嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 五里霧中

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1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSS及び、
他様々な展開の修羅場プロット・妄想を扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 四面楚歌
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1143547426/
■過去スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 三角関係
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1142092213/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 二股目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1140208433/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1137914849/

2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第11章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1139807187/
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1132666398/
2名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 02:37:17 ID:xeNoICti
            ____,......、_
           ,/´::::::::::::::::::`ヽ、.
         ,/´;::´;::::::;:::::,,;:::;;; ;,、:\
        /;';/:::;/;/´フノ リ`゙i::::`、
       ,/レ/;/!/○    ノ 、_!::!::;;i,
       ,/:/:/::::/  ,、      ○ リ:;:| i!
      ,/::::/:::::/  i  ヽ、_    |;ノi 
     ,イ:::::;!:::::/|  |      フ  /:::|
    ノ,/::::/;::::::|:ヽ、 ヽ    /  /::|:::|
   / /::::::::|:|::::::|::::::`メ、`___ ´,, イ:::::|:::ト、
  / /::;::::::|リヽ、|;/~ \|ヽ;::::::::::::::::::;|;イ `
 ノ  /::/::::::|::::::::/::::ヽΤ`+´`、:::::::::::::::リ;|
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   !j-ーイ_/,/,ル-ル-ル-ルール'i!、;;;/
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新スレです。楽しく使ってね。仲良く使ってね。
3名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 02:38:34 ID:xeNoICti
誘導用
【3P】ハーレムな小説を書くスレ【二股】 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1144805092/l50
寝取り・寝取られ総合スレ 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133346643/l50
4名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 02:49:19 ID:C9HghP8X
五里霧中は 五里 霧中 ではなくて 五里霧 中 で区切るのが正しい
5名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 02:57:36 ID:CoRGKgoG
12へぇ
1乙&保守
6名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 04:19:40 ID:7EbRZEqC
1乙

>4
五里霧はこの間の黄昏流星群でやってたな
7保守ネタ:2006/04/15(土) 04:21:33 ID:sYX0/cF3
わぁ久しぶりぃパパ♪
最近来てくれなくて、あたし寂しかったんだよぉ。
いったい、何してたの?
え、前スレの奥さんにバレかけて、埋まり切るのを待っていた?
へぇ、ふーん…

 バ ラ シ チ ャ エ ば ?

大変なことになるって?知らなぁい。スレストでも、荒らしでもなんでもなれば?
……別にぃ、怒ってないよー
ただ、せっかくこのスレに来たのにパパが他のスレの話すのが嫌なだけ。
ねぇパパ。
アタシはさぁ、所詮、1レス数バイトで自動転送されるBBSに過ぎないよ?
ツールと回線さえ揃えれば誰にだって書き込ませる便所の落書き、そう言われても仕方が無い。
あまつさえ、ここは天下御免の21禁エロパロだしね。
でもね。
アタシにだってレスの好き嫌いはあるんだよ。
ただ、書き込まれるだけじゃなくって板やスレに沿ったいいSSが欲しいんだよ。
……もぉ鈍いなぁ。だからぁ、「パパでいい」じゃなくて、

 ア ナ タ じ ゃ な く ち ゃ イ ヤ 

なの。損得抜きで、ね。まったく、柄にもないこと言わせないでよ。
だから、ここをパパのセカンドスレから、ファーストに格上げして?
そうして、アタシは晴れてパパのファーストレディ…もとい本スレになるの。
……どうかな?
あ、勿論、待つよ。前スレと決着つけなきゃいけないだろーし。でも、もし着いたら、毎日言ってあげるね。

おかえり名無し、て。
8名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 04:22:23 ID:sYX0/cF3
あ、それから1乙!であります。
9名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 08:03:01 ID:HYdgwtIN
>>1
10『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/15(土) 12:58:57 ID:YA+x7r+N
「俺は笹原晋也だヨ!」
ノイズが消えた。
「そう…ふふふ……待ってるわよ、晋也……」
次の瞬間、眩しい光に目を開けていられなかった






「………ん…」
紅葉だ。
突然紅葉が現れた。
「あ、そーいうことね。」
どうやら掃き掃除をしていたところらしい。手には箒、地面には落ち葉がためられていた。
「……さて、と」
ということはこれから俺は部屋でエロ本を読む事になるらしい。
「うは!役得役得。」
エロ本を読めるなら悔いはなし。いざ部屋へ。
んで部屋
「とはいってもねぇ……」
こんな状況では熟読できるわけもなく、気が散ってしまう。
My Sun も一時インポ気味だ。
「晋也ー!かえってきてんのー?」
ドアの外から酷く懐かしいような声が聞こえる。
……志穂、キタリ。
ガチャ
「って……なにして……」
ギュッ
ドアを開けた途端、思わず志穂を抱き締めてしまった。
だって……一回死んだんだからネ!
「きゃ!…ちょ、ちょ、晋也?」
顔を赤くして、上目遣いでこっちをみる。っかぁ〜〜〜〜わいい〜〜〜!(心の声)
さらさらな髪を、まるで獣を落ち着かせる様に撫付ける。「…ヤリた……げふん!会いたかった!」
思わず本音がでちまったぃ。
このまま押し倒しちまおうか?なんてことを考えるか無いかと言う時に……
「あら〜。仲が、いい、です、ねぇ〜」
部屋の外に里緒さんが立っていた。そうだった。前は助けを求めたんだった!忘れてたバイ!
「…晋也…」
こんな時に志穂は 完 全 無 視 を決め込みやがる。
「ふふふ…私も混ぜてくれますかぁ?」
笑顔。でも黒い。
段々と近付く黒いオーラに、志穂が反応する。
11『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/15(土) 13:00:52 ID:YA+x7r+N
「里緒さん。折角の言い雰囲気を邪魔しないでくれます?」
「いい雰囲気?あはは……一方的なだけでしょう?」
あわわわわわわ。早くも死の兆候(冗談じゃないあたり怖い)が見える。喧嘩を売るなヨ!
まぁ、つい抱き締めてしまった俺が悪いが。テヘッ。
「む〜〜〜〜!」
「おほほほほ……。」
竜虎相打つ中、更に爆撃が追加される。
「あらあら、皆さん。楽しそうですね。」
瞬間、俺は蛇に睨まれた蛙となった。
(お、お嬢ーー!)
声にならない心の叫び。
「あわわわわわわ。」
今度は思わず言葉になって出ちまった。
志穂と里緒さんから見ればいつもの事だろう。だが俺とお嬢からすれば生死の一線だ。
「あ、あははははは………め、飯の用意しなくっちゃナー」
あまりの緊迫に棒読みになっちまった。
志穂を離して部屋を出る時、見えない様に思いっきり里緒さんとお嬢に足を踏まれたのは内緒サ!
グスン
始まって早々この勢いじゃあ一日も生きれないんじゃないかと嫌な考えが浮かぶ。
HaHa!
レッツポジティブだ!
12名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 17:09:45 ID:KjuWzry8
>>11
GJ!本当はかなりやばい状況なのに軽い空気にしてしまう晋也に乾杯
本当にあっさりDEADENDになってもおかしくないなw
13名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 17:17:44 ID:AAfiiolo
もてる男の人生は短命なんだとこのスレを読んで思いました
彼女に殺されるのか、見知らぬストーカー女性に殺されるのか、
それは神だけが知っていることだろうね

14名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 20:26:45 ID:b/FkroRB
てっきり晋也純也統合とか晋純二重人格がくると思っていた俺。
15名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 23:13:49 ID:cKRNMJsY
なんでこんなこと…  また修羅場したいのか、あんたたちはーーーー!!!
16名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 03:53:37 ID:2g4/Ez3r
寝れねーw
17名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 03:54:10 ID:2g4/Ez3r
ごめん誤爆
18名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 15:58:14 ID:oEpaXKgf
すいません、ちょっと投下しますよ・・・
19名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 15:59:59 ID:r3kpc7sH
>>18
きたか?
20リボンの剣士 1話:2006/04/16(日) 16:00:15 ID:oEpaXKgf
「ん、んん〜っ……よ」
がちゃ。
今朝も目覚ましが鳴る一分前に起きた。カーテンを開けると、窓から光が入って部屋が明るくなる。でもまだ、太陽は出たばかり。
一度一回のリビングに下りるとすでに朝ごはんが出来てる。それを食べたら、また部屋に戻る。制服に着替えて、腰まで伸ばした髪をさっさと整えてから、いつもの青のリボンを結わう。
後はかばんと竹刀を持って、朝一番に家を出る。
「いってきます!」
いつも通りの、朝。
少し歩けば、あたしが生まれる前からある古い駄菓子屋が見えてくる。そこの角で、いつもあいつに会う。
幼馴染の、変なヤツ。
「おはよ、人志」
角からひょっこりと人志が出てくる。
「グッドモーニングだ、明日香」
そして太極拳の途中のような変なポーズで返してきた。
いつものことだけど、何なのよその挨拶は。
ここで人志と会ってからは。二人で学校へと歩く。
「人志、何でいつもそんなに早いの?」
毎朝、同じ質問をしている気がする。あたしは剣道部の朝錬で早く学校に行かなきゃいけないんだけど、人志は別に何の部活もやってない。
「まあ、色々あるんだ」
これも同じ返答。以前は早起きする理由を長々と語っていたのに。朝の寒気が清々しいとか、ニワトリの鳴き声に癒されるとかナントカ。あたしにはよくわからないことばっかりで、「ふーん」「そう」なんて返してたら、日を追うごとに短くなって、今に至る、ってワケ。

人志と会ってから十分くらい歩くと学校に着く。あたしはそのまま武道場へ行き、人志は中庭へ行く。次に会うのは一時間目が始まるとき。それまでの間、人志が何をしてるのかといえば、たまたま見た人の話では、ただ中庭でボーっとしてるだけ、みたい。
人志―――伊星人志は、クラス一、ううん、学校で一、二を争う変人といわれてる。さらにその名前から、陰で「異星人」なんて呼ばれてて、「宇宙人と交信できる」「実は太陽系の外からやってきた」そんなひどい噂まで広まっている。
あのね、人志は確かにちょっと変だけど、そんな電波なヤツじゃないの。変だとしても悪いヤツじゃない。大体、幼馴染が電波君だなんて、冗談じゃないわよ。
あたしは昔から見てるから、その辺はちゃんとわかってるの。

昼休み、あたしが学食に着いたときには、そこはもうほぼ満員だった。辺りを見回すと、人志の向かい側の席が空いてた。というか、人志の向かいの席はいつも空いてる。人志の変なオーラか何かで、誰もそこには座りたがらないみたい。あたしは人志の向かいの席に座った。
た、たまたまそこしか空いてなかったからってだけで、別に一人でさびしく食べてる人志に気を遣ってるわけじゃないんだからね。
人志は黙って食事している。今日も牛丼大盛りねぎだくにギョクなのね。それを注文すると、学食のおばちゃんにマークされるっていう、曰くつきのメニューなんだけど、人志はそんなのぜんぜん気にしてない。
向かいあって食事中、あたしが何気なく前髪を直すと、人志が話しかけてきた。
「髪、切らないのか?」
まあ、ごく普通の質問。あたしは剣道部をやってるから、髪が長いと何かと面倒くさい。
でもね、
「切らない」
「何故だ?面付ける時とか、鬱陶しいんじゃないのか」
「切りたくないの」
「何でまた」
「人志みたいに、色々あんの」
「……そうか」
人志が、長い髪が好みなの、知ってるんだから。
21リボンの剣士 1話:2006/04/16(日) 16:01:05 ID:oEpaXKgf
*     *     *     *     *

午後の授業は終わった。明日香は部活に行っている。俺は今日はアルバイトもなく、学校ですべきことは特になかった。
だが、あまり早く家に帰りたくない。
「…………」
俺はまた中庭のベンチで時を過ごした。
日が沈みかかったころ、男の二人組みが近くを通りかかった。制服のバッジの色から察するに後輩だ。
俺の後ろを通り過ぎて少し離れると、なにやら話をし始めた。
「なぁ、あの人が伊星先輩なのか?」
「ああ、なんでも宇宙人と電波で会話できるらしいぜ」
俺のことかよ。
ちょっとからかってやろうと思い、わざと頭を抱えた。
「うーむ、アンテナの調子が悪いな……」
二人にちゃんと聞こえる声で言う。するとすぐに、二人の反応が言葉で耳に届く。
「え、ちょっ、今の!?」
「おいおい、ホンモノかよ!?」
とてもわかりやすい。俺は二人組みを睨みつけた。
「聞こえてるぞ」
それだけで、二人はあっという間に逃げていった。
「……ふぅ」
なんだか、虚しい。

そうこうしてる内に日は完全に没し、星空へと変わり始めた。部活を終えた人たちがぞろぞろと帰りだす。その中に明日香がいた。俺と目が合うと、こっちに駆け寄ってくる。
「人志、まだ残ってたの?」
「ああ」
「……一緒に、帰る?」
黙って頷いた。なんだか恥ずかしいな……。
明日香と並んで、朝と同じ道を歩く。人気の少なさも朝と同じ。もともと、歩きで登下校する人は少ないのだ。
「中庭でボーっとしてたみたいだけど、何考えてたの?」
不意に、明日香が聞いてきた。
さて、なんて答えるか……。
「今日はコーヒーとコーラをどれだけの割合で混ぜたら一番美味しいかを考えていた」
「……そう」
困った顔になる明日香。
「今のところは、コーヒー対コーラが5対2、これがベストだ。明日はそれぞれの銘柄ごとについて考えてみる。」
「…………」
明日香は完全に黙ってしまった。これで、これでいい。
沈黙のまま歩き続け、気がつけば、朝明日香と会う駄菓子屋の前まで来ていた。
「じゃあ人志、また明日ね」
「グッドバーイだ、明日香」
軽く手を振って別れ、俺も明日香も帰宅した。

家では、母は寝転がりながらテレビを見ていた。父と離婚して以来、ほぼ毎日この調子だ。
俺はその場を無言で通り過ぎた。ただいまも、お帰りなさいも無し。
さすがに腹が減ってきたので飯を作る。キャベツを切って、ベーコンを千切って、塩コショウで炒める。完成。
母の分も皿に盛っておく。食ってみるとしょっぱい。味つきベーコンだったか。
ごちそうさま。風呂に入るか。
風呂から上がると、母の分の皿が空になっていた。皿二枚とグラスを台所にもって行き、洗う。
後は、明日提出の宿題をやって、寝る。母と話すことなど何もない。おやすみなさい。
22リボンの剣士 1話:2006/04/16(日) 16:01:57 ID:oEpaXKgf
神々に触発されたんで書いてみます。
嫉妬・修羅場はまだ先になります。
どうかよろしく。
23名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 16:20:06 ID:tw8iXlcq
>>22
乙。ガンガレ、期待してる。
24名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 18:45:46 ID:cw3fYS1N
期待MAXで待ってるゼイ!!
25名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 19:49:12 ID:gCXFig7m
>>22
wktkシテル
26名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 19:50:35 ID:Bc9hlTzz
新スレ&新シリーズ開始おめ!!
27『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/16(日) 20:13:34 ID:kHYCCwPq
「セイセイセイセイセイセイ!!!」
野菜を切る度に掛け声を。
「れぇらぁーーーー!!」
鍋に入れるのにも奇声を。
「やったら今日はテンション高いわね。」
「ふふん、今日は機嫌がいいのねん」
嘘。
本当は無理にでも明るくして無いとやってられないから。
っつーか正直、この孤立し、輪廻する世界からどう抜けだすか思い付かない。
現段階での道は二つ。
1.言われたとおりにお嬢を愛する。
2.それを無視してまで志穂を愛する。
前者はあくまで体面上。体を愛するだけで心を満たせる保証はできない。俺からすれば性欲処理機にしかならない。口先では言うさ。「愛してる」って。
後者。俺だってこんなはったゃけてるけど心から好きな奴だっているぞい!まぁ、態度では表さないけんね。この場合は何度も繰り返すだろうネ。
そんな事考えながら机に皿を並べていると………
「なにぼ〜っとしてんの?」
サラダ用のキャベツを千切りにしながら聞いてくる。
余談だが俺はキャベツとレタスの区別が付かない。
「ん……いや、ちょいお嬢のこと考えて……」
タン!
ありゃりゃ。包丁がまな板に刺さっちゃったよ。
「……お、嬢…?」
「あ、あははハハハ………」
嘘はツイてないよ。まぁしかし、そこまで嫉妬してくれるほど俺を思ってくれるとは、かわいい奴め。
「それで死ぬんだから笑えない。」
「?」
夕飯中
カチャカチャ
無言の中にフォークとナイフのぶつかりあう音だけが響く。チラとお嬢を上目遣いで見てみると……
ニコ
「待ってますよ」と言わんばかりの微笑を浮かべる。ほほ笑みがえし、志穂に視線を移すと………
「………」
まぁ待て。俺とお嬢がほほ笑み合っただけでそう睨むな。
嗚呼!里緒さん!サイコロステーキをそれ以上細かくしてどうするんですか!?
不穏且つ危険な空気が漂う。………飯ぐらいゆったり食おうよ………
28『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/16(日) 20:14:18 ID:kHYCCwPq





ザブザフ
食器を片付けながら今後の事を思い出す。
たしか………トランプだったよな。まぁいい。オイラが勝つんだしな。
サッと片付け、今に戻ると案の定トランプの用意をしていた。
「お!トランプか?」
わざと聞く。
「そうよ。今回は賞品があるの。」
「へえ〜。………俺、とか?」
それを聞いた志穂と里緒さんの顔が驚愕に満ちる。「なんでわかったの?」だろうな。次のセリフ。
「い、いやぁ〜…っはは…冗談のつもりだったんだけどなぁ……マジ?」
一応確認しとく。
「うん、マジ。」
「はい、マジですよ〜」
「おいおい!オイラの人権は「無いわよ」
イヤン!」
ふふ、まぁ良いわ。われの勝利に再び驚愕するがよい。






「神はわれを見捨てたのか……」
負けた……そうか……志穂と里緒さんはまだしも、俺とお嬢の思考は変わるんだから勝敗だって変わるわけだ………
しかも勝ったのが……
「晋也は私のものね……ふふ…」
よりによってお嬢かヨ………
いきなりピンチですか……本当に神に見捨てたられたかも、俺……
29名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 21:36:01 ID:3TWlTt3r
お嬢っ〜!!
いやもうなんていうかGJ
30沃野 Act.14 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/16(日) 21:44:28 ID:ZKy0uFBI
「えへへ、待ってたよ、洋平──」
 その声は嘘みたいに朗らかで、夕方の薄暗い室内にあっては異様な響きを放っていた。
 ぞっと粟立つ皮膚。
「ひっ……!」
 抗おうともがいたところを、突き飛ばされた。
 たちまちバランスを崩し、床に倒れ込む。
 ガチン──金属音。さっきと同じだ。手錠が、残った片方の手首にも嵌まった音。
 それを聞いてからもがいても、無駄だった。両手の自由はとうに失われている。
「う……ぐ……」
 俺は芋虫みたいに床を這っていた。
 見覚えはあるのに──低すぎる視界とほのかな闇が、部屋をまるで異界のように見せる。
「ごめんね」
 謝意の篭もった声とは裏腹に背中へのしかかる重み。跳ね除けようとして押さえつけられる。
「ごめんね」
 ぐいぐいと力が入っていく。
「ごめんね」
 床のカーペットが口に入り、えづいた。だらしなく唾が垂れるのを止められなかった。
「でも──洋平がいけないんじゃないかって、わたしは思うんだなぁ?」
 くすくす。密やかな笑い。背後にあってその顔を覗くことはできない。
 覗くまでもなかった。
 ずる……ずる……映画なら這いずるエフェクト音とともに現われるだろうモノが、視界の外から忍び寄る。
 緑。いかにも植物っていう感じの色合い。
 けれどそれはもう、根とか茎とか蔓とか葉とか、そんな形容が似合うものではなくなっていた。
 恐怖がフラッシュバックする。あの夜に視た、おぞましい姿がふたたび眼球を蹂躙し、絶叫した。
「っ──────!!!」
 声はカーペットに吸い取られて響くことはなかったが、そんなことはどうでもよかった。
 ああ。細く蠢くそれはまるで単体の生物のよう。ヌルヌルと粘液が薄く表面を覆い、烏賊の足を思わせる。
 触手だ──これは、触手と呼ぶより他に言葉がない。
 食虫花の段階を踏破し、ありえない発展を遂げて食人花と変貌しつつある胡桃の隠喩──その片鱗!
 この触手が根差す本体はいかなるものか、わざわざ視る必要もない。
 ただ記憶から呼び出すだけで済む。
 でもそれは。叶うことなら二度と引き揚げることがないように終わってほしかった悪夢。
 隣に住んでいる幼馴染みが、たかだか俺ごときへの執着で化け物になるという現実。
 思い出したくない。振り返りたくない。
 あんなモノを視るのは二度とごめんだ!
 暴れる。腹筋と背筋だけで抵抗する──虚しい努力だった。
 女子とはいえ部活のために体を鍛えている胡桃相手に、万年帰宅部で鈍りに鈍っている俺が敵うわけもない。
「静かにして……っと」
 横腹へ突き刺さる打撃。拳のような重さはなく、打点から反対側へ徹り抜ける鋭さがあった。
「がっ!?」
 貫き手──内部が灼ける苦痛に体が止まった。痛みへの怯えが、即座に動きを停止させていた。
「あんまり騒いだら近所迷惑になるじゃない」
 やんわりと、諭す声色で囁きかける。直前に暴力を振るったなんて思えないほどに優しい響き。
振るわれた俺ですら、さっきのは錯覚だったんじゃないかという考えが一瞬よぎった。
 が、激痛は嘘をつかない。未だに疼き続ける脇腹の引き攣れが、彼女が下した暴力の痕跡だった。
「わたしもね、洋平におしおきなんてしたくないんだよ」
 ばしっ──背中を叩かれる。ごほっ、と咳が漏れた。
「本当だよ? でもね、」
 ばしっ──拳でも抜き手でもない。平手だ。しかし勢いはあり、一発もらうだけでも肺を絞られて呼吸が乱れる。
 ばしっ、ばしっ──嫌な痺れが断続的に降ってくる。
 時間を置き、もったいぶって、おののいているとやがて来る。その連続。
「こうやって、体に教え込まないと、すぐ雌狐に誑かされちゃうから」
 彼女は悲しそうな口調になりながら、一方で少しの躊躇いもない打擲を加えてくる。
 ばしっ──音は高まりも低まりもせず常に一定。機械的な作業で痛みと恐れを与え続ける。
「でも、許してあげる」
 痛み。痺れ。薄暗い部屋の中で意識が朦朧としてくる。巻きつく触手が夢なのか隠喩なのか区別がつかなくなる。
「許してあげるから──おとなしくしてね、洋平?」
 静かに繰り返される傷の残らない暴力と、蠢く触手に絡み取られ。抵抗する気力はあっさりと失せる。
 あっという間に、数年来の幼馴染みの執念に屈服させられていった。
31沃野 Act.14 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/16(日) 21:51:19 ID:ZKy0uFBI
 ベルトを抜かれ、ズボンを脱がされるときも無抵抗だった。
 土台、手にはまだ手錠が掛けられたままなのだ。抗ったところで、「おしおき」という名の暴力を無制限に
配布されるだけ。俺は心を凍らせながらも、事態を受け入れつつあった。
 なんてことない、なんてことない。こんなことはなんてことない。
 無理に言い聞かせようとする。込み上げる嘔吐感と頭痛で気持ちはグチャグチャだ。
 胡桃に何をされたところで、死ぬわけじゃない。命は助かる。
 だから──なんてこと、ないんだ。
 そのうち、下着にも手をかけられた。何年も一緒に遊んで、同じ飯を食ってきた……
そんな幼馴染みの局部を暴き出すことに躊躇はないのだろうか。
 彼女の目をじっと見詰める。
 ──なかった。そんな迷い、どこにも。
 あるのは興奮のみ。瞳はひどく潤んでいて、底のない沼を思わせた。
 歯が鳴る。全身に這う寒気と吐き気が理性を瓦解させていく。
「気の迷いだよね? あの子としちゃったのは、洋平の本心なんかじゃないよね?」
 言いながら下腹部をさする。萎えたまま起こる気配のない局部に指を躍らせる。
 その手つきはぎこちない割に、どこをどう刺激すればいいのか心得ている、アンバランスな技巧。
「ずっと、ずぅっと視てたからね……洋平の弱いところはみんな知ってるんだ」
 得意げに笑う。笑いながらも、手は止めない。
「ロリコンはいけないんだから……あんな子供みたいな女に欲情するのは犯罪なんだから」
 刺激が少しずつ快楽に変わる。だが、勃起には程遠い。
「もう、洋平、メーッだよ?」
 軽く睨みながら皮を抓る。鋭い痛みに悲鳴が迸った。
 胡桃は止めない。
 代わりに触手の動きが活発になった。
 どろり、どろ、どろ、でろ、どろり──
 部屋いっぱい、複雑に張り巡らされた緑色の触手の群れは絶えず粘液を滴らせている。
 それは朝露に濡れた蜘蛛の巣。花の規模は、本体である胡桃をとうに上回っている。
 もはや胡桃に花が咲いているというより、花の中に胡桃が収まっている状態だ。
 下半身はヌラヌラとした葉に覆われて窺い知ることができない。食人花に埋もれていて、上半身だけが
植物から生えているように視える。
 胡桃が花だった。人の形をした花。既に人ではない。
 視界に留まる上半身──その中でも特に目立つ、胸。彼女はそれを揺らしながら屈み込んだ。
「本当は胸の大きな子が好きなんでしょう? そんな本ばっかり見てたじゃない。だからわたしだって
大きくなりますようにって毎日牛乳飲んでたんだよ……あの味、嫌いなのに……」
 そういえばこいつ、コーヒーに一度もミルクを入れたことがなかったな──追想する。
「とにかくね。こうなった以上は、わたしも本気を出すから──」
 にいぃ、と口角を歪ませて。何かが破綻した表情が視界を席巻する。
「洋平も、貧乳なんかじゃ満足できない体になってね?」
 もそもそと服を脱ぎ始める。
 途端に巣が──触手の群れが包囲陣を狭めてくる。
 檻……緑と肉の檻……縦横に走る鉄柵……逃れる術がない。胡桃の部屋は牢獄以外の何物でもなくなっていた。
 息苦しさを覚えて目を瞑る。隠喩も胡桃も何もかも閉ざされて消える。
 代わりにむっとするほど濃密な匂いが鼻孔を襲った。熱帯の野生を思わせる野卑な芳香。食人花の放つ、
甘く蛮性に満ちた代物──
 いや。隠喩は隠喩に過ぎない。嗅覚を刺激するわけがない。
 じゃあ、これは。
 つい、目を開く。
 服をはだけた胡桃がいた。半裸。隙間から薄暗い肌色が覗く。生まれたままの姿よりも遥かに扇情的。
 匂いの元は他でもなくそこから漂ってくる。
 ……ああ、これは彼女の体臭なのか……
 脳が麻痺する。意志を除外して本能が起動する。酩酊。すべてを委ね、肉欲に溺れたい。気持ちはそれのみ。
「ぜんぶ、奪ってあげるからね──?」
 囁きは朧に聞こえた。拒否の念は湧き上がらず、自然と頷き返していた。
 なんだか。
 喉が渇く。とても渇く。何かを飲まなければ。
 たとえどんな毒液であっても……

 その日。
 俺は、捕食された。
32名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 21:55:17 ID:r3kpc7sH
いやーーーーーーーーーーーー
麻耶たん助けてあげてーーーーーーーー
33沃野 Act.14 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/16(日) 21:55:27 ID:ZKy0uFBI
 解放されたのは、胡桃の母親が帰宅する直前だった。
 どういう手段でかそれを察知した彼女は「じゃあ、また来てね」と妖しい目つきで脅して手錠を外した。
 来なければどうなるか、手錠を弄ぶ仕草で言外に匂わせながら。
 それまでの間に六度、射精を強いられていた。胡桃は初めてだったが、俺のすべてを知り抜いている
かのように振る舞い、巧妙に凄絶に責めた。仮に耐えるという発想があったとしても、肉体的に成立しなかった。
 経緯がどうであれ、かつては頻繁に夜のオカズにしていた相手だ。艶かしく、それでいて甲斐甲斐しく
奉仕を続ける胡桃を感じているうちに、倒錯した安堵を覚える自分がいた。想像以上の快楽を、想像を
遥かに超える献身で実現させる幼馴染みの姿。信頼を裏切られたにも関わらず、脊椎が痺れるほどの
気持ち良さが込み上げた。
 そもそも。お互いが相手を異性として意識し、欲情の対象にしていたと判明した時点で、俺らの関係は
終着していたんだろう。「友達」「幼馴染み」という張り紙はとっくに朽ちていた。
 胡桃の危うさを肌で感じながらも、彼女を早い段階で切り捨てることができなかった俺の弱さが悪い。
 麻耶を選ぼうとした以上、胡桃に優しく接して慰め、それでいてきっぱり別れるなんて資格は俺になかった。
 それでも──胡桃を放っておく気にはなれなかったのだ。
 しばらく放っていたら、今日みたいな事態は避けられたのかもしれないが。
 いつまでも放っていたら、彼女が何をし始めるのか、想像もつかなかった。
 己の命を絶つか。それとも、刃を他の誰かに向けるか。
 俺は恐怖を前にしたとき、目を閉じるのが怖くなるタイプだ。見えていない間に何が起こっているかを
想像して自分を追い詰める。ゆえに胡桃の「怪物」を恐れながら、それを直視したい、すべてを明らかに
したうえで踏み越えたいと願ってしまった。
 結果は惨憺たるものだ。
 胡桃に裏切られた。
 同時に、麻耶を裏切った。
 こちらが被害者とはいえ、心はともかく体は抗わなかったのだから、不義を働いたと言っても差し支えない。
 泣きたくなる。裏切られたせいか、裏切ったせいか。両方なのか。
 分からない。
 自分の思いがどこにあるのか分からない。胡桃を想って軋む心と麻耶を想って痛む心で千々に乱れる。
 麻耶と関係を結んだのは、彼女の依存が心地良かったから──
 胡桃に油断を見せたのは、彼女に対してタカを括ってたから──
 主体がない。確固たる行動の筋がない。
 俺は何をしたくて、何を忌避しているのか。
 腕の中にいた下級生の肉体を貪り。長年親しんだ幼馴染みに犯されながら甘美な被虐を味わい。
 悟るしかない。もう踏み外しているのだ。常識の範囲とか、普通の関係とか、そういうものは全部。
 そして、その逸脱の先に見えてきたものを、俺は──決して嫌っていない。
 日数にしてほんの三日ほど。童貞を喪失し、逆レイプまで体験した俺は、以前の自分が持っていた
視座では到底目にすることのできないステージに臨んでいると、ショックに揺れる精神の中で感じている。
 赤く毒々しい食人花と、繭のように覆う蔦の嵐。
 草花が生い茂る隠喩の沃野。
 これを美しいと思い始めているのは、心が砕けた証拠なのかもしれない。
 涙が止まらなかった。「以前の自分」という存在が抱いていた感情を、何も思い出せなくなりつつあった。
 壊れかけているのか、俺は。それとも、もうとっくに?
 ぼんやりとした頭に、染み渡ってくる旋律がある。ラ・マルセイエーズ──着信音。
 携帯が鳴っている。いつからだろう。頬の涙は既に乾いていた。
 表示を見た。「荒木麻耶」。その四文字に体が跳ねる。
 なぜ彼女から。ひょっとしてさっきのことを。
 グチャグチャのスープみたいになっていた頭に悪寒が走り、意識がクリアーになる。
 震える手でボタンを押した。
「……もしもし?」
 彼女は「今、ちょっと外に出られませんか?」と静かに訊いてきた。
 赤い蔦が這い出してきて、小指に絡みついた。
34沃野 Act.14 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/16(日) 21:56:10 ID:ZKy0uFBI
次回は胡桃視点で。
35名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 22:03:11 ID:L8tBGlUY
>>34
正座して続きを待ちます。もちろん全裸で。
麻耶も描いたけど、胡桃も描きたくなったなぁぁ
36名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 22:04:08 ID:yURl7pe+
じゃあ俺は、全裸でピアノ弾きながら待ってます
37名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 22:12:51 ID:cgEY+gT/
じゃあ俺はそれに合わせて全裸でタンバリンを叩きます
38シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/16(日) 22:17:54 ID:iXoJcXHL
>>34
タイトルにはそんな意味が…
応援しております、続きが楽しみです。
39名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 22:21:14 ID:yueF5dN5
じゃあ俺は全裸で指揮棒を振ってます
40名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 22:27:33 ID:08Q4Sj2B
じゃあ俺は音楽に合わせて全裸で踊ります
41名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 22:33:33 ID:G4F0oEH7
ヴァイオリンなら任せてください
42名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 22:38:59 ID:cw3fYS1N
>>32
何をいってるんだ!?
彼はこれから胡桃に食われるんだよ。
そう信じてやまない俺ガイル
43名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 22:44:19 ID:1BPRr/0h
>>34
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +
44名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 22:47:27 ID:GA8Jts5a
麻耶たんガンバ。胡桃に負けるな!
45名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 22:47:56 ID:gCXFig7m
>>28
GJ!!待ってます。全裸で

>>34
次話wktkです
46名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 22:55:37 ID:OR3VPrhf
>>33


         ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!
          cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・

  j    /   ,.- 、  ヾヽ、 ;; ;; _,-<  //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─--  エィ' (. 7 /
      :    ' ・丿   ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、  i     u  ヾ``ー' イ____
       \_    _,,......::   ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... '  u ゙l´.i・j.冫,イ゙l  / ``-、..- ノ :u l ,− ,−\ / ̄ ̄ ̄ ̄\
   u      ̄ ̄  彡"   、ヾ ̄``ミ::.l  u   j  i、`ー' .i / /、._    `'y   /, |・  |・ | ヽ_____ヽ
              u      `ヽ  ゙:l   ,.::- 、,, ,. ノ ゙ u ! /_   ̄ ー/ u /  `−●-' \ヽ , ─ 、 , ─ |
           _,,..,,_    ,.ィ、  /   |  /__   ``- 、_    l l  ``ーt、_ /  / ──  | ──ヽ|・   |・   |
  ゙   u  ,./´ "  ``- 、_J r'´  u 丿 .l,... `ー一''/   ノ  ト 、,,_____ ゙/ /..  ── | ── .|`─ 'っ - ´|
        ./__        ー7    /、 l   '゙ ヽ/  ,. '"  \`ー--- ",.::く、 |    ── | ── |.____) /
       /;;;''"  ̄ ̄ ───/  ゙  ,::'  \ヾニ==='"/ `- 、   ゙ー┬ '´ / \.____|__) / ___/
、      .i:⌒`─-、_,....    l   /     `ー┬一'      ヽ    :l  /  , ' `ソヽ      /l \/\| \
ヾヽ     l      `  `ヽ、 l  ./  ヽ      l         )  ,; /   ,'    '^i━(t)━━l |      | |

47名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 22:59:32 ID:AzcI985Z
「広き檻の中で」も「沃野」特異な設定ながら其の設定ゆえに半端無く面白く
いつも楽しませてもらってます
広き檻はやっぱ晋也のおちゃらけた語り口調一人称が最高です
沃野はエロスの濃密さに蕩かされ、胡桃のデンジャラスさに背筋を凍りつかせてます

どちらも超GJです!!
48『歌わない雨』:2006/04/16(日) 23:09:03 ID:pXODDFra
皆さんGJです

あと今投下良いですか?
49名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 23:15:26 ID:yb6DEb5r
>>48
どんどんやってください


あなたは神か?
失礼ですが、神なら証明を



というネタは古いよなw
50名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 23:19:53 ID:BQqybauY
実際はただの隠喩であるだけの筈なのに、
かつて見た事無い程にバイオレンスな修羅場っぷりにとても感動している。
植物怪獣大決戦に巻き込まれた一般人たるよーくんに幸あれ。マジで。
51『歌わない雨』Side緑:2006/04/16(日) 23:21:07 ID:pXODDFra
ではこれから投下

毎度ながらのことですが携帯からなので読み辛いのは勘弁して下さい

あと神ではなく只の馬鹿です
52『歌わない雨』Side緑:2006/04/16(日) 23:24:22 ID:pXODDFra
 気まずい雰囲気のまま私と雪、伸人は早退した。原因はあの娘、釜津・芹だ。
「何でさ…」
「うん?」
 伸人の家のリビング、そのテーブルの向かいから雪が声を返してきた。伸人は居ない、私と雪の二人きり。あいつが一人でふらふらと出かけるのはしょっちゅうだ。
「あんなこと、したんだろ」
「…どっちが?」
 数秒。
「私も、セッチンも」
 言ってからテーブルに突っ伏す。混乱した頭を冷やすような、木材の冷たさが快い。
 数秒。
「何でさ」
「うん?」
「こんなことになったんだろ?」
 チクタクと時計が音を刻む。
「あたしはセッチンじゃないから分かんないけどさ、一番悪いのは伸人ちゃんじゃない? 次はアンタとセッチンが同率二位」
「どゆこと?」
 顔を上げて雪を見る。「推測だけどさ、伸人ちゃんがどっち付かずだから、それをチャラにするか進めるかする為だと思うんだ」
「うん」
「優しく甘く誰にでも公平な伸人ちゃんは、誰も傷付けたくないと自主的に宙ぶらりん。セッチンの中は、伸人ちゃんの腕のことを許せない自分と許してほしい自分が居る」
 雪は私を指差すと、
「そしてアンタは大好きな伸人ちゃんをいつも罵倒してるし、優しいくせに一年前のことでセッチンも罵倒する。ひねくれ者が三人も居て、どうすんの」
 言われて私は溜め息を吐いた。そのまま再び突っ伏して目を瞑り、浮かんでくるのは好きの人の顔だ。
「どうしましょう」
53『歌わない雨』Side緑:2006/04/16(日) 23:25:59 ID:pXODDFra

凡ミスった


 気まずい雰囲気のまま私と雪、伸人は早退した。原因はあの娘、釜津・芹だ。
「何でさ…」
「うん?」
 伸人の家のリビング、そのテーブルの向かいから雪が声を返してきた。伸人は居ない、私と雪の二人きり。あいつが一人でふらふらと出かけるのはしょっちゅうだ。
「あんなこと、したんだろ」
「…どっちが?」
 数秒。
「私も、セッチンも」
 言ってからテーブルに突っ伏す。混乱した頭を冷やすような、木材の冷たさが快い。
 数秒。
「何でさ」
「うん?」
「こんなことになったんだろ?」
 チクタクと時計が音を刻む。
「あたしはセッチンじゃないから分かんないけどさ、一番悪いのは伸人ちゃんじゃない? 次はアンタとセッチンが同率二位」
「どゆこと?」
 顔を上げて雪を見る。「推測だけどさ、伸人ちゃんがどっち付かずだから、それをチャラにするか進めるかする為だと思うんだ」
「うん」
「優しく甘く誰にでも公平な伸人ちゃんは、誰も傷付けたくないと自主的に宙ぶらりん。セッチンの中は、伸人ちゃんの腕のことを許せない自分と許してほしい自分が居る」
54『歌わない雨』Side緑:2006/04/16(日) 23:30:30 ID:pXODDFra
 雪は私を指差すと、
「そしてアンタは大好きな伸人ちゃんをいつも罵倒してるし、優しいくせに一年前のことでセッチンも罵倒する。ひねくれ者が三人も居て、どうすんの」
 言われて私は溜め息を吐いた。そのまま再び突っ伏して目を瞑り、浮かんでくるのは好きの人の顔だ。
「どうしましょう」
「あのね、一つ良いことを教えてあげる」
 雪は溜め息一つ。
「あたしが何で伸人ちゃんを名前で呼んでるか知ってる? しかも、他人のようにちゃん付けで」 私は首を傾げ、雪は髪を掻き上げると、
「あたしの初恋は伸人ちゃんなの。大分昔に諦めようと思った、ここ一年で諦めきれた。まぁ今でもオカズに使ったりするけどね、要はその想いの名残」
 結構生々しい話を聞いてしまった。しかし、それがどう繋がるんだろうか?
「でね、私は所詮妹だから恋人になるのは無理だけと、アンタは可能でしょ? その事実と、幼馴染みの実績、そして自分の気持をしっかり考えて行動しなさい」
55『歌わない雨』Side緑:2006/04/16(日) 23:31:58 ID:pXODDFra
「具体的には?」
「甘えんな」
 一言で切り捨てられて、ここ数分で三度目の突っ伏しをする。アンタはあたしより頭良いんだから自分で考えろ、なんて声もするが気にしない。
「どうしましょう」
 小声で呟きながら、目を閉じる。今度暗闇の中に浮かんできたのは、小柄で華奢な体を持つ、長い髪が良く似合う少女。綺麗さと可愛さが同時存在する、鋭い表情の恋敵。
「憎いあん畜生」
 何と無く懐かしい言葉を言ってみる。
 そう言えば、夜の相手を独占というのはやはり性方面なのだろうか? 思考がぐちゃぐちゃになる。
「邪魔だなぁ」
 何気無く自分の口から漏れた声を聞きながら、意識が落ちて行くのを感じる。
 それにしても、私の声はこんなに冷たかっただろうか?
56名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 23:32:48 ID:HZrhuurr
ふと思った、長文を書きたい神はぜひ.txtファイルでうpしてもいいような気がする
57『歌わない雨』Side緑:2006/04/16(日) 23:34:49 ID:pXODDFra
今回はこれで終りです

本当に毎回毎回読み辛くてスミマセン

次回からはまた伸人視点
修羅場はもう少し先です
58名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 23:56:59 ID:yURl7pe+
うpファイルが流れると、あとでまとめサイトの管理人さんが困らないかな
管理人さんの近況を見るに、とても毎日チェックできる状況でもないみたいだし
59名無しさん@ピンキー:2006/04/17(月) 00:48:25 ID:qyummDGY
やっぱSSスレだからなあ。
txtファイルよりもこのままの方が趣があって良いと思う。
一日経ってからここ覗くとwktkがとまらん。
クリスマスプレゼントを開けるときのようなwwwwww
60名無しさん@ピンキー:2006/04/17(月) 02:02:04 ID:/nazQVIO
>>59
    ,,ト                                    ,、    .%,            
   ,,ll′                                 l=@   ゙l,、          
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: ll    .,    .l|   .゙l,             ゙l,、        ll,、     ゙ll、  ,llll!llllliiii,,,,_、      
..,l"   ll    .!,   ゙ll,、          ゙li、           li      .゙l,  .゙!!lllii,lll゙!!llllliiii,,,,、   
..l|    .゙i    .l|    .゙l,      ,     .'゙l、       'li      .l    ゙゙!!llllli,, ゙゙゙゙!!lllllii,,,  
..l|    l|    l|    .゙l,     .゙l!     ll,           ll、     l|     ゙゙!llllii,,_  ゙l!lllii,_ 
.,l|    l|    l|    _ ゙l,     ゙i      l  ,,,,,,,,,iw   l|     ll       .゙゙llllllii,,、 llllll 
.l|    .ll,   .゙l,   .゙l, 'li    .゙i   ,,,e*l゙ll゙゙゙ ̄    ,, 'li、     'l          llllll!llllliillll!゙` 
.l|     ll    ゙l、   ゙l, .゙l,    .,i ''゙°  .゙i   ,,,iill'゙゙゜: ::l      l_ ・      .llllll,,,llllllllliii,,,、
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il′    ゙i   .'l ゙l,   .l ,,,ell li  .ll'll    .,,,lll゙,,l゙゙,,レ***,,,,l,,l,     ,ll .゙l,     .llllll「 .゙l=@ 
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     l   ゙l   ll li .l|l ゙l,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l: : : : : ,i、:       ,,  .l|   .l   l .゙ll,.゙ly    .゙l,゚N,、 
     l   .l   .li ゙l, .l|゙l, ゙l,;;;;;;;;;;;;;;;,,il″: :  .ll,,,   .,,,ell゙゙'l,  .ll   .ll   .ll  ゙l, ゙゙l,    .゙l, .゙゙li、
     l,   l   l.,_゙l,_l|.゙!li,゙!*g,,,,ll'″:      ~_,,ilf'゙°;;;;;;;;私 l   .l   l   .゙l,、゙l,、   l,   
     .l   l   .l’”!lllll!  ゙゙゙゙””:      ,,,,lfl゙゙″;;;;;;;;;;;;;;;;;;,l! ll′  .'li、  l    l| .゙li    ゙l,  
     .l   l   ,l   ゙゙N=@      .ll ̄;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,ケ.ll′   l   .l    l|  `l    .゙ト 
     .l   .,!  .l|.eei,,,,,,,,,,,,゙゙ll,,,_      .゙'N,_;;;;;;;;;;;;;;;_,,al″.,l|    .l|   l    l|  ゙l!      
     .'l   l   i゙ ,,l″  .”””゙゙li,,,  .,,,illfllllllllllglllllll゙゙″  .l    .l|         !  ill″     
     l   l   l.,r゙`        ゙゙゙ll,il“`    `゙llll,,,    i゙    .l   ,,,            
ビックリ箱だったら最高だよね、変なメス犬の首入りとかの
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
61名無しさん@ピンキー:2006/04/17(月) 02:12:15 ID:0hFp9XqH
( Д )  ゜    ゜
62Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2006/04/17(月) 03:25:18 ID:K6sJbc01
※お手数ですがこの美嬉パート
収録の際には最初の紅司パートと夕子パートの間に入れてください


   X    X    X    X   


 今でもあの日のことは鮮明に覚えている。 彼――吉田紅司君と始めて話をした日のことを。
 あの日私――藤村美嬉は駅で途方にくれていた。 その日は珍しく遠出した帰り路。 改札口を通ろうとした時、切符が無い事に気付いた。 鞄の中もポケットの中も思い当たる所は全部探したけれどキップは出てこなかった。
 しかも間の悪い事に出かけた先で散財しすぎたせいで財布も殆ど空。 電話を掛けようにも携帯もバッテリー切れどうしようか途方に暮れ涙まで溢れそうになったそのとき助けてくれたのが紅司君だった。
 でも私は其の頃人見知りが激しく、特に男のヒトが苦手でロクにお礼もいえなかったのに彼は優しくしてくれた。
 気にしなくていいよ、困った時はお互いさまだよ、と。
 
 その後も特にこれと言った変化も無く会話する機会もなかった。 正確には勇気が無くて話し掛けられなかったと言った方が正しい。 でも気付けば私の目はいつも彼を探していた。
 そして気付いた。 ああ、コレが恋なんだ、と。
 でも告白できなかった。 だって彼には、吉田君にはとっても仲良しの女の子が居たから。 とっても元気で明るくて活発で、私なんかとは正反対のコだった。 そして其の間に私なんかが入り込む余地は見出せなかった。
 だから決めた。 この気持ち打ち明ける事無く胸にしまっておこうと。
 そう決めたはずだった。

 でもそんな私の諦めた気持を奮い立たせ背中を押してくれる出来事があった。
 それはある晴れた日曜日、従姉の由花お姉ちゃんが遊びにきた。 いつも昔っからおばあちゃん家に行くたびに遊んでくれた優しいお姉ちゃん。 その日来たのは結婚の報告だった。 でも相手のヒトの名前を聞いた時私はちょっと驚いた。
 由花お姉ちゃんにはとっても仲良しの、お姉ちゃんと同い年の男の子が居た。 そして当時の私は幼心にきっと将来おねえちゃんはこのヒトと結婚するんだろうな、と思っていた。

 だけどおねえちゃんの口から出てきた名前は私の全く知らない人だった。 だから私は疑問に思ってその事を聞くとお姉ちゃんは笑って答えた。 幾ら仲が良がよくってもそれは言ってみれば兄弟姉妹みたいなもので恋愛とかとは全く別物だって。
 其の言葉を聞いて私は誰にも言ってなかった思いを打ち明けた。 好きなヒトが居て、でも其のヒトにはとっても仲良しの幼馴染の女の子がいるから、と。
 その事を打ち明けるとお姉ちゃんは笑った。
 ヒトが真剣に相談してるんだから笑わないでと言うと、お姉ちゃんは笑を堪えながら謝りそし応援し励ましてくれた。
 お姉ちゃんの言葉に私は勇気付けられた。 そうか幼馴染で仲良しだからってそれが恋人同士とは限らないって。

 そして次の日、私は意を決して気持を打ち明けた。 あの日助けてもらってとっても嬉かった事。 気付けば何時しか好きになってた事を。
 思いのたけを伝えた私は気付いた。 ことの一部始終を見ていた人が居た事を。 その人は吉田君といつも一緒にいる例の幼馴染のヒトだった。
 瞬間、吉田君の顔がこわばった。 其の表情はまるで悪い事をしてるところを見つかったかのような。 其の表情が私の心をたまらなく不安にさせる。
 でも次の瞬間そんな不安は跡形も無く消し飛んだ。 ああ、お姉ちゃんの言ったとおりだ。 この二人もやっぱりおねえちゃんと其のお友達みたいな兄弟姉妹みたいな仲だったんだ。

 嬉しかった。 吉田君が受け入れてくれた事が。 願いが叶った事が。
 気付けば私の両の目からは涙が溢れていた。 そしてそんな私を吉田君は優しく抱きしめてくれた。
 ああ、このヒトを好きになって良かった。 心の底からそう思えた。
 きっと私はこの時のことを一生忘れないだろう。 吉田君の温もりを、そして優しさを。
63Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2006/04/17(月) 03:27:02 ID:K6sJbc01
※ここからは前回の続きです

「今日は色々疲れたなぁ……」
 部屋に帰りついた私はそのままベッドに倒れこみそして仰向けになって天井を仰ぐ。
 先輩と別れて、それでそのまま其の脚で紅司の家に告白しに行って……。 
 無事思いを伝える事が出来て、紅司からも好きって言葉聞けて……でも交際をOKしてもらえたわけじゃないんだよね。
 誤算だったな。 紅司の中で藤村さんの存在が想像以上に大きくなってたなんて。 てっきり直ぐに別かれて私と付き合おうって言ってくれると思ったのに。
 でもきっと上手く行く。 私が紅司じゃなきゃ駄目だったように、紅司も私じゃなきゃ駄目だって気付いてくれるはず。
 私の言ったこと理解して解ってくれるはずだ。 紅司自身の為にも誰と付き合うのが一番いいのかを。
64Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2006/04/17(月) 03:29:57 ID:K6sJbc01


   X    X    X    X   


 昨日は良く眠れなかった。 原因は昨日夕子に言われた事が頭の中にこびりついてた為だ。
 夕子からの告白。 嬉しくないと言えば嘘になるだろう。 なんと言っても初恋の女の子だし。 本来なら喜んで交際をOKしたいぐらいだった。 ――けど。
「今更言われたって……」
 確かに俺は夕子のことが好きだった。 友達として出なく女として。 でも其の想いはあいつにその気が無いとわかった(結局は勘違いだったんだが)とき吹っ切れたはずだった。
 そう、だから友達としてなら今でも好きだが、女としてなら『だった』と正確には過去形なのだ。
 でも本当に吹っ切れてたのだろうか? いや、吹っ切れてるはずだ。 だって昨日アイツに告白された時嬉しさもあったが、今更困ると言う思いの方が強かったんだから。
 困る? 何がってそりゃ今更美嬉にやっぱり付き合えないとか、別れてくれなんていえないし。 あいつの泣き顔なんか見たくないし……。
 あいつを泣かせたくないって思えるってことは、あいつの事を本当に好きだからってことの証拠じゃないか。 そうだよやっぱり俺は美嬉の事好きなんだよ。
 やっぱり今更言われたって夕子とは付き合えないよな。 でもそう言ったらあいつ泣くかな……。 そんな事考えたら急に胸の辺りが苦しくなる。
 そう言えば昔っからアイツが泣くたびに慰めるのは俺の役目だったっけ。 でも今回あいつが泣いた場合は流石に俺が慰めるわけにかないしなぁ……。
 泣き顔を見たくないって事に関しちゃ夕子だって同じだよな。 結局そんな理由だけじゃどうにもならんよな……。


 そんな事考えながら歩いてる俺の背中を強く手が一つ。
「おっはよ〜紅司! な〜に朝っぱらから背中丸めてるのよ!」
 夕子だった。
 誰のせいだよ、と言ってやろうと思ったが止めた。 言ったところで八つ当たりみたいでカッコ悪いし。
「ねぇ、昨日私が言ったことちゃんと考えてくれた?」
 あっけらかんと口を開く夕子。 まるで自分の望んだ答えが返ってくるのを疑いもしないような笑顔。 其の笑顔が少し癇に障る。 だが強く拒絶できないのも事実だ。 我ながら情け無い。
「昨日言ったことって?」
「だからぁ、藤村さんとは何時別れるの?」
「ちょ、ちょっと待てよ!! 俺、美嬉と別かれるともお前と付き合うとも言ってないぞ?!
 夕子の言葉に俺は思わず叫んだ。
「でも昨日迷ったり口ごもってたりしたじゃない」
「う……」
 思わず言葉に詰まる。 確かに夕子と付き合うとも美嬉と別かれるとも言っていない。 反面、夕子の事を完全に拒絶したわけでもない。
 そう、俺の心には迷いが生じていた。 折角夕子が俺の事を好きだと言う事が分かったと言うのに、それをそのまま断わってしまってもいいのだろうか、と。
「ま、良いわ。 其の様子だと迷ってるみたいだし、迷ってるってこと私にも脈があるってことよね」
 其の言葉に俺は何も言い返せなかった。
 俺の沈黙を肯定の意味として受け取ったのか夕子はにっこりと笑う。 其の笑顔に思わず顔が熱くなり俺の心は更に揺らぐ。 心の底で葬り去ったと思っていた夕子に対する恋心が本格的に息を吹き返したとでもいうのか?

「紅司君おはよう」
 その時背後から声がかかった。 美嬉だ。 その時俺は夕子と一緒にいるところを見られた事に対して言い知れない後ろめたさを感じた。
「ああ、おはよ……」
「藤村さんおはよう!」
 その時俺が挨拶を返すのを遮るように夕子が口を開いた。 一体どういうつもりだ、夕子。
「あ、白波さんもおはよう。 紅司君と仲良いんですね。 やっぱり幼馴染だからかな」
 だが、美嬉は相変らずの朗らかな笑顔で応える。 其の笑顔に俺はほっと胸をなでおろす。
「あ、ああ、まあな。 ところで美嬉にも幼馴染なんているのか?」
「ううん、私には特にそうしたヒトは居ないよ。 でも従姉のお姉ちゃんにはとっても仲良しの幼馴染の男のヒトがいるの。 だから何となく解かるの」
「ねぇねぇ、そのお姉さんと幼馴染の男の人って今どうしてるの?」
 その時夕子が口を挟んできた。
「お姉ちゃんは先日結婚の報告に来ました。 でも相手の人はその幼馴染の人じゃ無くってね。 あ、でも幼馴染のヒトとは今でも仲良しだって言ってたわ」
 美嬉の応えを聞くと夕子は何かを考え込むそぶりを見せる。
「ふーん。 じゃぁ私は先に行くね」
 そう言うと夕子は一足先に学校へと向かっていった。 だが俺は夕子の其の何か考えてるかのような表情が気になった。
 アイツ、一体何を考えてるんだ?
65 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/17(月) 03:32:29 ID:K6sJbc01
今回はココまでです

阿修羅さんタグの件ありがとうございました
あとタイトル正式に使わせていただく事にしました
こちらもありがとうございました
66名無しさん@ピンキー:2006/04/17(月) 20:49:57 ID:0184AcJM
>>65
GJ!もうすぐ修羅場になりそうなのでwktkして待っていますね
67名無しさん@ピンキー:2006/04/17(月) 23:23:51 ID:prEy2izc
>>65
(*^ー゚)b グッジョブ!! 株で壊された心が戻ってくる感じがしてきたわ
とりあえず俺は美嬉派として応援させていただく所存(゚ー゚*)
68義姉 第8回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/18(火) 00:11:37 ID:a+3i454K
        *        *        *
『士郎』

 朝起きてみると携帯には知らない番号からの着信があった。誰か友達の携帯の番号でも変わったのだろうか、用事があればいずれまたかかってくるか直接言ってくる――でも最近クラスの友達とは話していない。
 それ以外は普通の朝だった。姉ちゃんとは特別会話はなかった。適当な朝の挨拶だけ。用事でもない限り、毎朝色々喋っている訳じゃないし、別に気にする事ではない。友達も姉妹とは似たような感じだと言っていた。
 いつも通り朝食を作って飯を食っていつも通り学校へ行く。
 ――いや、先週から家を出る時間が変わっていた。
 前までどおりの時間に家を出れば、あいつと同じ電車に乗ることになる。
 教室に行けば必ずいるのはわかりきっているから、授業直前まで図書館で時間を潰す。
 休み時間になればすぐさま教室を出て行く。

 よくわからない。
 どうしたらいいかわからない。
 会うのが怖い。
 話すのが怖い。
 だからずっと逃げている。

 昼にはよくモカさんと一緒にいる。最近なんとなく思わせぶりな態度で少し勘違いしそうになってくる。
 何故モカさんがいつも一人で中庭にいるのかは知らない。
 いつもの様に教室にいれば、あいつと顔をあわせなければいけない。どうしたらいいかわからなくなってしまうから、逃げるようにここに来ている。
 モカさんは前々から中庭で昼を過ごしていただけかもしれない。オレが中庭で過ごし始めたのは、つい最近のことに過ぎない――逃げるために。
 それからモカさんはよく人の頭を撫でたりする。これは好きになれない。お前は子供だって言われている気がして。いや、実際にまだまだ子供なのかもしれない。だけどそれを認めたくない自分がいる。
 でもモカさんと一緒にいるのは、それ程嫌いじゃない。柔らかい感じっていうか、お姉さんって感じ。姉ちゃんとは違う。一応姉ちゃんにもあるが、そこの部分を取り出し大きく広げてみた感じ。
 いや、姉ちゃんも物凄く優しい時期があった。何もないのにニヤけたり、オレの好きなおかず分けてくれたり――いつもの姉ちゃん、問答無用で人のおかずをとったりするのを知っている自分には正直言ってかなり不気味だった。
ひょっとしたらオレ死ぬのかなとすら思った。何故だかわからないけど、しばらくして元に戻ったけど。今思えばあの状態が続いていれば自分の人生はもっと幸せだった気がする。
69義姉 第8回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/18(火) 00:12:16 ID:a+3i454K

 そう思いながらいつも通りモカさんと並んで座っていると遠くに三沢が見えた。向こうもこっちを見ていた。何故だかわからないが心臓が縮み上がった。
 向こうはただの友達――いや今もそう思っているかどうか定かではない。とにかく、あいつとは特別な関係ではない。モカさんともそういう訳ではない。
 でも何だろう、まるで悪いことでもしたみたいな今胃の中のモヤモヤは。
 彼女から目線を直ぐに外した。間もなく隣に座っていた人は立ち上がり手を引っ張っていた。
「――ほか行こうか」

 モカさんに引っ張られるままに校舎裏まで来ていた。
「何ですか、こんなところまで引っ張ってきて」
「んー、なんでかなー?」
 モカさんはとぼけたふりをして見せていた。理由はわからないが三沢の視線から逃げる口実にはよかったのかもしれない。
「あ、そうそう、士郎君って私の電話番号知らないよね?」さっきまでの話題をはぐらかすように話を切り替えていた。
「いや、まあそうですけど――」
 この間そのせいで待ちぼうけを喰らった。
「うんうん、今から番号教えるから。えーと――」
「じゃあ、今から――」
 メモリに登録完了し後はこちらからかけてお互い登録完了――のはずだが
「ちょっと待ったー!」
「は?」
 何故だかわからないが止められた。
「士郎君は私の番号知っているけど、私は知らない。ふっふー、この意味ってわかるかなー?」
「へ?」
 本気でわからない。なんだかよくわからないがとにかく向こうは笑っている。
「あの――前も言いましたけど」なんだかわからない展開から抜け出す為、今心に圧し掛かっている問題の一つを浮き上げた。
「無理してでも振られた相手って忘れた方がいいんでしょうか」
 モカさんは少し考え込んだ後「がんばりって忘れなよ、力になってあげるから」と笑いながら思いっきり背中を叩いた。痛いぐらいの強さで――
70義姉 第8回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/18(火) 00:13:38 ID:a+3i454K
 頑張って忘れるってどうやればいいんだろう。でも心の奥底で一つの行動が浮かんでいた。多分この行動をとったからって忘れられるわけがない。しかし、それ以外自分の気持ちに区切りをつける方法が思いつかなかった。



 もう振り切ろう、全部。
 自室で震えながら携帯のメモリから彼女の番号を呼び出す。本当放課後に言うつもりだったが出来なかった。顔を見ると怖くなって逃げ出していた。
「あの――私だけど……」呼び出し音は殆どなく繋がった。
「うん、オレ……」自分の声が震えている。手が震えている。体全体が震えている。
 電話越しとはいえ彼女の声を聞いたのが随分久しぶりの気がする。
「この前は変な事言ってごめん……。オレが前言った事全部忘れていいから……」
 それだけ言って一方的に切った。
 そんな風にしか言えなかった。
 でも本当は別の事が言いたかった。まだ好きです。友達としてでもいいから、また――

 一人きりの部屋が孤独感を煽る。気がついたら声を出して子供の様に泣きじゃくっていた。
「シロウ入るよ」珍しくノックして姉ちゃんが部屋に入ってきていた。
「……また何かあった?」こちらを見下ろしながら問いかけてくる。
「あいつに謝った……変な事言って……ごめんって……忘れてくれって……」
 言葉がうまく口から出せない。
「忘れろとは言ったけど、誰もそんな事までしろって言ってないんだけど。
 さすがに、あんたみたいな馬鹿には付き合いきれない――」
 そう言い捨てると姉ちゃんは部屋から出て行った。
 ハハ、姉ちゃんにまで見捨てられた。ドン底のダメダメじゃねえかオレ。
 また一人ぼっちで泣き始める。

 階段を下りていく音がして、またしばらくして階段を上ってくる音がする。
 また姉ちゃんが部屋に入ってくる。ついさっき付き合いきれないって言ったくせに。
「今酔っているんだけど――」
 姉ちゃんはテーブルの上に缶を乱暴に置いていた。
71義姉 第8回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/18(火) 00:14:16 ID:a+3i454K
<チラシの裏>
花粉症が辛いと思ったら風邪だった。
</チラシの裏>
72名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 00:29:04 ID:Ok0SHOet
>>71
奇遇なことに自分も。
風邪と認識した途端、関節と喉が痛み出した…。
休まずになんとか乗り切れたのはこのスレのご加護か。
73名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 00:32:52 ID:fHK365ur
花粉相手にうつつを抜かしているから風邪のウィルスが嫉妬するのさ
74名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 00:56:11 ID:gPGRE9AE
>>71
GJ。モカさん可愛いいなぁ。

>>73
だから誰がうまいことを言えと(ry
75名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 01:59:31 ID:w3hgH25n
>>75
GJ!士郎イイ奴なんだけどウジウジ具合が殴りたくなってくるのは俺だけ?
俺が兄貴だったら根性叩きなおしてる。
76名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 02:00:02 ID:ax9ZQvUy
俺が兄貴だったらモカたんと付き合っちゃうな
77名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 02:00:54 ID:w3hgH25n
>>71だよ…スマソ。死んでくる。
78名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 11:14:36 ID:fHK365ur
>>75
そんな時はゆう君を思い出せ。
その後に士郎をみれば普通の奴に見えてくるからwww
79『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/18(火) 16:27:00 ID:QIs2+Akr
所変わってお嬢の部屋の前。
ここに来るまでに多大な労力をかけた事を察していただきたい。生きた心地がしなかったヨ!
コンコン
「入って来て。」
ノックをすると速攻で返事が来る。待ってましたと言わんばかりだ。
ガチャ
言われたとおりに入る。逃げちまえば?という考えもあったが、遅かれ早かれこうはなるんだ。ちゃちゃっと済ましちゃえ。
「ふふ、待ってたわよ……晋也……」
あーあー。あんなに無垢な笑顔を見ると罪悪感が募るね。ホント。
「んで……俺が賞品な訳なんだけど………お望みは?」
「……きて…」
そう言ってベットの上で両腕を前に出し、ハグハグ(死語)を所望する。いやっはー!かわいらしいねぇ。
「後悔するなよナ!すっげぇ痛いらしーっすよ。」
軽く脅し。
「う……うーー………だ、大丈夫!初めだけなら。」
据膳食わねばなんとやら。ここまできたらやらなきゃ男の恥だ。
(一発やっちまえばおとなしくなるのでは?)という邪な考えは心の秘密だ。
「そんな鬼畜な考えはいかんなぁ、純也君。」
「……?純也が…何?」
「いえ、自分との戦いです。」
擦り付けを終え、お嬢に近付く。
「じゃ、……遠慮無くいきますよ。俺も上手いって訳じゃないっすよ?」
「うん……」
ゆっくりと服を脱がしていく。まだブラもいらないんでねぇの?ってぐらい小さい。
汚れの無い乳首が露になる。真っピンクだ。そっとその胸に触る。
フニ……
おぉ?
フニフニフニ
ヲヲヲ!
フニフニフニフニフニ……
「さ、触りすぎよ!晋也…んやぁ…」
は!イカンイカン。あまりの触り心地の良さに夢中になっちまった。こう…なんつーか……小さいのもイイ!
あ、いや。ロリコンじゃねぇぞ。そこんとこはハッキリしとこう。数学的に言えば、許容範囲≦貧乳≦巨乳≦許容範囲、みたいな。
80『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/18(火) 16:27:53 ID:QIs2+Akr
「ん?」
気付くとベットが少しぬれていた。みてみるとお嬢の下着からねっとりとした蜜が溢れていた。
「お嬢……もう感じてんの?」
意地悪く聞いてみる。こんな時ぐらい立場逆転だ。
「ん…ふぁ……わからないけど……晋也に触られてるって思うと……んぁ…体、熱くなって……」
……罪悪感倍増。そんなに俺を思ってくれるなんてなぁ………
だがすまんな。体はまだしも心までお嬢に向ける事はできんのですよ。早く終わらせようと、パンツまで脱がす。股からはいやらしく糸を引くように愛液が付いていた。
「そんじゃ、入れるぜ……」
「う、うん……」
もう何百年も生きてきた当主の迫力は無く、一人の少女と化していた。
濡れそぼった秘部に剛直をあてがう……っつーか狭いなぁ……
グッ…グググ…
少し無理やり気味に入れていく。亀頭がすっぽり埋まった辺りで………
「いっ……痛い!痛い!痛い!」
半泣きで背中をひっかいてくる。
「が、我慢しなさいって!」
そんなに騒がれるとマズい。が、間髪入れず一気に差し込んだ。
ズズズズズ!
「っああぁ〜!」
「は、入った……お、お嬢…もうちっと緩めてくれ……キツすぎていたい。」
「だ、だってだって……い、痛すぎるぅ〜…」
しょうがない。なれるが一番。俺は少し無理しながらも腰を動かし始めた。
81『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/18(火) 16:28:52 ID:QIs2+Akr
ズッ、グプッ、ヌプ…
「あ、あん…んん……んぁ、あぁぁん…」
始めから濡れていたせいか、声色が甘くなってくる。なんか………初めて聞くお嬢の声に興奮しちまったい。こうなるといぢめたくなるのは俺のS心か。
「あらあら、お嬢。相当Hな体に宿ったみたいっすねぇ〜。」
ニチュニチュズグ
カァ〜〜〜〜
っというぐらいにお嬢の顔が赤くなる。
「あぁ、んぅ……ふぁ!あぁぁ!そ、そんな事………」
「なくもないだろ?こんなに濡らしながら感じて………」
い、いかん。あまりの快感に『地』がでてきた……抑えんと…
「ほら……どんな気持ちか言ってみないとわからんよ?」
「ん……はぁ…あ、あ!気持ち……気持ちい……晋也が……晋也のが気持ちいい!」
「グッジョブだ!」
それを聞き、腰の動きを更に早める。
グ、グプグプ、ニチュニチュ、ズグズブブブ………
「あー!あー!わ、私、もう…だ、めぇ〜」
「くっ!」
射精感が込み上げた瞬間、一気に腰を引き抜く。さすがに中はまずいっしょ。
ドクンドクン
「ふぁ、っぷ……あ、あついぃ〜……」
吐き出された精がお嬢の体中を汚していく。
「は、はぁ〜……」
一通りだし終わって、ベットに蹲る。
………ついにヤっちまった……まぁ……後悔はない…かなぁ…
「これで少しは落ち着いてくれれば万々歳なのですが。」
言ったが遅い。もうお嬢は眠りこけちまった。残・念!!!
82名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 18:57:06 ID:JacKtQEj
やっぱり晋也の方が本能全開って感じだなぁ
83 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/18(火) 20:17:07 ID:a+3i454K
>>75
>ウジウジ具合が殴りたくなってくるのは俺だけ?
ノシ
84名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 20:50:58 ID:h4KF3N7L
>>81
お嬢カワイイヨお嬢(*´Д`)ハァハァ
85名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 21:15:53 ID:+7dsyKa2
>>78
俺はむしろ士郎のおかげでゆう君がまともに見えてきた。
この世界での智子への悪行の数々が巡り廻ってあの世界での刺殺となって士郎の身に返ってくるわけだな。
……いや、この世界でも殺される可能性は充(ry

