお前を昂らせると、それはより強くなり、私を誘う。
***
……
***
香りを振りまき、遠くからでもそれと判る梔子(くちなし)のように、くらくらとまるで
酔うように引き付けられ、その奥にある蜜を舐め取る。お前は身を捩じらせてさらに蜜を
溢れ出させ、私の喉に香りを巻きつける。
お前は私の頭を支え、足をくねらせてそれに応える。
***
……あっ
***
抱かれ弱い子……楽しわね。まだ終わらせないわよ。
***
ううっ……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ミョンイにこんなことされていたの? よかったの? 感じていたの?
お前もミョンイを抱いたの?」
聞いているのに一向答えるそぶりもない。何も耳に届かないのね。
それこそ今度会ったら、私とどっちが良かったって、ミョンイにも聞いてみようかしら。
逆に聞かれたらどうしよう。
……本当に私ったら、なに馬鹿なことを考えているのだろう?
そんなことを思いながら、ゆっくりと指を沈めていく。
身体の中を探ろうとしたとき、また逃げ出そうとする。無理よ。私から逃げることは
できないの。
腰を引き寄せ、愛撫を繰り返した。もうお前の好きなようにはさせないから。
背中もうなじも、美しい髪の毛も。掬い上げ撫でまわし。
下腹を押さえて、中にある指の動きをより強く感じさせて、そうするとお前は身を捩り
……逃げる力も残っていない……ただ身体をくねらせて翻弄されている。その卑猥さが、
更に心をくすぐる。
「よかったわよ、ソングム。さ、残りを片付けましょうか」
仕事が終わったら、もう一度……。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
約束通り、資料のまとめを手伝う顔を見る。こういう時のあなたって、切り替えが早い
というか。さっきのあだっぽい表情から元の顔に戻って、黙々と筆を走らせている。でも、
行灯の光を受けるあなたの顔、ちょっと輝いて。初めて呼び付けた時よりもずっと、匂い
たつような色気すら感じる。
けれど……また上り詰めさせられてしまった。あなたの手は柔らかく、私を果てしなく
溶かしてしまう。
あなたは抱かれる一方だったって、ミョンイの口ぶりから想像していたけれど……。
これはチャングムとしていたこと? あの子もお前の愛しみを受けていたというの?
そう思えばひりひりと焼け付くように妬ましい。だけどあなたは、もうあの子とは二度と
会えないのだから。
でも…………私が宮を離れる前から、ちょっと様子が変だったけれど……やっぱり
あの時に聞くべきだったのか。帰ってからまるで人が変わったみたいになってしまって。
何かあったのか、クミョンたちに聞いても特になさそうだし。
いや、クミョンに度々料理を教えていたと、ヨンノが言っていた。全く。やはり水剌間に
置いておくのは良くないのだろうか。でも他だと、あんまり会えなくなくなるし……。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次の夜。私が一日の仕事のまとめをしていると、隣の部屋の灯りが消えた。
あれ? もうお休みなの? 私を放っておいて? 黙っていたら、こういうこと?
仕方ないわね……。
書きかけの綴りを脇に押しやる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ああ疲れた。昨夜、作業を終えた後また抱かれ、寝ようとしてもその度に身体に火を
付けられて、結局朝になるまで放してくれなかった。昼間も時々意識が飛んでしまったし。
しっかり寝て身体を休めなければ。
障子が滑る音がするような。
衣擦れ……?
ひやりとした空気が、持ち上がった布団から忍び込む。
背後に滑り込んできた……暖かな……振り向くと素肌。私も寝巻きを剥ぎ取られ、少し
冷えた肌に触れさせられる。
抱きすくめられ、素早く敏感な場所を手のひらで転がされていく。指先の冷たさが、
刺激する……。う、そこはやめて。
その冷たい手は私の手を導き、あなたの滑りの中に潜り込ませ動かし、愛撫をせがむ。
「一人で寝る気?」
ささやきと同時に、首筋に熱いものが押し付けらる。
私……求められることが怖いような気がする。あなたから、本当に離れられなくなる
ように思えて。
けれど。離れられないならそれでもいいかも。
お前だってどう思うにせよ、私から離れる訳にはいかないのだし。なら、このままずっと
宮で過ごしてずっと歳を重ねて、身体が動かなくなったらこの座はクミョンに……あれほど
力のある者は他にはいないし、それは揺ぎ無いことでしょ。
そうなったら私は別荘として使っているあの屋敷を譲ってもらって、あそこなら身の
回りの世話に不自由はないし、遅かれ早かれあなたも同じくらいの時に引退するだろうし、
チャングムのことがあるから一生私の言うことを聞くしかないし、あなたも引き取って、
女官は退宮したらお寺に入る人も多いけれど仲の良い者同士一緒に暮らすことも結構
あるから、二人でゆっくりお茶を飲んだり市場に買い物に出かけたり、時には料理を
作ったりして、寝るときはずっと隣で、ずっと一緒に暮らして、まあその頃になったら
ミョンイの菩提も弔って、そんな感じで余生を過ごしていけたらいいなあ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
それから数週が過ぎ、今もまたお前と絡み合っている。互いの感じる部分を熟知し、
馴染んだ刺激に心地よさを分け合う。
お前の心の中では、後ろめたさがあるのは薄々判る。そして私だって秘かに企てを
抱えている。けれど触れ合う肌は、偽りない快楽を与えてくれる。
もうどちらが自分の腕で、どちらが自分の身体なのか、褥も衾も判らぬくらいにもつれ
合い。
終われば、相手を撫でさする。気が高まればまた引き続き……。尽きることの無い
悦びは、繰り返すごとに高まり深まり。
喘ぎも日に日に大きくなる。
最高尚宮の部屋はとりわけ大きく、周囲に控えの間があったり、真隣が私の部屋。
もし聞かれても、さらに向こうはチェ尚宮の息のかかった尚宮だからいいようなものの、
内人時代のように障子一枚しかなかったら、さぞや皆の噂となっていたことであろう。
だから雨の夜は……声を気にしなくていいから、とりわけ激しい行為となる。湿っぽい
部屋の空気は、時の経過と共に更に重く澱む。
互いをまさぐり味わう二人を、雨音が包み込んでいく。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
幾夜も身体を重ねた。でも、会話はほとんど無かった。仕事のことと閨の間の枕詞だけ。
話せば亀裂が入る……そもそも話すことなんてないわよね。共通の思い出、見習い時代を
思い起こせば、そこには必ずミョンイがいる。内人時代は、あれ以来ほとんど話さなかった
から、思い出なんてちっとも無くて。
そして尚宮になってから、ぶつかることばっかりで。
あなただって判っているから、きっと何も言わないのでしょ。
もしお互い普通に話すことができていたなら、そうね。私はクミョンのことばかり話し、
あなたはきっとチャングムのことばかり話していたでしょうね。互いの弟子自慢、そういう
のをしてみたかった気もするけれど。
もしこれからあなたと、思い出らしい思い出を作っていけるなら。
でないと茶飲み話をするにも、ずっと黙ったままになるわよ。
やっぱり話すことなんて何もないのよ……けれど言葉が要らないほど、今こうして触れ
合えるならそれでいい。
愛しているだの言えば、好きなのかって聞けば、あなたが逃げていくような気がする。
これ以上私に強いるな、と。
けれど……。一度でいいから、口にしてみたい。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
部屋の外では決して気配を見せない。それが暗黙の了解。
けれど水剌間ですれ違う時、視線や空気が甘く粘るのを……お前だけでなく私自身も
そうなってしまうのを感じることがある。
二、三日会えないだけで落ち着かず、遠くに姿を認めただけで浮き足立ってしまう。
いけない。
もう戻れないところまで、来ているのではないか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
終わった後はお互いを撫で合い、余韻を楽しみ、同じ部屋で同じ空気を吸いながら眠りに
付く。
ここに連れてきてから、もうすぐ半年になる。
あなたはどんどん艶っぽくなっていく。私があなたを変えたのよ。
でもあの時は、こんなに……ここまで感じさせたり、感じさせられたりするとは思って
いなかった。
私を求めてくれて……私は幸せ。でもあなたは? 私と居ていて楽しい?
私には判る。あなたには守るべき者がいる。将来を約束していた友……その娘。それを
忘れることはできないはず……。
私は覚悟の上で、その者たちの不幸の上に自分の幸せを築こうとした。
でもあなたはどうなの? あの子たちを騙し続けることができるの?
幾度となく離れ逃れようとするのが、私には判るの。
私が求める時、昂り震えながら時折涙が滲むことがある。あなたは気が付いていない
でしょうけど、あの涙、時々苦い味が混じっている。そう思えてならない。
あなたが離れていく日が来るのなら、ああ、考えたくも無い。
あなたに抱かれなければ、いや抱かなければよかったのか。再び引き裂かれるのは、
きっと死ぬより辛いだろう。
「外に出ましょう。羽織るものを取ってきなさい」
夜になり、いつものように部屋に入ろうとするあなたにそう言った。怪訝な顔で取りに
戻り、先に出口で待つ私に追いつく。
「どこへ?」
「いいから」
並んで歩く。
「最高尚宮様。このような夜更け、怪しまれます」
無言のまま歩き続ける。歩くといっても、宮の中。夜警の多い門あたりには近付けない。
けれど、ほんの少しでいい。あなたとこうしていたい。
寒さが少し和らいできたとはいえ、夜はやはり寒い。あなたの手を取った。
あなたも何も言わず、冷たくなった手を私に預ける。その手を上着のすそで包むように
して、星を、二人で夜空を見上げた。
あなたとずっといられれば、寒さなんて二度と感じないだろう。
離したくない。あなたを握る指に力を込める。
もし内人時代に、あなたとの機会があったらどうだったろう? 私はあの時、あなたと
そうなっていただろうか?
……たぶん指一本触れていなかったのではないかしら。私はあなたの品のある姿を
眺めるだけで楽しかった。側にいられるだけで幸せだった。
ミョンイたちがいなければ。あなたを独り占めしなければ。あの子たちには見せて、
私が見たことの無いあなた。思い浮かべてはのたうった。
それに。
あなたが最高尚宮になったりして、自分からどんどん遠くなっていくのを見て、
たまらなく寂しかった。
『昨日までは同じ身分だったけれど……』
あの言葉は胸を刺したわ。今までずっと一緒だったのに。だからもう一度、何としても
自分の手元に引き寄せたかった。
そんなことがなければ、私はあなたを自分の下に組み敷きたいと願うことはなかった
でしょう。たぶん。
「昼間は水剌間で会えるし、夜は部屋で過ごせる。でも一度でいいから、ただ並んで歩いて
みたかったの。普通の友達みたいにね」
星空からあなたに目を移し、端整な横顔を見ながら言った。
あなたは何も答えず、星空を見上げている。
どうしてこれほど好きになれるの。幼馴染みの一人だったあなた。
子供の頃から生真面目な子で。
宮に入って十年ほどして、お互い背丈も伸び、身体もふくらみを帯びてきて。姿形は
変わっても、ずっとずっと変わらず真っすぐで。
あなたのことが好き。心の中でしか言えないけれど。
あたりに人の気配がないことを確かめ、あなたのおとがいを傾け、唇を寄せた。
このまま時間が止まってほしい。心から願った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
暖かい部屋に戻ると、身体が冷え切っているのを感じる。
急いで寝支度をし、お前と同じ布団に横たわる。寒いだろうから、さすがにすぐに
脱がせるのはやめておこうか。
このまましばらく、手をお前の身体で温める。冷たがって、くすぐったがって。面白い
わね。もっとこのあたりとか、腋の下とか、冷たい手で触っちゃいましょう。
子供の頃誰かれなく、こんな他愛もないことをして遊んでいた……お前とだって。
しばらくして身体も暖まったことだし……向こう向きのうなじを掻き分け、首筋に唇を
這わせた。けれど嫌がり、私をのけようとする。
その手を振りほどき、お前に我が身を絡みつかせ……でもずっといやいやをする。
……初めて味わった時のように。でもその内、いつものように私をまさぐり、身体の
中にも手を入れてくる。
そして共々果てた。
見ると、お前の目に涙が浮かんでいる。舌で掬い取っても、ますます溢れ出す。
なぜ泣くの。私がそばにいるじゃない。
「ねえ……私のこと……好きでいてくれるの?」
軽く口付けをした。
今は、それ以外に返す言葉が無い。
好きだなんて。
けれどそれならなぜ、私はこの者を抱き続けているの? もう時期は来ているはずよ。
かつて、敵同士であったはずのお前と抱き合うにつれ、我が痛みにひしひしと共鳴する
ものが感じられて、これはミョンイと過ごした幸せな日々や、チャングムと過ごした
楽しい日々とは全然違う。幸せな者から与えられる愛情ではない。
悲しみの共有。
やむなく相手をしている内、今まで見えていなかった、いや正しく言うなら、見ようとは
していなかったこの者の孤独。それが、己の孤独と似通っているように思えて。
この者自身には、料理を除いては野心も権力欲もない。そう感じる。けれどそれがあると
思い込み、自分を強いている。唯一ある執着、それは友への、人への想いだろうか。
お前は心置きなく話せる人はいるか? 友と呼べる者はいるか? 利を介した付き合い
しか知らぬ、お前。
私のように最初から人を遠ざけていれば楽なのだろうけれど、なまじ取り巻きに囲まれて
いるだけに、その寂しさはより寒々しいものなのだろう。
目指していた座を得て逆に孤独感が、まざまざと浮かび上がってきたのだろう。
そしてそれを癒せるのは私しかいないと、ただひたむきにいじらしいほど。縛りつけ、
独占しようとするほど。
これほど一途に、求められたことがあっただろうか。
喜びすら、感じる時がある。
悲しみと喜びがない交ぜとなった感情が、頭の中をかき混ぜる。
快楽に浸るひとときの心地良さが、身を惑わす。
それらは私を蝕み、徐々に徐々に離れがたくなっている。
こんな気持ちを抱くようになるなんて。
いっそこのまま、理性を麻痺させたまま、この者と過ごせればどうなるだろう。
今ならチャングムを呼び戻すことも、考えてくれるかも知れない。そうすれば、
少なくとも表向き、あの子も普通に過ごしていける。
もう角突き合わせることなく、この者の庇護の下、ある意味幸せに過ごす……。今まで
だってそうだったではないか。あの子が来るまでは、私は屈辱を感じながらも何もせず、
波風立たぬようにと願っていたではないか。
私はどうすればいい。あれを切り出すことは、お前と永遠に別れることになる。
……私にできるのか……今は……情人である者を……切り捨てることが。
心の底からミョンイに詫びなければならない。一時の迷い……かも知れないが、
この者に心を寄せてしまっている。
未練はある。けれども……いつまでもこんなことをしている訳には……いくまい。
チャングムが待っているのよ……私だけの思いを通すことはできない。
お前とのよすがを断ち切る……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――終――――
244 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 18:06:52 ID:GSHErIUF
壱参弐様
前回からの早いうp有難うございます!!!
次もこれくらいのスピードでうpして下さいw
すっごい楽しみにしてるんで・・・
素敵過ぎます〜〜!!
二人は離れられない仲に・・・w
でもハン尚宮様がまた行動を起こしそう・・・
チェ尚宮様がかわいそうだよぉ(´Д`)
壱参弐様!
ウワァァン(つд;*)涙がでてしまいました。
チェ尚宮様の気持が痛いほど伝わってきます。
素敵なお話をどうもありがとうございました。
続き楽しみにしています。
>でも一度でいいから、ただ並んで歩いてみたかったの。普通の友達みたいにね
ソングムが気の毒すぎて泣けた
>あともう一人いたが、あれは全く駄目。
'`,、'`,、'`,、'`,、'`,、(ノ∀`)'`,、'`,、'`,、'`,、'`,、
「はっ!(なにさ!水を持ってきなさいしか言わない人が!)」
皆様明けましておめでとございまつ。
壱参弐様!
新年一発目щ(゚Д゚щ)カモォォォンw
249 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/01(月) 14:44:54 ID:0EzByiUq
謹賀新年です。
壱参弐様、
今年も、切なくもエロい物語を
よろしくお願い申しあげます。
250 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 01:29:51 ID:SyPweEy1
壱参弐様
続きお待ちしてます!
はじめまして。
新参者の冬心と申します。
えろぱろ初挑戦です。
書き逃げします(笑
最高尚宮になったばかりで皆に認めてもらえない、ドラマでは
22話の話に付け足してみました。
ハン尚宮恥辱モノです。
「私との事と、女官としての務めは別のはず。何故そのようなこと!」
チェ尚宮の元に集まっている尚宮たちに抗議するハン尚宮だったが、彼女たちが聞き入れるはずはない。
「あなたが身を引きなさい。身分の低いあなたに、仕える事は出来ないわ」
その言葉を合図にするかのように、数人の尚宮がハン尚宮の両腕を掴んだ。
「何するの!」
チェ尚宮が歩み寄ってきた。
そして、フ、と笑った。
親指でくい、とハン尚宮の顎を上に上げる。
「私達が貴女に仕える事は出来ないという事を、今ここで貴女に抗議するわ」
「な・・・何言っ」
言葉が言い終わらないうちに、ハン尚宮の口はチェ尚宮の口によって塞がれた。
「っ・・・!」
ハン尚宮の口の中を、チェ尚宮の舌が掻き回す。
息も出来ないくらい激しい接吻に、ハン尚宮は顔を歪めた。
やっと開放されると、何がおきたのか分からないような驚いたような顔をした。
「何するのよ!」
「賤しい癖に、その濃緑の韓服を着ているのが許せないわ」
そう言うと、チェ尚宮はチョゴリの紐を解いていった。
「やめて!やめて!」
必死に叫ぶハン尚宮の口は、他の尚宮の手で塞がれた。
露わになったハン尚宮の肌を見て、尚宮達は口々に言った。
「綺麗だわ」
「綺麗ね」
チェ尚宮も言った。
「本当に・・・貴女の肌、しっとりしてて綺麗だわ」
鎖骨をなぞる様に指を滑らせる。
その指はだんだん下へと移動し・・・胸の頂で止まった。
口を塞がれている為、声も出せずにいるハン尚宮は、羞恥心と屈辱で目に涙を浮かべた。
「ふふ・・・泣いているのね。でもこのくらいでは済まさないわよ」
チェ尚宮はハン尚宮の胸の頂を口にくわえると、赤子のように吸った。
違和感がハン尚宮を襲った。
痺れるような、違和感―――――。
ここになって、ようやく口を開放されたハン尚宮は、涙ながらに訴えた。
「や・・・めてっ」
チェ尚宮は、胸の頂から口を話すと、チマに手を掛けた。
そのまま、チマを脱がせ、ハン尚宮を一糸纏わぬ姿にした。
そして、尚宮達はハン尚宮を床にうつ伏せにした。
「どうして・・・こんなことをするの。もうやめて」
「貴女が最高尚宮を辞退すればやめるわ」
「そ・・・それはっ」
「出来ないの?じゃあ仕方ないわね。」
背中に指を滑らせると、ハン尚宮の体がびくん、と震えた。
無理矢理脚を開かせ、秘部に触れた。
「ちょ・・・っと」
ハン尚宮は初めて感じる違和感に、戸惑っていた。
思わず、声が出そうになる。
他の尚宮達は、ハン尚宮の胸を弄んでいる。
「貴女・・・初めてのようね。女官ならば皆経験があるのに。」
チェ尚宮は、秘部から手を離し、ハン尚宮の目の前に出した。
「ほら。見て。こんなに濡らしているのよ」
チェ尚宮の手にべっとりと付いた液体を見て、ハン尚宮は目を背けた。
「い、嫌・・・っ」
「何て賤しいのかしらね」
チェ尚宮が手を再び秘部に当て、指を中に差し入れた。
ハン尚宮が思わず声を上げた。
「・・・んあっ」
胸と腰に、痺れが走る。
体が熱くなるのが自分でも分かる。
チェ尚宮は、指を中に差し入れたまま腕を上げハン尚宮の腰を持ち上げ、四つん這いの格好にさせた。
強い痺れが走った。
「ああう!」
崩れ落ちそうになるたび、チェ尚宮が指で持ち上げてくる。
中で指の動きを感じさせる。
「あっ・・・あふぅ・・・っん!」
「最高尚宮を退きなさい」
「・・・あぅっ、ん、くふっ」
それは出来ない、私はチョン尚宮様のお志を、と言いたいのに
自分の口からは信じられない声しか出ない。
チェ尚宮は、いつも堅物のように生真面目な顔をしているハン尚宮がこんなに顔を上気させて
喘いでいるのが面白くて仕方なかった。
指の動きをいっそう激しくする。
そして、ハン尚宮は、身体を大きく仰け反らせ、果てた。
ぐったりとしたハン尚宮の髪を優しく撫でながら、チェ尚宮は言った。
「最高尚宮を辞退しなさい。でないと、今度は・・・」
一方、ずっと外で待っていたチャングムが、いくらなんでも遅すぎると心配になり、
中に入ろうとしたところ、尚宮達が皆出てきた。
その中にハン尚宮はいなかった。
チャングムが部屋に入ると、ハン尚宮がいた。
ハン尚宮は、ひとりすすり泣いていた。
「最高尚宮様、どうなさったのですか?」
そう言って、チャングムはハン尚宮の胸元が乱れているのに気が付いた。
床に何か液体が垂れているのも見つけた。
「尚宮様・・・まさか・・・」
ハン尚宮は、弟子の前であるのにすすり泣きが止まらなかった。
そんなハン尚宮を抱き寄せ、チャングムが優しく言った。
「最高尚宮様。大丈夫です。尚宮様は、絶対、最高尚宮を辞退なさってはいけません。ね?」
ハン尚宮は弟子の胸で思いっきり泣いた。
―――――――――――――――終―――――――――――――――
すばらしい!
新年早々GJです!
はんさんぐんさまの恥辱モノいいですね(・∀・)。
今後もお待ちしております。
新職人さんキタッ!!!!!
グッジョブモナ ∩ グッジョブヨォォォ!
゚*:。.. _n ( ⌒) ∩__
( l. ∧_∧ /,. /_∧ i ,,E) ..。:*゚
\ \´∀` ) | | ‘∀‘)/ /∧∧
. ..。:*゜ \ ⌒ ) ヽ ,/ (*'∀')b グッジョブゥ
/ / | | (| /´ ゚*:。..
256 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 02:11:38 ID:iIsreNy8
ヨリの話キボンヌ
257 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 13:22:14 ID:SHcVk95M
>>252さんGJ!
乱交プレイテラモエス!
Sなチェ様最高!
チェ×ハン好きなんでたまりませんw
興奮したぜ、コンニャローーーーーーーーーー!!!w
でも…あの…揚げ足を取るわけでは決してないのだが、
>親指でくい、とハン尚宮の顎を上に上げる。
自分より背の高い者にそうやって、口付けに失敗し「あ!(しまった)」なチェと、
「え……」な尚宮達と、「は?」なハンが浮かんでしまってワロテシマタヨ…w
∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(;´Д`)< スンマセン、直ぐに帰ります
-=≡ / ヽ \___________
. /| | |. |
-=≡ /. \ヽ/\\_
/ ヽ⌒)==ヽ_)= ∧_∧
-= / /⌒\.\ || || (´・ω・`)
/ / > ) || || ( つ旦O
/ / / /_||_ || と_)_) _.
し' (_つ ̄(_)) ̄ (.)) ̄ (_)) ̄(.))
259 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 18:40:42 ID:en6VWdvn
>>258さん
冬心です。実は、自分でも投降した後気付いたんですよ(;^_^A
エロパロ初書きなんで、許してください(笑)
指摘してくれてありがとぉヽ(`▽´)/!!
冬心さん、「許して」なんて、そんな、一粒で二度美味しいって感じで
感謝感謝ですよ。間抜けなチェ(ex.呪いの札の時の口滑らし)ヲタなもんでw
っつーか、失礼しました。私のほうを許してくださいw
ヽ(`Д´)ノ モウトーコーシネーヨ!! などと言わないでくださいね〜
261 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 00:22:43 ID:oydr6W8y
>260さん
いえいえー。
こちらこそミスってすみませんでした(^^)
私も間抜けなチェ様ヲタですw
壱参弐様
続編を楽しみにしております。
期待あげ
壱参弐様
漏れも楽しみに待ってます!
265 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/21(日) 01:25:30 ID:7LZuQNqC
静かすぎる。
おーい、みんな生きてるか〜〜っ(°◇°;)/
>266
ワロタ(^Д^)ギャハ
こういうネタ好きw
ハン尚宮×チェ尚宮 −観望−
壱参弐 柵
内容:百合 原作改変 エロ薄い *キャラを汚します。
分量:これを含め、8レス
−謝辞−
内容の一部に、他サイト二次作者様が初めて着想された設定、
それを元に展開された別のサイト作者様の設定をお借りしています。
使用にあたり許諾いただきました。ありがとうございました。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
遅くなりましたが、今後ともよろしくお願いします。
あなたに抱かれた夜からひと月余り過ぎ、今日もあなたは私の隣にいる。この頃の
私、すっかり言いなりよね。
あなたが抱きたい時にはさっさと抱き締められ、私がちょっかいを出しても、延々
物語をして焦らせる。それからたっぷりと。
今日だって……。頑張ってお話しを聞いたでしょう。あなたが許してくれるまで、じっと
待っていたでしょう。だから早く。
「ソングム」
何か言いたげに震える下唇。親指で押さえなぞる。少し開いたその中に、舌先を
差し込んだ。こわばる舌、ほぐしてあなたの息が温まるまで、吐息が喘ぎに変わる
まで。優しく柔らかく舐めさすっていく。
ゆっくりチョゴリをずらし、肩や胸に指を置いて……。
あらわにした時は、大きな丸を描いたふくらみの先。触れるにつれ、小さく固く
すぼまり、ぴんと尖ってくる。それを更に私の舌で包み、もう一度柔らかくなるまで
吸い付く。
それにしても……今日は身体が、やけに火照っているわね。まだ胸しか触っていない
のに……。
こほん、こほん
あれ? 額に手を当てると、熱い。
「どうしたの? 辛そうね」
「少し喉が痛みます」
「それなら今日はもういいから。お休みなさいよ」
「はい。申し訳ございませんが、そうさせていただきます」
同じ部屋に寝かせることも考えた。が、昼間もずっと居てもらうわけにはいかない。
仕方なく自室に戻した。
心配した通り、ハン尚宮は二日ほど熱を出して寝込んだ。
辛そうに咳き込むあなたを見るたび、ぎゅっと抱き締めたくなる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
言い出すはずだったのに。床に伏せ、考える。
決意が定まらず、悶々とする思いが疲れとなってしまった。
気付いてくれるのを待つ気持ちすらあった。
しかしそれではいつになることか。 受身でいてはよくない。よくないとは思うけれど。
同じ場所で仕事をし、話しをし。合間に目をやると、お前の瞳がこちらをじっと見る。
その視線は、鋭く私の目の奥に入り込み、時になぶるように頭の中にまで達していく。
今日はどう責めようか、私の声を楽しもうか……その時から"それ"は始まっている。
なぜ判るかって? 私も同じことを考えているから。
互いの目が合うとき、お前の瞳に小さな怯えと期待が兆し、そしてお前は恥らうように
目線を外す。その乙女のような有り様がなんとも愛らしくて、私の身体も熱くなる。
だから、お前が……身体を寄せて……唇をうなじに感じた時には……私の指は吸い
寄せられるように黙々と肌を求め、お前の服の中に潜り込んでいく。
口付けだって、口の周りがべたつくくらいに柔らかさを感じさせられる。そして時々、
声も出ないくらいに良くて。その時は頭の中もただ、あの者しかいなくなって……。
朝になり感じる一抹の悔い。
昼間芽生える時めき。
夜味わう疎ましい、しかし至福の時間。
また朝が来て、虚しくなる。
その繰り返し。
私も離れられない。この者が感じているであろうと同じくらい。
だから距離を置かねば……距離を。
そしてやっと今日、風邪のおかげでその魔力から開放された。
けれど、こんなに熱心に看病してくれる。時間を見つけては、部屋に来て背中を擦り、
夜など、うつるからいいって言っても構わず、隣に寝てくれた。
ちょっと寝ついては、ぜぃぜぃ咳をしてまた起きて。朝まで何度も目が覚めた。その度、
あなたも起きて抱き締めてくれる。ずっと喉が痛くて苦しかったけれど、あなたの温かい
胸に息苦しさが和らいでいく。
そして感じる安らぎ。普段は憎しみが消えず、抱かれている時は快楽しかない。この子
を普通に見たことは一度もなかった。けれどこうして胸に顔を埋め、温もりに包まれる。
それが素直に気持ちいい。
今も、心配そうに見下ろす顔……ますます気持ちが砕けそうになる。
あれを……切り出さなければ。
静かに言おうか、それとも。
数日たって、身体もすっかり楽になった。気力も回復してきたのを感じる。
久しぶりに呼ばれ、チェ尚宮の部屋に向かう。
あの者も嬉しそうに……駄目よ駄目、今日こそは言うわ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ようやく血の気が戻ってきた。水剌間で見ていても、動きも軽やかになっていて。目が
合うと、いいわよ、と目配せをくれたように思う。
本当に久しぶり。そう思うと昼間から嬉しくて、夜が待ち遠しい。今夜は少しでも早く、
そして長く。
こうして後ろから抱きすくめるのが、一番好き。あなたの緊張した首筋が、少しずつ
柔らかくなるのが、とっても好き。
いよいよと求めた手を、ところが払いのけられた。急に居ずまいを正し、真面目な顔を
向けてくる。
「最高尚宮様、お願いがございます」
「二人っきりの時は」
「いえ、もうそういたしません」
冗談、と思い、すがり付こうとすると押し倒され、胸元に手をあて押さえつけられた。
上から眺めるあなた。
「私を太平館に派遣してくださいまし」
「何ですって?」
「チャングムと離れて半年以上になります。そろそろあの子の顔も見たいので」
「そんなこと言えて?」
「はい」
「なぜ?」
「そうなさってください」
「だからなぜ?」
「でないと、チェ尚宮殿のお為にならないかと存じます」
私の為にならない?
「そうなさる方がよろしいかと」
「そんなわがままが通るとでも」
「お立場が判っておられないのは尚宮殿かと存じます。よくお考えください」
言い放つ言葉は厳しかった。けれど、あなたの目尻に光るものを見た。私の前で初めて
流す涙。
あの涙はあなたと私の住む世界をはっきりと分からしめた。
あの子の元に戻ろうとするあなたを、引き止めたかった。
あなたの姿を、私の元に取り戻したかった。
けれど、しがらみから放たれた鳥は、一度も振り向くことはなかった。
部屋に戻ろうとするあの背中は、もう私のものじゃない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
どうしてあんなことが言えたのか、今頃あれこれ思案しているだろう。私の
言いなりに、何でも通るようになったと思っているのかとか、あるいはまた皇后様に
訴え出たのだろうかとか。
だけど、すぐに教えてはならない。いままでの報い、少しは悩んでもらわなくては。
その内、告げたことの意味を理解するであろう。そして遠くない先、頭を下げてくる
だろう。その時を、こうして待っていればよい。
いや、早速太平館に行く準備を始めておこうかしら。
数日は、そ知らぬ顔で当番についた。水剌間ですれ違うと、様子を伺うような眼差し
を向けてくる。が、気が付かなかったことにする。
もちろん、呼び付けられることもなかった。
「ハン尚宮殿、いるの?」
五日ほどした夜、やっと、珍しく最高尚宮自らお訪ねだ。
「この前のことだけど……どれぐらい行きたいの」
「そうですね、三カ月の間ぐらいではいかがですか。ちょうど春先で、あのあたりは
花盛りかと存じます。山菜や野花など改めて吟味し、新しいお料理を考えとうございます」
「そんなに!」
「不都合でしょうか。それともお一人では水剌間が回りかねるとか?」
「そうよ。あなたがいなければ……いえ、あまり長くおられても、あそこは大変でしょ。
お料理以外にも雑用が多いし、気配りも必要だし」
「それだけ遣り甲斐があるというもの」
「それに……あなたみたいに美しい方は、変に目を付けられても。だからどうかと
思って」
「お気遣いありがたく。けれど私のような年嵩に目を留めていただける酔狂な方はいない
かと存じます」
「いえ私はあなたが一番好き、あ、そんなに格式張って話さなくても、二人きりの時は」
「いえ、やはり上役に失礼を致したと反省しております」
「……判ったわ。では行ってらっしゃい。向こうの尚宮を呼び戻すよう伝えるから、
再来週からお願いするわ」
「ありがとうございます」
「それで……ハン尚宮殿……どうかこれからもよろしくお願いします」
「はい」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
部屋に戻り、再びあの手紙を読み返す。
「 ソングムへ
この手紙を読んでいるということは、どういうことかもうお判りね。
ミョンイの手紙は私が預らせていただきます。だって元々あなたに宛てたものじゃない
もの、あなたが持つのは相応しくないわ。
その代わりに私の手紙を置いておきます。
これからしばらく、宮を留守にするかも知れないけれど、私の部屋を探しても無駄よ。
そして前のように私や私の 愛 し い 子 に危害を加えようとしたら、あなただって
無事じゃいられないわよ。手はずは整えてあるから、私たちに何か起こればあの手紙と、
それに私の手紙も添えて、然るべき所に届けるようにしてあるの。
そうすればどうなるか、判るでしょ?
