【仮面】オペラ座の怪人エロパロ第6幕【仮面】

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@ピンキー
引き続き天使様の御降臨をお待ちしております。
エロ無し・ギャグ無しを投下する天使様は、注意書きとしてその旨のレスを入れてから
SSを投下してくださいませ。

過去スレ
 第1幕 http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1107434060/
 第2幕 http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1117948815/
 第3幕 http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1127032742/
第4幕 http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1132843406/
第5幕 http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1138109683/


関連
 【仮面】オペラ座の怪人エロパロ【仮面】:まとめサイト  
http://lot666.fc2web.com/
2名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 23:37:02 ID:z8AEM8O3
乙華麗度!
3名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 00:12:36 ID:Er+PFb3Q
乙科零度!
4名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 00:43:24 ID:s0+VXpbO
乙カレード!
5O.G.:2006/04/24(月) 00:45:51 ID:E1zwbipc





6名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 02:32:54 ID:8uDCShwO
スレ立て、乙です。


最初からギャグってのもなんですが・・・投下します。

・地下の修羅場
・クリスのオパーイを、どちらが大きくする権利を得るかということで争う先生と子爵
・著名人、数名出てます・・・
・一部、第5幕793氏の引用あります。スミマセン
71/4:2006/04/24(月) 02:34:28 ID:8uDCShwO
薄暗い地下の湖で、男たちの睨み合いは続いていた。

愛しい恋人を守るため、死をも厭わない勇敢な子爵。
人生のすべてを賭けて愛してきた女を、手放すつもりなど毛頭ないファントム。
そんな二人を、心を痛めながら、見守ることしかできないクリスティーヌ。

状況は、文字通り修羅場である。

「ファントム!彼女を離せ!彼女のオパーイを大きくするのは、この僕の役目なんだ!」
「ばかめ。ムッシュウ、これだけは言っておこう!ここは貴様の出る幕ではない。
貴様は、【仮面】オペラ座の怪人エロパロ第43幕【仮面】くらいまで引っ込んでいるがいい!」
「なに?まずは、第43幕まで続くのかよ!とつっこんでおこう。
しかし、引っ込んでいるのはお前のほうだよ、ファントム!」
ラウルが、”おいきなさい”のシャクちゃんよろしく、ファントムに指先を向ける。
「おのれ、どこまでも生意気な若造め!・・・では、聞いてやろう!
各方面でヘタレ呼ばわりされている貴様に、
クリスティーヌを幸せにできるという保証がどこにあるというのだ!」
ラウルは、余裕のある笑みを浮かべると、一歩前へ踏み出すと、「ふ、いい機会だ!
聞かせてあげよう、ファントム!」とよく通る声で叫んだ。
82/4:2006/04/24(月) 02:35:59 ID:8uDCShwO
「僕には僕の輝ける人生の未来予想図が完璧に用意されているんだ!
僕は、オペラ座のパトロンという立場をフルに活用し、このオペラ座をただの劇場にとどまらせず、
さらに意義のある、世界中でもっとも有名なテーマパークとして育て上げることを保証する!

舞台でのオペラの上演はもちろんのこと、
その他に全20のシアターも用意、そのすべてのスクリーンで映画『オペラ座の怪人』を
長期間上映。
たとえ他の最新作や話題作を上映することになったとしても、最低2つのスクリーンでは
常に「オペラ座の怪人」を上映することを約束しよう!

さらに、パーク最大の目玉ともいえる「地下への迷宮」が安全に楽しめるミステリーなツアーや
「コンゴの森」での灼熱地獄を経験することもでき、ちょっとした
ドキドキヒヤヒヤ体験を味わうことも可能!
その他、マダムたちに人気の店も取り揃えショッピングも思う存分堪能でき、
またプールにジム、温泉、整体、針なども受けることができる、体にやさしい施設もご用意!

こうして、一躍”愛されるオペラ座”のパトロンとなった僕は、各雑誌の表紙を毎号飾り、
時の人となる。美貌の僕を世界中の女性たちが放っておくはずもなく、
”抱かれたい子爵ナンバー1”の座も手に入れる。
だが、頭がいい僕は、こうした浮き世の栄華に溺れることもなく、
何よりも”オペラ座”を大切にすることをけして忘れず、プリマや歌手たちから持ちかけられる、
悩み事や相談にもマメに耳を傾け、必要とあらば、ベッドで励ますことも厭わず、
また地下の湖に夜な夜なナマズをはなしておく情け心も忘れない。

そんな懐の広い、清く男らしい僕に、クリスティーヌは心から感動。
信頼し愛しあう僕らは、反対する親戚一同やごねまくるO.G.すらを完全にブロック!
ついに正式な結婚にこぎ着ける!
僕らは毎晩、愛の巣で睦みあい睦み合いまくる、甘い甘い日々の到来。

そして、そして・・・、最終的にクリスティーヌのオパーイを大きくするのはこの僕の役割だ!」

「・・・くっ、おのれ。”コンゴの森”はパクリではないのか !? 」
93/4:2006/04/24(月) 02:37:50 ID:8uDCShwO
一瞬たじろぐファントム。
そんな彼に、ラウルが迫る。
「ふんっ!・・・・・・お前こそどうなんだ。ストーカーの名に賭けて、
どれほどクリスティーヌを幸せにできるのか、聞かせてもらおうじゃないか!」
気を取り直し、どうにかいつもの尊大な姿勢をとることに成功したファントムは、朗々と声を放った。

「ふ、心配は無用だよ、ムッシュウ。
私には私の壮大かつ華麗な人生設計図ができあがっているのだ!

私は、オペラ”勝利のドン・ファン”でみせたすばらしい演技力をかわれ、
ALW氏のミュージカル”The Phantom of the OPERA”のファントム役に大抜擢され、
一躍トップスターへの道を駆け上がることになるのだ!
ダブルキャストである、マイケル・クロフォード氏の飲み物の中に、毎日欠かさず
声が蛙になるクスリを混入させ続け、その地道な努力の甲斐あって、クロフォード氏は降板、
見事私が全公演に出演。
すべての公演の最終日のカーテンコールの舞台上で、
『実はわたくし、本物の”Phantom”でありました!』といきなりのサプライズな発言!
観客は大興奮と熱狂の嵐に巻き込まれる!
スタンディングオベーション!鳴りやまない拍手!
観客席から舞台の様子を観劇していたALW氏の隣にいたJ・シュマッカー監督を発見した私は、
すかさず彼に潤んだ眸でもって流し目を送り、もちろん投げキッスを添えることも忘れない。

まんまとJ・シュマッカー監督から、”今度、映画『オペラ座の怪人』を撮るんだけど、
ぜひきみに主役をやって欲しいんだ。どうかね?”とホテルの部屋の一室で
両肩をさすりながらのオファーを受ける。
映画のファントム役もあっさりと手中に収まりそうな状況のなか、
しかしプライドの高い私は、これを断固拒否。数日後、あらためて監督のもとを訪ね、
金額によっては出演してやらないこともない意向を匂わせ、完璧なマントさばき、
完璧なファントム・ヴォイス、あらゆる面での完璧なファントム・クオリティ見せ聞かせ、
監督に多額の出演料を払わせること、さらにはどうしてもの場合以外は、触れないで
いただく約束を取り付ける。

こうして無事、映画『オペラ座の怪人』のファントム役も勝ちとり、はりきって撮影に望んだ私だが、、
一番初めに撮った”マスカレード”での偉そうに登場するシーンで、階段の最上段から一番下まで落下!
奇跡的に右足の小指の骨折だけで済むのだが、今後のトップスターとしての活躍を見据え、
代役として心の友であるバトラー氏を猛烈にプッシュしつつ、大事をとってまさかの降板を余儀なくされる。

失意のなか、ふて寝をする私。男の哀愁漂う私の姿に、胸がきゅんとするクリスティーヌは
『私、私、マスターが好きなの』と泣きながら突然の告白、そして、キス。
私のファーストキスを奪うのは、まさにクリスティーヌなのだった。
私にメロメロとなったクリスティーヌと、昼夜を問わず情熱のプレイに励むことになり、
私はさらに多忙な日々を送ることになるだろう!

もうお解りかな、子爵!クリスティーヌのオパーイを大きくする役目は、この私なのだ!」

「・・・ファントム!!お前・・・、どこまで汚いんだ・・・!」
「うるさい! エロパロ板793氏のいうとおり、貴様は水牢で勝手に溺れておれ・・・・・・!」
104/4:2006/04/24(月) 02:40:06 ID:8uDCShwO
怒りも頂点に達し、ついにファントムに殴りかかるラウル。
激しくもみ合いうふたりだが、暗黙の了解なのかお互い髪を掴むという暴挙にだけはでない彼らに、
なぜだか目頭が熱くなる。
彼らの闘いは、現時点では互角といえよう。
だがやがて、ラウルがファントムにバックドロップをしかけたところで、クリスティーヌがとうとう叫び声をあげた。

「おねがい!ふたりとも、もうやめてーーー。
私の、私の美乳のためにそんなに争わないでぇぇぇぇぇ・・・・・・!」

男たちの視線が、一斉にクリスティーヌに注がれる。

「(いま、び、びにゅう・・・て言ったかい、ロッテ・・・・・・)」
「(書物によると、お前のそれは、むしろ、ひんにゅうではないの、か・・・)」

水を打ったように、静まり返る3人。
クリスティーヌが、一筋の涙を流す。


この激しすぎる地下での修羅場を、少し離れたところからひっそりと覗いているひとりの紳士、
すなわちG・ル○ー氏は低く呟いたのだった。

「おまいら、全員氏ね・・・_| ̄|○ 」


─終わり─


11名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 08:38:02 ID:gIYay9oi
>マイケル・クロフォード氏の飲み物の中に、毎日欠かさず
声が蛙になるクスリを混入させ続け
妙な方向に前向き…w
12名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 09:46:58 ID:6pcFGIhv
ちょw どんな修羅場コレwww
一気に読んだよ 天使様!
13名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 11:22:08 ID:gdR7wOja
テンポが良くて面白くて、私も一気に読んだよ。
それ故かドリフのコントをイメージしてしまいました。
天使さまお許しをw

おっぱいは二つあるから仲良く半分づつ受け持ったらどうだろうね?w
14名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 12:09:37 ID:38XScUZx
GJ!GJ!ww
>抱かれたい子爵ナンバー1
妙にツボったよ!w
15名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 13:22:20 ID:PQZ0P0Hn
あれだ、ホラ
びにゅう=微乳
>必要とあらば、ベッドで励ますことも厭わず
ってオイw
16名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 19:40:18 ID:E1zwbipc
とうとうG・○ルー氏もネタに・・・
あの世で、遠いジャポンのエロパロ住人のことをどう思ってらっしゃるだろうか
GJ!自分もテンポ良いギャグが大好きだ
17名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 15:57:19 ID:akM359DE
必要なくなった舞台道具とかで造形が気に入ったものをえっちらおっちら
運び込んでいるのかも。そのうちハンニバルの象とかも加わるのかもしれない。
スワンベッドは造形的に、ゴンドラの代わりに水路に浮かべて欲しかった。
ゴンドラは他の小道具同様、ファントムの髑髏の意匠なんだよね。
…髑髏ベッドとかも隠してあるのだろうか。(棺桶は別として)
1817:2006/04/25(火) 15:58:27 ID:akM359DE
すみません、旧スレに投下しようとして誤爆しました
本当にごめんなさい_| ̄|○
19名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 02:32:19 ID:V4zihCOA
やばいほどツボったw
挫けるな原作者様! あなたとあなたの作品はとっても愛されていますよ!
20名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 19:36:52 ID:EPgwpuBw
およよ
21名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 23:42:41 ID:iQ3M09vl
神タマ どうかそろそろプリーーーズ
22名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 23:45:05 ID:B2xazHXL
天使サマ、おながい
23名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 00:37:54 ID:lnmrEMP4
ファントム×クリス
・既に普通にそういう関係
・ハンニバルのリハ後
です
241/4:2006/04/28(金) 00:38:37 ID:lnmrEMP4
「では、カルロッタの代わりに今夜は君が歌ってくれ」
そういうと支配人はクリスティーヌの肩をたたいた。
「支度をしたまえ。マエストロ、その間にリハーサルの続きを…マダム・ジリー!」
「ええ、バレエの続きから。クリスティーヌ、手伝うから先に楽屋で待っておいでなさい」
促すマダムジリーに頷いて、クリスティーヌは舞台の脇へと走った。
すれ違いながらウインクするメグに微笑みで返し、胸に手を当てる。
まだ動悸が治まらない。こんなことになるなんて…本当に舞台で歌えるなんて…!
とにかく1人になりたくて、袖から舞台の後ろへ繋がる通路へと入り込み
幾重にも重なる幕の間で、ほっと息をつく。

袖幕、場面転換用の幕、背景が描かれた紗の幕。
舞台のざわめきはかすかに聞こえるが、外界から遮断されたような
不思議な感覚に、クリスティーヌは瞳を閉じた。

微かな物音。
目を開いた途端、眼前で闇が大きく踊る。
白絹の裏地が閃き、そして少女はその闇の中に囚われた。
「…天使さま…!」
一瞬何が起きたか理解できず、クリスティーヌは低く呟く。
背にぴたりと当たった暖かいものが、くつくつという笑いに合わせて小さく振動した。
「マスター…」
どうやら自分は背後から師のマントの中にすっぽり包まれたたらしいと判り、
クリスティーヌは息を吐いた。
「あの、私、今夜の舞台で、」
「知っている」
居心地悪く捩る腰を、皮手袋の掌が押さえる。
「さあ、マントを持っていなさい」
有無を言わさぬ口調に、暗闇の中手探りで
内側からマントの前を掻き合わせた。
252/4:2006/04/28(金) 00:45:02 ID:6HfJW+9B
「…よろしい」
そう言うとファントムは低く笑った。
暗く暖かい幕の中で、自分の息遣いが大きく聞こえる。
耳元で革の鳴る小さな音がして、滑らかな手袋の指が耳に触れた。
「あの…?」
身動ぎを肩に手を置き封じられ、指はそっと耳朶を撫で、耳飾を外した。
そのまま頭につけた飾りも抜き取る。
からんと金属音を立てて、それは足元に転がった。
巻毛を梳きながら背中に降り、衣装を止めつけている紐に手を掛けるに到り
初めてクリスティーヌは抗議の声を上げた。
「マスター…!」
「静かに、クリスティーヌ!」
押し殺した声に今いる場所を思い出し、息を飲み込む。
「止めて、嫌…」
身を捩るが手は止まらず、重たい音とともに上半身を
覆っていた衣装は、小さな下着と共に床に落とされる。

手は両のわき腹をなで上げ、乳房を持ち上げるように柔らかく弄る。
思わずマントを内側から押さえていた手を離しそうになり、慌てて掴みなおした。
「お願い、マスター…おねが、い…あぁ…」
革の感触に先端を摘み上げられ、擦り合わされ、懇願は吐息となって消える。
その隙に、悪戯な手の一方は、下半身を覆う衣装の留め金に手を掛けた。
ほんの一瞬で魔法のように、スカートは足首に絡んだ。
胸を握るように弄ばれ、膝ががくがくと震える。
握り締めたマントに縋るように掴まり、クリスティーヌはいやいやをするように頭を振った。
「やめて…やめ…」
か細い声をタイツが引き裂かれる音がかき消す。
細切れになった布切れが残らず足元に散り、少女が生まれたままの姿になったとき
それまで無言だった男が口を開いた。
263/4:2006/04/28(金) 00:46:37 ID:+kk6XdgC
「ならばここで止めようか?」
「え?」
男の問いに思わず顔を上げる。
「さあ、お前の舞台に戻るがいい」
「い、嫌あ!」
急に身体を包んでいたマントを奪い去られる。
文字通り身ひとつで、急に広い場所に投げ出されたクリスティーヌは
思わず悲鳴を上げた。
「そんな声を出すと、誰かに聞きつけられるぞ」
身体を隠そうと巻き付け掛けた腕を取り、背後の緞帳に押し付ける。
緋色のそれは、少女を抱きとめるようにその身体を包んだ。

「ひ…」
脚の間に入り込んだ長い指が水音を立て、
そこから頭の天辺まで一気に走った刺激にクリスティーヌは体を強張らせた。
ベルベットの感触越しに背に硬いものが当たる。
大道具だろうか、そのままその何かに背を預けた。
「闇の方が良いなら目を閉じることだ」
囁きながらファントムは腿から膝へと掌を滑らせる。そのまま膝裏を支えると、
クリスティーヌの片足を自らの腰に引っ掛けた。
硬く強張ったものが柔らかい合わせ目に押し当てられる。
「そうすれば、ここが闇の中だ…」
大きく広げられた身体の中心に、ず、と熱い塊が入り込んできた。

「あ、あ…はぁッ!」
不規則に突き上げられて頭を仰け反らせる。
高い天井の暗い上部には張り巡らさせた梁やロープ。
揺すり上げられるたび、天と地を繋ぐような幕の重なりがゆらゆら揺れる。
首筋も胸元も、執拗に這い回る唇と舌で既にひんやりと濡れている。
熱く火照った肌に、その感触が妙に心地いい。
強く突かれ、身体の脇で踊るマントと真紅の幕を一緒に握り締めた。
274/4:2006/04/28(金) 00:47:10 ID:+kk6XdgC
ぎゅっと瞳を閉じる。
2幕の始めの音楽が、舞台袖で出番を待つ踊子たちのさざめく声が、
すぐ後ろの通路から道具を運んでゆく足音が。
遠くのようでいて妙に近くに聞こえてくる。
「う…く…」
クリスティーヌは押し殺した喘ぎを漏らして、ファントムに縋る腕に力を込めた。
意思とは裏腹に、男の動きに合わせて腰は勝手に跳ねる。
浅く深く引き抜かれると、引き止めるかのように襞の総てがその強張りに絡みつく。
おくり込まれる速度が、終末に向けて徐々に早まってゆく。
やがて一際深く内部を抉られ、同時に強く腰を抱き寄せられた。
「う、ああぁぁぁ…!」
抱きすくめられたまま、クリスティーヌははびくびくと痙攣した。
目を見開き、天井を見つめながら、
蠢く内部で男が、脈打ちながら欲望を吐き出すのを感じていた。

身体を縛めていた腕から解放され、クリスティーヌはずるずると崩れ落ちた。
涙が滲む目蓋の裏で、緋色の幕が波のように揺れる。
ぼんやりと蹲る身体を、ふいにマントがふわりと覆った。
身を屈め、クリスティーヌの肩を抱きながら
ファントムはその耳元に歌うような言葉を流し込む。
「お前のドレスは楽屋に用意してある。
それを着てお前は舞台の中央で光を浴びるのだ
上手に歌えたら…その後、お前を迎えに行こう」
「マスター…」
見上げた瞳に素早く口づけすると、
瞬きした隙に男の姿は、舞台の闇に溶けて還った。
28名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 01:53:30 ID:ZGcsR6sx
>>23
天使様キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
剥くだけ剥いといて「舞台に戻れ」なんてヒドスw
鬼畜マスターいいねー23エンジェルGJ!!

>既に普通にそういう関係
なんか妙にワロタw
29名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 16:49:53 ID:6NL4OJCf
>>23
待ってました!!!
 
    -ーー ,,_    
   r'"      `ヽ,__       
   \       ∩/ ̄ ̄ ヽつ
  ノ ̄\ /"ヽ/ "   ノ   ヽi     ありがとうございます!
 |  \_)\ .\    >  < |\  
 \ ~ )     \ .\_  ( _●_)\_つ  
    ̄       \_つ-ー''''

……上手に歌えたら…その後、お前を迎えに行こう」……
って事は…続きを期待してもいいんですかなww
30名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 21:39:57 ID:bMPQ1apO
>23 GJ!!
マントに包まれるに萌え。
マスター励ましに来たのかと思いきやいたしてしまうにさらに萌えw
31名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 21:57:45 ID:AAslFq7B
>23 GJです!
真っ裸のクリスたんは
楽屋までどうやって戻ったのだろう
気になる…
もしかして、マダムが全部仕組んだ?
32名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 22:05:17 ID:N8DG2PgI
>>23
ちょ、マスター唐突すぎw
エロエロしくて大変ごちそうさまですた(;゚∀゚)=3
>>31
最後でファントムのマントに包まれてるyo
でも下が素っ裸じゃ、楽屋に戻るまでハラハラし通しだろうな…
3331:2006/04/30(日) 01:27:00 ID:r9sZnV4z
マスターはそこまで鬼ではないのだね
てっきり、クリスの耳元で囁くのに屈んだら
マントが被さっただけで、その後はマントを翻して
去っていったのだと思ってました(放置かよ!って一人突っ込み)
自分の読解力の無さ暴露…大変失礼しました
34名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 20:54:53 ID:D7XITo6j
さて今日の「オペラ座の怪人エロパロ」は
○○○○○○
でございまぁす。

ジャン!ケン!ポン!ウフフフフ〜♪
35名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 00:57:09 ID:uVLkhBzf
マスターはンガックック世代だ
36名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 06:49:28 ID:KKM/PVoD
あげ
37名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 12:35:55 ID:isx7ttQU
ttt
38名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:17:17 ID:l4UnsTfS
さみしいのう。。。
39名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:22:20 ID:cYM1NK71
えらい上のほうにあるからびっくりしたw
天使様方も住人の皆様方もお休み中かねぇ
40名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:54:22 ID:NZla1boc
あれ?
41名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 07:32:59 ID:HZdNYg3q
ファンクリのバカップル風ssが見てみたいと言ってみるテスト
42名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 22:10:03 ID:t5IAYF6r
見たい…ってかぜひぜひ読みたいっすねぇ〜

今夜こそ御降臨…!!このスレでは珍しい5日間無投下だし…
ということで丸出しでお待ちしております
43名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 06:45:51 ID:Et5PczOL
えらい時間だがパソコンの調子が良いうちに投下。
ずいぶん間を空けてしまいましたが、前スレ644からの続きです。
44ファントム×クリス(私の望み)1/9:2006/05/05(金) 06:47:33 ID:Et5PczOL
「ここはなにかしら…」
時折ひとり言を呟きながら、クリスティーヌは地下の私の棲家の隠し部屋を興味深く
覗いて回っていた。
『どの部屋も自由に見て回っていい。ここにあるものは何でもお前のものでもあるのだから』
と伝えておき、今私はオルガンの前を離れられないでいる。
そう私にいわれていても、クリスティーヌは各部屋の入り口でそっと中を覗き
そしてちらっと私の様子をうかがい見る。
そうして私の反応を待っているクリスティーヌに私が気づき、『入りなさい』とうなづいて合図してやると
にこっと笑い、嬉しそうに部屋に入っていく姿はあまりにも可愛くて、思わず口元がほころぶ。

クリスティーヌは頻繁に地下の私の棲家を訪れてくれていた。
まさかこれほどしょっ中私に会いに来てくれるとは思わず驚いているのだが、
私も仕事に興が乗ったり、時折不在にする時も有り得るので存分にかまってやれない事が大変悔しい。
なんて贅沢なことだろう、大事な愛するクリスティーヌがせっかくこのような私のもとに
会いに来てくれているというのに。
それにもうすぐイル・ムートの公演が始まるというのにこんなにも度々地下を訪れ、
リハーサルにはきちんと参加しているようだが影響はないのだろうかと心配にもなる。
しかし長い間夢に見てきた私の望みのクリスティーヌと一緒に過ごす、このような幸せな時間を
どうしても手放せなかった。

「クリスティーヌ、お茶を淹れてくれないか」
「はいマスター」
お茶を飲みながらでも部屋の周りや食器に家具まで、すべてのものが気になるのか
クリスティーヌはカップを手にしたままキョロキョロと落ち着かない。
長い間マスターと呼び慕っていた「音楽の天使」が、実は生身の人間であることは
この子は想像もつかなかったのだろうか?
それともまだお前の目の前にいる私は、父親の魂か音楽の天使かと信じているのか、クリスティーヌ?
私はずっと前からお前をひとりの女性として愛してきたのだよクリスティーヌ…
45ファントム×クリス(私の望み)2/9:2006/05/05(金) 06:49:13 ID:Et5PczOL
私の話をねだるクリスティーヌの手を引きながら湖のほとりを散歩したり、
鉛色をした水のうえを小舟で漕ぎまわったりして私たちは密かに幸せな日々を過ごした。
「この湖はセーヌ川に続いているのかしら」
「そうだ。もし水かさが増えたりしたらセーヌの水底に流されてどこに出るかわからんぞ。
 海の底かもしれないし」
「ね、マスター、海の底をイギリスまで歩いて行けたら素敵だと思いませんか」
「ああ海底トンネルのことかね。もう一年ほど前からそんな計画があるようだな。
 はたまた夢のような話だ」
私が幼い頃に囚われていたサーカスはヨーロッパ諸国を巡業し、イギリスにも立ち寄ったことも
あったようだった。
しかしどこの地域に行っても私は見世物であることに変わりはなかったので
外国の良い思い出などというものはなかった。
フランスであっても、クリスティーヌと出会えたこと以外何ひとつ幸せなことなどないのだ。
私は他国に行きたいなどと考えたりはしたことはなかったが、クリスティーヌともし、
もしも一緒に暮らすことが出来るのならそれが地の果てであろうともついて行くつもりだ。

クリスティーヌは私の棲家にあるものには何にでも興味があるようで、
壁に貼った彼女を描いた絵を一枚一枚見、調度品を手にとって熱心に眺めてみたりしていた。
そして特に、オペラ座の舞台を再現してみた模型やシャンデリアのある作業台が気に入ったようで
椅子に腰掛け私のペンで何か書いてみたり、鏡や人形に至るまで珍しげに触って遊んでいた。
「やだ頭がとれちゃった」
「ああそれはとれるように出来ているのだ」
人形の頭を持ったまま笑い転げるクリスティーヌが愛しくて
私は後ろから両肩を抱き、頬にそっと口付けた。
まだクスクスと笑う彼女がやや振り向き見つめ合うと目を閉じてくれた。
そっと唇に口付ける。
「ん…ふふっ」
私に口付けられながらもまだいたずらっぽく笑っているクリスティーヌが可愛い憎くて、
少しばかり罰してやりたいような気がして両手で彼女の頭を抱えさらに深く口付けた。
初めて舌をこの子の口の中に押し入れ、頬の裏に歯の表や裏を舐め回した。
クリスティーヌはもう笑ってはいなかった。
46ファントム×クリス(私の望み)3/9:2006/05/05(金) 06:50:17 ID:Et5PczOL
「んんん…」
苦しそうに眉間に皺を寄せながら私の腕を掴んだ手は震えている。
苦しさに放してほしいのだろう、しかし今の私にはそのような気など毛頭なかった。
ガタンと椅子から立ち、私の肩や胸をたたく彼女をさらに力を入れ強く抱き締め
作業台に押し付けて口の中を犯しつくした。
クリスティーヌが微かに呻き声を出し涙を滲ませたところでようやく唇を離して
そっと胸に抱き締めてやった。
少し怯えて体中が震えている…
次の瞬間またクリスティーヌは私の胸を押しやって体を放そうとした。
なぜなら己の腹に、私の下半身で固くなったものを感じとったからだろう。

「いやっ!」
くるりと私に背を向けたところで正面は作業台だ、逃げられるわけがない。
しっかりと私は彼女を後ろから羽交い絞めにし力の限り抱き締めた。
「いや…マスターいややめて…怖い…」
「怖くないよ…クリスティーヌじっとして…」
背後からうなじに口付け舌をねっとり這わせ、耳を甘噛みすると少しずつ
抵抗する力が抜けていくようだった。
しかし小さい手にはまだ力がこもっているようで、作業台の上に散らかったままの紙を
くしゃくしゃにして握り締めている。
無防備になっている胸元に両手を這わせた。
「っいやっっ!!」
そんな抵抗の悲鳴などかまわず白いブラウスの下から両手を差し入れ
直に彼女の柔らかな乳房を揉みしだく。
まだ膨らみきっていない、しこりが残る幼く硬い乳房を大事に優しく、
徐々にブラウスをたくし上げながら決して痛みを感じさせないように揉んでやる…
クリスティーヌの背中にぴったりくっついている私からは彼女の表情や柔らかな乳房を
直接見ることは出来ないがそのかわり、
作業台に置いている二つの鏡にクリスティーヌの顔が映って見えた。
ぎゅっと目を閉じ、しかし唇は震え何か言いたげな様子ですこし開けたまま
快感を感じているようにも見えた。
時折ちらりと肌色に近いピンク色の蕾みが見える白い胸元に私はもう自分を抑えることは
出来なかった。
47ファントム×クリス(私の望み)4/9:2006/05/05(金) 06:51:14 ID:Et5PczOL
「ああマスター…マスター…いやぁ…」
時々可愛らしい花実をそっとくりゅくりゅと捏ねて愛撫してやると机上に垂れた頭を
激しく左右に振り、切ないため息を吐きながら私を呼んでくれる。
クリスティーヌは作業台に手をついて髪を振り乱して快感に耐えていたようだが、
彼女の顔の真下にある紙のインクが何かの水気で滲んだ。
それはクリスティーヌの涙だった。
胸元からそっと両手を抜き、激しい息を吐くクリスティーヌの両肩を撫でてやる。
「クリスティーヌ、愛しているよ…」
涙をこぼしこわごわと私に振り向くクリスティーヌに優しく声をかけてやる。
「ああマスター…」
しかし私は左手でウエストをしっかり捕まえ、右手で
ロングスカートをまくり上げ小さい下着にそっと手を差し入れた。
「やあっ!いやっいやあ!!」
茂みをしばらくかき回した後そっと奥へと手を進ませた。
「これは驚いた…」
そこは雫がぽたぽたと落ちるかと思えるほどぐしょぐしょに濡れており
私の手を悦ばせた。
「まだまだ小さい女の子だと思っていたのに、
 いつの間にこんなに素晴らしい女性になっていたんだね…?
 私は全然知らなかったよ…」
「いや言わな…恥ずかしい…」
「どうして恥ずかしいのかね?私は嬉しいんだよ、ん?」
「やめて…いやあマスター…こんなこと嫌…嫌です…
 お願いもう許し…っ痛い!」
「ああいけない…!すまなかったねクリスティーヌ、
 もうここは触らないよ…」
私を感じてくれているという嬉しさについ彼女の中に指を埋めようとしたが
ひどく痛がらせてしまった。
拘束していた左手でまた乳房を揉んでやり、痛みを感じさせてしまった死に値する右手で
そっと内腿を撫で上げてやるとまた切ないため息を漏らした。
48ファントム×クリス(私の望み)5/9:2006/05/05(金) 06:52:48 ID:Et5PczOL
「痛くないところを触ってあげようか…?」
下着をそっと下ろすと驚き振り向いて、
「いやあマスターやめて!それだけは…!」
下ろされまいと自らも下着に手をかけ私の手の阻止をしようとするが、
「じっとしていろクリスティーヌ」
私の命令には逆らえない可哀想なクリスティーヌは、自分のつけている衣服から手を
放すしかなかった。
下着を膝まで下ろしたところでスカートをめくると白い弾力のある可愛い尻が目の前に現れ
その美しさに目眩がした。
両手で撫でながら口付け、舌を這わせた。
「いやいや…」
「クリスティーヌこちらを向きなさい」
なかなか私の言うことを聞かない彼女の腰を掴んでやや乱暴に体を私の正面に向かせた。
「スカートの裾を持っていなさい」
足から抜いていない膝下で止まったままの下着は足かせの役割をし、スカートの裾を持たせた
クリスティーヌは綺麗な姿を、自分の足元に跪いている私の目の前に晒し
動くことは許されなかった。
スカートの裾を掴んで噛み、羞恥に震える可愛いらしい姿を見せてくれるクリスティーヌに
女の悦びを与えてやりたい。
「綺麗だよ、クリスティーヌ…」
わずかに開いた足のすき間に手を差し入れ尻を撫でてやると
「きゃっ!」
艶かしく尻をうねらせ、腰を私の顔面に突き出す格好となった。
「そうかクリスティーヌ、そんなに私に可愛がって欲しいのか…」
「いやっ違っマ…!」
クリスティーヌの返事など待たずに私は彼女の蕾芽に吸い付いた。
「ひっ!ああっ…!」
彼女はわずかに腰をひこうとしたが私の唇と舌は離さなかった。
49ファントム×クリス(私の望み)6/9:2006/05/05(金) 06:54:01 ID:Et5PczOL
「じっとしていろと言っただろうクリスティーヌ…歯をたてるところだったぞ…」
彼女の腹の下でそう呟くとわずかにすすり泣く声が聞こえたが私は構わず
舌の表でザラザラと何度も舐め上げ、舌の裏でねっとりとしつこく離れずいたぶってやる。
クリスティーヌは既にスカートの裾を離し、私の頭髪に組み入れた指に痛いほど力を入れ、
腰を動かさないようにじっと耐えていた。
「クリスティーヌ、辛いか?」
私の頭上にかかった裾を捲くりながら、そう優しく腹の下から声を掛けてやると
こくこくと涙を流しながら頷く。私は立ち上がり、
「では今度は前を開けなさい」
「ああ…」
またも私の言うことをなかなか聞かないクリスティーヌの手をブラウスの裾に誘導し、
先程さんざん愛撫した幼い膨らみ晒け出させる。
「逝ったことはあるのかクリスティーヌ?」
まだ吸いたてると痛みを感じるであろう硬く勃起した乳首を交互に舐め絡めてやり
片方も指の腹で丸くゆっくりと止めることなく愛撫する。
すっかり濡れたもので敏感になっている蕾芽への愛情も忘れない…
噛み付くことはないがしかし太い指先で丁寧に可愛がる。
「言いなさいクリスティーヌ…」
「………」
「クリスティーヌ?」
がくがくと全身を震わせクリスティーヌは達した。
50ファントム×クリス(私の望み)7/9:2006/05/05(金) 06:55:23 ID:Et5PczOL
全身の力が抜け、とても立ってはいられない様子の細い体を支えてやり、
座っていた椅子を寄せ両腕と頭をもたれ掛けさせる。
クリスティーヌは椅子に突っ伏し上下させていた肩をやがて震わせ、激しく泣き出した。
「クリスティーヌ…」
そっと肩に手を掛けるとビクッと怯え、身を捩り頭を激しく振って拒絶の態度を示した。
このようなことをされて喜んでくれたなどとは思わなかったが、
クリスティーヌの痛々しい様子に後悔が私を襲う。
「クリスティーヌ…愛している…
 …すまなかった…」
泣きじゃくるクリスティーヌにそう、かすれた声をかけるだけで私は必死だった。
限界の近い自分の中心に熱を持ちしかしその場にはいられず、
足早にオルガンの前を通り過ぎ黒いカーテンをめくり岩部屋に入ると自ら欲望を放った。

惨めな気持ちで身支度を整えると、ふと私がクリスティーヌの為に誂えた
ウェディングドレスが目に入る。
クリスティーヌは今度こそ私を許さないだろう。
まるで娼婦のような扱いを彼女にしてしまった自分を心の底から呪った。
そしてクリスティーヌの愛を得られたと勘違いをしていた自分を嘲笑った。
そっとベールを手に取ってみる。
このベールをクリスティーヌの小さい頭に被せ、こちらを向かせて指輪をはめる日を
どれほど長い間夢に見てきたのだろう。
そんな現実になりつつあった夢を自分の手で叩き壊してしまったと今、
初めて気が付き岩壁がぼやけ出した。
「マスター…」
クリスティーヌが泣きはらした赤い目と少し腫れた顔で部屋の入り口に立って
カーテンを握り締めこちらをうかがっていた。
51ファントム×クリス(私の望み)8/9:2006/05/05(金) 06:56:35 ID:Et5PczOL
おそらく、地上に帰るから舟を出し送って欲しい、といいたいのだろう。
そしてもう二度と私のもとを訪れることはないだろう。
クリスティーヌの紅潮した愛らしい顔を見ながら、寂しく無理に微笑むと
ついに涙が目から溢れ出し頬を伝い出したのでベールを顔に当てた。
「マスター…
 マスターそれ…
 …汚れたら、もう被れませんわ…」

ベールごと私はクリスティーヌを抱き締め、
「ごめん!ごめんよクリスティーヌ…!!
 すまなかった、本当にすまなかった…!もうしないよ、嫌がることは決して…」
しかしクリスティーヌは私の胸に頭を押し付け左右に振り続けた。
「マスター…怖かった…マスターが怖かったの…」
「クリスティーヌ…」
「…それだけ、それだけなのマスター…」
「クリスティーヌ…」
私はまだ涙を流しながらクリスティーヌに優しく口付けた。
私は何度も抱き締め直して、まだ宝物を失っていないことを確認した。
「マスター…あの、泣いちゃったから、あのね…」
「美味しいお茶を淹れてあげよう。
 座って待っておいで、こちらにおいで」
クリスティーヌは今までの中で一番可愛い笑顔を見せてくれた。

いつも通りまた次に会う約束をした後、クリスティーヌは鏡の向こうの世界に帰って行った。
52ファントム×クリス(私の望み)9/9:2006/05/05(金) 06:58:03 ID:Et5PczOL
棲家に戻った私は散らかった作業台に何気に足が向いた。
先ほどクリスティーヌが手にとっていた私のペンが丁寧に置かれているのが目に入る。
そばには、くしゃくしゃになっている紙が何枚かあった。
何気にすっとその紙の皺を伸ばすと、私の字ではない文字が書かれていた。
『マスター』
私はまるで彼女の頬でも撫でるかのように優しく何度も何度もその字を指の腹でさすった。
何度も何度もいつまでも…
クリスティーヌが書いた字を私はいつまでも撫で続けた。

数日後の夜、私はパリ市内から用を済ましオペラ座を目指し街を歩いていた。
地下にまで聞こえてくる銃声が街中に響き渡りわずかな不安を抱きながらも、私はクリスティーヌに贈る
大事な指輪を懐に抱え帰途を急いだ。

<続く>
53ファントム×クリス(私の望み)作者:2006/05/05(金) 06:59:52 ID:Et5PczOL
読んでくれてありがとう。
さあ寝よ
54名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 10:50:21 ID:KTZ4gywc
うわァお!!!久しぶりの投下!!!
    -ーー ,,_    
   r'"      `ヽ,__       
   \       ∩/ ̄ ̄ ヽつ
  ノ ̄\ /"ヽ/ "   ノ   ヽi     ありがとうございます!
 |  \_)\ .\    >  < |\  
 \ ~ )     \ .\_  ( _●_)\_つ  
    ̄       \_つ-ー''''
まだ男を知らないクリス……本番が楽しみww
次回作も期待してます♪
本当にありがとうございました
55名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 21:49:27 ID:T0ukef1Z
>53
おぼこいクリス可愛い *´д`)
そりゃ先生もハァハァするさ
次回はいよいよプロポーズですか?
56名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 23:18:32 ID:jzKfOMx2
>53GJ!
一人の男としてクリスを愛する先生、それ故クリスにハァハァする先生
がかっこよくてエロくてイイ。
クリス、先生を嫌いになってないようで、ほっとした
57名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 23:29:25 ID:JNcC6N5d
わーいGJGJ!!
続き待ってました!
お互い感情表現が不器用だけど次こそは!
58名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 02:47:01 ID:CyHBNmBY
>>53
GJ!投下ありがとう!
優しいマスターですね。続きを楽しみに待ってます!
59名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 10:41:57 ID:uXA2WLnf
どの作品の天使様かと思ったらプロイセン軍の天使様でしたか!
待ってました。早朝からまりがd天使様GJ!

ほかの連載の天使様方も投下しないかなwktk
60名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 23:12:04 ID:hl+bLAre
ここってこんなに人いなかったけ?!
6153:2006/05/06(土) 23:40:46 ID:QDaiAj+O
レスありがとう、ゆっくりマッタリ話を進ませていくけど
次回もまた読んでください。
他の連載中の方の続き、自分も本当に待っています。
もう何ヶ月も気になってる
6260:2006/05/06(土) 23:43:31 ID:BSO1TINv
>>61
おッッッ作者様ハケーン♪

ぜひぜひ読ませていただきます!!っつか自分粘着……orz
63名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 00:18:05 ID:YBV0/AWv
…連載ではないのですが、前スレ861のその後
ファントム×クリス
ネタ、エロは未遂
ファントムは相変わらずチェr(ry
641/3:2006/05/07(日) 00:18:41 ID:YBV0/AWv
記念すべき夜になるはずだったあの夜。
その予想を超えた事態は、万能のジーニアスであるファントムを
一時は完膚なきまでに打ちのめした。
しかし、地下での長年にわたる1人住まいを可能たらしめた
ポジティブ・シンキングでもって、彼はあの出来事にひとつの結論を見出していた。
すなわち、クリスティーヌが目にしたアレは、起動する途中のものである。
よって完全に臨戦態勢となった暁には彼女の感想もまた、異なるものとなるはずだ。
もちろん関連書籍は貪るように読んだし、脳内シュミレーションも完璧。
今後カワイイだの小さいだの柔らかいだの、え、もう終り?あーあがっかりだの言われても
彼女の言葉は無邪気さゆえのもの、動ずる必要はない。
…いや、がっかりはちょっとあれかもしれないが、とにかく動じない動じない。
マダム・ジリーのなぜか憐れむような視線を感じながら
ファントムは2度目の機会を招くべく、クリスティーヌに真紅の薔薇を手渡した。

首尾よく地下に導き、首尾よくベッドに横たえる。
ここまでは前回も上手くいった。
問題はここからだ、と心中深くヤる気を新たにしながら愛しい娘を見つめる。
「マスターごめんなさい、この間は、あんなこと…」
謝りかけた唇を塞ぐようにくちづける。
「いいのだ、クリスティーヌ。お前が謝ることではない」
「でも…」
すまなそうに寄せられた眉に、一層愛しさが募る。
ファントムは柔らかな頬にそっと触れた。
「痛むかもしれない、少しだけ我慢してくれるね?」
「はい、天使さま」
クリスティーヌはこくりと頷いた。
多少イタくとも、音楽の天使が導いてくれるのなら怖くない。
それに、と彼女は思った。
それに今夜は、とっておきの手があるのだ。
652/3:2006/05/07(日) 00:19:38 ID:YBV0/AWv
あの翌朝無言で船を操り、無言で部屋まで送ってくれ、
目をあわせようとしない師に別れを告げて、
クリスティーヌはすぐに母代わりの教師の部屋を訪れた。
総てを話した後マダム・ジリーは沈痛な面持ちでため息をついた。
「何を見ても、出来るだけ口を噤んで、何もしないでおくことね、
クリスティーヌ…もし次があったら、ですけど」
そう言われはしたが、クリスティーヌは何もしないつもりはなかった。
不快な思いをさせたのだから、今度は少しでも喜ばせたい。
それは当たり前の思考の流れだし、自らの経験のなさが招いた先の事態であるから
今回はその方面に詳しい人物に助言を仰ごうとするのもまた、当然といえば当然の流れだ。
しかし彼女は、参考にする人物の選択を決定的に誤っていた。

メグ・ジリー。
一番の親友で、同年代の中では飛びぬけて経験豊富。
クリスティーヌがこのとき彼女を思い出したのは、自然な思考の流れであった。
しかし彼女は名高きマダム・ジリーの娘。
現役プリマ時代には、踏まれたい脚ナンバーワンの座を
5期連続で勤めたマダム・ジリーの。
幼い頃から、崇拝者を文字通り足元に傅かせる母を見て育ったのだ。
その傾向を色濃く受け継いだ娘は、親友の主張を聞いてその唇を開いた
「鞭、かしら」
思案気に金髪を揺らし、メグは呟く。
「鞭?」
「そう、鞭でね、打つの」
「……痛いんじゃないかしら」
乙女のもっともな疑問に、教師役の娘は首を横に振った。
「それが段々気持ちよくなるみたい。
特に年上で高い教養のある男性ほど、そういうの喜ぶのよね。
なんていうのかしら、小娘に翻弄される屈辱感というか、
新しい自分への開放感というか…」
663/3:2006/05/07(日) 00:20:36 ID:YBV0/AWv
友人の台詞の後半を聞き流し、クリスティーヌは考え込んだ。
年齢は高い。教養も豊か。条件はばっちり合っている。
「最初は嫌がったりするけど…悦んでるのは見れば分かるわ。
ふふ、男性の身体は正直ですもの」
含み笑いを漏らすメグの顔は自信に満ちており、
クリスティーヌの不安を拭い去るのに十分の力強さだった。

ファントムが一度身を起こし、衣服を解き出したその隙に
クリスティーヌは視線をせわしなく動かした。
勿論寝室に鞭は無い。
鞭はないが…ふとサイドテーブルの上に一巻きのロープを見つけた。
あれなら鞭の代わりになるのではないだろうか?
クリスティーヌは手を伸ばすとそっとロープを手に取った。
2〜3重に束ねて端を握ってみる。うん、いい感じ。
「クリスティーヌ?」
丁度総てを脱ぎ終えたファントムは、覆いかぶさるようにクリスティーヌの顔の両側に手を突いた。
クリスティーヌはファントムの瞳を見上げる。
さて、どこを打てばいいのかしら。顔から首筋、鎖骨から胸、腹。
徐々に視線を下げてゆき、終にそれを見つけてクリスティーにはにっこり笑った。
「ね、マスター…」
ファントムの肩を押し、上体を起こす。
まじまじと、今回も半分方立ち上がったソレを見つめる。
…ここに間違いないだろう。男性の身体は分かりやすいと言っていたし。
「クリスティーヌ、どうしたのだ?」
前回と似た行動に、ファントムは自然警戒した。
しかしそれはあくまでも、少女の言葉に対してであったが。
師の微かな動揺に気付かず、クリスティーヌはほうと息を吐いた。
「嬉しいの…」
これで私も音楽の天使を喜ばせることが出来る。
その嬉しさを満面の笑みに表しながら、クリスティーヌは振り上げたロープを
思い切りその一点に打ち下ろした。

声にならぬ叫びを上げて、ベッドから転がり落ちる師を見つめ、
クリスティーヌは1人頷いた。
「メグの言うとおり、最初は嫌がられるのね」
微笑みながら見下ろす。
「でもすぐに気持ちよくなるんですって。マスター、もう少しだけ我慢して下さる?」
返事を待たずに振り上げられた荒縄は、再び振り下ろされる。

その夜音楽の玉座を頂く荘厳な岩のドームには、
夜の調べではなく音楽の天使の歌声でもなく、哀れな男の叫びだけが何度もこだました。
67名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 00:23:38 ID:0Tj5GSu0
>53
GJ! GJ! GJ!
『マスター』っていたずら書きするクリス、
「汚れたら、もう被れませんわ」って言うクリス、
もう、クリスが可愛すぎて萌え死にそう……!

クリス、ベール被る気なんだね…?
68名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 00:48:57 ID:nDeuK6h/
>>63 GJGJGJGJ!!!

やばッッッまじウケルww
マスター不憫…かわいそすぎるww
まぁ金玉じゃなくてよかった…本当にやばいらしいから…ww

69名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 00:49:54 ID:f4muuUog
>66
マスター死なないで(号泣)
思いを遂げられる日は果てしなく遠いんだろうか・・・
70名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 01:20:52 ID:9TIltL9z
>>63
GJ!
バトラーファントムとエミーで脳内再生。深夜にお酒吹いた。
この調子でクリスとラウルの絡みも読んでみたいですw
71名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 14:15:33 ID:recZifru
>>53
GJ!!!
「やだ頭がとれちゃった」がツボにきた。はしゃぐクリスタンに(*´Д`) ハァハァ
前半のほのぼのに対して後半のエロスがまたたまらん。
続きwktkして待ってます!

>>63
GJ!!!
痛みを我慢するハメになったのはマスターだったかw
ポジティブシンキングってとこがなんか一番ワロタよ。
マスターが一生懸命になればなるほど笑える。
次回作も楽しみに待ってますw ノシ

どーいいでもいいが、「チェr(ry 」はまんまだとオモタ。
72名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 21:54:53 ID:VUC7w5bY
…マスター再起不能だな。
GJ!
73名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 02:06:53 ID:7c096di1
>>72
それってつまり…インry
74名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 20:59:08 ID:Z4/9eLZN
童貞で何もわからんマスターのSSキボンヌ
75名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 23:37:45 ID:FEWZeMND
>73 その”起き”るかw
嫌スレではファントムはチェリー確定な雰囲気だが…
76名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 00:27:27 ID:uyn6fs5x
前スレの薔薇すごいんですけどww
っつか500こえてるよねぇ?
77名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 08:30:14 ID:ruuJ8ZUT
512KBまでだよ。
78名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 09:56:09 ID:UwETrXdT
ΩΩΩ<ナ、ナンダッテー?!

500までだと思ってた。
ってか、あちらで頑張ってるマスター方も
皆そう思ってるのではないだろうか。
79名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:14:20 ID:unfUzglg
あっちにレスしようと思ったら、「512K超えてるのでできません」てなった。
無事に埋め立て完了したってことなんだろか。
80名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:42:35 ID:BMUEgUGr
>76
ばら上手だよね。
AA職人さんてすごく器用だ。
ばらの手入れをしているマスターを思いうかべてみたら、
アンソニー(「キャンディ・キャンディ」)とすり替わってしまったorz
アンソニー落馬しちゃうのに。。。。
81名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 16:23:00 ID:T305PH0u
でもどっちかって言うと 中身はテリーに近いっぽいよねw

ハッ・・オバ度がばれてしまうww


82名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 21:37:39 ID:4JhSoT6v
天使様待ちwktk
83名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 23:26:15 ID:ruuJ8ZUT
引き続きワクテカ
84名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 01:29:54 ID:w8fTTkp0
テンプレにあるまとめサイトの話題って、やっぱここでするのはNG?
85名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 01:42:58 ID:kk6bRIhN
いいんでないかい?別にスレ違いじゃないし、
天使様待ちの間に雑談くらい。
管理人様いつもありがとう。
86名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 20:35:09 ID:ri+UXOZx
それで雑談のほうは……?
87名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 23:10:22 ID:DkRMSXRv
今夜も投下はないのだろうか?
サミシ
88名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 23:23:27 ID:pbSKwpQB
雑談でもしてましょう
あんまり人少ない感じでも投下しづらいだろうから。
それに雑談から生まれるネタもある…褌のようにw
8987:2006/05/12(金) 23:38:59 ID:DkRMSXRv
褌懐かしい!!
しかも褌読めないっつったの自分だよ。。。
90名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 10:09:22 ID:MdywTZgI
雑談ついでに久しぶりに点呼してみたい自分がいる

本当に今このスレ、職人と読み手が何人いるんだろう
91名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 13:45:28 ID:RAoVJBX4
読み手は多分3桁いってると思う。
完全ROM者なら点呼しても答えないだろうし。
自分は1幕からの読み手兼職人
92名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 14:05:19 ID:907kWs7p
ノシ
自分は4幕の中盤あたりから読み始めました。
そして過去ログの為に●を購入。

たくさんの天使様ありがとう。
これからも投下を宜しくおながいします。
93名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 20:17:17 ID:1Fheob2E
読み専 ノシ
ひそかにファンジリ新作をwktkしながら正座待機中。
94名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 21:18:30 ID:v9XaTIb8
ノシ 読みメインのヘタレな書き手 3幕から参加

こういう点呼の結果は目安程度にしかならないと思うけど
自分もROMってるだけのスレでは点呼は完全スルーしてるし
95名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 21:54:29 ID:c3R6oGh4
ノシ 一応書き手で読み手。

投下ありませんね。
96名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 11:54:59 ID:SgX+l2Ax
ノシ
いつも読み手
でも一度すんごい駄作を晒したこともある…
2幕から参加しました

そういえば1幕スレ立てした人まだいるのかなぁ?
9790:2006/05/14(日) 21:44:30 ID:8TiughAg
あ、呼応ありがとう。

自分も書き手。
一幕から読み始めて二幕で書き込み、三幕から投下。
まだまだ投下したいけど今年になって暇が無くなった…。
また六幕中に落とせるといいな。
98名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 00:13:07 ID:wa2iGQlP
ノシ
かなりROM専ぎみの読み手
天使さま方すみません。いつも楽しませてもらってます or2
99名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 00:17:31 ID:Vok0poiZ
書き手ノシもちろん熱烈読み手

ネタ振り代わりに、シンデレラを。
結構前に嫌スレでシンデレラの話しが出てましたんですよ。
エロほとんど無しで完全にネタなので、
本物の天使様方、投下を是非、是非…or2゛
1001/5:2006/05/15(月) 00:18:11 ID:Vok0poiZ
父親を亡くしたみなしごのクリスティーヌは、継母のジリー夫人と共に暮らしていました。
継母と義姉のメグの意地悪が続きましたが、クリスティーヌはいささか神経が鈍
…優しく純粋な娘だったので大して堪えることもなく、それなりに日々を過ごしていました。
そんなある日、この国の王子の花嫁を選ぶ舞踏会が開かれることとなりました。
「何と言っても、歌姫カルロッタが歌うんですもの」
「カルロッタ?」
白いドレスの異様に下がった襟ぐりから、こぼれんばかりの胸元を覗かせ
義姉のメグは頷きました。
「そうよ。イベントにはメインの出し物が必要なんだから」
「でもあなたは留守番をするのですよ、クリスティーヌ」
見事な東洋の絹地を裾曳いて、マダム・ジリーは念を押します。そう、クリスティーヌは
国中の年頃の娘が招待されているこの舞踏会に出ることを、許されませんでした。
「お城に行くのは私達だけ。さあ、メグもう出かけますよ」
「はい、ママ」
「メグが王子のお目に留まったらどうしましょう。いえ、意外と私が選ばれたり…
そうよ、坊ちゃん育ちは年上に弱いことが多いから
…メグ、新しいお父様が出来るかもしれませんよ、おほほほ…」
「…」
「…言ってらっしゃいませ、マダム、メグ」
高笑いが遠ざかり、やがてあたりが静まり返ると
クリスティーヌはため息をついて呟きました。
「でも、私もお城へ行きたいわ…」
1012/5:2006/05/15(月) 00:18:49 ID:Vok0poiZ
「その願い、叶えよう娘よ!」
よく通る声と共に、突如として高らかな
パイプ(ではないかもしれない)オルガンの音色があたりを満たします。
目の前に火柱が立ち上り、それが消えたときそこには、1人の男性が佇んでいました。
赤いぴったりとした衣装に身を包み、顔には骸骨の仮面を着けています。
予想していたイメージとは多少違いましたが、クリスティーヌは瞳を輝かせました。
「あなたは…魔法使いね!」
「そう、魔法使いにして作曲家、芸術家そして建築家のジーニアスな男、それが私だ」
「まあ…!」
建築家がこの際どう関係があるのか分かりませんでしたが、
クリスティーヌは慎み深い娘だったので黙って頷きました。
「それでは、私をお城に連れて行った下さるのね」
「もちろんだともクリスティーヌ、では早速歌のレッスンだ」
「は?」
クリスティーヌの慎みにも限界があります。
しかし魔法使いは気にする様子もなく続けました。
「ドレスも乗り物も既に用意してある。あとは歌だけだ」
「でも、舞踏会…」
「今に分かる。総てお前のためだ、さあ、クリスティーヌ!」
「え、ええ…」
流されやす…適応力の高い性格のクリスティーヌは、
何かよく分からぬままに魔法使いの言葉に頷きました。
1023/5:2006/05/15(月) 00:19:25 ID:Vok0poiZ
魔法使いの馬が連れて行ったくれたのはなぜか地下道でした。
突き当たりの引き戸を開けると、そこはお城の中の階段の踊り場です。
そっと鏡裏から覗くと、なにやら言い争う声が聞こえます。
「何だと、アンドレ、カルロッタが?」
「ああ。王子に迫ったが、別にあなたに気があるわけじゃないと言われたらしく…もう歌わないと」
「帰ってしまったのか!」
侍従のフィルマンは頭を抱えました。
「わざわざ著名な指揮者まで呼び寄せたのに…!」
「ああ、このままではわが国の一大イベントが…」
「破滅だ、アンドレ!破滅だ!」
「あの…」
見かねたクリスティーヌはそっと顔を出しました。
「私、歌えますけど…」
フィルマンとアンドレは
顔を見合わせます。やがてアンドレが口を開きました。
「では、お嬢さん、ちょっとここで歌ってみてくれんかね?」

「ブラボー!」
見当違いのところで立ち上がったラウル王子を、
フィルマンとアンドレは素早く椅子に引き戻します。
しかし幸い舞踏会の客は、突如現れたなぞの歌姫に夢中で
王子の失態には気づきませんでした。
そして彼女が歌い終えたとき、割れんばかりの拍手と共に
クリスティーヌの前に王子が手を差し伸べました。
「すばらしい歌でした。僕と踊っていただけませんか?」

素敵な夜でした。王子はクリスティーヌとばかり踊り、二人は色々な話をしました。
あまりに楽しかったので、クリスティーヌは魔法使いが別れ際に言ったことをすっかり忘れていました。
曰く、夜中を過ぎるまで城に滞在してはならない。
「…いけない…!」
12時を告げる鐘が鳴り始め、クリスティーヌは慌てて立ち上がりました。
1034/5:2006/05/15(月) 00:20:20 ID:Vok0poiZ
「…それで急いでいたので…お借りしていたガラスの靴を、片方落としてきてしまったのです」
うなだれる娘に、魔法使いは鷹揚に頷きました。
「そう、それは予定通り」
「予定通り?」
「ああ。王子は靴を見るたびお前への思いが募り、お前を探し出すだろう。
無事探し当てれば求婚、承知すればお前は王妃となる」
「まあ、私とラウル王子が…」
クリスティーヌは嬉しそうに頬を染めましたが、魔法使いは難しい顔をして首を振ります。
「しかし王宮は恐ろしい世界だ。
王子がお前に夢中でも、いつかは飽きる日が来るかもしれない。
寵愛を失ったが最後、後ろ盾のないお前はとたんに路頭に迷うこととなる」
「そんな…」
「そうならぬために、お前にはまだ学ぶべきことがある」
魔法使いは立ち上がると、クリスティーヌの肩に手を置きました。
「どうすればいいの?」
不安そうに見上げる娘に、歌うように語り掛けます。
「閨での技だ。その技術を学んで、王子を虜にするのだ。
そうして世継ぎをなせば、国母としてお前の地位は安泰」
「安泰…」
「そうだ、そのためには恐れを捨て、身を任せるのだ。
先程関係ないと思っていた歌も、ちゃんと役立ったであろう?」
優しい声で奏でながら、魔法使いはクリスティーヌをそっと寝台に横たえました。
「師の胸へ…師の胸へ。私がしっかりと指導してやろう」

「…こんなに…痛いことを…毎晩続けられるかしら…」
滲んだ涙を魔法使いの指で拭われながら、クリスティーヌは寝台の中でため息をつきました。
「…世継ぎを授かるまでは」
頬を泣きそうに歪めたクリスティーヌに、慌てて言い添えます。
「大丈夫だ、すぐに慣れ痛みはなくなる。だが…」
魔法使いは厳しい顔で少女の顎に手をかけました。
「技というものは一日で成るものではない。お前のために、毎晩ここを訪れレッスンを続けよう」
「はい!よろしくお願いします、先生!」
シーツを身体に巻きつけただけのしどけない姿で、クリスティーヌはにっこりと頷きました。
1045/5:2006/05/15(月) 00:20:58 ID:Vok0poiZ
間がよいのか悪いのか。
数日後ガラスの靴を片手に恋心を募らせた王子が、ついに幻の歌姫を探し当て、
その住まいを訪ねたとき、まさにクリスティーヌは魔法使いの上でレッスンの真っ只中でした。
「ク、クリスティーヌ!?」
「あら、王子様!」
頬も肌も露な胸元もバラ色に上気させながら、クリスティーヌは微笑みます。
やわらかく弾む胸を呆然と見つめる王子をみて、
魔法使いは慌てた様子でクリスティーヌを膝の上から降ろしました。
脱ぎ散らかしたものを適当に腰に巻きつけ、何とか取り繕いながら魔法使いは口を開きました。
「聞け、王子よ。国の安定には何が必要か分かるか?」
「は?」
唐突な問いに、思わず王子は返事を返していました。
「それは世継ぎだ。今まで幾多の国が後継者問題で衰えてきたことか…!」
「そう、かな?」
「そうだとも後継者争いは国を疲弊させ、他国に付け入る隙を作る。
将来の不安定さ、戦の可能性、クリスティーヌとの間に子を多くなすことにより、
それら総ての憂いを取り除くことが出来るのだ」
「まあ、素敵だわ」
クリスティーヌののんびりした相槌に、王子もなんとなく頷いてしまいます。
「そのために、私はクリスティーヌに閨での指導を行っていたのだ。総てはクリスティーヌのため、
ひいてはお前のため、国のために…国の繁栄と民の幸せのためだ、私も引き続き協力しよう!」
さすがに謀略と脅迫で日々の糧を得ていた人間の話術は違います。
王子も多少単純で頭の弱…素直で心の広い人物だったので、
魔法使いの導くままにクリスティーヌの手をとりました。
「…僕と一緒に、跡継ぎを作ってくれるかい?」
「ええ、たくさん作りましょうね」

こうして王子とクリスティーヌは盛大な式を挙げて結婚しました。
その後も魔法使いはしばしば王宮を訪れ、その指導の甲斐あってか
若い夫婦は多くの子供に恵まれ、いつまでも末永く幸せに暮らしました。

おしまい
105名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 00:52:26 ID:vzBvxahx
GJ!ギャグに童話にさわやかエロが見事に混ざり合って良かった、何度もワロたよ
うまいことヤッちゃうなあ魔法使い。
恵まれた多くの子供たちの中には魔法使いの子もいるのかなあ
106名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 11:40:33 ID:hY7M/7sl
魔法使いさんの勝利だねwww
子ども達も実は一人も王家の血を継いでいなかったりしてw
107名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 23:25:03 ID:b0gEFoYx
GJ!
相変わらずマスターは妙な役がハマるねぇw
やっぱり弄り易いのか〜。
108名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 16:50:14 ID:VGYUDz0r
第5幕はあのまま放置?
109名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 18:05:46 ID:ji76kk5a
>100
GJ!なんだか続けられそうだね、童話シリーズ良いかもしれない

第5幕はもう容量を超えたので書き込めないから、数日うちにDAT落ちする。
前回の第4幕も容量を超えた後(1/24)、7日後(1/31)に落ちたので
おそらく明日かあさってあたりに第5幕も過去ログとなると思われ
110名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 18:29:21 ID:uCpfinHc
いちおもう一回HDに保存することにしました
ってどうでもいいですね。本当にありがとうございました
111名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 23:20:05 ID:TsBfzGef
>109 ラプンツェルとかそのままだ。手塩にかけた娘をかっさらわれるw
112名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 01:48:04 ID:OSP6bw8H
>>100
GJ!GJ!
強かな魔法使いだなw
こういう童話パロはおもろいね。

ラプンツェルは自分も読んでみたい。
でもラプンツェルってきいて最初に浮かんだのは
マダムの三つ編みだったよ。orz
113名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 07:31:40 ID:4ZlHJ0YV
HDに保存の仕方をおしえてホスイ・・・
114名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 08:45:01 ID:4vFCxrLk
>>112
高い塔の最上階に、一人暮らすマダム
…ってラスボス以外の何者でもない。
魔法使いがファントムなら、登ってゆくたびに
待遇が悪いとかちくちくイヤミを言われてそう…

>>113
ブラウザにもよるだろうけど
保存したいところを表示した状態で
ファイル→名前を付けて保存。
専ブラならスレを保存とかエクスポートとか。
115名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 18:35:57 ID:B8KJne0v
>>114
チョw
ラスボスマダムでリアルに紅茶を液晶に吹きかけそうになったw
116名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 23:05:03 ID:4ZlHJ0YV
ありがとう。
保存できました。感謝!
117名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 09:33:54 ID:ZHXcvGKS
おお、5幕落ちてる。間に合ってよかったね。

>114
ファントムの こうげき!
「じょうねつの プレイ!」

クリスティーヌは みをかわした!
ラウルは なみだめで みている

クリスティーヌの こうげき!
ファントムの ヅラを はがした!

ファントムに 500の ダメージ!
ラウルに 500の ダメージ!
118名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 18:08:01 ID:Ht6AGDRi
>ラウルに 500の ダメージ!
で吹いた。

でもラウルの中の人は今フサフサですぜ。マジで。
デコの広さは相変わらずだけどw
119名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 22:36:42 ID:MDz3mXQq
>118
マジ?生え際あんなにふわっとなってたのに?
…ってさ、”ラウル”は本来ズラ関係ないのになw
どこの刷り込みなんだか…ズラ王子…
120名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 22:39:15 ID:egoliVO6
盛り上がってまいりました!!!
121名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 23:19:47 ID:c4zd/AcF
……そうか?
122名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 23:26:52 ID:26+YJ5ga
この流れにラウル涙目。
123名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 00:30:18 ID:vVnZQsFa
何か急に過疎ったな。
124名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 01:10:57 ID:4qcRsXp3
投下少なくなりましたね、寂しい。
天使様降臨待ちの間に少し雑談など。
私もエロいのを書いてみようと参考にAVを見てみたがなんか、こう、萌えませんでした。
選び方が悪かったのだろうけど(やるだけっていうものだったので)
やはりストーリー性のあるもので勉強をしてみないと・・・
125名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 01:56:08 ID:SdFEOrdM
>124
なか〜ま!
私もエロ描写の参考になるだろうかと、レンタルビデオ屋で洋物AVの棚の
前にて思案すること数分・・・
けっきょく断念したけどねw
126名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 13:21:21 ID:o6pgNp3d
AVは行為中心で作られてるからロマンポルノの方が良さそうなイメージ。

洋モノは日本モノに輪をかけて行為中心の上に
喘ぎ声は低いし何かスポーツじみてる。
あと、日本モノよりモザイクばっかだから萎える。

と、洋モノ鑑賞を実行に移した私が言ってみる。


海外では日本モノのほうが演技とか喘ぎ声が萌えるって人気らしいよ…。
127名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 14:00:39 ID:/YzlxyJL
え、自分はモザイクのかかった洋物観た事がない…。
だってDVDが1枚$10〜20くらいで簡単に個人輸入出来るんだもん。

スポーツじみてる、というのは同意。
行為自体は濃厚だけどシチュエーションがあっさり・サッパリ。
ドキドキしないんだよねぇ。('A`)
下手なAVより、このオペラ座のエロパロの方が萌える!
と言うわけで天使様方(屮゚Д゚)屮 カモーン
128名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 14:13:23 ID:KZdbJT8g
エロ描写やシチュの参考にしているのはハーレクイン小説だw
あとは自分の体験からかなー。
自分がされて嬉しかった・良かった事を結構書き込んでるw
>126
洋モノの方が喘ぎ声も激しそうなイメージだけど、違うんだね。
129名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 15:18:43 ID:o6pgNp3d
>128
ああ、喘ぎ声は激しいよ。
男も女もなんだか獣っぽいぐらいにorz

私の中で洋モノは友達と一緒に見ながらツッコミを入れるネタビデオみたいなもんです。
萌えは無いけど笑えて仕方ないと言うか…。

台詞一つを取っても、字幕があるのと無いのがあるし
むしろ行為中の台詞はスラングばっかで萌えも何もないですよ。
130名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 16:54:28 ID:m7fjGf2g
洋モノってあのハーバルエッセンスのCMの
「ワ〜ヲイエスイエス!!」に
「カミンカミン!!」と「ジ〜ザス!!」と「ゴォォッド!!」を足した感じだよね…


昔親父のエロビデオを観たときそんなかんじだった気がするんだが…
131名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 19:26:43 ID:twEtVLFq

「ワ〜ヲイエスイエス!!」
「カミンカミン!!」「ジ〜ザス!!」「ゴォォッド!!」
と感極まって叫びまくるマスターを想像してしまった。
132124:2006/05/22(月) 20:29:07 ID:4qcRsXp3
うは何気に振った話題でえらい盛り上がってる。
マスターだったら「ゥエ〜〜〜ンジェル!!」とも叫ぶんだろうか。
考えてみたら洋モノキャラなんだよね
133130:2006/05/22(月) 21:08:39 ID:NO+OFkGh
>>131
ではそれで一発よろしく頼みます♪
134名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 21:51:51 ID:DllymhHF
>124 吹いたwww
「ゥエ〜〜〜ンジェル!!シィィングフォォウミ…」
「マスター、うるさい」
135名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 23:18:21 ID:o6pgNp3d
こないだ見た洋モノは男優が叫びまくってた。
女優より煩くて喘ぎ声聞こえなかったよw

ファントムがそんな叫び系だったら萎えるどころじゃないな。
136名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 23:24:23 ID:O7vb3IQp
いや、映画のファントムはことあるごとに絶叫してたから…
137名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 01:30:43 ID:DILdyHOR
やっぱり ソ〜〜〜〜〜〜〜〜〜 の顔でそ
138名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 06:32:11 ID:SsY+2Gmx
>>131
それだとマスターが下で攻められてるような
むしろ女豹なクリスに(;´Д`)ハァハァ
139名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 11:02:27 ID:7Ad5Aenu
>137 ちょw見に行くんだよ明日www エロも呪いもクリアして行こうと思ってたのにカースユー!
140名無しさん@ピンキー:2006/05/24(水) 00:19:37 ID:PaMdk33H
まだ上映してくれるところあるんだなあ裏山鹿
141名無しさん@ピンキー:2006/05/24(水) 22:30:49 ID:UcDjau/H
>135
まさにそんなの見た。しかも>138状態。
でも男優さんは金髪ロンゲのイケメンで、どちらかというとラウ(ry
142名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 00:26:01 ID:KJlitGN/
>>141
ハゲしく観たい…
143名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 09:18:21 ID:HQgxeqiO
ハゲ…失礼。135のおっしゃるとおり、ヲォウ!イェスイェス!煩いわけだが。
しかも大騒ぎしている男性単体が結構長く映ってたりするが、
本当に見たいのかw

上に乗っかってる女優さんも金髪で、
すっっっっごい薄目で見ればラウル×メグに
見えないこともなかった…と思う。
144名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 09:34:44 ID:CG5VSgLy
>>143
ラウル×メグ?ビジュアル的に(・∀・)イイ!!

ところでパトリックは結構脱ぐ役多いよね。
フルモンティはもとよりエンジェルス・イン・アメリカでも全裸シーン
あったし、この間の舞台ではブリーフ姿を披露、ハード・キャンディでも
下半身出してるし。偶然なのか監督が脱がしたがるのか…。
145名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 14:38:51 ID:WtQkTm7p
ラウル×カルロッタとかどうかな?
二人で絶叫してくれそうw

ラウル:ヲーイェー、ォーイェー
カル:カミン!カミン!
二人で:ゴォォォォッド!!ゴォォォォッド!!

