女の子が魔界へ拉致・迷い込む

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567名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 20:30:40 ID:7ze9dgyt
干す
568名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 19:16:04 ID:KRnQQirF
ほしゅーん
569闇の声:2006/06/14(水) 23:14:37 ID:b3sdH/lj
最早簪も耐えられないほどに薄くなった白髪の男が、訥々として語りだしたのは
次のような話である。


墨をだらりと溶かしたような闇に炎のように燃える紅い瞳が煌き、拉げたくぐもる音が連鎖し
鉄のような血飛沫の匂いが重く立ち込め、新緑の葉や干乾びた大地に無数の紅い花を
咲かせた。
二十尺程の異形の主は、炯炯とした瞳に黒金の体躯、姿は人の形に似ていたが
その首からは襟巻きのように長い蛇が十匹、緩くトグロを巻き時折毒を吐いている。

一人の女が邪淫を強いられていた。男根は既に深々と突き刺さっており、意識は遥かに
遠のいているのが幸いである。着衣は散り乱れ、もはや隠すべき肌も残っていない。
異形の影から伸び行く蛇たちが女体にぬめった痕跡を無数に走らせ、僅かに差し込む
月明かりがそれに静かな光沢を湛えさせる。
二つの蛇は両の乳房に螺旋の筋を描きながら頂を吸う。ある蛇は菊門の帳を容易く開き、
ある蛇は足の付け根から朝顔の弦のような曲線を描きながら這い上がっていく。
時に甦る意識の破片が、女に羞恥の吐息を毀れさせるが、その都度異形の影が唇で
その吐息ごと意識を暗黒へと封じ込める。

快楽を許され嬲られているのはその女のみで、絡み睦んだ塊の傍には、男達の切り裂かれた
四肢が幾重にも重なりあっていた。血の匂いが一層濃くなった。
−−突然、異形の動きがぴたと止まった。

“道士”
脳髄に直接響く声を、若い男は受け止めた。緋色のマントを膝まで垂らし、首から翡翠の
勾玉を揺らしている。顔立ちは精悍で目元が鋭く身体は引き締まって俊敏さを発散していた。

「魔界人よ、我がロハスの名において直ちに命ずる。その身来るべき所へ還り、
納まるべき場所に結せよ。至福の精よ、安寧をこの地に現さん」

ロハスが呪文を唱え終わる瞬間に、異形の者から黒煙が噴出し、その肉片が木の葉のように
剥れ落ち、朱に染まった大地を更に蹂躙していく。常人には耐えられないほどの腐臭が
一帯に纏わりはじめたが、ロハスは眉ひとつ動かさず女だけを抱き取り、疾風より早くその場から
遠のいた。

“道士。強大になったものだな。だが、まだ俺は息絶えぬぞ”
再びロハスの脳に忌まわしい声が轟き、花火のように沈静化した。
570闇の声:2006/06/14(水) 23:16:36 ID:b3sdH/lj
「手遅れか」
奪還した女の手首を握り、事切れているのを確認したロハスは失意の溜息を長く吐いた。
蝸牛の這ったようなべとついた光沢を裸身にまとい、腿の付け根から魔界人の腐った
種が艶々と滴っている。命の根のない体躯とて寄生の恐れの芽は摘まねばならない。
大方、旅の途中に襲われたのであろう、供人らしい男達の惨たらしい屍とともに、榊の葉で
彩った窪地に女の身体を横たえ、ロハスは右の腕に強く息を吹きかけた。
すぐに掌に透きとおるような炎が揺らめき、それを折り重なった物言わぬ身体たちにかざすと、
ゆっくりと浄化の舞を見せながら窪地いっぱいに橙の光が満ち溢れた。
「風・火・水・土。何を飲み込んでも穢れないのは、炎だけだな」
明るい光に照らされて、整った鼻梁に深い影が施され、厳しい面差しを一層精悍なものに
見せている。その双眸は炎を見据え、強健な体躯は微動だにもしない。

全て焼き終えた後、ロハスの目の端に何かが映りこんだ。
黒い茂みと灰色の岩の間に見える、白い影。
警戒と好奇を携え、ロハスはそれに近づいていった。
571名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 21:01:57 ID:zs/nQmES
キテル━━(゚∀゚)━━!!

試演
572名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 21:15:26 ID:QMcggYPJ
おもしろそう! 期待しています。
573名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 21:20:28 ID:C7DlX5Mo
ロハスというと有閑マダムがリゾートで寛いでいる光景が目に浮かぶ…

それはさておきクールな文章がいい感じですね。
続きを期待してます。
574名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 22:36:41 ID:3kaA20kt
闇の声と聞くと、某エロゲーを思い出す。
575闇の声:2006/06/15(木) 23:17:43 ID:kPIqPpZk
腰を引き即座に飛びのける体勢を崩さずに、白い布を引っ張ってみる。
「ん」
ゆっくりと弧を描きながら、少女の身体が中から転げ落ちた。
固く合わされた長い睫が月光を彩り、薄く白い皮膚に濃い陰影を添えている。
頬や項に乾いた土が付着していたが、整った顔立ちや珊瑚色の愛らしい唇、
美々しいたおやかさは隠しようがなかった。
どうやら異形のものではないらしい。おそらく先刻犠牲になった者たちの主であり、
襲われた瞬時に誰かが被布にくるんで、保護を図ったのであろうとロハスは推測した。
このままこの場所に放置すれば、魔の手のものに堕ちるのは必定である。

「男所帯だが、いたしかたないか」

ロハスは頭を掻きながら少女を抱き上げた。恐ろしいほど軽く柔らかな感触が、
再び巻きなおした白い被布の上からも明瞭に伝わってくる。艶やかで真っ直ぐな黒髪が
はらはらと数束落ちたのを、引っ張らないように注意しながらロハスは自らの庵に歩を進めた。


ロハスは、この魔の森の片隅に居室でもある庵を構えている道士である。
シラオネの国が魔に汚濁され、人々の心に闇を住まわせ、闘いに明け暮れる日々が続いたとき、
国王の命を受け老師ジェタリオンとともに、巣窟であるダンダロイの森に遣わされたのである。
老師ジェダリオンは、孤児だったロハスの才能を7歳の頃から的確に見抜き、手元で養育して
己が持つ全ての知育を隈なく施した。
必要な学問、言霊や四元素の自在な操り、肉体の鍛錬に−−女の抱き方まで。

遡ること数年前、ロハスのほかに数名の兄弟子がおり、彼らと連れ立って町の娼館に
足を踏み入れたのが筆おろしであった。老師自身はともに行こうとはしなかったが、
「学ぶべきことだ」と短く笑って見送ってくれたのを、ロハスは今も瞼の裏に思い描くことができる。