届けた手紙が偽りだとも言えないように、他にも手を打ってあるから。言い逃れ
しようとすればするほど窮地に立たされるでしょうね。
それもちょっと見てみたい気もするけれど。
だけど、今すぐにどうこうしようという気はないの。それだけは約束するわ。
だからよくよく考えておきなさい。あなたがどうすればいいかってことを。覚悟を決め
ないと、あなただけの問題では終わらないのよ。それは判ってるって思いたいけれど。
それじゃあね、
ペギョン」
……。
どうしよう。
ミョンイの手紙を。
それと判ったのは……いや全然判らなかった。ただ偶然、証文を検める必要があって
引き出しの裏を抜いたとき、ふとあの手紙に目が行ったのだ。
外見ちっとも変わっていなかったが、中を見て息が止まった。あなたがこんな真似を
してまで、という落胆。何度も同じ過ちを繰り返す自分への怒り。頭の中、血ががんがん
流れる音すら聞こえそうなほどだった。
でも兄上にも責任がある。屋敷ではいつ捜索されるか知れぬ、宮の方がよほど安全だと
言われたから。
処分も考えたけれど。あれがあった方が、いつかチャングムを懐柔するのに使えるかと
思って。あの子にとって、身を明かすたった一つの証でしょう。
まあ……仕方ない。奪われてしまったものを、どうこうは。
でもいったい、いつ? どうやって? このところ部屋に詰めきりで、お前も一人になる
ことはなかったはず。宮でも騒ぎはなかった。あの子も特に変わった様子は……
まさか、前に出向いていた時に? じゃああれから、あれを手に入れてからも私と?
それはなぜ? もう会う必要なんてなかっただろうに。
それとも、ほんの僅かでも思ってくれていたのか。ならばまだ気持ちは少しは繋がって
いると、そう考えていいのか。
いや、そんなことはないのだろう。
けれどそれならどうして私を。そしてどうしてあれほど激しく。
クミョンに相談しようかしら。でも、また怒られるのも嫌だし。しばらく黙っていよう。
そうしよう。
あなたを牢屋から解き放った時、こうなることは判っていたのかも知れない。
それでも、いくら甘いと責められようとも、あなたを手離したくなかった……。
もし失ってしまったら、私は何を支えにできたのだろう。いや、ミョンイの絶望の目に
増してあなたの恨みの目にまで苛まれたら、とうてい正気ではいられなかった……。
やはり……もう終わりなのか。私は放逐される。そしてクミョンも、一族も。
いや、謝り、座を譲れば私だけで済むのかもしれない。
どちらにしたって、あなたとは、二度と会えなくなる。それだけは間違いなかろう。
代わりにあったあなたの書き付け……。言外、さっさと居なくなれ、と。
ならばなぜ、すぐにでも私を始末しないのか。なぜ太平館へ行くというのか。
全く判らない。チャングムと共に、何か仕掛けようとするのだろうか。
いつもよく判らない。あれだけ寄り添っても、あれだけ悦びを分ち合っても、本当の
あなたを決して見せてくれようとはしない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ハン尚宮は水剌間をこなす傍ら、異動の準備を着々と整えた。もう明後日には
出発となる。
このところ長雨続き。出発の日までに治まってくれればいいのだけれど。厨房、
明かり取りの窓から外を眺めて、ハン尚宮は思う。
そんな昼下がり。
「ハン尚宮殿、入っていいかしら?」
「どうぞ」
「あの、太平館のことだけれど、本当に行ってしまわれるの?」
「はい」
「時々様子を見に行っていいかしら?」
―――お前がどう動くのか、探りも入れたい。
「最高尚宮様は、水剌間のみならず、全厨房を守られるのがお役目」
―――つれない返事。
「ですから、どうかご心配なく」
「お願い、考え直してくれないかしら」
「……」
―――俯き押し黙る、以前のあなたに戻ってしまった……。
嫌われたっていい。どうせ最初からそうなのだから。駄目もとで……ちょっと
甘えてみることにしよう。もしかしたら……。
「これから御膳の時のお話しとか、どうすればいいの?」
―――お前に先があるとでも? 今まで教えただけで、充分足りるはずよ。
「あなたがいなければ、私……どうかこれからも」
「なるべく女官たちから幅広く話しを聞かれればよろしいかと。私はそうして参りました」
「でも私、あなたのようにはうまく聞けないし、あなたから教えてもらうのが一番いいと
思うのだけれど」
―――ああ、うだうだと諦めの悪い。しかしこの場をやり過ごすため、とりあえず
調子を合わせておこうかしら。
「太平館では、少しゆとりもございますゆえ、しばらく風月を愛でて、もう一度書を
紐解いてみます。それで面白くて、ためになるお話しがございましたら、帰りましてから
お話し差し上げたく」
「ほんと! 本当に、また聞かせてくれるの?」
「はい。ご所望でしたら」
「是非是非お願いするわ。でも私も頑張ってみる。頑張って本を読まなくちゃ」
「最高尚宮様も精進を怠らぬお姿、きっと後進の者の鑑となるでしょう」
「そうね。……それで……」
「どうかなさいましたか?」
「あの……暫らく……会えないのね」
―――お前と離れるために行くのよ。
雨足が強くなり、濡れ縁で跳ねる音。
「……寂しくなるわね」
―――あなたを繋ぎ止めたい。
「後で話しをしに来ない?」
―――細い糸。それすらあるのかどうか。
「ねえ……」
―――全く。もうお前とは終わりだ。今さら何といわれようと。私が聞くとでも
思っているのか。馬鹿馬鹿しい……。
ハン尚宮は更に呆れた。けれど、チェ尚宮は去ろうとはしない。
―――チェ尚宮……そんなすがるような目で見ないで。情が移ってしまうではないか。
もう迷うな。考えても悩んでも同じこと。私は決めたのよ。
それでもハン尚宮は突き放すことができずにいる。それは、身に植えつけられた情欲の
せいか。それとも、微かに芽生えた愛しさのためか。
―――さてどうしたものか。今までの私なら、迷いも無く切り捨てていたところだけど。
いや、これからは注意深く過ごしていかなくては。まだ気持ちが残っていると
思わせておいて、追い払うまで、使えるだけ使わなくては。
なんという邪悪な考えだろう……。
けれど私は、あの時消えたも同然。もう、どんなことでも
それにもうすぐチャングムにも会える。今しばらく、構うのも悪くない……か。
私に不利なことは、何もないから。
……また言い訳。悪いくせ。私は自分を納得させるのに時間がかかる。
「いえ、では後ほど伺いたく」
それを聞くとチェ尚宮は、小躍りせんばかりの足取りで出て行った。隣からは部屋を
せっせと片付け、掃き清める音さえする。
ハン尚宮はそれを聞いて、覚えず微苦笑した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
夜食の準備が終わった。
合間を見て、代行の役割も含め、ミン尚宮たちに引継ぎを申し渡しておいた。明日
もう一度念押ししておこう。これで心置きなく、離れることができる。
この先しばらく、宮でも目立った予定はない。ゆっくり骨休めをしてこよう。
手も空いたことだし、最高尚宮の部屋に向かう。
しかし話しなどしたところで……。
手紙の意味するところは充分判っているはず。今更あれこれ言う余地はないって
ことも。お前はただ、私の命じる通りにすればいい。
部屋に入る。
部屋の中の匂い、それは現実のものではなくチェ尚宮が発する"気"なのだろうか。
その空気が身体を包み染み込み、少し鳥肌立った。
私を抱きたくてたまらない……この雰囲気、よくチャングムが漂わせていたっけ。
この期に及んでも、私が欲しいのか……それなら、浅ましい、と言うべき……。
それとも抱けば懐柔できるとでも? いいや、もうそれはない。お前なんかと。
なのに、のこのこと、この部屋に来る私もどうかしている。全く、どうかしている。
来るべきではなった。
少しの後悔、それは今さら役立つはずも無い。
気おされてはいけない。
さて。
向き合って座った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「考えたのだけど。チャングムは行ってだいぶ経つから、他の内人と交替に戻そうかと
思うのだけれど」
「それは、よいお考えです、ね え ?」
「いえ、あの、そうね、もう暫らく居てもらうわ。交替の者もあらかじめよく指導して
おかなければならないから」
「そうですか」
「それで……そうなると……チャングムと二人っきりで過ごすことになる」
「そうお願いしたはずです」
「また、前みたいに二人で……楽しそうに料理を……作るのか」
「いえ、しっかり精進して参ります」
「ひょっとして……」
「……それにあの子とも、じっくり話し合う必要がありますので」
―――じっくり……ですって。
身を合わせる二人の姿が、チェ尚宮の脳裏に浮かぶ。気持ちがかきむしられる。
一族のことも地位のことも、頭の片隅に追いやられていく。
「私を置いていくの?」
―――意味を成さない問いかけ。そうと判っているのに。
「私も辛ろうございます」
―――そんな口だけの慰めなんて。
チェ尚宮はがっかりした。けれど余計な言葉ばかりが、口から溢れてしまう。
「私の代わりに……いや私があの子の代わりだったのか……」
ハン尚宮は、頬を張り飛ばしたい気持ちを……必死で抑えた。
―――それ以上言わない方がいい。敵として組み討つのは仕方ない。けれど軽蔑
すべき輩にまで貶めさせないで欲しい。でないと私はあなたを心の底から嫌って
しまうだろう。
しかしチェ尚宮は続けた。無神経と思われようと、感情を逆撫でしようと、ただ気を
引きたかっただけかも知れない。
「……抱かれていたってことを……私の手で……とろけた顔をして、あんな声を出して、
果てた。あなたのどこが感じるのか、どんな格好で抱かれるのが好きなのか、私は
全部知っている……それを知ったらあの子は、あなたのことを今までのような目で見て
くれるかしら」
「チャングムには正直に話したいと思います」
―――そう思われても仕方がないようなことを、私はさせられていたのです。
「あなただって、求めてきたじゃない。何度も何度も。それも言えて?」
「そんなことも、ありました。けれど、あの子は私を信じてくれると思います」
「しかしお前……あれを取り戻してからも、続けていたじゃない? どうして? 私を
辱めたかったの? あなたがされたと同じようにしたかったの?」
―――最初はそのつもりだった。
「それとも、私を謀ったつもりなの?」
―――そんな気もあったけれど。
「本当は……良かったから、じゃないの?」
―――それから後は、徐々に……惹かれて。
「私のことを忘れることができる?」
チェ尚宮の人差し指が耳たぶをなぞる。
「ここを触られると、とても感じるんでしょ。首筋を……。ねえ、脱がせる前から……
舐めるだけで何度いったっけ」
口を寄せ、舌がうなじを這う。
「今だって、こうされたくて……期待して来たんでしょ」
耳たぶを唇で挟みながら、生暖かい息が吹き込まれた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――終――――
泥沼キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ッ !!!
277 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:29:57 ID:zUbaJIKt
ソングムもペギョンたんも、かわええなぁ〜〜w
278 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:55:28 ID:ukT0woCO
ペギョンたんとソングムたんベストカプw
うほ
>>壱参弐氏
新年一発目超乙です。エロ少なめでも
御馳走様でした(・∀・)
新職人さん、登場の予感。
282 :
蓮生:2007/02/10(土) 00:17:25 ID:sCMVfYEZ
予告しときますw
近々此方に女官時代のミョンイ→ペギョン←ソングムの
ペギョン様総受けものを投下させていただきます。
ジャンルは百合で
エロ有。
-‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
┏┓┏┓ ┏┓ ┏┳┳┓ ┏┓ / /" `ヽ ヽ \. ┏┓┏┓
┃┃┃┃┏┛┗━┫┣┻┛┏━┛┗┓ //, '/ ヽハ 、 ヽ ┃┃┃┃
┏┛ ┻╋┓┏┓┃┃ ┗━┓┏╋━━/. {_{\ /リ| l │ i| ━━━━━┓┃┃┃┃
┃┃┃┏┓┃┃┃┃┣╋━━┓ ┃┃┃ レ!小l● ● 从 |、i| ┃┃┃┃┃
┃┃┃┃┃┃┃┃┃┃┗━┓┣┓┗┛┗━━ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ│━━━━━┛┗┛┗┛
┃┃ ┃┃┃┃┃┃┃ ┏┛┃┗━┓ /⌒ヽ__|ヘ ゝ._) j /⌒i ! ┏┓┏┓
┗━━┛┗┛┗┛┗┛ ┗━┻━━┛ \ /::::| l>,、 __, イァ/ /│ ┗┛┗┛
/:::::/| | ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |
`ヽ< | | ヾ∨:::/ヾ:::彡' |
284 :
チェ尚宮×ハン尚宮〜介抱〜:2007/02/10(土) 00:43:30 ID:CDax9pWv
こんばんは、冬心です。
チャングムがウナムデラに送られたときに、こうなっていたらなぁと
妄想して書きました。
まだ途中で短めですが、多忙で次はいつUPできるかわからないので
UPしておきます。連載ものになる予定。
また、一部壱参弐様と話が重なってしまいました。
壱参弐様、申し訳ありません。
285 :
チェ尚宮×ハン尚宮〜介抱〜:2007/02/10(土) 00:48:41 ID:CDax9pWv
チャングムを雲岩(ウナム)寺に行かせてから、もう何日経っただろうか。
チャンイ、ヨンセン、ヨンノの三人にチャングムにやらせてきた課題を出したけど、皆駄目。
私自身も体調を崩してしまった。
風邪を引いてしまったらしい。
身体を起こしていることすら辛く、今日は水刺間の仕事は全て休んだ。
ミン尚宮やヨンセン、チャンイが見舞いに来てくれたが、辛いからといってすぐ帰ってもらった。
本当に辛い。
頭がくらくらする。熱があるようだ。
布団に入って横になっているが、頭が痛くて眠れない。
そんな時、誰かが私の部屋に入って来た。
「風邪を引いてしまったようね。大丈夫?」
今は人に会いたくないのに。
誰だろう。
顔の向きを変えると、チェ尚宮だった。
これは以外だ。
「珍しいわね」
とだけ言った。
「あら、私だって心配くらいするわよ。同じ水刺間の尚宮なんだし。それに・・・」
「それに、何?」
「ふふ。それより辛いでしょう?氷水を持ってきたの。林檎も剥いてあげるわ」
どうしたんだろう。妙に優しい。
考えられない。
でも氷水は有難い。
チェ尚宮は私の傍に座ると、髪を優しく撫でた。
「・・・何?」
「ううん。貴女の髪、綺麗だなと思って」
本当に今日はどうしたんだろう。
優しすぎて気持ち悪い。
チェ尚宮は林檎を剥くと、小さく切って私の口に入れた。
冷たくて美味しい。
「水分はたくさん採ったほうがいいわ。もっと食べなさい」
そう言うとチェ尚宮は、林檎を自分の口に入れた。
貴女も食べるの?
そう言おうとした瞬間、私の口はチェ尚宮の口で塞がれた。
「ちょ・・・っと、何するの!?」
「私が食べさせてあげるわ」
一人で食べれるから!
それに、風邪が移るわよ。
チェ尚宮は私に口移しで林檎を食べさせてくる。
手で拒否しようとしたが、熱のせいか力が入らない。
「美味しい?」
「なっ・・・!」
私は驚いて上手く言葉にならない。
「可愛いわね。昔から貴女は、そうだった。」
そう言うと、林檎を食べないで口付けをしてきた。
舌が口の中に侵入してくる。
チェ尚宮の身体を引き離そうとしたが、私の手はチェ尚宮の手に掴まれていた。
指を一本一本絡ませ、力も入らないので逃げられない。
チェ尚宮の舌は私の舌を絡めとる。
なす術もない私は、ただその動きに翻弄されている。
チェ尚宮が口を離すと、唾液が糸を引いた。
286 :
チェ尚宮×ハン尚宮〜介抱〜:2007/02/10(土) 00:49:25 ID:CDax9pWv
ペギョンが、驚いた目で私を見つめている。
貴女はこういう経験をしたことが無いようね。
熱で顔は上気し、目はとろんとしている。
素敵だわ。今日の貴女。
チェ尚宮が私のうなじに舌を這わせ、耳たぶを噛んだ。
「きゃ・・・!」
身体にぞくぞくと悪寒が走った。
いや、これは、風邪のせい・・・?
チェ尚宮は私をうっとりとした眼差しで見つめてくる。
「私も熱があるみたい」
そう言うと、再び口付けをしてきた。
「やめて・・・・・・」
そうは言うが、頭が痛くて抵抗する力も無い。
頭がぼぅっとする。
それから、チェ尚宮の手は私の首を伝って、胸元へ。
しばらく私の胸を服の上から優しく撫でていたが、私の白い寝巻きを無理矢理引き剥がした。
さすがにこれは何でも許せない。
私は痛む頭を抑え、
「いい加減にして!」
と叫んだが、チェ尚宮が私の眉間を指で強く押すと、私は痛さで呻いた。
-----------------------------------------続く------------------------------------------------
>>286 ハン尚宮様が大変な目にあっているというのに、一方その頃のチャングムは男と海でラブコメwww
288 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 00:02:00 ID:qyxe3uQu
>>286 ヲイ、ペギョンちゃん風邪ひいちゃってんだから、優しくしてあげてくれぃ!!
…と思ったが、禿萌へしてる漏れ(ノД`)
>>287 ブハーーーーー!!笑わせないでくれーーーww
289 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」:2007/02/12(月) 13:05:46 ID:E7vdqcVO
こんにちは。蓮生と申します。
百合萌えのネタを元に書いてみました。
ミョンイ、チェ尚宮(ソングム)、ハン尚宮(ペギョン)の女官時代の話になります。
3Pになりますw
ジャンル:百合
エロ有り。
290 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁1:2007/02/12(月) 13:09:07 ID:E7vdqcVO
―――16世紀初頭、
1494年、第10代王・燕山君即位。
暴君で贅沢大好きな王・燕山君は毎日のように饗宴を催し、
側室も沢山作り、
女官達は対応に追われ、目まぐるしい日々を送っていた。
―――そして…夜になり、
女官達はようやく休息ができる。
女官達は各自室へと戻っていった。
全部の女官の部屋の蝋燭の灯が消えているのに一部屋蝋燭の灯が漏れていた―――。
「明日も早いわ。早く寝ましょう。」
「えぇ…明日も早朝から夜遅くまで対応に追われるのよね…。
ソングム、灯消すわよ?」
「えぇ、いいわよミョンイ。」
ソングムは読んでいた書物を閉じた。
―――ふぅ…っ
蝋燭の灯を消し、
部屋には蝋燭の煙が微かに立ち込めた。
「おやすみ、ペギョン!」
「おやすみなさい、ミョンイ…ソングム…」
「おやすみ」
3人の女官、
ミョンイ、ペギョン、ソングムは床についた。
291 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁2:2007/02/12(月) 13:10:45 ID:E7vdqcVO
「……さむ……」
ペギョンは布団の中で小さく身を縮め、
鼻をすすり、袂に両腕を突っ込み、さらに身を縮めた。
こうすれば少しは寒さがましになる気がしたからだ。
ペギョンだけがそのまま深い眠りについた。
ペギョン以外の二人、ミョンイとソングムは今日も眠っているふりをしているがペギョンに対する躰の奥に焼き付く甘い熱情のせいで眠れないでいた。
深い眠りについているペギョンだが時に
身を縮めて寒そうにしていた。
その時、布団の中で隣にいたミョンイがそっと優しく抱きしめ、小さく呟いた。
「…寒い…?ペギョン…」
寒そうにしているペギョンを見ていたソングムも隣にいたペギョンを布団の中でそっと優しく抱きしめようとしたがミョンイの腕に触れた。
―――ん……?
何か感触が…………
ソングムは小声でミョンイに話しかけた。
「…ねぇ…ミョンイ…もしかして起きてる?」
「…!?
ソングム…っ!
貴女も起きてたの…?」
ミョンイとソングムは一旦、寝ていた自ら躰を起こし、話を続けた。
292 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁3:2007/02/12(月) 13:11:48 ID:E7vdqcVO
「ミョンイ…何故貴女起きてるのよ…」
「貴女こそ何故…」
「貴女、さっきペギョンを抱きしめていたでしょう…?」
「貴女こそさっきペギョンを抱きしめようとしてたじゃない…っ」
「貴女、そう言って
毎晩毎晩布団の中でペギョンと手を繋いでるの私知っているのよ?前から聞きたかったんだけど……」
「何…?」
ソングムは意を決して静かに口を開いた。
「貴女…ペギョンの事好きなの…?」
「………!?」
いきなり好きなのかと言い出したソングムにミョンイは唖然とした。
「…好きかって…?ペギョンを…?」
「えぇ…友情という感情ではなくその…男女との恋愛のような…そんな感情で好きなの?」
ミョンイは頬を桃色に赤らめ、小さく頷いた。
「そう……だったら私と同じね。」
「え…?」
「私も………ペギョンが好きなのよ
友情という感情でなく恋愛という感情で……」
「…………っ!?」
293 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁4:2007/02/12(月) 13:12:48 ID:E7vdqcVO
「好きって…ペギョンを…」
「…そうだと申しているじゃない、何度も同じ事を言わせないで」
ミョンイとソングムは沈黙し、互いを見つめあっていた。
―――まさか二人…同じ女を好きになるなんて……
二人は心の中でただそう思っていた。
沈黙が続く中、部屋にはペギョンの寝息をたてる息遣いだけしか聞こえない。
沈黙の中、先に静かに口を開いたのはソングムだった。
「…ペギョンはどう思っているのか知らないけれど私がペギョンを戴くわ
貴女には渡さないわミョンイ…」
「…それはペギョンが決める事よ…」
ソングムは薄く微笑んで眠っているペギョンの髪を撫でた。
「この子は私の初恋の子なの…見習いの頃からずっと…好きだった…」
ミョンイはペギョンの髪を撫でるソングムの腕を掴んだ。
「…私にとってもペギョンは初恋の相手なの…宮中を一緒に上がる前からずっと…ずっと…貴女よりもっと早くペギョンに出逢った」
「離して」
ソングムは自分の腕を掴むミョンイの手を振りほどいた。
294 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁5:2007/02/12(月) 13:14:12 ID:E7vdqcVO
「ペギョン…」
ソングムは指先で眠っているペギョンの耳元をなぞるように触り、耳元に顔を近づけ、
熱い息を溜め、甘く噛み、舐めた。
眠っているがペギョンは微かだが声を漏らした。
ソングムは自らの行為をとめることなく
ペギョンの首筋にソングムの唇が伝い、
ペギョンの頬に軽く口づけをした。
いきなり同僚で同室の女官が自分の目の前で愛する女にあのような行為を見せつけられ
ミョンイは唖然としていた。
ソングムはミョンイの顎を指先で顔をあげさせた。
ミョンイに薄く微笑みかけた。
「私は本気よ
ねえ…見てみたいと思わない?この子の裸」
「……え!?」
「きっと綺麗なんでしょうね…この子の裸も…」
ソングムはペギョンの首筋から胸元まで指先を伝え、
帯をほどき、上衣をはだけさせた。
ソングムはペギョンの胸元に手を差し入れた。
ソングムはペギョンの胸元を指先で刺激していた。
眠っているペギョンからミョンイとソングムの甘い熱情を刺激する甘い声が微かに漏れた。
「ん……ん……っ」
「ふふ…可愛いわねペギョン…
ミョンイ、黙ってみているつもり?
いいの?このまま好きな女が同僚の女官に抱かれても…」
295 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁6:2007/02/12(月) 13:17:45 ID:E7vdqcVO
ミョンイはふてくされた表情を見せた。
――ペギョンに触らないで………っ
先ほどから躰を触られていたことに気づき、ペギョンが目を覚ました。
「…ん…?二人とも何をしているの…?」
二人はペギョンを見つめていた。
先にペギョンの顔に近づいたのはミョンイだった。
「ねえ、ペギョン
私とソングムどちらが好き……?」
ミョンイの突発的な質問に対してなんのことやらという驚きの表情を見せた。
「…え…?いきなりなんなの…?どうしたの…?」
「ねえ、私にしない?ペギョン…」
「…!?
ええ………!?
ソングムまでいきなり二人してなんなの?
話がわからないんだけど………」
296 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁7:2007/02/12(月) 13:19:50 ID:E7vdqcVO
「混乱してる?」
「え…えぇ、だっていきなり二人がかりでこんな…話が読めないわ…!」
ソングムの手が
ペギョンの頬を撫でる。
「こんな事されたらもっと混乱するかしら?」
ペギョンの顔を覗き込み、その唇に口づけた。
「ん…っ!?んん…っ!?」
唇を吸われ、離れ、また唇を塞がれた。
ミョンイの目の前で見せつけるかのように
それを何度も繰り返し、ソングムはペギョンから抵抗する力を奪った。
唇と唇が離れた瞬間、絡み合った唾液は淫らに糸を引いた。
ミョンイがソングムの胸ぐらに掴みかかった。
「ちょ…っ!ペギョンに何するのよ!」
「私は私のやり方を通すわ
貴女もペギョンにこうしたいくせに」
ペギョンは二人を交互に見つめていた。
「ねえ…いきなり何なのよ…?
ソングムもミョンイもどうしたの?
ソングム…さっきのふざけているの…?」
「私…ペギョンの事好きなの…」
「ミョンイ…!?」
「ペギョン…っ
さっきの接吻はけしてふざけているんじゃないの!
私も貴女の事…好きなのよ」
「え……えぇ……!?」
二人の思いもよらない告白にペギョンは戸惑いを隠せずにいた。
297 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁8:2007/02/12(月) 13:23:08 ID:E7vdqcVO
二人はいま、
甘い熱情に犯され、
この躰を欲しく堪らなくなっていた。
「ペギョン…私にも口づけて…」
「…え…っ!?ちょ…っ!?ミョンイ!?」
ミョンイは顔を近づけペギョンの唇に口づけた。
逃げる口を奪う。
背けようとする顎を無理矢理掴み、
ミョンイはペギョンの唇を貪った。
「ミョンイ…っ、
やめ……っ、んぅ」
舌を絡めきつく吸うと、ペギョンがミョンイの肩を叩き、逃れようともがく。
ミョンイは抵抗する躰を押さえ込み、口づけを深くした。
息ができないくらいに。
「ん…ん…んふぅ…」
ペギョンの耳元でソングムが囁いてきた。
「私にも触らせて…ペギョン…?」
ミョンイがペギョンに口づけをしている最中にソングムは頬から首筋に、はだけさせた上衣をさらにはだけさせ、ピンと立ち上がった胸に唇を滑らせた。
「……んぅ……ふ……ぁ」
仰け反るペギョンの背は、ミョンイとソングムの二人にしっかり支えられていた。
「二人とも…ふざけない…でっ」
「ふざけてないわ…貴女の事本当に愛してるの…わからない…?」
「ペギョン…好き…」
298 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁9:2007/02/12(月) 13:26:57 ID:E7vdqcVO
二人の行為はとどまることなかった。
ソングムの唇に胸を吸われ、舌で押し潰すように舐められていた。
「ぁ……うぅ……」
ペギョンは二人から与えられる快楽で
火照り、とろけさせられていた。
ミョンイは普段見ぬペギョンの色香漂う淫らな姿に理性をかき乱されていた。
――普段の真面目で気品のある貴女に充分魅せられていたはずなのにいまの目尻に涙を滲ませている貴女も可愛くて……堪らない…
でも…そんなところを私以外には見せないでペギョン………
ミョンイはペギョンの顔に近づいた。
「ペギョン…可愛いわ…とても…でも貴女の色香は私にだけ魅せて…?」
「…ミョンイ…」
隣でソングムがふてくされた表情を見せた。
――ペギョンは渡さないわ…!
私のものよ…!
ソングムはペギョンの顎を無理矢理掴み、
ペギョンの顔に近づいた。
「ねえ、ペギョン
私のものにならない…?私は好きになったものは手放したくない主義なの」
「ソングム…」
ソングムはそのままペギョンの唇に口づけた。
クチュと、互いの舌と舌が絡み合う音は夜風のざわめきに混ざり合った。
ミョンイの手はペギョンの腰に、
腰から更に敏感な部分に滑りこんだ。
ペギョンは驚き目を見開いた。
――そんなところ自分でも触ったことないのに……っ!
「ん……ふぁ……っ」
ミョンイの手の中で
ペギョンの敏感な部分は熱を帯びて蜜があふれでていた。
299 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁10:2007/02/12(月) 13:30:44 ID:E7vdqcVO
ミョンイの手はペギョンの腰に、
腰から更に敏感な部分に滑りこんだ。
ペギョンは驚き目を見開いた。
――そんなところ自分でも触ったことないのに……っ!
「ん……ふぁ……っ」
ミョンイの手の中で
ペギョンの敏感な部分は熱を帯びて蜜があふれでていた。
淡い月の光が部屋に差し込み、ペギョンの火照らされ汗ばんだ白く透き通った躰を照らした。
「綺麗、ペギョン…」
「えぇ…本当に綺麗…」
「…あぅ…ミョンイぃ…そんなとこ触らな…いで…っ」
口では拒みながらも、ペギョンの足がしどけなく開かれていく。
常に気高く振る舞うペギョン。
激しい羞恥にいたたまれない気持ちだ。
自分の最も敏感なところから淫らな粘着音が聞こえる、そう思えば思うほど恥ずかしくてたまらないのに、
ミョンイとソングムの腕から逃げられずにいた。
ミョンイとソングムを思い切り突き飛ばせば逃げれるものの
何故かミョンイとソングムの手から逃げる抵抗力を失っていた。
「ペギョン…ここ…凄いとろけてる…可愛いペギョン…」
「あ、あぁ…ん…だめぇ……」
ダメと言いながら
ペギョンの躰は力が抜け、ミョンイとソングムに思うがまま自分の最も敏感な部分を弄ばれていた。
ペギョンは人の指先ってこんな感じるものなんだとこの時はじめて知った。
「あぁ……ん、ぁ……」
300 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁11:2007/02/12(月) 13:36:21 ID:E7vdqcVO
瞳をとろんとさせ
泣きそうな顔をしてミョンイとソングムの顔を見つめた。
ミョンイとソングムが甘い眼差しでペギョンを見つけていた。
「ペギョン…とっても可愛いわ…もっと感じて…?」
「ミョンイ……!?
あぁ…っ!」
ペギョンは目を見開いた。
ペギョンの熱い雌の中にミョンイの指が挿った。
「ああ…っ!
