嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 泥棒猫六匹目

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1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSS及び、
他様々な展開の修羅場プロット・妄想を扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 五里霧中
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1145036205/
■過去スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 四面楚歌
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1143547426/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 三角関係
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1142092213/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 二股目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1140208433/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1137914849/

2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第12章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1145448125/
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1132666398/
2名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 21:05:07 ID:Eb7cdFHO

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|  入_ヘ.ソ `}ー‐' ヽ {   `ヾ、ー'"r/_}へ:.:/::.:|:.:.:.:.:.:l:.|
ヘ   ` |  |:へ、 ` ー‐、    }r‐'^ー-、 ̄ト、:.:|:.:.:.:.:.:..l:|
.∧    __ノ }:| へ、   ` ー_r< ‐._ ̄V  |ヘ_ハ::.:.:.:.:.:.ト、
.ト{`ーr 7 | レ|/ ノ `二´ ̄-ァ^ー- 、 \ ヽ/ ノ^ }ト、:.:..:.:| ヽ、
|` } l l /   ハ \ノ / /  {  / ヽ  ノ_/   ヽ::.:|  ヽ
| 〈/   /  |  \ __ /{  /     /       }.:.:|   \
| /  /   ∧ 、___ /^>、   __ /____  |:.:.:|    ヽ
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       /      ̄/     / く/二ニー‐ ̄   |:.::.:.:.:|    ノ
            / |      〈         /:.:..:.:.:.:|

新スレです。楽しく使ってね。仲良く使ってね。
3名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 21:05:49 ID:Eb7cdFHO
誘導用
【3P】ハーレムな小説を書くスレ【二股】 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1144805092/l50
寝取り・寝取られ総合スレ 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133346643/l50
4名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 21:18:32 ID:IUnKOjs7
>>1
乙 
5名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 21:22:34 ID:cDtGnr/4
6生きてここに・・・・奈々の章 ◇アビス:2006/05/07(日) 21:45:19 ID:7zYREX2r
唖然と立ち尽くしてしまった
すごい目で睨みつけられた
なんという迫力なのだろう
力技でこそこなかったものの威圧感はすさまじいものがあった
なにもできずにいる私を勝ち誇ったかのような笑みで見つめ
二人でその場をあとにする
数分経って悔しさが込み上げてくる
「ああ!もう!」
近くにあった椅子を蹴り飛ばす
ああ、先輩方が怯えてるよ
でもどうでもいいや
正直な話仁ちゃん以外の男性の評価など私にはどうでもいいことだから
帰り道私はイライラしながら車の中で窓の外を見つめた
せっかくお話できたのに
気軽に話ができる仲にはなったと思うけど・・・・
あの人に邪魔されてしまった
ああ、悔しい!悔しい!悔しい!
正直容姿であの人に勝てるなんて夢にも思えない
それほど彼女の美は完成しきっている
街中で歩けば100人中100人の人が彼女とすれ違いざまに振り返るだろう
でも、私は彼女よりもちいさいけど胸はそこそこある
顔の方はカワイイねとは言われるけど綺麗とは言われない
子供っぽいと言われることも多々あるが
それでも中学のときなんどか男子に告白された
でも私はあの時から仁ちゃんしか目に入っていなかったので断った
少しはカワイイって思ってくれてるかな?
他の女子と違って私には壁を作らないところを見ると
多少の好意みたいなものはあるよね?
彼のことを考えているとすぐに家まで着いてしまった
不機嫌そうな私を運転手さんが横目でちらちら見ている
私は愛想笑いを浮かべ門をくぐった
7生きてここに・・・・奈々の章 ◇7zYREX2r:2006/05/07(日) 21:46:52 ID:7zYREX2r
初めて会ったのは2年ほど前だ
繁華街に買い物に来ていた私はお付の人と離れてしまった
世間知らずの私が途方もなく歩いていると男の人二人が私に声を掛けてきた
どうしよう・・・・・こわい
オロオロする私に男の一人が強引に手を引いてきた
「やめて・・・・!」
周りの人は横目で見るだけでなにもしてくれない
「いいじゃん、飯だけだぞ?」
「いまどき純情っこなんてモテないって」
軽薄そうな笑みを浮かべ私を無理やり引っ張る
私がさっよりも大声を上げようとしたときだった
「・・・・・・どわ!」
急に前に男の子が倒れこんだ
年は私と同じくらいでびっくりするくらいの美形さんだった
「痛てて・・・・」
「なんだ、お前?」
男の一人が挑発的に男の子にそう言う
しかし男の子はなにごともないかのように立ち上がりズボンをはたいた
「なんか言えよ、チビ」
挑発は続くが男の子は方をすかした
「なにやってるの?」
「デートだよ」
「男二人で・・・・・キモ」
横の二人の男がぴくぴく頬を動かしている
どうしよう・・・・このままじゃこの男の子ボコボコにされちゃうよ
「どうしてそうなるんだ!」
「だってどう見たって真ん中の子、二人の連れじゃないでしょ?」
「バカにして!」
一人がとうとう腕を振り上げた
私のことはいいから逃げて!
目で訴えかけても男の子はまったく動かなかった
「・・・・・な」
私の腕をつかんでいる男が驚きの声を上げる
男の子が軽々と拳を受け止めたからだ
「反射神経には自信があるんだ」
そう言って次々に飛んでくる拳をよけている
私の腕をつかんでいた男も加勢に入る
けれど男の子はひるまない
8生きてここに・・・・奈々の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/07(日) 21:48:17 ID:7zYREX2r
「・・・・・」
冷静な顔をして拳をよけていく
もう一人の男が掴みかかろうとするがそれもうまくよけていく
男の子の目を見ると『逃げろ』と言っている様な気がした
でも・・・・・
『いいから逃げろ』とその目はまた語りかけてくる
私は小さくうなずくと後ろを向き駆ける
はやく助けを・・・・!
私は駆け回った
早く早く!
すると向こうのほうにお付の人を見つけた
その人はボディガードもかねているので急いで事を伝え元来た道を引き返した
その場に着くと男の子の姿はなかった
近くの人に聞くと二人の男が男の子を追っていくのを見たらしい
ああ、私のせいだ・・・・
青ざめていく私をどうにか車まで戻してくれるお付の人
お付の人は男の子の容姿を私に聞いて探しに言ってくれた
「・・・・・・」
私のせいだ・・・・
自己嫌悪に陥っていると窓がコンコンと小さく叩かれた
「うそ・・・・」
思わず声が出た
窓の向こうには先ほどの男の子が立っていました
急ぎ窓を開き顔を確認する
少し殴られたあとがある
「ごめんなさい」
「こういうときはありがとう・・・・だと思うけど?」
それを聞いて顔を見てみるとなぜか男の子は微笑んでいた
一瞬で私は魅せられた
ああ、素敵・・・・
「あ、ありがとう・・・・それであの人たちは?」
「ああ、バカみたいに追っかけてくるから警察の前まで行ってそれに気づかないで付いてきてさ、そこで一発殴られてやったら即刻御用だよ、手錠なんてはじめて見たよ・・・・いい経験だった」
彼は殴られた頬をポンポンと叩きながら冗談を言うようにそう言う
「すぐに報告しようと思ったんだけど事情説明で遅れちゃって、ごめんな」
9生きてここに・・・・奈々の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/07(日) 21:49:31 ID:7zYREX2r
恩着せがましくない男の子の態度にますます魅せられてしまった
「報告も済んだし、じゃあ・・・・俺はこれで」
そう言って去ろうとする男の子の腕を私は必死で掴んでとめる
「あの、私・・・・大川奈々です・・・・あ、あなたは?」
まるでドラマのようだ
いや、私にとってはもうこの人は王子様だ
「俺か?俺は流仁っていうんだ」
それと同時に後ろで声がした
「仁様〜!もう逃がしませんよ!」
「やばい・・・・見つかった」
彼は軽く手を振ると全速力で逃げていく
「またケンカしたのですか!まったくこんどという今度は許しませんよ!」
「ごめん!でも仕方なかったんだよ!ゆるしてくれ!」
かなりのおじいさんだがすごく元気だ
疲れを見せるどころか少し嬉しそうに彼を追っていった
「流仁・・・・・」
私はこのとき恋をしたのだと確信した
その後泣きながらお付の人が戻ってきた
私を護れなかったどころか
代わりに護ってくれた恩人にお礼も言えないとはと・・・・
私はいまの出来事をお付の人に言うと少し安心していた
帰ってお母様に大目玉を食らうお付の人を私は必死で庇った
なんでかって?だってお付の人のおかげで彼と出逢えたから
私の声もあってその人はクビにはならずに済んだ
10生きてここに・・・・奈々の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/07(日) 21:52:27 ID:7zYREX2r
高校に入って私は彼と再会した
ああ、運命って素敵
彼を見つけた私が声を掛けようとしたときだった
「仁くん♪」
そう言って彼に抱きつき頭を撫で撫でしている
誰?その女・・・・
私はグツグツと煮えたぎる嫉妬を生まれて初めて感じていた
その後私は彼女のことを必死で調べた
この学校一の美人で大金持ちで成績優秀な彼女の情報はすぐに把握できた
すごくショックだったなにがって?
だって彼の婚約者だって言うのだもの
本人が言いふらしているらしくその話は入学してすぐに広まっていった
イライラしながら席に腰掛ける
ああ、最悪・・・・
ため息を付くとバカ騒ぎが聞こえてきた
クラスメイトの男子の一人が騒いでいる
うるさいな・・・・
イライラが増していく
「うるさい、黙ってろ!」
思ったことが現実に聞こえた
騒いでいた男子を見ると同時に額をゴンと叩かれていた
「痛いじゃないか、仁!」
仁?もしかして・・・・
ああ、そうなんだ
「みんな引いてるぞ?お前・・・・クラスデビュー失敗決定だな」
「が〜ん」
辺りを見回すと彼を見つめる皆の瞳にハートマークを浮かべている
もちろん視線の先にあるのは騒いでいた男子ではなく
もう一人の彼だった
「席はどうなんだ?」
彼の友達が彼にそう聞くと彼は適当に辺りを見回して私の隣に腰掛けた
「適当でいいじゃないの?」
「そうだな」
彼の後ろの席に彼の友達も腰掛ける
11生きてここに・・・・奈々の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/07(日) 21:53:01 ID:7zYREX2r
「おお、カワイイ子・・・・よろしく!」
目を輝かせて私に挨拶する彼の友人
「わたくしは高坂東児ともうすものであります!ぜひ親しいお付き合いを!」
私が思わず後ろに引くと同時にまた東児と名乗った男子の額に
ガツンと一発ぶつけていた
「東児・・・・引いてるだろ、その子」
「きさま、またいいとこ取りなのか・・・・ええ?」
「お前が見境ないって言ってるんだよ・・・・色魔くん」
反撃を試みるもそれをかわされてまた額を叩かれている
「ごめんね、うるさく・・・・・・・て」
言葉が途中で止まった
もしかして?
「キミ・・・・・確か二年前の・・・・・奈々さんだったかな?」
覚えていてくれたんだ
ああ、嬉しい!嬉しい!嬉しい!
「お久しぶり・・・・・仁ちゃん♪」
「仁ちゃん?仁ちゃんだとーーーーー!!!」
東児さんが恨めしそうにしているが彼は無視している
「仁ちゃんはやめてくれ・・・・」
友人同士の会話のようにスムーズに言葉が交わせた
でも、すごいな入学一日目なのに嫉妬の的だよ私
けれどなんか優越感っていうのかな?
気持ちいいなこういうの
もっともっと嫉妬させてあげるよ
すぐに恋人になるんだから・・・・ね?仁ちゃん・・・・
だってこんな偶然ってないよ?
同じ学校に入って同じクラスであなたは私の隣を選んだんだよ?
これはそうなるべくしてなったんだよ仁ちゃん・・・・
12アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/07(日) 21:57:43 ID:7zYREX2r
ビクビクしながら投下
またもや失敗してしまいましたごめんなさい
前スレ親切にしてもらったお礼にと急ぎ書いたのですが・・・・
失敗ばかりですね
これからも至らない点があったらおっしゃってください
当然ですが奈々編の回想です
失敗続きの自分ができるのはこれだけですが
明日と明後日に香葉の章と詩織の章を投下します
13名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 22:01:06 ID:IUnKOjs7
>>12
まぁガンガレ
14sage:2006/05/07(日) 22:32:38 ID:cCy6ieot
>>12
期待してっからガンガレ
15名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 22:36:38 ID:AuIVKtaA
>>12
気にすることは無い
少なくとも俺は気に入った
ノーマル主人公も気に入っているんだが男前で美形で金持ち主人公ってのがツボだった
奈々もかわいかったし
これからも増えるといいなぁ、美形or男前or金持ち主人公・・・












修羅場がメインだから無理だとは分かっているけどな
16名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 22:42:31 ID:HHmPE9uo
>>12
裸で待ってるからガンガレ
17名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 23:29:32 ID:L+08QRYD
>>12
狂おしいほどにGJ!全裸で待機しているからガンガレ
18『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/08(月) 00:00:12 ID:9HPBoJIe
結局この場は俺の逃げ切りでしのいだ。まったく。志穂ならまだしも、里緒さんの体格で殴られたらたまったもんじゃない。
しっかし……困ったなぁ……この世界、おれにとっちゃ苦痛でしかない。奈緒と花穂……どっちが好きといわれれば困る。
違和感バリバリだからだ。それにお嬢もなぁ……ここまでする程俺を思ってくれるってことだからなぁ………お兄さん、本当困っちゃうよ。
となると………
「三分割作戦じゃい!」
思い立ったが即日。このナイスアイディアを献上すべく、お嬢の部屋へとダッシュ。
ノックもせずドアを開ける。お嬢は窓の前で外の景色を眺めていた………とはいえ、塀で囲まれていて良い眺めとはいえない。
「お嬢!」
「晋…純也!?」
突然の訪問にさすがのお嬢もビツクリ。名前を間違える。……つーか、やっぱり純也なのね。晋也がいないってさびしいなぁ……。
俺の存在を理解すると、パァッと花咲くような笑顔を見せる。嗚呼!その健気な表情に弱いんだヨ!!
トトトと駆け寄り、抱き付かれる。あはぁ……いい匂が……イカンイカン。
「う、うむ、お嬢。実は話があって来た。」
よいしょとひっぺがす。
「うん、うん、やっと私を選んでくれるのね?」
あぁ、目がキラキラしてるよ。まっぶしいずぇー。
「いや、実はな、いい考えが浮かんだのじゃな。」
「いい考え?」
「ああ。誰か一人選ぼうとするから穏和じゃないんだ。だから!三人平等にいこうじゃないか!」
「三人…平等?」
「そう。例えば日替わりで、月曜から二日づつ交替で愛す!!日曜は休日!」
ビバ!週休一日制!!!
「社会チックにいえば三権分立。一人に力が集まるから崩壊がおこるんだよ!!」
その策を力説していく度……あ、あれ?目が怖いヨ?抱き締める力が強いよ?
19『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/08(月) 00:00:52 ID:9HPBoJIe
「いだだだだ!!」
「そんなのだめに決まってるでしょ!!他の女にも抱かせるなんて……許せないわよ!!」
「な、なんで?そうすりゃ穏和に……」
「じゃあ、純也は、私達が二股三股しても平気?」
「う!……うぅ。」
そ、そりゃ……
「イヤダイヤダー!!皆僕のだい!!」
「でしょ?…まぁ……そんな事は絶対しないけど……」
「ん?なに?」
「な、なんでもない!とにかく!曖昧な事はダメ。」
うーん。玉砕。はぁ、どーしよっかなぁ。
「ところでね……私からも提案なんだけど…」
指先を胸の前であわしモジモジとしてる。ぐぁ。こういう何気ない仕草がイイよなぁ……。不埒な考えじゃ。
「も、もっとお互いの事を好きになるために、その……お、同じ部屋で過ごさない?」
「ほへ?」
いきなりの事にま抜けた返事。いや、まぁ、だって、でもなぁ……したらしたで、違う死に方を迎えそうだし……
「アーー!!!」
そういきなり叫ぶ。
「いっけね。今日夕飯当番だった!急がないと志……あーっと……花穂にブッとヴァされちまうぜ!ってことで、じゃあな!お嬢。アデュー。」
一気にまくし立て、逃亡。まるで風と一体化したかのような俺を、お嬢は呆然と立ち尽くしたまま見て居るだけだった。







20『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/08(月) 00:01:53 ID:n1o+v6D/
そのまま台所へ向かうと、リズミカルな包丁の音が聞こえた。ナイスタイミング!本当に料理中だったか。
走った勢いで入り、誰かを確かめる。おっと、あのロ○ボディは……
「ふ、待たせたな、Girl……」
決まった。完璧な巻き舌だ……
「………」
ビシッと顎に手を当て、決めポーズを取っていた俺を、目をパチクリして見ている。
『今日の純也、変よ?』とでも言いたい気満々だ。
「ははん、志穂よ。俺は開眼したんだ。ダンディズム溢れる男にな………」
無理やり声を低くしてみる。地声が高いから憧れるんだよね。マジで。
「あのぉ……純也君?」
あ、あれ?なんだ?さっきまで肉を捌いて血塗れの包丁をこっちへむけてるヨ!?
「さっきから気になってたんだけドォ……志穂ちゃんってダレカナァ?」
しまった。また間違えた………
奈緒からはさっきから殺気が漂っている。あの包丁。半端ない攻撃力の筈だ。くっ!我が半身『純也』よ!我に力をカシタマヘ!!!
「アーー!!!庭掃除が途中のままだったぁ!!!!」
再度、逃亡。さっきまで立っていた足下に包丁が突き刺さっていた辺り、お嬢との能力の差が知れる。
いかんなぁ………早く順応しないと、また早死にするな………
21名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 00:21:56 ID:nSEM+I8A
これ逆に純也が晋也の中に入ったら瞬殺されるぞ…機転利かねぇし
22名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 00:22:44 ID:xSoXPlU8
『歌わない雨』の人ですが今投下大丈夫ですか?
23『歌わない雨』Another:2006/05/08(月) 00:46:22 ID:xSoXPlU8
 僕の名前は、後藤・伸人。どこにでも居る、平凡を極限まで煮詰めたような高校二年生。今日は妹の誕生日プレゼントを買いに街で散策中。
 丁度良いチョーカーが見付かり、レジで代金を払おうとした時、
 轟音。
 突然の物音に店の外に出ると、問答無用の光景が広がっていた。
「助けてくれー!?」
「どうなってるんだ!?」
「け、警察は!?」
「め、メイドが…メイドロボがアッ!?」
 そう、メイドが居た。正確には女性型アンドロイド。それがメイド服を模したシャープな装甲を身に付け、大型のビーム兵器で街を壊していた。
 数秒。
 呆気に取られていた僕と、メイドロボの目が合った。しかも、超しっかり。
「少し可愛い」
「見ツケタ、愛シイ人」
 抑揚の少ない声で告げながら、右側のビルを指差す。目を向けると、壁にはえぐれた跡でハートマーク。と、その屋上に立つ二人の人影!?
「「そこまでよ(だ)!?」」
 人影はそう叫ぶと飛び下りて近くに着地、今度は何なんだ?
「また現れたな『純愛団』」
「よくも伸人に愛を向けたわね」
「「許せない!!」」
 何やらこのメイドロボの心辺りが有るらしい、(魔法少女の格好が少々厳しい)ハイティーンの女の子達。
「嫉妬のパワーでマジカルにチェンジ」
「泥棒猫が居る限り、我等の存在は揺るがない」
「「マジカル☆ツイン、只今参上!!」」
 意味の分からない言葉を叫びながら、二人はポーズをキメる。
「マタ御前達カ、マジカル☆ツイン」
24『歌わない雨』Another:2006/05/08(月) 00:49:11 ID:xSoXPlU8
「何なんだこの状況は!?」
 僕は思わず叫んでいた。それに反応して、二人が振り替える。
「あのロボは世界を純愛で征服しようとする邪悪で極悪非道な集団、『純愛団』の高起動人型兵器。通称『ガール』、愛と理性と常識を中途半端に持った…」
「緑、話が長い。そして私達がそれらを倒す存在、『マジカル☆ツイン』だ」
「むぅ、芹はいつもそれだ」
「うるさい、イクぞ!?」
 只でさえ付いていけない展開なのに、更に恐ろしい事が起こった。驚愕、と言うよりも恐愕。二人はメイドロボの武器を取りあげると、
 殴った。
 蹴った。
 暴行だ。
 更に恐怖の加速は止まらない。
「「とどめよ(だ)!!」」
 二人は何処からか武器(緑と呼ばれた方は包丁、芹と呼ばれた方はナイフ)を取り出すと、ポーズをキメた。
「「喰らえ、『フォトン★デュオ』!!!!」」
 緑の包丁の先端から発射される破壊光線、わずかに遅れてナイフからも同じものがほとばしる。そしてそれは僅かなタイムラグをおいて時間差で着弾。飽くまでも、合体攻撃にする気は無いらしい。
 数瞬。
 独特の間をおいて、メイドロボが粉葉微塵に弾け飛ぶ。
「嫉みと」
「妬みと」
「「愛と共に!!」」
 キメ台詞を聞きながら、意識が遠退いていく。



「何て夢だ」
 外を見ると、いつも通りの朝。
 僕はなるべく夢の内容を思い出さないようにしながら、着替を始めた。
25『歌わない雨』Another:2006/05/08(月) 00:52:12 ID:xSoXPlU8
今回はコレで終わりです

因みに今回の内容は、本編とは多分全く関係ありません
26名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 01:15:02 ID:dsSYhMaD
ちょwww内容もぶっ飛んでいるがさらに夢オチかよw

>>20
>「イヤダイヤダー!!皆僕のだい!!」
晋也あれほどDEADENDを味わってもハーレム願望をあきらめないのかよw
さすが晋也w俺たちにはできないことを平然とやってのけるゥ!そこにしびれる!あこがれるゥ!
27阿修羅:2006/05/08(月) 01:26:11 ID:1lvssWvc
まとめサイト管理人です。
今回の更新につきまして、いくつか報告がありますので
書き込みさせていただいています。


>シベリア!様
名前変更いたしました。対応が遅れ、申し訳ありません。

>「広き檻の中で」、「もし、神様がいるのなら…」の作者様
ここ最近の投稿にて、トリップが変わっておりますが、
変更と考えてよろしいでしょうか?
(とりあえず一覧での表示は両方を用いています。)

>「歌わない雨」の作者様
本編最新のお話のカウントを「Act4」とされていますが、
実質6回目の投稿と思われますので、ひとまず、第6回の表記と
しております。もし何かしらの意図があるということであれば、
ご指摘いただければと思います。


>◆M1igzo3EW.様
サウンドノベル編集支援ツールについて、公開の許可を頂きたいのですが、
よろしいでしょうか?

>「沃野」サウンドノベルについて
アップローダにて◆XAsJoDwS3o様がサウンドノベルのデータを
公開されていますが、私がネットを離れている間にログが流れ、
入手することができませんでしたので、まとめサイトでは
取り扱っておりません。
お手数ですが、どなたか再アップしていただけないでしょうか・・。
(かなり容量が大きいようですので、まず最初に置き場所を
確保する必要がありますが。。)


>全体的なこと
遅れを取り戻すため、かなり急ごしらえで更新しています。
ミスなどにお気づきの場合はご指摘くださいませ。

長々とすみません。
28もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/08(月) 01:42:51 ID:Y+J1zZJu

嫌だ。円香さんの方には行きたくない。
写真以外で二人のツーショットを見たくない。
しかし、その場を動こうとしないわたしをお兄ちゃんはなかば無理矢理引きずっていった。


ゆっくりと一歩づつ、前に歩を進める。
一歩一歩が果てしなく長く、そして重く感じられる。絞首台に登る死刑囚はきっとこんな気分なのだろう。

しかし、わたしに死刑の瞬間が訪れることはなかった。

一向に立ち止まる気配のないお兄ちゃん、それどころか円香さんを見ていない。
そして、まるで路上の石を通りすぎるように、そのまま円香さんの横を通り過ぎた。

……え?

驚いて後ろを振り返るとうつむいたままキリキリと唇を噛む円香さんの姿が見えた。

どういうこと?
わたしはグルグル回る頭で必死に状況を整理しようとした。

お兄ちゃんは円香さんと付き合っているんじゃないの?
何で円香さんを無視するの?
いくら考えても整理されない思考を投げ出し、わたしは無言の疑問をお兄ちゃんに投げ掛けた。

"どうした?"
わたしの視線に気付いたお兄ちゃんが話しかけてくる。
"さっきの人……"
"病院の前にいた女の子のこと?茜の友達なのか?"

……えっ?
何言ってるの?円香さんはお兄ちゃんの恋人でしょ?

お兄ちゃんはわたしをからかっているのだろうか。

しかし、お兄ちゃんの態度から察するに到底お兄ちゃんと円香さんが付き合っているとは思えない。

でも円香さんはお兄ちゃんと付き合っていると言っていた。

病院の待合室で話したお兄ちゃんの部屋から消えた写真。
円香さんがわたしに見せたお兄ちゃんと円香さんの寄り添う写真。
円香さんに関するいろいろな情報が頭の中でグルグル回る。それらはひとつひとつが重なり合わないパズルのピースのように思えた。
しかし意外なところでそのピースは線で繋がった。
29もし神様がいるのなら……。 ◆qRcNCsfFhM :2006/05/08(月) 01:45:46 ID:Y+J1zZJu

翌日、まだ少し熱はあったがわたしは無理をして学校に行くことにした。
お兄ちゃんは休めと言っていたけど、三日連続でお兄ちゃんを休ませるわけにはいかない。
何より一度円香さんの様子を確認しておきたかった。
そして、一言伝えたい。
今までわたしを騙してくれたお礼をね。

わたしは少しふらつく足で、お兄ちゃんに支えられながら校門をくぐり抜ける。


恐らく、円香さんはどこかでお兄ちゃんを見ている筈だ。
少なくとも、わたしが円香さんの立場ならそうしてる。


キョロキョロと円香さんの姿を探す。
……いた。やっぱりわたしの思った通りだ。
ふふふ、円香さんはもうここにはこれない。公平に考えても、わたしと円香さんではわたしが有利だ。
わたしには積み重ねてきた年月がある。いきなり出てきた円香さんに負けるはずがない。
ギュッとお兄ちゃんの強くしがみつく、円香さんに見せつけるように。
どう?うらやましいでしょ?
円香さんは風邪をひいてもこんな事できないんだよ?

円香さんはすごく恐い顔でわたしを睨んでいる。
う〜怖い。まるで鬼みたい。
わたしは余裕の笑みを浮かべて、円香さんに向けてゆっくりと手を動かした。


"ストーカー"
30もし神様がいるのなら……。 ◆qRcNCsfFhM :2006/05/08(月) 02:16:16 ID:Y+J1zZJu

その後の生活はわたしが期待したほど大きな変化はなかった。
強いて言えば円香さんをあれっきり見なくなった事くらいか。
ストーカーは自分の姿を認識すると出来なくなるらしい。

それでも、初めは円香さんが何かしでかすんじゃないかと心配だったけど、後さたない事を考えると円香さんはお兄ちゃんを諦めたのだろう。



わたしとお兄ちゃんとの間にもごく小さな変化があった。
お兄ちゃんの帰りの送りがなくなったのだ。
お兄ちゃんにとっては最後の大会だし悔いは残してほしくなったからわたしから断わった。
そして何より、少しでもお兄ちゃんにイイところを見せたかったから。
ひとまず、わたしは"いい妹"を演じなければならない。
そこからでも、遅くはない。わたしには誰よりもお兄ちゃんの近いところにいれるんだから。



ほとんど人影のない教室から空を眺めた。
どんよりと曇った空は今にも泣き出しそうだった。
早く帰った方がいいかも、一応傘はあるけど濡れるのはやだし。


なんとかふんばっていた空も、わたしが電車に揺られている間に雨が降りだしていた。

わたしは鞄から取り出した折り畳み傘を広げ、できるだけ体を濡らさないように、注意して歩き出した。


閑静な住宅街を抜けた先の大きな橋。
わたしの街はこの橋が境目になっている。
この橋を渡ると近代的な街並みがいっきに田舎っぽくなるのだ。

その橋は空と海の間の静かにあいた世界のように幻想的な雰囲気をかもしだしている。
わたしはこの橋に魅せられているのかもしれない。
31名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 02:31:41 ID:FzK4fOUY
妹の死亡フラグが立った件。
32名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 02:39:51 ID:FKP+tMnV
いや、あのMAXサイ娘が相手な時点で死亡フラグは十二分にたっているんだがなw
33もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/08(月) 03:00:52 ID:Y+J1zZJu

もうすぐ橋を渡り終わるって所まできたころ、雨の向こうに人影が見えた。

どこか様子が変だ。
こんな土砂降りの雨の中で傘をさしていない。
少し嫌な予感がしたが、家に帰るためにはこの橋を渡らなくてはならない。
わたしは覚悟をきめ、不安のため高鳴る鼓動と共に前に進んでいく。

ゆっくりとぼやけた人影がはっきりとしてくる。
わたしと同じ制服。
長い間雨にうたれていたのだろうか、その制服はピタリと体に張り付いていた。
少しうつむいた顔には長い髪がかかり、よく顔が見えない。

そして……右手に何か持ってる。

それが何か分かった時、わたしはかな縛りにあったように動けなくなってしまった。
額には雨以外の冷たい雫が浮かんでいた。

右手に妖しく光るそれは……刃物だ。

何あれ?何であんなのがいるの?

わたしが恐怖のあまりその場から動けなくなると、うつむいていた影がわたしに向かってゆっくりと顔をあげた。

鬼のような表情とほとばしる殺気。その殺気が全てわたしに向けられていた。

しかし、それは見覚えのある顔だった。
鬼のような険しい表情を浮かべながらも、崩れていない上品に整った顔立ち。
そして雨に濡れてはいるが長くしなやかな髪。


まどか……さん?

間違いない。あれは円香さんだ。



円香さんは相変わらずの殺気をわたしに向けたまま、顔には笑みさえ浮かべて、ゆっくりとわたしに近付いてきた。


逃げなきゃ。今の円香さんは普通じゃない。逃げなきゃ……殺される!!

しかし、わたしが逃げようと思えば思うほど足が鉛のようになっていきうまく動かない。
もう、いつのまにか円香さんとの距離は5mもない。
34名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 03:00:53 ID:TihXVKDo
逃げてー!!
茜ちゃん逃げてー!!

>>阿修羅様
退院早々、新婚旅行行ってたんですかー?
海外でも修羅場とはさすがにお盛んだ。

色々大変そうですが頑張ってください。
35もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/08(月) 03:14:21 ID:Y+J1zZJu

そこまできて、ようやくわたしの足が動いた。
しかし、頭からの命令は神経がシャットダウンしているから足に届いていない。
今は頭が強制的に足を動かしている状態……。
だから、足があまり早く動いてくれなかった。

お願い。わたしの体でしょ動いてよ!!


もつれる足を強制的に早く動かそうとしたため、足が交わりわたしはその場に転んでしまった。


すぐ後ろからは、最高の笑みを浮かべた円香さんが近付いてきていた。








―――
まとめサイト管理人様。
トリップが変わっていたのは、久しぶりの投下のせいで忘れていたためです。
何とか思い出せたので古いトリップのまま行きます。
36保守ネタ:2006/05/08(月) 04:22:48 ID:/rE13vu6
めぐりあひ 立てやそれとも わかぬまに
 神降りにし 夜半のスレかな
           ――群裂色武――
37名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 05:08:56 ID:Yi5eGrPP
すげえペンネームだなwww
38至極短編  ◆I3oq5KsoMI :2006/05/08(月) 10:27:00 ID:IPw+Yuwl
vol.3 とある家政婦の風景

あいかさんは、お手伝いさんです。
おしごとでいそがしいお母さんの代わりに、ぼくのめんどうを見てくれます。

あいかさんは、いつもおいしいごはんを作ってくれます。
でもぼくは、にんじんがきらいです。いつものこしてしまいます。
「坊ちゃま、人間は食べることで成長するのです。だから好き嫌いしないで食べてくださいな」
そう言うとあいかさんは、にんじんケーキをやいてくれました。
ぼくはにんじんがきらいですが、にんじんケーキは大すきです。
こうやって、ぼくのにんじんぎらいを直してくれました。
あいかさんは、やさしい人です。
「にんじんを食べられるようになるなんて立派ですよ、坊ちゃま。そう、私の料理が坊ちゃまの身体を作るのです。
だから私の料理だけを食べて、私だけの坊ちゃまに成長してくださいな」
ぼくは、あいかさんが大すきです。

ぼくはいつも、あいかさんといっしょにおふろに入ります。
ひとりで入るのはこわいですが、あいかさんがいてくれるからへっちゃらです。
あいかさんは、ぼくの体をあらってくれます。
やさしくあらってくれるので、気もちいいです。
でも、ちん○んをあらってくてれるときがいちばん気もちいいのは、ないしょです。
あいかさんは、ひざまくらであたまをあらってくれます。
目にも耳にも水が入らないし、ひざがやわらかくて気もちいいので、よくねてしまいます。
そんなぼくを見て、あいかさんはよくわらいます。
「うふふっ……坊ちゃま、かわいいですよ。私だけの坊ちゃまは、本当にかわいい……ずっとこうして、誰にも邪魔されずに、坊ちゃまを独占していたい……」
ぼくは、あいかさんが大すきです。

あいかさんがいるから、ぼくはさみしくありません。
でもときどき、お母さんがこいしくなります。
お母さんに会いたくなって、ないてしまうことがあります。
そんなときはいつも、あいかさんがいっしょにねてくれます。
そして、ぼくをだっこしてくれます。
「坊ちゃま、私がいるから大丈夫ですよ」
あいかさんのおっぱいが、かおに当たります。
すごくやわらかくて、気もちいいです。
それに、とてもなつかしい気もちになります。
きっと、お母さんにこういうことをしてもらったんだとおもいます。
「坊ちゃま……思う存分甘えていいんですよ……」
そう言うと、あいかさんはパジャマのボタンをはずして、おっぱいを出しました。
あいかさんは、ぼくのかんがえてることが分かるみたいです。
ぼくは、あまえんぼうかもしれません。でも、今になっても、お母さんのおっぱいがこいしいのです。
ぼくは、あいかさんのおっぱいをすいました。
「ああ、坊ちゃま……私を、本当の、お母さんだと思っても……いいんですよ……だからもっと、私を愛してくださいな……
私のこと以外……考えられないようになって……」
ぼくは、あいかさんが大すきです。
39至極短編  ◆I3oq5KsoMI :2006/05/08(月) 10:28:35 ID:IPw+Yuwl
ぼくは、あいかさんが大すきです。
でも、きらいなところもあります。
それは、おこるとこわいところです。
あいかさんは、お母さんの代わりに、じゅぎょうさんかんにきてくれました。
ぼくは、とてもうれしかったです。だから、いいところを見せたくて、手をあげて、本よみをしました。
大きなこえで、はっきりとよみました。
「はい。松山くん、よくできました」
せんせいは、ぼくのあたまをなでなでしてくれました。
あいかさん、ぼく、がんばったよ。ぼくは、あいかさんの方を見ました。
でも、あいかさんは、こわいかおをしていました。どうしてそんなに、こわいかおをしてたのか、わかりませんでした。
「坊ちゃま……坊ちゃまに触っていいのは私だけです。二度と他の女に触られないようにしてくださいな……」
どうしておこっているのか、わかりませんでした。でも、あいかさんにきらわれたくないので、言うとおりにしました。
するとあいかさんは、ぼくのあたまをなでなでしてくれました。やっぱりぼくは、あいかさんが大すきです。

今日、となりのクラスのまなみちゃんが、体そうふくをわすれました。だからぼくは、かしてあげました。
まなみちゃんは、ありがとう、明日あらってかえすねと言いました。
ぼくはいいことをしたので、あいかさんにほめてほしくて、いえにかえってから言いました。
でも、あいかさんはおこっていました。
「坊ちゃま……私の仕事は坊ちゃまのお世話をすることです。料理を作るのも掃除をするのも服を洗うのもお背中を流すのも一緒に寝るのも……私だけがして良いんです。
どこの馬の骨だか分からないような雌畜生に坊ちゃまの服を洗わせてはいけません。いいですね?」
ぼくは、ごめんなさいと言いました。でも、あいかさんはおこったままでした。
ぼくは、あいかさんにきらわれたくないので、なんでもするからゆるしてと言いました。
すると、あいかさんは、チューしてくれたらゆるしてあげると言いました。ぼくは、はずかしかったけど、あいかさんに、チューしました。
そして、あいかさんは、いつものやさしいあいかさんにもどりました。
やっぱりぼくは、あいかさんが大すきです。

でもさいきん、あいかさんがへんです。お母さんが久しぶりに帰ってくると、気げんがわるいです。
まえはこんなこと、なかったのに。
「坊ちゃまは……私と奥様……どちらが好きですか?」
ぼくは、2人ともすきだと言いました。すると、あいかさんは、こわいかおになりました。
でも、これが本当の気もちです。あいかさんは、お母さんと、けんかしたのでしょうか。
もしそうなら、なかなおりしてほしいです。
だってぼくは、あいかさんも、お母さんも、同じぐらいすきだからです。

(おわり)
40名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 10:39:55 ID:2x2Vr2+A
>>39
GJ!!
この子が成長して思春期になったらどうなるんだろう・・・・
41名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 13:40:39 ID:SEIrPtG2
坊ちゃまが思春期になる頃には、あいかさんはオバサ…
いや、なんでもない。 ぼくはあいかさんがだいすきです。
42『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/08(月) 14:36:07 ID:n1o+v6D/
そのまま走り抜き、庭へ出る。まぁ、飯の時間まで掃除しながら時間つぶすか……。
「ん?」
裏へ回ると、花穂が箒を持ったまま座り込んでいた。いかんなぁ。サボリは厳禁ですぞ!!(常習犯の俺が言えないが)
花穂の死角に回り込み、驚かしてやろうと、ゆっくりと忍び寄る。と、あと少しというところまで近付くと、花穂の独り言が聞こえてきた。
「はぁ…純也のやつ、どうしちゃったんだろ。性格反転してるじゃない………もっと静かで……優しい純也が……好きなんだけどな。」
ツっと……花穂の頬が微かに濡れる。
「それに、志穂に里緒って誰よ……どう聞いても女の名前じゃない…。そんな知り合い、いつの間に出来たのよ。あんなの、純也と違う……」
………止めよう。聞くな。これ以上の自虐行為に耐えられる程、俺は強くない。
花穂に気付かれぬよう、その場から立ち去った……
自室。
ベットの上で、悩んでいた。もうこれ以上は無理だ。こんな訳分からん世界にとばされて、今まで以上に馬鹿なフリを努めてきたが、もう限界だ。
ここに俺の居場所はない。純也は純也であって、俺とは違う。花穂や奈緒が好きなのは純也だ。
そこに干渉出来る資格は、俺には無い。俺が好きなのは、あくまでも志穂なんだから。………お嬢に交渉しよう。
交換条件を出されるのは目に見える。その内容もだ。まぁ、ここまできたら怖い物なんて無いさ。
「どーんとこーぅい!!!!」
ぐっと右の拳を上に掲げる。気合いを入れ、再びお嬢の部屋へ向かった………







43『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/08(月) 14:36:57 ID:n1o+v6D/
ノックもせずに、静かにドアを開ける。相変わらず、純粋な笑顔を見せてくれる。……どうしてそこまで健気に、一途に、いられるんだ?
「純…也?」
「ん?あ、いや、ワリィ、ぼーっとしちまったな。」
「今日は珍しいわね。純也の方から二回も私の部屋に来てくれるなんて……やっと私の気持ちが通じたかな?」
「かもな。」
「え!?い、いま…なんて……」
予想外の返事に驚いたようだ。まぁ、今までの俺なら決して言わなかっただろうしな。喜んで小躍りしているお嬢の肩を掴み、真剣に目を見つめる。頼みごとするなら、真面目にな。
「お嬢、お願いがある。」
「うん!なんでもいいよ。なんでも聞いてあげる。あ、でもこの前みたいなふざけた提案は却下よ。」
「ああ、かなり真面目な話だ………俺を……俺のいた世界に戻してくれ。純也でなく、晋也のいた世界に。」
それを聞くと、お嬢は小さく溜め息を付いた。
「ふぅ……やっぱりね。そういうと思ったわ。変に無茶してたもんね、晋也。」
そしてしばらく考え込むように下を俯いていると
「じゃあ、約束して。今度こそ、私だけを愛して。なにがあっても」
そう言って自分の手を俺の胸に添える。
「私だけ………」
「約束……は出来ないけど…努力はしてみる。」
「曖昧な返事。……まぁ、いいけど。そう調節するわ。」
調節ってなんだ?
そう思った瞬間、世界は閉じた。
44名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 17:58:33 ID:sd29VwjQ
お嬢対策をろくに考えないで何度も立ち向かう姿に感動した
まさしく修羅場主人公の鑑じゃないか!
45名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 18:47:57 ID:Nxkw6TUc
またお嬢の不評をかって死ぬんじゃねえか。この調子だと
46名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 19:40:45 ID:3ayIPtzv
>44

死の恐怖から解脱した人間だからなww
47アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/08(月) 20:20:03 ID:+nambjDB
「ごめん・・・・俺、好きな人がいるから」
「おねがい!」
「ごめんなさい!」
「どうしても・・・・ダメなの?」
「ごめんなさい・・・・」
ああ、やっぱり・・・・
想像していたはずの答えなのに私は立ちくらみを覚えた
そして見てしまった
少し先の物陰の彼女の姿を・・・・
幸せそうな顔をしてその場を去っていく
殺してやりたい・・・・
「好きな人って・・・・月緒さん?」
仁さんは少し顔を伏せると決意したかのようにパッと顔を上げた
「はい、もうベタ惚れです・・・・彼女しかみえません!」
はっきりとした口調に目の前が真っ暗になる
「婚約者だから・・・・勘違いしてるんじゃないのかな?」
「確かに親同士が決めたことだけど・・・・でも俺、本気ですから」
・・・・どうして?
あの女を見るときは優しい目をしているのに
私を見ている目は冷めていた
「あの、俺・・・・ごめんなさい!」
去って行く背中
引き止めて私だけのものにしたい
心がダメなら愛刀で切り裂いて私のモノにしてやりたい
でも、それを実行したところで彼の方が数倍以上の身体能力を持っているので
返り討ちにあい私は警察に突き出されてしまうだろう
そして、彼は永遠にあの女と幸せに暮らすんだ
48生きてここに・・・・香葉の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/08(月) 20:20:35 ID:+nambjDB
許せる?許せるわけがない・・・・
トボトボとおぼつかない脚で歩き出す
最悪・・・・雨まで降って来たよ
この雨の中あの二人は相合傘なんてして帰ってるのかな?
それに比べ私は・・・・
なんとか家まで帰ることができた
ただいま・・・・仁さん
部屋中に飾ってある仁さんの写真にほほえむ私
この部屋結構広いのに写真で覆い尽くされている
絶景なのに悲しい気分になった
まずパソコンに向かって今日の仁くんの行動を書き込む
もちろんフラれたことは書かなかった
また悲しくなった
「こういうときは・・・・」
私は立ち上がり実家のおじいちゃんが作ってくれた愛刀を手に持った
隣の道場に向かい袴に着替えた
私の家は田舎の大地主でお金持ちだ
おじいちゃんが趣味で刀作りなどしている以外は
ほかのお金持ちの家と変わらない
欲しいものはなんでも手にできた
お洋服にお人形
父と母の愛情にペットに・・・・
数えたらきりがないくらいだ
男の子にだってなんども告白された
みんなバカばっかりだから速攻でフッてやったけど
49生きてここに・・・・香葉の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/08(月) 20:21:10 ID:+nambjDB
でも仁さんは違った
他の子にはない高貴な雰囲気を持っている
勉学はいまいちだけどスポーツに関しては天才だった
私は初めて人を好きになった
ドラマのような劇的なものはなにもない
でも好きになっちゃたんだから別にいいよね?
なのに!いつもいつも!あの女が仁さんの隣にいる
羨ましそうなたくさんの視線を受けて誇らしげにしている
ああ、殺してやりたい!殺してやりたい!
私は目の前にある木でできた人型人形の顔の部分に貼ってある
あの憎くてしょうがない女の写真に向かって一太刀入れる
ちょうど顔が真っ二つになった
物足りない・・・・次は心臓部
木に刀が入り込むと同時に快感が身体に走る
気持ちいい・・・・これが本物だったらどれだけ気持ちいいのかな?
現実には不可能のだろう
だって彼が全力であの女を護ろうとするだろうから
だから今はこれで我慢しなくちゃ
でもいつ我慢できなくなるかわからないな
今の状況・・・・
「はぁぁーーーーー!」
人形の写真部分を真っ二つにする
ふぅ、すっきりした
でも、あの言葉がフラッシュバックする
『ごめん・・・・俺、好きな人がいるから』
どうしてそんなこと言うの?
どうして私を拒絶するの?
足元に転がる真っ二つにされたあの女の写真を見つめる
顔が綺麗だからその顔に魅せられてるの?
それともあの大きな胸?
もしかしてその股ぐらで騙されてるの?
汚されていく仁さんを想像して私は胸が煮えくり返る気がした
そうだよね?あの女は穢れしならない彼を騙しているんだ
待っててね?すぐに彼女より私の方が優れていること証明して見せるから
待っててね・・・・仁さん
50アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/08(月) 20:22:52 ID:+nambjDB
詩織と奈々の陽の対象陰の香葉さんです
自分の力では不安なのですが
香葉の怖さが伝わっていると幸いです
このさき彼女はますます怖くしていく予定です
明日は詩織編を投下します
51 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/08(月) 20:31:19 ID:suocehMg
>管理人様
サウンドノベル版沃野 再うpしました

hitsuji30_9805.zip
52名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 20:32:31 ID:F9VzTzdK
毎日連載お疲れ様です
明日も期待しておりますm( __ __ )m
この作品は大化けする気がしてひそかに期待してたり(*´д`*)
53名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 20:34:49 ID:GpODGmRu
今のところ泥棒猫が入り込む余地がないくらいラブラブですね
ここからどう崩壊していくのかを考えるとワクワクするね
54名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 21:17:56 ID:dsSYhMaD
GJ!これからの展開に激しく期待
55名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 21:22:48 ID:l64nGM30
誰から壊れて行くのか楽しみです!
いや、全員重症か。
56阿修羅:2006/05/08(月) 23:29:27 ID:1lvssWvc
>◆XAsJoDwS3o様
無事にダウンロードできました。ありがとうございます!
これからファイルを保存できそうなところを探してみます。
(見つけられなかった場合には、分割とかになるかもしれません・・)
57名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 23:41:30 ID:pPVJs1jl
>>41
ヒント:あいかさんは女子高生メイド
58名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 00:00:26 ID:iCGOGeJ9
>>57
つまり、あいかさんはお母さん兼姉的存在ということでおk?
59名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 00:08:44 ID:jgA4eDIA
阿修羅さん
まとめ御疲れ様です
『歌わない雨』は基本が『Act○』、補足が『Side○』という方式なのですが、投下順で結構です

『マジカル☆ツイン』は、正直続けて良いですか?

因みに今回の投下は無しです
60名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 00:22:39 ID:q+MnsVza
>>58
ぼっちゃんが12歳くらいで、保健体育の授業とかぬかしてウマイことアレを。
大奥様に淫行がバレて殴られたらその場で倒れ、
ちょっと目を逸らしつつ、さりげなくお腹をさすってみせる。これで勝ち組モード。


そして14年後、娘と血みどろの修羅場を展開。
これでぼっちゃん26歳、あいかさん32歳、娘14歳でトライアングル。
61名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 00:27:23 ID:RHkxK6JB
>>57
むしろ俺はあいかさんはエスパーより数の少ない中学生メイド説を推します。
62名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 00:36:54 ID:Da5zlGOO
じゃあ俺はロボットメイドに。
63名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 01:05:31 ID:cQCeir6c
俺は人外説を推す。
メイド歴千年のメイド妖怪とかな。
64名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 01:14:01 ID:0t0i3yT1
じゃあ俺は主人公の妄想説を
65名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 01:46:43 ID:sCR6Zvvt
       、--‐冖'⌒ ̄ ̄`ー-、
     /⌒`         三ミヽー-ヘ,_
   __,{ ;;,,             ミミ   i ´Z,
   ゝ   ''〃//,,,      ,,..`ミミ、_ノリ}j; f彡
  _)        〃///, ,;彡'rffッ、ィ彡'ノ从iノ彡
  >';;,,       ノ丿川j !川|;  :.`7ラ公 '>了
 _く彡川f゙ノ'ノノ ノ_ノノノイシノ| }.: '〈八ミ、、;.)
  ヽ.:.:.:.:.:.;=、彡/‐-ニ''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;.;.;)
  く .:.:.:.:.:!ハ.Yイ  ぇ'无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~
   ):.:.:.:.:|.Y }: :!    `二´/' ; |丶ニ  ノノ
    ) :.: ト、リ: :!ヾ:、   丶 ; | ゙  イ:}    逆に考えるんだ
   { .:.: l {: : }  `    ,.__(__,}   /ノ
    ヽ !  `'゙!       ,.,,.`三'゙、,_  /´   「某実の母親の様におばさんでもピチピチ」と
    ,/´{  ミ l    /゙,:-…-〜、 ) |
  ,r{   \ ミ  \   `' '≡≡' " ノ        考えるんだ
__ノ  ヽ   \  ヽ\    彡  ,イ_
      \   \ ヽ 丶.     ノ!|ヽ`ヽ、
         \   \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `'ー-、__
            \  `'ー-、  // /:.:.}       `'ー、_
          `、\   /⌒ヽ  /!:.:.|
          `、 \ /ヽLf___ハ/  {
              ′ / ! ヽ
66もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/09(火) 05:07:25 ID:I0kre9j7

ストーカー。
茜ちゃんは確かにそう手を動かした。
ストーカー?私が?
何を言ってるの?純也くんは私のモノなのよ?
ストーカーはあなたの方でしょ?
私は茜ちゃんをキッと睨んだ。
すると茜ちゃんはイヤな笑みを浮かべると私の純也くんに抱きついた。
その笑みは私に向かって"あなたはここにはこれない。どう?うらやましい?"と語っているように思えた。
私ではあそこに行けないの?
何で?
茜ちゃんがいるから。
茜ちゃんが私の邪魔してるの?
そう。その通り。
じゃあ、私はどうすればいい?

答えはとても簡単。


茜ちゃんが消えればいいんだ。


プツンと私の何かが切れた。




あの橋の上。
近代的な街並みと前代的な風景を分ける橋は、今日天国と地獄を分ける事となる。

茜ちゃんの家へはこの橋を通らないと行けない。だから、茜ちゃんは必ずここを通るはずだ。

どのくらい待っただろうか?いつのまにか空から雨が降ってきていた。
私は傘をもってこなかった。雨は激しく私にうちつけ、服がビショビショになってしまった。
でも、いい。どっちにしろ濡れる事になるのだから。


しばらくすると、遠くから傘をさした人影が近付いてきた。こんな人通りの少ない橋を渡る人は限られている。
恐らく茜ちゃんだろう
茜ちゃんはまだ知らない。この橋が自分の家ではなく、地獄に繋がっていることを。

ゆっくりと近付いてくる人影との距離はもう10mもない。
そこまできてようやく私はおもむろに顔をあげた。

久しぶりだね茜ちゃん。
67もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/09(火) 05:13:14 ID:I0kre9j7

茜ちゃんは私を見てるのに動かない。いや、どうやら動けないみたいだ。それは私が右手にもつコレのせいかな?

私は笑みを浮かべガチガチに固まる茜ちゃんにゆっくりと近付いていく。

そして、いまだ動けずにいる茜ちゃんに対し刃を向けた。
あはははははは。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。
私は茜ちゃんに向かってやみくもに包丁を振り回した。
あははははははははは、ふふふふふ茜ちゃん、その顔最高よ?
恐怖で引きつった顔は私にとって最高の快感だった。
そしてもうすぐ茜ちゃんは肉の塊になるという事実。それが堪らなく嬉しかった。

茜ちゃんさえいなければ、茜ちゃんさえいなければ純也くんは私のモノだ!!!

必死に逃げまどう茜ちゃん。でも残念ながら頭と体が別の動きをしようとしている。
そんなんじゃ、逃げられないよ?

あっ、ついに茜ちゃんが転んだ。
それでも必死に逃げようとする茜ちゃん。でもうまく立てないみたい。
あらあらあら、どうしたの?もう逃げないの?
茜ちゃんはガクガクと震え、顔を気持ち悪いくらいに青くさせていた。

そんなに怖がらないで大丈夫だよ?茜ちゃん。すぐに楽になるから。

私は茜ちゃんにゆっくり近付き、その頭に狙いを定めると、そこに向かって刃をつき立てた。
刃が突き刺さる正にその瞬間、茜ちゃんはとっさに横に顔を流した。
包丁は茜ちゃんをかすめて宙を切った。

そして私が体勢を崩しているその隙に、茜ちゃんは再び茜ちゃんを切り刻もうとうごく私の手首を掴んだ。
68もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/09(火) 05:14:12 ID:I0kre9j7

火事場の馬鹿力ってやつだろうか?茜ちゃんはその細い腕からはとても信じられない力で私の手首を押さえつけていた。
なかなかしぶといわね。でもね体勢が悪いよ茜ちゃん。
私はあえて、そのまま包丁を自分の手元に引き、再び茜ちゃんの額に狙いをさだめた。
ふふふ、私がこのまま体重を乗せれば体勢の低いあなたでは受けきれないでしょ?
私はジワジワと体重をかける。
すると少しずつだが確実に切っ先は茜ちゃんへと近付いていく。

もう終わりだよ?茜ちゃん。
私は止めとばかりに全体重を腕にかけた。
しかし、まさに私が全体重をかけたその瞬間、茜ちゃんは握っていた私の手首を返した。肉を貫く嫌な感触。その感触は私から発せられているモノなのか、もしくは茜ちゃんから発せられているモノなのかもはや分からなかった。


ただ私は妖精を見た。

妖精は本当にいたのだ。純也くんのことではなく、本物の妖精。

想像とは違い赤くいびつな形をしたそれは、わたしの喉元から現れ、妖艶なダンスでわたしを迎えてくれた。
薄れゆく意識のなかで私はそのダンスにしばし酔いしれた。
69もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/09(火) 05:20:20 ID:I0kre9j7

はぁはぁはぁはぁはぁ。
これは……ゆめ?
キュッと手をつねる。突き刺すような痛みがわたしの手を駆け抜ける。

しかし、いくら強くつねってもわたしの目の前に転がる物体。
喉に包丁が突き刺さり、いまだびゅうびゅうと赤い液体を吐き出している物体は消えなかった。

はぁはぁはぁはぁはぁ。
息が苦しい。運動をしたわけではないのに……。

ドクンドクンドクンドクン。
心臓が激しく高鳴る。ここはお兄ちゃんの前ではないのに……。

全ては異様な存在感を示すこれのせい。
かつて円香さんだった物体。


わたしが……やったの?
グルグル回る頭では、五分前の事すらよく思い出せない。
ただ、包丁が喉に刺さる時の嫌な感覚が全てをリアルに感じさせる。
そして、わたしの手を体を赤く染める円香さんの血。


嘘でしょ?何で、何でこうなるの?
どうしよう、わたし、わたし……

円香さんを殺してしまった。



気が付いたらわたしは家の玄関前にいた。
あの後、円香さんをどうしたのだろう?
橋の下につきおとしたような気もするし、そうでもない気もする。
体が冷たい。服がビショビショだ。
わたしは傘をもっていなかった。
あの場所に忘れてきてしまったのだろうか?
だとしたら、早くとりにいかなきゃいけないのかもしれない。
しかし、そんな事しなくてもいいと思った。
帰り血が流れ落ちる程の雨に打たれたわたしには冷静さが残っていなかったから。
70もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/09(火) 05:24:50 ID:I0kre9j7

玄関を開け中に入る。
どんよりと曇った空が光を閉ざし、家の中は薄暗かった。
そのもの言わぬ闇はわたしを歓迎しているように思えた。

ぶちゅぶちゅっと濡れた靴下が嫌な感触を廊下に残す。
シャワーを浴びたい。その一身でわたしは浴室に急いだ。
血は雨のおかげで大分流れ落ちたが、円香さんがわたしの体をはいずり回る変な感覚を流し落とすために。

浴室からは光が見えた。
誰かいるみたい。でもいい。この時間にお風呂に入れるのは一人しかいないから。

わたしはそのまま脱衣所でビショビショの服を脱ぎ、浴室への扉を開けた。



暖かい。
わたしは今、お兄ちゃんの胸の中にいる。二人とも産まれたままの姿で。
無駄な肉のない綺麗な体……。
そしてお兄ちゃんの熱った体は冷たい雨にうたれてきたわたしにとって最高に気持ちいい。
できる事なら、このまま熱に身をまかせお兄ちゃんととけあいひとつになりたい。

しかしわたしの望みが叶うはずもなく、しばらくしてお兄ちゃんがわたしの体を突き放した。
驚きと焦りの共存した複雑な表情を浮かべるお兄ちゃん。ただその意識が外に向けられていることはすぐにわかった
待って、お兄ちゃん。わたしを見てよ。
しかし、お兄ちゃんは素早く、そして少し慌てた様子で出口へと消えて行った。

誰もいない浴室と閉ざされたドア。静かに床を打つシャワー。呆然とするわたし。


やっぱり、わたしはお兄ちゃんにとって妹でしかないんだ。
わたしに優しくするくせに、わたしが本当に欲しい優しさはくれない。

本当は抱き締めて欲しかった。
もう、大丈夫だって慰めて欲しかった。
だけど、いつもお兄ちゃんは何もしてくれない。
しかしそれでも、わたしはお兄ちゃんから離れられない。
お兄ちゃんのくれるジュースがあますぎるから。


……ずるいよ、お兄ちゃん……。
71名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 05:32:26 ID:cQCeir6c
巨星が遂に墜ちたか。
まさかまだ生きてるってことは…
72名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 05:37:11 ID:BddDhrCz
急展開キタ!
まさか円香さまが返り討ちとは…
73名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 05:55:42 ID:upwAC1jV
>>71
処女のまま死んだから妖精になるに決まっているだろブラザー?
74名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 09:05:33 ID:ZpHiQM9p
いや、まだだ。
超展開はこれからだ!
75名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 11:50:19 ID:BANrIM5i
ホントの覚悟はこれからだッ!テメーらも腹をくくれッ!!
76名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 13:00:31 ID:V2DjFZMp
ここで手話のトリビア
兄 ttp://www2.edu.ipa.go.jp/gz/g-syu1/g-wda/g-waa/g-wac4.mpg
姉 ttp://www2.edu.ipa.go.jp/gz/g-syu1/g-wda/g-waa/g-wac5.mpg
弟 ttp://www2.edu.ipa.go.jp/gz/g-syu1/g-wda/g-waa/g-wai5.mpg
妹 ttp://www2.edu.ipa.go.jp/gz/g-syu1/g-wda/g-waa/g-wae6.mpg
出典:IPA「教育用画像素材集サイト」 http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/

ええ、何も知らない人からみればあれです。
77『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/09(火) 13:36:33 ID:bXnBROZH
「ん……」
目が覚めたらベットの上だった。………あぁ、戻って来たのか?
起きる気もしないので、ゴロゴロする。はぁ…これで何回目だ?やり直したの。やっぱりお嬢を選ばんといかんのかぁ………まぁ、可愛さから言えばS級だし、文句は無いが……
「アーー!!悩んでもしょうがねぇ!それしかねぇんだヨ!!」
自分に喝!!未練を残すな。俺が好きなのはお嬢。志穂は仲のいい友達!O.K!
自己犠牲なんてのは好きじゃねえが、致し方ない。これ以外に前には進めない。
大体、あんな可愛いお嬢の誘いを断るなんて贅沢な話だ。うんうん、合理化。
「んじゃ、さっさと行くか。」
必要な荷物をまとめ、お嬢の部屋へ向かった。その途中、玄関ホールの階段を上がっていると……
「晋也ぁー!何そんなに急いでんのよ!!」
嗚呼、懐かしい響き。やっぱりあの声にあの叫びがぴったりだよなぁ……ダメだ。振り向くな。顔を見たら挫けちまう。
「う、うるさい!!今からお嬢とニャンニャンするんだぁい!」
焦って表現がストレートになっちまったい。
「ニャ、ニャンニャン!?ちょっと晋也!ニャンニャンてニャによ!」
はは、ニャが変にマジってらぁ。志穂の追撃をまき、お嬢の部屋まで辿り着いた。……変に緊張するのはなんでだろ。まるで初めて恋人の部屋に入るような感じだ。
「いざ!!」
気合いを入れて、ドアを開けようとした瞬間………
バン!
「晋也!」
「ぐぁ!」
お嬢の声と共にドアが勢いよく開く。近付いていた俺は、鼻をしたたかに打ち付けた。余りの痛さに蹲る。うん、血は出てない。えがったえがった。
78『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/09(火) 13:37:54 ID:bXnBROZH
「あ、あれ?なにしてるの、晋也?」
「いや、別に……お嬢こそ、よく俺が来ってわかったネ。」
「う、うん。声が聞こえたから……つい飛び出しちゃった。」
ああ、いざ!って叫んだ時ね。ようやく痛みが和らぎ、再起動。荷物を持ち上げ、部屋の中に入る。お嬢は目を丸くして、その荷物を見ている。
「晋也?それ、何?」
「何?って………着替えとかその他もろもろだ。お嬢から言ったんじゃん。同じ部屋で暮すって。だからさ。」
それを聞いた途端、涙目になり始める。うーん。感情が豊かな娘だなぁ。
「ぐす…しん、やぁ…ぇぐ。」
これが監禁拘束逆レイプした人間とは思えんな。やっぱ女てコワヒ!
「ほらほら、涙は悲しい時だけ流しなさい。」
そう言って、紳士的に紳士的なハンカチを(あ、ちょっと血が染みてる)差し出す。
が、それを無視して、いきなり俺の腕を引っ張りベットに押し倒された。







「ひ、ひどいわ!いきなりだなんてぇ!」
「ご、ごめん……つい嬉しくて、いきなり襲っちゃった。」
よくある(?)会話だが、この場では男女逆ってのが違うとこだ。いきなり逆レイプだなんて、先が思いやられる。大丈夫かなぁ……俺の体。
ちなみにまたお嬢の膜が復活してたのは面倒だった。
79名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 17:24:34 ID:vMn19jZT
お嬢カワイイヨお嬢(*´д`*)ハァハァ
80名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 19:15:52 ID:AL10me/7
なんか俺お嬢派になっちまったゼ。
お嬢可愛いすぎ。
81名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 20:08:18 ID:LXWhGvpW
しかし、例えお嬢に転んだとしても、
志穂や里緒が黙っちゃいないのが修羅場SSクオリティ。
82生きてここに・・・・詩織の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/09(火) 20:17:34 ID:X1wG/OHc
まったくクラスメイトだからって馴れ馴れしく
私の仁くんに触ったりして
「あの、詩織?ずいぶんくっ付きすぎじゃない?」
確かにいつもよりか密着度は高いかもしれない
でも、あの女の匂いを消すためにね
くっ付かないといけないんだよ?
それにしても仁くんは隙が多いな、もう・・・・
誰にでも優しくてどんな人も差別しない
その性格が仁くんのモテモテぶりに拍車をかけている
「だって・・・・・ね♪」
もっと身体をくっ付ける
頬どころか耳まで真っ赤だ
もちろん私も真っ赤になってるだろう
でも、いいよね?こんな恥ずかしいこともできる仲なんだから
恥ずかしいこと?
そういえば私たちってまだキスもそのさきもしていない
そうだ、はやく私のファーストキスを仁くんに捧げなくちゃ
仁くんってば何度もチャンスはあったのに貰ってくれないんだもん
今度こそ・・・・
「仁くん・・・・・」
「なに・・・・?」
無垢な瞳で私を見つめる
そっと顔を近づけると仁くんは私がなにをしようとしたのか理解したようだ
けれど抵抗はない
そうだよね?私たち愛し合ってるんだものね
軽く唇を重ねる
すぐに顔が離れるけど心はすごく近くに感じる
「やっと貰ってくれたね♪」
「あ、うん・・・・・」
これであとはその先だけど・・・・
これは仁くんが求めてくれたらにしよう
「仁くん・・・・今度は・・・・ね?」
「うん・・・・・」
うなずくしかできない仁くんがとても愛おしかった
83生きてここに・・・・詩織の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/09(火) 20:18:38 ID:X1wG/OHc
帰って来てベットに飛び込む
ああ、しちゃった
仁くんと・・・・キス
私はお姉さんだからリードしなくちゃという気持ちが大きかった
だから冷静に事を運んだけど
もう心臓はバクバクで脚もがくがくしていた
気づかれなかったかな?
気づかれてもいいか・・・・これからもずっと一緒にいるんだし
弱いところも見せてもいいよね?
二人並んで撮った写真を机から取って胸に抱きしめる
「仁くん♪」
今度は仁くんの番だよね?
私の初めては全部仁くんにあげるから
でもねやっぱり女の子だから自分からなんてはしたないことできないの
キスは私が勇気を振り絞ったのだから今度は・・・・ね?
仁くんに抱かれる幸せな想いを抱きながら目を閉じた
84生きてここに・・・・詩織の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/09(火) 20:20:00 ID:X1wG/OHc
夢を見ていた小さな私と仁くん
いじめっ子に私がいじめられてると仁くんは必ず助けてくれた
「詩織さんをいじめるな!!!」
仁くんは小さい頃から運動神経がずば抜けていたので
三人くらいの相手どうってことはない
でもケガする時だってあった
情けなくて涙する私に仁くんはあたふたしながらも
「僕が弱いからいけないんだよ」
でもと泣き続ける私に仁くんは
「男はなによりも女性を護るべし、家の家訓なんだ」
だから当然という風に仁くんは笑った
「だから僕は詩織さんを護るんだ」
私はこのとき確かに感じていた
初めて感じる小さな恋心を
「大好き♪仁くん♪」
抱き付く私に仁くんはあたふたして離れようとする
もう離さないよ仁くん・・・・
85生きてここに・・・・詩織の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/09(火) 20:21:58 ID:X1wG/OHc
中学に入って仁くんは少し大人っぽくなった
学生服に身を包む仁くんはとってもカッコよかった
私は女子中だったので仁くんとは同じ学校ではなかったけど
それでも週末には必ず会いに来てくれた
それから一年と半年後
私が3年生で仁くんは2年生になった
ある日私は繁華街でお父様とお母様とお食事していた
本当は仁くんも呼んだのだけど仁くんってば昔からこういうお店は苦手らしい
途中で逃げちゃった・・・・仕方ないのかな?
私は両親に先に帰ってもらって繁華街をお付の人の坂島さんと歩いていた
「・・・・・?」
向こうで騒ぎの声が聞こえた
興味を引かれたが坂島さんがそれを許さなかった
「お嬢様を危険な目には合わせられません」
年は三十くらいだったかな?
私のもう一人のお母さんのような人にそう言われては聞かないわけにはいかない
「わかりました」
そう答えると騒ぎの方に背を向け歩き出す
しばらく歩くと騒ぎの方が私に近づいてきた
振り返るとそこには仁くんが居た
「仁くん?」
「詩織さん?」
私の横に来ると走るのをやめた
すぐに後ろから男の人二人が仁くんを追ってきたのかやって来た
有無も言わさずに殴りかかるが仁くんは涼しげな顔で飛んでくる拳をよけている
「坂島さん!」
坂島さんにそう声を掛けると彼女は両手を構えた
彼女はこう見えても昔外国の特殊部隊に所属していてとてもお強い
仁くんをいじめる方を私は許しません
けれど・・・・
「いいから、いいから・・・・」
そう言って微笑んだあとまた駆け出した
「坂島さん・・・・追いましょう」
「ええ・・・・」
86生きてここに・・・・詩織の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/09(火) 20:23:05 ID:X1wG/OHc
仁くんの行き着いた先は警察署だった
私たちが着くと同時に仁くんは男の一人に殴りつけられていた
「仁くん!」
怒りがこみ上げる
けれど仁くんはまた私を止めた
右手を私のほうに向けフッと笑む
それと同時に正面に立っていた二人の刑事さんが二人を抑えてしまった
なおも暴れる二人についに手錠まで出す
呆然とする私の向こうで仁くんは警察の人と何事かを話して中に入って行った
「坂島さん・・・・おねがいがあります」
「ええ、わかっていますわ」
そう言って坂島さんは仁くんのあとを追っていった
数分後仁くんと坂島さんの二人が出てきた
仁くんは冗談めかしてニッと笑んだ
「心配掛けてごめん」
「痛くない?」
ハンカチを取り出し頬の殴られた所の汚れを拭いてあげる
「あ、そうだ・・・・あの子」
「あの子?」
妙に低い声の私に仁くんはたじろぐ
そして私をちらちら見ながら坂島さんに耳打ちする
坂島さんは「はい」と返事をして
「変わりにお嬢様をお頼みします」
「もちろん」
去って行く坂島さんを見送ったあと
仁くんは私の方を向いてあからさまな愛想笑いを浮かべた
「あの子って誰かな〜?」
「・・・・黙秘です」
「却下」
「どうかご堪忍を〜」
「良いではないか・・・・・」
「あ〜れ〜」
なにやっているんだろ、私たち・・・・
あ〜あ、どうでも良くなっちゃった
「もう、ごまかし方がうまいんだから」
たぶんまた下手な正義心で誰かを助けたのでしょ?
それに私たちを巻き込みたくなくて自分で解決する道を選んだ
私は呆れながらもそんな仁くんが愛おしくてしょうがなかった
87生きてここに・・・・詩織の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/09(火) 20:24:59 ID:X1wG/OHc
数分して帰ってきた坂島さんに耳打ちされると
仁くんは私のことを気にしながら足早に道路の方に向かっていった
なぜか気になる
女の勘かな?
「坂島さん?仁くんの用事ってどんなごようじだったのかな?」
「それは・・・・」
一度言い出したら私は意見を曲げない
それを知っているのか坂島さんは「仁様ごめんなさい」
と、つぶやいたあとに事を教えてくれた
どうやら仁くんは悪漢に絡まれて困っていた女の子を助けたらしい
その子が心配しているといけないからとその子がいまどこにいるか調べてもらったらしい
もう、仁くんは私にだけ優しくしてればいいのに
でもそこも仁くんのいいところでもあるか
「坂島さん・・・・その女の子はどこかしら?」
坂島さんは観念したのかすべてを教えてくれた
「そうですか・・・・ああ、そうだ私もお頼みしたいことがあるのですが」
88生きてここに・・・・詩織の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/09(火) 20:25:54 ID:X1wG/OHc
女の子のいるという場所に着くと
仁くんは女の子と楽しげに話していた
・・・・・・なに楽しそうに話しているの?
仁くんは私だけを見てればいいの!
すぐに仁くんのお目付け役の高田さんがやってきた
「仁様〜!もう逃がしませんよ!」
「やばい・・・・見つかった」
困っているね
困っている顔もまたカワイイな
「またケンカしたのですか!まったくこんどという今度は許しませんよ!」
「ごめん!でも仕方なかったんだよ!ゆるしてくれ!」
すぐに仁くんが私の方に近づいてくる
「詩織さん、はかったな!」
「鼻の下を伸ばす仁くんがいけないんですよ♪」
ニコッと笑む私に仁くんはニコッと皮肉をこめて笑顔を返してくれた
こんなことはただのじゃれあいだ
いつのことだ
でも・・・・このとき確かに芽生えていた
私の凄まじいまでの独占欲が
89生きてここに・・・・詩織の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/09(火) 20:26:34 ID:X1wG/OHc
家に帰るとすぐにお父様に仁くんとの婚約の話を持ちかけた
父は快く承諾してくれ早速明日申し出てくれるらしい
「でも、カッコよかったから許すよ・・・・仁くん」
今日の仁くんを思い浮かべ頬を染める
でもね、許してあげるけど
仁くん・・・・もう抑え効かなくなちゃった
仁くんのせいだからね?責任・・・・取ってね♪

90アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/09(火) 20:27:09 ID:X1wG/OHc
詩織の章です
詩織と奈々を可愛く思ってもらい
香葉さんをこわいと思ってもらえるように書いていますが・・・・
これからも詩織と奈々を可愛らしく香葉をこわく
と、伝わるように頑張っていきます
明日は仁の章を投下します
91名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 20:46:48 ID:P6ZYlB5V
(*^ー゚)b グッジョブ!!
詩織さんカワイス(*´д`*)
92リボンの剣士 7話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/09(火) 22:09:12 ID:1iFNgZvj
休日、プライベートの時間に、どれだけ自分の存在感を植え込むか。
それは相手の心をモノにするための基本中の基本。
伊星くんの休日は、主に一日アルバイトか、何も無く一人で過ごすか、そして新城さんと過ごすか、大体
その三パターンであると分かった。
幸い私は今度の日曜、伊星くんと一緒の時間を掴み取れた。それも”新城さんと過ごす”のパターンで。
一回目にして大チャンスだ。ここで私の存在感を刻み込めば、新城さんの部分も薄れて、まさに一石二鳥

ここだけの話、私は西園首寺駅を知ってる。伊星くんとの時間を増やすために、知らないフリをしたの。
そうすれば、移動時間を一緒にできる。
新城さんの試合だって、はっきり言ってどうでもいい。
いや、どうでも良くはないか。伊星くんと親しくなるための話のタネにするくらいの価値はあるから。

待ち合わせには、時間ぴったりに行くことにしよう。
「待った?」「ううん、今来たところ」なんてやり取りは、伊星くんの好みじゃないと思うし。
服は……どうしようかな。あんまり派手じゃないほうがいいのかな。
あんまりおしゃれし過ぎたら、「こいつ何しに来たんだ」って思われるかもしれないから、ちょっと地味
目で行こう。
後は重要アイテム、「お弁当」だね。
試合の開会が九時、新城さんの試合がお昼頃なら、途中でゴハン食べるのが普通だよね。
学食では新城さんを交えての三人だったけど、今回は二人。
ふふっ、伊星くん、おいしいお弁当作るから、楽しみにしてね。


「伊星くん、おっはよ〜っ!」
「……ん」
いよいよ日曜、私は七時半ちょうどに校門前に着く。伊星くんは先に来ていた。
まだ部活も始まっていないから、近くには伊星くん一人しかいない。
「お待たせ。さ、行こ?」
私と伊星くんで一緒に駅まで歩き始めた。

「私、剣道の試合を生で見るのって初めてなんだ〜」
駅までの時間、ただ黙っているわけにはいかない。せっかく得た時間、有効に使うのが『落とす』ための
コツなの。
それに、まだまだ伊星くんについての情報を集めなければならない。
「ねえ伊星くん。新城さんって、強いの?」
「ああ、強い」
即答だね。その答えには、どんな感情が入っているのかな?
「どのくらい?」
「そうだな……」
今度は片手を口元にやりながら、少し考えてる。
「本気を出せば、ドラゴンくらいは倒せるんじゃないかと」
「あははっ、それじゃあ、普通の人は勝てないよ〜」
分かるよ伊星くん。今のはウケを狙ったんだよね?
言ったことに対してちゃんとリアクションをとる、そうすると相手も言ってよかった、と思って、好印象
になるの。
でもしばらくは、私から質問して、伊星くんが答える、という形で話していこう。向こうから話し出して
くるようになれば、前より親しくなった目安になる。
「新城さんの試合は、いつも見に行くの?」
さあ、伊星くん、私ともっと話して。
93リボンの剣士 7話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/09(火) 22:10:44 ID:1iFNgZvj
『さいおん、くびでら〜、さいおん、くびでら〜……』
電車に揺られること小一時間、私たちは目的の駅に到着した。
さすがに電車の中であれこれ話しかけるのはマナーの問題があるから、ここでは静かにする他無かった。
とはいえ、隣同士座っていられたから、無意味な時間にはならなかった。
そうだ、帰りの電車は寝た振りして、伊星くんに寄りかかってみようかな。
帰るまでの間にうまくポイントを稼げば、それくらいやっても嫌がられないかもしれない。
そこから、一気に走る事だってできる。新城さんに追いつき、追い越し、引っこ抜く。それもはるか遠く
じゃない。

アリーナ……じゃなくて、武道場か。そこはちょうど開会式の最中だった。
私と伊星くんは観客席の端っこのほうに座った。
周りにあまり人はいない。人混みは苦手なんだね。
少しして、開会式の司会の人が、開会宣言をした。
私の『伊星くん攻略大会』も本格的に開会だよ。

新城さんの試合まで結構時間がある。伊星くんはボーっとした感じで他の試合を眺めていた。
この態度からすると、やっぱり新城さんの試合以外には興味ないんだね。
まあそれならそれで、点数を稼ぐチャンス。

ある選手が猛攻をかければ、
「わっ、すごい! 決まった?」
「今のは全部無効だ」
またある二人交差するようにぶつかり合ったら、
「いまのどっち?」
「……赤?」
審判はバッと白の旗を挙げた。
「ハズレだったね」
「……別にいいじゃないか」
ちょっとふくれる伊星くん。今のイイ顔だったよ。
94リボンの剣士 7話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/09(火) 22:11:22 ID:1iFNgZvj
さて、そろそろ頃合かな。
何試合目かが終わって、いよいよ新城さん、もとい、うちの学校の試合になる。
ではここで秘密兵器投入〜。
「ねえ伊星くん、お腹空かない?」
手を合わせ、手の甲を頬に当てて、とびっきりの笑顔。うまく見せるために鏡の前での練習は欠かさない
、私の得意技。さあ伊星くん、どう?
「いや……?」
…。
……。
ああいけない。妙な間を作っちゃった。予定では、「そういえは、少し……」なんて返事が返ってきて、

そのままお弁当、の流れに行くはずだったのに。
なかなか手強いね、伊星くん。
攻め方を変えないとダメかな?
「そうなんだ……。私ね、お弁当作ってきたの」
涙声で、俯いて。
「折角だから、食べて欲しくて……」
悲しそうに、哀しそうに。
「がんばって、作ったの……」
「……じゃあ、貰ってもいいか?」
よっし作戦成功。
私は鞄から弁当箱を取り出す。もちろん控えめに、ゆっくりとね。
「いただきまーす」
「戴きます」
この流れに持ち込めばこっちのもの。一気に攻めるよ。
……と思ったら、武道場の一人がチラッとこっちを見た。
面を付けてるけど分かるよ。新城さんでしょ?今ね、伊星くんと一緒にお弁当なの。羨ましい?
チラッとだけじゃなく、もっと見てよ。面白いもの見せてあげるから。
「あ、その唐揚げね、うまくできたの。小松菜にくるんで食べてね。おにぎりの中身は梅干しだよ。種は
取ってあるから、一気にいけるよ。それから」
「静かにしろ。試合が始まる」
「……うん、ごめんね」
うーん、もう一押しができないなあ。点数をどっさり取りに行くのは、まだ早かったかな?