んで、壁に聞き耳立てているマスターがいる、と。
146名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 19:46:12 ID:L8+I1wYt
>145
今飲食店でこの書き込みを読んだ。


素で烏龍茶噴いた…orz
147名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 20:37:42 ID:L8+I1wYt
洋モノポルノの流れをぶった切るのは気が引けますが


改変ネタ。エロ無し、ギャグ。1レスのみ。



 ファントムは、夜の屋上にアポロン像をめがけてまっすぐに昇って行きました。
 寒さや霜がまるで剣のやうにファントムを刺しました。
ファントムはゆびがすっかりしびれてしまひました。
そして涙ぐんだ目をあげてもう一ぺんそらを見ました。
さうです。これがファントムの最后でした。
もうファントムは泣いてゐるのか、怒ってゐるのか、歌ってゐるのか、悲しんでゐるのかも、わかりませんでした。
たヾこゝろもちはやすらかに、その鼻水のついた白い仮面は、横にまがっては居ましたが、たしかに少しわらって居ました。

 それからしばらくたってファントムははっきりまなこをひらきました。
そして自分のからだがいま綿の花のような白い冷たい雪に覆われて、しづかに冷たくなってゐるのを見ました。
 すぐとなりは、ペガサス像でした。
オペラ座の暖かい照明が、すぐうしろになってゐました。
 そして雪は降りつヾきました。
いつまでもいつまでも降りつヾきました。

 今でもまだ雪の下にゐます。
148名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 20:41:40 ID:L8+I1wYt
あ、ごめん。
元ネタは宮沢賢治『よだかの星』
149名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 22:13:47 ID:MBog4w6S
>147
せ、先生ーーーー!!・゚・(つД`)・゚・
150名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 22:38:18 ID:buyzdFSA
>>147
投下ありがとう天使様!
で、でもギャグになってません…ヽ(;´Д`)ノ
151147:2006/05/26(金) 18:52:27 ID:OHTuJpjp
スレの流れ止めてほんとすまんかったorz
お詫びに途中かけだが…

前スレ806の続き。
全3レス、エロ無し、鬼畜風味、暴力、流血描写あり。
苦手な方は是非ともスルーでお願いします。
152ペルシャにて。:2006/05/26(金) 18:55:19 ID:OHTuJpjp
「…っ―――!!」
 思い切り拳を壁に叩きつける。
その光景を見ていた使用人がそっと物陰に隠れたのを見て、内心苦笑した。
シャーから『最大の恩恵』を頂いてから一夜。
今日の謁見では誰が言わずとも、みな何があったかを知っている。
シャーは何も言わずに目の奥で私を哂っているのが伺える。
何もかもが腹立たしい…!
儀式的にシャーへの謁見を済ませると、今度はハーレムで太后へ謁見させられた。
あの女ですら何も言わず、時折扇の向こうで私を哂っていた。
あいつらをこの手で縊り殺してやりたい衝動をなんとか押さえ込み、自分の住まいに戻ってきたのはもう夕刻だった。
 軽く湯浴みを済ませ、寝室へと向かう。
臓腑が焼ける様な怒りに、食事も何も摂る気にならない。
早く寝てしまって、明日の早朝にはやまびこ宮へと発ちたかった。
乱暴に扉を開け、閉める。
室内に誰かがいた。
思わず身構えた私の目に飛び込んできたのは、私の『妻』だった。
「…何のつもりだ…!」
 怒気をはらんだ私の口調に、女奴隷が怯えたのが見て取れる。
女奴隷は部屋の絨毯の上に三つ指をついて私を待っていた。
「あの…お食事を…」
 見れば女奴隷の後ろには夕餉の用意がされている。
こんな日は私が食事を摂らないという事は使用人なら誰でも知っているはずだ。
「…要らん!」
 私の神経をわざわざ逆撫でした奴を、思い切り鞭で引っ叩きたい気分だった。
「それではお身体に…」
「要らん、と言った筈だ。何度も同じ事を言わせるな!」
 普段どおりに絨毯に並べられた食事を一瞥し、私は女奴隷を怒鳴りつけた。
「わざわざ用意させたのは誰だ? 料理人か? それとも使用人か?
そいつを連れて来い。主人の命に背いた罰を与えてやる!」
 私の怒号に、女奴隷が俯いたまま震えだした。
153ペルシャにて。:2006/05/26(金) 18:56:54 ID:OHTuJpjp
「…わたくしで、ございます…」
「…何だと?」
「わたくしが、全て用意をいたしました…」
 女奴隷の細い指が、服の裾をきつく握り締めたのが見える。
私は瞬時に一つの結論を弾き出した。
「…読めたぞ、お前の考えが」
 女奴隷が、恐怖に満ちた目を上げた。
「お前は、この食事に毒を盛ったな…?」
 女奴隷の目が、驚きで見開かれる。
私は優しい声色で、言った。
「そうだな、私を殺せばお前は晴れて自由の身だ」
 女奴隷の震えが、一層激しくなった。
「だがな、お前が思っているよりもずっと、私は己の身に降りかかる災難を嗅ぎ別ける事ができる」
 女奴隷が、ほんの小さく、首を横に振った。
「残念だったな………これから先も、お前はずっと私に抱かれるための籠の鳥だ!」

 怒鳴りつけると同時に、女奴隷に飛びかかる。
女奴隷が息を飲んだ時にはもう、そのか細い首は私の手の内だった。
このまま縊り殺してしまおうかとも一瞬思ったが、それではとても気が収まりそうにない。
ふと嗅ぎ慣れない匂いに顔を上げてみると、朝までは無かった赤い薔薇が数本、
寝台横の机の上の花瓶に生けてある。
「服を脱げ」
 私は怒りのあまりぼんやりとする頭で、薔薇を見つめながらそう言った。
震えたままの女奴隷の首から手を離し、立ち上がる。
「お前には主人殺しを企んだ罰を与えねばならん」
 女奴隷は恐怖を露にしたまま、動こうとしない。
「早くしろ!」
 私が怒鳴りつけると、女奴隷は震える指を衣服に延ばした。
154ペルシャにて。:2006/05/26(金) 18:58:18 ID:OHTuJpjp
女奴隷が衣服を取り払っていく光景を見下ろし、最後の一枚が取り払われたところで言う。
「そこの壁に手を付いて背中を向けろ」
 ぎこちない動きで立ち上がった女奴隷が、私の命令通りにこちらに尻を向ける。
私は薔薇を一輪、手に取った。
まだ脂の乗り切っていない幼さを残した双丘の間から、昨夜貫いたばかりの蕾が覗く。
羞恥か恐怖か、ずっと女奴隷は震えている。
 私はその震える尻に、薔薇を思い切り打ち付けた。
「ああぁぁあああっ!」
 風を切り裂く音とほぼ同時に、女奴隷の悲鳴が部屋に響いた。
裂けた皮膚からみるみる血が滲んでくる。
尻だけではなく、滑らかな背中も二、三度打ち据えてやる。
薔薇の花弁が散り、私達の周りに舞い落ちた。
「お前を殺しはしない。……だが、死ぬよりも辛い目に遭わせてやるからそう思え!」
 怒りに任せ、何度も女奴隷の背を叩く。
女奴隷の悲鳴はすぐに泣き声混じりの物に変わっていった。
「…何故自分が料理を作ったと言った? お前が何も言わなければお前以外の誰かが罰を受けていただろうに」
 ふと、仕置きの手を止め、訊いた。
ずっとその事が不思議でならなかった。
「……作ったのは、わたくしで…ございます、から………っ」
 息も切れ切れに、先刻と同じ答えが返ってくる。
「自分以外の誰かが罰を受けるのは嫌だったということか? お優しい暗殺者だな!」
「あああっ!」
 その反吐が出そうなほどの偽善的な答えに、また怒りの炎が燃え立つ。
もう一度背中に打撃を与えてやると、ついに女奴隷が膝から崩れ落ちた。


<続く>
155ペルシャにて。:2006/05/26(金) 19:00:14 ID:OHTuJpjp
以上です。残りは書け次第、また。

心置きなく吊ってきます∧‖∧
156名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 02:44:32 ID:qr1zVqcp
>>151
読み応えのあるSSをありがとう!
若いエリックの制御できない感情がどちらへ向かうのか、
続きがまた楽しみです。

雑談の方はどうかお気になさらずに…(;´Д`)
157名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 11:30:16 ID:ZsU+89kG
おおGJ!!
ドラマのような展開…すれ違いと不幸が畳み掛けるところがk版っぽい!
幸せになれるのかね…

ホント、雑談は天使様wktk雑談なので
どんどんぶった切って投下してください!
158名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 19:57:41 ID:YzsNY6SX
そんなに怒らないでくれよエリック…
可哀想じゃないか、健気な奴隷ちゃん。
次で救いがあると良いなあ、天使様待ってます!
159名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 02:27:09 ID:M9AMpiCZ
正の感情を出すこと自体に慣れてない感じだな、エリック。
奴隷タンの気持ちとかに気付いてあげられるといいけど…

…って、書き込めなくて規制か?とアセッた。
どうも専ブラから書き込みできなくなってるみたい。
IEからならOKでした。
160中年ファントム:2006/05/28(日) 15:23:57 ID:4IhFldu1
投下します。中年ファントムのシリーズです。
ファントム(死の前年) vs 取引先の女性社員
エロ有り。
『マンハッタンの怪人』に倣い、ファントムはマンハッタンで
暮らしている設定です。年代は2005年版の映画に準じています。
全部で12レス分あります。
161マンハッタン 1889年 1/12:2006/05/28(日) 15:27:59 ID:4IhFldu1

取引先との会談を終えると、外は氷雨が降っていた。玄関に着けられた馬車に乗りこみ、
男は目を閉じて深い溜息をついた。無意識のように胃のあたりを押さえる。このところ、
鈍い痛みを覚えることが増えていた。
「お疲れのご様子ですが、今晩は邸へ戻られますか、それともフラットの方へ?」
同行していた部下が尋ねた。
「そうだな……、自宅の方へやってもらおうか。君の家を回ってからでいい」
この時間になると、さすがに往来も少なくなっていた。馬車は出てきた建物を
回りこむように走りだす。
男は胸の隠しから封書をとり出し、すでに何度か読んだ手紙をふたたび読みはじめた。
今日、パリの代理人経由で届いたものだった。


こんにちは、小父さま
いかがお過ごしですか? お元気でいらっしゃいますか?
先日は弟と私のために面白い本を何冊も送っていただき、本当にありがとうございます。
私は早速、夢中で読みふけっています。寝床の中でもこっそり読んでいたので、
勉強の最中にあくびが出てしまって、言い訳するのに苦労しました。
あ、でも、これは内緒ね!
弟はまだ英語が得意ではないので、私が読み聞かせています。わくわくする物語に、
弟も、そして私もとりこです。弟からのお礼の手紙も同封しますね。

庭の薔薇がきれいに咲き誇っています。私の庭師ぶりも、かなり板についてきました。
写真も撮ったので同封します。抱えているのは深紅の薔薇です。
小父さまに写真でお贈りしますね。もう私も十五歳、ずいぶんと立派な娘になったでしょう?
この手紙が届く頃は、年の瀬も迫っているでしょうか。小父さまは仕事がお忙しくて
いらっしゃるのかしら。お風邪など召されませぬよう。ぜひまたお会いしたい……。

フランソワーズ

同封された写真の中で、濃い色合いの薔薇を胸いっぱいに抱えた少女が、晴れやかな笑顔を
浮かべている。年とともに、少女の面差しは彼女の亡き母親に似てくるようだった。
162マンハッタン 1889年 2/12:2006/05/28(日) 15:29:54 ID:4IhFldu1

女はお茶の道具を片づけ、手早く帰り支度を整えた。すっかり遅くなってしまったが、
年に何度かの役目を果たす時には、辻馬車を拾うことが許されている。コートの襟を立て、
傘をさして裏の通用口から出ると、急ぎ足で通りを渡ろうとした。
「危ないっ!」
馬車の御者が叫んだ。手綱が引き絞られ、繋がれた馬が蹄の音を乱してたたらを踏む。
危うく馬車にぶつかりそうになった女は、足を滑らせて転倒し、そのまま動かなくなった。

「どうした!」
馬車の扉が開けられた。御者が興奮した口調で言う。
「女が急に飛び出してきたんです! 轢いちゃいません」
部下が外へ出て、女を抱え起こす。倒れた時に頭でも打ったのか、女は気を失っていた。
「どうしましょうか……」
「目立った怪我はないようだが、放ってもおけない……」
男も降りてきて女の様子をざっと調べると、部下と二人で女を抱え、馬車に運び入れた。
「この時間に医者というと……」
「足を捻っているが、骨は折れていないようだ。こぶが出来ているから、頭の方も
それほど心配ないだろう。行き先を変更だ。フラットの方がここから近い。とりあえず
私が応急処置をして、様子をみよう……」
素早く女を診た男が、指示を出した。


女は朦朧とした意識の中、誰かに力強い腕で抱き上げられるのを感じた。
低い声が聞こえるような気がする。何か柔らかいものの上に横たえられたところで、
女の意識はふたたび途絶えた。
163マンハッタン 1889年 3/12:2006/05/28(日) 15:32:00 ID:4IhFldu1

頭と足にひんやりとした感触を覚え、女は目を開いた。
「…………?」
「気がついたかね。ああ、まだ動いてはいけない。痛みはどうだ?」
低く深みのある声が聞こえ、女は顔をそちらへ向ける。薄暗がりの中で、顔の右側を白い
仮面で覆った男がそばの椅子に座り、気遣わしげな表情を浮かべて女を見守っていた。
「あなたは……!」
「驚かせてすまない。事情があってこんな姿をしているが、先ほど君にぶつかりかかった
馬車の主だ。気分はどうかね? 目眩や吐き気を感じるか?」

そう言われて、女は頭と足の痛みに気づいた。冷たい湿布が施されている。男は上着を
脱いで、シャツの袖はまくり上げられていた。
「あ……、少し痛みますが、大丈夫です。あなたが治療してくださったのですか……?」
男は頷いて立ち上がると、「失礼」と声をかけ、女の足首に触れた。
「ここは?」
「つっ……! 少し、痛いです」
「捻挫だな、骨は大丈夫だ。転倒した時に捻ったのだろう。……申し訳ないことをした」
男はそう言って頭を下げた。

「そんな……、私こそ不注意でした。あなたのような方に、こんなにしていただいて……。
私、あなたを存じ上げております。今夜おいでになった、うちの大株主でいらっしゃい
ますよね?」
女は起き上がろうとして、男に押しとどめられた。その拍子に、自分が下着だけの姿で、
男物の部屋着を着せられていることに気づいた。
「…………!」
「雨と泥で汚れてしまったので、服を脱がせたのだ。それは私の部屋着だが、まだ袖を
通していない。君にはかなり大きいが、ここには女物がないので、我慢してくれるか……?」
「あ、あ……あの……、は、はい……」

驚きと恥じらいとで混乱した様子の女へ、男は微笑みかけた。
「替わりの服は、明日いちばんで揃えるよう指示をしたから……。そうか、君はあの時に
お茶を出してくれた人なのだね。その怪我では出勤もままならないだろう。私の方から
君の社へ事情を伝えて、しばらく休めるようにしてもらう。心配はいらないよ」
「は、はい……。あの……、本当に何から何まで、ありがとうございます……」
茫然としながらも、男から思いがけぬ優しい言葉と微笑みを向けられ、女は頬が赤らむのを
感じた。
164マンハッタン 1889年 4/12:2006/05/28(日) 15:33:25 ID:4IhFldu1

「あ、あの……、ここは……?」
「ここは私が所有する部屋だ。君の社から近かったので、こちらへ運ばせてもらった。
今夜はこのまま安静にしていた方が良いと思うが、ご家族が心配なさるだろう。
部下をやって事情を説明させよう。電話があるのなら、私が話してもいい」
「あ……、いいえ、私はひとり住まいですので……」
女は目を伏せた。三十路を越えて独り身でいることを恥じるつもりはなかったが、
自慢することでもなかった。だが男はあっさりと確認しただけだった。
「では、誰かに連絡する必要はないのだね?」
「はい……、ありません」
「ちょっと失礼するよ。部下を待たせていたのだが、帰宅するよう伝えてくるから……」


男が部屋を出ていくと、女はほうっと息をつき、あらためて周囲を見回した。
高い天井にセントラル・ヒーティングを備えた、ひと目で最高級アパートと分かる部屋だった。
重厚な家具と落ちついた調度が、上品で男性的な雰囲気をかもし出している。
女物の服はないと男は言っていたが、ここに女性が訪れることはないのか……。
埒もないことを考え、女は頬を染めた。

数年前から、年に何度か男は社を訪れていたが、いつも夜で、少数の経営陣とのごく内密な
会談のようだった。投資などの他に特許も有し、男は幅広い事業を行っているらしかったが、
人前にはめったに現れず、謎めいた実業家との噂を女も耳にしていた。
口の堅さを買われ、女はお茶出しを言いつかっていたが、口外せぬよう命じられていた。
男はお茶が置かれても無言で軽く頷くだけで、その姿には厳めしささえ漂っていた。
女がお茶を置き、男が頷く――それだけだった。

男は五十前後だろうか。長身の逞しく引き締まった体躯に、高い鼻梁の整った顔だち。
顔の半面が仮面で覆われているのには、初めは女も内心驚いたものだった。先ほど男が
言ったように、何か事情があるのだろう。いや、おそらく口にしてはならぬものを、仮面が
隠しているのだろう。だが見慣れてしまえば、それさえも男の不思議な魅力の一部と
なっているようだった。

そして今夜、女は初めて男と視線を合わせ、声を聞いた。蒼とも碧ともつかない色の眸は、
見つめられると吸いこまれてしまうような心地がした。低くて深い透る声で話しかけられると、
鼓動が速くなるのを抑えられなかった。
165マンハッタン 1889年 5/12:2006/05/28(日) 15:34:46 ID:4IhFldu1

扉をノックする音で、女は我に返った。
「は、はい……」
「失礼した。……ところで、君はもう夕食を済ませたかね?」
戸口に立つ男から尋ねられ、女は急に空腹を思い出した。なぜか頬が赤らむ。
「あ、いえ……、まだです」
「では、もう少し待っていてくれたまえ。簡単なものしか用意できないが、持ってくる
から……」
男はふたたび姿を消したが、ほどなくワゴンを押して戻ってきた。パンとオムレツ、紅茶の
セットが載っている。
「さあ、どうぞ」
女が起き上がるのに手を貸し、枕を重ねて寄りかかれるようにすると、男は穏やかな口調で
食事を勧めた。
「どうも……、あの、あなたは……?」
「私はお茶だけでいい。君は遠慮なく食べてくれ。もっとも、食事の支度をしたのは
久しぶりだから、味は保証の限りではないが……」

「おいしい……!」
ひと口食べて声を上げた女に、男は微笑んだ。
「料理もお上手だなんて……」
女ははにかむような笑顔を浮かべた。
「ひとに食事を作ってもらうなんて、何年ぶりかしら。本当においしい……」
「……私も長く独りで暮らしていたから、自然となんでも出来るようになった」
それだけ言うと、男は紅茶を口に運んだ。

ふと見ると、男は胃のあたりに手をやり、眉をかすかに顰めていた。
「あの……、どうかなさいましたか?」
「……いや、なんでもない。それよりも、食事が済んだら湿布をとり替えよう」
166マンハッタン 1889年 6/12:2006/05/28(日) 15:36:13 ID:4IhFldu1

「やはり腫れているな……」
男はなめらかな手つきで新たに湿布を施し、包帯を巻いていく。足に触れられるだけで
鼓動が速くなるのを、女は必死に抑えた。男がついと身を寄せる。女は身体を強ばらせたが、
男の手は女の頭に伸びた。
「大きなこぶが出来ている。中の血がいずれ下がって吸収されていくが、その際に、
目の周りが殴られたように黒ずんでしまうかな……」
冗談めかした口調だったが、男の指が額に触れると、女は顔を赤らめて小さく震えた。
「ん……? 熱もあるのか?」
男は眉をひそめ、女の額に掌を当てた。温かくて大きな手だった。女は思わず身体を引く。
「あっ、いえ……、大丈夫です。なんでもありません」
「……不躾だったかな? 失礼」
「いえ、そうじゃありません! ちょっと……、自分でも、よく分かりません……」

男は怪訝な表情で女を見つめたが、それ以上は何も言わずに湿布を替え、絆創膏で留めた。
「しばらくは何かと不自由だろう。君さえ良ければ、当分の間ここに滞在してはどうだ。
介護の女性をつけよう」
「でも……、そんな厚かましいことを……」
「いや、本当にかまわない。どうせ遅くなった時にしか、ここは使わないのだから……。
遠慮はいらないよ」
「……あなたには、来ていただけないのですか?」
言ってしまってから、女は赤面した。自分でも当惑する気持ちに、涙まで滲んできた。
「知った者がいないと、心細いか……?」
女は口もきけず、涙ぐみながら頭を縦と横に振った。子供のような仕草に、男の頬が緩む。
「では、私もなるべく寄るようにする。それなら安心かい?」
女はもう自分を抑えられなかった。気がつくと、男の肩にもたれて涙を流していた。

「す、すみません……。私……あなたが、とてもお優しくて……」
「私が、優しい……?」
男は意外そうだったが、震える女の肩を静かに撫でた。
「ほっとして気が緩んだのだろう……。今夜はゆっくり寝むといい。私は隣の部屋にいるから、
何かあったらこのベルを鳴らしなさい」
「行かないで……!」
女は男のシャツを掴み、涙に濡れた顔を上げた。目の縁が赤く染まり、唇がわなないている。
男はわずかに目を細めた。
「君は………」
「は、はしたない女と……、お思いですよね。でも、私……、あなたに……」
「それ以上は言わなくていい。……私も、頭にこぶを作った女性を抱くのは初めてだ」
男は低く笑い、おもむろに女を横たえていった。
167マンハッタン 1889年 7/12:2006/05/28(日) 15:37:36 ID:4IhFldu1

男の顔が近づいてくる。女は魅入られたように男の眸を見つめる。男はうすく微笑んだ。
「……こういう時は目を閉じるのだよ。初めてではないだろう?」
「あ……、は、はい……」
女は慌てて目を瞑る。実際のところ、女は一度しか経験がなかった。その男と結婚する
つもりでいたが、父親が病に倒れ、それどころではなくなったのだった。
「そんなに緊張しなくていい……」
瞼にふわりと口づけると、男はひそやかに囁く。涙を吸いとるように唇を滑らせ、女の唇に
そっと重ねた。軽く触れるように何度か口づけをする。女は男のシャツをきつく握りしめた。

「手を緩めて……」
男の手が女の部屋着をくつろげる。下着のリボンを解きはじめると、女は歯をカチカチと
鳴らすほど震えだした。男は手を止めた。
「……君は、ひょっとして………。怖いかね?」
目を開けた女は、真っ赤な顔で首を振る。
「い、いえ! 違います。……あ、はい……、少しだけ……」
「続けるか……?」
女はこくこくと何度も頷き、瞼をぎゅっと閉じた。男の口元がほころぶ。
「恐れることはない……。力を抜いて私にまかせなさい」
女は目を閉じたまま「はい」と幼子のように答えた。

下着のリボンがすべて解かれ、女の胸が夜気に晒された。緊張と恥じらいで震える女から、
男は部屋着ごと脱がせる。痛めた足首にかからぬよう注意して、そっと下穿きもとり去った。
自らの服を脱ぎ捨てると、男は女のかたわらに横たわり、上掛けを引き上げた。
「こうすれば、寒くはないだろう……?」
笑みを含んだ声で男が低く囁くと、女は男の胸へ顔をうずめた。男の腕の中は暖かかった。

髪を、肩から背中を男が撫でさするうちに、女の震えは止まってきた。指で顎を上に向かせ、
男はやわらかい口づけを繰り返す。喘ぐように開いた女の唇を舌先でなぞると、そのまま
口の中へ挿し入れた。
「あっ……」
女は一瞬ぴくりと震えたが、やがて自分の舌をおずおずと絡めていった――。
168マンハッタン 1889年 8/12:2006/05/28(日) 15:38:58 ID:4IhFldu1

肌に掌を滑らせ、男は時間をかけて女の身体を愛撫し、解きほぐしていく。うなじから
背中を、首から肩をゆっくりと何回も撫で、胸を手で包みこんだ。指先を頂にそっとあてがい、
膨らみをゆるやかに揉みしだく。速くなる息遣いとともに硬く尖りはじめた乳首を男は
口に含んだ。
女はかすかに震えたが、それが羞恥のせいなのか、快感のためなのか、自分でも分からなく
なっていた。思いやりのこもった大きな手に身を委ねていると、不思議な感覚が火照った
身体の奥から湧き上がってくるようだった。
気づかぬままに、女は息をはずませ、喘いでいた。

男の手が下に向かった。唇と舌で胸を愛撫しながら、腰のくびれに、腹に、臀に、掌を
這わせる。
「あぁ………」
女が初めて声を上げた。
「それでいい……。感じるままに、身も心もまかせるのだ……」
男の低い囁きに、女の五体が小刻みに震える。切なげに眉根を寄せ、指が食いこむほど
男の肩を掴んでいることにも気づかなかった。
身体の芯から熱いものが溢れてくる。首を振り、息を乱して女は喘ぎつづけた。

やがて、男の手が脚の間に挿し入れられた頃には、女の全身は蕩けるように熱く、すっかり
力が抜けていた。ぐったりと降ろされていた両腕の指が、何かを求めるようにシーツの
表面をまさぐる。
掌と甲で左右の内股をそっと撫でていた男が、指先を奥に伸ばした。とろりとしたものが
絡みつく。
「あっ………!」
女は目を瞠り、男の両腕を掴んだ。わずかに曲げられた下肢の奥で、男の指が止まる。
男は顔を上げて女を見つめ、穏やかに微笑んだ。
「大丈夫だ。手を放して……、続けるよ………」
「は、はい………」
女は恥じらいながらも笑みをこぼすと、信頼しきったように身を男に預け、眸を閉じた。
169マンハッタン 1889年 9/12:2006/05/28(日) 15:40:30 ID:4IhFldu1

男はふたたび女に唇を重ね、舌先を絡めながら止めていた指を動かしはじめる。
女の秘めやかな場所からは熱い雫が滲みだし、蠢く男の指を濡らしていった。
「ふ、ふっ……ふぅっ………」
味わったことのない、疼くような快い感覚が女の身体に拡がっていく。頬を紅に染め、
やるせない息をついた女から唇を離すと、男はもう一方の手で髪を撫でてやった。
「そう……、なにも怖くはないだろう……?」
耳朶に囁きかける甘い声に、女は眸を閉じたままこっくりと頷いて、男の首に腕を
巻きつける。女の下肢を開かせると、男はその間に身を滑らせた。


男がゆっくりと入ってくる。
「あ……、はぁっ………!」
男におし拡げられ、満たされていくのを感じ、女は首をのけ反らせて息を呑んだ。男は女の
身体に腕を回し、しばらくそのまま抱きしめていた。
「あなたが……私の、中に………」
息をはずませながら、感に堪えぬように女が呟く。
「そうだ……、私は、君の中にいるよ……」
耳元で聞こえる男のひそやかな声に、女の内部にはさざ波のような細かい震えが拡がった。
柔らかい襞からは、意思とは無関係に熱いものが止めどなく湧き出してくる。女の眦に
滲む涙を、男が舌先で掬いとった。
「あぁ……、私……なんだか………」
「それで、いいんだよ……」

男はおもむろに動きはじめた。腰を引き、押し戻してより深く沈める。気遣うように
繰り返されるゆるやかな動きに、女の膝はさらに曲げられ、腰が捩られていく。
「あ……あ、あぁっ………」
より深い繋がりを感じて、女は惑乱のうちに頭を振りたて、男の首をかき抱いた。
女の内部は顫動を繰り返し、絡みつくように男のものを締めつける。
男の動きが少しずつ速まる。すすり泣くような女の喘ぎ声が、浅い呼吸にまじって間断なく
上がった。やがて、女の全身が小刻みに震えだした。男を包みこんでいる部分が痙攣する。
「あぁ……はぁっ………! は…………っ」
背中を反らし、大きく喘ぎながら女が絶頂に達した。それに応えるように、男も大きく
腰を入れた――。
170マンハッタン 1889年 10/12:2006/05/28(日) 15:41:55 ID:4IhFldu1

「あ、ありがとうございます……。嬉しかった……」
頬を染めて、はにかむように女が言うと、男は苦笑した。
「行為のあとに礼を言われたのは、初めてだ……」
「そ、そうですか? でも、本当の気持ちだから……。今夜のこと、忘れません。あなたの
お気遣いとご親切も。大切な思い出にします……」
「大袈裟に考えることはない。こちらも悪かったのだからね。そして……私も楽しませて
もらったよ」
頬を軽くひと撫でして、男は面白そうに低く囁きかけたが、女はしごく真面目に答えた。
「私、早くに母を亡くして、それ以来、父や弟妹の世話や看病はしても、自分がされた
ことはなくて……。男の方との縁も、殆どありませんでしたし。……だから、本当にとても
嬉しかったんです」

「……では、ありがたく礼を受けとっておこう」
男はうすく微笑むと、女の背中を慈しむように撫でた。
「父上は……?」
「十五年ほど前に病気で亡くなりました。
その後は、私が働きながら弟妹を独り立ちさせて……、もう職場でも古株です」
「信頼されているのだね。……卑下することなどない、立派な人生だ」
女は温もりを愛おしむように、男の肩に頭をすり寄せた。
「あなたこそ、一代でこんなに成功なさって、ご立派ですわ……」
男は皮肉な笑みを浮かべただけだった。
「私のしていることなど、虚業だ。所詮なりゆきで生きてきたに過ぎない……」

自嘲めいた男の呟きには、昏い響きがあった。女が思わず顔を上げて見つめると、男は話を
変えるように女の前髪を掻きあげた。
「汗で絆創膏が剥がれかけている。新しいもので留め直そう……」
身を起こしたところで、男は不意に動きを止めた。
「くっ………」
男は片腕で身体を支え、前屈みになった。胃のあたりに手をやり、眉宇をひそめたまま
身じろぎもしない。額には脂汗が滲んでいた。
「ど、どうかなさいました……?」
171マンハッタン 1889年 11/12:2006/05/28(日) 15:43:20 ID:4IhFldu1

身体を折り曲げていた男が、嘔吐するように背中を震わせた。
「う……ぐ、ぐぅっ……」
口を押さえた手の隙間から暗赤色の血が溢れ、枕に滴り落ちる。男は茫然と自分の掌を
見つめた。
「あぁっ……!」
慌てて覗きこむ女を目で制し、男はしばらく肩で息をしていたが、「水を……」と囁く
ように言った。受けとったグラスから、少しずつ水を口に含む。

動転していた女だったが、素早く男の部屋着を纏うと、足を引きずりながらも手際よく
処置をした。枕をとり去ってから、タオルを濡らして男の手を拭う。男は黙って
そのタオルを受けとり、口元を拭った。
女は男を支えて横向きにそっと寝かせ、額の汗を拭う。濡らしたタオルを男のみぞおちに
当てると、椅子に腰を降ろした。

「……ありがとう」
「あまり口をおききにならない方が、いいですわ……」
男は目を瞑ったまま頷く。徐々に息遣いが落ちついてきた。
「ひとを呼んできましょうか?」
その声に目を開くと、男は小さく首を振った。
「吐血なさったのは……初めて?」
ふたたび頷いた男は、唇の端を歪めるようにうっすらと微笑んだ。
「いいか……、誰にも、言うな……」
「でも……」
言い募ろうとした女は、男の眸の強さに言葉を呑みこむ。
「大丈夫だ……」
そう言うと、男は喉の奥で低く笑った。
「あなたは……、なんだかまるで、喜んでいらっしゃるみたい……」
「……そうかも知れない」


それが、自分の生命に区切りがついたことを、男が初めて自覚した時だった。ずっと以前
から、この時を待っていたのかも知れない。オペラ座ですべてが終わった時、自ら命を
絶つことをしなかった、あの日から――。
生きることを積極的に選んだわけではなかった。目的があるわけでもなかった。
あった物といえば、クリスティーヌが男に託した指環だけだった。いわばそれだけを
生き続けるよすがとして、自死してはならぬ戒めとして、ここまで来た。

クリスティーヌの死後も、男はそうやって生きてきた。あの日から二十年近くが経ち、
それに終わりが見えた。この先、どんな日々が待っているのか。痛みにのたうちながら
最期を迎えるのか――。
来世を信じはしない。死後に彼女の元へ行けるとも考えない。罪に手を血で染めてきた男が
行くとすれば、むしろ地獄だろうか。それでも、死は男にとり、恐怖ではなく、安らぎの
ように思えた。
172マンハッタン 1889年 12/12:2006/05/28(日) 15:44:45 ID:4IhFldu1

「君の寝床を奪ってしまったな……、すまない。もう少し休んだら、君を隣の部屋へ
連れていくから……。血で汚れたベッドでは不愉快だろう」
「病人がそんなことを心配してはいけませんわ……。私なら大丈夫です。今夜はあなたの
おそばにいます」
「しかし……」
「ひとの世話は慣れていると、先ほど申しましたでしょう。疲れたら、そちらのソファを
お借りしますから。とにかくあなたは、安静になさってください」
女はきっぱりとした口調で言い、椅子の背に掛けてあった男の上着を片づけようとした。
胸の隠しから封書が落ちた。

「あ、それは……」
男が手をさし出す。女は封書を拾い上げると男に手渡した。その拍子に、差出人の名前が
目に入った。フランソワーズと記されていた。
「ありがとう……」
「そのお手紙の方のためにも、あなたは養生なさらなければ……。すみません、名前が
見えてしまって……」
女が躊躇いがちに言うと、男は大切そうに手紙をかたわらに置き、低く笑って答えた。
「この差出人は、そんな女性ではないよ。……知り合いの子供だ」
「……そうですか………」
だが女には、男の眸が優しい色合いを帯びたように見えた。懐かしい何かを思い出して
いるように感じられた。


「さあ、どうぞお寝みになって……」
女が上掛けを首元まで引き上げると、男は目を閉じて言いつけに従った。顔色は悪かったが、
容態は落ちついてきたようだった。おそらく他人がいる場で眠ることはなかったであろう
男が、自分の前で無防備に横たわっている。それが女には嬉しかった。

これ以上は男に関われないと承知していたが、女はそれでも男を見つめずにいられなかった。
降りやまぬ雨音が、窓の外から聞こえてくる。
女はいつまでも男の寝顔を見守っていた――。


<終わり>
173160:2006/05/28(日) 15:45:54 ID:4IhFldu1
以上です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
174名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 17:36:12 ID:Vpp6reN9
天使さま激しくGJ!
優しい先生と初っぽい女性に萌えますた。

頼むから病院に行ってほしい…。
175名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 21:25:21 ID:CPIu3To5
(*゚∀゚)=3 ムッハー!!
待ってました中年ファントム!!
ありがとう>>160天使!!激しくGJ!!
血を吐いてもどこか嬉しそうってとこが泣ける。

中年シリーズはこれで終了なんだろうか。
かなり好きなシリーズなだけにテラ( ´・ω・)サミシス
176名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 22:38:13 ID:AkdrexBp
自分の人生の終わりにほっとする先生セツナス…。
でもちょっとづつでも人と触れ合えてることは救いなのかなとも思った。
天使様、ありがとう。
177名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 23:22:12 ID:XCh2tVhH
 ( ゚д゚)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_ 
  \/    /
     ̄ ̄ ̄
 
  ( ゚д゚ )
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_ 
  \/    /
     ̄ ̄ ̄
 
      ∩
  ( ゚д゚ )彡 つーづーき!つーづーき!
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_ 
  \/    /
     ̄ ̄ ̄
178名無しさん@ピンキー:2006/05/29(月) 19:41:46 ID:RWj3F+yk
>160
GJ! GJ! GJ!
死が安らぎだなんて……、先生…… (つД`)

行為の後、お礼を言う女に萌えた。
一所懸命生きてきたんだね、本当に。
179名無しさん@ピンキー:2006/05/29(月) 21:34:45 ID:BAzK97ob
なにこのスレ……

世過ぎ…
180名無しさん@ピンキー:2006/05/29(月) 21:42:40 ID:RVBVZjgh
>>179
過去スレまで読んでみ。
ここは神スレだ。
181160:2006/05/29(月) 21:58:32 ID:hML+xTUB
>177
こっち見んな。


嘘です、160じゃありません。言ってみたかっただけですごめんなさい。

中年ファントムファンの一人ですー!
辛い時があってこその優しさ、セクシーさだと思うと
じーんと来るものがあるんだよね…。重みがあるっていうか。
いつもながらGJ!他の女性とのお話も読みたいな〜
182名無しさん@ピンキー:2006/05/29(月) 22:59:10 ID:i0JRMPV4
本当に優しいな、中年マスター。
優しさの見せ方も相手によって捻っていたり、ストレートだったり。
大人のいい男だ。

>179 そこでまとめサイト様ですよ
183160:2006/05/30(火) 12:09:04 ID:PPOCAeJG
感想ありがとうございました。励みになります。
このシリーズは、エロは無論のこと、行きずりの女性との
もっともらしいw出会い方に、ひじょ〜に悩みます。orz
千人斬りはムリ……。
 
もしまた何か浮かんだら、投下させてもらいますね!
お礼が遅れて申し訳ありません。
184名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 14:31:38 ID:/JFA3eTi
ファントム×クリス
エロは極薄
無理やり風味です
1851/3:2006/06/01(木) 14:32:12 ID:/JFA3eTi
少女にとっては嵐のようなものなのだろう。
避け様もなく雨に打たれ風に嬲られ、通り過ぎるのをただ待つしかない。

男はこの世界の王だった。
何事も思いのままになしてきた。
思い通りにならぬことも、脅迫とそれに伴った行動で思い通り操った。
支配人も、演奏家も、プリマドンナですら
この美しい殿堂の総てが、彼の僕だった。
その少女もまた、王国の末端に連なる取るに足りない存在だった。
その声にふと心が動いたに過ぎない。それだけのはずだった。

「ジャンはクリスティーヌのことが好きなのよ!」
「まあ、お似合いじゃない?でもクリスティーヌのほうはどうなのかしら」
「何も言わないけど…嫌ってことないんじゃない?ジャンは優しいし、ハンサムだし」
その道具係の若者が、ことあるごとに少女に戯れかかっているのは知っていた。
ころころとクリスティーヌは笑った。

少々の悪戯心。
天使を信じるあの少女は、同じように怪人の存在をも信じているのだろうか?
腰に首に腕を廻し、あっという間に脇の小部屋に引きずり込んだ。
1862/3:2006/06/01(木) 14:32:46 ID:/JFA3eTi
あのとき悲鳴を上げて逃げ出せばよかったのだ、と今でも思う。
そうすれば鼻で笑って放してやっただろう。
幽霊を、絶対者を恐れ、怯えるのは当然のことだ。
しかし少女は次の瞬間、悲鳴を飲み込み身体を緩めた。
大きく息をついて、安堵した、暖かい、嬉しそうな声で呟いたのだ。
「…天使様…」
胸の底から湧き上がった黒い靄が、男の目を、耳を覆った。

気付いた時には少女を床に組み伏せていた。
いっぱいに開かれた目は驚きのみを湛えて、それが何故か妙に癇に障る。
無言でブラウスのボタンを一つ一つ外す。瞳にみるみる涙が湧き上がる。
少女が身動ぎするたびに、鎧戸の隙間から差し込む光の中で埃が踊るように舞った。
やがて男が露わになった肌を指で舌で弄び始め、少女はやっと顔を背けた。

助けを求めて叫べばよかったのに。それでも少女は
笑い声や足音が扉一枚隔てたところを通るたびに
体を強張らせはしたが、それでも決して声を上げなかった。
初めての花弁に男が強引に押し入った時でさえ。
頬にこめかみに幾筋も涙を伝わせながら、
両手を口に当て、ブラウスの裾を噛みしめて、そうしてどんな声も零さなかった。

血と体液に汚れた身体を、少女の下着で拭ってやってから男は立ち上がった。
ぐったりとした身体を半ば無理やり立たせ、衣服を整えさせるとそのまま部屋から押し出す。
痛む身体を引きずるように、部屋までの階段を上ったのだろうか。
部屋に戻ってから、1人で泣いたのだろうか。
後を追いそうになる自分を必死に押し止め、王であった男は長く息を吐いた。
1873/3:2006/06/01(木) 14:35:11 ID:/mZr7qdK
現れないと思っていたその夜のレッスンに、少女は姿を現した。
男は何も言わず、少女も何も言わず、そうして楽の音が礼拝堂に溢れる。
優しい声は澄んで、豊かで、美しい。
歌に耳を傾けながら男は、少女の本当の声が聞きたいと思った。
父の魂に祈る声ではなく。この音楽の天使への声でもなく。
自分という名のない男へ向ける本当の声を。
それが例え陵辱者に対する嫌悪の声であっても。
そこまでの自覚は男にはなかったかもしれない、否、なかったからこそ気付かない。
自らの望むものに。

楽屋で、舞台脇の小部屋で、廊下の端の暗がりで、
突然襲い掛かる嵐のような男の仕打ちに、少女は黙って耐える。
性急に開かれた身体が、男を受け入れるのに苦痛以外の何かをもたらすようになっても、
クッションに顔を埋め、手の甲を血が滲むほどに噛みながら
微かな呻きと溜息を漏らすのみで、少女は声を上げない。
少し悲鳴を上げれば即座に誰かが駆けつけてこよう。
そうすればこの嵐は消えてなくなるかもしれないのに。
身体を震わせ、頭を仰け反らせ、男の背に爪を立てながら
今夜も少女は男の望みをかなえることはなかった。

請うたことのない男は、どうすれば望むものが手に入るのかまだ知らない。
そして既に自らが王などではなく、恋という魔物の
哀れな僕に過ぎないということも、まだ、知らない。
188名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 14:37:16 ID:KFrV9sy2
            キ
            タ
             ァ
              ァ
              ァ
               ァ
               ァ
               ァ
              ァ
             ァ
             ァ
              ァ
              ァ
          ヽ\  //
              _, ,_ 。
           ゚  (゚∀゚)っ ゚
             (っノ
               `J
189183:2006/06/01(木) 14:37:31 ID:/mZr7qdK
申し訳ありません。1レス目、以下が抜けておりました…orz

その道具係の若者が、ことあるごとに少女に戯れかかっているのは知っていた。
今まさに男の眼下で、件の若者は舞台から下がろうとする少女を呼び止めていた。
何を言ったかまでは聞こえなかった。が少女は男の言葉を聞きころころと笑った。
男が今まで聞いたこともないような声で。

少女をいずれは彼の王国の歌姫にしようと思っていた。
しかし、それはいわばチェスのようなもの。
例えあの少女であっても、ゲームの駒のひとつに過ぎない。
そのはずなのに頭の中とは異なり現実にざわつく胸の内に、男は不快さを感じた。
やがて少女は若者と離れ、舞台袖から人気のない廊下へと歩いてゆく。
少々の悪戯心。
190名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 01:25:37 ID:slHG55jM
つ、続くのですね天使様!GJ!
切ないなあ… 耐えてしまうなんてクリス健気だ。
191名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 11:28:56 ID:Ar19jGyo
GJ!
切ない話だ…。


で、住人はどこいっちゃったんだよ!
192名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 19:19:31 ID:ZL8kkefc
GJ!GJ!!
父の魂へでもない、音楽の天使へでもない、自分自身への声を
聞きたかったんだね。 ファントム……セツナス ・゚・(つД`)・゚・

      ∩
  ( ゚д゚ )彡 つーづーき!つーづーき!
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_ 
  \/    /
     ̄ ̄ ̄
193名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 22:21:45 ID:ZL8kkefc
投下します。「中年ファントム」シリーズです。
ファントム vs マダム・ジリー
マダム・ジリーの名前は、『マンハッタンの怪人』から
いただきました。
エロ無し。orz
全部で5レス分です。
194マダム・ジリー 1890年 1/5:2006/06/02(金) 22:24:53 ID:ZL8kkefc

アントワネット・ジリーがハドソン河上流にある邸へ到着すると、男は客間で待っている
とのことだった。執事の案内で廊下を進む。
この地域に散見される、他の大富豪たちの別荘ほど大きくはなかったが、広い敷地の奥に
佇む館は瀟洒な造りで、内部の調度からも男の地位がうかがえた。
いずれにしても、男は豪奢な邸宅など必要としていなかった。病みやつれた身体を休める
臥所があれば、それで充分だった。

立ち去る執事に会釈をして、女が部屋の中へ目をやると、二十年近くぶりに見る男の姿が
あった。
「遠いところを、ようこそ。マダム……」
痩せた………!
黒い礼服を纏った長身のすらりとした立ち姿、深みのある低い声は当時のままだったが、
男の肩は尖り、その身は肉を削ぎ落としていた。
「私は、そんなに面変わりしましたか……?」
男は歩み寄り、戸口に立ちつくす女の手をとると、甲に唇を軽く押し当てて優雅な挨拶を
した。女を見下ろす眸が、面白そうに細められる。蒼とも碧ともつかない不思議な色も、
惹きこまれそうな強い輝きも、なんら変わっていなかった。

「あ……、本当にお久しぶりね。突然の訪問、失礼しますわ……」
「どうぞ、こちらへ……」
男は女の手をとったまま椅子へ導くと、向かい側に腰を降ろした。執事がふたたび現れて
お茶を置く間、どちらも口をきかなかった。
三つ年下の男を、女は真正面から見つめる。右半面が白い仮面で覆われてはいるものの、
高い鼻梁の整った顔立ちは、年輪を重ねて渋みと落ちつきを増していた。だが、削げた
頬と尖った頤を目にして、女は胸を抉られる思いがした。
195マダム・ジリー 1890年 2/5:2006/06/02(金) 22:26:40 ID:ZL8kkefc

執事が下がると、男は口を開いた。
「あなたは変わらないな。今でもお若くて、美しい……」
「そんなお上手がさらりと言えるなんて、あなたもなかなかね。……私はもう、何人もの
孫のお祖母さんよ。メグの子供が三人、それにクリ……」
「フランソワーズたちも大きくなった」
男は遮るように言った。
「……あの子も、こちらへ来るそうだ」
目を伏せた男の低い声に、困惑とともに面映ゆげな響きが加わる。

「フランソワーズも勘のいい子ですからね。……会っておあげなさい。あなたのためにも、
良いことだと思うわ……」
クリスティーヌという名前が出かかると、男はいまだ敏感な反応を示した。そのことに、
痛ましいような、愛しいような気持ちが女の胸に込み上げる。
「あなたはまた、どうしてこちらへ……?」
「あんな高額の小切手を送りつけられては、何かあると考えるのが普通でしょう? もう
連絡はしないとも書いてあったし……」
「……それで察したのか………」
俯いたまま、男はぼそりと呟いた。

「当たり前よ。私を誰だと思っているの? 私はマダム・ジリーよ」
軽く睨むように女が微笑む。男は苦笑した。
「あなたには敵わないな……」
「そう認めるなら、私の言うことを聞いて横になってちょうだい。その方が、私も気兼ね
なくお喋りができるわ……」
女は男に手を添えてソファに寝かせ、肘掛けのところに畳まれていた毛布をかけてやった。
おそらく馬車の到着を耳にするまで、男は横たわっていたのだろう。顔色は優れず、お茶
にもまったく手をつけていない。

「ありがとう、マダム……。気を遣わせて、申し訳ない……」
女は笑みを浮かべて男の頬をひとつ撫でると、自分の椅子へ戻った。
「まあ、私がこちらへ来たのは、男友達との旅行も兼ねているけれどね。ついでと言っては
なんだけど、あなたの様子も偵察にきたってわけなの」
おどけた口調で女が言う。男も女に合わせて低く笑った。
「相変わらず……、さすがマダム・ジリーだね」
「あなたもこんなに成功して……、さすがだわ。私との約束もずっと守ってくれて……」
196マダム・ジリー 1890年 3/5:2006/06/02(金) 22:29:03 ID:ZL8kkefc

二十年前のあの日、オペラ座の地下深くで倒れていた男を助け出し、ひと月以上も匿った
後、ニューヨーク行きの船に男を乗りこませたのは、この女だった。別れる際に、一年に
一度は必ず連絡をするよう、男に約束させていた。
男は約束を守った。女の元に届くのは、居所を知らせるだけの短信ばかりではあったが。
年とともに男の住所はマンハッタンの南から北へと移っていき、パリで暮らす女にも、
男の成功ぶりをうかがい知ることができた。
女も折りにふれて、男が関わった者たちの近況を手短に書き送った。
誰も知らない、ふたりだけの秘密だった。


「ここは混沌の都だ。政治も金融も、鉄道も鉄鋼も石油も、すべて要領のいい悪党どもが
のし上がっていく。そのおこぼれに、少しばかりあずかっただけだ。悪党ということでは、
私も負けないからね。……それに、ここには様々な人間がいる。あなたが私をここへ遣った
のは、正解だったのだろう……」
自嘲めいた男の言葉にも、女は動じなかった。唇の端を上げて、すました顔で微笑む。
「それで結構よ……。でも三度かそこら、あなたがパリへ来た時、私には知らせなかった
でしょ。薄情な男ね」
「それもご存知なのか……。仕事がらみで部下と一緒だったし、迷惑がかかってもと……。
最後の渡航はフランソワーズの件で……」
男は憮然として言いよどむ。

「そして今回、私のほかにも身辺整理をつけたってわけね?」
一瞬、男は目を瞠った。
「いや、あれは……。まったく、マダムには敵わないよ……」
「そう、私に隠し事は無駄よ」
女は愉快そうにころころと笑った。それから、面持ちを改めると低い声で男に尋ねた。
「これまで、……辛かった? 私のしたことを、恨んでいた……?」
「今さら、あなたらしくもないな。……あなたが私にしてくれたこと、すべてを感謝して
いるよ。二度まで命を救われた。ここでの人生も、それなりに興味深かった。今ではそう
考えている……」
男の眼差しはまっすぐで、声には真摯な響きがあった。男は女の目を見つめたまま言葉を
続けた。
「小切手を送るなど不躾かとも思ったが、私の気持ちだと受け止めてほしい……」

女は胸を詰まらせ、声が震えそうになるのを堪えた。
「……あなたにそう言ってもらえると、私も嬉しいわ。小切手はありがたく頂くわね……」
男がこう言えるまでに、どれほどの時を必要としたのだろうか。どれほどの苦しみを乗り
越えてきたのだろうか――。今、女を見上げる男の眸は澄みきっていた。
197マダム・ジリー 1890年 4/5:2006/06/02(金) 22:30:44 ID:ZL8kkefc

女は顔を背けると、さも埃でも入ったように瞬きをして、瞼をハンカチで擦った。先ほど
とは違う涙が滲んできた。赤くなった目をパチパチさせるが、痛さで目が開けられない。
ハンカチの繊維くずが片目に入ってしまったようだった。
「あら……、本当にごみが入っちゃったみたい。困ったわ……」
男は思わず笑い声を上げた。
「本当にって……。見せてごらん、取ってあげるから……」

男が横たわるソファの前に跪いて、女は顔を寄せる。男は両手で女の顔を挟みこみ、指で
瞼を開かせると、舌先を瞼の裏にそっと当てた。
「あっ……!」
「動いちゃ駄目だ、じっとしていて………」
男が囁いた。舌先が女の裏瞼を掠めるように這う。
女は震える指で男の腕をつかんだ。一瞬が永遠のように感じられる。時が数十年前に遡る
ようだった――。

「……ほら、取れたよ」
舌先から繊維くずをつまみ上げると、男は女に微笑みかけた。
「もう、痛くないだろう……?」
「ええ……、そうね、ありがとう………」
女は何回か瞬きをして、痛みが消え去ったのを確認した。同時に、魔法の刻も消え去って
しまったことを知った。スカートを払って立ち上がると、背筋をすっと伸ばす。
男は黙って女を見上げていた。
198マダム・ジリー 1890年 5/5:2006/06/02(金) 22:32:10 ID:ZL8kkefc

「そろそろ、おいとまするわ。あまり長居をすると、あなたを疲れさせてしまうし……」
努めて軽い調子で、女が別れを口にした。陽が西に傾きはじめていた。男の目元に刷かれた
刻みこんだような翳も、その色を濃くしていた。
「これからマンハッタンに戻るのかい……?」
「いいえ、近くにある別荘へ招待されているの。そこで男友達と合流よ。彼の知人なの、
別荘の持ち主は。あなた曰く、悪党のひとりね、きっと」
どちらからともなく、ふたりは笑みを交わした。

「玄関まで送ろう……」
男がおもむろに身を起こした。
「あら、私ひとりで平気よ。無理しないで……」
「いや、大丈夫だ。……見送らせてほしい、あなたを………」
男はかぶりを振ると、差し出された女の手を握って立ち上がった。
男が女を見下ろす。小柄な女は男の顔を見上げた。自然な位置関係だった。ずっと長い間、
こうしてきたのだ。――そして、これが最後なのだろう。
ふたりは互いの手をとって、人けのない廊下を無言のままゆっくりと歩いた。


玄関の先には、女の乗ってきた馬車が待っていた。男は女の肩に手をかける。
「もう、お会いすることもないだろう。遠いアメリカまでわざわざ訪ねてくれて、本当に
ありがとう。……さようなら、アントワネット、お元気で………」
「……エリック………!」
言葉を続けられず、女は男を抱きしめて胸に顔をうずめた。男の背中を愛おしげに撫でる。
「忘れないわ……、あなたを………」
「……ありがとう」
男は女の顎を指先で持ち上げ、背をかがめてそっと唇を重ねると、沁み入るような笑みを
浮かべた。女は溢れていた涙を拭い、男の眸を胸に刻みつけた。

「さようなら………」
馬車に乗りこんだ女へもう一度声をかけて、男はその場に佇み、走り去る馬車を見送って
いた。窓から振り返る女の滲んだ視界の中で、男の姿が遠ざかっていった―――。


<終わり>
199193:2006/06/02(金) 22:33:45 ID:ZL8kkefc
以上です。
読んでくださった方、ありがとうございます。
200名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 22:52:25 ID:yYnRuFXL
193の天使さま、GJです。
リアルタイム遭遇感激!
携帯のページ更新を連打しました!
エリックに残された時間が
着実に減っているのが
読んでて悲しいです。
あぁ…、エリック死なないで…。
201名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 23:06:43 ID:Ar19jGyo
GJGJGJ!
エロなしなんだよね。
でも泣いた。ボロボロ泣いた。
ここのSSで泣くのもひさびさだ。
良いもの読ませてもらいました。ありがとう。
202名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 23:08:40 ID:82TRwoaM
自分もリアルタイム遭遇!!

っつか久々にスレのぞいたら凄い事になっててウレシス!!

なんかエリックって直接エロ描写ある訳じゃないのにエロいよねww
これもやっぱり作家さんのなせるワザなのか…!!
恐るべし……!!
いっつもありがとうございます!!!!
203名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 00:06:51 ID:7KnB57Kl
>193
GJ! GJ! GJ!
クリスの名前に反応するマスターが哀しい。
あとさ、マダムをファーストネームで読んでるのがエロい。
なんかあったのか、昔? あったなら、それ読みたいです。
204193:2006/06/04(日) 13:38:36 ID:Oa/8MxY2
感想、ありがとうございました。
今回は直接的なエロを入れられませんでしたが、
それでも「エロい」と言ってもらえて感無量……!
205名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 14:54:10 ID:uLuYa8XJ
>>204
おうよ
新作待ってるぜノシ
206名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 21:36:38 ID:ffPJSHaR
>204 またお待ちしてます!エロなくてもマスターの雰囲気がエロいです!

童話考えてみたよ。
「鏡よ鏡、答えるのだ。世界一美しいヅラを持っているのは誰だ?」
「それはシャニュイ子爵です」
「何だと、生意気な若造め!災いあれ!」
鏡に燭台を叩きつける。

…だめだ、エロ入る余地がない…
207名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 21:45:58 ID:Sh+xoPrq
wwwwww
208名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 03:00:36 ID:p6K88Qor
あーもう、エリックとマダムに、じんわりと涙したかと思えば、
206で吹いちゃったじゃないかw

193天使様、GJでした!!
209名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 14:25:18 ID:qnyn0dV1
投下します。
・エロ無し、ギャグ無し。
・クリスとマスターは結婚して数年経過してます。
・甘甘テイストなので、お口に合わない方はスルーで。
 
210似たもの同士 1:2006/06/05(月) 14:28:45 ID:qnyn0dV1
 夜中にふっと目覚めたクリスティーヌは、背中に体温を感じ、ごろんと体ごとそちらを向いた。
 そこには寝息をたてている夫があり、その横顔を見つめる。
 薄暗い寝室ではあったが、間近にある夫の顔はよく見える。ただれたような肌、めくれ上がった唇、削がれたかのような鼻、申し訳程度にしか毛のない頭部。
 クリスティーヌは夫に会えた嬉しさに微笑みながら、といっても相手は眠っているのだが、顔のパーツをひとつづつ丹念に見ていった。
 こうしてじっくりと夫を観察するのはとても久しぶりだった。
 何故なら、ここ3ヶ月というもの、舞台にかける歌劇の準備に忙しい夫は、朝も夜も関係なく劇場へ赴き仕事をしているのだ。
 古典を新しい演出で上演するということで、音楽だけでなく、脚本、演出、監督を一人でやっているのだ。通常の業務をこなしながら、だ。
 歌手やダンサー、衣装や美術に口を出し、手出しもしているから、体が幾つあっても足りないんじゃないかしら?というのは、クリスティーヌの親友のメグだ。
 現場ではその通りで、夫は寝食を忘れ、時間を忘れ、歌劇に関係のない物事は全て忘れて舞台に没頭しているのだった。
 妻であるクリスティーヌは、そんな生活を続ける夫の体が心配でたまらない。言って聞く人ではないからだ。
 彼女にできるのは、せいぜい、いつ帰ってきてもくつろげるように、清潔な寝床と食べ物を用意しておくこと、それから仕事の邪魔にならないようにすることくらいだろう。
 出来ることなら手伝って、負担を減らせられたらと思うが、彼の芸術の領域にクリスティーヌの入り込む余地はない。
 仕事に打ち込んで納得のいく舞台を作り上げて欲しいと思う反面、しかし、クリスティーヌは寂しかった。
 これが成功すれば、彼が一流の芸術家として認められるだろうことは分かっていたし、是非そうなって欲しいとクリスティーヌも望んでいる。
211似たもの同士 2:2006/06/05(月) 14:42:56 ID:qnyn0dV1
 もうしばらく辛抱すれば、夫の時間にも気持ちにも余裕ができるのも理解しているつもりだ。
 でも、結婚しているというのに殆ど会うこともなく、言葉も交わすこともわずかとなると、自分が、家主に忘れ去られて物置で埃をかぶっている人形のような気がしてくる。
 歌わない私には興味なんてないのかしら?私のことは忘却のはるか彼方なのかしら?
 仕事に夢中になっているエリックは素敵だし、尊敬しているけれど。
 クリスティーヌは見つめていた夫の顔に触れたくなって手を伸ばしたが、起こしてしまうことになったらと思い、引っ込めた。
 ずいぶんまともに眠っていないはずだ。彼のベッドで眠る貴重な機会を奪いたくない。
 と、その時、夫が目を開けてしまった。
 「…クリスティーヌ…?」
 焦点の定まらないぼんやりとした目で妻を見ると、上掛けをクリスティーヌの肩に掛け直してくれた。
 「ちゃんと入って眠らなければ…」
 彼は、赤ん坊にするようにぽむぽむと妻の背中を軽く叩いたが、眠気に負け、クリスティーヌのウエストに手を乗せたまま再び寝息を立てていた。
 クリスティーヌはこれ幸いと、夫にぴったりとくっついて自分も眠ることにした。
 ぬくぬくと暖かくてとても良い気持ちだ。そして、心もじんわりとあったかだ。だって、彼は妻の存在を忘れておらず、疲れているのにクリスティーヌを思い遣ってくれたのだ。
 ときどき、気持ちが離れたように感じることがあっても、こうやって彼の優しさに気付くと、とてもとても愛しくなる。どうしてこんなに愛しいのだろう。
 結婚して七年…いや八年になるというのに、愛情は増すばかりだ。娘も産まれて、自分は親になったというのに、いつまでも彼の傍にいて甘えたいと思ってしまう。
 ケンカもあるし、絶対に上手く筈なんてないと別れようと悩んだ事もあったけれど、今はこの人なしで生きるのは難しいとさえ思える。
 そんな風に思える人と出会えて、夫婦となって、私はなんて幸運なんだろう。…寂しいこともあるけれど。
212似たもの同士 3:2006/06/05(月) 14:44:30 ID:qnyn0dV1
 「…大好き…」呟きがもれる。
 すると、背中に置かれていた手に力がこもり、「…ありがとう」と、言葉が返ってきた。
 起きていたのかしらと夫の顔を覗くと、微笑んでいた。目が合うと「おやすみ」と言ってクリスティーヌを引き寄せて、また眠りに落ちたようだった。
 クリスティーヌは、夫も私とこうして一緒に眠ることに幸せを感じているのだろうと思えて嬉しかった。そして、愛する夫のぬくもりの中で彼女も眠った。
 
 翌朝、頬に誰かが触れているような感触を覚えて、クリスティーヌは目を開けた。
 頬を指の背でなぞっていたのは、夫だった。
 「…あなた?」
 彼が朝、妻を起こすことは滅多にない。不規則な時間で動いているので、クリスティーヌと娘の生活を乱さぬようにしているのだ。
 「おはようございます、エリック」
 早朝だというのに、彼はもうきっちりと隙無く身支度を調えていたので、すぐに劇場へ行くのだと解り、目覚めてすぐに、クリスティーヌは失望した。
 夕べのことは夢だったのかしら。ほんのちょっとだけど、幸せな時間を共有したと思ったのは、寂しさ故に見た夢だったのかもしれない。
 あまりに素敵な夢だったので、がっかりしてしまっただけよ。朝早く出て、皆が寝静まった頃に帰ってくることなんていつものことなのだから。劇場に泊まり込むことだって珍しくないのだから。
 クリスティーヌはそう自分に言い聞かせて、朝から暗い顔はしまいと、笑顔を夫に向けた。
 「おはよう、クリスティーヌ」
 クリスティーヌが体を起こして、ベッドから降りようとすると、エリックに「そのままでいいから」と押し戻されてしまった。
 エリックはベッドに浅く腰掛け、妻を見つめている。
 「…あ、あの、どこか変かしら…?」
213似たもの同士 4:2006/06/05(月) 14:45:52 ID:qnyn0dV1
 クリスティーヌは急いで長い髪を指で梳いて整え、寝間着の胸元をかき合わせ、自分の顔をぺたぺたと触って何か付いていないか調べた。 
 「いいや」
 「…でも、そんなにじろじろ見られては落ち着きません…」
 エリックは眉をひそめて、妻から視線を外した。
 「…すまない。まだ仮面をつけていなかった。不快にさせたのなら、謝る」
 立ち上がると、サイドテーブルに置いてある仮面を取って顔に付ける。彼の傷ついたような諦めたような笑みがクリスティーヌを不安にさせた。
 「不快だなんて…、ただ、その、…恥ずかしくて…」
 クリスティーヌは、エリックが考え違いをしていることに気付いて、本当のことを言わなければならなかった。
 何年も夫婦をやっているというのに、見られることが恥ずかしいだなんて、生娘みたいなことを伝えるには勇気が必要なものだ。
 「このごろ、あまり顔も合わせていなかったし…」
 すると、クリスティーヌの横にエリックがもう一度腰を下ろし、深く息を吐いた。
 「…私はてっきり…嫌われてしまったかと」
 エリックが目を閉じてそう言う。決まり悪そうな表情で、素直にそう言ってくれた夫がかわいい。
 「留守がちだし、クリスティーヌが私の素顔を忘れてしまったのかと。
 君が恥ずかしくなるとは思っていなかった…。
 その…。その…あれだ。いつも寝顔を見ているから、それと同じつもりで見てしまったんだ」
 言ってしまってから、エリックははっとして、仮面のない方の頬を赤らめ、それを見られまいと顔を背けた。
 「同じつもりって…。
 …私の寝顔をじっと見ていらっしゃるということ?いつも?」
 顔をそっぽに向けたまま、エリックはこっくりと頷いた。
 顔は見えなくとも、首も耳も真っ赤になっていることを夫は気付いているのかしら。
214似たもの同士 5:2006/06/05(月) 14:51:54 ID:qnyn0dV1
 「私も、ゆうべはあなたの寝顔を観察していたの。おあいこね」
 クリスティーヌはお互い同じことをしていたことがなんだか可笑しくて、見ていてくれたことが嬉しくて、夫の背中に抱きついた。
 エリックは驚くと同時に、ほっともしたようだ。
 「…今夜はできるだけ早く帰ってくるよ、クリスティーヌ」
 「お仕事はよろしいの?」
 エリックは妻に向き直り、もういつもの顔色に戻っていたが目は優しくて、クリスティーヌにそっとキスをした。
 「今日は約束が二、三入っているが、それさえ済めば帰ってこられるから」
 「本当?嬉しいわ」
 クリスティーヌはぱっと笑顔を咲かせたが、それはすぐに陰った。
 「でも、本当によろしいの?私たちの為に無理しているのなら、いいのよ。
 私もニネットもお留守番は慣れているし、あなたには納得いくような舞台を作り上げて欲しいもの」
 エリックは何も言わずに妻をぎゅっと抱き締めた。
 クリスティーヌは、言葉はなくとも彼の気持ちが伝わってくるような気がして、自分も夫の背中に腕をまわした。
 やはり夫に抱かれていると、あったかで幸せで、涙が出そうになってしまう。
 二人は少しの間そうやって、お互いをいたわるように抱き合っていた。
 「…ありがとう」
 やっと、絞り出したような掠れたエリックの声がして、クリスティーヌはすぐ上にあったその顔を見上げた。
 爪楊枝一本からでも雄弁をふるえるエリックなのに、自分の感情を言葉にすることは苦手で、その一言にたくさんの意味が含まれていることを妻は知っている。
 彼の緑がかった青いきれいな目は、自分と同じように潤んでいて、温かさをたたえているので、彼も胸がいっぱいになっているのだろう。
 私たちって似たもの夫婦なんだわ。と、クリスティーヌは思った。
 「夕べも、おしゃってたわ」
 そうクリスティーヌが言うと、エリックは唇を歪めて、はにかんだような表情になった。
215似たもの同士 6:2006/06/05(月) 14:53:54 ID:qnyn0dV1
 「…ああ、そうだった。
 …今朝、起こしたのは、その…。私も言いたかったんだ」
 エリックは一つ息を吐いて、続けた。
 「クリスティーヌ、愛している。
 …どうしても言いたくて、朝早くから起こしてしまった。済まなかったね」
 最後のところは少し早口で、照れていることがクリスティーヌには分かった。
 エリックが自分の気持ちを伝えようとするとき、必ずこうなるのだ。子どものようで、ずっと以前からかわいいと思っていることは、彼には内緒だ。
 「ううん。
 もし起こしてくれなかったら、夕べの事は夢だと思うところだったわ。…夢じゃなかったのね。
 愛してますわ、エリック」
 今度はクリスティーヌの方からキスをした。夫の首に腕を巻き付けて、情熱的なキスを贈った。
 「お帰りをお待ちしてます」
 「うん。待っていておくれ」
 心なしか足取りの軽くなった夫が寝室から出て行ってしまうと、クリスティーヌは喜びでいっぱいで、じっとしていられず、ベッドから勢いよく降りた。
 今日はたくさんお花を買ってきて、飾ろう。もちろん寝室にも。
 それから、ニネットにパパが帰ってくるわよと言ってあげられるわ。
 …あの人が帰ってきたら、あなたと結婚してとても幸せだと告げよう。
 また顔を背けて、赤くなるかもしれないわね。
 照れるだろう夫を思い浮かべて、クリスティーヌは一人にっこりした。
 そして、外へ出たエリックもまた、今夜は赤いばらの花束を持って帰ろう。と、心に決めてにっこりしていたのだった。
 
                
    <おしまい>
216215:2006/06/05(月) 15:07:57 ID:qnyn0dV1
娘のニネットという名前は、
以前自分が投下したSSで使ってたものをそのまま使いました。
217名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 15:28:51 ID:9F3Ze/s8
はぅ…、215の天使さま‥GJです
甘いお話し、堪能させていただきました
<おしまい>だけれど…

その夜はもちろん燃えあがり、
燃えた結果、実を結ぶ‥
勝手に妄想猛進中!
もう、止まりません…
218215:2006/06/05(月) 17:11:39 ID:qnyn0dV1
読んで下さった方、ありがとうございました。
>211の下から3行目、
>絶対に上手く筈なんてないと
→絶対に上手くいく筈なんてないと
に訂正よろしくお願いします。

>217
その夜は激しく求め合ったことでしょうw
そうなるだろーなーとイメージしながら書いたので、くみ取って貰えて嬉しいです。
219名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 20:32:33 ID:2orX2eaR
アマ────(・∀・)イイ!!
結婚して8年も経ってしかも娘までいるのにこの緊張感溢れる夫婦関係は
何故ハァハァ
220名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 21:14:51 ID:EnkbQcyd
>>215
なんだこの夫婦…
もう読んでて頬ゆるみっぱなしww
こんな素敵なSS描いて下さりありがとう天使様!!
221名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 21:55:57 ID:cM7MZXDv
>215
週の頭からあまあま、ぬくぬく、
何かいいモノ補給させていただきました。
ありがとう、天使様ノシ
いい歳なのにテレ屋だな、先生。

>217
それがこのスレの基本スタイルだw


222217:2006/06/06(火) 16:17:27 ID:8+6HFt4r
>221
そうですよね…
今までは投下された内容の情景を
好きキャラ&声で脳内変換してたので
「その後」まで至ってませんでした…
自分の脳細胞働かなすぎ‥
223名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 19:42:30 ID:iYgh/32l
妄想GOGO!しかし先生は、今夜は娘さんを早く寝かしつけるために歌わないと…
224名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 01:50:18 ID:Xm8lONJv
>223
歌えば歌うほど、寝なくなるお子
仕方なく、馬車に揺られるという
最終手段にでる先生
勿論、クリスティーヌも同行
馬車に乗り込んだ途端に
寝息をたてはじめたお子を
呆れ顔で見る二人…
二人の時間はこれから…

なぁんてどうでしょうか

ついでにクリスティーヌも揺られるという
おまけ(本来はこれが目的)付き!
225215:2006/06/07(水) 07:28:01 ID:GgxHUMol
このスレ最近人が減ったようだったので、
自分のSS読む人いないかも?と思っていたので、レスがついてて嬉しいです。
>224
そ、それは、馬車でヤっちゃうってことでしょうか?
箱型の馬車ならいいけど、オープン型だと丸見えだわwwww
226名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 09:26:04 ID:2AwApUBz
オープンwwエラいことに!