あぅ……あ……!」
「ペギョン可愛い…好きよ貴女の事……」
「もっと気持ちよくしてあげるわ…ペギョン…」
ソングムの指先は先ほどミョンイが弄んでいた最も敏感な部分に触れて刺激した。
「こんなにとろけさせちゃってペギョン…可愛いわ…本当に可愛い……」
「あ……ぁ……ん、ぁ……あぁっ!」
ミョンイとソングムは容赦なくペギョンを攻め立てた。
「…ねぇ…いまどんな気持ち…?聞かせてペギョン」
「私も聞きたいわ」
この行為ですら羞恥でいたたまっているのに二人の一言一言でさらにペギョンを羞恥にいたたまる。
「あぁ…んん……そんな……恥ずかし…くて…言えな……ぁ…いっ」
「本当に可愛いわペギョン…聞かせて?ね?」
「…お願いよペギョン…?」
301 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁13:2007/02/12(月) 13:41:57 ID:E7vdqcVO
「あぅ……うぅ……」
ミョンイの抽挿はゆったりと引き、すぐ奥を突く。快楽を味わうような動きをミョンイは優しくペギョンに与えた。
「あ…はぁ…あん…くっ」
「ペギョン…」
名を呼ぶと、ペギョンの目尻から、溜まった涙が零れ落ちた。
しだいに抽挿は速まり、ペギョンの躰をきつく支えた。
ソングムの敏感な部分に触る手つきも速度をあげた。
「ペギョン……っ」
ペギョンの耳元をミョンイの熱い囁きが焼く。
唇にソングムの唇がふれる。
「ん…っんん…っ」
ソングムの唇から離れた瞬間、
ペギョンは高い声をあげ、背筋を震わせ、
痙攣するように反り返って一瞬凍てつき、
絶頂に達して果てた。
「…はぁ…はぁ…」
ペギョンの躰はぐったりしていた。
ソングムは容赦なかった。
「…次は私ね…?」
熱いソングムの囁きが耳元を焼く。
「…え…ちょ…っ、ソングム…っ!」
再びペギョンの熱を帯びた雌の中にソングムの指が挿った。
「あぅ…っ!ああ…っ!」
「ペギョンの中…熱いわね…」
「やめ……ソングム……っ」
302 :
13:2007/02/12(月) 13:45:49 ID:E7vdqcVO
今度はミョンイがペギョンの敏感な部分を擦りはじめた。
ソングムの動きはミョンイの動きと違って
容赦なくペギョンの奥を突く。
「ふ……あぁ…あ、あ、あ…っ!」
――私はこのままでは私ではいられなくなる…っ
躰が熱い……頭がおかしくなりそう……
「ペギョン……ペギョン……」
「あ…はぁ…あ、あ、あ、ぁぁ……っ!」
ソングムとミョンイは薄く微笑みかけた。
「ねえ…どっちが気持ちいい?」
「私?それともソングム?」
――どっちが気持ちいいかと聞かれても…そんな…っ
「うぅ……あ…ぅっ」
「ねえ、中と此処の部分…どっちが気持ちいい?」
「あぁ……う…あ…ど…どっちもぉ………っ!」
ペギョンはミョンイの顔を見つめ、
頬を撫で自分の顔に近づけて口づけた。
「ペギョン…こっちも…」
ミョンイの唇から離れ、今度はソングムとも口づけを交わした。
「あ……ぃあ……っ
も…ぅ…だめぇ……っ!」
再びペギョンは高い声を上げ、背筋を震わせ痙攣するように反り返り、頂点に達してその場に果てた。
303 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁14:2007/02/12(月) 13:47:41 ID:E7vdqcVO
――そして翌朝、
部屋に朝日が差し込み外では雀の鳴き声が聞こえる。
今日も水刺間で王への御膳の支度で慌ただしい。
生真面目なペギョンが珍しく食材を切っている間に思いに更けていた。
――……人の手ってあんな敏感に感じるものなのね……
人の唇ってあんな柔らかいものなのね……
あ、いけないいけない…私のしたことが調理中に……
手が止まっていたペギョンの手は再び食材を切りはじめた。
――ミョンイのあの時の顔……はじめてみたわ……あんな艶っぽい表情で見つめてくるあの子…はじめてみたわ…
もう…また私ったら…やめよう…
再び食材を切りはじめた。
――ソングムの声って…あんな色っぽい声…はじめて聞いたわ…
いままであの子とあんなに目を見て話したことなかったわね……
『ねえ…どっちが気持ちいい?』
『私?それともソングム?』
ペギョンは思いに更けていく度に桃色に頬を染めた。
――ああもう!なんか調子が狂ってしまう…私のしたことが…
あの二人…本当かしら…私みたいななんの魅力もない人間に想いを寄せてるって……
二人は普段から真面目な性格だし…冗談ではしないと思うけれど……
ああもうどうしちゃったのかしら私…っ
いまは王様への御膳の支度中なのに…
304 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁15:2007/02/12(月) 13:49:08 ID:E7vdqcVO
「………つぅっ!」
思いに更けたペギョンは指を包丁で切ってしまった。
――私のしたことが…!うっかり指を包丁で切るなんて見習いの子くらいまでなのに…
女官でこんなドジ踏むなんて……
「! ペギョン大丈夫!?」
――ミョンイ…!
「やだ!血がでてるじゃない!」
「…………大丈夫よ、ただの擦り傷だから………」
「ちょっと待ってね!」
―――え…っ
ミョンイは傷口のある指を口へ運び、加えた。
「ちょ…っ!ミョンイ!?」
指を口から離し、
布を巻き付けた。
「はい、ペギョン」
「う…うん…ありがとう…」
ミョンイは照れくさそうに笑った。
「あ…ごめん!
慌てて巻いたからなんかカッコ悪くなっちゃったわね…っ」
ミョンイはすぐに自分の持ち場に戻っていってしまった。
――ミョンイ…昨夜…あんなにしといて平然な顔なんだから…
305 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁16:2007/02/12(月) 13:52:38 ID:E7vdqcVO
――午後、一通りの仕事が済み、一段落がついた頃、あまり人気のない王宮の一角にペギョンは一人座りこんで今朝ミョンイに巻いてもらった布を見つめていた。
――びっくりしたぁ〜…ミョンイにはいっつも驚かされてばかりだわ…
ミョンイに慌てて布巻かれたぶきっちょな指を見てペギョンは可笑しくて笑った。
――ふふ…本当に見た目悪くてカッコ悪いわね…でもはずさないでおこうかしら
こんな擦り傷なのにあんな必死になって巻いてくれたんだし…
――更に時は流れて夜、女官達は仕事を終え、各自室へ戻っていた。
ペギョンは書物を読み更けていた。
読んでる最中にミョンイが声をかけてきた。
「ペギョン!ペギョンったら!」
「………」
「ペギョン?」
ペギョンはミョンイの呼びかけに聞こえているが聞こえないふりをした。
――…二人の顔…まともに見れないわ…恥ずかしくて……
なのに…二人とも平然とした顔でいるなんて……
「…ペギョン…怒ってる…?」
ペギョンは書物の頁をめくりながら口を開いた。
「……別に……」
不安そうな顔でペギョンを見つめるミョンイ、ペギョンと同様書物を読みながらもペギョンの様子を伺うソングム。
306 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁17:2007/02/12(月) 13:58:46 ID:E7vdqcVO
表情が硬いペギョンに意を決して―――。
「ペギョン!ごめんなさい!昨日は…その…!で…でもっ!あ…あ…」
更に書物の頁をめくるペギョン。
「………」
ミョンイは頬を桃色に染めながら―――。
「あ…あの…っ
その…っ!あ…貴女の事…好きなのは本当よ!」
書物を読み終えたソングムもペギョンのところに寄って来た。
「ペギョン…私も本当に貴女の事好きなの…ごめんなさい」
「あ!今度夜食の当番でしょ?
替わってあげる…いや、替わらせて!」
「わ…私も今度献立一緒に考えてあげるわ!!」
「許してペギョン〜!!」
「許してちょうだいペギョン!!
あ、貴女に似合いそうな髪飾りとか指輪があるの!それもあげるわ!!」
必死に許しを請う二人を暫く見つめていた。
――別に怒ってないけれど二人ともこんな必死になって…特にソングムのこんな必死なとこはじめみた。
必死に許しを請う二人を見てなんだか可笑しくて思わず笑ってしまった。
「……ふふっ……別に怒ってないわ
二人ともそんな必死にならなくても…ふふふっ」
硬い表情から一変
笑顔になったペギョンの顔を見てミョンイとソングムはほっとした。
307 :
ミョンイ→ペギョン←ソングム「熱情」頁18:2007/02/12(月) 14:00:20 ID:E7vdqcVO
「はぁ…良かったわ
昨日の事怒ってるかと思ってたわ」
「本当に良かったぁ〜!」
ソングムはペギョンの怪我した指を見た。
「…あれペギョン
その指どうしたの?」
「ん…えぇ…ちょっとね」
「それにしても見た目悪いわね
綺麗に巻きなおしたらいいのに」
「ミョンイが折角手当てしてくれたんだから」
ソングムはミョンイの顔を睨みつけた。
「貴女、いつの間に!
ペギョンには綺麗に手当てしてあげなさいよ!」
「慌ててしたからこんななっちゃって…!」
「全く貴女って人は!」
――――三人の穏やかな時間はここまでだった。その後、ミョンイとペギョンは想いを通じ合うようになり、
ミョンイはソングムが太皇太后への御膳に毒を盛るのを目撃してしまい、
嫉妬に狂っていたソングムは男と内通していると嘘をつき、
ミョンイを殺害した。それからペギョンは心を閉ざしてしまい、
元々口数少ないペギョンだったが
ミョンイ殺害以来、
ソングムとは必要以上に口を利いてくれなくなくなってしまった。
ソングムは女官から尚宮になってもペギョンの愛する気持ちは変わらずにいた。
ソングムはひたすら思っていた。
――あの頃に戻りたい…
―――――――――――――――――――――ミョンイ→ペギョン←ソングム・終
GJ!
三人ともカワユス。
鼻血DE卒倒しますた☆
GJ!読書しながらこっそりペギョンたんのご機嫌を伺い見るソングムたん、萌え〜(;*´Д`)
>>307 > 嫉妬に狂っていたソングムは男と内通していると嘘をつき、
>ミョンイを殺害した。
なるほど、1話の偽証(?)はこういう理由だったのですね。
ドラマ見てると白粉の伏線があったとしてもいきなり偽証&周りが信じてるので
「たったそれだけでペギョン以外皆信じるのかよ」と思ったよ。
311 :
蓮生:2007/02/13(火) 00:12:14 ID:68ottq6A
皆さんありがとうございます!
百合萌えでのネタを元にして書いてみたんですが書いてて楽しかったですw
ダラダラ長文になってしまってすいませんorz
そうですね〜。
自分もあの時なんでペギョン以外皆信じてるんだと思って観てました。
>>284 冬心さん。重なることについて、私は気にしません。連載期待しています。
ハン尚宮×チェ尚宮 −思望−
壱参弐 柵
内容:百合 原作改変 エロい *キャラを汚します。
分量:これを含め、8レス
更にチェ尚宮はにじり迫り、私を抱き締めようと、中腰になり手を伸ばしてくる。
馴れ馴れしくしないで!
身をかわし、後ろから左手で思いきり押した。思わぬ反撃に前のめりに倒れた両肩を、
強く床に押し付ける。
これ以上、顔を見るのも嫌。
お前は何だ? いったいお前は。
ただいつもいる友達だった。ミョンイの隣に私がいた。あなたはその側にいただけじゃ
ないの。そのままで良かったのに。私はずっと、ミョンイに包まれていたかったのに。
なのになぜ、あの子を引き剥がし、私の心にずかずか踏み込もうとするの?
今まで堪えていたけれど、もう我慢できない。
背越し両肘を絡め取って、ありったけの力で捻る。少し上体が浮き上がった。
「痛い!」
顔をしかめている。
「お前! お前のせいで、私はこんな目に合ったのよ。許してもらえるなんて思わないで」
「私……」
「それだけじゃない。気を失っては冷水をかけられ、また足やらを拉がれて」
「ううっ」
「お前は……私が解き放たれてしばらくの間……この身体を見ずに済んだけれど。痣だらけ
だった。立つ度に骨が軋んだ」
「……私はどうなってもいいから……お願い…」
「チャングムもよ。あの子もあちこち叩かれて」
「……お願い……家は」
喘ぎも途切れ途切れ。
「いつまでも馬鹿正直なままだと思ったんでしょう? お前に二度と歯向かうことは
ないと侮っていたようね」
「……せめてクミョンだけは」
勝手なことを言わないで! お前はもう、何も言えないのよ。ましてやお前の願い
なんて、これっぽっちも聞くものですか!
更に強く顔を押し付ける。いっそ踏み付けたいぐらいだ。
「激しい尋問の繰り返しに……ひととき魂が離れた。私を呼ぶ声が聞こえなければ、
きっとあのまま……この世に引き戻された時、私は……変わっていた。そしてそれから後、
お前にも変えられてしまった!」
無理やり肌を合わせてきたあの日。痛みを堪えさせられたあの夜。そして私から
この者を求めてしまったあの時。全てが苛立たしい。
「よくも今まで好きなようにしてくれたわね」
しかし、ちょっと力を込め過ぎた。顔が紅潮し、額に冷や汗が浮かんでいる。手を緩め
ると、やっと息をつく。顔をこちらに曲げて見上げる瞳から、驚きの色は消えていない。
別にお前を拉ぐつもりはない。身体ではね。その代わり、お前の全てを何もかも……
お前がそうしたように。
座り直させようと襟首を掴んだ時、また柔らかな後れ毛が目に入る。
握り締めた手の……力が抜けていく。
二度と抱くつもりなどなかったのに。
雨は弱まったようだ。けれど軒先、雫の滴る音が絶えず響いている。
指先でお前の髪を数本、摘まんでみる。
こんな夜はいつも。
いつも。
指を後れ毛の中に差し入れ、掻き揚げる。合間からのぞく色白のうなじ。
お前を……。
うつ伏せたままの背中から手を回し、着ているものの上半分を脱がした。
剥きだされた背中に手のひらを当てると、指が沈んでいきそうなくらい柔らかい。
指先、爪のあたりで何度か撫でた。その軌跡、肌がこわばる。
小さく震える肩に齧り付き、甘い触感を歯で味わう。うっすらと歯型。
どれだけ抱けば気が済むのだろう。なぜ際限が無いのだろう。
……気など済まない。
抱けば抱くほど、指の先までが快感を覚えていく。
違う。これからはどちらが従うべき者なのか、身をもって判らせてやらねば……。
判らせてやるためなのよ。
両手を、横たわる身体の胸元に差し入れて、強くつねる。ふくらみは形を変え、お前に
緊張が走る。
捩る素肌に、じんわり汗が浮かび始めた。
身体をひっくり返し仰向けに変え、胸に顔を押し付けた。谷間に溜まった汗を舌で舐め
取り、柔らかな頂きを口で転がす。
お前は柳眉をひそめながら、けれど吐息は熱くなっていく。
途切れる息の中、言う。
「一人では何もできなかったくせに」
思わず手が止まった。
「これからだって、そうなんでしょ」
「余計なことを言わないで」
これから降りかかるであろう、この者にとっては苦難……に震えながら、精一杯強がっ
ているのか。
「ペギョン…」
それなのにひりひりと身を……疼かせている。
いじましい。
けれども。
これは、以前の私と同じではないか?
捉われて、いつ果てるとも知れぬ屈辱の日々に。手紙を取り戻してからは、お前を
追いやることや、この忌まわしい関係をチャングムに打ち明けることを考えた時に。
もう何も、頭から全部を追い出してしまいたくなった。
「だったら素直になって、チャングムに抱かれればいいじゃない。」
「私を怒らせたいの!」
少なくとも肌を合わせている間だけは、おののく心が宥められた。風邪の辛さが、抱き
締められて、すうっと和らいだように。
「そしてあの子の気の済むようにすれば」
「黙りなさい」
そしてまた、別れなければならないと思えば思うほど逆に、狂うしくお前を求め、ただ
ひたすら溺れていった。
お前だって……いずれは離れなくてはならないって、判っていたんじゃないの?
だから互いに求め合い、解きほぐせないぐらいに、もつれあい。
もうこれ以上は、駄目。お前に触れてはいけない。
「どうせ……終わり。私を放り出すなり、なんとでも……」
諦めたようにつぶやく細い肩に、身震いした。
いじらしい。そして、艶かしい。
思わず、腕を回して抱き締めてしまう。
私だってお前を追いやるなんて、本当はしたくない。
けれど今、断ち切らなければ……いつまでたっても……。
「何もかも終わる。<……そして私も解放される……>」
何かつぶやいていたようだが、よく聞き取れなかった。
覚悟は、あるのだろう。
けれど最後にもう一度だけ……と願うのか。
……そうね、これからは否応なしに、罪に向き合わなければならないのだから。
ならば今だけは。
何も考えられないくらいに、感じさせてやりたい。
何も考えられないくらいに、感じたい。
今宵、お前と共に。
結局、こういうことになるのか。
ふっ
自嘲の溜息が漏れる。お前といると、いろいろな感情を抑えることができない……。
それなら、いつまでも床の上に押し付けておくわけにもいかないわね。
そして最後くらい、普通にしたい。
上半分はだけた身体を、脱がした服で覆ってやり、横で布団を整える。
「髪を全部解きなさい。服も」
声を掛けて、自分も髪を下ろし、服の結び目を解いていく。
こんなことを思うようになるなんて、ほんの最近まで考えてもみなかった。
けれど、もうこれで。こうして抱くことはもちろん、お前に会うことも無いだろう。
思い残すことが何も無いように。
いいや思い出すものですか。ここから離れれば、きれいさっぱり忘れてしまうはずよ。
横目でちらりと見ると、お前もゆっくりと服を脱いでいる。
長く伸ばした髪の間から、背中や腰が見え隠れする。
「ねえソングム、誰かいたんでしょ?」
「誰かって?」
初めてまともに抱く、そう思うと少しばかり気恥ずかしい。
「相手よ。ミョンイ…とのことは……でも他に」
「いいえ」
背中越し、何か話しをしないと間が持たない。
「何人かはいたはずよ」
「いないわよ」
互いに背を向け、着ているものをひとつひとつ離して、丁寧に畳んでいく。
「うそおっしゃい。あなたはいろいろと、あんなものやこんなものを仕入れてるって、
聞いたことがあるのよ」
「それはただ、頼まれたものを譲っていただけ。王族の方々に納めていたから、それを
知った何人かに、こっそりと。それだけよ」
先に布団に入り、手枕をして後姿のお前に目をやる。粟立つ肌は寒さのせいか、
これからの昂りの予感からか。
「見ないでよ。恥ずかしい」
なによ……さんざん私を、裸にしたくせに。可笑しくて言い返す。
「何を今さら」
「でもやっぱり」
「さあ、お入りなさい」
持ち上げた衾に潜り込んできた。お前は遠慮がちに、少し間を空けて横たわった。
「でも、どうして? こんなにきれいなのに……」
身体を寄せ頭を撫でて、小声で聞いた。
「どうしてって?」
「誘えば誰でも、ついてきたでしょうに」
「あなた以外なんて……」
「どうして私なんか。誰も私に、声なんて掛けてくれなかったわ」
「私だけじゃないわよ……どれだけ多くの者たちが……憧れていたか」
毛穴の縮こまった肩口に、唇を寄せていく。
「あなたはそういうことに、あんまり気付かないから。それに……」
柔らかい。
「もう少し、にこやかにしていれば、皆も声を掛けたでしょうに」
「私はそんなのいいわ」
「そうね、あなたにはあの子しかいないものね」
胸もおなかも。
「あの子だって悪いのよ……ミョンイはあなたを独り占めしていたから」
「でも、いなくなった後だって」
「何人にも聞かれたわ。……あなたのこと。だけどあなたは絶対に振り向かないって、
そう言って追い払ったわ……。心の中に、大切な人がいるって」
滑らか。なのに、手が張り付きそう。
「でもただ一人、あの子だけは……遠ざけることができなかった」
身体中に舌を滑らしていく。
「そしてミョンイ…と同じようにその娘だけを、あなたは」
言葉に、熱い喘ぎが入り混じる。
「……愛し続けた」
口を上へとせり上げ、首筋も頬もねっとりと舐めまわす。
「けれど一度で…いいから私…を見て…欲しかったの」
でも今は、こうして見ているじゃないの。
手を繁みに潜らせ、やわやわとお前の敏感な場所を探りながら、
「ひとつ聞くけど」
いいや、止めておこう。これ以上この者を知る必要はない。今夜は何も考えないで……
初めて抱かれた時のように、何も思わず、肌を合わせよう……。
手を更に深く入れ……まだ充分には馴染んでいないようで、時折小さな呻き声の混じる
声を楽しむ。
身体をくねらせ、肌を紅潮させ、私を掴み、絶え間ない息遣い。
これから熱く変わっていくお前の姿が目に浮かび、それだけで身体の奥がざわめき、
私まで声が出てしまう。もう何も考えられなく……。
いけない、まだ始まったばっかりよ。もう少し冷静に。
手をお前の身体の深くで動かしながら唇を舐め回し、口の中に舌を送る。一瞬息が
詰まったようだ。
いじめてやりたい。そんな気持ちがふつふつと沸き起こり、舌を追い詰め、強く絡め、
そしてきつくきつく……千切れるぐらいに吸い上げた。
辛い? ふふ。今日は優しくはしないわよ。
上唇だけを吸上げつつ胸を摘み、揉みしだく。格好のいい胸を……さすがに
ここに齧り付くのは止めてあげる。とっても痛いから。
温まってきた両脚を裂いて、その間から圧し掛かった。
今度はゆっくりと、浅い口付けを与える。唇同士が微かに触れるだけで、鼻奥から
くぐもった声が聞こえてくる。
可愛くて、鼻の頭にも軽く口付けた。ふんぅ と甘い声でソングムは応える。
あれだけ、傲然としていた女が、泣き顔のようになって私にすがり付いている。
小憎らしさと愛おしさが、ぞくりとする悦びに変わっていく。
鼻から上唇、目へ。顔中で私の唇、舌を受け入れさせる、
上顎に、舌を貼り付けて小刻みに動かすと、溜息とも唸りともつかぬ声で鳴く。
こんなに素敵な表情を見せてくれたご褒美……一度昇らせてあげる。
優しくうなじを舐め、柔らかい双丘の先端を両手で優しくまさぐりながら、
「ソングム……きれいよ」
ぴくっと反応した。みるみる表情が和らぎ、また一層美しく変わる。
ふくらみの片方を揉み、片方の頂を舐め軽く歯を当てる。それは徐々にこわばり、
敏感さも増しているようだ。左右、手と口で交互に愛撫していると、身体を揺らして
息を吐き出した。
軽くいったようね。
「ちょっと痛かった? ごめんなさいね。つい夢中になってしまって」
「いいえ、でもあなたがこんなに激しいことを」
黙って、お前の上に乗せていた身体を横に下ろす。
息が整うまで、肩を撫でながら待った。
「ねえペギョン……さっき何をいいか」
また口付けをし、身体中をぴったり合わせた。
ソングム、今は無駄なおしゃべりはいらないのよ。私は味わいたいように味わうだけ。
それ以外はいらない。黙って私の思うようにされていればいいの。
一度果てた肌は一段と艶よく、粘るような触り心地になっている。腰や腿や肩、お前の
全てに触れたい。
私のまさぐる手と、私を求めるお前の手がぶつかった
その手を取り、私の胸に触れさせた。
外はまた荒れ始めたようだ。横に並んでしばらく互いを撫で合いながら、雨風が戸板に
弾ける音を、心地良く聞く。
お前を軽く抱えて私の体の上に誘い、唇を私の胸へ導く。流れる髪の毛に指を走らせる
と、少し蒸れたような髪の匂い。そしてお前の香り。それが入り混じり、鼻奥を芳しく、
くすぐった。
その香りを利きながら、上に重なるお前の脚、その間にある部分を優しく撫でる。
時折指を沈めたり、擦り上げたり。
息が上がってきた。
もっと苦しくなるのを承知で、首を引き寄せていつまでも口に吸い付き離さない。
上気した頬、思うように息の吸えない苦しさで、首筋が強張っている。そして身体中が
汗ばんできた。
ちょっと、お前にも味あわせてあげようかしら。乗せた身体を離し、お前の手を口に含み
湿り気を与える。そしてその手を私の熱い泉へ近づける。
お前は私の感じる場所を的確に捉え、巧みに私を愛しみ、そして私はきっと旨そうに
その指に絡みついているのだろう。私も少しずつ気持ち良くなってきた……。
あぅ、そこ……もっと。
頭を軽く押しおなかへ。そしてもっと下へ。
舌でなぞられている部分が、ほかほか温かくなっていく。
そしてまた手を差し入れられながら、表の部分を舐められ、吸われ、甘く噛まれた。
これ以上されると、負けてしまう……。今日は私だけがするのよ……。
と思う間もなく、お前の舌先が私の口に襲い掛かり、あっと逃れようとしたけれど、
まとわりつき絡められ、そのまま深いうねりに引きずり込まれ、あれよあれよという
間に、心地良さに沈められてしまった……。
そろそろ一休み……。中に入れられた手を離し、身体を起こす。
お前も座らせて、その肩を抱き、口付けをする。何度も舌を……。
全然、一息入れたことになっていない!
もうずっと、どちらか、いやどちらともが相手を味わい続けている。途中でやめること
なんてできないのね……。
お前はまた私の胸に手を置き、時々音を立てながら、身体中を舐めてくれる。妖しく
蠢く温もりとぬめりに、接する場所、全てが痺れてくる。
愛撫を受けながら、頭を撫でてやる。
求められる熱い喜び。
これからもいい子にしていれば、こうして可愛がってもいいのだけれど。
その蠢きが首筋にまで這い上がり耳元近くに達した時、怖気を覚えた。
この部屋に連れて来られ、無理やり舐められ……くっ……憤りが、蘇る。
下種め! こんな奴に愛しさなど。
ただ目の前のこの身体を弄り、辱めたいだけ。この者を貪り、食い散らかしたい。
ここにあるのは、怒り狂うような欲望、それだけ。
そう感じる自分自身が恐ろしい。
恨みと欲望がない交ぜになっている。
醜い快楽に溺れる、自分の浅ましさに吐き気がする。
ちょっと嫌になって身を離そうとすると、ぎゅっと抱き締められた。涙ぐみながら、
「あなたから離れたくない」
お願いだから……もう何も言わないで。そしてその顔を、見ていられないの。
……理性など取り戻してはいけない……何も考えてはいけない。
お前の身体を向こうに向けて座らせ、背中越しに胸を揉みしだいた。
腰の後ろから自分の身体を密着させ、お前の投げ出した脚に私の脚を上から絡めて
開かせ、内腿を擦っていく。同時にうなじや耳に舌を沿わせると、強く仰け反った。
私はその度、もたれかかる重みを受け止める。
指の動きに操られ、声は途切れがちになり、喘ぎへ変わり、それがもっと短い悲鳴に
なり、それも聞こえなくなった。そしてぐったり。
力が抜けた身体を、布団の上にうつむけた。
目の前に、白い背が広がっている。
それは、軽く指先で触れるだけで……興奮を取り戻し、ひくひくとしなる。でも……
後ろから確かめると、まだあの部分、中までは充分に満たされていないようだ。柔らかな
襞が指にまとわりついて、もっと受け入れようと待ち構えている。
肘で身体を支えさせ、腰を突き上げさせて、と。
望み通り、深く差し入れてあげる。
目の前に広がる大きな盛り上がり――胸よりも弾力がある――に口付けながら、再び
始まる喘ぎ声を楽しむ。そうやって背中やらお尻やらをまさぐっていると、その手を
掴まれ胸に添わさせられた。しばらく擦ってやるけれど……暴れ馬のように身を大きく
くねらすので、思うように捉えられない。困った子ね……じゃあ……。
身体を仰向けにしてやり、改めて眺める。
胸はぴんと尖っていて、まだ何もしていないのに、口を寄せただけで私の息を感じ、
さらに固く縮こまる。
また始めた愛撫に、双丘の揺れは大きくなる。そして時折耐えられなくなるのか、私の
腕を痛いほど掴む。
邪魔だ。
お前の片手に自らの身体を預けて、もう一方の手も、首の下から腕を回して手首を拘束し、
これでよし。脚の間に手を入れながら、胸の頂を舌先で丁寧に転がす。
愛しみを与えられ、為す術も無く身体中揺らしている。
お前が、また愛しく思えてくる……。
首筋もまた、強張りだして……。
あの子……チャングムは……私がもうすぐ最後の絶頂を迎える際に――私の喉元が反り
気味になると――決まって首筋、喉の中心から少し横に口を寄せ、大きく口を開けて
噛む、というより食らい付いた。
最初は痛かったし、何より驚き、逃れようとした。けれど、今私がソングムにしている
ように両腕をがっちりと押さえられ、脚も挟み込まれて身動きもままならず、そうして
私をずっと責め、首筋を離そうとはしない。続けられる内に、痛みが気持ち良く感じ、
酔ったようふわふわと身体が浮き始め、そしてぶるっと、寒気のようなものが皮膚を走り
…………そこから先はいつも判らなくなる。
気が付くと私は布団の中にいて、あの子は微笑みながら見つめていた。
何度かそんなことがあって、何故そんなことをするのか、ある時尋ねてみた。あの子は
『あの場所は、脈打つのがはっきり判るし、息遣いもよく聞こえます。それを感じるのが
たまらないのです』と言った。
それである時、私も同じようにあの子の首筋に舌を置いてみた。
なるほど。
あの子が高揚していくにつれ、脈はどんどん強くなり、心なしか血の管も膨らむような
気がする。そして息遣いが、唇にも伝わってくる。
いよいよ果てる前には、締め付けるような――耳ではほとんど聞こえない――
息の根が漏れてくる。
顔を間近に見、唇を合わせて吐息を味わうのも、もちろん楽しい。けれど、脈動に触れ
ながら昇りつめさせるのは、陶酔が実感できるような、自分の身体にまで快感が流れ
込んでくるような、そんな時めきが感じられて。
しかし良いことばかりでもない。跡が残ってしまうから。
次の日から数日は、人目に付かないよう襟元の合わせ目を寄せたり、人の前に立つ
角度を気にしたりしなくてはならない。幸い水剌間では、互いを構う暇もないくらい
忙しいし、尚宮はほとんど立ちっぱなしだから、まだ目に付きにくいようなものの。
だから何度も、止すように言い付けた。しかし夢中になると、あの子はまた同じように
強く吸い付いてくる。私が拒もうとすると、首筋を舐め上げられて、つい力が抜けて、
そのまま……。
あの……身体中を食べられてしまうような感覚。そして一抹の屈服感……。
お前の肌を味わいながらそんなことを思い出していた。
私の動きに、時折苦しげな表情を浮べ、だらしなく半開きになった口元から、濃い息を
吐く。
昂る波は身体を反らし、身震いを起こす。
左手は私の身体の下に挟まれ、唯一自由になるもう片方の手のひらを、何かに触れて
安心したいのでしょうね。でも掴みどころなく、空をひらひらと握り締めている。
口の中に溢れかえる液体を、喉をコクッと鳴らして飲み込もうとしている……けれど
少し口の端から……。
呆けている……。
押さえていた腕を放してやり、上から身を重ねる。安堵したように首に腕を絡めてくる。
自分の身体を、肘と膝で支えて少し浮かせ、またゆっくりお前のそこに手を宛がい、
柔らかい中にひときわ熱く膨らんだ部分を押す。
高みへ昇る顔を横目で見ながら、そっと首筋に唇を寄せる。
喉を通り過ぎる息……唇に感じる血の流れ……温かい一筋の道。
かぷっ
思いっきり吸い付いてやった……。
首筋から敏感な場所まで、身体を一直線に貫くような、太い痺れを感じなさい。
お前はがくがくと仰け反り、背中に爪が食い込むくらい力を入れ、声を嗄らして喘いだ。
そして……溢れさせ……沈めていない指まで、ぐっしょりと濡れている……。
ぴくりとも動かない……。
腕も身体も、疲れてしまった。私も。そしてお前も。気だるくて、寝巻きを着るのも
億劫に思う。
今晩はこのまま……。そう思う内に私も眠くなり、ソングムの身体に寄り添ったまま、
いつの間にか眠りに落ちていた。 ―――終―――
新作乙です。
今回はエロ部分が重厚・骨太な印象を受けます。
前作の心理描写あってこそ今回の重厚・骨太さが際立つ感じがしました。
しかし、このままだと二人ともチャングムかクミョンにたたっ斬られる気がする。
乙&GJです!!
