女性の求めをエロカッコ良く押しとどめろ!

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1名無しさん@ピンキー
登場人物はカッコイイ男性とヒロイン。どちらを主人公にしても自由です。
男性はヒロインと出会い、二人は次第に惹かれていきます。そして、
ある日、とうとうヒロインは勇気を振り絞って男性をを求めました。
しかし、切なくもある事情と判断により、男性は彼女の求めを断りました。
本当はとても愛している。けれど、今はそれに相応しくない。男性が彼女の
気持ちを受け止めた上で、彼女の求めをカッコよく断るシーンを書いてください。
少し色香を漂わせながら・・・
2名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 11:53:43 ID:v/1ptlzo
男「昨日の晩、ちんちんを蚊に刺されたばかりだから無理」
女「で…でもっ、それはそれで新鮮な刺激とか…!」
男「君のことを本当に愛している!でも、ごめんよ…そこまでマニアックにはなれないんだ…」

3名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 12:49:59 ID:AG3ZfFpc
必ず生きて還る。そしたら子供を作ろう。……何人でも。
4名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 13:01:18 ID:oRNvpeme
おまえがいま感じている感情は精神的疾患の一種だ。
5名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 14:29:55 ID:ZWHRBpTR
>>4
かなりワラタw
6名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 17:40:59 ID:AG3ZfFpc
服を着ろ。話はそれからだ。
7名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 17:42:26 ID:/0W4u9N2
イ`
8名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 21:51:37 ID:AG3ZfFpc
私のことは忘れてご身分の相応しい方とお幸せになって下さい。
9名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 10:43:15 ID:1DXYUMN3
>>6
そんなこと言われたら立ち直れないヨー!
10名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 14:19:53 ID:x8CxE96K
今日オレ生理なんだ
11名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 21:24:29 ID:7JtRHN3T
ごめん宗派が違うから。
12名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 22:39:01 ID:rJLMUc7m
今日宗教で聖日だから無理
13名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 22:45:38 ID:IDpLbCzz
だが断るッ!
14名無しさん@ピンキー:2005/06/27(月) 00:19:30 ID:12X8d7qh
求めに応えれないシチュってリアルでありうる?
15名無しさん@ピンキー:2005/06/27(月) 00:23:28 ID:bTQOdU5p
方形とかチンカス溜まりまくりとか
16名無しさん@ピンキー:2005/06/28(火) 13:08:28 ID:cJCHBdYZ
俺、EDなんだ
君とだけじゃなくて誰とも出来ない‥
17エロくもかっこよくもない罠:2005/06/29(水) 17:38:08 ID:KV24ztJy
「…ごめんな、それはできない」
背中越しに呟き、気づかれぬよう拳を握り締める。
「どうして…」
「君だって、わかっているだろう。
俺は君を傷つけたくない」

半分は、嘘だ。
傷つけて、滅茶苦茶にしてやりたい。
俺のこと以外考えられないほど、滅茶苦茶に。

「これでも…これでもだめなの?」
背中に彼女の柔らかな胸が押し当てられる。
首筋にかかる息が熱いのがわかる。
「…駄目だ…すまない…」
彼女の鼓動に、吐息に、昂ぶってしまいそうな己を押さえつける。
「今夜しかないの…わかるでしょう?」
「…。」

明日の彼女を思い浮かべる。
誇らしく輝く白いドレスに包まれ、沢山の人々に祝福される様を。
「 あいつはいい奴だ…君もあいつも不幸にしたくはない」
「今夜だけ、一度だけでいいの…っ」
彼女が声を震わせるのを聞きながら、俺は首を振った。

「幸せになってくれ…俺に言えるのはそれだけだ」
目を伏せ、身を縮める彼女の裸身をそっとシーツで包み、額に唇を当てる。

そして唇をかみ締めたまま、振り返らず部屋を後にした。
18名無しさん@ピンキー:2005/06/29(水) 22:41:45 ID:8kTQstfq
>>17
カッコエーな
19名無しさん@ピンキー:2005/06/30(木) 22:09:52 ID:J3Jxu+mo
>>17
痛みを覚悟してエロスに己を支配させない意志の強さはカッコイイです。この場合。
体を包んだシーツとキスのの体温が彼の代わりのようですね。
20名無しさん@ピンキー:2005/06/30(木) 22:18:56 ID:J3Jxu+mo
違うスレに投下したssですが、こちらにも当てはまるような気がするのでご紹介します。

http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1111913198/101-200
135から。「ラベンダー」というタイトルです。
21名無しさん@ピンキー:2005/06/30(木) 23:27:18 ID:CUljDUET
ハアハア
22名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 02:55:58 ID:AIlcsF2j
>>17
格好よすぎるよきゃー
2317:2005/07/01(金) 07:24:42 ID:w2TOkntt
お読みいただきありがとうございます(照)
ちょっとありがちかなと思いつつ書かせていただきました。
皆様のご期待に少しでも添えていれば幸いです。
次に投下するときはもう少しエロくなるように頑張りますね。
24名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 10:55:12 ID:tMCytF9s
お嬢さん……この世界、惚れた腫れただけでは済まんのです。

意地じゃ面子じゃ、下らん事とお思いでしょうが

男ちゅうんはその下らん事に命張らなあかん時があるんです。

何よりワシゃあ……


旭 ソ ー ラ ー じ ゃ け ん
25名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 12:11:07 ID:As5ANGRI
>>20
それ物凄いツボだわ。GJ。
26名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 16:40:53 ID:71dS39+C
少女萌え
27名無しさん@ピンキー:2005/07/03(日) 00:16:34 ID:9l6D5A/Z
全裸で俯きながら男の前に立つ女
「・・・お願い、します」
無言で女の股に手を遣る男



「緩すぎるwwwwwマジ無理wwwwクオリティヒクスww」
28名無しさん@ピンキー:2005/07/03(日) 03:14:16 ID:jwoLdGCs
私はホモ・セクシュアルだ
29名無しさん@ピンキー:2005/07/04(月) 01:18:57 ID:ITufPuk7
>28
うわってかウホッ!
3017:2005/07/04(月) 12:37:51 ID:j5lHZoqh
だめだってんだろ、な。
って、やめやめ…今日はだめだって。
そんな顔すんなよ、俺だって辛いんだぞ?
ほら、お前犯したくてギンギンになってんだろ?

だああ触んな、スケベの俺が必死で我慢してるんだからさ。
こいつをお前にぶち込んで、一晩中鳴かせたいけどな。
お前ぐしょぐしょに濡らしてるんだろ?

…明日だ明日。楽しみにしてろよ。
試合前にヤっちまうとさ、脚に来るんだよ。
祝勝会なんてばっくれてさ、夜が明けるまで犯してやるよ。

何だよ、泣くなよ、死ぬわけじゃないぜ?
絶対勝って抱いてやる。
だから、な?


でさ、ひとつ頼みがあるんだ。
今夜は…その、なんだ、隣で寝てくれないか?
みっともない話だけどな、こんな俺でも緊張はするんだって。
お預け食らわせといて悪いけど、頼むよ。

…礼は明日必ずする。
ベルトもお前もどちらも俺のものにしてやるからな。
31名無しさん@ピンキー:2005/07/04(月) 23:51:30 ID:71gmuDMK
>>17
めちゃカッコイイ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
32名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 21:35:40 ID:mIPHJ6/D
イイヨイイヨー
33名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 00:11:57 ID:zgdm3V72
保守
34名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 17:54:25 ID:tDWuDT7o
あげる
35名無しさん@ピンキー:2005/08/07(日) 01:28:29 ID:8AX6p+wf
このままではdat落ちしそうだ。
36名無しさん@ピンキー:2005/08/11(木) 18:27:41 ID:BAAqI6hL
それは惜しい。
3717:2005/08/11(木) 22:47:31 ID:LYbrUg2o
ワクテカ保守
38名無しさん@ピンキー:2005/08/15(月) 23:59:08 ID:/eo9jW92
「涼子さん、あなたが好きなアッサムティーです。
初めてのデートのとき入ったお店で買ってきました。
・・そんな顔しないで下さい。まだ、ちゃんと覚えていますよ。」
「・・・おいしい・・」
「・・・そう、よかった。生まれて初めてポットで紅茶を入れてみました。」
彼女は俯いて肩を震わせた。涙の滴がテーブルに落ちる。
「・・・晶文さん・・私・・」
彼女は立ち上がるとベッドに座った僕に覆いかぶさってきた。
「だめですよ。涼子さん。」
僕は優しく彼女を押しのける。
「どうして・・・」
「僕は、もうすぐいなくなりますから。」
「・・・そんなこと、わかってる。」
「いや、わかってませんよ。僕は明日から病院です。
次第に記憶を失い、そして死ぬ。」
彼女は耳を塞ぎ首を振る。
「いやっ、そんなの」
「いなくなった僕が、あなたの心の中に生き続ける・・・
それが辛いんです。わかって下さい。」
彼女は泣きながら僕の部屋を飛び出していった。
僕は彼女のカップに残ったアッサムティーを飲み干した。
今日のことを、この味をあとどれだけ覚えていられるだろうか。
39名無しさん@ピンキー:2005/08/21(日) 01:23:14 ID:/f2fcYAT
GJ
40名無しさん@ピンキー:2005/08/23(火) 01:16:54 ID:WWST4wdx
kakkoii
41名無しさん@ピンキー:2005/08/23(火) 02:31:37 ID:mr8czmuU
ベタなシチュとしては

・年齢離れすぎ
・自分は女
・相手は性の知識が未熟
・相手が貴い人で身分違い
・自分は汚れきっている
・自分は聖職者
・相手は聖職者
・相手本人や相手の親しい人物が、自分と敵対する立場に属している

とか?
42名無しさん@ピンキー:2005/08/23(火) 02:32:56 ID:mr8czmuU
・相手と血縁関係がある
この場合相手がその事実を知っているか、「義理の」なのか「実の」なのかなどでバリエーション
・妹 ・姉 ・母 ・娘 ・叔母 ・姪 ・先祖 ・子孫 など
義理の妹、姉、母、娘にはさらに
・養子によるもの
・自分の兄弟や父や息子の結婚によるもの
でバリエーションができる

まだいろいろありそうだな
43名無しさん@ピンキー:2005/08/23(火) 04:20:05 ID:E/NxCvp+
「先生・・・先生、好きです。」
 セーラー服の襟を揺らし近づいてきた彼女が、白衣の後ろをギュッと掴み、抱きついている。
「・・・僕も好きですよ。生徒として、とても大事に思ってます。」
「・・・違います、先生ッ。・・・お願い、わかって・・・!」
 彼女は前に手を回してきて両手を握り締めてるので、俺は身動きが取れない。
 背中に柔らかい胸の感触がした。 泣いているみたいで肩が時々震えていた。
 
「この白衣汚れてるから、鼻はかまないで下さいね。」
「・・・っかんでない!どうしてそうやって、子供扱いばっかりするの!?」
「君がまだ子供だから、子供扱いするんだよ。」
「・・・・・・先生のわからずや。私、今日は帰る気ないから。」
 彼女はますます強く握って離さない。
 俺は困った顔をして、彼女の手を強く掴んで、振りほどいた。
「・・・〜〜〜ッあのね・・・わからずやは君の方でしょ。」
「ぅ・・ひっく・・・ふっ・・・」
 彼女がついに声をあげて、泣いてしまった。自分が泣かせてしまったと思うと俺は困り果てて、
 彼女の頭をポンポンと叩いて慰めた。
「じゃあ・・・約束して。
 そんなに急がないで、大人になる準備をまずちゃんとするって、
 勉強をしてちゃんと卒業するって、約束して。
 理科の勉強もちゃんとする事。・・・わからない所があるならいくらでも教えるから。
 ちゃんとした大人になるまでは、、、あんまり、、馬鹿な事する気を起こさないで下さいよ。
 ・・・コッチは君に手を出したくても出せないんだから・・・。」

 それを聞いている時、彼女は半ベソ顔のままコクリコクリと頷いてくれていた。
 そして、少したってから小さな声で謝った。
「・・・すみ・・ませんでした・・・私、迷惑ばっか・・・かけて・・・」
「迷惑だなんて言ってない。卒業したらまた後ろから襲ってくれればいいから。わかったら、今日はもう帰って。」
 手を振って彼女を帰そうとしたら、彼女は鞄から教科書を取り出して言った。

「先生、私ココが、一学期からずっとわからないんですけど。」
 机の上にそれを置くと、教科書の一番初めの方のページを指した。
 俺はウンザリ、といった表情をしたが、その後、黒板をめいっぱい使って丁寧に説明した。
 彼女に教えるには、彼女と少し距離を置ける、その距離がちょうど良かった。
 それ以上近づくと、俺の方まで何か問題を起こしそうだった・・・。
44名無しさん@ピンキー:2005/08/23(火) 04:25:22 ID:E/NxCvp+
↑の、読み返したら色気も無いし、カコイくも無い罠。
お題に沿ってなかたよゴメン――。・゚・(ノД`)・゚・。

それより、30さんのがカコ良すぎな件について。
あと、ほとんどのレスに笑ってしまったwww
4517:2005/08/24(水) 14:44:06 ID:4a1P+e2N
月明りに蝋細工のような肌が透け
もつれた黒髪がそれを怪しく彩る。
前触れもなく開け放たれた窓から
彼女は一糸纏わぬ姿でするりと滑り込んできた。

「やっぱり、待っていてくれたのね。嬉しいわ」
青白い肌に不似合いな鮮血の色に染まった唇。
笑みに鋭い牙がこぼれて見える。
「…。」
暗い金色に輝く瞳に見据えられ
身動きひとつ、いや言葉を発することさえできない。
「迎えに来たのよ…亮も、こちら側にいらっしゃいな。」
シャツの上を細い指がなぞり、ボタンがひとつひとつ外されていく。
唇を重ねられ、舌が割り込んでくる。
くちゅくちゅと、かつてそうしていたように絡み合う舌。
しかし、彼女の舌も吐息も、今は氷のように冷たい。
「んふ…ああ、暖かいわ。
 亮の生命を私に頂戴。そして二人で、堕ちましょう?」
露にされた胸板を舌が這い
僕の下半身に伸ばされた手がくにくにと性器を弄び始める。
「…めだ…っ…。」
「ふふっ、抵抗するの?恋人の誘いを断るの?
 永遠の闇の中で、ずっと交わっていられるのよ?」
僕は竦んだ身に力を込め、大きく首を振る。
「君は…もう僕の恋人だった美央じゃない…
 僕まで堕ちてしまったら、誰が美央を救うんだ…っ」
「要らないわ、救いなんて。貴方と共に永遠を過ごせるんだから。」
赤い唇の奥で、舌が炎のようにちろちろと揺らめく。
もう一度絡められた舌は、僕の熱を吸ってほのかに暖かい。

許されるなら、僕も彼女と共に闇に身を委ねてしまいたい。
このまま彼女を抱いてしまえば。
でも。

「だから、ね、お願いよ、亮…」
ゆっくりと、のしかかってくる彼女。
僕は片手を彼女の背中に回す。
「…ごめん、美央。僕にはこれしか…できない!」
きつく彼女を抱き寄せ、そして。
ベッドに隠した白木の杭を、渾身の力で彼女の胸に突き立てる。
「……きゃあ、あああ…!!」
絹を引き裂くような悲鳴。
みるみるうちに砂と土くれに変わって行く彼女の体。
見開いた瞳から、僕の胸にぽたぽたと涙が落ちる。

朽ちてゆく彼女を胸に抱き、声を上げて泣いた。

悲鳴の後、彼女が言葉を発することはなかった。
ただ唇だけが
「ありがとう」
と動いた。動いた気がした。
4617:2005/08/24(水) 14:47:38 ID:4a1P+e2N
思いついたので投下してみました。
拙くてごめんなさい…。
状況説明が決定的に足りませんね。


と、久々に覗いてみたら結構レスが。
イイヨイイヨー(゚∀゚)
切ないの大好きです。
47名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 21:52:30 ID:90ZduVRH
>>46 ふぁんたじー!(*V∀V)中世のヨーロッパぽい感じだね。
その場の様子が浮かぶ様だー・・・。主人公の名前がうちの兄と一緒orz

41、42、みたいに考えると結構シチュがありそう。もっとハァハァしたい。ハァハァ
48名無しさん@ピンキー:2005/08/27(土) 02:57:00 ID:eTkYmVQ/
>>41
ひらたく言えば世界の違いをアピールする感じか。
いっそ悪人と思われる程にやってくれると面白いかも
49名無しさん@ピンキー:2005/08/28(日) 02:51:38 ID:TN06REcF
・魔女っ娘と人間界での偽りの家族
・妹姫と兄王
・助手の少女と名探偵
・悪の女幹部とヒーロー
・少女怪盗とおっかけてる警官
・女型モンスターと勇者
・聖女とただの兵士
・地縛霊の少女と霊感がある男
・鶴の恩返しで来た幼女と心優しい男
・家族を亡くしたレズ少女と引き取った隠れレズの叔母
・援助交際女子高生と熱血担任
5017:2005/08/30(火) 17:42:56 ID:lFYtXvlZ
>>49
そうか、スレタイからいくとレズものもありですね〜
目から鱗ですw

ハァハァ期待ほしゅ
51名無しさん@ピンキー:2005/09/07(水) 10:23:35 ID:32BCLm/w
ほす
52名無しさん@ピンキー:2005/09/08(木) 21:19:28 ID:rrttkQcE
ほしゅ! 過疎ってますね。投下待ち...
53名無しさん@ピンキー:2005/09/09(金) 00:17:20 ID:cAsvhzUK
保守
54名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 22:34:02 ID:7KoYvg6e
デブスが調子こいてんじゃねーぞ。イケメソの俺にオマエがつりあうわけねーだろ



…とか書く人は誰もおらんのだな
55名無しさん@ピンキー:2005/09/12(月) 10:09:03 ID:fUvip0Jp
なにその少女漫画的なかっこよさ
56名無しさん@ピンキー:2005/09/13(火) 03:58:34 ID:cZXN9tMy
>54
ブスはジャンルにもよるが、ギリギリ範疇内。
だがデブは止めれ。マジでスレが穢れる

しかも自分をイケメンと言う辺りがデブ臭漂ってるから。
嫌がらせですか?
57名無しさん@ピンキー:2005/09/13(火) 15:03:41 ID:9O40rjKp
>54
シビれた
58名無しさん@ピンキー:2005/09/14(水) 02:53:08 ID:IVQeXRK8
悪人とただの厨臭い悪役じゃ雲泥の差だという事が判ったな
59名無しさん@ピンキー:2005/09/14(水) 03:42:05 ID:r4f62ph4
悪人てどんなんだろ・・・
60名無しさん@ピンキー:2005/09/15(木) 23:54:35 ID:RqtI9JVO
>>56
それ普通は反対では…
てか君釣られ杉
61名無しさん@ピンキー:2005/09/16(金) 04:47:44 ID:F7COPkXQ
ブス=素直になれない男心、又は性奴隷の証
デブ=文字通りデブ

これ以外何があるというのか説明して貰おうか
62名無しさん@ピンキー:2005/09/17(土) 08:32:03 ID:gar91MEL
ブス=素直になれない男心、にはちょっと納得。
顔立ちのかわいい女を見ても、女子達のいる前では
褒めない男子ってのはよくいるよな
ブス=性奴隷とは思えんが(どうせ奴隷なら美人の方が)

しかし>>56は摂食障害者臭がする
63名無しさん@ピンキー:2005/09/17(土) 17:10:03 ID:mN2Gk2eA
デブをデブと思えない可哀想な62はマトモなスレに来るな
64名無しさん@ピンキー:2005/09/17(土) 23:50:26 ID:d/lMWbW2
>>63
摂食障害女はまず精神科へ行け
65名無しさん@ピンキー:2005/09/28(水) 12:28:21 ID:K1g9QcXy
サムスピ新作のガルフォードがこのスレにうってつけの事やってくれたな…
66名無しさん@ピンキー:2005/09/28(水) 13:14:52 ID:F7hZUKjd
>>65
詳しく
67名無しさん@ピンキー:2005/09/28(水) 18:17:58 ID:d07VJcld
>>65
いやらしく
68名無しさん@ピンキー:2005/09/28(水) 22:29:14 ID:4Lx4/upZ
>>66-67
ナコルルが告ろうとしたところで
「ごめん・・・俺にはパピーがいるんだ・・・」(ちなみにパピーは雌犬です)
って言って去る。
69名無しさん@ピンキー:2005/09/28(水) 23:07:42 ID:F7hZUKjd
>>68
犬かよ…
70名無しさん@ピンキー:2005/09/29(木) 10:43:56 ID:JrLgwCr9
>>69
ごめん、それ嘘。
本当は「俺は正義のニンジャだから」とか言う。
71名無しさん@ピンキー:2005/09/30(金) 01:09:44 ID:R5SfNhrb
>>70
どっちだよ…
72名無しさん@ピンキー:2005/09/30(金) 12:17:14 ID:3KM4E8Ta
>>71
専ブラ使えよ…
73名無しさん@ピンキー:2005/10/08(土) 14:18:54 ID:xIc7KBiC
そっと制服を半脱ぎで迫ってくる女生徒の肩を両手で受け止める、眼鏡をかけた男性教師。
どうしてと泣きはらした目で問いかける女生徒。

「ごめん、今は君の大切な初めてを貰う事はできない。だから今は…」

それまで苦笑交じりだったまなざしが怖いほどに真剣な光をたたえて近づいていく…。
獣の雰囲気を宿した大人の男の気配に少しびくつく女生徒。
しかし…。

軽く額に触れられる唇の感触。

「心を貰うよ…」
74名無しさん@ピンキー:2005/10/08(土) 14:52:08 ID:P7aeEpm/
>>73
俺の中心で井戸田が叫ぶ
75名無しさん@ピンキー:2005/10/12(水) 23:37:05 ID:IZ9bvVKY
>>74
それわかるw

このスレ好きだけどいいセリフが思い浮かばない。
せめてホシュで支援。
76名無しさん@ピンキー:2005/10/30(日) 03:56:32 ID:ck67JjLl
ホシュッッ!!
77名無しさん@ピンキー:2005/10/30(日) 05:37:46 ID:h1b5vESi
「すまん。だが、俺のお腹にはあの人の赤ちゃんがいるんだ」
78名無しさん@ピンキー:2005/10/31(月) 02:48:41 ID:06sv0ggv
あ?なんだよ。

どうせお前、俺がヘコんでんの見て同情してるだけだろ。
『かわいそう、慰めてあげたい』とか思ってんだろ。
余計なお世話なんだよ。
……どーせ、今ヤってもグチグチと女々しいところ見せちまうだけだろうし。

俺がすげーイケメンになったら、俺の方から誘ってやるよ。楽しみにしとけ。



>>77
なんか潔い
79名無しさん@ピンキー:2005/11/01(火) 23:01:43 ID:Hd84U3G1
良スレ発見!
80名無しさん@ピンキー:2005/11/06(日) 02:31:52 ID:YX8316QA
ほしゅage
81名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 01:40:44 ID:xIGajyXW
保守age
82名無しさん@ピンキー:2005/12/01(木) 01:42:56 ID:l+HLl3vP
人いんのか?
いないんだったら試しに。













ぬるぽ
83名無しさん@ピンキー:2005/12/01(木) 22:06:31 ID:hre3SrJd
>>82
がっ

こういうシチュ好きだから保守
84名無しさん@ピンキー:2005/12/20(火) 01:00:49 ID:OYleN+Gy
h
85名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 23:02:19 ID:+TCL+27F
「知らずに生きてくよりも、知ってサルになっちまう方が余程惨めだ。」
86名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 23:09:57 ID:+TCL+27F
↑童貞をヤリマソが誘ってるシチュ
87名無しさん@ピンキー:2006/01/02(月) 00:08:05 ID:Irln+hlV
>>85
童貞カッコイー
そう言われて以来、女はその男のことばかり思うようになった――

という妄想が浮かびage
88名無しさん@ピンキー:2006/01/09(月) 13:15:28 ID:+2oX6cmU
ふぅ、保守
89名無しさん@ピンキー:2006/01/13(金) 19:04:40 ID:HFu+qdlw
保守揚げ
90名無しさん@ピンキー:2006/01/13(金) 21:58:00 ID:88shMAgd
良スレ!!お初だぜっ。

「お願い、トータ…!他の人になんか抱かれたくないよ、トータじゃなきゃ嫌だよっ…」
姫として純潔を守ってきたリアは、一糸纏わぬ姿で兵士であるトータを後ろから抱きしめる。
焼けた背中に白い乳房を押しあてると、トータは微かに震えた。
ダメだ、――耐えろ…。
精一杯自分に言い聞かす。爪が食い込むほど、堅く握られた拳。
「なんでそんなに拒むの…?お願い、好きなのっ…
抱いてよ……!」
ぽろぽろと涙を流す姫を、振り返らずにトータは言った。
「愛しています、姫様…」
振り向けば理性が吹き飛びそうだった。
「っ…ひっく…トータっ…」
「姫を汚す輩は決して許しません。それが例え…
私でも。」
彼女を守りぬく。
そう決心して、トータはその部屋を後にした。
91名無しさん@ピンキー:2006/01/13(金) 23:27:45 ID:vVMXfCWN
>90
カッコよさ1000
92名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 02:26:09 ID:ebZWyv+p
耐えなくていい・・・続きをどこかで〜
93名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 16:08:44 ID:Hw5BFEGg
なにっ。続き書いていいのか!?ここは一応我慢スレでは?w
何となくヤリシーンはタブー的雰囲気な気がしたが
94名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 19:47:03 ID:Hw5BFEGg
保守
95名無しさん@ピンキー:2006/01/15(日) 00:58:48 ID:Q5z2SHsH
>>92
いや、押しとどめるからこそエロカッコ良いんじゃないか
その後の展開は各々の妄想でよいかと思う

などと熱くなりつつ保守
96名無しさん@ピンキー:2006/01/15(日) 11:45:07 ID:RAlgWUNN
耐えるってシチュはかなり萌え〜、やな。

97名無しさん@ピンキー:2006/01/15(日) 22:49:37 ID:zDSFkzKf
みんなすごいな。耐えられるなんて・・・フハッ
98名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 02:01:00 ID:AZQmvrl4
みなえちのむなしさをしっているのです
99名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 12:12:25 ID:M6Hwsepy
好きな女に迫られて耐えるって…拷問だな
100名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 13:05:47 ID:vgN5Cprq
>98
なんだかものすごく納得した
101名無しさん@ピンキー:2006/01/17(火) 01:03:45 ID:gp5YrIcV
>>99
断る事によって征服欲を満たす事が出来る。
102名無しさん@ピンキー:2006/01/17(火) 23:41:34 ID:kztWrzo5
>>101
マジ!?初めて聞く意見だな。かっこよい
ちと語ってくれぬか
103名無しさん@ピンキー:2006/01/18(水) 02:38:12 ID:i2KgneYT
俺は>>101じゃないけど、こういうことじゃないかな?
あえて断ることによって、より自分を意識させる。
欲しいのにどうしても手に入らないって状態で相手に自分のことだけを考えさせる。
1人の女性に自分のことだけを考えさせるってのは、ある意味征服したことになるんじゃない?

ま、俺の解釈が間違ってたら>>101本人の降臨モトム
104名無しさん@ピンキー:2006/01/18(水) 18:57:05 ID:4GEMJKZn
ウヒョヒョ。かっけー。
成る程な、ありがとう。
断っても迫ってこられてみたいぜ。
105名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 20:43:44 ID:HyNHpCm9
あげ
106名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 19:28:06 ID:rgEHr33x
このスレ見てたらなぜか華麗なる食卓を思い出した。

107名無しさん@ピンキー:2006/01/22(日) 01:12:48 ID:5uXK+GeM
あれは読者の求めを押しとどめてる気がする
10817:2006/02/06(月) 22:27:20 ID:3UXJc8Bu
ほっしゅほっしゅ
109名無しさん@ピンキー:2006/02/08(水) 23:49:09 ID:WSJLiKw4
17氏お久しぶりです
ここは良いSSが多いな
俺もなにか思いつけばいいんだけど…
11017:2006/02/14(火) 14:12:33 ID:fHSa79qV
書きたいネタあるけど時間がなくてまとまらない…
保守しつつ良SS期待しております
111名無しさん@ピンキー:2006/02/25(土) 01:24:54 ID:jKH+y4AB
残念だけど、今は君の気持ちに応える事が出来ない。
今の君は、目の前の現実から逃げ出したいだけなんだろ?

こんな言い方、卑怯だと思うけど…
君が感じている不安や怖いって気持ち、よく判るよ。
不安で眠れない日が続いてるのも知ってる。
だけど、君の病気は決して治らない病気じゃない。
確率はフィフティ・フィフティ。僕は医者としてその50%に全てを賭ける。
僕は君に生きていて欲しい。僕は君の命を諦めたくないんだ。
自棄起こさないで。君もその50%に賭けてほしい。
さぁ、手術の前に風邪なんてひいたら大変だからね、ちゃんとパジャマ着て。
大丈夫、ここに居るよ。君が眠るまでこうして手を握ってるから。
手術が成功したら、また水族館に行こう。

…手術が成功したら、その時は…
なんだ、もう寝ちゃったのか…
112名無しさん@ピンキー:2006/02/28(火) 05:14:42 ID:bblsr07l
>>111
いいね
エロカッコよくて優しいな
113名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 10:26:30 ID:3ZUe7D7f
「ねえ」
「なんだ、ガキ」
「ガキっていうな、ガキ」
「こう見えても俺は20代後半だ。残念だったな正真正銘ガキ」
「うるさい、ガキ。……いや、それはともかくさあ」
「ん?」
「なんでアンタ、アタシに何もしないの?」
「ガキだから」
「じゃあ買う必要ないじゃん」
「…………」
「たっかいお金払ってさ。わざわざこの家に住ませてさ。それで何もしないんだもん。ただ話したりごはん食べたりするだけ」
「ガキに興味はないしな。なんだ?住み心地悪いのか?」
「別に悪かないよ。出入りも自由だし。でも、それなら買わなくてもいいじゃん」
「実はお前、昔死んだ妹にそっくりでな」
「一人っ子言ってたじゃん」
「ばれたか」
「はぐらかすなよ」
「…………」
「同情だってんならいらないよ。アタシたち、昔っからずっとこうやって生きてきたんだもん。憐れみとかはむしろムカツクっていうか」
「そんなんじゃねえよ」
「だったら、しようよ。何でもするよ?危ないプレイにも慣れっこだし」
「……あんまそういうこと言うな」
「あ、やっぱ憐れんでんだ」
「いやそういうわけじゃ……よしゃ、わかった。お前がせめて16になったら抱いてやる」
「あと2年もあんじゃん」
「そんくらい我慢しろ。友達連れてきてもいいぞ」
「ほんと?」
「ああ」
「わかった。あと2年ね。約束だよ?」
「へいへい」
(……そうやってごまかされるところがガキなんだっつの。にしても、実は初恋の人にうり二つなんだとか言ったら爆笑されるか引かれるだろうな……)

おわり
114名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 10:51:05 ID:3ZUe7D7f
初恋の人ってなるべく汚したくないような気持ちありません?
ちなみにこの男、16になっても多分なんだかんだ理由つけて抱きません。
115名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 00:53:25 ID:Z5ElqLmb
GJ!!!(・∀・)イイネーイイネー
個人的にかなり好みな文体と設定。
続編か新作を気が向いたらまたお願いします!
116名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 07:06:59 ID:yn0sYytI
「ねえ、トーサカ」
「なんだ、リン」
「昨日さあ。トーサカ、となり町でキレイな女の人と歩いてたよね」
「……なんで知ってんだ?」
「こっそりと尾行してたから」
「だからなんで」
「………。………………。………………………暇だったから」
「暇だったからってお前なあ」
「いいじゃんほっとけよ。それよかその人、こっちの世界じゃちょっと有名な娼婦なんだよね」
「……ほお」
「ヤッたんだ」
「そりゃな」
「アタシとはしないくせに」
「そりゃな」
「……………」
「だってお前、まだまだガキだろが。言ったろ?リンが16になるまでは抱かないって」
「でも、アタシだって娼婦だ」
「もうリンは娼婦じゃねえ」
「トーサカに買われた娼婦だ」
「俺に買われた以上もう娼婦じゃねえ」
「……………」
「契約書にも書いてあった。一度買っちまえば、あとはこちらとは一切関係なく、その女は客の好きにできるってな。だからお前は……」
「……バカに………」
「あ?」
「バカにすんなよ」
「……………」
「アタシはただトーサカに養われてくだけの存在じゃない。アタシだって……アタシだって、トーサカを満足させることはできる」
「こら脱いでんじゃねえ。つーかガキがいっちょまえなこと言ってんじゃねえよ」
「ガキって言うな!」
「……………」
「そりゃ……アタシはガキだよ。見ての通り胸だってまだそんなにないよ。でも」
「……あのな」
「でも、男を喜ばせるテクは持ってる。今までたくさん変態オヤジたちの相手してきた」
「リン」
「だから、アタシはトーサカだって……」
「俺がお前に求めたのは、家族だ」
117名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 07:11:13 ID:yn0sYytI
「…………」
「…………」
「え?」
「ぶっちゃけ、最初にリンを見た時はただの客として抱こうかと思ってたよ。本来ガキには興味ねえが、ちょっとした事情があってな。でも笑えることに、同じ理由でどうしてもンな気にはなれなかった」
「…………」
「でもお前が……リンが、他の奴に抱かれるのは嫌だった。これもやっぱりさっきの理由でな……そんな時、日本にいた親父が死んだ」
「し……」
「これでも親孝行な息子だったんだぞ。今は転勤でこっちにいるが、帰ったら二人で暮らそうと思ってたんだがな」
「……………」
「親戚もいねえ、親父と二人暮らしだった俺は完全に一人になった。お前と似た境遇……いやそれはお前に失礼か」
「ううん」
「ま、それはそれとして。一人になってこの国に舞い戻ってきて、そんでここのベッドに寝ころんだ時、急に寂しくなったんだ。一人が怖くなった。そしたらふっとリンの顔が浮かんだ」
「アタシ……?」
「それでお前を買った。娼婦としてじゃなく、家族としてな。お前にはいきなりで迷惑なだけだったかもしれんが」
「そんなことない」「そか……とにかく、だからお前は抱きたくねえんだ。家族だからよ」
「トーサカ……」
「ええい泣くなうぜえ。それより服着ろ服」
「……………」
「ま、そんなわけだ。それにどっちにせよ、俺はまだお前は抱かねえよ。何度も言うが、ガキに興味はねえんだ」
「アタシ……」
「わかってくれたか?」
「うん」
「いい子だ」
(ま、実際のとこ抱きたくない一番の理由は初恋の女に似てるからなんだけどな)
「ねえ、トーサカ」
「ん?」
「さっき言ってた、最初に抱く気になれなかった理由ってなに?」
「………………秘密」
「……まあいいや。それとさ、家族って、言ってみればトーサカがお父さん?」
「………敢えて言うなら、そうかな」
「わかった」
「は?何が?」
「別にい。」
(お父さんに必要なのは、やっぱまずはお母さんだよな……16になったら、トーサカの国では結婚できるらしいし)

おわり
118名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 07:18:14 ID:yn0sYytI
調子にのって次を投下。
前から少し時間が経った話です。
トーサカの話は半分本当で半分嘘です。
119名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 22:52:05 ID:cIvThFMC
…………Fate?
120名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 23:27:22 ID:yn0sYytI
What?
なんかの漫画ですか?
名前、登場人物と一緒だったとか?
121名無しさん@ピンキー:2006/03/03(金) 00:28:35 ID:/IWJ9JRa
>>116-117
さっそく続きキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
またしてもGJ!!!!
トーサカとリンの掛け合い漫才が好きだ。
変態な客に教え込まれたリンのテクが発揮される日は
無い方が幸せなのかもしれないな…
スレ的にもトーサカ的にもw
122名無しさん@ピンキー:2006/03/03(金) 07:42:20 ID:/yyJEDQz
会話だけじゃなく動きとか心情とかの描写もしてホスィ…
でもGJ!!
123120:2006/03/03(金) 22:23:54 ID:I2+NQN6S
>>119
ぐぐってみました。
・・・・・・・・・・・・本当に偶然です。シンクロニシティです。
つか自分ですごいびっくりした。
124名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 23:10:54 ID:Dq+QAY6b
「どうして抱いてくれないの!?」

静かな城内に、一人の少女の怒声が響いた。絹一枚で身を覆った少女の言葉は
怨嗟であり、嘆願であり、悲哀でもある、抑えられなくなった心の悲鳴。
だが、そんな少女の気持ちにその矛先である黒衣の男は答えず、
ただ困ったような微笑を浮かべている。

「黙ってないで、答えてよ!!」

少女は、気付かない。
男の表情が作り物であることに
拳が、堅く握り締められていることに、、
気付かないから想いをぶつけてしまう。

「私、貴方にふさわしい女になるために頑張ったのよ!?
 奸臣を一掃して国政も一新したわ!
 皆が恐れていた魔王だってもうすぐ退治できる!
 平和になれば、身分の分からない貴方との結婚だって――
  
   「ごめん。」

男は言葉を遮った。その先を聞きたくなかったから、
自分の心を抑えきれなくなりそうだったから、
血が滲むほど拳を握り自分を騙した。

「……さようなら。」
そう言って男は姿を消した。




数日後、国王軍が魔王軍に総攻撃をかけた。

黒衣の魔王は 死んだ―――――。
125名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 00:59:59 ID:gqEOv0hr
>>124
一晩練って出直してこい。
126名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 04:07:34 ID:pibRyl1d
>>124
どこの一人相撲?
12777:2006/03/08(水) 23:45:22 ID:d2AR0PZj
お前ら厳しいな
ロマンチックで悪くないと思うぞ

反応あるだけうらやましくもあるが
128名無しさん@ピンキー:2006/03/09(木) 18:56:32 ID:KJH/jmRT
厳しいとか評価する以前の問題じゃないか?
なんか三流長編小説をラスト辺りを抜粋したって感じの違和感がある。
129名無しさん@ピンキー:2006/03/09(木) 19:06:40 ID:s3K+FiMM
>>128
>なんか三流長編小説をラスト辺りを抜粋した
それ自体は別に悪くないんじゃないか?自分で書いたものならば。

他人が書いたのを認めないんじゃなくて、
普通に、「自分の趣味に合わない」でいいんじゃないの?


まぁおれも件の投稿は、かっこよくおしとどめたんじゃなくて、
ただ諦めただけのようにも思えるんで、そのあたりもうひとひねり欲しかったな。
130名無しさん@ピンキー:2006/03/09(木) 20:13:56 ID:iPq3T9Gn
124に触発されて思い浮かんだ話を投下。ありきたりだけど。


「どうして、駄目なの?」
 底なしの闇の中でも、彼女は白く輝いていた。まろやかな体の線が
浮かびあがる薄いローブ一枚で、真剣に男に言い募る。
「あなたが言ったのよ。そういうのは悪いことじゃないんだって。
とても好きで、大事なら、むしろ自然なことだって。
実際に皆そうしてるんでしょう? なのにどうして……」
 祈るように縋るようにさしのべられた腕を、しかし男は身振りだけで
押しとどめた。触れることすらしなかった。少女の目が泣きそうに潤む。
「私が……嫌い?」
 男が深く溜息をついた。がしがしと頭をかきむしる。
「嫌いじゃねぇよ」
 なら、と言いさした少女を制して、男は途方にくれたように笑った。
「嫌いじゃないどころじゃない。惚れてると言っていい。……何をとち
狂ったんだかな」
 じゃらり、と手の中で鳴るのは鍵の束。そのまま少女の足元にかがみこむ。
「……何するの?」
「じっとしてろ」
 細い足首に努めて意識をやらないように、男はただ無骨な足枷だけを
見つめた。形のいい長い指が、ひとつひとつ錠前に鍵を合わせていく。
「……なぁ」
「うん?」
「これから言うのは独り言だから、聞かないフリしろよ」
131130:2006/03/09(木) 20:15:49 ID:iPq3T9Gn
 淡々とした声だった。
「おまえの笑う顔が好きだ」
「え……」
「呆れるほど物知らずなところも、笑っちまうくらいお人好しなところも、
ちったぁ人のこと疑いやがれってくらいおめでたい頭も……それから」
 かちりと、男の手の中で錠が回る。
「おまえのその、真っ白な羽も」
 混乱する少女の前で、今度は牢の天窓の鉄格子が開いた。
「だからいいか、振り返るな。今夜は上じゃ聖なる夜とからしい。
俺らはまともに動けない。間違っても迷うなよ。俺に、その羽が変わり
果てるところを見せるんじゃねぇ」
「私は……っ! 私はこの羽が黒くなったって……!」
 ようやく状況を飲み込んだ少女に、男は真紅に光る目を向けた。
 獣の目。呪われたイーヴル・アイだ。
「舐めんなよお嬢さん。言うなれば俺の本職だからな、たいして頭働かせ
なくたって目に浮かぶぜ。おまえじゃ俺に太刀打ちできねぇ。掻っ攫って
閉じ込めて、ボロ雑巾になるまで抱き潰す。おまえにゃ欠片の理性も残らない。
……おまえが今、俺に向けてる気持ちもだ」
「でも、だって……!」
 少女が泣く。ほんの幼い頃から忌まわしいものと教え込まれた男の目は、
今、間違いなく優しかった。しゃくりあげながら手を伸ばす。
 今度は、男も拒まなかった。
132130:2006/03/09(木) 20:17:41 ID:iPq3T9Gn
 出会ってから初めての抱擁。男の胸に顔をうずめながら、涙に濡れた声が呟く。
「……それじゃあ……好きになった人とそういうことをするっていうのも……
嘘だったのね?」
「そうだ」
 男は頷く。なだめるように少女の背を、頭を、翼を撫でながら、噛んで
含めるように囁いた。
「それは淫らで、汚らしく、背徳的で、欲望の塊の、罪そのものだ」
「あたしはあなたに、騙されてたのね?」
「そうだ」
 どちらからともなく目を閉じる。唇が触れた。
「……さよなら」
「ああ。……行け。もう悪魔達(おれら)に捕まるなよ」


 少女が飛び立つときに散った羽は男の瘴気に耐え切れず、さらりと砂に
なり消えた。


気がついてみれば純愛過ぎてエロくねーーーーー!(吐血)
出直してきます・゚・(ノД`;)・゚・
133名無しさん@ピンキー:2006/03/10(金) 00:08:23 ID:JfEdUkPQ
エロかろうがそうでなかろうがこの内容なら俺はGJとしか言えないなあ。
134名無しさん@ピンキー:2006/03/10(金) 00:13:57 ID:kfIYW3zh
内容はGJ!!!
だけど(吐血)はさすがに勘弁してくれ…
腐女子っぽい
135名無しさん@ピンキー:2006/03/10(金) 21:51:18 ID:CH2Skl9b
腐女子アレルギー多いな、この板。
136130:2006/03/10(金) 22:50:59 ID:CSTt8D9t
d

>>134
これって腐女子起源だったのか。知らんかった。
今度から気をつけるよ。

さて、無名に戻ります。
137名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 00:05:41 ID:kfNcW5A9
ぶっちゃけ萌える対象が違うだけで
この板にいる奴らと腐女子ってなんら違いないと思うんだ。
138名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 15:48:31 ID:cWIOWwb8
萌える対象が違うとかそんな簡単な事では無いと思うぞw