(8話に続く)
95名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 23:23:43 ID:XIx572LL
いいねぇ、可愛い泥棒猫って感じだ。
96山本くんとお姉さん ◆RiG2nuDSvM :2006/05/10(水) 00:20:14 ID:QbnXYNQa
<1>
「……ん……?」

朝。目を覚ますと、鼻先に姉さんの顔があった。

「姉さん……おはよ……。あれ……?」
「おはよう、秋くん」
姉さんの顔がスライドする。途端、世界が明るく広がる。
見慣れたつまらない天井に、なんとなく安心感。
今日は日差しがキツそうだ。身体の右側が熱い。
ちがう、右手が熱い。
姉さんが僕の右手を握りしめていた。

「……あれ? いつからそこにいたの? いまなん時?」
「ちょうど今、起こしにきたところだよ」
あぁ、また姉さんに起こされてしまった。
ちゃんと自分で起きられるはずなのに、最近いつも目覚ましが勝手に止まっていたり壊れていたりで、
結局姉さんに起こされるのだ。

姉さんがスカートを翻して、ふわりと柔らかな空気が揺れる。
姉さんのにおい。お日様のにおい。
ごはんだから早く降りてきてねと言い残して、姉さんは部屋を出て行った。
手汗でベトベトになっていた右手を布団で拭ってから、僕もそれに倣う。
97山本くんとお姉さん ◆RiG2nuDSvM :2006/05/10(水) 00:21:15 ID:QbnXYNQa
<2>
自己紹介がまだでした。僕、山本秋人って言います。
僕が中二に上がった頃から両親とも海外勤務になり、今はこの広い家で姉と二人です。
それでも頑張って暮らしています。

「今日こそ買い物に行かないといけないなぁ。秋くん手伝ってくれる?」
「いいよ。じゃあ放課後に……駅前で待ち合わせ?」
「わたし午後の講義ないから、迎えにいくよ」

こっちは僕の姉さんです。山本亜由美って言います。
僕より三つ上で、今は地元の女子大に通っています。とても優しい姉なんですよ。

「……秋くん? 急須とお話しているの?」
「ううん、なんでもないよ」
適当に誤魔化して、朝ごはんにありつく。
基本的に我が家では、家事の一切を姉さんが独占している。
『秋くんの栄養バランスを考えて料理してるから、お姉ちゃんが作ったモノ以外口にしちゃ駄目。分かった?』
……ということで厨房には立ち入り禁止。もし姉さんがいなくなったら、僕は餓死してしまうんだろう。
それじゃ駄目人間だからせめて掃除でもしようとすると、僕の部屋の隅から隅まで、知らぬ間に姉さんが片付けている。
洗濯だって僕の隙を見計らって済ませてしまう。
自分のことぐらい自分でできるのに、姉さんは少し過保護すぎるんだよ。
98山本くんとお姉さん ◆RiG2nuDSvM :2006/05/10(水) 00:22:19 ID:QbnXYNQa
<3>
昼休みのベルが鳴った直後、生徒がとる行動パターンは三つに分類されると思う。
一つ目は僕のように、その場で弛緩するタイプ。
二つ目は一分一秒の無駄も許さず、談話の花を咲かせまくるタイプ。
そして三つ目は、一目散に何処かへと駆け出すタイプ。
どうやら今日は最後のグループに分類されたのであろうか、友人の孝輔や岡田君は教室を転がり出て行った。
おそらく食堂だろう。

「山本くん、今日は一人でお弁当?」
これは隣りの席の藤原さん。
「うん」
うちの高校は食堂が小さい。テーブルもぎゅうぎゅう詰め。
だから僕のような万年弁当族までお供をすると、公共の迷惑になること甚だしいのだ。

「じゃ、お昼いっしょにたべて、いい?」
「もちろん」
藤原さんとは去年からずっと一緒のクラスだったけれど、わりと親しくなったのは今学期の席替えからだ。
つつつと机が寄ってきて、藤原さんの小さな肩も寄ってくる。

弁当のフタを開けて中身を一瞥。
豪華だね〜、という藤原さんの声をよそに、僕は箸じゃなくて携帯を取り出す。

――いただきます。今日はアスパラの肉巻きがおいしそうだね――
メール、送信。これでよし。弁当の中身に触れておくのもポイントだ。

「……山本くん、何やってるの?」
何をやっているか、とか言われても説明しにくい。
「姉さん」
この一言で分かってもらえないかな。
99山本くんとお姉さん ◆RiG2nuDSvM :2006/05/10(水) 00:23:54 ID:QbnXYNQa
<4>
この弁当は勿論、姉さんの手作りだ。
だから弟としては当然、姉に感謝の意を表明しなければならない。
ちゃんと姉さんのお弁当を前に『いただきます』をした証も兼ねて、メールを入れる義務。
姉さん曰く「よその泥棒猫の手垢のついた食べ物」
――たぶん添加物とか合成着色料を使った外食のことだと思うのだが――そういうのを食べなかったよ、という証明。
姉さんが騒いでいたことを僕なりに要約すると、そういうことなのだと思う。
……本当のところは、僕もよくわかっていないのだが。

そもそも初めて携帯を持たされた時、姉さんは休み時間のつど定時連絡を入れることを提案した。
いや、強く要請した。
……あれは半強制だった気もする。
『わたし達は二人暮らしで、お昼は家に誰もいないでしょ? 秋くんに何かあった時、困るの』
『だから秋くんはいつも、お姉ちゃんに居場所を知らせなければいけないの。分かった?』
姉さんは優しすぎるのだ。僕のこと、心配しすぎだ。
そこで三ヶ月に渡る議論の末、「最低でも昼休みごとに連絡を入れる」という妥協案に落ち着いたのだ。

これを怠ると大変なことになる。
つまりその日一日は、姉さんが口を利いてくれなくなる。
具体的には、ごはんを食べる時もテレビを観ている時もくつろいている時も、姉さんは無言で僕に背中を向けるのだ。
どっちを向いても無言の姉さんの背中。
たいへんだ。

内心で色々感慨に浸りつつも藤原さんと談笑しながら、弁当を綺麗さっぱり平らげる。
よく食べるんだね〜、という藤原さんの声をよそに、僕は箸入れじゃなくて携帯を取り出す。

――ごちそうさま。今日は卵焼きを甘口にしてくれたんだね――
メール、送信。これでよし。おかずの味に触れておくのもポイントだ。

「……山本くん、また何やってるの?」
また、とか言われても説明しにくい。
「姉さん」
この一言で分かってもらえないかな。
100山本くんとお姉さん ◆RiG2nuDSvM :2006/05/10(水) 00:27:31 ID:QbnXYNQa
休憩。数時間後、残りの5レスを。

こんなとことんキモ姉ものだけど、許してくれる?
「サザエさん風味ほのぼの添えややラブコメ純愛キモ姉修羅場もの」という微妙な調理法だけど、
ここにいていいだろうか(´・ω・`)?
101名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 00:29:27 ID:0P9BzgV5
wktk
102名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 00:44:53 ID:939jSzrm
キモアネはいいものだ…どんどんやってくれ
103名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 00:56:57 ID:pczcq6Ni
GJ!全裸で期待しつつまっていますね
104名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 01:03:40 ID:1T9m+iXT
胡桃といい香葉といい武道ヒロインは怖いのが多いなぁ
武道やっててもまともなヒロインが居てもいいジャマイカ

と言うわけで明日香たんはどうなるんだろうと気になる今日この頃
105名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 01:08:18 ID:0P9BzgV5
それは恐らく動揺して試合に負けるか怒りに燃えて相手をぶちのめすかで判明すると思う。
106名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 01:17:29 ID:KpApGoF+
いいですね!
キモ姉大好き。
さぁ早く続きを!!
107名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 01:50:53 ID:oCEwBhgr
これはどういう展開になるのか分からなくて期待大
というか姉がどこまで踏み込んでくるのかにwktk
108名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 01:54:46 ID:oRhbsWPy
>>94
GJ!オモロイですっ!次の更新wktkしてまつ

>>100
いい感じ♪こういう束縛系大好きです。

小恋物来ないかなぁ〜?
109山本くんとお姉さん ◆RiG2nuDSvM :2006/05/10(水) 01:57:16 ID:QbnXYNQa
<5>
「山本くん、いっしょに帰ろ?」
やや慌て気味に帰り支度をしていると、隣席から声がかかった。
「もう帰るんだよね? いっしょに帰ろ」
藤原さんはクラスの中でもかなりおとなしい方だ。いつも一歩ひいていて、地味な印象を与える。
そういう子ってたまに口を開いた時には、有無を言わせぬ迫力をもつ場合がある。
「いこ」
で、今がそうかは分からないけど、気がつくと僕は昇降口まで引きずられていた。
あぁ、ぐずぐずしている間に並んで校門を出てしまう。
多分もう来てる。ていうか、確実に待ってる。
女友達に家族を紹介するってのはなんか気恥ずかしい。早く断っておかないと。
「あの、今日用事があるからさ――」
「秋くん」
姉さんだ。横合いの木陰から唐突に声が掛かるので、多少ビクつく。
さて、どうしよう。

「……」
「……」

初夏だというのに、どこからともなく木枯らしが吹きぬけた。
グラウンドに捨てられていたゴミ袋が舞い上がり、バタバタと派手な音を立てる。

巻き上がった砂煙が、容赦なく僕の視界を覆った。
いたたたっ!
思わぬ大自然の目潰しに、涙が止まらない。目をあけられない。
ごしょごしょ瞼をこする。
110山本くんとお姉さん ◆RiG2nuDSvM :2006/05/10(水) 01:58:31 ID:QbnXYNQa
「……」
「……」
「山本くん、この女性は……」
「あ、ごめんっ、僕の姉。姉さん、彼女は――」」
見えない目をこすりながら、とりあえず藤原さんの声がする方に向って声をかける。
「藤原……里香さん……だよね?」
「……はい。貴女が、お姉さん……」
ありゃ? もしかして、知り合い? 
それとも藤原さんのこと、話題に出したことあったか?

「……」
「……」
「あの、はじめまして」
「はじめまして、秋人の姉です」
「……」
「……」
「……山本くん。私、行くね?」
「あ、今日は本当に悪ィね。」
ようやく視力が回復した時には、去り行く藤原さんの背中を見送っていた。
なんだか意味不明に罪悪感が募る。なにかいけないことをした気も。

……と思った刹那、藤原さんは鞄を後ろ手にしてくるっと振り向いた。
よかった、笑顔だ。
「山本くん、”また”明日」
111山本くんとお姉さん ◆RiG2nuDSvM :2006/05/10(水) 02:00:46 ID:QbnXYNQa
<6>
五月の湯船は、ちょっとぬるいぐらいが気持ちいい。
すりガラスの向こう側では、姉さんが乾燥機を回しながら洗濯物を畳んでいる。
今日の買い物で酷使した筋肉を、風呂水でうんと解きほぐしてやる。
僕と一緒に買い物をする時、姉さんはやたらと色んな物を買ってくれる。
プリンが欲しい?とかアイスが欲しい?とか、僕の答えも待たず次々とカゴに入れていく姉さんだ。
栄養バランスはどうなったのだろう。結局増えた荷物は僕が持つので、あまり嬉しくない。

『秋くん、リンスの詰め替えそこにある?』
「あるよー」

ガラス戸ごしの返事。
それにしても僕が風呂入っている時に限って洗濯を始めるのは、姉さんの悪い癖だ。
たまに戸口に手がかかるから、おちおち髪の毛も洗えやしない。
きっとアレだ。家事の一切を取り仕切りたいから、
僕が風呂で手を出せないうちに済ませてしまおうという算段なのだろう。
ちょっとぐらい手伝わせてくれたっていいのに……。

『秋くん、スポンジこっちにあるんだけど?』
「つかわないよー」

あぁそうだ。ついでに今日こそパンツを買い込まなければいけなかったのに、忘れていた。
最近僕のパンツが妙に減っている。
干した時に風で飛ばされたのだと思うけど……まさか下着ドロの標的だろうか?
いやドロだって僕のパンツに興味ないだろうが、姉さんの下着の被害については恥ずかしくて聞いていない。
でも二人暮らしなんだし、本当に僕が気をつけなければ。
他に家事が出来ない分こういう時こそ姉さんを守れなければ、父さん母さんに申し訳が立たない。
僕の大切な姉さんに、不埒な行為を企む輩がいるとしたら容赦はしないッ!
……湯気にあてられて妙に熱くなった。

『秋くん、この長袖まだ着る?』
「しまっていいよー」
『このシャツのことだよ? ちょっと、ここ、いい?』
かりかりと音をたてて、ガラス向こうの白い指がくねる。
「よくないよー」

目が回り始める直前に、ようやく姉さんは脱衣所から撤退してくれた。
下着タンスの中に、かえのパンツは数枚しかなかった。
112山本くんとお姉さん ◆RiG2nuDSvM :2006/05/10(水) 02:01:36 ID:QbnXYNQa
<???>
暗闇の中で目をこらす。

秋くんだ。
秋くんの寝顔だ。
うふっ。うふふふふ。えへへへへへへへへへへへへへへへ。

携帯チェックはもう済ませた。メール・着信履歴、共に異常なし。
目覚ましは止めた。これで明日朝の秋くんの時間もわたしのモノ。
――午前一時……まだたっぷりある夜の時間を、こうやって正座しながら過ごしていられる。
おおっと、いけない。
いつの間にか緩みきっていた口もとをパジャマで拭う。
おつゆで折角の寝顔を汚すような粗相をしては、勿体無いよ。

あどけない寝顔……かぐわしい吐息が、わたしの頬を撫でる。
すぐそこに、弟のクチビルがあるんだ。秋くんにキスができる。
『ものの勢い』で0になってしまっても、許されるだけの唇の距離。
もー、ちょい。あとちょっと、あとちょっと。
でも秋君ったら物音にも女心にも鈍感なくせに、そういう気配(殺気?)にだけは敏感。
いつもあと少し、というところで図ったかのように目を覚ますんだもん。
今朝も無理だった。
113山本くんとお姉さん ◆RiG2nuDSvM :2006/05/10(水) 02:03:22 ID:QbnXYNQa
まぁこの時間に失敗して起こしてしまうと、場を取り繕うのが面倒。
やっぱ勝負は朝よね。
可哀想な今のわたしに許されたスキンシップは、こうやって手を握り締めることぐらいよ……。
秋くんの手。秋くんの手。無意識のうちに、自分の太腿に擦り付けている。
……このまま、手をつないだまま、わたしの『わたし』に誘うことができれば。
パジャマごしだっていい。
秋くんの手がピクリと動いただけで、今朝はちょっとイきかかった。
あぁ、駄目だ。こりゃ寝る前に下着かえないと……。

この可愛い寝顔、他の誰にも見せない。誰にも渡さない。
そういえば今日の収穫……『藤原里香』――度々携帯チェックにひっかかっていた人名、特定できた。
顔も覚えた。あの目つきも絶対忘れない。やっぱり危惧したとおりの雌猫だった。
初めは敵か味方か探るような、おどおどした目つき。
それが獲物を狩る獣の目に変わっていく時の、あの生々しさ。醜さ。
しかも別れ際ときたらどうだ。あの女、哂っていた。嘲笑だ。
懐柔も威嚇も失敗に終わった後の腹いせだろう。『所詮は実姉』と言わんばかりの表情の歪み。
いいわ、明日もずっと校門で秋くんを待っていてやる。
理由なんか後で考えればいい。そうしよう。

……ちょっともう午前三時とはどういうことよふざけてんのこの時計。
流石にもう寝ないと、秋くんより早く起きられないよ。
おやすみ、秋くん……。


お姉ちゃんの夢、見ていてくれるかな……?
114山本くんとお姉さん ◆RiG2nuDSvM :2006/05/10(水) 02:06:30 ID:QbnXYNQa
おしまい。時間があれば2を書きたいす。

ただ、阿修羅の如き凄い修羅場を書かれる神々が勢揃いのスレの中で、
「たまには箸やすめ感覚のものを」という気持ちで書いただけです。
「果物ナイフ振り回すけど、あくまでどことなく牧歌的な雰囲気の修羅場を」ぐらいのスタンス。
それでも迷惑でなければ、またお付き合いください。
115名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 02:18:52 ID:fnhueX8A
>>114
面白かったので、次を楽しみに待ってる。
寝顔を見つめ続けるという行動が個人的にツボ。
このおねえさん、ほんものだ!
116名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 02:19:24 ID:939jSzrm
こんなのを待ってたんだ…

次もワクテカしながら正座して待っております
117名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 02:43:07 ID:KpApGoF+
うむ。

姉 ら し く て 実 に よ い。
118名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 06:37:28 ID:ktT8feRt
ツンとしたのもいいけど、やっぱ自分に素直なのが1番だ。
119名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 08:54:06 ID:p+kEL6zQ
テニスの王子様の真田の台詞いわく
「「いつまでもこのペースを保っていられるはずない!! 途切れた時がお前の最後だ!!」

という感じにこのスレを見ていたが、途切れることがないな・・
更に作品が増える一方だ・・


これでサマーデイズで鮮血来たら一体どうなってしまうんだこのスレwww
120名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 10:05:53 ID:+MnysG42
このスレでは携帯履歴チェックはスタンダードなのね・・
121名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 12:43:18 ID:1VnzCEGd
>>120
つまり、履歴をチェックされたら誰でもこのスレのような展開をリアルで楽しめる、と。
122名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 15:43:15 ID:PbEsU4x+
実姉(*´Д`)イイ・・・
123名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 17:20:00 ID:EAOY5nh+
「・・・・・・」
黙って布団に寝転がり天井を見つめる
夢のようだ、まさか詩織からキスしてくるなんて
今までなんどかそういう状況になったことがあるが
瞳を閉じる詩織を見て揚がってしまいどうしても失敗してしまっていた
詩織は「いいよ、また別の機会でね♪」と言ってくれたが
とうとう彼女のほうからしてきた
情けない話だ
今度は・・・・ってこんどは・・・・・
考えただけで顔が熱くなる
そいうことだよな?
「でも、詩織って脱ぐとすごいかも」
他人に聞かれたらクソ恥ずかしいことも今日はなぜか言えた
当然俺以外この部屋にいないからだ
いつもならアホすぎて独り言でもそんなこと言えない
「仁様、ご学友からお電話です」
ドアをノックされた
俺が返事をすると高田さんが入ってきて俺に電話の子機を渡す
「もしもし?」
124生きてここに・・・・仁の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 17:21:10 ID:EAOY5nh+
「・・・・・・」
黙って布団に寝転がり天井を見つめる
夢のようだ、まさか詩織からキスしてくるなんて
今までなんどかそういう状況になったことがあるが
瞳を閉じる詩織を見て揚がってしまいどうしても失敗してしまっていた
詩織は「いいよ、また別の機会でね♪」と言ってくれたが
とうとう彼女のほうからしてきた
情けない話だ
今度は・・・・ってこんどは・・・・・
考えただけで顔が熱くなる
そいうことだよな?
「でも、詩織って脱ぐとすごいかも」
他人に聞かれたらクソ恥ずかしいことも今日はなぜか言えた
当然俺以外この部屋にいないからだ
いつもならアホすぎて独り言でもそんなこと言えない
「仁様、ご学友からお電話です」
ドアをノックされた
俺が返事をすると高田さんが入ってきて俺に電話の子機を渡す
「もしもし?」
125生きてここに・・・・仁の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 17:21:48 ID:EAOY5nh+
誰だろうと声を出すと
〈もすもす?聞こえるでござるか?拙者は真田・・・・・なんだっけ?〉
「幸村・・・・って、奈々さんだろ?」
前に尊敬する偉人は?と聞かれ真田幸村と答えた
クラスの自己紹介などというくだらない恒例行事だったので
クラスの人間しか知らない
その中で俺に電話を掛けてくるなんていうのは東児と奈々さんだけだ
〈わかる?やっぱ愛の力?それともエスパー?まずい!授業中に居眠りしている仁ちゃんの頬にキスしたのバレてしまう!!〉
「そんなことしたのかよ」
〈あなたのご想像にお任せします〉
冗談を言い合い二人してクスクスと笑い合う
〈それで本題なんだけど・・・・率直に言うね?私の誕生日のパーティーにご招待いたしますです・・・・・はい〉
古めかしく言っているのか?
彼女の世界観は独特だ
最初逢った時は儚げな少女という印象だったが
まさかこんな変な口調の女の子とは思わなかった
〈返事は?〉
「・・・・・・」
〈なんか言ってよ〜!〉
「ごめん・・・・行けない」
なんでかって?あとで詩織が怖いからだ
だって、詩織ってばヤキモチ焼くと長引くんだもん
アホか・・・・俺は、気持ち悪い
〈拒否権はありません〉
どうやら強制らしい
でも、初めから行く気ではあった
最初のは冗談だ
こんなパーティーなどは日常茶飯事
そんなことで目くじらを立てるほど詩織も心が狭くない
「わかったよ・・・・奈々さんの誕生日は一週間後だよね?」
〈なぜそれを?まさか愛の力?〉
「ここ一週間毎日のように7月2日ってなんども連呼されればアホじゃないかぎりわかるよ」
126生きてここに・・・・仁の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 17:23:22 ID:EAOY5nh+
朝挨拶をすると7月2日は何の日?
昼休みになると7月2日は何の日?
帰りに7月2日は何の日?
今日なんて朝に
『あと一週間だね?仁ちゃん・・・・プレゼント楽しみにしてるよ♪』
と直接的に言ってきた
〈私は直接誕生日の言葉を言った記憶はありませんのであしからず〉
「アピールはしてたけどね」
〈私〜、仁ちゃんのボクシンググローブが欲しいな〜〉
おねだりタイムに入ったらしい
誕生日なのでこちらが拒否できないのをいいことに
奈々さんはとんでもないおねだりをしてきた
「さすがにそれは・・・・」
〈サイン付きでそれとこれが重要なの・・・・〉
神妙な空気が流れ俺は思わず息の飲んだ
〈愛を込めてね♪〉
ブチ・・・・
電話を切った
「ふざけるな!」
プルルルル・・・・・
「もしもし・・・・」
〈もすもす、聞こえるでござるか?拙者・・・・・〉
「それはいいよ・・・・まったく・・・・ところでそんなのでいいの?」
もっといいものがあるだろうに
〈お金で買える物なんていりませ〜ん・・・・・私はね心のこもったものがほしいの〉
心・・・・・か
わかる気がする
「わかったよ、サインはしないぞ?」
〈仕方ない・・・・それで手を打とう〉
冗談めかして笑う奈々さん
〈それでは・・・・また明日学校で〉
「お休み・・・・奈々さん」
〈お・や・す・み・・・・・チュ♪〉
そのまま電話が切れる
「最後のはなしの方向でおねがいしたいな」
フッと笑むと俺は電話をポンとベットに置き自分も寝転がった
もしかしたら彼女は俺に似てるのかも
明るく振舞ってはいるが寂しがりやなのだろう
そして不器用なのだ
そうやって明るく振舞っていないと寂しさが追いかけてくるから
127生きてここに・・・・仁の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 17:24:44 ID:EAOY5nh+
過去の自分が浮かぶ
父さんも母さんも俺など見ていない
後継者としてしかみていないとわかったのは中学生になってすぐだ
あれやれこれやれと言われ俺は従った
ある日過労で倒れた
そのときの二人の言葉が『そんなことで倒れるなんて立派な跡取りになれないぞ』
・・・・ふざけるな!
そう叫ぶ力もないほどに俺は衰弱していた
様態が回復して部屋に戻っって来た時だ
「この部屋ってこんなに殺風景だったっけ?」
そう思えた・・・・さびしい
帰って来ては寝るだけの生活だったのでそんなこと思いもしなかった
鏡を見る・・・・やつれたな俺
(まるで世捨て人だな・・・・お前)
鏡の中の俺がそう言った
「そうかもね」
そう言って俺は部屋にあるたった一つのベットに寝転がった
気持ちいいな・・・・このまま溶けてしまいたい
その時だった
「こんにちは・・・・・」
詩織さんの声がした
俺が起き上がり立ち上がると一瞬よろめいた
「仁くん!」
詩織さんが俺を抱きかかえてくれた
暖かい、良い匂いがする・・・・
「ごめんね、入院したって言うからお見舞いに行こうと思ったんだけど、おじ様が甘やかすなって・・・・面会を許してくれなかったの」
頬に涙が落ちてきた
どうしてあなたが泣いているのですか?
128生きてここに・・・・仁の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 17:25:27 ID:EAOY5nh+
「ごめんね・・・・ごめんね」
やさしく頭を撫でてくれる詩織さん
「俺・・・・俺」
俺は思いを爆発させた
両親が自分を見ていなかったこと
誰でもいい俺自身を見て欲しいってこと
すると詩織さんは泣きはらした顔でこう言ってくれた
「私があなたを見てる・・・・なにがあっても」
その瞳に映る自分がこう言った
(ここにいるじゃないか、お前を見てくれている人が)
欲しいものはもう手にあった
俺は恥を知らずに彼女に抱きつき泣きわめいた
詩織さんは優しくただ優しく俺を抱きしめ頭を撫でてくれた
129生きてここに・・・・仁の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 17:26:42 ID:EAOY5nh+
その後俺は行動を起こした
家出だ・・・・我ながら子供らしいと思ったが
親に思い知らせてやるっていう気持ちが強かった
と、行っても行く当てなどない?
そんなことはなかった
いま俺は詩織さんの家にいる
もちろん親に連絡はしないで
詩織さんのご両親は昔から俺の両親とは友人だったので
いまの状況を見て気に病んでくれていたようだ
そんなこんなで快く承諾してくれた
一週間、二週間と過ぎた
学校にはちゃんと行っている
放課後待ち構える黒スーツの目をかいくぐって俺は詩織さんの車に乗り込む
まさか詩織さんたちが共犯だと思っていない両親をうまく出し抜いた
三週間目・・・・
今度は両親が待ち構えていた
「俺・・・・帰らないからな」
そう言うと父さんがひざを折り頭を下げた
戸惑いの表情を浮かべる俺に今度は母さんがひざを折り頭を下げた
130生きてここに・・・・仁の章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 17:27:42 ID:EAOY5nh+
「すまない、わたしたちはお前を機械のように思っていた」
「うしなって気づいたの・・・・あなたは私たちの子供なんだって」
「お前は大事なわたしたちの子供だ・・・・だから、戻ってきて欲しい」
初めて見た
頭を下げる両親
プライドの高い二人が目に涙を浮かべ謝罪している
後ろを振り向くと詩織さんも瞳に涙を溜めて「よかったね」
と、言ってくれた
そうか・・・・俺にはちゃんと居場所があるんだ
「俺もごめんなさい!」
俺もひざを折って両親に謝る
どんな理由であろうと両親を困らせたのは俺だ
それもこんな公衆の面前で謝らせるほどに
だから精一杯謝った、すると父さんが俺を抱きしめてくれた
続いて母さんが
暖かい・・・・
最後の背中に感じた詩織さんのぬくもり
そうか・・・・俺には居場所があったんだ
その居場所を作ってくれたのは詩織さんだ
これから俺は詩織さんのために生きていこう
もしかしたらこの日だったのかもしれない
俺が彼女を愛してしまったのは
131アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 17:28:53 ID:EAOY5nh+
最初から見返してみると時間軸間違ってるよ
適当に流してやってください
仁編です
修羅場と関係ないことばかり書いていますが
どうしてもキャラクターのバックボーンを描きたかったんです
次からが本編となります
もう完成しているので訂正等加えたら投下します
今日中だと思いますんでもう少し待っていてください

132『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/10(水) 17:34:53 ID:IjXr6XoJ
結局その後三連戦までもつれ込み、気がついたら寝てしまっていた。初めてお嬢の部屋で朝を向かえた。うーん。フカフカのベットは寝心地が違いますな。
「ん……」
俺が動いたせいか、お嬢まで起きてしまった。ぼーっとしているようで、まだ焦点があっていない。朝は弱い方なのか?
「夢…みたい…」
「ん?」
「目が覚めて……晋也と一緒に居るなんて、夢みたい。こういうの、憧れてたの。」
「んー。願いがかなってなによりだ。」
拘束されながらの朝より何倍もましだわな。腕時計を見ると、もう六時を回っていた。いかん。朝食作らんと。
「朝食作ってくるから、も少し寝ててよいよ。また起こしに来るから。」
そう言ってベットから出ようとすると……
「いっちゃ駄目。」
と、腕を掴まれ、すがってくる。
「ご飯ならいらないわ。だから、ね?一緒に居よ。うん、今日…いいえ。もうずっと一緒に居てよ。」
あらら…困ったなぁ。腕にしがみついたままのお嬢を離し、ベットの上に放る。いくらお嬢を選んだとはいえ、甘やかすのは駄目だろな。
「いや、イカンぞ、お嬢。そう言う堕落した生活は。しっかりとした生活リズムを保つのも重要だ。」
うはっ。親父くさい事言ってんなぁ。でもまぁ、いってる事は正しいからいっか。
「うん…わかった。晋也が言うならそうする。」
そう言ってもぞもぞと布団に潜る。いやぁ、聞き分けの良い娘は助かるなぁ。着替えを終え、部屋を出ようとすると、またお嬢から声を掛けられる。
「絶対…絶対一緒に居てよ!…どこにも行っちゃ駄目だよ?」
全身全霊とも言える懇願だった。
「……努力するよ。」
それが精一杯の返事だった。そんなお嬢を見ているのが辛く、早々にドアを閉めた。
133『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/10(水) 17:36:32 ID:IjXr6XoJ
「うー……さぶい。」
最早初冬。更に山の上という立地条件により、既に窓の外は白く染まっていた。そんな外をみて思う。『最後に町に行ったのは何時だろう』と。
常人には耐えられぬのではないかという程の世界を巡って来たせいか、時間の経過がわからない。まぁ、前に進んでいない事は確かだ。
「うっ!はっ!」
イカンイカン。朝から小難しい事考えてると脳がオーバーヒートしそうだ。考えるんじゃない、感じるんだ!
「ダーーーーッシュ!!!」
体を暖めるために、全力疾走で台所へ。その間にチャッチャとメニューを考える。うん、今日も不変だ。



・台所には誰もいなかった。ということで早速料理開始。簡単にスクランブルエッグとカリッと焼いたベーコン。それにバタートースト。
うーん、和風か洋風かに悩んだが気分で洋風。夕飯は和風だな……
「おはよう。」
パンの焼きあがりを待っていると、志穂が入ってきた。再度時計を見ると、七時を回っていた。
「遅刻ナリ!遅刻ナリ!」
ビシッとチョップ。が、カウンターを食らうかと思ったら、フラフラしちまった。おろ?何か様子が。
「うっさいわね!寝不足なのよ!」
「…なんで?」
問うなっ!
「なんで…ですって?……一体誰の…せいだと……」
頬伝う涙。
見るな!!
「ごめ……っ…」
言うな!!!!
「は、HAHA!!里緒さんに悪戯でもされたかな?ほれほれ、お兄さんに話してみなさい。」
保て、いつものペース。
「馬鹿っ!!!」
パン!
頬をひっぱたかれた。これがグーパンチだったらどれだけマシだったろうか。張り手を食らったのは初めてだ。
気付けばパンは丸焦げだった。
「HaHa……焼き直すか……」
134名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 18:01:04 ID:pczcq6Ni
>>131
奈々カワイイヨ奈々(*´Д`)ハァハァ
現在これほどまでに仁が一途で他の2人が不利な状況がどう動いていくのか楽しみだ

>>133
お嬢は本当に良い子だなぁ……特にその 独 占 欲 がな!
最近、影が薄い里緒さんが気になる俺ガイル
135名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 18:18:20 ID:q+TeJpIn
里緒がラスボスなのかと楽しみにしている俺がいるw
136名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 18:22:02 ID:keqeALg0
>>134
包丁といで待ってるんだよw
137アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 20:17:30 ID:EAOY5nh+
うれしさを隠さずに私は電話を置いた
「お父さん・・・・今度のパーティーに私の大切な人を呼びました」
お父さんはすこし複雑そうな顔をしたけど「そうか」とうなずいてくれた
「それで、相手は?」
「クラスメイトの仁ちゃ・・・・おほん!流くんです」
「流?もしかして、あの大会社の・・・・跡取りの?」
どうやら流家というのは有名らしい
私は少し誇らしくなって「そうです」と答えるとまたお父さんは複雑そうな顔をした
「しかし、彼は月緒さんのご息女と婚約をしているのでは?」
その話も有名らしい
ああ、もう・・・・悔しいな
でも・・・・負けてられない
「お父さん・・・・愛は与えられるものではないの・・・・奪うものなのよ!」
また複雑そうな顔をされた
これは心配かな?
「そ、そうだな・・・・それでこそ僕の娘だ、応援しているよ」
「はい♪」
うきうきしながら階段を登る
どのドレスにしようかな?
ドレスを並べて品定め
「なんか女の子してるな・・・・私」
漫画で見たような状況に私は思わず笑ってしまった
仁ちゃんに会うまで想像もできなかったけど
よく大人に奈々ちゃんは大人しくていい子だねと言われた
でも、違うの・・・・だって今の私が本当の私だから
きっかけが欲しかった
自分を出すきっかけ
それを与えてくれたのは仁ちゃんだ
仁ちゃんの前では着飾った私を取り繕う必要もない
そう思わせてくれるほど
仁ちゃんには不思議と人の心を包みこみ力がある
たぶん仁ちゃんは悲しい思いをなんどもしたのだろう
138生きてここに・・・・一章 ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 20:18:40 ID:EAOY5nh+
私ね、思うの
優しい人ってそれだけ悲しみを知っている人だって
だって悲しいや辛いを知っていなければ本当に人に優しくできないでしょ?
それを知らない人の優しさなんて極端な言い方だけど偽善や綺麗事だよ
知っているから仁ちゃんは優しいんだ
知っているから仁ちゃんはなにもかもを包み込んでくれるんだ
私はもうゾッコンだよ?
仁ちゃんの気持ちは知っている
でも人にはゆずれないものだってあるんだよ?
私にとってそれが仁ちゃんなだけ
だからたとえ何年経ってもこの気持ちは変わらない
誰にもゆずらないし私だけのモノだ
でも待っているだけなんて耐えられない
だけど恋愛経験の皆無な私には漫画にあるようなアプローチしかできない
でもいいよ、恋愛経験は仁ちゃんに鍛えてもらうから
だから私は私なりにがんばってみるよ
不器用でも想いは伝わると思っている
「愛してるよ・・・・仁ちゃん♪」
部屋に飾ってある私と仁ちゃんの並ぶ写真
これは無理やりにたのんで一緒に撮って貰った写真
仁ちゃんの顔にキスしてドレス選びを再開した
139生きてここに・・・・一章 ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 20:19:51 ID:EAOY5nh+
私ね、思うの
優しい人ってそれだけ悲しみを知っている人だって
だって悲しいや辛いを知っていなければ本当に人に優しくできないでしょ?
それを知らない人の優しさなんて極端な言い方だけど偽善や綺麗事だよ
知っているから仁ちゃんは優しいんだ
知っているから仁ちゃんはなにもかもを包み込んでくれるんだ
私はもうゾッコンだよ?
仁ちゃんの気持ちは知っている
でも人にはゆずれないものだってあるんだよ?
私にとってそれが仁ちゃんなだけ
だからたとえ何年経ってもこの気持ちは変わらない
誰にもゆずらないし私だけのモノだ
でも待っているだけなんて耐えられない
だけど恋愛経験の皆無な私には漫画にあるようなアプローチしかできない
でもいいよ、恋愛経験は仁ちゃんに鍛えてもらうから
だから私は私なりにがんばってみるよ
不器用でも想いは伝わると思っている
「愛してるよ・・・・仁ちゃん♪」
部屋に飾ってある私と仁ちゃんの並ぶ写真
これは無理やりにたのんで一緒に撮って貰った写真
仁ちゃんの顔にキスしてドレス選びを再開した
140生きてここに・・・・一章 ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 20:20:28 ID:EAOY5nh+
「ふわ〜ぁ」
大きなあくび
「これで3回目だよ?そんな眠いの?」
呆れがちな奈々さんに俺は軽く解釈した
外を見るとプールの壁に男がたかっていた
そうか、もうプール開きか
「お〜、やってるやってる・・・・・どこもこの時期は同じ景色がひろがるんだな」
「男の子ってみんなあんななの?」
少し身を乗り出してそれを見ていた奈々さんがため息まじりにそう言った
「おうよ、俺だっていますぐにあの場所に飛んでいきたいよ・・・・あ〜、授業とあの壁がなくなればな」
俺は心底の哀れみを込めて東児見てやった
「最低・・・・もしかして仁ちゃんも?」
「俺をあの犯罪者と一緒にしないでくれ」
「それもそうか・・・・」
うんうんとうなずくと東児が後ろから俺をひじで突いた
「んなこと言ってお前も見たいんだろ?たとえば、詩織さんのとか・・・・」
「・・・・・・・」
ゴン!
教科書が顔にぶつけられる
「奈々さん・・・痛い」
しかし彼女はプイっとそっぽを向いてしまった
俺はこの怒りを東児にぶつけその憂さを晴らした
酷い?違うな・・・・だって諸悪の根源はこいつだから
141生きてここに・・・・一章 ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 20:21:15 ID:EAOY5nh+
熱心な目が俺に向けられる
今日は他校の生徒と練習試合の日だ
たくさんの視線が俺に向けられる
そんな期待しないでくれ
期待は一度壊れるともろくて簡単になくなる
それを俺は充分に理解している
でもひとつ・・・・いやふたつだな
違うまなざしを感じる
周りを見ると滅多に試合を見に来ない詩織の姿
そしてもうひとつのまなざしは・・・・・
「仁ちゃ〜ん、がんばれ〜!」
なんだあれは
「や、やめてくれよそんな大きな旗」
それもLOVE JINとプリント付きだ
「こっ恥ずかしいな・・・・ったく」
まんざらでもない俺に詩織がムッとして
「頑張れ〜仁く〜ん!!!!!!」
キーンと耳を突き抜けるような大音量が耳を通り抜けた
その後の苦笑の声
詩織は顔を真っ赤にして縮こまってしまっている
「・・・・・ふふ」
緊張も不安も当に吹っ飛んでいた
俺は心の中で詩織と奈々さんにお礼を言って相手と右手を合わせた
142アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/10(水) 20:22:05 ID:EAOY5nh+
凡ミスしてすいません
一章です
しばらくこのままのラブコメ路線ですが
ちゃんと後半に真っ黒と血の展開にするのでそれまでお付き合い願います
管理人様お疲れ様でした
早速の要望ですいませんが最初に投稿した一話を序章にしていただき
奈々の章、香葉の章、詩織の章、仁の章を二話等付けずに〜の章としていただけないでしょうか?
もうひとつですが今回の一章より以前の物をプロローグとして一章とは区切ってください
一章のほうから本編でお願いいたします
要望が多くてすいません、言葉の少ない私の責任です
143名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 22:57:09 ID:oCEwBhgr
このSS投下ペース・・・
アビス殿は化け物にございますか
キャラクターの個性もしっかり描かれておりますし楽しみにしております
黒化・・・いい響きだわ
144名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 00:57:37 ID:Aspg33s0
>>114
お前は俺をwktkさせすぎている
145名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 02:58:05 ID:hrteMg2l
正直タイトルにセンスを感じないものや一度に長文を沢山投下されたら読む気がしない
146名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 03:05:46 ID:Ew/Ij48Y
それなら読まなければ済む事。
147名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 03:11:55 ID:KqO3h2iY
>>142
真っ黒・・良い響きだ(*゚∀゚)=3ハァハァ
148生きてここに・・・・二章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/11(木) 08:50:19 ID:L2M+9es6
「圧勝だったね?」
奈々さんが満面の笑みで擦り寄ってくる
くっ付きすぎだろう?
離れようとしては近づかれ離れてはを繰り返す
俺は・・・・諦めた
「そうでもない・・・・」
「謙虚だねー?」
そうなのかな?でも、確かに相手の動きが手に取るように見えた
最近なぜかより速く身体が動くようになった
頭に身体が付いてきたのか?
けれどいま誰と戦っても負けない自信はある
「俺はどうだったんだよ」
ボロボロにやられている東児が青くなっている目を氷で冷やしながらやって来た
「ああ、頑張ったんじゃない?」
冷ややかなその声・・・・
いや、違うな
彼女は異性にあまり慣れていないんだ
だから無愛想になってしまう
今だって必死なのだろう
掴んだ手が震えている
昔の詩織がそうだったからよくわかる
ちなみに詩織は俺が殴られるのを見て
最初の内は耐えていたが後半になってバッティングされて出た
血を見て失神してしまった
すぐに医務室に友人が運んでいったが
だから、見に来ないほうがいいと言ったのに
奈々さんも俺が殴られる度に青ざめていた
俺の周りにはいじっぱりが多いな
149生きてここに・・・・二章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/11(木) 08:51:41 ID:L2M+9es6
ああ、血を吐いてる・・・・気持ち悪いな靴に付いちゃった
その目はもうやめてと言っている
なに?これで許すとでも思ってるの?冗談・・・・
私は隣に立っている子から木刀を奪い取るようにした
「ちょ・・・・香葉、なにもそこまでしなくても」
パンと爆発音のように肌を叩く
隣に立っている子が脚を抱えるように座り込んだ
「邪魔・・・・する気?」
ああ、もう・・・一人も二人も一緒か・・・・
私は木刀で二人を交互に叩く
周りの子に対しても見せしめになる
徹底的に・・・・徹底的に!
蚯蚓腫れの次には腫れた所から内出血が見られた
どうしてこんなことするかって?
だってこの子・・・・一人は逆らったからだけど
仁さんに告白しようとしたんだよ?
それだけ?私にとっては万死に値するほどのことよ
本当は磔刑にして胸に刀を突き刺してやりたいけど・・・・
それをやったら可能性がなくなるから今はしない
ああ、泡吹いてるよ・・・・
「気持ち悪い・・・・」
自然と言葉が出た
これがあの女だったらどれだけ楽しいだろうか?
想像しただけでゾクゾクするよ
力の入った手でもう一度木刀を振り下ろす・・・・
「・・・・・っ!?」
前に受け止められた
後ろを向くと
背中の後ろに届くまで上げた木刀の先を月緒詩織が掴んで私を睨み付けていた
150アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/11(木) 08:53:14 ID:L2M+9es6
>>145 は私の作品のことですよね?

私の作品はこのスレの神々に開花された私が半年前に書いた物に訂正や追加等を加えたものです
確かに長いですね、申しあけありません
自分でも解っているのですがでも心情描写をおろそかにしたくないという想いが強くてこういう形にしました
タイトルの方も最初はどうしようか迷いましたが物語の確信部にかかわるので言えませんが
やはりこのタイトルにしました
レスをくれる方の期待に応えようとつい長くなってしまっていますが・・・・
でも自分にはこの書き方しか出来ません
どうしょうもないダメ文で長くダレテしまう作品でもう訳ありませんが期待してくれる方が居る限り私最後まで続けるつもりです

と、言う訳で明日は三章を投下します
151アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/11(木) 09:41:39 ID:L2M+9es6
すいません、半年ではなく三ヶ月ほど前です
誤字や間違いも多くてすいません
152名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 09:46:26 ID:3dZ+90/v
>>150
気にせず頑張って下さい
投下速度が速いので、スレを見に来る頻度が上がっちゃったくらい
楽しませてもらってます
153名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 09:53:55 ID:mdKTjisF
自分もアビス殿の作品を楽しみにしてるものの一人です。
応援しているのでがんばってください。wktkして待ってます。
154名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 10:25:24 ID:KqO3h2iY
>>150
このスレはストライクゾーンの範囲が広いから、そんなことは気にしないで良いと思うぞ
俺はこの作品大好きだしな
155名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 10:58:31 ID:Up6N9q/7
>>150
俺は技術的なことに口を出せるほど目が肥えているわけではないのでとりあえず一言だけ言わせてくれ。

詩織タンハァハァ
156名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 11:46:06 ID:SXC7rL82
俺も詩織さんカワイス派として楽しんでます
これほどハイペースの投下、正直感謝こそすれ文句など無いっす
157名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 12:31:04 ID:F/ZEb4Fr
人にはそれぞれの趣味や嗜好がある

合うものがあれば合わないものもあるさ


とりあえず、実姉や実妹は修羅場スレに欠かせないスパイス
もっとも修羅場に持っていけやすく、その上嫉妬心が凄まじい

たまらんね
158名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 12:35:37 ID:pK9qH6BR
基本的に此処の人達は、職人さんを立てるのね
159名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 13:09:22 ID:pl0CSixN
4ヶ月で6スレめ……こりゃすごいスピードだぜ。
今、板で最も熱いスレの一つだろう。間違いなく。
だがこういう勢いのある時期にこそ、荒れの要素が生まれてくるのも2chの悲しい宿命。
粘着荒らしも出てくるし、一部が自分の趣味だけに染め上げようとして、荒れることもあるだろう。

現状、このスレの職人の幅はかなり広い。色んな傾向の修羅場を模索しつつある。
気に入らないSSも出てくるだろうが、自分に合ったSSにも出会いやすい。
これはとてもいいこと。

たぶん今が、スレにとって一番大切な時期だ。
職人以外の全裸で待ってますボーイズも、ROMも、大切なスレの構成員。
全てが台無しにならないように、頑張っていこうじゃないか。
160名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 13:34:18 ID:hG89m2pg
このスレの事、そんな馴れ馴れしく口にしないで!
161Bloody Mary 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/11(木) 15:07:24 ID:8CT2M/CG
「―――――って、ちゃんと聞いてますか?ウィル」
「えっ?あ、いや、すいません…」
 騎士団の詰め所で不服そうに半眼で睨む銀髪の女性。童顔に甲冑という、不似合いなその井手達は城内では見慣れた光景だった。
「もうっ、だからですね、ウィルには『王の盾』は向かないと思うんですよ。
ウィルは昔から独りで敵陣に特攻するきらいがあります。戦争してた頃なんて私がいなかったら何度命を落としていたか……
だと云うのに王族の護衛なんて」
 先ほどから俺に不満をぶちまけている目の前の女性は我らが王国騎士団の団長マリィ=トレイクネル卿。
 どうやら俺が王族の人間を護衛する騎士団とは独立した騎士―――『王の盾』に任命されたことがお気に召さないらしい。
 彼女の言っている内容は耳ダコだったので正直ウンザリしていたが、
俺の元上司のうえ一応心配して言ってくれているので無碍に扱うこともできない。
 始めに断っておくが俺は別に団長のことが嫌いなわけじゃない。むしろ好感を持っている。
騎士の名家トレイクネルの出身にも関わらずそれを鼻にかけたりしないし、俺のような平民出の騎士にも良くしてくれる。
甲冑を着ていなければ騎士とは思えないその物腰の柔らかさはこの王国の王女様より王女らしい。
団員の中には盲目的に崇拝している者がいるくらいだ。かくいう俺も団長を尊敬している。
戦争が終わった今、彼女のような騎士になるのが俺の目標だ。


 団長と初めて会ったのは二年前。まだ隣国と戦時中だった頃だ。
 傭兵として武勲を立てた俺は騎士団に入団し、当時まだ一部隊の隊長だった団長の元に配属された。
既に国内にその名を馳せていた彼女を初めて見たとき当初抱いていたイメージと大きく違っていて驚いた。
「一振りで十人の兵を吹き飛ばす」だとか「素手で城門をこじ開ける」とか噂されていたので、
どんな大女かと思えば実際は俺よりも小柄な女性だった。
顔立ちも未だ幼さが抜け切っていない。聞けば俺と年はそう変わらないらしい。
口調や態度も騎士とは到底思えなかった。
162Bloody Mary 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/11(木) 15:08:25 ID:8CT2M/CG


 こんな少女に部隊長など務まるのか。そう疑っていたが、配属されて最初の戦でその疑惑はすぐに解消された。
彼女の強さは本物だ。敵の大部隊に包囲されても団長は容易くその包囲網に穴を穿つ。
間合いに入った敵兵は例外なく一太刀で絶命させられる。
俺も若干16歳で騎士になった天才とかまわりに持ち上げられたが、それとはまるで次元が違っていた。
以後もその強さはさらに磨きがかかっていった。
 あるとき、そんな団長に強くなる秘訣を尋ねたことがある。だが彼女は
「守りたいものが出来たからですよ」
と微笑うだけでそれ以上は何も教えてくれなかった。
 その頃には俺も「戦姫マリィの懐刀」としてそれなりに有名になった。

入団してから一年と半年。団長の凄まじい活躍によってこちらの圧倒的勝利で終結した戦争は
マリィ=トレイクネルの名を国内はおろか、周辺諸国にまで轟かせることになった。
戦後処理が終わるとその戦績から彼女は騎士団の団長に、俺は『王の盾』に任命された。それが今から数週間前。


「―――――というわけであなたの戦い方は危なっかしくて見てられません。誰かが側について見張っていないと。
ですから、『王の盾』より私の部隊にいる方がいいと思うのですがウィルはどう思いますか?」
 俺が回想しているうちにお小言は終わったようだ。さて、どう答えたものか…
「でも『王の盾』に就いて日も浅いですから俺に向いてないとはまだ……第一、姫様の直々のご指名ですし…」
「そう!姫様!姫様なんですよ!」
 …回答を間違えたらしい。団長は更に声を荒げて捲し立てる。
「姫様は騎士団員のことをあまりよく知らないのに、よりによってウィルを指名するなんて!だいたい姫様は―――――」
 まだしばらくは開放してくれそうにない。長丁場を覚悟していたが背後から思わぬ助けが入った。
「あぁ、ウィリアム様」
 振り向くと俺を捜していたらしい姫様の侍女が立っていた。
「こんなところにいらっしゃったんですか。姫様がお呼びで……ひっ!」
 言い切る前に侍女は小さく声を上げた。なんだ?団長を見て驚いたっぽいけど……
「? どうした?」
「あ…いえ、その……姫様がお呼びです」
 少し顔を蒼くしながらも気を取り直してそう言った。
「わかった、すぐ行くよ。すいません、団長。姫様に呼ばれていますので俺はこれで…」
「……仕方ありませんね…構いませんから行ってください」
「すいません」
 もう一度謝って詰め所をあとにしたが団長の最後の笑顔が妙に気になった。
163Bloody Mary 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/11(木) 15:09:55 ID:8CT2M/CG




「…はぁ」
 ウィルの後ろ姿を見送ると私は溜め息をついた。侍女も知らない間にどこかへ行ったらしい。
 いけない、いけない。さっきは王女がウィルを呼んでいると聞いて咄嗟に殺意を隠しきれなかった。
 ウィルが私の側を離れ『王の盾』の任に就いておよそ二週間。まだ彼とは18時間33分27秒しか会っていない。
ただでさえ貴重な会話の時間を邪魔されたうえにその張本人が王女と知って怒りで思考が停止しそうになった。
 あのワガママ娘は私からウィルを奪っただけでなくのんびり会話もさせないつもりなのか。
王族でなかったら今すぐくびり殺しに行っているところだ。

 ウィルが私の隊に配属されて最初に驚いたのがその戦い方だ。
先陣をきって敵中に飛び込み目に付く敵兵を手当たり次第に斬り殺していく。
普段の押しの弱そうな彼の印象とはかけ離れた戦い振りはインパクトを与えるには充分だった。
 私も単身で突撃することはよくあるが自分の実力で突破できると踏んだときだけだ。
 でも彼のそれは全く考えなし。まるで命が尽きるまで何人殺せるか競っているような。
いったい何が彼をそこまで駆り立てるのか不思議に思った。
 まだ私には戦う理由なんて何もなかったから、ただ単に仕事として戦をこなすだけ。
騎士になったのも出身がたまたま騎士の家柄だったというだけ。
 だから何かしら戦う理由を持っているウィルが羨ましかった。

 ウィルの戦う理由。それはすぐに私の耳に入った。彼はフォルン村の出身だった。
 先の戦争の発端になったフォルン村の虐殺事件。
当時不作続きで疲弊していた我が国を隣国が侵略、国境にほど近いフォルン村が襲われた。
ウィルはその事件の数少ない生き残りだった。
 復讐。単純だが人を突き動かすには充分な動機だ。私は彼の進む先がどんなものか知りたくなった。
 戦のときもそうでないときも常に眼は彼の姿を追う。彼自身に惹かれるようになるまでそう時間はかからなかった。
そして幾多の戦いを重ねるうち、ウィルを守ることが私の戦う理由になった。

 戦争が終わった今でもウィルが私の心のウェイトの殆どを占めている。どうやらもう彼なしの生活は送れそうにない。
 なのに、ここ二週間ウィルを見る機会が減っている。無論、彼が『王の盾』になったせいだ。
戦以外での彼の姿を見るために戦争を早く終わらせるよう尽力したのにこれでは全く意味がない。

―――――こんなことなら戦争、終わらせるんじゃなかったな……
164Bloody Mary 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/11(木) 15:11:56 ID:8CT2M/CG

とりあえずここまで。

(チラシのウラ)
このスレでは珍しいファンタジーものを投下してみました。
でもファンタジー系あんまり需要ない?
のんびり更新して行きたいと思いますので気長にお付合いしてもらえたら幸いです。
165名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:39:29 ID:aw/t+pfr
うはww俺が今書いてるのもファンタジー系ww
修羅場であればいいと思うし、保管庫にも一個あるから大丈夫だと思うよ。
続き、期待してます。
166名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:45:15 ID:SXC7rL82
要はテーマじゃなくて内容(修羅場)ってことで期待しながら待ってます
そして165さんの新作も|ー゚)
167名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:45:42 ID:pXizbp11
ファンタジーイイヨイイヨー
168名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 16:24:24 ID:h4iYGUdH
ここで一句。

拷問具 拷問具大戦 拷問具。
(字余り)


お粗末様でした。
169名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 16:32:40 ID:fkxcD6ye
意味はよく分からないが、何かとんでもない圧力を感じた
170『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/11(木) 16:46:15 ID:I0JrDQAw
朝食、昼食と、志穂は食堂に来なかった。一応作ってはおいたが、全て捨てる事になった。
「う〜ん。志穂ちゃんどうしたんですょうねぇ?」
「さ、さぁ……」
片付けの途中、里緒さんに聞かれるが、答え方が見つからない。
「せ、生理とかじゃないっすか?はは、アッハハ!」
「晋也さーん。真面目に考えてください。」
「うぅ…はい。」
一応可能性のうちの一つだったんだけどなぁ。ま、原因は大体分かってるけど……。
「晋也!終わった?」
そんな事を話していると、お嬢が台所に顔を出す。……せっかちだなぁ。
「あらあら、お嬢様、こんな所に顔を出すなんて珍しいですねぇ。」
「う、うん……その、ちょっとね。」
「終わったよ、お嬢。」
全て終わらせ、エプロンで手を拭きながら近付く。だが、終わったと聞くやいなや、がしっと腕を掴み、引っ張ってくる。
「じ、じゃあ、早く行こう、ね?」
「ちょ、エプロンぐらい脱がしてくれ。洗わないと……」
「どうせ汚れるんだからいいじゃない。」
……お嬢、発言が親父臭いぞ。そんなやり取りを、里緒さんはほほ笑ましそうに見ている。
「あらら〜。まるで仲の良い親子みたいですねぇ。」
「ぐっ…親子…」
あ、ダメージ受けてる。まぁ、兄妹ならまだしも親子だもんなぁ。
「ふふふ…晋也さんも、大変ですねぇ、いろいろと。」
「ええ、大変です。いろいろと。」
「どっちにしても、後悔の無い様にしてくださいねぇ。」
うーん。里緒さんにはかなわないなぁ。
「む、晋也!里緒と話してないで、早く行くぞ!」
我慢しきれなかったのか、更に力を込めて引っ張られる。
「はいはい、行きますよ。」
あらら、ほんとに親子みたいだ。
台所を出て、玄関ホールへ向かう途中、神はそんなにも試練が好きなのだろうか。
腕を組みながら歩いてる所へ、ちょうど曲がり角で志穂とばったり……。
171『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/11(木) 16:47:05 ID:I0JrDQAw
「……」
「……」
「……」
嗚呼!イカン!!なにか会話を!!!あたふたしているうちに、お嬢が真っ先に口を開いた。
「ふふ……志穂、ご飯はしっかり食べないといけないわよ?せっかく晋也が作ってくれたんだから……勿体ないでしょ?」
あわわわわ………な、なんて挑発的な事ヲ!!一方の志穂は、お嬢をキッと睨んでいる。こ、こえぇ!!
……と思ったら、ゆっくりと近付いて来て、空いてるもう片方の腕を掴む。
んー。まぁ、ハタから見れば(見る奴もいないが)軽いハーレムだが、当事者にすりゃ生と死の分かれ道。
心臓がキリキリと悲鳴をあげそうだ。
「駄目……」
力は弱いが、その言葉からは強い意志を感じる。
「え?」
「渡さない……たとえ、お嬢でも…晋也だけは駄目!!!」
また志穂の瞳から涙が流れる。………こんな壊れそうな志穂は見たことがない。
「だ、駄目って言われてもね、晋也自身が私を選んだんだから、志穂に入り込む余地は無いのよ!」
俺の眼前で火花が散る。あ、熱いっ!!
それにしても、こんな美少女二人にここまで愛されてるなんて、ボカァ幸せです!!
「嘘!嘘よね?晋也。お嬢に騙されてるんでしょ?」
「騙してなんか無いわよ!!変な言い掛かりつけて晋也を惑わさないで!」
……すまねぇ、志穂。こうするしか…ないんだ。
「お、おう…俺が好きなのは……お嬢…だ。」
「嘘…嘘よ……いや、イヤアァァァ!!」
そう叫ぶと同時に、走りさってしまう。
「し、志穂!」
勝手に体が反応する様に、追いかけようとするが…
「ま、待って!いっちゃダメ!」
お嬢が腕を掴んで離さなかった。お嬢も泣きそうな顔で訴える。
「今、私のこと好きって言ったよね?だったら……だったら、あの女を追いかけないで、私の側に居て。晋也がいないと、私駄目なの……」
嗚呼……どっちを選んだにしろ、俺、後悔しそうだ………
172名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 16:50:42 ID:mdKTjisF
ファンタジーな修羅場もまたすばらしい。
wktkして待っているんでがんばってください。
173名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 17:51:21 ID:SXC7rL82
        ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
        (.___,,,... -ァァフ|           あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
         |i i|  }! }} //|
        |l、{   j} /,,ィ//| 『志穂派だったのに気づいたらお嬢ファンクラブに入ってた』
       i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ      
       |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |           な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
      /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人          おれも 何が起こったのか わからなかった…
    /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ         頭がどうにかなりそうだった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉        催眠術だとか超スピードだとか
    |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ       そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
   // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ     もっと恐ろしいものの 片鱗を味わったぜ…
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \
174名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 19:23:23 ID:qAEdovxY
姫様の泥棒猫っぷりに期待
175名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 20:37:09 ID:zdOB6ZBP
おいおい舞台がファンタジーで騎士団所属じゃ
結末は一つだな・・・
176名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 21:07:40 ID:P7oVZYMB
つ クーデター