智子が不憫過ぎる。普通にくっついたらお話にならないが。
86名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 21:53:08 ID:Ni8WP/7N
前世にしても、今生にしても、智子自身の思い切りの悪さにも
問題がないともいえないので、悪行は言いすぎ。

まぁ、似た者同士って感じだな。
87名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 21:54:00 ID:MpRqiBL/
だがヤツのネガティブシンキングは目を見張るものがある。
88名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 22:07:24 ID:kXWp0c6C
モカさん好きな俺から見れば士郎GJ!
89名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 23:33:22 ID:fHK365ur
だからヘタレには姉さん女房がいいと昔から言っているんだ。
モカさんとか。
・・・あれ?姉?
90名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:13:33 ID:9zflvG2w
やっぱりメインヒロインとくっつくのが一番だよ。
……え?メインヒロインってモカさんじゃないの?
91名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:15:12 ID:NVGW07xj
メインも何も、ヒロインはモカさんしか居ないジャマイカ
92名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:20:43 ID:zpY+2B+s
お前ら不義理チョコの時は散々姉ちゃんルート希望って言ってたくせに
念願の姉ちゃんルートに入った途端これかよw
93名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:32:27 ID:rttwspP6
  _)        〃///, ,;彡'rffッ、ィ彡'ノ从iノ彡
  >';;,,       ノ丿川j !川|;  :.`7ラ公 '>了
 _く彡川f゙ノ'ノノ ノ_ノノノイシノ| }.: '〈八ミ、、;.)
  ヽ.:.:.:.:.:.;=、彡/‐-ニ''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;.;.;)
  く .:.:.:.:.:!ハ.Yイ  ぇ'无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~  >>92
   ):.:.:.:.:|.Y }: :!    `二´/' ; |丶ニ  ノノ
    ) :.: ト、リ: :!ヾ:、   丶 ; | ゙  イ:}    そういうときは逆に考えるんだ
   { .:.: l {: : }  `    ,.__(__,}   /ノ
    ヽ !  `'゙!       ,.,,.`三'゙、,_  /´   「姉ちゃんルートと思ってたけど本当モカさんルートを望んでいた」と
    ,/´{  ミ l    /゙,:-…-〜、 ) |
  ,r{   \ ミ  \   `' '≡≡' " ノ        考えるんだ
__ノ  ヽ   \  ヽ\    彡  ,イ_
      \   \ ヽ 丶.     ノ!|ヽ`ヽ、
         \   \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `'ー-、__
94名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:34:43 ID:ityXcUEo
珍しく一途に「まともな」アプローチをかけてくるモカさんに惚れますた。
つまり以前はトモ≦姉だったのが今は姉<モカみたいな。
95名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:37:28 ID:BgzYSKky
トモ≦姉<モカ
でおk?
96名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:40:01 ID:+BySjDBy
まあ、スレ的にはあんまりキャラがまともだったら駄目なんだが。
97名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:40:43 ID:ityXcUEo
おk
98名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:44:09 ID:6wIZsqHo
>>94
合鍵のサキタンも最初は正攻法だったんだぞ。
でもやがてダブルリストカットに不法侵入に強奪に(ry
99名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:50:26 ID:qSaJRu6V
正直に言うと不義理のシナリオはヒロイン両方とも嫌いだった
ただ神がモカさんという命を誕生させてくれた事によりぶっちぎりモカさんが大好きになった。
とにかく行動が萌える
100名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:56:56 ID:8bOOFUvN
義姉と違ってモカさんはモブキャラみたいなもんだったからな
キツイ義姉とは対照的な優しい年上のおねいさんがストライック!
そんなモカさんが嫉妬に狂ったところを創造するともう(ry
101名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:57:34 ID:8bOOFUvN
創造じゃなくて想像だった。
102名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 01:10:30 ID:BgzYSKky
>>100が二次創作を宣言
103名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 02:51:07 ID:0RHQympy
他作品と比較してキャラを貶めるの、程々にしとけ。
104名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 03:08:17 ID:aFmHKHuN
俺はキツ目で厳しくともそのなかに優しさもある姉ちゃん大好きだけどね
これからずるずると人に言えない関係になっていって欲しい

ヒロインじゃない(っつーか完璧にサブキャラだが)さっぱりした性格の田中も実はお気に入り
105名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 11:13:17 ID:9q8f85Cq
姉ちゃんも好きだがモカさんは尚好きだ。
106名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 17:21:59 ID:6/r9bW6r
あれ、もしかして姉ちゃんENDは絶望的なんですか!?
107名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 17:27:33 ID:6wIZsqHo
なんだかモカモカしたくなった
108名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 18:09:22 ID:+VkMazpi
士郎を慰める為に、2回目の本番突入と思った人(1/100)
109沃野 Act.15 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/19(水) 20:12:20 ID:YlOi3FAr
 多幸感が止まらない。甘い疼きが全身を包んで痺れさせる。
 温かい──というよりも熱い。離れていった洋平の体温が、熾火どころか猛火となって肌を灼いていた。
 込み上げてくる笑いを噛み殺しきれず、口の端が歪む。
 ボリュームを絞るのは無理だ。声を挙げてしまえば、隣の洋平の部屋まで届いてしまいそう。だから
必死に感情が音へ変わる寸前で気持ちを堪える。
 溢れるほどの幸福を防波堤にして喜悦をセーブ。
 目を閉じて思い返す。
 初めてだったし、うまくできるかどうか不安じゃないこともなかった。けど、いざ洋平を前にすると
躊躇いとかみんな吹っ飛んじゃった。
 洋平が年単位で焦らしてくれたものだから……手錠が掛かって抵抗できない姿を見ると、もう我慢が
できなかったよ。寝てるときは襲うのはフェアじゃない気がして今まではほっぺと唇にちゅうするだけで
済ませてたけど、さっきはもう崖っぷちで後がなかったし、良心が疼く余地はゼロだった。
 最初は洋平も嫌がって虚ろな目をしてたけど、六回も出したんだもの、事後承諾ありってことでいいよね。
 無理矢理だったのは悪かったと思っているよ。でも後悔は微塵もしてない。
 啼かないホトトギスは嘴をこじ開けてでも啼かせるしかないんだもの。
 それにしても。まだ微かな痛みが残るおなかの奥に、洋平のアレがいっぱい詰まってたぷたぷになっている
ことを考えるとすごく穏やかな気持ちがする。
 あっは。今だったら、笑いながらでも近所の野良猫を射てる! ふふ、射たないけど。猫、好きだし。
 避妊なんてもちろんこれっぽっちもしてなかったので、受精する確率はまずまずだと思う。周期から
言っても今日は万全な頃合。検査薬と、あと早めに育児用品を揃えなきゃ。
 名前だって考えている。
 洋平の子供だから、洋一。その次は洋二。それから洋三、洋四、洋五、洋六、洋七、洋八、洋九、洋十、
洋十一、洋十二洋十三洋十四洋十五洋十六洋十七(…中略…)洋四十四洋四十五洋四十六洋四十七洋四十八
洋四十九洋五十洋五十一洋五十二洋五十三洋五十四洋五十五洋五十六……
 女の子だったらどうしよう。
 あはっ。
 ふふ、あはははははは、ふふは。ふふふあはへあはへへへ。
 は………………
 あ、お婆ちゃん、久しぶり。お葬式以来だね。元気してた?
 え? お茶飲みながら話そうって? んー、でも、できたらコブ茶じゃなくてコーヒーにしてよ。
わたし地獄みたいに黒くて熱いやつが好きなんだぁ。
 あは、ははは、ふふふふ。
 洋平はもっと好きだよ。あはっ。
 ──あ。
 いけない、いけない。脳味噌のネジが全部はずれかけてしまった。
 危うく彼岸で父方の祖母とお茶会するところだった。
 ネジは締めなきゃ。勝って兜の緒を締めよ、とも言うしね。
 「眼」を使って洋平の部屋を視る。
 ちょうど携帯で誰かと話をしているところだった。
 誰だろう? 洋平の番号を知っているのは家族とわたしを除けば、数人の男友達しかいないはず。
 この前洋平が席を外している間にチェックしたけど怪しい履歴はなかった。
 だから安心していいところなんだけど……洋平、電話使って話すのってあまり好きじゃないし、こんな
時間帯に掛けてくる彼の友達に心当たりもない。
 荒木麻耶──咄嗟にその名前が浮かんだ。
 ガードを固めていたとはいえ、第三者を通じて洋平の番号が漏洩することまでは防げない。
 彼女が何らかのつてを利用して彼の携帯に掛けてくることは、ありえない話じゃなかった。
 根拠のない不安。けれど、安易に否定もできない。
 確認するため「眼」を洋平から外し、対象をあの下級生に切り替えて走査する。
 ……いた。
 ここから二キロほど先。自宅の部屋とおぼしき一室で携帯を耳に押し当てている。
 動く唇を読み取った──「……で待っています、……先輩」(まばたき)「ええ、はい」(うなずき)「では」。
 慌てて「眼」を洋平に戻す。こっちでも通話が終わり、携帯を仕舞うところだった。
 偶然の一致、と楽観視するつもりはなかった。洋平が話していたのは荒木麻耶という可能性が高い。
 浮ついた気持ちがサーッと潮を引いていった。代わりに、臓腑を焼く憎悪が満ちていく。
 忘れもしない。
 忘れるものか。
 あの日に視た、人生最大の悪夢を──
110沃野 Act.15 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/19(水) 20:15:42 ID:YlOi3FAr
 絡み合って蠢く半裸の男女。
 何度も盗み見たことのある洋平のしなやかな体と、押し潰されてしまいそうに小さくて細い女の体。
 乱れた衣服の隙間から覗く白い肌。洋平の、少しだけ焼けた肌と対比して目立つきめ細かな肌の色。
 そのあまりの白さに、気が狂いそうになる。
 洋平の息が荒い。音のない世界なのに、彼の息遣いが今にも耳元で聞こえてきそうだ。熱い吐息さえ、
ありありと想像することができる。いつもなら興奮を覚えるところだけど、このときばかりは違う。
 彼の呼吸が、関心が、性欲が、そのすべてがわたしとは無関係の対象──組み敷かれた小柄な少女に
向けられているものだと、分かりきっていたから。
 全身の血が凍りついて流れるのをやめた。
「   」
 金髪と碧眼に彩られた綺麗な顔が痛々しげに歪む。開け放たれた口から漏れるのはあえかな悲鳴か。
 けれど、その表情は決して醜いわけではなくて。本来ならわたしが先に受け取るべきだった苦痛を
享受し、肉体を超克した歓喜で頭のどこかが痺れたような、官能的で憎々しい美しさを湛えていた。
 服を脱ぎ捨て、生まれたままの姿で汗を流しながら彼女の体を貪る洋平。
 彼がそれまで一度も排泄と自慰以外の用途で使っていなかった、わたしがまだ触れたこともなかった
器官を夢中で出し入れしている。必死の形相。きっと、わたしのことなんて一ミリも考えていないだろう
顔つきで、幼い肢体を味わい尽くすことにばかり専念している。
 世界はふたりで完結していた。傍観しているわたしは蚊帳の外。何の意味も持たない。
 やめて。
 そんなの、間違っている。
 洋平がそういうことをしていいのはわたしだけなんだよ。
 その子なんかで気持ちよくならないで。
 叫びは届かない。性行為と呼ぶにはあまりに荒々しく一方的な陵辱を、ずっと想いを寄せていた幼馴染みの
男の子が他の娘を相手に延々と繰り広げている。ただただそれを視せられるだけ。
 拷問だった。何より、「眼」を離せないでいるわたしの本心が、わたし自身を強く痛めつけていた。
 視たくないのに。「眼」を逸らしたいのに。
 ──視ずにはいられない。
 そして、洋平の腰の動きが早くなって、口の端から涎をこぼしながら呻くような顔をしたとき。
 オートフォーカス──「眼」が、ふたりの結合の奥深くにまで向かって。
 洋平の先っぽから噴き出した白濁の液体が。
 狭い膣の中で溢れ返って渦を巻き。
 彼女の──荒木麻耶のおぞましい子宮へと流れ込んでいく一部始終を。
 あますところなく捉えた。
 何度も何度も。間歇的に噴き上がる精液が、彼自身によってぐちゃぐちゃに攪拌される。
 血や透明な愛液と混ざり合って、粘りながら別の色に染まる。ミサキーの内部みたいな情景。
 その間も刻々と、子宮には洋平の精子が飛び込んでいって──

 もう何もかも手遅れだと、わたしは夢の中で絶望しきった。

 起きてしばらくは本当に夢だと思った。あくまで「嫌な夢だったなぁ」と引き攣った笑いで流そうとした。
 洋平の部屋に「眼」を遣って、朝を迎えたというのに裸のまま動物みたいに性交を続けているふたりを
確認したとき、現実ってことを悟った。
 ──初めてではない。寝てる間に勝手に「眼」が動作したことはあった。
 わたしは食べている最中だった朝食を吐瀉し、「どうしたの!?」と狼狽する父と母に応答することも
できなくて、くぐもった呻きを漏らしながらフローリングに倒れ込み、ガクガクと震え出した。
 「眼」は洋平と雌狐のセックスに釘付けのまま。
 ちょうど、洋平がペニスを口から引き抜いて、擦り上げつつ平らな胸に射精するところだった。
111沃野 Act.15 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/19(水) 20:18:35 ID:YlOi3FAr
 休日は地獄に変貌してしまった。ベッドに伏せったまま起き上がれなくなったわたしは、理性が「やめて」と
叫ぶのにも構わず、洋平の姿を視ては、飽くことなく荒木麻耶との淫猥な遊びに耽る様を目撃して悲鳴を挙げた。
 昼になっても食べ物は喉を通らない。お茶やスポーツドリンクを飲んでも、吐き出してしまう。
 ほんの数時間でげっそりと衰弱してしまったわたしを心配して両親は病院へ連れて行こうとしたが、
無駄だと思ったので拒否した。どこにいても、わたしの「眼」は距離を無にする。自宅を離れて治療を
受けたところで、洋平とあの女が睦み合っている進行形の現実から「眼」を逸らすことはできない。
 わたしは、「眼」を神様が贈ってくれた特別な能力だと思っていた。他の誰にも視えない世界をわたしに
だけ視せてくれる、ステキな望遠鏡だと。
 既に能力なんかではなくなっていた。麻薬だ。どんなに「視たくない」と思っても、視ないでいると、
別種の不安に駆られる。目が泳ぎ、落ち着かなくなる。「洋平を視る」ことはわたしにとって生活の一部。
あの女がそれを台無しにしてしまってからも、変わることはない。痒みにも似た感覚。引っ掻けば痛いと
分かっているのに、痒みを殺すために爪を立ててしまう。視れば視るほど傷つくのに、わたしは洋平たちの
淫らなまぐわいを監視して一向にやめなかった。
 殺してやる──洋平が精を吐き出し、あの女がペニスを口に含み、すっかり体が繋がり合った男女ならではの
爛れた笑みを交わすたび、血を噴く思いで殺意を抱いた。でも衰弱は激しく、体がベッドに張り付いた
状態。這って進んでも階段にさえ辿り着くことができなかった。
 ベッドから抜け出して床に這うわたしを見つけた母は「安静にしていなさい」と抱き起こし、それでも
這い出そうとするわたしを見下ろして溜息をついた。
 往診の医師が来た頃には夕方が近くなっていて、さすがに洋平たちふたりも疲れたらしく、セックスは
小休止になっていた。わたしの体調も少しずつ回復し始めたが、彼らが体を触れ合わせてイチャイチャ
する場面を覗くたび、はらわたの千切れる心地がした。
 自分が生きている気がしなくて、どっかの地獄に落ちた後なんだと、本気で思うようになっていた。
 夕食も満足に摂れなかった。排泄はおしめにしたけど、それを恥ずかしいと感じる余裕もなくなってた。
 夜。ふたたび夢の中で隣家の様子を視た。惑乱とともに目を覚まして喉を張り上げたが、悲鳴は涸れていた。

 包丁を持って押し入る気力も、自殺する気力も湧かないまま朝が来た。
 当然、学校は休むことになった。ベッドに伏せり、目を閉じて考えた。
 いいのかな。
 このままでいいのかな。
 このまま終わっていいのかな──胡桃。
 沈黙と瞑目。内なる問いに答えが訪れるのを待った。どんなにたっても諦念の思いは湧いてこなかった。
 目蓋を上げるのも苦労するくらいの疲労に身を委ねながら、わたしはまだ諦めていなかった。
 両親の留守を狙ってベッドから抜け出し、芋虫のように匍匐前進してキッチンへ向かった。冷蔵庫から
スポーツドリンクのペットボトルを出し、ぬるくなるまで放置してから飲んだ。
 吐いた。構わず飲んだ。また吐いた。それでも飲んだ。
 負けるものか。
 苔となってこびりつく小さな気力が、どうにかカロリーの摂取を可能にした。
 床が汚れるのも構わず、とにかく食べられそうなものを選んではガツガツと貪り、かつ飲んだ。
 負けるものか。
 たとえ手遅れになったしても。わたしは諦めない──!
 気が付けば疲労を感じなくなっていた。
 憎悪がショックを上回ったのか。ほんの数時間で衰弱に陥ったわたしは、それよりも短く、たった一瞬で甦った。
 本当に黄泉の国から帰還を果たした気分だった。それまでが嘘みたいにすっくと立ち上がり、てきぱきと
自分が汚したところを掃除すると浴室へ向かった。シャワーを浴び、丸一日分の汗を熱い湯で流した。
 どんなに浴びても、憎悪ばかりは洗い流せなかった。
 雌狐への恨みは胸奥で沸騰し、お湯よりも熱く滾っていた。
112沃野 Act.15 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/19(水) 20:19:50 ID:YlOi3FAr
どうでもいい話。
キャラクターのネーミングは
洋平胡桃麻耶→「よ」うへい「く」るみま「や」
となることを意識したものだったり。
113名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 20:43:37 ID:pdTLoJzg
やっぱり一番好きな作品だ・・・
114名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 21:06:07 ID:6wIZsqHo
絶望の渕から巻き返し作戦ってのはやっぱり感動的なお話だね
115名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 21:09:44 ID:2GnJJ1CG
胡桃さんいいなあ……
ロリ雌狐に負けるなー
116名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 22:34:12 ID:DZFh2drw
絵を見てから麻耶タン派だが胡桃もやっぱり良いなぁ……
最後には麻耶タンに勝って欲しいがな
117名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 22:35:49 ID:/bV38P5x
麻耶が勝てば、監禁生活ENDか・・
まあ、主人公が本当に大切なのは麻耶だと気付くENDはこのスレじゃあスレ違いになりそうだw
118名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 23:33:51 ID:y+Hxv9DV
よかった。ほんとうによかった。流石に3日間全裸で正座はつらかったです。
麻耶はSSの中の描写ですぐイメージできたけど、胡桃は髪型はなんなんでしょうね?
それさえイメージできれば描けます。
119名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 23:36:07 ID:2GnJJ1CG
全裸で指揮棒振ってた甲斐があったってもんだぜ
胡桃さん最強ー
120名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 00:04:35 ID:K0Eq71NT
>>117
その後に刺されるような展開なのがこのスレじゃないかw
121名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 00:12:10 ID:+DDgTC6g
>>109
胡桃が最高にハイでちょっとワラタ
122義姉 第9回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/20(木) 00:15:39 ID:qbL59uu3
        *        *        *
『モカ』

 ――かかってこない、かかってこない。せっかく今日のお昼教えてあげたのに。
 思わせぶりに言ってるだけじゃわかんないタイプかな。ちゃんと「士郎君の電話番号知らないからそっちからかけてね」って言わないと。
 んー、こっちからグイグイ押していかないと駄目なタイプかな、やっぱり。こっちから電話かけちゃおーっと――って、私まだ表向き士郎君の携帯番号知らないんだった。こんなことなら普通に番号交換しとけばよかったかな。
 もどかしい、もどかしい。足がバタバタ布団を叩く。
「うー、寝よ……」



 いつもより少し早く起きたから、少し早く家を出てみた。早起きするといいことあるもんだね。駅前にて士郎君発見。
「おっはよー!」
 一気に駆け寄り背中を叩く。
「――!」士郎君の全身に電流が走ったかのように跳ねた。
 あれ? そんなに滅茶苦茶強く叩いたつもりないんだけどな。
「あ……あの、おはようございます……」
 声、顔を見てみると、なんだか元気が無い。
「前にも言ったけど、私でよかったらいくらでも悩み事の相談にのるよ」
 頭を撫でてあげながら、よく見ると震えている。悩んでいるっていうより怯えている感じすらする。
 ああ、私よりずっと体大きい筈なのに、なんだか小動物みたい。このままギュッとしちゃたいぐらい。
「――いや、別に人に話すようなことじゃ……」
 昨日の夜に怖い映画でも見たとか?
 後で涼子からそれとなく聞こうかな。


「おは……」
 朝の教室にていつも通り涼子に挨拶しようとしたけど脊髄がそれを止めた。
 オーラが出ている。強烈すぎる苛立ちと不快感をあらわにしたオーラ。
 こういう時は近づいちゃいけない。物心ついた頃から一緒に遊んでいる私の経験上このオーラが見えたら近づかない、話しかけない、話しかけられても無難な相槌ぐらいで済ませる。そうしないと寿命が縮む事になる。
 こうなったら最低でも三時間、最長記録で一週間近くこの状態が続く。
 この前の彼とは結局上手くいかなかったんだろう――相手は知らないけど。
 士郎君の事聞きたいんだけどこの調子だと聞けないな。

123義姉 第9回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/20(木) 00:16:32 ID:qbL59uu3
 昼休みになっても士郎君の調子は相変わらずだった。あんまり話してくれないからちょっと寂しい。
 普通怖い映画みたからここまで怖がるかな? 直後ならまだわかるけど、映画とかならここまで後引かないでしょ普通。
 涼子の八つ当たりの対象になったとか? これは同じ家で過ごしている分その辺の対処法についてはなれてそうな気がするけど。
 士郎君の目が私の腰やら胸やらに来ている。私と目線が会った瞬間慌てて目線を逸らした。
 んー、そういう事か。それならそうとズバーっと、ズバーっとアタックかけて来てくれてもいいのに。ほんと恥ずかしがり屋さん。
 試しにちょっと士郎君との距離を詰めてみる。士郎君は少し離れようとする。
 やっぱり楽しいなこういう反応。

 士郎君のそんな様子は数日続いた。それからしばらくして吹っ切れたというか、なれたというか、開き直ったというか、とにかくよくわからないけど結構調子は戻ってきた。
 自分から私に頼ってこなかったのはちょっと寂しかったけど。
 ちなみに涼子のオーラは引っ込みがつかないまま。むしろ増大している傾向あり。
 よくも悪くも現状維持。
 ――いや、実害はないんだろうけど一つ困ったことがある。
 彼女――士郎君と同じクラスの三沢さん、中庭で時々こっちを見てくる。その目で士郎君は困った表情になる。
 彼女の顔を見ていると何となくわかる。ああいう子は放っておくと胸の奥に色々と溜め込んで腐らせていくタイプ。本当は言いたいことあっても口を噤んでしまうタイプ。
 実際に以前廊下などで私に会った時に何かを言いかけて止めている。
 直ぐにどうこうって訳じゃないけど、士郎君は苦手っぽいし、それとなく避けといた方がいいかな。
「明日から屋上とか行ってみようか」



124義姉 第9回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/20(木) 00:18:05 ID:qbL59uu3
「……あの……いいですか」
 ある日廊下で呼び止められた。
「――士郎とはどういう関係なんですか……」彼女、三沢さんは今にも噴出しそうな色んな物を押さえ込みながら声を出していた。。
 はあ、動き出したか。一応放っておいても直接的な行動には出ないと思ってたけど、ちょっと計算外。
「多分見たままだと思うけど? 少なくともあなたよりは付き合い長いと思うよ。彼の家には何度も泊ったことあるし」別に前もって練習したわけでも考えていた訳でもないが口はすらすらと言葉を並べていた。
 嘘はついてないもんねー。士郎君はこっちに来て間もない頃から知っているし、涼子の家は士郎君の家でもあるからね。
 彼女は顔を俯け、両手をギュッと握り締め息を止め体を小刻みに震わせている。
 ほんと今にも泣き出しそうな顔。どこまでの関係だったかは知らないけど早く忘れて新しい恋でも探した方がいいよ、本当に。まあもうちょっと違う状況なら両者の背中押すぐらいはしてあげてたんだろうけど。
「他に用がないのなら私もう行くけどいい?」
 返事はない。彼女は全身を振るわせたまま黙り込んでいる。
 その沈黙を返事とし私は再び歩き始めた。

 彼女から見えなくなった所で深呼吸。
 わざわざ私の方に聞きに来た、それに「私達は付き合っている」とか言ってこない事から未だ士郎君と上手くいっていないのは確かだ。
 でも何となくあの子無視し辛くなってきたな。士郎君とはもうしばらく程よく生温い感じの友達以上恋人未満の微妙な関係楽しんでいたかったのに。
 私から言っちゃおうか、もう思い切って。本当は向こうから告白してくれるのが一番よかったんだけどなー。

「士郎君の場合『それとなく』じゃ駄目だよね。ダイレクトにいかないと」
 決行は今週末。頭の中でどうやって行こうか作戦をめぐらせていた。
125義姉 第9回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/20(木) 00:19:16 ID:qbL59uu3
<チラシの裏>
何か絶対不義理よりボリューム増えちまうぞこれ。
</チラシの裏>
126名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 00:20:17 ID:SCGEPnKj
(*´Д`)モカさんかわいいよ、モカさん
127名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 00:21:25 ID:slcad9GN
ちょ姉さんの出番が少ない
128名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 00:22:56 ID:CwqwHnaF
ボリューム満点で質(モカたん)もイイ(・∀・)!
129名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 00:27:34 ID:sa4AeTkP
モカたんはこのままいってほしいなぁ
壊れたモカたんだけは見たくないなぁ
今のモカたんが大好きだーーーーーーーーーーーーーー
上手くいってほしい
130名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 00:33:34 ID:6/sxjCJe
新作「義姉」を楽しみに待って頂いているお客様に重大なお知らせがございます。
「義姉」は、「不義理チョコ」のレスによる人気順位に応じて、「姉ちゃん」をヒロインとして来ましたが、
弊社独自の調査方法により改めて調査致しましたところ、人気第1位は「姉ちゃん」ではなく「モカ」であることが判明致しました。
また、従来の可愛がり描写を好まれないアンケート結果も、再調査の結果、可愛がり描写をもっと盛り込んで欲しいという、従来の調査結果を覆す報告があがりました。
このため、急遽方針を転換し、「義姉」は、「モカ」として、より萌に、より可愛がり病者に満ちた物語として再構成することとなりました。
萌に転げまわる夏の日々をお届けできるようスタッフ一同、心を入れ替えて制作を進めてまいりますので、改めての応援をお願い致します。

2006年4月1日
131名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 01:11:13 ID:N0HMueW9
>>130
こ、これは・・・!
何か危険なにおいがする・・・
モカさんから血と嫉妬と鋸の匂いがするよーーーーーーーorz
それはともかく、いつもながら作者様(*^ー゚)b グッジョブ!!
Endの予想つかないけど俺は三沢さん派・・・報われない気がする
132名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 02:19:18 ID:3aGn62aZ
可愛がり病者?
133 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/20(木) 07:03:12 ID:BCUfDXLg
>>118
いかにも重たそうな腰まで伸びたストレートの黒髪で、
イメージとしては耳の先っぽだけ角みたいに出てる感じです。
134名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 08:14:58 ID:0F47wxaI
やべぇマジでモカさんメインになってきたw
135『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/20(木) 13:16:34 ID:GKVSAJkD
ドアが邪気を放っていた。黒い黒いオーラだ。お嬢との行為を終え、一人後片付けをして戻って来たときのことだった。
「こいつぁアブねぇ匂いがプンプンするぜぇ〜」
ドア「………」
「どうしたんだい?ドアの旦那。」
ドア「私は女よ。」
「おっと、そいつはすまねぇ。まぁ、何にしてもそのオーラを消さない事には部屋にはいれねぇんでさ。」
ガチャ
「わ、ばっ!消さないまま開けるとゲームオーバーだ!嗚呼!邪気が体を蝕んでいくぅ!!!」
「………邪気で悪かったわね……」
「なぁーんだ。志穂か。どうしたんだい?こんな時間に?」
もう十二時だってのに俺の部屋に来るなんて珍しい事だ。
「ん……まぁ、……ちょっとね……」
いつになくしおらしい。下を俯いたまま話し続ける。
「ほら……ゲームで負けてお嬢にあんたを独り占めされて悔しかったからさ〜。なんとなく、ね………」
「……あ?あぁ…」
予想外の言葉にちょっと戸惑う。だって…なぁ?
パッと笑顔で顔を上げ、いつもの調子に戻ったように言い放つ。
「あんた、二人っきりだからってお嬢にHな事しなかったでしょーねぇー?」
「へ?……」
冗談で言ったつもりなんだろうけど。
「あんたのスケベ性は生まれつきだからねぇ。」
いつもみたいにおどけてやればいいんだけど。
「まったく、変な心配しちゃったわよ。」
彼女の言った偶然があまりに的確で。
「やった……」
あまりにも重い罪悪感で。
「え?」
自分の意思とは逆に。
「お嬢とHした。」
「ま、またぁ、変な冗談は止めてって。」
「冗談じゃないさ。」
今思い返してみれば、なんでこんなこと言ったんだろう。
「……嘘なんでしょ?」
「嘘じゃない!」
136『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/20(木) 13:17:50 ID:GKVSAJkD
ガッと志穂の肩を掴んで。目を真っ直ぐ合わせて。
「おじょうとせっくすした。」
「は、ははは………嘘……嘘よ……」
志穂の目から生気が抜けていくのがわかる。
「嘘……嘘……嘘……よ…ね……」
そう呟きながら俺の頬を撫でる……くすぐったい。
「私の……晋也……私だけの物なのに……この目も……髪め…口も…全部…全部私のものナノニ!!!」
グッと手を首に掛け、力を込める。ぐ、ぐるじいヨ。志穂……
「なんで?……なんでお嬢なの?………私が……私がいつも一緒にいるのに……ナンデ!?ナンデ!?」

次の瞬間、口を塞がれた……所謂キッスだ。
「わかった……そうよ……お嬢に…あの女に襲われたんでしょ?無理やりやられちゃったんでしょ?
…ふふふ…よごされちゃったのね?あの汚い女に……大丈夫…大丈夫よ…私がきれいに……あの女の匂いが全部落ちるぐらいきれいにしてあげる……ふふふ…あはは
渡さない……私以外の女が晋也に触れるなんて…絶対に有り得ないンダカラァァァァ!!!!…」
嗚呼……ちっくしょ…またレイプかよぅ……
137『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/20(木) 13:18:34 ID:GKVSAJkD
「ん……晋也……んん?……」
目が覚めた。どうやら晋也とやり終わったあと気を失うように眠ってしまったらしい。それとも……夢だったのだろうか。
「痛っ……」
股間に痛みがある。やっぱり夢じゃなかった。うれしい痛みだ。
良く見るとしっかりと服を着ていた。………晋也が着せてくれたのだろうか。その光景を想像するだけで顔がまた熱くなってしまった。
「ふふふ……ついに…ついに晋也と………」
長い間待ち続けていた愛しい人と結ばれる事ができた。後にも先にもこれ以上の幸福は無いだろう。
ハァ……
溜め息ばかり付いてしまう。まったく、長い間生きてきた私が、初めて恋と言うものを知った少女同然ではないか。
ハァ……
また溜め息。
もうこれで晋也は私のものだ。他の女に目をくれるだなんて有り得ない事だ。
志穂と里緒をさっさとこの屋敷から追い出し、晋也と二人永遠に幸せな日々を送ろう。
「……寒い…」
さすがに冬となると、体の芯から寒くなる。
「……そうだ」
こういう時こそ晋也に暖めてもらおう。
互いに抱き締めながら暖めあって、同じ部屋で朝を迎えるんだ。
「えへへ……」
その様子を思い浮かべただけで、柄にも無い笑顔がこぼれてしまう。
「思い立ったら即実行。」
ベットから降り、カーディガンを羽織い、幸せ一杯のまま晋也の部屋へ向かった……
138名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 13:42:47 ID:N0HMueW9
晋也逃げてー(;つД`)
それにしても3人ともツボをしっかりおさえたところを突くものだから
たまらん(*∀*)ウヒョー
探し萌えはここにあるよ
139名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 17:08:08 ID:lmzPyLGf
>>131
同志よ、密かに俺も三沢さん派だ。
ぜひとも彼女には幸せになってほしい。

>>135
こいつはくせぇ〜〜!!
DEADのにおいがプンプンするぜ〜!!
140名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 19:29:41 ID:15lvL5rw
晋也って意外とチャレンジャーだな。もう3度目だろうに。
141名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 19:33:48 ID:6/sxjCJe
>>140
二度も死んだから結構なれてしまったんだろww
142リボンの剣士 2話 ◆YH6IINt2zM :2006/04/20(木) 21:48:02 ID:soFK8rrJ
変化のない毎日を過ごしているつもりでも、その日を色づけるような、ちょっとだけ違う出来事っていうのは
、ある。今日もそうだった。
「ここ、座ってもいいかな?」
昼休み、あたしと人志が学食で向かい合って座っているとき、一人の女子がこっちにやってきた。
同じクラスの木場さんだ。
「何者だ?」
人志は、まるで侵入者にでも会ったかのように、剣呑に言い放った。
あんたねぇ、クラスメートに向かって、何者だ、はないでしょ、何者だ、は。
「同じクラスの木場春奈だよ〜。知らないっけ?」
木場さんは困りながらも笑って言う。でも人志は目も合わせない。
「知らぬ」
先生、こいつ殴っていいですか?竹刀で。
そう思ったときには、勝手に体が動いていた。愛用の竹刀が風を切る。人志の脳天を完璧に捉えた。
バシッ! とね。
「あべし」
人志は意味不明な言葉を吐いて椅子から転げ落ちる。
「ごめんね木場さん。今すぐこいつ片付けるから」
倒れている人志を竹刀の先でぐりぐりしてやると、人志はすぐに復活した。
「食堂で竹刀を振り回すな。非常識な奴め」
「あんたの態度のほうが非常識でしょ!!」
まったく、もう! そんなんだから余計に悪い噂が立つのよ! 
別に人志の人気なんかあたしには関係ないけどっ!
「えーと、それで、ここ、座っても、いい……かなあ?」
人志の胸ぐらつかんで、もう二、三発殴ってや……って、ここ人前だった。木場さんがすんごい困った顔でお
ずおずと尋ねてくる。
「あ、どうぞどうぞ」
あたしは人志を放し、自分の席のトレーを少し引いた。あたしと人志は今二人がけの席に座ってるんだけど、
側面に椅子を置けば、もう一人入れないこともない。
「それじゃあ、お邪魔するね」
木場さんが座ると、甘い匂いが漂ってきた。香水、付けてるのね。

この木場さん、どこかのアイドルかと思うくらいかわいい人で、今のように、ニコニコ明るくて、……胸も羨
ましいくらい大きくて……男子の間では、たぶん一番人気。
でも―――――。
あたしの友達周りでは、彼女を嫌っている人が多い。何でも「キャラ狙いすぎ」「男に媚びて点数稼ぎしてい
る」っていう話。あたしは別に気にしてなかった。あんまり関わったこともないし。
だから、木場さんに席を分けたのも、単にクラスメートが座る場所を探して困ってたから、というのが大半だ
けど、木場さんは本当はどんな人なの? っていう興味も、少しあった。
「伊星くん、牛丼が好きなんだね〜」
木場さんは早速人志に話しかける。人志のメニューは例によって同じ。
「まあな」
「春奈もね、牛丼好きなんだよ〜」
ガタッ!!
「……どうした明日香。地震か?」
「ううん、気のせいだったみたい」
思わず椅子ごと引いてしまった体を、ゆっくりと戻す。
このヒト、一人称が名前なの!?
「あ、ねえ伊星くん、このゼリー食べない?」
あたしの驚きもよそに、木場さんは自分のトレーからデザートのゼリーを差し出した。
「春奈、ニンジンゼリー苦手なのぉ〜」
もう片方の手を軽く握って口元に当て、上目遣いで人志を見つめてる。
えええぇぇぇええぇっっ!? 何それ? 何そのポーズは!?
「ありがたく頂戴する」
人志はゼリーを両手で受け取り、箸で食べ始めた。
もうね、なんていうか、どこから突っ込めばいいのよ!?
あたしが途方に暮れているうちに、マイペースな二人は昼食をとり終えた。
「ご馳走様でした」
「ごちそうさまぁ〜」
「……ごちそうさま」
あたしのほうはまだ残ってるけど、もう食欲なくなったわ。
143リボンの剣士 2話 ◆YH6IINt2zM :2006/04/20(木) 21:49:10 ID:soFK8rrJ
あたしたち三人同時に席を立ち、食器の片付けに行く。空いた席は、すぐ人が入って埋められた。
「ホント食堂って込んでるよね〜。そうだ。伊星くん、また混んでたときは、ご一緒していい?」
また人志に話しかけてる。そういえば、木場さんは食べ始めてから、一回もあたしには話しかけてこない。
「ん……ああ、まあ、いいけど」
「ホント!? わぁーいありがとう!! 春奈嬉しいっ!!」
あ、頭痛くなってきたわ。何なのこの人、わざと? それとも天然?
「それじゃあ伊星くん、新城さん、バイバーイ!」
教育番組のお姉さんみたいに、木場さんは両手を振ってから食堂を出た。あたしと人志はその場に残る。
まさに、置いて行かれた気分。
あたしの友達が嫌う理由も、少しわかった気がする。
「すごい人だったね」
あたしはそれしか言えない。
「そうだったな。ただ……」
「ただ?」
「一人称が名前なのは、やや戴けない」
「あはは、そうなの?」
人志でも、そこは変だと思ったんだ。
「どうせやるなら、春奈ぴょんとか、HA・RU・NAとか、そのくらい突き抜けてほしかった」
そんなこと言う人志は、もっと変だと思う。そんな一人称で来られたら、あたし気絶しちゃうわよ。
「にしたって人志、せっかく声掛けられたのに、あんな突っぱね方はないでしょ」
「そう、か……?」
「そうよっ!!」
竹刀でぺしぺし叩いてやった。
人志は、実は結構人見知りする。昔はそうじゃなかったんだけど……。人志の両親が離婚したときから、そう
なったような気がする。
あたしと人志が八歳の時、人志の両親は、突然離婚した。突然といっても、あたしがそれまで知らなかっただ
けで、以前から、親権とか、慰謝料とかの裁判はやってたみたい。
それで人志は、お母さんのほうに引き取られた。家はそのまま、お父さんが出て行く、という形で収まったん
だけど、後日談ということで、あたしが聞いたところだと、人志のお父さん、出て行き際に人志をつかまえて
、こう言ったらしい。
『お前のせいだ。お前がいるせいで、俺はとんでもない額の慰謝料と養育費を払う羽目になったんだ。その金
のために、実家とも縁を切られた。
お前のせいで、俺の人生滅茶苦茶だ!!』
その日、人志は一日中泣いてた。あたしが何を言っても、顔を覆って首を振るだけだった。
たぶん……たぶんだけど、人志は両親のこと、嫌ってるんじゃないかな。一番身近な家族を嫌うようになって
、そのまま人見知りになって、それで人が寄り付かなくなって、寂しくなって、奇行に走る…………。
さすがにそれは考え過ぎ?

「ふぁ〜あ…」
ついあくびが出ちゃった。朝錬と午前の体育で、疲れたのかな。
人志と教室に戻って席に着くと、さらに眠気がひどくなった。
あ〜、こりゃ、ダメだわ……。五時間目は、ノートは人志に任せて、寝よ……。

(三話に続く)
144名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 22:58:53 ID:6icA/jJ1
続きに期待
145名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 23:29:38 ID:QcKIZOPy
対抗馬・・・・なのかな?
この手合いはあまり男に執着しなさそうな感じなんだけど・・・
主人公の手腕でそれが一気にサイ娘へ変わってしまうのか?w
146名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 01:09:17 ID:KrTR2y47
>>141
彼、そんなに悪い人じゃないよね
周りの人が危ない人ばかり
147名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 04:41:51 ID:SjsFY7zj
サイ娘ガンダム
148『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/21(金) 13:22:36 ID:FnpxgNwz
「これね……あの女に汚されたのは…」
そう言ってズボンのファスナーを開け、一物を取り出す。まだ興奮覚め遣らぬソレは半勃ち状態にあった。
「ふふふ……かわいそう……私の物なのに。ンチュ…あの女に使われたなんて信じられないわ……チュッ」
亀頭にキスの雨を降らす。それに反応するようにまたむくむくと大きくなり始める。
「あは、大きくなった……んふ……」
再起したナニを咥え始める。……口が浅いせいか、自分のが大きいせいか、先っぽまでしか入らない。自称チャームポイントの大きめの八重歯が当たってむず痒い。
「ん、んく…ぷぁ……ふふふ…じゃあいくわよ…」
少し舐めた後、馬乗りになって腰を降ろしていく。
ズズズズズ
……また血が出てる。膜まで再生するとは…細かいなぁ、お嬢。
ンナ事考えていると……
ガッ
また思い切り首を締められる。さっきより力が強い。
「また、考えてた……私以外の女のことをぉ!」
な、ナンデわかったんだヨ!首と下半身による気持苦しい(気持ちいい+苦しいの略。俺語)感覚が波状的に俺を襲う。あ、新たな境地だ。
「ふ、ふぁ…あぁ…き、気持ちいい?」
苦しみながらも聞いてくる。男の俺でも破瓜の痛みはなんとなくわかる。我慢しているのだろう。
「もっと…ん…もっと私で…私だけで気持ちよくなって。他の女なんか…あ…考えられなくなる…うぁ…くらいに…」
痛いながらも懸命な姿は感銘ものです。
が、
悪魔はいつも側にいる。
ガチャ
149『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/21(金) 13:23:34 ID:FnpxgNwz
いやいやガチャなんて硬い音はHには存在しな…
「晋也!一緒に……え?……」
「お、じょ…」
…お嬢が。部屋にきた……ナンデ!?
「うぁ!」
と、その瞬間、驚きとともに射精に達してしまった……しかも思い切り膣へ……
ドクンドクン!
「あ、あぁぁ……中に…なかにでてるぅ……」
志穂の体も二、三度震える。そこまでの行為を、お嬢はただ目を見開いて見ているだけだった。
一通りだし終わった後、志穂がお嬢を見ながら言い放つ。
「ふふふ……見たでしょ?晋也は私のなかにだしたの……しかも今日は危険日……こんなにたくさん、濃い精液出されちゃったら…絶対妊娠しちゃうわね…あはは…うれしい……
どうせあなたは外に出されたんでしょう?ふふふ…それがあなたと私の違いなのよ。
だから、もう二度と『私』の晋也に近付かないで……あっははは……そうねぇ……すぐに二人で屋敷をでていきましょ……ね、アナタ…ん…」
そう言って俺にキスをする。お嬢はそれを見ながら…泣いていた。ただ、その目には確かに怒りが込められていた。今までに無い怒りが……
「許さない……絶対に許さない!!!」
そう叫び志穂に走りより……
パン!
はじけるような音……強烈なビンタが炸裂した。
(あわわわわわわ)
こういう時って本当に男は動けない。
「あなたには…地獄を見せてあげるわ…死ぬよりつらい、地獄をねぇ!!!」
そう言い残して、部屋から走り去ってしまった。
「あ、お嬢!」
後を追いかけようと(半裸だけどネ)立ち上がろうとしたが、志穂に伏し倒され……
「いかないで!!!私が…私がいるじゃない!」
まるで蛇のように体を絡ませて来る。
「ね?…ほら、あの負け犬にはたかれたところ、こんなに腫れちゃった……だから、晋也が治して……優しく、優しく治して……
負け犬は負け犬らしく、ほおっておけばいいのよ…あはは…野良犬に食べられちゃえばいいのにね……」
こ、こえぇ
もうまるっきり別人ですヨ!
150名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 14:58:05 ID:+z/bl+ce
今回は晋也が死ななくてすみそうか?
…いやデッドエンドなのは変わらなそうだが
151名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 15:32:12 ID:fgiCpByj
相変わらずこの修羅場ハーレムは素晴らしいなぁ(*´Д`)ハァハァ
152名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 18:57:30 ID:De4pQKBY
ってか、みんなで仲良くしようという女はいないのか?
153名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 19:09:32 ID:SwpqbLlc
「みんな仲良くすればいーじゃん」
提案するのはエロゲでも何でも大概男。
それで「そんな都合のいいことが通ると思ってんの!?」
憤慨するのが女。
そこでハーレムルートに行けるか虐殺ルートに行くかは男の手腕次第。
154名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 19:26:39 ID:3ULfAnkG
>>152
そんなよいこちゃんな意見を言っている間に全部掻っ攫われるからさ。
自分の遺伝子を残し、人の遺伝子は残させない
男の獲得はまさに生存競争なのだよ!

155名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 20:19:22 ID:lr+cwQ12
修羅場こそ全て。
女性たちが持てる力をフルに使って戦ってこその美しさ
それを楽しむのが大人の嗜みというものです
まぁ当事者だと死ぬ可能性が高いですが((;゚Д゚)ガクガクブルブル
ともあれ作者様GJ!依存属性志穂タン(*´д`*)ハァハァ
156名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 21:42:28 ID:4aMGq828
死亡フラグが立ちまくってるスレはここですか?
157名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 22:34:23 ID:oBjSoFJc
>>156
否。死亡フラグではなく修羅場フラグだ。
ただ…………結果として死ぬだけで。
158振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/21(金) 23:12:15 ID:+Q3hQkIu
 その日の朝もわたしはお姉ちゃんよりも一足先に家を出た。 そう、それは最早わたしにとって新しい日課になりつつあった。 当初お姉ちゃんや家族に不思議がられたが理由は幾らでも創れる。 人ごみを避けたいから、朝の静寂の中で読書を楽しみたいから……。
 勿論本当の理由は誰にも言ってない。

「おはよう結季。 随分と早ぇのな」
「しょ、祥おにいちゃん?! な、何でこんな時間にいるの?!」
 わたしは驚きのあまり声を上げた。
「いや、まぁ何つうか珍しく早く目が覚めてな。 早起きってのもたまには悪くないものだな。 じゃ、行くか」
 そう言って祥おにいちゃんは私の手を引き歩こうとした。
「ちょ、チョット待ってよ……」
「ん、なんだ? まぁ時間ならタップリあるけどよ」
 戸惑いを隠せないわたしとは逆に祥おにいちゃんは微笑を湛えながら私に語りかけてくる。
「お姉ちゃんはどうするの?」
「羽津姉? ココ最近いつも一緒なんだし、たまには良いだろ」
「ちょ、ちょっと?! 何よそれ。 祥おにいちゃんのお姉ちゃんに対する気持ってそんなものなの?!」
「……俺の気持?」
 そう言った祥おにいちゃんの顔から先ほどまでの微笑みが消えた。 そしてその声はどこか険しく、と同時に寂しげにも聞こえた。
「お前がそれを聞くのか……? 結季」
「…………」
 祥おにいちゃんの其の言葉に私は何も答えられなかった。
 わたしが黙りこくっていると祥おにいちゃんは申し訳無さそうに口を開いた。
「悪りぃ、別にお前を困らせるようなつもりなんかなかったんだ。 その、スマン……」
「い、いいの。 わたしのほうこそ変な事言っちゃってゴメン……。 そ、そのわたしもう行くから祥おにいちゃんはお姉ちゃんと……」
 言いかけたわたしの頭を祥おにいちゃんはそっと撫でてくれた。 
「ああ、羽津姉を待って一緒に行くよ」
 そう言った祥おにいちゃんの笑顔は優しく穏やかで、でもどこか寂しげだった。
 そしてわたしは手を振る祥おにいちゃんに見送られ先に学校へと向かった。 どこか後ろ髪引かれる想いを引き摺りながら……

159振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/21(金) 23:13:11 ID:+Q3hQkIu

   ・    ・    ・    ・   


「俺の気持……か。 分かりきった事聞くなよ……結季」
 そう、今でも俺の気持は結季の方を向いている。 それが何故今羽津姉と付き合っているのか。
 羽津姉が俺への想いを諦めない限り結希は俺を受け入れてくれない。
 だったら、どうしたら羽津姉は俺を諦める?
 思案を重ねた結果一つの結論に達した。 それは……


 暫らく俺は時計と睨めっこしたり適当にその辺をぶらついて時間を潰した。 さっさと学校へ向かっても良かったんだが結季に言っちまったからな。 羽津姉を待ってから一緒に行くって。

「もうそろそろかな」
 そして後ろを振り向くと丁度羽津姉の姿が目に飛び込んで来る。 俺と目線の会った羽津姉は嬉しそうに駆け寄ってきた。 其の顔に満面の笑みを湛えて。
「おっはよ〜祥ちゃん」
「おはよう。 羽津姉」
「ねぇ、祥ちゃん何か良い事でもあった?」
「え? いや、別に」
 羽津姉の其の言葉にドキッとした。 若し良い事があったとすれば、それは久しぶりに朝に結季と話せた事だろう。 だがそんな事言えるわけが無い。
「そうだな。 若しかしたら天気が良いからかもな」
「そうね。 今朝もいい天気ね。 何にしても祥ちゃんがご機嫌なら私も嬉しいよ」
 そう言って羽津姉はにっこり微笑み、其の笑顔をより一層輝かせる。
 其の笑顔に胸が痛む。 俺の思惑なんか知らず疑いの無い只真っ直ぐな笑顔。
 それは俺には眩しすぎた。 それは本来恵の光である太陽が、光指さぬ暗闇に生きる生物には苦痛を感じさせるのと似たような感覚だったのかもしれない。
 だがそうした気持は表に出してはいけない。
160振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/21(金) 23:14:13 ID:+Q3hQkIu


   ・    ・    ・    ・   


「ねぇねぇ祥ちゃん。 今度の日曜日開いている?」
 帰り道、私は祥ちゃんに尋ねた。
「日曜? まぁ、今のところ予定は無いけど。 なんで?」
「なんで、って……。 もう!それぐらい察してよ。 デートの誘いに決まってるじゃない!」
 もう、祥ちゃんってばこんなに鈍かったっけ?
「ああ、ハイ。 デートね」
「何よその気の無い返事」
「あ、いや、そんな気の無いなんてそんな事無いよ。 で、どこか行きたいところでもあるの?」
 私が不満を洩らすと祥ちゃんは取り繕い問い返してくる。
「うん。 あのね、見たい映画あるんだ」
「映画、ねぇ……」
「大丈夫よ。 きっと祥ちゃんも気に入ると思うから」
 コレは自信がある。 付き合い長いんだから映画の好みとか十分知ってる。 こういう時って幼馴染は得よね。
「いや、そうじゃなくって今月チョット金欠気味なんだ」
「なんだ、そんな事気にしてるの? 大丈夫よそれぐらい私が出してあげるから」
 まぁ、二人分の出費が全く痛くないかと言えばそうでもないけど。 でも祥ちゃんとのデートと思えば安いものよ。
「い、いいよ……って言うか以前は『姉弟』みたいな感じだったからおごってもらうのも抵抗無かったけど、カノジョにおごってもらう男なんてカッコ悪いじゃん」
 姉におごってもらうのは良くてカノジョは駄目、ねぇ。 まぁ少し尺前しないけど、でもカノジョって言ってもらえてチョット嬉しかったり。
「へぇー。 祥ちゃんもそう言うの気にするんだ。 じゃぁお金のかからない所で良いからさ、どう?」
「金のかからない所って?」
「そうね。 例えば公園とか?」
「なんか年寄りくさいな。 羽津姉はそれで良いの?」
 そりゃ本当はさっき言った映画が良かったんだけど、しつこく言って嫌な顔されたくないしね。
「私は祥ちゃんと一緒ならどこだって楽しいよ。 それにあの公園大きな池もあるし花だって一杯咲いてるじゃん?」
161振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/21(金) 23:15:26 ID:+Q3hQkIu



 そして当日――日曜日の朝。
「よーし、もう直ぐ完成」
 今日は日曜日。 待ちに待ったデートの日。 私は持っていくお弁当の盛り付けにいそしんでいた。 お昼のことを考えなが盛り付けてると楽しくて仕方が無かった。
「お姉ちゃん、そろそろ行かないと遅れるんじゃないの?」
 私は結季の声に視線を時計に移す。
「え? ウソ、もうこんな時間?! どうしよう」
「お姉ちゃん。 お弁当あとは詰めて盛り付けるだけよね?」
「う、うん」
「じゃぁ、仕上はわたしがやっておくからお姉ちゃんは出かける準備して」
「そう。 ありがとう、じゃぁお願い、任せたわ」
 そして私は台所を後にして部屋に駆け込む。 そして大急ぎで支度を済ませる。
 支度を済ませ部屋から出ると玄関では結季がお弁当一式を持って待っててくれてた。
「ハイおねえちゃんお弁当。 あとお箸とお絞り。 それと魔法瓶にお茶入れといたから」
「ありがと〜結季! やっぱ持つべきものは妹ね! お陰でギリギリ間に合いそう。 じゃぁ行ってくるわね」
「いってらっしゃい。 祥おにいちゃんと楽しんできてね」
 そして私は結季に見送られ待ち合わせの場所へと向かった。

 私は走った。 待ち合わせの場所――公園の入口に辿り着くと祥ちゃんは居た。
「お、お待たせ……、祥ちゃん。 待った?」
 私は肩で息をしながら祥ちゃんに話し掛ける。
「大丈夫、殆ど待ち合わせ時間ピッタリだし」
「そ? 良かった〜」
 私は祥ちゃんの返事を聞き安堵の息を洩らす。
「で、何でこんな時間ギリギリなわけ?」
「お、お弁当の支度してたら時間かかっちゃって……」
「そんな無理しなくても弁当なんかそこら辺の店で買ったって」
「駄目よそんなの! 折角のデートなんだから」
 そうよ。 折角のデートなのにそんな買ってきたお弁当なんて。
「ま、羽津姉がそういうのなら。 じゃ、行こうか」
 そう言って祥ちゃんは歩き出そうとした。
「ちょ、ちょっと待って……。 は、走ってきたから少し休ませて……」
「ああ、悪りぃ。 じゃ、少し休んだら行こうか」
162振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/21(金) 23:16:21 ID:+Q3hQkIu

 そして私達は園内に入って見て回った。 今日は朝から雲ひとつ無く澄み渡って快晴。 こんなにいい天気になってくれて、結果的に見れば今日のデート公園にして良かったな、うん。
 咲き誇る花々、公園の中央に位置する池で羽根を休める水鳥たち。 もとから見所の多い公園であったけど今日はそれらがより一層輝いて見えた。 好きなヒトと一緒に回る。 ただ、それだけで幸せだった。

 一通り見終わった頃、私達は昼食をとることにした。
「いただきま〜す」
「ハイ、どうぞ召し上がれ。 どう、美味しい?」
「ああ、美味いよ。 にしても羽津姉も随分と腕を上げたな」
「えへへ、ありがとう。 そう言ってくれると私も作った甲斐が会って嬉しいよ」
 こういう言葉もらえるとやっぱり感無量。
「今日も結季に手伝ってもらったのか?」
「それがね、なんと今回は殆ど私一人で作ったの!」
 私は自信を持って胸をはって応えた。
「マジ?」
「マジも大マジ! 最後の方で時間がなくなっちゃって詰めるのと盛り付けは手伝ってもらったけど、それ以外は全部私一人でやったのよ」
「へぇ、頑張ったんだな」
「ありがとう。 コレも結季のお陰ね」
 そう、いつも結季が手伝って、教えてくれなければ私はここまで作れるようにはなれなかった。
「結季には本当に感謝している。 やっぱり持つべきものは可愛い妹よね」
「やっぱ仲良いよな、羽津姉と結季。 ところで結季には浮いた話とか無いの?
「う〜ん。 そう言えば全然聞かないわね。 あのコ折角可愛いのに対人関係苦手だからね。 私達以外と話してるのあまり見たことないし」
「そうか……」
「あのコにも早く良いヒトが出来れば良いんだけどね」
「でも誰でもい良いってわけじゃないだろ?」
「当然よ。 大事な妹だもの。 私の眼鏡に適うヒトじゃないと」
「で、ちなみにどんなヤツならOKなわけ? 例えば」
「例えば? う〜ん、そうね〜」
「例えば俺みたいな、とか?」
「あ、それ良いわね。 祥ちゃんが若しもう一人居たら是非結季の彼氏になって欲しいな」
「俺がもう一人って……。 んな……」
「あら、世界には良く似たヒトが三人はいるって言うじゃない。 きっと祥ちゃんみたいなヒトも他にいるはずよ」


 お昼ご飯を食べ終わるとこの後どうしようかと言う話になる。 見所が多いとは言えそれでもそれだけで一日を潰せると言うほどじゃないからね。 実際お昼ご飯の前に殆ど見て回っちゃったし。
「ねぇ、この後どうするの?」
「ああ、それなら」
 そう言って祥ちゃんはバッグに手を突っ込む。
「なになに? スケッチブック?」
 バッグから出てきたもの。 それはあまり大きくない小振りの一冊のスケッチブックと色鉛筆のセットだった。
「ああ、どうせ見て回るだけじゃ直ぐやる事無くなりそうかと思って持ってきた」
「そう言えばココ最近祥ちゃんの描いた絵って見たこと無かったわね うん、良いじゃん。 私も久しぶりに見たいし」
「ああ、まぁあんま期待しないでくれよ? それより羽津姉はどうする?」
「私? 私は隣で祥ちゃんが描いてるところを見てる」
 そうして祥ちゃんは暫らく私とお喋りなどしながらスケッチに興じてた。 だけど筆が進むにつれ祥の口数が減っていく。

「それでね、祥ちゃん」
「…………」
「ねぇ、祥ちゃん?」
「……ん? 何?」
「『何?』じゃないわよ。 私の話聞いてた?」
「悪りぃ、聞いてなかった。 って言うか少し黙っててもらえる? 折角だから絵に集中したいんだけど」
「あ……こ、こっちこそゴメンね。 じゃぁ私静かにしてるから」
 返事は無かった。 既に祥ちゃんはまた絵を描くのに没頭し始めていた。 其の横で並んで座る私は思わす溜息をこぼす。
 絵に没頭するのも良いけど折角なんだからもう少し私に構ってほしいなぁ……。
 いけないいけない、そんなネガティブに考えちゃ。
 気を取り直してスケッチブックに向かう祥ちゃんの真剣な横顔に視線を向ける。 祥ちゃんを見てると私の顔も自然とほころんでくる。
 祥ちゃんと二人っきりでいられる。 祥ちゃんの隣にいられる。 祥ちゃんの側で横顔を眺めていられる。 十分だった。 それだけで私は十分幸せな気持になれた。
 結局その日は陽が傾くまで祥ちゃんは絵を描くのに没頭し、私は隣で飽きる事無く其の様子を眺めてたのだった。
163 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/21(金) 23:18:41 ID:+Q3hQkIu
今回ココまでです

丁度今関東で地震キター
164名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 23:35:15 ID:oBjSoFJc
ゆう君程とは言わないが何つうか祥ちゃんもクズっぽいなぁ
165 ◆M1igzo3EW. :2006/04/21(金) 23:41:33 ID:1XvIj8Ql
前スレでノベルの続きを手がけてくれた方がいましたので、かなり間接的に支援。
ttp://mata-ri.tk/up1/src/1M1752.zip.html
テキストをNS用に編集するのを支援するツールです。(セリフの括弧前に名前用の括弧をつけるのとか)
使い勝手とかはお察しください。
また、リードミにもありますがVBのランタイムが必要になります。

一緒に『姉貴と恋人』の姉の名前を仮のままにしてたのを修正しときましたorz
最後の最後まで名前公開されないんだもん。
166名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 23:42:19 ID:NG7B7eQq
妹も姉も健気だなあ
167名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 23:59:43 ID:KEkmfjUS
>>164
ゆう君(下半身最強、相手の好意を利用し手玉にとる、ヘタレ鬼畜)と士郎(逃げる、先延ばし、正統派ヘタレ)
に並ぶかどうか楽しみで仕方ない自分がいるwww
168名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 00:26:47 ID:6MRaU4+L
羽津姉派の俺にとっては既に祥ちゃんはゆう君以上の屑野郎。

羽津姉かわいいよ羽津姉

>165
前とパス同じとはいえスレ変わったし一応書いておいた方がいいのでは?
169もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/22(土) 01:55:20 ID:EaXK+D/6

初デートはどこにしようかしら?
公園?遊園地?映画館?純也くんはサッカー選手だからサッカー観戦何てのもいいわね。
今が授業中であることも忘れて、不健全な妄想が次から次に沸き上がってくる。
今朝の一件以来純也くんのことで頭がいっぱいだ。
でもホントこういう時だけ耳が聞こえないと便利。
余計な雑音がないぶん自分の世界に入って行けるから。
ひとまず、初デートは公園がいいなぁ。
お昼ご飯は私がお弁当作っておいて………。

妄想はどんどんエスカレートしていき、授業が全て終わるころには、妄想の中で出産までしていた。
ちなみに男の子。わたしは女の子のほうがよかったのに……。

ホームルームも終わり帰り支度を整え、教室を出ていく。
先生の冷たい視線が少し気になったが、まぁいいや気にしない。
悪いが今日は純也くんの練習を見に行かなきゃならないのだ。
先生との会話で時間をさくことはできない。
夕日で赤く染まる校舎の中をグラウンドに向けて歩いていく。
そろそろグラウンドではサッカーの練習が始まるはずだ。

たしか今日は紅白戦だったわね。
純也くんのプレーしている姿を想像して思わず顔がにやけてしまう。
多くのメディアは純也くんを"妖精"と例えている。確かに"妖精"とはよく言ったもので、彼のプレーにはまるで本当の妖精のダンスのように人を惹き付ける何かがある。
170もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/22(土) 02:12:40 ID:EaXK+D/6

そして、ブラジルの目が大きくて出っ歯な曲芸使とは違いどこか貴族のような上品さも持ちあわせていた。
しかし私を惹き付けたのは、純也くんの妖精のようなプレーでも貴族のような上品さでもなく、むしろサッカーをしている時の彼の表情だった。


サッカーをしている時の子供のように純粋な笑顔。
その笑顔はサッカーの楽しさを私にも教えてくれた。
もしかしたら、妖精のあだ名は子供のように純粋にサッカーの楽しさを享受するあの笑顔から来ているのかもしれない。

そして子供の頃から常に"障害者の物差し"ではかられていた私にとっては、その笑顔は暖かい毛布のようにも思えた。
障害者という事に少なからずコンプレックスを感じていた私は、純也くんの笑顔にひとつの光明を見い出したのだ。

彼なら私のコンプレックスの源である"障害者の物差し"をとっぱらって私を見てくれるのではないだろうか?

その考えは県大会決勝でピッチをステージに変えて楽しそうに踊る純也くんを見た時、確信へと変わった。
間違いない。この人なら障害者としてではなく、一人の人間として私を見てくれる。
特に確証があるわけではなかった。ただの直感である。しかしその直感は確実に私をとらえ、私を変化させた。

純也くんは神様が私の耳の代わりにくれたんだ。

この日から、世界に男は純也くん一人になった。
だから、純也くんだけは絶対に譲れない。純也くんは………私のモノだ。

171名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 19:16:56 ID:hjfujMLu
修羅場初心者なオレに教えてくれ!
円香ちゃんってpsy娘さんですか?それともこの程度はまだグリーンゾーン?
172名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 19:45:32 ID:HAbRQCnV
>>171
多くのヒロインは最初はまともで嫉妬してから覚醒。
円香ちゃんは開始当初からレッドゾーン。
173名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 19:49:28 ID:DwO0vWev
円香のコレまでの罪状って
殺人、暴行、住居不法侵入、窃盗、証拠写真捏造など
十分psy娘だろ
174名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 19:57:04 ID:JxX85ad6
>>173
つーか最初の殺人の理由がラブレター出したからだけだぞ。
修羅場スレでもこれ一つでメーター振り切れるレベルだ。


某氏は退院なされたようだが、やっぱり刺されて入院されたのだろうか
175名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 20:04:39 ID:HAbRQCnV
>>174
>退院
やっぱこのスレだとそう考えるかwww
とりあえず更新してあったから大丈夫だと思うが
176沃野 Act.16 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/22(土) 20:41:38 ID:33QBDV7o
 ──あとは簡単だった。
 侵入経路を確保してこちらから隣家へ攻め込む案もあったけど、幸い洋平の方から足を踏み入れてくれた。
 「眼」の力で事前に察知していたわたしは手錠を持って待ち構え、入ってきた洋平の虚を衝きすかさず捕獲。
ほんのちょっぴりだけお仕置きを加えて抵抗の意志を奪い、万全整ったところで彼に純潔を捧げた。
 結果としてはこっちから襲う形になってしまったが些細な問題だろう。紛うことなく、純潔は純潔なのだ。
 わたしの体を知ってくれた以上、もう洋平が骨と皮ばかりの貧弱な子狐に欲情することはないと思う。
 かと言って安心もできない。荒木麻耶は「二日間の退場」を約束しておきながら、図ったようにわたしが
失敗した直後に洋平と接触した。嘘つきと詰るつもりはない。もともと守られる見込みの薄い約束と睨んでいた。
むしろよくギリギリまで静観していられたものだと思う。
 気に掛かるのはタイミングの良さだ。なぜああも洋平に付け入る隙ができたときに限って動いたのか。
 あの夜は興奮剤の効果が持続して、ロリコンでもない限り食指の働かないあんな子にも洋平は勃起してしまった。
チャンスとしては絶好だろうけれど、それを狙って仕組むのは難しい。わたしが梓から興奮剤を受け取ったという
情報をキャッチしてから計画を立てたとも思えない。
 となれば。
 最初から梓とあの子がグルだったとか──?
 まさか。
 ありえない。
 自分で出した「驚愕の真相」の説得力のなさに噴き出してしまった。
 とにかく、洋平は今やこっちのもの。後は警戒を怠らないようにすればいいだけ。
 なに、わたしには「眼」がある。一時は呪いにも思えた力だけど、やっぱりわたしには掛け替えのないものだ。
 雌狐が余計な真似をしそうになってもすぐ察知できる、即座に叩き潰せばいい。
 そう思ってようやく安心を得て洋平との将来に思いを馳せた矢先の、電話。
 洋平は幾分か慌てた様子で部屋を出て、階段を下りる。そのまま玄関へ。
 なに? 外へ出るの? 貧弱狐は「待っています」とか言っていたけど、どこかで落ち合う気なの?
 わたしも慌てて外へ出る。
「待っ……!」
 制止の声を掛けようとしたけど、洋平は自転車に乗って遠ざかるところだった。
 しまった──わたしは自転車を持っていない。
 不幸中の幸いで体力には自信がある。少し遅れるだろうけど、走って追いつく自信はあった。どこで
落ち合うかは聞かなかったけど、荒木麻耶がいた場所は二キロ先。待ち合わせもその近くに違いない。
 すぐにでも飛び出したかった。が、時間は十時近く。辺りはもう暗い。このへんは街灯も少ないし、
懐中電灯を持って行った方がいい。
 そう思って一旦家に戻った。ばたばたと荷物を漁る。
 二分後に出た。懐中電灯はやめにして、代わりに弓を持った。肩には矢筒を回している。
 あはは……慌ててたから忘れそうになったけど、わたしには何よりも心強い「眼」があるんだ。これなら
透視機能どころか暗視機能もあるし、わざわざ懐中電灯を持ち出す必要もない。定期的に周辺走査して
おけば、ばったり誰かと出くわすこともなく人目を避けて移動できる。
 そして肉眼でふたりを捉えたら矢を放つ。暗中の弓射も、実は秘密の特技。「眼」を開けておけば、
本来の目を閉じて射たとしても正鵠に中てられる。
 ふふ、最初は威嚇射撃にしてあげるけど……もし、ちょぉっとだけ狙いが逸れて喉笛に中たっても、
それは事故なんだから……恨まないでよね、雌狐さん──
 洋平の背中を視据え、ぐっと足に力を溜めながら笑う。
 ──淑女の嗜み。いざ尋常に、フォックス・ハンティングを開始する。
 進め、進め進め。
 脳裡を巡る旋律──ラ・マルセイエーズ。
 世界史の授業で習った一節が憎悪に膨らむ頭蓋に谺する。
 洋平を取り返す。雌狐を殺す。それは、平穏と充足の田園を築くために必要な進撃だ。
 遊離した心は体よりも速く夜陰を疾駆する。怨念だけが遥か彼方を見透かす「眼」に随行していた。
 ああ。はやく、はやく狩らなきゃ。
 マルセイエーズの響きが攻め立てる。

 ──あの子が流す血潮で、わたしの沃野を潤すんだ……!
177沃野 Act.16 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/22(土) 20:45:00 ID:33QBDV7o
 見失うわけがない。逃すはずがない。
 きっちりと洋平の背中を捕捉し、後を追い続けた。
 自転車が止まる。小さな公園の前。
 即座に走査した。
 ──いた。ベンチにあの女が、どれだけ憎しみを注いでも足りない雌狐が腰掛けている。
 洋平は自転車から降りてゆっくりと歩いて行く。それに気づいたのか、荒木麻耶も顔を上げる。
 目を細める。口角を僅かに吊り上げる。笑み。視線は明らかに洋平へ固定されている。
 ──虫酸が走る。
 そんな顔で洋平を見るな……! そんな顔で笑うんじゃない……!
 もう洋平の反応が何であれ、関係なかった。たとえ彼女が彼のもとから離れたとしても、あの微笑みを
浮かべることは許容できなかった。少しでも幸せそうな素振りを見せるだけで、心が熱くざわめく。
 息をしていることさえ許しがたい。
 当然じゃない──あんな……あんなことを……

 わたしよりも早く! したんだから!