久々に来たら投下凄いな。職人さん皆GJ!
139名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 17:58:40 ID:UKt7FXcw
「私を抱かないのか?」
「強がるなよ。こんなに震えているくせに」
「くっ……! ふ、触れるな」
「やれやれ。誘ってきたり、それでいて触れるなと言ったり、我が侭な姫様だ」
「私はもう姫などではない。この城も、城の人間も全てお前の物となった。
お前が占領したのだ。好きにしろ」
「そうは言われてもねえ。確かにお前は美しいが、俺は俺を愛してもいない女を抱くほど飢えとらん」
「………」
「俺はお前の親の仇だ。俺が憎くはないか?」
「……憎くないと言えば嘘になる」
「だろう? そんな女とわざわざ一夜を共にする変態倒錯な趣味も、勇気もねえよ。
寝台の中で短剣をつきつけられるのもかなわん。別にお前でなくても、俺に惚れてる女はいくらでもいる。」
「……そうか。なら、私はどうすればいい?」
「この城で今まで通り暮らせ。俺は構わん」
「わかった。えっと……その……ありがとう」
「礼など不要だ。では、俺は雑用を片付けに行く。さらばだ、姫。服はきちんと着ておけよ」
「あ、ああ……。それではな」
(手を出さないでいてくれたり、命を助けてくれたから礼を言ったのではないのだが……
「美しい」と言われて私がこんなに嬉しく思ったことなど……あいつは気付かないのだろうな……)
140名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 18:43:14 ID:kfNcW5A9
戦国無双の立花ギン千代思い出した。
141名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 20:51:28 ID:UKt7FXcw
「ねえ、寄っていかない……?」
「駄目だ。このまま帰るぞ」
「私のこと、もう嫌いなの?」
「言わせるな。もうキミにはあいつがいるじゃないか」
「でも……私……」
「俺はもう、人妻に手を出せるほど無鉄砲じゃない。そんな若さなんてもう捨ててしまったよ」
「私は……」
「何が不満なんだ。あいつは俺なんかよりずっと稼ぎもいいし、キミを十分に幸せにできる。
そう思ったから……身を引いたんだ」
「お金だけあったって、幸せな結婚生活だとは限らないわ。私は貴方となら……」
「黙れ! それでもキミはあいつを選んだんじゃないか。今更そんなこと言われたって、迷惑なだけだ」
「……そう……ね……。ごめんなさい。今のことは忘れて」
「悪かったよ。俺も……怒鳴ったりして……」
「ここまで送ってくれてありがとう。それじゃ、気をつけて帰ってね」
「ああ。じゃあな」
142名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 17:19:26 ID:OK1T59he
「泣いてくれるな」
男は腕の中の少女の髪を撫でる。薄い夜着ごしに柔らかな温かな体温、ほろほろと零れる
涙ばかりが流れるうちに冷たい。
「おまえに泣かれると辛い。……頼む」
そうは言いながら、こらえるように引き結ばれた口元を見るのも辛い。好きな女一人存分に
泣かしてやることもできない、そもそも幸せに笑わせてやることができない、その事実が
彼の内を苛んだ。
誘われるまでもない。抱いてしまいたい。
だが、一夜のことで終わらせたくもない。
苦しさを押し殺し、男はなだめるように言を継いだ。
「俺はおまえを日陰者にするつもりはない。……確かに、正妃とすることはできないが、
必ず側に迎える。今抱きあうは簡単だが、それはおまえを傷つけることにしかならない。
……頼む、俺におまえを守らせてくれ」
低く訴える声に少女は長らくじっと俯いていた。長い睫が雫を含んで震えていた。
男は隣国から妻を迎えたばかり、生まれたときからやがては正妃になる女として教育されて
きただけあって気位が高い。国力を考えても今隣国を刺激することは避けたかった。ましてや
自分はまだ王太子にすぎない。父の決定に逆らうだけの力も基盤もない。
けれども、いずれは。
必ず。
やがて顔をあげた少女は、何かを決意した目の色をしていた。小さく頷いた彼女に、男はほっと
息を吐く。
「……ありがとう」
少女は控えめに首を振り、涙の残ったままの顔で微笑する。細い指でそっと男の前髪をかきあげて、
柔らかに額に口づけた。男も口づけを返す。少女が体を離して、長い髪に絡んでいた男の指が名残
惜しげにほどけた。
「……おやすみ」
 振り返った少女の唇は、さよなら、と動いたように見えた。


 こうして、人魚は海の泡になりましたとさ。


そもそも第一王位継承者の寝室に、身元もわからない女が刃物を持って入ることができるなんて
無理がある、と御伽噺に難癖つけてみる。
143名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 16:38:11 ID:aPOUEj3z
禿げ
144名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 18:46:49 ID:TZOcslta
>>41とか>>49のシチュを書いてみるのはありだろうか。
145名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 19:27:25 ID:ruAw9BeX
あり。と言いたいところだがここで求めに乗ってはスレタイに反するし・・・

でも我慢できないッ!
146女型モンスター改め人外女と勇者:2006/03/14(火) 23:20:58 ID:TZOcslta
「……抱いてください」
「ルア」
俺の咎める声に、ルアは一瞬身を竦め、振り切るように言い募った。
「あなたが故郷に残してきた奥様を愛していらっしゃるのはわかっているんです。
でも、だから……」
「ルア、俺の言いたいのはそういうことじゃない」
言う間にも、巻いた布からじわじわと血が滲む。
傷を負った瞬間にわかっていた。この左腕はもう駄目だ。
不思議に、冷静にそれを受け入れる俺がいた。
浅く早くなろうとする呼吸をなんとかなだめながら、切れ切れにならないよう言葉を紡ぐ。
「もっと、自分を大事にしろ」
自分で言っておいて、少し笑う。年端もいかない少女を諭すには陳腐すぎるくらい
陳腐な台詞だが、普通とは意味が大違いだ。
ルアが強く首を振った。
「あなたに救っていただいた命です。どうか……使ってください」
真摯に訴える姿は人間にしか見えない。長い髪に散りばめられた小さな花も、年頃の
少女ではよくあるおしゃれだ。
これでマンドレークの一種とは、何かの冗談だろうと言いたくなる。男と交わることで
枯れ、残った体は万能薬に、あるいは強力な毒になるという。
柔らかな白い手が、俺の額に浮かんだ汗を拭った。
今までの経験からわかっている。じきに発熱する。かなり苦しくもなるだろう。
だが、それだけだ。
「ルア。やめろ」
「嫌です」
静かに布を置き、白い花の甘い香を漂わせながら、ルアが俺の脚の間に身をかがめた。
俯いた拍子に文字通り匂い立つうなじがあらわになって、俺の視界に飛び込んできた。
147女型モンスター改め人外女と勇者:2006/03/14(火) 23:31:15 ID:TZOcslta
……おいおい。
「待てこら。それは強姦って言うんだ」
あえて生々しい単語を選ぶと、ベルトにかかっていた指がびくりと震える。迷うように彷徨った
あと、ぱたりと地面に落ちた。
「そんなに、嫌ですか……?」
小さく俯いたまま、泣きそうな声が訊く。激しい感情をこらえているためか、耳元がほんのり
染まっていた。……血液があるんだろうか。妙に扇情的だ。
「ルア」
「…………」
「ルア。顔をあげろ」
潤んだ瞳がおずおずと俺を見上げる。苦しい息の下から、俺はなんとか笑ってみせた。
「魔王を倒した後でよかった。右腕も残った。こんな傷は焼けばなんとかなる。俺の女房だって、
片腕の俺は嫌だとは言うまいよ。おまえの命をもらうほどのことじゃない」
「でも!」
ルアがぎゅっとこぶしを握った。
「奥様のことを思うなら、無傷で帰ってください。私なら……知らない間に、あなたが、そんな風
に傷つくなんて……耐えられません」
「なあ、ルア」
「…………」
「おまえの気持ちは嬉しいよ。こんなことを言うのは卑怯かもしれないが、可愛いと思ってる。
でも、俺の心はあいつのもんだ。おまえにはやれない」
「わかっています……」
「だから、少なくて悪いが、腕一本もらってくれ」
ルアが驚いたように俺の顔を見つめ返した。断られる前に、たたみかける。
「おまえにはきっと辛い思いをさせると思う。まず傷を焼く手伝いをしてもらって……しばらく、
看病もしてもらわなきゃならんだろうな。我侭言ってるのはわかってる。それでも俺にとっては
……おまえを抱くより、その方が楽なんだ。……頼む」
ルアはしばらく呆然として、俺の名前を呼んで、泣きながら、頷いてくれた。


>>49>>145に捧ぐ。


>>145
なんかワロタw 反応dクス。
シチュ、全部は思いつかないんだよな……。特に49はムズい。
萌えはするんだ、誰か書いてクレー・゚・(ノД`;)・゚・
148名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 23:40:17 ID:0tsrWnge
神仕事!
149名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 23:53:57 ID:ruAw9BeX
ID変わる前にグッジョブ!
こんなに良い作品を捧いでもらえるなんて幸せ者だ!
人外もので、やっちゃうと死んでしまうって設定は燃えるよな。
例えが古いがルシオラとか・・・そういえば横島はこのスレタイ通りの男じゃないか。
1500/3:2006/03/15(水) 20:04:55 ID:HCDAzD3n
>>149
横島はエロカッコよくは無かっただろ。いやまその後の決意はカッコよかったけどさ。
それはそうと、>>124を勝手にパクってみた。作者さんには先に謝る。
1511/3:2006/03/15(水) 20:05:48 ID:HCDAzD3n
「ねえねえ!なんで行っちゃうのよう!!」
「っせーな、人の部屋勝手に上がり込んでさわぐなっつの」
 部屋の中に場違いな声が響く。
 ベッドと机以外何もない質素な部屋の中で、少女の姿はなおさら際立って見えた。
「いーじゃん、お姉ちゃんには私から謝っとくからさぁ」
「そーいう問題じゃねーの。王の前で自分の剣を折るってのは、つまり自分を首にしてくれってことなんだよ」
 男はこの国一番の剣豪。最も多くの敵を葬り、最も多くの血を浴びた“英雄”である。
 女はこの国の第二女王、つまり女王陛下の実の妹である。だがその見目麗しい容姿とは違い、性格はまさにおてんば。
 冷静で博識な姉と違い、むしろどこか庶民的な感じすらある。仮にも女王なのか疑いたくなるが、だが国民からの人気は高かった。
 男は女の護衛者だった。常に誰よりも女の近くにいる女の護り手。女にとって、男はまさに勝利を約束された騎士であった。
 だが、男は今国を去ろうとしていた。彼女に何を言うわけでもなく、何の相談もなく、である。彼女が戸惑うのも当然だ。
「なんでいきなりそんな…いくらなんでも急すぎるよ!?」
「前から気に食わなかったんだよ。この国の連中は俺を英雄だとかはやし立てるくせに、その実何よりも煩わしく思ってる。
ウンザリだ。こんな奴ら守ることが、いい加減馬鹿馬鹿しく思えてな」
「…ウソツキー」
「誰が嘘なんて」
「いーや嘘だね。アンタ嘘つく時いつも右耳がピクピク動くんだ。私の目はごまかせないよーだ」
「ッチ、変なとこばっかり鋭くなりやがって…ほれ、荷造りの邪魔だ。はよ出てけ」
「ねーねーならさー、私も一緒に連れてってよ!」
「バカかお前は。軍を勝手に抜けてその上第二女王をかっさらったなんて話になったら、それこそ俺は殺されちまうよ」
「ん、それもそうか…なら、最後に一夜の思い出を体に刻み込んでって?なんちゃってー!」
「バカだ、お前は。それに俺は18のガキなんざ抱くような趣味はないの」
「ガキっていうな!自分だって大差ないくせに!!」
「俺は22、もう立派に成人してんの」
 鬱陶しそうに女をあしらう男。邪魔だと言わんばかりにシッシッと手を振る。
1522/3:2006/03/15(水) 20:06:26 ID:HCDAzD3n
「いーじゃんよー。どうせお姉ちゃんもあの黒っちいのとお楽しみだろうし?私達も楽しもうよー」
「あのなぁ、冗談もそこまで行くとタチわりぃぞ?いい加減出てけ、いつまでたっても終わりゃしねぇ」
 そう言った途端、女は少し悲しげに俯く。やっと静かになった、と男は壁にかかった鎧に手を掛けた。だが、その時。
「…だもん」
「あん?」
「私、本気だもん」
「何言って、オイ待て止めろ、服を脱ぐなコラ!?」
 男が振り返った先には、ベッドの上で身に纏った布地を脱ぎ捨て、生まれたままの姿になった女がいた。
 その瞳は潤んでいて、しかし確固たる決意が奥で燻っているような、そんな眼をしている。
「私アンタと離れたくない!ずっとずっと好きだったんだもん、離れるなんて絶対に出来ない!!
 だからお願い、一緒に連れていって…私を…抱いてよ…」
 最後のほうは、かすれてよく聞き取ることが出来ない。だが、眼からこぼれる雫が、全てを物語っていた。
 彼女の想いも、彼女の心も、それを見ればすぐにわかる。女は、どこまでも男を愛していたのだ。
「…ったく、しゃーねーな。泣くんじゃねーよバカ」
「…グスッ、うるさい…バカって言うんむ!?」
 最後まで喋ることを許さず、男は女と口づけを交わす。
 舌で口内を蹂躙しつくし、互いに互いの舌を絡めあいながら、男は女の喉の奥へカプセルを流し込む。
「…んちゅ、くちゅっぷは、ん…く、ハァハァ…今、何、飲ませた、の…?」
「気持ちよくなる薬。初めては痛いって聞くからな」
「…エッチ」
「知らなかったのか?」
 口と口をつなぐ銀の橋。それが途切れた先の女の顔は赤く、眼は蕩け、息は荒く、淫猥な雰囲気が漂っている。
 男が女をベッドに寝かし、その上に覆いかぶさるように男もベッドに入る。
「…一つだけ、教えて?本当はなんで国を捨てるの?」
 潤んだままの瞳で問いかける女。沈鬱な顔をしながら、男は少し思考し、そして言葉を放つ。
1533/3:2006/03/15(水) 20:08:52 ID:HCDAzD3n
「…なぁ、この国の兵士のうち、何人が魔王とまともにやり合えると思う?」
「何人って…そんな奴アンタ以外いるはずないじゃない」
「ああ、だろうな。だから、俺は国を捨てるんだよ」
「どういう、こと?まさ、か、そんな」
「…どうせ誰か死ぬなら、被害は少ない方がいい。なおかつそれが一人で済むってんなら、方法はそれっきゃないだろう?」
「そんな…っ!自分が犠牲になるって言うの!?みんなの為に、自分一人だけ死ぬつもりなの!?」
「あー、耳元でうるせーな。だから言いたくなかったんだよ。ところで…」
 ニヤリ、とニヒルな笑みを漏らして、男は女の耳元で囁いた。
「そろそろいいか?覚悟しろよ、初めては死ぬほど痛いらしいからな。だから―――」
 トサ…。女の頭が枕へと沈む。いつの間にか、女は静かに寝息をたてて、安らかな夢の世界へと旅立っていた。
「―――その初めては、他の誰かのためにとっとくんだな」
 そう。男が仕込んだ“気持ちよくなる薬”。それは、強力な睡眠薬だったのだ。
 女を起こさぬように男はそっと立ち上がると、今度こそ壁に掛けた鎧を身に纏い、振り返って女を見る。
 その姿を瞳に焼き付けると、男は魔王の城へと視線を向けた。
「さて、と。いくぜ“黒っちいの”。互いに惚れた女を賭けて―――てか?へっ柄じゃねぇや」

 数日後、国王軍が魔王軍に総攻撃をかけた。
 黒衣の魔王は国王軍の一人の前に破れ、その命を落とした…
 だが、彼らは気づいただろうか?国王軍が総攻撃をかける前から、魔王がすでに傷ついていたことを。
 魔王の台座のその奥に、一人の男が横たわっていたことを―――

 FIN

ぜんっぜん短くまとめらんねorz
こんだけファンタジーな内容をたった1レスにまとめ上げた>>124は逆に凄いと思うんだ。
まあエロもの書くのは初めてだから、見づらかったりエロかっこよくなかったりしたらスマソ。
154名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 21:49:17 ID:gOZ/pG6h
GJ! カコイイ!!
これくらいなら全然長くないとオモ。
1551/2:2006/03/16(木) 19:04:02 ID:Ovuwrm2q
ここは、町の外れにある礼拝堂。
ところどころ穴の開いた天井からは、
まるでスポットライトのように月の光が差し込んでいた。
女はその場所に相応しく純白の聖衣に身を包み、
男は月光さえも拒むかのような黒いコートで全身を覆っている。
「行って…しまわれるのですね?」
「はい。契約は、全て履行いたしましたから」
分かっていたことだけれど…、その返答にシスターは俯いた。
「…では」
小さく会釈をして、男は身を返す。
もう一度見つめられれば、決意が鈍りそうだったから。
「待ってください!」
悲鳴のような懇願の声に続き、ふぁさりと布の落ちる音。
その声に振り向いた男が見た者は、ケープとロザリオだけの姿となったシスター。
雪よりもなお白い肌に豊かな曲線を描く魅惑的な肢体…
しかし何よりも男の目を引付けたのは。
「…何を、泣いておられるのです」
「あなたが、愛しくて仕方が無いのです!」
叫ぶようにそう言って、シスターは愛してしまった男の胸に飛び込んだ。
1562/2:2006/03/16(木) 19:05:10 ID:Ovuwrm2q
最初に会ったときは、冷酷でなんて嫌な人だろうと思った。
でも、本当は違っていた。
気が付けばどうしようもない位に、彼のことが好きだった。
「私は、賞金稼ぎです。血の匂いを嗅ぎ回る汚らわしいモノです」
「違います…わたくしは知っています。あなたは本当は優しい方だって」
身を引き剥がそうとする男の腕に縋りつく。
「わたくしが何を言っても、あなたは行ってしまわれるのでしょう…ならば」
顔を上げて男の瞳を見つめる。その大きな青い瞳から大粒の涙が溢れた。
「今宵一夜で構いません…わたくしを」
「何を仰っているのです、神の御前で」
「この町を救って下さったのはか、神ではありません!」
ロザリオを外そうとした白い手を、男は包んで押し止める。
「お止めなさい、シスター…貴女に神は、捨てさせられない。
 貴女は心のうつくしい方だ。
 たった一度でも過ちを犯せば…、神に背いた自分が許せなくなるでしょう」
神を愛し、純潔を誓ったシスターの信仰の深さは、
男には痛いほどよく分かっていたから。
「これからのこの町に必要なのは、神の愛に疑いなく包まれた貴女の笑顔です」
男の手が、シスターの涙をぎこちなく拭う。
「…では」
男は再び身を返す。そして二度と振り向かなかった。

説明くさいな…精進してきます。
157名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 23:54:09 ID:2uzETrRO
最近投下が多いな。みなさまGJ

>>151
153の後半がもうかっこよすぎ

>>155
ぎこちなく涙を拭うのが痛ましく、でもそれがいい
158名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 04:58:39 ID:JF47vkkM
そういえば昔幼なじみスレですっげえこのスレっぽい作品が投下されてた様な気がする。
タイトルも中身も忘れたが、一週間オナ禁してしよーって感じの。
途中で彼女が我慢しきれなくなって泣きついてくるけど、それを押しとどめるような感じの。
まあ、最後にはやっちゃうんだけどね。
ほんとーにうろ覚えだが、保管庫探せば見つかるかな・・・。
159名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 22:26:06 ID:YB9ABPDj
そういうシチュは思いつかなんだよ。
160名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 23:58:00 ID:bVFe+o0z
保守
161名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 01:54:19 ID:kzcFGR25
ぽしゅ
162名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 17:11:23 ID:h5n11vMf
保守る
163名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 05:59:39 ID:FxuwEpWy
>>49
>・妹姫と兄王
FE聖戦の系譜のエルトシャンとラケシスが思い浮かんだ。

>・助手の少女と名探偵
>・家族を亡くしたレズ少女と引き取った隠れレズの叔母
これは「黒の断章」の涼崎聡と柏木明日香、冬川希と咲水遥がけっこう近い
164名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 20:40:07 ID:cSgIv7pg
世界から見放された世界の一部
「世界だった物」
外界への干渉を許されない世界

そんな世界に迷い込んだ二人。
「ねぇ」
一人は18歳くらいの少女
「あ?・・・なんだ、まだ寝てないのか。
・・・・ちゃんと寝ろよ、明日は大変なんだからな」
もう一人は20台前半の男
「わかってるよ・・・でもさ、私にはできないよ」
「大丈夫だよ、お前は俺の言うとおりにしときゃ元の世界に帰れる」
「アンタは?」
男はなにかを隠すように言うが、少女は知っていた。
「・・・」
「私わかってるよ、この方法じゃ一人しか帰れないって
私にはできないよ・・・・アンタを置いて行くなんて」
「・・・・何偉そうなこと言ってんだよバカ、そういうのはもっと大人になってからいえガキ」
「バカとかガキとかゆ〜な!!・・・もぅ、アンタ寂しくないの?
私が消えたら、アンタまた一人なんだよ?」
「そんなことお前が気にすることじゃねえよ」
「気にするよ、私アンタのこと好きだもん・・・離れたくない」
「は?胸も無いガキがそんなこというな、いいから寝ろガキ」
「ガキガキゆ〜な!胸だってあるもん」
「はいはい、さっさと寝、ろっ!?」
男の体に衝撃が走る。
油断していたのか少女が抱きついただけでも、男の体は後ろに倒れこむ。
「ガキじゃないもん・・・私・・・アンタのことが好き、アンタなら抱かれてもいい」
「待て待て、服を脱ぐな服を!!」
少女は男の制止を無視し白い肌を露出した。
「これでも・・・ガキ?」
「ああ・・・ガキだよ、ガキはガキだ」
パンッと乾いた音が夜の世界に響いた。
「バカ・・・アンタなんか死んじゃえ!!」
そういうと彼女は近くの森に走り去った。
「・・・・はぁ、もっと気のきいたこと言えのかね俺は」
男は自分の懐から一枚の写真を取り出した。
中は男と男の妻と娘が写っていた。
「・・・・・・やっぱいくら俺でも娘は抱けんわ」
「それにしてもあの時から10年か・・・・」



文章力ないな俺
165名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 22:29:12 ID:zkAMvWSQ
父娘キタワァ
タイムトラベルものかな?
娘は真相を知らないってのがいいね
166164:2006/04/09(日) 00:38:55 ID:KnqRsN5j
設定は、隔離された世界に数年前から迷い込んでた男(父)が居て
男の娘も偶然巻き込まれてここに来る。*この世界では年を取らない。
娘が小さい頃に父が居なくなって母が苦労しても帰ってこない父を見かねて
嫌いなってる。でも父の顔も知らない娘は男に惹かれていく。
だったんだけど文章力に欠けている俺は表現しきれなかった。
できれば誰かほかの方にこれをリメイクして欲しいです。
167名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 01:10:18 ID:PX5amtm4
ちょっと何その萌える設定
せつねえ…
168名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 22:51:11 ID:mxZka0qZ
良スレあげ
169名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 00:10:02 ID:jkotrR04
次にあったとき俺は君とする
17017:2006/04/11(火) 12:17:55 ID:uMb9ltHi
>>164
「俺はここが気に入ってるからな。独りでいられるし…静かだ。」
「えっ」
「お前がいると煩くてかなわん、と言ったんだ。だから、お前は帰れ。」
男は少女と目を合わさない。
その顔を…愛した女の面影を写したその顔を見てしまったら、決意が鈍りそうだったから。

「…やだ。」
背中に暖かい感触。少女は、男の背にしがみついて、呟いた。
「やだもん…一緒に居たいよ、アンタといると落ち着くんだ…ここに置いていくなんて」
「…それが煩いって言うんだ…ちょ、ちょっと待て、何してる?」
「私から離れたくなくなるように…するの。出てけとか、二度と、言わないように。」
衣擦れの音。ぱさりと足元に落ちた少女の服を見て、男はつい振り返る。
その目に映ったのは、淡い光の中に、まだ幼さの残る少女の裸身。
少女はそのまま、男に勢いよく抱きつく。倒れこむ二人の体。
「抱いてよ…アンタずっとひとり、だったんでしょ…」
「…お前バカか…ガキに欲情したりしないぞ、俺は。」
「ガキじゃないっ!」
「ガキだよガキ。ガキのくせに色仕掛けなんて10年早い。」
男の手が少女の細い肩を掴む。そのままゆっくりと、体を起こして。
「俺は独りがいいって言っただろ…ガキを抱く趣味もないしな。」
「だって…帰れるのは一人、なんでしょ…そんなの嫌だもん!」
「さっさと服着ろ、んで寝ちまえ…ガキンチョはもう寝る時間だ。」
男は俯いた少女に上着を着せ掛ける。
その声が苦しげに掠れていることに、涙を堪える少女は気付かない。

ややあって、少女は顔を上げる。ぐいと目元を拭うと、片手を振り上げる。
「…バカ!人の気も知らないでガキガキ言ってさ!信じらんない!」
乾いた音。
「すぐ暴力に訴える。まったくガキとしか言いようがないね。」
男は打たれた頬を気に留めない素振りで、少女に背を向けた。
「…だいっ嫌い…。」
膝を抱えて座り込んだ少女が、背後で呟く。それきり黙りこくったまま。
…泣き疲れ、寝息を立て始めるまで。

「すまんね…こんな言い方しか思いつかねえんだ。」
眠っている少女の髪を、男がそっと梳く。
「大体、実の娘が抱けるかっての。ま、言えねえよなあ…俺がお前の親父だなんて。」
隔絶された世界に迷い込んで10年。小さかった娘は成長して今、目の前にいる。
愛した妻…、いや、今も愛する妻にそっくりの面差し。
「…アイツに似て、気が強いな。できればアイツに一言、伝えたかったが…。」
言葉を切ると、男は暗い空を見上げる。
その空が白み、愛娘との別れの時が訪れるまで、男は優しく少女の髪を撫で続けていた。
17117:2006/04/11(火) 12:20:53 ID:uMb9ltHi
…ぎゃああコテハン残ってた!

設定を見ていただかないと説明不足な仕様になっております。
私はどうも説明不足に陥ることが多いですね…。
>>164さんのパロディということで、お目汚し失礼いたしました。
172164:2006/04/11(火) 21:25:31 ID:gv1+0ioB
GJ!!!!
リメイクありがとうございます
以後名無しに戻ります。
173名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:54:44 ID:fcUvmnCj
なんかここで終わったらすげえ生殺しな気分。
帰るとこまで書いたらスレ違いになるから仕方ないけど。
174名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 15:25:14 ID:L2bteAWy
age
175名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 16:19:31 ID:NTVDIfbO
>>173
禿同
スレの趣旨的にはこれ以上は進んではいけないのは判ってるんだ。
だけど生殺しも辛いなorz
上手い文なだけに先に行って欲しくなってしまうのかも試練
176名無しさん@ピンキー:2006/04/17(月) 02:18:02 ID:VcDpKLQr
このスレの人にはパソゲだが、英雄伝説6空の軌跡をお勧めする
>>1の趣旨まんまだ。
177名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 11:26:54 ID:NCL/EojG
age
178名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 00:14:45 ID:uGTjkvBQ
ジ・アーゲン
179名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 23:55:26 ID:JmNY+LAD
>>176
kwsk
180164:2006/05/08(月) 23:17:08 ID:1aVtKaDu
ど、ど〜も164です。
いつもネタは思いつくのです、が。文章力が無いのでここに投下できないです。
ですのでネタの設定やヘタながらも文章を投下し、職人様にリメイクしてもらうという方法を思いついたのですが、どうでしょうか?
181名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 23:26:55 ID:bLUKrUXv
俺携帯だから見てるだけ〜
182名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 23:40:59 ID:YchN+QuX
>>180
文章力あるあるw
どうしても仕方ない場合以外は、頑張って欲しいというのが個人的意見。
183164:2006/05/09(火) 22:56:28 ID:RLnBHr7w
『じゃ、行ってきます。』

『まって!!』

『ん?』

『帰って・・・くるよね?』

『あぁ、必ず。帰ってきたら・・・・・・』

久しぶりに夢を見た。初恋の、想いが通じ合ったあの人の
そしてあの日居なくなった、あの忌々しい戦争で
「ん〜!今日もいい天気!!なにかいいことあるかも」
だが過去のことなど昼には忘れ、私は掃除をしていた。
窓を開け新鮮な空気を部屋に取り込む
「あ、ちょ〜どよかったぁ!手紙の郵便で〜す」
「いつもご苦労様〜、いまそっちに行くから待っててくださ〜い」
二回から玄関へ、早足で
「ふう」
「はい、でわ確かに渡しましたよ」
パタン
ドアを閉め、手紙を確認する。なぜかいつもこの瞬間はドキドキする。
「二枚か、一つ目は・・・」
手紙を裏返す、やはり書いてない。名前が
誰からだろ?ペリペリとのり付けを剥がし中身を取り出す。
「何々・・・」
・・・彼からの手紙だった。死んだ、とずっと思っていた。
「会いたい」と、そのあとには場所や日時が記されていた。
少し考え、そっと薬指の婚約指輪に触れた。
・・嬉しい、けど今の自分に会う資格があるのか?
戦争終結後に私は結婚が決まった。家のためとはいえ、好きでもない人と
だが、後悔はしなかった。その人は今仕事で隣国に出張している。
「・・・行って伝えよう、全部」
例え彼の気持ちを裏切ることになろうとも
184164:2006/05/09(火) 22:58:12 ID:RLnBHr7w
約束の日、夜

あの約束から三年
「俺ももう18じゃね〜か、大人なんだしレストランとかで豪華に食事で・・・」
ま、いいか。柄じゃないし、そもそも、もう変更もきかんし
「もうすぐか・・・よっと!」
待ち合わせ場所から立ち、人ごみの中彼女を探す。
三年もしたら変わってると思うが見つける自信はある。
「へへ」
思わず顔がにやける。
「会って・・・コレ渡して」



「お〜い!!」
彼だ
勝手に足が速くなる
「・・・」
彼が近づいてくる、いわなきゃ
「ひっさしぶり!!!元気にしてたか?」
いわなきゃ
「ぁ・・・」
「ん?」
いわなきゃ
「ど、ど〜した?」
目が熱くなる
「っ!!」
「おわぁ!?」



いきなり抱きつかれた。
「ばか、生きてたなら・・・もっとはやく・・・連絡してよ」
「・・・ごめん」
泣いてるのか?
・・・周りの視線が痛い
「と、とりあえず移動しよ」
「・・・うん」



今はもう使われてない神殿、遠くで海の音が聞こえた。
そこで私達は色々話した
彼が帰ってくるのに遅れた理由
いままでなにをしていたか
「・・と言うわけ、納得してくれた?」
「うん、じゃあ改めて・・・おかえり」
「ただいま」
彼は笑う、でもいわなきゃいけない。
「あの・・・」
「でな、あの時の約束な・・・」
約束?
彼は上着のポケットから小さな赤い箱を取り出した。
「サイズ、合ってたらいいんだけど」
箱から指輪を取り出し私の手を取り
「え?」
「あっ」
彼は困惑の声を上げる
185164:2006/05/09(火) 22:59:47 ID:RLnBHr7w
私はすぐさま手を振り解いた
指輪が落ちる
沈黙が続く
「どういうこと?」
彼が切り出した。
おしゃれとでもいえばいい、でもさっきの私の行動がその発言を許さない
「なあ?」
「あの、これはおしゃ」
「違うだろ」
そして沈黙、答えを渋ってる私を見かねたのか彼は出口に向かった
「・・違うの」
「幸せにな・・」
「だから違うの!!」
頭が真っ白になり、彼に抱きついた。
「・・・やめろよ」
淡白な、気持ちが篭ってない言葉
「おねがい・・・行かないで」
掠れた声しか出ない。
「はぁ」
彼は振り向き私を抱きしめ、頭を撫でた。
どれくらいたっただろうか
「一足遅かったな」
彼は私を真っ直ぐみていった
「私、あなたのこと・・・」
「結婚おめでと」
彼は笑顔でいった
「あなたのことが好・・・」
「言うな」
「やだ」
彼を手放したくない

「好き」
「俺、帰るわ」
彼は私を離し、歩こうとする
「元気でな」
彼を・・・・
「抱いて」
「そんなことしたら、お前は後悔するぞ」
「え?」
「だから、幸せでな」
「なんで!?私はっあんたが!ぁ・・」
泣いていた
「はは、・・・俺もお前のことが好きだ。だから、バイバイ」
彼は消えた。
私もあとを追ったが見つからなかった。

・・・・・後日、わたしは・・・・・



はい、文章力不足ですね
186名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 12:28:08 ID:xiiHZVom
例えどんなに下手な文章でも、その後ろから迸る熱いパトスが伝わってきたぜ!GJ!
文章は見かけじゃない、中身が問題なんだ。
187164:2006/05/11(木) 00:20:14 ID:OUVAv1rG
お褒めの言葉ありがとうございます。
設定は
男は昔、女と将来を誓い合います
が彼はある出来事を境に帰ってこなく(死)なります。
数年後
彼女は結婚を控えた頃に、彼が帰ってき、約束を果たそうと彼女にプロポーズします
ですが、なにも知らぬ彼は彼女の現状を知り自ら手を引こうとしますが
未練の残っていた彼女は彼を引き止めます。
彼は彼女の幸せを考え彼女の目の前から消えることを決意

すいません長ったらしくて
できればまたリメイクしてほしいです。
俺はバカですから、自分のネタをうまく文章化できません。
188名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 00:52:11 ID:lLMc96ZD
いやいや、十分伝わってるよ。
189名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:25:01 ID:uTOo+bQD
面白そうだったので、164さんの
>>183から>>185
リメイクさせていただきました。
メロドラマ風です。
自分自身の練習も兼ねてリメイクしましたので、つたない文章で申し訳ない。
あと、キャラの性格かなり違ってしまったかな?
思いつくまま急いで書いたので誤字脱字あったらすまん。

他の方のリメイクも期待しています。
というか、誰か私の文章もリメイクしてくれ……。

190名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:27:55 ID:uTOo+bQD
『じゃ、行ってきます。』
日に焼けた顔、白い歯を覗かせてあの人は笑う。
私だけのものになると誓ったのに、
兵士としての運命を受け入れた、吹っ切れたような笑顔。
『まって!!』
手を伸ばしても、もう彼には届かない。
『ん?』
一度歩き始めた彼が、立ち止まる。
行かないで。行かないで。
『帰って……くるよね?』
私の問いかけに
『あぁ、必ず。帰ってきたら───』
あの人は、そう答えて、消えてしまった。

枕が冷たいのに気が付く。目の辺りが生暖かく濡れていて、自分が眠ったまま
泣いていたのを理解した。
──最近はこんな事はほとんど無くなっていたのに。
久しぶりにこんな夢を見てしまったのはきっとこのせいだ、と少し恨みがましく
枕の横においたままになっている一通の手紙を眺めた。
差出人の無い手紙。
手短に、会いたい、とだけ書かれ、その後に待ち合わせ場所と時間が書かれていた。
だが、それは間違いなく『あの人』からの手紙であることを、その手紙の内容と
少し癖のある文字が示していた。

ため息をついた。
手紙に触れた左手に視線を移す。薬指にある婚約指輪。
3日後に出張から帰ってきたら式を挙げることになっている。
愛がある結婚なのか、と問われれば自信が無い。親が家柄だけで選んだ相手。
でも『私には先の戦争で別れたままになっている恋人がいて、その人の事が
忘れられない、それでも良いのか』と打ち明けると、彼は少し黙った後、
それでも貴方のそばにいたいのです。と告げた。

拒絶できない自分がいた。
少しづつ、婚約者と自分の間で何かが育ってきていた。
3年と言う時間の流れは大きい。もう、後戻りは出来ないのだ。
「……行って伝えよう、全部」
たとえそれが『あの人』を裏切ることを認める行為だとしても。

191名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:29:27 ID:uTOo+bQD

約束の場所、約束の時間。
まだ、彼は来ていない。
広場の中央にある噴水の側に座った。
(もう、手遅れなの)
言わなければならない言葉を心の中で繰り返す。

「お〜い!」
突然、頭上から声が降ってきた。張りのある、懐かしい声。
声のしたほうを振り向くと、噴水の背後の階段を男が駆け下りて来る所だった。
ぶんぶんと手を振り、周りの目を気にせず、豪快に階段を一段抜かしで下りてくる。
あの人らしい、少し乱暴なしぐさ。
(もう、手遅れなの)
「ひっさしぶり!!!元気にしてたか?」
屈託の無い笑顔。
どんどん近づいてくる。夢じゃない。
(言わなきゃ。言わなきゃ)
上がった息、汗の混じった、彼の匂い。
目が熱くなる。
「おわぁ!?」
もう、だめだった。
私は、昔そうしたように彼の胸に飛び込んだ。
「お……ばか、人が見てるぞ」
慌てたように彼が言う。そういう照れ屋な所も、昔のままだ。
「馬鹿なのはどっち」
しゃくりあげながら、3年前の自分の戻った私は彼の背中に回した腕に力を込めた。
「生きていたなら……もっと早く連絡してよ」
私が泣いているのに気が付いたのか、彼は急に勢いをなくして、
そろそろと私の髪を撫で、ごめん、と呟いた。

広場から森を抜け、少し離れた所に神殿の廃墟がある。
夕暮れも迫り、寂れたこんな場所には人影も無く、そのせいか広場では気にならなかった
遠くで打ち寄せる波の音が静かに、はっきりと聞こえる。
海を眺めながら彼は饒舌に帰ってくるのに遅れた理由を話している。
今まで何をしていたのかも。
192名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:30:09 ID:uTOo+bQD

でも、まるで遠い国の言葉のように私の心にはよく届かなかった。
「───やっと帰ってこれたよ。お前のところに」
私は彼の顔を見つめた。そのときの私は、どんな顔をしていたのだろう。
ん?と窺うような表情をして、彼は私の頭をくしゃっと撫でた。
「お帰り、は?」
「お帰りなさい…」
それを言うだけで、また熱いものが込みあげてきた。
言えない。
───言えないわ。

私から、どうやって拒めばいいの。私を信じて笑う、この人に。
まだ、愛しているのに。

こんなにも、愛しているのに。

彼の手が私の頬に触れた。暖かい。大きな手。
私の顔を覗き込むようにしながら彼が近づいてくる。
唇が触れる。
懐かしい、この感触。私の腕を掴むこの力強い腕も、この広い胸板も、全て──

「ごめん。俺、一番大事なこと言うの、まだだった」
キスの後、少し照れた顔で彼は上着のポケットに手をつっこんで何かを探った。
「あの時の約束の──」
「約束?」
「サイズ、合ってたらいいんだけどな」
彼はポケットから指輪を取り出して、私の左手を取った。
思いがけない出来事だった。
「えっ?」
「あっ」
彼が驚きと困惑の入り混じった声を上げた。

私はすぐさま手を振り解いた。
小さな乾いた音を立て、指輪が落ちた。
「──どういう事…だ?」
「こ、これは、ただの──」
慌てて左手を右手で覆う。指が震えていた。

193名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:31:13 ID:uTOo+bQD

「違うだろ」
ゆっくりと、かみ締めるように彼は言う。顔が見れなかった。
「────違うの」
違うの、こんな人生は違うの。
それを隠したくて、ぎゅっと右手に力をこめる。
でも、左手の指にあるその指輪は、ひやりと冷たく、残酷にその存在を主張する。
「そうか……」
彼は空を見上げた。そして、ふう、と息を吐いた。
「一足遅かったんだな」
彼は立ち上がった。穏やかな表情で。口には微かに微笑を浮かべて。
「幸せにな」
「だから、違うの!」
私も立ち上がって、彼にしがみつく。
でないと行ってしまう。あの時のように。
お願い。
「行かないで……」
彼は黙って私を見つめるだけだった。
「私、あなたの事が──」
「言うな」
初めて聞く、険しい声だった。
「…いや」
もう手放したくない。
「好きなの」

194名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:31:53 ID:uTOo+bQD

彼は寂しそうに頭を横に振った。
「俺、帰るわ」
「帰るって、何処に?」
「さあ……何処かな」
困ったように小さく笑いながら、彼は私の体を離そうとした。
嫌だ。
彼の背中に回した腕に力を込めた。
「お願い……」
声が震える。
「抱いて」
ごくり、と彼の咽のなる音がした。
彼の手が私の両頬を掴んで乱暴に顔を上げる。
でも、私の目に写ったその顔は何かに耐えるように、苦渋に満ちていた。
一番辛い思いをしているのは、私ではなく、彼───

「俺も好きだったよ。だから……」
彼は、優しい笑みを私に向けると、私の額に口付けた。
「……結婚、おめでとう」

彼の立ち去った廃墟で、私は動くことが出来なかった。
ただ、ぼんやりとその場に立ち竦んでいた。いつまでも。
寄せては返す波の音が、空っぽになった心を撫でるようにいつまでも響いていた。

(END)
195名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:32:50 ID:uTOo+bQD
以上です。

こんな感じでいかかでしょう。
196164:2006/05/11(木) 20:11:28 ID:OUVAv1rG
自分のネタのはずなのに泣けました。
GJです!
これ書く前に6回は見直してましたw
197名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 23:53:41 ID:lLMc96ZD
何かスレがリメイク合戦になってる希ガス。
書いたものを自分で読んで、こりゃ痛いなと思ったけど、
書いたからには貼らなきゃなるまい(?)