兄弟子達は下卑た笑いを漏らしながら、気に入った女の肩を抱きすくめながら、暗い小部屋に
めいめい消えていった。何か冷やかしの言葉を投げられたような気もしたが、あまり明確には
思い出せない。
ロハスの初めての女は若いというにはかなり無理がある、下腹に豊満な肉をみなぎらせた者で
大きすぎる胸をいきなりはだけてロハスの顔を押し付けてきたときには、色気を感じるどころか
嫌悪がその胸に湧き上がったほどだ。だが、百戦錬磨の娼妓はともに身体を隔てる布地を
ゆっくり取りはがし、少年ロハスに自らの唇を重ねてきた。ぼってりとした唇が少年の唇を容易く
割り込み、舌を舐めつくす。武器以外持たぬ指先をたわんだ乳房にいざない、感応の場所を
教えていく。
「あんたの兄さんから、懇切丁寧に教えてやれっていわれているのよ。
大丈夫、あんたいい身体しているし、飲み込みも早そうだもんね。良い男になるわ」
乳首を舐めあげられると娼妓のその言葉は嬌声に変わり、やがて短い喘ぎを連発し始めた。
彼女の手がロハスの一物を緩く掴むと、彼は一瞬全身を強張らせたが、手淫が始まると
硬くなったのは一点のみに集中した。女は彼のモノをほおばり、襞を忠実に舌でなぞっていく。

「ああ」不本意だ、と頭のどこか冷えた部分がそう思うのに、下半身のみ灼熱の様相を帯び、
命じられたとおりに彼女の胸を揉みあげ続ける。どくん、と自分の中に何かが波打つのが
感じられ、間髪を入れずにロハスは女の口腔に精を吐き出していた。
「まだよ・・・もうひとつの口に与えなきゃね」
唇を淫靡な液体で濡らしたまま、彼女は再びロハスの唇に舌を差し入れる。
己の種を口にしたことのないロハスは、必死に逃れようとしたが、豊満な乳房がすばやく彼の
頭を谷間に誘い込み、軽く耳を甘噛みして再び軽く口付けし、再び彼のモノを攻め立てた。
576闇の声:2006/06/15(木) 23:18:15 ID:kPIqPpZk
「こちらもいい感じよ」
にやりと笑い、自分の茂みに少年の手を押し当てる。ねっとりした蜜が指に絡みついた。
ロハスは、どうすればいいか既に察しており、女の言葉を待つまでもなく、自らの切っ先を
秘所に宛がい、一気に貫いた。柔らかく温かな褥は彼をじわりと包み込み、その官能は
脳天を痺れさせる。腰を振るたびに女は動物のような咆哮を喉の奥から迸らせ、やがて
ロハスは彼女の奥地に種を放逐した。

「やっぱりあんたは筋がいいわ。途中から、アタシの指導が要らなかったもんね」
大きな胸を波打たせ、数回目の射精を終えた後、娼妓は呟いた。
だが、ロハスは何かやりきれない思いがこみ上げてくるのを止められない。手技と舌技、
柔らかな肉体に確かに自分の肉は反応し、快楽を互いに貪りあった。決して感覚に不満は
持っていないのに、満たされないような、敵に屈服したかのような口惜しさの残照は何なのか。
しなだれかかる女の腕を静かに外し、ロハスは素早く着衣を整えると、兄弟子達の艶声を
後ろに聞きながら、老師の元に駆け出した。

事の顛末を頬を赤らめた少年から聞き終えると、老師は愉快そうに笑い飛ばした。
「それはいい、それでいい、ロハス。あの場所は今のお前に必要なものを与え、そして最も重要な
ものを得ないと、必ず示唆してくれると思うていた。吉祥じゃな」
「吉祥とは?兄弟子達は与えてもらえていたのですか?俺は何かおかしいのでしょうか」
「いやいや、そうではない。兄弟子達は目が曇っておるのじゃ。とにかくお前は良き経験をしたと
いうことじゃ、ロハス。若いお前は急ぐことはない、数年かけてわかることもある」


庵に戻り、自らの寝台に横たえた少女の顔を湯を絞った布でふき取ると、白いおもては一層
汚れない美しさを放ち、比類ない芳しい息づかいが殺風景なロハスの部屋を一気に愛らしい
雰囲気に変容させた。寝台から流れ落ちる艶やかな黒髪は床にまで達し、少女の肌の白さを
一層引き立てている。長い睫の下に溜められた影、すっきりした鼻と珊瑚の唇、どこにも欠点
らしいものは見受けられない。

「だが、俺には関係ないことだ。女ごときに惑わされるようでは護りの役は務まらない」
ロハスは呟き、寝台から離れた。美しい少女を見て、記憶の底に封じ込めていた筆おろしの日の
残影や、亡き老師の言葉が胸に去来したのは何故なのか。
苦笑いを口の端に浮かべ、隣室の板間にその強躯を横たえて、彼は深いまどろみのなかに落ちていった。
577名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 23:22:47 ID:kPIqPpZk
>>571-574
励ましの言葉ありがとうございます。
投下してよいものか迷いましたが、(何せマビマビさんの良作の後ですし)
読んでくださる方がいらっしゃるようですので、ゆるゆる進めていきます。

「闇の声」ってゲームがあるんですか?そっち方面に疎くて知らなかった。
今はこんな雰囲気ですが、直にスレタイに合ってくると思います。
578名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 19:48:57 ID:yQUyingo
>>577
ロハスに萌えた
579名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 23:07:31 ID:nOGxYUhG
淡々とした伝奇っぽい文体好きだ・・・
580名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 17:06:59 ID:OjYdBSh6
>>515
(´・ω・`)夢は覚めないのよ
581闇の声:2006/06/26(月) 23:46:33 ID:iANyTDD9
柔らかな茜の色がにぶく漂う明け方、ロハスは周囲の空気がかすかに変化したのを
感じ取り、静かに目を開けた。自分の身体のすぐ脇に、昨夜の少女が物言いたげな
表情で膝をついて座っている。一瞬黒曜石の瞳がこちらを見据え、すぐ恥ずかしそうに
違うほうを見やった。

「あの・・・貴方さまがお助けくださったのでしょうか。わたくしの供のものを、ご存知ではありませんか」
声は鈴のような張りをしめし、双眸は闇のように深い黒を湛えている。
一瞬何かが自分の中でわきあがったような感覚を覚えたが、ロハスはそれを心の中で否定し、
ゆっくりと身を起こした。
「残念ながら、この地の魔界人に残らずやられてしまった。
聞くが、一体なんのためにここへ来た?ダンダロイの森が魔の巣窟というのは誰でも知っている。
ここにおれば命の保障はない。疾く帰れ・・・送っていくから」
少女の切り落としたばかりの林檎のように白い頬は一層色を失った。
繊細な指に顔を埋め暫く嗚咽を漏らしていたが、やがて震えながら語りだした。

自分はアロンソニア=ミュラ。シラオネの巫女として宮廷に仕えていたが、祈りの声も空しく
国は乱れ民は憂えていく。そんなとき、ダンダロイの森で魔界人と闘う道士ロハスの話を聞いた。
より具体的に国を護るためには室にこもって祈るだけでは足りぬ、直接ロハスとともに魔物を
封じ込めよと神託がくだり、宮廷の番人数名と侍女のオリンピアとともに山々を越えてやってきた。
しかし突然疾風が沸き起こり・・・