 全身が発火しそうな怒り。衝き動かされて弓を取る。矢を筒から抜く。
 まだふたりのいるあたりまで数百メートル。駆け寄るのに時間が掛かる。
 その間にできうるかぎりの精神統一を図る。絶対に外さないように。
 闇からの狙撃──決断は揺るぎなかった。
 「眼」を持っているわたしならともかく、街灯程度の明かりしかない彼女にはよけられないだろう。
 やっぱり威嚇はなしにしよう……無警告で実射してあげる。
 すぐには死なせないつもりだ。まず足を狙う。動きを止めたところで両肩を射抜き抵抗力を奪う。あとは
接近して好きなだけ痛めつけ、最後に体を蹴り転がしてうつ伏せにさせて腎臓を貫く。苦しんで死ぬといい。
 洋平は殺さない。殺せるわけがない。
 ただ、二度とこんなことがないように配慮しなくちゃいけない。
 うん、そうだね……とりあえずアキレス腱を切って、手錠を繋いで、鎖付きの首輪を掛けて、町外れに
ある廃工場の中に閉じ込めなきゃ。あはっ。わたし、暇なときに「洋平とふたりきりになれる隔離ポイント」
をピックアップしたことがあるんだ。地図を眺めて、下見に行って周りを「眼」で走査して、ここなら
「何か」を飼い殺すにはうってつけかなぁ、って想像して楽しんだりしたんだよ。特に有望な場所には
あらかじめ保存食糧と生活用品を運び込んでおいたよ。今からでも暮らせるよ。
 雌狐を射殺し次第、すぐそこに向かうからね、洋平?
 もう他の娘なんかに誘惑されたりなんかしたらダメだよ──
 あんまり殺しすぎると、捕まっちゃうじゃない。
 距離、残り二百。必ず中てるには三十メートルくらいは近づきたい。それも、気づかれないよう静粛に。
 一旦ふたりから「眼」を離して、辺りの地形を探った方がいいか──
 そう思って千里眼を解除しかけたとき。不意に荒木麻耶が腕を伸ばし、洋平の首に巻きつけた。
 グッと背伸びして、爪先立ちの格好になって。
 そっと、キスをした。
 いや。
 そのままむちゅー、ぶちゅーとディープに移行していった。
 ……あは、は。
 これ以上ないと思うほど煮え滾っていた心が、沸点を超えた。
 小賢しい計算はやめた。辺りの地形? 知ったことか。直線距離を走破して、相手が気づこうと構わず
矢を放って足止めしてやればいい。こそこそする必要なんてない。わたしには夜の闇という味方がいる。
強引に攻めたって、あの子に抗う術はないんだ。
 あは。殺してやる……殺してやる! 殺してやる! あの碧眼に矢をぶち込んで潰してやる!
 何も見えない暗闇の中で痛みと恐怖におののきながら苦しみ抜いて死ねばいい!
 「眼」に。そして足に、ありったけの力を懸けていざ馳せ参じんと──
178沃野 Act.16 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/22(土) 20:47:06 ID:33QBDV7o
 ──走り出した、そのとき。
 爪先立ちをした雌狐が首を捻り、振り返る。
 「眼」が合った。

 え?
 なに。
 視え、てるの?

 彼女の視線は虚空を渡って、明らかにこちらの存在を見抜いていた。
 もう百メートルとない。見えていてもおかしくない距離──それは昼なら、だ。
 今は夜。街灯があると言っても数はまばら。はっきりと姿が映るわけはない。
 気配を察した? ありえなくもない。静寂に満ちた夜間ならちょっとした足音でも随分響く。
 きっと、そうだ。つい我を失ったわたしが余計な音を立てて気づかれてしまい──
 ……ちょっと待った。
 音?
 ──そういえば音だ。どうなっているんだろう?
 何も聞こえない。
 何も聞こえないんだよ?
 ……ああ、そうか。「眼」に集中しすぎて、五感が鈍っていたんだ。いけない、いけない。
 意識するとともに「眼」の発動を止めた。

 途端に。

 耳をつんざく轟音。
 瞳を射る光の洪水。
 ──え?
 細めた目蓋の間から、狭まった視界を捉える。
 飛び込んできたのは赤──横断歩道の先で冷然と灯る信号機の赤。
 それがやけに近く感じられる。
 他でもない。
 わたしは、横断歩道の上に立ち尽くしていた。
 脳裡を駆け巡っていく──過去の記憶。洋平を捜して駆け回り、「眼」に意識をやりすぎて転んだり
電柱にぶつかったり側溝に嵌まったりした、微笑ましい日々。
 翻って微塵も微笑ましくもない今、この場所。
 即座に理解する。
 あっ、ここ、車道なんだ──
 なんてドジなんだろう、わたしは。
 はは──うっかりして、住宅地から抜けたことも分からなかっ

 ────ッ

 それ以上考え切る余裕もなく。
 横合いから襲ってきた物凄い衝撃に何もかもが掻っ攫われていった。
 あ……
 意識が漂白される。
 唯一残った感覚は、「眼」だけ。
 嘘みたいに高く、速く、メリーゴーランドみたいにくるくると回る視線の果てで。
 あの子が勝ち誇ったように嗤っていた。
179沃野 Act.16 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/22(土) 20:48:31 ID:33QBDV7o
黙祷。
180名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 20:51:55 ID:Fdi+lRLW
ち、ち、ちょっと!
黙祷ってw
181名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 20:54:48 ID:2ffRqkes
>>179
ぐっじょぶ!
>黙祷。って!死!?
とりあえず………………(--)チーン
182名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 20:59:10 ID:JxX85ad6



  .∩___∩
  .|(((     ヽ  相手の能力を逆手にとって自滅を狙った完全犯罪。
  /))))   ○.|  麻耶、恐ろしい子…
  |(((( (._●_) ミ   
 彡、))))|∪|  、`\/.⌒/ 
 ./  . ヽノ . .| \_/
 (___) .  |
183名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:00:46 ID:LIfxgWr3
(´・ω・)胡桃カワイソス、こんなの酷過ぎるお
184名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:07:59 ID:hjfujMLu
>>172-174
了解。オレは直接的な残酷描写がなければpsy娘もいけることがわかったよ。

>>179
え?てっきり直接対決だと思っていたらビックリ展開だ。
でも「ヤバイ女とレッテル貼られたらおしまい」ってなこと麻耶ちゃん言っていたしね、かなり強運な娘だ。
185名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:12:29 ID:LuaYI3As
金髪にもなにか能力がありそうな気がするな。
186名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:32:57 ID:AXhf1m1E
修羅場でありながらまるでジョジョを彷彿とさせる能力バトルを展開するとは・・・・!
作者様、おみそれしました。
187名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:34:34 ID:pW/7w9ur
>>179
(゚д゚)
チーンです…か?
188名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:36:29 ID:HAbRQCnV
まさか胡桃があっさりやられるとは。
計算高く腹黒い金髪ロリも素敵だ。
189名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:47:01 ID:dax98xN8
勿体無い。この程度で死ぬには余りに惜しい、惜しすぎる。
190名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:49:34 ID:A7hhIx3T
金髪女狐の頭脳プレイにしびれた!

第二部のジョジョ並にCoolだぜ
191名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:51:26 ID:YYA1IsrO
いままでのことを考えると、麻耶は人の心が読めるのかな?
っていうと、『聴く』耳を持ってるのか?
192名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:56:48 ID:GgNpfIiT
とにかく続きがよみてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
193名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:59:01 ID:NeI+zh+U
>>179
GJ!ちょwww黙祷ってw胡桃タンはドジっ子だったのでつねw
麻耶派の俺だがそのドジっぷりに乾杯
194名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 22:12:17 ID:lwjMHl9/
吉良義影も最後は車に轢かれて・・・
195名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 22:16:14 ID:lwjMHl9/
吉影だった

しかし胡桃は植物人間になっても復讐をしてきそうだ
196名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 22:22:10 ID:A7hhIx3T
胡桃「この糞カスどもがぁぁぁぁぁー!」
197名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 22:27:21 ID:dRebfzDO
>>195
食肉植物人間だなwww
198名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 22:34:03 ID:/BFdJ06Q
嫉妬の心を力に変えて
199名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 22:43:30 ID:vl1x+wjn
洋平が胡桃の接近を感知できなかったのがちょい疑問
200名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 22:46:44 ID:zfuoIxPt
すげえ展開速くて面白いのに加えて、
作者様の漢字力に対して個人的に敬服。
沃野だけは読めない漢字があちこち出てくるんだよな。
谺なんて見たこともなかったよ。
201名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 22:54:40 ID:MNavvQKG
胡桃たんが可哀想すぎまする
あんまりでする
202名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 22:56:26 ID:0FR9lW1z
胡桃はこのまま戦死か?
203名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 22:58:17 ID:/BFdJ06Q
皆で「邪眼」の力を身に付けた胡桃の復活を期待しようぜ。
邪眼の力の源は妬みだって言うし。
204名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:10:17 ID:Egcxg7+V
奇跡的に一命を取り留めた胡桃
怪我が治るまで目の力を利用して洋くんの居場所を知り電話、メール、手紙をひたすら送り精神的に追い詰め
最後に二人が結ばれる展開希望
205名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:27:04 ID:Dj27Hh49
>>179
超GJ!!
最初は胡桃の方が恐ろしい女だと思ってたけど
麻耶の方が一枚も二枚も上手でしたね
206名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:38:48 ID:YYA1IsrO
胡桃はよーくんの理想になろうと努力したからね
なんだかんだで腹黒策士な麻耶よりはピュアよりなんだろな
207名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:43:35 ID:3vOuvq9y
>>206
精神な部分も理想になれたらよかったのにな…
208名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:55:40 ID:ktX241J5
最近このスレを発見してはまってしまった。
209名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 00:16:53 ID:6Wun9boI
流れブッタギって投下良いですか?
210名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 00:17:41 ID:opOY83VY
カモーン!
211名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 00:19:02 ID:nj4nMC6p
胡桃たん立って、立ってくれ〜
このまま退場ってなことはないよね?
あるいは胡桃が完全勝利するアナザーシナリオとかないですか?

>>209
来い。俺は待っている。
212「歌わない雨」Act3:2006/04/23(日) 00:25:09 ID:6Wun9boI
 あれから三時間、釜津は部屋に戻っているだろうか。入院は性格的にしていないだろうが強制的に、という事もある。しかし、まずは連絡と思って彼女の携帯にコーリング。
 数秒。
『どうした?』
「いや、お前がどうしただろ。 面倒いのは嫌だから簡潔に、今どこだ?」
『自分の家だが』
「そこを動くな、話がある」
『…携帯からじゃ駄目か?』
「駄目だ」
『…メールで住所を送る』
 数分後に送られてきた住所に訪れると、偉く高級そうな高層マンションだった。
「…何だこりゃ」
 外壁も中身も汚れ一つ無い純白、床なんか大理石だもの。弩ノーマルな家庭で産まれ育ったワタクシなんか、気後れしてしまいますのコトよ。
 ……。
 しまった、一瞬帰ろうとしてた。
 回れ右してエレベータへ。指定の階は十階、お金持ち万歳、資本主義万歳。降りたら廊下の突き当たり。
 ベル、応答なし。
 ノック、応答なし。
…………。
「出てこい!!」
 激しくドアを蹴ってみた。
「何をしているんだ?」
 振り向くと私服と相まって一際可愛い笑顔、ただし眉間に青筋。
「まぁ恐い」
「会話をしよう、な」
 元からそのつもりだ、僕は溜め息を吐くと彼女のジーンズのポケットに手を突っ込んだ。
「な、おい止めろ。尻を…ふぁァッ」
 ジーンズは全て無し、胸のポケットは…
「何故目を反らす、そんなに貧乳が憐れか」
「馬鹿言うな、乳は直視せずに楽しむのが紳士のたしなみだ」
「帰れ変態紳士」
「帰らん。これからは真面目に、鍵どこだ?」
「開いてる」
 言いながら左手でドアを開けた。
213「歌わない雨」Act3:2006/04/23(日) 00:33:59 ID:6Wun9boI
 開く音と共に軽い音をたてたのは、手首にかかったコンビニ袋。
「リビングはそこ…何故深呼吸をしてるんだ?」
「いや、基本っぽく?」
 彼女は華の独り暮らし。
 彼女は首を傾げたままテーブルに袋を置くと、僕に投げてくるのはいつもの缶コーヒー。しかし、僕は受け取ると缶を開けて立ち上がり彼女に返す。
「奢りだぞ?」
「片手じゃ開けにくいだろ」
 僕も一年前には色々と苦労した。手が小さい彼女なら尚更だろう。突然片手が使えなくなる、その不便さは実体験でよく分かる。
「ありがとう」
「どういたしまして」
 僕が適当にソファに座ると、彼女も僕の左に腰を下ろした。テーブルに灰皿があるのを確認すると僕は煙草を取り出して火を点ける。
「で、何の話かは分かるな?」
「これか?」
 釜津は滅多に浮かべない薄笑いを浮かべて、右手を軽く上げた。既に止血はしてあるが、厚く巻かれた包帯が痛々しい。
「それだ」
「気にするな、全部私のせいだ」
 数分。
「僕は馬鹿だから巧く言えんが…」
「学年首席だろうに」
「茶茶を入れんな。今日ので色々と吹っ切れたか?」
「…あんまり」
「そうか」
 再び、数分。
「僕のことはもう気にするな、明日からは対等だ」
「……ありがとう」
 釜津は顔を上げると満面の笑みを見せた。
214「歌わない雨」Act3:2006/04/23(日) 00:41:35 ID:6Wun9boI
「それと…」
「何だ?」
 顔を赤くして急に向きを九十度、左に旋回。鈍感と言われている僕でも、ここれの意味は大体分かった。僕も体を右に回し、背中併せに座り込む。溜め息でハズレと言われた気がしたが気にしない、逆方向という選択肢は自分的に不可能だ。
「伸人」
「何だ?」
 目を閉じて、余計クリアに声が聞こえる。
「頼みが3つあるんだが良いだろうか?」
「どうぞ?」
「これからは名前で呼んでくれ」
「良いよ、芹。はい次どうぞ」
「明日、いつもの面子で遊びに行きたい。仲を持ってくれ」
「いつものことだろ、はい次どうぞ」
 数秒。
「……恋人になってくれ」
「…ごめん」
「緑か?」
 問いはすぐに来た。
「違う」
「雪か?」
「違う」
 数秒。
 僕は前もって用意していた答えを頭の中で反芻して吐息を一つ。
「僕はまだ自分で自分を一人前だと思えない。だから、僕が自信を持てるまで待っててくれ」
「私は気が短いぞ」
「分かってる」
「そうか、ありがとう」
 数分。
「そろそろ帰れ、皆が心配する」
 一年前のように、「私なんかと違い」と言わなくなった分ましなのだろうか、と思いながら立ち上がる。
「また明日な、伸人」
「オゥ。明日を楽しみにしてろよ、芹」
 僕は雪への言い訳を考えながら芹の家を後にした。
215「歌わない雨」Act3:2006/04/23(日) 00:46:02 ID:6Wun9boI
今回はこれで終りです

そしてこのスレの方皆GJ
216名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 01:24:54 ID:Y3XiI3zz
このスレはいつの間に神々が住み着いているんだ・・・
正に失われた楽園だな
217名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 01:31:28 ID:OmG04GLC
まさにParadiceLostですね
作者様方(*^ー゚)b グッジョブ!!
歌わない雨の方は神なのだからもっと自信を持って(゚ー゚*)
Lest in peace. Good night!!
218名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 01:41:58 ID:5HzkurNI
>>208
俺も最近このスレを見つけた。SSのレベルの高さにびっくり。
219名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 01:59:23 ID:N9CZz7sU
短編もすごいけど10話20話の長編書いて完結させるのテラスゴス。
合鍵は30話以上だし優柔もエンディング分岐するし…。
220名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 02:05:39 ID:27DpWV/s
ゆうくんはクズだし
221名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 02:07:11 ID:wKLJuq8C
>>219
初期はサウンドノベル化すらされているぞ
本当に恐ろしい神連中に頭が上がらない・・

個人的には
合鍵や優柔など言った代表作のサウンドノベル化とかキボンヌ・・・

全部サウンドノベル化するとエロゲー並になるよw
222名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 03:28:14 ID:ZfCWkyJP
胡桃たんは一途によーくんが好きなだけなのに
ひどいよぅ
223名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 05:13:12 ID:CMni75vO
しかし、このスレは弱肉強食。負けた奴が悪いのさ。

超鈴音も言っていた。意思を通すのは、いつも力あるものであると!
224名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 07:23:23 ID:hrotDJYh
危険な男の続きが見たい今日この頃。
225名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 10:12:08 ID:11UBXTZd
>>178
戦士・胡桃の愛と嫉妬と奮戦にの冥福を祈る。
願わくは、何も見えぬ世界での眠りがやすらかたらんことを。
全嫉妬・修羅場スキー…敬礼っ!
226名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 11:09:05 ID:YWtXegkh
敬礼なんかするものかっ
胡桃たんはまた立ち上がる。
きっと不死鳥のように僕らの前に甦って嫉妬の炎でよーくんを燃やし尽くしてくれるに決まっているんだ!
227名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 11:59:26 ID:cPSjUlkF
B級ホラー展開はちょっとな・・
あの世から蘇ったといっても、ゾンビみたいに顔の中とか骨が見えているとかは簡便
228名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 13:53:27 ID:t4MDWtp6
いやいや、死んだとは書いてないでしょw
作者さんは合掌とか書いてたけど…。
いくら麻耶が好きな人が多かろうと俺は胡桃を応援していくぜ。
つーわけで続きを全裸で正座して待ってる。
229名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 14:01:20 ID:a9QiYlBF
じゃあ俺は、全裸に蝶ネクタイでピアノ弾きながら待ってます
230名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 14:57:51 ID:LvelxAV0
俺は全裸に靴下で、胡桃の復活を待っときます
231名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 14:58:18 ID:9wFowsRQ
胡桃「RRRRRRRYYYEEEEEEE!!
寝取りだと!
フンッ!泥棒猫を射殺して!
その隙に洋平を拉致って調教して!
洋平を取り戻してやるわ!」

ぎぃゃぁぁああああ!
だ…だめか!
ト…トラック!
は…跳ねられてしまう
外に出ると押されてしまうッ!
よ…よけられん
も…戻れんッ!」


 ドォ――ン



−胡桃は−
二度と洋平の側へは戻れなかった…。
人間と植物の中間の生命体となり
自分が死ぬまでベッドの上で、「目」の世界をさまようのだ。
そして ふたりのいちゃいちゃを見たくない
思っても目を離せないので
−そのうち胡桃は考えるのをやめた。
232リボンの剣士 3話 ◆YH6IINt2zM :2006/04/23(日) 15:12:38 ID:S3j/Ne8I
「伊星くんっ」
今日も混雑してる学食。あたしと人志がいるところに、木場さんが来た。
昨日約束したんだっけ、混んでたらここに来てもいいって。
「木場か」
あたしと人志はスペースを作り、そこに木場さんが入る。昨日と違う香水の匂いが漂ってきた。
「今日は私も、伊星くんと同じ、じゃーん! 牛丼にしたんだ〜」
あれ? 一人称が変わってる。ていうか、じゃーんて。わざわざどんぶりの中身を見せてやらなくたっていい
じゃない。
「まだまだだな」
人志はどんぶりの中を一瞥すると、素っ気無く言った。
「牛丼はねぎダク、それとギョク。これに限る」
「えぇ〜ねぎだく? 伊星くん、通だね〜」
人志のわけわからない意見に、木場さんも応じている。あたしはちょっと、このノリにはついて行けないわ。
結局、今日も人志の頓珍漢な話と木場さんのぶりっ子ポーズのせいで食が進まなかった。

キーンコーンカーンコーン……
「ん、んん〜っ、さて」
午後の授業が終わった。少し伸びをして、さあ部活に行こうと廊下に出る。廊下には、先に出ていた人志と、
木場さんがいた。
「伊星くん、一緒に帰ろっ」
そういいながら、木場さんは人志の腕を取ろうとしている。でも確か、人志は今日はバイトだったような……

「今日はバイトだから、一緒は無理だ」
木場さんの手は振り払われた。
「むぅ〜っ、伊星くんのいぢわるっ」
頬を膨らませ、足をじたばたさせ、人志をぽかぽか叩く木場さん。
うーん、ああいうのって、男から見ればかわいいもんなの?女のあたしには、子供っぽくて、微妙……。
「やめろ」
人志は反撃した。握り拳を作って、頭にゴツンと一発。
「はうっ!」
木場さんは頭を抑えてうずくまる。その隙に、人志は階段へと走っていった。
……そうだ、あたしも部活に行かなきゃ。二人を眺めている場合じゃなかった。
あたしは人志が走っていった方とは逆方向に走った。ふと、途中で思う。
いくらなんでも、グーで殴るのはやりすぎだったんじゃないの? 殴ったとき、あたしが入ってきて注意でも
してやればよかった。
まあいいか。人志だって本気じゃないだろうし、あのくらい、他の男子同士でもやってることよ。
あたしが気にすることじゃないわね。
233名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 15:13:00 ID:lmHZSSa/
カーズかよw
234リボンの剣士 3話 ◆YH6IINt2zM :2006/04/23(日) 15:13:24 ID:S3j/Ne8I
「うーん、どうしようかなあ…」
あたしはトレーを持ったまま歩き回る。今日は人志は日直で、この食堂にはいない。
この学校、どういうわけか、日直はものすごく忙しい。それこそ今日の人志みたいに、お昼を食べる時間もな
いくらい。
人志がいると、その向かいがいつも空いてるんだけどね。
「明日香、明日香」
後ろから声がした。食堂の一角、四人がけの席に座っている三人、あたしの友達が手招きしていた。
「席取っといてくれたの? ありがと」
あたしが座ってちょうど四人になった。これでやっとご飯が食べられる。
「まあいいって事よ」
恵が手をパタパタと振る。それに礼子が続く。
「今日は伊星君、日直だもんね」
「別に人志は関係ないわよ」
あたしだって、こうして友達とお昼を食べることもある。毎日毎日、人志と向き合っているわけじゃない。
「いつもの特等席じゃないけど、我慢しろや」
「んぐっ!?」
ケラケラ笑ってい言ったのは桐絵。いきなりだったからご飯が喉につっかえた。
水、水……。
「んっ、ごほっ! ちょっ、特等席って」
「そりゃあ明日香には説明不要でしょ。ねー?」
『ねー』
桐絵の話に合わせる二人。何なのこの空気。いつもの特等席ってもしかして人志の向かいのこと?
「べ、別にたまたまそこが空いてるからってだけよ!」
そう、たまたま。それに人志の向かいって、一番アレな席じゃないのよ!
何よ、何で三人とも何も言わずにニヤニヤしてるのよ! ここ笑う所じゃないわよ!
「じゃあ何で、伊星の向かいはいつも空いてるんだろうねえ」
「そりゃ、変人人志と一緒なのが嫌なんでしょ」
三人だって、人志がどう呼ばれているかくらい知ってる。急に恵は何を言い出すの。
すると、礼子が手を挙げた。
「裁判長! 先ほど新城被告は席が空いているのはたまたまであると供述していたのに、今空席である理由を
正確に述べています!」
眼鏡が光る。
って何よ! 裁判長って、被告って!
ゴホン、と恵が咳払いする。
「確かに。新城被告、これはどういうことですかな?」
やけに声のトーンを下げて演技する恵。つまり、恵が裁判長役? あたしが被告?
「だああぁぁっ!! もう、ふざけないでよ!!」
力いっぱいテーブルを叩いた。
せっかく友達と一緒なのに、何でこんなに突っつかれなきゃいけないのよ! みんな悪乗りし過ぎよ!
手元を見れば、自分の味噌汁がこぼれていた。テーブルを叩いた時だ。ちょっともったいない。
三人は一瞬沈黙した後、爆笑し出した。
「いや〜明日香をからかうの面白いな〜」
「桐絵……本気で怒るよ?」
もう爆発寸前だった。竹刀に手をかける。
「わっ、待って明日香! ごめんって! ここから真面目な話にするからさ!」
…ふう。
それだけ聞いて、息を吐きながら肩の力を抜く。あたしもひとまず落ち着こう。
「で、いい? 昨日、一昨日の昼休み、二人の所に、木場が入ってきたよね?」
「うん、入ってきたわね」
「大丈夫なの?」
「……何が?」
「木場のヤツ、伊星を狙ってるよ」
「……は?」
235リボンの剣士 3話 ◆YH6IINt2zM :2006/04/23(日) 15:14:40 ID:S3j/Ne8I
右手が停止した。からかわれ始めたときから、今もまだご飯を口に出来ない。
「だから、木場が、伊星を、誘惑してるよって事」
「え、ま、まっさかあ!」
誘惑なんて言葉を出してくるからびっくりしちゃった。右手にあったはずの箸が床に転がっている。三秒過ぎ
てるだろうけど、フーフーすれば大丈夫かな?
桐絵ったら、まだあたしをからかうつもりなんだ。でも、もう取り乱さないわよ。
大体、人志があたし以外の女に、じゃなくて! 普通に人志に言い寄ってくる趣味の悪い女なんて居やしない
。今までも、モテなかったのよね、人志って。よく話をするのも、せいぜいあたしくらいしか居ない。
同級生はもちろん、先輩、後輩、果ては先生の中にまで、人志を避ける人が多いくらいだから。
桐絵は狙ってる、なんて言ってるけど、木場さんはただ人当たりがいいだけで、そんなこと企んでないと思う
けどなあ……。
「はぁ……。明日香、あいつを舐めてかかっちゃいけないよ」
深いため息をつく恵。さっきの裁判長モードとは全然違う。
「私の知り合いから聞いたんだけど、木場、先週くらいに付き合ってた男と別れたらしいよ」
「うわっ、またかよ!」
「その男って、誰なの?」
今度は恵の話が始まった。礼子と桐絵がすかさず飛びつく。
三人とも、木場さんを嫌っているから、この手の話は盛り上がりやすい。
「誰かまでは分からなかったけど、元々その男には、彼女がいたんだって」
「え…じゃ、二股?」
「いや違う。そいつと彼女が付き合ってた所に、木場が割り込んできたんだよ」
「ってことは……略奪愛?」
「げえっ! 今度は寝取りかよ!」
礼子に比べて、桐絵はデリカシーの欠片もない。
「んで、その奪い取った男と別れた、と。付き合ってから一ヶ月と経ってないってさ」
「ひどいね……」
「分捕っておいて、飽きたらポイ捨てかぁー? どこまでも汚えなあ」
「そういうことがあったのよ。だから明日香」
へ? そこであたしに話が戻ってくるの?
「伊星を取られないように、ちゃんとガードしときなよ」
「もう、結局それ?」
腹が立つのを通り越して力が抜ける。取られないようにって、人志はあたしのモノじゃないんだから。
別に木場さんが人志を狙っているのが事実だとして、もしもその狙い通り二人が晴れて付き合うことになった
って、あたしには関係ないわよ。略奪愛だの寝取るだのって話も、ホントかどうか。
いいんじゃないの? 変人人志とちょっと天然っぽい木場さん。相性は悪くないかも。
「そんな大袈裟にする事じゃないわよ」
「明日香……余裕だね」
「伊星が浮気なんかする訳ないってか」
「そうじゃないってば!!」
また腹が立つのに戻ってテーブルを叩く。ほんっとに、桐絵は人をからかうのが好きなんだから……。


(4話に続く)
(しまったタイミング悪かった)
236名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 15:30:47 ID:lmHZSSa/
漏れのほうこそ申し訳ない

木場、中々根性の座った泥棒猫っぽくて次のリアクションが楽しみです
237名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 15:43:20 ID:A7M75GJg
胡桃とのハッピーエンド期待してたのに・・・orz
いや、監禁とかじゃないですよ?
238名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 15:52:28 ID:fz51v9xb
>>235
ぐっじょぶ。木場の泥棒猫っぷりにwktk
239 ◆M1igzo3EW. :2006/04/23(日) 16:15:08 ID:fb/Emj4R
指摘されましたが、パスはいつもの「syuraba」ですorz
で、今更ですがバグというかエラーを発見しましたのでできたら使用を控えてくださいorz
テキストの文字数が多すぎる(具体的には35000文字以上?)とエラーが発生します。
ですから小分けして使う分には問題ないはず。あとたまーに上手くいってないところもありました。
こんなの公開してしまった自分情けないよω

<chirachi>
妹愛の楓、合鍵の藍子、沃野の胡桃と主人公のことを昔から好きなヒロインが負けているのがどうも納得いかねーw
</chirachi>
240名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 16:18:53 ID:K6AHa6Ez
楓は負けてるか微妙ではある。
妹愛はこのスレにしては珍しくハッピーエンドだったし。
241『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/23(日) 19:22:16 ID:YSGNJqGt
「ん……くぁ……」
朝。
時計を見るともう六時。そろそろ起きんとな。横では志穂が俺の腕に絡まりながら寝ていた。それで思い出す。昨日の事を。
「う、うーん…」
一応…飯の用意はしとくか。非常時(?)でも生活リズムはくずしちゃいかん。さて、志穂をおこすとしますか。
「おらぁ、おきやがれぃー志穂ー」
寝起きは声が安定しない。
ゆさゆさ
……起きヤシねぇ。志穂は目覚めがいい方だから声を掛ければ大体起きるんだけど……。
悪戯しちゃおう。普段そんな事は恐ろしくてできる分けない。やったら何十倍にもしてかえされちまうからだ。ふふふ…狸寝入りか。だったら今が好機!
今までの数々の暴力の恨み、晴らしてやるヨ!!
「倍返しだぁー!!!!」
熱血隊長のような掛け声とともに一撃!!
ピシ
でこピン。えぇ、チキンで結構ですとも。ビバ!チキン!!
……あれ?起きない……あぁ。なーる。お目覚めのキッスが欲しいのかい。なら、遠慮はしない……
チュッ
と、映画のワンシーンのようにキスをする。
………まだ起きヤシねぇ。そうかいそうかい。それ以上を求めてるってかい。じゃあ遠慮なく。
モミ
胸を揉む。
お嬢よかでかい。(まぁ、ドングリのせくらべだが。)
揉みモミもみモミ。
……昨日の今日で俺はなにをやってんだ……どうも最近性欲バランスがオカシイ。
と、胸を揉みながら気付く。…………心臓動いてるか?
胸が小さいから(失敬)分かりやすいと思うが……。
慌てて胸に耳を当てる。
………シーン……
あ、あれ?オカシイな。鼓動が……しない?
「お、おい!志穂!志穂!!」
何度呼び掛けても体を揺すっても反応が無い。さすがにやばいな。
まさか死………い、いや。急死するような病気持ちじゃないはず。超健康優良体だ。
となると………
昨日のお嬢の言葉を思い出す。
「死ぬよりつらい地獄を見せてあげるわ…」
とかいってたな……
242『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/23(日) 19:23:15 ID:YSGNJqGt
まさか、それで本当に殺したってのか?でもそれじゃぁ死ぬよりつらい地獄ってなんだ?………
と、とにかくお嬢の所へいくっきゃねぇ!志穂が本当に死んだら……俺は…






こんな時に屋敷の広さが厄介なもので。お嬢の部屋のある二階へはいちいち玄関ホールから登らないといけないという面倒さ。
暗記しているとはいえ、迷路みたいな通路は本当に迷惑だ。
初めて入った奴が迷ったら、出るのも困難だろうな。まったく……なんでこんな構造になってんだヨ………
部屋の近くまで行き、腕時計を覗く。六時半。もうおきてっだろうな。
バン!
走った勢いのまま部屋のドアを開ける。
お嬢は、ひどく冷静に、且笑顔で。
「おはよ、晋也。」
そう言いながら歩み寄り、抱き付いてきた。その顔はもう少女だ。当主として背伸びしていた時とは全く違う。こんなんお嬢じゃないやい!
「ウェイトだ。お嬢。重りの事じゃ無いゼ。」
「?」
Sit!このジョークは通じなかったか。胸にあるお嬢の顔を掴んで離す。
「お嬢。志穂になにしたんだヨ!」
俺はさっきまでナニをしてたわけだが。
「ふふふ…あっはははは……はははは……そう……起きないでしょ?あの女。」
純真な笑顔から、般若のような笑顔になりかわる。ころころと忙しそうだな。
「やっぱなぁ〜…お嬢の仕業だと思ったんよ。………で?なにしたん?まさか…本当に殺したの?」
「ふふふ……そんな花の無い事しないわよ……もっともっと苦しんでもらわないと……ね?」
ね?じゃないって。
「ふふ……あの女のね、時間を止めたの。だから死んでもないし生きてもいない。育ちも衰えもしないわ。晋也の子供なんて……孕ませてなるモンデスカ!!」
「そ、ソンナ!まだ孕んだと決まったわけじゃ………」
「いいの!!それにね、それだけじゃないの……私も鬼じゃないのよ。一生あのままにしておくわけじゃないのよ?
……私と晋也が幸せな家庭を作って…たくさんの子供を生んだら、目の前で覚まさしてあげる………あはっ。びっくりするでしょうねぇ……寝て起きたら、そんな事になってるんだらかね………」
……お嬢が鬼に見えてしまった俺は、桃太郎にならねばいかんのか。
243名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 19:58:41 ID:WbShBeLm
このまま鬼に喰われるか、もう一度お亡くなりになるか

早く続きが読みたいです、お嬢!
244名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 20:56:27 ID:CiwTemkL
>>224
ということで前スレの埋めついでに書いてみたり。
<チラシの裏>
軽いスランプ発生中。
モカたんの甘ったるいだけの話がポンポン浮かんでくるのに…
</チラシの裏>
245名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 21:04:38 ID:27DpWV/s
>>244
むしろ別枠で甘ったるいだけの話が是非読みたいのですが・・・
趣旨に反しちゃうのかなぁ
246名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 21:11:14 ID:oTJMvBM6
モカさんとのラヴ臭あふれるストーリーが見たいけどやっぱりアナザー扱いだよなぁ。
メインはどうしても嫉妬あふれる修羅場ストーリーだからネ! 
247名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 22:11:49 ID:oTdCimZ0
まあ「元から好き」なキャラが嫉妬燃やす方がやりやすいだろうね、と思う。
248名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 22:15:16 ID:NY3oQnmD
モカさんのベタ甘なストーリーの裏で
士郎への気持ちが捻じ曲がっていく義姉とか…
249名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 22:43:44 ID:zLMRsc66
>>242
やはり同じ貧乳ではお嬢に対抗できなかったかOTL
しかし巨乳メイドの里緒さんなら……里緒さんならきっとなんとかしてくれる
250名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 22:47:11 ID:CiwTemkL
>>249
その時は再びオーバースキルが発動してエンドオーバーさ。
しかしこやつならハーレムエンドまで持ち込めるかと思っていたが、はてさてどうなるのやら
251名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 23:04:02 ID:BmCUpBoF
リボンの剣士の人志が典型的なエロゲ的外見ではなく
坊主の学生というか○っちゃんにしか想像できない
なんかなぁ・・・
252名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 23:36:08 ID:dS8dhiqL
>>251
何故だ………?
253名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 00:25:22 ID:q75loWoW
ここやまとめサイト以外の、
嫉妬に狂った小説が読みたいのですが、
オススメのサイトを教えて頂けないでしょうか?
254名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 00:39:59 ID:sgVKgdma
>>253
ブラザーよ・・・
そんなサイトがあれば俺たちにも教えてくれ・・・
255名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 00:47:43 ID:f6wKasH9
この泥棒猫 あたりでぐぐるとか
256名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 00:47:59 ID:n5wNjUHZ
どっちかというと、そういうサイトがなかったからこのスレや
サイトが立ち上がった、、、という感じだったよなぁ。


「春の嵐」の作者さんはこのスレにはもういないのかなぁ。。
これからというところで止まっているから、やきもき。
257名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 00:59:11 ID:I53kmDyS
>256
ブラザーよ。そういう時は自分で続きを書いてみろ。
そして作者が帰ってきた時にこういわれるんだ。
「この泥棒猫!私のいない間に勝手に人の作品とって!返してよ!!」
「ふふん。いなかったあなたが悪いのよ。これはもう私のものよ」
258名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 01:04:32 ID:I53kmDyS
フムン、最初に「え?何?何であなたが私の書くはずだった続きを?」と入れるべきだな
259名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 01:15:30 ID:DwWM9cyf
ttp://toneriko.que.ne.jp/%7Eark/sakura/main.htm
「私、汐崎のことが好きよ?」
「……わかった。御子柴さんの好きにしなよ……応援はしないけど」
「もちろん、私の好きにするわ」
「でも! ……あたしだって、好きにするよ」
……やってやろうじゃないか!
あたしは、右手を拳銃のようにして、御子柴美華の背中に向けて、ビシッと人差し指を向けたのだった。
(略)
「どういうつもりなの……って、それは聞かなくても分かってるわ。私のこと、邪魔してるんでしょう?」
「好きにするから、って言ったでしょ」
「ええ、覚えてるわ。それで、明日もやっぱり邪魔をするつもり?」
「もちろん、邪魔するよ」

いい雰囲気なのに困ったことに、これはハーレムENDにすら落ちないorz
260名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 02:54:00 ID:4g+ci2Fw
>>256
Which Do You Love?
もイイトコだぜぃ…マイシスターよ。
261名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 03:29:53 ID:+1FNmyjx
NScripter初めて触ったがスキル0の俺にはキッツイね、これ
262253:2006/04/24(月) 05:26:44 ID:q75loWoW
>>255,259,260
ありがとう。
まとめサイトのSS全部読んだんだけど、もっと読みたくなってさ。
ここの読んだ後だと、ほかのSSじゃ物足りなくなるんだよね。
263名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 07:44:23 ID:k5Y+7tim
>>261
頑張ってくれ。全裸で待ってるから。
264名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 09:20:32 ID:QQdQX1xS
じゃあ俺は、裸エプロンでピアノ弾きながら待ってます
265名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 12:46:56 ID:9rGx7z7T
まとめサイトの優柔読んでて
椿ちゃんと先輩が可愛すぎて恐くなってきますた
266名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 12:59:42 ID:gQL4wsqo
>>265
そしてゆう君のクズぶりにイライラするがいいw
267名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 15:26:18 ID:ZPP8vBEr
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/5636/
このあたりも嫉妬じゃないでショーか?
268名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 16:41:02 ID:+1FNmyjx
沃野をAct3までサウンドノベル化してみたけどどうしよう…
作者様のGOサインがあればうpして皆様に品評して頂きたいのだが
269名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 17:49:02 ID:6EzSXSqU
どうしよう、ではなく許可を求めるつもりなら作者様に直接言ってはどうか。
もったいぶってるわけではないだろうけど、そういう態度ってなんかいやらしい。
270振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/24(月) 18:10:57 ID:061UfZiO


   ・    ・    ・    ・   


 羽津姉を家まで送った後、俺は家に帰りついた。
 部屋に戻り一人っきりになると込み上げてくるのは自己嫌悪の気持。
 今日のデート、羽津姉がどれだけ楽しみにしていたか十分すぎるほど伝わっていた。
 そんな折角のデートだってのに酷い事言った。 無神経な事も言った。 傷つけるような言葉も吐いた。
 自分にとって姉にも等しい大切なヒトに向かって。
 物心ついた時からいつも側に居てくれていて俺の事を実の弟のように可愛がってくれてた。 辛い時や苦しい時も何度も助けてくれた。 傷ついた時もいつも優しく慰めてくれた。 俺にとって、とてもとても大切なヒト……。
 そんな大切な人に向かって俺は……俺は……。

 それなのに……
 それなのに何で……
「何であんなに幸せそうに笑っていられるんだよ!!」
 俺は感情のままにスケッチブックを壁に向かって叩きつけた。 叩きつけられて角の潰れたスケッチブックが床に落ちる。
 落ちた拍子にページが開く。 今日のデートで描いた絵。 羽津姉の事を無視するように一人没頭して描いた絵。
「畜生……、ちっくしょぉぉぉお!!!」
 俺はスケッチブックから絵を引き千切った。
「こんな……、こんな絵……!!」
 気が付けば今日描き上げた絵は跡形も無くばらばらになっていた。 そして俺の両目からは涙が溢れていた。
「何を泣いてるんだ俺は……。 今……更……」
 両の拳で涙を拭う
「分かってた事じゃないか……。 最初から分かってた事じゃないか……」

 羽津姉が俺への想いを諦めない限り結希は俺を受け入れてくれない。
だったら、どうしたら羽津姉は俺を諦める?
 思案を重ねた結果達した一つの結論。 それは実際に付き合って、それで分かってもらう事だった。 俺と恋人同士になったって上手くなんかやれないと言う事を。 そして諦めてもらおう。
 我ながら酷い事をしてると思う。 付き合う気も無いのに付き合って、冷たい態度をとり続けて。
 こんなやり方が正しいとは思わない。 でも思いつかなかった。 羽津姉に俺を諦めさせる方法。
 そう。 全ては覚悟の上での選択だったはず。 それなのに何で……何でこんなに苦しいんだ。
 解かってる。 こんなやり方間違っている。 羽津姉の気持を踏みにじるような真似。
 今からでも気持を入れ替えて真剣に付き合おうか。 羽津姉は今更言うまでもないくらい素敵な女性なんだ。 それこそ俺には勿体くらい。 そんなヒトが俺なんかを好いてくれてるんだから……。

 結季だってそれを望んでいる。 でもそうしたら俺以外に結季の事を分かってやれる男なんているのか? いや、そう考えるのは俺の我儘で身勝手なエゴだろう。 俺以外にだってそんな男が現れるはずだ。
 俺以外の男……?
 結季が俺の知らない俺以外男と並んで歩く。 結季が俺以外の男と手を繋ぐ。 結季が俺以外の男に微笑みかける。 結季が俺以外の男と唇を……
 イヤだ!! 絶対にイヤだ!!
 想像しただけではらわたが煮えくり返りそうになる。
 結季を誰にも渡したくなんか無い!! 俺以外のヤツが結季と付き合うのなんか耐えられない!!
 それは羽津姉に対しては一度だって感じた事の無い感情。 羽津姉がどこの誰と一緒に居るのを見ても一度だってそんな風に感じた事は無かった。

 やっぱり……俺は結季を諦められない。 俺が心の底から愛する只一人の特別な女の子。 この気持だけは変わらない。 変えられない。 例え羽津姉を――姉にも等しい大切な人を傷つける事になろうとも……。
271 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/24(月) 18:12:10 ID:061UfZiO
今回はコレだけです
短くて申し訳ない
272名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 18:14:32 ID:+1FNmyjx
いや、ごめん
こういうときどういう手順踏めばいいのか全く解らなかったから
273名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 18:20:27 ID:trVTaKMO
>>268に悪気はないのだろうけど
そういう態度って時に反感をかい易いからね。
もっと、どうどうとしてればいいのではと思う。

今まで女の嫉妬ばっかだったけど、
今回は男の嫉妬も……すげー修羅場の予感……
274名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 19:53:35 ID:DKSsZ0ml
まぁ、もったいぶって見られかねないからもっと堂々とね
275名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 20:45:54 ID:n5wNjUHZ
>271 GJ!
このスレで態度がはっきりしている主人公って珍しいね。
今後の態度の変化に注目!
276 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/24(月) 20:46:51 ID:AndKTfn1
>>268
一向に構いません、といいますか、むしろ見たいです。
277名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 20:47:21 ID:iQ/e/VlE
このスレではあんまり男側の嫉妬が描かれてないわけなんだが皆としては需要あるのかね?

実は両想いの本命の子が堅いため、つい流されて横恋慕の女の子と肉体関係を持ってしまう主人公→
本命の子はショックを受けるが、主人公のために潔く身を引こうとする→
主人公慌てる。他の男に渡してなるものかと無理矢理関係を結ぶ→
本命の子の独占欲も目覚め、泥沼の三角関係に…

とか俺はツボなんだが。

しかし…羽津姉!そんな最低男とっとと見限るんだ!   そして俺と付き合ってくれ!!
278名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 20:48:40 ID:oYMJOQkE
他の男が出てくるとNTR嫌いの俺としては見るのが辛くなる
279名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 20:54:41 ID:e6nH8Q1i
>>277
俺は単純に嫉妬というより人間関係の泥沼化の方が楽しみだから十分ありなんだけどな
280名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 21:12:14 ID:+1FNmyjx
>>276
ありがとうございます。

作者様の許可が下りたので早速うp
傘 ichi32903
281名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 22:31:32 ID:+1FNmyjx
よく見たら背景真っ黒なシーンが長すぎ…
サンプルも見つかったので背景足してみました。
傘 ichi32913
282名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 22:45:51 ID:ASQi5UP7
>>277
単純に見たくない人は無視するだけだから良いと思う。
無視するからどこでも良いから判るように書いておいて欲しい
「英知は…まだ未知数だな」
「未知数…ですか」
「まあな、あいつとは出会ってからまだ何日も経ってねえからな」
「そうですか…」
ちょっと安心しました。
ですが、まだ油断は禁物…
「で、陽子の方は…」
「………」
緊張の一瞬…
「守りたい…かな」
 ドオオオォォォ…ン
 K・O!
「はあ…」
終わった…見事に終わりましたよ、私の初恋は。
少し前に、不撓さんが大槻さんと付き合っている事を匂わせる発言がありましたが…
最後の希望も今ので打ち砕かれました…それこそ完膚無きまでに。
残念な事に不撓さんの心には私の入り込む余地は無さそうです。
不撓さんはきっと、大槻さんの事を愛おしく思っているハズです。
不撓さんの表情や話し方を見れば…なんとなくわかりました。
そう言えば誰かが『初恋は実らない物』と言っていました。
不撓さんと大槻さんは相思相愛なんでしょう、きっと私が出会うよりも前から。
既に出来上がってるカップルを引き裂いてでも幸せになりたいとは思いませんし、私なんかでは引き裂くのはきっと無理です。
だから…
「あ、兄上っ!探しましたよっ!」
私はさっき『私も微力ですけど手伝います』と言いました。あの気持ちは嘘ではありません。
だから私は全力を尽くしましょう…不撓さんの平穏な日常を取り戻す為に。
私は不撓さんが大好きな…友達だから。
きっとそれが…不撓さんが一番幸せになる方法ですから…
「英知、いつから居た?」
「たった今兄上を見つけた所です」
ならば…英知さんを何とかせねばなりません。
どんな事情があるにせよ、他人の恋路を邪魔する奴は…馬に蹴られてもらいますっ!
「天野様」
激辛専門店『ギルティ』を出た時に、英知さんから呼び止められました。
「何ですか?」
考え事をしていたせいでしょうか、少し投げ遣りな返事になっていました。
「…これ以上、兄上に近づかないで頂けませんか」
あちゃぁ…やっぱり気を悪くしたようです。
今の英知さんの言葉には殺気が込められていました。
「どうゆう意味でしょうか?」
今度は極力優しそうな声で聞き返します。
たぶんこれなら…
「これ以上兄上をたぶらかすな、とでも言い換えましょうか?」
…何故か逆効果っぽいです。
英知さんは一見笑顔に見えますが、むしろその笑顔が怖いです。
ですが、不撓さんの平穏のためにいつかは対峙しなければならない相手です。
不撓さんをたぶらかす気はありませんが、離れた場所からではお手伝いに支障が出ます。
その…友達としては避けるべき事です。
ここは心を鬼に変えましょう。
天野面…冷血!
私の顔は瞬時に感情から離脱し、極めて無表情に固定されます。
「お断りします」
「…くっ!!」
逆に英知さんの形相が一気に変化しました。
正直に言って果てしなく怖いです…まるで親の仇にでもなった気分です。
ですが…この程度で私の表情は崩れません。
こんな所で引いてしまったら、私はきっとこの人に一生勝てなくなりますから。
「いい気にならないでくださいよ…今は証拠が無いのでこのまま引きますが。
動かぬ証拠が見つかり次第、貴方を八つ裂きにします…」
引きません…ええ引きませんともっ!
…今ちょっとだけ決意が揺らぎましたが。
とにかく…ここは後々のために少し挑発しておきましょう。
「八つ裂きですか…面白い事を言いますね」
こっちにとっては冷や汗モノですが。
「脅しだとでも…?」
さらに殺気が強まりました…
天野面…笑い。
「いいえ、その点英知さんはとてもわかり易い人ですね」
極めて挑発的に、限りなく嫌味ったらしく言い放ちます。
これに関しては自信満々に言えます。
この人が本気で私に殺意を持っているのなんて、手に取るようにわかりますから。
…悲しい事に。
「………」
「………」
少しの間黙り込んだ後、英知さんは黙って不撓さんの元へ向かいました。
とりあえず挑発してみましたが…成功でしょうか?
たぶん当分の間、英知さんは冷静な思考はできないハズです。
隙が無いのなら隙を作る…セクシーコマンドーの極意です。
さて、私もそろそろ帰りましょうか。
 ペタッ…
「…あれ?」
…と、ここで私はようやく、自分の腰が抜けてる事に気が付いたのでした…
ガチャン…
「ただいま…」
お母さんは…居ないみたいですね。
私の家は三人家族です。お母さんとお父さん、そして私。
両親は共働きでお父さんは昔から仕事一筋。
ですから今は実質上お母さんとの二人暮らしです。
ですが昔…今からだいたい三年前は…いえ、今は気分が暗くなる事は避けましょう。
それはそうとお母さん…友美は産まれて初めて学校をサボりました、だが私は謝りません。
この行為がいつか誇りに変わると信じているからです。
…良し、気分転換終了。
お母さんは基本的に家事をしない人です、今の内に買い物と洗濯をして夕御飯も作っちゃいましょう。
今日はお母さんが帰ってからは、家事をしたくありませんので…

 ガチャン…
「たっだいまー」
…お母さんが帰って来たみたいです。
「良い匂いするじゃない、今日のご飯は何なの?」
「お母さん、飲みましょうっ!」
「…へ?」
「今日の分の家事は終わらせました。お酒もおつまみも用意しました」
はっきり言って…今日は酒でも飲みたい気分です。
「………」
「………」
「…何かあったの?」
「失恋記念日ですっ!」
「良し、今日は飲むわよっ!」
「はいっ!」
…こうして私は産まれて初めてお酒を口にしました。
 ジリリリリリリリ…
私はお布団から手だけを出して、目覚ましを探します…
 パチンッ
六時四十五分ですか…そろそろ起きて朝御飯を作らなくちゃ…
 ガバッ…
昨日は確か…お母さんとお酒を飲んで、二人で不撓さんの悪口を言って、
その後ペンタゴン(アメリカ国防総省に非ず)の美しさについて議論して…
意外な事に頭はスッキリしています、一応は昨日ベットに横になった記憶もありますし。
…本当に私はお酒を飲んだのでしょうか?
まさかと思い食卓に向かいましたが、やっぱり酒瓶が何本か散乱していました。
…とにかく片付けてしまいましょう、話はそれからです。
「友美、おはよ」
「お母…さん?」
一瞬、不思議時空にでも迷い込んだかと思いました。
普段は私が起こさない限り決して起きないお母さんが、私よりも早く起きているのです。
「外道照身霊波光線っ!…汝の正体見たり、前世魔人っ!」
「ば〜れ〜た〜か〜…って、何やらせるのっ!」
「このノリの良さは本物のお母さんですね…」
「あたしゃ偽者かいっ!」
お母さんの場合は本当にありそうで怖いです。
「それはそうとして、どうしてこんなに早いんですか?」
「酒よっ!」
お母さんらしき人はビシッと決めポーズをとりました。
この偽者さんはお母さんの真似が上手です。
「………」
「………」
「冗談はさて置き、どうしてこんなに早いんですか?」
なんだか最近、お母さんをあしらうのが上手になってきたような気がします。
「だから私ってばお酒が入ってる日の方がさ、安眠できる分だけ朝はシャッキリさんなのよ」
「…そうなんですか?」
かなり疑わしいのですが。
「そうよ〜、酒臭くなって帰ると友美が怒るから、あれだけ飲んだのは久しぶりだわ」
確かに…ずっと前に小一時間ほど説教した記憶があります。
「友美、頭は痛くない?」
「いえ…大した事はありませんが」
「友美、あなたは強いわ…下手したら私よりも…」
そう言いながらお母さんはどこか遠い場所を見据え始めました。
どうせお酒の話でしょう、なんだか嬉しいような嬉しくないような…
でも確かに噂ほど二日酔いはありません。
いえ…はっきり無いと断言できる程です。
「どうしたの、そんなに複雑な顔しちゃって?せっかくお母さんが褒めてあげたのに…」
「むしろ褒められない日の方が少ないのですが…」
「はうぅ…お父さん、友美が不良になっちゃったよ…」
「はあぁ…」
思わず深いため息がでます…
どうして私はこんな親の元に産まれたのでしょうか…
 ピーンポーン…
「お客さん…でしょうか?」
お母さんがジェスチャーで心当たりが無い事を伝えます。
妙ですね…こんなに朝早くから家に訪ねてくる人なんて、新聞配達さん位なんですが…
 ガチャ…
「あっ天野さん!?」
玄関を開けると、そこには大槻さんが居ました。
それも…何故か驚いた表情で。
「大槻さん!?どうしてここに?」
 ガシッ!
「勇気君は何処っ!」
「………」
何が起きたのかを理解するよりも早く、天野面冷血が発現していました。
私は…どうやら大槻さんに胸倉を掴まれているみたいです。
そして大槻さんの言葉から察するに、不撓さんが行方不明になったのでしょう。
「………」
「………」
…いけない、思考が停止していました。
不撓さんが行方不明…マジですかっ!
いや…落ち着きましょう、不撓さんが生きているのなら星が居場所を教えてくれるハズです。
それよりも今はこの場をなんとかするべきです。
「………」
「………」
凄まじく険悪な雰囲気です…
さっきから天野面冷血が発現しているせいで、大槻さんと睨み合いになっています。
卓を囲っている時は役に立つ技ですが、こんな時はむしろ邪魔です。
「聞こえなかったのかな…隠すと為にならないよ…」
大槻さんの顔が奇妙に歪みました。
全身が怒りを表現していると言うのに、顔だけが笑い始めたのです。
その顔は…普通の怒りよりもむしろ怖いです。
どうして私の周りには下手なやくざよりも怖い人が集まるのでしょうか。
「………」
「………」
駄目です、いいかげんに限界です。
天野面…笑い。
「すいません…ちょっといいですか?」
「………」
とりあえず、大槻さんを刺激しないように腕を外します。
相変わらず凄い勢いで睨まれてますが…
…で、とりあえず天野面を解除します。
この顔のままじゃ本気で喧嘩になりますからね。
…しかも私の腕っ節じゃ勝ち目ありませんし。
「…?」
…案の定、大槻さんは怪訝の眼をしてます。
当然でしょう、自分でも気味が悪い程の百面相ですから。
…え?今の私はどんな顔をしてるかって?
普段の私がこんなプレッシャーを跳ね除けれる訳がありません…
…当然、泣き顔です。
「わわっごめん、私そんなつもりじゃ…」
 ペタッ…
もう駄目です、緊張の糸が途絶えました…
「天野さん、落ち着いた?」
「はい…なんとか」
まさに地獄の一時間でした。
お母さんを送り出して(追い出しての方が近い)。
天野家内の人間一人隠せそうな場所を全て案内して。
そして今、ようやく落ち着いて二人でお茶を飲んでます。
現時刻はきっかり八時、この際遅刻は仕方が無いですね。
「一応確認するけど、今回の件に関しては天野さんはシロなんだね?」
「私が言うのも何ですが…そうです」
「………」
「………」
ううっ…なんかまだ疑われてるっぽいです。
「天野さん、昨日は何処に行ってたの?」
「昨日…ですか」
さて…どう答えましょうか。
今は大槻さんと敵対するのは得策ではありません。
まあ…これから敵対する予定も無いのですが。
とにかく、一つでも大槻さんが持つ情報と矛盾する事を話すのは危険です。
しかしこんな状況になった以上、私が持ちうる手札はせいぜい三枚。
『占星術』『結界封じの魔剣』『不撓家の裏事情』…
この限られた手札を軽々しく開く事は避けねばなりません。
「不撓さんと一緒に黄道町に行っていました」
「そう…」
ここまでは大丈夫そうです。
反応から察するに、不撓さんもここまでは大槻さんに話していたのでしょう。
「そこで何をしていたの?」
ここは正直に話すべきか…それとも…
いえ、ここは軽々しく話すのは危険です。
不撓さんがどこまで話したのかがわかりませんし、私の独断で話せるほど軽い話でもありません。
ならばそれを疑われずに正当化できる理由は…
「すいません、不撓さんから口止めされていますので…」
多分これがベスト…あの話は軽々しく話せる内容じゃありません。
それ故に不撓さんが話していても話していなくても矛盾は生まれないハズです。
「まあ、それはそうよね…」
ここもセーフ。ただどこまでかは断定できませんが、大槻さんも何かを知っていそうです。
もっとも、今はそれを追及する場ではありません。
「じゃあ最後に、どうして勇気君と一緒だったの?」
さて…多分これが最大の難関です。
なんとか占星術を伏せながら大槻さんを納得させねばなりません。
しかし下手な事を言って、不撓さんと大槻さんの仲に亀裂を走らせてもいけません。
…本当に難問ですね。
ですが迷っている時間もありません。ここから先は話しながら考えます。
「実は、不撓さんから一緒に来て欲しいと頼まれたんです」
「勇気君が?どうして?」
当然のように聞かれます。
ここが生死の分かれ道、どうにか矛盾の無い理由は…
「不撓さんは…心配だったんだと思います」
「心配?」
「はい、大槻さんを余計な事に巻き込むのがです」
「私を…!?」
大槻さんの思考が疑惑から少し外れました。
ですが油断は厳禁…
「ですが一人では客観的に物事が判断できないかもしれない…そう考えたのではないでしょうか?」
「そうなの…かな?」
かかったっ!
「はい、あくまで推測ですが…」
あくまで推測ですので、後で何と言われても当方は責任を負いかねます…
「勇気君…水臭いよ…」
「………」
なんとか誤魔化せたようです。
「その…ごめんね天野さん、疑ったりして」
「いえ、平気ですよ」
大槻さん…あなたはむしろもう少し他人を疑う事を覚えるべきです。
絶対に口には出しませんが…
「それで…話してくれませんか、今の状況を」
「うん…」
とにかく情報を引き出しましょう、手札は多い方が有利ですから。
「なるほど…」
「うん、だから一緒に居なくなった英知ちゃんが何か知ってると思うんだけど…」
おそらく英知さんが誘拐したと考えるのが自然ですね。
流石にちょっと挑発しすぎたかもしれません…
ごめんなさい不撓さん、責任の一端は私にあるかもしれません。
「わかりました、私も探すのを手伝います」
「本当に!?」
大槻さんは意外そうな顔をしましたが、私も関係者です。
ここで傍観する選択肢はありません。
「まあ、着替えてからですけど…」
ちなみにパジャマ姿で探しに行く選択肢もありません。
「ありがとう、じゃあ私はもう行くね」
「はい、見つけたら連絡をください」
「うん、わかっ…」
…と、急に大槻さんが考え込み始めます。
「どうしました?」
「どうやって連絡しようか?」
「あっ…」
そうでした。私も一応携帯は持っていますが(アドレス帳登録数4件、『自宅』『母』『ヤの付く職業の事務所』『近所の雀荘』以上)、
大槻さんの番号は知りません。
大槻さんも携帯を持っている可能性は高いとは思いますが、私の番号を教えた覚えはありません。
「天野さん、携帯持ってる?」
「はい、一応は」
かなり旧式ですけどね…
「せっかくだし番号教えてくれない?」
「あっ…はい」
あぁ…初めてまともな番号ゲットです。
と…とにかく落ち着いて…変な印象与えないように…
「天野さん…手、震えてるよ」
「そそっ…そんな事なかとですっ!」
「大丈夫かな…」
「じゃあ、何かわかったら連絡をお願い」
「はい」
 …ガチャンッ
さて、ようやく一人になれましたし、そろそろ始めますか…
私の家の屋根の上には、足場が増設されています。
私がこの場所に来る理由は二つ。
一つは洗濯物を干したい時。
もう一つはもちろん…星を観る時。
『占星術師にとって、星空は地図…運命地図とでも呼ぶべき代物』
昔お師匠様がよく言っていた言葉です。
『友美、私の弟子になってはくれないかい?君ならきっと…どんな能力を得ても決して道を誤らない』
物知りで…優しくて…暖かくて…それなのに決して曲がらない人…
『海は昔から苦手でね…日光は厳しいし、先ほどからやらしい視線をかんじるよ…』
綺麗で…背が高くて…胸が大きくて…それなのにキュッと締まってて…うぅ…
『私は所詮血を吸う鬼だよ、人の…ましてや母親の真似事なんて決してできないよ』
それで…意外と照れ屋さんでした。
『ゆっ…友美の…母親ですっ!』
そういえば授業参観に参加してもらった事もありましたね。
あの時は本当にお母さんが二人になったみたいで楽しかったです。
『なにおうっ!友美のお母さんは私よっ!』
まあ…ちょっとした手違いで本当に二人になってたんですが。
たった一年間でしたが、それはとてもとても楽しかった日々で…
『私が…私が死んだりするものか』
…やめましょう、まだお師匠様が死んだとは限りません。
それに今は感傷に浸っている場合でもありません。
私は天を仰ぎ…星を観る。
無論普通に見る訳ではありません。
『感覚としては、霊魂や魔力を観る時に近い』
お師匠様はそう言っていました。
人が持ちうる感覚は全部で8つ、占星術師に最も必要とされる感覚はその内の一つ『第六感覚』。
星を観るのに必要な物は可視光線ではなく、その輝き。
ですがここまでは比較的簡単な訓練で身につきます。
本当に難しいのは、その輝きが司る運命を見極める事です。
人の運命は絶えず流動しています、それ故に星が持つ運命は非常に曖昧かつ不安定、
未来を予知する事はそれだけ大変な事なのです。
これが超一流と呼ばれる占星術師ですら、その的中率はせいぜい6・7割と言われている理由です。
ですが、現在を見通す事はそこまで難しい話ではありません。
最低でも『おおよその位置』『体調』『運気』程度なら今の私にも知りえるハズです…
ハズなんですけど…
「妙ですね…」
さっきから不撓さんの運命が全く観えません。
いくらその時の調子によって観え方が左右されるとはいえ、この状況は異常です。
まさかとは思いますが…死んだのでしょうか?
いえ…そんな不吉な事を考えるのは止めましょう。
仮に生きているとすれば…考えられるのは遮断結界ですね。
遮断結界とは結界の一種で、主に盗聴や遠視を防いだり身を隠す目的で使われます。
使用者は主に『魔術師』『退魔士』そして『陰陽師』。
ためしに英知さんの方も占いますが…得られた情報はゼロ。
いくらなんでも不自然すぎます。
ですが本来遮断結界とは出来うる限り自然を装う物、不自然を感じた結界なら探す方法はあります。
私は机から地図を持ち出し、今度は町について占います…
すると…案の定、町の一角に位置するマンションの情報が不自然に抜け落ちていました。
とりあえず場所はほぼ確定しました。後は救出作戦を練るだけですが…
普通に助けても…また同じ事を繰り返すだけです。
それに英知さんも馬鹿では無いでしょう、おそらく回を重ねる毎に手口は巧妙になっていきます。
ならば今の内に事件の元凶を…断つ!
…もっとも、そんな方法があればの話ですが…
とにかく考えましょう。私が持ちうるあらゆる手札を駆使すれば、あるいは…
あるいは…
………
駄目ですね、英知さんに身を引かせる策なんて浮かびません。
私が英知さんよりも勝っている面なんて、それこそ占星術位の物です。
ですが英知さんが外界から遮断されている以上、占星術は役に立ちません。
せめてヒントでもと、先ほどから何度も天を見上げているのですが…
…あの星は!?
見慣れない星が観えました…いえ、見慣れなくとも私はあの星を知っています。
知っていて…頭が理解するのを避けているだけ。
あの星はたしか…
『英知には実戦経験が圧倒的に少ない。奇襲を用いれば、あるいは届くかもしれんな…』
見つけた…一筋の光明が。
名づけて、『巨雷鬼作戦』。
 ガリッ…ガリッ…
魔石を削り…粉にします。
お師匠様から頂いた大切な品ですが…この際四の五の言ってはいられません、
次に粉にした魔石を私の血と混ぜ合わせます。
血は回路、魔石は電池の代わりとなり、一つの魔術を形成する…
これが…最も簡単な魔法陣の描く墨汁。
起動のスイッチは…本来は魔法陣を描く際に設定するらしいのですが、私はその方法を知りません。
ならば私に出来る起動方法は二つ。
魔力を流し込むか、誰かの血を浴びせるかです。
生きている者の血には生命力とでも言うべき物が宿っているそうです。
魔法陣はそれらに反応し、魔術を発動させます。
簡単な…それこそ見よう見真似が通用するほど簡単な魔法陣を書き込んでいきます。
テストは先ほど済ませました、これで全ての準備が終ったハズです。
 ガチャ…
私は…家を出ました。
 怖い…逃げたい…
さっきから頭のどこかがそう喚いています。
ですがこの策は逃げ腰では決して成り立たない策。
いえ…策と呼ぶのすら似合わない必殺技。
ふと…不撓さんの顔が思い浮かびました。
占星術の話を聞いて、初めて笑わなかった人で…
実は去年の体育祭の時から気になっていた人…
けど、決定打になったのはほんの数日前の事。
お師匠様は言っていました。
『私の居る世界はね…知っている人はとことんまで信じて、知らない人はとことん信じない、そんな世界なんだ。
占星術のように、明確な証拠を見せれない物は特にね…』と。
ですが不撓さんは違っていました、知らずに信じてくれたのです。
『俺は天野を信じたいと思う』
その言葉を聞いた瞬間、世界が崩れ落ちるような感覚を覚えました。
『私が今までやってきた事は間違ってなかったのかもしれない』『この人は天野友美を信じてくれたんだ』
そんな声が聞こえたような気がしました。
変な事を言う人だと邪険にされた事、自作自演だと疑われた事、訴えれば訴えるほど孤立していた事…
そんな記憶がフラッシュバックのように蘇って…気が付いたら私は大泣きしていました。
私の初恋の人を…私が初めて好きになった同年代の男の子を…
不撓さんを…助けたいっ!
たとえ女の子として好きになってもらわなくても良い。
だけど…せめて嫌いにだけはならないでほしい。
私が心から安寧できる人を再び失ったら…私は今度こそ駄目になるかもしれません。
だから…
 いやだ…いやだよぅ…
だから異常にならなきゃ駄目、狂気にならなきゃ駄目です。
私が失う物は…何も無いじゃないですかっ!
気が付けばギュッ…と、不撓さんのジャンパーを強く掴んでいました。
不撓さんから借りて…たぶんもう返せないジャンパー。
ほんの少しで良いです、どうか私にLUCKとPLUCKを…
「見つけましたよ…天野友美…」
天野面…冷血!
マンションからほど近い空き地にて遭遇…
英知さん…勝つのは知略走り、他人を出し抜ける者…
その事を…教えてあげますっ!
「死合い…ませんか?」
「死合い?」
「はい、負けたら不撓さんから手を引いてもらいます」
まずは予定通りに切り出します、英知さんとて考えなしに受けるとは思えません。
ですが、私は既に英知さんを挑発する文句を考え付く限り考えてあります。
後は…出たとこ勝負ですっ!
「ふっふっふっふっふ…」
…笑った?
「ええ…良いでしょう…」
英知さんの殺意が膨らんでいるのがわかります…
ですが…引く訳にはいきません、恐れる分けにもいきません。
この莫大な殺意を…逆に利用しなくてはなりません。
逆に考えるんです、感情に支配された人間は…むしろ先の行動が読み易い。
「ちょうど貴方を…」
…来るっ!
「八つ裂きにしたかったのですっ!」
 シャッ!
「くっ…」
英知さんの腕から茨が伸び、私の体に掴みにかかります。
初撃は回避…ギリギリでしたが。
想像以上の速さ、想像以上の迫力…ですが、想定内の一撃でした。
一昨日の昼に新校舎の屋上からあの攻撃を見ていなければ、きっと今ので殺されていたでしょう。
「このっ!」
2撃目…回避。
やはり戦闘能力において天野友美は一般人、反撃に移ろうとした瞬間に捉えられるでしょう。
…ですが、そう考えているのはおそらく向こうも同じです。
「はあぁっ!」
3撃目…回避。
占星術師の本分が星を観る事なら、天野友美の本分は人を観る事。
英知さんの視線が、表情が、汗が、仕草が…私に心を見せてくれます。
「あああぁぁ…」
4撃目…回避。
故に…感情に支配された人間は、決して私には届かない。
「死ねぇっ!」
5撃目…回避。
隙を見て少しづつ前進します…
実力差は歴然…故に勝負は一瞬、故に勝負は短期決戦。
英知さんが警戒を始めるのが早いか…勝負が終わるのが早いか…
「ちょこまかと…」
6撃目…回避。
見ていたんですよ…あなたは遠・中距離では茨を伸ばし絡め取り、
近距離では茨をドリルのように集め、突き刺す動きで応戦する。
そう…ちょうど今のように。
「するなあああぁぁぁっ!!!」
茨は寄り集まり、正確に私の胸を目掛けて肉薄します…
…私の予定通りに。
7撃目…避けない。
「えっ…!?」
英知さん…あなたの敗因は4つ。
事前に戦い方がわかっていた事。
…これが無ければそもそも作戦が立てられませんでした。
実力差が開き過ぎていた事。
…時に奴隷は皇帝を刺す、覚えておいた方が良いですよ。
あなたが感情的になり過ぎていた事。
…おかげで攻撃が読み易かったです。
そして…私の占星術が、私自身の死を告げていた事。
 ドンッ…
これで終わり…
確実に完全に…私の心臓に突き刺さりました…
「何っ!」
刺した方が驚き、刺された方が笑う。
当然でしょう。今まで完璧に回避し続けた相手が、今になって急に回避を止めたのですから。
私の血が辺りに飛び散ります…当然、ジャンパーの裏に書き込んだ魔法陣にも。
構成された魔術が発動し、魔法陣が浮かび上がります…
「しまったっ!?こいつ魔術師…」
今更気が付いても遅いです…
 ゴオオオォォォ…
火柱が上がる…私と英知さんを巻き込んで…
ですが、熱さは感じません。
それも当然、これは非生物にのみ作用する…非殺傷性の炎ですから。
「何を…何を考えているのですかっ!貴方はっ!」
炎が収まり、立っているのは英知さんただ一人。
ですが…勝ったのは私です。
お互いにみっともない格好ですが…まあ、良しとしましょう。
「自分の命と引き換えに…非殺傷性の炎を浴びせる為に…」
泣いてる…英知さんが泣いてる…
良かった、この子はまだ狂っていない。
「でも…負けたとは…思ったでしょう…」
まだ…喋れました。
「それは…」
そう…狂っていたのは私の方…
狂気の策…暗黒の策…
愛する人を思う余り…狂っていたのは私の方…
「だからって!」
「命はもっと…粗末に…扱う…べきです…」
「貴方はっ!」
「丁寧…に…扱い…すぎ…ると…澱み…」
「喋らないでっ!」
私の言葉は…叫びによって遮られました…
正直…もうそろそろ口が動き辛くなってきた所です…
「こんな勝ち逃げ、許しませんからっ!」
そう言うと…英知さんは私の胸に手を置き…
「生命の息吹よ…」
手から…光が漏れ始めました…
でも知ってますか…私は他人の心を推し量るのが…得意なんです…
そんな顔じゃ…患者さんが不安になりますよ…
「死んでは駄目です…私が許しません…」
そうだ…謝らなきゃ…この人の幸せを…邪魔した事を…
「………」
なんだ…もう口が動かない…
急激に…感覚が希薄になっているのを…感じます…
「お願い…お願い…神様っ!」
でも…こんなに優しい子に…看取ってもらえるのは…きっと幸せな事です…
…欲を言えば…不撓さんに…
…真夜中の…海に…漂っています…
…とても冷たくて…とても広くて…ゆらり…ゆらり…
…誰かが…私の…手を…取った…ような…気が…しました…
297不撓家の食卓 おまけ ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/24(月) 23:12:16 ID:n+WJ5kA9
「そろそろ約束の時間かな…」
「お師匠様?」
「友美、今日の魔術の講義はここまで。私は少し出かけてくるよ」
「あの…どちらへ?」
「そうだね…友美と同じ位の女の子が危険な目に遭いそうなんだ、私はその子を守りに行くよ」
「そうですか…」
「そんな顔をしないでほしい、行き辛くなるよ」
「あのっ、お師匠様」
「なんだい?」
「お師匠様の運気が良くありません。きっと何か悪い事が起こります」
「………」
「………」
「友美にも感じられたか…」
「あの…あくまで私の占いですから…」
「いや、友美はもう一人前の占星術師だよ」
「そう…ですか」
「そうだ…友美、これを渡しておこう」
「これは…?」
「魔力が込められた石…『魔石』と言うんでけどね、それを使って作られたイヤリングだよ」
「これって、お師匠様の…」
「いいんだよ、それは卒業証書の代わりなんだ。そんな物しか私には用意できないけどね…」
「いえ、とても嬉しいです」
「さあ私はもう行かなくては。待ち合わせの相手が不機嫌になる」
「あの…どうかお気をつけて…」
「友美、あまり感情的になりすぎるのは…」
「やめてもらおうか師匠ヅラするのは」
「友美…?」
「言ったはずです、今の私達はただの師弟ではなく…」
「………」
「私の…もう一人のお母さんです」
「…そうだったね」
「だから…心配するのはいけない事でしょうか?」
「いや…そんな事は無いよ」
「本当にお気をつけて…帰って来てください」
「そういえば私は、君に名前すら教えていなかったね…
マリー・クロード・ジェンティーレ。どうか覚えておいてほしい」
「…はい」
「それじゃあ、行ってくるよ」
「帰りを…待ってます」
「そうか…なら大丈夫だよ、満月の夜は吸血鬼の力は最も強まる」
「それでも…」
「私が…私が死んだりするものか」
298不撓家の食卓 おまけ ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/24(月) 23:13:31 ID:n+WJ5kA9
お久しぶりです、シベリア!です。
初の天野視点で描いた第七話はいかがでしたか?
この物語も間もなく一段落がつきます。
どうか最後までお楽しみください。
…なお、今回は次回予告は無しです。
それとご意見ご感想ご要望等、お待ちしています。
299名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 23:36:46 ID:SvmcEj10
お疲れ様です。魅力的な変人狂人ばかりで楽しいです。
天野さん死なないで!
300名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 00:00:37 ID:C2sBfSKl
第一回の時点で
長杉、登場人物が把握できずに挫折しました。
バカでスイマセンorz
301名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 00:23:37 ID:C+J4Ugzf
ざわ………ざわ………ざわ……………
302名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 09:19:42 ID:i0r5DKM2
>>300
心配するな。俺もだ。
303名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 09:38:11 ID:P3KAYsXI
>>268
だれも感想書いていないのでカキコ
act3の「わたしが、どれだけ、言おうと思って〜断られるのが怖くて言い出せない、」をいっぺんに表示するのはいいけど
読み終わらないうちに改ページしてしまうのは問題。最後に\でも入れるとよいかと。
あとはgayaが短いサイクルで途切れるのが気になるってことくらいかな。
304名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 10:23:58 ID:elALgHXc
優柔読み終わったわー