あぁあ、何かもう…もう単に萌えるとかの次元ではなく、ひしひしと胸打つものを感じました。
エロなのに泣けてくるのは何故ですか…。
本当に凄いです。
また、魅せて戴けることを願っています。ありがとうございました、お腹いっぱいです。
>身をかわし、後ろから左手で思いきり押した。
左利きハン尚宮様
____
._| |__|_ ____
|_ _|__|_ __/ /__/__
|_ _|__| |_ __|__| __(__∧∧
.|_|(,,゚∀゚) / / |__(,,゚∀゚) ⊂| つ( ゚Д゚)つ
| ̄ヽ__⊂__つ / ./ /_⊂__⊃ └───┴―-┘
\____)__) ./_/_|__|__|
し`J し`J
ハン尚宮×チェ尚宮 −翹望−
壱参弐 柵
内容:百合 原作改変 エロ仄か *キャラを汚します。
分量:これを含め、7レス
−謝辞−
内容の一部に、他サイト様が構成されたイメージから着想を得たものがあります。
使用にあたり許諾いただきました。ありがとうございました。
(236、268及び上記は、この一連のSS全てに係る謝辞であることを補足いたします)
いよいよ太平館へ向かう日の朝。
早朝の当番も終わり、ミン尚宮などにも今後のことを頼んでおいた。何か動きがあれば、
すぐヨンセンを使いに寄越すようにと。もうチェ尚宮は、あからさまな邪魔立てはしない
だろう。
これで万事よろしい。
内人の頃から何度か行くことはあったけど、こんなに心弾むのは初めてね。
一応の決まりごととして、最高尚宮様にご挨拶をしておかなくては。あの朝、気付かれぬ
内に部屋を出て以来、顔も合わせていないし。
「チェ尚宮様、では行ってまいります」
文机の向こう、最高尚宮の威厳を保つ顔に、言った。
立ったままの挨拶で済ますつもりでいた。
しかし目が合うと、名残惜しげな瞳を向ける。優しい顔に思えた。昔のソングムを思い
出す。
かつての友にも、別れを告げよう。
あたりに人の気配が無いことを確かめて、出入り口の戸を閉める。
近付き、座った。
「これでお別れね」
「……」
「さようなら、ソングム」
「一昨日……あの夜……」
恥じらいが眉のあたりに漂う。
「ずっと一緒にいてくれて……ありがとう」
意外な言葉に、黙って見つめる。
静かな時が流れた。
迷ったが、聞きそびれたことを口にする。
「ソングム。少し聞いていいかしら。どうして私を、そこまで……」
「……」
言葉にならないのだろうか。
「考え方も生き方も、そして生まれも違うじゃない……なのになぜ」
「……違う……違うわね」
言い淀んでいる。
「子供の頃も今も、ずっと違った。確かに話しはあんまり合わないかもね」
言葉を待つ。
「価値観が違うというのかしら。でもね、いろんな人と付き合って……あ、お話しした
だけよ。でもやっぱり、あなたの真面目さっていうかひたむきさは、他の人には無いから」
またしばらくの静寂。
「あなたは、都合のいい時だけ頼ってくるなんてことはしなかった。
辛くても心が曲がらない。私や多くの女官たちには真似のできないことよ」
「けれど見ての通り、私は変わったのよ」
「そんなことはないわ。むしろ……そうであって欲しいくらいだけど」
また静かになる。
「それと、なぜ牢屋に来たの」
「あなたが……もう長くなさそうだって聞いて」
「お別れを言いに?」
「そうね……いやミョンイの時には……目をあわすことすら、言葉一つ交わすこともなく
追いやってしまった。あなたには、そんなことはしたくなかった」
「詫びたかったの?」
「私の罪深さを……ただ知って欲しかった。そしてなじって欲しかったのだと思う。
生きているあなたに。あなたに対することもミョンイに対するものも」
可哀想な子。何度も夢にうなされていたわね。自らの心残りがミョンイの怨念を
膨らませ、この者を苛み続けているのか。
だけれど、酷いことをした報い。これからしっかり受けてもらわなくてはならないのよ。
つと腕を伸ばして、衿の合わせ目を親指で開いた。襟元に隠されたところに、それは
あった。
そっと撫でる。
今はまだ赤い。その内青みがかり、やがて黒くなっていくだろう。そして少しづつ
褐色になって消えていく。けれどかなり強く噛んだから……歯の跡はうっすらと、
ひと月は消えないでしょうね。
親指に力を込め、くっと押す。ソングムは痛みを堪え軽く呻いた。
これでしばらく……あるいは一生お別れね。
もう一度軽く、うなじから頬、耳のあたりまで撫でた。
愛しさも、これで終わり。
心の中でつぶやき、立ち上がろうとした時。
「ペギョン、待ちなさい。最後に言っておくわ。あなたがこれからどう過ごすにしても、
一つのものだけを見ていては駄目よ」
「あの子だけ見ている訳ではないわ」
「昔に比べれば、ずいぶんましにはなったようだけど。あの子のことばかりじゃないの。
料理以外にも、普段のことや色々な動きも目に入れないと」
「私に口を挟まないで」
「そこがいけないの。人の言葉に、一旦は耳を傾けて御覧なさい」
そう言うとチェ尚宮も立ち上がり、近付いてきた。ああ、もう嫌だ。慌てて引き戸を
開け、外へ出た。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
チャングムは太平館門前で、そわそわと到着を待ち詫びていた。一昨日に太平館の
尚宮から、自分と交替でハン尚宮が着任すると伝えられたからである。
着く予定の時刻から考えて、お昼はたぶん途中で済ませると思われた。にも関わらず、
せっせと用意していた。
今もまた、門の前で右往左往している。
太平館の前には特段の建物など無いのであるが、しかし塀が長々と続き、道も若干の
うねりがあるため、遥か遠くまでの見通しはない。そしてここも宮の一つ、女官が好きに
出入りすることはできない。こうやって門のすぐ外にいることすら尚宮に懇願し、やっと
お許しを得たほどなのである。
それにしても遅い。本当にお越しになるのだろうか。不安な気持ちが、チャングムの
足を動かし続ける。
木々や家々に見え隠れする人影。
その姿を見紛うはずもなかった。駆け出したい気持ち。会って早々に嘆かせても、
お叱りになられても、いやむしろ叱られたかった。でも太平館の尚宮に、厳しく諌め
られていたため、ぐっと抑える。
向こうもチャングムの存在を認めたようだ。けれどやはり同じ歩みで、ゆっくりと
近付いてくる。
ハン尚宮も同じく、駆け出したい気持ちだった。あと少し進めば、愛しい子に会える。
そう思うと嬉しいような、けれど面はゆいような。踏み出す一歩に喜びと、くすぐったく
竦(すく)むような感覚がして、足がどきどきとしていた。
やっと門の前で向き合った、尚宮とその弟子。互いの手を取り合い、そしてひっしと…
…人目もあることゆえ、心の中で抱き締め合う。
チャングムはもちろん、すぐにでも一緒に過ごしたいと思っていた。しかしハン尚宮は
どのような場合でも職務を優先する。
昨日までの大雨で途中の道が塞がっていて、一旦引き返しそれで時間がかかったと、
そして昼食もまだであると。着いてそれだけを話した後、すぐに前任の尚宮と引継ぎを
始めた。
以来、一時(いちどき)。
そっと様子を伺うと、尚宮たちはまだ真剣に打ち合わせを続けている。
宮に戻る尚宮の道中も案じて、早く終えようとしているのだろう。
さぞやお疲れのはずでしょうに。チャングムは尚宮の身体を案じた。けれどこうして
隙間から眺めているだけでも、幸せな気分になるのはなぜなのだろう。あの方がおられる
というだけで安心でき、力が湧いてくる。
あの時、ろくに話すこともできずに引き裂かれてしまった。そして自分の手から永遠に
失われてしまうかも知れないと怖れながら、けれど尚宮様が生きておられるならそれで
いいと思い、言われる通りに太平館に来た。以来僅かな手紙のやり取りと、ほんの数回、
チェ尚宮様の目を盗むようにして来てくれたチャンイからの言伝て。それからおじさんの
話しぐらい。
手紙には無事にお過ごしと書かれていた。けれどヨンセンからの手紙には、チェ尚宮様に
昼とはなし夜とはなしに呼び付けられ、時には朝まで御用を言い付けられて、とても
お疲れのご様子だとあった。牢屋から出て病み上がりに近いお身体で、さぞお辛かった
ことだろう。けれど私は何一つお助けすることもできず、会える日を祈って料理に打ち
込んできただけだった。
来し方を思い巡るチャングムの目に、涙が浮かぶ。
もう陽もだいぶ傾いてきた頃、ようやく引継ぎが終わった。前任の尚宮は、久々の宮に
向けて、足早に立って行った。
やっと二人きりの時間が過ごせる。
チャングムはいそいそと食事の用意をした。この時間だと昼夜兼ねるということに
なってしまうけれど……それなら夜をゆっくりと過ごせるというもの。思わず笑みが
こぼれてしまう。
普段宮中では、尚宮と内人が共に食事を取ることはない。けれどこんな小さな所帯で
咎め立てする者もいないから、尚宮の許しがあれば給仕の名目で側にいることができる。
もちろん、ハン尚宮はそうした。
チャングムは見つめていた。ハン尚宮が食事を口に運ぶ様子、咀嚼するおとがい、
嚥下する喉の動き。その全てが美しく愛おしく、自分の手はちっとも動こうとしない。
「そんなに見つめられたら、食べにくくて仕方がないわ。お前も食べなさい」
促されて慌てておかずを箸で摘んだ。
牢屋から這い出てきたのは半年、いやもっと前か。それまで何の気なしに過ごせた
時間が、今にして思えばどれほど貴重だったか。
愛しい方、私の全てである方が濡れ衣を着せられて、釈明も聞き入れてはもらえず
拉がれている。自分が叩かれている以上に、それが辛かった。
俯き御飯を噛む口に苦い味が混じる。
「お前が情けない顔をしていたら、私も楽しくないわ。これからはこうして過ごせるの
だから、前のように明るく笑ってちょうだい」
そう言う尚宮の胸中も込み上げるものがある。それを堪えて、黙々と口に運んだ。
「変わった食べ物ね」
尚宮の問いかけに、嬉しそうに微笑むチャングム。
「はい、時折お見えになる明のお客様から戴いたものです」
「そうなの。これは何と言」
更に問おうとする言葉を遮るように、いつものおしゃべりな舌が回りだす……。
「この前お見えになった使臣様が今でもお気に掛けてくださるそうで、それにあの者たち
ならどんなものでもおいしくできるだろうと言われるそうで、いろいろカチカチに干した
魚やら燻した肉やらをお持ちになって、それはそれで工夫して調理してお出ししていたの
ですが、それも少し多目にお持ちになって余ったものを残していかれて、更にあれこれ
考えることができたので、少し尚宮様にも召し上がっていただこうかと思いまして、あの
もちろん前の尚宮様からもお褒めはいただいたのですけれど、やっぱりハン尚宮様に
お試しいただきたくって、実はご着任をお聞きしてから急いであれこれと考えてご用意
したのです」
やっぱりチャングムね。途切れもせず続く説明に、ハン尚宮は今までの苦労が吹き飛ぶ
ような気がした。
食事も終わり、それぞれの部屋で残りの仕事を片付ける。ハン尚宮はこれからの
予定の確認、チャングムは料理の覚え書きを書き付けた。それが終わると長い夜が
待っている、はず。
明日の段取りも整え、頃合を見計らって尚宮の部屋に向かう。
「入らせていただきます」
「お入り」
文机を挟んで、改めて互いの姿を見る。
チャングムはそれほど変わっていなかった。若いということもあるだろうけれど、
この子ならどんなところでもやっていけるのだろう。あるいは私がいなくても大丈夫なの
だろう。ハン尚宮はそう感じた。
チャングムもハン尚宮を見つめる。
「お会いしたかったです。何度も何度も、尚宮様を夢に見ました……。時には
お苦しみのお姿が浮かんだこともありました……。なのに何一つできない自分が
怨めしくてなりませんでした」
「心配をかけてごめんなさいね」
「お辛い思いを堪えておられると、ただ尚宮様のお身体を案じておりました。少し
おやつれかと。本当にご無事だったのですか」
「大丈夫よ……ううっ……お前のことばかり思って……」
いけない。なんだか感情を表に、簡単に出すようになってしまった。あの者を振り
回そうと、演技のようなことを続けていたからかしら。ハン尚宮は自省した。
この子に、そんなことをしなくても。あの者にはあの顔、この子には元の自分の顔。
切り替えないと。
「いえ、別に辛くもなかったわ」
「酷い目にあわされていたと伺いました」
「意外とチェ尚宮も、よくしてくれたわ。……お前こそ、よく頑張ったわね」
「おじさんが何度か励ましに来てくれましたし、ヨンセンやミン尚宮様からお手紙も
戴いて。それに慣れるとここも、珍しいものが多くて勉強になりました」
「それは良かったわね。でも寂しかった。お前の笑顔が見られなかったんですもの」
「私もです、尚宮様」
「ところで知っての通り、ひと月ほど先に数回、使臣のお遣いの方がお見えになる。
先ほどその件の引き継ぎはしたけれど、また頑張りましょうね」
「はい。こうしてご一緒できるなんて夢のようです」
今回は、一年ほど先に来る使臣一行に先立ち、その下見に来られる方々の接待である。
だから大宴会は開かれず、普通の、それでも充分に手の込んだものではあるけれども、
食膳を用意すればよかった。
「それじゃあお休みなさい」
「お休みなさいませ、尚宮様」
チャングムはてっきり一緒に過ごせると……しかしお疲れであり、わがままも言えない。
少しがっかりしながら、廊下を二つ挟んだところにある自分の部屋に戻った。
一人で休むハン尚宮。長らくの拘束生活も終わり、久々に身も心も解き放たれていた。
しかし決して一人きりになりたかった訳ではない。待ち望んだ再会である。もちろん
チャングムと、ずっと寝食を共にしたいと思っていた。けれど、そうしないのには理由が
あった。
一つは、気持ちの問題である。
いろいろな感情があったとはいえ、やはり添うべきではなかった者との交わり。その
悔悟は一人で埋めなければ。チャングムに癒しを求めれば、その甘美さに、なじるべき
自分すら見失ってしまうだろう。
それに抱き合った感触が、肌の上にもまだ鮮明に……敏感に残っている。今あの子に
触れられたら、溺れてしまそうで怖い。あの子を同じような、欲望の対象にはできない。
そして、ある意味もっと深刻な問題。それは身に刻まれた痕跡であった。
昨日からちょっと痒かったけれど、本当に忙しくて気にしている暇がなかった。
宮を出てしばらく歩き、少し汗ばんできた頃から、今度は妙にあちこち痛い。道々、
漆にでもかぶれたのかと、先ほど着替えた時に確かめてみた。
あっ
背中一面、肩や脇や腕に、幾筋もの引っかき傷が残っていたのである。
こんなに沢山、ところどころ盛り上がり血の瘡蓋まである……全然判らなかった。
私も夢中だったってこと……。
けれどこれだけは、絶対に見せるわけにはいかない。話すのもどう受け取るか、いや
烈火のごとく怒るに決まっているのに、こんな生々しい"行為"の名残を見たら、すぐに
でも宮に行って何をしでかすか判らない……。しばらく我慢すれば直るだろう。
ひりつく背中を横たえて、尚宮は眠りについた。
太平館の厨房は、よほどのことが無い限り尚宮一人内人数人、あとは下働きで回して
いる。下働きは全て通いであり、大きな行事の前後以外は、泊っての勤めはない。
警備も同じようなもので、食器類や食材、倉庫の絵画・置物その他調度品が盗まれぬ
程度の人員しかいない。
それで特に夜は人声も少なく、落ち着いて過ごせる場所である。
人手が無いから――見習いたちもいないため――尚宮とて他部署との打ち合わせや
献立作りから下拵え、実際の調理も、料理をお出しするまで、何から何までこなさ
なければならない。だから体調を崩すわけにはいかない。
チャングムはこれまでの太平館暮らしで、それを知っていた。そして何より、尚宮の
ことが心配だった。牢屋から引き摺り出され、以後チェ尚宮の下で酷使されてきたの
である。
出来ることならお側に居て、肩をお揉みしたり足を擦ってさしあげたい。けれど、
うるさい私がいたら邪魔になる。お身体を休めてもらうのが何より先。その内きっと、
お声が掛かるだろう。
そう思い、我慢して一人で眠るしかなかった。
しばらくは、打ち合わせをしたり、試作をしたり食器を磨いたり。
そうして二週間が過ぎた。
接待の日が近付くにつれ、太平館は慌しくなってくる。応接の間やお休みになる部屋の
確認に、宮から長官の部下たちも派遣されてきた。ハン尚宮たちはその方々の食事も、
本番の練習や試食を兼ねて提供していた。
久々に二人で本格的な料理に取り掛かる。
以前チェ尚宮に飛ばされた時には、苛立たしさを抑えるのに苦労した。だけど、今
こんなに幸せな時があるだろうか。
何をするのも一緒。
食材を蔵に納めるのも。
食材を取り出すのも。
材料を吟味するのも。
材料を洗うのも。
下拵えをするのも。
そして料理をするのも。
もちろん力仕事は男の下働きを使うし、下拵えや食器の扱いは女の下働きが手伝って
くれる。それでもやらなければならないことは沢山ある。
チャングムは手間のかかる仕事は全部引き受けて、朝から晩まで懸命に働いた。
尚宮にはなるべく静かに座ってもらい、仕上げや味見をお願いしようとした。
それでも尚宮はいつの間にか側に居て、同じような作業に取り掛かっている。
チェ尚宮は、もう一人内人を送ろうかと言った。それをハン尚宮は断った。
心遣いもあるだろうが、それより二人だけにしたくないという気持ちが、透けて見えた
からである。
忙しくてもこうして二人きりの方がずっといい。並んで手を動かしながら、ハン尚宮は
思う。
今でも時々、お前の横顔がミョンイに見えてくる。
お前はそろそろ、ミョンイと別れた時の年頃になるわね。あのままミョンイがいたら、
どんな女官になったのだろう。
あるいは、どんないい女になっていったのだろう。
お前にそれを重ね合わせて見てみたい。
できたお惣菜の一切れを、チャングムの口に入れる。昔ミョンイとそうしたように……。
あの子はいつも突拍子もないことをして、私の都合なんてお構いなしだった。
特にお料理のこととなると、時間なんて関係無しに熱心に聞いてきて。私も懸命に
話してあげた。こうして隣に並んで。
私だけでなく……私だけであって欲しかったけれど……ソングムにも。
あの子は普通では手に入らない食材をよく知っていたから。それに相手が名門の子
だろうと、私のような者であろうと、一向に頓着しなかった。ただ興味のあることに
夢中だった。
思えばミョンイとはいつも一緒にいて、幼い頃からよく触れ合っていた。
料理をするときも、しょっちゅう手を取って教えてあげた。
一番最初はいつだっけ。見習いになる前に同じ部屋で寝泊りしていた時……いいえ
もっと前、私がミョンイちゃんの家に遊びに行って、お泊まりしたときだったわね。
ミョンイちゃんのお家は布団も余分がないからと、小さな身体を寄せ合って一つ布団で
休んだ。
服は着たままだったけれど、ぎゅっと抱き締められて、ほっぺたをくっつけてきて。
それが柔らかくてとても気持ちよくて、安心して眠った。
今から思えば、あれが初めての夜だったのかも知れない。
あの子はとにかく、ひっつくのが好きな子だった。十二、三を過ぎて、胸が膨らんで
くると、何気ない顔で触っては、驚く私を見て笑い転げていた。
それがいつの間にか、じっと見つめられながら、深く包まれることになって。
そんなことを思い出しながら何度か放り込むうち、チャングムの唇に指が触れ、
慌てて引っ込めた。
あの子はただ無邪気に笑っているだけだったけれど。
唇の柔らかさに指が痺れている。確かに、ここに、チャングムがいる。指先に感じる
存在。そして幸せ。
お前と共に笑い合い、お前に包まれて……。
自分の頬の緩んでいるのを感じ、気取られまいと、ハン尚宮は厳しい表情を取り繕った。
―――終―――
331 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 21:54:17 ID:xCqTbqYi
壱参弐様
乙です!
なんかもうソングムたんがあまりにもかわいそすぎて泣けてきました(ノД`)
続きも楽しみに待ってますw
「うぅ」
「痛かった?ごめんなさい。」
「何をするの・・・」
「大丈夫。すごく汗を掻いているから躰を拭いてあげるだけよ」
そう言うと、チェ尚宮はハン尚宮の胸に顔を埋めた。
「!?」
ぺろりと、汗を舌ですくった。
くすぐったさとぞわりとする悪寒がハン尚宮を襲う。
ハン尚宮は手でチェ尚宮を押しのけようとしたが、やはり力が入らなかった。
それどころか、だんだん眠気が襲ってきた。
閉じそうな目を必死に開きながら、ハン尚宮は言った。
「貴女・・・何をしたの・・・」
チェ尚宮は答えの代わりに、肉付きの薄い耳たぶから細い首筋をカーブを描くように口付けをした。
「っい・・・や・・・」
ハン尚宮は潤んだ瞳でチェ尚宮を見つめた。
それを見たチェ尚宮は、満足そうに微笑みながら
「さっきの林檎に、睡眠薬を」
と言った。
「何ですって・・・!」
「だって、貴女、とても辛そうだったから。苦しくて眠れないでいるのでしょう?
だから睡眠薬を」
「そんな・・・・・・」
「でも気が変わったわ。寝かせない」
「なっ・・・!」
わずかに開いた口を閉じられないまま、両手で敷布を握り締めるハン尚宮が急に
いじらしくなり、
胸の先の尖った粒を、指の腹で少し強めに何度も擦る。
「ん・・・・・・っ」
ハン尚宮の口から思わず声が漏れた。
自分の奥がきゅう、と収縮していくのをチェ尚宮は感じた 。
こんどはハン尚宮の細い肩口に掴まる。
指先が、高さを増した一点をいきかうたびに、微弱な電流が下腹から腰に流れ、
太腿の内側にへんに力が入る。
そこが今にも、つってしまいそうだ。
言い表せないような感覚に体中がもぞもぞする。
どうしていいか分からないといった様に、裾からすらりと伸びた
白い両腿がピタと合わされる。
ほっそりとしたふくらはぎの筋肉までが、ときおりピンと張りつめる動きとなる。
チェ尚宮は黒い茂みに指を這わせ中の女芯を
探った。ぴちゃ、ぴちゃと淫らな音がする。
「あ・・・っ・・・・・や・・・めて・・・っ」
「ふふ。やめないわ」
チェ尚宮はハン尚宮の秘所に指を差し入れた。
ヌチュ。
「・・ぁあああああっ・・!」
硬く膨れた乳首を擦りながら、自分の中心が潤い、
それが敷布に少しずつ伝っていくのを肌で感じた。
吐く息が、今までに無く熱い。
チェ尚宮は立ち上がると後ろを向き、身に纏ってるものを全て脱ぎ捨てた。
細い背中、くびれたウエスト、よく実った果実を思わせる形のいい尻、
程よく肉がついた太ももに、すらっと伸びた長い脛。
ハン尚宮はその見事な肢体に目を奪われずにはいられなかった。
「ねえ・・・私のも触って」
チェ尚宮はハン尚宮の手首を掴み、黒い茂みに指を忍びこませた。
コリっとした女芯の感覚を確かめ、更に奥に指を進めさせると
ぬるっとした熱い粘液が溢れていた。
「あなたの体と・・・一緒でしょ・・?」
「ぃやっ!」
チェ尚宮の汗ばんだ額に髪が張り付き、恍惚な表情をする。
同じ女から見ても淫靡に見える。
敏感になってる秘所に舌の感触が加わった。
「あ、 やめ・て・・ああっ!」
チェ尚宮の舌は、敏感になって膨らんでいる女芽を中心に舐め回し
指を巧みにスライドさせていた。
ハン尚宮の頬は紅潮し、チェ尚宮の繊細な愛撫で全身が快感の波に襲われ、極限状態になっていた。
「ハン尚宮、いや、ペギョン。最高尚宮になるのは、私よ」
「うっ・・・ああぁッッッ」
指の速度が増し、その都度女芽を撫で上げる。
新たな蜜がトロっと奥から流れ出た。
「もちろん、貴女の実力は認めているわ。でも、絶対に負けたくない。負けられない。」
「あぁ、あっ、あっ・・・あっ・・・・・・いやああああっ!!!」
ハン尚宮は頭が真っ白になり、自分でも何が起こったか把握できないでいた。
気が付くとチェ尚宮が布団も被らず横で縮こまって眠っていた。ハン尚宮も寝間着を着ている。
ハン尚宮がチェ尚宮に布団を掛けてやると、チェ尚宮がハン尚宮が目が覚めたことに気がついて起きた。
「気が付いた?手荒な事をして悪かったわね」
そういうと、頬に優しいキスをした。
「この前の事は忘れるのよ」
そう言うと、チェ尚宮はハン尚宮の部屋を後にした。
私は、何をしていたのだろうか。
ハン尚宮は一人布団の中でさっきまでの事を反芻しては赤面していた。
赤面しつつ、あることに気がついた。
さっき、チェ尚宮は・・・『この前』と言わなかったか?
あれからずいぶん眠っていたのかしら・・・。
ミン尚宮とヨンセン、チャンイが入ってきた。
「ハン尚宮様、大丈夫ですか!?」
「ええ・・・」
「1週間も眠られたままだったんですよ」
と、ミン尚宮が言った。
「1週間も!?」
驚いた。
まさかそんなに眠っていたとは・・・。
「医女の話では、風邪が悪化して、軽い肺炎を起こされたんですって」
「それでチェ尚宮様がすごく焦っていらして」
「チェ尚宮が?」
「はい」
「ハン尚宮様が吐血されたと慌てて内医院に駆け込んでいらしたそうで・・・
1週間仕事の合間を縫ってはハン尚宮様の看病をされていたんですよ」
「・・・・・・」
「あんなに慌てていらしたチェ尚宮様は初めて見ました」
「ほんと、びっくりしました〜」
「ちょっと意外かも〜」
「そう・・・」
その頃チェ尚宮は、自室に戻ってひとりこうつぶやいた。
「ペギョン・・・料理対決の相手だもの、治って貰わなくては困るわ。
それに私は貴女を・・・。正々堂々戦いましょう」
翌日。
ハン尚宮は早くも仕事に復帰した。
だが、チェ尚宮の姿は見えなかった。
「チェ尚宮殿は?」
「お風邪を引かれて、今日は休みだそうです」
私が移してしまったのかしら・・・。
仕方ないわね・・・
ハン尚宮は、チェ尚宮の部屋へと林檎と氷水を持って向かった。
----------------------------------完----------------------------------
今週末は大漁ですね(;´д`)ハァハァ しかもチェ&ハン祭なのね。
338 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 02:38:20 ID:m5H/yEEg
冬心たん、待ちわびていたじょ。すっごくヨカタYO!!
ハン尚宮様かわいすぎて悶え死ぬwww
またネタ浮かんだら宜しく頼む。
>>333-335 クミョンが失恋して宿屋で泣いているというのに、叔母様ときたら抵抗できないペギョンにやりたい放題w
340 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 15:44:10 ID:9J+xkJx7
ある夜のことであった。夫と妻のせわしない話し声が響き渡る。
「まったく!あんたって人は!おとといは頭が痛くて、昨日は足が痛くて、今日は腰が痛い?痛くない日なんてあるのかい?」
「勘弁してくれよ〜。最近ずっとチャングムとイルトの遊びの相手をしてやってたから疲れているんだよ〜」
「父親のつとめは果たして夫のつとめは果たさないというのかい!」
「いや、それとこれとは別で……」
「あのね、貧乏人はこれしか楽しみがないんだよ。今日という今日は逃がさないよ!」
そう言うと妻は、後ろからトックをはがいじめにして服に手をかける。
「うわっ!ちよっ!ちょっ!やめんか!」
じたばたするトック。
「全く男らしくないね、この人は!」
その時、眠そうな顔をしたチャングムとイルトが扉を開けて入ってきた。
「ふあぁ〜。ん?おじさんとおばさん、何をしてるのですか?」
「どわっ!!」
慌てて離れる二人。
「いやあのその……体を鍛えていたんだな。泥棒とか入ってきても撃退できるように」
「そうそう!こういうことは日頃から訓練しておかないとね」
「……ふ〜ん……」
釈然としない表情のチャングムとイルト。
妻はまずいと思い、話題を変えようと質問を切り出す。
「でもどうしたのさ。こんな遅い時間に起きて」
「眠れないんです。」
「あれまあ。それは悪いことをしたね。うるさかったんだね。まったく、あんたのせいだよ!」
「何だよ……。わしだけのせいか?」
その言葉は無視。
「じゃあ、お話をしてあげるよ」
「わあ、本当ですか?」
寝室に向かう妻と嬉しそうなイルトとチャングム。
一人残されたトックは溜め息をつく。
「やれやれ……」
しばらくして
バーン!と勢い良く戸が開いて妻が突入。
「ひゃあ!何?どうしたんだ?」
「ちょっとあんた!これは何?」
バサッと床に本を叩きつける。それを見てトックは顔が青くなり
「おっ!そ、それは……わしの描いた春画……何故お前が!じゃなくて。いや、あの、実はだな。」
「へ〜え。これはあんたが描いたのかい?よく描けてるじゃないか。で、夫のつとめはおろそかに」
「いや、これは生活のために……」
「ああ?そりゃー、金になるなら文句は言わないよ。だけどね、そのお金はどこに消えてるのさ!それは、あんたの懐!だろ?」
そう言うと、妻はトックに掴みかかろうとする。
「おっと!」
素早く身をかわす。
「逃げるんじゃないよっ!」
狭い部屋の中を走り回る二人。
「ねえ、母ちゃんお話まだ〜」
再びイルトとチャングムが部屋に来る。
「ねえ、イルト。おじさんとおばさんは何をしているの?」
「さあ、よく分からないけど、お前が父ちゃんの部屋から持ち出していた、あの本が母ちゃんの気に触ったらしい。あ、チャングム。前から言おうと思っていたんだけど、いくら本が読みたいからって、勝手に持ち出したら駄目だろ?読みたい時は父ちゃんに断らないと」
「そ、そうね……。私、おじさんに謝らなきゃ……きゃっ!」
「チャングマ〜助けてくれい!」
チャングムの後ろに隠れるトック。
「こら!子供を盾にするなんて、卑怯だよ!」
騒がしい夜はそうして更けていった……。
>>341 漫才夫婦キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ッ !!!
と思ったら
>いくら本が読みたいからって、勝手に持ち出したら駄目だろ?