深夜馬車を拾う親子連れ。
夫は何だか切羽詰っており、妻は困った様子。
オーダーは「この辺りを適当にぐるぐる回ってくれ」
御者「(゚Д゚)ハァ?」
227名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 20:06:14 ID:le32Px7S
馬車でエチー、というシチュは以前ココで読んだような気が・・・
228名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 20:41:29 ID:tiPptpcV
あー、あったねぇ。
あの馬車は箱型馬車で、非常にエロかった。
229名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 21:12:25 ID:7Tsw+E5j
うほ
230224:2006/06/07(水) 23:08:59 ID:Xm8lONJv
うちのお子が幼少期、実際この方法で寝かしつけました
馬車ではないし、揺れたりもしなかったけど、
ある意味おまけはありました
途中で検問にひっかかり
免許不携帯発覚!
バスで事情聴取…
そんなこともあったなぁ(遠い目)
231名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 23:45:45 ID:6e6CecPK
丁度昨日馬車モノ短編を書いたんだった。
この際、馬車つながりで投下してみる。
読んだ方すみませぬ。
232馬車 1:2006/06/07(水) 23:47:27 ID:6e6CecPK
馬車の窓から、移っていく街の景色を眺めていると、クリスティーヌ…と、いつもの低く甘い声で名を呼ばれた。
振り向くと、あの緑の瞳が私を見つめている。
少し微笑みかけ、窓の方へ乗り出していた身体を背もたれに戻すと、長身のその人が私の腰を引き寄せた。
間近に顔を見上げた私の顎を、黒い手袋をした指がさらに持ち上げ、唇が重ねられる。
少し、――ほんの少しだけ仮面が邪魔だったけれど、その口づけはとても甘くて、
馬車という狭い空間の中で、私はかつて私の歌の師であった人にうっとりと身体を預けたのだった。

舌先が触れ合うくらいの優しい口づけが徐々に深くなり、腰にまわされた腕の力が強くなり、
片手がドレスの上から胸を弄りだすに及んで、私は戸惑って彼を見上げた。
一部の隙もない身なりをしたその人の瞳が、仮面の奥の緑の瞳が――、かすかに細まった。
この人がこんな眼差しで私を見るときは……、でも、まさか……?
彼は私の耳元に唇を寄せて囁いたのだった。
「声を出してはいけないよ、クリスティーヌ……」
「……マスター……?」
私が問いかけた言葉は彼の唇に塞がれて行き場を失い、続いて訪れた嵐のような口づけに翻弄される。
馬車の中とはいえここは屋外で、壁一枚隔てたすぐそこには人がいるというのに……。
狭い椅子の上で腰を引き寄せられ、斜めに押し倒された。
その手はためらうことなくドレスの裾をたくし上げ、厚みのあるスカートとペチコートの下を探る。
すぐに脚を割る革手袋の感触を感じた。
こんなところでそんなことをしてはいけないと、嫌なのだと伝えなければならないのに……。
頭の奥が痺れてしまって、私は抵抗すらできないでいる。

手袋を外す気配がして、彼の手が直に私の太腿に触れた。
その手はそっと私の下着に触れてきて……、仮面の奥の瞳がわずかに微笑んだ。
「……良い子だ」
その言葉の意味が解って、私は顔から火が出るほど恥ずかしかった。
私の下着はあっという間に取り去られ、彼が自分の前をゆるめた気配がした。
少し俯き加減のその人が、そのまま瞳を上げて私を見つめる。
私を射るような緑の瞳に見つめられたまま………あああ……!
その眼差しに耐えられなくなり、手の甲で口元を覆い視線を外すと、再び耳元で囁かれた。
「……声を出してはいけない」


233馬車 2:2006/06/07(水) 23:49:03 ID:6e6CecPK
狭い馬車の中でクリスティーヌに覆いかぶさり、その表情を見つめながら腰を進める。
「……声を出してはいけない」
耳元で囁き、片手で彼女の脚をさらに開かせ、もう片手は髪を梳くように差し入れる。
クリスティーヌは苦しげに眉を寄せ、片手の指の甲を噛んで声を出すまいとしていた。
その反応を楽しむように、一寸刻みに柔らかく私を受け入れる彼女の中へ押し入っていく。
「…っ! ん……っ!」
可愛い唇から吐息が洩れる。
「クリスティーヌ……息遣いもだめだ……そんな甘い吐息を他の者に聞かせるわけには行かない」
涙を滲ませて切なそうに私を見るクリスティーヌの最奥へと自身を埋め込みながら、
快感のやり場を見つけられずただ首を振って耐える愛しい姿を、間近に見つめる。
頬を上気させ、自らの指を噛み、吐息をかみ殺すクリスティーヌの姿のなんと悩ましいことか。
首筋に唇を寄せるとクリスティーヌの肌の甘い匂いに包まれる。
一番奥まで突き入れてから、その耳元でさらに囁く。
「動いても……声は出すな」
クリスティーヌの責めるような視線を見つめ返し、押さえつけた身体を静かに突き上げ始めた。
「は…っ! ぁ…っ!」
止めきれない甘い息遣いが彼女の唇から洩れる。
「……声を上げてはいけないと言ったろう?」
髪を弄っていた手を止め、洩れる吐息を塞ぐように紅い唇を覆う。
そのまま繰り返される男の動作に、瞳を閉じ、眉を寄せて耐えるクリスティーヌのそこは、すぐにひくひくと脈打ち始め、
頂上が近付いていることを知らせていた。

234馬車 3:2006/06/07(水) 23:50:01 ID:6e6CecPK
馬車の中でクリスティーヌの口を塞ぎ行為に及んでいる私の姿は、もし誰かが見たとしたら若い娘を無理矢理襲う暴漢にしか見えないことだろう。
ほっそりとした指で私の腕をきつく掴み、息を殺してこの行為がもたらす快感に耐えているクリスティーヌ。
潤んだ瞳でときおり私を熱く見つめ返し、張り出した白い腰は今や私の動きに合わせて艶かしく振られていた。
その腕は私の背に縋り、やがて私の腰を引き寄せ始める。
普段の愛らしく清楚な姿とは裏腹な淫靡な姿に、眩暈すら覚える。
「………クリスティーヌ……!」
幼い少女の頃から教え導き、見守ってきた私の天使。
強引に手折った美しい蕾は、今や私の想像を超えて見事な花を咲かせ始めている。
「……ああ、クリスティーヌ………!」
甘美な締め付けを感じて愛らしい顔を見やると、クリスティーヌが瞳を閉じて仰け反り、私が覆う手の下から声が洩れた。
「……ぁ……あ………」
白い両脚が私の腰に絡みつき、ぐっと引き寄せられる。
「……んっ…………んん……っ……!」
絶頂を知らせるくぐもった甘い吐息とともに、クリスティーヌの身体が私の下で痙攣して果てた。

びくびくと私を搾り上げるように蠢くクリスティーヌの中で果ててしまいたいという欲望を抑え込み、
半ば意識を失って放心しているクリスティーヌの髪を撫で付ける。
涙の滲んだのを拭い取り、甘い息を吐く唇に小さく口付けた。
「こんなところでも逝ってしまうとは……困ったお嬢さんだ………」
身支度をさせて抱き起こし、両手で頬を挟んで正気を取り戻させる。
「あ……、マスター……?」
自身は燃焼し切れないままクリスティーヌから離れるのは心残りではあったが、
すでに馬車の揺れは止まり、オペラ座に着いていた。
「もうオペラ座だ」
私はまだうっとりと私を見上げるクリスティーヌの手を取った。

235馬車 4:2006/06/07(水) 23:51:48 ID:6e6CecPK
「もうオペラ座だ」
気がついたときには、馬車はオペラ座についていた。
いつ到着したのだろう? 
身支度はいつの間にか整えられており、まだ快楽の余韻から醒めずふらつく私の手を、その人が取る。
私ったら……本当に……こんなところで……。
狭い車内を見回して一人頬を紅く染めた。
ああ……でも、マスターは……?
私だけがあんなに……。
私が向けた視線はもの問いたげだったのかもしれない。
革手袋をした手に支えられて馬車を降りる時に、耳元に低く甘い囁き声を聴いた。
「………続きは部屋についてからだ」


(終)
236馬車 おまけ:2006/06/07(水) 23:58:45 ID:6e6CecPK
部屋に着くなり、後ろから黒い手袋をした腕が伸びてきて抱きすくめられた。
「キャ…! ちょ……マスター?」
驚いて振り向こうとするのを抱き上げられ、否応もなくベッドへと運ばれる。
ベッドに広がった私のスカートに膝をついて上着を脱ぎ、荒っぽくクラヴァットを外していくその人の仕草に
見とれてしまう。
「……続きは部屋で、と言っただろう?」
手袋を外した彼がもどかしげにドレスに手をかける。
「あ! 待って……」
「待たない」
「マスター…」
「待てない」
「あっ……」





脱がせにくい外出着を脱がせると、クリスティーヌの身体はまだ熱く火照っており、
身体を震わせて再び私を受け入れた。
馬車の中では堪えていた甘い声を部屋中に響かせていた私の天使は、
今隣で静かな寝息を立てている。

237名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 23:59:35 ID:6e6CecPK
以上読んでくださった方ありがとうございました。
238名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 00:24:52 ID:iXT2cios
お、おまけが〜〜! ありがとうございます〜!
「待たない」「待てない」って……それでこそマスターだ!w
その後の何行かのアキが……反転しても何も出ない… ('A`)

ふひぃ〜〜、強烈な萌えでした〜! ハァハァ(*´o`)
239名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 00:31:12 ID:zaaZx0lm
密室で…っていいよねww
クリスなんかわいいの…!!
GJ!!!!!!!!!!!!!
240名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 01:41:58 ID:pGTVRfpP
GJ!
今度の馬車も萌えました。
おまけの「待たない」「待てない」マスター最高です。
241名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 20:22:49 ID:O/CxBFgn
うあああああ・・・・・・
本能に邁進するふたりに 萌 え た (;´Д`)
禿しくグッジョブ!!!!! 天使様、ステキSSを本当にありがとうございました〜
242名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 23:06:25 ID:QYvQ4aBp
馬車キタワァ*・゚・*:.。.:*・゜(*´д`*)゚・*:.。..:*・゚・* !!!!!
所構わずサカる先生萌え!逆らえないクリスも萌え!!
243237:2006/06/08(木) 23:54:02 ID:Bc851BKT
コメントありがとうございます。
おまけは急遽書きました。
感想もらえると非常に嬉しいものだと久々の投下で再確認。
>>238
反転wwwwww
244名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 18:01:07 ID:mPRcxs+Y
age
245名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 23:27:18 ID:7ApjT/1z
66続き。クリス修行編
ラウル×クリスティーヌでネタ、エロは未遂
ラウルは非チェ(ry)…でも素人童(ry)

>70 絡ませてみました。
2461/5:2006/06/09(金) 23:28:05 ID:7ApjT/1z
「あなたが横にいては、治るモノも治りません」
そう言われ、地下を訪れるのを禁じられてもう何日になるだろう。

のたうちまわっていた師は、暫く後にぴくりとも動かなくなった。
「気持ち良すぎると失神しちゃうわ!」
メグの言うとおり、師は確かに意識を失った。
これが気持ちいいということなのだろうか?
しかし、自分はどうすればいいのだろう?
イタいものだと聞いていたが、それはまだなの?
暫らく待ったが師は目を覚ます気配がない。
仕方なくその身体にそっとシーツを被せ地上へ戻ったが、
話を聞いたマダム・ジリーは顔色を変えて部屋を出て行った。
そうしてクリスティーヌはファントムが回復するまで、師のもとへ行くことが出来なくなったのだ。

少女は部屋でひとり悄然とベッドに腰掛けていた。
どうやら、自分はまた何か間違ったらしい。
ファントムはかなりの重症で、回復にはかなりの時間を要すると聞いた。
看病したい旨の申し出も、マダム・ジリーに却下された。
メグと話すこともしばらくの間禁じられている。
クリスティーヌは溜息をついた。
残された中で、自分に出来ること…そのとき、小さなノックの音が聞こえた。
「クリスティーヌ?」
ささやき声にクリスティーヌはぱっと顔を輝かせる。
「ラウル!」
扉を開いた先には、少し驚いた顔の幼馴染。
「どうしたんだい?こんな夜に来て欲しいなんて…」
「突然お呼びして、ごめんなさい」
部屋へと招き入れ、クリスティーヌは扉を閉めた。
上着を受け取りクローゼットに掛けると、椅子を勧める。
「いやいいんだよ。何かあったんじゃないかって、ちょっと吃驚しただけだから」
クリスティーヌは安堵したように微笑むラウルと
向かい合うようにベッドに腰掛けた。
2472/5:2006/06/09(金) 23:29:11 ID:7ApjT/1z
「それで、何か話でもあるの?」
問われてクリスティーヌは口篭もる。
「…あなたにこんなことお願いしていいのか迷ったのだけれど
…でも、他に頼りになる人もいないし…」
項垂れる可憐な姿に、ラウルは勢い込んで身を乗り出した。
「僕にできることなら何でもするよ、クリスティーヌ!君の力になりたいんだ!」
幼馴染の両手を握り締める。
「ありがとう、ラウル」
「で、何をすれば君の助けになれるんだい?」
クリスティーヌはぽっと頬を染めた。
「あの…ええと、教えて欲しいのだけど…」
「何を?」
俯いて、視線を彷徨わせる。
「男の方って…どうすれば気持ちよくなるの?」
「え…?」
意を決したようにクリスティーヌは顔を上げた。
「大事な人を、気持ちよくしてさしあげたいの。
でも、私不慣れで、どうしていいか分からくて」
「それって…」
自分のことだろうか?物凄く遠まわしに告白されて、でもって、誘われてる?
彼もまた、極端なポジティブ・シンキングの男だった。
「だから、教えて欲しいの」
かつての失敗が、クリスティーヌに次の言葉を付け加えさせる。
「…出来れば実際に、いま、ここで…」
「…分かった、教えるよ」

しかし頷いたものの、ラウルは考え込んだ。
気持ちよく、といってもだ。
高級娼婦との経験はあるが、彼は貴族の御曹司。
何もしないで寝転がっているだけで、服を脱がせ馬のりになり
職人技ともいえるそのテクニックで、勝手に気持ちよくしてくれていたのだ。
正直あまりディディールは覚えていないが、それでも必死に記憶を辿る。
2483/5:2006/06/09(金) 23:30:05 ID:7ApjT/1z
「ね、ラウル、最初はどうしたらいいの?」
「えっと先ず…」
思い出しながらベッドへ移り、クリスティーヌの隣に腰掛ける。
…ここで肩を抱いて、この柔らかそうな唇にキスの一つもしたいところだが、
かつての一夜限りの恋人たちはそんなことした覚えがない。
根が真面目な彼はぶんぶんと頭を振ってその考えを追い出した。

「じゃあね、ボタンを外してくれるかい?…いや、シャツじゃなくて、その、ええと、下の…」
「ズボンの方ね」
細い指が、ズボンの開口部に伸ばされる。
「?何だか、開けにくいわ…随分…、固い…」
開け難いはずだ。
懸命に身を屈めるクリスティーヌの部屋着の胸元からは、
柔らかそうな乳房が零れんばかり。嫌でも視界に入ってくる。
さらに布越しとはいえもぞもぞさわさわ、恋心を抱く美しい少女に弄られているのだ。
それは膨らむ。固くもなる。ボタンではなく、別のモノが。
やがてクリスティーヌがやっとズボンの前を開くと、
彼の分身は待ちかねたように勢いよく零れ出した。
「きゃ…!」
「あ、き・き聞いといたほうがいいのかな」
小さく声を上げ目を見開くクリスティーヌから、ラウルは心もち目を逸らせた。
「ク、クリスティーヌ、君、初めて…?」
上ずった声に気付かずクリスティーヌは首を振った。
「ううん、初めてじゃないわ(見るのは)」
「ええ?」
ラウルの驚きをクリスティーヌは聞いていなかった。
視線も上げず、膨らみかけた幼馴染の分身を見つめる。
そこだけ露出した局部を、幼馴染の少女にじっと見られている…。
それを思うだけで、彼の全身は火照り、そして彼自身はどんどん頭を擡げる。
2494/5:2006/06/09(金) 23:30:51 ID:7ApjT/1z
「まあ」
思わぬその動きに、クリスティーヌはさらにまじまじとソレを見つめた。
師のそれとはやはり、些か、異なる。色とか形状とか大きさとか。
しかしクリスティーヌは先日の失敗から、感想は心中で呟くに留めた。
手を伸ばして屹立途中の茎に触れ、次いでそっと両手で包む。
幼馴染の身体はびくっと震え、さらに上ずった声が降ってくる。
「ねえクリスティーヌ。本当に初めてじゃ…」
「初めてじゃないわ(触るのも)」
「………」
断言に落ち込みそうになる…が、今はそれどころではない。
「じゃあ、その、手を…その、上下に、動かして」
「…こう?」
優しく擦られる感覚に、ラウルは首を仰け反らせた。

「ええと、良いの?」
「う、うん」
「次はどうするの?」
「は?次?ああ…ええと、うぅ…」
間断なく背筋を駆け上ってくる甘い電流に
考えをまとめることが出来ない。
「く…キ…キスとか」
「キス?」
「キスしてくれると、嬉しいし、気持ち、良いんだけど…」
彼の言葉に少女は顔を上げ、上目遣いで見つめる。潤んだ大きな瞳、
小さな手で包まれた己の先端は、花弁のような唇のすぐ近くにある。
が、ラウルの思惑とは異なりクリスティーヌの概念にはキス=唇しか存在しなかった。
「分かったわ」
上半身を起こすと、クリスティーヌは首を伸ばした。
2505/5:2006/06/09(金) 23:31:27 ID:7ApjT/1z
唇がラウルの唇にかする。
「届かないわね…ちょっと待って」
「や、そうじゃなくて、…いや、何でもない」
それはそれでいい。彼女が身を起こせばちらちら見えている
あの魅力的な膨らみは、ちょうど手の届く位置に来るではないか?
ラウルは幼馴染の腰の両側に手を伸ばした。
「さ、こっちに来て。もう一度ちゃんとキスを」
「ええ」
引き寄せられるままにクリスティーヌはラウル脚の間に身体を入れた。
そうして身体を起こすために膝に力を入れた、その瞬間。
膝の下にもにゅっとした感触を感じるのと、ラウルが何やら叫び声を上げるのはほぼ同時だった。
ぎゃっとかぐうとか聞き取りにくい音を立て、幼馴染の子爵の頭ががくりと後方に倒れる。

「ラウル?」
呼びかけながらラウルの肩に手を掛ける。
「ラウル、ラウルってば。ねえ!」
揺さぶるが一向に目覚める気配がない。
やがてクリスティーヌは溜息をついた。
「失神?…あんなキスでも、そんなに良かったのかしら?」
身体を起こすために膝に力を入れた、その下に何があったのか
彼女はまだ気付いていない。
「でも、困ったわ…もっと教えて欲しいのに…」
不満そうに呟いてクリスティーヌは
仰け反ったまま動かない幼馴染を見つめた。
251名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 00:13:55 ID:2QBLLt51
>>245
ラウルカワイソーwwww
純粋で何もわからないのは罪ですなww

自分この手の話し好きw
252名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 00:39:12 ID:i3knL/zS
>245
GJ!GJ!GJ!wwww
超天然クリスの超絶技巧wに翻弄される、哀れなポジティブ・シンキング
の男ふたり……。
彼らに幸せは訪れるのか? つーか、再び使い物になるのか〜〜っ!?w
253名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 22:06:29 ID:TFMXDCtw
このスレしか覗いていなかったから知らなかった…。
もう去られてしまったとばかり思っていた天使さまがまだ書いていらしたことを。
もうどこまでもついて行きます!
ここしか知らずにいて、これを期にと色々覗いてみたけど、なんというかこちら
にいらした天使さまたちは、愛も才覚も頭一つどころではなく抜きん出てるね。
今までどんな贅沢させて貰ったていたか改めて思い知りました。
他の住人からしたら何をいまさらかも知れないけど。
驚きと感謝をこめて記念カキコ。
254名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 00:01:36 ID:3hDx5JbC
>>253
そ、それってどういうこと?
無知な私に詳細教えて下さい!!!
255名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 14:52:23 ID:Bd66LMkW
外部の話は荒れる元です。
ここの職人様を褒めるために外部の話を持ち出すのはいかがなものかと。
256名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 15:12:42 ID:iFi1/rUq
>254まとめサイトにリンクはってらっしゃる天使様たちのサイトのことだと思うよ
スレとまったく関係ない外部の話だったらしてはいけないけどあそこはここから派生したものだし
257254:2006/06/13(火) 20:08:21 ID:3hDx5JbC
>>256
ヒントありがとうございました
暫く見ないうちに随分リンクが増えている・・・!
天使様がた、まとめサイトの管理人さま、改めてありがとうございます!!!
258名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 07:22:00 ID:zEw8mSzh
リンク先のサイトをここで褒めるより、
サイトに直接メールなりした方が、天使さまも嬉しいだろうし、励みになるんじゃないの?
>256
ここから発生したものであっても、やっぱりサイトの話は荒れやすいから避けた方がいいと思う。
25970:2006/06/15(木) 22:22:52 ID:kBNbohNb
>>245
しばらくこのスレをチェックしておらず、たった今拝読しました。
ありがとうございます〜!!
パトリックとエミーで脳内再生。萌え転がりそうですヽ(´∀`)ノ
260名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 21:18:16 ID:EtZ/+vKP
投下します。

ファントム×カルロッタ。
鬼畜風味。

受け付けない方はスルーでお願いします。
261名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 21:20:41 ID:EtZ/+vKP
幽霊が出ると噂の楽屋。
廊下の一番突き当たりにある、この不便な楽屋に近づく者など誰もいないが、
そこから低い男の声と甲高い女の声に混ざって、何かが空気を切るような音がする。

「舞台でも楽屋でも、このオペラ座のどこでも女王様のおまえだが、
このソファの上でだけはおまえは私の奴隷だ、そうだな?」
幾度か続けて短鞭を振り下ろした後、赤い条の走った白い臀を
黒革の手袋の嵌ったままの手で撫で回しながら、男が低い声で女に問うた。
鞭を受けている間、高い声で泣き叫んでいた女だったが、
男にそう聞かれてもすすり泣くばかりで返事はない。
胴着もコルセットも取り去られ、スカートの裾をまくり上げられた歌姫の背には
じっとりと汗が玉をつくり、膝のあたりに下ろされたままの下着がいっそう惨めさを
倍加させる。
自尊心の強いというよりは、高慢と評される女のあられもない姿を
男の蒼い眸が満足そうに見下ろしている。
262名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 21:22:13 ID:EtZ/+vKP
ふたたび鞭が振り下ろされる。
「返事は」
「………あ、あ、あぁ……」
涙と涎で汚れた顔をソファに押し付けた恰好で、女が低く呻いた。
ふたたびの鞭。
「返事は」
「……はい、わ…たくし……は、……貴方の、…………奴隷です……」
切れ切れにそう答えた女の声に男が満足そうに笑う。
闇に浮かぶ白い仮面の奥で、酷薄そうな眸がきらりと光った。

女の前に手を伸ばす。陰核を擦り上げた。
「あぁっ、あああぁぁぁぁ………………!」
「ちゃんと答えられた褒美だ」
くちくちと湿った音をさせて男の指が女のなかに入っていく。
女のそこは打たれている時から、大腿に伝わり落ちるほど濡れていて、
男はその恥ずかしい蜜をかき混ぜるようにしながら太い指を埋めていった。

一方の手で臀を撫で回しながら、もう一方の指で女を責める。
「ふ、打たれて感じたか、オペラ座きっての歌姫のなんと淫乱なことよ」
「ああっ、いや………」
男のクラヴァットで縛められた両手を背中の上で蠢かせて女が啼く。
「何がいやなものか、こんなに濡らしておいて……」
「やめて、もう、やめて」
哀願する女のそこから指を引き抜き、男がふたたび鞭を取り上げた。
口の端に微かに笑みを浮かべて鞭を振り下ろす。
「見ろ、おまえの恥ずかしい蜜で手袋が汚れてしまったではないか」
「ああっ、やあっ、やめて、やめて!」
女の唇から切羽詰った声が上がった。
苦痛より、男に鞭打たれる屈辱と羞恥で涙が溢れ出す。
「おまえのために誂えた鞭だ、どうだ、新しい鞭の味は?」
「やあ……、かんにんして………」
気強い歌姫の涙ながらの懇願に、男は口の端だけで笑って鞭を振り下ろす。
狭い楽屋に、女の張りつめた肌に弾ける鋭い音と、悲痛な呻き、
そしてむせび泣きとが交錯する。
263名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 21:24:08 ID:EtZ/+vKP
「ふ、どうやら気に入ったようだな、新しい鞭の味は」
「あ、ああ………」
「さあ、欲しいと言え、貴方のものが欲しくて堪らないと言うんだ」
「いや……」
「上の口じゃ言えないようだが、代わりに下の口は欲しそうに涎を垂らしているじゃないか」
男が太い指を女の入り口にあてがい、ゆっくりと焦らすように円を描く。
何かを期待してか、女がわずかに身顫いした。

と、男が鞭を持ち替え、柄の部分を女のそこに差し挿れた。
「あああっっ…………!」
思いがけない責めに女が絶叫する。
「私のものなど欲しくないらしいからな、しかたあるまい?」
男がそううそぶき、ゆっくりと柄を引き抜く動きを見せた。
「や、あ、ああっ!」
男が前屈みになったと思うと、片手で女の乳房を掬い取った。
細い身体に不似合いな重量感のある乳房を乱暴に揉みしだく。
幅広の大きな手が両の乳房を交互に、あるいはまとめて掴み、
白い柔肉が男の黒革に包まれた太い指の間からはみ出ては握りつぶされる。

乳房を蹂躙されながら、女の大事なそこを鞭の柄で責められて、歌姫が泣き叫ぶ。
蝋燭の灯りだけのほの暗い部屋のなかで、身も世もあらぬ風情で悶える白裸がぼんやりと浮かび、
その後ろで黒づくめの男の白い仮面だけが窓から射す一条の月明かりに光っていた。
264名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 21:26:49 ID:EtZ/+vKP
「ああ、おねがい、それはいや……」
ソファに顔を押し付けたまま、女が呻いた。
柄をゆっくりと出し入れしていた男が動きを止める。と、途端に黒いものが空に閃き、
次の瞬間、男の手が歌姫の白い臀を打ち据えていた。

「ああ―――っ!」
ぱん、ぱんと肉を打つ乾いた音がして、赤い条の走った白い臀の上に、
さらに赤い手形が灼きつけられていく。
男の手から逃れようと必死で臀を左右に振る歌姫のなんと惨めな姿か―――、
しかし、女のそこからはしとどに蜜が溢れ出し、ふくらんだ恥肉で堰きとめ切れない蜜が
大腿を伝って零れ落ちていく。
「ああっ、おゆるしください、おゆるし……」
女の哀れな懇願も涙とともに消え入り、「聞こえんな」という男の冷たい声にもかき消されて、
すすり泣きだけが部屋にこだまする。

「ああ、ご主人様……、もうお尻をぶたないで……ください………、」
「なぜ打たれたか、わかっているな?」
「は、い……」
「…………」
「お、おねがいです、む、鞭の柄はどうか………、ご主人様のものをどうか………」
ひゅっと音がして、ふたたび臀を打ち据えられる。
「ああっ!」
「わかっているな?」
「ああ………」と諦めたような声を出して、歌姫が口上を述べる。
「……カルロッタの恥ずかしいそこを……、どうぞ……、どうぞ、存分になさってくださいませ……」
言い終わると同時に、うう、と歌姫がむせび泣いた。
265名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 21:28:14 ID:EtZ/+vKP
「ふふん、」
男は皮肉っぽい笑みを浮かべると、前立てから弓なりに反ったものを取り出し、
歌姫のべったりと溢れた蜜をなすりつけるようにしてから胎内へと衝き挿れた。
「ああっ、あ……、ああ………」
鞭あとの模様が赤く走った白い臀の向こうに男の怒気を漲らせたものが徐々に呑み込まれていく。
女は臀を揺さぶりたてて男のものを受け入れ、羞恥か屈辱か、
あるいは歓喜かによって涙を零している。
「たいへんなよがりようじゃないか、カルロッタ……、
ふふん、おまえみたいな高慢ちきな女ほど、被虐の性があるものを………、
ピアンジはわかってないな」
男が勝ち誇ったように言いながら、ゆっくりと動き始める。
「ああ、ああ、いいの……、いいの…………」
狂ったように臀を振り立て、涙と涎にまみれた顔を左右に振りながら女が悶えた。

狭い楽屋にひいひいと女のよがり泣く声と肉と肉がぶつかり合う乾いた音、
そして体液がかき混ぜられる湿った音とが交差する。
男は無言で女の白い背と赤い臀とを見つめながら怒張を打ちつけている。
男の巧みな抽迭に、やがて女の背すじが反っていき、突き出すように高く掲げた双臀が
ふるふると痙攣し出した。
「ああ、あああああぁぁぁぁぁ―――――――――!!!!!」
歌姫の悲鳴のような声が絶頂を告げる。
女の細い身体が、襲い掛かってくる狂おしいまでの絶頂の波に呑み込まれて、激しく収縮し、
その収縮する粘膜から引き抜かれた男のそれから熱く滾ったものが女の臀に白く散った。

間断なく絶頂の喘ぎ声を上げ続ける女の背を見下ろしながら、
身なりを整えた男が冷たく言い放つ。
「その尻の模様が消える前にまた可愛がってやろう」
女は是でもなく否でもなく、ただ臀を微かに戦慄かせたまま男の言葉を聞いていた。



266260:2006/06/17(土) 21:29:43 ID:EtZ/+vKP
以上です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

タイトル入れ忘れてスミマセン。
267名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 22:03:55 ID:OYNzwX/I
>>60
GJGJGJGJ!!
ファンカル久しぶり!というかこのスレに投下久しぶりですっごく嬉しい
「ふふん、おまえみたいな高慢ちきな女ほど、被虐の性があるものを………、 」
このギャップ大好き(*´Д`)ハァハァ
ありがとう天使様!!
268名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 22:47:20 ID:7HueoBsA
>>266
をををっをっを!!!!!111
なんて女王様なファントムなんでしょう(;´Д`)ハァハァ
作者様、禿しくグッジョブです
これから寝るところなのにすっかり目が覚めちゃったお(´・ω・`)ショボーン

タイトルあったんですか?是非お聞きしたいです〜
269名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 23:06:52 ID:fWTKZ2OI
長い間待ち望んでいたカップル(しかもハード鬼畜)がついに…!
んでこのファントム、クリスには異常に優しかったりしそうだ。
270名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 00:39:45 ID:TY06jTVW
最初ッから最後まで容赦のないSマスターGJGJ!
すごい調教名人っぷりだ
ピアンジは分かってないってのにちょっとワラタ

>269 クリスには異常に優しく調教し(ry
271中年ファントム:2006/06/20(火) 18:06:41 ID:2I/hHpZu
投下します。
「中年ファントム」のシリーズです。
ファントムがアメリカへ来てから5年後くらいの設定です。

ファントム vs 酒場の女給&その息子
女との絡みが少なく、エロも微量……。orz
272ロワー・イーストサイド 1/10:2006/06/20(火) 18:13:08 ID:2I/hHpZu

男は暗闇の中、眼前に拡がるイースト・リバーの黒い水の流れを見つめていた。この流れが
ハドソン河とひとつになり、海へ――大西洋へと向かう。その遙か先には欧州の大地が、
そしてフランスがある。男の知る者たちが生きて、暮らしている。

男は遠く海を隔てたアメリカの地、マンハッタンにいた。ここへやって来てから、五年を
超える歳月が流れていた。多岐にわたる才能・手腕は富を生み出し、今や男はかなりの財
を築いていた。そこに至るまで、数々の辛酸も嘗めてきた。法を犯すことも厭わなかった。生きつづける――その思いだけでここまで来た。意味を考えることはしなかった。目を
背けてきたと言えるかも知れない。

衝動に駆られ、男は足下の小石を拾い上げると流れに投じた。暗い水面に白く小さい
波頭が次々と上がり、消えていった。独り自嘲の笑みを浮かべると、男はマントを翻し、
来た道を戻りはじめた。

時に男は夜になると、この辺りを訪れて川面を眺めることがあった。
お世辞にも治安の良い地域とは言えなかった。塵芥にまみれ、異臭が漂い、テネメントと
呼ばれる安アパートには、貧しい移民たちが肩を寄せ合って暮らしている。発展を続ける
マンハッタンの、もうひとつの顔――。暗く侘しい佇まいだったが、どこか男の胸中に
沿うものがあった。


男の目が薄暗い小路に群れる少年たちを捉えた。年端のいかない小柄なひとりの子供を、
それよりずっと年かさの少年たちがいたぶっている。
「おい………」
男の指が動いた。一瞬、動きを止めた少年たちのうち、いちばん大柄なリーダーらしき
少年の被っていた帽子が、後ろへ弾き飛ばされた。
「でかいなりをして、大勢でひとりを嬲りものか……?」
手にした小石をもてあそびながら、嘲る口調で男が言う。
273ロワー・イーストサイド 2/10:2006/06/20(火) 18:15:53 ID:2I/hHpZu

突然現れた黒衣の丈高い男を、少年たちは驚いたように見上げた。男が漂わせるうろんな
雰囲気、顔の右側を覆う白い仮面に、気を呑まれていた。
「な、なんだよ……、おっさん………」
「私は機嫌が悪い。次は帽子だけでは済まないぞ……」
蒼とも碧ともつかない不思議な色の眸が、極北の星を思わせる冷たい光を放つ。
「ひっ……、ば、化け物……!」
ひとりが掠れた悲鳴を上げ、よろめくように数歩下がると、後ろを向いて一目散に駆け
だした。つられて少年たちは次々と逃げていく。リーダー格の少年も、じりじりと
後ずさりし、帽子を拾い上げるとそのまま走り去った。

「ふん……、臆病者が………」
ひとり残った子供が立ち上がってうそぶくと、男を見てにっと笑った。
「あいつら、徒党を組まないと何もできやしないのさ」
「おまえは、私を見ても逃げださないのか……?」
「なんで? 小父さん、かっこ良かったよ。ナショナル・リーグのピッチャーにだって
なれそうなコントロールだったね。……助っ人、ありがとう」
少年の言葉に、男は苦笑を洩らした。服の汚れをはたく少年に近づくと、ハンカチで顔に
ついた泥を拭ってやる。

「……おまえも、多勢に無勢のところを泣きもせず頑張っていたな。なかなかだ……」
「泣くもんか! あんな奴らに……」
「何があったんだ?」
「何もないよ。……あいつら、うさ晴らしで時々おれに絡んでくるんだ」
男を見上げる少年の眸は利発そうに輝いていたが、つぶらな黒い目、縮れた黒い髪、やや
厚ぼったい唇に浅黒い肌――黒人の血が混じっているのは明らかだった。

「……ぼうずのような小さい子供が、夜にここらをうろつくのは危ないだろう……?」
「おれ、もう十歳だよ。……おふくろを迎えにきたんだ。もうすぐ仕事が終わるから」
「では、私が送ってやろうか。……奴らがどこかで待ち伏せしているかも知れない」
「ほんと? 小父さんが一緒に来てくれるの!」
「ああ、……用心棒だ」
男は自分の言葉に、自分でも驚いていた。だが、思いがけぬ成り行きと、この少年との
出会いを、面白く感じてもいた。
274ロワー・イーストサイド 3/10:2006/06/20(火) 18:18:04 ID:2I/hHpZu

「こっちだよ。……母ちゃんは、この先の酒場で働いているんだ」
二人が薄暗い道をしばらく歩くと、小汚い酒場からひとりの女がふらふらと出てきた。
少年は女に走り寄る。
「母ちゃん、……また酔っぱらってるんだね。だめだよ、こんなに飲んじゃ……」
「ふふん……、いいの、いいのよぉ。今夜もお出迎え、ありがとねぇ……」
女は呂律の回らない口調で答え、息子を抱きしめて頬ずりをした。
「酒くさいよ。……さあ、帰ろう、母ちゃん」
少年は母親を支えるように男の許へ歩かせた。女は酒場の女給なのだろう。顔立ちは悪く
ないが、化粧は濃く服装は安っぽい。上から羽織った肩掛けだけは、まともなものだった。
女は明るい色の髪に白い肌をしていた。

「あら、こちらは、どなたかしらん……」
女は男に目をやったが、さして驚いた様子もなく笑みを向ける。男は無言で軽く顎を
引いた。
「さっき、……知り合ったんだ。おれたちを送ってくれるって……」
「そう……、親切ねぇ、ありがとう………」
鼻歌など口ずさむ女を両側から抱え、男と親子は歩きだした。奇妙な道行きだった。


やがて、いかにも古びたテネメントの前で、少年は歩みを止めた。
「ここだよ、小父さん。……今夜はありがとう」
「いや……、おやすみ、ぼうず………」
男が立ち去ろうとすると、女が男の手を握った。
「あら……、帰っちゃうの? せっかくここまで来たのに……」
女は媚びを含んだ笑みを浮かべ、男の眸に視線を絡ませた。
「このまま……、どう………?」
「……自分の息子の前で、男を誘うのか」
「あぁら、いいのよ。この子はよぉく分かってるんだから……」
男は憮然とした面持ちだったが、女は悪びれたふうもなく、酔った足取りでテネメントの
入口へと歩いていく。

「いいのか、おまえは……?」
「……うん、おふくろはああ見えてもいい女だよ。それに……、最近つきあってた男が
どこかへ行っちゃったんだ、母ちゃんには何も言わずに。小父さん、母ちゃんに優しく
してやってくれないかな……」
少年はませた口をきいたが、しだいに項垂れていき、心許なげな声になった。
「そうか……。ぼうず、腹が減ってるんじゃないか? これで何か食べてこい」
男は少年に小銭を手渡すと、テネメントへ向かった。
「……ありがとう」
少年は小銭を握りしめ、男の後ろ姿を見送っていた。
275ロワー・イーストサイド 4/10:2006/06/20(火) 18:19:39 ID:2I/hHpZu

薄暗く狭い階段を上ると、親子の暮らす部屋があった。壁の色はくすみ、小さな部屋には
ベッドの他にも、あらゆる物が雑然とひしめき合っていた。
「ひどい所で驚いた……?」
「いや、もっとひどい所も知っている。……失礼な言い方だったかな」
男は低く笑った。
「あの子は……?」
「何か食べに行かせた。腹を空かせているようだったし、……息子の前で母親を抱くほど
酔狂ではない」
「ふふん……、あの子の部屋だってあるのよ、そっちに。……窓もない物置みたいなもの
だけどね。……ありがとう」
女の物言いが蓮っ葉なものから、はにかんだ調子に変わった。

女は羽織っていた肩掛けをとると、丁寧にそっと畳んで椅子に載せ、男のマントと上着を
脱がせて壁に掛けた。
「いい品物ね……。お金持ちそうなのに、なんでこんな所へ来たの?」
「君こそ、なぜ私のような男を誘った……?」
「私はね、白いの、黒いの、赤、黄色、どんな男だって知ってるの。仮面の男がひとり
くらい加わったって、なんてことないわ。お金さえもらえればね……」
女はあっけらかんとして笑った後、口調を改めた。
「あなた……、あの子と歩いてたでしょ。悪い人じゃなさそうかな、と……」

「それに……、素敵だもの、あなた……。ほんとよ………」
女は黒絹のクラヴァットを解き、ヴェストとシャツを脱がせて男の胸に顔をうずめると、
厚い胸板に掌を這わせ、うっとりと囁いた。
「優しくして……」
「……君の息子からも頼まれた」
女は驚いたように顔を上げた。
「あの子ったら、……いっぱしの口をきいて」
泣き笑いのような表情を浮かべ、女はわずかに涙を滲ませた。
「いろんな男が通り過ぎていったけど、……よりによって、あの子が生まれちゃったの」
「父親は……?」
「さあね……、あの子が生まれるずっと前に、どっかへ行っちゃった。生まれてくるまで、
誰の子供だかも分からなかったしね……」
女は俯いて小さな声で答えた。
276ロワー・イーストサイド 5/10:2006/06/20(火) 18:21:26 ID:2I/hHpZu

「さぁ、湿っぽい話はおしまい。来て………」
女は男の手をとってベッドへと誘った。見上げる目の縁が紅く染まっている。商売っけ
抜きで、女は欲情しているようだった。男が服を脱がせてやる間にも、息が荒くなって
いく。ふたりが横たわると、ベッドがきしんだ音を立てた。

女は男の眸を見つめ、肌を、逞しい筋肉を、愛おしむように撫でまわした。
「あぁ……、いいわ……、綺麗な眸、身体………。ほんとうに素敵……、素敵よ………」
息をはずませて、うわ言のように何度も呟く。目を閉じて男の喉から胸へと舌を這わせ、
先端を吸いながら掌で胸から腹をゆっくりと往復させる。その手が下へ伸び、硬く勃ち
上がりはじめた男のものを握ると、脚で挟みこんだ。

「あぁぁ……、はぁ…………」
女が蕩けるような声を上げ、かすかに身を震わせたところで、男は女の背に腕を回して
横向きになった。身体をぴたりと合わせたまま、女の背中をそっと撫でる。
「今度は、私がしてやろう……」
女の耳元に、低く甘い囁きが響く。うなじから臀の丸みまで、身体の線に沿って男の掌が
ゆるやかに上下する。
「あ……、はぁぁっ………!」
男の愛撫に堪えきれぬように、女が大きく喘いだ。息を荒げて身体を小刻みに震わせる。
挟みこまれた男のものに、とろりとした熱い雫が絡みついてきた。
「ふっ、うぅ……あぁ、ん………、いい……、すごく、いいの………」
女は腰を振りたてて男をこすり上げる。押しつけてくる胸の頂は、硬く尖っていた。

女の片足を持ち上げ、男はゆっくりと内部へ入っていった。秘唇がひくつき、男を奥へと
導くように柔らかい襞が蠢き、締め上げる。
「あぁ……、キス、して………」
思わず口にしてから、女は自分の言葉にはっとなり、かぶりを振った。
「……ごめんなさい」
「いいさ………」
男はうすく微笑んで唇を女に寄せた。軽く、そして徐々に深く口づけていく。女の唇を
割って舌を挿し入れると、やわらかく舌を絡め合わせた。
閉じた女の瞼から涙が溢れだした。男の舌を吸いながら、女は涙を流しつづけた――。
277ロワー・イーストサイド 6/10:2006/06/20(火) 18:27:28 ID:2I/hHpZu

男が通りへ出ると、少年は入口脇の壁に寄りかかり、膝を抱えて座りこんでいた。
「ここにいたのか……」
「うん……、母ちゃんは……?」
「眠っている。……金は枕元に置いてきた」
「そっか、……小父さん、母ちゃんに優しくしてくれたんだね。ありがとう……」
立ち上がった少年に見つめられ、男は困ったように曖昧な笑みを浮かべた。

「ぼうず、腹はふくれたか……?」
「うん」
少年はつぶらな黒い眸で男を見上げ、にっこりと微笑んだ。
「そうか……、これで私は帰る」
「小父さん、……また、来てくれる……?」
「そうだな………」
男は言葉を濁したが、少年は屈託なげに手を振った。
「さよなら、小父さん、ありがとう。……またね!」


結局、男は次の夜も少年のところへ出向いた。なぜか親子のことが気になっていた。少し
離れた場所に馬車を待たせ、男は親子が暮らすうらぶれたテネメントへと向かった。
少年が入口の脇にしょんぼりと立っていた。
「どうした……?」
男が声をかけると、少年ははっとしたように歪んだ顔を上げ、男に飛びついてきた。
「母ちゃんが死んじゃった……。あの男がいなくなってから、ずっと酒浸りで……寝る
前には薬も飲んだりしてたから………」

ベッドの上で女は冷たくなっていた。昨夜は笑ったり涙を流したりしていた女が、今は
眠るように死んでいた。少し嘔吐もしたのだろうか、口元が汚れている。
男は濡らしたハンカチで女の顔を拭い、髪を整えてやった。化粧が落ちると、女の顔には
どこか無垢な、あどけない表情が現れた。荒んだ生活を送ってきた女だったが、死顔は
思いのほか穏やかだった。

278ロワー・イーストサイド 7/10:2006/06/20(火) 18:29:06 ID:2I/hHpZu

「どうする……?」
「こ、このままだと、明日の朝には役人が来て、きっと母ちゃんはどっか狭っくるしい
無縁墓地にやられちゃうんだ……。そんなの、いやだ。いつも母ちゃんは、広くて綺麗な
とこへ行きたいって言ってたのに、死んでまでそんな………」
俯いた少年の肩が震えている。
「ぼうず、おまえは誇り高い男だが、こんな時は泣いたっていいんだぞ……」
男の言葉に、少年は顔を上げた。
「お、おれ………」
黒い眸から涙が堰を切ったように溢れだした。肩を震わせ、声を殺して、少年は泣き
つづけた。男は無言で少年を見守っていた。


「ぼうず、来い。おまえの母さんを埋葬しにいこう」
「え……、どこへ……?」
「ついてくれば分かる。……母さんは広々とした豊かな所へ行きたかったんだろう? 
ならば、そういう場所に眠らせてやろう」
男は肩掛けで女をくるみ、無造作に抱き上げると部屋を出た。わけが分からぬままに、
少年は男に従った。
二人は暗がりを歩いて馬車が待つ場所まで来た。男は御者に低い声で何かを告げると、
馬車へ乗るよう少年に目で促す。何処へかと向かう馬車の中で、二人はただ黙って向かい
合っていた。

途中で御者が馬車を離れたが、少しすると戻ってきて、馬車はふたたび走りはじめた。
やがて、馬車が止まった。目的地へ到着したようだった。
「ぼうず、ここからは歩きだ。暗いから、私から離れずについてこい」
男は女の遺体を肩に担ぎ上げ、御者からスコップを受けとると一本を少年に渡した。
「ここは……?」
「セントラル・パークだ。……行くぞ」

すでに閉じられた入口の脇から、男は平然と公園に入っていった。あたりは真っ暗で、
鬱蒼とした木々の向こうは見通せない。道路の反対側には貧しげな住居が並んでいた。
公園の建設時にここを追い出された人々が集まり、さらに同じ階層の者たちが住みついて
できた集落だった。いずれ彼らは、そこからも追いやられていくのだが――。
279ロワー・イーストサイド 8/10:2006/06/20(火) 18:32:00 ID:2I/hHpZu

男は夜目が利くらしく、迷うことなく公園の奥へと進んでいく。少年はスコップを肩に
担ぐと、はぐれぬように小走りで男の後を追った。道に高低がつき、周囲は山の中の
ようになってきた。黒々とした森が拡がり、せせらぎの音が聞こえてくる。
しばらくして、男は欅の巨木の前で立ち止まった。
「ここでいいだろう。……公園の中心から南西のあたりだ。この木が、ぼうずの母親の
墓標になる」

女の遺体を木の根方へ寝かせると、男は少し奥まった地面にスコップを突き立てた。
「おまえも手伝え……」
「ここに、……母ちゃんを埋めるの?」
「そうだ……。公園全体が母さんの墓だ。どんな金持ちどもだって、こんなに広い墓は
持っていないぞ。気に入ったか……?」
男は笑みを含んだ声で言い、マントと上着を脱いでシャツの袖をまくり上げると、穴を
掘りはじめた。少年は頷いて、男とともにスコップをふるった。

「……このくらいでいいだろう」
男は手を止めると額の汗を拭った。少年も汗びっしょりになっていた。吐く息が白い霧に
変わる。深い長方形の穴が掘られていた。
「母さんに、最後のお別れをしてやれ……」
ハンカチを手渡すと、男は木の裏側へ回った。少年は母親の頬をさわろうして、手が土で
汚れているのに気づいた。ハンカチで拭い、頬をそっと撫でる。白い頬は冷たかった。
長い間、少年は無言で母親の頬を撫でていた。


「小父さん、……もう、いいよ。ありがとう………」
背中を木に凭せかけていた男へ、少年が声をかける。男は女を抱き上げ、穴の縁へと
運んだ。
「肩掛けは、このままでいいか……?」
「うん、母ちゃんのお気に入りだったんだ、それ……」
「分かった……」
男は穴に降りて女の遺体を横たえると、肩掛けと髪を整えなおしてやった。
「ぼうず、ここから先は私ひとりでやろうか……?」
「ううん……、おれもやるよ」
「そうか……」
二人はスコップで土を掬うと、母親の遺体へ振りかけた。女は少しずつ土に埋まっていく。
ひと言も口をきかず、二人は黙々とスコップを動かしつづけた。
280ロワー・イーストサイド 9/10:2006/06/20(火) 18:33:47 ID:2I/hHpZu

こんもりとした土盛りをならし、落ち葉を撒いてから、男は木の根方に女の頭文字を
刻みつけた。
「目印だ。……ぼうずが母さんに会いにきた時、これなら間違えることもないだろう」
「うん………」
上着とマントを身につけると、男は根方に座りこんで少年を膝に抱き上げた。夜気に
当たらぬようマントでくるみ込む。
「ここで夜明かしだ……。寒くないか?」
「ううん、……あったかいよ、小父さん………」
男は黒い縮れ毛をゆっくりと撫でてやる。少年は男の胸に凭れ、小さく洟をすすって
いたが、頭を撫でられるうちに、いつしか眠りに落ちていった――。


身体が揺れるのを感じて、少年は目を開いた。白くたち籠める朝靄の中、男が少年を
背負って歩いていた。二人を覆うように羽織ったマントが、朝の冷気を遮る。
「目が覚めたか……。夜明けだ」
「おれ、降りるよ……」
「いいさ、……冷えるし、まだ眠いだろう? そのまま寝ていてもいいんだぞ……」
少年は男の肩に掴まりなおすと、頭を凭せかけた。背中の温もりが伝わってきた。

馬車は昨夜と同じ所に停まっていた。少年を馬車に乗せると、男は胸の隠しから封書を
とり出して少年に手渡した。
「おまえは学校に入るんだ。行き先は御者が承知している。先方へこの手紙を見せろ。
いいようにしてくれる。詳しいことは中に書いておいたから……」
「え……?」
「おまえは賢い子だ。勉強がしたいだろう? 金の心配はしなくていい」
「小父さんが、……おれを学校へやってくれるの……?」
男は少年に微笑みかけた。
「まあ、ほんの気まぐれだ。……学校でもいろいろと嫌な目には遭うかも知れないが、
おまえは強い男だ。きっと乗り越えていけるだろう」
281ロワー・イーストサイド 10/10:2006/06/20(火) 18:35:49 ID:2I/hHpZu

「小父さんには、……また、会えるの?」
男は口を開かなかった。
「いやだ! おれ、小父さんに会いたいよ……」
少年は馬車から飛び降りると、男にしがみついた。
「いやだ……、い……いやだよ………」
「……分かった」
男は泣きじゃくる少年の背中を撫でていたが、顔を上げさせると、眸を覗きこむように
言った。
「ならば、こうしよう。十年後にぼうずが私をまだ覚えていたら、母さんの墓に来い。
そこで会おう。同じ日の同じ深夜にだ」

「それまでは、会えないの………?」
「おまえは強い男だろう? そんな弱気でどうする。……寂しくなったら、母さんに
会いにくればいいさ」
「……分かった。おれ、小父さんを忘れない。絶対に忘れっこないよ。……十年後に、
おれが二十歳になった時に、必ずここへ会いにくる。小父さんも忘れないでくれよ、
きっとだよ……」
「……約束する」
男は頷いた。
「おれ……、小父さんみたいな強くて優しい大人の男になってみせるよ」
少年がまっすぐに男の眸を見上げると、男はかすかに微笑んだ。

「行くんだ、……元気でな」
男はふたたび少年を馬車に乗りこませ、扉を閉めると窓へ向かって手を振った。
「小父さん、ありがとう。……またね! きっとだよ!」
動きはじめた馬車の窓から振り返り、少年は叫んだ。男は頷いてやり、馬車を見送る。
少年は後ろを振り返りつづけた。佇む男の姿がしだいに小さくなり、朝靄の中に見えなく
なっていった――。


<終わり>
282271:2006/06/20(火) 18:38:42 ID:2I/hHpZu
以上です。
読んでくださった方、ありがとうございます。
最初のところ、改行に失敗しました。すみません。_| ̄|○
283名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 20:54:09 ID:iF7csbxQ
凡庸ないい話をファントムがやることには意味があるかもしれない。
でも「強くて優しい大人の男」がいったいぜんたいファントムなのか?
と思ってしまったら……疑問を抱いたほうが負けなんだろうな。
楽しんだ者勝ちという意味で。
つまらんこといってすまぬ。
284名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 21:37:25 ID:t0/fWWJI
まあ いいじゃないか みんなファンタジーで
285名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 22:08:13 ID:RRv1IxtM
確かに今回の話のファントムは一般的なイメージと大西洋分かけ離れている気がw
あと、昨晩寝た女が急死したらもう少し慌ててみせてもいいだろうに
マスターったら・・・いつでもどこでもクールなんだから・・・でもそこが(*´Д`)

残念ながら今回は「前に何処かで読んだような」既視感を最後まで拭えませんでした。
でも作者様の今までのSSはどれも独自路線に驚かされつつも大好きです。
今後とも素晴らしいSSを創り出せるよう、ネットの片隅からひっそりと祈念しております。
286名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 22:09:27 ID:r/vFQhdG
まぁオイラは感動したよー。
ありがとう作者さん♪
287名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 22:14:10 ID:S/K35mi6
エロパロ板に書く意味はないかもな
288名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 22:18:41 ID:f7wy+vUm

289名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 22:19:49 ID:f7wy+vUm
自分はカコイイファントムにまた逢えて嬉しかったけどな。
ssは書くほどに作家さんの色が出ていくものだと思うよ。
で、それで良いと思う。
290名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 23:17:01 ID:wKoG2YkJ
>271 GJでした、天使様!
中年ファントムは女性と触れ合うけれど、どれもストレンジャーとしての触れ合いなんだよね。
映画の後ファントムが生きてたなら、愛するが故に別の男にクリスを託し
仮面なしに外へ出て行くってラストなんだから、こういう「強くて優しい大人の男」にもなり得ると思うなぁ。

原作完璧忠実それのみってのは、パロ自体の否定のような気もする。
本当に書かれる方の色って出てると思う。だから色々読めるここが好きだ。
291名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 23:27:20 ID:ZjjITbyp
>271GJ!
 マスターは社会的弱者を自分に重ねたんだろうな。
 
292名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 23:36:58 ID:MJ14HuDg
気に入らない内容ならスルーすればいいだけでしょ。
わざわざ意味はないと書く方こそ、意味がわからない。
293名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 00:41:42 ID:elpE8xwo
何度も言われてることだけど、マンセーレス以外お断りって空気はどうかと思う。

いくらパロディであっても最低でも変えちゃいけない設定と言うのはあるんじゃなかろうか。
そういう縛りがあるからこそ面白いんだと思うし。
少なくとも自分には、今回の話が「ファントムのその後」である
必然性は感じられなかった。とてもいい話、感動できる話ではあったけど。
294名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 08:31:01 ID:noHwpNDJ
「必然性」のある「エロパロ」って何だ?

ここに必然なのは萌えだけだと思うがね。
295名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 09:02:58 ID:tQD4IYAa
エロパロ、二次創作全体がどうあるべきかを語りたいわけではなくて……。

原作設定を変えていい、悪い、とかいうより
とにかく「これもアリか!」と読者が納得できればいいんじゃないか、と思っていますよ。

単に、(過去にも何作か投下されてそのポテンシャルが知られた)この作者さんの
今回の話、という狭い中で、「ファントムの話としては萌えられなかったかも」という
個人的意見が出ただけと思ってください。次回作への期待をこめて。
296名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 15:42:10 ID:i3KSqzV4
>>283>>285の意見は、書き手に対する気遣いも感じられるし
意見として受け入れていいんじゃなかろうか。
それよりも「意見」に対してかみついている>>292のようなレスが
あるから荒れていくんでは?
批判としてスルーするのも意見として今後の課題にするのも
書き手の自由でしょう。
297名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 18:52:44 ID:o1jx8E8r
>296は>287みたいなのも「意見」と思えるのか。
世の中色々な人がいるのはわかるけど。
もう何が何だかわからないよ、ママン
298271:2006/06/21(水) 18:58:49 ID:wJzM/iNg
ご意見、ご感想、ありがとうございました。
今までずっと確信犯的に、ファントムのキャラを「別人28号」に
して書いてきましたが、色々なご意見を伺えて興味深かったです。
重ねてお礼いたします。
299名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 20:51:12 ID:xdeYOKNB
>>298
GJ!
また書いて下さいね絶対・・・伏しておながいします
300名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 22:11:43 ID:w631/eLX
>298 うん、自分はあのマスターアリなのでGJ!でした
マスターの小鳥ちゃんの安否も気になりますので
またの投下お待ちしています!
301名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 22:13:44 ID:lp8/r53/
あそこまで人格が変わってしまうと、ファントムの人生に何が起こったのだろうと
思っちゃいます。
人格を変えてしまうほどの出来事があったという設定なら、むしろそっちの話を
投下してほしい。
302名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 23:10:34 ID:sW9cO/I6
>>301
sageてね
もしかして「マンハッタンの怪人」は読んでないのかな?

それまでの人生を捨ててたった一人、遠い異国でどん底から頂点までのし上がる…
それだけの経験をすれば人格も変わっちゃうだろうなと思えるけどな。
303名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 23:34:01 ID:zza0eZpE
>>300
小鳥ちゃんってwwwwwwwww
思い出して吹いちゃったジャマイカwww
304名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 23:45:59 ID:xdeYOKNB
こうなると突然レスが付きだすこのスレ…。
住人いるなら普段からもっと反応汁!
305名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 23:07:29 ID:D3aHshy8
>>304
そういう風に仕切られるとレスする意欲が萎える。
306名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 23:19:13 ID:G6mkzVSe
レスする意欲が萎えるのは仕方ないかも知れないけど、レスがないために
書く意欲がなくなっていった書き手がどれほど多いか考えてみた方がいい。

あと、マンセーレスしか書けない雰囲気は良くないとはいえ、プロの官能作家を目指して
いる職人でもない限り、批判などされたら二度と書かなくなるのではないか。
307名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 23:59:25 ID:UBHPdWXA
>>306
激しく同意
308名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 00:52:09 ID:rTQ7CDXW
ファントム×クリス。特に空気は読まない。

監督が「ストッキングについては好きに妄想シル」と言っていたらしいので
好きに妄想した。
薬物(?)使用。ラブラブはしてません。
3091/3:2006/06/23(金) 00:52:50 ID:rTQ7CDXW
空気が揺れるのを感じて、ゆっくりと目を開く。
目に写るのは黒いレースのカーテン。
視界はぼんやりと霞んでいて、甘いような苦いような不思議な香りが漂っている。
カーテンがもう一度大きく揺れて、頬をはっきりと風が嬲った。
香りが一段と強くなり、頭の真に響くような気がして思わず目を閉じる。
そうして次に目を開いたとき、目の前のは白い仮面があった。

そうだ、私は音楽の天使の元へ導かれたのだ。
「てんし、さま…」
名を呼んだはずなのに、妙に舌足らずな、呂律の回らない声になる。
「クリスティーヌ」
音楽の天使は気にする様子もなく、手に持っていたものをベッドの脇へ置いた。
視線だけでその手の動きを追う。
置かれたそれは銀色の香炉で、凝った透かし細工のふたの隙間から白い煙が立ち昇っている。
「東洋の香だ」
天使の唇がかすかに歪んだ。
「痛みを抑え官能を増し…記憶を薄めてくれる」
そう言いながら手を伸ばす。その動作がひどくゆっくりに見える。
「我が天使よ…お前は私のもの…」
もう手袋をしていない手は、言葉と共に下着の紐をするりと解いた。
3102/3:2006/06/23(金) 00:53:36 ID:rTQ7CDXW
ふわふわと漂うような不思議な感覚。
皮手袋の指先に触れたときはなぜかぞくりとしたけれど
この裸の掌は肌を撫でるたび、皮膚の下で何かが蠢くような奇妙な感じがする。
「私に仕えるのだ、夜に、音楽に…」
「なに、あ…!」
胸を揉みしだかれ、吸いたてられ、身体が勝手に跳ねる。
両足の間の秘すべきところに、指はやすやすと入り込む。
合わせ目を焦らすようになぞられ、奥から何かが湧き出してくる。
その上の小さな一点から、じんじんと痺れが全身に広がってゆく。
「ああ…や…」
そこに触れてほしいのに、熱い掌は両膝の内側へ移動してしまった。
膝から腿へとなで上げられ、何故か腰の奥がずうんと痺れる。

そのまま天使はずるりと右足のストッキングを下ろし、
腿の内側を唇で食むようにくちづける。
もう片方のストッキングも同じように外され、そのまま左右の足首を
天使は自らの肩に担ぎ上げた。
「お前を私のものにする…私だけのものに」
下半身が持ち上がり、誰にも見せたことのない場所が緑の瞳に晒される。
恥ずかしいはずなのに、そこが胸の鼓動に合わせるように
ひくひくと脈打っているのが分かる。
「愛しいクリスティーヌ…ああ、お前を…」
天使の声は乾いて掠れている。
濡れて震えるその場所に、同じく脈打つ熱い塊が押し当てられた。
「力を抜きなさい…身を、任せて…」
入り口が楔でこじ開けられる。
下腹を打たれたような重い痛みに背骨がみしみしと軋む。
「…あぁ…!」
声を零したとたん腰を掴まれ引き寄せられ、深く深く貫かれた。
3113/3:2006/06/23(金) 00:54:26 ID:rTQ7CDXW
無理やりに引き裂かれる痛みとともに、穿たれた空間が肉で満たされてゆく悦びを感じる。
膨れ上がった肉を打ち込むように突き立てられ、中を擦られ、
悲鳴とも啜り泣きともつかない音が自分の唇からとめどなく漏れる。
荒い息遣い、切れ切れに囁かれる私の名前、天使の声も泣いているようだ。
「く…う!」
短い呻き声とともに、楔の先端か熱いものを私の中で迸らせた。
強く抱きしめられ、耳から毒のように声が注ぎ込まれる。
「忘れるのだ、クリスティーヌ」
「てんしさま」
「忘れて、眠りなさい…夜はお前を護る、さあ、眠って…」
「………」
低い声に引き込まれるように、私の意識はゆっくりと闇に引き込まれていった。

オルゴールの音が聞こえる。
遠くで、次いで近くで。
わたしは重いまぶたを開いた。
サルの人形がゆっくりシンバルを叩いている。
紅いシーツ、黒いカーテン、…頭に霞がかかったようで、何も考えられない。
じわりと身体を起こし、変わった形の寝台から降りる。
そう、夕べは…夕べは…瞬く無数の蝋燭、人形、靄の漂う湖…。
何故かはっきりと思い出せない。カーテンを上げ、部屋を出る。
まさに靄の漂う湖が目の前に現れる。ああ、小船が、小船には男の人が…
…視線を転じると、オルガンの前に座る姿
とたんに腰の奥深くが妙にざわめく。酷く甘くて痺れるような感覚に襲われ目を閉じる。
行かなければ、あの傍へ。触れなければ、あのひとに。
もどかしいような気持ちに突き動かされ、わたしはあのひとの元へと歩んでいった。
312名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 01:08:05 ID:vr4dRyY3
>>308
この話すごいですな
映画にも違和感無いし……
GJです!!ありがとうございます!!

でも今度はもっとエロ要素多めでおながいします
自分エロエロ大好きなもんで……わがままばっか言って申し訳ナイ!!
でも投下ほんとにありがとうございます!!!!!!!!!!
これからもよろしくお願いしますですですです
313名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 02:14:36 ID:Wx4yrQ5X
>>308激しくGJ!!!
自分、あの夜は何もなかった派だったんだが、転向するよ。
なんか久々にDVD見返したくなった。
いいものをありがとう。

>>312
気持ちはわかるがモチツケw
314名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 09:20:56 ID:fCz+EnFm
>308GJGJ!!
いや、自分の中で本当に違和感なく繋がったよ。
また新たな脳内妄想ワールドが開けそうですw
ここの天使様方は本当にすごいな

乾いて掠れるマスターの声に萌えw
315名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 14:13:01 ID:hyGCyCOv
>>308
うまいなぁ…いや、GJ!!
読んでいてリアルに映像を見ているような錯覚になりますた。

そうか、あのクリスのボンヤリは持ち前+薬物だったのかw
316名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 15:27:12 ID:3wgMKSCF
イイネーイイネー!
ものすごくGJ!
もう言葉にならないくらいGJ!!!
317名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 21:39:07 ID:IW+MXMFg
>>308
わお、グッジョブです!!!
マスターが繰り出す見えない蜘蛛の糸に絡め捕われゆくかのようなクリス。
もう、これでごはん一杯分いけそう。
ストッキングの謎もこれで(・∀・)スキーリ
318名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 21:44:39 ID:IW+MXMFg
連書き&キナ臭い話でごめん

>>306
レスもらえないと書く意欲がなくなるんですか?
何か変だな・・・ただ書きたい話があるから書く、じゃないのか?
世の中いろんな人が居るものだね。

職人・住人数が減った理由は、何度か荒れたのと、単に飽きてきたからだと単純に考えてた。
自分もだいぶ飽きてきてオペラ座題材じゃもうずっと書いてないし。
319名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 22:37:10 ID:3wgMKSCF
306サンじゃないけど。

書きたいから書く→反応がある→次への意欲につながる

ってことなんじゃね?
自分は飽きたとわざわざここで言うコトに世の中いろんな人が居るものだとオモタ
320名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 21:34:28 ID:ENIaVC0y
さて
321名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 22:15:26 ID:Bndyxl9z
さてさて
322名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 22:30:23 ID:ATnkqj5Q
雑談でもしますか?w
323名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 22:46:28 ID:Bndyxl9z
んだんだw
324名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 22:49:28 ID:LRbmkXe/
賛成!
325名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 22:51:35 ID:49psNscl
んだw

ところで映画の中でクリスとラウルの楽屋で再開のシーン…
ラウルの「アヒャw」に今でも笑わされる
326名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 23:12:44 ID:2I1yW2SJ
>309GJ!映画でクリスが起きてきて目が合った時のマスターのキョドり具合は
きっと何かあったなと思ってたんだ。これでスッキリ!

落ちたからもう話題に出来るんだけど、同性愛サロンにオペラ座スレあったんだよ。
http://love3.2ch.net/test/read.cgi/gaysaloon/1147318636/
エロ話期待してたんだけどな、どっちかというと微笑ましい雰囲気で笑えた。

327名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 23:14:11 ID:ATnkqj5Q
ところでこのスレ、ラウルのSSって少ないですよね。
キャラ的に動かしにくいのかな?