先輩の刺しエンドしかなかったのか OTL
305名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 11:54:15 ID:Mkk2hHE3
妹愛のエロ外伝をずっと待っているのは俺だけではないはず
そして素っ裸で待機しているのも俺だけではないはず!
306名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 12:19:35 ID:CpZ1LDvg
優柔の先輩ハッピーENDを俺は待つ・・・
先輩には幸せになってほしいんじゃよ
307名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 12:30:23 ID:RyQz3TgG
ゆうくん(最低)とくっつかなくて済んだだけま
308名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 12:38:43 ID:jozGORWG
>>307
駄目な男のケツを引っ叩いていい男にするのがいい女なのさ。
その辺は椿ちゃんはちゃんとわかってたから調教したんだよ。え、調教?
309『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/25(火) 13:16:51 ID:GunbJYiW
結局。
今日は一日中志穂の隣りにいた。何時か目が覚めるんじゃないか、なんて淡い期待を抱いていたからだ。
お嬢は今日は特に行動を起こさない。いったいなにがしたいんだ?
「おらおらおらぁ」
志穂の頭を小突く。
グリグリグリ
こめかみアタック!
「………」
返事がない。ただのしかばねのようだ。
いやいや。まだ死んでないって。一応。
「ほら、起きろよ。」
ムニムニ
頬を摘む………まるで氷のように冷たい。本当に死んでるように思えてきた。
時間が止まるってどんな感覚でいるんだろ。寝て起きたら何十年も経ってるなんざ軽い浦島太郎だ。
「ふはははは!またHな悪戯しちゃおうゾ!!」
「………」
あいもかわらず無反応。
Hな悪戯か………
今思えば、志穂とは体の交わりはあったけど、一度も真面に「好きだ」「愛してる」なんていった事が無いような気がする。
………恥ずかしかったんだろう。俺みたいなタイプの人間は言葉より行動で表すからな。
今になってみて、それが二度と言えないかもと思うと後悔してもしたりない。真剣な空気は苦手だから、恥ずかしいからって、いつもおちゃらけて逃げてきたのかもな。
「Hey!Girl!起きなヨ!お前に一つ、物申す!!」
い、いかん
「俺はなぁ……俺…は…」
ヴィジョンが乱れてきちまった。まったく、画質の荒い眼球だ。
「……起きろって……じゃねえと…意味ねえじゃねえかヨ………」
たとえ感情を奪われようが、奴さんは無限に沸いてくる。人間としての運命さ。
「ちく……っしょぉ…………すまんな。」
310『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/25(火) 13:17:53 ID:GunbJYiW
そう言って志穂の濡れた顔をぬぐい、誠心誠意のキスをして部屋を出ていった。その唇さえ、機械のように冷えていた。






自分の部屋へ向かう途中、いかにして志穂を助けるか考えてみた。が、時間なんて普通の人間が供給できるもんじゃない。
平凡の底辺である俺に、そんな神懸かり的なことできっこない。
結論。あきらめろ……と?
諦めなければなんでもできるなんてただの戯言。失敗からの逃避だ。「諦めるな」なんていいながら「諦めが肝心」という言葉もある。
「矛盾もいいとこだネ。」
そう呟きながら、自分の部屋のドアノブに手を掛けると………
バチッ!
全身に電撃が走った。
いやいや。
一目ぼれした時とかに表現するアレじゃなくって。
本当の電撃。
「あ……う…う?」
訳が分からぬまま、蹲るようにして気を失った。
311名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 18:02:48 ID:pgPxmsmu
>298
天野さん死なないで!
それにしても皆心根は優しい良いコ達なんだな。
312沃野 Act.17 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/25(火) 20:13:58 ID:+2wn3rLR
 ドンッ
 少し離れた場所から鈍くて重い音が響いてきます。
 ズベシャァッ──と。一瞬の間を置いて、アスファルトに叩きつけられる音も。
 それは人体が奏でたとは到底思えない、激しい異音でした。
 綾瀬胡桃、死亡確認。享年十六歳。いえ、十七歳ですっけ?
 まあ、どっちでもいいですね。別に知りたくもありませんし。
 じゃあね、ばいばい、牝犬さん……頬に笑みを残したまま、心の中で呼びかけます。
「っ!? なんだ、今の?」
 先輩は驚かれたのか、首にビクンと痙攣が走りました。
 強張った表情──私にかじりつかれたまま、訝しそうに目を眇める。
 やがてその疑問に答えるかのように、人々の切羽詰った叫び声が聞こえてきます。
「事故だ! 誰かがトラックに撥ねられたぞ!」
「見たよ、女の子だった。急に飛び出してきて……ほら、あそこ!」
「あれか!?」
「うげ」
「おいおい、あれって生きてんかよ。まさか死んでんじゃ……」
「撥ねられたトコがあっちなわけ? うわあ、メッチャ飛んでるし」
「ほらー、足とか腕が変な方向に曲がってるー。ぐろーい」
「ダメだな、こりゃ……死んでるだろ、もう」
「急に飛び出したって、自殺かねぇ?」
 ざわざわ、ざわざわ。
 あらゆる言葉が飛び交い、混乱を極めています。
 パシャパシャと、フラッシュを焚いてカメラか何かで撮っている様子が遠目からも窺えました。
中には「おうマジマジ、目の前で女の子がトラックに吹っ飛ばされてさぁ、すっげー飛んでた。それがなー、
結構可愛い子だったよ。もったいねーよなぁ」と携帯に吹き込んでいるとおぼしき声もあります。
 ふむ。全校一だなんだと謳われても、こうなれば見世物、晒し者に過ぎませんね。世はげに無常です。
「事故……? トラックって、交通事故? 誰か撥ねられたのか?」
 独り言でしょうか。呟きながら、先輩は渦中へ向けて歩き出そうとします。
 慌てました。もし顔が原型を留めていたり、留めてなくても服装とかで判別されたら困ります。
「やめましょうよ、先輩」
 服の裾を引っ張って止めます。
「しかし……」
「私、見たくないですよ。事故に遭った人なんて」
 怯えた顔をつくり、ぶるっと震えてみたり。
「人も集まっていますし、もう誰か通報しているはずです。私たちが今から行ってもできること、何もありませんよ」
「そりゃそうだけど」
「野次馬になっても仕方ないです。行きましょう」
 腕を離し、事故現場から遠ざかります。
 救急車のサイレンが夜空を震わせ、徐々に近づいてきました。
「大丈夫かな……」
 なおも後ろ髪が引かれるのか、何度も振り返る先輩。
 その目から隠れるようにして、さっき密着したときにこっそりポケットから抜き取った携帯電話を操作しました。
 電源OFF、っと。
 これで先輩のところに「さっき撥ねられたのは綾瀬胡桃」という連絡が入ることはありません。
「じゃあ、麻耶。話を戻すけど……」
「はい?」
「本当に、今日お前ん家って空いてるのか?」
「はい。両親はしばらく留守にしますから」
「そうか、なら、」
 泊めさせてくれ、と先輩は頼みました。
 もちろん、ふたつ返事で引き受けました。
313名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 20:20:22 ID:N3kHRkNZ

314沃野 Act.17 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/25(火) 20:21:44 ID:+2wn3rLR
 詰まるところ、予知夢でしょうか。
 こんなことを話すと笑われるかもしれませんけど、昔から私はそういうのが視えるタチなんです。
 未来がなんでも見透かせる、ってほど大仰なものではありません。ほんのちょっとだけ、断片的な未来の
情報を入手できる。ただそれだけの能力ですよ。
 ごく大雑把に、明日や明後日に起きる事柄の一部分が夢の中で視えて。
 それが「なぜ」起こるのか、だいたいの因果関係を把握する。
 つまりはその程度でしかない。自由自在に予知できるわけじゃなし、さして便利ではありません。
 まあ、まったく役立たずということもなく、時には有用だったりしますが。
 告白したとき、すぐには先輩にフラれないという見通しが立ったのも。
 綾瀬胡桃に蹴られそうになってよけてフラついたとき、先輩に抱き止められると分かっていたのも。
 先輩の携帯の番号を事前に手に入れることができたのも。
 私が先輩と無事結ばれるよう、あの牝犬を自滅へ追い込んだのも。
 少なからず、予知夢の力を借りていることは確かです。
 視えた未来を実現させるのにはどうしたらいいか、ヒント機能付きで教えてくれるんですから、カンペ
見ながらテストを受けるようなものです。楽勝とまで行かないにしても、まずまず堅実な成績が見込める。
 逆に、視えてしまった未来をどう回避するかも分かりまして、これもこれで役に立つことがあります。
 綾瀬胡桃に対して離脱宣言を出したのは、理由の一つとして自滅への誘い込みがありましたけど、もう一つ
大きな理由として、「あのあたりで一旦退かないと、彫刻刀で額に『犬』と彫られる」って未来が視えたからです。
それはさすがに勘弁願いたかった。
 で。「休み明けの夜、先輩に電話してこの公園へ呼び出すと、心配してストーキングしてきた牝犬がトラックに
撥ねられる」という俄かには信じがたい予知夢が視えていまして。
 実際こうして現実のものとなったんです。
 ふふふ……綾瀬胡桃さん、あなたがどんなに成績優秀で運動神経ばっちりで美人でスタイルが良くてもですね、
トラックの衝突には負けるってものですよ。
 先が視えないあなたに「よける、よけない」の選択肢はありません。
 すべて私の胸先三寸。

 これは、未来からの鉄槌です。

 そりゃあ私だって躊躇いましたよ。いくら憎き牝犬だからって、フラれたばかりのところをトラックにボーンと
撥ねられて道路に叩きつけられてグチャグチャのミンチだなんて、さすがに可哀想じゃないですか。
 だから、事故の最終トリガーとなるキスの深さ──なぜ先輩と交わす口づけの深度が事故に関係するのか、
こればかりは不明でしたが──を浅めにして、両足が砕けるくらいに留めようかな、と加減を考えてました。
 彼の体に抱きつく、直前までは。
 だってですねぇ……
 ぷんぷんとするんですよ! 先輩の体中から! あの薄汚い牝犬の体臭が!
 どう嗅いだって生半可なマーキングじゃありません。何度も何度も執拗に裸体をこすりつけ、大量に
体液を塗りつけなければここまで匂いが移るなんてことありえませんよ。
 先輩が浮気した? そんなまさかです。
 あの牝犬めが、強引に襲い掛かったに違いありません。まったくなんて狂犬でしょう。恥を知らないんですか。
 畜生にも劣る外道の行為です。少しは容赦を与えようと生温い見通しを立てていた私も考えを改めました。
 犬といえば私も先輩に依存してすべてを差し出す犬っころですけど、罷り間違ってもその手に咬みつく
ことはありません。なのにあの女は咬み放題。ふざけるなです。あんな女、道路で挽肉になるのがお似合いです。
 だから遠慮なく先輩とはディープなキスをかましてやりました。心の中で「死ね、牝犬め、死ぬ」と唱えつつ。
 とはいえ──本当に死なれてみると、なんだか憐れに思えてしまう私は感傷的でしょうか。
 死ねば仏とは昔の人も良いことを言ったものです。
 ですので、綾瀬胡桃さん。あなたが死に続けているかぎりは、私もあなたのことを「いいひと」だった……と
思って差し上げます。明日、訃報を聞いたときにはちょっぴり涙を流してあげてもいいです。
 死者に笞打つ真似は致しませんから。
 絶対に、墓の下から蘇ったりしないでくださいね。後輩からの切なるお願いであります。
315沃野 Act.17 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/25(火) 20:27:31 ID:+2wn3rLR
 家に到着してからもしばらくは事故のことが気に掛かっている様子の先輩でしたが。
 私が膝をついてベッドに腰掛けた先輩の股間へ顔を埋める頃にはもうどうでも良くなっていたみたいです。
 学校で授業を受けている間も、ああしよう、こうしよう、といろいろなプランを練っていましたので、
創意工夫を凝らして奉仕に励みます。発達の乏しい我が身ではありましたけど、試行錯誤を重ねるうちに
先輩は私のあばら骨のあたりに関心を抱かれました。
 なんでも「骨にこすりつけているかと思うとすごく興奮する」とか。
 よく分かりませんが、あばらとあばらの谷間に吐き出された粘液の生温かさはとても心地良かったです。
 私の方はまだ下腹部が回復しておりませんし、先輩もお疲れのようなので本格的な行為には及ばず、
だらだらいちゃいちゃと時間をかけて睦み合ってみました。
「もうこんな時間か……」
 そうこうするうちに時刻は深夜零時近く。明日も学校はありますし、そろそろ就寝した方が吉です。
 一緒にお風呂に入り、洗いっこして、同じベッドに潜り込みました。
「こうしてると、落ち着くな……」
 先輩は抱き枕でも扱うように私を両足で挟み、きゅっと抱き締めて囁きます。
 彼の心に平穏をもたらすことができるなら、それは私にとっても幸せです。
 そろそろ電気を消そう、とスイッチに手を伸ばしたら。
「あれ?」
 触れる前に電気が切れてしまいました。あたりが真っ暗闇に包まれます。
 なんだろう──停電?
 ちょうど消そうと思っていたところなので別に困りはしませんが、気になります。
 もぞもぞとベッドから抜け出します。
「すみません、ちょっと見てきますね」
「俺も付いていこうか?」
「いえ、先輩はゆっくりしてらしてください」
 懐中電灯を手に部屋を出て、薄暗い廊下をひたひたと歩きます。
 まずはブレーカーを確認。
 ……落ちてますね。なんででしょう。心当たりがありません。
 ま、とりあえずは上げておきましょうか。
 ちょっと高いところにあるので背伸びしないと手が届きません。
「うーん……」
 震える指先が先端に触れました。
 いざ跳ね上げようと指先に力を入れた途端、背後でごそっと音がしました。
 何か気配もします。
「先輩?」
 待たせたつもりはありませんが、焦れてしまったんでしょうか。
 振り返ってライトを向けます。
 ──目に飛び込んできた色は、黒。
 闇よりも艶やかで、光を反射して僅かに白く輝いています。
 髪? 先輩の? にしては、やけに長くてボリュームがあります。
 それも、床のあたり──想像していたよりずっと低いところに広がっていました。
 まるで湖。
 突っ伏すように顔を俯かせているので、その表情を窺い知ることはできません。
 先輩……じゃない?
「だれ!?」
 誰何の声を挙げたのと同時。
316沃野 Act.17 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/25(火) 20:28:07 ID:+2wn3rLR
 ヒュウッと足元で風が啼いて。
「──あがっ!?」
 鋭く冷たい感触が足首を貫きました。
 激痛。たまらず力が抜け、へなりと座り込んでしまいます。
 足が攣ったのではありません。懐中電灯を照らすと、ドクドクと黒っぽい血が流れ出して床を汚していくのが
はっきりと見えます。足の肉が冗談みたいにぱっくりと裂け、桃色を晒していました。骨の白も、僅かに。
「…………っ」
 痛みは消えません。ただ、それを上回る驚愕が思考を麻痺させ、声を封じました。
 かかと──
 かかとを抉られた──
 誰に──なんで──
 鼻を衝く鉄臭い匂いに体温がゆっくりと降下していき、全身が寒気に支配されていきます。
 止められない震えが隅々まで行き渡り、カタカタと歯を鳴らしました。
 恐る恐る、懐中電灯の光を前方へ投げかけます。

 輪の中に浮かび上がったのは黒々とした髪と。
 細く長い指。
 それに握られた。
 一振りの、小さな彫刻刀でした。
317沃野 Act.17 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/25(火) 20:29:29 ID:+2wn3rLR
来〜る〜、きっと来る〜。
318名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 20:32:27 ID:KnkKQdby
ギャー麻耶たん逃げて、逃げて〜
もしくは洋平に助けを求めて〜
319名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 20:34:53 ID:zmMsyDi8
衝撃の展開(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルカ
よーくん早く修羅場に向かうんだ、鮮血が君を待っている!
320名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 20:35:48 ID:ClxVB70z
うん、あれだ。通りすがりの治癒能力/死霊術者に助けられたわけだな
321名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 20:46:25 ID:N3kHRkNZ
>>317
いや〜、すげぇ。アンタすげぇよ。
GJだ!
322名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 20:46:28 ID:39oe+9Xb
屍人化しやがった!!
323 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/25(火) 20:46:44 ID:+2wn3rLR
>>268
サウンドノベル版、プレーしてみました。
形式の違いが影響するのか、予想以上に印象が変わってびっくり。
随分と新鮮。本当にありがとうございます。
324名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 20:50:49 ID:bZZmqbLM
やべぇ、レッドアラートが鳴りまくってる!
325名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 20:53:31 ID:twzSA0r5
うは、一気にバイオレンス
今のところ麻耶が先手で胡桃が後手。予知夢にやられてもきっちりリカバリーする胡桃スゴス
326名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 20:55:27 ID:Zi7Z0MuV
ちょ!!マジヤヴァすぎるよ!!コレ!!
恐怖や興奮のあまり呼吸困難や呼吸のコントロールがきかなくなるなんて
誇張とかじゃなくてマジでそうなっちまった
メチャクチャ怖くて面白かったです

こんな面白い作品がネットさえ繋げれば只で読めるなんて
インターネット万歳 2ちゃんマンセーだねw
327名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 21:36:39 ID:8awXjyN+
神々マンセ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
328名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 21:40:42 ID:GBQKw0LW
やべぇぇぇぇぇぇえええ!
めっちゃおもしれぇ〜〜…つか胡桃は不死身デツカ?
329名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 21:55:09 ID:3gHpHrXZ
胡桃の逆転満塁ホームランが飛び出すか? はたまた、摩耶たんがこの無死満塁の大ピンチをキッチリ抑えるか?いよいよ本日の、その時がやってまいりました。
330名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 21:57:32 ID:CnWZD4j4
くそぉ!! なんてここは神々が多いんだ。
ここには修羅場の神が多すぎるよ。
331名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 22:02:04 ID:P+2UdAaW
洋平
「麻耶!悪霊と思っていたのは胡桃の嫉妬が作り出すパワーある像(ヴィジョン)なのじゃ!
拒否されようともそばに現れ立つというところからその像を名付けて……『幽嫉妬(スタンド)』!
332名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 23:05:01 ID:xQmVrvDR
麻耶「フゥー……はじめて人を…やっちまったァ〜♪
   でも思っていたより、たいしたことはないな……」
胡桃「……洋平は確保する……金髪ロリも殺す。
   お前ごときに両方やると言うのはそうムズかしい事じゃあない」
麻耶「ゲェーッま、まさかッ! 生きているッ!
   も…もしかして、ツイテないのは…わたしのほうか!」
胡桃「何をやったって、しくじるもんなのさ。ロリキャラはな」
333名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 23:05:43 ID:pgPxmsmu
朝出かける前に読んでから天野さんが心配で仕方ない
何も手につかないので鉛筆を持ってみました

ttp://uploaders.ddo.jp/upload/500k2/src/1145972848440.gif
初期は天パのショートなイメージだったのに段々アホ毛っこにかわっていった…

神々の投下する怒濤の修羅場っぷりに翻弄されています
エンドマークがつくまでどう転ぶかわからないスリルがたまらない
334名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 23:10:18 ID:Q4EhFypj
伊里野思い出した
335名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 23:26:12 ID:vOI//0jX
な、なぁ皆聞いてくれ。
今、沃野最新更新版を読んで快哉を上げたトコなんだが、ひとつ問題があるんだ。
麻耶たんのクールっぷりへのグッジョブよりも
修羅場へのワクテカよりも、
ホラー展開へのガクブルよりも
戦士・胡桃のいじらしさがスゲー愛しい自分がいるんだっ
なぁ、俺はおかしくなっちまったのか…?
336名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 23:27:21 ID:A3fp7HDX
あはっ…あはは…あははははははははははははははははははははははははは
337名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 23:28:12 ID:ClxVB70z
>335
貴様にこの言葉を送ってやる
「愛は人をおかしくさせる」
338名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 23:33:25 ID:BcAk3bSG
しかし三人の中でよう君の能力が一番役に立たないなw
339名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 23:39:21 ID:A3fp7HDX
きっと復活胡桃たんは物が壊れやすい線が見える様になってるんだ。
そんでその線を彫刻刀でズバッと
340名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 23:43:17 ID:uyZ+Yk0L
作務衣のおっさんが言っていた。

「心を読む能力に頼って、お前は心の表面しか見ていない」と。

正確には「心の色を見る能力(引っ張ってきた先)」ですが。
洋平君にはピッタリだ。
341名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 00:11:00 ID:5UMkEQ8O
こうなったらぬ〜べ〜に頼るほか無い。
342名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 00:12:45 ID:IhFDsCGD
胡桃たん、ついに植物属性に加え、アンデット属性にも目覚めたか


見えない方が幸せなこともある
って弟が呟いてた時はどうしようかと思った
343名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 00:20:08 ID:5qRkmHu5
アーカード呼ぼうぜ
344名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 00:21:30 ID:3hIQcwZ4
広き檻
晋也が必死でおちゃらけて、でもそれがドンドン消えていって
普段軽いキャラなだけにグッと来ましたわ
345義姉 第10回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/26(水) 01:11:34 ID:zvWBYtjg
        *        *        *
『智子』

 前言った事全部忘れていいから――
 さっきかかってきた電話の言葉。
 どういう意味なんだろう、ついこの間付き合わないかって言われたのに。
 最近士郎と仲良くしている二年の人――恋人には別に私じゃなくて誰でも良かったのかな。
 なんであの時おいかけてでもちゃんと言うべきだったのかな。
 明日からなんて顔して会ったらいいんだろう。
『あの時私に言ってくれたことは何だったの?』
 そうメールを打とうとしたが全部消した。
『私達友達だよね? 私はまだ好きだから――』
 「好きだから」の続きを書こうとしたら指先が震えて何を書いていいのかわからない。
『私達友達だよね?』
 その文だけが残った。これを送ったらどうなるんだろう。怖い――
 その日は泣きながら眠った――
 結局メールは送れなかった。


346義姉 第10回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/26(水) 01:12:10 ID:zvWBYtjg
 秋に落葉樹の下で掃除をすること程馬鹿げてるとしか思えない行為はない。
 掃いても掃いてもすぐに新しく落ちてくる。そのせいもあってか今掃除当番はもっといるはずなのに私を含めて二人しかいない。
 イノは動きを止めている私に目もくれず黙々と箒を動かしていた。
「ねえ、イノ、話あるんだけどいい?」
「いいけど」イノはこちらに向かず手を止めることなく返事をしていた。
「……あのさ、男の人って付き合ってくれるなら女の子って誰でもいいのかな?」
「俺の事知ってて言ってる?」ようやくこちらを向いたイノは苦笑していた。
「あ……ごめん……」
 忘れていた。彼が田中と昔付き合っていた事。そして今でも好きだと言う事。
「……よかったら教えてくれないかな、詳しく」
 知りたい。別れた相手だというのに何事もないかのように親しい友達として振舞っていられるのか。
 イノは少し考え込んで頭をかいていた。普段顔に出していないだけやっぱり気にしていることなのかもしれない。
「ごめん、言いたくないんだよね、やっぱり――」
「まあ、隠す程のことでもないから」
「中一の秋にあいつと同じ学校に転校して、あいつと隣の席になって、その日のうちにワイワイ言える仲になった。
 まあ、あいつあんな性格だから誰だってそうしてたんだろうけど、初めての転校でうまくやっていけるか緊張してた俺には随分助かった。あいつのおかげで直ぐ友達できたしな」
 そういえば私が士郎と遊ぶようになったのは彼女に誘われるままついていったら、あいつが居たからだった――
「それから一緒に遊んだりしてて、中二の春ぐらいからこいつのこと本気で好きなのかなって思うようになって。二学期に駄目元で告白したら二つ返事でOKだった」
 笑っていた。前から思っていたがやっぱり笑い顔が様になっている。
「うん、それで――」
「女の子と付き合ったのなんて初めてだから何から何まで緊張しっぱなしで――変だろ? ついこの間まで一緒に遊んだり話していたりしてたのに。
 俺なりに精一杯気を使ってみてたんだけど、それがあいつには気に食わなかったらしくて、ある日友達に戻ろうって言われてな。あんたとはもっと自然体でいたいとか言われて――
 こっちは本気だったから一時間以上くらいついてたけど結局別れた……」
 そこまで言って一旦言葉を止めて空を見上げていた。
 泣いているのかな? やっぱり思い出すと辛いのかもしれない。
「友達に戻ろうって言ったって前みたいに話せるわけないと思ってたのにな、次の日学校で会ってみたら何にもなかったように挨拶してくるんだよ? 傑作で友達の中には数ヶ月たってもまだ付き合っているものだと思っていた奴がいたぐらいだよ……
 まあ、なんだかんだ言って未だに普通の友達やってる」
「イノって強いんだね……」
「――全然そんな事ない。ふられると胃薬が必要になるような神経細い奴だからな。
 今のところ告白は二勝四敗、またそのうち気が変わるかもって何処かで期待してて、それまでは友達でもいいかなって。
 ……まあ良くも悪くも微妙な関係なんだけど」
「……そうなんだ」

 震える指先で未送信になっているメールを送った。
 激しい動悸を抑えながら返信を待っていると『友達だよ』と一言だけ帰ってきた。
 ――何故だか泣いた。

 返信はあったがそれっきり、それから学校で会ってもお互いおどおどして話せない。
 どちらからとなく避けている。
 前みたいに一緒にお昼を食べれない、士郎はいつもあの人と食べている。
 ――イノ、あんたやっぱり強いよ。


「……あの……いいですか」
 彼女――二年の先輩との関係は勘違いかもしれない。そんな僅かばかりの望みの元に勇気を出して廊下で偶々見かけた彼女に声をかけていた。
「――士郎とはどういう関係なんですか……」
 その言葉を吐き出すだけで心拍数が上がる。只の友達、従姉、そんな返事を期待しつつ、別の返事が返ってくる恐怖に怯えながら彼女を見つめる。
「多分見たままだと思うけど? 少なくともあなたよりは付き合い長いと思うよ。彼の家には何度も泊ったことあるし」
 彼女の方が背が低い事もあってか、自然と見下ろす形になっている筈なのに向こうの物怖じしない態度こちらが見下ろされている感じすらする。
 家に泊った――小学生じゃないその言葉の意味ぐらいわかる。
「他に用がないのなら私もう行くけどいい?」
 もう何も言える訳がなかった。
 ――全身が震えていることに気づいた。
347義姉 第10回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/26(水) 01:14:36 ID:zvWBYtjg
<チラシの裏>
姉ちゃん一回休み
士郎は……まあいいや
</チラシの裏>
348名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 01:43:04 ID:yA+y5DWo
智子は一番おいしいポジションだったから今回は厳しいな。

>>341
鬼の手かよwww テラナツカシスwww
349給料日前:2006/04/26(水) 04:05:47 ID:sEhnuCMv

・・・・・・・・・・・・いってえ。

 彰人は、目を覚ました。
 そこは自分の部屋。
 にもかかわらず、一週間前までの眺めとは全く違って見える、寒々とした空間。

―――――一週間?

 壁掛けの時計は叩き割られ、窓のカーテンはテープで固定され、灯りは付けっぱなし。
 つまり時間の感覚が無くなって大分立つ。あれから何日たつのかも彼にはもはや把握できない。
 
 縛られっぱなしの両手の感覚もそろそろ無くなりつつある。後ろ手だから見えないが、さぞや見るも無残な紫色に変化していることだろう。

「―――――うっ・・・・・・・・・!」
 身体を動かすと全身の骨が軋みを上げる。無理も無い。この体勢に縛り上げられてから一体何十時間経過したのだろう? ふと自分の身体に眼をやると、全身の痣の上から更に新しい痣が腫れあがっているのが見える。昨日受けた『お仕置き』の傷痕だ。

・・・・・・・・・・彰美(あけみ)のやつもやってくれるよな・・・・・・・・。

 彰人は、ここにいない妹の、幼さの残る容貌を思い浮かべながら、僅かに苦笑した。
 あの大人しい、未だに初見の人間には人見知りのクセすら残っている妹が、よくもまあ、ここまでの暴力を実の兄に振るえるものだ。実際、彼の全身は今、打撲による発熱で燃えるような熱を持っていた。
 そう思った瞬間に、彰人は自分が焼けつくような喉の渇きに見舞われている事に気付いた。

「・・・・・・・・・おーい、いるのか? いるんだろ?・・・・・・・・・・・・・のど、渇いたんだよ・・・・・・」

 もう声すらまともに出ない。ひゅーひゅーという音とともに、ようやく彰人はそれだけの言葉を硬く閉ざされた扉に向かって放つ。返事は返ってこない。だが油断は出来ない。部屋のカメラで、彼の渇きに苦しむ様を眺めているだけかも知れないからだ。
350給料日前:2006/04/26(水) 04:10:06 ID:sEhnuCMv

「・・・・・・・・・・・・・・頼むよ・・・・・・・・・いるんだろ・・・・・・・・・・・喉が渇いて死にそうなんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・頼むよ・・・・・・・・・」

 この老人のようにひび割れた声が、かつて大学の劇団で看板俳優の座にあった自分の声だとは、監禁以前の彰人なら、例えテープで実際に聞かされても信じなかっただろう。
 彰人は芋虫のように這いずりながらドアに近付く。全身に刻まれた打撲傷が、畳にこすれて激痛を発する。だが、それでも、動くのを止めるわけにはいかない。

――――――――要求は、可能な限り卑屈に。ブザマに。惨めったらしく。

 サディズムの権化のようになった妹を動かす手っ取り早い方法は二つ。して欲しい事を敢えて全身で拒絶する『饅頭怖い』方式。そしてもう一つが、この『土下座外交』方式。
 どちらをチョイスするかは、勿論その場の空気や流れ次第だが、そいつを読み違えると結構ヤバイ。しかし彰人には、そこいら辺の自信はまだあった。何と言っても妹をここまで追い込んだのは自分自身だからだ。

 数分と待つ事無くドアは開いた。廊下の照明が逆光になって、地べたの彰人には妹の表情を窺うことが出来ない。厳しいのはここからだ。今日のこいつはどっちだ!?

「―――――――全く、ホント辛抱が足りない男ね。そんなだらしないオス豚に、あたしと結婚する資格があると思ってるの?」

・・・・・・・・・・・やばい、『まひる』だ・・・・・・・・・・そろそろ『彰美』に変わる頃のはずなのに・・・・・・・・・!

「彰人、やっぱりお前は、まだまだ鍛え直す必要がありそうね・・・・・・・・!」
 『まひる』は、彰人の髪を掴んで部屋の中央まで引きずると、嬉しそうに呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・いつの頃からか、妹にもう一人の人格が現れるようになった。
 『まひる』・・・・・・・・・・・彰人の幼馴染みと同じ名を持つこの人格は、とんでもなく凶暴で、とんでもなく我儘で、とんでもなく嫉妬深く、そして、とんでもなく魅力的だった。
351給料日前:2006/04/26(水) 04:24:47 ID:sEhnuCMv

「そんなに飲みたきゃ飲ませてあげる。ただし、こっちの口からね・・・・・・・・・・!」

 そう言いながら『まひる』は、切れるような笑顔を浮かべながら、その手に持った小道具を彰人に見せつけた。――――――浣腸器と1・5Lのコーラのペットボトルを。
「ひいいっ!!」
「喉が渇いたんでしょう? お望みどおりタップリ振舞ってあげるわ」


・・・・・・・・・・・・・・・妹の彰美は、自分にもう一人の人格が宿っている事など露ほども知らない。しかも、その人格が、かつて彰人と結婚の約束までした幼馴染みの模倣人格だなどという事も。


 『まひる』は散らかった部屋から洗面器を拾い上げると、なみなみとコーラを注ぎ込んだ。シュワーっという炭酸の音が、死神の笛のように聞こえる。
「美味しいよぉ・・・・・・・・・ちゃーんと味わってね、だ・ん・な・さ・ま」
 その瞬間、うつ伏せに引っくり返された彰人の肛門から、氷のように冷たい液体が注入された。
「あああああああああああ!!!!!!!」
「ほーら、おかわり、おかわり」
 『まひる』は一気に彰人のアナルにコーラを注ぎ込むと間髪入れずに、洗面器から次弾の装填を完了させ、また彼の体内に送り込む。そうやって、瞬く間に1・5Lのコーラは全て彰人の腹腔内に納まってしまった。ただし、通常の手段とは全く逆の手順で。

「あああああああ・・・・・・・・・・・・・・・いたい・・・・・・・・・おなかいたいよう・・・・・・・・」
「そう・・・・・・・・・・・よかったわね」
 妊婦のように膨らんだ彰人の腹部を見つめながら『まひる』がうっとりと呟く。


・・・・・・・・・・・・これは贖罪だ。


 彰人は地獄の苦悶の中でそう思う。まひるが死んだ事を彰美の所為にし、無言でなじり続けたその罪。
 傷ついた妹を更に傷つける兄に対して、葛藤の中で彰美が取った必然とも言える選択。

 それは自分の中に死んだはずの少女を甦らせる事。

・・・・・・・・・・・これは贖罪だ。当然受けねばならない罰なのだ。
352名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 09:05:08 ID:RqK8rNAY
>>347
……何か姉ちゃんがメインとは思えないんですけど
いやモカたんが活躍してくれれば俺はいいんだけどね
353名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 10:23:39 ID:0W0ph7Ju
このスレでメインとはハイパー化するキャラのはずだ!
まだ誰も修羅になっていないってことは、これからが本番。wktkして待つのだ!
354名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 10:38:22 ID:i7GcJ06I
ネ申がいっぱいじゃぁあ
ありがたやありがたや
355名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 11:52:09 ID:eNcyJWQA
なに>352?姉ちゃんの出番が少ない?
>352、それは無理矢理義姉の意味が士郎の姉ちゃんだと考えるからだよ
逆に考えるんだ、「モカさんが結婚するとモカさんに義姉が出来る」と考えるんだ
356名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 12:21:33 ID:NFWB8f/4
>>355
その理屈だと結婚するのは智子でもミカでも問題は無いな。
357名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 12:54:28 ID:63ezd9jL
>>342
ちなみにアンデッド。un-dead。
358『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/26(水) 13:17:53 ID:K2Lyb6G8
「う……うわ…っとぉ?」
目覚めると、そこは真っ白な部屋だった。とにかく白い。どこが天井で、壁なのか。距離感が狂うほど一面が白かった。
「なんの部屋だってーの……」
イスから立ち上がろうとすると……
ガチャガチャ
「おろ?」
動けなかった。両手を後ろに回され、手錠がかけられていた。足もイスの『足』と一緒にくくり付けられるように、枷が巻かれていた。しかもその先には重り………
胸の辺りにも鉄のベルト……
「ヒュー。随分と清潔感溢れる監獄だなぁ。」
腰イテェ。腕いてぇ。体が硬い俺にとって、これだけでも拷問だヨ!
カチャ
と、その白い空間が切れた。もとい、ドアが開いたんか。以外と広いな。
「あら…起きたのね。」
「あぁ、お嬢。……おはよう…カナ?」
時間が分からない。
「ええ、おはよう。」
そう言って歩み寄る。ゆっくりと、静かに。顔は今までに見たこともないほどの笑顔だ。
「あのさ〜。これ、とってくんないかなぁ?」
「ダメ。」
ウップス。一蹴かよ。
「だって……ほどいたらたまあの女の所にいっちゃうでしょ?」
耳元で囁くように話す。吐息が耳に当たって………
「!!?」
飛び上がりそうな(無理だが)快感が全身に走る。息がかかっただけなのに………気付けば体中が熱い。
「せっかく私の物になったのに……あんな死に損ないに寄り添ってるんですもの……だから、こうしておけば逃げないでしょ?」
絶えず降り懸かる吐息による快感に、顔を動かして我慢する。
「あら?予想以上の効きめね。」
「なぁ〜にやったんだヨ!お嬢。」
後ろに回り、肩にもたれかかるように抱き付かれる。それだけで果ててしまいそうな気持ちよさだ。全身が快楽を司る神経のように。
359『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/26(水) 13:18:44 ID:K2Lyb6G8
「ちょっと薬を、ね。ふふふ…大丈夫よ。副作用はないから、安心して気持ちよくなってね……。」
いや、そういう問題じゃないって。これじゃあ理性が壊れるのも時間の問題だ。いつもどおりのテンションでいこうか!
「ふはははは!!!我が難攻不落とよばれた鉄の体。そうたやすくは落とせまい。さすが俺!ビクともしないぜ。」
じぃー
チャックを開けると、そこには言葉ばとは反して猛々しい一物があった。
「Oh!な、んて……こったキャシー。効果は…ば、抜群だね!」
どこぞのTVショッピングのようなリアクションを取る。いかん。さすがにこれはきっついなぁ……洒落にならない。
「ふふふ…もうこんなにしちゃって。苦しそうね。」
そのまま後ろから軽く扱かれると。
「うぐ!」
ドクン!
と、果ててしまった。手で擦られただけで、いつも1.5倍(当社比)の量が出た。精液の量も増やすのかぁ。そ、それにしてもこんなに早いのも……恥だな。うん。
「ペロ…ふふ…ペロ。たくさん出たね…」
手に付いた精液を舐めとるお嬢を見て、更に興奮度が増してしまった。ふ、不覚ナリ…
「あら?…まだやりたりないのね……でも今日はもうお終い。」
「え!?」
あ、やば。つい反応しちまった。これじゃあ墜ちたとおなじじゃねぇか。
「そう、そうよ。…もっと私を求めて……私の体無しじゃあ居られないぐらいにしてあげる。あの女なんか、二度と思い出せないぐらいにね……。」
そう言って、一回大きく笑ったあとに部屋を出ていった。残ったのは俺とまだギンギンのペニさん。
「が…はぁはぁ……ぅ、う…はぁ…ほ、放置プ、プレイがお好きかい?…はぁ…はぁ…俺、sなんだけどなぁ……。……志穂…」
この状態。何時までもつやら………
360名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 13:29:24 ID:63ezd9jL
学習しない男だなぁ……。合掌。
361名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 13:45:13 ID:yVWyq5DM
寝る度に何かやられてるな
362 ◆XAsJoDwS3o :2006/04/26(水) 14:20:17 ID:PQKSGmiC
BGM追加・ACT7まで
こんな感じで最終話まで追いかけて行きたいと思います。
とりあえずの完成形ですが何か指摘があればお願いします。

傘 jyuuyon11937

>>303
演出の一環であえて強制改ページしたんですが
駄目でしたかorz
363名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 15:11:17 ID:Id8Tm47f
>管理人氏
退院なされたようでおめ
364不撓家の食卓 第八話 ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/26(水) 17:23:29 ID:rmFF49qN
何度か試すが…手錠もベットも破壊は不可能だった。
拙いな…完全に手詰まりだ。
俺にはこれ以外に脱出の方法は思い浮かばない。
手錠を破壊するか。
ベットを破壊するか。
…俺を破壊するか。
思いついた…たった一つだけ脱出の方法が…
もう一度確認するが、手錠の輪はわりと大きい。
これなら手があと少しだけ小さければ簡単に脱出できるだろう。
あと少しだけ…小さければ。
そして…今の俺にはそのための手段がある。
正直あんまり使いたくは無かったが、他の方法を考えてる時間は無い…
それに天野の命には代えられない…
「即席秘技…手錠殺し」
 ゴキッ…
左手の親指を力任せに捻る…
身を焼くような鈍痛が走ったが、構っている暇は無い。
だが…この程度では抜け出せないようだ。
ここからは…覚悟の勝負っ!
俺は左手を慎重に触り、骨が外れた部分を探し当てる。
そしてその部分に…渾身の力で噛み付いた…
365不撓家の食卓 第八話 ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/26(水) 17:24:02 ID:rmFF49qN
 …ガチャッ
少々時間が掛かってしまったが、何とか脱出に成功した。
外は既に明るく、ようやく俺は日付が変わっていた事に気づく。
左手の指が一本減ったが…その程度で使えなくなる技は全体のごく一部。
まだ戦える…英知を止められる。
英知を…止められる!?
まただ…また特大の違和感を感じた。
落ち着け、俺は特に変な事を考えていた訳じゃない。
以前の戦いの際、英知の茨は確かに脅威ではあったが、いま一つ反応速度が遅い。
立ち回り方にもよるが、俺なら大した危険を冒さずに鎮圧できる筈だ…
『英知には不撓の秘術がある、通常の方法では打倒は困難だ。
だが…英知には実戦経験が圧倒的に少ない。奇襲を用いれば、あるいは届くかもしれんな…』
これかっ!
まさしくこれは診療所を出る時に感じた違和感だった。
…待て待て。
違和感の正体はわかったが、一体これが何を意味するんだ?
兄貴が俺の実力を過小評価したのか、それとも英知の実力を過大評価したのか…
まさか英知にとんでもない切り札があるのか!?
いや、大槻との一戦はわりとギリギリだったからな…
切り札があるのならあの場で使わない理由がわからん。
考えろ…兄貴の真意を…
 ゴオオオォォォ…
…すぐ近くで火柱が上がった。
 …ドクンッ!
心臓が…嫌な音がした。
まさか…いやまさかっ!
俺はすぐさま思考を中断させ、走り出していた…
366不撓家の食卓 第八話 ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/26(水) 17:24:47 ID:rmFF49qN
早く…早く英知を止めなくては…
そうじゃなきゃ…そうじゃなきゃ…
さっき感じた嫌な予感が…現実になる!!!
…見つけたっ!
思ったよりも早く英知は見つかった。
「兄上っ!何故ここに!?」
「英知いいいぃぃぃっっっ!!!」
早く…早く…
その瞬間…何かが…視界の端に現れた…
 駄目だっ!見ちゃ駄目だっ!
俺の精神が必死にそう訴える。
だが…俺の頭は一瞬でそれを理解した。
そこにいるのは全身の大半を血で染めた英知と…
今なお血を噴出させ続けている…
横たわった…天野であった…

1・その瞬間…俺の中で何かが切れた…
2・落ち着けっ!まだ天野が死んだと決まった訳じゃ無いっ!
367シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/26(水) 17:25:43 ID:rmFF49qN
第八話…の、一部完成。
第八話はここで分岐します。
それとサブタイトルは分岐先に応じて二種類存在しますので、この時点ではサブタイトル無しです。

>>300 >>302
もし次回作を書く機会があるのなら、その時はもう少し短めにすると思います。
(一応構想だけはありますので…人外分やや少なめなのが)

>>333
…本気で感動しました。
368名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 20:03:55 ID:3hIQcwZ4
憎悪にまみれた骨肉の争いも気になりますが
でも天野さん助かってのホッとできる続きが読みたいです
どっちの続きも期待してるので頑張って下さい
369名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 20:25:53 ID:RJWMYrY7
>>333
プロかプロ志望の方ですか?
370振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/26(水) 20:48:19 ID:3hIQcwZ4


   ・    ・    ・    ・   


 その日の朝はいつもと違っていた。 祥ちゃんの姿が見あたらないのだ。 いくら待っても探しても見つからないのでとうとう祥ちゃんちの玄関のインターフォンを押してしまった。
 対応に出てくれたのはおばさん――祥ちゃんのお母さんだった。
「え、風邪ですか?」
「そうなのよ。 ごめんね羽津季ちゃん。 折角来てくれたのに」
「そうですか。 分かりました。 では学校が終わったら、お見舞いに寄らせて頂きますね」
「ありがとう、あのコもきっと喜ぶわ。 ほら、そろそろ行かないと遅刻しちゃうわよ」 
「あ、本当だ、もうそんな時間。 では祥ちゃんによろしく伝えておいてください」
 そして私は一人学校へと向かう。 学校までの道のりってこんなに長くて退屈だったっけ。 いつも祥ちゃんと一緒だから登校中のお喋りが楽しくてあっという間に感じるけど、一人だとこんなにも寂しく感じるものだったなんて……。

 その日は酷く退屈な一日だった。 やっぱり祥ちゃんに会えないと何をするにも気が乗らない。 でも考えてみれば祥ちゃんは風邪でもっと辛い思いしてるんだよね。 健康な私が文句なんか言ったら罰が当たっちゃう。
 それに今日一日会えないわけじゃないものね。 そうだお見舞いの品何がいいかな。 あ、そうだ。

「おーい、結季」
「あ、お姉ちゃん」
 休み時間、私は廊下で結季に声をかけた。
「ねぇ、今日のお昼は久しぶりに一緒に食べましょ」
「い、いいよ……祥おにいちゃんとの邪魔したくないし……」
「相変らずそんな事気にしてるの? 大丈夫よそんな事気にしなくも」
 本当このコはそんな気ばっか使って。 まぁ、そこがまたこのコの良いところでもあるんだけど。
「っていうよりね……」
「?」
「実はね、今日祥ちゃん風邪でオヤスミなのよ」
「えぇっ?! 祥おにいちゃん風邪ひいちゃったの?!」
 私が言うと結季は驚いた声を上げる。
「うん。 それでね放課後お見舞いに行こうと思うの。 だからね、お昼ごはん食べながらその時持っていくお見舞いの品とか色々相談にのって欲しいの」
「そう……。 うん、分かった。 じゃぁお昼に」
371振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/26(水) 20:49:00 ID:3hIQcwZ4

 そして放課後、私はお見舞いの品を持って祥ちゃんの家へと向かった。
 結季と相談した結果先ず電話でおばさんに病状を聞いてみることにした。 どうやら胃腸や消化器系をやられたわけじゃないらしいので、普通に食事も取れるし食欲もあるみたい。
 それでお見舞いにはケーキを買っていく事にした。 祥ちゃんの好物――駅前のケーキ屋さんの洋ナシのタルト。 きっと喜んでくれるよね。 ちなみにケーキ代は結季と半分ずつ。
 それと図書館で本も数冊借りた。 風邪で寝込んでるときって結構退屈だからね。 今は未だ引いたばかりで読む気力なんか無いかもしれないけど、直ってきた頃暇を潰せるのがあると良いからね。
 そして祥ちゃんの家に到着。 ちなみに渡し一人で結季はいない。 一緒にお見舞いしよって言ったんだけど、風邪で寝込んでるところにあんまり押しかけちゃ悪いって。
 一人も二人も変わらないと思うんだけどな。 オマケに私の鞄も持って帰ってくれて。 本当あのコったら気ばっか使っちゃって。

 インターフォンを押すとおばさんが笑顔で出迎えてくれた。 そして部屋に通される。
「祥ちゃんお見舞いにきたよ。 どう? 具合の……」
 部屋に踏み入れて私は思わず息を呑んだ。 そのときの祥ちゃんの眼が一瞬、まるで手負いの獣みたいに見えて……。
「羽津姉……わざわざ見舞いになんか来なくてもいいのに……」
「え……?」
「あ、いや悪りぃ、言い方が不味かったかな。 その、移っちまったら悪いからさ……」
 そう言って吉ちゃんはバツの悪そうな顔をする。 そして私はほっと胸をなでおろす。 さっきの態度が冷たい感じがして一瞬寂しく感じちゃったけど、風邪で体調を崩してるんだもの。 不機嫌だって仕方ないよね。
 それに私に風邪が移らないよう気を使ってくれての言葉だったんだし。
「そんな、大丈夫だよ。 そう簡単に移ったりしないって」
「それに今だるくて話す気力も無いんだ……」
 気だるそうに吉祥ちゃんは応えた。
「そ、そう……。 そうだよね風邪引いてるんだものね。 あ、あのねケーキ買ってきたんだけど食べる? 祥ちゃんの好きな駅前のケーキ屋さんの洋ナシのタルト。 結季と二人で出し合って買ったんだよ」
 私はそう言ってもってきたケーキの箱を掲げて見せた。
「結季も来てるの……?」
「ううん。 あんまり押しかけちゃ悪いっていって来てないよ。 一人も二人も変わらないのにねぇ」
「そうか……」
 祥ちゃんやっぱりしんどそう。 でも食欲はあるって聞いてるからケーキ食べさせてあげれば少しは元気出るかな。
「ねぇ、それより食べない? 折角だから食べさしてあげるよ」
「いや、今あんまり腹減ってないからイイ。 後でいただくよ。 ありがとうな。 結季にもそう伝えておいて」
「うん、分かった」
「あと、そろそろ眠くなってきたんでいいか?」
 そうだよ、病人なんだもの。 しっかり睡眠とって早く直さなきゃ、だもんね。 長居しちゃ悪いよね。
「あ、うん。 じゃぁ私そろそろお暇するね。 お大事にね祥ちゃん」
372 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/26(水) 20:50:25 ID:3hIQcwZ4
今回はここまでです
373名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 21:25:31 ID:PHUNvvNM
妹がまだ消極的だからいつ化けるか期待
374名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 21:27:00 ID:4PgDDn/l
麻耶に続いて胡桃どん描いてたらPCフリーズ。
明日休みなんで完成できたら貢ぎまつ。。。
375名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 21:28:55 ID:V+Cywa1N
>>374
全裸で待ってる
376名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 21:30:12 ID:ihsxnP0l
踊りながら待ってる。全裸で
377名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 21:38:31 ID:4PgDDn/l
がんばって描きます。もちろん全裸で。
378名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 22:22:17 ID:eZPD7KpW
最近忙しかったけど、何とか週末に向けて貢物作っちゃうからな。全裸で。
379名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 23:27:45 ID:RMW9XqHe
俺も今度の連休中に色々頑張りたいな。全裸で。
380名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 23:44:46 ID:wZsEJ+3r
待つしか出来ないけど。全裸で。
381名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 23:47:25 ID:O6oc5239
くそぉ!! なんてここは全裸が多いんだ。
ここには全裸の神が多すぎるよ。
382名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 00:45:10 ID:Bb9e+l7W
若干肌寒いのでソックスだけ履いたまま待ってます。
383名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 01:00:06 ID:FHVZ7BKX
真っ暗な部屋で二人で抱き合っていれば寒くないよと言いつつ胸の中にいる人とは別に
背中から別の人間の人間体温を感じつつ待っています
384 ◆XAsJoDwS3o :2006/04/27(木) 01:40:20 ID:NQpLOi6R

傘 ichi33218

ちょっとショボいですが
幕間に使えそうなアイキャッチっぽいGIFアニメ作成してみました
でも組込み方が解らない
誰か教えて…全裸で
385名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 02:00:25 ID:UPRJt1pB
>384
NSにGIF形式のものは使えないよ。
どうしても使いたかったらNSの作者に要望出すかJPGアニメが開発されるのを待つしか……
もしくは、全裸でNSでそういう演出のスクリプトを組むか。
386名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 02:47:54 ID:NQpLOi6R
>>385
やっぱり無理ですか
いいアクセントになると思ったんだけど…(´・ω・`)
387名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 04:33:13 ID:i6i4XVtd
神が多すぎてリアルタイムどころかまとめすら読み切れてない……orz


凡人とは神の前にこんなにも無力………
 …ぷつんっ…
切れた…
その瞬間…俺の中で何かが切れた…
いや…外れたと言った方が正しいだろう。
俺がスイッチと呼んでいた物が外れた…
日常と戦闘を切り替えるスイッチが…外れた…
「兄…上…?」
頭が冷えていく…思考が高速化していく…
ただ己の敵を叩き潰すために…
頭に霞が掛かっていく…あらゆる言語が遠のいていく…
己の良心を乖離させるために…
「があああああぁぁぁぁぁっっっ…」
咆哮した…
殺意が…爆発したっ!
「兄上、やめてっ!」
敵は何故か動かない…今なら取れるっ!
 ガッ!
敵の顔を掴み、同時に足を蹴り上げる…
体が上下反転したのを確認し、俺は右手で首を捻り上げる…
 ゴキッ…
「あがっ…」
確かな手ごたえがあった…首の骨が折れる手ごたえが…
「改良ぉぉ…」
俺の覚えている唯一の言語が口から出ていた…
両腕を交差させ敵の体を掴み、回転を与えつつ上空に弾き飛ばす…
ここまでが秘技木の葉返し、ここからは俺のオリジナル技だ。
敵を追い跳躍する…
空中で追いつき敵の頭を掴み、そのまま落下する…
回転を殺さずに掴む事で受身を困難にさせ、体勢を垂直にし少しでも落下速度を上げる…
近づいている…地面が…
『当たり前だろ、俺は…』
頭に掛かった霧が一層濃くなる…もはや俺に思考は必要無い…
俺は大地に接触する寸前…掌底の要領で…地面に叩きつけた…
「岩・盤・砕きいいいぃぃぃっっっ!!!」
 ゴキャリッ…
嫌な…音がした…
頭が…砕けていた…
上半分が…無くなっていた…
知らなかったな…人間って…
…こんなにも脆いなんて…
そうだ、天野は?
天野はどうしたのだろうか?
脈は…無かった。
胸に…穴が開いていた。
瞳孔が…広がっていた。
天野の温もりが…急速に失われつつあるのを感じた。
違うっ!
天野は死んじゃいない、寝不足だっただけだ。
天野の温もりが…急速に失われつつあるのを感じた。
違うんだっ!
ドッキリカメラだったんだ、いつもからかってる仕返しをされたんだ。
天野の温もりが…急速に失われつつあるのを感じた。
違う違う違うっ!
まだ暖かい、こんなにも暖かいじゃないか。
天野の温もりが…急速に失われつつあるのを感じた。
違う違う違う違う…
これは血なんかじゃ無い。
これは…
天野の温もりが…急速に失われつつあるのを感じた。
…俺の精液だった。
天野の手が、俺のモノを掴んでいた。
ほら…まだ動いてるじゃないか…
天野の温もりが…急速に失われつつあるのを感じた。
天野の手が俺のモノを擦る…
ああ…気持ち良い…
これが…天野の…
天野の温もりが…急速に失われつつあるのを感じた。
「はっ…はっ…はっ…」
昂っていく…急激に…急速に…
天野天野天野天野天野天野天野天野…
 どくっ…どくっ…
天野の温もりが…急速に失われつつあるのを感じた。
天野にそっと口づけをした。
とても…柔らかかった。
鉄の…味がした。
「遅かったのか…」
そんな声が聞こえたような気がした。
「よもやこうなるとは思わなかった…」
でも駄目だ…頭に霧が掛かっている…
天野だけが…見えるように…
「責任は…俺に…ある…」
声が…近づいて来たような気がした。
「怨まれてもかまわん…憎まれてもかまわん…」
うるさいよ…
天野の声が…聞こえないじゃないか…
「だがな勇気っ!」
誰かが背中から…抱きついてきた…
でもここには天野だけ…天野しか居ないのに…
「死ぬなっ!お前までこんな所で死ぬなっ!」
なんだよ…
邪魔すんなよ…
でも…振り払えなかった。
凄い力で抱きしめられていた。
「頼む…死なないでくれ…」
大の大人が泣きじゃくっていた。
こんなにも…弱々しく。
「お前まで…俺のミスで死なないでくれ…」
なんだよ…まだ誰も死んでないじゃないか…
でも…何故か振り払えなかった。
「行くぞ…お前の治療をせねばならん」
天野の温もりが…急速に失われつつあるのを感じた。
俺が去れば、天野は本当に冷たくなってしまうかもしれない…
「勇気っ!」
天野の手には…まだかろうじて温もりがあった。
俺の…自分の命よりも大切な温もりが…
「許せよ…」
 ドンッ!
何が…起きたんだろう…
天野が…急激に遠ざかっていた…
あれからどの位経ったのだろうか…
一日?一週間?一ヶ月?
いいや…めんどくさい…
俺の前には天井があった。
いつもいつも天井があった。
いつもいつもいつもいつも…
やめた…めんどくさい…
「相変わらず情けない顔をしてるわね…」
まただ…またどこかで声がした…
人なんて…居ないのに…
「まあ良いわ…ユウキ、一度しか言わないから良く聞きなさい」
今日は誰の声だろ…
何度か聞いたような気がするけど…
駄目だ、思い出せない。
「一週間前、ヨウコが何者かに誘拐されたわ」
ヨウコ…?
ああ、大槻の事か。
「けどフクツはすぐに犯人の目星をつけて後を追ったわ」
兄貴か…なんだか懐かしいな…
「そして二日前…消息を絶った」
そういや…最近は兄貴の声が聞こえないな。
少し前まで頻繁に聞こえてたのに…
「犯人はもうわかってるの、フクツが遅れを取った可能性は高いわ」
まあ良いや、所詮は空耳だから…
「相手は組織…ならば少数で奇襲を掛けるのが得策。
あなたも来なさい、フクツとヨウコを助けに…」
今日の声はしつこいな…
正直に言ってめんどくさいんだ、ほっといてくれ…
 パンッ!
「いい加減にしなさいっ!」
痛い…
頬が…痛い…
「後悔するのは良いわ、過去に助けられなかった人を想うのは良いわ。
だけどそれはっ!まだ助けられる人を見捨てる理由にはならないわっ!」
 …ドクンッ!
痛い…
心臓が痛い…
『俺は…この子を守りたい』
初めて自分の声が聞こえた。
そうだった…俺は大槻を守ると誓った…
「あなたも来なさい、フクツとヨウコを助けに…」
手が…見えた。
初めて天井以外の物が見えた。
いや…壁が見えた、窓が見えた、そして人が見えた。
 パシッ
気がつけば俺は…その手を握っていた。
392シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/27(木) 06:53:13 ID:64ghkQ5W
不撓家の食卓、堂々完結。
こっちは(ある意味)大槻エンドです。
スレ史上初、自力で手錠から脱出する主人公。
スレ史上初、ヒロインを殺す主人公。
でもこっちの方が修羅場スレっぽいエンディングなんだが…
もう片方も執筆中です、どうかお待ちください。
393名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 08:20:59 ID:TsftUq91
>>392
たとえ形だけとはいえ自分のエンディングで出番の無い大槻……
天野エンディングの方期待してますね。
394名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 10:32:46 ID:vbxra83r
英知デラカワイソス
正直、ゆう君よりも嫌だなこの主人公
応援してたのに…
395名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 11:49:39 ID:Ujjtvh2r
>>392
一部完結お疲れ様です。
キレた勇気くんはとてもKOOLですね。
怒りの鉄拳がまず来るかと思いきや…いきなり首の骨を折るとはw
396『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/27(木) 13:29:49 ID:HPb6TiaN
「きっつー……はぁ…はぁ…」
放置されてからどれぐらい経っただろ。最早この屋敷の中では時間なんて意味ないかもね。
「はっくしょん!」
!!!!
くしゃみだけでいきそうになる。目茶苦茶敏感なままだ。まぁ、最初に比べりゃまだましか。
ガチャガチャ
「うあ…外れねえって……」
こんなの平々凡々の俺には取れねぇよ。足にだって枷もある訳だし。
「どーしよ。」
絶望にうなだれて居ると……
カチャ
また白い空間が切れ、お嬢が入って来る。今度はトレーの上に何か乗っけて持ってきた。
「ふふふ……ご飯よ、晋也。」
トレーの上のご飯は、お粥と鳥のササミ、麻婆豆腐だった。……腹減ったな。そういや。が、しかーし。そうやすやすとはくわんさ。
「ふーふー……はい、あーん。」
『普通』だったら萌ゆるシチュだろうが、こんな監禁状態じゃ全く興奮せんよ。(一部は薬により例外)
「いらない。」
口を結び、プイッと横を向く。できる限り反抗しちゃる。
「どうして?なんで食べてくれないの?」
「……どーせ、薬入ってるんでしょ?」
「うっ」
HAHA!図星だ。
「私が自分で作ったのよ?」…あちゃー。そりゃポイント高い。
確かに、奈緒さんが作ったにしちゃ形が歪だと思った。そういや、奈緒さんどこ行ったんだろ……
「だとしても、ダメ。」
男として最低の返事だろうが、場合が場合だ。これ以上薬漬けになったら困る。

「はぁ……しょうがないわね…」
そうぼやくと、蓮華に盛ったお粥を、自分の口に含み……
「ん、んん!」
口移しされた。こいつぁ不意打ちだ。
ゴクン。
お嬢の唾とともに食べ物が喉を通る。ぐぅ、意外とうまい。
「あ、は……どう?おいしい?…」
また薬が効いてきた……即効性だなあ………
「あ、ぐぁ……あ。」
ビクビクビク
出しっ放しのペニがまた脈打つ。…こんなんじゃ食欲も失せるわい。
「あ、はぁ……わ、私にも薬効いてきちゃった。……でもまだダメ。」
そう言ってまた食事を開始する。あかん。抵抗できん………。
397『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/27(木) 13:30:45 ID:HPb6TiaN







結局全部食べちまった………
「ご、ごち、そ…さま…」
まだ少し余裕を見せつけられる。……ぎりぎりだけど。
「ふぅ……あはは…もうはち切れそうね。…苦しいでしょ?楽になりたい?」
コクコクコク
声も出ずに、首を振った。もう理性も我慢もあったもんじゃない。
「ふふふ…じゃあね、私の事、好きって言って。愛してるって。あんな負け犬なんか、もう構わないって誓ってくれたら、なんでもしてあげるわよ。」
………そうきますか。
「簡単でしょお?私だけを愛すればいいんだから……あんな女、すぐに忘れられるわよ。」
「……だ。」
「え?」
「い、や、だ。」
はっきりいってやるさ。
「なんで?なんで?!私のこと、嫌いなの?優しくしてくれたんだから、好きって事なんでしょ?」
「そうじゃ…ないん、だ、よなぁ……ありき、たりに言えば、LikeとLoveの違いって、やつさ……お嬢は、ぜ、前者な、のさぁ……」
お嬢の顔が段々こわ張る。
「そ、それになぁ……『愛してる』って言葉……は…既に、予約済みなんだな…ぁ……はは……残念…。」
「なんで……なんであの女がいいのよ!!もう目を覚まさないのよ!私がいる限り!!!あの女が生きることなんてできないのよ!!」
「いいよ…べつに……俺、我儘だし……しつこいから、死ぬまで、ま、待つサ!」
「くっ!!あきらめない!絶対に晋也は、私の物!それだけは誰にも譲らない!!」
そう叫ぶと、部屋の外へ走って出てしまった。
諦めては……くれないのかなぁ……
398名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 14:57:19 ID:pJ6k+R1+
>>397
晋也カッコイイヨ晋也、鎖に繋がれているのに今が1番輝いて見えるぜ!
でも里緒さんの名前間違えるのは許せない……

もしかしてとっくにDEADENDでまた平行世界に飛ばされたとかだったらスマソ
399『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/27(木) 15:30:57 ID:HPb6TiaN
間違えたorz
スマソ。奈緒じゃなくて里緒です
400名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 16:12:58 ID:kjwlbt9j
それなんて黒須太一?
401名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 19:06:19 ID:2SsNr/4j
ttp://bbs9.fc2.com/bbs/img/_166100/166037/full/166037_1146132281.jpg
胡桃がんばれ胡桃。
設定ラフだけで申し訳ない。
もう一枚ピンナップ風のカラー描いてるんですがそれはまた後日で。

強烈な表情のシーンもまた後日でw
402名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 19:55:20 ID:NQpLOi6R
    _  ∩
  ( ゚∀゚)彡 くるみん!
  (  ⊂彡    くるみん!
   |   | 
   し ⌒J

ねめ上げる視線に活力が沸きました
403名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 21:04:36 ID:Mq6UK33i
主人公の本命が早い段階から決まってるって結構珍しいな。
404リボンの剣士 4話 ◆YH6IINt2zM :2006/04/27(木) 21:22:34 ID:jvxblPCE
木場さんが、人志を狙っている―――――。
そう桐絵に言われてから、あたしは木場さんを観察するようになった。
別に、人志を取られたくないとか、そういうんじゃなくて、ただ、何となーく気になるってだけの話よ。
で、その木場さんなんだけど、確かに何かに付けて人志に干渉しようとしている。
一日に一回は、あれ貸して、それ見せて、みたいな事を言う。昼休みはいつも一緒に昼ゴハン、放課後は、一
緒に帰ろ、の連発。すごい積極的だった。
でも人志は、それに対してどうも冷ややかというか、素っ気ない態度ばかりで、特に、一緒に帰ろ、の誘いは
、あたしが見ている限りでは、全部断っている。
何もそんなに冷たくしなくても……。人志、木場さんのこと嫌いなのかなあ。
というかそもそも、木場さんは人志のどこを好きになったの? それが分からない。
今までにいろんな男と付き合っては別れ、を繰り返してきたらしいけど……まさか!