「後は全く覚えていないのです」
ロハスの顎がゆっくり下に落ちた。こんな無茶で浅慮な人間は初めてである。
「いいかよく聞けお嬢さん。あんたの無鉄砲さで幾多の人間が死んだんだ。
あんたが魔界人に喰われなかったのは、奇跡的に身体が岩陰に落ちたからなんだよ。
神託なんぞ信じずに、早く今ある場所へ帰ってくれ」
「無理です・・・シラオネの神託に巫女は絶対の服従を誓うのです。
魔物をロハス様と封じ込めるまでは帰れません・・・あなたがそのロハス様なのですね」
まなじりに強い色を滲ませて、ミュラはロハスを見つめ返す。

ややこしいことになった、とこの国一の道士は困惑の表情で腕組みをした。魔界人には
滅法強いロハスも、このような世間知らずの乙女に手向かう術を持っていない。
何より思い込みが激しくそうで単なる脅しすかし程度では帰るように感じられない。

・・・ふとひとつの悪戯が心に浮かんだ。
582闇の声:2006/06/26(月) 23:47:04 ID:iANyTDD9
「ミュラ、本当に魔物を俺とともに封じ込める気概があるのか」
「勿論ですわ。ロハス様と魔物を封じ込めよという聖なるお告げなのです。
まっとうするまでここから動きませんわ」目には微塵の揺るぎも見られない。
「・・・全く良い覚悟だ」

言い捨ててロハスは下半身の布をはらりと落とした。ミュラは顔をそむけるでもなく
ただ一点を凝視している。
「それは?」
「これが俺の魔物さ」
口にしながら可笑しさがこみあげる。全く男根も知らぬ乙女がいるとは驚くべきことだ。
「普段はおとなしいが時に立ち上がって悪さをする。今もほら」
それに無邪気な視線が絡むと、ロハスは胸の中が熱くなりますます彼の精は屹立した。
「まあ・・・良かったわ、わたくしにはそんな魔物はありませんもの」
「だが、お前には魔界があるだろう、知らぬのか?」

怪訝そうに見返す瞳に顔を近づけながら、ロハスはそっとミュラの被布をたくしあげ、
股間に手を差し込んだ。小さく悲鳴を上げて逃げ出そうとするミュラの腰を片腕が
しっかりと取り押さえ、空いたほうの指先が直に恥毛を掻き分け、女陰をなぞった。
「あうっ」
「これがお前の魔界」
中指を割れ目に沿って何度か往復させ、時折突起を弄ぶとミュラは身を捩って
暴れだした。秘所からは清冽な泉が静かに滴ってきている。
「いやっ・・・やめ・・・あ・・・っ」

瞳孔が開き、黒い瞳の焦点が定まらなくなっていく。薔薇の唇が半開きになり
甘い吐息が漏れたとき、ロハスの悪戯が何か違うものに変化しはじめた。
583闇の声:2006/06/26(月) 23:47:59 ID:iANyTDD9
「撤回するなら今だぞ・・・もう少しで俺も抑えられなくなる。どうする」
「撤回は・・・しません」
荒い息を弾ませながら、ミュラが反応した瞬間、ロハスの頭の中で何かが弾けた。
ミュラの顎をつかんで上向かせるとそのまま唇を重ねる。必死で繊手が彼の
厚い胸板を押し返そうとするのを意に介さず、舌で上唇と下唇をなぞり、そのまま
唇を割って舌を絡ませてゆっくり吸い上げる。ミュラの身体がびくんびくんと
雷光に打たれたかのように反応するのが心地よく、長いこと唇を離さずにいた。

ようやく唇を離すとまだ息の整わない熱を帯びた華奢な身体を抱き上げ、寝室へと運びこむ。
ミュラを仰向けに横たえて再び熱い舌を唇に与え、そのまま首筋に這わせていく。
服をすばやく滑らせるように脱がすと、たわわな乳房が誘うように揺れている。一つを口に含み、
もうひとつの頂に指を立て静かに埋め込みながら円を描くように揉みしだく。
「あっ・・・だめ・・・そんな・・・くっ・・・ん」
初めて与えられた感覚に、ミュラは顔を真紅に染めかぶりを振って抵抗するが、
男の力が腹の上にかかっているので逃れることができない。
「もう遅い」
そう呟くとロハスは両の乳首を舐めあげたり舌で転がしたり、軽く甘噛みを施す。
ミュラの艶声は一層切ないものに変わっていった。

舌が乳房を嬲っている最中に、彼は少女の腰を持ち上げ、そこを覆っている布を一気に
取り外した。
「ああっ、いや!み、見ないで・・・っ」
恥ずかしさのあまり逃げようとするミュラを再び押し倒し、細い足の間に身体を割りいれる。
「ここだな、お前の魔界・・・すでに涎が流れているぞ」
「うそっ・・・いや・・・」
涙を浮かべて逃れようとするミュラの膝を高くあげ、ロハスは腿を抱きしめるとその女陰に唇をつけた。
敏感な部分に男の唇が触れ、淫らな音を立てて吸い上げられるとミュラの抵抗は
一層激しさを増したが、屈強な男の腕の中では逃げることも叶わず、直に時折脚を痙攣させては
甘い溜息をもらすだけとなった。
584闇の声:2006/06/26(月) 23:48:52 ID:iANyTDD9
「そろそろ行くぞ」
ロハスがミュラにかぶさった瞬間、敏感なところに何か固いものが当たり、一気に上へと
向かって貫かれた。
「いやあ・・・痛いっ、いた・・・っ・・・やめ・・・て・・・」
まだ半分ほどなのにミュラは恐ろしいほど苦悶の表情をみせる。眉間に寄せられた皺と目尻に
走る涙の後をロハスはちらりと見たが、それよりも自身を熱く締め上げる極上の感覚に
酔いしれており、もっと到達したいという欲望の波の方が強烈に彼を痺れさせていた。
少しだけ静かに肉刃を差し込んでいく。ミュラの脆弱な悲鳴は途切れなかったが、
やっと終着までたどり着き、彼はそのまとわりつく感覚の甘美さに恍惚とした。

「今、やっと魔物を魔界に追い込んだ。魔物は暴れん坊だから用心しろ」
そうミュラの耳元に囁き、耳朶をそっと唇ではさむ。そのまま顔中に口付けの雨を優しく
降らし、軽く唇を合わせた後、掌を豊かな乳房に押し当てながらゆっくりと腰を動かしていく。
充分に泉を湛えている秘所は滑らかだったが、男を初めて受け入れているためか、
収縮が厳しさを増し、それが一層ロハスの一物に刺激を与えているのである。
ロハスは前へ後ろへと腰を振り、それにあわせてミュラはかなしいほどの艶声を響かせた。