・文が長すぎて読みにくい。説明大杉で読む気がしない。
・はっきり言って別物。ストーリーも変わってるし、現代風になってしまった。
・「女性が求める」成分が少ない。
・登場人物がオジン、オバンくさい。
以上の事を踏まえて読みたくない人はNGIDよろ。以下4レス±1
198名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 23:54:12 ID:lLMc96ZD
コトン、と郵便受けに手紙が落ちる音。
一人で夕食を取ったあと、私はテレビも見ず、ただ椅子に座ってぼーっとしていた。
気怠げに椅子から立ち上がり、郵便受けを開けると、封筒が二つ入っていた。
どちらも国際便らしい。なかなか珍しい事だが、片方の差出人は分かっている。
海外で商社マンとして働く、婚約者からの手紙。結婚式も間近だというのに、
帰ってくるようなそぶりも見せず、何をしているのだろうか?
結婚前からこの調子では、家族となった私を、子供達を、ちゃんと顧みてくれるのだろうか。
約束として一週間に一回は手紙を送ってくれるものの、内容は無機質で代わり映えしない近況ばかり。
私は最初からこの結婚には乗り気でなかったのだ。しかし両親はそうでなかった。

私は以前、心に決めた男性がいた。その人は、数年前の戦争で、兵士として駆り出された。
国を離れる前、彼は「帰って来たらプロポーズする」等と下手な台詞を残して去り……そして帰ってこなかった。
生存も死亡も伝えられることなく、行方不明者として処理され、今も行方が分かる事はない。
最初の一年は、まだ希望を持つ事が出来た。だが、年を重ねるごとに、それも薄れていった。
両親は私を慰め、彼の事を忘れさせようとした。
死んだ男に執着するのは止めろ、と怒鳴られて、口論に発展した事まであった。
また、お見合いの相手を見つけてきては私に会わせ、半ば強引に結婚の話を進めた。
お前もあと数年したら結婚相手も見つからなくなるぞ、と脅しめいた忠告をされ、渋々それを承諾したのだ。
今となってはもう、婚約を取り消すなどと、言い出す事も出来ようはずがない。

私はしばし憂鬱な気分になり、婚約者からの手紙は後回しにして、もう一つの手紙を見た。
差出人の書いていない、外国からの封筒。宛先の筆跡に微かな見覚えを感じ、私の心臓は少し鼓動を早くした。
のり付けを強引にはがし、便せんを取り出す。
そこには、懐かしい文字で、懐かしい名前が書かれていた。
不意に涙が溢れてきて、いくら拭っても止まらなくなった。手紙の文面すら読めないほど、私はずっと泣きじゃくっていた。
「……よかった……生きてた……」
199名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 23:56:21 ID:lLMc96ZD
手紙に「会おう」と書かれていた日が近づくにつれ、私は期待が膨らむと共に、不安も募らせていった。
私の今の状況を、どうやって彼に伝えたらいいのだろう?
私が婚約していると知ったら、彼は怒るだろうか?泣くだろうか?
それを考えるのは怖かった。でもそれ以上に、「会いたい」という純粋な気持ちが勝っていた。
答えを出す前に、約束の日を迎えてしまったのは、間違いだったのかもしれない。
約束の日の朝、私は早朝に目が覚めてしまい、二度寝する事も出来ず、仕方なくいつもより時間をかけて身支度する。
彼は時間ぎりぎりでないと現れないと分かっているのに、30分も早く約束の場所に着いてしまい、
何もする事が無く、ただ通行人を眺めて、壁により掛かって立っていた。
待ち合わせでこんなにドキドキするのは、初デートの時以来ね、と自嘲気味に考える。
もう何度も見直した腕時計をまた確認していた私は、人が近づいてきたのにも気付かなかった。
私が彼に気付いて、顔を上げると、不意に肩をつかまれ、強く抱きしめられた。
「よお久しぶり!元気だったか!」
「ちょ、ちょっと何してんのよ、このバカッ!」
私は恥ずかしさの余り叫んで腕をふりほどこうとするが、彼の腕ががっちりと私をつかんで放さない。
「痛いってば!恥ずかしいから人前で抱きつくなって、前から──」
そこで不意に言葉が途切れた。こんなありきたりなやりとりも、数年ぶりだという事に気付いたから。
「……遅すぎるわよ……ひっく……何年待ったと、思ってんの……」
「悪い。本当にすまなかったと思ってる……あーよしよし、泣くなよ」
「な、泣いてなんか無いわよっ!本っ当に、心配したんだからね……!」
と言いつつ、彼の胸に顔を埋めてすすり上げる。これじゃ全然説得力無いよね。
それでも彼は、何も言わずただ私の背中をさすっていてくれた。
私がだいぶ泣きやんだ頃、彼が小声で言った。
「なあ、いつまでも抱き合ってるのって恥ずかしいから、喫茶店でも行かないか?」
こ、こいつって……。私は呆れ返りながらも、小さく頷いた。
200名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 23:57:26 ID:lLMc96ZD
席に座って、コーヒーを二つ注文すると、私はおそるおそる口を開いた。
「ねえ、私、話したい事が……」
「この店、まだやってたんだな。流石に店員は変わってるけど。懐かしいなー」
「う、うん。他の店は結構無くなっちゃったけど、この店はね」
「お、そういえば向こうでの事まだ話してないよな?聞きたいだろ?俺の冒険譚」
「そんな大げさなの?……まあ、聞くけど」
「ああ、もう話だけで三冊は本が書けそうなぐらいだぞ。いいか……」
彼の話は時に面白く、時に真面目で、明らかに誇張が入っている部分は、私もくすくす笑った。
話はずっと続き、彼は滝が流れるように話し続けた。まるで私に話に割り込む隙を与えないように。

「……で、まあようやくここに帰って来れたというわけだ」
「ふふっ、本当に本が書けそうね。小説家になったらいいんじゃない?」
「だろ?やっぱりな。……いっとくが、この話をしたのはお前が初めてだぞ」
「ん。ありがと。でさ……」
「あー、長話したら喉が渇いたな。お前もお代わりいるか?」
「いや、いいよ……あの」
「そういえばお前、約束の事覚えてるか?あの……出る前の」
「あ……」
どきん、と心臓の音が突然高くなり、顔が赤くなる。
彼は鞄から箱を取り出して、私に手渡した。
「こんな場所で悪いんだけどさ……」
震える手で箱を開けると、そこから出てきたのはシンプルな作りのネックレス。
……指輪じゃ、ない?
さっと顔を青ざめさせる私に目線を合わせず、彼が少しトーンを落して、ぽつりと。
「約束、間に合わなかったみたいだな。ごめん」
201名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 23:58:30 ID:lLMc96ZD
「知ってたの……いつからっ!」
思わず頭に血が上り、声を荒げる。
「昨日から。偶然友人にあってな。信じてなかったが……今日のお前見てたら、分かった」
「違う……私は、結婚なんてしたくなかったのに」
「働き者の、いい男だそうじゃないか?俺なんかよりよっぽど、お前のためになるさ」
「違う!そんなんじゃないの!私はあなたがっ」
「何年も連絡一つよこさない男と、一週間に一度手紙をくれる男と、どっちがいいと思う?」
私は不意に激昂して、彼の頬に平手を打ち付けた。高い音が周りに響く。
「何も分かってない!なんにも……!」
「いや、わかってるさ」
打たれた頬を押さえつつ、彼が伏し目がちに呟く。
「噂を聞いた時、俺は正直お前を恨んだよ。
 だけど、女を何年間も待たせて、ずっと帰れなかった自分が不甲斐なかったんだ」
彼はそれなり何も言わず、二人分のコーヒーの代金を机に置いて、立ち上がった。
「もう俺は死んだんだ。そういう事になってたし、そういう事にしておく方がいい。じゃあな」
「待って……待ってよ!」
店から出た彼を走って追いかけ、必死で背中にしがみつく。
「私……あなたと一緒がいいの……
 あなたと一緒に結婚して、あなたと一緒に暮らして、あなたと一緒に子ども作って……!」
それでも彼は構わず私の腕をふりほどき、逃げるように足を速める。
「止めろ。お前を後悔させたくないんだ」
そう言う彼の声は、少しだけ震えているようにも思えた。
「……ッこのバカ!後悔ならもうしてるわよ!」
彼の後ろ姿に向かって怒鳴りつける。悔し涙が止まらなかった。
「……幸せになれよ」

自分の部屋に戻って、彼にもらったネックレスを壁に叩き付ける。
近所迷惑も顧みず、私は大声で憤懣をまき散らした。
「バカ……バカっ!本当に馬鹿よ……私が、幸せになれるのは──」
──あなたの側にいる時だけなのに。
202名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 23:59:13 ID:lLMc96ZD
以上。
203名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 02:19:01 ID:Id5aSzws
GJ!
それぞれ味があってちょっとした変化がおもしろいもんだね
204名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 03:22:29 ID:KPnglw/k
男性サイドで書いたの見てみたい
205名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 03:32:12 ID:6u7t2Ml/
「ささ、今からわらわと共に寝ようぞ」
「…………普通、女王陛下のほうから夜這いという話はあまり聞かないと思うのですが」
「気にするでない。お主が奥手で、いつまでたってもわらわの寝室に来ぬのが悪いのじゃ」
「そういう問題ではないのですが……私は一応個室が与えられているとはいえ、ただの陛下の家臣にすぎませんので」
「む?そのようなことは関係ないぞ。わらわは身分の違いなどにはこだわらぬ。みな、好きなように恋すればよいのじゃ」
「先代の陛下……あなた様のお父上が亡くなられてまだ二年もたっていないというのに、現在の陛下であるあなた様がそのようでは困ります」
「何を言うか。わらわはきちんと国政をこなしておる」
「それは確かにそうでございますが……」
「ただ色恋に関してのみ甘いだけではないか。わらわはそなたのことが好きじゃ。愛しておる」
「……由緒ある王室に汚れた血を混ぜてはいけませぬ」
「お主のどこが汚れておるというのじゃ。わらわと一緒じゃ。違いなどありはせぬ」
「駄目なものは駄目です」
「むう……」
「お諦めください。いずれあなた様も結婚なさる時がくる。その時まで純潔をお保ちに……」
「ほう、そうかそうか!では今まで暗黙の了解であったが、今度正式に身分の違う者同士でも結婚することのできる法を出すとするか!」
「へ、陛下!?」
「そうなればそなたも文句はなかろう?この国でわらわに逆らえる者などおらぬ。きっと再来月には通してみせるぞ、楽しみにしておけ。それでは今夜のところはさらばじゃ!」
「陛下!お、お待ちください!陛下ー!」
206名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 03:35:19 ID:6u7t2Ml/
スレの趣旨に反している気がするが思いついたんだから仕方ない。
207名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 05:03:52 ID:BF9I1hMj
ばっかてめ、メチャメチャ萌えたじゃねーか。どう責任とってくれんだハァハァ。
208名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 22:31:11 ID:XMp3weSa
いや、GJ。何かほのぼのしてていいな。
…っていうか個人的には、一度エロかっこよく押し止めて、後で報われるのが好きw
209名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 23:51:50 ID:6+s/nx7L
エロカッコよく押し止めた後に報われるスレが欲しい所
2101/3:2006/05/14(日) 01:35:57 ID:VrizNR0e
「私は…もう貴女の幼馴染でもなければ、友人でも、部下でもないのです」
ゆっくりと自分でもかみ締めるように言った。
「貴女は、わが一族の仇なのです」
目の前にいるこの痩せた誇り高き女王が。
美しく鋭い瞳に燃えるような赤毛を持つ女性が。
私の幼い頃から愛する人が。
「ああ…そうだ。だが、ならば何故!」
同じ年頃の娘よりも少し低くかすれた声が、今は尚一層低く震えて俺を責めたてる。
「いつでもできたはずだ!私がお前を雇ったとき、私がお前を側に置いたときに!」
その通り、いつでも首を刎ねる機会はあった。
しかし剣に手をやるときまって、まだ先に機会も時間も十分にある、と手を下ろしていた。
「何故すぐに殺さなかった」
結局私が剣を抜く前に女王が私の正体を知ってしまった。
少し年上の彼女が幼少の時に弟のように可愛がり、いつのまにか彼女の前から消えてしまった少年。
彼女の一族がこの国を乗っ取る際に殺し損ねた王子であると。

「私がお前との記憶を思い出す前に…愛する前に、何故…」
女王として君臨していた姿はどこかへ消え、彼女は涙をぽろぽろと流しながら嗚咽を押えていた。
もう私の前にいるのは冷徹で残酷と呼ばれていた女王ではなく、優しい幼馴染の女性だった。
「何も知らずにお前を愛した私への哀れみからか」
それに答える言葉が見つからず剣の柄を握ったままでいると、
突然彼女が俺の背に腕を回し唇を押し付けた。
唇を割ろうとする舌の動きに、私は慌てて彼女から顔をそらし逃げた。
「お前が私を哀れに思うのなら、そう思ってくれるのなら、
 私を抱いてくれ…お前を愛する惨めな女として。
 …それから仇として首を刎ねろ」
半ば悲鳴をあげるようにそう言い放ち彼女は私を揺さぶった。
「お願いだ…。一度でいい、一度で…」
ゆるく巻いた髪が彼女の震える肩から背中へ滑り落ちる。
「…ずっと、ずっと愛していたんだ」
2112/3:2006/05/14(日) 01:43:26 ID:VrizNR0e
私にすがる彼女を抱きしめることができればどれだけ楽であろうか。
今すぐにその涙を拭き取り、美しい赤い髪に口付け、何度も愛しい名前を囁くことができるのならば。
そうすればきっと貴女は昔のように優しく微笑みながら私の名前を呼んでくれるだろう。
私と彼女の血がそれを許せば。

静かに私は首を振り彼女の体を押し戻した。
思ったほどの抵抗はなく、糸の切れた人形のようにぎこちなく彼女は一歩下がった。
顔を上げると彼女の顔は目を見開き絶望に包みこまれたかのように歪んでいた。
そして素早く私の腰の短剣に手をかけ叫んだ。
「ならば…早くお前の目的を果たせ。それとも私をそのように苦しめるのが目的であるのか!」
ガラス球のような灰色の瞳から涙が後から後から溢れていた。

この国を親から受け継ぎワンマンに合理的かつ理性的に支配する彼女を切れば
権力に胡座をかくだけの残りカスは司令塔を失ったも同然。
敵討ちは順調に進むはずであった。だが。
―――私に、できるわけがない。
やんわりと剣から彼女の手を離し、距離をとるように身を引いた。
「私は貴女を殺すことは出来ない。けれども貴女に思いを残すこともいけない」
私は彼女に笑いかけた。
「私は復讐者という役割を上手く演じられなかった。
…そんな役者は速やかに舞台から退かなくてはなりません」
2123/3:2006/05/14(日) 01:52:03 ID:VrizNR0e
「行くのか」
戸口へ向かう私に、彼女は後ろから声をかけた。
「私の正体はもう一部に知られています。
 …目的も果たせなかった今、ここにいて何になりましょう」
ここに留まり続ければ彼女の一族は私を側に置く彼女自身へも不信を抱くであろう。
離れるのが、一番なのだ。
「はは…敵討ちもお終いですね。女一人切れない私には始めから荷が重かったのでしょう。
 私は一族の墓を廻り、どこか新しい土地へ行くことにします」
「…この国で実権を持つのは私だ。
 弟や老いた父、他の一族諸侯にもお前のことに口出しはさせない」
「貴女の一族…王族にとって敵である男にそこまでする理由がありませんよ、女王陛下」
理由か、と小さく呟いて彼女は目を伏せた。
「愛している。私は、お前を思い止まらせる理由には、なれぬか」

次の瞬間、堪らず彼女の手を取り引き寄せきつく抱きしめた。
「愛しています」
もう少し力を入れれば壊れてしまうのではないかと思うほど痩せた体。
豊かな髪から花の匂いが香る。
誰がこれからこの泣きじゃくる脆い女性を守るのだろう。
私がいつまでも彼女の側にいれば…。
「嫌、嫌だ…行くな!一緒に…私も一緒に…!」
だが、私はもうここにいてはならない。



足音が離れていく。
女王は一人、もう戻らないぬくもりを思い目を閉じた。
お姉ちゃんは特別に大好きだから、大きくなったら僕がお嫁さんにしてあげる。
小さい頃の他愛もない約束が胸によみがえる。
指輪代わりの花で編んだ冠をあれは私に被せ、私の髪を好きだと言って撫でてくれた。
二度も私に恋をさせて、こんなにも弱弱しい女にして、惨めな思いにして殺すつもりだった。
…そう言ってくれたのならばどんなに嬉しいだろう。
愛しています。
最後の言葉は彼女の胸に深く突き刺さったままであった。
213名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 01:53:51 ID:VrizNR0e
書いてみた。何か押しとどめる分足らないや。
女王たまモノで被っててごめんよ205。
っていうかマジ205の女王たま萌える。従者がエロカッコ良く押しとどめ続けるのきぼん。
>>209
なんかこう兄弟スレ立てたいよな。でもあくまで寸止めなところがまた想像を促進させてくれるのかもしれない。
214名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 13:06:06 ID:4LZdiODs
「先日、隣国の女王が前代未聞の法を出したそうだな」
「そのようですわね〜。なんでも身分の違う者同士でも結婚することができるとか」
「馬鹿な法を出したものだ。何を考えているのかわからん」
「それで国中の貴賤を問わない殿方が、自分も女王サマと結婚してこの国の王になれる!って思って城にた〜っくさん押しかけてきたらしいですわよ」
「自業自得といったところか。その程度の騒ぎをあの女王が予測してなかったというのも考え辛いが」
「ま、当の本人はその方々を適当に追っ払わせて、一人の自分の家臣と婚約することを宣言なさいましたけどね。とはいえ、その家臣の方が未だに抵抗しているようですが。まあこれは時間の問題でしょう」
「……貴様が妙に嬉しそうに見えるのは気のせいか?」
「あら、気のせいではありませんことよ陛下?私といたしましては、本音を言えば隣の女王サマが羨ましいんですもの」
「羨ましいだと?」
「ええ、家臣と婚約なさるなんて。それは例えば陛下と私が婚約できるということですもの」
「それが羨ましいのか?」
「ええ、とっても」
「……残念だったな。我が国ではそのような法は出さぬぞ。由緒ある数百年続く王室の血を汚させるわけにはゆかぬ」
「はいはい。わかってますわよ陛下」
「私本人としては……その……決して貴様が嫌いというわけではないがな」
「そのお言葉だけで十分、私は幸せですわ」
「……貴様が妙に寂しそうに見えるのは気のせいか?」
「気のせいですわ」
215名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 13:09:35 ID:4LZdiODs
押し留め分が足りないにもほどがあるが、まあ後日談だし。

>>213
GJ!!
俺はシリアスなのは書けないから羨ましい。
そちらの女王たま切ねえええ
216名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 16:14:33 ID:NpAUD5GU
>>205>>214も大好きです
特に>>214の女性従者がちょっと年上だったりしたら、もうたまりません
217名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 17:32:19 ID:IcRrY6+i
そこは陛下おにゃのこを受け入れろよハァハァだよな。寸止め辛え
218名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 18:44:17 ID:UzbGAgWo
おしとどめるのはイラつくが萌える
219名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 20:06:47 ID:Do8xstm5
やっぱ重要なのは
1:女性側の求め度
2:男性側の押し留め度

女性の押しが強ければ強いほど
男性は強く押し留めなければならないし
男性の中で女性への想いが強ければ強いほど葛藤が生じる。
ある程度パターン化されてしまうし、変化球も投げづらい。
簡単そうだけど難しい。このスレ奥が深くて好きだ。
220164:2006/05/15(月) 16:02:56 ID:ro3rwG3A
こんにちわ
このスレて悲しい恋がメインですよね。
>>205さんのようなお話はすごくめずらしくておもしろいです。
また二つほど思いついたので近日中に投下します。
……リメイク希望で、ボソ
221名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 23:25:15 ID:NsUBhFGp
>>205
とりあえず、身分の差を力技でねじ伏せたのは初めて見た。

>>220
最初っからリメイクリメイクと……
お前自身の文章で住人のスピリットに語りかけてこい!
222名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 00:22:57 ID:DDa0+tvO
2231/3:2006/05/16(火) 05:33:52 ID:aG7N9JnF
一糸纏わぬ少女の裸身を、彼は半ば呆然と見詰めていた。
普段から露出の控えめな衣装ばかり身に付けていたためか、少女の肌はとても白く見える。
適度に鍛えられた、まだ成熟しきってはいない身体。
細い足首。ふくらはぎ、太腿は無駄な肉がなく、しなやかだが、腰の曲線は女性らしい柔らかさを感じさせる。
陰りを注視するのは躊躇われて、なだらかな腹部を上がる。
組んだ両腕に押しつぶされた胸の谷間が見えた。
大きすぎず、かと言って小さすぎもしないそれは、自分の手の中に調度すっぽりと収まるのではないか。
らしくもない想像をしてしまう。

肩が小刻みに震えていた。
見れば、少女の頬はこれまでにないほど紅潮していた。耳まで赤い。
自分で裸になっておきながら、男の観察するような視線から逃れるように、俯いて床を見ている。
伏せた目に落ちる睫の影は、少女をいつになく艶かしく見せていた。
身じろぎして、肩にかかる黒髪がはらりと鎖骨に落ちた。
抱いて欲しい。
言葉にすることなく、少女は懇願していた。
永遠のように感じられた僅かな時間の後。

「すまない」

彼はやっとその一言を発した。
ゆっくりと少女の側に寄ると静かに跪き、先ほど彼女が落としたばかりのシーツを手に掴む。
立ち上がって、やはり静かに、宝物をくるむように少女の身体に巻きつけた。
「どうして」
視線を合わせると、少女の目には拒絶された悲しみが溢れていた。
それはどんどん膨れて、とうとう耐え切れず、頬に零れ落ちる。
2242/3:2006/05/16(火) 05:34:32 ID:aG7N9JnF

「やっぱり、私の『好き』と、あなたの『好き』は違うものなの」
しゃくりあげるのを堪えて発した言葉は、低い呟きのようになってしまった。
少女にしてみれば、これは一種の「賭け」だった。
自分を大事にしてくれるこの人の気持ちが、自分が抱く想いと同じものかどうか。
勝率は半分。だが彼女は期待してしまっていた。
結局自分一人が盛り上がっていただけだったのかと、惨めな気分が心を支配していく。
彼の顔が見れない。拒絶された以上、もうこの場所にはいたくない。
自分の姿を顧みず、少女が立ち去ろうと一歩下がった、その時だった。
「そうじゃ、ない」
何かを押さえ込んだような声。
少女が、ゆるゆると顔を上げる。
今度は逆に、彼が視線を彷徨わせていた。
暫く、お互い無言の状態が続く。

辛抱強く少女が待っていると、ようやく彼は口を開いた。
「私は、恋を知らないから」
あまり多弁でない彼は、自分の心の内をどう伝えるべきか、迷っていた。
だが言わなくては。言葉を惜しんではならない。
彼女には自分の心を理解してもらいたかった。
意を決し、考え考え、一言ずつ、少女に向けて言葉を発していく。
「今まで、自分を高めることが全てだったから。
恋というものを、私はしたことがなかった。
だから、君に対するこの気持ちが恋なのか、そうでないのか、分からない。
……自信がないんだ」
最後のほうは本当に自信の無さが表れて、消え入りそうな呟きとなってしまった。
2253/3:2006/05/16(火) 05:35:08 ID:aG7N9JnF
情けない。彼は心の中で舌打ちする。
見れば少女は、ポカンと、驚いたような顔をしている。
それはそうだ。
彼女には常に余裕ある態度で接するように心がけてきた。
信頼を失いたくなかったから。
今までくぐった、どんな修羅場でも、こんなに緊張したことはない。
彼は自らを叱咤すると、改めて少女を真っ直ぐ見つめ直す。
「こんないい加減な気持ちで、君に触れたくはない」
やっとの思いで言い切ると、はぁ、と大きく息をつく。
彼のそんな態度を見て、少女はそれまでの陰鬱な気分が、嘘のように消え去っていることに気づいた。
全く。どこまで堅物なのだろう、この人は。
苦笑すると、目尻に残った涙を指先で拭った。
「一大決心して、脱いだのに」
「すまない」
「私の裸、変じゃ、なかった?」
「……綺麗だった。本当に」
「それなのに、してくれないんだ」
「欲情と恋情は違う、……と思う。だから、私は」
「もう、分かったわよ」
言葉の応酬と共に一歩ずつ近づいて、

「……今はこれで我慢する」

最後の一歩を踏み出すと、少女は彼の胸にぎゅっとしがみついた。
腕を伸ばしたせいで、身に纏っていたシーツがパサリと落ちる。
彼は一瞬だけ身体を強張らせたが、その後は応えるように、少女を優しく腕の中に収めた。
すまない、と、もう一度耳元で囁く。
「後になって、『なんであの時あんなに悩んでたんだ』って、後悔するんだから、絶対」
小さく鼻を啜ってぼやく少女に、かもしれない、と返事をして、彼もまた苦笑した。
226名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 05:39:12 ID:aG7N9JnF
あんましエロカッコ良くなんなかったよ。
野郎がへたれでスマン。
227名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 13:31:33 ID:9pcnwnSO
>>226
これでエロカッコ良くないだと……?
じゃあココの住人はどれだけレベル高いんだ!?
228名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 17:43:33 ID:GMIe6GyT
>>226
何このエロカッコ良い朴念仁
いずれ報われる系のは呼んでてほのぼのするなあ

GJ!!
2291/3:2006/05/19(金) 01:51:44 ID:0azb3Bi6
「なんのつもりだ」
のしかかってくる女体に僅かに眉を顰め、だが男は醒めた声で問いかけた。
「女性にそれを言わせる気?」
ソファーに深々と腰掛けた男に跨りながら、曖昧に笑って女は言葉を返す。
長いスカートが捲れ上がって、真っ白な太腿がむき出しになる。
「正気か?」
「せめて本気と言ってちょうだい」
言いながら、ブラウスのボタンを細い指で一つずつ外していく。
ほどなくして繊細なレースが施された白いブラジャーに包まれた、大きく形の良い胸が現れた。
だがそれを見ても、男の冷静な態度は乱れない。
男の沈着冷静な態度はいつものことで、その反応に女が気分を害することはなかった。
あえて気にしないように努めているようにも見える。
「ねえ、……触って」
しかしその唇から吐息と共に吐き出された言葉は熱く、湿っている。
どこか思いつめたような瞳で、じっとりと男を見ている。
返事をせずに男は右手を動かした。

「あっ!」
直後、女が声を上げた。だがそれは快感から発せられたものではない。
男の手は、女が予測していなかった場所に潜り込んでいた。
「ちょっ……なんで、いきなりそこからなのよ」
「俺の勝手だ」
「あ、……っ」
下着越しに、男の中指が秘部の中心を擦りあげる。
女の腰が反射的に揺れた。
2302/3:2006/05/19(金) 01:52:18 ID:0azb3Bi6
落ちてしまわぬように、彼女は慌てて男の両肩にしがみつく。
右の太腿を左手で掴んで押さえ、悠然と背もたれに背中を預けたまま、男は右手で女を嬲り始めた。
「……っ、んっ、ん」
揃えた中指と薬指が、布一枚を隔てた割れ目に押し付けられて、更に何度も往復する。
その度に、噛み締めるようなくぐもった声が女の口から漏れる。
思い出したように親指で核をぐり、と軽く押せば、息を呑むのと同時に腰が跳ねた。
男は女を見上げた。
快楽に身を任せて悶える女は美しかった。
切なげに眉を寄せ、閉じられた瞼が痙攣する度に長い睫が震える。
薔薇色に染まった頬が、吐息で塗れた唇が、切れ切れに耳に届く細い声が、欲望を刺激していく。
己の中心にも熱が集まっていくのを、男は自覚した。
だが、身体の熱とは裏腹に、彼の心の一部は依然として冷えたままだった。

与えられていた刺激が唐突に止んで、女は訝しんだ。
そっと目を開けると、男の醒めた目が自分を見据えていて、彼女は少しだけ怯んだ。
「ここまでだ」
感情の伴わない声で告げられる。
「な……」
「あとは自分でどうにかするんだな」
あまりと言えばあまりな、無体な事を続けざまに言われ、流石に女も怒りを覚える。
「……こんな状態にしておいて、放り出す気?」
押し殺した声で抗議する。
2313/3:2006/05/19(金) 01:53:51 ID:0azb3Bi6
己の吐き出した蜜によって、女の下着は既にシミを作るほどに濡れていた。
離れた男の指を求めて、中心は今なおじんじんと疼き続けている。
声に震えが混じっていたのは、快感の余韻のためだ。
「あなただって、おさまりがつかないんじゃないの」
皮肉を込めた反撃に、鼻で笑って一蹴する。
「俺にもプライドがあるんでな」
醒めた視線の中に、僅かに熱が篭ったのを、女は気づいたかどうか。
男は更に決定的な一言を放つ。
「あいつの代わりはごめんだ」
途端、女の顔色がさっと変わった。
皮肉の倍返しを受けて罪悪感に歪んでいく女の表情を見る男の目は、元の醒めたものに戻っていた。
男は黙って女を押しのけた。
女は、何も言わなかった。
扉の前に立ったとき、背後から女が静かにすすり泣く声が聞こえたが、男は無視して部屋を後にした。

外に続く廊下を歩きながら、女が惨めに己を慰めればいいと、男は思った。
自分が与えた快感をなぞるように、自分の指の動きを思い出しながら。
自分のことを考えながら。
「不毛だな」
自嘲に口角が上がった。
232名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 01:55:05 ID:0azb3Bi6
>>1のお題目から外れてしまった。
寸止めは勿体ねえええ!と思うくらいのが萌えるけど
男側の対応はどこまでがセーフ?

>>227>>228
レスありがd。
自分もいずれ報われる系好きです。
でも報われるかどうかわからんのも好きw

それにしても連続の投下になるのが気が引ける。
他の方の投下を待ちながらドローンします。
233名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 03:04:40 ID:VLCwIm8E
おお、スゲェの投下されてんな!GJ!
確かに>>1のお題とは違うけど、こういうのもたまにはアリじゃないのか。

男の行動よりも、ちゃんと女性の求めをエロカッコ良く押しとどめている
内容であるかどうかじゃないかなーと思うぞ。
だから男がどこまで及ぶのかはさして重要じゃなさげ。
さすがに挿入は無しだと思うけど。
234名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 16:42:58 ID:HQFuvUyK
エロカッコ良い!
235名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 23:52:52 ID:5aAAdmNK
>>229
GJ
男も女もなんだか大人だ…
236名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 21:18:07 ID:8BpdRDSX
触ったら負けかな、と思っている。
237名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 10:53:19 ID:VuBTjdLz
じゃあ触れないようにやろう。
238名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 10:54:47 ID:VuBTjdLz
 仰向けに寝具へ押し付けられた男の上に跨る少女の髪には今もまだきつく結い上げた跡が
残っている。俯いた顔はわずかに上気し、伏目がちに熱を孕んだ目尻に光るのは涙。
先ほどから少しづつ溜まっては時折零れ落ちるにまかせられ、頬にはその跡がいくつも
乾いてはまた刻まれていた。

「なぁ、いい加減これ外さないか?
 こんな可愛い子を慰めてやれないんじゃ色男の名が泣くってもんだ」

 言ってわずかに身じろぐ男の体の下、後ろ手に拘束する手枷が存在を主張して鈍い声を
上げた。押し倒された場所が柔らかい上に枷の下にも手首を痛めないための布が巻かれて
いるが、二人分の重量を乗せられたそこは傷むだろう。それでも男の声色は痩せ我慢を
感じさせない平素の軽口だ。

「ダメ。そんなこと言ったって信じてなんかあげないわ、嘘つき」

 そんな男の腹に乗り上がった少女はもう何度も交わされた言葉のやりとりを繰り返す事に
飽きたのか、心ここにあらずといった風情で男の胸元から脇にかけてを指先で撫でている。

「じゃあ頼むから泣くなよ。拭ってやれない涙は男にとっちゃ猛毒だぜ?」
「女にとっても毒よ……いっそ一緒に死にましょうか」

 泣き笑いの顔になった少女の唇は男の頬をかすめて顎先までを辿る。最後に剃ってから
日にちが立っているせいか細かな無精ひげの生え始めるそこに熱い舌が触れるのを諦めた
表情で男は受け入れた。
 濡れて柔らかな粘膜を短い針のようなひげが削る感覚は少女にとって痛みに近い。
そのまま一頻り撫で終えて名残惜しげに離れる舌はいっそう赤く、異物の感覚ゆえか
溢れた唾液が唇の端を一筋垂れた。
 戻した舌でぐるりと口内を舐める。いっそいくつか傷でもついていないだろうかという
少女の期待を裏切って口の中には汗と唾液の味があるだけだ。
 見下ろす男は変わらず困ったように眉根を寄せて、頑是無い我侭をやり過ごそうとする
大人の顔でこちらを見上げている。昔はそれを自分が子供ゆえの余裕と思っていたけれど、
今なら分かる。

「ロクデナシ」
「痛いとこつくねぇ。ホントの事だ」

 そうだ、本当のことだ。自分を女と見ない目と感じない体。そのくせ言葉だけはいくら
でも少女を愛し賞賛し、陶然と満たしてくれる男。
 それがこの自称女好きの正体だ。

「外してくれよ、な。そしたらキスしてやるから」
「どこに?」

 短い言葉に皮肉の棘を生やして少女はうっすらと笑う。

「頬は嫌よ。額もダメ。手になんかしたらそのまま引っぱたいてやるんだから」
「分かった、どこでもお前の好きなとこにしてやる」

 懇願のような物言いをしながら裏切るのは下がる眉尻と上がる片頬。最後には少女が
自分の言葉を受け入れると確信している男の顔は間抜けなくせに抜け目ない。
 ああ本当にロクデナシ。
 深いため息を一つ吐いてから少女は男の胸に頭を預けた。
239名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 10:55:53 ID:VuBTjdLz
時代、場所設定が曖昧なのはわざとだから突っ込まないで。
240名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 16:52:08 ID:JPw8qlRf
エロいなあ
241名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 17:53:02 ID:EdVglVdY
エロカッコいい!
手を出されないのは逆に大事にされてる証だと思うんだが
片方は男女の恋、もう一方は親子愛で思いのベクトルが違うのは悲しいね。
242名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 01:13:26 ID:p61d9izk
エロカッコ良い…!
この板で久々に本格派ショートショート読んだよ。
心の底からご馳走さんでした、GJ!
243名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 11:35:42 ID:Bm4C09fs
どれもレベル高杉・・・
244名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 16:14:29 ID:CpiCqWe6
幸せ、そんな歯の浮くような言葉は俺には
今では何だったのかも思い出せないんだ
245164:2006/06/01(木) 19:23:48 ID:q56n0mM+
気がついた時、彼はどことも知れぬ砂浜に横たわっていた。
足に寄せる波を感じながら思考を回復させていく。
「生き…てる…?」
空に浮かぶ太陽に手をかざし眩しい光を遮る。
「ここは…どこだ」
ガサ
「っ!?」
少し離れた南国風な森のの草群が音を鳴らして揺れる
寝てる体を起こし、立とうとするが体は軋み言うことを聞かない。
(やっぱり…痛い、生命あっただけでも奇跡か…)
「誰だっ!?」
声だけは大きく虚勢をはり相手を威嚇する
最初は気付かなかった痛みが少しずつ体を侵食し意識を朦朧とさせる。
「くっ…」
体はグラつき砂浜に倒れこむ
(相手はなんだ?人か、鳥か、肉食獣か、虫は…勘弁して)
無駄な推測を繰り返す
しばらくして、四つんばい…ハイハイをしながらこちらに向ってくる女性を確認した。
(なぜハイハイ?)
頭に?が浮かびそうな顔で女性を見つめる。
「け、け、け、怪我してるんですか!?
敵じゃなさそうだ
「ん、まぁ…ね、ちょっとヤバいぽいかも」
「そそそ、そうですか、人呼んできましょうかかか?」
「助けてくれるなら嬉しい、あ、その前にさ」
「は、はい!?」
「その、落ち着こう?
そのまま行ったら、あらぬ誤解を招きそうだ」
数分、深呼吸や話をした
どうやら彼女は俺の大声に驚いていたらしい
「もう、驚いちゃいましたよ〜そのせいで腰が抜けちゃって…」
「あ…ははは、だからハイハイなのね
あ〜そろそろ落ち着いた?
そろそろ助けて…」
「あ!ごめんなさいぃ!!少しだけまっててくださいね!?」
そういうと彼女は森に消えていった。



書き蓄めた文章がパソコンごとあぼんしちゃった。
文章覚えてるので携帯から
これはエピローグということで…
続きはすぐ書きます。
(正直、最後までかけてなかった…
246164:2006/06/01(木) 22:40:50 ID:q56n0mM+
彼の回復は目覚ましかった。
あれだけひどかった傷ありながら一ヵ月で動けるようになり、いまでは町の手伝いまでするようになった。
でも
「定期船てさ、どれくらいでくるのかな」
「ん〜うちの町はあんまり大きくないから、島にくるのは半年に一度くらいかな?」
「うへ…じゃああと四ヵ月くらいか」
彼は、帰りたがっていた
当たり前な感情なのはわかってる。
でも私は、私は彼のことが好きになっていた。
行ってほしくない、これも私にとっては当たり前な感情だと思う。
しかし彼には帰りを待つ女が居るという、私にとってこの上ない邪魔な女だ。
「…〜い」
いつか別れが来ると思うと胸が苦しくなる。
「お〜い」
なんとか、引き止めたい。
でもどうやって?
「お〜い!」
「うひゃい!?ななななにかな!?」
「いや、ボーとしてたからさ、どーしたのかなぁ?て」
「あ〜なんでもないよ?うん、全然」
「え?あ、そう?俺そろそろ行くけど」
彼はなんというか鈍感な感じだ。
そういう性格なのか、例の女が居るからか
何度かそれっぽいことを言ってみたりしたがダメ
「私も行くよ大変そうだし」
「別に一人で大丈夫だって」
「とかいっちゃてさ、前みたいに迷子になって腹へったーとか言って倒れちゃうよ?」
「ん〜やっぱ付いてきて」「はいはい」
彼が行くところは岬だ、切り立った崖から海が見える。
かれはそこから船を探している、早く帰るために
247164:2006/06/01(木) 22:45:24 ID:q56n0mM+
「この町ってさ、水道とかないのに電気は通ってるよな」
「電気は遺蹟から取ってるて聞いたことがあるよ。
ろすとてくのろじーて奴だね」
「へ〜すごいなぁ…とっ、着いた!」
「ふぅはぁ疲れた…見つかるといいね…」
それからどれくらい経っただろうか
日は赤みを帯び視界がオレンジに染まる。
「船来ないね、そろそろ帰る?」
「あとちょい〜」
「そんな頑張らなくても…」
「ん〜でもさ、あいつ待ってるから、早く帰ってやりたいんだ」
彼の何気ない言葉に胸が痛む
「…この町で暮らすとか考えてないの?」
「え、ん〜」
「すこし不自由だけどさ、町の皆あったかいし」
「いや…」
「反対する人も居ないよ、むしろ大歓迎!」
「でもさ、俺には」
「あはは…また彼女?」
「えっ?」
彼が困惑の声をあげる
少し、私の声が震えていたからだ。
「…私じゃダメかな?」
ヤケになっていたのかもしれない
「私も好きだよ君のこと、その彼女に負けないくらい君のことが好き」
「…俺にはアイツを捨てることをできない、俺が好きなのはアイツだから」
「こんなに…好きなのに…」
「…ありがとう、ごめん」
それから三ヵ月、私と彼はあまり話さなくなった。
でも私は諦めたくなかった。
その日、私はある花を摘んでいた
そして今日も岬に彼はいた
「まだ、船探してたんだ」「ん?まぁ…ね」
「同じこと聞くけどさ、この町で暮らす気ないかな?」
「悪い俺は」
そう言って彼は倒れた
「大丈夫、少し眠るだけだから
少し眠って、少しだけ忘れるだけだから、少しだけ彼女のこと忘れるだけだから」
続く?
248名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 22:56:46 ID:TEp3KCFg
いやっほう!
249名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 08:52:31 ID:+ZCfBIY/
エピローグじゃなくてプロローグだな。
期待age
250名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 08:53:55 ID:+ZCfBIY/
いかんsageてた。
251164:2006/06/02(金) 09:38:35 ID:m7RxQkm5
エロカッコよさも足らないしこのまま続けると駄作になりそう…
続けるか続けないかは住人さんの意見を仰ぎたいです。
一応これだけでも完結なので
252名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 03:16:08 ID:Fu+EmNn1
こっこの歌を思い出したよ。強くはかない〜ていう歌。
253名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 11:42:02 ID:+BSFCncz
>>49>>163 (全3レス)


 若いからといって、国王の仕事と言うものは、手加減と言うものはまったくない。
 執務室の明かりは、夜遅くまでともり続ける。
 哨戒の手にある明かりが、ゆっくりと、窓の外で動くのにふと手をとめて、彼は
「彼女らはもう眠ったろうか」
そう思う。先日、かけがえのない子を自分に与えてくれた、王妃と言う人のことを。
政略結婚ではあったが、子をなすほどの時間は、彼女に対してそれなりの愛着を
感じさせていた。
 静かに、彼の周りの時間が流れ、書類の山もそろそろ征服しそうな頃合。
「…一体何時間、そこに立っているつもりかな? 話があるなら入ってきなさい」
書類の山から目を離さずに、彼はそう言う。かすかにきしんだ扉の音の後、足音も
なく、彼女はその前に立った。
「お前のことだから、私の仕事を邪魔するのが怖かったとか、そんな理由ではないね」
「…何故?」
「何故、とは?」
「何故王女は、自分の意思なんて関係なく、どこか、知らないところに行かなくては
いけないの?」
彼は、妹の言葉を聞いて、また昼間、妻に縁談を紹介されたな、と思う。
「あれは、お前の幸せを思って」
「お兄様のそばを離れて、私、幸せになんか絶対なりません」
「言い切られても困るな。お前の年齢なら、もうどこかに縁付いていてもおかしくない
のに」
彼は苦笑いをした。
「私、お兄様のような方でなければ、どこにも行きません」
しかし妹は真剣に、そう言う。
「その子供じみた言い訳が、いつまで続くかな。
 もう効果がない証拠に、昼間、縁談を持ちかけられたのだろう?」

254名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 11:42:49 ID:+BSFCncz
「お姉様のご配慮は、ありがたく思います。でも」
「断る私達の身にもなってくれ。お前をいつまでもこの城に置いておくのか、いやな
話も、聞かないではないのでね」
「知ってます」
彼女は、つん、と金色の髪を揺らして
「もう十六になる妹姫を、誰にも婚約さえさせないのは、お兄様に異常な執着がある
からと」
「おや、私は、兄上が理想と言い張るばかりに、みすみす婚期をのがそうとしている
と聞いているがね」
どちらもうわさとして、本当に流れていた。兄は書類の山から何か一枚を探し出して
来る。
「早いものだね、もう十六歳になるのか。今年のお前の誕生日の舞踏会の趣向はどう
しようか、係りのものが伺いを立てに来たよ」
妹は、そんな兄を、少し恨めしそうに見る。
「そんなもの、いりません」
「いらないというわけには行かないのが辛いところだ」
「そうやって、私にお嫁の行き先があるかどうか、お兄様もお姉様も家臣たちも探す
のが、本当の目的なんでしょう? そんな目的のために開かれるのなら、そんな会、
いりません」
「強情な王女様だね」
兄は根負けした、と言いたそうに書類を投げた。
「それでは、私や彼女がお前に秘密で用意させている贈り物が無駄になってしまうね。
 その贈り物を作らせる金は、一体どこから出ているか、知らないお前でもあるまい?」
やんわりと、たしなめるような口ぶりになる兄の顔を見て、妹は言う。
「ほしいものなら、あります」
「へえ、何が欲しいんだ」
「お兄様」
あまりにあっさりと言う。
「私が欲しいか、面白いことを言う」
兄は最初笑ったが、妹の視線は、明らかにその反応に面白くないものを感じさせていた。
「正気の沙汰か?」
彼は眉を寄せる。
255名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 11:46:03 ID:+BSFCncz
「正気です。お兄様さえいただけるなら、私その後、どんな下劣な男に嫁がされようとも、
我慢します」
妹の視線は、本物だった。
「お姉様たちのことがありますから、いい控えてきました。
 でも、このお城にいる間だけは、お兄様を私にくださいまし。
 私も、…お兄様にすべてを差し上げます」
彼女は、衣装を合わせていた紐をぎゅっ、と引き解く。しかし、その衣装がほどけおちる
のと、彼が普段使いにしているローブが着せ掛けられたのは、ほとんど同時だった。
「…そうやって、お兄様は優しいから…」
彼女の目に、涙がたまってくる。
「私、ますます離れられなくなります」
「そういってくれるのはうれしい。しかし、勘違いをしてはいけない」
兄は、ぽつりとおちた妹の涙が、着せ掛けたローブにしみこんでゆくのを、何とはなしに
切なく見た。
 ふわっ。彼女の体が宙に浮く。そして、彼の腕の中に納まる。ローブに包まれて、その
内側にある下着姿の彼女の体は、誰かの手が触れれば、すぐにでも鮮やかに花開きそうな、
そんな予感を秘めていた。
「ここまで美しく育て上げたのは、確かに私の自慢だが、そんな見返りを求めての
ことではない」
きょうだいの顔がぐっと近寄り、兄がささやくように言う。
「お前の美しさは、ふさわしい誰かと結ばれて、私の心を苛むためにある」
そして、彼女に口付ける…その額に。
「部屋まで送ろう。
 私達が痺れを切らして誰かをつれてくるか、それともお前が自力で、お前のいう私の
ような男を見つけてくるか、根競べといこうじゃないか」

*****
・姫君と兄王
まさかそこでその名前をみるとは…
256名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 00:37:08 ID:ptNlovdo
お兄様!
涙が少し浮かびました、その優しい気持ちに。
読んでて胸がツンとしました。ありがとうございます。
257名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 01:49:27 ID:3lNo+843
ぐ、ぐっじょぶ!
258名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 01:39:41 ID:FAYqoWbO
GJ!お兄ちゃんエロかっこいい。
259名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 02:00:46 ID:p4eqKPNz
乙!
某聖戦の系譜のキャラで脳内再生されるな。
260名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 02:05:03 ID:8fZXs/gI
男一人、女二人で構成されてる兄妹なんかいたっけか
261名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 04:26:46 ID:D/LWnelP
>>259
まあ、実際妹が連れ合いにするのは
傭兵だったり盗賊だったり、なわけで。
262名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 16:08:52 ID:XxG16BIp
いずれどこぞかのコピペだと思うが


とある大学の教授の部屋を若い女学生が訪れた。
「先生・・御願いです。今度の試験でどうか私を合格させてください」
「その為なら・・私・・なんでもします・・」
女学生は教授の前に跪き、長い髪をなで上げながら
彼の瞳を見つめ、さらにつづけた。
「あぁ・・なんでも・・ねぇ・・御願い・・」
教授も彼女の瞳を見つめる。
『何でも・・するのかい?』
「えぇ・・します・・」
彼女の耳元にそっと教授は囁いた。

『それじゃ・・・してくれるかな・・・勉強を』


教授エロカッコいいと思った自分は末期ですかそうですか。
263名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 19:41:32 ID:vHBLYt/m
>>262
大丈夫だ。
お前だけを末期にはしない。
264名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 21:16:53 ID:MWMzpl5w
>>262
俺も末期だ。付き合うぜ、相棒。
265名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 21:27:44 ID:hKLIFQKv
>262
同じく末期だ。
このまま突っ走るのも乙だと思うんだが、兄弟。
266名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 00:26:43 ID:nMjr2b9C
>>262
俺も末期なんですから気にしないでくだせぇ、親分。
267名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 03:41:45 ID:HNWEYHDK
>262
自分も末期患者のようですぜ、旦那
268名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 13:36:14 ID:5jc6T4x5
>>262
俺も末期だったようだぜ、親友。
269262:2006/06/10(土) 13:39:10 ID:/8I5sHcN
>>263-267

おお、心の友よ!

ときに>>261、選択肢の中に「遠国の騎士」追加激しくきぼん。
270262:2006/06/10(土) 14:19:27 ID:/8I5sHcN
>>268
書き込みしている間に増えてたよココロの友!
271名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 05:17:44 ID:sA/IwsHS
おいおい、このスレのどこがエロパロなんだよ。え?
ちっ、期待させやがって…。
俺が欲しいのは鬼畜エロなSSなんだよ。
挿入もしねぇスレなんざ、大人しく底に沈んでやがれ。


…スマン。スレお題の♂風なレス付けたかったが上手くいかんw
職人さんの力量すげぇな。
禿しくGJ!アサカラモエタゼ…
272名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 10:51:04 ID:Ac1VI+kC
「アイツは…魔王はまだ生きてるの、だから…」
彼女は地面の魔法陣に手を付けてそれを発動させた。
陣の文字が光り、俺の足元から半透明の球体が俺を包む。
――なんだよ、これ
いや、わかってる、だから恐くなった。
「おい!!」
体を通る寒気を打ち払うように叫ぶ。
嘘だよな?
嘘だよな?嘘だよな?
嘘だよな?嘘だよな?嘘だよな?
「君は魔王が復活する日まで眠り続け――」
そんなこと
「ふっざけんなっ!!!」力いっぱい殴るが球体はびくともしない、逆に手が鈍い痛みに支配される
「……」
彼女は俯き、顔を隠す。泣いてんのか?
「まだ間に合うから!早く解いてくれ!!」
「ダメだよ……」
なにがダメなんだよ、くそが…また独りになっちまう……
「俺、金貯めてんだぜ?結婚式の、……っもうちょいでお前のドレスを買ってやれるだ!!」
「ごめん」
「ごめんじゃねぇよ!!」
顔見せろよ…なんでこっちみねぇんだよ。
辛いんだったらやめろよ…
「愛してるんだ!結婚しようって約束忘れたのかよ」
「でも君は剣だから、魔王に対抗するための、だからその日が来るまで」

   『おやすみ』

…リメイクキボンで
273名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 16:45:26 ID:OpPrvsvf
>>272
GJなんだが、男女逆じゃないか?
274名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 18:46:23 ID:wL7p/vdx
>273
 実はまだ続きがあるんだよ。こんな感じに。

「おはよう」
 そういって俺を起こした彼女は、……彼女の子孫と名乗る少女だった。
 似すぎている。あまりにも彼女に。実は同一人物なのだと告げられれば、頭から信じて
俺は疑いもしないだろう。
 あの日から、丁度百年。
 一世紀もの歳月は、しかし、魔法陣に封印されていた俺にとっては一晩の眠りに等しい
感覚。
 街並みはすっかり変わっていたが、空の青さも川の流れも森の空気も、あの頃と何にも
変わっちゃいなかった。
 そして……俺が心から惚れた笑顔も、まるきり、記憶にあるそのままに。

 この少女は、彼女とは違う。違うと分かっていて、なのに俺は少女の上に彼女の面影を
重ねてしまう。
 とっくの昔に失ってしまったはずの時間を、取り戻せるような気がしてしまう。
 ……いや。
 彼女を失ったことが、まるで夕べの悪い夢だったかのように思えてしまう。

「あの……あのね、気に触ったらゴメンなさい。私、どうやら……君のことが好きみたい
なの」

 嗚呼、どうしてその台詞まで、すっかり彼女と同じなんだ?