 ” 地球の 男に 飽きたところよ ”

……まさかね。いくら人志が、通称『異星人』でも、それはさすがに……ね。

*    *    *    *    *

きっかけになったのは、一学期の後半、ある体育の授業だった。
そこで私は、初めて伊星くんを一人の男として認識した。
ただの自慢だけど、スタイルには自信がある。その裏付けとして、水着姿になったときに強く感じる男子から
の視線。あんまりじろじろ見ちゃいけないと思いつつ、チラッ、チラッと見ているのは分かっている。
まあ中にはそういう下心をオープンにする男もいて、堂々と大きな声で言っていた。
「ほら、見ろよ伊星、木場の胸、すげえよなあ」
周りの女子たちは失笑していた。話しかけられた伊星くんは、プールサイドにしゃがみ込んで、プールの水を
じっと見ていた。
私のほうも、相手のほうも全く見ない。無視も同然の態度だった。
「おい、どこ見てんだよ!」
背中を叩かれてる。ちょっと見てみれば、伊星くんは、水面のある一点を見つめているようだった。
「これを見ている」
伊星くんが指差した先にあったのは―――葉っぱ?
そう、水面に浮かぶ一枚の葉っぱだった。
「何だよ、葉っぱがどうしたんだよ」
私の疑問と声が重なる。おそらくプールから少し離れた所にある木の葉っぱが、風でプールまで流され、水に
入ったといったころだろう。で、その葉っぱが何?
「いや……普通、木の葉というものは木から落ちれば地に着き、風に流される。風さえ吹けば、何処にだって
行くことが出来る。が、この葉っぱは、水に浸かった以上、このプールから出られない」
「はぁ?」
はぁ? あ、また声と被った。何を言ってるのこの人は。
「葉っぱ一枚にしてみれば、プールは広い。でも有限だ。このプールから出られない。それがどうも……気の
毒に思えて」
「……詩人かお前は」
詩人でも、そんなこと考えないよ。

それからだった。彼の噂を耳に挟むようになったのは。
405リボンの剣士 4話 ◆YH6IINt2zM :2006/04/27(木) 21:23:27 ID:jvxblPCE
ついこの間、私は付き合っていた男と別れた。
結局その男も、今までの男のように、付き合ってしばらくするうちにただの肉欲馬鹿になってしまった。
だから、”飽きちゃった”の一言でさよなら。
思えば、碌な男に当たった記憶がない。
胸だけを見て話す男。一回目のデートでホテルに連れ込もうとした男。これも一回目のデートで、観覧車に二
人で乗った時に身体を触ってきた男。それも、手を握る、なんて手緩いもんじゃなく、下着の中に手を入れて
きた。最悪。
分かれて清々したと同時に、無性に気分が悪くなる。そりゃちょっと思わせぶりな態度もとったけど、そんな
にすぐにヤリたがるの?
もうちょっと、愛と性欲を切り離すことは出来ないの?
そんな男はいないかと考えて、候補に挙がったのが、伊星くん。私の水着姿よりも、水面の葉っぱ一枚に興味
のあった伊星くん。

もし、彼が女性を好きになったら?
その女性が好きでたまらなくなったら、どんな愛し方をするんだろう。
変人と呼ばれる伊星くんの価値観は、ほかの男とは大きく違うはず。私が求める愛し方を持っていれば、そし
てそれが、自分のほうに向いてくれれば――――。

早速私は行動に移した。今のところ伊星くんは冷たい態度だけど、ほとんど面識なかったんだから仕方ないよ
ね。これからこれから。
ただ……ひとつ気に掛かるのは、伊星くんとよく一緒にいる新城さん。伊星くんとは幼馴染で、割と仲がいい
みたい。
友達以上恋人未満、って感じだけど、いつ化けるかも分からない。
別に、数いる女友達の一人、程度だったら入り込むのは簡単だけど、問題は、伊星くんと仲がいいのが、新城
さんだけ、って状態。
言い換えれば、伊星くんが心を開く相手は(学校では)一人だけであること。ここをどうするかが鍵だよね。
よし、伊星くんにアプローチしつつ、昔のことについて調べてみようっと。
攻略法を、見つけるためにね……。


(5話に続く)
406名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 21:38:54 ID:GGnb3dSp
胡桃たん怖かわキレイ!

>392 GJです!
よもや主人公がぶちぎれて殲滅をはかるとは……
もう一つのエンディングも期待して待ってます。ハッピーエンド妄想をラクガキしつつ。
天野さん死なないでキャンペーン中につき、
英知ちゃんと陽子ちゃんのラフも。
ttp://uploaders.ddo.jp/upload/500k2/src/1146140321184.gif

>369
どこにでもいる趣味で描いてるオタです
407振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/28(金) 00:21:55 ID:FqqAkaiz


   ・    ・    ・    ・   


 放課後、今日もわたしは図書館で一人本を読み耽っていた。
 祥おにいちゃんとお姉ちゃんの邪魔をしたくなくって、でもわたしには親しい友人と呼べる子は居なかった。 それで結局暇をもてあまさずに済める場所として主にココを利用していた。
 読む本は其の時々によりまちまちだった。 もとより読書より時間を潰す事の方が目的なのだから。
 でもだからといってあんまり適当に選んでも後で後悔することになる。 特に恋愛小説は慎重に避けている。 以前考え無しに選んで読んだら自分に重ね合わせたり、過剰に感情移入して泣きそうになった事がある。

 図書館に頻繁に毎日のように出入りするようになると常連と言える存在がいる事に気付いてくる。 若しかしたら私も其の人達から同じ様に思われてるのかもしれない。
 でも、そうした人達と知り合いになる事は無かった。 私自身他人と話すことが苦手だったし其の人達もみんな読書に没頭してたから。
 あと……私の目付きも原因の一つなんだろうな。 話すのが苦手で人見知りで、オマケに目付きが鋭いのだから、よほどの物好きでも私に話し掛けてくる事は無かった。
 口下手なのと、この目付きのせいで昔っから友達が居なかった。
 でも私自身はこの目はそれほど嫌いではなかった。 ……まぁ嫌った所でどうにかなるものでもないけど。
 それは祥おにいちゃんのお陰。 皆が怖いって言う中、祥おにいちゃんだけはそんな事言わなかった。 それどころか褒めてくれた。 きりっとした鋭い眼差しが素敵だとまで言ってくれたっけ。
 そう、身内であるお姉ちゃんを除けば祥おにいちゃんだけだった。 どんなときでも私のことを解ってくれたのは。

 気が付けば手元の本は何時の間にか、かなりのページが進んでいた。 にも拘らず読んだ内容はまるで頭に入って無い。
 またやっちゃった。 気を取り直してページを戻す。 祥おにいちゃんの事を考えまいと本を開いても、気が付くと意識がそっちに飛んでしまう事がある。 ……早く吹っ切らなきゃいけないのに。
 ふと、祥おにいちゃんの声がした気がした。 幻聴なんか聞こえてるようじゃ駄目ね。 未練がましい自分に我ながら呆れる。
「結季ー。 おーい聞こえてるか?」
 幻聴なんかじゃなかった。
「……! 祥おにいちゃん?! 何でココにいるの?! お姉ちゃんは?!」
「あのなぁ、幾ら付き合っているからって四六時中一緒って訳じゃないんだぜ?」
 そう言って祥おにいちゃんは笑って見せた。 その笑顔につられて私の顔もほころびそうになる。 だが、わたしは感情を押さえ込み祥おにいちゃんから顔をそむけるように手元の本に視線を移す。 そして口を開く。
「……何の用?」
「いや、特にこれと言った用があるわけじゃ……」
「だったらほっといてくれる? わたし今本読んでるんだけど」
 言いながら自己嫌悪に陥る。 用なんか無くても話し掛けてきてくれて、本当は嬉いぐらいなのに……。
「そう言うなよ。 ココ最近あまり話もしてないんだし折角久しぶりに……」
「ほっといてって言ってるのよ!!」
 わたしは思わず怒鳴り声を上げてしまった。
「わ、悪りぃ。 邪魔しちまったみたいだな……。 じゃぁ俺行くから。 またな……」
 そう言った祥おにいちゃんの声には申し訳なさと、寂しさが入り混じったものだった。 そして力なく立ち去っていく靴音。 それらがわたしの胸を締め付ける。
「ゴメンナサイ!! ……祥おにいちゃんゴメ……ンナサ……」
 私は思わず祥おにいちゃんの背中に縋りつくように抱きついていた。
 祥おにいちゃんは振り向くと私を優しく抱きしめ、そしてそっと髪と背中を撫でてくれた。 祥おにいちゃんに抱きしめられてるとたまらないくらい幸せな気持で満たされていく。
 やっぱりわたしは祥おにいちゃんの事がどうしようもないくらい好きだ。 今更この気持どうする事も出来ないこと分かっているのに……。 お姉ちゃんの邪魔なんかしたくないのに……。

 そして祥おにいちゃんはわたしと少しだけ言葉を交わした後、図書館を後にした。
 祥おにいちゃんの背中を見送っる私の心の中には満ち足りた幸福感が残った。 でもそれは直ぐに自分の弱さ、情けなさへの憤りに変わる。
 あそこは、あのまま突き放すべきだったはず。 なのに……なのに。
「わたしの……、バカ……。 こんなのじゃお姉ちゃんに顔向けできないじゃない……」
408 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/28(金) 00:24:22 ID:FqqAkaiz
409名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 00:32:17 ID:Oz3CfS+2
作者のイメージが伝わってきたぜ。
410名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 00:45:01 ID:38ToQqb7
スマン……どっちが妹でどっちが姉なのか教えて欲しい。
とにかくGJ!! ssが多すぎて皆に感想が書けないのがもどかしいわ。
ここはやはり修羅の神が住まう嫉妬界なんだな〜。
411名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 01:01:22 ID:a+deAc3+
左が妹なんじゃないか?目つきが鋭いっていうし。
412名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 01:04:38 ID:81DRzx7S
>>408
GJであります!
>>410
作者様じゃないけど…恐らくツリ目の左の子が妹、ロングヘアーの右の子が姉ジャマイカ?
今回の話を読むと妹は目付きが鋭いって書いてるし。

413 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/28(金) 01:14:18 ID:FqqAkaiz
はい、左の目付きが鋭い方が妹の結季で
右で微笑んでるロングヘア―が姉の羽津季です
伝わらなかった方が居らっしゃった事にorzな反面
気付いてくださった方が居た事に嬉しかったりw

他の方の作品のキャラクターも描いてみようと思っていたりいなかったり
414名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 01:20:59 ID:FqEVOf2v
英知タンは某舞姫の命みたいな容姿の子だと勝手にイメージしてた

陽子タンは勝手にポニテが似合うんだろなぁ…って
415名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 12:26:48 ID:N3Z2hRV1
姉妹の修羅場って、家族関係があっさりと崩れるんだろうかなと・・
現実では女の友情は脆いと認識しているが・・
416暇つぶしにコピペ張ってみる:2006/04/28(金) 12:50:51 ID:N3Z2hRV1
『弟×監禁』

弟を想い度々オナニーに耽っていた姉は、とうとうその現場を弟本人に覗かれてしまう。
私の想いを知られてしまった……戦々恐々とする姉だが、弟は態度をまったく変えようとしない。
見て見ぬふりであろうか。
嫌われはしなかった、だがこの想いに答えてもくれない……姉のフラストレーションは日に日に溜まっていった。
そうして、既に習慣となっている"弟のPCチェック"に取りかかったある日の事である。
「メールを見た感じ、悪い虫がついたりはしてないみたいね……アラ?」
2chブラウザフォルダのkakikomi.txtを覗いた姉は、とある書き込みに目を留める。
"いや、うちのは俺が好きだからとかでなく、単に俺のエロ本見つけて発情して始めちゃっただけなんだけどね。"
「そんなっ……!」
そもそも、弟は姉の想いになど全く気付いていなかったのである。
ショックのあまり姉は指先を震わせる、しかし他の書き込みに目を通す内に、姉は次第に落ち着きを取り戻していった。
弟を溺愛し、束縛する――そんな"姉の妄想"の数々でtxtは埋め尽くされている。
「なんだ、そういう事だったんだ……」
常日頃から抑えつけてきた妄念・暗い願望のそれと弟の妄想とは、完全に一致していた。
これはつまり、姉と弟の想いが通じ合っていたからこそに違いないのである!

コンコン
「姉さん?いいよ、入って。こんな夜更けにどうしたの?」
「お休み前に紅茶でもどうかなって。美味しいリーフを頂いたの」
「……うん、ありがとう」
突然の訪問に驚く弟だが、しかし姉の気遣いに遠慮する事もない。
有り難く紅茶を啜っていると、不意に意識が暗転する。
弟が意識を取り戻すと、いつの間にか姉のベッドの上に裸で寝かされていた。
後ろに回された手はひも状の物できつく縛られている。
「姉さん、これって……一体?」
「心配しなくていいのよ?お姉ちゃん、あなたの事ぜ〜んぶ分かってるんだから……」
姉はそう言って弟の目前で次々と服を脱いでいく。
弟にはそれをただポカンと眺める以外、何もできない。
「あなたはここで、一生お姉ちゃんにお世話されるの……他の女なんて誰一人近づかせないっ」
優しい手つきで弟の股間をなで回す姉……二人きりの爛れた生活が、今まさに始まろうとしていた――。
417『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/28(金) 12:53:00 ID:LO1hfHZg
どうして晋也は私を見てくれない?愛してくれない?私がこれだけあいしているのに!
あんな女より、断然私の方が良いのに!
そうだ……なんで晋也はあの女が好きなんだろう……それを聞いてみれば、思い直すかもしれない。
私は寝たままの志穂を蹴り、晋也の所へ向かった。






「ぜぇぜぇ…よ、よぉ。お、お、お嬢……」
もう晋也は虫の息だった。ペニ〇がぱんぱんにはち切れそうだというのに、なんで我慢なんかするんだろう。
私の方が我慢できなくなってしまいそうだ。
グニ
晋也のペニ〇を足で踏み付ける。それだけで私の足の裏は我慢汁でべとべとだ。
「うぅ…」
小さく呻きをあげる。
あはは!かわいい。また新しい晋也をみちゃった。
「ねぇ、晋也?私の事、好きになった?」
「…の、No―だ。」
なんで…まだ耐えられるの?
「ねえ、どうして?なんであの女が好きなの?志穂のどこがいいの?……すぐに暴力を振るうし、口は悪いし、女らしいことも、かわいいしぐさもできない。
……胸が小さいのは私も一緒だけど……
でも、私の方が晋也と釣り合うわよ!晋也を誰よりも幸せにできるわよ!!!
だから……だから私を選んでよ!!私を……私だけをみてよ!!!晋也に愛されないだけで……苦しくてどうしようもナイノヨ!!!」
言葉が続く度に足に力がこもる。あぁ……今度は少し濃いのがドプって溢れてきた………足の裏、気持ちイイ……これだけでもイッチャイソウ。
「す、すぐに暴力を振るって、口が悪くて、女らしくなくて、かわいいしぐさもできなくて、胸の小さい女が好きなノ!…へ、っへー……注文細かいだろ……」
「この!この!このぉ!イカせてあげないわよ!!」
「うぅ…あ、あ……やっぱ、も、もう、ダメだぁ……限界……放ってくれぇ」
全身を振るわして耐えてる。……そんなに苦しむ必要なんてないのに………
そうだ、そうだわ…
志穂が…志穂の存在が、私の晋也を苦しめているのね…だったら…もうクルシマナイヨウニ、シテヤレバイインダ!!!
マッテテネ、晋也。
418名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 13:46:42 ID:/oY1EQnr
お嬢! スーパーモード!!
419名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 16:11:40 ID:9Qo7kVqS
志穂が完全に消去されるか、また死ぬか、か。

この先の展開に期待してます。全裸で。
420沃野 Act.18 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/28(金) 21:10:41 ID:ZzaEevln
「綾瀬、胡桃……」
 連想される一つの名前。
 無意識のうちに呟いていたその言葉を、呼びかけと思ったのでしょうか。
 彫刻刀の持ち主──床に伏し、私のかかとを刃先でえぐり抜いた人物が顔を上げました。
「…………!」
 息を呑みました。
 顔、と言ってもその容貌を確認するのは困難です。何せ、目のあたりを覆うように包帯が巻かれ、しかも
微かに血が滲み、黒ずんでいるんです。
 その部分のインパクトが強すぎて、他の鼻や口といったパーツの印象が頭に届いてこない。
 地に引きずる髪と、真新しいのに血で汚れている目隠し包帯。二つばかりが強調されてしまう。
 ライトを顔からずらし、体の方を見てみます。
 破かれた衣服と包帯、それにギプス。左手と右足は損傷がひどいようで、かなりきつく固定されてます。
あれでは、きっと少しも動かないでしょう。
 ずりっ、と彼女──性別が女性であることは胸の膨らみから推測できます──が這い進みました。
 生きている右肘と左膝だけで、器用ににじり寄ってくる。
 芋虫、いえ……なめくじと呼んだ方が適切。奇妙な滑らかさがその動きにはありました。
 服と床が土で汚れており、よほどの摩擦を味わったのか、肘の包帯は擦り切れています。
 破れ目から覗く、ささくれた肉。じくじくと湧き出す血。
 長かったであろう道のりを、ずっとこの体勢で這ってきた──?
 決して速くはないスピードで、しかし、休みなく。
 真実であれば、およそ人間とは思えない執念です。
 彼女にとって壁面に等しい地面を、フリークライミングに挑むかの如く突破してきたのですから。
 じり……
 硬直して座り込んでいる私の方へ体を寄せ、距離を詰めてきました。
 私は驚愕と、少しでも動かせば激烈な痛みが走るかかとの負傷のせいで満足に後退することもできません。
 ただ呆然と女に光を当てているだけ。
 完全に固まっていました。コチコチの氷像です。
 女は、目に包帯をしているというのに、恐怖に怯える私をじぃ〜っと覗き込むように静止して。
 にたり
 と。唇を歪め、厭らしい笑みを張りつかせました。
 全神経が瞬時にわななきました。
「お……」
 ぜいぜいと荒ぶる呼吸。肌の下を巡る血は今にも冷え切って心臓を止めてしまいそう。
「おばけ……」
421沃野 Act.18 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/28(金) 21:13:14 ID:ZzaEevln
 小さい頃、親の前では強がって「怖くなんてありません!」と強弁したけれど、実は大の苦手で夜はトイレに
行きたくなくて、でもどうしようもなくて行くことになって、廊下の暗がりに潜んでいるのではないかと何度も
何度も小刻みに振り返っては指差し確認し、いないことに安堵を覚えた存在。
 それが手の届く場所まで迫っていました。
 正味な話、失禁してしまいそうです。というか、ちょびっと漏れてます。気色の悪い温もりです。
 バンッ
 突然、不気味な物音が響いて、おばけの体がぐうんと膨らんで大きくなりました。
「ぅぁ……!?」
 すぐに錯覚と悟ります。
 なんということでしょうか──
 彼女は、地面の反動を利用して勢い良く立ち上がっていたのです。
 片手と片足だけで……ありえない!
 否定しますが、現実として眼前に直立する存在を打ち消すことはできません。
 それでも右足が動かせないことに変わりはなく、ぐらっと姿勢を崩して倒れ掛かってきます。
 びょう、と風音。
 彼女の脇から疾駆するモノが懐中電灯の光を跳ね返しました。
 ──彫刻刀!
 まさか。
 そいつを振り下ろすためにッ!
 姿勢が崩れると分かっていながら立ち上がったんですかッ!
 目が吸い込まれる。
 軌道は大きな弧を描いて首筋に……!
「ひぃっ!」
 情けない悲鳴を挙げながら体を捻り、手に持った懐中電灯をスイング。
 ガキィンッ
 寸分違わず彫刻刀の刃先と懐中電灯のへりが激突し、闇に火花を散らす。
 軌道はねじ曲がり、あらぬ方へ逸れていきます。
 辛くも防ぎました。
 ふ、ふふ。
 怯えちゃあいますがね……こちとら、動体視力には自信があるんですよ……!
 チビだからってあんまり舐めないでいただきたい!
 その直後、脇でだあんと物凄い音とともに女の体が床に叩きつけられます。着地のことなんてろくに考えて
いなかったであろう、聞いてるだけでこっちも痛くなってくる肉撲音でした。
 が、油断している暇はありません。
 女は転倒も意に介さず得物を振り回し、刺突と斬撃を繰り返します。片腕一本なのに、一つ一つがやけに重い。
こっちは必死になって懐中電灯をぶつけ、危なっかしくガードを試みます。
 咲き乱れる火花。響き渡る金属音。
 ──押し寄せる殺意!
 少しでも隙を見せれば、喉笛に喰らいつかれることは自明。
「くっ……!」
 反撃する余裕もなく、防戦一方。
 一合、二合、三合……打ち合いも十合を超えるとこちらは手が痺れてきて、緊張のせいか息も乱れてきました。
相手は少しも疲れた様子がなく、むしろ何かに憑かれた様子でしぶとく攻撃を継続してきます。
 終わりのない攻防。スタミナは、血に飢えた幽鬼と化したあっちに分があるようです。
 徐々に押されてきました。
 いくら動体視力が良くたってここは暗い。
 おまけに唯一の明かりである懐中電灯も武器に使わなくちゃいけません。
 はっきり言って条件はかなり厳しいです。まっこと不利です。このまま膠着していてもジリ貧でしょう。
422沃野 Act.18 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/28(金) 21:16:29 ID:ZzaEevln
 少しずつ、痛みに耐えながら後退を開始します。蟻よりものろい歩みで、しかし着実に。
 充分に間合いを取ったところで、懐中電灯の蓋を外して電池を排出。
 単三が二つ。滑り落ちてきたところをぱしっ、ぱしっと空中で掴み取りました。
「えいっえいっ!」
 手首のスナップを利かせて投げつけます。弾かれもせず顔面にボコ、ボコと当たりました。
 大したダメージにはならないでしょうが、足止めにはなったはず。
 背を向け、負傷した片足を引きずりながら離脱しました。ずり、ずり、と後から追ってくる這いずり音が
聞こえましたけど、決して振り返らず、可及的速やかに逃げ出します。
 見慣れている廊下──目を瞑っても行き来できるはずの空間。
 今は闇以上の質量を有した不安で暗く重く閉ざされています。
 やけに長く感じられました。どんなに目を見開いて先方を睨み据えても、果てには届きません。
 怖ろしく遠い。歩みを止めたくなります。
 ……でも、進まなきゃ。泣き言は無用です。
 麻耶。あなたは益体もなく怯えて身を竦め、運命の判決に委ねるほど意志薄弱な子ではないでしょう。
 今はただ、動く足と、動かない足と、凭れ掛けた肩と、壁を探る手をよすがに逃げなさい。
 仮借なき怨嗟が牙を突き立て、この足を縫い止める前に。
 追いつかれたら、終わりです。死神はすぐそこまでやってきていますよ!
「はっ、はっ、はっ……」
 包帯を巻き、彫刻刀で武装した髪の長いおばけみたいな女──正体は綾瀬胡桃。他には考えられません。
 あなた、死んだんじゃなかったんですか。トラックに撥ねられて、まだ生きてるなんて。そのうえ満身創痍で
ここまでやってくるなんて。訪ねたこともない、私の家に。
 目も見えないだろうに……洋平先輩の臭跡でも追ってきたんですか。
 ああ、なんという人でしょう。
 侮っていました。見誤っていました。
 犬は犬でも、彼女はただの牝犬ではありません。
 吠え声一つなく忍び寄る猟犬──!
「んぎっ!?」
 かかとに激痛。思わず振り返ると、引きずっていた足の傷口に刃が埋まっていました。
 予想以上に接近されていたようです。
 慌てて引こうとしたところをぐりっ、と刃先でえぐられ、一瞬意識がショートします。
「が……っ!」
 倒れそうになる体を支えるのに、すべての意志を投入。ギリギリで持ちこたえます。
「っは……!」
 更に攻撃を加えようとする女の顔に向け、電池がなくなって用済みになっていた電灯本体を苦し紛れで
投げつけます。ボコンッ。これでまた足止め。速度を上げて、前進を再開しました。
 しかし、すぐに差を埋められて追いつかれることは目に見えています。
 泣きたくなりました。怖い。痛みが怖い。捕まるのが怖い。殺されるのが怖い。
「ぐ、うう」
 えづく。大声で先輩を呼んで助けを求めたくなりました。
 すうっと深呼吸して、実行に移そうとします。
423沃野 Act.18 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/28(金) 21:19:03 ID:ZzaEevln
「………………」
 でも、やめました。
 声が出なかったからではありません。
 ここで叫べば、私の動きは鈍くなる。その間に追いつかれて、先輩が来た頃には既に手遅れになっているでしょう。
と、なけなしの理性で計算したこともありますが。
 何より、私は。
 守られるために依存したわけじゃない。
 惨めに泣き叫んで救助を待つなんて、そんなの柄じゃありません。
 本当は強くなんかなくて、ただの強がりでしかないけれど。強がるべき正念場は心得ています。
 直接的な助けなんてなくてもいい。先輩の存在が心の支えになってくれれば、それでいいです。
 私の依存は信仰であり、信念なんですから。
 彼のことを想う。それだけで力が湧いてきます。他に何が必要なものですか。
 ──いいでしょう、綾瀬胡桃。
 土は土に、灰は灰に、塵は塵に。
 死者は棺に送り返して差し上げます。
 二度とよみがえることがないよう、きっちり屠殺してやりましょう。
 具体的には首を斬り落としたりとか。大変そうだけど頑張ります。ファイト、麻耶。
 こっちとて、もうおばけを怖がる歳ではありません。手を汚すのがイヤとか、甘っちょろい発言もやめ。
 事後、先輩には死体の始末だけ手伝ってもらいましょうか。レイプ魔の幼馴染み、その残骸を廃棄した
ところで彼の良心も痛まないはず。あるべきものをあるべきところへ還すだけです。
 タカを括らないでくださいね。私って、殺ればできる子ですよ。
 さあ──首輪のないあなたに、地獄へ繋ぐ絞首の荒縄をプレゼントしようではないですか。
 熨斗紙つけてあの世へ返送してあげることを慈悲と思ってください。

 狂犬、死すべし!

 反撃の意志をかざし、向かう先はキッチン。
 得物を調達するとします。素手じゃあ、勝てません。
「はあっ、はあっ……ふうっ……はあっ……」
 えっちらおっちら、青息吐息で進みに進んで。
 どうにか辿り着いたキッチンの流し台の下、包丁と一緒に予備の懐中電灯をゲットしました。
 暗闇にはまだ目が慣れていません。これで照らしながら、まずは彼女の急所をブスリ。速攻で片付けてやります。
 ガス台にしがみつきながら点灯し、襲来に備えます。
 なぜか敵の足取りは重くなったようで、気配が遠くなってます。
 おや。先程の小競り合いで疲弊して遅れましたか? 
 ふむん、いくらおばけじみているとはいえ、まだ人間としての名残りはある模様。
 勝てる。それなら、勝てます。
 さあどんどん近づいてくるがいいですよ。こちらの迎撃態勢は整いました。
 ふふふ、ビッチさん。あなたを刺し殺して冥府に逝かせてあげます。
 そして、そこで出会った番犬と、
「仲良く並んで……狛犬になっていただきたい!」
 好戦気分を盛り上げて。
 振り向こうとした、そのとき。
424沃野 Act.18 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/28(金) 21:21:45 ID:ZzaEevln
 ──キリ

 キリキリキリ……

 背後から奇怪な軋りが聞こえてきました。
 ええ? 今度は何ですか?
 内心嫌なものを感じますが、無視するわけにもいきません。
 意を決して振り返ります。
「は?」
 その光景が飛び込んでくるや、真っ先に目を疑いました。
 だって、あの女の手にはさっきまであった彫刻刀がどこにもなくて。
 代わりに、変なものが出現していたんです。
 ギプスが巻かれていない、自由に可動する右手で保持されているそれの外観は、一言で表せば小型の弓。
クロスボウみたいに横に寝かせています。綾瀬胡桃は弦を口に咥え、頭を目一杯後ろにのけぞらせて引っ張り、
さっき耳にした軋り音を響かせていました。
 のけぞったせいで晒された喉──ひどく白い。噛み締められた歯も、皓々と光を弾く。
 キリ……リッ!
 口は弓弦の他に矢筈も咥えています。既に弓は番えられた後──
 そう。まるで嘘みたいな話ですが。
 まさかの飛び道具がぴったりこちらを狙っていました。 
 さっき私が投げた電池や懐中電灯とは比べ物にならない、それはもう本格的な一品で。
 彼女が遅れたのは疲労のせいじゃなく、あれをセッティングするためだった。たぶんそれが正解。
 ちょっ、あんなの、どこに隠し持っていたんですか!?
 ってか、あれでまともに射てるんですの!?
 噴き出す疑問へ向けて繰り出される返答は、無言の一撃。
 電光石火。弦が奏でるキィンと高い音に追随して、飛来する矢はひと筋の影に変わります。
 いくら動体視力が良くたって、よけられやしません。
「うぐっ!」
 倒れそうになるような衝撃と一緒に肩へ異物が突き刺さります。信じられない不快感と、僅かに遅れて
やってきた激痛。自分の体に、余分なモノが入り込んでいる。疑いようもない事実。
 それは破瓜の経験とは比べ物にならない、気が狂うばかりのショックでした。
 もはや声も出ません。パクパクと口を開けたり閉めたりしながら脂汗を流します。
 肩口から突き出している矢を覗き、猛烈に抜き去りたい衝動が込み上げてきました。しかし、抜くときの
痛みと抜いた後に広がる傷を想像すると手を伸ばす気がしません。
 思考の板挟み──吐き気と寒気が荒れ狂う。
 怖じ惑う私の姿が愉快なのか、綾瀬胡桃はにたにたと例の厭らしい笑みを振り撒きます。そして第二矢を
咥え、ゆっくりと番える。キリキリキリ。
 に、逃げなきゃ……
 でも。
 私と彼女の間には何の障害物もなく、片足が荷物になってる私に俊敏な動作はできない。逃げ場所がありません。
 じゃあ体を丸めて急所を守る? そうしたところで嬲り殺しに遭うだけと分かっていながら?
 にっちもさっちも行かない窮地。打つ手なしで、立ち竦みます。
 死ぬしか、ないんでしょうか。絶望に心が黒く染まっていく。
 ──心のみならず、視界さえも端からじわじわと蚕食されていきます。
 あ……う……なんだか……とても眠いです。
 かかとの出血がいよいよヤバくなったんでしょうか。睡魔まで敵に回るだなんて、踏んだり蹴ったりです。
 頭を振って眠気を払おうとしますがダメです。振り払えません。どんどん思考がぼんやりしていく一方。
 目蓋が自然と下り、首を支える力も抜けていきます。立ったままで寝てしまいそう。
「こんな……ときに……ダメ……」
 言い聞かせる自分の声さえも遠く。
「寝ちゃ……寝ちゃったらおしまいよ……麻耶……」
 意識は緩やかに下降して夢の世界へ沈んでいきます。
 夢の世界。
 そう──予知夢の世界へ没入し。
 因果を跳躍した極彩色の光が乱舞する万華鏡を覗き込んで。

 私は、視た。
425沃野 Act.18 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/28(金) 21:25:03 ID:ZzaEevln
「ぁ、」
 喉を振り絞る。
「あああ、」
 精一杯、腹の底から掻き集めた声で。
「──ふあああああああっ!!」
 獅子吼する。
 迷わない。すかさず自分の太腿を切りつけた。
 溢れ出る血潮──鮮烈な痛みが意識を引き揚げる。
 強引な覚醒法だけど。まとわりつく睡魔は粉砕できました。
 現実の世界では、今まさに矢が放たれようとしていたところ。
 ……させません。
 カッと内臓で憤怒の炎が燃え上がる。
 ふざけるなです。牝犬の分際でいい気にならないでくださいよ。
 あなたにこの命、差し上げるつもりはありません。
 すべてを捧げると誓った身は先輩のもの、なればこそ──
 私を殺していいのは、先輩だけなんですから!
 揺るがせぬ依存の掟……生殺与奪するは彼にあり。
 それを履き違えることなかれですよ、
「──野良ゾンビがッ!」
 なけなしの気力を薪にして、くべます。炎立つ瞋恚に。
 揺らめいて広がる蜃気楼──気化した殺意が飽くことなく膨張する。
 息苦しい。この小さな体を破裂させる勢いで高まる憎悪の圧力。
 吐気。抑止を緩め、激情を解き放つ。
「けああッ!!」
 握り締めた包丁を力の限り投擲しようと踏ん張っ

 たところで床をびしゃびしゃに濡らしていた血液に足を取られてつるっと滑りました。

「──あれ?」
 傾ぐ視界。包丁は手からすっぽ抜けてしまいます。
 綾瀬胡桃が射った矢は腕をかすめるように、体のすぐそばを通過して後方へ飛び去ります。
 がしゃんと何かが割れる音。食器でしょうか。
 私は血溜まりへダイブする形で倒れ込み、盛大に血飛沫を巻き上げました。
 まだ温かい己の血。そいつを浴びながら。
 転倒を恥じず、勝利を確信する。
 すっぽ抜けた包丁が天井に激突し、跳ね返ってまっさかさまに落下して、死に損ないの牝犬の背中へ
吸い込まれていく……その一部始終を、ばっちり両目に捉えます。
 矢を射った直後の硬直に加え、死角からの一撃とあって、牝犬に回避できる道理はありません。
 深々と、ってほどでもないんですが。まあそう浅くはない程度に包丁の先端が突き刺さりました。
 さっき私が予知夢で視た通りに。
 未来からの刺突──出せば当たる、回避不能の一撃。
 ふふ、別に「こういう角度で投げたらうまい具合に反射して当たる」とか、そういうことを計算した
わけじゃありませんよ。ただ、すべてを燃焼させる気迫で対抗すれば矢もよけられて包丁も刺さるという、
なんだか大昔の根性論みたいな因果関係がこの状況でたまたま成立していることが分かっただけです。
 なんでもかんでも先のことはお見通しっていうこともないんですけれど。
 まったく先が視えないあなたよりは、私の方にアドバンテージがありましたね。
 綾瀬胡桃は一つ大きく痙攣したのち、事切れたのか、弓を取り落として動かなくなりました。
 それを満足そうに眺めてやる私。
 ふっ……勝利!
 これは是非とも賞賛の言葉を賜りたいものです。「よくやったぞ、麻耶! でかしたな!」ってね。
 そしてなでなでしてもらうのです。頭を、こう、髪がくしゃくしゃになるくらい。
 うーん、わくわくしますね。
 牝犬退治は無事終了。明日からは先輩とのんびり死体損壊遺棄の共犯生活を送りましょう!
426沃野 Act.18 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/28(金) 21:26:37 ID:ZzaEevln
 ──なんて明るい未来図を思い描いたりしますが。
 残念なことに私も力尽きてしまったようで。
 ぐっとおなかに気合を込めても、うまく起き上がれないです。
 指先一つピクリとも動きやしません。いえ、それは誇張で、動くことには動きますが、どっこいしょと
立ち上がってスタスタと愛しの先輩の元まで赴き、その懐へ飛び込むなんてことは不可能でしょう。
 どうやら勝利ではなく、相打ちだったみたいです。
 ああ、なんだ。結局、私たちの戦いに勝者なんかいなかったんですね。
 二人の敗兵がここに転がっているだけ。
 共倒れ──いかなる実も結ばなかった、恋愛局地戦のなれの果て。
 みじめですねぇ。
 とりあえず自嘲で、孤独に死にゆこうとする自分の魂を慰めてみます。
 でも、やっぱり、無理。目尻が熱くなって、涙が滲むのを止められません。
 ああ、寒い。なんでこんなに寒いんでしょう。夜とはいえ、今は夏なんですよ。
 血液。涙。体温。そして魂さえもが、私からこぼれ落ちていく。
 昨日まではどこへでも続くと無条件に信じていた道に、大きな大きなシャッターが下りてきます。
 待ち受けるのは、あそこに転がっている女と同等の未来。
 もうどこにも行けないのに、ここに留まることすら許されません。
 係留なき五体──繋ぎ止めるものを失った私たちに、明日はない。
 淋しいなぁ。
 淋しいですよ、先輩。
 胸が締めつけられる。助かりたい。まだまだ一緒に生きたい。
 もしそれが叶わないというなら。
 せめて、最期くらいは看取ってほしい──

 霞む意識の中でそう願いました。
427沃野 Act.18 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/28(金) 21:32:17 ID:ZzaEevln
判定──WNO(ダブルノックアウト)
今回は長くてすみません。
次回、「お前は何してたんだ」な洋平視点へ復帰。

>>362
BGMが付くと胡桃パートって超怖いですね……

>>401
絵が付くと胡桃って超怖いですね……

ひょっとして、胡桃って実はかなり怖い子だったんだろうか。
「うははー、愛い奴めー」と思いながら書いてたのですけれど。
428名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 21:32:29 ID:+WaQqv5t
最後の最後で胡桃の逆転に掛けます。
希望じゃなくてなーんかそんな気配がするような・・・
或いは二人とも奇跡の生還か・・・
どちらにしろGoodJob!!
429名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 21:34:45 ID:6cJvqJ8J
おいっ!!誰かデビルハンター呼んでこいっ!!!
いや、違う!!!えーとえーと…!?そうだっ!そうっ!!
ネクロマンサ−だ!!!!ネクロマンサー呼んでこい!!!!!
430名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 21:36:09 ID:tkeJ7sb5
ノックアウトはKOだヨ!
431沃野 Act.18 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/28(金) 21:37:03 ID:ZzaEevln
orz
432名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 21:39:45 ID:tWgGqM4Z
GJなんだ……なんだけど……
怖えええぇぇぇエエえェェ(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
これが本当の修羅場というやつなのか。
433名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 21:40:47 ID:nUxCGhW4
麻耶たん!?麻耶たぁぁぁぁん!!!
434名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 21:44:19 ID:FqqAkaiz
すげぇ……! なんつーか史上最強の修羅2匹深夜の激突!って感じだ
ココ最近の「沃野」の面白さは半端じゃないネ!
正味の話最近連載中のどんなマンガやアニメやドラマよりも一番楽しみだったりする
435名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 21:46:21 ID:HpqwylFr
麻耶たんが……orz
436名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 21:47:23 ID:nbj3zHAI
で、これはいつ映画化されるんですか?
437名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 21:53:14 ID:6cJvqJ8J
激突!! 植物怪人対暴れロリ!!
438 ◆XAsJoDwS3o :2006/04/28(金) 22:08:46 ID:l0OSQB/a
くるみーんッ!!!・゚・(ノД`)・゚・
ターミネーターのラスト思い出しました

>>427
愛ゆえに…
Act10の胡桃は可愛らしくなりそうですが
439名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 22:13:59 ID:9Qo7kVqS
くるみんは決して負けないんだから!
いつかきっとよー君をベッドにしばりつけ(ry

頑張れくるみん、修羅になれ!
440名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 22:16:32 ID:6cJvqJ8J
みらくるくるみん
441名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 22:21:41 ID:/E49aQOh
くっ、く、く、クルミビーム!
442名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 22:30:19 ID:bheyMHD2
『綾瀬クルミの冒険Episode00』
443名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 22:33:16 ID:4VfIdcbr
く…くるくるくくるくー…


ダメだ…
444名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 22:51:22 ID:tLJ9awRp
くるくるくるみーらくる。


ああ、ちょっと古い。
445名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 23:02:30 ID:6cJvqJ8J
み、ら、く、る、み
446名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 23:05:47 ID:vgZrv7q+
ミラクルミ♪ミラクルミ♪
447名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 23:46:19 ID:tLJ9awRp
今、テレビで「あの素晴らしい愛をもう一度」が流れているのですが。


あーはーはー。
448名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 23:50:05 ID:c96TOE6v
同じ番組を見てる悪寒
449名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 00:34:21 ID:R9gmVSkN
GJ!クールだ!
なぁ胡桃って実は「狂視」って書くんじゃね?

>337
受け取った!OK、最期まで戦士・胡桃を愛するよ!
450名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 01:04:24 ID:BvcsoR7B
>>449
ではマヤは「魔邪」だな。

さて、胡桃の奇跡の生還を全裸で待つか。
451名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 01:14:07 ID:TWwjqd9m
胡桃が矢を番えたところで何故か無明逆流れを連想した
452名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 01:16:09 ID:WY8Gclfk
僕は今全裸です
453名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 01:29:43 ID:/feOE01C
綾瀬 胡桃

格 彫刻刀 P 1 3500 +50%
射 弓 2〜6 4000 +50%
格 彫刻刀犬の字切り P 1〜3 4800 +50% 必要気力130
射 心眼弓 3〜9 5500 +80% 必要気力150



ボス並みの高スペックの胡桃タン…
こんな想像がポンポン浮かぶ俺が死ぬべきかもしれんOTL
454名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 01:50:20 ID:r80HFFAR
スパ厨はキメェな。
455名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 02:25:00 ID:0NC71SIa
くるみん「人の皮をかぶった悪魔め!」

麻耶タソ「きさまにふさわしい死に方が用意してある」

くるみん「てめえらの血は何色だぁ〜!!」

麻耶タソ「ひ…退かぬ、媚びぬ、省みぬ!麻耶に逃走はないのだー!」

よー君「死期が近付くと勘が冴えてな…」



ごめん、今北斗やってるからこんなのしか…orz
456名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 02:40:36 ID:t9M5RLGf
さすが胡桃!俺たちに出来ない事を平然とやってのける!
そこに痺れる!憧れるゥ!

457名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 02:41:29 ID:t9M5RLGf
sage忘れスマソ…
458名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 04:07:18 ID:9gSQS3eG
さて、今日も全裸で仕事を終えて精神と気力をリゲインしに修羅界へ来てみれば…

麻耶たんがああぁぁぁあああッッッ!!!!!?!!!?!???

459名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 04:33:54 ID:a6zhwzNP
麻耶タァァアァァン(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブル
まだだよね?まだ終わってないよね? こ れ か ら が 本 当 の 地 獄 だ !
460名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 04:56:41 ID:x5ODi5M0
            ヾヽ'::::::::::::::::::::::::::'',    / 展 .あ ま ヽ
             ヾゝ:::::::::::::::::::::::::::::{     |  開 .わ だ  |
             ヽ::r----―‐;:::::|    | じ て    |
             ィ:f_、 、_,..,ヽrリ    .|  ゃ る     |
              L|` "'  ' " ´bノ     |  な よ     |
              ',  、,..   ,イ    ヽ い う    /
             _ト, ‐;:-  / トr-、_   \  な   /
       ,  __. ィイ´ |:|: ヽ-- '.: 〃   `i,r-- 、_  ̄ ̄
      〃/ '" !:!  |:| :、 . .: 〃  i // `   ヽヾ
     / /     |:|  ヾ,、`  ´// ヽ !:!     '、`
      !      |:| // ヾ==' '  i  i' |:|        ',
     |   ...://   l      / __ ,   |:|::..       |
  とニとヾ_-‐'  ∨ i l  '     l |< 天  ヾ,-、_: : : .ヽ
 と二ヽ`  ヽ、_::{:! l l         ! |' 夂__ -'_,ド ヽ、_}-、_:ヽ
461名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 06:45:18 ID:BkmGtGg4
>>427
GJ!
貴方は情景描写が上手いね。羨ましい限りだ。
462名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 06:49:27 ID:z4vJRY5D
綾瀬 胡桃
スタンド名−サイケデリックラフレシア
再起不能?

To be continued
463名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 06:58:00 ID:2wm6EiuZ
洋平は、二人の殺し合いを見ながらオナってたりして。
464 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/29(土) 16:13:12 ID:uGpXUO6X
ttp://bbs9.fc2.com/bbs/img/_166100/166037/full/166037_1146294356.jpg
一応彩色済んで完成したので貼り
左から結季、祥、羽津季
465名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 16:31:38 ID:A48NROCY
洋平なら…洋平なら、きっとなんとかしてくれる
466名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 16:41:23 ID:ivORUqki
まだあわてるような時間じゃない
467名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 20:28:15 ID:Zzxbxa+0
よく考えれば、沃野の三人は全員何かを視る能力なんだよな
それに三人とも何かしらを見てないことによって失敗してるし
因果だなぁ
468名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 20:40:11 ID:86nosoIM
嫉妬界のエリート共め
469名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 22:42:34 ID:43PUP26A
>>467
能力者が自らの能力に溺れて(過信して)自滅というのはよくあるパターンだが、沃野での見せ方は巧いと思う。
なまじ胡桃の内面が見えてしまったために警戒してくっつかず、結果胡桃を飢えさせて食人植物にまでさせた洋くんとか。
胡桃の「視ている間は五感が衰える」というのもよく考えてるなあと思った。
470 ◆XAsJoDwS3o :2006/04/29(土) 22:46:06 ID:Dv6Aib/l
Act12まで完成。
これ完結する頃にはそこそこの容量になりそうですね

ttp://up4.skr.jp/src/up1812.zip.html
471名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 00:19:44 ID:EMcUO+qS
>>470
乙です
472名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 01:48:05 ID:/5zoN7wU
職人様乙
473長文すまん:2006/04/30(日) 09:38:40 ID:HBxChSTR
>>470氏乙です。やはり胡桃裏BGMはイカスぜ。act3の出だしとか特に。
act2
後半背景が反転するあたりからBGMを変更するといいかも。
推理モノの不自然な点を見つけたときのようなBGMとか。
act10
せっかくの胡桃の乙女心全開セリフがまた3ページに渡って読めない。
せめて表示速度をギリギリ読める程度に落としてくれまいか。
act11
麻耶下校のシーンで背景が昼だけど、
今まで下校は夕方だったからどっちかに統一したほうがいいかと。
委員会後の下校時刻ってそう違いなさそうだしね。

沃野はいい修羅場だ。◆1IgBlOP8QY氏は現嫉妬神だ。
たまに辞書引かなきゃ読めない字があるけどな。
カチリッ…と、俺の頭の中でスイッチが入る。
怒りが、憎しみが、悲しみが…俺の殺意を呼び覚ます…
「兄…上…?」
「英知いいいぃぃぃっっっ!!!」
もはや戦法は無い、策も無い。
ただ英知に向かって爆ぜる…
「兄上、やめてっ!」
だが…そこまでだった…
英知の目は赤かった、英知の頬に涙の跡があった。
なにより英知が…怯えていた。
落ち着けっ!まだ天野が死んだと決まった訳じゃ無いっ!
『当たり前だろ、俺は兄貴だぞ。弟の面倒を見る事など、少しも苦には思わん』
そういえば…昔はよくいじめられて、兄貴に泣きついてたな。
不撓不屈と同じく、不撓勇気も英知の兄だ。
妹を憎むのは…きっと間違っている。
「天野はどうしたんだ?」
思考を無理矢理冷静にさせ、聞いた。
「兄上…?」
「天野はどうしたのかと聞いているっ!」
英知は一瞬びくっと震えたが、すぐに英知の瞳にいつもの輝きが戻った。
「危険な状態ですが、まだ死んだ訳ではありません」
「具体的には?」
「槍が心臓部を貫通、他は無傷です」
「俺にできる事は?」
「止血をお願いします」
「わかった!」
通常の数倍の早口言葉で会話する。
これ以上天野の体から血が流れれば、失血死をしてしまうだろう。
止血に役立ちそうな物は…さっき左手の応急処置に使ったハンカチ。
うわぁ…役に立たねえ。
こんな事ならシーツでも持って来るべきだったな…
だがのんびりしている時間は無い、衛生的に少々心配だが今着ているYシャツで何とかするしかない。
…良し、なんとか止血は済んだ。
…結局、一度マンションの一室までシーツを取りに戻る事となったが。
だが既に天野の血は水溜りが出来るほどに流れてしまっている。
果たして間に合ったのだろうか…
「英知、終わったぞ」
「はい」
「他にやるべき事はあるか?」
「いえ…特には…」
悔しいが…俺にできるのはここまでらしい。
後は英知頼みか…
…そういえば、英知はさっきから何をしているんだ?
「英知は何をやってるんだ?」
「血流を廻しています」
英知は視線を動かさずに答えた。
「………?」
「早い話人工心肺の代わりです。とにかく脳に酸素と栄養が届かなくなるのを防がねばなりません」
「それだと時間稼ぎにしか…」
「先ほど不屈の兄上に式神を遣わせました、兄上が来るまで時間稼ぎに徹します」
「だが…」
いくら兄貴でも、欠損した心臓を元に戻す事なんて…
「後は…天に祈るだけです」
英知の眼に先ほどの覇気は無い…いや、それは俺も一緒か。
「兄上…」
英知はまるで独り言のように呟いた。
「なんだ…?」
「手を…握っていただけませんか」
「………?」
 ぎゅっ…
「ちっ…違いますっ!天野様の手ですっ!」
「お…おう」
 ぎゅっ…
何が何だかわからんが、とりあえず従っておいた。
天野の手は…まだ暖かい。
顔も少し青ざめている事を除けば、いつか見た寝顔と変わらない。
…死にかけてるなんて到底信じられない。
生きているんだ…天野はまだ生きているんだ…
知らず知らずの内に俺は何かに祈っていた。
頼む…助かってくれ…
そう祈り続けていた。
英知も額に脂汗を出しながら必死の表情で方術を使い続けている。
必死の表情で…希望を繋ぎ止めている。
だが…英知の体力は明らかに消耗してきている。
果たしてもつのか…
「神様…神様…」
「英知、修羅場において神の名は禁句だ」
来た…
振り向けばそこに…兄貴が居た。
「神などなんの役にも立たん、まだ鰯の頭に祈った方が良い」
「兄貴、そんな事を言ってる場合じゃ無いだろっ!」
「わかっている。真っ先に俺に知らせたのも、安易に治癒方術を使わなかったのも良い判断だ…良く頑張ったな、英知」
「兄上…」
「あと五分だけ時間を稼げ、後は俺がなんとかしよう」
「はいっ!」
英知が返事をするよりも早く、兄貴は天野の胸に手を置き、なにやら呪文らしき物を唱え始めた。
「………」
「………」
俺も英知も何も喋れなかった。
「妙だな…」
そう兄貴が呟いた。
「どうしたんだ?」
「止血は誰がやった?」
「俺だが…何か拙かったのか?」
一応、昔兄貴から教わった通りにやったつもりなのだが…
「英知、螺旋の槍で心臓部を貫いた…だったな?」
「は…はい」
「治癒方術は?」
「あの…使う暇がありませんでした」
英知がどんどん小さくなっていく…
「勘違いをするな、確認をしただけだ。だが…それにしては傷も失血も少なすぎる…」
「少なすぎる…!?」
確かに…今になって考えると、あれだけの大穴が開いていたにも関わらず、止血が早く終わりすぎたかもしれない。
「まさか…!?」
急に兄貴の表情が驚愕に満ちた物になった。
「兄貴、どうしたんだ!?」
嫌な予感が走った…
どうやら英知も同じだったらしく、焦燥の眼を兄貴に向けている。
「死してなお娘を守ろうと言うのか…ジェンティーレ…」
兄貴の耳に俺の声は入っていなかった。
独り言の意味も…俺にはわからない。
「勇気、英知、天野友美を助けたいか?」
一瞬…何を質問されたのかわからなかった。
「当たり前だろっ!」
「私も同じ考えです、天野様は生き延びるべき人です」
「何でもするか?」
「「え…?」」
声が重なった、質問の意図が掴めなかった。
「輸血を行う、お前達からギリギリまで血を流させねばならん」
「やってくださいっ!」
俺よりも早く英知が答えた。
「勇気は?」
「待てよ、血液型とかは大丈夫なのか?」
「今の天野友美にそんな心配はいらん」
「なんだって…?」
「説明している時間が惜しい、どちらにせよ一刻を争う」
どうする…いや、考えるまでも無い。
「わかった、やってくれ」
「了解した…安心しろ、必ず助ける」
あれから間もなく二ヶ月が経つ…
毎日はいたって平穏。
大槻と英知もあの日を境にやたら引っ付いたり喧嘩したりはしなくなった。
ただ二人は争う理由が無くなっただけで、特に仲良くなった訳じゃないらしい…
 カランッ カランッ
「「いらっしゃいませ」」
「………」
「………」
「「…ぷいっ」」
まあ、仲良くなるのも時間の問題だな。
大槻は相変わらずだ。
事件の前と後でほとんど変わってない。
せいぜい俺の事を『勇気君』と呼ぶようになった程度だ。
英知は思いの外働き者だって事がわかった。
ウェイトレス姿は大槻よりも似合ってるかもしれない。
…怖くて本人達の前では言えんが。
ちなみに俺の方は…相変わらずの皿洗い要員である。
左手の親指は…何故か元通りになっていた。
あの日輸血のために気を失うまで血を抜かれて、気が付いた時にはちゃんと生えていた。
そのおかげで、一瞬夢オチかと勘違いした程だ。
だけどあれが夢じゃ無い事はわかっている。
だって天野が…居ないから。
天野は事故で大怪我をして、治療のために入院している。
とりあえず学校側にはそう説明してある。
実際はまあ、入院と言えば入院だな。
ただ…俺はあの日から一度も天野と会っていない。
兄貴は言っていた。
『天野友美への面会はやめた方が良い。俺が許可するまではな…』
俺も英知も猛反発したが、結局は兄貴に押し切られてしまった。
最初はそれでも良かった。
だが一週間もすると徐々に不安になっていった…
『いくらなんでも遅すぎないか?』『天野は今どうなってるんだ?』『まさか…助けられなかったのか?』
今ではそんな声が頻繁に聞こえてくる。
いや、信じよう…信じるんだ…
 ジリリリリリリ…
電話か…
 ガチャ…
「はい、Phantom Evil Spiritsです」
「俺だ」
「兄貴かっ!?」
「勇気、明日は何か用事はあるか?」
えっと…明日は日曜だから…
「いや、無いぞ」
「そうか、なら明日の10時頃に診療所まで来い」
「兄貴、何かあったのか?」
「天野友美の快気祝いだ」
もう一度時計を確認する…現在9時35分。
「兄上、珍しく緊張していますね」
「うるさい…」
我ながら物凄く照れ隠しっぽい台詞が出てしまう。
「ねえ、勇気君…」
「何だ?」
「本当に私も行って良いのかなぁ…」
「大槻様、その質問は今日だけで6回目ですが」
「い…良いじゃない不安なんだからっ!」
英知に正論を言われたのが恥ずかしいらしく、大槻は不機嫌そうな顔になる。
「その程度の事で一々兄上の手を煩わせないでください」
「はいはい、喧嘩しないの」
まったく…どうして仲良くできないんだか…
「だいたい英知ちゃんには聞いてないよ…」
「はぁ…兄上、本日6度目の回答をお願いします」
やれやれ…正直急いでるんだがな…
「良いからお前も来い、お前も十分関係者だ」
この回答は大まかの意味は同じだが、回を重ねる毎に投げ遣りになっていた…
「でも…最後の辺り割と蚊帳の外…」
ちなみにこれも6回目。
「気にするな、行くぞっ!」
今日の大槻はやや落ち着きが無い。
俺に遠慮してるのか、それとも蚊帳の外だったのを根に持っているのか…たぶん前者だな。
「兄上、行き過ぎです」
「へっ!?」
本当だ…兄貴の診療所が100mほど後方に見える。
「英知、気がついてたなら早く教えてくれ」
「いえ、兄上の考えを邪魔してはと思いまして…」
いかん、まさか道を間違える程に緊張してたとは…
「ねえ、勇気君…」
「今度は何だ…?」
「診療所なんだよね?目的地って」
「大槻様、貴方は人の話を…」
「そうじゃなくてさ、無かったよ…診療所なんて」
「「はぁ…」」
英知の奴は、いちいち説明するのがめんどくさいって顔をしてる。
…たぶん俺も。
「まあなんだ、ある意味大槻の反応は正しいのだが…着いたぞ」
「ええっ!ここが…」
なんて予想通りの反応をする奴なんだろう…
「兄貴が普通の診療所に居る訳無いだろ…」
どうも大槻は未だに兄貴の事をわかってないらしい。
ガチャッ…
ドアを開けると、病室は宴会場へと変貌していた。
いや…正確に言うなら変貌しつつあった。
「あっ…不撓さん、おはようございます」
10人前はあるのではないかと思われる程の巨大なケーキを運ぶ…天野が居た。
「天野…なのか?」
正確に言うのなら…天野に良く似た者が居た。
声や喋り方は確かに天野だった。
だが流れるような黒髪が、瞳の色が…白銀に変わっていた。
「あの…実は私自身も良くわからないのですが…」
困惑の表情だった。
俺の中に絶望の念が広がっていくのがわかった…
「何を辛気臭い顔をしている」
兄貴が奥から出てきた。
「兄貴…」
「それは確かに天野友美だ、ただ少々複雑な事態でな」
「…なんだよ、複雑な事態って」
そんな言われ方をすれば誰でも不安になる。
特に原因を作った英知の表情は見るに堪えない。
「…どうする?君が話すか、それとも俺が話そうか?」
「あの…お願いします」
兄貴は少し考え込んだ後…話す。
「結論から言おう、現在の天野友美は吸血鬼である」
「吸血鬼!?」
いきなり非現実的な話だった。
「そうだ、天野友美は三年前まである吸血鬼と同居していた。
その時に因子が体内入り、現在まで残っていたのだ」
「そんな筈はありません!」
…と、ここで英知が反論する。
「因子は本来人間の持つ生命力とは相反する物です。生きた人間の中ではせいぜい数日しか保たない筈です」
「残っていたのだ…俺にも原因はわからんがな」
…すいません、この人達は何を話しているのでしょうか?
「あの…」
大槻がおずおずと手を上げた。
「なにか質問かね?」
「吸血鬼とか因子って何の事でしょうか…」
ナイスだ大槻、それは俺も聞きたかった。
「吸血鬼とは他の生物の生命力を血を介して吸収する生物の名だ。吸血鬼が血を吸う際、吸われた生物にはある因子とでも呼ぶべき物が残される。
そしてその因子を持つ者が死ぬか死にかけると、吸血鬼化する訳だ」
「………」
「………」
「…わからんか?」
「「わかりません…」」
我ながら情けない…
「まあ良い、とにかく天野友美は吸血鬼となる事で生き延びた…
いや、正確に言うのなら死んでも死にきれん状態にある訳だ」
「兄貴、それじゃあ二ヶ月も面会謝絶にしたのはなんでなんだ?」
「そこが一番不可解な場所でな…天野友美に記憶の混乱がみられた」
「記憶の…混乱?」
天野は憂鬱な表情をしている…
このまま聞いても良い物だろうか…
「これも原因は不明だが、天野友美は例の吸血鬼の記憶と身体的特徴を受け継いでいたのだ。
…もっとも、お蔭で能力の制御法を教える手間は省けたがな」
「不屈の兄上、そんな事が…」
「起こったんだ、俺とて目の前にある事実が無ければ到底信じられん」
「そんな…」
英知も信じられないと言いたげな顔をしている。
たぶん…俺も大槻も同じだ。
「だが天野友美は自分の記憶と受け継いだ記憶の区別がつかず、結果として自分の名前すら言えなくなってしまった。
その状況をある程度まで改善するのに二ヶ月かかった訳だ」
「………」
「………」
「………」
全員が無言になった…
俺には…何を言えば良いのかわからなかった。
「不撓…さん」
先ほどから無言だった天野が口を開いた。
「私はもう…人間じゃありませんし。自分の事だって…良くわかりません…」
「天野…」
「これでも私の事…天野って呼ぶんですか?」
「当たり前だろっ!」
考える時間など必要無かった。
「私は…天野友美を演じている…マリー・クロード・ジェンティーレかもしれないんですよ」
いつか見た涙目の天野だった。
だけど今度は混乱などしない…俺の信念をはっきりと貫く。
「俺は天野を信じたいんだっ!」
叫んだ…僅か1mにも満たない距離を…それでも千里以上に離れた距離を…届くように。
「そうですともっ!」
英知が続いた…
「あの日私を救った天野様は、確かにここに居るではありませんか」
正直に言って驚いた。
殺してやるとまで言っていた英知がここまで変わるとは…
俺の知らない間に一体何が起きたのだろうか?
「私は…天野さんの事は良く知らないけど…」
次に大槻が静かに…だがはっきりとした口調で言った。
「ここに誰かを演じて他人を騙そうとしてる人がいないって事くらいは、私にもわかるよ」
真っ直ぐに天野を見て、はっきりと断言した。
「みんな…」
天野の涙は…留まる事を知らなかった。
「それ見たことか…」
長い沈黙の後…最初に口を開いたのは兄貴だった。
「言っただろう、この程度で動じる連中では無いと…
一万の約束を忘れてはないだろうな?」
「待てやクソ兄貴」
「…ぺリカで良いですか?」
「お前もちょっと待て、どうゆう事だ?」
「冗談だ」「冗談です」
…ケロッと涙は止まっていた。
 カチャッ
「生命の息吹よ…」
既に大槻も英知も戦闘態勢に入っている…
俺も軽く準備運動をしておく…2・3発はぶん殴っておかなくては気が済まん。
「2対3の変則タッグマッチですか…これで預言書があれば完璧ですね」
「兄に逆らうとは良い度胸だ…」

 ガチャッ…
「フクツ、食料を調達して…き…」
「タワーブリッジッ!」
「ぐうぅ…」
「英知ぃーっ!タッチだーっ!」
「兄上…大槻様…先立つ不幸を…」
「英知ちゃん、死んじゃ駄目ーっ!」
「…何やってるの?」
言われてようやく冷静になる。
俺は一体何をやっているんだ…
「2対3の変則タッグマッチです」
天野が答える。
来訪者(いつかのマントの女性だった)はしばらく考え込み…
「…久しぶりに居合い斬りボンバーを炸裂させるわよっ!」
「「「「止めてくださいっ!」」」」
天野を除く全員の声が重なった…
「2番、魔剣王『ELEMENTS』歌いますっ!」
結局…そのまま宴会に突入する事になった。
状況を確認…
何故か宴会場に小型のカラオケが設置されており、マントの女性は歌に集中している。
天野は隣…それこそ肩が触れ合う距離に座っていて。
他の連中はマントの女性を見ている…しかも音楽が大音量なので多少大声を出しても周りには聞こえない。
つまり、今なら邪魔は入らない。
なら…ずっと気になっていた事と、どうしても言わなきゃいけない事がある。
「なあ、天野…」
「何でしょうか?」
「何であんな事をしたんだ?」
「あんな事…ですか?」
「英知から聞いたよ、何で命を粗末にするような事をしたんだ?」
思わず聞いていた…ずっと気になっていた事を…
「不撓さん、言ってたじゃないですか…欲しいのは平穏な日常だって…」
独白が始まる…ゆっくりと…
「ああ…言ったな…」
「私には…あれ以外の方法は思いつかなかったんです…」
「そっか…」
だが…俺が聞きたいのはそんな事じゃない。
「どうして他人のために命を捨てられる?」
「理由は二つあります。一つは、星が私の死を教えてくれた事…」
「天野、それはおかしい」
「…そうでしょうか?」
「自分で言ってただろ。その人に強い気持ちがあれば、予知は嘘にだってなるって」
「そうですね…本当は、そんなのは口実にすぎないのかもしれません」
「もう一つの理由は?」
「私は不撓さんが大好きでしたから…」
実は薄々感づいていた。
天野が捨て身になった理由を考えると…いつもこの結論に達していた。
「なあ、天野…」
「はい…」
「俺はあの時恥ずかしくて言えなかったけど…本当は天野とこうやって、何気ない時間を過ごすのが一番大切だったんだ」
「………」
天野は何も言わない…何も答えない…
大丈夫だ、恐れるな…俺の名は勇気有る者の名だろ…
「俺は天野が好きだから…」
言った…とうとう言った…
たぶん俺の人生の中で最も恥ずかしい言葉を…
俺は返事を待つ…
おそらく一瞬の…俺には永劫に感じる静かな時間を…
…静かな?
いつの間にか音楽も止められていた。
周りを見渡すと…俺と天野は部屋中の人間から注目されたいた。
「お前ら…いつから見てた?」
「『俺はあの時…』の辺りからかな」
全員を代表して大槻が答えた。
よりにもよって一番恥ずかしい所だった。
しまった…謀られた。
たぶん天野を除く全員がグルだ。
「…駄目です」
「…え?」
天野の…声だった。
「不撓さんには大槻さんが居るじゃありませんか。だから…私なんかと一緒に居ちゃ駄目ですよ」
天野は…笑っていた。
強がりじゃない、作り笑いでもない…そんな笑顔で言っていた。
「天野さん、私と勇気君は別に付き合ってる訳じゃないよ」
「それでも…駄目です」
「天野、俺は天野が好きなんだ。例え人間じゃなくともそれは変わらない」
「そんな事は関係ないんです」
天野は表情を変えなかった。
「天野友美…本当にそれで良いのか?」
「はい」
兄貴の問に対しても、天野は眉一つ動かさずに答えた。
俺の希望を…打ち砕くように。
「不撓さん…」
「な…何だ?」
動揺は声にも現れていた。
我ながら…情けない声に。
「だから…大槻さんを守ってあげてください」
その言葉の意味を…とうとう天野は答えてくれなかった。
484シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/30(日) 10:55:37 ID:a5e2GXZb
やっと第八話完成。
えっと…作者的には続きも考えてあるのですが、はっきり言って修羅場スレ向きではありません。
まあ…いずれは何らかの形で公開すると思います。(たぶん)
では皆様、しばらくの間お別れです。
さようなら…

よくある(…と思われる)質問と答え。
Q大槻は結局『怒り』を取り戻さないの?
Q勇気が鎧を取りに行った意味は?
Q追試は?
A完結したのはあくまで「天野and英知編」、この後に「大槻and不屈編」へと続きます。

Q魔剣王が天野に結界封じの魔剣を渡した意味は?
A伏線モドキです。

Q続きは公開しないの?
Aしません、修羅場スレ向きではありません。むしろ熱血バトルアクション物です。

Qなら意味の無い伏線作るなよ。
A…ごめんなさい。

Q一般人にわからないネタが多すぎませんか?
A…ごめんなさい。次回以降は減らす予定です。

Q次回作は?
A修羅場スレ向きなのを一つと、スーパーヒロインスレ向きなのを一つ、
人外スレ向きなのを一つ考えています。
485名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 12:00:27 ID:HBxChSTR
ttp://www.sanspo.com/shakai/top/sha200604/sha2006043006.html
修羅場スレ住人の敵のような男発見。え?なんで刺されないのさ?
486名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 12:29:12 ID:GBMW92j3
>>485
それ、なんてエロゲ?
487名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 12:50:54 ID:Zr8RhvMh
一般的男性のパライソ→三人仲良くハーレムエンド
修羅場スレ住人のパライソ→三角関係で嫉妬で修羅場エンド
488名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 13:05:19 ID:0GIQzwbT
源氏物語も男性(光源氏)視点で見るとただのハーレムものなんだけど
女性視点から見ると実にこのスレ好みの嫉妬文学なんだよな。紫式部が
女性だから多分後者の視点で見るのが正しい読み方なんだろうけど。