308さん(この天使様は以前にも何度か投下されてますよね。
個人的に ネ申 です)が、ラウルが多いので嬉しいです。
328名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 00:01:05 ID:rJOUDMEu
>>326
あーあったね。
見つけたときは衝撃的だったw
どんな話題が出てくるのかと期待してたんだがなー。
残念。
329名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 02:50:18 ID:/HeSfdur
DVDでメイキングの映像を見ると、パトリックを嬉しそうに抱き寄せる
監督の笑顔がすごく気になる。
あまり想像したくないんだが、パトは監督に食われてるんだろうか…。
330名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 13:23:14 ID:mBhs+qqC
>329
嫌スレに投下してほしかったよ
331名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 18:10:42 ID:Aqj/a9xZ
マスターの小鳥ちゃんはどうなったんだろねw
332名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 21:46:10 ID:S+jWG7F8
>>52からの続きです、またすごく間を空けてしまいました。

まだこの季節には早いはずの雪がちらつきだしたオペラ座の屋上で
私はクリスティーヌを待っていた。
今日から「イル・ムート」の舞台が始まった。
与えられた伯爵婦人役をクリスティーヌは見事に演じきり、
舞台は大成功に終わって今頃彼女はファンに囲まれ絶賛を受けているはずだ。
確実にスターとしての栄光の人生を歩み始めたクリスティーヌ、
そんな愛弟子の輝く姿を5番ボックス席、いや観客席の端の席すらからも見ることなどは
到底叶わなかったが、今こうしてどんなに遅くなってもここに会いに来てくれると
約束してくれたクリスティーヌを待っていられる、
彼女の心がここにやってくるというだけで私は心が満たされた。
懐の固い小箱をしっかり抱き締め、パリの夜景を眺める。
もうすぐあの街並みのあの辺りでクリスティーヌと一緒に暮らすことが出来る。
プリマドンナとなったクリスティーヌはもうオペラ座の寄宿生ではなくなったので
いずれは宿舎を出なければならない。
シャニュイ子爵はおそらく自分の屋敷に彼女を引き取ることを考えていることだろうと思う。

既に私はクリスティーヌと一緒に暮らす為のアパルトマンの契約を済ませ、鍵も受け取っていた。
私はそのアパルトマンにクリスティーヌと一緒に住みたい。
結婚して一緒に暮らしたい、
もちろん彼女がそれを承諾してくれたらの話なのだが…

吹雪が強くなり、緊張から白い息を吐きアポロの竪琴像に背をもたれかけていると
突然重い扉が開いた。
「マスター!」
「クリスティーヌ!」
少ない階段を急いで下りてきたクリスティーヌが、頬を真っ赤に染めて
真っ直ぐ私の胸に飛び込んで来てくれ、しっかりと抱きとめた。
「ああマスターごめんなさい遅くなって…! 
 まあっどうしましょう、こんなに冷たくなってしまってるわ」
「お前こそこんな肌寒い格好で屋上に来たりして、
 大事な体なのだぞ」
急いで私のマントの中に抱え込み抱き締めたが身をよじって嫌がり、
「まだ熱いのマスター、
 階段を走って上がってきたんですもの」

「だってマスターがずっとお待ちなんだから、早く行かなくてはいけないって
 思ったんですもの。
 マダム・ジリーがやっと抜け出させてくださったのよ、
 “あの方”を待たせてはいけませんって」
クリスティーヌは着替え途中の衣装の上に赤い薄いマントを羽織っただけの格好で
はあはあと息切れをしながら先程まであった事を話してくれた。
「何もそんなに急いで来なくても良い、しょうのない子だねまったく…」

しばらくは今日の舞台がどれほど素晴らしかったかを寄り添いながら話し、
私は後ろから、そろそろ体が冷えだしたクリスティーヌを抱き締めマントの中に匿った。
彼女は私に褒められるのを嬉しそうにはしゃぎながら、私の手を取りくるくると
銅像にぶつからないように回っていた。
そうしているうちにクリスティーヌはなんとペガサスの銅像に足をかけ登りだしたではないか。
「クリスティーヌ!あぶない、降りなさい」
「マスターわたしの事愛してるって言って!そうしたら降りるわ」
「降りろクリスティーヌ、とにかく降りなさい」
「大丈夫よマスター、マスター愛し…─!」
その時激しい吹雪が一瞬吹き、クリスティーヌの体がふらっと建物の外側に傾いた。
「危ない!」
とっさに彼女の腕をとって引き寄せ抱きかかえ、バランスを崩した私は
彼女を抱きかかえたまま二回三回とふらふらと回転し
銅像に背中と後頭部を強打してやっと止まった。
それでも私はクリスティーヌの体を離さなかった。

「ク、クリスティーヌ、頼むからもうお転婆は勘弁してくれないか…
 私の身が持たないよ…」
私の胸にしっかりとしがみついたままでまだ鈴を転がしたような可愛い笑い声を
たてているクリスティーヌを抱き締めながら、くらくらする頭でかろうじてまだ立っていた。
「ごめんなさいマスター!はしゃぎ過ぎました?
 うふふマスター、…あら?」
私の胸でまだくすくす笑うクリスティーヌは私の胸に入っている硬い箱を探り当てた。
「?何かしら、何か硬いものが入ってますわ」
「ああ…
 これを、お前に…」
私が懐からクリスティーヌに差し出したもの、それは小さな宝石箱だった。
蓋を開け、ふたつのうちの小さい方の金色の指輪を震える手で取り出し彼女の前に差し出す。
「マスター、これって…」
彼女の左手を取り指輪を握らせた。私はその小さい手を撫でながら、遠慮がちに呟いた。
「私はお前と結婚式を挙げるためのミサ曲も作った。
 もうずいぶん前から作っていたんだが出来上がったよ」
「マスター… 」 
「私と結婚したらお前はきっと退屈しないよ、日曜には一緒に散歩に出掛けよう、」
「マスター」
「いっぱい可愛がってやる、ずっとふたりだけで歌を歌おう、」
「マスター」
「手品も見せてやる、腹話術も出来るし、一週間ずっと面白い話も聞かせてやる、」
「マスター」
「アパルトマンの契約も済んでいる。
 鍵ももうもらってある、今地下のオルガンのそばに置いて… 」
「マスター!」

「…何がお望みなのかはっきり言ってくださらないと」
「クリスティーヌ… 」

「…愛しているクリスティーヌ、望みは、私の望みは… 」
そういいかけたところでクリスティーヌが私の唇を自分の唇でふさぎそっと囁いた。
「マスター、あなたは独りではありませんわ」
「クリスティーヌ!」
私はクリスティーヌを抱きかかえるとクリスティーヌが私の首に手を回し
押し倒すように体重をかけてくるので止まることなど出来ずに銅像にぶつからないように
屋上いっぱいに私たちは雪の上に足跡をつけて回りまわった。
ふたりの吐く白い息をお互いの顔にかけあって微笑みあい、
そうしていつまでも口付けを交わし、笑いあい、また口付けを交わし…
私はもう孤独ではないのだ、クリスティーヌ、お前はこの世の私の幸せそのものなのだ。
神よ、あなたは私にこの世の幸福をすべて与えてくださった。
私はもうクリスティーヌのためならいつ死んでもいい、と密かに思った。
この時私は、本当にそう思っていた─
「クリスティーヌ、そろそろ行こうか─
 もう楽屋には誰もいないだろう」

地下の私の棲家に到着するとクリスティーヌは早速私の作業台やオルガンに座り
いつもと同じように調度品を触り遊んでいた。
「アパルトマンに越したらこれはどこに置こうかしら、ね、マスター、
 でもあれはいらないと思うの…」
うきうきと嬉しそうにそう話してくれるクリスティーヌに勇気を出して聞いてみる。
いずれは絶対聞かなければならないと思っていた事だ。
「クリスティーヌ、子爵のことなんだが…」
「え?」
「…いや、なんでもないクリスティーヌ」
「…マスター、ラウルのことなんですが…」
「いや、よい、よいのだ。
 さあこちらにおいで。さっき話したものを見せてあげよう」
そして先ほど階段を下りてくる途中に話した、『私の顔』を渡すと
手に取り珍しげに眺めた。
「マスターこれなのね、すごいわ…」
「お前の為に作ったのだ。
 これをつけていれば誰も私をふりかえりもしなくなる」
「でもマスター、わたしは何も気にしていませんわ」
「よくわかっているよクリスティーヌ。
 しかしだ、しかし、お前には辛い思いをさせたくはないのだよ。
 私はお前を世界中の誰よりも幸せな女性にすると決めているのだ。
 私はいい、私はな…」

少し寂しそうな顔をするクリスティーヌの頬を撫で、
「そのような顔をするな、笑っておくれクリスティーヌ」
クリスティーヌは私をちらっと見るとにっこりと微笑んでくれた。
今からそう、例えば百年もすればこのようなものは着けなくても、
顔にどのような傷を持とうとも外を出歩ける時代が来ていることを、
クリスティーヌを抱き締めながら願った。

「マスター…わたし、わたし、ああ恥ずかしい…」
「クリスティーヌ…
 大丈夫だよクリスティーヌ、ずっと目を閉じてじっとしていればいい。
「マスターわたしやっぱり… 恥ずかしいの、怖いの… 」
「いつもと同じじゃないかクリスティーヌ、怖がらないでおくれ?
 私の妻になってくれるのだろう?クリスティーヌ… 」
既に私たちはベッドの上ですべての衣服を脱ぎ去り、
しかしクリスティーヌはドレスを握り締め恥ずかしそうに俯くばかりで、
その初々しい様子が愛しくてたまらない。
「でもマスター…いつもと違うわ、その…」
「いつもと同じじゃないか、クリスティーヌ?
 私のされるままになっていればいいんだよ、お前は何もしなくていい」
「その、あの痛い、のは、いや、なの…」
「そんなことしないよクリスティーヌ、私が信じられないのか?」
わずかに首を横に振り震えるクリスティーヌを怯えさせないように手元のドレスを
奪い去り、そっと押し倒した。

数週間前、作業台で初めてクリスティーヌの体に触れ
あれから何度となく素肌を重ねていた。
しかし私は自分を彼女に押し入れたりはせず、ただクリスティーヌの体を撫で、触れ、
その小さい無垢な体に男に触れられる快感を根気強く教えてやった。
痛みは作業台の前でただ一度だけ、一瞬だけ感じさせてしまってから
彼女にあのような苦しみを味わせていない。
今日の私の目的を敏感に察してしまったのだろうかクリスティーヌ、
もう私たちは師と生徒の関係を超え、もはや恋人同士でもない、
結婚を約束した婚約者同士なのだよ、クリスティーヌ…
いつものように体のすみずみまで優しく愛撫してやり何度となく絶頂を迎えさせてやった。
後に迎えるであろう痛みを少しでも和らげるためにも、
執拗にその幼い体を愛しんだ。
すでに私に対する不信な思いを向けられず、いつものように
深い眠りにつきそうな快感にゆたうクリスティーヌを見下ろしながら、私自身の限界が近いことを知った。
「クリスティーヌ、愛しているよ…」
そして私はクリスティーヌからの信頼を裏切った。
「…!いやあっ!!」

私が彼女の中に押し入った瞬間に見せたクリスティーヌの瞳は生涯忘れられないだろう。
信頼する師に裏切られたその哀しい瞳は私の心に深く焼きついた。
「すまないクリスティーヌ…う… 」
クリスティーヌは片手をベッドの固い淵に手を掛け、引き裂かれる痛みに耐えていた。
快感の中でふとそれに目をやると、爪が割れんかぎりに指先に力を入れているようなので
両方の手首を取り私の背中に回させた。
「いいか私の背中から手を放すな…私に爪をたてろ…っ!」
そうさせることで私はクリスティーヌの体を押さえつけることが出来、
さらに深く体が結びつき彼女の奥へ侵入した。
「あうっ…!」
もうどこにも逃げられない可哀想なクリスティーヌはただ耐えるしかなかった。
私はあまりの快感につい手加減が出来ず、体を揺らすことを止められない。
彼女の腕と足が痙攣をおこしたように不自然な震えを見せる。
涙をじわっと滲ませ、痛みに耐えかねとうとう声を出して泣き始めた。
「…い痛い…マスター…
  も、う、ゆ許し…て、ぅぅ…」
「すまない、すまないクリスティーヌ…
 もう終わる…もう、少し…我慢を…」
「ごめん、な、ごめんなさ…い…っっ…ひ…ぅぅ…」
何も悪いことなどしてはいないのに、泣いて許しを乞うクリスティーヌがあまりにも哀れで
私はその時、この子がこれよりの生涯たとえ私に背いたとしても、
必ず許せるという確証を持った。
そして彼女の中で限界を超え、そっと私を彼女から引き抜く。
その瞬間もはじめて引き抜かれることを知ったそこは痛みを感じたようで短い悲鳴があがった。
クリスティーヌの腹の上に、彼女を犯し苦しめたものを放った。


処女をなくしたばかりで、しどけなく両脚を大きく開いたままのクリスティーヌ─
その姿はあまりにも痛々しく儚げだった。
「クリスティーヌ…大丈夫かクリスティーヌ?」
「えっ… えっえっ… 」
痛みと羞恥を堪えて、それでも身動きひとつ出来ないでいるクリスティーヌの片脚を持ち上げる。
「ひっ!」
「よしよし…もう何もしないよ、拭ってやるからじっとして… 」
「うう… 」
痛みと初めての傷を見られてる羞恥からか自分の指を噛み締めじっと我慢している。
傷ついたそこをそっと拭ってやると、まだ奥からわずかにふたりの混じったものが
滲み出し、そして彼女の腹の上にはべっとりと私の体液に混じった
赤いものが広がりだしていたものも清めてやった。

「…可哀想にクリスティーヌ、こんなに傷ついて…
  痛かっただろう…?」
顔を覆っている両手以外は動きそうにないクリスティーヌの両脚をぴったりと閉じてやり、
シーツを掛けそれにしっかりとくるまってやった。
その上からそっと下腹あたりを撫でてやると、
「マスター…」
指の隙間から私を見遣り、今私のものになった初々しい娘は震える唇に僅かに微笑みをのせた。
覆いかぶさり抱き締め、額に口付けた。
「私の妻になってくれたんだね、クリスティーヌ…
 ありがとう、クリスティーヌ愛している…」

脇にしっかりとクリスティーヌを抱えてやり、ふたりで眠りについた。
しかし夜中の間彼女は何度かうなされて泣き出していたようだった。
私は無意識に泣き出すその度にしっかりとまた抱き締めなおし、何度となく頭を撫でてやった。
そうするとまた安心したように泣き止み眠りにつく。
頭を撫でながら私も再び眠りにつく、ということが何度かあった。
夜明けが近くなった頃目が覚めた。
何度となく、ぐずって泣いていたクリスティーヌにふと目をやると
なんと穏やかな優しい顔で寝息を立てている。
泣いた後の涙で汚れてはいたが、安心しきった表情のクリスティーヌが
私の横で寝息を立てていた。
これからの人生、この子のこんな可愛らしい姿を毎日見ることが出来るとは、
私はまだ信じられない気持ちでいた。
もうひとりで朝を迎える日は来ることはないのだ。
私はそっと自分の目じりの温かいものを指で拭くと
簡単な食事の用意をする為先にベッドから出た。


クリスティーヌが不安そうな小さい声で私を呼んでいる。
「クリスティーヌおはよう、…大丈夫か?」
「え、ええマスター…」
恥ずかしそうにシーツで顔を隠しそう返事するクリスティーヌが可愛くてそっと抱き寄せた。
「クリスティーヌ、お前を妻と呼んでもよいか」
「え、ええマスター…」
またもそう答えるクリスティーヌの髪を撫で、
「いや、まだそう呼ぶのは早いな。
 式を挙げてここを出てからそう呼ぶことにしよう」
「はいマスター… 、いえ、あの、あなたっ……、
 …マダムから“あの方”をそうお呼びしなさいって、教えていただきました…」
恥ずかしそうにシーツで顔の半分を隠すクリスティーヌを私は力いっぱい抱き締めた。
クリスティーヌは何度も頷きながらにっこり微笑んで
私の胸に顔を擦り寄せた。
「いつ時間が空いている?私たちのアパルトマンを見にいこう。
 お前の家具も必要だ、その帰りに注文してもよい、欲しいものがあったら何でもいいなさい」


それより数日前のこと─
シャニュイ子爵は自身の邸宅でクリスティーヌからの手紙を読んでいた。
しばらく眺めた後、深夜の月明かりが差し込む窓からオペラ座の方向を見遣った。

『わかったわ、それでは貴方の婚約者になります、ラウル
                           ─クリスティーヌより』


<続く>
今回も読んでくれてありがとう。
もっと早く書けるように努力しますです。
343名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 22:03:20 ID:vXWw8/Y7
>>342様、GJ!!久しぶりの投下、お待ちしておりました。
幸福なマスターの後に急展開の予感、目が離せません……
344名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 23:10:28 ID:ONZcpB45
先に家を準備しちゃうマスターGJ!
最後のラウルが気になる…本当に"続く"の上手い天使さまだ…
345名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 00:32:37 ID:pPpr4z2E
>342
GJ! GJ! GJ!
原作テイストの先生があまりに幸せで嬉し涙が……。
と思ったら、最後のラウルの件が……!
だからなのか、「これよりの生涯、私に背いたとしても」なんてあったのは。
どうか最後は先生が幸せになりますように……。

それにしてもいじらしいクリスがたまらなく可愛い。
346名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 21:36:58 ID:vXvgF2su
>342 GJ!
クリスのカラダにだんだんとゆっくりと教えていく先生がやさしい。
先生とクリスがあまりに幸せそうで、それがなんだか怖いような気がする。
原因はシャニュイだ・・・orz

続き、待ってます。
347名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 22:47:43 ID:t39pbQOV
原因はクリスだろ……orz
348342:2006/06/26(月) 23:21:26 ID:H2tOodb7
いや原因はワシ…orz
レスありがとう、全5話で終わらせる予定だったがまだちょっと延びそうだ。
たらたら書いてるけどまた読んでくれ。
349名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 23:27:47 ID:RU34zBY2
>>348
おう!!
読むにきまってるでねぇか (`・ω・´)b
俺は待ってる!!!
350名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 00:20:06 ID:K2nksqrT
>>348
天使様GJ!!続きいい子で待ってます。
でも今回のはモグラ氏や輪ゴム氏の件思い出して一人で勝手に
うわああぁぁ(AA略 天使様先生をどうか幸せに…!

ていうか久々にきたら投下いっぱいで嬉しいお。空気読まずに感想。
>寸止めの天使様
おまけに萌え死にそうです…でも微妙に生殺し…w ハンテンシテモナニモナイ…orz
>中年マスターの天使様
今回はちょっとオリジナルが強かったですが、小鳥ちゃん楽しみにしてますw
>308天使様
GJ!!俺もあの夜は何もなかった派なんだけど萌えました。ありがとう天使様。
351名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 22:07:28 ID:qpmgah4c
近頃えねっちけーがミュージカル映画特集やってて
タップでてくる度にニタニタしちゃうよwアステアはズラwww
352名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 23:50:34 ID:HmRXbe7u
誰もいないので勝手に206氏のネタをこの板っぽく考えてみる。
>206氏、スマソ

水牢の罠から、親切なピアンジの助けで抜け出したラウルは
ファントムにみつからないよう森へと逃げました。
彷徨ううちに1軒の小屋を見つけ、入ってみるラウル。
しかしそこは7人のマダム・ジリーの住処でした。←ここら辺でエロ

さてファントムはラウルが生きていることを知りましたが
7人のマダム・ジリーを恐れ近付こうとせず、
したがって毒リンゴイベントも発生せず、
クリスティーヌ王子が通りかかることもなく…何事も起こりませんでした。
7人のマダムとともに取り残されたラウルを除いて。←めくるめくエロ
353名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 23:55:24 ID:WjXTuNSv
>>352
どっかで読んだぞwwwwwwwwwwww
ワロスwwwwwwww
354名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 00:04:49 ID:hjo0L1Zu
クリスティーヌが王子なのか、わろっす
何故にピアンジがそんなに親切にしてくれるのかが最大の謎だな
わずか9行のSSでありながら突っ込み所満載だ、GJ!
355名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 00:16:13 ID:DDdvVrN8
7人のマダムに開発されるラウルwww
ってファントムも近づかないのかよw
356名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 00:35:47 ID:kP+LQSVi
ちょwwwww
マダム最強伝説
GJ
357名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 00:38:28 ID:lk4GARQn
一瞬嫌スレに来たのかと思ったw
358名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 00:57:07 ID:C7en+A7p
ちょw
めくるめくマダム激しくキボンww
359名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 03:07:14 ID:BYAMZByW
最強マダム、7人もいるのかよwww
360名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 08:19:14 ID:mV9Vfnvq
最強マダム七人に教育されて、ラウルも最強に。
マスターを凌ぐテクニックを身につけ、クリス奪還。
ってのは?w
361名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 22:36:58 ID:nbM4+yL+
(*・人・*)カミサマ・・・
362名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 22:45:05 ID:qkTkTUVf
>>じゃぁあたしも…
 
(*・人・*)カミサマ・・・
363名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 00:06:59 ID:ZEmMf0um
では自分も…
   _, ,_
  ( ゜ノゝ゜)< come to me Angel of …SS〜♪
364名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 17:42:44 ID:+ohSREIx
あの、ここでは舞台版はあまり歓迎されないのでしょうか。
そして、子爵×歌姫の話は需要ないでしょうか?
もし大丈夫そうでしたら、投下したいんですけど…
365名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 18:08:12 ID:x3CI5GSu
>>364
おk!!!!!!!!!!!!!!!
ありがとう!!
366名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 18:21:45 ID:+ohSREIx
じゃあちょっとだけ……

舞台版でカップリングは子爵×ロッテ

(ちなみに舞台版未見の方のために注釈をつけますと、
舞台版ではオール・アイ・アスク・オブ・ユーの直後に
シャンデリア落下。マスカレードは、その半年後で
シャンデリアが出来上がったお祝いだそうです。)
367before the masq:2006/07/04(火) 18:25:38 ID:+ohSREIx
赤い、どこか不吉な印象を与える衣装を、女―――というには少し欠けるくらいの
少女だが―――は食い入るように見つめていた。
衣装をまとった男は、髑髏を模した仮面を身につけている。
みじろぎもしない女の青いドレスの胸だけが、規則正しく揺れる。
何故、と髑髏の仮面の下の唇が紡いだようだった。
しかし、青ざめ、ひたすらに驚愕しているだけの女はそれに気付かない様子だった。
彼女の胸元には、誇らしげに輝く、美しい指輪が吊るされていた。
大ぶりな輝石のはまったそれに、男の口元がゆがんだ。
一瞬たりとも目を離さない二人を、少し離れた位置から、
一人の青年が見つめていた。
その瞳は憎悪と怯えの入り混じった不思議な色をしていた。
彼は、おそらく男が少しでも動けば襲い掛かるくらいの覚悟はあったのだろう。
踏みしめた足に力が入っていた。
男は相も変わらず口元をゆがめていた。かすかに、その唇が震えている。
女は、やはり呆然としていた。青年の眉間に刻まれたしわが、また深くなった。
368before the masquerade:2006/07/04(火) 18:29:24 ID:+ohSREIx

「『―――シャンデリアの落下事件より一週間が経過。オペラ座の復活は絶望的か。
支配人のアンドレ、フィルマン両氏はこれを否定。
シャンデリアの修復が済み次第新演目を上演するとの発表。
悲劇の歌姫、クリスティーヌ・ダーエ嬢は知人の家で静養中。
同オペラ座のプリマ・ドンナであるカルロッタ・ジュディチェルリ嬢は
引退説を完全否定。しかし、喉の故障については黙秘を貫いた』……か。
随分と楽しい記事じゃないか」

言葉とは裏腹に、ひどくつまらなそうな口ぶりでラウル・ド・シャニュイ子爵が
言った。読み上げたばかりの新聞を胡桃の卓に置くと、
彼は少し長めの前髪を鬱陶しそうに払った。
「この一週間、ずっとこの話題で持ちきりだ。混乱が解けていない」
「そうね」
小さな声で答えたのは、彼の幼馴染であり、件の『悲劇の歌姫』でもある
クリスティーヌ・ダーエだった。そう答えた彼女も、ラウルのものとはまた別の
新聞を手にしている。
「それほどまでに、衝撃的な事件だったのよ」
そういって淡く微笑んでみせるクリスティーヌの顔色は、常よりも青ざめている。
シルクの部屋着にばら色のガウンを着てベッドに座っている彼女は、
小さくため息をついた。
369before the masq:2006/07/04(火) 18:31:25 ID:+ohSREIx
ラウルの屋敷には、ここ一週間ほどクリスティーヌが滞在している。
ひどく憔悴した彼女を心配したのか、ジリー母娘が連れてきたのだ。
げそりとやつれたクリスティーヌのために、ラウルは部屋を整え、
医者と看護婦を呼び、彼女の暮らしやすい環境を作り出した。
しかし、クリスティーヌの容態は悪く、いつでも青白い生気のない顔をしている。
自分を殺したいと願う人がいる、しかもそれが彼女の慕っていた
『音楽の天使』であるならば、優しく清らかな彼女が耐えられないのも
無理もない話だろう。
「シャンデリアが落下するなんて、長い伝統を誇るオペラ座でも初めてだもの」
シャンデリアの落下、という言葉にラウルは視線を流した。
しばしの沈黙が流れる。
その間のクリスティーヌは、長い巻き毛を指に巻きつけながら、
何かを考えているような様子だった。
否、二人とも同じことに思いをめぐらせていたはずだった。


悲劇の起きたあの晩、二人はあの舞台の上にいた。
 
370before the masquerade:2006/07/04(火) 18:33:23 ID:+ohSREIx
事件の晩―――それはオペラ『イル・ムート』の初日でもあったが―――の
オペラ座内はひどく混乱していた。完璧な音感と衰えを知らぬ喉を誇っていた
プリマ・ドンナの初めての失敗や舞台の降板、そして躍進中のコーラスガールの
台頭。その舞台は幕開けから何かがおかしかった。
ちぐはぐな舞台は続き、あわただしく始まった踊り子たちの群舞や、
その合間に現れた大道具係、ブケーの首吊り死体。
怯える観客、そして忌まわしいシャンデリアの落下。

クリスティーヌが伯爵夫人役として舞台に上がる少し前、彼女とラウルは
オペラ座の屋上ではじめて心を通わせあった。
共に夏をすごした幼馴染であるクリスティーヌとラウルは、あの時から愛し合い、
慈しみ合う恋人同士になったのだ。
ラウルは五番ボックスをあけ、舞台の袖から彼の可愛い恋人が歌うのを眺めていた。
桃色のドレスを着て歌うクリスティーヌは、実に魅力的だった。
舞台は大成功で、役者たちはたっぷりとしたビロードの緞帳の前に進み出て、
観客に向けて礼をしていた。とりわけクリスティーヌに向けては、
一際大きな拍手と歓声が沸きあがっていた。
371before the masquerade:2006/07/04(火) 18:35:23 ID:+ohSREIx
ギィィ、と何かがきしむ音に気付いたのか、不意に観客の一人が天井を見上げた。
その仕草に気付いたのか、周囲もそれにならう。
そして、彼らは一様にざわめき、血相を変えて立ち上がった。
拍手が消えたことを訝しがった役者たちが天井を見上げた途端、彼らは
一同におののいた。
耳障りな音を立て、シャンデリアが舞台めがけて落下してきたからだ。
蜘蛛の子を散らすように舞台上の人間が逃げる中、舞台中央にいた
クリスティーヌだけが呆然としながらまっすぐに落ちてくるシャンデリアを
見つめていた。
「クリスティーヌ!危ない!」
言うが早いか、ラウルは舞台へと飛び出して、立ち尽くすクリスティーヌの
華奢な腕を引っつかんでいた。そのまま力任せに彼女を引き寄せる。
「っ!」
痛みに顔をしかめるクリスティーヌが腕の中に納まったのを確認すると、
ラウルは慌てて袖まで駆け出した。クリスティーヌのなびいた髪の一房が、
シャンデリアにともっていた蝋燭の炎で焼けた。
シャンデリアは緞帳を突き破り、背景幕、紗幕を切り裂いて壁に激突した。
派手な音が立って、長い歴史を誇った、オペラ座のシンボルたる
シャンデリアが破壊された。
「危なかった……」
極度の緊張からか、うっすらと額に汗をかいたラウルが呟いた。
不意に重くなった腕を見ると、抱いていたクリスティーヌが気絶していた。

舞台の上は炎に包まれ、オペラ座で働く男達は総出でその火を消すために
水をまいている。ラウルはそれを横目で眺めると、クリスティーヌを
抱えあげて外に出て行った。
372名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 18:37:25 ID:+ohSREIx
今日はここまで。また投下します。
途中あげちゃったのは他意はありません。すいません、ミスです…。
そしてタイトルは『before the masquerade』です。

373名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 21:04:55 ID:96gyYWBN
>>372
GJ!
自分は舞台版みたことなくて新鮮でヨカタよ!
しかし投下される前は舞台版でエロ?!とおもってニヤニヤしたしまったww
実際舞台でエロやったらすんごい事になるんだろーなwwww

っつか自分が何いってんのかわからなくなってきた…どうか忘れてください……
374名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 22:12:26 ID:z7nfj/8O
>>372
新鮮です!GJ!
続き、まったりお待ちします。
375名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 22:51:54 ID:6TpIJQds
>>372
GJ!
舞台好きの自分としてはとても嬉しかったです!
シャンデリアのシーンがまさに舞台の演出そのもの・・・
つづき待ってます。
376名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 16:55:52 ID:CDuys12E
>371からの続きです。連続で失礼します。

ラウル×クリス 舞台版
377before the masquerade:2006/07/05(水) 16:57:16 ID:CDuys12E
「クリスティーヌ」
何かを考え込んだまま微動だにしない恋人に、ラウルは囁きかけた。
クリスティーヌがはっとして顔を上げる。
「何、かしら?」
どこか硬い声音に、ラウルはひどく悲しい気持ちになった。
彼は彼女の白い手を握り締め、いたわるような微笑みを浮かべた。
「疲れただろう?もう休んだほうがいい」
ラウルの言葉に、クリスティーヌが目を見張った。それからいやいやと首を振る。
「……嫌よ!ラウル、嫌!眠りたくないのよ!」
「クリスティーヌ、言いたい事はよくわかる」
取り乱したクリスティーヌを抱きしめ、ラウルはなだめるようにささやいた。
しかし、彼女はサイレンのような悲鳴を上げる。
「嫌!眠れば彼が来るわ!彼に連れて行かれてしまうわ!」
「大丈夫、彼だってここまではこないよ」
「あなたはあの人を知らないの!あの人がどんなに恐ろしいかを!
あの人はわたしを殺したがっている!」
「クリスティーヌ!」
ラウルの怒声に、クリスティーヌは息を呑んだ。大きな瞳いっぱいに涙をため、
彼女は啜り泣きを始めた。彼が慌てて甘い声を出す。
「あぁクリスティーヌ、怒鳴ったりしてごめんよ」
「ラウル……怖いわ…あの人がいるのよ……どこにいても、傍にいるの……」
ぐずぐずと泣き出したクリスティーヌの髪を撫でながらも、
ラウルは激情に身を焦がしていた。彼の宝物たるこの美しい少女を
こんなにまで苦しめる男に、殺したいほどの憎悪を感じる。
「大丈夫だ、クリスティーヌ。僕が、君を守り抜くよ」
ラウルの言葉に、ようやく安心したのかクリスティーヌが頷いた。
彼は彼女をそっとベッドに横たえさせた。
「おやすみ、僕の可愛いロッテ」
378before the masquerade:2006/07/05(水) 16:59:00 ID:CDuys12E

クリスティーヌの寝室を出て自室に引き上げたラウルは、安楽椅子に腰掛けた。
膝に肘をつき、髪をぐしゃりと握る。
「―――あぁ!」
苛立ちに、ラウルは低く呻いた。
狂乱するクリスティーヌに、自分は何を感じた?
あの時、取り乱したクリスティーヌにラウルは怯んだ。
彼女の狂気に、突き放したいような気分になった。
何があっても愛すと、守り抜くと誓ったとのに!
彼女と再会したときの喜び、彼女の美しい微笑、自分を呼ぶ甘い声、細い肩、唇。
それらを、ラウルは必死で思い浮かべた。
「クリスティーヌ……」
愛しても愛しても、クリスティーヌの頭の中には常に他の男でいっぱいなのだ。
それは父親であり、彼女の『音楽の天使』であり、彼女を憎む怪人である。
自分のことをどれ位考えていてくれるのか、などと思うと辛くて身を切る思いだ。
「………」
379before the masquerade:2006/07/05(水) 17:01:03 ID:CDuys12E
そこで、ラウルはふと思い立った。

なら、その諸悪の根源を絶ったら?
彼女に付きまとう悪魔を追い払ったら?
彼女を悪夢から目覚めさせたら?

そうすれば、彼女は余計なことに気を取られなくて済む。
ラウルの、ラウルだけの可愛いクリスティーヌでいられる。
ラウルは薄く微笑んだ。立ち上がると、棚から拳銃を入れてある箱を取り出し、
中に納まった黒光りするそれを眺めた。ずしりと持ち重りする銃を手に取り、
静かに目を閉じる。

あの『ハンニバル』の初日の晩、楽屋を訪ねたラウルに親愛の情を示した
クリスティーヌ。頬をばら色に上気させ、彼女は彼女の秘密、
『音楽の天使』の事を教えてくれた。その夢見るような口ぶり、仕草。
しかし、その直後に『音楽の天使』は彼女の妄想ではないことが発覚した。
彼も、確かに天使の声を聞いた。甘く高潔で、すばらしくよく響き渡る、
掛け値なしの美声だった。聞いていると、まるでモルヒネでも服用したような
気分にすらなってくる、人々の思考をとろかせる歌声。
あの歌声に、クリスティーヌは捕らえられている。
しかし、その天使は彼女を殺そうと目論んだ悪魔なのだ。

ラウルは、それから随分と長い間拳銃を見つめていた。
彼は、自分自身も怪人の“狂気”に蝕まれ始めているのに、
まったく気付いていなかった。
380before the masquerade:2006/07/05(水) 17:04:56 ID:CDuys12E
軽く響いたノックの音に、ラウルははっとした。慌てて拳銃を箱にしまい、
何気ない風を装って扉を開ける。
立っていたのは、屋敷の中で一番若い小間使いだった。
クリスティーヌと年が近かったので、世話を申し付けた娘だ。
「夜分に申し訳ございません」
「いや、構わないが……どうした?」
赤毛の娘は困ったような顔をしていた。それから、そろそろと上目遣いに
ラウルを見やる。
「クリスティーヌ様が、うなされております」
それはいつものことだろう、と言いたかったが、ラウルは黙っていた。
クリスティーヌは眠りにつくたびに悪夢に囚われるのだ。
「そうか。それで?」
「うわごとで、旦那様をお呼びです」
娘の言葉に、ラウルは言葉を失った。それは初めてのことだった。
クリスティーヌのうわごとは、大体『音楽の天使』に対する恨み言や
懇願だと言うのに。
「そうか……」
「傍についていてあげてくださいませんか?」
ラウルは焦って窓の外を見た。ずいぶん長いこと考え込んでいたようで、
すっかり闇夜だ。そんな時間に未婚の女性の部屋を訪ねるのは、
あまり品行方正とは言いがたいことだ。
「旦那様………」
娘は泣きそうな顔をしている。ラウルが連れてきた歌姫が、本当にラウルの
恋人であると信じているのだ。他の使用人たちは、みんなクリスティーヌの事を
主人が囲うことにした歌手だと思っている。“坊ちゃまの気まぐれ”に目に留まり、
金を援助する代わりに、体を差し出す娘だと。
「わかった」
ラウルは頷き、すぐにクリスティーヌの元に行くことを約束した。
娘はほっとしたように笑い、一礼をして出て行った。
381before the masquerade:2006/07/05(水) 17:08:08 ID:CDuys12E

―――クリスティーヌ……クリスティーヌ……―――
 
頭の中で、声が響き渡る。甘く、高潔で美しい声。
自分の魂に直接響き渡るような声。夢の中にでも響いてくる、その調べ。
あの声はこの体全てを包み込み、そして決して離してはくれない。 
醜い素顔を仮面で隠した男。自分より随分と年上だった。
父親と同じくらいだろうか?あの悲しみに満ちた瞳は、きっといろいろな
経験を積んで出来上がったのだろう。だけれども、彼の瞳には憧れが宿っていた。
そしてその瞳は純粋でまっすぐで、天使に相応しい色をしていた。

あの時、クリスティーヌは男を哀れんだ。『音楽の天使』の正体たる男を、
確かに憐れんだ。彼は優しかった。どんなにひどい仕打ちをした
クリスティーヌに対してでも。
だから、あのシャンデリアが落ちてきたときにはひどく絶望した。
心を通じ合わせていたと思ったのは、自分の思い過ごしだったのだろうか、と。
自分は、結局は天使の願う理想ではなかったのかもしれない。
憎悪の対象でしかなかったのかもしれない。

「あぁ……ごめんなさい……助けて……ラウル…ラウル」 
口をついて出たのは、暖かい陽だまりのような眼差しをした恋人の名前だった。
助けて欲しかった。この悪夢から。
382before the masquerade:2006/07/05(水) 17:10:46 ID:CDuys12E
「クリスティーヌ」
不意に暖かいものを感じ、クリスティーヌは瞼を薄く開いた。
手が、自分のものより一回り大きな手のひらに包まれている。
「……ラウル……」
首をめぐらせれば、そこには恋人の顔があった。心配そうな表情で、
彼はクリスティーヌの顔をそっと覗き込んでいた。
「大丈夫かい、クリスティーヌ」
ラウルは優しくクリスティーヌの額にかかった髪を払った。
その仕草に、安堵する。
「ラウル……」
「うなされていたよ?またあの夢かい?」
夢うつつのクリスティーヌは、自分の寝室にラウルがいることに、
さして疑問を抱かなかった。ただぼんやりとして、恋人の端正な顔を見つめた。
「ラウル……」
「ん?」
クリスティーヌはふらふらと起き上がると、ラウルの胸に飛び込んでいった。
体がひどく冷えていたので、暖めて欲しかったのだ。
「クリスティーヌ?」
飛び込んできた恋人の体を抱きとめながら、ラウルがささやいた。
クリスティーヌは何も言わず、彼の広い背中に腕を回した。
彼の体は温かかった。優しかった。
「あぁ……ラウル……」
383before the masquerade:2006/07/05(水) 17:13:07 ID:CDuys12E
うっとりと、クリスティーヌは呟いた。彼はこんなにも暖かい。
『音楽の天使』が与えてはくれない安息を、彼なら体の隅々にまで
染み渡らせてくれる。

だけど、どうして。

暖まっていく体とは裏腹に、心のどこか奥深くはしんと冷えていた。
だからだろうか、クリスティーヌは余計にラウルの体にすがりついた。
「クリスティーヌ……」
熱っぽい目をしたラウルは、クリスティーヌの頤を掴み、引き寄せた。唇が重なる。
「クリスティーヌ」

 ――-―――クリスティーヌ――――――

耳の奥でした声に、クリスティーヌは体をこわばらせた。
ラウルははっとして唇を離す。
「大丈夫だ、怖くないよ」
甘ったるくささやかれ、クリスティーヌは小さく頷いた。
彼女は努めて『音楽の天使』の事を忘れ去り、今目の前にいる恋人にだけ集中した。
384before the masquerade:2006/07/05(水) 17:14:42 ID:CDuys12E
「あっ……ぁあっ!」
 なんと美しい声だろう。ラウルは今更ながらに感嘆した。澄み切ってやわらかく、それでいて甘美で妖艶な声が、クリスティーヌの体から絶えず響き渡る。
 柔らかな乳房を弄べば、彼女は切なげに体をくねらせた。すり合わせる太腿の間からは、かすかな水音が立ち上り始めている。
 彼女の目を覗き込むと、快楽にぼうとけぶっていた。赤い唇はしどけなく開かれ、ちらちらと桃色の舌が覗いていた。
「クリスティーヌ……」
「ラウル……」
 囁きかけると、彼女も潤んだ声で答えた。その甘さに、うなじの毛がちりちりと逆立ったのを感じる。
 クリスティーヌに覆いかぶさり、すべらかな下腹部に愛撫を与えながら、ラウルは混乱していた。彼女は男を知っている?いや、そんなわけないと自分に言い聞かせながらも、ラウルは困り果てていた。
 しかし、彼女はかつて、あの怪人の元に一晩捕えられていたのだ。あの男が狂人であろうとも、この美しい娘に執着しているのは火を見るよりも明らかである。そんな彼女と夜を明かして、間違いを起こさないはずがあろうか?
385before the masquerade:2006/07/05(水) 17:16:26 ID:CDuys12E
「あっ……ぁあっ!」
なんと美しい声だろう。ラウルは今更ながらに感嘆した。澄み切っていて柔らかく、
それでいて甘美で妖艶な声が、クリスティーヌの体から絶えず響き渡る。
柔らかな乳房を弄べば、彼女は切なげに体をくねらせた。
すり合わせる太腿の間からは、かすかな水音が立ち上り始めている。
彼女の目を覗き込むと、快楽にぼうとけぶっていた。赤い唇はしどけなく開かれ、
ちらちらと桃色の舌が覗いている。
「クリスティーヌ……」
「ラウル……」
囁きかけると、彼女も潤んだ声で答えた。その甘さに、うなじの毛がちりちりと
逆立ったのを感じる。
クリスティーヌに覆いかぶさり、すべらかな下腹部に愛撫を与えながら、
ラウルは混乱していた。
彼女は男を知っている?いや、そんなわけないと自分に言い聞かせながらも、
ラウルは困り果てていた。

彼女はかつて、あの怪人の元に一晩捕えられていたのだ。
あの男が狂人であろうとも、この美しい娘に執着しているのは火を見るよりも
明らかである。そんな彼女と夜を明かして、間違いを起こさないはずがあろうか?
「あぁっ……あん……やっ…」
386before the masquerade:2006/07/05(水) 17:22:23 ID:CDuys12E
柔らかな肢体に手のひらを這わせ、指で触り、唇を押し付ける。
クリスティーヌはそのいちいちに過敏に反応した。だんだんと熱くなる
彼女の体とは反対に、ラウルの心は冷めていった。でも、どうして?

彼女が純潔ではないから?―――いや、そんなはずはない。そう思いながらも、
ラウルは奇妙な焦燥を覚えていた。
クリスティーヌは歌手だ。彼女たちを貶めるつもりはとてもないが、
オペラ座の娘たちは男に体を差し出すこともある。
現に、ラウルも高級娼婦と呼ばれる、“元”コーラスガールやコールド達と
褥を共にしたことがある。

(違う―――)

ラウルは嫉妬しているのだ。まっさらだったクリスティーヌの体を蹂躙した、
美しい彼女の肢体を堪能する権利を持った、あの狂人に。
「クリスティーヌ」
低い囁きに、クリスティーヌはうっとりとした表情を見せた。
ラウルはかすかに目を眇めると、彼女のほっそりとした足を掴んだ。
そのまま力任せに開く。
「――――っ!!」
クリスティーヌの顔が、恐怖に引きつった。全身が強張り、小刻みに震え出す。
「ラウル……何をするの……ラウル……」
「黙って」
ラウルは囁き、彼女の唇を塞いだ。嫌がるクリスティーヌの動きを封じ込め、
体を割りいれる。彼女の瞳が凍りついた。
387before the masquerade:2006/07/05(水) 17:24:21 ID:CDuys12E
「――――あああああああっ!」
それは、まさに闇を劈くような悲鳴だった。硬質な叫び声に、
ラウルは思わず体の動きを止めた。
クリスティーヌは、顔中をぐしゃぐしゃにして泣き喚いている。
「クリスティーヌ……?君、過去に……」
「初めてだわ……」
恥ずかしそうに、そして悲しそうにクリスティーヌは告白した。
ラウルが顔色を失う。彼女の反応からして、まさか生娘ではあるまいと
たかをくくっていたのに。
しかし、それはまた思いがけない贈り物を貰ったような嬉しさも伴う衝撃だった。
彼女を“女”にしたのは、あの男でなく自分―――…あの朝に傷ついた自尊心が、
急に生き返ったような心地だった。
「ラウル、どうしてこんな事をしたの……」
クリスティーヌの問いには、どこか縋る様な響きがあった。
ラウルは二、三度首を振ってどうにか落ち着きを取り戻すと、柔らかく微笑んだ。
「君を、愛しているからだよ」
不安げだったクリスティーヌの顔が、みるみるうちに安堵に緩んだ。
ラウルは彼女を抱きしめると、慈しむ様な、壊れ物に触れるようなやり方で
口付けをした。

388before the masquerade:2006/07/05(水) 17:26:24 ID:CDuys12E
高らかな声を上げ、歌姫は歓喜に体を震わせ、そして崩れ落ちた。
時を同じくして、彼女の上にいた青年もうめき声を上げ、全身の力を抜いた。
暫くの間、二人は呆然としていた。目が合っても、何を語るでもなく
ぼんやりと見つめ合うだけだった。
「クリスティーヌ」
先に口を開いたのは、ラウルのほうだった。クリスティーヌは出血した足の間が
気になりはじめたのか、体を縮めている。
「何かしら?」
不思議そうなクリスティーヌの手を取り、ラウルはそこに口付けた。
絵本の王子様のような仕草に、彼女は頬を染める。
「ラウル……?」
あまりにも長いことそうされていたので、さすがにクリスティーヌが
怪訝そうな声を出した。ラウルは優しい微笑を浮かべると、
上半身を起こしてぐしゃぐしゃになったまま脱ぎ捨てられていた
シャツを拾い上げた。大きな手が、さぐるように動く。
ラウルは何かを見つけたのか、嬉しそうな表情になった。
それからクリスティーヌの体を起こしてやり、そっと左手を包み込む。
なにか異質なものの感触を感知し、彼女は体をすくめた。
389before the masquerade:2006/07/05(水) 17:29:24 ID:CDuys12E

「これ………」
見ると、クリスティーヌの細い指には素晴らしく豪奢な宝石のついた
美しい指輪が填まっていた。
「どうか、僕に君を守らせて欲しい」
クリスティーヌの目をまっすぐに見つめがなら、ラウルが言った。
彼女は驚いたように指輪を見、それから戸惑ったように目を伏せた。
「僕の、妻になって欲しいんだ」
真摯な瞳、まっすぐな言葉。彼は、“音楽の天使”とはまた違って高潔だ。
誠実で、自分に陽だまりのような安らぎを与えてくれる。

大好きなパパの思い出を分かち合ってくれる人。
はじめて、恋したひと。
光の世界に、導いてくれるひと。夜が怖くないと囁いてくれて、
昼間の明るい喜びを教えてくれるひと。

クリスティーヌは、意を決したように目を開いた。
不思議と、“音楽の天使”の事は思い出されなかった。
「わたしの愛しい人、もちろんです。わたしは、あなたの妻になります」
ラウルはその言葉にみるみる相好を崩し、彼女をぎゅっと抱いた。
そしてそのまま、二人は抱き合ったまま眠りについた。

彼女に久しぶりに訪れた眠りは、彼と同じく優しくて穏やかだった。
390before the masquerade:2006/07/05(水) 17:31:38 ID:CDuys12E

数日の後、いつものようにラウルと向かい合って食事を取っていた
クリスティーヌは、ふとこんな事を口にした。
「わたし、そろそろオペラ座に戻ろうと思うの」
ぶどう酒を口にしていたラウルはゴブレットを置き、それから小さく微笑んだ。
「ここが、気に入らないのかい?」
「いいえ、そうじゃないのよ」
傷ついたようなラウルの言葉を、クリスティーヌは穏やかに否定した。
「もうそろそろ、レッスンを再開しようと思って」
その一言に、ラウルの瞳が凍りついた。しかし、彼の婚約者はにこりと笑む。
「大丈夫、『音楽の天使』とのレッスンじゃないわ」
そういって、クリスティーヌは首をかしげた。その姿勢のまま、口を開く。
「もう行かなくちゃ。あなただって、解るでしょう?歌手がこんなにも
レッスンを怠るなんて、ありえない事だわ」
クリスティーヌは少しばかり早口に言った。ラウルは困惑しきった顔をしている。
「ねえ、構わないでしょう?」
クリスティーヌがかわいらしく訊ねた。ラウルは微苦笑をもらし、とうとう頷いた。
「わかった。すぐに、マダム・ジリーに連絡を取ろう」
クリスティーヌは嬉しそうににっこりと笑った。
それから、上目遣いにラウルを見つめる。
「あとね、もう一つお願いがあるの」
「何だい、クリスティーヌ?」
クリスティーヌは、今度はためらいがちに口を開いた。細い指で
長い髪をいじりながら、おずおずと言う。
「二人の婚約は、内緒にしていて欲しいの」
その言葉には、さすがのラウルも凍りついた。クリスティーヌは俯いたまま、
言葉を続けた。
「この事件が終わるまで―――彼が、オペラ座からいなくなるまでは」
お願い、とクリスティーヌがラウルに懇願した。彼女はうっすらと涙ぐんでいる。
彼は自分の可愛いロッテが悲しんだり、苦しんだりすることには耐えられず、
にこりと笑いかけた。
「解った―――奴がいなくなるまで、内緒にしよう?心配しないでいいよ、ロッテ」
ラウルの優しさに、クリスティーヌはまた涙ぐんだ。
それから、大きな瞳にたまった涙を指先でぬぐい、微笑んだ。
「ありがとう………でもね、何があろうとわたしの心はあなたのものだわ、ラウル」
391before the masquerade:2006/07/05(水) 17:35:48 ID:CDuys12E
その翌々日、オペラ座の寄宿舎に入っていくクリスティーヌを見つめながら、
ラウルは小さくため息をついた。
シャンデリアの修復は順調で、完全な復活までは半年の予定だと言う。
そして、それが出来上がった暁には、お祝いに仮面舞踏会を開催する予定だと、
アンドレとフィルマンが教えてくれた。
クリスティーヌをはじめとする演者達はレッスンを続け、舞台に備えるらしい。

「でもね、わたしは必ずあなたに会いにあの家に行くわ。
それに、あなたもここに来てくださるでしょう?」
オペラ座に帰る道中、馬車に乗ったクリスティーヌはそう囁いてラウルにキスした。
つい数週間前までは無垢で愛くるしいだけだった少女が、
今では立派な“女”になっている。
マダム・ジリーあたりに小言を言われるなぁと苦笑しながらも、
彼はしなだれかかって来た彼女の髪を撫でた。
「もちろんだよ、可愛いロッテ。僕らは何せ―――」
「―――秘密の、婚約者たちですものね」
クリスティーヌはくすくす笑い、ラウルも悪戯っぽく瞳を輝かせると
彼女に口付けた。
392before the masquerade:2006/07/05(水) 17:45:43 ID:bwSgmReE

クリスティーヌがオペラ座に帰ってきてから数ヶ月がたった。
今の所、大きな事件もなく、“怪人”も現れてはいない。
翌月には、オペラ座は完全な復活を遂げるという。ラウルによればその祝いとして、
大掛かりな仮面舞踏会が開かれるらしい。
クリスティーヌは彼と一緒に参加する予定で、今からそれを楽しみにしていた。
その後に上演される新演目では、カルロッタが再び主役を演じ、
彼女は端役を割り振られていて沈んでいたので、余計に嬉しかった。

レッスンが終わり、夜も更けた寄宿舎の廊下を、青い外套を着込んだ
クリスティーヌは足早に歩いていた。外にはラウルが馬車を用意して、
待っていてくれるはずだ。今日は一緒に彼の家で夕食をとる予定になっている。
「クリスティーヌ・ダーエ」
ふいに硬質な声が響いて、クリスティーヌは足を止めた。
振り返ると、闇の中からマダム・ジリーがすいと抜け出してくるところだった。
「こんばんは、マダム・ジリー」
クリスティーヌはとりあえず挨拶し、微笑みかけた。
マダム・ジリーはまるで彫刻のように無表情のまま、首を傾げる。
「こんな時間に、どこへいくのですか?」
「シャニュイ子爵様に呼ばれております」
少しばかりはにかみながら、クリスティーヌは淀みなく答えた。
途端にラウルの顔、声、それから暖かさを思い出して幸福な気分になる。
393before the masquerade:2006/07/05(水) 17:49:18 ID:bwSgmReE
クリスティーヌ・ダーエがオペラ座のパトロンであるシャニュイ子爵の
愛人である事は、もはや公然の秘密だった。
すなわち、彼女はオペラ座の寄宿生でありながらも、少しばかりの我侭は
目を瞑ってもらえる立場なのだ。支配人のアンドレとフィルマンは
しきりに彼女におべっかを使い、周りの対応も悪くない。
何せ、シャニュイ子爵は呆れてしまうくらいに、このコーラスガールに
首っ丈なのだから。
クリスティーヌは別にそのことに驕るような事はなかったが、
やはり今まででは考えられなかったことを幾つかやってのけた。
その一つが夜間の外出である。
「だめです。お戻りなさい」
マダム・ジリーが冷たく言い放った。クリスティーヌの細い眉がきゅっと顰められる。
「ですがマダム・ジリー、子爵様がお待ちなので行かないと……」
「お戻りなさい」
にべもなく言い返され、クリスティーヌは面食らった。
彼女の外出を咎めるものなど、もはやここにはいないと思っていたのに。
「お願いです、マダム……」
尚も食い下がろうとするクリスティーヌに、マダム・ジリーは冷ややかな
一瞥をくれた。音もなく彼女の傍らにつくと、すっと顔を寄せる。
「いいかげんになさい、クリスティーヌ・ダーエ。
あのお方が、何も知らないとでも?」
その言葉に、クリスティーヌは目を見開いて立ちすくんだ。
青くなった彼女を、マダム・ジリーはちらりと眺めてから踵を返した。
クリスティーヌは、呆然としたまま固まっていた。
かたかたと、細い肩が微かに震えている。
「いや……」
394before the masquerade:2006/07/05(水) 17:51:42 ID:bwSgmReE
呟いたクリスティーヌの顔色は、紙よりも白かった。
左手にはまった指輪が、いやに重く感じられる。
「クリスティーヌ?」
いきなり声をかけられ、クリスティーヌは飛び上がらんばかりに驚いた。
振り向くと、大きな目を丸くしたメグ・ジリーと件のラウルが立っていた。
「メグ……それに、ラウル?」
「どうしたの?ひどい顔色」
心配そうなメグの言葉に、クリスティーヌは無理やりに微笑んだ。
なんでもないというように、首を振ってみせる。
「こんばんは、子爵様。メグ、一体どうしたの?」
訊ねられ、メグははっとしたように顔を上げた。彼女はにっこりとすると
ラウルを振り返った。
「入り口で子爵様に案内を頼まれたの―――すごいわ、自らお出ましになるなんて!」
前半は説明するように、後半は興奮したような口ぶりでメグが答えた。
彼女の自慢のブロンドには、見慣れない髪飾りが光っていた。
それはくず石ではあるが本物の宝石をあしらった高級品で、
若手のコールドのメグには不相応の品だ。
おそらく、ラウルが寄宿舎の中に入れてもらう代わりに与えたのだろう。
395before the masquerade:2006/07/05(水) 17:53:59 ID:bwSgmReE
「ラウル…いえ、子爵様。お待ちいただければ、すぐに参りましたのに……」
寄宿舎は支配人たちを除けば基本的に男子禁制だ。しかも、こんな夜中では
ここに住まう女たち以外は門を潜ることすらままならない。
「いやに遅かったからね、心配だったんだ」
ラウルは暖かく微笑みかけながら言った。メグがぐるりと目玉をまわしてみせる。
クリスティーヌも笑い返すと、彼のほうに歩み寄った。
「メグ、どうもありがとう。ラウル、早く行きましょう」
「おやすみなさい、マドモワゼル・ジリー。よい夢を」
「おやすみなさい、子爵様、クリスティーヌ」
ラウルはクリスティーヌの肩を抱くと、にこやかにメグに向けて挨拶した。
メグも魅力たっぷりに彼に答え、クリスティーヌには悪戯っぽく目配せをした。
396before the masquerade:2006/07/05(水) 17:58:14 ID:bwSgmReE
「あーあ」
緩やかなテンポで歩いていく二人の背中を見ながら、メグはため息をついた。
おそらく、今晩中に親友が帰ってくることはないだろう。
「いいなぁ、クリスティーヌ」
髪飾りを触りながら、メグは一人ごちた。
親友が時々ではあるが薬指に填める指輪には、この髪飾りの何倍もの、
いや比べ物にならない程に素晴らしい宝石がついている。
オペラ座の娘たちの中には、芽が出ずに結局は高級娼婦と化すものも多い。
踊り子や歌手には、どうしてもお金が必要で、そのためにも強力な
パトロンが必要なのだ。その点、シャニュイ子爵は家柄も資産も申し分ない。
おまけに若くて誠実な美男子だ。舞台に立つ殆どの女たちがクリスティーヌを羨んだ。

――――――……ス…ティーヌ………

本当に微かな、消えてしまいそうな程に小さな声が聞こえ、メグは顔を上げた。
辺りを見回しても、誰もいない。窓を覗いても、シャニュイ子爵の馬車は
もう遠くを走っているところだった。

――――クリスティーヌ……!

今度は地を這うような低い声が響き、メグは震え上がった。
彼女はこの声を知っていた。舞台に何度も現れては不幸を起こす、あの怪人の声。
「―――!!」
驚きに目を見張るメグは、廊下に掛けられた姿見の前で失神しそうに
なってしまった。鏡の中には、白い仮面がぼうと浮いていたのだから。

「きゃあああああああああ!!」
397before the masquerade:2006/07/05(水) 18:02:24 ID:bwSgmReE

「きゃあああああああああ!!」
悲鳴を上げながら、クリスティーヌは飛び起きた。一拍遅れて、
彼女の豊かな巻き毛が降ってきた。ぜいぜいと肩で息をしながら、
彼女は辺りを見回す。傍らでは、ラウルが安らかな寝息を立てている所だ。
「あぁ―――……」
クリスティーヌは顔を覆い、俯いた。最近では、もうずっとこんな悪夢は
見ていなかった。でも、なぜまた―――!

夢の中で、彼女は『音楽の天使』に出会った。天使は悲しげな目をしていた。
思わず駆け寄ると、天使はその瞳を見開き、彼女を睨みつけた。
正しくは、彼女の指輪を。彼は静かにクリスティーヌの首に手を掛けた。
きりきりと締め上げる。なぜ、と彼の唇が囁いた。
怯えたクリスティーヌはメチャクチャに手を振り回す。
その拍子に、彼の白い仮面がはらりとはがれ、見るも無残な、
あのおぞましい顔が現れる。そこで、目が覚めた。
398before the masquerade:2006/07/05(水) 18:04:00 ID:bwSgmReE
クリスティーヌは慌てて薬指に填まった指輪を外そうとした。
しかし、指輪の填まった左手は、ラウルにしっかりと絡め取られていて動かない。

自分は、天使に何をした?
あの優しかった天使を裏切り、崇高な音楽に背き、低俗な肉欲におぼれて!

視線を感じて、クリスティーヌは窓を振り返った。明るく光る月を背に、
男が立っている。逆光で顔は良く見えないが、黒いマントと黒いフェルト帽には
見覚えがあった。そしてその顔を彩る白い仮面にも。
「いや……」
細い囁きにも、ラウルは目覚めない。死んだように眠っている。
そのことにクリスティーヌは絶望した。
彼が好きだ。彼を愛している。でも、自分の魂はいつだって『音楽の天使』の
芸術に寄り添っているのだ。体をいくら重ねようとも、彼の魂と自分の魂が
交わる事は決してない。

窓の外では、男の口元が笑みを浮かべるように釣りあがった。
白い仮面に大きな手のひらがかぶさる。
そしてその手はゆっくりと仮面を掴み―――はがした。
闇夜を切り裂くような声で、クリスティーヌは絶叫した。
399before the masquerade:2006/07/05(水) 18:06:30 ID:bwSgmReE

一ヵ月後のある晩、オペラ座は華やいでいた。シャンデリアの修復が終わったのだ。
支配人たちはその事を知らせるために、上客や俳優たちを集めて
仮面舞踏会を開催した。その騒ぎのためだろうか、オペラ座の中は夜だと
言うのに眩しい位に輝いている。
「まぁ……」
青いドレスに三日月を模した髪飾りをつけたクリスティーヌは、
新しくなったオペラ座のシャンデリアに感嘆の声をあげた。
シャンデリアは、以前のものよりも美しく、豪奢なものへとなっている。
「気に入ったかい?」
濃紺の軍服に身を包んだラウルが、目を丸くしているクリスティーヌに囁いた。
彼女はぱっと微笑むと、大きく頷く。
「素敵!素晴らしいわ!」
無邪気にはしゃぐクリスティーヌに、ラウルは頬を緩めた。
静かにかがみこんで、唇を合わせる。
驚いたように目を見開いたクリスティーヌに、ラウルは悪戯っぽく目配せした。
彼は彼女の腕を取ると、ダンスフロアへとエスコートする。
「行こう、僕の可愛いロッテ」
恋人の甘い言葉に、クリスティーヌは目を細めた。
しかし、首筋に不意に感じる指輪の重みに、顔を曇らせてしまう。
400before the masquerade:2006/07/05(水) 18:08:35 ID:bwSgmReE
「ロッテ?」
「………二人の事は、誰にも内緒にしていてね」
公の場に二人で出席するのは、これが初めてのことだ。
これで、クリスティーヌ・ダーエはシャニュイ子爵の愛人であることが、
周知の事実になる。ラウルはそのことに釈然としない様子だったが、
クリスティーヌとしては好都合だった。
周りに、婚約者だと漏れることのほうが恐ろしい。
「わかったよ、クリスティーヌ。でも、どうしてなんだい?」
「……聞かないで。まだだめなの」
「ロッテ、でも」
「お願いだから………」
恋人の表情が強張っていることに気付いて、ラウルはそれ以上の詮索をやめた。
クリスティーヌは静かに微笑むと、彼の傍をすいと離れてしまった。
人ごみに阻まれ、クリスティーヌはラウルから離れていく。
彼は必死になって青いドレスを追った。しかし、手を伸ばしても
彼女は遠ざかっていく。
あと少し、と言うところで彼女の長い黒髪はラウルの手から零れ落ちた。
その瞬間、会場が水を打ったように静まった。
階段の上では、“招かれざる客”が皮肉っぽく唇をゆがめているところだった。
401before the masquerade:2006/07/05(水) 18:11:34 ID:bwSgmReE
赤い、どこか不吉な印象を与える衣装を、女―――というには少し欠けるくらいの
少女だが―――は食い入るように見つめていた。
衣装をまとった男は、髑髏を模した仮面を身につけている。
みじろぎもしない女の青いドレスの胸だけが、規則正しく揺れる。
何故、と髑髏の仮面の下の唇が紡いだようだった。
しかし、青ざめ、ひたすらに驚愕しているだけの女はそれに気付かない様子だった。
彼女の胸元には、誇らしげに輝く、美しい指輪が吊るされていた。
大ぶりな輝石のはまったそれに、男の口元がゆがんだ。
一瞬たりとも目を離さない二人を、少し離れた位置から、
一人の青年が見つめていた。
その瞳は憎悪と怯えの入り混じった不思議な色をしていた。
彼は、おそらく男が少しでも動けば襲い掛かるくらいの覚悟はあったのだろう。
踏みしめた足に力が入っていた。
男は相も変わらず口元をゆがめていた。かすかに、その唇が震えている。
女は、やはり呆然としていた。青年の眉間に刻まれたしわが、また深くなった。
はじめに動いたのは男だった。重みを感じさせない足取りで、すいと女に近寄る。
女は全身を強張らせた。青年も駆け寄ろうとしたが、傍にいた黒衣の女に
遮られてしまう。いつもは冷静な黒衣の女の顔が、恐怖に青ざめていた。
402before the masquerade:2006/07/05(水) 18:13:50 ID:bwSgmReE
「お前の鎖はまだ私に繋がれている!お前は私のものだ!」
地を這うような低音が響いた。ビィィィン、と音の残滓が反響する。
その声は恐ろしく、高潔で甘美だった。誰もが、みじろぐ一つする事すら
できずに固まっていた。
男は眉間にきつく皺を刻むと、女の胸に輝く指輪に手を伸ばした。
彼はその大きな手で指輪を包み込むと、力任せにそれをひっぱった。
ブチリ、という音と共に細いチェーンが切れ、指輪が女の胸元から消えた。
女は、まばたき一つ分の時間の後に、何が起きたのかを悟った。
慌てて男に手を伸ばす。しかし、男がふっと体をゆすったと同時に
白い煙が立ちこめ、彼女が白煙に目を背けたその一瞬のうちに、
男は消えてしまった。彼女の宝物たる、あの美しい指輪と共に。
彼女は、ただ呆然として男の立っていた場所を眺めていた。
 

――――マスカレード、仮面が溢れかえる
――――マスカレード、その中で顔を隠そう。誰にも見つからないように……

403名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 18:19:30 ID:bwSgmReE
以上です。384は失敗です。倉庫掲載の折には、お手数ですが
削除お願いいたします。

ファントム全然出さなくてごめんなさい。ラウル好きなんです。
舞台ファントムは映画ファントムより幽霊みたいです。おじさんだし。
ラウルも、もうちょっとアホですけど、クリスとのバカップルっぷりは好き。
もしよろしければ、汐留、あるいはBWかWEまで足をお運びください。
舞台のファントムもいいものですよ。印象が違うし。

長文乱文失礼致しました。
404名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 21:16:06 ID:CDkUpeBp
すごいなあ…あの空白の時期が見事に繋がった。
自分は四季しか観たことないんだが、
舞台の「オペラ座の幽霊」として生きている怪人…
神秘性というか、それが見事に表現されていると思った。
ほとんどSSにはファントム出てきてないのに、いやまじですごい!
405名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 21:21:38 ID:CDkUpeBp
連投失礼
391までの天使様とお揃いでIDにCDが出た♪
そして昨日、天使様は一字とばしでSExが出てましたおめでとうございます
406名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 00:03:03 ID:ZfpTYh+6
天使様、そのあとにはBW(ブロードウェイ)出してるね。強運だなぁ
407名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 00:13:14 ID:BW3fAAkq
すごい、としか言いようがありません。
最近で一番読みごたえがあって好きです。

自分はファンクリよりもラウクリの方が好きかもだ。
そして映画よりも舞台が好きです。
408名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 17:45:56 ID:a5DewuXF
>>403天使GJ!!!!
ラウクリなんだけどファントムの存在感がすごい。
この「逃れられない」感がたまんないね。
ゴシックホラーちっくで非常に楽しゅうございました。
是非また投下を。
409名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 19:08:43 ID:B5j4+HQS
>403
GJ!
じわじわと追いつめられていくような感じが良いよね。
舞台のファントムの雰囲気が良く出てて素敵でした。
次作も書いて欲すぃ。
410名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 01:27:11 ID:nQGg3H4r
ファントム×クリス、エロ極薄
2年位前(映画の)、地下にて調教中。
おさわりだけです。
4111/4:2006/07/09(日) 01:27:51 ID:nQGg3H4r
クリスティーヌは揺らめくろうそくの中で、俯いて腰掛けていた。
まだどこか幼さを残す頬は少し青ざめ
揃えてテーブルの上に置かれた手の甲は、赤く腫れている。
クリスティーヌが犯したのは未完成の衣装が気になってのミスだったが、
それを理由に罰を許すつもりは、彼女の師にはない。
振り下ろされる指揮棒は繊細な手を傷つけないよう細心の注意が払われていたが、
それと痛みはまた別の問題だった。
からりという音に、クリスティーヌは瞳を上げる。
テーブルの上に転がる指揮棒が目に映ると同時に、師の声が響いた。
「痛かったか?」
「…いいえ…」
聞こえるか聞こえないかの声で呟き、かぶりを振る。
その頭にファントムはそっと掌を乗せた。
「辛いならそう言って構わない」
滑らかな低い声から、彼女を断罪していた厳しい響きは消え
気遣うような温かみが混じっている。
「痛かったかね、私の天使?」
「…は、い…」
ぎゅっと瞑った目から涙がぽろぽろと零れる。
「どうした、クリスティーヌ。まるで小さな子供に戻ったようだぞ」
「痛、かったの…痛かった…」
あやすように髪を梳きながら、ファントムは華奢な身体を自らの膝に抱えあげた。
手を髪から、小さくしゃくりあげる背中に移し、ゆっくりと撫でる。
「痛い思いをしたくなければ、二度と今日のようなことはせぬことだ」
「はい…はい、天使さま」
「いい子だ。まだ痛むか?」
「はい…少し、だけ」
「そうか」
4122/4:2006/07/09(日) 01:28:37 ID:nQGg3H4r
再びクリスティーヌの腰を抱き上げ、後ろ向きに膝に乗せる。
掌が腰から脇までを撫で上げた。
「痛みを忘れられるようにしてやろう」
「あ…」
師の動きに驚く間もなく、その両手はブラウスの上から
柔らかい乳房を揉みしだきはじめた。
「ふ、ぅ…っ!」
未熟な果実の奥にある、まだ硬い果芯をぐいと握り込まれ
クリスティーヌは痛みに身を捩じらせた。
乾きかけていた目尻が、再び汀を取り戻す。
「ああ、痛むか、すまない」
囁きながら一旦手を離し、先端を指でそっとなでる。
そこがいつの間にか硬く尖っていることを確認すると、ファントムは満足そうに息を吐いた。
柔らかな果実を摘み取るようにそっと摘む。
「あ!」
息を呑むような声。
滑らかな布地ごと挟みながら指の腹で転がす。
「くぅ…ん!」
クリスティーヌは魚のように大きく身をくねらせた。
しかしそれは先程のように苦痛から出ないことを、彼女の師は十分に承知してる。
「頃合か」
捏ね、押し潰し、引っ掻いて何度も切なげなため息を吐かせから
ファントムはますますその存在を露にする蕾から手を離した。
4133/4:2006/07/09(日) 01:29:23 ID:nQGg3H4r
「天使、さま?」
振り返ろうとした頭を軽く押し止め、荒く息をする下腹を掌で押さえる。
その熱が身体に沁みるにつれ、細い身体はじわじわと緊張を解いてゆく。
閉じていた膝が緩んだとき、ファントムの右手がその奥に伸ばされた。
クリスティーヌははっとして腿を捩り合わせるが、
一瞬早く差し入れられた手を挟むことにしかならなかった。
「いや、天使さま、いやぁ…あっ!」
硬いスカートの生地の上から、ファントムはもうひとつの蕾のありかを
正確に探り当てた。
そのまま乳首に与えていたのと同じ刺激をクリスティーヌの身体の中心に与える。
「…ぃ…っ!」
細い背が再びこわばる。
指先で円を描くように、擦りあげるように、押し込むように
幾重かに重なった布の上から愛撫する。
ずきずきと重い痺れが、すぐその下の閉じた合わせ目から
腰の内部、さっきは痛んだ乳房の内部を打つように広がる。
「あぁん、あん、あ、あ」
固く結ばれていた唇は緩み、
緩急をつけながら刺激される指の動きに合わせ
甘さの混じった荒い息がもれる。
4144/4:2006/07/09(日) 01:30:04 ID:nQGg3H4r
細い指は最初は止める目的で師の腕に触れていたが、
今では自らの身体を支えるように、指先を食い込ませている。
唇は完全に開き、唾液にぬれた赤い舌が灯火を反射し艶かしく輝く。
ファントムの動きに合わせてぎしぎしと音を立てていた椅子の軋みは、
やがて一定のリズムを刻み始めた。
「ん、あは…ふ」
瞳を閉じ、切なげに眉を寄せながら
クリスティーヌも無意識のうちに同じリズムで自らの腰を指先に押し付け始めていた。
「クリスティーヌ、どうした?
「あ、やあ、うぅん…」
ぎゅっと眉を寄せ、かすかに首を振るが動くのを止めない。
岩壁に写る二人の影の動きが早まってゆく。

「ぅん!んんっ!」
ファントムの腰に重なったクリスティーヌの腰がぶると震えた。
指先がスカートの厚い布地の奥に厚く湿った気配を感じたとたん
ぎゅっと強く腿が掌を締め付ける。
そのまま膝をがくがくと震わせ、背をしならせた後
クリスティーヌはくずおれた。
「…逝ったか」
やはり荒げた息の隙間でつぶやいて手を離すと
そのままクリスティーヌの身体はファントムの膝の間に滑り落ちていった。
「まだこれからだ、クリスティーヌ」
半ば意識を失った焦点の合わぬ瞳。唇の端から唾液が光る跡を顎に残す。
小さな頭を膝の上に乗せ、汗で張り付いた髪を梳いてやりながらファントムは呟いた。
「これからゆっくりと教えてやる。お前が私無しではいられない身体になるまで、ゆっくりと」
震えるまつげの端から、涙が一筋こめかみへと伝い落ちた。
415名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 01:35:16 ID:r0BnotOK
           キ
            タ
             ァ
              ァ
              ァ
               ァ
               ァ
               ァ
              ァ
             ァ
             ァ
              ァ
              ァ
          ヽ\  //
              _, ,_ 。
           ゚  (゚∀゚)っ ゚
             (っノ
               `J
416      :2006/07/09(日) 02:01:52 ID:rWlEhGwT
 
    -ーー ,,_    
   r'"      `ヽ,__       
   \       ∩/ ̄ ̄ ヽつ
  ノ ̄\ /"ヽ/ "   ノ   ヽi     ありがとうございます!
 |  \_)\ .\    >  < |\  
 \ ~ )     \ .\_  ( _●_)\_つ  
    ̄       \_つ-ー''''

 
417416  :2006/07/09(日) 02:03:04 ID:rWlEhGwT
 
    -ーー ,,_    
   r'"      `ヽ,__       
   \       ∩/ ̄ ̄ ヽつ
  ノ ̄\ /"ヽ/ "   ノ   ヽi     申し訳ございません!
 |  \_)\ .\    >  < |\  
 \ ~ )     \ .\_  ( _●_)\_つ  
    ̄       \_つ-ー''''
ageてしまいました…
418名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 02:07:26 ID:r8WqfhaE
つ、続きってあるんですか?調教ちょっと鬼畜入りマスターハァハァ
優しい言葉をかけながら追い詰める、ドキドキしました
419名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 02:20:50 ID:kVxfOVS5
>414
GJ!
本番ないのにこのエロさ!

ゆっくり教えていく過程も読みたいです。
420名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 22:23:46 ID:eAPNjZYb
ファンクリ調教キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
俺様マスターに(;´Д`)ハァハァ
クリスの涙一筋にも│Д`;)コソーリハァハァ
410天使さま、ありがとうございました。
421名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 00:59:11 ID:kZY01Heg
(゚д゚≡゚Д゚)ダレモイナイ…?
422名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 01:09:15 ID:LhusjyOJ
そうそうこのスレって投下から2日ぐらい経つと恐ろしい程静かになるよねww
423名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 14:41:57 ID:UgDV7nl2
とりあえず毎回同じAA張るヤシが欝陶しいのだが。
424名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 01:57:34 ID:zPzYP8YF
確か原作のマスターって皮膚が壊疽してるんだよね。
クリスとエロいことしたら大変なことになりそうだ。
425名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 11:06:43 ID:5lRBCV0k
>>424
「マスターったら、またベッドの上に膿こぼしてらっしゃるぅ(膿皮性)
んもう、お洗濯大変なんですからね?」
「ははは、すまん」
------------------------------
「…クリスティーヌ、お前の指が私の肩の皮膚を突き破っているのだが」(潰瘍性)
「あ…っ、だって、マスターがあんまり激しくなさるからっ…」

自分で言っておく。妄想乙。
426名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 14:05:34 ID:tFL8ukI9
>>425
光明皇后を思い出した。
427名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 15:03:31 ID:3iVfwZcj
>>425
全然動じないクリスwスゴスw
「ははは、すまん」じゃないだろwww
428名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 16:24:23 ID:zNVyhM8U
今、学校の廊下でこれを見たわけだが


通りすがりの見知らぬ人の視線が痛いよママン…orz

笑いすぎで腹筋痛くなりました。
こんな日常風景は嫌過ぎるw
429名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 22:15:52 ID:AHwLRqtF
>425 GJ!
430名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 22:44:51 ID:BWrlcg+9
ラウル×クリスです。
ファンクリ派が圧倒的多数とは思うのですが。書いてみますた。
ラウルがクリスを救出した後のお話です。
4311/6:2006/07/13(木) 22:45:45 ID:BWrlcg+9
「眠れないのかい……? ロッテ」
嘆息とともに寝返りを打ったクリスティーヌに、ラウルは囁き掛けた。
月明かりと窓枠が作る格子模様が、彼女の体の線に沿って歪んでいる。セピア色の長い髪が、
シーツの上にしっとりと広がっている。

ベッドに入ってから、一体何時間が過ぎたのだろう。
心身に刻まれた深い疲労を取り去ろうと、強く瞼を閉じる。けれど、眠ろうとすればするほど、
今夜の呪わしい出来事が脳裏をよぎり、より一層目が冴えてしまうばかりだった。
この世の光がすべて飲み込まれてしまうような、暗く冷たいあの地下からクリスティーヌを
救い出し、馬車を駆ってこの邸内に戻ってきた。
震えて涙をこぼしてばかりいるクリスティーヌを宥め、抱きしめ、静かにベッドに寝かしつけた。
横になったまま、こちらに背を向けてじっと窓の外を見つめている彼女を見つめながら、自分
自身も落ち着きを取り戻そうと努めた。目の前で恋人を連れ去られる屈辱、生まれて初めて
感じた死の恐怖――今まで自分は幸福と自惚れ以外に何も知らなかったのだ。

悪夢のような一夜だった……もうあの怪人は追ってくるまい。

「クリスティーヌ……?」
掛け布の下で小さく上下する細い肩を見つめながら、それ以上声を掛けてよいものかと逡巡
していると、クリスティーヌが身を捩って向き直った。
瞳が光る。
ラウルをじっと見つめる。
何か言いかけたように唇をちょっと動かし、そして僅かに首を横に振った。
432名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 22:46:08 ID:gvS7lwfD
>248
学校…?