「……私じゃ……ダメ、なのかな……?」
 そんなわけねぇだろ!
 そう叫びたい。抱きしめたい。痛いほど、この胸を占める愛おしさ。
 けれど。
 俺は本当に、目の前にいる少女を愛しているのか?
 ていよく彼女の『代わり』にしようってんじゃないのか?
 独りだったあの頃に戻りたくないから、寂しさの穴埋めに使おうってんじゃないのか?

「明日は最終決戦だ」
 俺は努めて興味なさげな表情を作る。
「少しでも寝ておけ。男の寝所なんぞでくだらんジョークを言う暇があるのならな」
「…………そうだね」
 少女は名残惜しげに俺の部屋から出て行く。
 俺の返答に、俯き、顔を隠す仕草まで……泣いているくせ、俺に悟られまいと気を張る
ところまで、彼女と同じで。
 最後に一言、こう言い残して。
「おやすみ」

>272
 リメイクじゃなくて悪いんだけど。いいインスピレーションをありがとう。
275名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 18:59:15 ID:M0Y5Ljut
>>274
GJ!
野暮なツッコミを昇華してくれてありがとう
276名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 19:49:00 ID:Ac1VI+kC
GJ!
リメイクじゃなくてもすごく嬉しいですよ。
たしか男女逆でも可じゃなかったけ?

自分の考えてた続き

「町はどっちだったけ?」自分の中のドス黒い狂気が今にも出そうだ。
「え?あ、あっちだよ」
彼女の指差す方向には見知らぬ町があった
自分の記憶にない建物達が時の流れを感じさせる
「そうか…」
町に向かい手を構える。
魔力が一気に手に集中し、輝き始める。
「なにを――」
彼女がそう言うと同時に町に火柱が上がった。
ふふふ、ははは
「クックック、生きてる奴いるかなぁ……?」
恨みを、俺を捨てた女への、俺じゃなく女が選んだ世界への恨みを爆発させる。「え、え、え?」
「解放してくれたお礼にお前は助けてやるよ」


すんません、恨みでエロカッコよくは無理でした。
277名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 21:23:54 ID:f0lwaFVG
「明日で25でしょ?そんなんで良いの?」
体を擦り寄せながら女が言った。
「べ、別に良いって…」
同窓会、仕事の帰りに車で寄ったから、飲めない上にみんな結婚と恋愛の話ばかりで居心地が悪く、二次会には行かなかった。
「良くないわよ〜、ハタチ過ぎて童貞ってだけでもあり得ないのに〜。クラスでアンタだけよ今だに童貞なんて」
ユキコ、男喰らいで名をはせる高校時代の同級生、卒業して就職してからもこの女の噂を耳にするほどだ。

二次会に行かず帰ろうとした時に声をかけて来た、
「あたしカラオケ好きじゃないのよねー、それにタクシー代浮くしー」
俺が車で来たのを知って送らせるつもりらしい…
「これ飲み終わるまで待ってよー」
結局カウンター席に移って二時間、生三杯と鏡月2本分付き合わされた。
車で来た俺、トマトジュースばかり飲んだ、明日のウンコ真っ赤だろうな…
女と会話したこと無い俺、発した言葉の七割は「うん」「そう」「へー」…

で、いつの間にか俺の童貞の話になって、25間近の童貞に興味を持ったこの女にセックスのお誘いを受けてる。
「良いじゃ〜ん、別にお金取るわけでも、付き合うわけでもないんだし」
「いや、でもー…」
キッパリ断れない俺、元々押しに弱い性格なんだ…
「怖がんなくても大丈夫」
ヤッちまう方が楽かもしれない、会社でもみんなのエロトークについていけないし。
「ジッとしててくれたらすぐ終わらせるから〜」
でも噂が本当なら記念すべき150人目のユキコブラザーズ…
「彼女出来た時困るよ〜」
いやいや、男のくせにって言われるかもしれんけど、こんな適当に捨てるのは嫌なんだ、童貞。
それに恋愛も結婚も出来なければ出来ないで一生童貞を貫くって誓ったばかりじゃないか、俺。
ヤリマンと関わりを持った童貞の物語に決着をつけろ!お前が童貞でいられるうちに!

「ごめん無理!絶対無理!!」
緊張のあまり発した言葉は店内に響いた。店内の視線の全てが一斉に俺達に集まる。
するとヤリマン、諦めたというよりは注目から逃げるように、
「じゃー好きにしたら!?20年でも30年でも童貞やってりゃいいじゃん」
小さな声で言うと五千円札置いて店を出て行く、
そしてヤリマンは、童貞を食べ損ねた…

「やればヤリマンの撃墜マーク、やらなきゃ童貞25歳、どうしようもねーな俺…」
278名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 21:27:36 ID:f0lwaFVG
初めて書いて不馴れな上にかっこよくなくてスマソ
279名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 23:10:17 ID:KcH6q79R
グッジョブ。だけどエロ格好良くはないかな・・・。
280名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 02:08:14 ID:gqIJYmiv
かっこよくはないがワロタ
こういう情けないのもいい
でもできればハッピーなのがいいな
281名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 02:28:17 ID:JasGbuLR
「ウソでしょ…本当に逃げて来ちゃった…」

「もう大丈夫だ、そんなもんさっさと捨てちまえ」

左手には指輪が握られている
今時政略結婚なんてあり得ないと思うけど
それは30分前までのアタシの運命だった
目の前で煙草を吸っているのは未来の夫となるはずだった男の部下
だと思っていたけど、実際は会社の不正を暴くために雇われた探偵らしい

コイツがアタシの未来を変えた

初めて会った時には何て堅そうな人だろうと思った
二度目に遭遇したのは社長室
不正取引の証拠を探していたところにばったりと出くわしてしまった

「見つかったら仕方ねーな。
いいぜ、さっさと未来のダンナにチクれよ」

そんなふてぶてしい態度で煙草をふかした彼に目を奪われた

恋をしてしまったのだ、たぶん


チクらない代わりに自由にして、という
アタシの望みを叶えつつしっかりと会社を解体してしまった
おかげで結婚はめでたくご破算
呆然とする未来ダンナを置き去りにして逃げて来た

282名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 02:32:12 ID:JasGbuLR

「もうアンタは自由だ、好きなところに行きな」

……好きなところって?

「何やってんだよ、惚れた男がいるから逃げたんだろうが」
もう目の前にいるの

「とにかくその格好じゃ目立ち過ぎるからさっさと着替えろ」

服の入った紙袋に腕を伸ばした彼の胸にしがみつく

…彼の香り

「アンタが好きなの」

「………オレをからかうなんざ百年早ぇな」

「からかってなんかいない
お願い…一度でいいからアタシを」

「ストップ。そっから先はアンタを幸せにしてくれる
男の前で言うこった」

「……何で?」

「…………純白のドレスより赤いドレスのが好みなんだよ
お嬢さんには手ごわいアイテムだ」

そう言うと彼はくるりと背を向けた


「あ、アタシだってただのお嬢さんじゃないんだから!
見てなさいよ。いまに赤いドレスを着こなすような
オンナになるんだから!!
聞いてる?!!」

勢いこんでまくし立てたアタシに

「そん時は朝まで寝かさねーからな」

彼の吐息がかけられた耳たぶが熱い


ひらひらと右手を振りながら黒い影が遠ざかって行く

悔し涙がぼろぼろと零れてきた
左手に握っていた結婚指輪を力いっぱい遠くに投げる


「………この、悪党…」


呟いたら少し、すっきりした
283277:2006/06/20(火) 17:27:07 ID:OAGWnyMr
>>279
そうですね、今から考えると股間触られたり胸押し付けられるだけでも多少はエロくなったかもと反省してます。

童貞だけにカッコヨクはしようが無いけどw
284名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 23:02:47 ID:lyndg/Yy
いや、277の童貞カッコ良くはないかもだが潔いよ。
281の探偵も良いよ良いよ〜
285名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 23:19:40 ID:/uGD/HKI
>>277
このスレではエロ<<<カッコ良いだと思う。
女からのも入れてお触り以上はあえてこのスレでなくてもいいんでは。
277さんの話では童貞君がやり万を断ったことを誇りに思えばスレタイに沿うよ。
気の弱い童貞の表現はばっちりだし、文章力ある。また書いてくれ。
楽しみにしています。
286名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 05:02:08 ID:nhonkUoF
存在を消そうとして過去に逆行し主人公の母を殺そうとする悪人、
同じく逆行しそいつから少女時代の母を護る主人公。
そうしているうちに母に惚れられて…とか。
(ターミネーター、バックトゥザフューチャー風)

愛していた女性と親友の忘れ形見の娘で、母である女性にそっくりなので
女性や親友を裏切る行為にも思えて抱けない…とか。
(特に元ネタなし。男がFF4のカインだと面白いかも)

義理の父で血は繋がらないと双方知っているけれど、やはり父として育ててきたし
プリンセスとして育て上げると誓ったので抱けないとか。
(プリンセスメーカー風)
287名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 05:23:50 ID:r6YDkHRM
できれば近親ネタでないほうがいいなあ、と無理難題を言ってみる
288名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 18:38:54 ID:iSIgnSzZ
近親ネタの場合、即物的な問題で押し留めざるおえない側面があるからな。
289名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 22:26:57 ID:YBGmgzuZ
>>288
入力ミスだよな?
何故か(ryの仲間とか、2ch用語とかじゃないよな?
2901/2:2006/06/28(水) 21:05:38 ID:cDAS5HiG
「何よ、あんたが言ったのよ。卒業したら口説いてもいいって」
「押し倒していいとは言ってねぇ!」
 教科指導室のソファの上、馬乗りになられた状態で坂口はとりあえずわめいた。
理沙はちょっと小首を傾げる。見下ろしてくる眼ざしは、綺麗にマスカラを塗った
睫に彩られていた。
「大丈夫、春休みだもん、誰も来ないよ。来ても鍵かかってるし」
「そういう問題じゃねぇ! 鍵も勝手にかけんな!」
「またまた。嫌じゃないくせに」
 女って奴は。
 坂口は無言で天を仰いだ。
 まだ20年すらも生きていないくせに、端々に覗く表情はいまだ子供っぽいくせに、
一方で獲物を見つけた雌豹のような顔をしてみせる。
 なめらかな指が手慣れた仕草ですぅっと脇腹を滑り、襟元に辿りついた。
 ―――ヤバい。
 坂口の顔がひきつった。ネクタイをしていない。
 教員の数少ない特権が、今逆に仇となって坂口にのしかかっている。かと言って
本気で暴れれば理沙に怪我をさせかねない。なんとか平穏に身を起こそうと四苦八苦
する。
 こんなことなら、宮垣先生に『筋トレ教師の会』に誘われたとき、ちょっとは考え
るフリでもすればよかった。
 埒もない考えが頭をよぎる。
「ちょっと、あんまり動かないでよ。観念しなさいって。……あっ、こら! ムダ
だってば!」
 動けば動くほど、やわやわとした太ももが坂口の腰の辺りを締めつけると悟って、
坂口はがっくりと力を抜いた。
 つい先日まで濃紺の野暮ったいプリーツスカートだったのに、今はオフホワイトの
シフォンスカートだ。ふんわりと自分の上で弧を描いて、傷だらけのボロいソファの
下へと流れ落ちていく。
 薄汚れた天井に点いた蛍光灯が、理沙の髪をつややかに照らし出して対比が皮肉な
ほど鮮やかだ。
 坂口は目を逸らし、本棚越し、自分の机の方を向く。
 煙草が吸いたい。
 が、透視能力などない身には、分厚い本の背表紙が並ぶ様が見えるだけだった。
 現実逃避も許されない。
 坂口は深く溜息をついた。
「おまえなぁ」
 降参というように両手をあげる。
「こういうことは、もう少し、男に花を持たせるもんだぞ」
「そうは思えないけど」
 1年半ほど前まで散々世の親父達とツキアッテいたらしい少女は、あっさり男の
面子を蹴りとばした。坂口はうめく。
「だからおまえはガキだってんだ……」
「ふん。どこまでその余裕が続くか見せてもらおうじゃないの、センセイ」
 まるっきり悪役のような台詞を吐いて、ボタンをはずしにかかった指を押さえる。
「余裕なんかねぇよ」
 低い声で囁けば、理沙が少し驚いたような顔をした。
2912/2:2006/06/28(水) 21:08:40 ID:cDAS5HiG
「いいか、おまえは卒業して春休みかもしれんが俺は勤務中。ここは学校。
なのに元とはいえ教え子とこんな事態なんてバレりゃー間違いなくクビだっつーの。
余裕なんざあるか」
「―――ってあのねぇっ!!」
 怒ったらしい理沙がぎゅっと襟首を掴む。
「言うに事欠いてそれ!? いっつもいっつも馬鹿にしてっ! あたしは本気だって
何回言ったらわかるのよこのトウヘンボク!」
「おまえの本気は相手の迷惑を顧みず職場で関係を強要すんのか。そりゃおまえの
知ってる男はそんなのでも喜んだかもしれねーけどな。売春と恋愛をごっちゃにすんな」
「だってあんたはあたしを恋愛相手に見てくんないじゃない!!」
 悲鳴のような言葉に坂口は一瞬動きを止めた。
「そりゃ……っ! あたしはそーゆーことしてたけど! だからって軽い気持ちで
言ってんじゃないのに!」
「別におまえが軽い女だなんて思ってねぇよ。……考えなしだとは思うが」
「悪かったわねっ!!」
「いやまぁ仕方ねぇだろ。おまえにゃまだ経験値足りねぇんだから。……気持ちは
わかったから、下りろ」
「嫌」
「こら」
「嫌……」
 グロスの塗られた唇を噛みしめて俯く理沙に、坂口はもう一度溜息をつく。
「……今夜空いてるか」
「……なんで」
 一瞬すがるような目をして、理沙が小さく尋ねる。
「このままじゃ埒があかねぇ。食事に連れてってやるから、一旦下りろ」
「それでバイバイ? つくづく人の話を聞かない男ね」
「バカ。……男も女も寝るだけが能じゃねぇだろう。順番に教えてってやるから焦んな」
 え、と理沙が言葉をこぼす。
「……それって」
「行くのか? 行かないのか?」
 言いさした理沙を制した坂口に、理沙は慌てて頷いた。
「い……行く」
「じゃ下りろ」
「……うん」
 ようやく自由になった体に、坂口はやれやれと伸びをする。ぱたぱたとシフォン
スカートを整える理沙の頭をぽんと叩いた。
「仕事終わるまで適当に時間つぶしてろ。あとで連絡いれるから、携帯の番号だけ
残してけ」
「……バックレたりしない?」
「しない」
 言い切る坂口に理沙はちょっとだけ頷いて、ミスプリントの裏に数字を書きつける。
これで嘘だったら今度こそ襲うからね! と言葉を残し、シフォンの裾を揺らしながら
ようやくがらがらと指導室の戸を閉めていった。
 静かになった部屋で坂口はやれやれと本棚を迂回し、煙草を取り出す。
「ったく、こっちだって色々段取り考えてるのによぉ……」
 紫の煙と一緒に吐き出された言葉を、少女は、いまだ知らない。
292名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 21:29:15 ID:ex0e+A3J
イイネ(・∀・)b!
どうしても悲しい別れが多いけど、ハッピー(になり得る)話が読めるとやっぱり嬉しい。
293276続き1/2:2006/06/28(水) 22:14:52 ID:cDAS5HiG
「だが……そのままってわけにもいかねぇよなぁ」
 ぬらり、と男の目が光る。本能的な恐怖に、女がじりじりと後ずさった。
 ぱんっ、と空気の破裂する音―――そして、悲鳴。
 ずたずたに服を切り裂かれた女に、男の体が襲い掛かる。

 嗚呼この憎むべき世界、すべて破壊しつくしてあの女と同じ顔のおまえと
 ただ2人。

 身も焦げるような憎しみに渾然とする。それはいっそ愛しさにすら似た陶酔。
 女の白い裸体を組み伏せて、首筋に噛みついた―――その刹那。
「……可哀想に」
 嘆きが耳を打った。
 悲しみの声は、最早苦痛しか伴わなかったはずの記憶を呼び覚ます。

 名前を呼んで、呼ばれたあの頃。
 おまえの白いドレスを夢見た。

「…………ッ!」
 振り切るように身を起こす。
「おまえが悪いんだ! 俺は……っ! 俺はおまえと幸せになりたかったのに、
幸せにしてやりたかったのに!! 俺の気持ちを踏みにじって、おまえは……っ!!」
 血を吐くような叫びに、女は、ただ静かな眼差しを向けた。
 白い頬を、つぅっと涙が滑る。
「……ごめんなさい……」
「―――何謝ってんだ、おまえはあの女じゃないだろう!! 俺を裏切った、
おまえの……っ!!」
 支離滅裂な怒鳴り声。返らない日々、戻らない時間。
 帰る場所のない現実に、憤ることしかできない。

 ああ憎いおまえが憎い。
 おまえが、おまえが、おまえが!!

 沸騰するような思考に頭を抱えた男を、白い腕が抱きこんだ。
294276続き2/2:2006/06/28(水) 22:15:37 ID:cDAS5HiG
「あなたの知る女性(ひと)は……自分の血筋に呪いをかけたの。代々生まれ
てくる女子は皆、その呪いを受けてきた。……私はあなたの知る女性じゃない
けれど、私はあなたを知っている。記憶が私の中にある……ずっと、嫌で嫌で
しかたなかった。私は私なのにって。でも……もう、どうでもいいわ。長いこと
独りにして本当にごめんなさい……」
「……そんな、まさか……っ」
 ルキアと呼んだ。ケイと呼ばれた。
 同じ声が今、確かに彼の名前を呼ぶ。
「私はあなたの知るルキアじゃない。でも同時にルキアなの。私を恨んであなた
が楽になるのなら……それで気が済むのなら」
 抱けばいいわ。
 耳元で囁かれた言葉に目の前がくらんだ。
 どれほどに永く時が過ぎようとも、忘れられなかったあの日々と。
 忘れられなかったが故に育まれた憎悪と。
 挟まれて動けなくなる。その深い色の瞳。見つめるだけで呼吸がつまる。

 なぁ頼むそれ以上何か言わないでくれ。
 愛しているなんて間違っても。
 言わないでくれ殺してしまう!

 開かれかけた唇の動きを見てとって女の体を突き飛ばす。
 背を向けて走り出した。
 走って、走って、走って。
 夕陽が沈む頃になってようやく煤けた瓦礫の町に出る。
 焼き尽くされた―――その、残骸。逃げる暇すらなかったのか、親をなくした
子供の泣き声も聞こえない、死の静寂。
 黒い地面を拳で叩いた。たぎるようなあの憎悪は曖昧にぼけて汗になる。
 そうして、残った感情に―――
 彼は、ただ、泣いた。


>>276
 投下しに来てなんかイイのがあったから一気に書き殴ってしまった。
 勝手に続けてスマソ。
295名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 23:16:49 ID:o7fjVtz6
GJ!
296名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 01:35:20 ID:zOvOYOzi
GJ!GJ!
297名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 02:19:21 ID:i6Fu+VFt
超short story
「ねぇ……私、魅力ない?」
「いや? 魅力の上じゃ誰よりも上だ。俺が保障する」
「じゃぁ! なんで私を抱かないの!? 私はいつでも待ってるっていうのに、アナタはそれを知っているっていうのに!!」
「バァカ。2年は早い」
「ふざけ……!!」
「だから」
「っえ」
「二年たったらまたこいよ。……そんときゃ、抱いてやるから」

設定:男は16。女は14。他にいうことはあるまい。
298276:2006/06/30(金) 20:26:42 ID:olxVZHLv
GJ!

>>294
グッジョブ
俺にはできなかった恨みでエロカッコよく……
この技術の練達さ、長久の歳月を思わせる…
299隙間三行 ◆pVdGUF5Fso :2006/07/01(土) 22:00:45 ID:Ew3N1BAk
逃れられないよう、両腕に力を込めて。
「千景…」
耳朶に、唇を寄せる。
千景の腕が、応えるように俺の背中に回された。
「和弥…」
甘く、俺を呼ぶ声。
俺の背中を、輪郭を確かめるように撫でる手。
柔らかい胸の感触。その身体が帯びた熱。
堪えきれず、ぎゅっと両目を瞑る。

呼吸が苦しい。心臓がバクバクする。
しっかりしろ、俺。
深呼吸を一つ。そして。
言霊を込め、千景の耳元に囁いた。

『千景から離れろ、外道』

呪の発動と同時に眼を開く。
彼女の背後に、弾き出された小さな陰。
蜘蛛に似た形状の式神だ。
『待て!』
呪で動きをとどめ、片手を伸ばして捕らえようとしたが一瞬遅かった。
かき消すように、彼女を操っていた式神が消える。


300隙間三行 ◆pVdGUF5Fso :2006/07/01(土) 22:01:45 ID:Ew3N1BAk
式神の支配が解けた千景の身体から、力が抜けた。
そのまま倒れ込みそうになるのを受け止める。
サラサラと音を立てて流れる長い髪からまた、ふわりと甘い匂いが漂う。
さっきまでの千景を思い出した和弥の眉間に深い皺が寄る。
ぎり、と奥歯がくぐもった音を立てた。
あれは、俺に向ける態度じゃない。コイツが好きなのは俺じゃなくて幸兄だ。
幼い頃から、ずっと。

「千景、千景!」
彼女の名を呼ぶ声が、情けないほど震える。
「ん…。」
呼びかけに、幽かに反応があった。
彼女が無事だった安堵と力を使った疲労から、急に冷たい汗が噴きでる。
今の俺の力じゃ、式神を追い出す程度が精一杯。
俺に、幸兄くらいの力があれば。
追い出すだけでなく、式神を捕らえて敵の正体を暴くことだってできるのに。

「…っ!」
鼻の奥が、つんと痛い。


ただ、悔しくて、辛かった。


301名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 01:16:28 ID:spQEpFYa
「私はあなたを好きにならなければいけないの」
「無理すんなよ」
「あなたこそ、無理なんてしないで素直に抱きなさいよ」
「お前、本当は俺の弟の方が好きなんだろ?」
「黙って。そんなことはとうの昔にあなたはわかっているはずでしょう?」
「わかってるから言ってるんだ」
「わかってるなら言わないでよ・・・。私が、私たちが結ばれなければ、両家の和解は実現しないのよ?」
「そのために好きでもない男と結ばれても仕方ないってか」
「私一人の恋が成就しない代わりに、たくさんの人たちが幸せになれる。だから」
「うるせえ。俺はあんな一族がどうなろうとかまいやしない」
「・・・・・・本気で言ってるの?」
「半分な。今まで何十年も勝手な理由で争ってきて、んで今になって争いに疲れたから和解するだ?
馬鹿らしい。そんなら最初っからやるなって話だろ」
「自分たちの愚かさに気づいたのよ」
「違うな。単に戦を続けるだけの力がなくなってきただけの話だ。俺たちが結ばれて和解したところ
で、力が戻ったらまた争いになるに決まってる」
「そんなことわからないじゃない」
「こっちの方で、そういう密談があったんだよ」
「・・・・・・!」
「だから、俺たちが結ばれても、この和解にはほとんど意味がねえんだよ」
「私は・・・・・・」
「あん?」
「私は、あなたのようには考えられない。だって、たとえ一時的にでも平和になるんでしょ?それが
仮初めの平和だったとしても、和解している間にどうにかなるのかもしれないじゃない」
「・・・・・・・・・」
「自分の一族の子供たちの顔を思い出してみなさいよ。あの子たちにも争いの歴史を背負わせるの?
私は、それこそ私の勝手な理由であの子たちを争いに巻き込ませたくないの。わかってよ。ねえ・・・
わかってよ!」
「俺は」
「・・・・・・」
「俺は誰よりも、他の誰よりも、お前の未来が幸せになればいいと思ってる」
「何を・・・言ってるの?」
「これは俺のエゴだってことはわかってる。でも、お前が一族の幸せを望むのと同じくらいにそう
思ってるんだ」
「・・・・・・?」
「どうせお前と違って俺は名ばかりのうつけ当主だ。弟のほうが俺よりもよっぽど優秀で、あいつ
らも陰では弟に家を継がせたがってた」
「あなた、まさか・・・」
「堅苦しいことは嫌いな性分なんでな。色んなしがらみから解放された人生ってのは楽しそうだ」
「やめな・・・さいよ。無断で里を離れた者には、誰であろうと粛清が下る掟でしょう?過去に例外は
ないわ」
「知らねえよ。例外がいねえってんなら、俺がその第一号になってやる」
「そんなの、認めない・・・私は認めない!あなた一人が不幸になるなんて、絶対に!」
「さっきまでお前一人で不幸を背負う覚悟をしていたのにか?」
「・・・・・・!」
「心配なんていらねえよ。一応剣術とかじゃ100年に1人の逸材だって言われてんだぜ?やられる前に
さっさと外国にでも逃げてやるよ」
「私、は・・・!」
「既に弟に継がせるように手紙は書いてある。あいつは優秀で、どちらかと言えば平和主義者だ。人
心掌握の仕方もうまい。お前の言う平和は、俺よりもあいつの方が実現する可能性は高いぞ」
「待ちなさいよ!こんなことで、私が嬉しがるとでも思ってるの!?」
「だから言っただろう。これは俺のエゴだ・・・・・・じゃあな」
「待ちなさい!待って!待ってよ!」

後に、外国へ向かう船のある港で、惨殺されている男の遺体が発見された。
それがこの男であるのかは、不明である。
302名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 08:58:19 ID:HLjNqlEb
>>301
男かっけー
303名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 11:41:50 ID:PIk2/vTB
>>301
泣いた
男カッコよすぎだって・゜・(ノД`)・゜・
304名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 16:27:59 ID:SnHnv1FY
「何ゆえ抱いてくださいませぬ」
 悲しみを含んだ詰り声に、男は瞑目した。
「……おみつ」
「酷い方。うちを嫌いでないと言わはりながら……」
「おみつ!」
 夜目にも白い夜着の肩を震わせる女に、男は思わずその細い肢体をかき抱く。
「違うのだ。そうではない……」
「違うと言わはるのなら抱いてください。殿がご身分ある方であるは百も承知、
妻になどと望みませぬ。ただ、一夜の思い出が欲しいと……」
「おみつ、おみつ。聞いてくれ」
 男は顔を背けたまま声を絞り出した。
「……私は、ずっとそなたを騙していた」
「…………殿?」
「よもやこんなことになろうとは夢にも思わなかったのだ。だがそなたを想う
心に偽りなどありはせぬ。どうか……許して欲しい」
 男は眉を寄せ、苦しげに吐き出した。
「私は、タヌキなのだ」
「…………」
「…………」
「…………は?」
「人を……化かしてやれと思って、面白半分にこの姿をとっていたら、そなたと
出会ってしまった。ずっと……言えなかったのだ。ヒトではないとわかったら、
そなたは離れていってしまうだろうと……」
 長い、沈黙が下りた。
「……殿」
「すまなかった」
「殿。お顔を上げてくりゃんせ」
 白い手がそっと男を促す。おみつははんなりと微笑った。
「うちはキツネどす」


 異種族カップル、誕生?


 END.
305304:2006/07/03(月) 16:29:58 ID:SnHnv1FY
何かイロイロすんませんすんませんっ。
思いついたら書かずにはおれなかったんだー。
306名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 18:08:55 ID:hSVDzjm+
ちょwwwwww
二人揃ってゲテモノ(人間)好きのケダモノかよwwwww

つーかタヌキ♂と言うと、信楽焼きの巨大なふぐりを思い出すんだが、
とにかくお幸せに
307名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 19:14:44 ID:kJD1ZrNm
ちょwww吹いたww
308名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 01:29:58 ID:K8dpUi21
朝、起きるとアパートの中は、夏なのにいつも冬のように寒い
「…夏樹」
「あ…起きたんだおはよ〜」
夏樹はいつも厚着の服を着てる、当然だ、寒いのだから
「今日の朝は冷やしそうめんだよ〜、氷いっぱい乗せてあげる、ちょっと待っててね」
「うん」
夏樹、かわいいな
髪を後ろで束ねて台所に立つ姿がすごくかわいい、夏樹
こんな俺といっしょになってくれてありがとう、夏樹「夏樹…」
堪らなくなり後ろから抱きつく
「やだ、ちょっと危ないよぉ…」
「愛してる」
「…うん、私も愛してる、……ほらほら、座った座った」
席につきそうめんを頂く、冷えててうまい、さらに夏樹の手料理で二倍美味い
「あ、今日は私一時からしごとだか…ヘクチッ!」
「夏樹…?」
「な、なんでもないよ!」夏樹、顔が赤い
額に手を当てる、熱い、風邪?
「風邪か?夏樹」
「あ、あははは…、バレちゃった、こんな風邪、薬飲んだらすぐ治るよ」
嘘だ、すごく熱かった
「休み、取った方が」
「大丈夫だよー、あ、食器片付けるね」
夏樹、全然食ってないぞ
夏樹が自分の視界から消えた途端食器が割れる音がした
「あっ!ゴメン、すぐ片付けるよ」
「夏樹」
「はぁ…はぁ…」
夏樹が床に倒れこむ、夏樹を抱えベットに寝かせる。「はぁ…、しょ…っき、かたづい……てないよぉ…」
「風邪を引いたら汗をかかなきゃ、あと仕事先には電話しとくから」
電話で夏樹の仕事先に電話してから、クーラーを切る
窓を開けて、新鮮な空気を取り込む、…暑い
「あっ!ダメだよ!速く窓閉めなきゃ!!」
「病人は寝てなきゃ、手握っててあげるから」
「あっ、ダメ…駄目…溶け、ちゃ」
暑い、暑い、暑い
夏樹、夏樹、夏樹、夏樹、夏樹、夏樹、夏樹、夏樹 なつ…き、なつ…き愛し、て
「あ…、あ、あぁあぁあぁぁ!!」
な、いちゃ、いけな、い、な、つきはわらっ、てなきゃ
「いやぁぁぁ!!!」

彼女の目の前には服と、濡れた床だけが残っていた。

なんか方向間違えてるな、全然押し止めてないよ……以上、雪男×一般人でした。リメイクキボン…ボソ
309名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 22:19:16 ID:YstiUEw0
うーん……なんで風邪くらいで溶ける覚悟までしなきゃいかんのかが
イマイチ読めない。もちょっと切羽詰った状況にした方がいいんじゃないか?
3101/4:2006/07/06(木) 02:04:15 ID:bPDDEbyj
死にネタかつベタネタ注意。


何故、この男のことが好きだったのだろう。
想っていなかったことにして割り切れるほど大人ではないし、
詳細な説明ができるほど単純な子供でもなく、少女はその場で答えを出せなかった。
永遠に叶うことのなくなった自分の初恋。
知らせを聞いたときに泣きすぎて今は涙も出てこない。
花で満たされた棺の片隅に、手の中の包みを隠すように差し入れる。
生前の約束を果たし、改めて見た男の死に顔は本当に安らかで、レシェを少しだけ苛立たせた。
どうして彼はよりによって自分にこれを託したのか。
それも考えたって答えの出ない問いだ。
「お幸せに、陛下」
レシェはもう振り返らずに棺から離れた。

 ***

前々からこの日に想いを告げようとレシェは決めていた。
「陛下、お祝いの品をありがとうございました」
子供から大人へ、今まさに花開こうとする美貌は眩いばかり。
誕生日の今日はどこか誇らしげで、優雅に一礼する仕草も立派な淑女だ。
「ああ。おまえももう十六か……、そろそろ縁談も決めねばなるまいな」
男――この国の王は、目を通していた書類から顔を上げ、優しい目でレシェを見た。
話の流れを好機と見て少女は王に尋ねる。
「……陛下こそ、ご結婚されませんの?」
「せん」
答えはいつも通り簡潔なものだった。
「幸い私には弟がいる上に奴は子だくさんだ。心配はいらん」
「そ、そんなことでいいんですか!?王家の血筋とか、お世継ぎとか……」
思わず大声を上げた少女を、王はどこか眩しそうに見つめた。
「ふむ。……おまえは見てくれだけでなく、物言いまであれに似てきたな」
3112/4:2006/07/06(木) 02:05:13 ID:bPDDEbyj
「あれ」と口にしたときの親しげな響きに、レシェは胸の痛みを覚えた。
16年前、レシェが産まれた年に亡くなった叔母のことを思い出すとき、この男は決まってこんな顔をする。

「あたしが叔母さまに似てきたことは、陛下にとって嬉しいことですか?」
王はかすかに微笑んだまま何も言わない。
レシェは日ごろから、少しでも叔母に近づこうとしていた。
大人たちに話を聞きまわり、話し方や衣装の趣味、髪の結い方、何でもその真似事をしようとした。
顔や声や背格好が叔母に似ていると言われるたびに安堵し、いつからか同時に歯噛みするようにもなった。
叔母のように王を助けて働けるよう一生懸命勉強もしたし、身の回りの世話だってできるように練習した。
命じられたわけではないが、王の心を慰めて自分の方に向けたいがためにそうしていたのに。
それでも、かつて愛した叔母にレシェが近づくことを、王は褒めてくれない。

「陛下……、あたしはいつまで陛下の『娘』でいればいいのですか!?」
答えない王に焦れて、レシェは叫ぶ。
叔母が亡くなった年に産まれたレシェを、王は第二の父親と公言している。
周囲の人々はそれを、王を賊から守って死んだ女への償いだと言う。
死んだ叔母にレシェがあまりにも似ているから、罪の意識を覚えてしまうのだと。
だから、才覚もない小娘が気安くするのを許しているのだと。
それを分かっていたからこそ、今までは言わずに我慢していた。
「もうあたしは十六なんです!叔母さまの代わりに、陛下の子供だって十分に産める身体になりました!
なのに、いつまで陛下は帰らない叔母さまを想い続けられるのですか!?」

「レシェ」
口調が激しくなってきた少女を、静かな声で男が不意に遮る。
「おまえに頼みがある。おまえにしか頼めんことだ」
「陛下!あたしはまだお答えを……!」
「これを預かっておいてくれるか?」
懐から取り出されたのは、手のひらにのる程度の小さな布包みだった。
重さはほとんどなく、中に何も入っていないかのように頼りない。
「私が死んだら棺に入れてくれ」
何でもないように言われたその言葉に、レシェは息を呑んだ。
「……中身は?」
見ない方がいい、としかめたその顔が言っている。
3123/4:2006/07/06(木) 02:05:49 ID:bPDDEbyj
ためらわずレシェは包みを開く。
ぱさぱさに乾いた長い髪が一房、丁寧にまとめられて、大切にくるまれている。
見る影もないが、きっと自分と同じ色の髪だったのだろう。
王が望んでそれを貰い受けたのだと、母親に以前聞いたのをぼんやりと思い出した。
残酷なまでに明確な男の答えに呆然としながら、レシェは黙って物言わぬ恋敵を見つめた。
ずっと二人はこんな形で一緒にいた。
自分は代わりにすらなっていなかったのか?

「あまり気持ちのいいものではなくて悪いが、おまえになら託せる。
身につけていてもうっかり処分されてしまうかもしれんしな」
その言葉で我に返ると、無理やり笑顔を作りレシェは頷いた。
何かを口にすると、泣き出すか癇癪を起こしてしまいそうだ。
それではあまりにも子供じみていて情けない。
平静を装って、元のようにして叔母の髪を大事に胸にしまうと、ぺこりと頭を下げる。

「……おまえにはいつも救われていた。本当に感謝している」
王の執務室から出ようとすると、背中越しに声をかけられ反射的に背筋が伸びた。
「ありがとう、レシェ。応えてやれなくてすまない」
優しく穏やかな言葉に安心したが、それでも顔を見られたくない一心で、振り向くことはできなかった。
何故この時に気づけなかったのか、せめてきちんと顔を見ておかなかったのか。
伴侶を見つけて、その子を産み、幸福に満たされた遠い未来においてすら、
つまらない見栄を張ったことを、心の片隅で悔やみ続けることをレシェはまだ知らない。
3134/4:2006/07/06(木) 02:12:26 ID:bPDDEbyj
***

まるで失った女の姿を、そのままなぞり上げ、作り直すように成長する少女だった。
別物とわかっていながらも、亡き女の面影を宿した少女が時には疎ましく、この上なく愛しかった。
まさか父親ほど年の離れた自分に惚れるとは予想だにしなかったが。
「……いや、私はそれを望んでいたのかもしれん」
やり直すことなどできるわけもないのに、少女を死人の代わりとして見たことがないとは言い切れない。
強い想いと努力を知った上で関わり続けていたのは自分の弱さのせいだ。
「何が父親代わりだ、俗物め……」
独りきりになった部屋で王は自嘲した。

努めて隠し通した病は静かに王を蝕み続け、ようやく愛しい女のもとへ誘おうとしている。
王であることにこだわり続け、挙句に死なせてしまった女は許してくれるだろうか。
「……贈り物は何も持って往けぬが、16年越しの求婚を受け入れてもらえるか?」
笑みを含んだ懐かしい声の返事が聞こえた気がして、王は安心して目を閉じた。


長々と失礼しました。
ざっとスレを読み返して、>>214さんにインスパイアされました。
死にネタでもはや別物で大変申し訳ないのですが、あくまで一つの形としてお許しくだされば幸いです。
314名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 21:01:50 ID:ESkWuIGZ
>310
しっとりしててイイ!
つか、このスレレベル高くね?
315名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 02:35:33 ID:uobcq4lf
>>310
gj!

しかし無粋を承知で敢えて俺は言う!
救いを!頑張った女の子にもっと救いを!!。・゚・(ノД`)・゚・。
316名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 02:38:24 ID:6q2s29ss
「――落ち着いて聞いてね、アナタは死人なの」
「………は?」
「アナタは彼女の力で蘇った。」
蘇った?俺がいつ死んだ?
「アナタは彼女と再開する前に旅に出ていた。」
「…たしかに出てた。」
「私は、そこに居たわけじゃないけど、多分その間に死んだ。
そしてその後に彼女の力が作用して生き返った。

「ちょっと待てよ…」
「彼女の力は召喚能力の亜種、蘇生召喚、簡単に言うとネクロマンサー
蘇生された者はその体を維持するため、無意識に召喚者から魔力を吸い続ける。
最初に蘇生された時なら、彼女の魔力容量で有り余るほど足りていた。
だけどアナタが強くなるにつれ、吸う量が増え、彼女の容量を圧迫し始めた」
「――っ!じゃあ……」
「そうね、信じる信じないはアナタの勝手だけど、今彼女が危険状態に陥っている原因はアナタ」
じゃあ簡単だ、アイツが回復する方法――
「今考えてること当てましょうか?……死のうとしたでしょ。
そんなことしても無駄、アナタは死ねないし、身が傷つけばそれを治すために、更に膨大な魔力が彼女から吸い取られる。」
「―――じゃあ、じゃあ一体どうしたらいいんだよっ!」
「蘇生契約が切れる条件は二つ、一つは召喚者の死
もう一つは、召喚者か蘇生契約を切る。
あとは―――分かるわね?」
「二人で死ぬか、俺が消えるか」
「そう、タイムリミットは一週間……答えはアナタしか出せない。」
317名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 02:40:35 ID:6q2s29ss
六日、たった
話を聞いた時から答えは決まったような物だ。
だけど恐かった、思いが通じ合って、抱き合って、キスして
―――そしたら次の日には倒れてて、その次の日には倒れた原因を聞いた。
自分が死人などと信じたくなかったが、自分の記憶にはたしかに前後が繋がらない不思議な記憶があった。
それだけでわなく、自分が何か大きな力を、使うごとにアイツが気分を悪くしていたような気がする。
…やっぱりそういうことなんだろうな
覚悟を決めて、病室のドア手に掛け、開く。
「カイ…?!」
フィアはいきなりの訪問で準備をしていなかったのか髪をてぐしで整える。
「いいって」
「ダメだよ、私はカイの彼女なんだから、いつでもカイの前じゃ綺麗にいたいの」
「あ〜、じゃあ俺も手伝うから、早く終わらして、話たいことがあるんだ」
棚からクシを取出しフィアの栗色の髪をとく
「話したいことっ……て?」
「俺とお前のこと」
「―――っ!!こ、ここで言われても困るよ……?」
一気に顔を赤くして恥ずかしがる、いつもならここでからかうけど、そんなことは今の心境ではできない。「違う」
声を低くして言う
「え」
「お前……俺にずっと黙ってることってないか?」
「な、ないよ」
「……例えば、俺が死人だったとか、…お前の力で俺が生きてるとか」
クシを置き、フィアの目を見る、がフィアは俺と目を合わそうとしない。
「知らない……あ!それよりさ、お見舞いのフルーツ食べよーよ、カイって皮むけるでしょ?」
「時間がない」
「あるよ?」
「自分で分かるだろ?」
「わからない」
「別れの言葉を」
「ヤダ」
「ふぅ…お前やっぱアホだな、自分で白状したよ」
「あっ…!!」
口に手をあてて、涙目で俺をみる
「ぷっ…くくく、その顔やめとけって、笑っちまうっ」
フィアは喋らず顔をしかめる
「くく、こ、今度は喋らないつもりか?ぷくく」
「な、なによ!そんな笑うことないじゃん!!」
「ひぁ〜だって、おもしれ〜んだもん、ひ〜ひひひ」「む〜!!」
「恐っ、おっと怒り爆発する前に退散させてもらうわ」
逃げるように、ドアのほうへ歩く
「帰れ!馬鹿!」
フィアは手当たりしだいに物を投げ付け、叫ぶ
「あほ!“アンタなんか消えちゃえ”!!」
―――ようやく聞けた。
318名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 02:42:19 ID:6q2s29ss
体が淡く緑に包まれる
「えっ!?」
いきなりのことでフィアは困惑していた。だが少し間を置き自分の言ったことを理解する
「あっ!!ダメ!!」
「ありがとな」
「今のは違うの!!」
「今まで楽しかった」
「消えちゃダメ!」
ベットから立とうとするが足に力が入らず、そのまま地面に倒れこむ
「だ、大丈夫か!?」
駆け寄り手を差し伸べ、起こそうする
「あっ」
だが手は擦り抜ける
半透明な手を見つめもう少しで消えることを理解する「あ、ああぁああぁぁぁ、ヤダ、ヤダァ」
泣きながら懇願する彼女を見るのが辛くなり後ろを向く
「変な男に捕まんなよ、じゃないと化けて出てやるからな!」
まともな返事は帰ってこなかった。
次第に何も聞こえなくなり、何も見えなくなった。


『生まれ変わったら、今度こそいっしょになろうな』
だがこの言葉は彼女に届くことはなかった。


長々すんません、やっぱり文章力不足&構想不足で途中でダレてしまった。
リメイクとか…してうわなにをs(ry
319名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 03:02:56 ID:ublx7vWW
カッコイイヨー切ねぇよー・゚・(ノД`)・゚・
320名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 08:01:22 ID:fkD3JPE6
GJっっ!!
悲しいな。
3211/3 ◆pVdGUF5Fso :2006/07/07(金) 12:27:05 ID:XXl/MnB5
「お礼の申しようもありません。おかげで、父は罰されずに済みました。」
少女は若い男に深々と頭を下げて謝意を示す。
「いえ、私は大したことはしておりません。」
男の謙虚な態度に、少女は小さく笑った。
普段より女らしい装いが、若い男の眼に新鮮に映る。
「しかし、あなたに足場の組み方を教えて頂かなければ、あの高さまで建材を運び上げる
 のは不可能でした。礼といってもささやかですが、どうぞ召し上がってください。……
 サラ、給仕を。」
「はい、父上。」
老年の男に名を呼ばれた少女が、パン、スープに加えて、焼けたばかりの鳩と上等の葡萄
酒、新鮮な果物を卓上に並べる。
パンとスープ以外は彼らにとっては贅沢品だ。奮発したに違いない。

サラの父は、道路の敷設や橋の架橋を請け負う工房の責任者である。
横暴な王から、『城前の天険』と称される断崖に木橋ではなく石橋を架けよ、期日までに出
来なくば投獄後、いかなる処分も覚悟しておけ、との厳命を受けたのだ。
噂では酒宴で酔った勢いに任せ、この難事業が成功するか隣国の王と賭けをしたらしい。

スープと鳩肉から立ち上る湯気。
さらに鳩肉からは香ばしく焼けた皮と香草の、果物からは瑞々しい甘い匂いが立ち上る。
「では、遠慮なくいただきます。」
「橋の完成を祝して。」
「乾杯。」
竈を兼ねた暖炉の薪が爆ぜる音まで軽やかに響く。
食卓は、幸福な空気に包まれていた。


3222/3 ◆pVdGUF5Fso :2006/07/07(金) 12:30:10 ID:XXl/MnB5
「ご馳走様でした。」
夜も更け、若い男は暇乞いをする。
入り口の階段を下って振り返ると、階段の一段上にいる見送りに出てきた少女と同じ目の
高さになった。