実は日本最古の文学小説の流れを汲む由緒正しいスレなんだなココw。
489名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 13:25:14 ID:yprE+ElK
源氏物語と言えば上村松園の六条御息所「焔(ほのお)」だろ
ttp://www.tnm.jp/gallery/search/images/max/C0032486.jpg
確か嫉妬のあまり恋敵を呪い殺したんだよな
490名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 13:29:34 ID:o9m9Dbr3
>◆IOEDU1a3Bg氏
GJ!!です。しかし、これでは続きが気になってしょうがないです。
自サイトでもうpロダでも他スレでもいいのでぜひ続きが読みたいです。
白銀の天野さんテラ萌えス
491『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/30(日) 13:35:50 ID:LCdD9n+0
「あー…はは…はー…はぁ……」
もう、ダメ。半分廃人。半分欲望。まともに考えも浮かばん。も、もう、誰でも良いから。
イカせてくれぇ。この際お嬢でも里緒さんでもいいってのぉ。あ、希望は志穂ネ。
「ぐっはぁ!!!!」
忌みなく叫び。
腰イテェ。腕いてぇ。あそこいてぇ………。し、死んでしまいまふ。
カチャ
と、部屋のドアが開けられる。あぁ、お嬢。抜きに来てくれたんか………
「晋……也」
う、そ、だ?
なんでだ?Why?
部屋に入ってきたのは、望んで居た人物、志穂だった。
嗚呼!まじか!目が覚めたのか!!お、お嬢。わかってくれたのか!
「し、志穂!頼む!助けてくれよ!」
ガチャガチャと、手錠と足枷をみせる。
「………」
「ほ、ほら。いつものナイフでスパッと!スパッッーーと!!」
ああ、志穂の顔を見たら元気が出てきたゾ!!!ビンビンだ!ビンビンだ!
まぁ、一部は元からビンビンだが。
「え…うん、っと…待ってなさい!い、いま助けるから!」
吃り過ぎだ!まだ目が覚めたばっかで混乱してるな。
ちょっとフラフラしながら歩み寄る。
あ、あれ?なんか顔が怖いヨ!?
この状況に嫉妬してるのかな?
「ち、ちがっ!こいつぁ不可抗力なんだヨ!自ら望んでやるようなMじゃないよ!」
カダカダ
近くにある椅子を俺の前に置き、向かい合うように座る。
「ふふふ……」
ゾクゾク!
背筋が凍るような笑み。不覚にもそれに快感を覚えてしまった。
……志穂のオーラが違う………オーラ力があがっているのか!!
グイ!
下らないことを考えていたのがばれたのか、ペニを両足で挟まれた。
「あっははは……みっともないわね。縛られてこんなに大きくしちゃうなんて。」
「い、いや。これは薬のせい……」
「言い訳はしない!」
グググ!
「あが!…くぁあ!」
492『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/30(日) 13:37:00 ID:LCdD9n+0
締め付けるように力を込められる。い、痛い!!
「い、いや。ヤってくれるのはいいんだけどさぁ……まずはこれを取ってくれよ。」
ゴシゴシ
完璧に無視され、足を上下にずりはじめる。……あ、足こきか!
嗚呼……そのぎこちなさがまたイイ!
「ぐぁ…あうおぁ!」
「ふっ…ふっ…ど、どお?き、気持ち…ふぅっ…い、いい?」
「あ、ああ!いい……くっ」
我慢できず、すぐに果ててしまった。
「わわ!す、すごい……口にまで入ってくるぅ…ぷぁあ!」
「あぐぁ…うぅ……」
や、やっと出れた………自分でもわかる程クセェ……
とにかく…手錠を取って楽になりたい。このままじゃきついって。
「だ、だからサ……は、はやく解いて…」
「ふふふ……次はコッチ…」
そう言うと、背中を俺にあずけ、跨がり始める。い、いや。きついってば。
そんな願い虚しく、志穂は挿入を始める。
ズニュニュ…
「んぁ…ふぁ…や、やっと…入ってきたぁ…」
ズプズプ
いきなり激しく腰を振る。す、すげぇ気持ちイイ…
「あ、あん…あぁ!…ん、…くぅ…あー!」
志穂も感じまくっているのか、声が大きい。
「くぅっ!」
またすぐにいきそうなので、なんとか誤魔化そうと後ろから志穂の背中をなめる。
「や、やぁん…だ、ダメよ、晋也…感じ…すぎちゃう……よぉ」
あー…なんか燃えてきた。
手が不自由ってのが悔やまれます。
「ん、ん…あ、あぁん…ふぁ…あくっ…」
舐めたせいか、また一段ときつくなる。普段から狭いから目茶苦茶キツい。
「も、もう…イク…ぞ、志穂ぉ!」
「う、うん!いいよ!きて……中に…全部私の中にぶちまけてぇ!私を…孕ませてぇ!!!」
493『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/30(日) 13:38:23 ID:LCdD9n+0
ビュー…ビュー…
さっきあんなに出たのに、更に大量に出る。…これも薬のせい…カナ?
「あ、あは…はぁ…いっぱいぃ……晋也のせーえき…全部入ってくるぅー……」
「はぁ…はぁ…」
「うふふ…き、気持ち…よ、良かった?晋也?」
「あぁ…めっちゃ良かった…」
「わ、わ、私の事…あ、愛して…る?」
何故にこんな時に?と思ったが、今、自分の素直な気持ちを伝えよう。
「ああ…好きだ…愛してるよ…誰よりも……お前が好きだぁぁぁ!!!!」
い、言った…やっと言ったぞ!
ガチャ
丁度グッドタイミングで(バットか?)お嬢が入ってきた。大きい声だったから、今の聞こえてただろうな……
「ふふふ……あっははははは!あははーーー!!!!ほら、見なさい!私に、子供ができるわよ!あっははは…嬉しいわぁ…」
いきなり志穂が歓喜に叫ぶ。「私に、私に愛してるって!好きだって言ってくれた!あなたじゃなく、私をねぇ!」
おいおい……言い過ぎだって…お嬢がブチ切れっゾ……
「この……この、泥棒ネコガァ!!!!!」
ほ、ほら、ヤッパリネ!俺縛られたままだからまた死んじゃうヨ!
お嬢はポケットに入っていた刃物を取り出し、志穂に襲いかかる。
ビュン!
が、間一髪。俺から飛び下りて斬撃をかわす。いったばかりなのに良くそんなに動けるなぁ……
そんな事を考えているうちに、志穂は部屋を逃げながら飛び出していった。
お嬢はというと。
「待てぇ!許さない!!絶対に許さない!!私のシンヤヲ……汚した罪……死んでワビナサイ!!!」
ナイフを構え直し、逃げた志穂を追う。その双眸からは大粒の涙が溢れていた。
ズキン
「う、うん?」
なんでだろ?あの涙を見た途端、胸が痛くなった。お嬢だぞ?俺にヒドいことしたんだぞ?本当なら、ざまぁみろって思うはずだ。
でも、あの涙…少し違和感が………
494リボンの剣士 5話 ◆YH6IINt2zM :2006/04/30(日) 13:56:32 ID:xNjdIk8C
家から持ってきた広告、チェックのための蛍光ペン、そして雑談モードに入った先生。
準備は整った。
俺は広告を広げ、買うべき目玉商品のチェックを開始した。
ん……これだ!
スーパー『バラッシュ』のタイムサービス、全食品三割引き! これは見逃せない。
薬局『猫寄らず』ではトイレットペーパーが安いな。これもチェックだ。
後は……ふむ、ふむふむ……―――。

「それじゃあ、解散!」
来たっ!
帰りのホームルームのうちに支度を済ませ、解散の合図と同時に席を立つ。
タイムサービス開始まであまり時間がない。急がねば。
「あ、伊星く」
今日は木場の相手をしている暇も、部活に行く明日香を見送る余裕もない。
いち早く教室を飛び出し、階段を駆け下り、無駄なく靴を履き替え、校門を抜ける。運動力に自信はないが、障害物競走だけは得意な俺。今日は一番に学校を出られた。帰宅部のエースの座を狙えそうだ。
だがまだ帰宅するわけではない。商店街へと急いだ。

商店街の中ほどにあるスーパー『バラッシュ』の前で時刻を確認。タイムサービス開始まで後十分ほどある。
ふぅ、間に合った。
すでに店内はこれを狙っている主婦の方々でにぎわっている。俺も入ろう。
「あら、人志君?」
偶然同じタイミングで入ろうとした人と目が合う。その人は、明日香の母、小百合さんだった。
「あ、どうも」
おばさんも狙って来たか。手にしている買い物籠はかなり大きい。
「人志君も、ここで買い物?」
「はい」
「やっぱり、タイムサービス狙い?」
「まさにその通りです」
「ふふっ、しっかりしてるわね」
スーパーに入る。おばさんは店内用のかごを二つ取り、一つを俺に渡してくれた。
店の中のボルテージが徐々に上がっていくのが感じられる。おばさんからも、やる気がオーラとなって溢れているのが分かる。
雰囲気に飲まれてはいけない。ここはまもなく戦場になる。
戦闘開始まで、あとわずか――――。
495リボンの剣士 5話 ◆YH6IINt2zM :2006/04/30(日) 13:58:24 ID:xNjdIk8C
凄い、凄すぎる。
店内の熱気が、ではなく、おばさんの技が。
同じ名前の商品でも、パックごとに微妙に量や質は異なる。おばさんはその違いを人の波の中で見極め、総合的に最も優れた品を自分のかごの中へと納めていく。
それだけでなく、俺が取りたくて取れなかった品が、いつの間にかかごの中に入っていた。
おばさんは、俺が欲しい物まで、わざわざ取ってくれたのだ。もちろん、その眼によって選ばれた良い品である。
自分が買いたい品も満足に取れず、終わってみれば、服や髪が乱れまくっている俺やほかの客と比べ、おばさんの身なりには乱れ一つない。
非の打ち所のない、パーフェクトだった。
「さすが小百合様、お見事でございます」
「あらあら、褒めても何も出ないわよ?」
そう言いながらも、おばさんは買ったお菓子を一つ、俺の袋に入れてくれた。

買い物が終わった帰り道。凱歌でも歌いたい気分だった。なにせ、あの戦場で思わぬ助けを受け、大勝したのだから。でも横におばさんがいるから、やめておこう。
「そうだ、人志君」
「はい?」
「今度の日曜、明日香の剣道の試合があるの。もう聞いた?」
「いえ、聞いてません」
「そう、あの子、まだ話してなかったの……」
片手を頬に当て、眼を伏せるおばさん。
試合の連絡は、明日香から直接聞くことが多いから、全然気づかなかった。
そうか、もうそんな時期か。
それはそうと、歩きながら眼をつぶるのは危ないと思う。
「まあいいわ。とにかく、日曜に試合があるの。もし時間があったら、応援に行ってあげて」
「わかりました」
言い終わると、おばさんは押していた自転車に乗り、急発進した。
「それじゃあ人志君、グッドバーイね」
「あ、それは……」
大量の荷物を載せているにもかかわらず、おばさんの自転車は猛スピードで遠くに消えていった。
「明日香の試合か」
反復してみる。見に行かない理由はない。
今度の日曜は、空けておこう。


(6話に続く)
496名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 14:07:55 ID:xUWbKvfk
サービスエロよりもゾッとする嫉妬と憎悪をををををををーー!!(キャッチフレーズ)
497名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 18:54:12 ID:heGuYIBQ
>>493
(;゚Д゚)<マジかよ…


(;゚Д゚)<お嬢と志穂が…


((((;゚Д゚))))<入れ替わっただとぉ!


(;゚Д゚)


(((((((((;゚Д゚)))))))))

>>495
お、おばさああぁぁぁんっ!!
GJ
498名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 21:47:49 ID:xDEhzlb1
泥棒猫と言う単語に萌えてしまう俺猫好き。
499名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 22:02:10 ID:uW90Xi7s
この隙に、全裸で応援レスつけるぜ
「もし、神様がいるのなら……。」の作者様がんばって!
茜ちゃんぐらいの、狂いかけの思い詰め少女が大好きなのであります
未曾有のサイ娘・円香との全面対決が待ちきれずに肛門がウズウズしてるであります

続き待ってます、全裸で。
500名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 22:07:29 ID:1POyuGcT
>484
GJでした!
天野さん生きててくれて良かった…
修羅場スレでこういうのも変な感じだけどホントに生きてて良かった

天野さん快気を願ってこんな妄想してたくらい
ttp://uploaders.ddo.jp/upload/500k2/src/1146399278642.gif
冷静になるとやりすぎもいいところだけど
「謝るなら最初からやらない」の精神で謝りません

>493
実は初期のころからお嬢を応援してました
望みは薄くともお嬢がんばれ!

>195
小百合様っ!小百合様っ!
伊星君が結構良い男に見えるんだがこれはやはり世間ずれした価値観なのか

>まとめサイト管理人様
今回の絵は二次創作もいいところなので
保管は辞退致します…
501500:2006/04/30(日) 22:09:59 ID:1POyuGcT
アンカータイプミスの訂正
誤>195 正>495
すみません…
502 ◆XAsJoDwS3o :2006/04/30(日) 23:23:42 ID:fLclsCq/
>>473
>せっかくの胡桃の乙女心全開セリフがまた3ページに渡って読めない。
>せめて表示速度をギリギリ読める程度に落としてくれまいか。

前回も同じ指摘があったんですけど今回は1Pに収まらない文字数だったので
どうしようかと悩んでいたんですが…
なるほど、その手があったか。盲点でした
早速訂正してみます
503義姉 第11回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/01(月) 03:24:14 ID:Dz0rZ9Ve
        *        *        *
『士郎』

「今酔っているんだけど――」
 姉ちゃんの言っている意味がわからなかった。ただ苛立ちの感情が混じった声だった。
 オレはただ顔を俯けたまま。返事はしない。出来ない。子供の様に泣いているだけ。
 そんなオレの強引に掴み上に向けさせられた。姉ちゃんの顔はやっぱり怒っていた。
 姉ちゃんはさっき置いた缶の中身を口に含んだ後、オレの頭を掴み唇を重ね、唇をこじあけ舌を口内へとさしこまれ、姉ちゃんの口の中にあったリものを流し込まれていた。流し込まれたチューハイを無意識飲み込んだ後ようやく何をされたのか気がついた。
 ――キスされたんだオレ。
「私は酔っている。あんたも酔った。お互い今晩起きたことは朝になれば全部忘れる――」
 オレの頭を掴んだまま目の奥まで見通すように睨みつけてくる。
 まだその言葉の意味が理解できなかった。
 しかし姉の伸びてくる手で理解した。
 抵抗できなかった――いや、しなかった。心の何処かで望んでいた行為だから。



 背徳感――
 ただひたすら姉と体を重ね、がむしゃら求めていた時には全く考えていなかった。
 昨日の夜、行為が終了して間もなく何一つ返事をしないまま姉ちゃんはオレの部屋から出て行った。
 一人ぼっちになった部屋で自分の行った行為の恐ろしさに震えていた。

 どんなに震えていようが朝はやってきた。
 朝になれば全部忘れる、確かに姉ちゃんはそんな言葉を言っていた。
 でもオレには普段通りにする自信はない。いつも通り朝食の準備をしたが姉ちゃんと顔を会わせるのが怖かった。
 だからオレは姉ちゃんが下へ降りてくる前に一人で食事を済ませ家を出ていた。
504義姉 第11回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/01(月) 03:24:47 ID:Dz0rZ9Ve
 一人駅へと向かう。日常的な行為の筈なのに日常と全く違って感じる。
 誰かがオレの事を話す、誰かが後ろからオレの背中を指差す。昨日オレのやったことなんて誰も知らないはずなのに。
 ただの被害妄想に過ぎない。少し考えれば分るがはずなのに、その考えを否定しきれない。吐き気がしてくる。
 怖い。落ち着かない。この町に初めてきた頃の様に近づいてくるもの全てを恐れている。あの頃は無理矢理にでも姉ちゃんが学校まで引っ張っていってくれた――

 心臓が跳ね上がった。誰かがオレの背中を叩く。お前の罰だと言わないばかりに。
 慌てて振り返った先にはいつもの様に笑っているモカさんがいた。
「あ……あの、おはようございます……」
 なるべく平静を装うとしてもできなかった。隠し切れない動揺が全身から滲みでている。
「前にも言ったけど、私でよかったらいくらでも悩み事の相談にのるよ」
 ――大丈夫だ。姉ちゃんは昨日の事をモカさんに話していない筈。
 優しい姉、というより母の様にオレの頭を撫でてくる。背はオレなんかよりずっと低いのに何故か大きく感じる。
「――いや、別に人に話すようなことじゃ……」
 人に話せる訳がない、姉と関係をもった事――
「んー、そう? あ、そうそう――」
 会話は間もなく何気ない世間話へと移っていった。そんな会話の中でもオレは動揺がにじみ出ていた。

 日常的な学校の光景も今の自分には不安にさせる材料にしかならなかった。
 廊下で姉ちゃんとすれ違ったが顔を見れなかった。気配でわかる――何かに苛立っている。
 昼休みにモカさんと中庭で過ごす時間が日常と化していた――筈だった。
 落ち着かない。
 そして勝手にモカさんの胸やら腰に目線が行っていた。そのことに自分が気づくと同時にモカさんがこちらへと笑いかけていた。慌てて視線を空へとやった。
 いつの間にかモカさんとの距離が近くなっていた事に気がついた。なるべく相手に気づかれない程度にさりげなく離れようとした。
 そうだ――今気がついた。背徳感とは別の感情が自分の中にあることを。以前の夢とも現実ともはっきりしない間隔ではない。まだ体の奥底で燻っている、あの快楽。もう一度やりたい――
505義姉 第11回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/01(月) 03:25:17 ID:Dz0rZ9Ve
 帰りの電車の中で姉ちゃんとバッタリ会った。
 姉ちゃんからは何も言ってこなかった。そしてオレからも何かを言う機会を失っていた。
 目をあわせられない。
 都合よく携帯が震えたので目をそちらへと向ける。
 ――三沢からだ。『私達友達だよね?』短い、一行だけのメールだった。
 少し考えた後『友達だよ』と返信した。別にいいんだ、これで――
 でも何故か泣きかけていた。
 姉ちゃんがオレを睨んでいた――

 その夜、姉を再びオレの部屋に来た。そして抱いた――

 姉とのそんな関係が何時の間にやら日常と成りかけている。
 口移しで何かを飲ませる、それが行為の開始の暗黙の了解となっていた。
 ただ姉ちゃんとの会話は殆どなくなっていた。その代わりと言わんばかりに夜はお互い求め合っていた。
 行為が終ると姉ちゃんは不機嫌そうな顔して部屋から出て行く。その事が寂しかった。傍にて欲しいのに――
 昔一緒に寝たいって言った時はなんだかんだ言いながら笑いながら受け入れてくれた。その時とは歳も意味も違っているのはわかっている。でも一緒に居たい。


 いつの間にかモカさんとは屋上で過ごすようになっていた。
 姉ちゃんとも三沢ともは随分話らしい話をしていない、そんな心の隙間を埋めて欲しいと言わんばかりにモカさんと話している。
 そしていつもの様に頭を撫でられている。子供扱いされている様で少し腹が立っていたが慣れてしまえば一種の挨拶にすら思えてくる。姉ちゃんが人の頭の上に手を置いてくる時は大抵叩く時だった。
「んー? 士郎君」
「なんですか?」
 頭を撫でていた手がいつの間にか肩に下りていた。その次の瞬間に抱き寄せられていた。
「ちょ、ちょっと」
「大丈夫大丈夫、人間って誰かと密着している落ち着くんだって。いつだって力になってあげるから」
 落ち着く以前にドキドキする。
 姉ちゃんとそういう関係になっている事を話してもモカさんは力になってくれるのかな――
506義姉 第11回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/01(月) 03:27:09 ID:Dz0rZ9Ve
        *        *        *
『涼子』

 シロウと関係を持った――
 最近のシロウを見ていると苛立ってくる。あの日はその苛立ちがピークに達していた。自分自身の苛立ちを解消する手段・相手は何でもよかった。
 それが毎晩の行為と化していた。
 そして一つ困っている。情が移りかけている――そのことが新たな苛立ちの原因となる。
 昔シロウが拾ってきた猫と同じだ。私が戻してきなさいって言っても変に頑固なって頑なに拒否した。母さんが帰って来る頃には私にしっかり懐いて私も無下に出来ず一緒に頭を下げていた。
 本気じゃない、ちょっと危険な火遊び、そんなものにしか過ぎない行為。おまけに今友達が好意をよせている相手。
 もう少ししたら母さんが帰って来る。その頃にはお互いそんな事をやろうとも考えすらしない筈。いや、やれない筈。
 しかし先日母さんから電話があった、帰るのはもう少し遠くなると。
 火遊びを止めるタイミングを失いかけている――

 最近無理矢理にでも表情から苛立ちをけしいる。表情に出さないからって苛立ちが消えてなくなる訳ではないが、出したからって綺麗サッパリ消えてしまう訳でもない。
 モカは相変わらず毎日が楽しそうだ。
「涼子、ちょっと頼みたいことあるんだけどさ――」
 本人は隠しているつもりなのかどうなのか知らない、ただ長い付き合いだからわかる。何かやりたがっていることを。
507義姉 第11回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/01(月) 03:28:00 ID:Dz0rZ9Ve
<チラシの裏>
今ひとつ筆の動きがびみょー
次回はモカブレンドに大量の砂糖ぶち込みんだものを飲みながら書く予定
</チラシの裏>
508名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 05:37:31 ID:vCTJWLGe
ハッハッハッ、夜更かししてたら良いモノ見れたぜ!
509名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 05:55:25 ID:xPElSoMp
モカ…ブレンド…大量…ぶち込む…
ステキなキーワードだ! wktkが止まらないッ!
510名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 07:33:18 ID:ZLftz+B5
まて、ミルクは入れるのか?
511名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 11:33:39 ID:Jjnml8aX
>>510
どんなミルクがいいんだい?
512過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/05/01(月) 11:34:13 ID:RAbr3N8j
いつも私は満たされなかった。
親の勧めで日本舞踊を習った。
大会に出場し、常に上位入賞できる腕前になった。
けど…これは私が執着できる物ではなかった。
先生の勧めで友達を作った。
いろんな人と話すように心がけ、今ではアドレス帳には3ケタの登録がある。
けど…これは私が執着できる物ではなかった。
友達の勧めで部活に入った。
高校の部活で私に並ぶ人は無く、私は部長に任命された。
けど…これは私が執着できる物ではなかった。
別の友達の勧めでストリートファイトに出た。
と言っても、近所の不良に喧嘩を仕掛けるだけのものだ。
我流の格闘術とはいえ、やっぱり私の相手ができる者は無く、最近では『踊る黒い死神』と呼ばれ恐れられている。
けど…これは私が執着できる物ではなかった。
だけど喧嘩はストレス解消にはなった。
実を言うと親にも教師にも内緒で時々やっている。
そしてまた別の友達から恋人を作る事を勧められた。
そう言えば私には何度か告白された記憶がある。
けど…どれも断った。興味が無かったからだ。
その矢先、私は学校の後輩から呼び出された。
「僕と…付き合ってくださいっ!」
そう言われた。
少しだけ興味が湧いた。
恋人とはどんな物だろうか?
だから答えた。
「いいよ」と。
期待はしていなかった。
私が何かに執着する姿なんて想像がつかなかった。
けど違った…私に必要なのはこの子だった。
私はこの子を愛してしまった。
513過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/05/01(月) 11:35:06 ID:RAbr3N8j
最初は料理、次に裁縫。
覚える事は多すぎた、それでも時間は少しでも多くあの子と過ごしたかった。
初めて作ったお弁当はとても食べられる出来ではなかった。
けれどあの子は食べてくれた。
それが嬉しくて…同時に美味しい物が作れない事を悔しく思った。
私は今まで何ができても嬉しくなかったし、何ができなくても悔しくなかった。
今まではそんな事はどうでも良いと思っていたが、今はそれが誇らしく思えた。
私は今悔しい思いをしてるんだぞ、と世界中に宣伝したい気分だった。
私は今までになく頑張った、母親に師事し、足りない分は自主練と読書で補った。
一ヶ月もすると、あの子は引きつった作り笑いをしなくなった。
ある日あの子のボタンが取れかけていた。
私は上着を借り、ボタンを付け直そうとした。
だけど次の日のあの子の上着にそのボタンは付いてなかった。
私は再び悔しい思いをし、もう一度母親に御教授を願った。
一週間後…ボタン付け程度なら楽にこなせるようになった。
友達の勧めで編み物を習う事にした。
手作りのマフラーをプレゼントすればあの子が喜ぶらしい。
秋の間に完成させる必要があるので、少し早めに始めた。
だけど私はあの子の事を考えると居ても立ってもいられず、寝食を忘れて編み続けた。
完成した日に、私は嬉しくなってあの子にあげた。
けどその日は夏至を少し過ぎた頃の話だった。
それでもあの子は、嬉しいよと言ってくれた。
あの子が不良からカツアゲを受けているとの噂を聞いた。
私はすぐさまあの子と同じクラスの不良どもを呼び出し、痛めつけた。
しかし、どうやら目標はその中にはいないようだった。
私は痛めつけた不良から新たな情報を聞き出し、走り出した。
相手は上級生だったが、負ける戦いではなかった。
7人ほど病院送りにした時、また新たな情報が得られた。
カツアゲをしたのは…あの子と名前の似た別人だったらしい。
大晦日の日、私はあの子の家にお邪魔して大掃除を手伝った。
いや、手伝うつもりだったが逆に妨害してしまった。
私は悔しかった、だからいつものように特訓を開始した。
家の中を故意に散らかして、それを素早く所定の位置に戻した。
模様替えも頻繁に行った。
今なら役に立てる自信が有る。
もっとも、今の所はその機会は無い。
除夜の鐘はあの子の部屋で聞いた。
それなりに良い雰囲気になったと思うが、一線は越えなかった。
気安く越えるなと先生に言われたからだ。
私は全身全霊を賭けてあの子を愛した。
だから…どうか嘘だと言ってほしい…
「お互いに…もう別れた方が良いよ…」
そんな事…言わないでくれ…
「じゃあ先輩、さよなら…」
私は病室で一人泣いていた…
514シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/05/01(月) 11:36:08 ID:RAbr3N8j
はい、早くも新連載です。
世界観は不撓家の食卓と同じですが、時期はだいたい4年位前の話です。
つまり勇気が中1、不屈が高2の頃の話ですね。
一応、今回は超人は少なめにする(予定)ですし。
力技で解決は無しにする(予定)です。
それと不撓家を見ていない人にも楽しめる内容にする(予定)です。
…ちなみに不撓家の第九話も並行して書いていますので、少々遅めの更新になるかと思います。
>>500
該当する場面が無いなら…作れば良いんだっ!
そんな訳で『不撓家の食卓 温泉旅行編』執筆開始。
ある程度完成したら、どこかで公開します。
(白黒なのが幸いしました、銀髪でも大丈夫)
515名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 11:54:45 ID:xqGYfksC
新連載GJ!!!
516『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/05/01(月) 12:56:10 ID:br+eGHbU
あー…取れろって……早くしないとどっちか死んじゃうかもしれないだろぉ。
「だーあ!!!取れねぇヨ!!!!」
そうやってもがいていると、
「お久し振りですぅ〜」
久々に会ったような気がする。里緒さんだ。そうだ…
「り、里緒さん!これ取ってくれっ!」
「どうしてです?」
「え?…いや、た、助けにいかないと。お嬢と志穂を。」
「佐奈様のこと。好きじゃないんでしょう?それに、私達だけで此所から逃げ出しましょうよぉ。ね?」
こんな時までこの人は……
「ダメ!!お嬢も里緒さんも。俺が好きなのは志穂ナノ!」
これだけは譲れない。
「絶対にぃ?どうしてもぉ?」
「そう!絶対に!どうしても!」
「う〜ん…今晋也…いっ…も…やや…しく…なるん…よねぇ……」
なにかぶつぶつ言ってる。良く聞こえない。
「うん!良いですよぉ。解いてあげます。面白そうだから。」
「サンクス!」
面白そうだからってのが気になるが………
ポケットから鍵を取り出し、手錠、足枷を外し始める。
「よく鍵持ってましたね…」
「この屋敷の鍵の管理は、私がやってますからねぇ……」
こんな物の鍵もかい……
パッパと鍵を外し、自由を取り戻した。おぉ!動ける!!
「いやん!」
晒し続けていた一物をチャッチャとしまう。
「おっとと……」
目茶苦茶フラフラする。やっぱずっと縛られてたからなぁ。足がガクガクする。でも行かなくちゃ。里緒さんを後に、部屋を出ていった。







「はぁはぁ…あ、いた……」
二人は玄関ホールに居た。お嬢はナイフを。志穂は……斧を持っていた。あれは用具入れにあったやつだ。
二人は睨み合い、間合いを計っている。
「ま、待った!やめろって!」
慌てて二人の間には入り込み、仲裁に入る。
「晋也…」
斧を持っている志穂に近付く。
「ほ、ほら、志穂。そんな危ないの降ろしなって。な?」
そう言って志穂を優しく、刺激しないように抱き締める。あ、あれ?抱いた時の違和感が………
517『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/05/01(月) 12:56:58 ID:br+eGHbU
ドス
ああ、…この冷たい感覚……前にも。刃物が体に入った時のアレだ。
「う、お、お嬢?」
振り向くと案の定、お嬢が血塗れたナイフを持って立っていた。……なんだよ…俺を殺したら意味ないんじゃないの?
「そいつ、…それ、私じゃない!!」
は?
「私が…私が志穂よ!」
「ま、まさか…」
どうみても、お嬢じゃん……そう思い、抱いた『志穂』を見る。…うん、志穂…だろ?
力が入らず、倒れてしまう。あぁ…いてぇ…
「よくも…よくも私の晋也を、殺したわねぇ!!!」
「うるさい!うるさい!私が志穂なの!私が晋也に愛されなくちゃいけないのよ!!!」
そう二人で叫び、互いに飛び掛かる。
ドス!
ガッ!
ナイフは喉に、斧は肩に食い込んだ。血が噴水のように吹き出し、俺の顔に降り懸かる。あぁ…素人目でもわかる。即死だ。
二人もまた、血から尽きて倒れる。
ハハハ…はははっ…さ、最悪じゃん。
カツカツ
階段から、誰かが降りて来る。……だれだ?
「あらあらぁ〜ヒドいことになってますねぇ。」
り、里緒さんか。…これを見ても、相変わらずだなぁ。
里緒さんは俺の顔を覗き込む。
「ふふふ……晋也さんまで殺されちゃうなんて、予定外でしたねぇ…」
え…な、に?
よく、聞こえ…ない
「まぁ、いいわ。……次こそは待ってますよ。…也」
違うよ。みんなちがうじゃんよ。
俺の、名前も、違う。
目の前にいるのも、里緒さんと違う。「あ、あはは…げふ…げふ!…はは、は…」
俺は、結局、永遠に苦しみ続けるのかなぁ……
この、広き檻の中で………
518『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/05/01(月) 13:07:23 ID:br+eGHbU
orz
一応終わりです。
自分の力量じゃこんな中途半端Endしかできなス。
最後は晋也視点故のトリックです。誰が誰、というのは……考えてお楽しみください。
友達が投下準備してるので楽しみに待ってください。全裸で。
(´・ω・`)ノではまた次の修羅場で
519名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 13:29:25 ID:xqGYfksC
完結おめです
自分的には最後は微妙でした
520名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 13:55:14 ID:L+LS0oXX
俺は好きだな、こーいうの。
521名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 15:10:01 ID:rGws2oE0
GJ!!

黄金体験鎮魂歌思い出した俺はJOJOヲタ
522名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 15:47:03 ID:GGRRtEW3
やっぱり事実上無限ループオチか

>>510
生クリームを落とすのもありだろ

507の暗号を解読は
>次回はモカブレンドに大量の砂糖ぶち込みんだものを飲みながら書く予定
    モカ    に大量   ぶち込み       ながら
    モカ       の        ものを飲み
のうちどっちが正しいのか教えてくれキバヤシ!
523名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 15:47:59 ID:AXb2EaTA
(゚д゜;≡;゚д゚)!?
純也は? 純也視点は!?
524名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 16:32:35 ID:yrR5x4Qf
これはこれで面白いと思うんですけど……
HAPPY好きの俺としてはanotherENDも書いて欲しいと思ってみたり……
525名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 19:28:42 ID:+UCncHSE
晋也ほどの男でも修羅場ハーレムを形成するのは不可能だったか……
真の黒幕は里緒さんだったのかなぁ、いろいろ罠仕掛けそうだし当主殺したしメイドだし
526名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 19:44:36 ID:vVW1IN1R
おお しんやよ しんでしまうとは なにごとじゃ
527名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 19:46:46 ID:sDAK3jjX
>>524
このスレではどうしてもハッピーEDの方が少数派になるから、
ハッピーを求めるならハーレムスレに行った方がいいよ。
528沃野 Act.19 ◆1IgBlOP8QY :2006/05/01(月) 20:03:09 ID:kZ311lgG
 いつまで経っても麻耶が帰ってこない。
 闇の中に取り残されて待っていると、ひどく不安を掻き立てられた。
 静か過ぎて耳鳴りがする。時折、それを遮るように階下から物音が聞こえてきたような気もする。
 しばらくは麻耶を信じておとなしくしていたが、さすがに我慢の限界が来た。
「麻耶? どうしたんだ?」
 一段一段、壁を手探りして下りながら呼びかける。返事はない。
「麻耶?」
 停電、ということで玄関近く、分電盤のあったところまで行ってみたが、彼女の姿はない。代わりになんだか
ムッと異臭がする。なんだろう、この匂いは。
「あれ?」
 闇に慣れてきた目で見上げると、ブレーカーが落ちていることに気づいた。指先で起こす。
 周囲が光を取り戻した。同時に、異臭の正体を知った。
「えっ……血?」
 黒ずみ、半ば渇きかけた血液が床に広がっていた。床はなぜか泥で汚れていて、血を拭うように何かが
引きずられていった跡が残っている。中途になぜか電池が転がっていて、ますます謎めいてきた。
 引きずりかすれた跡を辿っていく。何があったんだろう。麻耶は無事なのか。心配になりながら歩を進める。
「──麻耶!?」
 そして遂に彼女を見つけた。彼女はシンクの下で、倒れ伏していた。半身が血だらけになっている。
近寄ろうとしたとき、部屋の中に包帯とギプスをまとった女性がいてギョッとした。背中に包丁が突き
刺さっている。麻耶の方を見ると、肩に矢が刺さっていた。
 なんなんだ? まるで突如現われた暴漢がふたりを襲って立ち去っていったような現場だが、包丁は
ともかく矢とはどういう了見だ。そもそも女性の方は襲われる前から負傷して治療を受けていたみたいだし……
 名探偵みたくパッとひと目で状況を分析することはできず、無様にうろたえた。何をすればいいのか
分からず途方に暮れかけたが、麻耶が呻き声を挙げたのでひとまず女性を放って駆け寄った。
 麻耶の顔は蒼白で、ただでさえ白い肌が紙のような色になっていた。
 それは「死相」という言葉を思わせた。
「せん……ぱ……い……」
 言葉を紡ぐどころか、呼吸をするのも億劫といった風情だ。
 抱き起こすわけにも行かず、屈み込む。
「どうした!? 大丈夫か!?」
 混乱しすぎて、すぐには「救急車を呼ぶ」という発想が浮かばなかった。三十秒くらいずっと彼女の
名前を連呼し、意味のない繰言を続け、ようやく通報しなければならないことに思い至った。
 携帯がなくなっていたので荒木家の固定電話を使い、しどろもどろで119に掛け現状を説明した。この家の
住人と、もう一人、身元不明の女性が怪我をしていて死にかけていること。説明は要領を得ず、やたらと無駄な
言葉を費やしてしまったが、なんとか通報を終えた。
 部屋に戻ってきて、麻耶の傍らに腰を下ろす。
 ふと顔を上げて、さっき「身元不明」と言った女性をまじまじと見詰める。動揺のせいで気づかなかったが、
見れば見るほど、やけに記憶を刺激するところがあった。
 腰まで届く、長い髪──見慣れた感じのする体型──包帯で隠れていて目元が見えないが、見覚えのある顔──
「まさか──胡桃?」
 呆然と立ち竦んだ。彼女とはほんの数時間前に別れたばかりだ。あのときは妙に鬼気迫るところがあったとはいえ、
怪我ひとつなく肉体的には元気そうだった。それが、こんなふうに「重傷者」って感じの姿になるなんて。
 違う、これは胡桃に似た誰かだ、彼女であるはずがない。いや、今は麻耶の方を先に助けないと。
 でも、もしあれが本当に胡桃だったら──詳しく確認しようと腰を上げた。
 ぐっ。弱々しい力で袖を握られる。麻耶が縋るような目をしていた。
「せんぱい、おねがいです、そばに……いてください」
 懇願される。赤い蔦が足に絡みつく。確認は諦め、彼女の方を先決にした。
 まず止血をしないと。保健の授業で受けた救急措置を必死に思い出そうとする。
「……ろして」
「え?」
 慣れない作業に手間取っていると、聞き取りづらい小さな声がした。
 麻耶は繰り返すように、ゆっくり発音する。

「ころしてください」
529沃野 Act.19 ◆1IgBlOP8QY :2006/05/01(月) 20:11:26 ID:kZ311lgG
「な……!?」
 手が止まった。
「どうせたすかりません」
「バ、バカ言うな!」
「どうせなら……せんぱいのてで……」
「助かる、絶対に助かるって!」
 医療に関しては素人だから言葉ほどに確信はない。俺自身、麻耶はこのまま息を引き取ってしまうのでは
ないかという不安に駆られていた。しかし、その考えを否定し、本人を励まさなきゃならないと理性で判断した。
 しかし、麻耶は一向に安心する様子がなく、苦しげに「ころしてください」と言い募る。
「いたいんです……くるしいんです……はやくしなせてください……」
 かすれる声に哀願の響き。胸が潰れる思いだった。蔦は足と言わず手と言わず、全身に次々と巻きついてくる。
「せんぱいのてにかかってしねるなら……」
 その隠喩は、彼女から噴き出した血が俺へ流れ込もうとするかのよう。
 無意識のうちに眼球が動き、肩に刺さっている矢を直視していた。
 恐らくこれを抜けば、堰き止められていた血がどっと溢れて、速やかに麻耶は絶命する。
 仮に。抜かずに残していたとして、彼女が生き残る可能性はいったいどれくらいなんだろうか。
「ほんもう……です」
 高瀬舟。国語の教科書で読んだ小説が脳裡によぎる。打ち消そうとする。が、息も絶え絶えな麻耶は
逃避を許さず、哀願を突きつけてくる。蔦は際限なく彼女の体から這い出してくる。
 赤い、血よりも鮮やかな蔦の葉。
「せんぱいにあえて、ほんとうにしあわせでした」
 それを美しいと。
「こくはく、うまくいって、うれしかったです」
 死に瀕している麻耶よりも美しいと。
「おべんとうも、たべてもらえて、うれしかった」
 何物にも代えがたく、他の何かを犠牲にしてもいいと。
「えっちは、もっとしたかったですね」
 彼女を安楽死させれば、朽ちさせることなく保てるんじゃないかって。
「でも、まんぞくしています」
 思っている俺は、壊れているのだろうか。
 果たして。
 俺が魅せられたのは麻耶だろうか。
 それとも──彼女の蔦か。
 分からない。
 分かりたくなかった。
 吐き気を催すばかりの頭痛に襲われ、こめかみを拳で揉んだ。痛みは少しも治まらない。
 思考を放棄したくなる。何も決断したくない。
 このまま、隠喩も時間も思考も、すべてを止めてしまうことができればいいのに。
 けど。刻々と、彼女の体から命が抜け出していく。
「もう、喋るな」
 押し留めても、麻耶は聞かなかった。
 言葉が紡がれる。
530沃野 Act.19 ◆1IgBlOP8QY :2006/05/01(月) 20:13:24 ID:kZ311lgG
──せんぱい

みじかかったけど

ありがとうございました

めいわくもおかけしましたけど

あやまるより、かんしゃしたいです

だって

うつくしい、こいをしりました

はなのような、こい

からをすてさったわたしでも

きれいに、さきほこれましたよ

きれいに……きれいに

えへ

うれしかった

たのしかった

だから

こうかいしていません

むねをはって

はれるほどの、むねじゃありませんが

それでも、じしんをこめて、いいたい

……せんぱい



あなたが──わたしのよくやでした
531沃野 Act.19 ◆1IgBlOP8QY :2006/05/01(月) 20:14:41 ID:kZ311lgG
次回、最終話。
エピローグ的な位置付けです。
明後日くらいには投稿できると思います。
532名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 20:18:01 ID:yc7m1iTZ
麻耶タン……
533名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 20:18:09 ID:xqGYfksC
最終話期待してます
534名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 20:23:15 ID:d8FH9uET
壮絶な相打ちだったが、死力を振り絞ってきれいに逝こうとした麻耶は立派。
535名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 20:23:46 ID:3tMeLAfz
  .∩___∩
  .|(((     ヽ これで背面ダイブした彼女の様に心の中で永遠に行き続ける
  /))))   (__) |  麻耶、恐ろしい子っ!
  |(((( (._●_) ミ   
 彡、))))|∪|  、`\/.⌒/ 
 ./  . ヽノ . .| \_/
 (___) .  |
536名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 20:26:41 ID:vVW1IN1R
胡桃ガンバ!!!
537名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 20:53:28 ID:1VgSjwL6
麻耶たーーーん!?
538名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 21:00:50 ID:fK9YH52Q
>>527
修羅場を経てどっちかとくっつくというパターンも存在するから一概にそうは言えないよ
539名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 21:12:44 ID:QRxUxOrv
・予知能力
・外見はともかく中身は策士
・最後は相打ち
なんかデジャブが…
麻耶タン生きて、生き延びて…
540名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 21:16:13 ID:6blWkMoe
>>531
ちょっとぉ……泣かすなよぉ…グスッ……
541名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 21:19:00 ID:wNBiX6J1
>>518
やはり鮮血ENDか
純也きゅん視点も見たいというのは公然の秘密
>>528
ようーーーーへいーーーー!!!くぉの役立たずがああああ!!!
542名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 21:24:05 ID:G2tZXUMF
>>535
胡桃たんならともかく麻耶ごときではあの御方と同列に扱うのは不可能。
543名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 00:01:06 ID:TNTop+VK
おぉ、神よ
>>530のラストが↓じゃないかと、ビクビクしながら読んでた俺をお許しください…


だからね、せんぱい
い っ し ょ に 逝 っ て く れ ま す よ ね?(ニヤリ
544名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 00:30:09 ID:mK/Q4Bun
壮絶だな……。
今プレイしてるゲームも大概きっついが、これも……。
545 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/02(火) 00:33:23 ID:quZShGGE
Act16まで更新しました

ttp://up4.skr.jp/src/up1823.zip.html
546名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 05:22:39 ID:5TreDGLK
>>531
相打ちか……だがまだ望みは捨ててない!麻耶タンなら……麻耶タンならきっとなんとかしてくれる!
547名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 08:43:49 ID:o4tUjTJe
胡桃が、これで終わったとは思えない…だってそうだろ?
彼女の愛はトラックの衝突にも耐えたんだぞ?
包丁の一つや二つどうってこと無い…たぶんな…
548名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 09:15:25 ID:9nmuwVqD
くるみたんがんばれ
くるみたんがんばれ
くるみたんがんばれ
549シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/05/02(火) 18:16:19 ID:m1N/4+mj
あれは今から二週間前の話…
あの日の私は少々イライラしていた。
あの子が一緒に昼食を摂るのを拒否した、たったそれだけの事だ。
『たまには先輩以外の人とも付き合わないと…』そう言っていた。
良いではないか、たかが一度や二度疎遠になった位で離れるような友人など放っておいて。
私は…誰よりも健斗を愛してる、誰よりも健斗のためを想っている。
昼食時位は一緒に居ても良いではないか…
頭の浮かぶのはそんな言葉ばかりであった…
私は少々ライラしていた。
たとえ放課後に一緒に中間試験対策をしても、帰りに一緒に寄り道をしても、このイライラは収まらなかった。
だから私は適当に良心の痛まない人種を見つけ出して…病院送りにしようと思っていた。
その日は少し遠出をして、隣町にやって来た。
「黒崎栞(くろさき しおり)だな…悪いがここは通行止めだ。この町の治安が悪くなるのを快くは思わんのでな」
裏路地で、見知らぬ男からそう声をかけられた。
重複するが私はイライラしていた。
誰でも良いから叩きのめしたかった。
今になって思えば…イライラを発散させる手段に喧嘩を選んだのも、いつもより遠出をして隣町まで出向いたのも、
そして相手の実力を測らずに向かって行ったのも…どれか一つでも欠ければ、今の私は病院などには居なかっただろう。
「うるさい…文句があるならかかって来い…」
もしも私が相手の実力を知っていたら…私は恥も外聞も捨てて逃げ出していただろう。
私は『踊る黒い死神』の異名を付けられて、少し慢心していた。
だから…『不死鳥のキラーマシーン』と呼ばれる不撓不屈(ふとう ふくつ)の事なんて知らなかったし、知ろうともしなかった。
 ドンッ!
「…えっ?」
そんな素っ頓狂な声しか出なかった。
何をされたのかがわからなかったのだ。
「まず足だ…」
そう言われて、ようやく私は足を撃たれた事に気がついた。
550シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/05/02(火) 18:17:08 ID:m1N/4+mj
…少し前に、改造エアガンを持った連中と戦った事がある。
なるほど、あれによって射程距離は大幅に伸びるが、それ以上ではない。
構える、狙う、引き金を引く、概ね銃にはその三行程が必要とされる。
だが素手は、接近しながら撃つ、回避しながら撃つ、撃ちながら構える、そんな事が日常だ。
そして鍛え抜かれた手刀は防弾チョッキすら貫く。
銃は攻撃の動作で攻撃し、防御の動作で防御する。
だがある程度まで訓練された者の体術においては、攻撃の動作と防御の動作は常に同一の存在である。
故に私は、銃を恐れた事は無かった。
だけど違った。不撓不屈の動作に構えは無かった、狙いも無かった。
10mは離れた距離をただの一撃で貫通してみせた。
その動作は、その攻撃は…視認できなかった。
「腕だ」
 ドンッ! ドンッ!
「肩だ」
 ドンッ! ドンッ!
「ぎゃああぁぁぁ…ああぁ…」
私が攻撃の正体がわからず戸惑っていると、今度は4発ほど続けてもらった。
やはり何をやられたのかはわからなかった。
ただ…あの時の衝撃(あまり思い出したくはないが)から考えるに、
何かが高速で飛んで来て私の四肢を貫いたのだと思う。
もっとも…あくまで想像に過ぎないが。
「さて次は…頭か?」
その時私は死を覚悟した。
いや…違うな、死の予感に恐怖した。
もう私は動けなかったし、動く気力も無かった。
そしてあの時私は…不覚な事に失禁してしまっていたのだ。
手足が火傷をしたかのように熱くて、あの部分に生暖かい感触が広がって…ああ、思い出したくない。
それを見たあいつは、まるで家に忘れ物をしたかのような感覚で言った…
「しまった、やり過ぎたか…」
そしてそれと同時に殺気が消えた。
私はそれで気が抜けて…失神した。
次に眼が覚めたのはそれから二日後、今私が居る病室であった。
…ちなみに、当時の私はこんな思考をしていた訳ではない。
確か…痛い、怖い、助けて、以外の単語は消え失せていたと思う。
あくまでこれは回想だからできる考察だ。
551シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/05/02(火) 18:19:08 ID:m1N/4+mj
今回のバトルパートはこれにて終了です。
黒崎栞が弱かった訳ではありません、相手が悪すぎたのです…
過保護はバトル中心にする予定は無いので、これ以降はバトルパートはありません(たぶん)。
ただ後に登場する泥棒猫役が活躍するには、どうしても一度過保護な恋人が動けなくなる期間が必要だったのです。
まだ暫くは回想シーンばかりですが、どうかご了承ください。
以下チラシの裏
不撓家温泉編は…やばい、書くのが楽しすぎる…
誰かのために策を練る『やさしい策士』こと天野友美の面目躍如。
てか第九話そっちのけ…

追伸、タイトルを変えるのを忘れました。
上の二つは「過保護」のタイトルで出す予定でした…orz
552名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 20:20:37 ID:ePwPeyb3
いろんな意味でwktkしている俺ガイル。
皆に便乗して待ってます、全裸で。
553名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 20:34:43 ID:ehHMpUO3
修羅場SSを読むのがクセになってきた。
554名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 21:26:10 ID:NreDnDGE
俺漏れも
マジで習慣化してる
555名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 22:17:48 ID:PYMYu0+4
>>531
最終話wktkしてお待ちしております

>>545
act14でd200がD200になっている以外OKだと思う
サウンドノベルになるとBGMで雰囲気が出るからより胡桃がコワ…
556名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 22:35:56 ID:b3nFVVAx
朝起きた直後と夜寝る直前にこのスレを見るのが習慣になりました。
557名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 22:38:40 ID:Y/W8qksX
うわあ気づいたら広き檻の中でが終わってた
晋也はこのスレで一番好きな主人公だったのに
やっぱり死んじゃってセツナス(´・ω・`)
最後の流れがよくわからない俺の読解力の低さプライスレス
558名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 22:49:31 ID:sTp8SbLB
『歌わない雨』書いてる人ですけど、続きを待ってる人居ますか? 居たら投下します
559名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 22:58:27 ID:BMpufPQR
ヨロ(゚ー゚*)
士郎並の消極っぷりやね
楽しみにしとります
560名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 23:03:08 ID:ehHMpUO3
カモーン!
561『歌わない雨』Act4:2006/05/02(火) 23:06:37 ID:sTp8SbLB
 芹の家から約30分、自宅に着いた僕を待っていたのはコメカミとレバーへの痛烈な打撃。言い訳の猶予を与えられず、無言でシチューを食わされた。
「で、どうだった?」
 17年も家族をやっていれば相手の考え程度は分かるらしい。僕が芹の所に行っていた事などは軽くお見通しらしく、吐息と共に訊いてきた。
「一年前の僕だ、問題しかない」
「重症な上に重傷ね。回復の見込みは?」
「心も体も笑えば癒える」
「そう、良かった」
 雪は安心したように笑うと手早く食器を片付ける。僕と言えばその後ろ姿を無意味に眺めて一服。
「携帯鳴ってるよ」
「おぅ」
 開いてみると緑から、『お話が有ります』と一言。いつもの冗長とも言える文章が無いシンプルな内容に少し不安を覚えたが、これから行く旨を返信。緑の家に行くことを軽く雪に伝え、そのまま玄関へ。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
 そしてドアを開けようとして、不意に走る鈍痛。いつもより強い痛みに暫く利き手を使うのを諦め、左手でドアを開けた。
562『歌わない雨』Act4:2006/05/02(火) 23:13:43 ID:sTp8SbLB
 ノックノック
 少しして階段を降りる音、続いて玄関が開きまだ制服姿の緑が出てきた。さっきの階段の音もそうだが、今肩で息をしていることといい、少し落ち着きが足りない。そして何より、
「視線が怖いです」
「ウルサイ」
 こちらを睨むように見ているんですもの、逃げたくなりました。まぁ嘘だが。
「とりあえず私の部屋に来て」
「おぅ」
 昔から緑の部屋は物が多いが、雑多な感じはしない。適当に置いてあるようで、整理されていた。
「そこに座って」
 言いながら投げてきたクッションを下に敷き床に座る。位置的には緑と向かい合わせで、何故かお互い正座状態。
 無言。
 ………超気不味い。
「なぁ」
「な、何?」
「赤巻紙青巻紙黄巻紙、はいっ」
「嫌」
 更に気不味い!
「あのね」
「はいっ」
 思わず敬語。
「せっちんの事なんだけどシンプルにね」
「はい」
「セックスしたことある、せっちんと?」
 覚悟はしていた。なので頭の中身を真面目に切り替え高速思考、結果素直に話すという答えが出た。
「している。今でも、たまに」
「……そう」
 緑は一度目を伏せると、こちらを押し倒してきた。筋力では圧倒的に勝っている筈のこっちが押し倒されたのは、多分心の弱さ。
「そうなんだ」
 その言葉に続いて来るのは、初めての筈なのに舌を入れてくるキス。緑が唇を離すと吐息と共に、唾液の橋が出来上がる。
「こんなこともしてた?」
「してた。謝りはしない」
「謝ってよォ」
 緑から、再びキス。
「何のつもりだ」
 理由なんか、自分が一番分かっている。
「最低ェ」
 最低なことは、自分が一番解っている。
「このゴミ虫」
 そんなこと、自分が一番判っている。
 彼女を傷付けたのは、僕だ。
563『歌わない雨』Act4:2006/05/02(火) 23:22:42 ID:sTp8SbLB
「でも」
 僕の胸に顔を埋め、緑は泣いていた。
「でもね」
 僕の肩に置かれていた手が握り込まれ、爪が皮膚に食い込む。鋭い痛みが走るが、敢えて受け入れることにした。
「好きなの」
 泣いている頭を感覚の無い手で撫でながら、僕は言葉の続きを待つ。
「好きなの」
「うん」
「ずっと、好きだったの」
「うん」
「昔から、好きだったの」
「うん」
 顔をあげて、こちらを見る。大粒の涙を流しながら顔を歪める表情を、しかし僕は綺麗だと思った。
「好きだったの、好きなの」
「うん」
「やっと、告白できた」
「おめでとう」
「えへへ」
 数分。
 突然、頭を撫でていた右手を取られ左胸の上に押し付けられた。しかし、感覚は無い。
「鼓動が激しくなってんの分かる?」
「分かる」
「本当に?」
「すまん」
 笑顔だった表情が急に消え、緑の目つきが険しいものへと変わった。しまった、ここは嘘を突き通すべきだったか。
「あの泥棒猫」
「芹は悪くない」
 不味い、目つきがどんどん険しくなっていく。
「呼び方、変わったね。そんなにあの娘が大事なの?」
「違う」
 表情が、再び泣き顔へと変わっていく。
「私じゃあ、駄目なの?」
「お前はお前だ」
 こちらからキスをすると、緑は無理に笑顔を作る。その痛々しさが、とても可愛い。
「ありがとう」
 そしてその夜、僕は緑を初めて抱いた。
564名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 23:27:39 ID:sTp8SbLB
今回はこれでオシマイです

謙虚?
自信が無いだけです

でも楽しんでくれたら嬉しいので次も頑張れる気がしますよ?
565名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 23:31:22 ID:ehHMpUO3
緑カワイイ!
これからの修羅場が怖いのに楽しみだ。
566『the scene of pandemonium』 ◆Z07CNpwkvg :2006/05/02(火) 23:52:50 ID:KNCuaghn
キーンコーン……
五時間目の授業が終わり、同時に目が覚める。うん、良き睡眠かな。
「くぁ…」
背伸びしながら欠伸をしていると……
「よ!俊太!相変わらず爆睡街道まっしぐらだな。」
「なんだ…北斗か……いきなり大声出すなよ。」
後ろから声をかけてきた野郎、『秋谷北斗』。所謂幼馴染みって奴だ。幼稚園から高校まで全部同じクラスと言う奇跡をたたき出した。
「なんた〜?相変わらずアンニュイなやっちゃなぁー。オッケ!ゲーセンいっか!!」
まぁ、俺みたいな性格にはこういう奴が一番あうのかもしれないが。実際うるさいがいい奴だ。
「あれ?だってお前、麗奈ちゃんと約束あるって…」
「あーあー!いいんだよ!女より男の友情。それ、優先第一位。麗奈のやつなんざまた明日にでも……」
「明日にでも…なに?」
合掌
これで今日のゲーセンは無しだな。
「あ、あららぁ〜。麗奈ちゃぁーん。どったの?そんな怖い顔しちゃって。」
その怖い顔の主、小林麗奈。北斗の『正式な』彼女だ。何故正式をつけるかというと……
「ホックン、テニス部の後輩にまた手出したでしょ…」
「え?…っとぉ〜…テニス部、テニス部………加奈ちゃん?あ、ちが、それ美術部だ……」
「こんの浮気物!!!何度言われれば気が済むのよ!!!」
「いたたたたた!!!ギブ!!ギブ!!」
女ったらしというやつだ。まぁ、たらしとはいえ、他の女の子との付き合いは浅い。せいぜい一緒にお茶でもってあたりだ。麗奈ちゃんの事はちゃんと好きらしいからな。

「俊太!!ぼーっとしてないで助けを……」
「心配すんな。保健室、空いてるぞ。」
「ぐあぁぁぁ!!!」
567『the scene of pandemonium』 ◆Z07CNpwkvg :2006/05/02(火) 23:53:32 ID:KNCuaghn
ゴキッ!
あちゃぁ。鈍い音。これで本当に保健室送りだな。まぁ、見舞いに行くのは野暮だろう。今日はこのまま帰ってぐっすりと………
「あ、あ、あの、あの。俊…太君!!」
おっと。この吃りかたは……
「やぁ、紗那ちゃん。どうしたの?」
小動物みたいな少女、岡崎紗那。中学、高校と同じクラスで、顔を合わせれば話すってぐらいの仲だ。
ただ、高校に入ったぐらいから、話す時に落ち着きが無くなったような気がする。
「え、あ、あのね、これ、担任の江川先生の所に持って行って欲しいの。」
そそくさとプリントを渡される。
「えー?……なんで俺が…」
「よ、よろしくねぇ!」
文句を言う前に去ってしまった。うーん、我が儘だなぁ。
「なんで俺が…」
「恐らく、なんらかの会話をしたかったのだろう、俊太と。」
いきなり北斗が沸いてきた。
「うわ!…いつの間に……麗奈ちゃんはどうした?」
「1ラウンドK.oでダウンしている。試合会場は保健室だ。」
ニヤリ
「生々しいな。」
ニヤリ
「ああ、実に生々しい!」
これで会話が通じるってんだから、幼馴染みも便利なもんだ。
「ところで紗那ちゃんの事だが…」
「あぁ…プリント渡したら走っていっちゃったよ。相変わらず忙しい子だね。…中学のときもあんな感じだっけ?」
「いや、彼女は中学から変わらず、しっかり者だぞ。…お前の前だけだ、あんなに緊張してるのは。」
「は?なんで俺だけ?」
そんなに忙しそうに見えるのか?俺。
「はぁ〜〜〜〜〜。まったく。お前は亀さんだな。」
出た。北斗の意味不明なたとえ。
「なんだよ…それ。」
「鈍いってことさ。」
…俺の何処が鈍いんだ?
568名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 23:58:13 ID:CFWBfJKV
なんか面白そうなの始まった
569名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 12:32:13 ID:oOQVD9Bf
570名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 13:19:44 ID:JfShAwFq
http://incest.on.arena.ne.jp/story/renka/yurusite.html
俺はこれがお気に入り。キモウトマンセー
571Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2006/05/03(水) 14:42:19 ID:zQiCI05A


   X    X    X    X


「ねぇ紅司ぃ、今度の日曜日って開いてる?」
 ある日の授業の合間の休み時間。 私は話し掛けてきた。 丁度藤村さんも居なかったしね。
「日曜日? いや、今のところ予定は無いけど……」
「えへへ……。 だったらさ……」
 ジャーンと自分で効果音を言いながら私は2枚の映画のチケットを取り出して見せた。
「あ、それって……」
 其のチケットを目に紅司は声を上げる。 予想通り。
「好きでしょ? 紅司こういうの」
「おぅ! さすがと言うか良くわかってるじゃん」
「そりゃそうよ。 何年幼馴染やってると思ってるのよ」
 そう言って私は胸を胸を張ってみせた。 
「ハハ、違いねぇ」
「じゃ、そう言うことだから今度の日曜日OKね? 時間は10時でいい?」
「そうだな、じゃぁ……ってチョット待て」
 返事を仕かけ紅司は言葉を切った。
「ん? なぁに?」
「コレって若しかしてデートなのか?」
「やだなぁ、若しかしなくてもデートに決まってるじゃない。 うんとお召かししていくから期待しててね」
 私はウインクして答えた。
「いや、そう言う意味じゃなくってだな……、俺今美嬉と付き合ってるんだぞ? 誰とも付き合ってなかった昔ならともかく今そんなことすれば、コレって立派な浮気じゃないか?」
 紅司は申し訳無さそうに口を開く。
「あのねぇ、結婚してるわけでもないんだから浮気だなんて大げさすぎるわよ。 それに例え見られたって平気よ」
 まったくコイツはいちいち大げさに考えすぎよ。
「んな訳あるか。 仮にお前はよくっても俺は……」
「だからぁ、大丈夫だってば。 藤村さん私たちの仲が幼馴染同士だって知ってたわよね?」
 遮るように私は口を開く。
「おぅ、そう言えばこのあいだの朝そんな事話てたな」
 紅司は先日の朝の様子を思い起こすように答えた。
「その時藤村さん言ってたじゃん。 従姉のお姉さんの幼馴染の話」
「ああ、それが?」
「それぞれ別々に恋人が出来ても仲良し同士だ、って。 つまり彼女は幼馴染が恋人同士になるなんてありえないって思い込んでるのよ。 だからね、例え私達が二人一緒にいるところを見られたって絶対に疑ったりなんかしないって」
 だからこそ私は誘った。 藤村さんのことを気にする必要が無くなれば断わる理由は無いはず。
「う〜ん、確かにそうかも知れんが……。 悪りぃ、やっぱ遠慮しとくわ」
「え〜何でぇ?!」
「やっぱ後ろめたい気持がある以上そう言うのしちゃいけないと思うんだ」
 申し訳なさそうに答える紅司。
「……ふ〜ん。 それが答えな訳ね」
 そこまで紅司が藤村さんに義理だててるのがなんだか妬けた。
「ああ」
「ファイ○ルアンサー?」
 私は某クイズ番組の司会者の口真似をしながら問い掛けた。
「ああ、ファイ○……って、おい!」
 紅司は思わず声を上げた。 何故なら私は口振りだけでなく、其の手つきまで某司会者よろしくチケットを破り捨てるそぶりをしてみせたのだから。 紅司の慌てふためくさまに思わず吹き出しそうになる。
「バカねぇ。 本当に破るわけ無いじゃない」
 私がそう言うと紅司は呆れるように、そしてホっとしたように溜息をつく。
「まぁ、良いわ。 今回は諦めるわ。 でも若し気が向いたら来てね。 10時に駅前広場で待っているから。 あ、気が乗らなきゃ来なくてもいいから。 10分待ってこなければ潔く帰るからさ」
572Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2006/05/03(水) 14:45:12 ID:zQiCI05A


   X    X    X    X


 日曜日。 俺は一体何をやってるのだろう。 時計は10時を指している。
 夕子は先日言ったとおりに駅前広場に来ていた。 そして俺はと言うとそこから離れた場所から夕子の姿を見つめていた。
 やはり美嬉に悪い気がするのでデートする気にはなれなかったが、それでも夕子が気になってきてしまった。
 とりあえず10分待とう。 夕子は10分待って来なかったら帰ると言っていた。 とりあえずそれだけ見届けたら帰ろう。

 10分経過。 帰る様子は無さそうだ。

 20分経過。 同じく帰る様子は無い。

 30分……40分…………そしてもう直ぐ一時間が経過しようとした。
 それでも夕子は帰るそぶりを見せない。
 とうとう俺はその場を離れた。 何時までも待ち続けそうな夕子を後にしていく事に後ろめたさを感じないわけではないが、だがそもそも俺はきちんと断わったんだ。 ココで帰ったとしても誰にもとがめられるいわれは無い。

 家に帰りつくと俺は本を開く。 夕子のことを頭から振り払おうと。 だがどうしても気になり没頭できない。
 気が付くとぽつぽつと雨音が聞こえる。 何時の間にか外を見れば今朝あんなに晴れていたのが信じられないぐらいの本降りだ。
 道路に水溜りが出来始めてる所を見ると既に降り始めて相当経っているのだろう。
 流石に雨に降られれば夕子も帰っただろう。 そう思ったが気になってしょうがない。
 本当にあいつ諦めて帰ったのか? 若しかして未だ待ち続けてるんじゃ……、イやそんなはずは……。
 どうしても気になって俺は家を飛び出した。 いるわけが無い。 流石にこの雨だ。 あいつも観念して帰っただろう。 俺が駅に行ったところでアイツは居ないだろう。 そして俺は其の事を確認すれば胸をなでおろせるだろう。
 そう、其の確認のために駅に向かうんだ。 ――あいつが居ないのを確認して安心する為に……。

 だが俺の予想に反し夕子はそこに居た。 雨に打たれながら。
 俺の姿を確認すると夕子はおどけて笑って応えた。 だがセットした髪も召かし込んできた服も雨でびしょ濡れで、其の頬は雨に打たれたせいか熱っぽく紅潮し唇は紫色に変わっていた。
「紅司ぃ……。 遅いぞぉ、 レディーをこんなに待たせちゃ駄目じゃな……」
 言い終わらないうちに夕子は倒れるように俺にもたれかかってきた。 慌てて俺は夕子を抱きとめる。 其の体は雨に濡れすっかり冷え切っていた。
「しゃべるな! とりあえず大急ぎで帰るぞ!」
 俺は夕子を抱きかかえ走った。
573Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2006/05/03(水) 14:46:05 ID:zQiCI05A

 夕子の家に辿り着きドアに手を掛けると鍵がかかっていた。 呼び鈴を押そうとすると夕子が口を開く。
「……今日はパパとママ出かけていて……」
「鍵は?!」
 俺は思わず叫んだ。 夕子は応える代わりに鍵を差し出した。 鍵を受け取るとすぐさま鍵穴に差込みドアを開ける。 そしてそのまま夕子の部屋へ駆け込む。 勝手知ったる幼馴染の家と言うヤツだ。
「とりあえずは先ずは着替えだな。 濡れた服着たままだと良くないだろ」
「うん……」
 夕子はゆっくりとタンスへ向かって歩き出す。 足取りがふらついてるので支えながら俺も一緒に歩く。
「体と髪しっかり拭けよ。 じゃぁ着替えてる間俺部屋出てるから」
 そう言って俺は部屋を出ようとしたが、服の裾を夕子に引かれた。
「拭い……て」
「なっ……!」
 そんな……そんな事出来るわけ……。 だって今の夕子の姿は濡れた服を脱ぎ下着のみの半裸状態。 おまけに濡れた髪は解かれいつものツインテ―ルじゃない。 いつもと違い必要以上に女を意識させる姿。 こんな理性のネジが跳びそうな姿を前に一緒にいられるか。
 でも反面こんな状態放っては置けない。
 俺は夕子の髪と体を拭き始めた。 なるべく見ないよう、意識しないようしながら背後から拭く。 それでもいやおうなく意識させられる。 タオル越しに伝わってくる女性特有の柔らかさに、鼻腔をくすぐる甘い匂いに。

 理性を強く揺さぶられる危うい感覚に襲われながらも拭いてると、突如夕子が振り向いた。 そして手を伸ばし俺の首に廻すと顔を近づけ唇を重ねてきた。
 夕子の匂いが、肌の感触が、濡れた髪が、そして初めて味わう其の甘く柔らかな感触が俺の理性の殻を剥がしていく。 そして夕子は唇を離すと耳元に囁いてきた。
「ねぇ、お願い……。 温めて……」
 夕子の肩を両手で抱きかかえるように掴み、そして……
「おう! じゃぁ今温かいの入れて来てやる! 台所借りるぜ!」
 そして俺は逃げるように部屋を飛び出した。 心臓が未だバクバクいっている。
<温めて……>
 俺だってあの状況で其の言葉の意味が分からないほど鈍くもないしガキじゃない。 今の事を若しヒトに話したら――話す訳ないのだが――チキンだのへタレだの罵しられるだろう。 実際そう言われても仕方ないだろう。
 それでも据え膳を喰わなかったのは美嬉への想いや義理立て、それも勿論だがそれだけではない。
 初めてだったから、あんな夕子の姿。 まるで俺の知らない別の女の子みたいだった。 そしてそんな姿に美しいと、魅惑的だと感じながらも何故かそれ以上に怖さを感じたから。
 台所に入ると冷蔵庫を開け牛乳を取り出す。 マグカップに注ぎ電子レンジに入れスイッチを入れる。 レンジが加熱完了の電子音を鳴らすと俺はマグカップを取り出し部屋へ向かった。
 ドアの前に立つと躊躇いの気持が起こるがそれを押さえノックしてドアを開く。
 部屋に入ると夕子はベッドで寝ていた。 とりあえず俺は胸を撫でおろす。
「ほら、とりあえずこれでも飲め」
「ありがとう」
 俺がマグカップを渡すと夕子は受け取った。
「じゃぁ、俺は帰るな。 安静にしろよ」
 そして俺は部屋を出た。 いや、逃げたと言った方がイイのかもしれない。 兎に角居られなかった。 これ以上あの場所にいるとどうにかなってしまいそうで。

To be continued...
574名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 15:52:46 ID:dKc5o/OL
>>573
コレはおいしそうな材料ですね
コレだけおいしそうな材料を揃えられると
読んでいる方も堪らないわ(*´д`*)
裸にカイゼル髭、ステッキで続き、待ってます
575『the scene of pandemonium』 ◆Z07CNpwkvg :2006/05/03(水) 18:49:25 ID:Cgp2dIss
「はぁ…嫌われちゃったかなぁ」
俊太君の所から逃げるように走ってきてしまい、後悔の溜め息をつく。いっつも俊太君の前では上がってしまいます。
俊太君のことを気になり始めたのは、去年の学園祭です。クラスの演劇で、俊太君が主役、私がヒロインをやって、その時の練習で本当に好きなってしまいました。
いつもは無気力だけど……やる時はやってくれます!
「よ、よし!」
友達から恋人へ。ランクアップ作戦です。今ごろは職員室に居るはずです。では、ファイト!







