【涼宮ハルヒ】谷川流 the 19章【学校を出よう!】
Q批評とか感想とか書きたいんだけど?
A自由だが、叩きは幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。
Q煽られたんだけど?
Aそこは閉鎖空間です。 普通の人なら気にしません。
Q見たいキャラのSSが無いんだけど。
A無ければ自分で作ればいいのよ!
Q俺、文才無いんだけど…
A文才なんて関係ない。必要なのは妄想の力だけ… あとは思うままに書いて…
Q読んでたら苦手なジャンルだったんだけど…
Aあうう… 読み飛ばしてください。 作者さんも怪しいジャンルの場合は前もって宣言お願いしまぁす。
Q保管庫のどれがオススメ?
Aそれは自分できめるっさ! 良いも悪いも読まないと分からないにょろよ。
Q自分で作れないから手っ取り早く書いてくれ。
Aうん、それ無理。 職人さんにも色々あるのよ。
Q 投下したSSは基本的に保管庫に転載されるの?
A 拒否しない場合は基本的に収納される。 これは僕にとっても規定事項だ。
スレ立て直した方がいいんじゃないか? スレ番号がやたらと紛らわしいし。
前スレは黒歴史決定?
何で1は宣言もせず立てる?
ここの特殊ルールか?
紛らわしいので20立てたよ
どうせまた立ててもアレだし、ここでいいでしょ
立てたんか…
16 :
誘導:2006/07/14(金) 16:33:24 ID:2FD/fykT
17 :
誘導:2006/07/14(金) 16:33:30 ID:Rp40nkna
>>Rp40nkna
いいからすっこんでろ
建て直しという発想がおかしい。
スレ番間違ったくらいで。
ここは20番目のスレッドです。
一日に一回は荒れるなw
もうアニメも終わったんだし、2期が始まるまでは落ち着いていこうぜ
さあ落ち着いていきましょう
じゃあ一度飛んでどうなってるかみてこい
重複した場合は早く立った順だろ。
番号違ってややこしいけどここを使うのがルールじゃねーの?
ここでうだうだ言ってても、職人さんが投稿したらそのスレが主流になるだろうから、
今ここで言い合うことでもないだろ。
とりあえずみんな、スルーが合言葉だ
間違ってもアンカーなんてつけたりしないでくれよ
>>30 そういう常識が身に付いていない子供が多いようだな。
ID:U6g1DYJ/みたいなヤツとかw
じゃあお前が言って二番目の20スレのガキを諭す書き込みをしてくれ
つまんねー議論は前スレでやれ
まだ30KB残ってるんだから丁度いいだろ。
20を見てくれよ、また分からず屋出てきた。
俺がやらずともこいつがまたここに20スレの誘導を貼るかもしれん。
俺はどっちかにしようとこだわり過ぎて両方ともおかしくしちゃったね
31の通り職人が流れ作って、決めればいいことだ。
あーもー。ここでいいんだな? 皆がここにするならもうこだわらん。
もう別のスレ作れば? こことほか二つは捨てようよ
谷川流 the20(真)とかにすればわかりやすいだろ?
「ここが本家だ」って主張する奴もいるんだからそこら辺飲みこんでくれよ
↑馬鹿
釣られちゃダメです
43 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 19:36:31 ID:7SkrfBH9
意見を出し合うのは大いに結構ですが、このままですとスレに閉鎖空間が発生し荒ら神人が暴れだしてしまいますよ。スレの危機を敢えて招く様な真似は謹んで頂きたいものです。
44 :
18-352:2006/07/14(金) 20:12:52 ID:7rrRgapN
>前スレ779
>荒れに乗じてメタ全開のネタを書くのも、人によっては敬遠されるんじゃね?
スマン、気の迷いだ。しかし戦犯扱いも避けられんかもしれん。
ほとぼりが冷めるまでROMしとくよ。
>>前スレ780
ネゴシエイターに噴いた。
>>前スレ780
萌えた俺は末期ですな GJ
なんかやたら混乱したが、ようやくこっちに統一されたか。ヨカタヨカタ
シチュエーションはあれこれ思い浮かぶのに文章に結びつかない…
どうしたら上手く書けるんだろう
とりあえず思い浮かんだシチュだけでもいいから書いてみるんだ
最初は意味分からなくてもいい
それを推敲していって、最終的に文章にすればいい
夏休みにはまだ早いぞ此畜生と言いながら、
この混乱期はネタを暖めるために神様がくれた時間なんだと思う事にする
まだ見てないスレの分を暇なとき携帯から見ているんだが、
保管庫の予備ってどういう順番で保管されているんだ?
多分投下順じゃないかな
Newがあちこちについてるのは、名有りの職人さんのを揃えてるからではないかと
さすがに投下がないね。
ってことで、まだ完成していないんだが、つか、途中で投げ出してたんだが、頭のほうを投下してみる。
6-555の設定での消失長門ってことで、ある意味、7-373の続きにあたるかも。
エロなし、すまん。
何かが終わった、そう思った。私の中で何かが終わったように思えた。
そして、確かに彼の姿が消えたように見えた。
しかし、今、わたしの視界はパソコンの前でエンターキーを押したままの姿で、
凍りついたように固まっている彼の姿を捉えている。
何が起きたのだろう。わたしの目の錯覚だったのか。何も起こらなかったのだろうか。
「い、今、ジョンが消えなかった? 一瞬だけど」
「……錯覚かと思いましたが、涼宮さんにも、そう見ましたか?」
「き、消えましたよぅ、たしかに。うぅ、一体何がどうなってるの?」
彼が連れてきた人達の囁き声を遠くに聞きながら、わたしは、ただ立ち尽くしてた。
彼の知っているわたしが用意していた緊急脱出プログラム。失敗だったのだろうか。
それとも、この彼は図書館の彼なのか。入れ替わった? まさか、そんなことが。
いや、彼の話は本当だと思える。ならば、その可能性は否定できないはず。
カリカリと微かな音がして、パソコンのOSが立ち上がる。
彼の肩が揺れた。
そう思った瞬間、彼の身体がゆっくりと机の上に崩れ落ち、そのまま、床に転がった。
「きゃっ!」
女子生徒の短い悲鳴を聞くと同時に、わたしの身体は勝手に動いていた。
彼の側に寄り、膝をつく。彼の身体を抱きかかえ、仰向けにして、耳を彼の口元に近づける。
少し荒い、でも規則正しい息遣い。
小さな囁くような声で、わたしの名を呼んでいるような気がした。血の気が引いていく。
こんなときは、どうすればいい? 以前、保健か何かの授業で習ったはずだ。
頭が混乱して、すぐに思い出せない。焦りが募る。
そうだ、頭を動かさないようにして、上着を緩める。そして、気道の確保。
震える指先で、彼のネクタイを緩める。うまくできない。結び目を弄っているうちに、
既に緩んでいることに気が付く。何をしているのだ、わたしは。
次。次は? そう、ブレザーをはだけ、彼のワイシャツのボタンを一つずつ外していく。
「どうなったの?」
涼宮ハルヒの声。心配そうに上から覗き込んでくる。なぜかその仕草に苛立ちを感じる。
「わからない」
そう答えて、彼の制服スボンのベルトを緩め、シャツをはだける。
なぜ、彼女は落ち着いた声なのか。なぜ、涼宮ハルヒは落ち着いていられるのか。
そんな思いがこみ上げてくる。いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
ってゆうかもうひとつのほうに落としたよ
次はどうすればいい?
焦りと苛立ちで、視界が暗く狭まってきているような気がする。どうすればいい?
わたしは、彼を守らなければならないのだ。なのに、わたしは彼を守れないかもしれない。
次は何をすればいいのか? 思わず、そう叫びそうになる。
そのとき、床についているわたしの膝に何かが触れ、呻き声が聞こえた。
反射的に彼を見る。彼の両腕がゆっくりと動き、そして、薄らと両目が開いた。
気が付いた。よかった。思わず、安堵の息が漏れる。
彼は、きょとんとした顔をすると、腕の動きを止め、わたしの顔と、
上から覗き込んでいる涼宮ハルヒの顔を交互に眺めた後、わたしに視線を向け、口を開いた。
「……ここは?」
「部室」
そう答える。
「ジョン、大丈夫なの? 何か喋りはじめたと思ったら、急に倒れちゃって」
「ジョン……?」
涼宮ハルヒの言葉に、彼が呆然とした表情を浮かべている。少し様子がおかしい。
混乱しているのだろうか。
「そうよ。ジョン・スミス。あんたが自分でそう言ったんじゃないの」
「ジョン・スミス……」
そう呟きながら、彼は、ゆっくりと身体を起こし、驚きと焦りが混ざったような表情で
わたしを見た。
「長門、すまんが教えてくれ。お前は、俺と、図書館で、偶然出会ったんだっけ?」
わたしの名前を知っている。そして、わたしが記憶している図書館のことを知っている。
「そう」
そう応えて、わたしは、漠然と不安な気持ちになる。
彼は、わたしが知っている図書館の彼ではない。わたしの名前を知っているから。
では、緊急脱出プログラムは失敗したのか。それとも、また別の彼になったのか。
彼は続けて、ここ三日間の彼の行動をわたしに話し、それが正しいか訊いてきた。
それは、わたしの記憶と一致する。肯定。
すると彼は、慌てたようにシャツをはだけたままの姿で立ち上がり、部室を見回してから、
彼が連れてきた人たちに向かって何か訊きはじめた。今日の彼の行動を訊いているらしい。
彼が何か尋ねている途中で、涼宮ハルヒが連れてきた女子生徒――確か朝比奈みくる――が
短い悲鳴を上げ、彼は、自分の衣服が乱れていることを知ったらしい。
慌てて壁に向かい、衣服を整え始めた。
「すみません朝比奈さん、変なとこ見せちゃって。しかし、何でこんな格好に……」
そういえば、彼の服をはだけたのは、わたしだ。少し恥ずかしい。頬が熱くなる。
彼は、朝比奈みくるに、とても気を使っているようだった。
しかし、涼宮ハルヒが連れてきた男子生徒――確か古泉一樹――に対しては、何となく遠慮が
無いように見える。その意味では、彼の涼宮ハルヒに対する態度も、何処と無く遠慮が無い。
彼の世界で、彼らやわたしは、どんな関係だったのだろう。
どっちがマジスレなんだよもう!
全員から何かを聞き取った後、彼は悄然とした様子で、よろめきながらイスに座り、
頭を抱えて呟いた。
「脱出できなかった……のか?」
その場の全員が唖然としている。
しばらくして、彼が、ゆっくりと視線を、床に座ったままのわたしに向けた。
「どういうことだ? 長門……」
ぴくっと身体が反応する。
彼の様子を見る限り、緊急脱出プログラムが失敗したとしか思えない。
彼は、三日前にこの部室に飛び込んできた彼だ。先程、緊急脱出プログラムを実行した彼だ。
わたしに話した、彼のここ三日間の彼の記憶は、わたしの記憶と一致する。
でも、緊急脱出プログラムは、わたしが用意したものではない。わたしは魔法使いではない。
彼に責められているように感じる。しかし、わたしが、彼の知っているわたしでないことは、
彼も理解しているはず。でも反論できない。どう反論して良いのか解らない。
わたしは、俯いたまま、ただ、スカートの裾を握り締めていた。
「ちょっと、ジョン! あんた何言ってんの? あんたが倒れたとき、真っ先に、
この娘が介抱してあげたのよ!」
涼宮ハルヒの怒気を含んだ声。
「え? あ、いや、すまん。長門、お前のせいじゃないんだ。それは解っているんだが……」
彼の声に顔を上げると、彼がすまなそうな顔をしている。
そう、わたしのせいではないことは、彼が一番良く知っている。
「ジョン? ちゃんと話しなさいよ。一体、さっきのは何だったわけ?」
涼宮ハルヒの声に、彼が、驚いたように顔を上げる。
「え? あ、ああ……。そうだな。話したほうがいいか。でも、もう大方話したんだけどな。
いや、長門や朝比奈さんには話してなかったっけ」
ハルヒや古泉にはさっき話したことだけど、そう前置きして、彼は話し始めた。
涼宮ハルヒを中心に結成されたSOS団。
世界を改変する能力を持っているかも知れない涼宮ハルヒ。
未来から来た朝比奈みくる。限定的超能力者の古泉一樹。そして、宇宙人によって作られた
ヒューマノイド・インタフェイスの長門有希。非日常的な事件とそれを解決する彼ら。
中でも、わたしは、ほぼ万能な存在だったらしい。
悪い気はしなかった。その万能インタフェイスが、わたしではないことは解るけど。
彼とわたしのエピソードは、わたしが考えた小説と、よく似ていた。
ならば、彼の知っているわたしも、彼が好きだったのだろうか。
わたしの小説では、その宇宙人少女は、男子高校生に好意を寄せて、告白する。
いや、わたしの小説と彼の世界に何らかの関係があるはずはない。
彼は、一昨日の昼、学校で朝倉さんを見て、世界が変わったことを知った。
彼の世界では朝倉さんも宇宙人のインタフェイスで、彼を殺そうとした。
わたしは、その朝倉さんを倒し、彼を助けた。そして、彼女は転校したことになった。
それ以来、彼にとってのわたしは、最終防衛線的な存在となった。
それで理解できたような気がした。彼が朝倉さんを教室で見て大騒ぎしたこと。
そして、朝倉さんを苦手そうにしていたこと。わたしと朝倉さんを同類だと言ったこと。
この部室に飛び込んで来たときの、あの動揺と焦燥。
昨日見つけた栞。緊急脱出プログラム。それを準備したのは、彼の知っているわたし。
彼は、彼の世界に戻ることを望み、それを実行した。しかし、脱出できなかった。
最後に彼は、わたしに向かって言った。
「あの長門が間違いを犯すはずはない。俺は、自分より長門を信頼しているんだ。
何か俺の知らない理由があるに違いない。だから、さっきは悪かった。お前のせいじゃないんだ」
そう話し終えると、そのまま黙り込んでしまった。
彼の言葉は本当だったのだ。彼の話は全て辻褄が合っている。
「でも、あんた、一度消えたわよ。すぐ、戻ったけど」
「え?」
「だから、とりあえず、その緊急脱出プログラム自体は、ちゃんと動作したんじゃない?」
涼宮ハルヒの言葉に、彼は一瞬驚いた表情を見せたが、またすぐに元の表情に戻った。
「そうか。なら、なおさらだ。長門には何か考えがあるに違いないんだ」
彼の、彼の知っているわたしに対する信頼は、絶対的な領域に達しているようだ。
嬉しいような、羨ましいような、微妙な気分。
「で、その緊急脱出プログラムとやらを起動する鍵が、あたしたちだったってわけ?」
「そうだと思う」
「それって何か意味があるんじゃない?」
「意味?」
「そうよ。だって、あんたが自分の世界に戻るだけなら、あたしたち全員がここに集まる
必要なんてないじゃない。ここに集まって、あんたが自分の世界に戻っちゃったら、
わたしたちはどうすりゃいいのよ? あんたは、わたしたちのこと知ってるかもしれないけど、
わたしは、あんたのことも、古泉くん以外の人のことも知らないんだから。
だから、あたしたちが一緒に集まって、お互いに知り合いになるってことが重要なんじゃない?」
涼宮ハルヒの話には、何か説得力を感じる。
「それって――」
彼が何か言おうとしたのを遮って、彼女は、話を続けた。
「古泉くんもあたしも、あんたには、今日初めて会ったし。いや、正確には三年前に会ってる
んだけど、でも、言われるまで解らなかったし。ねえ、みくるちゃんは?」
「え? は、はい、あたしはこの前、えと、一昨日かな。会いましたけど、そのときが初めてです」
「えっと、有希ちゃんだっけ? 有希でいいかな? 有希、あんたは?」
「以前から知っている」
「ふーん、有希だけなのか、ジョンのこと知ってたのは」
「おい、それってどういうことだ?」
「え? よく解らないけど、何か意味ありそうじゃない?」
どういうことなのだろう。
彼は、この中の人を全て知っている。わたしは、彼だけを知っている。
彼以外の人には、今日初めて会った。
涼宮ハルヒは、彼と古泉一樹を知っている。でも、わたしや、朝比奈みくるは知らなかった。
古泉一樹は、涼宮ハルヒだけを知っている。朝比奈みくるは、誰とも接点がない。
彼を中心に、彼の前に涼宮ハルヒ、左右に、古泉一樹とわたし、後ろに朝比奈みくるを配置して、
それぞれ知っている人に向かって線を引くと、それは数字の4になる。
四、肆、市座、商品台。そうぼんやり考え、それに何か意味があるのだろうか、そう思った。
四元数、集合H。何を考えているのだろう。そんなことに意味があるとは思えない。
「だから、そのSOS団を結成するのよ!」
「は?」
涼宮ハルヒの声に、少し抜けた声を出す彼。
「それで何かが起こるかも知れないじゃない。もしかしたら、あんたが元の世界に戻るきっかけに
なるかもしれないわよ? 何かわくわくしてきたわ。何たって、あんたは異世界人なのよ!」
「ちょっと待ってください、涼宮さん。彼は異世界人じゃないかも知れません」
涼宮ハルヒに向かってそう言ったのは、古泉一樹だった。
「たしかに彼は異世界人かも知れません。でも、彼は、朝比奈さんを未来人だと言ってましたね。
仮に可能世界があれば、平行世界、多時間宇宙と言ってもいいと思いますが、そうであれば、
その世界では、タイムマシンによる過去へ介入は無意味な行為になると思います。
なぜなら、過去を改変しても新たな世界が発生するだけで、その、時系列上の未来が変わるわけ
ではないでしょうから。
その意味では、未来人と異世界人の出現は、排他的なのではないでしょうか?
つまり、未来人が現れる世界では、異世界人は現れない。
異世界人が現れる世界では、未来人は現れない」
そう言うと、大げさな仕草で、朝比奈みくるに視線を向けた。
「ふぇ?」
そう声を上げ、怯えたような仕草をする朝比奈みくる。
「あ、あたしは何も知りませんよぅ、ただの女子高生ですから……」
古泉一樹が、軽く肩をすくめて話を続ける。
「未来人の存在は、多時間宇宙を否定していると思いますね。もしそうなら、
この世界は唯一であって、よって、彼は、彼の世界から来たのではなく、彼を除いた、
我々の世界が再構成された可能性があります。逆に、彼だけが再構成された可能性もありますが」
彼の言葉には、何か引っかかりを感じる。
しかし、それについて深く考える前に、それは、涼宮ハルヒの声によって霧散した。
「まあいいじゃない? そういうことは、これからじっくりと考えていきましょ。
あたしは、理由は何であれ、あたしの前にジョンが現れたことが嬉しいわ。
ずっと、宇宙人や超能力者、未来人や異世界人を探してたんだから。
ジョンと一緒にいれば、きっと何か、もっと不思議なことが起こると思うの。
だから、ここにいるみんなで、SOS団を結成するのよ!」
涼宮ハルヒは、輝くような笑顔でSOS団の結団を宣言した。
古泉一樹が、少し驚いたように涼宮ハルヒを見て、同じように彼女を見ていた彼に小声で
何か言っていた。
朝比奈みくるは、もじもじしながら渋っていたが、涼宮ハルヒに押し切られた格好で
同意したようだ。
彼と古泉一樹、わたしは、沈黙していたが、それを肯定と受け取ったのか、彼女は、
「とりあえず今度の土曜日にみんなで集まりましょ。詳細は、後で連絡するわ!」
と、叫ぶように言い放って部室を出て行った。古泉一樹が後に続く。
「ま、待て! 俺の体操着!」
そう言いながら、彼がカバンを持って立ち上がり、
「長門、今日はすまなかった。また明日も来ていいか? ああ、じゃあ、また明日」
そう笑顔を見せて、彼らを追って行った。
「あ、あの、その、あたしも書道部に戻りますんで。そ、その、しっ、失礼しますっ」
おどおどしながら、早足で、朝比奈みくるもドアに向かう。
そして、部室には、わたし一人が残された。
わたしは床に座ったまま、呆然としてた。
考えてみれば、彼が倒れてからずっと床に膝をついたままだ。
古泉一樹の言っていたことが気になる。再構成された世界。再構成された存在。
そんなことがあるのだろうか。それなら、平行世界のほうが、まだ説得力がある。
いや、コペンハーゲン解釈ならどうだろう。観察者の意思によって存在する唯一の世界。
そう考えると、古泉一樹の話は、筋が通っているように思える。
未来人が現れる世界では、異世界人は現れない。
ならば、この世界は、変えられたのだろうか。
もし、この世界が唯一であって、変えられたものなら、彼の知っている世界に戻すことは
できないのではないだろうか。この世界に、宇宙人や魔法使いは、たぶん存在しないから。
世界を改変できる存在のいる世界。それを、それが存在しない世界に変えてしまったら、
もう元に戻すことはできないはずだ。金庫を開ける鍵が、その金庫の中にあるように。
ただ、そうであれば、あの緊急脱出プログラム、あれが説明できない。
平行世界や可能世界なら、彼が戻れる可能性はある。
でも、そうなら、図書館の彼はどこに行ったのだろう。
ふと、彼の脱出は成功していたのではないか、そう言う考えが頭を過ぎる。
彼がエンターキーを押した瞬間に、この世界、今、わたしがいる世界が分岐したとしたら?
緊急脱出プログラムによって、複写され、創造された世界。
馬鹿馬鹿しい。そもそも、何から分岐したと言えるのか。
彼の居た世界か、それとも、わたしの知っている世界か。
考えても解らない。
しかし、どちらにしても、彼は彼だろう。
図書館の彼も今の彼も、基本的に同じ個性を持っているはずだ。根拠はないが、そう思える。
彼はここにいる。彼は消えなかった。そう考えると、安堵感に包まれる。
そして、彼がパソコンのエンターキーを押したときに考えていたことを思い出した。
もし彼が今の記憶を失って、図書館の彼に戻ることがあっても、その彼に会いに行けばいい。
そして、文芸部に誘えばいい。彼は、彼の世界が変わっても、涼宮ハルヒを探し出してきた。
だから、わたしも。
そう考えて、あることに気が付き、急に胃の辺りが重くなった気がした。
彼は、涼宮ハルヒを探していた。そして、涼宮ハルヒを探し出してきた。
それは、彼が、涼宮ハルヒを必要としていたということ。
彼の世界では、彼と涼宮ハルヒは、特別な関係だったのだろうか。
それとも、特別な感情ではなくて、彼女の能力が、彼の身に降りかかった全ての元凶だと
考えたからだろうか。
わたしは、頭を振りながら立ち上がった。そうかも知れないし、そうでないかも知れない。
それは彼しか知らないこと。
何れにしても、涼宮ハルヒと彼の関係が、彼の知っている関係になるまでは、多少の時間が
掛かるだろう。それまでには、彼にわたしの気持ちを知ってもらうこともできる。
結果は、彼が決めること。
わたしの気持ちを知って貰った上でなら、断られても、納得できるかも知れない。
そう、何もしないで後悔するより、行動してから後悔したほうがいい。
彼は、明日もここに来ると言った。もしかしたら、文芸部に入部してくれるかも知れない。
そう考えると、気持ちが軽くなった。
長い時間、固い床に正座していたため、膝に痛みを感じる。
立ち上がり、片足ずつ、何度か、膝を曲げ伸ばし。そして、両手を伸ばして、背伸び。
「ふう」
さて、もう下校時間もすぎている。今日はもう帰ろう。
イスを片付け、パソコンの電源を落とす。パソコンの前に立ったとき、彼が倒れていた姿を
思い出した。あのときの焦燥感。思い出しただけで苦しくなる。
そういえば、あのとき、わたしは彼を助けなければならないと思い続けていた。
強迫観念に囚われたように。助けたいではなく、助けなければならないと。
なぜそう思ったんだろう。わたしに出来ることなど知れているのに。
彼が急に倒れたので、気が動転してたのかも知れない。彼は無事だった。
今日は、駅前のスーパーで買い物をして帰ろう。
とりあえずここまで。近いうちに続きを投下するよ。
はいはいめしあめしあぶったぎってごめんよっ
50 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/07/14(金) 23:59:06 ID:YX179jlu
せっかく書いてやったのになんだよ。こっちに合わせろよもう、
あがってるほうだとフツウ思うだろうが。
申し訳ない。こちらでの投下お願いします。
>>65 なにやらおもしろくなってきた。長門の焦り具合とかがよかった
>67
大人の対応GJ。
69 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 00:09:46 ID:ZBBkwaIi
>>65 続き待ってる
何か混乱している人がいるみたいなので、ageとく
子どもでごめん。状況よめたよ。コピペします。でもアンカーもまともにつけられないのに言うなよw
キョンはチャリ通学ハルヒはバス通学で憂鬱後って設定でコネタ
まったく何なのよ昨日の夢は・・・キョンが私とキスなんて百年早いっつうの
なんか授業ずっと集中できなかったし・・
私は朝からヘビーローテーションしてるあのシーンをまた回想しながらバスを待った。
あれ、やばい、定期ないじゃん。チっ。ぼんやりしてて落としちゃったのかな
もう交番まで歩いてかなきゃなんないじゃない!注意力が落ちてるわ。キョンのせいだまったく
私は坂道をとぼとぼと歩いた。チャリンチャリンとベル音が鳴る振り返るとアイツだった。
「ハルヒ、お前バスじゃなかったか?」
「いいでしょ、たまには歩き・・(もしかしてこれってキョンの家行けるチャンス?)
っていうか私今夜家に帰れないなあ」
「どうした?サイフでも落としたのか?」
鈍いんだか鋭いんだかまったくバカキョン。でもいいわ。別に家行って何?って感じだもの
なんであんなこと思ったのかしら。自分で笑っちゃうわ。
「自転車乗ってくか?」
「えっ・・仕方ないな乗ってあげる。」
なんか夢ではキスまでしたのにおかしいな。なに私照れてんだろ。
あたしを乗せてもスイスイ進んでく。やっぱキョンも男なんだな。
自転車ってこんなに乗り心地いいもんだったかしら?暮れかけた空を見ながら思った。
消失中の長門さんでコネタ
あたしは白紙の入部届けを彼に突き出してみた。
ちょっとつっけんどんだったかもしれないけれど。
彼はちょっと驚いたようだった。無理もない。文芸部なんて・・・興味ないだろう
「あのこれって・・・」
「良かったら・・」あたしは頬を赤らめているのを悟られぬよううつむいて、声を搾り出した。
「考えておいて・・」
「ああ。てゆうか活動内容とかって?」
「えっ・・」考えてなかった。あたしずっと一人だったし。
「もしかして未定?」
「ええ」あたしは軽くうなづいた。
「じゃあ二人でゆっくり決めてきゃいいのかな?」
彼はあたしから視線をそらしたずねた。これって・・あたしの解釈正当だよね
「ええ」せいいいっぱいの笑みであたしは答えた。本当はずっと孤独だった。
放課後遠くから聞こえる級友の笑い声が忌々しかった。
意地になって毎日足を運んでたけど、本当は・・・この部屋にはつらい思いしかなかった。
それが二人だけの世界になった。二人だけの・・・もうあたしは一人じゃない。
この人といっしょに明日から、楽しくすごしていけるんだ。ちょっと涙ぐんでしまった目を
指摘されたので日差しの強さのせいとうそぶく
しかし三つになったのか・・・他沈めてage進行でいくしかないと思うんだこのスレ。
なんか過疎ってるし。
あの変な荒しの同時コピペ、専用ブラウザだと挙動がおかしくなったりする。
見るのも嫌になるし、ちゃんと表示されない。
何とかならないのだろうか。
73 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 00:32:44 ID:n9qCUdjR
>>71 そうだな。というわけでage
ふと思ったんだけど「いつき」って女でもありえる名前だよな
放課後に部室行ったらハルヒが古泉を名前で呼んでて
ちょっと嫉妬を感じつつ遅れてきた女古泉にびっくりするキョン
というネタを思いついた。それだけだ。
74 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 00:35:20 ID:0rcOuS44
それアイズ?
>>65 谷川っぽくていい感じ。
違和感なく読めた。
続きwktk
76 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 00:46:59 ID:0rcOuS44
77 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 00:50:14 ID:jVR6/MQ8
ちょっとsageたぐらいでそんな怒るなよ。カルシウム足りないんですか??
78 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 00:52:53 ID:n9qCUdjR
79 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 00:53:04 ID:OZcdoGXg
お前らもっと幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。
80 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:00:57 ID:H6CxeCgp
>>77ぼくのコネタも読んでくださいってイミもあるんだよ。
>>78 ジャンプのマンガでいつきちゃんってゆう子が出てくんのそれだけ
81 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:10:22 ID:k7Lkwijn
ここを先に埋めていく方向でいいんだよね?
なんだか事情は良く分らないですが、一応短いものが出来上がったのでこちらに投下しますね。
「涼宮ハルヒのGS」
今日も今日とて我らがSOS団は不思議探索。
絶好の小春日和だってのに俺たちは一体何をしてるんでしょうね?
だれかわかり易く三行程度にまとめて欲しい。
本来なら普通の高校生らしく、運動に、恋愛に、勉学にと励むべきなんだろうが、
俺たちがしているものといったら、一応部活動の名は付くとは言え、
正体不明のものを探す正体不明の集団だ。
正体不明の集団と自分たちのことを形容するのに若干不満が無い訳ではないが、
宇宙人、未来人、超能力者とそれだけで大三元が出来そうな手牌に、
古泉曰く『神』まで居るのだからこれはもはや大三元四暗刻が天和で出来上がっているようなトリプル役満である。
ああ、少なくとも俺は違う。どう考えても役の一つも付かないクズ牌だ。
せめてドラの価値位はあってほしいなあ、と思った時期も俺にはあったが、もうそれは過去のことだ。
さて、今日の不思議探索は某遊園地である。
…おい、こら、そこ、なんだ、普通の高校生が遊びに行くような場所だなと言う顔をしない。
何でも、ハルヒによれば、この遊園地は設立当初から、企画者を始めとして
管理責任者から整備担当者からぬいぐるみの中の人まで、関係者の死が相次いだ、
その筋では無茶苦茶有名な、「心霊遊園地」…らしいのだ。
「その筋」が何なのかは俺には知らん。どうせハルヒのことだから、
某大型掲示板のオカルト板辺りにあったガセネタでも引っ張ってきたのだろう。
事実、そんなことがあったら客足が途絶えそうなものなのに、
実に休日らしい家族連れ、カップル、仲良しグループなどでにぎわっている。
有る意味において浮いているのは俺たちだろう。
ある種のアトラクションと勘違いされそうな、朝比奈さんの巫女さん姿と、
どっから調達してきたんだか分からんが、
どう見ても神父さんです。本当に有難うございましたな装備をする古泉…
明らかにどっかの漫画から影響を受けたのだろう、お札やら精霊石っぽい首飾りやら神○棍を持っているハルヒ。
腕には「所長」という腕章が輝いている。
…うん、一般人たる俺は他人の振りをしたいな、これは。
「涼宮さんは、あれをやってみたかったようですよ」
「あれって何だ」
「あれ、知らないんですか。まあ最近の子供では知らないかもしれませんね」
お前は幾つだ。少なくともお前だけは俺と同じ年齢だと思っていたのだが。
「実はですね、我々の調査によると、彼女は先週からGS○神という
まあ、悪霊を華麗に退治する漫画にはまっているらしいです」
んでそれをやりたいからこうなった…というわけか。変なものを呼び出さなければ良いが。
「それについては大丈夫です、『機関』は、場所がここに決まった時点でそれなりのものは一応用意しましたから。
適切な時刻に適切に演出をしますよ」
…なら大丈夫かもしれないな。アイツに地獄の門を開かれても困る。
まあ、ハルヒはまあなんつーか、その格好は確かにはまっていたが、
その格好はお盆にお台場辺りで開かれる一大イベントでやるべきだろう。
TPOっていう概念はアイツには存在しないのか。
それに確か原作どおりならば長門も連れて来て、ミサイルやらをなにやらを打つ娘になるべきなんじゃないのか。
「なーんだ、やっぱり読んでいるんじゃないですか」
まあな。伊達にブック○フの常連じゃあないぞ。
だが額にバンダナをつけてビー玉を出すのだけはゴメンだ。
「でも確かに今日、長門さんが居ないのは少々不自然ですねえ、『機関』も不審がっています」
83 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:11:31 ID:H6CxeCgp
そうだけど
そう、今日のSOS団の集会に、なぜか長門だけは居なかった。
不思議探索を長門が休むと言うのは珍しい。
ハルヒによれば、体調を崩したとのことだが、あの戦艦長門が体調を崩すということがあるのだろうか。
…あるかもしれないな。とっとと切り上げて、お見舞いに行ってあげるべきだろう。
正直な所、何を見舞えば良いのかは分からんが。メロンを持っていってもしょうがない気がする。
まだしもカレーの方が良いような…いや、アンチウイルスソフトでも差し入れるべきなんだろうか。効果があるかは分らんが。
「ほら、そこの二人!男同士でこそこそ何やってるの!とっとと行くわよ!」
所長、いや団長様のお達しだ。俺たちは話を早々に切り上げて、ボディコンGSとお供の浮遊霊の格好をしている
二人の方へ向かった。
「ふへえええええ…皆見てますよう…」
「いーじゃない、怪しげな自縛霊!呪われし遊園地を取り仕切る悪霊!
それを華麗に、極楽へ送ってあげるわ!これでこそSOS団の一大イベントね!」
…もう何も言うまい。被害者が一人減っていたことはむしろ幸運と考えるべきなんだろうな。
「そうねえ…でも有希が来たら、これを装備させようと思ってたのにねえ…残念だわ」
と言いながらハルヒが出したのは、特徴的なアンテナだった。
選りにも選って、ハルヒなどとアイデアが被るとはな。
至極当然ながら、悪霊などと言う物騒なものが出るわけではなく、午前中の俺たちの探索行は一切無駄に終わった。
「つまんないわねえ…何で出てこないのかしら」
「まあそうそう幽霊なんて出てきませんよ」
いつものニヤニヤ顔も、神父の格好をしてると妙にそれなりの説得力が増すな、おい。
「そうですよう、せっかく遊ぶ所に来たんですから、普通に遊びませんかあ?」
朝比奈さんはもうすっかり慣れてしまったか吹っ切ってしまった様で、
格好は別として、少なくとも表情は周りの雰囲気には溶け込んでいた。
しかし、ハルヒはそこでぱっと頭を上げた。
「そうよ、それだわ!」
何が分かったんだ。まるで黄金と銀の比重の違いを発見した古代ギリシャ人のような表情をしやがって。
「考え方が間違っていたわ!確かにこれじゃあ見つからないわけね、やっぱり発想が良くなかったのよ」
「いや、間違っているのはお前の頭だろう」
「キョン、うるさい。いい、こういう風な場所に出てくる幽霊ってのは、普通に楽しく遊んでいるパーティなんて前には
出てこないものなのよ!むしろ、うん、例えば単独行動ね、そういうことをしているときにやってくるものなのよ!」
すると永遠のイエスマンたる古泉は、それに同調した。たまには反対意見も出したらどうだ。
「なるほど、そのような発想は盲点でした」
…しかしこいつ、バイオ○ザードにまで影響を受けていたのか。
正直ゾンビに追い回されるのだけはゴメンだぞ。地獄の盆踊りを踊りたいなら一人でやれ。
「と、いうことで一時解散!4時まで自由行動で、何か面白いものを見つけたら即座に私に連絡すること!
いいわね!」
ハルヒの一声で、我らSOS団はソロ活動を行うことになってしまった。
個人的には朝比奈さんとのコンビ活動がベストだったのだが、所長の命令とあれば仕方ない。
知っている人は知っているかもしれないが、遊園地で一人で歩くというのは実に味気ない物だ。
周りには家族連れや、カップルやカップルやカップルなど…
…いかんな。SOS団の中では唯一その系統の扮装をしていないのに、発想が「そいつ」に近くなってきている。
とりあえず、妹に買って帰るべきお土産でも探すか、とお土産屋に足を向けたところ、
後ろから何かに引っ張られるような感覚がした。
…この感覚、長門か?
85 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:13:52 ID:H6CxeCgp
さげんなぼけえ
瞬時に振り返ると…誰もいない。
まさかハルヒのトンでもパワーで、本当に「何か」が呼び出されたんじゃないか、
とか思ったとき、視点よりやや下にぺルシアンブルーの髪が見えた。
なんだ、やっぱり長門じゃないか…っておい!
俺が目測を誤ったのも無理はない。あいつの身長が、通常比20%off位にちんまりとしていたからだ。
もともと長門はちみっこいイメージがあるが、今の長門はそれ以下だ。
まさかバーゲンで値下げとか言うんじゃないだろうな。
えーと、たぶん長門さんだと思うのですが、あなたはいったいどちらのお子さんでしょうか?
「あなたの推測は誤っていない。私は長門有希」
…ではなぜそうちみっこくなっているのでしょうか?
「リソースの不足」
「私は常に膨大な情報を処理する必要があるため、常に多くのカロリーと、情報統合思念体からの補給を受けている」
そうか、あの大食いにもきちんとした理由があったのか。まるでwindows xpだな。
「だが、情報統合思念体からの補給が18時間ほど前から途絶気味」
きちんと仕送ってやれよお父さん。
「やむをえず、省エネルギーモードへと移行、かつ涼宮ハルヒの観察を続けてきた」
「それが、私がここにいる理由」
まあ理由はいささかエキセントリックながら分った。では聞くが、なぜお前は俺に今マンマークしている?
「涼宮ハルヒには現在別のインターフェイスがフォローに回っている」
ほう。
「原因は、彼女が個人行動になり、周りに注意を払い始めたため、本来存在しない私が発見される危険性が生じたため」
なるほど。だが俺がマンマークされた理由が分らんままだぞ。
「あなたは涼宮ハルヒの鍵」
「ゆえに、マークの対象は自動的に重要度順に移行し、観察対象としてあなたが選ばれた」
…そうか。
「そして、私と言う個体も、あなたと行動をともにしたいと考えている」
……
まあ嬉しいと言うわけじゃないが、長門(小)相手では最大限譲歩して見ても、仲のいい兄妹にしか見えない。
「わたしはかまわない。あなたがそれでよければ」
…結局、俺は長門(小)と二人で遊園地を回った。
長門が楽しんでいたかは分らん。少なくともお化け屋敷はつまらなそうだったし、
体感シューティングでは当てすぎて逆につまらなそうだった。
長門が最も興味を示したもの、それは昔のその遊園地の発行したフィルム映像だった。
某ネズミのドタバタ。まさかそんなものが好きだとはね。
んで、もう少しで約束の時間だが…
「長門、お前は最後に乗りたいものとかあるか?」
聞いてみた。一通り乗り物は試してみようとも思ったが、列の長さからこの時間、一つに絞るのが得策だと
考えていたからだ。
「…あれ」
長門はジェットコースターを指差した。
正直に言おう。俺はそのような絶叫系は苦手だ。なにが悲しくて金を払って命の危険を感じなければならん。
だが、長門が乗りたいと言うなら話は別だ。俺たちは、おとなしく列の最後尾に並んだ。
時間帯が良かった為、俺たちの順番は30分後に回ってきた。
しかし、お前らも見たことがあるだろう?
ジェットコースターのような乗り物には、安全のため、入り口に「この高さ以下の子はだめだよ、ごめんね」
というやたらファンシーなたて看板がある。
まあ、ここまで説明すれば分ると思うが、長門(小)はここで引っかかってしまった。
へこんだ長門。これを想像するのは困難だろうと思うが、是非想像してみてほしい。
外見上の変化はただ首を五度程下げているくらいだが、長門の表情専門家たる俺は分る。
長門は結構本気でへこんでいる。…親父さん、仕送りはまだですか。
結局、コーヒーカップに乗って、俺が力いっぱい回すことで妥協したが…それでも。
「…」
「いつまでも仕送りが滞っているわけじゃないだろ?」
長門は目に見えて落ち込んでいた。
そのため、俺は後から考えれば、我ながら大胆な提案をしてしまった。
「いずれ、回復したら、また連れて来て乗せてやる。それでいいか?」
長門は少し驚いた顔をした。少なくともその様に俺には見えた。
その表情を見て、俺も気が付いた。
うん、これはどう考えても再デートとかその辺の誘いだ。しまったな。長門は嫌かも知れない。
しかし、長門の場合、イヤとかは言わないで、無言で拒否とかその辺だろうな。やれやれ。
「…」
そう考えた矢先、思わぬ反応速度で長門の首がミリ単位で瞬間的に上下した。これは驚きだ。
気のせいかもしれないが、積極性すら感じさせたぞ、おい。
と、ポケットの中の携帯が振動を始めた。
相手を確認した俺は、念のため出力機の方から少し頭に距離を置いて電話に出た。
「おう」
「『おう』じゃないわよ、バカキョン!とっとと集合場所に帰ってらっしゃい!」
案の定、周りに響き渡るような大声が音声出力から発生した。
耳を近づけていたらやばかったな。鼓膜の一つは破壊したかもしれん。
あー、ハルヒさん?たしかもう少し集合時間には余裕があったように思うんですが?
「そんなことは知らないわよ!とにかく、あんた以外はいるから、すぐ集合すること!」
はあ。やれやれ。一つ嘆息を付いた後、俺は長門に向き直った。
「というわけだ…じゃあ治ったら、俺に連絡をくれ。団の活動がない日曜なら基本的に暇だからな」
ブンブンという効果音つきのような気がするくらい、長門の首が激しく上下した。
結局、俺は最後に来たことを理由に、お茶代全員分のおごりを命じられた。
「ところで古泉。『仕掛け』はやったのか?」
俺は少し気になって聞いた。やはり好奇心の一つ位はあるからな。
「いいえ、特には。どうも、今回の涼宮さんは、結局のところ、皆で遊びたいというのがメインだったようですね。
あの後も、なんだかんだで朝比奈さんと合流してたみたいですし。
おかげでエキストラの人々にはそのままお帰り願いましたよ」
そうか。それならそうと、素直に言えば良いのにな。長門のように…
俺はボディコンを当たり前のように着こなして、隣の浮遊霊をいじっているハルヒを眺めていた。
次の日。学校に来た長門は、元の大きさだった。仕送りはうまく戻ったらしい。
放課後、SOS団に戻った俺に、長門は本を手渡した。
まあ、建前上は文芸部である以上、たまには本を読んでみてもいいか、そう思った俺は本を広げた。
すると、俺はその本の最初の方にしおりが挟んであるのを見つけた。
「来週日曜、午前10時、同じ地点にて待つ」
終
88 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:18:32 ID:H6CxeCgp
はいはいまたおなじことしちゃったよクソ。ごめんなさいね。
89 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:20:34 ID:RneHSXEB
>>87 長門(小)カワユイな、
絵に描いてみたいが画力無いからな・・・・
90 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:21:16 ID:H6CxeCgp
SSで潰さないで、こねたにも感想くださいね。まじで
>>87 乙。
以前ここだか長門スレで誰かが書いてた「ジェットコースターの身長制限に引っかかる長門」と「ながと3/1」を思い出した。
92 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:22:11 ID:w0p6JWnF
よかったけど、配役を弄った意味があんまりなかったかな。
タイトルにまで持ってくるならそれなりに意味があった方がよかったかも。
94 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:26:06 ID:k7Lkwijn
>>87 懐かしい。俺も読んでたよ。
首を振る長門は変だったけどGJ!
>>93 部室を狭そうに占拠してる縦横高さが三倍の長門をイメージして吹いた
96 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:27:51 ID:6MnTCiqr
何これ元ねたあるの?
99 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:32:26 ID:RneHSXEB
>>90 コネタの感想は難しいんだ・・・
ハルヒ バス
アニメOPのハルヒが自転車に乗ってる所を思い出した・・・
消失長門
消失長門はキョンに入部届け出す時、相当勇気を必要としたんだな
って再認識した・・・。いつもハルヒよりで見てるからな・・
これぐらいの感想しか書けん、スマンorz
100 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:32:29 ID:6MnTCiqr
つうかこのSSの話。
>>91 覚えていましたか。実はそれにインスパイヤをリスペクトされて、今頃完成しました。
長門1/3の人、あの雑談をしてた人、ネタ元にしてすいません。
>>タイトル
正直タイトルは直感で考えたので、あんまり本筋に絡めることが出来ませんでしたorz
実のところ、ふとあの人とハルヒが、何かキャラ的にかぶっている気がしたので、
ついその誘惑に耐え切れず、コスプレさせてしまった。
今は反省している。
割り込みは気にしないでください。まあ小ネタなので。
102 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:34:41 ID:6MnTCiqr
ああマンガの話か
そんなに酷かったのか俺のコネタは・・・・・・・・・・・・・・・
103 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:34:58 ID:k7Lkwijn
三倍長門もいい
ジェットコースターってものにもよるけど、130ぐらいあればおkじゃないのか。
105 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:38:48 ID:6MnTCiqr
話題がループしそうだからそんなこと聞かないで、そしてあげて
ガッシュとティオは引っかかってたな
107 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:44:10 ID:6MnTCiqr
週間サンデーのスレじゃねえから
108 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 02:03:17 ID:zhfbZ6bj
∩___∩
| ノ _, ,_ ヽ
/ ● ● |
| ( _●_) ミ _ (⌒)
彡、 |∪| ノ
⊂⌒ヽ / ヽノ ヽ /⌒つ
\ ヽ / ヽ /
\_,,ノ |、_ノ ここはうんちばっかり
109 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 02:08:16 ID:aApDSpmc
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>3倍長門
154cm(アニメ版設定)×3=462cm…5ナンバー車とほとんど同じか。
数字に起こすとベラボーに大きいって感じがしないね。
ハルヒが美神に似ているような、という件に便乗して。
キョン≒泉田
ハルヒ≒お涼
そんなことを思ったことがある人がいたら、教えてくれ。君はきっと俺の仲間だ。
>110
自重で崩壊しそうだけど、材質が違うだろうから大丈夫そうなのが怖い。
大きくなっても本読んでるんだろうな・・・
114 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 02:15:13 ID:OFo0CSGY
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これが倍率ドン"10倍"の15.4mか逆に1/10倍の15.4cmで登場されたら
さしものキョンでもアゴが外れんばかりに驚くだろうな。
>>115 それは、殺人的にカワイイな・・・
頭に載せたりできそうだしな、ハルヒ1/10も悪くないがな。
なんか、シャナタン思い出した。
これはさげたほうがいいかもな・・
>>111 ハルヒ=みかみ
キョン=横島
みくる=シキガミつかうメイちゃんだっけ?
長門=色黒の女のライバルなんだっけ
古泉=・・・だろ?
このスレがこんなに積極的に攻撃されるのって初めて?
それと書いたあとに思い出したけど縮小ネタって
某二度ドラマ化されたマンガのバッドエンドがトラウマになってるから
あんまり見たくないんだよね。
>>118 ハルヒ=美神令子、キョン=横島忠夫、みくる=おキヌ、長門=マリア、古泉=唐巣神父
…じゃないか?
基本sage進行で、重複スレがageられたときにageればいいと思う
え〜みくるがふえーんって泣いてシキガミでてきた方が面白いだろ
>>119 古泉…あんなにフサフサだったのに!
って原作でもこんなセリフあったな。
ってマリアが長門だとすると、情報統合思念体は…アレかw
朝倉は大家のおばあさんにすると思念体ネタでの力関係が合致しておもろいかもしれんw
>>122 思念体噴いたw
だが若い頃のヤツなら格好は付くぞ。
でも書くとクソになるんだよなあ。想像だけだとすげーおもろいのに
つまり!それはテレビアニメの来週の話が知りたいと言うワクワク感と同じ!
妄想だけでとどめておけばワクワク感が持続するんだよ!
そっか!形にしてしまわない方が美しい物もあるんだね!ありがとう125。
君からは人生において大切な処世訓を頂いたよ!
しかし、それを形にしてしまうのが
人の業なのですよ。
昨日の夕立で閃いたのでネタ投下。
16-116です。
保管庫の方いつも乙ッス。
題名「第14話(その後)」
キョン「おい。ハルヒ。濡れてるじゃないか」
ハルヒ「き……気のせいよ!」
キョン「あんだけでかいクチたたいておきながら、はあ」
ハルヒ「な、なによ。その溜息は!は、初めてなんだからしょうがないでしょ!」
キョン「………初めてだったのか?」
ハルヒ「……そうよ。悪い?」
キョン「いや、悪くはないが。なら、なおさらオレに任せろよ」
ハルヒ「………あんた、さっきから何か慣れてない?」
キョン「そりゃ、オレは初めてじゃないしな」
ハルヒ「いやらしい」
キョン「な!これのどこがいやらしいんだよ。オレは妹いるんだぞ。そりゃ経験あるさ」
ハルヒ「…………妹ちゃんともしてるの?」
キョン「ああ。たまにな。毎度濡れまくりなんで後始末に困るが…」
ハルヒ「もしかして、他の娘ともしてる……?」
キョン「そういえば妹以外とはしたことないな」
ハルヒ「…………」
キョン「どうした?やっぱオレがやるか?」
ハルヒ「いらない。私がやる」
キョン「なら、もうちょっとこっち来いよ」
ハルヒ「ちょ!バカキョン!近づき過ぎ!」
キョン「あーもー!オレに任せろ!」
ハルヒ「あー!返しなさい!あたしの傘!」
キョン「これは職員用だ!いいからオレが持つからお前じっとしてろ!」
ハルヒ「次はうまくやるわよ!」
キョン「初めてなヤツがオレを濡らさないで帰れるわけないだろ。いいから、ホラ」
ハルヒ「………うー。わかったわよ。濡らしたら死刑だからね」
キョン「…………はいはい」
ハルヒ「……………………」
キョン「……………………」
ハルヒ「……………………」
キョン「……雨、すごいな。ほら、もっとこっちこいよ」
ハルヒ「………ふん。あ、キョン。あんた肩濡れてるじゃないの」
キョン「…………あー、気にすんな。団長様を濡らすわけにはいかないからな」
ハルヒ「ふん。キョンも少しはわかってるじゃないの」
キョン「ほら、そこ水溜りあるからちょっと迂回するぞ」
ハルヒ「…………うん」
---サムデイ イン ザ レイン---
以上っす。
実況と誤爆した……
ポッキーSSはもう来ないのだろうか。
古泉はともかくハルヒ編を見たいんだがなあ。
セリフ形式のみでつまんないと悲しくなるんだよな
そういうこと言うと新しい職人が来にくくなるかやめれ
>>133 来てるよ(´・ω・`)書いてるよ
遅筆だし浮気だし中々進んでないけど
129は面白いのにケチつけすぎ。SSがメインだからって冷遇しすぎ。
ぶっちゃけ読んでないんじゃない?まあ俺もGSは読まないで感想書いたが。
もうみんなSMスレに行けばよくね?
非エロは持ってくるなよ
ぶっちゃけエロ無しの方が良い作品多いよな
一概には言いきれないが、多いのは事実
同意
エロの有無にかかわらずSSならば形式は関係ないと思う。
まあ、限度はあるだろうが。
というか、
>>142 12:00:00スゴス!!
エロパロじゃない二次創作なら他所行けよ
基本的にエロいの書いてる職人さんが時たま非エロのを投下するなら文句無いが
ここの奴らは最初からエロ書く気ねぇじゃねえか。
「実際エロの有無を気にするのは厨房だけ」とか言っても、ここはエロパロ板。
板違いの非エロばっか投下してりゃ荒れるのも当然。
「エロ無しの方がいい」って思うなら他所で集まってやってりゃいい。
エロだろうと非エロだろうと良い作品が読めればそれでいい。
ちょっとホームの注意書きを見てみる
http://sakura03.bbspink.com/eroparo/ >キャラ単位、キャラ主体のスレッド →ピンクのキャラサロン
>年齢制限付きの作品に関するスレッド →エロゲネタ&業界/エロ漫画小説アニメ/エロ同人等
>画像の貼り付け →半角二次元/お絵描き・創作等
>実在する人物(アイドル等)を元にした創作 →えっちねたロビー等
他所に池とは言うが、適切な該当箇所が無い希ガス。
作品、というか谷川流作品全般を指すんだからキャラスレはまず違うし。
原作でもアニメでも年齢制限は無いし画像でもないし、ましてや実在の人物な筈がない。
アニ板はそれこそ板違いな訳で。つまり、エロパロがSS板としては最大公約数。
仮に適切な板があったとしても、今度はそこでエロ込が投下できなくなるという逆のジレンマ。
>一般向け作品(漫画/アニメ/ゲーム/小説/ドラマ等)のエロ妄想・萌え談義、
>およびオリジナル・パロディを問わないエロ小説創作等を行う板です。
最後の「等」ってのはどこまで広義に捕らえて良いんだろうね?
「エロ小説『等』」ならエロ小説以外も含むのか。
エロ無しも素晴らしい作品が揃ってるので個人的には問題ない
なんかこの討論定期的におこるな…
まぁ良い作品なら何でも良いと思うけど
文句言ってんのがエロSS職人なら分かるけど
ただの読み手が文句言ってんなら聞く必要ないと思う
エロが無いとダメとか、そういう事言って
投下作品数が少なくなることだけは困る。
面白ければいい気がするよ。
146は吊りだろ。今日日本気でこんな厨房みたいなこと言ってる21歳超がいるのか?
>>154 釣りと言うより定期的(同一人物かは?)に出てくる。
本人はいったて真剣の様だがハルヒに関しては
総合SS自体存在しない現状では無意味である
事に気が付かないかわいそうな人
粘着振りがスレ立てに失敗したにもかかわらず誘導工作してた香具師と同じ気がする。
根拠の無い推測はやめな。
でも、エロいかエロくないかは、人それぞれだよなぁ
エロくないって投下されたのでも、エロいと感じることあるし
以前小ネタで投下されたOSとウイルスの話はエロいと思った
>>小ネタの子
つまらない。
大人になるまでROMれリア厨房
そこはもうちょっと幼馴染が照れ隠s(クマー!
外部板に谷川SS総合スレがあるとかなら誘導のしようもあるんだけどね。
書き手としても毎回毎回「エロなしです」と宣言しながら投下するのは引っかかる部分もあると言えばある。
一回しかやった事無いけど。
もう次の作品来るまで書き込みせずに黙って待ってようぜ
フフフ……バイト前にちょっと覗いて見ただけです。
エロだのなんだの何回繰り返せば気が済むんだ
15498回
そして、スレ住人がバグるわけか。
そして数ヵ月後には「SS職人の消失」が…。
そして、スレ住人の1人が元のスレへと戻すんだな。
名無し「いてもいなくても迷惑なんだから、肝心な時くらいでしゃばってこいよな。たまには俺の願いを聞いてくれてもいいだろうが・・・・・・」
スレに語りかけている最中、自分が何を思っているかに気付いて愕然として
そんな忌々しいことを考えてしまった頭をどこかに打ち付けたくなった。
名無し「なんてこった」
書いたセリフが電子の渦へ消えて行く
俺はアラシに会いたかった。
170 :
11-226:2006/07/15(土) 19:47:02 ID:OpH6I4qS
投下します。「長門有希の喪失」「朝比奈みくるの最後の挨拶」と
書いて来ましたが、今回が最後になるかと。11レスほどお借りします。
春爛漫であり、桜が舞い落ちる中の卒業式というのもまたオツなものである。
体育館に集まった我々三年生は、未だ進路が決まらぬ一部の生徒を取り残し
つつ、君が代から校歌斉唱とお馴染みのコンボを唄っていた。
色々と感慨深いものがあるが、そこは高校三年生。式典くらいはクールにド
ライに決めるってもんさ。
「……ぐすっ、ひっくっ、うえええ」
さて、ではここで問題。俺のすぐそばで泣いているこの女の子は誰だろう。
「ぐすんっ……ひっく……」
朝比奈みくる? いやいや、そもそも彼女は上級生であり、とうの一年前に
卒業しているご身分である、あー、そこの君、『留年』などという単語を思い
浮かべるのはよしなさい、朝比奈さん割とビクビクしていたんだからな。
では長門有希? 冗談じゃない、たとえこの卒業式においてもあの長門が泣
いたなんてことを知ったら、俺はいますぐ世界が改変されたのではないか、と
疑うことにしている。そうなれば、またぞろ鍵を集めてパソコンのエンターキ
ーをポチッとな、だ。
第一、こういう式典であいつは泣かないだろうね。あいつが泣くとしたら、
俺たちSOS団と別れるときくらいじゃないだろうか?
じゃあまさか、涼宮ハルヒ?
惜しい、実に惜しい。いや、俺もだな。てっきりハルヒがこういう時泣けば、
それはさぞ見応えのある画になったに違いないと、そう思っていたんだがね。
「……」
はい諸君注目。今、泣いている少女の肩をしっかりと抱きしめてあげている
のが我らが団長、涼宮ハルヒである。口を真一文字に結び、やや悲しげに睫毛
を伏せてはいるが、その瞳から涙が零れている訳ではなかった。
じゃ、泣いているのは誰かというと……面白みもなんともないが、阪中だ。
俺が驚いているのは、ハルヒが阪中をしっかりと抱きしめてあげているのと、
阪中がハルヒの胸に顔を埋めていることである。
この三年でハルヒは変わった、俺たちSOS団団員は中身はそれなりに変わ
ったのだが見た目の変化が著しかったのは、ダントツでハルヒだろう。
と言っても容貌が変わった訳ではない、単に……そうだな、柔らかくなった
というのが一番合った言い方だろうか。
確かにハルヒは変わり者だ、宇宙人未来人超能力者異世界人を捜し求め、気
まぐれで映画を作り、野球大会に出場し、不可思議な悩み相談を受け付け、代
役でバンドに出てかと思えば、節分の豆まきなんかを校内で盛大にやってのけ
るようなそういう変わり者であり、世が世なら前田慶次と酒を飲み交わしてい
たところでおかしくもなんともないヤツである。
そう、変わり者ではある。
しかし決して悪人などではなく、オカルトにかぶれてなどもいない。
要するに分かりやすく言うと、ハルヒという女は「面白いコト」を探し続け
ていただけなのだ。
俺は凡人であるから、他の連中の気持ちがよく分かるね。そう、ハルヒをバ
カにすることは簡単だ。宇宙人などいない、未来人などいない、超能力者なん
ている訳ない(実際にはいるんだが)、そう断言してせせら笑えばいい。
だけど。
それでも、心のどこかで「そういうのがあったらいいな」と思ったことはな
かったか? そういう非日常な存在がいた方が「面白いな」と、そう考えたこ
とはなかったか?