こうですか?わかりません!
177名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 21:14:49 ID:ng41GlTF


ここは神が集うスレだな・・
マジで電車男並みに映画化される日がやってくればいいんだが
タモリの世にも奇妙な話みたいにタモリが司会で

今回の修羅場はとか語ってくれ最高w
178名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 21:34:54 ID:KqO3h2iY
>>164
期待の新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
姫様の登場を全裸で待ってますね

>>165
俺は一万年と二千年前から愛してた
179名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 22:44:29 ID:FFitK82r
むしろファンタジーが少なすぎるんだな
修羅場は現代だけじゃない
未来・現代・過去・異世界・平行世界と幅広いもんだ
男が一人いて女が二人いればどこでも修羅場さ!
180名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 22:55:51 ID:mdKTjisF
未来……ロボットの女の子が主人の恋人に嫉妬して(ry
過去……戦国、幕末、といった時代背景で修羅b(ry
異世界……ファンタジーしか思いつかない。
平行世界……想像できない。変わりに誰か考えて。

こうですか。わかりません。
181名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 23:00:00 ID:O5d8I9Ud
現代以外は設定考えたりすんのめんどくさいしなぁ…
182名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 23:02:14 ID:v2nL42t9
ファンタジーむしろ大好きだ
183名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 23:39:24 ID:OVCWFvxX
平行世界……向こうの世界の自分に嫉妬
184名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 23:39:52 ID:xo2Z4u18
人に恋愛感情があるかぎり、嫉妬、修羅場は、そこにある…
185名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 00:19:43 ID:2aIuC5cz
そういえば昔何かの二次SSで平行世界から来た自分と
主人公を巡って嫉妬合戦みたいなのを見た気がする
186生きてここに・・・・三章 ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 08:13:13 ID:M6twefYh
「・・・・あなたがイジメのリーダーだったのね」
その目は殺気立ち今にも飛びついて来そうだった
しかしそれをせずにあの女は私の足元に倒れている子を抱えた
「・・・・・この子おねがい」
近くに居たあの女の友達がうなずく
そして私を睨み付けた
あの女はもう一人の子を抱きかかえると私を睨み付けてその場を去って行った
「いいの、あの人・・・・流くんの」
「今はね・・・・・我慢のときなの」
熟した果実になったらたっぷり狩ってあげるよ
その綺麗な顔をズタズタに引き裂いてその皮を仁さんに贈ってあげる
醜いあなたを仁さんはもう愛してはくれない
でも、まだ熟してないから
もう・・・・そろそろかな?
187生きてここに・・・・三章 ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 08:14:19 ID:M6twefYh
悲しいな・・・・
仁くんとの帰り道
いつもは楽しいはずなのに今日は沈んでいる
私は先生に頼まれて陰湿なイジメのリーダーを探っていた
医務室から出て少し落ち着いた私は仁くんの帰りの準備が終わるまで
友達と物陰や倉庫などイジメの場所にされそうな場所を探索していた
もちろん出くわした時に報復を受けないように離れて歩く友人を一人と隣にもう一人付けて
そして・・・・見つけてしまった
主犯格が香葉さんだとわかった瞬間なぜか私は強気に出た
友達は危ないと言ったが私は引かなかった
私は怒りを抑えてケガをした二人を連れてその場を去った
医務室に付くと同時に気が抜けてひざを付いてしまった
そのあと二人は病院まで送られていった
仁くんはまだ立てない私を遅いからと探しに着てくれた
仁くんが支えてくれた
少し泣いてしまった・・・・
仁くんは理由を聞くでもなく抱き止めてくれた
188生きてここに・・・・三章 ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 08:14:59 ID:M6twefYh
その後私は仁くんに支えてもらって職員室に運んでもらった
仁くんを待たせて
先生に報告をする
難しい顔をした先生がもう一度確認してきた
私は強くうなずく
先生はわかったと言って苦笑いを浮かべた
『学生会副会長だという理由だけで頼んでしまってすまなかったあとは任せてくれ』
それを聞いて私は仁くんの元に戻った
また少し泣いてしまった
「詩織?」
仁くんが不安そうな顔で私を見ている
「なにがあったのかは聞かないけど、無理だと思ったら言ってね?」
「うん・・・・・仁くん」
もう少しがんばってみよう
私なりになにかしてもみよう
なにかあっても仁くんが護ってくれるよね?
189アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 08:15:47 ID:M6twefYh
修羅場突入か?と期待された方もう少し焦らさせてください
彼女の言うようにまだ熟していませんから・・・・
土日に投下できないので帰ってきたら急いで四章と五章を投下します
今日の分は長くなってしまいますがお付き合いください

次章 奈々 仁ちゃん略奪計画本格始動
190名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 08:29:21 ID:mdvuTjw1
奈々たんキタ━━(゚∀゚)━━!!
191『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/12(金) 14:44:30 ID:yYMb90+R
夜。
まだ必要な荷物を取りに、部屋に戻って来た。とは言え、俺の部屋自体簡素なものなので、これといって大事なものは無いが。
ひとまず小説類を(官能含む)袋にまとめ、部屋を出ようとすると……
「晋也?……いる?」
…志穂の声だ。志穂がこのドアの前に居る。
「………」
でも声は出せなかった。ここで志穂と話したら、なんの意味も無い。ただ沈黙をとうした。
「なんだ…いないんだ。物音がしたから居るかと思ったんだけどなぁ…………お嬢の…部屋、かぁ……」
トッと、ドアを軽く叩く音がする。ドアに寄り掛かったのだろうか。
「あのね……晋也……」
志穂が何か話始める。俺が居ないと思ってるから一人ごとかなんかだろう。……何でも言ってみなさい。返事は出来ないけど、聞いてあげるから。
「さっき……晋也が……お嬢が好きだって言ったの、本当……なのかな?
………あの時、私が晋也だけは譲れないって言ったのは……本当だよ?私、晋也がいないとダメなんだ………生きていけないよ。
そんな事、本人の前では言えないけどネ………今日一日、晋也と話せなくって……いつもみたいに馬鹿できなくて……初めて、わかったの。でも、もう遅かったかな
?晋也は、わ、私の、手の届かない所に…グス…行っちゃったのかな?……うぅ…えぐ…ぐす……」
涙声が混じり、しばらくの間嗚咽が漏れる。
「………小さい頃から…お嬢や…里緒さんや…晋也も私も…いつも一緒で……楽しかったんだけどなぁ……
やっぱり、いつまでも続く関係じゃなかったんだよね……結局、私の負けってことだったんだね。」
ごそごそと、何かを探る音がする。ドア一枚しかないからよく聞こえる。
192『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/12(金) 14:45:15 ID:yYMb90+R
「このナイフさ、初めて晋也からもらった誕生日プレゼントなんだ。……覚えて、無いよね……これ、ずぅーっと身に着けてるんだ。着替えても、お風呂入る時も、寝る時も。
なんか、すぐ側に、晋也が居る様な気がして、嬉しくなっちゃうんだ。」
忘れやしない。覚えているとも。あれは、志穂の七歳の誕生日。六月七日。暑い夏の日。
あの前日、俺は初めて誕生日にプレゼントを送ると言う事を知った。……今まで自分の誕生日にプレゼントを貰った事が無かったから、知らなかったんだ。
もう日が無く、俺は焦りまくった。部屋にあるガラクタをあげても失礼だと思い、なけ無しのお金をかき集め、下町まで行ったんだ。
あの炎天下の下、何時間もかけて歩いた。いや、死ぬかと思ったね、うん。それでやっと着いた店で買ったのがあのナイフ。
意識朦朧としていて、なんでナイフを買ったのかは覚えてねぇや。
あの死ぬ様な思いをして以来、志穂にプレゼントをあげた覚えなんてない………
「あの日、お嬢と里緒さんからもプレゼント貰ったけど………晋也プレゼントより、何倍もよかったものだったよ。」
わるぅございましたネ!
「でも、でも!晋也から貰ったっていうだけで、何よりも大切なものだった…………
でも、もうこれは持っていられないや………晋也が…うぅ…お嬢が好きだって言うんなら…ぐす…これを持ってても、辛いだけだよ…ぅ……」
厚い、このドアは果てしなく厚い。いますぐ飛び出して、抱き締めてやりたい。
「後悔の無い様にしてくださいねぇ。」
里緒さんの一言が脳裏に浮かぶ。いまここで部屋を出たら、後悔するだろうか………
そう悩んでいると、カランと言う音の後に、志穂が走り去る音がした。
そっとドアを開けると、案の定志穂の姿は無く、そこにはナイフが残っていた。
「ばっか……忘れもんだぞ。」
そっとナイフを拾う。
まだ少し暖かい。ずっと…ずっと身に着けていたと言う事がわかる。
「あぁ……俺は……どうしたら。」
どうしたらいいんだよ!!!俺!!!!!!
193名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 15:10:31 ID:ZJ2h+6p1
晋也カッコヨス
194名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 15:20:45 ID:sTbx/EYe
ハーレムって現実ではどっちかというとあり得ないと思うんだが
修羅場ってのはハーレムより現実的だよなぁ
どっちを選ぶかという葛藤が心の琴線にふれるよなぁ

感動あり怒りありの修羅場最高!!
195名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 15:26:52 ID:vRLy32hK
男一人対女複数の場合は正直男の立場なら好き勝手にやらせてもらえればそれに越したことはないがそれを許さないのが女クォリティ。
ただそれは同シチュエーションで性別逆にしても成り立つが。
196名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 15:34:41 ID:6fdjYhc8
ちょっと前にタイの双子姉妹と結婚した男のニュースがあったが、
ハーレムウラヤマシスとは思わずこれから展開されるであろうめくるめく
修羅場にwktkした奴、先生は怒らないから正直に手を挙げるんだ。

ノシ
197名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 16:24:27 ID:k4a4VqQz
ノシ
ハーレムは常に修羅場化の因子を孕んでいるのだよ!
198名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 16:46:34 ID:fvA3J68G
>>197
それには同意せざるを得ないw
199名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 16:59:27 ID:Kap2nQsW
>>196-198
よぉ俺
200名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 18:29:37 ID:fvA3J68G
このスレを見てたらしばらく沸き起こらなかった創作意欲が噴水のような勢いで出てきたから困る
201名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 18:48:23 ID:mzo3XxwF
>>196
俺はあのニュースを見たときNatural2を思い出した。
アナザーワン2は館モノの修羅場ゲーらしいが、やはり館という閉鎖空間には人を修羅場へと駆り立てる魔力があるのだろうか。
202名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 19:11:19 ID:6fdjYhc8
>>200
あ、あの、わたし全裸で待ってます…から…。
203アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 19:17:51 ID:M6twefYh
どうしよう!
まだドレスが決まらない
一番大事な人を呼んだんだよ?
半端なものは着れないよ
でも・・・・・どれもいまいち
もう時間が・・・・当に過ぎている
トントン
ノックされた
「まだで〜す」
「時間なんてございません!」
強い口調のお手伝いさん
これはワガママ言ってられないかな?
「すいません、着替えを・・・・手伝ってくれませんか?」
数秒置いて「お邪魔いたします」とお手伝いさんが入ってきた
お手伝いさんは散乱するドレスを見て呆れがちに肩をすくめた
私は結局一番のお気に入りのドレスを選んだ
手早く着付けを始めるお手伝いさん
「いつもは着るもので迷ったりしないのに、どうしてかしら?」
くすくすと笑みながら前に回ってくる
私より人生経験の豊富なこのお手伝いさんの女性はなんでもお見通しのようだ
「お化粧・・・・してみますか?」
私は力強くうなずいた
するとお手伝いさんは待っていましたとばかりに化粧道具を取り出した
手際よく化粧が施されていく
少しは綺麗に見えるかな?
喜んでくれる?仁ちゃん・・・・
子供が化粧してるって笑うかな?
それはないか
だって仁ちゃん、いじわるも言うけどデリカシーに欠けることは言わないものね
204生きてここに・・・・四章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 19:18:57 ID:M6twefYh
「自信を持ってください、あなたはとても魅力的な女性ですよ」
自信か・・・・でも、どうしても詩織さんに対しては
あの人以外なら?でも基準はどうしても彼女になってしまう
もしかして勝つ必要ないのかも
そうだよ、私は私だもんね
いくら願っても彼女にはなれないし
なれたとしてもごめんしたい
私は私なりに仁ちゃんにアプローチしてみよう
準備が終わり私は勇んで立ち上がる
不意に窓の下に仁ちゃんを見つけた
なんか・・・・正装してると別人みたい
もちろん仁ちゃんはなにを着ていても似合うけど
なんかどこかの国の王子様・・・・
と、思ったらやる気なさげに持っていた袋を置いてため息を付いている
少し不真面目なんだよね・・・・仁ちゃんは
でもね、ボクシングをしている時の仁ちゃんはとても真剣な目をしている
その瞳に何度も吸い込まれそうになった
試合は正直・・・・こわい
仁ちゃんが殴られる度に目を閉じてしまいそうになる
でも、勝った時のあの表情は言葉では表せないほど充実感に満ちている
私は自然と笑みを浮かべていた
205生きてここに・・・・四章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 19:20:22 ID:M6twefYh
私は部屋に置いてあった袋を持つと駆け出して階段を降りる
そして人ごみを通って行く
途中私の存在を気づかれたが私は気にすることなく駆けていく
後姿を確認して深呼吸する
意を決し声を掛ける
「じ〜ん・・・・・ちゃん!
いつものようにそう声を掛け仁ちゃんの背中にダイブ!
しっかりと首に手を回して絡める
ああ、幸せ・・・・
いけない、いけない・・・・これじゃあ、仁ちゃんが困ってしまう
「ちゃんはやめろ」
私は渋々ほんとに渋々と仁ちゃんから離れた
「仁ちゃんは・・・・仁ちゃんだよ」
いつもどうりだね?
でもね私って意外とめざといんだよ?
仁ちゃんってば頬をかくふりして赤くなってるの隠してる
「え、へへ・・・・どうかな?」
回転してみせる
私だってやればできるんだよ?
どう、女の子らしいでしょ?
お・・・・今度は隠せないよ
真っ赤かだ
でもついカワイイなんて口にはしないよ
だって男の子なんだもんね・・・・私ってそういうのわかってるよ
「な〜に、赤くなってるのかな〜?」
仁ちゃんは顔を背けてぶっきらぼうに袋を手に持って私に渡した
「ほら・・・・お望みのものだよ・・・・お姫様」
お姫様だなんてそんな・・・・
いけない・・・・・いけない
私はすぐにそれを受け取ると袋を破って中身を確認する
「おぉ〜!ボクシンググローブだ!」
ああ、やっぱりやさしいね、仁ちゃんは
私ね仁ちゃんがこれをくれるなんて思ってなかったよ
だからね、期待しないで待ってたの
だって、一番大事なものだよね?
一緒にずっと戦ってきたんだから
一番輝いている仁ちゃんが身に着けているモノ
すりすり・・・・仁ちゃんの匂いだ
胸がいっぱいだよ
「ありがとう〜、ありがとうだよ〜・・・・」
泣いているのを自覚しているけど・・・・
いいよね?
206生きてここに・・・・四章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 19:21:48 ID:M6twefYh
本当にうれしいよ・・・・ああ、そうだお礼にって買っておいた
「あ、そうだ・・・・これ」
私はいま思い出したかのようにそう言って仁ちゃんに袋を渡した
仁ちゃんは不思議そうに袋を見ている
「なんだこれ?」
「開けてみんさい・・・・」
驚くよ?好感度アップだよ?
ほら、早く開けてみてよ
絶対にビックリするから
なんだか私の方がわくわくしてるみたい
でも好きな人の喜ぶ顔ってなによりも嬉しいんだよ?
中身が私にも確認できた
よし今だ!
「じゃじゃ〜ん!新しいボクシンググローブ!
どう?ビックリしたでしょ?嬉しい?
「俺が前から欲しいって思ってた・・・・」
そうなのです、私は仁ちゃんのことに関しては鋭いのです
前に一度仁ちゃんがぼんやりと見ていたカタログ
こっそり後ろから見てみると
その視線はある一点に集中していた
青と白のカッコいいやつだ
ちゃんと心も込めたよ
だってそのグローブはね
私が自分で探して買ったんだから
お金もね、お手伝いさんのお手伝いしてお小遣いという感じで貯めたものだよ
仁ちゃんを見つめる
ああ、喜んでる喜んでる
よかったな〜♪
私にとってはこれが最高の誕生日プレゼントだよ
仁ちゃんも私を見つめる
いやん、照れるな・・・・
あれ?私のこと不思議そうに見てるだけ?
ああ、そうか・・・・どうしてわかったのか・・・・でしょ?
だってわかるよ
ずっと見てるんだから
あなたのこと
「仁ちゃんのことならなんでもわかるよ」
ね、仁ちゃん・・・・
207アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 19:23:06 ID:M6twefYh
六章もほぼできたのですが、どうしましょうか?
あとは簡単なので皆様が長くてダレテしまわないのなら投下します
もう少ししたら五章も投下します

次章 仁 戸惑い
208名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 19:45:00 ID:H81BS4gu
ドンと来ーい!!
209名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 20:47:46 ID:2aIuC5cz
仁君果たしてどちらに転ぶのかしら・・・
ボクサーでも流石に刺されたら死ぬよね (´・ω・`)
210アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 20:59:32 ID:M6twefYh
料理はなかなかのモノに見える
手をつけようとしたが高田さんが咳払いをしている
まだ・・・・だめ?
「主役が来ていないのですよ?まだ我慢です」
言ってもいないのに答えてくれた
すごいなこの人・・・・
俺は退屈になって大きな窓をまたいで外に出た
プライベートプールのある庭に出ると俺は手に持った若干大きな袋を地面に置いた
「・・・・・・」
こういうパーティーはもう何度目だろう?
多すぎてわからないよ・・・・まったく
会場の方を見てみる
知っている人が大勢だ
みんな暇だな
俺も・・・・だけど
「じ〜ん・・・・・ちゃん!」
後ろから飛びつかれる
そして首に両手を絡めてしっかりと抱きついてくる
「・・・・・う」
背中の感触・・・・・に俺は一瞬戸惑った
冷静に・・・・冷静に・・・・だ
「ちゃんはやめろ」
「仁ちゃんは・・・・仁ちゃんだよ」
身体は離れていくのを感じた
振り返ると俺は一瞬にして時間が止まったような錯覚を覚えた
「え、へへ・・・・どうかな?」
クルッと回転してピンクの綺麗なドレスを見せてくれる
肩ほどまでの髪がひらっと舞う
ドレスを着るとまた違った印象を受ける
女の子らしい容姿の彼女は普段着もそんな感じだが
今はうっすらと化粧を施して綺麗なドレスを着てる
「・・・・・っ」
思わず声が出てしまった
もしかして・・・・奈々さんはあと数年したら化けるかもな
数年どころか今も・・・・充分
何を考えているんだ俺は
美人を見慣れてる俺でも一瞬目を奪われてしまった
やるな奈々さん・・・・
211生きてここに・・・・五章 ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 21:00:54 ID:M6twefYh
「な〜に、赤くなってるのかな〜?」
からかいがちに顔を近づけてくる
どうやら中身はそう簡単には変わらないらしい
「ほら・・・・お望みのものだよ・・・・お姫様」
適当な感じでそれを渡す
ごまかした感がするがこれはいつも奈々さんがやってることだ
文句は言わせない
「・・・・・?」
奈々さんは一瞬きょとんしたがすぐにハッとして袋を破っていく
破るのかよ・・・・その服で・・・・まったく
「おぉ〜!ボクシンググローブだ!」
高らかにボクシンググローブを空に向けて大げさにリアクションする
すぐに頬にすり寄せる
なにをしたいのか・・・・まったく
「ありがとう〜、ありがとうだよ〜・・・・」
今度は泣いている・・・・コロコロと表情が変わるな
やっぱりどうしても詩織と比べてしまう
悪いとは思いつつも・・・・
「あ、そうだ・・・・これ」
なぜか俺が渡した袋と同じくらいの袋を渡された
「なんだこれ?」
「開けてみんさい・・・・」
奈々さんと違って俺は丁寧に袋を開けていく
中身を確認・・・・・
「じゃじゃ〜ん!新しいボクシンググローブ!」
胸の前で両手を合わせて声を張り上げる奈々さん
これって・・・・まさか!
「俺が前から欲しいって思ってた・・・・」
前にぼんやりと見ていたカタログの目に止まった物だ
まさかあれを見てたのか?
でも数ある中でこれを選んだとは思えない
俺がこれがほしいと知っていたんだ
目の動きだけでわかるなんて・・・・すごい洞察力だな
「仁ちゃんのことならなんでもわかるよ」
どうやら俺は顔に出てしまうらしい
以後気おつけよう
212アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 21:08:12 ID:M6twefYh
なんかすごいですね、最近の神々の投下数・・・・・
自分も頑張らねば
ラブコメ展開ばかりですいません
少しネタバレですが今手を掛けている十章からある女性が目覚めます
十章あたりまでご堪忍を・・・・
六章・・・・・投下よろしいですか?
213名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 21:12:53 ID:sLDBgZAA
OKOK
214名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 21:37:30 ID:VfJkFdpI
気にせずどんどん投下してくださいな〜
楽しみ楽しみ(´∀`)
215生きてここに・・・・六章 ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 22:48:45 ID:M6twefYh
「今日って・・・・誰の誕生日だっけ」
不思議そうに私を見ている仁ちゃん
あ・・・・そうだった
今日は私の誕生日だった
「えっと・・・・・あ、そうだ!二年前のお礼だよお礼!」
適当にごまかすこともできずに私は一番妥当なことを言った
「二年前?・・・・・そんなの・・・・・いいのに」
そう言ってまた中身を見つめ微笑んでいる
よかった本当に喜んでくれているみたい
その顔を見るために頑張ったかいがあったよ
仁ちゃんの目・・・・・キラキラしている
普段は落ち着いていて大人っぽいのにね
好きなことになると子供のような顔をする
「おお!すっげーカッコいい!」
仁ちゃんはようやく袋から中身を出して早速とばかりに手に着ける
そしてファイティングポーズを決めた
ああ、カッコいい
でも・・・・その衣装じゃ・・・・
この言葉は心に留めておこう
仁ちゃんに恥なんてかかせられないよ
・・・・・でも、なんかいいなこういうの
周りが見たら・・・・恋人に見えるかな?
「奈々さん?」
ボーっとしている私に仁ちゃんがそう声を掛ける
奈々さん・・・・か
最初は苗字にさん付けだったので
それは嫌と言うと仁ちゃんは私を奈々さんって呼ぶようになった
ここは新密度・・・・アップしてもいいよね?
「仁ちゃん、私ね・・・・もう一つ欲しいものがあるんだ」
「ちょ・・・・俺ほかになにも・・・・」
そんなことじゃないよ・・・・簡単なことだよ
「これからは奈々って呼んで?」
仁ちゃんは少し頬を赤く染めた
抵抗があるのかな女の子を呼び捨てにするの
でも、あの人の事は詩織って呼んでるし
やめよう、やめよう今はあの人の事を考えないようにしよう
「それはちょっと・・・・」
「拒否権はありません」
そうだよ、もっと積極的に
仁ちゃんがこんな些細なことで私を嫌ったりする訳ないし
ここは強気だよ・・・・うん
216生きてここに・・・・六章 ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 22:49:22 ID:M6twefYh
「な・・・・・」
頑張って仁ちゃん!
もう少し・・・・もう少しだよ
「な・・・・さん」
ああ、もう・・・・仁ちゃんってば
いつのならこの頬を赤く染めた仁ちゃんを見るだけで満足して
「もういいよ」って言っていただろう
「はい、もう一回♪」
耳まで真っ赤にした仁ちゃんは空を見上げて思い切り深呼吸した
「な・・・・・な!」
ああ、嬉しい、嬉しい、嬉しい!
「じ〜ん・・・・・ちゃ〜ん!」
思いっきり抱きつく
ああ、仁ちゃんはやさしいな・・・・もう
でも・・・・あれ?
仁ちゃんが倒れていくよ・・・・私たちっていま
「どわ!」
「きゃ!」
そうだった後ろはプールだった
私ってばなんて事を
頭からのダイブだったので二人ともびしょ濡れになってしまった
「ごめんね・・・・・仁ちゃん」
仁ちゃんは肩をすかして「まあ、いいよ・・・」と言ってくれた
仁ちゃんの顔・・・・近いな
少し近づけばキスできちゃうよ
本当に綺麗な顔
水も滴るいい男だね仁ちゃんは
ああ、はやくその唇で私のファーストキス奪って欲しいな
それとも奪っちゃっていいですか?
顔が熱くなるよ
思わず下を向いてしまった
あれ・・・・・?
あぁーーーーー!
「仁ちゃん!」
思わず仁ちゃんに抱きついてしまった
仁ちゃんは何がなんだかわからずにあたふたして後ろの窓の方を振り返った
誰も見ていないのを確認すると仁ちゃんは、はぁ・・・・と息を漏らした
「きゅ・・・・急にどうしたの」
217生きてここに・・・・六章 ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 22:51:43 ID:M6twefYh
「あのね・・・・・このドレス生地・・・・うすいでしょ?」
それを聞くと仁ちゃんは顔を真っ赤にして下を見ようとしてやめた
いちよう胸の部分にはパットを入れていたけど
飛びこんだ勢いでずれてしまったみたい
仁ちゃんが壁になって窓の向こうの人には見られてないけど仁ちゃんが動いちゃったら
仁ちゃん以外に見せるなんてできない!
だから仁ちゃん・・・・私を護って・・・・
「見られるなんて嫌だから・・・・ね?」
「ああ・・・・わかってるよ」
仁ちゃんは私を抱きしめるとそのままゆっくりとプールの端まで運んでくれた
難関はここだ
どうしよう・・・・
不安そうな私をよそに仁ちゃんは少ししゃがむと私を抱きかかえた
お姫様抱っこだ・・・・
「片手が使えないからしっかり捕まっていてよ」
私はうなずくと力強く抱き付く
そのときに少しだけ仁ちゃんに胸が見えてしまったみたい
瞬間に仁ちゃんは真っ赤になった
でもすぐに頭を振って目を細めてむずかしそうな顔した
この反応って・・・・少しは私のこと意識してくれてる?
だったら嬉しいな
そんな私をよそに仁ちゃんはプールサイドに手を置いて深呼吸する
反動をつけて飛んで仁ちゃんはプールサイドにお尻を乗っけた
少し痛かったけど災い転じて福となすかな?
仁ちゃんのぬくもりを私はいま世界で一番感じることが出来る
ああ、幸せ!
この時間が永遠ならいいのにな・・・・
218アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/12(金) 22:53:11 ID:M6twefYh
今日は土日投下できないぶん多くなってしまいました
ここまで読んでくださった方、お疲れ様です
毎日投下を目標に始めましたが、どう考えても土日は無理なことに気づきました
これからも平日は毎日投下いたします金曜日少し多くなるかな?
前のレスで言いましたが十章に手を付けているのですが
三十章以上いくんじゃないの?
まだ構想の半分も行っていません
応援のレスありがとうでございますです
長々すいません・・・・・毎回レスをくださるのでつい嬉しくて
では次回は月曜に投下します

管理人様お疲れ様でございます
早速要望を聞いてくださり感謝です

次章 奈々ちゃん行きます!
219名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 23:18:46 ID:DncSRbSW
>>218
GJ!!奈々カワイイヨ奈々(*´Д`)ハァハァ 詩織の居ない所で地道に親密度アップをするのが健気だ
こういう嵐の前の静けさというか前兆の兆しみたいな空気好きだなぁ

今の鬼のような更新速度は少々心配してたので無理はしないでくださいね
無理をしない限りどんどん書いちゃってください!
220名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 23:56:57 ID:7uA8NkqP
両想い、相思相愛の相手がいるのにその娘と付き合えず別の娘と付き合う
そう言う意味では晋也も祥ちゃんも同じ筈なんだけど反応全く逆だよねw

素直で不器用なやつは好かれ、策を弄するヤツは嫌われるってことか
221名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 00:09:48 ID:YTyKuPk8
素直で不器用な子なんていたっけ?
222名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 00:14:20 ID:/AhDGaNj
俺ちょっと思ったんだけどあまり一人の神が頻繁に投下すると他の神が投下しにくくならないか?
以前とあるスレで一人の神が頻繁に投下していたために他の神の作品が以前に比べて少なくなっていったのを思い出したんだ
今ではそのスレは以前と雰囲気が変わっちまってるんだよ
だから修羅場スレはそうなってほしくないし・・・

他の神にも聞きたいんだがもしかして作品が出来ているけど投下しにくいから投下していないなんてことになっていないよな?
それが俺の危惧していることなんだよ

俺の思い過ごしだといいんだけど心配しすぎか?
223名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 00:18:34 ID:yGy3HkzF
噴水のように湧き出てきた衝動に任せて制作ちう
まだ文章に起こせるほど構成練りきれてないけど('A`)


文章に関してはあまり人に見せたことないしほとんど初心者だから技術的なものは全くない。
そんな俺だけどこのスレは受け入れてくれるのだろうか…
224アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/13(土) 00:24:50 ID:5aQiEEeH
>>222
もしそうなのだとしたら・・・・神々の皆様、申し訳ありません
225名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 00:34:07 ID:tdpRb+A+
>>224
大作はロダ張りのほうがいいかも

まっケータイ組は嫌かも試練が
226名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 00:43:57 ID:gqFy+MZs
>>222
あんまり人の作品へのレスが多いときはちょい躊躇う。
しかしそんな時俺の中のアニマの修羅がな…
227名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 01:18:51 ID:KZm0Mbmp
>>222
神々ならば
「なによ、このスレはあなたのモノじゃないんだからね!」
と対抗意識を燃やして投下してくれる……俺はそう信じてます。

>>223
スレの趣旨に反しないものであれば投下に遠慮はいらないと思う。
書かなきゃ文章力も向上してかないし。
気になるようならば書きあがった後すぐ投下せずに何日か推敲しながら暖めてみては?
228名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 01:23:06 ID:/M5ASdAi
俺の読解力が低い為にアビス神の作品は誰が語っているかわからなくなるのが悔しい
あと最高に綺麗なENDを見せたわたあなが一番好き
忙しいといってた神がエロエロ外伝を投下してくれるのを待っています・・・裸で
229名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 01:36:44 ID:/M5ASdAi
あとモカさんという栄養分が与えられなくてひからびそうです
230名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 01:47:22 ID:ChWLwfT/
>>99
>>姉さん曰く「よその泥棒猫の手垢のついた食べ物」
>>――たぶん添加物とか合成着色料を使った外食のことだと思うのだが


ちょっと吹いたww
山本くん・・君は優柔の主人公並に天然ですかw
231名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 03:23:53 ID:ngzGjjuj
絵師は今のところ4人か。
232もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/13(土) 04:26:35 ID:h+4LdaG6

……もう、家にはいたくなかった。これ以上家にいてもわたしが傷付くだけ……。
それに、わたしがいたらお兄ちゃんに迷惑がかかる。
妹は人殺し……。そんな事知れたらお兄ちゃんは一生汚名を背負っていかなくちゃならない。
わたしのせいで、お兄ちゃんの人生を狂わせてはいけない。
そして何より、わたしは最後までお兄ちゃんの妹でいたいから……。
でも、わたしにも一言だけ言わせて。
わたしは、濡れて携帯が使えなくなる前に一言だけお兄ちゃんにメールを送った。


今、わたしは雨の中を傘もささずに、行くあてもなくさ迷っている。
少し前まで傘はもっていた。わたしが円香さんを殺した時にもっていた折り畳み傘を。
それはわたしの家の近くの道路にポツンと落ちていた。
少しホッとした。恐らく、これでわたしに繋がる証拠は消えた。目撃者もまずいないだろう。
わたしが捕まるようなことはなくなったわけだ。

だけど、だからといってわたしの罪が消えたわけではない。

円香さんを殺したのはゆるぎない事実だ。だからこれからわたしは重い十字架を背負って生きていかなくてはならない。
そんなこと今のわたしに出来るのだろうか?

あの傘は近くのコンビニに棄ててきた。血は雨のおかげで流れ落ちていたけど、円香さんの血の臭いがしそうで嫌だったから。
そのせいでせっかく着替えた服も再びビショビショになり、わたしの肌に張り付いていた。
靴も完全に浸水し、グチュグチュと嫌な感触をわたしに残している。
そして、冬の冷たい雨は、わたしの体の芯まで凍えさすようであった。
しかし、それでもなお、わたしには歩くしかなかった。もとより帰る場所なんてないんだから。


233もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/13(土) 04:29:09 ID:h+4LdaG6

あの橋には数台のパトカーと、かなりの数の野次馬が集まっていた。
まるでドラマのワンシーンのような光景。しかし、わたしにはそれを群がる野次馬のように客観視することは出来ない。
近付いたらそのまま絡めとられるような気がしたから。
だから、わたしは下を向き、なるべくそちらを見ないようにして歩いた。
しかし視線を落とした地面には、雨水に紛れた赤い液体が反対の歩道を歩くわたし付近まで流れてきていた。
その血は、あの時の光景をフラッシュバックさせるのには十分過ぎた。
蘇る肉を裂く感触と視界を染める赤く暖かいシャワーの光景。

胸が締め付けられる。
そんなわたしの姿を流れる血に姿を変えた円香さんが笑っているような気がした。
身を凍らす物理的な寒さじゃなくて、まるで魂だけを凍りつけるような寒さがわたしの体に染み渡り、ガクガクと体の中が震えだした。

だから、逃げた。わたしの心が凍りつく前に。
だから、走った。辺りをつつむ不安を払拭するために。


走るスピードが上がるにつれ、今までより雨足の強まった雨は容赦なくわたしの顔にうちつけ、わたしの視界を奪っていった。

聴力につづき、視力も奪う行動。
それは夜の闇にすーっと溶けていく不思議な感覚だった。
今なら、人間が火を発明した理由がよくわかる。
確かに、そこには未知なる恐怖が潜んでいた。

しかし、それでもわたしは走るのをやめなかった。本気で死んでもいいと思ったから。


はぁはぁはぁはぁはぁはぁ。
もうどのくらい走っただろうか。
いつのまにか体はほのかに熱をおび、疲労による全身に広がる倦怠感がまさにピークになろうとしていた。
しかし丁度その時、わたしの足先に何かが引っ掛かり、ガクンとわたしの視界を下げさせる。
全身に痛みが走り、わたしは地面にはいつくばるように倒れていた。

道の水溜まりが、わたしの熱を奪っていくのが分かる。
それはまるで、夜のプールにプカプカと浮かんでいるような不思議な感覚だった。
234もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/13(土) 04:32:06 ID:h+4LdaG6

水溜まりがわたしの熱を頭のてっぺんから、足のつまさきまで奪っていくと、後に残ったのは不思議と孤独感だけだった。

気が付けば、わたしは何故走っていたのか?
そう思うほどさっきの不安は嘘のように消え去っている。
そして不思議な事に、今まで見えなかった自分の姿までも見えるようにもなった。
もっとも、それは一度冷静になった頭を再び混乱させることになるのだが……。

闇が消え去り、街のネオンがぼんやりと辺りを照らしだす。

わたしは自分が今何処にいるのか知りたくて、何気なくキョロキョロと辺りを見渡した。
すると、視界の先にボンヤリとだが人影が見えてきた。
何やら、しきりに何かを叫んでいるようであったが、わたしにはそれが聞こえなかった。
音は宙を舞うばかりで、決してわたしに届くことはない。
ただ、歪む人影がわたしの後ろを指さしていることだけはかろうじてわかった。

わたしの後ろに何かあるのだろうか?
そう思うと、急にそぉっと背筋に冷たい何かがつたった。嫌な予感がする。
その気配におされ、わたしはほとんど条件反射で後ろを振り返った。

圧倒的なスピードと、大きさ。正に鉄の塊と呼ぶにふさわしい物体が路面にタイヤを擦らせながら近付いてきていた。


そこで、初めてわたしは自分の置かれた立場を理解した。
わたしが、いつのまにか道路のど真ん中にいることを。

何とか逃げ出さなきゃ。
わたしは、何とかこの場を逃げ出そうとしたのだが、転んだ時に足をくじいてしまったようでうまく立てない。

迫りくる恐怖は確実にわたしを捕え道路に縛りつけた。
嫌、嫌だよ。やっぱり、やっぱりわたし死にたくない!!

さっきの覚悟はどこえやら、わたしはいつのまにか助かる事だけを考えていた。
しかし、いくら考えても妙案は浮かんでこない。
235もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/13(土) 04:33:30 ID:h+4LdaG6

その間にも、鉄の塊にふんした死神は水しぶきをあげながら近付いてくる。

誰か助けてよ!!
お兄ちゃん!
……お兄ちゃん、助けて!!

鈍い衝撃のあと、わたしの体が宙を舞った。

地面に叩き付けられるまでの僅かな間に、わたしは走馬灯とかいうやつを見た。
生きていた記憶の回忌。本来ならわたしに関わるいろんな人が出てくるハズだった。
しかし、出てきたのはわたしとお兄ちゃんだけ。
お母さんもお父さんも友達も出ない。
ただ、わたしとお兄ちゃんだけで紡ぎだすストーリーが延々と繰り返されていた。


……そうか、結局わたしは死んでもお兄ちゃんだけなんだね。


……ずるいよ。
236もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/13(土) 04:37:09 ID:h+4LdaG6

純也は変わってしまった。

茜ちゃんがトラックにひかれて死んだ後から純也は文字どうり抜け殻になっていた。
何を言っても、何をしても笑わない。口数もほとんどなくなった。
そして、何より変わったのは純也の周りに女の影がちらつきはじめた事だ。

純也は責任感の強い男だ。きっと、妹の死を全て背負ってしまっているのだろう。
だから、純也は女に逃げた。
常に世界を意識し、体調面を誰よりも気遣っていた純也はもういない。



妖精、兵藤純也のいない全国大会は予想通り一回戦敗退。
俺たちサッカー部が夢見た舞台はわずか一試合で終わってしまった。

泣き崩れる俺たちの中で一人だけ遠くを見つめていた純也がすごく印象的だった。


大会終了後、純也は学校を中退し単身イングランドへと渡った。
最初はレベルの差に戸惑っていたみたいだが、最近では完全にレギュラーに定着し、そこそこの活躍を見せている。
それでも、俺には高校時代の純也と重ならなかった。
機械のように単調なプレーに終始するだけのプレーヤー。俺が知ってる妖精は死んでいた。

純也の活躍が日本でも目立つようになると、数々の新聞、雑誌に女がらみの記事がのりだした。
コーラの泡のように湧き出ては消えていく女の影。
純也は全てから逃げたんだ。



去年の純也は何時になく好調だった。
ワールドカップを見据えての事だろう。純也は順調に得点を重ね。ウインターブレイク前の時点で得点ランキング第二位。アシストランキングでは堂々第一位に立っていた。

今思えばそれは、星の最後の瞬きだったのかもしれない。

……この年の十二月。雪の降るロンドンの自宅で純也の変死体が発見された。
享年20歳。
237もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/13(土) 04:38:30 ID:h+4LdaG6

葬式の席に俺は友人の一人として参加していた。久しぶりに集まる元サッカー部の面々。
一瞬あの時の空気が流れたように思えたが、それは気のせいのように思う。
どうしても、俺たちの輪の中心にいるべきヤツが一人足りないから……。

もう、あの頃には戻れないんだな……。
最後のお別れにと思い、棺の中の純也の顔を見た。
その顔を見た時、今まで踏ん張っていた俺の両目からとめどない涙があふれた。
純也は………苦しそうだった。
全然安らかな死顔じゃなかった。


きっと、純也はずっと罪の意識にさいなまれてきたんだ。
一人で全てを背負いこむ毎日はさぞ、苦しかっただろう。さぞ、つらかっただろう。さぞ、寂しかっただろう。
それでも、たった一人異国の地でコイツはずっと闘い続けてきたんだ。

純也が女に溺れた理由が少しわかった気がした。
確かにやっていけないよな?何かに溺れないと不安で不安でしょうがなかったんだろ?

けどな、純也。
最後くらい……笑えよ。
やっと楽になれたんだぞ?もう苦しまないですむんだぞ?
最後くらい俺たちの知ってる妖精に戻ってくれよ。


純也の遺品の携帯。俺は特別にそれを見せてもらった。
高校時代からの純也の愛用品。
メールの受信ボックスはいっぱいだったが、最後のページに妹からのメールが一通だけ残っていた。
日付は丁度あの事故の日。恐らく彼女の最後のメールだろう。
俺は震える手で携帯のスイッチを押した。そして携帯のディスプレイに写る文字を確認した時、俺は純也が狂った理由を完全に理解した。

そこにはたった一言だけ、こう書いてあったから。




愛してたよ
238もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/13(土) 04:49:57 ID:h+4LdaG6

以上で終りです。
結局、円香、茜に続き純也くんもあぼーんです。

本来の話ではハッピーエンドになる予定でしたが(実は先にエンディングを書いていた)スレ的にハッピーエンドはいかんだろうと、途中で無理矢理ストーリーを変えました。

それで軽いバッドエンドになったわけですが、どうせなら最高にバッドエンドにしてやろうと、ブルガリアに負けた後で悔しさのあまり再び修正しました。

純也視点では書かないと決めておりましたので、最後はとあるサッカー部員視点です。
分かりづらくて、すいませんm(_ _)m


さて最後になりましたが、最後まで私の駄文に付き合ってくれた皆様、並びに超不定期更新ながらまとめてくださったまとめサイト管理人様ありがとうございました。

このスレは最高です。
239名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 05:04:10 ID:KZm0Mbmp
>>238
お疲れ様です。
全滅エンド……南無。
本来の話の投下もあるんですよね?
240名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 05:20:35 ID:hAc8TUqp
お疲れ様です 毎回とても楽しませて頂きました
投下確認のたびにキター!と素で叫んでたぐらいに

バッドエンド胸を深々とえぐられましたorz
ハッピーエンドVerもあるならそちらも是非お願いします
アナザーエンドもこのスレでは常套ですから何の問題も無いはずですし
241義姉 第13回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/13(土) 05:23:06 ID:flLubnKK
        *        *        *
『士郎』

 右手がゆっくりとモカさんの髪を梳い続ける。
 誰かの髪の毛の梳いてたのはいつ以来だろう。母さんと一緒に寝ていた頃は毎日の様にしていた。そして、いつの頃からか一緒に寝なくなった。
 時々一人で眠るのが怖い時があった。お母さんの所へ行きたくても中途半端なプライドが邪魔した。そんな自分を見て気づいたのか姉ちゃんは一緒に寝るように誘ってくれた。そして姉ちゃんの髪を同じように触らせてもらっていた。
「士郎君、私の事好きだよね?」
「――はい」
 今頃になって隣で寝ているはずの姉ちゃんが気になった。モカさんはぐっすり眠っているからって言ってたけど、結構音立てたんだから起きてもおかしくない。
 でも、いいんだよな、これで。姉弟なんだからああいった関係を続けていていい訳がない。
 それに、ただ誰かに傍にいてくれるだけで心地いい。
「士郎君の匂いって涼子と似ているんだね」
 全身がビクッと跳ねた。後ろめたい事実を突きつけられている。
「あ、シャンプーとか同じの使ってるからか」
 軽く笑いながらモカさんも同じ様にオレの髪を梳く。
 大丈夫、何も気づかれていない、知られていない。心臓の鼓動は直ぐに落ち着きを戻し始めていた。
「じゃ、私一旦帰るから――それから、またしようね」
 唇が頬に触れるだけの少しこそばゆい優しいキス。
 そういえば姉ちゃんとはこんなキスはしたことがなかった。情欲だけの貪るキスだけ――

        *        *        *
『モカ』

 士郎君から離れるのは名残おしいけど、別れのキスをしてから涼子の寝ている部屋へと足を向けた。
 告白に夜這いかけるなんて結構無茶な事するなあ、私も。もうちょっと普通に告白しようかなとも思ったけどインパクト重視でこれにした。失敗したら一生モノのトラウマになりかねなかったけど、まあ成功したからいいか。

 今更無意味かもしれないが、鼻歌混じりにスキップしそうになるのを抑え、ゆっくりと足音を殺しながら部屋に戻る。音を立てぬよう最新の注意をもってドアノブを回し、開けた。
 よし! まだ熟睡中だ。にんまり笑って出迎えられる可能性もあったが問題なし。睡眠不足と言って叔母から譲ってもらった睡眠薬はまだ効いている。
 いくら友達だからと言って――いや、友達だからかな。やっている最中の声とか聞かれるの恥ずかしいし。
 士郎君との事もう言っちゃおうかな。熟考――よし、このまま黙っていよう。ここまできて話すのも今更っぽいし。隠れて付き合うってちょっとしたスリルっぽいし。それにバレたらバレた時で別に大した問題ないし。
 にやけている顔を抑えながら、外がもう少し明るくなるまでもう一寝入りしようと布団に潜り込んだ。
242義姉 第13回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/13(土) 05:24:21 ID:flLubnKK
        *        *        *
『士郎』

「テレビ見にくい?」
「……いや、別にそんな事ないですけど」
 本日、昼過ぎにモカさんが帰ってから電話で呼び出された。断るのは悪いと思ったし、何より今家にい辛い事もあって素直にモカさんの家に遊びに来た。
 ドアを開けてそうそう挨拶代わりに頬にキスされた。殆ど不意打ちだったから反応できずにポカンとしていたらモカさんに笑われた。
 で、ビデオでも見ようって言われたからソファーに腰を下ろしたら、モカさんは子供が親にするように、オレの前に腰を下ろした――正直どう突っ込んだらいいかわからなかった。モカさんも特別何か文句言ってくる訳ではなかったのでそのまま定位置となった。
「そうそう、私達の事、涼子にもう話した?」思い出したようにモカさんが口を開いた。
「いや……まだです……」
 姉ちゃんとは会話らしい会話を随分していない。このことを話したら姉ちゃんは何て言うんだろう。わからない。それどころか何て言ったらいいのかすらわからない。
「そっか。じゃあもう少し黙っていようか」
「――はい」
 モカさんは無防備にオレに背中を預けながら、弱い心に言い訳をくれる。
 気がついた時には後ろからモカさんを抱きしめるように腕が回っていた。特別何をする訳でもなく、ただ一緒にいるだけの心地よいだけの時間。嫌なこと、後ろめたいこと全てを何処かに捨てて来てくれる――

 ただ、傍にいてテレビ見ているだけの状態。そんな中、モカさんがオレの手を掴み、ごく自然にそのまま手を胸に促す。
 ――そういう事して欲しいって事だよな。
 ここまで露骨にやられれば嫌でもわかる。
 モカさんて着やせするタイプなんだよな――そう思っていると半ば無意識に手が柔らかい感触を味わいたいと蠢く。その手の動きにあわせてモカさんの体全体も小さく揺れる。
「もう、士郎君エッチなんだから」ボソッと呟く。
 えっと、今はモカさんから――
「続き、ベッドでしようか――」
 その誘いに黙って頷いていた。

        *        *        *
『涼子』

 シロウにしては珍しく遅い時間に帰ってきた。
 夜、いつもの様にシロウの部屋に行けば布団を頭からかぶっていた。
 こいつの言いたい事はわかる。
 もうしたくない――口に出しはしない、こいつらしい消極的な態度での返事だ。
 あれだけヤリタイヤリタイって目で言ってた癖に!
 今朝のシロウとモカと様子を思い出していた。フン、そうか――シロウにとって私はその程度か。

 布団越しにシロウを二度蹴った――そんな中途半端な態度で人にわかってもらおうと思ってるのか。
 知られたくないから黙っているのか――
 分ってくれると思っているから黙っているのか――
 私を何だと思っているのか――

243義姉 第13回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/13(土) 05:26:00 ID:flLubnKK
<チラシの裏>
煩悩回路が出力機能と上手く直結しない
</チラシの裏>
244名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 06:36:02 ID:lIEGmWpB
そろそろ姉が嫉妬モードに入ってきたようでwktk
245名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 10:38:47 ID:CVqPEw8v
義姉キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!!!!
246名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 12:28:20 ID:AgiaAbOh
モ、モカたん…超イイ(・∀・)!
にやけた顔が見てみたいっ!!
247名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 13:13:27 ID:R8Igkuhk
もし神様が…は残されたママンがどうなったのかが気になるぜ・・・
248『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/13(土) 13:16:36 ID:m5EO3LNk
ナイフをポケットに入れ、お嬢の部屋へ向かう。こうなりゃ一か八かだ。
「あ、晋也、遅かったね。どうかしたの?」
我儘だ。これは自分の完全な我儘だ。覚悟はしてるサ。おでこに頭を付け、全力で土下座。恥も外聞も知ったこったゃない!!
「お嬢!……お願いだ!!!教えてくれ!!………どうしたら…どうしたら、志穂を幸せにしてやれるんだ!……もう…アイツの泣き顔は見たくないんだ……」
怒られようが怒鳴られようが何でもこいだ。呆れられて、永遠の死を迎えても良い!
「……さあ?あんな負け犬、そこらの男にヤらせてれば快楽におぼれて結果オーライなんじゃない?」
「………」
我慢我慢我慢!ここでお嬢を…しても意味が無い!
「…ふぅ、ま、それぐらい聞いてくるとは思ってたけどね……本当に聞いてきたのね。」
「えぁ?」
考えはお見通しってか。参ったね。
「……無い事は無いわよ。一つだけ、方法が。」
「…マジか!?教えてくれ!」
藁にも縋る思いで、問い詰める。
「……私を、殺せばね。」
……予想だにしない答えだ。つまりはなにか?殺して万々歳ってか?そりゃどっちかが死ねばある意味解決だが。
249『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/13(土) 13:17:35 ID:m5EO3LNk
「…言ったでしょ?私がこの屋敷自身だって……つまり、私が死ねばこの屋敷も死ぬって事よ………」
「屋敷が…死ぬ?」
なんて非科学。なんて非現実。ま、そんな言葉、この世界じゃ通用しないよな。
「でも、この屋敷が消えれば、ここで起きた事すべても消える。晋也がこの屋敷で生きてきた事実、思いで、証拠……その全てがね。」
不気味な笑みをこぼし、更に続ける。
「だから、私や志穂、里緒の事も全て忘れるのよ。」
…全部?忘れる?……それじゃ意味が……
「じゃあ、この屋敷での事が無くなるとしたら、俺はどうなる?俺の…みんなの存在は!?」
「さあ?」
さあって…
「別世界の『晋也』として生きる事になるわよ。『屋敷の使用人として生まれなかったら』『普通に学校にかよう青年だったら』そんな可能性の世界に。」
「それじゃあ……そんなんじゃあ……」
「意味がない。でしょ?」
「………」
「ふふふ…だからそんな意味の無いこと考えないで、ね?せっかく私たちの生活が始まったんだから、いいじゃない。」
気付けばお嬢は隣りにいた。失意のうちに、ベットに移動し、また俺はお嬢を抱いた。……もとい、犯された。
250名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 13:53:14 ID:gqFy+MZs
無限ループからの脱出は因果レベルからのリセットか…

>>246
つ ttp://luckydragon.cocolog-nifty.com/happy/20040605.gif
251名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 13:55:40 ID:sA5Zkp1B
お嬢(*´Д`)

二m(ryじゃなくてハーレムという方法があるじゃないか!
しかし代わりに晋也が刺されるという諸刃の剣、素人にはおすすめできない
252リボンの剣士 8話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/13(土) 14:50:28 ID:kGudg6oX
開会式が終わったら、試合までは割とヒマになる。待ってる間は外で走ったり、素振りしたり。
試合は団体戦。あたしは中堅。個人戦と違って立て続けに試合するわけじゃない。

「そろそろだ。入るぞ」
部長さんの指示で、足を拭いてから試合場に入る。外でも裸足だから。
さて、人志は来てるかな……。
試合場に入って観客席を見渡す。あんまりキョロキョロしてると注意されるから、なるべく最短の時間で
探さないと。
人志はいつも人の少ない所でぽつんと座ってるのよね。
というわけで右端の辺りを見てみる。
―――いた!
そこには、座っている人志……と、木場さんもいる。
珍しいな。そう思ったときだった。
二人の構図が、変。

何? その膝の上にある箱は。
何? その箱から出てくる食べ物は。
何? 木場さんの身体の角度は。
……ああ、お弁当か。そうね、もうお昼だもんね。

そうそう、人志が来てるってわかったんだから、いつまでもよそ見してちゃいけないわ。
一列に並んで、相手チームと向かい合って、礼。もう試合が始まる。
先鋒がまず試合場に入っていく。あたしの試合は、次の次。

……今、人志はお昼食べてるのよね。
自分でお弁当を作って持って来るのは見たことないから、木場さんが作ってきたのかな。
そうだとしたら、木場さんと人志は、前から一緒にここへくる約束をしていたことになる。
いつの間に約束したの?
何で人志は、木場さんと一緒に来てるの?
いつも一人だし、誰かに言い触らすこともないだろうし。
じゃあ、木場さんの方から? そうよ。木場さんは最近人志を狙ってるんだから、休みの日に接近しよう
としないはずがない。
お弁当まで作って、張り切っちゃて。
まったく、人志もいいご身分ね。あたしは試合が終わるまで、水くらいしか口にできないのに。

「中堅!!」
「へっ? あっ、はい!」
気がついたら前二人の試合はもう終わっていた。審判の人がちょっと怒ってる。
変なこと考えてる場合じゃなかったわ。
急いで対戦相手と向かい合い、構える。
「始め!!」

さあ、見ててよ、人志。
253リボンの剣士 8話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/13(土) 14:51:37 ID:kGudg6oX
もう、なんなのよ!
試合中だってのに、あの映像が頭から離れない。
人志と木場さんが、仲良くお昼を食べてる所。

ねぇ、人志。あたしの試合、ちゃんと見てるわよね? お弁当食べながら、木場さんとおしゃべりなんか
してないわよね? そんなことしてたら、許さないわよ。
あれ、許さない? 何で?
別に人志が試合を見に来るのは義務じゃないんだし、木場さんも来て応援が増えてるんだからいいじゃな
いの。
それなのになんで、何で……。

―――――!!
あたしの頭のすぐ上に、相手の竹刀が…!
――ああ、そうね、考え事なんかしてるから、隙だらけになってたのね……。

もう遅かった。
面からいい音がして、すぐに審判の「面アリ!」の声が聞こえた。


「ただいま……」
家に帰って、部屋に入って、そのままベッドに身体を投げ出す。
負けた――。
人志の前だったのに。人志が見てたのに。
ごめん。ごめんね、人志。
「……っ、ううっ……」
泣けてくる。くだらないことを考えて、格好悪い姿を晒して。
明日、人志に会ったら、何て言おう。
ううん、言葉どころか、顔も合わせられないわよ……。
―――。
254リボンの剣士 8話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/13(土) 14:52:17 ID:kGudg6oX
ぼーっとしたまま、夜の十二時を迎えた。
もういいや。今日は寝よ……。



また、またなの?
頭に浮かんでくるのは、人志と木場さんが……もういいわよそれは!!
眠れない。寝返りをうっても頭を振っても離れない。
あたしは一つ思いついて、竹刀を持って部屋を抜け出す。そっと階段を下りて、玄関を出る。
真夜中だから、辺りには誰もいない。
深呼吸して、竹刀を正眼に構える。振りかぶって、一気に下ろす。
ぶんっ!
風を切る音が良く聞こえた。いつもなら、この痛快な音に、いやなことも吹き飛ばされる。
それなのに。
まだくっついてる。まだ張り付いてる。
ぶんっ!!
もう一回振る。

……なんでよ。なんでなのよ。別に、別に人志が誰と仲良くしてたって、関係ないじゃないのよ。
ふと、腕に冷たい何かが当たった。
これは、雨……?
ちょうどいいかもしれない。吹き飛ばせないなら、雨で流す。
あたしは竹刀を振り続けた。雨はだんだん強くなる。それでも離れない。
「いいから、あっち行ってよ!!!」
怒鳴りながら更に振る。更に念じる。
あんな光景、あたしには関係ない。関係ない! 関係ないっ!!

途中から、何をしているのかわからなくなった。握っていたはずの竹刀がない。
地面と空が入れ替わったような感じがして、あの映像と一緒に、意識も吹っ飛んだ。


(9話に続く)
255名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 16:40:00 ID:hAc8TUqp
あぅぅ、明日香たんが可哀相でし

このまま胡桃や香葉みたいに武道を捻じ曲がった方向に使う
黒ヒロインと化してしまうのだろうか
256『歌わない雨』Act5:2006/05/13(土) 21:06:30 ID:mXgMeLSa
 学校に居る間、何も起こらなかった。昨日の出来事がまるで無かったかのように、釜津と緑は小競り合っていたし、飯も普通に食えた。
 とにかく、不自然な位にいつも通りだった。
 しかし、それは間違いだった。いくら僕にとって普通の光景でも、ドンパチの片方はこの学校最強の暴君で、緑も緑でその暴君にサシで張り合える数少ない人間なのだった。

 所変わってここは放課後のカラオケ、その一室で、今は切り込み隊長として芹と緑が歌っている。しかも、よりにもよって芹の得意な曲『ピエールとカトリーヌ』だった。
「上手いんだがなぁ」
 何だろう、この感情は。素直に誉めることが出来ない。昨夜に緑を抱いた事を、嫌が応でも思い出してしまう。
「どうだった?」
 訊きながら、緑が僕の右隣に腰を下ろす。いつもの流れで芹はその反対、僕の左隣へ。しかも、それ程狭いソファでもないのに何だろうこの圧迫感は?
「おい、伸人が眉をしかめているだろう。離れろこの雌豚」
「そっちこそ、伸人にかわいそうな病気が伝染るから離れたら?」
 相も変わらないいつもの口論、しかし不自然すぎる。緑の表情が、いつもと違う。
 緑は嗜虐的に目を細めると、やけに冷たい声で、
「この泥棒猫」
 嫌な予感が、的中した。
257『歌わない雨』Act5:2006/05/13(土) 21:08:13 ID:mXgMeLSa
 中学時代に何度か聞いた、鉄の声。僕に依存して、僕以外の全ての人間、それが例えば僕の妹の雪や彼女自信の母にまで嫉妬と敵意を見せていた時の声。
 そして、誰も勝った事の無い策士の声だ。
「ほう、泥棒猫。随分と面白い事を言うな。まるで、伸人がお前の所有物のようだ」
 乗ったらいけない、と思うが僕が声を出す前に芹が更に口を開く。
「口を出される筋合いは無い。確かにお前が幼馴染みだというのは事実だが、お前の所有物ではないだろう」
「確かにね」
 言葉と共に、緑は笑みを浮かべた。
 不味い。
 この表情は、策士の装備が整った顔だ。
 それはつまり、この関係と相手を倒す方法が揃ったと言う顔。
「幼馴染みが必ず結婚する訳じゃないし、その後に普通恋愛も有るだろう? だから、緑に口を出される筋合いは無い」
 芹の言葉を聞いて、緑は更に笑みを強くした。はっきり言って、恐ろしい。
「そうよね、正にその通り」
「なら…」
「だから、セックスの回数や順番も適用出来ないわよね」
 僕はその冷たすぎる声に愕然とした。昔の声どころじゃない、それ以上だ。
「それに、あなたとのセックスは両者の愛情で行われたものじゃない」
「それなら」
 芹が怒りを溜めて緑を睨みつけるが、当の本人は涼しい笑顔のままだ。
「互角なのよ、ここからが始まり」
 そう、これが策士の戦い方。強制的に自分の場に引きずり込み、自分の位置と同じに立たせ、相手の武器を封じ込める。
258『歌わない雨』Act5:2006/05/13(土) 21:12:51 ID:mXgMeLSa
 今回の場合、身体能力だと芹との差は火を見るより明らかだが、それが一切関わらない。
 そして一番えげつないのは、
「それにセックスなら昨日の夜、私もしたから色仕掛けも無駄よ」
 相手の武器を潰し、自分の武器を作るためには依存の相手である僕すらも利用することだ。
 最悪だ。
 しかし、今回ばかりは僕の仕切りだ。本当にこの関係は心地良いから、崩したくない。
「待てよ、緑も芹も」
 場の勝負で関係が壊れるなら、場の存在なんて不要だ。
「争うよりも、笑おうぜ。今日は過去を水に流すお祝いだ」
 勝負なんてそもそも必要無い。
「これからも、僕の前では争うな」
 その為に、僕は悪役にだってなってやる。
 策士を転がして、暴君を叩き潰して、踊りきるのが悪役だ。
 憎まれてなんぼならいくらでも憎まれるし、死んで済むなら死んでやる。
「まずは楽しく歌わなきゃ」
 僕は静かに決意した。
259『歌わない雨』Act5:2006/05/13(土) 21:14:27 ID:mXgMeLSa
今回はこれでおわります

『マジカル☆ツイン』は、需要ありますか?
260名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 21:40:55 ID:Dsrn4dtN
そ、そんな。「僕の前では」だなんて……
それじゃまるで「相手を叩き潰してから来い」って言っているようなものじゃないか!
261名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 21:51:40 ID:yGy3HkzF
>>260
( ゚д゚ )
262名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 23:10:14 ID:sA5Zkp1B
>>254
明日香タン(´・ω・`)カワイソス、怒りで対戦相手を叩き潰してしまうのかと思っていたのは秘密だw
>>259
良い三角関係になってきました(*´Д`)
>>260
(・∀・)ソレダ!!
263名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 23:10:58 ID:uWtaYivB
私の前で>>260なんか見ないでっ!
264Bloody Mary 第二話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/13(土) 23:35:09 ID:sijW7i9t
「遅いッ!」
 自室で痺れを切らしたわらわは思わず声を張り上げてしまった。
「ウィリアムはいったい何処をほっつき歩いておるのじゃ!」
 心を落ち着かせるために部屋の中を行ったり来たりするが苛つきは一向に治まってくれない。
いっそのこと自分で捜しに行こうか、そう考え扉の方に向かう。
それを見て慌てたように侍女が止めに入った。
「い、今、城の者に捜させていますのでどうかもうしばらくお待ちください!城内には居らっしゃる筈ですから」
 ……分かっておる。何処にいるかは分からぬが誰といるかは簡単に予想がつく。
 恐らくあの女――――騎士団長マリィといるのじゃろう。
ウィリアムが遅いときは決まってマリィに捕まっているときじゃ。
わらわがウィリアムを『王の盾』に推したときも独り猛然と反対しておった。だが『王の盾』に任命することは王の勅命じゃ。
いくらトレイクネル家出身の者といえど覆すことなどできるはずがない。
 それ以後のあの者のわらわに対する目は王家に仕える騎士とは思えぬ。
ほぼ間違いなくわらわがウィリアムに恋心を抱いていることに気づいておる。わらわがあの女の心情に気づいたように。
265Bloody Mary 第二話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/13(土) 23:36:01 ID:sijW7i9t
 ウィリアムのことは戦争中だった頃から噂で聞いていた。国を勝利に導く救国の戦姫マリィ=トレイクネルの側で戦う、
彼女の「懐刀」と呼ばれている騎士の存在。だがわらわはさして気にも止めなかった。
その頃は騎士を「野蛮な種族」と蔑んでいたから少しも興味が沸かなかった。
しかし、嫌々出席した戦勝パーティーで彼を見たとき。わらわの身体を衝撃が走り抜けた。完璧な一目惚れだった。
ウィリアムがわらわの手の甲に挨拶のキスをした瞬間なんか頭の中が真っ白になったほどだ。
 あぁ、この者が欲しい……「野蛮な種族」にわらわは恋をしてしまった。
とはいえ、一国の王女が自国の騎士、ましてや平民出の者に愛を告げることなどできるはずもなく。
彼のことを想い自慰に耽る悶々とした日々を過ごすしかなかった。一時はもう諦めようとさえ思った。
 そんなある日、城内で偶然ウィリアムとマリィが楽しそうに談笑しているのが目に入った。
その時のマリィの表情は今でも忘れられない。必死でウィリアムの上司として振る舞ってはいるが、
わらわにはハッキリと見えた。その瞳の奥に激しい恋慕と情欲が宿っていることを。
なぜあの女がウィリアムの側にいるのか。なぜあそこにいるのがわらわではない。なぜあの女はウィリアムと楽しそうに笑っているのに
わらわは諦めねばならない…?なぜ、なぜ!なぜなぜなぜなぜなぜなぜ!!!
その瞬間わらわの決意は固まった。どんな手を使ってでもウィリアムを我が物にしようと。


 にしても本当に遅い。まさかマリィに襲われたのではないか。心配になってもう一度扉に向かおうとしたその時。
「失礼します」
 ノックと共にその声を聞いて全身がかぁっと熱くなった。
「ウィリアム=ケノビラック、只今戻……おわっ!」
「ウィリアム!ウィリアムウィリアム!どこに行っておったのじゃ!」
 さっきまでウィリアムが来たら説教してやろうとか困らせてやろうとか考えていたのに
彼の顔を見た瞬間嬉しさのあまり飛びついてしまった。
 彼の身体に顔を押し付け、鎧の鉄の匂いと共にウィリアムの匂いを肺いっぱいに吸い込む。それだけで下半身に湿り気が帯びる。
それと同時にかすかにあの女の匂いがした。
 やはり。今まであの野蛮人と。
 ―――よかろう、マリィ=トレイクネル。
このアリマテア王国王女、マリベル=ノブレス=アリマテアが全力を以って貴様よりウィリアムを奪取する。
266Bloody Mary 第二話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/13(土) 23:37:16 ID:sijW7i9t





 部屋に入った途端、いきなり姫様に抱きつかれた。
「こ、困ります、姫様。は、離れてください」
「イヤじゃイヤじゃ!ぜっっったいイヤじゃ!今日はもう一日中離れぬからなっ!」
 更に強くしがみ付かれる。随分と気に入られたものだ。
 姫様の『王の盾』になることが決まった直後、同僚に「うちの姫様は大の騎士嫌いだからな、覚悟しとけよ」
と脅され戦々恐々としていたのに、いざ会うと一体全体どういうわけか最初から俺に懐いている。
 好いてくれるのは嬉しいが、なにぶん相手は王女様。こんなところを国王陛下や貴族連中に目撃されたら首を飛ばされかねない。
少々扱いに困るのが正直なところだ。
「えーと…それで姫様。俺に何か御用ですか?任務に戻るのが遅れたとはいえ侍女が総出で捜しにくるほど慌てていたようですが」
「え?あー…その、なんじゃ……そう!またおぬしの昔話が聞きたい」
「は?…えと、それだけ?」
「……駄目か…?」
 おずおずと尋ねる姫様。まったく。姫様は本当に甘えるのが上手い。そんな顔されたら断れるわけないじゃないか。
陛下が姫様を溺愛するのものも頷ける。
「構いませんよ。何をお話しましょう?」
「フォルン村で暮らしていた頃の話が聞きたい!」
 姫様は満面の笑みで答えた。その笑顔にふと幼馴染みの顔がだぶる。
「またそのような顔をして……そんなにわらわがキャスとかいう娘に似ておるのか?」
 キャスのことを思い出していたのが表情に出ていたようだ。俺は無言で苦笑すると昔話を姫様に聞かせた。


 キャサリン=ウィーバー。フォルン村の村長の娘で俺の幼馴染みの名だ。
母子家庭だった俺の家は貧しかったが村の皆の助けもあってなんとか暮らせていた。特に俺たちによくしてくれていたのが
村長の娘、キャスだ。病気がちな母に代わってに家事の一切を引き受けてくれた。
 引っ込み思案で、そのくせ困っているヤツを放っとけなくて。俺はそんなあいつが大好きだった。
キャスへの想いが募ったある日、俺はとうとう告白した。今思えばかなり滑稽だったと思う。もうちょっとマシな告白の仕方もあっただろうに
その時の俺はいっぱいいっぱいだった。それでもあいつは笑顔で俺に答えてくれた。凄く。凄く嬉しかった。
 ―――でも翌日。村は血の色に染まった。


 性格は全然違うが姫様はキャスに瓜二つだ。だから俺は『王の盾』になった時、運命を感じた。
あのときキャスを守れなかった俺に神様がもう一度チャンスをくれたのだと。

 その日は時間が許す限り、姫様に昔話を話し続けた。
267Bloody Mary 第二話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/13(土) 23:41:20 ID:sijW7i9t
二話終了。
メインキャストは出揃いました。
でも姫のミヤビな口調難しいですね。地の文につかうのは断念…orz
268名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 23:50:08 ID:IiBLqEi5
ダメだ、姫様のカワイさに一撃KO
269名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 23:51:16 ID:Qsdw8Tu7
これはいいファンタジーものですね
姫様に期待
270名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 00:03:36 ID:pFjnlBnr
姫様かわいいよ姫様
271名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 00:33:16 ID:bQGUBJBW
しどろもどろになる姫様テラカワイス!!!
一目惚れだったのかぁ。。