この頃から本の万引き癖があったのかチャングムw
343 :
チャングム×チェ尚宮〜復讐〜:2007/02/28(水) 00:49:52 ID:bhX2G4ls
冬心です。
チェ尚宮が病気にかかった大根を食べて発病したときの、
ドラマでは40〜41話になります。
尚、本当はこの時医局長はまだ生きているんですが、
ここでは既に亡くなった(亡くなってないけど)後という設定にしています。
344 :
チャングム×チェ尚宮〜復讐〜:2007/02/28(水) 00:50:59 ID:bhX2G4ls
チェ尚宮は病気にかかった大根を生のまま食べ、その翌日。
チェ尚宮は発病。
クミョンが部屋にやって来た時には、高熱を発し、立ち上がることもできない状態になっていた。
食中毒の症状に苦しむチェ尚宮の部屋に、治療のためにやって来た医女はチャングムだった。
「お・・・お前が何故・・・」
「女官長様の治療には私が当たります」
「仇を助けてやるか、見捨てるか」
かつて「まだ心をきめかねる」と答えたチョン・ウンベクからの問いに、彼女自らの行動を以て答える時が来ていた。
チェ尚宮に施鍼しようとするチャングムを丁度部屋に入ってきたクミョンが制止する。
「何をしている!出てお行き。お前ではなく他の医女をおよこし!」
だがチャングムは、微かに笑みすら浮かべてクミョンに問いかけるのだった。
「何を怖れて私の治療を拒否なさるのですか?」
そのチャングムの言葉が、病を得て弱っていたチェ尚宮の強烈な意志を再び蘇らせる。
「お待ち。治療しなさい。チャングムの言う通り、怖れなければならないことなど何もない」
促されるまま、再び鍼を手にするチャングム。
「最高尚宮様は席を外していただけませんでしょうか」
「何?」
「治療にはしばらく時間がかかります。ですから・・・」
「席を外しなさい」
チェ尚宮が言うと、クミョンはそれ以上何も言わず部屋を出て行った。
チャングムはチェ尚宮の手首を取り、施鍼を終えた。
終えても出て行こうとしないチャングムをチェ尚宮は不審に思った。
「終わりでは無いのか?」
「いいえ。」
チャングムチェ尚宮にはすばやく近づくと、チョゴリの下に手を入れ、
チェ尚宮の右のふくらみを掴んだ。
「なっ・・・!」
・・・力がはいらない。
高熱も出ていたし、何より これから起こることの恐怖を思うと、力が入らなかった。
「医局長の遺書は御座います」
そう言ってこんどは、下着の下から直に掴んできた。
形を確かめるように色々な角度から揉み、不適な笑みをうかべた。
胸を乱暴に揉まれ、少し痛かった。
「・・・ク、クミョンだけは。・・・助けておくれ・・・!」
情けなくも、弱みを握られた今のユリウスにはその言葉しか思い浮かばない。
その言葉は同時にチェ尚宮が罪を認めたということに等しかった。
チャングムはいつも強気なチェ尚宮の初めて見る媚びるような大きな瞳を
間近で見てしばらく優越感に浸っていた。
あのなチェ女官長が私に食い下がっている。
けれど、それ以外に何か別の感情が沸き上がってきた。
345 :
チャングム×チェ尚宮〜復讐〜:2007/02/28(水) 00:51:49 ID:bhX2G4ls
「女官長様。私も、ハン尚宮様も、決して女官長様をお許しにはなりません。」
「だったら・・・。」
「ですが、遺書を皇后様に、いえ、誰にも見せずに処分しても構いません」
「・・・!?」
「・・・けれどその代わりにもっと確かめさせて頂きます。」
「・・・チャングム・・・?」
ユリウスは安堵したのも束の間、今度は別の変な恐怖感に苛まれなくては ならなくなった。
髪を解く。
チョゴリの紐を乱暴に解き、チョゴリを力ずくで一気に左右に開くと、
チェ尚宮の白い両胸がチャングムの目に晒された。
・・・何をしようというの・・・。
下も脱がせる。
チャングムは目を見開いてチェ尚宮の全身を眺め回した。
まるではじめて女性の裸体を見る男がするように上から下まで・・。
丸く膨らんだ胸、細く括れた腰、すらりと伸びた
肢体。透き通るような全身。
同じ女、また敵でありながら、なんてはかなげな愛らしい体をしているのだろう・・・そう思った。
チャングムは自分とハン尚宮以外に
他の女性の容姿を羨んだことは無かったが、
チェ尚宮を見て、純粋にきれいだと思った。
それに、長く伸びた漆黒の髪、涙を含んだ大きな瞳、
同じ色をした長い睫毛、
柔らかい頬、薔薇色の形よくふくらんだ唇、こんなに近くで
見たことが無かっただけに、改めてそれらも
同じ女から見ても本当に美しいと思った。
気づいたら吸い込まれるようにチェ尚宮の首筋に自らの唇が赤い跡を
つけていた。
「チャングム・・・!?」
チャングムは自分がいまどんな感情を抱いているかもわからず、
とりつかれるように、チェ尚宮の首筋から鎖骨あたりまで唇を這わせ、
夢中でいくつかの赤い跡をつけていた。
チェ尚宮も自分の身に何が起こったか分からなかった。
呆然としている。
やっと離れたあと、
チャングムは自分の息がとても荒い、しかも敵である者にこのようなことを
してしまう自分がショックであったが。
本来の目的は治療だけだったのに・・・。、
この短時間の間にどうだろう。
・・・この私が不覚にも・・・。
けれど触りたい・・。もっと・・。この美しい身体を・・。
そしてこの美しい顔が私によってどうなるのか、もっと見たい・・・。
チャングムはチェ尚宮を壁に押しやると片手で胸を円を描くように
優しく掌で愛撫しながら、自らの唇をチェ尚宮の唇に押しつけた。
胸の弾力と唇の弾力がすぐにチャングムを翻弄した。
チェ尚宮は驚き、口が半開きになっていたためチャングムの
舌はすぐにその口腔内に滑り込んでしまった。
「んっ・・」
チェ尚宮はさらに驚き、声をあげてしまった。
チャングムもハン尚宮以外女性の身体に触れる経験に 自分自身、
驚いたが、その意外な心地よさに驚嘆した。
滑らかな肌。甘い吐息。舌の柔らかさ。
・・・ハン尚宮様とはまた違った・・・。
チェ尚宮はチャングムにこういう事をされる自分がショックだった。
私の何が、チャングムにこんなことをさせたんだろう。
口が離れた。
「チャングム、何をするのだっ!」
チェ尚宮はチャングムの
口紅で真っ赤になった自分の口元を拭った。
「いいですか?このことは口外なさらないように。もし口外したら、
私は遺書のことを言います。 そうなったら・・・困るでしょう。
大人しくしたら・・・悪いようにはしません。」
自分でも、つくづく男が吐くようなセリフだと思った。
けれど、もう止められない。
「・・・。」
チェ尚宮は混乱したまま仕方なく口を噤んだ。
チェ尚宮の胸に顔を落とすと、その尖りを口に含んだ。
舌先で幾度もそこを舐め上げる。
「いや・・・」
くすぐったいような感覚に身体が震える。
チェ尚宮の普段とトーンの違う声がチャングムを刺激し、
もう夢中になり、舌は舐め上げる速度を増し、時に強くそこを吸い上げた。
チュパッ、チュパッとチャングムの唇から淫音が発せられる。
チェ尚宮はこの音に耳を塞ぎたくなった。
「ぁっ、いや・・だっ・・」
・・チェ女官長様・・かわいいです・・もっと乱れて・・
本来の目的とは大きく外れたことをしていると分かっていても
チャングムはもう自分を止められなかった。
チェ尚宮の白い双丘の先端はチャングムの舌により、すっかり形状を
変えられてしまった。
「んっ・・くぅ・・」
意志とは関係なく、漏れてしまう声にチェ尚宮も自分で驚く。
ハン尚宮様を殺したも同じ憎かったはずの女の口から
恥ずかしげに上ずった吐息が漏れるたびに
この女がだんだん愛おしくなり深く深く口づける。
チュプ・・ンっ・・チュプ・・
以前、ミョンイに無理やり唇を奪われたことはあったが、
深い口づけを経験していないチェ尚宮にはこれは刺激的だった。
女同士とはいえ、チャングムの口づけは・・・
・・・一瞬夢中になり、心で自分を叱咤した。
口を離すと、透明な唾液が糸をひいた。
チャングムはチェ尚宮がこれを嫌がってはないことを確信した。
チェ尚宮の白い腿には、何やら液体が伝い下りはじめ光っていたのだから。
それはチャングムをますます高ぶらせ、当然のように次の行為へ導く。
伝い下りた液をなすりつけるようにしながら、内腿をなでまわすと
指先で、ヌメヌメとした割れ目をなぞった。
「きゃあっ・・・!」
突然、あらぬ場所に触れられ、一気に我をとりもどした。
「それ以上は、もう、しないで・・・。やめなさい!」
頬を赤らめたチェ尚宮をなだめるように言った。
「ここまできてやめたら、もったいないです。
やめないでと言わせるようにしてあげます・・・。」
不適な笑みがチャングムの顔をさらに不気味にさせる。
「ほら、もうこんなにして・・・。
これは女官長様が気持ちいいって出した蜜の味です。」
チャングムは絡みついた愛液を2本の指でぬちぃぃっと伸ばすと
無理やりチェ尚宮の口に入れた。
甘酸っぱい自分の液体を自分の口で無理やり味わわされた。
女の細い指がこんどは中に埋め込まれてゆく。
「つっ・・・うぅ・・・。」
チェ尚宮は激烈な痛みに唇を噛む。
涙が頬を伝う。
・・・私達の命を守る代償がこれ・・・?どうかしている。助けて・・・クミョン・・・
心の中で弱い叫びをあげていた。
「すぐ楽にして差し上げます。だから・・・泣かないで下さい。」
細い指は愛液を潤滑油にしながら、ずぶずぶと埋め込まれていった。
チャングム自身、女がどうされると喜ぶかはわかりすぎるほどに分かっていた。
ゆっくりとチェ尚宮の腿の間に頭を割り込ませ、
よく見えるようにすると、唇を秘芽に近づけた。
そしてそこを舌でぴちゃぴちゃと嘗め回すと同時に
指はテクニカルにチェ尚宮の内部をかき回し始めた。
「いやっ・・・あっ・・・!」
チェ尚宮の体はぴくっとのけぞった。
こんな場所を舐めるチャングムにも、なされるがままになる自分にも失望した。
舐められている屈辱と
卑猥な音をたてる舌の感覚に背筋がたえずぞくりとしたが、
同時に意志と反する何かがチェ尚宮の体に押し寄せてきていた。
それを知るのが怖く、逃れようと腰をくねらせる。
それがチャングムの目にはチェ尚宮が快感に打ち震えているようにしか見えない。
「やめ・・て・・・やめ・・・てぇ・・・。その・・・指も・・あっ・・」
ずるっ・・ぴちゃっ・・ちゅ・・
チャングムの指に又新たな蜜がまとわりついてきた。
おまけにひくひくと締め付ける。
チェ尚宮の秘芽はその存在をしっかりと示し始めた。
その場所から似つかわしくないほどの愛液が
溢れ、チャングムの掌までぬらし、それがかえって淫らであった。
「んはっ・・・やぁっ・・・いやっ・・・」
チャングムは頬を上気させ、苦痛とも快感ともわからぬまま悶えるチェ尚宮の
顔を本気で美しいと思った。
「いいです、もっと。もっとです。女官長様。」
さらに指と舌の動きを早める。
んぁっ・・あぁっ・・」
時々、チャングムの顔が楽しそうにこちらを見上げる。
下からは絶えず甘い香りが昇ってくる。
・・・世の中にこんなことがあったなんて・・・。しかも女性同士で・・・。
自分の口から漏れる声をもはや自分では抑えられない。
指が、舌が、自分の恥ずかしい場所を這い回る。
腰全体に温かい血液がたまるのを感じ、膝はガクガクと震えだした。
「女官長様。素敵です。もっと素直になって下さい。ほらっ。」
もう片方の指で、胸の先をつまみ上げ、
芯をむき出しにしたあどけない秘芽を強く弱く吸い上げた。
「あっ・・・!あっ・・・!・・・んっ、もうっ・・・」
チャングムはチェ尚宮の限界を指で感じとると
指と舌の動きをぴたりと止めてしまった。
チェ尚宮は急に我にかえり、ちゃんぐむを見上げた。
息が上がっている。さっきまでの自分の様が急に恥ずかしくなった。
「・・・っ・・・チャングム・・・?」
「もう、やめておきます?」
自信たっぷりに笑い、ちぇ尚宮を見下ろした。
チェ尚宮尚宮の顔が冷静になるのを見計らい、また同じ事を繰り返しては
やめた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
・・・よく分からないが、その先にもっと何かがある・・・そんな気がしてきた。
チャングムの指と舌がとても魅力的に見えていた。
「どうします?」
「・・・ねがい・・・づけて・・・」
「何ですか?聞こえません。」
「つっ・・・続けて!」
「ふふふ・・・わかりました。」
・・・はっと気がついた時には、チャングムの体にもたれかかり、
全体重を預けていた。腰全体がひどく重く、熱い。
下腹部が時おり、とくんと脈打つ。
「チェ女官長様。かわいかったです。あ・・ら、泣くほど良かったのですか?」
チャングムが指や手のひらににべっとりついた
チェ尚宮の愛液を愛おしそうに なめている。
ハン尚宮の顔が・・そして、
いま一番思い出したくないミョンイの顔が
浮かぶと、急に罰が悪くなりやりきれなくなった。
私は・・・敵の医女に・・・。
首や胸につけられた跡を誰かに見られたりしたら・・・。
「チャングム・・・もう・・帰ってちょうだい。」
「待って下さい。ちゃんと私にもお礼をしてもらわなくては・・・」
チャングムはにやりと笑った。
そしてまた唇が近づいた。
---------------------------------完---------------------------------
351 :
冬心:2007/02/28(水) 01:39:10 ID:q8k/snI4
>>344 情けなくも今のユリウスには...
すいません、同時に他のも書いてるので交ざりました(○_○;)
ユリウスでは無くチェ尚宮です。
352 :
蓮生:2007/03/01(木) 20:25:59 ID:6sp7E9T3
こんばんは、蓮生です。前の百合萌えでのチェ×ミンのネタを元に書いてみました。
ドラマでは28話あたりになります。
微エロ、ジャンルは百合になります。
353 :
チェ尚宮×ミン尚宮「反抗」:2007/03/01(木) 20:27:09 ID:6sp7E9T3
チャングムとハン尚宮が謀反の罪で宮中を追い出され、
身分は奴婢になり、
チャングムは済州島へ流刑、
ハン尚宮は済州島へ流刑途中息絶えた。
水刺間では新しい最高尚宮が決まっていた。チェ尚宮だ。
この日、チェ尚宮が最高尚宮になった祝賀会があり、
チェ尚宮は尚宮達から次々と贈り物を受け取っていた。
「おめでとうございます……」
「ありがとう、あちらに座りなさい」
「おめでとうございます!尚宮様!」
「尚宮様!」
チェ尚宮はかつてハン尚宮に慕っていたミン尚宮の顔を見つめた。
「全て忘れてください!私を尚宮様の手足のように使って下さいませ!」
――ほぉ…チマの中で横柄にあぐらかくとはな……私に反抗しているつもりなのかしらね……
チェ尚宮は薄く微笑んだ。
「座りなさい」
「はい」
354 :
チェ尚宮×ミン尚宮「反抗」2頁:2007/03/01(木) 20:29:00 ID:6sp7E9T3
全ての贈り物を受け取った後、チェ尚宮は尚宮達に挨拶を述べた。
「皆、ありがとう
まずは、騒がしかった水刺間にようやく平穏が訪れた事を嬉しく思う
水刺間から謀反人などこれからはあってはならないこと!
謀反に荷担したハン尚宮やチャングムは勿論のこと、二人と親しかった者を許す事は出来ぬ
そもそも、事の起こりは伝統を無視するチョン尚宮様や、賎しい身分であるハン尚宮を最高尚宮にしたこと
時代に背を向け、人を見極められないとああなるのだ
しかし、私は違う!
誰もが認める歴代最高尚宮の一族の出
私はその伝統を守り続けるつもりだ
それと、皆が軽率に行動したことも水に流す事にした
これからは私を信じ、今まで通り慣行に従うようになさい」
こうしてチェ尚宮は尚宮達に自分に忠誠を誓わせるのだった。
チェ尚宮はふと薄い笑みを浮かべながら見つめたミン尚宮の方を見つめた。
「…ミン尚宮、今夜私の部屋にきなさい」
ミン尚宮は驚いてチェ尚宮の顔を見つめた。
「は……はい……」
――この私にささやかに反抗するとはな……まぁ、いいわ
今夜思い知らせてあげるわ
355 :
チェ尚宮×ミン尚宮「反抗」3頁:2007/03/01(木) 20:31:01 ID:6sp7E9T3
祝賀会が終わった後、ミン尚宮とチャンイは水刺間の執務室にいた。
「反抗するとおっしゃったのに『忘れてください!』ってどうしたんですか?」
「反抗したわよ!」
「どうやって?」
「お辞儀するとき正座しないで、チマの中で横柄にあぐらをかいていたの!」
チャンイは悔しそうに舌打ちをした。
「仕方ないでしょ!?
怖くて死にそうだったんだものぉ―!!
『許す事は出来ぬ!私は違う!』」
「実は私も怖かったです…」
「だから半分だけへつらうのよ!」
「え?」
「だから〜…うーん…身体と心は別物って事よ
とにかく心の中では反抗するわ!私達がここで生きる道はこれしかないもの!」
「そうですね!私は尚宮様についていきます♪
あ!ところで尚宮様?」
「何よ」
「そういえば今夜、最高尚宮様に呼ばれたんですよね〜?」
「は!!忘れてたぁ〜…」
ミン尚宮は困り顔で
頭を抱えていた。
「私、狙われている!」
「はぃ?」
「やっぱりバレたのかしら?串焼き、味付けをいつもより少し塩辛くしたのも、チマの下であぐらかいてたのも……!」
「尚宮様…本当にささやかな反抗ですね」
ミン尚宮は机を叩きつけていきなり立ち上がった。
「いや!!わかったわ!!むしろ身体が目当て……!?」
――はぁ…またはじまった…ミン尚宮様の激しい思い込み…
「まだ女の操を守り続けているのにぃ!!」
チャンイはいつもの事だと思い、呆れ顔。
356 :
チェ尚宮×ミン尚宮「反抗」4頁:2007/03/01(木) 20:33:42 ID:6sp7E9T3
そして夜になり、
この日の月も淡く、宮中を包み込む。
誰もいない水刺間の厨房でミン尚宮は桶を頭にかぶってしゃがみこんで身を潜めていた。
「ミン尚宮様!」
「しっ!名前呼ばないで!最高尚宮様に見つかっちゃうでしょ!」
「今度は何ですか?」
「あー…いきたくないのよぅ
こんな夜更けに呼び出すなんてもうあれしかないじゃない〜…
私狙われてるわ!
襲われちゃうわ!」
チャンイは溜め息をつき、呆れ顔でミン尚宮を見つめた。
「隠れても逃げても最高尚宮様の命令だから無駄ですよ〜!」
ミン尚宮は立ち上がり、チャンイの肩を持って揺さぶった。
「あんた!師匠の危機なのよ!ちょっとは心配したらどうなのよ!私、殺されちゃうか襲われちゃうかどっちかなのよぉ〜!?」
「大丈夫ですってぇ〜!尚宮様ぁ!
いくら最高尚宮様でも殺しはしませんてぇ!それにミン尚宮様を襲う人なんていませんよぉ〜!」
その時、声がした。
チャンイとミン尚宮は声のするほうを見つめた。
「あら、こんなとこにいたの?」
「最高尚宮様…っ!」
―――来たぁー!!!!
「さぁ、黙ってついてきなさい」
「…はい…」
357 :
チェ尚宮×ミン尚宮「反抗」5頁:2007/03/01(木) 20:35:22 ID:6sp7E9T3
ミン尚宮はチャンイの方を振り返って目で合図を送っていた。
チャンイは小声で
「健闘を祈ります、尚宮様ぁ!」と言った。
ミン尚宮は頷いた。
チェ尚宮もミン尚宮の方を振り返って
「何をしている!
早くなさいミン尚宮!」
「ははは、はい……っ!」
――恐いわぁ…どうしよう…生きて帰れますように……
チェ尚宮に連れられ、ミン尚宮はチェ尚宮の部屋へ訪れた。
「座りなさい」
「は…はい…」
チェ尚宮も上座に腰を下ろした。
「…ところで…」
「はい…何でしょう…?」
「今日の王様への御膳にお出しした串焼き、お前の担当であろう?」
「はい…さようでございます…」
「味付けがいつもより少し塩辛いと王様がおっしゃっていたわ」
「も…申し訳ございません…!」
「全く!今の王様は温厚なお方だから良かったものの、
先代の燕山君であれば私達は処刑は当たり前だったのよ!?」
「申し訳ございません…最高尚宮様…」
――あ〜!やっぱりバレてたぁ〜…!
358 :
チェ尚宮×ミン尚宮「反抗」6頁:2007/03/01(木) 20:37:49 ID:6sp7E9T3
「後、今日の祝賀会の時、お前はチマの下は正座ではなくあぐらをかいていたわね?
あれはどういうつもり?」
ミン尚宮は驚き、
チェ尚宮を見つめた。
「……!?」
「あれは私に対しての反抗?」
ミン尚宮は図星をつかれ、返す言葉を失った。
「…ふん…まぁ、いいわ
今回は許してあげる
反抗的なお前をどう躾るかしらねぇ…」
チェ尚宮は立ち上がり、ミン尚宮の傍へ来た。
ミン尚宮の頬を撫でた。
「お前はまぁ悪くない容姿ね」
「さ…尚宮様…?!」
「脱ぎなさい」
ミン尚宮は耳の掃除をしてもう一回聞き直した。
「もう一度言う!服を脱げと言ってるでしょ!」
「最高尚宮様!いきなり…な…なんて破廉恥な!!」
チェ尚宮は強引にミン尚宮を床に押し倒した。
「私、ふざけてないわよ?
お前…自分を私の手足のように使えと言ったわね…遠慮なく使わせていただくわ」
「尚宮様!離してください…っ!」
――忘れてやるわ…ペギョンの事…
忘れてやるのよ……
チェ尚宮はハン尚宮に対する想いを消す為、誰でも良かったから躰の温もりを求めていた。
359 :
チェ尚宮×ミン尚宮「反抗」7頁:2007/03/01(木) 20:39:58 ID:6sp7E9T3
ミン尚宮は怯えながらも必死に抵抗した。
――こっ…この人正気!?
「最高尚宮様っ!
そっそういう事はお互いの合意の下になされなくてはいけっ…いけな…っっ」
チェ尚宮はミン尚宮の腕をさらに強く握った。
チェ尚宮の鋭い眼光がミン尚宮を突き刺す。
「ぃた…っ!」
「さっきからごちゃごちゃとうるさい
すぐ済ませてあげるからおとなしくなさい」
「最高尚宮様…!
そっ…そういう事は愛があるもの同士がするもの…ではっっ」
チェ尚宮はミン尚宮の顔を覗きこみ、
薄く微笑んだ。
「お前は道具よ
人が道具に特別な感情を抱くものか」
チェ尚宮はミン尚宮のチマの紐をほどいた。そして上衣をはだけさせられた。
――ああまさか本当に襲われるなんて…!
心と身体は別物…
心と身体は………
「さ…尚宮様!!
私やはり後ろ向きでいいですっっ!!!!!」
「後ろだろうが前だろうが黙ってればすぐ終わるわ!」
ミン尚宮は裸を見られる事に羞じらっていた。
「裸を見られるのにそんな羞じらうとは…
処女なの?」
チェ尚宮はミン尚宮の耳元に息を溜め、
軽く舐め、チェ尚宮の唇は耳元から首筋へと伝っていった。
「うぅ……っ」
「あら、本当に処女のようね…女官なら誰でも経験してる事なのに…お前、てっきりチャンイとしているかと思っていたわ」
360 :
チェ尚宮×ミン尚宮「反抗」8頁:2007/03/01(木) 20:42:25 ID:6sp7E9T3
――そういえば……チャンイとはこんな事なった事がないわね……
「本当にお前…こうしてみると可愛らしい顔してるわね…
おとなしく抱かれれば悪いようにはしないわ」
チェ尚宮はミン尚宮の胸に触れた。
「あら…形も綺麗だこと…」
「さ…尚宮様…っ!」
――そういえばペギョンも形が綺麗だった……
もう一度触れられるものなら触れたい……
乳房の中心にある紅い実をいじった。
ミン尚宮から甘い声が漏れる。
――心と身体は別物よ心と身体は…
ミン尚宮はひたすら己に言い聞かせていた。
紅い実にチェ尚宮の唇が触れた
紅い実を舐めたり、
強く吸ったりした。
「あぁ…っ」
溜め息のような甘い声。
チェ尚宮はミン尚宮を抱いているのに
頭の中はハン尚宮の事でいっぱいだった。
――忘れてしまいたい…忘れたほうがいい…
「ギヨル……」
ミン尚宮は驚き、目を見開いた。
――ギヨルって…私の名前……
チェ尚宮はミン尚宮の顔を覗き込み、
唇と唇が近づこうとしていた。
361 :
チェ尚宮×ミン尚宮「反抗」9頁:2007/03/01(木) 20:45:25 ID:6sp7E9T3
『ギヨル……』
ミン尚宮の名を呼ぶチェ尚宮のあの時の表情を見てミン尚宮はいつも強気なチェ尚宮なのに何故あんな誰かにすがるようなそんな寂しくてたまらないという表情をするんだろうと思っていた。
――初めてみたかも…チェ尚宮様のこんな表情……
チェ尚宮はミン尚宮に口づけをした。
身体を押し込み、口づけを深くした。
「んん……っ」
チェ尚宮はまたハン尚宮の事を思い出していた。
――ペギョン……
何故私の心を掻き乱すの……?
忘れようとしているのに…
貴女以外の女を抱いても全然満たされない…
唇と唇が離れ、
チェ尚宮は小さく呟いた。
「……ギョン……」
「尚宮様?」
「愛してる………ぺギョ………ン」
チェ尚宮はミン尚宮の身体からどいて
背を向けて座った。
「ミン尚宮、
もういい…、おさがり」
「え?」
チェ尚宮は声を荒らげた。
「もう下がれと言うに!!」
「は…はいぃっ!!」
ミン尚宮は乱れた衣服を整えて部屋を後にした。
362 :
チェ尚宮×ミン尚宮「反抗」10頁:2007/03/01(木) 20:47:55 ID:6sp7E9T3
ミン尚宮が去った後、チェ尚宮は上座に座り頭を抱え思いに更けていた。
――ペギョン…貴女への想いはそう簡単に消えないみたい…
この胸の中に鮮やかに残っている…………
貴女を忘れようと
他の女を抱いてみたけどやっぱり違うのよ…貴女ほどの人なんていない………
ペギョン…ペギョン…
「ペギョン…」
チェ尚宮は小さく呟き、机上に顔を埋めて泣き続けた。
――チェ尚宮×ミン尚宮「反抗」・終
363 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/01(木) 22:47:23 ID:E6S6zNgE
うわぁぁぁぁん、漏れもかなしいぉペギョンタン〜〜〜(っ´д`)っ
>>344から
>>350の続編です。
鬼畜度あがってます。
かなりエロいです。
苦手な方はスルーを・・・
口づけの嵐の後、チャングムは布団を敷き、すっかり怯えきっているチェ尚宮を無理矢理布団へ引っ張り込み
万歳の姿勢をとらせ、布できつく手首を縛り上げた。
「チャ、チャングムっ・・・何を・・・!」
「大丈夫。お静かに。もっと気持ち良くさせてあげます」
手の自由を奪われたまま布団に仰向けに寝る姿勢をとらせた。
そのまま、軽く胸に触れた。
胸や、鎖骨には先ほどの「跡」が赤くいくつも浮かび上がっている。
――――これは、復讐です。ハン尚宮様を陥れた――――
さらけだされた脇の下にむしゃぶりつき、わき腹を舌で何度もなぞった。
ウエストのあたりが、ぴくぴくとくすぐったそうに震える。
そのまま、お腹、臍、足の付け根を丹念に舐め回す。
どこに触れても舌に吸い付いてしまうような、潤った、なめらかな肌に・・・。
「どうですか?思うように躰を動かせない方が、格段に良いでしょう?」
答えられないまま白い体を震わせている。
・・・チャングムは今までハン尚宮とどんなことを・・・どんな風に・・・?
思わず想像せずにはいられない。
手は、白い胸をもみしだき、乳輪の周りを円をかくようにくるくると指先でなぞる。
もう片方の手は、足の付け根や内ももをまさぐるが、秘所には決して触れない。
それを、気の遠くなるほど執拗にくりかえす。
先ほどと違い、明らかにポイントをはずされ、じれったささえつのる。
・・・・・・私は一体何を考えているの・・・何をして欲しいというの・・・・・・
「このままで良いですか?ちゃんと言わなければこれ以上触りませんよ。」
元来、気が長いほうではなく、じれったいことを好まない彼女は
腹さえ立つ気分に追いやられた。耐えきれず・・屈辱的な思いで懇願をする。
「・・・もっと・・・さ・・・触って・・・。」
「どこを?」
「む・・・胸の・・・先を・・・。」
「随分素直になりましたね。」
「ほら。こんな感じですか?」
二本の指で、胸の頂を摘みながらずらし、口はもう片方の先端を吸い上げた。
途端、その刺激が下腹部へつながり、膣がしまり、熱い蜜をじわっと溢れさせた。
「ここが、良いのですか?」
唇を震わせて、チャングムの動きに準じながら髪を揺らめかせ
小さく頷いた。
・・・嫌だ・・・どうしようもなく・・・可愛い・・・
反抗的で強気な気質なのに、すこし前とは思えぬほど素直で、手の動きに
体を小刻みに震わせるチェ尚宮に、どうしようもない愛おしさを感じ、
ますます惹かれていく自分を否定できなくなった。
頭が下におりると、チェ尚宮は反射的に足をぴたりと閉じた。
あふれ出していたみだらな液で合わせた内ももがにゅるっとすべった。
「ちょっと!・・・誰が足閉じて良いって言いました?」
思わず声を荒げた。
「・・・。」
「いまさら何を恥ずかしいっているのですか」
言いながら、閉じられた脚の間に強引に指をすべりこませ、そのまま
中へ指を侵入させた。
その指はクチュ、と簡単にのみこまれていく・・・。
・・・すごい・・・
そこはすでに熱く潤みきっており、何度か出し入れするだけで
チャングムの手のひらまでぬらした。
「こんなに淫らな音を立てていますよ。ここ。これ以上したらどうなるでしょうか・・・ね?」
卑猥な言葉に、チェ尚宮は耳をふさごうと思ったがその手は上で
縛られていることを思い出し、唇を噛みしめた。
指を二本に増やし、中で折り曲げて天井をつつきまわしてみる。
すると、閉じられていた膝がガクガクと震えながら、弛緩し、開いていった。
「ん・・・んん・・・っ」
指の動きに合わせ、声を抑えようと口を閉じるも、鼻から吐息が抜け出て
しまう淫猥さは、チャングムをますます高ぶらせ、指のスピードをあげさせていく。
いつの間にかチャングムの顔は、そこを覗き込む形となり、
執拗に、一点を攻めていた。
「綺麗です。女官長様。ねえ。聞こえてます?」
天井は指の動きにこたえるように厚みをまし、やがて膨れ上がっていった。
「・・・そ・・・そんなとこ、見る・・・な・・・!」
たまらず、口を開いたそのときだった。
とつぜん透明のさらさらした無味無臭の液体が飛沫を上げて、何度も噴き出し、
チャングムの顔や髪に直撃し、それは口の中にも入った。
「・・・っ!!」
チェ尚宮が驚いて目を見開いた。
・・・すごい。まさか私がここまでさせるなんて・・・
自分の躰におこったことが理解できず、ただ驚き怯えているチェ尚宮に対し、
女の躰の神秘に感激しながら、チャングムは一人このうえない優越感を感じていた。
「もう・・・こんなに濡らしてしまって・・・。」
何かわからず打ち震えているチェ尚宮の赤く充血した秘口に、自らの舌を尖らせて
ぐっと奥まで刺しこんだ。
「・・・あっ!!」
・・・ニュルッ・・・チュポッ・・・
指と違い、ぬるぬるとした感触と熱い吐息にたまらず声をあげる。
「んぅ・・・は・・・あ・・・っ」
「・・・可愛い声を上げてしまって。まだ足りませんか?」
舌の動きを早める。
「そ・・そんなっ・・やっ・・」
舌を抜き差ししたまま、固く立ち上がった秘芽を指先でこねあげ、反対の手の指で
胸の突起をくりくりと転がすと、すぐに内壁が舌を強く締め付けた。
「・・・はぁっ!ぁあ・・・ん!!」
入り口から奥に舌を飲み込むように、膣肉が何度も蠢き
腰を痙攣させ、細い体は電気を流したかのように何度も跳ねた。
そして、愛液をびちゃびちゃと流れさせ、チャングムの口のまわりを散々に濡らした。
少しの間、白い体はこまかく余韻に震えていたが、手の拘束を
解いてやるころには、目を閉じ完全に意識を遠のかせていた。
チェ尚宮の上気した頬を撫でながら言った。
「聞こえていないでしょうけど・・・言わせていただきます。私、女官長様を許すことは出来ません。
鍼を持った瞬間殺意も浮かびました。ハン尚宮様をあんな目に遭わせて。
でも・・・女官長様が許しを請うのなら・・・
これからも・・・」
自分でも何を言っているのやらと苦笑すると、
唇をそっとチェ尚宮のそれに押し当てた。
クミョンは、しばらく経っても出てこないチャングムが何かしているんじゃないかと心配して来て、
事の一部始終を見ていた。
チャングム・・・
私が一番側にいて手に入れられなかったものを
お前はまた手に入れた・・・
決して・・・
決して許すものですか!
--------------------------------完--------------------------------
368 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 01:13:53 ID:XxhWLsn8
冬心たん、君は神だ(´∀`)!!