それが分かった人間はハルヒ側の人間であり、それが分からなかった人間は、
まあどちらの側にでもついていくがいい。俺は少なくとも、ハルヒの側でいた
いものだ、こちらの方が何千倍も面白いからな。
北高の他の連中も、まあどちらの側につくかを決めちまったんだろう。不幸
な連中だ。
そんな訳で、俺たち北高生徒はこの三年で間違いなく変わり得たのだと思い
ながら、無事に卒業式を終わらせたのさ。
「キョン、ゴメン。SOS団のミーティングはもうちょっと後でね!」
やるつもりなのか。
「当然よ。最後の最後まで、あたしはSOS団の団長なんだから!」
そう晴れ晴れとした笑顔で叫ばれると、一団員の身としては何とも言えない
ね。まあ俺だって、まだハルヒにくっついてぐずってる阪中を引き剥がすほど
鬼でもないけどな。
「じゃ、俺は先に行ってるぞ」
「うん……待ってて」
少し嬉しそうなハルヒの言葉を背に受けつつ、俺はその場から立ち去ること
にした。そしていつものように、だが恐らく最後となるであろうSOS団の活
動場所へ向かおうとした時だった。
珍しいヤツが、珍しい場所で、珍しいことをしていた。
つまり。古泉一樹が、中庭の木の下で、ぼんやりとしていたのだ。
ぼんやり、というのは俺の古泉に対する悪意を持った表現であり、素直に考
えれば、どこか遠くを見据える眼差しと言ってやった方が本人の名誉のために
も適切か。……別にどうでもいいコトだが。
「……おや、あなたでしたか」
ちっ、ぼけっとしているようならこのまま見なかったことにして通り過ぎた
ものを。仕方ないので、古泉にやる気なさげに腕を振ってやることにする。
「……?」
wktk
古泉はいつもの偽善者的というか、貼り付いたというか、詐欺師的な、とい
うのが一番適切な笑顔を浮かべてはいたものの、目の奥にどこか憂いを帯びて
いた……ように見えた。
俺は別にこいつの表情専門家でもなんでもない、ただ何となくそう感じてし
まっただけさ。
だから、何となくそれが気になってついついコイツの隣に座ったことも何ら
おかしいことではない。まったくな。
「おや、どうしました?」
知るか。たまには道草もいいものだ、というだけだ。
「いや、僕は一向に構いません。こういう機会はもうないですし、ね」
相変わらずファーストフードのチェーン店の店員さんのような笑顔を振りま
きつつ、古泉は肩を竦めた。
やれやれ。
俺が合わせたように肩を竦めると、古泉は苦笑した。何がおかしい。
「いいえ、もうあなたのその肩を竦める仕草ともお別れかと考えた自分が、あ
まりに滑稽だったもので」
おいおい。お前卒業したらトンズラする気か? ハルヒは地獄の果てまでお
前を追いかけるだろうよ。
「さあて、それはどうでしょうか――」
だから、何が言いたい。
「いえつまり、涼宮さんは僕のことを追いかけてくれるのだろうかと、たまに
そんな事を思うんですよ。あなたとハルヒさんが付き合いだしてから、ね」
この時の俺は、恐らくコンペイトウを頬に詰めてグーで殴られたときのよう
な顔をしていたに相違なく、つまりは痛いんだか驚いてんだか分からない表情
だった。
「まさか、気付かれてなかったとでも思ったんですか?」
いいや、さすがにそこまでは俺も期待していなかったさ。ただ、お前の台詞
に驚いているだけだ、今まで口に出そうともしなかったからな。
「涼宮さんが内緒にしておいてくれ、と言ったんでしょう?」
ああ。SOS団の規律が乱れるとか、団長として示しがつかないとか、そん
なコトを色々とのたまっていた気がするが、要するに恥ずかしいんだろうがお
前は、と突っ込んだらもちろん一発いいのを脳天に貰ったぜ。頬じゃないあた
りにハルヒらしさを感じ取ってくれ。
ちなみに。
告白して、告白された直後に古泉含めた三人にバレていたことは言うまでも
ない。その後鶴屋さん、阪中あたりにもしっかりと嗅ぎつけられたな。女の勘、
怖い。
ただ、全員どうも妙な優しさがあって誰も面と向かって俺やハルヒに指摘し
たことはないんだよな。何だか「ただの胃潰瘍です」と言われているガン患者
の気分だ、サナトリウムに入っても構わんからずばり切り込んでくれたらいい
ものを。
「涼宮さんは怖かったんでしょう、SOS団の結束が緩まる……というか、あ
なたと自分が付き合うことによって、人間関係に破綻をきたすことを、ね」
どうしてそうなるのか、などと俺は尋ねはしなかった。尋ねる必要がないと
言いたいが、実際にはただの言い訳だな。
「長門さんと、朝比奈さんは言うまでもなく――――そして、この僕も」
俺は古泉から目を逸らし、空を見上げることにした。やあ青い空だ。
古泉は苦笑しつつ、最初の爆弾を放り投げた。
「僕はね、涼宮さんのことが好きだったんですよ」
――ああ、知ってた。
風が吹いた、くるりと桜の花びらが回転しながら舞い上がり、また地面に落
ちた。その間、二人ともに口を利かなかった。
「おや、ご存知でしたか。僕の気持ちは隠し切れていたと思うんですが」
確かにお前は見事に隠していたさ、多分そういう目でお前を見なきゃ絶対に
気付かなかったろうぜ。だから、ちょいとばかり卑怯なんだコレは。
「卑怯?」
俺はな、古泉。お前から直に聞いたんだ。「僕は彼女に好意を持ってます」
ってな。そう言われた後で、注意深くお前を見てお前の言葉を聞けば、まあ鈍
い俺でも気付くってもんさ。
「僕はそんな事、一度も言ったことは…………あ、まさか」
古泉の顔がほんの少し強張った。
そうだ、古泉。かつてハルヒの力を流用して長門が作り出したあの世界だ。
あの世界のお前は転校生であり、ハルヒのそばにいた。
そして、好きだと言ったんだ。まるで俺を牽制するかのようにな。
「……なるほど、参りました。さすがにそれは、予想外のアプローチでしたね」
ああ、まったくだ。
沈黙する。心地よくはなく、少しだけ気まずかった。
「不可思議な力を持たない、でも不思議を探し続ける長い髪の美少女。まあ、
確かに僕が好きになりそうな人ですね。でも――」
古泉が俺を見る。その表情はどこか寂しそうでもあり、悲しそうでもあり、
その癖とっておきの悪戯を隠しています的な楽しさも垣間見えた。
「勘違いでした。僕が好きなのは、涼宮さんじゃありません」
……おい。
まるで才能はないけど情熱だけが存在する脚本家が、思い切ってクライマッ
クスにどんでん返しを仕込んではみたものの、見事に失敗、墜落した映画を見
たような気分だぞ。
「無論、長門さんでも朝比奈さんでもありません」
…………。
俺の凄まじいまでの訝しげな表情に気付いて、古泉は慌てて手を横に振った。
「一応言っておきますが、僕は異性を愛しても同性を愛する気は毛頭ないです
からね」
……助かった。
「僕が好きだったのは……確かに涼宮さんでしたが、涼宮さんその人だけを好
きになったんじゃありませんでした」
そこで古泉は言葉を切った。この男が、珍しいことに言葉を舌に乗せるのを
ためらっていた。
「言えよ、古泉。……言ってくれ」
古泉の笑いが消えた。
目を開き、肩を落とし、力なく、囁くように、コイツは言った。
「僕が好きだったのは、あなたと一緒にいる涼宮さんだったんですよ」
溜息。
それは俺が発したものであったし、古泉が吐き出したものでもある。
「そうか」
「そうです」
それじゃあ、仕方ないよな。
「ええ、仕方ありません」
「参りました。僕は涼宮さんが好きなのに、涼宮さんが好きな理由である、あ
の笑顔を向けるのはあなただけなんですから」
何と言えばいいのか分からず、俺は無言を選択する。
「あなたを恨めれば、憎むことができれば、いえ、せめて……妬むことができ
れば良かったんでしょうが、ね」
古泉は座ったまま立てた片膝に額を当てた。
「僕は、あなたも好きでした。いえ、尊敬していると言ってもいいでしょう。
困りますよねえ、恋敵が得難い親友だったんですから」
参りました、と古泉は笑った。
あまりに恥ずかしい台詞に、両手が無意識に×マークを取りそうになるのを
堪えつつ、俺はそっぽを向く。
「不安なことが、一つだけあるんです。質問に答えていただけますか?」
答えられるものならな。
「SOS団で、色々なところに行って、色々なことをやりましたよね」
「……ああ」
「野球をやりました」
インチキ使って勝ったがな。
「島にも行きましたね、まあ我々機関の所有のものでしたが」
今や朝比奈さんのビーチボールくらいしか覚えてないぜ、あとはハルヒの名
推理くらいのものか。もう一度行きたいね、ただしミステリ抜きで。
「巨大カマドウマとも戦いました」
俺は戦ってないがな。
「コンピュータ研とゲームで戦ったりもしました」
長門がいなけりゃどうなっていたことか。
「学園祭は大変有意義で楽しかったですね」
もう映画は撮りたくないし、お前の劇は正直何やってるかわからなかったぞ。
「五人で踊ったこともありましたっけ」
二度とやらん。
「本当に色々なことがありました。まさか海外に行ってまでミステリ劇をやる
とは夢にも思いませんでしたが」
機関の連中に行っておけ、間違っても全身鎧を飾るな、夜中に動き出すから。
「我々に悪意を持つ連中とも戦いました」
俺にゃ関係ないね。
古泉はいったん言葉を切り、確認するように俺の目を覗き込んだ。
「それでも僕は、総合的に考えて楽しかったと思います。この三年は、刺激的
で、毎日が楽しかった……」
語尾が震える、怖いのかお前。俺に、その問いをぶつけるのが怖いのか?
いいぜ古泉、どんとこい、だ。
「質問です。あなたは――楽しかったですか?」
「当たり前だ、バカ野郎」
あのな、古泉。何度も何度も言っただろうが。楽しかったんだぜ、俺は。絶
対に楽しかった。SOS団としての活動は、危なかったことも含めて何もかも
だ。この世界中の誰もが経験し得ないものを、俺はこの三年でやり続けたんだ。
これが楽しくなくて何になる?
宇宙人がいた、超能力者がいた、未来人がいた、そしてハルヒがいた。怪し
げな組織、怪しげな敵、高慢ちきに振舞って俺たちに立ちはだかる生徒会長ま
でいてくれた。
これが楽しくないなんて、とてもじゃないが言えないね。
「そうですか……。ああ、良かった。ほっとしました」
古泉が胸を撫で下ろす。
ああ、そうさ。安心しろ、間違っても俺は巻き込まれたことを後悔したりは
しないし、お前たちを弾劾したりなんて絶対にしない。だからな、だから――。
俺は恐らく、これから一生涯やらないようなことをしでかした。
即ち、古泉の頭に手を当てて、髪の毛をくしゃくしゃにしてやったのだ。
そして、言ってやった。
「泣くな」
嬉しかったのか、安心したのか、卒業するのがそんなに悲しいのか、いずれ
にせよそれら全部が入り混じった、なんとも言えない感情だったのだろう。
外れた仮面の下から、とめどもなく涙が滴り落ちていた。
「申し訳ありませんね、妙なところを見せてしまいました」
まったくだ。二度と見たくないね。お前はいつでも無駄なスマイルを振りま
いている方がこちらの胃に優しいのさ。
「ええ、一つ貸しということでお願いできますか? これが涼宮さんたちにバ
レたらと考えるだけでも恐ろしいです」
俺は無言で立ち上がった。
……さて、次の台詞を言うにはそれなりの心の準備が必要だ。そうかと言っ
てモタモタしているとタイミングを逃すだろう。
くそ、まったく。一度だけだ、この一度だけ言ってやる。何しろもう卒業だ、
心残りは片付けておくに越したことはない、ああもう、畜生。
言え、言っちまえ。
「そういう事にしておくさ。親友だからな」
「……」
古泉の顔が凍りついていた、いや驚きすぎだお前。
「行くぞ、古泉。モタモタしていると、俺の後から来るはずの団長に揃ってブ
ッ飛ばされちまうぞ」
ニヤリと笑ってやった。古泉は唖然としたまま、夢遊病者のように立ち上が
った。
そして二度、三度とわざとらしい咳払いを繰り返した後、いつもの笑顔で言
った。
「聞き逃してしまいました。もう一度言っていただけますか?」
却下だ、二度と言うかあんな台詞。
「そこを何とか」
却下と言ったら却下だ。たとえ機関総出で俺が内緒にしておきたいことを調
べ上げられ、公表すると言われてもノーコメントを貫き通す覚悟だ。
「はぁ、分かりました。あなたの頑固さに敬意を表して、ここは引き下がるこ
とにしましょう」
そう言って、古泉はニヤリと笑った。既視感がある。どこかで見たような笑
い、これから告げる自分の言葉が面白すぎて抑えきれない笑みだった。
これでこの話は終わりだ。いい加減俺も恥ずかしいんで、ここらへんで終わ
るが最上というものだろう。
ああ、古泉が何を言ったのかって?
アイツは、手のひらを空に向けて、ゆっくりと肩を竦めてこう言ったのさ。
「やれやれ」、とね。
<了>
183 :
11-226:2006/07/15(土) 19:51:43 ID:OpH6I4qS
以上です。ありがとうございました。
GJ!ヤベぇなぁ、古泉って萌えキャラだったか?w
GJ
何と言うか……いいツンデレだ、キョン。
∩
( ⌒) ∩_ _
/,. ノ i .,,E)
./ /" / /"
./ / _、_ / ノ'
/ / ,_ノ` )/ /
( / good job!
ヽ |
\ \
スレの雰囲気を一瞬で変えてしまう投稿。…すごい、すごすぎる。
こういう話もいいね。
トイレでケツ拭きながら読んで超泣いた
今までの作品もかなり泣いたしあんた最高だよ
谷川、こんなところで最終回のネタバレするなよw
いや、マジでこの3作品が、本物の最終回っぽく感じる。
どれも泣かせていただきました。ありがとう。
>>183 いいねえ…こういう卒業の日なら最高だ、いい仕事をありがとう。
実際に最終巻出るまでこのイメージ持ち続けるかもしれないw
マジですげえ…
これがスニーカー大賞受賞者の力か…
オレにとっちゃ貴方の三部作がそれぞれ全部キャラSSの最高傑作だよ!
全部泣かせてもらいました。
こんなSSが書けるようになりたいもんだ…
ありがとう。GJだ!
男の友情ってイイね!!
古泉は今まで好きでも嫌いでもないキャラだったけど
一気に好きなキャラの一人になってしまったよ
谷川さん原稿をネットで公開しないでくださいよ、担当泣いてますよ
ここはチラシの裏
ふと感じた。神SS職人に対してあんまり谷川谷川言うのは、どっちも侮辱している気がする。
でも議論する気はないのでスルー推奨
原稿の裏
じゃあ担当が谷川氏の原稿を流してるでFA?
特に意味は無いのでスルー
>>183 GJ!GJ!
あのぉ、ネタが溜まったらでいいのでこのシリーズでのハルヒとのエピソードも読みたいかも…
>>111 亀レスだが、
長門≒マリアンヌ+リュシエンヌ
古泉+みくる≒岸本
ということで手を打たないか?
200 :
わかめ結び:2006/07/15(土) 21:40:00 ID:aKesxRNC
「おねがい、キョン、脱がせて」
「あ、ああ」
「ねえ、下も……」
「ここまできて言うのも何だが、ほ、本当に」
「いいの、キョンがいいの」
「……わかった、ちょっと足広げて」
「うん」
って下もポニーかよ!
男に萌える自分が怖くなる佳作だなオイ
202 :
進級 続き:2006/07/15(土) 21:41:41 ID:yHOESnsC
この感動的な流れを申し訳ないですがぶった切ってC級作を途中ながら投下しますよ。
完成時期も未定と言うお粗末な仕事っプリですが許してください。
エロなし予定。確定分のみ。
203 :
進級 続き:2006/07/15(土) 21:42:55 ID:yHOESnsC
ふー。なかなか充実した授業だったな。あんなに分かったのは中学校一年以来だ。
勉強というのは不思議なもので、分かる分からないでは面白さが大幅に違うことは周知の事実だ。
それが顕著に現れるのは数学である。
そして文系の俺に理系並みの数学力が備わりつつあるのを俺自身驚いている。
谷口の恨めしい視線が気持ちいいぜ。
ハルヒ・・・今更だが、お前って何でもできるんだな。
ハルヒの並外れた才、もとい変態的な力に改めて感心しつつ部室に向かった。
忌々しい掃除当番という障害を乗り越えてからな。
コンコン、ガチャ。
「ちーっす」
「・・・・・・」
長門の醸し出す心地よい沈黙が部室を包み込んでいる。
パイプ椅子に腰掛けると、天使の御手に淹れられたお茶が俺の前に置かれる。
「キョン君、今日も頑張って下さいね」
ありがとうございますっ!朝比奈さんの声援は不屈の精神を養ってくれますとも。
そして二流役者の古泉にもお茶が配給される。今日は将棋か。
安っぽいスマイルの中から僅かに眠気が感じられるのは気のせいだろうか。
当のハルヒといえば甚だしく意外なことに団長席でノンレム睡眠中である。
部室で寝るなど前代未聞だ。こいつが学校で寝るのはテストの余り時間ぐらいのはずである。
シーラカンス並みに希少なハルヒの寝顔を鑑賞しようと試みたのだが、
俺の気配に察知したのか目を覚ます。お前の勘のよさは勲章ものだ。
「・・・う〜ん、っ!キョン!来たなら来たって言いなさいよ!団長の隙を突こうったってそうはいかないんだから!」
お前の隙を突いて如何ほどの恩恵を享受できるのか教えてくれ。あとよだれ拭け。
「いいから!はいコレ!」
プラトンも真っ青のA4紙30連が俺の前に投下される。
昨日の救いようの無い疲労感が脳裏を過り血圧が下がりそうである。
だが、俺とて昨日の俺ではない。
朝比奈さんのエールのお陰で計算速度も暗記力も理解力も昨日の2割り増しの気分なのだ。
定昨日よりも割りと早くA4を片付けていく俺を見てハルヒは何を思ったのか
「へー。あんたも人並みの頭持ってんのね」
そうだとも。俺は昨日の特訓のおかげで名前の横に+が突きそうなほど脳が活性化している。
それでもハルヒ曰く、今の俺はようやく凡人の域に達したということだ。
ハルヒ的俺ランクを知りたいような気がしないでもなかったが
「ほらここ。こうするとできるでしょ?」
「こういう時はね、この公式を使ってみるのよ」
「三単現のSが抜けてるわよ」
幾分か一昨日よりも柔らかく教えてくれるハルヒの前にはそれは愚問ってもんだ。
眠くて怒る元気が無いのか、はたまた成長する雛を見て喜ぶ親鳥の心境なのか。
どちらにしても俺のHPの減り幅が小さくなったのは確かである。
そして心なしか俺とハルヒとの距離が昨日よりも近くなっている気がする。
間近で見るハルヒの笑顔は目に毒だ。
204 :
進級 続き:2006/07/15(土) 21:44:25 ID:yHOESnsC
あー疲れた。今日も何とか終わったな。
部室の窓際にオレンジ色の読書マシーンが静かに座っている。
「キョン君お疲れ様でした」
ああ。朝比奈さん、あなたの愛らしい笑顔で俺の心は瞬間的に癒されますよ。
「キョンにしては割りと早かったわね。もうちょっとかかると思ってたんだけど」
長門も丁度ブリタニカ百科事典のような分厚い本を閉じて帰り支度を始める。
ふと気付いた。古泉が寝てやがる。こいつのはこいつので寝顔は割りと貴重かもしれん。
もちろん俺の中での寝顔希少価値は長門、ハルヒ、朝比奈さん、古泉の順であるのは言うまでも無い。
今のうちに悪戯書きでもしてやろうか。
「今日はこれにて解散!」
ハルヒのハイテンションヴォイスが古泉を起こす。
部室で寝てしまうとは失態でしたね、などと負け惜しみを述べて古泉は部室を後にした。
寝起きの顔も様になっているのが憎らしい。
それに追尾するように長門も部室を出る。
だがその時唇が高速で動いているのを俺は見逃さなかった。
頼むぜ長門、この一週間ぐらいは普通の高校生で居させてくれ。
そう不安に思っていると
「着替えるから先に帰ってて」
朝倉を髣髴させる言葉なのは違いないが、朝比奈さんの可愛らしい声が心地よく耳に響く。
毎日朝比奈さんと仲良く話ができる俺は北高一の幸運男子なのかもしれん。
夜間の外出は控えたほうがいいな。朝比奈ファンクラブ会員による闇討ちが懸念される。
「ほら!いつまで居るつもりなのよ!帰るわよ、キョン!」
俺の襟首を万力アームで掴み、ずるずると引きずっていく。
頚動脈が悲鳴を上げつつもでは朝比奈さん。また明日、
と引きずられながら手を振る俺に困惑しながらも手を振って下さった。
校門をくぐりハイキングコースを歩く。こいつと帰るのは悪い気がしないでもない。
はたから見れば美少女と付き合っている幸運な男子、と間違えられることもあるだろう。
時にハルヒ、今日は随分寝ていたな。お前らしからぬ様子だったぞ。
「別に」
そうか。
夕日に照らされる橙色のハルヒが変に優しく見えた。
「じゃああたしは寄る所があるから。じゃあねキョン」
なあ、別れるのは次の曲がり角でもいいんじゃないか?
「! 何?あたしと帰りたいの?」
不覚だった。俺としたことが何故こんなことをためらいなく言っちまったのか。
いや、すまん、失言だ。夕焼けの特殊効果だ。
幸いにもその夕焼けが俺の赤面をカムフラージュしてくれた。そう信じたい。
「もう!変な事言わないでよね!」
焦る俺を尻目にハトが水鉄砲食らったような顔でツンツンしている。
そういってハルヒは俺とは別の道を行った。
俺も相当疲れてんだな。早く家に帰ろう。
こんな感じを残り5日間繰り返しつつ、
勤勉週間は俺の溜息と古泉の視線、朝比奈さんのエールに長門の沈黙で幕を閉じた。
ハルヒと言えば、この一週間、授業中は殆ど寝ていたな。
205 :
進級 続き:2006/07/15(土) 21:46:13 ID:yHOESnsC
―テスト当日
今までの俺ならテストなんぞ開始10分でスリーピングタイムになるはずなのだが、
今日は違うぞ。一問一問が手に取るように分かる。勤勉週間、つまりハルヒのおかげか。
最後の科目ですべての解答を終えても尚20分ほど残っていた。
ふと長門に目をやると、意外にも机にあるのは僅かに空欄のある解答用紙である。
断っておくがカンニングしようとは微塵も思っていない。
この程度の問題、長門なら満点も余裕で取れそうな気もするのだが。
位置的に表情の確認はできないものの、ペンは動いていない。
まさか。もしかして分からないのか?
いやいや、長門のことだ。テスト終了前に宇宙パワーですべて埋めてしまう可能性がある。
はたまた採点するアルバイトを操るかもしれん。
なんにせよ長門が全国ランキング1位を取ると思っている。
トップを巡って争う全国のがり勉諸君には申し訳ない。
万能宇宙人が受験するなんて聞いてないもんな。
いろいろ妄想したが何の役にも立ちそうもないので長門から視線を外し、
後ろの団長を見習うことにした。
―終了のチャイムだ。
用紙回収後に寝ぼけ眼で席を立つ。
ふと振り返ると既にハルヒの姿は無かった。
お前、ついに瞬間移動できるようになったのか?今度やり方を教えてくれ。
ハルヒの神速に感心しつつ俺は長門と部室へ向かった。
「長門、今日のテストはどうだったんだ?」
試験中の様子から大いに気になっていた。
「・・・問題ない」
そ、それだけか?
「あなたよりも2点低い解答を作成した」
長門の吸い込まれそうな黒い瞳が俺を見つめる。
「何でそんなことしたんだ?長門なら簡単に満点を取れただろう」
「・・・・・・」
だんまり、か。
こいつが黙る。これはこれ以上追求せず汲みとって、という意思表示なのだが
一年も長門と居ると無言からも随分意思を読み取れるようになるってもんだ。
これだけは俺の専売特許のつもりである。
長門の行動には必ず何かしらの意味がある。こいつは無駄なことを殆どしない。
だから今日のことだって何か裏があるに違いない、そう思ってるうちに部室に到着した。
206 :
進級 続き:2006/07/15(土) 21:48:05 ID:yHOESnsC
厚さ5センチの木の向こうに学校一の癒し系マスコットキャラが居ると思うと気分も高揚してくるってもんだ。
天使を拝むためにノックをしようとポケットから右手を出し上に挙げたとき、
俺のブレザーが引っ張られる。
予想外のことに間抜けな顔をしてしまったに違いない。
幸い、その顔を目撃したのは眼前のドアだけのはずだ。
振り向いてみると、意外なことに長門が俺のブレザーをちょこんと摘んでいる。
丁度人差し指と親指で紙切れの端を掴むように。
ハルヒ消失事件の主犯格、一般人仕様の長門の顔がフラッシュバックする。
そして上目遣いで
「待って。今は駄目」
思わずクラっと来たね。
無表情ながらも、長門の上目遣いは人生経験の乏しい俺からすればかなりの兵器になる。
だが、長門に惚れ直している場合ではない。
今こいつは間違いなく俺を止めた。よほどの緊急事態なのか?
「・・・・・・入って」
およそ10秒ほどだっただろうか、長門が俺を制止したのは。
どうして止めたんだ?
「・・・ない」」
何だって?
「理由は無い」
・・・・・・そんなことがあるのか。
長門らしくも無い。理由も無く俺を止める?意味が分からん。
「この室内の空間に異常がある」
とか何とか言ってくれたほうがまだ良かった気がする。
長門の理由の無い行動が俺をどれほど不安にさせるか分かったもんじゃない。
再度長門の目を見る。少しばかり潤んでいる。
いかん、これでポニーテールでもしたら俺は確実に長門の虜だ。プエルトリコだ。
ぶんぶんと首を振り、親父ギャグを排斥した。
そして改めてノックして部室のドアを開ける。
「はぁ〜い」
出迎えてくれたのはスーパーアイドル朝比奈さんであった。
神々しさはいつも通りだが、今日はいつもと違う。
そう、今日はメイドでもナースでもチアでもバニーでもカエルでもなく、
北校指定の制服を身にまとっていらっしゃる。
今日はどうしたんですか?
だが、俺の質問には団長席に座るハルヒが答えやがった。特上のスマイルで。
「やっと来たわね。テストも終わったし、打ち上げに行くのよ」
なんだそりゃ。打ち上げとやらはこういう時にやるもんなのか?
それに朝比奈さんたち3年はテスト無かったから打ち上げとは無縁のはずだ。
「そう?じゃあSOS団の活動ってことにしておいてあげる」
もはやこいつのご都合主義には慣れっこだ。ドンと来い。
「詳しいことは古泉君が来てから説明するから」
207 :
進級 続き:2006/07/15(土) 21:49:21 ID:yHOESnsC
だが、ハルヒはすぐさま怒りと懐疑を3:2で調合した表情を顕にした。
何だ。今日のテストのことか?それなら心配するな、お前のお蔭様でな
「そうじゃないわよ!それよ、それ」
ハルヒの指差す先には俺、を通り越して長門。
長門!?
長門が俺のブレザーの端をちょこんと握っている。
感触が無かったのでてっきり離してくれたものだと思っていた。
長門がさっきの潤みを2割り増しにして俺を見つめてくる。
「ちょっとキョン!何か有希が辛そうよ。まさかあんた何かしたんじゃないでしょうね!」
まてまて、濡れ衣だ。冤罪だ。俺が長門にどうこうするはずがないだろう。
「じゃあ、何で有希があんたにくっついてんのよ」
そう言われてもなあ。
朝比奈さんもどう反応してよいか困っているご様子だ。
長門、そろそろ離してくれてもいいんじゃないか?
俺の訴えをどうにか飲み込んだのか、しぶしぶ、本当にしぶしぶ手を放した。
長門にしては分かりやすい仕草だ。
手が離れると長門を鋭い目で一瞥し、ハルヒは空気を流すように
「う〜ん、古泉君はあとどれくらいで来るのかしら」
知らん。もうすぐ来るだろ。
するとタイミングを計ったようにドアが開き、フリースマイルを放つ。
「おや、もしかして、僕をお待ちでしたか?」
正直お待ちでない。むしろお前がドアの向こうで待っていたんじゃないのか?
ハルヒは窓際に立ち腰に手を当てて胸を張ってこう言った。
「全員揃ったわね。これからSOS団でカラオケに行くわよ!」
時が止まった。
俺はカラオケと聞き間違えそうな単語を貧弱なボキャブラリーから探していた。
「カラオケよ、カラオケ。あんたの聞き間違いじゃないわ。打ち上げと言えばカラオケよ!」
打ち上げとカラオケが直結する奴はそう多くは無いと思うぞ。
それにさっき打ち上げの名目は取り下げたはずだ。
「いいのよ!そんな細かいことは。そんなことばっかに神経使ってるとすぐにハゲるわよ」
さすがに若くしてハゲキョンなどという不名誉な称号は得たくなかったので突っ込みも引っ込む。
すぐにハゲないことは分かっていてもハゲると聞くと不安になるからな
「さ、これからいくわよ。いつもの集合場所の近くにあったの」
記憶の地図を開くのも面倒だ。俺はカルガモ親子のようにハルヒに追従することにした。
他のメンバーも特に文句は無いようだ。
208 :
進級 続き:2006/07/15(土) 21:51:00 ID:yHOESnsC
まさか平日に来るとは思わなかったな。
だが、今回は全員でここに来た。よって俺は久しぶりに奢らなくてもいいわけだ。
「そうね。今日は割り勘ね」
状況も相乗してかハルヒの笑顔がやたら輝いて見えた。
たまにはお前も払え古泉。お前は《神人》バイトで儲けてるんだろうが。
「ここよ。ここ」
そう言うハルヒが指差した建築年代が特定できそうも無いほど怪しい建物を良く見てみた。
「からおけだいきち」
もはや意味不明な看板を掲げている。
確かにハルヒが好みそうな店だな。
一応古泉と長門に確認したが、店内に危険は無いらしい。
手動のドアを開き店内へ入る。
古泉は実に楽しそうにしてやがる。例えその態度が芝居であっても羨ましい限りだ。
その余裕はいったいどこから来るんだ?
朝比奈さんと言えば、物珍しそうに店内を見渡していらっしゃる。
その仕草、殺人的な可愛らしさですよ。
それにしても未来にはカラオケという俗物は無くなっているのだろうか?
ところで宇宙人製アンドロイドは音楽に興味があるのだろうか。
いつぞやの文化祭ではマジシャンオブギタリストになっていたが、歌唱力は未知数だ。
無口な奴ほどカラオケで熱唱するという俺の独断法則があるのだが、
もしや長門もそういうタイプか?
まあ歌唱力の品評会はこの際は無しだ。
俺が他人の歌にケチつけるほど上手いはずが無い。
ハルヒが店員と二、三言葉を交わし、
俺たちは防音対策がなされているかどうか疑わしい小部屋に入った。
驚いたことに店の概観からは想像できないほどの豪華さだ。機材も現代チックなオーラを発している。
「さー歌うわよ!」
ハレ晴れとしたスマイルを振りまく。
歌に自信が無い俺としては終始聞き役に回りたいところだ。
「歌う順番はくじで決めるわ」
ポケットから五本の爪楊枝を取り出すハルヒ。
お前は未来から来た猫型ロボットか。用意周到すぎだ。
「はい、じゃあ古泉君、引いて」
スマイルの仮面、とでも言うべきか。
笑顔以外の表情が見られないのが逆に不気味だぞ。
「できれば最初は避けておきたいですね」
古泉が引いた楊枝には緑の印が。
209 :
進級 続き:2006/07/15(土) 21:52:48 ID:yHOESnsC
一同が緑が一体何なのか考えこむ。
ちょっとまてハルヒ。これでどうやって順番を決めるんだ。
「色で順番を決めるのよ。ピンクが一番目、赤が二番目、緑が三番目、青が四番目、白が最後よ。
この順番でどんどん回していくの」
そうかい。突っ込む気も失せるた俺はドリンクメニューを眺めることにした。
次に朝比奈さんに選択権が与えられた。
少し迷うような仕草もたまりません。
「ん〜、じゃあこれ」
ひいたのは桃色。ピンク。
「えぇー!最初ですかぁ?」
人前で歌うことに抵抗を覚えるもの、覚えないものと二極に分かれるものだが、
恐らく朝比奈さんは前者なのだろう。ちなみに俺も前者だ。
次に俺の前に楊枝が差し出された。
高校野球のトーナメント抽選のくじならためらうのだが、半ば開き直っていた俺はままよ、と引いた。
楊枝には青の印。初っ端じゃないだけ良しとしよう。
そして長門の前に残り二本。
迷う様子も無く即座に引いた。白。
こういうわけで
朝比奈さん
ハルヒ
古泉
俺
長門
このサイクルでマイクを回すことになった。
律儀に順番決めないで歌いたい奴が歌えばいいものを。
トップバッターの朝比奈さんが選曲を迷っているとハルヒが
「みくるちゃんはこれよ」
小悪魔的な笑みを浮かべる。
流れ出すメロディを聞いて俺は幼稚園時代を思い出した。
おい、ハルヒ。高校生にもなって森のクマさんとは何が狙いだ。
「みくるちゃんにぴったりじゃない」
無情にも曲は進む。
文句ひとつ言わない朝比奈さんの従順性には頭が下がります。
「あるぅひぃ〜♪もりのなかぁ〜♪」
確かに。朝比奈さんには申し訳ないがその頬を染めた幼い顔立ちが醸し出すオーラが抜群に合っている。
これだけでも今日来た甲斐があるってもんだ。
朝比奈さんをおもちゃにしているハルヒは実に楽しそうな顔をしている。
「赤頭巾ちゃんの衣装も似合いそうね」
などと言いつつもイメージどおりに歌ってくれてさぞかし満足なのだろう。
俺も正直見てみたい。
古泉はワンコインのスマイルで童謡に手拍子を入れている。
泣けてこないか?
長門に目を向けるといつの間に注文したのか、カルピスソーダを飲んでいる。
ストローでチュウチュウ吸う様子を眺めると安心するな。
美味そうに飲む長門を見ていると俺もカルピスソーダが飲みたくなってきた。
店員に言い付けて持ってこさせることにする。どうせ割り勘なのだ、痛くもかゆくも無いのさ。
210 :
進級 続き:2006/07/15(土) 21:55:00 ID:yHOESnsC
命からがら森のクマさんを完唱した朝比奈さんは照れくさそうに退場する。
そのお姿、写真にすれば一枚3000円は固い。
次はハルヒ、か。
こいつの歌唱力は文化祭で実証済みだ。よって特にコレといって期待することも無い。
聞きなれない洋楽を熱唱、満足げに椅子にどかっと座り
「どうだった?」
と俺に尋ねてきた。
「なかなかよかったぞ」こいつの鬼才ぶりはもはや語るまでも無い。
俺の冗談半分の賛辞をどう受け取ったのか
「じゃあまた聞かせてあげるわ。私の歌声がタダで聴けるなんてそうそう無いんだからね。光栄に思いなさい」
こんなに素直に反応するのも珍しい。というか、やはり金を取るつもりなのか。
下手に褒めると歯止めが利かなくなるのがハルヒだったな。
「大変上手いですね。このような万能少女がいるとは。才能を配分した神を少しばかり恨みますよ」
副団長が火に油を注いだところにガソリンを注ぐようなことを言いやがった。
褒めすぎ人のためならず。俺は古泉の足を踏んでやった。
お次は古泉だ。
スマイル仮面は俺にデュエットを申し込んできたが蹴ってやった。
わかってますよ、と言いたげに肩をすくめる。
こいつは能力こそ変態的だが、基本は高校生だ。そう電波な曲は選ぶまい。
無難な歌を無難に歌い無難な評価を受けて印象の薄い古泉だ。
革命的な音痴だったら面白かったのだが。
今回の言い出しっぺであるハルヒは自分の番以外はウーロン茶を飲むか曲本を眺めているかのどちらかだった。
やはり歌えれば満足のようだ。
朝比奈さんは健気に拍を取っていらっしゃる。そして歌い終わると必ず拍手を下さる。
なんと心優しい方だろうか。
そして俺の番だ。
こういうときに限ってハルヒが茶にも曲本にも飽きて聞く気満々の体勢を取りやがる。
もうちょっとウーロン茶を楽しんだらどうだ?オレンジジュースもあるぞ。
状況の打開は不可能と悟り、適当に選曲、メンバーに俺の凡庸な歌声を披露してやった。
ここではあくまで詳細には語らん。
誰だってやなことは思い出したくないもんだ。
歌い終わるとハルヒは
「ふーん」
という最も解釈しがたいリアクションを取った。
そもそも俺にプロ級の歌唱力を求めること自体愚行なのだ。
しかし、朝比奈さんの御手が巻き起こす拍手によりどうにかこうにか平常心を保っていられた。
古泉がインスタントの笑顔で
「お上手ですね」
お前はお世辞が下手ですね。
211 :
進級 続き:2006/07/15(土) 21:57:33 ID:yHOESnsC
長々とどうも。
確定分はここまでです。
今回投下分と同じぐらいの量は既に作ってありますが、推敲がまだなので
次回の投下は火曜日を予定しています。
212 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 22:00:49 ID:FBwOsrwk
>>210 > 「お上手ですね」
> お前はお世辞が下手ですね。
ワロタ
>>212 GJ
俺もだ。みんな同じとこで笑うんだなw
な、長門の手前で止めるのかよ!
火曜まで生殺しかよ!
デュエットを申し込む古泉にワロタ。
>>210 >お前はお世辞が下手ですね。
実況民の漏れは「てめーらこんばんは」思い出したww
俺だけじゃないんだ、あそこでニヤニヤしたのはw
>>211 マンセーレスが続いてるけど、正直全然面白くない
別に801は気にしないんだ。所詮二次創作だし
しかしね、801でもね、さすがにこーもだらだら続けられると思っちゃう
ただ長いだけで面白いところが一つもない、全てがつまらない
厳しく言っちゃうと
キャラの名前だけ借りたオリジナルの領域へ行こうとしてるように思う
キョンがキョンらしくないのはもとより、ハルヒも長門も古泉も別人
てゆうかせめて女キャラメインで書けよ。
>>211 伏線はりすぎ。今回だけでも2ネタ以上、今後どう回収する?
前回のネタ振りだったハルヒ式家庭教師は消化不良気味…
それぞれ1本として書いてくれた方が読みやすそう。
>>219 そこまでひどくはないと思いますけど。
・・・・たしかに、
オリジナルに向かっていますね。
色はアニメ射手座の日のパーソナルカラーと見受けるが、如何か?
いや、なんでもありません
エアークラッシャーな季節がやってきました
いや、いくらネット掲示板とはいえ人と人が交流してるには
変わりないから、せめてもの礼儀は身につけようぜ?
その場の空気が良い感じの時は特にさ。
別に
>>219さんの考えは間違ってないと思うけど、けどウンコマンヤナ
別に酷評もいいじゃん。気になるなら相手にせずスルー
てかキョンの語りみたく比喩をいっぱい地の文に入れる表現技法って
なんか名称ある?
谷川流
誰がうまいこt
228 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 23:20:26 ID:blRcCgKE
自演しようと思ったのにきくぞう師匠みたくなっちゃた
今、前に自分が書いたSSを改めて見たら
恥ずかしくなってきた。
あの時もう一つの展開を書いてくれた方は
誰なんですか?
もう遅いかも知れませんが、
ありがとうございました。
比喩はともかくこういう饒舌体は結構伝統あるよ
野坂昭如…はちょっと違うけど庄司薫とか
エロがなくても愛があればいいじゃない
そんな風に思っていた時代の俺がお送りします
『長門有希の設定』
放課後の文芸部室。
部室には長門しかいない。
遠くで運動部の連中がジョギングしてる声。
部屋の中はしんとしてページをめくる紙音しかしない。
これはこれでやっぱ落ち着くな。
長門との間に流れている沈黙はいい沈黙だ。
長門相手だとハルヒみたいに「コイツ何言い出すんだろう」って恐怖感もないし、
朝比奈さん相手の「あーなんか話さなきゃ話さなきゃ」っていう緊張感もない。
古泉はどーでもいい。
静寂の中ときどき聞こえる紙の音。いいね。
ページに目を落としながら暗黒星雲のような真っ黒い瞳が上下に動いている。
時折ちら、とこちらを覗う視線が俺を刺す。
「あ、すまん。……邪魔してるな俺」
俺はぼー、っと長門の顔を注視していた自分を発見してした。なんて無礼な。
謝る俺に
「構わない」
と間髪入れずに長門。
そうか。
「そう」
許しが出たので俺は長門の顔をぼーっと見つめながらヒマを潰す事にする。
呼吸をしているのか、と疑問を持ってしまうくらいに見事に目と指先だけしか
動いていない長門を見ているうちに、ふと別の疑問が沸いてきた。
「なあ長門」
「なに」
「質問があるのだが」
「……」
4ミリくらい首をかしげる長門。
さあどうぞ、って言いたいのか?俺は質問をしてみる。
「お前って宇宙人が作ったアンドロイドなんだよな?」
「正確に言うと対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース」
「朝倉涼子も、黄緑さんもそうなんだよな?」
「そう」
「朝倉は仕切る委員長タイプだったし、黄緑さんはよく知らないけどニコニコしながら
いつのまにか自分のペースに持ってくるような感じがする。同じ情報ナントカ体が
作ったヒューマノイドなら、なんでこんなに性格……が違うんだ?」
おもわず「性格と体型」と言いそうになった。
長門は気にしてるのか気にして無いのか判らないが、他の女子と体型を比べるのは
あんまり女の子にしていいことじゃあるまい。
234 :
15-705長門スキー:2006/07/15(土) 23:57:24 ID:f4OGN6P4
それを知ってか知らずか、長門は答えて言った。
「それぞれの目的に合致した性格付けがなされている」
「朝倉涼子は急進派の派遣したインターフェイス。涼宮ハルヒの観察に適した状況に
なるように環境を変化させる事も辞さない、ある意味で粗暴ともいえる手段を達成
するために最適化された性格を持たされていた。他人を操りながら周囲の軋轢を
極力減らそうとするために学級委員まで勤められるリーダーシップを備えていた」
ほう。
「喜緑江美里は穏健派が派遣したデバイス。詳しい情報は得られていないが
観測対象を涼宮ハルヒ自身だけではなくその周囲にまで設定しているのが特徴。
そのためには周囲とのコミュニケーション能力を増大させるのが得策だと
判断してあのような性格に設定されたのだろう」
「私は観察に特化したモデル」
そう言ったときの長門はなんて言うかな。
こう言っていいのかどうかはわからんが、なんとなく寂しそうに見えた。
俺の見間違えかもしれんが。
「周囲への影響を極力控えるためにこのような性格付けがなされた」
「長門……」
なにも言えなかった。まるで空気みたいな存在であることを強制された、
長門がそんな風に見えてしまったからだ。
「外見や体型もそう」
「へ?」
「朝倉涼子は周囲の異性に性的魅力を誇示する事でリーダーシップを強化していた」
……まあ、同じ命令でも美人に言われたらなんとなく聞く気が増すような感じがするしな。
「黄緑江美里は調整型。周囲をコントロールする際にあくまで受動的手段を用いるために
庇護欲を誘うような外見と体型に設定されたのだろう」
可愛いって言うか、砂糖菓子みたいなキャラに見えたな。
ところで。
「長門、お前は?」
「他人に興味をもたれないような外見容姿に設定されている」
……長門よ。
いや、長門を作った統合ナントカ体とやらもわかってないな。
「俺は逆だけどな。むしろ長門を見るとほっとけないし、守ってやりたいとも思うし、
なんか命令なりお願いされたら全力で聞いてやらなきゃいけないと思うのだが」
「……」
「周囲への影響は知らんが、俺への影響は全然あるぞ」
「……」
なんだその視線は長門?
今までに見たことの無い瞳の色を見せている。
焦っているのでも、呆れているのでもない。
そうすることで俺の意識を読み取れるとでもいうような大きく見開かれた目で。
かっきり五秒ほどの時間が流れた後で、長門は本に視線を戻す。
あ、もしかして怒ったのか?
おい長門――
焦りかけた俺に防御不能の一言が襲い掛かってくる。
「……あなたは、特別」
------------------------
キョンの心臓が停止したまま終わる
しかし、神が降臨した後ってのは投下しづらいよな…
うまくSSを書くコツってあるのだろうか?
思いっきりエロパロ板って書いてある場所に「面白いなら非エロでもいいでしょ!」と占拠する
そうまるで文芸部とSOS団のような
俺たちはSOS団が好きだ
エロパロ&文章創作板
エロパロ板も絵描き創作板もぴんくちゃんねるのほうにあるってことは
2ちゃんの方針として創作系はこっちのほうに回すってことなんだろ
エロとそれ以外の区別が付きにくいものも多いわけだし
>>236 この場所でその比喩だと、歓迎しているようだ。
確か上の方で誰か貼ってたが
【この板の趣旨】
一般向け作品(漫画/アニメ/ゲーム/小説/ドラマ等)のエロ妄想・萌え談義、
およびオリジナル・パロディを問わないエロ小説創作等を行う板です。
この板のTOPのこれを読んでるとわざわざ「および」って書いてる辺りエロ無しも普通にOKなんじゃないのか?
どこの世界にも文盲はいるし、荒らしたいだけの奴もいる。
・エロ妄想・萌え談義
及び
・エロ小説創作等
であるから、「等」が萌え小説を含む趣旨と考えられる。
つまり、
>>1の内「萌え萌えなSS」は板の趣旨からしても容認されるわけだ。
他のスレが落ちたら、あらためてエロスレ作ったらどうなの?
249 :
??? ◆Yo7hmTF7VU :2006/07/16(日) 00:40:35 ID:lqom1WUu
???
なんでもない、ただの妄言だ
252 :
15-341:2006/07/16(日) 01:26:12 ID:df3lPZna
■6■
われらが学び舎。
部室には長門がいた。
「いてくれたか」
俺はいつかと同じような台詞をはき、いつかと同じ安堵のため息を漏らした。
「俺がどうしてここに来たか、わかるか?」
仮面の側顔がゆっくりと正面を向くと、俺は名状しがたい感慨の波に襲われる。
俺に焦点を結んだ双眸から浮き彫りとなる皮相は人工的で、喜怒哀楽といった感情を液体ヘリウムで真空凍結乾燥させたあげく、
合成着色料を惜しげもなく添加したようなサイケな色調といったら、さしずめフードファディズムに反旗を翻すスーパーバッドインフルエンスミックスサンドを彷彿と、って何語だこれ。
「異文化コミュニケーションにもほどがある……」
自分のモノローグの解読に苦悩する俺を尻目に、ふるふると長門は首を左右に振る。
夢から覚めてみれば一目瞭然だった。
がらんどう。
地球外の眼差しだ。
だが。
古泉がロッカーに潜んでいたことだって、長門は気づかなかった。
もしや……と俺のメタすごい脳は四則演算っぽいものを駆使して一つの推論を構成した。
長門に以前ほどの能力はない……いや、それどころかすでに緊急特番などに出演している自称ESP現象者とさほど変わりないレベルまで減衰しているのではないか。
なんだか草野仁とかのが強そうだ。
というか草野仁 イズ 宇宙人だ。
いい加減みんな気づけ。どんな世界の不思議よりも、還暦オーバーでべらぼうな筋肉を蓄えているあのマッチョマンが一番不思議な存在だということに。
いつか遠くない将来、日本に渡来したアメリカザリガニのごとき異常繁殖と人間界で培った適応能力を武器に、鍛え抜かれた腕力のままに生態系を破壊されていそうで怖かった。
恐慌に陥った俺はヒエラルキーの最下層を弾圧することで自己を保守するという究極に下衆な最終手段を思いついた。
「ふははは、見ろ! 野々村がごみのようだ!」
「………」
絶望的地獄絵図を垣間見て緊急脳内シンポジウムを開催する俺をまじまじと凝視する長門。
俺は我に返ると、堰を一発こぼし、今更ながら真顔を取り繕う。
「確認するぞ長門。お前の力は銀二にほとんどを剥奪されて風前の灯。正解か?」
長門は頷く。
予感的中。
ちなみに銀二とは。
情報統合思念体=銀河の男=銀二。
下町情緒溢れる江戸っ子のいなせな風味がほとばしる、我ながら心にくい演算方式から導き出した二つ名である(ネーミングセンスゼロ)。
そんな永遠に実を結ぶことのない二義的な内容の雑談は後回し。
253 :
15-341:2006/07/16(日) 01:27:48 ID:df3lPZna
「話はそれだけ?」
長門はハードカバーに再び目を落とす。
急に訊ねられてどぎまぎしたが、ようやく俺は本題を切り出すことができる。
「朝に商店街行ってきた」
ぺら。
「息を吸った」
ぺら。
「5秒の座禅の末に、宇宙の真理に到達した。すごかった」
ぺら。
打てども響かない。ソー・クールだコンチクショウ。
「よくクラスで、数学の微分積分だとかって将来役に立つの? とかどこの界隈でも100万回以上議論されてきた質問を上げるヤツいるだろ。
一概には言えないが俺の持論ではそれは人それぞれだ。
学校という人生の縮尺地図で日本の青少年は最低9年間の義務教育を過ごした上で本物の社会に放流と相成る。
社会はどす黒い濁流そのものだから必ずしも二元論ばかりでなく勘ぐりが必要不可欠。特に三十路を迎えた俗称負け犬女の安全日ほど信用ならないものはないから要注意だ。
つまり、果たしてこの数学とやらは将来役に立つのだろうか? とファジーな切り口で物事に突っ込めるようになったという点で、数学は大変有意なものに昇華する。
またはこうも考えられないだろうか?
将来セクハラ幹部の魔の手によって、『女子社員は全員ミニスカートだ!ふぉふぉふぉ』などと不合理な事態に遭遇しても、
あの時無意味な数学を耐え忍んで学んだおかげで、私は今日我慢するという選択ができるようになりました、先生どうもありがとー……と無我の境地に近い精神を育む全国がまんくらべ大会みたいな意味合いも兼ねているのではなかろうか、と」
「………」
ぺら。
スルーだと!?
「ここまでこけにされて、男として黙っちゃいられねえなあ……」
俺は最後の手段を投じる。
「僕と付き合ってください」
プロポーズ。
「いい」
喋ったああああ。
俺は今だったらどんな冒険だろうがやり遂げる気がした。
「じゃあこの誓約書にサインと印鑑を」
「OK!」
婚姻届(本物)。
「滅茶苦茶根回ししてるじゃないですか!」
長門はブライダル情報誌を片っ端から読み耽っていた。
取り上げて破る。
長門が恨めしそうに流し目。勿論無視する。
俺が無視を続けたため、結果長門は読書に戻る。
254 :
15-341:2006/07/16(日) 01:29:05 ID:df3lPZna
「昼に山に登った」
ぺら。
「下界を眺望しつつ飯を食って」
ぺら。
「そんで墓参りしてきた」
パタン。
長門は手の上の本が閉じて立ち上がる。
「帰るのか?」
「あなたは」
「俺はここで寝てくとするよ。朝早かったし」
「そう」
長門が部屋を出て行く。
俺は公言したとおり椅子へもたれ掛かり、ひんやりとする机に突っ伏した
眠りに落ちる間際に、俺は今朝の出来事を回顧する。
少女の声に似た懐かしい風が通り抜けた気がした。
「ハルヒ……」
お前は、まだここにいるのか?
交通事故だった。
地面の白が見る見るうちに赤色にに染まっていく光景。
誰かの悲鳴。
俺は動くことができない。
ただ見つめ続けていた。
涼宮ハルヒが死にゆく時を。
12月27日。
つまり去年の今日。
ハルヒは、俺の腕の中で、死んだのだ。
>>199 レスありがとう。
由紀子のポジションがどうしても気になってしまうが、スレ違いなので君の言う通りここらで手を打った方が良さそうだね。
キャベツ太郎並に濃いなー
この回りくどさが無駄に心地いいの
258 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 01:58:04 ID:GRKeD35N
☆ ア ニ メ 最 萌 ト ー ナ メ ン ト 2 0 0 6 ☆
本日SOS団の萌え要員朝比奈みくるが出場!!
私に入れなきゃ
/:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.l:.:、:.:|:.:.:.:.:.:.:.、:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.ヽ
//:.:.:.:./:.:./:/ |:.:.|:.、:.:.:.:.:.:.:.:\:.:.:.:.:.:.l|:.:.:.:ト!
|:|!:.:.:.:.:!:.:.|:/ !:.:|:.:l:.:.:._l:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.||:.:.:ノ|
|ハ:.:.:.:.:|:.:.|'| ̄ !:.:ト、\:.:.:.|l`ヽ|:.:.:|:.:/l:/ハ
l! ヽ:.:.:.l:.:.l:| ヽl ヽ=≠-、:.l|:.:.:|//彡/:|\
\:|:.:.|=-‐ トしrハ|:.:ノ|/! |´|:.:|:.:.:ヽ
i`:.l , ー‐' ,':.:.:.:トノ:!:.:l:.:|:.|:.l!|
禁則事項ですっ★ |:ノ:.\iヽ ー‐ /:.:.:.:/:|:.:.:.|:.:|:.:lソレ'
//:.:.:.l「| ト、__,.. ィ/:.:.:.:斗-!:.:.:|:.:.:.:.ヽ
/:.:/:.:.:./l/ ノ,へ ! /:.:./ \l:.:.:.:.:.:.',
/:.:.:/:.:.:./|/ 'ー-ri /:.:.:.:/ , |ヽ:.:.:.:.:.:',
/:.:.:.:.ノ!:.:./ ! 二j´ /:.:.:.:/ / l:.:.\:.:.:.:.',
/:.:.:.:.:.:/ ∨ノ/ ,rノー|:.:/ノ´_,,. -‐ /!:.:.:.:.:ヽ:.:.:l
!:.:.:.:/_, -‐' .〉 ,ィ´ ̄l:/ '´ /:.|:.:.:.:.:.:.:|:.:.:|
↓のスレにて投票中。
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1152979733/l50 (PCなら二時間以内にコード発行。携帯なら即時発行。)
259 :
19-557:2006/07/16(日) 02:14:51 ID:t5r5anqj
前スレで消失長門IF物を書いた者です。たくさんの感想、本当にありがとうございました。
ツッコミ逃れ用に急遽付け足したラストに感想が集中したのは、複雑な心境ですが……
お礼にもなりませんが、長門の短編をひとつ。本番無し。
おそらく、どこかでとっくに書かれているネタだとは思いますが。
2レス予定。落ちは各自の予想(妄想)に任せます。
「何言ってるんだキョン、それは以前の話だ。今の長門有希はAAランク。眼鏡を外したのが効いたな」
成る程、俺は谷口と同じセンスの持ち主というわけか。非常に複雑だ。
それにしてもAマイナーから三階級特進とは、殉職どころの騒ぎじゃないな。
昼休み、何故か話題は谷口の美的ランキングの話になった。
俺が何となく長門の話題を出すと、上記の通り、谷口が最新版の情報提供をしてくれたわけだ。
「あれで少しでも感情を出してくれれば、AAランクプラスにしてもいいんだがな」
ふっ、甘いな谷口。やはりお前は、ちっとも分かっちゃいない。
あいつは見かけよりもずっと感情が豊かな奴だ。
それを知らずして、長門の何たるかを語って貰っては困るね。
「でもまあ、長門有希はキョンのお手つきだからなぁ」
「そうなのキョン? でも納得かな。キョン、ああいうタイプ好きだもんね」
待て谷口、あれは貧血だと言ったはずだ。勝手な捏造をするな。
国木田、何を納得してるんだ。人の嗜好を勝手に決めるな。
『 長門有希の否定 』
放課後、SOS団の部室に顔を出すと、長門が一人で分厚いハードカバー本を読んでいた。
もはや見慣れた光景である。
しかしまあ、長門の正体を知っていても、こうして見ると普通の女子生徒にしか見えん。
やはり何も知らない他の人間からは、寡黙な文学少女と見られてるんだろう。
実際、教室で一人静かに本を読んでいる姿は一枚の絵のようにすら見える。
それもやはり長門の整った顔立ちがあってこそだ。
隠れファンが多いというのも頷ける。
……いかん、アホ谷口や国木田のせいか、妙に意識してしまっている。
「……AAか」
思わず声に出してしまった。
もちろん小さな呟きでも、長門に聞こえなかったはずはない。
こいつなら100キロ先の針が落ちる音を聞き分けても驚きはしない。
とは言え、まったく意味をなさない言葉だ。聞き流されると思っていた。
だからこの後の長門の行動は、完全に俺の予想外だったと言える。
長門は顔を上げると、ぱたんと本を閉じた。
こいつが読書を中断するのは珍しい。余程のことと言っても良い。
そのままの体勢で、じっと俺を見上げてくる。
さて、谷口を始め多くの人間が勘違いしているが、表情から長門の感情を読み取ることは可能だ。
これでも長門の表情鑑定では世界一どころか宇宙一を自称する俺だ。
その俺がプライドに掛けて断定しよう。長門は稀に見る不機嫌さだ。
……何故?
深く澄んだ黒曜石の瞳で、じっと見つめられ動けなくなる。
その視線に、俺だけでなく周囲の時間まで縫い止められてしまったのではないかと錯覚する。
長い停滞の後、ゆっくりと長門が口を開いた。
「……違う」
何が? と訊き返すタイミングを逃して、俺は棒立ちのままだ。
長門は音も立てず椅子から立ち上がると、これまた音も立てずに近寄ってきた。
ぴたり、と俺の数十センチほど手前で立ち止まり、再び黒曜石で射抜いてくる。
「AAじゃない」
だから何が?
今度こそ訊こうと思った矢先に、長門に腕を掴まれ──、
むにゅ、
……世界が一瞬にして反転。閉鎖空間が発生した。
夏への扉、幼年期の終り、闇の左手、人間の手がまだ触れない、宇宙をぼくの手の上に……
部室の本棚に並ぶ、読んだこともないSFタイトルが頭を駆け巡る。
それほど混乱している。
何が起きたかは……察しろ。
伝えようにも、あいにく俺の思考能力は軒並みシステムダウン中だ。
「── JIS L4006」
何だその暗号文は? 俺の分かる言語で喋ってくれ。あと、この状況を説明してくれ!
「この国の工業規格。ファンデーションのサイズはトップバストとアンダーバストの差で決まる」
……えっと、長門さん? 何をおっしゃって……
むにゅ、
うおっ!
「Aを差10cmとし、2.5cmごとにアルファベット順に表示を変えていく」
いや、あのその、長門さん……、その、手が、その……、
「AAはAより小さい差7.5cmを指す」
むにゅ、むにゅ、
「AAじゃない」
……いや分かった、分かりましたから……その、長門さん、
「……AAじゃない」
むにゅ、むにゅ、むにゅ、
「……AAじゃない、」
だから長門さん、俺的には非常にこの状況は端的に言って嬉しいのですけれども、
……その、この状況で涙目になられると、誰かが来たとき──って、涙目!?
むにゅ、むにゅ、
「……AAじゃ、ない」
Bくらいかな?
AAAだよ
そこまでの展開思いついたなら
エロまで持ってってから投下してほしいな
ちょ、長門モエスwwwwwwwwwwwwww
これは破壊力がデカいというか上手い話の持って行き方だなあ
SFタイトルの羅列が妙に的確で笑った。嫉妬もんのセンスだw
>>261 エロに走ったりハルヒに見つかる展開も考えられるのに、あえてそこで切るあたりが憎いな(W
>>170 11-226氏
こんなところでマジレスキモイですが本当に言葉にならないくらい
(主に「長門有希の喪失」で)感動させてもらいました ありがとうございました。
これであなたの作品が読めなくなるのは本当に惜しい。
このさきハルヒでなくても何か書いたり自サイトをもしかして作ることになったなら
そのときはなんとか貴殿だとわかるようにしてもらえませんでしょうか?
最後にもう一度、感動をありがとう。
長門は内面描写が他3人と比べると格段に多いからSSにした時動かしやすいんだろうなあ
しかもベラベラ描写するタイプではなく想像喚起型の内面描写。
その上一人称小説まで公開されてると。
そりゃ俺でも書きたくなるさ。
一晩に二回投下する俺はアホなのだろう
やっぱりエロもないといけないよな、とプチ反省。
------------------------------------------------------
『長門有希の呼称』
俺は自分の男性器で長門の女の子の部分を押し広げる。
体温の低い長門だが、ここだけはすっかり熱く火照りきっているのが可愛い。
柔らかい肉を掻き分けて俺の男根が長門の狭い体内に入り込んでいく。
ゾクゾクするような感覚。何度体験しても、たまらなく気持ちいい。
無表情な長門の顔がかすかに緊張するのが判る。
ものすごく微妙な表情の変化で、俺以外のヤツには判らないだろう。
……もちろんこんな可愛い顔は他の誰にも見せる気は無いけどな。
とにかく、長門はものすごくわずかに眉の角度を変化させ、一瞬だけ視線を
さまよわせるという形で当惑を示し、その当惑が消えないうちに一番奥深くに
先端が触れた衝撃で吐息をほんのすこしだけ漏らした。
長門のほんのわずかの一挙一動が俺の胸をぎゅうぎゅうと締め付けてくるみたいに
切なくさせる。やっぱ恋だなこれは。
長門にそう囁くと、一瞬だけ蕩けそうな目をして俺の事を見る。
「そう」
単にそれだけを口にすると、俺でも微笑みかどうか確信できないような
薄い微笑を長門は浮かべる。
亀頭のあたりを柔らかくきつく締めてくる長門の体内の触覚。
たまらん。たまらんね。
柔らかい粘膜の襞に包み込まれながら、長門の唇にキスをする。
ねっとりとした長門の肉体を性器で感じながら、愛しい女の唇を奪う快楽。
世界中にこの幸せを大声で叫びたい気分だ。
触れ合った肌の冷たい感触。
体温の低い長門の皮膚が主に俺の汗で濡れている。
そこからとくん、とくんという小さな鼓動が伝わってくるのが嬉しい。
愛しさがあふれそうで、俺は思わず口からその名を漏らしてしまった。
「長門……」
「……」
俺の身体の下から感じるいつもの視線。
洞窟の入り口のような黒い瞳が俺の事を見つめている。
いつもと少しだけ違うのは、その瞳が何か言いたげな色をしている事だ。
「長門……?」
「もう長門ではない」
長門はそう言った。
あ……そうか。
「本日市役所に婚姻届を提出したときから私の姓はあなたと同じになった」
「……」
「ゆえに私のことをもう長門と呼ぶのはやめて欲しい」
……といってもなあ。
長門はやっぱり長門なわけだし、今後も長門じゃ「ダメ」
これ以上言ったら許さない、とでもいいたそうな視線を俺に向けてくる。
しばし考え込んだ俺は下半身を繋げたまま、俺の胸の中の長門……有希の耳元に囁く。
「…………有希」
「……っ」
ひくん。
そんな感触が男根全体に伝わってくる。
え?
なんだこれ。
「有希」「……」ひくっ
やっぱり動いてる。
「有希?」「……」ひくひくっ
俺が有希の名を呼ぶたびに、長門の膣の中が俺の肉棒を食い締めるように
ひくついてくる。
「なが……有希。お前……嬉しいのか?」
俺の問いに答えて、目を伏せたまま、な…有希は言う。小さな声で。
「私の感じているこれは嬉しさに近いと思う」
「そうか」
「おかしい。身体の制御が効いていない。調査を――」
無理矢理キスをしてな……じゃなくて有希の口を塞いだ。
調査なら俺がしてやるさ。
どこが弱いのか、どこをどうすれば甘い声を漏らしてくれるのか。
なんて言われながら可愛がると切なそうで震えてくれるのか。
夜は長いし明日の夜もあさっての夜もずっと一緒なんだからな。
「可愛い、俺の有希」
……そのとき有希が漏らした甘い喘ぎを銀河の果てのどこかにいる
統合ナントカ体の主流派とやらに聞かせてやりたいね。いや聞かせちゃダメか。
もう可愛すぎ。…・・・お父さん俺は娘さんのこと幸せにしますから。
------------------------------------------------
特にオチないまま終わる。
アニキャラ板長門スレの長門スキーたちに幸あれ。
>>271 萌エタ──―(゚∀゚)────────(∀゜)──────―─( )────────( ゚∀)───────―(゚∀゚)───!!
本当にありがとうございました。
>271
>特にオチないまま終わる。
心配するな、替わりにオレが落ちたw
>261
絶妙な匙加減で終わる所にワビサビを感じる。
萌だえた!
「ねえ、奇蹟って信じる?」
そいつは俺に聞いた。その隣で、長門は黙ってこちらを見ている。回答待ち、
というやつだ。
さて。
どう答えたもんかね、まったく。
事の始まりは……と、説明するほどのことは何もない。その日はいつものように
ごく普通の一日らしく始まった。
「いい、キョン。今日の放課後は絶対部室に来るのよ!」
変わっていると言えば言えなくもないのが、昼休みから妙にテンションの高い
団長様だ。まあ、いつも通りだけどな。
言われなくても分かってるよ。だいたいな、俺が放課後あそこに行かなかった
ことなんてあったか?