>259
個人的には需要アリなんですが、あまりにスレの趣旨を離れそうでしたら
あぷろだ等を利用したほうがよいかもです。。
272名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 00:53:26 ID:h1rvSgPa
女視点の描写がイマイチなのが惜しい
273名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 00:58:48 ID:3XikfA6m
姫様すばらしい(*´д`*)
274振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/14(日) 02:45:45 ID:/jWchYlb


   ・    ・    ・    ・   


「お姉ちゃん。 なんだか元気ないみたいだけど大丈夫?」
 その日お姉ちゃんはあまりにも沈んだ表情をしてたのでわたしは思わす訊いた。
「そんな風に見える? 大丈夫よ。 いたって健康だから」
 私の問いにお姉ちゃんは心配掛けまいと微笑んで応えてくれた。
「……祥おにいちゃんとは上手くいってる?」
 こんな事訊くべきじゃないのかもしれないけど、そう思いながらも訊いてしまった。
「ええ、心配しなくても上手くいって……るとも言い切れないかな……」
 そう言ってお姉ちゃんは寂しげな微笑を浮かべ溜息をついた。
「なんかね、最近ふと思っちゃうのよ。 若しかしたら告白したのは失敗だったのかな、なんて……」
「駄目よお姉ちゃん! そんな弱気になっちゃ」
 私は思わず叫んでしまった。 いきなり大きな声を出した私にお姉ちゃんは驚いた表情を見せてる。
「ご、ごめんなさい。 いきなり大きな声出しちゃって」
「良いのよ。 コッチこそごめんね。 心配させるような事言っちゃって」
 そう言ってお姉ちゃんはわたしの頭を優しく撫でてくれた。
「お姉ちゃん。 祥おにいちゃんのこと嫌いになっちゃったの?」
「そんな事無いわよ。 好きよ、祥ちゃんのこと。 胸を張っていえるわ。 世界で一番誰よりも愛してる、って。 ただね……」
「ただ……?」
 わたしが訊くとお姉ちゃんは寂しそうな顔で口を開く。
「うん。 なんか祥ちゃん無理してるんじゃないかな……、やっぱ幼馴染同士って上手く行かないのかな。 そんな風に思っちゃうことあるのよ」
「無理だなんて、上手く行かないだなんてそんな事無いないよ! お姉ちゃん同性の私から見たって物凄く魅力的なんだから」
「ありがとう結季」
 そう言ってお姉ちゃんは微笑んだ。 でも其の表情はやっぱり寂しげでかげりのあるモノだった。
 其の寂しげな笑顔に見てるこっちの胸まで痛くなる。 こんなにもお姉ちゃんは一途で健気なのに。 そんなお姉ちゃんにこんな顔させる祥おにいちゃんが恨めしく思えた。 でも其の原因の大半は私にあることを思うと祥おにいちゃんを責めたり恨むなんて出来ない。
 どうにかしてお姉ちゃんに元気になって欲しかった。 何かいい方法は……

「ねぇ、お姉ちゃん。 今度気晴らしに旅行にでも行ってくれば? もう直ぐ夏休みだし」
「旅行……か。 そうね。 でも止めておくわ。 なんだか最近祥ちゃんと二人っきりになってもギクシャクしてばっかだから」
「じゃあさ、わたしも一緒で三人で、ってならどう?」
「3人で? そうね、久しぶりに昔みたいに三人で出かけるのも良いかもね」
 良かった。 お姉ちゃんの同意が得られて。
「うん、決まりね。 じゃぁ今度私から祥おにいちゃんい話しておくね。 あと、旅行先とかプランも私が組み立ててもいい?」
「随分乗り気ね? 良いわよ。 じゃぁ、任せるわ。 楽しみにしてるわね」
275振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/14(日) 02:51:38 ID:/jWchYlb


   ・    ・    ・    ・   


「旅行?」
「うん、祥おにいちゃんとお姉ちゃんとわたしの三人で一泊旅行。 どう?」
 答えるまでも無い。 結季が俺を旅行に誘ってくれたんだ。 どこに断わる理由がある。
「勿論。OKに決まってるだろ」
 俺は速答した。
 本音を言えば3人じゃなくて結季と二人っきりが良いんだが、うっかりそんな本音洩らせば間違い無く結季の機嫌を損ねる。 いや、それどころか数日間は口も聞いてくれないほど怒らせるかも。 当然この誘いも無しになるだろう。
 何せ形の上だけとは言え俺は未だ羽津姉と付き合ってるのだから。 羽津姉の事を何より優先する結季が羽津姉を差し置いて俺だけ誘う事はありえないから。 だからとりあえず現状としては最良の形。

「あ、でも……」
「何?」
「いや、仮にも年頃の男女だけで旅行なんておじさんとおばさんが許してくれるの?」
 そう、それが問題だ。 幾ら俺たちがきょうだいみたいな間柄だからと言っても結季と羽津姉の両親が許してくれるのか。 年頃の娘が男と連れだって旅行だなんて。
 俺が心配そうに口を開くと結季は俺の不安を吹き飛ばすかのように口を開く。
「大丈夫よ。 そのための手は考えておいてあるから」
「手? それって一体……」
「それは内緒。 でも大丈夫だから心配しないでわたしに任せて」
 自信一杯に、と言うより自分自身をも鼓舞するように結季は応えた。 いつも控えめな結季にしては珍しいが、コレはコレで新鮮で良いな。

 まぁ、何はともあれ結季と過ごせる久しぶりに時間だ。 それも旅行! それだけで俺は兎に角楽しみだった。 何せ羽津姉と付き合うようになってからと言うもの結季は羽津姉を気遣って俺との接触を避け続けてたからな。
276振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/14(日) 02:52:45 ID:/jWchYlb

 そして旅行の日の朝がやってきた。
 結季がどんな手を使って両親を納得させたのかは知らないが予定通り出発となった。
 それにしてもこんなに早い時間に、セットした目覚し時計よりも早く起きたのなんか久しぶりだ。 どうやら俺は自分でも思っている以上に今日の旅行が楽しみらしい。

 天気は快晴。 静寂な空気に包まれ朝焼けの中俺は待っていると二人は現れた。 二人の、と言うより結季の顔を見ると自然と顔がほころぶ。
 俺の顔がほころぶのを見ると羽津姉の顔にも笑顔が灯った。
 そう言えば最近羽津姉笑顔が少なくなってたっけ。 原因は……俺自身があまり笑わなかったからなんだが。 羽津姉と一緒にいると、と言うより結季と一緒に居れない事がどうにも寂しくてつい仏頂面になる事多かったから。
 正直言えば羽津姉が其の寂しさを感じて俺との付き合いに限界を感じてくれる事を望んでたんだが……。
 今日ばかりはそう言う考えは止めておくか。 折角久しぶりに結季も一緒の三人なんだ。 三人一緒に遊んだ昔に戻って楽しむか。

 駅に到着すると人も疎らだった。 これから乗るのは始発から数えて数本目なんだから当たり前か。 同じ朝でもいつも人で賑わっているラッシュのとは全く違う其の感じに新鮮さすら感じる。
 やがてホームに電車が到着する。 ドアが開くと俺たちは乗り込む。 電車の中はがらがらに空いており何だか貸しきりみたいで気持ちイイ。
 俺たちは荷物を網棚に載せ席に掛ける。 ちなみに席は二人掛の席が向かい合う形の所謂ボックスシートというヤツだ。
 席につくと丁度発車を告げるベル音が鳴り響く。 ドアへの注意を促すアナウンスが流れ、電車特有のエア音と共に自動ドアがいっせいに閉まる。
 窓の外では景色がゆっくりと流れ始める。 電車は徐々に速度をあげ、ホームが完全に見えなくなる頃には十分にスピードも乗り景色が矢継ぎ早に流れていく。
 外から中に視線を戻すと羽津姉がおにぎりを準備してくれてた。 朝が早いからと朝食も弁当を用意してくれてたのだ。 基本的に羽津姉が作り結季は補助に徹したらしい。
 味は美味しかったが形はチョットいびつだった。 結季の手ほどきを受けて驚くほど料理の腕が上達した羽津姉だったが、まだところどころ完璧じゃなかったりする。
 おにぎりを頬張りながら普通の男だったらこういう所に惹かれるのかな、とどこか冷めた目でいる自分を感じる。
 ふと、結季に目をやれば船をこいでいた。 そんな結季の頭を羽津姉はそっと抱き、そして自分の膝の上にのせた。 そして結季を起こさないよう小さな声で俺に語りかけてきた。
「結季ね、今回の旅行全部自分ひとりで仕切ってくれたのよ。 今朝も私より先に起きてお弁当の下準備やその他の準備もしてくれて。 やっぱ疲れてたのね。 だからこのまま寝かせてあげましょ」
 そう言った羽津姉の顔はとても穏やかで優しい姉の顔だった。 それは俺が姉として大好きで尊敬してる羽津姉の顔。
「そうだったんだ。 うん、お疲れ様。 結季」
 そして俺も結季の髪をそっと撫でた。 その後暫らく俺と羽津姉は結季が起きるまで起こさないように静かにしていた。 だがそれは決して退屈などではなく満ち足りたものだった。 そう、ずっと昔から繰り返してきた穏やかな『きょうだい』の時間。

To be continued...
277名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 03:04:57 ID:jq1DDEvZ
羽津姉ちゃん健気でテラモエス(*´Д`*)
祥ちゃんには地獄の底に落ちてもらいたいなw 
278名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 03:19:14 ID:m5A91Lpf
早く修羅場に突入して祥ちゃんが殺されないかなw
279 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/14(日) 06:54:56 ID:PngM9qc6

>>239 >>240

ハッピーエンドバージョンは、構想段階で作ったものなので、一応は読めますが多少話が食い違っております。


もし、それでもよければ投下いたします。
280名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 07:31:53 ID:tDMxq4LF
>>279
ハッピーエンド…読みたい(*´Д`)


『振り向けば〜』読んでて思ったんだが、

男→→→女A
↑ ↓
↑ ↓
←←女B←←

とかだったら最後はどんなものになるんだろ?
281名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 10:29:13 ID:Cnd1z1RK
>>267
鼻血でた
282名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 11:39:36 ID:kv5ezIUO
祥ちゃんいつ死ぬのかな
283名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 12:56:13 ID:hQED5j6Q
ゆう君並に死を待望されてるなぁ。祥ちゃん
いや俺も死んで欲しいと思ってるけど
284名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 12:58:21 ID:CA0zBqVw
嫉妬深い女性の愛情を受けきれない優柔不断男など刺されればいいのですよ。








そんなこと言う俺は基本的に従順な子の方が好み(ry
285名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 13:26:46 ID:h1rvSgPa
無自覚な分ゆう君こえてるな。
こんだけキモい主人公を見たのは久しぶりだw
286名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 15:28:20 ID:O6TTKsgr
祥ちゃんの対応って普通じゃない?形だけ付き合っても手はださないってやつ。
この関係がこじれてる一番の原因は結季でしょうに。
287名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 15:31:19 ID:uNHidvHH
というか手を出さないというより利用している悪寒((;゚Д゚)ガクガクブルブル
ゆぅ君は確変で悪化したけどこっちは序盤から黒いわねぇ(゚ー゚*)
ようは羽津ねぇがみんな好きなんやね(*´д`*)
288名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 16:38:56 ID:YyclcqYk
あはは祥ちゃん死ねばいいのに
289山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/14(日) 17:10:42 ID:wjaGLnkK
山本くんとお姉さん2 〜『教えてくれたモノ』

>これまでにでてきたひと
・山本秋人……山本くん。姉と二人暮らし。なんだかんだ言って姉萌えだが、空気を読むのはやや苦手。
・山本亜由美……弟が全てのキモ姉。弟にはどうやら「優しい姉さん」と誤認されている。当然嫉妬深い。
・藤原里香……山本くんの隣の席の女の子。おとなしいけどちょっとだけ腹黒。なかなかに嫉妬深い。

<1>

――
―――『……あなたが離れていくからよ、デニム』

しゃくり、しゃくり。
姉さんの手が翻り、僕のお皿に剥かれたりんごが次から次へと盛られていく。

―――『離れていく? 僕はいつもカチュア姉さんの側にいるじゃないか! これからだって!』

もしゃり…、もしゃり…。
僕は鈍重な手を伸ばし、りんごを無理矢理口元へと運ぶ。
今のところ生産が消費を格段に上回っているので、やや焦り気味だ。

………
……


とある休日の昼下がり。お昼ごはんのあと。
「秋くん、おりんご剥いてあげるね〜」
姉さんはそう言って、果物ナイフを取り出した。

長い髪を後ろで束ねて、爽やかにりんごを剥き始める姉さんを見ていると、自然と頬がほころぶ。
女の人のそういう姿って、なんだかほんわかして優しげでいい。
窓からは、柔らかい五月の光。
そんな些細なモノに幸せを感じる自分が少し照れ臭くて、僕はテレビのリモコンに手を伸ばした。
290山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/14(日) 17:11:40 ID:wjaGLnkK

―――『嘘よデニムッ! あなたは私より戦いを選んだわッ!
    自分の理想を実現させるためなら、あなたは私を見捨てることができる……!』
―――『カチュア姉さん……。』

そして二十分後。
瞬き一つせず、食い入るようにテレビを見つめながらながら、黙々と果物ナイフを操る姉さんと。
そんな世界に入れ込めず途方にくれながら、りんご咥えてズボンのベルトを緩めようか悩んでいる僕がいた。
唸るテレビのスピーカーからは、さっきからなんか物騒な台詞が吐き出され続けている。
タクなんとかオウガとかいう難しい名前の、古いドラマの再放送らしい。
しかし正直なところ、今の僕の頭の中に番組内容が割り込む余裕なんぞない。

―――『たった二人きりの姉弟なのにッ!!』
―――『姉さんッ!待ってッ!』

あぁああ、そんな風にすると、あぁあぁ……。
さっきからテレビに夢中で、一瞥もされていない姉さんの手元が危なっかしくて……うわああぁああ……。
徐々にあやしい手つきになっていく姉さんのナイフ捌きの前に、番組のスリルもサスペンスもへったくれもあるものか。
それでいて、剥く作業のスピードと刃筋の鋭さだけは加速していくというこの不条理。
先ほどまで優しかった五月の日差しまでが、果物ナイフを鈍色に輝かせて僕の視線を釘付けにしていた。

「あ、あのさぁ、姉さん、僕もうお腹いっぱいだし……」
―――『私はデニムを愛していたわ。たった一人の弟だもの、当然よね』

一声かけようとした刹那、姉さんはサッとテレビのリモコンを取り上げ音量を上げた。
画面に固定されたままの瞳がうるうるして、今にも零れ出しそうだ。
僕には何をやっているシーンなのかよく分からない番組だが、そんなにも感動的な内容なのだろうか?
まぁいいやどうでも。ともかく、いくらなんでももうこれ以上は食べられない。
ナイフも危ないから、そろそろやめにして欲しい。
291山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/14(日) 17:12:31 ID:wjaGLnkK

「ね、姉さん、僕もういらないからさ……」
―――『でも弟じゃなかった。そして私を見捨てた……』

姉さんがぐっと唇を噛みしめたので、慌てて言葉を引っ込める。
うるさいと怒られるのかと思ったが、どうやら矛先は僕ではなかったみたいでホッとした。
……いや、ホッとしてちゃいけない。
強く握り締めたナイフが少し震えている右手、新しいりんごを求めてビニール袋の方へと伸びていく左手。
そんな光景が僕を苛む。
ああぁあぁだから姉さん、ちゃんと手元見てないとホントに危ないってば。

―――『手に入らないのなら、いっそ……』

……ねぇ。
逆手にナイフ握って、りんご剥けるの?
292山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/14(日) 17:14:27 ID:wjaGLnkK
早々とここで中断。明日か夜に<2>を。
<1>〜<9>まで、合計30レス未満ぐらいの分量になりそ。
のんびりいくんで、ふたたびしばらくの間よろしく。



<1>についてはごめんなさい元ネタ知らないひともごめんなさい
ついできごころ
293『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/14(日) 17:57:52 ID:+RvXgu6S
あれから………志穂のナイフを拾ってから、どれ程経っただろうか。あれ以来、ずっとお嬢の部屋にいっぱなしだ。
もう四人みんなが顔を合わせて楽しく食事なんてことは、夢のまた夢だ。
………これが生きるために、望んだ結果?……いや、違う。こんなすれ違いの生活じゃない。みんなでワイワイやって馬鹿やって……
それが俺の望む事だろ?
「もう……無理か……」
意志喪失。少なくともお嬢が幸せになってくれれば、それでいいか……
「晋也さん?いますか?」
小さな声で、里緒さんが部屋のそとから呼んでる。お嬢を起こさないようにゆっくりベットから降り、部屋を出る。
……なんか、怒ってる?里緒さん。
「ちょっと、ついて来てくださぁい」
「はぁい。」
里緒さんに言われるがまま、ついていく。一階へ降り、先へ先へ……五分ほど歩いて着いたのは、治療室だった。
「いっけませんよー、里緒さぁん。夜の密会だったらもっとムード溢れるとこにしないと。」
「それは、また今度連れて行ってあげます。」
やったぁ……約束もらったネ。
「ま、とにかくなかにはいりましょうねぇ。」
294『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/14(日) 17:58:36 ID:+RvXgu6S
鍵を開け、ドアを開ける。ムワっと、薬品独特の匂いが鼻を突く……嫌いだなぁ、この匂い。
ザッザと奥に入っていく里緒さん。慌ててそれについて行く。奥のベット。カーテンで遮られている。
……ここでやるってか?
「いや、もっと場所を選びましょうよ。」
『?』という顔をしたまま、カーテンをあけると、そこには………
「志…穂?」
脳が熱い。理解ができない。志穂が点滴を受け、寝ていた。
「はは、は……やだなぁ、びっくりにしちゃ大掛かりだなぁ。」
「晋也さん。」
いつもの冗談も、ピシャリと里緒さんに止められる。目が真剣だ。……まじっすか…
「なんで……っすか?なんでこんな……」
「栄養失調です。……重度の」
「…栄養…失調……」
ただ里緒さんの言葉を繰り返すしかない。……重度って……命に関わることか?
「……一週間、なにも食べてないんですよ?……見つけるのが遅かったら、死ぬところでした。」
……俺のせいだ…俺の……ヨタヨタと近付き、志穂の手を握ろうとする、が。
「晋也さ〜ん。そんなことできる資格ありますかぁ?」
またいつもの口調で話す里緒さん。
295『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/14(日) 17:59:22 ID:+RvXgu6S
「………」
無いな。俺のせいなんだから。……これが…生きるために必要?
「俺…俺……」
「この前私が言った事、覚えてます?」
「後悔の無い様に……」
「そのとぉり!」
…後悔しまくりだ。……後悔するだけで済むなら、一生してやるさ。
「晋也さん。」
再度呼ばれて振り向くと……パン
痛くは無いが、響くビンタ。「嗚呼……」
「わかりました?人の感情を見て後悔するんじゃないんです。自分にとって、後悔するかどうかですよ?
人の顔色伺いながら、自分も幸せになれる程、晋也さんは器用じゃないんですから………せめて、自分の幸せだけでも手に入れましょうよ…」
……俺の……幸せ……?
「は、はは……そっかそっか。自分の幸せだけでも……ね。」
了解だ。迷いは無い。即決即行動っと
「ありがとう!!里緒さん!あんた人生の恩人サ!!」
「どういたしましてぇ。」
ホワッとほほ笑む。うん、癒される癒される。一つの決意を胸に、部屋を飛び出す。
(さようなら、里緒さん)
これが最後かもしれないから、俺は声に出さず、心の中で別れの言葉を呟いた………
あの里緒さんの笑顔、願わくば忘れぬように………
296名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 18:04:52 ID:vW5VzBIq
>>289
元祖キモアネキタコレw
297名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 18:09:21 ID:Am4M0HQL
>>289>>292
タクティクスオウガか・・・懐かしいなぁ〜。
姉さんを生き残らせるために何度リセットしたか・・・生き残らせないと暗殺されるもんなorz

とにかくGJ
ワタスは実姉(*´Д`*)ハァハァだすからホントに楽しみだす。
298名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 18:15:36 ID:vW5VzBIq
>>297
Lルート最後の刺客は実はデニムとねんごろになってたが思想の違いから除名されて捨てられたアマゾネスと脳内保管。

ちなみに、上手くやると姉さん死んでても暗殺されないルートもあるらしい。
299名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 18:17:11 ID:3XikfA6m
>>292
( ゚Д゚)ハッ再放送ってことは姉はあのカチュア説得のシーンを知っているんだな!
そして一緒に見た秋人を期待した目で見るとw

>>295
晋也カッコイイ
300名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 18:48:26 ID:gPytXLfu
時代はキモ姉
301名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 18:56:31 ID:Am4M0HQL
>>298
そんなルートあるのッ!?

ってこれ以上はスレ違いだから遠慮するだす。
302名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 21:16:37 ID:+qxSgtOR
作者さんはネタが通じない事を心配していたが、
キモ姉信奉者にとって、タクティクスオウガは基本履修だったようだな。
303名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 21:20:05 ID:Fo+QCcI5
オイオイ、何時の間にこんなスレ作ってたんだよ畜生。
少し見てない間に楽園作りやがって!

とりあえずまとめ読み漁ってくる。
304名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 21:32:49 ID:oeKG8Dp+
>>302
元ネタ知らない私に詳細なネタバレお願いします
えっと、姉が弟くん大好きなオウガな話ですか?
305名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 22:19:16 ID:p0gPPuUA
仕事から帰ってくると本当に癒されるなこのスレは・・
神さんに大感謝w
306山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/14(日) 22:52:35 ID:wjaGLnkK
<2>
電話のベルが鳴った。
姉さんが席を立って、僕は呻きながらソファーに身体を沈めた。


……
………
あれから。テレビを満足気に消し、にこやかに僕の方を振り向いた姉さん。
姉さんの正面には、一仕事終えた達成感の余韻に浸りお茶を啜る僕。
僕の前にはりんごのお皿。
お皿の上には、見事殉職を果した胃袋の善戦によってなんとか残り二人前にまで撃ち減らしたりんごども。
そして。
「お姉ちゃんの剥いたおりんご、一つも食べてくれないの……?」
これは、姉さんの第一声。

可憐に咲いた花びらがしおれていく様を、100倍速でビデオ再生するとこんな感じだろうか。
陽光に踊るような姉さんの笑顔が、みるみるうちにしょげかえって絶望色へと染まっていく変化を見せ付けられる。

あぁ……。
あぁ、そうなんだね、姉さん……。

間違っていたのは僕の方だ、姉さんじゃないよ。
姉さんがとっとと片してしまった、山のような剥きカスどもは何も語れはしない。
剥きりんごの需要と供給のバランスを守るために散った胃袋の尊い犠牲は、誰も知らない英雄譚。
姉さんはテレビに夢中だった。だから僕の奮戦ぶりなど知らないし、剥かれたりんごの個数など関係ない。
知らないということは存在しないということだ。
姉さんに突きつけられたのは、「剥いてあげたのに弟が一つも食べてくれない」という事実のみだ。

『姉さんの目の前で、姉さんに感謝しながら、おいしくりんごを頂く姿を見せてあげる』
姉さんが僕に期待していたささやかな幸せとは、まさにそれ。たったそれだけ。
すなわち、姉さんがいつも言っている「弟としての当然の義務」
それ以外は初めから要求されていない。
それ以外には初めから意味がない。全く。全然。眼中にないんだ。姉さんは。
「さっきまで食べていた」という言い訳は、「昨夜宇宙人とババ抜きをした」という主張と同価値でしかない。

うなだれきって、仔犬のように小さくなって、肩を揺らし始めてしまった姉さん。
握り締めたままの果物ナイフの刃先が、姉さんの喉元で怪しく震えている。ように見える。
ホラ、かける台詞は一つじゃないか。恐れるな、山本秋人。
「いただきます、姉さん」
ぱぁっとほころんだ姉さんの喜色に、勇気が奮い起こされる。
勇気がこの場でいかほどの戦力を為してくれるかは、まるっきりの別問題だったが。
………
……
307山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/14(日) 22:53:48 ID:wjaGLnkK
唸りながらお腹をさすっていると、姉さんのスリッパがぺたぺた帰ってきた。電話終わったのかな。
見上げれば、腕組みしながら小首をかしげて、果物ナイフのフタでほっぺをトントン、としてる姉さん。
何か思案中なご様子だ。
……ねぇ。そのナイフ、いい加減片付けようよ。

「……秋くん」
「ん、なに?」
「秋くんは休日なのに、そうやって一日中ゴロゴロしているつもりなのかな?」
「は?」

さっきまでとは雰囲気一転、冷ややかな目つきで、急にそんなことを言い出す姉さんに狼狽した。
第一、別にだらだら過ごすつもりはない。
月曜までの山積みの宿題が用意されていたので、今日は一日がかりで片付ける計画だったのだ。

「もっとお日様の下に出ないと不健康だと思うな、お姉ちゃんは」
ビシッと、果物ナイフで僕の鼻っ面を指し示す姉さん。
……というか、それもう使わないんだから片付けようよ。

「だって姉さんいつも――」
そもそも僕があまり外出しないのは、姉さんの言いつけによるものだ。
買い食いや外食は固く禁止されているから、コンビニなどに出入りする必要もない。
たまに散歩に出ることもあるけど、気がつけば姉さんが隣りにいて、腕を組まれて一緒に歩いている。
中学までやっていた野球部も高校に入ってから辞めてしまったし、今は庭で一人で素振りをするぐらい。

「お姉ちゃんお留守番してるから、たまには友達と外で遊んでおいでよ」
「でも孝輔だって今日バイトだし……。みんな都合あいてるかなぁ」
「そんなの関係ないよ」
いや関係あるでしょ。
「あのさ。僕今日は、夜まで部屋で宿題やろうと思っていたんだけど」
「そんなの駄目だよ。行っておいでよ」
駄目って言われても。

「じ、じゃあ……図書館……。図書館で宿題してくる……でも、いい?」
「いいからっ!うだうだ言わずに早く行きなさいっ!」
有無を言わさずソファーから引っ張り上げられた。
仕方ないなぁ、それじゃあまず、荷物を鞄に詰めて、それから……。
ん……。
「あ、でも姉さん。図書館は屋内だから、お日様の下で健康的な外出ってのにはならないんじゃ」
「もうっーー余計なことはいいからっ! 行〜く〜のっ!!」
姉さんがぶんぶん腕を振って力説した拍子に、果物ナイフのフタが外れて飛んで行った。
慌てて行って、拾って、戻って、刃先にはめてあげる。
「ねぇ、それ、もう仕舞わない?」
「愚図愚図せずに早よいけーーーーッ!!」


……
………
308山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/14(日) 22:55:54 ID:wjaGLnkK
「あ、姉さん待って携帯忘れ――」
「秋くんッ、聞き分けの悪い子お姉ちゃん嫌いだよッ!? さっさと行くッ!」
退路を塞ぐように廊下に立ちはだかって、僕をぐいぐいと押し出していく姉さん。
「いや、でも、携帯――」
「もうッ! いいから言うこと聞いてッ! 急いでッ!」
「……その果物ナイフ、ずっと持ってるの?」
「秋くんッ! お姉ちゃん怒るよッ!?」

何をそんなに慌てているんだろう……?
まるで僕を追い出したがっているような態度に、反発を覚えなかったと言えば嘘になる。
なんだよ……人を急に、邪魔者みたいに……。
僕に会わせたくない、誰かでも来るのかよ……。

久しく感じなかった苛々に、不快感をもてあまし始めていた僕。
だから玄関を開けた時には、もう既に仏頂面で。
そこに居た人の質問にはぶっきらぼうに答えた。
「お出かけですか、秋人さん?」
「図書館だよ」


……ん?

「あ。あず?」
「こんにちわ、秋人さん」
表情ひとつ変わらない、静かな挨拶が返って来る。
制服姿のこの細身の少女は、山本梓。僕より一つ年下の父方の従兄妹だ。
309山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/14(日) 22:58:26 ID:wjaGLnkK
「あず、今日来る日だったんだ?」
「学校の帰りについでだから寄って行ってやれと、さっきお父さんから電話がありまして」
「そっか、いつも悪ィな」
「けど、図書館にお出かけなんですよね?」
「僕はね。でもどーぞ、上がっていってよ。……姉さん?」
玄関先で、なんだか固まっている姉さんだ。

「……秋人さん。折角ですから、私も図書館までご一緒していいですか?」
「いや、でも……。僕は構わないけど、いいの?」
「読みたい本もありますし、たまにはいいでしょうから」

単に宿題やりに行くだけなのに……。また梓に余計な負担をかけやしまいか?
いやでも、どうやらこれから、家にお客さんが来るみたいだ。それも、僕が邪魔になるぐらい重要な……。
だったら梓も連れて行った方が、邪魔にならないだろう……。

「じゃ、行って来るよ、姉さん」
相変わらず固まったままの姉さんにかけた言葉。少しだけ冷たいモノが混じろうとするのを、止められない。
……どうぞ、ごゆっくり。僕は行くから、さ。

「あ、秋くん? やっぱり今日は雨降りそうだから――」
「亜由美さん、予報では夜半まで降水確率0%です」
「で、でも梓ちゃん、もう遅いから――」
「亜由美さん、まだ午後二時です。秋人さんと一緒におりますからご心配なさらずに」

ぺこり、と可愛らしくお辞儀をして、梓が玄関を閉めた。

―――――――――――――――――
<2>ここまで。次回は家庭背景と梓の紹介で、説明系の内容
生意気にもシリーズ化の布石。おやすみノシ
310名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 23:03:07 ID:ziIlHNp5
姉かわいいよ姉。
新キャラも登場してますます目が離せないゼ!
311名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 23:08:59 ID:NfReUC7r
一日に、2,3作は投下されるのか、このスレは。たまげたなあ……。
312名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 23:17:42 ID:3XikfA6m
>>309
新キャラキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
姉と梓の会話にこれからの期待が膨らむ
313名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 23:20:48 ID:RYSdIlOl
秋人君、君の胃袋の奮戦っぷり、俺たちはしっかり見ていたぞ!
314名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 23:21:12 ID:gPytXLfu
お姉ちゃんにとって弟と結婚すら可能な従姉妹は最大の敵!泥棒猫!
315名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 23:28:07 ID:Cnd1z1RK
鼻血がまた出た
316名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 23:37:39 ID:o++zB3S2
俺の心が読まれてるとしか思えないほど理想的な姉なんですがこういう時はどうしたらいいのお姉ちゃん
317名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 00:00:36 ID:mkJTkKkX
新しい泥棒猫と刃物や武器が出てくるだけで顔がにやけてしまう。
318名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 00:02:33 ID:tDMxq4LF
姉ちゃん、俺のツボにキタコレwwwww
テラモエス(*´Д`)

新キャラも腹黒そうでいいな、こいつ
319Bloody Mary 第三話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/15(月) 00:18:57 ID:S0wtGrh9
 『王の盾』というのは文字通り王を守る盾となる騎士のことだ。騎士団の管轄から離れた王家直属の騎士部隊。
 そこに名を連ねることは大変名誉なことだし、同時にいかなる時も王家の人間を守らなきゃならない責任ある役職だ。
 常に護衛対象の側に立ち、周囲に気を配らなければならない。
 なのだが。

「ウィリアムウィリアム!あれは何じゃ!」
 武器庫に来て既に今日何度同じ質問をされたか。
「あれは馬上槍です。馬に乗って使う武器ですよ」
 というか姫様、馬上槍も知らないのか。これはもしかしたら騎士嫌いというのも本当なのかもしれないな。
なにより騎士団の詰め所あたりからまわりをきょろきょろしていたからこの辺りにあまり来たことがない証拠だ。
「ほう。ではあれは―――」
 以降も姫様の質問は続く。今日は姫様にせがまれ、兵舎の界隈を案内していた。
姫様曰く「ウィリアムがどんな生活をしているのか見たい!」だそうだ。
俺の生活なんて見てもつまらないと云ったのだが、姫様はもっと俺のことが知りたいのだと譲らなかった。
最初は俺の住んでいるところに行きたいと言われたが、流石に城の外に連れ出すのは不味いのでこの辺で勘弁してもらった。
 『王の盾』になってからというもの、王族が危険に晒されることなど先ずない。戦争が終わっったので命を狙う刺客が現れることもない。
よって俺の仕事は専ら姫様の子守だ。いや勿論それは良いことではある。
「―――ふむ、なるほど。時にウィリアム、おぬしいつも剣を二本帯刀しておるな?いったいどうしてじゃ?」
「ああ、これは師匠の影響です。師匠が二刀流だったもので」
「師匠…おお、憶えておるぞ。確か名前はベイリンと申したか。傭兵時代に世話になったという―――」
「ええ。その人に戦いのイロハを教えてもらったので自然と俺も剣を二本使うようになったんです」
「ウィリアムの師匠か……機会があれば会ってみたいものじゃ」
「…はは」
 苦笑いするしかなかった。あの人、かなり無礼な人だからなぁ……会ったらどうなることやら。
320Bloody Mary 第三話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/15(月) 00:19:42 ID:S0wtGrh9
「む、ウィリアム!あれ!大きなあれは何なのじゃ!」
 その質問に俺が答えるより先に。
「投石機ですよ、姫様」
 後ろから声がした。この声は……
「石を遠くに飛ばすための兵器です――――あぁ、泥棒猫をどこか遠くに飛ばすのにも使えるかもしれませんね」
 振り向くと、いつからいたのか団長が立っていた。
 ……なんか変だ。団長、笑顔なのに目が笑っていない。姫様もさっきまで笑っていたのに今は口を横一文字に結んでいる。
「どうです、姫様?試しにひとつ投石機に乗ってみませんか?遠くまで行けるかも知れませんよ」
「ふん!結構じゃ!わらわはウィリアムの側にいると決めているのでな!」
 そう言って俺にくっつく姫様。あ、今、団長の眉がぴくりと動いた。
 おかしい。なんだこの緊張感は。まるで戦場にいるみたいな………
 と、とにかく俺がこの場を和ませないと。
「だ、団長。城下の見回りはもういいんですか?いつもより帰るのが早いようですけど…」
「えぇ。どこかの小娘が騎士を城内で引き摺りまわしていると聞いたので、飛んで帰って来ました」
 駄目だ。全然和まない。それにずっと城に居たけど引き摺られてる騎士なんて見てないぞ。
「いけませんねぇ。姫様、私の団員を城内を連れ回して従者のように扱うとは」
「『私の団員』?寝言は寝てから言うがよい、マリィよ。ウィリアムは『王の盾』じゃぞ?もうおぬしの部下ではない。
言うなれば王家の者―――つまりはわらわの部下じゃ。
それともおぬしは王の勅命を反故にする気か?」
「〜〜〜〜〜ッ!」
 勝ち誇ったように笑う姫様を見て悔しそうに唇を噛む団長。
 チョット待て。団長の背後に幽鬼みたいなオーラがたちこめているのは錯覚か?
 あんな鬼気迫る団長の姿なんて戦場でも見たことないんだけど。
「ウィル!」
「ははははい!!」
 突然名前を呼ばれて返事がどもってしまった。
「明日!非番でしたよね!?」
「へ?はい、そうですけど……」
 そう答えると団長は落ち着くようにして深呼吸した後。
「明日!私と…でーと、してくださいっ!!」
321Bloody Mary 第三話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/15(月) 00:20:37 ID:S0wtGrh9




 ぼふっ
その日の夜。わらわは抑えられない怒りを枕にぶつけた。
 あの女!よりにもよってわらわの目の前でウィリアムをデートに誘いおった!!わらわは城から出られぬというのに…!!
 思い出しただけではらわたが煮えくりかえる。

『デ、デート…?』
『お願い、ウィル!……おねがい……』
『は、はぁ…午前は予定があるので午後からなら別に構いませんけど……』

 目を潤ませながら言いおってッ…!!あの優しいウィリアムが断れるわけがなかろう!
ウィリアムもウィリアムじゃ、あっさり承諾しよって!
 ああ腹が立つ!!
 もう一度枕を投げつけようと掴んだその時。
「姫様」
 突然声がした。知らぬ間に侍女のシャロンが部屋にいた。
「…シャロン、わらわは今機嫌が悪い。つまらぬ話なら黙って部屋から出て行くがよい」
「姫様より頼まれていた件、手に入りましたのでご報告に上がりました」
 シャロン―――わらわの身のまわりの世話をしている侍女のひとりなのだが彼女にはもうひとつの側面がある。
シャロンは情報収集に長けているのだ。特に国内のことなら無数のパイプを使って情報を入手してくる。
 わらわが頼んだというのはマリィに対抗するための手段だ。戦姫に暗殺など通用するわけもないからそれ以外の方法でなんとかできないか
彼女に頼んでいたのだ。
「……見せてみよ」
「こちらに」
 シャロンから十数枚の紙きれを受け取る。
 そこに書かれていた内容を見てわらわは驚愕と歓喜に打ち震えた。

 は、あは。
 あはははははははははははははははははっ!!!!!!!!!!
 見つけた!見つけた見つけた!!ついに見つけたぞ!!!
 これが、これが戦姫マリィのアキレス腱!!!!

 わらわはこみあげる笑いを堪えることができなかった。
322Bloody Mary 第三話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/15(月) 00:22:37 ID:S0wtGrh9
ここまで
ラストの謎の部分を明かすのはもう少し先になりそうです。

(チラシのウラ)
オウガの話が出たのでここで小ネタを一つ。
団長のファミリーネームはランスロットを逆さから無理矢理読んだ名前を取りました。
といっても彼女のモデルはオウガののランスロットではなく
円卓の騎士長の方ですが

>>309
新キャラに超期待してます
323名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 01:01:05 ID:iaD26X0g
>>309
見事なまでの直球。小生の嗜好にど真ん中ストライクであります。
パウエル姉弟ネタが出た時点で、図らずも漲ってしまいますた。

しかし、留守中に何する気なのか、気になる。
まだ殺人事件には少し早いと思うんだよね。
324名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 01:22:25 ID:DuSMpTmX
>>322
姫様もいいがやっぱり団長もいいな(*´д`*)
325名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 01:43:18 ID:Ro/uvpaQ
タクティクスオウガねえ…初めてLルートに入ったときの衝撃は忘れられないな。
326名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 01:53:56 ID:iaD26X0g
TOで「独占欲の強いキモ姉」属性に目覚めた者は、意外と多い
んじゃないだろうか。

まぁ、エンディングにそれが生かされていないのは、問題だが。
327名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 02:31:34 ID:DcVqpntb
あのエンディングで旅立つデニムをストークするカチュアとかあれば良かった…
もしくは女王権限で速攻確保して拉致監禁とか。
328名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 03:25:06 ID:R+JR4yyM
ゲームのキャラ批評とか見ると、嫌われてるんだよなぁ。
俺には最高のキャラなのに。
329名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 03:28:11 ID:1YuP7phQ
団長ガンガッテ(*´д`*)
団長のアキレス腱ちょっと欲しいかも…
330名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 03:43:47 ID:ZBwtjoNe
もう10年前のゲームなんでうろ覚えだが、確かゲームの後半に唐突に
現われた主人公の幼馴染みにアンタのせいで傷モノになっちゃったので
責任を取れとばかりにサクッと主人公を持って行かれてしまうんだよな。

それよりもタクティクスオウガと言えば王妃とマナフロアの修羅場ですよ。
『誰が許すものですかッ!!誰が、貴女を・・・!このまま、一生、私に
 仕えるのよ! 一生、私の奴隷にしてあげるッ!!いいわねッ!!』
331もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/15(月) 07:23:48 ID:DXaQShj5

もし、神様がいるのなら……。Another Story

わたしは深い闇のなかにいた。
全ての存在を否定するかのような闇。
そこでは夢と現実との区別をつけることさえ許されない。
ただ、闇だけが全ての世界……。
不思議な事に、わたしはその暗闇の中で何かを探していた。
広大な世界から何かを手探りで探すという気の遠くなるような作業。
しかし、わたしは諦めなかった。
必ず見つかると信じていたから。



ゆっくりと意識が覚醒していく。
やっと、あの闇から解放された。
わたしは、ほっと安堵の溜め息をつき、ゆっくりと両の瞼を開いた。
わたしの前にはいつもの通り、溢れんばかりの光が広がっているはずだった。
しかし、予想に反して目の前には只の静寂な闇……。
わたしはまだ夢の中にいるのだろうか?
そう思えるほど、現実の光景はさっきの夢と酷似していた。

そもそもここは何処だろう?
わたしの体の下にひかれる少し固い布団の感触はわたしの部屋のそれとは確かに違う。

何故自分がここにいるのか?それはわからない。
だからわたしは、ゆっくりと記憶をたどることにした。

激しく降る雨の中、わたしは高熱のためふらつく足でがむしゃらに走っていた。
そうだ、あの時起きたらお兄ちゃんがいなくて、それでわたしお兄ちゃんを探しに……。
そして……わたしが覚えている最後の光景、迫り来る恐怖と空を舞うわたし。

……わたし、車にひかれたんだ。
そこまで記憶をめぐらせ、ゆっくりと右手を心臓に持っていく。とくん、とくんとわたしの生きている証しが感じられた。
大丈夫わたしは生きている。ひとまず、少し安心した。

……ということは、ここは病院かな?
自身の命を確認し、ある程度余裕が出来た。
でも、もしここが本当に病院なら何で光が見えないんだろう?
夜だから?隔離病棟にいるから?
332もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/15(月) 07:27:08 ID:DXaQShj5

だけど、この世にこんなに深い闇が存在するのだろうか。そう思えるほどわたしの目の前に広がる闇は絶対的だった。

さらにある程度考えが回るようになって、初めてわたしの全身を柔らかな熱が包んでいることに気付いた。
それはエアコンでは絶対に生み出せない、偉大な自然の暖かさ。

それが何の暖かさなのか、それを認識した途端にゾクッと背中から嫌な予感が全身に広がった。
サーッと引いていく血の気とは反対に、ジワジワと予感が確信へと変化し全身に広がっていく。

夢であって欲しい。心のそこからそう願う。
しかし、無情にもわたしの生の証明をした鼓動が、全てを重く現実として響かせていた。
あまりに信じられない状況に、わたしは泣くのを、いやそれ以前に泣き方さえも忘れてしまった。

わたしは光を失ってしまったのだから。



もし、神様がいるのなら。わたしにとってそれは悪魔と何ら代わりない。
何も見えず、聞こえず。誰もいない闇の中で生きて行くよう強制するのだから。

もし、これが定められた運命だとしたら、いっそ神様に逆らい、舌を噛みきって死んでやろうか。
ためしに舌を歯で挟んでみた。そしてキリキリと歯を舌に食い込ませていく。

はぁはぁはぁはぁ。
……駄目だ。わたしには出来ない。
痛みとともに死後の世界を想像して怖くなり、わたしは途中で舌を解放した。
額には冷たい汗がにじみ出ていた。
残念ながら死の決定権はわたしにないようだった。

まだ自分が視力を失った事を認めたくないわたしは、僅かな可能性を信じて、おもむろに体を起こし、そのままぐるりと辺りを見渡した。

相変わらずの闇が創大に広がっているだけで、やっぱり光は見えない。

再びつきつけられる現実。
これからは、もうわたし一人では何も出来ないんだ……。
それは今のわたしにはあまりに重すぎた。
333もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/15(月) 07:30:37 ID:DXaQShj5

不意に、ガックリと肩を落とし呆然とするわたしの頭の上に、ポンと暖かい何かが置かれた。
それは暖かくて気持よく、どこか懐かしい感触だった。

これはずっと昔からわたしがつらい時、悲しい時、苦しい時に決まってするあの人の癖。
こうされると、不思議といつも気持ちが落ち着いた。
だけど、今のわたしには逆効果だよ?

………お兄ちゃん。


わたしはお兄ちゃんを裏切った。だけど、それでもお兄ちゃんは今ここにいてくれている。
きっと、闇の向こうのお兄ちゃんはいつもの笑顔をうかべているはずだ。

忘れてた泣き方、でも今それをお兄ちゃんが思い出させてくれた。
涙腺をコツンコツンとノックしていた涙が、瞼の裏に乗る。そして、ゆっくりとわたしの瞳からこぼれ落ちた。




わたしが泣いている間、お兄ちゃんはずっとわたしの頭を撫でてくれた。
そしてしばらくして、わたしが泣きやむのを確認すると、お兄ちゃんは静かにゆっくりとわたしの頭の上から手を引いていく。

スーッとお兄ちゃんがわたしから離れていく感覚。
この感覚は二度目だ。
以前この感覚を体感した時、お兄ちゃんは円香さんに奪われてしまった。
また、お兄ちゃんは遠くに行ってしまうの?

……嫌だ。
もう、二度とあんな惨めな気持ちを味わいたくない。
わたしは身をのりだし、慌てて離れゆくその手を掴んだ。
思った以上に近くにいたお兄ちゃんの息が顔に当たる。

もう、一人になるのは我慢できない。
だから………今この気持ちを伝えよう。
ひときわ激しく脈うつ胸の鼓動を信じて。


しかし、それでも後一歩をなかなか踏み出せない。拒絶されるのが怖かったから、そして何より、女としての自信がわたしには決定的に欠けていたから。

だけど今日が最後のチャンスなんだ。
贅沢は言わない。だからお願い神様。どうかわたしに一握りの勇気を。
334もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/15(月) 07:33:53 ID:DXaQShj5

グッと汗ばむ手を握り締め、覚悟を決める。
そして、わたしはゆっくりと唇の動きを確認しながら声を発した。

「好き、です」

ひどく簡単な言葉での愛の告白。
ずっと、子供の頃から伝えたかったほのかな気持ち。
だけど、できなかった。わたしに勇気がなかったから……。

「……好き、です。」

告白は、ちっとも綺麗な言葉でないし、ドラマのように劇的でもない。
それに、今のわたしは聾唖の上に盲目。お兄ちゃんとは明らかに釣り合わない。

「好き、です」

だけど、それでもわたしはお兄ちゃんと一緒になりたい。
だから、何度も同じセリフを繰り返す。お兄ちゃんが答えてくれるまで。

「好き、で」

突然、呪文のように同じセリフを繰り返すわたしの唇に何かが触れた。
暖かくて柔らかいその感触は、わたしのことばを遮り、その後でゆっくりとわたしの思考を奪っていった。
一体、わたしの唇を覆うこの感触は何なのだろうか。
その答えは混乱した頭より先に、ゆっくりとわたしの頬をつたう涙が教えてくれた。


そうか。これが、答えなんだね。お兄ちゃん。
わたしは、そのままゆっくりと濡れた瞳を閉じて、お兄ちゃんに体を預けた。


夢の先の現実で、ついにわたしは探しものを見つける事ができた。
だからわたしは、それをなくさないようにずっと抱き締めていこうと思う。

サラサラとわたしの髪をなびかせる暖かい風は、わたし達に春の息吹を運んでいた。





神様はやっぱりわたしにいじわるだった。
わたしから次々と大切なモノを奪っていき、ついには視力まで失わせた。

だけど



神様は世界で一番欲しかった人をわたしに与えてくれた。
335もし神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/05/15(月) 07:47:45 ID:DXaQShj5

話のつじつまが合わない所はスルーでお願いします。

本来は、まぁ色々あってハッピーエンドとは言えないのですが、一応純也と茜がくっついて終わりです。

ちなみに途中で話を変えた理由は、あまりに円香がブッ飛び過ぎるからです。

でも、タイトル的にはこっちだったかなぁ……。
336名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 08:15:02 ID:ha6MvZ2T
前の超BADが茜逝った後に何故かママンと結ばれてママンの一人語りで
「ありがとう茜いなくなってくれて」とかいうのが唐突に起こるポルナレフENDを期待してた俺w
337『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/15(月) 13:02:48 ID:cAPF1MzL
走る、走る。二段とばしで階段を上り、走る。疲れは感じない。感じてられない。
時計を見る……夜中の一時………お嬢は寝てるか?
そうは思いながら、部屋のドアを思いっきり開ける。
「……はぁ…はぁ」
お嬢は、起きていた。何ごとも無いように、また窓の外を眺めて。
「はぁ…はぁ…お嬢……」
「…おはよ、晋也。」
振り向いたその顔は、万円の笑みで。まるで女神のような包容力で。
「……はは、おはようにまだ早いかな?」
「…うん、そうかも。」
もう、言わずとも彼女はわかっているのかもしれない。ここに俺が来た理由が。
「お嬢……俺、決めたよ。……この世界を壊す……お嬢を、殺す……」
「うん……」
反論もせず、タダ頷くだけだ。泣くな、俺。泣くな、お嬢。
「……理由は?……私といるのが、嫌になっちゃった?」
「いいや、お嬢たちと……みんなとここで過ごした日々は楽しかったよ。……でも、今のままじゃ……俺の大切な人が幸せになれないんだ。」
「志穂…か。」
「ああ……」
しばらくの沈黙。互いに目を合わす。
「……俺の幸せは、あいつが幸せになること……アイツが笑っていられれば……幸せでいられれば……たとえ俺が隣りにいなくても、アイツに再び出会う事はなくても、俺は満足さ。」
「………本当にいいの?…志穂や、みんなでこの屋敷で生きてきた事実が、みんなきえちゃうのよ?」
「消えないよ。…現にいまここで、俺とお嬢が話してる。……これは事実でしょ?」
「……うん。そうだね。」
338『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/15(月) 13:04:02 ID:cAPF1MzL
ふぅっと溜め息をつくと、また窓の方を振り向き、大声で笑う。
「ふふふ……あっははは……はは…は……あ〜あぁ……結局、志穂にはかなわなかったかぁ……」
「ごめん…」
「ふふ…いいのよ。何となく分かってたから。…晋也、私を抱いてても、心ここに在らずって感じだったし……」
「……」
「はぁ……そっかそっか、これが失恋ってやつかぁ……悲しいなぁ………うん。」
「………」
もはや、謝る意味もないかもしれない。俺は沈黙を通した。
「でも、一番愛してる人に殺されるなら、本望ね。じゃあ、最後にお願いしてもいい?」
「ああ。」
「キス、して?」
「お安いご用です。お姫様。」
「ふふ、キザ。」
そっと近付き、目を閉じたまま上を向くお嬢に、軽くキスをする。その両目から、微かに涙が流れている。
「ん、ん……」
どれぐらいだろうか。長いキスを終え、唇を離す。
「あり…がとぅ……」
「な、泣くなよ、お嬢……」
「晋也だって……泣いてる……じゃない。」
「ごめん……ごめん!
「もう大丈夫よ。覚悟は……ついてるから…」
そっとナイフを取り出す。…悪いな、志穂。ちょっと使わせてもらうよ。…返せるかどうかも分からないけど、頑張って返してみせるサ。
339『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/15(月) 13:05:18 ID:cAPF1MzL
「キスしてくれた代わりに、一つだけお願い聞いてあげる。」
「…お願い?」
お嬢を殺すだなんていってるのに、それ以外にお願い?
「うん……この世界が消えて、別の笹原晋也になったら……どんな人になりたい?」
どんな……俺……
「もう贅沢は言わないさ。普通に生きて、学校に通う学生でいいサ。」
「わかった……じゃあ、来て。」
「うん。」
ナイフを逆手に持ち、ゆっくりと振り上げる。狙いは、心臓に。落ち着け、慌てるな。
「………」
罪悪感は……ある。でも、もう引けない。大事な人のため、俺を応援してくれた人のため。
「さようなら……お嬢……みんな!」
思いっきり、目掛けた通りにナイフを振り落とす。
「…ばいばい」
最後に聞こえた『音』。
それが聞こえた時にはもう、ナイフは深々とお嬢の胸に突き刺さっていた。
その瞬間、周りの景色がまるで消しゴムでけしていくように無くなっていく。これが、世界が壊れるってことか。
嗚呼、俺の足下も消えていく。限り無く死に近い体験。……恐怖はない。悲しみもない。感情さえ消えていく。自分の名前も思い出せない。『記憶』『思いで』が消えていく。
自分が消えていくことを自覚できる。
薄れていく意識。そこで確信した。最後にした最大の無くし物。それは、自分の人生。この世界を生きてきた人生。
「ばいばい……みんな。」
願わくば、皆が幸せであることを………………


















340名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 13:58:29 ID:8Qp7Qsb+
晋也の男気に泣いた・・・・・
ほんとに感動した。
願わくば晋也は幸せになってほしいなぁ

一番好きな主人公だ
341名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 14:12:46 ID:VSwz5GHU
やばい晋也とお嬢のやり取りに鳥肌たった、こういうのに弱いのよね俺…
願わくば皆に幸せになってもらいたいな…
342名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 14:21:58 ID:DuSMpTmX
晋也カッコイイヨー。゚(゚´Д`゚)゜。
こんな厳しい状況でも最後に男を見せたその心意気に乾杯
343『歌わない雨』Side雪:2006/05/15(月) 15:19:30 ID:OVR4jo8O
 学校に居る間、何も起こらなかった。昨日の出来事がまるで無かったかのように、せっちんと緑は小競り合っていたし、ごはんも普通に食べていた。
 とにかく、不自然な位にいつも通りだった。
 でも、伸人ちゃんと違って私は見逃していない。
 なにしろ、たきつけたのはアタシだ。その本人が気付かないなんて、お笑い草にも程がある。 長年連れあった同性だからというのもあるだろう。
 私ははっきり確信した。
 緑の目が、昔と同じになっている。
344『歌わない雨』Side雪:2006/05/15(月) 15:22:38 ID:OVR4jo8O
 ここは放課後のカラオケ。頼まれたのか自発的なのか、伸人ちゃんの提案でいつものメンバーでの寄り道。今せっちんと緑が歌っているのは、せっちんの得意な曲『ピエールとカトリーヌ』だ。
「上手いんだがなぁ」
 伸人ちゃんとは違う意味でだが、感想は同じだ。下品なこの歌詞はとても嫌いだ。
「どうだった?」
 訊きながら、緑が伸人ちゃんの右隣に腰を下ろす。いつもの流れでせっちんはその反対、伸人ちゃんの左隣へ。しかも、それ程狭いソファでもないのに伸人ちゃんを中心に詰めている。
「おい、伸人が眉をしかめているだろう。離れろこの雌豚」
「そっちこそ、伸人にかわいそうな病気が伝染るから離れたら?」
 相も変わらないいつもの口論、しかし不自然すぎる。緑の表情が、いつもと違う。
 あたしが望んだ展開に、心が弾む。
 緑は嗜虐的に目を細めると、やけに冷たい声で、
「この泥棒猫」
 思わず、叫びそうになった。
 中学時代に何度か聞いた、鉄の声。伸人ちゃんに依存して、伸人ちゃん以外の全ての人間、それが例えば親友のあたしや、彼女自信の母にまで嫉妬と敵意を見せていた時の声。
 そして、狂いに狂った策士の声だ。
「ほう、泥棒猫。随分と面白い事を言うな。まるで、伸人がお前の所有物のようだ」
 乗せられたように、せっちんは喋り始めた。
 その言葉一つ一つがあたしの心を弾ませる。
「口を出される筋合いは無い。確かにお前が幼馴染みだというのは事実だが、お前の所有物ではないだろう」
「確かにね」
 言葉と共に、緑は笑みを浮かべた。
 たまらない。
 この表情は、策士の装備が整った顔だ。
 それはつまり、この関係と相手を倒す方法が揃ったと言う顔。
 祭りの始まりの最後の狼煙。
345『歌わない雨』Side雪:2006/05/15(月) 15:27:29 ID:OVR4jo8O
「幼馴染みが必ず結婚する訳じゃないし、その後に普通恋愛も有るだろう? だから、緑に口を出される筋合いは無い」
 芹の言葉を聞いて、緑は更に笑みを強くした。
「そうよね、正にその通り」
「なら…」
「だから、セックスの回数や順番も適用出来ないわよね」
 あたしはその冷たすぎる声に驚喜した。昔の声どころじゃない、それ以上だ。
「それに、あなたとのセックスは両者の愛情で行われたものじゃない」
「それなら」
 せっちんが怒りを溜めて緑を睨みつけるが、当の本人は涼しい笑顔のままだ。
「互角なのよ、ここからが始まり」
 二年前とは比べ物にならない程の愉悦が心の中に溢れてくる。
「それにセックスなら昨日の夜、私もしたから色仕掛けも無駄よ」
 最高だ。
 最高だ最高だ最高だ。
「待てよ、緑も芹も」 伸人ちゃんが二人の勝負に口を挟む。
「争うよりも、笑おうぜ。今日は過去を水に流すお祝いだ」
 当然だろう。
「これからも、僕の前では争うな」
 伸人ちゃんが完璧なのは完全主義者だからではない。
 二年前の出来事を忘れるため、勉強とスポーツに逃げ続け、八方美人を貫き続けた結果の副産物だ。
346『歌わない雨』Side雪:2006/05/15(月) 15:30:02 ID:OVR4jo8O
 しかし、あたしは繰り返しを望む。
 伸人ちゃんは緑が一度も負けたことのない作詞だと思っているが、それは大間違いだ。 緑は二年前に一度だけ負け、しかしその事実が知られる前に勝者は死んだ。とても下らない理由、女の嫉妬だ。
 誰にも知られずあたしが殺した。
 それがスイッチになってたように緑は策士を辞めたし、伸人ちゃんは少し壊れた。大した量では無いものの、直せないように狂っていった。
 この時点で、あたしの目標は決まった。
 妹、という理由で勝負の場にすら上れなかったあたしは、だからこそ漁夫の利の資格を手に入れた。
 憐れな道化で構わない。
 自身の恋愛沙汰には関わらず、他人の実りを噛み砕き、壊れていく伸人ちゃんの側でただ一人夢想を続ける。
 なんて甘美な世界だろう。
 しかし、壊れるのはまだ早すぎる。
「まずは楽しく歌わなきゃ」
 あたしは場を取り持つように言うと、計画を練り始めた。
347『歌わない雨』Side雪:2006/05/15(月) 15:32:56 ID:OVR4jo8O
今回はこれでおわりです

やっと全員の立場が書けました。雪は直接絡みませんが、個人的には一番好きなので一応
348名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 15:40:39 ID:DuSMpTmX
雪腹黒可愛いよ((((*´Д`))))ハァハァガクガクブルブルハァハァ

>雪は直接絡みませんが
つまり間接的にはガンガン絡んでいくわけですね!!!もし、神様の円香の様に……
349名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 16:09:47 ID:DcVqpntb
>> 妹、という理由で勝負の場にすら上れなかったあたしは
諦めちゃ駄目だ!
350アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/15(月) 17:24:18 ID:z85UkQ7l
投下開始します
351生きてここに・・・・七章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/15(月) 17:27:04 ID:z85UkQ7l
プールから上がってすぐに私を抱えたまま裏口からこっそり屋敷に戻る
「あそこに入って・・・・」
私が洋服の倉庫を指差すと仁ちゃんは辺りを見回して
人が居ないのを確認すると足早にその部屋に入った
「ふぅ・・・・・」
ああ、離れてくよ仁ちゃんのぬくもりが
でもしかたないか
「あ・・・・・ごめん」
急いで視線を反らす仁ちゃん
そうか私の裸見られちゃったんだ
直接ではないけど見えてるよね?
下は・・・・まだ恥ずかしいな・・・・見えてないだろうけど
でも仁ちゃんが望んでくれればいいよ
いつでも
「着替え・・・・ないかな?」
ちらちらとこちらを見て仁ちゃんが私に聞いてくる
「暖めてあげようか?」
「・・・・・・・・」
あれ・・・・・いつもは「ふざけるな」とか「冗談はよせ」なのに
顔を真っ赤にして俯いちゃった
もしかして・・・・
意識してるよね?これは・・・・
よかった少しも女の子として見て貰えてなかったらどうしようって思ってたけど
これは脈ありってとっていいよね?
事故だったけど、神様からの贈りものかな?
でも、0%の可能性じゃなくなったよね?
勝機が向いてきたのを私は感じていた
この勝負なにがなんでも勝つよ
詩織さん、私負けないよ
だってね私・・・・もう仁ちゃんなしじゃダメみたいなの
352生きてここに・・・・七章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/15(月) 17:27:50 ID:z85UkQ7l
「・・・・・ありがとう、奈々さん」
新しいスーツを肩にかけると仁ちゃんはそう言って肩にかけたスーツを手に取った
ふ〜ん、奈々さんか
私はスーツを奪い取るとそっぽを向いた
「あ・・・・奈々さん」
「私は奈々さんではございませんよ」
もう、仁ちゃんってば・・・・
仁ちゃんは背を向けるしか出来ないので私が渡さないとどうすることもできない
どうする?どうするのかな?
観念しちゃいなさい!
353生きてここに・・・・七章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/15(月) 17:28:41 ID:z85UkQ7l
「奈々・・・・その・・・・・」
奈々って言ってくれた
もう仁ちゃんってば素直なんだから
これで少しだけだけど距離、縮まったよね?
私はなにも言わずに仁ちゃんの肩にスーツを乗っけた
仁ちゃんは安心の声を出して着替え始めてた
私がいるにもかかわらずに着替えをする
もしかしてあまりそういうの意識しない?
そうだよね、ボクシングの試合なんて・・・・
仁ちゃんってすごい身体してるな
背中の筋肉なんてすごいよ
脚の筋肉の付き方もマンガの中の人みたい
それで全体的に細い
抱きついていたときの感触が鮮明に浮かぶ
仁ちゃんの胸に顔をうずめたときのあの感触
仁ちゃんの手に抱きしめられるあの感触
さっきまで私のモノだったんだ
そんなことを考えているうちに仁ちゃんは着替えを終えていた
「じゃあ、俺・・・・・外に出てるから」
「ちょっと・・・・待って!」
振り向きかけて仁ちゃんはやめた
だから私は後ろから抱きついた
仁ちゃんはいつのことかとばかりにため息をついた
でも、違うよ・・・・
少し振り向く仁ちゃんに私は唇を近づけた
「え・・・・・」
驚きの声を私は自分の唇で止めた
ゆっくりと離れていくと仁ちゃんは頬を染めた
「どうして・・・・」
「・・・・・・・・」
何も言わない
何も言えない
だって好きですって言ったらフラレちゃうでしょ?
だからね
354生きてここに・・・・七章  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/15(月) 17:29:39 ID:z85UkQ7l
「なんででしょうね?」
いつもどおりに茶化してみせるの
そうすれば仁ちゃんは不思議に思うでしょ?
私の気持ちは知ってるだろうけど
なんで告白しないの?って
仁ちゃんを困らせるのは正直嫌だけど
意識してくれるでしょ?
私を見るたびにどうして告白もせずにキスしたのかって
思い出すでしょ?私とのキスを
「・・・・・」
当然の戸惑いの表情
ごめんね、仁ちゃん
「俺、その・・・・・!」
ドアを開きバタンと閉じる
ごめんね・・・・
私は心でそうつぶやくとガタンと音をたててその場にひざをついた
唇をなぞっていく
ぬくもりがまだ残っている気がした
結局私からだったね・・・・
後悔はないよ?だって私の初めては全部仁ちゃんで予約済みだから
最初だけじゃないよ?仁ちゃんは最初で最後なんだから
でもね、恋愛経験ゼロの私じゃこれが限界
顔に熱が集まっていく
自然と涙がこみ上げ流れる
嬉しいの・・・・・嬉しいよ
ぬくもりが嬉しかった
触れ合いが幸せだった
最高の誕生日だよ
仁ちゃん・・・・
355アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/15(月) 17:30:20 ID:z85UkQ7l
>>322
面白いです!
姫さまがいいです!
これからの展開に期待しておりますです

>>335
耳が聞こえないという特殊な状況をうまく表現できていて尊敬です
自分にもこれだけ力があれば・・・・

>>339
晋也や女性陣の幸せを願っております

>>347
腹黒・・・・いいですね
できれば絡んで欲しいです

土日投下できなかった分夜にでもまた投下しようと思います

次章 読めない奈々の心
356名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 18:44:31 ID:PHSICI9O
アビスさんハイペースな投下乙です
357名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 19:29:17 ID:R6yYwt9t
気がつけば1日に2回は、このスレを確認している。
358名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 19:41:09 ID:S+/sT454
株で5万飛んだ日でもこのスレがあれば生きられる・・・
ありがとう神様m( __ __ )m
359名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 20:37:46 ID:oXzqZhP+
たとえ二週間連続勤務だろうと、このスレさえあれば俺は倒れるまで戦える・・・
神々に心の底から感謝ッ
360Bloody Mary 第四話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/15(月) 21:41:23 ID:S0wtGrh9
 翌日の午前。俺は城下町の酒場に来ていた。やや寂れた感じのするこの酒場は月に一度、ある人物から定例報告をしてもらうのに
待ち合わせている場所だ。
 酒場の中を見渡すと隅のテーブルで目的の人物が酒を煽っているのを見つけた。
「朝からアルコールですか。堕落してますね、師匠」
「よう、ウィル。『王の盾』になったんだってな。」
 そう言って俺に座るよう顎で促すこのオッサンはベイリン。俺の師匠で騎士になる以前所属していた傭兵旅団のリーダーだ。
「いいんですか?こんな朝からお酒なんて飲んでて」
「いいんだよ。戦争が終わってからこっち、仕事なんてありゃしねぇ。
南の方じゃ雲行きが怪しくなったてんで旅団の他のヤツらはそっちに行かせたんだがオレはお前に頼まれた仕事があるしな」
「…すいません」
「ま、そりゃ別にいいんだけどな
……で、お前に頼まれてた―――フォルン村を襲ったって奴等の所在だが」
 師匠には戦争終結後、フォルン村を襲った連中のことを調べてもらっている。ヤツらが敵国の兵なら戦争中に顔を合わせることも
あるだろうと思っていたが一度もそんな機会に恵まれなかった。それで師匠に行方の調査を依頼したのだ。
死んでいるのならそれはそれでよし、生きているのなら―――――
「とりあえず正規の兵じゃなくどっかの傭兵かなんかってことだけはわかった。それ以外のことはもうちょい待ってくれ。
近いうちに調べがつくと思うからよ」
そこで一端話を切り、俺を数瞬見つめこう切り出した。
「…なぁ、ウィル。もうこの辺で止めにしないか?」
「なんです、突然」
「いや…ちょっとキナ臭い話を聞いてな……もしこのまま調査を続ければお前が知りたくないことまで
知らなきゃならなくなるかも知れんぞ?それでもいいのか?」
「あいつらは……やめてくれと泣き叫んでるキャスを汚し、犯し、それに飽きたら嗤いながら殺したんだ。
許せるわけがない―――許せるわけ、ないよ……」
 俺の言葉を聞いて師匠は嘆息した。
「まぁ、何か分かったら城の詰め所に寄らせてもらうわ。
それよりどうだ?付き合わないか?」
 言いながら酒の入った器を揺らす師匠。
「すいません、師匠。この後予定が入っているもので俺はこれで失礼します」
「予定…?ははぁん、オンナだな?」
「なっ!?い、いいでしょう!そんなことは!」
 がっはっはっはと下品に笑う師匠を置いて席を立つと呼び止められた。
「ウィル、たとえ何を聞いて後悔したとしても、絶対に逃げることだけはするなよ?」
「師匠?」
 いつかぶりに見る師匠の真剣な表情。師匠、あなたはいったい何を知っているんですか。
「あ、それから最後にもうひとつ。
――――――避妊はしろよ?」
「やかましいわっ!!!」
361Bloody Mary 第四話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/15(月) 21:42:26 ID:S0wtGrh9


 師匠と別れた後、団長に指定された待ち合わせ場所――――城下町の中央広場、噴水前で彼女を待った。
 少し早く来すぎただろうか。
 しかし団長、急にどうしたんだろう?突然デートなんて。なんか妙に切羽詰まってたし。
『王の盾』になった祝いでもしてくれるのかな?
 それにしてもどうもここ最近の団長の行動は不可解な点が多すぎる。『王の盾』になってから、俺を見つけては
引き止めて俺がいかに『王の盾』に向いていないか説いたり、任務の終了する時間に詰め所で待っていたり。
もしかして俺のことが好――――
 いやいや。団長がそんなまさか。師匠がしょーもないこと言うから変な方向に思考が逸れてしまった。
かぶりを振って雑念をはらう。
 うん。団長のことだ。きっと俺を労おうという心遣いから今日俺を誘――――
「遅くなってすいません、ウィル」
 ほら、団長もいつも通りの喋り方じゃないか。
「いえ、俺が早く来ただけで……」
 そう答えながら団長を見たとき。
 ――ドクン
 いつもと違う団長の姿を確認して俺の心臓は突然高鳴った。
 甲冑を着ているときはロングの髪をまとめているのに今日はその綺麗な銀髪を下ろしてそれが陽の光を反射してひどく美しく見えて
だいたい団長の私服姿を見るのはこれが初めてなんじゃないかそれより俺はなんでこんなに混乱しているんだなんで団長の―――
 なんだ、この気分は。
 あ、相手は団長だぞ、不謹慎にも程がある。
「あの…この格好、やっぱり何か変ですか…?」
 呆けていた俺を見て団長は不安そうにスカートの裾をつまむ。は、早く何か答えろ、ウィリアム。
「あ、え、その…す、すごくににに似合ってます……」
「よかった……なにぶん普通の女性らしい格好を殆どしたことがないので少し不安になってしまいました」
 ほっとして団長は朗らかに微笑んだ。
 ぐっ……か、可愛い……
「今日は舞台を見に行こうと思うのですがどうですか?あ、チケットなら心配いりませんよ。
もうこちらで用意しちゃってますから……ほら!」
 嬉しそうに舞台のチケットを取り出しこちらに見せるその姿はますます俺を混乱させる。
「さ、早く行きましょう。時間なんて限られてるんですから」
 俺の手を取り歩き出す団長。
 やはり今日の団長はおかしい。なんでこんなに楽しそうなんだ。城内では決して見たことのない顔ばかりする。
362Bloody Mary 第四話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/15(月) 21:43:15 ID:S0wtGrh9