ソングムかわいすぎww
そして鬼畜チャングム(ヘ`∀´)/鹵
369 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/07(水) 23:20:32 ID:MPIkMIMj
ソングムたんと漏れのペギョンちゃんが見つめ合ってる夢を見てもた。
おそらくこのエロパロの影響。
朝から悶え死ぬかとオモタw
ハン尚宮×チェ尚宮 −顧望−
壱参弐 柵
内容:百合 原作改変 エロ有
分量:これを含め、8レス
その頃、宮。
「チェ尚宮様。昼の御膳の支度が終わりました」
「お入り。あなたに大妃殿に届けて欲しいものがあるの。着替え終わるまで待っていて」
クミョンは入り口近くに立ったまま、見るとはなしにチェ尚宮の背中を見た。
この頃お疲れになられて。それなのになぜハン尚宮様を太平館へ遷されたのか。
ハン尚宮様が今までどれだけ気を配ってこられたか、あちらに行かれてから改めて
判った。
最近は水剌間も行き届かなくなった感じがする。
叔母様も、随分おやつれになって……。
「暫らく外に出るから、後のことをよろしくね」
お仕着せから余所行きに着替え終え、振り返りざま両の手で襟元を調え直したその時。
「チェ尚宮様! 一体どうなさったのですか?」
クミョンはチェ尚宮の許へ歩み寄った。
「え?」
「お見せくださいませ」
「お待ち」
「それは……何か付いています」
「何でもないわ」
もしかして御病気? なのに隠しておられるのかも。大切な最高尚宮様のお身体、
放ってはおけない。
そう思い、嫌がるチェ尚宮に構わず襟元を寛げる。
紫色の痣……。腫れ物かしら? 触っても特に熱っぽくもないけれど。
「いいのよこれは。心配しないで」
やっとクミョンの手から解放され、改めて衿を合わせ直した。
「診ていただかないと、病の前触れかも知れません」
「そうじゃないの」
「伯父様にお願いして、塗り薬でもいただいた方が」
「いいって言っているでしょ」
「この頃の叔母様は、お体が優れないようにお見受けしております。私も心配でなりません」
「別に何でもないのよ」
「今ご健康を損ねては、水剌間はどうなるのです。この頃気苦労が絶えないご様子ですし」
「心配してくれるのはありがたいけど……」
チェ尚宮がそっと伺うと、クミョンは心配顔でじっと見ていた。
「ちょっと虫にね」
ますます不安げにしている。
確かに虫っていってもこんなに残るほど毒が入ったとしたら、それはそれで深刻だし
……また例えば、腹に居座る虫が首にまで上がってきたとしたら、それも重大な病
ではある……。かといって、今さら他の言い訳を考えるのも……。
いずれにせよこの痣のことを……兄上に相談されたら……もっとまずい……仕方ない
……この子なら胸に納めてくれるだろう……。
「実はね……お前も知っていると思うけど……この前、ハン尚宮の隣で寝ていたときに、
その……寝返りをうったときに、腕がちょーっと、当っちゃって」
全然納得してくれない。どころかハン尚宮と聞いた途端、目に不審がありありと……。
「あの、はずみでね」
「打ち身には見えません。所々ぷつぷつと跡があります」
「……」
「お話しください」
「あのね、あのー、あの、言い辛いけど。あの、その、ちょっと噛まれて」
「え?」
「いえ、ぐっと。あ、まあ成り行きでね」
成り行き……ですか。
溜息…。
しばしば叔母とハン尚宮が遅くまで共に過ごしている。
そんなありさまを、夜、チェ尚宮の部屋に立ち入ることを許されていたクミョンだけは、
何度か目にしていた。もちろんその多くは、真剣な顔で打ち合わせをしているか、書き物を
している姿だった。
けれど、最初の頃はよそよそしい雰囲気だったハン尚宮が、いつとはなしに部屋の中で
寛いでいる様子に驚いたことがあった。
そしていつの頃からか、水剌間で料理をするハン尚宮の背中や手元に、叔母が目線を
預けていると感じることも度々あった。
だからクミョンも、薄々気付いていた。
しかしそれがどの程度のものなのかまでは、知る由もなかった。さすがに夜中に呼ばれ
ることはなかったし、クミョンも妙な好奇心はない。用も無いのにあの部屋に近付きたい
などとは思わなかった。
女官同士の結び付き、それは人によって濃淡がある。
そもそも話すだけで、触れ合いなど求めない者もいる。また触れたとて、ただ手を繋い
で眠ったり、抱き締め合ったり。あるいは唇を寄せるぐらいで満たされる者も。
その程度ならよくある話し、いちいち咎め立てされることはない。
もちろん私だって……そういう"関係"があることぐらい知っている。
「ねえねえ、すごいのを見せてあげようか?」
「なに、なに?」
ヨンノが、チャンイやヨンセンを部屋に集めて、いかがわしい本を見せびらかして
いた。
またその手の話し? お料理を勉強しようという気持ちは無いの? 心中苦く思い
ながらも、耳はついついそちらへ傾いてしまう。
それにハン尚宮様のご様子では、それほどのことを――優しく抱き締めていただき、
軽く唇をお寄せいただいたぐらいだったから――なさるとは思えなかった。
それくらいなら、私は何も言うまい。
叔母様がお幸せでお過ごしなら、私も嬉しくない訳がない。
しかし、叔母様。
ヨンノはますます得意げに喋った。
「それでね、好きになるとー、自分のものだってね、相手に印を付けちゃうのよ」
……好きになると、ですって?……まあ、何事も知っておくのも悪くは無いわね……。
「え、どんな、どんな」
チャンイとヨンセンが口を揃えて聞く。
「こうやってね、ちょっとヨンセン! 腕を貸しなさいよ」
「やだー。あっっやめてよ」
じたばたもがくヨンセンに構わず、袖を捲り上げて、
ちゅーっ
「痛ーい」
「ね、そんな風に」
「跡が付いちゃったじゃない」
「すぐ消えるから、大丈夫よ」
「あんたなんかに付けられるのが嫌なの!」
「じゃ、誰だったらいいのよ? ひょっとして、もういない子のことまだ考えてるの?」
「いないって何よ! チャングムは太平館で頑張ってるって、お戻りになった尚宮様も
おっしゃっておられたわ!」
そしてまた取っ組み合いの喧嘩が始まるのを、横目で眺める羽目になる……。
確かに一週間もしない内に目立たなくなったわね、"あの跡"は。
けれど、ハン尚宮様が発たれてから数週過ぎても未だに。ということは。
お互い、深く深く関わり合ったと、そういうことですか、叔母様?
そして叔母様ばかりでなく、ハン尚宮様までも、なのですね?
私はいったい……。
「お気を付けください。敏(さと)い者もおりますゆえ」
それだけ言うと目を伏せ、クミョンはチェ尚宮の支度が整うのを静かに待った。
それから一週間。
太平館では、無事に第一陣の接待が終わった。次の客人が来るのはまたひと月先。
段取りも飲み込めたから、今回よりはかなり余裕を持って過ごせるはずである。
後片付けの作業にかかりながら、チャングムは絶え間なく、太平館でのこれまで、見た
こと聞いたこと学んだことを語る。とりあえず一仕事を終えた安堵からか、口調も一層
滑らかだ。
けれど話しても話しても、時間が足りないように思えた。
会えなかった月日は、それまで教えを受け、時には逆に励ましもして過ごしてきた
時間からみれば、実際のところさほど長くは無い。
でも、ハン尚宮のそばに居られないなど、考えたこともなかったチャングムである。
別離を余儀なくされ、想いが更に強まるのは当然過ぎるほど当然なのだろう。
だからチャングムは、とにかく話したかった。昼中だけでなく夜までも、そして次の朝
までも。ハン尚宮の話しを聞くよりまず、自分のことを話した。自分はここにいて、
ずっと頑張ってきたんだと。
そして自分を微笑みながら見てくれる、時々軽く頷いてくれる、チャングムはそんな
ハン尚宮を見るのが何より嬉しく、もっとその顔を見ていたくて、だからもっと話したく
なった。
ハン尚宮も宮の様子を、ただしチェ尚宮との出来事だけは慎重に避けながら、少しづつ
話した。
先日の応接の記録作りのため、チャングムは――前任の尚宮の時は、資料を揃えるだけ
だった――時には深夜までハン尚宮の部屋に籠もっていた。
本当は……もう少しお側に近付きたかった。けれど最高尚宮へ報告する期限が迫って
いて実際忙しかったし、ハン尚宮もそのような様子を見せない。なのに無理に、などと
願うことはできない。
作業が一段落すると、相変わらず二人は何事もなく、そのまま各々の部屋で休んだ。
こうして二人は、太平館でのびのびと過ごした。
全くここは、余計な者がいなくていい。仕事も使臣さえ来なければ大したことはない。
これまでの疲れを癒すにはもってこいだ。
そしてゆっくり考えることができる。これからの……それを思うと、ハン尚宮の心は
澱のごとく沈む。
本当にゆっくり考えたい。もう一度気持ちをまっさらにして、考え直したい。
昼過ぎから振り出した久しぶりの雨が、空気をしっとりと落ち着かせている、そんな夜。
細かな雨音、それはかえって闇の深さを引き立てる。聞こえるのは、二人が資料を
めくりつつ筆を走らせる微かな音だけである。
今日もいつものように、遅くまで書き付けに取り組んだ後のこと。
チャングムが去った部屋で、ハン尚宮はうとうととし始めていた。
しかし、ある気配が。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
なんだか懐かしい……墨汁から漂う幽香のような薫り……今日はとりわけ書き物が
多かった……あの子もせっせと墨を……あたってくれた………………いやこれは……
違う。
そういえば、あの。
ここに来た日の別れ際、私が抱えた荷物にチェ尚宮は小さな袋を押し込んだ。今さら
何をくれるのか、そう思ったけれど、また荷解きして返すのも無粋。何より一刻も早く
あの者から離れたくて、結局ここまで持って来ていた。
くれた時、一瞬芳香が鼻を掠めた。けれど道中、ぬかるんだ道取りに気を取られ、着く
なり早々打ち合わせを始めたから、部屋に戻り荷を解くまですっかり忘れていた。
包みを開くと匂い袋がいくつか転げ、芳香が立ち込めた。持ってきた着替えも、その
香りに染まっていた。
女官たちは衣類の虫除けとして、小さな巾着や畳紙に包まれた香木を使う。内人の間は
檜や山奈だったり、尚宮は伽羅や青木香、龍脳などそれぞれ好みのものを。衣替えの
季節になると、あちらこちらに新しい香りが翻り、気持ちも何となく改まった。
私は落ち着いた感じの白檀が好きだった。
ソングムは、やはり高価なものを用いているようで、たぶん麝香なども合わせてある
のだろうか。通り過ぎた後に、馥郁たる香を残した。華やで奥深く……お前の身体が
火照ると……もっと甘く深くなって。
……それと同じ香りをくれた……私の好みではないけれど。
寝返りを打つ。
けれどそのまま箪笥に直に入れるには強過ぎたし、だから紙に幾重も包んで、衣類とは
別の引き出しの奥深くに片付けておいた。今まではそれで大丈夫だったのだけれど。
今日の雨。
その湿り気に乗って、匂いが染み出てしまったのだろうか。
また寝返りを打つ。
昔まだ子供だった頃、ソングムが実家から香木を持ってきて、部屋の火鉢で焚いて
見せたことがあった。小指くらいの木切れだったのに、部屋も服も髪の毛も匂い
塗れになってしまった。慌てて扉を全部開けて、服も外に干したけれど、次の日に
なっても全然取れない。
おかげで尚宮様からは、調理をする者が強い匂いを纏うとは何事かと、きつくお叱りを
受けて。
ソングムは、薬にも使うとても貴重な材料なの、と言っていたっけ。
また、まどろみへ。
あの頃のソングム……。
薫りは更に濃くなり、そうっと静かに揺り起す。
そして、するすると布団の合間から滑り込んでくる。
ふっと寒気を覚え、頭から布団を被り、隙間を手でぎゅっと握り締めた。
けれども。
それはゆっくり肩口から忍び込み、纏う衣を剥いでいく。
剥き身になった背中や脚を細やかにさすられ、そして次第に前に向かい、優しく
胸全体を撫でた。動き回るそれを制したつもりだったが、お構いなしに身体全部を
這い回る。
「い、いや……」
拒む口内に温かく侵し入り、誘われるまま己の舌が絡み取られ。
また次第次第に、下方に位置を移し、胸を揉み、そして吸上げ、転がし、包み。
いや……二度とあんな……いけない。身体を下に返して胸を守り、固く目を閉じる。
「ふっ」
微かな笑い声。
動きは背中からまた少しずつ、下へと降りていく。
「脚を開いて」
厭わしい言葉と共に脚が割り込まれ、左右にずり広げられる。
そしてしなやかな動きが腰のあたりにたどり着き、さらに下へ、もっと奥へ。
そしてより中へ中へと、侵入を企てていく。
気持ち悪い。
歯を食い縛ったけれど。
「……ぅ」
息が漏れてしまう。
ぬるぬると弄られ、粘った音の響き。体奥押し広げられる感覚、内からの圧迫が喉に
まで遡り全身を満たし……かつて貪った快楽が広がって。
「いっ いぃ」
声を殺そうと慌てて口を枕に押し付ける。
温かさを帯びた柔らかな滑りが首筋を捉え、ぺろぺろりと行き来する。
自分でも判るほど、背中が反り返った。
「ああっぅ」
喉奥で押し潰された声。
血が沸き立ち、瞬間、身体中を駆け巡った。
力の抜けた腰は、容易に反転させられ脚を持ち上げられる。ゆらゆら動く足指の間を
生暖かさが通り抜ける。膝の裏から腿の内側……すすーっと這う湿り気。
それは足の先から行きつ戻りつ、少しずつ焦らすように、掲げられた脚の付け根へと
向かっていく。
止めさせようと夢中で掴んだけれど、手のひらには何も残らず……身体を火照らせ
続ける。上気する薫りは次第に濃く淫靡になり、昂る自分の匂いと入り混じり鼻を侵して
いく。
逆らう術を忘れた脚が、深く折り曲げられた。
温かく滑るそれは、付け根から更に奥へ。いま中を探し当て、温かくうねり、繰り返し
波を寄せ、潮が満ち溢れて浜辺を濡らす。
臀部から腰にかけてひやりとした冷気が伝った。雨がここまで……滴り落ちている
のだろうか。それとも与えられたものか。よもや、この身から零れているのか。
「もう、お願いよ」
何度昇り詰めても許しを請うても止まず、ようよう力を出して跳ね除けると弱まる
どころか圧し掛かられ、豊かなふくらみに口元を塞がれて、息をするのもやっとだ。押し
潰され身動きが取れないまま更に敏感な場所を探られ、奥まで深く入り込んでいく。
「感じているの?」
動きを緩め、囁き。
「欲しいんでしょ」
残酷な問いかけが、耳奥、とろりと流し込まれた。
「じゃあそう言いなさい」
いや、そんなことない。感じてなんか、そんなはずはないのよ。もういいのよ、もう。
けれど触れるか触れないかの軽やかな動きに、震えが止まらない。
「それとも……本当にやめていいの?」
流し目をくれ、勝ち誇ったように言う。黒髪が揺れ、頬のあたりに陰惨な笑みが刷いた。
しかしその面は青白くて……。
訝しむ心を振り払うかのように、また柔らかく触れてくる。
身体に再び火が放たれ……欲しい。本当は。
けれど、自分がひどく淫らな獣に思えて極まり悪く、喉を振り絞る。
「やめて」
けれどその蠢きは、もう燃えるものなどないと思うほど焦がし続ける。
止められるはずもない。もっと身体でも……そして言葉でも……いっぱい、いっぱい。
「素直になりなさいよ」
無言の抵抗は、悶える腰の前では意味をなさない。
「よがっているのよ、ほら」
脚をさらにぐっと開かれ、片方の足首を掴んで掲げられて。
「こうしたらどうなるのかしら」
柔らかくぬるぬるした部分が、両脚の間へ……熱く押し付けられ、鋭敏な場所同士を
ぴったり合わせ、内股共々こすり付けられる。
「いやらしい顔をして。いいって言いなさいよ」
「あぅ…いひっ…」
くいくいと押し付けて弄る。酷い仕打ち……けれど夢中だった。
「抱かれているのよ。あなたを見ているのよ。私が気持ちよくしているのよ」
望み通り……次々、言葉でも更に弄ばれる。心を犯される痛みにすら酔ってしまう。
あの場所がくちゃぐちゃと音を立て、互いの熱い滴りが内股に広がっていく。
「聞こえないわよ。ほら」
終わったはずなのに……。もう断ち切ったはずなのに……。ようやく這い出した
ぬかるみに、再びずるすると引き込まれていく。それなのにこの身は……滑り落ちる
心地良さ。
ミョンイ? 目の前は白く歪み、思い浮かべることさえできない。
「逃げないで…」
あてどなく逃れようと伸ばした手を掴まれ、その度、腕を相手に巻き付かせられて、
その腕ごと締め潰されて。
「いいっー」
互いの鼓動が、一瞬高まり、そして深く重なった。
身体中震え、べっとりと背中に汗。
「ソングム……」
私もお前を……そう思い、髪に指を絡めようとした。けれどただ青白く、ぼやけた顔が
浮かぶだけ。
あるのは、腰にしがみ付く肉の感触。
「ペギョン……好きよ、本当よ」
痛々しい、切ない声が何度も繰り返す。
それは少しずつ小さくなって、身に纏わり付く肉感も徐々に薄れる。後を追うけれど、
姿はもう見えなかった。
「ソングム! ソングム!」
慌てて辺りを見回す。布団の隙間から逃げ行く自分の体温。入れ替わりに甘美で、今は
爽やかにも思える匂いが、胸の奥を満たす。
消えて行った方向に手を伸ばし、温もりの痕跡を捜し求めた。けれど固い床が、指先を
弾き返しただけだった。
冷たさに驚いて……本当に目が覚めた。
まさか何か? もしや、償うために自らの……まさか。
あの者の無事を確かめたいと何度も思ったが、腰がひどくだるく、力が出ない。
そうよ。遠く離れた場所では、駆けつけるわけにもいかないのだから。今は眠るしか
ないのよ。
思いを振り切り、もう一度布団に潜り込んだ。
耳を澄ますと雨音が聞こえる。こんな夜は……。
ぼんやり浮かぶ愛しみの記憶。
細かな雨の音と甘い薫り、そして柔らかな感触に包まれて、いつしか深い眠りに落ちて
いった。
一週間ほど経ち、記録も全て書き終えた。
こうなると太平館はいよいよ暇、いや余裕が生まれる。
多くの女官は、溜まっていた裁縫をしたり、市場に行きたがったりする。しかし
チャングムは、料理の研究と山菜の探索ばかりしている。
その上、チャングムはちゃっかりと、前のお遣いの方々に料理の本などをおねだりして
――あの使臣様が、あの子の望みを聞いてやるようにと言われていたそうで――読み
耽っていたらしい。前任の尚宮が呆れたように伝えてくれた。
だいたい、お料理をお出しするのはお前の役割ではないのに。あまりいい気になって
いるとその内痛い目に合うだろう。何より、お遣いの方々はそれほど強くは出られない
ものの、あなたのような綺麗な子を目の前にしてどのようにお感じになるか。
私ですら時折、触れてみたくなるのに……。危なっかしいったりゃありゃしない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
前任の尚宮はチャングムの、いわばお目付け役としてチェ尚宮から派遣された。しかし
完全にチェ尚宮側の人間というわけでもない。ごく普通の中人の家に生まれ、多くの
女官と同様に、家計の助けとして宮に入れられた。宮では目立つことも無かったが、
東宮殿で真面目に務めを果たしてきた、平凡な女官だった。
チェ尚宮のことは素直に凄いと思っていたし、ハン尚宮の腕も出自に対する偏見なく
評価していた。だから今度の事件やその後のいきさつには驚きながらも、ハン尚宮に
同情する気持ちもあった。
けれどチャングムを押し付けられた時は、さすがにいい気はしなかった。
それでも送られて間もなく、チャングムの身体が弱りきっていた時には何も用事を言い
つけず、ゆっくり休ませてくれた。そしてしばらくして回復した後は遠慮なく、つまりは
こき使った。
チャングムはよく働いたし、噂通り料理は上手かったし、そうこうする内に次第に
良さとあしらい方も判ってきた。だからチャングムがほぼ願う通り、研究も山菜採りも
認めてくれたのである。
ただハン尚宮に関わることは、チェ尚宮を慮って一切口にさせなかった。あらゆる
ことは、チェ尚宮に報告せねばならない。機嫌を損ねるようなことを告げると、自分も
良くは思われない。それにハン尚宮の立場も悪くなるだろう。
だからチャングムが門前で出迎えるのも、まだ引継ぎが終わるまでは自分の配下なのだ
からと、渋ったのである。
ところで今度のお遣いの客人も沢山の、決して高価ではないけれど珍しい食材を残して
いってくれた。チャングムは早速あれこれ、蒸したり搗いたり挽いたりして試している。
あれらの食材がいつも手に入る訳ではないが、機会があれば御膳にお出ししてみたい
ものだ。異国の珍味に、王様にもお喜び戴けるだろう。
それと……あの者にも。
ハン尚宮の脳裏に幽鬼のような姿が浮かんだ。けれど宮からは、特段の知らせは
無かった。
あれは夢だったのね……。
あのチェ尚宮にも……これらの食材を教えてやることとしようか。あと、本も読ま
なければ。それも約束していたことだった。
―――終―――
378 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 23:46:02 ID:WJg8a8M0
あ、なんかソングムとペギョンちゃんイイカンジww
ぬへっ♪(嬉)
ハン様…サンダルウッド
チェ様…ムスク
(*´Д`)=3
クンクン( ・ω)
(*´Д`)=3
壱参弐様、嗅覚まで刺激させんじゃねーよ(゚Д゚)ゴルァ!!www
ああもう凄すぎる。ありがとうございました。
すっげー。
なんかもう、思いっきり入り込めた。いいねいいね。
>>381 ☆
/ ̄| ☆
| |彡 ビシィ
| | / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
,― \ |
| ___) | ∠ Good Job!
| ___) | ∧_∧ \______
| ___) |\___(´Д` )_____
ヽ__)_/ \___ _____, )__
〃 . / / / / 〃⌒i
| / ./ / / .i::::::::::i
____| /⌒\./ / / | ____|;;;;;;;;;;;i
[__]___| / /-、 .\_. / Uし'[_] .|
| || | / /i i / | || |
| ||____|____/ / .| .|\_ノ______..| || |
|(_____ノ /_| |_________..| || |
| LLLLLL./ __)L_| |LLLLLLLLLLLLLLLL. | ||_____」
| || (_/ / i .| || | ||
|_|| / .ノ |_|| |_||
(_/
過去スレ見れーんかたので、嬉しい。
d!
383 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 03:10:55 ID:KYhm645p
すごく上手ですね!!
DJ!!!!
ハン尚宮×チェ尚宮 −闕望− *闕望(=欠望)
壱参弐 柵
内容:原作改変
分量:これを含め、7レス
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
お知らせ:
前スレのレス番号218から356にかけて投稿しました作品について、
タイトルを「尽・未来際」に変更します。
なお本件に関連する事柄で、相手の方及びあるサイトの管理人様には、
誠実な対応をしていただきました。
深く感謝いたします。
壱参弐
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
季節の変わり目というのか。朝に雲一つ無い空が急に薄暗くなり、突然の雨に
見舞われることもしばしばだ。
冬明けの晴れた日には、お盆や食膳などの木製品を、倉庫から出して風に当てる。
それは厨房だけでなく他の係の者も、それぞれが管理する本や書画、布団や衣類を
庭や軒下に並べ、籠もった湿り気を追い出していた。
けれど今年は、特に天気が安定しない。雨は降るでもなし止むでもなし、安心して
虫干しにかかることができない。
ハン尚宮は諦めて、チャングムと共にしばらく読書をして過ごすことにした。
今ハン尚宮が読んでいるのは、ミン尚宮から譲り受けた本である。地方に伝わる物語を
集めたもので、中身は他愛も無い話しがほとんどだった。けれど、言い回しが面白い
というか、読んでいると絵が浮かび上がり、あるいは朗々とした歌声すらも聞こえてくる
気がするほど……。ハン尚宮はこの本を読むたびに、幼かった頃を思い浮かべた。
子供の頃、ペギョンとミョンイは、それぞれが付いた尚宮に、よく御伽噺を聞かせて
もらったものだった。
ペギョンの尚宮だったチョン尚宮の語り口は、独特の節と共に、深く心に染み入った。
ミョンイの尚宮は絵を書くのも得意だったから、物語を何枚かの絵に仕立て、それを
見せながら大げさに面白く語ってくれた。
聞いていた見習いたちは、その頓狂な話にわくわくし、時には真顔での話に釣り込まれ、
思わず真面目に聞き入ると、またぱっと滑稽な口調に切り替える。そうしてすっかり
騙されては、皆でカラカラと大笑いをしたものだった。
宮は厳しい暮らしとは言え、暴君の先代となるまでは、こうして過ごす楽しい時も
あったのだ。
あの時代の後は人の心もずいぶん窮屈になり、何より多くの才能溢れた尚宮や内人が
宮からいなくなった。
ハン尚宮も、まさか自分が王に語る日が来るとは思って見なかったから、最高尚宮に
なってから、見習い時代にもっとよく聞いておけばよかったと、少し後悔もした。
ところでミョンイの尚宮は、彼女が内人となった後はミン尚宮を暫らく教え、それを
最後に引退したが、退くにあたってミン尚宮に数冊の本を渡した。それが、今ハン尚宮が
目を通している本であり、子供時代に聞いた物語の元となった本である。
ミン尚宮はこの本を、なかなかハン尚宮に渡そうとはしなかった。最高尚宮であった
ハン尚宮に差し上げる種本として、手離したくなかったのだ。
けれどミン尚宮は知らなかった。その話は、ずっと昔にハン尚宮も聞いていたものだと
いうことを。なぜならミョンイとミン尚宮が付いた尚宮は、ミョンイのいきさつについて
誰にも、決して語ろうとはしなかったから。
話の中身よりもハン元最高尚宮にとって必要なのは、語り口を上手にすることだった。
だからもう新しい話を持ってこなくていい、逆に話し方の指南をして欲しいと言って、やっと
貰うことができた。
だからそれ以後のミン尚宮とのひとときは、ハン尚宮が話して聞かせる形を取っていた。
ミン尚宮は元来話しがうまかったし、付いた尚宮の口調を見事に受け継いでいて、
同じ物語をしても、ハラハラドキドキさせた。そしてまた絶えず笑いを感じさせた。
どうしたらあなたのように話せるのかとハン尚宮が尋ねると、ミン尚宮はこう言った。
「ハン尚宮様は、相手の方のお気持ちをお汲み取りになるのはお上手ですけれど……
もちろんそれも大切です……けれど尚宮様もお話しされている時だけは、心の中で大声で
笑ったり泣いたり、怒ったりそして恥ずかしがったりしてください。時には我をお忘れに
なるぐらいに」
なるほど、そういうものかも知れないと、ハン尚宮は思った。
そうして何度もミン尚宮相手に練習をして、王に聞かせたものだった。
しかしそれから後、語る相手は変わり……チェ尚宮には、そこまで感情を込めて話を
したことはなかった。
ところでチャングムの方はといえば、相変わらず明国の料理の本や、どこからか借りて
きた古書などを読み耽っていた。
そして時々庭先に出ては、じっと空を見上げていた。
ある朝、今日は特に用事もない。二人は夜が明けるとすぐに、裏手の山まで出かける
ことにした。一昨日チャングムが、どうしても見せたいものがあると言ったからである。
太平館は接待の場に相応しく、風光明媚な所にある。
少し足を伸ばせば丘や小さな山がいくつも並ぶ。近くに清流もあった。そして狩りも
できるほどの広さの森も含め、その一帯全てが庭である。
山々は手前から奥へ行くほど高くそびえ、冬でも緑に覆われている。
春には、至る所に桜の花が彩りを添え、秋山は特に圧巻である。紅葉の盛りには山が
燃えると見えるほど、赤や黄色が織り成す錦が鮮やかに迫る。
もちろん晴れた日の眺めも麗しいが、小雨の日も霧がまた、山間に煙るごとく立ち上り、
えも言われぬ風情を醸し出す。この地に足を運んだ人々は、雨中に足元の悪さも忘れて、
山に見蕩れるのが常だった。
チャングムは肩に弁当を結わえ、そして大きな籠をぶら下げている。ここに来てから
暇を見つけては、こうやって辺りをうろうろしてたという。
前任の尚宮様の、さぞ困惑していたであろう顔がハン尚宮の目に浮かぶ。
―――言い出したら聞かないやんちゃな娘を抱えて、本当に気苦労が絶えなかった
だろう。帰ったら謝っておこう。
荷物を持とうかと言うハン尚宮に、チャングムは首を振って答えた。
この辺りは窪地であり、また川も水気を運んでくるのか、よく霧がかかる。今朝も、
外に出たときから霧が立ち込めていた。そのせいか、春だというのに少し寒い。
山に近付くにつれ、風も無いのに、更にひんやりとした重い空気が頬を撫でた。
山道に入り少し昇ると、クマ笹の葉が腰の高さで刃のような葉を四方に伸ばしている。
それが途切れたあたりで、チャングムは言った。
「ここで蕗の薹(ふきのとう)を沢山取りました。ヨモギとかも」
嬉しそうに指す山脇の蕗は、しかしもう、どれもこれも丸い葉が広がっている。
「水辺の方がもっと大きいのが取れるのですけど」
下には沢が見えた。けれどその行く手は、根元から流された木々が折り重なっている。
「お前、あんなところに降りて行ったの?」
「前は簡単に降りられたんですけど。あの木は冬の初めにすごい雨が降って、その時に
流されてきたのです。あの晩は太平館の近くの小川でも、夜中に大きな石がごろんごろん
と音を立てて転がっていました。さすがに怖くなりました」
―――ああ、そんなことがあった。雨は止まず、雷が一晩中鳴り続けていた。ちょうど
その頃、私は宮で……。
嫌な思い出である。
気を取り直してチャングムに語りかける。
「私もあんなに強い風の音を聞いたことはないわ」
「実はちょっと部屋を出て、外を眺めたりしていました。」
「あの中で? 雨に濡れたでしょう」
「はい。軒に入っていても、水しぶきが顔まで吹き付けてきました」
「あらあら、風邪を引かなかった?」
「でも、山の方がぴかっと光ると、辺りは一瞬、昼間のように明るくなって」
「雷は怖くないの?」
「はい。稲光がカクカクと折れながら地面にぶつかるのが、とても面白かったです」
「あの時の嵐は凄かったわね」
「屋根が吹き飛ばされた家もあったそうです」
「ここに来る時も、道々に木の枝や岩が落ちていたわ。前ほどは降っていなかったのにね」
「この山道も、端っことかが崩れているところがあるんですよ」
そう言うとまた歩き出しては止まり、かがんで山菜をもぎ取っていく。
普通の山辺なら、山菜を摘むために他にも人が入ってくる。
けれどここは御料地、好きに立ち入ることは許されない。だからほとんど手付かずで
ある。僅かに歩くだけで、チャングムの籠には蕗の小山ができている。
そして山の中は、どこまで行っても二人きりだった。
伸びた山蕗を次々集める後ろ姿を眺めながら、ハン尚宮も足元に気を配りながら山路を
辿った。実のところ、打ち据えられた古傷が残っているようで、昔は平気だった山道を
少し辛く感じていた。
―――けれど、せっかくお前と来たのだから。
途中、岩や土砂が堆く積み重なり、その上を越えて行かなければならなかった。
チャングムはちょっと先に進んでは、ハン尚宮の手を掴んで懸命に支えた。下りる時も
同じようにして。
―――昔は小さな手が可愛かったけど、今ではこうやって、私をしっかり支えてくれる。
岩や木に片方の手をついていたせいで、チャングムの手のひらは苔塗れになっていた。
「もう危険な場所はありません。さ、行きましょう」
パンパンと手を払いながら言う。
更に昇ると、羊歯ばかりになった。
「ここから先はあまり取れないので、歩くだけになります」
「あとどれぐらいかしら」
「もう、ほんの少しです。でも私一人の時は、ここから入っていくんです。近道なので」
見ると、山肌から赤茶けた土が崩れ落ちていた。
「足跡があるわね。これ獣道じゃないの。大丈夫?」
「猪が通る道ですけど、冬の間はほとんど出ませんし。ここに来たての時は、腰に鈴を
付けていました」
また二人で歩き出す。
「実は雪の降った日、あの近道で足を滑らせたことがあって。へへへ」
「まあ。あんまり危ないことはしないでね」
しばらく歩くと森が途切れ、霧も薄くなって視界が開けてきた。
「見てください、尚宮様!」
山頂から四周を望む。
霧と見えたものは眼下に低く雲となり、太平館や小川、付近の丘を覆っている。雲が
所々盛り上がり、渦のように巻いて見えるのは、あたかもソルロンタンを煮込む時の
ような有様である。
白い渦の合間に、山の頂がぽつりぽつりと緑を添える。それは絵に描かれた島のようで、
まさに雲の海であった。
見上げると空は晴れ渡り、どこまでも青く広がっている。そして東の方からは、
日差しが眩しく雲の上辺を朱に染めている。
一面、人の手で作られたものは見当たらず……いや、手前の山の頂に建てられている
物見櫓だけが唯一、白い海の間からちょこんと突き出ていた。
青く澄む空の下、広がる白地に描かれた緑や朱の光景。目を凝らすと、その先には
月が淡く残っていた。
―――彼方の宮での暮らしも、霧に包まれていたようなものだった。
私は道を見失い、手探りで彷徨っていた。
けれどその上には、何一つ曇りのない空が、こうして広がっていたのね。
「尚宮様、御飯を戴きましょうよ」
チャングムが声を掛けるまで、ハン尚宮は、時折吹く清々しい風を感じながら、思いに
浸っていた。
二人は木陰に切り株を見つけ、持ってきたお弁当を広げた。太陽が昇るにつれ、
ぽかぽかとした陽気すら感じられるようになった。
弁当と言っても、干した魚と御飯と、そして少しの味噌だけ。
でも美しい景色こそが、最高のおかずだった。
そしてチャングムの側に居られることが、どんな美食よりも心を満たしてくれた。
―――牢屋の中でお前は、母にできなかったことをしてくれると言ってくれたけれど。
これってお前自身がお母様としたかったことじゃないのかしら。
山に出かけて山菜を摘んだり……兎を追ったこともあるって話してくれた
わね……。きっと山の上で、一緒に御飯を食べてみたいと思っていたのでしょうね。
そんなことを思いながら、ハン尚宮は、竹の皮で包んだ御飯を口に運んだ。
―――ミョンイとお前、そのどちらとも共に過ごせた私は、幸せ者ね。
なぜだか、こみ上げるものが口中に塩味を滲ませる。
―――ミョンイも、お前が立派に大きくなった姿を見たらなんと言うだろう。
どれだけ、今のお前を見たかっただろう。そして……この子の元から離れ
なければならなかった時……寂しかっただろう。
ハン尚宮はチャングムの顔をじっと見つめた。
―――ちょうどミョンイと別れたのは、これぐらいの歳の頃だった。あれから……時は
止まってしまった。見ることも、同じ年月を過ごすことも。
この子のこれからの時間は、あの人が歩めなかった時間なのね。
今でも大切に思う友の面影が、チャングムの横顔に浮かんだ。
―――この子の幸せを願っていたミョンイの代わりに……ミョンイの分まで、私が
お前を見てあげるから。
けれどミョンイ。あなたは私に何を委ねたの? どうしてこの子を私に託そうと
思ったの?