「もう、旅立たれるのですか。」
「はい。…居心地が良すぎて長居してしまいました。」

淡い月明かり。人通りの絶えた路地には他に人影はない。

「ずっと、ここに留まってはいただけませんか。」
決意を秘めたサラの眼が、男を捕らえる。
「父上のご命令ですか?」
「いいえ違います、そんなんじゃありません。私の意志です。」
男の問いに憤慨したのか、少し早口になる。
「…私のことがお嫌いですか?」
泣き出しそうな声。恥じらうように俯くと小柄な身体が一層小さく感じる。
丁寧に結った髪から薔薇の香油が薫った。
「とんでもない。」
彼女が欲しくない、と言えば嘘になる。

父の横で。真っ直ぐ背を伸ばして、挑むように断崖を見上げていた。
その姿を初めて見たときから一目惚れだった。
簡素な長衣に隠されたしなやかな肢体も、ある時は鑿を握りある時は製図を行うマメだら
けの硬い手も、いつか父の跡を継ぎたいと目を輝かせて語る姿も、才能も、総て愛しい。

頬から首筋を伝い鎖骨まで、指の背でそっと辿る。
きめ細かい薄い膚。皮膚の下の早い脈動。
息を飲む、彼女の気配。
彼女の僅かな動きに、胸の上の小さな金属片が揺れた。月光を反射してきらりと瞬く。
いつも首にかけている革紐にぶら下がる敬虔な信者の証。
(そう、だった。)
それは男に、自身の烙印を思い出させる。


「私は所詮浪民です。この国の正規の民にはなれません。」
男の手は少女の頬を愛しげに触れ、名残を惜しむように離れた。
ゆっくりと後退る。そして。
「さよなら。」
足音が遠ざかっていく。
あまりにもあっけない別れ。
少女は俯いたまま、いつまでも月下に佇んでいた。



男が去って数ヶ月後、内乱が起きた。
皮肉なことに、勝敗を分けたのはかの断崖に架けた橋だった。
天険に聳える難攻不落の城は、落ちぬ橋により侵攻が格段に容易になっていたのだ。
横暴なる王は街に火を放ち、混乱に乗じて逃亡を図った。
街は焼け落ちた。サラ父娘達の工房も、類焼を免れなかった。





3233/3 ◆pVdGUF5Fso :2006/07/07(金) 12:33:15 ID:XXl/MnB5
橋の欄干に凭れ、一人ぼんやりとしている若い男に、水売りの老人が声をかける。
「お若いの、待ちぼうけかね。日陰で一杯如何かな?」
「頂くよ。」
素焼きの瓶から汲んだ冷たい水を、若い男は美味そうに飲んだ。
「水の味は変わらないな。」
「何じゃ?」
「いや、何でもない。」
若い男は柔らかく笑い、話題を変える。
「ここは観光地なのかい?」
「まぁ、そうじゃのぅ。」
周囲には屋台が並び、行き交う人々で混雑している。
老人は何度も説明し慣れた調子で語り始める。
「昔、サラという女がこの橋に生き別れになった恋人の名を付けたという話じゃよ。その
 名に触れながら祈ると、願いが叶うそうな。」
老人が指さした先には金属の板が取り付けられている。
金属板は多くの人間が触れて摩耗し、既に文字は読めない。
今日も願いを叶えて貰おうと人が集まり、長蛇の列をなしている。
「暴君を討った新王の命を受け、女だてらに父の跡を継いでな。戦で破壊された街を立て
 直し、弟子を育てた。流行病を患って若くして死んだそうじゃ。山頂の教会に墓がある。
 聖女サラってな、今じゃこの街の守護聖人さ。」
若い男は礼を言い、飲み干した杯を返した。
「お代。」
「毎度ありぃ。」
渡された代金を何気なく見た老人は目をむいた。古金貨が一枚。
水一杯にはあり得ない対価だ。
「釣りは要らないよ。」
老人が顔を上げたときには、既に雑踏に若者の姿はなかった。

誰もいない教会の中、『聖女サラ』像の前に男は佇む。像の下には彼女の棺が埋まっている。
教会内に墓を建ててもらえる者は、王族か聖人ぐらいだ。
生前の彼女なら、柄にもないと顔を真っ赤にして必死で辞退するだろう。
「……彼女の徳より教会の権威を示しやがって。」
呻くように発した、場に相応しくない粗野な言葉が高い天蓋に響く。
彼女を表現するならば、普段の質素な格好をさせ教会内よりも外に置くべきだ。
彼女はそんな歩きにくそうな服やごてごてした装身具を纏ったことはない。
跪いて虚ろな眼で天を仰がせるより、愛情のこもった眼差しで街を見守る立像こそ相応し
い。街には、彼女達が心血を注いだ建造物が今でも残っているのだから。

「アスモデウス、お前らしい不敬な物言いだな。」
天蓋から荘厳な声が響く。
「故人を偲ぶ邪魔をしないでくれるか、ラファエル。」
男は振り返りもせず、天蓋から背後に舞い降りてきた者に応じた。
「また失恋か。懲りん奴め。」
「放っておいてくれ。」
「たかだか人間の女一人を籠絡するなど、お前ならば造作もなかろうに。」
「……野の花は、野で咲き誇っているのがいい。これで良いんだ。」
男の声が、徐々に掠れていく。
「泣いているのか。悪魔のくせにつくづく妙な奴だ。」
「お前こそ趣味が俺の観察なんて変だろ。気色悪ぃぞ、天使のくせに。」
涙声に関わらず平然と悪態を切り返す態度に、天使は苦笑した。

「…今夜は飲むか。腐れ縁のよしみで付き合ってやろう。」
「当然、勘定はお前持ちでな。高価なモノから順番に頼んでやる。」
そして酔うと一晩中、如何に人間が儚く愛しい存在かを饒舌に語るだろう。
天使だった頃から彼は少しも変わっていない。
「仕方のない奴だ。」
だからこそ、目が離せないのだが。


324 ◆pVdGUF5Fso :2006/07/07(金) 12:34:31 ID:XXl/MnB5
>>299-300
和風+少年漫画っぽく。
ハッピーエンドになるかどうかは今後の主人公の成長次第。

>>320-323
悪魔アスモデウスと人間サラ。伝説をモチーフにいじってみた。
天使ラファエルの性別はご想像にお任せする。


お邪魔した。ではノシ
325名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 18:10:55 ID:KIBuCypA
>>324
神。何かエロカッコいいってか哲学的なものを感じた。
ここは神のすくつですね。
326名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 20:28:24 ID:UssqZj10
>>324
泣けた。良かった。
あと、カレル橋に行ったことあるのかい?
327名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 00:29:06 ID:0hY8OrRI
>>324
エロスをあんまり感じないけどすげえスタイリッシュだ。神と呼ばせていただきたい。
328名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 03:00:01 ID:qvqjMGvt

―――どれくらい時が経っただろうか

暗い、目を開けていても、閉めていても

そこは暗黒、ただ水の中を落ち続ける感覚だけが

俺がそこに居ると感じさせる

「ねぇ、いつまでそうしてるわけ?」
また、アイツだ。
「わからない、ただ、こうしていたい」
「自分が誰かも、もうわかんないんでしょ。んなことしても無・駄」
俺、俺は、誰?
「………」
「速くこっちに来ちゃいなよ」
何んでここに来た?
「俺は、誰?」
「やだ、教えてやんない、こっち来たら教えてあげてもいいかなぁ〜」
「ならいい」
アイツの言う『こっち』は嫌な予感がする。
だから、行かない
「ぐ……なんかムカつくわね、アンタ」
「なんで、そんなに俺にかまう」
「っなんででしょ〜ねぇ〜、こっち来たら教えてあげる」
またか、『こっち』てなんだ?
「ならいい」
「だぁぁあ!!ウザイよアンタ!?いい加減こっち来いよ!!」
「〜っ!うるさい!声小さくしろ」
「あ〜うるさくて結・構!!さっさと、アンタの魂手に入れないとこっちはノルマ達成できないのよ!」
「………」
「うざ、だんまりかよ」
「………」
「こっち来たらいっぱい気持ちいいことできるのになぁ〜」
「考え中だ、ボケ」
「ななっ!ボケですと!!?あぁっも〜しらない!っも〜帰れ!仕事のじゃまじゃ!!」
「なっ―――」
329名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 03:02:06 ID:tdyHj8/l
ttp://www.nippon-animation.co.jp/new/title/kanfu/story.html
>無情の掟
>師であった小龍女を愛していることを打ち明けると、
>一度、師父と仰いだ者と結婚することはできないと教えられる。
>それはその時代、武の世界に生きる者の掟だった。

なんか中国にはそういうのがあるらしい
というわけで武術の師弟ネタを!師匠と弟子どっちが女でもイイ
330名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 03:03:15 ID:qvqjMGvt
「カイ…カイ……私、カイがいなきゃダメなんだよぉ
なんで、なんで帰ってこないの?じゅつはせいこうしてるはずなのにぃ」
〇月×日
四十五度目の失敗
彼が消えてから半年、彼女体は回復し始めた。
だが、彼女は心に大きな傷を負った。彼女は動かず、旅団は彼女を見捨てること決めた。
私はこのままの彼女を残すことができず、彼女の世話役として残る。
体の回復は順調だ、食事も少しなら食べる。
心の問題は深刻である、思い出したように彼の名を呟き、嘆く
床にへたりこみ、狂ったように泣き始める。
術で再度彼の蘇生を試みるが、失敗に終わる。
今回は神聖な力が集まる神殿での蘇生、結果は同じだった。
これから帰宅する。


今回は少し長く書きすぎた。
「フィア、帰りましょう」彼女に語りかけるが彼女は答えない
「カイ……」
やはり、目の前で消えたのがショックだったのか
「……先に帰宅します。フィアもあまり遅くならないようにしてくださいね」



「――…イ……ぐす、カイ……」
バリ…
「カイ…」
バリリリ
「もう、無理なのかな」
ドサ
今日はもう帰ろう
立って、出口まで歩いて
グニ
ん?
「……踏むなよ」
「は?」
「いきなり踏むなよ、ちゃんと下見ろよ」
「カ…イ……?」
「なんか帰ってきちゃった?」
「カイっ!!」
「ギャ〜!」
331名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 03:05:42 ID:qvqjMGvt
ただ、ハッピーエンド書きたかっただけです。
誰か殴ってorz
332 ◆pVdGUF5Fso :2006/07/09(日) 12:00:31 ID:HUvpik/7
>>325-327
レス有難う。正直嬉しい。

カレル橋は浦沢直樹氏の「Monster」に出てきたな、と知る程度。
観光地の石橋・欄干の聖人ヤン・ネポムツキー像基部の金属レリーフは触れる
と幸福を呼ぶと言われ、つるつるにすり減っている。
って何このシンクロ。さっきググって驚いた。

エロスは…ほどほど(ry 精進する。ではノシ
333名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 16:31:14 ID:qfb6L65c
男「俺とお前じゃ釣りあわねーんだよ!じゃあな!」
女「まって・・・おいてかないで・・・」
自然に涙が落ちる
男「・・・おれなんかわすれて・・・しあわせつかみな!」
・・・わかっていた・・・あいつとおれはつりあわない
あいつはIT企業の社長の娘・・・婚約者もいる・・・
それに比べて俺は・・・
あいつの泣き声が聞こえる
・・・・











さようなら・・・もう、もどれない
334名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 04:38:41 ID:eVbenBTi
女であることを隠して義賊っぽい海賊のお頭をやっている中性的美形と
他の海賊にさらわれていたところをお頭に助けられてベタ惚れになってしまった姫とか。
最初は身分違いだからとか言って退けてたけどあまりにもしつこいので
二人きりになったときに女だと言うことを伝えてあきらめさせようとする。
でも天真爛漫と思いきや実は鋭い姫は実はそんなことかなり前から気付いてて、
しかも自分に対してお頭がちょっとドキドキしはじめたことにも感付いていて
お頭の手をとって自分の胸にそっと当てたりと誘いをかけ始める。
335名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 11:03:54 ID:Af89xcy1
ここまでまとめてみた。このスレ愛され杉。
見落としあったらすまん。追加訂正ヨロ。

さくっと一言
 >>2-4 >>6  >>8  >>10-13 >>16
 >>28  >>54 >>77 >>85
336名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 11:04:55 ID:Af89xcy1
短編
 〜100
  >>17(17氏) >>20  >>24  >>27  >>30(17氏) >>38
337名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 11:05:33 ID:Af89xcy1
 >>43  >>45(17氏) >>73  >>78  >>90
338名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 11:06:27 ID:Af89xcy1
短編
 101〜200
  >>111 >>113 >>124 >>139 >>141 >>142 
  >>164(164氏)>>170(17氏)
339名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 11:07:23 ID:Af89xcy1
短編
 201〜300
  >>205>>214 >>238 >>262 >>277 >>297 
340名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 11:07:55 ID:Af89xcy1
短編
 〜335
  >>301 >>304 >>308 >>333
341名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 11:08:53 ID:Af89xcy1
長編
  >>116-117 >>130-132 >>146-147 >>151-153 >>155-156
>>183-185(164氏)→リメイク>>190-194 >>198-201
342名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 11:09:48 ID:Af89xcy1
343名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 11:10:44 ID:Af89xcy1
長編
>>310-313 >>316-318 >>321-323(◆pVdGUF5Fso氏)
>>328>>330
344名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 11:11:32 ID:Af89xcy1
リレー
  >>272>>274>>276>>293-294
345名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 11:13:04 ID:Af89xcy1
思い浮かぶシチュ・キャラ
 >>41  >>42  >>49>>163  >>65>>70
346名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 11:14:04 ID:Af89xcy1
思い浮かぶシチュ・キャラ
 >>176  >>286 >>329  >>334


347名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 12:06:00 ID:Af89xcy1
訂正
 ×長編245-247  ○長編245-247(164氏)


長々とカキコしてゴメンね。
348名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 01:11:01 ID:fjhoSDuT
まとめ乙

今思いついたシチュ。
息子の幼なじみの女の子がよく家に遊びに来るのを、息子めあてだとしか思ってなくて
告白されてはじめて実は自分めあてだったと気付いたおとぼけお父さん。
349名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 01:37:11 ID:hMrmpVTZ
父寝取られはなんかトラウマあるなー。
350名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 01:52:53 ID:pQGctKPU
>>348
お父さんってところで映画のアメリカン・ビューティーを思い出した。
もっと違う話だけど、女の子を押しとどめるところがカッコよかった。
351名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 13:16:56 ID:mtJnUbrF
姫君は、切なげに睫毛を伏せた。彼女の立つバルコニーに沿うようにして
生えた大木の枝には、一人の青年が腰掛けている。彼は猫のように
するりした仕草でと枝からバルコニーの中へと入ってきた。
「おめでとうございます、姫様」
青年はそういって、静かに微笑んだ。姫君は俯いてしまう。
「貴女のことを、私は誇りに思います」
明日、姫君は隣接する富裕な国の王妃となる。その王は中々に好色な人物で、
姫君のほかに二人の妻と八人の妾がいるという。
「姫様、お顔をあげて下さい」
青年が優しく言った。姫君よりも三つ年上の彼は、彼女の乳兄弟で幼馴染である。
昔からよくこうして姫君のバルコニーにこっそり現れては、
二人で夜通しとりとめのないことを話した。
「わたくしは寂しいです。本当に、もうお会いできないの?」
姫君が縋るように訊ねた。青年は困った様に首をかしげた。
「そんな事をおっしゃらないで下さい。私などに、そんな言葉は勿体無い」
「わたくしは、あなたをお慕い申し上げています。離れたくありません……」
「姫様………」
352名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 13:25:44 ID:mtJnUbrF
姫君は、この優しい幼馴染に心を寄せていた。しかし、青年は一介のの
市民であり彼女はこの国の王女だ。二人の恋が実る事はない。
二人は、長い間見つめ合っていた。姫君は、何を思ったのかするりと
ガウンを脱いだ。薄い夜着一枚になった彼女に、青年は慌てた。
「姫様!どうぞお召し物を……」
「………お願いです、わたくしを連れて逃げてください。わたくしは、
 あなたのためにただの女になります。だから、二人で遠くへ逃げましょう…」
姫君は、そう言いながらすすり泣いた。青年の顔もゆがむ。
彼も、この姫君を深く愛していた。その穢れのない心も、鈴のような声も、
花の様な姿も。しかし、やはり二人の身分は違いすぎたし、何よりも
姫君は明日、婚礼を迎える。そうでないと、この小さな国は大国に
攻め入られてしまう。
「姫様……」
本当は、逃げてしまいたかった。この美しい人と、永遠よりも遠いところへ。
しかし、彼は目を閉じると自分の祖国のことを思った。
「駄目です、姫様。私は、貴女と逃げる事はできない」
353名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 13:35:28 ID:mtJnUbrF
諦めたように微笑む青年に、姫君は傷ついたような顔をした。
彼は目を伏せ、それから手にしていたものを彼女に差し出した。
「明日の婚礼に使うヴェールです。ドレスは師匠が作りましたが、
 ヴェールは私が作ったものです。貴女の為に、心を込めて作りました。
 どうぞ、私の想いを無為になさらないで下さい……」
姫君は、震える手で青年からヴェールを受け取った。精緻な刺繍が施された
それは、完璧なまでの美しさだった。姫君はそれを抱きしめ、
ぽろぽろと涙を流した。
「もしも願いが叶うなら…わたくしは、あなたのためにこのヴェールを
 つけたかった……」
そう言って泣き濡れる姫君の手を、青年はたまらずに取った。
姫君がふっと顔を上げる。青年は逡巡するように視線を揺らし、
彼女の小さな白い手を額にきつく押し当てた。
「我が麗しの姫君様に、永久に変わらぬ忠誠を誓い申し上げます」
青年は一度だけ姫君の目をまっすぐに見つめると、素早く闇の中へと
消えていった。残された姫君は、彼がいなくなった後も
ただただヴェールを抱きしめて泣いていた。
354名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 20:57:58 ID:Qz+QGSt6
>>349
じゃあ娘(妹)の幼馴染で、息子(兄)に憧れてると思っていたに脳内変換
355名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 21:13:23 ID:EsTT/HrR
>>353
GJ!
そこは一緒に逃げてほしかった(ノд`)・゚・。
356名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 22:31:26 ID:1zFBJ4Ba
>>355
そしたら、スレタイが・・・・・
357名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 01:23:56 ID:3Vwy1uRA
あ〜!!エロカッコよく押し止めた後むくわれるスレ欲し〜よ!!!
358名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 02:03:44 ID:fVC3Op0h
欲しいな
このスレ読んでて勝手に続編妄想すること多いもんw
専スレ立てないなら、各シチュスレ辺りに投下して、ここにアナウンスするのが妥当かな?
359名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 02:21:59 ID:UCBg8S9a
一度きちんと押し留めたならば、ここで報われるのは一向にかまわないと思うんだがいかがか?
兼ね合い・バランスが難しくなるかな?
360名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 05:12:33 ID:B2LfOunz
以前通っていた男子校での喧嘩のライバルを追って中国に渡って呪いの泉に落ち、
水をかぶったら豚になりお湯をかぶったら人間に戻ると言う妙な体質に。
その事を逆恨みし、復讐しようとそのライバルを襲撃してきた男。

でもそのライバルは実は水をかぶったら男に変身する体質だけど元々は
可愛い女の子だったと判明。しかもよく喧嘩してたのは男の事が気になってたから。

しかし純情すぎるのとこいつは俺のライバルだと言う妙なこだわりから
女の姿のライバルから誘惑されてもうろたえながら押しとどめたり、
水をぶっかけて男にしてから闘いを挑もうとする。
361名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 11:33:38 ID:uLX0Mc9V
>>359
実際そういうのこのスレにいくつかあるしな。
362名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 21:35:35 ID:UrEA6lgZ
「私はトーコの気持ちを理解した」
翻訳機を通して伝わる言葉は、まるで感情がこもっていない。
アクセントは極めて平坦で、表現は直接的でときどきおかしくなる。
それでも籐子は彼が戸惑っているのを表情から察した。
もう一押しするために、籐子は制服に手をかける。
本能的な色仕掛けはきっと彼にも有効だ。
その手を少年の手が押しとどめた。
「……理解してくれたんでしょ、シュネス?」
籐子は挑戦的に少年を見た。
胸はドキドキとうるさいくらいに高鳴っている。
「トーコ」
シュネスはじっと籐子を見つめ返した。
鮮やかなオレンジ色の瞳は、彼の生まれた場所ではありふれた色なのだろうか。
「私たちは調査した。トーコたちはタマゴを産むことをしない」
「は?」
籐子は耳を疑った。
背筋の伸びた二足歩行、外見は自分たちと変わりのない脊椎動物。
それなのに今、何だか不思議なことを言われた気がする。
「タマゴを、産むことを、しない」
シュネスはもう一度ゆっくり言い直した。
彼らの基準ではどうか知らないが、籐子の目から見て端整な顔はいたって真面目だ。
363名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 21:36:47 ID:UrEA6lgZ
「……たま、ご?」
「私たちはメスが卵を産む。オスが精子をかける。受精卵ができる」
籐子の頭にサケの産卵風景がよぎった。
頭は真っ白になり言葉も出てこない。
「トーコ、誠に申し訳ありません」
シュネスはそう言って、謝罪の気持ちを表すために片手を上げた。
浅黒い肌は心持ち赤く、その目はあらぬ方向に泳いでいた。

「ふーん、キミは卵から産まれたのかー」
同僚の爬虫人はケタケタと楽しそうに笑って出迎えた。
帰艦したシュネスはげんなりとする。
「……見てたんですか?」
例え少年にとって一大事件「告白」があろうとも、職務に忠実であれと買って来させられた生鮮食品が重い。
少女と会ったのもその『調達任務』の最中だった。
現地住民に酷似した外見、年齢も立場も使いっぱしりに最適なシュネス。
「僕らお仲間だったんだぁー?」
シュネスから翻訳機を受け取りながら、正真正銘タマゴから産まれた爬虫人はにんまり笑う。
「そ、そうでも言わなきゃ、あの子が納得しないから!!」
「あひゃひゃ!!シュネスはモテモテだねーぃ!」
鱗に覆われた腕でヘッドロックを決められる。
もったいなかったかなあ……、と地球を侵略しに来た悪い宇宙人は、年頃の少年らしく考えた。


人型宇宙人×地球人の女の子
カッコ良いどころか間抜けな理由でゴメンw
364名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 02:42:44 ID:0wdQ9gUl
「まだ近くに居るはずだ、狩りだすぞ!!」

港に響く怒鳴り声、その中で男は銃を構え、いつでも撃てるようにする
「……ご苦労なことで、さっさと帰らないとヤバいですね」
「ごめんなさい………私の、私のせいで…」
この状況を作ってしまった少女は自分を責めながら、唇を噛み締める。
「まったくです。一人で勝手に外に行くなと口が酸っぱくなるほど言いましたよ?」
「……ごめんない…ごめんなさい……」
少女の頬に一筋の雫がこぼれ、続いてボロボロと落ちていく。
「泣いて助かるなら誰でも泣いています」
泣く少女に男はさらに追い打ちをかける
いくら護衛だからといっても人間だ、自分の立場を顧みぬ彼女の脱走
そして、最悪に属するパターンの誘拐に遭遇してからの彼女の自虐的な態度
爆発しそうになる怒りを押し止めるが無意識に言葉に出てしまう。
「今回はいい機会です、これでわかったでしょう?貴方の立場がどれほどの物か」
「……はい」
「…!、来ましたよ」
365名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 02:45:48 ID:0wdQ9gUl
「静かに…」
足音からして二人
次第に大きくなる足音が近づいてくるのを実感する
男はこれから起きる惨劇を予感し少女に目をつぶらせる
唾を飲み込む音、近づく足音
コンテナの背後に身を隠し、路地を覗き込んできた敵の顎に銃を突き付け
「っな!?」
放つ
派手な銃声の後に顎を吹き飛ばされた敵の死体が倒れこもうとする
男はそれを許さず死体の腹を蹴りで強打し吹き飛ばす
それはもう一人に当たり、死体共々倒れこむ
「すいませんね」
更に銃声、転がる死体共から銃を奪い取り一つは自分の懐に入れる
「お嬢様、もう目を開けても構いません」
「終わった……の?」
「いいえ、まだです。これから少し走りますよ」
少女の所に戻り死体を見せぬように自分を死角にする「それとコレを」
もう一つを少女に渡す
「無理だよ」
「念のためです」
無理矢理少女に銃を持たせる
「持つだけで少し勇気がでます」
「…うん」
366名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 02:48:33 ID:0wdQ9gUl
移動を繰り返し、人を殺しながら走る
「はぁ…はぁ…」
「…少し休みましょう」
物陰に身を隠して息を整える
「もう少しで道路に出ます、そうなれば安心でしょう」
「うん…」
「がんばりましょう」
少女に元気は無い、こんな状況なら当たり前だが
少女は先の戦闘で人を殺すを見てしまったのだ。
(…かなりきてますね)
男はそんな少女の気持ちを察して毒づく
「大丈夫です、あぁいうのは人生一度や二度見るものです」
「そう…かなぁ?」
「そうです、……そろそろ行きますよ」
少女の返答を待たず男は辺りを警戒しつつ歩きだす
「ま、待ってよ」
その時だった、物陰から出た瞬間、銃声と共に男の脛から血が吹き出す。
「ぐ…あっ!?」
撃たれた痛みで男はひざま付く
「あ〜あ、仲間皆殺られちまった」
「くっ」
敵の語りに耳を傾けず男は元の物陰に飛び込む
「どぉ〜してくれんだよコノヤロォ!!」
銃を連発して威嚇しながら男が隠れた場所に近づいてくる
「はぁ……クッ!痛ってぇ…」
男はすぐに止血を施す、がただの応急処置では痛みが引くわけもない
奴が言うことが正しければ、奴を殺したら全てが終わる
(どうする?奴に気付かれてるなら不意打ちは不可だ、油断もしてないだろう。
それにこの足だ、これ以上傷つかずに勝利できるか?



無理だ、ならば特攻あるのみ)
複雑な思考は現実では一瞬で済み、その思考から生み出された作戦を実行するため物陰ギリギリに移動する。
(一、二の三!!)
物陰から飛び出し、敵に向かい走りだす。
止血した足から血が滲みだす
「うおおぉおあぁああああ!!!」
「叫びゃこの状況が覆ると思ってんのかよっ!!?」
撃ち合いと共に脇腹に痛みを感じた。
突然、走る足から力が抜けて倒れこむ

「くそ…」
「お前はすぐに死なせねぇ…俺も大分頭にきてんだ」
目の前の地面に弾がめり込む
「くくく、痛いか?いてぇよなぁ!!!がっ!?」
いきなり怒鳴り声とは違う声がでる。
銃声が響き、それは敵の胸に命中していた。
367名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 02:50:54 ID:0wdQ9gUl
「お嬢様…?」
「大丈夫!?」



港に接する道路で二人は車を待つ、人通りの少なさに加えて夜だ、辺りはシンっと静まり返っていた。
少女は男の頭を膝に乗せなから口を開く
「私さ、いっつも言うこと聞かないで外出てたよね」
「…そうですね、見つけるのには苦労しました」
「だよね、でもさ、いつも最初に見つけてくれるのはキミなんだよ?」
「…そうですね」
「これってさ私達は見えない何かで繋がってるんだよ、きっと」
「はは…、赤い糸でですか?」
「…うん、きっと赤い糸で結ばれてるんだよ」
「……」
「好きだよ」
「………私もです」
「ふふ、やった両思いだね」
「でも……この赤い糸はすぐ……切れちゃうかもしれませんね……」
「なんで?」
「……」
「あれ、どうしたの?」
「………」
「起きなよ……」


368名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 07:52:09 ID:GmoRnJU9
GJ!!(ノд`)・゚・。
369名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 21:26:44 ID:pQrHDAbT
なんかこのスレのせいで
涙腺が緩くなっちったよ………GJ!
370名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 22:30:05 ID:s7zAq3Ny
最近の作品はどれもカッコイイ・・・。
だが、

 エ ロ く な い !!
371164:2006/07/15(土) 23:37:32 ID:0wdQ9gUl
アッー!!
自分の文章力上げるのに夢中になりすぎて>>364にエロ忘れてたorz
今回はリメイク希望しなくても大丈夫だな!!とか思った俺のバカァ!
皆さんごめんなさい
372名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 00:09:56 ID:XGfMTPey
エロなんて飾りです。エロい人には(ry
373名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 04:28:29 ID:DgXZFvxw
なに?エロくないだと?
ジョジョ、それは積極的にエロを見いだそうとしていないからだよ
逆に考えるんだ
>>363の爬虫人は牝で、これからシュネスに対して性的なご褒美を与える」
と考えるんだ
374名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 19:14:15 ID:6mXJBmUO
むしろ雌雄同体宇宙人

シュネスはオスとして生きていくことを選んだのに、
「女の子」の方を攻められるのが大好きだった。
「だって地球人には、どっちかしかついてないから仕方ないじゃないか!」

自分もエロ分を補充して出直します。失礼しました。
375名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 01:38:08 ID:sekNl22G
「…また、来たのか」
「当たり前ですよ、一応そんなのでも私の叔父にあたるわけですし」
少女は買ってきた食材を広げながら、男の方を見る。
「ヒゲ剃ったらどうですか、いい加減伸びっぱなしじゃ天国の姉さんに嫌われちゃいますよ?」
「…ほっといてくれ」
そういうと少女は、今夜はカレーですからと言い、キッチンに向かう。
少女が料理を作る間、会話はなかった。
男は思い立った様に立ち上がり鏡を見る。
さすがに自分でも気になったのか何日振りかも分からない髭剃りをした。
剃り終わると力なく仏壇の前に座りこみ呟く。
「美雪…」
その名前は男の心に重く響いた。
少女は作ったカレーを机に置き、放心したような男を見て複雑な表情をした。
「カレーできました、だから一緒に食べましょう」
必死に出したその言葉は、男には届かなかった。
少女は近付き、男の腕を掴み引っ張ろうとする。
が、掴んだ腕は払われ少女は尻餅をつく。
「なぁ、どうやったら美雪帰ってくるかな?」
男はさっきの行動を気にも止めない様子で少女に聞く。
「姉さんは…帰ってきません。……姉さんは死にました。」
「…美雪は死んでない」
「…死にました」
「死んでない」
「死にました、アナタといっしょに姉さんの最後をみま――」
少女が言葉を言い切る前に男は、少女を押し倒した。「きゃ!?」
「なんでだよ、何で死んじまったんだ…!?」
倒され、支離滅裂な言葉を投げ掛けられても少女は男を見離さず、ただ男の質問に答える。
「よく、わかりません。なんとかなんとか病って長い名前の病気で死にました」
周りが気付いた時には末期だった、男の必死な看病も効かず、今となってはその看病も男を苦しめる要因にしかならない。
少女の言う真実の言葉に男は、ごめんと言い残しまた力なく座りこんだ。
「私じゃ…ダメですか…?」
しばらくの沈黙の後、思い切ったように少女は口を開く。
「私じゃ…姉さんの代わりは無理ですか?
私じゃ!…アナタの心の傷を癒すことはできませんか?」
早口で、かつ鮮明に少女は男に想いをぶつける。
「同情なら、いらない」
しかし、男は悲観にしかその言葉を捕らえることができなかった。
「同情じゃありません、好きなんです。アナタのことが…ずっと、ずっと前から!」
「……」
「なんとか言ってくださいよ…」
「……ガキじゃ無理だ」
しばし間を起き、少女の平手が男の頬に当たる。
「アンタ…!バカじゃないんですか!?っ断るにしても、もっとマシないいかた出来ないんですか!?」
「はは、バカだから」
「もう、帰ります」
少女は立ち上がり、玄関に迎う。
「…おい」
「……なんですか?」
「少し、楽になった」
「……」
「ありがとな」
「感謝なんてされたくありません」
そう言い放ち、少女は玄関を開け
「あしたも、来ます」
そう言い放ち消えた。
376名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 20:16:53 ID:yOQTii+n
いい話だね。こういうの好き。
377 ◆pVdGUF5Fso :2006/07/21(金) 22:09:25 ID:VW4AozbN
女の子に押し倒されたのは生まれて初めてだ。
男どうしでなら、プロレス技の掛け合いで押し倒されたことは何度かあるけど。

閉館時間を迎えた放課後の図書館。窓を閉めている背後から襲われた。

学校指定のタンクトップをウザがって着ていないからブラウスから水玉模様のついたブラ
が透けて見えるのはいつものことだけど、下から見上げる機会はそうそうないよな。
驚きはしているけど何処か冷静に事態を見つめている僕の一部が、心の中でそっと呟く。
折り目のとれかけた短いプリーツスカートから伸びる脚が僕の両脇を挟み込んでいる。
僕を締め付けて形の歪んだフトモモが、妙に生々しい。

「どいて欲しいんだけど。」
「や。」
「ごめん。僕他に好きな人がいるから。」
「ツカハラぁ。」
お得意の上目遣いを決めながらのしかかってくる。
いわゆるマウントポジション。絶体絶命。

「ウチら噂ンなってんだょ。」
「知ってる。」
その噂は、『僕が好きな人』が僕を嫌うように君が流したであろうことも。
ガッコのベンキョはいい加減なくせに、恋愛ごとに関しては周到に罠を張る。
罠が予想以上に成長して、ミイラ取りがミイラになりかけてるけど。

「ミズタニは周りに煽られてムキになっているだけだよ。」
彼女がこれまで付き合ってきた男は、スポーツ万能、クラスの人気者タイプばかり。
2ヶ月単位で別れたりくっついたりで忙しそうだ。
「H高って知ってる?県外の全寮制男子進学校。」
突然関係ない話を切り出されて、彼女はぽかんとした顔で僕を見る。
宇宙人が日本語を喋っていてもそこまで驚かないんじゃないか。
「僕はそこの推薦を取りたい。ミズタニに関わって内申下げたくないんだよね。」
こってりマスカラを塗った睫毛に縁取られた眼を、真っ直ぐ覗き込んで。
「邪魔なんだ。」
内申に書かれるコトじゃないし、もう推薦決まってるから嘘だけどね。


378 ◆pVdGUF5Fso :2006/07/21(金) 22:10:20 ID:VW4AozbN
「バーカ、ドーテー!死ねっ!!」
捨てゼリフと同時に、バン、とドアが荒々しく閉じられた。
(馬鹿でも童貞でもいいよ)
僕は何もかも捨てていく。でないと、気が狂いそうだから。
親の虚栄心につけ込む戦略は功を奏した。
「さよなら。」
彼女の足早に遠ざかっていく足音に、小さく別れを告げる。

今でも好きなのは、2年前の君。
何が君を変えてしまったんだろう。
自分の家が『おかしい』ことに気付いてしまった僕も変わりはしたけれど。


時間の流れは、ときどき残酷だ。
僕は立ち上がり服の埃を払うと、ゆっくりと鈍く光る図書館の鍵を拾った。




※フィクションです、全世界のツカハラさん・ミズタニさんには一切関係ございません。
379 ◆pVdGUF5Fso :2006/07/21(金) 22:16:33 ID:VW4AozbN
>>377-378
どちらも中学生。

同窓会でふと思う。
変わった人が変わりすぎるのか、変わらない人が変わらなさすぎるのか。
380名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 16:42:46 ID:D0cwqPmS
きっと養父に犯されたんだな。
381名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 17:44:56 ID:Z5VwBFiz
>>379
GJ!
立ち直るまで面倒見てやるほうがカッコイイとはおもうけど
そこまでしてやれないだろうし。
妙にリアルで切なくてよかった。
382名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 12:44:32 ID:UxBbXIns
「どうして……どうしてなの!?」

僕の前には、泣きそうな位に顔を歪めている半裸の少女が居る。
半年前、僕を僕を「あなたってちょっと頼りないし…」の一言でさっくり振ってくれた。
そして、今、再び出会いに行ったらあっさりと僕に一目惚れしたのだ。

今の僕は半年前の貧弱な坊やでは無い。
身体は良い具合に引き締まり、ポージングを取ればしなやかな筋肉が盛り上がる。
肌色も仕事で良い具合に赤銅色に焼き上がり、筋肉を良い具合に際だたせている。
これなら、振った彼女が蹌踉めくのも無理は無いだろう。現に、今のボクはかなりもてているのだ。
が……。

「ごめん、勝手な言いぐさだけど、ボクは君の事を抱けない」
「そんな……昔の事は謝ったじゃない。そんなに、私の事、許せないの……?」

泣きじゃくる彼女の言葉を背中で受け止めながら、萎えたままの息子をトランクスに格納。
振り返ると、そこにはスレンダーで華奢な少女がこちらを見上げていた。
潤んだ目に心がズキリと痛む。だが、ボクはこう言うしか無かった。

「ごめんね。もう、住む世界が違うんだ」
「下手な言い訳しないでよ馬鹿っ!」

わんわんと泣き出した彼女を置いて、ボクはラブホテルの一室から立ち去った。
下手な言い訳か……本当に事実なんだけどね。


「お、帰って来たな。待ってたぜ!」

家に帰るとでかい声がボクを出迎えた。
ボクの姿は既に仕事着である土木作業着になっている。
と言うか、この姿で居ろと言う彼女のご氏名である。土木作業員。
この仕事がボクを鍛え上げたと言っても過言ではない。
そして、同居人の仕事でもある。そう、目の前でガハハと笑っているマッチョなボクの彼女。

「飯喰おうぜ飯!」

見上げる程に高い身長。全身これ凶器と表現出来るマッチョな肢体。
西洋人を彷彿とさせるごつい顎に白く光る大きな歯並び。
ボクの身体なんて彼女に比べれば貧弱な坊やの範囲だ。
尤も、ボクは彼女に童貞を奪われ、犯さ……交際を続けた結果マッチョな女でしか感じなくなった。
そう、一縷の望みを賭けてもみた……が、先程の通り賭けに敗れた。
『体もあそこもばっちり鍛えてやるからな』の言葉通りボクは鍛え上げられた。
ムキムキマッチョ以外に勃起しない筋肉フェチへと。

「よーし、飯喰ったから腹ごなしに一発すっか!」

……これはこれで、幸せかもしれないけどさ。





383名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 14:26:43 ID:BQXzLRxd
いっそ普通にウホッでもよかったんじゃないか

GJ
384名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 20:01:39 ID:PsWjnRGa
GJ!面白かった。

ついでにこれ思い出した。
ttp://www.mni.ne.jp/~illusion/diary/g.html
385名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 05:07:37 ID:IxWx2it9
思い出したって言うかまさにそのソフトの一作目をイメージして書かれてると思う
386名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 12:18:57 ID:YrUWmN1v
保守兼ねて、雑談ネタをふってみる。

@これまでのSSでどれが好き?
AどのSSでどんな続編妄想した?
Bまだ書かれてなくて、読んでみたいシチュは?
387名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 01:16:43 ID:PQhrRXNi
>>386
@で>>205が好きだな。明るくて幸先のいい話の方が好きだ。ここだと難しいがw
388名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 03:28:09 ID:l1O7GmnQ
>>386
思いつくまま書くと、長くなったw@Aまぜこぜな感じで

>>223
男も女もピュアで良いです
>「後になって、『なんであの時あんなに悩んでたんだ』って、後悔するんだから、絶対」
そうなることを望みますw
>>290
良識ある大人と経験豊富な子供の対比がすごく好き
先生、幸せにしてやってください
>>304
笑えたのと文の雰囲気が好き
>>310
女の子が切ない、王様も純愛で悲しい
いっそ叔母さん死ななかったことにして、明るい三角関係に・・・と無理な妄想をしてみる
389名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 22:51:09 ID:8Wo2XY/0
>>386
@
やはり>>30はかっこよさピカ1ではないかと。
>>113からのトーサカ&リンカポーも好きだ。
そして被るんだが>>205は俺も好きだ。
>>321〜はエロくないんだがSSとしてまとまっててイイ。
390名無しさん@ピンキー:2006/07/30(日) 00:29:10 ID:hnRIeas2
@
>>253-255
血縁のある兄妹で、一歩間違えればどろどろなシチュを品よくまとめてある。
王道直球勝負でエロ格好良い。

A
>>351-353
男は実は盗賊。頭である師匠と契約し、結婚式最中の姫を攫う。
一応結婚はしたので姫の国に攻め込む口実にはならない。
で、男と姫は駆け落ちする。師匠には指輪が報酬。

B
中華っぽいの。和風洋風はあるけど、これはまだない。
391名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 11:21:26 ID:eJAVjZpg
>>103とか>>205はぶっちゃけシチュエーション勝ちだと思う。

いえ褒め言葉ですよ?
392名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 11:23:26 ID:eJAVjZpg
あ、違う>>103でなくて>>113だ。
393名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 14:04:38 ID:S4E+7Kde
個人的には>>378のやつが好き。続き見たいの含め。
や、なくてもいいけど。
394名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 19:56:06 ID:9Dyjnaoj
うーん。
まとめてみると
・好みは結構バラバラ(敢えて挙げれば>>205が人気高い)
・ハッピーエンド好きが結構多い
・○○読みたい!みたいな欲求は薄い(出てきたものを美味しくいただく)
のがここの読み手の傾向?
395名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 00:04:17 ID:+i6KT7le
まあ、そんな感じ?
ハッピーエンド好きが多いのはなんかこのスレの根幹に関わるな。
396名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 00:01:28 ID:E/h+XY2u
悲恋も切ない話も大好きだーっ!!