 舞台が終わり、陽も落ちたころには俺の心も落ち着いて―――いなかった。
 劇場の中でもお互いチラチラと相手を盗み見たり、手が偶然触れ合ったりで舞台に集中できなかった。
 いや、きっと団長の普段着に慣れてないせいだ。
 そういえば団長はどこに行ったんだ?
 劇場内をきょろきょろすると、その一角―――おそらく土産売り場か何かだろう―――でじっと品物を見つめている団長の後ろ姿が目に入った。
 近づいてよく見てみると小物が並ぶショーケースの中…ひとつのブローチに目を奪われているらしい。
「団長?」
 声をかけるが聞こえていないのか反応がない。
 このブローチは…たしかさっきの舞台で主人公がヒロインにプレゼントしたブローチと同じだな。
この店は舞台衣装の類のレプリカを販売しているのだろう。
 それにしてもこんな近くにいるのに全く気づかないとは。よほどこのブローチが欲しいのだろうか。
 値段は―――よし、これなら何とか買えるな。
「すまないが、このブローチをくれ」
 売り子に声をかけたところでやっと団長が俺に気づいた。
「ウ、ウィル!?」
「欲しいんでしょう?このブローチ……あぁ、有難う」
 売り子からブローチを受け取り、団長に差し出す。
「どうぞ」
「あの…いいんですか?」
「えぇ。日頃お世話になっているほんのお返しです。気にしないでください」
「あ、ありがとう……」
 受け取った包み紙をぎゅっと胸の前で大事そうに抱く団長。はは、これならプレゼントした甲斐があったというものだ。

 夜、それぞれ帰路に着く城下町の通りで。俺の少し前を歩く団長は俺に尋ねてきた。
「『王の盾』の任務はどうですか?」
「なんとかやっています。護衛と言っても危険なことなんて全くないですけど。
退屈するかなとも思ってたんですが姫様の相手をするのは中々大変ですね、ははは」
「私は―――私は淋しいです」
「……団長?」
「ウィルが私の隊から離れて二週間と少し。あの日から私は全然任務に集中できないんです。
訓練してても腕が鈍っているのが判るんです。ぼぅっとしていることが多くなったんです。気づくとあなたを捜しているんです」
 独白。俺は急にそんなことを言い出す団長に戸惑って何も声を掛けることができなかった。
「私はウィルがいなきゃ駄目なんです。ウィルが側にいないと力が沸かないんです」
 そこで団長は振り返り。
「お願いします。私のところに帰ってきてください」
 彼女の頬には。
「どうか、どうか私の側にいてください」
 一筋の涙が伝っていた。
「団長……俺は―――」
 言いかけたところで団長の顔が目前に来て。
 彼女は俺に背伸びした。
 顔を離して暫くの静寂の時間を挟み、団長は顔を真っ赤にして
「わ、私はここで失礼しますねっ」
 と言って俺から離れ駆け足で帰って行った。
 ひとり取り残され間抜けに突っ立っている俺。
 ……………え?
「俺、今…団長に――キス、されたのか……?」
 やっと思考が回り始めた俺は人気のない夜の街で、暢気にもそんなことを呟いた。
363Bloody Mary 第四話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/15(月) 21:46:06 ID:S0wtGrh9
団長が一歩リードして第四話終了。
ちょっとオッサンとの会話が長すぎたかも。
すいません。
364名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 21:48:10 ID:OVR4jo8O
団長GJwwwwww

これはwwwwww
365名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 21:56:06 ID:cBCzg1w4
団長カワユスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
366アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/15(月) 21:59:12 ID:z85UkQ7l
投下します
367生きてここに・・・・八章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/15(月) 22:00:41 ID:z85UkQ7l
ドアを閉めてそのドアにもたれかかる
まさかあんなことになるんなんて
唇をなぞる
「・・・・・・」
まだぬくもりを感じた
正直な話奈々はとても魅力的な女性だと思う
もしかしたら一番気負いせずに話せる人かもしれない
瞬間に浮かぶ詩織の顔に罪悪感がこみ上げる
過ぎてしまったことは仕方ないのか?
とてもそうは思えそうにない
悩んでも答えはでそうにない
俺は何度も詩織さんに心の中で謝ってその場を後にする
結局もとのプールまで戻ると俺は置き去りにされた二つのボクシンググローブの前に腰掛けた
会場はもうパーティーを始めたらしい
まったく、じゃじゃ馬なお姫様のせいで
俺はフッと笑んでプレゼントされたボクシンググローブを手に取った
彼女の気持ちは知っている
でも、なぜか彼女はそのことを口にはしない
いっそのことそうしてくれれば断れるのにな
ああ、見えていろいろ考えてるのか?
そんなことないか・・・・でもない?
368生きてここに・・・・八章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/15(月) 22:01:19 ID:z85UkQ7l
あの子は掴めないな
人の心を読むのは得意な方だが
彼女の行動は予測不可能だ
いつもはおどけているにも関らず急に大胆な行動を起こす
見ていて飽きないしおもしろい
でも急に女の子らしい振る舞いをする
キスの記憶が鮮明によみがえる
なんであんなことを
その身体を震わせ必死に唇を合わせていた
たぶん初めてだったんだよな?
でなきゃあんな必死じゃないか
気がついたら俺は奈々のことばかり考えていた
術中にはまってるのか?
「な〜にニヤニヤしてるの?」
後ろからした声に再び罪悪感がこみ上げてきた
「詩織・・・・?」
なんで詩織がここに?
綺麗なドレスを着こなして前かがみぎみに俺を見つめる
「なに?それ・・・・」
俺は慌てて手に持ったボクシンググローブを隠した
「・・・・・」
今度は後ろのボクシンググローブだ
さすがに鋭い
「あれって仁くんのだよね?」
「あれはその・・・・」
今度は顔を近づけてきた
え・・・・?
どうして?
「口紅」
口紅?なんのことだ?
か細い指が俺の唇をなぞる
あ、そうか・・・・・
詩織はそのまま何も言わずに俺の後ろに回り手に持ったボクシンググローブを見つめた

369生きてここに・・・・八章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/15(月) 22:03:00 ID:z85UkQ7l
仁くんが奈々さんの誕生日のパーティーに行くと聞いて私はいてもたってもいれなくなり飛び入りで参加した
当然入り口で止められたけど仁くんの名を出すとすぐに高田さんが現れた
高田さんが私のことを紹介するとすぐに通してくれた
会場中探したけど仁くんの姿は確認できない
会場にいないとなると仁くんはかならず庭あたりにいるはず
だってこういう時って必ず仁くん庭に出て夜空を見てるの
それが好きなんだって・・・・
私は仁くんのことならなんでもわかってるんだから
近くに大きな窓を見つけた
その先に庭がある
やっぱり、少し向こうに仁くんの後姿を見つけた
もう、スーツ着てるんだから地べたに座っちゃダメでしょ
世話がやけるな・・・・
あれ?なんか顔が赤い
その顔を私は見たことがある
私とキスしたときだ
あのときのはにかんだ顔を思い出す
もう、仁くんってば私とのキス思いだしてるの?
照れちゃうな・・・・
でも私は気づいてしまった
仁くんの見つめる先にある真新しいボクシンググローブを
「な〜にニヤニヤしてるの?」
仁くんはまるで浮気を見つかったような笑みを浮かべた
「詩織・・・・?」
声もどこか弱々しい
いつものぶっきらぼうぶりはどうしたの?
「なに?それ・・・・」
「・・・・・」
ふと視線に入る仁くんの手のボクシンググローブに私は違和感を覚えた
大事そうになんで抱えるの?
そのまま隠してしまった
「あれって仁くんのだよね?」
仁くんの向こうに見えるいつも仁くんが身に着けているボクシンググローブ
私たちの少し向こうにプレゼントを包んでいたかのような袋
「あれはその・・・・」
珍しく言いよどむ仁くん
どうしたの?いつもの堂々としたあなたはどこにいったの?
そして私は気づいてしまった
ある違和感の正体に
「口紅」
声が勝手にでていた
自分でも驚くほど低い声が出た
370生きてここに・・・・八章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/15(月) 22:03:42 ID:z85UkQ7l
仁くんの唇に残るうっすら残るルージュのあと
そうか、そういうことなのね
ふ〜ん・・・・あの子、私がいないところでなにをやってるのかな
この子はね、私のモノなの
人のモノに勝手にキスしていいのかな?
それにプレゼント?仁くんが持っているのを彼女が?
向こうにあるのを仁くんが?
私のいないところでぬけぬけと
あの子・・・・
私はなにも言わずに仁くんの唇に自分の唇を合わせる
少し離して唇を舐める
仁くんは抵抗しない
仁くん・・・・私仁くんのことは怒ってないよ
でもね、私独占欲だけは強いの
でも今日はあの子の誕生日だから
今日は見逃してあげる
でもね、明日学校ではちゃんと言わせてもらうわよ
どれだけ私たちが愛し合ってるか
でも、仁くんの唇だけは綺麗にさせてもらう
当然だよね、私のモノなんだから
今日だけ幸せを感じてて・・・・
せいぜい今日の誕生日を楽しんで
371生きてここに・・・・八章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/15(月) 22:04:23 ID:z85UkQ7l
私は仁くんに微笑みかけるとその場を去ろうとする
「詩織・・・・ごめんなさい」
「謝らないで・・・・あなたが望んでしたことではないのでしょ?」
仁くんはなにも言わない
でも仁くんのこれは肯定だ
「ごめんなさい」
仁くんはいつも言い訳せずにいるからね
あの子が勝手にしたことなのに罪悪感を覚えている
かわいそうな仁くん
「私・・・・今日は帰るね」
振り返っていつものように笑む
仁くんは肩透かしをくらったようだ
そうだよ、それでいいの
仁くんはなにも気に病むことはないの
全部ぜ〜んぶあの子のせいなんだから
372生きてここに・・・・八章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/15(月) 22:05:39 ID:z85UkQ7l
「もう、よろしいのですか?」
坂島さんは私にそう尋ねるとゆっくりと車のドアを開いた
私はかるくうなずくと車の中にはいる
坂島さんはすぐに車を出してくれた
私は隣にポツンと置いてあった袋を見つめた
「・・・・・・」
袋を開いて中身を出す
真新しいボクシンググローブ
赤と黒の世界でただ一つの特注品
でも、もう意味ないな
仁くんが新しいボクシンググローブを欲しがっていたのは知っていた
だから・・・・だから!
仁くんに怒りは覚えない
だって全部あの子のせいでしょ?
ぬけがけして仁くんの気を引こうとしても無駄なのに
仁くんは、もう私と深く繋げってるの
でも、あの子には少しの不安材料がある
つかめないという所だ
仁くんもあの子の気持ちを解りかねてるみたい
天真爛漫に見えて時にしとやかに女らしく
カワイらしい容姿
私にはないものを持っている
怖い・・・・
373生きてここに・・・・八章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/15(月) 22:06:56 ID:z85UkQ7l
私には仁くんしかいないの
あの子もそう思っているのを感じる
もしかしたら私とあの子は似たもの同士なのかも
だからか・・・・・同じ人を好きになったのは
だからなの?同類嫌悪のような物を感じるのは
言い知れない不安が一つ・・・・いやまだある
香葉さんだ
彼女はまだ諦めていない
だって、イジメに合っていた子
仁くんに告白しようとしてイジメられたらしいの
それを止めた子まで・・・・
負け犬にかわりはないけど
あの執念のような怨念ようなものを発する彼女に私は一種の恐怖を覚えている
不安材料の二つが私の胸をきつく締め付けていく
374アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/15(月) 22:11:09 ID:z85UkQ7l
ここまで読んでくれた皆様お疲れ様です
トリップが変わりましたが中の人は一緒です

肩透かしばかりですいません
本当はここでビンタ合戦の予定でしたが後の展開を考えてやめました
ちゃんと考えのあってのことですのでお許しを
と、言っても土台は完成しました・・・・ついに

次章 起動戦士香葉さんU 凶戦士
微妙なネタですいません・・・・次章で開幕戦のゴングが鳴ります
正直皆様に受け入れてもらえるか不安ですが
次章は開幕戦のゴングですので開始を予感させる感じのものです
正直皆様に受け入れてもらえるか不安ですが
次章の次の章から自分なりに刃物な展開を書いたつもりです
375名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 22:15:40 ID:S+/sT454
やはり詩織さんの独占欲の深さに惹かれる俺がいる
作者様(*^ー゚)b グッジョブ!!
376小さな恋の物語の中の人:2006/05/15(月) 22:49:33 ID:C3kl5sxJ
第4話UPした後PCが天寿を全うしました
今日新しいPCが届き設定いじってこのスレにきたら…
もう6スレ突入ですかそうですか(・ω・`)
前のPCのデータのサルベージが一段落着いたら再開しますので
もう少々お待ちくださいませ

あっ石投げないで…
377名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 22:54:26 ID:DOdLNDQH
>>376
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +        
 と__)__) +
378名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 22:55:54 ID:S+/sT454
8k程、前スレのほうが小恋のために残されてますので
期待して待っております。
もちろん8kで足りなければこちらの方にもお願いいたします
379名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 23:19:58 ID:m6M8AH6x
ここって既出?
ttp://red.ribbon.to/~ftft/home.html
ハーレムスレでは紹介されてて不評だったけどここでなら
受けがイイと思う。
380名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 23:49:19 ID:t3un8ITl
>>363
あ、なんかすごく嫌な予感が……。

死亡エンドの可能性濃厚か……。
381名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 00:04:55 ID:AiFIC96D
もし、神様がいるのなら……。Another Story
とても良かったです と、言うかやっと落ち着けました
バッドエンドも確かにこのスレらしかったですが、自分はやっぱハッピーエンドのほうが好きです
まぁ、手放しのハッピーではないですが

あと今まで一切使われなかった「」が始めて使われた事の意味!
これは胸に来ました!

おつかれさまでした 次回作も期待しております
382名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 00:26:05 ID:9NG33y9Z
もし、神様がいるのなら・・・・を読んで「ゆきうた」のヤツを攻略したくなってきた。
また泣けるかもしれん。

そして晋也とお嬢のやりとりに号泣
本当にいいやりとりだ。
383振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/16(火) 04:04:33 ID:lY5dSfUH

「う〜ん。 こっち……じゃ無くてこっちだ! よし、あ〜がり、っと」
 俺は結季の手元からとったカードと手元のカードでペアを作り山に捨てる。
「う〜、またわたしの負け……」
 そう言って結季は手元に残ったジョーカーを睨みながら心底悔しそうに呟く。
「結季って案外顔に出るからな」
 俺は笑いながら口を開く。 結季の事良く知らない人間はポーカーフェイスだと思ってるらしいが、幼馴染の俺に言わせりゃ結構顔に出やすいんだよな。
「もう、祥ちゃんも少しは手加減してあげなさいよ」
「羽津姉、真っ先に上がった人間の言う台詞じゃねぇよ」
「えへへ、それもそうか」
 反対に表情を使い分けたくみに惑わせてくれるのが羽津姉だ。
「もう一勝負いくか?」
「当然よ。次こそお姉ちゃんにも祥おにいちゃんにも負けないんだから」
 そう言った結季は既にトランプをシャッフルし始めてた。 普段人前であまり表情を出さないくせに、いや、だからこそか。 気心の知れた姉である羽津姉と幼馴染の俺にだけは其の感情をあらわにする。
(考えすぎだったかもしれないな)
 正直言うと今回の旅行物凄く楽しみにしてたのは言うまでも無いが、反面積極的に動いてくれた事に結季らしくないと違和感を感じないわけではなかった。 だが相変らず裏表の無い結季が何か企んだりとかありえないよな。

 そしてシャッフルし終わった結季はカードを配ろうとして手を止めた。 丁度車内アナウンスが流れた為だ。
「あ、もう直ぐ乗り換え」
 結季は残念そうに呟く。
「続きは次の電車に持ち越しね」
 羽津姉が言うと結季は残念そうに、でも手早くトランプを仕舞う。 そして代わりにポケット時刻表を取り出す。 ページの間には幾つも付箋が張られている。
「乗り換えたらまた勝負だからね。 祥おにいちゃんもお姉ちゃんも勝ち逃げ許さないからね」
「おう、返り討ちにしてやるぜ」
 笑って答え俺も下りる準備を始めた。
384振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/16(火) 04:07:20 ID:lY5dSfUH

 そして幾つかの乗り継ぎを経て目的地と思われる駅に着いた。
「到着か?」
「うん。 お姉ちゃんも祥おにいちゃんも疲れた?」
「大丈夫。 こんなに長い時間電車に乗ったの久しぶりだけど、乗ってる間ずっと楽しかったしな」
「乗り換えも全てスムーズに済んだしね。 本当お疲れ様結季」 
 俺と羽津姉は改札口を通りながら結季にねぎらいの言葉をかける。
「そんな、だって言い出しっぺだもん。 コレくらい当然よ。 でも予定通りの時間に到着できてよかった」
 そう言うと結季はにっこり微笑んだ。 そんな結季の笑顔に胸が高鳴る。

 改札口をくぐりぬけ駅の外に出ると出発直後には未だ低かった太陽もすっかり高く昇っており、空は真っ青に澄み渡っていた。
「で、この次はどうする?」
 目の前のターミナルには何台かのバスと乗客待ちのタクシーが止まっている。
「えっとね。 次はね……」
 そう言って結季は何かを探すように辺りをきょろきょろ見回す。 目的地行きのバスを探してるのかと思ったがチョット違うみたいだ。 其の視線は、道路の向こうの車に注がれてるようだった。
 そして一台の車が俺たちの目の前で停まった。 車のウィンドウが開き運転席から顔をのぞかせたのは綺麗な女の人。 年のころは二十台半ばと言った所だろうか。 あれ? どこかで見た事があるような……。
「お久しぶりです。 季歩おねえちゃん」
「季歩ねえさん?!」
 女の人の顔を見て二人はまるで正反対の反応を示す。 待ちわびて分かりきってたかのような結季と不意を付かれたかのように驚きの声を上げる羽津姉。
「久しぶりね。 羽津季も結季も元気そうで何よりだわ」
 羽津姉が未だ驚きの隠せないでいるのと対象に笑顔の結季。 そして何か思い出したように携帯を取り出し掛け始めた。
「もしもしお母さん? わたし。 うん、今着いて季歩おねえちゃんにも出会えたところ。 季歩おねえちゃんに代わるね」
 そう言うと結季は車の女性に携帯を渡す。
「御無沙汰してます叔母様。 はい二人の事は任せてください」

 車の女性が電話してる間に俺と羽津姉はこっそり結季に問いかける。
「どういうことだ? 結季」
「そうよ、私にも説明して」
 俺たちが問い詰めると結季はどこか悪戯っぽく笑って見せた。
「えっとね、普通にわたし達三人だけで旅行なんか許してくれないでしょ? だから季歩おねえちゃんに引率って言うか保護者代わりって言うか、それをお願いしたわけ」
「はぁ〜、成る程ねぇ。 それで季歩ねえさんがココにいるわけね」
 結季の回答にようやく納得が言ったかのような表情を見せる羽津姉。
 俺も大体は飲み込めたがわからないことが一つ。
「季歩……さん?」
「あれ? 祥ちゃん出会った事無かったっけ? 私達の従姉で年は私より7つ上なんだ」
「従姉? あ、そう言えば。 確かずっと前出会った事があるかも」
 記憶の糸を手繰り寄せようやく思い出せた。 何年も経ってるせいか以前出会ったときと大分感じが違ってるのもあって直ぐ思い出せなかったんだ。 それでもどこか見覚えがあった気がしたのはやはり従姉というだけあって二人とどこか似てたからだ。

「お待たせ」
「季歩おねえちゃんお母さんと話し済んだ?」
 どうやら季歩さんの方は電話が済んだらしい。 携帯を返しそして結季が受け取る。
 俺の視線に気付いたのか季歩さんは俺のほうを向き口を開く。
「こんにちは。 羽津季と結季の従姉の果彩 季歩です。 始めましてじゃないわよね? えっと……」
「こんにちは瑞岬 祥です。 ハイ、確かずっと以前お会いしたことあります」
「でも祥おにいちゃんさっきまで忘れてたよね」
「いや、その……」
 結季の突っ込みに俺が口ごもっていると季歩さんが笑って口を開く。
「別に良いわよ。 気にしてないから。 さ、それより三人とも乗って。 これから連れて行ってあげるね。 あ、荷物はトランクに入れてね」

To be continued...
385名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 09:20:27 ID:72Z3Ppm2
>>374
独占欲が溢れ出してきた詩織さん最高、次回修羅場が展開されるのか期待

>>384
ちょw年上の新ヒロイン登場?wktkが止まらない
386名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 09:43:32 ID:TzrL2UtV
ここで姉妹を放って年上のお姉さんに惚れる展開キボンヌ
387名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 12:37:43 ID:MYhSdU0n
これはwww
結季すらも咬ませ犬にする展開か?
388『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/16(火) 13:18:52 ID:TufwbeQf












PiPiPiPi!PiPiPiPi!PiPi……
「ぐあ!俺の安眠を邪魔しおって……」
朝。今日もなんらかわらない目覚めだ。が、
「ふぅ……」
今日に限ってアンニュイな気分だ。まあ、月曜日はいつもこんな感じだが。起きるか。
のらりくらりと起き上がり、食パンを焼きながら着替える。制服の学校ってのは楽で良い。
「………」
ふと着替えながら考える。たまに、昨日までのできごとはすべて夢だったのではないか?今日初めて夢から覚めたんじゃないか?と。
「馬鹿な……」
昨日も普通に過ごして寝たんだ。んなこたぁーない。やっぱ今日は低電圧だな。
焼き上がったパンにバターを塗り、コーヒーと一緒に食す。コーヒーはブラックに限るね。やっぱ朝はこうアメリカチックに優雅じゃないとな。
「せんぱーい!!時間ですよー!晋也せんぱーい!」
ダンダンダンとドアを連打しながら、若き少女の叫び。
「誰だ!儂の不可侵なる聖域に土足で踏み込むのは!恥を知れぇい!!」
「別にゆっくりするのは構わないですけどぉー!時間無いですよー!」
「え?」
腕時計を見ると、既に家を出る時間になっていた。
389『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/16(火) 13:19:52 ID:TufwbeQf
「は、早くそれを言いなさい!!」
「さっきから急かしてたのに………」
朝っぱらから大声で………隣りの部屋の人に失礼ですな。慌ててパンをコーヒーでながしこみ、鞄を取っていざ出陣!
ガチャッ!
「あ、おはようございます。せんぱい。」
ペコリと行儀良く頭を下げる少女。
「うむ、おはよう、後輩。」
「……その後輩って呼ぶの、止めてくださいよぉ。」
「なんで?お前は俺をせんぱいと呼ぶ。だから俺もお前を後輩と呼ぶ。うん。万々歳万々歳。」
「私には烏丸春華というれっきとした名前があるんてす。だから私を呼ぶ時は春華と………」
「おはよう、烏丸春華。」
「……もういいです。行きましょう。」
真夏の炎天下の中、二人の戦士は熱気という敵陣を抜け、学校へと向かう。
「ふぃー……まだ六月の始めだっていうのに、溶けそうなほど暑いですねぇ。」
「………」
「せんぱい?」
「んあ?…あぁ、暑いな。」
「……どうかしたんですか?せんぱい?…どこか具合が悪いとか?」
「いや、暑くてぼーっとしてただけだ。」
そういってスタスタと歩く。春華も小走り気味について来る。
390『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/16(火) 13:20:54 ID:TufwbeQf
「………」
やっぱ、今日は何か違う。……というより、何か足りない。……忘れ物があるような気がする。
鞄の中はいつも空っぽだから変わりはない。特別提出する様な物もない。
と、歩いていると、ポケットに違和感を感じる。何かと思って探ると………
「せんぱい……それ、なんですか?」
そこにあったのは、一本の安そうなナイフだった。……なぜか……とても懐かしい。昨日今日手に入れた様な物じゃないような………
「あ、あれ。春校の制服ですよ?めずらしいなぁ、こんな所にいるなんて。」
気付けばもう校門に着いていた。
春校……私立春英高校。俺のかよう夏目高校とは全く正反対の(俺の家から見て)高校だから、こんなとこにいるのは珍しい。が、そけにたっていた春校の女子から、目が離せなかった。
見とれてる。そう表現するのが適切か。何も考えなしに、ゆっくりとその女子に近付いていく。まるで操り人形の様に、体が動く。その女生徒も、俺を見ている。
「………せんぱい?」
春華が後ろから呼び止めるが、止まらない。意識が戻った時には、その女子の目の前まできていた。
「あ……」
「う……」
二人とも言葉に詰まる。
391『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/16(火) 13:21:49 ID:TufwbeQf
しばしの沈黙。
先に口を開いたのは俺だった。
「えーっと……いきなりでなんなんだけどさ………これ、受け取って欲しいんだ。」
そういってさっきのナイフを渡す。いきなりで変な奴だろうと見られると思ったが、自然にそれを受け取り、ぎゅっと胸に抱く。
「あり…がとう。」
消えそうな声で、返事をもらう。初めて聞いたはずの声。これがなんだか愛しくて。
「あと、一つ。どうしても言いたいことがあるんだ。……この言葉、お前が予約してたんだけど……やっと言えるよ。」
「うん。私も、あなたに言いたいことがあるの。」
少女の目からは涙が。ばっか……まだ泣くにははええよ。
「多分、言いたいことは同じだから、一緒に言うか。」
周りの生徒が見せ物の様に見てくる。見たけりゃ見ればいいさ。みんなにも、俺のこの少女への思い、聞かせてやるよ。
周りの奴等に、学校の中にいる奴等に。世界中の奴等にも。
別の世界で生きているかもしれない、俺を応援してくれた人へ、俺を愛してくれた人へ………皆に届け。
俺は、一番大切な『無くし物』を取り戻したよ。かけがえのない、愛する人を。
もう二度と失わないよう、ここに宣言する。
「「愛してるよ!!!し…………」」
高い夏空の下。
響く二人の声。届け、止まること無く。俺がここにいる事が、アイツらにもわかるように……………






Fin
392名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 14:50:34 ID:3WyZ6p0U
後輩を巻き込んで、第二部が始まると思っている俺は病んでる


一番好きな作品が終わっちゃうのはヤダヤダぁ!!
393名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 15:42:24 ID:Br4sAwI+
このエンディング
お美事、お美事にございます
今日もまた株で6万減らした心が癒される・・・
394名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 16:50:15 ID:Y/kQkquN
ひょっとして後輩=お嬢だったりするんだろうか?

しかし最近の盛況っぷりは凄いな。
このままだと五里霧中スレが役目を終える前に7スレ目が立ってしまいそうだ。
395名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 17:03:34 ID:FmP2jdkM
20日で1スレ消費のペースだからな。
なんつうかアニメ化とかそういうの無しでこのペースってのは凄い。
修羅場属性の人って結構いたんだなぁ。
396『歌わない雨』Act6:2006/05/16(火) 17:10:13 ID:w0bFR0es
 目覚まし時計の高い電子音と共に目が覚めた。今日は土曜日、だからと言って特に遅く起きる訳でもない。
 朝が極端に弱い僕は鈍った思考で階段を降りる。顔を洗いリビングに行くと、既に朝食を食べていた雪に目が行った。
「おはよ」
 挨拶に頷きのようなもので曖昧に返すと、テーブルに着く。渡されたトーストをかじり、珈琲で一息。
「今日の予定は?」
 少し考え、
「ない」
「なら、せっちんの所に行ってあげれば? 独り暮らしだし、片手使えないの大変でしょ?」
「うん」
 何だか可哀想な子のような返事で返すと、僕たちは再び朝食を食べ始めた。

 歯を磨き、煙草を一本吸うと大分頭が冴えてきた。普段着に着替えると、僕は芹の家へと向かう。
397『歌わない雨』Act6:2006/05/16(火) 17:11:26 ID:w0bFR0es
 ノック。今回は穏便にドアを開けてもらおうと思う。前回は少し手荒にしたせいで、しこたま殴られたからだ。
 数分。
 やはり少し激しい方が良いかと思い、片足を上げた瞬間、ドアが開いた。
「はい、どちらさまで…おはよう伸人。何故片足を上げてるんだ?」
 超寝起きだった。
 髪の毛とか服の皺とかがかなり酷い状態になっていた。表情も、いつもの鋭さが欠片も無い。
 こんなの僕の芹じゃない!!
「寝起きだな」
 僕が呟くと、芹は顔を真っ赤にしてドアを閉める。
「五分…いや三分待ってくれ」
 三分後。
「おはよう伸人、どうしたこんな朝っぱらから。まぁ上がれ」
 余裕の表情でいつもの芹がそこに居た。どうやら、さっきの事は無かった事にするらしい。
 それでこそ、『暴君』釜津・芹だ。
 僕は芹に続いてリビングに入る。座るのは、いつもの豪華なソファ、家にも一台欲しい逸品だ。
「珈琲で良いか?」
「僕がやる」
「…ありがとう、こんな作業も大変でな」
 立ち上がり、芹と入れ替わりにキッチンへ。珈琲メイカーをセットすると、芹の向かいに座った。
 芹は薄笑いを浮かべて、
「一人で来て良かったのか? どこぞの女におっかない目で見られたり…」
 獲物を見付けた爬虫類のように、舌舐め擦りをして前に体を乗り出し、
「襲われるかもしれんぞ?」
「今の僕にその手の話は通じない。冗句ならよそをあたれ」
 芹は溜息を一つ。
「で、どうした? 告白の返事にでも来たのか?」
「そうじゃない。いや、そうと言えばそは煙草を大きく吸った。肺に煙が溜っていくと同時に、思考がシャープになっていくのが分かる。
 煙を一気に吐き出し、
「僕はこの前までの状態が一番好きだ。だから、それを崩したくない。悪いとは思っているし、何を言われても構わん」
398『歌わない雨』Act6:2006/05/16(火) 17:17:04 ID:w0bFR0es
 僕は喋るのを一旦止め、芹を見た。
 芹本人は否定するが、こいつだって馬鹿じゃない。むしろ良い方だ。どんな言葉が出てくるかと思ったら、無言だった。
「代わりに、ある程度の要求には答えよう。只で事を済まそうなんてムシの良い話は僕も嫌いだ」
 芹は少し考えていたようだが、ある程度まとまったらしく顔を上げると薄い笑みを浮かべた。
「良いだろう、いつも通りに過ごしてやる。ただし、その日常に私とのセックスが入っていた事や、ほぼ毎日二人で話をしたことも入っているんだよな?」
 この程度なら予想済みだ、答えも当然用意してある。
 僕は軽く笑みを作ると、
「僕はいつもの、と言った筈だが? それも当然だ」
「そうか。なら私からの要求は只一つ、私が伸人を好きだと言う事実を片時も忘れるな」
「交渉成立だな」
 丁度珈琲が出来上がったらしく、僕はマグカップ二つに珈琲を注いでテーブルへと置く。
「芹、忘れるな。お前が少しでも緑と昨日みたいな事したり、色恋沙汰を口に出したら絶縁するぞ」
「分かっている。そっちも契約は守れよ」
 互いに言い合い珈琲を飲む。
 これで取り合えず、一時凌ぎだろうが日常と時間を手に入れた。
 次はいよいよ策士の相手だ。
399『歌わない雨』Act6:2006/05/16(火) 17:18:50 ID:w0bFR0es
 次はいよいよ策士の相手だ。
 そう僕が考えていると、芹が思い出したように僕の顔を見た。
「そうだ伸人、これから買い物に付き合ってくれ」
「…何でだよ」
「片手が使えなくて不便なんだ」
 そう言えばすっかり忘れていたが、今日来た本来の目的は芹の補助だった気がする。
「それに…」
 芹は少し間を置き、
「『友達』だろう?」
 残酷な笑みを浮かべた。
400『歌わない雨』Act6:2006/05/16(火) 17:22:19 ID:w0bFR0es
今回はこれで終わりです


次はいよいよ書きたかった『悪役VS策士』
個人的にはテンション上がりまくりです
どういう風にしようか考え中
401『広き檻の中で』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/16(火) 17:49:14 ID:TufwbeQf
勢いづいて学園編作成中なんですが………できたら投下よろしいでしょうか?
402名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 17:52:14 ID:TzrL2UtV
イイヨイイヨー
403名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 17:52:51 ID:FvhLKSxH
щ(゚д゚щ)カモーン
404名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 18:06:26 ID:mzn1cyhb
OK!
待ってます!!
405名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 18:18:37 ID:72Z3Ppm2
>>401
続編キタ━━━ヽ(∀゚ #)人(;゚∀゚)人(# ゚∀)ノ━━━ !!!
全裸で待っています!
406山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/16(火) 18:32:08 ID:Xpg6tpC2
<3>
僕と姉さんが二人暮らしを始めて、もう三年になる。


両親の海外勤務を知らされたのは、僕が中学一年生を、姉さんが高校一年生を終えようとしていた春だった。
その時の僕はどこか他人事のように、両親がこれから自分達をどう扱うのだろうか、ぼんやりと見守っていた。
いずれにせよ、子供の身でどうこう言える問題ではない。
親の決定に従うだけ。そう思っていた。

両親も決して、自分本位で子供を顧みない人種ではない。
むしろ構ってやれない分、余計に責任感が募るというものだろうか。
父さん達が第一に懸念したのは、親不在の家庭が思春期の未成年に及ぼす影響について。
――やはり、このまま置き去りにしていくわけにはいかない。
――かと言って、今の子供達の世界を壊してしまうのも可哀想だ。
そして両親は提案した。おじさんの家、すなわち梓の父親の家で預かってもらおうか、と。

おじさんは大手不動産会社の重役で自身でもマンションを経営している、すなわちとても裕福な家庭の主だ。
家も広いし、責任ある立場の人で世間の信用も高い。住所が近いので転校の必要もない。
子供の頃から泊まりに行ったりしていた家だ。両親とも仲がいいので、喜んで迎えると言ってくれている。
子供達への影響が最も少ない、考えうる限りで最良の選択肢。
周囲のみんなが、その選択肢を支持した。父さん母さんも、おじさんおばさんも、梓も。
ただ一人を除いて。
407山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/16(火) 18:33:32 ID:Xpg6tpC2

姉さんだけが。
どういうわけか姉さんだけが、「この家」にこだわった。
「ここでこのまま僕と二人で暮らす」と言ってきかなかった。
そのためならどんなことでもすると言い張った。

当時、毎夜遅くまで姉さんと両親が議論していたのを、よく覚えている。
そして空が白みはじめる頃。自室に戻る前に姉さんは必ず、寝ている僕の傍らに座り込んだ。
「一緒にいようね。ここで、ずっと、一緒にいようね」
そう囁きながら、僕の髪を優しく撫で続けた。
……寝ている素振りをしていただけだから、それもよく覚えている。

そして、刻一刻と海外への出発の日が近づいていって。
一向に結論が出なくて。
姉さんが折れなくて。
「お前はどうしたい?」
ただぼんやり議論を聞いているだけだった僕に、急にみんなの目が集中して。
成り行き上、事態の決定票みたいなモノを押し付けられて。

姉さんが、僕の傍らで、縋る様な目で見つめていて。
その目をみていたら、くるしくて。
いつかみた、なつかしい何かが、こぼれだしそうで。僕は。
だから、

だから僕は――

――




そして今の生活が出来上がったんだ。
408山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/16(火) 18:34:45 ID:Xpg6tpC2

両親は今でも、この状況には反対している。
二人暮らしは事実上黙認してもらっているに過ぎない。
今年ハタチになる姉さんはともかく、僕は基本的におじさんの保護監督に服していなければならないのだ。
僕が物心つく前から家を空けがちで、ろくに責任を果せずじまいの後ろめたさからだろうか?
父さんも母さんも、僕に関しては五月蝿いほど過剰に心配するきらいがある。

そんな遠い異国の空の両親に、僕らのことを懇願に近い形で託されているおじさん。
それでも、可能な限り僕達姉弟の意思も汲み取ろうと、板ばさみになりながら努力してくれている。
「監視」という名目で家にお茶を飲みに来るおじさん。世間話に来るおじさん。
――これが落しどころだった。そしてそれすらも滅多にあることではない。
居を別にしている僕らを四六時中監督するには、おじさんは多忙すぎるのだ。

だから娘の梓がおじさんの代理として、こうやって家に様子を見に来る。
多いときには週に一度。最低でも半月に一度。
それも実際には「様子を見る」なんて堅苦しいものじゃない。
『ちょっと亜由美ちゃんとこに遊びに行ってくれんか。これ持って。秋人君の顔も見てきてやってくれ』
……結局こんな感じで、一人娘にお土産を持たせて、お使いを頼んでいるだけ。
ただ家に上がってもらい、一時間ぐらいお茶を飲むなり僕の部屋で本でも読んでもらうなりして、帰るだけ。

こんなのは単なる儀式だ。笑えるぐらいに無味乾燥な形式だ。
年頃の従妹の貴重な時間を奪ってしまっていることに、心苦しささえ感じる。
けれどそれでも両親にとっては至極大切なことであり、従っておじさんも蔑ろにはできない最低限の体裁。
そして何より、干渉がこれだけで済んでいるのは紛れもなく、おじさんが僕らのことを信用してくれているからなのだ。

だから僕達は、そんなおじさんの心遣いと信頼を裏切らないように。
平穏に、自立して、正しく、健康的に生活していなければならない。
もし裏切るような真似をしでかしたのなら――
――少なくとも僕はすぐに、この家から引っ張り出されておじさんの下に預けられるだろう。
僕と姉さんの二人暮らしは、そういう基盤の上に成り立っているのだから。

二人では不自由なこと、いっぱいある。
努力しなければいけないことだって、沢山気づかされた。
それでも、僕は。

――この家で一緒に暮らしていたい――
あの夜の、姉さんの囁き。

想いの欠片。



かなえてあげるために。

―――――――――――――――――――――――
<3>ここまで
笑っちゃうほどそのまんま説明フェイズ。次回、梓のターン。
409名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 18:42:05 ID:8K0ajHdh
wkwktktk
410Bloody Mary 番外編『誓い』 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/16(火) 19:03:26 ID:howTpQ6o
 あちこちから聞こえる鍔迫り合いの金属音。そして誰かの悲鳴。最近はこんな音ばかり聞いている。
「ひっ…!た、助け……で」
 浅ましく命乞いする敵兵の顔面に容赦なく剣を突き立てる。
 さて。今日はこれで何人殺したか。
「うぉぉぉぉっ!!!!」
 今度は背後から怒号を上げて斧を振り上げる兵士の腕を右の剣で切り飛ばし、そのまま左手に持つ剣で首を刎ねた。
切断面から勢いよく血飛沫があがり、俺の鎧を紅く染め上げる。
 俺にとって戦場はあの日の再現だ。迫ってくる敵国の兵士の顔をヤツらに見立て、殺す。
無論、こんなことはただの八つ当たりだ。そんなことは解っている。……解っているのだが一度走り出した憎悪の塊は
もう自分でも止められなかった。こんな国さえ無ければ、こいつらさえ居なければと、ひとりひとりに憎しみをぶつけていく。
俺たちが、あいつが、いったい何をしたって言うんだ。


『す、すす、好き、だ』
『え?』
『だっ!だから!俺はお前が好きだって言ってんの!』
『……ぷっ…くく…くくくっ』
『ッ!!お前今笑ったな!?笑っただろう!』
『ご、ごめんなさい…でも…くっ…ふふっ…ウィルったら告白しているのに怖い顔してるんだもの』
『う、うるさい!とっとと返事しろ、このやろう!』
『野郎って……あ、痛い、痛い!ごめんなさい、言うから。今言いますから。
――――もう……コホン、うん。すごく嬉しい。私も、ウィルが大好きだよ』
―――あぁ、俺はなんて幸せ者なんだ。たとえ母さんが死んで天涯孤独になっていても、彼女がいるだけで
俺はこんなに満ち足りてる。わくわくする。彼女とこれからどんな毎日が送れるのか考えるだけで明日が楽しみでしょうがない。
 そのはずだったのに。
411Bloody Mary 番外編『誓い』 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/16(火) 19:04:13 ID:howTpQ6o


「いやぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」
 キャスの悲鳴を聞いて俺は耳を塞ぎたくなった。だけどいくら聞きたくなくても腕は後ろ手に縛り上げられそれは叶わなかった。
「……ふぅ…まぁまぁかな」
「よく言うぜ、こんなに出しやがってよ」
 ついさっきまでキャスを犯していた連中がゲラゲラと嗤う。
 その声を聞いて今日何度目かの怒りの沸点を突破した。
「貴様ァァァッッ!!!」
「五月蝿せぇよ、糞ガキが」
「がっ!?」
 その怒りも鳩尾に一発蹴りをもらっただけで失速する。
 なんでだ。なんでこんなことになってる。俺はキャスに告白して、キャスも俺が好きだと言ってくれて―――
どこで、どこで間違えた?何の報いでキャスがこんな目に会ってるんだ…誰でもいい、誰か教えてくれ……
「うっ…うぅっ…ごめんなさい……ごめんなさい…………ごめんなさい…ごめんなさい」
 泣きながらキャスは何度も許しを請う。それはいったい誰に対しての言葉なのか。
「ちッ、メソメソ鬱陶しい女だな。もう用も済んだし殺っちまうか?」
「そうだな、犯ったから殺るか?ぎゃははははは!!!」
 また嗤いながら鞘から剣を抜く男ども。
「い、いやァッ!!や、やめて!!助けて、いや!ウィル!助けて!!!」
「暴れるんじゃねぇよ、この!じっとしてろ!」
 死の気配を感じ取ったキャスは必死で抵抗し、俺に助けを求める。
「やめろッ!!やめてくれ!!頼むからやめてくれぇぇぇぇッッ!!!」
 でも俺にできるのは男たちに懇願することだけ。
「ウィル!助けて!!お願い!!た―――」
 深々と。
 無慈悲にも彼女の胸に深々と剣が突き刺さっていく。
 必死の形相をこちらに向けたまま、キャスの目は急速に光を失っていった。
 その瞬間、彼女が好きだったフォルン村の極々平凡な、ひとりの少年も死んだ。


 考え事をしながら戦っていたのがアダになったらしい。いつの間にか本隊から離れ、敵に囲まれていた。
―――突破は……無理そうだな。まぁいい。それなら一人でも多く道連れにするだけだ。
 腹を括って剣を握り直した直後。
「ウィル!前に出すぎです!下がりなさい!」
 包囲網をあっさり抜けて団長が助けに入った。あれだけの数を突破してきたのか!?
「本隊まで戻ります!私に付いて来てください!」
 そう命じながら襲ってくる兵の群れを捌いていく団長。
 ―――頼もしい。この人があのとき、いてくれれば……
 不覚にもそう思ってしまった。
 いや、よそう。あの日キャスが死んだのは俺の所為だ。俺が弱かったからあいつは死んだんだ。
 勇猛果敢に道を切り拓いていく団長の背中を見て、俺は彼女の強さに嫉妬した。
412Bloody Mary 番外編『誓い』 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/16(火) 19:05:01 ID:howTpQ6o
以上番外編でした。
修羅場とは直接関係ないですがこれから先の展開を考えると
どうしても話に盛り込みたかったので投下しました。
感情移入するためのスパイスになれば恐悦至極。
413名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 19:12:26 ID:kTRiuPrr
>>411
やっぱ「悲劇の過去」話は重要だなぁ…
主人公が何故助かったか、を師匠絡めて話にしてくれると更に面白くなる気がしないでもないような…
いや、それはわがままですね、忘れてください><
414名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 19:40:00 ID:llaHM1o1
>>401
続編楽しみに待ってますよwwww
415アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 20:35:16 ID:sU/GPtVH
投下開始です
416アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 20:35:50 ID:sU/GPtVH
ああ、眠い
結局あのあとも奈々はいつもと同じように俺に接してきた
なにごともないかのようにいつものように
見えない、奈々の気持ちが・・・・
世間には疎そうなのにな
そうでもないのか?
ああ、結局昨日は奈々のことが頭から離れずに眠れなかった
・・・・?
俺が頭を抱えていると視線を感じた
窓の向こうだ・・・・・
香葉さん・・・・?
なんだろう?彼女はなにか憑き物が取れたように晴れやかだ
新しい恋でも見つけたのかな?
香葉さんはニコッと笑うと何人かの女の子を連れて校舎の裏へ向かっていく
一番後ろの子・・・・あの子たしか・・・・
この間俺に告白してきた子だ
どうしたんだろう?
酷く怯えてるように見える
去って行く大勢の後姿を見送る
・・・・あれ?
詩織さん?なにをやってるんだあの人は
頭に枝を付けて友人とこそこそ木などに隠れて香葉さんたちの向かったほうに向かっていく
なんか、マヌケだな・・・・でもなんかギャップで可愛らしく感じるよ
417アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 20:36:31 ID:sU/GPtVH
でも、なにをやってるんだ?
疑問はすぐに解く
それが俺の信条だ
立ち上がると俺は教室を出た
「仁ちゃん?どこ行くの?授業始まるよ?」
「なんだ?面白いことでもあったのか?」
奈々と東児が俺に追いかけてきてそう言う
奈々はまあ俺を心配してのことだが
東児は退屈しのぎだろ・・・・こいつ
「とりあえず、一緒に行こうか?」
俺の第六感みたいな物がその方がいいと告げていた
418生きてここに・・・・九章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 20:37:41 ID:sU/GPtVH
やっぱり・・・・おかしいよ
任せてと言った先生は昨日の夜から行方不明らしいの
昨日の夜は彼女の家に行くはずだったらしい
なにかあったんだろう
怖い・・・・怖いよ仁くん
でもね、最後の最後までやってみるよ
仁くんのこともあるけどなにかあの人には他の人にはないモノを感じる
いじめ?そんな半端なものじゃない
私の勘がそう告げるの
彼女は・・・・もう壊れているのかもしれない
やっぱり怖い、でもがんばれ詩織
ここで負けてはダメ
変わるんだ、私は仁くんに相応しい女になる
そのためには私が強くならなきゃ
自分を強く持たなくちゃ
419生きてここに・・・・九章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 20:39:19 ID:sU/GPtVH
ああ・・・・やっぱり
またイジメが繰り広げられる
木刀を何度も叩きつけている
どうして?どうしてそこまでできるの?
なにがあなたをそうするの?
目が殺気立ってる・・・・・すごく怖い
横の友達も怯えている
仁くんに助けを・・・・だめ!
自分でなんとかするの・・・・
私は頭に付けた枝を地べたに置くと少しずつ近づいていった
仁くん・・・・私・・・・・強くなるよ!
「あら、またあなたなの?」
なに?この殺気
すごい、まるでテレビに出てくる凶悪犯の目だ
怖い・・・・・怖いよ
木刀が地面に引きずられて
その先が私に向けられる
「あなたに・・・・なにが出来るの?」
挑発的なその目
その目はかつて見た負け犬の目じゃない
凶気に満ちたその目
「あなた・・・・自分がしていることがわかってるの?」
彼女は冗談とばかりに笑んだ
どうしてそこで笑えるの?
え・・・・なに?
木刀じゃない・・・・・
ポトンと木で出来た刀身が落ちた
出てきた本物の刀の先が私に向けられる
「私が切り刻んであげる・・・・・あなたを狩ってあげる」
その顔はこの世の悪魔だった
420アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 20:39:56 ID:sU/GPtVH
どうも奈々に感情移入しすぎだな・・・・
この話は最初奈々視点でした
ここからは香葉さんを中心に話が進んでいきます
十章もほぼ完成しているのでもう少ししたら投下いたしま
421『歌わない雨』Act7:2006/05/16(火) 21:24:39 ID:w0bFR0es
 芹との買い物を終え、部屋に戻ると先客が居た。ニヤニヤと笑っていた雪が僕を見ていた時点で予想はしていたが、いざ会うと気後れがする。
「おかえり、伸人。せっちんとのお出掛け、楽しかった?」
 緑が冷たい声で、しかし表情は楽しそうだという矛盾を孕んで笑いかけてくる。
 一緒に出掛けた、というのは朝一で芹の所に行ったのを雪に聞いたからなのだろう。そして帰りがこの時間なら推測は簡単だ。
 監視をしている訳じゃない、と自分に言い聞かせる。
「いきなりご挨拶だな」
「それよりも、まずはただいま、でしょ?」
「はい、ただいま」
 その一言で緑は笑みを強めた。
「で、何か用か?」
 緑はクスクスと笑いながら、
「用があるのはそっちじゃないの?」
「質問を質問で返すな」
 僕は警戒と苛立ちの混ざった声で言った。相手のペースに巻き込まれている、と自覚するが警戒心はどうしても取れない。
「怖い怖い、そうね。じゃあ私から」
 怖いのはこっちだ。一挙一動に何か裏があると思ってしまう。
「伸人が何か話があると思ったから来たの。無いなら帰るよ」
「待てよ」
 これもきっと作戦だ。相手の準備が整う前に奇襲を仕掛ける、緑の常闘手段。
「まわりくどいことは嫌いだから簡単に。今から交渉開始だ」
 一瞬。呆気に取られた表情をしたが、すぐに元に戻すと、
「良いわよ」
 こっちに乗ってきた。
422『歌わない雨』Act7:2006/05/16(火) 21:26:08 ID:w0bFR0es
「そっちの要求、と言えばこれまで通りにしろ、ってのとせっちんと争うな。あと、攻撃の全面停止と伸人の行動の黙認ってところ?」
 鋭い。
 それに、先に言うことで話術による膨らみの禁止をする。日本語の醍醐味である曖昧表現の停止を強制的に行ってくる。
 僕は煙草に火を点けると、緑を見た。僕なりのささやかな抵抗だ。
「煙草、止めた方が良いよ? 百害有って一利無し。煙草止めま響かず。
 打たないと響く。
「それよりも、要求はこんなもので良いの?」
 こんなもの、と言われた。緑にとっては些細な問題なのだろう。
 しかし、今のところこれ以上の要求は無い。むしろ、緑が自分で自分の首を絞めているようにさえ思える。
「…そんなところだ。そっちの要求は?」
 だが、言ってから後悔した。
 相手がこっちの要求を複数言うということは、相手も複数だということだ。
 だとすると、相手の要求は、
「こっちからも四つ」
 頭に浮かんでくるのは、激しい後悔。
 相手の言葉に肯定をしたからこれ以上の要求は出せないし、相手も同じ数なのでそれに対抗して増やすことも出来ない。
 しかも、逆に言えばこれ以上の要求をすると、相手の手札も増えることになる。
423『歌わない雨』Act7:2006/05/16(火) 21:30:30 ID:w0bFR0es
「一つ目、毎朝私にキスをする」
 いきなり辛い問題が出てきたが、一回肯定したら覆すことなど出来はしない。したら余計に泥沼だ。
「二つ目は、毎晩私とセックス」
 反論出来ない強い声で緑は続ける。
「三つ目、私が伸人を好きだという事を片時も忘れないで」
 芹にも言われた言葉だ。常に相手が意識の中に居るということは必要以上に意識をさせられる。今日の買い物で、それは嫌という程実感させられた。
「四つ目」
 緑は笑みを強くして、
「二年前、あの娘に関わった人。私、雪、伸人ちゃん、そしてあの娘。皆を許してあげて」
 心に冷たい痛みが走った。
 何故今ここでその事を言う。
 昨日カラオケで緑が互角と言ったが大嘘だ。芹以外の皆が知っている僕の初恋の記憶、それが一番の手札。
 忘れて良いのだろうか?
 許して良いという緑からの甘い誘いに、僕は言葉を失った。
 ただ、無言で頷く。
「契約は成立ね。そっちが守る限り、私もけして破らない。セックスは、今日は疲れているみたいだから勘弁してあげる」
 そう言うと、緑は部屋を出ていった。
 『悪役VS策士』は、僕の、完敗だった。
424『歌わない雨』Act7:2006/05/16(火) 21:33:14 ID:w0bFR0es
今回はこれで終わりです

『策士』の無敵さを書きたかったんですが難しいですね
もっと頭の良い人ならきちんと書けるんでしょうが…
425名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 21:50:36 ID:lY5dSfUH
広き檻、長かった作品も遂に堂々の完結!
と思ったら、え?まだ続くんですか?
何はともあれお疲れ様でした

晋也、お前の声、確かに俺にも届いたぜ!
426名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 23:06:19 ID:vWHy/gFB
広き檻
人生やり直しても、世界が変わっても二人の絆は永遠に……ついでに晋也の修羅場属性も永遠に。

他の作品も毎回楽しみにしております。
ていうか感想書ききれないほど作品が多い。
作品投下→他の作者様が修羅場エネルギーチャージ→作品投下→他の(ry
っていう正のスパイラルなのだろうか?
427アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 23:13:36 ID:sU/GPtVH
投下開始です
428アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 23:14:47 ID:sU/GPtVH
「あなたがいなければ・・・・こんなことにならなかったの」
その瞳に映るのは獲物
捕獲し皮を剥ぎ肉を裂く
狩人の瞳
どうしよう・・・・・・
刃先が私の首元に軽く押し付けられる
小さな赤い雫が私の首を伝っていくのを感じる
「あなたがいなければ彼は私を愛してくれるの」
周りの子は怯えて腰を抜かしている
それか逃げ出している
でも、引かない
ここで逃げたら私はもう逃げるしかできない女になってしまう
「そんなので威してるつもり?」
それを聞いて彼女は冷酷にニッと笑んだ
429名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 23:15:47 ID:Qb3ntD2D
今笑える修羅場放送中w
430生きてここに・・・・十章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 23:15:48 ID:sU/GPtVH
「なになに?」
「なんだよ・・・・仁、真剣な顔して」
「・・・・・・・・」
三人で頭だけ出して様子をうかがう
な・・・・・
「うそ・・・・なにあれ」
奈々の顔が青ざめていく
東児は唇を噛み締めた
俺は飛び出す
詩織の元に
無我夢中で
「詩織!」
「仁くん!?」
その瞬間、悪魔のような女の刀を握る力が強まるのを感じた
それを見た詩織は地面を蹴って後ろに下がった
すぐに反応した悪魔が刀を振り上げそのまま詩織に向かって降ろしていく
「食らえ!」
わき腹に一発食らわせてやる
両足が地面を引きずって後ろに下がる悪魔
「え・・・・・」
手ごたえはあったのに・・・・なんで?
なんで立ってられるんだよ!
431生きてここに・・・・十章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 23:17:15 ID:sU/GPtVH
仁さん・・・・無駄よ・・・・もう私は負け犬じゃないの
・・・・あるね・・・・きっかけをがあったの
それからね・・・・私の中で何かが壊れたの
違うわね・・・・本当の私になったの
もう感じないの・・・・悲しいも辛いも
楽しいも・・・・あるのはね、あなたへの愛とどうしょうもない憎しみだけ
でも・・・・いいの
これが・・・・本当の私だから
ニッと笑えんで仁さんを見つめる
私はそのまま憎くてどうしようもない雌犬に向かっていく
仁さんが私と雌犬の間に割ってはいる
私に向かって放たれる拳
ダメじゃない・・・・仁さんはなにもせずに見ていて
あの雌犬の無様の姿を・・・・
あんな雌犬なんかより私の方が優れているってこと・・・・教えてあげる
私は回転して拳をかわしてあの雌犬に向かっていく
432生きてここに・・・・十章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 23:18:08 ID:sU/GPtVH
う、ふふ・・・・・どう?
見下していた人間にこんなふうにされる気分は・・・・
怖い?・・・・そうよ、恐怖で歪むその顔が私を駆り立てるの
その瞳はまるでライオンにノドを噛まれる瞬間の動物の瞳
私の肉と血にになりなさい・・・・・
「この!悪魔!」
大きな石が投げつけられて私のわき腹に当たった
あら・・・・もう一匹いたのね
可愛らしい顔・・・・食べちゃいたい
でもね、いくら可愛い顔していてもね
仁さんと私の間に入るなんて許さないわよ
433生きてここに・・・・十章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 23:20:57 ID:sU/GPtVH
「奈々・・・・・」
身体が震えている
怖いはずなのに・・・・
それでもと自分を奮い立たせて・・・・俺を援護してくれた
華奢な身体からは想像できない力だ
でも今は感謝するしかない
軌道の変わった悪魔がバランスを崩す
「今度は逃がさない!」
今度は顔面に一発
頬に食い込む俺の拳に悪魔の目が下がって拳を見た
そして悪魔は笑んだ、その瞳は狂気に満ちている
悪魔はいまにも声を上げそうにして刀を詩織に向かって投げつけた
「しまった!」
回転しながら詩織に向かっていく
「詩織さん!」
直前で奈々が倒れていた詩織を抱きかかえてその場から手で押した
ゴス!
地面に突き刺さる刀
いつの間にか悪魔はその刀の方へ向かっている
俺は刀ではなく詩織の方に向かった
な・・・・・違う・・・・奈々!
434生きてここに・・・・十章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 23:21:34 ID:sU/GPtVH
違うわよ・・・・仁さん
知ってるこういうときはね・・・・
弱いのから狩るの・・・・
私は刀を手にするとまっさきにか弱そうに恐怖するもう一匹の雌犬に向かっていく
「奈々しゃがめ!」
「きゃ!」
振り下ろした刀が弾かれて私の身体も後ろに引いた
さすがね・・・・仁さん・・・・冷静な判断よ
仁さんのいったとおりにする雌犬
すぐに言うことを聞いたってことは・・・・ふふ
でもね、仁さんは私のものなの・・・・
そこからじゃよけるなんてできないでしょ?
ふふ・・・・切り刻んで愛してあげる
可愛い・・・・可愛い雌犬さん
「させるか!!!!」
逆手に構えて振り下ろした瞬間仁さんがスライディングして雌犬を抱える
仁さん?・・・・どうしてそんな子を抱いているの?
今はいいわ・・・・でもあとで・・・・たっぷり・・・・ね?
435生きてここに・・・・十章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 23:22:49 ID:sU/GPtVH
また地面に突き刺さる刀
しかしすぐに悪魔は刀を俺たちに向かって振り下ろしてきた
俺は奈々を突き飛ばすと刀を握る手を殴りつけてやった
ゴンと音を立てて天空に上がっていく刀
悪魔は刀の落下地を予測してその場に駆ける
させるかよ!
俺も続こうとしたが
さっきのスライディングで脚を痛めたらしい
動け・・・・ない
俺がもたもたしているうちに刀が降ってくる
悪魔が刀を掴んだ
それと同時にまた刀が宙を舞った
「あんた、自分がなにしてるのか・・・・わかってるのか?」
東児だ!
ああ、さっきまで腰抜かしてたくせに
でもお前がいてくれて本当によかった!
「く・・・・!」
悪魔は悔しそうな声を上げ逃げていく
ボスっと音を立て持ち主を失った刀が地面に突き刺さる
辺りを一瞬の静寂が包んだ
「う・・・・・ぅぅ・・・・・・怖かったよ!」
沈黙を破ったのは奈々の声だった
俺に抱きつき顔を摺り寄せる
「仁・・・・く・・・・ん」
詩織も俺の前までやってきてガクっとひざを折った
俺は詩織を抱き寄せ二人を力強く抱きしめた
「怖かった・・・・・怖かったよ仁くん!!」
「仁ちゃん!仁ちゃん!仁ちゃーん!」
436生きてここに・・・・十章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 23:23:39 ID:sU/GPtVH
泣きすがる二人に俺は安堵がこみ上げてきた
「お前のおかげで助かったよ・・・・東児」
「腰抜かして、かっこ悪いとこ・・・・見せちまったな」
「そんなことないさ・・・・」
「そうか?」
二人で笑い合う
でも安心するのはここまでだ
「東児・・・・速く警察を」
「ああ、そうだな・・・・」
ケータイを取り出す東児と俺の間にある刀に俺はあるものを見つけた
「東児・・・・・」
「どうした?」
刀にこべりついた真っ赤なものを東児も気づいたようだ
「刀が・・・・・血に染まってる」
無我夢中で気づかなかった
俺たちはその刀に錆びのようにこべりついた紅の血に
唖然とする東児と俺
東児の手からケータイが落ちた
437生きてここに・・・・十章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 23:26:04 ID:sU/GPtVH
>>411 私は他の神々の作品にチャージされて投下いたしてます

なんか戦闘ものになってる気がする
次回からの修羅場と呼んでいいのか・・・・は心理描写を中心にいたします
香葉さんの壊れた理由は後々彼女の視点で語られます、でもバレバレか・・・・
この話は普通のラブコメの三角関係に壊れた人が入ったらどうなるのかなって?
っていう妄想から始まりました
このスレの神々の愛憎あふれる修羅場には遠く及びませんが自分なりに頑張りした
この先の修羅場もほぼ香葉さん視点です
その次に仁かな?ほんのちょっとですが詩織視点も・・・・
状況と立場を微妙に変えますがこのスタンスで行きます
香葉さん視点で・・・・
と、言ってもラブコメ展開ではなく香葉さんによる香葉さんのための物語になります
長々すいまん、心配性なもんで・・・・
ちなみに今回の香葉さんの壊れ度はレベル1です

次章 香葉 かませ犬では終わらない
438アビス ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 23:27:53 ID:sU/GPtVH
すいません間違いました
>>411 ではなく >>426 です
チャージさせてもらってますよ!神々の皆様!
439アビス ◆1nYO.dfrdM :2006/05/16(火) 23:40:06 ID:sU/GPtVH
度々すいません、他の神々ではなく 神々の皆様です
なんて恐れ多いことを・・・・・あわわ
440名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 23:48:41 ID:72Z3Ppm2
>>438
ちょwレベル1でこれかよ(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブル
でも良い感じで壊れているなあ……
>>424
伸人一方的に押されているが頑張れ、あと傍観者に徹している雪はもっと頑張れ!
441名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 23:59:14 ID:lY5dSfUH
こりはヤヴァ系武道ヒロインとして胡桃を越えるか?とwktkな自分ガイル

ところで武道ヒロインと言えばリボン〜の明日香たんの今後も気になる
コッチは壊れないで欲しいな
442429:2006/05/17(水) 00:16:26 ID:6AerxrM8
つい面白いのやってたから書き込んだら神の投下を邪魔していた・・・orz

>>438
マジすまん。邪魔するつもりはなかった。
443名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 00:17:58 ID:6AerxrM8
しかもsage忘れ・・・orz
444アビス ◆1nYO.dfrdM :2006/05/17(水) 00:22:58 ID:Os6Lkbf/
気にしなくて結構です
こういうのはお互い様ですかr
445名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 00:53:59 ID:O36TCHej
ああ、なんて良いスレなんだ。
446『memory』第2話 ◆KnhAfDLnMc :2006/05/17(水) 01:51:39 ID:UvlMj+WZ
「あなた、何でこんなとこにいるのよ?!ここは立ち入り禁止でしょ!」
「それは君だって同じだろ、そんなことより早く降りて」

病院の屋上。
一人の女の子がフェンスの上に登っていた。
もちろんフェンスを乗り越えればあとは地上まで真っ逆さまだ。
僕と同じく病院服を着ている。おそらくここの入院患者だろう。
靴はそろえてフェンスの手前に置いてある。
この子が自殺しようとしているのは明らかだった。

「いやよ、邪魔しないで!出てってよ!!」
「何があったか知らないけれど、駄目だよ、自殺なんて!」
「あなたには関係ないでしょ!いいから出てって!!」
「こんなの見ちゃったら見過ごせないよ!降りてきなって!!」
「…………だいたいあなた誰よ?何でこんなとこにいるのよ!?」
「えっと、僕は高……なんだっけ?」
情けないことに僕はさっき聞いたばかりの自分の名前をど忘れした。
仕方ないだろ、あの子は諒一って呼んでたし。
名字を言われたのは僕が自分の名前を聞いた1回だけだ。
「…………変な人。普通自分の名前を忘れる?」
って、自分に言い訳してる場合じゃない。
とにかくこの子が飛び降りる前に思い出さないと。
「ちょ、ちょっと待って!今思い出すから!まだ飛び降りちゃ駄目だよ!」
思い出せ。
高○諒一だ。
高石、高木、高田、高見、他には……
「………もういいわ。なんだかどうでもよくなってきちゃった」
「へ?」
そう言ってゆっくりと降りてきた。
「ねえ、ここであったこと、内緒にしてくれない?」
「え、あ、うん……」
彼女の輝くような笑顔に、何とも情けない声で答えた。
僕は馬鹿みたいにぽかんと口を開けたまま突っ立っていた。
447『memory』第2話 ◆KnhAfDLnMc :2006/05/17(水) 01:54:52 ID:UvlMj+WZ
「へえ、記憶喪失なんてホントにあるのね」
「らしいね。実際なってる人がここにいるから」

僕たちは屋上のベンチで語り合っていた。
と言ってもまだ自己紹介が済んだくらいだけど。
僕も無事名前を思い出した。よかった。覚えた端から忘れていく訳ではないみたいだ。
彼女は吉村真理。歳は秘密だそうだ。多分高校生くらいだと思う。
酒井さんはいかにもかわいいという感じだったが吉村さんは美人という言葉がよく似合う。
彼女の笑顔を見ると思わずドキッとしてしまう。
そして彼女は思いのほか明るい人だった。とてもさっきまで自殺しようとしていた人とは思えない。
いったい何でこんな人が自殺なんてしようとしてたのだろう?
聞きたくないと言えば嘘になるが、さすがにさっきまで自殺しようとしていた人に直接聞けるほど無神経では

ない。とりあえず手がかりを探してみることにした。
「ねえ、吉村さんは何で入院してるの?何か重い病気を抱えてるとか?」
「私?ただの盲腸」
「えっ?」
「意外だった?余命3ヶ月を宣告された、とか思ってたんじゃない?」
ぐうの音も出ないとはこのことだ。僕は自殺の理由は病気だと思ってた。
いったいどこの世界にただの盲腸で自殺する人がいる?
「そ・れ・か・ら、私のことは名前で呼んで」
「え、それ、ちょっと恥ずかしいよ……」
「いいじゃない、呼んでくれたって。呼んでくれなきゃ死んじゃおうかなあ……」
明らかに冗談と分かる言い方だった。だからといって許せる訳でもない。僕はそういう冗談は嫌いだ。
「分かった。でももう冗談でも死ぬとか言わないで。それができないなら、呼ばない」
「……分かったわ。もう言わない」
そう言って吉村さ……真理さんは僕の肩にぽんっと頭を預けてきた。
「ちょ、ちょっと、……ま、真理さん?」
「お願い。少しだけこのままでいさせて」
「………うん」
「ありがとう。諒一くん」
448『memory』第2話 ◆KnhAfDLnMc :2006/05/17(水) 01:55:42 ID:UvlMj+WZ
「ところで諒一くんの病室は何号室?私は406号室だけど」
「……………………あれ?」
「まさか忘れたとか言わないわよね?」
「忘れたと言うより知らない…かな。僕が気づいたときにはすでに病室にいたし、そこから出てそのままここ

に来たから。」
つまり、僕は一度も自分の病室に帰っていない。
「まあ、何階だったかくらいは覚えてるでしょ。行ってみたら思い出すんじゃない?」
「エレベーターで上がってきたから覚えてない……」
「…………じゃあ受付に聞きに行きましょ。ほら、行くわよ」
そういって真理さんは僕の手を引っ張っていった。
449 ◆KnhAfDLnMc :2006/05/17(水) 01:59:00 ID:UvlMj+WZ
ここの神々執筆速度早すぎorz
どなたか爪の垢を煎じて郵送してください……
450名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 02:04:36 ID:6meTx7QJ
病室で待っていた綾香と真理の出会いに期待が膨らむ
451振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/17(水) 02:41:57 ID:LJ2gmnMx

 俺たちは荷物を車のトランクに積みいれて席に座る。 ちなみに席は結季が助手席で俺と羽津姉が後ろの席だ。
 俺たちが乗り終わると車は走り出す。 開かれたウィンドウから入ってくる風が気持いい。 ふと、風に乗って潮の香が漂ってきた。 空を見れば海鳥の姿も見える。
「季歩ねえさん。 どんな場所に連れて行ってくれるの? 海、よね?」
 羽津姉が問い掛けると季歩さんはバッグミラーで後部座席をのぞきながら応える。
「そうよ。 水着もってきたでしょ? とっても良いところよ。 滅多にヒトに教えない取って置きの穴場なんだから」
「結季は知っているのか?」
 俺が問い掛けると結季は振り返りながら答えてくれる。
「わたしも未だ詳しくは教えてもらってないの。 だからわたしも楽しみなんだ」


 そして目的地の砂浜に辿りく。 その光景は予想以上に素晴らしいものだった。
 輝くばかりの真っ白な砂浜。 青くすんだ海。 波も少なく穏やか。 それなのに驚くほど人が少ない。 僅かに点在する海水浴に興じてる人たちを見た限りでは遠浅で遊ぶにもとても適してるようだ。
 俺が目の前に広がる風景に見惚れていると横で羽津姉が歓声を上げる。
「うわ−! とっても素敵。 見て見て祥ちゃん」
 隣で嬉しそうにはしゃぐ羽津姉。 其の笑顔を見て改めて思う。 なんのかんの言ってもやっぱり羽津姉って美人で可愛いんだよな。 そしてその笑顔は俺は決して嫌いじゃない。 小さい頃から何時も間近で見てき、そして俺を見守ってきてくれた笑顔……。
 久しぶりの満面の笑顔に心が軽くなる。 だが同時に胸も痛む。 其の笑顔を意図的に曇らせた張本人がそんな事考えるなんて我ながら身勝手なものだ、と。
「ね、だから穴場だって言ったでしょ」
 俺は季歩さんの声に引き戻された。 
「ええ、本当に素敵なところですね」
 俺は笑顔で相槌を打つ。
「ありがとう季歩ねえさん。 私とっても気に入っちゃった」
「季歩おねえちゃん。 素敵な場所教えてくれてありがとうね」
 羽津姉と結季も続けて口を開く。
「どういたしまして。 可愛い従妹と其の幼馴染クンのためなら」

「あれ? ところで着替える場所は?」
 羽津姉が上げた疑問の声に俺も気付き辺りを見回した。 そう、穴場と言うだけ合って人が少ないのは良いのだが代わりに海の家なども無い。 よって着替えるような場所も見当たらないのだ。
「あ、大丈夫よ。 そこん所もちゃんと抜かりは無いから」
 そう言って季歩さんは車のトランクを開けて何かを取り出す。
「テント……ですか?」
 取り出されたもの、それは折りたたまれた小さなテントだった。
「そ、コレを組み立てて其の中で着替えるの」
「成る程。 あ、じゃぁ俺組み立てます」
「あ、私も手伝う。 速く着替えて泳ぎたいしね」
452振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/17(水) 02:46:47 ID:LJ2gmnMx

 そしてテントも組み終わった。 レディーファーストと言う事で先に着替えてもらい俺はテントの外で待っていた。
 ちなみに今着替えているのは羽津姉と結季。
 季歩さんは年長者で引率者と言う事もあって一番最初に着替えてもらって、今はビーチパラソルの下レジャーシートを敷いてくつろいでいる。
 あの二人の従姉だけあって美人でスタイルも抜群だったりする。 口元に引いた紅の鮮やかさとサングラスが大人の色気を感じさせる。 結季と羽津姉ももう数年したらあんな感じになるのかな。
「祥ちゃんお待たせ―」
 羽津姉の声に振り返るとそこには水着に着替えた羽津姉が居た。 水着はピンク色のビキニでプロポーション抜群の羽津姉には良く似合っていた。
「どう? 似合う」
 そう言ってまるでグラビアモデルのようにポーズをとってみせる羽津姉。 成る程、実際このまま雑誌のグラビアに載ってても何の不思議も無いくらいだ。
「ああ、よく似合って……!」
 言いかけて言葉を呑んだ。 羽津姉の後ろに少し控えめそうにしている同じく水着に着替えた結季の姿。 結季の水着姿を目の当たりにした瞬間自分でも分かるほど顔の温度が上昇していくのを感じる。
「やだ、祥ちゃんったら赤くなっちゃって可愛い。 そんなに私の水着姿って魅力的? いいよ、祥ちゃんにだったら幾らでも見られたって」
 赤くなった俺の顔を見て、羽津姉は頬に手を当て照れたようなそぶりをしつつも嬉しそうに声を上げる。
 だが、口には出さないが俺の心のうちは羽津姉が思っているのとは大分違う。
 客観的に見れば羽津姉の水着姿の方が魅惑的なのだろう。
 標準サイズより(多分)大きめのそれでいながらとても形の整った張りのあるバストも、引き締まったウエストも、そこから柔らかな曲線を描くヒップラインも、すらりと伸びた長い手足も、其の魅力も色気も十分に引き立たせるビキニも。
 対する結季のプロポーションも均整の取れた見事なものだが、胸も小振りでスレンダーな感じで、グラマラスな羽津姉とは対照的だ。 水着も綺麗や色気より可愛らしさを感じさせるデザイン。
 多分普通の男の視点で見れば殆どが羽津姉の方を押すのだろう。 だけど俺の目には結季の方がはるかに魅力的に映り釘付けになった。
「そ、それじゃぁ俺も着替えさせてもらうわ……!」
 俺は逃げるようにテントに駆け込む。
 やべぇ、結季の水着姿は去年の夏にも見ているのにこんなに興奮しちまうなんて。 新しい水着と言うのもあるんだろが、あの日告白して以来(断わられたけど)今まで以上に結季に女を意識してしまっているせいだろうか。
 下半身も微妙に反応しちまってるし……。 まぁ、とりあえず静まってくれたから良いケド。 お陰で着替えるのに手間取っちまった。

To be continued...
453 ◆tVzTTTyvm. :2006/05/17(水) 02:52:16 ID:LJ2gmnMx
阿修羅様 毎度管理お疲れ様です

一つお願いがあるのですがページの切り替えは
旅行の始まりである9話からにしていただけないでしょうか?