…大学のことだと思いたいが、もしも厨なら即刻去れ。
ここは21歳以上がくる板だ。
4332/6:2006/07/13(木) 22:46:19 ID:BWrlcg+9
ラウルは、まるで初めて危険なものに触れる子供のように、恐る恐る手を彼女の方に伸ばした。
指が頬に触れる。
真冬の陶器のように冷たい。
「僕も同じだ……眠れない」
と、クリスティーヌの手がラウルの手に重なり、大きく息を吸ったかと思うと、ぽろぽろと涙を
こぼし始めた。
ラウルの腕がクリスティーヌを抱きしめる。ラウルの胸の中で、彼女は声を上げて泣き出した。
「……ごめんなさい……ごめんなさい」
「クリスティーヌ?」
「全部私が悪いの……あなたを巻き込むつもりはなかったのに……」
ラウルはクリスティーヌの顔を上げさせると、上体を起こし、強い口調で言った。
「僕は君を守りたかった。あの暗闇から君を救い出したかったんだ、それだけだよ。君が謝る
ことなんか何にもない」
その言葉をすべて否定するように首を振り、再び泣き出したクリスティーヌに、ラウルは
優しくキスをした。
「大丈夫、もう怖いことなんかないよ。恐怖は過ぎ去ったんだ……僕がそばにいるよ……
ずっと、君のそばに」

曇りのない青い瞳。そこから注がれる真摯な愛が、クリスティーヌの心に広がってゆく。
何度も繰り返されるキス。いつしかクリスティーヌの眼からは涙が引いていた。
ふたりはお互いの唇を割って、舌を差し込み、激しく吸い立てあう。
――何かを忘れようとするかのように。誰かから逃れようとするかのように。
4343/6:2006/07/13(木) 22:47:44 ID:BWrlcg+9
「クリスティーヌ……」
息を荒くしたラウルは、ごくりと喉を鳴らして唾液を飲み込んだあと、耐え兼ねたように
クリスティーヌの肩を掴んだ。
クリスティーヌの潤んだ瞳がラウルを見つめ返す。
「愛しているよ……」
そう耳元で囁き、ラウルは白いシュミーズドレスの胸元に手を差し入れた。
柔らかい脂肪の感触がラウルの手を捉える。中指の腹に、硬い突起を感じる。
そのまま、ゆっくりと揉みしだいた。
クリスティーヌの息遣いが激しさを増す。瞼は閉じられ、眉間が僅かに険しくなっている。
「あ……はぁっ」
濡れた唇から溜息が漏れ、ラウルの髪を揺らした。

ラウルの手が彼女の乳房を優しく掴み、緩め、その先端を弄ぶ。
「んん……っ」
初めて感じる痺れにも似た甘い感覚に、クリスティーヌは思わず身を反らした。
ラウルの瞳に愛欲の色が走る。
片手でクリスティーヌの肩を露わにし、細い腕をドレスから素早く抜き取った。
「あぁ……ラウル」
息を乱れさせながら、瞳に動揺を浮かべたクリスティーヌを安心させるように、ラウルは
微笑んだ。
深緋に色づいた乳首に口づける。そっと、慈しむように。
クリスティーヌが大きく息をついたのを聞くと、その先端を舌先で撫でた。
ねっとりと舐め上げ、前歯で擦る。唇で噛み、優しく吸う。
その度にクリスティーヌの喘ぎ声は、どんどん妖しさを増すのだった。
4354/6:2006/07/13(木) 22:49:06 ID:BWrlcg+9
奔放な兄に連れられて、歓楽の巷で官能に耽ったことは何度もあった。
しかし、これほどまでに心臓が高鳴り、心から目の前の白くすべらかな肌を欲し、熱い
興起を身の内に感じたことがあっただろうか。
小さく夢見がちな少女であったロッテが、多数の紳士淑女の前で堂々と、美しい歌声を
披露した時、ラウルは一瞬で恋に落ちたのだ。自分がよく知るかつての少女の姿をクリス
ティーヌの中に認めた時、その身を自分のものにしたいと強く欲したのだ。
その思いは、簡単には叶わなかった――それどころか、彼が今まで知ることのなかった、
クリスティーヌを愛さなければおそらく生涯体験することのなかった苦しみを伴って、
運命はラウルに襲い掛かってきた。

この戦いの勝者は自分だ――そう思うと、ラウルの中に眠っていた胴欲がその身を奮い
立たせ、愛欲の沼に引きずり込む。

ドレスの紐を解き、するすると足首に向かって下ろしてゆく。クリスティーヌは下唇を
噛み、顔を逸らしている。優しく頬にキスすると、汗で湿ったドレスを床に落とした。
ラウルはブラウスを脱ぎ捨て、下半身を露わにした。抑えられない欲望が噴出しそうに
なる。掛け布をずらすと、クリスティーヌの白い体が月明かりに浮かび上がっていた。
乳房を両手で揉みしだきながら、唇を脇腹に這わせる。舌で柔肌を舐める。
「ひぃ……っ」
薄く開かれたクリスティーヌの口から、泣き出しそうな喘ぎ声がこぼれる。
手を腰に移動させ、骨盤のあたりをそっと掴むと、ラウルはクリスティーヌを見つめながら
起き上がった。唇を噛むようにねっとりとしたキスをすると、片膝をクリスティーヌの
太腿の間に入れ、脚を開かせた。
4365/6:2006/07/13(木) 22:49:38 ID:BWrlcg+9
ラウルの身体が、クリスティーヌに覆い被さる。程よく筋肉のついた胸が、クリスティーヌ
のそこに重なると、激しい鼓動が肌を通して伝わってきた。
「大丈夫……力を抜いて」
潤んだ瞳から注がれる、縋るような視線がいとおしい。

ラウルの細く長い指が、クリスティーヌのそこに伸びてゆく。
中指の先が、中心部に触れる。湿った感触が伝わってきた。
そのままゆっくりと花弁をなぞり上げると、くちゅっという淫猥な音が響いた。
「濡れているね、クリスティーヌ……嬉しいよ」
「あ……いや……ぁっ」
中指を奥へ進める。ぬるりと簡単に入っていってしまう。
以前、年嵩の娼婦に教えられたように、中指を回しながら抜き差してやる。クリスティーヌの
唇はきつく噛まれ、ぎゅっと目を瞑って、まるで恐ろしい仕置きに耐えているかのようだ。
何度かそれを続けるうちに「ああっ!」という溜息とともに、クリスティーヌの唇が開かれ、
頭が仰け反った。たまらずラウルはその唇に自分の唇を重ねた。
舌を侵入させ、絡ませながら、ひとさし指も奥へと差し込む。少しきつい感じがしたが、
たっぷりと蜜を垂らしたそこは、無理なく二本の指を咥え込んでしまった。
抜き差しを激しくする。クリスティーヌは、瞳を僅かに開いて身体を反らし、よがっている。
「あぁ……かわいいよ、クリスティーヌ……」

蜜にまみれた二本の指をそこから抜き、上に向かって撫で上げた。
ぬめりを花芽の隠れ家に擦り付け、指を割り入れた。
「はぁっ、いやあっ……」
その刺激は、クリスティーヌを驚愕させた。初めて味わう感覚だった。
ラウルの指は、始めはゆっくりと、次第に激しく、彼女の花芽を愛撫してゆく。蜜は量を増し、
ラウルの指をとろとろと塗らす。
4376/6(1):2006/07/13(木) 22:52:13 ID:BWrlcg+9
しっかりと瞑られた眼にキスを落とし「クリスティーヌ?」と囁くと、彼女から溜息が
漏れ、涙の滲んだ瞳を少しずつ開き始めた。
ラウルはゆっくりと侵入を再開した。奥へ入ってゆくたびに、クリスティーヌの眉間が
険しくなる。しかし、ラウルは自分を止めることができなかった。
温かいぬめりに任せて、最後まで挿入した。
「はぁッ……いやぁッ……」
クリスティーヌの声に、痛みだけでなく快楽の響きが混じっていることを感じ取ると、
ラウルは徐々に腰を使い始めた。ふたりが交わる音が静かな部屋にこだましている。

ラウルの背中に浮かび上がる美しい筋肉が蠢く。クリスティーヌの手がその逞しい腕を
掴んだ。
ふと上腕に鋭い痛みを感じ、腰の動きを止めてしまう。刃で付けられた傷口にクリス
ティーヌの指が触れたのだった。
痛みと快感の混じった初めての感覚に翻弄されているクリスティーヌはそれに気づかず、
夢中でラウルの腕に縋っている。自分の隆起が愛しい彼女の膣内にあることを思い、
ラウルは痛みを忘れて激しく腰を使った。

「ああ……もっとゆっくり……お願い」
クリスティーヌが苦しそうに懇願するのに、ラウルは険しい表情でしか返すことができない。
欲望が噴出しようとしている。もう限界だ。
「クリス……ティーヌ、もう……っ」
彼女の最も深い部分に差し入れ、ラウルは官能の極みに達した。
4386/6(2):2006/07/13(木) 22:52:58 ID:BWrlcg+9
クリスティーヌに胸を合わせ、怒涛が過ぎゆくのを待つ。
これが絶頂というのなら、自分は今まで本当のそれを知らなかったのかもしれない……
そう思えるほど、ラウルは今まで経験したことのない激しい波に身を任せていた。
しばらく経ってから身体を起こすと、クリスティーヌの瞳から涙が溢れているのが見えた。
「痛かったんだね……許して、クリスティーヌ」
クリスティーヌはベッドに起き直ると、軽く微笑みながらラウルの頬にキスをした。

ふたりの温度が残るベッドのうえで、クリスティーヌとラウルはしっかりと抱きしめ合った。
お互いに愛し合っているのに、どこか深い部分で繋がり合えないようなしこりがあった気が
していたが、それがついに消え去ったようだった。それを確認するように、ふたりは
熱く深いキスを続けた。

ふと、クリスティーヌの目に、白いシーツに点々とこぼれた緋色が写った。
はっとしてラウルから身を離すと、ラウルが彼女の視線を追って振り返った。
自分の左腕から、血が滴っているのが見える。
「ラウル、ラウル……! 傷が!」
クリスティーヌは慌ててシーツをラウルの腕にあてがい、そのまま俯いてしまった。
「大丈夫だよ、クリスティーヌ。この程度の……」
そう言いかけたまま、ラウルも口を噤んでしまう。ふたりは沈黙することしかできない。
言葉にするには、その傷が彷彿とさせるものはあまりにも重く、深刻で、生々しかった。

ラウルは諦めたような、けれど限りなく優しい視線をクリスティーヌに向け、彼女の身体を
そっと倒した。そして右腕に彼女の頭を乗せ、額に口づけた。
ふたりは同時に目を閉じたが、安らかな眠りはまだ訪れてくれそうにないのだった。

〈続く〉
439名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 22:56:09 ID:BWrlcg+9
> 431です。
ナンバリングを間違えて、6/6がふたつもできちまいました。_| ̄|○
440名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 23:20:09 ID:zNVyhM8U
天使さまGJ!
ラウクリ派なんで眼福でございます。
続き待ってます!

>432
浪人経験ありの大学三年です。
進路と目先の試験に悩むお年頃ですorz
441名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 23:52:25 ID:OJd0dtBo
リアルタイムだったのに
何度も読み返してたらこの時間。
431天使様、GJGJGJ…!!
ラウル、優しいけど我慢できないの( *´д`) ハァハァ
続き待ってますor2゛
442名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 00:05:29 ID:VcJDHGBQ
ぎゃあああせdrftgyふじこlp天使様割り込みすみません!!
でもGJ!ラウクリ切ないよラウクリ。傷見て絶句する二人が何ともいえん。

>440 いやごめん俺が悪かったよ…そろそろ夏だから過敏になってしまった…
吊ってくるお('A`)
443名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 02:19:38 ID:KvGLQF75
>>431天使様GJ!!
ファントムの影がつきまとうラウクリ大好きだ。
続きが禿しく待ち遠しい。wktkして待ってます。

>>442
ドンマイだ。
444名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 20:45:22 ID:IXYlxjZx
>>439投下乙
間違ってたらすまんが、もしかして before the masquerade の作者?
445名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 21:18:51 ID:Ok0k05JB
431そして439です。
> 444
んん〜違いますよぅ。
> 442
なんもなんも。
みなさん読んでくださってありがとう。続き書きます。
446中年ファントム:2006/07/14(金) 22:41:59 ID:/9xL0wSz
「中年ファントム」最終話です。
クリスが亡くなって4年後の話です。
エロも萌えもありませんが、最後という事で、
投下させていただきます。orz
全部で11レス分です。
447ワシントン・ハイツ――雪 1888年 1/11:2006/07/14(金) 22:45:08 ID:/9xL0wSz

寝室の扉を執事がノックすると、「あぁ」とも「うぅ」ともつかない唸るような声が、
部屋の奥から聞こえてきた。
「旦那さま、お目覚めの時刻を過ぎておりますが……」
「……今日は……休む………」
「……承知いたしました。では、秘書へそのように伝えておきます」
当主の掠れた低い声に、執事は落ち着いて応対する。居間の暖炉を確認してから、静かに
階下へ降りていった。

次に執事が居間を訪れると、主である男は部屋着を羽織り、暖炉前の安楽椅子に深く身を
沈めていた。燃えさかる炎をぼんやりと見つめている。よく眠れなかったのか、仮面で
覆われていない左眼の下には、うっすらと翳がさしていた。
「お目覚めでしたか。そろそろ昼になりますが、お食事はいかがなさいますか?」
執事の問いかけに、男は無言で首を振った。
「……では、午後のお茶の時にでも、軽食をお持ちいたします」

執事は傍らの小卓にお茶を置くと、事務的に言い添えた。
「秘書へは、旦那さまはしばらく仕事をお休みになると、伝えておきました」
「ん……、あ、……いや、いい………」
男は機械的に頷いてから、言葉の意味を初めて理解したように、何かを言いかけたが、
そのまま黙りこんだ。
「では、また参りますが、ご用がおありでしたら、お呼びつけください」
「……ん………」
暖炉に薪を何本か足すと、執事は一礼して部屋を退出した。その間も、男は黙ったままで、
瞬きひとつしなかった。
448ワシントン・ハイツ――雪 1888年 2/11:2006/07/14(金) 22:46:41 ID:/9xL0wSz

早めのお茶に軽食を添えて、執事がふたたび居間を訪れると、男は窓際に立ち、ガラス戸
越しに灰色の空を見上げていた。
中央のテーブルには、本がページを開いたまま無造作に置かれている。長椅子の肘掛けに
重ねられたクッションのひとつが、床に転がっていた。
「……今夜は、雪になりそうだな………」
「はい、もう二月になりますから。積もることはなさそうですが……」
振り返ることもなく呟くように言った男へ答えながら、執事はテーブルを整理してお茶と
軽食を並べ、クッションを拾い上げると長椅子を整えた。続いて小卓の茶碗を片付ける。
茶碗は空になっていた。

男は長椅子にどさりと身体を預け、気だるげな声で執事に問いかけた。
「そのお茶は……」
「香草を淹れたものですが、お口に合いましたでしょうか?」
「そうか……、香草茶か。これもだな………」
男は緩慢な動作で、注がれたお茶をひと口飲んだ。
「はい、気分を安らげ、活力を増す効果があるのだとか。私は詳しくございませんが、
娘が、持参したものを勧めてくれまして……」

「娘……?」
男は惚けたように聞きなおす。
「先日にお許しを頂いておりました娘と孫娘が、昨日こちらに参りました。すぐに申し
上げるつもりでございましたが、昨夜は旦那さまがひどくお疲れの様子でしたので……」
「……そう言えば、そうだったか。ご主人が亡くなって、西から引き揚げてくると言って
いたな………」
「仕事と住まいが決まりしだい、そちらに移らせます。……旦那さまのご気分が優れない
時に、申し訳ございません」

男は自嘲めいた笑みをかすかに浮かべた。
「気にすることはない。……別に、病気でもないからな」
「ご挨拶に伺いたいと、娘が申しておりますが……」
「いや、いい……」
そっけない口調で答えてから、男は言葉少なにつけ加えた。
「急いで出ていく必要はない。空いている部屋を使うといい。外出する時には馬車も。
こちらへは近づかないように………」
「かしこまりました。お気遣い、ありがとうございます」
執事の礼にも、男は心ここにあらずといった風情で、黙ってお茶を啜っていた。
449ワシントン・ハイツ――雪 1888年 3/11:2006/07/14(金) 22:49:58 ID:/9xL0wSz

夜――。
寝床の中で輾転反側していた男は、諦めたように身を起こした。息をするのも辛いような
胸苦しさがあった。頭も重くぼんやりとして、何を考えることもできなかった。
男は枕元の灯りをつけると、寝しなに飲んでそのままになっていたグラスにコニャックを
注ぎ足し、ひと息にあおった。

数日前から、男はこんな状態になっていた。夜はなかなか寝つかれず、日中も身体が
だるく、何をするにも疲れを感じた。気力というものがまるで湧かず、会話すら億劫
だった。午前中は特にひどかった。
それでもなんとか堪えてきたが、仕事に一区切りがつくと、何をする気も失せていた。

男は重い足取りで窓辺へ向かい、厚いカーテンをわずかに引いた。
夜半に降りだした雪が、真っ暗な空から落ちてくる。窓を細く開けた。途端に冷気が入り
こんできたが、気にする風でもなく、しばらくの間、男は見るともなしに降る雪を眺めて
いた。


翌日、雪はやんでいた。窓越しに薄日が射し、葉を落とした木々の梢からは、溶けた雪の
雫がきらめきながら滴っている。
昼少し前に執事が居間を訪れると、男は昨日と同じく暖炉前の安楽椅子に座り、深く背を
凭せかけていた。
「お早うございます。食事とお茶をお持ちしました」
「……そちらへ行く」
男は短く答えると、長椅子に身を移し、注がれた香草茶を口に運んだ。
「やはり、積もりませんでしたね。数日のうちには、また降るかも知れませんが」

唐突に、男が執事へ問いかけた。
「昨日のことだが……、なぜ、私がしばらく休むと分かった……?」
「旦那さまは、ここ数年この時期になりますと、調子を崩されておいででしたので……」
「…………?」
男は訝しげに執事を見上げた。
「ご自分では気づいておられませんでしたか? どこがお悪いというのではありませんが、
ひどく塞がれて、お疲れも甚だしく、毎年この時期になると、ひと月足らずほど仕事を
休んで、邸に閉じこもっておられます。今では、部下の方たちも、それを心得ているよう
ですが……」
「そう……だったかな………」
「はあ、三、四年ほど前から……、最後にパリへおいでになった年からです。気鬱の病と
でも申しますか……。溜まったお疲れが、この時期に出るのかも知れません」
450ワシントン・ハイツ――雪 1888年 4/11:2006/07/14(金) 22:51:13 ID:/9xL0wSz

男は唇の端を歪めると、立ち上がって窓辺へと歩み寄った。手を後ろに組み、執事に背を
向けて外へ目をやる。
「そうか……、あの年からか。それで香草茶か……。私も、だらしないものだな………」
「差し出がましいことを致しまして、申し訳ございません」
「いや、いいんだ……」

高台に建つ邸の二階からは、森林が拡がっているのが見える。その先には、ハドソン河の
流れも眺められた。マンハッタン島の北端に近いワシントン・ハイツ北西部一帯は、男の
邸をはじめ富豪の邸宅もいくつかあったが、自然がいまだ豊かに残る田舎と言えた。
仕事への不便にも関わらず、男がここに移り住んでから、三年ほどが経っていた。

シャニュイ伯爵夫妻が――クリスティーヌが事故で亡くなったのは、四年前のまさに昨日
だった。パリにいる代理人以外は、誰もそれを知らない。
時に陥る心身の不調に、気づいていなかったわけではないが、それが、いつも同じこの
時期だとは、指摘されるまで男は意識していなかった。

パリからの帰途、彼女の死を、その後も続く人生を、男は受け入れたつもりでいた。半月
ほど前には、シャニュイ家の墓所に供える花の手配も、例年どおり滞りなく済ませていた。
だが、心の奥底と身体は、それを受け止めかねていたのか――。
男は深い息を吐いた。

「いつまで、続くのかな……」
「は?」
「……なんでもない………」
低い声の独り言を執事は耳ざとく聞き取ったが、男は話を変えた。
「……先ほど、外で子供の声がしたようだが、あれが君の孫娘か……?」
「申し訳ございません。雪が珍しいので、ついはしゃいでしまいまして……」
「いや、別にかまわない………」
執事は恐縮して詫びたが、男は気分を害したわけでもないようだった。
451ワシントン・ハイツ――雪 1888年 5/11:2006/07/14(金) 22:52:30 ID:/9xL0wSz

「なんだか、疲れたな………」
男はぽつりと呟いた。
弱音ともとれる言葉を執事が耳にしたのは、これが初めてだった。当惑を覚えたが、表に
出さぬよう努めた。
「ずっと働きづめでいらっしゃいましたから……。この機会に、しばらく休養なさるのも
宜しいのではないでしょうか」
「そうかな……」
男は振り返ると、捉えどころのない笑みを浮かべた。
「はい、のんびりなさって、……読書三昧も良し、絵など描かれるも良し、仕事とは関係
ない図面をお好きに引かれるも良し。なんでしたら、気分転換に釣行なども……。私も、
お伴させていただきます」

「そうだな………」
寂しげな笑顔が、ほんの一瞬浮かんで、消えた。
「君は私のところへ来てから、どれくらいになる……?」
「旦那さまにお仕えして、十三年になります」
「そうか……、お互いに年を取ったな。……私のような者に、よく仕えてきてくれた」
「とんでもないことでございます。私こそ、前の勤め先を失って途方に暮れておりました
ところを、旦那さまに拾っていただいて……。ご恩は忘れません」
「もしも……、仕事を辞めて、さらに奥へ移り住んだとしたら、君はどうする……?」
「は……? そのようなご計画が、おありなのですか?」
「……いや、ふと思いついただけだ。忘れてくれ………」

男は長椅子へ戻り、香草茶を口にした。
「このお茶……、気に入ったよ。娘さんへ礼を伝えてくれ」
「旦那さま、私はどこまでもお伴いたします」
「……分かった。何にしても、まだ先の話だ。忘れてくれていい」
執事の生真面目な口調に、男はうすく微笑んだ。
「娘さんの仕事というのは……」
「向こうでは教師をしておりましたので、そういった仕事を探すつもりのようです。明日
あたりから、かつての恩師や友人などに会ってみると申しておりました」
「そうか………」
男は気のない返事をした。娘のことに触れたのは、話を逸らせたかっただけのようだった。
男は、ぼんやりと焦点の定まらない眼差しを、窓の外へ向けていた。
452ワシントン・ハイツ――雪 1888年 6/11:2006/07/14(金) 22:53:47 ID:/9xL0wSz

日がな自室に閉じこもり、何をするでもなく時を過ごしていた男が、階下へ降りていった
のは、十日ほども経った頃のことだった。胸苦しさは和らぎ始め、どうしようもない
倦怠感は、ようやく薄れつつあった。
図書室の壁一面に設えられた書棚から、男は無作為に本を抜き出して、大机に積み上げた。
漫然と拾い読みをするうちに、ページを繰る手が止まる。また別の本を手にしては、同じ
ことを繰り返していた。

かすかな笛の音が、邸の奥から聞こえてきた。たどたどしい音色は、執事の孫娘が吹いて
いるのだろうか。だが素朴な調べには、どこかしら心和ませるものがあった。笛の作りの
せいか、微妙に調子の外れた音を耳が捉え、男は小さく微笑んだ。


その夜、食事を運んできた執事へ、男は何気ない様子で尋ねた。
「午後に笛を吹いていたのは、君の孫娘かね……?」
「お耳に入りましたか! 申し訳ございません。母親が出掛けていたので、退屈した
らしく……。きつく注意いたします」
「いいんだ、耳障りだったわけではない。ただ、ちょっと気になっただけだから……」
「は……?」
「いや……、あの笛は………」
「亡くなった父親が、作ってやったものだそうですが……」
「そうか……、いや、ほんの少し音程がずれているようだったから……」
男は曖昧な笑みを浮かべた。
「穴を少し直せば……、いや、要らぬことだったな。……初めて聞いたが、いい曲だった」
「そうでございましたか。私は不調法なものですから……」

執事は軽い驚きを感じていた。主人から音楽の話が出たのは、初めてだったのだ。しかも、
かなりの耳の持ち主らしい。
男がかつて音楽と関わり続けてきたことを、この執事は知らない。男は音楽を捨て去り、
ここでは音楽と無縁の生活を送ってきた――。
453ワシントン・ハイツ――雪 1888年 7/11:2006/07/14(金) 22:55:31 ID:/9xL0wSz

翌日の午後、ふと気が向いて、男は森へと出掛けた。ここ数日、降ったりやんだりして
いた雪が、うっすらと地面を覆っている。雪は今も降っていたが、久しぶりの外出を妨げる
ほどではなかった。
男はマントのフードを被ると、雪を踏みしめ、ゆっくりとした足取りで、森の中をハドソン
河へと向かった。少し離れた後ろを、二つの足音が追ってくるのには気づいていたが、
放っておいた。

小一時間ほど歩くと、森を抜けて川岸へ出た。この季節、天候で、人影はまったくない。
対岸の左手には、赤色の小さな灯台が霞んで見えた。薄曇りの空から落ちてくる雪が、
川面に吸いこまれるように消えていく。
男は岸辺に佇み、水面に降る雪を眺めつづけた。

マントの肩先が白くなってきた頃、小さなくしゃみの音が聞こえた。男は我に返ったように
身じろぎすると、苦笑いしながら後ろを振り向いた。
木立の陰で所在なげに立っていた女と幼い少女が、決まり悪そうにおずおずと姿を現した。
「私の後をつけるよう、執事に言われたか……」
「い、いえ、……はい、父が心配いたしまして……。こそこそと後を追ったりして申し訳
ございません」
理知的な目をした女が、頬を少し染めて正直に答えた。つぶらな眸のあどけない少女が、
母親の後ろから顔を覗かせている。フードのついた赤い防寒コートが愛らしい。
二人ともあらかじめ聞いていたのか、男の仮面を目にしても、怯える様子はなかった。

「……私は大丈夫だ。馬鹿げたことなど考えたりはしない………」
「はい……、本当にすみません」
恐縮したように、女は目を伏せた。
「いや……、こんな天気の中をご苦労だったな。……戻ろう、君の子供が風邪をひいては
いけない」
男と目が合うと、幼い少女ははにかむように笑った。


「……お孫さんは、風邪をひいたりしなかったかな?」
長椅子に寝そべっていた男が、何食わぬ顔で尋ねると、お茶を運んできた執事は、狼狽えた
ように食器の音を立てた。
「娘さんも、就職の当てがつきそうだとか……」
「も、申し訳ございません。差し出た真似をいたしまして……」
「いや……、気を遣わせたな………」
男は含み笑いをしながら、やおら起き上がると、執事が注いでくれた香草茶を口にした。
「……久しぶりに外へ出たが、気持ち良かった………」
「は……、それは宜しゅうございました。お疲れになりませんでしたか?」
「少しね……。肩が凝ったかな、いや、冗談だ……」
男は帰り道の途中から、少女を負ぶってやっていた。執事は冷や汗を拭いながらも、鬱々と
した状態から恢復しつつあるらしい、主人の様子に安堵した。
454ワシントン・ハイツ――雪 1888年 8/11:2006/07/14(金) 22:56:57 ID:/9xL0wSz

数日後、ふたたび散歩でもする気になった男が、門へ向かっていると、後ろから小さな
足音が小走りに近づいてきた。男はゆっくりと振り返る。
「また、森へ行くの?」
執事の孫娘だった。コートとお揃いの赤い毛糸で編んだ手袋を嵌め、木製の竪笛を握って
いる。
男が頷くと、少女は少しもじもじした後、思い切ったように言った。
「一緒に行っても、いい?」
「……お母さんは、なんと言った?」
「お母さん、出掛けてるの……」
「では、お祖父さんに聞いておいで。私はここで待っているから……」

少しすると、少女が跳ねるように勝手口から駆け出してきた。執事が持たせたのだろう、
小ぶりの水筒を肩からたすきがけに掛けている。戸口で見送る執事が、申し訳なさそうに
頭を下げた。
「お祖父ちゃんが、行ってもいいって!」
「そうか……、じゃあ、行こうか」
執事へ頷いてやってから、男は門扉のくぐり戸を開け、少女と二人で邸の外へ出た。


幼い少女の歩調に合わせて、白く雪に覆われた森の小径を辿る。
「私ね、雪って初めて見たの! きれいねぇ」
飛び跳ねたり雪を蹴散らしてみたり、少女は歩きながら息を弾ませてはしゃぐ。水筒に
繋がれた小さなカップが、カラカラと鳴った。
「足を滑らせると危ないぞ。……おっと」
言ったそばから、少女はつるりと滑って後ろへ倒れかかった。男の腕が素速く伸びて、
少女の手を掴む。

「……ほんとに滑っちゃった! 小父さん、ありがとう」
赤い頬をした少女は、物怖じしない様子で男を見上げ、にっこり笑った。それから慌てて
口を押さえた。
「いっけない! お祖父ちゃんから、小父さんに迷惑かけちゃいけないって、言われて
たんだった。……今のこと、内緒にしてくれる?」
「迷惑なんかじゃないさ……。でも分かった、内緒にする」
男が頷いてやると、少女の顔にぱあっと笑顔が拡がった。つられるように男も微笑む。
455ワシントン・ハイツ――雪 1888年 9/11:2006/07/14(金) 22:58:28 ID:/9xL0wSz

二人はそのまま手を繋いで歩いた。男に手を握られて安心したのか、少女は少しもじっと
していない。ぴょんぴょんと両足で跳んだり、片手で笛を持ち、ピッピッとでたらめな
音を出したりする。森への散歩が、楽しくてならないようだった。
「このコートね、お祖父ちゃんが買ってくれたの。手袋はお母さんが編んでくれたのよ」
「……よく似合っているよ。赤ずきんちゃんみたいだ」
「ほんと? あ、そしたら森から狼が出てきちゃうかも! でも、小父さんがいるから
大丈夫だよね」
「鉄砲は持っていないがね……」 

他愛ない話をするうちに、坂道を下って川岸へと出た。男は岩の上の雪を払い、少女を
抱き上げて座らせると、隣に腰を下ろした。少女が水筒の蓋を開けて、カップにお茶を
注ぐ。
「のどが乾いちゃった……。お祖父ちゃんがね、小父さんと飲みなさいって」
「君が先に飲みなさい……」
少女は飲み終わると、もう一度お茶を注いで男に渡してくれた。お茶は冷めかけていたが、ほのかな甘みがあった。少女のために、執事が砂糖を入れたのだろう。男はカップを手で
包み、喉を潤す香草茶を味わった。


「……この間吹いていた曲、聞かせてくれるかな……?」
「小父さん、聞こえてたの?」
「ああ……、いい曲だったね」
「うん!」
少女は手袋を外し、両手で竪笛を構えてゆっくりと吹き始めた。柔らかな音色が流れる。
男は川面へ目をやって、笛の音に耳を傾けた。音楽を聴くのは、何年ぶりだろうか。長調の
素朴な旋律は優しげで、胸に沁み入るような調べだった。

吹き終わり、男が少女の手を両手で包みこんで温めてやると、少女は嬉しそうに笑った。
「この曲ね、お父さんから教わったんだけど、まだあんまり上手く吹けないの」
「でも、とても良かったよ。ありがとう。……何という曲かな?」
「名前はないの。えっとね、前に住んでた所の歌で、賛美歌じゃあないけど……、天に
いる神様、私たちに色々なものを与えてくれてありがとう、みたいな歌なの。歌詞はよく
覚えてないけど……」
「…………」
456ワシントン・ハイツ――雪 1888年 10/11:2006/07/14(金) 22:59:56 ID:/9xL0wSz

「でもね……、この曲、好きだけど、教えてくれたお父さんは死んじゃったし、本当の
こと言うと、ありがとうって、あんまり思えないの。……こんなこと言ったら、神様に
怒られちゃうかな」
少女は少し寂しそうに言ってから、悪戯っぽく舌を出した。
「神様が何かくれるより、お父さんがいた方が良かったな……。でも、お母さんがいて、
お祖父ちゃんとも会えたし、それをありがとうって思わなくちゃ、いけないのかな……」
「…………」
沈黙する男を見上げて、少女は言葉を続けた。
「小父さんも、そう思う?」

「いや………」
男が言葉を濁すと、少女はさらに問いかけてきた。
「……小父さんは、神様を信じてないの?」
「……そうだな………」
男は少女から目を逸らし、低い声で答えた。
「じゃあ、……小父さんは、悪魔を崇拝しているの?」
「いや、悪魔も崇拝していない。黒ミサを挙げたりなんかしないよ……」
少女の無邪気な問いに、男は笑いを洩らした。
「よかった! ちょっと心配しちゃった。でも……、そしたら小父さんは、何を信じて
いるの? それとも、何も信じていないの……?」

「……私が、何かを信じているか……?」
男は言葉に詰まった。なんと答えてよいか分からなかった。そして、ほんの子供からの
問いに動揺する自分が、疎ましかった。低い声音が、昏い響きを帯びる。
「分からない………」
「何も……、誰も、信じてはいないの? それで寂しくない……?」
「…………」
男は答えなかった。答えられなかった。
457ワシントン・ハイツ――雪 1888年 11/11:2006/07/14(金) 23:01:29 ID:/9xL0wSz

少女はふたたび笛を吹き始めた。飾りけのない、だが、どこか郷愁を誘う調べが流れだす。
男は上体を投げ出すように倒すと、頭の下に手を組んで空を見上げた。白いものがちらつき
始めていた。
雪が顔にかかるのもかまわず、男はそのままの姿勢で、笛の音を聞いていた。

「さっき、君が私に訊いたことだが……」
仰向けに空を見上げたまま、男は重い口を開いた。うまく答えられるとは思えなかったが、
それでも、この少女に伝えておきたい気がした。
少女は吹くのをやめて、男を振り返った。
自分に言い聞かせるように、男は言葉を続けた。
「私は、神も悪魔も信じてはいない。……だが、誰も、何も信じていないわけじゃない。
幸せでいてほしいと願った……願う人たちがいて、そう願う自分の気持ちに……偽りは
ないつもりだ。その人たちも……私を案じてくれているのだろう……。このことを信じて
……信じたいと思っている。うまく言えないが………」

「うん……」
少女は小首をかしげ、男が話すのを黙って聞いていたが、頷くと、小さな笑みを向けた。
「今の曲、……もう一度、吹いてくれるかい……?」
「……うん!」

笛の音が流れる。男は目を閉じて、じっと耳を澄ませた。
小雪が男の仮面に、左頬に、そして瞼にも降りかかり、溶けて雫となる。それを拭うことも
せず、男は優しい調べに身を浸していた――。


<終わり>
458446:2006/07/14(金) 23:02:42 ID:/9xL0wSz
以上です。読んで下さった方、ありがとうございます。
また、これまで当シリーズを読んできて下さった方々、
本当にありがとうございました。
459名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 01:49:08 ID:xFrj8QO7
>>446
神も悪魔も信じていない〜のくだりが
長い彷徨の末の先生の行き着いたところとして
胸にすとんと落ちた。
沢山の悲しいけど優しい物語をありがとう!!
460名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 02:04:17 ID:ch4zQayG
ジェラルド・バトラー15のスレ落ちた…?
461名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 10:25:43 ID:exwHc+nv
>>446
GJ!!!
もう中年ファントムにも会えないのか…(つД`)
クリスを得られなかったこのシリーズは切ない。
でもファントムが優しい良い人たちに囲まれてて良かった。
素晴らしい作品をありがとうございました。
462名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 13:01:07 ID:aAyjBmsA
遂に終わっちゃうんだ…と思うと読むのが勿体無かった
けど、一気に読んじゃったよ。
この名作が終わるのは悲しいけど、今まで良いもの読ませて
くれてありがとう!
463名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 23:55:09 ID:4qGluBZ3
>446
GJ! GJ! GJ!
「誰も、何も信じていないわけじゃない」で涙……(つД`)
ファントムにとって、クリスティーヌの幸せ、フランソワーズの幸せは
心の底から願ったことなんだね。
晩年、フランソワーズや執事など、人との温かい交流があったことが嬉しい。
今までお疲れさまでした、本当にありがとう!
464名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 19:28:54 ID:7cAqW91s
ファントム×クリスです。
甘いです。最後ちょっとオチつけてみますた。
4651/6:2006/07/16(日) 19:29:38 ID:7cAqW91s
波のさざめきのような音を立てて、葡萄畑を風が渡ってゆく。遥か向こうの端からこちら
に側にかけて、葉の緑が色を変える。ようやく傾いてきたパリの太陽に照らされて、その
情景は絵のように美しく、ふたりの目に映った。

「もう“帽子”をとっても平気よ」

乗ってきた馬車が見えなくなってから、クリスティーヌは男に笑いかけた。爪先立って、
男の頭を覆っていた黒いケープを肩へ落とす。半面に白い仮面を付けた端正な顔が現れた。
張っていた糸が緩んだように、仮面からのぞくグリーンの瞳が微笑む。
男の背中へ腕を回し、クリスティーヌは自分の顔を、広くて暖かい胸にうずめた。
クリスティーヌの細い腰を抱き寄せ、広い葡萄畑を眺めると、仮面の男――ファントム
は大地の息吹を吸い込んだ。
「懐かしい感じがするわ……こんな所に来たのは久しぶり」
ファントムに体を寄せたまま、クリスティーヌが首を捩って陽に輝く葡萄畑を見やる。

まだ充分に明るいのに、ふたりの立つモンマルトルの外れには他に人影はない。パリ市街 
からそうは離れていないが、まだアパルトマンも店も多くは作られておらず、こうして見る
と、まるで遠くの田舎町まで来てしまったかのようだ。

前方に少し小高くなった草床の丘を見つけると、ファントムはクリスティーヌの手を取り、
緩やかな坂道を上っていった。
黒革のひやりとした感触がクリスティーヌの指先に触れる。小さな手でぎゅっと握り返す
と、その手袋はすぐに温かくなり、中にある彼の手の熱さを伝えてきた。
4662/6:2006/07/16(日) 19:30:15 ID:7cAqW91s
若草の匂いが漂う丘に、向かい合って腰を下ろす。
ファントムはケープの中から丸めた荒紙と木炭を取り出し、クリスティーヌに目で合図を
送った。
クリスティーヌははにかんだような笑みを唇に乗せ、頬をちょっと赤らめると、少しずつ
後ろへ下がっていった。
ファントムから3、4歩分くらい広がったところに、カシワの樹が影を作っている。その
木漏れ日の下に、陽の光から、また人目からその身を隠すように、クリスティーヌが腰を
落ち着けた。
風がカシワの樹の葉を揺らすたび、鉛白色のドレスに落ちる影が形を変える。彼女のまつげ
が濡れたようにきらきらと光っている。頬に微笑みを浮かべたまま、ファントムの瞳を見つ
める。

ファントムは自分の肩越しに、相変わらずほかの人の気配がないことを確かめると、ゆっくり
と視線をクリスティーヌへ向けた。クリスティーヌが息を吐いて、ファントムから目をそらす。
そして、葡萄畑の波音がひときわ高く駆けた瞬間、クリスティーヌの手が自分のドレスに
掛かった。
ファントムが眩しそうに目を細める。ドレスの上を走る手を促すように、顎を軽く上げてみせる。
上目遣いでその様子を見ながら、クリスティーヌは自身の手でドレスを徐々に緩めていった。
草の上に横座りになったまま、窮屈そうに腕を抜き取る。子どものようなその仕草と、艶めく
表情の対比がひどく淫らだ。

クリスティーヌの肩があらわになる。コルセットから零れ落ちそうな白い胸が、激しい鼓動
に震えている。
ふと彼女は、自分の左手首にはまったままの金の腕輪に目を落とした。
稽古の際に着けていたものを、外し忘れていたらしい。自分への会いたさに、余程慌てて
身支度を整えてきたのだろう。そう思うと、ファントムの胸の内に甘い感動が波紋のように
広がってゆく。
「外さなくていい……そのままで」
腕輪に掛かったクリスティーヌの右手を低い声で制し、ファントムは木炭を紙の上にサッと
走らせた。4回ほど木炭が往復したところで、彼の手が止まる。
視線をクリスティーヌの瞳から外さず、今度は顎を斜めに引く。唇の端には悪戯な笑みが
上っている。
4673/6:2006/07/16(日) 19:30:55 ID:7cAqW91s
クリスティーヌの白い喉元がごくりと音を立て、彼女は自分の息遣いに耐え切れず、唇を
少し開いた。腰周りで萎れているドレスの布地を掴んでいた両手が、背中に回る。
僅かに背を反らすようにして、コルセットのリボンを解いてゆく。ファントムの視線に
促されてか、恥じらいのためか、思いつめたような表情で素早く手を動かす。
片手が、自分の肩を抱くようにして止まった。

風が止んでいる。

水滴が伝うように、その手が胸元を下りてゆく。ぴく、と手の甲が痙攣した瞬間、コル
セットがはらりと下へ落ちた。
陽の光がみずみずしい肌に反射して輝いている。葉の影が彼女の首筋を、肩を、胸を、
ウエストを、下腹部を、しっとりと覆うように揺らめいている。
臍の下あたりで頼りなさげに布地を掴み、「あの……あんまり時間をかけないで……ね」
と言った。

その言葉には返事をせず、ファントムは右手の手袋だけを外して、再び木炭を走らせ始
めた。慈しむように弧を描いてゆく。時々手を止め、クリスティーヌを挑発するような
視線を送るが、またすぐに真剣な顔つきになって、木炭を持ち替えたり、左手で紙を擦っ
たりしている。
始めは恥ずかしそうに俯いていたクリスティーヌも、肌をくすぐるそよ風に慣れてきたの
か、ファントムの視線に微笑みで返すようになっていた。

日の傾きがふたりの影の形を変え、辺りの気温がほんの少し下がった頃、それまでじっと
ファントムの手元を見ていたクリスティーヌが、膝を前に進めた。
「動いてはだめだよ」
すかさずファントムが諌める。
クリスティーヌは口をちょっととがらせて、膝を元に戻した。
カシワの樹を仰いだり、金色の腕輪の角度を変えてみたり、落ち着きがなくなっている。
そのたびにファントムに言葉や視線で咎められ、クリスティーヌは子どものように足を
揺すって、不満そうな目線をファントムの手元に送った。
4684/6:2006/07/16(日) 19:31:34 ID:7cAqW91s
風がクリスティーヌの髪をなびかせ、彼女は首を振って顔にかかるそれを掃った。
ファントムは可笑しそうにその様子を眺めていたが、やがてすっと立ち上がって、クリス
ティーヌの方へ歩み寄った。クリスティーヌの瞳が彼を追う。
彼女の前まで移動すると、片膝を付き、肩や胸のあたりまで落ちかかった茶色の髪を、
背中の方へ掃ってやった。額から頬、首筋へと太い指が移動する。
手袋をしていない方の手が、クリスティーヌの耳を過ぎ、うなじへ伸びた時、彼女の手が
ファントムの手に掛かった。息が荒くなっている。

唇を少し開き、懇願するような目でファントムを見る。
自分の吐息で乾いてしまった唇を舌先で軽く濡らし、数回瞬きをした。
彼は片手をうなじに置いたまま、もう片方の手でクリスティーヌの指先をしっかりと握り、
彼女に唇を重ねた。
深く激しい口づけがクリスティーヌを翻弄する。熱い息が頬をかすめる。
「んん……ぅ」
湧き上がる官能に耐え切れず、クリスティーヌが喉の奥から甘い声を上げた。
その声を聞くと、ファントムは舌を差し入れたまま、指で彼女の背中をなぞった。
唇が離れ、クリスティーヌが「はあ……っ」と息を吐く。

ファントムはケープと上着を脱ぎ、クリスティーヌの背後に敷いた。
クリスティーヌは、それが何の合図であるかを知っているので、じりじりとケープの上に
腰を移動させる。
大きな手で背中を抱えられ、首筋にキスを受ける。下唇を吸い上げられ、顎の線を舌で
なぞられる。
熱い手が乳房を覆い、熟れ始めた先端を弄ぶ。
目の前がぼうっとして、陽の光を返す白い仮面が幻のように霞んで見えた。
4695/6:2006/07/16(日) 19:32:05 ID:7cAqW91s
片腕で彼女の体重を支えながら、ファントムはゆっくりとクリスティーヌの体を倒して
いった。右手はせわしない衣擦れの音をさせながら、ドレスのスカートを捲り上げている。
真っ白な太腿がドレスから探り出され、木漏れ日の下に晒された。
上半身をむき出しにされたまま、足首から脚の付け根に向かっていやらしく撫で上げられ、
クリスティーヌの全身を切ない官能と恥ずかしさが駆け抜けてゆく。

「ぃやあっ!」
ファントムの手が、下着の上からクリスティーヌのそこを揉んだ。
中指と薬指を奥に差し入れ、掌で円を描くように敏感な箇所をまさぐる。
「あ、あぁ……ぅぅんっ」
声を上げようとしたところを、濡れた唇でふさがれてしまう。

男の手は、激しく、優しくクリスティーヌの湿った小丘を愛撫する。
中指がつぅっと淫溝をなぞり上げた。クリスティーヌが悲鳴のような喘ぎ声を漏らす。
何度も何度も、その指が溝の上を往復する。
口を半開きにしたまま、クリスティーヌは息をますます激しくし、目を瞑って快感に
耐えている。
「くぅぅ……」
仔犬のような声を鼻奥から漏らし、クリスティーヌの目が細く開かれた。
その瞳を見つめたまま、ファントムは彼女の下半身を覆っている下着をするすると下ろ
していった。

ファントムは体を起こすと、クリスティーヌを自分と向き合う形に抱きかかえた。
彼に跨った姿勢になっているせいで、クリスティーヌの脚は大きく開かされている。
その秘所に目を落とした後、ゆっくりとした瞬きとともにクリスティーヌの瞳を覗き
込む。彼女の瞳孔が涙に溺れている。
4706/6:2006/07/16(日) 19:32:44 ID:7cAqW91s
クリスティーヌの腰を抱いていたファントムの手が、自分の腰を包む衣服に掛かり、逞しい
下半身を覗かせた。クリスティーヌは両手を地面について自分の体重を支え、その動きを
妨げないように、腰を捻った。
ファントムが再び彼女の腰に手を添えると、クリスティーヌは両腕を彼の首に巻きつけた。
太い首に金属の腕輪がひやりと触れる。
濡れた茶色の瞳が、催促するように妖しく光った。
耳元で低い囁きが響く。
「入れるよ……」

溢れた蜜でぬかるんでいるクリスティーヌのそこに、男の熱塊が侵入してゆく。
「う、ああ……んん」
淫らな声を上げ、彼女の淫溝はその塊を飲み込んでいく。
柔らかい突き当たりまで腰を進めると、ファントムは激しく突き上げ始めた。
「ああっ、あぁっ、はぁぁっ……」
クリスティーヌは首を仰け反らせて快感に悶える。
腰の動きがゆっくりとしたものになり、険しく睨みつけるようなグリーンの目に、だんだん
と優しい色が広がる。クリスティーヌの額や胸元に浮かんだ汗を、そよ風が冷やしてくれる。
と、すぐにまたその動きは激しいものに変わり、熱く攻め立てるような快感がクリスティーヌ
を猛獣のように襲ってくる。
「だめぇ、ああ……あ……もう、だめっ……」
嬌声を上げ、クリスティーヌが官能の極みに昇りつめた。
同時に、ファントムも彼女の奥深くに精を注ぎ込んだ。

葡萄畑を撫で上げながら、風が渡る。

繋がりを解いて、ふたりは甘く蕩けるようなキスを何度も交わした。
ふと、クリスティーヌが顔を上げ、「ねぇ、絵を見せてくださらない?」とせがんだ。
はっ、と手元から紙がなくなっているのに気づいたファントムは慌てて周りを見回したが、
愛しいクリスティーヌの姿を移したその木炭紙は、どこかへ消えてしまっていたのだった。
「うそ……ひどいわ、そんなのって」
拗ねた口調でファントムを咎めながら、クリスティーヌは身支度を整えていった。
是非描いてみたいモチーフなのだ、モデルになってくれたらきっと素晴らしい作品ができる、
と彼女を言いくるめてここまで連れてきたのは彼自身なのだし、クリスティーヌには何も返す
言葉がない。

「でも、誰かの目に触れてしまっても……私を描いたものだなんて分からないと思うわ。
だって、あなたが描く私の画、いつもちっとも似ていないんですもの」
ファントムの襟元を直しながら、クリスティーヌはからかうように言って、笑いかけた。
ファントムは彼女の手を取り、申し訳なさそうにそっと口づけを落とした。

ふたりは知らない。そのデッサンを偶然拾ってしまったある画家が、光の技法を用いて習作に
使い、一枚の絵画として後世に残してしまったことを。
471名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 23:34:30 ID:J1iczBPx
や、野外プレイだハァハァ
映画のマスターはいっぱいクリスの絵を描いて壁に飾ってたけど
きっとクリス本人を目の前にして描いてみたかったんだろうね。
ところで、後世に絵画として残した画家さんってどなた…?教えてエンジェル
472名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 01:02:00 ID:MPf8MSRe
>464 天使様GJ!GJGJ!自分から脱いじゃうクリス萌え。しかも青カン…!!

でも、天使様……できればsageて下さい…。orz
473464:2006/07/17(月) 02:04:50 ID:0r1avlOj
Σ(゚д゚lll)・・・ゴ、ゴメソ
画家はルノワールのつもりで。
>> 習作-陽のあたる女の上半身
474名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 02:39:20 ID:Mfc0cpsk
オウッ天使様!素晴らしかったです!
>「あんまり時間をかけないで」大胆なクリスたんハァハァ
葡萄畑で、あはは うふふ 萌えました、ありがとう
475名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 23:52:36 ID:iOSwjPCg
GJ!
もう先生は最初っからそういうつもりだったとしか…
クリスティーヌを自ら脱ぐよう仕向けた
先生の口説きテクニックも見てみたいw
476名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:58:07 ID:GNp2DmbS
赤い頭巾を着けている→赤頭巾ちゃんかぁ
…と考えていたら、頭を離れなくなりました。
ネタ、一応ファントム×クリス。
エロ極小、しかも音声のみです。
4771/4:2006/07/18(火) 22:59:12 ID:GNp2DmbS
白仮面ちゃん

その子はいつも白い仮面を着けていたので
皆から白仮面ちゃんと呼ばれていました。
ある日ジリーお母さんは白仮面ちゃんを呼びました。
「クリスティーヌおばあさんが病気なのです」
「クリスティーヌが?!」
身を乗り出す白仮面ちゃんに、ジリーお母さんは頷きます。
「ええ、森の中の1人住まいだから心配で…お見舞いに行って下さいますわね?」
「勿論だとも」
言うや否や、白仮面ちゃんはばさりとマントを羽織りました。
「すぐに発つ」
「お願いしますわ」
ジリーお母さんが用意したワインとケーキの籠を抱え、
白仮面ちゃんは家を飛び出しました。

「白仮面ちゃん」
呼び止める声に振り返ると、そこに居たのはラウル狼でした。
「…何の用だ」
白仮面ちゃんはいまいましげに舌打ちします。
顔もよく、金持ち。そして密かに見下していた例の部分も
科学の奇跡か金の力か、最近妙にふさふさしてきています。
白仮面ちゃんが彼を好ましく思う要素は、全くありませんでした。
そんな白仮面ちゃんの態度に気付かぬように、
ラウル狼は親しげに話し掛けてきます。
4782/4:2006/07/18(火) 23:00:07 ID:GNp2DmbS
「クリスティーヌおばあさんのお見舞いに行くんだよね?」
「それが貴様と何の関係がある」
言い捨てて踵を返そうとした白仮面ちゃんを
ラウル狼は慌てて呼び止めました。
「いや、待ってくれ!あっちに素敵な花畑があるんだ!」
「花畑?」
「そう、お見舞いに丁度いいと思って」
ラウル狼が指差す方向は、おばあさんの家とは反対の方向です。
「女性は花を贈られると喜ぶものだよ。
クリスティーヌおばあさんは特に花が好きだからね」
「なるほど」
白仮面ちゃんはふふんと鼻で笑いました。
愛しいクリスティーヌのことは何でも…もとい、身内なのですから知っています。
(あれが好きなのは確かに花だが、あくまで赤いバラ、あくまで1輪の!)
心の中で呟き白仮面ちゃんは唇を歪めました。
(私の到着を遅らせようというのだな、その手には乗るか!)
「狼よ、忠告感謝する。さっそく摘みに行こう」
「うん、そうするといいよ」
白仮面ちゃんは踵を返すと、花畑へ行くと見せかけ
狼の姿が見えなくなると同時に猛然と走り出しました。

クリスティーヌおばあさんの家は、側に大きなブナの木のある
森の中の一軒家です。
到着した白仮面ちゃんはどんどんと勢いよく扉を叩くと
返事を待たずにノブを回しました。
4793/4:2006/07/18(火) 23:01:45 ID:GNp2DmbS
クリスティーヌおばあさんの家はいつも鍵が掛かっていません。
無用心にも程がありますが、この際白仮面ちゃんには好都合でした。
「クリスティーヌ!患っていると、聞いて、いてもたっても、いられずに、」
「あら白仮面ちゃん、よくおいでに…」
そう言いかけたクリスティーヌおばあさんは
ぜいぜいと息を荒げる白仮面ちゃんに首を傾げます。
「…白仮面ちゃん、どうしてそんなにハァハァなさっているの?」
「それはな…」
白い清楚なネグリジェ、ベッドから半身を起こしたしどけないその姿。
熱のせいか頬はいつもより色付き、瞳は少し潤んでいます。
白仮面ちゃんの息は、運動のそれとは別種の荒さになっていました。
「…それは、早く会いたくて走ってきたからだ」
「まあ」
クリスティーヌおばあさんは微笑みました。
あまりの愛らしさに白仮面ちゃんの口がだらしなく弛みます。
涎をたらさんばかりのその様子に、クリスティーヌおばあさんは不思議そうに瞬きしました。
「…白仮面ちゃん、あなたのお口はどうしてそんなに大きく開いているの?」
その瞬間、クリスティーヌおばあさんのネグリジェの肩部分が
ズルリと滑り落ち、白い肩が露になりました。もう我慢できません。
「それはな…お前を食べてしまうためだ、クリスティーヌ!」
そう叫ぶと白仮面ちゃんは物凄い勢いで
クリスティーヌおばあさんに襲い掛かりました。

暫く後、ラウル狼はクリスティーヌおばあさんの家にやって来ました。
礼儀正しくノックをし、返事がないのでそっとノブを回して見ますが
不思議なことに鍵が掛かっているようで開きません。
首をひねりながらラウル狼は家の脇に回り、窓から中を覗き込みました。
4804/4:2006/07/18(火) 23:02:47 ID:GNp2DmbS
部屋の中に人の姿はありません。しかし何か違和感を感じます。
ガラスに額をつけるようにさらに覗き込むと、何か動くものが視界に映りました。
窓の側ベッドの上に、不自然なシーツの盛り上がり。
小さなベッドの上の不自然な盛り上がりは、もそもそ、もぞもぞ動いて。
あわててドアにまわりますが、そこには鍵が掛かっています。
ラウル狼はそっとドアの隙間に耳を当てました。
微かに聞こえてくるのは男の低い囁きと、少女の押し殺した喘ぎ声。
「お前の耳は何故こんなに感じるのかね?」
「んん…いや、いや…」
「お前のこちらの口は…おや、こんなに涎をたらして…お前も早く"食べたい"のか」
「や!あぁあ…っ!」

若干入れ替わっていますが、明らかに狼たる自分の絡むべき台詞です。
ラウル狼はどんどんとドアを叩きました。
「クリスティーヌ!エンジェル!」
しかし、今まさに佳境にさしかかる中の2人に、その声は届きません。
「昼間から寝台にいるなど…待っていたのか?淫らな娘よ」
「…ん、だって、ね、熱が…」
「風邪だな。汗をかけば、治る」
「あぁん!」
窓から見えるベッドの盛り上がりが規則正しく揺れ始め、
ラウル狼はドアに縋ったままずるずると崩れ落ちました。
「…総ては、君のためだったのに…!」
その嘆きの声を聞きながら、ジリーお母さんは
一部始終を見ていたブナの木の陰でふっと暗い笑みを浮かべるのでした。

ところで今回外から施錠したのはジリーお母さんです。GJ!

(おわり)
481名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:30:02 ID:/VAEpg5s
>>480
ワロスwwwwwなんだコレw
っつかクリスティーヌおばあさんとか熟女プレイ通り越してんじゃんとかオモ田よw
482名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:51:13 ID:wkpjRvc6
>476
ちょw天使様GJwwバロスwwww何故唐突に赤頭巾ちゃんネタがwwww
クリスが娘なのかお婆さんなのかワカラナスwラウルカワイソスwwwマダム最強www

そーいえばラウルの中の人の新作が赤頭巾ちゃんの逆襲の話だっけ?
映画公開前から呪いにかかったヨカーンww
483名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:27:30 ID:zik23HDq
白頭巾ちゃん、ってかわいいネーミングなのに喋りはちゃんとマスターwww
腹いてえwww
484名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:41:09 ID:fo6MGXhx
×白頭巾
○白仮面
白頭巾って山城新伍の鞍馬天狗…
485名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 09:40:48 ID:Cuc69233
や〜め〜て〜!
仕事中コソーリ覗いたのに吹き出しちゃったじゃないかwwwwwww
周りの視線がイタイww
なんかさーフツーは
赤頭巾→クリス
おばあさん→マダム・ジリー
狼→ファントム
狩人さん→ラウル
とかなりそうなもんなのにキャスティングが全く違う辺りがドツボ。
なんで白仮面ちゃんがおばあさんに襲いかかってるんだよww
こーゆーの大好き。
常識では計りきれないセンスの天使様、超GJ!
486名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 20:45:21 ID:z+uFA+Ll
おお、pink鯖にふさわしいオトナの童話www笑いが止まらないwwwwww
天使様、禿しくグッジョブです!!!

>>485
仕事中にエロパロ板は流石にまずいだろw ネットワーク監視してない職場であることを祈るお。
487名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 20:23:47 ID:IEIHvofj
ラウル×クリス
> 438の続きです。ドゾー。


4881/8:2006/07/20(木) 20:25:13 ID:IEIHvofj
それからの数週間は、まさに嵐のようだった。
普段はひっそりと、二年前に気に入りの女優を連れて北欧へと旅立ったまま音沙汰の無い
――数ヶ月に一度、簡素な手紙をよこす以外に――奔放なラウルの兄、フィリップ・ド・
シャニュイ伯爵の帰りを待つばかりのこの屋敷が、大騒動の核となってしまったのだ。
それは、他でもない、あの呪わしいオペラ座の事故とそれにまつわる流説の中心人物が
この邸内にいると人々が知ってしまったからだ。

パリは、舞台の最中に行方をくらましてしまったプリマドンナと怪人の、それを追って
行ったきり生死の分からなくなっていたパトロンの子爵の、様々なゴシップに溢れていた。
ある者は怪人が子爵を殺め、クリスティーヌを連れ去ったのだと吹聴し、ある者は怪人の
魔力に慄いた子爵が遠い外国まで逃奔してしまい、クリスティーヌは自らその命を絶った
のだと憶測した。

そのなかで、調査を重ね真実に迫ってきた警視や記者たちがとうとうシャニュイ邸にまで
押しかけ、執事や女中だけでなく給仕や小間使いの少年までもが、彼らの対応に追われる
始末となってしまったのだ。

ラウルは、できることならバルコニーから身を乗り出し、大声で怒鳴って、無知で詮索好きな
人々に本当のことを伝えてやりたかった。あの卑怯で野蛮な怪人ならまだしも、なぜ自分が
世間から隠れるような真似をしなければならないのだ?

しかし、外の喧騒を耳にする度、しばらくは黙って身を隠しておけと自分に諭した自分の姉が
正しく思えてきた。さすがに大年増の貴婦人だけあって、こういった醜聞の治め方も心得て
いる。今のラウルが何を言っても、世間にとっての好奇の対象にしかならないだろう。彼は
歯軋りしながら、広い邸内の一番奥にある寝室で、一日が過ぎるのを待っていた。

カタ、とティーカップの置かれる音が部屋に響く。
「こんな事になるなんて……」
やっと聞きとれるくらいの声で呟き、クリスティーヌは、片袖机の上に飾られた花々に目を
やった。使用人はこの部屋に手を出せないのだろうか――花は限界まで開ききって、取替え
時をとうに過ぎてしまっている。

そのまま視線を動かさないクリスティーヌが、いま、何を考えているのか……ラウルには
痛いほどよく理解できる気がした。小さいロッテは少女から大人の女へと変貌を遂げ――
大惨事の渦中で味わったふたつの愛と、その身に降りかかった災いに苦しめられている。
一瞬でも自分が彼女の傍を離れたなら、その心は風のようにどこかへ去っていってしまい
そうだ。

彼女を守らなくては。あの日、雪の舞う屋上で誓ったように、未だ彼女の心に巣食う暗闇から
彼女を救い出してやらなくては。
4892/8:2006/07/20(木) 20:25:59 ID:IEIHvofj
ラウルはゆっくりとテーブルに近づくと、くるりと回ってクリスティーヌが腰掛ける椅子
に手を添えた。
クリスティーヌの目は、やはり一点を見つめたまま動かない。ドレスの胸元が僅かに上下
して、縁取りのレースを震わせている。

クリスティーヌの背後から、そっと身を屈めて髪に頬を寄せる。ラウルがそのブロンドの
髪を後ろで束ねているせいで、逞しい首筋がくっきりと浮かび上がって、ブラウスの下に
隠れている鍛えられた身体まで透けて見えるようだ。彼の顔立ちと同じように、ラウルの
肉体と精神はまだ充分に若く、生命力に溢れていた。

目を閉じ、白くほっそりとしたクリスティーヌのうなじに唇を寄せる。
きめ細かな肌から立ち昇る香りを嗅ぐように、ラウルが高い鼻梁を押し当てると、彼女の
温かい血潮が皮膚の下を駆け上がっていった。
指先で、セピア色の髪とうっすらと桃色を乗せた白磁のような頬を弄ぶ。

「すぐに落ち着くさ、クリスティーヌ。心配することはない……大丈夫だから」
婚約者の優しい言葉に表情を緩め、クリスティーヌが少しずつ首をラウルの方に傾けて、
柔らかい唇を彼の鼻先へと近づけていった。
あれから毎晩のように体を重ねているのに、こうしてキスを交わす時はいつも緊張してし
まう。自分の身体を待ちわびて熱く煌くフィアンセの青い瞳に、どんな仕草で応えればよい
のか分からない。自分の胎の奥から湧き上がる情感を、どこへ向けてよいのか分からない。

「言っただろう? 君を不安の淵から救い出すと……君を温かい安らぎで満たしてあげる
と……あの夏の日を、これからもずっと一緒に歩んでいくんだ、ロッテ」
ラウルのその言葉は、子守唄のようにクリスティーヌの耳に落ちていった。
まだ父が生きていた頃……ブルターニュの海辺で、自分の歌は常に喜びと共にあった。父の
ヴァイオリンと幼い自分の歌声は夢のように響き――夜の帳はいつもとても温かく、彼女を
包んでくれた。
4903/8:2006/07/20(木) 20:26:56 ID:IEIHvofj
「あの時の君がどんなに輝いていたか……僕の拾ったスカーフを受け取った時の君の笑顔、
再びペロスで会った時の君の手、ばら色の頬……今でもはっきりと思い出せるよ、もう僕の
手から離れようとしないで――愛しい、僕の天使」
クリスティーヌはうっとりと目を閉じ、肩から回されたラウルの腕に頭を預けていた。
こうして、オペラ座やパリの喧噪から逃れ、ラウルとふたりきりで愛を語らっていると、
この世には清廉な思い出と、愛に溢れたこの狭い空間しか存在しないかのように感じられた。

花の甘い香りが部屋を満たしている。

「本当に、夢のようだわ……すべてが、まるで夢のよう」
言葉よりもその口調は淡々としていて、クリスティーヌが懐かしい思い出に浸っているのか、
何かを忘れ去ろうとしているのか分からなかったが、ラウルは彼女のつぶやきに微笑みで
返した。片方の腕を彼女の膝下に差し入れ、ふわりと抱き上げる。

クリスティーヌは、細い手首をラウルの首に回して、その身を彼のしっかりとした両腕に
預けた。皴ひとつないダマスク織りの掛け布が整えられたベッドへ、ゆっくりと近づいて
ゆく。
クリスティーヌの身体をそうっとベッドの中央に下ろすと、ラウルは彼女の背中の方から、
羽枕を跨ぐようにしてベッドに乗った。白いブラウスを脱ぎ、床に放る。
かつてオペラ座の屋上でそうしたように、彼女の身を後ろから優しく抱き寄せた。

「結婚したら――クリスティーヌ、盛大ではないけれど、静かな教会でふたりだけの式を
挙げよう――、そうしたら、しばらく旅に出るんだ、ロッテ。ふたりきりで……誰にも邪魔
されずに過ごそう、毎日君を愛してあげるよ……こんな風に……」
クリスティーヌに熱っぽく囁きかけながら、ラウルの手がすばやく彼女の衣服を解き、丸く
柔らかい乳房を掬い上げた。
クリスティーヌの両脇から手を差し入れ、中央に向かって寄せるように揉み上げる。その
弾力を掌にしみ込ませるようにじんわりと握り、親指で頂を転がす。
「はぁ……はぁ……ぁぁっ」
熟しきった苺のように色づき硬くなった頂にラウルの指が触れるたび、クリスティーヌの
口から熱い吐息が漏れる。ラウルの胸に上半身を凭せ掛け、両手で羽枕をぎゅっと掴み
ながら、快感に悶えている。
4914/8:2006/07/20(木) 20:27:54 ID:IEIHvofj
すらりと伸びたラウルの指が、硬く尖った先端を摘み上げた。
「んくぅっ」
クリスティーヌが唇を噛む。
摘まんでは離し、指の腹で軽く撫でてはまたきゅ、と摘まむ。
それだけでクリスティーヌの意識はだんだん薄れてゆき、身体の中から熱い雫が湧き出て、
とろとろと溢れ出すのを感じるのだった。

気が付くと、ラウルの片手がなだらかな脇腹の線を辿り、僅かに開かれた両脚の隙間へ
と徐々に伸びていた。
「あ……あ……」
クリスティーヌの口から切なく紡ぎ出されるのは、恥じらいのために上げている声か、
それとも期待のそれか――。
ラウルは躊躇うことなく、三本の指をその熱く湿った隙間に差し入れた。
ぬる、とした感触が指先を捉える。
「ん……? もうこんなに濡らして……どうしたの、クリスティーヌ?」
一番長い指を軽く曲げて、潤みの中心を浚う。
「やぁ……ぁ……はぁ、あぁぁ」
何度かその濡れそぼった亀裂を往復させると、クリスティーヌからいやらしい喘ぎ声が
上がった。
「ん……?」
官能を促すように、ラウルが彼女の紅潮した顔を覗き込んだ。
激しく息を吐く口から、潤った舌が見える。ラウルは乳房を弄っていた手をクリスティーヌ
の顎に当てると、少し乱暴に自分の方に顔を向かせ、自分の舌を絡ませた。

秘所に伸びたラウルの手は、ぬめりを指先にまといながら、徐々に合わせ目を開かせてゆく。
露に濡れた花芽がひく、ひく、と震える。
「ひぃぃ……いやぁぁ……」
極まりつつあるクリスティーヌの甘い悲鳴を聞くと、その指を激しく動かした。
いっそう高い声が上がる。

クリスティーヌの舌から舐め取った唾液をごくりと飲み、ラウルは彼女の顎から手を離した。
苦しそうにベッドの天蓋を仰ぎ、クリスティーヌが大きく息を吐く。
ラウルの手は、さらにクリスティーヌのそこへ伸びてゆく。自分の身体を彼女の下へ滑り
込ませ、長い両脚で挟むように抱き抱える。
片手で花芽を弄りながら、もう片方の手で亀裂を押し広げた。赤い秘肉が露出する。
あらわになった過敏な芽を強く擦られて、鋭い刺激がクリスティーヌの全身を駆け抜けた。
4925/8:2006/07/20(木) 20:28:40 ID:IEIHvofj
さらに、さらに指を激しく動かされ、クリスティーヌは嬌声を上げて絶頂に達した。
「あ、はぁ……ぁ」
身体が宙に浮いたような感覚の中で意識が戻ってくるのを待っていると、突然、新しい
快感が胎内に走った。
ラウルが、達したばかりのクリスティーヌの洞に、指を差し込んだのだ。
「だめっ、だめぇぇっ」
花芽にはまだ痺れが残っているのに、愛欲の洞に長い指を入れられ、クリスティーヌは
その快美に翻弄された。
「うんっ、んんっ、あ、あぁぁ……」
身体がそこを中心に跳躍するほど、胎内で激しく指が動く。まるで蛇のような生き物が
入り込んで、内側から犯そうとしているみたいだ。

二本の指がぐちゅ、ぐちゅ、と卑猥な音を立てて、クリスティーヌの内襞を舐め回す。
そこから溢れかえった熱い露は、ひたひたとラウルの指を浸蝕してゆく。
「は、ふぅぅ……」
さんざんに弄ばれた後、ラウルの指がくちゅりという水音を立てて引き抜かれた。

「ほら……見てごらん、こんなに濡れてる……」
ラウルがべとべとになった人指し指と中指を、クリスティーヌの目の前で軽く開いて見せた。
指の間を、何本もの白濁した太い糸が繋ぐ。
「やだ……」
自分の欲望の証がフィアンセの美しい指に絡み付いているのを見せつけられて、クリス
ティーヌは思わず目を逸らした。
ラウルはその指をゆっくりと自分の口元に持ってゆき、舌でぐるりと舐め、吸った。
「いやらしいね、クリスティーヌ。嬉しいよ……」
4936/8:2006/07/20(木) 20:29:43 ID:IEIHvofj
ラウルは口角をちょっと上げて、瞳に淫靡な色を浮かべた。
顔を真紅に染めたクリスティーヌの腰を抱えて前に倒し、曲がった脚を引き寄せて、
四つん這いの格好にさせる。
何が起こるのか分かっていないクリスティーヌは、不安な表情でラウルを振り返った。
その怯えた少女のような視線と、洞から蜜を滴らせた淫らな姿勢が、ラウルの興奮を煽る。

ラウルが隆起した自分自身を取り出し、クリスティーヌの腰のくびれに両手を掛けた。
クリスティーヌは、戸惑いの表情でラウルの動きを窺っている。
ラウルが少し、膝を前に進めた。
片手を添えながら、硬くなった幹をゆっくりと挿入する。

「はあっ!」
クリスティーヌは猫のように背中を反らせ、ラウルの熱塊を受け入れた。
初めての快感が、身体の奥深くから花火のように弾けた。
とろとろに溶けたバターのようなそこを、ラウルが滑らかに往復する。臀部から腿にかけて
均衡に付いた筋肉が、動きに合わせて白い肌の下で蠢く。
ラウルが楔を打ち込む音に、クリスティーヌの濡音が混じる。

クリスティーヌはベッドの掛け布を必死で掴み、顔をしかめて喘いでいる。口は大きく開け
られ、額の産毛は汗に濡れている。
ラウルは束ねた金髪を乱れさせながら、目を瞑って激しく腰を使った。
「あぁ、す、すごい……の……ぃぃ、いっ」
クリスティーヌが淫らな言葉を口にしながら、快感を伝える。
腰を回すようにして打ちつける。熱く舐る内襞の絡みつきに、ラウルは限界を感じた。

1234567890123456789012345678901234567890
7
長い溜息とともに、ラウルの精がクリスティーヌの膣内に注がれた。
クリスティーヌは腰をベッドに落とし、苦しそうに息をしている。汗ばんだラウルの身体
が重なる。彼の髪が解けて、さらりと顔に落ちかかった。
しばらくそのまま、ふたりはうつ伏せになって官能の波間に漂っていた。

このまますべて忘れて、深い深い、醒めない眠りにつけたらどんなにいいだろう……その
夢の中で、私はあの頃に戻れるだろうか――愛の苦しみなど知らなかった、あの頃に――。
クリスティーヌはしじまの中で、そんなことをぼんやりと考えていた。

ふたりの息が整い、汗もひいた頃、ラウルはクリスティーヌの頬にキスをして起き上がった。
まだ身体を横たえたままの彼女を上質な掛け布で包んでやり、自分は脱ぎ散らかしてあった
衣服を身につけ、くしゃくしゃになったクリスティーヌのドレスを拾い上げてベッドの片隅
にそっと置いた。

「……イギリスに行こう、クリスティーヌ」
乱れた髪を整えようともせず、横になったまま、クリスティーヌが身体をラウルの方に向けた。
白い布が彼女の身体に巻きつく。
「しばらくしてほとぼりが冷めたら、戻ってくればいい。……ね?」
彼女の髪を指で梳いてやりながら、ラウルは子どもに聞くように優しく尋ねた。
喜ぶでも悲しむでもなく、クリスティーヌは小さく頷いた。
「出発は早い方がいい、その前に結婚式だね……準備に充分な時間がとれなくて申し訳ない
けれど――君を世界で一番幸せな花嫁にしてあげるよ。約束する」
ラウルは微笑んで彼女の額にキスを落とし、立ち上がった。細いリボンで髪をまとめ、簡単に
身支度を整えると、急くように部屋を出て行った。
4947/8:2006/07/20(木) 20:31:08 ID:IEIHvofj
部屋に充満していた花の香りは、ふたりの熱にすっかり掻き乱されて、元には戻らない。

ひとりベッドの中で、表情を変えずにラウルの背中を追っていたクリスティーヌの瞳から、
一筋の涙が伝い落ちた。
片袖机の上で咲き乱れる大輪のバラは、もの言わずクリスティーヌを見下ろしている。
クリスティーヌの涙が、シーツの上にぽとり、と落ちた。
その瞬間、萼の拘束から逃れたバラの花弁が、ひとひら舞い落ちる。

――ラウルは私のすべてを知らない――だから私は、もうあの人の前で泣くことができない。
彼はきっと、今と変わらぬ愛を私に注いでくれる。限りない優しさで私を包み、生涯をともに
分かち合ってくれる。言葉と違わず、永遠に。
なのに、どうして涙が零れるのだろう。どうしてこんなに胸が締め付けられるのだろう……。
私はもうとっくに気づいているのだ――あの頃には戻れないと。あの夏の日は、もう廻っては
こないのだと。

クリスティーヌは身体を横たえたまま、溢れる涙を拭おうとはしなかった。

〈続く〉
4958/8:2006/07/20(木) 20:34:05 ID:IEIHvofj
487デス…。
アア…493がひどいことに。
恥ズカシス _| ̄|○
どなたかこのマヌケを治してください。
496名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 22:57:46 ID:okCt4t7K
>>495
今回も禿しくエロエロでご馳走様ですたー
しかしラウルってばイク時に
1234567890123456789012345678901234567890
7!
って数えてるとは・・・'`,、('∀`) '`,、
497名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 23:40:16 ID:nlD5TPTA
数を数えるともう少し長持ちするからな。
いえ冗談です、
本当は天使様、一行あたりの文字数を計っていたのでは?
クリス、やはり心はマスターにあるのかなあ
続きすごく気になる・・・
498名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 16:43:13 ID:pDNHcpx0
ちょwwww天使様wwwwwテラワロスwwww
すばらしいエロの、しかも佳境のところでこれはwwwwww
ある意味絶妙なタイミングです。
上質なエロ巣と笑いを堪能できて二度おいしい。
いろんな意味で天使様GJ!!!!