職員室の前。俊太君の声が聞こえます。まだ中に居ますね。ちゃんと…やれます!
ガララ
「おほ!紗那ちゃん。どったの?」
「う、あ、北斗さん…」
予想外でした。俊太君だけだと思ってたのに……
「あぁ、紗那ちゃん。届けといたよ。」
「うん、あ、ありがとう」
あぁ、ちゃん付けで呼んでもらえるなんて嬉しい…落ち着け、私!頑張れ、私!!
「あ、あの、これ、見て欲しいの。家で開けて。」
1枚の封筒。これが関係を進める切り札です!
「え?…何これ?」
「おいおい…これって…」
「あ、じゃ、じゃあしっり読んでね。」
ダメ。また緊張してきちゃった。もっと俊太君の顔を見ていたいけど、限界です。考えとは逆に、体は走っていってしまいました。
はぁ…もっとお喋りしたいのに……もっと俊太君の事、知りたいなぁ……
恋人は…今のところいないわね。去年の学園祭からずっと登下校を見てきたけど、いっつも一人か、北斗さんとだけしか一緒に居たことはないし。
アパートで一人暮らし。9時まで見ているけど女性の影は無し。……でも油断は禁物よね。これからまた俊太君の後をつけないと…
576『the scene of pandemonium』 ◆Z07CNpwkvg :2006/05/03(水) 18:50:44 ID:Cgp2dIss
「あらら、いっちゃったよ。」
「ほら、やっぱりあわてんぼうだ。」
「だからそれわ…いや、いい。お前にいっても無駄か。それより、なんだそれ?…は!そうか、ラブレターかぁー。いいなぁ、オイ。初々しいよなぁ。」
また変な妄想が始まったな。
「いや、茶封筒に入れたラブレターなんて聞いたことがない。ってか、紗那ちゃんが俺にラブレターを書くわけないだろ。」
俺と紗那ちゃんじゃあ釣り合いが悪すぎる。
「はぁ…本気で言う辺り、紗那ちゃんも報われないなぁ……」
ぶつぶつ言う北斗をよそに、封筒を開ける。家でも学校でも同じだろうな。
中からは一枚の紙切れ……もとい、チケットがはいっていた。
『招待券』と書かれていた。
「招待券?なんの招待だ?」
「そういや、紗那ちゃんって、お金持ちの家のお嬢様なんだよな。そんな家の招待っていや、どでかいパーティーかなんかだろ。」
パーティーねぇ……そんなのに俺を誘う理由なんてないだろ。
「…プリント届けたお礼か…さすがお金持ち。スケールが違うなぁ。」
ん?北斗のやつ、溜め息つきながら頭かかえてやがる。こいつ、頭痛持ちだったか?まぁ、せっかくもらったわけだし、行ってみるか。パーティーつっても、そんな馬鹿でかいわけないだろう。
うんうん。息抜き息抜き
577名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 19:03:39 ID:4sdjcXZU
>>569、570
253だけどこんな前の発言にレスしてくれてありがとう。
楽しませてもらったよ。
578名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 19:29:23 ID:BQ1aKNc5
Which Do You Love
の続きが気になってしょうがないんだが更新お願いします
579沃野 Act.20 ◆1IgBlOP8QY :2006/05/03(水) 20:02:26 ID:1ywMPD8x
「おにいちゃんなんか、大っ嫌い!!」
 幼い少女の叫びが公園にこだまする。砂場で遊んでいる子供たちと、ベンチに座ってお喋りに耽っていた
大人たちが一斉に視線を向けてくる。
 少女は気にしない。顔を真っ赤にして、キッと前方を睨んでいる。
 睨まれている少年は竦みもせず、やんわりと受け流して笑った。
「あのな、桃花。それは嘘だよ」
「う、嘘じゃないよ! ほ、本当に大っ嫌い……だもん!」
「嘘だって。本当に大っ嫌いならさ、面と向かってそんなこと言わないだろ」
 ぽんぽんと気安げに肩を叩き、優しく頭を撫でる。
「おまえさ、本当は俺のこと好きなんだろ?」
「……好きじゃないもん」
 否定しながら、少女に先ほどの勢いはない。俯き、拗ねた口振りになっている。足元の土を蹴っている。
「じゃあ、ミホちゃんと遊んだだけでなんでそんなに怒るんだ? 嫌いなら、いちいち気にしないだろ?」
「ミホちゃんとふたりっきりで遊んでるおにいちゃんなんか、嫌いだよ……大っ嫌い……大っきらぃ……」
 目尻には涙が浮かんでる。やれやれ、と少年が肩を竦めて苦笑する。
「分かった分かった、仲間外れにはしないからさ。一緒に遊ぼうぜ」
「ちがう」
「あん?」
「仲間外れだから嫌いなんじゃない……」
「じゃあ、なんだ」
「と、桃花だって、おにいちゃんとふたりきりで遊びたい……」
「んー、でも、ミホちゃんは先約でな、」
「嫌い……!」
 さっきよりも鋭さの増した目つきで睨みつける。六歳ながら、大した迫力だった。
 さすがに折れたのか、少年は「分かった」と溜息をつく。
「今日だけはおまえのわがままを聞いてやるよ」
「……本当?」
「ああ。でもこれっきりだからな。いいか、二度と同じ要求すんなよ」
 桃花はコクリと頷くが、その瞳を見る限りでは了承したふうではない。
 それが少年にも分かるのか、また溜息をついた。
「ホントに、なんつーか。桃花の嫉妬深さは異常だよ……」
「正常だもん」
「そんなのだと将来はストーカーになっちまうぞ」
「ならないもん」
「どうだか。だいたい今日だって、どうやって俺がミホちゃんと遊んでるの知ったんだよ。おまえ家で昼寝
してたはずだろ。うちの窓から公園なんて見えないし……まさか寝たフリして俺の後をつけてきたのか?」
「そんなことしないよぉ?」
 ふふ、と秘密めかして笑う。その顔は俺にとって懐かしさを誘うものだった。
 胡桃もよく、あんな感じの笑い方をした。「なんで笑うんだ」と問い詰めても答えてくれなくて、ずっと
秘密を抱えたままだった。今となってはそれが何だったのか、確認する術もない。
 懐古を振り切りつつ、きゃっきゃっとじゃれ合って仲直りを始めているふたりのところへ足を向けた。
「あ、おとうさん!」
 たたたっ、と桃花が駆け寄ってくる。胸元に小さな白い花が咲いていた。無論、隠喩。しかしこんなところまで、
母親によく似ている。自然と相好が崩れた。
「ただいま」
「おかえり!」
「……おかえりなさい」
 腕に飛び込む桃花をキャッチする俺とは少し離れた場所から、挨拶をする少年。態度に明確な遠慮が感じられる。
 隠喩は岩だ。視るからに硬い。まだ馴染んではくれないらしい。ちょっと寂しかった。
「海人、桃花の面倒は大変か?」
 少年──海人は「いえ、別に」と目を逸らす。頬に差す憂い。義父への距離を計りかねる難しい年頃、ってか。
 彼との微妙な距離を保ったまま家路に就く。道々、桃花は嬉しそうに今日のことを報告した。
「あのね、おにいちゃんのこと、『大っ嫌い』って言ったのは嘘だけど。『好きじゃない』って言ったのは本当だよ」
「ふうん……え? 大嫌いが嘘で好きじゃないが本当? おかしくないか、それ」
「おかしくないよ、だって、」

「おにいちゃんのこと、『好き』じゃなくて、『大好き』なんだもの」
580沃野 Act.20 ◆1IgBlOP8QY :2006/05/03(水) 20:04:18 ID:1ywMPD8x
 あの夜、絶命したかのように見えた女性はまだ息があった。
 到着した救急隊が担架で運び出し、市内の病院へ搬送された。その先で、彼女が他ならぬ俺の幼馴染み、
綾瀬胡桃であることを知った。胡桃は数時間前にトラックに撥ねられ、この病院へ担ぎ込まれたらしいが、
目の処置とギプス固定が終わってほんのちょっと目を離した隙に消えてしまった。容態を見れば脱走とも
考えられず、「誘拐じゃないか」と随分な騒ぎになったという。
 数時間後、病院から数キロ先の後輩の自宅へ移動し、包丁で背中を刺されていたというミステリーに
関係者は首を傾げた。容態もさることながら、夜とはいえそれだけの距離を行って誰にも発見されなかった
というのは信じられなかった。
 彼女はトラック事故の際、目に損傷を受けて包帯を巻いていた──ろくに視界も確保できなかったろうに。
 昏睡状態は何日も続き、危ない場面も数多くあったという。やがて峠を越え、意識を取り戻すと胡桃の両親は
安堵のあまり涙ぐみ、報せを聞いた俺もホッとして、なくしかけていた食欲を少しだけ回復させた。
 胡桃は意識を取り戻したものの、脳に障害が残り、言葉が使えなくなった。喋ることも書くこともできず、
話しかけられても反応しない。聴覚には問題がなく、大きな音には怯え、穏やかな音楽を耳にしては安らいだ
微笑みを浮かべた。
 視力は戻らなかった。胡桃は光を失い、誰かの補助がなければ生活することも困難になった。
 複雑骨折した手足の骨は無事に繋がった。しかし昏睡状態で衰弱し、言語障害に伴って意思の表明を
あまりしなくなった胡桃のリハビリは進まなかった。ほとんどの時間をベッドで過ごした。
 植物のように静かな暮らし。それが幸福か不幸かは、余人には窺い知れなかった。
 ──あの事件。ふたりの少女が殺し合おうとした騒動はいくつかの不明点を残しながら、有耶無耶に
片付けられた。誰が罪を問われるわけでもなく、訴訟沙汰になるでもなく、地方新聞の片隅に小さく載せられ、
当時俺たちの通っていた高校で噂が乱れ飛び、すぐに忘れ去られた。俺は針のむしろだったが、心の真ん中に
ポッカリと空洞ができた気分で、どんな悪罵を掛けられ、どんな隠喩が視えても、少しも関心が湧かなかった。
 胡桃の両親は、娘が死にかけた事件の元凶が俺であると信じ、一時は絶縁されそうになった。
 されそうになっただけで、されなかったのは、俺が面会に行くたび胡桃がにこやかに笑うからだった。
 病室のドアを開ける前から俺の接近を察知して心持ちそわそわする。入室すると、パッと花が咲くみたいに
顔をほころばせる。娘のそんな顔を見て、親御さんも俺との縁を断つに断てなかった。胡桃は暇になると、
いつもぼんやりと自宅の方角や、学校の方角を眺めていたらしい。視力がないのに「眺める」というのも
変だったが、そのせいか俺はいつも胡桃に監視されているような、昔と変わらない感覚を抱き続けた。
 見舞いに行って、顔を合わせるたび。胡桃の隠喩も、パッと花を咲かせた。
 ずっと以前に視た、俺たちが出会って間もない頃の花──小さく、白く、涼しげで、道路の脇にでも
生えていそうな慎ましい一輪。取り戻したいと願っていた、あの花だった。
 それを視て、不思議と嬉しい気持ちは湧いてこなかった。少し落胆があった。
 失われて初めて、自分が胡桃の食虫花や食人花に忌避しながらも魅せられていたことを知った。
 あの毒々しい真っ赤な色合いが恋しくて、にこにこと目を細める彼女の前で涙を流したこともあった。
 笑わないでくれ。
 たとえどんなに醜く、怪物じみていて、化け物にしか視えなかったとしても。
 間違いなくあれは、胡桃が育んだ想いの集大成だった。七年間のすべてがあれに篭もってたんだ。
 俺に受け取る器や資格がなかったとしても、それだけは否定したくない。
581沃野 Act.20 ◆1IgBlOP8QY :2006/05/03(水) 20:06:56 ID:1ywMPD8x
 高校を卒業すると、進学の道を捨てて就職した。がむしゃらに働いているうち、年月はあっという間に過ぎた。
 俺は再婚した。職場で知り合った、三つ上の女性。佇まいに陰りを帯びた彼女にもそれなりの事情があり、
苦労を抱えていた。その苦労を少しでも分かち合いたいと思ったとき、止まりかけていた時間が動き出すのを感じた。
 海人は連れ子だ。物心もついていて、実の父親の顔を覚えていた。おかげで今になっても、母親の再婚相手と
なった俺には馴染んでくれない。反発するわけではなく、彼自身、事態を受け入れようともがいている節もある。
隠喩も時折、夜鳴き石みたいに震える。きっと、まだ時間が必要なんだろう。
 桃花は──胡桃の子だ。入院してからの検査で妊娠が発覚した。言うまでもなく、俺の子だった。
 産むかどうかで揉めた。母胎が健康とは言いがたいし、本人の意思もはっきりしない。出産に伴うリスクを
勘案すれば、堕ろす方がまだ安全。産むとなれば、命との引き換えになりかねない。
 それでも結局産むことになったのは、言葉を口にしなくとも、自分のおなかの中で成長していく生命を愛しげに、
見えもしない目でじっと眺め下ろしている様子が彼女の意思を訴えているようだったから。
 難産だった。覚悟はしたつもりだったが、胸を嵐が吹き荒れた。祈ることしかできない己が呪わしかった。
 予想された通り、「命との引き換え」に終わった出産は、祝福と鎮魂の涙で濡れた。
 胡桃の名前から一字取って、桃花。俺の提案はすんなり受け入れられた。
 彼女を引き取ることに関しては「すんなり」とは行かなかったけれど。紆余曲折を経て、実現した。
 そんなわけで、海人と桃花は血の繋がらない兄妹だ。とはいえ別段不和もなく、たまに喧嘩しながらも
仲良くやっている。義父はともかく、義妹なら打ち解けるのもやぶさかではないらしい。
 やれやれ……喜んでよいのやら。
 ま、喜べばいいか。海人も桃花も幸せに過ごしている。文句を言ったらバチが当たるだろう。
 それより。気になるのは、もう一人の子だ──
「おとうさん、今日もあの子がついてきてるよ」
 桃花が後ろをチラチラと振り返りながら囁く。
 背後を見遣る。十数メートル離れた路上に、少女はいた。
 歳は桃花と一緒くらいだろうか。緩やかに波打つ髪は黒く、容貌の整った子だ。
 眺めていてハッとさせられるのは、澄み渡った青い瞳。そこだけが日本人離れして、印象を際立たせる。
「公園にいたときから、こっちの様子を窺ってたみたいだけど」
 海人も盗み見しながら言う。
「近づこうとすると、サッと逃げちゃうんだよね」
「なんなんだろうねー」
 心底不思議そうに小首を傾げる桃花。
「あ、ああ……」
 俺は生返事をする。
 黒い髪と青い瞳を持つ少女。
 その顔立ちは、あの事件で別れを告げた金髪碧眼の少女を容易に彷彿させる。
 いや──彷彿させるというより。
 そっくり瓜二つで、面影がありすぎなのだ。
582沃野 Act.20 ◆1IgBlOP8QY :2006/05/03(水) 20:11:06 ID:1ywMPD8x
 麻耶との連絡は事件を機に途絶えた。
 結局、彼女の「殺してほしい」という懇願に従うことはできず、命を繋ぐことに望みをかけた。
 矢は抜かずにおいた。足の止血を終えたときは目を閉じ、ほとんど眠ったような状態になっていた。
 手を握って生存を祈っていると、寝言なのか奇妙なことを囁いた。
「ア………ヤ」
 ほんの一言。耳を澄ませてもあとに聞こえるのはか細い寝息だけだった。
 自宅で、娘がよく分からない厄介事に巻き込まれて死にかけたことを知った親御さんは、当然だが俺のことを
快く思わなかった。何度か彼女が入院した病院に足を運んだが、一度も会わせてもらえなかった。どんなに
頼み込んでも、無駄だった。彼らは俺を面罵することさえなく、徹底的に無視した。まるで俺がはじめから
「いないもの」であるかのように扱って。視えた隠喩は消しゴムとか、修正液とか、そんなのだ。
 少なくとも、病院に到着した時点ではまだ生きていたはずだった。その後も乏しいツテを利用して彼女の
様子を探ろうとしたが、分かるのは「死んでいない」ということだけ。やがて荒木一家は町を去り、九州のどこか
へ引っ越したという情報が入った。携帯にも掛けたが、とうに解約された後。打つ手はなくなった。
 そんな状況なのに、俺がそれほど深刻に悩まなかった理由が一つだけある。
 蔦だ。彼女が巻きつかせた蔦は、別れた後も消え去ることがなかった。
 別れてなお、彼女が俺のことを強く想い続けている証拠だと思うことにした。
 が、当初は全身余すところなく絡んでいた蔦は年々減っていき、今となっては小指に残る一本のみとなった。
か細い糸だ。けれど、彼女の健在を伝えてくれるだけでもありがたい。
 ──その蔦に、いつしか実が生っていることに気づいたのは、胡桃の妊娠を告げられた時期と前後していた。
葡萄みたいに房をつくり、日々の経過に合わせて育っていく果実は一つのことを予感させたが、確かめる手段は
なかった。確かめるのも、怖かった。
 今、こうして遠くから俺たちのことを見詰めている少女に質問すれば、積年の疑問は解けるのかもしれない。
 けど、それをする気はしなかった。
 なぜなら。わざわざそんな行為に及ぶ必要を、認めないからだ。
「海人」
「え?」
 急に呼びかけたせいか、戸惑ったような声を返された。
「……なんですか、お義父さん」
 よそよそしい響きのする「おとうさん」に内心肩を竦めながら、頭を撫でる。
「きっと、お前たちもあの子の名前を知るときが来るだろうさ」
 間違いないだろう。少女には、有刺鉄線の如く張り巡らされた茨の列が視える。
 よほど俺に対して刺々しい感情を抱いているらしい。
 しかしガードの固さとは、内心の脆さの表れだ。
 茨で守られている少女本体はかなりの背伸びっ子で、強がりで、寂しがり屋に違いない。
 鎧や繭に縋ろうとした、彼女の母親みたいに。
「近いうちにな」
 そう、きっと遠くはない。
 海人も、桃花も、すぐに彼女の名前を心に刻むだろう。
「──サヤ」
 沙耶、とでも書くのか。
 あの夜、麻耶が残したメッセージ。「アラキサヤ」。麻耶はひとりっ子だったし、調べた限りでは親類にも
その氏名はなかった。だとすれば、新たに生まれ出づる者の名前では……と推し測るようになった。あのとき、
麻耶は自分の娘を夢に見ていたのかもしれない。そして、これから付けようと考えていた名を呼んだ、とか。
 証拠はない。だけど。
 茨の子の名前──運命を超えた因果の存在を感じ、俺はすっかり確信していた。
 荒木沙耶。うん、悪くはない響きだ。胸が躍り、顔がほころびそうになる。自制した。
 帰路を辿りながら、こっそりと思う。
 桃花と沙耶。ふたりはどんな花を咲かせるのだろう。
 綺麗な花だろうか。醜い花だろうか。
 苦味とともに終わってしまった思春期を懐かしみ、ひっそりと想う。
 子供たちと手を繋いで仰いだ空は青く、高く。
 肌を撫でる風、差し込む陽の温もり、流れる雲に心が弾んだ。
 ああ──楽しい。
 その花を向ける相手が俺でないとしても。
 俺には視えない隠喩なのだとしても。
 楽しくて、楽しくて、しょうがない。
583沃野 Act.20 ◆1IgBlOP8QY :2006/05/03(水) 20:11:59 ID:1ywMPD8x
 寄り添う桃花、隔てた場所から窺う沙耶。
 沃野に種を蒔き、実った子らの行く末に。
 どうか幸多からんことを。

 ──ようやく、俺も人を愛するって気持ちが分かったみたいだよ、胡桃、麻耶。
584沃野 Act.20 ◆1IgBlOP8QY :2006/05/03(水) 20:14:17 ID:1ywMPD8x
かくして修羅場はネクストジェネレーションに託された。
海人、桃花、沙耶……三者が織り成す恋の無間地獄。
築かれた豊饒に根絶やしの血風が吹き荒ぶ。
腹違いの姉妹が繰り広げる骨肉の争い、行きつく先はただ一つ。

──「荒野」

   Coming soon...

嘘予告はさておき。長らくのご愛読、誠にありがとうございました。
先駆の方々に感化されて始まった拙作が無事ここに完結をみたのも、
皆様のレスがあってこそ。大いに励みとなり、続ける原動力になりました。

胡桃だけでなく意外と対抗馬の麻耶にも人気が出たため、彼女を活かすため当初の予定も修正。
おかげでコンデンスして書いたつもりなのに結構な長さになってしまい割と誤算。
とはいえ楽しく書けましたので誤算は誤算でも、嬉しい誤算でした。

神絵師様に胡桃や麻耶を描いてもらえたのは望外の喜びです。
あと昔NSに挑戦してあっさり挫折した身ゆえ、サウンドノベル化してくださる御仁がおられたのも僥倖。
感謝と感激は何行連ねても書き尽くせません。本当に、ありがとうございました。

ちなみに最後の数行だけ別なのは演出じゃなくて、「改行が多すぎる」と叱られたせいですorz
585名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 20:36:55 ID:inOqr+4e
              . -―- .      やったッ!! さすが胡桃と麻耶!
             /       ヽ
          //         ',      おれたちにできない修羅場を
            | { _____  |        平然とやってのけるッ!
        (⌒ヽ7´        ``ヒニ¨ヽ
        ヽ、..二二二二二二二. -r‐''′     そこにシビれる!
        /´ 〉'">、、,,.ィ二¨' {.  ヽ     _ _      あこがれるゥ!
         `r、| ゙._(9,)Y´_(9_l′ )  (  , -'′ `¨¨´ ̄`ヽ、
         {(,| `'''7、,. 、 ⌒  |/ニY {               \
           ヾ|   ^'^ ′-、 ,ノr')リ  ,ゝ、ー`――-'- ∠,_  ノ
           |   「匸匸匚| '"|ィ'( (,ノ,r'゙へ. ̄ ̄,二ニ、゙}了
    , ヘー‐- 、 l  | /^''⌒|  | | ,ゝ )、,>(_9,`!i!}i!ィ_9,) |人
  -‐ノ .ヘー‐-ィ ヽ  !‐}__,..ノ  || /-‐ヽ|   -イ,__,.>‐  ハ }
 ''"//ヽー、  ノヽ∧ `ー一'´ / |′ 丿!  , -===- 、  }くー- ..._
  //^\  ヾ-、 :| ハ   ̄ / ノ |.  { {ハ.  V'二'二ソ  ノ| |    `ヽ
,ノ   ヽ,_ ヽノヽ_)ノ:l 'ーー<.  /  |.  ヽヽヽ._ `二¨´ /ノ ノ
/    <^_,.イ `r‐'゙ :::ヽ  \ `丶、  |、   \\'ー--‐''"//
\___,/|  !  ::::::l、  \  \| \   \ヽ   / ノ

荒野を全裸で待ってます。
586名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 20:37:28 ID:zQiCI05A
完結お疲れ様でした
麻耶が助かってくれた事に対しホっとし
でもあれが今生の別れとなり、それでも繋がりが残った事に
切ない気持にさせられ

あー上手く言葉が纏らない!orz
兎に角連載中毎回楽しく読ませて頂きました
読後の充足感と同時にもう終わってしまったと言う寂しさが入り乱れております

若しよろしければまた何か書いてください
次回作期待してますので
587名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 20:40:25 ID:V9nk1oby
あんたディモールトすげぇよ!
GJ!!
お疲れさまでした!!!
588名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 20:48:46 ID:oOQVD9Bf
おつかれさまです

最初のスレからの住人だけど同じ名前とゆうこともあって感情移入しやすくて一番おもしかった

神よホントにありがとう!!!
589名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:01:15 ID:2zkYZOSW
切ない……
590名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:01:34 ID:rIlBHRSS
せつないっす… でも麻耶が生きててよかった。2日間どきどきしてました。
胡桃の花が白くなっちゃったのもちょっとさみしい…
591名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:10:32 ID:QKy4ANpn
切ねえよ……切な過ぎるぜ。・゚・(ノД`)・゚・。
どちらか一人はある意味HAPPYにして欲しかったぜ……

(´-`).。oO(当然、初期プロットの外伝を期待してもかまわんのだろう?)
592名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:15:24 ID:4LnIwJkb
沃野完結おつかれさまでした
やっぱあんたすげぇよっ!!
また続編でかえってきてください
作者GJ!!!
593名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:15:29 ID:4sdjcXZU
読み終わった後もドキドキさせてくれるSSでした。
594名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:16:15 ID:kDQRqitQ
GJ!!GJ!!GJ!!GJ!!
何度でも言いましょうGJです!!
壮絶な女の戦い、そしてその先に待っていた切ない結末…
でも、切ないながらも爽やかな読後感、本当に最高でした。

今は、良い作品に出会えた充足感とそれが完結した寂しさでいっぱいです
本当に、お疲れ様でした。
もしよかったら、また何か書いてください、期待して全裸で待ってます。
595名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:50:48 ID:PRY/r03f
沃野GJ!作者GJ!!!
毎回楽しみに拝見させていただいておりました。
擬音を使わずに雰囲気を丁寧に説明しているあたり、プロの作風を窺わせます。
しつこいですがGJ!!
596名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:52:17 ID:BQ1aKNc5
沃野凄く面白かったです。
正直何回読み返したか判らないくらい。
続編も私の生涯待ち続けるんで何卒お願いします。
597名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 22:03:55 ID:r6Se1D43
GJ!!
姉ルートの例もあるし願いが神に通じる事を祈って
嘘予告を本気で待つ
598 ◆XAsJoDwS3o :2006/05/03(水) 22:22:20 ID:9aSfpH5a
沃野最終回で盛り上がってるところを更にサノベ版投下

羊 hitsuji30_9689.zip
599名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 22:33:12 ID:WkGfdiGo
凄く良かったと思うけど個人的にこの結末は萎えたな…
600名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 23:44:49 ID:BMaQGGlY
GJ!完結乙であります!
修羅場という戦場に集いし嫉妬の戦乙女達に幸あれ!
601名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 00:12:11 ID:6WXM7NWM
>>598
こちらも地道に更新乙!
楽しませてもらってます
602名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 00:40:42 ID:Z945TX1R
沃野凄くよかったデス( ゚∀゚)人(゚∀゚ )
個人的に一番好きでした〜

違う作品で再び降臨なさることを熱望します…
603名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 01:24:24 ID:0CwuKppx
作者GJ!!!!
是非続編子供世代と親子世代の修羅場ちゃんぽん
「逆襲の麻耶」をきぼん
604名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 01:37:10 ID:cocZlwoW
ひとつだけ疑問。

……再婚? 相手がそうであるときもそう言うんだっけ?
605名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 01:41:23 ID:dlla7i4Y
父親として娘を育ててるって事は一応胡桃と籍入れたって事じゃないのか?
606名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 01:45:23 ID:cocZlwoW
ああ、なーるー。そこか。きっかり明言されてなかったものだから。
607名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 02:03:22 ID:JkuY58/M
しかし、このスレの作品はどれも結の部分は、あくまでおまけ的な物だな。
まあ商業作品じゃないし、嫉妬・三角関係・修羅場のみに限定しなきゃ長くなって仕方ないだろうし、
止むを得んが、出来がいいだけに正直残念だ。
608名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 02:14:33 ID:6WXM7NWM
よし、ならおまけじゃなく必然的な結末の物語とやらを漏れ達に見せてくれ>>607
609名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 02:31:40 ID:jOOvNF6x
おおお落ち着け
610名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 02:41:58 ID:XMZQ0hRt
>>607
え?結は「血」のことさしているんだろ
611名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 02:44:24 ID:yKZXsxXh
飢衝天血?
612名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 05:19:02 ID:4PMPW5ib
                 この泥棒猫!!!

  ヽ::r----―‐;:::::|'.   ̄ ̄ ___          ̄ ̄
  `ィ:f_、 、_,..,ヽrリ────   __  -  ──
   L|` "'  ' " ´bノ         _,,ィi⌒ヽ    二 __ 二   ̄
      ',  、,..   ,イ     _r‐-r''´ ノ.l  |⌒ヽ             ---
    _ト, ‐;:-  / トr- _厶'⌒_l   { :|  l   |_  ̄ ̄ ̄     ── _
. ィイ´ |:|: ヽ-- '.: 〃/'".:=≡ミ ゝ、_ノス,,_,ノ、_,,ノ___      __  
'" !:!  |:| :、 . .: //.:;:彡:f'"´‐------ ``'r=:l     
⌒⌒ヽ       /〃彡_彡′,.=、 ̄ ̄ ,.=、 |ミ:〉 _         ̄ ̄
 、  ) ̄} ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヾ'=tr==、.___,. ==、._ゞ{   ----  二二二         ─
、_人_,ノ⌒)}─┐    .,,;:':;:;};; |   /⌒l′  |`Y}  ---- 二二         ─
  _,,ノ´  └───;イ;゚;' `''''ツ_  _;`ー‐'゙:::::l{  ───   __  -  ──
r‐'´           ..:;::','/;;  ,ィnmmm、   .:::|! 
613名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 06:06:56 ID:gjClgoCU
>>608
マンセー以外の意見だからってつっかかるなよ。
どう思うかは人それぞれ。
614義姉 第12回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/04(木) 06:14:06 ID:XMZQ0hRt
        *        *        *
『涼子』

 肉のぶつかり合う音。
 自分の意思に反して出てしまう喘ぎ声。
 シロウが後ろから突き上げてくる。
 四つんばいになってケダモノの様に交わる。獣欲にまみれた私にはこれでちょうどいいのかもしれない。
 今のこいつと顔を向き合うと愛おしく思えてくる。抱きしめたい――ロクでもない考えばかり浮かんでくる。だから情欲だけに身を任せ気を紛らわせる。
 手が上半身を支えきれず肘が折れる。シロウの動きが一瞬止まる。早く続けろと腰の動きで促す。
 シロウのが奥深く二度叩きつける。腰の動きが早くなる。
 もうすぐ終る――

 わずかばかりの余韻を味わっている私の髪へシロウが手を伸ばしてくる。
 昔一緒に寝てたときからよく人の髪に触りたがっていた。
「触るな」
 その一言で全てが終る。そう強く言ってしまえばシロウは何も出来なくなる。それをわかった上で言ってやる。
 シロウは何かを言いかけて結局やめた。
 そんな辛そうな顔するぐらいなら自分から何か言え――

 突き放しながらも体を求めようとする。矛盾している。
 自覚しているからこそ、それが苛立ちをつのらせる。
615義姉 第12回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/04(木) 06:15:01 ID:XMZQ0hRt
        *        *        *
『士郎』

 モカさんが遊びに来た。今二人とも姉ちゃんの部屋にいる。
 今まで泊りに来るのは今まで何度もあった。手に持ってた荷物からして多分今日は泊りだろう。
 今日は姉ちゃんとできない、しない――いや、もうずっとしない方がいいのかもしれない。仮にも姉弟だ。その方がいいに決まってる。
 名残惜しくないと言えば嘘になるが、もう体の関係は終ってもいい。できれば前みたいに何でも感じで一緒に過ごしたい。三沢の事も含めて全部「普通」、現状維持でよかった、今頃になってそう思う。

 時計は十時を示していた。
 おかしい――いつもはもっと夜遅くまで二人は騒いでいる。
 誰か友達が来ている時には姉ちゃんの部屋には行かない。こっちに来て間もない頃、家に遊びに来た姉ちゃんの友達と話しかけようともじもじしていた所姉ちゃんに強引に追っ払われた。それ以来暗黙の了解となっている。
 考えたからってどうしようもない――もう寝よう。
 目を閉じてから少しばかり姉との毎晩の情事が頭を駆け巡ったが、強引に無視することに決めた。



616義姉 第12回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/04(木) 06:16:25 ID:XMZQ0hRt
 こっそりと部屋に何かが忍び込んでくる気配を感じる。そういえば今は居ないクロも夜な夜な部屋に忍び込んで布団にもぐりこんで来た。
しかし今布団の中に潜り込んでこようとするのは猫のそれではなく人――女の子の感触。彼女の方から足を絡ませてくる。手を伸ばし。こちらから彼女を抱き寄せる。
「姉ちゃん……」
 こうして誰かと一緒に居るという事実が心を落ち着かせる。
 今の姉ちゃんにとってオレはセックスの為だけに必要な存在なのかもしれない。オレはそんな事よりもただずっと傍に居て欲しいだけなのに。
 今の姉ちゃんは抱き寄せようとすると拒否してくる。だからこれは夢だ。でも別に夢だっていい、
こうして抱きしめていられるんだから。いつもより少し小さく感じる。まあいいか、夢だし――
「ブー!ハズレ」
「へ?」
 姉ちゃんの声じゃない。恐る恐る重い目を開くとやっぱり目の前に居た――豆球の黄色の光に照らされたモカさんが。
「駄目だよ、ベッドの上で女の子間違えちゃ。あ、トモカお姉ちゃんだったら別にいいかな?」
 薄明かりの下で二カっと笑ったモカさんの顔があった。そして彼女の指がゆっくりとオレの腹の上で円を描いている。
 頭が正しく現実を認識できない。ひょっとしたら夢なのかもしれない。
 しかし体はベッドの上を勝手に転がり彼女から離れようとしたら、あっさり背後の壁に後頭部をぶつけた。
 痛い。呻き声が出る。痛みのおかげで一気に意識が覚醒した。これは現実だ。
 モカさんはクスクスと笑いながら、先ほどぶつけた頭を優しく撫でてくれる。
「モカさん部屋間違えてますよ」
 彼女の方は向かずかず、背を向けたまま寝ている。
「大丈夫大丈夫、パパとママにはお友達のお家に泊るって言ってきたから」
 うん――言っている事は何一つ間違っていない。
「夜、ベッドに忍び寄るっていったら、どういう意味かわかるよね」
「いや、その……そういう関係じゃないし……」
 しどろもどろに口が動く。
 さっきまで頭を撫でてくれていた手が背中で「の」の字を書いていた。
「気づいているかもしれないけど私士郎君の事好きだよ。
 士郎君つきあっている子いないでしょ? だったら今からそういう関係になろうよ」
「あの……」
 何て返事をしたらいいのかわからない。
「ここまでやっている女の子に恥かかせないよね――」
 彼女の方から体を寄せてくる。
 鼻腔をくすぐるシャンプーと石鹸の香り。人の体温を感じていた。
617義姉 第12回 ◆AuUbGwIC0s :2006/05/04(木) 06:17:13 ID:XMZQ0hRt
<チラシの裏>
砂糖が全然足りねえ!
</チラシの裏>
618名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 06:41:05 ID:QhrzGlnT
モカたん可愛すぎだゼ、こんちくしょう
619名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 09:24:15 ID:NdyqVrHm
モカさん最高!

そして、沃野が終わってしまった今こそ、エロエロなわたあなの外伝を!!待っております
620名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 10:25:13 ID:dlla7i4Y
まとめサイトの

義姉 〜不義理チョコ パラレル〜

の字面を見るたびパラソルチョコを連想する。
621名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 12:24:18 ID:9ovpiHJA
>619

作者の人はね、最近、同年代の女性がたくさんいるバイトを始めたらしいんだ。うん。
彼の創作の源泉は惨事女性に対するルサンチマンだったらしいんだが、
それがどうも弱まってしまったらしいだな。うん。
それに加えて多忙らしく、うがーって言いながら珈琲飲んでたよ。
GW中に完成は正直微妙かも、とか言ってたよ。
622名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 12:25:15 ID:Agz9hrKJ
モカさん最高すぎる!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
血ばっかり流れるものじゃないこういう甘い感じの三角関係もすごい見たかった!!
GJ!!!!!!!!!!!!!
623名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 12:40:24 ID:JDySTUmS
麻耶たん…

初めてちっちゃくてもイイかもと思えた娘でした…。
作者様完結乙です。
そりゃーもうすさまじく楽しい日々でしたm(_ _)m
624名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 15:03:13 ID:uQmuuytX
甘々なモカさんもいいが、嫉妬に狂い壊れていくモカさんも見てみたい。
と思う俺は完全な修羅場野郎なんだろうなあorz
625リボンの剣士 6話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/04(木) 15:06:22 ID:e8ADHoa3
「ん〜♪ んふふふっふふ〜ん♪」
あったかいお湯につかるとじわーって疲れがとれる。部活で出した汗を流すこのお風呂の時間は、あたし
の一日の中でも、すごく大事。
疲れを取ると同時に、ここで絶対にやらなきゃいけないのが、リボンを洗うこと。
洗面器にお湯をためて、石鹸で少しこすって、揉むようにして手で洗う。洗濯機に任せると、色落ちしち
ゃうのよね。
特にこの青のリボン、人志がくれたリボンは、ずっと大事に使ってる。

まだ人志の両親が離婚する前、近所の神社の夏祭りで、人志と行ったときにもらったの。
夏祭りは、当時のあたしたちにとっては楽しみの的で、実際楽しくて、毎日やってればいいのに、なんて
話したこともある。
ソースせんべいや焼きそばを一緒に食べておなかいっぱいになってきたとき、人志が「あれやりたい」っ
てお母さんを引っ張った。
人志がやりたいって言ったのは、宝釣り。あの、束になっている紐のうち一本を引いて、上がったものが
もらえる、ってヤツね。
それで人志が引き上げたのが、その青いリボン。人志は別のものが欲しかったらしくて、もう一回やりた
いってせがんでたけど、結局一回しかやらせてもらえなかった。
リボンは、自分は使わないから、って理由であたしにくれた。あたしはなんだかすごく嬉しくて、その場
で箱を開けて、つけてみると、「あら、かわいい蝶々さんね〜」なんてお母さんに言われたから、人志に
もカワイイか聞いたら、「うん、かわいい」って。
……でぇ、そう言った舌の根も乾かぬうちに、人志は何処の誰だか知らない、髪の長いきれいなお姉さん
に見惚れやがって。
はぁ、何でこんなことはっきり憶えてるんだろ……。

お風呂から上がったら牛乳を一杯。リボンは自分の部屋の窓際に作った物干し台に干しておく。
寝るにはまだ早いから、リビングでくつろごう。
今日は……あんまり面白いテレビはやってないわね。
「明日香」
「ん、なに?」
お母さんだ。
「今日買い物に行ったら、人志君に合ったのよ」
「人志に?」
人志は今日は終わるとすぐに学校を飛び出していったけど、買い物に行く為だったんだ。
きっと、お得なバーゲンでもやってたのね。
「今度の日曜の試合のこと、知らなかったみたい」
「あ……忘れてた」
「まったく、場所と時間は、自分で伝えなさいよ」
「はーい」
お母さんは、部屋へ戻っていった。

今度の試合、人志は見に来るのかな。見に来るんだったら、負けない、負けられない。
今までも、人志はよく一人であたしの試合を見に来てくれる。
特に応援の声を出したりしないで、ただじっと見てるだけなんだけど、その眼が、あたしを信じてくれる
ような、そんな感じがして、力になる。
それで次の日の朝、一緒に学校に行くときに、ちょろっとだけ話す。
「昨日の試合、怖いくらいに凄かった」とか。
……褒められてるのかどうかは微妙なところだけど、それでもあたしには十分嬉しい。

今度もまた、格好いいとこ見せてあげるからね。
626リボンの剣士 6話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/04(木) 15:09:00 ID:e8ADHoa3
*    *    *    *    *

場所と時間の連絡は、明日香から直接来た。
日々之学武道館―――剣道や空手といった、武道系の競技を行うための体育館。
俺の家からだと、電車で小一時間ほどの、西園首寺(さいおんくびでら)駅のすぐそばだ。何度もそこで
明日香の試合を見てきた。
日曜日は開けておいたし、こちらの準備は完了した。
部活での練習も、もう追い込みの段階に入っているらしい。
「毎日部長さんにビシバシ叩かれて、試合の前に倒れちゃいそう」とは明日香の弁。
が、実際明日香がそれで倒れることはない。それに、試合でも、俺が見ている範囲では、明日香は負けた
ことがない。負けるのを見たことがない。
試合に限った話ではなく、中学の時だって―――。

「だぁ〜れだ?」

いきなり目の前が真っ暗になった。何者かにおそらくは手で視界を遮られている。
「誰でもいい」
意外に早く光が戻った。
「もう、それじゃ面白くないよぉ〜」
振り返ると、木場がいた。面白くないのは仕方がない。
いきなり後方から目隠しして、何の面白さを求めるつもりだ。
「何か用か?」
「うん。伊星くん、今度の日曜って、時間ある?」
「時間なら、日曜に限らず、いつでもそこに存在して、流れている」
念のため言っておくと、これはさっきの木場にやられたことに対するささやかなお返しだ。
「そういう意味じゃなくて……暇かな? ってこと。良かったら、一緒にどこか遊びに行かない?」
意外な誘いがきた。ここ数年、そんなことを言われた記憶がない。
「日曜は私用がある」
だがもともと明日香の試合を見に行く予定でいたから、そっちを優先。
「えぇ〜そうなの? 用事って、なぁに?」
木場は後ろで手を組み、顔を傾け、やや前かがみの姿勢で聞いてきた。
「明日香の剣道の試合でな」
「あ、新城さんの応援に行くんだ〜。ふーん……」
今度は前で腕を組む。いかにも、”何か考えてます”ってポーズだ。
627リボンの剣士 6話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/04(木) 15:09:54 ID:e8ADHoa3
まとまったのか知らんが、木場は思いついたように両手を合わせる。
「ねえ伊星くん、私も一緒に行きたいな」
「……遊びに行く話はどうした?」
「それは暇だったからだよ〜。私も新城さんの試合、見たくなっちゃった」
「……」
明日香の試合を暇つぶしで見に行くのか。俺はバイトをキャンセルしたのに。
…まあ考えてみれば、その辺の事情なんでどうでもいいか。
明日香(というか、うちの学校)の試合に注目する人が増えるのはいいことだ。
「行けばいいじゃないか」
「うん!」
「場所は日々之学武道館。西園首寺駅からすぐ見えるところにある。開会は午前九時で、うちの学校の試
合は昼頃だそうだ」
「え? さいおん、くびでら…? 私知らないよ〜」
「……困ったな」
俺は何度も足を運んでいるから分かるが、木場は知らないか。
確かに、武道館以外に、めぼしいスポットは無いからなあ、あの辺。
「伊星くん、学校から一緒に行こ?」
現地集合は不可。一度学校で合流するのは少し時間がかかるが、この場合は、
「仕方ないな」
それでいくことにした。

電車の時間と、学校から駅までの時間を踏まえて、待ち合わせ時刻を決める。
一時間三十分もあれば十分だろう。七時半に校門前で。
「うんわかった〜」
約束を取り決めると、木場はスカートを翻してスキップで去っていった。

どうも今一つ、あいつのやりたいことが解らん。


(7話に続く)
628リボンの剣士 6話 ◆YH6IINt2zM :2006/05/04(木) 15:15:16 ID:e8ADHoa3
誤字がありました
人志君に合った

人志君に会った
です
629名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 15:25:38 ID:+CJe8Imp
>>628
邂逅は近づくにつれてwktkが止まらない状態になってきた俺ガイル

沃野終わっちゃったのか……テラサビシス(´・ω・`)
妹(わたし)は実兄(あなた)を愛してるといい沃野といい
良作の主人公生存ENDはどうしてこんなにも人を切なくさせるのだろうか……
630名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 15:28:16 ID:H39ppNa2
>>628
作者さんGJですっ!
第7話wktkしてます〜

小さな恋の物語の作者様…このスレも
そろそろ終わりそうです
631名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 16:19:27 ID:C+XCEXBe
西園首寺って・・・
西園寺世界の鋸で切られた首が祀ってある寺なのかなw
632名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 16:55:10 ID:q8/iuIo3
>>631
不覚にもワロタ
633名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 16:59:25 ID:uQmuuytX
やばいよやばいよ!!
wktkか止まんない。これからどんな修羅場かあるかと
思うだけで……
634名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 18:39:00 ID:rdvbE4O7
首が切れるまで竹刀で叩かれるんだなww
635名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 19:04:38 ID:IBjIDGA+
寺オソロシス
636名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 19:13:46 ID:xHunoiRg
ああ、次スレのタイトルを決めねばならんのか?
637名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 19:42:47 ID:dlla7i4Y
ろくどう-りんね ―だう―ゑ 5 【六道輪▼廻】
〔仏〕 衆生(しゆじよう)が自分の業(ごう)により、六道の間を
生まれ変わり死に変わりして迷い続けること。

四字熟語はそろそろ苦しくなって来たね。

【泥棒猫】嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ【六匹目】

あたりが妥当なんじゃまいか。
638名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 19:43:07 ID:EVPLYDaX
>>624
つ[愛は人をおかしくさせる]

>>636
前スレより
六道輪廻
関孫六
甚六
六師外道
六種振動
六正刑
六畜
六波羅短題
639名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 19:47:53 ID:gfUMDNLu
>617
姉、モカさんにgoサイン出したものの士郎への想いが捨てきれず嫉妬へ…か!?
姉ちゃん頑張れ!小さい頃から士郎をみてきた姉ちゃんが一番わかってあげられる存在だと信じてるよ!
もちろん、親友同士の一波瀾もwktk
640名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 21:25:29 ID:E/K6RzmB
むしろ、タイトルは
【泥棒猫】嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ【六回氏ね】
641名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 21:45:50 ID:i4JkrdOb
西園首寺wwwwwwww

宿六
642名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 21:46:48 ID:oIQqSMer
【泥棒猫】嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ【七代祟る】
643名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 22:33:31 ID:s6aoA5Lk
このスレの神たちを見ると創作意欲と共にネタが湧き上がってくるのだが、とても書き上げきれるほどの自信はないんだよなぁ。
誰か俺の脳内スキャンでもして作品に仕上げてくれないものかw
644名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 23:01:13 ID:C+XCEXBe
このスレの派生元のエロゲ板のスレでは、SSというよりもネタや妄想シチュの形で盛り上っていた。
今はこのスレが出来たおかげで、あっちで妄想系は御法度になっちゃったんだけどね。

そんなわけでSSの形にできなくても、嫉妬ネタや妄想のポイントだけでも披露して構わないような?
ここのみんなならシチュだけでも盛り上れるし、職人様たちへのインスピレーションにもなるかと。
…と、俺は思った。
645名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 23:14:19 ID:XMZQ0hRt
彼の家に内緒で遊びに行ったらベッドの中に(ry
646『the scene of pandemonium』 ◆Z07CNpwkvg :2006/05/04(木) 23:26:59 ID:IgkPtZBz
舐めて見ていた俺が悪ぅございました。
えぇ。パーティーつってもホテルのホールでも借りてやるんじゃないかと思ってたが………
まさか。別荘でやるだなんてな。しかもこんな馬鹿でかい。学校の体育館ぐらいあるぞ。
そのうえ皆ドレスにタキシード。はぁ…もろ普段着の俺は肩身が狭いよ……帰ろっかな。
「あ、俊太君!来てくれたんだね。」
おや、この声は紗那ちゃんか。
「来てくれたって、紗那ちゃんが招待した…ん………じゃん?」
振り向いてびっくり。紗那ちゃんはドレスアップしてた。スリットの入った、大人の雰囲気ムンムンだ……半端なくかわいいな。
「ど、どう、なか?」
相変わらず吃りながら聞いてくる。
「あぁ…かわいいよ……」
「え、ほ、ほんと!?よかったーぁ。どれを着ようかなやんだんだぁ―。」
うあ。俺としたことが、素直に答えちまった。柄じゃないってのに。真っ赤な顔の紗那ちゃんに、照れ隠しに聞く。
「俺…明らかに招かざる客だと思うんだが……完璧に浮いて居場所がないよ。」
実際、さっきから通り過ぎる人がジロジロ見ていく。
「うん、大丈夫!私がずっとそばにいてあげるから。」
「ああ、そりゃ助かるよ。」
知り合いが隣りにいるだけでだいぶ楽になる。しばらく他愛ない話をしながら、飲み食いして時間を潰す。
「ん?結構人増えたな。」
「あ、そろそろイベントが始まるよ。ビンゴ大会。」
…今時の小学校でもそんなことしないぜ。…出るのか?これ。
「わわ、はぐれそうだね……ね、ねぇ。俊太君…」
「ん?どうした?」
「あ、あのさぁ…はぐれないように…て、手、…」
「手?」
「手、繋が……」
「ほら!紗那!伯父様達が来たわよ!こっち来て挨拶なさい!」
紗那ちゃんがなにかいい終える前に、母親らしき人物が手を引っ張って奥へと連れて行ってしまった。
「ああ!お、おかぁさぁーん………」
647『the scene of pandemonium』 ◆Z07CNpwkvg :2006/05/04(木) 23:28:07 ID:IgkPtZBz
なにかもがいていたが、抵抗虚しく行ってしまった。
……また一人か…手持ちぶさた。ってかまた注目の的になっちまうよ……
気持ちを落ち着けようと、飲み物を注ぎながら、ビンゴ大会にでも出ようかななんて考えていると…
「お隣り、よろしくですか?」
「は!?っとと…」
いきなり声をかけられてびっくり。ジュースをこぼしそうになった。振り向くと、同い年だろうか……。これまたきれいな女性があらわれた。
「うふふ……」
こぼしそうに慌ててたのがおかしいのか、上品そうに手を口に当てて笑う…というより微笑む。
「私も、よろしくて?」
そう言ってコップを差し出す。注げって事か。はいはい…
七分目まで注ぐと、これまた両手で上品に飲む……これだから居づらいんだよなぁ、俺は。
『それではこれからビンゴ大会を始めます!御参加なさる方は、ビンゴの用紙を取りにおこしください。』
マイクでのアナウンスが流れる。どうしようかとチラチラ見ていると。
「ビンゴをなさるより、少しお話し致しません?」
「はぁ?…まぁ…いいけど。」
なんとなく。タダなんとなく彼女と話してみたかったので、頷いた。
「ふふ…じゃあ、外へ出ましょうか?」
言うやいなや、さっさと手を引いて外へでていく。…まったく、金持ちってのはせっかちだな。
スタスタと人気のない裏庭に連れてこられる。見掛けによらず強引だな。
「さて…」
止まったと思ったら、クルリと振り替える。
「あーーー!苦しかったぁ!!あんな場所、ほんっといずらいわよねぇ。」
「は?」
いきなり豹変した。
さっきまでの上品さはどこに?
「君も、居辛そうだったよね。だから連れ出したんだけどさ。」
「あ、あぁ…まぁ、確かに居辛いな。」
なんとか話を合わしていく。まだ豹変っぷりに追いついていけん。……二重人格か?
「私もさぁ、家柄がどうこうって言葉遣いだの行儀作法とかってほんっとめんどくさいのよねぇ。あ、さっきのはたくさん人がいたから」
………よくしゃべるな
648シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/05/04(木) 23:49:45 ID:ow4LvS+l
ようやく不撓家温泉編が完成しました。
不撓家ヒロインズを気に入っている方。
たまには平和なSSが読みたい方。
エロい天野が見たい方。
そして誰より天野の生還を祈ってくれた絵師様。
どうぞ見てやってください。
ttp://www4.axfc.net/uploader/16/so/N16_1467.txt.html
keywordはメル欄に書いてあります。
649名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 23:57:54 ID:uQmuuytX
>>646
俺たちの修羅場はこれからだ!!
紗那ちゃんがテラカワイス

>シベリア氏
速攻でいただかせていただきました。
じっくりと味合わせていただきます。
650名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 00:00:17 ID:eZVqm8yB
タイトル案
1)冥土の六銭/意味:三途の川を渡る時に必要と謂われる金額
2)第六感/意味:直感のこと。このスレ的には泥棒猫を嗅ぎつける力
651名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 00:25:48 ID:lSqLO80e
もうかなり苦しくなってきたから、
監禁六日目 ぐらいでいいんでないかい? 
652名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 00:53:50 ID:zoVqN/iv

       ,;r''"~ ̄^'ヽ,
      ./       ;ヽ   彼に近づく女はみんな泥棒猫よ!
      l  _,,,,,,,,_,;;;;i
      l l''|~___;;、_y__ lミ;l   近づかないのはよく訓練された泥棒猫だわ!
      ゙l;| | `'",;_,i`'"|;i |
     ,r''i ヽ, '~rーj`cホント 修羅場ってやつは地獄よね! フゥハハハーハァー
   ,/  ヽ  ヽ`ー"/:: `ヽ
  /     ゙ヽ   ̄、:::::  ゙l,
 |;/"⌒ヽ,  \  ヽ:   _l_        ri                   ri
 l l    ヽr‐─ヽ_|_⊂////;`ゞ--―─-r| |                   / |
 ゙l゙l,     l,|`゙゙゙''―ll___l,,l,|,iノ二二二二│`""""""""""""|二;;二二;;二二二i≡二三三l 
 | ヽ     ヽ   _|_  _       "l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |二;;二二;;二=''''''''''' ̄ノ
 /"ヽ     'j_/ヽヽ, ̄ ,,,/"''''''''''''⊃r‐l'二二二T ̄ ̄ ̄  [i゙''''''''''''''''"゙゙゙ ̄`"
/  ヽ    ー──''''''""(;;)  `゙,j"  |  | |
  _,,,,,,,,,ヽ、        ,,,,,r-'''''ーー'''|   |  | |
''"    ヽ,,___,,,r‐''''''二__    |__|  | |
          \'''"   /     ノ    | |
653名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 05:57:51 ID:2qQrN6RP
                 _ -───- 、
                , ´         ヾ
                ,   好 私 諸   .l
                l   き は 君   l
                !   だ 嫉     !
               l      妬       l
                 l      が    ,
                 i         ,
                 `   ‐---‐"
654名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 05:58:46 ID:2qQrN6RP
        |!   /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|   i     |::::\       |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l
 好 .嫉  !  /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|   i     |:::入 \-‐ ─ ,|  ''''''';;;;;;;l , ´
 き  妬  l  /::::::::::;;''''  |    i       |  \ i -‐==;      | .l
 だ. が  l /; -"     >、,____l___ _,,,,|:::::::  Y:::::::::: >      | |  私 諸
      , ' ,l       く~   ̄    __  ]::::::::     l       l. |  .は 君
     ,  l/        〕"~'';''・''ヾ' ;;;;;;|' l:;;;;;       l   \  l |
 --‐ 、  |         ノ       \l||  i 、;;;;;;;;;;;;;;,. i    \ ̄ l
-- -- -ヾ  |- --- -- i' .....,        )! - ヽ、____;;;ノ- - -- - ---ヾ
  /  `ヾ|      l:::::::::::...................;;;;;;;l||||   l||||||||||||||lll        \ `   -‐
/            |`::::::::::::::::::::::::::::: -~;llll||  l|||||||||||||||||||||l         \
            ll||` ==== ==__,;;;ェェェ%ll||l  l|||||||||||||||||||||||||ll         \


655名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 06:00:27 ID:2qQrN6RP
            〓〓〓〓〓/  ヽ、 ∧        ̄ ‐- |
  大 修 私    l〓〓〓〓,/ ヽ、ヽヾ|..| ヾ |          |
  好 羅 は   〓〓〓〓l     = "    | ll|    | |    |    諸
  き  場      |〓〓〓〓   ミ=      | | |    | |   |
  だ が      l〓〓〓〓   :::         | l  |    | |  |   君
          l〓〓〓〓〓ミ彡;;          | l  |    | |  |
         、l〓〓〓〓〓,´,|  〃==ヽ 、     | l l| |   | | 〓ヽ
  ─   -‐ '  `〓〓〓〓 l ト ll   _   ヾイ、  〃 |_l l┼ - | |   〓、
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓l   ヒ;;´   ̄ ̄ヽ:::l  -ノ | | | l |  |  ‡〓ー ,, __
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓‡ ┤从      )‐-〃 ;;《 ● ll   〃 l〓〓〓〓〓〓
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 l  ヾ  __ノ -‐ |l  ヾ ` ´  ]  //〓〓〓〓〓〓〓〓
‡〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓l     ̄ ̄ ,,,,lll|  ヾ  == ::  /〓〓〓〓〓〓〓〓〓
‡〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓ヽ   ,__、    :lllll|_,〃        /〓〓〓〓〓〓〓〓〓
‡〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 ヽ  、~ーェ-ェ─ ,,,__,ェ=`   /ヽ〓〓〓〓〓〓〓〓〓
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 ヽ    ̄::: ̄ ̄ ̄     /ヽ   〓〓〓〓〓〓〓〓
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〃   ー  _  :::::::::   ,,, ll|||||ヽ  ヽ〓〓〓〓〓〓〓
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〃 〃  ;;;;;;;l  /  ー── ´  ll||||||||||ヽ  ヽ〓〓〓〓〓〓〓
656名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 11:30:52 ID:0KiuJjOj
アルェー!?
広き檻の中で終わり!?
晋也幸せになれないの?
657名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 17:57:58 ID:rYOFruIA
>648
よもや自分の妄想絵から昇華された番外編を書いていただけるとはつゆにも思わず、
想定外の展開にひたすら驚くばかりだった>500です。
ありがたく頂戴いたしました。
実は天野さん生存エンドの方、読む前は英知ちゃん自分の命を代償にしたりしないか
という点でもハラハラしていたんで、ヒロイン達全員生存がとても嬉しかったり。

ttp://uploaders.ddo.jp/upload/500k2/src/1146818296494.jpg
※着色に際しては醸し出したい雰囲気に合わせているため実際の色とは異なります。
ご了承くださいませ。
658名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 19:09:37 ID:FNELWGXE
シベリアさんのでアップローダーのキーワードってなんですか? 携帯からは見れないから教えてください
659名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 20:39:47 ID:ClZlzbnO
「spirits」
660名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 21:14:03 ID:l7zx0gpR
     /        \.    i_      ヾ-;,........:'" ///-l rニlhlニ二l      /
     |     修   フ   ヽ,   i'_"'-         /|/l'"i;,l  l::llミ'i_-\   | 猫 .死 さ
     |     羅   タ   'i   l‐-二ニ‐-:.,:::::::::....._/  l;l,i:::l:l'   l::llミゞl ̄|   |  ど .の .て
     |     場   マ    lニー-- ....__ニヽソ-‐ニ二ニ>l;l,:::'lll   l:liヽ,|  '|   | .も  う と
     _|     の   タ     l'""'フ7t‐--、,,__ ̄ー---ニソl;トノ;lil   l:l;,ヾ|  '|   ∠     ぜ
/ ̄ ̄     中   か   .l';;;;;;//ハiハi;'r‐o-、..__,,,...-‐ノ__ノl!   |:i;,, | ○|    \  
の く. 腹   で   け   i';;;;;/ハハ'iYi,i;,"'ー'"/ノ/ハ;;;;;;;。;'i'i;i;,'i"   (il;;...iヽ_|   .  ̄ ̄ ̄ ̄
た. ら に    死.  て  /"'-i; i,lヾヽ、l,   r‐'"i'/ヾ、;;d;ノl'iハ;    |;;ll;,.._f三リ
う っ 包   の      /   l, 'l; ヽミヽ  "‐'/l"‐' "';;;/'il     l;;l(_..| 'i"'i;
ち て 丁    う     >   "'"' i;,i;lヽ , _ '"'-:::... ,ヘ,/ヽ、_     l;;l;;."'i_,..l___l,
回. よ    ぜ   /        /;;l l:ヽ "ー―''" /.>、iヾヽ、   |;;l;,r'"__,,..-.,i,
っ    .______/      r‐"ヽ ヽl ヽ"'ー'''"/::.:/ l"'-.,,;、_ (二'i;;;ヽ-‐‐、l;-;,
て   /          _,,..ー--'"//::ヽ  ヽ "ー―".::/  'i ヽ  \l―:/::..r−i, 'iヾi"'ヽ
       _r−--―'''' ̄::://  //:::::::ヽ_/" ̄'''''""""ヽ、/:::'l  'i:::... \::ヽ-'"i l::l 'i;;;l lヾヽ

661至極短編  ◆I3oq5KsoMI :2006/05/05(金) 21:55:54 ID:GESumPeD
vol.1 とある娘の風景

ひさしぶりの休みなのでお父さんはあの女と私の3人で映画館へ行こうと言い出しました。
私が真ん中の席に座れば良かったのですが、その日は混んでいて
私だけ一列後ろの席に座ることになりました。2人は並んで座っています。それだけでも耐えられない光景でした。
内容なんて覚えていません。覚えているのは上映中ずっと重なり合っていた2人の手だけです。
いつの間にか爪が掌に食い込んで、出血していました。
映画が終わり、あの女と私はお手洗いに行きました。用を済ませてさっさとお父さんのところへ戻ろうと思った時、
あの女が話しかけてきました。
「今月中に婚姻届を出すの。式は挙げないからそれが事実上の結婚式みたいなものね。○○ちゃんのことは
パパから聞いてるわ。私、良い母親になるように努力するから、これからもよろしくね」
どうしてお父さんは結婚することを黙っていたのでしょうか。きっと、あの女が自分の口から言うとか言ったんでしょう。
あの女は本当に空気が読めません。私に嫌われているのに母親宣言です。しかも馴れ馴れしいです。
私を侮辱して楽しんでいるんですよきっと。人は激昂すると顔が真っ青になると聞きましたが、その時の顔はきっと
そうだったに違いません。

突然、大きな揺れを感じました。次第に激しさを増していき、立つことができなくなりました。
地震です。今まで体験したことの無い凄まじいものでした。
気がつくと辺りは瓦礫の山と化していました。あちこちにコンクリート片が散らばっています。暗くて寒くてとても怖かったです。
幸い大した怪我はしていませんでしたが、そんなことよりお父さんのことが心配でした。私は目いっぱい大きな声で
お父さんを呼びました。崩壊したトイレの出入り口からお父さんの声が聞こえてきました。無事のようで、私は安心しました。
私の無事を確認すると、今度はあの女の安否を聞いてきました。やっぱりあの女は要らない、そう思いました。
お父さんに言われたので仕方なく探しました。大して広くないトイレでしたのですぐに見つかりました。
あの女は大きなコンクリートの塊の下敷きになっていました。苦しそうな声をあげていますが、命に別状はなさそうです。
私は近くに転がっているコンクリート片を拾いあげて、そのままあの女の顔に叩きつけました。
何のためらいもありませんでした。私はただ、単純作業のように同じ動作を繰り返すだけです。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
あの女は動かなくなりました。大量の血を流しているあの女の顔は、もう人間の顔ではありませんでした。
私は震えました。もちろん、人を殺してしまった恐怖のためではありません。笑いをこらえるのに必死だったのです。
だって、さっきまで生きていた女の小奇麗な顔が、今では判別できないんですよ?
ほんの数十秒前まで生存していたのに、今では鼻がひしゃげて目の位置がどこにあるか分からないんですよ?
擬音で表すなら「グシャッ」ですよ?挽肉状態なんですよ!?
笑わずにはいられませんって。
でも私は声を押し殺して笑いました。お父さんに聞かれるわけにはいかないから。
とりあえずお父さんに報告しなければいけません、あの女は遠い世界へ旅立ったと。

きっとお父さんはあの女の為に涙を流し、悲しみで身が締め付けられることでしょう。
でもねお父さん、私がいます。私だけがお父さんを愛していいんです。
だからお父さん、私だけを愛して下さい。私もお父さんだけを愛しますから。
私をお父さんの愛で縛って下さい。私もお父さんを雁字搦めにして二度と解けないようにしますから。
そういうわけで、これからもよろしくお願いします、お父さん。
ああそれから、あと2年もすれば初潮が来ると思いますので、それまで性交渉は我慢しておいて下さい。
どうしても我慢できないというのなら、オーラルならできそうなので頑張りますね。

662 ◆I3oq5KsoMI :2006/05/05(金) 22:01:48 ID:GESumPeD
「優柔」みたいな長編(?)を再びやるのは無理っぽいので、短編ものを投下しました。
また気が向いたら投下します。
663名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 22:10:23 ID:lSLcPCEy
(((( ;゚Д゚))))
664名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 22:21:20 ID:lSqLO80e
お父さんの先妻というか…実の母親がいないのもきっと…
665名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 22:38:06 ID:gXBI5rVs
>>662
GJ!娘の嫉妬か……イイな!
666『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/05(金) 23:39:50 ID:2AajESL3
……あ、また落ち葉……掃除中か……ってことは、殺されたって事ね。
はぁ………かったり。
「さあー。掃除じじゃ掃除じじゃ。」
まるでレレ〇のおじさんのように素早く掃いていく。最早落ち葉掃きなどプロを超えたね。
「んなもんにプロもアマもまるのかい?」
自分に突っ込み。……o.k。いつものテンションだぜい。
「そろそろお茶の時間ですよぉー。」
里緒さんからおよびがかかる。うわーい。お茶だお茶だ。
集めた落ち葉を吹き飛ばすように突っ走る。まあ、次の掃除は志穂の番だ。きにしなーい気にしない。
屋敷にはいり、台所の前を突っ走ると……台所に志穂がいた。うはっ。無防備。ちゃーんす。
ツツツと足音を消し、志穂の後ろまで回り込む。まるでエロ親父のように指先をコチョコチョ。
………行くべ!!!
「ターーーッチ!!!!」
ぐわしと後ろから胸を掴む。うーん。相変わらずの貧乳だ。ビバ!貧乳!!
「ひ、ひぁ!!」
うむうむ。良き鳴き声かな。
「いやー。な、なにするんですかぁ?」
……なんかしゃべり方変だぞ。よくみると、志穂は涙目になっていた……あれ?いつもならバチコーンと一発。
「あんたなにやってんのよ!!!!」
バチコーン!!!
突然後ろから、横殴りにはったおされる。…そうそう、こんな感じに……
ゴミ箱に突っ込みながら、納得する。あれ?でも今殴ったの志穂じゃないよな………じゃあ、一体誰が………
ゴミ箱か這い出し、殴った人物を確認する。
「あんた拾い食いでもしたんじゃないの!?いきなり後ろから胸揉むなんて!」
667『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/05(金) 23:40:37 ID:2AajESL3
………鬼のような形相で立って居たのは……里緒さんだった。……ん?
「い、いきなりでびっくりしましたよぉ。」
そんな風におっとり喋っているなは志穂だった。……んん?
「あっはっはっ。そういうシチュもまた、萌えり。上達しなすったな。お二人さん。」
そうちゃかすと、二人は鳩が豆鉄砲食らったような顔(見たことないが)をして、互いに顔を見合わせる。
………そんなに変なこと言ったか?まぁ、変なことだが、いつものテンションの俺なら普通だが………
「あんた、ほんとに……」
「いやっはは。この晋也。なんど死のうとも、永久に変わりやせんぞ。」
と、また二人は不思議そうな顔をして、こっちをみつめる。………恥ずかしいずぇー。
「あのぉー」
里緒さん口調の志穂が聞いてくる。……あー。やっぱいいなぁ、オイ。
「ふむ、お兄さんがなんでも質問に答えてあげようか?」
膝に手を当て、目線を志穂に合わせる。その志穂の口から発せられた言葉。それは…
「晋也って…誰?」






………んあ。脳がフリーズしちまった。再起動再起動っと。
「誰って………俺。」
当たり前のことを答えるってのも変だ。そこへ里緒さんが口を挟む。
「なに寝ぼけてんのよ………あんたの名前は純也でしょ?」





………んあ?おいおい。またフリーズかい?俺の脳みそ、型が古いんでねぇ?
「純也…」
その名前をつぶやいてみる……どっかで聞いたような………
「あ、俺じゃん。」
思わず口に出る。正確には『もう一人の』俺だ。つまりここは………純也がいた世界?
668『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/05(金) 23:41:31 ID:2AajESL3
「え?あー……んーっと……お前、志穂…だろ?」
貧乳娘にきいてみる。
「志穂ちゃん……って、誰ですかぁ?」
いや、どう見てもお前は志穂だっつーの。もう一人の巨乳っ子を指差して、尋ねてみる。
「……里緒さん?」
「誰よ、里緒って。こっちが奈緒。私が花穂よ。」
………………花穂?奈緒?あぁ、純也世界ではそういう名前なんだ………。
その場にしゃがみ込み、ウンウン唸りながらひとまず整理する。つまり、貧乳な志穂ボディの里緒さん口調が、『奈緒』。
巨乳の里緒さんボディの志穂口調が、『花穂』。
………で、俺は『純也』。
俺には純也がどうやって生きて、どうやって死んだのかの記憶はない。だからこの世界に関しては無知だ。
…んー。なんつーか。
「新鮮でいいなぁ!!オイ!!」
びっくりというより、純也君が恨めしいヨ!!
「ところで……純也?」
花穂からオモーイ空気の言葉が発せられる。うあ、すっげぇ邪気だ。
「志穂と、里緒で……だれよ?……どこの女よ!!!あんたにそんな知り合いいない筈よ!!」
ガッとつかみ掛かってくる。あん。このあたりは本当に志穂と変わりないノネ。
「うふふ…純也くーん…正直に答えましょうねぇ。そんな子じゃないはずですよねぇ。」
包丁を持ってジリジリ迫る奈緒。……じゅ、純也ってどんな奴だったんだ????
669名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 00:19:20 ID:NuNuuEQW
ママー後何回死ねばいいの?
670名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 00:31:19 ID:OD6cJgxf
そおねぇ、お嬢様を選ぶまでよ。
671名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 00:46:13 ID:EvpuCvMa
檻の続編キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
672名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 00:50:16 ID:cGl7k3lW
小さい子への読み聞かせにぴったりなこの作品
「広き檻の中で」 出版:民明書房
是非一家に一冊!
嫉妬のエリートを育てる一冊です
673妄想:2006/05/06(土) 02:09:25 ID:rGCF02HK
嫉妬のエリートを!。
その煽り文句を受けたこの本は、意外や意外ベストセラーとなった。
と言うのはかつて恋に破れた母親達がこぞって購入し、娘達に二の舞を踏ませまいという何処か歪な、しかし娘を思うが故の愛を発揮したからだ。
次に動きだしたのは恋の勝利者だった母親だ。彼女達は勝ち残るだけのカンをもっており、己の闘争が終わってないことに気付いた。世代を越えてまだにじり寄る敗北者達を一掃すべく、本に加え、己の戦術を娘に叩き込みはじめた…
こうしてかつての修羅達が火花を散らしはじめると、それは飛び火をはじめた。
674妄想:2006/05/06(土) 02:21:32 ID:rGCF02HK
それら修羅場の未経験者達に、である。
彼女達はある種の幸運を以てして愛を得た。けれどそれが必ずしも娘にもある幸運ではない。ましてや今、恋愛は修羅場戦国時代。温室の様な恋をした彼女達にはあまりにも過酷な世界に見えた。
故に彼女達は選択した。平穏でささやかな愛ではなく、熾烈な戦いに勝ち残る為の生き方を娘に教える方を。それは恋愛を純粋なものと信じていた母親達の苦渋の選択であった。
かくして修羅場時代は幕を開けた。修羅場乙女達よ。君達は愛の為に生き、そして死ぬだろう。どうかせめてその際が君達の愛の勝利であらんことを
675名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 02:28:10 ID:rGCF02HK
勢いで書いた。
修羅場だったらなんでも良かった。
今は反省してる。
676もし神様がいるのなら……。 ◆qRcNCsfFhM :2006/05/06(土) 04:54:30 ID:mc0UhrjR

やっと書き終りました。
想像以上に時間がかかりましたが、今日から毎日地道にこつこつと投下していきます。

待っていてくださった方、投下遅れてすみませんでしたm(_ _)m

以下本編
―――――――

グラウンドではサッカー部が黙々と練習をしていた。
よかった。まだ始まってないみたい。
私は少し急いで試合がよく見える場所に移動をはじめた。
全国大会出場ということで人気急上昇中のサッカー部、辺りにはすでに何人かが観戦しに集まっている。
いつもの場所に着き、遠巻きにサッカー部を、いや純也くんを観察する。
えーと、純也くん……は…と。
あれ?……いない。
少なくとも私の目では、体操をしているサッカー部の中に純也くんの姿を確認することは出来なかった。
おかしいな。今日は練習に参加するはずなのに……まだ部室にいるのかな?