それと画廊からのリンクが私のSSへのリンクが間違ってますので修正願います

「前線プレス激しく!!相手にスペース与えるな!!!」
敵さんの監督が一際大きな声で指示を送る。

俺達の夢へと続く県大会決勝。
そして、これが俺達三年の最後の大会。だからどうしても勝ちたい。
だけど、後輩の中場まで来て俺の足は完全に止まってしまった。
観客からの応援や、敵の監督の怒号が遠くに聞こえる。
体か重い、滝のように流れる汗を拭き取る力さえない。

はぁはぁはぁはぁはぁ。
俺は膝に手をつきガックリとうなだれた。

―――スタミナ不足
とある事情で練習時間が限られる俺には、どうしても克服できなかった弱点。
「純也ーっ!!パスいったぞー!!」
えっ?
俺の空白を打ち破る大きな声とともに、緩やかなパスが俺の前を通りすぎていく。

いつもなら何でもないパスに反応さえできなかった。
目の前で起こった現象が信じられず、俺は呆然とそのボールを見送った。
鉛のように重い足は一歩も動けない。
コロコロと力なく転がるそれは、そのままラインの外に出ていった。
その時悟った。
俺の最後の大会はここまでだ、と。



突然、バシーっと呆然とする俺の背中を誰かが叩いた。
かなり強い衝撃。俺はそれに驚いて後ろを振り返った。
「大丈夫か?純也」
そこにはサッカー部キャプテン 松山 章大がいつになく真剣な顔で立っていた。

やっぱり、はたから見てもおかしいのか。
あんな、パスにも反応出来ないんだから当然と言えば当然だが。

何も言えない俺の状態を確認すると、章大はキュッと眉をしめ監督の所へゆっくりと歩いて行った。
監督と言っても形だけで、試合での事実上の決定権は全て章大にある。

交代か……。
確かにそれが一番妥当な選択だ。
攻撃のチャンスはほとんどなく、ずっと守備におわれっぱなしだ。
戦術的にも、スタミナ切れのピエロより中盤で長く走れる選手の方が効果的だろう。
悔しいけど仕方ない。弱点を克服できなかった俺が悪いんだ。

章大が監督に一言二言伝えると、タッタッタッと小走りで俺の所までやってきて、数人の仲間を集めた。

「選手交代だ」
章大はゆっくり俺たちを見渡した後で、まるで自分を納得させるような静かな口調でそう告げた。
………やっぱりか。覚悟していたとは言え、やはり直接口から言われるとショックはでかい。
章大はそんな俺の落胆を気にもとめずに言葉を続けた。
「交代するのは……FWの牧。代わりにDFの佐藤を入れる」

……え?
交代は俺じゃないのか?
「おい、待てよ章大。何で牧なんだ?ここはスタミナ切れの俺を交代すべきだろ?」
「いや、牧を変える。お前は残って体力を回復させろ」
「でも、俺はもうあまり走れないぞ。今は我慢の時なのに。この先十人で戦うつもりか?」
「ああ」
正気か?只でさえ限界ギリギリで戦っているはずなのに……。
「いいか、みんなもよく聞け。
残念ながらチーム力は相手が一枚も二枚も上手だ。このまま延長、PKに行ってもまず勝てない。
だから一瞬のカウンターに賭けるしかない。
そして、今それが出来るのは純也だけだ」

「でも……俺は」
「大丈夫ですよ。純也さんならきっと出来ます」
「そうだな。まぁあと、二十分くらい十人でも何とかなるだろ」
それでも反論しようとする俺の言葉を遮って、みんな章大の意見に賛成の意を唱える。

でも牧はそれでいいのか?
コイツがこの大会に向けて誰よりも努力していたのを俺は知っている。
交代には納得出来ないハズだ。
「牧はどう思う?」
一人うつ向く牧に章大が問いかける。
「俺は……俺もそれしかないと思う。悔しいけど、それが出来るのは純也しかいない」
牧はワナワナと唇を震わせて、絞りだすような声でそう言った。
相当悔しいのだろう。自分の努力が無駄になるんだから。
それでも、牧は自分の私情を押し殺しチームのための判断を下した。

もちろん、その作戦が成功するとは限らない。成功の可能性は極端に低いだろう。
それでも牧は……みんなは、俺に全てを賭けてくれるのか。
俺には、もう走る力さえ残ってないのに……。
そう思うと、カァーッと熱い思いが胸いっぱいに広がっていく。

「待った純也。泣くのはこの試合に勝った後にしな。今泣かれると恥ずかしいから」
みんなを元気づけるかのように、章大はいつものおどけた口調で俺をからかってきた。

すると、試合中なのにまるで花が咲くかのように、笑いが広まっていく。


みんなありがとう……。俺、ここに入学して本当に良かったよ。






あれから二十分、俺以外の十人は相手の猛攻を必死で耐えていた。
スコアはかわらず1-1。
みんな、ユニフォームを泥だらけにしながら必死でボールを追っかけてている。
俺の方はほとんど動かず休んでいたおかげで、大分足が動くようになってきた。

しかし今の所、カウンターのチャンスは一度もない。
だけど、あいつらはきっとボールを俺に届けてくれる。

だから待った。一人最前線で。みんなを信じてるから。



そしてついにロスタイムギリギリ、敵のコーナーキックの溢れ玉を、章大が大きく蹴りだした。
ボールは大きな弧を描き、俺の方に飛んでくる。
チラッと見た相手ゴールの守備には一人しかいない。

行けるぞ。


俺は章大からのボールを丁寧にトラップし、マークについていたDFを左右のフェイントでかわす。
足が少しフラついたが、疲れなんて言い訳にならない。牧が、みんなが作ってくれたチャンスなんだ。絶対に決める。

俺はそのまま広大なスペースを一人で駆け上がった。
ワーッと耳を裂くような歓声が聞こえる。わずか三千人収容の小さなスタジアムだったが俺には、ここが国立のように感じられた。


最後のDFと向き合い上半身を左右にゆする。そして、俺の動きに釣られて敵DFの重心が傾いた瞬間、その重心とは逆方向に抜け出した。

よし、最後のDFをかわした。これでGKと一対一だ。

しかし、ここで俺は有り得ないミスをしてしまった。
さっきのDFをかわすとき、深く切りこみすぎてしまいボールが流れてしまったのだ。

すでに流れたボールはゴール横、シュートコース、角度ともほとんどない。かといって、再び切り返す時間もない。
いちかばちかだ。
俺は渾身の力を込めて右足を振りきった。


……音が消えた。
さっきまで聞こえていた地なりのような歓声も、監督の怒鳴る声さえも。
それは凪だった……風の変わる、いや空気の変わる前兆。

ネットにつきささったボールが力を無くし、ゆっくりと地に落ちた時、空白を全て埋め尽すかのような大歓声が辺りを包む。
今、空気が変わった。


俺は小さくガッツポーズを取ると、みんなの元に走った。
信じられないくらい嬉しい。間違いなく人生最高の瞬間だ。
試合に勝った事、それ以上にみんなでもっとサッカーが出来ることが嬉しかった。



「最優秀選手賞、並びに得点王。兵藤 純也くん」




「おーい、純也早く来いよ。記念写真撮るぞ」
「あー、ちょっと待ってて。今行くから」
俺はさっきもらった二つのトロフィーを置き、メダルだけもってみんなの元に向かおうとして歩きだした時、
「純也さん、遅いですよ」
二年生の女子マネージャー、唯ちゃんが少し不機嫌な模様で俺を迎えにきた。
「はは、悪ぃ」

「あれ?純也さん。トロフィーは?」
「あっ。やべ、忘れた」
「もう、何やってんですか!!どうします?今から取り行きますか?」
「いや、いいよ。みんな待たすのは悪いし」俺はポンポンと唯ちゃんの小さな背中を叩き、未だ何か言いたそうな口を閉ざすと、そのままソイツとみんなの元に向かった。


さっき唯ちゃんにトロフィーを忘れてきたって言ったけど、アレは嘘だ。
本当はわざと置いてきた。
だってユニフォームが一番綺麗な俺が、あれを持ってたら恥ずかしいだろ?

ワールドカップ前と言うことで、投下しました。
ちなみに、スポ魂小説ではありません。嫉妬、修羅場小説です。



ボツになった初期構想段階のストーリーに沿っていくので、先に投下したストーリーとは違います。
もちろん、普通に進めると茜と結ばれるエンドになってしまうので、エンディングは変わりますが。
459Bloody Mary 番外編2『出会い』 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/17(水) 14:04:17 ID:P7yjxbIW
>>413
文章を考えているときはその辺も書いてたんですがカットしてしまいました。
でもリクがあったのでどうせだから投下。
 ただ本筋とはさらに離れてしまうので不快に思う方はスルーしてください。
↓以下番外編2
460Bloody Mary 番外編2『出会い』 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/17(水) 14:05:55 ID:P7yjxbIW
「ざっと三十から四十人ってところか」
 林の陰から外をうろついている男たちを見回し、だいたいの数を見当付ける。
 攻め入ってきた割に数が少ないな…こいつら本当に侵攻する気があんのか?
もしかしたら後ろに大部隊が控えてるのかも知れない。気を抜かないほうがよさそうだ。
「ベイリンの旦那、どうします?上の連中は人数を確認したら戻って来いってお達しでしたが」
「……そうだな」
 仲間の一人がオレに意見を乞うているところを考えるとやはりこのまま帰るのは納得行かないらしい。

 国境に位置するフォルン村が隣国に襲われたという知らせを聞いて王国は奪還部隊を派遣、オレたち傭兵旅団も
それに参加した。今は斥候としてオレ以下数名がフォルン村を偵察に来ている。

「とりあえず中に入って生きてるヤツがいないか捜せ。くれぐれもバレないようにな」
 他の仲間にも指示を送りオレたちは散開した。
 生きてるやつを捜せ―――そうは言ったものの。村の中のあちこちに石ころのように転がっている死体を
見るとそれも絶望的だった。
(こりゃ侵略ってより虐殺だな……)
 適当な民家を見つけるとそっと様子を伺いながらその家に入った。どうやらここにはヤツらはいないようだ。
 その一室で一組の男女が横たわっているのが目に入った。……ガキか。年はオレの娘よりやや上くらいだな。
「待ってろ、今縄解いてやるからな」
 死んだように動かない少年の戒めを解いてやるが反応が鈍い。よほど非道い光景を目にしたのか。
少女の方を見てみるとこちらはもう事切れているらしかった。死後一日ほどだろうか。
 念のため脈に触れようと少女の首筋に手を伸ばしたとき。
「うわぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」
「うおっとッ!!」
 突然さっきの少年が狂ったように果物ナイフを拾ってオレに襲い掛かってきた。
 一瞬焦るが所詮ガキの斬撃。かわすのは造作もなかった。
 だが。
(こいつ―――)
 ガキのくせになんて眼してやがる。兵士が死の間際に放つ、修羅の瞳。そんな眼だ。
 到底十四、五の子供とは思えない。
 耳を澄ますとなにやらボソボソと呟いている。
「…だ…守るんだ………守るんだ……守るんだ」
 少年に警戒しながら横目で少女の亡骸に目をやる。
(このガキの知り合いか…)
 状況から察するに目の前で殺されたんだろう。くそったれが……反吐が出る。
ガキの方を見据える。依然こちらにギラギラとした殺気を放っていた。完全に我を失っている。
 やれやれ、このまま放っとくこともできねぇな。気は進まないが荒療治するしかなさそうだ。
「無駄だな」
 ビクリ。オレの言葉を聞いてそいつは肩を震わせた。
「この女はもう死んでる。お前は―――守れなかったんだ」
「うっ……うぅ……うぅあぅ…」
 少年は嗚咽を漏らし、握っていたナイフを落とす。
「うぅぅ……うわぁぁぁぁぁぁ―――……」
 慟哭。オレは気が済む泣かせてやることにした。
 ――――――ってヤバイ。こんなデカい声で泣かれたら近くの敵兵に気づかれるじゃねぇか。
 オレはガキを黙らせ、手早く村を脱出することにした。
461Bloody Mary 番外編2『出会い』 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/17(水) 14:06:33 ID:P7yjxbIW




「生きてたのは全部で四人か」
「えぇ。しかも無傷なのは旦那の連れてきた子供だけです」
 本隊に戻った後、オレは生き残った村人の人数を確認した。
「おまけにその子供もショックで気が触れちまってますが……」
 さっき助けたガキを見ると、娘に何か話しかけられていた。
「お兄ちゃん、平気?痛いところない?」
 少年は膝を抱えたまま何もしゃべらない。大泣きした後はずっとこんな調子で、まるで人形のように動かない。
「マローネ、やめとけ」
「もー、おとーさんうるさい!」
 娘に怒られてしまった。オレ、今年で三十七なんだけどな。くすん。
「もう大丈夫、大丈夫だから」
 娘があやすように少年の頭を撫でる。その行為がそいつの何かに触れたのか。
「ごめん……キャス……ごめん……ごめん…」
 少年は泣きながらオレの知らない誰かに謝り続けた。
462Bloody Mary 番外編2『出会い』 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/17(水) 14:10:13 ID:P7yjxbIW
以上。
お目汚し、すいませんでした。

>>439
いや、そんな。気になさらないでください。
というかむしろワロタ
463名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 16:46:03 ID:cv8mbODA
スレが進行速度は速すぎる・・wwww
464『歌わない雨』Side雪:2006/05/17(水) 16:46:55 ID:dX4+QyUV
 伸人ちゃんが家を出てから数十分、そろそろ頃合いだと思って緑に電話をかけた。
『おはよう』
「おはよ、これから遊びに来ない? 何て言うかもう暇で暇で」
 伸人ちゃんが家に居ないことを暗にほのめかす。聡い緑なら、簡単に理解する筈だ。
『…伸人は?』
 早速喰らい付いてきた。
 あたしは口から笑い声が出ないようにして、なるべく自然を装い、
「せっちんの所」
 あたしが促したのは言わない。嘘は言わないが、真実だけで真実をごまかす。
 それが道化の方法だ。
 緑は嫉妬を隠そうともせず、歯を噛むと冷たい声で、
『あの、泥棒猫』
「そう言っちゃ駄目だよ」
 あたしはあくまで善意を込めて呟いた。
 危険分子と見られるのは厄介だし、計画が破綻しては元も子も無い。
『そうね、その通りだね』
「そうそう、だから遊んでうさばらし」
 相手の嫉妬を肯定する言葉に、緑は冷たい笑みを漏らした。
 電話が切れる。
「くふ」
 自然と笑いが込み上げてくる。
「くひひ」
 全く善人も楽じゃない。笑いを抑えるのも、これはこれで大変なのだ。
「くははははははははは」
465『歌わない雨』Side雪:2006/05/17(水) 16:47:53 ID:dX4+QyUV
「おまたせ」
 数分して、緑が家のリビングに入ってきた。顔にはいつもの表情、しかし今その頭のなかは策で一杯だろう。
「早かったじゃん」
「まあね」
 テーブルに着く。位置は、一昨日あたしが緑を扇った時と同じ。
 それからの行動は、雑談。
 内容は、主に伸人ちゃんの事と、せっちんの事だ。悪口が全く出ないのは、逆に快い。
 そして話題を狙っていたものへと変える。
「今はこうやって笑っているけど、二年前は大変だったね」
 せっちんが知らない、伸人ちゃんの初恋の思い出。
 そして策士の、唯一の敗北の思い出。
 案の定、緑の表情が変わった。
 緑自信忘れようとしていたのかもしれないし、これを手札にしようか迷っているのかもしれない。
 更にあたしは言葉を続ける。
「昔は大分へこんでいたし」
緑が考え事をする時の癖。目を細めて、しかし焦点を合わせない表情を見て、緑に対しては今が最適だったと確信した。
466『歌わない雨』Side雪:2006/05/17(水) 16:48:55 ID:dX4+QyUV
 数分して変わった表情から、手札が揃ったことが分かる。
 再び込み上げてくる笑いをこらえつつ、善意の化粧をして、
「今、この二人だから言えるんだけどさ」
 道化の言葉は止まらない。
「もしかしたら、今も苦しんでいるんじゃないかな?」
 もしかしたら?
 馬鹿馬鹿しい。
 今も苦しんでいるに決まっている。
 立ち直っているなら今も完璧である訳が無いし、緑とせっちんの喧嘩も止めない筈だ。
 時計を見ると、時間は既に正午を回っていた。
「そろそろだね」
「え?」
 呆けた顔をして緑がこっちを向く。
 伸人ちゃんは昼過ぎには帰ってくると言っていたから、もうすぐ帰宅するだろう。
「あと少ししたら多分帰ってくるから、話してみたら?」
 最後の仕上げに、少し悲しそうな表情で、
「緑だから言える事とか、話せる事もあるし」
467『歌わない雨』Side雪:2006/05/17(水) 16:54:26 ID:dX4+QyUV
 計画は順調。
 特定した個人を推薦する事で、その人以外にはやれない事を示す。伸人ちゃんに近しい二人の内の一人のあたしでも無理だが、貴方ならやれると言えば尚更だろう。
 緑は笑みを強くして、
「そうね、そうよね」
 力強く言った。
「それじゃ、伸人ちゃんの部屋で待っててあげて。あたしはこっちで露払いしてる」
 あたしがそう言うと、緑は笑みを浮かべたまま伸人ちゃんの部屋へと向かった。
「くふ、くははは」
 笑い続けて数分、伸人ちゃんが帰ってきた。
 なんてスムーズ。
 なんて御都合主義。
 全てが計画道理に進んでいる。
 順調順調順風満帆。
 あたしは笑いを噛み殺すと、
「伸人ちゃん、お客さん」
「そうか。部屋?」
「うん」
 軽く頭を掻いて伸人ちゃんは部屋へと向かった。
「くははははははは」
 再び笑いが漏れてくる。一体、今日何度目だろうか。数えるのも馬鹿らしい程に笑いたい。
「くはははははは」
 伸人ちゃんはきっと今、緑に傷付けられているだろう。
 そして少しづつ壊れ、狂っていく。
 主役なんてとんでもない。
 エキストラなんて御大層な。
 あたしは舞台の裏方で、ひたすら夢を見続ける。
 一人で踊る哀れな悪役と、二人で作る夢舞台。
 何て美しいのだろう、想像するだけで頭がとろけそうになる。
「くはははははは」
 あたしは一人で笑い続けた。
468『歌わない雨』Side雪:2006/05/17(水) 16:58:52 ID:dX4+QyUV
今回はこれで終わりです

雪は書いていてとても楽しいです
原黒じゃありませんよ?
きっと
469名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 17:16:54 ID:E03ij4k0
雪主役だよ雪。雪腹黒だよ雪。
470名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 17:43:28 ID:6meTx7QJ
うほっ、帰って来たらこのスレがパラダイスと化しているw
振り向けばは季歩さんが可愛いし、もし神は完全版が始まり
Bloody Maryは新ヒロイン誕生し、雪は腹黒カワイイヨ雪

もう何て言うか、幸せすぎてwktkが止まらない!!!
471名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 17:53:02 ID:NNTmwuJw
誰だっ!このスレに加速装置なんかつけた奴!!
472名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 18:14:58 ID:2k/w14ST
さっき間違えてジェットエンジンをw
473名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 18:31:57 ID:hoKCj1lk
虫歯治療の際にw
474アビス ◆1nYO.dfrdM :2006/05/17(水) 20:11:14 ID:Os6Lkbf/
投下開始します
475生きてここに・・・・十一章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/17(水) 20:12:06 ID:Os6Lkbf/
警察の人がいじめにあっていた子に事情を聞いている
彼女は以前の子と違って軽度のケガで済んでよかったよ
でも、私は仁くんにたっぷりとお説教された
無茶したのは私だから仕方ないか
でも仁くんはこんな危険なことになる前に俺に言ってくれ
それだけ最後に言うと許してくれた
「まさか、あなたに助けてもらえるなんてね」
「あの状況で助けないわけ・・・・ないじゃないですか」
それもそうだよね
でもここはとりあえず
「ありがとう・・・・」
「いえ・・・・仁ちゃんをくれたらチャラにしてあげますよ」
こんな時までこの子は・・・・
「ダメです、仁くんは私のなんだから」
「いずれは私のモノになるんですから・・・・そこんとこわかってます?」
この子はまったく口の減らない子ね
「だぁぁ!貴様!なにをする!離せ!俺を解き放て!」
仁くんらしくない声が当たりに響く
私と奈々ちゃんは思わずその声の方向へ目を向けていた
医務室の窓の向こうでベットに包帯で両手と脚を縛られた仁くん
その横には東児さんが・・・・仁くんにイタズラしている
「積年の恨みじゃ!弱ってるいまこそ勝機じゃ!」
まったくなにをやってるのかな?
私は校内に入ると医務室を目指した
そして後姿の東児さんの後頭部を近くにあった椅子でゴンと殴りつける
「・・・・・ひどいと思うよ・・・・いくらなんでも」
地面に顔を付けてぴくぴくしている東児さんに仁くんは少し心配げな顔をした
「まぁ、こんなんで死ぬようなら、とっくに死んでるか」
すぐにいつもの仁くんに戻っていた
もう、相手が男の子なのに・・・・嫉妬しちゃったよ
だって仁くん東児さんと一緒の時はいつも楽しそうなんだもの
476生きてここに・・・・十一章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/17(水) 20:14:00 ID:Os6Lkbf/
「脚のほうだいじょうぶ?」
「げふ・・・・」
下に横たわる東児さんを踏みつけると奈々ちゃんは仁ちゃんのベットに肘を着いてそう言った
「これくらい・・・・平気さ」
「ごめんね、私のせいで」
ムッ・・・・なに親密な空気だしてるのかな?
仁くんってば頬なんて染めちゃってさ
私は無言で仁くんを見つめた
仁くんは私の視線に気づいて息を飲んだ
怒らないよ、でもわかってるよね?仁くん・・・・
「首・・・・だいじょうぶ?」
「だいじょうぶ・・・・ちょっと血が出ただけだから」
それでいいんだよ、仁くん
仁くんは私の心配だけしていればいいの
「ごめんね〜仁ちゃん〜」
奈々ちゃんは仁くんの脚にすりすりしながら猫なで声を上げた
私たちの親密な空気をなに壊しているのかな?
「奈々・・・・そろそろ、そこ退いた方がいいよ」
「嫌だよ〜♪」
「・・・・下の東児が復活してる」
すぐに下を向くと背中を踏まれて身動きが取れない東児さんが必死に頭を上げよとしていた
「ぐむ・・・・・あともう少しで・・・・・禁断の花園が」
「きゃあ〜!!!!!!」
立ち上がりドンドンと東児君の背中を踏んづける
「げふ!がふ!ひぎぃ!そこはやめて!」
ああ、可哀想にに東児さん
でも仁くんじゃないからいいか
「これでもか!」
今度がわき腹を蹴られて壁に激突した
「俺・・・・まだ見てなし・・・・・酷い・・・・この仕打ち」
「あんたなんかに見られるなんて・・・・・ごめんね、仁ちゃん・・・・私・・・・汚されちゃった」
ゴンととどめに椅子を投げられて東児さんはわざとらしくガクッとした
「だから、俺は見てない・・・・」
477生きてここに・・・・十一章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/17(水) 20:15:09 ID:Os6Lkbf/
「大変でしたね・・・・仁さま」
高田さんのこんな顔初めて見た
「心配かけてすいません」
「女性お二人を護ったのですよ?むしろ誇るべきです」
ありがとう高田さん
でも、正直な話俺は恐怖した、あの瞳に・・・・
今まで何度も人と拳を交えた
もちろんスポーツでのフェアな戦いだ
けれどあの人の目は異常だった
東児がいなかったらどうなっていたことか
考えただけで背筋が凍った感覚がした
車に揺られながら俺はそう考えていた
そしてやって来てしまった
二度目の狂気が
ガラスの割れる音
見るとガラスに何本もの矢が突き刺さりヒビを作っていた
次にパンクしたのか大きくゴムが弾ける音がした
車が回転し横転する
478生きてここに・・・・十一章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/17(水) 20:16:53 ID:Os6Lkbf/
「高田さん!!!」
俺は外に投げ出されて川の中に落ちた
「仁さん・・・・・」
すぐに狂気の正体が現れた
俺をやさしく抱き上げて満面の笑みを向ける悪魔
逃げようしたが体中が痛み軋む
骨折はだいじょうぶ
ヒビもだいじょうぶ
けれど今の俺に抵抗の術はなかった
「そう、それでいいの・・・・」
悪魔は笑むと俺を背中に乗せて歩き始めた
高田さん・・・・どうか無事で・・・・
俺は薄れ行く意識でそうつぶやいた
479アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/17(水) 20:19:39 ID:Os6Lkbf/
ラブコメ?と見せかけて最後に香葉さんの登場です
正直なところ彼女はもう自分の手から離れている感覚です
なので一番書きにくいのですが・・・・ですが彼女の怖さを伝えていきたいと思います
なので香葉さんだけさんを付けています
何度も書きますがこれからは香葉さんが中心なので・・・・・
ちなみに補足ですが仁と詩織は序章あたりかな?で下校を歩いてとありますがあれは詩織さんがそうしたいからと迎えの車を断っているからです
今回は事が事のだけに車に乗っけました

次章 香葉さんの仁くん拉致日記
480アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/17(水) 20:20:14 ID:Os6Lkbf/
>>462 ほんとすいませんでした
いつも楽しく拝見させていただいております
481名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 20:53:25 ID:ONSUMPDp
ひー、拉致されちまったよ。ガクブル
恐怖のターンがはじまるのか。
482山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/17(水) 21:43:01 ID:Ov/aIgUZ
章分けに失敗したせいで、ここだけ妙に長くなりましたすんません。
6レス分ちょうだいします  ↓↓↓ここから
―――――――――――――――――――――
<4>
「秋人さん」
霞みゆく想いの向こう側から、現実の梓が話しかけてくる。
いけないな。昔みたいにこうやって梓と街を歩いていると、物思いに耽ってしまう。

「なんだか慌しいご様子でしたけど、図書館へは急ぎの用なんですか?」
「いや全然。僕は宿題をする環境が欲しかっただけだから。あずこそ、今日は学校?」
「午前中だけ課外授業があったんです、外から講師の方を招いて。私の学校、そういうの多いですから」

眩しいほどの白い肌に映える、チェックのスカート。ブレザーの胸元に咲くワインレッドのリボン、厳かな校章。
艶やかな流れる黒髪に、可愛らしいベレー帽。
……彼女の纏った制服は、地元でも有名な中高一貫の名門女子学院のものだ。
気品と可憐さを兼ね備えたこの制服を身に着けているだけでも、その名声と相まって地元では特に目立つ。
……実際、平均偏差値はうちよりずっと上だ。
彼女と並んで歩いているだけでも、同世代の男子にはおそらく垂涎の一事だろう。

本当に綺麗になったよな、あず……。
従妹の成長ぶりに誇らしささえ感じながらも、どこか寂しげに微笑んでいる自分を強く自覚する。


僕と、姉さんと、梓。僕らは、三人兄妹のように子供時代を遊んでいた仲だ。
一人っ子の梓は、僕を“お兄ちゃん”と、姉さんを“お姉ちゃん”と呼んで慕ってくれた。
特に僕にはよく懐いてくれて、いつも甘えてきて、どこへ行くにも纏わり付いてきたものだ。
一緒にお風呂にまで入ってこようとして、よく姉さんと喧嘩になっていたっけ……。
家が近くで両親が仲良しとなれば、子供心にはもう垣根など無い。
従兄妹同士、お互い泊まったり泊まりに来たりの往復だった。

それでも、そんな時間は長くは続かない。
まず最初に、僕らとは少し年の離れた姉さんが、かつての三人のようには遊ばなくなった。
さらに僕が中学に上がり、梓が中学入試の猛勉強を始めた頃から、僕も梓も頻繁な行き来はできなくなった。
そしてあれは、僕と姉さんが二人暮らしを始めたのと丁度同じくらいの時期だ――
――僕のことを“お兄ちゃん”ではなく“秋人さん”と呼ぶようになったのは。
――よそよそしい、他人行儀な言葉遣いをするようになったのは。
――屈託ない笑顔を向けてくれることもなく、無表情で、淡々と接してくるようになったのは。
――どんなときでも近づきすぎることなく、いつだって僕との間に「壁」を作るようになったのは。

世間では普通のことなのかもしれない。人は変わっていく。中学高校時代ともなればなおさらだ。
彼女は変わった。姉さんも変わった。……そして他人から見たら、きっと僕だって変わったに違いないのだ。
ただそれでも僕は、今でも彼女のことを昔と同じように“あず”と呼ぶ。
いつの日かもう一度、くだけた笑顔で、“お兄ちゃん”と返事してくれる日が来るようにと。
願いを込めて。

………
……
483山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/17(水) 21:43:56 ID:Ov/aIgUZ
「でも、秋人さんがご自宅で勉強できないなんて珍しいですね。どうかしたんですか?」
ふいをつかれた。

家を出る時から、ずっと纏わり付いている苛つき。
僕の背中にひっそり寄り添ってくる、得体の知れない不安感。
決して重いものではない。でも喉に刺さった魚の小骨のように、僕の意識を喚起してやまない『ソレ』

「それになんだか、先程からご機嫌斜めのように見えますが……」
……やっぱり顔に出てしまったか。
無意識に、手で顔をさすってしまう。

「あ……ごめんなさい。別に詮索するつもりじゃ……。ごめんなさい……」
恐縮してサッと距離を置こうとする梓に、再び寂しさがこみあげる。
せっかく梓が僕に向けてくれた気遣い。それが離れていくのを引き止めるような気分で、口を開いていた。

「ちょっと前に電話がかかってきて、さ」
「……はぁ」
「姉さんが電話に出た後、急に出かけろ出かけろと騒ぎ出して」
「はい」
「家で課題をこなしたいって言っても駄目だって、追い出されたんだ。それだけ」
「ふうん」

……なんだ。口に出してしまえば、トンでもなく些細なことじゃないか。
『姉さんに都合があって家を追い出された』――ただそれだけのことだ。
冷静に客観的に考えれてみれば、こんなことに拗ねて苛々していたなんてどうかしていると思う。
妹のような年下の女の子の前で、みっともない……。
でも、梓に話してみて良かったな。なんかスッとした。
家を出た時よりも透き通った空気が、肺を満たし始めていた。



「秋人さん、可哀想ですねェ」

……………………あれ? 
そこだけ微妙に台本を間違えたんじゃないかと、脚本家に文句をつけたくなるようなちょっとした違和感。
だってそこは、『子供ですねー』とか『甘えん坊ですねー』とか、その辺の台詞の出番じゃん?
思わず「NGかい?」と軽口を叩いてしまいそうな。
だから僕は、梓を振り返って――


――梓が、じっと、僕の横顔を見つめていて。

僕の表情の筋繊維、一本一本を取り出して吟味しているかのように。じっと。見つめていて。
その黒い瞳の深みに飲み込まれ、沈み、浮かんでは溺れていくような。
霧散しかけた不安の粒子が、再び心に淀んだ沈殿物を形作ろうとしていた。
万物が色彩を失い、灰色の世界で梓と僕の二人だけが息づいているような錯覚を覚える。
フッと。

空気が変わっていた。
484山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/17(水) 21:45:16 ID:Ov/aIgUZ
「亜由美さん、花の女子大生ですから」
梓が、宙を仰ぐ。
彼女の瞳から解放されたのか、捕獲されたのか、覚束ない奇妙な浮遊感。

「どういう……ことだよ?」
「そういうことですよ。……秋人さんには、忘れがちなのかもしれませんが」
不安の溜まった心の容器を攪拌されたような気がして、カチンときた。

「……あずは、何が言いたいんだ?」
「ご自分でも分かっているのに、どうして私に聞くんです?」
梓が微笑む。灰色の世界のそこだけに色鮮やかな花が咲いた、眩しすぎる美しさ。

「秋人さんの方が私なんかより、ずっと一緒に亜由美さんといるんでしょう?」
「そりゃあ……。でもだからって姉さんのこと、全部分かるわけじゃ……」
「そうですよね。分かりませんよね」

くすくすくす。慎ましさと艶やかさの絵の具で塗った、梓の笑み。
僕は何が分かっていなくて、何が分かっているんだ……?
……あれ? 梓の言っていること矛盾してないか? いや、僕が混乱しているのか?
それに目の前の少女は、誰だ? ……梓か? 僕のあずって、こんな目をする子……?
ぐるん、ぐるん、ぐるん、ぐるん。灰色の世界が回っているような、心の困惑。
ええと、ええと。それより僕らは一体、何の話しをしていたんだっけ?

「どうして亜由美さんが、秋人さんを邪魔者に扱ったか。ではなかったですか?」
そう、それだ。どうしてだろう。

「秋人さんは、どう思っているのですか?」
だから分からないよ、そんなの。
ただきっと、誰かが家に来るから、それでかな……と思って……。

「そうかもしれませんね」
梓の囁きが、耳元でそよ風になる。

「……そうですよ。きっと」
甘い吐息に、かぐわしい音色に、そっと眩暈がする。酔いしれる。

「誰かが来るから、あれだけ仲の良かった弟を追い出した。……そういうことなんですね? 
 ……でしたらそれはきっと、凄く大切なヒトなんでしょうねぇ」
すごく……。
そうだ。ぼくより……たいせつなぐらいだから……。
ぼくより……ずっと……。
485山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/17(水) 21:46:09 ID:Ov/aIgUZ
「どんなヒトなんでしょうね? 私も気になっちゃいます」
囁き。囁き。囁き。囁き。渦巻く。
わからないよ……そんなの。僕には分からない……。

「そうですよね。分かりませんよね」
くすくすくす。梓の台詞。さもおかしそうな、あずの微笑み。
あれ、さっきと同じ? また僕の頭の中が回ってる? 
全身にじわじわと染みわたる不安感、気だるささえ感じる。

「姉弟には……見せられないものだってありますから。教えられないことだってありますからね」
そ、そんなこと……ないよ。
僕は、僕らは、二人で支えあって、今までもずっと、これからも。

「姉弟だって、いつも一緒にいられるわけじゃありませんし」
違う、そんなことない……、今までだって、ずっと一緒だったんだ僕らは……。

「『血の繋がった』姉弟なら、いつまでも一緒にはいられませんし」
そんなことないッ……!
そんなこと……そんなこと関係ないッ!!

「そうですか?」
姉弟だったらなおさら、血が繋がっているならなおさら、いつだって、いつまでだって、
僕らは一緒にあり続ける事ができるッ! 決まってるッ!!

「だから秋人さんには、分からないのではありませんか? 今、誰がお家に来ているかを」
だから、だから……僕にわからない……?
なぜ? ……きょうだいだから……?
またこんがらかってきた。僕は何がわからないんだ?
ぐるぐるぐるぐる。回る、まわる。頭が、せかいがまわる。

「亜由美さん、いつもお綺麗です」
そ……そうだ、そのとおりだ! それなら分かる! 
姉さんは綺麗で、スタイルも良くて、優しくて甲斐甲斐しくて、向日葵みたいな人で、だからっ! 
だから、
……ええと……だから……
だから、なんだったっけ……
あず? あず、おしえてよ、あず……。
486山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/17(水) 21:47:10 ID:Ov/aIgUZ
「だから、『当然』なんですよ。当然、放っておかれませんよ」
そりゃあ……、そりゃあそうだ。
男なら、誰だって姉さんが気になるに違いない。好きになるに違いない。放っておけないよ。

「ほら。やっぱり秋人さんには、最初からご自分で分かっていたじゃないですか」
……何を……?

「誰がお家に来ているかを、ですよ。今、ご自分で口にしたじゃないですか?」

……おと……こ……?

「そうかもしれません」
あずの囁きが、そっと僕の言葉に絡みつく。それが、何故か、心地よくて。

「……そうですよ。きっと」
胸の奥に、燻っているナニかに、絡みつく。ここちいい。きもちいい……。

「でも仕方ないです、秋人さんは実の弟ですから。姉弟はずっと一緒にはいられませんから。
 秋人さんは何も悪くないんですよ。気に病む必要もないんですよ」
ぼくはきょうだいだから。血のつながったきょうだいだから。
ずっといっしょには……いられないから……。仕方ないんだ……どうしようもないんだ……。

「きっと、素敵な男性なんだろうなぁ」
……そうだ……わかってたはずだ……。
ねえさんはきれいだから、すごくすごく、すばらしい女性だから。
ねえさんとずっといっしょに、これからもずっといっしょにいるのは、素敵な男性なんだ……。

「うらやましいな」
あずが、そらをあおぐ。

ねえさんは、いまごろ。
いまごろ、ぼくのいない、いえで、
ねえさんを ソイツが


「亜由美さん、うらやましいなァ」
いつかみたような。たかく、たかく、でも、はいいろのそらを。

ねえさんに   ねえさんは
わらって……

……きょうだい……は……

ずっと……


―――
――
487山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/17(水) 21:47:58 ID:Ov/aIgUZ

「秋人さん? 秋人さんっ!」

「……あ……? ……ぅ……ん」
気がつけば、喧騒。溢れる色彩。動き行く時間。
心配そうに、梓が僕の顔を覗き込んでいる。
梓と話しこんで、そのまま物思いに耽って、いったいどれだけの時間が経ったのだろうか……?
僕はバス停で、図書館行きのバスを待っていた。
気持ち悪い……。吐き気がしやがる……。

「顔色悪いですよ? あの、バスに乗れます?」
「大丈夫……。ごめん、気にしないで」
もうこれ以上、考え事をするのはやめよう……。
バスの中で、さっき食べたりんごを吐き出したら洒落にならない。

「課題をこなすだけなら図書館でなくとも出来ますけど……。ご気分が優れないのなら、私の家の方に来ます?」
「……ん、いや」
確かに、足を動かすのもなんだか億劫になってきた。わざわざ図書館に行く気力もない。
でも姉さんに図書館に行くと言って出てきた以上……その通りに行動した方が、いいのだろう。
予定を変えたのに連絡しないと、また後でうるさいし。
後ろポケットには携帯が入っていない。連絡を入れたくてもできないし……。

姉さんが
僕を
無理矢理追い出したから
持って出てこれなかったんだ。

あるはずのスペースに、あるべきものがない。
その気色悪い空虚感が、僕の神経を逆撫でする。煽り上げる。

なんだよ……
なんなんだよッ、これはッ! これはなんなんだよッ!!


――姉さんが……

姉さんがッ、自分でッ……!

姉さんがッ、いつも居場所を教えろと、自分で押し付けた物のくせにッ……!!




初夏の風。
舞い踊る梓の黒髪、僕の頬を撫でる。

―――――――――――――――――――――――――
<4>ここまで。耳元でそっと囁くのも、女の戦いかた。
次回、いったい今なにしてるのお姉ちゃんのターン。
488名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 22:10:53 ID:y1TiEIpE
あずカワイいよ、あず。
489名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 22:57:31 ID:WC7Uqjb/
これは洗脳と見ていいのかな?かな?かな!?
490名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 22:57:33 ID:AhG4o7xa
>>487
追い込みの描写が最高だね。
しかしオレはおねーちゃん派。
キレキレの逆襲を期待しているぞ。
491名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 23:06:26 ID:r7sKlK9Z
オレは泥棒猫派になった
492名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 23:48:32 ID:EBsbTZDa
藤原里香はどうなったんだ・・?

しかし、お姉さん。
弟を追い出して、男を連れ込むとはやるなww
493名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 00:02:51 ID:/Mt5Pv5n
厄いわね
494名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 00:22:44 ID:98859N0b
うはwwwwwwなんだこのペースはwwwww
神々様、マジで乙!
こんな時間に帰宅する生活でも、このスレで潤うよ。


そして必死に追いすがるまとめサイト管理人に乾杯
495名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 00:51:04 ID:KjP4wnMv
スレもサイトも早くて助かるぜ。
496名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 01:03:16 ID:I7Rw9osp
>>492
いや、オレは弟を外に出して、その間に電話で訪問するのが
分かっている泥棒猫その1を駆除するのだと思ったが。
497Bloody Mary 第五話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/18(木) 01:06:09 ID:UuTbpq0U
番外編を挟んだのでこの辺で登場人物のおさらい。というか自分で書いてて名前忘れそうなので。

ウィリアム・ケノビラック(ウィル)…………主人公君。『王の盾』に出世した成り上がり。復讐が大好物。
                    事件からたった一年で村人Aから騎士にクラスチェンジしたところがファンタジー

マリィ・トレイクネル(団長)…………………王国騎士団団長。主人公が大好き。仕事に私情挟みまくり。
                    無意味に強いところがファンタジー

マリベル・ノブレス・アリマテア(姫様)……アリマテア王国王女。これまた主人公が大好き。萌え担当。
                    今現在、本文で名前が一度しか登場しなかったあたりがファン(ry

キャサリン・ウィーバー(キャス)………主人公の幼馴染で故人。不幸っぷりがファ(ry

ベイリン(師匠)……主人公の剣の師匠で傭兵。といってもよーくんのことじゃないよ。実は妻子持ち。
         修羅場スレなのにオッサンが出てるところがファンタジー?

シャロン……侍女の一人。お話の帳尻を合わせるためにご都合主義で生まれたキャラ。まるで忍者。
      突然登場して読んでいる方に「誰やねん」とつっこまれたであろう人。
      とにかくファンタジー
498名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 01:06:22 ID:L1HuISfS
思考を誘導し、秋人を奪い取ろうとするあずは素晴らしいなぁ(*´д`*)
499Bloody Mary 第五話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/18(木) 01:07:00 ID:UuTbpq0U
 一晩明けても俺の動悸はまだ治まらなかった。
 もしかして本当に団長、俺のことが好きだったのか…?
い、いや多分顔を近づけたときにたまたま、ホントにたまたま唇が触れただけだ。
 ……―――阿呆くさ。どう考えたってあれはキスだろう。いくら取り繕ってもこれは揺らぎようのない事実だ。
 とにかく団長に真意を聞き出そうと今朝、詰め所の方に寄ってみたが彼女は居なかった。
同僚に尋ねてみると、どうやらまとまった休みをもらって実家の方に里帰りしているらしい。
困った。団長が休暇から帰る明後日まで俺は独りでこの疑問と格闘しなきゃならないのか。
 だいたい次に団長に会うときどういう顔すればいいんだ。

「――ム、ウィリアム!」
「あ!は、はい。なんですか?」
 黙考しすぎた。気づけば姫様が不服そうに頬を膨らませていた。
「おぬし、ちゃんとわらわの話を聞いておるのか?」
「いや…すいません。えっと、何の話でしたっけ?」
 降参して謝るが、どうやら機嫌がよくないらしくへそを曲げたままそっぽを向いてしまった。
どうやって機嫌を直してもらおうか策を練っていたところ。
「のう、ウィリアム。昨日―――どうじゃったのじゃ?」
 唐突に話題を変え、今一番訊かれたくないことを訊いてきた。いったいどういうつもりでそんなことを
訊くのか姫様の顔を確認しようとしたが、姫様はこちらに顔を背けたままでそれは不可能だった。
「ど、どうって……姫様?」
「その……デート、したのじゃろう?マリィと…」
「ええ、まぁ……えと、楽しかったですよ」
 当たり障りのない回答ではぐらかす。さすがに姫様相手にキスされたとか俗っぽいこと言えないよなぁ。
 暫しの沈黙。
「――ウィリアム、おぬしは母上のようにわらわを置いてどこかに行ったりせぬよな?」
 こちらを見つめる姫様の顔は母猫に捨てられた子猫のようで。
姫様の母君…確か戦前に行方不明になったんだったか。それ以降、姫様は寂しい思いをしたようだ。
 だけどどうして俺にこんな顔を向けるんだ。俺は姫様に会ってまだ二週間程度だぞ。
「頼む、ウィリアム。わらわを独りにしないでくれ。もう独りはイヤなのじゃ」
 ゆっくり、ゆっくりと俺に寄り添ってくる。そして俺の胸に頭を預け。
「独りは寒いのじゃ、辛いのじゃ。ウィリアム、わらわを温めてくれ。わらわを癒してくれ」
 昨日の団長と同じだ。
 姫様といい、団長といいどうして俺にこんなに本心を晒せる?どうして俺なんかに。
「わらわを守ってくれ……わらわを、『私を助けて』―――」
 ッ!!!
 彼女のその言葉が引き金になって、脳裏にキャスの最期の姿がフラッシュバックする。
 ………守る。そうだ、俺は守りたいんだ……
 震える手で俺は彼女の肩に手を掛け、そしてゆっくりと。
500Bloody Mary 第五話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/18(木) 01:08:57 ID:UuTbpq0U
―――止せ。
お前が今やろうとしていることは姫様とキャス、二人に対する侮辱だ。
姫様にキャスを重ねるな。姫様はキャスじゃない。
キャスは死んだ。キャスは死んだんだ。
お前が見殺しにしたんだ!
 ―――ゆっくりと姫様を引き離した。
「姫様、大丈夫ですよ。俺は『王の盾』です。『王の盾』である限り俺は姫様をお守りします」
「あ……」
 刹那、姫様は酷く淋しそうな顔をする。しかしすぐキッとこちらを一睨みし、こう命じた。
「そこに屈め、ウィリアム」
「姫様?」
「仕置きしてくれる。黙ってそこに屈むのじゃ」
「は、はぁ…」
 姫様の意図を測りかねながら彼女の言うとおりにした。そして。
「ん……」
 姫様は俺に口付けした。
 ―――あぁ、俺…団長に続いて姫様にまでキスされたのか。
間近にある姫様の顔を見て俺はぼんやりとそう思った。
「―――はぁ」
 唇を離した姫様は俺が見たことのない恍惚とした表情をしていた。
「……ひめ、さま?」
 思考がまとまらない。何とかそれだけ口にするが姫様は黙って俺に背を向けた。
「………今日はもうよい。でていけ。」
「姫様、いったい―――」
「出て行け!」
 駄目だ。何を訊いても答えてくれそうにない。
 今日のところは引き下がった方が得策のようだ。
「……失礼します」
 俺はそう言って姫様の部屋を退室した。
501Bloody Mary 第五話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/18(木) 01:09:43 ID:UuTbpq0U




バタンッ
 ウィリアムが退室した後、わらわは彼を帰したことを後悔した。泣きたくなった。
「おのれ……」
 キスしてくれなかった。あれだけ本心をぶちまけたのにウィリアムはわらわにキスしてくれなかった。
死人の力まで借りたというのに。なるべくウィリアムから聞いていた幼馴染みに似せたつもりだ。
 彼はほぼ間違いなくキャスという娘のことを思い出しただろう。なのに。
 昨日のことはシャロンに尾行するよう頼んでいたから一部始終のことは知っていた。
勿論、あの女が最後にウィリアムに接吻したことも。
 悔しかった。自分より先にウィリアムの唇の味を知ったあの女を殺したくなった。
わらわの知らない彼の唇の柔らかさをあの女は知っているのかと思うと気が触れそうになった。
 あの女に勝つためにはウィリアムの方からわらわにキスするように仕向ける必要がある。
そう思って恥も外聞も捨ててウィリアムの幼馴染みの力を借りたのに達成できなかった。
 最後は半ば無理矢理唇を奪ったがあまり嬉しくはない。
いやキスできたことは素直に嬉しい。ただその行為は既にわらわより先にマリィが済ませている。
その事実がちっともわらわに喜悦を与えなかったのだ。

 おのれおのれおのれおのれおのれ!!

―――もうよい。アレを使おう。この国が危うくなると思い、今までどうするか迷っていたが
 もうそんなの知ったことか。ウィリアムが手に入るならこの国など微塵ほども惜しくないわ。
 マリィ=トレイクネル。見ておれ。貴様を地獄の底に叩き落としてくれる。

「シャロン!シャロンはおらぬか!」
「こちらに」
 わらわが一声かけるとシャロンが部屋に入ってきた。
「一昨日の例の資料、街の情報屋にでも流せ。なるべく自然にな」
「よろしいのですね?王国が危険に晒されることになりますが……」
「構わぬ。早急にそのようにせよ」
「かしこまりました」
 シャロンは静かに退室した。

 マリィ、おぬしもこれで終わりじゃ。わらわを敵に回したこと、後悔するがよい。
502Bloody Mary 第五話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/18(木) 01:11:31 ID:UuTbpq0U
第五話 初ちゅー姫様編でした。

>>486
秋くんに揺さぶりかけるあずあず(*´Д`)
しかし山本梓と聞いてiメートのツナギ姿を思い浮かべるのは自分だけ?
503名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 01:15:29 ID:gH84eHnc
>>502
あああ、やっぱりウィル剣帝化フラグかーッ。とローカルに反応してみる。
殺愛は止められないのですね。
504名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 02:02:13 ID:L1HuISfS
>>502
割り込んでしまって申し訳ないOTL
ウィルの好物は復讐ということは、やっぱり鮮血が舞散るのか……
505アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/18(木) 08:25:39 ID:Dm6s+yYz
投下開始します
506生きてここに・・・・十二章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/18(木) 08:26:41 ID:Dm6s+yYz
私と奈々ちゃんはまだ警察に話を聞かれていた
東児さんの次は仁くんその次が私と奈々ちゃん
私たちはあやふやな記憶を補い合ってなんとか警察の人に伝えた
その後二人でお迎えが来るのを校門の前で待っていた
もちろん後ろには警察の人が立っている
「なんか人が見えませんか?」
奈々ちゃんが不思議そうな顔をして暗闇の向こうを指差した
私が目をこらすと・・・・・
「高田さん!」
暗闇に浮かぶ姿に私は思わず駆け寄っていた
「詩織さま・・・・・仁さまが・・・・・仁さまを・・・・」
肩からたくさん血が・・・・矢?折れてるけどこれって矢だよね?
それが刺さってる
高田さんは後ろの刑事さんに肩を借りてパトカーで病院まで送られていった
「ねぇ、詩織さん・・・・さっきの」
仁くんが・・・・危ない!
私は奈々ちゃんを連れて仁くんの家の道をたどっていく
すぐに炎上する車を発見した
刑事さんも遅れてやってきて消防車を呼んでいる
「仁くーん!」
私は祈りをこめて必死で叫んだ
答えはない
「詩織さん・・・・」
「奈々ちゃん・・・・」
私は奈々ちゃんを見つめ奈々ちゃんは軽くうなずいた
「仁ちゃんのために一時休戦です」
「ええ、仁くんのためだからね」
確認しあって私たちは仁くんの捜索を始めた
507生きてここに・・・・十二章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/18(木) 08:27:39 ID:Dm6s+yYz
「ここは・・・・?」
目が覚めると俺はどこかの倉庫に居た
必死で身体を動かすが動けない
手に縄みたいなものが結ばれ腰にも何かが巻きつけられている
脚は・・・・なにもないが痛みが走った
「お目覚めはいかが?」
最悪に決まってるだろ
「香葉さんか・・・・」
「そうよ・・・・仁さん」
嬉そうな声だな
そんなに嬉しいか?
ショートカットの髪に鋭い目つきの悪魔が暗闇の中で月に照らされ姿を現した
「これで二人きりだね・・・・さぁ、愛し合いましょ?」
近づきゆっくりと唇を寄せる悪魔
俺は唾を吐きかけそれを止める
「強情ね・・・・」
顔をハンカチで拭くと悪魔は笑んだ
「そんなに彼女がいいの?」
「あいにく、たった一人しか愛せないタイプなんでね」
また顔を近づけてくる
「男の子なんだから・・・・見境なくなったっていいじゃないの?」
「面くいだから・・・・俺」
「私だって良い線だと思わない?」
悪魔はそう言って微笑んだ
まるで映画とかの悪女だな
「あんたの家・・・・鏡ないのか?」
「・・・・・・え?」
「自分の顔を見たことあるのかって聞いてるんだよ!」
508生きてここに・・・・十二章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/18(木) 08:29:04 ID:Dm6s+yYz
「・・・・っ!」
顔を強張らせて俺の頬を殴りつける
何だよ・・・・悪魔でもそんな顔できるのかよ
「俺は折れないぞ・・・・どんなことをされたってな!」
また頬を叩かれる
何度も何度も・・・・
それだけで疲労と怪我の痛みで身体が軋む
「痛い?・・・・苦しい?・・・・開放されたかったら私の物になりなさい」
「痛くなんてないな・・・・東児のパンチの方が数倍効く・・・・な」
今度は腹に一発
「俺は許さない・・・・詩織や奈々を傷つけようとしたあんたを!」
次は顔面に戻る
「・・・・・・」
やっぱりあんた悪魔だよ
だって、なんか嬉しそうな顔してるしな
おもむろにバケツを持つと中の水を俺に掛けた
「ごめんなさいね・・・・せっかくの綺麗な顔なのに・・・・でも、これで綺麗になった」
そう言ってまた俺の腹を殴りつける
殴られなれてるとはいえ・・・・これは・・・・効くな
あれだけ大暴れしたのになんでこんな元気なんだ?
俺なんてヘロヘロなのによ
「どう?私の物になる気になった?」
悪魔め・・・・俺は屈しないぞ
今の俺にはこれしかできない
こうやって時間を稼ぐことしか・・・・
509アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/18(木) 08:30:10 ID:Dm6s+yYz
今回は仁くん中心でした
香葉さん香葉さん言っておいて・・・・
次章も帰ってきたら投下します
次章の視点はみんな一緒くらいかな?
次章もこの章も香葉さん視点でしたが後半書いてるときにネタ切れしてしまい・・・・
このような形になってしまいました・・・・すいません
510名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 13:54:59 ID:wv7Ahq8R
あやまる必要なんて微塵もないよッ!ゆっくり自分のペースで書いてください。
511名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 14:47:26 ID:QWIMyZFf
>>509
期待して続き待ってますよー


さて、神々の作品に刺激されて創作意欲に火がついたのに中々筆が進まない…
512『歌わない雨』Act8:2006/05/18(木) 17:04:02 ID:5uxNxqr8
 今日は皆で楽しく御出掛け(はぁと)
 楽しく可愛く表現しても、僕の心に立ち込める暗鬱とした気分はどうにも晴れない。
「せっかくの日曜日なのに」
 しかも、天気は快晴。
 ここまで揃っていて尚且つ気分が悪いのは、きっと隣で陽気に鼻唄などを歌っている人間のせいだろう。
 その名前は中道・緑。
 僕の幼馴染みで、僕が一番恐れる策士だ。
「緑、御機嫌だね?」
「まぁね」
 雪の声を聞き、軽く舌舐め擦りしながら僕を見る。
 そりゃあ御機嫌だろう。
 雪の目を盗んでした僕とのキスは、ゆうに十分間にも及んだのだ。さぞ満足したに違いない。
 しかし本題はそんな事じゃなく、キスはあくまでも契約で、大切なのは契約が守られるかだ。
 そんな訳で、僕と緑と雪の三人で外を歩いていた。
 芹も誘い、二人の様子を観察する。
 話はそれからだ。
「おはよう。伸人、雪」
 つらつらと考えていると、もう待ち合わせ場所に着いたらしい。先に来ていた芹が若干一名を除き、笑いかけてくる。
「あら、どこからともなく霊長類系の鳴き声が」
 すると緑は急にしゃがみ、
「あ、もう来てたんだ? あまりにも小さくて気付かなかった」
 あんまりな言葉を返す。
「黙れ雌豚、家畜の分際で言葉を覚えるのは大変だっただろう。これからはもうそんな苦労はしなくて良いぞ?」
「そっちこそ、人間様に進化しきれてないみたいで、大変よね。無理に社会に溶け込まないで、大自然で自由に暮らして良いのよ?」
513『歌わない雨』Act8:2006/05/18(木) 17:06:02 ID:5uxNxqr8
 これらの言葉の応酬はいつもの通りで、個人的には止めて欲しいのだが、取り敢えずは守れていると安心した。
 だが、それも長くは続かない。
 緑は僕を見ると笑みを浮かべ、唇を軽く舐めた。
「…どうした、伸人?」
 芹の顔を見て、益々後悔の念は強くなる。二人が僕に好意を寄せているという事実と、緑としたキスが僕の心を締め付ける。
 多分、これが策士の狙い。残酷な罠の一つだ。
「…伸人ちゃん?」
「どうした、そんなに呆け…避けろ!」
 僕はどうやら立ち止まっていたらしく、その事実を認識したのは芹に突き飛ばされた後だった。
 眼前に広がるのは、一年前今朝の光景。
 但し緑のポジションは僕で、僕のポジションは芹が担当。
「っ、危ないだろうがッ!!」
 少し違うのは悪態をつきながら自転車を止めたことと、それに乗っていたのが体格の良い巨漢だということだ。
 しかも体重の軽い芹を止めただけで腕を痛めた僕と違い、更にはその細腕で少し宙に浮いた自転車を難無く地面に叩き付けた。
「お前のッ、脳味噌はッ、飾りかッ!!」
 続くのは拳による猛攻、腕は痛めていないらしい。
「反省ッ、しろッ!!」
 久しぶりにキレた芹を見た。
 その抜きん出た身体能力で、圧倒的に敵を痛めつける。
 これが『暴君』釜津・芹の真骨頂。
 と、冷静に解説しつつ見知らぬ巨漢を助けに入る。
「こら止めろ」
 芹の右手を、右手で掴む。
 本当は利き手である左手の方が力が強いが、随分久しぶりな感じのある腕の痛みによって動かなかった。
514『歌わない雨』Act8:2006/05/18(木) 17:09:27 ID:5uxNxqr8
「何をッ!!」
 叫びながら芹は振り向くが、僕と目が合うと腕を動かすのを止めた。
「だけどこいつは…」
「僕は芹にこんな事をしてほしくない」
 僕は芹の頭を撫で、
「ありがとう」
 笑みを作る。
 途端、芹は顔を真っ赤にしてうつむき口元で何かを呟き始めた。
「卑怯だ」
 我ながら確かに卑振り向くが、僕と目が合うと腕を動かすのを止めた。
「だけどこいつは…」
「僕は芹にこんな事をしてほしくない」
 僕は芹の頭を撫で、
「ありがとう」
 笑みを作る。
 途端、芹は顔を真っ赤にしてうつむき口元で何かを呟き始めた。
「卑怯だ」
 我ながら確かに卑動の黙認は緑の方から出してきた提案で、朝にキスをした以上それを実行するしかない。
「これからどこに行こく?」
 顔を赤くしたまま浮かれた芹の表情に、多少の罪悪感を抱きながら僕は笑みを作ると、
「さっきも助けてもらったし、好きな所で良いよ」
 それを聞いて、芹は尚更はしゃぐ。
「伸人…」
 緑が恨みがましい、少しすねた目で僕を見た。
 策が一切見られないその表情は可愛らしく、新しい罪悪感が僕の中に芽生えた。
「ごめん」
「伸人ちゃん、モテモテじゃん」
 くはは、と独特な笑い声をあげる雪は、心の底から楽しそうだ。
 しかし、安心する。
 僕の中に多少のジレンマがあるとはいえ、これこそいつもの日常だ。
515『歌わない雨』Act8:2006/05/18(木) 17:11:56 ID:5uxNxqr8
 一日中楽しく過ごしたが、相手は策士、甘く見るべきではなかった。
 ここは緑の部屋、時間は既に夜空に星が煌めいている。
「気持ち良かった。ね、伸人」
 緑を抱いた後、猛烈な後悔に襲われていた。
 これが策士の一番残酷な罠。
 朝に抱けばその日一日を強烈な罪悪感で潰し、
 夜に抱けば獰猛な後悔が僕を襲う。
 いつにしても精神が擦り減らされる。
 極めつけは、芹と仲良くすればする程に、毒が深まっていくということだ。
 不意に、左手が痛んだ。過度のストレスが再発の原因と医者には言われた。
 その痛みと連鎖するように、ある天啓が思い浮かんだ。
「緑、交渉だ」
「何?」
 急に策士の声になる緑に、僕は内心で笑顔を作る。
「これからはお前が作った料理以外の食い物は食わない」
「良いねそれ、楽しみ。そっちの要求は?」
 策士も所詮は人間、破格の条件に飛び付いてきた。
「キスの後に、あの人の名前を言え」
 それは僕の初恋の人。
 僕の心が痛まないかと聞かれれば完全にノウだが、それ以上の痛みが緑には走る。
 肉を切らせて骨を断つ。
 毒には猛毒を。
 正攻法なんて使わない。
 それが悪役だ。
 緑は青くしていた顔で笑みを作ると、
「良いわよ。それじゃあ、今日はおやすみなさい」
「おやすみ」
 僕は笑みを浮かべると、部屋を出た。
 今回は僕の勝利だ。
516『歌わない雨』 ◆JypZpjo0ig :2006/05/18(木) 17:14:47 ID:5uxNxqr8
今回はこれで終わりです