そして続きをwktk待機。
499名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 21:47:01 ID:w44DMlPG
425を見た後に皮膚科の待ち合い室ですごいニヤニヤしながら練ってみた。

全く関係無い内容ですが、主役三人、ネタ無しエロ無し、2レスで鬱展開。



「さあ、選べクリスティーヌ…。私と、この男のどちらの手を取るのかを!」
 岩の牢獄に怒号が響く。
そう怒鳴った醜い顔の男の手には縄が…そしてその縄の先はもう一人の若い男の首を締め上げている。
「僕を見捨てろ! こいつの言う事を聞いてはいけない!」
 そう叫んだ若い男の首を縄がぎちりと締め上げ、男は低い呻き声を漏らした。
「わたしは、ただ貴方を信じていたのに…」
 クリスティーヌ、と呼ばれた女の頬を一筋、涙が伝う。
「選ぶがいい…。もはや退くことはできんのだ…!」
 一瞬の虚を付き、クリスティーヌが若い男に飛び付き、何かを囁いた。
男は驚いたように顔を上げ、そして全てを覚悟したかのように小さく頷いた。
その涙ぐんだ目で少し笑って見せたかと思ったそのとき、また強く彼の首にかかった縄が引かれた。
「ぐぅ…っ!」
「ラウル!」
 悲鳴のような声で恋人を呼んだクリスティーヌを、男が無理矢理引き離した。「時間だ、クリスティーヌ…。お前はただ私の手を取ればいい。それで何もかもが丸く治まるだろう…?」
 醜い顔をさらに引き攣らせ、この場に見合わないほどの優しい声色で男が言う。
クリスティーヌは己の震えを押さえるかのように、深く息を吸い込み、顔を上げた。
男にちらりと目をやり、そのままラウルの顔を見る。
「ラウル…ごめんなさい……」
 クリスティーヌの小さな呟きに、ラウルは優しく首をふった。
「わたしは…」
 男が狂気をその笑顔に浮かべたまま、クリスティーヌに近寄る。
「わたしは、死んでもラウルのものよ…!」
 はたと歩みを止めた男の目が見開かれた。
そして何かを言おうとした口をつぐみ、泣いているのか、笑っているのかも判らないほどその顔を歪ませた。
「お前は…お前はそれほどまでにこの男がいいか…!」
 そう吐き捨てるように呟いた男が、目にも留まらぬ早さで縄を引いた。
ひっ、とクリスティーヌが息を飲む声が聞こえ、ラウルがもがく。
しばらくの後に、大きく痙攣したかと思うと、それきりラウルは動かなくなった。
500名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 21:50:31 ID:w44DMlPG
 顔を覆ったまま、ごめんなさい、と譫言のように呟くクリスティーヌの肩を男が乱暴に掴む。
「全てはお前が招いた事だ…。お前がその手で恋人を殺したのだ、クリスティーヌ!」
 男の怒号に、クリスティーヌは気丈にも顔を上げ、静かに言った。
「わたしは、あなたの言いなりにはならないわ…」
 拒絶の言葉に固まる男の手を摺り抜け、ただ一つ、あるものを探す。
「クリスティーヌ…」
「わたしが愛しているのはラウルだけよ」
 散らばった楽譜の下から目当ての物を掴み、そっと胸元に押し当てる。
「クリスティーヌ…!」
「ラウル、愛しています」

 クリスティーヌがそれを…ナイフを胸深くに突き刺したのと、それに気付いた男が悲鳴を上げたのはほぼ同時だった。
「クリスティーヌ! クリスティーヌ…!!」
 ゆっくりとその場に崩れ落ちるクリスティーヌを男が抱き抱える。
花嫁衣装をが見る間に色を変えていく。
クリスティーヌは苦しそうに…だが、満足げに口の端を吊り上げ、男に言った。
「あなたは…ラウルと一緒にわたしの心も殺したのよ……!」
 そして声にならない声で恋人の名を呟き、ゆっくりとクリスティーヌは目を閉じた。

 後に残るは獣じみた男の慟哭のみ。
男を追い詰める人々の声がすぐそこまで迫っていた。



<終>
501名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 00:09:06 ID:H/vBb47+
。゚(゚´Д`゚)゚。
クリスもマスターも可哀相だエーン
502名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 23:45:35 ID:pu42TqY9
・゚・(つ_`)・゚・

ほんと、こうなってもどうなっても
おかしくなかったんだよね。
キスひとつで収めたクリス、凄い。
503名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 16:39:55 ID:fyFzQ0OF
>>499天使様の前書き「2レスで欝展開」の一言がなんとなくツボってしまった
舞台も見たことなく何の予備知識もないまま初めて観にいった時、
まじでこうゆう展開になると思ってた。
504499:2006/07/23(日) 20:43:27 ID:FdBxJSBr
感想ありがとうございます。
こんな鬱展開でドン引きされると思ってました。
そして見返すとミスが多い…orz


個人的にクリスがこれぐらい潔ければクリスを好きになれたと思います。
505名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 00:07:43 ID:uTUXuQCG
504天使様どこにミスが?全然わからないですよ。
またぜひヨロ

私も投下させて下さい
ファントム×クリスティーヌ
原作の地下で、
クリスティーヌが椅子に縛られているシーンでちょいエロ
506原作エリックとクリスティーヌ 1/5:2006/07/24(月) 00:09:03 ID:uTUXuQCG

「ねえ、エリック、縄をほどいて… 
 わたし、どうせ逃げられっこないでしょう?」
「だめだ。おまえはまた死のうとするにきまっている…
 そしてまた、あの男のもとに戻るかもしれないしな」
「そんなこと…」
そう言って俯く愛弟子である娘を一瞥したエリックは、くい込んだ縄が沿う
わずかに見える白い肌に目を奪われた。
そんなにきつく縛ったわけではないのに、かなりクリスティーヌの体を締め付けていた。
不在にしていた僅かな時間の間に
クリスティーヌはひどく暴れたか、戒めから抜けようともがいたせいか?
縄はいっそう強く彼女の体を締め付け、二本の縄の間には
形の良い乳房が少し歪ませながら浮き立っていた。

「クリスティーヌ…」
威厳ある音楽の天使の低く唸るような声色に、クリスティーヌは
師匠に対する、今までに感じた恐怖とはまた別のそれを感じた。
エリックは思わず─クリスティーヌに悟られないようなほど控えめに、
ごくり、と喉をならし骸骨のような手でそっと
クリスティーヌの縛られた縄を沿っていく。
「…!エ、エリック…!」

「な、なにをなさるの、止めて…!」
「クリスティーヌ…
 今ならおまえは私の思い通りになる。
 おまえは私の妻になる運命の女なのだクリスティーヌ、
 今にわかる!おまえは私を選ぶだろう」
縄を這うエリックの骸骨のような指先から目が離すことが出来ないクリスティーヌは
悲鳴とも懇願ともつかない声を上げた。
拷問部屋ではシャニュイ子爵と<ペルシャ人>が閉じ込められ、
クリスティーヌが鍵を密かにエリックの手元から持ち出してくるのを待ち望んでいた。
「やめて、やめて頂戴エリック、
 こんな非紳士的なふるまいをあなたがなさるなんて…!」
「ここには鋏はないぞ、クリスティーヌ…!
 いや、おまえに触れることが出来るなら、鋏でずたずたにされるのも
 また本望だ」
507原作エリックとクリスティーヌ 2/5:2006/07/24(月) 00:10:38 ID:uTUXuQCG

そういうと同時にエリックはクリスティーヌの、
縄で戒められた胸元に手をのばし
その長く細い指で恐る恐る両の乳房に触れた。
「ああっ…!」
揉まれる快感、というよりもエリックに触れられたという恐怖からなる悲鳴だった。
思わず声を上げたクリスティーヌだが、拷問部屋に閉じ込められているシャニュイ子爵を想い
下唇を噛んでこれ以上は声を出すまい、と必死に堪えた。
『声を出してはいけないわ…!
 ラウルにこんなことされているなんて知られたくない…!』
「どうしたクリスティーヌ?
 どうか私に声を聞かせておくれ」
『我慢するのよ…!あの鍵でどうにかしてラウルを助けなければ…!
 どうすれば良いの、このままエリックの思うままになって
 油断させるしか方法がないの…!?』
首を左右に激しく振るクリスティーヌをエリックは哀しい思いで見ていた。

水が溢れ灼熱の暑さの拷問部屋ではラウルと<ペルシャ人>は顔を見合わせた。
「クリスティーヌ…!?どうしたんだあの声は!
 まさかあいつが何か酷いことを…!」
「落ち着いてください子爵、大丈夫です。
 エリックはクリスティーヌに危害を及ぼしたりはしません。
 それよりも彼女が鍵を手に入れて、我々がここから脱出する可能性は
 もう無いと思ってよいでしょう。
 どこかここから出られる扉を探すのです」

ちらちらとオルガンに視線を投げるクリスティーヌにエリックは気づき、
「クリスティーヌ、あの革袋が欲しいのではないのかね?」
エリックはスカートを膝上まですっと捲くると、クリスティーヌの片膝を抱え上げ
椅子の肘掛にかけさせた。
「やめて!いやっ…恥ずかしっ…!!」
縛られた腕を肘掛の上で暴れさせて僅かに腰を引くがエリックの視線からは
逃げられない。
クリスティーヌの足元に跪くエリックに捕らえられたその片足は
虚しく椅子の外側で揺れるだけだった。
「クリスティーヌ…なんて柔らかい肌をしているんだお前は…
 人に触れるなんてなんて幸せなことなのだろう、わかるかねクリスティーヌ?
 もう少し、もう少し触らせてくれないか…」
「やめて!やめてぇっ!」
「暴れるなクリスティーヌ、縄が余計にくい込むぞ」
508原作エリックとクリスティーヌ 3/5:2006/07/24(月) 00:11:51 ID:uTUXuQCG

「ああ。なんていい姿だクリスティーヌ…
 清純なおまえのこんな姿を眺められるなんて私くらいのものだ。
 あの子爵殿でもまだおまえのこんな姿を見てはいないだろう…
 ああ暴れるな、椅子ごと後ろに倒れてしまうぞ」

「欲しいのはこの鍵かね?」
クリスティーヌは死にたいと思えるほどの恥じらいを感じながらも、
薄目でエリックをちらと見た。
皮袋からエリックは1本の鍵を取り出し、クリスティーヌの目の前に差し出した。
「この皮袋の中にはふたつ鍵がある。
 おまえが欲しいのはこの拷問部屋へつづく鍵なのだろう?」
ちらちらと拷問部屋の鍵をクリスティーヌの目前にかざしながら
エリックは悲しさに震える手で、そっとクリスティーヌのやや湿り始めている下着の
わずか手前の、白く繊細な肌に指を這わせた。
「いやっ!」
「そうか、ごめん!
 私の死臭のするこんな手でおまえを汚すわけにはいかないな…」
エリックは拷問部屋の鍵ですっ、と内腿を撫でた。
「ひっ!
 やめて、やめてくださいエリック…
 怖いわいやっ…」
エリックは何も言わずその鍵をふくらみの根元まで撫でた後、
下着の端にひっかけ僅かに持ち上げた。
「あっ…!」
エリックは少し顔を傾けながらクリスティーヌのその秘所を覗き込み、
「クリスティーヌ…!素晴らしいよ…」
鍵を持つエリックの手はさらに震え、クリスティーヌは敏感なその内腿に
ピタピタと冷たい鍵が当たる恐怖に、
もはや拷問部屋のラウルのことは頭には無く声を上げ涙を流して許しを乞うた。
「怖い…!やめて、エリック!
 お願いやめて!!」
すすっとわき腹をなで上げ、下腹の中心にある小さな窪みに差込み
くりくりと冷たい鍵を回すと、クリスティーヌは
ガタガタと体中を震えさせこぼす涙は絶えることはなかった。
「鍵が欲しいのだろう?
 よかろう、くれてやっても良い。
 ただし、しっかりと咥え込むことが出来たらの話だがな」
509原作エリックとクリスティーヌ 4/5:2006/07/24(月) 00:12:59 ID:uTUXuQCG

そしてまたすすっと鍵は下腹をくだり、薄い布越しに濡れている秘所を撫でた。
「やめてっ!それは、それだけはやめてっ!」
「鍵はお気に召さないのかね?」
「いやあ…やめて…」
「鍵は嫌かね?」
クリスティーヌは泣きながら二度三度と頷いた。
「嫌かね?」
鍵を再びクリスティーヌの眼前に差出しそうエリックは問う。
「それでは私の死臭のする手のほうが良いということかね?」
「ああ…」
クリスティーヌの瞳には絶望の色が広がり、
また大きく目を閉じた。
 
「クリスティーヌ…私と結婚してくれるね?」
鍵の鋭く欠けた部分で薄い下着はいとも簡単に引き裂かれた。
そしてその鍵が、エリックの仮面が、地面にカシャンと落ちる音と同時に、
地下湖にクリスティーヌの哀しい叫び声が響き渡った。
クリスティーヌの両脚を己の肩に抱え込み
決して離さぬ、と、ばかりに喰らいつくエリックの頭を
後ろに倒れないが為に抱え込むクリスティーヌはうつろな目で拷問部屋の方を眺めた。
今まで意識したことすらないその箇所にねっとりと這う、
エリックの乱暴な舌と歯の動きに絶頂を何度となく味わっているうちに
とうとう幼馴染みが閉じ込められているその方向を見ることもなくなってしまった。
口元からは透明な液体が流れ出し、
敏感になりすぎて、もはやエリックからもたらされる快感以外はなにも感じなくなったそこから
別の液体が迸っていたことも、
そして床にこぼれていないことすらクリスティーヌは気がつかなくなっていた。
ただひとつだけ気がついたこと─
エリックがいつの間にか片手だけで自分の脚を支えていることに。
エリックのもう片方の手はどこにいったのかしら、とうつろにその行方を確かめてみると
エリックは自分のズボンの中に入れて激しく動かしているようだった。
ふっ、とクリスティーヌは微笑みを浮かべていた。
なんて不幸せで可哀相な人なの、とクリスティーヌは思った。
エリックの地を這うような低く切ない呻き声が響き、
しばらくするとその片方の何かに濡れた指がクリスティーヌの脚に触れ、
クリスティーヌはそのエリックの手に自分の手を添えた。
エリックの指に嵌っている金の指輪にクリスティーヌは指を這わせた。
510原作エリックとクリスティーヌ 5/5:2006/07/24(月) 00:14:26 ID:uTUXuQCG

肘掛にかけた脚は下ろされていたがクリスティーヌの体は今にも椅子から
崩れ落ちてしまいそうだった。
しかし今なお縛られたままの縄が、クリスティーヌの体を
かろうじて支えているようなものだった。
その縄が手首に腕に、そして今にも首をも絞めてしまいそうにくい込んでいる様子にエリックは慌て
「じっとしていろ、いまほどいてやる。
 たいへんだ、おまえの手首がこんなになっているクリスティーヌ… 
 私はおまえに痛い思いをさせてしまったんだね?」
満足げなエリックの優しい声にクリスティーヌは
地獄の天使のもとを去ることなど永遠に出来ないと感じた。
エリックに抱きかかえられながらぼんやりと、鏡のように静かな湖面に目をやると
スクリブ街側からの換気孔から、月の光が水面に射し込んでいるのが見えた。
墨のように黒く滑らかな水面を、薄い月の光りが染めじわりと広がっていった。
エリックの腕に揺られながら、
あの月の光はわたしだわ。
とクリスティーヌはそんなことを思った。
静かな地下にはエリックが用意したクリスティーヌの寝室から、彼がクリスティーヌを愛しむ声と
拷問部屋からの水音だけが響き渡っていた。


〔完〕
511あとがき:2006/07/24(月) 00:16:00 ID:uTUXuQCG
とりあえず子爵とペルシャ人は自力で助かった方向で。
512名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 13:59:27 ID:bK5HyoE5
GJ!!
触るだけ触って本番はしない先生…必死さが伝わって
良かったよ。泣ける…
513名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 16:02:26 ID:tOEzY6mi
不幸せでかわいそうな人っていうのが、
原作クリスのエリックに対する基本スタンスだもんな。
エリックの狂気を孕んだ優しさが怖くて哀しい。
GJでした!

…しかし…ラウルー!ダロガー!逃げてーー!(自力で)
514名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 22:09:51 ID:h5IAXKqz
GJ! GJ! GJ!
原作の先生の雰囲気がそのまま出てた。
いきなりクリスティーヌを自分のものにしちゃわないのが却って哀しい。
クリスティーヌの先生に対する憐憫の情も伝わってきて、
最後はやっぱり泣けました……。
515名無しさん@ピンキー:2006/07/25(火) 00:15:12 ID:IWQGzlqj
すごい!!
原作設定の彼らを読めて嬉しいです。
切ない・・・。
天使さまありがとう。
516511:2006/07/25(火) 00:40:43 ID:0NfF+xNe
感想ありがとう、集英社「子どものための世界文学の森」のクリスが縛られている
挿絵があまりにエロいので思いつきました。
517名無しさん@ピンキー:2006/07/25(火) 08:50:08 ID:+h09ndUJ
子供用文学なのにそんなにエロいのか…w

やるな集英社。
518名無しさん@ピンキー:2006/07/25(火) 18:01:26 ID:+h09ndUJ
本屋で見てみた。確かエロい…!
でも見た事で余計にエリックが哀れに思えてきた。
本当に「可哀相で不幸なエリック」なんだな…。


そしてこの本持ってる事を思い出して驚愕。
519名無しさん@ピンキー:2006/07/25(火) 21:57:50 ID:4Si9hNtf
誰か縛られてるクリスの画像うp!!!!!!!!!!
520名無しさん@ピンキー:2006/07/26(水) 21:38:50 ID:k4VSgJqf
2枚うpさせてもらった。原作クリスティーヌ1、と2です。
すぐ消えると思う
ttp://www.csync.net/service/file/index.html
521名無しさん@ピンキー:2006/07/27(木) 02:12:10 ID:YesU85cl
>>519GJ!!!!
522名無しさん@ピンキー:2006/07/27(木) 13:40:24 ID:/COtUBiO
童顔クリスハァハァ。
しかし子供向け商品って
時折無邪気にエロ…えらいことするなぁ。
523名無しさん@ピンキー:2006/07/27(木) 14:27:03 ID:A+bpT+C/
エロ可愛いクリスですね。13、14歳くらいな感じがする。
この本のファントムのイラストがまた大人で、背が高くて格好良過ぎ。
524名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 16:38:35 ID:59KkuiCe
ちょい若ファントム×ちょい若マダム
クリスがオペラ座に来る前です。
5251/5:2006/07/28(金) 16:39:14 ID:59KkuiCe
戻ってきた。
広間の片隅で、改めて私はそう実感していた。

色とりどりの衣装、意匠を凝らした仮面、香水の匂い。
入り乱れる群集、灯火、音楽、この熱気!
まだ寄宿生だった頃、大人に紛れてこっそりと忍び込んだり、
プリマになってからは当時の恋人にエスコートされて踊ったり…
そう、あのひとと出会ったのもこのマスカレードの宵だった。
その人が新しい恋人となり、やがて夫となり、
娘の父となり…そうしてその人を失った私は、
再び―今度は教師として―このオペラ座に招かれたのだ。

「きゃ!」
回想に浸ってぼんやりしていたのだろう、
突然背中に感じた衝撃にふらつく。
どうやら、後からきた人とぶつかったようだ。
「失礼、マダム」
振り返ると、長身を華やなマントに包んだ男は低く囁いた。
低く…甘い声、黒い仮面の奥の薄い緑の瞳。
影に住まう者もこの喧騒に誘われて出てくるのだろうか。
少なからず驚くが、極力顔に出さないように私は微笑んだ。
「いいえムッシュウ、こちらこそ」
男の瞳がすっと細まり、一瞬驚いたような光がよぎる。
しかし、やはり男もそれを巧妙に押し隠し、そのまま会釈し
離れていこうとした、そのときだった。
5262/5:2006/07/28(金) 16:40:18 ID:1mZlItMT
頭がぐっと引っ張られる感触に、思わず小さな叫び声を上げた。
「マダム?」
少々慌てたような声とともに、男のマントが翻る。
今日私は中国風の衣装を身につけており、
それに合わせた長い房飾りのついたイヤリングが
男のマントの飾り紐に絡んでしまっているようだった。
「…これは、重ね重ね失礼」
長い指がそれを外そうと耳朶を撫でた。
羽根が触れるような感覚に一瞬目蓋を閉じるが、
すぐに訪れた鋭い痛みに眉を寄せる。
「…何?」
「…すまない」
目を開けると男が困ったように肩をすくめた。
指先で摘んだ耳飾は、留め金が開いて壊れている。
痛んだ頭のあたりに触れると、結い上げていた髪が
行く筋も引っ張り出されてすっかり崩れてしまっているのが分かった。
「あら、まあ…」
溜息をつくと、男は丁寧に腰を折る。
「折角の宵を台無しにしてしまっただろうか?」
仮面の奥で緑の瞳が何故か面白そうな色を浮かべている。
「ええ、もう踊ることは出来ないわ」
先ほど飲んだワインの所為だろう、私の唇も笑みを造っていた。
「今夜愉しむはずだった分を、埋め合わせさせて頂きたいのだが、マダム」
そう、ワインの所為。
そうして私はもったいぶって差し出された男の腕に、
するりと自分の腕を絡めた。
5273/5:2006/07/28(金) 16:40:51 ID:1mZlItMT
勝手知ったるこのオペラ座。
人気の無い小部屋がどこにあるか位分かっている。
男もそれは同様。
ドアを閉め、廊下の明かりと喧騒を締め出すと、
男は無言でマントを床に落とした。
窓から入る僅かな星明りで、その均整の取れた体つきが露になる。

向かい合って佇むと、少し見上げる形になった。男の腕が腰に掛かる。
自分の顔を覆う仮面を外そうとすると、大きな手がそれを押し止めた。
「マダム、それはそのままで。秘密は暴くと存外つまらぬものだ」
「…そうね、ムッシュウ」
腕の内でくるりと身体を廻される。
背後から抱き締められるような形になり、男の胸板に背を預けた。

項の産毛が男の吐息を感じる。
肩越しに覗き込むように襟元の象牙のピンを抜き取り、太い指が絹紐を絡め取る。
「…それを解いては…結びなおすのが大変なのよ」
「マダム、こう見えて私は器用なのだがね」
斜めに走る飾り結びを総て解かれると、刺繍を施した前当てが垂れ、胸が晒される。
「異国の装いがよくお似合いだ」
下から掬い上げるように弄ばれ、息を荒げながらも首を廻した。
「…あら、フランス風は似合わないと…っ!」
立ち上がりかけた胸の先端をくっと摘まれ、言葉は詰まって消える。
5284/5:2006/07/28(金) 16:41:25 ID:1mZlItMT
熱い唇が耳朶を食むと同時に、下着の中にもぐりこんだ指が私の中心に触れた。
「随分とお待たせしていたようだ」
耳の縁に舌で触れながら、指先が溢れ出していた泉を掻き混ぜる。
溝をねっとりと往復し、柔肉を優しく挟み、中心の孔に先端を差し入れぐるりと廻す。
指と舌が全く同じように動き、私は切ない声を零しながら身を捩った。

「手をつきなさい、マダム」
いつの間にか窓の近くに移動していた。夜も更けているのに通りの喧騒がはっきり見える。
「外から、見えるわ」
カーテンの陰に逃れようとするが、男の腕はしっかりと胸に回っていた。
「皆こんなところなど見てはいない」
「……」
薄白い灯りがで、男の手に揉みしだかれ淫らに形を変える自分の胸を浮かび上がらせる。
「さあ、手を窓について」
艶めいた声に言われるがまま、右手を窓につき、もう片手でカーテンを握る。
硬い絹地の音とともにスカートが捲り上げられる。
湿って張り付いた下着がずらされ、その部分が男の目に晒された。
「美しい。白く滑らかで…美しい」
男の手が双丘をするりと撫で、押し開く。熱く脈打つ部分に冷気が流れ込んできた。

男の熱が当てがわれる。
腿までも流れている蜜を絡めるように掬うように…焦らすように先端が入り口の花弁を擦る。
「…早く…」
腰を突き出すように催促すると、鳥肌が立つほど甘い声が笑った。
「存分に愉しんで、マダム…」
一気に大きな塊が突き入れられ、堪らず窓に縋りつく。
乳房がガラスに押し付けられ、反らせた背が一層撓んだ。
「どうした?」
「つめ、たい…!」
「すぐに暖かくなる」
529名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 16:42:04 ID:1mZlItMT
腰を送り込まれるたび、掌の下でガラスがぎしぎしと不穏な音を立て始める。
男は一度動きを止めると乳房を掬うように後から抱きすくめた。
抱えられ身体の向きを少し変える。
私の身体を壁に押し付けるように、男は後ろから突き上げる。
頬と掌を壁にべっとり付け、男に合わせて腰を動かす。
ぐちゃぐちゃ滑った音と肉のぶつかる鈍い音、布の擦れる音、歯の間から漏れる呻き声、息遣い。
星明りで無彩色に照らされる部屋に、淫らな音だけが響く。
やがて男も私の身体を囲うように壁に掌を押し当てた。
動きが段々と早まってゆく。
ベッドが揺れるようにカーテンや窓ガラスが震えている。

この壁の向こうではマスカレード。窓の向こうは新年の宵。
擦られ、繋がる部分からのひりつくよう快感が頭の中をも掻き混ぜる。
掻き混ぜられ、揺さぶられ、光と極彩色の火花が弾け…!
喉の奥から愉悦の叫びを搾り出し、体をびくびくと強張らせ
そうして落ちる意識の中で、私は心からここに戻ってきたことを感じていた。

朝の光の中、稽古場の小卓の上にそれを見つけて私は眉を寄せた。
ファントムからの不遜極まりない手紙。赤い髑髏の封蝋が傲慢に輝いている。
これを支配人に渡すのはうんざりすることに私の役目で、
支配人が怯えたり怒鳴り散らしたりするのを目にする羽目になるのだ。
溜息と共にそれを手にして、その下に小さな箱が置いてあるのに気付く。
飾り気のない白い箱。
開けなくても分かっている。中身も贈り主も。
私は少し唇を緩めた。
次のマスカレードには、この新しいイヤリングを着けていこうかしら?
小箱を手の中に、私は少し微笑んだまま支配人の部屋へと向かった。
530名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 16:42:47 ID:1mZlItMT
↑これが5/5です。ごめんなさいorz
531名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 09:56:36 ID:7xPnL7pT
ファントムとヤッちゃうことでオペラ座に戻ってきたことを実感するなんて
マダムは自分では気づいてないけど
彼なしではいられない体になっちゃってるのかなあ。
このふたりの関係もエロいなあ、GJ!ありがとう天使様!
532名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 12:49:30 ID:c7TMV8a2
GJ! GJ! GJ!!!
この二人の関係、会話にも大人のエロスが漂ってるって感じでカッコいいなあ。
しゃれた素敵なssをありがとう、天使様!
533名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 21:43:48 ID:CaiHpfyA
マダム〜〜〜vvvv
天使様ご馳走をありがとう!
534名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 21:56:14 ID:5tTlp4qm
書き込ませてください。
原作 エリック×クリスティーヌ
欝展開なのでいやなかたはどうかスルーしてください
535名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 22:10:23 ID:5tTlp4qm
光のない朝。
朝の来ない夜更け。
そう、ここは果てのない闇夜、出口のない迷宮。


はぁはぁとまるで獣のように荒い呼吸をしながら、狂ったように腰を振る
“化け物”を、クリスティーヌは冷ややかに眺めていた。“それ”は
自分の体に乗りあがっているというのに、彼女にはまったく現実味が
感じられなかった。今日の“化け物”は、どうやら上機嫌らしい。

こうして、“化け物”に体を蹂躙されるのは幾度目になるだろうか。
この“化け物”は女を抱いたのは初めてらしく、行為に快楽が
寄り添う事はない。それに、しきりに接吻をせがむのが鬱陶しいことこの上ない。
―――もっとも、その要求をのんだ事はなかったが。

不意に、地下の貯蔵庫につながれた幼馴染を思い出した。彼も、この“化け物”と
同じように自分を抱くのだろうか、それとももう少しは優しく労わって
くれるのだろうかと考え、即座に考えるのをやめた。
そんな関係になる以前に、彼と会うことはもう二度とない。
なぜなら、自分の残りの人生は、この“化け物”に食い荒らされるだけで
終わるのだから。

「―――て」
細い囁き声に、“化け物”は動きを止めた。クリスティーヌの虚ろな瞳には、
もう何も映っていなかった。濁りきったその目に、かつての輝きはない。
「はやく、ころして」
そんな声すらも、澄み切っていて美しかった。
536名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 22:14:53 ID:5tTlp4qm

うつらうつらしたまま、今日も随分な時間がたった。何度も白みかけた意識を、
爪と落ちていたナイフの切っ先で彫った文字に触れることで繋ぎとめる。
ここは、ひどく静かだ。はじめのうちはよく聞こえてきたクリスティーヌの
悲鳴も男の怒声も、最近ではめっきり聞こえなくなった。今では、
ほんの時々に男の声が聞こえるだけだ。

自分は、一体いつまで生きていられるのだろうか。
食事や水ももう届けられなくなった。
喉が焼け付き、目の前がかすむ。理性的に物が考えられない。
ひたひたと忍び寄る死の影に、ラウルは怯える前に安堵した。
このまま生きながらえる方が死よりも辛いのは、火を見るよりも明らかだ。

ゆっくり目を閉じると、あの夏の日がくっきりと思い出された。
乾いた唇が、静かに微笑みをつくった。
「クリスティーヌ……」
穏やかなその呟きを、聞いたものはいなかった。
537名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 22:25:27 ID:5tTlp4qm
うっと醜いうめき声を上げて、男は思い切り背をそらした。
びく、びく、と欲望を吐き出すたびに腰が揺れる。全てを出し切ると、男は
満足気なため息をついた。柔らかな長い髪に顔をうずめる。
しかし、そこからは甘いにおいなどは少しもせず、あるのはただ
肉の腐った匂いのみ。

醜く変色し、そろそろ骨の浮き出てきた『花嫁』を、男は愕然とした
面持ちで眺めた。あんなに若々しく輝いていた頃の面影は、
もはや微塵もない。
「クリスティーヌ……?」
夢から覚めたような心地で、男は呟いた。しかし、彼女は答えない。
最後の瞬間、彼女は小さな声で囁いた。“不幸で可哀想なエリック”と。
あの瞬間のはかなくも鮮烈な美しさを思い出し、男は『花嫁』の唇に触れた。
あの素晴らしいばら色をしていた唇が、はらりと彼の手中に落ちてきた。

「クリスティーヌ、この哀れな男に口付けさせておくれ」
男は震える声で囁くと、『花嫁』の額に口付けた。彼女は逃げるでも怯えるでもなく
大人しくしていた。
「さぁ、お前を本当の恋人のところへ帰してやろう」
そういうと、男は『花嫁』を抱き上げた。回廊を進み、開けた場所に出る。
そこには、壁に寄りかかる死体があった。腐敗は激しく、金の髪ばかりが
美しかった。
男は、『花嫁』をその死体に寄り添わせた。『花嫁』の手に、指輪を握らせる。
「さぁ、私からの贈り物だ……不幸で可哀想なエリックからのだ……
どこへでもいけばいい」
男は呟くと、ふらふらとした足取りで部屋を出て行った。


数週間後、男は珍しく地上にいた。大きなヤドリギの根元にしゃがみこんで、
鳴いているようだった。
不意に、男が大きく咳き込んだ。暫くの間、彼は苦しげに嗚咽していた。
やせ細った骸骨のような掌は、真っ赤な鮮血で染まっていた。
男は強引にそれを拭うと、ふらふらと立ち上がった。
―――さぁ、最後の仕事をしなくては。
彼の大事な大事なクリスティーヌに、今生の暇を告げる、大きな仕事を
終えなければ。

男は、もはや萎えきった足を引きずるようにして、旧友の住むアパートへと
向かった。
538名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 23:19:10 ID:VDxvlCXX
>>537
凄いな、何と言っていいのか分からないけど
原作の先生の狂気に侵された怖さを感じた。
クリスティーヌの言動如何では十分こうなり得る。
うん、凄い。GJです。
539名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 23:56:32 ID:f2oAajJV
>>534
原作テイスト溢れるSS、ありがとうございました。
箍が外れてしまうと人間ここまで狂えるものなのかと。
クリスティーヌの最期の言葉がただただ哀しいです。

ヤドリギって寄生木ですよね? その根元は宿主の樹上ですよね? というわけで何となく
並木道を着飾った人々が往来する頭上を音も無くモモンガのように飛び進む先生を連想。萌えー
540名無しさん@ピンキー:2006/07/30(日) 01:57:08 ID:HLPITW5b
>>534
投下お疲れさまでした。

しかし、カップリングと「鬱展開」だけではスルーしようにも判断できません。
ネクロフィリア(屍姦)と明記して欲しかったと思います。
541名無しさん@ピンキー:2006/07/30(日) 02:23:01 ID:bXu09psK
いや、ヤドリギも根元に寄生する事もあるだろうし…。
(そこも木だ)
ぴょんぴょん跳ねてるのちょっと萌えるケドナーw
542名無しさん@ピンキー:2006/07/30(日) 04:20:45 ID:KIRWsMC2
>>534
私も屍姦と明記すべきだと思う。
屍姦は特殊・・・書かれてなければ避けようが無い。
543名無しさん@ピンキー:2006/07/30(日) 10:22:44 ID:wHJLCU2X
ごめんね、屍姦といえば光市母子殺人を思い出すので本当に欝になってしまうんです。
でも原作の雰囲気はよく出てたよ。
クリスティーヌの最後の言葉はSSの世界でも
思いやりに満ちているけど哀しくて、そして美しいと思う。
544534:2006/07/30(日) 11:40:28 ID:1gu8+28S
携帯から失礼します。すいません、自分が物を知らなかったのがみなさんに不快な思いをさせました。本当に失礼しました。しばらくはロムに徹して、勉強しようとおもいます。
545名無しさん@ピンキー:2006/07/30(日) 13:25:53 ID:ZfBtaP1T
昼休みに昼食を取りながらうっかり見てしまった。
しかもメニューは肉。

いや、普通に食べれますけどね…。

個人的には屍姦でも大丈夫ですが腐敗具合がリアルだ。
ちょっと昔嗅いでしまった死臭を思い出しました。
でもゴシックな雰囲気は好みです。
また投下をお待ちしています。
546名無しさん@ピンキー:2006/07/30(日) 18:56:04 ID:wHJLCU2X
ロムに徹しないでぜひ今日からでも、新しいネタがありましたら
書いてくださいね待ってます!
547名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 22:45:19 ID:NtPnD49G
うん。
屍姦には驚いたが、いいものが書ける天使様だと思うので
また投下してほしいと思う。
スペック表示があれば何も問題は無いよ。
待ってる!
548名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 22:46:47 ID:NtPnD49G
落ちそうじゃないか!
549名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 22:46:58 ID:VLs6qM1J
毎日信じられない暑さだなあ
天使様たちバテてないだろうか
550名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 22:48:57 ID:VLs6qM1J
ケコーン!
551名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 22:57:46 ID:RcFoVBnJ
>>549
西の方にお住まいなんですね
関東は梅雨明けたばかりで朝晩涼しいっすよ
つか、もう8月なんだなぁ・・・
552名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 23:24:15 ID:Iry+CA4P
>534
スペック表示があれば問題ないと思う。
文章はとても好みでした、すごく上手だと思った。
なので、ロムに徹しないでまた書いて欲しいです。
553名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 23:55:46 ID:h4w9eXwI
> 494の続きです。
今度は失敗しないように気をつけます。
5541/9:2006/08/01(火) 23:56:56 ID:h4w9eXwI
イギリス――北欧で生まれ、少女の頃からフランスで暮らすクリスティーヌにとって、
それは未知の土地であった。ラウルは、経済的にも政治的にも発展した国で、フランス
ほど肥沃な大地に恵まれてはいないが、伝統と教養を重んじる美しい所だと教えてくれた。

このパリから、オペラ座から離れ、ほんの一時でもこの苦しみを忘れさせてくれるのなら、
イギリスだろうとスペインだろうと、どこでも良かった。遥かな海峡が、深く暗い憂悶と
自分を遠く隔ててくれるかもしれない。もう間もなく自分の夫となる優しい彼と、幸福の
条件を何一つ欠くことのない生活が送れるかもしれない……。
ラウルの祖父が残した別荘があるというその土地での、新しい暮らしに思いを馳せながら、
クリスティーヌは今日もひとり、フィアンセの帰りを待っていた。

いつもは日が暮れる前に、馬の蹄の音とともに帰ってきてくれる――きっと、私を暗闇に
ひとりにしないように気遣ってくれているのだろう――愛しい人は、ブーローニュの森に
夕日が姿を隠そうとしているこの時間になっても、戻ってきてはくれなかった。
パリの陽はいよいよ短く、窓辺に立つクリスティーヌの影を伸ばしてゆく。

朝早くから自ら馬車を操ってはあちこちへ出向き、外国での新しい暮らしと、このとんでも
ない身分違いの結婚のために、身を粉にしている直向きな婚約者に比べて……自分の無力
なことといったら、どこまでこの身を蔑んでみても足りないくらいだ。
自分のために小間使いのような真似を強いられ、表情には出さなくとも、芯から疲れ果てて
帰ってくる彼を食卓で迎えてあげることも、気をきかせて好きな銘柄のお茶をいれてあげる
ことも……たったひとつの誇りであった歌を聞かせてあげることすらも……今の自分には
できないのだ……。

さみしい。
さみしい、さみしい……!
あの人が恋しい。今すぐあの逞しい胸に抱かれたい。暖かい双翼の中で私を暖めて欲しい。

愛しい恋人も、親友も、師母もいない部屋でたったひとり、クリスティーヌは、心臓の奥
深くに突き刺さるような孤独に襲われていた。
5552/9:2006/08/01(火) 23:57:47 ID:h4w9eXwI
静かに部屋の扉が開き、蝋燭係の女中が手燭を持って入ってきた。慣れた手つきで部屋中
の蝋燭に火を灯すと、一礼だけして去っていった。
部屋がほのかに暖かくなる。クリスティーヌの顔が、ぼんやりと窓に映った。
この数週間で、彼女の顔はひどく変わってしまった。
頬がこけ、目の周りをうっすらと隈が覆っている。瞳の輝きは日を追うごとに失われて、
顔色は病人のように青白かった。

クリスティーヌが自分の顔から視線を外すと、その肩越しに片袖机の上に飾られた真紅の
バラが目に入った。今朝取り替えられたばかりなのだろうか……ほころびかけたみずみず
しい蕾が、花器からいくつも首を伸ばしている。
クリスティーヌは、吸い寄せられるように片袖机の方へ歩み寄った。一本の茎を抜き取る。
丁寧に棘を取られ、黒布のリボンなど結ばれているはずもないそれは、まるで裸にされた
乙女のように頼りなかった。

白いネグリジェの胸元に一本のバラを抱き、クリスティーヌは天蓋の付いたベッドの方へ
歩いていった。バラを枕元に置き、聞く人もいないのに、音を立てないように掛け布の
下へ身体を滑り込ませる。
身体を丸め、両腕で、まるで他人のものみたいにひんやりとした自分の肩を抱く。
首筋に指を這わせ、そっと撫でてみる。
熱い波紋が身体に広がる。
クリスティーヌの手は、いつしか自分の乳房を覆っていた。

彼女の意思が働かないところで、その手は柔らかく脂肪の丘を揉みしだいてゆく。乳首を
摘まむと、甘い感覚が身体に走った。
息を荒くして、不思議な快感に身を委ねているクリスティーヌの脳裏に、突然ある感触が
蘇ってきた。

熱い手……凄艶に、けれどとても優しく私を抱き、ねっとりと腰を滑り落ちる、火のように
熱い手……。あれは……あれは、いつのことだっただろうか……。
思い出してはいけないと、本能が告げている。
あの手を思い出してしまったら、私は、私は……。

瞼を閉じているのに、クリスティーヌの目の前には青緑色の光が煌いて、消えない。耳には
低くて甘い囁きが纏わりついて、離れない。
5563/9:2006/08/01(火) 23:58:26 ID:h4w9eXwI
いけないことだ――。恐ろしいことだ――。
頭の片隅から、理性が止めようとする。
けれど、情欲の吐りに駆られたクリスティーヌには、自分の秘谷へ伸びる手を抑えること
はできなかった。

部屋中に自分の鼓動が鳴り響いているのじゃないかと思うほど、心臓が高鳴っている。
下着の隙間から、恐る恐る指先を差し入れてみる。
しっとりと汗ばんだ気配がし、柔らかい肉が触れた。
少しずつ、慎重に指を進めてゆく――中指の腹に、ぬめった粘液を感じた。
その温かいぬめりをすくい、指をゆっくりと上下させる。次第に何ともいえない快感が
下腹の奥からぞわぞわと湧き上がってくる。
快感が膨張してゆく。ぬめりの量が増す。

この先に進むことを許したのは、好奇心だろうか……女の欲情だろうか……それとも――。
何かに背中を押された気がして、クリスティーヌは自分の蜜壷に中指を侵入させていった。
初めての感触に驚き、一瞬指が止まった。
これが、私の「なか」――。まるで別の生物のようにぬるぬると潤んでいて、柔らかく
伸縮している。きつく指を咥え込んでいるのに、周りの壁はふかふかとしたクッションの
ようだ。

戸惑いとともに、指を抜く。すると、淫らな刺激が生まれた。
たまらず首を仰け反らせる。
それからは、誰に教えられたわけでもないのに、指が勝手に激しく往復するのだった。
片手の指を前歯で強く噛みながら、クリスティーヌは快感に身を躍らせた。
この感覚に、終点はあるのだろうか……奥深くまで白く細い指を差し入れながら、そんな
ことを考える。
ふと、「ここ」に与えられる快感には、あの浮き上がるような、目の前が真っ白になって
弾けるような――ラウルは「いく」と言った――瞬間がないことに気がつく。

あれを体験してみたい……。
クリスティーヌは、抑えることのできない欲望を自分の指先に移し、激しく抜き差しを
繰り返した。
溢れかえる蜜で自分の指と下着をべっとりと濡らし、脚を突っ張って身悶える。
まだ……まだ……もっと……
とうに理性は消し飛び、体中の神経がこの快感を味わおうと、貪欲に集中している。
5574/9:2006/08/01(火) 23:59:00 ID:h4w9eXwI
全身で刺激を貪るクリスティーヌの耳に、突然ノックの音が響いた。
はっと我に返り、身体を硬直させる。

キィ……とドアの軋む音が聞こえ、聞き慣れた靴音が入ってくる。
「クリスティーヌ?」
優しく尋ねるように、ラウルの声が囁いた。
「クリスティーヌ、遅くなってごめんよ……もう寝たの?」

熱く蕩けた自分の中心から指を抜き、絡み付いていた蜜を下着で拭う。
嫌な汗が背中を伝うのが分かった。
靴音はゆっくりとこちらに近づいてくる。

あぁ……! 来ないで!!
お願い、そこで立ち止まって……私を見ようとしないで……!

追っ手から隠れる罪人のように、クリスティーヌは身を固くして祈った。
靴音がゆっくりと近づいてくる。
軽やかな衣擦れ――きっと、別の部屋で堅苦しい正装を解き、着替えてきたのだろう――
ああ、どうして馬車の音が聞こえなかったのだろう?
気づかれてしまったら……ラウルにこんなことを知られてしまったら……恥ずかしくて
死んでしまう! だから、お願いだから、来ないで……!

ベッドの端が沈む気配がし、ラウルが傍に腰掛けたのだと分かった。
頬に冷たい手が触れる。
クリスティーヌは思わず目を開け、その手の主を見てしまった。

「ごめん、起こしてしまったかい?」
いつもと変わらない優しい瞳に安堵する。
小さく首を振って、クリスティーヌは蝋燭の灯に照らされた彼を見た。オレンジ色の光を
まとった彼の髪は、金色の絹のように輝いている。
こんなに高貴な人に愛されながら、私はなんてことを――。
クリスティーヌの心に罪の意識が広がり始めた。

「やっと目処がつきそうだ。今日は君の……ドレスの手配を……何しろ分からないことばかり
だから、随分と時間が掛かってしまってね。それでこんな時間に――。本当はすべて君に選んで
欲しいんだ、クリスティーヌ。生地も、装飾も、レースのひとつひとつまで……。でも、我慢
してくれるね? 今僕が贈ってあげられる最高のものを用意するから」
ラウルが珍しく、押し付けるような物言いをした。
クリスティーヌの花嫁姿……本当なら、彼が初めて手に入れるはずのそれを――ほんの数時間
ではあったが――彼の見知らぬところで奪ってしまった男への嫉妬と憎しみに、今日は何度と
なく苦しめられたのだった。
5585/9:2006/08/02(水) 00:00:09 ID:h4w9eXwI
「クリスティーヌ?」
どことなくクリスティーヌの様子がおかしいことに、ラウルは気がついた。
こうして頬に手を当てたり、髪を撫でてやったりしている時、彼女は必ず自分の手を添えて
くれる。それが今日は、手をベッドの中へしまったまま身じろぎもしないし、その瞳が妖しく
潤んでいる。
「クリスティーヌ……? 具合でも悪いのかい……?」
訝しげに彼女の瞳を覗き込む。
すると、枕元に置かれた一輪のバラが目に入った。
これは――?
ラウルの心臓が急に高鳴り出す。
それが何を意味しているのか、彼はずっと前から知っていた。

「クリスティーヌ……誰かが来たのか?」
そのまま瞬きもせずに、感情のない声でラウルがつぶやいた。
クリスティーヌが視線の先を追う。
白いシーツの上に横たわるバラが、蝋燭の灯に照らされてその影を揺らしている。
ラウルが何を思ったか悟ったクリスティーヌは、戸惑いの表情とともに彼を見つめた。
「クリスティーヌ……?」

こんなラウルの瞳を見るのは初めてだ。
いつもは優しく輝く青い瞳が、冷たく凍りつき、その奥からは怒りと恐怖が津波のように
押し寄せてきている。
クリスティーヌは何か言わなければと口を開いたが、言葉が見つからなかった。

ラウルの両手がクリスティーヌの肩を掴む。
指が食い込む。
「誰かが来たのかって聞いてるんだ、クリスティーヌ!」
目の前にいるのは、自分の知っているラウルではない。強すぎる力と語気に怯え、クリス
ティーヌは声を発することができなかった。

やっとの思いで首を横に振る。
鷲の爪甲のように彼女の肩を捕らえていた手が、少し緩んだ。
ベッドから身体を起こし、ラウルの気を鎮める言葉を探す。どう言えばいい? 何を言えば、
彼はこの激情から帰ってきてくれる? いつもの瞳に戻ってくれる……?
5596/9:2006/08/02(水) 00:00:43 ID:h4w9eXwI
「誰も……誰も来ていないわ……」
クリスティーヌの声が震える。
「誰も来てなんかいないわ……ラウル! どうして――」
ラウルの瞳からは、まだ怒りの色が消えない。激昂の炎を揺らめかせながら、その奥で探る
ようにクリスティーヌを見つめる。
「どうしてそんなことを……聞くの……ラウル」

クリスティーヌの言葉は、ラウルを余計に刺激し、高ぶらせた。彼の手がクリスティーヌの
肩から外され、彼女を包む掛け布に添えられる。
布が波打つその形から、クリスティーヌが僅かに脚を開いているのが分かる。太腿から腰に
かけての曲線と、薄桃色を乗せた白い肌が透けるようだ。
ラウルの手は、何かを確かめるように掛け布を剥いでゆこうとする。
とっさに、クリスティーヌはその手を制してしまった。
「……クリスティーヌ?」

ラウルが怪訝な目で彼女を見るのは、当然のことだった。
同時に、ラウルの胸に、怒りでも嫉妬でもない、また恐怖ともいえない感情がこみ上げて
きた。

――これ以上、進んではいけないのかもしれない――

この布を剥いだら……クリスティーヌが隠そうとしているものを晒させ、確かめてしまった
ら……自分は、まだ見ぬ狂気のような苦しみの坩堝へ突き落とされるのではないか?
無垢で可憐な少女であったはずのクリスティーヌの中には、男を苦しめ、翻弄し、欲望に狂わ
せる魔物が潜んでいるのではないか? 彼女との幼い憧憬に溺れているのは、自分だけなの
ではないか?
ここで一歩踏み込んでしまったら……彼女が魂の奥底から欲し、身体の髄から求めているもの
を見せつけられてしまうのでは……そしてそれは自分ではないのだと――思い知らされること
になるのではないだろうか……。

ラウルの手に重ねられたクリスティーヌの指先からは、微かな震えが伝わってくる。
今にも泣き出しそうに瞳を揺らめかせている彼女は、一体何を隠そうとしているのか……。

ラウルの喉がごくり、と鳴った。
それに怯えたように、クリスティーヌの手が僅かに引かれた。
バラの花の影が、蝋燭の灯に照らされてゆらゆらと歪む。

ラウルは迷うのを止めた――ためらっていては間に合わなくなる――もう一度、あの屈辱を
味わいたいのか? 恋人の心が犯されてゆくのを、ただ傍観するだけの自分に戻りたいのか?
ラウルは荒々しく白い掛け布を剥ぎ取ると、クリスティーヌの腕を引っ張り、シーツの上に
彼女の身体を押し倒した。
5607/9:2006/08/02(水) 00:01:15 ID:h4w9eXwI
彼はクリスティーヌのネグリジェに手を掛け、その薄い生地を力任せに引いた。
腰高に結ばれたリボンが千切れる音がする。
クリスティーヌの足首の方から乱暴に生地を捲り上げ、あっという間に剥ぎ取ると、投げ
捨てるように床に落とした。

クリスティーヌの目は、恐怖に見開かれている。
彼女はその身を守るように、自分の両腕で胸のあたりを覆った。
クリスティーヌが仰ぎ見るその先にいるのは、いつもの優しい婚約者ではなく、獰猛な目
をした一人の男だった。

男は、汗で湿った彼女の下着をぐい、と下ろす。
クリスティーヌは「ああ……」と絶望の声を漏らし、瞼を閉じた。もう彼の目を見られない。
栗色の睫毛に涙が滲む。

クリスティーヌの両脚からは力が抜け、ラウルが下着を抜き取ろうとするのを助けてしまう。
温度と体液が染み込んだその薄い布地が、足首から抜かれる。
膝を僅かに曲げてぐったりと横たわるクリスティーヌの裸体を見下ろしながら、ラウルは着て
いた服をすべて脱ぎ捨てた。

クリスティーヌの上に馬乗りになり、彼女の両手首を掴む。
乳房を覆っていた腕を開かせ、折れそうに細い手首を枕に押し付ける。
「やぁ……っ! ラウ……」
自分を呼ぼうとした彼女の唇を、深い口づけで塞ぐ。
首筋を舐めまわし、尖った顎に噛み付く。
ラウルの中の熱い滾りが、獣のように彼を駆り立てる。

ラウルはクリスティーヌの上から身体を起こすと、彼女の両脚に手を掛け、大きく開かせた。
柔らかいふくらはぎを自分の肩に乗せ、細い腰を持ち上げる。熱い息を吐きながら、太腿
の内側に舌を這わせる。
「ひっ……やぁっ、いやぁっっ!」
クリスティーヌの悲鳴を無視して、その秘奥にむしゃぶりつく。
襞を露出させた入り口を、唇で塞ぐ。舌を奥へと侵入させる。
そこは既にぬるぬると蜜を垂らして、女の匂いを沸き立たせていた。
5618/9:2006/08/02(水) 00:01:51 ID:Dy+D4e87
「クリスティーヌ……もうこんなに濡らして……」
襞を啜り上げながら、ラウルが囁く。
「うぅ、くぅぅ……いやぁ……」
クリスティーヌは泣き出しそうな声で喘いでいる。

「クリスティーヌ……誰を思っていた? 誰を思って濡らしていたんだ?」
ラウルの前歯が、敏感な花芽を噛んだ。彼の言葉はクリスティーヌの情欲を責める。
「ひぃぃっ!」
「答えるんだ、クリスティーヌ……」
舌先が尖った芽の先端を行き来する。
クリスティーヌの腰がびく、びく、と痙攣する。
「あ、あなたを……ラウル、あなたを……!」
途切れ途切れに答える声色に、艶めきと悲しみが混ざる。
「あなたがいなくて、さみしくて……それで……あぁッ!」
ラウルの中指が奥へと侵入した。内襞を拭うようにぐるりと回す。
「それで……?」
「いやぁ……ラウル……! どうして……」
涙交じりの声で、クリスティーヌがまた「どうして」と言った。

どうして……?
自分だって、理由が知りたい。クリスティーヌを手に入れたのは自分なのに、勝利した
のは自分なのに、こんなに不安になるのはなぜだ? 彼女を抱くたびに、その温もりが
遠のいてしまいそうに感じるのは……? 
教えて欲しいのはこちらの方だ、クリスティーヌ! 君は本当に、僕を愛しているのか?

クリスティーヌは目に涙をため、乞うような視線でラウルを見る。
ラウルは中指を彼女の中から抜き、ひりひりと直立した柱を洞の入り口に押し当てた。
クリスティーヌの潤んだ瞳とぴくぴくと収縮する入り口を交互に見ながら、腰を進めて
ゆく。クリスティーヌの腰を抱え、ぐい、と抱き起こして奥まで挿入させた。
「ぅんんっ……」
ラウルに貫かれ、背中に掛かる髪を揺らしながら、クリスティーヌが頭を仰け反らせる。
ラウルは両手で彼女の腰骨を掴み、激しく突き上げた。

「いやっ……あぁ……あぁぁ……」
奥を穿つたびに、クリスティーヌが苦しそうに喘ぐ。瞼を閉じ、睫毛に涙をためて、切な
そうに顔をしかめている。
ラウルは、狂ったように何度も何度も彼女を突いた。
クリスティーヌの胎内から溢れ出る蜜は、ラウルの下腹のあたりまで濡らし、淫猥な音と
匂いを撒き散らしている。
「うぅ……だめ、ラウル、もうだめ……ぇ」
クリスティーヌは喉の奥から、子どものような高い声を搾り出した。
5629/9:2006/08/02(水) 00:02:24 ID:h4w9eXwI
ラウルの興奮はまだ治まらない。
汗ばんだ上半身からは力が抜け、虚ろな瞳を薄く開けているクリスティーヌを、再びシーツ
の上に押し倒す。
両脚を抱え上げて、深く深く柱を差し込む。
「ああぁ……っ!」
緩んでいたクリスティーヌの表情が、また険しくなった。口を大きく開けて、荒い息を吐い
ている。ラウルと繋がっているそこを汗と粘液でびっしょりと濡らし、シーツの上にできた
しみをどんどん広げてゆく。
そんな彼女を責めるように、ラウルはさらに激しく腰を振った。洞の行き止まりを、さらに
押し広げるかのように突く。

「やぁぁ、だめぇ……ああぁ……はぁぁっ!」
クリスティーヌを痺れるような快感が襲う。それはものすごい勢いで彼女の中心を駆け昇り、
頭の先から霧のように広がって散った。
「ラウル……私、私っ……」
唇を震わせて泣くように叫び、クリスティーヌは下半身を大きく痙攣させた。
世界のすべてが吹き飛んでしまったような、激しい絶頂だった。

ラウルはクリスティーヌの腰が小さく跳ねるのを見ながら、腰の動きを速め、大量の精液を
膨れ上がった彼女の中に射った。
ラウルは、自分の身体の中の濁流が堰を切って抜け出てゆくのを感じた。

両腕の下で、クリスティーヌがはぁはぁと息切れをしている。
汗で湿った真っ白なデコルテが激しく上下して、蝋燭の灯を反射する。
太陽に照らされて光る雪のようだ……ラウルはぼんやりとそんなことを思った。

身体の火照りが落ち着いてきたのを感じ、ラウルはクリスティーヌから柱を抜いた。
どろり、とふたりの体液がそこから溢れ出す。
クリスティーヌは濁った湖のような目で、ラウルを見上げた。
底の見えない瞳は、ラウルを捕らえて離さない。
クリスティーヌの唇がゆっくりと動いた。

彼女は、ラウルの名を呼び、
「愛しているわ……」と言った。

彼女の目じりから一筋の涙が落ちてゆくのを、ラウルは夢と現の狭間に迷い込んだような
気持ちで見ていた。

〈続く〉
563名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 15:18:51 ID:uwkla6Ji
ラウルが熱い…!
それに名前すら出てこないのに、先生の存在が濃いなぁ
続き凄い気になります!GJ!!
564名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 20:31:36 ID:jUPPJPe+
>553
GJ! GJ! GJ!
ラウクリの絡みもエロかったんですが、>563の言う通り、
先生の存在感がすごくて……!
565名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 01:50:05 ID:6wWwB4bp
天使様GJ!なんかマジで映画のその後みたいで( ゚д゚)スゴス…
クリスタソたら寂しいからって自分でハァハァ 熱いラウルにハァハァ 続き楽しみに待ってます
566名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 16:09:53 ID:EVLFCtl7
枕元に赤い薔薇があって、自分でしてタってなら
ラウルも熱くなるよな。
今後先生(本体)の登場はあるんだろうか。楽しみですgj!
567名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 17:12:39 ID:q2RYE5Xq
割り込み失礼します。

メグと先生 エロなし 時系列は物語の終了直後
568名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 17:16:22 ID:q2RYE5Xq
ノックの音が聞こえ、ソファで転寝をしていた男ははっと目を開けた。
慌てて身を起こし、ドアに駆け寄る。
「今晩は、ムッシュウ」
ドアの前に立っていたのは、黒い外套に身を包んだ少女だった。
彼女はまっすぐな視線で男を射抜くと、手にしていた紙袋を突き出した。
「御所網のワインもチーズも、あなたのお好きな魚もきちんと買ってきましたよ」
そっけなくそう言うと、少女は男の脇を通って家の中へと入り込んだ。
外套のフードを鬱陶しげに払うと、少女の肩口に美しい金色の髪がこぼれた。
「あぁ……有難う、メグ」
男が惚けたような声で礼を言った。メグは眉を大げさに持ち上げる。
「貴方らしくないわね、ムッシュウ」
メグは台所に立ち、手際よく食材を食料庫にしまいながら答えた。
男が僅かに苦笑いをこぼす。
「ああ、あまり体の調子がよくないんだ」
男はそういうと、葉巻を探り出して火をつけた。煙の匂いに、メグは顔をしかめた。
「葉巻は喉によくないと、あれ程自分でおっしゃっていたのに」
嫌味にも呆れた言葉にも聞こえる言い方で、メグが呟いた。男が本格的に苦笑する。
「もう、喉を大事にする必要もない」
今まで屈んでいた彼女が、ふっと立ち上がった。それから、非難がましい目で
男を見つめる。
「………ママは、あなたの歌声をとても褒めていたわ。神に音楽を授けられた人だとも。
 なのに、随分と無責任なことをするのね」
オペラ座のバレエ・ダンサーであるメグは、現在はこの男の面倒を見ることを
生業としていた。オペラ座はウバルト・ピアンジの死を受けて営業を停止している。
そうでなくても、トップ・テノールは死に、新しいプリマ・ドンナはオペラ座を去り、
その前にプリマを務めていたカルロッタもパリから去った。
つまり、まともなオペラを上演できる状況ではないのだ。
「あなたが、オペラ座に来てくれるならきっと盛り上がるのに」
冗談でもなんでもなく、メグは何度目かになる台詞を男に言った。
しかし、彼はその度に力なく首を振るばかりだった。
「メグ、私には歌うことなどもう出来ないんだ……私の音楽は、もう鳴らない」
料理を始めたメグの背中に向けて、男はぽつんと呟いた。
569名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 17:19:21 ID:q2RYE5Xq
男は、メグの母親の旧友で、ひどく変わった人物だった。
音楽家で、建築家であり科学者であり奇術師。
なんというか、ひどく才能豊かなのは確かだがつかみ所が無い。

彼とメグが出会ったのは、オペラ座の営業停止が改めて発表された日だった。
支配人の二人が沈痛な面持ちでそれを告げた時、歌手も踊り子たちも、
自分の身の振り方に一抹の不安を覚えた。メグももちろんその一人で、
まるで人生の希望が絶たれたような気がして泣き崩れた。
しかし、彼女の母が迷う娘に一言告げた。

―――わたしの知り合いがメイドを探しているの。メグ、その方のお世話をなさい

結局、メグは母親に言いつけられたとおりにその男の世話をした。
男の年の頃はよくわからない。母親と同じ位だろうか。金の髪が所々に生えているが、
頭部の殆どは禿げ上がっている。瞳は薄い緑色で、深い輝きを湛えていて美しい。
年の割には滑らかな肌をしているのだが、顔の半分以上が醜くゆがんでいた。
初めて彼に出会ったとき、メグはその顔を見て腰を抜かしそうになってしまった。
男の醜さに怯える少女に、彼は静かに微笑んだ。
「生まれつきなんだ。だが、もしも君が不快に思うのなら、私は仮面で顔を隠そう」
その言い方があまりにも弱弱しかったので、メグは目を慌てて首を振った。
「申し訳ありません、その……見たことの無い顔をしていたから。
 でも、少し待っていただければ、きっとあたしはあなたのお顔も見慣れますわ」
驚きはしたが、不思議と恐ろしさは感じられなかった。
それどころかどこか懐かしさすら感じ、メグは笑いながらそう答えた。

男は、結局仮面を使うことは無かった。メグも彼の素顔を厭わなかった。
二人は、不思議な関係を築きあげた。
570名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 17:24:23 ID:q2RYE5Xq
「ところで、どうしてそんなに暗い顔をしている?」
夕餉を粗末なテーブルで取りながら、男はメグにそう訊ねた。
彼女は彼の食事に付き合いながら、何の気なしに答えた。
「親友が、旅に出たんです」
その瞬間、男の目がかぁっと見開かれた。沈黙の後に、そうか、と男は静かに答え、
白ワインを口にした。華奢なグラスを弄びながら、彼はぼうっと空中を眺めている。
メグは、自分で調理した魚を食べながら彼が何かを言うのを待っていた。
「……ムッシュウ、話しても?」
「あぁ」
男が答えたので、メグはワインで喉を潤してから小さな唇を開いた。
「あたしにはね、親友がいたの。小さな頃からずっと一緒にいたの。
 大事な、大事な人だったの。だけど、彼女は結婚して、異国へと発ったの。
 とても遠いところよ。もうおいそれとは、会えない―――」
そこまで言って、メグははっとした。男の目が、ひどく落ち窪んでいたのだ。
上目遣いに様子を伺うと、彼は静かな顔で彼女を見つめていた。
「そうか……」
抑揚の無い声で、男が呟いた。メグは沈黙を恐れるように、べらべらとまくし立てる。
「彼女、あたしの顔を見た途端に泣き出したのよ。子供みたいに泣くのだもの。
 びっくりしてしまったわ。それでね、どんなに遠くにいても、あたしの踊りを
 覚えているって言ってくれたの。あたしのこと―――……」
メグが不意に言葉を詰まらせた。親友との今生の別れを思い出し、
こみ上げてくるものがあったのかもしれない。

シャニュイ子爵夫妻は、今日の昼間に北へと発った。子爵は財産をほとんどを
処分し、祖国を捨てた。二人は、どうしてもこの町、この国に
留まりたくないのだと口を揃えていた。
「それで」
黙りこくったメグを、男が促した。メグは泣き笑いの表情を浮かべ、言葉を続ける。
「……忘れないって。あたしを本当の親友だって言ってくれた。
 どこにいても、幸せを祈っていると。いつだってあたしのことを思うって……」
遂にメグが泣き出した。男は静かに、彼女の震える肩を見つめている。
暫くの間、メグは涙を流し続けた。泣き濡れる親友を励ますために、押し殺した
あの寂しさがあふれ出てきたかのごとく。
571名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 17:26:13 ID:q2RYE5Xq
「ごめんなさい……」
泣きやんだメグが、ハンカチで口元を押さえながら男に謝った。
男はやさしい目をしている。泣かせてくれたのだ、と彼女は唐突に理解した。
「なぜ謝る」
男は、少しばかり憮然としながら言った。照れているらしい。
不器用な優しさに、メグはまた泣きたくなってしまった。
「……ムッシュウ、聞いていいかしら?」
「なんだ」
目元の涙をぬぐいながら、メグが口を開いた。
「あなたが、クリスティーヌの<音楽の天使>だったのでしょう?」
男の穏やかな緑の目が見開かれた。メグは目元を綻ばせて、ワインを飲んだ。
「………あぁ、そうだ」
男が、小さな声でメグの疑問を肯定した。彼女はふわりと微笑むと、
男の空になったグラスにワインを注ぐ。
「愛していたの?」
グラスから目を離さないままに、メグが問うた。男は目を伏せ、唇をそっと持ち上げた。
「ああ……愛していた。この世の何よりも」
深い声で、男はこの問いも肯定した。メグは顔を上げない。
グラスの淵から、ワインが溢れた。
572名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 17:32:26 ID:q2RYE5Xq
「おい!」
驚いたのか、男が声を荒らげた。メグは俯いたまま、声を押し殺して泣いている。
「メグ、どうした?なぜ泣く?」
「……あなたが、そんなこと言うから」
メグはそういいながら、今度は嗚咽を漏らし始めた。ぐずぐずと泣き濡れる少女に、
男はほとほと困り果ててしまった。
「メグ、何が気に障ったんだ?」
メグは首を振り、いっそう激しく嗚咽した。男はぎこちない手つきで、
少女のほっそりとした肩に触れた。彼女は彼の手に縋って泣いた。
「……あなた、かわいそうなひと。そして、あたしも可愛そうだわ」
すすり泣きの隙間から、メグはそう吐き捨てた。困惑する男に、彼女は燃えるような
憎悪の視線をそそいだ。
「ムッシュウ、答えて」
どこか蓮っ葉な言い方で、メグが迫った。その迫力に、男はたじろいでしまう。
「あ、ああ。なんだ?」
「あなたがあたしの父親なんでしょう?」
鋭い針のような問いかけに、男は息を呑んだ。メグは唇を噛み締めて、
彼を殆ど睨むように見つめている。
「………ああ。そうだ」
メグの視線の強さに観念したのか、男が静かな声で答えた。
彼女は、自分で尋ねておきながらどこか驚いたような顔をした。
桃色の唇から、ため息が漏れる。
「ねぇムッシュウ……ママのこと、愛していた?」
一転して弱弱しい口調で、メグが囁いた。男は絶望的な顔つきになり、
逡巡するように視線をさまよわせた。長い長い沈黙の後、口を開いたのは
彼女のほうだった。
「………もう、いいわ。何も聞きたくない」
男は辛そうに目を伏せた。だけどね、とメグは溢れる涙を拭いながら言葉を続ける。
「ママはあなたを愛しているわ」
そう告げられ、男は俯いた。彼女は、優雅に椅子から立ちあがった。
「……あたし、もうすぐ結婚するの」
その一言に、男も驚いたように立ち上がった。メグは、男のそれにそっくりな
優しい緑色の双眸を細めた。
「もう、ここにはこないの」
男は、ひどく傷ついたような顔をした。その顔を見たメグが、泣き出しそうな顔で
ゆったりと微笑んだ。
「ママの気遣いと、あなたの誠実さに感謝します。ごめんなさい、さっきは
 言い過ぎたわ―――あなたがそう思ってなくても、あたしの父親はあなただけだわ」
メグは微笑んで、男に近寄り彼の首に腕をまきつけた。
愛情を込めて、男の頬にそっと唇をつける。
「ありがとう、パパ」
男は、静かに少女の背に手を回した。二人は、それから随分の間抱き合っていた。
573名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 17:40:19 ID:q2RYE5Xq