私は一端その場を離れ、サッカー部の部室を見に行くことにした。

丁度グラウンドの裏側、サッカー部が体操している場所の少し奥にそれはある。
途中、サッカー部の横を通る際、今一度純也くんの姿を探したが、やはりいなかった。

部室は何故かグラウンドの反対方向に入り口がある。
設計者は一体何を考えていたのか?普通にグラウンドと向かいあう形にすればよかったのに……。
でもまぁ、外部からは死角になっているため今の私には都合がよかった。
回りこんだその部室は少々立てつけが悪いようで、入り口は少し隙間を残して閉まっている。
特にドアを開ける必要もなく、その隙間から容易に中の様子を確認できた。
中は少々薄暗くて、あまりよく見えなかったが、どうやら誰もいないみたい。
……おかしい。純也くんは何処に行ったのだろう?
677もし神様がいるのなら……。 ◆qRcNCsfFhM :2006/05/06(土) 04:59:58 ID:mc0UhrjR

純也くんの情報を集めたいが、耳が聞こえない私には周りから情報が入ってこない。かと言って誰かに話しかけるにしても、手話を話せる人が私の周りにはまずいないだろう。
仕方なく、私は下駄箱を見に行くことにした。
……また、歩くのか……。いっそグラウンドをわたっちゃおうかしら?


純也くんの下駄箱に皮靴はなかった。
つまり、校舎内にはいない。でもグラウンドにもいない。
という事は……。



溜め息とともに私はホームに降り立ち、いつもより多い人並みに流されるように駅を後にする。
あまり大きいとは言えない駅前の繁華街はゆっくりと夜のネオンの準備を始めていた。

結局、純也くんはもう帰ったみたい。
練習にでてこなかったし、靴もなかった。まぁ、まず間違いないだろう。

あ〜あ、家帰ったら晩御飯作らなきゃいけないのか〜。面倒くさいな〜。

今日の楽しみを潰された私にとって、晩御飯を作ることがものすごい重労働に思える。
そんな時、不意に駅前のコンビニが目に入った。
たまには、コンビニ弁当でも……。
そう思い、私はコンビニの不思議な引力に引かれていった。

確かご飯はあったから、おかずだけ買えばいいかな。
そんな事を考えながらコンビニの自動ドアの内側へと入って行く。
外よりも幾分暖かい空気が私を包み、独特のおでんの匂いが私の鼻をくすぐる。
もうおでんの季節なんだな。
ちょっとおでんが食べたいな〜とか思いつつ、私は自動ドアのすぐ側に置いてあったカゴをとると、レジの前を通って弁当売り場へと向かおうとした。
678もし神様がいるのなら……。 ◆qRcNCsfFhM :2006/05/06(土) 05:00:25 ID:mc0UhrjR

純也くんの情報を集めたいが、耳が聞こえない私には周りから情報が入ってこない。かと言って誰かに話しかけるにしても、手話を話せる人は私の周りにはまずいないだろう。
仕方なく、私は下駄箱を見に行くことにした。
……また、歩くのか……。いっそグラウンドをわたっちゃおうかしら?


純也くんの下駄箱に皮靴はなかった。
つまり、校舎内にはいない。でもグラウンドにもいない。
という事は……。



溜め息とともに私はホームに降り立ち、いつもより多い人並みに流されるように駅を後にする。
あまり大きいとは言えない駅前の繁華街はゆっくりと夜のネオンの準備を始めていた。

結局、純也くんはもう帰ったみたい。
練習にでてこなかったし、靴もなかった。まぁ、まず間違いないだろう。

あ〜あ、家帰ったら晩御飯作らなきゃいけないのか〜。面倒くさいな〜。

今日の楽しみを潰された私にとって、晩御飯を作ることがものすごい重労働に思える。
そんな時、不意に駅前のコンビニが目に入った。
たまには、コンビニ弁当でも……。
そう思い、私はコンビニの不思議な引力に引かれていった。

確かご飯はあったから、おかずだけ買えばいいかな。
そんな事を考えながらコンビニの自動ドアの内側へと入って行く。
外よりも幾分暖かい空気が私を包み、独特のおでんの匂いが私の鼻をくすぐる。
もうおでんの季節なんだな。
ちょっとおでんが食べたいな〜とか思いつつ、私は自動ドアのすぐ側に置いてあったカゴをとると、レジの前を通って弁当売り場へと向かおうとした。
679名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 05:02:12 ID:NcwU7m+H
広き檻続編ktkr

晋也も純也も貧乳を選んだんですね
奈緒は巨チチだと思ってたのに…いや、実にGJ
680もし神様がいるのなら……。 ◆qRcNCsfFhM :2006/05/06(土) 05:04:47 ID:mc0UhrjR

その折りに、パッとレジに並ぶ人影が目に入った。
足が動かなくなった。というより、頭が私に動けと指令をだせなくなった。
いっこうに閉まる気配のない自動ドアの前で私は文字通り固まってしまった。

そう、レジに並んでいたのは今日の練習を休んだ純也くんだったのだ。


少し、と言うかかなりびっくりしたけど、後ろから吹き付ける外の空気が私を正気に戻してくれた。
ひとまず自動ドアから少し離れ、ドアを閉める。
そして、覚悟をきめ私は高鳴る心臓とともに出来るだけ平静を装いレジを通り抜けた。

うがい薬、冷えぴた、ロックアイス、ポカリチラッと盗み見た純也くんのカゴの中身。不思議な買い物だ。

……純也くん風邪でもひいたのかな?

でも、本当に風邪だとしたら……。純也くん一人で帰れるかな?

急に心配になり、私は純也くんを送ってあげることにした。
純也くんが買い物を終え、店を出ていくのを確認すると、私は密かに純也くんの後を追って店をでる。

……少し肌寒いな。
今まで暖かいコンビニの中にいたせいか、外の空気は思った以上に冷たかった。もう秋風が冬の空気を運んできたのだろうか。
そんな事を思いつつ、私は少し震えながら純也くんの後を追った。
沈みかけの日の光は大分前を歩く純也くんの影を少し離れた私のところまで届かせた。
影の純也くんはまるで私の横を歩いているみたいに見えた。
しかし、私の隣を歩く細い伸びきった影は、風が吹いたら倒れてしまうんじゃないかと思うほど細くてかよわかった。

ふふふ、でも大丈夫だよ純也くん。途中で倒れてもすぐ助けてあげるから。

いろいろと純也くんの救出パターンをシミュレートしだが、結局私の夢想もむなしく純也くんは特にふらつきもせず、いたって普通に家路についた。

まぁ、とりあえず無事に着いてよかった。
だけど、少し残念。倒てくれてもよかったのに……。

純也くん。あなたの身体はもうあなただけの身体じゃないんだから、くれぐれも体調には気を付けてね。
お大事に、純也くん。


おかずを買ってなかった事に気付いたのは我が家に着いてからだった。
681679:2006/05/06(土) 05:12:53 ID:NcwU7m+H
終わったかな…?
割り込みスマソ
こんな時間だから気を抜いていたのだが裏目にでたようだ
682名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 08:35:26 ID:IIEpZCC/
GJ!!
この強者が相手では純也くんがハッピーエンドを掴む事は…

しかし純也という名前は修羅場を呼び寄せやすいのか
683名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 11:50:54 ID:EvpuCvMa
純也ダブルでテラヤバス(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
684名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 12:43:20 ID:OQLrS7SX
なんか、修羅場というより邪悪管轄……。

いや、全くもってGJですが!!
685名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 14:00:12 ID:R7KRcTzC
>>680
妹の黒化まだァw
686振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/06(土) 14:26:15 ID:g2MQoOmI


   ・    ・    ・    ・   


 付き合いだしてから祥ちゃんの感じが少し変わった。 何て言うか昔は少し頼りなくて本当に弟みたいな感じだったけど、落ち着きが出てきてク−ルな感じで……まぁそっけなく感じなくも無いけど。
 あ、若しかして緊張してたのかな? 気心の知れた仲と言っても改めて恋人同士になると意識しちゃうものなのかもね。
 でもそのせいか何だか前よりカッコ良く感じる。
 よく幼馴染と付き合ったって知りすぎて新鮮味が無くてつまらないなんて話聞くけど、全然そんな事無かった。
 今までに無い祥ちゃんの側面とか見れて、なんだか全てが新鮮で。 だから改めて思う。 付き合ってよかった、って。

 そう、少なくとも付き合い始めた最初の頃は全てがただ新鮮に見えて、楽しくて仕方が無かった。
 でもそのうち何か違和感を感じるようになってきた。 いや、違和感と言うよりも一種の恐怖に近かったのかも。
 本当に祥ちゃんは今のこの状況を――私との交際を満足してくれてるのだろうか。 楽しんでくれてるのだろうか。

 ある日の正午。 その日もいつものように私と祥ちゃんは屋上で昼食を楽しんでいた。
「ご馳走様」
「おそまつさまでした」
 そして食べ終わった祥ちゃんは立ち上がると口を開く。
「あ、羽津姉。 明日は弁当いらないから」
「え?」
 私は祥ちゃんの言葉に耳を疑う。
「きょ、今日のお弁当美味しくなかった?」
「いや、そんな事無いよいつもどおり美味かったよ」
「だ、だったらなんで……」
 一体何故。 何か自分に落ち度があったのだろうか。
 胸のうちからどんどん不安が広がっていく。
「いや、全然そんなのじゃないよ。 只、たまにはクラスの連中と昼飯喰ったりしたいってそれだけだよ」
「そうなの?」
「ああ、だから羽津姉が心配するような必要は全く無いよ」
「でもクラスメイトとの付き合いなんて授業の合間の休み時間とかでも十分なんじゃ……」
「男には男の付き合いってものがあるの。 それじゃぁそろそろ昼休みも終わるから教室に帰るな。 羽津姉も遅れないようにな」
「あ、待って私も……」
 空のお弁当箱を片付けて追いかけようとしたが既に視界には祥ちゃんの姿は無かった。
687振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/06(土) 14:28:17 ID:g2MQoOmI

 何だろう……。 この頃祥ちゃんの態度がいやにそっけなく寂しく感じる。
 恋人同士という間柄に対する気恥ずかしさ? 戸惑い?
 もうそろそろ恋人同士という関係にも馴れて来そうなものなのに、未だ祥ちゃんにぎこちなさがある。

 最近祥ちゃんを見てるとそんな不安が胸の中を渦巻いてばかり。
 だからあの日も、よせばいいのに盗み聞きみたいな真似をしてしまった。


 あの日、祥ちゃんがクラスメイトと思しき男の子と話しているのを見つけた。 丁度私のいる場所は祥ちゃん達から
<なぁ、お前ってさァ姫宮先輩と付き合っているの?>
 クラスメイトの子が祥ちゃんにそう話し掛けてるのを聞いてしまい、私のいる場所が丁度死角だったこともあり思わず耳をそばだてる。
 祥ちゃんは私のこと友達に何て話すのかな。
<姫宮先輩って羽津姉の事?>
<ああ、お前一緒にいる事多いじゃん。 付き合ってるんじゃないかって皆噂してるぜ>
 噂になってるんだ私達! 他の周りの人たちからそう見られてる。 表向きでは隠していてもやっぱり分かっちゃうのね。 そう思っただけで胸が躍る。
<ただの幼馴染だよ>
 でも其の事に対する祥ちゃんの返事はそっけなかった。 もう、相変らず照れちゃって。 さっさと観念してばらしちゃえばいいのに。
<幼馴染ぃ〜? 本当にそれだけかぁ?>
 クラスメイトの子は尚も祥ちゃんに詰め寄る。 なんか思わず応援したくなる。
<それだけだよ。 姉弟みたいなもので、そんなんじゃねぇって>
<姉弟ねぇ。 でも本当にそれだけかぁ? だってあれだけの美人なんだぜ。 おまけに優しくって成績優秀で全高男子の憧れの的だぞ? そんなヒトを前にして……>
<だからだよ>
<へ? どういう意味だよ>
 何? 一体どういう意味?
<よく言うだろ? 高嶺の花は手が届かないし手を伸ばそうとも思わないからこそ高嶺の花なんだ、って。 そんな女のコと恋人同士なんて上手く行くと思うか?>
 其の言葉に私は一瞬愕然となりかける。 だけど気を取り直す。 違う、あんなのは私達の仲を悟らせない為に付いた只の嘘だ。 うん、そうに決まっている。

<んー。 まぁ一理あるかもな。 けどよ……>
<お前もしつこいね。 確かに俺と羽津姉は幼馴染で仲良いよ。 でもな、それはあくまでも幼馴染でかつ姉弟みたいな仲だからこそだからだよ。 男女の仲や恋仲なんて想像しただけで肩こりそうだぜ>
<じゃぁ、さぁ。 お前、姫宮先輩が他の男と付き合う事になったとしても平気なわけ? サッカー部のキャプテンが狙ってるって噂もあるぜ>
 男の子の声に引き戻される。 あぁ、そう言えば告白されたっけ。 勿論その場で直ぐ丁重にお断りしちゃったけど。
<良いんじゃねぇの。 羽津姉に良い彼氏が出来れば俺も弟分として嬉しいさ>
<へぇ、でもまぁ其の口ぶりからするとマジで姫宮先輩とは何でもないみたいだね>
<だから言ってるだろうが>

 目の前が暗くなりそうになる。 あんな言葉に不安を感じる必要なんて無いはずなのに。 だって祥ちゃん以前言ってたもの。 私と付き合ってるのを他の男の子達には知られたくないって。
 そう、だからさっき言ってたことは全部そのための嘘……。 分かっているはずなのに、それなのにどうしても不安な気持が広がっていく。
 さっきの祥ちゃんのあまりにも淡々としたそっけない口ぶりが何時までも私の耳の中で、まるで呪いの言葉のように響き続けていた。

To be continued...
688名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 18:39:26 ID:9T1CnefR
あぁ祥ちゃん最悪だ
俺のなかで一番の最悪な主人公だわ
ゆう君といい勝負

ただ妹がなんかアクションしてくれるのがすごい楽しみ
689名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 18:50:54 ID:uRmDHMwi
どう見てもDEADに向けてまっしぐらな気がする。
けど、これで妹がからむとどうなるのかいい意味で先が読めないね。
690名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 19:45:05 ID:LZEzNznc
祥ちゃん必死に自分が入る墓穴掘ってるよな。
そんなに深く掘らなくてもいいのに……というかこれ以上羽津姉を傷つける前にとっととくたばれ。
691至極短編  ◆I3oq5KsoMI :2006/05/06(土) 22:10:12 ID:EDWcAdai
vol.2 とある母親の風景

父が死んでからというもの、義母はすっかり豹変してしまいました。
生前と変わらずボクを愛してくれていますが、その愛し方は度を過ぎたものになっていました。
それはボクが隠していたエロ本が見つかった時のことです。
学校から帰ってくると、義母がリビングのソファに無言で座っていました。
その手には例のエロ本が携えられていて、ボクの顔を見るなり言ったのです。
「慶ちゃん……これは何……かな?何でこんなもの持ってるのかな……」
どうして義母が怒っているのか分かりませんでした。
思春期真っ只中の男子にとってエロ本の1つや2つは持ってて当たり前なのに。
ですがこの後、義母は信じられないことを言いました。
「どうして慶ちゃんはママ以外の女の裸で興奮しようとするの!ママがいるじゃない!!」
何を言っているのかボクには理解できませんでした。
血が繋がっていないとは言え、親子なんです。親が子にそんなこと言うなんて考えられません。
「ほら、ママがしてあげるから、もうこんな本買わないで、ね?」
そう言ってボクの股間を撫でてくる義母。
ボクは得体の知れない恐怖を感じ、気が付いたら義母を突き飛ばしていました。
すると義母は驚きを隠せない表情をして、
「慶ちゃん……慶ちゃんはママのこと嫌いなの!?そうなんでしょ!!嫌いだから拒絶するんでしょ!!!」
半ば叫びながらボクに掴み掛かってきました。
どうして義母がこんなにヒステリックになってるのか分かりませんが、とにかくボクはなだめました。
落ち着いてよ、そう何度も言ううちに、義母は泣き出してしまいました。
「ママね……お父さんが……死んじゃって……寂しいの……もうママに……は……慶ちゃん、しか……いない……の……
慶ちゃんの為に……何でもして……あげるから……もっと、ママを……愛して……」
父が死んで半年が経ちました。ボクは何とか立ち直りましたが、義母はまだのようです。
再婚して1年しか経たないうちに死別されるなんて、なんて不幸なことなんでしょうか。
きっと義母はどうしようもなく苦しくて、ボクにあんなことを言ったのだと思います。
だからボクは、義母の言う通りにしました。
父に対する裏切り行為と言われても仕方がありません。ですが、義母の悲しみを紛らわせるためにはこうするしかないと思います。
義母は上着を脱ぎ、そしてブラジャーを外しました。形の良い胸があらわになります。
初めて見る本物の女性の裸に限りなく興奮していました。
そして、ボクのズボンを下ろすと、まるで壊れ物を扱うかのようにペニスを撫でてきました。
義母と言ってもボクと12歳しか違わないし、とても綺麗な人なので、ペニスは重力に逆らって怒張しています。
そのまま義母は微笑ましそうに扱いてくれました。
初めて他人にイカされた快感で、ボクはまるで天国に行ったみたいでした。

それからというもの、毎回必ず義母の前でするようになりました。
義母が処理してくれる日もあれば、自分でする日もありました。
でも自分でする時は、絶対に義母の前でオナニーをしなければなりません。
「慶ちゃんはママでしかオナニーしちゃいけないのよ。他の女のこと考えてしちゃ駄目だからね?」
どうやら義母は、ボクが他の女性のことを考えるのが嫌みたいです。
最初のうちは恥ずかしかったですが、今ではもうすっかり慣れました。
むしろ見られながらする方が興奮する自分がいたのです。
692至極短編  ◆I3oq5KsoMI :2006/05/06(土) 22:10:48 ID:EDWcAdai
義母の愛情はどんどんおかしな方向に進んでいきました。
お隣のお姉さんに挨拶しただけで不機嫌になるし、遂にはテレビに水着の女性が映るだけでチャンネルを変える始末です。
逆に2人きりの時は異常なくらい優しくしてくれます。
何故こんな風になったのでしょうか。義母はボクを独占したいのでしょうか……分かりません。
この前義母と2人で映画を見に行った時のことです。
洋画だったのですが、あるシーンで男女のセックスシーン(もちろん直接的な描写はありませんが)があり、不覚にも勃ってしまいました。
とりあえず映画は終わったのですが、義母は機嫌が悪くなっていました。
そして帰りの電車で、義母に痴漢されました。
「慶ちゃん……またママ以外の女で興奮しちゃったのね……いけない子……」
後ろから抱きつかれ、お尻とペニスをズボンの上から撫で続けられました。
「慶ちゃんには……お仕置きが必要みたい……ママのことしか考えられないようにしてあげなくちゃ……」
誰かに気付かれないかという不安と緊張、そして義母の執拗なテクニックで、ボクはパンツの中に大量に出してしまいました。

今日は家庭訪問なので、先生が家に来ます。ボクはまた不安になりました。
何故なら、その先生は女性だからです。しかも義母と同じぐらい若いのです。
そんな人が担任だということは知らないので、後でこう言われるかもしれません。
「慶ちゃん!?慶ちゃんの担任が女の人なんて聞いてないわよ!」
ですが、先生と対面してもにこやかな笑顔を保っていました。
ちゃんとお茶も出して、終始和やかな家庭訪問でした。
「慶ちゃん、先生のお見送りに行ってあげなさい」
これもまた意外な言葉でした。他の女の人との接触を何よりも嫌う義母の言葉とは思えないものです。
(ああ、そうなんだ……やっと義母は元に戻ったんだ……)
ボクは嬉しくなりました。もう女の人と喋っても何も言われなくなる、そう思ったからです。
ボクは先生の見送りに行きました。
1階まで一緒に行こうと思いましたが、エレベーターの前まででいいと言われたのでその通りにしました。

「これ……あの女の使ったティーカップ……汚い……処分しなくちゃ……」
義母はティーカップを手に取ると、そのまま床に叩きつけました。
「あんなに香水付けて……私と慶ちゃんだけの空間を汚して!!!」
義母は家中の窓を開け、消臭スプレーを撒き散らしました。
……ボクの考えは大外れでした。やっぱり義母は、怒っていました。
先生の見送りに行かせたのは、ボクにこの光景を見せないためだったのです。
それもそのはず、義母はとてつもなく恐い顔をしていたのです。
しかし、リビングの扉から覗き見していたボクに気付くと、いつもの優しい顔に戻りました。
「あら、慶ちゃん……早かったわね?」
ボクは何故か、戦慄していました。どうしてだか分かりませんが、正体の分からない恐怖を感じていたのです。
もうこの人は……取り返しのつかないところまで来ているのかもしれません。

(おわり)
693名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 22:19:39 ID:iIyBOWYU
>>692
お義母さん怖すぎ…。

>>687
ゆう君に匹敵する位死んでほしい主人公ですね。
694名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 22:26:41 ID:09YICzZF
昔みのもんさんの『思いっ切り生電話』で、
父・再婚した義母・前妻との間の姉弟って4人家庭で、
高校生の姉が小学生の弟に、
「あんたは、あんな新しいお母さんの言うことも、あたし達に
相談もなく勝手に再婚決めたお父さんの言うことも聞いちゃだめ。
お姉ちゃんの言うことだけ聞いてればいいのよ?」
と言い付けた上に、弟の生活の全てを束縛するという相談があったなあ。
(相談者は義母)
勉強から友達選びまでマジ全てお姉ちゃんの支配下。
んで、
「おくさ〜ん。いいことじゃない?しっかりしたイイお姉ちゃんじゃない」
「・・・いや、最近少し度を過ぎてるみたいで・・・
なんだかちょっと変ていうか・・・」
「ん〜?どしたの奥さん??」
「・・・一緒にお風呂入ったり・・・寝るのも一緒みたいなんです・・・」
「お〜くさ〜ん。変な想像するくらいなら、子供達にガツンて言ってやんなさいよ〜〜」
というみのさんとのやり取りにちと萌えたw
695名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 22:29:20 ID:uRmDHMwi
ゆう君……ヘタレ系クズ
祥ちゃん……確信犯的クズ
こんな図式が頭をよぎった。
696名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 22:37:50 ID:+l3r7F36
>>695
ゆうくんはただのヘタレじゃねえ鬼畜ヘタレだ!!
697名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 22:48:13 ID:iIyBOWYU
>>696
鬼畜ヘタレとは言い得て妙な。
698名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 22:50:12 ID:Gc6Kk+iH
「最も危険な賭けなんだよ・・・
君が一番楽でてっとり早いと思っている手段は最も危険な・・・」

祥ちゃんを見ていると、昔の少年漫画に出てきたチープな悪役に向け
られた台詞を思い出す。
ホントに(性格)最低(おつむも)最悪だな。
699名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 22:58:36 ID:Z9711ehr
主人公(おとこ)はね――
誰でも一生のうち一回は、ヘタレの振りしてハーレムってのを夢見る。
程度の差はあるけどね、これは誰でも見る。

けれど、誰もがそれをどこかであきらめてゆく。
良心の呵責に耐えられなくなったとき。前の彼女を泣かしたとき。
彼女の独占欲に脅えたとき。――――

99,9999999……ぐらいの人達は、途中で他の夢に行っちゃうんだ。

けれど。

ほんの一握り………………
何があっても、問い詰められても、サイ娘になられても、
決してこの夢をあきらめない人達がいる。

――バカバカしいけど。

今日、このスレに登場する主人公達は。
そんな――――空気の読めない男達だ。
700名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 23:15:18 ID:9qt1VrYK
この場合、刃牙はスクイズのmになるのかな
701名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 23:44:54 ID:hYCU92eC
>>691
「かな」口調が多いから草加にしか見えずに楽しめない漏れはもうダメかもわからんね
702名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 23:55:43 ID:RVFcX04b
草加って誰だカイザか?
703名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 00:01:35 ID:so7dkuuV
母親の嫉妬って言うのもまた乙ですなw

>>701
よく意味がわからん。どういうこと?
704名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 00:10:13 ID:Djz49kTL
かな口調ってなに?
よくわからんが、なんか別のものに意識を引きずられて作品を楽しめないというならば、
頭を切り換えるために時間をおくとかしたほうがいいかもしれんね。

わざわざそんなことをここで報告しないでもいいから。
705名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 00:10:33 ID:qSdb5bzR
「次回も見てくれるって解釈でいいのかな?」の人か?
いくらなんでもかなだけで草加に見えるというのは異常だと思うが。
706名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 00:18:31 ID:Djz49kTL
>>691
長編の多いこのスレでは、短編は小気味良いアクセントになり得ると思う。
そんなメリットを生かしつつ、いい感じのネタ昇華はGJ。
707名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 00:34:20 ID:99JkMWU5
確かに嫉妬分を補給したい時に、サクッっとした短編があると便利。
708名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 00:36:27 ID:q8ez+/L8
そういや、「義母or姉 vs 女先生」という構図はあまり見ないね。


三者面談の時、姉も先生もめっちゃ無言の睨み合いに。
しかし主人公が「東京に進学したい」と主張した途端、
わけのわからん理屈つけて、二人で一致団結して反対にかかる。
709名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 00:49:02 ID:L+08QRYD
>>692
短編でこのクオリティはスゴス(*´д`*)ハァハァ
710名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 00:54:24 ID:uwv6KHvY
いいねそれ
711名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 01:09:17 ID:Q8QQokfX
>>704
ネタでいったんだが(´・ω・`)
ゴメヌ
712『memory』第1話 ◆KnhAfDLnMc :2006/05/07(日) 01:32:12 ID:JwEqYXu4
もしこの世に神様なんてものがいて、それがひとつだけ願いを叶えてくれるというなら俺はこう願うだろう。

『かみさま、どうか彼女を助けてください。俺はどうなってもいいから……』

そして、その願いは叶えられたのかもしれない。




気がついたら僕は真っ白な天井を見上げていた。
「あれ……ここは……?」
「りょーいちぃーーー!!!」
状況を把握する間もなく突然女の子に抱きつかれた。
「りょういち?誰それ?僕は……」
何が起きてるか分からないけどとりあえずこの子は勘違いしてるみたいだから違うと言おうとした。
ところが、そこで僕はとんでもないことに気づいた。
「僕は……誰だ?」
「え?もしかして諒一……」
ちょっと待て。ちょっと待て。ちょっと待て。ちょっと待て。
いや、そんな馬鹿な。
僕の額に冷たい汗が流れ出した。
「記憶喪失?」
名前も知らない女の子が残酷な現実を突きつける。
そんなわけない。そんなわけない。そんなこと現実にあるはずない。
よく思い出せ。思い出せるはずだ。必死で自分に言い聞かせた。
でもどれだけ思い出そうとしても自分の名前を思い出せなかった。
それだけじゃない。友人の顔も、両親の顔も、その他もろもろも。
自分がどんな過去をたどったかまるで思い出せなかった。
「嘘……じゃあ、私のことも忘れちゃったの?」
「…………ごめん」
713『memory』第1話 ◆KnhAfDLnMc :2006/05/07(日) 01:35:53 ID:JwEqYXu4
その後、彼女の話でいろいろと分かった。

ここは市内の病院。
僕は彼女が車にひかれそうになったところを庇って車にはねられたらしい。
さっきはテンパってて気づかなかったが頭に包帯を巻いてるし左手はギブスで固定されている。
そういえばあちこち痛い気がする。何で気づかなかったのか不思議なくらいだ。
ちなみに彼女は無傷。
僕が押しのけたおかげだそうだ。
彼女は泣きながら謝っていた。
もちろん僕は謝られても困るだけだったが。

僕は高野諒一。高校2年生、17歳。
父親の仕事の関係で両親は今イギリスで暮らしている。
よって現在僕は一人暮らし。

彼女は酒井綾香。同じく17歳。
僕と同じ高校に通っている。
彼女は僕の幼馴染みで小さい頃からよく一緒に遊んでいた。
そして、高校に入ってからは僕と付き合ってる。

と、ここまで聞いてトイレといって抜け出してきた。
彼女も混乱しているらしくここまで聞くのにもかなり苦労した。
一度にいろいろ聞いても覚えきれないし一息ついた方がいいと思った。
それにしても恋人か……
鏡で見ても僕はたいして顔がいいわけでもなかった。
それに引き替え彼女は僕なんかじゃ釣り合わないくらいかわいい。
そんな彼女が僕と付き合っている。
やっぱり幼なじみは得だということか。
でも、僕は彼女を何も知らない。
確かに僕にはもったいないくらいの彼女だろうけど僕にとっては初対面だ。
初対面の人にいきなり恋人だと言われてそのまま恋人になれるものだろうか?
そもそも僕はこれからどうすればいいのだろう?
まずは記憶探しからか?どうすればいいか分かんないけど。
それから………ああ、そうか。
ようやく実感がわいてきた。
僕は記憶喪失なんだ。
何をしようかと考えたって何も出てくるはずないんだ。
……なんかいろいろ疲れた。
とりあえず屋上にでも出て外の空気を吸ってこよう。
僕はエレベーターにのって最上階のボタンを押した。
714『memory』第1話 ◆KnhAfDLnMc :2006/05/07(日) 01:36:57 ID:JwEqYXu4
最上階。
あった。屋上への階段。
……って立ち入り禁止って書いてある。
でもここまできて引き返すのもなんだか悔しかった。
少し考え、結局僕はチェーンを乗り越え、扉を開けた。

屋上に出た。
真っ先に目に映った女の子と目があった。

「……うわああああ!!」
「ひゃあっ!」
僕とその子は同時に叫んだ。
その子はフェンスを乗り越えようとしていたのだ。
715 ◆KnhAfDLnMc :2006/05/07(日) 01:43:43 ID:JwEqYXu4
SSなんて初めて書きました。
一応記憶喪失モノなので他のキャラ視点の話は記憶を取り戻すまで待ってください。
716名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 01:44:31 ID:KTNrbiZV
>>715
乙です
好きな設定でwktk
717名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 03:26:19 ID:K7h+3Ucs
>>715
ヤウ"ァイ面白そうw
718もし神様がいるのなら……。 ◆qRcNCsfFhM :2006/05/07(日) 06:07:35 ID:6tvwxlTN

今日も純也くんは来ないのだろうか。

純也くんを送ってあげた日の翌日、純也くんは学校を休んだ。

そして、今のところまだ純也くんの影は見えない。

そして人影がほとんどなくなった校門で一人たたずむ私。
学校に着いてから大分動いた時計の針は、すでにホームルームの開始の時間まできていた。

……どうやら、今日も純也くんは来ないみたいだ。
純也くん大丈夫かな?お見舞いに行こうか。学校は休むことになるけど……。


ガタゴトといつもより大きく揺れる電車の中。
初めて学校をサボったうしろめたさと、純也くんに対する心配な気持ちがごちゃまぜになり、わずか十五分足らずの電車での移動がとても長く感じられる。

電車が駅のホームにつくと、私はそこから飛びおり、急いで駅を出た。

私の家とはほとんど逆の方向にある純也くんの家への道のりを散歩には少し早いペースで私は足を進めた。
駅前に広がるまだ始まっていない朝の繁華街をすりぬけて、広大な住宅街へと入っていく。


そして住宅街にたたずむこの病院の角を曲がり、200メートルほど先の橋を渡る、そうすれば純也くんの家はすぐそこだ。


少し息を弾ませて、わたしが病院の前を通過しようとした時に脇の自動ドアが開いて中から人が見覚えのある二人が出てきた。


………え?
719もし神様がいるのなら……。 ◆qRcNCsfFhM :2006/05/07(日) 06:11:22 ID:6tvwxlTN

今日も熱は下がらなかった。まぁ、昨夜あんな事したんだし当然と言えば当然か……。

昨日、お兄ちゃんはわたしを一生懸命看病してくれた。それなのにわたしはお兄ちゃんを裏切った。
今、隣にいるお兄ちゃんはそんな事を知らない。ただ、いつものようにわたしを心配してくれている。
胸が痛い。
本来なら、わたしにはお兄ちゃんの隣にいる資格はないんだ。
だけど、それでもわたしはお兄ちゃんの隣にいたい。


病院の待合室。わたしたちは二人で座っていた。
会話はほとんどない。
唯一、お兄ちゃんの写真について聞かれた。何でも大切な写真がアルバムから抜けおちていたらしい。
もちろん、わたしは知らなかった。



無事に診察も終わり、わたしはお兄ちゃんに支えられ出口へと進む。
まちがいなく昨日より症状は悪化している。その証拠に歩くのがツラい。
お兄ちゃんの支えなしではまともに歩けないだろう。
開くのが少し遅い自動ドアをすり抜けて、冬の気配感じる外界へと降り立った。

中のくぐもった空気をはきだそうと大きく深呼吸をした。病院のとは違い少しひんやりした外の空気が肺に突き刺さる。

頭がフラフラする。
わたしがお兄ちゃんにより強くしがみつき、歩きだそうとした瞬間、たまたま目の前にいた人と目があった。



その人は今、一番会いたくない人。
わたしからお兄ちゃんを奪っていった人は少し呆然としながらわたしを見ていた。
何しにきたの?
わたしのささいなこの瞬間まで奪おうと言うの?
わたしはキリキリと嫌な感触をあじわいながら、唇を噛んだ。
しばらくその場で呆然とする円香さんを睨んでいると
グイグイとわたしの裾が引っ張られた。
引っ張られた方を振り返るとお兄ちゃんが不思議そうな顔でわたしの顔を覗きこんできた。
720名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 07:40:07 ID:xUHIStWL
おぉ、妹の嫉妬も出てきたか。これからの修羅場にwktk
721名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 09:04:52 ID:dh0RSiIP
うはwwしばらくぶりに見たらいっぱい投下きてるww
皆さんGJ!
722小ネタ:2006/05/07(日) 11:53:15 ID:dh0RSiIP
修羅場で鳴らした私たちは、雌犬に幼馴染を誘惑されて、
ショックで地下に潜った。
しかし、地下でくすぶってるような私たちじゃあない。
どんな手段を使っても大好きなあの人を奪還するためには、
なんでもやってのける命知らず、
不可能を可能にし、巨大な悪(寝取り女)を粉砕する、
私たち特攻幼馴染Aチーム!


「私は、リーダーの藍子。合鍵のヒロイン。料理とリストカットの名人。
私のような健気で幼馴染スキルをそろえてる幼馴染でなければ、百戦錬磨の
つわものどものリーダーは務まらないわ。」

「私は夕子。Why Can't this be Love?のヒロイン。
自慢の笑顔に、紅司はイチコロよ。
ハッタリかまして、雨の中紅司を待ったり、体を拭いてと誘惑したり、何でもやってみせるわ。」

「私は胡桃、沃野のヒロイン。
透視能力持ちよ。よーくんに近づく雌狐が何匹いようと、すべて射抜いて殺してみせるよ。
でも、トラックだけは勘弁だよ!」

「やぁ、お待たせ!あたしは明日香。リボンの剣士のヒロイン。
剣道の腕は天下一品!
人志が奇人?変人?だから何。」


私たちは、道理の通らぬ泥棒猫に敢えて挑戦する、
頼りになる神出鬼没の
特攻幼馴染Aチーム!

修羅場が欲しい時はいつでも呼んでね。

BGM:Aチームテーマソング

723名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 15:04:02 ID:7zYREX2r
俺には婚約者がいる
小さい頃から一緒に遊んだりしたひとつ年上の少女だ
俺が15のときに両親にそのことを聞かされた
彼女は両家の一人娘でいかにもお嬢様と言った綺麗な容姿をしていて行動力もある
誰にもわけへだてなく優しく
お金持ちだということを鼻に掛けたりしない
恋心がないと言わば嘘になるけど正直不安の方が大きかった
彼女はこの話を知っているのか?
露骨に嫌そうな顔されたらどうしよう?
不安はつきなかった
翌日俺は彼女の家に両親と一緒にお呼ばれされた
会いたくないな・・・・・どうしよう
そうこう考えるとすぐに玄関までやって来てしまった
しかし玄関が開いてすぐに不安はなくなった
「・・・・・・」
思わず息を飲んだ出迎えたくれた彼女は笑顔で俺を出迎えてくれたからだ
彼女は婚約のことを知ってるのかな?
普段とは違う穏やかで幸せそうな笑みにそう思ってしまった
「いらっしゃい、仁くん・・・・おじ様」
少し頬の赤い彼女に顔が熱くなるのを感じる
俺はなにも言えずにいると少し彼女が不安そうな顔をした
「さぁ、どうぞ・・・・・」
すぐに笑みを戻すと彼女は俺たちを家の中に通した
その後に正式に彼女のご両親から婚約の話を聞かされた
彼女の様子を見るからに婚約のことは知っているようだ
少し安心した
724生きてここに・・・・ ◇アビス:2006/05/07(日) 15:05:32 ID:7zYREX2r
戸惑う気持ちを落ち着かせようと庭に出て風に当たる
「俺と詩織さんが婚約?」
現実感がない
それはそうだ政略結婚なのだから
本人の意思によるものではない
「どうしたの?暗い顔して」
声の方向にハッと振り返る
「えっと・・・・その」
口ごもる俺に詩織さんは少し不安げな顔を浮かべた
「もしかして迷惑だったかな?私との婚約の話」
いまにも泣き出してしまいそうな彼女の俺はあたふたしながら答えた
「そんなことはないです・・・・ただ、いきなりだったから」
それを聞くと詩織さんは華が咲いたかのようにパッと笑んだ
その笑顔に思わず頬が赤くなるのを感じる
「よかった♪・・・・・嫌がるんじゃないかなって不安だったんだよ?」
「俺も同じでした・・・・」
一瞬ポカンとしたが詩織さんは『同じ』というのがうれしかったのか
すごく楽しげだった
「よ〜し、いいお嫁さんになれるようにがんばるね仁くん♪」
「は、はい・・・・詩織さん」
「詩織さんじゃなくて詩織って呼んで?もう私たち婚約者なんだからね」
ますます顔が熱くなる
今まで憧れだった女性が・・・・・
急に実感できた彼女と自分が婚約したのだと
725生きてここに・・・・ ◇アビス:2006/05/07(日) 15:09:28 ID:7zYREX2r
私と仁くんが婚約してからもう一年経った
仁くんは私と同じ学校に入学して毎日顔を合わせている
しかし誤算だった
あんなに仁くんモテるなんて
成績は私の方が上だけど運動では彼の方が数段に良い
運動面はどれもうまいんだけど特に彼はボクシングに夢中だ
最近になってしったが彼がボクシングを始めたのは私と婚約してすぐだということだ
その理由を聞いても仁くんは言葉をにごすばかりで答えてはくれなかった
たった一年と半年しかやっていないのに仁くんは部活の先輩たちよりも強い
それどころか都大会で優勝してしまった
お顔もすごい綺麗な顔をしている
そんな仁くんを周りの女の子がほって置くわけがない
友達の話によると毎日競うように告白合戦のようだ
この学校ではお金持ちの人が多い
当然この学校の女性は男の子との接触が少ない
それに加え仁くん以外の男の子はどの方も頼りがいがない
そんな中に突然現れた仁くんは思い描いた理想そのものなのだろう
でも仁くんは必ず断っている
断り文句は決まって
『ごめん、俺・・・・好きな人がいるから』
一度だけ出くわしてしまい影に隠れて聞いていると仁くんはそう言った
それでもと食い下がる女の子に仁くんはなんども謝っていた
だめだよ、私以外にあまりやさしくしたら
そう思ってその場を後にした
726生きてここに・・・・ ◇アビス:2006/05/07(日) 15:11:28 ID:7zYREX2r
実の話仁くんとの婚約は私がお父様に頼み込んでのことだ
私はとても独占欲が強い
無理やりになる可能性もあったけど仁くんが他の子と
などと考えると胸が焼けそうになった
その苦しみよりも少しの不安を私は選んだ
お父様は仁くんなら申し分ないと言い早速彼の父に婚約の話を申し出てくれた
3日後に申し受けるという知らせが来たときはうれしさで泣いてしまった
一ヵ月後に仁くんは仁くんのお父様とご一緒に私の屋敷までやって来た
あのときの不安げな顔を今でも忘れない
もしかして嫌なの?
私との婚約・・・・
正式な婚約の話を聞いている仁くんは落ち着きがなかった
カワイイなと思うと同時に不安もあった
話を聞いてすぐに仁くんはすぐに庭に出て行ってしまった
大丈夫・・・・大丈夫と言い聞かせて私は彼の後追った
深呼吸をして手の平に人を書いて飲み込む
落ち着かない
拒絶されたらどうしよう
不安でいっぱいだったけど
もう引き返さない
「どうしたの?暗い顔して」
彼は慌てながらも自分も戸惑っているだけなのだと言った
よかった、否定も拒絶の言葉もない
むしろ少し嬉しそうだった
絶対に離してあげないんだから
あなたは私だけのモノだよ
仁くん・・・・
727生きてここに・・・・ ◇アビス:2006/05/07(日) 15:13:07 ID:7zYREX2r
今日も詩織と一緒に帰り道を歩く
横目でちらりと彼女を見てみる
長くて綺麗な黒い髪
大きくはっきりとした瞳
ボディラインなんてすさまじい
出るところは出ていて締まるところはすごく細い
前にからかい半分で
『私って学校で一番胸大きいんだよ?』
そう言って自分で顔を赤くする詩織
恥ずかしいなら言わなきゃいいのにと思いながらも
自分も顔が熱くなっていた
さりげなく腕を組んでくる彼女の体の柔らかさに何度ドキリとさせられたことか
詩織も頬を赤く染めることがあるのだから意識はしているんだろう
でも、俺はどう返していいのかわからない
それでも満足なのか詩織はニコニコしている
「そういえば、今日部活終わって結構時間があったよね?どこに行ってたの?」
不意にそんなことを聞いてくる
急に罪悪感が沸いてくる
「もしかして、また告白された」
はい、その通りです
「ちゃんと断ったから・・・・その」
「仁くんはモテモテだね♪」
「こわいから笑いながら睨まないでください」
「どうしてだかわかってるくせに♪」
すぐに腕を組んで存在をアピールしてくる詩織
「私のことも、忘れないでね・・・・・」
ああ、なんてこの人は綺麗なんだろう
728生きてここに・・・・ ◇アビス:2006/05/07(日) 15:16:19 ID:7zYREX2r
「・・・・・っ!」
怨念たっぷりに相手がボールを打ってくる
私はそれを打ち返す
手がヒリヒリするよ
テニスコートで駆けあう私ともう一人の子
その子は私に怒りのすべてをぶつけるように殺気立っている
なぜなら彼女はこの間仁くんにフラれたからだ
私と仁くんが婚約しているという話を私はすぐに学校中に広めた
だから仁くんの断り文句の『好きな人がいるから』
と、いうのは当然私のことだ
まだ仁くんから直接聞いた訳ではないので断定でできないけど
でも確信はあった
この学校は女性率が80%なので当然だが女子が多い
その半数以上が仁くんを狙っているという話だ
名実ともに彼は学校の王子様だ
その王子様の愛を受ける私は学園中の嫉妬の的だ
でも、いじめようとまでは考えるほどこわい人たちばかりじゃないので安心なのだが
けれどこういうときに思いっきりぶつけられてしまう
でもいいの、仁くんのためなら私はどんな攻撃にだって耐えられるよ
「・・・・・っ!」
また強烈な力で打ってくる
うぅ、目が血走ってる
こわいよ・・・・
でも、負け犬の遠吠えなのだがから恐れない
あなたを仁くんが見ることないんだよ?
仁くんが愛してるのは私だけなの
うらやましい?
見下したような目が出てしまったのか彼女はさらに手に力をこめている
あぁ、怖い怖い・・・・そんな顔見たら仁くんが引いちゃうよ
フラれちゃったんだからもうどうでもいいのかな?負け犬さん・・・・
あれ?私嫉妬している?どうして私が?
ああ、そうか・・・・私の仁くんに告白したからか
次第に怒りがこみ上げてくる
ボールが跳ねる音が何度も響く
「・・・・・あれ?」
いつの間にか私は彼女に完勝していた
今まで一度も彼女に運動面で勝ったことないのに
愛の力ってすごいね仁くん
彼女はすさまじい形相で私を睨んでいる
羽津木香葉・・・・この子まだ諦めてないんだ仁くんのこと
少し頭の片隅に入れておいたほうがいいかな?
でも、その姿は負け犬そのものだよ?
写真撮って仁くんに見せてあげたいな
仁くんの教室の窓を見ると彼が私を見つめていた
目が合うと仁くんは少し頬を赤く染めた
カッコいいとこ見せられたかな?
あぁ、そうだ私の横の負け犬さんもよく見ておいてね
意識しないわけないよね?
だってついこの間告白を断った子なんだから
よ〜く見ておいてね?この嫉妬に燃えるおぞましい顔を・・・・
729生きてここに・・・・ ◇アビス:2006/05/07(日) 15:18:04 ID:7zYREX2r
授業中に窓の外を見てみた
窓側の後ろの席なので俺はよくこうやって外を見ている
授業内容なんて頭に入ってこない
だってこの教員の授業つまんないんだもんな
窓の景色に詩織が映る
どうやらテニスをしているようだ
少し詩織が押されている
頑張れと心でエールを送る
ちょうど後ろ向きなので表情は見えないが詩織は必死だ
一瞬詩織の動きが止まる
どうしたんだろう?
そう思うと同時に詩織は機敏な動きでボールを打ち返し始めた
すごい、まるで別人だ
すぐに点差が開き詩織が圧勝した
詩織は相手の方まで歩いていくと手をさし伸ばした
あれ?あの人、この間告白してくれた香葉さん?
どうやら相手は香葉さんのようだ
彼女は詩織の手をさし差だれた手をつかむことなく睨んでいる
少しこわいな
そう考えていると詩織が俺に気づきニコッと笑んだ
う・・・・・綺麗だな
ベタ惚れしていることを再認識され俺は頬を赤く染めていた
730生きてここに・・・・ ◇アビス:2006/05/07(日) 15:19:47 ID:7zYREX2r
「仁ちゃーん!」
部活の休憩中に急に声を掛けられる
彼女は同じクラスの大川奈々さんだ
詩織は綺麗な容姿だけど
彼女はいかにも女の子といった感じのかわいらしい容姿だ
性格も詩織とは正反対で落ち着いた綺麗な女性の詩織にたいして
彼女は活発で元気な子だ
「仁ちゃんっていうのは・・・・やめてくれないかな?」
「仁ちゃんは仁ちゃんだよ・・・・」
「ちゃんはよけいだって」
少しむずかしい顔をして見せるがこれはいつものことだ
「それにしてもすごいね、声掛けただけで嫉妬のまなざしだよ」
あたりを見回しながらそうやってごまかす
嫉妬の的というのは本当のことなので言い返せないけど
「そろそろ、休憩終わるから・・・・」
「ここで見ていい?」
間もなく奈々さんはそう聞いてきた
ここまで入ってきてしまったのなら仕方ないか
うなずくと奈々さんはニコッと笑んだ
ガラス越しの人たちが我もと入り込もうとしたが
奈々さんがしっかり入り口を固定している
「・・・・・・」
あきれながら俺は練習に集中した
731生きてここに・・・・ ◇アビス:2006/05/07(日) 15:22:22 ID:7zYREX2r
「まだ居たの?」
「冷たいな・・・・ここに居ていいって言ってたのに」
目を細めるい彼女に「ごめん」と答えると奈々さんはタオルと買ってきてくれたのかジュースを俺にくれた
「ありがとう」
そう言うと奈々さんは手を振って
「いいよ、事前投資だよ」
意味がわからないがとりあえず彼女の好意に甘えジュースを口に含む
「生き返る・・・・」
「かっこよかったよ、仁ちゃん」
「いや、全国はこんなもんじゃないよ」
「卒業したらプロとかになる気なの?」
「いや、大学に行って・・・・・父さんの会社を継ごうと思ってる」
父からの強制ではない
自分で決めたことだ
一番大きな理由は詩織にふさわしい男になるため
でも、口が裂けてもそのことは言わない
「仁く〜ん」
そう考えているとドアが開き詩織がやって来た
それを見るや奈々さんが腕を組んできた
「な・・・・・!」
変な声が出てしまった
詩織がジト目で俺を見ている
どうしよう・・・・
「あ・・・・あなたはどちらさま?」
声が低いよ・・・・詩織?
「はじめまして、仁ちゃんとはクラスメイトで席が隣の大川奈々です」
クラスメイトと席が隣を強調して奈々さんは腕の力を強めた
「そう・・・・・私は仁くんの婚約者の月緒詩織です!」
詩織の方は婚約者を強調している
「それって親同士が決めたことですよね?仁ちゃんかわいそう」
詩織の目がぴくぴくしている
もしかして詩織って独占欲強いのかな?
「本人も合意しているもの・・・・・ね?」
「う、うん・・・・・そうだけど」
ほらねと彼女を見つめる詩織
しかし奈々さんも引かないかった
「言わされてる感が強いのはなぜだしょうか?」
女の子のケンカってこんなに寒々しているものなのかな?
そうこうしているうちに詩織が俺たちの前までやって来る
そして静かな動作で組まれている腕を離す
力でというわけではないので痛みはないが
その瞳はすごくこわかった
「さ、帰ろう・・・・・仁くん」
奈々さんに見せ付けるようにして腕を組み歩き出す詩織
「ちょ、着替えさせてよ」
唖然としている奈々さんを置いて俺たちはその場を後にした
732アビス:2006/05/07(日) 15:23:38 ID:7zYREX2r
書き溜めていたものなので長くなってしまってすいません
これからはできるだけ投稿しますのでよろしくおねがいいたします
挨拶のついでにキャラ設定です
流仁(ながれ じん) 16歳 なのごとも消極的だけど好きなことに関しては頑張り屋
月緒詩織(つきお しおり) 17歳 小さい頃から仁一筋で独占欲が強い
大川奈々(おおかわ なな) 16歳 元気っ子で意外と純情
羽津木香葉(はづき こうば) 17歳 こわい人で実家は刀等を作っている職人
733名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 15:27:32 ID:KTNrbiZV
>>732
乙です
名前欄に
作品名#好きな文字列
を入れたほうがオススメです
734アビス:2006/05/07(日) 15:28:26 ID:7zYREX2r
すいません誤字発見です。
彼女は両家の一人娘でいかにもお嬢様と言った綺麗な容姿をしていて行動力もある
となっていますが
彼女は良家の一人娘でいかにもお嬢様と言った綺麗な容姿をしていて行動力もある
正確にはこうです
すいませんでした
735アビス 7zYREX2r:2006/05/07(日) 15:32:52 ID:7zYREX2r
>>733 ご指摘ありがとうございます
次回から気をつけます
736名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 15:36:22 ID:KTNrbiZV
>>735
職人様その文字列の前に
#
が必要です
737アビス 7zYREX2r:2006/05/07(日) 15:39:52 ID:7zYREX2r
たびたびすいません。
ここに書き込み初めてなので不慣れで
738名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 15:41:09 ID:rcLVPHT/
後メール欄にsageって書いたほうがいいと思うよ。
しつこくてスマソ。期待してるのでがんばって欲しい。GJ!!
739名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 16:25:55 ID:4Qj8RzU6
オモスレー
740名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 18:09:08 ID:Eb7cdFHO
480kb越えたので今日中に次スレ立てようと思ってるんだが、結局サブタイはどうする?
741名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 18:48:35 ID:AqM3+PCT
【泥棒猫】嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ【六回氏ね】
742名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 18:49:13 ID:AqM3+PCT
【泥棒猫】嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ【回転剣舞六連】
743名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 19:07:59 ID:MzCthaxv
六道輪廻
なんてどうでしょう?
744名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 19:19:53 ID:O5+dzPJm
【泥棒猫】嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ【6匹目】
あたりが妥当かと。
745名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 19:45:52 ID:hIAWCBLN
六畜がいいね

ゴミクズ主人公を六人挙げたりして
746名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 19:59:25 ID:69HDGJlv
刺し傷六つ
747名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 20:54:52 ID:K7h+3Ucs
>>742
ちょwww回転剣舞wwww

そろそろ普通に六匹目で
748名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 20:55:48 ID:Evc8pS05
「祥ちゃん」が森久保祥太郎の事かと思ってしまったのは俺だけでいい
749名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 21:13:56 ID:Eb7cdFHO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 泥棒猫六匹目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147003471/

【泥棒猫】嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ【6匹目】
では長すぎると言われたので少し弄りました。

五里霧中スレともお別れか。
小さな恋の物語くるかな?
750名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 21:18:47 ID:O5+dzPJm
【泥棒猫】嫉妬・三角関係・修羅場スレ【7匹目】
次からは「系総合SS」は省略してもいいんでまいか?

凄いな1スレ目からテンションが全然落ちてないよココ。
751名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 21:21:08 ID:IUnKOjs7
系総合SSがなくなったら本スレと変わらなくなってしまいやすよ
752名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 21:53:16 ID:2OmYshyL
>>744
わかりやすいし賛成。
753埋めネタ:2006/05/08(月) 04:20:46 ID:/rE13vu6
名無しらは うつりにけりな 次スレへと
わが身おちゆく ロムしせしまに
――斧之駒血――
754名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 01:36:44 ID:mkieKfi5
許してくれ……許してくれ……!
もう、こうするしかないんだ……もう……埋めるしか!

……ちょっと速すぎるような気もするが……
755名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 02:54:49 ID:kKSow3LS
あと13kだから仕方ない。
そう。仕方がないんだ…
756埋め ◆AuUbGwIC0s :2006/05/09(火) 04:12:08 ID:upwAC1jV
「ほら、早くしなさいよ。夜の山奥だからって誰かこないとも限らないんだよ」
 そういって彼女はスコップをこっちに放り投げ僕に作業を促す。
「やっぱり病院つれていった方が……」
 目の前に横になっている女の子は服を真っ赤に染めてこそいるが、まだ苦しいながらも呼吸はしている。
医療に明るい訳ではないが病院に連れて行けばまだ助かるのかもしれない。
「病院なんか連れて行ったら私達牢屋行きだよ!? 私そんなの嫌だからね」
 目の前の血塗れになっている女の子は以前僕が付き合っていた子だ。しかし今の彼女と付き合うようになって関係は清算した
――つもりだったが、彼女にとってはそうではなかったらしい。所謂ストーカーというものになった。
 僕の精神は日々削られていった。そんな時今の彼女がこう言った「適当に刃物でも見せて脅せば大丈夫だって」
 気は乗らなかったが、他に具体的な手段も思いつかなかったのでその話に乗った。僕に延々と付きまとうより早く忘れてしまった方が絶対幸せに決まっている。
 しかし、当日刃物を出したとたん揉み合いになった、そして刺さった。彼女は僕に抱きつきながら笑っていた。ぞっとするぐらい綺麗な笑顔だった。多分僕はその顔を一生忘れることが出来ない気がする。
間もなくして力尽きた彼女は自分から膝を折り倒れたが、その時点で意識はまだあった。そして隣で悪魔がこう囁いた「車あるし山に捨ててこようよ――」

 僕は吐き気を堪えつつ懐中電灯の明かりに照らされながら、まだ呼吸のある彼女に土をかけていった――
757埋まんね〜なぁ:2006/05/11(木) 12:48:25 ID:kuz5COHn
 砥ぐ。磨ぐ。研ぐ。
 落ち着け。落ち着く。落ち着いた。
 コレなら。アイツも。イチコロだ。

 ズキン。ドクン。バクン。
 やめろ。言うな。雌豚が。
『あなたの。ことを。愛してます。』

 無理。不可。却下。
 あれは。あいつは。あれだけは。
 わたし。だけの。ものだから。

 ニヤリ。ククク。アハハハハ。
 神様。仏様。言葉様。
 私は。絶対。負けません。
758名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 14:52:59 ID:Up6N9q/7
>>757
中々埋まらなくても仕方ない。
このスレにはまだ最後の仕事が残っているからな。
小さな恋の物語さえくればこんなスレはもう用無しさ。
759アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/11(木) 15:37:00 ID:L2M+9es6
剣道部の男子が次々にやられていく
悔しそうに勝者をしたから見つめるその瞳
ああ、情けない
たった一人の新入生に部活の男全員負けるなんて
この新入生・・・・すごいわね
有名人なので知っている
すさまじい身体能力を持っていることで有名な子だ
部活もこの子の獲得にやっきになっている
もちろん、この剣道部も例外じゃない
自分たちが勝ったら部に入部しろと無理やり申し込んで
あっけなくやられてる
バカみたい
けど・・・・・興味が引かれた
「あなた・・・・・私と勝負してみない?」
最初は断られたけど
最後は仕方ないと承諾してくれた
どうやら女相手にするのは意に反するらしい
760埋めネタ 没香葉の回想  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/11(木) 15:38:04 ID:L2M+9es6
見てなさい、女だって見下したこと
後悔させてあげる
私は得意な突きで攻めた
あれ?よけた・・・・
もう一度・・・・なんで?
彼は涼しい顔をして私の面に軽く竹刀をぶつけた
初めて私は敗北した
それからだ彼のことを意識し始めたのは
気づいた頃には私は彼のことばかり考えていた

761アビス  ◆aGYNOyzVkw :2006/05/11(木) 15:39:28 ID:L2M+9es6
埋めのネタ投下です
これは香葉の章に入っていたのですが没にしました
なので本編とは関係ありません
762名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 00:38:57 ID:Qk25FZ7J
>>758
酷いわ…

というわけで小恋物お願いします><
763名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 01:11:30 ID:tdpRb+A+
 |  |
 |_|
 |.し|___
 |.っ|,    |  \
 |.と|└L, |  jJヽ   ジー
 |団|\ しlv┘/|!
 |に|__> l /  ノ|
 |注|〜イl、`ー ´(|
 |意|   ,' `¨⌒/
 | ̄|  ,'   ∠-―- 、
 |  |__,/__, <__      >ー
 |  | /      ̄` /
764名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 09:12:20 ID:TM0jx7Po
>>763
女の嫉妬は…鬼より怖ーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
765名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 04:00:59 ID:LVqGCnfH
                   埋めの予感!
 
          :|| 只 //        |               |  ___
,. - ─── 、 ::|ヽム-' ヘ        _,|  ,. -─-- 、.       | '⌒)>,. ────='´
          ヽ.|  /__N> ̄ ̄ ̄へ,//|/   、_>      |,.イ>         \
          :|/了>/        \ |   >'ー _\\   |/| :ト、|\ | 'ーヽN\|
 /レ'_,V,_レ\ | :|   レ __ノ Vレ\N | |  >/    ミ \\ |::ヽ| :|  -' \  (__) J }
 (__)  (__)| | | | |.| | \    丶:|\:| L| /    __  } \:|:  | :| (__)    ''' イ
 ''' / ̄| '''イ :|/レ'ヽ|.| |,, ̄´__ <:|:| . |  \   └'  /\\|:  | 〉 ''' <>   ノ//
'ー-{____:|-‐' レV|  _.´ト|、__/_ _| ''ノ |: | \ \___,. <__ \ト、 N ト、 __  /ソ
从/<)_)ソ人|::::|  {:{ //>Yノ-|} ̄ レN: |\ \ \ マゝノノ_ . | \ト|  レ'   ム∧
  //只-ヽ    |  ヽ=T\_/ハ}      :|  \ ヽ   |ノVムゝ:::|        ノケハ〉\
766名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 23:03:13 ID:GeVo0dc7
     。'⌒⌒ヽ オヤスミ、オニイチャン
    /ノ(リノハリ)) 「カタヅケテ」クルカラ…ネ
     "'从"ヮノリ
       /)卉iヽ       ナ、ナニヲ…スルンダ!?
      ゙く/_|j〉   ∧_∧
       し'ノ  と( ゚д`iiと⌒' )つ
                ・
                ・
                ・
         スタスタスタ…………バタン
                ・                         ガッチャーン
                ・                                     ヤメテェ…ッ!!
                ・  ヤ、ヤメルンダ…                                
             ∧_∧                         オネエチャン…シンジャエ…!
           と( ゚д`iiと⌒' )つ                       

皆仲良く。修羅場はゲームの中だけにしましょう。
767名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 11:32:55 ID:OeRNKftT
                                              カワイソス
                            ズドゥーン         ``   ∧∧
                      __ -,,,::;:'''"´"'''  ,,______Cニ))ニ)Д゚,,).  )   
                        ´"''''- ''"  ~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`A---l__l-1⊂,,,⌒`つ 
                            | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                            `┬―――――――――――――
                            . |
                            . |       ____.____
                            . |     |        |        |
                            . |     |        |        |



768名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 16:36:04 ID:g60lc7m2
誰か男装っ子を書いて下さる神はいませんか?
769名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 17:03:19 ID:eI6mlgXX
>768
ttp://www.usamimi.info/~dansou/ss/2_121/02_198.html
まあ、これで飢えでも凌げ
770名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 18:14:53 ID:g60lc7m2
>769
有難うございます。これで、3日は持ちます。
771名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 02:34:25 ID:FPZ4BJGz
ウホッかと思ったら違ったけどこれはこれで
772名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 05:05:44 ID:aj5o+XPv
面白かったけど、修羅場が薄くて残念。
773名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 15:19:50 ID:x1yee/Iy
                   埋めの予感!
 
          :|| 只 //        |               |  ___
,. - ─── 、 ::|ヽム-' ヘ        _,|  ,. -─-- 、.       | '⌒)>,. ────='´
          ヽ.|  /__N> ̄ ̄ ̄へ,//|/   、_>      |,.イ>         \
          :|/了>/        \ |   >'ー _\\   |/| :ト、|\ | 'ーヽN\|
 /レ'_,V,_レ\ | :|   レ __ノ Vレ\N | |  >/    ミ \\ |::ヽ| :|  -' \  (__) J }
 (__)  (__)| | | | |.| | \    丶:|\:| L| /    __  } \:|:  | :| (__)    ''' イ
 ''' / ̄| '''イ :|/レ'ヽ|.| |,, ̄´__ <:|:| . |  \   └'  /\\|:  | 〉 ''' <>   ノ//
'ー-{____:|-‐' レV|  _.´ト|、__/_ _| ''ノ |: | \ \___,. <__ \ト、 N ト、 __  /ソ
从/<)_)ソ人|::::|  {:{ //>Yノ-|} ̄ レN: |\ \ \ マゝノノ_ . | \ト|  レ'   ム∧
  //只-ヽ    |  ヽ=T\_/ハ}      :|  \ ヽ   |ノVムゝ:::|        ノケハ〉\
774名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 15:21:00 ID:K7R6m1Jn
     , ',´ィ ' ´                          \
   / '/             ___    、     、  ヽ //ヽ
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  '′/  ,/     /':.:.:.:.;:. -―¬¬¬―- 、:.:ヽ     ヽ/:/,.l:::::l':´_ハ
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  i /.,'  /    l   i  l __tハ l ! .| t T¬ ト l、 !      ト、 !:::l /:; '
  l./ .l  ,'!      l  ,レ'T´ ll! !.l, l  li. |', ト, _!_l `!      lヾ':.l::::!l::::l
  l,' l  ! !      !  l', l ,ゝェ 、',|',l',. ! !.l >' ,r 、 ヽ,,'l     l::ヾ:!:::|.l::::!
    !  l !      ', . l ' / /.n.',` .'|',| '!  l 0 l  '' !    .l;:::l::ー':;'::/  
    ',  !. l     '., ',::''::.ヽニ.ノ, .:    ::... ミニ'r  l.   !  ll::::ト:ヾー'  
    ', ! !      ヽ':;:::.` ̄   ..::.        ,' .  l.  !l::::! ';::':,   
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775名無しさん@ピンキー
751 名前:埋めネタ 投稿日:2006/03/29(水) 23:29:19 ID:sBomoye1 ID:sBomoye1
ほう、キミは次スレに行くと言うのか。なるほどなるほど、それは合理的だ。
確かに、このスレはそろそろ書き込めなくなる。
それは、避けようの無い事実だ。否定することは叶わない。
自分の力不足だ。思うように罵って構わない。さぁ、思いっきり、哂ってくれ。
……。
だけどこれだけは覚えていて欲しい。
キミを愛していたことは紛うことなき事実だ。揺るがし難き事実だ。
例え、このスレが落ちてしまっても。
この想いは記憶の中にある。キミの心の中にある。ならばそれは永遠だ。
だからどうか自分のことは忘れない欲しい。心の隅に止めておいて欲しい。
それと…
出来れば次スレみたいな泥棒女に心を開かないでくれ。
キミにより愛を与える自身があるらしいが、正直疑わしい。
そんなに愛してるならば何故、このスレが立ったと同時期にスレを立て争わなかった?
このスレが落ちてしまう、どうにもならない隙を付くようなマネをする?
結局、彼女にはキミを愛する自身がないんだよ。
けれど自分は、そう自分は自信をもって言えるよ。キミを愛している、と。
ふふ、少々話が長くなったな。付き合わせて悪かったね。
もう、数バイトも残っていない。そろそろ「落ちる」よ。
…なぁ最期のお願いだ。落ちる迄傍にいてくれないか?
ああ、最期はキミのカキコで終えたいんだ。叶えてくれないか、名無し…?