大分下がったからageるわ。
397投下:2006/08/03(木) 02:08:32 ID:WdKWkzUl

「ね、阿部ッち、しよっか」
 ナツキさんが、持っていたビール缶を置いて、ごろりとフローリングに寝ころんで言った。
「はぁ? 何をですか。……また、丑三つ時のマラソンなんて言われてもやりませんからね」
 ポテトチップをつまみながら、俺はオレンジジュースを啜った。
 アルコールじゃないのは、未成年だからという理由もあるが、単に酒が苦手なだけだ。
 後ろ向きに寝転がっていたナツキさんが、ころんとこちらに体を返した。
 目の周りがずいぶん赤い。酒のせいか、さっきまで泣き続けていたせいか。
「するって言ったら、セックスに決まってるじゃない」
 ゴフッ。
 漫画の描き文字のような音を立て、思わずジュースを噴き出す。
「な、ななな、何、訳のわからんコト言ってんスか!」
「本気だもん」
 起き上がったナツキさんが、床であぐらを組む。ショートパンツから伸びる白い太股が目に焼き付く。
「ナツキさんは、酔ってるんですよ」
 太股から目を逸らしながら言う。
「酔ってなんかない! シラフだもんね」
 拳を振り上げる姿は、どこからどう見ても酔っぱらいだ。
 しかも、とても自分より五つ上、二十四歳の言動とは思えない。
398投下2:2006/08/03(木) 02:10:21 ID:WdKWkzUl
 ナツキさんは、俺の、元バイト先の上司だ。
 ナツキさんのことを「デキル美人営業」と言ってる奴らに、この酒乱ぶりを見せてやりたい。

 はーっ。と溜め息をつく俺の前で、ナツキさんはフラフラ立ち上がり、ゆっくりとこちらへ近づいて来た。
……かと思いきや、自分が置いたビール缶を踏んづけ、後ろ向きに派手に転んだ。
 まだ中に入っていたビールが、フローリングに撒き散らされる。その中に、転んだナツキさんが沈没している。
「ちょっ、大丈夫っスか!?」
 慌てて抱き起こすと、ナツキさんが泣きながら俺にしがみついてくる。
「痛いよー……痛いよう」
 酔いのせいで、幼児退行を起こしているナツキさんの後頭部を、よしよしと撫でる。
 薄いタンクトップを通して、豊かな胸の弾力を感じる。そろそろ理性がヤバイかもしれない。
 頭の中で、さっきナツキさんが口にした「セックス」という言葉が踊る。

「痛い……」ナツキさんが、ぎゅうっと俺の背中を抱いて言った。
「ナツキさん……」
「どこもかしこも痛い……でも、胸の中が、一番痛いよ……阿部ッち」
 その言葉で、冷静さが舞い戻ってきた。
399投下3:2006/08/03(木) 02:12:08 ID:WdKWkzUl
【やっぱりフラれました。今日は朝まで飲むので、阿部ッちは強制参加ね】

 大学の授業中に、ナツキさんから、こんなメールが入ってきた。
 ナツキさんが勝ち目のない片思いをしているのは、ずっと見てきたし、どれだけ相手のことが好きだったか、俺はよく知っている。
 そして、ナツキさんがフラれて喜んでいる自分がいることも、俺はよく知っている。
 しゃっくり上げながら泣くナツキさんの背中を、何度も手の平で撫でる。手の大きさには自信があった。
 この手を、「男の手」と感じてくれたら良いのに。

「弱音を吐ける弟」みたいな位置をキープして、一年かけて、ナツキさんの隙間に入り込んだ。
 そして、じゅうぶん自分に依存させてから、ナツキさんのいる会社を辞めた。これで、上司と部下という関係ではなくなる。
(──俺、狡いよなぁ)
 自嘲気味に笑った。

 ナツキさんの嗚咽は、いつの間にか、規則正しい寝息に変わっている。
 寝顔を見ていると、とても自分より年上には見えない。
 涙の痕が残る頬に、軽く口づける。
 本当の甘い関係になるには、まだ、もう少し……。

 <了>
400名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 08:39:28 ID:qbLVgHqr
押しとどめてはいない。

が、GJ
401397:2006/08/03(木) 18:41:07 ID:rYhaZy8O
確かに押しとどめてない……orz

リターンマッチの機会を……
402名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 20:41:15 ID:dy5wktmh
押しとどめられてるのは、作中の女じゃなくて住人の煩悩じゃないかと思い始めたw
403名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 00:14:38 ID:btHnMXDu
押しとどめられて、ますます燃え盛る住人の煩悩w

>>401
いつでもおいで
404名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 00:03:42 ID:lPw9h4pI
誰もいない…
保守ageぬるぽするなら今のうち…
405名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 00:10:56 ID:FhAZueyg
>>404
う゛ぁかがそくさまガッてやるよ
406名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 16:25:17 ID:DBfGJUdq
私はいつも、めぐる一年間の中でこの日を楽しみにしている。
いや、この日しか私は“楽しい”ということ実感できなくなっていた。
この日のためだけに、私は、もう、誰も居ない昔の実家に帰ってくる。
―…そろそろだ、少し、心臓の音が高鳴る。
玄関が開く音がした。あぁ、今すぐに気持ちの向くままに玄関に走りだし抱きつきたい。
でもダメ、私はそんな女の子じゃないんだから。
廊下を歩く音が、近づいてくる。もう少し、もう少しで会える。
襖が開いたら始めに、おかえり、だ。
そう心に何度も復唱しつづける。
襖が開く。
「お、おきゃうぇり兄さん」
「ただいま〜、て……」
しまった、痛恨のミスだ。こうなることなら一回、口に出して言うべきだった…
407名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 16:27:17 ID:DBfGJUdq
夕飯を終えて、一息つく。
「どう?私の料理美味しかったでしょ」
「美味かった、お前上達したなぁ」
「でしょ〜」
「うん、あ〜俺ちょっと、食ったら眠くなってきた、自分の部屋いくわぁ」
「え」
「心配すんなって、まだ二日もあるんだから」
ふぁ〜、と口を広げる兄さんはホントに眠そうだった。
兄さんはまだ二日って、いってたけど私にとっては後二日なのだ、後二日で兄さんはまた“アッチ”に帰ってしまう。
我慢できない、兄さんはもっと自覚してほしい。
兄さんが帰ったら、私はまた独りぼっちだ。
また、来年まで兄さんに会えない。
「はぁ…」
考えるだけでため息が出る。

「お?どした」
気付いたら兄さんの部屋に来ていた。兄さんの声を無視してとなりに座る。
「お、おい」
床をついていた兄さんの手に手を重ねる。
「…兄さん」
そう呟くだけで、体が熱くなる。
「抱いて」
408名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 16:29:43 ID:DBfGJUdq
「抱いて」
甘い声で、そう囁かれただけで思考が一気に削られる。
胸の奥が締め付けられて、少しだけ、昔の記憶がフラッシュバックする。
高ニの時に、妹の初恋の相手が自分だったと気付いたとき
兄妹でしてはいけないという背徳感を感じながら初めてしたとき
「兄さん」
重ねていた手が持ち上げられ引き寄せられ、柔らかい胸に押しあてられる。
「ん」
触れると同時に甘い声が漏れてくる。
それが引き金になったのか無意識のうちに指が力を加える。
「ん…、あっ」
気持ちいい、しかし、それとは別の小さな疑問を感じた。
胸から手を離して、それを口にする。
「兄…さん?」
「お前…、彼氏とかいねぇのか」
目を丸くしてコイツは質問の意味をかんがえる素振りを見せると、すぐさま笑顔になって答える。
「大丈夫!絶対に浮気なんかしないよ、私には兄さんがいるんだから」
コイツ…、本気で言ってんのか、まだ俺が彼氏と思ってんのか
コイツも18だ、もう五年も経ってるんだぞ。
いくらなんでも引きずりすぎだ。俺が帰ってくるたびに笑顔で迎えてくれていた、でもそれは家族として、兄妹としての関係として迎えてくれていたと思ってた。
だけどコイツの彼氏はまだ俺、俺のことがまだ男として好きなのか?
「兄さん」
絶対ダメだ、年に三日しか帰ってこれない奴だぞ、そんなの幸せになれっこない、このままじゃ妹の人生がダメになる。
「兄さん!」
「な!?」
「兄さん、どうしたの?…続き、しようよ」
妹の唇が近づく、それを俺は肩を掴んで止めた。
「兄…さん?」
「ダメだ、俺といっしょに居ちゃダメだ」
「え」
「お前、わかってんのか、俺が死人だって、わかってんのか?、」
「違うよ?兄さんは生きてるよ、現に私の目の前にいるじゃない」
「…それは違う、この日が特別なだけだ。俺はもう死人だ。この三日だけしか俺は現界できない」
「………」
「それをまだ俺が彼氏なんて、おかしいだろ、だから―」
「っおかしくなんてない!!兄さんは私の彼氏だ、ううん、私の彼氏は兄さんだけ。」
409名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 16:31:33 ID:DBfGJUdq
兄さんに抱きついて、胸に顔を埋める。
兄さんの匂い、兄さん兄さん
「やめろ」
「やだ」
兄さんはやさしい、本当に嫌なら突き放せばいい。
そうしないのは嫌じゃないからだ。
それなら
「ん」
「なっ…」
キス、兄さんは私をからかってるだけだ。こんな冗談は迷惑だ。
「今度は…兄さんからだよ」
「……」
「…え?」
体が離される、なんで?兄さんは私のことが好きじゃないの
兄さんは私をじっと見て、口を開いた。
「なんで、俺が帰ってこれたかわかった」
そんなの簡単だ、私と会うためだ。
「お前がずっと俺のことをずっと、死んでからも想っていたから、俺は帰ってこれた」
ほら、やっぱり
「だから言う、こんなことならもっと、前から言っておくべきだった」

「別れよう」

「え?」
おかしいよ、なんで
なんで別れるの、だってまだ好きあってるじゃない。
そんなのヤダ、やだやだやだやだやだやだ
「嫌だ、兄さんは私のこと嫌いなの…?」
声が震える、兄さんは目を伏せて答える。
「好きだ」
「ちゃんとこっちみて言ってよ…」
兄さんは答えない
「――ねぇっ!」
兄さんの手を掴もうとした、けど、霧を掴むように手が通り抜ける。
「え…?」
兄さんも驚いた顔をしていた。なんで
「…未練がなくなったから」
「未練…?」
「…今分かった。お前が想っていたんじゃなくて、俺が想っていたからだ、死んでからずっと、自分でも気付かないくらい」
兄さんの体が透ける、向うの壁が見えるくらいに
私も兄さんもしゃべらない、もう時間がないのに、くちが開かない
「楽しかった」
そのことばに顔を上げた時、兄さんはいなかった。
410名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 16:54:38 ID:R2cSy2de
えーと、終わりかな?
生者と死者とはまたタイムリーでGJ。

ひとつ気になったんだけど、「現界する」という表現は月用語だと思われ。
(「現世」のことを「現界」ということはあるようだけど)
411名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 17:06:46 ID:DBfGJUdq
おぼんなので書いてみました。
>>410
やっぱり間違えてた…、投下した後みてみたらちょっとおかしいかな、て思ってたけどやっぱりorz
412名無しさん@ピンキー:2006/08/13(日) 07:36:31 ID:h9XWPqa/
何故か妹のほうが死んでると思ってた。
GJ!
413名無しさん@ピンキー:2006/08/18(金) 00:52:14 ID:OoxhpXrd
正直、真にこのスレっておもた


いや、悪い意味じゃないんよ?
だって、こないだ見に行った沈没のナギーがガチでこれなんだもん
見に行ってみたら?

そのうち、DVDやTVで出るだろうけど
館じゃないと、出ない迫力のあるやつだよ
価値はあると思うね
414名無しさん@ピンキー:2006/08/18(金) 00:54:28 ID:OoxhpXrd
何このスレっておもた

だったよ  誤爆
415名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 21:13:22 ID:ABBOS/7d
誤爆はエロカッコよく押しとどめられないな。
416名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 00:33:52 ID:E+zzzYYo
エロい誤爆ならいいってのか?アンタたちは!
417名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 03:51:28 ID:CGET5xZJ
まだこのスレ残ってたのか…リアルにぶったまげた。
人居るかどうかわからんが、明日起きて暇だったら久しぶりに一本書いてみるか。
…つっても、エロ書くのは151から実に五か月ぶりだからなぁ。エロかっこよく無くてもだがしかし私は謝らない。
418名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 09:43:38 ID:A/+7b61X
投下されて喜びはすれども怒りはしない。
よって謝る必要はないので堂々と投下してこい。むしろして。
419名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 15:14:02 ID:CGET5xZJ
「本当に…行ってしまわれるのですね」
「ああ…それこそが某の定めならば」
時は龍の半刻、未だ朝霧覚め遣らぬ船着き場にその者らはいた。
女の喪服は濡れに濡れ、その姿態を表すほどとなっている。
「ああ、キヌよ。その様な姿、物の怪に憑かれてしまうぞ。何故に濡れ、喪に伏そうとするのか」
「貴方様の為に百度、神仏に念じておりました。されどあなたは死に逝く定め。なれば、喪に伏すのは当然のこと」
女の答えに男は微笑し、女の喪服を脱がすと、そのまさに絹のような女の裸体が現われる。
「某が為にそこまでするとはな。されど華が枯れては月が悲しもう。
喩えこの身朽ち果てるとも、汝の香は冥土の果てまで満ち足りる。言わんや汝の鳥のごとき歌声もまた、某が元に響こうぞ。
それともキヌよ、某の冥土の旅路の楽しみまで奪ってしまうつもりなのか?」
言って、自らの羽織る服を脱ぎ女に被せる。だが女は敢えてそれを着ることなく、裸体のまま男にしがみ寄る。
「罪なお方…我が身は既に濡れ、貴方様を想えばこの腟ですら、乾くことはないというのに…」
男が軽く花弁に触れれば、湿り気のある音が微かに響き、女は淡くその身を震わす。
「…言ってくれるな、愛しの君よ。某の一時の欲で汝の華を汚したとあれば、この身は畜生道に墜ちようぞ」
今度こそ女に服を着せ、いきり立つソレを隠すように背を向ける男。その背に頭を軽く乗せ、微かに女は呟いた。
「…莫迦なお方」
「…ああ」
「ですが真に莫迦なのは…その方に惚れた私でしょうね…」
男は答えることが出来ない。背中越しに伝わる冷たい水気が、朝露のせいでは無いと知っていたから。
「…汝を置いて逝ったとなれば、この身は地獄に墜ちるであろうな。常世の最後のせめてもの手向け。汝の望みを叶えよう」
故に、男はそう尋ねた。
「私の願いは常に一つ。酷なこととは知りつつも…生きて帰っておくんなまし」
「…承知。菩薩に頼まれたとあっては、いかな神仏も断り切れまい。必ず、生きて帰る」
終に男は船に乗り、帆を漕ぎ出し海に出る。空を仰げば燕の姿。その燕に届くようにと、男は声を張り上げた。
「佐々木小次郎、押して参る!!」

以上。佐々木小次郎って架空の人物とも言われてるから架空の話もいいんじゃないかと。イメージはもちろんFAtな、なにをするきさまらー!
エロ無さ杉にもほどがあるが、先日通りだがしかし私は(ry
420名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 18:41:10 ID:1RaaG7Bv
普通に格好いいよ佐々木さんちの小次郎さん。GJ!!
421名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 01:19:00 ID:YKVQ55e+
…↑の小次郎、携帯から書きこしたんだが、今見るとカナリ見づらいな(汗
みんなスマソ
422名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 18:06:23 ID:t4QWjPU9
携帯から見てるから問題ナシ
イイヨー、コジロウイイヨーGJ!
423名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 10:13:56 ID:pIfnNx1M
うーん…。
まず誤字。 龍→辰 押して参る→推して参る だとオモ。
あと、歌とか「おくんなまし(たしか吉原言葉)」からしてキヌは遊女?
だったら女一人で男の見送りに外出できるか疑問。足抜け(男と逃亡)を警戒されるハズ。
上記が気になって話に入り込めなかったよ。
424名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 13:23:41 ID:6wMxOShg
スゲー本格的だと思ってたのは俺だけだったのか・・・。
というより、上には上がいる?
425名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 22:18:57 ID:r4zyB0Gi
>>386
むちゃくちゃ今更だけど、いい?

@>>310 ただただ切ない…
レシェにもっと希望あるエンドを望まないわけでもないがこれはこれだからいいんだろうしな…
幸せな未来はあるようだし。
A>>115 16歳になっていざしようとするリンをエロかっこよく押し留めるのキボン
426425:2006/08/27(日) 22:21:53 ID:r4zyB0Gi
訂正
>>115>>116
427386:2006/08/29(火) 01:24:00 ID:zszPDy6w
>>425-426
 無問題そして歓迎。
 良作には亀でもレスが付くものだ。
428名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 02:55:37 ID:zjOkj8/H
>>423
ふむ、それはすまなかった。
だが押して参るは実はわざと。押して、には無理をしてという意味があるそうだから、推しての語音と被せたかった。
吉原言葉は知らなかったな。クオリティー低くてスマソ
>>424
それはねーよw
下調べなし携帯カチコチ30分で書き上げた駄作だぜ?w

そんで本人の許可が出たので>>386に参加
@:>>205がコメディタッチで大好きです。この人の作品もっとよみたひ…
A:>>164の男視点(何で死んだのか、何で現界出来たのか、等)。
  ていうかぶっちゃけパクって書いたけど亀過ぎて投稿できない奴がまだ手元にあるw
B:生物兵器なウイルスが蔓延した世界。
  そのウイルスは人間に取り付き発情させ、子孫のDNAに介入。
  DNAが書き換えられた子孫は食人の怪物になってしまう。
  そのウイルスが女に感染、効果を知っていてもどうしても我慢できずに好きな人を襲う、というシチュ。
  書きたいのに暇がねぇw誰か書いてマジデマジデ
429名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 04:00:03 ID:5vG0TNAb
あげ
430名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 09:23:11 ID:bHVA12O8
>>428
亀でも気にしないからもう全部さらけ出しちゃいなよ。
431名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 05:40:31 ID:gQwLyMP8
「せんせぇ、……と、もっとして」
甘くとろけた声に誘われるまま、熱く狭い狭間へ指を挿す。
濡れた音に煽られるように少女の膣がまた少し狭くなる。
「ね……も、むり、なの……いれ、て?」
俺が欲しいと全身でねだる様は、確かに刺激が強いが。
「だーめ。おまえの中、キツすぎて入らないよ」
指一本でいっぱいになる場所に、平均よりも少々でかいモノを無理矢理収めるなんて真似できるわけがあるか。
「……で、も……ほし…い、のぉ……あァん!」
「……ダメだっていってるだろ」
…………どれだけ求められても、俺自身求める気持ちが強くても、傷つけるわけにはいかない。
痛みなんて感じなくなるまで、けして彼女を抱かないと決めたのはせめてもの罪滅ぼしなのだから。


エロくもかっこよくもねぇよ……力不足でスマンOTZ
432名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 09:10:04 ID:rRy/qfD/
・女は処女なのか?
・男の罪滅ぼしってなんだ?教師なのに生徒に手を出そうとしてることか?
・エロいなGJ
433名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 19:35:58 ID:VochVR6l
先生と呼ばれる人が必ずしも教師とは限らない
434名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 19:47:53 ID:ntFV6PRm
>>433
そっち方向か。
俺は女の子が少額録粘性の設定かと思った。
435名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 20:17:41 ID:YukvMAxQ
>>434
何かの障害かと思ったじゃねえかw
436431:2006/09/01(金) 21:55:04 ID:+iJxi0gk
設定としては中三女子と元バイトの塾講師(大学生)
相手が高校入るまで手は出さないで見守ろうと思いつつ
我慢しきれず半分出してるけど、最後の一線はさすがにダメだろう……

みたいな葛藤に挑戦したかったorz
437431:2006/09/01(金) 22:01:57 ID:+iJxi0gk
あ、書き忘れ。

>>434
処女です。
罪滅ぼしの意味は436にあるような感じ
438名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 07:16:19 ID:hos8luJn
「ねえトーサカ」
「なんだリン…ってお前の言いたいことはわかっちゃいるが」
「しようよ」
「お前まだ16になってねえだろ」
「あと1ヶ月先だけど…でもトーサカ、また別の国に行っちゃうって」
「……ああ。職業柄、上の命令には逆らえなくてな」
「アタシはついていけないの?」
「そうだ」
「どうしてよ。トーサカ、言ったじゃん。家族が欲しかったって」
「だから何度も説明しただろ。今度の国は、こことは比べものにならないくらい無法地帯で…」
「アタシはトーサカと一緒にいたい」
「俺もだよ。苦労もかけられたが、なんだかんだで楽しかった…だが、駄目なもんは駄目だ。この家は俺の所有になってるから、住み続けても……」
「まだ約束果たしてないじゃん」
「だからな…」
「トーサカが好き」「…………」
「アタシはトーサカが好き。ずっとそうだった。多分、これからも。ずっと」
「……リン」
「娼婦としてじゃない。『アタシ』が、トーサカとしたいの…それでも、駄目なの?」
「駄目だ」
「…………」
「…………」
「……やっぱり……トーサカにとってアタシは、ガキ?」
「ああ。同じ年頃の娘と比べたって、まだまだ未発達のチンチクリンだ」
「…………」
439名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 07:18:21 ID:hos8luJn
「だから……次会う時までに少しは成長してろ」
「…………………え?」
「帰ってくるさ。いつかはわからねえが、絶対お前のところに帰ってきてやる」
「……………」
「だから、悪いが約束はその時までとっといてくれ」
「…………」
「な?」
「……絶対だよ」
「おお」
「帰ってきたらトーサカ、アタシ見ても誰だかわかんないかもよ?」
「ははっ、せいぜいできるもんならやってみろガキ」
「……うるさい。精神的、ガキ」
440名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 07:23:29 ID:hos8luJn
まあ…今更だけども。
これの元々のネタは>>113>>116
441名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 07:38:20 ID:hos8luJn
……………あ。

『これが最後っていうんなら、せめてあの時の約束……守ってよ』

が「娼婦としてじゃない〜」の前に入ります。
442名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 09:42:38 ID:RzJzf+WN
トーサカキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
あいかわらずカッコヨス。
443名無しさん@ピンキー:2006/09/13(水) 18:38:03 ID:v2yyLsLY
保守

そしてトーサカ久しぶり!GJ!!!!!!!!!
444名無しさん@ピンキー:2006/09/14(木) 21:36:45 ID:eT6/OQqA
あげ
445名無しさん@ピンキー:2006/09/18(月) 20:44:01 ID:wKoq2hFA
ほしゅ
446名無しさん@ピンキー:2006/09/22(金) 21:08:44 ID:9sNaX/AL
亀ですまんがトーサカだーーーー!!GJ!
447名無しさん@ピンキー:2006/09/26(火) 00:55:43 ID:VFTu8XdM
そろそろ圧縮来るよ、保守
448名無しさん@ピンキー:2006/09/29(金) 01:26:31 ID:F2tpQaFA
どうした神は潰えたか?
449名無しさん@ピンキー:2006/10/01(日) 22:23:53 ID:r4vkCpoL
「功名が辻」で似たようなことやってた。
450名無しさん@ピンキー:2006/10/04(水) 01:09:01 ID:Wwnh+pAu
何この萌えスレ。
明日早番だってぇのに読みふけっちまったじゃねぇかどうしてくれる

451名無しさん@ピンキー:2006/10/04(水) 01:47:22 ID:sfeSoKnz
>>450
どうぞ
>>386

いや別にやらなくていいけど
それはともかくとしてお前さんもいずれ何か投下してくれると嬉しい。
452名無しさん@ピンキー:2006/10/10(火) 02:02:06 ID:QTjS32lQ
夜が更け、朝日が上ろうとする時間帯、ほとんどの人は夢見心地で寝ているだろう。
「…よっと、こんなもんか」
男は旅路の荷物を整え、泥がこびりついたブーツを履き紐を堅く縛る。
「……今日でこの国ともお別れか」
「…ん……むぅ…」
男は隣のベットで眠る女の顔を見て複雑な顔をする。
そっと女に近付き額に唇を近付けて口付けをしようとする。が、止めた。
「はは…」
困ったように一人で嘲笑し、数歩離れて背を向けた。
いつもは起きてる時にすることだがアレは“いってきます”のキスだから、
“いってきます”て言ったら“ただいま”て言わなきゃならない。
でも今度は“さよなら”だから、もう一生会わないから、できない。
これはけじめ、隠密任務ながら他国との娘と関係を持った自分への。
「ごめんな…」
男はそう言って部屋を後にした。
453名無しさん@ピンキー:2006/10/10(火) 02:03:20 ID:QTjS32lQ
岬から見えるあたり一面の水平線の真ん中から昇ってくる朝日が眩しく、目を細めた。
「いいんですかぁ〜、このまま帰っちゃって〜?」
後ろから近づく気配に僅かな期待を寄せて、あえてなにも反応しなかった。
が、間延びした声がした瞬間、男は苦しみに似たため息を吐いた。
「あ〜なんですかその態度ぉ〜、レディに対して失礼です〜」
振り向くとぷぅーと頬を膨らませた黒装束の娘がこちら睨んでいた。
「…仕方ないだろう、国からの命令だ」
「でも〜、他の選択もあったと思いますぅ〜」
「たとえば?」
「あの子を私達の国に連れていくとか〜」
「バカ言え、アイツにとったら俺達の国は敵だ。俺からの頼みでも断固反対だな」
「じゃ〜無理矢…」
「無理矢理連れてったら周りは敵の国の住民、その住民にとってもアイツ敵、それから先は目に見えてわかる」
「あぅ〜…難しぃ〜」
「俺が国に帰らない手もあるが、待っているのは元母国からの刺客だ。とてもじゃないがやってられん」
男は視線を海に戻し、手で目を覆う。
「結局さ」
「結局…?」
「これが一番の選択なんだよ…」
男の声は擦れる声を息を吐くように絞りだして静かに泣いた。
「………帰るぞ」
しばらく二人の間に沈黙が流れたが、男はスッと立ち上がりすっかり元に戻った声で女に指示を出した。
「鼻水…」
「うるさいッ!!」
454名無しさん@ピンキー:2006/10/10(火) 02:05:17 ID:QTjS32lQ

町が目覚める、窓に差し込む朝日で女は覚醒した。
そして霞む目で時計を見てギョとする。
「寝坊したぁぁぁ!!」
慌てて寝巻を着替え、女は部屋から飛び出す。
「ごめぇん!、すぐ朝ご飯の支度する…か……らね…?」
女はリビングを見渡し、いつも机で新聞を呼んでいるはずの男が居ないことに気付く。
「…あれ、珍しいアイツが寝坊なんて」
数拍置いて、いきなり女の顔の頬が釣り上がり、ニヤけたまま台所に立つ。
「驚くぞ〜、アイツが起きたら朝ご飯出来てるなんて前代未聞だよ」
女はその時の男の顔を想像しながら幸せそうに料理を作り始めた。

終わり。
455名無しさん@ピンキー:2006/10/10(火) 03:06:32 ID:5y3Kyq2R
女性が求めてはないけど萌えた。グッジョブ。
456名無しさん@ピンキー:2006/10/10(火) 14:48:13 ID:aL7ZaAWY
女性が気が付いた瞬間まで妄想して禿萌えた。
GJ
457名無しさん@ピンキー:2006/10/11(水) 23:05:28 ID:BJErqWen
なんだよこれ。なんだよこれ。
女が快活そうな人なのがまた悲しい。GJ
458 ◆pVdGUF5Fso :2006/10/13(金) 19:10:31 ID:ygICt8za
男は、古いレジスターを載せた机の横で、椅子に座って珈琲を飲みながらのんびりと時間
を潰していた。店内には他に誰もいない。静かなティータイムである。

朝夕には初秋の涼しい風が吹き始めたとはいえ、日中の暑さはまだなかなかのものだ。
時折往来を通りすぎる車の窓が一瞬、鋭く陽光を反射する。
店前の舗道を覆う煤けた石畳も、てらてらと光っている。
平日の午後。人通りは稀だ。時折、ビジネスマンが足早に通り過ぎる程度。
店内にエアコンはかけているものの、ショウウィンドウの大きな窓ガラスからむわり、と
熱気が伝わってくる。

見るともなしにぼんやりと店内を見渡す。
黒ずんだ大きな柱時計。凝った浮き彫りの刻まれた古いテーブルと揃いの椅子。和箪笥。
ボーンチャイナのティーセット、カットガラスの大きな器。油絵、水墨画。
他にも様々な、いわゆる『骨董品』が並んでいる。
一見雑然としているが、店主である男はどこに何が配置してあるか全て把握していた。
男自身、記憶力がいいと密かに自負している。

視界の端に異物感。
顔を上げて、目を細める。

硬質な光を帯びた、見慣れぬモノがそこにある。
飲みかけの珈琲を脇に置き立ち上がった。



459 ◆pVdGUF5Fso :2006/10/13(金) 19:11:24 ID:ygICt8za

ソレを掴んで元の場所へ戻り、机の上に置いてしげしげと眺めた。
いわゆる陶枕、である。
磁器で出来た枕で、形は蒲鉾型。頭を乗せやすいように中央が凹んでいる。
夏物らしく白磁に藍色の涼しげな草木の図柄が踊っている。
いくら記憶を辿ってみても、これまでに見た記憶がない。
疑問を感じながらそっと撫でる。なめらかでひんやりとした上質な磁器の感触が心地よい。

内部は中空。覗き込んでみると、小さな紙片が目立たぬ位置に貼り付けてあった。
茶色く変色し、朽ちた紙片に掠れた墨痕――『邯鄲(かんたん)』と読める。銘、だろうか。
一通り確認した後、試しに額を当ててみた。あつらえたように身体に馴染む。
心地よい冷気に、思わず溜息が漏れる。
眼を閉じて、どれくらい動かずにいたのか。


「あなた、お店で居眠りなんかしちゃいけませんよ。」
くすくす、と耳に馴染んだ笑い声。

「お前…。」
「今日はもう店仕舞いします?」
頭を上げると、横に妻が立っていた。
半袖の白のブラウスに藍の花柄のフレアスカートがよく似合う。

妻は猫のようにするりと身体を寄せてきた。
優しく、肩を抱かれる。
頭を傾けて、大きな乳房に顔を埋める。どっしりした重みと柔らかさと、ぬくもり。
彼女の母性の象徴のような。
その頂にそっと口づけると、彼女は必ず私の額に口づけを返してくれる。
愛情を確認し合う儀式。

何度も繰り返された、濃密で愛しい時間――だった。





460 ◆pVdGUF5Fso :2006/10/13(金) 19:12:10 ID:ygICt8za
「貴女は、私の妻ではないね。」
頭を起こし、男は女に淡々と語りかける。
女は男の肩を抱いたまま、ふわりと微笑んだ。
「どうして分かったのかしら?」
不思議そうに首をかしげる仕草まで、生前の妻と寸分も違わない。
「偽物は、時に本物以上に完璧になる。」
これは、現実ではない。
「あなたがわたしを受け入れるなら、永遠にこの幸せを得られるわ。だから…」
こちらにおいでなさい。
甘い誘惑に男は一瞬逡巡した表情を浮かべたが、やはり淡々と答えた。
「駄目だ、かみさんにどやされてしまうよ。」

「…そう、残念ね。」
声と容貌は妻のまま。だが、気配は既に妻のものではない。
人にあらざるモノ――神か魔か、精霊か。
女の腕が滑らかに動いた。指先が男の眉間に触れる。
そのまま眉間をとん、と押された。

一瞬の衝撃。


古時計が時を刻む音の響く店内。
老眼鏡をかけたまま居眠りしていたらしい。
(なんだか、長い夢を見ていたような……)
顔を起こして、まだ幾ばくかの眠気がこびりついた眼をこする。

眼鏡をかけ直す手が止まった。
陶枕がない。
店内を一通り見渡した店主は、おもむろに机の引き出しに手を伸ばし、ノートとスクラ
ップブックを取りだした。アレが実在するなら――仕入れた記録が残っているはずだ。
ところが、仕入れ伝票やメモをいくら調べてもどこにも陶枕を仕入れた形跡がない。
念のため古い記録も全て当たってみたが、結果は同じだった。

(どこまでが夢だったんだ…)
既に冷え切った珈琲を啜りつつ呆然としている男の丸まった背を、差し込んできた夕日が
照らす。白髪が、鮮やかな茜色に染まった。
461 ◆pVdGUF5Fso :2006/10/13(金) 19:13:07 ID:ygICt8za
>>458-460
骨董屋の店主と陶枕の精。
主人公の平均年齢を上げてみた。

邯鄲・南柯・胡蝶など、漢文系夢話は結構好きだ。
462名無しさん@ピンキー:2006/10/13(金) 19:34:07 ID:NBcbPMBc
渋いなあ。大人だなあ。
萌えるのとかと別の次元で感じ入ってしまう。
463名無しさん@ピンキー:2006/10/14(土) 03:05:13 ID:fzWpOnGp
「耳をすませば」を思い出した
464名無しさん@ピンキー:2006/10/14(土) 12:44:03 ID:Dytu+Tr9
GJ。文章が美しくて楽しめました。
465 ◆pVdGUF5Fso :2006/10/18(水) 21:01:22 ID:qfHaJ7rJ
愉しんでもらえたようでほっとした。
レスしてくれる人ありがとう。

次の方の投下を期待しつつ、ROMに戻ります。
ノシ
466名無しさん@ピンキー:2006/10/19(木) 21:31:14 ID:7nNNU0UK
書き手待ちage
4671/4:2006/10/20(金) 01:07:25 ID:s6QnPLCJ
涙が、あふれてあふれて止まらない。
私は今日、失恋した。
それなりに良い雰囲気で、もしかしたら向こうは、なんて考えていた私は本当にバカみたいだ。
「彼女が出来ました!」と、明るく教えてくれたのが今日。彼に告白しようと思って、一緒にご飯を
食べにいったのが今日。本当にバカみたい、バカみたい。「一番に先輩に報告しようと思って」って
何? 結局、空回りしている私が残っただけだ。
少し落ち着いたかなと思うと、また涙があふれてくる。
それはきっと、私の髪を撫でてくれているこの人のせいだ。

幼馴染というんだろうか。佐伯陽介。7つ年上の彼とは、家が近所だった。親同士はともかく、
私と彼はそんなに仲が良い訳ではなかった。悪い訳でもないけれど。彼と、私の兄がよくつるんで
いたせいかもしれない。私が高校に上がったくらいから、よく話すようになったと思う。今では社会人
と大学生だ。私は未だ自宅から学校に通っているが、陽介は就職と同時に、実家からそんなには
離れていない所で一人暮らしを始めた。時々、彼のお母さんと一緒に部屋にお邪魔する事もあった。
後輩に告白する事もなく失恋した帰り、駅に向かう途中で洋介と会った。
そこからはあまり覚えていない。彼が笑顔で声をかけてきて、何だか泣けてきたのだ。

そして今、陽介の部屋にいる。
「落ち着いたか?」
やはり髪を撫でながら言う。私は無言のまま頷いた。
「……突然ごめんなさい…」
泣きじゃくった挙句、今回の失恋から過去の失恋まで語ってしまった。頭が冷静になるにつれ、
恥ずかしさがこみあげてくる。もちろん、申し訳なさも。
4682/4:2006/10/20(金) 01:08:23 ID:s6QnPLCJ
「いいって。さすがに道端で泣かれた時は焦ったけどな。
周りの、女の子泣かしてやんのオーラが怖いのなんの」
そういうふうに言ってくれる彼の優しさがありがたかった。いつも、これに救われる。
頭の上に、ぽんっと手が置かれる。
あたたかい、大きな手。
昔にも、同じ事を思った。
「大丈夫、お前かわいいんだから、そのうち良い男出来るって。大体、まだ二十歳だろ?」
そうやって笑う、その顔が安心する。
昔から、この笑顔が好きだった。
「…じゃあ……」
「ん?」

「私とエッチできる?」

さらりと口にしてしまった自分に驚く。向こうも、ぽかんとしている。仕方がない。
でも、ずっと聞いてみたかった事でもあるのだ。
ずいぶん間があって、陽介が口を開いた。
「……うー…ちょっと無理」
「ほら、無理なんじゃない……っ」
急に鼻の奥がツンとして、また泣いてしまいそうなのをこらえる。聞かなければよかった。
「じゃなくて!お前が無理なんじゃなくて、俺が無理なだけで!ああもう泣くなって!」
「なんで、無理なの、彼女がいるの…」
「今はいねぇけど!…大樹、お前の兄貴に申し訳ないってか…」
「お兄ちゃんは関係ない!」
4693/4:2006/10/20(金) 01:09:04 ID:s6QnPLCJ
「……つうか……お前、…処女だろ?だったら好きな」
「だって、私はしたいもん」

「私は陽介としたいの」

はっきりと口に出してしまうと、何だか気が楽になった。でも、きっと彼を困らせてしまっている。
顔が見れなくてうつむいていると、私は陽介に抱きしめられていた。
「失恋したからって、ヤケになんな」
ああ、やっぱりそう取られてしまうんだ。
「ヤケになんか、なってない」
「だったら好きな男としろよ、こんなんで簡単にやんなよ」
ああ本当にバカみたい、バカみたい。
何にもわかってない。
あなたがちっとも振り向いてくれないから!
今まで好きになった人は、どこか彼に似ていた人ばかりだった。陽介を重ね合わせているのは自分
でもわかっていたけれど、でもちゃんと好きだった。だから失恋して、こんなに傷つくのだ。
それでも陽介は特別だった。別格だった。でもわかっていた。私に望みなどあるはずがないと。
「簡単じゃなかったらいいの?陽介、私の事軽蔑した?」
また涙声になっている自分が嫌だった。まるで泣き落としみたいだ。
「…正直な所、この体勢だし、お前めちゃくちゃかわいいし、こんな状況じゃなかったらやりてぇよ」
少しおちゃらけて言ってくれる。
「ま、もうちょっと分別のあるオトナになってからなー」
また笑顔。好き。
でもその笑顔を見ると、私の心がツキリと痛む。
4704/4:2006/10/20(金) 01:10:05 ID:s6QnPLCJ

「…泊まってもいい?」
明日も仕事だろう。迷惑なのはわかっていたけれど、少しでも離れたくなかった。
陽介はオッケーと応えながら頭を撫でた。
「一緒に寝てもいい?」
「ベッドから落ちんなよ」
さっきまでの空気はもうなくなっていた。
いつもみたいな会話に戻ってしまった。それは安堵すると同時に、悲しくもあった。

いつか、いつか、いつか。
そう思っていたけれど、そのいつかはいつなんだろう。
私はまた、不毛な恋を繰り返すかもしれない。
繰り返したくなかったから、あんな事を言ってしまったのだと思う。
でも、壊してしまった。きっと壊してしまった。

私は今日、失恋したのだ。
471名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 01:26:44 ID:s6QnPLCJ
…不完全燃焼。書こうと思った方向に行かない。
女の子視点でやろうとしたんだが…難しいなー。
472名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 01:29:11 ID:SCTrLxHd
ベッドに入ってからもう一度誘ってみる続編キボンヌ。
473名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 09:48:08 ID:/aZuKPr8
えーとちょっと訊きたいんだけど、
これ「彼」ってのは後輩と佐伯君の二人いるんだよね?
474名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 17:57:53 ID:sCnPJiKc
最初混乱したが良かったよ。悲しいけど。
GJ
475471:2006/10/21(土) 01:02:44 ID:+hUuTgmG
レスありがとう。

>472
最初の段落1つ目の「彼」は後輩。後は全部佐伯。
ネタが浮かんでそのまま走って書いたので、わかりにくくて申し訳ない。
もう少しきちんと推敲していれば…orz

つーか、エロかっこよく押し留めてないな。
続きなんぞ書いたら余計ぬるくなりそうだ…ごめん。
476名無しさん@ピンキー:2006/10/25(水) 23:04:53 ID:aNVnBixX
保守兼ねて、読み手書き手問わずに質問
「格好良い男」ってどんな男?

いろいろタイプがあると思うんだが
477名無しさん@ピンキー:2006/10/27(金) 00:29:03 ID:5jk8vAOA
格好良いと思うのは人それぞれだからなぁ。
それこそ人の数だけ、格好良いのパターンがあるんじゃないか?
なんてありふれた事を言ってみる。

以下マジレス。
エロカッコ良く押しとどめるという前提なら、「余裕」かな。
やせ我慢だろうが、無理してようが、相手にそのギリギリが伝わらなければ。
>>30さんみたいのも好きだ。ギリギリなんだけど、余裕もある感じで。
ついでに、あんまりギリギリ感を出されると、必死だなwwwwって思うこともある。
478名無しさん@ピンキー:2006/10/27(金) 01:02:58 ID:w/WptM2F
ギリギリ感がなければ、格好良い。だが愛が見えない。
ギリギリ感があれば、格好悪い。だが愛を感じる。
結論としてはみんな違ってみんな良い。
479名無しさん@ピンキー:2006/10/27(金) 22:34:59 ID:y1AA9wCQ
総論は >みんな違ってみんな良い 金子みすゞ なので各自論が聞きたいな。

んじゃ自分。
オトナは人生経験から来る渋い余裕。
若者はギリギリ感漂わせつつ、使命・倫理・ポリシー堅守かな、王道は。

若いのが余裕かましてるとナルシスト臭くなってくる。
そこをオレサマカコイイにならないよう上手く料理してあったら秀作だと思う。
480名無しさん@ピンキー:2006/10/28(土) 02:33:43 ID:J8pXSIw6
俺的理想は>>111の医者。
481名無しさん@ピンキー:2006/10/29(日) 20:48:14 ID:8XUVgzkU
エロかっこいいを目指すなら男が多少エロい方向にいったほうが良い?
482名無しさん@ピンキー:2006/10/31(火) 16:40:13 ID:rIA3sYAo
483名無しさん@ピンキー:2006/11/04(土) 22:40:52 ID:oboqmM8X
あげ
484名無しさん@ピンキー:2006/11/05(日) 04:38:34 ID:6d2lYWHE
エロな求めじゃなくなっちゃった…けど投下ー。


「綺麗なもんだな」
鍵を掛けたはずの部屋に表れたオルタに、花嫁衣裳のコーシカは驚きもせずに唇を釣り上げてみせた。
「馬子にも衣裳かしら」
「いや、ドレスがさ」
「さすがこそ泥ね。レディよりも、布切れのがお好き?」
とぼけた口調にコーシカは鼻で笑った。
「俺も男だからな、んなこたない。ただ…」
オルタは肩をすくめ、苦笑いに似た顔を見せた。
「直前になって駄々こねて閉じこもる花嫁が綺麗だとは思えないわけよ」
「……ふん」
「覚悟決めろよ。女だろ?」
485名無しさん@ピンキー:2006/11/05(日) 04:46:21 ID:6d2lYWHE
「…オルじゃないと嫌なの」
「俺じゃなくても大丈夫だよ」
「オルがいいの!」
「俺じゃよくないの」
「いいんだってば!」
もどかしそうに叫び、コーシカはオルタの胸に飛び込んだ。先程までの作り笑いは消え去り、肩を震わす彼女の涙を、オルタは拭おうともせず、ただ優しく語り掛ける。
486名無しさん@ピンキー:2006/11/05(日) 04:54:14 ID:6d2lYWHE
「なあ、あんたの夢はなんだった?
 優しくて、かっこよくておしゃれな亭主と一緒になって、
大きくて、下品じゃない程度に豪華な家に住んで、
女の子二人と男を一人産んで、
お母さまにそっくりで可愛いですわね。
なんてお友達のマダムに世辞を言われてみたりしながら、
百合の咲く庭園で、優雅にハーブティを愉しむことだ。
いつか恨み言みたいに俺に言ってたろう?」
487名無しさん@ピンキー:2006/11/05(日) 04:58:59 ID:6d2lYWHE
「つまりあんたの望む亭主は、
かつて身の代金目当てに女の子を誘拐しちまったようなお尋ね者なんかじゃないってことだ」
目を細め、口角をあげる作業に没頭しつつ、オルタは煙草に火を点けた。
純白のドレスにつつまれた、細くしなやかな肢体。
結いあげられた艶やかな髪。
薄化粧をした美しい泣き顔。
頬をつたう涙。
いとおしいそれらすべてを己の手で乱し汚せぬ代わりに、
せめてこの紫煙だけでも染み込んでくれやしないかと、ささやかな意地をこめながら。
「さよなら、コーシカ。綺麗だよ」
488名無しさん@ピンキー:2006/11/05(日) 05:05:22 ID:6d2lYWHE



補足をすると、場面はいいとこの娘さんの結婚式(親が決めた)の直前です。
男はかつて身の代金目当てで彼女を誘拐したお尋ね者。
で、なんだかんだで淡い恋が芽生えちゃってた彼女を心配して、様子をみにきちゃいました、ということでした。
489名無しさん@ピンキー:2006/11/05(日) 07:33:56 ID:o8Alj58s
誘拐で芽生える恋ってのもすげえな…GJ
490名無しさん@ピンキー:2006/11/05(日) 21:16:39 ID:7UAFR+zN
ストックホルム症候群だなー
491名無しさん@ピンキー:2006/11/09(木) 23:25:39 ID:ap7f2Etp
犯罪者側があまりにカッコイイかあまりに情けない(というか不憫な)かすれば、こんな事態もあってもおかしくないんじゃないかな。

>>476
俺の中での「カッコイイ男」は、
・どんな苦境でも軽口を叩きながら切り抜ける。
・いつも不敵な笑みを浮かべ、決して焦りを見せない。
・動きの一つ一つにネコ科の動物を思わせる優雅さがある。
・英国製(またはイタリア製)の高級スーツに身を包み、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
・義理堅く、情に厚い。異常な程の優しさを持つ漢。

俺の中の「斯く在りたいカッコイイ男」はこんな感じだな。

このスレに合わせてエロカッコ良くかわす男なら、ある程度以上の年齢(理想を言えば30代後半以上)なら優しく諭すように、若ければつっけんどんに突き放すように。
492名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 10:39:37 ID:l8DNRDW3
初期のルパン3世はカッコエエと思う。ルパンに限らず次元も五右衛門も。
だが特に銭形なんかシブカッコエエ。最高だ。
493名無しさん@ピンキー:2006/11/10(金) 12:01:10 ID:JGjF9dS2
カウボーイビバップのスパイクジェットビシャスかっこいい
494名無しさん@ピンキー:2006/11/11(土) 21:16:04 ID:HnqZ1qwD
スパイク、ジェット、ビシャスと分けないと
ビバップ知らない人は長い名前(一人)と勘違いするかも
495名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 10:58:05 ID:xPvxWGPT
ほす
496名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 21:47:14 ID:9v++8i0Y
そろそろあげ
497名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 14:29:19 ID:aRhB5Wnu
>>494
ノシ
一人の名前かとオモタ
498名無しさん@ピンキー:2006/11/26(日) 00:50:38 ID:PVYtyzT2
「ねえ、抱け」
「……こんな夜中にいきなり家にやってきて命令口調でなに言ってんだお前は」
「仕方ないじゃない。アンタ以外に男の知り合いなんていないんだし」
「まあ、そりゃそーだろうな……っていやだからそういう問題じゃなくてな」
「理恵ちゃんに」
「あ?」
「理恵ちゃんに男ができた」
「……で?」
「抱け」
「要するに自暴自棄か!そりゃ入学ん時からずっと好きだった奴に虫がついたらヤケになる気持ちもわからんわけじゃないが」
「別にいいじゃん。今年のミスコンが抱けって言ってるのよ?万年童貞のアンタの筆下ろし相手としては文句ないでしょ」
「大有りだボケェ。お前だって万年処女じゃねえかよ……つーか誰がお前なんか抱くか。こっちはこっちで別に好きな人いんだから」
「アンタの気持ちなんか知らないわよ」
「この自己中女が……幼馴染でもなけりゃ絶対話してねえぞ」
「理恵ちゃんがアタシ以外の奴と浮気するんなら、アタシも浮気して理恵ちゃんの目をこっちに向けさせるって狙いもあるんだから、抱いてくれなきゃ困るのよ」
「いやその狙いはどうかと思う。向こうがノーマルな限り振り向かねえだろこっちには」
「んじゃアンタはどうなのよ」
「俺はちゃんと桂ちゃんと仲良いんだから大丈夫だよ。こないだ好きな人の話して、今は誰もいないって言ってたし」
「ハッ」
「その嘲笑はなんだコラァ!」
「いやいや別に?それはそれは仲のよろしいことで」
「……なんかすっげえむかつくんですけど。まあそんなわけだから帰れ帰……」

 〜〜〜〜〜♪

「あ、桂ちゃんからだ!ほれ、こんな時間でも俺にメールしてくるあたりもう最っ高にラブラ……」
『from.桂一 よお、俺にも遂に彼女できたぞ!理恵ちゃんっていうんだけどこれがまたすっげえかわいいんだ!写メ送ったから見てくれ!』
「……………」
「……………」
「……殺していい?この桂ちゃん」
「それを言うなら理恵ちゃんを殺していいか?」
「なんかこうアレよね……萎えた」
「いや俺はまだ諦めてねえぞ!なんでだよおい!好きな人いないっつってたじゃん!ちょっとねえ桂ちゃん!?」
「お酒あるんでしょ?今夜は飲もっか。上がらせてもらうわよ」
「ええいうるせえ!あ、返信きた……ってうおあ!今までメールに使ってこなかったハートマークつけてやがる!幸せ絶頂だなあおい!?」
「ま、お互いホモとレズ同士、アタシらはこれからも仲良くしてきましょうね」
499名無しさん@ピンキー:2006/11/26(日) 00:54:02 ID:PVYtyzT2
全然エロカッコ良くも押しとどめてもないけどまあ……ついでにあげ
500名無しさん@ピンキー:2006/11/26(日) 00:55:38 ID:Au+Rd7OZ
コレはコレでワロタ
「最後にホモネタと分かる・・・」かよw
501名無しさん@ピンキー:2006/11/26(日) 06:34:25 ID:OY9Nk62Z
GJ

この後振られたのと酔った勢いで……ないか?
502名無しさん@ピンキー:2006/11/26(日) 09:34:47 ID:7qHMcA92
笑った
押しとどめる所より落ちが面白かったら駄目だと思う
503名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 14:16:11 ID:iCyH8KoH
いつも不思議に思うんだが、
感想レスが3つつくと流れがぴたりと止まるのは何でだ?
504名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 15:11:40 ID:t5R/+RWm
4つくっつくと消えてしまうからだろ
505名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 18:38:40 ID:H1Wann9Z
このスレには一人の書き手と三人の読み手しかいないんだよ!