「そういえばそうね。えらいわ、キョン。あんたにしてはやるじゃない」
そりゃどうも。
もちろん、俺は熱意あふれるSOS団構成員などでは断じてない。行けば十中八九
訳のわからん出来事に巻き込まれるのを承知の上だと思えば、酔狂なのは認めるが。
ただな、考えてもみてくれ。
部室に行かないってのは、俺の見てないところでハルヒのやつがとんでもない
ことをしでかすってのと同じことだ。そうなりゃ、古泉のやつが遠回しな言い方で
俺をつついてくるのは目に見えてる。サイコロなんて振るまでもなく、スタート
地点から六マス目まで、もれなく俺が尻拭いするで確定していやがる。
だったら、だ。
結果が同じなら、せめて最初から巻き込まれてる方がまだましだと思わないか?
途中参加じゃわからんことばかりだしな。それに、万に一つもやっかいごとを
事前に防げる可能性だってある。あいつがちょっとばかりエキセントリックな
だけの、ただの女子高生になってくれるんだったら、俺は喜んで歓迎するね。
どっちにしたってハルヒはハルヒだからな。だろ?
「それじゃ、他のみんなにも言ってくるわ。いい、逃げるんじゃないわよ!」
何からだよ、という俺の言葉なんざ聞くはずもなく、ハルヒのやつは教室を
飛び出していった。まったく、元気のいいこって。
おまけに、昼休みの終わりを告げるチャイムの後。
「涼宮、涼宮はいないのか」
「早退だそうです」
あいつ、午後の授業をぶっちぎりやがった。まあ、伝言を残していくくらいの
甲斐性は身についた辺り、多少は成長しているらしい。どうして俺に言っておか
ないのかと思わなくもないが。言われたところでどうにもならないけどな。
「やあ、みなさんもうおそろいですね」
そして放課後だ。遅れてやってきた古泉の言葉通り、部室の前には雁首そろえる
俺、朝比奈さん、長門の三人。我らが団長様は、『早退』したためなのかここには
いない。ただ、全員そろってから入ること、と無駄に達筆な字でしたためられた
文章が扉に貼ってあるだけだ。
「どういうことでしょう」
知るか。むしろ俺が教えてほしい。
「あの……もう入ってもいいんでしょうか」
不安そうに周囲を見回しながら、朝比奈さんが聞いてくる。どうも、ハルヒの
意に反したことをしでかしたらどうなるか、が骨身に染みついてしまっている
ご様子だ。可哀想に。
大丈夫だと思いますよ、朝比奈さん。
本当に、という顔で見つめてくる彼女に、軽く頷いてみせておく。根拠はない
わけでもないからな。あいつが『みんな』の中に自分を含めてるなら、一番乗り
していないはずがない。どこかに隠れて、などというのは涼宮ハルヒらしくない。
あいつは正々堂々と理不尽だ。自分で言ってて意味がわからないが。
ともあれ、だ。いつまでもここでうだうだしていても仕方がない。いるんだか
いないんだかわからないハルヒのやつを待つってのも、時間の無駄というもの
だろう。最終決定を求めるように、俺をじっと見つめてくる長門に頷いてやる。
わかったという返事だろう、ほんの数ミリ頷き返し扉に手をかける。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。いつぞやのカマドウマみたいなやつが出てこない
ことだけ祈っておこう。まあ、ハルヒのやることだからな、危害を加えられる
ようなことはないはずだ。『神人』みたいなとんでもないやつを出してくるほど、
今のあいつの精神状態は荒んでない。古泉の受け売りだけどな。
そんな、ちょっとばかりの期待と不安のブレンドされた俺の心を、あっさりと
吹き飛ばすような光景がそこに待っていた。
「お久しぶりね」
長い黒髪。
人当たりのよさそうな笑顔。
一瞬、夕焼けに染まる無人の教室が脳裏をよぎる。
「……どうして」
そこで言葉に詰まった。思わず他の面々の反応をうかがってしまう。
「おやおや」
古泉は論外だ。たとえそこにカマドウマがいようが、こいつはこんな反応に
違いない。
「え? え?」
朝比奈さんは……そいつがそこにいる意味がわかって驚いているのか、いまいち
わからない。もしかすると、単に見慣れない顔があっただけで驚いているのかも
しれない。
それより長門、そう長門だ。この状況に一番驚いて然るべきなあいつはどうしてる?
「……そう」
淡泊な反応だった。いや、ここで長門が目を丸くでもしていたら、俺の方が
驚いちまうけどな。しかし、お前がこの事態について言及も追求もしてくれない
なら、俺がするしかないのか。そうなのか、長門。無言の問に返事はない。そりゃ
そうだ、別にあいつはエスパーじゃない。
なら仕方がない。ハルヒがいったいどう絡んでいるのか、それはまた後回しだ。
まずは聞かなきゃならんことがある。目の前でほんの少し恥ずかしそうに笑う、
こいつに。
「どうしてお前がここにいる」
そう言えば、こんな表情を見るのは初めてだったかもしれないなと思いながら、
俺はその名を呼んだ。
「朝倉涼子」
「ふふ、あのときのキョンくんの顔すごかったよ? もうね、ジャングルの奥地で
珍獣を見ただとか、そういう感じ」
そうか、そりゃよかったな。今すぐ忘れてくれ。
夕暮れの通学路、げんなりするより他ない俺の隣でくすくすと笑うのは、当然の
ようにそこにいる朝倉だ。その横にいる長門からは、助け船なんぞ期待できない。
どうしたって世界は理不尽に出来ている。なあ、そう思わないか?
さて。
俺としては別に必要ないと思うんだが、こういう場合は説明するのが筋ってことに
なるんだよな。本当なら解説は古泉にでも任せてしまいたいんだが、あいにくやつは
ここにいない。実際のところ、わざわざ語るほどのこともないんだが。まあいい、
それじゃ始めるか。
「どうしてお前がここにいる。朝倉涼子」
何より聞きたかった俺の疑問に答えたのは、残念ながら朝倉ではなかった。
「ちょっとキョン! あんたってほんと失礼なやつね!」
どうしてそこでお前が出てくる。というかどこにいる。
「ここよここ!」
景気のいい音を立ててハルヒが出てきたのは、掃除用具入れの中からだった。なあ
ハルヒよ、お前も少しは世間体というやつを考えろ。どこに掃除用具入れの中に隠れる
女子高生が……
「何よ」
いや、なんでもない。
そうだな、掃除用具入れに隠れる女子高生がいないわけでもない。そこには今の
ハルヒとは何光年分も差がありそうな理由があったがな。ですよね、朝比奈さん。
「変なの。まあいいわ、それよりキョン。あんたね、謎の失踪をとげたクラスメイトに
久しぶりに会えたっていうのに、何よその態度は。あたしはそんな団員に育てた
覚えはないわ!」
そりゃ奇遇だな。俺もお前に団員教育とやらを受けた覚えはない……とはさすがに
口にしない。したって待ってるのは底無しの泥沼だからな。結果が同じなら白旗を上げる
のは早いにこしたことはない。
悪かった。だがなハルヒ、謎の失踪はともかく、どうして朝倉がここにいる。普通
おかしいと思うだろ。
「それは言えないわ」
何だそれ。
「詳しい事情は涼子から聞いたんだけど、とてもここじゃ話せないわ。FBIもびっくりの
話よ、もし聞いたらキョン、あんただって驚いて目を回すに違いないわ!」
いったいどんな話を吹き込んだ、朝倉。一応視線を振ってみると、声を出さずに
ごめんねと口の形だけが動いた。続いて、大丈夫、と。さすがに本当のことを話した
わけではないらしい。そんなに簡単に信用していいのか、という話もあるだろうが、
長門が特に何をするでもなく静観している以上、問題はないはずだ。たぶん。
わかったよ。俺はびっくりしたくないんで遠慮しとく。で、事情はともかくその
朝倉がここにいるってことは。
「そうよ。明日から涼子はあたしたちのクラスに戻ってくるの。昨日偶然街で見かけて
話を聞いてね、SOS団にだけ先にお披露目しようと思ったのよ。ほら、だからまずは
言うことがあるでしょう?」
何だよ言うことって、そう俺が口を開く前に。
「お帰りなさい、涼子」
長門が言った。ほらみなさいと鬼の首を取ったようなハルヒはさておき、正直俺は
驚いていた。朝倉も一瞬驚いたような顔を見せたが、すぐにそれを引っ込め、はにかむ
ようにしてただいまと答える。そうか、長門。俺が知らないだけで、お前にもいろいろ
あるんだよな、きっと。
「事情はよくわかりませんが、これからよろしくお願いしますね」
「あ、えっと、私もよろしくお願いします!」
事情はよくわかってますと言いたげな古泉の口調はともかく。朝比奈さん、やっぱり
何もわかってないんですね。あなたはそのまま綺麗な世界で生きてください。
「キョン、あんたは?」
あー、久しぶりだな、朝倉。
「そうだね、久しぶり」
何よそれと言い出しそうなハルヒを制して、朝倉がこちらに微笑んだ。そこにわずかに
申し訳なさそうな色が見えたのは、気のせいではないだろう。そうじゃなきゃ割が合わない、
なんてけちくさいことを言うつもりはないぜ? 俺にはそう見えた、それだけのことさ。
それはともかく、だ。薄々わかっているが一応聞いておかねばなるまい。なあハルヒ、
どうしてSOS団にだけなんだ。お前の性格ならクラス全員相手でも俺は驚かないぞ。
「そんなの決まってるじゃない」
そう言ったハルヒの表情を見て、ああこれを藪蛇というのかと思った。
「涼子もSOS団の団員になるからよ!」
ほらな。
さて、回想シーンは以上終了だ。肝心要なことは何一つ話しちゃいないんだが、
そんな話をハルヒの見ている目の前で出来るわけもない。それこそFBIもびっくりの
話になっちまう。
まあ、その場合目を回すのは古泉の『機関』とやら辺りになるんだろうけどな。
朝比奈さん(小)なら本当に卒倒してしまうかもしれないが、朝比奈さん(大)は
そうはいかないだろう。長門の親玉の方は考えるまでもない。むしろ、そういう
トンデモなケースこそ想定に入れているに違いない。
「どうしたのキョンくん。お疲れ?」
誰のせいだと思ってる。
「もしかして私?」
わかってて言ってることが見え見えなその反応に、俺はもう一つ溜息をつく。
憂鬱ってのはこういう気分のことを言うんだろうな、まったく。
「冗談よ、ごめんなさい。でも聞かないのね、どうして私が帰ってきたか」
それならさっきもう聞いた。FBIもびっくりなんだろ。
「だから、本当の事情。聞きたくない?」
頼むからこれ以上俺の悩みを増やさないでくれ。今だってハルヒにゃ話せない
裏話ってのが盛りだくさんなんだからな。
「じゃあ一つくらい増えてもいいよね」
長門、お前から何か言ってやってくれ。
「私は知りたい」
「ほらね」
ほらじゃなくてだな……長門、お前も何も知らないのか?
「私は彼女の再構成に関して、一切申請を行っていない」
となると、ますますハルヒ、か。あいつを特別扱いするのは好きじゃないが、
こればかりはどうにもならん。
「それじゃ、了解も取れたところで」
取れてないぞという言葉は当然無視された。ふと思う、こいつひょっとして
ハルヒに似てないか、と。
「外国、っていうのが甘かったのね、きっと。うん、でも死んだなんてことに
してたら、ますます涼宮さんの興味を引いちゃうし、仕方なかったかな」
まるで他人事のように話ながら、同意を求める朝倉。俺としちゃ答えようも
何もあったもんじゃないが、長門は小さく頷き返していた。それに満足したのか、
朝倉の話は続く。
「それでね、涼宮さんったら追跡調査をしていたみたいなの。たった一人で、ね。
細かいところは私も聞いてないんだけど、けっこういい所まで行っちゃった
みたい。おかげで、この先辻褄の合わないところが出て、彼女が世界に疑問を
持っちゃいけない、そう上が判断した。そんなところかな」
やっぱり状況を変化させるのは現場の行動よね、といつかと同じような台詞で
朝倉は話を締めくくった。何とはなしに身構えてしまったが、別にその手にナイフ
が握られているわけでも、わけのわからん空間に引き込まれてしまったなんて
こともない。朝倉は肩をすくめて苦笑しているだけだし、夕暮れの空は赤く
染まったままだ。
それで、辻褄合わせにお前が戻ってきたってことか。
「そう。涼宮さんが喜んで納得してくれそうな理由つきで、ね」
聞いてほしそうだが、どんなとはあえて聞くまい。
「彼女は涼宮ハルヒの安定のために再構成された。状況を改変するような力は
持ち合わせていない」
珍しく長門の方から口を挟んできた。つまりどういうことだ?
「私にはね、もう何の力もないってこと」
「朝倉涼子という存在は、あなたのような通常の人間と同義。そうとらえて
もらって問題ない」
要するに、朝倉はただのクラスメイト、そう思っていいってことか。
「そういうこと。これからよろしくね、キョンくん」
差し出された右手を素直に受けていいものかどうか、しばらく悩んでから結局
俺はその手を取った。考えても仕方ないし、どうしたって逃げられるもんじゃ
ないのもわかってる。なんせ、朝倉も俺たちSOS団の仲間入りだからな。
「ありがとう」
くすりと笑ってから、朝倉は呟くように言った。
「ねえ、奇蹟って信じる?」
その隣で、長門は黙ってこちらを見ている。回答待ち、というやつだ。
さて。どう答えたもんかね、まったく。
『あなたを殺して涼宮ハルヒの出方を見る』
思い出すのは、あの台詞とそこから始まる一連の出来事。あのとき、こいつは
本気で俺を殺そうとしていた。間違いない。
だが待てよ、俺の中でそんな声がする。
誰より長門のことを知っていたはずの朝倉が、そんなことをするだろうかと。
ひょっとして、こいつは失敗しても構わないと思っていたんじゃないのか。
それは、どっちに転んでもいい、そう思っていたというだけで、俺を殺そうと
した事実が消えるわけじゃないのかもしれない。だとしても、朝倉が本当に何を
考えていたのかは俺にはわからない。なんたって、長門の考えが読み取れるように
なったのもつい最近だしな。それだってほんのわずかだ。
なら、朝倉が本当は止めて欲しかったと思っていなかったなんて、誰に言える?
もちろん逆も然りだが、今の朝倉を見れば、俺は断然前者を取りたいね。ああ。
甘い、そう言われるかもしれない。特に古泉なんて、あの笑顔のままでさらっと
そう言いそうだな。まあ、やつのことだから、そのすぐ後で、あなたの決定です
からとかなんとか言って、あっさり引き下がりそうなもんだ。朝比奈さんだって、
納得してくれるに違いない。あの人の場合、誰かに反対するところなんてなかなか
見られないが。ハルヒは論外だ、あいつはそういうところで他人を疑うようには
出来てない。その点は褒めてやってもいいと思うぜ、俺は。
「じゃあね、キョンくん」
朝倉の言葉に我に返れば、そこはいつのまにか長門のマンションの前だった。
お前もここに住むのか。
「うん。長門さんと一緒なの。うらやましい?」
そんな見え透いた罠にははまらないからな。
「そっか。キョンくんは涼宮さんの方がいいんだ」
そうくるかい。いや待て俺、落ち着け。ここは何を言っても負けだ。余計な
ことは一切口に、
「涼子」
意外な所で助け船が出た。
「彼をあまりからかわないでほしい」
長門、お前にフォローしてもらえる日が来るなんて夢にも思わなかったぞ。
だからな、そのなんだかちょっと寂しそうに見えなくもないような視線を向けて
くれるな。頼む。
「ふふ、ごめんごめん。あー、でもすっかりキョンくんに長門さんを取られ
ちゃったみたい。寂しいな」
どこが寂しいんだという口調のその言葉は無視して、俺は言う。
なあ、朝倉。お前が信じるんなら、あるんじゃないのか。
「キョンくん」
でな、そいつはきっとこれから起きるんだよ。
我ながらどうかと思う台詞だが、この際気にしないことにした。どうせ聞いてる
のは目の前の二人だけだ。それより気になるのは、これが朝倉にちゃんと伝わった
かどうかだ。つまり、お前が帰ってきたことが奇蹟じゃない、これから俺たちと
一緒に生きていくってことが奇蹟なんだ。ちょっとばかり気紛れな神様からの、な。
「ありがとう」
朝倉はそう言って顔を伏せた。だから俺はその言葉しか聞いちゃいなしし、何も
見ちゃいない。そのまま背中を向けてさっさと退場したね。なんかこう、らしく
ない、まったく。やれやれ。
翌日。
いまいち寝付けなかった俺は、にもかかわらず早朝から目が冴えて、無駄に早い
時間からいつもの坂をだらだらと登っている。どうでもいい話だが、妹はキョンくん
を起こせなかったと地団駄踏んでいた。妹よ、兄はお前のおもちゃではないぞ。
学校に着けば、校庭からは部活動に励む熱心な生徒の声が聞こえてくる。ハルヒの
やつが感化されて、早朝ランニングなんてものを取り入れないように祈っておこう。
無人の廊下を歩きながら、そんなどうでもいいことを考えつつ教室にたどり着き、
扉を開ける。
「おはよう、キョンくん」
なんとなく予想はしていたが、そこには朝倉の姿があった。何故か俺の後ろの席、
つまりはハルヒの席に、だ。
おはようさんと俺が返すと、小さく笑ってから朝倉は窓の外に目を向けた。
「涼宮さんはこの世界を見てたんだ」
どうだかな。世界の見え方なんて人それぞれだろ。そこに座っただけでハルヒの
世界が見えるんなら、俺は喜んでその席に座るぜ? ベストポジションだしな。
「そっか。そうだよね」
ふふ、と笑ってから、再び窓の外に視線をやる。お前にはお前の世界が見えてるん
だよな、朝倉。そいつが殺伐としたもんじゃないことを願ってるぜ。
ああ、そうだ。
「ん? 何?」
結局昨日言いそびれてたんだっけな。
お帰り、朝倉。
「……ただいま、キョンくん」
一拍間を置いて、朝倉は笑顔でそう言った。
さて、これでひとまず貸し借りなしだ。お前が加わってくれたおかげで、SOS団は
ますます騒がしくなりそうだけどな、悪いようにはならんだろうさ。朝比奈さんが
いて、長門がいて、古泉がいて、ハルヒがいる。視界を広げりゃ鶴屋さんだっている。
これだけメンツがそろってるんだ。
だからな、朝倉。
よろしく頼むぜ、今後とも、な。
"Return of Ryouko Asakura, or Ordinary Miracle in daily life" closed.
GJ
朝倉絡みの作品はどれもこれも作者の方向性が色濃く繁栄されるから楽しいなぁ
本編でこんな展開になったりしないよな・・・
次の巻の表紙は、法則によると朝倉なんだが。
そろそろ古泉が表紙になってもいいと思うんだ
販促的にそれはないかと
喜緑さ……何でもない
次の表紙が朝倉で長編になって、2年になって朝倉がまた戻ってきて・・・
あー、妄想が広がるー。
1 ハルヒ
2 古泉+誰か
3 朝比奈さん+鶴屋さん
4 意表をついてシャミ
のどれかだと思っている俺がいる
そういやまだ男出てきてないよな
長門+朝倉+喜緑の情報統合思念体3人娘とか見たい
古泉とキョンの二人…
うん、ジャンルが変わるから絶対ないな
鶴屋さん+キョン妹は?
別に801趣味じゃないけど、キョン&古泉の表紙は欲しいなあ
朝倉があっさりやられたのはキョンに統合思念体の存在を信じさせるとともに、長門を信頼させるためだったなんて説もあるな。
陰謀の泣いた赤鬼とか意味深だし。
それを知ってしまったキョンが長門に不信感を持ち、二人の仲かぎくしゃくするなんて展開も……
>陰謀の泣いた赤鬼とか意味深だし。
言われてみればそうだなー、そこへ貼り付けるとしっくりくる話だわ。
表紙になった朝倉さんの顔が妙にエロかったのを覚えている
驚いた。
人気の割りにみくるの小説って少ないんだな。
ハルヒとか一番少ないと思ってたのに。
>>298 俺もみくるスキーだけど、人気は多分、長門>ハルヒ>>みくるだぞ。
あとは、単純に書きやすさの問題かな。
おれ的に、みくるっちには萌え要素が少ないなぁ
>>299 そうだったのか
人気キャラ投票のスレでみくるがぶっちぎりの一位だったような気がしたけど
長門って以外と人気なんだな
保管庫でも多かったし
作品内ではステレオタイプな萌キャラという扱いになっているのに
実際の人気はハルヒや長門に劣っているという皮肉・・・
303 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 17:19:29 ID:gFkhYMhY
>>299 >>301 人気投票ではハルヒかみくるが一位になることが多いな。
多分長門スキーは熱心な信者多いんだよ。
だから書き込みも多い。
すまん。ageちまった。俺の情報結合解除を申請してくる
>>302 そのステレオタイプ差が災いしてるんだと思う
無個性なんだよね
長門有希さんの〜マダー?
やっぱ鶴屋さんだなぁ
>>301 劇中描写の量かな。
長門は一番成長の著しいキャラだしね、消失での衝撃も大きい。
ハルヒは直接的には描かれないけどキョンのモノローグとか見てても、
ってかキョンとのツンデレラブ加減が凄まじいしアニメ効果もあるし。
みくるは陰謀でだいぶスポットライトが当たったけど
まだまだ心の底から本音ぶちまけてない感じ。何より本人がキョン達と距離置いてるし。
そのうちみくる(大)辺りが当時の心情を告白してくれたりするとだいぶ違うと思う。
というかいまだ本音を明かさないみくる(大)の今後の活躍にwktkしてる自分がいる。
この先みくるが大活躍して人気で逆転することが出来るのだろうか? 何か無理っぽいけど
・・・それでも谷川なら・・・谷川ならなんt(ry
310 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 18:51:40 ID:5SXFcTfs
みんな保管庫で好きな話ってどれ?
漏れん中では
14-487様: 『優しいお話』
が良い感じなんだけど。。。
まあ自分で探すのしんどいから教えてほしいだけなんだけどね
そういうのは荒れる元。
めんどくさがらずに、保管庫を全部見ていけ。
312 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 18:54:57 ID:5SXFcTfs
>>312 ageるなバカッ!!
罰としてみくるちゃんのSS投下しなさい!!
これは団長命令よ!!!!
>>252 15-341氏
あなたの話というか文体が独特で大好きだー!GJ!!
続きも期待してますぜ
>帰還
お盆に迎え火焚くと祖先の霊が帰ってくると言うけど、
ヒューマノイドインターフェースにも通用するのかなと
時節柄思ってみたり。本編でも帰ってくるといいんだけどね。
ポッキーの人にwktkを捧げる
俺としては
「キョンの消失、ハルヒの悪夢」かな。
>>310 『長門有希の否決』とその続編が好きだな、俺は。
「二人のティータイム」みたいなバカか話が読みたい
>301
みくるは難しい。
書いてみれば判るよ。まずキョンの語り口調を変えなきゃならん。
ツッコミが出来ない。それだけで文章がなんとなく面白くない気がしてくる。
そういう理由で、ミクルエロス40キロバイトはまだ完成しそうにない。
「憂鬱小学校」の続き見たい
322 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 21:17:57 ID:iTW7Zs2D
過去作の感想はそういうスレッドが保管庫にあるだろうに
元名古屋グランパスエイト、現FC岐阜の片桐 淳至選手は
高校時代に彼女のマムコにスイカバー突っ込もうとして殴られたらしい
というわけでキョンがハルヒにスイカバー突っ込もうとs
>>288 >1 ハルヒ
>2 古泉+誰か
>3 朝比奈さん+鶴屋さん
>4 意表をついてシャミ
>のどれかだと思っている俺がいる
下から読んで行ったので288のカキコがエロスの話しかとオモタil||li_| ̄|○ il||li
シャミとみくる・・・(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
そういうミスに気付いたあとって、
ちょっと恥ずかしくなりませんか。
少なくとも俺はそうです。
長門が人気あるのって単純に消失長門が扱いやすいタイプだからじゃね?
オタクにとって綾波みたいなタイプは幻想を抱きやすいんだろうね。
もちろん長門は好きだけどリアルで消失長門みたいなタイプは実は扱いに困る。
>>320 みくるに手を付けると、どうしても趣向がSM方面に走ってしまいそうな折れが居る。
>>326 そこでリアルを考える必要があるのかと(ry
>>327 だったらSM板ハルヒスレへ!ちょうど盛り上がってきたし!
でも向こうではみくるはS説が有力
330 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 22:26:46 ID:vYIlm3fo
>>326 ……わかりやすいやつだなあ。
テレビに出てくる専門化のよーなこと言って楽しいか、オイ。
リアルで扱いに困るとかキメエ発言だなおい。
いったいあんな女が存在するだろうか?
現実との境はしっかりつけろよリア厨
全くの雑談というか戯れ言だが。
消失版の長門なら割合いないでもないんじゃないだろうかと思わないでもない。
そこに容姿端麗とつくと話は別だが。
>>330 良作であるほど激しい批判を受ける。
発する光が強ければ影もその分黒くなるのさ。
みくる作品は少ないが傑作も多いから
ハルヒは年長者である朝比奈先輩をもう少し敬うべきだと思います。
実は年下説あるし良くねえ?
>327
ノシ
ちょっとSM板見てくる。
初めてなんでドキドキ
>>334 言っちゃなんだけど、最初の憂鬱以外は並な作品…
まあ良い意味でも悪い意味でもライトノベルだよな。
憂鬱と消失だけでいい。
ラノベ嫌いでも楽しめるのは「憂鬱」と「消失」と短編少々ぐらいな気がする。
>>338 オレは801もSMも毎回チェックしてる
「性の知識0の長門にキョンが
てとりあしとり教える」という
ストーリーの夢を見たい!
キョンも性の知識ゼロっぽいキガス…
長門は本からの知識だけはかなりあったりしそうで萌
「陰謀」はみくるメインで「消失」クラスの面白さの話。
そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました。
>>330 その人、散々難しいこと言ってる割にはハルヒシリーズの楽しさがどういうところにある
のかさっぱりわかってないようだから、別に気にする必要ないんじゃない?
というか、「クソ」だの「カス」だのと汚い言葉を使ってる時点で俺は書評として認めて
ないし。それこそ、2chのアンチの書き込みを屁理屈で固めたらああなるって感じの駄文
でしかないじゃん。
自分の考えを頑張って文章化してるところは偉いけどね。俺にゃハルヒを語れと言われた
ってああも詳細に語ることなんてできそうにないし。でもとりあえず、読みが偏見入りす
ぎだと俺は思った。
古泉のTSモノってありましたっけ?
「陰謀」は一冊全体が伏線って感じで、面白さは微妙。
ただ今後に大きな期待をもたせる出来にはなってる。
憂鬱だけ見ればニヒルで皮肉家だし最後のキスもあまり葛藤なかったしそれなりに経験ありそうな気もしたが
溜息で古泉が巨乳に少し触れただけで嫉妬しまくりなのでそんな気はなくなった
330のはハルヒ関連のスレに無差別で爆撃されてる。
おれは5スレで見たけど、いちいち真面目にレスしてるのはこのスレだけだ。
荒らしにレスつけるやつらは全員阿呆。
このスレは阿呆だらけなのか。
「その書き込みに対して真面目にレスしてる」ように見えるお前は変。
つーかエヴァ自体古いし。比較対象にする価値さえあるのか?
陰謀はハルヒがデレ化してキョンにアプローチするいい話だと思ってたが。
356 :
347:2006/07/16(日) 23:47:06 ID:zP8kboO0
>>351 ……思いっきり真面目にレスしてた。
そうか、ありゃ荒らしだったのか。知らなかったとはいえすまん。
>>353 いや、まじめな人も少なからず
存在する可能性が・・・・。
358 :
354:2006/07/16(日) 23:50:42 ID:7NXyAvi0
どーでもいいが、SS投下するわけでもないのにコテつけてるのって、どうよ?
なんかウザイ気がするのは俺だけか?
皆さんを代表して俺が謝罪します。
すいませんでした
>>359 別にコテつけるのなんて自由だと思う。
あれだ、デブスはミニスカートはくな!みたいな。
あー、やたら長いのが完成したけど(まだ推敲してないが)、ここに投下して良いだろうか?
途中で切ろうにも、最後のオチが分かったら非常につまらんと思われる。
うpろだ探して上げた方が良い?
あるいは、重複スレのほうに細々と投下するとか。
どうしたもんかね?
長いって どれくらい?
好きにしなさい。
まあ別にここでいいんじゃん?
SSスレなのに投下しない理由がどこにある
俺もいいと思うよ。
さすがに100レスくらい一気に投下されたらビビるがw
あとで誰かに「長いな」って言われても、俺が「長いっつったろ」って言いわけしたくなるくらいかな。
まあ、364も承認してくれたし、推敲したらここをお借りしようと思う。
推敲にはまだ時間がありそうなんで、他の職人さんはバンバン投下してください。
自分が投下する際には前置きを置きますので。
欲しがりません
勝つまでは
勝った後では
貪欲に欲しがります
でも勝ったところで物資はどうせ乏しいんから、欲求不満は解消できないんだよな。
負けた場合は
お前の物は俺の物俺の物は俺の物
ドローになったら
お前も俺も、無一文
棄権しちゃうと
危険が我が身に降りかかる
でも本当の勝負は
これからだ
終了 先生の次回作にご期待ください
オレはようやく登りはじめたばかりだからな。このはてしないSOS坂をよ…
なんだこの流れは?
僕たちの戦いはまだ・・・終わらない。
これもハルヒが望んだことだというのか…?
ハルヒというより
ハルにゃん
みくるっつうか
おっぱいぱいぱいばいあぐら
おっぱいぱいぱいばいあすろん
391 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 00:40:19 ID:VitJ8xas
長門ってかんじの
狙撃者が
ナルト
朝倉ではなく
浅井
396 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 00:44:04 ID:VitJ8xas
喜緑のようで
黄土色
限りなく古泉に近い
温泉
キョンよりも
ねぇねぇ、
あれだけハルヒハルヒって宣伝して、
翠星石にあっさりサヨナラホームラン打たれたけど
今どんな気持ち?
∩___∩ ∩___∩ 偽票100票以上入れられて且つ
♪ | ノ ⌒ ⌒ヽハッ __ _,, -ー ,, ハッ / ⌒ ⌒ 丶| 100票以上差をつけられて天国から地獄へ落とされての逆転。
/ (●) (●) ハッ (/ "つ`..,: ハッ (●) (●) 丶 それに加えて不正投票疑惑まで持ち上がってるけど
| ( _●_) ミ :/ハルヒ厨 :::::i:. ミ (_●_ ) | 今、どんな気持ち? ねぇ、どんな気持ち?
___ 彡 |∪| ミ :i ─::!,, ミ、 |∪| 、彡____ ハルヒ厨って生きてる価値あるの?w
ヽ___ ヽノ、`\ ヽ.....::::::::: ::::ij(_::● / ヽノ ___/
/ /ヽ < r " .r ミノ~. 〉 /\ 丶
/ /  ̄ :|::| ::::| :::i ゚。  ̄♪ \ 丶
/ / ♪ :|::| ::::| :::|: \ 丶
(_ ⌒丶... :` | ::::| :::|_: /⌒_)
| /ヽ }. :.,' ::( :::} } ヘ /
し )). ::i `.-‐" J´((
ソ トントン ソ トントン
明日、明日よりも明後日、明後日よりも明々後日よ!
鶴屋さんチックな
釣瓶師匠
シャミ的
朝比奈さん(大)が踏み切りで告白する奴はよかったな
知るかぎり、NO.1みくるSSだ
幸田シャーミン
?シ抵シ第ュウ莉・荳九′螟ァ驥上↓縺?繧九?ョ縺ッ縺薙?ョ繧ケ繝ャ縺ァ縺吶°?シ?
大気婿
>368-411
念レス成功。
ここは谷川流SSスレです
普通の書き込みもできない21歳以下の方はお帰り下さい。
おめでとう!打ち上げどこでやる?
駅前集合でいつもの喫茶店に
一番最後のやつのおごりな!
離れてたって
以心伝心
いい加減ウザイ。
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連休中で他にすることもないんだし、仕方ないんじゃないの?
正直作品部分以外は読んでないし。
この調子で夏休み入ったらスレ全体はどうなることやら…。
連休中ですることないから、仕方ないだろ。
正直作品より面白いし。
でも古泉に近い温泉とか吹いてしまったw
なんか殺伐としてるから、SS投下するの今度にしとく・・・。
みんな、おやすみ ノシ
どこが殺伐として見えるのか普通に疑問に思う。
こういう状況でも楽しめる余裕を持ちたいものだな。425
>>347 同意。
そこの人、書評ってか子供の読書感想文みたい。
何が、どこが、どう悪い、ってのが無い。
ハルヒを叩くのは構わないんだけどさ。
もうちょっと何を主張したいのか明確にしないとね。
あれじゃあ、自分はこんな難しいこと知ってるぞって、自慢してるようにしか見えない。
いろいろ読ませてもらったけど、ヲタクが嫌いなのかね?
ヲタクなのにヲタク批判するのもねえ。
430 :
13-73:2006/07/17(月) 02:30:40 ID:WVJ9KxR5
推敲完了。
362で言ったようにやたら長い。
ジャンルは何だろ?ギャグ、それも一発ギャグか?w
まあ、オチ以外はダンディーさかの のトーク部分(ギャグを引き立てるための部分)みたいなもんかもしれんw
ある意味、殆どのパーツは蛇足ってことになるなw
まあ、良かったら読んでみてやってください。
<インスペクタ>
<自動干渉機>に送信。
『対象』の削除を要求。
それには世界の存在を破壊する危険性がある。
よって、当該人物の削除・抹消を求める。
<年表干渉者>の同意を求める。
<インターセプタ>
拒否する。
<高等監察官>、貴方の意見は一理ある。
しかし、『対象』を削除した場合の世界への影響は未知数であり、削除は推奨されないと判断する。
それなくして世界は成り立たない。
<自動干渉機>に求める。介入を。
<アスタリスク>
介入する。
実行…………
…………
******************
<インスペクタ>
<自動干渉機>に送信。
『対象』の削除を要求。
それには世界の存在を破壊する危険性がある。
よって、当該人物の削除・抹消を求める。
<年表干渉者>の同意を求める。
………
異常事態の発生を感知。
<年表干渉者>の意見を求める。
<インターセプタ>
緊急事態の発生を確認。
至急対策が必要。
土曜日の朝、それは日頃充分な睡眠時間を取れない学生が長らく休める数少ない時間で、それは朝比奈さんのお茶並の価値があるものだ。
けれども、鳴り響く携帯電話の音が俺の至福の時間を奪っていった。
のっそりと置きあがり目覚まし時計を確認する。その針はだいたい学校に行く為に起きるくらいの時刻を指していた。
こんな時間に俺の睡眠を妨害して電話をかけてくる奴なんて大概決まっていた。
涼宮ハルヒだ。
あいつは、いつも突然に俺の安眠を妨害してくる。ひょっとすると俺の安眠妨害ランキングは妹を抜いて1位を記録してしまうかも知れない。
しかし、何の用事だろうな?今日の不思議探しは9時からの予定で、時間的にはまだ余裕があるはずだ。
俺は訝しがりながら、電話の通話ボタンを押した。
「…………」
受話器から聞こえてきたのは長々と続く三点リーダ。
普通なら悪戯電話として切るべきところかもしれないが、俺にはこの3点リーダを口癖にする知り合いがいた。
「長門か?」
「そう」
「何かあったのか?」
「緊急事態。すぐに来て」
緊急事態……何だ、またハルヒ絡みか?
考えを巡らす。またハルヒが何かを起こしたのだろうか?
「分かった。すぐお前の家に向かう」
俺は考えが杞憂に終わることをひたすら願いながら電話を切った。
頼むぜ、ハルヒ。俺の勘違いで終わらせてくれよ。
オタクは自分より重度のオタクを軽蔑することで自分がオタクでないという
錯覚に陥る、そして周囲に自分より重度のオタクがいなくなるところまで来て初めて
自覚症状が出る。
「入って」
何度も訪れた長門のマンション。708号室の扉が開かれると、見慣れた宇宙人の姿が目に入る。
「何が起きたんだ?」
長門の部屋には、相変わらず生活感というものがあまりなかった。
しかし、最初にここを訪れた時とは確実に違いが存在していた。
カーテンやツイスターゲーム、俺達が持ちこんだものが所々に置かれていて、まるでSOS団の第2支部といった感じが少しする。
「これを」
長門がパソコンのディスプレイに目を向ける。コンピ研から手に入れたあのノートパソコン、これもこの部屋の変化の一つだ。
画面を覗きこむと、そこに映っていたのは一通のメールだった。
『 警告。
世界が崩壊する前に、カミヲヨミガエラセヨ
<インスペクタ> 』
何だ、これ?第一の感想はその一言に尽きた。
世界が崩壊する……それはなんとなく理解できる。ハルヒのトンデモパワーによって、この世界が何度か危機に陥ったことを俺は知っていた。おそらく、今回もそれに関する何かじゃないかということが想像できる。
カミヲヨミガエラセヨ……
「神を蘇らせよ」か?全く分からん。神ってのはハルヒのことだろうか。
最後の<インスペクタ>ってのはなんだ?地球を観察してる異星人か?四天王とかいるのか?
「長門。これは何だ?」
「…………分からない。調査が必要」
長門が逡巡するような表情で答えた。
「しかしおそらくこの警告は正しいもの」
警告ね、そういえば始めにそう書いてあるな。
「世界は現在進行形で消滅の危機にある」
──やれやれ
深く溜息をつく。
それは予想していた事態だった。けれど、実際に長門の口から聞いてみるとその重みがぐっと増したような気がする。
「何か対策はないのか?」
「…………現時点では不明」
非常に困ったことに、長門にも解決策が見つからない分からないらしい。
ということは、おそらく古泉達の機関も何も分かってないだろうし、世界の誰も分かってない可能性が高い。
くそっ、解決の糸口はどこだ……
「だいたい状況は分かった。長門はそのまま調査を続けてくれないか」
「……………………」
長い三点リーダが続いた後、長門は吸い込まれてしまいそうな、その瞳をこちらに向けた。
何も変わらない表情、抑揚のない声で長門が告げる。
「私は数十秒後にこの世界から消滅する」
──冗談だろう?
言葉を失っていた俺が、やっと吐くことが出来たのはその一言だけだった。
「本当」
長門の表情はやはり何も変わらなかった。
何かに縋る様でも、自棄になった様でも、悟った様でもない。そこにあるのはこの1年ですっかりと見慣れた長門有希の顔だった。
「おそらく条件を満たすことで世界の再構築が可能」
抑揚のない声が淡々と告げる。
怒りも、悲しみも……迷いさえもそこから伝わってこなかった。
「お前等の親玉がそうさせたのか?だったら文句を言ってやる」
「情報統合思念体は、この件とは無関係。……おそらくもっと高次の存在が関わっていると推測される」
時間が嘘みたいに早く進んでいる。
長門の告げた時間までもう幾許の猶予もなかった。
「何か!何か方法はないのか」
長門の足がキラキラと砂のように結晶化をし始める。
見覚えのある場面──握られたナイフ、夕日の教室──、朝倉涼子が消えたあの日だ。
「おい、長門!長門っ!!」
何も出来ないことを知りながら、手を伸ばす。指先から長門のショートヘアに触れた感触が伝わる。
長門は俺を見ていた、その深淵のような瞳をまっすぐに向けて。
それは俺の見間違いだったのだろうか?
「あなたを信じている」
長門は微笑んだ。まるであの時みたいに
目を覚ました俺が驚いたのは、自分が見知らぬマンションの一室に横たわっていたことだった。
おかしい。昨日俺が眠りについたのは自室のベッドの上で、それはやがて宇宙が滅びることよりも確かなことだった。
全く見覚えのない部屋、そこに俺は居た。
空き部屋と思われるその部屋には、家具という家具の姿は一切見当たらなくて、壁紙も床もここには誰も足を踏み入れたことがないように綺麗なままだった。
本当になんでこんなところにいるんだろうな?
ドアに手をかけて──勿論、壁という壁がコンクリートに覆われていてドアが見当たらないこともなかった──、部屋から出ようとした時、俺は何かが気になって部屋の方を振り向いた。
ゴミ一つないフローリングの床に“何か”が落ちていた。
何故だか分からいが、俺にはそれがとても大事なものに思えて、拾い上げてみる。
何の変哲もない花のイラストの入った栞だ。
『カミヲヨミガエラセル鍵』
裏にまるで印刷されたように丁寧な明朝体の文字と、見たことのない図形が書かれている。
六角形が2つ、ところどころにNや、NH2といった記号。
「…………長門」
無意識に栞を握りながら、呟いていた。
しえん。欲しがりませんと言ったのに落ちてきたのはWHY
マンションを出た俺を待っていたのは、いつものようにニヤケ面を浮かべた古泉だった。
まるで多幸症のようにニコニコとしている。
「どうも」
古泉がその顔に浮かべたスマイルを崩さないで話し掛けてくる。
それは間違いなく古泉の声だった。にもかかわらず、俺はその声に違和感を感じていた。
不本意ながら、俺がSOS団の中で最も一緒に行動する機会が多いのは古泉で、少しの違いでも見分けてやる自信があった。
その違いは糸を通そうとする時の針の穴よりも些細な点程のものだったが、目の前に居る古泉は俺の知る古泉ではなかった。
「お前は誰だ?」
「おや、気付かれました」
古泉は、古泉そっくりの仕草で肩をすくめた。
「僕は<水星症候群>と言います」
めりくりうすしんどろーむ?
「普段は抜水優弥と呼ばれています。どちらで呼んでもらっても構いませんよ」
「古泉はどこだ?」
「申し訳ありません。こちらの方には、特殊ですがEMP能力が存在していましたので、体をお借りしています。」
まるで悪びれてないような口調で古泉(優弥)が答える。
EMP……?古泉は確かにエスパーだ。ESPじゃないのか?
「そうですね。微細な違いがそこには存在しますが、今はそのことは些末な問題に過ぎません」
不本意だがこいつの言う通りだった。
「で、用件は何だ?」
「世界の命運があなたにかかっています」
──やれやれ
団員への奢りと言い、映画撮影の雑用係と言い、面倒な役割はいつも俺に回ってくるのだ。
たまには誰か代わってほしいね。
「あなたの世界だけではありませんよ。僕の属する世界……いえ、多重的に存在する幾多の並列世界全ての命運です」
古泉(優弥)は、話しを続ける。まるで演説のように話す姿は古泉と何ら変わりがなかった。俺以外だったら気がつかないかもしれない。
「あなたは超越者達に選ばれたようです」
超越者……?
「世界を外側から監視している存在だと、僕は思っています」
つまるところ神様ってことか。
「そうですね。それに準ずるものと言って良いでしょう。最も、超越者より更に上の存在を僕は信じていますが」
わけの分からんことばかりだな。
「基本的に何か事件があった時には首をつっこんでみたいと思う性質なのですが、残念ながら今回の騒動では僕は端役に過ぎないようです」
古泉ならここで溜息をつくかも知れない。
漠然とそんなことを考えたが、優弥は絵に描いたようなニコニコ顔を崩さなかった。
「ある意味ではあなたが羨ましいですね。御武運を祈りますよ」
古泉(優弥)は優雅に一礼をすると
「さようなら」
俺に背を向けて歩き出した。
……優弥の話は、殆ど理解できないものだった。
マンションの入り口で暫く考えを巡らせてみたが、俺に分かったことと言えば「今のが古泉でなかったこと」「また俺が厄介な事件に巻き込まれていること」それくらだ。
今のは確かに古泉とは違っていた。優弥自身がそう言っていたから多分間違いはないだろう。
優弥こと偽古泉は“超越者”がどうとか言っていた。
──この銀河を統括する情報統合思念体
誰かが前に言っていた。
超越者ってのはそいつ等のことなのか……?
見知らぬマンションで目を覚まし、古泉に似た偽古泉に出会い、超越者が云々言われる。
朝からの状況がさっぱりと見えてこなかった。1/3くらい読んだミステリよりも謎だらけだ。
他に俺が分かったことと言えば、古泉が話し終えて歩いていったのが駅の方向だってことぐらいだ。
ああ、もう一つ分かる。そんな情報分かったってしょうがないってことだ。
…駅…駅前
俺はポケットから携帯を取り出すとディスプレイの表示を見てやる。
「8:54」
もう一つ分かったことに追加が出来た。今日の不思議探しの奢りも確実に俺だろう。
……やれやれ
「ったく、キョン。いつも言ってるけど、あんた団員の自覚があるの?」
俺達は、SOS団の御用達の喫茶店に居た。
目の前には、不機嫌な表情をしたハルヒ。
手元にはアイスコーヒー、深い黒色がまるで誰かの瞳の色みたいだ。
「すまん。色々あってな」
色々ね……俺は朝から何をした?マンションの一室に倒れていて、暗号のような栞を拾い、偽古泉に出会った。
話してやればハルヒは喜ぶだろうし、奢らなくて済むかもしれないけれど、とても話す気にはなれなかった。
ハルヒの暇つぶしミステリを考えるのは古泉に任せておいてやれば良い。
俺の隣に座っていらっしゃるのはマイスウィートエンジェル朝比奈さんだ。
舞い降りた天使のようにかわいらしいその表情がその隣にあるのはまさしく僥倖だった。
厄介ごとの最中にある俺にとって、その存在はだったぴろい砂漠の中のオアシスよりもありがたい。
ハルヒの隣、朝比奈さんの目の前では古泉がニヤケ面でハルヒに応答している。
駅前でさっきのことについて聞いたが、どうやら覚えていないようだ。白昼夢でも見たっていうのか?そんなはずないよな。
俺、ハルヒ、朝比奈さん、古泉。SOS団の4人全員が顔を揃えていた。
4人……?
──ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上
不意に、初めて出会ったハルヒの言葉を思い出す。
古泉は超能力者、朝比奈さんは未来人。
記憶を磨ガラスの向こうから見ているような感覚を覚える。輪郭がぼやけていて思い出せない。
何か大事なことを忘れていた。
○インタールード・<インターセプタ>
<<彼には鍵という力があった。それが彼の望んだものか否かは分からない。
鍵は単体では意味を持たない。
しかし扉を開くことで、何かを起こすことが可能だ。
世界の崩壊が迫っていた。
わたしは自分の属するこの世界を愛している。
わたしはわたしのできることを行うのだ。
せめて彼を導こう。
今のわたしが出来ることはそれぐらいだから>>
「本当に覚えていないのか?」
俺は隣を歩く古泉に話し掛ける。
午前中の不思議探索ペアは不本意ながらスマイル野郎と一緒だった。
「ええ、全く」
古泉は大げさな動作で、お手上げのポーズを作る。
「しかし、興味はあります。抜水優弥なる人物、世界の危機、そして超越者……涼宮さんが喜びそうな話ですね」
ハルヒの喜びそうなものについては、古泉と俺は同意見らしい。
「お前はどう思う?超越者ってのは神様みたいなもんだとかも言っていたな。ハルヒと関係があるのか?」
「おそらく無関係ではないでしょうか。少なくとも涼宮さんが閉鎖空間を発生させた形跡は見当たりません」
ハルヒとは無関係か。
ということはさっき俺が思いついた何とか思念体が犯人だろうか?いや、それも誰かに否定されたような気がする。
「抜水優弥なる人物は他に何と?」
「多重的に存在する幾多の並列世界だったか……?それら全部が危機らしいことを言ってたな」
古泉は少し考えこむ表情を見せ
「少なくとも抜水優弥の正体と言うのは分かりますね」
俺には謎のままだがな。
「おそらくですが、我々の世界とは属する場所を異とする者。平たく言えば異世界人です」
異世界人……
ハルヒが望んだ人物の一人だ。来なくて良いと思っていたのにとうとうやって来たらしい。
未来人、超能力者と来て異世界人だ。宇宙人だって…………
「彼が並列世界を越える能力を持っているのか、あるいは異世界とのワームホールが出来てしまい我々の世界と彼等の世界が交錯したのか……」
「古泉」
長々と演説を続ける古泉の話の腰を折ってやる。
「俺達は、SOS団は本当に4人だったか」
喫茶店で覚えた違和感。そして、宇宙人という言葉。
「何を言っているんですか?僕と、涼宮さん、それにあなたと朝比奈みくる」
古泉が指折り数える。どうみても小指は立ったままだ。
「俺達の側には宇宙人がいなかったか」
そうだ、俺達の前には宇宙人がいたはずだ。万能選手で、感情を表すのが下手くそな宇宙人が。
「この栞を見て何か分からないか」
そう。この栞は宇宙人の……長門の残したヒントだ。世界が俺を残して変化したあのときと同じように、あいつから残されたヒントのはずだ。
「すみません。宇宙人の話は僕には思い出せませんが……これはミノキシジルの化学構造式ですね」
──みのきしじる?
「ミノキシジルですよ」
古泉はポケットからペンを取り出すと、栞にカタカナを書きこむ。
「そんなもんよく知ってたな」
「これでも気苦労が絶えませんから」
古泉は苦笑しながら、髪を掻き揚げた。
「何かあったらまた伝えてください。機関も僕も全力でバックアップしますよ」
普段は胡散臭い奴等だが、状況が状況だ。
──信頼させてもらうぜ、古泉
気がつくと、俺は一人で立っていた。
朝、見知らぬマンションで目覚めた時と同じ感覚だった。
ポケットの中には花柄の栞。
明朝体で丁寧に書かれた文字と、記号の他にカタカナが書きなぐられていた。
粗暴なその字体には見覚えがあった。去年の七夕に俺が見たものと同じ……
古泉一樹もこの世界から消えていた。
俺達3人が集合したのはファストフード店だった。
店員の0円スマイルがやたらと目に付くのはおそらく気のせいだ。
「じゃあ、また組み分けするわよ」
既にセットを食べ終えたハルヒが、もはや馴染みの爪楊枝を取り出す。
赤い印付きが2つ、無印が3つだ。
何故だろう。ここにいるのは3人だけなのに、俺は全くの違和感を感じなかった。
「あら?取り出し過ぎたわね」
訝しげな表情を浮かべつつ、ハルヒが無印の爪楊枝2本をしまう。
そもそも組み合わせを決める意味はあるのか?3人しかいないんだから、そろって回ればいいじゃないか。
言いようのない感覚が再び俺を襲ってくる。喫茶店で感じたものと同じ感覚、脳みそをシェイカーで揺らされたような気分の悪さだ。
くそっ、他のことを考えよう……
隣では、朝比奈さんがハルヒのくじをおどおどしながら引いていた。印付きだ。
斜向かいのテーブルで、俺と同級生くらいの男女と少女がもう一人の3人組が座って談笑していた。
同級生くらいのがカップルと、もう一人はどちらかの妹だろうか……
俺達もあんな風に見えるんだろうか
俺は漠然とそんなことを考えながら手もとに回ってきたクジをひく。
少なくとも誰からも、俺達が宇宙人や超能力者や、未来人達の集まりであるようには見えないだろうな。
ポカポカと暖かい日和に気の早い桜がもう蕾を結んでいた。
未来人から衝撃告白を受けた川辺を俺達は歩いていた。隣にはあの時と同じように朝比奈さんがいる。
あの時と同じベンチに腰掛ける。今すぐにでも眠れそうなくらいの麗らかな陽気だ。
春風が朝比奈さんの髪を揺らしていた。
「朝比奈さん。突然なんですけど、未来に連絡を取ってみてくれませんか?」
俺から話を切り出した。
「え?」
朝比奈さんはぽかんとした表情でこちらを見てくる。
「なんだかよく分かりませんが、また世界の危機らしいんです。お願いします」
「分かりましたちょっと待ってくださいね」
朝比奈さんは何かを確認するかのように、目をつぶった。
*
俺も同じように目をつぶり事態の整理を始める。
未来には朝比奈さん(大)がいるはずだ。少し不本意だが、力を借りれるだろう。
ひょっとすると、この事態の収束法を知っているかもしれない。
少しだけ安心した気持ちで、俺は朝比奈さんの方を見た。
俺の隣の空間にはただ虚空だけがあった。
「朝比奈さん!!」
俺は叫ぶように言葉を発していた。辺りを見る……人っ子一人いない。
ベンチの後ろを必死で探す。ひょっとしたら誰かが出てくるんじゃないかって期待を込めて……誰もいない
未来人も、希望もどこを探しても見つからなかった
<アスタリスク>
介入する。
実行。
終了。
「朝比奈さん。突然なんですけど、未来に連絡を取ってみてくれませんか?」
俺から話を切り出した。
「え?」
朝比奈さんはぽかんとした表情でこちらを見てくる。
「なんだかよく分かりませんが、また世界の危機らしいんです。お願いします」
「分かりましたちょっと待ってくださいね」
朝比奈さんは何かを確認するかのように、目をつぶった。
*
「ふえ……」
突然、朝比奈さんがふらりとベンチに倒れこむ。
ベンチの裏の茂みがガサゴソと音を立てる。
「おひさしぶりです」
ベンチの裏から現れたのは、朝比奈さん(大)だった。
魅惑の表情を、焦りが覆っていた。
「時間がありません。本当は、私もこの子も既にこの世界から消えているの」
消える……そうだ、俺の前から長門も、古泉も消えたんだ。
「何か大きな力……長門さん達の物とも、涼宮さんの物とも異なる力が働いてるみたい」
「朝比奈さん、俺はどうすればいいんですか?」
叫ぶように朝比奈さんに問い掛ける。
「長門も、古泉も消えちまった。おまけにハッキリ言って何も分からない……八方塞です」
「ごめんなさい、私にも何も分からないんです」
「そんな……」
「時間が迫ってる……キョン君。役に立たないかもしれないけど、これを」
朝比奈さんが何かを俺に手渡す。
「私を……」
朝比奈さん(大)は朝比奈さん(小)を指差した
「そして私をお願いします」
朝比奈さんは見るもの全てを虜にしてしまうウインクを俺に投げかけた。
ふと、気がついた時、まるで天使からの贈り物のように俺は何かを握り締めていた。
眼をこらしてじっと見てみる、それは「味のり30パック入り」と書かれた袋だった。
ためしに包みを破り、一枚取り出して口に含む。
ぱりっとした触感、ご飯のお供にぴったりのその味。まさしく海苔だ、未来的な要素も宇宙的な要素も超能力な要素もどこにもない。
何でこんなもん持ってるんだろうね?
突然の記憶の欠落。それには覚えがあった。
朝目覚めたマンション、栞に書きこまれた粗暴な文字
そして、今。
誰かがまた消えた……
携帯を取り出す。
「もしもし?」
誰かが言っていた、ハルヒは神だって。
──神様が消えるわけないよな
「ハルヒ、今どこだ?」
俺は必死に受話器に話し掛けた。
指定された場所に向かうと、不機嫌そうなハルヒが手を振っていた。
「何よ?いきなり電話かけてきて。不思議なことでも発見したの」
何でもないさ。ただお前の様子が気になっただけだ。
「あんた今日朝から変よ。なんか悪いもんでも食べたの?」
自慢じゃないが、お前ほど変な人間にはなっちゃいないさ。
「あたしのどこが変なのよ」
ハルヒはアヒル口を見せて怒ったような表情を見せた後、その顔を物憂げなものに変える。
「でも今日のあたしはちょっと変かも」
「ねえ、キョン。SOS団ってあたし達2人だけだった?そんなはずないわ……もっと人が多かったはずよ」
「頭は良いのにゲームが弱くて、副団長の古泉君」
古泉一樹、いけ好かない表情を浮かべる超能力者だ。俺も知っている。
「SOS団のマスコットで、ちょっとドジっ娘のみくるちゃん」
俺のエンジェルにして、未来人。北高のアイドル朝比奈みくる。忘れ様がない。
「無口だけど、何でもこなせる本好きの有希」
統合情報思念体から派遣されたヒューマノイドインターフェース。何度も世話になったはずだ、何で思い出せないんだ。
「ねえ、それってあたししか知らない人達?みんなどうなっちゃったの?」
記憶が笊ですくった砂のようにこぼれ落ちていく……
違う!俺もそいつらのことを知っているはずだ。
「まるで消えちゃったみたい……」
ハルヒの声は震えていた。
俺が一番見たいと思わない表情をハルヒは浮かべていた。
高校に入ってから一番見なれたハルヒの顔。
だが、今の泣きそうな顔程こいつに似合わない表情を俺は知らなかった。
「キョンは消えないよね?どこにも行かないよね?」
安心しろ。例え未来人が未来に帰っても、例え宇宙人が親玉の元に戻っても、例え超能力者が俺達の前から姿を消しても……
俺は絶対にお前の側にいてやる。
お前がどっかに消えちまったら全力で探してやる。
ハルヒの黒髪を軽く撫で、華奢なその手を握ってやる。強く、離さないように。
────だから
「笑ってくれ」
その笑顔は春の陽射よりも晴れやかだった。
頬を伝う冷たい感覚に、俺の意識は覚醒する。
──雨か?
太陽が燦燦と輝いていた。まるで消えた誰かを果敢無むように。
俺は泣いていた。
手には確かに誰かの温もりが残っている。
違う。その暖かさが誰のものかを俺は知っていた。
涼宮ハルヒ
記憶を失わない限り忘れない自信があった。
現在進行形で、俺はいろんな記憶を奪われてる。
でも、俺はお前のことを忘れてない。
──だから、お前が消えることないだろ……
長門が消えた。古泉が消えた。朝比奈さんが消えた。
ハルヒも俺の前から消えてしまった。
どうすればいい?
誰か答えろよ?宇宙人でも、未来人でも、超能力者でも、神様でも……
美少女戦隊でも…天使、悪魔、死神、幽霊、妖精。何でも良いさ。
答えてくれ!!
「世界をお願いできます?」
呆然と立ち尽くす俺に声をかけたのは、一人の少女だった。
まるで記憶に残らないような外見をしている。
誰だろう?
口調だけならクラスメートの一人に似ていたが、消えてしまった記憶にも多分、該当する顔はなかったと思う。
「私のことはどうでもいいのです」
──それもそうかもな
「これから言う場所へ向かっていただけると、有難いのです」
──何で皆俺を巻き込む?自分でやればいいじゃないか
「すみませんが、そうはいかないのです」
──俺はずっとこうしていたい。この世界はもう俺の知ってる世界じゃないんだ。
「あなたがあなたの世界を救うには、そこに向かうしかないのです」
少女が言葉を続ける。
「カミヲヨミガエラセテ」
「あいつか?」
携帯電話に話し掛けている男が、俺のほうを向く。
「ふむ。全くの普通の人間に見えるな。EMP能力の発現も見えん。寮長殿はどう思う」
白衣の男が携帯電話の男に声をかける。
「分かってたまるか。僕は普通の人間だぞ」
鬱陶しそうに白衣の男の相手をしながら、携帯に話し掛けている。
「おい、真琴。どうなんだ」
<<全くユキちゃんってばセッカチさんね。早い男は嫌われるわよ>>
頭の中で声がしたけど、別段気にならなかった。
世の中には宇宙人やら、未来人やら超能力者がいるんだ。頭の中で声がするくらい別にありえることだろう。
<<んー。そうね。インスペクタが指示して来たのはこの子みたいよぅ>>
「確かなのか?」
<<そう言われても、この子にはEMP能力もないから何とも言えないわね。でも、多分この子っしょ>>
「あのな、世界がかかってるんだろ?そんな適当で良いのか」
あきれた表情で男は、携帯に話を続けている。
「寮長殿、時間がない。会長代理の判断に任せようではないか」
白衣の男が俺に何かを手渡す。
「我が校の化学班が開発したものだ。受け取りたまえ」
何が起ころうとしているんだろうか。俺には全く理解できなかった。
<<固体名、宮野秀策のEMP能力をインタラプト>>
「さらばだ。少年!必ず成功させたまえ。でなければ、私は消えてしまった茉衣子君に、顔向けが出来ん」
白衣の男がまくし立てるように言葉を続ける。
「そして造物主に伝えてくれ!必ずいつかそこへ辿り着くとな!」
どこか遠くへ伝えるように叫んでいた。
「あれは何だ?」
消えてしまった男に聞くわけにもいかず、残った男に聞いてみる。
呆れた顔をしている、俺も今こんな感じの表情をしてるだろう。
「歩く“迷惑”だ」
少し考えた後、目の前の相手はそう答えた。
「でも、いないと寂しくならないか?」
「そうだな」
「俺は“そいつ”を取り戻しに行ってくるよ」
男が、手を差し伸べる。
「世界を頼む」
俺も手を差し伸べる。単純な親愛の挨拶だ。
目の前の相手になんとなくシンパを感じる。
<<上位世界への逆介入を実行>>
<アスタリスク>
介入する。
実行。
………………
たくさんレスついてるからどんなSSと思ったら…
見知らぬ部屋に俺はいた。
右手には手渡された小瓶──『ミノキシジル配合』の文字が踊っている──、左手には海苔のパック。
その部屋では、一人の男が寝息を立てていた。
30台くらいの男だ。
その頭は………──禁則事項──ていたた。
……ミノキシジル、俺はニュースでその名前を耳にしたことがあるのを思い出す。
ここはSOS団つっこみ担当としては、言わなければならんことがあるだろう。
──カミってそっちかよ!!!!
ミノキシジルは脱毛症を改善し、育毛効果のある化学物質だ。
ちなみにそのメカニズムは分からないらしい。
この男の頭にかけてやれば良いのか?
蓋を取って、小瓶の中身を──禁則事項──あがった頭にかけて、寝床の傍らに海苔を置いておく。
これで……いいんだろうか…………
急な眩暈を感じて、意識が飛びそうになる。
足の先が消えていた。
俺も消えちまうのか……?