彼の一物が瞬間引き締まったように感じ、次の瞬間一気に少女の奥底に彼の精が
放たれた。ミュラの何度目かの絶頂もほぼ同時に達した。


ロハスは、果てた後もミュラを逞しい腕に抱えたままなかなか抜き取ろうとしない。
これほど女体に耽溺したのは初めてのことである。恥ずかしさと痛みで流す涙を
唇で吸うと、また唇を重ねる。

「まだ痛むか?」
「大丈夫・・・です。でも酷い魔物ね。中で大暴れして魔界が壊れるかと思いましたわ」
邪気のない言葉にロハスは少し苦笑をもらした。
「そろそろ大人しくなったかもな。解放するか」
そのままゆっくり引き抜くと、欠損した空間を追い上げるように肉襞が絡みつき、ふたりは
同時に喘ぎ声を漏らした。
ミュラの腿に這う血や精をロハスは手近の布で丹念にふき取ったあと、再び彼女を
抱きしめる。ミュラは恥ずかしさのためか、彼の胸に顔を埋めて目をあわせない。
柔らかな肢体は、一向に熱が引かないようだった。

「ミュラ」ロハスは静かに彼女を呼んだ。
「また魔物が息を吹き返したようだ・・・鎮めてくれるか?」
585名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 23:52:58 ID:iANyTDD9
以上です。これ、ある古典が元ネタです。
不定期投下すみません・・・。
586名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 12:35:07 ID:QOGW7CaK
お疲れ様でした! 作者さん、GJ!
女の子のその部分を魔界に例えたのは、
なかなかおもしろかったです。
こういう風なのもアリですな。

文章の雰囲気とエロのバランスもいい感じで、
もうちょっと読んでみたいなと思いました。
587名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 20:32:31 ID:3AaqVl7z
マビマビ氏がサザエさんスレにいた
588名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 21:27:49 ID:QtVG95R/
>>585
GJ!おもしろい。
けど魔物の行が読んでいて少し恥ずかしい気持ちに。
もうちょっと長くても良かったと思います。