そろそろ雪が本格的に動きます
もちろん伸人は気付きません
楽しみですね?
517名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 18:17:07 ID:3GeJ64vn
「祥ちゃん!!私と付き合ってるんじゃないの!?」
「祥お兄ちゃん私のことを好きだって言ったじゃない!!」
「あの人は俺のことをこんな風に困らせないんだよ!!」
こんな展開が欲しいw
518名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 19:40:01 ID:gH84eHnc
いえいえ。真・策士にそんな行為は似合いません。猫二匹を蹴落とした後、
あくまで普通を装いながらほくそえむのです。
519アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/18(木) 20:19:52 ID:Dm6s+yYz
投下開始です
520生きてここに・・・・十三章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/18(木) 20:20:34 ID:Dm6s+yYz
「誰が・・・・悪魔なんかに」
「酷いわね・・・・あなたのことをこんなにも愛してる女に向かって」
歪んだ愛なんて向けられてもね
詩織や奈々のような純粋なのを俺は希望するよ
「まぁ、いいわ・・・・時間はたっぷりあるんだし」
何言ってるんだ?この悪魔は・・・・
自分のしでかしたことの大きさに気づいてないのか?
俺は思わず苦笑していた
「なに・・・・・笑っているのよ」
「ここがどこだか知らないが・・・・そう遠くないんだろ?」
「・・・・・」
「警察があんたを探してるんだ・・・・もしかしたら今頃近くに来ているかもな」
そう俺が言ってやると悪魔は脱力したかのように肩を落とした
そして再び聞こえてくるあの音
金属音と共に銀色の刀身が再び俺の前に現れた
俺が死を感じたときだった
521生きてここに・・・・十三章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/18(木) 20:24:55 ID:Dm6s+yYz
見せてあげる私がどれだけあなたを愛してるか
私は刀で自分の左肩を斬った
あはは・・・・ぜんぜん痛くない・・・・
噴出す血が仁さんを赤く染め上げる
呆然としちゃって・・・・・
ふふふ・・・・綺麗・・・・
私は染めてあげる・・・・あなたを私だけのあなたに・・・・
「愛してるわ・・・・仁さん・・・・」
ゆっくりと近づく
「・・・・・・・あんた」
どう?私の愛を感じてくれた?
綺麗な顔・・・・綺麗な身体・・・・・
ふふ・・・・・あ、はははは・・・・・く・・・・・あ、はははは!
何よりも誰よりも・・・・あなたのためなら私は世界中の人を敵に回しても構わないわ
でも・・・・あなたに近づく雌犬だけはゆるせないの・・・・
だからそれは必ず排除するの・・・・
だってそうでしょ?私にはあなたしかいないの
だからあなたも私だけなの・・・・・
ふふ・・・・あ、はははは!
522生きてここに・・・・十三章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/18(木) 20:25:35 ID:Dm6s+yYz
「予想はついてるんですか?」
そんなものあるわけないでしょ
「もう、愛の力よ!それでなんとかするの!」
我ながら呆れてしまう
でも、そんな風に思っていないと不安で押しつぶされてしまう
「よく、考えてください・・・・そうだ!」
奈々ちゃんがポンと手を合わせる
何か思いついたの?
「愛の力です・・・・・」
ダメだ・・・・どうしよう
そんな時だった
私のケータイ電話が鳴った
「はい・・・・」
〈詩織さまですか?〉
電話の相手は坂島さんだった
〈時間がないので申し上げます・・・・仁さまは近くの倉庫に閉じ込められているようです〉
倉庫?あたりを見回す
〈仁さまの持ち物には特殊なGPSが付いていまして、説明している時間はありませんね、すぐに座標を送ります〉
私は送られてきた座標を見てその場所に向かった
523生きてここに・・・・十三章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/18(木) 20:26:41 ID:Dm6s+yYz
「ここだね・・・・」
奈々ちゃんが中の様子を伺っている
どうしよう・・・・また刀なんて持ち出されでもしたら仁くんが
私たちが乗り込めば間違いなく彼女を刺激してしまう
そんな私をよそに奈々ちゃんは深呼吸して後ろに下がっていく
なにをする気?
まさか!
「とう!」
とび蹴り?目の前の鍵のかかっているドアにとび蹴りをして蹴倒す
「仁ちゃん!」
聞き耳を立てていたのか奈々ちゃんは中の様子がわかったみたい
私も後に続く
中にあるダンボールをかき分けた先に出るとそこには刀を振り上げた香葉さんと椅子に縛られた仁くんがいた
怒りがこみ上げる仁くんが・・・・仁くんが
それは奈々ちゃんも同じようだ
「邪魔・・・・入ったみたいね」
月明かりに照らされた悪魔が私たちを見つめる
その瞳に先ほどの恐怖がまた込み上げる
でも・・・・許さない!
私は奈々ちゃんとうなずきあい悪魔に立ち向かっていく
524生きてここに・・・・十三章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/18(木) 20:27:54 ID:Dm6s+yYz
「そうね、あなたたちを殺せば・・・・もしかしたら」
悪魔は何事かつぶやいた
「待てってね・・・・仁さん」
「詩織・・・・奈々・・・・・逃げてくれ・・・・・警察を・・・・・」
ああ、仁ちゃんの声がかすれている
身体も・・・・・大量の血で染まっている
どれだけ酷いことされたの?
初めてだよ・・・・こんなにもヒトを憎く思ったのは
違う・・・・もうヒトじゃない・・・・・この姿はまるで悪魔そのもの
私は詩織さんに目線で合図した
そのまま私は悪魔に向かっていく
目先の私を標的にした悪魔は刀を突いてきた
刀身が顔の横をかすめる
刃先が横になり今度は横から刀身が・・・・
「・・・・っ!」
ゴンと詩織さんが悪魔に体当たりする
けれど悪魔は詩織さんの髪の毛を掴んで頭を引き上げる
そしてそのノド元に剣先を向けた
悪魔さん・・・・私を忘れていますよ!
私はとっておきをポケットから出すとそれを悪魔に押し当てボタンを押した
「ぐ・・・・・う!」
断末魔の声を上げて悪魔は後ろに下がる
このスタンガンは高田さんが護身用にと私と詩織さんにくれたものだ
まさかこんな形で使うなんて
けれど悪魔は口元をゆるめるだけだ
スタンガンを使ったのに何で?
けれど詩織さんは怯まずに悪魔に向かっていく
私も・・・・・!
525アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/18(木) 20:29:42 ID:Dm6s+yYz
激しく遅くなってなりましたが応援のレスありがとうです
気が付けば皆様のレスを見るのが一日の楽しみになっています
次章は香葉さん視点でたっぷりと彼女の壊れっぷりを表現したいと思います

次章 香葉の愛はどこまでも
526振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/18(木) 21:06:32 ID:fPhlVcb2


   ・    ・    ・    ・   


「もう、祥ちゃんったら赤くなっちゃって、相変らずウブで可愛いんだから」
「そうだね……」
 照れ隠しのように慌ててテントに駆け込んだ祥おにいちゃんにお姉ちゃんは上機嫌。 でもわたしには分かってしまった。 祥おにいちゃんが赤くなったのはお姉ちゃんにじゃない。 私の水着姿にだって事を。
(祥おにいちゃんのバカ……! 祥おにいちゃんはお姉ちゃんの彼氏でしょ?! わたしなんかに見惚れてどうするのよ……)
 反面、わたしに女としての魅力を感じてくれる祥おにいちゃんを嬉しく感じる自分もいる。
 祥おにいちゃんの態度にも、矛盾した私の中の二つの気持に対しても思わず溜息が出そうになる。 だめ、溜息なんかついちゃ。 今日は折角の楽しい旅行なんだから。
 そんな事考えていると水着に着替えた祥おにいちゃんが出てきた。 其の姿を目の当たりにしお姉ちゃんは歓声を上げる。 向こうでくつろいでいる季歩おねえちゃんも「へぇ」と感嘆の声を洩らす。
 祥おにいちゃんって特別運動とかしてるわけじゃないけど、でも筋トレ日課にしてるって言ってるだけあって結構イイ躯してるのよね。
 やや痩せ型で、でも結構付く所には付いてて締まる所は締まっていて。 特にお腹とウエストはくっきり浮き上がった腹斜筋のお陰か引き締まって……。
 いけない、いけない。 これじゃわたしも祥おにいちゃんのこと言えないわね。
 その時わたしは自分の手を引っ張られる感触に我に返る。 お姉ちゃんだった。 反対側の手には祥おにいちゃんの手が握られている。
「ほら、結季。 ボーっとしてないで速く泳ぎましょ」
「行こうぜ結季」
「あ、うん。 そうだね」
 折角の旅行、それもこんなに良いところに来たんだから楽しまなきゃね。


 わたし達三人は童心に帰って波と戯れ楽しんだ。
 追いかけっこして泳いだり、ビーチボールやビーチボートで遊んだり。 ちなみにボールもボートも季歩おねえちゃんの車のトランクに入っていた。
 で、その季歩おねえちゃんはと言うと、相変らずパラソルの下でくつろいでいる。 一緒に遊ぼうって言ったんだけど『幼馴染水入らずで三人で楽しみなさい』って。 気を使ってくれたのかな季歩おねえちゃん。 今回は色々協力してくれて本当に感謝している。
 三人で夢中になって遊べて本当に楽しかった。 三人で、と言うより祥おにいちゃんと一緒に遊べて……。
 駄目、この旅行はお姉ちゃんの恋を応援し、確固たるものにする為のもの。 そして私の想いにピリオドを打つ為の……。


 夢中になって遊んで、気が付けば日も傾き始めてた。
 水平線に沈みゆく太陽。 オレンジ色の夕陽に照らされに金色に輝く海。 ルビーのような紅からアメジストのような紫、そしてサファイアにも似た紺碧へと深いグラデーションに染まっていく空。 其の美しさにわたし達は目を奪われる。
 ふと、わたしは両手の人差指と親指で窓を作り、其の中に夕陽とお姉ちゃんと祥おにいちゃんを収めてみた。
 うん、とっても絵になる。 やっぱり妹の贔屓目とかそう言うの抜きにしてもとってもお似合いだよね……。
 …………
 あ、あれ? な、何だか視界がぼやけて……。 涙? どうして? どうして涙なんか……。

「結季?」 
「おい、一体どうかしたのか?」
 気が付けばお姉ちゃんと祥おにいちゃんが不思議そうな、そして心配そうな顔でわたしの顔を覗き込んでいた。
「え、あ、いや何でもないよ。 その……夕陽があんまり綺麗だったから……」
 わたしは慌てて取り繕い答える。
「なんだ、そうか」
 私が答えると祥おにいちゃんはホッとした表情を見せる。
「結季ったら感激屋さんなんだから」
 お姉ちゃんは笑ってわたしの頭を撫でてくれた。
527振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/18(木) 21:08:09 ID:fPhlVcb2

「気持ちイイ〜。 昼は海水浴で夜は温泉なんて今日は本当に良い一日だったわ。 ありがとうね結季」
 夜、わたし達は季歩お姉ちゃんの車で送ってもらい予約しておいた旅館にチェックインし、晩御飯も済ませそして温泉に浸かって昼間の疲れを癒していた。
「そんな、お礼なんて。 楽しかったのは私も一緒なんだから。 それに海水浴は季歩おねえちゃんのお陰だし」
「そうね。 季歩ねえさんにも感謝してるわ。 季歩ねえさんも折角なんだから一緒に泊まっていけばいいのに」
 そう季歩おねえちゃんは私達を送ってくれた後帰ってしまった。 季歩おねえちゃんにも用事があるしね。 それに……
「どうしたの結季。 ヒトのことジッと見つめたりして」
「ん、やっぱりお姉ちゃんって綺麗だなって思って。 胸だって私より大っきいし」
「ちょっ! い、いきなりなに言い出すのよ!」
 真顔で言った私の其の言葉に、お姉ちゃんは温泉で上気し朱を帯びた頬を益々紅らめる。
「うん、だって改めてそう思うんだもの。 祥おにいちゃんも果報者よね。 こんな綺麗なお姉ちゃんの彼氏なんだから」
「も、もう……、このコったら一体何を言ってるんだか……!」
「お姉ちゃん顔紅いよ?」
「お、温泉で長湯したせいよ! もう出ましょ。 これ以上入ってたらのぼせちゃうわよ!」
 そう言ってお姉ちゃんは照れ隠しするように湯船から上がる。 そして私もそれに続く。
「そうね、もう十分浸かったものね」


「あれ? 結季、何で浴衣着ないの?」
 そう、旅館に泊まったら、ましてや温泉から上がったら普通浴衣に着替えるもの。 でもわたしは……
「折角なんだからアンタも浴衣に着替えなさいよ。 それじゃまるで帰り支度みたいよ」
 そう、お姉ちゃんも、そして多分今頃同じく温泉から上がってる祥おにいちゃんもくつろいだ浴衣姿。 対して私は上から下までしっかり着込んで、ついでに言うとバッグも準備して完全に帰り支度。
「うん。 私は一足先に退散させてもらうからお姉ちゃんは祥おにいちゃんと恋人同士水入らずの夜楽しんでね」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! 私も祥ちゃんも結季のこと邪魔だなんて思ってるわけないでしょ」
 うん、分かっている。 お姉ちゃんはどんな時だって私を邪魔者扱いなんかしない。 退散するのはあくまでも最初から私が決めてた事なんだから。
「それにこんな夜遅くどうやって帰るつもり? きっとこんな時間じゃ電車も途中で無くなって家に着かないわよ?」
「大丈夫よ。 季歩おねえちゃんちに泊めてもらうから。 話はつけてあるし」
「季歩ねえさんに?」
「そ、ここって季歩おねえちゃんのマンションから車ですぐ……とも言い切れないけど、それほど離れていんだよ。 もう直ぐ迎えにきてくれる頃だからわたし行くね」
「結季、あんた若しかして最初ッから……」
 用意周到な私の対応にお姉ちゃんは驚きを隠せないと言った表情を見せる。
 わたしはお姉ちゃんの言葉を遮り小さな小箱を手渡す。
「ちょ、結季! こ、これって……!」
 手の中のものを見てお姉ちゃんの顔は見る見る紅く染まっていく。
「買うとき物凄く恥かしかったんだから……」
 言ってて自分でも顔が熱くなるのがわかる。
「頑張ってね。 お姉ちゃん」
528 ◆tVzTTTyvm. :2006/05/18(木) 21:12:21 ID:fPhlVcb2
To be continued...

このスレの住人の方々のレスには時に意表をつかれ驚愕させられますw

香葉さんの凶悪ッぷりには只々戦慄を覚えます
529リボンの剣士 9話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/18(木) 21:17:45 ID:ILiL5hqu
昨夜の雨は明け方には上がったようだ。今はすっかり晴れている。木の葉から零れ落ちる雫が、とても綺
麗だ。
いつもの通学路。水溜りがあるものの、休み明けの億劫な気分は減少する。
駄菓子屋の角で、これまたいつものように明日香と会う……はずなのだが、いない。
明日香が通ってくる道を覗いても、誰一人歩いていない。
先に行ったのか? それとも寝坊か?
昨日のことを鑑みるに、可能性は半々だった。

昨日の試合――――。
俺が知っている明日香と比べて、あの試合での明日香は、一言で言えば、全くらしくないものだった。
失礼だが、別人ではないかと思ったくらいだ。いつも見せるような果敢な攻めはなく、相手の動きに対し
てふらふらして、何もできずに面有りを決められていた。
相手がやたら強かった、とも考え辛い。それこそ離れて見ていた俺ですら威圧感を覚えるほどの奴でなけ
れば、明日香の敵ではないだろう。昨日の相手に、それは無かった。
で、そいつに負けた明日香はどうしているか。もっと鍛えなければと急いで朝錬に行ったか、あるいは単
に不貞腐れているか。
前者であれば何の問題も無い。だが後者なら。
俺自身、明日香が試合で負けるのを見るのは初めてだった。敗れた悔しさはいかほどか、俺に簡単に量れ
るものではない。そんな明日香と、なんて話せばいいのやら。
……。

俺は一人で学校へと向かった。
仮に明日香が凹んでいたとしても、そこから立ち直れないようなヘタレじゃない。
明日香は俺よりも、ずっと強いのだから。

学校に着いてから、道場を覗いて確認する、という方法を思いついた。明日香がいれば、それで良しだ。
なんとなく忍び足で道場に近づく。別に疚しいことなど無いのだが。
中から威勢のいい掛け声が聞こえてくる。
入り口横の壁に張り付き、顔だけ出して中を確認する。明日香はいない。
ということは、寝坊か。戻ろう。
そう思い入り口を背にした瞬間、何者かに襟首をつかまれた。
「いい所に来たな、伊星。」
部長さんの声だった。
俺は何も言わずに手を払って逃げ出した。しかし回り込まれてしまった。
「新城が来ていないのだが、何か知らないか?」
「存じませぬ」
むしろ俺が聞きたい。
「そうか。だがすぐ帰ることは無いだろう。見学でもしていけ」
木刀でコツコツと地面を突く部長さん。本名、黒凪鉄子。
逃げ場は無かった。
結局、道場の掃除と道具の手入れを手伝わされた。来るんじゃなかった。畜生。
530リボンの剣士 9話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/18(木) 21:18:29 ID:ILiL5hqu
慣れないことをしたせいで朝から疲れた。教室に戻ると、朝のホームルームの真っ最中だった。
あー頭がボーっとする。
「え〜、今日は新城が風邪で欠席、と」
!?
担任から衝撃的な言葉が発せられた。
明日香が風邪? そんな馬鹿な。有りえない。
中学一年の頃から今まで、毎年皆勤賞を取り続け、卒業のときには、体育良好……、何だっけ、思い出せ
ん。とにかく健康賞のようなものを受けた明日香が、風邪だって?
昨日のダメージはそれほどまでに大きかったという事か?

担任は教室を出て、一時間目の先生が入ってくる。
明日香がいるはずの席は、空いたまま。

物凄く、嫌な予感がする。
ただの勘でしかないのだが、午後から降り出した雨が、その勘が正しい事に一票を投じている気がする。
朝は見事に晴れていたのに。
このまま何もせずに帰っていいのだろうか。明日香の風邪は、どうなっているのだろうか。
そうだ。直接見に行って来ればいいんじゃないか。
学校帰りに、明日香の家に寄って行こう。
と、そこで、間抜けなミスを犯していることに気づいた。
……傘を持っていない。
外の雨は昨夜ほど強くはないが、無視できるほど弱くもない。
濡れた状態で他所の家に行くのもアレだし、購買で売られている傘は一本二千五百円。ぼったくりもいい
所だ。
ならば一度家に帰って、その後明日香の家に向かうか……。
「い・せ・い・くんっ」
どすっ。
後方から激しい衝撃。バランスを崩したが、倒れるのは何とかこらえた。
「っ……木場か!?」
「えへへっ」
俺のすぐ後ろで木場がニヤニヤしていた。
「一緒に帰ろ」
先週、毎日のように聞いた誘いが、今日も来る。
「ちょっと今日は用事が……」
「ぶー。今日はバイト休みでしょ〜、用事なんてないでしょ〜」
木場は一気に膨れて制服の裾を引っ張ってきた。
しかし、何で木場は今日がバイト休みなのを知っているんだ。
「いや、本当に急用だ」
制服が伸びてしまっては困るから手を取り払う。
「どんな用事なの?」
「天変地異を未然に防ぐために流行性疾患患者の現状を調査……」
「???」
「とにかく、急がなければ何かが起こる」
木場が困惑している間に、外へ駆け出した。
やはり一度家に帰って、それから明日香の様子を見に行くとするのがいいだろう。
531リボンの剣士 9話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/18(木) 21:19:08 ID:ILiL5hqu
急ぎたい時ほど運は敵に回るもので、俺は赤信号で足止めを食らってしまった。
傘が無いから、雨が遠慮なく身体に当たる。
周りの信号待ちの人たちは皆傘を開いていた。俺だけか、くそ。
だが突然、雨がふっと止まった。
正確には、俺の頭上に傘が出現していた。
「はぁ、はぁっ。用事って、そんなに、大急ぎ、するほど、大事なの?」
その傘の柄を持っているのは、木場。息切れしている。俺を追ってきたのか?
信号が青になった。俺は横断歩道を走らず渡る。傘がそのスピードに合わせて付いて来る。
「伊星くん、なんか今日、ヘンだよ?」
渡りきったところで、息の整ってきた木場は、そう、言った。
別にヘンでいいじゃないか。俺は変人、伊星人志だ。それでいい。
「これから、どこへ行くの?」
俺がヘンなら、木場だって変だ。俺が何をするのか、何処へ行くのか聞き出そうとして、こんな雨の中を
追いかけてまで、しつこく聞いてくる。
本当に、こいつは何がしたいんだ。
「明日香が風邪なんて引くから、珍しくて見物に行こうかと」
「……見物じゃなくて、お見舞い、だよね?」
「若干違う」
木場は笑った。普段のへらへらした感じではなく、少し、大人びたような。
「優しいね。伊星くん」
「いやだから違うと……」
「新城さんのことが心配で、一日中居ても立ってもいられなかったんだね」
「違うってのに……」
見物と見舞いには、本当に違いがあるのだ。それを木場は掴めていない。
「よし決めた」
「何を」
「私も、これから新城さんのお見舞いに行くよ」
「だから俺のは見舞いじゃ……」
「あっ、でも私、新城さんの家わかんない。ねぇ伊星くん、案内して?」
「…………」
何だこのデジャヴは。この強引な持って行き方は。
そんなに明日香が気に掛かるのだろうか。しばらく前まで、木場と明日香はあまり係わり合いになったこ
とは無い筈だが。
「わかった」
深く考えても仕方がないかもしれない。別に木場が同行してもしなくても大差ないだろう。
ただ、誤解の一つは改めておきたい。
「俺はあくまで”見物”しに行くだけだからな」
「うん。私はお見舞い、伊星くんは見物、それでいいと思うよ」
「……」
何故だろう。どこか腑に落ちない。
木場の目が、『本当はお見舞いに行きたいけど、恥ずかしくてそう言えないんでしょ〜。このこのっ』と
語っているように見えるが、俺の被害妄想だろうか?


(10話に続く)
532名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 22:20:00 ID:L1HuISfS
>>528
ちょw近藤さんを買って恥ずかしがる結季テラモエスw
>>531
ダメージを受けている明日香にとどめを刺す春奈タン(*´д`*)
533Bloody Mary 第六話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/18(木) 22:26:59 ID:UuTbpq0U
「あれ?ウィル、珍しいな。なんでお前が詰め所に居るんだよ?
『王の盾』の方はいいのか?」
 騎士団の詰め所に居る俺を見つけて訝しげに聞いてくる同僚。
「あはは……ちょっとね」
 昨日のことをありのまま話すわけにもいかないので、苦笑いしながら適当に誤魔化した。
姫様に口付けされた翌日、いつも通り彼女の部屋へ行ったが、姫様は今気分が優れないと言って
侍女に門前払いにされた。十中八九、昨日のことが原因だろう。
 そのまま帰るわけにも行かず、今はこうして詰め所の方で報告書を書いている。

 俺の頭の中は今、疑問符でいっぱいだ。
一昨日の団長、昨日の姫様の行動は俺を狼狽させるには充分だった。
 ここ数日の間に俺たちの関係は大きく変わろうとしている。
 二人ともいったいいつから俺のことが好きだったんだ…?
団長と出会って二年、例のデートの出来事までそんな素振りはなかった。少なくとも俺は気づかなかった。
姫様に至っては出会ってから間もない。
『王の盾』の任務以外で会ったとすれば戦勝パーティーか『王の盾』の叙任式くらいだ。
 どうして俺なんかが好きなんだろう。いったいどうして。
 俺は自分の大切な人も守れなかったような―――
 思考がネガティヴな方向に流れそうになったので、考えるのをそこで一旦やめた。
「………ふぅ」
 どうやら俺は相当参っているみたいだ。というのも色恋沙汰はどうも苦手なのだ。
恋愛なんてキャス以来したことないし、
傭兵やってたころも師匠の子供のマローネに「お兄ちゃんは女心が全然判ってない」とよく呆れられたものだ。
あの日以来、戦闘訓練ばかりしていたツケが今になってまわってきたらしい。
……弱った。


「おい、ウィル」
 一時休憩していると同僚に呼びかけられた。
「あ、はいはい」
「お客さんが来てるぜ、ベイリンとかって人」
 見ると、来客の窓口の方で師匠がこちらを見ていた。
「わかった。悪いけどちょっと出てくるよ」
534Bloody Mary 第六話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/18(木) 22:27:50 ID:UuTbpq0U



 師匠と詰め所を出ると人目を避けるため、裏通りに移動した。
「早いですね。こちらに来たということは何かわかったんですか?」
「全部な。後はウラをとるだけだったから、あれからたいしたことはしてねぇよ」
「―――……」
 全部。ということはついに決着をつけられるってことか。
 長かった。この三年、血の滲むような日々だった。
それも、やっと終止符が打てる。
「ウィル、最後にもう一度だけ聞くぞ。本当にいいんだな?」
「師匠、くどいです。その答えは一昨日したはずです」
「……そうか。」
 一度、俺の目を見つめた後、師匠は言葉を続けた。
「フォルン村を襲った連中、こいつらは北方のモルド傭兵部隊だ。傭兵といっても殆ど賊の類だったらしい。
そのうち素性が分かったのが全部で十八人。で、そいつらの現在の所在は―――」
 モルド。そいつらがキャスを殺したヤツらの名前か。
 沸々と。腹の底で何かが蠢いているのが分かる。
「隊長のモルド以下七名は行方不明。残りの十一名は死亡している。全員、事件から一年以内にな」
「え…?死んでる?」
 拍子抜けした。キャスを殺した連中はもう既にこの世にいない…?
「そうだ。お前が騎士になったころにはもう死んでいたことになるな」
 くそが。俺が殺す前に勝手に死にやがって。
 自分の手で殺せなかったのは残念だが、死んだものは仕方ない。
 俺の三年に及ぶ復讐劇は呆気ない終わりを迎えた。
「―――それから、ここからが問題なんだが」
 ………え?
 だが意外にも師匠の言葉はそこで終わらなかった。
「死体の発見場所と、行方不明者が最後に消息を絶った場所な、全員が全員、国内なんだよ」
 何?師匠は何を言ってる?
「戦争を起こした原因を作った連中が王国内にいたんだよ。
しかも不可解なことに程なくして全員姿を消したか死亡してる。
……これがどういうことか分かるか?」
 意味が、わからない。師匠は、いったい、何を、俺に、言おうと―――
「いいか、よく聞けよ―――」
 師匠は十数枚の紙きれを取り出しながら、おれに真相を語り始めた。
535Bloody Mary 第六話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/18(木) 22:29:05 ID:UuTbpq0U
いつもよりやや短いですが第六話でした。
次回、カンのいい人はもう気づいてると思いますが
団長視点を織り交ぜつつ真相究明。
536名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 22:49:21 ID:QWIMyZFf
>>535
俺、あなたの書く話好きだよ
続き期待してます。
537名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 23:12:14 ID:j2xsfD51
物凄くいい所でOTL
放置プレイか!?放置プレイなのか!?

リボンの剣士もきてるー
見舞いでどんな方向に進んで行くのかwktk
538名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 23:25:58 ID:dhGJyIAi
振り向けばそこに・・・・・は全員が全員ウジウジしててほんとむかつくぜーーーー
そこがまたいいのかもしれん
539名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 23:36:37 ID:gH84eHnc
>>535
「復讐復讐復讐!」 「よろしい、ならば復讐だ」

……しゅ、修羅場は?
540義姉 第14回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/18(木) 23:49:45 ID:o1Cifwro
        *        *        *
『士郎』

 姉ちゃんとの会話は完全になくなっていた。食事すら一緒にとらなくなっている。最後のコミュニケーションらしいものと言えば布団越しに蹴られた事だけだった。
 夜の関係を止めてしまえば元の姉弟の関係に戻れる――そう思っていた。しかし今は姉ちゃんとの溝はどんどん深くなっていく。もはや同じ家に住んでいるだけの他人となっている。
 どうしたらいいのかわからない。小さな頃は何も考えず生の感情だけをぶつけていた。だからしょっちゅうケンカばっかりしていた。いつの頃からだろう、素直に姉ちゃんで呼べるようになったのは。
 今自分は一人ぼっちだ。部屋にはオレ以外誰もいない。いつもなら用事もないのにやってくるのに――
 一人きりじゃ無いはずの家で孤独を感じている。その孤独感を紛らわせようとモカさんへと電話をかけていた。
541義姉 第14回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/18(木) 23:50:41 ID:o1Cifwro
        *        *        *
『モカ』

 士郎君に夜這いをかけた時、最初「姉ちゃん」って言ったんだよね。あの二人って今じゃ馴れ合う素振りどころか殆ど話さないのに家じゃ結構仲いいのかな。この間原因は詳しくは教えてくれなかったけど士郎君からケンカしたみたいな事電話越しに辛そうに話してたし。
士郎君が来て間もない頃は私に士郎君への文句ブツクサ言ってきたと思ったら帰り道じゃ仲良くしてたりしてたし。口ではなんだかんだ言って仲いいのって結構うらやましいんだよね。

 今のところ士郎君との仲は好調。涼子には男が出来たと一応それとなく言ってみたけど、なんでもない話題の様に流された。結局未だ秘密のまま。ちょっとは勘繰ってくれないと隠しがいがないよ。
 士郎君と仲良くしていた三沢さん、私に面と向かって何か言うわけでもなく見ているだけ。別に卑怯な手段を使って奪ったとかそういうつもりは全く無いけど、ああいう目で見られるとあんまりいい気はしないな。士郎君も何か言う訳じゃないけど彼女見ていていい顔しないし。


「士郎君はイヌとネコどっちが好き?」
 二人きりで膝枕させて軽く頭を撫でながら聞いてみる。
 やっぱり可愛いな、こうして撫でながら上から見てると。少し照れながらも凄く満たされた表情。
「猫ですけど」
 うーん、ネコか。ネコでいいかなー、もう。
「うんうん、わかった」そう言って遊んでいたもう一方の手で士郎君「ほらゴロゴローってやって」
「無理ですって」少し困った顔をして笑ってる。
「士郎君は私の何処が好き?」不意打ち気味に尋ねてみる。
「え――優しいところ……」一瞬間を置いてから返事が返って来る。
 今ちょっと考え込んだでしょ、そういうのはいつでも即答できるようにしないと。
 口に出して言う代わりに頭を撫でている手を少し乱暴な動きに変えた。
542義姉 第14回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/18(木) 23:52:44 ID:o1Cifwro
        *        *        *
『智子』

 大きく深呼吸をしてから静かに保険室のドアを開けた。
 ――居た。
 士郎が体育の授業で保健室に行ったと聞いて心配になってやってきていた。今士郎は保健室のベッドの上で静かに横たわっている。
 会って何て話したらいいんだろう。頭の中がはっきりしないのに足が勝手に士郎へと向かっている。足の裏の接地間ない。夢の中の様に朧げに立っている事、歩いている事に現実感がない。そんな中体はゆっくりと自分の意思以外の何かにひっぱられるように彼に近づいていく。
 気がつくと真下に士郎の顔があった。寝ているらしいくこの距離まで来ていても反応はない。自分の頭が重力に従いゆっくりと落ちようとしていた。
「――モカさん?」少し寝ぼけた感じでゆっくりと口を開いていた。
 意識が突如覚醒し、慌てて顔を離し背を向けていた。
「……ごめん、間違えた」後ろからそんな声が聞こえた。
「……大丈夫?」
 背を向けたまま聞く。顔を見ることが出来ない。
「……うんまあ。鼻血がちょっと酷かったけどもう止まった」
 お互いの言葉が余所余所しく感じる。
「モカさんって――付き合っている人?」
 ――違うって言って。
「……うん」
 言って欲しくない答が帰ってきた。
「好き――なんだ……」
「……好きなるように努力してる」
 ――そんな努力しなくていいのに。
「そう……。
 なにか言いにくいことあったら私から言ってあげるから。士郎って変な遠慮して言おうとしないところあるから。
 私でよかったらいつでも相談乗ってあげるし、力になってあげるから――」
 もう自分の口が自分の意思で動いていない。
「じゃあ、私もう行くから」
「ああ――」
 これ以上この場所にいると自分の口から何が出てくるのか分らない。それが怖い。だからこの場所から逃げた。

 保険室からゆっくりと出て行った時、全身が強張っている自分に気がついた。

        *        *        *
『士郎』

 保健室で気づいた。三沢の事、姉ちゃんの事、全部モカさんに逃げている。
 モカさんは弱い自分を許してくれている。そして自分はそれに甘えている。
 モカさんはオレの事を好きだと言ってくれる。オレも嫌いじゃない。
 いいのかな、これで――自問自答してみるが答えはわからない。
 屋上でよりかかっているモカさんの体重を感じながら、そんな事を考えている。
 ただよりかかっているだけで、特別何もしていない。でも心地いい。
 三沢ともひょっとしたらこういう関係になれたのかな、ふと思う。姉ちゃんだったら――
 今自分はモカさんをその二人の代わりにしているのかもしれない。
 ――よくないな、こういうの考えているのって。

「今日帰りに私の家寄ってよね」
 ボンヤリと空を見ながら考えている中、声をかけられた。
「え――あ、はい」
 返事が終ると同時に頬にキスをされた。
「よーし」心の奥底からの抑えきれない笑みがそこにあった。
543義姉 第14回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/18(木) 23:54:07 ID:o1Cifwro
<チラシの裏>
ぐっばい、もはや生半可なテコイレでは修正不可能となった初期プロットよ
</チラシの裏>
544名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 23:57:26 ID:L1HuISfS
モカさん可愛いよモカさん
545名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 23:59:38 ID:frkKD50Z
本当に神たちの作品のおかげで盛り上がってますねw 
546 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/19(金) 00:03:49 ID:UuTbpq0U
>>538
ごめんなさい。
丁度物語の転換期なので…
ちゃんと用意してますのでもう少しお待ちください。
547名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 00:04:22 ID:dhGJyIAi
モカさん最高最高最高最高!!!
神作者最高!!!!
548 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/19(金) 00:05:43 ID:jMw9KrXE
すいません、>>538ではなく>>539でした
549名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 00:22:20 ID:gFTErZMD
「士郎は私のものよ!」
550名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 00:51:03 ID:Q+D+dL4M
ゴメン、鼻血出た。何だこのモカさんのラブリーっぷりは。
551名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 01:34:07 ID:XSNd1CnJ
>>539
修羅場に至るまでの過程も楽しめばいいじゃないか。どっしり構えていこうぜ。

それにしてもこのスピード…尋常じゃないよ。神々に敬意を表します!
552名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 01:54:10 ID:ypOPSY/0
悪魔に策士に泥棒猫。ホント修羅場は地獄だぜー(AAry

だがそれがいいwww

初めて見た純也くんのプレーは正に妖精だった。
もちろん、純也くんの事を初めて知ったわけではない。
聞いたことくらいはある。

兵藤 純也。
天才の名を欲しいままにしている学園のヒーロー。


私は耳が聞こえない。
そして産まれてこのかた音を聞いたことがないため、音という概念がわからない。
ただ、それを今日初めてわかった気がする。

音とは空気の振動。
教科書に出てきそうな言葉だが、今の私には断言できる。
何故なら、それを今肌で感じる事が出来ているからだ。
それは、理科の実験で行われる目の前だけで起こる現象ではない。
もっと大きく、私の肌を直接刺激している。

小さな観客席が揺れている。誰も跳ねたり、飛んだりしている訳ではない。
恐らくは、声で揺れている。
私の周りでは、耳を裂くような大歓声が辺りを包んでいるはずだ。
どの程度の声量なのか、少し興味があった。でも、今は肌で感じるだけで十分だ。
音は邪魔でしかない。
誰にも邪魔されずに妖精の踊りにしばらく魅了されていたいから。


本当は嫌々きた全校応援のはずだった。
しかし、気が付くと身をのりだして、手を握り締めていた。
さっきまで死んでいた筈の妖精は蘇り、まるで水をえた魚のようにイキイキとピッチを疾走している。
音の振動とシンクロするような激しい心臓の鼓動の、言うあてのない緊張感が私を包んでいた。


ピッチの上では、純也くんが最後のDFと向き合っている。
純也くんは上体を左右に揺すり、まるでダンスを踊るかのようなステップで敵をかわしていった。

そして、そのまま角度のない所からはなったボールは、うねりをあげてゴールの中につきささった。


……その瞬間、音の振動が消えた。
さっきまでスタンドを、空気を震わせ続けた振動が、まるで神隠しにでもあったかのように……。
ただドクンドクンと高鳴る心臓だけが取り残され、私の全てを包んでいた。

ネットに突き刺さったボールが力を失い、地に落ちた時、再び空気が振動しだした。
まるで地なりのように揺れるスタンドは私の心臓の音も言いようのない圧迫感もすべて打ち消した。
ただ、私の胸に静かに宿っていた炎だけは、より勢いをまして燃え上がっている。


その体の熱りに身をまかせ、ふと目を瞑れば、揺れる空気の中に、私と純也くんしかいない不思議な空間に溶けこんでいく。
まるで、溶けあうことが自然の事のように。そして、そうあるのが当然の成りいきのように。

突然ピーンと頭の中で糸が張るような戦慄が駆け抜けた。
カッと大きく目を開けて、思わず笑ってしまいそうな口を手で押さえる。

ふふふ、あはははは。
そうか、そうだったのか。
この溶けていく感覚は当然のこと。
なぜなら私と純也くんは元々一つの存在なんだから。


神様は、私に耳をくれなかった。
だから、純也くんは神様が耳の変わりに与えてくれたんだ。
それは疑うすべのない確信。


純也くんは私のもの。


家に着いてからも、私の激しく高鳴る心臓の鼓動が静まる事はなかった。
それは劇的な試合を見たからかも知れないが、恐らくは運命の人を見付けることができたからだろう。
ふふふ。
私はニヤける顔を取り繕うともせずに、そのまま誰もいない家の中を、急いで私の部屋へと向かった。
心臓の鼓動は一向に静まる様子がなかったが、またそれが心地よい高潮感を私に提供してくれる。
その高潮感が冷める前に、私は柔らかな椅子に座り、机の上のパソコンの電源を入れ、そのままネット回線を繋げた。
回線が繋がるまでのこの時間がもどかしかったが、不思議と嫌じゃなかった。


しばらくして回線が繋がると、私は急いでキーボードに指を走らせ"兵藤 純也"で検索を開始した。

カーソルが砂時計に変わってから幾分たつと、パッと画面が変わった。

思った以上のヒット件数。
さすが、純也くんね。

私は大量の情報の中から、出来るだけ役にたちそうな情報を集める。

兵藤 純也。誕生日は早生まれの3月14日。ホワイトデー生まれ……もう、忘れる事は無さそうね。
身長は178センチ、体重68キロ。右利きのO型。代表歴はU-13、U-15、U-17、U-20代表候補。

あっ、家族構成までのってる。
凄いわねこのサイト……。
どこでこんな情報手に入れたのかしら?

えーと、母子家庭で母と妹との三人暮らし。
彼が二歳の頃両親が離婚し、父親に引き取られる。
今の一緒に住んでる母は再婚相手で妹も連れ子。
父親の死後も、そのまま一緒に住んでるみたい。
ちなみに、妹は聾唖で手話をマスターしている。

……手話?
その言葉を見た瞬間に、私の心臓は一際強く高鳴った。
純也くんは手話ができるの?
心臓の辺りから何とも妙な優越感が、ジワジワ全身に広がっていく。
……ふふふ、やっぱりね。私と純也くんは繋がっているみたい。
私は回転椅子をくるりと回し、丁度私の真後ろにあるベッドに飛込んだ。
枕を顔に押し当て嬉しさを噛み締める。
運命の糸って本当にあったんだ。


しばらくそのままの体勢で、暴走しそうな優越をやりすごすと、私は大きく息をついて、ベッドに座りなおし、ぼーっと左手の小指を見つめた。
ふふふ、ここから見えない赤い糸で純也くんと繋がっているんだ。
そして、やがて二人は結ばれる。

そうだ。
思いつくやいなや、私は急いでパソコンの元に向かい、あるワードで検索をかける。
少し恥ずかしい……けど。
"兵藤 純也 高山 円香"

ヒット件数は……ゼロか。
まぁ、しょうがない。今はまだね。
でも、もうすぐヒットするようになる。最もその時は高山 円香じゃなくて、兵藤 円香になってるかもしれないけどね。
556名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 06:37:29 ID:P0c7yqpf
>>531
部長の名前がひそかに気になるw
557名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 07:33:50 ID:xTFn9hg2
>>553
お〜もしかして完全版って全部書き直し?それなら高山・Psy娘・円香様のパワーアップをぜひ!
前回はうっちゃりで負けてしまったから、もう少ししぶとくなっていただきたい。

>>556
髪型とあだ名もな
558アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 08:17:54 ID:lTT51OK/
投下します
559生きてここに・・・・十四章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 08:19:21 ID:lTT51OK/
ふ・・・・・ふふ
あははははは!
どうしてかしら・・・・・痛みがない
学校での一件で指は折れていた
なのに痛みなどない
私は折れ曲がった指を自分で伸ばした
お腹も青くなっていた
さすが私が選んだ人・・・・
でもね、いくら痛みを与えても私は引かない
身体中に電流みたいのが走る
ダメじゃない・・・・あなたたちは私が狩る汚い雌犬なの
皮を剥ぎ取って道端に捨てるの
のこった亡骸を仁さんに見せて一緒に笑うの
なんて醜いんだってね・・・・
どうしてそんな目をするの?
私とあんたたちとでは踏んでる地面が違うの
吸っている空気が違うの
ダメじゃない・・・・人間様にはむかったら
あなたたちは人間様にはむかったら
まして私の仁さんに手を出すなんて
その汚れた手で・・・・
ダメじゃない・・・・雌犬ふぜいがあんな風に人間様に媚びるなんて
お仕置きしてあげる・・・・・仁さんを汚した罰よ
仁さんを惑わした罰よ・・・・
ずたすたに裂いて皮を剥ぐの
そのあと気づきなさい
どれだけ手を伸ばしたって汚れた雌犬では人間様に手が届かないって事を
これはね、神の制裁なの
正当な権利なの
だってそうでしょ?
あはは・・・・・あはははは!
あは・・・・・・ふふ・・・・・・あはははは!
壊してあげる・・・・あなたたちのすべてを
560生きてここに・・・・十四章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 08:20:34 ID:lTT51OK/
バカのように突っ込んでくる雌犬の一匹
私は手をちょっと引いてそのまま突き出す
「きゃあ!」
肩先に剣先が少し食い込む
あは、食い込んだ・・・・・あ、はは・・・・・く・・・・ははは!
ああ、気持ちいい・・・・・こんなに気持ちいいことがあるなんて
でも突き刺すことが出来なかった
もしその胸に突き刺すことができたら
ああ、どれだけの快感が私を襲ってくれるのかな?
転がる雌犬とは別方向からもう一匹がやって来る
あの雌犬はクラスメイトの
馴れ馴れしい態度が気に食わなかった
自称婚約者の雌犬の次に殺してやりたいのはこの雌犬さん
あなたも切り刻んで捨ててあげる
突き上げた刀をよけた・・・・
なるほどバカじゃないみたいね
でもね、所詮雌犬は雌犬なの
どれだけあがいても雌犬程度じゃ私には勝てないの
体当たりしてくる
そのままスタンガンを私に押し当てようとする
無駄よ・・・・無駄なの
そのモーションの間に私は逆手に持った刀を目下の雌犬に突き降ろした
とっさの反応で後ろに下がったけど・・・・
残念ね・・・・わずかに感触があった
見ると背中あたりを抑えようとしている
ああ、気持ちいい・・・・・動物虐待がこんなに気持ち良いなんて
思わす絶頂しそうになっちゃったわ
「香葉!これ以上二人を傷つけたらぶっ殺すぞ!」
どうしたの?なにを必死に叫んでるの?
殺す?ああ・・・・・・この雌犬たちのことを殺せって言ってるのね
いいわ・・・・あなたが望むなら私はなんだってしてあげるわよ
561生きてここに・・・・十四章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 08:22:03 ID:lTT51OK/
私が再び刀を構えると雌犬共はニカっと笑んだ
なにを嬉しそうにしているの?
私があなたたちを・・・・
「私たちの勝ちよ・・・・負け犬さん」
負け犬・・・・負け犬?
どういうこと?
「愛の勝利よ!負け犬さん!」
気づくと二人の後ろに何人もの同じ服を着たのが居た
銃を構えている
後ろにだけじゃない・・・・反対側にも・・・・
そう、邪魔するのね・・・・みんな・・・・みんな私の敵よ!
だったら壊してあげる・・・・・
あは・・・・あ、ははははは!
562アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 08:22:57 ID:lTT51OK/
彼女の愛は敵が警察だろうと国だろうと止められません
なぜかこの話の没にしたのがあるのでそれも一緒に投下します

563生きてここに・・・・十四章 没 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 08:23:36 ID:lTT51OK/
ふ・・・・・ふふ
あははははは!
どうしてかしら・・・・・痛みがない
先ほどのことで指は折れていた
なのに痛みなどない
私は折れ曲がった指を自分で伸ばした
お腹も青くなっていた
さすが私が選んだ人・・・・
でもね、いくら痛みを与えても私は引かない
身体中に電流みたいのが走る
ダメじゃない・・・・あなたたちは私がもいであげる果実なの
皮を剥ぎ取って中の実を食い散らかしてやるの
のこったカスを仁さんに見せて一緒に笑うの
なんて醜いんだってね・・・・
どうしてそんな目をするの?
私とあんたたちとでは踏んでる地面が違うの
吸っている空気が違うの
ダメじゃない・・・・人間様にはむかったら
あなたたちは人間様の血になり肉になるの
ダメじゃない・・・・食料は食料らしくしていなくちゃ
はむかったらね、ポイって捨てられちゃうの・・・・ゴミ箱にね
その後は腐っていくのが運命なの
だから美味しいうちにずたずたにして食べてあげるの
ナイフで裂いて・・・・
だから・・・・・じっとしてなさいよ!
564生きてここに・・・・十四章 没 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 08:24:52 ID:lTT51OK/
バカのように突っ込んでくるあの女
私は手をちょっと引いてそのまま突き出す
「きゃあ!」
肩先に剣先が少し食い込む
あは、食い込んだ・・・・・あ、はは・・・・・く・・・・ははは!
ああ、気持ちいい・・・・・こんなに気持ちいいことがあるなんて
でも突き刺すことが出来なかった
もしその胸に突き刺すことができたら
ああ、どれだけの快感が私を襲ってくれるのかな?
転がるあの女とは別方向からもう一人がやって来る
あの子もほんとに美味しそう・・・・
あなたも切り刻んで飲み込んであげる
突き上げた刀をよけた・・・・
なるほどバカじゃないみたいね
でもね、果実はその皮を剥いでこそ美味しくなるの
だから逃げちゃダメよ・・・・
味合わせて・・・・あなたの実を・・・・
体当たりしてくる
そのままスタンガンを私に押し当てようとする
無駄よ・・・・無駄なの
そのモーションの間に私は逆手に持った刀を目下の子に突き降ろした
とっさの反応で後ろに下がったけど・・・・
残念ね・・・・わずかに感触があった
見ると背中あたりを抑えようとしている
ああ、美味しそう・・・・はやく食べたい
「香葉!これ以上二人を傷つけたらぶっ殺すぞ!」
どうしたの?なにを必死に叫んでるの?
殺す?ああ・・・・あの子達のことね
いいわ・・・・あなたが望むなら私はなんだってしてあげるわよ
565生きてここに・・・・十四章 没 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 08:26:39 ID:lTT51OK/
私が再び刀を構えると二人はニカっと笑んだ
なにを嬉しそうにしているの?
私があなたたちを・・・・
「私たちの勝ちよ・・・・負け犬さん」
負け犬・・・・負け犬?
どういうこと?
「愛の勝利よ!負け犬さん!」
気づくと二人の後ろに何人もの同じ服を着たのが居た
銃を構えている
後ろにだけじゃない・・・・反対側にも・・・・
そう、邪魔するのね・・・・みんな・・・・みんな私の敵よ!
だったら壊してあげる・・・・・
あは・・・・あ、ははははは!
566アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 08:28:52 ID:lTT51OK/
いま見ても微妙だな・・・・
視点がコロコロ変わって見にくいかもしれませんが名称等変える等しているので・・・・
帰ってきたら次章投下します
567名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 11:22:49 ID:Jc7NSx0l
このペースだと今日中に次スレ立つんじゃなかろうか
568『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/19(金) 13:38:46 ID:gvNGCgAf
(お、おい。聞いたか?)
(ああ……晋也の奴、春校の女子に愛してるだってよ)
(きゃー!校門の前でやっるぅ。)
(私晋也君密かに狙ってたのになぁ)
「せん……ぱい…」
おうおう。皆聞いてたなぁ。はは!ここに史上最強のバカップル誕生だい!!
ここまできたら怖いもんなし。皆が見るど真ん中で、志穂に口付けする。
(((((!!!!!!!)))))

「行こう!志穂!!」
「…うん!」
いざ!我等が愛の巣へ!!(ボロアパートもなんのその)
俺は志穂の手を引き、衆人ども溢れる舞台を掻き分け、走り出した。サボり万歳!!ビバサボり!!
家に着き、中に入る。嗚呼…いかん……
「ふー……皆の目の前であんなことするなんて……恥ずかしいじゃない……もう。」
「………」
「…晋也?どうし……」
クワッ!!
俺の理性、完全崩壊。あとは本能のまま動くだけです!脳隊長!!!
「春校の制服ぁぁぁぁぁ!!!!!」
「きゃあ!!!」
そのままベットにマウントポジション!
前から春校の制服は気に入ってたため、もはやこれは天の恵みとしかいえん。良かった………正しい生き方してきて………








569『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/19(金) 13:40:07 ID:gvNGCgAf
「……あ、あんたねえ……こっちは初めてだってのに………いきなり四連戦全部中出しって………この、鬼畜!痛くて動けないわよ!!」
「わ、ワリィ……加減が分からんかった。……俺も腰いてぇ……明日も学校休もっかな。」
いや、そしたら更に疲れるな。性欲バランスがおかしいヨ!
「……着替えもないし、疲れたから、今日は泊まってくわ。」
「え?親は?」
「あんたと同じ、一人暮らしよ。」
「さいでっか。」
だあぁ……眠くなってきた。
「まぁ……その…あんたさえよければ……一緒に住んでもいいんだけど………」
「………」
「ねえ、聞いてるの?晋也?晋………」
「ZZZZZZZ…………」
「オボエテロヨォー」
声は怒りながらも、添い寝する志穂の顔はうれしそうだった。
〜朝〜
リズミカルな音で目が覚める。なんだ?いつの間に俺の目覚ましは肩叩きの音になったんだ?……むう。あの千円時計にそんな機能がついていたとは………
のっそりと起き上がり、時間を見る。が、まだ六時半だった。……一時間も早く設定したっけ?昨日。
「あ、おはよ。」
違った。肩叩きの音の正体は、包丁での料理の音だった。
570『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/19(金) 13:41:01 ID:gvNGCgAf
まぁ、それだけでも転げるほどの絵なのだが、さらに裸Yシャツときた。俺の制服………着替えが無いからってそれは………反 則 だ!!
「ビバ!!裸Yシャぁばびゃふっ!!!」
残念!飛び付いた瞬間、張り手で吹き飛ばされちまった。着地に失敗したカエルのように、無様に倒れる。
「ぐぅ…」
「あんたねぇ……一晩寝ただけで良くそこまで回復するわね………こっちはまだ痛いってのに………」
自分でもそれには呆れる。まあ、インポよりいいだろ。うん、ポジティブポジティブ。「もうすぐできるから向こうで待ってて………」
「いや、志穂。前菜はいい。俺はいますぐメインディッシュを食らいたいんだ。だからこの場で……………OK。我慢する。」
さすがの俺の性欲も、光放つ刃には勝てないようだ。喧嘩に負けた犬の如く、トボトボと隣りの部屋へ入っていく。
トントントントン
「………」
カタカタカタカタ
「あー………」
ジュー…ジュー…
「スッゴイ……」
「うん、いい味」
「ニヤニヤしたい!!!」
よっしゃ!!
ニヤニヤニヤニヤ……ニヤニヤ…デレデレ……ニヤニヤニヤニヤ……
「何ニヤニヤしてんのよ。気味悪いわね。」
お前のせいだい!!
571『歌わない雨』Act9:2006/05/19(金) 18:04:27 ID:mmnYX0tN
 契約通りに日常をすごして三日間が過ぎた。
 相も変わらず、僕の心はいつも沈んでいたし、そのくせ急に上がったり下がったり。
 緑と芹はいつも馴れ合いの喧嘩をしたり、雪はそれを笑いながらなだめたり、僕はその光景に安心したり。
 皆少し疲れているけど、それこそが僕が欲しがった日常だった。
 しかし長くは続かなかった。

 僕と緑が最後の契約をしてから四日後、恒例となったキスをしてあの人の名前を言う。
昨日は緑の要望で泊まりだったので、セックスも起きてすぐに済ませた。
 いつも通りの筈だった。
「ねぇ」
 あの人の名前を言い終えた後、緑は僕の胸に顔を埋めて弱く呟いた。
「どうした? 胸に顔を埋めるのは僕の専売特許だぞ?」
 下らない冗談にも反応せず、そのままの体勢で数秒。
「辛いよ、悲しいよ、苦しいよ」
 泣きながら、緑は叫ぶ。
「いつまでこんな事しなくちゃいけないの」
 そこに居たのは、悪役の毒で心を擦り減らされた、策も何も無い少女だ。
 これが僕の最後の策。心を潰して余裕を減らし、普通の女の子に強制的に引き戻す。
 しかし、その姿はあまりに痛々しくて見ていられなかった。
572『歌わない雨』Act9:2006/05/19(金) 18:07:28 ID:mmnYX0tN
 僕は目を閉じると緑にキスをして、強く抱き締めた。
「もう、こんなの止めないか?」
 緑からの返事は無いが、僕は言葉を続けた。
「皆、傷付きすぎた」
「…うん」
「皆、疲れすぎた」
「…うん」
 そのままの姿勢で数分、僕は緑を抱き締め、緑は泣いていた。
 そして漸く緑は顔を上げると、
「最後に聞かせて」
「うん?」
「伸人は、私のこと、好き?」
「ごめん。緑のことは好きだけど、やっぱり幼馴染みとしてしか見れない」
 再び、緑は泣きは始める。
 緑は馬鹿だ。
 そして僕も馬鹿だ。
 何が策士だ。
 何が悪役だ。
 余計な策など練らず、こんなに簡単な質問をすれば良いだけなのに。
「…振られちゃったね」
「…ごめん」
「謝る位なら、最初から振らないでよ。でも、すっきりした。これでようやく私の初恋はおしまい」
「ごめん」
「良いんだよ。だだ、もう暫くは嫉妬させて」
 そこには、普通の女の子が居た。
 そして僕は新たな決心をする。
 これから、全てに決着を付けてやる。
573『歌わない雨』 ◆JypZpjo0ig :2006/05/19(金) 18:09:53 ID:mmnYX0tN
今回はこれで終わりです

続きは夜に

そして『広い檻』
イラッシャイマシター!!!!
574名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 19:10:36 ID:Mn4h+Fi6
>>570
GJ!志穂カワイイヨ志穂カワイスギルヨ志穂(*´Д`)
そして春華と晋也を密かに狙っていた人に激しく期待
正直、wktk状態が治まらない!

>>573
緑。・゚・(ノД`)・゚・。
だが俺はあきらめんぞ!嫉妬の心がある限り泥棒猫は不死身だ!
575名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 19:44:35 ID:Dq3BsdZT
生まれ変わっても、修羅場です
576名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 19:48:15 ID:eI6mlgXX
棺桶に入るまでが修羅場です
577名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 19:48:15 ID:dNEIddhW
春華と里緒さんは何か関係あるのかな?
お嬢は存在自体消滅しちゃったっぽいけど。
578アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 19:56:27 ID:lTT51OK/
投下開始します
579生きてここに・・・・十五章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 19:57:20 ID:lTT51OK/
「詩織・・・・奈々・・・・」
近くに居た警官が俺の縄を解く
そして肩を持ってその場から移動させる
「俺よりも・・・・詩織と奈々を・・・・・」
「だいじょうぶだ・・・・もう保護しているよ」
見ると二人の姿はもう悪魔の前にはなかった
少し先に俺に微笑みかける二人の姿があった
よかった・・・・
悪魔に目を向ける
あんたはどうして・・・・こんなこと
なにを・・・・やってるんだ?
「詩織、奈々!!!!」
俺は無意識のうちに詩織たちの居る方へ走っていた
すぐに詩織と奈々を両脇に抱えて出口に向かう
「速く逃げろ!!!!」
俺が叫ぶと辺りの人間もそれに気づいたようだ
狭い倉庫の中は一瞬で暴動が起こったかのように人が駆け抜けていく
俺は出口から出るとすぐに二人の頭を抑えて覆いかぶさった
580生きてここに・・・・十五章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 19:58:05 ID:lTT51OK/
仁さん・・・・私はどんなことをしたって
どんなに拒絶されても諦めたりしない
世界が二人を認めないのならこんな世界なんていらないわ
だから、二人だけになりましょう・・・・一つになりましょう?
そのためなら私はなんでもやってあげる
だいじょうぶ、あの雌犬たちは今度はちゃんと皮を剥いで殺してあげるから
安心して・・・・仁さん
私はポケットからライターを取り出すと火をつけて近くに置いてあった箱に投げつけた
ボン!爆発音のような音がした後に炎が回る
伝っていく火の道が次々に辺りの物を炎に包み爆発する
まずは手始め・・・・
もう少し・・・・もう少しで仁さんが私の物になったのに
でもまだ始まったばかり
さぁ、狂気の宴を楽しみましょう
仁さん・・・・そして雌犬さん・・・・・
581生きてここに・・・・十五章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 20:00:00 ID:lTT51OK/
倉庫から火花が散って爆発する
背中に火の子が飛んでくる
俺は泣き叫ぶ二人を必死で抱きしめた
く・・・・これはちょっときついな
しばらくして静けさが戻る
炎のパチパチという音以外しない
よかった・・・・・二人は・・・・・無事だよな?
安心が俺の意識を一瞬で飛ばした
582生きてここに・・・・十五章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 20:00:29 ID:lTT51OK/
仁くんがすごく痛そうな顔をしている
ごめんね、私たちのせいで・・・・
しばらくして仁くんが私と奈々ちゃんにもたれてきた
救急隊の人は命に別状ないと言って仁くんを連れて行った
警察の人は爆発し原型のなくなった倉庫を捜索している
だけど、死体はおろか痕跡すらなく彼女は忽然と姿を消していた
まるで最初からそこにいなかったかのように
まるで今までの出来事が夢だったかのように
583アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 20:01:06 ID:lTT51OK/
拉致が失敗しても香葉さんは諦めません
次章は月曜日に投下します
一段落したので事次章から一日一章で行きます
昨日で全章をほぼ終えました
あとは毎日投下する分の手直し追加等して投下です
全部で二十八章ほどになります、それまでよろしくです
584アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 20:02:18 ID:lTT51OK/
拉致が失敗しても香葉さんは諦めません
次章は月曜日に投下します
一段落したので次章から一日一章で行きます
昨日で全章をほぼ終えました
あとは毎日投下する分の手直し追加等して投下です
全部で二十八章ほどになります、それまでよろしくです
585アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 20:02:50 ID:lTT51OK/
凡ミスすいません
586名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 20:21:01 ID:1RW/lfmL
フッ・・・気にすることはない。
587 ◆tVzTTTyvm. :2006/05/19(金) 20:57:06 ID:vfE5BhWI
ttp://bbs9.fc2.com/bbs/img/_166100/166037/full/166037_1148039545.jpg
香葉さん描いてみました
お気に召さなかったら遠慮無く仰ってください 撤去しますので

自分の「振り向けば…」の続きは深夜か或いは明日にでも
588アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/19(金) 20:59:31 ID:lTT51OK/
ありがとうです
気に召さないだなんてとんでもない
自分が想像していた通りの容姿ですよ!
でも・・・・自分の書いてる作品のキャラとはいえ・・・・怖い
589Bloody Mary 第七話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/19(金) 21:06:54 ID:jMw9KrXE
 トレイクネル家の自室。
 静かな部屋でくちゅくちゅと水っぽい音だけが響いている。
「は………んっ……」
 自分ではいつも日課にしている自慰と同じつもりだった。
 していることは同じ。でも身体の反応はまるで違っていた。
「あっ……あっ…あっ…あっあっあっ」
 ビクビクと自分の意志とは無関係に腰が震えだす。
「ウィル……ウィル…私っ…私っ…」
 優しく私を愛撫するウィルを夢想する。
 そしてそっと指で唇をなぞった。
 ―――ここに、ウィルの……
「んッッ!!!!」
 一昨日の夜を思い出した瞬間、身体は硬直し頭の中は真っ白になって意識が霧散した。
「はっ!……はぁ…はぁ…はぁ…んく……はぁ……はぁ―――」
 ……すごかった。ただ一昨日のキスを思い出しただけでこれほどなんて。
 これで初めてウィルと結ばれるときはどうなってしまうんだろう。
「っ!!!」
 駄目…想像したらまた達してしまった。

 呼吸が整ってから一昨日の一連の出来事を思い出す。
 ウィルをデートに誘ったのは私にとって一世一代の大勝負だった。
約束は午後からだというのに、朝早くから起きて念入りに髪の手入れをして、
服を選ぶのも慎重に何度も着替え直した。
 だからウィルがいつもと違う目で私を見てるのは凄く嬉しかった。
あぁ、ウィルが私を女として見てくれている―――そう思うと全身が甘い痺れに襲われた。
舞台の最中もウィルの視線が気になってずっともぞもぞと腿を擦らせていた。
 少し浮かれていたのかも知れない。
そのせいもあってあの夜、ウィルの口から“姫様”と聞いたとき私は猛烈な不安に襲われた。
 本当はあんなこと言うつもりはなかったのに一度溢れ出した言葉は途中で止めることなんてできなかった。
言いたいことを気が済むまで吐き出して、ウィルが何か答えようとしているのに気づいてから
私は「しまった」と後悔した。
怖い。ウィルから答えを聞くのが怖い。ウィルに拒絶されるのが怖い。
ウィルの口を塞ぎたい。思い立ったらすぐだった。気が付けば私はウィルにキスをしていた。
「やった!やったやったやったやった!!」
 ガラにもなくベッドの上ではしゃいでしまう。
 ホントはもうあのまま押し倒してしまおうかとも思ったけど流石にそれはマズイですよね。
 ウィルも相当驚いてたみたいですし。
 うん。でも次に会ったときはもっと積極的に行こう。もう騎士団長の立場とか気にしない。ガンガンいきますっ!
ふふっ。待っててください、ウィル。
 私があなた無しには生きられなくなったように、あなたも私なしでは生きていけなくしてあげます。すぐに、ね。
590Bloody Mary 第七話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/19(金) 21:08:22 ID:jMw9KrXE
 ぐっと握り拳を作ったとき、ふと鏡に映る自分の姿が目に入った。
鏡を見ながら頭に付いているブローチに手をやる。
 プレゼント。
ウィルが私に、私のために、私のためだけに買ってくれたプレゼント。
あはっ。
 鏡に映る顔がだらしなく綻ぶ。
 また、ウィルと舞台見に行きたいなぁ……
確かあの舞台、同じ原作者の別の本が舞台化されてたはず。
タイトルは何だったかな……えーと…
 度忘れしたのか思い出せない。やだなぁ。あ、でも確かお父様の書斎にその本があった気がする。
ちょっと面倒だけど見に行くことにした。

 本がずらりと並ぶお父様の書斎で目当ての本を探す。
「たしか―――あった。そうそう!これ」
 一冊の本を引き抜こうとしたとき。
 バサリ
 隣にあった本も一緒に本棚から抜け落ちてしまった。
「もう。お父様ったらぎゅうぎゅうに本を詰めるから―――あれ?」
 拾い上げようと屈むと、落ちた拍子に開いてしまったページを目にして私は違和感を感じた。
「これは……日記?どうしてこんなところに……」
 思わずしげしげ日記を見つめてしまう。
 日付は戦争が始まる少し前。
やめておけばいいものを、私は好奇心に駆られ、日記を本格的に読み始めてしまった。
591Bloody Mary 第七話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/19(金) 21:08:56 ID:jMw9KrXE






「いいか、よく聞けよ。
あの戦争な、隣国の侵略戦争ってことになってるが事実は逆だ。
侵略したのはこの国、アリマテアの方なんだよ。
始まりは作物の不作でガタガタになりそうなのを打開するためだったらしい」
「な、に?」
 うろたえる俺に「やっぱりか」というような顔をする師匠。
「戦争の原因―――フォルン村の虐殺事件は王国の茶番だ」
 俺に農作業を教えてくれた隣家のおじさん―――
 差し入れをしてくれたおばあちゃん―――
 村長の心配そうにこちらを見つめる眼―――
 キャスのはにかんだ笑顔―――
 村のみんなの顔が浮かんでは消えていく。
「茶番…ってどういうことです」
「これだ」
 手に持っていた紙の束から一枚抜いてこちらに差し出す。
 ………これは、モルド傭兵部隊に宛てた契約書……?
そこにはフォルン村を襲う見返りに報酬を支払うというような内容がつらつらと書かれていた。
「これは…?」
「捺印を見てみな」
 師匠に促されもう一度契約書に目を向けた。
 この捺印の紋章は……前に何処かで。
 盾を抱えたオオタカの前を交差する二本の剣。確か……
「トレイクネル家の家紋ッ!?」
 なんだ。
「フォルン村が襲われたのはトレイクネルの差し金だ。
ゲイル=トレイクネル―――確かお前んとこの騎士団長の親父だったよな?
 最後にそいつのサインがある」
 なんだよ。この契約書は。
 なぜ団長のお父さんとモルドが契約なんかしている?いったい何のために。
「戦争でも起こして自分の家の権力を強くしたかったってのが自然だな。
武器商人やらトレイクネル派の貴族がグルになってあの虐殺事件を起こした。
金儲けやお零れを与るためにな」
「じゃあ……まさか、まさか…隣国は―――」
「全くの濡れ衣で戦争を吹っ掛けられたことになるな」
 その言葉で俺が三年間積み上げてきた心の主柱は音もなく瓦解した。
「ただ戦争を起こすべきだと進言しても穏健派あたりから反対されるのは目に見えている。
だからあんなまわりくどいことをしてモルドと契約したんだろう。
モルドの連中が事件の後何人も死亡しているのは多分口封じ……
って、おい!ウィル!しっかりしろ!おい!」
 ―――あのせんそうで……おれは、ひとをたくさんころして……
 でも、そのひとたちはかんけいなくて――――――
「ウィル!おい!ウィ―――」
 俺の意識はそこで途絶えた。
592Bloody Mary 第七話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/19(金) 21:09:32 ID:jMw9KrXE






 最初、何が書いてるのかさっぱり解らなかった。
「何…?これ…?」
 その日記には戦争の発端、フォルン村の虐殺事件の真実が淡々と書かれていた。
 え?あの事件って確かウィルが巻き込まれた事件だよね?
なんでお父様が関わってるの…?あれは隣国の侵略じゃなかったの?

『俺は、絶対にあいつらを許さない』

 いつか私に過去を教えてくれたウィルの言葉が頭の中で何度も反芻する。
「あ………あ……あぁ……」
 私のお父様が原因だったんだ。
 私のお父様があの村を襲わせたんだ。
 私の家がウィルの大切のものを奪ったんだ。
 私の血がウィルを苦しめたんだ。
 私が!私が!私が私が!私が私が私が私が私が私が!!
「あああああああぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!!!」
 ウィルが私に背を向けて、離れていく光景が酷くリアルに想像できる。
 ウィルに真実を知られるのが怖い。
 ウィルが私から離れてしまうのが怖い。
 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!!!!