以上です。メグは金髪、マダムは黒髪、先生は金髪。
ってことはそーゆーことですよね。
メグにも幸せになって欲しいものです。
574名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 19:27:52 ID:fanoDAY/
>>573
ゥワァァァァァァァァン良い話だよ〜〜〜。・゚・(ノ∀`)・゚・。
天使様GJです。
メグもパパもママも幸せになってほしいよ〜〜。
三人で仲良く一緒に暮らせればいいのにってマジに思っちゃった。

んでメグの婿は入り婿で、子どもも孫も出来て大所帯になり、
波平のようなマスターに・・・
575名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 22:11:13 ID:aQlFo7Ak
>573
GJ! GJ!
先生を自分の父親として肯定しているメグに涙。
しかし、先生はクリスは愛してたけど、マダムは愛してなかったのか……。

>574
頭髪だけは今でも波平っぽいよなw
576名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 03:36:40 ID:Iq0dz5gQ
>波平
おい、どうしてくれる、想像してしまったジャマイカw
577名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:01:34 ID:Rw6TJRCe
投下します。「ファントム残日抄」の続きです。
ファントム、ラウル、クリスティーヌ(ちょびっと)が登場。

いろいろと、他力本願な構成になっています。orz
全部で10レス分です。
578愛は不死鳥 1/10:2006/08/07(月) 00:04:42 ID:Rw6TJRCe

ここはオペラ座地下深く、昼なお暗いファントムの宮殿である。クリスティーヌは稽古で
いない。―――前作と一字たがわぬ安直な出だしの下、ファントムは書斎で研究・実験に
いそしんでいた。
くらりと目眩を感じ、机に手をついて我が身を支える。
「くっ……、休息が必要のようだな………」
いつものクセで独りごち、彼はよろめきながら長椅子へと向かった。

ふと、鏡に目が行く。
「………………!!!!!」
彼は激しい衝撃におののいた。
いや、顔の右側を見たのではない。それは通常モード―――仮面で覆われている。だが
しかし、秘かに自信を持つ左顔が、今や眼窩は落ちくぼみ、頬はこけ、やつれ果てて
いるではないか。自慢のセクシーボディも、肩は尖り、ズボンはゆるゆる………。
あまつさえ、はだけたシャツから覗く胸板は、確実にその厚みを失いつつある。

『クリスティーヌ争奪杯』からラウルが自主撤退して以来、ファントムのお務め回数は
天文学的数字にまで跳ね上がり、またしても狂おしくも疲労困憊の日々が続いているのだ。イケてる男のやつれ姿は、それはそれで、そそるものがあるとはいえ、明らかに現在の
彼は、危険水域に迫っていた。

特注のオペラ座謹製『精力増強! 高カロリー・高タンパク弁当』も、日夜消費される
莫大なエネルギーには追いつかない。2005年映画版怪人の体質を受け継ぐファントムに、
よもや激ヤセに悩む日々が訪れようとは、いったい誰が想像し得たであろうか―――。

変わり果てた己が姿に、思わず彼は両頬に手を当て、口を開けた。さよう、エドヴァルド・
ムンクの名画『叫び』のアレである。それがまたピタリと決まり、活人画さながらの、
おどろおどろしい迫力さえ漂わせていた。

「このままでは、原作の爺さん怪人へと、まっしぐらではないか………」
彼は打ちのめされたがごとく、長椅子にどさりと倒れ込んだ。
「いや……、無論のこと、我が心の師、私のルーツとも言うべきあの方への敬愛の念は、
いささかも変わるものではないが………」
根強い原作ファンへのフォローは、決して怠らないファントムであった。

579愛は不死鳥 2/10:2006/08/07(月) 00:06:37 ID:Rw6TJRCe

といえども、研究は急務であった。今の暮らしが続けば、官能の炎(『ほむら』と読んで
いただきたい)どころか、命の炎(ここは『ほのお』で結構)すら消えかねない。
ファントムは己が生存を懸けた、悲愴なる闘いに挑んでいたのだった。

「愛しい天使よ……、おまえのニンフォマニアは、きっと私が治してみせる。おまえが
完治し、私のセクシー度パラメータが復活したあかつきには、ふたりして(適正レベルの)
『めくるめくエロスの世界』へと旅立つのだ! ………ぜぃぜぃ」
体力の限界を超えた3行もの決意表明に、ファントムの息が上がる。彼は虚ろな眼差しを
仮想・クリスティーヌへと向けた。
と、そこへ―――。

「えいこ〜ら〜〜、えいこ〜ら〜〜、も〜ひ〜と〜つ、えいこ〜ら〜〜♪」
能天気な、だが朗々たるテノールが、ほの暗い巌屋に谺する。
今やファントムの『パシリ』へと身を堕とした自称・イケメン子爵のラウルが、家紋入り
スワンボートをパタパタと漕ぎながら登場した。己が境遇を知ってか知らずか、彼の
美声はあくまでも明るい。
何故かファントムの胸中に、鬱勃たる憎悪の念が渦巻く。

「こんにちは〜、君あてに届いた荷物を持ってきたよ」
もはや勝手知ったる他人の家、ファントムの宮殿にラウルは遠慮なく上がり込み、幾つかの
箱を運び入れた。
「え〜と、これが今日ジャポンから届いたもので、こっちは書籍と薬品だね」

箱の中身は以下のごとし。
 栄養補助食品:うなぎパイ、養○酒、蝮ドリンク、スッポン(3匹目)、チョウザメの卵、
        おくら納豆&やまいも、etc. etc...(払いはラウル)。
 薬品:筆者には読めぬ、ドイツ語のラベルが貼られたもの各種(払いはラウル)。
 書籍:『これであなたも催眠術の達人!』
    『男が自信をとり戻す時』
    『心理療法詳説:症例8 ニンフォマニア』
    『ホルモン治療の現状と展望』
       ・
       ・
       ・
   その他、ハウツー本から専門書まで各種(これまた払いはラウル)。
版元は言わずもがな、エロパロ界きっての老舗、ダール社である。

580愛は不死鳥 3/10:2006/08/07(月) 00:08:51 ID:Rw6TJRCe

「ご苦労だった。……しかし、ここへ来る時に耳障りな歌は禁ずる。それと、あの悪趣味な
舟は、何とかならぬのか………」
長椅子に寝そべったまま、ファントムは陰鬱な声音で呟く。
「え〜? 君の髑髏ボートだって相当の………。君はスワンベッドを持ってるから、僕は
スワンボートにしてみたのさ。僕のイメージに合っていると思うんだけど。白鳥の騎士
………なんちゃって(・∀・)」
貴族にしてはいささか軽佻浮薄とも言える冗談を、ラウルは躊躇いもなく口にする。
「ふん……、確かに、お主のキャラには似合わなくもない………」
「でしょ? ンハッ☆」
皮肉も通じぬ忌々しき元・恋敵の天真爛漫さに、疲労が倍加するファントムであった。
 
「まあ良い……。荷物を片付けたら、茶でも淹れろ。お茶請けはうなぎパイだ」
下僕のごとき扱いに、さしもの子爵も気色ばむ。
「ファントム、いったい僕をなんだと思ってるの?」
「パシリだ。決まっておろうが」
ファントムは傲然と言い放つ。
「パ、パシ………! ひどいよ、僕は一応このオペラ座のパトロンで、注文への支払い
だって、僕がしてるのに………」
「当然であろう。私は当劇場随一の売れっ子オペラ作曲家にして、新事業の企画・構成
にも携わる、マルチタレントのジーニアス。その私に、大浴場の、しかも何故か女湯へと
流れ落ちたような、痴れ者のパトロンが仕えるは宇宙の理! ………ぜぃぜぃ」
またしても3行もの長広舌をふるい、ファントムは息を切らせた。

「うっ……! そ、それは………」
いつぞやのトラウマが甦りかけ、思わずラウルは目を逸らす。
ファントムは人差し指をクイクイと曲げ、身の程知らずの愚か者を招き寄せた。そして
傷口に塩をすり込むかのごとき、効果抜群のひと言を耳元へ囁きかける。
「役立たずの、小鳥………」
「………ガーン!!!…………」

_| ̄|○

覿面であった。
肺腑を抉るクリティカル・ヒットを喰らい、小鳥ラウルはその場にくずおれる。
荒鷲ファントムは、生命の危機に瀕する己が現状をも忘れ、胸中でほの暗い快哉を叫んだ。
疎ましきラウルの歌声に対しても、溜飲が下がろうというもの―――。

581愛は不死鳥 4/10:2006/08/07(月) 00:10:39 ID:Rw6TJRCe

「この事、ゆめゆめ忘れぬよう、しかと心得よ」
「ははーっ、………う、うぅぅぅ…………」
アイデンティティの崩壊か、臣下のごときいらえがラウルの口を衝いて出る。一瞬の後、
自らのヘタレさと愚かしさに、彼はよよと泣き崩れた。
「うぅぅ……えっ、えっ………ぼ、僕って、駄目なヤツ………。やっぱり君には到底、
敵わないんだね………」
「分かれば宜しい。……ふっ、鼻水など垂らして………うい奴じゃ。ほれ、チーン」
しばし勝利の脳内美酒に酔いしれたファントムは、しかる後に仏心を起こしたか、子爵の
洟をかんでやった。

「ぐすっ、すん……、ありがとう。君って、意外に優しいところもあるんだね」
「そう、分かったかね、ラウル君。……それでは、お茶を淹れに行きたまえ。私のために
うなぎパイも忘れるでないぞ………」
ファントムが厳かに命じると、元・恋敵は素直に台所へと向かった。
どのみち、ファントムから情けを掛けられる時点で、『ラウル=負け犬』認定は必定で
あった。

582愛は不死鳥 5/10:2006/08/07(月) 00:12:45 ID:Rw6TJRCe

「僕ね……、○○伯爵令嬢と婚約することになったんだ」
必死とも形容すべき面持ちで、うなぎパイを黙々と口に運ぶファントムへ、ラウルが
思わぬ新事実を告げた。ちなみに、○○には適当な苗字を入れていただきたい。
「○○伯爵令嬢……? ああ、あの………」
「ぎくっ! ファントム、知ってるの? まさか、荒鷲が出動………」
「たわけ! そのような事、全身全霊を捧げ、死を賭してまでクリスティーヌを愛する
私が、する筈もなかろう。……まあ、母親の方と、その昔ちょっとな………」
「ほっ、母親か……。でも、やっぱり出動はしてたんじゃないか」
「黙らっしゃい。……お主へ有益なアドバイスを授けてやろうかと思ったが、要らぬ話の
ようだな………」
「い、要ります! 荒鷲先生、ぜひともご教授をっ!」

調子の良いラウルの懇願に、ファントムは鷹揚な態度で頷きつつ、やんちゃに明け暮れた
青春の日々を振り返る。
『愛の狩人』の異名をとった、二十代のセクシー怪人・青年ファントムの前には、貴族の
奥方から踊り子まで、進んで脚を開いたものであった。クリスティーヌもまだ幼い無垢な
少女で、彼を音楽の天使とも父親の魂とも、プラトニックに慕ってくれた。
なんと遠くまで来てしまったことか―――。
しみじみと、来し方行く末に思いを致すファントムであった。

注1)前作の『ファントム残日抄』とは、いささか前提が違うと、疑問に感じる読者も
おられるかも知れない。ま、そこはそれ、成り行きってことで、脳内記憶を書き換えて
いただきたい。ひとつ、宜しく………。

それはさておき―――。
「先生、アドバイスを!」
ラウルの嘆願で、ファントムは現実へと引き戻された。
「そうであったな………。お主も貴族の端くれなら聞き及んでもおろうが、貴族の女と
いうものは、奥方も令嬢も、淑女の風を装ってはいるが、あれでなかなか………」
「は、ハゲシイ、とか………?」
「まあ、そのようにも言うか………」
「す、スキモノ、だとか………?」
「お主も、身も蓋もない言い方をするものよの……。だが、当たらずといえども遠からず。
殊に○○伯爵夫人には、この私ですら、ややもすると手こずらされたものだった………」
「ぎくぎくっ! ……と、いうことは……もしかしたら、令嬢も………」
「うむ。お主が相当に励まねば、令嬢は満たされぬ心と身体を………」

「ぎくぎくぎく〜〜っ!!! じゃ、じゃあ……僕がケダモノ、いや、荒鷲になれなければ……」
ラウルは再びくずおれかかる。
そんな子爵を眺め、ファントムの胸中は、昏い喜びで満たされていた。さよう、不届き
にも小鳥の分際で、愛しい天使に手を出した忌々しき若造を、この男は決して赦しては
いなかったのだ。事実は、絶倫天使にラウルが襲われたと言えなくもないのだが―――。

583愛は不死鳥 6/10:2006/08/07(月) 00:14:22 ID:Rw6TJRCe

ラウルはやにわにうなぎパイを掴むと、ガツガツと頬ばり始めた。
「あっ、何をする! それは私のうなぎパイだぞ!」
「代金を払ったのは僕だ! ……もぐもぐ」
大の男が二人して、うなぎパイを奪い合う。描写するのも情けない光景であった。
「むぎゅ〜〜っ! や、やめれ〜、口がアヒルみたいになっちゃうよ〜〜!」
ラウルの唇をひねり潰さんとしていたファントムは、ハッと我に返る。所業の愚劣さに
気づいたのではない。一部ファンの間ではツボとされる己が『アヒル唇』の魅力を、この
若造に分け与えてしまう愚に気づいたのだ。

「ふん……、まあ良い。そんなものの二切れ三切れ、くれてやるわ」
ファントムは内心の口惜しさを押し殺してうそぶくと、子爵の唇から手を離した。
「だが、お主は今からうなぎパイを食す必要はない。私が提案するのは、基礎体力を
つけておくことだ」
「基礎……体力………?」
ラウルはうなぎパイをごくりと呑み込み、ファントムの言葉に耳を傾ける。
「さよう、まずは『へび運動』。これは原作より継承されてきた、由緒ある所作だ。
内臓の機能を整え、精力を高めるのに役立つ(というのは嘘だ)。後の世にジャポンで
考案される金魚運動は、これが起源とも言われる(という説はない)。やってみなさい」

ファントムの指導の下、ラウルは気をつけの姿勢で、地べたをクネクネと這う。
「バリエーションとしては、両腕を挙げて頭上で合わせるポーズもある」
この所作が実際に、角○版原作227頁に記載されていること以外は、嘘八百を並べ立てる
ファントムである。実は彼自身、この所作はいかがなものか、少なくとも己がセクシー・
イメージにはそぐわぬと考えているのだが、原作怪人への敬意ゆえ、その疑問を口にした
ことはない。

「なかなか宜しい。日頃からオペラ座の廊下などでも励むように。おお、そうだ。じきに
クリスティーヌも戻ってくる。彼女の前でして見せれば、お主へ慈愛の念を向けてくれるで
あろう………」
争奪杯から自主撤退したとはいえ、この若造が未だわずかに彼の天使へ未練を残している
ことを、ファントムは察知していた。
「えへ……、そうかな? クネクネ、クネクネ………」
ファントムの昏い企みにも気づかず、『へび運動』の習得に邁進するラウルであった。

584愛は不死鳥 7/10:2006/08/07(月) 00:16:49 ID:Rw6TJRCe

「次なる訓練には、器具を用いる。奥の戸棚を開けてみなさい」
言われた通りにラウルが戸棚の扉を開けると、見慣れない物体があった。
「これは、私が十代の頃に使用していたトレーニング機器だ。体力増強にもシェイプアップ
にも、そしてメンタル・トレーニングにも絶大の効果がある」
「これは………?」
「オモイ・コンダラだ。婚約祝いとして、お主へ贈呈しよう」
「オモイ・コンダラ! これがあの………」

注2)オモイ・コンダラ。ジャポンのスポ根マンガ史上に燦然と輝く、伝説のトレーニング
機器。これを用いれば、豪速球から面妖な魔球まで、なんでもござれの逸品である。熟達
すると目から炎を発することも可能。
使用時には、雄壮な軍歌調の旋律がどこからか聞こえてくるという、ホーリー・アイテム
でもあると伝えられる。その材質・形状は、謎に包まれている。
ちなみに、上半身強化用の『大リーグ○ール養成ギプス』と併用すれば、効力は倍増。

「今後は、我が宮殿までの階段昇降時に、これを装着するのだ。さすれば、お主の小鳥も
パワーアップを遂げ、令嬢を法悦境へといざなうのみか、どんな淑女もよりどりみどりの
『めくるめくエロスの世界』も手に入れられよう。間違いない」
「め、めくるめく………ごくっ。先生、ありがとうございます! 僕、頑張ります!」
「うむ、励めよ、青年………」
鷹揚に頷きつつ、忌まわしき思い出の品を手放すことに、ファントムは胸中で解放感を
覚えていた。

実はこの機器、ファントムのトラウマとも言うべき、忘れたい過去と直結していた。
少女だったマダム・ジリーにオペラ座地下へと匿われ、与えられる餌、いや、食料を
座して貪り喰らううちに、傷つき痩せこけた少年だった彼は、いつしか汚部屋に棲む
肥満児のオタクへと、変貌を遂げてしまったのだ。

見かねた当時のマダムは、結婚のためオペラ座を去る前に、ファントムへこれを与えて
肉体改造を命じた。その後の華やかなりし彼の青春時代は、この機器の賜物だったので
ある。彼が今でもマダムに頭が上がらないのは、この過去のためでもある。

585愛は不死鳥 8/10:2006/08/07(月) 00:18:13 ID:Rw6TJRCe

そうこうする内に―――。
「ただいま〜、マスター」
愛する天使がご帰還である。今も彼は送り迎えを免除されていた。楽屋裏との行き帰りの
道行きで交わす愛の語らいができぬのは、寂しい限りだが、日々のお務めを果たすのに
青息吐息のファントムなのである。
「おかえり、クリスティーヌ、愛しい天使………」
休息とうなぎパイとで足取りも確かになった彼は、いそいそと天使を迎えに出る。そして
若造に見せつけんとばかりに、ひしと彼女を抱き寄せると、息も詰まるような口づけを
送った。
「あん、マスターったら……あぁ……うふ…ん………。クリス、幸せ………」

蕩けるがごとき眸のクリスティーヌへ、ファントムは必死で気息を整えつつ、優しい
眼差しを向ける。涙目のラウルを目の端に捉えているのは、言うまでもない。
「クリスティーヌ、今日は子爵が訪ねてきたのだよ」
「あら、こんにちは、(役立たずの)小鳥ちゃん」
「……ぐさぐさぐさっ!!!…………」
無邪気にも残酷な天使の挨拶に、ラウルの癒えきれぬ心の深手が疼く。
存分に我彼の差を思い知らせたファントムは、にこやかに口を開いた。
「せっかくだが、子爵はこれでお帰りだそうだ。な、ラウル君」
そして『へび運動』を披露するよう、ラウルへ目で合図する。

かつての想い人からの慈愛の念、せめてもそれを期待して、ラウルはにわか特訓した
『伝統の所作』で、船着き場へとクネクネ這っていった。ちらりと見上げた天使の眸に、
それらしき表情は浮かんでいないような気もしたが、思い過ごしと己に言い聞かせる。
「その調子だ、ラウル君。以後も励めよ。………忘れ物だ」
荒鷲先生はなぜか上機嫌の様子で、オモイ・コンダラをスワンボートへと放ってくれた。

もうクリスティーヌは過去の存在、これから訪れるのは、○○伯爵令嬢との愛慾の日々、
そして、めくるめ………ごくっ。ラウルは前向きな思考に頭を切り換えると、パタパタと
家紋入りボートのペダルを漕いで退場した。
「ラウルって、キモイ………」
見送るクリスティーヌが、ファントムの思惑通りの台詞をぽつりと呟く。この声がラウルに
届かなかったのは、彼にとり幸いだったと言えようか。

586愛は不死鳥 9/10:2006/08/07(月) 00:19:45 ID:Rw6TJRCe

「愛しい天使よ、今日の稽古は、きつかったのではないかね?」
「そうなの、クリス、くたびれちゃった。でも……うふん………」
「いや、おまえは疲れている様子だ。少し休んだ方が良い」
「う〜ん、そう……かしら………?」
「そうだとも。おまえは疲れている………ほーら、眠くなってきただろう?」
「うふ……ん、なんか、眠くなって……きたかしらん………」
「そうだ……おまえは眠りたいと思っている………そーら、瞼が重くなってきた………」
「ふぁぁ………ふぅ……ん……zzzz………」

寝室へとクリスティーヌを導きつつ、彼は催眠術を駆使していた。
彼女への稽古をことさら厳しくするマダムとの連繋プレーにより、お務め回数を抑えて
ファントムの消耗を少しでも食い止め、研究の時間を確保する作戦が、徐々に実を結び
始めているのだ。
ちなみに、今回の技は『簡単にできる催眠術入門』(ダール社刊)による。


それからも、ファントムの涙ぐましい努力は続いた。そしてついに、ジーニアスたる
英知と才能を結集した、筆者には解説不能の研究が、成功裡に終了したのだった。
彼の愛する天使はニンフォマニアから脱却し、それでも通常よりは遙かに強力で感度の
良い、まさにファントムにはうってつけの『官能の天使』へと生まれ変わった。

それのみならず、研究の過程で偶然にも解き明かされた秘儀をもってして、ファントムは
荒鷲から不死鳥へとメタモルフォーゼを遂げていた。人類史上最強のセックス・シンボル
『フェニックス・ファントム』の誕生であった。
日々繰り広げられるは『めくるめくエロスの世界』。―――詳細は、【仮面】オペラ座の
怪人エロパロ【仮面】:まとめサイトをはじめ、あんなサイトやこんなサイトを参照して
いただきたい。

ラウルも首尾よく○○伯爵令嬢との結婚を迎えんとしていた。衆人の冷たい視線もなんの
そので励みに励んだ『へび運動』と、オモイ・コンダラのおかげであろうか。
ファントムは解説書の仏語訳を添えて、『愛の○りかご』を結婚祝いとして子爵に贈った。
もはや場所ふさぎの無用の長物が必要となる日など、来る筈もないからである。

587愛は不死鳥 10/10:2006/08/07(月) 00:22:15 ID:Rw6TJRCe

今、ファントムとクリスティーヌは、オペラ座の屋上で朝陽を見つめていた。暁の太陽が、
ふたりを祝福するかのように神々しく昇っていく。
彼は太陽を指さし、傍らに寄り添う永遠の恋人へ告げた。
「ごらん、愛しい天使よ、にっぽんの、もとい、オペラ座の夜明けだ。あの太陽に向かい、
我々はさらなる『めくるめくエロスの世界』へと飛翔するのだ」
「マスター、クリスはこの宇宙で一番の幸せ者よ……… je t'aime〜〜!」

ふたりはひしと抱き合い、熱き口づけを交わす。
背景を埋め尽くすのは、無論お約束の、咲き乱れる紅き薔薇の花々であった―――。


      ☆、。・:*:・゚`★.。・:*:・��Fin��☆、。・:*:・゚`★.。・:*:・

                ↑
                |
  「Fin」の文字は、流麗なアルファベット書体に脳内で変換していただきたい。
588577:2006/08/07(月) 00:24:20 ID:Rw6TJRCe
以上です。
読んでくださった方、ありがとうございます。
しょっぱなから、改行に失敗……すみません。
589名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 01:59:27 ID:gUdABQD6
GJ!
相変わらずツボをつく笑いをありがとう!!
何とか持ちこたえたファントムに乾杯。
590名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 09:31:34 ID:XqbUU4SH
ちょ、先生w適性レベルオメwww
ラウルに仏語訳解説書付けてやるなんて意外と親切なw
肉体は改造できても汚部屋は残っちゃったのかwww
なんかもう色々面白かったですgj!
591名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 12:54:43 ID:jm+bYNkt
ちょw天使様最後投げたwwバロスwwwwGJ!!
とりあえず先生生き延びることができるんだなw絶倫天使に襲われたラウルワロス
592名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 15:19:10 ID:g6wFc0Ke
かつて小鳥ちゃんはマスターだったのに、
いまやラウルの称号に!クリスもさりげなくヒドスww
ダール社気になって前スレまで探しに行ったよwww
593名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 23:00:58 ID:/wb5qnMp
いんやー、笑った笑った。
ここは類稀な天使様がいるスレだ。
ありがとう!!!

これからもこのスレが投下で賑わいますように。
594名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 21:19:56 ID:Hox0Oiv9
以前マスターに赤蝮ドリンクを贈呈した者です
新製品をお勧めに参りましたが
マスターはもう不要なんですね…ようございました
シャニュイ子爵…お使いになりますか?
595名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 10:31:01 ID:id5G8sAA
ファントム×クリスでエロほとんど無し
クリスが地下に遊びに行っています
5961/3:2006/08/09(水) 10:32:47 ID:id5G8sAA
「とっても変わったお花でしょう?
カトレアに似ているのだけれど、ちょっと違うような気もするし」
そう言ってクリスティーヌは首を傾げた。
手の中にあるのは1輪の蘭の花。本人が言うように
確かにカトレアに似ているがもっと落ち着いた薄紅色で、
花弁も中央の弁唇も肉厚に見える。
贈られた花束の中に入っていたが、見たことの無いものだったので持ってきたというのだ。
「パフィオペディルムの一種か…どちらにしても珍しいものであることに変わりは無い」
「レメル様から頂いたものなの。貿易をしていらっしゃるから、変わったものをお持ちなのね」
瞳を輝かせるクリスティーヌにファントムは少し眉を寄せる。
この年若い弟子の歓心を、自分以外のものが買っているのを見るのは多少
…ほんの少しだが、癪である。ファントムはクリスティーヌの手から花を奪い取った。

「マスター?」
困惑した声を無視し、手の中で花をくるりと廻す。
「こういった蘭の故郷は暑い国であることが多い」
「まあ、そうなの?」
興味を惹かれたようで、クリスティーヌは身を乗り出す。
ひとつ頷いてからファントムは視線を花に移した。
「南の国の、暗く繁った森の中、」
指が、つと花弁の縁をなぞる。
「熱く湿った叢の下で、蕾は綻び花弁を開く…」
そっと肉厚な花弁を摘み、ゆっくりと擦り合わせる。
「慎ましやかに閉じていた花弁は色付き、解け、開き
虫を誘う濃厚な香りを撒き散らし始める」
ふとファントムは花から瞳を上げ、クリスティーヌと視線を合わせる。
少女の上半身がぴくりと揺れた。
5972/3:2006/08/09(水) 10:33:35 ID:id5G8sAA
「虫は…濡れた叢を掻き分け…」
すいと指が花の上を梳くような動作を見せ、
そうしてファントムは花弁に顔を寄せた。
「そうして自らを誘う花を見つける」
息を飲む小さな音。
しかしそちらを見ようともせず、ファントムは舌を出すと
花弁の一枚をべろりと舐め上げた。
「…!」
クリスティーヌは息を詰めて目を見開いた。
花弁が蝋燭の揺らぎにあわせぬらぬらと輝く。
「匂いと色を愉しむように、熱い滴に塗れた花弁と戯れ…」
そのまま唇で挟むように揺らし、ゆっくりと舌を絡める。
喉のなる音と共に、少女が椅子の上で微かに身を捩る気配がした。
ファントムは唇を中央の弁唇へと移す。
捻れたように波打つ縁を辿るように、再び舌を這わせた。
そのまま上目でクリスティーヌの顔を覗う。
上気した頬、胸元が呼吸に合わせて大きく上下しているのを確かめ、
ファントムは唇を緩めた。
魅入られたようなとび色の瞳がじわりと潤む。
「甘く芳しい蜜の溢れた狭い通路に、潜り込む」
言葉と共に尖らせた舌先を、弁唇の中央にぬるりと差し入れた。
5983/3:2006/08/09(水) 10:34:55 ID:FzOEM2ho
「マスター…!」
椅子がかたりと鳴り、クリスティーヌの細い声が蝋燭を揺らす。
「どうしたのかね?」
花から顔を離し、唇を舐める。
「あ…」
眉が切なげに寄せられ、漏らした息が熱い。
「クリスティーヌ」
ファントムが花をテーブルの上に投げ出すと、
クリスティーヌの視線がその濡れた花弁を追った。
「私に何か、お願いがあるのだろう?」
俯いた頭がひくと動く。伏せられた睫が震えている。
椅子が小さく軋み、スカートの中で腰が、脚が、もぞもぞと捩られている。
「言ってみなさい。可愛いお前の言うことだ、何でも叶えてやろう」
頬を歪めながら鷹揚に頷く。暫らくの間沈黙がその場を支配した。
「は、花、に」
静けさの重みに耐え切れず、終に唇が吐息のような言葉を紡ぐ。
「花にしたように…」
椅子に背を預け、微かな笑みを浮かべたままファントムは
震える唇が懇願の言葉を落とすのを見つめていた。
599名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 12:31:49 ID:r1g6vOI/
>>595
真っ昼間からすごいもん見た。

隠喩なんだけど、かなり直球。
エロい。すばらしいですGJ!!!!!!

600名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 13:21:18 ID:iJ4Mj5Ov
す、すんばらしい・・・!!
行為そのものを描いてるわけじゃないのに、
なんというエロさ!
生唾ゴックンものでした。
ありがとうございます〜!
601名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 13:36:40 ID:6kfzfRxY
確かにすげえ!
エロいね、エロすぎるね!
GJ! GJ! GJ!

夏休みでよかった〜! 夏休みバンザイ!
602名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 14:12:46 ID:xWSHeYOB
うはw先生エロ過ぎですw
美声でンなこと囁かれながらパフォーマンスされたらたまりませんな。
とは言えしっかり反応してるクリスの方も、なにげにイロイロ教え込まれてそう。

あと先生って手が大きいから楽器なんかを奏でるのもセクシーな気がする。
今度はエッチくさい手の動きでクリスを懊悩させてほすぃ。
603名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 23:32:23 ID:9aCD/oYx
えろい。えろすぎます先生!!
604名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 00:42:26 ID:53W5ykVR
先生これじゃ生きる媚薬みたいだwその先生に色々仕込まれるクリスタソ ハァハァ
天使様、つづき!つづき!(AA略)
605名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 03:28:33 ID:oSeiWS3H
割り込み失礼します。オペラ座炎上後のクリスとラウル。気に入らない方はスルーでお願いします。

「そのぅ、シャイニィ子爵。非常に申し訳ないのですが」パリの警視長官が
そういってラウルの面前に差し出したのは、一糸まとわぬ彼の婚約者が描かれたスケッチだった。
舞台の上でさえ彼女が見せたことの無いなめかしい肢体に怪しいまなざし
彼さえまだ見ていない彼女の未知の領域までもがはっきり描かれたそのスケッチに
ラウルは今自分が死人のような顔色をしていることをはっきり悟った。
「我々はオペラ座を炎上させて、パリの街を不安に陥れたあの男を逮捕せねばなりません。
子爵、どうか我らの立場を理解して」警視は言葉を続けていたがラウルは殆ど聞いていなかった。
彼の心はどす黒い疑惑と自己嫌悪と嫉妬でいっぱいだった。
「しかし、将来子爵夫人になる方にとって、いかに有益な証拠といえどコレが公になれば・・」
警視がそう言いよどんだとき、ラウルは彼が自邸に訪ねてきた目的をはっきりと悟った。
厳重な包囲網をかいくぐって見事に逃げたあの男の逮捕はとっくに諦めていて、
パリのみならず欧州中の耳目をそばだてさせたオペラ座炎上の当事者の1人であるラウルから
沈黙と引き換えに金が欲しいだけなのだ。ラウルは卓上のベルを鳴らし、執事を呼んだ。
ラウルの表情一つで全てを読み取る有能な執事は、何も言わずともラウルを詰問者の顔をして現れた
物乞いから開放してくれるのだ。「モラン、警視にお茶を差し上げてくれ」
ラウルはそう言って、執事に促されながら物欲しげに自分を見つめる警視を追い払った。
606名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 03:43:33 ID:oSeiWS3H
書斎に1人になってから、ラウルはドアに鍵をかけ
警視の手形、である彼も婚約者が描かれたスケッチをまじまじと見つめた。
そこに描かれたクリスティーヌの肢体は、実に扇情的だった。
「こんな君を見て、冷静にスケッチできたなんて」ラウルはつぶやく。
クリスティーヌの身を飾るのは彼女の長い髪と、首につけられた首輪のような宝石だけで
見事な脚は左右に大きく広げられていたり、横臥して無邪気に微笑む彼女の胸の谷間には
マーガレットの花がはさまれている。どこか郊外なのが野草が咲き乱れる庭の中で
素朴な乳搾り娘のように麦わら帽子を被って微笑む彼女の乳房は天を向き
彼女の秘密の場所にはひまわりで覆われて見えない。
ラウルはそのスケッチを暖炉に放り込み燃やしてしまいたい衝動に駆られながら
一枚一枚を眺めることをやめられなかった。どれも彼の全く知らない・想像すらできなかった
クリスティーヌであり、かつて悪友たちと兄と訪れた娼館で、初めて彼がベッドの上で女性と2人過ごすことをおぼえた時より
複数の女性と複数の男性と夜明けまでただ快楽だけに身を任せた時以上に
ラウルに罪悪感というスパイスをふんだんにもった快楽の予感を感じさせ震わせた。
彼を罪へと誘うそのスケッチを炎に投じることが遂にできぬまま、
ラウルはそのスケッチを彼のデスクに封じ込み、鍵をかけた。
彼の婚約者はこの同じ屋根に眠り、明日彼と領地内の森に行くことを
それは楽しみにしていると、彼の乳母が彼に告げにきてもう1日がたとうとしてる。
料理長はピクニックが楽しくなるように最上の食材を備えて準備し
領民たちは彼の婚約者のために明日は晴れ着を着て畑に出るという。
楽しい一日になるはず・・・だった。彼がこのスケッチを見るまでは。
607名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 12:05:38 ID:dnB1ZWLl
つ…続きは………??…
608名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 08:57:33 ID:dq2R8vil
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erobbs/1154154630/l100

これ マヂですかぁ〜〜?
なきます。
609名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 08:59:25 ID:dq2R8vil
ショックであげてしまった・・
610名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 21:32:47 ID:yL3c1cvP
うん、続きは???
ラウルならこの秘密は墓まで持っていくだろうな、優しいから。
第三幕に、ファントムがクリスの絵を描くSSがありましたが、
同じ天使様なのかな?
別人さまでしたらすみません。
611名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 22:07:08 ID:1CvZS6NY
つ、続くのエンジェル?
このラウルは何かしでかしそうで
ドキドキする。
嫉妬は最大のスパイスになり得るからねぇ
612名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 12:17:33 ID:PsTeNYat
このスレ読んでからすぐ寝たら変な夢を見てしまった。

大学の教室で隣席のクリスティーヌちゃんから「のど飴持ってない?」と聞かれて
しまったーもってないやーとハンドバッグを探り
「ファントム先生からもらったら?あの人喉に良いグッズ色々持ってそうじゃん」
と答えるとクリスティーヌちゃんも「そーよねー、講義終わったら行ってこよう」
とナチュラルに流していた。
卒業して結構経つのに教室リアルに覚えてて驚いた
っていうか脳味噌腐ってる…放課後のキャンパスネタでなんか投下しようかなw
613名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 13:04:11 ID:ygrRMwMn
のど飴wwワロスwww
614名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 14:16:38 ID:xNV/DUtu
先生ならなんでも持っていそう、特に口臭予防スプレーは絶対常備。
>>612さん楽しみにしてるよ!
615名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 14:26:54 ID:7RaiIMyf
ファントム先生は渋く南天ノド飴でしょうか。
リラックマノド飴とか持ってたら面白いのになぁw
616名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 15:35:46 ID:Y4CP19Fp
歌専門でやってます。
先生に勧められたプロポリス喉飴、確かに効くけど殺菌作用で咥内がちくちく痛い。
ファントムなら効能重視で渡すのか味重視で渡すのか…。
617名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 23:57:44 ID:S2kf+jFs
むしろ先生お手製で。
効能と味覚の両方を兼ね添え、ついでに低刺激なクリスティーヌ専用のど飴。

そしてこのノウハウを逆手にとり、カルロッタの喉潰しスプレーを作る先生。
618名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 01:44:00 ID:9Uzj3oXl
「のど飴?勿論あるとも。後で私の研究室に取りに来なさい。
ただし、他の学生には内緒だよ。必ず一人で来るんだ、いいね」
619名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 11:41:14 ID:Et0iARNw
喉には低刺激だが、カラダはみょ〜な具合に刺激するキャンデーなんじゃないか?
「教授っ…いただいた特製キャンデーを舐めてから…なんか身体が熱くて変なんですっ…」
「それはいかん、副作用かも知れない。私の研究室で休んでいきたまえ。
さて、どのへんが苦しいのかね?」(←腰骨直下型の低音美声で)

( ゚Д゚)ウマー
620名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 14:52:03 ID:UMp+d9Ty
「…服もゆるめた方がよかろう。
 苦しいのはここか? それとも……このあたりか?」
肉厚の手でおもむろにからだを撫でまわす先生。

( ゚Д゚)ウマー
621名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 20:07:46 ID:tDXKHhmj
いっちょ一行リレー小説でもはじめてみてはいかがでしょうww
622名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 22:22:56 ID:qzQC32k5
天使様がおみえになるまではw嫌スレっぽくなるかもだがww

「おや?いかん!熱が上がってきたようだ。
早く足を冷やさなければ!さあ、クリスティーヌ…」

( ゚Д゚)ストッキングゲットウマー
623名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 21:43:47 ID:zieVGNsV
リレー中豚切りスマン。
某板の「お客様の声」というスレでこんな投稿があって

687 : おさかなくわえた名無しさん [sage] 2006/08/16(水) 21:24:30 ID:1b0KgPvN
駅前のスーパーにて。

中年男性っぽい字で
「閉店間際に行くといつも”上寿司”は売り切れだ。常に置いておけ。
上寿司じゃないといくらが2個入っていないからだ。
昨日、閉店間際に行ったら上寿司があった。嬉しくなって購入した。
家に帰りビールのつまみとして食べたのだが!!!!!
なぜいくらのシャリにワサビが入ってるんだ!!!!!いくら等の
軍艦にはワサビはいらんだろう!!!!
俺はワサビが苦手なんだ!他のネタはワサビを取り除いて食べたが
まさかいくらにワサビが潜んでいるなど、誰が考えよう?
実に不愉快だ。これからは注意するように」

いくら好きでワサビが嫌い・・・でもおっさん。
-----------
なんか先生の声と口調で読んでしまいました。この居丈高・高圧的
かつ妙に理屈っぽく押しつけがましい要求が似てる気がするwww
624名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 22:50:15 ID:qDJS5CpU
山葵が鼻にきて
「オゥ、クリスティーヌ…」
な先生を想像しちゃったジャマイカ。
625名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 23:35:51 ID:TOKeh6Fz
>>623
ハゲワロタw
まんま先生じゃないかw

スーパーの支配人(支店長かw)宛ての警告文ですな。
投書用紙にはきっと髑髏の封蝋がしてあったに違いない。
626名無しさん@ピンキー:2006/08/17(木) 01:54:21 ID:nekA7/aF
腹いてぇww
リアルマスターだwww
627名無しさん@ピンキー:2006/08/18(金) 00:49:23 ID:iM1wGKhy
>誰が考えよう?
このあたりのドラマチックさに吹いたw
先生ホント何やってんだそんなトコでwww
628名無しさん@ピンキー:2006/08/18(金) 01:23:29 ID:ltxOxx8D
自分はその前の文言「ワサビが潜んでいるなど」で限界。
投稿した男性、まさかこんなとこで笑いものにされてるなんて夢にも思ってないだろうな。
だめだ今度寿司屋行ったら笑う。久しぶりに新たな呪いにかかった。
リレー小説と、そして天使様も大笑いしてると思うけど投下ヨロシク
629名無しさん@ピンキー:2006/08/18(金) 15:51:42 ID:if2+1ZUI
>>628
”いくらは二つ、サビ抜きで。
5番テーブルは空けておけ!”

ファントム×クリス
地下にて調教中。
イタかったりはしないです。
6301/4:2006/08/18(金) 15:53:14 ID:if2+1ZUI
少女は、何一つ身につけていなかった。
巻毛を戴いた頭は男の脚の間に沈み、その向こうに白い尻が揺れる。
その小さな手で男の根元を支え、薔薇色の唇で先端を咥え、
くちゅくちゅと音を立てながら一心に舌と唇で彼に愛撫を与えている。

「舌をもう少し遣いなさい…手も、動かして…」
「ん、んぅ…」
男は胸元を寛げてはいるものの、さほど着衣を乱すことなく
幾重にも積み上げたクッションに背を預けていた。
少女は指示されたとおり両手で柔らかい袋を優しく擦りながら、
茎の部分に丁寧に舌を這わせる。
「…そうだ、いい子だ…」
息をつきながら手を伸ばし、とび色の巻き毛を指先に巻きつける。
「もういい。放しなさい」
「ん」
クリスティーヌは小さく頷くと顔を上げた。
唇から離れた男の先端はたっぷりと絡められた唾液で光り、力強く天を向いている。

「おいで」
「…はい」
差し伸べられた手に縋って、クリスティーヌは膝立ちになった。
薄暗い部屋、薔薇色のシーツの上で少女の裸身は浮き上がるように白い。
男の脚の間に膝をつき、シャツを纏ったままの広い肩に両手を掛けたその身体は、
荒い息のなかで小さく震えている。
「あの、マスター…」
「ああ」
目の前で揺れる乳房のツンと尖った先端を眺めながら、ファントムは薄い笑みを浮かべた。
「随分と上手になった…約束通り、これは外してやろう」
捩るように合わせられたクリスティーヌの両膝の間に、ファントムは無造作に手を割りいれた。
湿った音ともに、手は抵抗感なく滑り込む。既に溢れ出していた蜜は腿を伝い、既にその辺りまでを濡らしていた。
その道筋を逆に辿って、男の手は少女の入り口へと至った。
6312/4:2006/08/18(金) 15:55:52 ID:if2+1ZUI
指先で柔らかい花弁の中心に埋め込まれたものを探り出し、その丸い断面を掴む。
ずるりと一気に引き抜くと、少女は細い喘ぎと共に身体を捻った。
男性のかたちを模した象牙の張型は、先ほど押し込まれたときはその冷たさに
少女の身を縮めさせたが、今はその体温を移し取り熱を持っている。
「これではお前には物足りないのではと案じていたが…」
纏った透明な液体で鈍く輝くそれを、ファントムはクリスティーヌの眼前に晒した。
「こんなに感じていたのか」
「いや…!」
さっと俯けようとした顎を蜜に濡れた手で捕らえ、顔が近づく。
「言いなさい」
「や…」
「言うんだ」
強い口調に羞恥のあまり潤んだ瞳を逸らせつつ、唇を震わせる。
「…か…んじて、いました…」
「よろしい」
手を放してやるとクリスティーヌは顔をファントムの胸に伏せた。
「さあ、何をしている?」
片手で乳房をやわやわと弄び、もう片手で腿を撫で上げながら囁く。
「次に何をするかは、分かっているはずだ」
手をもぐりこませ、すっかり姿を現している突起を指先で弾いてやる。
「…ひっ!」
「良い弟子は、師を失望させたりはしない」
肩をきつく握り締める小さな手を引き剥がし、指を絡め、固く膨れた己に導く。
「お前は良い弟子だな?クリスティーヌ」
「…は、い」
導かれるままに男の根元を握り、クリスティーヌはそれを跨ぐように腰を浮かせた。
蜜を滴らせる花弁が男の視線に晒される。
全身を薔薇色に染めながら既に滑った先端を自分の入り口に宛がう。
しかしそこで少女は動きを止めた。腿が、尻がふるふると震える。
「あ…で、出来な…」
涙を滲ませた目で請うように見つめるが、師はゆっくりと首を横に振った。
「教えたことも出来ないのか。優秀な弟子だと信じていたが…」
「っ…」
6323/4:2006/08/18(金) 15:58:11 ID:if2+1ZUI
クリスティーヌの目元が更なる紅を帯びた。睫を伏せ、唇を噛む。
先端が花弁に埋まり、ぐちゅりとあられもない音が少女の耳を打つ。
触れている部分から全身に痺れが走り、羞恥以外の何かが肌を火照らせた。
下を向いたまま息を止めて腰を沈め、熱い塊を自らの内に受け入れてゆく。
粘膜が擦られ、ついで押し広げられる。
進入が続く間中、蜜が溢れるその部分に
男の焼けるような視線が当てられているのを感じていた。

「あ、あぁぁ…」
根本近くまで飲み込んで、クリスティーヌは熱い息を吐いた。
潤んだ瞳でファントムを見つめ、その肩に頬を寄せる。
「…筋はいい、また努力は疑うべくもない。しかし」
ひくひくと震える背を撫でながら男は呟く。
「お前にはまだ、学ぶべきことがある」
ファントムは目を細めると、身体の両脇にのびるクリスティーヌの腿の内側を撫でた。
そのまま撫で下ろし、ぐっと膝を左右に開く。
「ひぁ…!」
すとん、とクリスティーヌの腰が下がった。少女は悲鳴のような声を上げて仰け反る。
急に深く突き入れられ、背がびくびくと撓む。
「あ、あ、あ…!」
高い鳴声とともに、蠢く内側はきゅっと男を締め付けた。
繋がった部分からとぷりと液体を溢れさせ、クリスティーヌはそのままくたりとファントムの胸に凭れかかる。
「咥えただけで達したのか、淫らな娘よ」
空気を震わせるような囁きに、顔は伏せたままいやいやをするように頭を振る。
しかしそれに構うことなくファントムは膝の上の白い尻を両手で掴んだ。
「嫌、いや…もう…」
逃れようと振りたてる腰は、咥えた男を煽り昂らせることにしかならない。
少し唇を強張らせて、それでもまだかろうじて冷静さを保ち、ファントムはクリスティーヌの身体を引き寄せた。
「…ああ、我が天使よ…まだそこまでは教えていないのに、私を悦ばせようとしているのか?」
「違…!」
「しかしクリスティーヌ…それならば、こうせねば」
「や…やぁ、あぁ」
尻をつかんだ手に強引に腰を前後に動かされ、唾液に濡れた唇から切れ切れの喘ぎが漏れる。
6334/4:2006/08/18(金) 16:00:23 ID:if2+1ZUI
「違うの…わたし、あぁ…!」
拒絶の言葉は強い電流を流されるような刺激に焼き消える。
「何も考えるな…」
ファントムは手を差し入れ、蜜に塗れた小さな突起を指先で摘むように弄った。
「私の声と…この感覚にのみ従えばいい」
「んんっ!」

「気持ちが良いのだろう?もっと欲しいのだろう?さあ」
声とともにクリスティーヌの背が大きく撓った。
肩に掛かっていた細い指がずるりと滑り、男の厚い胸の上に置かれる。
クリスティーヌが自ら腰を遣いだしたのを確認して、ファントムは腰から手を放した。
「…次は、こうだ…」
男の手が腹を撫で上げる。そのとおりにクリスティーヌはゆっくりと腰を回し始めた。
下腹を男のそれに擦り付け、甘い息を吐きながら尻を持ち上げる。
熱く蕩けた肉は強張りを柔らかく包み、男が離れてゆくたび吸い上げるように蠢く。
「ふ…あぁ…あん…!」
揺する腰に合わせるように、唇から艶やかな声が零れ落ちる。
男の胸についた手の指先がくっと曲がり、小さな爪が肉に食い込む。
「そうだ、クリスティーヌ…クリスティーヌ!」
細い指に自らの掌を重ねて、快楽に曇った瞳を欲望で濁った瞳で見据え、
ファントムも下から突き上げるように腰を遣う。
やがて弾けるような悲鳴を上げてクリスティーヌの身体が強張った。
くたくたと凭れ掛かってくる背を抱きしめながら、ファントムもまた
呻きとともに己の熱を少女の肉の奥深くに放った。

少し身をずらし、ぐったりした身体を、紅色のシーツに横たえる。
「少しの間なら、休んでいてもかまわん」
薄く開いた瞳がぼんやりと見上げるままに圧し掛かり、唇の端に流れた唾液を舐め取る。
「時間はたっぷりある…夜明けまではまだ長い」
白い身体を組み敷きながら、ファントムはクリスティーヌの耳元で笑った。
634628:2006/08/19(土) 01:35:29 ID:/0mey4o5
>>629天使様GJ!
痛くなさそうで良かった…この時代の“おもちゃ”ってマジどんなのなんだろう。
映画のクリスがあんなにぼんやりしてたのはマスターにこんな風に調教されてたせいなんだと想像。
続きってありますか?

回転寿司屋のビックラポンが外れたら「ダームユー!」キレるマスター…
635名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 02:06:29 ID:6/FW69Ja
>>629
GJ!!素晴らしいSSをありがとう天使様!

ファントムは銀座の寿司屋が似合いそうな気がする。
それも個室を予約してたりして。
クリスティーヌを呼び出したら何故かラウルまでくっついて来て、
口論になったりとか。
「若造、何故貴様がここにいるのだ」
「この店はシャヌイ家の御用達なんだが…」
「マスター、好きなものを頼んでもいいのかしら?」

自分が銀座の高級寿司屋なんか行った事無いから、話が続かんorz
636名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 01:47:37 ID:b+lvFkcz
天使様GJ!大人の玩具使用のエロい調教ハァハァ(;´Д`)騎乗位萌。
つーか象牙って豪華だなー。とか思ってしまった。ほんとこの時代の玩具ってどんなんだろう。
時代が時代だけに凄そうだ、色々と。
637名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 02:54:39 ID:r+i7BcWE
象牙使用の張り型は本当にあるヨ。
この時代はプラスチックとかシリコンないから…。
638名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 17:56:07 ID:d3HevCOw
あとは木製とか金・銀細工だろうね。
豪奢に真珠とか埋め込んだのを職人に作らせるらしい。
639名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 23:38:52 ID:3QAL59+T
象牙、木製、金、銀…壊れそうだ(((゚Д゚; )))
この時代の女性は大変だな
640名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 01:25:51 ID:nVVi3m66
水牛の角、べっ甲ってのもある。
多少なりともしなるようにするために、中空にしておいたらしい。
今ならシリコンでしなるけどさ。

人肌に温めてから使うのがデフォ。
641名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 08:53:59 ID:90d1EcCw
動くモノ以外なら、大体あるんじゃないのか?この時代なら

…動くのもあるかもだ。ジーニアスだから
642名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 14:26:09 ID:Kyy5R6ie
そんなものの開発に血道を上げてるマスターはみたくないwww

三日三晩徹夜で目を血走らせて全精魂と技量と芸術性を込めて作成に打ち込み
ついに出来上がったオモチャを掲げて
「見よ、この美しいフォルム!乙女を傷つけぬ程良い弾力性と滑らかさ!
そして意表を衝くアグレッシブな動き!まさに天才の作といえよう、
待っていろクリスティーヌ…!」
そして響き渡る哄笑。

…嫌スレだな、これじゃ。
643名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 15:35:52 ID:0H+822nt
>意表を衝くアグレッシブな動き
いや、そこは自分で頑張れよマスターwww
644名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 16:13:14 ID:jFd7DGuN
>>643
がんばってもいいが
それだとひとり二本差しができない。
645名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 16:40:23 ID:07L8Mf3C
そこでやっぱりラウルのとうじょry)
646名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 21:37:50 ID:SsJL9+BC
>>645 いや、彼は今マンハッタンのラウルへの瀬戸際。
    余裕ないよきっと。
647名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 01:21:53 ID:jUxOUhC/
>644そのために作ってるんだw
これ使ってクリスにアレしようコレしようとwktkするマスター…
めちゃめちゃイキイキしてそw
648名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 15:46:40 ID:RhLeNLGJ
今422KB。いよいよ終盤に入ってきたなぁ。
649名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 20:45:20 ID:0p0L5G1t
IDにGJが出てるよオメ
オークションもそろそろ近いね
650名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 22:39:18 ID:xjRJrY3y
マターリしてるから一応貼っておく。
608氏も言ってくれてるけど、存続の危機らしい。
万が一のときは避難所ってコトでいいのかな。

エロパロ板自治スレッド8
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1151677220/l50

で、天使様…or2゛ or2゛ or2゛
651名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 00:17:16 ID:+8DJ0WMR
> 562の続きです。
相変わらずラウル×クリス。先生は登場しませんです。
6521/7:2006/08/25(金) 00:18:29 ID:+8DJ0WMR
階段を下りる足が突然空を踏み、暗い水の中に落ちた。
落下する感覚は確かにあるのに、冷たさを感じない――これは夢なのだ――
早くここから出なければ。目を覚まさなければ。
出口はどこだ? 水面は?
水は濁って、光をほとんど通さない。遠くの方から、金属の塊が軋みながら落ちてくる
鈍い音が聞こえる。身体が重くなる。
早くこんな所から脱出して……何をするのだった? ……そうだ、愛しい恋人を、クリス
ティーヌを助けに行くのだ。彼女はどこだ……? 自分はどちらに進めばいい?
上も下も、右も左も深緑色の闇だ。もがけばもがくほど、深く沈んでいく。

金属と石が擦れる不快な音が耳を突く。錆びた重さが背中に圧し掛かってくる。
苦しい……! 止まってくれ! 息ができない!

ラウルは大きく息を吸って、目を開けた。
背中がびっしょりと濡れている。額から汗が伝って落ちた。

嫌な夢だった――暗い記憶を脳裏から振り落とすように、ラウルはベッドの中で身を捩った。
と、自分の隣がぽっかりと空いているのが目に入った。
一緒の掛け布にくるまれていたはずのクリスティーヌがいない。
心臓がずきりと痛む。不安と動揺が恐ろしい勢いで押し寄せてくる。
クリスティーヌがいない!
ラウルはベッドから跳ね起きた。

慌ててまだ暗い部屋に視線を走らせると、バルコニーに人影が見えた。
一瞬ぎくりとしたが、月明かりが作る影の形から、すぐにクリスティーヌのそれだと
分かった。
ラウルは安堵の溜息を吐き、再び心臓に血が巡ってくるのを待った。

耳を澄ますと、クリスティーヌが小さな声で歌っているのが聞こえる。
よくは分からないが……それはラウルが知らない曲のようだった。滑らかな旋律の中に、時々
沈み込むような暗い響きが混じる。
ラウルは皺の寄ったシーツに触れた。冷たくなっている……一体クリスティーヌは、どれくらい
ああしているのだろう……。
6532/7:2006/08/25(金) 00:19:29 ID:+8DJ0WMR
昨夜、クリスティーヌは初めてはっきりと、「愛している」と告げてくれた。
それまで、愛を語らい合うことはあっても、彼女はまるでその一言を避けるように、
「あなたを愛している」とは言ってくれなかった。

ラウルが激情にまかせてクリスティーヌを抱き、ふたりで激しい絶頂に押し流された後、
クリスティーヌは何度も何度も、ラウルの胸の中で「愛している」と繰り返した。
彼女の熱い涙が裸の胸に浸み込むのを感じながら、もう彼女は自分のものなのだと、彼女
の心が離れていってしまう恐怖に怯えることはないのだと、ラウルは自分自身に言い聞か
せた。
そしてクリスティーヌの涙が涸れ、月が西に傾き始めた頃、ふたりはようやく眠りについた
のだった。

もう不安は過ぎ去ったはずなのに――どうしてあんな夢を見たのだろう。どうしてクリス
ティーヌは、ひとりで歌っているのだろう――ラウルはしばらく、ベッドから身を起こし
たまま、ぼんやりと彼女の影を見つめていた。

ふと歌声が止み、濃灰色の影が僅かに動いた。
声を上げずに泣いているのだろうか……細い肩が震えているようだ。
ラウルがその涙の理由に思いを馳せた瞬間、バルコニーのガラス戸が静かに開き、クリス
ティーヌがふわりと部屋に入って来た。
ラウルは何故かいたたまれないような気持ちになり、す、とシーツに身体を滑り込ませ、
目を閉じた。

クリスティーヌはゆっくりとベッドに近づき、ラウルの横にそっと身体を横たえると、
うずくまるようにして身を寄せた。
「ラウル……」
クリスティーヌが小声で呟く。彼の匂いを吸い込むように鼻先を胸に埋め、甘えるように
彼の名を呼ぶ。
6543/7:2006/08/25(金) 00:20:35 ID:+8DJ0WMR
ラウルは目を開け、クリスティーヌを優しく抱き寄せながら、額にキスを落とした。
小さな頭の下に腕を差し入れ、髪を撫でてやる。細く柔らかい身体を、腕の中で暖める
ように抱く。
クリスティーヌが上目遣いで彼を見た。
濡れた瞳が月明かりにきらきらと輝いている。

「……起きていたの?」
クリスティーヌの言葉に首を振り、ラウルは優しく微笑んだ。クリスティーヌは「何だか
眠れなかったの……変ね」と言ってラウルの胸に頬を擦り付けた。

昨夜、あんな風にクリスティーヌを抱いてしまったのに、彼女はこうして自分を愛おしげ
に見つめてくれる。自分の胸に甘えてくれる……。
クリスティーヌへの深い愛情とほんの少しの後悔を内に感じながら、ラウルはクリスティーヌ
の頭をぽん、と叩いた。
枕元にあったはずのバラの花は、ラウルが気付かぬうちに片付けられていた。もうふたりを
隔てるものは、目に見えるところから消えた。けれど若い彼らの恋は、お互いのすべてを
語ることを恐れている――そうしている限り、あの陰鬱で甘美な思い出を拭い去り、昇華
することはできないのだと知っていたとしても。

「ラウル……私のすべてはもう、あなたのものなの……フランスを経つ時、私は全部を
捨ててゆくのよ……あなたと共にあることだけが、私のすべてなの……分かって」
クリスティーヌは自分に言い聞かせるように話し、目を伏せた。
「ラウル……」
もう一度呟いて、クリスティーヌは彼の胸に唇を這わせていった。

しっとりとした甘い感覚がラウルをくすぐる。
クリスティーヌが皮膚を吸うようにして唇を離した時、ラウルの口から「は……っ」と
吐息が漏れた。
それに誘われるように、クリスティーヌは再び唇を押し当て、胸へのキスを繰り返した。
小さな舌先が、左右の筋肉の間をなぞってゆく。
ラウルの鼓動は高さを増し、浅く、深く、狭い間隔で息継ぎを繰り返す。
6554/7:2006/08/25(金) 00:21:36 ID:+8DJ0WMR
クリスティーヌの腿がラウルの脚の間に割って入り、覆いかぶさるような形になった。
その時、彼の隆起物にクリスティーヌの肌が触れた。
クリスティーヌは恥ずかしがって身を引いたが、ラウルは彼女をぐい、と抱き寄せて
わざと硬くなった自分自身の感触を押し付ける。
戸惑いに揺れるクリスティーヌの瞳を見ながら、ラウルは彼女の手を取り、股間へ導いた。

クリスティーヌのほっそりとした指が、布越しにでもはっきりと分かる硬張に触れた時、
ラウルの下半身に甘い刺激が走った。
ラウルがそっと自分の手を離しても、クリスティーヌの指はじっとそこに留まっている。
彼の隆起がひく、と蠢き、微かな、けれど官能的な刺激を彼女に伝えると、その指先は
恐る恐る上下に擦る動きを始めた。

「あぁ……」
ラウルが眉間を寄せて息を吐く。
クリスティーヌはたどたどしい手つきで彼のそれを愛撫している。
ラウルはじれったさに耐えられなくなり、軽く彼女の身体を浮かせ、自分の下半身を覆って
いた衣服を脱ぎ捨てた。
「クリスティーヌ……」と囁きながら、彼女のネグリジェも剥いでゆく。

深いキスの後、再び彼女の手を取り、今度は重ねた自分の手とともに、硬くなった柱を
握らせた。身慣れた刺激を生み出させるために、そのまま上下に擦る。
最初のうちは躊躇っていたクリスティーヌも次第にその動きから恥じらいを捨て、ラウルが
快感に喘ぐのを喜んでいるようだ。

「クリスティーヌ……いいよ……すごく」
彼の吐息混じりの声は、クリスティーヌをさらに大胆にする。

クリスティーヌは、以前年上のバレリーナが言っていたことを思い出していた。
こんなことを自分がするなんて、あの時は思ってもみなかったけれど……ラウルが喜んで
くれるのなら……ああ、でも、とんでもなくはしたない女だと思われはしないだろうか……。

クリスティーヌは緊張で汗ばむ指でラウルの太幹を握り、自分の身体を後ろへ引いていった。
掛け布が捲れ、ラウルの隆起がクリスティーヌの目の前に突出した。
初めて見る男のそれは、思っていたよりも生々しくて、不思議な色と形をしていた。

「これ」が自分のなかに入っていたんだ……こんな形をしたものが、彼に隠されていたんだ
……どこをどんな風に愛してあげたら、ラウルはもっと喜んでくれる……? 私が彼を心から
愛しく思って、欲しがっているのを伝えられる……?
クリスティーヌが柱を握ってじっと見ているので、ラウルは訝しげに彼女を呼んだ。
それを合図にしたかのように、クリスティーヌは開いた唇をそこに付けた。
6565/7:2006/08/25(金) 00:22:24 ID:+8DJ0WMR
「う……っ」
ラウルの下半身を疼くような快感が駆け上がる。クリスティーヌの舌が、柱の脇を、つぅ、
と舐めた。
「あぁっ……ク、クリスティーヌ……っ、いけない、そんなことを……」
ラウルが切ない声で訴えるのに、クリスティーヌは舌の往復を止めない。
ラウルの幹が張り裂けんばかりに緊張する。唾液の雫が、柱を伝って落ちる。

ラウルの手が、クリスティーヌの頭に添えられた。
彼女の動きを助けるように、少しだけ力が加えられる。それに促されて、クリスティーヌは
口を丸く開けると、柱の先端を潤った唇でそっと咥えた。
「!」
ラウルが眉間を険しくして天蓋を仰いだ。びりびりとした快感が彼を突き抜ける。
クリスティーヌは、そのままいきり立った柱を口に含んでゆく。唾液をすする音が部屋に
響き、ふたりを取り巻く空気が熱気を帯びて膨張する。

「クリスティーヌ……」
ラウルが息切れの間から彼女を呼んだ。
ふとクリスティーヌは目を上げ、ラウルの瞳を覗き込んだ。
ラウルは紅潮した顔を歪めて、苦しそうな息だけを吐いている。何かを伝えたくて名前を
呼んだのではなさそうだ……。
クリスティーヌが恥じらいを感じて再び目線を下へ移すと、ラウルの手が彼女の長い髪を
かいた。
「クリスティーヌ、こっちを見て……」

クリスティーヌは、ラウルが何を欲しているのかがなんとなく分かった。こんなに淫らな
真似をしているのに――彼は喜んでくれているみたいだけれど――もっと恥ずかしいことを
彼女に求めているのだ。

クリスティーヌはラウルの言葉を無視して、下を向いたまま、口の中で硬さを増す柱を舐め
ていた。ラウルの息がさらに荒くなる。
「クリスティーヌ……」
興奮のせいか、彼の口調はさっきより強くなっている。クリスティーヌはちら、と目だけで
彼を見た。
「ああ、そう……そのまま……」
目を合わせたまま、これを続けるなんて……クリスティーヌは恥ずかしさに眉を寄せながら、
おずおずと唇を下へ移動させていった。
6576/7:2006/08/25(金) 00:23:17 ID:+8DJ0WMR
その様子は、ラウルの興奮を煽る。困ったような顔で彼の目を見ながら、濡れた口いっぱいに
柱を咥えているクリスティーヌは、小悪魔のように淫猥で妖しく、妖精のように可愛らしかった。

クリスティーヌの口の中で、ラウルの柱が怖いくらいに堅張し、ぴく、と動いた。
その時、ラウルがクリスティーヌの頭を抱えて自分から離し、下半身を慌てて引いた。
「だめだよ、クリスティーヌ……そんなに……」
クリスティーヌは、なぜ彼がそんな風に咎めるのか理解できなかった。けれど、彼が汗ばんだ
腕でクリスティーヌを抱え上げて、熱いキスを繰り返しながら「もう、我慢ができない」と
言って彼女の秘溝に指を這わせた時、それはラウルが自分の紡ぎ出した快感に限界まで翻弄
された証だったのだと分かった。

クリスティーヌのそこはもう温かく濡れていて、ラウルの指を簡単に受け入れてしまう。
ラウルが彼女の奥深くまで中指を差し入れ、激しく往復させる。
今度はクリスティーヌが快感に喘ぐ番だ。

ラウルの上に跨ったまま、指で秘所を掻き回され、舌で首筋を舐られる。
いつになく激しいその仕草に、クリスティーヌは高い声を上げてよがった。

クリスティーヌのそこが愛蜜でとろとろに濡れ、肉欲に膨れたのを指にとらえると、ラウル
は堪らない、といった様子で彼女の腰を持ち上げ、硬立した柱の先端を挿し入れた。
「ん……あぁ……ん」
クリスティーヌは腰を回して彼の興奮を受け入れてゆく。
柱の根元までが飲み込まれると、ラウルは激しく腰を突き上げ、クリスティーヌの身体を
揺さぶった。

ラウルが険しい表情で腰を入れる。
その度にクリスティーヌの身体が跳ね、切ない喘ぎ声が唇から漏れる。
「クリスティーヌ……ああ、もう……!」
クリスティーヌが達するより早く、ラウルは限界を告げ、奥深くまで突き入れた柱を怒張
から解いた。
6587/7:2006/08/25(金) 00:24:02 ID:+8DJ0WMR
目を閉じて息をしているラウルを見下ろし、クリスティーヌは愛おしげに微笑んだ。
薄く開けた青い瞳でそれを見たラウルは、照れ隠しの笑みを唇の端に浮かべて彼女を
引き寄せ、胸に抱いた。

クリスティーヌは汗で張り付いたラウルの胸毛を指で辿り、「あの……嫌じゃなかった?」
と呟いた。
「嬉しかったよ、クリスティーヌ……とても可愛かった……」
ラウルは彼女の頭を撫でて、頬と唇に口づけた。

満ち足りた気持ちがラウルを包んでいる――クリスティーヌの身体は熱く、柔らかく、
心地よい重みを彼に伝える。彼女の鼓動が、自分のそれに呼応するようにリズムを刻んで
いる。

ラウルが浸る甘い幸福感のその奥に、針の先でつつくような痛みが紛れ込む。
言葉と、身体と、行為と……ふたりは愛し合っているはずなのに、どこか不完全で危うい。
愛の言葉が核心に近づけば近づくほど、身体を深く重ねれば重ねるほど、この城の足元は
満ちてきた海水に侵食されて、次の嵐で崩れ去ってしまいそうになるのだ。

ラウルの苦しい夢は、クリスティーヌがひとりで歌った旋律は、ちくちくと彼の胸を
刺し、ささくれた棘のように、簡単には抜けてくれない。

空が白み始めている――この棘が抜けなくても、城はいつまでも不安定であったとしても
――クリスティーヌを誰よりも愛し、力の限り守ってやれるのは自分しかいないのだ――
今日はどこにも行かず、一日中クリスティーヌの側にいてやろう。一緒に食事を取り、
取り留めのない会話をし、円満な夫婦のように過ごそう……。もうクリスティーヌを泣かせ
たりしたくない、してはいけない。

ラウルはそう心に決めながら、クリスティーヌをシーツに横たえさせた。
優しいキスを身体中に蒔き、「くすぐったいわ……」と笑う彼女の唇を深い口づけで塞ぐ。
そうしてまた胴欲の坩堝にふたりで溺れてゆくのだった。

〈続く〉
659名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 00:37:06 ID:ta1aAmee
わーい続きだGJ!
クリス可愛いし一所懸命だし、行為だけ見てるとラブラブなのに
やっぱり名前も出てきてない人の影がどうしても払えない…!
660名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 10:43:41 ID:zBGHFM7i
なんだっけ、ミロのヴィーナスの腕とかそうらしいけど、欠如によって却って存在感を増すとか言うヤツなのかなあ。
なんかこの不気味な存在感こそ先生の面目躍如って感じ。
決してサビに文句付けているだけではない。

…寿司屋の呪いが解けませんorz
661名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 00:39:39 ID:x4La2Gno
このままふたりに幸せになっていって欲しいと思うし、
マスターが出てきて欲しいとも思うし、すごいなこの緊張感溢れる物語。
3人の行き着く先には何が待っているんだろう。
続き待ってます!
662名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 11:05:19 ID:e7MHgYeI
困り顔クリスも照れ笑いラウルも初々しい。
先生の思惑がどの辺りにあるかが気になるな。
>660 イクラ好き、ワサビ嫌い…自分の中では嫌スレの童t(ry設定位、確定事項だw
663名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 12:27:48 ID:/nUgQ9CC
ラウルの希望拒まなかったり自分からしてあげるクリスが健気だ。
若い二人が一見甘々なのに危うい…続きが楽しみだ。wktk待機。
664名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 13:34:07 ID:x4La2Gno
ハンニバルのポスター落札

665名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 15:57:38 ID:e7MHgYeI
猿ゴールゲト!
↓先生、次 で ボ ケ て(^ー゚)b
666O.G:2006/08/26(土) 16:15:56 ID:PssaDUyq
ワサビ抜きのイクラを食べながらシャンデリーア落札。
667名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 21:19:36 ID:e7MHgYeI
↑ちょw意外に義理堅いなマスター
それ落札してドコに置くつもりだw
668664:2006/08/26(土) 23:24:40 ID:x4La2Gno
663がポスターで664は髑髏とピストルだよ、自分バカ…orz
ワサビたっぷり潜ませたイクラ一貫誰かくれ
>>658
続き待ってます、不安な夢にうなされるラウルが切ない。
669名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 23:30:10 ID:/nUgQ9CC
あ、じゃ自分ポスター落札してたのか。気付かなかった…。とりあえずゲト
つ【7フラン】
670名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 17:58:05 ID:cmj58cYn
まとめサイトを読んでいて思ったのですが、「失われた環」の続きがハゲシク
読みたいです!