すまん……ハル…ヒ……約束…守れ……ないか…も
消えいく意識の中、俺はかすれる声で呟いた。
「世界を多いに盛り上げる……俺達をよろしく」
俺の意識は深く深く落ちていった。
******************
土曜日の朝、それは日頃充分な睡眠時間を取れない学生が長らく休める数少ない時間で、それは朝比奈さんのお茶並の価値があるものだ。
けれども、鳴り響く携帯電話の音が俺の至福の時間を奪っていった。
「もしもし?」
寝惚け眼をこすりながら、電話に出る。
「この馬鹿ーーーーーーーーーーー!!!」
劈くような声が俺を一気に覚醒に追いこむ。
「遅刻よ!!遅刻!!」
目覚し時計を確認する。集合時間はとっくに過ぎていた。
「すぐ来なさい!!」
団長の怒り声が俺を急かした。
駅前。
ニヤケ面の超能力者がこちらを見ていた。
可憐な未来人が俺のほうに手を振ってくれた。
寡黙な宇宙人がその視線を俺の方に向けた。
「こらー!!遅刻も遅刻。大遅刻じゃない」
俺の顔を見かけるのと同時にハルヒが俺に詰め寄ってくる。
「分かってる。罰金だろ?」
「そのとーり」
さっきまでの怒り顔をすぐにひっこめる。現金なやつだ。
「さあ、今日も世界を盛り上げるために多いに頑張るわよー!!」
ハルヒが笑っていた。俺だけが知ってる100%の笑顔で
俺の仲間が……俺の世界がそこにあった。
〜the end〜
なんか話の意味がわかんない
紫煙?
ちょっと…そればかりはネタとして少々ヤバげな気が…。
459 :
13-73:2006/07/17(月) 03:04:23 ID:WVJ9KxR5
以上。
つーか、最初に完全に書き忘れたのだが、ハルヒメインに“学校を出よう”を加えたコラボSSです。
しかし、まあ我ながら、くだんねーなーwww
発想はラノベ板、谷川スレの住人があまりにこのネタで遊んでるのを見たからかな?w
ある意味では、うん。谷川スレ住人に捧ぐSSかもしれんw
それでは、長々と失礼いたしました。
460 :
13-73:2006/07/17(月) 03:08:11 ID:WVJ9KxR5
あんま既に書き終わったものについて多くを語る気はないけど
458に言われたので、追記。
あくまで原作者に敬意を示して、書いています。
問題があるようなら、許可なく削除しちゃってください。
まあ、かなりブラックなジョークかも知れんね。考えてみれば
久方振りに学校が絡むSSだと思ったのに、
なんか物凄い勢いで肩透かしを食らった気分…
オチがそれかよ〜orz
>>459 面白かった。タイトルでオチが予想できたのがアレだったけど。
現在の気温は38度。体温を遥かに超えている。はっきり言おう。暑い。
俺はそのフライパンと化した街の中を当ても無く彷徨っていた。
というのも、家のクーラーが今朝方に一斉に壊れてしまい、気温が上がるに従ってサウナ状態になり
我慢できなくなって家を飛び出したのである。ちなみに妹も友達の家に出て行ってしまった。
父が業者に電話していたので帰る頃には直っている事だろう。
俺はクーラーの効いているであろう図書館に行ったのだが皆考える事は同じなようで既に渋谷のスクランブル交差点状態、
次に噴水のある公園に行ったのだがそこもやはり先客で埋まっていた。
いよいよ行く当ての無くした俺はこうしてさすらっているのである。
―――遠くにある飛行機雲を俺は見送った。
ここでどろり濃厚なジュースでも飲んでる病弱な金髪の女の子でも出てきたら面白いんだが。
・・・そんなバカな事を考えながら歩いていた俺は自動販売機を見つけた。――そうだ、コーラでも飲むか。
いやいや、こういう時はスポーツドリンクを飲む方が良い。俺は150円出してポカリのペットボトルを買った。
とにかく早く体の中だけでも涼しくなろう。冷たい液体を口から流し込もうとしたその時。
熊のぬいぐるみを持った小さい女の子が俺をアイフルチワワのごとく見つめていた。
「どうしたんだ?飲みたいのか」
「うん、のど乾いた」
ペットボトル入りなので量は沢山ある。俺はその女の子にも分けてやる事にした。
「美味しい、ありがとうおにーちゃん」
「別に良いんだぞ、今日は特に暑いからな」
「あのねおにいちゃん、あたしお金持ってないの、ごめんなさい」
この子は俺にお金払いたかったのか!? 俺はこんな小さい女の子からお金をせしめるつもりなど端から無いぞ。
「払わなくて良いんだぞそんなもん、俺はお金取ろうと思って分けてやったわけじゃないんだからな」
「でもね、お礼がしたいの」
「良いんだ良いんだ別に何もくれなくて良いんだぞ」
「そーだ!」
女の子はポケットからキーホルダーを取り出した。
「これね、あたしがパパやママと北海道に行った時に買ったの
中にまりもが入ってるんだよ」
「だがこれはお前が大切にしてるものだろ」
「家にもう1個あるから良いの、はいあげる、じゃあねー!!」
「お、おい!こら!!」
女の子は俺にそのまりものキーホルダーを半ば押し付け走って去っていった。
・・・今時あんな純粋な女の子もいるのか。立派な大人になるんだぞー。
━━━━━
俺はさっきのキーホルダーを指に引っ掛けながら商店街を歩いていた。
「さてこのキーホルダーどうしようか、鞄に付けるか、それとも」
「あっ、キョンくーん」
何とSOS団のエンジェル、朝比奈さんが買い物袋を引っ下げ登場。
商店街に高原の爽やかな風が吹き込む。ああ一気に暑さも解消だ。
「朝比奈さん、お買い物ですか」
「はい、冷蔵庫の中が空っぽだったので、
・・・キョンくん、どうしたんですかこのキーホルダー、かわいいです」
「いえ、さっき道端で出会った女の子にジュース分けてあげたんです、物欲しそうに見つめてたので
そしたらその子がくれたんですよ、なんでも北海道に行った時に買ったものだそうで」
「そうなんですか、良かったですね」
朝比奈さんはじっと俺の指にぶら下がったキーホルダーを見つめている。
・・・そうだ。朝比奈さんにプレゼントしよう。
「朝比奈さん、良かったらあげますよこれ」
「え、そんな悪いですよう」
「いや良いんです、俺よりも朝比奈さんの方が大切にしてくれそうなんで」
「ホントに良いんですか・・・? 実はわたしこういうキーホルダー欲しかったんです」
「じゃあどうぞ貰って下さい」
「嬉しいです、有難うございます! 大切にします!」
「いや良いんですよそんな」
「キョンくん、お礼に差し上げます」
朝比奈さんは買い物袋からりんごとバナナを取り出した。 と同時に落とした。
「ぁぅ・・・ ごめんなさいキョンくん」
「いや、だから良いですよ、悪いですよ折角朝比奈さんが買ったのにそんな」
「良いんです、あ、こんな地面に落としたものは嫌ですよね
・・・メロン差し上げます、安物なんですけど、熟したら美味しいはずですよ」
「いやだからホントに結こ」
「キーホルダーありがとうございます!!じゃあまた明日学校で!」
朝比奈さんは俺にメロン一玉を手渡して去っていった。
・・・安物とか言ってたがちゃんと網目も入っている。決してこれは安いものではない。素人の俺にも分かる。
俺は本当にこんな物貰って良かったのだろうか。
━━━━━
俺はメロンを抱きかかえながら公園の中を歩いていた。早くどうにかしないと皮の中で煮えてしまうぞ。
―――ふと木陰のベンチを見ると長門が本を読んでいた。
しかしながらやはりこいつは存在感が無いというのか周りの景色に同化し過ぎるというのか。
「おう、長門」
「・・・・・・」
長門は1センチほど首を横に向け再び本に視線を落とした。
「・・・それにしても暑いな今日は」
「そう」
なかなか会話が弾まない。
俺がボーっと空を眺めていると横から視線を感じた。
ふと横を見やると長門が俺の持ってるメロンをじっと見つめていた。
「長門、欲しいのか?」
「メロン、食べたい」
「・・・そうか、だったらやるよ、朝比奈さんからさっき貰ったやつなんだ」
「・・・そう」
「ほら、やるぞ、でもこれ貰ったら出来るだけ早く家に帰ったほうが良いかもしれないな、腐るぞ」
「速やかに帰還する
・・・・・・あなたにお礼がしたい」
「いやいやそんな物いらないぞ俺は」
「どうしても」
長門は鞄の中からハリーポッターの本を取り出した。最新作だ。
「あげる」
「最新作だろこれ、しかも読んでないんじゃないのかまだ、本屋の袋に入ってるぞ」
「構わない、また買えば良い」
「いや、でもだな」
「良い」
「・・・そうか、まあ実は俺も読んでみたかったんだ、ありがたく貰っておくよ」
「そう、では私は帰る」
「有難うな長門、メロンは冷やしてから食うんだぞー」
「そうする」
・・・・・・正直感謝するぞ長門! 買おうかどうか迷ってたんだこれ。
俺はそのままベンチで小一時間読みふけった。
━━━━━
「さてと」
俺はまた当ても無く歩き出した。
「おうキョン、あちーなー今日は」
熱帯気候でアホさ100倍谷口の登場である。
「どこか行って来たのか谷口」
「見りゃわかんだろプールだプール、
・・・・・・もっとも客多すぎては入れなかったがな、でも水着のピチピチの女の子がいっぱいいてさー」
おい谷口、100の3倍で300倍だぞお前のアホさ。鼻血出してやがるし。シャナ・・・じゃない、シャアもびっくりだ。
「悪かったな、ってかキョンどうしたんだ?買ったのかハリーポッターの最新刊」
「いや、長門に貰ったんだ」
「ひゅ〜ひゅ〜」
俺はこの本でこいつのバカ頭を叩こうとしたがまず長門にもJ.K.ローリングにもダニエルラドクリフにも悪いし
こいつの鼻血が出すぎて出血多量で村上さんとの同棲生活になっても困るのでやめておいた。我ながら賢明な判断だ。
「良かったらくれよ、お礼に別のものやるからさ」
「まあさっき一通り読んだから別に構わんが・・・ 何くれるんだ
「俺の着た水着だ、嬉しいだr」
「また明日な」
「冗談だって冗談!!これやるよスルッとカード5000円分」
何かのテレビ番組のプレゼントコーナーか。ってか何故そんな物持っている。
「別に良いだろ、まああれだ、俺らん所の学校の野球部が高校野球の予選に出てるだろ、
で友達連れて応援に来い、そいつら全員の分の交通費だって野球部の先輩に貰ったんだけどな、
俺も含めてみんな行く気無いし、暑いだろ」
「まあそりゃそうだ」
「だからやるよ」
「そうか、じゃあありがたく受け取っておく、じゃあなまた明日」
俺はハリポタの本を谷口に渡してこの場を去った。
「サンキューキョン、じゃあなー」
ちなみに俺の持っていたのは上巻。この作品は下巻まである。
1冊およそ2000円で2冊約4000円。
もし谷口がこのカードを金券屋にでも持っていったら2冊買えてお釣りも来るであろう。やはり谷口はアホだった。
━━━━━
俺は更に放浪の旅を続ける。すると古泉と出会った。
「やあ奇遇ですね」
「全くだ」
「暑いですね今日は」
「そうだな、だから顔近づけて話すな余計に暑苦しい」
「いえ僕は貴方の顔を見てると幸せな気分になれるんです」
「俺は別にそれほど幸せでもないが」
「そうですか、でも顔赤いですよ」
そりゃ38度だ、体温より暑いんだから赤くなって当然だ。むしろ涼しい顔をしているお前の方がおかしい。
お前のその悩殺スマイルに眼鏡かけさせてマフラーぐるぐる巻きにしてコート着せて北の半島の並木道に放り込んでやろうか。
きっと日本人観光客のおばさん達にモテモテだろう。
「いえ僕は年配の女性よりあなたg」
「じゃあ帰るぞ、またな」
「冗談ですよ、それにしてもちょうど良かった、実はハチクロの映画のチケット持ってましてね」
「・・・・・・まさか2枚持ってるとか言うんじゃないだろうな」
「その通り、よく分かりましたね」
こいつは俺を誘って見に行くつもりだー!! よりにもよってあんな映画を!!
早く逃げなければ!!しかし古泉の手は俺のシャツをつかんで離さない!!
「違います、そんなんじゃないですよ」
「じゃあどんなのだ」
「僕は別に見に行こうとは思ってないんですよ、2枚とも貴方に差し上げようかと思いましてね」
「なるほど、そういう事だったのか、 ・・・・・・で、2枚貰ってどうするんだ」
「涼宮さんと」
・・・なるほどそういう事か、しかし今の俺とハルヒとの関係は親友以上ぎりぎり恋人未満といった所だ。
この映画はまだ相応しくないのではなかろうか。
「いいんじゃないでしょうか、別に」
「・・・まあお前がそういうんだったら、ってかお前は見ないのか」
「僕は特に興味はないですし、この前売り券もこの前我が家に来たお客から貰ったものですので」
「そうなのか」
「では僕はこれで」
「ああ待て古泉、お礼だ」
俺は谷口から貰ったスルッとカードを古泉に手渡す。
「いえ、僕は結構ですよ」
「いや何というか俺の気が済まない、っていうのもだな、これは」
俺は古泉に今までの成り行きを説明する。
150円で買ったポカリスエットを女の子に分け、その子からまりものキーホルダーを貰い
それを朝比奈さんが欲しがったので差し上げたらメロンを頂き、そのメロンが長門の手によってハリポタに変わり、
ハリポタ1冊が谷口のお陰でこのカードに変わったのだ。今更ながら少し谷口には悪い事したかとも思ったがまあ良い。
「なるほど、わらしべ長者ですね」
「まあそういう事だ、だからまあ貰っておいてくれ古泉」
「分かりました、ではありがたく受け取っておきます、これなら役に立ちますからね」
「じゃあ古泉、また学校でな」
「またお会いしましょう」
俺と古泉は別方向に別れた。
「これでハルヒを映画にでも誘おうか」
━━━━━
お次はめがっさにょろにょろ笑い袋の鶴屋さんの登場である。
「やあキョンくん暑さに負けず元気かいっ!?お姉さんはもうへばっちゃって限界だよっ!!」
スキップしてやって来た貴方をどこからどう見たらへばってるように見えるんですか鶴屋さん。
この谷口ほどではないがバカな俺にも教えてください。
「キョンくんそれ映画のチケットかいっ!? あっハチクロだねっ!?お姉さんめがっさ見たかったんだよっ!」
「鶴屋さん、見たかったんですかこれ」
「そうなのさっ!でも前売り券売り切れててさっ!」
「じゃあ差し上げますよ、2枚」
「2枚もくれるのかいっ!? 嬉しいよっ!めがっさ嬉しいよっ!
じゃあお礼にこれあげるっさ!」
鶴屋さんがくれたのは褐色の四角い物体だった。
「高級品のスモークチーズっさ!!これをみんなで食べると良いのだっ!!」
「いや、でも悪いですよ」
「構わないっさ!!じゃあありがとうキョンくんっ!また会おうっ!!」
「あ、鶴屋さん・・・」
鶴屋さんは台風のようにやってきてそして去っていった。
台風一過には高級品のスモークチーズだけが残った。
━━━━━
しかしながらチーズというものは人によって好き嫌いがかなり激しいものである。
折角の高級品のチーズだ。万が一口に合わなくて残してしまったら非常に勿体無い。
その時である。
「もしもし少年、その手に持ってるのはチーズではないかな」
黒いシルクハットとスーツを身に纏いステッキを持ったいかにも金持ちそうなおじさんが声をかけてきた。
こんないかにも的な爺さんが普通に街中を歩くものなのか。まあこの辺りは高級住宅街だから変ではないか。
「あ、はいそうですが」
「このチーズはフランスのごく限られた地方のしかも数軒でしか作っていないんじゃ」
「そんなに高級なものなんですかこれ!?」
「そうじゃ、非常に美味い、でも好き嫌いがハッキリしておってな」
「なるほど」
「もし良ければこのチーズを譲ってくれんかの、勿論お金はたっぷり出すぞ」
「いえ、でも・・・」
「無理かの、正直数十万円は下らないんじゃよこのチーズ」
数十万!?数十万あったら何でも買える。最新鋭ハイビジョンテレビに壊れかけの冷蔵庫に・・・
「譲ってくれんかの」
お爺さんは緊縛された諭吉さん集団をチラつかせてきた。
「譲ります」
俺は諭吉救出の道を選んだ。
━━━━━
しかし札束を、しかも諭吉の札束を持っているというのはどうにも落ち着かない。
別に銀行襲って奪った物でも無ければ息子を装って年寄りに電話かけて騙し取ったものでもなく
法に触れるような行為はしていないのは分かっている。
だがやはり怖い。
俺は街の裏通りに差し掛かっていた。その時である。
ハルヒが不良集団に絡まれていた。
・・・・・・いや、まともに喧嘩が成立しているではないか。
「ちょっと何よ偉そうに!!アンタがぶつかって来た癖に!!」
「ぁんだとオラァ!このクソ尼!喧嘩売る気かゴラァ!!」
「もう既に売ってるわよこのモヒカン!!」
「モヒカン・・・ だと!? 言いやがったな!!!」
「なあおいこの女とことん痛い目に遭わせた方がいいんじゃねーの」
「そーだな、おいこいつ裏の倉庫連れて行くぞ、捕まえろ」
「ちょっと何するの!やめて、やめなさいよこの!!やめなさーい!!」
このままでは幾らハルヒと言えど危ない。というか古泉から電話が掛かってくる例の事態になってしまう。
何があったかはよく分からないがハルヒに手を出す奴など俺が許さない。止めに入ることにする。
「ハルヒどうしたんだ!?」
「キョン!?何でこんな所にいるのよ」
「テメェこいつの知り合いか!このアマが俺にぶつかって来たのに謝るどころか蹴りかましやがった」
「そうなのか?ハルヒ」
「違うわよ!あたしが自販機の前でジュース飲んでたら向こうがぶつかって来たのよ」
「ぁんだとー!」
正直どっちの言う事も信用できる。
こいつの事だ、人にぶつかっても謝らずに逆に蹴りかますくらいは十分ありえる話だ。
「何なのよそれーキョン!!」
「そのまんまの意味だ」
「おいテメーもこっち来い、連れてけ」
「来やがれクソ!」
「来い!!」
このまま人気の無い倉庫に連れてかれたら俺とハルヒ双方の童貞処女の消失は目に見えている。
俺は迷わず札束を取り出した。
「どうも俺の知り合いが迷惑かけてしまったようで、どうかこれで許してやってくれませんか」
まあ予想していた事だが不良は固まっている。ハルヒも目が点だ。
「ちょ・・・ ちょっとキョン!!何でアンタがそんな物持ってるのよ!?」
「まあこれには色々あってだな、後で話す、で、これで気が済むならどうか」
不良のうちの一人が俺の手から諭吉を奪い取った。 そしてそいつが札束をまじまじと見つめる。
そしてその時だった。
その不良の目の色が変わった。
更にそいつは他の仲間を呼び寄せ何やら内輪で話し始めた。
そしてその内に不良仲間の顔が赤信号から青信号になった。 更に汗が流れ始めている。これは何かある。
「・・・おいテメェ・・・ この札束どうやって手に入れた」
俺は正直に先ほどの老いた紳士のことをを話す。
次の瞬間、不良集団は何も言わず札束を放り出し逃げていった。
よく分からないがとりあえずハルヒも俺も助かった。
「・・・キョン、とりあえず礼は言うわ、ありがと」
「まあ、ハルヒが無事で良かった」
「・・・・・・で、キョン
団長であるこの私にきちんと説明しなさい」
そりゃそうであろう。いきなり自分の目の前で団員が札束を取り出したのである。動揺するのも無理は無かろう。
「実はだな、かくかくしかしかのこれこれで」
「なるほど、めがっさにょろにょろのスモークチーズと・・・ って分かんないわよ!!!」
「まあ冗談はよして、だ」
「さっさと話さないと死刑よ」
「家のクーラーが壊れた俺は暑い街の中を彷徨ってたんだ、
で、だな、道端の自動販売機でジュースを買った、そしたら通りすがりの小さな女の子が欲しがってだな」
「まさかキョンその女の子にジュースあげたの!?」
「まあ幼稚園児くらいだろう、気にするな」
「するわよ」
「で、そしたらその女の子がお礼にまりものキーホルダーくれたんだ」
「キョン・・・ アンタって奴はー!! 見せなさいよそのキーホルダー」
「そのキーホルダーは朝比奈さんの手によってメロンに変わった」
「みくるちゃん? 明日みくるちゃんに見せてもらうわ、でそのメロンは」
「長門の手によってハリポタに変わった」
「有希にも逢ったの? でそのハリポタは面白かった?」
「まあまあだ、前編の途中までしか読んでないが、でそれは谷口によってスルッとカード5000円分になった」
「儲かったじゃないキョン! で、で?」
「それは古泉によってはぐと竹本に変身した」
「ああハチクロ!?、で?」
「そいつらは鶴屋さんによって最高級品のスモークチーズになった」
「・・・へえ〜、それで? それで?」
「それが通りすがりの紳士の手によってそこに落ちてる札束になった、というわけだ」
「面白いじゃない!! そういう事もあるものなのね」
あっさり信じてもらえたようだ。意外である。
「それにしてもキョン、どうしてあの時よりにもよって札束なんか取り出したりしたのよ」
「まあ、それ以外に持ってるものが無かったからだな」
「アンタね!勿体無いとか思わないの?! 100万よ100万!!
今回はなぜかあいつら札束放っぽり出して逃げてったけど、取られてたら大損だったのよ分かってる!?」
「俺は100万”なんか”よりお前の方が大事だからな」
「ちょっと・・・ キョン・・・?!」
「100万なんて大人になって稼いだら良いだろ
だがハルヒは幾ら金あっても手に入れれるもんじゃないんだ、
今回はあの時たまたま俺が通りかかったから良かったものの、俺だって喧嘩なんか強くない、
それこそ札束出すのが精一杯だ、札束あればどうにかなるなんてどっかのヒルズ族の考える事だがな」
「そうよ・・・ 考えが浅はかよ」
「そうだな、でもどっちにしろあの時俺が札束持ってなければお前も俺も確実にヤられてただろう
いや最悪『殺られてた』かも知れないんだぞ」
「そりゃそうかもしれないけど・・・ でも」
「俺にとっちゃ100万失う事よりお前を失う事の方がつらいんだ」
ああ言っちゃった言っちゃった。我ながら何と青臭くかつ似合わない台詞であろうか。
「・・・キョン」
「・・・ハルヒ」
「それは告白と受け止めて良いのかしら」
「ああそうだ、別に嫌なら良いんだぞ」
「ふ、ふん!! 嫌・・・ じゃないわよ」
「ハルヒ、そこに落ちてる札束使ってデートしてくれ」
「・・・全部は使わないわよ勿体無いから、それに半分はSOS団の活動費に充てる、これで良いわね」
「良いぞ、だったら残り半分は俺とハルヒで」
「山分けか」
急にハルヒの声が中年のおっさんぽくなった気がした。
「・・・キョン、・・・後ろ」
後ろに誰がいる?そうか、長門と朝比奈さんと古泉と鶴屋さんと谷口が祝福してくれてるのか。
ありがとう仲間よ、俺とハルヒは貴方達のお陰で無事結ばれました。
「サイレン・・・ サイレン!!」
サイレント?静かにしろだと? どんどん聴かせりゃ良いんだこのフジテレビのドラマにも負けない告白シーンを。
「署に来てもらおう」
突然俺とハルヒに手錠がはめられた。
気がつけば俺達は野次馬に取り囲まれていた。
そしてすぐ横にはサイレンを鳴らしたパトカーが数台停まっていたのである。
「お前ら2人を銀行強盗の容疑で逮捕する」
「「ハァア!?」」
「良いから連れてけ」
俺とハルヒはそのまま問答無用でパトカーに乗せられてしまった。
しかもマスコミが一斉にカメラを向けている。シャッター音がセミの音を掻き消す。
━━━━━
その後の事を掻い摘んで説明する。
なんでも数時間前にすぐ近くの銀行に若者数人が刃物とスタンガンを持って押し入ったとの事。
その若者らは100万円の札束を奪い逃走、
そしてその奪われた札束と俺らの足元に落ちてたイコール俺が持ってた札束の通し番号が一致したそうである。
なるほどそれではすぐ横にいて且つ札束でデートしようなどと言っていた俺らが捕まっても無理は無いわけだ。
しかしお解りだと思うが俺はここ数日銀行なんて行った覚えは無い。
この札束はチーズと引き換えに初老の紳士から貰ったものである。
俺はその紳士の特徴を取り調べの警察官に伝えた。すると翌朝その紳士は市内で逮捕された。
ちなみに俺とハルヒはお互い手錠と足かせで繋がれて鉄格子の中で一晩を過ごした。
そして分かった事なのだが、その紳士は実は麻薬ブローカーで
外国から仕入れた各種麻薬を国内のならず者に高く売りつけていたのである。
そしてその購入者の中にはハルヒが絡まれてた不良グループが含まれていたのだ。
要はその不良グループが麻薬欲しさに銀行強盗を働きその盗んだ金で紳士から麻薬を購入、
しかし不良側は紳士に手渡したはずの札束を何故か俺が持っていたので気が動転して逃げ出した、そういう流れのようだ。
『金は天下の回り物』とはまさにこの事である。
ちなみにその不良グループも昼前から夕方にかけて全員逮捕された。
紳士も不良らも容疑を完全に認めたとの事。また紳士の背後には大規模な暴力団の陰があったらしい。
俺とハルヒは数時間後無事釈放された。辺りは真っ暗になっていた。
「キョンどう責任とってくれるのよ」
「すまん、これは本当にすまん、申し訳ない」
「・・・でもまあ良いわ、めったに体験できない事だしね、彼氏と拘置所収監なんて、・・・・・・二度と体験したくないけど」
全くだ。しかも無実の罪での逮捕ときた。
―――それにしても「彼氏」か。何と良い響きだ。
「だってキョンはあたしの彼氏でしょ」
「ああその通りだ、ハルヒは俺の彼女だ」
「あたしの彼氏になったからには覚悟しなさい」
「ああ、十分覚悟できている」
俺はハルヒを振り向かせる。キスする為だ。
しかし俺が奪おうと思っていたものは逆にハルヒに奪われた。
「愛してるからキョン」
「俺も愛してるハルヒ」
「で、キョン? デートはいつ連れてってくれるのかしら」
「・・・・・・うっ」
■終
まあとにかく超展開の話です
途中やたらキョンが漢っぽくなってたのはスルーしてw
>>476 GJ、小さい女の子がお礼って言った時には冷や汗が出たが。
これは正直微妙かな。
>>476 よかったよ
タイーホにはびっくりしたが
破綻しすぎ…
>>476 やっぱり鶴屋さんといえばスモークチーズなのか…
483 :
1:2006/07/17(月) 05:20:08 ID:1CUYwzpA
4〜5レスほどお邪魔します。
正直に言おう。オレにはこの状況がまったく理解できていなかった。
ただ、異常事態なのは間違いない。天変地異が起こる前触れと言っても過言ではないだろう。
下手をすれば、次の瞬間には世界が消滅してしまうかもしれない。
そのくらい、切迫した状況だ。
いつもSOS団が集まる喫茶店の小さなテーブル席。
本来は2人掛けのテーブルに3人で座り、世界滅亡のカギを握る二人を前に、オレはどうするべきかと悩んでいた。
右手側に鶴屋さん、左手側に朝比奈さん。
そして、離れた位置にはこのセッティングを施したハルヒと、見物にきた古泉。そして何故かいる長門。
沈黙が重圧となってオレの胃をキリキリさせる。
事の起こりはそう、今日の放課後の部室だった。
まるでパブロフの犬的無意識で部室に向かったオレは、ドアをノックしてから頭のなかで3秒数え、
それでも返事がなければドアを開けるようになっている。
まぁ、大概はノックしてすぐに朝比奈さんのエンジェルボイスが返ってきて、アンニュイな午後のひとときを慰めてくれるのだが、
その日は3秒待っても返事がなかった。
アンニュイな気分が絶望的なものに変わったのは言うまでもない。
ドアを開けて中に入れば、部室の影の支配者、長門がいつもの位置で当然のごとく持っている分厚い本を、
見慣れた格好で規則正しくページをめくっていた。
朝比奈さんはおろか、ハルヒも古泉もまだ来ていない。
「あれ、まだ誰も来てないのか?」
カバンを置いて問いかけると、長門はゆるゆると顔を上げてアハ体験ができそうな微妙な変化の頷きを見せて、視線を本に戻した。
と思いきや、オレが部室に来るのを見計らっていたかのようにすぐ古泉がやってきた。
「おや、涼宮さんと朝比奈さんはまだでしたか」
古泉もオレと似たような第一声でやってきた。
「今日はちょっと遅くなってしまったものですから、僕が一番最後かと思っただけですよ」
ちらりと時計を見れば、なるほど、確かに全員集合していてもおかしくない時間だ。
ハルヒがこのまま現れないのは素晴らしいことだが、朝比奈さんがいないのはおかしい。
この魔窟と化した部室には、天使と悪魔のどちらか一方だけの出現ができない細工でもあるのか。
──まてよ……?
脳裏にイヤな予感が閃いた。ハルヒのヤツ、部室じゃ何もできないからと朝比奈さんを拉致って、
変な場所でオモチャにしてるんじゃないだろうな!? あいつのことだ、マジでやりかねん……。
「探しに行かれますか?」
詐欺師スマイルの古泉が、オレの表情を読んでそんなことを言う。すでに腰を浮かせていたオレは返事を返さず
部室を出ようとしたんだが……携帯がブルブル震えていることに気づいて座り直した。
マナーモードのままだったからまったく気づかなかったよ。
着信はハルヒからだった。
もうちょっと話の辻褄合わせてくれ。
てか、コレってハルパロなのか?
485 :
2:2006/07/17(月) 05:21:29 ID:1CUYwzpA
嫌な予感がした。予感と言うより、予言か。今のオレならノストラダムスよりも的確に未来を言い当てることができるね。
「思うに、着信を無視した未来よりも可及的速やかに電話に出た未来の方が、幾分か生存率が高まると思いますよ」
携帯の液晶画面を苦渋の表情で眺めていたオレに、古泉が嬉しくもないアドバイスを口にする。
なんでコイツは電話の相手がわかるんだろうか。言ってることは正論だがね。確かにそうだろうともさ。
分かっているんだそんなこと。だが、本能がそれを拒否しているだけなんだ。
この年齢でご先祖様に会いに三途の川を渡るのは勘弁したいので、意を決して通話ボタンを押す。
『遅い!』
「おかけになった番号は……」
『死にたいの?』
電話に出ても出なくてもオレは死ぬのか。たまにはボケらせてくれ。
「今、どこにいる? 朝比奈さんは無事なんだろうな」
愛娘を連れ去った誘拐犯とのファーストコンタクトに成功した父親気分で問いつめると、
珍しく電話口でハルヒが言いよどむ気配が伝わってきた。
電話だと必要最小限の会話しかしないこいつが、こんな態度を取るとは珍しい。
「どうした?」
『今すぐいつもの公園に来なさい。大至急!』
バカでかい声でそれだけを言うと、さっさと切りやがった。
行くしかありませんねぇ、とでも言いたげに肩をすくめている古泉と、パタン、と本を閉じる長門の姿。
オレに拒否権はないらしい。
公園にたどり着くと、そこには制服姿のハルヒが腕を組んで仁王立ちしている姿しかなかった。
コノヤロウ、朝比奈さんをどこに拉致りやがった。
ハルヒはオレを睨むや否や、むくれたようなアヒル口を見せて、いつもの喫茶店方向を指さした。
なにやら知らんが、怒っているような笑い顔に見えるのはオレだけだろうか。
「行きなさい」
「は?」
「駆け足!」
従わなければ拳が飛んできそうな勢いに、オレは訳も分からず走り出していた。なんなんだ、いったい?
ハルヒの殺人光線的な視線を背後にビシバシと浴びながら喫茶店に駆け込むと、後ろ姿だけでもすぐにわかるマイエンジェル、朝比奈さんの姿を見つけた。
ご無事でしたか、朝比奈さん。
ちゃんと制服を着ているし、ハルヒに悪戯もされていなようで一安心……と思ったら、その向かいには鶴屋さんも座っている。
この二人の組み合わせは別に珍しくもない。オレと国木田、あるいは谷口が一緒にゲーセンで暇つぶしをしているくらい、
自然な組み合わせだ。
だがな、この雰囲気はなんだ? いつものハイテンションな鶴屋さんは頬杖をついてだまりこくり、
朝比奈さんはいつもとは正反対のオーラを放っている。
つまり、ご立腹のようなのだ。
愕然としたのは言うまでもない。個人的な話で申し訳ないが、オレは「朝比奈さんが怒る」などという姿がどうしてもイメージできない。
ハルヒがしおらしく泣き、古泉が寡黙になり、長門が表情豊かに微笑むくらい、朝比奈さんが怒っている姿など思い描くことができないのだ。
もし仮にそんなイメージを思い描ける人がいれば、是非ともご連絡いただきたい。そしてその対処方法も考えてくれ。
486 :
3:2006/07/17(月) 05:22:36 ID:1CUYwzpA
見なかったことにして立ち去ろうと、朝比奈さんたちに背を向けたらそこにはハルヒ他2名が、
しっかり腰を落ち着けてこちらを睨んでいた。
ハルヒなんぞ、全盛期の大山倍達さえ怯ませそうな視線を送り続けている。
やめくれ、ハルヒ。おまえの視線はメデューサよりタチが悪いんだ。石にするだけでは飽きたらず、ピロリ菌までまき散らしそうじゃないか。
……ああ、そう考えたら胃が痛くなってきた。
「キョンくん、そこに座ってください」
ええ、朝比奈さん。あなたのお言葉なら、その椅子が死刑執行用の電気椅子だろうと拘束具が仕込まれたものであろうと、
喜び勇んで座りますとも。座ることでその表情にいつもの笑顔が戻るのであれば、ですが。
「座って」
お母さん、ボクは今日、無事に帰れないかもしれません。
そんなわけで、冒頭に戻るわけだ。
まさにクライシス。オレの一日のささやかな幸せ、部室を舞う仙女……もとい朝比奈さんがご立腹な状況など、
世界滅亡に等しい事柄だ。オレにハルヒのような能力があるのなら、ためらいなく世界を作り替えるであろう、
由々しき事態だ。
この雰囲気、その原因はそれとなく察しが付いている。
朝比奈さんと鶴屋さんはケンカでもしたのだろう。どんな理由のケンカかはわからないが、仲の良い親友同士なら
そんなことがあってもいいはずさ。歓迎すべきことではないが、健全じゃないか。
しかしな、何故そこにハルヒが加わり、どうしてオレが派遣されなければならないんだ?
古泉あたりなら流暢に解説してくれそうだが、あの野郎、傍観者を決め込んでハルヒと一緒に
爽やかスマイルを送り続けていやがる。長門も本ではなくこちらを見ているが、何を考えているのかさっぱりだ。
「あー……いえ、なんでもないです」
ちょこっと口を開いただけで二人に睨まれた。
もうダメだ。胃がキリキリどころがギチギチ音を立ててねじ切れそうだ。
しかしハルヒに着せ替え人形にされて、マシュマロバディを弄ばれ、耳かぷされても怒らない朝比奈さんがここまで怒るとは、
いったいどうしたことか。
ケンカ相手が鶴屋さんなのも、まぁ間違いない。しかし、オレのイメージにある偉大な先輩が
朝比奈さんを怒らせるというのも納得できない。
「ねっ、キョンくん!」
「はぃ?」
なかば現実逃避で考えていたところ、鶴屋さんに不意に呼ばれれば、声が裏返るのも仕方がない。
「ちょっと聞きたいことがあるっさ!」
「ちょ、ちょっと鶴屋さん、やめて……」
鶴屋さんの言葉にかぶせるような朝比奈さんの発言は、出だしこそ大きな声だったが、尻すぼみな結果に。
ああ、可憐です朝比奈さん。あなたはやはり地上に舞い降りた天使。ときどき翼が黒く見えるのは気のせいでしょう。
「なんでさっ、みくるっ! この場所だってハルにゃんがセッティングしてくれたんだよっ!」
「そ、そうだけど……ダメ! ダメなの! ダメなんです!」
何がダメなのかわからないが、朝比奈さんが言うのだからダメなんでしょう。ええ、ボクもそう思いますとも。
そして再び訪れる沈黙。
ど、どうすればいいんだ……コレ? と思ったそのとき。
484は476へのレスね
488 :
4:2006/07/17(月) 05:23:44 ID:1CUYwzpA
「うあっ!? あ、いや、すいません。ちょっと携帯が」
いきなり携帯が震えて、さすがに驚いた。メールが着信している。差出人は……長門? ただ一言簡潔に「トイレへ」と書いてある。
ああ、長門よ。こんな状況でもオレを助けてくれるのか。おまけに胃腸の健康状態まで気にしてくれるとは。
キャベジン長門の称号か、図書カード3,000円分のいずれかを進呈したい気持ちでいっぱいだ。
沈黙を保ち続ける朝比奈さんと鶴屋さんに、さも緊急の用事が入ったとばかりに携帯を持っていることを意識させ、急いでトイレに駆け込んだ。
ちらりとハルヒたちの席も目に入ったが、冬眠前のツキノワグマが鮭を狙うような目つきで飛びかかろう
としていたのは気のせいだろう。
「ふぅ……」
トイレは男女兼用のトイレだ。このまま逃げるべきかと算段しつつ一息を吐いたそのとき、控えめな温もりを
持つ手の平がオレの両目を覆った。
「だ〜れだ」
この天使のラッパのように清らかなお声。忘れるはずもありません。ええ、忘れるものですか。
可憐さそのまま、グラマー度はボンド・ガールも真っ青な朝比奈さん(大)だ。
「ふふ、お久しぶり」
この笑顔、このお姿。まさにあなたがオレにとっての聖女です。特にこの状況ならば、あなたにしか
泣きつける相手はおりません……というか、なんでここに朝比奈さん(大)がいるんだ? 長門からの指示だから、
あいつが現れると思ったんだが。
「え? じゃあ、長門さんには分かっちゃってたのかしら」
「なんのことです? というか、鶴屋さんとのケンカの原因はなんですか」
「それは、禁則事項です」
ピッ、と人差し指を唇に当てて、聖人君子さえも魅了してしまうようなウインクをされれば、オレ如き凡人が問いつめることなどできるわけもない。
「でもキョンくん、そのままだと倒れちゃいそうだから答えをあげるね」
「は? えっ……答え?」
ちょいちょい、と手招きされれば、世の中の95%の男は近寄りますとも。残り5%はハルヒ曰く
ゲイらしいですが、オレはノンケですので断る理由がございません。
が、エンジェルヴォイスで囁かれたその言葉は、ゲイのほうがよかったかと思えるセリフだった。
「マジですか……」
「マジマジ、大マジ。あ、でも出来れば周囲に聞こえるような大きな声で言ってもらいたいなぁ。もちろん、ウソはダメよ」
なんだってそんなことを……。どんな罰ゲームですかそれは。
「それは、この時間に駐留している私に聞けばいいと思うわ」
「まぁ、朝比奈さんのお願いを断る理由はありませんが」
「あ、そろそろ時間だわ。それじゃ、頑張ってね」
ウィンクひとつ、個室トイレに姿を消した朝比奈さん(大)は、そこから出てくることはなかった。
489 :
5:2006/07/17(月) 05:25:26 ID:1CUYwzpA
そのまま別の時間軸へ移動したのだろう。前触れもなく現れて風のように去っていくのは相変わらずだ。
さて、答えをもらったはいいが困った答えだ。しかも、なんでこの状況でそんなことを言わなければならないのか、
さっぱりわからん。
今回は朝比奈さん(大)にとって切迫した状況ではなさそうだし、もしや引っかけでもあるのだろうか?
だが……う〜ん、どうするべきか。
無言で席に戻り、それでも考え続けていたためか、目の前にいる二人の天使(この場合は悪魔かもしれん)が
方や上目遣いの冷ややかな目で、方や細めた鋭い目でオレを睨み続けている。
「え〜っとですね……なんと申しますか、お二人の気持ちはわかりました」
朝比奈さん(大)からもらった答えを脳内でリピート再生しつつ、一言一句間違わずに言ってみる。
目の前の可憐な上級生二人は、けれど「何言ってんの?」とでも言いたげに、顔にクエスチョンマークを浮かせていた。
……本当に合ってるんですよね、朝比奈さん(大)?
「しかしですね」
ちらりとハルヒ組の席に目を向ける。
古泉は面白そうなニヤケ面を、長門は焦点があってないような目を、そしてハルヒは噛み千切らんばかりに
ストローをくわえて経過を見守っている。
ああ、朝比奈さん(大)。こんな状況であんなセリフを大声で言うことなんてオレにはできないですよ。
でも、小声で囁くのはきっと、未来では規定事項なんでしょう?
オレは目の前の朝比奈さんと鶴屋さんに顔を近づけ、周囲にバレないように小声で答えを囁いた。
結果として、朝比奈さん(大)からもらった答えで正解だったようだ。
オレの言葉を聞いて、朝比奈さん(小)はホッとしたように、鶴屋さんは待ってましたと言わんばかりの
笑みを浮かべて、その日はお開きとなった。どうやってケンカを収めたのかハルヒに問いつめられたが、その辺は割愛しよう。
翌日、無事にその日の授業を終えたオレはまっすぐに部室へ向かった。
ノックをすると、すぐに返事があった。
天女が舞い戻ってきてくれて一安心だが、昨日の話をすることが優先だ。
「キョンくん、昨日はごめんなさい」
部室に入るや否や、オレが口を開く前に朝比奈さんの方からちょこんと頭を下げてきた。
いえいえ、いいんです。そんな愛くるしい謝罪をされたら、怒るんじゃなくて抱きしめたくなるじゃないですか。
「説明してくれますよね?」
朝比奈さんはエプロンドレスの裾をつかんで、もじもじしている。これは襲わない方が失礼かもしれん、という愛くるしさだが、自粛しよう。
490 :
6:2006/07/17(月) 05:27:11 ID:1CUYwzpA
「ええっと、鶴屋さんが言い出したことで……。卒業前にカワイイ後輩の背中を後押ししてあげよう、とか言われて。それで、その……」
そりゃ確かにあなたと鶴屋さんがケンカでもすれば驚きますよ。言わなくてもいいようなことさえ口走るってもんです。
シチュエーション的には、昔から使う古された王道パターンだ。
「私と相手、どっちを取るの!?」ってね。
王道こそ真理とはよく言ったもので、まんまとオレはハメられた。朝比奈さんも芸達者になったもんだ。
結局オレは、朝比奈さん(大)にもそそのかされる形で本音を口走ったわけだが……。
「あ、でも、私も鶴屋さんも、昨日の話は聞かなかったことにしますから。
鶴屋さんも『自分の気持ちは口にすれば覚悟できるもんさっ!』とか言ってましたし。
それに涼宮さんには、私と鶴屋さんのケンカの原因がキョンくんってことにして呼び出しただけで、
ええっとその……正しい顛末は……その、伝えてないと、思います」
ええ、ええ、是非そうしてください。そこらへんは信用してますよ。
本当に申し訳なさそうに暗い顔をしないでください。そんな表情をされると、オレがいじめてるみたいじゃないですか。
なんとかこの空気を変えなければ……。
「でも本当は、あの場を切り抜けるために適当なこと言ったんですよ」
「へっ?」
「本当は……」
つい、っと一歩踏み出せば、朝比奈さんは2歩くらい後ろに下がる。
「はぇ? あの、えぇ!? きょ、きょきょ、キョンくん、でっ、でもそんな……」
……だめだ、オレにシリアス路線は維持できないらしい。焦る朝比奈さんを見ていると、自然と頬が弛んでしまう。
それに気づいたのか、朝比奈さんも焦り顔から笑い顔に戻ってくれた。その笑顔でこの魔窟の邪気をつねに祓い続けていただきたいものである。
「もう、冗談なら冗談っぽく言ってくださいよー。びっくりしちゃいました」
「すいません」
オレは素直に謝罪した。余計な一言を付け加えて。
「でももし、本気だったらどうしました?」
「もうっ! そんなこと……」
SOS団専属のメイド兼書記係は、大人になっても変わらないクセなのか、人差し指を唇に当て、ウィンクをしてこう言った。
「禁則事項ですっ!」
〆
「禁則事項です」でシメるのはもうマンネリだな。
どいつもこいつも使ってる感じがする。
>>483 乙。一番乗りだと良いな。
うーん、うまく朝比奈さんが動いてますね…
自分が書くと、動かなくて困るんです。
試作している作品で、長文なのに、朝比奈さんのセリフがなんと3つしかなくて、
仰天したので間違いないです。
ある意味原作通りっていえばそうなんですが…
うまく動かすコツとかって無いもんですかね?
>>476 ちょっとキョン無責任すぎないか…
キーホルダー辺りは許せても食べ物とか本は感想求められるだろ
>>491 その効果が最大限に引き出されていればいいんだけどね
>>476 最後に得たのがハルヒの告白か。素直すぎるハルヒが唐突だけど、乙。
ここのスレはもうエロパロスレではないな。
まあいいじゃないか、面白ければ
昨日、ハルヒの街にいってきました
学生さんたちはあんな坂を毎日上り下りしているのか・・・
宇宙人や未来人や超能力者はいなくてもバケモノはいたってことだね
夏休みだし西宮界隈は大賑わいだろうね。
面白ければいいってのもなんだかな。
別にエロマンセーて訳じゃない。
何かデジャヴを感じるレスだが
一行目と二行目が矛盾してないか?
501 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 08:43:09 ID:z7vgU7T9
497面白くすらないような・・・・・
あげてしまってスマソ
やっつけネタ多くなってきてるような気がする……
カミノキエルヒ
「まるで多幸症のようにニコニコとしている。」はきわどい表現。
「多幸症的な」とするかもしくは暗喩で用いる用法は定着しているが、
この表現の「まるで」の部分に作者の患者への差別的感情を感じさせる。
俺もおもた
俺も>504に同意
所詮パロディなのに過剰なクオリティを期待して批評してる人が多いスレだな
俺はパロディにそこまで求めてないし、出来のよさはともかくパロディって感じだが
ちょっとそこだけは気になった
どーもこんにちわ
前スレの48です
また書いたので投下してみます。
「今朝未明、大型で強い閉鎖空間が近畿方面を直撃しました」
「……台風かよ…」
古泉のビミョーにボケを挟んだ報告に俺はビミョーなツッコミをいれる。
放課後の部室。
先程まで、掃除当番中の朝比奈さんを除く団員全員が揃っていたのだが(別に何かするでもなかったが…)、
ハルヒが突然、何かを思い出したように立ち上がると、そのままスタスタと部室を出てどこかへ行ってしまった。
トイレか?
まぁ、あいつの突飛な行動にも、もう慣れたものだった。
ハルヒが出て行った直後、古泉が切り出したのが、さっきの報告。
「キョンくん…涼宮さんに何かしましたか?」
古泉の問いに対して、俺はここ数日間のハルヒと自分の関わりを思い出してみた。
「いや…特に何も…」
本当のことだ。
最近は、いつものように部室に集まって。
いつものようにハルヒがどっか行くとか言い出して。
いつものように結局何も無くて終わる、といった毎日だった。
「そうですか…僕はてっきり朝比奈さんと何かやらかしたのかと…」
「おいおい、勘弁してくれよ」
「…だって、今日は朝比奈さんを見かけてませんし…」
「掃除当番なだけだって…」
「そうですか」
古泉はどうにも納得していない様子だった。
でも、正直ハルヒの不機嫌の原因を全て俺の責任にされても困る。
俺だって四六時中あいつと一緒にいるわけじゃないんだし。
「わかりました…」
そう言うと、古泉は椅子から立ち上がった。
「おい、どこ行くんだ?」
「すみません…今日は失礼させていただきます」
古泉はそのまま部屋を出て行った。
閉鎖空間の原因が俺じゃなかったから、それ以外の原因を探しに行ったのだろうか。
それとも『機関』とやらでその原因の会議でもするのか。
「……おそらく…」
うお!びっくりした。お前本読んでたんじゃなかったのか。
二人だけになった途端に長門がしゃべり始めた。
で、おそらく何だ?
「おそらく…何もしなかったのが要因」
え?何もしなかったのが要因って、どういうことだ?
「長門、それってどういう…」
「あなたはあの日のキス以来涼宮ハルヒに何もしていない」
うっ
「女の子は恋のことでは純情で臆病になる」
長門は続ける。
女の子?純情?臆病?ハルヒが?
「本当はHなこともしてみたいけれども、自分からは言い出せないから…
男の子から積極的にアプローチしていてくれるのを待ってるものなのよ」
そっ、そうなのかぁーー?!
って言うか、今日の長門はちょっと変。
女の子とか恋とか、自分からこんな話するヤツじゃなかったはずだ。
…って、ん?
ここまで来て俺は長門が今手に持って呼んでいる本に目が行った。
『少女コミック』
なーるほど…
長門も案外影響されやすいんだな…
なんて思っていると、長門は『少女コミック』を傍らに置くと、椅子から立ち上がった。
そして、トテトテと歩いてこちらに向かってくる。
「……来て…」
俺のすぐ側まで来ると、俺の服の袖をクイクイと引っ張りながらそんなことを言う。
何だ?何処へ連れてこうってんだ?
とりあえず、ハルヒもいなくなって暇になったので、ともかくも長門の言うとおりにしてみることにした。
放課後でほとんど誰もいなくなった校舎内を、俺は長門についていく。
「…ここ」
やがて、長門はとある場所の前で立ち止まった。
「…保健室…ねぇ…」
俺がハルヒに何もしなかったことと、保健室と一体どういう関係があるのか…
ひょっとして、さっき出て行ったハルヒがここにいるとでも言うのか。
うーん…
ハルヒのキャラ的に想像しづらいけど、長門が言うように少女漫画的な展開があるとしたら、
ハルヒがここで独りふさぎこんでいるのか?
「入って…」
俺が考え込んでるのをよそに、長門は保健室の扉を開け、中に入っていく。
「お…おい、ちょっと待てよ」
何だかいやな予感がしたが、長門がさっさと行ってしまうので、俺は慌てて続いた。
……あれ?
誰もいない。
今入ってきた長門と俺以外誰もいない。
「何なんだ…?」
おかげでわからなくなった。長門は何がしたいんだ?
俺が長門の様子を見ていると、長門はカーテンで仕切られたベッドの方へ向かって行く。
あ、まさかその中にハルヒが…
シャッという音とともに長門が仕切りカーテンを開ける。
…うーん…
やっぱり誰もいないぞ。
じゃぁ、何で保健室なんかに来たんだ。
「大丈夫、誰もいない」
何が大丈夫なんだ?
何だ?さっきの行動は誰もいないことがわかってて、そのことを確認したのか?
別に二人だけで話がしたいんなら、さっきの部室でも同じ状況だったのに、何でこんなところへ。
俺が頭の上に「?」をいっぱい浮かべてる中で、長門はひとしきり部屋の様子を確認し終えると、
トテトテと俺の方に向かって来る。
そして、俺の目の前で立ち止まり、俺の顔を見上げた(身長差のためどうしてもこういう格好になる)。
「今から予行演習を始める」
は?予行演習?何の?
「あなたと涼宮ハルヒの次のステップの予行演習」
は?えぇっ?!次の段階って…
「まずはキスから…」
長門は俺の目を真っ直ぐに見つめている。
白い肌に感情の欠落した顔。ボブカットをさらに短くしたような髪が、それなりに整った顔を覆っている。
しかし、そんなに見つめられると、なんというか、恥ずかしい。
「え…と、その、ここで?」
俺は何だか場が持たなくて、よくわからない質問をしてしまう。
「大丈夫。問題ない。この空間をわたしの情報制御下においた」
長門の言葉に、俺はハッとなって自分の後ろを振り返る。
そこにはただの壁だけがあった。
そう、壁だけ、本当に壁だけ。俺たちが入ってきた扉が無くなっている。
「他の有機生命体は干渉できない。これで安心して存分に演習できるはず」
いや、しかし、この行動は…
俺の頭に、濃い眉と清潔そうな長い髪が印象的な元学級委員長の顔が浮かんだ。
そして、背スジに薄ら寒いものを感じるのだった。
「……?…」
長門は相変わらず俺の方を見つめ続けている。
どうやら本人は大真面目なようだ。
どうしよう、何だかだんだんどうでもよくなってきた。
というか、この状況が長門に『はやくぅ』と急かされているみたいでなんだか良いかもしれないとか思い始めていた。
実際には『はやくぅ』なんていいそうも無いが。
「……早くして…この空間も永久に留めておけるわけではないから」
うーん…精々こんな感じか…でもいいや。
俺はもう調子に乗ってしまうことにした。
長門の方に向き直ると、長門の両肩を両手で掴む。思ったよりも華奢だ。
細すぎる。力を入れたら壊れてしまいそう。
長門の瞳は真っ直ぐに俺の瞳を見つめている。
俺を見つめる闇色の瞳。何だか吸い込まれてしまいそうだ。
俺は、ゆっくりと長門の顔に、自分の顔を近付けていく。
「長門…あの…目を閉じてもらえないか…」
何だか、じっと見られてると恥ずかしい。
「問題ない」
いや、俺の方は問題なんですけど。
「それよりもわたしにはこの演習を隈なく見届ける義務がある」
そうですか。じゃぁ。
俺はゆっくりと目を閉じる。
こういう時って、女の方が目を閉じるんじゃなかろうか。
などと、考えながらも、自分が目を閉じてしまうと不思議と落ち着いてくる。
「……有希…」
俺は調子に乗って、いつもの苗字ではなく名前の方を呼びながら、
ゆっくりと長門の唇に、自分の唇を重ねた。
柔らかい。長門の唇。
不思議な感覚だ。女の子の唇ってこんなに良いものだったのか。
正直、ハルヒとキスしたときは、非常時で、もう無我夢中で、よくわからなかった。
俺は初めて覚える感覚に感動した。
が、
「……━━━━!!」
し、舌が!長門の舌が俺の口の中に入り込んでくる。
こ、こいつ何処でこんなこと覚えて…
「うわぁっ!!」
俺は思わず長門の肩を掴んだ手に力を込め、長門を引き剥がしてしまった。
目の前にはペロッ舌を出したままになっている長門の顔。
その舌先から長門の唾液(?)が糸となって俺の唇まで繋がっている。
「何故?男の方から勝手に話すのはルール違反」
長門の咎めるような口調。
でも、仕方ないじゃないか。
「いや、そ、その…し、舌が…」
言いながら思った。
俺の方が女の子みたいだ。
「お互いの舌を絡めるのは次のステップでの必要事項」
そりゃ、そうかも知れないけど、こっちは初めてなんだから。
「舌を絡めあうことで性的興奮を高めあうのは重要」
性的って…
「続ける。どうしてもやりにくいなら、わたしは目を閉じるから」
そう言って長門は自分の唇をやや上に向けたまま。ゆっくりと目を閉じた。
うわ、これって『はやくぅ』って言ってる体勢だ。
でも、あらかじめ唇がやや半開きになってるのが、『やる気』って感じで怖い。
ええい!女々しいぞ!俺!
長門がここまでしてくれてるんだ。
俺も『本番の予行演習』ということで腹を括れ。
「いくぞ…長門…」
「………」
長門は何も答えない。先程の『はやくぅ』のポーズを維持している。
俺は再び長門の唇に自分の唇をゆっくりと重ねると、
今度は自分から舌を入れてやった。
お互いの舌が触れ合ったとき、長門の身体がピクリと震えた。
そんな気がした。
「んんっ…んっ……」
いままで聞いたことのない長門の声。
声と言うか、これは自然に漏れてしまう音のようなものなのだろう。
よくわからない。だって、こんなことは初めてだったから。
どうしたら良いかよくわからないけど、俺はとにかく一生懸命に自分の舌を動かした。
長門の口内を這い回るように、いろいろと動かしてみた。
自分の舌を彼女の舌の上においたり、舌のまわりに巻きつけたりしてみた。
これでいいのだろうか?このやり方で合ってるんだろうか…
いや、正解なんてわからない。
でも、唯一つ解っていることがある。
とても、気持ちが良い…
「はぅ…んっ……」
今、俺たちはどうなっているんだろう。
気になった俺は閉じていた目をゆっくりと開いてみた。
そこにあるのは長門の顔。意外にもその頬は今までになくピンク色に上気して見えた。
そんな、本来アンドロイドであるはずのこいつが、こんなことって…
俺は、ゆっくりと長門から唇を離した。
絡み合った二人の舌が離れ、先程と同じように透明な糸がお互いの間に引かれる。
「長門……お前…」
顔を離してみると、その現象は顕著に見ることができた。
長門の頬がうっすらと赤みを帯びている。
「……ん…」
長門がゆっくりと目を開ける。
その瞳は心なしか潤んで見えた。
「性的興奮は高まった?」
そう言いながら、長門が俺の股間に手を伸ばしてくる。
うわっ、そんな、ヤバい。
抵抗する間も無く、長門の手に触れられてしまう。
「………」
正直、性的興奮は高まっていた。
ちょっと硬くなってる…
「良い調子」
ごめんなさい。とても順調です。
そろそろ手を離してくれませんか?俺の大事な部分が更にヤバくなりそうで…
「では続ける。今度はわたしの胸を探りながらして」
などと、俺の股間を探っている長門が言う。
えっ?胸って…やっぱり最後までしちゃうのかな…
でも、はっきりいって、俺の股間がだんだん収まらなくなってきているかもしれない。
このまま行っちゃっていいのか?
でも、長門はなんだかヤル気まんまんだし、良いのか…
俺は言い知れぬ罪悪感にを覚えながらも、
やっぱり男の子だった。
長門の肩に片手をかけると、もう片方の手を、長門の胸の辺りに伸ばしていく。
が、そこで戸惑った。
何と言うか、『探る』って言うほど
「胸が無い…」
「…………」
「…………」
しまったぁああああああああぁあああああああ!!
ついポロリと口からでてしまったぁあぁあああ!!
あぁ、長門の身体が俺から離れていく。
さっきまでちょっと潤んだ瞳に見えていたのが、いつもの無表情だ。
というか、
「ひょっとして、怒ってる?」
いつもの無表情だけど、心なしか眉がつり上がってるような気がする。
「いくつかの段階を省略することにする」
次に長門が発したのはそんな言葉だった。
『胸を探りながらのキス』を省略するのはわかった。
『いくつか』って、何処をどう省略なさるのか…
「…キャスト・オフ……」
長門がそういった瞬間、俺の目の前で、長門がいつも着ている制服の上着が四散した。
細かい粒のようになって飛び散っていき、消えてなくなる。
長門風に言うところの「情報連結を解除した」のか?
凄ェ!
何が凄いって?
良く見ろ。
四散したのは上着だけじゃない。
スカートも無くなってるんだ。
上はセーラー服で、下はパンツ。でも靴下は残っている。
何ともマニアックな状態だ。
しかも、上のセーラー服のリボンは解けて前が開いているとは芸が細かい。
…っていうか
「いくつ省略したんだ?…」
かなり端折ってるよこれ。
「問題ない。一番重要な部分は残してある」
長門はそう言うと、傍らにあったベッドに腰掛けた。
そうか、このために保健室なわけか。
思えば最初からヤル気だったのか…
「さぁ、早く来て。有機生命体の男子が、女子のこの部分を暴くのは重要」
長門はゆっくりとベッドの上に寝そべっていく。
回りくどいが、要するにパンツはあなたが脱がせてねってことか。
わかったわかった。
あくまで『予行演習』な。
俺は自分にそう言い聞かせて長門の元へ向かった。
もっとも、これ以上進んだら『本番』であることに相違ないことは頭の片隅でわかっていたが。
たどり着くと、長門は仰向けに、膝を折り曲げた状態で寝転んでいた。
俺は長門の傍らに腰掛けると、彼女の腰に向かって手を伸ばしていく。
そして、パンツに手を掛けた。
「い、いくぞ…」
バカ!何がいくぞ、だよ。気合入れ過ぎだよ、俺。
「早くする。そこで時間をかけると、余計に羞恥心が高まる」
天井を見たまま、長門が俺に忠告する。
羞恥心が高まるのは俺の方なのか、お前の方なのか。
いや、この場合、『演習』対象となっているハルヒのことを言っているのか。
ハルヒに羞恥心ってあるんだろうか…
もし、あいつとこういう状況になったとしてもだ。
自分から脱いで、パンツを俺に投げつけてきそうな気がする。
などと、考えて気を紛らせながら、俺は長門のパンツを動かしていく。
なるべく素早く。今、膝を通過したところ。
残念ながら、膝を折り曲げた状態で、長門の大事な部分は隠れていてまだ見えない。
それでも、腰の部分にパンツのラインが無くなっている状態というのは見ていて興奮する。
長門の足首にパンツが掛かった。
「片方の足首に引っ掛けたままでする?」
「何処の知識だそれは……」
まったく、なんだかさっきからこいつの知識はどうにもマニアックな方面に偏っている気がする。
ともかくも、足首からパンツを抜き取った俺は、それをベッドの傍らに置いた。
いよいよか…
俺はベッドの上に乗ると、寝転んでいる長門の足元に膝を突いて座りなおす。
そうして、立てている長門の両膝に手を掛けた。
「長門…いいか?」
「許可をとらなくていい。本番では逆効果ともなり得る」
長門は相変わらず視線をこちらに向けない。
今となっては何だかそれが恥ずかしがってるようにも思える。
俺は、長門の両膝を拡げて行く。
目の前に露わになる長門の女性器。
控えめの陰毛は、柔らかな縦スジを隠し切ることは出来ず、
性器の柔肉の形がはっきりと目で判る。
初めて見る女性の大事な部分。
俺は頭に血が昇っていくのを感じ、自分の性器もまた反応し始めているのを感じていた。
「あまりその部分を凝視すると、羞恥心が高まる」
長門に言われて、俺はハッとなった。
いつの間にか長門のソコに見入っていた自分に気づく。
「何だ?やっぱりお前でも恥ずかしいのか?」
「違う、羞恥心が高まるのは涼宮ハルヒ。あまり過ぎると、暴走しかねない」
う、確かにそれはそうかも。
長門の膝を掴んでいた片方の手を、その性器に向かって這わせていく。
内腿を通過するとき、長門がピクッと震えたような気がした。
しかし、拒否はしてこないし、忠告もない。
これで良いのか。俺はそのまま手を進める。
「んっ…」
その部分に手が触れた時、長門の口から微かに息が漏れた。
柔らかい、柔らかい緩やかな双丘に俺の指が触れた時、長門がギュッとシーツを握ったのが見えた。
でも、ここからどうしたらいいんだろう。
わからない、わからないけど、とにかくその形を確かめたくて、俺は自分の中指を長門のワレメに這わせた。
微かに湿り気を帯びているような気がする。
「違う…」
天井を見つめたままの長門が言う。
あれ?俺、また何か間違えたか?