チャングム……私はお前にとって、どうあるべきなのだろう。
私はこの子のことを……。いつまでも、ずっとずっと、この子をだけを見て
いたいし、この子だけに見ていて欲しい。でも……。
愛しい顔を見ながら考える。
―――思えば……最初に出会った時は、利発な子だと思ったわ。そして元気一杯で、
お転婆な子だった。
私は師匠として、一人前の女官にしようと厳しく接してきた。けれどいつしか、
教え諭す弟子から、私を励まし、支えとなってくれたわね。
そんなお前を見て、弟子に対する気持ちから、あたかも友といるような気持ちへ
と変わっていった。いや、それ以上だったかも知れない。
どうしても手放したくない、失いたくないとまで思うようになって。
ハン尚宮は心に仕舞っていた決意が二つあった。どう話そうか。チャングムと過ごす
時には、いつも考えていた。
そのどちらも、聞けば衝撃を受けることは容易に予想された。だからきちんと伝え
なければ、心を無闇に惑わせてしまう。
―――ミョンイ……きっと、空の上から見守ってくれているのでしょうね。できること
なら、あなたに直に聞いてみたい。私はどうしたらいいのって。
あなたなら、きっと一番いい答えをくれるはずよ。
そしてチャングム、お前にも聞いてみたい。私のやろうとしていることは、
間違ってはいないのかと。
ああ、だけど……ねえチャングム。いつまでもお前に甘えていてはいけないと
思うの。頼り過ぎていると……私はいいけれど、お前のぐんぐん伸びる芽を摘み
取ってしまいそうで。
ミョンイが私を信じて、この子を託してくれたのなら、いや、ミョンイの生まれ
変わりだとしたら。私は……お前とミョンイを信じてみたい。
私はもう一度、お前の師匠に戻って、お前を導きたいと思う……。
ハン尚宮がずっと自分を見つめているのに気が付いて、チャングムはニコッと微笑んだ。
―――今一度、お前は私を受け止めてくれると、そう信じて、もう一度あの雲海の中に
下りていこう。たとえ見通しが悪くても、その上にはきっとこのような、晴れ渡る
空が広がっていることを思い出して。そしてそこから、ミョンイが見守っている
ことを願って。
その夜。
ハン尚宮はチャングムを部屋に呼んだ。もうそろそろ、休まねばならぬ時刻である。
久しぶりの招きに、チャングムの心は浮き立つ。
「尚宮様」
座るなり重ねてくるチャングムの手を、手の甲に乗せたままにして、ハン尚宮は静かに
語りかけた。
「私はお前のことを愛おしく思う」
その手を、どれほど握り返したかったか。けれど懸命に堪えて続けた。
「けれど、もう前と同じではいられない」
チャングムは落胆し、手を自分の膝の上に戻した。
「なぜですか。もう安心だと手紙に書かれていたではありませんか?」
「チェ尚宮が、私たちをこれ以上追いやることはない。それは確かよ。
けれど、私も最高尚宮に戻れる訳でもない。理由はどうあれ、王様がお倒れになった
ことは事実だし。皇后様も私を再任させることは難しいでしょう。
……女官長も他の尚宮を推すでしょうから」
「そんな。水剌を担える尚宮様は、ハン尚宮様以外にはおられないと思います」
「それは違うわ。お前は私しか見ていないから。目立ちはしないけれど、他にも立派な
方がおられると思う。
……それに……チェ尚宮だって、しっかりやってくれるでしょう」
「ではこのまま? ……何も……どうしてチェ尚宮様がこれから先も、最高尚宮でと
言われるのですか」
「お前は到底承服できないでしょうね。私もそれは……けれど。
いずれにしても、以前のように好きにはできない。そして何もかも庇ったりもできない。
私たちを妬む者、追い落とそうとする者、それはチェ尚宮たちに限らないけれど、
どんなところにいて目を光らせているか判らない。何しろお前は才能がありすぎるから」
「でも……」
「だからここでも、好きに振舞えるわけではないの。料理に打ち込むためにしていること
なら、守っていくわ。でもそれ以上のことは」
そう言いながらハン尚宮は思わず、愛しい頬を両手で撫でさする。
「もう戻りなさい」
ハン尚宮の手に包まれたチャングムの頭は、少しも頷かない。
チャングムは納得できなかった。以前のようにおねだりすれば……。
「尚宮様、せめてもう暫らく、この部屋に居させてください」
「駄目です」
手を離し、心を鬼にして言った。
「内人としての分を弁えることも覚えなさい」
「どうしてですか」
「話しは終わったわ。早く帰りなさい。私は寝るから」
それでも座り続けるチャングムを放っておいて、ハン尚宮は布団を敷き始めた。
「自分の部屋にお戻り」
チャングムは動けなかったのだ。ハン尚宮様から、ひどく突き放されたように思えて
身がすくんでいた。
「おやすみなさい」
そう言うと、ハン尚宮は布団に入りくるりと背を向け……本当に寝てしまった。
―――やっぱり全部は、言えなかった。
でも話し始めないと、ただ日が経っていくだけ。だからこんな夜に伝えて、
それ以上言葉が続かなくなって。
チャングム、ごめんなさい。
ハン尚宮は心の中で詫びた。
尚宮様はお話しに詰まられると、いつもこうして布団をお被りになっていた。だから
今日だって、きっとまた、何かお思いに違いない。
「尚宮様、失礼します」
お話しはできなくても、せめてお体を寛げて差し上げたい。今日は山道を昇られて、
足も張っておられるはず。
そう思い布団を少しめくって、肩や腰を擦りだした。
尚宮の身体に触れること。それは牢屋の時以来である。この日が来るまでの時間は、
チャングムにとっては永遠のように思われた。そして今触れないと、また手の中から
逃げてしまうような気がした。
だから本当は、ぎゅっと抱き締めたかった。いや、抱き締めて欲しかった。
けれど、肩を揉んでもずっと黙ったままだ。
ひとしきり擦り終わると、チャングムはやむなく自室に戻った。
次の日。
今日も特にすることはない。ハン尚宮は次回の接待の献立をあれこれ考え、隣では
チャングムが食器を磨いている。
「ハン尚宮様」
「なに?」
「このままこちらで、お過ごしになられるおつもりですか?」
手紙では、チェ尚宮は脅威ではなくなったこと、その内太平館に行って一緒に過ごす
こと、けれどそれまでは変わらず真面目に精進するようにとしか書かれていなかった。
ここに来ても詳しくは言わなかった。
ハン尚宮はミョンイの手紙を取り返した当初、もちろんすぐにでもチェ尚宮を追い払い、
チャングムを呼び戻すつもりでいた。周りの者たちにも、そう伝えるべく考えてもいた。
けれどその後、迷いが心を捉えて。
だから今日初めて、自分とチャングムがこれからどうするのか、話すことになったのだ。
「いいえ。もうしばらくしたら、水剌間に戻るわ。もちろんお前も」
「私も帰れるのですか? チェ尚宮様は一生ここにいろと」
「それは私から言います。あとひと月ほど過ぎたら、一緒に帰りましょう。
それともずっとここがいい?」
「いえ。いろいろ勉強になりましたが、やっぱり水剌間で御膳をお出ししたいです。
それにハン尚宮様がお帰りになられるのでしたら……。ハン尚宮様がいらっしゃるところ
でしたら、どこへでもご一緒いたします」
その夜。
ハン尚宮は蝋燭を吹き消し、床に就いた。
ひたひたと忍ばせた足音が、廊下を渡ってくる。そして、尚宮の部屋の前でぴたりと
やんだ。
「入らせていただきます」
小声で言うと障子を静かに開け、チャングムは部屋の中へ身体を滑り込ませた。
気候は緩み、夜に寝巻き姿でいてもあまり寒くはない。
それでもチャングムは、暖かい空気がなるべく逃げないように、小さな隙間から
手だけを潜らせると、昨日と同じようにハン尚宮の背中を擦りはじめた。ほんの少しでも
いいから触れていたかったのだ。
何も言わないハン尚宮を撫で続ける。手のひらという小さな接点だけれど、こうする
ことで、長い間の別離を取り戻せるような気がして……。
たまらなくなり、身体ごと布団に潜り込んだ。
ハン尚宮は、それでも身動き一つせずに寝息をたてていた。
それをいいことに、もっと身体をくっつけてみる。背越し、伝わる胸の鼓動に
耳を当てる。
久しぶりに感じる温もりと、尚宮様が確かにここにいるという安心感に、急激な
睡魔がチャングムを襲った。
―――終―――
はうぅぅぅ・・・切ないなぁ
392 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 21:48:39 ID:BvwhS6Mj
ハン尚宮様、
おまえが必要なの!ともう一度言ってあげて下さい。
>竹の皮で包んだ御飯
皆さんコンビニのヨンエむすびは食べましたか?
394 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 12:01:55 ID:boe1Z70C
>>393さん
え?!そんなのあるんですか!!初めて知りましたw
396 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/22(日) 15:11:02 ID:uVlUUOs+
壱参弐様
お越しをお待ちしております。
397 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 22:59:37 ID:cU5MCiux
冬心さんや蓮生さんもいらして〜〜ん。続編待ってまーっす(´∀`)/
398 :
前座人:2007/04/24(火) 21:20:06 ID:aufU6Z2v
真打ちの皆様登場までの余暇に駄作を一本投下します。未熟な点やお目汚しは御容赦ください。
◇ハン尚宮×チェ尚宮
◇エロなし
◇携帯参戦、改行多です。
ある日のこと。
何時ものように最高尚宮様の部屋での会議中、突然それはやってきた。
何でも一昨日到着したばかりの明国からの使者が、旅の疲れからか食欲を無くしているので、料理に何か趣向を凝らせと王様直々のお達しであるとのこと。
当然のことではあるが、献立そのものは随分前から決まっている。
皆で額を突き合わせた結果、香辛料を使った料理二品と菓子を新たに作るということで折り合いがついた。
さて、これは大変。一体どんなものを作ろうか――。
そんなことを考えていると、最高尚宮様からの指示が下された。
料理の献立は自分と他の尚宮で、菓子についてはチェ尚宮とハン尚宮に。
正直驚いた。
尚宮に上がってからこっち、共に一つの事に励んだ記憶などさらさらない。こんなこともあるのね、本当に珍しいこともあるもの。
けれど、不快ではなかった。
そうね、疲れを取るには甘い菓子だけでも随分と違う。
けれども、菓子は料理以上に繊細さが必要とされる。大事な国賓を遇す料理だもの、ここは慎重を期さなければ。
勝手知ったるお前と手を組まざるを得なくなったのは、丁度良かったのかも知れないわね。
そんなわけで今私は、部屋でお前と二人、ああでもないこうでもないと議論の真っ最中。
「他の内人には任せられない事だから。貴女なら、能力も優れているし適任だわ」
書を捲り数多ある菓子の文字を目で追っていきながら、口早にそう言うお前。
僅かに伏せた睫毛の長さにふと、目を奪われる。
「それを言うなら、私よりもクミョンの方が適任でしょう?」
最高尚宮様からの指示がなければ十中八九、私の代わりはクミョンだろう。
まさかあの可愛い姪に能力が無いなんて、言わないでしょうね?
「あの子では経験が足りなさすぎるわ……ねぇ、不満なの?」
「何が?」
「たとえ仕事でも、私の傍に居るのは嫌なの?」
驚いて、顔を上げる。
やっぱり同じ様に顔を上げたお前と、視線がまともに合った。
思わず笑ってしまう。
そうか、そうだったの。
「何が可笑しいのよ?」
形の良い眉をきゅっと潜めて、お前が問う。
いいえ、可笑しくなど…強いて言えばそうね…嬉しいのかしら。
まるで昔に戻ったみたいで、お前と共に何かに励むということが純粋に嬉しかった。
けれど何よりも嬉しかったのは、この者が私を甚く好いている…ということ。
思えば昔からそうだった。
その強い眼差しで真直ぐに私を見つめる。聡明なお前のこと、いつか心を…私の想いを見透かされてしまうんじゃないかと、ひどく心配したくらいに。
だから私は口を慎み、お前の前では必要以上に己を消して…今まで過ごしてきたというのに。
そうだったのね。
私が傍に居て嬉しいのね?
心配は要らないわ、だって私もそうだから。
「いいえ、別に?」
「…じゃあ何故笑ってるのよ」
「笑ってなんていないわ?」
――ただ、可愛いなあと思って、ね。
「嘘よ。貴女って本当、いつだってそう!お上品ぶって取り澄まして、少しは自分の気持ちとかそういうの見せたらどうなの?」
「見せてるわよ?」
――だから笑顔も惜しみなく向けているじゃない?
そう言うと、益々紅潮する頬。吊り上がる、眉。
怒った顔も、とても綺麗。
「馬鹿にするのも…!」
「ソングム」
「何よ!……?…え、えぇっ?」
お前の顔から、瞬時にして怒りの色が消えていく。
余程驚いたのだろうか、口を小さく震わせ何度も瞬きを繰り返しながら私を凝視して…。
「馬鹿になんてしてないわ、ソングム…」
「やめてよ!何急に名前で呼んで…っ…何考えてるのよ?」
代わりに芽生えてくるのは…羞恥の色。
ただ名前を呼んでるだけじゃない、そこまで赤くならなくたって…。
…可愛いわね。
「貴女のことを考えてるわ?…ソングム…」
「やめてったら!」
「…どうして…?」
「どうしてって…」
手を伸ばして、優しく頬を撫でる。
熱を帯びた其処は、冷えた指先に心地好い。
「名前で呼ばれるのは嫌い…?」
私は一体、何をしているのだろう。
目の前には仕事が山ほどあるというのに、時間もそれほどないというのに。
でも――。
「昔はお互い、名前で呼び合っていたじゃない…?」
「で、でも…今は…昔とは」
今は…お前しか見えなくて――。
「ソングム…」
「貴女…一体どうしちゃったのよ?変よ、おかしいわ…!」
「でも、気持ちを見せろと言ったのは貴女でしょう…?」
「それは確かに…、でも」
「言う通りにしたのに不満なの?」
――もう、いいでしょう?
襟首を掴んで引き寄せ、躊躇いがちな唇に口付けた。
**********
「ペギョン…」
小さくそう呟いて、私の手を握り締める。
どうやら寝言のようね、可愛い顔して眠っちゃって。
献立は私の方で決めちゃうわよ?異存はないでしょう、お前は眠っているのだから。
しかし…、あれだけ強要したのに頑として名を呼ばず、もう諦めかけていた今になって…しかも寝言では呼んでくれるのね。
素面では徹底的に拒否するつもり?私も割と頑固だけれど、そっちも相当なものね。
戯れに、指先で鼻を軽く突く。刺激にぴくりと動く仕草が愛らしくて、思わず笑ってしまった。
まあ、そんなお前を好いているのも事実だから…これはもう仕方がない。
甘んじて、受け入れましょう。
それは、私とお前の初めての…そして終わりの見えない未来への、第一歩。
どうか、この手を離さないで。
手探りで共に進んで行くには、お前はあまりにも真直ぐだから。
不器用で、人に慣れてなくて、真直ぐだから簡単に挫折して。
本当は優しいお前。だからこそ自分が傷付かない為に、簡単に他人を傷付けて。騙し、欺き、謀り…弱いから、流されて。元に戻れなくなって、迷って。
だからもう、迷うことがないように、いつもその瞳に私を映しなさい。
傍に居て、離れないで。
――約束よ?
そう呟いて、私は温かな手を握り返した。
(了)
>>398 遅れ馳せながら、
n n
( ヨ) ヲツ━━━ !! (E ) +
ヽ、ヽ、∧_∧ / / *
ヽ、( ´∀`) / ┼
ヽ /
ヲトメ ンソグム カワユス モヘー
>403
毎度笑かしてくれますな。
オギョモも好きねえ…w
405 :
名無しさん@ピンキー:2007/05/19(土) 00:00:51 ID:DmrT9Lbc
石川島播磨重工保守
>>壱参弐様
ここ初めて来たのですが…自分女なのですが…はげしく萌えますた!!w
放送時からハン尚宮のファンになり、彼女とは対照的なチェ尚宮の喜怒哀楽を露にして
バンバンバンッと机を叩く姿を毎回楽しみに見ていましたが(つまり女官編の方が圧倒的に好き)
このカプって正直考えたことなかったけど…最高。壱参弐様によってめでたく開眼しました。
最近ちょっと間が開いてるようですが…次の投下をとてもとても楽しみにしています。
冬心さんや蓮生さん、その他皆さまのSSも待っていますよ〜。
っということで、保守さげ。
緊急保守
408 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 15:23:41 ID:D2mnZZ0b
東京ドーム保守
409 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/08(金) 16:45:16 ID:RdFvtmjT
楽しみにしているので寂しいです(;ω;)
410 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/09(土) 16:28:48 ID:1ToOhVHk
もうアゲル。
アゲた上で、伏して伏してお願い申し上げます。
壱参弐様、ぜひぜひ新作を!
ハン尚宮×チェ尚宮 −属望−
壱参弐 柵
内容:百合 原作改変 エロなし
分量:これを含め、10レス
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
長らくお待たせしております。励ましていただいた皆様、本当にありがとうございます。
−お知らせ−
1.この作品は、あと3回で完結の予定です(全14回)。
2.保管庫収録分で、設定の一部を修正する予定です。
宿望 冒頭のチェ尚宮とのやりとり(104中ほど)
・クミョンは具体的な悪事に加担する前であることを明確にした。
渇望 クミョンとの絡み(大幅に)(130終わり〜131初め)
顧望 渇望修正に伴う修正(372中ほど)
・ハン尚宮はクミョンを抱き締める以上の関係は持たなかったことに変えた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あなたは、そっと見ていた。
目の前の、それは王様の母君のために建てようと、国中を探して見つけた一番長く太い木
だとか。ぎーこぎーこ、切り倒すのに十日もかかったわ。
いざ運ぼうと押したけれどもびくともしない。引いても縄がぷつりと切れるだけ。
誰かが女の人の髪の毛は強いから、それで作った縄ならと言いだして、都中の女の人の
髪は、可哀想に、ばっさりと切り取られてしまった。
そして今まさにたくさんの男たちが取り囲んで、黒光りのする太い綱を幾重にもかけて、
えいやえいやと力をこめ引き始めた。
あなたはそれを見て、自分が引いているわけでもないのに手を握り締めていた。周りに
いた皆も同じ、固唾を呑んで見守っている。
確かに綱は切れなかった。けれど、木もごろりとも転がらない。ただ、軋むような音を
立てただけだった。それで引いていた男たちはくたびれて、へたりこんでしまった。
男たちの合間から、太い木が見えた。
あなたは、どういうわけか、なつかしさに引き寄せられるように、その木のそばに
近付いた。そしてそっと幹を撫でてみたの。意外に柔らかい、そうあなたは思った。
すると不思議なことに、あなたが触れた途端、その木が急に"ことり"と動いたから皆
びっくりして、慌ててもう一度引っ張ってみた。すると、するすると動き始めたのよ。
けれどあなたが手を離すとまたぴくりとも動かなくなる。
だからあなたはその木にまたがらされて、そのまま都まで一緒についていくことになった。
あなたはその木が綺麗に削られ、ぴかぴかに磨かれているのを、ずっと見続けていたわね。
今都にある大きなお寺、その棟木を見上げる度に、あなたは気持ちが安らぐでしょう。
見守られているように感じるでしょう。
なぜならあれはね……あなたの……。
:
:
:
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
チャングムの寝息を聞くと、ハン尚宮は身を起こしてチャングムの方に向き直った。
半分ほどはみ出した背中に布団をかけ直し、肩を軽く抱き締めてみる。それは記憶に
あったより、ずっと大きく硬く感じた。
この子のことだから、どうにもならぬ気持ちを紛らわそうと率先して力仕事をこなして
きたのだろう。前にここにおられた尚宮様も、お陰で楽をしたと言っておられた。
柔らかい髪を撫でながら思う。
身体の疲れや気疲れが、私とこうして一緒にいられて、たぶん一気に吹き出したの
だろう。そうよね。あんなことになって、お前も女官友達ともほとんど話すこともできずに
ここで頑張っていたのだから。
身体のあちこちに触れても、よほど疲れているのか、気持ちよさげに眠り続けている。
そんな時。
「柳の木ね」
チャングムがつぶやいた。
突然の甘えた口調に、ハン尚宮はどきりとした。柳?
何のことだろう。しかし寝顔は相変わらずだ。
寝言か、と思う間もなく、
「最高尚宮になったのです。お母さんの夢を叶えたのです」
この子は……。
「いつまでも見守ってくださるの」
また寝言を言う。
ああ、もしかしたらあれかも知れない。
ハン尚宮はある昔話を思い出していた。それは彼女も大好きだった話だ。
その話は、柳の精と杣人(そまびと)の出会いから始まる。やがて二人の間に可愛い
女の子が産まれた。その子が三つのとき、その柳は切り倒されて、大きな寺院の棟木に
なったというものだ。
ミョンイの尚宮様はお部屋の縁側に腰掛けて、両脇に私たちを置いてお話しをして
くれた。そして物語のさわり、縄を拵え、いざ引こうとする場面が来ると、両方の手で
私たちの髪の毛をぴっぴっと軽く引っ張られた。お話も面白かったけれど、その感触が
妙に楽しく、何度も何度もおねだりしたものだった。
きっとミョンイもそうしながら、この子に話してやったのだろう。そうしてお前は
眠りについたのだろう。
ミョンイと別れ……宮に入っても私と一緒では、安らぐ時はなかったでしょうね。
なのにこの子には、一度もそんなことをしてあげなかった。
では今夜は、私がその話をしてあげる。
「昔々、ある山奥の村にひとりの杣人がいました。その男が行く山に、大きな柳があり
ました。それは女人のような葉をそよそよとなびかせ、心地良い木陰を作って………」
ひとしきり話し終えても、ハン尚宮は眠りに付くのが惜しかった。
宮に閉じ込められている間、どれだけこうしてお前と過ごしたかっただろう。温もりを
感じたかっただろう。お前と触れ合えば、わだかまりもやましさも、何もかも消えて
しまうような気がする。
そう思いながらハン尚宮は、チャングムの髪の毛を撫で続けた。ずっとこうして、
私も太平館の尚宮としてここにいてもいいかもしれない。雑用は多いし忙しい時は
辛くもあるけれど、お前と一緒なら私も頑張れるから。
夜が白むまで、ハン尚宮は隣で寝入るチャングムを撫で、小声で語りかけた。
お前が私を求めているのは判っている。言葉はいいから、気持ちを肌で確かめたいと
思っているのでしょう。
そうすればお前はずっと楽になるのだろう。そうしてあげたいとも思う。
けれど……私は……お前のことが本当に好き。だからこそ求められるままに触れ合っては
……私は、またお前しか見えなくなってしまう。それが怖い。
ハン尚宮は、チャングムの手を軽く握った。
お前は試練に耐えられる子よ。どうか辛さを受け止め乗り越えなさい。そして本当の
安らぎをこの手で掴みなさい。
朝起きると、布団の中には自分だけがいる。
チャングムが慌てて身づくろい厨房に向かうと、何事もなかったような顔で、
ハン尚宮は食事の支度をしていた。
尚宮の食事は内人が作るのが決まりである。けれどハン尚宮は自分の腕を鈍らせない
ようにと、交替で作るようにしていた。
朝の挨拶を交わした後も、ハン尚宮は無言のままでいた。チャングムも何も言わず、
支度を手伝った。
そして同じ部屋、尚宮の部屋に運んで食事を取る。やはり無言のままで。
これからしばらくの予定は、虫干しを終えた食器類の片付けと献立案の仕上げである。
それが終われば、後は食材の搬入に立ち会うぐらいで、数週ほどは、ほとんどすることが
ない。ということはまたたっぷり料理の研究ができるということだ。
そう思ってチャングムは少しうきうきしながら、倉庫に入っていった。尚宮様の
お言葉が少ないのが気になるけれど、いつものことと言えばいつものことだし。
ハン尚宮は、部屋で次の宴会の献立やその他一切の段取りをしたためていた。
せっかくだから、チャングムが取ってきた山菜なども取り入れてみよう。二人で摘んだ
山の息吹を思い出しながら料理をするのも楽しいものだろう。
もう間もなく完成する献立は、宮に送り最高尚宮に確認してもらうことになる……が、
私の作る料理にチェ尚宮が口出しすることはない。というか、させない。形の上で
報告するだけだ。
そうね、ヨンセンに取りに来させよう。チャングムも友の顔を見たいだろうし、私も
宮の様子を聞きたい。
書付けを片付けると、ハン尚宮は食器倉庫に向かった。
「どれぐらいで終わりそう?」
「あと少しかかります」
「じゃあ手伝うわ」
「いいえ、一人でできます」
「夕食を早目に済ませたいの」
二人はまた黙々と作業に取り掛かった。
夕食も同じく静かに取る。
いつもはお話しをしながらなのに。
その様子にチャングムも、昨夜のことでお怒りなのではないかと心配になり始めた。
「あの、尚宮様。昨日は申し訳ありませんでした」
「……。あとで部屋にいらっしゃい」
部屋に戻り、日誌を書き終えたチャングムは、頃合を見計らって尚宮の部屋へと
向かった。
「入らせていただきます」
「そこにお座り」
ハン尚宮と正対してチャングムは座った。
「お前、昨日はどういうつもり? 礼儀を弁えろと言ったでしょう」
「お身体がお疲れかと思いまして」
「じゃあどうして隣に入ってきたの?」
「それは……どうしてもおそばにいたくなって」
「私たちはどこで見張られているかわからないのよ。ここだって人が少ないとはいえ、
気を付けなくては」
「このようなことを申し上げて、失礼かと思いますが……それだけが理由ではないように
思います。以前なら私が触れると……受け入れてくださったのに……どこかお変わりに
なった気がします」
「そんなことはないわ」
「ミン尚宮様が噂されているって、前にチャンイが来たときに話してくれました。
ハン尚宮様はチェ尚宮様と……夜をお過ごしになっているのではないかと……」
思わず息を飲み込んだ。
平静を保とうとするハン尚宮の胸は、けれど痛いほど高鳴った。
「よくお側におられるから……面白おかしく噂しているだけだって、そうは言って
いましたけれど……私は本当のような気がして」
チェ尚宮に言われた時、正直に告げると言い返したではないか。
なのに今まで言いそびれていたのよ。
ハン尚宮は心中呟いた。
けれど隠し通すなどできない。この子は、こと私に対しては妙に鋭い。
いずれ宮に戻れば私とチェ尚宮の様子に気付かぬはずはないし、他の者たち、ましてや
チェ尚宮などから聞かされれば、もっと深く傷付けることになる。
しかしそれにしても……面白おかしくか。ミン尚宮め。
二人の間では、あれはあれで真剣で、いわば身を刻まれる思いをしていたというのに。
けれど、はたから見ればそのようにしか見えないのか。
仲が深まるにつれ、他の世界とは切り離され、二人の間でしか通じない言葉を交わして
いるということか……。
いや、それならそれでいい。それ以上のことを他の者たちに知られる必要はない。ただ
この子だけが判ってくれればそれで。
ハン尚宮は、深く息を吸った。
「お前に、話しておかなければならないことがあります。
チェ尚宮とのことは……お前の思う通りよ」
「どうして」
「初めは私も嫌だった。でもそれが、あの時あの状況から免れるための唯一の手段だった」
「けれど……」
「あのまま……自分はいいけれどお前を失いたくない一心で、それでチェ尚宮の言う
とおりに身を委ねた。その内、活路が見出せるかも知れないと思った。そうされて
いても、お前のことを忘れまいと。
逃げられぬ私にあの者は……好きなように……全く好きなようにしてくれた」
「そんなことが……お辛かったでしょう」
「こうしている間は、私もお前も無事でいられる。私さえ耐えればあの者と対立すること
なく、穏やかに暮らしていける。そう思い続けようとした。お前やミョンイを裏切って
いる訳ではないのだと」
「そのようなご事情でしたら……仕方なかったのですよね」
「けれど、それはどこか心地良いものでもあった。私を守ってくれるという言葉、ずっと
そばにいて欲しいという懇願に、心が痺れることもあった」
チャングムは黙って、ハン尚宮の話しを聞くことにした。
「そうこうする内、いろんな方に協力いただいて、ようやくあの者の弱みを掴んだ……。 もう私たちを害することはできない。それに、すぐにチェ尚宮を追い払うこともできた
だろう。
だけれど、私は……そうはしなかった」
また言葉が淀む。
「ずいぶん前から拭えず、わだかまっていた感情……お前も、もう大人だから話そうと
思うのだけれど」
重い口をこじ開ける。
「チェ尚宮はね、かつてはミョンイと、そして私の友達だったのよ」
「ご友人だったのですか?」
ハン尚宮は軽く頷いた。
「お前のお母様は、とても人気者だった。両班の子だったこともあって憧れの存在
だったわ。多くの者が惹かれ、いつも沢山の子たちが取り巻いていた。
だけどあの子――私たちはチェ尚宮のことをソングムって呼んでいたけれど――とは、
割と気が合ったようで、よく話していた。
家の方針でもあっただろうけれど、本人も料理は好きだって言っていた。そして珍しい
食材を手に入れては、ミョンイや私に見せてくれたりして。
私はあまりソングムとは話しはしなかった。というか、ミョンイ以外とはあまり話しは
しなかったから。いつもミョンイにくっついて、ただ横で他の人と話すのを聞いていた
だけだったけれど」
「そして、ミョンイは魅力的で……何人かと多少の付き合いがあるのは知っていた」
「それであの当時は、はっきりとは判らなかった。けれど、チェ尚宮とああなって確信
した。
信じられないかも知れないが……ソングムはミョンイとも。それは、つまりそういう
意味でね」
「そして気持ちが抑えられなくなった……それはミョンイや私やお前をひどい目に
合わせたことだけでなくって」
「辱めてやりたいと思っていた……仕返しをしたいと思って……だから何度か抱いた……」
「いや、知りたかった。なぜミョンイはあの者と」
いいや違う。決してミョンイのせいではない。
話しながらハン尚宮はそう感じていた。ミョンイがどう思おうと誰と過ごそうと、
当時のペギョンはそれほど気にはしなかった。気にしていてはきりがないということも
あったけれど、むしろ、そんな自由奔放な気性に惹かれていたからだったし、何より深く
想われているのは自分だけだという秘かな自信も、実は未だにある。
それにいずれにしても、ミョンイのことは昔の話。それが今ソングムを何度も抱くと
いう理由にはならない。
何より、私の感情は……嫉妬なのか、それとも同情……ありていに言えば欲望?
未だに自分でも判らない。その全てが当てはまるようで、何かが違うようで。言い表し
ようのない想い。
それを正直に言うとするなら……。胸の中にもやもやとした、けれど強烈な、つまりは
"関心"があるということ。
ハン尚宮は言葉を捜した。
「その内、愛おしくすら思うようになって」
愛しい? ハン尚宮様が、チェ尚宮様のことを?