な、なんだってー(AAry
506名無しさん@ピンキー:2006/12/04(月) 13:26:06 ID:YIbcR4j5
4人目だおノシ
507名無しさん@ピンキー:2006/12/04(月) 17:31:28 ID:KmidZ48e
ID変わった後から言っても説得力ねえよと言いつつ5人目。
投下ペース落ちこんだなー
508名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 21:18:10 ID:I9PrlogY
浮世の悩みをみな忘れ
夢に世にこそ遊びぬる


 闇の中ひそやかにくちづけの濡れる音がした。合間に洩れるかすかな吐息と囁きが、
ほつりほつりと立ちのぼっては消えてゆく。そうして数えること幾ばくか、くったりと
力の抜けた身体を凭せかけ、女は愛おしげに男の胸板へ頬を寄せた。
 が、男はそっけなく無抵抗の肢体を押しやると、情感のこもらぬ手つきで寝具の上へ
横たえる。
「今宵はもうよい。休め」
 男の言葉に潤んだ瞳がまたたいた。投げ出された腕がゆるりと動いて、黒々と渦を
巻く乱れ髪を撫でつける。
「この頃とんとお見限り。どこぞに可愛い娘でも囲いましたかえ?」
 滲むように甘いかすれ声が力なく男を詰った。ぐったりと弛緩した身体に男はかすかに
眉を寄せたが、暗い閨の影のうち、女の目にはそれと見えない。
「抱かれたくばもう少し真面目に養生しろ。人形の如き有様では興が削げる」
「ほんに。お見苦しゅうて申し訳もございませぬ。なれど、口づけひとつでは幾らも
足しになりますまい。旦那様を餓えさせては囲われ者の名折れにございます。
さ、喰ろうてくださいませ」
 肌を合わせて精気を啜る、化生の男に女はねだる。男がこぼした溜息に、ひっそりと
笑った。
 この屋敷について、女は多くを知らない。連れてこられたのは三月(みつき)前、
人柱として川に沈められた夜だった。以来、女は男のために飼われている。
 喰われる恐怖はない。精気の代償に男は女に夢を見せる。心底愛されているかの
ような甘い夢。目覚めればそこもまた夢の如き御殿、山海の美味に綾錦、金銀もあれば
玉もある。寝ても醒めても夢ならば、何の恐ろしいことがあろう。
「……旦那様」
「何度も言わせるな。今宵は休め」
 冷たい物言いとは裏腹に、男は丁寧に女の姿勢を整えると上掛けをひっぱりあげた。
武骨な指が額を滑って前髪を梳く。女はうっとりと目を閉じて、男の手に頬をすり寄せた。
「この身はもう幾らも保ちませぬ。旦那様とておわかりのはず。夢見たまま逝かせて
くださるとのお約束でございます。あとほんの一啜り、そうして眠らせてくださいませ」
509名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 21:20:30 ID:I9PrlogY
「……眠りたいか」
「はい」
「身体が辛いか」
「いいえ」
「ここの生活が不満か」
「とんでもございませぬ」
「では何故そう死にたがる」
 女はそっと男の手に自分のそれを重ねた。
「夢から醒めるのが恐ろしいのでございます」
 顔すら定かでない両親が、何をしたのか正確には知らない。世間様に後ろ指を
指される類であることだけは確実で、現実の世は常に苦痛に満ちていた。
 男にとって自分がエサであることはわかっている。惜しみなく注がれる甘い蜜も、
所詮はすべて偽りごと。それでもいいと女は思う。人生最初で最後の安楽にまどろんで、
誰かの糧になるならばそれもいい。
「……おまえが望むなら、永久に醒めない夢をやろう」
「また、そのような。何を仰せです」
「戯言ではない。……我が眷属になれ。この屋敷はおまえにやろう。そうして、ずっと
我が隣にいるがいい」
 女の欠落を惜しむかのような言葉に、笑みがこぼれた。ゆっくりと首を振る。
「そのお言葉だけで十分でございます」
 男の指がぴくりと揺れた。女は歌うように続ける。
「夢は長くは続かぬもの。いずれ飽きられ現世へ戻るくらいなら、短き夢を存分に
味わいとうございます」
「我が言葉を疑うか。おまえが望む限り夢を見せてやると言うに」
 ええ、と女は頷く。与えられる夢はこんなにも優しい。
「嬉しゅうございます」
「信じていないな」
「これもすべて夢でございますれば」
 男は深く息を吐いた。止まっていた手がまた女の髪を撫で始める。
「……早く起き上がれるようになれ。ちょうど山の紅葉が美しい」
「はい」
 甘い夢を噛みしめて、女は静かに目を閉じた。


   〜終〜
510名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 21:28:14 ID:I9PrlogY
冷たい中にも情愛の仄見える男にしたかったのにただのツンデレにorz
女が事切れるが早いか、男が愛情を信じさせるが早いか、な感じ。
カッコよくならねぇよぅ(ノД`)
511名無しさん@ピンキー:2006/12/07(木) 01:06:41 ID:jfyNJXkE
GJ!艶と翳りのある男女、おいしく戴きましたぜ
512名無しさん@ピンキー:2006/12/07(木) 02:40:11 ID:W6kwgcwy
うまい言葉が見つからんな……切ないという言葉はありきたりだし。
自分のボキャブラリーの貧困さを恨む。
とりあえず言えることはGJ!!
513名無しさん@ピンキー:2006/12/07(木) 17:26:01 ID:Bxc2A5hq
>>510
世界観がすごくいい
それを表現する語彙の豊富さもお見事
これ以上ないくらいのGJにございます
514名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 19:37:37 ID:QwaO32nz
よーしジンクス破って4つ目のレスつけちゃうぞGJ!
エロより色気って感じ。
……で、結局ハッピーエンドなのバッドエンドなのどっち?
515名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 20:17:44 ID:BGYgbfQx
5つ目いっちゃうぞ。幻想的な雰囲気にしばし酔いました。
エサであるはずの女を愛してしまった男と、愛される幸せの絶頂で
死を願う女とのすれ違いが美しくも哀しい。いいお作をありがとう。
>>514
読んだ人の中に答えがある。あなた好みの結末はどっち?
516510:2006/12/09(土) 01:24:43 ID:/QG4SIFP
おおぅ、5つもレスd! 反応あるって嬉しいな。

エンドについては、このまま美しくバッドエンドでもいいし、女が男の眷属になって、
数百年後とかに
「あなた。お茶入りましたよ」
「あぁ」
みたいなほのぼの系でもいいし、

「……ところで、1つお伺いしてもようございましょうか?」
「なんだ」
「あなたが昨日お召しの服―――移り香の元はどちらの娘でしょう?」
「!」
「1日2日なら食事のためと思いもしましょう。なれどもう随分長く同じ香りを纏うて
お帰りになりますね」
みたいな「永遠の愛なんてないんだよボケェ」せちがら系でもいいし、

「……馬鹿を言うな。女はおまえだけと決めている」
「でも……」
「アレは男だ」
「ちょっと待てェェエエエェェェ!?」
みたいなギャグ系でもいいし、

「なかなか美味い精気の持ち主でな。おまえにも喰わせてやろうととっておいた。
最近食事していないだろう。どうだ、今夜辺り一緒に」
みたいな、エロパロ板らしく3P突入しかも何気にラブラブ系でもいいし、
それ以外でもいいし。
お好きな続きをどうぞ。
517名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 16:52:21 ID:YagfRxLe
>「アレは男だ」

唐突にパタリロのバンコランが頭に浮かんだ
何故だか自分でもわからない
518名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 00:38:19 ID:KU3rezsZ
>>516
エエエエェェェェ(゜Д゜;)ェェェェエエエエ
519名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 13:52:55 ID:41XO5sv2
後書きを含め、八房竜之介の宵闇幻燈草紙初期を思い出したよ。
最初だけ水商売女が使うなれなれしいタメ語なのが残念だとオモ。
520名無しさん@ピンキー:2006/12/15(金) 16:47:42 ID:2gjGwDnB
×竜之介 幻燈 → ○龍之助 眩燈
521名無しさん@ピンキー:2006/12/21(木) 23:02:55 ID:7+GQ2yXT
ネタが浮かばないので保守ついでに訊いてみる。
実際コこのスレの住人は何人くらいいて、男女比どれくらいなんだろうか?
やっぱほとんど男性なんだろうか。
私は時々書き手になる女なわけなのだが。
522名無しさん@ピンキー:2006/12/22(金) 03:54:17 ID:o8MHp764
なんだろな。
俺は男だけど、この板自体文章を読みに来てる感があるからなぁ。
ここと3語スレは好きなんだけど、中々投下が無い。。
523 ◆pVdGUF5Fso :2006/12/23(土) 21:48:19 ID:uk+qw32s
ファサ、という音と柔らかな感触。
「向こうも終わったわよ。陽動役お疲れ様。」
眼を開くと、視界に飛び込んできたのは星空。上から覗き込む顔、白い息。

「ああ。」
眼をそらして横を向くと、俺に掛けられた女物の、豪奢な黒い外套の袖が見えた。
そして俺の周囲に生えている、ヒースとエニシダとミズゴケが白い灰になって朽ちている。
無意識に精気を吸い尽くしてしまったらしい。先刻までの戦闘でひどく消耗していたのだ。
「あら、生返事ね。わざわざ迎えに来てあげたのに嬉しくないの?」
歩きにくい踵の高い靴を脱いで片手に持ち、横たわっている俺の傍らに座り込む。
「別に。状況確認もあんたの仕事、だろ。」
「そりゃ仕事だけどね。」
もう一度彼女を見ると、肩に止まらせた小さな使い魔の顎を撫でていた。
俺の居場所を彼女に知らせたのは、こいつなんだろう。
524 ◆pVdGUF5Fso :2006/12/23(土) 21:49:45 ID:uk+qw32s
どうにか上半身を起こした。夜目の利く俺にははっきりと見える。
地味の痩せた荒野という背景にそぐわない、『計算され尽くされた隙』のある服装。
服だけでなく、靴やアクセサリーも全て馬鹿みたいな値段が付いた一流品。
そんな格好がよく似合う見事なスタイルと艶やかな顔。
美人なのは否定しない。
国の要人だか知らないが、いい年こいたオッサンが鼻の下を伸ばして彼女にいいように
あしらわれている様を見るたび、苦いものを噛んだような嫌な気分になる。
ああなりたくはない。

「まだ動けないのね。時間が勿体ないし、協力してあげましょうか?」
「協力って…。」
「植物よりも動物、特に人間から精気を吸収する方が、効率いいんでしょ?」
「…。」
「それも、内粘膜や体液経由が美味しく感じるってことも。交合は最高の手段だそうね。」
誰にも教えていない一族の秘密をしれっと口にされれば誰でも驚く。
「……どうしてそこまで知っているんだ。」
「嫌ね、そんなに恐い声出さないで。」
濃い色の口紅を引いた唇からこぼれる悪戯っぽい華やかな笑み。
「引退なさったあなたのお爺様とは良いお友達よ、今でも。」
あのエロジジィ、余計なことをべらべらと。
「掟の話もしたか?」
「掟?」
片方の眉がきゅっ、と吊り上がった。本当に何も知らないときの彼女の癖。
よかった。ジジィも洗いざらい吐いた訳ではなさそうだ。後で釘を刺しておこう。

525 ◆pVdGUF5Fso :2006/12/23(土) 21:50:43 ID:uk+qw32s
「ねえ、戦闘中に吸った相手の精気はどうしてるの?」
「取り込まず攻撃に使ってる。」
「取り込めばここまでズタボロにならなくて済むじゃない。」
肩をすくめて冗談交じりに。
「俺は一応ベジタリアンなんで。あんなの取り込むより道ばたの草のがマシ。」

能動的に血肉に同化させる精気は基本的に植物から。例外は両想いになった相手に限る、
なんて一族の掟はまだ秘密だ。
掟破りは吸精の快楽に耽り、人間の形を失った化け物に堕ちてしまう。
人間を襲った者は吸血鬼と呼ばれ、一族と人間に退治される運命だ。
そういえば、家畜を襲ってチュパカブラなんて呼ばれた奴もいた。
526 ◆pVdGUF5Fso :2006/12/23(土) 21:51:43 ID:uk+qw32s
「あらそう。でも撤収しないと。」
「置いていけ。回復したら自力で戻る。」
彼女は俺が上半身を起こした際にずり落ちた外套を拾い、立ち上がる。
「この子を背中に乗せてやって。」
後から唐突に襟首を掴まれ、身体が宙を浮いた。
「馬鹿ね、同僚は見捨てないわ。」
俺は、グリフォンの嘴に銜えられていた。



527 ◆pVdGUF5Fso :2006/12/23(土) 21:52:38 ID:uk+qw32s
彼女のグリフォンの羽根はフクロウに似た構造らしく、音もなく夜空に飛びたつ。
手綱を握る彼女の右腕で視野は遮られている。
冷たい風が吹き付けるが、再び着せ掛けてくれた外套と彼女に包まれているおかげか
あまり寒さを感じない。

「どこまで協力してくれる?」
なんて聞けなかった。
本気をはぐらかされる可能性だってなきにしもあらず。
男女の道にかけては百戦錬磨の古強者であろう彼女に小手先の戦術は通用しない。

今は、まだガキ扱いされてる。
キャリアも腕前も、まだ彼女には遠く及ばない。
でも、いつかは。
フォローの必要な同僚ではなく同等以上の相棒として、隣に立てたときには。


528 ◆pVdGUF5Fso :2006/12/23(土) 21:53:38 ID:uk+qw32s
「ちゃんと運んであげるから、心配せずに寝てていいわよ。それと、happy holiday。」
そう言いながら風に嬲られる俺の髪を軽く押さえてくれる。
さっきから髪が触れる首筋や頬がむず痒かったので、そんな細やかな心遣いが有難かった。
でかい商店で嗅いだことのある流行の香水の匂いに混じった、彼女の匂い。
接した肌から流れこんでくる僅かな精気にすら酔ってしまいそうになる。瞼が重い。
「ああ。」
そうか、今日は聖誕祭なんだな。
妙に幸せな気分になった俺は、素直に眼を閉じることにした。


529 ◆fjJL0/TJdk :2006/12/23(土) 21:57:13 ID:uk+qw32s
>>523-528
年下吸血鬼(吸精鬼)と同僚の年上魔獣使い。
格好良くありたいと努力+背伸びする男と、それが微笑ましく、ついからかってしまう女。

明るめの話に挑戦してみた。では、良い年末を。


530名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 19:50:55 ID:kmhiGlfy
ヤると世界が滅亡する体質とか思いついた
これがいわゆるセカイ系って奴か
531 ◆pVdGUF5Fso :2006/12/27(水) 00:00:44 ID:fG340Eps
出先なので携帯から失礼。
他にクリスマス〜年末ネタを書いた人がいたら、気にせず投下して欲しい。
532名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 18:43:08 ID:pVtLKWYU
落ちてるかなとビクビクしながら覗いてみたら投下されてた…

いやGJ!
なんか設定がかなりツボだ
続き作れそうな雰囲気だし
533名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 12:02:28 ID:7NESiS9J
>530
レベルEでそんなネタがあった
マクバクの女王が異種族の男と結婚するとその男の種族は必ず滅亡するって話
原因は詳しく説明してないが女王の体質

ただいまスレ数798
圧縮を乗り越え無事に新年を迎えてくれ…
534名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 19:14:03 ID:XMGk3vKH
つーかさ、このスレこの板でなくともよくね? 内容的に。
創作文芸とかでもいけそう。
535名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 20:51:55 ID:7NESiS9J
タイトルは完全にエロパロ板向き

内容は
・創作文芸よりは軽めの作品が多い
・短編・掌編が主、エロゲ派生作品もある
・書き手の年齢層も比較的若い印象を受ける

個人的にはここの雰囲気が作品投下しやすく気に入っている
読み手住民のマナーもいい


そして534はこのスレの住人とは思えないし、創作文芸の住人とも思えない
ここに限らずエロ<シチュ萌えのスレは複数存在するが何か問題でもあるのだろうか
それに創作文芸板での作品発表スレ立ては板冒頭の注意書きに書いてあるほど
嫌がられているはずだが
536名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 01:37:06 ID:0aKUbfjV
圧縮が先か、正月が先か。
圧縮かな。
537名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 15:20:36 ID:qRjD0qjb
違うんだ、このスレ落ちたらもったいないと思ってて、
ただこのレベルと雰囲気なら、一般向けでも十分やっていけるんじゃないかと
言いたかっただけで、邪魔だとか出てけとかいうつもりじゃなかったんだ
気分悪くしたならスマソ
大掃除しながら圧縮されてくる
538名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 22:31:26 ID:qiyfWMrJ
まあなんつうか敢えてこの板にこんなスレがあるのがいいと思うんだ。
圧縮でそうも言ってられんが。
539名無しさん@ピンキー:2006/12/30(土) 01:09:53 ID:XXEb5g9e
近ごろ某スレでネタ>まともエロなし>エロの住人がつまらんとか
オリジ数レス完結話で登場人物が多いと困るとか訳分からん誤爆してる奴がいるんだが
ソイシが来たかと思った
文体似てたし

とりあえず圧縮来るまでまめに保守するしかないな
54017:2006/12/30(土) 23:11:32 ID:DtW9TIbu
ご無沙汰しております。17です。
なかなかネタがまとまらずROMばかりしておりますw

このスレ大好きなので保守〜
541 ◆pVdGUF5Fso :2006/12/31(日) 01:00:38 ID:8wwIyDbM
他の書き手の人、>>523-528の設定を使ってくれて構わない。
書けそうだったら書いてくれ。
自分は遅筆なので連投は難しい。
542 ◆pVdGUF5Fso :2006/12/31(日) 01:15:03 ID:8wwIyDbM
名前も各自適当にヨロ。
543名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 22:34:58 ID:0wOn3mZI
それをすることは他の書き手にとってある意味敗北宣言
544名無しさん@ピンキー:2007/01/01(月) 16:31:43 ID:N58GboYq
とりあえずあけおめ!
今年もこのスレが良質の作品発表場となりますように。

>>543
いや、以前はリメイク合戦とかあったくらいだし、全然かまわないと思う。
545名無しさん@ピンキー:2007/01/01(月) 20:09:51 ID:jbx85CHx
だめだってんだろ、な。
って、やめやめ…今日はだめだって。
そんな顔すんなよ、俺だって辛いんだぞ?
ほら、お前犯したくてギンギンになってんだろ?

だああ触んな、スケベの俺が必死で我慢してるんだからさ。
こいつをお前にぶち込んで、一晩中鳴かせたいけどな。
お前ぐしょぐしょに濡らしてるんだろ?

…明日だ明日。楽しみにしてろよ。
試合前にヤっちまうとさ、脚に来るんだよ。
祝勝会なんてばっくれてさ、夜が明けるまで犯してやるよ。

何だよ、泣くなよ、死ぬわけじゃないぜ?
勝ったら絶対抱いてやる。
だから、な?


でさ、ひとつ頼みがあるんだ。
今夜は…その、なんだ、隣で寝てくれないか?
みっともない話だけどな、こんな俺でも緊張はするんだって。
お預け食らわせといて悪いけど、頼むよ。


試合前に求めてくるクセ、治さないとな。
若手選手にありがちなメンタルの弱さをどう克服させるか。
そんな横顔に物足りなさを感じながら彼女は「ウソツキさん」と呟いた。






文面全部17氏(>>30)からの借り物な私はめけ組ですかそうですか。
・・・新春一発目がリメイクってのはやはりまずかったですかね?
それはそうとあけおめことよろはじめまして。
546名無しさん@ピンキー:2007/01/01(月) 21:58:04 ID:+KqkZXxz
あけおめ。
しかしそれはリメイクではないような…。
547名無しさん@ピンキー:2007/01/01(月) 22:28:01 ID:qXhDhlNY
>>545
余計なもんくっつけただけだな
リメイクというなら、他人の文章そのまま使わずに、
同内容でも自分なりに書き直すべきだと思うよ
548名無しさん@ピンキー:2007/01/02(火) 00:41:36 ID:i88xXeQ0
彼女の涙を見るのは、それがはじめてだ。
それが覚悟の証であると、鈍感に分類される彼にでも気づくことができた。
口から数センチ先で、つけたばかりの炎が燻っている。紫煙が緩やかに立ち上る様は
目に残像を与え、灰を生み出していった。
強い女だった。強い女だと、思っていた。
「どうして」
いつもは胸に突き通る、少しかすれたような声が震えている。
彼は伸ばしかけた指先を、ポケットの中で握り締めた。
「くだらねえからさ」
突きたてた爪が掌に食い込み、痛みを発する。それによって、自身の決意も揺らがずに済む。
彼はまだ長い煙草をもみ潰しながら、ゆっくりと言葉を継いだ。
「生きてる間に遊ぶなら、おまえみたいな体のやつがいいと思ってな。適当に選んだんだよ。
乳と尻に栄養がいってる分、頭も軽いだろうってな」
突き放す言葉を選んでも、彼女の瞳の色は変わらない。
自分の言葉に、嘘があるからか。男は自身の変化に戸惑った。
人を騙し、欺いて生きてきたはずだ。
それが今は、愛した女のひとりも騙せやしないのだ。情けなさに奥歯を軋らせた。
それでも自分は、この嘘をつき通すべきだ。いや、つき通さなければならなかった。
「じろじろ見てんじゃねえよ。それとも何か? 恨みでも吐こうってか」
舌打ちした。元々鋭い女であった。失念して気を許したのは、自分の甘さだ。
しばし沈黙が続く。このまま夜が明けてしまえばいいと思った頃、彼女が口を開いた。
「……嘘つきよ、あなた」
涙は相変わらず、頬を伝ってこぼれ落ちていく。それが今まで奪ったどんな宝石よりも美しく、
高潔であることを、男は改めて痛感していた。
「承知の上だろ」
体の中心に、熱が集まっている。胸の中に己の手で、杭を打ち込んでいくような感覚。
「そうね、でも」
彼女の白い指先が、スラックスの上へ伸びていく。
「あなたの目と、ここは、正直だわ」
女の眼の中に、妖しい色が見て取れた。抱いたことがないわけではない。犯したとさえ思えるような、
激しい情交など珍しくなかった。
抱きたい。ほしい。野性が、理性を叩き潰さんと襲いかかってくるのがわかる。耐えた。
手を振り払い、そのまま立ち上がる。男はゆっくりと一呼吸を終えると、見上げてくる彼女を改めて見つめた。
「……女抱くってのはな、理屈じゃねえんだよ。だから理屈が混じったら、そこでおしまいだ」
明日には死ぬかもしれない。そういう自分に、これ以上の未練は必要なかった。
「おまえの体だっていずれ、俺を忘れるさ。心もな。……それだけの話だ」
時計を見やった。一年を終えるサインが、もうじき訪れる。その前に、片付けてしまいたかった。
向けた背中に、視線が刺さる。ポケットから放り出した合鍵を、ソファへ投げた。主だった荷物は既に、
駅前のコインロッカーの中だ。
彼女は何の言葉もなく、ただ目で追ってくる。男はドアノブを掴み、俯いた。たたきの中に、気に入りの靴を
履いた自分の足と、彼女の靴だけが見える。ヒールの高いブーツだった。足の長い彼女が履くと、
互いを引き立てるように似合っていた。
様々な記憶が蘇る。たった一年の出会い。たった一年の同棲。
愛を知らなかった自分に与えられた、奇跡のような時間だと思った。
「……もっと」
咽喉を越え、言葉があふれ出した。
「もっといい女になれ。もっと、俺を掻き立てる女になれ。約束しろ」
感情の塊が、抑えつけると決めていたものを押し流していく。
「こんなつまらねえ屁理屈に邪魔されるような女じゃなくなったらよ、そのときは」
顔を背け、外界へと目を向けた。暗示をかけるように、ノブを回す。
「必ず、迎えにきてやる」
確約などできることではなかった。
だが、そう告げなければ、今日と明日ですら、繋がらなくなる気がしていた。
殺風景な部屋で、二人で過ごした部屋から出る。吐く息は白い。
遠くで鐘の音が響いた。同時に、願う。
どうかもう少しだけ、罪深い人生を歩ませてくれと。
あの女を再び抱き締めるために、血潮を感じさせてくれと。

***
いきなり投下してすみません……年末イメージで、ちょっと思いつくままにかいてしまいました
549 ◆pVdGUF5Fso :2007/01/02(火) 00:43:23 ID:Me0+VuOR
リメイクやリレーで他者の設定使った作品があったので、二次創作に抵抗はないと踏んでいた。
中には二次創作を好まない、一次創作一本の書き手もいるんだな。

ではキャラクターは使わず設定のみ使う、だったらどうだろうか。
「女性だったら」「現代日本だったら」
別のキャラクターで全く違う話を創作できると思うのだが。


圧縮が近い上スレが過疎気味だったので提案してみたんだが、荒れそうな流れを作って申し訳ない。
あと、念のために申し添えるが別に強制したい訳ではない。

挨拶が最後になったがあけましておめでとう。
今年も新作を楽しみに待っている。
550名無しさん@ピンキー:2007/01/02(火) 10:50:52 ID:rE0XnZ87
>>205>>214みたいな?
551名無しさん@ピンキー:2007/01/02(火) 11:19:06 ID:gohgmsP5
リメイクやリレーは別に構わないと思うんだが、
>>545みたいに自分の文章より他人の文章の方が多いのは駄目だと思う

>>549
人の書いた文章に感動して、「リメイクさせて!」「萌えたから勝手に続けた」というのは、
新たな書き手を刺激する魅力的な文章だったってことなんだし、
新作も投下されるし、みんなにとって喜ばしいことだと思う
(元の書き手さんが、勝手にリメイクすんな!!と思ったら、申し訳ないが)

だけど、自分の都合で、「リメイクしてくれ」とか「書いてくれ」とか要求したりするのは違うんじゃないかな
やりたい人がいたら自発的にやるし、そもそもここは単発作品が多いし、
あなたのサイトじゃないから無理して連載してくれなくてもいいと思う
552名無しさん@ピンキー:2007/01/02(火) 11:24:00 ID:rE0XnZ87
>>548
見落としてた…GJ
結局男は嘘を突き通せないのな…
553 ◆pVdGUF5Fso :2007/01/02(火) 14:09:43 ID:Me0+VuOR
「ネタがなくて書けないなら、良ければこの設定使ってくれ」
がこのスレの私物化だということか。

潮時だな。

二度とここに投下しない。
保管庫が出来ても保管は遠慮する。

548、折角の作品投下直後をgdgdにしてスマソ。
さらばだ。
554名無しさん@ピンキー:2007/01/02(火) 22:39:48 ID:L0+Ev58m
少なくとも自分は>>541>>549
スレの私物化発言だとは思わなかったよ。
単純に531の早とちりじゃないの?
再度噛みくだいて説明するかスルーすればよかったのに…
残念だ。
555名無しさん@ピンキー:2007/01/02(火) 22:41:17 ID:L0+Ev58m
失礼。>>531>>551です。
556名無しさん@ピンキー:2007/01/03(水) 01:34:57 ID:cSXRiw/K
>>554
無駄だ、嵐行為をしている自覚のない同人板厨房臭い
1割以上のスレが落ちる圧縮の怖さもここのリメイクきぼんも知らんくせに
己の主張が一番正しいと疑ってないからな

783 :名無しさん@ピンキー:2007/01/02(火) 15:50:44 ID:msxN5SlJ
>>540(多分>>541の間違い)
アドバイスしたいなら自分語りなんざ不要、指摘だけしろ
何が先達だ、その上から目線は見てて気分悪い
空気の読めない先達さんは例えどんなにキャリアがあろうと尊敬できません
頼まれてもないのに方法論語っちゃうアドバイ厨は消えてください

ってかそんなこと語りたいなら控え室にでも逝ってこい
善意の高尚書き手様が一番面倒だな、あーやだやだ
557名無しさん@ピンキー:2007/01/03(水) 16:03:27 ID:fmo6jjda
無駄に空気悪くせんでよろし
558名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 00:26:52 ID:eWEkmJqt
お気に入りのスレを落としたくなくて、盛り上げたい気持ちもわかるし、
リメイクはやりたい奴が勝手にやれば良くて、書き手が申し出るもんじゃないって考えも、
どっちも納得できるんだよな

まあ>>551の自治厨ぶりもウザイし、◆pVdGUF5Fsoの偉そうな上から口調もムカつくけどな
559名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 09:59:40 ID:Gf1cJpXS
んじゃどっちにも噛みつく558がエロ格好良くなんとかすれば宜しいな。

あと551ってどの話を投下してるの?
まさか(投下せずに)口だけじゃないよね。
560名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 17:59:12 ID:a7Cq3iwS
皮肉にも荒れたおかげで圧縮を乗り越えたな。
大して投下もしないくせに主張だけは一人前の書き手ばっかだ、この駄スレ。
言い訳も他人事みたいな語りもウゼェよ。

お前らの主張からすれば一番カッコイイ行動は黙ってオリジナリティとクオリティの高いSS投下だろ。
それを圧縮前にできなかった負け犬どもが偉そうにキャンキャン吠えんな見苦しい。
561名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 21:12:34 ID:r5+BBbxk
まぁまぁ、新年からそう尖がらなくてもいいじゃねーか。
結果オーライ、そんで今年もよろしくマターリ過ごそうぜ。

……いや、だから、ほっといたのは悪かったよ。事情は説明したろ?
機嫌直せよ、な?
ホントに浮気なんかじゃねーって。俺はオマエだけだ。マジマジ。
なんなら初詣で神様に誓ってもいい。俺の願いは今年もオマエと二人で
ずっと一緒にいられますように、だ。な、だから拗ねんなよ。

じゃなんでしてくれないの、って、オマエそりゃ、だから、つまり……
えぇい、一度しか言わねーぞ!
オマエが大事だから、こんな、気まずくなったのを誤魔化すみたいなきっかけで
セックスしたくねーんだよ!!
やっぱ、どうせなら、こう……お互い求め合っての末にしたいじゃねーか!!
悪かったなロマンチストで! だぁぁっ、ちくしょー顔が熱いっ!

あ。やっと笑ったな。
やっぱオマエは笑顔がいいよ。うん。

ああ、俺も。
―――好きだ。




とゆーわけでマターリしようや。今年もよろしく。
562名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 21:47:33 ID:bwOQIDSY
>>561イイ!!
563名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 22:28:04 ID:Gf1cJpXS
17氏乙。
564名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 00:10:30 ID:OCurqKa4
>>561
流れを逆手にとった返し技お見事! GJ!!
565名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 02:25:55 ID:a+Mt7z6/
>>548>>561
乙です

まさにカッコよくエロいですな。
56617:2007/01/05(金) 10:00:37 ID:WkRDjG+k
>>561氏GJです!
照れまくる男がかわいいな〜

>>563
私が書いたのではないですよ、念のため。
567名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 13:49:28 ID:CPnXHFYa
すまんが独り言を言わせて貰う

レスは大抵上っ面しか見ずに付く
そういうものだ
派手な奴には派手にレスが付く

常駐して随時作品投下なんて地味な努力は評価されないモノだ
空気のありがたみのようなものだ
普段意識されることはない
お前は努力しているよ
いつも作品投下ありがとう

少しずつ上手くなってくれ
568561:2007/01/05(金) 18:08:43 ID:/mhuztRS
うん、17氏ではないです。期待を裏切ってスマソ。
だが、かの17氏のように見られたことは素直に光栄です。アリガd。
569 ◆zEx2QnLEMw :2007/01/07(日) 02:15:32 ID:tZouJkni
此処は菱刈ヶ原。
男の精を吸い尽くす鬼女が出ると専らの噂。
夜半の野道をとぼとぼと歩く男が一人。

男が野原の真ん中にさしかかると生臭き一陣の風。
「抱いてくりゃれ、我を抱いてくりゃれ」
男の背後から掻き付く襤褸蓬髪のおぞましき老婆――これぞ菱刈ヶ原の鬼女。
並の者は肝を潰し脱兎のごとく逃げ失せる。

だが此の男は笑みを浮かべ女の肩を抱き寄せた。
「望み通りにそちを抱き肌を温めてやりたいが其れは叶わぬ身じゃ、相済まぬ」
男の腕に一層の力が籠もる。
流す涙が墨染めの袖に滴った。
「浅ましき我が身を其処まで案じて下さるか」
鬼女の目に肉欲ではない色が宿る。
「嗚呼かたじけない…南無大慈大悲……」

翌朝。
野原の真ん中に朝露に濡れた石地蔵が一体。


鬼女が現れることはなくなった。

570名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 13:36:23 ID:nQEYlCt1
地蔵が男として現れたのか鬼女がそういう幻を見たのか…
個人的に後者のがいいけど。GJ!
571名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 20:43:45 ID:IV6P4tk6
妄執の解けた鬼女がお地蔵さまになったのかとオモタ。
シチュがツボったので勝手に続ける……つか後日談とゆーか。
お坊さんが地蔵だと成り立たない話なんだが……。
先に謝る。>>569、無断でスマソ。



 なに、菱刈ヶ原を抜けてきた? それはまた……鬼女に会われんかったかね。
会った? よくまぁご無事で……さすがお坊さまともなると違うのかね。
 ……したらば、よかったらちぃと俺ん願いを聞いてもらえんだろか。なに、あの鬼女がね……
早く往生できるよう、お経をあげてもらいたいんでさ。
 ああ、いや……あの鬼女もね、今じゃ酷い姿を晒しちゃいるが、昔はいい娘だったんだよ。
そりゃ小町ってほどの器量じゃなかったが、気立てがよくて、優しくてね。春にゃあ嫁ぐはずだった。
 ところがねぇ、ちょいと町へ使いに出た帰り、……大きな声じゃ言えないが、お武家様の
試し斬りに遭っちまった。必死に逃げたようだが女の足だ、背中をばっさりやられちまって。
それだけじゃない、倒れた娘の髪まで切ってったんだから、酷い話じゃあないかい。
 娘は生死の境をさまよって、それでも一命はとりとめた。周りはやれよかったと喜んだよ。
また娘が健気でね。辛い治療にもよく耐えたし、おっとさんおっかさんに心配かけまいと、
痛かろうに笑顔を絶やさなかった。
 だけども悪いことは終わらなかった。生死を分けるような深い傷だ、どうしたって痕は消えない。
嫁ぎ先はそれを理由に破談を告げてきた。娘も親も嘆いてねぇ。そこが貰ってくれないんじゃ、
他に貰い手のあろうはずがない。医者も傷は残ったが子供を産むのに支障はないと言うもんで、
揃って嫁ぎ先に話をつけにいったんだ。
 知らない仲じゃなし、なんとかと頼み込んだが先方はうんと言わない。言えるはずもなかったのさ。
娘が死にかけてる間、先方にゃ新しい縁談が舞い込んでた。相手は庄屋の娘でねぇ。一方娘の家ときたら、
元はそれなりに裕福だったんだが、娘の治療で随分使っちまって、大分寂しいことになってたのさ。
傷が残ったのをこれ幸いと、庄屋の娘に乗り換えたわけだねぇ。
 話すうちに親はそうと悟った。悟って激怒して飛び出したよ。誰がこんな家に大事な娘をやるもんかと
啖呵切ったが、諦めきれなかったのが娘の方だ。どうやらあっちの息子に惚れてたらしい。夜になって
こっそり引き返した。慌てたのが息子の方だ。庄屋に知れたら事だからね。部屋に忍び込んで
話を聞いてくれと訴える娘を殴る蹴る、みっともない髪だと罵って、挙句に娘をひん剥くと、醜い体だと
笑いものにした。こんな体で抱いてくれろとはあつかましい、よほどに面の皮が厚いんじゃろとな。
 娘は再び寝込んだ。乱暴が傷に障ったせいもあるが……そんな目にあっちゃあ無理もない。
高い熱を出して、食も細くなり、目が虚ろになって……いまやばさばさになった髪に一筋二筋
白いものが混ざっていった。そうしてある日、ふらりと起き上がると一声叫んで菱刈ヶ原へ走って
消えた。鬼女が出るようになったのはそれからだ。不思議なことに、昼間いくら人が探しても娘は出てこない。
聞けば鬼女は老婆の姿をしとるというし……恨みの挙句、人でないものになっちまったんだろうなぁ。
哀れなことだよ。哀れなことだ。
 あぁ、随分と長話になっちまって面目ない。そういう訳なんでさ。……え? おそらくもう往生した?
 ……はぁ、いや、なるほど。菱刈ヶ原を抜けるときにそんなことが……。そうならそうと、最初から
言ってくだせぇよ。いやよかったよかった。ありがとうごぜぇます。ありがとうごぜぇます。
 ……いや、俺なんか結局何もできねぇで。えぇ……医者やってて患者を助けられねぇことほど辛いことは
ないですよ。ましてや小さい頃から見てきたからねぇ……。
 おお、もうご出発ですかい。今からじゃ日暮れ前に次の村に着くのは無理ですよ。むさ苦しいところですが、
今夜は泊まっていってくだせぇな。……はぁ、どうしてもお急ぎで。ならばそうだ、水と饅頭だけでも持って出て
おくんなせぇ。
 ……それじゃ、道中お気をつけて。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。
572名無しさん@ピンキー:2007/01/08(月) 00:11:09 ID:vNoGlaXB
リレーキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
鬼女タンテラカワイソス。成仏できてよかったね。
>>569>>571もGJ!!
573569 ◆zEx2QnLEMw :2007/01/08(月) 21:54:42 ID:zGMjkykk
・男は地蔵の化身だった     ・女が地蔵になった
・地蔵が男と女を引き合わせた  ・男と女が出会った場所にあっただけで地蔵はただの背景
解釈は読み手の自由

>>571
ネタ使用だとはっきり分かるようにしているので構わないというよりもむしろ光栄だ
素朴な村医者の語りを用いることで鬼女のキャラクターの厚みが見事に増している

ところでコテやトリって勇気がいるもんだな
試しにつけてみたが重いというか独特の緊張感があって同意するボタンが押しにくい
つー訳で名無しに戻る
574名無しさん@ピンキー:2007/01/10(水) 22:57:26 ID:teIpAbSA
このスレは長編不可?
出会って、惹かれて、求めるまでの過程も描写してみたいんだが、
そうするとどうしても長くなるんだ。
ダメならダメで、寸止めさせずにエチーさせて他スレに放り込むので、
遠慮のない意見が聞きたい。
575名無しさん@ピンキー:2007/01/10(水) 23:34:20 ID:6xVYW27a
読み手としては長編だからって特に拒否する理由はないけど。
気になるなら注意書き付けて投下すれば?くらい。

書き手の意見はどうなんだろ。
576名無しさん@ピンキー:2007/01/11(木) 08:50:21 ID:4MF3bpaU
>>574 俺は全く気にならない。
投下してくれ!!
577名無しさん@ピンキー:2007/01/11(木) 09:13:47 ID:/e14W8zK
とりあえず一言。
読みたい。
578574:2007/01/11(木) 20:20:25 ID:ZbIghsBH
らじゃ。もう少しまとまってから投下させてもらいます。
注意書きと、タイトル入れてNG指定できるようにしてみる。
579名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 15:03:43 ID:K9Z2tbom
期待あげ
580荒野の悪魔<注意書き>:2007/01/12(金) 22:06:57 ID:9iWAoGSX
とりあえず最初の部分を投下します。よろしく。

<注意>
・長編になる予定。とばすときは「荒野の悪魔」をNG指定でヨロ。
・宗教(キリスト教、仏教)っぽいものを扱います。気になる人は「荒(ry
・今回まだヒロイン出てきません。
581荒野の悪魔:2007/01/12(金) 22:10:30 ID:9iWAoGSX
 暖かな日差しが、降り注いでいた。
 眠りから覚めた彼は、眩しさに目をすがめる。一拍置いて、その事実に驚いた。
 ―――明るい。
 震える右腕を顔の前にかざしてひさしにする。慌てて動けばすべてが消える気が
して、彼は騒ぎ始めた動悸と裏腹にゆっくりと身を起こした。呆然と辺りを見回す。
 地面に寝ていたわりに体は痛くない。それもそのはず、周囲は一面柔らかな草に
覆われていた。あるかなしかの風に、色とりどりの花が揺れる。空気は甘くかぐわしく、
大地はなだらかな線を描いて丘へと続いていた。ところどころにこんもりとした木々の
影、どれもたわわに実をつけて重そうな枝ぶりだ。
 空は染み入るほどに青く、雲はすっきりと白い。何もかもが輝くばかりに美しく、
優しく、柔らかく―――
 ―――ああ。
 彼は瞑目する。
 懐かしかった。どれほどこの景色に焦がれたろう。
 振り仰げば頬に陽光のぬくもりを感じる。涙がこぼれた。
 それは失った過去の幻、彼の故郷の風景だった。
582荒野の悪魔:2007/01/12(金) 22:14:10 ID:9iWAoGSX