「違う、そうじゃない。きちんとわたしの目を見ながらやりなさい」
は?
「…と、涼宮ハルヒなら言うはず」
ホントかよ……
まぁ、ここまで来たら言うとおりにするか。
俺は屈めていた上半身を起こす。そして、寝転んでいる長門で、横に俺も横になった。
「長門、こっち向いて」
言われた長門は、素直に身体をこちらに向ける。
ちょうど、ベッドの上で向き合う状態になった。
「長門……」
こうした状態で、俺はまた、長門の股間に手を伸ばしていく。
再び、俺の指先が長門の性器に触れる。
が、長門の表情に変化は無い。
俺は長門の性器の上で、自分の手を動かし始めた。
もっと、弄るように指を使ってみようか…
うぅ…や、柔らかい…
少し力を入れただけで崩れてしまいそうだ。
乱暴に扱うことはできない、俺は逡巡するように、長門の縦スジを指でなぞり続けるのみだった。
「な、なぁ長門…これで良いのか?」
「いちいち確認しなくて良い」
あれ?何だかさっきまでと返答が違う。
でも、相変わらず長門は無表情のままだ。
いや、違う。違うぞ。
よーく見ると、眉毛がピクピクと動いている。
目の前にある長門の顔をよーく観察しているとわかる。
時折眉間に皺が寄ったりする。
何だ?こいつ、ひょっとして我慢してないか?
「ひょっとして、気持ち良いのか?」
「…おそらく、こういった行為で女性は性的興奮を得られると思う」
いや、そうじゃなくて、お前は、長門有希はどうなの?
何だかだんだんじれったくなってきた。
俺は上半身を起こすと、再び長門の足元に座った。
そして両手でもって長門の両足を拡げると、
我ながら大胆にも顔を長門の股間に近付けていった。
「あっ……それは…次のステップ…」
あぁ、そうだよ、これからは俺が積極的に進めてやるよ。
長門の股間をまじまじと見つめてみる。
うーむ、よくわからんけど、良くできてると言うべきか。
凄く卑猥に見える。
目で確認しながら手で触れてみる。
あ。これって開くのか。
ピッタリと閉じたままになっているワレメに指で触れ、左右に開いてみる。
「……ん…」
また、長門の内腿がピクッと震えた気がした。
俺の目の前に現れたのは鮮やかなピンク色。正に人間の内側といった感じの色。
そうか、よく『アワビみたい』とか言われてるのって、この部分のことなのか。
で、どうしたら良いんだ、これ?
「…よく濡らして…」
長門のボソボソとした声が聞こえてきた。
え?濡らすってどうすんの?
「…最初は手で…まず片手でゆっくり解して、柔らかくなってきたら、指1本入れてみて…また解して…少し濡れてきたら、舌で解す」
わかった。ありがとう、長門。
でも、さっきまでよりだんだん声が小さくなってきてないか?
…とは言っても、入れるって…ここで良いのか?
俺は拡げた性器の下辺に位置する窪みに指を近付けていく。
「……ふぅっ…」
その部分に触れた時、長門から小さく息が漏れるのが聞こえた。
うぁ…俺の指が、長門の中に吸い込まれていく。
そうか、ここが膣口ってやつか。保健で習った気がする。
え?でも?この穴、何と言うか、狭すぎないか?
だって、ここに挿入するわけだろ。男の肉棒を。
俺は別にサイズ自慢するつもりは無いが、とてもここに収まるとは思えない。
何故なら長門のこの部分は、俺の中指一本でもいっぱいいっぱいのような…
「ちょっと待って。指の反復の速度が強すぎる」
長門に言われて気づく俺。
ごちゃごちゃと考えながら、いつの間にか指を長門の中に出し入れしていた。
でも、長門の中って良い感触。
ヌルヌルしていて、でも、ところどころにデコボコがあって。
触っていて気持ちいい。
そうか、このヌルヌルしたのが濡れるってことなのか。
そういえば長門に出し入れしている俺の指が、だんだんとこのヌルヌルで覆われてきた。
や、『ヌルヌル』じゃない。これは『愛液』ってんだ、思い出した。
俺の中指が部屋の光を鈍く反射している。
「待って……速すぎる…」
あ、何だか、長門のここが解れてきた気がする。
さっきまでは直線的に動かすだけだったけど。
俺の指が若干だけど、本当に僅かだけど、横方向にも動くよ。
それに、指の滑りがよくなってきた気がする。
ひょっとしたら、指2本入るんじゃないか?
俺は、中指を抜き出すと、中指と人差し指をきっちりと揃えてまあ長門の中へ入れた。
「……あ…あぁ…」
うぁ…入ってくよ。
凄くきついけど、指2本入っていく。
長門の中の感触がより良く分かる。
特に、この上の天井部分が気持ちいい…
「……ま、待って…あっ…ダメ…」
長門が、珍しく大きな声を出したかと思った次の瞬間。
ピシャッ!と俺の顔に何かが吹き上がってきた。
何だ?なんだか生温かい…
「あ…」
その生温かい液体は、俺が指を挿入している長門の膣口の僅かに上方から噴出していた。
ひょっとして……おしっこ?
「うわぁっ!!」
俺は慌てて長門から身を離した。
いや、汚いとかそういうことじゃないぞ。決して。
「長門、別に汚いとかそういうわけじゃないから…」
何で言い訳してんだ俺は。
とにかくびっくりしただけだって。
「……………」
長門から返事が無い。
ただ、途中で止められないのか、長門の股間からはチョロチョロとおしっこが漏れ出していた。
いや、おしっこでいいのか?
だんだんと噴出す勢いが弱まっていく。
やがて、完全に収まると、長門はプルプルッと身体を震わせた。
やっぱりおしっこだったんだ。
「…………」
な、長門……?
長門は顔を背けている。こちらからは表情が見えない。
「……このように…」
な、何?
「…女性は男性に比べて尿道が短く、失禁しやすいので注意すること……」
そうですか。ごめんなさい。
でもな、長門
「お前、ホントは気持ちいいんだろ?」
「……違う…これはあくまで演習。擬似的にわたしが体現しているだけ。言わば演技」
演技……ねぇ…
ホントにか?
(続く)
続きは近いうちに書きます。
また、お願いします。
>>520 うはっ
エローイ
これじゃ生殺しデス先生!!
続きを強烈にキボンヌ
>520
キャストオフと失禁を冷静に誤魔化す長門にワラタ
続きガンガレ。
シリアスな批判の直後にスカトロ系?ぶっとんだ頭してるなオイ。
1行目でワロタw これから続き読む
525 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 12:56:36 ID:UaC4vhQl
520 521 522 524 525の人間性を疑うね。
>>527 まぁ、そう反応してやるなよ
いつもの奴だって、いつもの
だから?
>>523 差別批判の後に差別投稿したわけでも
スカトロ批判の後にスカトロ投稿したわけでもないだろ
それとも謝罪とかが入るまで次の投下するなってのか?
と釣られてみる
ここのやつら釣られ過ぎだろ、スルー覚えろよ。昨日といいまったく。
まあでもスカトロは断りを入れてから
>>2嫁
>>530SOS団のメンバーが差別問題を討論するようなSSを落とせばいいんじゃないか?
>>523 やたらことを荒立てて、本当は差別なんてどうとも思っていないんだろ。
下手に反応したら差別主義者だとか煽るつもりなんだろ?社会問題を荒しの道具にすんな!
>>520 ヒジョーにモエロス
気にせず続きを書いてくれ!(スカトロなら断り入りで…)
ついつい何か書きたくなってしまったので自作のSSを投下します。
ここに来たばかりの新参で、文才もありませんがご容赦の程を。
エロ描写はないですが、内容の読み取って頂ければ幸いです。
では、数レス使わせて頂きます。
風が吹いた。季節相応の生暖かい風……小さい頃は強い風が吹く日でもよく外で遊んだもんだ。
どちらかと言えば風は割と好きな方だった……あの日までは。
あの日…あの時以来俺は――風が嫌いになった。
「ふう……もう少しか」
俺は腕時計を見て時間を確認した。丁度十八時半を回っており、退社の時間の十九時までもうすぐというところだ。
上司からは、早々に仕事を切り上げて帰ってもいい……と言われたが、俺は残って目の前のパソコンと激しい攻防戦を演じていた。
……今日はお客がここに来る。無論退社時間も間近なこんな時に来るお客とは、取引先の相手という訳ではない。
「お先に失礼しまーす」
一年後輩の新入社員君が俺にそう告げて、オフィスを駆け足で出て行く。ここは走るの禁止だぞ、後輩君。
俺を残して誰もいなくなったオフィス。もうすぐ沈むであろう夕日の光がオフィス一面に広がった。
夕日に染まる中、俺は今日ここに来るお客の事を考えていた。
「二人に会うのは半年ぶりか……」
誰もいないオフィスで呟いた。……いかんな、最近独り言が増えた気がする。
深く溜め息を付きつつ、先日掛かってきた電話の内容を思い出していた。
電話での彼女の声は元気そうだった。俺を気遣ってくれていたのだろう、落ち着きのない感じではあったが。
途中だったデータをまとめて、俺はパソコンの電源を切った。
今回俺が担当する事になった商談関係の書類を鞄に放り込む。
……時間は十八時四十五分を過ぎていた。俺はオフィスの電灯のスイッチを切って、こじんまりとしたオフィスを後にした。
待ち合わせ場所と言っても、駅の真ん前や有名な犬の銅像の前で待ち合わせという訳ではない。
今回の二人と会う待ち合わせ場所は――この会社の屋上である。
普段働く小さなオフィスがこの雑居ビルの三階、屋上へはエレベーターで七階まで上がればすぐだ。
「……またか」
このビルのエレベーターは一基しかないため、退社時間間近となると上り行きはなかなかやって来ない。
俺は階段で屋上まで上がることにした。最近忙しくてろくに運動もしてないしな。
一日中パソコンと睨めっこを続けていたせいか、かなり疲労が溜まっているようだった。
「ちょっと階段を上るぐらいでこのザマとは……」
ついつい独り言が口から溢れてしまう。
数階分上っただけで、グラウンドを何周もしたかのように息が苦しかった。たまには休みを貰いたいもんだ。
七階まで上がった俺は、屋上へと上がる扉に手を掛けた。
この時間になると決まって屋上への扉は施錠されているものだが……今日は戸締りを忘れたのか、鍵が掛かっていなかった。
「泥棒に入られても俺は一切知らんぞ」
そう愚痴を言いつつ、扉に開けた。
屋上には誰もいなかった。まだ二人は来ていないようだ。勇み足だっただろうか?
大通りを見下ろせる場所へまで移動した俺は、鞄を置いて近くにあった手摺に触れた。
――屋上――手摺――そして――
吹き飛ばれてしまいそうな強い風が吹いた。
ふと眉間が歪むのを俺は意識した。今の俺はどんな顔をしているんだろうな。……鏡があっても見たくはないが。
俺は触れていた手摺を力強く握り締めていた。もしかしたらこのまま捻れば折れてしまいそうなくらいに。
ふと屋上の扉が揺れた気がして、俺は後ろを振り返った。
「待ち合わせの時間は……さすがですね、十九時丁度ですよ」
俺は扉から現れた彼女に向かいそう言った。
「久しぶり……キョン君」
目の前の……朝比奈さんは少し戸惑ったような表情をしていた。
思えば朝比奈さんより先に俺を待ち合わせ場所に来ていた事例はほとんど無かったな。
そう考えていた矢先に、また扉が開いた。
「……前会った時よりは随分と顔色が良いな」
朝比奈さんより少し遅れた現れたそいつは俺に向かってそう言った。
「そうでもないぜ?ここんとこ休みが全然貰えなくて大変なんだよ」
そう返答した。休みが貰えなくて疲れてるのは正解だったからな。
「……何だよその顔は。俺には会いたくなかったって顔するなよな。こっちだって仕方なく来てやってるんだ」
相変わらず口が回る奴だ。前みたいに一発ぶん殴れば大人しくなるだろうか?
特に今はぶん殴る理由はないから、殴ってしまうと確実に俺の八つ当たりになってしまうが。
「………」
朝比奈さんはさっきからずっと黙ったまま俺たちの問答を見つめていた。
「キョン君……ちゃんとご飯食べてる?前みたいに作って持って来ましょうか……?」
「大丈夫ですよ、朝比奈さん。最近はインスタントと冷凍食品ばっかりですけど、一日三食は欠かしてませんから」
元気だと胸を張ってアピールしておいた。
「そう……無理してない?大丈夫よね?」
自分で思っている以上に顔色は悪いようだった。実際問題、朝比奈さんでもわかるぐらいに俺は疲れていたのだ。
胸を撫で下ろした朝比奈さんが俺を見る。何とか誤魔化せたようだ。
「ちゃんと上着の準備はしてきてるな?随分と冷え込むだろうからな」
「こんなの持って出社して随分と周りに怪しまれたんだがな」
俺は左手に冬用のコートが入った紙袋を持っていた。
目の前の二人も熱そうではあったが、対策と言わんばかりにそれなりの服装をしている。
特に朝比奈さんはそのグラマーなボディラインがより強調されるような格好だ。こいつの方は……省略しておく。
俺は二人が今日ここに来た理由を知らされてはいない。防寒着を持って、今日のこの時間に必ず会いたいという事しか知らなかった。
だが、俺はここに来た理由を聞こうとはしなかった。薄々気付いてはいたからな。
無論二人も理由を話そうとはしなかった。俺がその理由を察した事に気付いたからだろう。
二人共、複雑そうな表情をしたまま黙り込んでしまった。……俺もそうだった。どう話を切り出せばいいだろうか。
雑居ビルの屋上に吹く風が急に止み、静寂が俺たち三人を包み込んだ。
沈黙を破るべく俺は気になっていた事を朝比奈さんに聞いた。
「朝比奈さん、長門と古泉には……」
「二人にはここに来る前に会って来ました」
長門と古泉はここには来ていない。来るなら俺に何かしらの連絡は必ずしてくるだろうからな。
「古泉一樹は大学の期末考査のレポートの締め切りが近くて手が離せないそうだ」
わざわざの解説役、有難い事だ。こういう点では古泉にも引けを取らないな。
「長門有希は、ご丁寧にも俺の腕に噛み付いてくれた。それに確か……」
そう言い掛けた所で、朝比奈さんが続けて言った。
「長門さんは一緒に行く事は出来ないと言いました。キョン君、貴方の事を頼む……と」
「……そうですか」
あの二人とは随分と会っていない。元気にしているだろうか?
「少なくとも今のあんたよりは元気そうだった。あんたもあいつらを見習ったらどうだ?……気楽に言うなと思われても仕方ないがな」
余計なお世話だ。俺は長門や古泉のように強くはない。そう言いたかったが、その言葉が心に強く圧し掛かった。
「さて、そろそろだな。準備、いや覚悟は出来たか?」
「キョン君……大丈夫?」
二人が揃って俺の表情を伺う。俺は出すことの出来る精一杯の表情を顔に出した。。
「ええ、大丈夫ですよ」
平気だと伝えつつ、動揺していたのだろう。俺の声は震えていた。心無しか紙袋を持つ左手も震えているような気がした。
俺は紙袋からコートを取り出して、それを羽織った。どう考えても場違いな格好ではあったが、そんなことはどうでもいい。
鞄を拾い上げて紙袋を中に押し込もうとしたその時に気付いた。充分震えてるじゃないか、俺。全然大丈夫ではなかった。
その様子に朝比奈さんも気付いたようだったが、何も言ってはくれなかった。俺のこの状態を察してくれたのだろう。
こんな時期に着るべきではないものを着てるんだ、自然と汗が出てくる。これは脂汗なのだろうか、それとも冷や汗なのだろうか?
どうでもいい事で自分を必死に誤魔化そうとしていたが、そんな時間的な余裕は無かった。
「じゃあ、行くぞ」
「キョン君……目を閉じていてね。すぐ済みますから」
二人が続けて俺に言った。俺はゆっくりと目を閉じ、大きく深呼吸をした。
そして――思い出していた。三年前のあの冬の日から今までの事を――
「では、失礼しました」
そう言って俺は職員室を後にした。今日は掃除当番な上に日直という面倒な組み合わせだった。
学級日誌を職員室の担任の元へ届けた俺は、既に合格している大学に提出するための書類の事に関して担任に聞かれていた。
何でも必要事項を書いた書類がまだ大学に届いていないらしい。ちゃんと期日前にポストに投函したんだがな。
思っていた以上に話が長引いた。途中で学年主任まで首を突っ込んできたからな。全く何故俺が文句を言われねばならんのだ。
俺は文芸部室へと足を進めていた。ただでさえ長話で遅れてるんだ、部室でハルヒに何を言われるか知れたもんじゃない。
心の中で愚痴を言いつつ、ふとある事を思い出し部室に向かう途中で足を止めた。
「ノートとペンケース教室に忘れてきちまった」
慌てて自分の鞄を覗き込むが、実際に忘れてきているのだろう。鞄の中には真新しいノートとペンケースが入っていなかった。
忘れ物を探してたって言えばハルヒも大目に見てくれるはずだ。実際ちゃんと忘れてるしな。
さっと体を翻して、俺は教室へと駆け足で向かった。
教室へはすぐに辿り着いた。職員室からは割りと近かったしな。
教室の扉を開けた俺にぴゅうっと身も心も冷やしてしまいそうな強い風が体を押し戻した。
「あれ?さっき出るとき窓はちゃんと閉めたはずなんだが……」
俺とハルヒの席に一番近い窓が全開で開いていた。確かに最後に教室を出たのは俺だ。
鍵は閉めてなかったから俺が教室を出てからまた誰かが開けたのだろう、こんな寒いのに誰だよ一体。
例年以上に今年は冷え込んでいるらしく、体調を崩して休む生徒も割と多かった。
寒いのを我慢しながらも窓をきっちり閉めた。一年間世話になった教室もこれで一安心だろう。
続いて忘れ物を確認すべく自分の机の中を見た。ノートとペンケースとの再開だ。
最後の授業だってのに、新品のノートを使わなきゃならんとは。一ページ弱しか書いていない綺麗なノートだ。
「実に勿体無い」
そう呟きつつ、俺は今日までの高校生活を思い出していた。
高校三年の冬、今は一月の二十日を過ぎた辺りだ。後一週間もすれば卒業式までの休みの期間に入る。
何とか卒業のための単位も充分取得しているし、卒業後の進路も決まっているから気楽なもんだ。
SOS団をハルヒが結成したのが一年の頃だったな。あれからハルヒのSOS団的活動は規模を拡げて行ったっけ。
教育委員会と戦おうとか、テレビ番組に出ようとか……さすがに規模の大きくなりそうな活動は俺が必死で制止したがな。
ハルヒには散々振り回された。でも充分過ぎる程の高校生活を味わえたけどな。これでもめちゃくちゃ感謝してるんだ、ハルヒ団長?
何だかんだと言われつつも、ハルヒのお陰で大学に合格出来たからな。感謝どころの言葉では片付けられないかもしれん。
半年前、成績の低さもあり志望した大学への進学をギリギリまで悩んでいた俺にハルヒはこう言った。
『あたしが勉強を手取り足取り教えてあげるから!』
夏休みの間、超教師と書かれた腕章を付けたハルヒにほぼ毎日泊り込みで猛勉強をさせられた。
その頃には、俺の両親もハルヒの両親も、俺たちやSOS団の事は理解してくれてはいたから説得には余り時間は掛からなかった。
……ハルヒの親父さんには、いやらしい視線を浴びせられ続けてはいたが。
その猛特訓のお陰で何とか俺の成績は上昇し、安定して飛行が可能なまでになっていた。
だがハルヒよ。自分の志望を大学を変更してまで俺と同じ大学を受験したのはどういうつもりだったのだろう。今度聞いてみよう。
だが悪い気は全くしなかった。大学でもあいつと一緒なら退屈しないで済みそうだったしな。所謂、腐れ縁ってやつだ。
その結果、俺とハルヒは揃って同じ大学に合格した。その時は部室でどんちゃん騒ぎして教師連中に怒鳴られたっけ。
大学と言えば、古泉は県外の大学を受験して何時の間にやら合格通知を受け取っていた。
長門は……いつもは俺が聞けば必ず何かしらの返答をくれていたが、今後の進路をどうするかは聞いても答えてくれなかった。
言いたくなかったのだろう、俺は深く追求したりは決してしなかった。
規制かかっちゃうかも。2分は待つといい。
高校生活も北高でのSOS団の活動ももうすぐ終わろうとしている。
長いようで短かったな。あの部室で朝比奈さんの淹れてくれるお茶も飲めなくなるのかと思うと残念でならない。
去年の春に卒業した朝比奈さんは、こっちの時間での滞在期間を延長して欲しいと上司に頼み込んで、特例として今もこの時間に滞在している。
県内の服飾の専門学校にしており、時間がある時はSOS団のマスコットとして顔を出してくれている。
もちろん教師連中が黙っているはずがなかったが、そこは俺とハルヒで教師共を入念に説得しておいた。
「さて、戻るか」
今日は朝比奈さんが来ている。早く美味しいお茶を頂きたいものだ。
過ぎ去った過去を思い出しつつ、俺はノートとペンケースを鞄に放り込んで。教室を飛び出した。
部室へ向かう俺の目の前に、丁度上階から降りてきたハルヒに会った。
「そんなとこで何突っ立ってるんだ?さっさと部室に行くぞ」
じっと何かを堪えたような表情をしているハルヒにそう言った。一体何なんだ?俺の顔に変な物でも付いてるのか?
「キョン」
ずっと黙ってると思ったら荒げた口調で俺を呼んだ。
「話があるからこっちに来なさい」
そう言って俺のネクタイを引っ張り上げる。首が絞まって痛い……どれだけ引っ張るつもりだ?ネクタイが切れちまいそうだ。
ハルヒはネクタイを物凄い力で引っ張ったまま俺を引き摺り、ある所連れて行った。
俺がハルヒに初めて引っ張られて連れて行かれた、屋上へと続くドアの前だ。
「いきなり何なんだよ。説明も無しに。卒業式前にネクタイが切れたらどうするんだよ」
ハルヒは無言のまま屋上へのドアを思い切り蹴破った。
本来は施錠されているはずなのだが、この前の文化祭公開用に用意した映画を撮影する際にハルヒがぶっ壊したまま、そのままになっていたのだ。普通直しておくだろう……何をやっているんだ。
などと考えていた俺をハルヒは屋上へと引き摺り出した。
何のつもりなんだと聞く間も無くハルヒは俺に向かいこう言った。
「あんた……あたしに何か隠し事してるわね」
直球だった。しかも断言系で。
「何よ、その顔は」
確かに俺はハルヒには黙っている事が二つあった。ハルヒの持つ力の事、そしてジョン・スミスの事だ。
未だにその事をハルヒは知らない。特にジョン・スミスが俺であるという事を俺の口から語りたくなかった。
「あんたさっきから変よ。今なら全部許してあげるから、綺麗に白状なさい」
「……何の事だよ、ハルヒ。さっぱりわからん」
一応、知らぬ素振りで誤魔化しておこう。大抵はこのパターンで何とかなる。ハルヒ相手では些か不安だが。
「言ったでしょ。今なら許してあげるから。隠し事は駄目」
ごり押し作戦か。ならこっちは篭城作戦で対抗するしか有るまい。
「答えなさい!」
ハルヒは俺の頬を両手で抓りながら、ますます口調を荒げる。どのみち頬を抓られたままでは答えようなどない。
だが、すぐに手を話して続けてこう捲くし立てた。
「答えるつもりがないなら、もういいわ!あんたが全部吐くまで」
と言いながら……おい、ハルヒ。何してるんだお前は。
「ここでストライキよ!」
屋上の手摺を乗り越えたハルヒは、事もあろうに危なっかしい行動に出始めやがった。おいおい危ないっつーの。
どうやら本気でストライキを敢行するようだ。鉄柵を掴んで、以下にも牢獄に閉じ込められた囚人のように俺を睨み付けた。
「やれやれ」
俺が話さなかったら、いつまでここでストライキをするつもりなんだハルヒは。ついついお得意のポーズが出てしまう。
「ハルヒ、危ないから戻って来い。部室でみんな待ってるんだろうが」
「他のみんなは関係ないの!いいから答えなさい!」
「いつまでストライキするつもりだ」
「あんたが隠し事を全部話すまでって言ってんでしょ!アホキョン!」
押し問答が続く。隠し事があっても絶対に話すわけにはいかない。だが、俺はふと気付いた。
……怒鳴るハルヒが涙目になっているということに。気付いてはいなさそうだった。
本気で知りたいのだろうか?今にも泣き出しそうになってきている。そんなハルヒを見てどうしようかと複雑な気持ちになった。
「どうなのよ!何とか言ったらどうなのよ!」
崩れ落ちそうになるハルヒを見て、少しは真実を話してもいいんじゃないだろうかと思った。それ程までにハルヒは必死だった。
こんなとこで泣き叫ばれたら俺が周りから何と言われるかわからん。下から丸見えな上にドアも開きっぱなしだからな。
「はぁ……わかった。わかったからこっち戻ってこい」
「……本当でしょうね?」
「教えてやるから。その柵上れるか?」
ようやく落ち着いたのか、赤くなった目で周りを見渡すハルヒ。どうやら向こう側からだとハルヒの身長では無理なようだ。
「聞いてやるから。……そこで言いなさいよ。全部」
「こっちに戻ってきたら教えてやる。そこ危ないだろう」
「戻れないのよ。段差足りないし。だから今そこで言いなさい」
また駄々を捏ねるのかハルヒは。そう思いつつ俺は手摺をよじ登った。
「な…なによ!危ないじゃないの!あっち行きなさいよ!」
先に危ない事したのは一体誰だよ?俺の身にもなってくれ。
ふと下を見ると下校中の生徒が何人もこっちを見上げている。そりゃあ嫌でも目立つだろうからな。
「ほらこっちだ。手、伸ばせるか?」
「約束よ。さっきの事もちゃんと聞かせてもらうからね」
「ああ、わかったから手を伸ばせよ」
久しぶりにハルヒの晴れ晴れとした笑顔を見たような気がする。何ともいい気分だ。
ハルヒの手を取り、柵を乗り越えさせようとした時だった。
その時――今まで体験した事の無いような風が吹き、俺とハルヒを包み込んだ。
ハルヒの身体が強風に押し戻されたかのように空中に浮くのが見えた。
一瞬何が起こったのかわからなかった。ハルヒの手を握った俺の身体も大きく揺れる。
動転していた俺の視界にハルヒが足場を踏み外す様子が入った。ハルヒの表情が……見えなかった。
俺までもが足場を失って体勢を崩してしまっていたからだ。どうしようもなかった。余りの唐突な出来事に頭が回らなかった。
俺は飛びそうな意識の中でハルヒの身体を引き寄せた。ハルヒの体温が伝わってくる。
「キョン!」
俺を呼ぶハルヒの声が聞こえた。俺はハルヒの身体を抱きしめたまま――強烈な激痛と共に意識を失った。
消え行く意識の中で俺の視界に今まで見たこともないような表情をした古泉と朝比奈さん、そして明らかに動揺を隠し切れない表情をした長門の顔が映ったいた。
抱きしめていたはずのハルヒの姿が無かった。ハルヒは俺の横にいるようだった。だが俺はそれを確認する事が出来なかった。
首の骨が折れてしまっていたのだろうか?横を向く事が出来ないまま、俺の意識はそこで途切れた。
俺は数時間後に病院で目を覚ました。古泉が発した信じられない言葉――決して信じたくなかった言葉を目覚まし変わりに。
幸い俺は軽症で済んだために、数日で退院した。
古泉曰く、持っていた超能力はいつの間にか消え去ったと言っていた。
情報統合思念体の判断により長門も、その能力の全てを失った。実質的に人間と同じような存在になったのだそうだ。
退院した俺は家に引き篭もった。何もかもがどうでもよかった。あれから俺は――失意のどん底にいた。
ハルヒの親父さんやお袋さんに顔向けなど出来るわけもない。俺は自分を責め続けた。
何度も朝比奈さんや長門、古泉も俺の家に来てくれた。谷口や国木田も俺の様子を見舞いに家に来てくれた事もあった。
だが、俺はみんなに会いたくなかった。
俺は卒業式には出なかった。それに大学への進学も辞退した。
何が楽しくてハルヒのいない卒業式に出たり、大学なんぞに行かねばならんのだ。
それは半年後、お袋が親戚の伝で県外の会社を紹介してもらうまで続いた。
俺は仕事に没頭し必死で忘れようと試みたが、それでもあの出来事を忘れる事など出来なかった。
こっちで仕事を初めて以来、俺は地元には帰ってはいない。帰るとまた思い出しそうだったからだ。
過ぎ去った忌まわしい過去を振り返りつつも、俺はすぐさま現実へと引き戻された。
ほんの数秒間だけ目を閉じていたつもりだったが、その数秒間は俺にとってはとても長かったように感じられた。
「行きますね」
朝比奈さんの声がした。その直後、一体何度味わったのだろうか……体が捻じ曲がりそうな感覚が俺を襲う。
物の一瞬の出来事である。辿り着いた先が何処なのか、俺はわかっていた。
今は――三年前の冬、俺の心に楔を打ち込んだ――あの日の放課後だ。俺たちは北高の職員玄関の前に辿り着いた。
この時の気温の低さが凄く堪えた。コートをちゃんと持ってきて正解だったな。
「問題なくこっちに来れたようだな」
「ええ……でも、それ程長くはいられません」
俺の後ろから二人の声が聞こえる。他にも何か話をしている様子だったが、耳には入ってこなかった。
もう二度と見るつもりのなかった、俺の母校だ。正確には……戻ってきたんだ。あの日に。
「おい……聞いてるのか?まさかとは思うが時差ボケとかでボケちまってるんじゃないだろうな?」
大丈夫、気は確かさ。ちょっと心の中のアルバムを覗いていただけさ。
俺は身振り手振りで、二人に正気を保っている様をアピールしておいた。
「キョン君、余り時間がありません。貴方がやるべき事、わかっているとは思うけど……」
「大丈夫ですよ、朝比奈さん」
一応、大丈夫なつもりだった。少し期待している半面――怖いという気持ちもあった。
「俺たちはここらで待っておいてやる。さっさと済ませてきな」
小さく頷いて、職員玄関で待ってくれている二人と別れた。この周辺に誰もいなかったのは幸いだった。
決して誰かに見つかるわけにはいかなった。俺の顔を知ってるであろう、教師連中や生徒にはな。言い訳のしようがない。
俺は周りを警戒しつつ足を進めた。側から見ればどう考えても不審者だ。抜かるなよ、俺。
そう俺は――ハルヒに会いに来た。今、この時代にいるであろうあいつに。俺がかつて言えなかった気持ちを伝えに。
「この時間だと……ん?」
こっちに来た途端に、時計の刻む時刻が調整された自分の腕時計を見た。時間は十六時前。
大体あの出来事の一時間前だ。今、こっちにいる俺は職員室で担任に説教されているはずだ。だがふと気付いた。
あいつは何処にいるんだ?記憶を引き摺り出して必死に思い出した。が、皆目検討が付かない。しくじった。
覚えてる記憶の中では――俺が忘れ物をした教室から出た直後にハルヒは上の階から降りてきた。
「じゃああいつはそれまで何処にいたんだ?」
出さなくてもいいのに勝手に独り言が口から漏れる。誰かに聞こえてたらどうするんだ。
確か俺はハルヒの出くわした直後に屋上まで引き摺られ連れて行かれた。まさか――屋上か?
屋上にはいい記憶など微塵も残ってはいない。屋上で撮影していた映画の記憶も、あれ以来思い出したくはなかったからだ。
ハルヒがいるかどうかはわからんが、俺は僅かな可能性に賭けるしかなかった。
周りに誰もいない事を入念に確認しつつ、俺はあの忌まわしき屋上へと向かった。
途中で物陰に隠れつつ、放課後に残っている生徒や教師を何とかやり過ごした俺は、屋上へのドアへと続く階段の前までやってきた。
一歩ずつ階段を上る。明らかに心臓がバクバクなってるのがわかる。呼吸もし辛くなってきやがった。
ドアの前までやって来た俺は大きく、そして誰にも悟られないよう静かに深呼吸した。
屋上に――人の気配がした、ような気がした。だが俺は確信していた。このドアの向こうにはあいつがいるという事を。
俺は恐る恐る震える右手でドアのノブを掴んで、ドアを開けた。
俺は勝つ見込みの皆無な大博打に勝った気分だった。目の前には手摺を掴んで屋上から外をじっと眺めるあいつの姿があった。
――俺が会いたかった相手、俺が気持ちを伝えたかった相手、俺にとって大切な存在――涼宮ハルヒはそこにいた。
ハルヒの横顔が見えた。何だか不安そうな表情をしていた。あいつが滅多に、いやほとんど見せたことのないような表情。
俺は足の震えが止まらないまま次の一歩を踏み出した。本当なら思い切り飛び付いてあいつを抱きしめたかった。
だが、俺は飛び出したい気持ちを深く抑えてゆっくりと歩みを進めた。
俺に気付いた様子はまだない。今にも口から心臓が飛び出るような気分だった。それほどまでに俺は高揚していた。
あいつに何と言って声を掛けようか、などと考えていた最中に予想外の出来事が起こった。
身動ぎしそうな冷たい風が突如として吹いたからだ。
「……っ!」
いきなりの出来事に思わず声に出してしまった。その瞬間、ハルヒは屋上に自分以外の人間がいた事に気付いた。
「………」
ハルヒが無言で俺の方を見る。どうしたものか、俺から声を掛けるつもりだったのだが。気が動転していた俺にハルヒがこう言った。
「キョン……あんたそんなとこで何突っ立ってんの?」
久しぶりに――声を聞いた。もう聞く事が出来ないと思っていたあいつの声。何度怒鳴られたかわからないあいつの声が。
俺は今にも倒れ突っ伏してしまいそうだった。三年ぶりだぜ?あいつの声や……姿を見るのは。どうしていいかわからなくなった。
「何て顔してんのよ?あたしの顔に変な物でも付いてるって言いたそうな顔ね」
どんな顔しているのだろう?明らかに顔の筋肉が緩んでいるのはわかる。恥ずかしくてあいつ以外には見せられないだろう。
「……何よその格好?どっから盗んできたのよ?」
一瞬ハルヒが何を言ってるのか理解出来なかった。
「さては職員更衣室から盗んできたのね?返してきなさい。制服はどうしたのよ?」
それを聞いてやっと理解した。俺の今の格好はスーツに冬用のコート、明らかに生徒が着るような服装ではない。
ハルヒは大きく溜め息を付いた。どう言い訳しようか考える暇も無く、俺は口を開いた。
「さっき掃除の時間にバケツ引っくり返しちまって。制服は教室で乾かしてるんだ」
あいつに三年ぶりに話し掛けた言葉がそれか。もっと気の利いた台詞を言おうと決めていたのに……情けないぜ。
「んで、着るものがないから更衣室から盗んできたって?しょうがないわね。後でちゃんと返しておきなさいよ」
一応、適当に誤魔化したが、ハルヒは俺がスーツを盗んできたと思い込んでいるようだ。反論しにくいが、あいつらしい。
本当はこの俺が三年後から来た、何て事に気付いた様子は微塵も無い様だった。
「で、こんなとこで何やってんの。掃除終わったんでしょ?」
「お前を探してたんだよ。……待ってもお前が部室に来ないからな」
ハルヒの隣まで移動しながら、俺は適当に話を合わせておいた。
「考え事してたのよ。高校生活を振り返ったの」
「こんなに寒いのに屋上でか?考えるくらいなら部室でも出来るだろう」
「一人で考えたかったの。たまには一人で考え事もしたいわよ」
「一人で考え事をするなら家でも出来るじゃないか」
「学校生活を振り返るのに家で振り返ってどうするのよ?学校で振り返るのは当たり前じゃない」
オーバーアクションで語るハルヒ。実に真っ当な意見だった。変わってないな……ハルヒ。全然変わってない。
取り留めの無い普通の会話だったが、俺はそれが出来るのが嬉しかった。嬉しいだけでは表現が足りないかもしれん。
「さっきから顔が赤いわよ。熱でもあるんじゃないの?」
「屋上まで飛んできたからな。そりゃ息も上がる」
本当にハルヒに会いたかったら時間を超えて飛んできちまったわけだ。
しかし、ハルヒの仕草一つ一つが愛らしいぜ。それと同時に……とても懐かしい気持ちだ。
「そう……」
ハルヒの顔が少し曇った気がした。ハルヒは何かを俺に言おうとしたようだったが、すぐに口を閉じて黙り込んでしまった。
お互いに沈黙が続く。こんな時は決まってハルヒが沈黙を破っていたが、この時は何か考え込んだ様子であった。
今すぐにでも抱きしめてやりたかった。それほどまでに――ああっ駄目だ。もうどうでもいい。我慢なんぞ出来ん。
もはや俺は平静を保ててなどいなかった。考えるよりも先に体の方が動いていた。
「へ……!?」
ハルヒもいきなりの事で驚いたのか、思わず素っ頓狂な声を漏らしていた。
俺はハルヒを抱きしめた。力一杯に抱きしめた。三年分の俺の想いを込めて。
「な……!いきなり何すんのよ!離しなさいよアホキョン!こんなとこ誰かに見られたらどうすんの!」
興奮しているのか声が裏返り気味になりながら、コートを思い切り握り締めた。
何も言わずに俺はハルヒの言葉を聞いていた。すぐに離せるものか。俺の三年間溜まりに溜まった気持ちはこんなもんじゃない。
そのうちハルヒも大人しくなり、俺のコートを掴む手の力も緩くなっていたのを感じた。
俺とハルヒの二人しかいない屋上。邪魔など入らん。邪魔しようものなら俺が力尽くで追い返してやる。
抱きしめながら、次に何と言おうか迷っていた。だが、迷っている余裕など今は無い。
耳元で俺は今まで言えなかった自分の想いを告げた。
コートを掴んでいるハルヒの手が急に強くなった。何だか力一杯抱きしめなければ怒られそうという使命感に駆られた俺は更に自分の体にぐっと抱き寄せるように抱きしめた――瞬間、ハルヒは俺を突き放した。
「どっどどういう風の吹き回しかしらね。ちょっと痛かったじゃないの!」
どう見ても動揺してるし、顔も真っ赤になってるぜ。
「俺にだって抱きしめたくなる時があるんだよ」
はぐらかしながら俺はハルヒを見つめた。目元が少し潤んでいるように見える。……やりすぎたか?
「わっわけわかんないわよ!こっち見んな!さっさと制服に着替えてきなさいよっ!」
狼狽した俺に向かってハルヒが噛みまくりの口調で捲くし立てる。
今まで一度も見たことなかった。ハルヒがこんな表情するなんてな。
言われるままに俺はハルヒに背を向けて歩き出した。ハルヒが後ろで喚いているのが聞こえる。
「さっさと行ってきなさい!」
やっと言えた――この時をどれだけ待ち望んだ事か。わかってくれるか?ハルヒ、今の俺の気持ちが。
ハルヒの声を背中に受けつつ、俺は立ち止まり振り向いた。もう一度だけ、もう一度だけハルヒの元気な姿を見たかった。
真っ赤になった顔なんて見られたくなかったんだろう。目元を更に赤くさせたハルヒが俺を見つめた。
屋上のドアを開けた俺は――自分の目元に込み上げるものを感じた。必死に袖で目元を拭った。
こんなとこハルヒ以外の誰かには絶対に見られたくなかったし、見せたくなかったから。
ハルヒは屋上から出てこようとはしなかった。俺もそれを悟って階段を降りて行った。
丁度二階へと降りてきた所で、朝比奈さん達と出くわした。
「キョン君……」
「別れは……済んだか?」
二人が俺に話しかける。正直、別れなどとは思いたくなかった。だが、それが俺の現実だった。
ハルヒ以外の事など今はどうでもよかった。そう思っていた矢先、ある事を思い出した。
「朝比奈さん、少し寄り道をしたいんですが……時間はまだ大丈夫ですか?」
「ええ……まだほんの少しだけ」
「少しだけでも残ってるなら充分です」
俺は寄り道したかった場所は告げずに、二人と共にある所へ向かった。
「恐らく涼宮さんは心の中では気付いています。今の貴方が本当のキョン君で無いことを。……かつて出会ったジョン・スミスではないのかと」
廊下を歩く俺たちに朝比奈さんが語り出した。
「ここに来るのはあれから三年を経過した状態が必要条件でした。今の貴方がジョン・スミスの役割を担って涼宮さんに会うという事を」
「涼宮ハルヒはあんたと……昔会ったジョン・スミスとやらを重ね合わせてたんだろう。実際は同一人物ではあったんだが」
「ごめんなさい、キョン君。私たちは全て知っていたのに……」
説明してくれるが細かい事なんてどうでもよかった。二人がそこまで言ったところで俺たちが目的地までやってきた。
「知ってて黙っていてくれたんでしょう?」
扉の前で立ち止まって俺は朝比奈さんに言った。朝比奈さんは黙って頷くだけだった。
俺は目の前の扉を開けた。鍵が掛かっていなかったのを俺は覚えていたからな。
扉を開けた瞬間、冷たい風が俺たち目掛けて飛んできた。
かつて俺とハルヒが座っていた席に一番近い窓が開きっ放しになっていた。
あの時も窓が開いていたはずだ。結局誰があの窓を開けたんだ?
俺はかつて自分が座っていた席の前までやってきた。今はこの時間にいる俺が使っている席だ。
そして――あるはずだ。だが取りに来ていないのなら、この机の中に。
机の中にはノートとペンケースが入っていた。真新しいノートと使い古したペンケースが。
開きっぱなしの窓から冷たい風が次々と入ってくる。俺は机の上にノートとペンケースを置いた。
そして俺は思い切って開きっぱなしの窓を閉めた。ついでに鍵も掛けてやった。
突然勢いよく窓を閉めた俺の行動に、後ろにいた二人も驚いた様子だった。だが、恐らく勢いよく窓を閉めたという事では無かったのだろう。窓を閉めたという行動に対して驚いていたという事が俺には理解出来た。
結局二人は黙ったまま、何も言わずに俺の行動を見守っていた。悪いな二人共、俺の愚行に付き合わしちまって。
窓を閉めた俺は次に机の上に出したノートとペンケースに目をやった。やってやる。こんな事の繰り返しはごめんだ。
俺はペンケースを開けて油性マジックを取り出して、まだ真新しいノートの表紙に誰が見ても読めるであろう文章を書いた。
後ろにいる二人は俺が何と書いたかは知らないはずだ。二人は俺のその行動も黙って見つめていてくれた。
油性マジックをペンケースに戻した俺は、ノートとペンケースを改めて机の中への押し込んだ。
「もう充分ですよ。やりたかった事は全部済みましたから」
そう伝えて後ろを振り返った俺は二人が半ば呆れた表情を、それと同時に半ば笑っている様子を見た。
「さて、時空の振動が始まりやがった。そろそろ大きい波がやってくる。長門有希に噛まれて正解だったぜ」
「キョン君、目を閉じていてね。直に終わりますから」
二人が俺を見ながらそう言った。俺のここでの役目はもうすぐ終わる。
無言で目を閉じた俺の耳に――教室の外から足音が聞こえてくる。間違いない、ノートとペンケースを取りに来た三年前の俺の足音だ。
あの時、ノートの表紙には何も書いていなかったのを覚えている。
変わったはずだ。いや――ここで俺が変えなければならないんだ。もうあんな想いはたくさんだから。
体に急激な圧力が掛かった。時間遡行特有のいつものあれだ。だが、今回はいつもよりは苦しくはなかった。
俺はゆっくりと目を開けた。空間が歪んでいる様子がダイレクトに俺の視角に入ってくる。そう思った矢先に俺の目に飛び込んできた光景。
俺がノートに書いたをメッセージを見つめる――北高の制服を着たかつての俺の姿。ハルヒの手を引き屋上を駆け足で降りて行く俺とハルヒの姿。いつもの部室でいつもの面子と談笑している俺たちSOS団の姿。
その光景を見た瞬間、俺の中で何かが弾けた。
”真実を告げる事を恐れるな”
それがノートの表紙に俺が書いたメッセージ。これを俺が書いたという事は……敢えて書かなかった。
俺たちは小さな雑居ビルの屋上へと戻ってきた。時間は十九時四十五分、これほどまでに時間が長く感じたのは久しぶりだ。
「お疲れ様でした。キョン君、大丈夫?」
「この通り、大丈夫ですよ」
出発前よりは幾分、気分が軽くなっていたのは事実だったしな。
それから二人とそれとなく会話をしたが、どうやら二人もこれからやらなければならない用事とやらがあるらしい。
「また様子を見に来ますね。キョン君、あまり無理をしないでね」
朝比奈さんがそういい残して、二人は会社の屋上から出て行った。
またこの季節にはお馴染みの暑苦しい熱気が俺の体にしつこく粘りついてきやがった。
鞄の中から紙袋を取り出して、羽織っていたコートを紙袋に押し込む。またクリーニングに出さなきゃならなくなった。
会社を後にした俺は今住んでいるアパートへと帰宅するための帰路についた。
満員電車に揺られる車内で、俺は途中で寄り道をしようと考えていた。
アパートの前までやって来たのは二十一時前の事だった。ほぼ毎日帰宅の電車が遅れてしまうのはいつもの事だが。
部屋へと続く階段の上がる俺の両手には、鞄とコートの入った紙袋、そして帰りに雑貨店で買った荷物入りの袋が握られていた。
部屋の鍵を開けた瞬間、溜まっていた熱気が一気に溢れ出した。
首元のネクタイを弛めた俺はすかざす、窓を開けた。少しはマシだろう、電気代の節約にはなる。
電気も付けずに、生暖かいそよ風が入ってくるアパートの一室で俺は今日の出来事を振り返っていた。
仕事終わりの体じゃ正直きつかったが、それを忘れさせてくれるぐらいの出来事を俺は味わったんだ。苦しみを全て忘れさせてくれるような出来事をな。
ふとある事を思い出した俺は、タンスの引き出しからある物と、一枚の紙切れを取り出した。
一つは俺があの時教室に忘れてきたノートだ。三年も経ったせいで多少黄ばんではいたが、俺はそれを大事に取っていたのだ。
無論、表紙には何も書かれているわけはない。あの時俺が取りに来た時には何も書かれていなかったからな。
暗がりの中でノートを眺めていた俺に向かって、開いた窓から急に勢いよく風が入ってきて右手に持つノートを吹き飛ばした。
つくづく風には好かれていないんだな、俺――そう嘲笑した直後、俺の足元に風で落ちたノートが目に入った。
その表紙には何も書かれていないノート――の裏表紙に何かが見えたのを俺は見逃さなかった。
裏表紙には何かを書いた覚えなどない、いや実際に何の書いてなんかはいなかったはずだった。
だがそのノートの裏表紙には文字が記されていた。はっきりと読める文字で――
”ハルヒは必ず俺が幸せにする” ”ジョン・スミスへ”
その瞬間俺は悟った。そして俺の心の楔が消え去ったのを俺は感じた。
繋がっている――確実に繋がっているんだ――俺のやった事は間違いではなかった。この裏表紙に書かれた文字を見て俺は確信した。
見間違えるはずなどない。これは――俺の字だ。そして――あのメッセージは繋がった。このジョン・スミス宛のメッセージ。
歴史は確実に違う道を進んだ。どういう理屈かは知らないが――このメッセージは俺にそれを伝えてくれたのだろう。
そのノートを拾い上げて、テーブルの上にそっと置いた。そして俺は帰り際に買った雑貨店のビニール袋の中身を取り出した。
「今日ぐらいは……俺の願いを叶えてくれてもいいよな?」
俺は取り出したそれを窓際に立てかけた。俺はノートと一緒にタンスの中から出した紙切れを、窓際のそれに括り付けた。
今日は一年に一度――彦星と織姫が出会う日――七夕
ハルヒが初めて俺と出会ってから――八年目の七夕
高校三年の時にSOS団でやった七夕イベントの日、あいつに内緒で使わずに持って帰った一枚の短冊に俺はペンで願い事を書いた。
「すまないな。今回は一枚しかないんだ。すまないが二人で叶えてくれ」
俺はそう窓から見える夜空に向かい独り言を呟いた。そよ風で笹の葉とたった一枚しか付いていない短冊が揺れる。
俺がたった一枚の短冊に書いた願い事――それは――いや、それは秘密にしておこう。
頼むぜ、あっちの俺。ハルヒを絶対にしてやってくれ――それが今の俺がやりたくても出来なかった事。
今年の夏休みには地元に帰ってもいいかな。そんな気分になれた。
今日からは――また風が好きになれそうだ。
完
以上です。SSを掲示板に投下したのが初めてだったので、テキストを上手く分割して貼るのに手間取りましたorz
自分でも11レスも掛かるとは想定外でした。長いと思った方がいたら御免なさいです
途中途中で場面が区切れてしまっているのはご勘弁をお願いします
一応、内容の補足を加えておきます。
・冒頭は原作、アニメの時間から5年程経っています。
・朝比奈さんと一緒に現れた人物は未来人(?陰謀参照)のパンジーさん(ラノベ板谷川スレ命名)です
・朝比奈さんは(小)でも(大)でもない、(中)な感じでイメージしてみて下さい
読むのに必要な補足は以上です
>>548 補足は正直蛇足だと思う。
というより、本文でちゃんと伝わってると思うが。
内容は結構ツボに入った。
本屋で売ってる2000円前後の三文小説の100倍感動できた。
読んでる最中、あまりに綺麗すぎて震えた。
ありがとう。
>>548 谷川仕事しろwww
としか言いようが無い!GJ!!11
これだけ強烈に引きずり込まれるような感覚を味わったのは久しぶりです
>>548 バタフライ・エフェクトを最近見た俺には効いた。
あまり使いたくない言葉だがGJ
最初、君望展開かとあせったが
綺麗な話でよかった
GJ!!しか語彙のない俺を許せ
新作ラッシュ凄いな。
皆様感想ありがとうございます。書いた甲斐があったというものです
ここだけの話、内容をイメージしてる最中不覚にも目元に水分が。・゚・(ノд`)・゚・。
自分で書いておいて自分で感動するという醜態を晒してましたorz
ちなみに最後の最後で脱字してます。全部投下してから気付いて欝…肝心なとこでorz
>>549 確かに余計だったかも…参考に致しますね
では、また傍観者に戻りますね
おつ
557 :
16-116:2006/07/17(月) 15:54:40 ID:Onq2kgti
>>555 ファイズ乙。
はじめはパンジーさんを口調から谷口…?と勘違いしてて
てめー、朝比奈さんに何をした−−!状態だったw
すぐに気付いたけど、自分の読解力のなさにちとヘコんだ…
最後のあたりで結局未来は変わらないっぽい感じを受けたが、当時の二人が幸せならいいよな。
どこぞのゲームの涼宮姉展開ならまだ幸せにはなれるよな?とにかくGJ!
で、落ち着いたので投下しますね。
題名は「涼宮ハルヒ七変化」
3レスほど使用。
曜日ごとに違う髪型をする女。
それが後ろの席の涼宮ハルヒだ。
とんでもない美人だが、思考もある意味とんでもない。
毎日変えるのはオシャレのつもりか知らんが、さすがに度を越してないか?
そんな思いを毎日見かけるたびに思っていたのだが、ある日それに法則があることに気が付いた。
いつ気付いたのかは特にどうでもいいことだ。オレ以外の誰も気付いていなかったのは不思議に思ったけどな。
涼宮ハルヒの髪型七変化。
いつしかそれはオレの曜日判別のカレンダーとなり、毎日かかさずチェックするようになった。
土日も気になってチェックしたのだが、これはなかなか大変だったな。
ああ、土日の髪型はストレートに流したままだった。別のところは変化していたけどな。
GWの明けた週の水曜日、HR前になんとなく気になったオレは話のネタとして涼宮ハルヒに話し掛けてみた。
会話が成立するとは全然思っていない。
したらいいな程度だ。
いつかのように「時間の無駄」と会話を一方的に一刀両断されるとばかり思っていたからだ。
「曜日で髪型変えるのは宇宙人対策か?」
このセリフにも特に意味はない。
頭のネジがちょっとトンデルこいつなら、このくらいのことはやるだろうとの失礼な偏見から出た言葉だ。
「いつ気付いたの」
ゆっくりと顔をこちらに向け、いつもの興味なさそうな視線で見つめてくるハルヒ。
口調も何気ない。
特に驚いた様子もないな。………外したか?
「んー。ちょっと前」
「あっそう」
ハルヒは頬杖をついて窓の方を向き、気だるげに
「あたし、思うんだけど、曜日によって感じるイメージってそれぞれ異なる気がするのよね」
何やら理由らしきことを喋り始めた。
当たりかどうかはわからないが、ハルヒの興味を惹くことに成功してオレ自身軽くサプライズだ。
いつも「うるさい話しかけるな」という対人拒否バリアで自分を覆っている涼宮ハルヒと初めて会話が成立しているのだ。
まさかこいつと会話ができるとはな。
「色で言うと月曜は黄色。火曜が赤で水曜が青で木曜が緑、金曜は金色で土曜は茶色、日曜は白よね」
何となく分かる気もする。土曜以外は。
「髪飾りやリボンの色が毎日違うのもそのせいか」
ドアノブのようなお団子頭を指差してやる。
今日は水曜だから青だ。
「………そこまで見ていたの?」
まあ席も近いし、毎日髪型が変われば自然と目に入るさ。
それと、もう一つ気付いたことをがある。
「……もう一つ?………何かあったかしら……?」
ハルヒは心当たりがない様子で、不思議そうな顔でオレを見つめてくる。
本当のことを言うと今日はなんとなくで話かけたのではない。次のことを本人に聞いてみたかったのだ。
少し呼吸を整えてから、
「涼宮。下着の色まで上下毎日イメージカラーに揃えるのも同じ意味があるのか?」
オレはハルヒに言った。
何に気付いたのか興味深そうにこっちを見ていたハルヒだったが、これは予想外だったらしい。
しばらく鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた後
頬杖を解き、肩にかかる黒髪を片手で払った後、
「…………………説明しなさい」
ドスの聞いた重低音の声で凄み、ものすっごい目つきで睨んできた。
うわ、やっぱ気付かれてたか。
どうやらこの話題の選択は失敗だったようだ。この話題はもうやめて適当にごまかすとしよう。
「いや、ほら。曜日ごとの色ってさっき言ってただろ。それにリボンと下着の色が丁度合致するんだよ」
だが、オレの口はまだ会話を続けるようだ。
ハルヒは一変して不機嫌モードになって、ただいま状況イエローだというのに。
さすがに仲の良い間柄でもないのでこの話題はまずかったようだ。
いや、ハルヒならそんなことは気にしないだろう。………やっぱり気付かれていたのか。
話題を修正しないとマズイと思い、必死にフォローの言葉を探すオレ。
「いきなり男子の前で着替えだした時は赤系の下着だったし、それ以降も毎日覗いてたからわかるぞ」
オレの意識を無視して勝手にヤバい話題を続けるオレの口。
気温が一瞬にして五度ほど下がった気がするね。
目つきも先ほどよりも怖い。
「ちなみに今日は青の下着だったな。オレとしては中間の白と水色の縞々だと最高に萌えたんだが、やっぱり縞々は無しなのか?」
そして口は止まらない。しかも人のシークレットをバラすなんて何て勝手な口だ。
いや、これがオレが話したい事ではなくてだな。
ハルヒはオレの問いかけには答えず、(当たり前だ)素晴らしく凶悪な目つきで睨んでくる。
目つきがどんどんヤバイ人になっていくのが実によく分かる。というか目の前だし。
今の会話の中で何か癇に障ることでもあったか?……心の中ですっとぼけてみても無理なようだ。
視線を刃物に例えると最初はカッターだったのがどんどん凶悪になり、今や果物ナイフになってきたように思える。
「金曜日の色に気付いた時は思わず心の中で突っ込んじまったんだぜ?そんな色どこで買ってくるんだ!ってさ」
お笑い芸人がよくするように手首のスナップを利かせて笑顔で裏拳っぽいツッコミジェスチャーをするオレ。
ハルヒはまったく表情を変えなかったが、オレの笑顔が乾いていたせいだと思いたい。
どんどん墓穴を掘っている気がするのは気のせいだよな。うん。
……気のせいにしておきたい。
「そ…それに土曜日の茶色は下着の色として正直どうかと思うんだ。覗いた時はマジでビビったぞ。あの色はよくない」
ていうか、今はあんな色の下着も売っているのか?
机の上に置かれたハルヒの両手が小刻みに震えている。
誰かオレの口をふさいでくれ………考える前に当時そのまま思った本心が正直に飛び出してしまう。
「土曜はオレのイメージとしては黒なんだよ。土曜の下着の色は黒にしないか?」
その方が大人っぽいし、目の保養にもなる。
……口は勝手に語りだすのをまだまだやめないようだ。
ハルヒはまだ俯いている。耳も真っ赤だ。おそらく顔も真っ赤だろう。問題は手にすごく力が入っていることだが。
それが恥ずかしさから来てるってことだとイメージと違って可愛い感じでいいんだがなあ。
あり得ない妄想で現実逃避をしていると
「あんたの意見なんて誰も聞いてない!!」
ハルヒがクラス全体に響く大声を発しながら立ち上がった。
全員の注目がオレとハルヒに集まる。
ハルヒは両手をぶるぶると震わせながら
「学校にいる時も家に帰る途中でも、休日は家でも、ずっと、ずーーっと!後をつけたり、いやらしい視線を感じると思ったら、アンタだったのね!」
声には紛れもなく怒りがこもっている。というか、激怒寸前……?刃物レベルは日本刀に達したかもしれない。
一応、(絶対に無駄とわかってはいるけど)弁明してみる。
女子の目もあるわけだし、ここでフォローしておかないと後々マズイことになりそうだ。いや、もう遅いかもしれないが。
それは髪型七変化と下着の色の関連性を調べるためだ(最初はたしかにいたずら半分だったさ)
いやらしいなんてとんでもない。ちょっとした研究だ(ちょっと研究に熱中しすぎたのは認めるが)
ああ、勘違いしないでもらいたい。お前自身には興味はないし、手を出したりもしないから安心しろ(今のオレでは釣り合わないからな)
そんなのはこっちから願い下げだ。むしろ頼まれてもイヤだ(オレは告白は自分からするタイプだ)
ああ、でもな。先月終わりの日曜日に穿いてた白いのはとても可愛かったぞ(服もお嬢様っぽくてすごく可愛かったぞ)
丸一日その記憶しかないってのは自分でも驚いた(思えばあの時からかもな、お前のことが本当に気になりだしたのは)
レースのフリフリってのも似合うんだな(オレ以外にも見てたヤツもいるんだぞ?お前は可愛いくせにそういうの気にしないから心配だ)
あ、でもその日のブラのサイズはちょっと合ってなかったみたいだったな(きつそうな顔してたときは声かけようか迷ったな)
お前も風呂場で気がついたみたいだったな。あれから新しいのは買ったか?(………きれいな体だったな。やべ、鼻血出そうだ)
…買ってないのか?(……将来はオレが買ってやる。って言えたらいいんだがね)
身体測定から今日までに2cmは大きくなってたじゃないか(これ以上スタイルよくなると変なの寄って来そうで心配なんだよなあ…)
これからどんどん大きくなるんだろうから早めに買っておけよ(むしろオレが大きくして、オレがその都度買ってやる)
……ああ、フォロー失敗。口から出たのは予想通りに当時のオレの嘘偽りない本心だった。
だけど、所々ハルヒに伝えるのに不適格なことばかり喋ってなかったか?
全て伝えても結果は変わらないのが目に見えてるが。むしろ悪化するな。
それはそれとして、現状は墓穴を掘っている以外のなにものでもない。
女子の視線が時間経過でどんどん冷たくなっていくし、ハルヒの震えはさらに激しくなっていく。
男子連中は笑いを堪えているヤツらばかりだ。……谷口、お前は笑いすぎだ。
気付いたとき、オレは空を飛んでいた。
いや、正しくは宙を飛んでいた、だ。
まだ窓からダイブしたくなるほど人生に悲観してはいないし、次の授業もグラウンドではない。
さすがにハルヒだって空を飛べとは言わないだろう。
何が起きたかって?体は反応できなかったが、目はしっかりと反応していたからよく覚えているぞ。青だった。
じゃなかった、回し蹴りだ。それも上段のな。おかげでチラリとだがへそとブラまで見えた。肉を切らせて骨を絶つ、か。
吹っ飛びながらそんなしょうもないことを考えていたが、床に落ちて意識を失う前に堅く決意したことが一つある。
もうこの際ヤケだ。明日からは縞々を是非勧めてみよう。ということだ。
以上です。
あ、そうだ保管庫の方、いつも乙です。16-116です。
アニメのインタビューがなんかで京アニのスタッフが
リボンも曜日のイメージカラーに沿っているという話を聞いたので妄想しました。
ここんとこ、バカなネタしか書いてねーな…
いい作品の後にこんなんで申し訳ない。
感想くれたらまた何か考えて書いてきます。
では。
そっか、下着の色も変えてるべきだなw
あと、茶色の下着は結構フツーだったりする。
乙
「茶色」とほどハッキリは言わないが「ブラウン」なんじゃないか?