>>587
それを言うなら、とりつき、乗っ取り、入れ替わりのほうじゃない?
589名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 10:16:03 ID:RzUcv30l
サザエさんスレにも居たよ。
SS書いているわけじゃないけど。
590名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 21:56:37 ID:b1Sjm/AY
職人さん頑張れ〜。
591名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 12:58:28 ID:OULZo349
592名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 23:03:28 ID:XJwtM+4z
#24#
593:2006/07/08(土) 23:04:57 ID:XJwtM+4z
#24#
594名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 02:51:28 ID:1fWTW0tQ
保守
595名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 21:09:12 ID:Gyl84jeZ
あげ
596名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 07:41:15 ID:26PlAg4S
保守。
597名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 19:27:17 ID:SuYxRxQ3
これはいい過疎
上げとく
598名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 03:57:04 ID:A57vU/ZP
保守
599名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 00:04:43 ID:tYDrRs4o
ほっすほっす
600名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 23:30:16 ID:pNHGR4BC
保守(つД`)
601名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 17:07:27 ID:6spnag/z
ほしゅほしゅ
602奪われた花嫁:2006/09/05(火) 02:22:26 ID:UY476Qrd
暗闇の中で、鎖のすれる音がした。
サシャはそこでずっと手を拘束されたまま吊るされていた。
どのくらい経っただろうか。
暗い部屋の中では時間の感覚は麻痺してしまう。
水すらも口にしていない体では思考することすらも困難で。
(誰か…助けて)
そう思った瞬間に彼女の頭をよぎったのはよりにもよって今一番顔を合わせたくない相手だった。
幼い頃より定められていた婚約者のもとへ嫁ぐはずだった彼女を式の直前につれさり、そのまま辱めた男。
誰よりも信頼していた。
心の許せる相手だった。
だからこそ許せなかった。
(それに私、彼が魔物だなんて知らなかった。)
603奪われた花嫁:2006/09/05(火) 02:30:31 ID:UY476Qrd
思い出すのは結婚式の日のあの光景。
控え室に訪ねて来てくれた彼はてっきり自分を祝福してくれるものと思っていたのに
酷く憤慨している様子で彼女の腕を強引に引っ張って。
あのように乱暴にされたことなど生まれてから一度もなかったサシャは驚いて彼を突き飛ばしてしまった。
その反動でサシャの爪が彼の頬に薄くだが引っ掻き傷ができてしまった
『あ、ご、ごめんなさい。』
たいした傷ではないとはいえ、自分の手で虫さえも殺したことのないサシャはとっさに謝罪の言葉を口にした。
『いや、僕のほうも焦りすぎた。乱暴にする気はなかったんだ。』
いつものような優しい言葉に、サシャはほっと肩をなでおろす。
なんだか彼がいつもと違い恐ろしいものに思えたのだが、気のせいだったようだ。
『サシャ、迎えに来た。僕と一緒に行こう。』
微笑んで手を差し伸べる彼に彼女は首をかしげて見せた。
『どこへ?』
『どこか。そうだな、君の行きたいところに行こう。前に南の国へ行きたがっていたよね、連れて行ってあげるよ。』
それはいつか彼が話してくれたことだった。自分の住む国とは違う御伽噺のような所。
確かに一度は訪れてみたいと思っていた場所だ。
それを口にすると彼はいつか連れて行こうと約束してくれた。
随分と昔の口約束なのだが、覚えていてくれたらしい。彼女はとても嬉しくなった。
『うん、行こう。だけど今日は結婚式があるし、しきたりで三日三晩は旦那様と一緒にいなくてはならないらしいからその後でね。』
そう答えると彼はなんだか妙な顔をしていた。
今にも泣き出しそうな、そんな顔だった。体もわなわなと震えていた。
『君は本気で結婚する気なのか?』
『そうよ。小さなころから決まっていたもの。見て、このドレス綺麗でしょう。これから私は一生に一度の晴れ舞台なのよ。』
見せびらかすように裾を掴んでまわる。
彼の目が険しくなった。
『どうしたの、怖い顔をして。祝福してくれないの?』
サシャは彼がすぐにその怖い顔をやめてもちろんだよ、と笑ってくれることを期待していた。
しかし。
『できるわけないじゃないか。』
聞いたこともない鋭い声がとんできて彼の体が不気味な音をたてて変形し始めた。
頭からは長い日本の角が生えて、彼女と同じくらいだった背は頭二つ分ほど大きくなり、手足と背中を黒い体毛が覆いつくす。
残った肌は褐色に変貌し口からは牙が覗きざんばらに伸びた前髪から猫の目のように暗く光る瞳が見えた。
『貴方、誰?』
そこにいるのが彼だと彼女は信じたくなかった。
『僕は、僕だよ。』
それは聞き慣れた声でそう彼女に告げ、そして泣き叫んで逃げようとしたサシャを腕に抱くとそのまま彼女を連れ去った。
そのまま時空を越えて、魔物の住む世界へとつれてこられた。
巨大な岩をくり抜いて造った不気味な屋敷へと連れ込まれ、そして問答無用で組み敷かれた。
そこから彼女が彼から受けた仕打ちは想像できないほどの苦痛に満ちたものだった。
何度やめるように頼み込んでも彼は止まらず、彼女の体中を嬲り続けた。
晴れ舞台のために来ていた白いドレスは無残に引き裂かれた。
いまは可愛らしく清楚な面影すらも残っておらずただのぼろ布のように今はサシャの体にまとわりついているだけである。
太ももには彼女自身の血が流れている。
彼から受けた仕打ちの中で最も辛かったのはこの血が流れた瞬間だった。
初めて目にする男のそれを彼が股間から出したときに最初は彼が何をするつもりなのかが分からなかった。
それをサシャの下半身にある小さな穴に入れるつもりだと知ったとき絶対無理だと思った。
大きさが違いすぎる。裂けてしまう。
しかし彼は強引に彼女の中へそれをねじ入れて、そして予想どうり今まで体験したことのない強烈な痛みを彼女は感じた。
結合部からは血が伝うのがみえた。
それだけでも痛いのに彼は乱暴に腰を動かし始めた。そのたびに新しい痛みが生まれ彼女は泣き喚いた。
そして痛さで体が麻痺し泣き声も枯れてしまうころ彼女は意識を暗闇の中へと手放してしまった。
次に目が覚めたときには彼女の周囲には誰もおらず、現在のように手を拘束され吊るされていたのだった。
604奪われた花嫁:2006/09/05(火) 02:32:41 ID:UY476Qrd
少女が意識を失っていることに気がついたのは自分の欲望の証を全て彼女に注ぎ込んだ後のことだった。
閉じた目からにじみ出ている涙を手で拭き取ってやる
こんな風に泣かせて、痛い思いをさせるつもりなどなかった。
優しく導いて気持ちよくさせようと決めていたはずなのに。
彼女が自分以外の者と結婚などしようとするからだ。
一番大好きなのは自分だと彼女は言ってくれた。
なのに大はしゃぎでで結婚のことを話して、その上祝福しろとまで言って。
そんなことできるわけない。
その金色の髪も小さくて赤い唇も白魚のような手も首筋も胸も手も腰も他の誰かに触らせることなど絶対ごめんだ。
その蒼い瞳に映るのは自分一人でいい。
最初は一目ぼれで、遠くから見ているだけで我慢しようとしていたけどできなかった。
人間の少年に化けて彼女に近づいた。
彼女は周囲に同じ年頃の子供がいない上、家から出ることもできない。
珍しい話や土産をこっそりくれる自分に懐くのはそう難しくないことだった。
そして彼女は言ってくれた。
自分のことが一番好きだと。
だが彼女は自分以外のものと結ばれる道を選んだ。
頭では分かっているのだ。
彼女の言う好きは自分の求めているものとは違うものであると。
しかし彼女のは結婚相手を愛しているわけでもない。
なぜなら彼女の花婿になるはずだった男は彼女にとって顔も声も知らぬ相手なのだから。
だからこそ納得できなかった。
いや、彼女が相手を愛していたとしても彼女に対する思いがそう簡単に消え去るわけではないが、彼は彼女が泣く顔を見るのは嫌だった。
ましてや自分以外のもののことを思って流す涙をそばで見続けることなどきっと彼にはできない。
だから今回のように無理やり連れ去ってしまうような行動には移れなかっただろう。
けれども彼女はいまだ恋の意味を知らない。
彼女の結婚という事故さえなければ気長に待つつもりだったが事情が変わった。
大体今まで自分ながらぬるすぎたとは思っている。
いくら彼女が箱庭育ちで外出もままならないお嬢様であってもその美しさに自分以外の害虫が湧かないはずないのだ。
彼女に彼以外の者のことなど目に触れないよう考えられないように早めに隔離しておくべきだった。
まさかあんなに抵抗されて、泣かれるほど嫌がれるなどとは予想していなかった。
魔物であったことを隠していたことも大きいだろう。
彼女から見れば彼の姿はさぞ恐ろしい異形に見えただろう。
それに嘘がきらいな彼女に出会ったときからずっと嘘をついていたのだ。不信感も強いだろう。
しかしまだ遅くはない。
こうなった以上時間はたくさんあるし彼女のことなら誰よりも知り尽くしているという自負が彼にはある。
(結婚のことは直前まで知らなかったがこの際無視で)
ゆっくりでもいいから彼のことを受け入れてもらうのだ。
ひとまず辛い思いをさせてしまったお詫びに彼女に珍しいものをくれてやろう。
ここは魔界だ。珍しいものの好きな彼女が好みそうなものなどいくらでも見せてやれる。
なにがいいだろうかと考えあぐね、彼はとてもいいこととを思いついた。
交わるときにいたい思いをさせてしまったそのお詫びとして最適でもあり、うまくいけば彼女の機嫌も治るという一石二鳥の品だ。
ただし取りに行くのにだいぶ時間がかかってしまうのだが。
「すまない。しばらく君を一人にするよ。」
彼女の髪を一房手に取り口づけると彼は早速行動を開始した。
605名無しさん@ピンキー:2006/09/05(火) 08:04:16 ID:Oej37H8B
>>602-604
いーぞいーぞ純愛系魔族!
続き楽しみに待ってます。
606名無しさん@ピンキー:2006/09/06(水) 21:48:16 ID:a5p3yMKP
久々の投稿でうれしい〜。
続きwktk
607名無しさん@ピンキー:2006/09/11(月) 21:42:39 ID:LIfpiE0O
何だこのスレ
めっちゃヤバエロイよ・・・はぁはぁしてもいい?
608堕ちた姫君:2006/09/15(金) 06:37:37 ID:zfGR5wR+
 ローデルセラムは気候の温暖な、四方を緑の多い山に囲まれた小さな王国である。
 その山あいの小さな修道院でアニエスは10の時から静かな暮らしを送って来た。
 戒律の厳しい生活であったが、世間の汚れに染まる前にここにやってきたアニエスにはそう辛い物では無く、
日々の勤めの中に小さな喜びを見い出す事が出来た。そうして16の年を迎える頃には、
信心深く、無垢な、そして美しい娘に育ったのであった。
 夜明け前に起床し、朝のお祈りを捧げた後、朝食前に修道院のすぐ側にある薬草園で作業をするのが、
アニエスの毎日の勤めであった。
礼拝堂から出たアニエスは、洗い晒しの木綿の粗末なドレスに着替え、麦藁の篭をもって、外へでた。
 外はまだ所々朝霧が晴れず、木々の緑にミルクのようなもやがかかっている。
日が上りきるまで、まだ少し時間に余裕があるようだが、朝露の乾ききる前に、薬草の新芽を摘み終わらなくてはならないのだ。
前庭の下生えの露がドレスの淡いローズグレーの木綿地を濃くぬらすのも気にせず、アニエスは足早に庭を横切り、薬草園に向った。
 薬草園の木戸を抜けて中へ入ると、すでに同じ作業をしている、年上の修道女たちが数名居た。
 アニエスは軽く会釈をすると、自分もすぐに作業にとりかかった。
 お勤め中は無言でなくてはならないのだ。
 薄荷草の、萌える若緑色の新芽だけを摘む。
 ポキリと折った瞬間、青く、清々しい香りがアニエスの鼻をくすぐった。アニエスの好きな瞬間だ。
彼女は白いおもてに花のような微笑を浮かべながら、夢中で次々と薄荷を篭に摘んで行った。
この薄荷草は後で修道女たちが乾燥させて、お茶にしたり、香料として市場等で売られ、修道院の貴重な現金収入となる。
ここでは基本、自給自足なのだが、どうしても自給できない塩等を買うのに必要なのである。
 香料に加工するのも、アニエスの勤めの一つである。
 