チャングムは軽い目眩を覚えた。
「何度も抱かれ、そして抱いている内に……少しずつ判ってきた。あの者は心の中で涙を
流しているのだと。
元々は真面目な子だった。それはお前だって感じたことはあるでしょ。
そしてああ見えて、寂しがり屋なのよ。それを知って無下にはできなくなった。
ミョンイのことにずっと囚われ、けれど苦しさを打ち明ける相手もいない」
「それを聞いてやれるのは、私だけなの。あの者には私が必要……」
問い返す言葉を失ったチャングムは、耳の中に言葉が流れ込むのに任せた。
それだけで精一杯だった。
「そもそもは私たち、ミョンイも含めて三人の関係が始まりだった。ミョンイはあなたの
お母様。けれどミョンイとソングムと私のことは、お前には直接関わりは無いのよ」
「あの者は本心から私のことが好きだって判った。歪んだ情けだとは思うけれど。
哀れでならない。私しか縋るものがないなんて。こんな、気のない私をずっと好きで
いるなんて。
その一途な心根に、私は溺れて…しまった」
「そして情……のようなものが芽生えたのかも知れない。あるひと時、私があの者に
癒されたことも確かだった」
しばらく、部屋の中には物音一つしなかった。
再び、ハン尚宮が口を開く。
「それでね、チャングム。私は私の代で、この縁の始末を付けたいと思っている。たとえ
あの者が許し得ぬ行いをしたとしても」
「私がいなければ、あの者は寂しさに耐え切れないでしょう。あの者は孤独の中で
彷徨っている。そして私しか、それを癒せるものはいない」
「では……もしかして、これからもチェ尚宮様と?」
それだけは我慢できない。もし再びハン尚宮様が頷いたならば、今すぐに宮に飛んで
帰って、どうにかしてしまうかもしれない。いやそれよりも、ハン尚宮様を連れて
どこかへ逃げてしまおうか。
「いや、それもない」
チャングムの形相。予想していた反応だけれども……。
「たぶん側にいてやるだけで充分なはず」
「ソングムはミョンイを今も想っている。それは間違いない。
それでずっと苦しみから逃れられないでいる。お前を極端に怖れるのも、お前を
見る度にあの……時の光景が蘇るから……」
「ミョンイは力があり過ぎた」
「同じ時に、権力を得ることを宿命付けられたソングムが居た」
「そして私はその二人の近くにいた。三人とも料理が好きで、腕も同じくらいに、
そこそこ上手な方だった。
だから、それぞれがそれぞれを意識してしまって。
好きになったり自分だけのものにしたかったり。
愛おし過ぎて憎らし過ぎて。
その気持ちを未だに私も、どこか引き摺っている」
「これが、私たちが抱えている醜い姿なのよ。その愛憎の渦に、お前まで巻き込み
たくはない」
と、尚宮様は言われるけれど……。
チャングムは苛立たしくさえ思った。
今、尚宮様の前にいるのは母ではなく私なのに。愛しい人を奪われて、どうして
我慢しなくてはならないのか。
「それでね、チャングム。
これから話すことは、お前にとって納得できないことと思います。
お前の母親は殺められ、あの者はのうのうと生きている……」
「けれど、今の私にはチェ尚宮を追放することを決意できない。
もちろん、かつては何回も考えた。横にいるチェ尚宮をこの手で……とすら。
けれど罪の意識に苛まれる有り様……。ミョンイの夢に苦しむ哀れな姿……」
「もうあれで充分ではないかと思うようになった」
「ずいぶんひどいこともされた。けれど結果的には、あの者が私たちの命を救ったことも
また間違いない……」
そこまで言うと、ハン尚宮は大きな溜息を漏らした。もう一つの考えを、言わなくては
ならない。
「私自身、最高尚宮に戻るつもりはないの。ソングムとの勝負に勝ったのだから、少なく
ともミョンイと私の誓いは果たせた。心残りはなくなったわ。
たぶんミョンイもそう思っていると思う。
そして私が次にしなくてはならないことは、ミョンイのあなたへの願いを成就させる
こと」
「お前は競い合いで、確かにチェ尚宮に勝った。けれどあれは、言ってみればお母様が
支えてくれたからじゃないかしら」
「これからのお前に必要なのは、もっと懸命に精進して……それは勝ち負けじゃないし、
最高尚宮になれようともなれずとも、どちらであってもそれは問題ではない」
「真の料理人となること。それが、お母様の一番喜びとなるはずよ。そして私は、お前が
そうなるように導きたいと思っている」
「けれど」
「あの者を追い払えば、恨みは晴らせるでしょう。だけれど私はもう一度信じてみたいと
思う。それはいけないことなのかしら?」
「それは、チェ尚宮様とそういう……関係になられて……お心変わりをされたのですか?」
「いいえ違うわ。二つ理由があるの。
ミョンイの望みは……本当の望みはお前が最高尚宮になることではないと思うから。
お母様は、あなたが無事に育って楽しく生きることを願っておられたと思う。そして
できれば、あなたの素晴らしい力を発揮する場が見付かればと。
でも、幼くして一人で生きることになったお前に、ミョンイ自身はもう教えてやること
はできない。それであなたに宮に入るように言われた。宮に入れば自分の歩んだ道を
辿らせることができる。そうやって、ご自分のことを伝えようとされたのだと思うの」
しかし。幾らなんでも無謀な話しよね。身寄りのない子に、宮に行き最高尚宮になれ
というなんて。それを叶えようとするこの子もこの子だ。というか、あの親にして
この子あり、といったところだろうか。
「ソングムへの無念はあったでしょうけれども、それでもまずはあなたのことを一番
大切に思っておられたはずよ。
幼いあなたに生きる希望を与えるために、ご自身の夢だった最高尚宮のことをお話し
されたのだと思う」
それだけ思いの強い子だった……それはこの子も同じ。ひとたびこうと思い込めば、
とことん突っ走ってしまう。
「そうして、宮の中からお前を見守っていこうとされた。あの退膳間の前に立つと、
お母様の息吹が感じられたでしょう?」
その無謀さが、お前のいいところでもあり、また欠点でもある……。
そんなお前を、正しい方向に伸ばしてやりたい。
「それとね、もう一つの理由だけれど、これからも長い間水剌間で過ごしていく訳だけど、
お前独りで修行していればいいというものではない。やはり誰か競い合う相手がいないと」
そこまで言うと、ハン尚宮は再び口を閉じ、己が心を振り返った。
私とて……確かに料理は好きだった。上手になりたいと思っていた。けれど本当に
最高尚宮になりたかったのかどうか。ミョンイが言い出さなければ、そう思うこと
などなかっただろう。あるいはチョン尚宮様に言われたから、またチャングムに言われた
から。全て人に言われたからではなかったか。まさにあの者の言うように。
私は先頭に立つ器ではない。むしろ誰かを支える方がいいのではないだろうか。
あの当時も、私はミョンイが最高尚宮になるべきだと思っていた。
あの子は私と違って人当たりがよく、人を束ねる力があった。
包丁捌きはまだ、と思うこともあったけれど、他の人には無い何かがあった。直感の
素晴らしさというか、今にして思えば味を描く能力なのかも知れない。
甘酢を埋めた時も、当然あの子が受け取るものだと思っていた。
だからあのこと以来、封を切ることは無いと思い込んでいた。いつか私も魂となった
暁に、また二人揃って取りに行くしかないと。
では、私自身が何に執念を燃やしていたかといえば、ソングムに負けたくない、それ
だけではなかっただろうか。たとえ最高尚宮になることは叶わなくても、腕では勝り
たいと。
再びチャングムを得て一筋の光明が差したけれど、それでもお志を継ぐこと、
ミョンイの願いを叶えること、それは掴みどころの無い祈りに近い。
勝つことを目標にしてはならぬ。そうチャングムには言ってきた。
けれど疫病騒ぎの直前に、チャングムが私の言葉尻を捉え、からかうように
『勝ち負けを考えるなと言われていたのに』と言ったことがあった。いみじくも、
あれが私の本意ではなかっただろうか。
あの時確かに私は、ソングムに勝ちたいと思っていた。
ハン尚宮は視線を上げ、チャングムをじっと見て語りかけた。
「私はミョンイを失ってからずっと独りでやってきたと思っていた。チェ尚宮なんて
相手にもしていない……いやそんなことすら、考えないようにしていた
けれど、競い合いをしてみて判ったの。ずっと前から心のどこかで、あの者だけには
負けたくないと思い続けていたってことを。それが私を励ましていたことを。
もちろんお前のお母様との約束が大きな力になっていたけれど、目の前にある
目標は……やっぱりソングムだった……」
「だからお前にも、修練をする仲間は必要よ」
「私はあなたに、本当に力を発揮できるようにしてやりたい。そのためには、復讐など
行っている暇はないわ」
「チェ尚宮の悪行を明かそうとすれば、役所に告発し、そして証言しなければならない。
たとえ悪人とはいっても、人を追い落とすことは決して気分のいいものではない」
「それは辛いことだし、私はお前にそんな嫌な目にあわせたくない。それより、もっと
懸命に料理の修練を積んで欲しい」
「お前はもうすぐ水剌間に戻る。けれどお前と腕を競えるのはただ一人しかいないと
私は思っている。
もしチェ尚宮を追い出せば、たぶんあの子だって水剌間にはいられないでしょう。
あの子自身がどう考えているのかは判らないけれど、チェ尚宮とは深い繋がりがある。
そんな子に、大事な御膳を任すことはできないと思われるでしょうから」
「あなたがこれからも精進を怠らなければ、ゆくゆくは尚宮になり、そして最高尚宮にも
なるかも知れない。
けれど本当にそれでいいの? お前は今まで自分の好きなようにしていて、それが腕を
伸ばしている面はあるけれど、水剌間を仕切るにはそれだけでは足りないわ。もっと
決まり事も含めて、勉強しなくてはならないことが山ほどあるのよ。
それを本当にひとりでやっていける?」
「でも私はとても許すことはできません。」
「クミョンも、失うには惜しすぎる」
「けれど……」
「そしてお前とあの子を競い合わせてみたい。これは純粋に尚宮として、料理人として
願うこと」
「無念です」
「思い出して御覧なさい。最初の競い合いの時、お前が誰を意識していたか? 私の
ことなんて途中から忘れてしまったんでしょ。ただあの子に勝ちたいと思っていたでしょ?」
さすがにチャングムも言い返せなかった。
遠く、ホッホー、ホッホーとふくろうの鳴き声が響く。
「母の無念が晴らせません……」
ハン尚宮はチャングムから視線を逸らし、ミョンイの顔を思い浮かべるかのような
眼差しで、つぶやくように言葉を紡いだ。
「ミョンイを殺めたこと、それは」
「もちろん今でも許すつもりはない。けれども、これからの人生で償わせたいと考えて
いる」
「あなたと引き離されてから……チェ尚宮とはね、幾夜も共に過ごしたわ……」
「ふと見ると、涙を流している。そんなことがよくあった……」
「そして夜中に突然目を覚まして、手を痛いほど握り締められたりしたことも……」
「最初は驚いたけれど。でも……」
「もしミョンイが、夜毎の有り様を見ていたとしたら、きっと私の気持ちを判ってくれる
と思う」
「そして私自身、ソングムを信じてやりたい。あの者はミョンイのことで……自分を苛み
ながら生きている」
「その上、私まで失うのが怖かったのでしょうね。私がいなくなれば、更に罪深さを
感じて、心を狂わせてしまっただろうから。
あるいは空ろな心を癒すために、その代償となるものをやみくもに求め続けただろう
から。きっとその先にあるのは……余りに目立つと、疎ましく思う者は出てくる。分を
弁えなくてはならないのはあの者だって同じ」
「それをチェ尚宮自身も、何となく感じていたのでしょう。だから私に……抑えて
欲しいと願った。……私はあの者に、もう愚かな真似はさせない」
「では、チョン尚宮様のお志はどうなさるのですか」
「私はお志を忘れてはいないわ。それは安心して。
……前のように急に変えるのは難しいのかも知れない。だから少しずつ変えていこう
と思うの。その少しの違いが将来、大きな違いとなることを信じて」
加えて、ハン尚宮は胸中思う。
現実的な話をするなら、他の誰かが最高尚宮になるぐらいなら、私としてはむしろ
チェ尚宮の方がやり易い……お前はこんなことまで考えなくてもいいけれども。
「私の話しはこれまでよ。今日はもうお休みなさい」
ハン尚宮はチャングムに出て行くように促した。
―――終―――
注意書き:昔話の部分は、三十三間堂棟由来の再話。
杣人(そまびと) 山で木を刈ることを仕事とする人。
421 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/15(金) 12:50:42 ID:9B/zZfHn
以前、朝鮮王宮での王の交わりがどうだったのか・・・というのがありましたよね。
最近読んだある小説にて、その詳細がわかったので、ここに書いておきます。
王の寝室は、至密 ( チミル ) と呼ばれ、井の字の形をしています。
その真ん中の正方形の部分に、王とその夜の相手の寝床が東枕で設えられ、その他に置いてあるものは便器のみという中で、房事が行なわれるわけです。
周囲の八つの小部屋は、王の寝室と障子や屏風1枚のみで仕切られています。
その小部屋には、護衛と称して、女官長である提調尚宮 ( チェジョサングン ) や、至密付きの尚宮達。
もしもの時のための医女、女史 ( ヨサ ) と呼ばれる王の房事を記録する係りの尚宮 ( もしくは内人 ) が配置されています。
ま、こんな中で、房事は行なわれるわけですね。
ちなみに江戸時代の大奥の場合ですと、将軍が側室と房事をする場合は、その部屋の中央に将軍の床。
右手にお相手の床。
お相手の更に右に、少し離れてお伽坊主と呼ばれる尼さんの床。
将軍の左には、お添寝役と呼ばれる奥女中の床が、それぞれ敷かれてあり、障子一つ隔てた次の間には、当番のお年寄りと呼ばれる奥女中が、寝ずの番をしているそうです。
そして翌朝になると、お相手とお添い寝役、尼さんは、それぞれ昨夜の房事の様子を、寝ずの番をしていたお年寄りに報告しなければならなかったとか。
古今東西、どこの後宮も、奇妙な習慣があるものですね。
壱参弐様
あと三回。お疲れ様です。
これから暑い季節なので体調を崩されぬよう。
>>421 >その小部屋には、護衛と称して、女官長である提調尚宮 ( チェジョサングン ) や、至密付きの尚宮達。
ヨンシンたんもソングムたんも王様のギシアンに付き合うお役目があったのか
423 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/17(日) 13:27:54 ID:Xgyi+nWX
壱参弐様
新作ありがとうございました。
あと3回ということで、今後の展開にドキドキしております。
424 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/29(金) 00:35:23 ID:uluVwfv5
良いお話だったからプリントして何度も読んでる人です。
お体を大切に☆彡
今回もGJですた。
待ちきれないよ・・・机たたいて待ってまつ。
≪パンスル邸≫
「………おかしい、医女の服が二着も足りない。
汚したから洗っているとは聞いていないし……」
「チャン執事、チャン執事はおるかー?」
「はい旦那様只今」
――――――――――
≪宮中≫
「叔母様、その格好は……」
「あ、オギョモ様が兄上に医女の服を作らせたの。それを借りてきたのよ。
さ、お前の分もあるから着てみなさい」
「………………嫌でございます」
427 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 00:51:35 ID:U9gldFXj
チェ尚宮とクミョンで医女服コス
「あ、オギョモ様が兄上に医女の服を作らせたの。それを借りてきたのよ。
さ、お前の分もあるから着てみなさい」
「………………嫌でございます」
チェ尚宮とクミョンで医女服コス
チェ尚宮とクミョンで医女服コス
(;´Д`)ハァハァ八ァ八ァノヽァノヽァノヽァノ \ア / \ア/ \ア
428 :
クミョン:2007/07/15(日) 01:05:49 ID:3AMIDsNc
着ないわよ!それが私
_______
|| __ || |
|| .| | || | ∧_∧ ゴフッ!
>>427 ||  ̄ ̄ || | _ _ .' , ..(#.)゚Д゚) ・,∵
|| ◎||- ― .= ̄  ̄`:, .∴ と と ) ’
|| || __――=', ・,‘ と__と_ノ
|| |三三| .|| ̄ ̄  ̄"'". ’
||_____||_|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
医女服コスで「私の命、お前に預けよう」と
>>427に迫るチェ尚宮
医女服コスで「最後にひとつだけお願いがございます……私の治療をry」と
>>427に迫るクミョン
>>429 どちらも広い心で慈しみなさい。
医女コスハーレム!(*゚∀゚)=3
432 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/17(火) 23:50:53 ID:EulCZ7Ao
>>431
やめろ
ハン尚宮×チェ尚宮 −競望−
壱参弐 柵
内容:百合 原作改変 エロい
分量:これを含め、10レス予定ですが、途中でスレが埋まるので、次スレで継続します。
わ、わ、わ 神に投下待ちさせてるw
誰か〜 スレ立てておくれ〜
自分でしたいけど、なぜか出来ない〜〜
いえ違います。ここで途中まで書いて、自分でスレ立てして、続きを書きます。
436 :
434:2007/07/19(木) 03:17:48 ID:ebgu+xKi
あ、よかつた…
そうですか、ではお待ちしております。m(_ _)m
けれどチャングムの気持ちは収まらない。
母の恨みを晴らすこともできず、尚宮様が勝ち取った座を取り戻すこともできず。
その上尚宮様とも以前のように接することができないなんて。
やはり尚宮様はお心変わりをされたのだ。心までもチェ尚宮様に傾けてしまったのだ。
そう思うとたまらなく切なくなった。
ガタッ
文机を押しのけ抱き締めた。
私のことだけを考えて欲しい。チェ尚宮様のことなどいい、何でもいいから今はただ
そばにいたい。いろいろあっても、今までは許してくれたではないか。
そう思いハン尚宮に体重を預けていくと、斜めから押し倒すような形になった。
失礼極まりないのは判っている……でも。
両手をハン尚宮の肩の脇に突いて、チャングムはハン尚宮の顔を見下ろした。
「およしなさい」
静かな声で制する。
「尚宮様を抱き締めたいのです」
「それなら抱き締めるだけにしなさい。でもそれで終われるの?」
「もっと、全部が欲しいのです」
チャングムの目から涙が溢れだしていく。
「お心も全てを」
「だから駄目なの」
雫は、真下にあるハン尚宮の目の中にぽたぽたと滴った。
―――熱い。
涙と、思いに耐えられなくなり、ハン尚宮は顔を横に背けた。
「忘れられないなら私が忘れさせて差し上げます」
そう言うとチャングムは、ハン尚宮の首筋に唇を近付けていく。襟元から立ち上る肌の
匂いに堪らなくなり、合わせ目に指を入れ、上着をずらしにかかった。
「よけいなことはしないていい」
ハン尚宮はチャングムの手首を握り締めて動きを止めた。その手首から、激しい脈動が
伝わった。
「母の時には、あの時はいいと、私を見てくださるとおっしゃったではないですか」
段々と力が強くなった。歳若く、そして激情にたぎったチャングムの力に叶うわけも
ない。握った手首が振り解かれると同時に、ハン尚宮の身体はチャングムの腕の中に
包まれた。
抱き締められながらハン尚宮は思った。
今私を抱いているのはこの子ではない。いくら思いが募ったとて、この子がこんな
力ずくでしようとするはずはないもの。
―――ひょっとしてミョンイ、あなたなの?
この前あなたのお墓に行ったときのチャングムは、本当にあなたそっくりだった。
きっとあなたがこの子に乗り移っていたに違いない。今もそうなのね。あなたがこの子の
身体を借りて、私を取り返そうと……。
けれど……ミョンイ。この子には真っ直ぐに生きて欲しい。料理の道を真っ直ぐに
歩いていって欲しい。そのためには、これ以上の重荷を背負わせてはいけないのよ。
今は余計なことを頭に入れず、ただ無心に学ばせてやらなければ。
そう考えた末の、これが私の決断なの。責めるなら私を責めて。けれど、できること
なら判ってちょうだい。
「私のことを必要として欲しいのです。もう一度そうおっしゃっていただきたいのです」
チャングムは更に身を寄せ襟元に手を差し入れ、柔らかな胸を愛おしそうに手のひらで
なぞる。宛がわれた手は徐々に下に向かい、結び紐に邪魔されるとそれを解いていく。
いつしか上の衣類は開(はだ)けられ、片肌脱ぎの格好でもう片方の腕に、名残を留める
だけになった。
「尚宮様のお気持ちを乱すような方は、私が追いやりますから……」
囁きと共に顕わになった胸を、指先で撫でられる。瞬間、身体がじゅんと痺れた。
ハン尚宮は耐えた。感じてはいけない。
「やめて」
少しづつ胸の鼓動が……高まっていく……身体は勝手に熱を帯び、汗ばんでいく。
ゆっくり息をして、気持ちを落ち着かせた。
「尚宮様はもう、私のことなんて」
「馬鹿なことを言わないで」
ごめんなさいチャングム。でもあなたの思うようにさせてはならない。それでは
あなたのためにならないから。あなた自身が、自分というものを形作っていかなくては
ならないのよ。
そして私とは少し距離を置いて欲しいの。
そう思い、チマの巻き紐に手をかけようとするチャングムを拒み続けた。
ハン尚宮の言葉が耳に入らぬかのように、チャングムは胸をまさぐりながら身体を
預けていく。そして閉じられたままの脚に自分の足先を差し入れて開き、絡めた。その
動きにつれチマがずり上がり、それをいいことに手で更にたくし上げる。自分の脚も同じ
ように剥き出しにして、内腿を触れ合わせていく。
その蕩けるような感触に、チャングムは動きを止めて大きく溜息をついた。
しばらくそのまま。
少しして更に深く絡め、またじっと密着させる。この肌触りに、自分とのことを思い
出して欲しかった。
脚はそのままの状態で、片耳をハン尚宮の胸に押し当て鼓動を聞く。今は落ち着いて
脈打っているけれど、すぐに激しく高鳴っていくはず……。
顔を上げてもう一度しみじみと、尚宮の身体を眺めた。
そうなれば全てが私のものに……。
白磁の肌に、吸い込まれるように唇を近付けていった。
ハン尚宮の胸は、チャングムの頬を乗せたまま静かに上下していた。
一時我を忘れていようとも――今までのこの子なら――そろそろ落ち着くはずだ。
それを待っていた。
しかし一向動きは止まない。ついに顔を埋められその胸の頂に舌が触れた時、たまらず
強い力で跳ね除けた。
「やめなさいって言っているでしょ! お前にまで無理強いされたくない!」
「申し訳ありません」
剣幕に、さすがのチャングムも目が覚めた。慌てて後ずさりをし、平伏する。
「早く戻りなさい。今後私がいいと言うまで、この部屋に来ることも罷り成らん!」
そう言うとハン尚宮は着衣を整え文机を元に戻し、横を向いてしまった。
こうなると取り付く島がないのはチャングムも判っている。一晩中頭を下げ続けても
無駄だろう。いや、このまま居座ったところで、ハン尚宮様は顔も見たくないとばかりに
立ち去られ、どこかの空き部屋でお休みになられるに違いない。
しでかした過ちに、足が竦んで思うように動かないけれど、ようやく腰を上げ深く
一礼をすると、静かに部屋を出て行った。
その頃、宮。
:
:
:
「チェ尚宮様、やはりあなたを許すことはできません。けれど私はもうあなたをこの手で
掴むこともできない……」
「だからお前を恨んで恨んで……」
「お前も、クミョンも、お前の家も、全て……」
:
:
:
クミョンは朝当番の報告のために、チェ尚宮の部屋に向かっていた。中庭を通った時に
郭公の声が聞こえ、それは爽やかな一日を予感させた。
報告といっても無事に終わったことを伝える程度のもので、基本的には尚宮の仕事なの
だが、最近のチェ尚宮の様相、頬はこけ、少しのことで不機嫌顔――特に起き掛けは――
になるのを恐れをなして、みな部屋に入りたがらない。
だから尚宮たちに懇願されるまま、専らクミョンの役割となっていた。
:
:
:
「ああ恨まないで」
「許してちょうだい、私……」
:
:
:
今日は王様が早朝から打ち合わせとのことで、まだ夜が明けきらぬ時刻に御膳を拵え
なくてはならなかった。報告に行くのはもう少し後でも良かったのだが、チェ尚宮様は
時間を置くのがお嫌いな方だ。私も次の仕事が立て込んでいて早目に終わらせたい。
空も白み、日差しが見え始めた。この時間ならお目覚めのはず。
ぅぅ ぅう ゃめて!
うー ねぇ うぅ うーうー おねがぃ
部屋の中扉の前まで進むと、呻き声がクミョンの耳にも届いた。
また……。
「チェ尚宮様! 叔母様! 大丈夫ですか」
慌てて部屋に入り、布団の中で丸まっている叔母様を揺り動かした。
「う、うぅ〜ん」
「チェ尚宮様!」
「はっ ああクミョン」
寝言を聞いていたことなどおくびにも出さず、白い寝巻き姿の尚宮の前に座る。
「叔母様、しっかりしてください」
チェ尚宮はかつては朝が早かった。けれどこの頃、大変疲れた様子で、こうして
クミョンに、やっと起こされることも度々だった。
「夢なの? 夢なのね。今までのことは全部……隣には……私独りここにいる……
やっぱりそうよね」
クミョンの方を見もせず、チェ尚宮はうつむいて独り言ちている。クミョンは黙って、
落ち着くまでその様子を眺めていた。
「ねえ、ペギョンはもういないのよねぇ」
ふと、クミョンの心に魔が差した。
「そうです。叔母様がそうなさったのです……」
低い声で囁く。
「うわーん。どうしてあんなことを……。あの人が生きてさえいれば。
それにせめて夢の中だけでもいいから、あの人と抱き合いたかったのに」
ふぅ
声には出さず、クミョンは心の中で溜息をついた。まだ夢の中に遊んでおいでだ……。
ちゃんとお目覚め戴かなくては。がらりと声色を変えて言う。
「尚宮様。ハン尚宮様でしたら、先だって太平館に行かれ、お元気にお過ごしです」
「そうだったっけ? あ、そうだったわね」
やっと正気にお戻りになった……。しかしひどい寝汗。
下働きに言い付けて、湯を持ってこさせる。手拭いを絞って差し出すと、クミョンは
箪笥から着替えを取り出した。こうやって、もう何度起き掛けに着替えを手伝っただろう。
チェ尚宮はクミョンに背中を向け、諸肌脱ぎになって首筋や胸元の汗を拭いていく。
一通り拭き終えても、まだ所々汗が吹き出し、背に二筋ほど流れ光っている。
クミョンはまた手拭いを絞って渡した。
今日は、ハン尚宮様がいなくなられた夢か……。この前は、「私が負けるなんて」の
繰り返し。その前は、「ああ素敵、あなたともっとこうしていたい……ペギョン」
あほらしい。
もう一度絞ると、今度はクミョンがチェ尚宮の背中の汗を拭いながら、やはり声に
出さずに呟く。
心の中までハン尚宮様に取り付かれておられる。それ以外は考えられないのだろうか。
そしてますますやつれて見える。水剌間の体制は整ってきたのに、叔母様の心労は募る
一方のようだ。
特に楽しげな夢を見られたような後は、がっくりと肩を落とされているように感じる。
夢から現(うつつ)に引き戻された衝撃が、そうさせるのか。
寝汗を拭われ、気持ちよさげな背中に尋ねた。
「私で良かったものの、他の方に聞かれたらどうなさるおつもりですか?」
私が寝言を聞いたのは両の手の指で足りないくらいの数だ。けれど尚宮たちに
それとなく聞いても、知らないと言う。遠慮しているのではなくて、どうやら本当のようだ。
ということは、私が来ると判っている朝だけ、夢を見られるのだろうか。それとも私
の来る気配が、叔母様に夢を見させるのだろうか。
しかしそれはどちらでも変わりは無い。私は人に怪しまれないかと気を配り、そして
叔母様のことがますます心配になるだけだ。
「叔母様、だから私があれほど申し上げたのです。隣でお休みになるなんて不適切だと」
さすがにクミョンの口調も尖った。
「そうよね……ねえクミョン、あなた今晩からこの部屋で休みなさい」
「どうしてでしょうか?」
なぜ私が、叔母様のお守をしなくてはならないのでしょう?
「一族の後継者として、料理やら何やらいろいろ教えなくてはならないことも多いし。
一々呼び出すよりは、ずっとそばに居たほうが都合がいいじゃない」
―――けれど本当はね、もう私に時間はなさそうなのよ。
あなたにこうして接していられるのも、後ひと月足らずかもしれない。でも今
どうなるか判らない時に、お前を不安にさせたくない。だから言えないのよ。
「お断りいたします」
どうせハン尚宮様の代わりに背中を撫でさせたり、眠るまで見守って欲しいのでしょう?
隣に誰かがいれば、怖い夢も見なくて済むと思っておられるのじゃないでしょうか?
そんなことはない、と断言できます。私がいれば、今以上に安心して夢を見られると
思います。
そして私だって女官たちの部屋で、それなりに気楽に過ごせているのです。
やっとチャングムを追い払って、仕事も充実しているのです。なのにこの部屋に戻って
きたら、夜な夜なハン尚宮様のお名前をお呼びになるであろう叔母様とご一緒。これでは
申し訳ございませんが、こちらの神経が持ちそうにありません。
だいたいハン尚宮様が甘やかし過ぎたのよ。叔母様ばっかり。ハン尚宮様はどうも
前から、この人って決めたら全てを注ぎ込むような気がしてならない。私にも、
もうちょっと目をかけてくれてもいいはずよ。
そう思いながらクミョンは淡々と報告を終え、すがる目を向けるチェ尚宮をなるべく
見ないようにして、盥を抱えて部屋を去った。
残されたチェ尚宮は一人思い巡る。
あれだけ私と深く接し、身体を震わせて応えていたのに。ここを出たっきり仕事以外の
何の連絡もくれない。
この前送ってきた献立の案だって、中身なんてろくに見ないでひょっとして何か他にも
書いてきているんじゃないかって、たとえばいい季節になったわねとか、こんな料理を
考えたんだけどとか、いっそ楽しく過ごしているというのでも構わないからと封筒を
透かしてまで見たけれど。何にもなかった。
きっと……私のことなんてすっかり忘れているんだわ。
今この間にも、朝も昼もペギョンはチャングムと笑いあっているのよ。そしてあの子に
……毎晩のように。あの物静かな表情を剥ぎ取られ生身をさらけ出し、心を奪われる
悦びにむせび泣いているのよ。
そして……あなたがいないことも寂しいけれど、あなたがどうしようとしているのか
全く判らない、それが更に私を苦しめる。
ああ、会いに行きたい。会って確かめたい……。
けれど絶対来るなと言われたし。自分が指名する以外の子は寄越すなと言っていたし。
何かあそこに行く、適当な名目はないだろうか。
それにしても、せっかく夢に出てくるのなら一度くらい笑ってくれてもいいのに。私は
あの子の笑顔を、もう何年も見たことが無い。
次の日。
太平館ではまた黙々と、それぞれの作業に取り掛かっていた。
チャングムとすれ違っても、ハン尚宮はそ知らぬ顔。宮から打ち合わせの官員が来ても
同席は無用と。
そして食事時もチャングムはただ運び入れるだけで、側に呼ばれなかった。仕方なく
チャングムは、台所の隅で一人で食事を取った。そのあしらいに、さすがのチャングムも
近寄りがたく感じていた。せっかく二人きりでいられるというのに、一旦気まずくなって
しまうと逆に修復の糸口が見えない。
できれば気晴らしに山に出かけたいとも思ったが、とても許してもらえそうな雰囲気
ではない。それどころか、二度と帰ってくるなと言われるかもしれない。
こんな時に客人でもあれば、嫌でも顔を合わせることができるのに……その予定も全然
ない。だからただ、一人で本を読んだり一人で料理を研究したり、それを書き付けたり
して時を過ごすしかなかった。
次の日も、その次の日も。ほとんど顔を見ることもなく、こうして一週間が過ぎた。
ある昼下がり、チャングムはハン尚宮に外に誘われた。たまには市場の様子を見に
行こうと言う。久しぶりにハン尚宮に声を掛けてもらい、着替えるのももどかしく外に
飛び出した。
待ち合わせ場所の太平館の門でチャングムの姿を認めると、ハン尚宮はさっさと歩き
出した。チャングムもやや遅れてハン尚宮についていく。
その後姿を見ながらチャングムは思う。
思えば初めて尚宮様について歩いたのは、宮に入って間もない頃だった。部屋子に
迎えられて中庭を、尚宮様の大人の足取りに負けないようにせっせと大股で歩いた。
あの時から、こうして後姿を眺めながら歩くのが大好きだった。一生この人につき
従いたいと願っていた。
最初は振り向きもしてくださらなかった尚宮様。怖くて仕方なかったけれど、少しずつ
教えていただけるようになって。それから、少しずつお話しも聞いていただけるように
なった。いつもこの方は私の師匠で、私など及びもつかないと思っていたのに。
でも今の自分は何なのだろう。競い合いの頃から、自分が一歩前に出てしまっている
のではないだろうか。
もちろんあの時にはそれが必要だと思っていた。尚宮様はすっかり自信を無くして
おいでだったから。けれどいつの間にか、この背中を追い越していたような驕りは
なかっただろうか。
道の途中、丘を越えたあたりから、空が鈍く曇ってきた。
昨日も陽が傾くと、冷たい風が台所に時折流れ込んでいた。今日はそれにも増して、
ひやりとした風が吹き抜ける。指先が少しかじかむ気がして、チャングムは時々両手を
擦り合わせた。
半刻ほど歩くと、二人は市場に入る手前の、見晴らしの良い場所にたどり着いた。
ハン尚宮は歩みを止め、振り返って言った。
「チャングム。お前が最高尚宮になったら、お母様の手紙を渡すわ」
「あの手紙をお持ちなのですか?」
頷くハン尚宮。
早く教えてあげたかった。けれどこの子の怒りに任せれば、すぐにでも告発しようと
しただろう。それだけは避けなければ。
「私がそれまで宮にいればそうするし、万一のことがあっても、そうしていただける
ようにある方にお願いしておいたの」
遠くに小山が見える他は田畑が広がり、視界を遮るものはない。ここなら誰かの耳に
入ることはないだろう。この話しを聞いているのはお前、それとこの曇り空の彼方、
たぶん晴れ渡った高い空の上から……見守っているであろうミョンイだけ。
ハン尚宮は、雲を見上げながら続けた。
「お母様は、お前が最高尚宮になってから手紙を見なさいと言われたそうね。
私はあの手紙を読んで、何度もその意味を考えた。なぜそんなことを言われた
のかって。
あるいはなぜ私に、お前のことを知らせようとしなかったのだろう。そうすれば
ひょっとして、もっと早くにチェ尚宮をどうにかできたのではなかっただろうかって」
競望は、ここで次スレに移行します。