 私は恐怖のあまりその場にへたりこみ、ガタガタと震えていた。
593Bloody Mary 第七話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/19(金) 21:11:59 ID:jMw9KrXE
団長幸せの絶頂から恐怖のドン底への巻でした。
にしても休暇取ってオナニー三昧か、いいご身分ですね。
594名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 21:16:30 ID:dNEIddhW
>>593
ちょwwww
自分が(ry

いやー最高だわw
この後どう展開するか本当に楽しみ
595名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 21:16:49 ID:m32RSaLe
>>593
だが俺はそういう気持ちの昂ぶりを抑えられない騎士団長が好きだ。
修羅場の方、期待して待ってますね
596『歌わない雨』Act10:2006/05/19(金) 23:37:17 ID:mmnYX0tN
 緑とイチャイチャし、芹とラブラブして過ごし、今は放課後。
 場所は自室、一人きり。
 不意に、ノック音が響いた。
「伸人ちゃん、今良い?」
 続いて来るのは妹の声だが、聞き慣れない真剣見を含んだものだ。
 どうしたんだろう、珍しい。
「構わんよ、入れ入れ」
 数秒。
「どうした?」
「…あのね」
 再び、数秒。
「怒らないできいてほしいんだけど」
 僕は無言、しかし構わず雪は話を続ける。 僕の周囲の女の子は皆、人の話をあまり聞かずに進める傾向がある。雪も、そんな一員だ。
「この間、と言うか一昨日なんだけどさ、聞いちゃったんだよね」
 無言。
「朝に」
 途端、僕の心臓が大きく跳ね上がる。
 ドア越しの雪に気付かれないように僕は小さく呼吸を整えると、なるべく平静を装い、
「何を?」
「キスした後に、緑にあの人の名前を言わせてたよね?」
 見られていた。
 その単純な事実で、僕の左腕が痛みだした。
「二年前のこと、許せてないの?」
 壁の向こうから聞こえる声は、強い悲しみが含まれていた。
 雪も思い出しているんだろうか。
 関わった皆が悲しみ、馴れ合い、最後には皆が傷付いた。
「緑も、心配してたみたいだから」
 その純粋な言葉は、本人が考えるよりずっと残酷に響いた。
 悪意は無いのだろうが、惨すぎる。
 頭に浮かんでくるのは、今朝の緑の表情だ。
 緑が先に使ってきたからと言っても、僕が緑を傷付けて良い理由にはならない。初めは武器に使っていたんだろうが、今朝の緑はあまりにも痛々しすぎた。
「出来れば、許してあげて」
 これは緑にも言われた言葉、それが僕の心に突き刺さる。
 善良な人間だからといって、善人であるとは限らない。
 数分経った後、雪の溜息が聞こえた。
「あたしの話はこれでおしまい、ちょっと出かけてくるね」
 左腕が、ずきずきと痛む。
 玄関のドアが開く音を聞いて、僕は久し振りに泣いた。
597『歌わない雨』Act10:2006/05/19(金) 23:41:04 ID:mmnYX0tN
 どうやって来たんだろう、いつの間に来たんだろう。
 気が付いたら、僕はいつもの公園のいつものベンチに座っていた。
 あの人が好きだった場所、最後に来たのは芹が手をナイフで刺した前の日だっただろうか。
 大体一週間前のことなのに、本当に遠く感じた。
 夜空を見上げていると、突然足音がした。
「今日は歌っていないんだな」
 声のした方向を見てみると、芹が立っていた。
「そんな日もある」
「そうか」
 芹は悲しく呟いて、
「隣に座っても良いか?」
「何でそんな事を訊くんだ、暴君様ともあろう御人が。それに、友達だろう?」
 最後の言葉に微笑むと、芹は無言で僕の隣に腰を下ろした。
 風呂上がりなのか、僅かに濡れた髪の毛からはシャンプーの匂いがした。
 久し振りに感じる、芹との二人の時間に僕は吐息を一つ。
「煙草、吸って良いか?」
「何だ急に。私はお前よりも重煙者だぞ?」
「いや、髪に匂いが付くだろ」
 女の子だし、と付け加えると芹ははにかみ、構わんさと返す。
 最近無かった些細なやりとりに思わず安心する。
「煙草だけじゃ寂しいだろう」
 そう言って渡されるのは、共通で好みの缶珈琲。
 ふと気付き、
「二本あるってことは、毎日こんなの買って来てたのか?」
「私もそんなに暇じゃない」
 眼前のゴミ箱に同じ銘柄の缶が大量に入っているのは指摘せずに、黙って珈琲を飲む。
598『歌わない雨』Act10:2006/05/19(金) 23:42:17 ID:mmnYX0tN
は、毎日こんなの買って来てたのか?」
「私もそんなに暇じゃない」
 眼前のゴミ箱に同じ銘柄の缶が大量に入っているのは指摘せずに、黙って珈琲を飲む。
 芹はそっぽを向くと、
「雪に、頼まれたんだ。多分、励ませるのは私だけだと言って」
「お節介め」
 心の中で感謝をしながら、しかし出てくるのは悪態だった。
「そう言うな。雪も心配してるんだ」
 優しいその表情に騙されたのか、つい話しても良いかと思ってしまう。
「言いたくないなら構わんが、話して楽になることもあると思うぞ?」
 だから、つい話してしまった。
 あの人のこと。
 あの人がここを気に入っていたこと。
 あの人と一緒に過ごした日々。
 そして、あの人が自殺をしたこと。
 今から二年前の、父の死から始まった、僕の初恋の物語。
 全部聞き終えた芹は、やはり聞き始める前と変わらず、優しい顔をしていた。
「どうだった?」
「…そうだな」
 芹は吐息を一つ。
「お前が絶縁したくなっても構わない、取り敢えず聞いてくれ」
 数秒。
「自分を許しても許さなくても、それはお前の人生だ。例えどんなに近しい人間でも、口を出すことは出来ない」
 これは、この言葉は、
「ただ、どうしても辛くなったときに側で抱き締めたいと、抱き締めてほしいと思う人が居ることを忘れないでほしい」
 あの人が、父が死んで悲しんでいた僕に言ってくれた言葉と同じものだ。
 芹は言い終えると、弱く僕を抱き締めた。
599『歌わない雨』Act10:2006/05/19(金) 23:45:17 ID:mmnYX0tN
 そして僕はようやく気が付いた。
 僕の初恋はとっくの二年前に終わっていた。
 そして今、芹を好きになった。
「なぁ芹」
「ん?」
「今更こんな事を言うのもムシが良いことは分かってるんだが、聞いてくれ。嫌なら断ってくれてもも構わない」
「私がお前の頼みを断るとでも思ったのか?」
 芹の笑みを見て、僕は数秒言葉を溜め、
「好きだ、付き合ってほしい」
「…喜んで」
 頬に涙が流れたが、芹の笑みが崩れることは無かった。
600『歌わない雨』 ◆JypZpjo0ig :2006/05/19(金) 23:50:21 ID:mmnYX0tN
今回はこれで終わりです

エンディングまで後少しなので、頑張りたいと思います
これまで駄文に耐え読んで下さった皆様、もう少しお付き合い下さい

そして団長かわえぇwww
続きが楽しみだwww
601名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 23:53:47 ID:fuer8zOz
ホォォォォォォォォォォゥ!!!
神が!神様が!!インカミンッ!ホホーゥ!何だいこのスレは?最高じゃないの!
マザー・ファッカー!














神職人の皆様、全作品非常に楽しく読ませてもらっています。
本当にありがとう。
あなた方のお陰で今日も何とかこうして生きていられます。
602名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 00:33:48 ID:htV3Mk/y
あぁもうなんかお礼にユートピアがしたい
603名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 00:45:43 ID:RbcLTxLK
。・゚・(ノД`)・゚・。 団長・・・
604名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 01:00:05 ID:FXy8dxkr
このままだと小恋がくる前に七スレ目が立ちそうだな。
605名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 01:34:02 ID:2ey7fjuE
伸人はこのままHAPPYENDに行けるのか、それとも多くの主人公の様に鮮血に沈むのか
どちらにせよ期待していますw
606名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 01:43:29 ID:nHMsnymL
あの雪が! このまま! 大人しくしている! はずが! ないッ!!!

ということでエピローグまで突っ走ってください。
607名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 02:22:54 ID:0ioDceMh
最近の作品は、修羅場ながら心暖まる作品が多く非常に早くて素晴らしいのだが、
合鍵・沃野のような真っ黒でドロドロした作品に期待している


あの麻薬のような刺激を欲しているのは俺だけじゃない…よね?
608名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 04:54:03 ID:jacw6tIk
心暖まるものがあるからこそドス黒いものがキラリと光るのさ。
当然逆も然り。
つまりこの調子で大量投下を(ry
609名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 05:45:26 ID:aj5o+XPv
>>607
俺も俺も。あの死角からえぐられる感じがたまんないんだよね。
610名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 08:32:10 ID:AlYUw76L
徐々に壊れていく過程が見たいもんだ・・・
君が望む永遠の遥みたいに真っ白な子がどんどん灰色に最後は真っ黒とかもいいね。
611名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 09:19:58 ID:NAZiWyQx
>>610
黒くなったけ?


元々、黒かったような気もしなくはないが・・
612名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 09:38:32 ID:K7R6m1Jn
Bloody Maryえらい展開キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
613名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 10:00:32 ID:AlYUw76L
>>611
病院での情事のシーンは遥伝説を作り出した女子とは思えなかったぜ
614名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 10:09:14 ID:W4/AL9ur
隠し妻エンドまで行くとまっ黒というか何というか……
615『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/20(土) 11:45:57 ID:qXu/K9MM
「はい、できたわよ。」
「うはぁ……」
目の前に並べられた料理の数々。朝食でここまで豪華なのは初めてだ。
「にしても、材料あるくせに料理はしないのね。」
「え、ああ、一人だけだと、作る気が無くってね。はは。」
「もしかして……」
スッと箸を取り上げられてしまう。嗚呼!
「Why!?」
「誰かに作ってもらってたとか?」
………ほらほら、先の尖った物を目に向けちゃいけません!
「ば、馬鹿!んな訳あるか!」
「よろしい。」
そういって箸を返す。密かに頭では料理を作ってもらいたいから、材料を買い溜めしておいたことは内緒だ。
真実も、知らなければ真実とはならない。揉み消しもみ消し!
「いっただきまーす。……ガツガツ……もぐもぐ………」
「……どお?おいしい?」
「んまい……うますぎだヨ!」
あまりのおいしさにむせび泣く。知らなかったなぁ、一般の調味料からこんな味が出せるだなんて。分子の珍秘だよ、まったく。
むろん、朝っぱらから三杯飯をを食らったのは言うまでも無い。十分に褒めごろしたあと、デザートだと飛び付いてぶっ飛ばされたのもまた、言うまでも無い………クスン
616『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/20(土) 11:47:28 ID:qXu/K9MM
んー。満腹満腹。腹一杯になったところで、時計を見ると、まだ登校に余裕があった。こんな事は初めてなため、何となく手持ちぶさただ。
志穂と愛を語り合っても良いが、それだと我慢が効かなくなる恐れがあるため………
「うん、朝シャンでもすっかな。」
「じゃあ、洗っとくわね。」
その場を任せ、着替えとタオルを持っていざ風呂場へ。こんなボロアパートでも風呂付ってのは助かる。
朝からシャワーも疲れるが、なにせ昨日の残り香が………ゲフン。
懸命に頭を洗っていると………
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴る。参ったなぁ、手が離せない。仕方ない、志穂に任せるか。
「すまん、志穂!!代わりに出てくれ。あ、でもちゃんと服着ろよ!!」
あのまま出て訪問者が男だったら洒落にならない。自慢じゃないが、志穂のあの格好を見たら理性がブチぎれるだろう。そんな志穂を襲う男を撃退するシャンプー男。
嗚呼、また名物が増えちまうな。
一つの事から話が膨れ上がってしまう悪い癖だ。そんな妄想猛々しい途中で、風呂場からでる。
「いやぁー。いい湯だっ………「せんぱい!!不法侵入者です!!!」
ドテン!
617『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/20(土) 11:48:31 ID:qXu/K9MM
訪問者の突然の訴えにこけた。そこには怯えた兎のような目をした(見た事無いが)春華と、正反対の鬼の目をした志穂が立っていた。
俺が風呂場に居た間、なにが怒ったかは計り知れぬ。
「あ、あーっと………」
言葉に困っている間に、志穂が先に聞いてる。
「晋也……この子、誰?」
春華に見えないように、きっついまなざしを向けてくる。くっ!世渡り上手な奴め!!
「えーっと……春華っていうんだけど……同じアパートに住んでて……まぁ、お隣りさんって奴よ。」
「……で?」
そんな事どうでもいいのよと言わんばかりに、たった一文字でぶったぎられる。つまり二人の関係は?ということだろう。
「あ、はは……まあ、仲の良い後輩ってとこカナ。」
「毎朝起こしに来て、一緒に登校するぐらい、が抜けてますよ〜。」
ば、ブァカ!なにも火に油を注がんでも!!
「ふーん…ふふ、でももう大丈夫よ。これからは私が毎朝起こしてあげるから。お疲れ様、後、輩さん」
あわわわわわ……
「いえいえ。昨日今日会ったばかりの女の人に任したら、いつせんぱいの寝首をかかれるか心配でたまりません。
不肖、この烏丸春華。全力でせんぱいのお側に仕えたいで候う。」
618『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/20(土) 11:49:47 ID:qXu/K9MM
こ、こら!余計な燃焼は空気汚染の増加に………
「毎日毎日晋也を叩き起こすのも大変でしょう?だから明日からは普通に『一人で』アパートを出て『一人』で登校すればいいわよ。」
「むう〜〜!せんぱい!このチビは誰なんですか!?」
「ぐっ!ち、チビ……ですってぇ!?」
確かに、春華の方が志穂よりは出かい。いや、志穂が極端に小さいだけか。春華だって女の中では小さい方なんだから。
しっかし、どうして俺の周りにはこうロ○体型しか現れないのか………まあ、不満じゃないが。
「晋也!!」「せんぱい!!」
「は、はひ!?」
また不埒な事を考えてたら、見抜かれたように怒鳴られる。怖いよう。
蛇ににらまれたカエルのように、体が動かなくなる。逆に心臓はオーバーワークだ。
「登校しましょう」
「学校に行くわよ。」
「…まだ早……」
「「いいから!!」」
変なところで息を合わせたツープラトンアタックに瞬殺され、すごすごと鞄を取りに行く。
ぐぅ…今日も暑いぜ…………ほんの少しの現実逃避は、心の清涼剤には到底足りなかった……………合掌(自分に)
619名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 12:08:50 ID:2ey7fjuE
春華が良い味出しているなw
そして晋也の運命はいかに!この世界では生き返れないぞ!
それにしてもやっぱり晋也は修羅場原s(ry
620名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 13:17:33 ID:4HR8S4bS
さて学校に新たな修羅場が待っているのかどうなのか。
それが重要だ。
621Bloody Mary 第八話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/20(土) 13:29:32 ID:XzoA8eSd
 最悪だ。吐き気が治まらない。
 昨日俺は師匠と話している最中に気を失ったらしい。
目が覚めれば一晩経ち、自分の家にいた。おそらく師匠が家まで運んでくれたんだろう。
 昨日聞いた事件の真相。俺にとってあまりに想定外だった。
 団長のお父さんが黒幕だったという事実は確かにかなりショックだった。
 でも到底復讐がどうのと言う気になれない。
 それというのも――――

「う、ぐ………げぇ」
 また気分が悪くなって近くのゴミ箱に吐いた。
 ……それというのも隣国が全く関係なかったことが俺に重くのしかかっているからだ。
あの国は全然無関係だった。ただわけの分からない因縁で戦争に巻き込まれただけだ。
 本当は関係のない戦争でたくさんの兵士が死んで……
 そう、俺が、殺した。
 助けを乞う兵の顔に剣を突き立て、はらわたを切り裂き、四肢を切断し、首を刎ねた。
俺が殺しまくった。彼らには何の謂れもない復讐心をぶつけて。

「げはっ!…ごほっごほっ……」
 初めて人を殺したときに覚悟したつもりだった。
戦争で駆り出されたのはモルドの連中ではない。それでも俺は殺した。
あの国のヤツらがキャスのような娘を二度と生み出さないために、という大義名分が俺の覚悟を支える原動力だった。
けど。
彼らは…本当に!全く!微塵も!関係なかったんだ!!なのに俺はひたすら殺した!!
向こうの人間にとってはこの国が、俺こそが村を襲った連中そのものだったんだ!!!!

「俺はあの戦争でいったい何をしていたんだ……」
 重い。覚悟の後ろ盾がなくなり、背負った十字架がとてつもなく重い。
「城に、行かなくちゃ……」
 たとえ心がボロボロでも身体は染み付いた習慣を行動に移したいらしい。
 吐き気を催しながらフラフラと日常通りに城に向かった。
622Bloody Mary 第八話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/20(土) 13:30:13 ID:XzoA8eSd



「ウィリアム、本当に大丈夫か?」
 王族と貴族の会合に付き添った後、姫様の部屋に戻る途中で俺はまた壁に手をついた。
 歩くのすら辛い。姫様に気取られないよう注意を払うことさえできなかった。
「大丈夫です。ちょっと立眩みがしただけですから」
 心配そうに覗き込む姫様になんとか笑顔でそう答えた。
「無茶するでないぞ?戻ったらわらわの部屋で休むがよい」
 …はは。それじゃ護衛の意味がない。まぁ今の俺が『王の盾』の任務をこなせているとは言えないけど。
「あ……」
 城内の回廊の先。そこであの人と会った。
「あ………あ、あの……ウ、ウィル?」
 厄日だ。こんな状態で今一番会いたくない人に会ってしまった。
「団長……」
「え、と、ウィル。あの、お、お話が――――」
「すいません、団長。俺は仕事があるので失礼します」
 居た堪れなくなって団長の言葉を遮り、彼女の脇を通り抜けた。
「あ……あ…あぅ…あ…あ……」
 団長の声が聞こえないフリをしてその場をそそくさと立ち去った。
 しばらく先まで行った後で。
「良かったのか?ウィリアム」
 姫様の質問に答えられなかった。わからない。けど今は団長に構っている余裕がなかった。
「――――ウィリアム、ちょっとこちらに来るがよい」
 姫様は何か思いついたように立ち止まると手近な扉を開いた。
「こっちじゃ」
 ここは……食糧庫?なんでこんなところに……
 彼女の後について薄暗い食糧庫に入る。
「姫様、こんなところにいったい何の用――――」
 姫様に尋ねようとしたら突然抱きつかれた。
「ひ、姫様?どうしたんです、いきなり」
「ウィリアム。辛いのならわらわにそう言ってくれ。
わらわはウィリアムの助けになりたい。ウィリアムを癒してやりたい。
おぬしがわらわをそうしてくれているように……」
 なぜかひどく心地よかった。姫様の言葉が。少しだけ吐き気が治まる。
「おぬしが辛そうにしているのを見ているのは苦しい。
何か、何かわらわがしてやれることはないのか?」
 鎧を着ているのに身体に姫様の体温が伝わってくる気がする。
「わらわに言ってくれ。わらわは何をしたらいい?」
 あぁ、この温もりが俺の罪の意識を覆い隠してくれる。
「ひめさま……」
 もっとこの温もりが欲しくて。
 早くこの罪悪感を忘れたくて。
「愛しておる……ウィリアム……」
 俺は彼女の服に手をかけた。
623Bloody Mary 第八話 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/20(土) 13:33:25 ID:XzoA8eSd
勢いに任せて第八話。
次は心中穏やかでない団長side

(チラシ)
最近どこで話を区切ればいいのか解りませんorz
624アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:00:03 ID:5KEdHmJE
投下開始します
625アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:00:37 ID:5KEdHmJE
結局香葉さんの遺体は発見されなかった
この事件は大きく取り上げられたけど一週間ほどで沈静化を見せている
あの後仁くんは私の家までやって来てお父様に謝っていた
涙を流しながらどんな理由があろうと私を危険な目に合わしたのは事実
言い訳しない、自分が悪いと・・・・
もちろんお父様は仁くんを責めたりなんてしない
だって、そうでしょ?悪いのは全部あの悪魔なんだから
お父様は微笑んで仁くんを抱き締めていた
やさしいお父さんだね・・・・仁くんは言って微笑んだ
そうだね・・・・わたしのお父様は世界で一番のお父様だよ
でもね、仁くんもお父さんになったら一番のお父さんになれるよ
そのあと仁くんは奈々ちゃんのお家まで出向いて同じように謝っていた
私はその背中を見つめることしか出来なかった
自分が激しく無力に思えて私は酷い自己嫌悪に蝕まれていた
奈々ちゃんのお父様は目に涙を溜めて仁くんの手を握ってお礼を言った
『キミは奈々を護ってくれた、違うかい?それに最初からキミに非はない、奈々を護ってくれてありがとう』
一番言ってあげたい言葉を奈々ちゃんのお父様は仁くんに言った
そうだよ・・・仁くん・・・・仁くんは私と奈々ちゃんを護ったの
それも命がけで・・・・
626生きてここに・・・・十六章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:01:21 ID:5KEdHmJE
後日私は仁くんをデートに誘った
気分転換になったかな?
最初は定番の映画、もちろん淡い恋物語
仁くんはああ見えて涙もろいの
必死で涙を隠してた
カワイイな・・・・も〜
そのあとはフランス料理・・・・は仁くんが苦手なのでファーストフード店に入った
仁くんは減量しらずなので気にせず食べていた
もう・・・・ほっぺにご飯が付いてるよ
私がペロッと舐めて取ってあげると仁くんは頬を赤く染めた
そのあとは私のお洋服をお買い物
仁くんに選んでもらって仁くんにそれを持ってもらう
少し持つよって聞くと仁くんは首を振った
前が見えなくなるほどの大荷物を持っているのに仁くんはバランスひとつ崩さずに歩いていた
さすがだね、重いはずなのに・・・・バランスだって・・・・
やっぱり仁くんはすごいや
私も婚約者として鼻が高いよ
627生きてここに・・・・十六章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:01:54 ID:5KEdHmJE
「ふぅ・・・・・」
玄関で買い物袋を置いて一呼吸いれる
すぐに坂島さんがやって来て「ご苦労様」と言って荷物をお手伝いさんに運ばせていった
俺がお辞儀すると坂島さんは「お姫さまの相手も大変ですね?」
と聞いてきた、俺は「ナイトにケガや疲労は付き物ですよ」と答えると坂島さんは「頼もしいですね」と言って微笑んだ
ジト目で睨み付ける詩織がすごくこわかった
坂島さんにまで嫉妬するの?
思わず吹いてしまう俺に詩織は顔を真っ赤にしてそれを否定していた
日常を取り戻していく感覚
いつもこうだったんだ・・・・変わりない日々
変わらない日々を人は退屈な人生だと笑うかもしれない
でも俺は変わらない日常がこれほど大事なものだと初めて気づいた
不安はある・・・・彼女の、香葉さんの遺体見つかっていないということだ
正直あの爆発で生きているとは思えない
けれど俺の頭から離れない、あの悪魔のような目
本や漫画で出てくるような悪役より数倍の恐怖を俺たちに植え付けた
身近に死を感じさせたあの瞳
まるで日常のことのように刃を身体に食い込ませた時のあの顔
あの人がこれで終わるなんてどうしても思えない
けれど、あれから三週間ほど経過したがなんの反応もない
あの時はなんとか二人を護れたが・・・・次は自信がない
情けない話だ・・・・なんのために俺はボクシングを始めたんだ?
もちろん、詩織を護りたいという想いが強かったからだ
628生きてここに・・・・十六章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:03:37 ID:5KEdHmJE
俺を好きでいてくれる人一人や二人護れる自信がないなんて
俺はケガが回復するとすぐに練習にのめり込んだ
そんな中に生き抜きにと詩織からのデートの誘いを受けた
断る理由なんてない
いい息抜きになった
詩織が今日、泊まっていかない?
と帰ろうとする俺に聞いてくる
子供じゃないんだからどういうことなのか理解できる
俺は軽くうなずくと出口に向けた足を元の方向へ向けた
629生きてここに・・・・十六章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:04:58 ID:5KEdHmJE
お父様も交えての楽しい食卓
幸せ・・・・
仁くんと結婚したら毎日こんな風に楽しく暮らせるのかな?
幸せなのは間違いないか
仁くんって誠実で生真面目さんだもんね
でもなんでか普段は不真面目でぶっきらぼう
まるで正反対のその二つがうまく合わさっているのが仁くんなの
帰りの言葉を受け入れてくれたってことは・・・・わかってるってことだよね?
食事のあとは私の部屋でなにげない雑談
でもね、仁くん・・・・奈々ちゃんの話・・・・なんでするのかな?
それ以外はほとんど東児さんとの話
仁くんは友達も多いけどやっぱり東児さんが一番みたいなの
東児さんは私よりも仁くんと付き合いが長い
東児さんのお父様が古くから仁くんのお父様の会社と付き合いが合って
自然とその息子の二人も仲良くなっていったみたいなの
正直な話、私はあまり東児さんと面識がないので
入り込めない話になると・・・・
ああ、もう・・・・なんで私男の子の友達なだけの東寺さんに嫉妬してるの?

630生きてここに・・・・十六章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:06:08 ID:5KEdHmJE
不機嫌になる私を感じて仁くんは少し俯いてすぐに思いっきり顔を上げた
そして慌てて視線を外す私の頬に手を重ねて自分の方に向かす
微笑んで口付けを交わす
初めてだね・・・仁くんからしてくれたの
私が身を委ねると仁くんはゆっくりと私の肩に手を置いた
ゆっくりと這わされる仁くんの指
片手を背中に回して少し強く抱き寄せ仁くんは私にもう一度唇を近づける
絡み合う舌と舌
初めて私は大人のキスをした
そのあとゆっくり前のボタンを外していく
下着も上手に外した
「上手だね・・・・もしかして経験あるの?」
そうだよね、仁くんほどの人なら何人も・・・・
過去のことは気にしないでいよう・・・・
そう考えていると
「経験なんてないよ・・・・ただ、構造を知ってるだけ・・・・」
そうなの?男の子ってそういうことも知っているの?
でも初めて・・・・なんだよね?
私もだよ・・・・仁くんが初めてだよ、キスもこんなことも
これからだって私はずっと仁くんだけのモノだよ
優しく私をベットに寝かして仁くんはまたキスしてくれた
初めて人に身体を晒す私に仁くんは「綺麗だよ」とつぶやくと
優しい愛撫を繰り返した
そして私は仁くんを受け入れた
初めての痛み・・・・でも、仁くんがくれる私だけの痛み
最後まで痛いだけだったけど・・・・幸せだった
その後深夜までなんども交わって私は仁くんと愛し合った
631生きてここに・・・・十六章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:07:16 ID:5KEdHmJE
「結局朝帰りだね♪」
腕に抱きついて仁くんの家まで歩いて向かう
「そう・・・・・だね」
もう、あれだけ激しく交わったのに
いまさら恥ずかしがるなんて
私まで・・・・
思わず赤くなる頬を抑えて私は幸せを噛み締める
これが私たちの日常になっていく
これからずっと・・・・
そう思わせてくれるほどこの時間は私にとって幸なものだった


〈緊急ニュースです。
 先日お伝えした学校で生徒達に刀で襲い掛かり
 逃走後襲った一人を拉致しその場を爆発させ行方不明とされていた
 女子学生の家で女子学生の両親の遺体と女子学生の通う
 学校の生活担当の教師の遺体が庭で発見されました 
 警察は女子学生が犯人と見て捜索中とのことです 
 なお女子学生は凶器を所持している模様です 
 近隣の住民の方は戸締りをしっかりし外に出ないようにしてください 
 繰り返します・・・・・・・・・・〉
632生きてここに・・・・十六章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:09:25 ID:5KEdHmJE
tVzTTTyvmさま本当にありがとうございます
まさか自分のキャラを絵に描いてくれるなんて思ってもいませんでしのでただただ感激しています

本来は土日に投下できなかったのですがなぜか今日はパソコンをいじれるので明日月曜日都合で投下できないので夜当たりにもう一章投下します
アホみたいな長さですがゆっくりでいいので読んでいただければ幸いです
633生きてここに・・・・十七章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:10:10 ID:5KEdHmJE
あの日の三日ほど前に生活担当に呼び出された私はあることをそこで言われた
『月緒から報告があった・・・・・イジメをしているね?』
イジメ?あれは制裁よ
己の立場もわかっていない雌犬への制裁
正当なモノよ・・・・・
だから私は首を横に振った
するとあの教員ってばなにを思ったか私の家に明日行くって言い出したの
どういうこと?・・・・・
もしかしてイジメを理由に私を退学させて仁さんとの時間を奪うつもり?
そうはさせない
私は家の少し前で教員を待ち構え角から出てきたところで心臓に向かって刀を突いた
私を確認するその目に映るもう一人の私がこう言う・・・・
『邪魔をするならすべてを消せばいいの・・・・』
『こうやってね?・・・・・』
仁さんと私の障害は大きくなる前に斬り捨てる
汚い遺体を私は家の庭に埋めた
そのあとお風呂で身体を洗う
仁さんだけの身体なのに・・・・ごめんなさい、汚しちゃった
でもいいわ・・・・私たちを邪魔する者なんてゴミ以下でしょ?
もしろ褒めてくれるわよね?
634生きてここに・・・・十七章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:10:50 ID:5KEdHmJE
きぃ・・・・・きぃ・・・・・きぃ
歩く度に木が軋む
この音を聞くのも久しぶりだわ
まず自分の部屋に戻って包帯を取り出す
鏡を見る・・・・焼けた自分の頬がなぜか綺麗な物に思えた
とりあえず右手と右足に・・・・
焼かれた肌を真っ白な包帯で包み込む
そのあと自分で斬った傷を
そのあと右頬にガーゼを・・・・
あとで仁さんに慰めてもらおう
仁さんのためにこんな姿になったのだもの・・・・
一人笑んでいる私の向こうで襖が開いた
父と母だ・・・・
二人は信じられないといった風に私を見ている
酷いわね、まるで幽霊でも見ているみたいに
声を掛けると父は・・・・
『一緒に警察に行こう・・・・いや、その前に病院か』
警察?病院?私をそんなところに閉じ込めてどうするつもりなの?
そんなことはさせない!その間にどんどん仁さんがあの雌犬どもに汚されてしまう
ああ・・・・あの汚らわしいその手で仁さんに触れるなんてもう許せない
電話を手に取る父にそっと歩み寄る
目線を合わせた父がゾッとして青くなる
私は手に持った刀で父の身体を真っ二つに切り裂いた
すごい、女一人の力で人間の身体を裂くことができるなんて
逃げ惑う母の背中に縦の傷を入れる
倒れる母の背中に私は刀を突き刺した
あは・・・・やったわよ、仁さん・・・・また二人の邪魔をするゴミを消したあげたわ
外に出て仁さんの家のほうに向かう
途中で私は仁さんの姿を見つけた
「見つけた・・・・・仁さん」
隣に一匹雌犬がいるけど
今は再会を喜びあいましょう?
ね、仁さん・・・・・
635アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:15:48 ID:5KEdHmJE
>>610 あたりを見ていてネタ切れしていたのがなぜかいまさらになって気づきました
いまのところ香葉さんと・・・・な構図ですが詩織と奈々の・・・ネタ切れが解消しなんとか書けました!
自分なりに徐々に壊してドロドロさせたつもりです
もう少し先になりますがよろしければ読んでやってください
636アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 14:39:02 ID:5KEdHmJE
また夜に一章ほど投下します
長くなりますがお付き合い願います
637名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 14:48:50 ID:+4/QYayJ
そろそろ新スレを立てた方がいいんじゃなかろうか。
俺は立てられんから誰か頼む。
638名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 15:00:15 ID:K7R6m1Jn
作品がわんさかうpされてるからねw

試してくる
639名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 15:00:56 ID:Ae/6dyKT
>>637
スレタイって
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 泥棒猫七匹目
でいいのかな?
いいのならすぐにでも立ててくる。

……やはり五里霧中の存命中に七代目が立つことになったか。
俺たちは五里霧中スレの執念を甘く見すぎていたのかもしれない。
640名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 15:05:10 ID:K7R6m1Jn
あ、そうかスレタイがあったか

嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 七転八倒

( ゚Д゚)

( ゚Д゚ )
641名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 15:13:04 ID:1c2bLD2Z
五スレは残された余命の中、小恋物語の投下をじっと待ち続ける健気な子。
そして七スレに投下される小恋物語。
見向きもされなかった六スレの、黒い感情の行き場は…。
642名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 15:15:18 ID:mFyRSlZU
【泥棒猫】嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ【7匹目】

漏れはスレタイに【】ある方が好き。
643名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 15:23:40 ID:Ae/6dyKT
四面楚歌スレ見てきたら七去というのがあった。
嫉妬することを含む妻を離縁していい七つの理由だそうだ.。
あまり聞かない単語だからスレタイ映えするかは疑問だが。

嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 七去

見ていれば慣れる……か?
644名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 15:53:58 ID:nHMsnymL
包丁7本
645名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 16:10:55 ID:JL0YC2MH
っていうか、もう次スレかよ!!
646名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 16:11:29 ID:VYAIQdVw
七つの大罪
647名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 16:26:48 ID:1c2bLD2Z
そういや立ってから二週間も経ってないね

監禁七日目
6481/2:2006/05/20(土) 17:08:34 ID:x4BswFf5
 今朝も、口の周りはベトベトだった。
 寝涎がどうも出やすい体質らしい僕は、毎朝口を拭ってから大欠伸。
 その欠伸が届いたのか、キッチンの方から幼なじみの小娘が、ひょこり顔を出してくる。
「あ、たっくん。おはよう!」
 元気よく挨拶してくるそいつの唇は、やはり今朝も濡れていた。
 唇が乾きやすいとのことで、しょっちゅう自分で舐めているそうな。
 でも、幼なじみとはいえ、男の前で舌なめずりは正直勘弁して欲しい。
 これでもこちらは健康的な青少年なのだ。
 赤い舌の艶めかしさに時折前屈みになってしまうのを誰が責められようか。
 僕のそんな思惑なんて露知らず、幼なじみは朝食が出来た旨を、目の前10センチまで顔を近づけ伝えてきた。
 赤い舌が、ちろりと唇を舐めていた。
6492/2:2006/05/20(土) 17:09:19 ID:x4BswFf5
「「いただきまーす」」
 二人揃って手を合わせる。
 今朝のメニューは鮭の塩焼きと卵焼き。
 幼なじみは僕が食べ始めるまで食べようとしない。
 自分の作った者の評価が気になるのだろうか。
 卵焼きをひとかけら口に運ぶ。しっかり噛みしめて味わってから「美味しいよ」といつもの言葉。
 幼なじみは嬉しそうに微笑んでから、自分の食事に取りかかる。
 こんなに料理上手なのに、自信が持てないのは何故だろうか。
 ただ、ひとつ気になることとして。
 幼なじみが注視していたのが、卵焼きの方ではなかったような。
 きっと気のせいに違いない。
 だって、好きこのんで他人の箸を見つめるような人は、そうそう居ないと思うんだ。
650『歌わない雨』Side緑:2006/05/20(土) 17:11:37 ID:LVoFwvDq
 私を伸人が振って数分後。自分の家に帰り、部屋には私一人が残った。
 朝食も既に伸人と食べ終え、学校に行く時間までは少し暇を持て余す。
「振られちゃったか」
 一人で居る部屋の静けさと共に、その事実だけが染み込んでくる。
 悲しい。
 辛い。
 苦しい。
 どの口がそんな事を言ったのだろう。到底言える義理ではないし、自業自得そのものだ。
 しかも、それは伸人も同じで、もしかしなくても私より辛かった筈だ。
 それでも、伸人は悲しんでいる私を抱き締めてくれた。キスをしてくれた。
 帰り際に、明日も明後日も、ふっきれるまで料理を作ってくれと言ってくれた。
 そして、私が伸人を好きだったことをずっと覚えてくれると言ってくれた。
「私は、馬鹿だった」
 初恋なんて、とっくの二年前のことで終わっていたのに、そんなことにも気付かずにしがみついて。
 でも、それでも伸人は優しくしてくれた。助けてくれた。
 だから、今までのようには行かないかもしれないけれど、
 振り向いてもらうのも無理だと分かっているけれども、
 せめて伸人を助けてあげようと決意した。 だから私は覚悟を口に出す。
「私は、伸人が…」
 好きでした。
651名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 17:12:40 ID:x4BswFf5
ふと思いついた小ネタを投下。
間接キスに胸が高鳴る……
そう思っていた時期が、俺にもありました……
652『歌わない雨』Side雪:2006/05/20(土) 17:14:09 ID:LVoFwvDq
 登校時間、伸人ちゃんと緑は、やけに清々しい表情だった。
 教室に入ってからも、いつものように皆でふざけあったりしていたし、緑とせっちんの喧嘩もいつものと変わりは無かった。
 しかし、緑の様子がいつもと違う。
 いや、寧ろいつも以上。最近のものとも、策士に戻る前とも違う、
 敢えて表現するなら、
 清々しい表情だった。
 丸め込まれたと言うよりも、
 憑き物が落ちたような表情だった。
 それを確認して、あたしは心が凍っていくのを感じた。人に対する想いの部分が熱を失っていくのが、自分でも嫌になる位にはっきりと分かる。
 この駒は、もう殆んど使えない。
 悪意を失った策士は、牙や爪を無くした肉食動物と変わらない。
 その単純な力で獲物をくびり殺すことは出来ても、生きる為に肉を引き裂いて食べることなど出来はしない。
 善意に満ちたその頭では、あたしの障害にすらなるかもしれない。
 それにせっちんはどうかと言えば、元から善良だ。
 道化のあたしには、使いたくても使えない。
 そして一番の問題は、伸人ちゃん自身だ。
 壊れていっていると思っていた。
 狂っていっていると思っていた。
  しかし、現状はどうか?
 直ってきている。
 治ってきている。
 こんな御都合主義の、善良な物語では誰も彼もが満足しない。
 最愛の兄の元で、ただ二人きりの世界はどうなってしまうのか?
 だから仕方なく、強攻手段に出る事にした。
 本当は自分が直接関わらないのが一番だが、そうも言ってはいられない。
 伸人ちゃんは、今日は運良く一人で部屋に居る。
「くあ、くははは」
 大丈夫、今はまだ自分に運が向いている。 あたしは笑い声が伸人ちゃんに聞こえないように部屋に向かった。
653名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 17:15:59 ID:K7R6m1Jn
>>651
GJ

続けよ!!!!!!!!!!!!!!!!

スレタイは>>647にイピョーウ
654『歌わない雨』Side芹:2006/05/20(土) 17:16:20 ID:LVoFwvDq
 雪から電話をもらい、私は髪を拭くのもそこそこにいつもの公園に向かった。
 途中で缶珈琲を二つ買う。
 本当はあまり好きではなかったが、それを美味そうに飲む伸人の顔が好きで、つい習慣になってしまった。
 これも、伸人の趣味にあわせてしまったものの一つだ。
 伸人自身、人と好みが被るのは好きではないらしいし、私も気恥ずかしさから偶然を装っていたが、今では本当に好きになっている。
 煙草などがその極端な例で、本当は嫌いだったが、今では伸人以上に吸っている。
 伸人と過ごした一年間を思い出しながら歩いていたら、いつの間にか着いていたらしい。
 今日は、いつもの歌を歌っていない。
 私は、伸人が歌っている曲が一番好きだった。
 以前に題名を訊いたが、伸人自身も知らないらしい。
 ただ、中学三年の時に死んだ彼の父がよく歌っていた曲らしい。
 私はなんとなく声を掛けそびれて、無言で近付いた。
 と、突然伸人がこちらを向き、目が合った。
 なんとなく気まずくなり、
「…今日は歌っていないんだな」
 そんな言葉が口から漏れた。
「そんな日もある」
 いつもの空気だ。
 少し安心した私は、いくつか言葉を交して伸人の隣に腰を下ろす。
 そして久し振りに、たくさんの話をした。
 伸人の悲しい話を聞き、慰め、そろそろ潮時だと考える。
 どうせ、私は友達だ。
 抱き締めた腕を解こうかと考えたとき、最初は耳を疑った。
「好きだ、付き合ってくれ」
 一瞬思考が飛び、続いてやって来るのは驚喜の感情だった。
「…喜んで」
 私は、久し振りに泣いた。
655『歌わない雨』 ◆JypZpjo0ig :2006/05/20(土) 17:18:31 ID:LVoFwvDq
今回はこれで終わりです

次回は最終回
綺麗にまとめたいと思います
656名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 17:19:51 ID:x4BswFf5
>>655
GJ!
雪かわいいよ雪
あと割り込んでスマソ
657639:2006/05/20(土) 17:35:52 ID:48Cad7VB
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 監禁七日目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148113935/

立ちました。

>>642
それだと字数制限オーバーになるようです。
やはり『嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ』という基本の部分が長いのか。
【】一組にしても五文字が限界の模様。

五里霧中スレは遂に埋まったようですね。
もう余命幾許も無かったのに……ただ小さな恋を待っていただけなのに…
仕方がないとはいえ少し物悲しくなったり。
658名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 19:14:05 ID:2ey7fjuE
>>651
おもしろそうなのがキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!

>>655
雪が遂に動くのか!この作品好きだったから最終回テラカナシス(・ω・`)
659『歌わない雨』 ◆JypZpjo0ig :2006/05/20(土) 19:52:45 ID:LVoFwvDq
少し宣伝

華『当然だ、私と誠はは一心同体だからな』

水『どうしたらアンタの一番に成れるのかな?』

勇治『どっちも誠にゃふさわしくねぇよ』



誠『大切な人? 居ないよ、そんなモン』

『ジグザグラバー』
COMING-SOON……

660アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 20:06:55 ID:5KEdHmJE
投下します
661アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 20:07:39 ID:5KEdHmJE
投下します
662生きてここに・・・・十八章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 20:08:47 ID:5KEdHmJE
「見つけた・・・・・仁さん」
向こうに見えるのはなんだ?
まるでこの世の物とは思えない光景に俺は息を飲んだ
真っ赤に染まった身体を引きずるように歩み寄ってくる
その後ろに広がるのは血の道
身体の右側を包帯で覆っているが端から見える火傷のあと
手に持っている物が血なのか刀なのよくかわからなくなっている
真っ赤な刀を引きずって静かに近づいてくる
剣先が道路に引きずられる音と共に真っ赤に染まったそれがニヤっと笑んだ
663生きてここに・・・・十八章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 20:09:31 ID:5KEdHmJE
どうしてそんなに怯えているの?
ねぇ?仁さん・・・・?
すぐに仁さんは横にいた雌犬を後ろに隠した
そう、そうなのね・・・・その雌犬がいけないのね
だったら待ってて・・・・すぐに消してあげるから
刀を立てて突きの体制に入る
咄嗟に仁さんが雌犬を残して私の方へ向かってくる
どうするつもりなの?
瞬間拳が飛んでくる
私は真っ赤に染まった手でそれを受け止める
不思議ね・・・・以前は見えなかったその拳も今はスローモーションに見える
もしかして神様が私に雌犬どもへの制裁のために力をくれたのかしら?
あは・・・・・・く、ははは!
ごめんなさい・・・・・少し大人しくしていて
私は仁さんの右足に軽く刃先を食い込ませた
「ぐ・・・・・!」
脚を抑えて仁さんは後ろに尻餅を付く
ごめんね、でもね・・・・雌犬成敗のためには仕方ないの
だって仁さん洗脳されちゃっているのだもの
こうでもしないと目が覚めないでしょ?
私は静かにしかし確実に一歩一歩雌犬に近づいていく
664生きてここに・・・・十八章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 20:10:30 ID:5KEdHmJE
どうしたの?あの目下したような瞳をしたあのときの勢いは?
こわい?私が怖い?・・・・・ふ、ふふふ・・・・・味わいなさい
あなたがどれだけ罪深いかを!
刀を振り上げる・・・・・
「死んじゃえ・・・・!」
振り下ろすとわずかに肉を裂く感触がした
ふふふ・・・・・あ、はははは!
思い知った?自分の業の深さを・・・・・罪深さを
死んで償いなさい・・・・
しかし目の前の光景に私は息を飲んだ
665生きてここに・・・・十八章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 20:11:27 ID:5KEdHmJE
「が・・・・・・うぐ!」
仁くんが私に覆いかぶさって悲痛な叫びを上げる
な・・・・・なに?なにが起こったの?
今にも飛んでしまいそうな意識の中で私は自分の全身が凍りついたように動けずにいた
「う・・・・・・ぐ・・・・・・・詩織・・・・・」
急に仁くんが私にもたれかかってくる
それと同時に仁くんの右肩から尋常ではない血が噴出した
雨のように仁くんの血が私を濡らした
「仁くん・・・・・仁くん!」
ゆすっても声をかけても反応も返事もない
真っ青な顔をした仁くんの横顔に私は時を忘れた
許せない・・・・・自分勝手な理由でこれだけのことをして
仁くんを傷つける人を・・・・・私は許さない
私の一番大切な人を傷つけるなんて・・・・・
ゆる・・・・・・さない!
私は無意識のうちに悪魔に向かっていった
護身用のスタンガンを取り出し呆然としている悪魔に押し当てる
「く・・・・・ぅ」
小さなうめき声と共に悪魔は倒れていく
はぁ・・・・・はぁ・・・・・
私の呼吸だけが聞こえる・・・・・
しばらくしてすぐに警察の人が近所の人の通報でやって来た
赤しかないその光景に思わずむせる人
気分を悪くしてその場を去る人
悲惨な現場を見慣れている警察の人もそうなってしまうほどこの景色は残酷な物だった
「仁くん!仁くん!」
私は運ばれる仁くんにすがるように泣きついていた
このままじゃ仁くんが・・・・・私を護ろうとして・・・・・ごめんなさい、仁くん
私は心と言葉でなんども仁くんに謝った
それしか知らないかのように仁くんの名を呼び謝り続けた

666アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/20(土) 20:12:07 ID:5KEdHmJE
仁の敗因は詩織さんとヤリすぎてへばっていたからです

次章は火曜日か水曜日に投下します
667名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 23:04:55 ID:K7R6m1Jn
  /'           !   ━━┓┃┃
-‐'―ニ二二二二ニ>ヽ、    ┃   ━━━━━━━━
ァ   /,,ィ=-;;,,, , ,,_ ト-、 )    ┃               ┃┃┃
'   Y  ー==j 〈,,二,゙ !  )    。                  ┛
ゝ.  {、  - ,. ヾ "^ }  } ゚ 。
   )  ,. ‘-,,'   ≦ 三
ゞ, ∧ヾ  ゝ'゚       ≦ 三 ゚。 ゚
'=-/ ヽ゚ 。≧         三 ==-
/ |ヽ  \-ァ,          ≧=- 。
  ! \  イレ,、         >三  。゚ ・ ゚
  |   >≦`Vヾ        ヾ ≧
  〉 ,く 。゚ /。・イハ 、、     `ミ 。 ゚ 。 ・
668名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 23:06:09 ID:K7R6m1Jn
ごめん酷い誤爆した

生きては来週までお預けか(´・ω・`)
669 ◆tVzTTTyvm. :2006/05/20(土) 23:26:04 ID:oR68hw2f
アビスさんお気に召したようで何よりです 自分でも描いてて結構怖かったですw
残り二人も描いてみたいのですがよろしいでしょうか
参照イメージソースなどあれば仰ってください

しかし香葉さんはどこまでイくのか……
先生を殺し、親殺しまでやっちゃうとは……
包帯、火傷、鮮血ターミネ―ターも真っ青ですね
670義姉埋めネタ:2006/05/20(土) 23:56:46 ID:K7R6m1Jn
え・・・?もう行っちゃうの・・・?
で、でも、まだ面会終了時間まであるよ
お願いだからここにいてよ・・・もう少しでいいから・・・

そう・・・やっぱり・・・あの人のところに行くんでしょ、新スレとかいう娘のところ

・・・?名無しくんのことならなんでも知ってるよ
あまり話題に出さないように努力してるみたいだけど私にはお見通し
・・・みんな、みんな、私のことを置いてっちゃう、パパも、ママも、義父さんも義母さんも・・・
名無しくんまで私のこと置いていっちゃうんでしょ?
この足?このもう動かない足がいけないの?一緒に歩けないもんね
これじゃ皆にも追いつけるわけも無いよね

直らないのは名無しくんが良く知ってるはずだよ?大分前から知ったんだよ
だからお願いした薬が貰えるまで結構時間かかっちゃった
担当医さんと名無しくんにはじめて嘘なんてついたからドキドキしちゃったよ
嘘や隠し事はするのもされるのも嫌だよね

・・・やっと効いてきたみたいだね
効果は一緒に頼んでくれたから知ってるよね?夢うつつのままゆーっくり眠くなるの

ほら?こんなことしても痛くないでしょ?腕の方は力あるんだよ
院内での車椅子リハビリで頑張って他の見ててくれてたもんね
私も後で飲んでから同じ事するね

・・・うっ・・・くっ・・・私―んなと仲良くしたか―んだけどドジでのろまだ―らすぐ置いてかれちゃうの
だから一番――な人には置いてかれたくなくてこんなことしか――いつかなかった
ご――ね、――んね、バカだよね?――しか方法が浮かばないなんて

ごめ―ね、――だよ
671名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 01:54:24 ID:GC5hob/w
>>670
良いね。実に良い。
切ない無理心中だね。
672埋めネタ:2006/05/21(日) 04:19:06 ID:j0S1HUfZ
「(新スレが)立った…!」

「このスレに相応しい“修羅場”は決まった!」

「心縛り付ける絆!セピアメモリー!
 永久誓う約束!ゴールデンルール!
 愛告げる鮮血!スカーレットブラッド!」

「捕えよ!幼馴染・エターナルパートナー!」
673名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 10:43:03 ID:a6ZxPZQn
>>671
最後の辺りからもう新スレとか関係なくなってるね
(´・ω・`)すまない

嫉妬スレって
   女
   ↓
女→女←女

とかあり?
どうみてもガチ百合です
本当にありがとうございました
674名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 15:23:10 ID:ursJ3sZn
>>673
それを見て昨日やってた某ストロベリーなアニメを思い出した・・・
百合でも嫉妬ならば!嫉妬ならばやってくれるはず!
というわけで673さん期待してます(゚ー゚*)
675名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 15:38:37 ID:/++cGd0b
男←→女←女もいいじゃなぁい?
676埋め  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/21(日) 21:07:48 ID:h9X9Cehg
女なんて性欲処理の道具でしかない
それも処女にかぎる
処女をいただいたあと?
廃品なんて入らないから捨てる
今日も女あさりもとい品定め
俺は超美形だからこの顔でアホな女はほいほい付いてくる
でもその女は違った
俺を睨んで俺を拒絶した
その日から俺は毎日のようにその場に出向き彼女を探した
ある日彼女と再会した
なにをしてるんだ俺は?
真剣に自分の気持ちを彼女の訴えかけた
まさか俺が本気で人を好きになっちまうなんて
677埋め  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/21(日) 21:08:37 ID:h9X9Cehg
どうせ身体目当てなんでしょ?
なんでそういう目をするんだ
こんなに深く女の視線に恐怖を感じることになるんだなんて
俺は彼女から電話場号だけ聞きだすと毎日のように電話した
一週間かかってやっとデートまでこぎつけた
けれどやっぱり身体目当ての烙印を押された
半年そんな感じで過ごしたが・・・・
どうやら俺に惚れてるのにかんな風にわざとやってるな
そう感じた
だから俺は彼女の前で彼女以外の女を抱いた
処女の女に快楽を教えていく
ただ呆然とその光景を見ている彼女を見つめて
ふふ・・・・どうした?俺に興味なんてないんじゃないの?
嫉妬に顔を歪める彼女に俺は優越感を感じて目の前のどうでもいい女を犯し続けた
678埋め  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/21(日) 21:09:45 ID:h9X9Cehg
その日から彼女の俺を見る目が少し変わった
こびるようになってきた
ふふ・・・・順調順調
そして俺は毎晩のように彼女の前で処女の女を犯していく
どうだ?お前にもこれを教えてやる
だから俺のものになれ・・・・
とうとう陥落した
くふふ・・・・・俺は彼女の純潔を貫いた
けど・・・・やっぱり他の女と同じだって気づいた
だから捨ててやった
数日後俺が他の女と歩いていると彼女が目の前に現れた
そして俺に抱きつく・・・・
俺の冷たい目を見て彼女は・・・・
冷たい・・・・なにがあったんだ?
なんで空を見てるんだ?
俺の傍らには自らの腹に包丁をつきたてた彼女がいた
眠いな・・・・俺の腹からも血が出ている
ま、いいか・・・・初めて惚れた女に殺されるってのも
679アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/21(日) 21:12:27 ID:h9X9Cehg
自分のパソコンでないので【生きここ】は投下できませんがふと最低君を書きたくなって書きました
680アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/21(日) 21:15:29 ID:h9X9Cehg
タイトル忘れた・・・・「最果ての」 かな?
681名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 22:20:53 ID:a6ZxPZQn
ディモールト・いい。
生きここwktk

>>674
認識した
プロットでは>>675に近く
   女
   ↓
女→女→男
って感じ
でもショタ男の話のほうが筆がすすんでいる私を許すな
682名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 00:23:47 ID:v2idMsl3
修羅場は野郎がからんでないとダメだな。もちろん惚れられたほうで
683今日もいっぱいして:2006/05/23(火) 19:54:09 ID:irf/AMNU
『まーくんはボクとけっこんするの』
『だめですわ。わたくしとけっこんして、せかいをせいふくするのです』
『みーちゃんもゆーちゃんも、ふたりとけっこんするよ』
 今から10年以上も前のお話。
 幼稚園の頃の可愛い思い出。
 だったんだけど。
「しねぇぇぇ!」
「しゃらくさい!でございますわ」
 美由紀の机の上からの飛び蹴りを、ゆかなが落ち着いて捌く。
 力の行き場のなくなった美由紀の蹴りは、無残にもロッカーを大きくへこませた。
 って、あれ。俺のロッカー。
「かわすな!」
「あら。かわしたのではなく、捌いたのですわ。お馬鹿さん」
「むきー!!絶対に殺す」
 美由紀は机を持ち上げると、それをゆかなの方へと投げる。
 ゆかなはまるで日舞でも舞っているかのように右へ左へ。ひらりひらりと机という隕石をよけている。
 むしろ、その他のクラスメートがとばっちりを受けて倒れてるし。
「あたれあたれあたれあたれ」
「お〜っほっほっほほ。無駄ですわ。あ〜、醜い攻撃ですこと」
「むぅ。あ」
 やば。見つかった。
「まーくん!!」
 美由紀がその場から俺に向かって飛んでくる。
 そして。
「ぎゅ〜」
 俺の上に覆いかぶさって力いっぱい抱きしめてる。
「ねぇ、聞いてよ。ゆかなったら、ボクにいじわるばかりするんだよ」
「美由紀さん。貴方・・・・・・真南斗さまから離れなさい!!」
「いやだよ。べ〜」
「ふっ」
 ゆかなが持っていた扇子をたたみ、美由紀に向かって投げつける。
 もちろん美由紀はそれを飛んで避けた。
 はれ?
「がふっ」
 扇子は俺の眉間につき刺さり。
 もう。ダメ。
684今日もいっぱいして:2006/05/23(火) 19:54:54 ID:irf/AMNU
「んっ」
「あ、目覚めた。大丈夫?痛くない?」
「申し訳ございません。真南斗さま」
 目が覚めたら俺は自分の家にいた。
 そして、目の前には幼馴染の二人。
「ごめんね。咄嗟だったから避けちゃって」
「わたくしも、頭に血が上りあのような簡単なことも見過ごしてしまうとは」
 二人とも心配そうに俺の顔を覗いている。
 天真爛漫で活発で男っぽいところもあるけど、コロコロと変わる表情がすごく可愛い美由紀。
 成績優秀、運動真剣抜群、そしてモデル並みのスタイル。非の打ち所のないゆかな。
「何か冷たいものでも飲む?ゆかなは暖かいお茶だよね」
「今、精のつくものを頼んでいますわ・・・美由紀さんも一緒にいかが?」
 基本的に二人は中がいい。
 ただ、たまに不協和音を響かせるのだ。
 俺はこんな二人が好きだ。
 そりゃ結婚は一人としか出来ないけど、出来れば三人ずっと一緒にいたいと思っている。
「あ。まーくん」
「ん?」
「はい。ん〜」
 !?
 いきなり美由紀にキスされ、口の中に甘い何かが流し込まれる。
 りんごジュースか?
「んっ、ちゅぅ。む、んっはぁ」
 そのまま進入してきた舌が俺の口内を犯す。
「・・・み、美由紀さん!!」
「んっっ!?」
 ゆかなが美由紀を押し、今度はゆかなが俺にキスをする。
 基本的にゆかなは受けだ。だから、俺がゆかなの口の中に舌を進入させてゆく。
「ぁっ、ちゅ、ゃっ」
「むぅ。ゆかな!酷いよ!!」
「抜け駆けするからですわ」
 はぁ。まったくまた喧嘩をはじめる。
「そういや、昼はなんで喧嘩してたんだ?」
 二人が同時に俺の方を向く。
「まーくんせいだよ」「真南斗さまのせいですわ」
 二人の矛先が俺に向けられた。
「まーくんがゆかなの中にボクより1回多く出したから」
「真南斗さまが私にはしてくださらない、美由紀さんのお、おし、おしりを・・・です!」
 二人に攻め寄られ俺は壁際まで下がる。
「まーくん」
「真南斗さま」
『今日もいっぱいして』
685今日もいっぱいして:2006/05/23(火) 19:56:14 ID:irf/AMNU
こんな軽いのりのもあっていいかなと思ってネタとして投稿させてもらいました。
神職人さま。これからも楽しみにしているので頑張ってください。
686名無しさん@ピンキー:2006/05/24(水) 01:16:44 ID:+UPspQ81
>>685
よすぎ!!
まさにエロス!!!!
687名無しさん@ピンキー:2006/05/24(水) 01:48:14 ID:4ftgIdPu
ハーレムっぽいけどこれはこれで嫉妬があって(;´Д`)スバラスィ ...ハァハァ
688名無しさん@ピンキー:2006/05/24(水) 16:34:37 ID:Q0Ousqwl
凄ぇ良作GJ
もう埋めに入っているから、そこまで見てないかもしれないのが残念

できれば



















ゆかなも攻めだとよかった
689名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 00:45:28 ID:IOUknbeA
まだいかせない!!
690名無しさん@ピンキー:2006/05/29(月) 19:39:26 ID:8azwg+NX
無駄な足掻きを…!さっさと落ちなさいよっ!
691名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 00:11:23 ID:q0l6gyF9
あらあら醜い争いですこと。
さぁ名無しさん。こんな二人はほっといて8スレ目にいきましょう?
692名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 00:13:51 ID:6fmjEQd9
                   埋めの予感!
 
          :|| 只 //        |               |  ___
,. - ─── 、 ::|ヽム-' ヘ        _,|  ,. -─-- 、.       | '⌒)>,. ────='´
          ヽ.|  /__N> ̄ ̄ ̄へ,//|/   、_>      |,.イ>         \
          :|/了>/        \ |   >'ー _\\   |/| :ト、|\ | 'ーヽN\|
 /レ'_,V,_レ\ | :|   レ __ノ Vレ\N | |  >/    ミ \\ |::ヽ| :|  -' \  (__) J }
 (__)  (__)| | | | |.| | \    丶:|\:| L| /    __  } \:|:  | :| (__)    ''' イ
 ''' / ̄| '''イ :|/レ'ヽ|.| |,, ̄´__ <:|:| . |  \   └'  /\\|:  | 〉 ''' <>   ノ//
'ー-{____:|-‐' レV|  _.´ト|、__/_ _| ''ノ |: | \ \___,. <__ \ト、 N ト、 __  /ソ
从/<)_)ソ人|::::|  {:{ //>Yノ-|} ̄ レN: |\ \ \ マゝノノ_ . | \ト|  レ'   ム∧
  //只-ヽ    |  ヽ=T\_/ハ}      :|  \ ヽ   |ノVムゝ:::|        ノケハ〉\
693名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 00:38:02 ID:6fmjEQd9
                   埋めの予感!
 
          :|| 只 //        |               |  ___
,. - ─── 、 ::|ヽム-' ヘ        _,|  ,. -─-- 、.       | '⌒)>,. ────='´
          ヽ.|  /__N> ̄ ̄ ̄へ,//|/   、_>      |,.イ>         \
          :|/了>/        \ |   >'ー _\\   |/| :ト、|\ | 'ーヽN\|
 /レ'_,V,_レ\ | :|   レ __ノ Vレ\N | |  >/    ミ \\ |::ヽ| :|  -' \  (__) J }
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从/<)_)ソ人|::::|  {:{ //>Yノ-|} ̄ レN: |\ \ \ マゝノノ_ . | \ト|  レ'   ム∧
  //只-ヽ    |  ヽ=T\_/ハ}      :|  \ ヽ   |ノVムゝ:::|        ノケハ〉\
694名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 06:06:40 ID:+XiArBP+
まだ…彼女を埋めるわけにはいかないっ!
695名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 09:55:48 ID:cnqTeWJs
埋めるには木の下?
696名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 14:55:30 ID:6fmjEQd9
       _,;‐-、_   .______,
      /,. ..::.  'i∠三;;;:.:`‐、.  
      し;;、"''./_,. ゛ `ヾミ;)  
        `"/ _C) . .:.:_.::;`ト-‐、
          i.;'"゛  . : :.::C)::::!:.:;;` `i
       ,,イヾ、  .: : . `;::;ノし;:.. 丿
       / `‐、`'ー、,,___,.ノ;(  し'゛  ちくしょう……
      ,ゞ、 ,,イ`マニヽ-‐".}   
      ノ`''ミヽ!_ ‐く,、:.::).:.:.ノ  

  __,冖__ ,、  __冖__   / //  
 `,-. -、'ヽ' └ァ --'、 〔/ /  
 ヽ_'_ノ)_ノ    `r=_ノ    /´        r'゚'=、
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 `,-. -、'ヽ'   く <´   7_//  ,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_
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   n     「 |      /   |   /ヽ      /・l, l,   \ ヽ
   ll     || .,ヘ   /    1  i・ ノ       く、ノ |    i  i,
   ll     ヽ二ノ__  {     {,      ニ  ,    .|    |  i,
   l|         _| ゙っ  ̄フ   }   人   ノヽ   |    {   {
   |l        (,・_,゙>  /    T`'''i,  `ー"  \__,/     .}   |
   ll     __,冖__ ,、  >     },  `ー--ー'''" /       }   i,
   l|     `,-. -、'ヽ'  \.     `x,    _,,.x="       .|   ,}
   |l     ヽ_'_ノ)_ノ   トー       `ー'"          iiJi_,ノ
   ll     __,冖__ ,、 |
   ll     `,-. -、'ヽ' iヾ
. n. n. n  ヽ_'_ノ)_ノ  {
  |!  |!  |!     へ l 
  o  o  o   /
697名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 14:57:59 ID:6fmjEQd9
           ,.. -───‐- 、
         ,/:.:.:.:.:.:_,,. -─- 、:.:.:.`ヽ、
        /:.:.:.:.:.:/ ___  \:.:.:、\_
     r‐く、:/:.:.://´:|:.:.:.:、:.:.:.:`\|:.:.:.lく__{_
     く二ニ/:.:.:./:.:|:.:.:.:!:.:.:.:.ヽ:.:ヽ\:.l:.:.ヾ`くニヽ、
  r─‐ァ'´ /:.:.:.:.|:_/!|:.:.l|:.:.:.:.l:.:|、:.:.|:.:l:.|:.:.:.:|l∠   lヽ
  l/´!|>'|l:.:.:.:.l!:|`!|ヽ|ヽ:.:.:ト、!, く|l:.|:l:.:.:.:.ト、_`ヽ、Ll
.    / /|l:.:.:l:|,rf⌒ヽ! \l´ ィ⌒'ミ |:.:.i:.|:.:l|人  〉
   | ,イ:.:.l:.ハ、:ヽ仆、:::リ      ト、:::リ l:.:.|ノ:/)っ ∨        うめ
   ∨|ハ:.|:.:.:.:|Tr‐っ'    ,   ー' /:.:.//'´
     l! ヽrーュi ⌒!、 t-r‐!  ,.ノ:.//
       / 〈l|L__人`ヽ`ー'イ |lィー'´
       `ー-=‐'`ヾ\_弋_フ/く
             「`ーく_乍_フ_ ト、_
            l /l |:| ヽゝ/ー、_)
             `ヘニLl ̄`
                 \入
                ヽノ
698名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 14:59:46 ID:6fmjEQd9
            ///\/\ヽ__:::::::::::| |     j j:::::::::__://\/、\\
              /::/ /    | \\:::::ヽヽ   /7::::::::// 〉    ヘ ヽ:ヽ
          /::/ /       ヽ. \ヘ:_::|_|-―-|_|:_/7‐′/     ヘ `、:`、
            /::〈   〉    , ヘ、ヽヘ.,ゝ‐`      -'、/ /` ' /\   /  〉::〉
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          /::〈 /    /〃. !/イ | |‐-|、∧ |、|.斗|、 〉 .〉:::|  ヽ:ヘ.   `、/:〉
         \::\    /¨´   |::::| ヘ ハ/fr_ヘ |´ィr_∨ ∧:::|   `ヘ.  /:/
         \::\_/     f⌒ヽハ!| ヒり  ,ヽ ヒり / ./  \_    ‘イj/     うめうめ
               ̄     (::::::,.-ヽ ⊂⊃ 、 _, ⊂⊃/  r'´0}.ニ=-
               -=ニ廴{:::( 〉  〉:.、 __,. イ 〈--f:{:::0::0}、
                 // /`¨/  /::::::::| || |:::::ヘ. |_!;廴(ノ\\
                //./ /  | /リ:::::::::::} ||.{:::::::::|ハト、   |、 | ヽ|
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                       |二スー‐r‐'7ヾ ノ:!
                      L:/ `ヽハ/   ヽJ
699名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 15:08:51 ID:6fmjEQd9
                  _ _ _,.... __
              ,.-‐' "´ヽ::::::y'´    ミヽ、
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           /.:./.:.:/.:.:/.:.:::::ト、:.ヽ:.ヽ:.ヽ.:.:ヽ:ヽ
             //:.:./.:.:/./:N:|ヽ!|il:.:ヽヽ:ヽ::l:.::.::i::::',
          ///:.:/:.:.:.:./:イ.::|l|:f´ ̄|::Y:i::|!:.:!.|.:.:.:.|:.:.:.!
            ///.:./:/;イ:/:::lj;:ムH!  ィ:ll什ト、j:|.:.:.:.|::.:.:l
        //!:!:././/::!:l:イ| 」⊥ヽ   |lj抂ェ」|`!..:.!:ト、:.l
          〃 |:|:i:.:.l:i:.:.|:.l:.:レぅ⌒f   !´ヒ'  lヽ!.:.l.:| ヽ:.l
        ! ‖!|:.:i:l.i.:ト:l.:iハ..::::j_     L::::ノ |:.:|:.|  \     うめです
          l lヽ从ト:! い、 ¨´   ,       |.:.l.:.|、,__ \
           ! >ヘヽヽノ:ト、    −   /|.::|i:.|;;i;;i`ー‐ヘ
           /ヽ-‐7´/;;イ:::>..,._   ,.イ::::::|.::|l:リ^介r、;;_j;;;;\
         /;;;/ノ;rくハ二__ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄__コニミ{ノ:/ノ,リ`´`'ーヘ
         /;;;;ィ"~^ヽ`ミミ片__W ̄`' ̄`' ̄″|:..:`Y彡'″
        ´"´     >'-ニ_ `'´ ̄`' ̄`' ̄`゚ヒ'ー-ト、
            /     弋ー--t--ァ-ー¬´「lY   ヽ、
           /         ヽ::.::.:У::.::.;:-┤j !|     \
         /   ヽ /     ヽ::/::.::./´ r'⌒ヽヘ      ヽ
700名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 16:42:28 ID:vPTnZwsd
                      /し, /    _>.
                     / { \レ/,二^ニ′,ハ
                     |'>`ー',' ヽ._,ノ ヽ|
                     |^ー'⌒l^へ〜っ_と',!
      __             ! u'  |      /       しっと団参上
  /´ ̄       `!             ヽ  |   u'  , イ
  |  `にこ匸'_ノ            |\_!__.. -'/ /|
  ノ u  {                 _.. -―| :{   ,/ /   \
. / l   | __  / ̄ ̄`>'´   ノ'    ´ {、    \
/ |/     {'´    `ヽ. " ̄\ U `ヽ.    __,,.. -‐丶 u  ヽ
| / ヾ、..  }      u' 〉、    }    `ー''´  /´ ̄ `ヽ '" ̄\
! :}  )「` ノ、     ノ l\"´_,,ニ=-― <´  ヽ{  ノ(   `、  |
l   、_,/j `ー一''"   },  ノ ,  '''''""  \   ヽ ⌒ヾ      v  |
ヽ   _         /   } {. { l ┌n‐く  ヽ/ ``\        ノ
  `¨´    `¨¨¨¨´ ̄`{ 0  `'^┴'ー┘|ヾ    }、 u'   `  --‐r'
701名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 16:45:10 ID:6fmjEQd9
\\   一  万  年  と  二  千  年  前  か  ら  う  め  て  る //
   \\  八 千 年 過 ぎ た 頃 か ら ず っ と カ キ コ し た く な っ た   //
       _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.
     ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡
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  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡
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   し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J.   し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J
702名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 17:15:42 ID:6fmjEQd9
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      ,|::::/::/::::::::|   |   `ー.、    リ::|   
      | /::/:::::::::::| .   |      7   /|::|
     ,イ/::::|:|::::::::::|   t     /"   ノ"|::::|     泥棒ネコは決して許しません
      |'/:::::::|::|i::::::::|::`-..,,_\,..../"__,./::::l:|::::|
      ./::::::::::||:::l:::::::::l::/\~7::::゛~ ̄::::::::::::::|/|:ノ
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   |. | L::/iノー-ー‐-ー-ー‐ -ー-::::::: ~`"
   k tメ/|i i ‖ i ‖ i | i  ‖ハ:::::ノ
  /|7ゝ't::::|丶ー-ー-ー-ー‐-ーー ' ̄
/  |   `し:::::::/〜〜/:::::::::::|〜〜|
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703名無しさん@ピンキー
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    ,/~    `゙ヽ、
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 /     ,∠,彡--ーフフ个\、::::::::^ヽ、
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  /":::::::_,::::::::::ノ:::::::::::::::::|::::::::|::::::::::::::ヽ;ヘ
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レ´ /:::::/::::/::::;/ |:::ハ::::::::::::::::ノ i:::::ト、::::::i::::::|:::i
  /:::::/|:::l::::iヘ、 l:::ハ;::::::.:::::i u |::::i `i:::ト::::::|::::i
  i:::ノ /:::ソi::l  `l:ノ, ヽ::::::::/ /l::ノ ,,..レ'-|::::ハ|ヘ
  l::l |::/ レ、   `ヽ,\| 、/,.レ'"  ,/|::/ノ ハ
  l::l ヽlヽ  `ー---'"    ヾー-ー'"u ,レ-ーイ~i::|    なんですって〜
  `' /:::ノ`、 u  ______,...、  ,/:::::::::::| i::i
   イ::ノ/::i:::`丶、,__i、   --ー〜),/::::::::::i:::::i レ
   レ ij i::::/l:::::::::_,ブ`Τフ ̄ ̄ゞ、::::::::::::ノi:::j
      ヾi ヽ/:|Γ~`メ~"゙j、/|:::::ト、;:::::ノ レ
        ,ハ:::| ム,_从,___,j l::::ノ  ヽ、
        / ノ:::`Τ ̄ ̄丁~::::::|`ヽ、 \
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     '、ソ''"~/::::::/:::::::::::::::::`、::::::::|     `"
        /`ソーt-t-t-t-t-tーイ ヽ