609堕ちた姫君:2006/09/15(金) 06:40:58 ID:zfGR5wR+
 アニエスは修道女ではない。現在は見習いという身分だが、
元々、地方の貴族の娘で、ここへは花嫁修行、という名目で預けられたのである。
それゆえ、日が登ってからは、白い肌を損なわないように外での勤めは免除されている。
 朝の勤めが終わった後は、年上の修道女から一通りの家事を学んだり、
そしてまた、他の修道女たちに混じって尼僧院長から神学を学んだり、
本を読んだりするのだ。
 普通、年頃になった娘には親元から迎えが来て、帰郷すればすぐに結婚させられる。
だが、アニエスはできれば修道女として一生を神に捧げ、神と共に暮らしたいと思っていた。
 しかし、幾度故郷の父に手紙をおくっても、はかばかしい返事は戻って来ることはなかった・・・。

 ふと、一心に薄荷草をつむアニエスが、手をとめた。
 修道院から下働きの女らしき人陰が、1人、こっちへ向って走って来ている。
しかも自分の名を呼びながら。
 珍しい事も有るものだ。他の修道女達も手を止めて女の走ってくる方向を見ている。
アニエスが薬草園の外へ、女を迎えに出てみると、よほど慌てていたのか
大声を出しては行けないという戒を破って、息を切らしながら告げた。
「急いで院長さまの所迄お越し下さいませ、アニエス様。
王宮からお使いの方がきているのです。」

「アニエスです、院長さま。失礼いたします。」
「お入りなさい。アニエス。」
 院長室のドアをノックすると、柔らかい院長の返事が聞こえた。
 部屋の中には尼僧院長と、その墨染めの装いとは対照的な、
華やかな出で立ちの女性がアニエスを待っていた。
 肩から掛けているヴェールについた紋章から、彼女が確かに王宮の、
しかも高位の女官ということがわかる。
 女官はアニエスが部屋に入ってくると、椅子から立ち上がり、優雅に礼をした。
一分のすきもなくキッチリ結い上げられた艶やかな黒髪、
細く釣り上がった眉に冷たい感じがするほど整った目鼻立ちの、
いかにも有能そうな女官であった。
610堕ちた姫君:2006/09/15(金) 06:45:54 ID:zfGR5wR+
「お初にお目にかかります。アニエス姫。」
 アニエスは礼を返しながら苦笑した。
「・・・私のことは、ただ、アニエスとお呼びください。」
「アニエス様の母君は現国王の叔母上さま。いわば王族の一員であらせられます。
私ごときが失礼ながらお名前を呼び捨てにすることはできません。」
まだ何か言いたげなアニエスを目で制して、女官は続けた。
話す言葉ではへりくだってはいるが、声も、有無をいわさぬ威厳に満ちていて、
少々慇懃無礼な感じがした。
「恐れながら、この度は姫君の出自をあれこれ申す為に参ったのではございません。
陛下より、そして、姫君のお父上様からの手紙を預かっております。
王宮への特別な出仕の御要請です。お父上様もご了承でございます。
詳しくは手紙を御覧くださいませ。」
 出仕?確かに地方貴族の娘が、女官として王宮で礼儀見習いをすることはあるが・・・
王が直接采配しているとは聞いた事がない。
それに礼儀見習いに入るには少し年が過ぎているし。それに特別とは何だろうか。
「3日後に、迎えの馬車を差し向けます。それまでに御準備ください。
と、申しましても、お持ちになる物は何もございませんでしょう。
王宮で必要な物、ドレスも身の回り品も全てこちらでご用意致します。
その為に国王陛下からも、故郷のお父上様からも支度金をお預かりしております。
身ひとつでお越しくだされば結構です。」
(それではまるで・・・お嫁いりのようだわ・・・)
あまりにも急な話に付いて行けず、戸惑っているアニエスが何も言えないでいると、
女官はさっさと自分で話を締めくくった。
「お聞きになりたいことがあれば、王宮にお越しになってからお尋ねになればよろしいかと思います。
では、わたくしは、修道院に入れない男性の護衛達を外で待たせておりますので、
失礼いたしますわ。
院長様、お時間を頂いて有り難うございました。3日後にまた参ります。」
 一礼すると、さっさとドレスの裾を翻して、女官は出て言った。
 仮にも王宮の使者だ。院長が珍しく慌てて、修道女達何人かを見送りにやらせていた。
 アニエスはしばらく呆然と立ち尽くしていたが、やがてその場で手紙を開封し、
読み始めた。
 確かに手紙は、王家の紋章で封蝋されていた。
 国王陛下からの手紙には、アニエスに王宮に来るように、
という簡単な命とサインがあるだけであった。もう一方の、
表のサインが見なれた父のものである手紙をあける。
読み進む内に、アニエスの顔色が明らかに変わった。
 『隣国の第2王子が、この国に留学にやってきている。お前は尼僧になりたいと望む程、信心深くまた神学にも造詣が深いようだから、王子のお話し相手兼、聖典の家庭教師として勤めるように。』

611堕ちた姫君:2006/09/15(金) 06:50:34 ID:zfGR5wR+
 一旦使者を見送りに外に出ていた院長が、何時の間にか部屋に戻って来ていて、
アニエスにそっと声をかけた。
「今日、明日のお勤めは免除しましょう。礼拝だけ参加なさい。」
 アニエスは手紙から顔を上げた。
「院長さま・・・これは・・・一体どういう・・・」
「私も、貴方のお父上様から、詳しい事情について書簡を頂きました。
ここは俗世から分かたれた修行の場ですが、アニエスも、この世の中が、
おしなべてこの修道院のように平和ではないことは知っていますね?」
「はい・・・魔界化の事ですね。」
 忌わしい言葉を口にしたアニエスは、軽く祈るような仕草をした。