途中からニヤニヤ笑いが止まらなくなったwwwwww
キョン・・・無茶しやがって・・・・
おもしろす。乙っ
ベージュの事か?
ふと思い出した実話。
ある学校では、校則で白を含めてベージュ以外の下着が禁止されていた。
理由は「下着が透けていると男子が興奮するから」
その隣の学校では、逆にベージュの下着が禁止されていた。
理由は「下着が透けないのでノーブラに見えて男子が興奮するから」
前スレ174の続きかいてきたけど、いいのが投下されてイマイチ自信がなくなってきた。
もう一回書き直してくる。
>>566 気の利いた笑い話みたいだなw
ベージュじゃなくてチョコレート系の色も普通に売ってるよ
>566
あまりのオープンエロスっぷりに吹いた。
逆に清々しいw
570 :
18-352:2006/07/17(月) 16:37:04 ID:iQ1+vhK0
シリアス、ギャグとも良作が投下されてて正直怖気づいたが、
手前のを読み直すとあまりの内容の薄さに「ああ、太刀打ちしようと思うのが間違いだな」
と逆に吹っ切れたので、白旗を掲げつつ3レスほど拝借します。
「はい」
ある晴れた暑い日のこと。
涼宮ハルヒがジュースを買った。
それが全ての始まりであり、おそらく結末となるのだろう。
そう考えていた時期が、俺にもありました。
……なーんてな。
K:……何の陰謀だ?
思い返せば幼少のころから妙な知恵がついていて、端から見ればさぞ気味の悪いガキンチョだっただろう。
例えば毎週体育座りで鑑賞していたヒーロー番組。
今まで空気だった幹部級キャラが活躍し出すと「ああ来週からいなくなるんだな」ということが漠然ながらわかってしまった。
そう、俺にはわかるのだ。誰かが普段しないようなことをやり始めるのは、何かしらの悪い兆候だと。
尚且つ目の前にいるのは俺に災厄を運搬することを天職としている暴走トンデモ女であり、威力は倍増であり、確実だ。
即ち。
涼宮ハルヒが俺にジュースを差し出すなどあってはならない事態なのである。
罠か?
罠なんだろ?
きっとそのジュースは「いやあ最近食品分野にも進出したんですよ」とかのたまうどっかの怪しげな巨大企業の新商品か何かだ。
飲んだ途端に理解しがたい味がするんだろう。「いやあ何分初めてなもので」などという言い訳は通用しねえぞ。
責任者を(ry
H:キョンは固まっている。二の句が継げないって表情のままずっとこっちを凝視してる。
あ、あんまり見ないでよね。気味が悪いったらありゃしないわ。
そもそもあんたの顔って基が間抜けにできてるから、目を大きくしたぐらいじゃカッコつけにもならないのよ。
……だからっ、こっち見んな!
K:あっ、顔背けやがった。
ハルヒは俺の目どころか顔すら見ようとはせず、こちらからだと表情の読めない絶妙な角度をキープしている。
くっ、なかなかやるな。俺に決して表情を見せないことで感づかれまいとする作戦か。
きっとハルヒの顔には邪悪な笑みが血の池地獄のごとく広がっていることだろう。
>>568、569
管理教育がエスカレートしすぎてた頃、雑誌やラジオで「うちの学校の変な校則」みたいなコーナーが流行ってたんだよ。
どっちも定番ネタだった。
H:何よ、まだ取らないの?
……って、あ、あたしの顔を見てる!?
何よ何よ、ジュースでも見てなさい!
それより上げっぱなしで腕が疲れちゃうじゃないの。まったくもう、キョンって本当にグズ!
K:ハルヒの腕が震えている。
野郎、俺を嘲ってやがる。
ご丁寧に顔まで赤くして、そんなに耐えるのが辛いなら大音量で笑ってもいいんだぞ? その方が気が楽になる、気がする。
しかしあくまでも戦うというなら、いいだろう、展開を変える最良の手段はあきらめないことだ。MMRのキバヤシもそう言ってる。
考えろ、敵の思考を読め、論理を展開させろ!
……ゴメン、暑いから無理。
H:暑いわ。
こんな日に、本当、何してるのかしらあたし。
あー、こんなことなら自分でさっさと飲んでおけばよかったわ。むしろ、何でバカキョンにあげようなんて思ったのかしら。
思いついたら即実行があたしの主義だけど、今回ばかりは恥ずかしく思うわ。
すべて夏の暑さのせいね。
だいたい団長であるあたしがくれてやるって言ってるんだから、下っ端は大人しく受け取ってればいいのよ。
全然わかってないわね、キョン。
K:もしや、俺は試されているのか?
これさえも何らかのアレなのか。俺が起こすアクションで世界がどうにかなっちまうとでも言うのか。
――それはない。こんな日常的な一コマに変態的妄想が介入する隙間など全くないし、そんな気配も全くなかった。
しかし、だったら、ハルヒは俺に何を期待している?
……俺にだって、わからないことぐらい、ある……。
H:……俯いちゃった。キョンの表情はもうわからないけど、嬉しそうな顔じゃなかったのはよくわかっている。
失礼な奴。このあたしがジュースを買ってあげたっていうのに。というか、そんなに驚くことでもないでしょ。
雑用の労いにたまにジュースを買ってあげただけじゃない。いつもは奢らせてばっかりだし、ってそれは遅れてくるキョンが悪い。
でも、確かにいつものあたしなら、こんなことしないかも。
戸惑っちゃうのも、仕方ない……のかな……。
K:何だろう。俺のステイタスには断じて超感覚能力などないが、ハルヒの発する温度が微妙に下がった気がする。
やばい、今俺が感じているのは寒気だ。こんなにも暑いというのに。
思い出したくもないが、古泉の野郎は言っていた。ハルヒをこの状態にしておくのは、マズイと。
こいつがこんなオーラをまとうのは……憂鬱? 退屈?
前者はいろいろ封印したい記憶なのでナシの方向でいこう。後者であるならば、何かに飽きたということに――
待てよ。
こう考えてはどうだろうか。
ジュースを差し出し、俺の戸惑いを観察すること――この行為自体が涼宮ハルヒの新たな暇つぶしであったとしたら。
発想の転換というやつだ。今の俺にはコロンブスが乗り移っているに違いない。見ろ、卵は底を潰して立てるんだ。
だったら何も恐れることはない。ハルヒの目的は充分達成されているではないか。どうだ、俺のこの間抜けっぷりは。
なるほど、俺の観察にはもう飽き飽きしてるってわけか。
フッ……。
俺の負けか。ハルヒ、まんまとお前の術中にはまっちまったぜ。
そして俺は、この状況における「屈服」を暗示する行動に出ることにした。完敗だぜ。
ハルヒがホールドアップし続けるジュースに手を伸ばし、
H:…………っ!?
急に指に変な感触がしたと思ったら、キョンの奴、今度はジュースに手をかけたまま固まっている。
というか、あたしの指ごと掴んでるじゃない。
な、な、何してんのよ、キョン!
K:取れん。
ハルヒ、奢ってもらっておいてすまないんだが、ジュースを握る力を大幅に緩めてくれないか? 取れないぞ。
そう申請すると、ハルヒの表情はみるみるうちに変化していく。
もはやいちいち解説するのが面倒になるくらい、喜怒哀楽の闇鍋パーティといった混在ぶりだ。
最終的にはふっきれたような笑顔に固定され――
「ふんっ、甘いわよキョン! この暑い日に、あんたなんかにジュースを奢るとでも思ったわけ?」
そう一気にまくしたてながらプルタブを破壊し、ジュースを垂直に立てんばかりの角度で口に流し込み始めた。
そりゃないだろう。
「こっちだって暑いんだ!」
俺はハルヒからジュースを奪取し、奪還されないうちに飲み干した。うっ、半分も残ってねえ。量が少なくて味もろくにわからん。
ふう、と息を吐き俺はハルヒに「残念だったな」というニヤリ笑いをくれてやる。
だがハルヒは驚愕と当惑がコーヒーとクリームのように渦巻く表情で目を見開いている。何のアクションもない。
どうかしたのか、と訊く。暑すぎて思考がまとまりやしない。ん? もしや俺が何かしたのか?
ようやく思い出したかのようにただでさえ暑いというのに(ホント、ご苦労なことだ)赤みの明度を増幅させてこっちに来る。
「バカキョン!」
そして俺から空き缶を取り上げると地響きを伴いそうな勢いで歩き出した。
おい、過半数も飲んでおいて怒るなって。どれだけいやしん坊万歳なんだ。
――しかし、だ。
この仕打ちを加算するといささか癪ではあるが、ジュースをわけてもらったときに口にする台詞は決まってるんだよ。
ごちそうさん、ハルヒ。
でもって、
「ありがとう」
おわり。本当に薄い。
タイトルの元ネタは某バンドの人気曲から。
>>574 ごめん、挟まってしまった。
しかし、微笑ましい馬鹿ップルぶりだ(W
間接を意識するハルヒかわいいよ
>>572 そういや内の高校では異性と20cm以上接近してならないとかいう校則があったな。
>>578 男子クラスと女子クラスに分かれてる、ってことじゃない?
>577
逆に考えるんだ。
レズと801を推奨している学校
障害が大きいほど盛り上がるモンだ
きっと裏では凄いことに…
>>548 とてもよかった
けれど安易にキャラを殺すのはあまりよくないと思うし
過去のキョンがハルヒを助けてたら現在にもハルヒがいないとつじつまがあわなくなる(ジョンスミスをハルヒがしってる)
いっその事家にかえったらハルヒが笑顔迎えてくれてhappy endでよかったんじゃ?とも思う
>>582 過去でハルヒ助けたはずなのに戻ってきてもハルヒ居ないのは
平行世界ありの作品世界なんじゃないか?
ハルヒの能力の収束が絡むとキョンとハルヒのどっちかが死ぬパターンが
思い浮かびやすい辺りが原作の今後の展開に不安が残るな…
まあ谷川さんはハッピーエンドだって言ってたから大丈夫なのかな
>>580 そういや男子校と練習試合したとき、更衣室見に行ったうちの香具師が
801現場目にして逃げ帰ってきたことがあったな。
それ以来、男子校運動部を見る目から偏見を拭えなかった高校時代orz
>>583 原作ではパラレルワールドの概念はないはずじゃないと朝比奈さんの居る意味がなくなる
あとキョンが三年前に戻ったとしてても1番始めのハルヒはジョンスミスとあってないことになってしまう
けど文章構成とかはすごく良かった よんでるこっちまで暗くなってしまうぐらい
それだけにもうちょっと原作を意識してほしかった
じゃないとキャラの名前が一緒なだけの別のSSになってしまう
>>583 だな。
「ハルヒが死んだ未来」のキョンが、過去に干渉して「ハルヒが生きている未来」を
作り出したと。ノートのメモ書きをみてその並行世界の成立を確信してEND、と。
「生きてる未来」のほうの後始末を書いて古泉あたりに「死んだ未来」からの
干渉の解説をさせて終わる形ならハッピーエンドっぽくなったんだろうけど、
こっちのほうが終わり方として綺麗だと思う。ちょっと暗いけど、
「死んだ未来」の方のキョンの気持ちの整理もつけられたわけだし。
>>582 俺もそう思ったよ。
キョンが未来から帰って家に帰るとハルヒが「おかえりーっ!」て何食わぬ顔して出迎えてくれるのかと。
でもこの終わり方でいいと思う。少なくともバッドエンドではない。
悲しくて悲しくて仕方なかった・・・でもあの時果たせなかったキョンの想いはしっかりと伝わって。
語彙がないから上手くはいえないけどキョンが変えた平行世界の未来ではキョンとハルヒは幸せに暮らしている。
そのことだけで充分です。お疲れ様でした
>>548氏。
>>548 おい谷川、こんなところ(失礼!)で何してるんですか!編集者にあまり苦労かけちゃ
いけませんよ。
正直、
>>582,
>>587のように「おかえりキョン」な展開を期待していた。でも、
これはこれでキョンの気持ちに整理が付いていて、そして、ほかの世界では
何かがしっかりと残っている。
トゥルーエンド、って感じかな。
・・・あれ?目から水分ががががが。
せつない話が続いたところでそろそろ甘甘だったり暖かくなる話を所望します。
>>585 逆だろ
パラレルワールドがありえるから朝比奈みくるが居るんだ
長門が言ってるけど、朝比奈さんの役割は自分の未来に至るように正しい数値を入力すること
また、それによってもたらされる未来がSOS団にとっていい物である保証がないことも原作で語られてる
平行世界がありえないのなら、それこそ時間素行の意味がない
逆にパンジーは朝比奈さんとは別の未来から来ていると予想できる
誤字ったけど謝らない!
二次元方向でなく三次元方向に時間が流れるのが、この話の斬新なトコだな
歴史は一本の大きな木説は変わらないから、原理が変わるだけだけど
おまいらスレ違い
本当にな
595 :
射手座の夜:2006/07/17(月) 20:43:13 ID:tNm3f/kE
1/10
「アラート。黄経19時黄緯マイナス30度、1AU以内に赤外反応」
「敵なのっ?」
ブリッジの巨大なビュースクリーンの前で、後ろ手を組んで仁王立ちした
まま、ハルヒは鋭く訊く。
「可能性は高い」
空中に浮かぶ色とりどりのスクリーンに囲まれた長門がそう返す。ちーとも
意味の判らん数字がその顔を照らしていた。ドレスホワイト着てちんまり
座っている姿が、何と言うか、似合っているな。某アニメで例えるならば、
馬鹿ばっか、が口癖のキャラだ。
一方ハルヒは、
「よーし、叩き潰してやろうじゃないの。全艦戦闘準備。機関全速。
カチコむわよ!」
エポレットから垂れたふさふさの金モールの房飾りごと、勢い良く腕を振って
号令する。おいおい待て。1AUというのはつまり、地球と太陽までの距離だ。
「長門よ、遭遇までの予想時間は」
「一時間後プラスマイナス10分」
早いな。敵さんえらく高速じゃないか。でも、今から戦闘準備ってのは
ちと早い。
「聞いたかハルヒ。まだ時間はある。落ち着け」
「閣下と呼びなさいよ。わかったわよもう」
口を三角にして半眼でこちらを睨む。
全く。お前は夢かゲームのつもりかも知れんが、実際はこれ、マジなんだ
からな。死んだら終わりなんだぜ。
「艦隊全艦艇に暗号通信。第2衛星を盾にする。軌道遷移用意。以降平文通信を
禁止する。以上」
ちょっ、あんた何勝手に命令してんのよ。こら、というハルヒの声を聞き流す。
死ぬのは嫌だからな。
ここはハルヒの作り出した閉鎖空間。俺は前に一度やられたように、ハルヒ
に首を絞められて起こされた。全く、殺す気か。
今回違うのは、SOS団全員が勢ぞろいしている事と、何やらメカメカしい部屋
にいるという事。窓らしき辺りから見える風景は、暗黒と、そして巨大なガス
惑星。夢か。
少なくともハルヒはそう思っているようで、
「なんか眠れなくて、テレビ点けたらアニメやってた訳。それがさ、もう全然
駄目。宇宙の筈なのに上下があるし、音は聞こえるし、なんだか空気がある
みたいなのよ」
それで動力源が人力よ人力、呆れたわね、と続けるハルヒを無視して、周囲を
見渡す。とにかくゴテゴテと偉そうな軍服のハルヒ、白い詰襟の長門、古泉よ、
ドイツ第三帝国海軍か空軍か、良く似合ってるなそのコスプレ。そして我らが
朝比奈さんは、何故かここでもメイド服姿であった。何故だ?
596 :
射手座の夜:2006/07/17(月) 20:44:13 ID:tNm3f/kE
2/10
「まぁ良いんじゃないでしょうか」
探検してくるっ!と言い残して飛び出していったハルヒ以外のメンツで、
ラウンジらしきところで状況確認。
「ここは閉鎖空間の一種ですね。ここでは僕の能力も有効になっているよう
です。しかし」
古泉は、有り難くも皆にお茶をいれて下さる朝比奈さんに、
「この空間には過去も未来もありませんから、彼女は完璧に役立たずです」
いつものニヤケ笑顔でこんな事を言いやがった。あ、朝比奈さん、泣かないで
ください。役立たずなのは俺も同じですから。
「ここは戦闘艦内部。涼宮ハルヒは空間戦闘を望んでいるものと思われる」
そこで長門は俺を見て、
「戦略的思考のできる人間は、この状況において重要である」
おお、長門に誉められた。
「古泉一樹よりも、あなたのほうが重要」
まぁ、古泉はどんなゲームでもひどく弱いからな。古泉はニヤケ面のまま、
何やら凹んでいるようだ。最近、長門の表情を読むほどではないが、古泉の
表情もなんとなく読めるようになってきた。ざまぁみろ。よくやった長門。
朝比奈さんを泣かせた罰だ。
「この空間では、物理法則の一部がどうも変わっているようです。例えば」
立ち直り早いな。古泉はテーブルを指先でトントントンと三回叩く。空間に
スクリーンが現れる。ところで、俺はこういうのをフィクションで見るたびに
思うのだが、何も無い空間をどう発光させて像を作るつもりなのか、というか
無理だろコレ。
「総統総統、SOS団から通信です」
スクリーンに現れたのは、変なコスプレをした、これはコンピ研部長さんだ。
照明がおかしいのか、肌がいやに青白く見える。
「どうも即時通信が可能になっているようですね。彼らとは数十億キロは離れて
いる筈なのですが」
「ふっふっふっふっSOS団の諸君。我らがコンピ研の前に屈するか、滅ぼされ
るか、二つに一つを選びたまえ。
……ところであの団長は?」
ノリノリじゃないかコンピ研の部長さん。確かに即時通信のようだ。
「閣下は席を外されています。ところで、投降者を一人、収容お願いします」
しれっと古泉が言う。
続けて細々とした会話を済ませると通信を切り、
「この閉鎖空間を終息させるには、涼宮さんに元の世界に戻りたいと思って
頂かなくてはなりません。この世界に満足されると、大変な事になります。
僕の役目は、この世界が涼宮さんにとって不満だらけにすることです」
「で、お前は向こうに付こうという訳か」
勝てると思ってるのか?
「正直、思っていません。でも、このままではあっさり涼宮さんに満足されて
しまいます」
ですから、皆さんも協力お願いします、そんな事を言って古泉は、シャワー
のように降る光に包まれた。
「でも勝負は、楽しみにしてますよ」
消える直前、俺にウィンクしやがった。
「古泉一樹の空間跳躍を確認」
テレポートかビームか、何でもありだな。
597 :
射手座の夜:2006/07/17(月) 20:45:54 ID:tNm3f/kE
3/10
饒舌な解説者が裏切りやがったため、以降の解説は、俺が長門から聞き取って、
俺なりに解釈したものだ。
ここは閉鎖空間だが、従来の半径5キロとかの限られたものではなく、かなり
広いらしい。ただ、星に見えるのは巨大な球体に張り付いた光点で、世界はこの
太陽系に限られる模様。あ、これについては違う解釈も考えられる。
ここではさっき見た通り、光速を越えた即時通信が可能で、これが超技術に
よるものか、物理法則が弄られているのかは不明だ。しかし、どちらにしても
物理法則は弄られているらしい。
「単に、我々のスケールが縮小されただけかも知れない」
長門の言うには、ただ単に俺たちが100億分の一くらいに縮んだだけで、閉鎖
空間は相変わらず半径5キロメートルのままである可能性もあるという。それなら
この空間の端から端まで、通信も即時だ。
「しかしそれだと、プランク長さや目の電磁波感受性を整合性を保って改変
しなければならない」
よく判らないが、つまり、どれが正解かは判らないという事だな。
「私、閉鎖空間って初めてです」
朝比奈さん、ここはそんなに喜ぶような場所ではありませんよ。どうやら
俺たちは、このあとドンパチをやらないといけないのですよ。
ラウンジの窓の外、巨大なガス惑星を背景に、僚艦たちが見える。俺たちが
乗っているのがSOS団艦隊旗艦、戦艦”無敵”号なのだが、向こうに見えるのが
同型艦”大胆不敵”号で、更にその向こうが”自殺行為”号らしい。誰だこんな
命名をしたのは。
同型艦というからには、この艦もあの艦と同じ格好をしているのだろう。
リボルバー式の銃をモチーフにしたような外観に、更にごてごてと翼やアンテナ
が付き、その先端をライトで点滅させている。艦の中央から外に高く突き出した、
あれはやっぱり艦橋なのだろうな。ご丁寧にも第三番艦橋らしきものがあるぞ。
「武装はペタジュール級のガラスレーザが9基、ミサイル80発、短距離応戦用の
レールガンが24基、原理不明の主砲が一基」
まぁ、銃のカッコしてるから、一発デカいのがあるんだろうとは思っていたぜ。
それが戦艦800隻分あるわけだ。あと重巡が2000隻、駆逐艦が4000隻。輸送艦
なんて地味なものは陰も形も無いぜ。実にハルヒらしい。
補給や修理が必要になったら、どこからともなく補給艦隊や泊地が現れるの
かもな。ただ、俺たちはそこまで長居をするつもりは無い。
「見てみてこれー!」
ハルヒ帰還。何やらヒラヒラしたものを持っている。
「じゃじゃーん」
上下つなぎの服だが、伸縮性高そうだな。次に起こる事態を悟ったのか、
朝比奈さんの、ひっ、と怯える声がした。
「さぁみくるちゃん、スーツチェンジで変身タイムよ」
いやーっ、という舌足らずな悲鳴を背後に、艦橋に戻るため立ち上がる。
「そういえば古泉くんは?」
「便所だ」
背後にそう答える。それでしばらく忘れられていたのだから、哀れな副団長だな。
598 :
射手座の夜:2006/07/17(月) 20:47:23 ID:tNm3f/kE
4/10
全く、これが変な深夜アニメの影響程度で良かったぜ。もしハルヒが「航空
宇宙軍史」シリーズとか読んでいたら、今頃アタマに補助脳つけていたところだ。
艦内状況をチェックする。長門から色々借りていたSFのおかげで、なんとか
付いていけてる状況だが、リアルなのか適当なのか。
どうやら敵は銀河中心方向から侵攻してくるナントカ帝国で、それをここで
迎撃しようという筋立てらしい。いや実際ザルな設定だな。朝倉そっくりの
宇宙的美少女が、通信カプセルを渡して息絶えるなんてシーンもあったらしい。
艦中央の巨大な慣性キャンセラーは低い響きを立てて順調に動いている。
おかげで俺たちは、第2衛星の軌道速度を無視して、上空に静止していられる。
第2衛星が盾になって、敵の探索から隠してくれている筈だ。
もし慣性キャンセラーが無ければ、数十Gの高加速で、コンピ研艦隊の連中は
全員ペーストになっている筈だ。そう気が付いたから言った訳だ。今頃連中の
慣性キャンセラーは全力運転しているんだろうな、と。
「へ?何それ」
慣性を消去する慣性キャンセラーが無いと、あんな加速出せる訳無いだろ。
「え、ええそうね」
このやり取りの直後、艦のど真ん中に慣性キャンセラーなる装置が増えている
のを発見した。コンピ研の連中及び古泉よ、俺に感謝しろよ。
「もうすぐね」
ハルヒが呟く。そろそろだ。俺は制帽を深く被り直した。艦橋を見渡す。
右に長門、真ん中に仁王立ちするハルヒ、左の通信員席が朝比奈さん、なの
だが、これは目の毒だな。黄色のぴっちりスーツは何と言うか、松本零士風で
エロ過ぎるのだ。特に胸。その服、おっぱい袋がついていませんか?
「……」
ハルヒのじと目の視線が痛い。俺はフロックコートの襟を直し、更に制帽の
金モール付きの庇を下げる。どうやら俺がこの艦の艦長、ハルヒが艦隊司令の
元帥閣下、なのらしい。
「総員戦闘配置」
「総員戦闘配置」
ハルヒの命令を、可愛らしく朝比奈さんが復唱する。手元のモニタをチェック
すると、艦内のデータメインバスがリアルタイムモードに切り替わり、5重に
冗長化されるのが見て取れた。テレメトリが艦内の状況を全てグリーンと
報告する。艦橋の照明が落ちる。
非常灯とモニタの灯りだけの艦橋はそのまま無言が続き、そろそろハルヒに
ひと声かけようかと思った頃、
「アラート。黄経0時黄緯80度、距離一万」
単位なしはキロメートル、そう長門とは打ち合わせてある。近い、近過ぎる。
「高質量単位多数発射を確認。恐らくはミサイル」
こいつらの推進システムの基本は縮退物質だ。通常物質を食わせて莫大な
出力を得る。しかも重力波ホーミング弾頭だ。
……これもハルヒをそそのかして、そういう設定にしちまった訳だが。
「第一波4000発、到達まで66秒。第二波4000発、到達まで96秒。マーク」
逃げられないって数と密度だ。こりゃ古泉の別働隊だな。
599 :
射手座の夜:2006/07/17(月) 20:49:08 ID:tNm3f/kE
5/10
「全部打ち落としなさい!」
「待てハルヒ」
何よ今緊急事態なのよ、というハルヒを無視して、
「朝比奈さん、全艦に通信。慣性キャンセラー及び縮退エンジン停止。ぎりぎり
まで自由落下せよ、って」
はっ、はーい、と朝比奈さんが復唱する。何よ勝手に、とハルヒが俺に詰め
寄ったところで、人工重力が消失した。
「ちょっ、何よ」
ふわりと足元を浮かせたハルヒの手を掴む。動力切ったから人工重力も切れた
んだ。ほら掴まれ。こいつムスッとしっ放しだな。その横顔の向こうを、レーザー
みたいに輝く筋が走る。敵ミサイルの噴射ガスが発光しているのだ。
敵ミサイルは目標を見失って、俺たちは自由落下している。それでもやられる
奴はいるようで、
「戦艦”無謀”号撃沈。戦艦”狂気の自殺”号も……」
そりゃ沈みそうな名前だな。さて、と。
「全艦全システム復帰。衛星の軌道に乗れ。10分で会敵だ」
敵ミサイルは近場で最も大きな重力源である衛星に突入して、その半球をずた
ずたにしている。さて、重力ターンで廻り込むぜ。いや待て。
「第一から第四駆逐艦隊は全速で離脱。射手座を目指せ。敵遭遇時は適当に応戦
して逃げろ」
用心のための露払いだ。ぽかぽかと俺を叩くハルヒを無視して、
「全艦黄経20時黄緯0度にロール+軸照準。主砲発射準備」
さてこれで準備完了だ。ハルヒは、
「何一人で命令してんのよキョンの分際で」
俺の首を絞めにかかった。やめろ。死ぬ。マジで死ぬ。ミサイルに殺られる前に
ハルヒに殺られる。
「前方駆逐艦隊より入電。われ優勢なる敵と交戦中」
やっぱりな。ハルヒの細い指の間に指を入れてどうにか声が出るようにして、
「全艦全砲門開け。艦首前方を指向」
こいつらに積んであるレーザ砲ってのにはマジで砲門がある。パカッと開いた
蓋の裏側がミラーになっていて、これで照準する仕組みだ。
敵艦にはコンピ研の連中と古泉が、生身で乗っている。連中は夢か何かだと
思っているのかも知れんが、多分死んだらお終いだ。そう考えると、白旗を
揚げるのが一番安全な気もするが、問題は我侭閣下ハルヒだ。
従って、全力でぶちかまさせて貰うぜ。さっきの古泉の攻撃の容赦の無さは、
背後の衛星の変わり果てた姿が物語っている。8000発の縮退物質が分子間力を
取り戻し、衛星の半分を吹き飛ばしてしまった。お陰で背後から攻撃される
心配はしないで済む訳だが。
つまり古泉はこっちで死人が出ることは無いと踏んでいる訳だ。仲間を信じて
いる、とか、その手の薄っぺらいセリフではなく、多分ガチガチの計算だ。
逆に言えば、向こうを攻撃しても死人は出ない、古泉は多分そう言っている。
600 :
射手座の夜:2006/07/17(月) 20:51:04 ID:tNm3f/kE
6/10
ところで、いい加減手を離してくれ。マジで脳に酸素が行っていないから。
「私が一番偉いのよ。そこんところ履き違えたら駄目よ」
へいへい。ハルヒはようやく手を離してくれたが、そのまま俺の背後に居る
つもりらしい。
まずいなぁ。俺はハルヒの視線から隠すように身体を少し動かし、手元の
ディスプレイを見た。
1:砲撃開始。撃ちまくれ
2:全艦全速加速開始。進路黄経20時黄緯マイナス30度。敵に構うな。
3:宇宙キングストン弁開け。総員退艦せよ。
長門よ、お前、楽しんでるだろ。三番は一体何だ。宇宙キングストン弁て。
衛星の地平線から、小さな、しかしぎらぎらした太陽が昇っていく。その光景
の中に、小さな光点がちらちらと見える。敵だ。いっちょまえに太陽背負って
やがる。しかしだ、それは(長門が)予想済みだ。
「砲撃開始。撃ちまくれ」
艦の巨大な超伝導コンデンサから莫大な電力がレーザへと注がれる。真空中
ではレーザは見えない筈だが、衛星から噴き出すガスが、レーザの進路上で輝く
光の筋を作る。しかしまぁ、つまんないから、命令追加だ。
「各艦ミサイル発射」
視野の端で長門がこくんと頷く。朝比奈さんが復唱し、ミサイルが山ほど
艦隊からプラズマの噴射炎を引いて飛んでゆく。壮観だな。
……まぁ、そういう訳だ。これまで俺の口走った格好良いセリフは皆、長門が
適当なSFから剽窃したか自分で考えたかしたものを、手元のディスプレイに
転送して貰って、それを口走っていたに過ぎない。実際には艦隊の運用は全て
長門がやっている。どう考えてもそれが一番だろ。
しかしこれがなかなか面白い。長門はいつも3つほど例を挙げてくれるのだが、
どうもその中から選んだ一つ、俺の選択に沿って艦隊を運用してくれている
ようだ。全く気楽なAVGみたいだな。
「軌道前方に敵主力部隊を確認。距離1000。主砲発射準備良し」
手元には長門作の選択肢が来ている筈だが、腕で隠して、ハルヒを見やる。
ほら、どうした。
ハルヒは一瞬複雑な表情をした後、急速に強気ポテンシャルを高めていった。
無敵ハイテンションの元帥閣下の降臨だ。
「主砲発射!情け無用ファイヤ!!」
勢い良く手を振り、ハルヒは砲撃を指示する。しかし何故に源文調なんだ。
別働隊を作らず、主力を全て集中したこちらの火力は、完全に敵を圧倒して
いた。敵はどうやら他にも別働隊を作っていたらしいが、今頃第三番衛星の
陰から出てきたところで、もはや大勢は決したと言って良いだろう。
「こうよこれこれ!
キョンあんたも、もっと私の命令を聞いてシャキッとしなさい。
みくるちゃん、降伏勧告よ。
……ところで古泉君は?」
601 :
射手座の夜:2006/07/17(月) 20:54:16 ID:tNm3f/kE
7/10
そこで計ったように通信が入った。古泉だ。
「残念ですが、お別れの挨拶です」
ご丁寧に三角布で左腕を吊っていやがるが、十中八、九演技だな。なるほど
巧い事考えたもんだ。元の世界に戻って、腕に怪我などしていない古泉を見れば、
あれは夢だったのだと、納得もし易くなるというものだ。
「この艦はもう長くは持たないでしょう」
映像にはノイズが走り、嫌が応にも乗艦の最後が近いことを想起させる。
「ちょっ、何でそんな所にいるのよ!!」
ハルヒの驚きの声は、最後には悲鳴になりかけていた。
「彼と本気で勝負をしたかったのですよ」
そんな理由でっちあげやがったか。勿論俺はそんなセリフ、半句たりとも
信じちゃ居ない。要するに夏合宿の時の応用だな。こういう事を思いつかない
よう、ハルヒにトラウマこさえようという訳だ。しかしそれはいい趣味じゃ
無いぜ。
「何よキョンとはいっつもゲームしてるんじゃない!!」
古泉は髪を掻きあげる。包帯して薄汚れていても、サマになりやがる。
「こういう大舞台で彼と一度、戦いたかったのですよ。
でも残念、彼には勝利の女神が付いていたようです」
「……」
あ、ハルヒが口篭もった。今自分のこと勝利の女神と呼ばれたと思ったな。
しかし実際には長門なんだがな、勝利の女神は。
「今日はとても楽しかったですよ。最後くらいは勝ちたかったのですが。
それでは皆さん、さ」
そこで通信はいきなり切れ、そして、長門が平坦な声で告げた。
「敵艦隊旗艦、撃破を確認」
そして暫く、艦橋には沈黙が重苦しく立ち込めた。
「長距離ワープ準備」
沈黙を破ったのはハルヒだった。ちょい待て。ワープなんて出来るのか?
設定ではそんなものがあっても、ここは閉鎖空間だ。
「目標、銀河中心。敵中枢を直接叩くわよ」
待て待て待て待て。そんなものやったら、一体どうなるんだ。
「長距離ワープ初期モード、フリーラン加速開始」
おい長門、マジでワープするつもりか。艦が加速を始める。
「こうなったらトコトンやるわよ。しょせん血塗られた道よ。
そうでしょブルクハイト」
誰だブルクハイトって。
「全艦、長距離ワープ。目標銀河中心」
朝比奈さんが艦隊通信で指示を伝える間にも、艦はみるみる加速してゆく。
艦隊の全艦艇が長大な噴射炎を背後に引きながら、衛星軌道を離脱する。
「長距離ワープ二次モード。慣性主軸固定。総員定位置へ」
手元のテレメトリ画面が、グリーンからエメラルドブルーへと変わる。
602 :
射手座の夜:2006/07/17(月) 20:56:24 ID:tNm3f/kE
8/10
「カウントダウン、Tマイナス10、9、8……」
ハルヒよ、お前もどっか座ったほうが良いんじゃないか。
「もう遅いわよ」
じゃあほら、俺の席に座れ。
「あんたどうするのよ」
立ってるさ。
「そんな訳いかないわよ。っていうかもう遅いっ」
何しやがる。俺の膝の上に腰掛けやがった。仕方ない。俺はハルヒの腰を
引き寄せて、衝撃に備えた。
「イグニッション。最終モードスタート」
瞬間、俺たちは、びゅーーーーん、と伸びた。戦艦が、艦橋が、ハルヒが、
そして俺が前後にべらぼうに伸びる。ぐんぐん伸びる。無限に伸びてゆくん
じゃ無いかと思った頃、先端で何かに突き当たった。
「何っ」
伸びまくったハルヒが、伸びまくった俺の膝の上、艦橋の中で叫ぶ。
「空間境界の障壁に到達」
長門の報告には、ハルヒにとって理解できる情報は含まれていない。しかし
ハルヒはこれを、自分の行く手を遮る敵と決めたらしい。
「ぶち破りなさい!」
「機関出力をミリタリーからマキシマムへ。艦構造警報。応力許容値の
5パーセント」
艦全体が震動しながら青白く光り出す。なんとなく判ったぜ。この戦艦、
実のところハルヒの青カビ発光巨人と同じ代物なんだろ。
「艦構造警報。応力許容値の15パーセント」
更に震動が激しくなる。
「こらアンタどこ掴んでるのよ」
それよりお前もっとちゃんと掴まれ。
「艦構造警報。応力許容値の80パーセント」
げっ。いきなり80パーかよっ。この艦が砕け、俺たちが真空に投げ出される
のが早いか、閉鎖空間が砕けるのが早いか。
ぶれる視界の前方に、小さな光の筋が見えた。ままたく間に視野全体に広がる。
閉鎖空間が壊れるのだ。しかし、しっかり握っていた筈の肘掛の感触が無い事に
今頃気付く。艦橋全体がぶれて、白一色になろうとしていた。
これからどうなる。全員この閉鎖空間の真空の中で死ぬか。どことも知れぬ
ワープを果たして異世界に跳ぶか。俺はハルヒを更に抱きしめた。ハルヒのほうは
俺の首根っこに抱きついているようだが、苦しいっ。
「艦構造警報。応力許容値の160パーセント」
気を失いそうな震動の中、まだ長門の声が聞こえてくるのが信じられん。
その瞬間、世界は真っ白に吹き飛んだ。
そして次の瞬間、俺は暗い自分の部屋で目を覚ました。驚きは無いぜ。
さて。カーテンの袖をめくる。ワープで跳んだ、どことも知れぬ異世界、
だったりすると困るからな。恐る恐る、窓から外を眺める。
あ、これは別の意味で困る。
もう朝だ。
603 :
射手座の夜:2006/07/17(月) 20:58:52 ID:tNm3f/kE
9/10
寝不足面がこうも雁首を揃えていれば、少しは疑っても良さそうなものだが、
ハルヒの脳内に、そんな疑問が去来することは金輪際無さそうだ。
部室の長テーブルの向こうで、古泉は優雅にあくびをかました。そんなもの
までサマにならんでも良いだろうに。勿論怪我など影カタチも無い。
久しぶりにやったチェスの駒を片付けながら訊く。ところでお前、テレポー
テーション使えるだろ。
「何のことですか」
あの敵旗艦が沈む前に、脱出艇が飛び出したのは確認済みだ。長門はちゃんと
チェックしていた。しかしお前は、脱出艇が出た後の艦に残っていたな。あそこ
から生き残るためには、魔法か奇跡か超能力が必要だ。実はあの後、俺たちの
艦にテレポートでもしたんじゃないか?
「そこまで見抜かれるとは」
なめるな。
「しかし、仕方がないじゃありませんか。状況を涼宮さんにとって耐え難いもの
にしようとする努力を、あなたは放棄されていたようですし」
いや、俺も努力したぞ。アイツを除け者にするのは、生命がかかった状況とは
いえ、それなりに胸が痛んだぞ。
「いや全く。最後には涼宮さんにも美味しいところを味わせてあげようだなんて。
その調子で今後もお願いします」
ちょっ、お前見てたのか。
「実はずーっとトイレに隠れていたのですよ」
おい。
「冗談です」
そこで長門が、ぱたんと本を閉じた。
帰り支度を始めた面々を横目に、長門に近づく。
お前のお陰で助かった。ほら借りてた本、返すぜ。
「……」
ああ、結構面白かったぞ。ラストにほんのちょっと救いがあるってのが良いな。
「そう」
手渡した文庫本を鞄に落とした長門は、その鞄から別の文庫本を取り出した。
「読んで」
ありがたく読ませてもらうよ。しかしそこで、俺の手から掠め取る奴がいた。
「何これ」
ハルヒだ。こら返せ。長門に借りたんだ。
「ふーん」
じと目で俺を睨みながら尋問してくる。ああ、時々借りているんだ。なかなか
面白いぞ。
「ねぇ有希、これ私に貸して」
こら、長門が困っているぞ。しかし長門の表情を読もうともしないハルヒは、
「サンキュー有希」
黙っているのを承諾とみなしたのか、そのまま文庫本をかっさらって、帰って
しまいやがった。
604 :
射手座の夜:2006/07/17(月) 20:59:54 ID:tNm3f/kE
10/10
そして沈黙の後、
「あのー、あの、あれもしかして」
……多分そうなんでしょうね。表紙にあったタイトルは、物凄い嫌な予感を
掻き立てるものだった。
「長門さん、あれはもしかして、宇宙戦争もののSFではないでしょうか」
「あなたの推測は正しい。内容は空間戦闘と、個人兵装を用いた地上戦闘を
含んでいる」
つまり、泥沼の白兵戦という奴か。千年以上にも及ぶ恒星間戦争の物語と
聞いて、朝比奈さんが涙目になってる。おい、やばいぞ。何か対策は無いのか。
三人の視線が、長門に集まる。
長門は、その場の全員を見渡して、こう言った。
「今夜は、音をたてずに人を殺す八つの方法を教授する」
最後ワロタw
どうせ対処するなら、ハルヒにファウンデーションとか戦争しないSFを貸してやれ長門w
同じく最後の一言にワロタw
みくるには絶対無理だろそれw
>>590 パラレルがあるなら朝比奈さんの未来は消えないんだから過去をいじる必要がないだろ?
一本道だからこそ過去をいじって自分の未来に繋げる必要がある
後パンジーも同じ未来から来たと思うぞ
まぁ微妙には変わってると思うがこの未来では誰かが死んでるけどこの未来では生きてるなんて事はない
だったらハカセくんを助ける必要がないし
ハルヒを放置してても構わないだろ
>>604 上手いなぁ。長文で別作品スレスレの内容を綺麗に纏めてる。
ハルヒらしいといえばこれ以上ないほどハルヒらしいSFだった。乙。
>>604 面白かったが、元ネタがわからん……
わかる人は何倍も面白いんだろうな。
完成度が高杉。
貪るような読破後、心の虚数空間が満たされた。
「終わり無き戦い」のオチも笑いとパンチが効いてる。もはやプロの仕事
終わりなき戦いわろたw
おもすれー。
最後はワロタというか気に入った
一等自営業な台詞を吐くハルヒもw
>3:宇宙キングストン弁開け。総員退艦せよ。
コレを読んでトップをねらえ(無印)を思い出した俺はもう若くない。
オレのケツをなめろフイタww
すみませーん、前スレ172の続き持ってきたんですが、投下してもよろしいでしょうか?
どうぞどうぞ
ばっちこーい!!
619 :
19-557:2006/07/17(月) 23:25:11 ID:83yy7oBd
>426 なんか、こっ恥ずかしいですね。
>318 愛してる。
失礼して駄文投下。7レス予定。今回は長門モノではありません。
ごめんなさい、自分はまた時間を空けて出直してきます。
4
(キョン君朝よ)
「キョンくん朝だよーー!」
妹と同級生(ではないか)からのステレオ音声ですぐに目がさめた。 どんな目覚ましよりも効くぞ、これは。
「ねーキョンくん、どうしたのー?」
見事な起こされっぷりにテンションが上がりきった俺を見て妹が心配してきた。 大丈夫だ、妹よ。
俺は朝のままの勢いで全力で走って北高まで来た。 正直言うとあの坂をダッシュで上ってきた俺が馬鹿だった。
スタミナの無い俺は息も絶え絶えな状態で教室に入った。 心なしか昨日よりか俺を見る視線が増えてる気がする。 ってか増えてる。
俺は真っ先に真後ろの谷口の席に向かった訳で。 理由は分かるよな。
「よう、キョ…」
「またチェーンメールか?」
谷口はゴムボールをいきなり投げつけられたようにたじろいで、
「よく分かったな。 今度はお前が超能力者とか変人だとかいう訳の分からん内容だがな」
酷い言われようだなオイ。 大方昨日の古泉のやり取りでも聞いてたのだろう。 あれを聞いてまともと思う奴は一度MRIで脳を診てもらった方がいい。
「気にするなキョン、それでも俺たちは友達だ。 なぁ、国木田」
いきなり話を振られた国木田は瞬間接着剤を全身にかけられたようにしばらく固まって、
「あ… うん、そうだよキョン」
何も聞いてなかったなコイツ。
「あー、授業始めるぞ」
岡部が入ってきた。 今日は早いな。
「あとそれと…」
俺は手渡しでプリントを手渡された。 内容を要約すると、
『放課後球技大会の内容決議をするので、生徒会室まで来てください』
との事だ。 俺はいつの間に役員になったんだ?
「何言ってるんだキョン、始業式のときに体育委員になったじゃねえか」
という谷口が後ろからの華麗なツッコミを聞き流した。
俺はなった憶えは無いけどな… と言っても無駄だろう。 恐らく長門がそういう風に改変したんだろうさ。 俺はそんなガラじゃない。
(これからどうするの?)
いきなり話しかけるな。 とはいえ実はもうやる事は決まってる。
今の状況に対して俺たちの状況を把握し、なおかつ俺の味方になってくれる奴は一人しかいない。
正直あいつに頼るのは肉をぶら下げてサバンナを走りぬけるよりイヤだ。 だがそんなことも言ってられん。
俺は昼休みになったとたんに俺は猛ダッシュで廊下を走った。 途中で先生に止められそうになったが、そんな時間もない。
ホント俺は学習能力が無いな。 と思ったのは九組の前で息を切らした時だった。
どうやら九組は体育らしく、ちょうど古泉が体操服姿で廊下を歩いていた。
「古泉!」
俺はあわてて呼び止めた。 俺の体裁がどうなろうと知ったことじゃない。
古泉は俺の姿を確認し、苦笑を浮かべながら肩をすくめた。
「おやおや、またあなたですか…」
完全に馬鹿にされてるな。 まぁそんな事はどうでもいい。
俺はブレザーのポケットから短針銃を取り出し、周りから見えないように古泉に向けた。
古泉は俺を再度見て、さらに苦笑を広げた。 いや、これは嘲笑か。
「何の真似ですか? そんなおも…」
俺は古泉が言い切る前に俺は短針銃を発射した。 昨日と同じく音は無かったが、銃口は古泉に向かっていた事で当たったことを証明していた。
古泉はそのまま俺にもたれかかるように倒れた。
(なるほどね。 でもそんな風にして勘違いされないかしら?)
その言葉に俺はヤバイと感じた。 …時には遅かった。
「キャアアアアアアッ」
女子のガラスを割りそうな叫び声とともに周りがざわめきだした。 周りを見ると何か女子が殺気立ってる。
「おい、古泉大丈夫か?」
俺はあわてて古泉を背負って保健室に運んだ。(まぁ、俺がやったんだが) そこのお前、変な目で見るなよ。
保健室のベッドに寝かせて目を覚ますのを待ってたんだが、一向に目を覚まさない。 鶴屋さんの時は10分ほどだったんだが…
(どういう訳なんだ?)
ここは頭の中の妖精さん… もとい朝倉に聞いてみるとしよう。
(彼の場合は記憶情報だけじゃなく、他の能力も復元してるから時間がかかってるのよ)
(で、どれくらいで目を覚ますんだ?)
(分からないわ。 1時間、2時間、もしかしたら1日かかるかもね)
お前のプログラムだろーが。 とツッコミを入れたかったが、タイミングよくチャイムが鳴ったので急いで教室に戻るハメになった。
教室に戻ると全員(谷口と国木田もだぜ)の視線がかなりキツい物になっていた。 俺も必死なんだ、そんな立たないレッサーパンダを見るような目で見ないでくれ。
何か痛い視線をそこら中(特に女子辺り)から受け続けながら午後の授業を消化した俺は、その視線から逃げるために急いで生徒会室に向かった。 下手すると呪いでもかけられたかもな。
そのせいとは言いがたいが、俺は色々と忘却していた事があった。 まぁ、俺が覚えてたとしても強制イベントとして組み込まれたようで、まぁ後回しするよりかはいいと思う。 いや、思いたい。
俺は生徒会室の前に来ていた。 前ならあの会長の「入りたまえ」とでも聞こえたんだろうが、ノックをしても全く反応が無かった。 誰もいないのかと思って俺が振り返った途端、
「どうぞ…」
聞き覚えのある女性の声だった。 俺は再度振り返りドアを開けた。 もう何でも来い。 今ならアフリカ像が出てきても驚かないぜ。
生徒会室に入って俺は一瞬会長席に座っている笑顔の主が誰か分からなかった。 いや、思い出せなかったというのが正解か。
カマドウマとかの時に色々と関わったき、き…
(喜緑さん…)
それだ。 カマドウマがどうも印象強すぎて… じゃなかった。 何で彼女がいるんだ?
「どうしました?」
「いえ、何でもありません。 で、今日は喜緑さんしかいないみたいですが、会長はお休みですか?」
(馬鹿)
失言だった。
「今の会長は私です… ですがその発言で確信しました…」
立ち上がった。
(喜緑さんがここにいる理由は…)
あぁ、言わなくても分かってる。 俺の監視と記憶が戻った時の情報再操作役だ。 くそっ、生徒会から呼び出しの時点で気付くべきだった。
喜緑さんが笑顔をそのままに少しづつ近づいてくる。 まだドアは開いている。 今なら…
「逃がしません…」
喜緑さんがそう言った途端ドアだった場所が灰色の壁になり、俺は壁に激突し無様に尻餅をついた。 痛ぇ…
「どういう理由で記憶が戻ったかは知りませんが、再度記憶操作させてもらいます…」
喜緑さんが言ったと思ったら、頭がバーベルを乗せられたかのようにズンっときた。 あの時と同じように眠らせる気か…
「ど、どうして俺の記憶を消そうとするんだ?」
「情報統合思念体は状況の打開を求めています… 涼宮ハルヒの力が弱まってきた以上自律進化の可能性を逃すことになります… だからこれ以上あなたに委ねておくわけにはいきません…」
さらに頭が重くなってきた。 力が入らない、やばい…
(封鎖コード解析完了。空間閉鎖解除)
かろうじて聞き取れた。 何をやってるんだ朝倉?
(ドアから離れて)
いつの間にか復活していたドアを確認して俺は身体をよじった。 と同時にドアが勢いよく開いて体操服の男が入ってきた。
「やあ、お待たせしました」
俺の目には古泉のニヤケ面がはっきりと見えた。 遅いぜまったく…
喜緑さんが警戒しながら、それでも表情を変えず、
「古泉一樹、あなたもですか…」
古泉は肩をすくめて、
「残念ながら緊急の用という事で彼に呼び出されましてね」
頭の重圧が消えたのを感じた。 そして同時に喜緑さんがこっちを見た。 いや、むしろ睨んだ。
「混在情報……認… 解析…」
おそらくそんな感じであろう言葉を高速詠唱した。
「なるほど… 朝倉涼子の構成情報の一部がありますね… それですべてが納得がいきます…」
納得されても困るんだがな…
「では…」
喜緑さんがまた高速詠唱を始めた。 が、周りに全く変化が無い。 何をしてるんだ?
(マズイわ。 気付かれた)
(まずいのか?)
(あれは情報解除プログラム このままだと私の情報が削除されてしまうわ。 もって40秒って所ね)
(どうすればいいんだ?)
(噛んで)
一瞬情報伝達に齟齬が発生したのかと思った。
(もう一度言うわ。 喜緑さんを噛んで)
あっけらかんとすごいことを言うな。 女性を噛むなんて小学校低学年の時にキレた時以来だぞ。
(しかしどうやって噛むんだ? 相手は万能魔法使いみたいな奴だぞ)
(それはあなたが考えて。 今は情報削除を防ぐのが精一杯なの)
(そうか…)
俺は改めて喜緑さんを見定め、立ち上がった。
「古泉、何とかして彼女の動きを止めてくれ」
「ほう、何か策でもおありですか?」
古泉のスマイルが2割増しになる。
「一応な… でもやれるか自信はない」
「そうですか。 でも僕はあなたに賭けますよ」
そう言って古泉が喜緑さんに向かって行った。
「あまり手荒なことはしたくないんですよ… だから…」
気付けば身体が1ミリも動かなくなっていた。 古泉も走る動作の途中で止まっている。 しかし朝倉といい、何で最初に止めないんだ?
(あと20秒ね)
そんな事を言う余裕があるなら手伝え。
動けないまま刻々と時間だけ過ぎていく…
(あと5秒よ)
もうダメなのか? と思った瞬間、開きっぱなしのドアから猛ダッシュで誰かが入ってきた。
「会長、キョンくんに何やってんのさっ」
視界の端にロングヘアーが見えたと思ったらそのまま喜緑さんにフライングクロスチョップをかましていた。 あぁ、言うまでも無く鶴屋さんだ。
2人はそのまま鶴屋さんが押し倒した形で倒れた。 それでひるんだのか、身体が動く。 チャンスは今しかない!
「ぬおりゃ!」
情けない声を出しながら鼠を捕らえるベンガルトラのような動作で飛びついて、そのまま腕に噛み付いた。
長門のように甘噛みだったが、それでよかったんだろう。 朝倉が何か得体の知れないものを注入したらしく、喜緑さんはそのまま夢の住人となった。
その後、状況をあまり把握していない鶴屋さんに説教されている俺。
「だからキョンくん、いくらイジめられたからといっておいたはだめにょろ!」
というか鶴屋さんが最初に攻撃したんじゃ…
チラリと横を見ると古泉が残念そうに肩をすくめていた。 どうもほとんど役に立てずに終わったのが納得いかなかったらしい。
「…結局僕は不要でしたか?」
「いや古泉、正直に言うとあそこで着てくれなかったら本当にヤバかった。 感謝してるぜ」
「そう言って貰えて光栄ですね」
分かったからそのニヤケ面130%を別の方向に向けてくれ。
(朝倉、何か秘策が有ったんなら言っといてくれよ)
待てど暮らせど朝倉の反応が無い。
(おい、朝倉?)
いくら呼んでも返答が無い。 おい、どうしたんだ? まさかさっきので消されちまったのか?
朝倉の返答が無くあせっていると、黄緑さんが棺桶から出てくるゾンビのように起きた。
「ふう、手ごわかったわ」
これはマズイ。 これでは戦艦大和に縄文時代の武器で挑むようなものだぞ。
「大丈夫よ。 ナノマシンを使って喜緑さんの情報を私のに置き換えたから」
は?
「なるほど、それでは安心ですね」
古泉、納得してるところ悪いがもっと俺に分かるように30文字以内で説明してくれ。
「喜緑さんの情報の上から私の情報を上書きしたのよ」
古泉が説明に入る前に朝倉(なのか?)がさらっと言った。 ナイスだ。
「つまり見た目は喜緑さん、中身は朝倉という事か?」
「その通りです」
古泉め、しっかりとシメはもって行きやがった。
「紛らわしいから朝倉の姿に出来ないのか?」
「それは無理ね。 一応カナダに転校した事になってるから居たら怪しいじゃない。 でもこれである程度のことは出来るようになったわ。 たとえば涼宮さんを探すとか」
何か一気に解決に近づいたな
「固体情報は喜緑さんだから騙し騙しで情報統合思念体に接続できるのよ。 それでも万全には程遠いわ」
それで十分だと思うが… とりあえずハルヒを探してくれ、そうすりゃ一気に片がつく。 もう自律進化の可能性なんて知るか。 もうハルヒに世界改変でもさせてやる。
「分かったわ、ちょっと待ってね…」
そういうと朝倉(IN喜緑さん)がまたなにやら高速詠唱を始めた。
「大体の場所は分かったわ。 意外と早く見つかったわね」
まだ4秒くらいしか経ってないのにそこまで探せるのか。 本当に青いタヌキロボよりも万能だな。
「で、ハルヒはどこにいるんだ?」
「ちょっと待ってね、絞り込む… あっ!」
「どうした朝倉?」
何かあったのか朝倉が再度高速詠唱を始めた。 かろうじて、
「…体…Dコー……… 情報統合思念体アクセス……範囲拡大…………」
とだけは聞こえた。
「まずいわね。 涼宮さんをロストしたわ…」
朝倉の顔が深刻そうな面持ちに変わった。
「それは情報統合思念体の影響ですか?」
古泉が真剣な表情になり、朝倉を問いただす。
「いいえ、涼宮さんが無意識のうちに感じ取って妨害してきたようね」
という事は…
「これから涼宮さんを探すのはかなり難しいわね… さっきの場所から移動してるかもしれないし…」
一瞬意識がブラックアウトした。 もうハルヒに会えないのか?
ふと気付けば鶴屋さんに後ろから支えられていた。
「えーっとキョン君、これはどういう状況っさ?」
鶴屋さんは状況が把握できてないようで頭に疑問符を浮かべている。
「つまりですね、喜緑さんが朝倉になって、ハルヒが見つからなくなって…」
「簡単に言うと今のままでは涼宮さんに会うことが出来ないという事です」
うまく伝えれない俺に代わり古泉の説明が入った。 今回ばかりは礼を言っとこう。
「じゃあ朝倉、俺たちはこれからどうしたらいいんだ?」
「今はどうしようもないわね。 今のところこちらの動きもバレてないみたいだし、明日まで様子を見るしかないわ」
「そうか…」
うなだれている俺を尻目に古泉が、
「でも念には念を押して一緒に行動したほうがいいのでは?」
という案を出した。
「そうね、万が一気付かれた場合その方が対応が取り易いわね」
ちょっと待て、学校内ならともかく家まで一緒にいるわけにもいかんだろ。
「それだったらウチに来るといいっさ! 離れの一つくらいなら貸してあげるにょろ!」
鶴屋さん、そこで焚き付けないでください。
「じゃあ決まりね。 とりあえず学校を出ましょう。 このまま生徒会室にいるのも怪しいし」
とりあえずゲタ箱まで来たんだが、どう見ても目立ってるな。
何せ生徒会長1、体操着姿1、片割れがおかしなカップル(もう違うが)1という変な組み合わせだ。 目立たない方がおかしい。
「とりあえず僕は制服を取ってきますよ。 このままだと結構恥ずかしいですからね」
狙ってやってたんじゃなかったのか。
そう思いながらゲタ箱を開けると可愛らしい便箋が落ちた。
俺はあわててそれを拾い上げ、中身を確かめた。 俺はこれを何回も見たことがある。
便箋の中の手紙には丸っこい字でこう書かれていた。
『今日の夜10時にあの公園のベンチで待っててください』
とりあえずここまでです。
続きかいてきます。
またいいところで切れたーっ!
でもGJ!
えーと、とりあえず思いついたので、エロパロ的小ネタを投下しておきますえ。
「はぁっ!…はぁ…はぁ…」
静かな部屋に、荒く息をつく音が響き渡る。
誰有ろう、我らが団長様、涼宮ハルヒの声だ。
ちょ……ハルヒ…声大きすぎ…
「う、うるさいわね…勝手に出ちゃうんだから…仕様が無いでしょ…んっ…はっ!」
パチュンパチュンと腰がぶつかり合う音がそれに混ざってくる。
体育倉庫から失敬してきたマットと、保健室から失敬してきたシーツで拵えた即席ベッド。
その上に俺が寝転ばされ、更にその上にハルヒの身体が乗っかっている。
それで、俺たちは何をしているかというと…まぁ、その、不純異性交遊をしてるわけだ。
そうだよ、セックスだよ。
部室でハルヒと二人きりになってしまったらアウト。
奥に隠してあるこの即席ベッドをハルヒが引っ張り出してきたら、開始の合図だ。
ただ、こうなったとき、俺に人権は与えられていない。
一方的にハルヒに上に乗っかられて、勝手に良いように動き回られ、
ハルヒが勝手にイッちまうんだ…
この前なんかひどかったぞ。
ハルヒが2回イッて。それでも何故か俺はイケなかったんだ(何だろ、疲れてたのかな?)。
それでもハルヒが堪能したいい笑顔で、『すっきりした』と頭の上に浮かんでそうないい笑顔で、
そそくさとパンツ穿き始めるもんだから、
「お…おい…」
とか言ってみたら。
「何よー。何か文句ある?」
とか言われて。それでも立ちんぼになってる俺のモノが目に付いたのか。
「仕様がないわねー…」
とか言いながら。
手でイカされた…
何だか凄く適当に扱われてる感じがする。
俺はお前の道具か!
などと考えつつも、結局流されてる俺って……やっぱり男の子なのか…
いや、でもこうしてハルヒの欲求不満の捌け口になってやることは、世界平和に繋がってるのか。
すげぇ!俺のセックスはアフリカの貧しい子供たちを救うにも等しい尊い行為なのか。
なーーーんてな…んなわけねーだろ…
「はぁっ!…はぁ…すっごく…硬い…」
今日も今日とてハルヒは俺の上で激しく上下運動。
最近は締め付けながら動かすのを覚えたらしい。
うぁっ!ダメ…ダメだって…そんなに引っ掛けたらダメだって…
「もぉ!バカ…こうやって、あんたの先っちょが引っかかるのが良いんじゃない!」
そりゃ…お前が良いだけだろ!
いや、こっちも良いんだが…これだと、すぐにイッちまう…
「ふぅっ…はぁっ…キョンの…硬い…すっごいスケベ…」
うぅう…ハルヒの入り口が、俺のカリ首に引っかかる。
何度も何度も…
そこは弱いんだ…
こいつ、わかっててやってんじゃないのか?
うわ!ヤバい…こみ上げてきた…
「ちょ…ハルヒ…ちょっと待て!」
俺は堪らなくなって、手を伸ばしてハルヒの尻を思いっきり掴んでやった。
止まれ……止まってくれぇ…
「何よ…もう出ちゃいそうなの?…」
ハルヒの腰が止まる。
おお…わかってくれたか…珍しいこともあるもんだ…
「…言っとくけど…今日中に出したらヤバいから…」
え?それってまさか…
「そう…危険日…排卵日ど真ん中よ!」
おいおい、勘弁してくれ!!
じゃぁ何で生でやってんだよお前!
もうちょっと自覚を持ってだな…というか、さっさとどけ!!
「このまま射精しちゃったら…ほぼ間違いなく孕まされちゃうわね…」
などと、恐ろしいことを言いながら、
ハルヒさんはゆっくりと腰を落としてきました。
何でだーー!!
先程まで俺の先っちょ責めのため、浅い位置で抽送を繰り返していたのが、
ズブズブと深い位置まで飲み込まれていった。
さっきまでのカリ首に対する断続的な刺激だけでもイキそうになってたのに。
肉棒全体をハルヒの柔肉に包まれて、全体を締め付けられるみたいだ…
うわ…すごく…
気持ちいい…
632 :
秘密道具は秘密の計画:2006/07/18(火) 00:17:07 ID:VcxLTtrU
「うおぉっ!!!」
ヤバかった…全身の力が抜けてしまいそうだったよ。
「ふっ…んっ……」
おいおい、ハルヒさん…何をなさるんですか…
何故腰を左右に動かしあそばれているのですか…
「ヤバいわ…全然ヤバいわよ…このまま中に出されたら…私…んっ…妊娠させられちゃう…」
だったらさっさとどけよ!