虚しい心を抱えたクリスが、ラウルと交わる続編はありましたが、愛する
妻と子を得たファントムは? クリスなんて眼中にないって感じがすご〜く
カッコ良くて、いささか反則ワザとはいえ、胸がす〜っとしました。w

ファントムとマリエンヌの出会い編、その後、ぜひ読んでみたいです〜!
作者様、まだここを読んでおられたら、なにとぞ宜しくお願いします。

それと、この場を借りて、いつも丁寧に纏めてくださっている、まとめサイトの
管理人様、本当にありがとうございます。お礼を申し上げます。
671名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 23:44:15 ID:U55TxjBV
>>670
私もあのssの続きがずうっと気になっていました!
他に類を見ない設定で、ファントムがクリスティーヌ以外の女性を
愛するようになったきっかけなど、気になりまくり。
「失われた環」の天使様、ぜひぜひ続編をお願いします!!
672名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 00:43:12 ID:khbKEA0z
>670
あ、私も読みたかったんだー、「失われた環」!
クリスティーヌへの思いを断ち切ったファントムが、一体どういう経緯で
マリエンヌと出会い、愛するようになったのか、そんで、マリエンヌが
どういう心境でファントムの愛を受け入れることになったのか、
激しく気になる。 第7幕での降臨を待っています!!
673名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 06:04:38 ID:CYRovvVP
あぁ 自分もちょうど夕べまとめサイトを読んで
同じ事考えていました。
なにとぞ!



674名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 11:42:25 ID:nxvQmH0H
他にも途中で終わってる話がいくつもある。
続きをお願いします。
なにとぞ!
675名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 00:16:02 ID:N55WThj9
連載を途中で放置してる職人のひとりです
ま、毎日暑いので書けてません・・・スミマセンスミマセンor2
絶対続き書いて終わらせますのでor2゛
676名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 00:38:35 ID:wpHYZOaY
>675
なにとぞ!
677名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 15:08:21 ID:6zjgjrzS
私も放置職人の一人です。
バイトと受験勉強が忙しくなってきて放置中ですorz

投下したいネタはまだまだあるのになぁ…。
678名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 18:06:51 ID:y1HqJnZ4
先生が単独でシアワセになってクリスティーヌが嫉妬するパターンは
結構新鮮でwktkしたなあ。
「音楽の天使」が、誰か他の人に翼を与えたらクリスはどうするんだろうって。
彼女的には他の女がマスターに抱かれているよりも、他の歌い手がマスターと
共に音楽の高みに上り詰めてる方がショックかも、とかいろいろ考えさせられた。

と真面目に語りつつ、こんなミニゲームを見つけた。
http://avg-maker.com/211590.html
作者さんは嫌スレの人辺辺りの希ガスw遊びつつ天使様の降臨街。
679名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 19:13:27 ID:N55WThj9
適当にやったらクリア出来た。235番目のプレーヤーだ。
嫌スレかどっかでかなり前、似たようなのあったね。
なんで1本だけローソク…
680名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 21:08:02 ID:nER7pvGU
241番目だった。
クリアするまで何回やったっけな・・・?
681名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 21:51:53 ID:F27xIMMm
過去スレ含めて、どのシリーズが好き?
と聞いてみるテスト
682名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 01:02:33 ID:ZnnRHlUl
259番目だった。
683名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 02:52:36 ID:w1icuMl/
>>681
ファントムが縛られてクリスに攻められてたのが好きかも。
684名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 03:45:35 ID:2nc9rOl8
>681
選べるかい!wってとこだけど
1番泣いたのは スェーデン編。
685名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 13:13:06 ID:xQeuhTSz
コミケ編。
この夏は天使様いらっしゃらなかった…。
686名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 13:18:32 ID:p+LTplAS
自虐マスターの天使様の最初のシリーズ(長いな)
独占欲と諦めの狭間で煮え煮えするマスター(゚д゚)ウマー
687名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 00:00:02 ID:x/KU+Cu2
父娘シリーズかな。
あの2人が夫婦ってだけで堪らないのに、娘までいるっていうのが何ともw
688名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 00:16:21 ID:M6s9mdkJ
このふたりの子なら女の子、って感じがするね。
ぜひどなたか天使様に、男の子が出来る話も書いて欲しいものです。
自虐マスターの話、よく読み返す。
何十回読み返しても胸がつまるけどやめられない。
689名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 00:51:20 ID:QsmG137C
寸止めエンジェルに何度も生殺されたw
尻エンジェルもエロス
690名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 01:35:07 ID:JjphL0Tk
>>681 「愛の不死鳥」のシリーズ。
原作・映画、果ては嫌スレネタまで網羅してて、さらにスレ住民の差し入れさえも
盛り込まれてるあのネタ満載感がたまらん。
691名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 09:38:15 ID:2LxBxpPU
「失われた環」を投下した者です。途中放置していてごめんなさいorz
気にしてくれている住人さんがいてくれて、職人としてとても嬉しいです。ありがとう。
大ざっばには出来ているので、今年中には完成させて投下したいと思います。
ただ、400字詰原稿用紙に換算してみたら、百枚近くになるんだよな…。
多分あまり削れなくて長いままでしょうが、投下できた時は、よかったらお付き合い下さい。

692名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 12:04:31 ID:cummcf0s
「失われた環」の投下、いつまででもお待ちしております。

ミニゲーム何度かやってみた。
その中に、マエストロ(?)がワサビ入りのいくらを
握っているところがあって笑いました。
693名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 16:49:27 ID:CC5HJID+
「失われた環」の職人様、キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
いつまででも、wktkで待機しております〜〜!!
694名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 17:53:22 ID:M6s9mdkJ
>>691
ずっとお待ちしておりました天使様!
そんなにたくさん続きが読めるなんて嬉しすぎです。削る必要なんて無いです。
決して無理なさらずに。今年中でも来年でもずっと待っています。
695名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 18:37:24 ID:aWjhyADD
わーい 「失われた環」の職人様
同じく待ってますので無理せずm(_ _"m)ペコリ

バイトと受験勉強の職人様・・(マサカ未成年じゃないよねw!?)
頑張って 晴れて住人たちを萌えさせてください。

自虐マスター職人さま=2年半後の方でしょうか・・
まったり待ってます。2年半内についても 興味シンシンです。

マスターとマダムの「ポアント」も泣いたなぁ。
696名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 19:46:00 ID:zTLyqeAW
待ってました「失われた環」!
他の中断職人様も続編を待ってます!
またこのスレに活気が戻ってくれると嬉しい!

自分は「バラ園」で泣いたよ。
697名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 18:10:34 ID:8b4CqD9Z
読み切りものでも印象深い作品が多々有り。
仔クリスとか、お花畑でウフフアハハ、もよく読み返してほのぼのしてる。
698名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 22:10:22 ID:x4DoWtVj
中年ファントムもそこはかとなくいい

抱かれてもいいと思うよ
               男ダガ
699名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 22:24:22 ID:CXjFCYbp
このスレに男性がいること初めて知った!!
一人だけなのかね??
700名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 23:40:27 ID:8b4CqD9Z
いや、ロム専含めて数人はいると思うけどな、多分、確証はないけど。
映画とか舞台でも男ひとりで観に来てる人結構いたし、まさかこのスレ女性だらけとは思えない。
701名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 00:21:04 ID:qIqi8TnE
エロパロに男がいないと思うほうがどうかと。女ばっかと思うのもどうかと。

なんにせよ天使様の御降臨待ち。
702名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 00:36:57 ID:eQb0NPri
いやぁ 勘違いしてました。
職人さんは 男性ばかりかと。
得ろ=男だとばかり思ってた。

うやうやしくご降臨お待ちしております。
703名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 00:49:38 ID:GaaM42vn
恐れ多くも投下します。
>>688氏の言葉を受けて書いてみました。

ファントムとクリスは夫婦、息子が一人。
肝心のエロが色々と苦しいですスミマセンorz
704幼い初恋(1):2006/09/04(月) 01:14:33 ID:GaaM42vn
 ある晴れた日の昼下がりの事だった。
 ファントムとクリスティーヌの息子であるシャルルが、
6歳にしては大人びた顔を涙でぐしゃぐしゃにして帰宅した。
 片手には、途中道端で摘んだと思われる可愛らしい花。

 「どうしたの、シャルル?お母さんに理由を聞かせて頂戴?」
 クリスティーヌが優しく問い掛けると、シャルルは
しゃくり上げながらも、理由を説明し始めた。

 「コ、ゼットが…ぼく、のことすき、じゃないって。
ぼ…ぼくが、コゼットを、すき…でも、コゼット…はそんなのじゃ、
ないって…うわぁぁあ〜」

 ファントムとクリスティーヌは、思わず顔を見合わせた。
 どうやら、シャルルは失恋してしまったらしい。
 お相手は数百メートル先に住む、コゼットという少女。
 この頃シャルルが彼女の事をよく話題にしているのには気付いていた
夫婦だったが、まさか恋心を抱いていただなんて。

 「泣かないで、シャルル。初恋は大抵叶わずに終わるものなのよ」
 「…そうなの?おかあさん」
 涙で濡れた顔を上げ、シャルルはクリスティーヌの目を見つめた。
 優しくて、温かい眼差し…無論、母としてのものだが。

 「〜…っ、きめた!ぼく、おおきくなったら、
おかあさんとけっこんするんだ!!」
 「何!!?」
 励まし方が分からずにいたファントムが、シャルルの
とんでもない告白に思わず叫んだ。

 「やさしくってあったかいおかあさんが、だいすきなんだもん」
 「まぁ本当?」
 シャルルの素直で可愛い言葉に、クリスティーヌは微笑む。

 「駄目だ!クリスティーヌは…母さんは父さんの物なのだぞ、
シャルル!」
 「そんなこといったってだめだもん!おとうさんは
おとうさんなんだから、だめなんだもん!」
 「くっ、そんな滅茶苦茶な理由があって堪るか!そうだろう
クリスティーヌ!?」
 「あら、私はシャルルなら構わないわよ?」
 微笑みながら、さらりと言うクリスティーヌ。
 その言葉を聞いて足元を見下ろすと、ふふんと勝ち誇った
笑みを浮かべるシャルルがいた。

 −おのれ、つい先程まで泣いていたくせに…!−

 すっかり冗談に躍らされてしまったファントムの、
悔しさに満ちた叫び声が、家中に響き渡っていた。
705幼い初恋(2):2006/09/04(月) 01:38:27 ID:GaaM42vn
 それからその日のシャルルは、クリスティーヌにべったりだった。
 食事の準備の時も、庭に出て草木に水を遣る時も。
 遂には、お風呂にまで一緒に入ってしまったのだ。
 そのお陰で、ファントムの顔には常に不満の色が浮かんでいた。

 「シャルル、やっと眠ってくれたわ。本を読んであげたり、
歌を歌ってあげたり…疲れちゃった」
 ファントムが寝室のベッドに腰掛けていると、疲れたとは言いつつも、
満更でもなさそうな様子のクリスティーヌが入ってきた。
 最愛の妻から顔を背け、ファントムは、クリスティーヌに
表情を読まれまいとする。

 いつもなら優しく笑いかけてくれるのに、と思うと、
クリスティーヌは悲しくなるのと同時に、むっとした。

 「ねぇエリック、貴方、シャルルの冗談を本気にしているの?」
 ファントムの背後に回るように、クリスティーヌは
ベッドに腰掛け、彼の肩を捕えて顔を覗き込んだ。

 クリスティーヌが目にしたのは、子供のような膨れっ面のファントムだった。

 「…冗談だとは分かっていたさ。ただ、あの時の…
子爵の時のお前を思い出してしまっただけだ」
 「まぁ、そんな事」
 珍しく素直に漏らすファントムが、何だか可笑しくて愛しくて、
くすぐったく感じられるクリスティーヌ。

 「お前が、後悔しているのではないかと」
 「そんな事…あるはずないわ、エリック」
 「随分と嬉しそうにしていたから」
 「シャルルの言う事が、あんまりにも可愛かったんですもの」
 「………」
 「こっちを向いて、エリック」
 ファントムが投げ掛ける疑問に、次々と答えるクリスティーヌ。
 それに根負けし、彼女の要求を、ファントムは素直に受け入れた。

 「エリック、愛しています。仕事熱心な貴方も、
子供みたく甘える貴方も…全部」

 ファントムの顔の醜く歪んだ箇所に優しくキスをし、
そのうち二人の唇がそっと触れた。

 小鳥が啄むようなキスを繰り返していると、ファントムの手が
クリスティーヌの腰を引き寄せる。
 「クリスティーヌ…」
 「…エリック」
 互いに熱を帯びたような視線をぶつけると、どちらともなく
真っ白なシーツの海に体を沈めていく。

706幼い初恋(3):2006/09/04(月) 02:03:52 ID:GaaM42vn
 「ん…っ」
 ファントムの舌がクリスティーヌのそれに絡み付き、
混ざり合った液体が口内に溢れ出す。

 「…お前にこうして触れるのも…久し振りだな」
 「あ…っ!」
 ファントムは器用に、あっという間にクリスティーヌの寝着を
脱がせ、彼女のやや小ぶりな胸を揉みしだく。

 愛撫する唇や手を下半身の方へと滑らせ、その度に
クリスティーヌの体は嬌声を上げて跳ね上がる。

 「ひぁん!」
 下着を取り払い、ファントムの指がクリスティーヌの
花芽を擦り上げた。
 ほんの少しの刺激だったが、彼女の蜜がシーツに深い
染みを作るのには充分だった。

 「クリスティーヌ…もうこんなに濡らして…」
 蝋燭の仄かな明かりに、蜜に塗れた指を翳すファントム。
 「嫌…言わないで…お願い…」
 顔を背けた上に手で覆い、クリスティーヌは懇願した。

 その様子が愛しくて、ファントムは不意に笑みを零す。

 「分かった、もう意地悪は言わないでおこう。その代わりに…
次にするべき事は、分かるね?」

 その言葉にクリスティーヌは戸惑いながらも頷き、ベッドの
上の空いていた場所にファントムを寝かせると、その上に馬乗りになった。

 「そうだクリスティーヌ…そのまま…」
 クリスティーヌはファントムが導く通りに、唇や指で
彼の体を愛撫しながら服を脱がせていく。

 「…どうした?」
 順調に愛撫を続けていたクリスティーヌの動きが、突然止まった。
 「エリック…その、これも…?」
 クリスティーヌは、ファントムのズボンを脱がせる事に
躊躇っていたらしい。

 「出来ないのか?」
 「え…えっと…恥ずかしくて…変、かしら?私…」
 「…変ではないさ。免疫のないお前に、無理強いする私ではないよ」
 期待に応えられなかったかしら、と落ち込むクリスティーヌの
頭を撫で、ファントムは自らズボンと下着を脱ぎ捨てた。

 「さあ、腰を下ろして」
 露にした欲望の上に、クリスティーヌを跨がらせる。
 クリスティーヌは恥じらいながら、ゆっくりと腰を下ろしていく。

 「や…ぁん、エリック…っ」
 厭らしい水音を立てながら、ファントムの欲望を
包み込んでいくクリスティーヌ。

707幼い初恋(4):2006/09/04(月) 02:26:22 ID:GaaM42vn
 「はぁ…っ」
 根元まで包み込むと、どちらともなく溜息を吐いた。
 目が合えば微笑んで、動き出すまでの間は、繋がったまま抱き締め合った。

 「…そろそろ動くぞ、クリスティーヌ…」
 その言葉にクリスティーヌが頷くと、ファントムはゆっくりと動き出す。

 「あ、ぁあ…っ」
 溢れる甘い吐息を押し殺すかのように、ファントムの体に
手を回し、肩に顔を埋めて抱きついた。

 「どうして…声を殺す?」
 「っふ、だって…恥ず、かし…っ」
 「この部屋には、私達しかいないのだ…だから、もっと
聞かせてくれ、私だけに…お前の声を」
 「はぁぁっん!」
 ファントムが下から強く突き上げると、クリスティーヌの
大きな嬌声が寝室に響く。

 「ふぁ、エリック…!」
 「クリスティーヌ…クリスティーヌ…」
 クリスティーヌの中が何度も蠢き、その度にファントムは
大きな波をやり過ごす。

 数回訪れた大きな波の中でも、最も大きなものを感じた、
次の瞬間。

 「エリ…ック、あぁぁああ…っ!」
 一際大きな嬌声を上げ、クリスティーヌはファントムを
締めつけながら達した。

 「…っく、クリス…ティーヌ…!」
 呟くような、呻くような声を出しながら、ファントムも
クリスティーヌの奥に熱いものを放って果てた。


−−−−−−


 余韻に浸りながら眠ってしまったクリスティーヌを、
ファントムは優しい眼差しで見つめた。
 絹のように滑らかで艶やかな髪を、指で梳いたり撫でてみたりする。

 行為の前、最愛の妻が「愛している」と言ってくれたことを
思い出し、ファントムは思わず頬が緩んだ。

 「…私も愛しているよ、クリスティーヌ…」
 クリスティーヌの額に軽く口づけ、愛の言葉を甘く囁く。

 「ん…エリック…」
 それに応えるかのように、クリスティーヌが彼の名を呼んだ。
 起こしてしまったか、とファントムは思ったが、またすぐに
心地良さそうな寝息を立て始めたので、寝言だったのだと思うことにした。

 クリスティーヌを抱き締め、ファントムもゆっくりと眠りに就いた。
708幼い初恋(5):2006/09/04(月) 02:46:03 ID:GaaM42vn
 どのくらいそうしていたのだろう。
 シャルルはとび色の瞳を見開いて、立ち尽くすだけだった。

 眠る前に「ずっと傍にいる」と約束したはずの母が、
目を覚ますといなかったのだ。
 だから、少し長くてまだ暗い廊下を−怖いけれど−通って、
母を呼び戻そうと、寝室の前に足を運んだ。
 そして、ドアをノックしようとした瞬間、耳に大きな悲鳴に似た
声が飛び込んできたのだった。母のものだった。

 母の身に何かあったのか、とシャルルは部屋に押し入ろうと
身構えたが、その後に聞こえてきた低い、甘い声が父のものだと
気付くと、上半身は寒中に放り出されたかのように、足は
根っこが生えたかのように動かなくなってしまった。

 −なんだかわからないけど、じゃましちゃいけないきがする−

 シャルルはそう感じて、自分の部屋に引き返そうとも思ったが、
体が動かなくなってしまっている。
 仕方がないので、シャルルはずっとそこに、寝室の前に立っていたのだ。

 シャルルは一部始終を聞いていた。

 苦しそうな声や悲鳴が聞こえたかと思えば、歓喜に満ちたような
声が聞こえた。
 責め立てるような言葉は、途中途中に愛の言葉に変わった。

 耳に飛び込んでくるものが何か理解出来ず、頭が、体までもが
揺れる感覚に襲われる。

 その感覚が何度かシャルルを襲った後、寝室から聞こえる声は
ぴたりと止んだ。

 「………」
 ドアの向こうに、自分の知らない世界が広がっている。

 「…ぼく、もうねなきゃ…」
 考えるだけ無駄だと悟った瞬間、シャルルの体は不思議と
自然に動き出した。

 シャルルが寝室の前を立ち去ったのは、夫婦がすっかり
寝静まった後である。
709幼い初恋(6):2006/09/04(月) 03:12:51 ID:GaaM42vn
 「お早うシャルル、今朝も凄い寝癖ね」
 愛らしいエプロンを身に付けたクリスティーヌが、
重力を無視しているプラチナブロンドの髪に触れる。

 「後でちゃんとしなくちゃね。あっ、お早うございます、エリック」
少し遅れてダイニングに姿を現したファントムは、朝早くから身支度を完璧に整えていた。

 「ああ、お早う。クリスティーヌにシャルル」
 「エリック、今日はお仕事、遅くなるの?」
 「…そうだな、予定よりやや進行が遅れているから。
今夜は先に寝ていてくれ」
 「分かったわ、お仕事頑張ってね」
 クリスティーヌはそう言うと、ファントムに大きめの
バスケットを差し出した。

 「お弁当。仕事場で食べてね」
 「…有難う、戴くよ」
 ファントムは柔らかく微笑み、バスケットを受け取る。

 すると、ほんの少しだが、二人の手が触れ合った。

 「!!」
 クリスティーヌは反射的に手を放してしまったが、
バスケットは既にファントムがしっかりと手にしていたので無事だった。
 「な、何故赤くなる」
 「あ…貴方だって、赤いわ」
 シャルルの目の前で、昨夜のように二人にしか分からない
世界が展開される。

 また、あの感覚…。

 「ほ、ほらシャルル!寝癖直さなくちゃね」
 明らかに焦っているクリスティーヌの手が、シャルルの肩に触れた。

 −なんにもかわってないふりなんてして、ぼくはしってるんだぞ!−

 ぱしん、とシャルルの小さな手が、クリスティーヌの手を
振り払って拒絶した。

 「かくしごとしてこそこそして、おとうさんもおかあさんも
だいっきらいだー!!」

 シャルルはそう叫ぶと、物凄い勢いで自分の部屋に走っていった。

 「どうしたのかしら、シャルル」
 「隠し事…こそこそ?何かしたか?」
 「さぁ…あっ!?」
 一度は首を傾げたクリスティーヌだが、すぐに驚いたような顔をして
大きな声を上げた。

 「もしかしてシャルル、寝室の外で聞いてたんじゃないかしら…」

シャルル、二度目の失恋だった。



−終−

710名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 03:39:35 ID:SlV/i+cB
>703
GJ! & 投下乙でした。1話目の投下に遭遇して2時間付き合った……w

「だいっきらいだー!!」と叫んで走り去っていくシャルル坊やに
父親の血を感じました。
物を倒していかなかっただけ、父ちゃんよりマシだと思いました。
711名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 03:51:25 ID:adBin5d7
同じく、wktkしながら2時間待機し続けました〜! ふい〜〜!w
GJでした! 息子にマジで妬いちゃうマスターが可愛かったです!
父ちゃんのダメな血は、母ちゃんによって、少しは薄まったのかな?
いたいけな少年が、この後グレない事をお祈りしますw
なんにせよ、幸せなファンクリに乾杯〜!
 
712名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 07:29:05 ID:z0XeYWqG
息子にヤキモチやいちゃうマスター、カワイスw
幸せそうな家族で和みました。GJ!ですわよ。
いや〜、これから本番って時にシャルルが乱入してこなくて良かったよ。
先生、邪魔されたらブチ切れしそうなんだもん。
713688:2006/09/04(月) 17:30:07 ID:63S2faK8
天使様・・・!GJ!まさかリクエストに答えてくださるなんて。
ほのぼの→エロ→大人のふりかけCM風ほのぼのの転換が見事でした。
「おのれ、」と息子に嫉妬するマスター萌え
夫婦でありながら翌朝お互いに赤くなって照れちゃうふたりに萌え
本当にありがとうございます天使様!ぜひ続編なども期待
714名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 18:17:56 ID:stC6Kcjy
子どもみたいな膨れっ面先生サイコーw ふてくされたんですねww
きっとシャル坊とも 真顔で真剣にやりあったのでしょうね。

ほのエロハッピーGJ!!
またまた エロしくお願いします。


715名無しさん@ピンキー:2006/09/05(火) 17:26:53 ID:LXJsgnZc
GJ!! こんな家庭にあこがれます。作って見せますっww

先生って 子供とも対等な感じ。
娘にはデレデレでしょうがw
自分が子どもらしい扱いを受けて来なかったせいでしょうか?
切ない・・
716名無しさん@ピンキー:2006/09/06(水) 09:14:31 ID:lclxYP/H
>>703
GJ!
次回投下時は、まとめてメモかワードに書いておいて、コピペで連続投下してもらえないものか…。
夜中に投下の続きを30分ずつ待つのは辛い…。

>>715
ガンガレ
717名無しさん@ピンキー:2006/09/06(水) 18:27:40 ID:OEn0sYnj
エ、まさか天使様書きながら投下されたのですか?
自分はてっきり、鯖がつながりにくいとかパソコンの不調とかかなと思っていました。
なんにせよGJ!
手のかかる息子がふたりで大変だクリス。ぜひともシリーズ化をキボン
718名無しさん@ピンキー:2006/09/07(木) 16:27:45 ID:rd0lHECm
ファントム×クリスティーヌ
(多分)地下でイチャイチャ
7191/4:2006/09/07(木) 16:28:31 ID:rd0lHECm
「キャーッ!」
バレリーナの控え室に鋭い悲鳴が響く。
着替えていた踊り子たちが、一斉に悲鳴の主を振り返った。
震えながらその金髪の娘は、丁度上着を脱いだばかりの一人の少女を指差す。
「それ、腕!腕に痣が…!」
指差された少女は己の腕を見下ろし、さっと青ざめた。
雪のように白く滑らかな二の腕に、黒ずんだ痣がついている。
「…あ、」
少女が口を開くより早く、傍にいた少女が自分の掌をその痣の上に当てた。
「…指の跡よ!」
取り巻いた踊り子たちが小さな悲鳴を上げる。
「オペラ座の怪人よ…」
「ファントムだわ」
「…怖い!」
7202/4:2006/09/07(木) 16:29:11 ID:rd0lHECm
ひそひそと囁く声に、自らの腕を抑えた少女は首を振る。
「違うの!違うのよ……実は夕べ…気味の悪い夢を見たの…」
囁くように言葉を続ける。
「寝苦しくて目が覚めたら、その…身体がぜんぜん動かなくて
上から…誰かが私の顔を覗き込んでいたの」
俯けた顔を上げ、唇を震わせる。
「知らない男の人だったわ…ええと、白髪で、うんと小さくて…そう、腰の曲がったおじいさんだったの。
私の顔を覗き込んで、にたーっと笑ったわ。口は耳まで裂けていて、中は血のように真っ赤だった」
息を呑む声。少女は回りの青ざめた顔を見回し、声を潜めた。
「その人は手を伸ばして、節くれだった皺だらけの指で、私の腕を掴んだの…!」
再びそこここから小さな悲鳴が上がった。
「次に気がついたら朝だったから、あれは夢だと思ったんだけど…」
眉をひそめて自分の腕に視線を落とす。
「…そういえば、聞いたことがある」
一番年かさの娘が口を開いた。
「私たちの部屋がある辺りって、昔道具小屋のあった場所で
道具係をやめさせられた老人が張りで首を吊って死んだことがあるって…!」
悲鳴が大きくなる。
「まさか、その老人の幽霊?」
「私、そういえば、小さな影みたいなのを見たことがあるわ!」
口々に呟く踊り子たちの中心で、少女は青ざめたまま自分の腕をぎゅっと押えた。
7213/4:2006/09/07(木) 16:32:19 ID:k5VTio/y
「なるほど。ここ数日の幽霊騒ぎはお前の所為だったというわけだ」
男は自らの下で大きく上下する、白い胸元にくちづけた。
「あんな騒ぎに、なるなんて、思ってなかったの…」
荒い息の間から切れ切れに呟き、目を閉じる。
溢れた涙はこめかみを伝い、横たえられている
長椅子の暗紅色のクッションに吸い込まれていった。
「困った娘だ。
幽霊を探せとばかりに隙間や暗がりを大勢の人間が覗き込み、
おげで支配人に手紙を渡すのにも大変な手間がかかった」
スカートの裾から手を差し入れ、もうずいぶん長い間擽るように嬲り続けている
少女の身体の中心を、再び下着越しにゆっくりと撫で上げる。
クリスティーヌは掠れた悲鳴を上げて、すっかり力の入らなくなった身体を慄かせた。
「ああ、お願い…!」
「その上夜は見張りまで立つようになり、十日も、レッスンはおろか会うことすらできなかった」
ぐっしょり濡れそぼった布の上から、はっきり尖った肉芽を引っ掻く。
「ああ、あ、ぁ、あ…!」
「私の我慢はこんなものではなかったぞ?」
ひくひくと震える唇に自分のそれを合わせる。
舌を差し入れ、少女の舌が応えようと動いた瞬間に唇を離す。
与えられるはずの快楽を奪い去られ、クリスティーヌは大きく喘いだ。
「…許して、もう…」
「それに下らぬ作り話で人の心を乱す子供には、お仕置きが必要だ」
「私だけ、の、所為じゃないわ…!」
胸の頂を手袋の指先で焦らすように転がされながら、クリスティーヌは弱弱しく首を振った。
「マスターが、強く、掴んだり…なさるから」
「…私の所為だと?」
「そう…ああっ!」
「ならば仕方ない。お仕置きはここまでにしよう」
7224/4:2006/09/07(木) 16:36:02 ID:m+iFMgIE
細い両足首を掴んで、片方を長椅子の背にかける。
大きく広げられた脚から下着を下ろし、引き抜く。
すっかり緩み蜜を溢れさせる合わせ目に、指を差し入れ浅くかき混ぜると
動きに合わせて嬌声が漏れた。

膨れ上がった肉の楔を、すっかりとろけきった肉の鞘は
締め付けながらもたやすく呑み込んむ。
ファントムは待ちかねたように背に回された小さな手に苦笑した。
「私の背中の引っ掻き傷は…猫の所為にでも、すればいいのか?」
男の言葉に一瞬目を開くが、すぐに突き上げられ、ぎゅっと目を閉じる。
揺さぶられるままに縋り付き、男の動きに合わせて腰を動かす。
やがて逸らされた頭ががくがくと揺れ始め、一声鳴くような悲鳴を上げる。
奥から搾り取るように締め付けられるのを感じ、ファントムも自らを引き抜くと
クリスティーヌの腹の上へと放った。

「や、ぁ…!」
ふわふわと覚醒の狭間を漂っていたクリスティーヌは
首筋を突然咬みつくように吸われ、身体をびくりと震わせる。
顔を離し、みるみる赤くなる跡を眺めて男は唇を歪めた。
「さて今度はなんと言い訳する?吸血鬼か?狼男か?」
「…今度こそオペラ座の怪人の所為だって言ってやるんだから!」
「それは困るな」
ぷうと膨れる頬を撫でながら、ファントムは自らの付けた跡に再び唇を寄せた。
723名無しさん@ピンキー:2006/09/07(木) 17:08:36 ID:LXTSKPeT
GJGJ!
スンバラシイ!
天使様ありがとうありがとうありがとう。
724名無しさん@ピンキー:2006/09/07(木) 23:01:16 ID:PUheHv6c
イチャイチャたまりません、GJ!天使様
10日も我慢させられた欲求不満マスターハァハァ
しかしあれだな…人知れずふたりが仲良くなって、こっそりクリスが地下に遊びに行く、
というのは映画のマスターの一番の望みだったのかなとさっきDVD観て思った
美味しいSSありがとう!
725名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 07:59:28 ID:Bf0CnqgY
うはっwちちくりあってるwww
天使さまGJ!
>724
クリスも十日間我慢していて欲求不満だっただろうね。
随分可愛がられているようだから、先生無しではいられない体になってしまったのかもw
726名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 12:02:55 ID:fgSC+kPc
やりながらの会話って萌える…!
天使様ありがとう!!!
727名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 16:43:31 ID:vdW4MMli
天使様降臨期待上げ。
728名無しさん@ピンキー:2006/09/12(火) 07:59:35 ID:3yOQaN22
なにとぞ〜
729名無しさん@ピンキー:2006/09/13(水) 00:48:21 ID:Um9ii+X9
天使様じゃなくてごめんなんだけど

若いころやんちゃしてて、片付け下手な映画マスターなら。

「マスター…これ…」
「何だね?クリスティーヌ」
「本の間から出てきたの。髪の毛。赤毛の…私のじゃないわね?」
「っ?!」
「…カルロッタの髪に似てる…」
「ち、違う!あの女をここに連れてきたことはない!誓って本当だ!」
「ここでないところではあったの?カルロッタ以外なら連れてきたことがあるの?!」
「こ、言葉のあやだ!ええと、その、そうだ、人形だ!人形を作るときの…」
「じゃあこちらは?」
「?」
「…あちらの楽譜の下から出てきたの…長い、黒髪」
「っ!そそそそれは、ほら、アレだ、私の髪だ!昔は長く…」
「…マスター、」
「待て、待て!ヅラ…髪に手をかけるのは止せ!止め…ノォーーーーー!」

とか、つらつら考えた。
730名無しさん@ピンキー:2006/09/13(水) 16:26:07 ID:YZs+gvlH
GJ天使様!(笑)
橋本徹弁護士の言葉を借りると
クリスの、マスターの身の回りチェックは、
東京地検特捜部の捜査よりも厳しいと思った。
731名無しさん@ピンキー:2006/09/13(水) 17:06:37 ID:KTqBXsa8
>>729
ワロタ
何だこの妙な緊張感www
732名無しさん@ピンキー:2006/09/15(金) 23:13:16 ID:ZPoD1Mzq
ファントム×メグ
SM風味。
かなり長くなってしまいましたが、思い切って投下します。
7331:2006/09/15(金) 23:14:24 ID:ZPoD1Mzq
メグ・ジリーは、自分の好奇心を止めることができなかった。

カルロッタの楽屋の鏡に、あんな仕掛けがあっただなんて! 
部屋のこちら側からはただの姿見にしか見えないのに、ちょっと引くとそれは扉のように
開き、暗くじめじめとした通路への入口になっていた。

蜘蛛が巣を作り、鼠が地を這う湿った道はとても恐ろしく、母にはもう二度とあそこへ
足を踏み入れないようきつく叱られたけれど……一体あの道はどこへ繋がっているのか
……噂好きの若い娘は、どうしても確かめずにはいられなかった。
それに、クリスティーヌが楽屋から忽然と姿を消してしまい、支配人やパトロンたちを
巻き込んだ大騒ぎになったあのガラの夜から、クリスティーヌはなんだかいつもぼんやり
としていて、その訳を親友の自分にも決して語ってはくれない。
きっと、あの鏡の奥に、彼女の秘密が隠されているんだ……メグは「親友のために」と
自分に理由を作って、深夜のたった一人での冒険を決行した。

管理室からこっそりと鍵を拝借し、一番奥の楽屋へ向かう。もう劇場の明かりはほとんど
消されていて、昼間の喧騒が嘘のように廊下は暗く静まりかえっている。
こんな時間に楽屋に来る人などいるはずはない……そう思いながらも、メグは手に持った
ランプを高く掲げて、辺りを慎重に窺った。

音を立てないように、ゆっくりと鍵を回す。かちゃり、という冷たい金属音とともに、
ドアが開く。大量の花や化粧品、煙草や香水が入り混じった不透明な匂いが鼻をつく。
ランプを持った自分の姿が正面に写っている。……今夜も、あの鏡は簡単に開いてくれる
だろうか。

足音を忍ばせて鏡へ向かう。
自分の鼓動が激しくなっているのが分かる。
「オペラ座には恐ろしい怪人が住み着いている」――そんな噂話が頭をよぎった。
もしかしたら、いや、きっとそうに違いない……この通路は、「怪人」の棲家へ続いて
いるんじゃないだろうか……。
7342:2006/09/15(金) 23:15:01 ID:ZPoD1Mzq
ガラの夜にそうしたように、鏡にそっと手を掛ける。
ズズ……と重い音をさせて、鏡は横に動いた。

開く!

冒険が半分成功したような喜びと、ここからはもう引き返せないという怯臆の気持ちが
交差する。
ごく、と唾を飲み込んで、メグは奥へと続いている石張りの通路へ爪先を差し入れた。

一歩、また一歩と暗い道を進んでゆく。
時々、水がしたたり落ちるような音が響く。頼りになるのは、この小さなランプだけ……
心もとない灯は、道の終焉を示してはくれない。もしかしたら、噂で聞くように、怪人の
姿を見たものは生きてその住処から出ることはできないのかもしれない。クリスティーヌ
は命を取られこそしなかったが、その代わりに魂を吸い取られてしまったのでは……
バレエシューズの底が水を吸って冷たくなってきた。もう帰ろうか……。

メグがそう思った瞬間、背後の鏡がひとりでに音を立てて閉まった。
「!!」
振り返る間もなく、彼女の口を大きな手が覆った。
体は後ろから太い腕で強く抱えられており、思うように動かせない。
「……! ……!!」
悲鳴を上げようとするが、皮手袋をはいたその手は、彼女の声を漏らしてはくれない。
ランプがけたたましい音を立てて転がり落ちた。

殺される!
メグは必死で息を吸おうとする。すると、薬品の匂いが肺に飛び込んできた。
その匂いと未曾有の恐怖に翻弄され、メグの意識はだんだんと遠のいていった。
朦朧とする意識の中で、「少々悪戯が過ぎるようだ……メグ・ジリー」という男の声を
聞いた気がした。
7353:2006/09/15(金) 23:15:36 ID:ZPoD1Mzq
夢か現実か分からないまま、メグは目を開けようとした。
何かに邪魔をされて、瞼がなかなか持ち上がらない。睫毛が擦れる嫌な感覚が瞼を突く。
ぼんやりとした光しか目に入ってこない……目隠し?
両目を覆っているそれを外そうと試みる。手が動かない!
メグの両手は後ろ手に縛られているのだ。
自分の身に何が起こっているのか把握できないまま、メグは身を捩ろうとした。――うまく
動けない。足首も縄のようなもので固定されている……それも、着ていた服をすべて脱がされ
両脚をMの形に開かされた格好で。

「気がついたようだね? メグ」
遠くの方から、先ほどの男の声が聞こえる。
「好奇心が旺盛なのは良いことだ。ひとりでここへ来ようとした勇気も認めよう。しかし」
その声は、ゆっくりと近づいてきた。目隠しを通した光が遮られ、男が目の前に来たことが
分かる。
「このオペラ座には、見てはいけないものもあるのだよ……知っているだろう? 時々、
詮索好きな裏方や踊り子が姿を消してしまうのを。そして、彼らが決して戻っては来ない
ことを……?」

男の言葉を理解する余裕は、今のメグにはない。
けれど、とても恐ろしいことを話しているということだけは分かる。
裸にされている寒さも手伝い、ガクガクと体が震え始めた。

「本当なら、おまえもその仲間に入れてやるところだが……」
そう言いながら、男の手はメグの顎を持ち、少しだけ上に向けさせた。
「その美しさと気丈さに敬意を表して、チャンスを与えることにしよう」
メグは唇を開いたが、言葉を発することはできなかった。
奥歯がガチガチと音を立てる。
男は「チャンス」と言った。一体何をする気なのだろう?

男の手が顎から外され、彼は軽く笑ったように見えた。――見えた、といっても、メグ
がその様子を目にした訳ではなく、男から発せられる空気がそんな風に感じさせたのだ。
「そんなに震えなくてもいい。簡単なことだ……」
男はメグに覆いかぶさるようにして、耳元で囁いた。
「私の“問い”に答えるのだ……拒まず、抗わず」
7364:2006/09/15(金) 23:16:10 ID:ZPoD1Mzq
男は、思ったよりも難しいことを要求してはいないようだ。
けれど、「問い」とは何だろう。常人にはとても答えられないような難解な謎掛けだろうか? 
私は何か知ってはいけないことを知ってしまったのだろうか? メグの脳裏を不安と恐怖が
交互によぎる。

「返事は?」
男の唇がメグの耳に触れた。
「……はい」
ようやく発した彼女の声はかすれていた。

男はゆっくりと彼女から身を離すと、何かをテーブルの上から取り上げた。
この部屋の灯りは、すべて蝋燭なのだろうか……? 男の影が行き来する間から漏れる光は
絶えずゆらゆらと揺れていて、蝋の燃える匂いが充満している。メグは男の動きに目を凝らし
ながら、自分が拘束されている場所を把握しようと努めた。

しかし次の瞬間、メグの思考は完全に止まってしまった。
男はメグに再び近づき、「何か」で、彼女の胸元をなぞり上げたのだ。
「きゃあっ!」
メグは体を跳躍させた。
「抗うな、と言ったはずだ」
男はそう言い、手に持ったそれでメグの張り出した乳房を辿る。
ふわふわとした感触がメグの胸をくすぐる。軽くて柔らかいもので撫でられているようだ。

「おまえの体に触れているものは何だと思う?」
それはメグの乳首で意地悪く震えた。
「あ、い、いやっ」
メグの口から高い声が漏れる。
「“これ”は何だと問うているのだ、答えなさい」
男はそれを胸から腰、太腿へと滑らせていった。
メグの肌の上を、くすぐったいようなゾクゾクとするような、奇妙な感覚が渡ってゆく。
それが再びメグの腰を渡り、寒さに尖った乳首に触れた時、彼女の身体はぴくんと反応した。

これは……これは……?
「は、羽根?」
メグは怯えた声色で言った。
7375:2006/09/15(金) 23:16:50 ID:ZPoD1Mzq
男はそれを聞いて、鼻で軽く笑った。
「さすがに簡単すぎたようだ……そう、鵞鳥の尾だ」
どうやら自分は「問い」に正解することができたらしい。もしかして、これで終わり……?
そんなメグの密かな期待は、次の刺激で断ち切られてしまった。

「あ……何っ……」
メグの臍の下あたりに、冷たい何かが垂らされた。
それは一本の線を描きながら、下へと伝い落ちてゆく。細い糸のようだったそれはどんどん
太くなり、ついにはメグの秘所のあたりにとろりとした水溜りを作ってしまった。
覚えのある香りが漂っている……けれど、混乱しているメグは、何の香りだったかすぐ
には思い出せない。

男は衣擦れの音をさせながら、メグの背後に回り込んだ。きゅ、と皮の擦れる音がする。
手袋を外しているのだろうか。

「では、これは……?」
垂らした液体を指先でたどる。
その指はメグの下腹を垂直に降りてゆき、恥毛の手前で止まった。
メグの喉がごくりと音を立てる。唇をわずかに開いたところへ、その指先が触れた。
はっとして顎を下に振ろうとすると、男の手が伸びてきてそれを制した。
細い顎をつまむように持ち上げ、親指で下唇を開けさせる。液体をすくった指が、口中に
差し込まれた。

メグの舌に液体が触れる。……甘い……?
早く、早くこの味と香りを思い出して答えなくては。
焦れば焦るほどメグの思考は麻痺して、簡単なはずの謎掛けを解くことができなくなって
しまう。彼女は夢中でその指を舐めた。

「まだ分からないのか?」
男はメグの口元から指を引き抜く。唾液の糸が伸びたのが分かった。
口を開けたまま必死で記憶をたどるメグの前に、男が屈み込んだ。
7386:2006/09/15(金) 23:18:02 ID:ZPoD1Mzq
「あぁぁっ」
彼女の乾いた唇から、悲鳴のような高い声が発せられた。
男がメグの腰に手を沿え、秘所に舌を這わせたのだ。

金色の恥毛に絡みついた冷たいそれを拭うように舐め、割れ目に舌先を差し入れる。
「いや……何をっ……」
メグが腰を捻ろうとすると、男の手が腰をぐっと掴み、メグの動きを阻止してしまった。
男はそのまま、執拗にメグのそこを舐め続ける。
メグは動物に虐められているようなその感覚に、最初は抵抗し、苦痛に感じていたが、
男の舌が割れ目の中の突起に到達した時、甘い刺激に変わるのを認めないわけにはいかな
かった。

卑猥な水音をさせながら、男の舌がメグの小さな突起を回すように舐める。
「や、いやぁ……あぁん」
抵抗しているつもりが、自分の口からよがるような声が出てしまった。メグは顔を赤くして
唇を噛んだ。

「さぁ……おまえの体を汚したものは何だと思う……?」
男の舌は、メグの突起を舐るのを止めない。
「あぁ、だめぇっ……やめて、お願い、やめてぇ……」
メグが身悶えする度、彼女が縛り付けられている椅子のようなものがギシギシと音を
立てる。
「あまり動かないでほしいのだが? おまえがその恥ずかしい格好で腰掛けているのは、
ルモンという職人が作った美しいベルソーなのだよ……本来なら、幼子の揺り籠に使う
ものだ。その繊細な美術品を、おまえの淫らな尻で壊されては堪らん」
メグを咎めながらも、男は舐る動きをどんどん淫猥にしてゆく。
「ひいぃ……いやぁぁ」
「さぁ、早く答えないと、全部舐め取ってしまうぞ……」
ちゅうっという音をさせて、濡れた花びらを吸いたてた。
7397:2006/09/15(金) 23:18:47 ID:ZPoD1Mzq
「おや? 違う蜜が溢れてきたようだが……?」
男の舌先が、秘裂の奥へと侵入してきた。
「うぅぅ、くふぅぅっ」
メグの理性は止まりかけた思考を元に戻そうと努めているのに、口をついて出てくるのは
いやらしい喘ぎ声だ。
膣の入り口がひくひくと痙攣し始めているのが分かる。メグは、自分が官能の沼に引きずり
込まれてゆくのを認めない訳にはいかなかった。

「さぁ……」
男の熱い息がメグの秘所にかかる。
「それでは、お前の蜜をじっくり味わわせてもらうとしよう」
そう言うと、男は指でメグの秘裂を広げ、さらに奥へと舌を差し込んだ。
じゅぷっという淫らな音が響く。

あぁ、そんな音を立てないで……私のそこは、そんなに濡れてしまっているの……
「んんっ、や、やめて……もう……」
目隠しをされ、手足を縛り付けられた格好で、恥ずかしい場所を男の舌でまさぐられる屈辱。
怖いのに、すぐに逃げ出したいのに、すべてを拒絶したいのに……意思とは反対に、身体は
熱く潤んで、淫靡な刺激を受け入れてしまっている。

ぴちゃぴちゃと猫がミルクを啜るような音を立てて、男はメグの花びらを舐め、太い指を
膣内に進入させた。
「あふぅぅ……だめぇっ」
中で襞を掻き回すように円をかき、途中まで抜いてはまた奥まで突き入れる。
激しく往復させ、一番感じやすい箇所を指の腹で刺激する。

「お願い、お願いぃ……もうやめてぇ……あぁっ」
メグはかすれた声を振り絞って喘いでいる。理性は完全に失われ、男の指に秘所を任せ
きっている。
そして、男が指を往復させながら、下唇を恥ずかしい突起に這わせた瞬間、メグのそこ
から熱い液体が噴水のように溢れ出た。
「あ、あぁ……あ」
7408:2006/09/15(金) 23:19:26 ID:ZPoD1Mzq
メグは、一筋の湧き水のように噴出する体液と、抑えられなかった欲情が流れ出してゆく
のを感じていた。
火照っていた身体から、ゆっくりと体温が引いてゆく。閉じた瞼から染み出した涙が、両目
を覆う布に吸い込まれる。

「……まだ答えてはいないだろう?」
男は微笑を含んだような声でメグに囁きかけ、両手でメグの頭を挟み、少し上に向けさせた。
冷たい金属と、その上のねっとりとした液体が唇に触れる。小さなスプーンのようだ。
ぼうっとした頭の中で、メグはやっとそれが何であるのかを思い出した。
「蜂蜜、ね……?」
「随分と時間が掛かったものだ」
男は馬鹿にしたような声色で言い捨て、メグの傍を離れていった。

まだ何かをされるのだろうか……こんなのはもう嫌だ。早く帰りたい。
思考が戻ってくると、メグの心に再び恐怖が蘇ってきた。しかし、背後から男が何かを取り
出しているような物音が聞こえると、わずかに心臓が高鳴るのを感じた。
男の舌と手によって開花させられた愛欲は、メグの身体に微かな期待を与える。

「さて、淫乱な娘よ……これで最後だ」
男の口から、「最後」という言葉が発せられた。聞き間違いではないはずだ。何をされるのか
分からないけれど……解放はしてもらえるようだ。

不意に男の手がメグの足首に触れ、器用に縄を解いていった。急に血が通い始めたことに
戸惑っている間に、続いて手首の縄も外された。
突然自由になった両手を動かそうとすると、長時間きつく縛られていたせいか、肩が少し
痛んだ。それでもどうにかして手を上げようとした直後、メグの身体は宙に浮いた。
「きゃあっ!」
何が起こっているのか理解できないメグは、男の腕の中で身を捩った。手足をばたばたと
動かして、がっしりとした腕から逃れようとする。
そんな抵抗を物ともせず、男は黙って歩みを進める。メグが目隠しに手を伸ばすと、男は
柔らかいベッドの上に彼女を放り投げ、彼女が体勢を立て直す前に、再び手首を縛り上げた。

「いやっ、い、痛いっ!」
「騒ぐな」
男は強い口調で言った。その言葉は、メグの身体を硬直させるのに充分な恐気を含んでいた。
7419:2006/09/15(金) 23:20:01 ID:ZPoD1Mzq
「最初に言ったことを忘れたわけではないだろう? 私は聞き分けのない人間を好かない」
メグは身体をくの字に曲げて、声を上げずにすすり泣いた。
男は、その言葉の厳しさとは裏腹な優しい手つきでメグに触れると、身体を起こすように
促した。脱力したメグは、されるがままに両肘で上体を支え、膝を付いて、四つん這いの
格好になった。

「よろしい」
男は満足そうに言って、自分もベッドの上に片膝を乗せた。男が体重を掛けた分だけ、
ベッドが歪む。
すると突然、メグの背中に強烈な刺激が走った。
「ひっ!」
熱い雫が、ぽたぽたと数滴垂らされたのだ。
「あうぅ……いや……あ」
痛いような刺激の後、熱いという感覚がむき出しにされた皮膚に伝わってくる。雫は流れ
落ちようとはせず、そのまま一点に留まってじわじわと肌に焼き付く。

再び、ぽたっ、ぽたっ、と背中に同じ雫が落とされた。メグの身体はその度にびくんと波
打つ。
「蝋……蝋ね……そうでしょう?」
泣き出しそうなメグの言葉に、男が答える。
「まだ何も問いかけていない」

え……?
メグは男の意図していることが理解できない。
蝋じゃなかったのだろうか? でもこの感じは、溶けた蝋燭を触ってしまった時の刺激と
そっくりなのに。聞かれる前に答えてしまったのが気に障ったのだろうか?

目隠しをされたまま、メグはあれこれと考えを巡らせた。
ぎし、という音とともにベッドが歪み、男がメグの背後からベッドに乗り込んできたのが
分かった。膝を立てた両脚を広げさせ、自分の身体をその間に割り込ませてきた。
……今度は一体何をする気……?

男は大きな手で、メグの尻に触れた。形の良い丸みを辿り、揉み解すように撫でまわす。
「あ、ああ……ん」
淫靡なその手つきに、メグはつい甘い溜息を吐いてしまう。

男の息が蝋燭を吹き消す気配がした。
74210:2006/09/15(金) 23:20:32 ID:ZPoD1Mzq
男は手に持っていた棒状のそれ――細い蝋燭のようだ――を、メグの秘所へ触れさせた。
ペンで線を引くように、つぅ、と秘裂をなぞる。
「んっ」
ついさっき絶頂に達したばかりのメグのそこは、そんな僅かな刺激にも反応してしまう。
それは意地悪く、湿った入り口のあたりを上下に行き来する。その動きはだんだんと滑らか
になり、メグの愛蜜が染み出したのを彼女自身に自覚させた。

「淫らな娘だ」
言いながら、男は蝋燭を少しずつ内部へ挿入していった。それは男の指よりも細く、すんなり
とメグの膣へ入り込んでしまった。
円を描くように捏ねると、メグのそこはくちゅくちゅと音を立てる。
メグは自分でも知らないうちに、その棒の先端が敏感な部分に触れるように腰を回していた。

何回かそうして動かされた後、それはぬるりとメグの胎内から引き抜かれた。
先端を僅かに触れさせたまま、秘裂から尻の割れ目を辿る。
愛蜜にまみれたその先端が、丸みの奥に潜む肛孔に達した時、男の片手が尻頬に添えられた。
メグの身体がぴくんと震える。ほんの一瞬、時が止まったように思えた。

男は吐息をメグの尻に吹きかけた。
そして、蝋燭を持つ手に少しだけ力を入れて、きつく閉じられた肛孔にその先端を進入させた。
「あ、うぅぅっ!」
それはメグにとって初めての刺激だった。
今まで自分ですら触れたことのない禁断の場所、絶対に他人に晒すことなどないはずの不浄
の場所……そんな所に、物を入れられている……!
「いやっ、いやぁぁぁ!!」
メグは悲鳴を上げた。

「声を上げるな……」
男は低く囁いて、挿入したものを軽く上下に動かした。
「ひぃ……い……っ」
メグは縛られた手でシーツを掴み、かつて経験したことのない刺激に耐えている。
それは痛みでも、摩擦でもなく……刺すような圧迫感と、怒涛のような弛緩と緊張とが一気に
攻め入ってくるような……不思議な感覚だった。
74311:2006/09/15(金) 23:21:07 ID:ZPoD1Mzq
「んうぅっ……くぅぅ」
身体中から汗が吹き出し、一気に引いてゆくような凄艶がメグを翻弄している。

男は細い棒をくるりと回転させ、その絞襞に新たな刺激を加えた。
「ああ……あ……もうやめて……許してぇ……お願、い……」
メグは懇願するように叫んだ。もう咽ぶような声しか出てこない。
「駄目だ」
「うっ、うぅぅ……」
男はさらにそれを奥まで進め、少し後退させて、入り口のあたりでまた上下させた。ゆっくり
と円を描き、奥まで入れては回転させる。
そうされているうち、メグは自分の恥ずかしい孔に与えられているその刺激が、壮絶な官能
に変わってゆくのを感じていた――その下の秘裂からは蜜がたらたらと溢れ出し、彼女の白い
太腿のあたりまで流れ落ちていた。

「では……最後の“問い”だ」
男は蝋燭でくりくりとメグの秘孔を弄びながら言った。
メグは息を荒くし、涙と自分の唾液で汚れきった顔を後ろに向けた。濡れた目隠しは、薄明るい
光を通してはいるものの、男の姿をはっきりと映してはくれない。
男は、細い蝋燭をそのままに、もう片方の手の指をメグの秘所へ滑らせた。
くちゅ、と音をさせながら、いっぺんに二本の指を挿入する。

「んはあっ」
メグは両肘で身体を支えながら背中を反らせた。
尻孔を弄られながら、奥まで差し入れた二本の指で、柔らかく膨らんだ内襞をくちゃくちゃと
舐られる。
「ひぁあ……やっ、あああ……ぁん……あああ……!!」
メグにもう理性は残っていない。下半身は官能と恥辱と愛蜜でどろどろに溶け、腰は動物のように
びくびくと痙攣している。大きく開けられた口からは、性急な息と唾液、淫らな喘ぎ声だけが
放出されている。

男は汗ばんだメグの尻頬に唇を付けるようにして、舐めるような声で言った。
「お前にもっと好いものをやろう……さぁ、どちらの孔に入れて欲しい?」
74412:2006/09/15(金) 23:21:56 ID:ZPoD1Mzq
いつの間にか、メグの尻からは、あの細い蝋燭が外されていた。
男は親指の腹で、その敏感な絞目を丸く撫でた。
「ここか……? それとも」
親指を緩やかに動かしながら、長い中指で膣内を弄る。
「こちらの方か……?」

「はぁ……くぅぅ……」
その指が引き抜かれると、メグの秘所から大量の蜜が流れ出した。
男はメグに後ろから覆いかぶさるようにして、べとべとに濡れた指をメグの口元へ持って
いった。彼女の耳の内側に唇を這わせながら、指先を上下の歯の間に滑り込ませる。
「ここも、孔だな」
指はメグの口中を探るように動く。メグは反射的に、その指に舌を絡ませてしまう。
餌を待ちかねていた小動物のように、懸命に指を舐める。彼女の身体はもう、男に完全に
屈服していた。

「さぁ、答えなさい。どこの孔がいいんだ?」
男の手が、メグの背筋をたどり、尻の間を滑り降りた。
メグの秘所がぴくぴくと震える。
その動きを制するかのように、男の指が外陰をそっと抑えた。メグが咥えていた指が、
答えを求める合図のように外された。

「そ、そこに……私のそこに、入れて……ください……」
男は満足げに微笑したようだった。

メグの胴のくびれに、男の大きな両手がかかった。
メグは背中に、男の体温と熱い息を感じた。
溶けそうなほど熱く潤んだ入り口に、男の硬い肉棒の先が触れる。そしてメグが少しだけ
腰を浮かせた瞬間、それは、ずん、とメグの膣内に突き入れられた、
「はあぁぁっ」
メグはたまらず大きな息を吐いた。

内奥に、熱い塊を感じる。硬く、大きく、吸い付くような欲望の塊……あまりの官能に、
目が回りそうだ……胎内に男の躍動を受け入れて、メグは全身を性感に委ねていた。
74513:2006/09/15(金) 23:22:54 ID:ZPoD1Mzq
それはメグの深奥まで達したかと思うと、またすぐに引き抜かれる。その動きはどんどん
激しさを増し、息をつく暇もないほど、メグの欲情を攻め立てる。
メグはシーツを握り締め、歯を食いしばって、身体が崩れてしまわないように耐えていた。
力を抜いて、この官能に押し流されてしまったら、命までも溶けてなくなってしまいそうな
気がしていた。

男はメグのすべてを貫き、その反動で退く。そしてまた奥まで攻め入ってくる。
男の腰とメグの尻がぶつかり合う音が響いている。メグの膣から溢れ出した蜜は、彼女の
内腿を滝のように伝い落ちていった。

メグは男の動きに身を任せながら、逃れようのない激しい絶頂感が近づいているのを意識
していた。全身が痺れ、男が往復するその中心部から、緩んだ土砂のように崩壊してしまい
そうだ。大量の放水のような快感は、恐ろしい力でメグを押し流そうと侵攻してくる。
「あぅぅぅっ、あぅっ、あ、あ……」
肉棒が突き入れられる度に、メグの喉から雌犬のような声が搾り出される。
男は容赦なくメグを穿つ。びりびりとした震えが下腹を駆け上ってくる。

「あ……あぁ…・・・あぁぁあああっっっ!!!」
男が力強く腰を突き入れた瞬間、メグは地獄に引きずりこまれるような激しい絶頂に見舞われ、
そのまま崩れ落ちてしまった。
倒れこんだベッドの上で、目をきつく覆っていた布が緩んだのを感じた。閉じかけた睫毛の
隙間から見えたものは、真っ白な仮面だった。


メグが目を覚ますと、そこは見慣れた寄宿舎のベッドの上だった。
はっとして身を起こすと、明け方の淡い光の中で、同輩達がすやすやと寝息を立てている。
慌てて自分の身体に目を落としたが、いつもの寝着を身に付けたいつもの身体がそこにある
だけだった。両方の手首にも、何の痕もついていない……あれは夢だったのだろうか?

メグはベッドから起き上がり、部屋の小さな鏡まで歩いていった。寝着をはだけて、身体を
確かめてみる……縄の痕などどこにもない。やはり夢だったのか……メグは混乱した気持ち
で身を捩った。そして、しばらくの時間、鏡の前に釘付けになった。
彼女の白い背中には、点々とした火傷の痕が残っていたのだ。

そして、足元に置かれたそれを見た瞬間、あの出来事は夢ではなかったと確信した。
そこにあったのは、黒いリボンを結んだ真っ赤な薔薇だった。

メグはその薔薇を拾うと、誰にも見られないように、そっと引き出しの奥へとしまいこんだ。
746名無しさん@ピンキー:2006/09/15(金) 23:25:13 ID:ZPoD1Mzq
以上です。長々と失礼いたしました。
747名無しさん@ピンキー:2006/09/15(金) 23:39:48 ID:Fes1S9Po
ぐ…GJ……!!!!!
縄も蝋燭もフル出動、最後の問いはソレはズルいよ、先生!
メグも、薔薇しまっちゃうんだ…
748名無しさん@ピンキー:2006/09/16(土) 00:37:21 ID:uBJU3zwf
天使サマGJ!GJ!GJ!!
奴隷化してくメグがえろい。
ありがとう。
749名無しさん@ピンキー:2006/09/16(土) 03:53:57 ID:J1pMRnwW
うわっ、うわっ、ウワアアアァァァッァァァァァ!!!!!






グッジョブ!!!!!!

750名無しさん@ピンキー:2006/09/16(土) 23:20:18 ID:k/ysHxgC
GJ!ハラハラエロエロしながら読ませていただきました。
原作や映画ではファントムとクリスが関わる場面が無いから
とても嬉しい。ここでしか楽しめない良作にハァハァしました。
読書の秋です、もっと長くてもカモーンって感じです天使様
751名無しさん@ピンキー:2006/09/17(日) 00:34:29 ID:pqIhE401
えろいー!マスター静かにえろいー!!
こんなんじゃメグタンまた入ってくるyo!
752名無しさん@ピンキー:2006/09/17(日) 04:15:47 ID:unaCIWVi
ああメグたんハァハァ
天使様GJ!鬼畜風味がたまらんです。

勝手に申し訳ないですが、KBが残り少ないので新スレ立てました。
投下される天使様は第7幕へよろしくお願いします。
5番ボックスも遠慮なさらず
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1158433917/
753750:2006/09/18(月) 00:23:39 ID:JpQRnz0C
天使様またメグたんよろしく!
新スレたったし少しお話でも。
本スレでも話題に上っていますが、びっくりするくらいこれからあちこちで上映されるんですね。
しかもワンコインで結構音響設備の良い映画館で。
自分も近いところがあるので観にいくつもり。
てか正直、上映してくれない限り全編通して観ない・・・(DVDで気に入ったシーンばかり抜き出して観てる)
754名無しさん@ピンキー:2006/09/18(月) 03:15:16 ID:s66ZmgrL
GJ!
鬼畜風味、ハァハァしました。
メグたん癖になりそう。
気がつくと夢だったのかと思わせるくらいにキレイに後始末しているマスターを想像。


・・・次スレで言われていたけど、このスレ早く消化しないと。
755名無しさん@ピンキー:2006/09/18(月) 06:24:10 ID:N/uPTrci
GJ! GJ! GJ!
崩壊していくメグがエロい!
抑えた口調で責めていく先生がエロい!

続き or 別バージョンキボンヌ
756名無しさん@ピンキー:2006/09/18(月) 07:42:27 ID:mkYrOIx4
縛りの後は 若いからすぐ消えたのかもw
さすがにやけどはむりね。
757名無しさん@ピンキー:2006/09/18(月) 08:22:31 ID:3WL2LzQ8
私もDVDだと、飛ばしてるシーンもあるよw
幸いにも関東住人なので、秋の上映祭りはがんがるぞ〜!
片道2時間くらいは、なんのその、だ!
758名無しさん@ピンキー:2006/09/18(月) 19:42:08 ID:mJHK80NI
おいらもがんがるぞっ
759名無しさん@ピンキー:2006/09/18(月) 20:23:04 ID:JpQRnz0C
この映画はやはり大画面でみないとね
ところで、少し気になっていることが。
まとめサイトの管理人さんはお元気でいらっしゃるんだろうか?
御多忙で更新に手が回らないのだったら安心なんだけど、もしかしたら病気とかで
体調崩されているのではないかと心配。
この夏も暑かった・・・
760名無しさん@ピンキー:2006/09/18(月) 21:46:17 ID:b5yRLrUl
自分も気になってた。
確か更新が7月初旬でストップしてたような。
それまでコンスタントにうpして下さってただけに心配...
761名無しさん@ピンキー:2006/09/18(月) 23:20:45 ID:NnqhDYLM
>759
お元気だといいね。
いつも読み返してモエモエさせていただいてます!
762名無しさん@ピンキー:2006/09/19(火) 00:47:30 ID:QoJgY/JH
うん、自分も気になってた。
背景画像がなかなか探せないのかなとかも思ってみたり……。
いつも素敵にupして下さっているもんね。

ご病気とかじゃないことを祈っています。
763名無しさん@ピンキー:2006/09/19(火) 23:05:41 ID:NfvBRtH7
それでは埋めましょうか。

放課後キャンパスのど飴エロはどうなりましたでしょうか天使様w
764名無しさん@ピンキー:2006/09/19(火) 23:26:42 ID:gvOotTKW
口移しとか・・・ポ
765名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 01:16:41 ID:vEIitomh
スレ立てから約5ヶ月かぁ〜。
次スレはどんくらいで消化されるのかな。
766名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 13:22:13 ID:m2Pb5P8x
>764
のど飴を?
619-620的効能のあるのど飴を、先生自らも舐めると?

それグッド!>m9(・∀・)ビシッ!!
767名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 16:42:46 ID:ZWBYT2jz
ウシシ
768名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 22:20:36 ID:yuI2wivn
英語圏のファンフィクションサイトをつらつら眺めてたけど
結構あるぞ、どきどきキャンパスモノw
ファントムが先生、クリスがハイスクールの生徒とかあって
洋の東西を問わないもんだなとオモタwww
769名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 22:30:39 ID:AyU6YSTz
             r'゚'=、       ∧_∧
               / ̄`''''"'x、   ( ´∀`) 早く埋めよう!
          ,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_
      __,,/    i!        i, ̄\ ` 、
  __x-='"    |   /ヽ      /・l, l,   \ ヽ
 /(        1  i・ ノ       く、ノ |((( ))) i,
 | i,        {,      ニ  ,    .|(; ´Д`) i,
 .l,  i,        }   人   ノヽ   |    {   {
  },  '、       T`'''i,  `ー"  \__,/     .}   |
  .} , .,'、       },  `ー--ー'''" /       }   i,
  | ,i_,iJ        `x,    _,,.x="       .|   ,}
  `"            `ー'"          iiJi_,ノ

770名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 22:52:45 ID:CiksQJmj
ちょw何故そのクリーチャーを持ってくるw

今495KB。あとちょいだね。
771名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 22:54:34 ID:gcZaXmUb
ぴーてぃふる くりーちゃーおぶ だーくねーす♪
のところでクリスの視線の先にそいつがいる図を想像してしまった。
さすがにキスできまい。
772名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 23:19:25 ID:JSLeT41C
ということはアレか、先生もラウルも既にヤツに喰われて…(((((((( ;゚Д゚)))))))
773名無しさん@ピンキー:2006/09/21(木) 13:28:45 ID:nyXMEfoD
             r'゚'=、         _, ,_
               / ̄`''''"'x、   ( ゜ノゝ゜) ←ファントム
          ,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_
      __,,/    i!        i, ̄\ ` 、
  __x-='"    |   /ヽ      /・l, l,   \ ヽ
 /(        1  i・ ノ       く、ノ |      i,
 | i,        {,      ニ  ,    .| J; ´Д`)←ラウル
 .l,  i,        }   人   ノヽ   |    {   {
  },  '、       T`'''i,  `ー"  \__,/     .}   |
  .} , .,'、       },  `ー--ー'''" /       }   i,
  | ,i_,iJ        `x,    _,,.x="       .|   ,}
  `"            `ー'"          iiJi_,ノ

>>772 こういうことでよろしいでしょうか
774名無しさん@ピンキー:2006/09/21(木) 15:19:52 ID:AKnAS0IA
これにチューすると感動してラウルとマスターを返してくれたりしませんか?
だめですかそうですか。

マスターもジーニアスならこのくらい飼い慣らしてもらいたいものですな
もしかしてあまりにすごい造形を目にしてこれまでのコンプレックスに
終止符を打ってたり…
775名無しさん@ピンキー:2006/09/21(木) 17:28:08 ID:AKnAS0IA
残り消費に投下。獣姦アリマスター変態w
------------------
朝目覚めると、愛しい新妻は犬になっていた。

待て、こういう時に慌ててはいかん。
昨夜飲み過ぎたためなのか、はっきりしない頭でどうしてこんなことになったのかをよくよく思い返してみる。
自分をきちんと律することも出来ず、ふつか酔いとはなんたる失態!
しかし昨日は特別な日だったのだ。
クリスティーヌのためにこの3年ひたすら働き、作曲し、クライアントに姿を曝す苦痛にも耐えた。
これまでの傲慢さを償うかのように。
彼女を私の暗い世界に閉じこめたくない一心で小さな愛らしい家も買い、ようやく身内だけの簡素な式を挙げたのが昨日…
昨晩のクリスティーヌの愛らしさを思い返すと自然に頬が緩んだ。
始めは怯え、ぎこちなかった彼女のその愛らしい蕾は、私の我慢強い慎重な愛撫に少しずつ綻び、艶やかな花弁を晒し、その内側の蜜を滴らせ…
776名無しさん@ピンキー:2006/09/21(木) 17:33:23 ID:AKnAS0IA
長いことレッスンを施してきた師たる私でも聞いたことのなかった甘い声を思い返して放心していたことに気付き、慌てて頭を振る。
そんなことを考えている場合ではない。
目の前にいる彼女は、これまでと変わらぬ愛らしい瞳と濃い茶の巻き毛を持っていた。
これは確か、最近人気のあるプティ・キャニッシュという犬種だ。
元々優秀な猟犬であったものが優れた品種改良の結果こうして愛玩に相応しい小さなサイズとなり、ご婦人方に人気がある。
庶民にはなかなか手の届かぬ高価な犬で、確かカルロッタが贈られて鼻高々で飼っていたような…
いかん、犬に関してまで豊富な私の蘊蓄を傾けている場合でもない。
777名無しさん@ピンキー:2006/09/21(木) 17:34:56 ID:AKnAS0IA
どうも先程から私は現実から逃避しようとしているようだ。しかも裸で寝台の上にへたり込んで。
「ああ、クリスティーヌ…」
変わり果てた彼女を抱き上げると、その軽さに涙が溢れてきた。
さんざん愛を交わして私の腕枕で眠るとき、幸福に酔ったような瞳を上げて「明日目覚めるときも、マスターのお側にいますわ…」
と優しく囁いたお前。
だが目覚めると、腕の中にいたのはこの小さな小犬だったのだ!

これは罰なのだろうか。
これまで多くの罪を犯してきた私が幸せになることは許されず、幸福の絶頂で愛する者を奪われたのだろうか。
ならば、なぜ優しく汚れのない私のクリスティーヌがこのような目に遭わなくてはならないのだ?
状況をよく判っていないのか、丸い瞳を潤ませて小首を傾げるクリスティーヌが哀れで、私は涙を流しながら口付けた。
かつて、心を閉ざしていた私に彼女がそうして救ってくれたように。
ああそうとも、お前の姿がどう変わろうと私の愛は変わらない。
神が私の愛を試すというなら、私はこのままのお前を妻として愛そう!
いつもしていたように優しく頬を包み込むようになぞると、クリスティーヌはうっとりと目を細めてぱたんぱたんとしっぽを振った。
顎を擽るとベッドの上に横たわり、しどけなく腹を曝して足を開く。
ああ、私を誘っているのか、クリスティーヌ!?
778名無しさん@ピンキー:2006/09/21(木) 17:35:20 ID:AKnAS0IA
私の愛は究極の試練を迎えているようだった。
この姿の妻を愛せるか。
もちろん、これがクリスティーヌだと思えば否やはない。しかし…
「駄目だ、クリスティーヌ、お前がこんなに小さいのではお前を壊してしまう…。」
囁くと彼女はその媚態のまま、不満そうに私を見つめる。
「仕方がない、ほんの真似事だけだぞ…?」
言い聞かせると私はクリスティーヌをシーツに押しつけ、昨夜のように上に覆い被さると、今更大胆な自分が恥ずかしくなったのかもがき始めた彼女に濃密な口付けをした。
「悪い娘だ…。」
口付けに没頭していた私は、ぱたぱたと響いてきた足音と話し声に気付かなかった。
「ごめんねクリスティーヌ、新婚早々朝から付き合わせて…」
「いいのよ、マスターもまだお寝みだったし、それより素敵なお祝いをありがとう。
私の代わりに置いてきたけれど、起きたらどんな顔をなさるかしら?」
勢いよくドアが開き、全裸で犬を組み敷いている私とメグ・ジリーとの目が合う。

朝のパリに、悲鳴が響き渡った。
779名無しさん@ピンキー:2006/09/21(木) 18:06:36 ID:4IfLHLh7
500
780名無しさん@ピンキー:2006/09/21(木) 19:25:42 ID:SoeI1ikS
いやwwwおかし〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ww
超 笑えるww
一日の疲れがぶっ飛んださんくす笑いの天使さま
m(_ _m)ペコリ
781名無しさん@ピンキー
せ、先生の愛の深さを思い知ったよwwwGJ!!!!