 もう、それ、が始ってから何十年にもなる。
 最初は人の踏み分け入らぬ森の奥で、見た事もない怪異を見たとか
そんなただの怪談話だったらしい。が、身の回りの草花や野の小動物に、
明らかに見なれぬものが混じり始めたのは、そんなうわさ話が出でから、間もなくのことだった。
 昔の修道士達が編纂した野の草花の美しい写本には全く見られない、
夜になると踊る目のある草だの、肉の腐った臭いのする毒毒しい色の花が人里でもはえはじめ、
野の生き物にも目やシッポが一つ多かったり足りなかったり、
挙げ句には人語を発するモノ迄出始めた。
 最初は、見つかり次第殺して埋めたり、焼きはらったり、
教会の僧侶に魔よけをさせたりとなんとか排除しようと努めていた人々も、
自分達の家畜にまでに範囲が及ぶに至り、あきらめて共存の道を選ぶようになってしまったのだ。
「馬に羽がはえりゃ街にいくに楽だし、牛がうちの婆さんの死期を予言してくれりゃ
棺桶屋に注文をだす手間が省ける。」
 そして、とうとう人にも魔の印を持った者が産まれるようになった時には、
もはや慌てるものは殆どいなかったらしい。
 どこか遠くにある大きな教会に納められた、人が読んではいけないとされる禁書に描かれた
悪魔たちのごとく、また、聖典で語られる、神がこの地におりたつ前の上つ代の混沌のごとく、
世も人も変化していく。
 それを為すすべも無く眺めるしか無かった聖職者達は、魔界化、とそれを呼んだ。
 人々の心も、その過程で、神の教えからどんどん離れて行った。
目に見えぬ神の恵みよりも、目に見えて触れられる怪異のほうがより近しいものだから。
 多くの街では、教会は廃れ、淫猥な音をたてるペンペン草が、
その廃虚で無気味に震えている有り様であった。
教会を守る僧侶達自身が魔と化した所も、少なく無かったという。

612堕ちた姫君:2006/09/15(金) 06:54:48 ID:zfGR5wR+
「なぜこのような世になったのか。そして、神はなぜ、
この世に私達を遣わしたのか。それは分りません。」
院長もそっと、祈りの仕草をした。
「ですが、アニエス、この役目は、あなたにぴったりだと、私も思いますよ。
俗世に戻れば、隣国の王子殿下の相手を勤めるのに相応しい身分なのですから。」
「ですが、父親が反対しているとはいえ、私は修道女を志す身。
男の方の身近に側仕えるなどと、考えることもできません。
それに、まるでこれは・・・」
 よくあるお見合いのパターンのようでも有る。
だがアニエスはそこまで口には出せなかった。
 院長はアニエスが固く握りしめた手を、やさしく自らの皺深い手で包み込んだ。
「確かに私達修道女は、貞節の誓いを立てます。
ですが、結婚は神の教えに反することではないのですよ。
無闇に男女の事を汚れたものと感じる事は間違っています。
どんな生活においても、神のみこころに叶う生き方はできるのですから。 
国王陛下も故郷のお父上も、アニエスが神の忠実な僕だとお認めになったからこそ、
賓客に聖典を説く名誉の役に貴方を選ばれたのですよ。
 聞けば、隣国は多くの者が魔の印をもち、完全に魔界と化してしまうのも
時間の問題と言われているとか。
おそらく神の御教えを学ぶ事が難しくて、王子殿下もわざわざローデルセラムまで
留学しにこられたのでしょう。
 ローデルセラムは、四方を山に囲まれ、神の恵みと信心深い国王様のお陰で、
今迄はずいぶんと魔の影響をまぬかれてきましたが、
近隣の国の魔界化の影響か、徐々に魔の印を持つものがふえているといいます。
 私達は外に出る事が叶いませんが、アニエス、貴女は外の世界を
見聞きしていらっしゃい。貴女ならば、この世を有るべき姿に戻す手がかりを
掴めるかもしれません。許されるならば、ここへ戻って来て、そして、私達にそれを教えておくれ。今はただ祈りましょう。神の恵みが貴女にありますように・・・」
 院長に諭され、アニエスは逃れられない自分の運命を理解した。
全てが神の導きなのだろうと。
 この時は全く分らなかった。全ては悪魔の操り糸とは。
613堕ちた姫君:2006/09/15(金) 06:59:49 ID:zfGR5wR+
 王宮の使者の訪れから3日目。
 アニエスは何年ぶりかに、尼僧のつけるヴェールを脱いで、ゆるやかに波打つ
蜂蜜色の髪を肩の上に下ろした。昨夜はよく眠れなかったようだが、ブルーグレイ
の瞳は澄んで、そしてすこし潤んでいた。馬車に乗り込んで、窓に自分の顔がうつり
こむのを、別人のもののようにアニエスはみつめた。
 優雅なカーブを描く眉、アーモンド型の目、ほんの少し丸みをおびた形の良い鼻、
そして小さな唇。その唇には、花から色素をとった紅をすこしだけさして、今日、
生まれてはじめての化粧をしたのだ。
 金髪にふちどられた小さな白い顔が、馬車の窓から最後の別れを告げるように、
上下に動くのが庭に立つ院長からもみえた。迎えの女官が着せた淡い色のドレスは、
まるで遠目から見ると花嫁衣装のようだった。
 年若い妹を、涙ながらに修道女達は見送った。木立の間に馬車が見えなくなるまで。