言ってることとやってることが矛盾してるよ!!
うわぁ…何ということでしょう…ハルヒの中はあったかくて…ヌルヌルして…
腰を動かされると…膣内のデコボコが俺の肉棒を這い回るようで…
全体をしごかれてるみたいだ…
マズイ…力が抜けていく…
「あっ!!…ここ…ここ気持ちいい!!」
ハルヒの嬉々とした声が俺の頭に響いてくる。
そして、ハルヒの中の奥深くで、俺の亀頭の先が、何かコツコツとしたものに当たっている。
「すごい!キョン!…あんたのが一番奥まで届いてる…こんなの初めて…」
一番奥って、まさか…子宮口ってやつ…か…
「はぁっ…はぁっ!!すごい!…んっ!…ここ擦ると気持ちいい!」
ハルヒが喜んでる…腰は今までみたいに上下に動かすんじゃなくて、
激しく前後に動かしてる。
でも、俺にとってはそれがとてつもなくヤバい…
ハルヒの中で、俺の肉棒全体が、あちこちへ折れ曲がって、
尚且つ先端の敏感な部分にはコリコリと少々硬い感触が当たり続けてて…
「うぁっ!すごっ……イキそう…」
そんな…今こんな状態でイカれたら…
「うぅううぅぅうううーー…」
なんてことだ…ハルヒのやつ…かってにイキやがった…
おれのあたまの よこについた て で、しーつをにぎりしめながら、はでにイッてる…
あぁ、もう…ハルヒ…すごいしめつけだ…
おれの がはいってることなんか おかまいなしにしめあげてるよ…
「ふぅ…はぁぁぁぁーーー…」
イキおわったのか…
ハルヒのいつものすっきりした かお が おれにちかづいてくる
そうなんだ…ハルヒはいつもイキおわると こうやっておれに もたれかかって…
でも だめ なんだきょうは…はやくどいてくれ…
だめだ…もう がまん…できな…
「うぅぅううっ!!!!!」
俺の口から派手に呻き声が漏れた。
「はぁぁっ!!熱ぅっ!」
同時にハルイからも声が漏れる。
もうダメだった。
ハルヒがイッたのが最後。俺の臨界点をかるーく突破してしまった。
俺の腰がガクガクと震えてる…
自分でも信じられない勢いで、信じられない量の精液が、
一気にハルヒの膣内に放出された…
「バカ!キョン!中で出てるよ!中で出してるってばぁ…」
うるさいな…そんなことわかってるよ…お前のせいだろ…もう…いいよ…
全部出し切ってやる。
俺は射精しながら、下から腰を突き上げやった。
すげぇ!こんなことできたんだ!
「そんな…奥に直接…妊娠しちゃうよ…」
そうだ、子宮内に直接射精してやった。
お前の言うように危険日なら、間違いなく妊娠だ。
いいよ、安心しろ…責任取る気はあるから…
「うはぁあああぅ……」
でも、実は二人ともわざとやってる
いや、何と言うか…最近マンネリ気味とか言って…ハルヒがちょっとだけシチュエーションを考えて来るんだよ。
今回は、
『射精したくても出来ない男と、それを敢えて責め立てる妖艶な女』
最初は、俺の肉棒をゴムで縛ろうとかハルヒが言い出したんだけど、
痛そうだし、ゴムっていうと、朝比奈さんの髪を縛るやつしか部室に無かったから、遠慮した。
まぁ、そんなわけだ。
一頻り射精を終えた俺は、慌ててハルヒの中から自らの肉棒を引き抜いた。
力を失った肉棒はだらしなく垂れ下がる。
しかし、その先端から女の入口まで繋がる白濁した糸が、確かに膣内射精が行われた事実を示していた。
「ごめんな、ハルヒ。痛かったか?」
俺は力なくシーツに突っ伏したままのハルヒの身体を持ち上げ、反転させて自分の方を向ける。
い、ホントに大丈夫か…
「ううん。大丈夫、気持ち良かったよ…キョン…」
先程までの鬼気迫った表情とは打って変わって、ハルヒの顔は優しく微笑んでいる。
そして、満足げに俺の頬を撫でてくるのだ。
「そうか、ハルヒも良かったよ」
俺はハルヒの手を握って答える。
そんなとき、俺の腕の中でハルヒの身体がブルッと震えた。
「んん…中からキョンの精子が溢れてきた」
ハルヒがゆっくりと自分の足を開いていく。
そこには、激しく突き動かされた直後で、元のように閉じきらない膣口。
その内部で膣壁が盛り上がり、中から白濁した精液の塊が吐き出された。
うわ、なんだか恥ずかしいっ……
俺ってば凄い量出してるよ…
俺はなんだか居た堪れなくなり、その光景から目を背けた。
「それをしてもすごい量ね。お腹の中がグチュグチュ」
ハルヒの方はむしろ冷静になったのか、今溢れ出てきた精液を指先で弄んでいる。
「い、いやぁ、ハルヒが演技とはいえ危険日なんていうから、興奮しちゃって」
俺はハルヒの方をまともには見れず、チラチラと垣間見ていた。
「え?」
ハルヒが何だか不思議そうな顔をしている。
「え?」
あれ?俺、何か変なこと言ったか?
俺たちはお互いの方を向き合い、お互いの目と目が合った。
「危険日は演技じゃないわよ」
衝撃の事実。
「なにいいぃいいいぃぃぃ!!!!!!!!」
急激に青ざめる俺。口が開いたまま塞がらなくなる。
「そ…そんな…ハルヒ…だって…あくまで こうふん を たかめる えんぎであって…」
「やーねぇ…演技ばかりじゃ面白くないじゃない!」
そ…そんな…そんな理由で…
お父さん、お母さん、ごめんなさい…
さようなら、俺の学生生活…明日から働きます…
「大丈夫よ!ちゃんと考えてきてあるから」
えっ?そうなの?
「じゃぁあああん」
猫型ロボットのように得意満面にハルヒが手にしているのは、ビンに入った何やら黒い液体。
「コカ・コーーラぁぁーーー!!」
お前は猫型ロボットか!
え?何?何でコーラ?
「知らないの?中出しされたあとでも、コーラで洗えば大丈夫なのよ」
「そ、そうなのか。ホッ」
俺はそれを聞いて安堵の息をついた。
ハルヒはコーラのビンを何度も上下に振った後、思いっきり栓を抜き取った。
「わぉ!」
勢い良く噴出すコーラ。
ハルヒは慌ててそれを自分の股間に宛がった。
「うわ!すごい…しゅわしゅわぁーーーって…気持ちいいかも…」
おいおい、変な趣味覚えるなよ…
「ところで、ハルヒ、お前よく知ってたな、コーラなんて…」
「んっ!……あぁ、古泉くんに聞いたのよ」
「は?」
「だって、彼って普段何考えてるかわかんないけど、経験は多そうじゃない?あのルックスだし」
「そうか…なぁ?…」
「まぁ、だから、いいこと聞いたと思ってんのよね…」
別室にて…
ヴーーンと微かな機械音を奏でながら動き続けるモニター。
そこには、文芸部室の内部の様子が映し出されている。
「涼宮さん…とうとうやっちゃいましたね…これで良かったの?古泉くん…」
「良いんですよ…僕もいい加減疲れてきましたからね…」
「これで、涼宮ハルヒの不満は一気に解消される」
「ふふ…もうキョンくんは逃れられなくなったわけですからね…」
「でも…なんだかキョンくんに悪いわ…」
「良いんですよ…このまま放っておいても見ていてじれったいだけですから…
まったく、さっさとこうやって既成事実を作ってしまえば…
もう、彼女も彼も、今の世界を選ぶしかなくなるはず…です…」
「涼宮ハルヒの着床を確認…」
でも、「どうしよどうしよーーー、生理が来ないよーー」という不安感から、
とてつもなくでっかい閉鎖空間が発生したのでした。
(おしまい)
ごめんなさい、途中でageてしまいました…
いちごヨーグルト食べながらやってるからこうなるんだよ…
すみませんでした
でも、また書いたら投下するのでよろしくお願いします。
「○×すれば妊娠しない」という話は、ほぼ全部ナマでやりたい男がでっち上げた嘘だからなー(W
>>638 お疲れさん
面白かったよ
次の投下を楽しみにしてます
バカだな。うん、実にバカだ。
微笑ましくなるようなバカップルぶりだ。
こんなバカップルに振り回される三人組はさぞかし辛いものがあるんだろうな。
ハァ、ヤンママハルヒか…悪くない。
バカップルって、カプ厨が自分の好きなカプがラブラブなの見て嬉しがってるときにしか聞かない言葉になったな。
>>643 そうか?高校時代にもいたし、普通に使ってたが。
>>643 ふむ、バカップルにはそういう取り方もあるのか・・・・・・
俺はてっきり「人目の有る無しに拘らずイチャついているバカなカップル」
のことかと思ってた・・・・・・
日本語通じてないのかな。
今はカプ厨だけが使ってる言葉だと言ったつもり。
昔普通に使ってたとか言葉の意味とか返されて困惑。
おこらんといてな
べつにおこってないじゃn。
高一で妊娠とか実際になったら大変だな。
それでもハルヒなら何とかしてくれるのかな。
へー、バカップルってカプ厨だけしか使わないんだー。
何でそう斜に構えて自分に陶酔するかね。
カプ厨ってどういう意味?
みんな落ち着け
>643はこのスレを荒らして反応を見ようとしている
情報統合思念体の罠だ
高一で子持ちは大変だけど
この二人の場合だと周りがすごい助けてくれそうだから
なんとか子育てできる気がする。
ここで両親と16しか違わない俺が登場!
呼んでないですね
退学になるけど大丈夫か?
657 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 01:29:41 ID:oc8hEqMy
GJ! やぱハルヒ×キョンか
658 :
19-557:2006/07/18(火) 01:34:59 ID:nD2znry5
さて、ここで流れの読めない人間登場。
7レス予定。勢いで書いた。反省はしていない。
659 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 01:35:08 ID:oc8hEqMy
今になってハルヒ×キョン×みくるキボンな俺
日曜日の昼過ぎ。外は雨だが関係ない。
今日は珍しくSOS団の活動が無い。
良いことは重なるモノで、母親も出掛けてしまったので、家にいても勉強しろと強要されることもない。
妹の面倒を見るように言われたが、あいつも小五だ、付きっきりである必要はない。
となれば布団の上で、だらーっと過ごすのが健康的な高校生の生活という物じゃないか。
今の俺は平穏そのもの、幸せそのものだ。
普段、学校ではこうはいかない。
幸せを噛みしめていると、必ず厄介ごとを持ち込んでくる奴がいるかならな。
まあ、さすがにあいつでも、今突然この部屋のドアを開けて飛び込んで来るなんてことは無いだろう。
自分の置かれている幸福な状況を再確認し、一眠りしようと枕の位置を正そうとした。
しかし平穏は予想に反し、突然の闖入者によって乱された。
開け放たれるドア。そして、うるさく連呼される間抜けな俺のあだ名。
『 ある女性の成長 』
「キョンくん、キョンくんー、たいへんだよー!」
妹が腕に抱えるのは、シャミセンという動物保護団体に聞かれたら訴えられそうな名前の猫だ。
訴訟相手は俺ではなく、ここにはいないゴッドファザーにして欲しい。
ともかく、その妹に抱えられた毛玉を見たことで、俺は更に眉を顰めることになる。
「シャミが外で遊んでたのー」
呑気な声で報告をする妹。やれやれ、そりゃ溜息も吐きたくなるさ。
何だって普段は寝てばかりの怠け猫が、こんな日に限って外に出るんだよ。
「勘弁してくれ、泥だらけじゃないか」
シャミセンは車の跳ね水でも被ったのか、濡れ鼠の泥だらけだった。
茶一色で、雄の三毛猫という希少性がすっかり失われてしまっている。
そして当然、それを抱える妹の手や服も同じ運命だ。
「キョンくん、どうしよー?」
どうするってなぁ……
「風呂に入れるしかないだろ」
まるで俺の言葉が分かったかのように、妹の腕の中でシャミセンの耳がピクリと動いた。
暴れる猫を何とか風呂場まで連れ込むことに成功。
観念したのかシャミセンも大人しくなったが、そこまでの代償に俺の腕には幾筋もの引っ掻き傷。
さすがにこれを名誉の負傷などと誇れるほど達観はしていない。
トランクス一丁という情けない姿で毛の固まりを洗っていると、隣から声を掛けられた。
言うまでもなく、同じく泥だらけになったためシャワーを浴びている妹だ。
「キョンくん、あたしの髪も洗ってー」
アホ。小学五年生なんだから一人で洗え。
「えー、キョンくんのいじわるー」
こら、狭いんだから手を振り回すな。
……はいはい分かった。分かったから頬を膨らませるな。
「へへー。キョンくん大好きー」
お前に好かれたところで、何も嬉しくはない。
とりあえず先にシャミセンをわしゃわしゃと洗ってしまい、バスタオルで水気を拭き取る。
呑気なもので、喉元過ぎて安心したのか脱衣所のタオルの上で眠りについた。
初めから外に出ずそうしていれば俺も今頃布団の上で眠れていたというのに。
「キョンくん、早くー」
妹はすでに椅子に座ってスタンバっている。こっちも呑気なものだ。やれやれ。
「キョンくんに洗ってもらうの、久しぶりだねー」
「んー、そうだな。最後に洗ってやったのは、いつだっけな」
以前は一緒に風呂に入っていて、髪を洗ったりしてやるのも俺の役割だった。
それも俺の生活時間の変化や妹の成長に伴い自然と回数が減り、いつの間にか完全に別になった。
まあ他所の事情はよく知らないが、どこも大抵そんなもんだろう。
シャワーを頭から浴びせかけると、きゃいきゃいと嬉しそうに騒ぐ。
しかしほんと変わってないな、こいつは。まったく成長していない。
「えー、そんなことないよー」
ほら、と言って胸を張る。
もしやとは思うが、その下町の熟練金属加工職人が三日間掛けて削り整えた平面を言ってるのか?
「むー。あたしだって高校生になれば、みくるちゃんみたいなおっぱいに」
「ならん!!」
「もうっ、キョンく──わぷっ、きゃっ! やっ、キョンくん! やだったらー!」
続けて文句を言おうとする妹に、シャワーを浴びせて黙らせる。
妹の神をも畏れぬ妄言を止めるのは兄の役目だろう。
シャンプーを泡立て、わしゃわしゃと洗ってやる。デリケートなどとは無縁だ。
「んー、キョンくん気持ちー」
まあ、他人に髪を洗ってもらう気持ちよさは、床屋に行けばよく分かる。
「ねえ、キョンくん」
何だ?
洗う手を休めずに返事をする。
「どうして最近、いっしょにお風呂に入ってくれないの?」
どうしてって、いつまでも俺に洗ってもらうようじゃ困るだろ。
「どうしてー?」
あのなあ、俺だってずっとお前の面倒を見ているわけにはいかないんだよ。
「兄妹なのに?」
兄妹だって、一人暮らししたり結婚したりして、いつかは別れるもんだろ。
「えーっ!!」
妹は急に振り返ると、必死な顔で叫んだ。
「そんなのヤダっ!!」
……こいつのこんな顔を見るのは、いつ以来だろう。
その必死顔も長くは続かない。
シャンプーが目に入ったのか、すぐに目を押さえて痛い痛いと言い出した。
溜息を吐きながら、シャワーで泡を洗い流してやる。
そうこうしているうちに妹も落ち着いたようで、再び大人しく椅子に座り込んだ。
ただし、どうも落ち込んでいる様子だ。
まったく、いい加減に兄離れをして欲しいのだが……
「あのなあ、離れるったって、今すぐってわけじゃないぞ」
「…………」
「高校の間は実家にいるし、大学だっておそらく通える場所に行く。結婚なんて遙かに先だ」
それどころか、一生縁が無い可能性だってある。
そう言っても妹は落ち込んだままだ。
とにかくアヒル口は止めなさい。誰かみたいになられては困る。
「……分かんないもん。すぐに結婚しちゃうかもしれないもん」
俯いたまま、憮然とした口調で言う。
「あのなあ、結婚ったって、相手がいなきゃどうしようもないだろ」
そして俺に相手はいない。
まあ結婚相手はともかく、彼女もいないっていうのは威張れる物ではないが。
「……いるもん」
──何を言い出すんだ、こいつは?
シャンプーが脳まで達しておかしな化学反応を起こしたのか?
いったい誰が俺と結婚してくれるっていうんだ。
「ミヨキチちゃん」
……は? 何でミヨキチの名前が出てくるんだ?
「だって、キョンくん、ミヨキチちゃんとデートしたもん」
デートって……、ああ、あれか。
「ミヨキチちゃん、あたしより大人っぽいし、おっぱい大きいし……」
……まあ、確かに妹よりは大人びているが、所詮は小学生だ。当然対象外である。
ちなみに俺は年上好きの傾向があるらしい。
もちろん、そんなことまで教えるつもりはないが。
「あのなあ、ミヨキチと結婚なんて、考えたこともないぞ」
溜息混じりに答えてやる。
これで終わりかと思ったが、妹は続けて爆弾を投下した。
「じゃあ、みくるちゃん?」
朝比奈さんと結婚?
何と魅惑的な響きだろう。残念ながら、可能性は絶望的だが。
「ゆきちゃん?」
長門か。プロポーズでもすれば、分かった、と一言で了承しそうで怖いな。
悪い男に騙されなきゃいいが……って、そんな心配する必要はないな。
続く鶴屋さんの名前も否定する。
仮に結婚できたら逆玉で左団扇を約束な上に、毎日がとても楽しそうではあるが。
「じゃあ、ハルヒちゃんなの?」
「それはない」
これは即答。間違ってもそんなことは無い。断じて無い。
「じゃあ、まだあたしといっしょにいてくれるの?」
別にお前のためにってわけじゃないが、一緒に住んでる以上、必然的にそうなる。
「えへへー」
……そんなに嬉しそうに笑うな。
体も洗ってと甘える妹の頭を軽く叩く。
あまり甘やかしては、こいつのためにならない。
俺はまだ体を洗ってはいないが、そのまま湯船に浸かった。
トランクスを履いたままなので、変な気分だが仕方がない。
さすがに妹も五年生になったのだから、この程度のエチケットは必要だろう。
する事もないので、体を洗う妹をぼーっと眺めたりなどする。
「やだキョンくん、じろじろ見て、えっちだー」
羞恥心の欠片もなしに、けらけらと笑う。アホか。
えっちえっちー、と囃し立てる妹を無視することに決め、天井を見上げる。
あー、昼間っから風呂に入るってのも贅沢で良いなぁ。
いつの間にか妹も静かになった。
気にせずにぼーっとしていると、視界の端に妹が立ち上がるのが分かる。
天井から視線を移すと、ちょうど浴槽を跨ぐところだった。
大事なところが丸見えである。
「こら、そういう所はちゃんと隠せ」
「えー、前はそんなこと言わなかったのにー」
「お前だって、いつまでも子供じゃないんだから。学校で色々と習っただろう」
小五と言えば、もう性教育だって受けたはずだ。
「うん、習ったよ。もう生理がある子もいるみたい」
そういうことは、あんまり言うんじゃありません。
入れ替わりに体を洗おうと思っていたがタイミングを逃した。
妹が脚の間に割り込み、胸に寄りかかってきたので、後ろから抱きかかえる格好になる。
昔、一緒に風呂に入っていた頃と同じ体勢。
以前よりも窮屈で、妹も体が大きくなったことに気付いた。
上から覗き込むと、心なしか胸も膨らんでいるように見える。
いつまでも子供っぽいと思っていたが、少なくとも体の方は成長しているらしい。
「ねえ」
さっきまでよりもトーンが落ちて、どこか不安げに声を掛けてきた。
「何だ?」
「キョンくんは、……えっちしたことある?」
驚かなかったと言えば嘘になる。
……こいつもそういうのに興味を持つ年頃か。
まあ、自分の少し前を思い出せば、それも当然に思える。
ましてや女子の方が成長が早いとも言うしな。
ここは年長者として、真面目に答えておくべきだろう。
「そっかー。あのねぇ、あたしもまだだよ」
当たり前だ。
妹は、そっかそっかぁと言いながら嬉しそうにお湯をぱしゃぱしゃと弾いている。
この程度の話でテンションが上がるとは、やはり小学生だ。
「えっちをしたいって思ったことはある?」
少し答えづらい質問だったが、まあな、と濁し気味に答える。
おい、にやにや笑うんじゃない。
男なんてのは、そいうもんなんだよ。
それからまた会話が止まり、ぼーっと天井を見上げる時間が過ぎる。
ふと視線を感じて下を向くと、腕の中で妹が、じっと俺を見上げていた。
のぼせているのか、頬が赤く、目が少し潤んでいる。
どうした、もう出るか?
「ううん、そうじゃなくてね……キョンくんは、えっちな女の子はキラい?」
何を言い出すかと思えば……と、そこで妹の言いたいことを察し、言葉を選ぶ。
まあ何だ。
女でも変に潔癖性になるより、ある程度興味を持っていた方が良いと思う。
知らなくて後悔したり辛い思いをするのは女の子の方だからな。
だから、えっちなことに興味を持つのも、恥ずかしいことでも何でもない。
妹が安心したのが、腕越しに伝わる。
やはり妹の言う『えっちな女の子』は俺のよく知る奴だったらしい。
にしても、そういうことに興味を示すようになるとは……いつまでも子供扱いは出来ないな。
そんな感慨に耽っていると、腕の中で妹が、はにかんだ笑顔で口を開いた。
「じゃあさ、お兄ちゃん、……えっちして」
支援
「そういう冗談は止しなさい」
びし、と頭頂部にチョップを喰らわせる。
前言撤回。やはり子供だ。まったく、人がせっかく真面目に話してやったというのに。
「あうっ、……キョンくん、いたーい」
膨れ面をするな。アヒル口も禁止だ。ほら、もういい加減に出るぞ。でもじゃない。
まったく、久々に妹の口から「お兄ちゃん」という懐かしい言葉を聞いたと思えば。
つけあがらせるとすぐにこれだ。困った妹である……
────と、話を締める。
周りを見回して、あれ?と違和感に捕らわれる。おいおい、どうしたっていうんだ。
現在、日付が変わって月曜日、放課後のSOS団の部室。
引っ掻き傷の説明から始まった昨日の出来事を話し終えると、どうもみんなおかしな顔をしていた。
朝比奈さんは何だか慌てているような照れているような感じで、頬に手を当て赤くなっている。
古泉は一見いつも通りの笑顔だが、よく見ればどことなく苦笑のように引きつっている。
驚くことに、あの長門までもが無表情のまま非難の視線を送ってきている。
ハルヒは……こいつは分かりやすい。怒っている。分かりやすいほどに怒っている。
ぷるぷると肩を震わせていて、口を開いた瞬間に穴という穴からマグマが噴出しそうな勢いだ。
って、何で怒ってるんだこいつは?
幸いハルヒは俯いたままで、噴火までには、まだ猶予がありそうだ。
……もっとも、溜めが長い分、噴火したときの激しさが心配だが。
とりあえず手近に立っていた朝比奈さんに小声で相談をする。
(朝比奈さん)
(え、あ、は、はいっ!?)
声が裏返っている。
(その、どうしてハルヒのやつ怒ってるんですか? 俺、何か変なこと喋ってましたか?)
朝比奈さんは驚くような戸惑うような表情をした後、
(えっと……その、キョンくんの妹さんって、小学五年生ですよね?)
なんて、今更の質問をしてきた。
(ええ、そうですが。それがどうか……)
疑問は至近距離でのオリンポス山の大噴火に遮られた。
「ちょっと、キョンっ!!」
「──は、はいっ!!」
思わず敬語だ。いつになく恐ろしいぞハルヒ。完全に肉食獣の目付きじゃないか!
その後の詳細は省く。
あんたってやつは、なんで、まったく、自覚しなさい、ほんとにもう、このバカキョン!!
──などと陽が暮れて下校時刻となるまで、ずっと床に正座の姿勢のまま怒られ続けた。
なぜ怒られているのかは、まったく不明のままである。
他の団員が誰も助けの手を差し伸べてくれなかったのは、ちょっとばかりショックだった。
……いったい俺が何をしたって言うんだ?
この一歩手前感が日常のお兄ちゃんっぽくてGJ!
このSSに素直にGJ!って言える。
いや、自分に妹がいなくて本当に良かった。
実際に妹がいるヤツは妹萌えが理解できないって言うしな。
妹がいる俺は負け組み('A`)
だが萌えた
キョンの無自覚っぷりがウマス...
妹とか姉とかと、ごく普通にやってる家庭を幾つか知ってるオレって・・・
>>673 え、フツーでしょ? 一番気兼ねなくできる相手じゃん・・・とか言ってました。
これ以上はスレ違い気味になるので、ここらへんで。
GJ
実妹がピザな俺は脳内妹であそんでま
676 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 02:26:39 ID:8b/ZBVe8
結局何がいけなかったんだ?男三兄弟の俺には分からん…
背面座位をしたこと
俺は二人妹がいるけど、妹萌えはわからん。
下の妹は最近テレビの美人妻コーナーに出た程度に美人なんで、友だちにはうらやましがられたが。
妙な誤解されないようにけっこう気を遣っていたな。
>>676 キョンが即答したことに一番怒ってんだろ?
妹萌え部分はフェイクでしょ 上手い構成だな……と思った。
てのがオレのよみだが…。
彼女の妹とその友達(小5)に
「お姉ちゃんとHした?」って聞かれた時と似てる・・・
妹までに異性をかもし出させたキョンのフェロモンにあきれたんじゃないか?
これは妹ちゃんをキョンの毒牙から守るためにぜひとも私がキョンの家に見張りに行かなくっちゃ!
>>676 ハルヒは妹ちゃんとはいえキョンと一緒に
お風呂なんてうらやましい、と怒ったんだよ。長門も。
朝比奈さんは違うかもしれないが。
ハルヒ乙
ハルヒ×キョンで投下します
くだらないです。
ながくなてしまた
すいません
涼宮ハルヒの健康
世の中には「健康のためなら死んでもいい」と言ってのけるほど自分の健康に
気を使う連中がいるということを俺は知っているが、平均的にも平均的、
もしここに古代中国の思想家が立っていたら俺の中庸体現度に驚いてひれ伏して
しまうかもしれないほどの平均的男子高校生である俺としては、やはりまだ
自分の健康というものに気を使うまでもなく体は健康で肌はシャワーの水滴をはじき、
抜け毛も口臭もなくBMI数値も平均的で、性欲もそれなりにあり、
自らの健康などということについては普段まったく考えてもいない。
しかし我らがSOS団の団長であらせられる涼宮ハルヒは「世界を変える力」
というその特殊能力の特殊さを考えの外においたとしても、やはり俺のような
一般的男子高校生とは思考回路が計算尺とIBM社謹製スーパーコンピュータ
並に違うらしく、自らの健康を守るためならば、他人にこのような醜態をさらしても、
存外平気なようだった。
醜態というのは正に今のハルヒの状況であり、同時に俺の状況でもある。
少し長くなるかもしれないが、俺のためにも説明させてくれ。
何故俺が、てらてらと濡れて光るハルヒのまたぐらを懸命に舐めているという
至極不可解きわまりない状況に陥ってしまったのかを――――。
話は一週間ほど前にさかのぼる。
高校時代の放課後、という青春の代名詞のようなこの時間帯を、野球部の怒声
であるとか、吹奏楽部の演奏音であるとか、帰宅部の笑い声であるとかこれも
青春の代名詞のようなごく普通の高校における生活音を耳から耳へと聞き流しながら、
今日も今日とて俺は足しげくSOS団の部室へと通っていたのだった。
俺は清純可憐なる朝比奈さんの淹れてくれた美味芳醇な紅茶をすすりながら、
分厚い本のページをめくり続ける長門の1分につき1こましか動かないアニメーション動作を横目で眺めつつ、
眼前に繰り広げられる古泉とのSOS団竜王戦の次の手を考えていた。
要はまあ、いつもの部室の光景を思い浮かべてもらえばいい。
それは俺が望んでいるそのものだと言っていいが、いつも通りの風景で、いつも通りの活動だった。
687 :
涼宮ハルヒの健康:2006/07/18(火) 03:48:31 ID:sVVvxfk7
違っていたのは唯一、ハルヒの様子だけだった。
107手目で古泉が投了を宣言した辺りで、ハルヒはやってきた。
いつもは太陽神が移動性高気圧を伴ってこの狭い部室に到来したかのような賑やかさで
扉を蹴破ってくるハルヒだったが、今日はなんと驚いたことに、ドアノブを回して
扉を開けるという一連の動作を、特に大きな音も立てず大声も出さず、
まるで普通の人がそうするような動作でハルヒは部室に入ってきたのだった。
「……おなかいたい……」
ハルヒは暗い顔で力なさげにそう呟くと、ふらふらした足取りで部室の一番奥、
最新式のデスクトップパソコンが設置された団長席へ歩いていった。
椅子に座るとハルヒは、何も言わずに机に倒れこむようにして、突っ伏した。
ぎょっとしたのは俺と古泉と朝比奈さんだ。
あまりにも様子が違いすぎる。
というか「こいつも人並みに、体調が悪いなんて事があるんだな」と、
俺はそのとき素直に驚いたのだ。
古泉を見ると、どうやら俺と同じような感慨を抱いているようだった。
俺が見ていることに気づくと、
「やあ、珍しいこともあるもんですね」
いつもの古泉スマイルで言うのだった。
こいつ、心配してるわけではないな、さては。
ハルヒを「神様」なんていう割にはどうも敬っている感じがしないのは、
こいつの性格によるものなのか、なんなのか……。
「おい、ハルヒ――」
俺が呼びかけるよりも早く、黒と白の様式美、メイド姿の朝比奈さんが団長席に
駆け寄って、覗き込むようにしてハルヒにあれこれ尋ねていた。
「す、涼宮さん、大丈夫ですか?」
「うー……なんか急に痛み出してね……」
「あ、あの……」
朝比奈さんはちらりと俺と古泉を見てから、ハルヒの耳に手を当ててそっと耳打ちをした。
「ああ、違う違う、生理じゃないわよ、ついこないだ来たもの」
だが、ハルヒは朝比奈さんのそんな心遣いを台無しにするべく、必要以上の大声で
そんなことを言うのだった。少しは恥じらいというものがないのか。
聞いた朝比奈さんの方が再び俺と古泉を見て、顔を赤くしている。
「あー、だめだわ。おさまんない。病院いってくる」
ハルヒはそう言い鞄を取ると、おぼつかない足取りで部室を出て行った。
ぱたん、と、とてもハルヒが出て行ったとは思えないほど小さな音を立てた扉の方を見ていると
「……付き添っていかれては?」
古泉がそう聞いてきたが、黙殺した。
もちろん、いつもの天然高気圧とはまったく様子の違ったハルヒのことが、心配じゃ無いというわけではないが、
なぁに、明日になれば何事もなかったかのように元気になって戻ってくるだろう。
「なるほど、強い信頼……ですね」
「人の心を読むなっ」
「ハハ、僕にそんな能力はありませんよ。観察と推測です」
などと朗らかに言う。
お前が観察すべきなのは俺じゃなくてハルヒの方だろうが。
その次の日。
ハルヒはやはりいつも通りのハルヒに戻っており、それでもいつもと違うのは、
団長席でばくばくとヨーグルトを食べているということだった。
「いやぁ、なんかね、胃に菌がいたらしいのよね!菌が!ピロリとかいうやつ!」
それでヨーグルトなのか。おなかに優しく。
「ええ、なんでもピロリ菌は乳酸菌に弱いらしくてね。こうして援軍を大量に
送り込んでやってるってわけよ」
大量にはいいが、プレーンヨーグルト500ml一気食いは食後のデザートとしては
多すぎるんじゃないか、ハルヒ。
「ダメよこういうのは、一気呵成で行かないと。勝手に私の胃に住み着いてるなんて許せないわ。宿賃を取りたいところよ」
そう言うとハルヒは、手に持っていたヨーグルトの容器を仰向けにして、
底をたたき、一気飲みにした。
「うん、ごちそうさま」
容器をゴミ箱に投げ捨てると、次は鞄からヤクルト6本パックを取り出して飲み始めた。
ハルヒの体内乳酸菌は次々と援軍が送られて大喜びだろう。
どうしてもピロリ菌を駆逐したいらしい。
よりにもよってハルヒの胃に住み着いてしまうとは、菌ながら同情を禁じえない……。
下手なシャレみたいになってしまったが、とにかくハルヒは乳酸菌によって自らの胃に住む
細菌を駆逐することに決めたようだった。
それから一週間程度、ハルヒは健康雑誌や健康番組から情報を集め、
部室でヨーグルトやヤクルト、世に溢れるさまざまな乳酸菌入り製品を
一気飲みにするのが日課になっているようだった。
そしてようやく、今日の話になる。
俺が部室に入ると、ハルヒが団長席で健康雑誌を読んでいるところだった。
「なんだ……お前ひとりか」
「なんだとは何よ、失礼ね、それより見てよこれ」
ハルヒは手にしていた『ゆほびか』を俺に見せつけ、
「あのピロリ菌ってば、胃がんの原因にもなるらしいわよ。人の体に住まわせて
もらってる分際で、大迷惑よね」
それを言うならハルヒ、この世界に住まわせてもらっているお前には、
勝手にその世界を改変させる力があるんだが。ていうか『ゆほびか』って。
女子高校生の読むものじゃないな。おばあちゃんかお前。
「それにしても意外だな、お前がそんなに健康を気にするなんて」
「世界を大いに盛り上げるには、私は倒れてなんかいられないのよ。団長は常に健康でいなければ、部下が心配しちゃうじゃない」
「そうだな……確かに」
俺が入院して寝ている間、こいつは俺のことを心配してずっと見舞ってくれてたらしい。
意外と心配性なのだろう。
だからこそ、自分のせいで他人に心配を掛けたくないのかもしれない。
「キョン」
「ん、あ。ああ。どうした」
「私が病院いったとき、心配した?」
「一週間くらい前の話か?ああ、心配した」
いつもあまりにも元気で、誰も頼んでもいないのに、自然と皆勤賞を受賞してしまうような奴が
病院にいってしまったら、それは誰だって心配するだろう。
おれが「心配した」ということがハルヒには意外だったのか、何も言わずに雑誌に目を戻した。
その横顔の頬が少し赤らんで見えたのは、きっと俺の見間違いだろう。
そこでおれは教室に財布を置き忘れてきたことに気づき、取りに帰った。
そして再び部室に戻ってきた時、事態は急展開したのだった。
ええとなんだ、話が長くなってすまない、俺もこんな状況で混乱しているんだ。
なにしろ女の股に顔をつっこんで、局部をなめつづけるというのは俺の人生の中でも初めての状況なんでね。
クンニグリス。
その言葉と行為の内容は知っていたが、まさか俺がこんな場所――部室――でその行為に及ぶとは、
神も仏も涼宮ハルヒだって予想外だったに違いない。
何しろ俺が舌を動かすごとに、大きくまたは小さく体をくねらせ足り震えさせたりしているのは、
ハルヒ本人なのだから。
「んっ……くぅ……」
下から上に大きく舐め上げると、切ない声が聞こえた。
椅子に座っているハルヒを見上げると、ぎゅっと目をつむり、
ハルヒは何かをこらえているようでもあった。
「……気持ち、いいのか?」
口をつけたままで喋ると、ハルヒは背筋を震わせて
「バッ……バカっ…そのままで喋らないでよ……!」
潤んだ瞳で見下ろしてきた。気持ちいいらしい。
話を10分前に戻そう。
教室から財布を取って帰ってきた俺は、部室の前ではたと立ち止まった。
なにか女の泣くような声が聞こえた。
俺が教室に行ってここに戻ってくるまで、5分ほどしか掛かっていないはずだ。
つまり中にいるのはハルヒだけ、という可能性が高い。
今の声――?
「ハルヒ――!?」
勢いよく扉を開けると、ハルヒはびくっとして、口から人差し指を抜いた。
「?なに、やってたん――」
団長席に近付いたところで、異様なにおいが鼻を突いた。
なんというかこう、外国のチーズというか、発酵系の匂いだったが、不思議と悪い感じはしなかった。
ハルヒはうつむいて、両手をスカートの上にのせている。
「ん?ネット見てたのか。なになに『乳酸菌』――」
PCのディスプレイに映っていたのは、今ウェブ2.0とか言って話題の、
ウェブ上の百科事典のページ、乳酸菌の項だった。
――乳酸菌(にゅうさんきん)は、発酵によって乳酸を産出する細菌の総称で、
ヨーグルト、乳酸菌飲料、漬け物などの発酵食品の製造に利用される。――
「はは、なんだ、本当に乳酸菌にハマってんだな。次は漬物に挑戦か?」
しかし俺を凍りつかせたのは、次の数行だった。
――また、一部の乳酸菌はヒトの腸などの消化管(腸内細菌)や女性の膣内に常在しているが――
まさか、と思いハルヒの足元を見た。
ハルヒはうつむいたままで、肩を震えさせている。
足首に、しわくちゃになったボーダー柄がひっかかったままになっていた。
女物のパンツが、脱ぐと異様に縮こまるということは、妹がいなければ知らなかっただろう。
「ハルヒ」
俺の呼びかけに、ハルヒはびくっと体を震わせた。
「おまえ、まさか……」
ここまでいったところで、ハルヒが――キレた。
「あああああああああもうっ!なんでそんなに早く帰ってくるのよバカキョン!
もう少しゆっくりと帰ってくるのかと思ってたじゃない!」
「――俺がいない間にお前が何をしてたか、あててやろうか」
謎を解決に導く要素は揃っている。
「部室前で聞こえた、女の泣くような声」
「部室に入ると、ハルヒは口から指を抜いた」
「ハルヒはここ一週間、乳酸菌を摂取することに余念がなかった」
「乳酸菌は女性の膣内にも存在しているという」
「足首に引っかかっているのは、下着だろう」
頭が痛くなってきた。
常日頃から、変だ変だとは思っていたが、まさか変は変でも「変」態だとは。
「お前、俺がいない間に――」
「……っ!!いや、だめっ……」
「この部室で――」
「その先を言ったら……!!」
「オn」
ハルヒの両手が俺の口にあてがわれた。
独特の香りが鼻腔をついた。
「…………体に、いいと思って……」
こいつはつまり、健康になりたかったのだ。
そのやり方が常識を地球半周分くらい外れていたとしても、我らが涼宮ハルヒは、
常識なんて物を気にしないから涼宮ハルヒなのだ。
……こいつは馬鹿なのだろうか。
ハルヒは自分の指を俺の口に押し込んできた。
ぬる。
とした触感が口内に生まれた。
同時に、なんとも言えない不可解な味が広がる。
ハルヒは、部室で自慰にふけっていたのだ。
しかも自分でその自分の指を舐めて――
自分の膣内にいる乳酸菌を自分で摂取する。正に変態の考えだ。
考えがそこに至ったのが悪かったのか、それとも口に広がるハルヒ本人の味が
俺の理性を失わせたのか、とにかく、思考と理性が消し飛んでいった。
「直接、乳酸菌、舐めさせろ」
ハルヒはこっちを見て、真っ赤になった。
「ほら……足開けよ」
「いゃっ……!」
椅子に座ったままのハルヒの太ももを掴み、左右に広げると、そこはしっかりと濡れていた。
「観音」や「菩薩」と呼ばれることもある女性のその部位は、俺にとっては「観音」
というより「アンノウン」で、実際に目にした今でもそれをうまく言い表すことが出来ない。
色は血色のいい色で、なんと言うかこう、拝むように合わせた両手を少し開いて
親指側から覗くよう、というか、毛の生えたアワビ、というか……。
椅子の前に膝をつき、ピンク色のそれをよく観察すると、ハルヒの呼吸に合わせて、それも震えているのがわかった。
「ピロリ菌をやっつけたかったのよ。やっぱり自分の菌が一番信頼できるじゃない!」
やはりハルヒの思考回路は、常人には理解し難い。
俺の思考回路が今、ハルヒの局部に釘付けになっていることを差し引いても、
やはり理解できない。
「……ちょっと、あんまり、見ないでよ……!は、はずかしいんだから…!」
といって顔を赤らめるハルヒは、いつもの様子からは想像がつかないほどにしおらしく見え、それは非常に可愛らしかった。
俺は顔を濡れたハルヒに押し付け、息を吸い込んだ。
「やだっ……におい、かがないで……ひゃぁうっ」
舌を伸ばして舐めてみると、柔らかい陰毛の感触の下に、これ以上柔らかい肉はないだろうという確信のもてるほどの柔らかさを持った肉の感触があった。
「んっ……くぅ……」
下から上に大きく舐め上げると、切ない声が聞こえた。
椅子に座っているハルヒを見上げると、ぎゅっと目をつむり、
ハルヒは何かをこらえているようでもあった。
「……気持ち、いいのか?」
口をつけたままで喋ると、ハルヒは背筋を震わせて
「バッ……バカっ…そのままで喋らないでよ……!」
潤んだ瞳で見下ろしてきた。気持ちいいらしい。
舌を左右に動かすと、その動きにあわせてハルヒの体が震えているのがわかった。
「ひゃん……やあぁ……っんん……」
切なげに漏れるハルヒの声を聞いていると、興奮してくる。
舌の勢いも増そうというものだ。
一度、唇を閉じる。
「…………?」
ハルヒが下をむいて、俺の様子をうかがっている。
ハルヒの目はほとんど涙目といっていいくらい潤んで、黒い瞳がより大きく見える。
唇を閉じたままで、ハルヒの唇――下の唇だが――に当てる。
鼻から息を吸い込み、一度に息を吐く。
「ぶるるるるるるっ」
と唇が高速で動き、ハルヒの局部を責めたてた。
「ぶるるるるるるっぶるるるるるるっ」
何度かやっていると、これはハルヒの好みらしく、つぎつぎと液が溢れ出し、じっとりして参りました。
「ちょっ……!キョン……!それ……やめてっ……!」
ハルヒは両手で俺の頭を押さえ込んできた。
もちろんやめない。
続ける。
「やだっ……キョンっ……イクっ……!!」
ハルヒは俺の頭を揺らすが、引き離そうとはしていない。
合意であるのだ。
ハルヒの涙ながらの訴えを聞き、俺は唇を突起物にあてがって、また一度に息を吐いた。
唇が、クリトリスを高速でたたいた。
「………………………………………………………っ!」
濃い液が出てきて、俺の口にまとわりついた。
「っやぁぁああああああああああああああああああああんんっ!」
ハルヒは背中を大きくのけぞらして、ひょっとしたらコンピ研に聞こえたかもしれないほどの大声を上げた。
「大声出しすぎだ、ハルヒ」
立ち上がって、机に突っ伏したハルヒに声をかけるが、返事はない。
肩で息をしている。
「……そんなに、気持ちよかったのか?」
というと勢いよく起き上がり
「気持ちよくなんかないわよっ!」
と耳まで真っ赤な顔で、言ってきた。
「いいからパンツぐらいはけよ」
まだ足首に引っかかったままになっている。
「……ダメ」
「なにがだ。ほら、早くしないと誰か来るぞ」
「腰が抜けて、立てない」
…………よかったんじゃないか。
「ああもうほらっ、早くしろ――」
腕を引っ張り立ち上がらせると、ハルヒはフラフラとしながらも、腰まで穿きあげた
「うぅ……ベトベト。気持ち悪い……」
「よかったくせに」
「ううう、うるさいわねっ!馬鹿キョンっ!」
ハルヒが腕を振り上げたところに、
「おやおや、随分仲がよろしいんですね」
古泉がいつもの笑顔で入ってきた。
古泉はすんすんと鼻を鳴らし
「なんだか、変なにおいがしますね。なんというか……チーズのような」
と言った。
ハルヒは背中をびくっとさせ、無言で団長席に座った。
ここは俺が弁解せねば。
「なんでもない、なんでもないんだよ古泉!」
俺は出来るだけの爽やかさな笑顔を作った。白い前歯が輝いているに違いない。
古泉はその笑顔を見てくっくっと笑い、
「ああ、すいませんがちょっと僕は用事を思い出しましたので帰らせていただきます」
というと俺に手招きをし、耳打ちした。
「つぎはあなたがこう言うんです、『タンパク質も体にいいんだぞ』って」
「はぁ?一体何のことだそりゃ」
「いえいえ、あなたのためを思ってですよ」
それだけ言うと古泉は出て行った。
「なんだぁ?人の顔見て笑いやがって」
「……キョン、ちょっとその顔してみてちょうだい」
俺はハルヒの言うとおりに、爽やか三組な笑顔を見せ付けてやった。
すると、ハルヒは見る見るうちに顔を赤く染めた。
「な、なんだよ――」
ハルヒは赤い顔のまま、鞄の中から手鏡を取り出して俺に突きつけた。
「鏡?鏡が何か――」
鏡には、予想通り爽やかな俺の笑顔が映っている。
「前歯!」ハルヒは頭を抱えながら言った。
「前歯?――あ」
挟まっていた。前歯に。毛が。……ハルヒの。
「古泉に……気づかれたかな?」
「知らないわよっ馬鹿キョン!」
ハルヒはぷいとそっぽを向く。
「あと古泉が『タンパク質も体にいい』って言えとか言ってたが――どういうことだ?」
ハルヒは赤い顔をしている。
「……わかったわよ!早くズボンを脱ぎなさい!!」
「ええ!?何のことだいきなりっ!」
「今度は私の番!キョンだけが私の乳酸菌で健康になるなんて、許さないんだから!」
「はぁ?私の番って――?」
と言っている間にもハルヒは、俺のズボンからベルトを抜き取り、トランクスを下げた。
「おおうっ!?」
そこには、ハルヒのにおいにすっかり興奮しきっている我が分身の姿があった。
雄雄しい。
「今度は、わたしがあんたからタンパク質をもらうの!」
ハルヒ、まさかそれって――?
考える間もなく、俺の分身はハルヒの口中に納められ、あっけなく俺は高たんぱくな
体にいい(?)ものをハルヒに摂取させることとなってしまった。
ハルヒへの愛撫は俺に対しての前義と同様の意味を持っていたのだ。
その間――わずか三秒。
ほとんど口に含まれたその瞬間、すぐに出てしまった。
ハルヒは大分苦労しながらも、俺の精液を飲み下し
「これで……もう健康間違いなしね」
と気丈に言い放った。
健康とはかくも苦労して手に入れなければならないものだったのか、と、俺は考えを新たにした。
「それにしても……」
ハルヒのニヤニヤ笑いが俺を見ている。
「待てよハルヒ、何となく言いたいことは分かるが言わないでくれないか」
しかしハルヒは俺の願いなど気きれてくれるはずもなく言い放つ。
「早かったわねえ……早漏なのね。キョン」
…………………………返す言葉もない。
俺がうなだれているとハルヒはゲラゲラと笑い、
「ほら、早く洗いにいこ、手と口」
と言って、俺の手を掴み、元気に走り出すのだった。
すっかり健康的な笑顔で――。
終わり
上手い。
けど、女の子はそんなに臭うものじゃないぞ。
女は風呂入ってないとヤバイけどな
せーり付近はけっこうくるよな
長門由来の乳酸菌を使用したヨーグルトが食べたいえす。
長門ひろゆきでよければ……
久々の休みに、徹夜でSSを書いている俺は、ひょっとしなくてもすごく馬鹿なのかもしれない。
人があんまり居ないみたいなので、投下します。12レス。
どこぞやの宇宙的存在だかなんだかによって作られた竜宮城から逃れてから一日が経ったその朝、
長門は無事ベッドから起き上がることが出来た。
まあその宇宙的な罠、古泉流に言えばゲームの中から脱出した段階で
長門は情報統合思念体とやらとの無線ラン接続を回復したため、
ちょうど宿屋を見つけた主人公とそのパーティのように充分に治っていたんだろうが、
ハルヒの思いやり…
いやまあ俺も長門にはゆっくり休んで欲しいと思っていたんだが…
まあその辺の思い入れによって、ベッドへと押し込められていた。
しかし、長門は本当に寝たのだろうか。結局、介護役のはずのハルヒが早々に
椅子の上で寝込んでしまい、それを確認した俺も結局睡眠欲には勝てず、
自分用に割り当てられた部屋に移動して睡眠をとってしまったため、
結局それを確認することは出来なかった。
考えてみれば惜しいことをしたかもしれん。あのハルヒの寝顔なら見たことがあるが、
あの長門の「寝顔」だけは一度も見たことが無い。
仮に設定上30分しか睡眠を必要としないように出来ていたとしても、正直長門の寝顔は一度は見たいと思う。
多分そこには、ハルヒとはまた違った趣があることだろうさ。
さて、朝になり、森さんと新川さん作成による朝食を平らげた後に、我ら団員にはハルヒ団長により、
「治ったとはいえまだ心配な長門を大事にするための外出禁止令」が発布された。
まあ俺も主に精神的な疲労により、今日はゆっくりしても良いか、と思っていたため、
特に異論は提示しなかった。周りの皆も同様のようだ。朝比奈さん、長門、古泉、
SOS団ではないとは言え鶴屋さんと俺の妹、
世をしのぶ姿…にしては、嵌り過ぎているほど外見的、物腰的に的確な
自称パートタイマー的執事とメイドである、新川さんと森さんもそれに同意した。
…あれ、何かが足りないぞ?
「長門さんを一人で残して出かけてしまうのも気がかりです。僕も賛成ですよ。
一人を救うため全員が命運を共にする…なかなか美しい話じゃないですか」
違和感を感じている俺を取り残しつつ、古泉は些かオーバーアクション気味にイエスマン的行動を取った。
「そこで推理ゲームの予定を繰り上げようと思ったのですが…肝心な要素が足りないですね」
?確かに俺的にも違和感があるが、一体なんだろうか。
すると妹が俺のズボンを引っ張りながら、違和感の原因を言い当てた。
「ねーねー、キョンくん、どこ探してもシャミが居ないよ〜、どこいっちゃったんだろ?」
そうだ、シャミが居ない。妹の部屋に押し込んでおいたので、今朝あたりから妹はずっと「それ」にかまっていそうに
思っていたのだが…違和感の原因はそこだったか。
「そうなんです、僕が作っておいた推理ゲームには、シャミセン氏が不可欠だったのですが…
まさか居なくなってしまうとは。まあ外は寒いですから、建物の中のどこかには居るのでしょうが」
うん、あの面倒くさがり屋の猫が居なくなるとは俺も思っていなかった。
しかし、そこで水を得た魚のようにハルヒはこう言い放った。
「へえ…これは期せずしてイベントの到来ね。うん、今日はこの建物の中のどこかに居る、
シャミセンを探しましょう!もちろん有希も見てなければいけないから、いっぺんに探すのは二人一組!
残った方が有希と一緒に居て、時間制限を設けた上で交代で探して、シャミセンを先に見つけた方が勝ちね!」
勝ちって何だ。負けたら何かペナルティが課せられるのか。
すると間違いなく俺のチームが負けて、主に俺にペナルティが課せられることになるんだろうな。
自動販売機や喫茶店がこの近くにないことは確認済みだが、後の付にされるんだろう。
SOS団の例によって、爪楊枝によるくじ引きが行われ、チームが分けられた。
くじびき結果。
先攻、古泉、朝比奈さん組。
後攻、ハルヒと俺組。
…ありゃ?負けるのは嫌だったんじゃないのかハルヒ?
なんだか分からんパワーを使って、俺とは別のチームになって、俺を負かすんじゃないのか?
だから俺は聖ミカエルも裸足で逃げ出す、地上に舞い降りた天使たる朝比奈さんと
1/2の確率で組めるとかなあとか、それなりの希望を持っていたのだが。
「アンタと組むの!?…はぁ、戦う前から負けそうねえ…」
そう思うならそのトンでもパワーで勝てそうな組み合わせにしておけばよかっただろうが。
そうだな、古泉辺りと組めば良い。どう間違っても俺と朝比奈さん組では勝てるはずが無いし、
こちらとしても大満足を通り越して超満足、いや地上の楽園、パライソさ行くだ!
朝比奈さんはどう思うか分らないけれど、古泉の意思なんてものは正直どうでもいい。
まあ少なくとも四人中二人が満足できる組み合わせだ。まったくもって申し分ない。
「いえ、そうとも限りませんよ」
そこ、顔を近づけるな。うっとおしい。そもそもモノローグまで読むな。
「いえ、表情から推察しただけです。そんなことはどうでもいいじゃないですか」
そして少しにやけた顔で、古泉はこう続けた。
「それよりくじ引きの結果がこうなった・・・と言うことは、涼宮さんには、
あなたと『二人っきり』で何か行動したいと思うことがあるのでしょう」
そう言いながら、古泉のニヤケ顔は、明白に50%増量セールになった。
「いやあ、あなた方は素直になれないものと思っていましたが、いつの間にそこまで」
だまれアホ、勝手な推測をするな。解説もするな。これは純然たる偶然だ。
たまにはハルヒ的トンでもパワーだって、休日を設けることが有るんだろう。そうに違いない。
…まあくじ引きによって先攻を取った古泉等二人は、とっとと部屋を出て、
あちらこちらへ探索に出かけた。…くそう、忌々しい。
パッと見、美男美女のベストカップルに見えないところも無い所に、余計に腹が立つ。
とりあえず、長門を眺めてみたり、ハルヒと「先に行った方が有利だったな、運がなかったなあ」
「あんたのせいよ、バカキョン」などと軽口を叩きあったりして時間を潰していると、
ようやく二人が帰ってきた。
「えっと、あちらこちら探したんですがあ、見つかりませんでした…」
「直ぐみつかるとおもったんですがね…案外思いにもよらないところに隠れているのかも知れませんね」
おや、朝比奈さんはともかく、そちらには古泉が居るというのに、こいつは意外だ。
さらに、俺たちのターンが生まれた事から、ハルヒには何か良く分からん意図があるようにも思えた。
どうも…これは、勝負以外のこと絡みな気がした。
いや、正直その時の「それ」は単なる「勘」ってやつだ。
だったが、それが正しかったことはハルヒと共に探索行をしばらく行った後に、唐突に明らかになった。
だがその前に先ず探索行について説明しておこう。
いくつかの部屋やそのベッドの下などを探した後、とてもあっけなくシャミは見つかった。
確かに妹の部屋のカーテンリールの上に居るなんて、ハルヒ的発想である「犯人は現場に戻るわ!」
という意見が無ければ到底発見出来ないだろうが。
しかしその喜びが一段落すると…ハルヒは、アイツには珍しい、何かを考えるような顔をしながら言った。
「えっとさあ、ごめん、話し変わるんだけど」
お前の話があっちこっちへ飛ぶなど、日常茶飯事だ。どんとこい。
「ええと、キョン…『夢』のことなんだけど…」
「ん…?悪いが俺は見てないぞ。ただ、なんとなく漠然とフラフラはしていたが」
これは嘘だ。だが、古泉のように、スラスラと嘘が出てくるほど、俺は創作能力に富んではいない。
だから逃げを打ったのさ。しかしハルヒはそれでも突っ込んできた。
「まあ、アンタが覚えているか居ないかなんて、どうでも良いわ。
重要なのは、その夢で私は一つの質問をアンタにしたことなのよ」
ドキン。それを聞いた瞬間、俺は明らかに心臓に余計な負担がかかるのを感じた。
まずい。
「そのときの質問を正確には思い出せないけど…
まあ端的に言うと、アンタがクリスマス辺りから有希のことばかり見てることを問い詰めたのね」
まずい。この展開は…
「あんた、何か有希に変な下心…とか、持ってたりしないでしょうね」
「いや…」
「それに有希も少し変なのよ。少しくらいの変さだけど、私には分かるの。
…あんた、有希に何かしたの?」
…実に不味い。黙っていたら「ナニか」有ったことにされてしまう。
「何か」があったことは確かだから、完全否定にも説得力というものがまるで無い。
といってその疑いを回避するために真実を語るわけにも行かない。
それは無理だ。
たしかに同じ状況だったあの時は、とっさに思いついた真実1/2の嘘話で誤魔化せた。
しかし今同じ話をするわけにいかない。
それをすると、「あの洋館が夢でなかった」ってことの何よりの証明になってしまう。
どうするか。
「…なに、アンタどうしたの、有希に…アタシに言えないことをしたの?」
少し不安がかっているように聞こえたのは、俺の気のせいだろう。
俺はそれに耐えかねて、つい、あの時と同じようなセリフを紡いでしまった。
「いや…実はだな、長門は悩み事を抱えているんだ
んで、ちょっと前に、俺はその相談に乗ってやった」
「…へぇ…」
しまった。ここまで同じだと、かなりまずい。迅速な軌道修正が必要だ。
俺は足りない脳みそをひねくり返して、それっぽいことを経験やらかつて読んだ漫画やらなんやらから検索した。
結果、後で考えると、実に考えが足りないことを口走ってしまった。
「その悩みとはアレだ、恋愛的なものだ。
長門は、つい最近、図書館で出合った、とある北高生に親切にされたらしく、
そいつにどうやら一種の一目ぼれ…というか、それに近いようなことをしたらしい」
俺は消失したあの長門を思い返して、それっぽいことを創作していった。
今の長門があの長門なら、そんな出会いがあればそれくらいは思っただろう。
…そこ、俺のことをうぬぼれ屋とか言うな。後になって考えると「あの」長門はそんな感じの欠片くらいはしたんだ。
いくら鈍いと評判の俺だからといって、流石にそれくらいは気が付く。…実に恥ずかしいがな。
「んでだ、つい最近そいつを見つけた上で、友達になった挙句告白をしようとしたんだが、
どうしたら良いかが本気で分からなかったらしい」
ハルヒは…ハルヒにしては珍しく、驚いたことに、一言も口を挟まず、俺の言うことを黙って聞いていた。
「んで、その辺りのだな、男子高校生の心理とかその辺を…」
「キョン」
ハルヒはふと顔を上げると、真面目な顔をして俺をにらみつけた。
* * *
私はキョンの言うことを黙って聞きながら、頭を急速に回転させていた。
キョンの話はなんとなく信憑性が高いようで、どこか嘘くさくもある。
でもその嘘くささがどこにあるのかが分からない。
でも、考えていくうちに、頭の中では最近の有希の行動がそのキョンの話とつながって、
カチリ。と音を立てたような気がした。
…でも。
…そうだとすると。
「キョン」
私は思わず声を上げてしまった。
…その推測が正しいとするなら。
「有希が言ってたってアンタが言った、その男の子って…」
…多分。
「アンタのことじゃない?」
…嘘を言っているのは、キョンでなくて有希の方。
* * *
…
俺は正直、少し茫然自失していたらしい。
目が点になる…なんていうありがちな慣用句が実際に適用されたのは、俺の中では少なくとも初めてのことだ。
コイツはどこから、そんな妄想を。
「だってさ」
「あの娘って、クラスに友達とか居ないのよ」
「いえ、イジメられているわけじゃないわ、どちらかといえば、そう、有希が距離を置いてる…って感じね」
「クラスだけじゃないわ、学年全体、いいえ、学校全体を見渡してもそう」
「確かに学校外で、特に図書館で、そんな男の子と出会う可能性がないってわけじゃないけど」
「あの娘、GW以来、放課後と休日はずっと私たちとSOS団の団活動をやっているのよ」
「そんなのに、そんな男友達なんて、つくれるわけないじゃない」
「となると、アンタか、あるいは古泉君ってとこだけど」
「あの娘を…図書館に連れて行ってあげるのは、アンタ位でしょ?」
…俺の思考が止まっている間に、ハルヒはこれだけのことを並べ立てた。
なんてこった。瓢箪から駒とは正にこのことだ。
…いや、この場合火のないところに煙を立てたって言った方が正しいのか。
なにしろ、大本は俺の嘘話だからな。
「まて、ハルヒ」
俺は思わず遮った。これ以上誤解を広げられても困る。
「確かに長門には世話になっている。いろいろ助けてももらった。SOS団として、一緒に色んなことをした。
だが、俺はアイツに惚れられるような、いわゆる『頼れる男』みたいな行動を取っていないぞ」
これは全くもって情けないが、本当の話だ。
だが、俺をバカにする前に少し待って欲しい。「あの」長門を助けれる様な存在なんて、宇宙全体を探しても少ないだろう。
お前らもそうは思わないか?あの万能選手かつ宇宙人の魔法使いであるところの長門に、
男らしく助けを差し伸べるなんて出来るのだろうか。少なくとも俺はまったく出来る気がしない。
出来るというなら立候補してみてくれ。物は試しだ。弾除け程度には成れるかもしれない。
「そんなの知らないわよ。仮に有希がアンタに…惚れたとして、アンタのどこに惚れたか…なんて。
あの娘、案外世話焼きだから、そんなアンタが良いのかもしれないわ」
なぜだか、俺にはハルヒの眼に、少し翳りが見えたような気がした。これは気のせい…な気はしない。
「私、有希と話をしてみる」
ちょっと待て。あいつは今病み上がりなんじゃないのか。
「そりゃそうだけど…あのしっかりものの有希が、ここに来て突然体の調子を崩すなんておかしいじゃない。
『心身相関』って言葉知ってる?あの娘が体の具合が悪いのは…何か…何かを、抱え込んでるからよ。
だから、私がそれを聞きだすわ。あんたも来なさい」
そう言うやいなや、ハルヒは俺に背を向け、俺の腕を引っつかむと、右手にシャミを抱えた状態のままの俺を
皆が待つ大広間の方へと引きずっていった。
おい、まてハルヒ、止めろ。
…だがどうやって止めたら良いのか、今度ばかりは俺にもわからん。
まるでダンジョンゲームで、目の前の落とし穴を右に避けたら、バネで吹き飛ばす罠に掛かったような感覚だ。
「あ、見つけたんですねえ、さすがです〜」
「おや、どこに居たんですか?随分探したんですが…」
これは俺の腕の中のシャミに対する朝比奈さんと古泉のセリフだ。
ああ、そういえばそんなゲームだった様な気がする。さっきのことなのに、なんか随分昔のような気がするぜ、おい。
「そんなことはどうでも良いわ」
だが悪いな、今のハルヒにとっては、どうやら優先事項が他にある状況みたいだ。
「有希、ちょっとこっちへ来なさい。いえ、別の部屋に行くわ」
ハルヒはそう言うと、立ち上がった長門を俺同様に引っ張って…
まあ長門は歩いてはいたが、そんなことはどうでも良い。
とにかく長門と共に、二階の別室へと移動した。
「いいあんたたち。覗いたり、聞き耳を立てたりしたら、駄目だからね」
凍りついたような表情でそう言い放って。
「な…なにが起きたんだいっ?ひょっとして、キョン君っ、あの二人に何かオイタでもしたにょろ…っ?」
いや、俺も正直何が起きたのか、よく分かりません。説明して欲しいのはこっちの方です。
「…なんでしょう、涼宮さんは怒っているのかな…何ていったらいいか…ごめんなさい、よく分からないです…」
ああ、すいません、朝比奈さんにまで負担をかけるつもりはないんです。適任者がここにはいますし。
おい、ちょっと古泉。いいからこっちへ来い。
「なんでしょうか?…私たちも場所を変えたほうが良さそうですか?」
…ああ、そうだな。少なくともお前の顔からニヤニヤ笑いが30%減少している状況からは、そう考えられるな。
「わかりました。では皆さん、少しお待ちを」
俺たちは、ハルヒの部屋とはまた別の、一階にあるリビングルームへと移動した。
古泉は手をこちらに広げるようなゼスチャーをして、俺に語りかけた。
「さて、ここならいいでしょう。では説明してください
…いえ、まずは私のほうから説明するべきですね。
まず、僕の感覚では、今、涼宮さんの精神状態は高い緊張状態にあります。閉鎖空間が出来るときとはまた違う…
そうですね、つい先日、あなたが倒れた時の精神状態が近い感じでしょうか。
実をいうと、昨日、僕が彼女に『夢である』と説明したときから彼女の精神はそのように推移していたんですが、
あなた方が2階に上がって、しばらくしてからその緊張度は格段に上がりました。
…何が、あったんですか?」
そう奴にシリアスな顔で迫られたのだが、俺としては正直そこまでのことが起きていたとは知らんかった。
なので、起きた事をありのままに古泉に告げてやった。
…ハルヒの「誤解」も含めてな。
「なるほど…」
すると何か、得心するところがあったのか、古泉は腕を組んで、頷いた。
「なんだ、何か分かったのか?なら説明してくれ。俺にはさっぱりわからん」
これは本心からだ。本気で俺にはさっぱりわからん。
「そうですねえ…どこから話しますか。先ずはシャミセン氏ですね」
おい、待て。ハルヒの勘違いとうちの猫がなぜ今関係があるんだ。
「まあ落ち着いてください。順を追って説明しますから。
まず、シャミセン氏は非常におとなしい猫です。正直今日の朝、居なかった…ということ自体が、
私としては相当に予想外でした。それを使ったトリックまで考えていた位ですから」
今はお前の推理ゲームなんてどうでも良い。問題は何だ。
「そう、今朝のシャミセン氏は明らかに普段と異なる行動を取っていた。
かつて、これに近いことが起きた事に心当たりはありませんか?」
…ひょっとして、あの人語を喋りだしたことか?
「そのとおり。その時、シャミセン氏は何故喋ったか。それは涼宮さんの力を受けていたからです。
今回も同様で、シャミセン氏が急に行動的になったか。それは涼宮さんの力を受けていたからです」
…そうかもしれないな。普段家で、行動的とは程遠い家猫的家猫たるシャミを見ていると、それにはかなりの説得力が有る。
「…だが何故ハルヒはシャミセンが一時的に行方不明になることを望んだんだ?」
「それを望んだ…というのは不正確ですね。彼女が望んだのは、あなたと再び探索行に出かけることです。
それも二人きりで。
先ほども同じようなことを言ったように思いますが、実際はそれ以上の事だったのは正直な所、意外でした。
いえ、迂闊だったと言ったほうがいいでしょう。
たしか、あなた方は同様のことを館でもしたそうですね。
その際に彼女としては、『とても重要な話』をあなたにしたのでしょう。
しかし、僕がそれを『夢』としてしまったことで、それが無しになってしまった。
だから再びその状況を作り出した…ということですね」
なるほど、シャミセン一連の話は良く分かった。じゃあなぜ長門のことが、
ハルヒの中ではそんなに重要視されるような事だったんだ。
「…本当に分からないんですか?それとも分からないフリをしてるんですか?」
だから分からんと言っている。
「…ふう。鈍い人…ですねえ」
何についてだ。勝手に人を朴念仁にするな。
「いいですか、涼宮さんの考えは、有る意味当たっています」
っ?!
「長門さんは、あなたにいわゆる好意を抱いていますよ。それも明白に」
……
「私はその背景もつい昨日、館の中であなたから聞きました。確かにそれは好意を受けるに値しますね」
俺は…たっぷり30秒は停止していた。
……証拠は。どこだ。
「長門さんの目線…とかですかね。涼宮さんの観察眼と推察力は、極めて鋭いですよ。
特にあなたのことはよく見ていますね、流石に。証拠としては十分です」
それは証拠とは言わん。妄想とか何とかと言うんだ。
「分かりました、僕から提示できる、間接的証左の一つとして、涼宮さんに問い詰められた後における
長門さんの行動を予測してみましょう」
そういうと、古泉は指を二本立てて、一本を折り曲げた。
「いいですか、仮に、長門さんがあなたに好意を抱いていなかったら、長門さんは適当な言い訳をして、
その『誤解』を解くことに専念するでしょう。彼女が普段無口でも、流石にそこまでは無口ではありませんし、
本気を出したときの彼女の情報伝達能力は僕などより相当に高いですから」
そう言ってから少し間を置くと、立っていたもう一本の指を折り曲げながら言った。
「ですが、もしあなたに好意を抱いていたなら…
そうですね、彼女の性格からして、『沈黙』を持って肯定の意とするでしょう。
その時は…まあ腹を括って下さい」
「ちょっと待て。そんなのは証拠になんか…」
そう言いかけた俺の所へ、突然ハルヒが走りこんでやって来た。
「アンタ、ちょっと来なさい。有希が…私にも、何も話そうとしてくれないのよ!
アンタが当事者なんだから、アンタが何とかしなさい!」
そう言い放って。
…古泉、お前は一体いつから超能力に加えて、予知能力まで手に入れやがったんだ。
ハルヒに首根っこをつかまれて、その部屋までやってきた俺の前には、長門が座っていた。
古泉の予言付き解説によれば、そんな長門は俺に好意を持っている…らしい。
俺にはわからんが。そもそも俺には、さっきハルヒに言ったように、長門に惚れられる要素が分からん。
どちらかといえば、俺は長門にはみっとも無い部類の方を、遥かに多く見られてる気がする位だ。
惚れるなど、万が一にもない。少なくとも俺が女だったら、そんな情けない男にはまず惚れないだろうな。
そう、俺は…
いや、なんてこった。
ハルヒには言えないことで、少なくとも一つだけは心当たりがある。
俺はこの間、どうなるかの保証も無く、長門を信頼し、結果刺される犠牲まで払って『本当の長門』を捜し求めた上、
長門の『親』に「消すなら黙っちゃいない」等と啖呵を切ったじゃないか。
…古泉が言った『背景』とやらはそういうことか。
だが、俺は…
いや、その前に俺は確かめなければならない。
いやむしろ、これは意識していなかったとは言え、
結果としてとんでもなく卑怯な真似をしてしまった俺が、せめて、尽くすべきことだ。
「ハルヒ、悪いが少し、席を外してくれないか」
ハルヒはそう言い放った俺を少しだけ、そして長門の顔を少しだけ、どちらも少しだけ見た後、
ハルヒはドアを開け…閉めた。
悪い。本当に「少しだけ」待っていて欲しい。後で埋め合わせが仮に付くなら、幾らでもする。
「さて…長門」
「…なに」
「何でハルヒに『あの様に』問い詰められた時、黙ってた?」
「……」
…ああ、あのエスパーさまは、確かにエスパーだったよ。
少なくとも、俺にわからなかった第6感とやらは持っていたらしい。
そしてそのグラスを通してみれば、そして長門の表情専門家の知識を総動員すれば…
流石の俺も「それ位」はわかる。
「…よし、判った」
そう解釈して良いんだな?
* * *
わたしは外で待っていた。
本当は…もっと離れるべきだったんだろうけど、それは出来なかった。
それをしたら…ううん、私は離れるべきだったのよ。
だって、私は二人ともが…好きだもの。
だから、そっと祝福してあげる…べきだもの。
でも、それは…それは…
「ハルヒ、入って来い。そこにいるんだろ?」
* * *
「ハルヒ、入って来い。そこにいるんだろ?」
居なかったら…まあ俺はアイツにとって、それだけの男だったって事だ。
…だが、アイツは居た。
そしてほっとした俺も居た。
「……」
「……」
「……」
ドアが閉まった後、部屋の中は無音になった。
いや、むしろ俺たちが無音にしていた。
しかし、俺の中で、俺が次にするべきことは確定していた。
そして、時を移さず、俺はそれを行動に移した。
俺は、長門に向かって、土下座した。
「すまん、長門!」
* * *
わたしは…なぜか二人と同じ部屋に居た。
いいえ、キョンがわたしを入れてくれた。
キョンが…何をしたいのかは…分からない。
わたしはどうしたらいいの?
わたしは…何をしたいの?
すると、わたしの耳に、わたしの意表を突く、とんでもない音が響いた。
「すまん、長門!」
* * *
「…」
下から見上げた長門の眼の材質は、何も写さない黒檀から、深い色のターコイズへと変貌した。
ああ、これは悲しんでいる眼だ。…そして、全てを分かった眼だ。
「ちょっと、キョン?!」
続いて、あわてたハルヒの声が響く。
* * *
わたしは目の前の状況が信じられなかった。
有希の目の前に、アイツが土下座している。
…そして、それを受け入れている…多分…有希が居る。
…なんで?なんでなのよ?!
「ちょっと、キョン?!」
* * *
「なんでそんなこと言うわけ?なにか有希に不満でもあるの?」
もちろん不満なんかはさらさら無い。だが、俺自身に対する怒りならあるがな。
「有希の良さなら、あなたが一番分かっているでしょ?!」
ああ、全くもってその通りだ。コイツをなんとAマイナーなんかにランク付けしやがった谷口に、
ランク上げについて小一時間問い詰めてやりたい位にはな。
「なんで、なんでなのよっ?!」
* * *
私は目の前の光景を、ありとあらゆる感覚器官から受容し、把握した。
「あの日」以来、どうあれ「こうなる事」が起こる事は、既に有りうる組み合わせ全てについてシュミレートしていた。
そして、その結果だけは、いかなる選択や方法においても、変化させることは出来なかった。
でも、私はそれでも…全く可能性が無くても賭けた。
そして、私は賭けに負けたのだ。
故に、私には一つの言葉を紡ぐ以外に選択肢は…無い。
「私は、負けたから」
* * *
「私は、負けたから」
ああ、長門、頼む。今から俺がどうにか出来るなら、何でもする。
朝倉にもう一度刺されれば良いというなら、一度といわず、何度だって朝倉に刺されてやる。
だから…どうか、どうか…
そんな風に…泣かないでくれ…
* * *
…有希の眼から、一筋、涙が、落ちた。
「負けた」
そう有希は言った。
何に負けたの?だれに負けたの?
あなたに勝てる人なんて、この世の中に居るわけないじゃない。
あなたは、SOS団が誇る、オールラウンダーのスーパーガールなんだから…
* * *
こんなことになったのは、全て俺のせいだ。
考えてみれば、最初から答えは見えていた。
それなのに、すぐ心を決めなかったこと…それが結果、長門を苦しめることになった。
全く最悪だ、この俺は。後で朝比奈さんに頼んで、TPDDとやらを借りて、
過去の俺を殴り倒してくるべきなのかもしれない。
いや、そんなものに頼らなくても、今、自分で自分を殴り倒せば良いのか。
だが、今はそれよりも優先してすることがある。
これだけは、自分で言わなければ成らない。
「ハルヒ」
「な…なに?」
「見ての通りだ。俺は、自分を偽ったせいで、コイツを泣かせてしまった。
だから、せめて自分の偽りを正したい。俺の懺悔に、付き合ってくれないか?」
* * *
キョンは何を言いたいの?
わたしに…何を?
「ハルヒ。俺はお前のことが…好きなんだ」
* * *
ちょっと前の俺なら、自殺衝動とかで誤魔化したくなるようなセリフだったが、
今回はスムースに出てくれた。正直、これほどスムースに出てくれるとは思っていなかった。
それが出たのは…
「長門」
「……」
「本当にすまなかった」
「…あなたと、
…涼宮ハルヒが」
……せめて長門が全力で俺を責めてくれるならば、俺にのしかかる100tもの罪悪感も少しは軽くなったことだろう。
だが、長門の口から出たのは、そんな言ではなかった。そうしてくれたら本当に、どれほど楽だったことだろう。
でも、濡れたターコイズブルーの眼をした、長門の口から出た言葉は、こうだった。
「しあわせならば、私は」
ああ。
そうなのだ。長門は。
彼女は。
* * *
わたしは…そのあとのことをあんまり覚えていない。
たしかしばらく二人を責めていたような気がする。
どうして、どうしてと。言葉にもなってなかったと思う。
その時、私は自分も責めていたと思う。
私は、何てことをしてしまったのかと。
だけど、その間も、その後でも、二人は全く同じような優しい目をして、こっちを見てくれた。
それだけは覚えていた。
* * *
結局、もうその日、一泊して年を越した後、旅行は解散となった。古泉の推理ゲームはお流れとなった。
旅行中、その一件の後は、俺も、ハルヒも、おそらくは長門も、お互い二人きり、乃至は三人きりになる状況を極力避けていた。
旅行から帰って2日、俺は自分の携帯の電源を落とし、一人自分の部屋で自己嫌悪に陥っていた。
妹も妹なりに、何か気を使ってくれたのか、一度も乱入してくることが無かった。
そんな時、珍しくも古泉が俺の家にやってきた。
開口一番、コイツは相変わらず表情の読めない単調な笑顔で、こんなことをのたまわった。
「結局、あの後、涼宮さんは閉鎖空間の作成も、世界の改変も、夢にすることも行いませんでした。
これは成長の証だと思いますよ。もちろん、あなたについても」
…ああ、そう言ってくれると少しは救われる。
…だが、そうだな、もし、俺が『あの時』あいまいな態度を取っていたら、お前は俺をどうした?
参考までに聞かせて欲しい。
「まあ、普段からあなたを見ていた経験則からして、それは『無い』とは思っていましたけどね。
そうですね…まあ、最低でも『空前のヘタレ』『最低の二股』『ハーレム妄想男』など…まあ思いつく限りの罵倒をしたことでしょう。
あるいは単純に無言でぶん殴ったかもしれません。感情の赴くままに。
ですが、あなたはちゃんと『けじめ』を取ったじゃないですか」
…そうか。
でも、俺はこの後どんな顔して皆の前に顔を出せばいいんだろうな。
俺は結局…最悪な行動を取った挙句、結局あの幸せだったSOS団という空間を破壊してしまったわけだ。
「へえ、そうなんですか?そうなったとは初耳です。団は健在ですよ、今でも」
…なんだと?
「そのままの意味です。実は『副団長』としての僕に、あなたへ、とおおせつかった伝言がありましてね。
『団長命令:大至急SOS団団室に来ること』だそうです」
…
「『SOS団は年中無休なのよ、正月三が日位は許すけど、とっとと出てきなさいバカキョン』と追記されていますね」
…俺は行っていいのか?
「命令ですからねえ、行くべきなんじゃないですか?」
お前は行くのか?
「命令ですからね」
「よし、なら俺も連れてけ。どうせお前は自家用タクシー使うんだろうが」
あの坂を一気に駆け上がるのは、この寒空の中では辛いからな。
「そうですね、『大至急』だそうですしね」
ニヤニヤしやがって、この野郎。だが、今回だけは感謝してやる。
結局、部室にたどり着いた俺を待っていたのは…
「団長」と書かれた腕章を腕につけた団長様と、メイド服の天使様。
そして…「強敵」と書かれた腕章をつけた、本を抱えた小柄な女の子だった。
「遅いっ!罰としてこれをつけることっ!」
…俺の目が確かなら、その腕章に書いてあるのは
「トロフィー」
の文字。
…?何だこりゃ。しかも見事な明朝体。印刷でもしたのかこれは。
「私が書いた」
…そうなのか。
「そう」
…悪い、何かのジョークなのだろうが、俺の今の倒れそうなコマ並に低い回転数の頭では正直意味が分からん。
* * *
旅行の後、わたしは、いつもSOS団の会合が開かれる喫茶店で、ただ一人を待っていた。
正直、出てきてくれるかどうか、全く自信が無かったけど、彼女は来てくれた。
「有希、来てくれたのね。…来てくれないかとも思ってた」
「私も」
有希の表情は…意外…かな、わかんないや。私はキョンほど有希の表情に精通してないから。
「呼ばれるとは思っていなかった」
そう…ね。普通ならね。
* * *
私のシュミレートでは、このような状況に陥った後、再びSOS団、その中でも特に涼宮ハルヒ及び、彼との
再度の邂逅は不可能なことだと断じられていた。
故に、これは私の想定能力を大幅に超えていた。
その結果として、思考能力は格段に低下し、以降の彼女の行動を予測することが出来なかった。
「あのね、私たちは『普通』の団結力で結ばれているようなヤワな団ではないつもりよ。
だから、呼んだら直ぐ集まるのは当然なのよ!」
予測されなかった彼女の言葉を、私は…理解した。…彼女は、私のことを本当に。
「そう」
「そうなのよ!んで、有希、あなたはこれをつけなさい!」
彼女は、ある言葉が記された、腕章を私に差し伸べた。
* * *
私は「強敵」と書いて「とも」と読む、さっき作ったSOS団の新腕章を有希に突き出した。
出した手が震えているのがわかる。
お願い、受け取って。
「いい、在団中はずっと、必ずこれを付けて来ること!」
いつか離れるとき…そのときが来るかは分からないけど…それまでは。
「そして、『最後』にキョンに決めさせること!」
たしかにキョンの気持ちは嬉しかったし、こうなることを…望んではいた。わたしは。
でも…こんなやり方では…
アンフェア。
少なくともわたしにとってはそう思えた。
だからもう少し、お互いに競い合いたい。
いえ、出来るだけの長さの時間を有希と、SOS団と一緒に過ごしたい。
それは…だめ?
しかし、有希は、それをそっと受け取ってくれた。
わたしは正直、心底からほっとした。
「分かった」
有希の表情、今度は分かるわ。多分『納得』って表情ね。
「でも、手加減はしない」
言うじゃない。
「望むところよ!」
有希の表情は変化しなかったし、語調も変化しなかったけど、間違いなく『面白そうに』こう言った。
「もし、あなたが現状の状況の有利さから来る油断をするなら、
『彼は私が手に入れるのだ。彼にはそれだけの価値があるのである』」
そう、こんな関係の方が私も嬉しい。
「やれるものならね。やってみなさいっ!」
* * *
終わり
朝早くから、いいもん見た。みくるんが蚊帳の外だったのが少し残念だったけど、
まあそれは原作どおりか。「強敵」と「トロフィー」はベタだが良かったよ。
シミュレート
強敵と書いて「友」と読んだりするんだろうなぁ。
それはそれとしてGJ
717 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 07:36:47 ID://4+ksg8
どーでもいいが小学生くらいのとき強敵を「つよてき」と読んでいた。
スルーしてくれ
>>676 亀だが結婚話あたりの反応じゃないかな?
これはよい三角関係ですね
キョンうらやまs…と思ったが気が休まるときがなさそうw
キョンとハルヒの会話も夢ってことになってたんだよな、これ見て今ごろ気付いた。
少しばかり投下させていただきます。
3レスほどの小ネタで、ストーリーすら殆ど無い習作です。
終わりが中途半端なのも仕様です。
悪い夢を見た。
私は昔からエキセントリックな夢をよく見る方だった。
それは私が抱いているこの退屈な世界に対する無意識かでの抵抗であったのかもしれないし、単にそういう夢を見やすい脳の仕組みをしているだけなのかもしれない。
しかし、それにしても今日のは酷かった。最悪だ。
自分の顔を鏡で確かめる。電気をつけなくてもわかるぐらい目の下は黒く腫上がっていたし、頭は二目と見れない程ぼさぼさだった。
全く酷い有様ね、と自分を笑ってみると、鏡の中の女にまで馬鹿にされたような気がして私はムカついた。鏡の中の女も仏頂面を作る。
さらに、いつの間にか自分の指が唇に当たっていたのに気付いて、私たちはますます不機嫌な顔になった。
苛立ちを払うようにカーテンを開けても、暗闇が圧し掛かってくるだけだ。時計を見ると、午前二時十三分。
寝不足はお肌の大敵ね、なんて下らない事を言う気はさらさら無いが、起きるにはあまりに早すぎるのも確かだ。
……学校にでも、行ってみようか。
わけがわからない事を考える私の頭を枕に打ち付けて、さっさと寝直すことにする。
次に見る夢は愉快な夢だといい。少なくとも、途中で飛び起きるような夢はごめんだ。
宇宙人とか未来人とか超能力者と楽しく遊ぶ夢。世界で一番楽しい私の夢。
しかし、薄く澱んだ睡魔は、いつまで経っても私の意識を奪わない。イライラする。頭を掻き毟りたい。
羊でも数えてみようか。いや、私はそんな退屈なことが大嫌いだ。
羊を数えるぐらいなら棺でも数えた方がまだマシだし、その中から吸血鬼だのファラオだの出てきてくれたら尚いいと思う。
そう。退屈だ。学校に行っても結局不思議な事なんてありやしない。
SOS団の活動にしても、ちゃらちゃらしたお遊び部か何かと勘違いしてる不愉快なのが一匹いるし。
さっきの夢にしても、世界は灰色で、巨人が沢山いて、少なくとも退屈とは程遠い世界だったのに、あの馬鹿のせいで……
いけない。考えが安定しない。睡魔は私の意識までは奪わなかったが、思考力だけはちゃっかり奪い去ったようだ。
ムカつくわ。大体何よ睡魔って。偉そうにして。絶対私の方が偉いわ。
何だか眠ったら負けるような気がしてきた。いや、寝たら勝ちなのかしら。まあ、どっちでもいいわ。とにかく私の勝ちね。
勝ちだから寝るわ。おやすみなさい。明日も天気が良ければいいわね。
目を瞑る。顔が迫る。目を開ける。目を瞑る。顔が迫る。さっきより近い。目を開ける。目を瞑る。顔が触れる。
何なのよ。
私はそう呟きながら掛け布団を跳ね除けた。
もう少しで眠れそうだったのに。またしてもあの馬鹿のせいで。丑三つ時だからって私に呪いでもかけてんじゃないでしょうね。
私はあいつの家があるであろう方向に睨みをきかせた。壁しか見えない。
はぁ、もういっそこのまま起きてた方が楽かもね。少なくとも妙な幻は見ないですむし。
暫く壁を睨みながら悩んだ後、その考えに至った私は、布団の上に膝を抱えて座り込む。幸い考える事は山ほどある筈だ。
明日はみくるちゃんに何着せようかしら。有希にも何か着せてみたいわね。あの子ならどんなのだって黙って着てくれそうだし。
古泉君にも何か着せてみたいわね。ぬいぐるみでも着せてみようかしら。外見とのギャップがいい感じね。
うん。いいわね。写真にでも撮れば、男女幅広い層に訴えかけるチラシが作れそう。
あいつは……そうね、撮影監督補佐とカメラマンでいいでしょ。どうせ写真映えするような顔じゃないし。
でもって、週末の市内探索ね。今度こそ不思議なものを見つけてやるわ。
みくるちゃんとか有希とか古泉君とかとペアを組むのもちょっと飽きたから、偶にはあの馬鹿と組んでやってもいいわね。
あのアホっぽい顔が、逆に何か神秘的なものを引き寄せるかもしれないし。試してみる価値はあるわ。
あとそれだけじゃつまんないから、何かでかいイベントを考えないとね。
どんなイベントにしようかしら……アイディアが有り過ぎてまとまんないわ。ま、いいや。明日あいつに聞かせてメモらせよう。
あとは……
結局考える事の六割方はSOS団のことで、私がそれに気付いたのは日が昇り始めた頃のことだった。
軽くシャワーを浴びて制服を着こんだ後、髪の毛を乾かしながらぼんやりと鏡を見つめる。
こびりついた悪夢はシャワーでも洗い落とせなかったが、澱んだ眠気は漸く脊髄に落ちたらしく、体中の血液は眠気で重くなっていた。
私はドライヤーを手放して、そのまま化粧台の上に倒れこんだ。
まったくもって気分は最悪だ。二日目の朝にも勝る。学校になんか行きたくも無い。どうせ退屈で怠惰で平凡で日常だ。
しかし、今日みくるちゃんに着せる服ももう用意してしまったし、何にせよ私の予定通りにいかないというのは気分が悪い。
思い直して顔を上げると、まだ目の下にうっすら隈が残っているのに気付いた。
あれだけ揉んでも洗っても取れないと言う事は、化粧でもするしかないだろう。
私の上半身はまたしても倒れ伏し、口からはまるで誰かのようなため息が漏れていた。
ろくに休息できなかった脳の回転数は未だに鈍く、化粧なんて面倒な事したらそれこそ途中で止まってしまいそうだ。
……止めとこ。学校に行くぐらいなら、別に何てこと無いしね。
そう納得してもう一度顔を上げ、髪の毛を整えていつものようにカチューシャをつける。
そうして鏡の中に現れたのは、いつも通りの格好の、いつもより少しばかり野暮ったい自分の顔。
学校に行くぐらいなら、別に全然問題ないわよね。よし、いざ出発!
しかし、突き上げようとした私の右手は気付けば滅多に使わない化粧道具を取り出しており、目の下を肌色で隠している真っ最中だった。
昨夜の事もあって、鏡の中で私を見つめる女の顔が無性に腹立たしかったのだろう。それなら仕方ない。
ついでに最近代わり映えのしない髪の毛にも何だか苛ついてきて、髪型を変えることにした。
私は退屈な事が大嫌いなのだ。いつも同じ髪型なんて、退屈すぎて我慢ならない。
鏡の中の女はそんな私を馬鹿にしたような目で見つめていたが、やがて諦めたように薄く笑うと、髪の毛を後ろにまとめ始める。
なかなか斬新な髪型の出来に満足した私は大きく頷くと、今度こそ右手を高く突き上げ、そのままの勢いで家を出た。
しかし外に出ると、睡眠不足の頭に四角い朝日が直撃し、危うくその場に座り込みそうになった。
私は特に朝が嫌いなわけではないが、どうやら今日はその限りではないようだ。
私はライオンも怯えさせるぐらいの気迫で水色の空を睨みつける。
太陽め、近いうちに撃ち落してやるわ。
物騒な決意を心に秘めながら、気を取り直してアスファルトの上を歩き出した。
鈍い身体に鞭打って、いつものようにきびきびと。
それでも、あの馬鹿まだ来てないんだろうな、などと考えながら上る坂道は、いつもより退屈ではないのかもしれなかった。
>結局考える事の六割方はSOS団のことで、
そのまた九割方は誰のことかなー、というのが微笑ましいやね。
>>724 ………終わり?
確かに見事なまでにオチないのな。キョンとの会話まで書いて欲しかった気もするが。でもGJ。
>>721非常にGJ。万物に喧嘩を売るハルヒがいちいち面白い。語りも原作っぽい感じだし。のめりこみ過ぎて
>>725に割り込みは死ねと思った俺をどうか許してやってほしい
>>695 最高に変態チックで気に入った。
ただ、キョンが言った「クンニグリス」はわざとかな?
クンニリングスが正解だが…
>>721最初、文字の海にビビッたが、頑張って読んでみたら面白かった。
730 :
55:2006/07/18(火) 17:28:45 ID:RbgCqult
>>55 からの続き。後22レスで終わりなんだが、エロないし、途中で埋まってしまうと思うので、
とりあえず続きの14レス分を投下してみる。
翌日、授業が終わって部室へ向かう準備をしていると、廊下から名前を呼ばれた。
知らない人が、教室の入り口のところに立っている。誰だろう。
俯き加減で、その人の前に行くと、
「長門有希さんだよね。今日、生徒会室に来てくれないかな。
下校時間までなら、何時でもいいからさ。文芸部のことで話があるらしいんだ」
と告げられた。また文芸部の休部問題。そう思った。
それ以外に生徒会から呼び出しを受ける理由が思い当たらない。
機関誌は、まだ発行してない。しかし、今年度中に発行できれば問題はないはず。
なぜ、こんなにしつこく言ってくるのだろう。これで三度目。
来年度の部活予算の配分があるから? でも、今はまだ十二月。
文化祭で機関誌を発行しなかった。その件で、文化祭の後、改選されたばかりの生徒会に
呼び出され、一週間程前にも、再度呼び出しを受けた。
その都度、年度末までには機関誌を発行すると伝えている。それで生徒会は納得したはず。
それ以外に何か用件があるのか、そう訊こうと顔を上げたら、もうその人の姿はなかった。
まただ。なぜ、堂々と対応できないのだろう。
しかし、文芸部の件で生徒会から呼び出されたのだ。無視するわけにもいかない。
何れにしても行かなければならないのなら、用件は、生徒会室で聞けばいい。
休部の件なら、これまで通り、年度末までには機関紙を発行すると伝えればいいだけ。
そう考えて、教室に戻ろうとした。
そのとき、後ろから肩を叩かれ、飛び上がりそうになった。振り向くと、そこに彼がいた。
「よ、長門。どうした? 今日は、部活は休みか?」
少し慌て気味に、首を振って、
「これから」
そう答えた。彼は笑いながら「じゃあ、一緒に行こうぜ」と言った。
彼の笑顔。
わたしは、生徒会からの呼び出しの件を頭の隅に押しやり、カバンを取りに教室に入った。
部室に入り、カバンを置くと、いつものイスに腰掛ける。
彼は、テーブルを挟んで、わたしの斜め前にイスを持ってきて座り、弁当を食べ始めた。
わたしは、彼を視界の隅に捉えながら、何から訊こうか考えていた。
今日こそは話を訊ける。本を読む気にはならなかった。
「訊きたいことがある」
そう言ったのは、彼が、弁当を食べ終え、買って来たお茶を飲みながら、
何かを考えているように天井を眺めているときだった。
彼が、ぽかんとした顔をわたしに向ける。
あなたの知っている世界のことを知りたい。あなたと涼宮ハルヒの関係を知りたい。
やっとの思いでそう言った。やはり、彼を直視することはできない。
図書館のことも訊きたかったが、先ずは、彼が涼宮ハルヒをどう思っているか知りたかった。
彼は、少し驚いたような仕草をし、そして、考え込むような表情を浮かべた後、
両手を頭の後ろで組んで、天井を見上げながら話し始めた。
「そうだな、ハルヒは昨日も言ったように、妙な力を持っている、いや、持っているかも
しれない奴で、それを自覚していないんだ。暇になると何をしでかすか解らん奴で……」
そう話し始めた彼の話の端々からは、涼宮ハルヒに対する愛情や信頼が感じられた。
彼は、涼宮ハルヒを大切に思っている。彼は自覚してないかも知れないけど。
彼女に振り回される彼。でも、彼は、それを嫌がってはいないように思えた。
彼は涼宮ハルヒが好きなのかもしれない。そう思うと、気持ちが沈む。
昨日は、それでも大丈夫だと思ったのに。いや、大丈夫。ちゃんと話を聞かなければ。
「……ってことで、ハルヒと俺の関係は、お姫様と、執事みたいなものだな」
彼の顔に、穏やかな表情が浮かぶ。
どうやら、付き合っているわけではないらしい。何となく安堵感。
一拍置いて、彼は、彼の知っているわたしのことを話し始めた。一瞬、違和感を感じる。
それは訊ねていない。訊きたいと思っていたけど。
「長門は、俺にとって、一言で言えば気になる存在だ」
気になる存在? 心拍数が跳ね上がる。
「いつも冷静で、感情がないんじゃないかと思うくらい表情もない」
彼の話では、彼の知っているわたしは、無表情で無感動。
周囲に溶け込むこともなく、いつも一人で、分厚い本を読んでいる。話す言葉は最小限。
それは、わたしだ。いつも一人きりのわたし。わたしは、彼の世界でも一人だった。
自然と俯き加減になる。
「でも、これは俺の自惚れかも知れないけど、俺にだけは、いつもと違った一面を見せてくれる
と言うか……」
複雑な心境。感情を持たない宇宙人製のアンドロイド。
そのアンドロイドが、感情の片鱗を彼にだけ見せていた、そんな感じらしい。
それは、ロボットが感情を芽生えさせ、人間に恋するときの定番行動なのではないだろうか。
彼は、そんなわたしに同情してたのかもしれない。
「同情?」
そう訊いてみると、
「違う!」
強い否定が返ってきた。思わず身体を竦めてしまう。怒ったのだろうか。
「いや、すまん。怒っているわけじゃないんだ。でも、確かにそう見えるな。同情か」
彼は、軽く溜息をついて、話を続けた。
「そうなのかもしれない。でも、長門には、同情や憐れみって言葉は似合わない。
あいつは、無敵で万能だからな。ただ、俺は、あいつを人として見てしまうんだ。
人じゃないと言うことは理解してるさ。長門に、人の、俺の常識がそのまま当てはまるとは
考えていない。あいつは、それで楽しいのかもしれない。でもな、どうしても納得できないんだよ。
だから、あいつが初めて感情らしいものを見せたとき、俺は、少しだけ嬉しかったんだ」
少しの沈黙。そして、何処となく窺うような視線をわたしに向け、
「……俺は、あいつに人としての幸せってヤツを知って欲しいのさ。
でも、あいつはどう思ってたんだろうな。余計なお世話なのかもしれない……」
そうぽつりと言って、話を締め括った。寂しそうな表情。
彼は、彼の世界のわたしを、彼の子供か何かのように捕らえているようだ。少し残念。
でも、それはそうだろう。身近に現れたアンドロイド。いくら人の形をしていても、
それは人ではないのだ。そのアンドロイドが感情を持ち、人の倫理観を理解したとしても、
アンドロイドと人の間に情愛が生まれることはないだろう。
いや、仮に、そのアンドロイドが人と同じような感情を持ち、人の倫理観や価値観を理解した
としたらどうだろう。それは人と言えるのではないだろうか。人と機械の境界線はどこにある?
彼は、その宇宙人製アンドロイドに同情に近い感情を持っているように思える。
それは、情愛に発展する可能性があるのではないだろうか。
少なくとも、アンドロイドであるわたしは、彼に特別な感情を持っていたとしか思えない。
そして、彼は、そのわたしに人の価値観を理解して欲しいと思っているようだ。
それは、彼が彼の知っているわたしを人間扱いしていたと言うことなのだろうか。
彼と、彼の知っているわたしの関係に思いを廻らせていると、彼が口を開いた。
「今回の世界改変のことで、昨日から色々考えてたんだが、それを話してもいいか?」
そして、躊躇するような素振り。
「お前が俺の知っている長門じゃないってことは解っている。
だから、何っているんだって思うかも知れない。でも、だからこそ、聞いて欲しいんだ。
今のこの世界では、お前にしかこんなことは話せないしな。
で、何か思うところがあれば言って欲しい」
彼の状況認識が聞けそうだ。無言のまま頷く。
彼はイスに座りなおすと、両手をテーブルの上で組み、静かに話し始めた。
「俺は、この世界はハルヒによって改変されたのではないかと思っている。
今まで曖昧に言ってけど、実際、ハルヒは、世界を改変する力を持っているんだ。
それに巻き込まれたことがあるからな。ただ、ハルヒがそれを自覚的にコントロール
できないのは本当だ。俺は、この世界がハルヒによって無意識に改変され、
それに気が付いた長門が、脱出プログラムを仕込んでくれたのではないかと考えている」
何となく苦しそうな表情。
俯き加減で、彼は、互いに組んだ両指を交互に動かしながら話を続けた。
「ハルヒや朝比奈さん、古泉は、能力を持っていないことを除けば、俺の知っている奴らと
同じだ。お前だって、宇宙人でなく人間だとすれば、俺の知っている長門と同じに
見えないこともない。ハルヒは、お前が宇宙人だったなんて知らなかったはずだからな」
彼の視線が、一瞬、わたしを捉え、そしてまた、彼の両手へと移動する。
「ただ、理由がまったく解らん。この世界でハルヒは、古泉と一緒に光陽園に行っている。
改変前は、俺と一緒のクラスだったのにな。
それに、あいつはSOS団を大切に思っていたはずだ。だから、SOS団の存在しない世界を
望むとはとても思えない。実際、昨日、ハルヒは嬉々としてSOS団結成を宣言してただろ?
もし、あいつがこの世界を望んでいたなら、SOS団結成はないんじゃないかと思うんだ」
少しの沈黙。眉を寄せた、何か苦いものを飲み込んだような表情。
「考えれば考えるほど、ハルヒがこの世界を望んだとは思えないんだ。
昨日、光陽園学院前でハルヒに会ったとき、あいつは、むちゃくちゃ不機嫌そうだった。
ここがあいつが望んだ世界なら、あいつが不機嫌なのはおかしいだろ?
そして、SOS団結団を宣言したときの、あの晴れ晴れとした笑顔。
古泉は、ハルヒのあんな笑顔を見たのは初めてだって言ってたから、
光陽園では、あんなふうに笑ったことってなかったんじゃないだろうか。
俺の知っているハルヒは、SOS団で、度々あんな笑顔を見せてたんだ。
なんで、こんな世界に改変したんだろうな」
そして、眉を寄せたまま、不機嫌そうに黙り込んだ。
わたしは、昨日の、涼宮ハルヒの輝くような笑顔を思い出していた。
彼女のあの笑顔は、彼に会えたからではないのだろうか、大好きな彼に。
自分が好きな相手の前から、突然、姿を消す。そして、その相手に自分を探させる。
そうすることで、相手に、自分の存在を再認識させる。そんな小説を読んだことがある。
しかし、相手に自分を再認識させるために世界改変とは、どんなセカイ系なのだろう。
いや、思考が逸れている。
わたしは、彼の話について考え、気になった点について訊いてみることにした。
「世界改変に巻き込まれたことがあると言った」
「え? ああ、そうだ」
「戻った方法は?」
「む、むう……、すまん、それは言いたくない」
「あなたは、何かあれば言えと言った」
「……それはそうだが。そうだな、それは朝比奈さんとお前のヒントがあったんだ」
「…………」
「白雪姫とsleeping beautyってな。すまん、それでカンベンしてくれ」
「…………」
彼の顔が見る間に赤くなっていく。そうなのか。そう思い、気分が落ち込むのを自覚する。
しかし、先程の彼の話では、別に付き合っているわけじゃなさそうだった。
どういうことなのだろう。思い切って訊いてみる。
「あなたと涼宮ハルヒは、恋人同士?」
「違う、断じて違うぞ!」
即答。真っ赤な顔で否定する彼。あまり説得力はない。
実際、ある種、特別な関係だとしか思えない。しかし、恋人同士ではなさそうだ。
もし恋人同士なら、彼はそれを認めるだろう。否定する要素は何もないのだから。
しかし、これで納得できる。彼が涼宮ハルヒを探し出してきた理由。
わたしは、昨日の古泉一樹の話を思い出していた。改変された唯一の世界。
そうなら、涼宮ハルヒが観測者なのだ。世界は観測者の意思により存在する。
彼の言う改変される前の世界では、そうだと言える。
そして、彼は、涼宮ハルヒに選ばれた存在なのだ。
涼宮ハルヒは、この世界でも観測者なのだろうか。
「涼宮ハルヒは無自覚に閉鎖空間を発生させる?」
「ああ、あいつはストレスが溜まると無自覚に閉鎖空間を発生させるらしい」
「ならば、ここの涼宮ハルヒは、能力を失っていると思われる」
彼の話では、昨日SOS団を結成するまで、涼宮ハルヒは不機嫌の極みにいたはず。
「俺もそう思う」
「それは、缶詰の中の缶切り」
「何だって?」
何でも願い事を叶えることができる存在がいたとして、その存在が、願い事を叶える能力の
消失を願ったら。それが実現した時点で、その能力を取り戻すことはできない。
「…………」
呆然とわたしを見つめている彼。瞳に力がない。
「やっぱり、もう……」
でも、指摘できることがある。
「緊急脱出プログラム」
「え? そうだ、あれはどうなんだ? あれはハルヒの力じゃない。長門が……」
何か言いかけて、彼が絶句する。そう、それでも彼は脱出できなかったのだ。
そして、この世界に彼の知っている長門有希はいない。
「ふう」
彼が溜息をついて、
「ま、でも状況は整理できたような気がする。ありがとな、長門」
そう寂しそうに呟いて、話を変えるように、わたしに向き直った。
「お前は、ここでは、どんな風に過ごしてるんだ? やっぱり、一人だけの文芸部員なのか?」
「そう、あなたが知っているわたしと同じ。魔法は使えないけど」
彼の眉が少し上がったように見えた。
「友達は? 休みの日にはどっか遊びに行ったりしないのか?」
「友達は、朝倉さんだけ」
「朝倉だけ……」
休みの日は、家で本を読んでいる。出かけるのは、駅前スーパーと図書館くらい。
だから、外出服も持っていない。制服があれば十分だから。
彼は、驚いているようだった。
「俺の長門もそうだった。だが、あいつは宇宙人だから、それも仕方が無いのかと……」
俺の長門。その言葉に身体が反応する。でも、それは彼の保護者的な考えによる発言。
「長門。お前、それで退屈だとか、寂しいとか思わないのか?」
「そんなことは考えたことも無かった。本が読めれば楽しいから」
彼は、何かに怒っているようだった。
わたしと彼の知っている宇宙人であるわたしを重ね合わせているのかも知れない。
「お前は、宇宙人でもアンドロイドでもないんだろ? 人間なんだろ?」
頷く。
「それなら、もっといろんなことを楽しまないとだめだ。友達作って、休みの日には
一緒に外に出るとかさ」
そして、呟くように言葉を続けた。
「それにしてもハルヒの奴、お前を人間に変えてまで、同じ設定にすることは無いじゃないか。
友人のいない、孤独で無口な文学少女なんてさ。あんまりだと思わないか?」
なんとも答えようがない。
そもそも、わたしには、この世界が作り変えられたという実感がないのだ。
彼の、世界改変に対する認識は相対的なもの。
絶対的な指標がない限り、彼がだけが改変された可能性もあるのだから。
わたしは、困ったような顔をしていたに違いない。
彼は、わたしを見て、何かに気が付いたような、気まずいような顔をして、言った。
「すまん、余計なことを言ったようだ。いや、お前がそれでいいなら別にいいんだが……」
心配してくれている。そう思った。
「わたしは人と接するのが苦手だから」
「そうなのか……。え? それじゃ、俺がここに来るのは……」
「あなたは違う」
思わず口をついて出た強い否定の言葉。彼の驚いた顔。
「あなたが苦手なら、家に招いたりしない」
「あ、そうだな、すまん」
彼は、一昨日のことを思い出したのか、落ち着かないように視線を彷徨わせた後、
話題を変えるように明るい声で言った。
「でも、ハルヒがいるさ。そしてあいつのSOS団がな。
たぶん、これから色々振り回されるだろ。それもまた楽しいもんだぜ。なにしろ、あいつは、
こっちの都合なんて一切考えずに強制的に引っ張りまわすんだからな」
そういって、彼は微笑んだ。
そうかもしれない。それで、わたしも、彼と一緒に行動することができるのだから。
涼宮ハルヒと彼との特別な関係。でも、その意味では、わたしも彼とは特別な関係かも
しれない。わたしが彼を図書館の彼と同一視しているように、彼も、わたしを、
彼の知っているわたしと同一視しているように感じるから。
だから、彼が、彼の現状認識を話してくれたことは、嬉しかった。
気が付くと、もう夕方近い。
窓の外に目をやり、生徒会から呼ばれていたことを思い出した。憂鬱な気分。
「どうした?」
彼の声。文芸部のことで生徒会から呼び出しを受けていることを説明する。休部問題のこと。
「俺も一緒に行こうか?」
いや、これは文芸部の問題。彼は部員ではない。その意味では彼は文芸部とは無関係。
入部して欲しいのだけど、それは彼が決めること。
「いい」
そう彼の申し出を断って、私は席を立った。十五分か三十分程度で終わるだろう。
そう言うと、彼が、
「じゃあ、待ってるよ。もう少し、話があるんだ」
そう言った。
わたしは頷いて、イスから立ち上がった。
生徒会室。ドアをノックして返事を待つ。そして、ドアを開けた。
やはり人の前に出るのは苦痛だ。西日が射す生徒会室で、生徒会長が一人で机に座っていた。
緊張する。部屋の中に生徒会長一人しかいないことも緊張を増幅させる。
なぜ誰もいないのだろう。そう思い、いや、席を外しているだけかもしれないと思い直した。
生徒会長が、わたしを一瞥し、立ち上がる。
「長門さん。文芸部の件だが、今年は機関誌というか会誌は発行するのかね」
やはり機関誌の話。なぜ同じことを何度も聞くのだろう。
今までと同じように、年度末までには出すつもり、そう答える。
「ふむ。なら良いんだが……」
そう一人ごちて、
「噂で聞いたんだが、昨日、騒ぎがあったそうじゃないか」
心拍数があがる。なぜ知っているんだろう。
「他校の生徒と思われる生徒二人が、書道部から部員を一人連れ去って、文芸部に行ったとの
ことだったが、どういうことかな」
「……別に」
やっとそう答えた。
連れ去られた人というのは、昨日、涼宮ハルヒが連れてきた朝比奈みくるのことだろう。
確かに彼女は嫌がっていたが、最後は、涼宮ハルヒのグループに入るといっていたはず。
彼女が、どこかにクレームを言ったとは思えない。
もしそうなら、呼び出されるのは、生徒会からではなく、生徒指導室からなはずだ。
一体、何のつもりで、このようなことを言っているのか。
「それに、先日、一年五組で一騒ぎを起こして、授業をサボった生徒もいたそうじゃないか」
彼? 彼が授業をサボったとは初めて聞いた。たぶん涼宮ハルヒを探しに行ったのだろう。
「その生徒は、ここ何日か文芸部室に出入りしているようだが、彼は部員かい」
「違う」
関係ない。
「君は文芸部では一人だ。そんなところで、男子生徒と二人だけって言うのは感心しないな。
もっと付き合う人を選ぶべきではないかね」
関係ない。この人は、なぜ、このようなことをねちねちと言ってくるのだろう。
文芸部と関係ないことだ。
それに、そんな話は、生徒指導室の領分。生徒会が口を挟むことではない。
機関誌は発行すると言ったのだ。もう用事はない。
わたしは、ドアに向かって歩き始めた。
このまま会長の話を聞いていても、時間の無駄だとしか思えない。
そのとき、生徒会長が、わたしの腕を掴んだ。
驚いて振り向くと、そこに会長の薄笑いを浮かべた顔があった。
「まだ話は終わっていないんだ」
寒気を感じる。この部屋には彼とわたししかいない、そう思った瞬間、背筋が寒くなった。
わたしは、慌てて彼の手を振り解き、早足でドアに向かう。
しかし、会長は、笑みを浮かべたまま、回り込んできてわたしの前に立ちはだかった。
ドアは、彼の後ろ。
咄嗟に、夕日が差し込んでいる窓に向かって走った。誰かを呼ばなくてはならない。
嫌な予感で一杯だった。
その予感は、的中したらしい。
会長は、窓を開けようとしているわたしの肩に手をかけると、わたしを振り回すようにして、
乱暴に窓の横の壁に押し付けた。
背中と後頭部を壁に強く打って、一瞬、呼吸が止まる。なぜこんなことをするのだろう。
先日、彼が問い詰めてきたときとは、まったく違う、乱暴な振る舞い。
いや、考えている場合ではない。とにかく誰か呼ばなければ。
声を出そうと口を開こうとした瞬間、会長の掌で口を塞がれた。
薄ら笑いを浮かべた顔が近付いてくる。
恐怖と嫌悪で、反射的にわたしの口を塞いでいる腕をとり、振り払おうとした。
そのとき、彼の腕に力が入り、わたしの後頭部を壁に打ち付けた。
鈍い音。一瞬、目の前が真っ暗になる。
「あまり、乱暴なことはしたくないんだ。これでも君が好きなのでね」
鳥肌が立つ。何を言っているのだろう。意味が解らない。
男子は、好きな女子に、暴力的に迫るものなのだろうか。
彼がわたしを壁に押さえつけるように身体を寄せてくる。思わず、両腕で自分の胸を隠す。
会長は彼の身体全体で、わたしを押さえつけると、空いてる手で、わたしの太股のあたりを
触り始めた。口を押さえられているので息苦しい。吐き気がする。
「僕は、君が好きなんだ。だから……」
「ぅぐ」
反射的に声を上げる。でも、口が塞がれているので、唸り声にしかならない。
わたしの両足の間に、彼が膝を捻じ込んでくる。
両足が開かないように、膝に力を入れる。太股に彼の膝が当たって、痛みを感じる。
「足を開いたほうがいいよ。痛いから」
そういうと、彼は、膝でわたしの太腿を蹴ったようだ。
強烈な痛みを感じ、呻き声が漏れた。膝から力が抜ける。
「おっと」
そういいながら、彼の足が、わたしの両足の間に割り込んできた。
彼の膝が、わたしを持ち上げる。そこに感じる痛み。なぜ、こんな目に遭うのだろう。
わたしが何をしたと言うのか。
首筋に会長の息がかかる。嫌悪感で、思わず、首を振った。
わたしの口を押さえている手が動いて、わたしは、また後頭部を壁に打つ。
思わず呻き声が出る。眼鏡が飛んだ。視界がぼやけ、大きな耳鳴りがする。
痛み、恐怖、怒り、憎しみ。さまざまな感情が渦巻いて、
わたしは、自分が何をしているのか解らなくなった。
――誰か
両目をきつく瞑り、せめて、この苦痛が早く終わって欲しい、そう思った。
諦めが頭を過ぎった。こんな目に合うくらいなら、そう思ったのかも知れない。
腕の力が抜けそうになる。いや、だめだ。諦めたら、さらに苦痛を強いられるだろう。
会長の手が、制服の上からわたしの胸を弄る。痛い。痛みしか感じない。
思わず、彼のその腕を握る。でも、力が入らない。
あの夢とは大違いだ。あの時の彼とは大違いだ。
会長の膝、会長の手、会長の存在。それは、わたしに苦痛しか与えない。
わたしは、会長の死を半ば本気で願った。
現実を喪失する感じに襲われる。これは夢なのかもしれない。悪夢。
そのとき、何かがわたしの身体に広がった気がした。身体が反転する感覚。
イメージ通りに制御できるのだと言う確信。体中に力が湧き出してくる感じ。
文芸部室で待っているはずの彼の姿が脳裏に浮かぶ。その彼の心配そうな表情。
わたしは、掴んでいた腕を握り締めた。
「うっ、痛、何を、やめろ」
会長が驚いたようにわたしの手を振り解こうとする。
今なら、突き飛ばせる。そう思ったとき、何か大きな音を聞いた。
バタン!
次の瞬間、わたしの頭の横を、何か光るものが通り過ぎる。
「うわっ!」
会長の叫び声。何が起こったのだろう。何でもいい、この苦痛から解放されるなら。
「ぅぐわっ!」
そのような叫び声とともに、会長の身体が崩れ落ちた。わたしの口を塞いでいた手が離れる。
壁にもたれたまま、大きく口を開いて、息を吸う。何が起こったのか。
目を開くと、そこに、朝倉さんがいた。
「長門さん、大丈夫?」
そう心配そうな声で言って、彼女は、うずくまっている会長の頬に、光るものを当てた。
大きなナイフ。なぜ、彼女がそのようなものを持っているのだろう。
「会長さん、随分面白いことしてるのね。婦女暴行は重い罪よ」
「な、何を……」
「あら、言い逃れするつもり? ズボンのベルト、外しちゃってるじゃない。言い逃れできるの?」
「い、いや、これは……」
「安心して。写真撮っといたから」
「なに!?」
「現場写真。生徒会長、生徒会室で下級生に乱暴って感じ?」
「うっ」
「それとも、あんたのそれ切り落とした方がいいかしら。この先、新たな被害者が出る前に」
「ま、まて、これは未遂だ。それにそんなことしたら、お前だってただではすまないぞ」
「じゃあ、試してみる? 無理矢理するのが好きなんだよね。なら、される側の気持ちも
経験しとかないとね」
そういって、朝倉さんが、手に持ったナイフを振り上げる。
「うわぁっ、やめろ、やめてくれ!」
そう叫んで、両手を挙げた会長は、何か呻いて、すぐに両手を下ろした。
そのまま片方の手首を押さえている。
「ふーん。折れたんじゃない。その腕」
「なんだと? くそ、お前か」
獣じみた視線が、わたしに向いた。思わず、顔を背ける。
「自業自得でしょ。二度と、長門さんに近付かないと誓う?」
「ちっ、誓う。だから、それを仕舞ってくれ」
「まあ、停学になっても退学になっても、あんたにとっては、きっといい経験ね」
そして、彼女は立ち上がり、わたしの顔を覗き込んで言った。
「間に合ってよかった。さあ、行きましょ」
先程まで感じていた妙な感覚が消えた。力が抜ける。
痛みと恐怖で身体の震えが止まらず、思うように動けない。
「あ、朝倉さん……わたし……」
「大丈夫、大丈夫よ。長門さんは、わたしが守るんだから」
朝倉さんは、震えの止まらないわたしを抱きしめると、わたしの腕を肩に乗せ、
ゆっくりと歩き始めた。引きずられるように足を出す。太腿に力が入らない。
朝倉さんに引きずられるようにして、生徒会室を出た。
幸い、廊下には誰もいなかった。しばらく廊下で壁にもたれ、気分を落ち着ける。
多少気分が落ち着いてきたところで、朝倉さんは、わたしを女子トイレに連れて行ってくれた。
制服の乱れを直して顔を洗う。気持ちが悪い。何度も制服を払い、顔を洗った。
眼鏡どうしよう。きっと生徒会室だ。でも、しばらくは生徒会室に行きたくない。
かなり時間を掛けて、わたしは、朝倉さんに連れられて文芸部室へ戻った。
ドアを開けたとき、彼がわたしを見て、立ち上がった。
「長門? どうした? 朝倉、お前、まさか……」
「なに言ってるのよ」
「何があった?」
「ちょっとね。生徒会長のおいたが過ぎたみたい」
「なんだと?」
彼が近付いてくる。今は、彼に見られたくない。
わたしは、朝倉さんの後ろで隠れるように小さくなった。彼は愕然としているようだ。
「朝倉、何があったんだ?」
「どう言えばいいかな。でも、長門さんは大丈夫よ。少し絡まれただけ。何もされてないわ」
「何もされてないって……」
そう呟いた彼は、その言葉の意味を理解したのか、口をきつく結んでドアに向かおうとした。
止めなければ。
「大丈夫」
そう言って、俯いたまま彼の前に立つ。ここで彼が出て行けば、騒ぎが大きくになるに違いない。
「長門……」
彼はわたしに向かい、わたしの両肩に手を置いた。制服越しに彼の温もりを感じる。
顔を上げる。彼の心配そうな、でもやさしい瞳。先程までの気持ち悪さが消えていく感じ。
安堵感を感じる。
微笑もうとした。でもだめだった。視界がぼやける。涙が出そうだ。悲しいわけじゃないのに。
涙は見られたくない、そう思いながら視線を落とす。
と、彼の手が肩から離れ、次の瞬間、わたしは、彼の胸の中にいた。
彼の手がやさしくわたしの背中に回される。彼の匂い。あの夢と一緒だ。彼と一緒にいる夢。
わたしは、無意識に彼を抱きしめた。
つい先程、男子に襲われそうになった。なのに、今、彼に抱きついている。
普通なら、しばらく誰とも接触したくないと思うのではないだろうか。
でも彼は違う。彼に抱きしめて欲しかった。彼に抱きしめられると安心するから。
どのくらい彼に抱きついていたのだろう。
ふと、随分恥ずかしいことをしているのだと気が付いた。
わたしは、彼を抱きしめていた両手を離し、俯きながら言った。
「大丈夫」
部室の長テーブルに向かい、ことの顛末を彼に話したのは、それから少ししてから。
生徒会室で、急に生徒会長に迫られ、逃げようとして揉み合いになったこと。
そして、朝倉さんに助けられたこと。
もういい加減そろそろスレタイから学校を出よう!は外さない?
彼は、顔をしかめてわたしの話を聞いていた。話し終わると、
「やっぱり、俺も一緒に行けばよかった。くそっ、今からでも一発殴りに行かんと気がすまん」
と、今にも立ち上がりそうな彼。その彼に朝倉さんが、どこかのんびりした口調で話しかける。
「会長は、たぶん退学ね。まあ、表沙汰になる前に転校すると思うけど。
それに、手首も骨折したみたいだし、今頃は病院に向かってるんじゃない?」
「骨折?」
「興奮してたからね。変な力が入ったんじゃないかな」
そう言って朝倉さんが、わたしに視線を送ってきた。わたしが? でも、よく憶えていない。
「ま、何にしても自業自得でしょ」
投げやりな感じで言った朝倉さんに、彼が反応する。
「そうだな。でも、お前、何処にいたんだ? 長門が危ないってよく解ったな」
「あら、言ったでしょ? あたしは長門さんを放っておけないの。守ってあげたいのよ」
質問の答えになっていない。でも、たしかにおかしいような気もする。
朝倉さんは、いつも、授業が終わるとすぐに下校していたはずだ。
今日に限って何か用事でもあったのだろうか。でも、お陰で助かった。
彼女の、守ってあげたい、という言葉。それは、昨日のことを連想させる。
彼を守らなければならないと思っていたことを。
しかし、わたしは、わたし自身も守れない。それで彼を守ることなんて出来るわけがない。
何となく悲しい気持ちになる。わたしも、朝倉さんのようになりたい。
「まあ、でも、そのお陰で長門が無事だったんだから、感謝しなくちゃな」
「あなたに感謝される覚えはないよ」
「何ってやがる。長門は俺の大事な友人だ。友人を助けてくれた恩人には感謝するさ」
「ふーん、友人ねえ、何時の間に友人になったのかしら」
朝倉さんが片目でわたしを見る。慌てて俯いた。頬に熱を感じる。
「まあいいわ。長門さん、だいぶ落ち着いたみたいだけど、まだちょっと心配だから
今日はあなたが送ってあげて。彼女、眼鏡なくしちゃったみたいだし」
「待て。お前、長門と同じマンションだろ? お前が一緒に帰ったほうが良いんじゃないか?」
「あたしは、ちょっと後始末」
朝倉さんが携帯電話を振りながら、わたしに笑みを見せ、部室から出て行った。
あの写真を使うのだろうか。でも、さすがに、生徒会長に同情する気にはなれない。
「なんだ、あいつは」
そう言いながら彼は、カバンを持つと、わたしに視線を向けた。
「なんだ、不謹慎かもしれないけど、やっぱり、眼鏡はないほうがいいな」
眼鏡のないわたし。聞いたことがある。そう、彼に言われたことがある。
彼、わたし、朝倉さん。朝倉さんが立ち去ってから、彼に言われたはず。
でも、何処で言われたのか思い出せない。
いや、言われたとすれば、彼が部室に来るようになってからなはずだ。
しかし、彼が部室に来るようになってから、眼鏡について言及されたことはなかったはず。
なんだろう、この気持ち。何かが変わっていくような感じ。視界が広がる感じ。
「どうした?」
彼の声で我に返った。彼がドアのところで立っている。
わたしは、カバンを持ったまま頭を振り、ドアに向かった。
まだ、先程の動揺が残っているのかも知れない。
帰宅途中、
「そういや、お前の部屋に朝倉が来たときは驚いたな」
と、一昨日のことを思い出したのか、彼が、何気なく言った。
「朝倉は、あいつが転校したことになったときにハルヒが気にしてたから、この世界で復活した
と考えれば、まあ納得できないこともないんだが、まさか、お前と友達だったなんてな。
しかし、相変わらずバイオレンスなやつだ」
その言葉が頭に引っかかった。ナイフを振り回す朝倉涼子。そういえば、彼の話では、
涼宮ハルヒは、わたしと朝倉さんの関係を知らなかったのではないだろうか。
パズルの欠片。
世界改変。涼宮ハルヒが望んでいない世界。涼宮ハルヒと古泉一樹が別の高校に通っていること。
彼が部室に現れた日の朝に見た夢。朝倉さんの行動。
眼鏡をかけていないわたし。一致しない図書館の思い出。そして、わたしの小説。
彼の知っているわたしが仕掛けた緊急脱出プログラム。
生徒会室で感じた妙な感覚。朝倉さんが言った守るという言葉。
感情を持った宇宙人製アンドロイド。彼と涼宮ハルヒの関係。
これらは、全て、一点に収束する。彼の言っていることは正しかった。
彼が改変されたのではない。この世界が改変されたのだ。
とりあえずここまで。後4kで埋まると思うけど、次スレはどれだっけ?
次スレは21
とりあえず
>>16 から変更がなかったと思うので、続きは、そちらに投下する。
梅梅梅
埋めて終わるか
r'ヽ= 二ニ、  ̄`丶、::::::::::::::ヽ:::ヽ〃、
_ -‐l レ'´ -<、 ` ‐- _::::::::::::::::::::ヽ
_ -‐ ノ .'´‐ ) _ `` 、 _ -':::、::::、::::::::::::::\
<、_ _ ‐/ ≦、::::::`:::;‐-. ニ-‐:::´:ヽ::ヽ:::ヽ:::::::ヽ:::::ヽ
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