 これからの生活を思うと、心が沈むアニエスだったが、一つだけ嬉しい事があった。それは乳母の娘で、幼馴染みのニナと6年ぶりに再会できたことだった。お城での
勤めの間、アニエスの身の回りの世話をすることになったらしい。
 ガタゴト、と山道をいく馬車の中で、揺れにお互い膝をぶつけあいながら隣に座った
女友達と旧交を深めた。
「アニエスさま、お久しぶりでございます!本当にお綺麗になって、
亡くなった奥様そっくりで、ニナはもうびっくりいたしました。」
 多弁を戒められる修道女の暮らしになれたアニエスは、少し面喰らったが、
すぐに昔を思い出して優しく笑った。
「ニナはちっとも変わらないわ。王宮に侍女として勤めに出ていたのですって?」
 ニナは藍色のドレスに、薄いクリーム色のベールをつけた侍女の装いで、
明るい茶色の巻き毛もしっかりと結い上げて同じくクリーム色のリボンを長くたらして
結んでいた。
「はい!アニエスさまがどこに輿入れされても、付いていけるよう勉強の為に
参りました!! でも王宮にもアニエスさまよりもおきれいな方はおられませんでしたよ!」
 輿入れ、という言葉を聞いて、アニエスは一瞬怯んだ。
もう当たり前のように故郷ではそんな準備がなされていたのだろうか。
「隣国の王子様ですって、どんな方かしら、ニナはお見かけしたことはないんですよ。
普段は、王宮から少し離れたお城でご滞在中なのですって。」
 うきうきしたように話を続けるニナに、かえって気が重くなったアニエスは、
すこし眠る、と言って目をつむった。これ以上話していると、ニナを傷つけてしまう
ような事を言ってしまうかもしれない。ニナはそんなアニエスにに、そっと肩から
柔らかい毛織物をかけた。本当に眠るつもりはなかったのだが、昨晩の睡眠不足の
せいか、アニエスはいつのまにか寝入ってしまった。
614堕ちた姫君:2006/09/15(金) 07:03:22 ID:zfGR5wR+
「・・・さま、アニエスさま、起きて下さいまし。」
 はっと目をさましたアニエスは、一瞬自分がどこにいるのか分らなかった。
もうとっくに日が暮れていた。馬車の窓越しに外をみても護衛のもつ松明だけが
御者席あたりでともっているだけだで、少し離れた所は全くの暗闇でしかなかった。
「お城に着いたようでございます。」
 ここが?暗闇に目がなれてみると、確かにそこには大きな建物らしきものがあった。しかし、灯火らしきものは全く見えず、月明かりで申し訳程度に窓や尖塔が見える
くらいであった。
「申し訳有りませんが、灯りの為の油が不足していて、王宮でさえも夜は本当に
灯りがすくないんですの。松明を持っては中にはいれませんから、入り口迄、
衛士に送ってもらって、その後は蝋燭をどこかでなんとか借りてまいります。」
 ニナが申し訳無さそうに言った。
「到着が夜になるなんて。実は、灯りに使う油や蝋燭をつくる村が、最近魔界化
してしまって、ものすごく品不足なんです。完全に魔界化すると、いきなり、
全く連絡ができなくなるそうで、王宮でも他の手配が間に合わなかったのですわ。」
 二人が城の玄関らしき所に到着すると、1人だけ侍女が迎えに出ていた。
「アニエス様、ようこそおこしくださいました。この城の侍女頭を勤めるアリシアと
申します。最近は灯りもないものですから、皆早くやすむようになっておりまして。
夜おそうございますので、お出迎えも少なく申し訳有りません。」
 アリシアは深々と頭を下げた。
「お部屋のほうに御案内いたします。こちらへ・・・」
 灯りも無いのにすたすたと歩むアリシア。
一瞬、アニエスはその目が猫のそれのごとく光ったように見えた。
 秋口の涼しい夜の空気が、急にとても冷たく、おもく感じられたような気がした。
 やがて城の奥まった一室に案内されたアニエスはほっとした。
取りあえず今日は休んでしまおう。
「アリシアさま、蝋燭か何かございませんか?」
 不安そうにニナがアリシアに尋ねた。
「あいにく・・・持っておりましたら御案内の際に点しましたものを・・・
もうしわけありません。そうだわ、暖炉をつけるには少し早うございますが、
灯り代わりに火を入れましょう。すぐ下働きの者に薪を運ばせますわ。
準備を致しますので、その間アニエス様は湯あみされてはいかがですか。」
615堕ちた姫君:2006/09/15(金) 07:06:24 ID:zfGR5wR+
 そういって、アリシアに案内されたのは、アニエスが想像していたのとは違い、
大きな白大理石の浴槽のある非常に立派な湯殿だった。浴そうには湯が既に張って
あり、良い香りのする湯気があたりに満ちていた。もちろん灯りはないが、大きな
窓が高い所にいくつもとってあって、月の光が青く差し込んでいた。目が慣れると、
そう暗くは無い。
 ニナはアニエスのドレスを脱がせるのを手伝った後、すぐにもう一度参りますから、
と言いおいて、暖炉の支度を手伝いに一度湯殿を出て行った。
 山の上の修道院では、湯をふんだんに使って湯あみをする事など無かったので、
アニエスには非常に贅沢に感じられた。さすがに一国の王子が滞在するにふさわしい
立派な城のようである。
(明日、日が登ったら外にでて見てみないと。お庭はどんなかしら?ここにも
薬草園はあるのかしら。ニナと一緒に薄荷のお茶を作ってみるのもいいな・・・)
 ゆったりと湯舟に漬かって息を吸い込むと、修道院での生活でもなじみのある、
まんねんろうとラベンダー、それにつる薔薇の馥郁たる香りが鼻孔をくすぐった。
それらのかおり高い薬草の入った木綿の袋が、湯のふき出し口に掛けてあるのだ。
この城にきた理由も、不安も一時忘れて、アニエスはしごくゆったりとした気分になった。
 アニエスが薬草の入った袋を優しく揉んで、香りをたのしんでいると、入り口の
ほうから物音が聞こえた。
「ニナ?・・・ニナなの?」
 もう暖炉の用意が終わったのだろうか。
 しかし入り口から現れたのは、ニナとはにてもにつかぬ・・・背の高い、
裸の若い男性だったのだ。
 アニエスの頭が一瞬にして真っ白になる。
 月明かりがほんのり照らす、その顔だちや体躯は父親や小さい頃に見知った
男の子のものとは全く異なっていた。
 肩程までのびている黒い髪の間から、先が鹿のそれのようにとがった異形の耳が
見える。それだけではない。肘から先の腕と膝からしたの脚には獣のような濃い毛が
密集してはえていた。そして下腹にも。
 まさしく聖典に描かれる悪魔の姿だった。
(ひ・・・・あ・・・・・)
 アニエスは悲鳴をあげようとしたが、喉が凍り付いたように全く声がでなかった。
616堕ちた姫君
「んー、なんだお前は。 何故ここに居る」
 悪魔が人語を発した事と、その声が意外にも美しい柔らかな声であったので、
さらにアニエスの頭は混乱を極めた。
 男は無遠慮に、一糸纏わぬ姿のアニエスに近寄ってくる。
 高窓の下をちょうど通り抜けた時、一瞬、月の青白い光が、全身をハッキリと
照らし出した。
 強い意志を表すような目、高く整った鼻梁、頑固そうな口元。古代の王の肖像画の
ような、高貴な顔だちだった。だが、酷薄に見える程薄い色合いの青い目が、闇の
中で、普通では有り得ない光をはなっている。
(悪魔・・・!)
 神に祈ろうにも声が出ない、身を守るものは何一つとして身につけてはいない。
 男はさらに近付き、容赦無くアニエスの腕を引っ張って、湯の中に閉じ込めていた
裸身を外に引き出した。
「ほう、これは・・・」
 月明かりの下、水面のうえにくっきりと白い肌が描き出された。どんなに暗くとも、
そのしみひとつない裸体の、際立った美しさは隠しようがなかった。
なだらかなデコルテの下には手のひら程の小さめの形良いふくらみがあり、その頂きは
薔薇のつぼみのように淡く色付いている。腰回りもまだ非常に細く、少女然としていた。
 アニエスは片腕で胸を押さえ、必死にもがいたが、全くたちうちできない。
「こんな夜遅くに男のところに忍び込んでくるとは、どこぞの遊び女か。だれぞ
護衛が気をきかしたか、新しい侍女が我が情けを頂戴しに参ったというところか。」
 アニエスが、激しく頭を振って否定する。
「見ればまだ、魔の印を受けていない様子。我が姿をみておそれをなしたか。
怖がらずとも良い・・・俺は紳士だ。お前の望みを叶えてやろう。」
 男はそのまま自分も湯舟につかり、アニエスを抱き寄せる。
 乱暴に髪を捕まれ、顔を仰向けにさせられたアニエスは、16年間、神への祈りの
言葉しか紡いだ事のない汚れなき唇に、なすすべもなく男の口付けを受け入れ
させられたのだった。