 どっと猥雑な喧騒が押し寄せて、アゼルは目を開いた。途端視界に入ったのは
冷たい石造りの壁で、すくい取るより早く夢の光景は霧散する。強く目をつぶって
みるが、あの光景は二度と戻ってはこなかった。現実でも泣いていたらしい。
こめかみに冷たい感触が滑っていく。
「や、起きたかい」
 馴染みの声に半身を起こせば、案の定入り口からバアルが彼の方を伺っていた。
向こうの部屋が明るいので逆光になっているが、酒瓶とパンの籠を持っているのが
わかる。その後ろからひっきりなしに男女らの嬌声と哄笑が聞こえてきて、アゼルに
現実を教えた。彼は小さく首を振る。
 これが、今彼の生きる世界。
 大気に混じるのは酒と、化粧と、性の臭い。ねっとりと絡みつくようなそれも、2度
3度と呼吸を数えるうち肺に馴染んでいく。
 もはや、あの美しい地に、アゼルが存在することはないのだ。
 安寧と切り離された寄る辺なさが募る。込み上げる孤独感に一層涙がこぼれかけ、
唇を噛んでこらえた。
「入ってもいいかい?」
 にこりと尋ねる青年に、アゼルは頷いた。
「ついでに……戸を閉めてくれるとありがたい」
「はいはい」
 バアルは陽気に言って部屋へと踏み込んでくる。扉が閉じられると、少しだけ喧騒が
遠のいた。バアルが後ろを向いた隙に素早く目元を拭うと、アゼルは燭台に火を
ともす。その横にバアルが籠を置くと、彼はくるりと部屋を見回して肩をすくめた。
「相変わらず物好きだなぁ。せっかく寝台があるのに、わざわざ石の床で寝て」
「寝るつもりじゃなかったんだ」
 アゼルは虚栄に満ちた派手派手しい布をかきわけて椅子を掘りだし、バアルに座る
よう勧める。短い返答で事情を悟ったのか、バアルは小さく苦笑した。
「また神に祈ってたのか。……僕はこれでもいろんな堕天使を知ってるけどね、
君みたいなのは初めてだよ、アゼル。むしろ君、天国でうまくやれてたのかい?」
「さぁ。でも……幸せだったよ」
583荒野の悪魔:2007/01/12(金) 22:17:07 ID:9iWAoGSX
 俯いた拍子にさらりとアゼルの髪が流れる。波打つ色は元は金だったが、今は
闇色に染まっていた。瞳の色も変わってしまった。翼は端から腐って落ちて、
激痛の記憶とともに背中に酷い痕を残した。顔立ちはほとんど変わらなかったが、
柔和な面差しと細身の体が神を裏切った罪悪感に翳りを帯びて、人を惑わせる者
としてはかえって『上物』の部類になってしまっている。
「僕は生まれついての悪魔だからねぇ。君の信仰は理解できないけれど。
まぁ飲みたまえ、ちょっとは気が晴れる」
 酒瓶を差し出したバアルに、アゼルは手を振りかけ、ふとその動きを止めた。
「これ……」
「あ、やっぱりわかるかい? 地上のだよ。君しばらく『食事』していないだろう。
少しは精気を摂らないと、本当に滅んでしまうよ」
 そう言うバアルはそれこそ地上で『食事』をしてきたのだろう。飢えの気配を
まったく感じさせずに、にこにこと笑っている。後ろめたさの欠片もない笑顔だが、
その意味するところはひとつ―――地上で、誰かの魂が滅んだのだ。
 精気はすなわち神の御恵み、神の被造物たる生命は、おしなべてこれを必要と
する。悪魔ですら、例外ではなかった。だが、地獄とも魔界ともつかぬこの呪われた
地に、神の恵みは一滴たりとも届かない。故に悪魔は人を惑わし精気を啜り、
悪魔の代わりに人が滅ぶ。
 そうして、誰かの糧となるはずだったワインとパンが、アゼルという堕天使を生かす
のだ。
 その罪深さにももう―――慣れてしまった。
「ありがとう。いただくよ」
 どんな経緯があったにせよ、バアルがアゼルの身を気遣ってくれての品には
変わりない。悪魔に感謝の言葉を捧げ、アゼルは酒杯を差し出した。主への祈りは
心の中でのみ呟く。注がれる赤い液体とともに、爽やかな葡萄の香りが立ちのぼった。
「……不思議だな」
「うん?」
「同じ酒でもここのはよどんだ臭いにしか思えないのに、地上のになるとこんなにも
かぐわしい」
「そんなに違うかい?」
584荒野の悪魔:2007/01/12(金) 22:20:34 ID:9iWAoGSX
 バアルは、くん、と酒瓶の口に鼻を寄せる。首を振った。
「僕にはわからないな。同じ臭いだ。たぶん、君が、これらからでも精気を摂れる
ことに関係あるんだろうけど。ここのは悪魔達が自分の力で作り出した……いわば
紛い物だからねぇ。どちらにせよ僕らは味を楽しむだけだから、全然支障はない
ものだけど……あ、でも人間もわからないのか? たまに美食を願ってくるのが
いるけど、文句も言わずに食べてるし。精気を摂れないから弱っていきこそする
けどねぇ。やっぱり、たとえ堕ちても、天使は違うってことかなぁ」
 ふむふむと無邪気にバアルは頷いている。純粋に感心しているようだった。が、
ふと顔を上げるとしかつめらしくアゼルの顔をのぞきこんでくる。
「だけどね、アゼル。こんなのは誤魔化しにしか過ぎないんだからね。そりゃあ
ないよりましだろうが、近いうちにちゃんと『食事』に行くんだよ」
「うん……」
 アゼルは曖昧に頷く。
 まだ天に在った頃、精気とは周囲に満ちているものだった。摂取の必要を感じる
ことすらなかった。常に体内を巡るもの、大気のように己に寄り添うもの。弱った
存在があれば与えることすらできたのだ。それが当たり前なのだと思っていた。
「気が進まないようだね、天使殿?」
「うん……いや、わかってる。食べに行くよ」
「そうしてくれたまえ。でないと僕は節度のない悪魔だから、君を襲って精気を
摂らせるよ」
「遠慮する……」
 茶目っ気たっぷりに言って寄こすバアルに、アゼルは大仰な溜息をついてみせた。
 こうすることが、友といって差し支えない態度で接してくれるバアルへの、せめてもの
礼儀だと思っている。
 ……たとえ彼が悪魔でも。
 アゼルももう、神の僕とは認められない者に成り果てているのだから。



 続く



結構書いたと思ったのに、案外レス数少なく済んでしまった。色々試行錯誤していきます。
585名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 22:24:50 ID:mXs2J0ig
伏魔殿(パンデモニウム)っぽいね
続き楽しみにしてる
586名無しさん@ピンキー:2007/01/13(土) 17:19:23 ID:NPD74GTD
続きに期待
587名無しさん@ピンキー:2007/01/15(月) 13:42:14 ID:VJVLA7NF
何なんだこりゃ?
◆pVdGUF5Fso氏はこのスレの書き手に対して吸精の設定を使って良いとは言っている
だが、氏の作風に依存しまくった模造品や贋作を書けと言っている訳じゃないだろ
588名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 00:38:23 ID:l9rUEYy3
結論は最後まで読んでからにしたい。

580、もちろん最後まで書くだろうな。
ギブアップするならするで報告しろよ。
589荒野の悪魔:2007/01/16(火) 00:48:05 ID:2UYuZ0JX

 教会の朝は早い。未だ夜も明けやらぬ、一日で最も気温が下がる刻限に、
マリアはいつものとおり床を離れた。そのまま自身が暮らす小屋の中、慎ましく
膝をつき頭を垂れると、朝の祈りを捧げる。常ならばこの時間、隣に建つ礼拝堂では
神父が同じように祈っているはずだが、今日は一人きりだ。
 ―――神父様の道行きが平らかなものでありますように。
 ―――教区会議が平穏の内に終わりますように。
 ここ数日と同じに祈りをそう締めくくると、マリアは手早く身支度を整え、角灯を
手に表へ出る。マリアと神父が二人で暮らすこの教会は、さして大きいものでは
ない―――どころか、かなりこぢんまりとしたものだったが、家畜の世話や薬草園の
手入れなど、日々の仕事はけして少なくなかった。
 まずは山羊の乳を搾ろうと、桶を下げて家畜小屋へと向かう。
 が。
 礼拝堂の角を曲がったところで、ふと、闇の底に何か異質な気配を感じた。
マリアは足を止めて角灯を掲げる。
「もし……?」
 小首を傾げての問いかけに、闇が動いた。
「おはようございます。随分早いですね」
 若い男の声だった。光源は手にした角灯と星明りのみ、手元ばかりが明るくて
詳細は伺えない。だが、頭から外套を被った人影は、教会の外壁に向かい跪いて
いたようだった。こんな時間に、とマリアは少し驚く。
「おはようございます。……旅の方ですか?」
「ええ。到着が閉門ぎりぎりで……宿にあぶれてしまいました」
 なめらかな声は少しだけ震えている。その意味するところに、マリアはまぁ、と
小さく息をこぼす。
「では昨夜からここに? さぞ冷えたでしょう。起こしてくださればよかったのに……。
どうぞ、こちらへ。火が焚いてありますから」
 人影が荷物を拾ったのを確認し、元来た道を先導する。時折振り返れば、
影は静かについてきていた。小屋の入り口を押さえ、再度どうぞ、と差し招く。
「ありがとうございます」
 頭巾に覆われた頭が小さく会釈して、小屋の中へ足を踏み入れる。マリアは
手桶を置くと、ぱたぱたとその前をよぎって暖炉に薪を足した。
「どうぞ、火の傍へ」
 椅子の上で開きっぱなしだった聖書を棚に戻し、火の前に座る場所を作る。
背後から深い声がした。
「助かりました。私はアゼルといいます」
「私はマリアで―――」
 半分振り返りながら答えた声が途切れた。マリアはそのまま唖然と動きを
止めていた。
 外套の下から現れた顔は、それほど美しかった。
 柔和で穏やかな顔立ち。すっきりした額は知性を感じさせた。透き通るように
白い肌と、艶のある漆黒の髪が見事な対比をみせている。薄めの唇はあるか
なしかの笑みの形、それでいてどこか憂いを帯びた眼差し。細身の体は、外套を
脱ぐだけでも流れるように優美な所作をみせた。
590荒野の悪魔:2007/01/16(火) 00:50:07 ID:2UYuZ0JX
 美しい。まるで天使のように。あるいは―――悪魔のように。
 危険だ、という気がする。これは近づいてはならないモノだ。それでいて、
強烈に惹きつけられる。どうしても目が離せない。
 凝然と見つめるマリアに、アゼルは不思議そうに首を傾げた。
「……どうかしましたか?」
 その一言ではっと我に返る。
「あ……すみません、不躾にじろじろと。あんまりお綺麗なものだから、つい……」
 青年は苦笑する。
「褒めていただいてるようですが……男としては、いささか複雑なものがありますね」
 困ったような気配と途方にくれたような声音が混ざって、途端に人くささが
増した。気を取り直して眺めると、確かに美しい青年だが、何をそんなに警戒
しなくてはならないのかわからない。暴漢でもなければ酔漢でもない。知性と
礼儀を兼ね備えた人物に見えた。
「そ、そうですね。すみません、私ったら」
 マリアは自分が更に無礼を重ねたようだと頬を染める。謝罪して大きく息を
吐くと、微笑を浮かべた。
「改めまして、私はマリアと申します。この教会をお手伝いしている者です。
どうぞ、温まっていらしてくださいな。すぐに山羊の乳を搾ってきますから」
「お気遣いなく」
「いいえ、遠慮なさらないで。うちの山羊の乳は美味しいと評判なんですよ」
 客人はもてなすものだ。
 教会は神の家、すなわちすべての人の家である。神父が留守の今、彼を
兄弟として迎え入れるのはマリアの役目だった。
 外套を受け取って壁にかけると、代わりに膝掛けを渡し、マリアは再び外へ
出る。寒空の下を足早に急ぎながら、朝食の献立をあれこれと思案した。
もてなしは務めでもあるが、一人きりでない食事は数日ぶりで、純粋に嬉しく
もある。一人の食事はどうしても味気ない。それに―――思い出したくない
過去を思い起こさせる。
 マリアは一瞬足を止めると、わずかに黒から紺へと色を変え始めた空を
見上げる。胸元で小さく感謝の印を切った。
591荒野の悪魔:2007/01/16(火) 00:52:57 ID:2UYuZ0JX



 黒パンに、とろりとなるまで火で炙ったチーズがのせられる。銀の食器とは
いきませんが、と出された客用の真新しい木の椀には、温められた山羊の乳。
塩漬けの野菜と腸詰め肉を煮込んだスープには、産みたての卵がふんわりと
溶き入れられている。
 食前の祈りを捧げると、アゼルはマリアの心づくしに手を伸ばした。
「……美味しい」
「よかった。お口にあいましたか」
 輝くような笑顔で喜ぶマリアを見るのが苦しくて、アゼルは食卓の上へ視線を
落とした。並べられた料理の下、卓にかけられた布は質素だったが、清潔に
洗われている。それはマリアの服も同様で、ひいては小屋全体の雰囲気に
通じるものだった。
 たいした広さのない部屋に、調度はいくらもない。暖炉兼かまどの火代、
自在鉤の鍋、粗末な卓に椅子がいくつか、水がめ、籠、作りつけの棚がひとつ。
どこも丁寧に掃除され、整頓されていた。入り口の扉とは反対方向に、洗い
ざらした布が一枚かけられている。おそらく向こうは寝室だろう。他にあるものと
いえば、天井から吊るされたおびただしい量の乾燥植物だろうか。すべて薬草で、
独特のにおいを放っているが、なかなかよく種類が揃っていた。状態も悪くない。
 神に従い、人を癒し、慎ましく毎日を送る者の家だった。
 けれど―――彼女はそこに、悪魔を招き入れたのだ。
 喉の奥にせり上がる苦々しさを誤魔化すように、アゼルは木の椀に口をつける。
今朝搾られたばかりの山羊の乳は、マリアの言ったとおり口あたりの優しいもの
だった。味だけではない。よく世話されているのだろう、宿る精気もよいものだ。
 本当に、この食事だけで自身を賄えるならば、どんなにかいいだろう。
 心底そう願うのに、目の前の娘の精気に体の奥に巣食った飢餓を思い知る。
喉が鳴りそうになるのを、食物の精気で何とかなだめていた。
 本当は、小屋に入れられた時点でさっさと終わらせるつもりだったのだ。名前を
呼んで誘惑して。性の快楽に溺れさせてしまえばそれで済む。正直なところ、
地上に長く留まりたくはなかった。
 下界に比べ、地上の風は甘い。無論天上のものとは比べようもなかったが、
それでも主の息吹を感じるものだ。本来であればアゼルにとって、地上の方が
まだ過ごしやすい。
 だが、そこに住まう人々が―――アゼルには、恐ろしかった。
 バアルなどは人間に呼び出され契約を交わす代償で魂を得ることがあったが、
アゼルがその方法を使うことはない。
 強い願いを持つものほど、彼が昔天上から愛した『人間』から乖離している
ことが多く、欲望に支配された姿は悪魔と同じほどにおぞましく―――そして、
おぞましいと感じる己を思い知る。
 主の子らを愛せない。
 その自覚は堕ちた夜の記憶と結びついて、分かちがたく彼の心を苛んだ。
 故に自ら地上に出ては、まだ親しみを感じる者を探すのだ。
 だがそれすらも―――彼に別の苦痛を与える。
592荒野の悪魔:2007/01/16(火) 00:57:16 ID:2UYuZ0JX
 君も難儀なものだねぇ、とバアルは言った。
 とっくに堕ちているのに、七つの大罪に身を委ねきれない。聖職者や敬虔な
信者の方がまだ身近に感じられて、心情として安心し、精気を得る相手に選ぶ。
結果アゼルは自分と同じ苦しみを、相手に与えることになる。
 初めての『食事』をしたとき、下界に戻ったアゼルを、悪魔達はやんやの喝采で
迎えた。
 英雄扱いされたが、臆病で、卑怯で、罪深いだけであることを、おそらく彼らも
知っている。褒め言葉の裏には嘲笑と揶揄があった。それがわかっても―――
アゼルは他に、どうすることもできない。
 祈り、懺悔し、許されず……罪は日々重なり続け、幾重にも彼を縛りあげている。
 バアルに言われるまでもなく、祈ったとて無駄だと思うこともある。どれほどに
祈ろうと、神の声が応えたことはない。己の姿を見るたびに、許されざる現実が
否応なく目に入る。
 それでも、諦めきれなかった。
 もしかしたらと思ってしまう。かつての幸福な記憶。彼を生み育ててくれた
かけがえのない存在。今でも愛している。もう一度愛されたい。
 主よ、主よ。
 どうしたらいいのですか。
 どうすれば、私は―――
「アゼルさん」
 呼びかけに、彼ははっと顔を上げた。マリアが心配そうに彼を覗き込んでいる。
何かを問いたげにしていたが、口にしたのは
「おかわり、いかがですか?」
 という言葉だった。安心させるかのように微笑んでくる。よほど酷い顔をして
いたらしい。
「……ありがとうございます」
「いいえ。主のご加護がありますように」
 そんなものはない、と言いたかった。けれど、言えなかった。
 あの夢を映したかのような鮮やかな緑の瞳が慕わしい。今朝がた更なる罪を
重ねようとしたアゼルを押しとどめたのは、間違いなくこの瞳だった。
 もっとこの目を見ていたい。
 飢餓とは別の欲求が浮かんで、彼はしばし戸惑った。
 見逃すか。そうして、別の相手を探そうか。
 けれどそれでは、ここを出ていかなくてはならない。結局、緑の眼差しを
見つめることができなくなる。
 それに正直、マリアの精気はとても魅力的だ。
 どうしよう。どうすればいい。
 アゼルはしばらく逡巡する。
 考えて、考えて……どちらの道を選ぶにせよ、もう少しここに留まる必要が
ある、と気づいて、少しほっとする。
 まずは、マリアに近づくことだ。
 アゼルは、朝食の礼に、と薪割りと水汲みを申し出た。



  続く



投下ペースは、これくらいか、もうちょっとゆっくりになりそうです。
週1はできるように頑張ってみる。遅筆なんだorz
そしてだんだん単なる恋愛小説を書いているような気がしてきたw
593名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 18:45:19 ID:RowTjiXT
すまん……なんか厨腐臭いんだが……。
594名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 00:16:31 ID:f7+P/5So
>銀の食器
レミゼかよw いつの時代なんだwww

先に断っておくと、楽しんで読ませてもらってる。
ただ、ちょっと個人の見解を言わせてもらうと、もう少しあれこれ展開進んでから
1回でまとめて投下した方がいいんじゃないかと思う。
なんかだらだらプロローグみたいで、ちょっともったいない。
595名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 20:46:40 ID:oGb1tiMt
荒野の者です。ノロに冒されましたorz
回復までにもうちょいかかりそうです。治ったら投下しにきます。
596名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 22:14:41 ID:HsSeCMsg
先達のネタをパクって連載抱えた作家様気取り、ノロがどうとか自分語りウザ過ぎ
あなたのサイトじゃないんだから(ry
>>551みたいなのに噛みつかれても不思議はないぞ。

次回の投下から気をつけてくれ。
597荒野の悪魔<注意書き>:2007/01/21(日) 23:07:48 ID:uNtDVAtF
<注意>
・ものすごくヌルいですが陵辱っぽいシーンがあります。
・宗教(キリスト教、仏教)っぽいものを扱う上に、都合上けなしてます。
598荒野の悪魔:2007/01/21(日) 23:10:10 ID:uNtDVAtF

 救済を求めて、差し伸べられた腕を覚えている。青白い、病に冒された腕だった。
「助けてください。どうか、どうか」
 熱に浮かされた口調。ざんばらに乱れた髪の奥で、落ち窪んだ目がぎらぎらと
底光っていた。かさかさに乾いた唇。骨と皮ばかりになった体は、濃い薬の臭いが
した。
「死にたくない。まだ死にたくないんです」
 痩せこけた体のどこにそんな力があるのか、女はアゼルを押さえつけてすすり泣く。
 高い聖堂の天上が見えた。弓状にせり上がって天を目指し、一点で収束する。
人々が聖歌を歌ったならば、次々とこだまして美しい祈りの響きに変えるだろう。
だが、今そこに吸い込まれるのは、女の、妄執とも言うべき願いだけだ。
「お助けください、天使様」
 おやめなさい、とアゼルは言った。こんなことをしてもあなたの病は治らない。
 主の定めたもうた運命なのだ。心安らかに受け容れなさい、と。
 女は激しく首を振った。はずみで嫌な咳き込み方をする。ごぼり、と生臭い血が
吐き出され、アゼルの肌に火傷のような痛みを与えた。苦悶するアゼルに、女は
一層、助けてください、とうわごとのように繰り返す。
 幼い子供がいるのです。やっと授かった子供です。とても残しては逝けない。
もう少し、あと少しあたしを生かしてください。お願いです。
 女の眦から涙がこぼれて血と混じる。どれほど言葉を尽くしても、恐怖と苦痛に
絡めとられた女の耳には届かなかった。
「天使様と交われば、栄光に満ちた生命を少し分けていただけると、あの方が」
 縋るように、体が押しつけられてくる。女の指がアゼルの下半身をまさぐった。
細い刺激がつぅいと走る。
 アゼルは更に顔を歪めた。こんな状況にあるにも関わらず、女の動きに未知の
熱が頭をもたげる。そんな己に衝撃が走った。
 一瞬遅れてやってきたのは、混乱と純粋な恐怖だった。やめなさい、と叫ぶ。
 それは悪魔の言葉です、耳を貸してはならない!
 言って自分で腑に落ちた。そうだ、悪魔だ。悪魔が力を貸しているから、こんな
細い腕を振り払えない。こんなに容易く、淫らな行為を強いられる。
 ―――汚らわしい。
 離しなさい!
「いいえ、いいえ」
 叫ぼうともがこうと、女はびくともしなかった。意に反して屹立したアゼルの
ものを見て、満足そうにふふふと笑う。
 ―――それが、心底恐ろしかった。
「もしもこの命が延びるなら」
 悪魔に魂を売り渡したとて構いはしません。


599荒野の悪魔:2007/01/21(日) 23:12:50 ID:uNtDVAtF



「……それで、食事はしてきたのかい?」
「してきたよ」
 情事の後なのか、バアルはしどけない格好で毛皮に埋もれ、煙管をふかし
つつ本を読んでいた。顔を上げたバアルに、アゼルは視線を落としたまま
答える。
 それが人を手にかける行為であるうえに、あの夜の記憶と密接に結びつく
ものである以上、食事の後どうしてもアゼルは落ち込むものだった。今回も
胸の奥がずっしりと重い。気持ちが悪くて吐きそうだ。けれど、そんなアゼルの
耳に、小さくバアルの含み笑いが届く。
「マリアちゃんとは、ちゃんと再会の約束をしたかい?」
「え」
 アゼルはその場で静止した。バアルはぱたん、と本を閉じると、おもしろそうに
アゼルを見つめてくる。
「いかにも君好みの、身持ちの堅そうな娘だって? ご馳走になればよかったのに」
「……バアル……?」
「ん?」
「どうして、それを」
 アゼルは恐る恐る悪魔の方を伺った。
 彼の言うとおりだ。結局マリアに手は出せなかった。けれど飢えも切実で、
旅の帰りにまた寄ると約すと、隣町で別の者を襲い、とりあえず下界に戻って
きたのだった。
 バアルは頬杖をつく。
「噂話は立派な娯楽だからねぇ。醜聞となれば尚更だ。君が、修道女でもない
教会の下女一人陥とせなかったって、あちこちで話題になってるよ。堕天使殿の
誑しの腕が落ちたって、みんなそれはそれは嬉しそうだった」
「……ああ、そう……。みんな暇だな……」
 がっくりと肩を落としたアゼルに、バアルが声をあげて笑う。
「そりゃあもちろん暇だとも。悪魔は労働とは縁がないからねぇ」
「だからって、監視の真似事までしなくてもいいだろうに。しかも、わざわざ地上で」
 バアルはふっと紫煙を吐いた。
「君は目立つからね。みな気になるのさ」
「……それは、私がいまだ信仰を捨てきれていないから?」
「うーん、まぁ異端であることは確かだね。僕が構っていることも原因のひとつ
かな。ま、そんなことはどうでもいい。次はいつ会うんだい?」
「それは……」
 アゼルは言い惑い、一旦口をつぐんだ。
「それは、答えなくちゃならないことか?」
600荒野の悪魔:2007/01/21(日) 23:15:19 ID:uNtDVAtF
「おやおや」
 バアルはくつくつと笑う。元より陽気な悪魔だが、今日は一層機嫌がよいよう
だった。
「君が我を通そうとは珍しい。いいよ、そういうことなら聞かないでおこう。君の
私生活にまで干渉する気はないからね。それはそうと、君。なかなかおもしろい
話を仕入れたんだ。暇ならちょっとつきあわないかい」
「……いいよ」
 バアルの口ぶりからするに、出歩いても碌なことはないだろう。あれこれと
冷やかしや揶揄の的になるだけだ。部屋にこもるなら彼と話をするのも悪くない。
 アゼルはバアルの向かいに腰かける。柔らかな長椅子に、寝そべるように
かけられた肉食獣の毛皮は、亡骸から剥ぎ取られたもののはずなのに滑らかな
手触りをしていた。勧められた刻みを断り、話の先を促す。
「それで? 随分機嫌がいいようだけど、その話とやらのせいなのか?」
「ああ、そうかもねぇ」
 バアルの唇が何かを企むような笑みを作った。心もち体を乗り出し、反対に
声はひそめる。
「聞きたまえよ。……東方には、神がいないんだ」
「は?」
 突拍子もない言葉に、アゼルは唖然とする。バアルは手にした本の表紙を
軽く撫ぜてみせた。
「これは東方の書物なんだけどね。色々おもしろいことが書いてある。とりあえず
言えることは、あちらに神がいないってことかな」
 悪魔の瞳がきらめいて、獲物を観察する眼差しを作る。アゼルは眉を寄せた。
「何……言ってるんだ。東も西もないだろう。この世は神が創りたもうたものなんだから」
 バアルがくすりと笑った。
「そんなものはないんだよ。代わりにあるのが『仏』という概念でね。永遠の
安寧を得た魂とでも言うのかな……。人が、獣が、草木が、あまつさえ道端の
石ころすらも、この仏たる資格があるらしい。そして死んでもまた生まれてくる」
「魂の不滅? それは神による復活と永遠の命ということだろう?」
「違う。そもあちらでは、この世に生きること自体を喜ばしいことと捉えないようだ。
生は意のままにならない。欲望に振り回され、失ったと言っては悲しみ、
得られないと言っては苦しむものだと。なかなか興味深い意見だね」
 アゼルはますます眉を寄せる。神が存在しない世界など、ありえるわけが
なかった。ともかくも反論を試みる。
「あちらもこちらもないよ。欲望を捨てよとは神の教えだ。だから修道院では、
神の御心に沿うように、清貧と純潔と服従とが求められるんだろう」
「ああなるほど」
 気を悪くした風もなくバアルが頷いた。どうやら議論自体を楽しんでいるらしかった。
601荒野の悪魔:2007/01/21(日) 23:18:48 ID:uNtDVAtF
「確かに、欲望を克服するという意味では同じなのかもしれないね。……うん、
まぁそれで、欲望を克服し自らへの執着を捨てたとき、魂はすべての苦しみ
から解き放たれ安楽の境地に達するのだそうだ。これが仏。
……あれ? 今言ってて思い出したけれど、そういえば古代の思想に
こんなものがなかったっけね?」
「……アタラクシア……だったか?」
「ああ、それだ。あとで快楽主義の思想も調べてみよう。とにかく、永遠の喜びを
享受するのに神の許しがいらないんだよ。実に画期的じゃないかい?」
 にこにこ笑うバアルの言葉が、アゼルにはどうにも理解できなかった。
「そんなもの……つまり、異教徒の教えだろう? 神の愛を知らないだけだ」
「愛ならあるよ。いや、『慈悲』だったかな。『菩薩』という……これはなんなん
だろうね、仏の仲間なのか? どうもねぇ……これでもう十回ほどは読み
返しているんだが、色々複雑でなかなか理解できないよ。まぁとにかく、
菩薩はこの世で苦しむすべての魂を救うために、あえて安寧の世界へ赴かず、
生まれ変わりを繰り返しているのだそうだ。自ら苦界に身を落とし、病を知り
痛みを知り、苦しみに呻きながらも他者の救済を目指す。僕が言うのもなんだが、
実にご立派だ。天の高みから、なんら痛みを受けずに見下ろすのではないのだね」
「神は人への愛ゆえに受肉され、すべての人間の罪を背負って十字架に
かかられたんだよ」
「うん、一回きりね。しかも対象は人だけ。吝嗇な野郎だ」
 あっさり言ってのけたバアルに、アゼルはむっとして立ち上がる。
「君は何が言いたいんだ!?」
「神はいらないってことさ。嬉しくないのかい? この考えに沿うなら、君だとて
救われるんだよ。もう罪に怯えることも、許しが得られないと悲しむこともない」
「思い上がりだ! 神なくして幸福はありえない。君は、なんだってそんな
恐ろしいことを言うんだ!?」
「悪魔だからだよ」
 バアルの唇がにぃっと笑った。
「来るべき戦いの日に、僕らは神の軍勢と争うことになってる。いつのこと
なのか知らないけれどね。何かいい方法はないかと探してたのさ。僕だって
滅ぼされたくはないからねぇ」
「今からでも遅くないさ。悔い改めて神の前に頭を垂れれば―――」
「君がそれを言うのかい?」
 心底おかしそうにバアルは笑う。
「悪魔に唆された人間に犯されて、天から転げ落ちた君が? この暗く淫らな
地にありながら、それでも祈りを忘れぬ君が、日々許しを得られず絶望して
いるくせに、悪魔に祈れと言うのかい?」
「―――っ!!」
 撃たれたように立ちすくむアゼルの頭を、すぃと近づいたバアルが撫でた。
「君がこの地にある限り、僕らは神を信じない。君の存在こそが、神の非道を
証明するのだからねぇ。……可哀相に」
 アゼルはその手を振り払う。きつくバアルを睨めつけた。
「……しばらく、私の前に姿を見せないでくれ」
「はいはい。悪かったよ」
 わき目もふらず部屋へ戻るアゼルの背中に、バアルの溜息が聞こえた気がした。
602荒野の悪魔:2007/01/21(日) 23:24:15 ID:uNtDVAtF


 ―――主よ。
 彼の暴言をお許しください。彼も迷っているだけなのです。彼は悪魔ですが、
根は邪悪な者では―――
 アゼルはそこで祈りを止め、寝台に突っ伏した。
 ……邪悪でない?
 そんなはずがない。彼は悪魔だ。邪悪なる者なのだ。主に背き、放埓を愛し
怠惰を好み、容易に人を滅ぼしてまわる。しかもそれを悪びれるところがない。
彼は悪魔であることを楽しんでいる。
 ……けれど、アゼルを助けてくれた。
 それがどんな気紛れによるのかわからない。天に戻ることかなわず、地上で
翼の腐り落ちる痛みに転げまわっていたアゼルを拾い上げてくれた。傷の
手当てを施し、三日ほどは不休で看病してくれたのではないかと思う。ほとんど
意識がなかったからわからないが。
 そうして目を覚ましてからこちら、嫌悪を示し頑なに悪魔の手を拒むアゼルを
宥め、己の置かれた状況とこれからを生きる術を教え、あれこれと世話を焼き
―――そう、まるで親しき友のように。
 感謝、している。恩がある。悪魔を友と思うことにいまだ抵抗感はあるけれど、
それすらもバアルは許容して、堕ちた天使に親しみを見せてくれるのだ。
 ……あるいは、こうしてアゼルが思い悩む様が、悪魔にとっておもしろいの
かもしれない。
 それなら、まだ理解できるのだけれど……。
 アゼルは枕に顔をうずめた。何もかもがわからない。
 神のいない世界? すべての生命は死に絶えるだろう。悪魔達が、主に
反しながらも精気を求める事実が、それを証明している。そうして魂は復活
することなく、永遠の闇に囚われる―――
 いや、そもそも精気が神と関係のないものだとしたら?
 神の存在を知らず、東方の彼らは生きているのだろう。そうして神に関係なく、
安寧を手に入れている―――いや、それこそが、主の限りない愛を示すもの
ではないか?
 けれど―――
 ただ混乱して、アゼルは呻いた。
 ……マリアに会いたい。
 無性にあの瞳が見たかった。懐かしき天上の緑。矛盾のない、美しい世界。
何を悩むことも思い煩うこともなく、幸せだけに満ちていた日々。
 帰りたい。
 マリアに、会いたい―――。



   続く
603名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 04:56:21 ID:XeB/LQFh
「ヤりたきゃヤんなさいよ。そんでとっとと解放して」
「おぅ、ハ〜ニィ。僕の愛しいアフロディテ。残念だけどそのお誘いには
乗れないよ。君が芯から僕を望んでくれるまではねェ」
「この……っ! 人を酔いつぶして拉致って剥いて、手錠に目隠しまでして
バシャバシャ写真撮ってる奴にそんな気になるかこのド変態! 何プレイよ!?」
「ノォノォ〜。リィ〜ビドゥを美のイッデ〜アへのエロォォスへと昇華させる! 
それこそが芸術! それこそがアァァ〜ツなのさ!」
「ウザっ! 超ウザっっ!」
「HAHAHA! 照れなくていいよ子猫ちゃん。君の頑なな愛の蕾が綻びるまで、
何もしないと誓おう。そして僕は君の美しさを記録し続ける!」
「つーか犯罪だからホント!! 誰か助けてぇぇぇ!!!」


※よいこじゃなくてもマネしないようにネ!



荒野の人の哲学議論とセンター試験のニュースに倫理の授業を思い出してやった。
正直スマンかった。でも反省しかしていない。
604名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 10:19:11 ID:wf9qKyI5
>>602
>くつくつ つぅい にぃっ
急にラノベ系の擬音が増えたな
筆運びもラノベっぽく変わってるし

さて、次はどうなるか楽しみだ

>>603
カッコヨクねぇwww
605荒野の悪魔<注意書き>:2007/01/23(火) 18:21:35 ID:qo6/VN8E
<注意>
・ヌルいですが陵辱?シーンがあります。
606荒野の悪魔:2007/01/23(火) 18:23:55 ID:qo6/VN8E
 マリアは抱えた洗濯物を盥に入れようとして、ふとその手を止めた。
 満々と水をたたえたその面に、平凡な女の顔が映っている。いや、久しく
見目のことなど気にも留めていなかったが、己はこんな顔だったろうか。
不器量というのではないが、もう少し整っていたような―――
 いつの間にか両手は洗濯物を置き、確かめるように頬に触れる。ざらりと
荒れた指先の感触に、はっと我に返った。
 ―――何を、愚かな。
 四年も前に、捨てると決めたものを。
 マリアは深く息を吐く。この冬一番の冷え込みに、大気がそこだけ白く濁った。
 一瞬の混迷を打ち消すように、布を盥へと押し込んだ。たちまちのうちに
水面は乱れ、女の影を消す。
 惑っている。原因はわかっていた。あの人が―――アゼルが、この瞳を
美しいと褒めたせいだ。故郷を思い出させると、慕わしげに、狂おしげに
この目を見つめていた。
 アゼルの視線を思い出しながらも、間違ってはいけない、とマリアは懸命に
手を動かす。あんな瞳で見つめられたからといって、想われているわけでは
ない。彼はただ、郷愁の念を抱いただけだ。美しいところだったと、もう二度と
帰れないと、寂しそうに呟いていた。
 そう―――きっと、マリア自身も悲しみに共鳴しただけなのだ。マリアも今の
神父と出会う前、あんな表情をしていたはずだから。
 マリアは小さく頷く。同じように痛みを知る者として、アゼルの力になりたかった。
その思いに偽りはない。
 彼は今、どこにいるのだろう。
 マリアはその旅路に思いを馳せる。アゼルの出立から十日が経った。二週間
ほどで戻ってくると聞いたから、今頃はこちらへ向かっているはずだ。毎朝の
祈りの中で、神父の道行きと共に、その平らかなることを願っている。
 予定であれば、神父の戻りは今日明日辺りのはずなのだが―――
 と、マリアは耳をそばだてて手を止めた。水音に紛れて、呼ばうような声が
聞こえた気がする。
「……もし……」
 人の声だ。マリアは軽く手をすすぐと、前掛けで拭きながら表へまわる。
教会の敷地の外に、貴族のような身なりの、三人の男が立っていた。
「教会に、何か御用ですか?」
 声をかけると、彼らは揃って笑みを浮かべた。一見爽やかそうだが、どこか
無理に作ったような、性根の卑しいものが透けて見えて、マリアは体を固くする。
嫌というほど見覚えのある笑い。その目は記憶と同じように、無遠慮にマリアの
体を眺め回していた。
「どちらさまですか」
 今すぐにも踵を返したい気持ちを抑えて問えば、男の一人が口を開いた。
「貴女が、レディー・マリア?」
「いいえ。ご覧の通り私は下女です」
 男達は顔を見合わせる。
「ですが、アゼルを歓待されたのは貴女ではありませんか?」
 及び腰だったマリアが、その言葉に改めて男達を見直した。
607荒野の悪魔:2007/01/23(火) 18:26:41 ID:qo6/VN8E
「アゼルさんの……お知り合いですか?」
「ええ」
 男達は笑みを深くする。
「我々はアゼルの朋輩でしてね。先日彼から手紙が届いたのですが、貴女に
大変世話になったと書いてありまして」
「戻るのはもう少し先になりそうだから、先に行って感謝の品を届けて欲しいと」
「それで我々が来たのです。少しお邪魔してもよろしいですか?」
 男達は手にした小箱を指し示す。とろりと光沢のある絹の敷布、それだけでも
目を剥くものなのに、そこに乗った小箱自体も絢爛たる刺繍を施された布張りで、
マリアを唖然とさせた。
「神の家に住まう者として、兄弟に当然のことをしたまでです。アゼルさんには
半日の間仕事も手伝っていただきました。そんな過分な物をいただく謂れは
ありません。お気持ちだけで」
 教会に世話になった礼にと、後日寄進が行われることはままあるが、これは
あまりに常軌を逸しているように思われた。たった一食の礼にこんなものを
容易く差し出す者がアゼルの朋輩とは、何かの間違いではないのだろうか。
 眉を寄せ、マリアが半分以上呆れの気持ちで断ると、男達はますます笑う。
「すばらしい」
「アゼルの言ったとおりだ。今日び聖職者だとて金銀を前に目の色を変えるものを、
なんと美しい心映え」
「貴女はご自分を下女だとおっしゃるが、真に気高い貴女こそ、貴婦人の尊称に
ふさわしい」
 口々に言われて、マリアは困惑する。その前で男らは、淑女にするように膝を
折ると恭しく小箱を開けた。
「美しい方には美しいものがふさわしい。どうぞご覧になってください」
 綺羅綺羅しく輝く宝石細工が、黒い天鵞絨の上に燦然と並んでいた。マリアは
思わず一歩後退さる。
「アゼルさん……いえ、アゼルさまは、そんなにも身分の高い方だったのですか?」
 左に位置した男が立ち上がる。否とも応とも言わぬまま、マリアに向かって
手を伸べながら、ふいに声を低くした。
「……アゼルは美しかったでしょう?」
 マリアは頷く。異論はなかった。彼は確かに美しかった。
「彼の手を見ましたか?」
「……はい」
 薪割りも水汲みも、畑仕事すら当然のようにこなしていたが、白い、滑らかな
指だった。あれは日々の労働を知らない手だ。皮が厚くなることもなく、血管が
透けて見えていた。
 マリアは思わず自分の手を背後に回す。そこに男は優しく囁いた。
「恥じることなどありません。我々に任せていただければ、すぐにも柔らかな
手になるでしょう」
「さぁ、御手を。まずは香油を塗りこみましょう」
 いつの間に出したものやら、男は小さな壷を傾ける。とろりと金の光が流れて、
マリアは慌てて手を出した。
608荒野の悪魔:2007/01/23(火) 18:28:08 ID:qo6/VN8E
「何をするのです、こんな、もったいない―――」
「貴女にはそれだけの価値があるのですよ、レディー・マリア」
 寸前で油を受け止めた手を、男の手が包み込んだ。はっと気がつくと、
右の男もマリアの手を押し頂くように捕らえている。
「ほら、綺麗になった」
 すっと指をなぞられて、違和感に目を向けると、マリアは驚愕した。
 痛くない。
 あかぎれのできかかっていた手が、本当に滑らかになっている。
「ああ、こんな御手にはやはり絹の手袋がふさわしい」
 男が言うなり、マリアの手は白い手袋に包まれていた。
「肌は薔薇水で整えて、白粉に、紅を差し」
 甘い香りが立ちのぼる。
「絹の衣装を。深い青がいいか、暗い赤がいいか―――」
 肌触りのよい豪奢な衣装がくるくると色を変える。
「赤がお似合いだ。ブルネットによく映える」
「では手袋も色を合わせよう」
「靴はこちらを」
「髪を結い上げなくては」
「仕上げに宝石を飾ろう。髪と、耳と」
「首と、腰と」
「さぁ、扇をどうぞ。―――姫君」
 気がつけば目の前には華やかな世界が広がっていた。数え切れぬほど
蝋燭の立った絢爛たる照明、磨き抜かれた水晶が光に反射して更に明るく、
ずっしりとなめらかな緞帳が優美な曲線を描いて窓々を飾る。そこかしこに
飾られた花々は、負けず劣らず色鮮やかな磁器に生けられていた。壁際には
山のように料理が並べられ、床は大理石の組み細工。天井もはるかに高い。
 男に示され右手を見れば、全身が映ってもなお余りある大きな鏡。三人の
男をかしずかせ、映っているのは―――
「……これは、私……?」
「そうですよ、姫君」
「思った通り、いやそれ以上にお美しい」
「こんな……馬鹿な……なんの……魔法、ですか……?」
 切れ切れに問うたマリアに、男達は笑う。
「我々は貴女の尊い御心に応えたまで。これが貴女の本当の姿なのですよ」
「いいえ……。いいえ!」
 マリアは強く首を振る。
「これらは神の御心から遠いものです! とうの昔に捨てたもの!」
 男達は宥めすかすように笑った。
「困ったな、お気に召さない?」
「とてもお美しいですよ」
「それに……そう。これなら、アゼルの美しさにもふさわしいご自分だと思いませんか?」
 甘く囁く言葉に目眩がする。
609荒野の悪魔:2007/01/23(火) 18:30:02 ID:qo6/VN8E
 アゼル―――アゼル。
 朝食の席で辛そうな顔をしていた人。必死で痛みをこらえる目をしていた人。
苗の植え替えを手伝ってくれた。あまりに丁寧に、愛おしげな手つきで芽吹いた
緑を扱うから、緑が好きかと尋ねたのだ。アゼルは少しの間迷って頷いた。
そうして、マリアの瞳も同じ色だと、美しいと褒めてくれたのだ。
 その人が、こんなことを望んだのだろうか。本当に?
「……主は言われました。栄華を極めたソロモン王でさえ、野の百合ほどにも
着飾ってはいなかったと」
 男達がたじろぐ。
「主の栄光の前に、これらの輝きなど無いも同然。太陽の前の蝋燭ほどにも
輝かないでしょう。―――消え失せなさい!」
 叫んだ瞬間、視界が戻った。男達が忌々しげに舌打ちする。
「強情な女だ」
「せっかく良い夢を見せてやったものを」
「まぁ……それならそれでやりようはあるがな」
 マリアの両手を捕らえたまま、賛美者の顔からうってかわっていやらしい
笑みを浮かべた男達に、怖気が走った。
「嫌っ! 離して! 離しなさい!」
「悪魔に両手を差し出して、今更それは通らない」
 マリアは目を見開いた。
「あく、ま……?」
「いかにも」
 思わず身を引いたマリアの腕に導かれるように、男達は教会の敷地へと
足を踏み入れる。
「やれやれ、厄介な守護だった」
「聖域など形骸化しているのが常だというのに」
「まさか我らだけでは入ることもかなわぬとは」
 口々に言いながら、悪魔らはようやくその手を離した。マリアは飛び退さる
ように男達から距離を取る。
「悪魔が……! アゼルさんの知り合いなどと、よくもそんな嘘を!」
「嘘ではない」
「確かに友ではないがな。不本意ながら仲間といわれれば頷かざるを得ない」
「向こうだとて嬉しくはなかろうよ。いまだに我らを見下げ果てた目で見るからな。
元が天使サマだからとて、何がそんなに偉いのか」
「自分だとて女への欲望に負けて翼をもがれ、人の命を啜って生きているものを、
いつまでもお綺麗な顔をして」
「バアル様も何故あんな輩に構うのだか」
 マリアは大きく息を吸う。悪魔の言葉の数々が、妙に息苦しさを伴った。
610荒野の悪魔:2007/01/23(火) 18:32:58 ID:qo6/VN8E
「何、を……馬鹿な……。もう、騙されたり」
「嘘ではないと言っておろう」
「まぁ信じる信じないは好きにするがいい。それくらいの自由はやろうよ」
 男らは獲物を嬲る眼差しで笑った。
「アゼルこそがおまえを騙していたのだ。あれは堕天使。我らと同じ、人を惑わす者だ」
「獲物を横から横取りされたと知ったなら、どんな顔をすることか」
「あの高慢な鼻も少しは低くなろうよ。やれ楽しみだ」
「下女殿は富も美貌もいらないと仰せだ。ならば無上の快楽を差し上げよう」
「我らの腕の中、よがり狂ってその魂を差し出すがいい」
 マリアは踵を返す。礼拝堂目指して一目散に走った。その後ろを、悪魔達の
笑い声が追いかけてくる。
 悪い夢を見ているように体が重い。足元がいやに頼りなく、扉までが果てしなく遠い。
 ―――主よ、主よ。
 お助けください、どうか。あなたの僕をお守りください!
 必死になって駆けるマリアの耳元で、くすりと悪魔の笑う声がした。髪を掴まれ
がくんと頭がのけぞって、白い首が露になる。
「捕まえた」
「はは、呆気ない。どれ」
 顎を掴まれる。湿った吐息が耳にかかって、ぞわりと肌が粟立った。無茶苦茶に
腕を振り回すが、呆気なく手首を掴まれる。
「嫌っ! 嫌ぁっ! 離して!」
「そう嫌がるな。可愛がってやろうほどに」
「何、すぐによくなるさ」
「違いない」
 下卑た笑いを立てながら、一人が背後からマリアの両手を押さえ、首と耳とに
舌を這わせる。一人が両脚を抱え込み、マリアの体が宙に浮いた。支えを失って、
抵抗の術が失われる。残りの一人がマリアの胸に手を伸ばした。
「触らないで! 嫌!! 誰か! 誰か助けて!!」
 誰かこの声を聞き咎めてはくれまいか、とマリアは必死で声を上げる。だが、
悪魔らはおもしろそうに笑うばかりだ。
「なかなかに生きがよい」
「結構胸があるぞ。いやらしい大きさだ」
「いっ、いや……あっ! いやぁ!!」
「嫌か? もうここが立ってきたぞ」
「ほぅ、敏感だな」
「処女ではないな。だいぶこなれているようだ。昔は随分男に可愛がられたな?」
「それが教会に入って男日照りか。それは楽しめそうだ」
「嫌ぁぁぁ!!」
 喉も裂けよとマリアは叫ぶ。涙が溢れて頬を伝った。
 悪魔らの頭越しに青い空が見える。冷え込みは厳しいがよく晴れているからと、
洗濯を決めたのは今朝のことだったのに。
 ―――天にまします我らが父よ。
 どうか助けてください。御目を少し、地上へと向けてください。この声をお聞き
届けください!
 ―――神様!!



   続く
611名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 21:13:14 ID:C6ZLra3M
うはwラノベ臭くなったと思ったら前田珠子の「破妖の剣」ktkr。
今度は商業作家かw
高校生くらいかと思ってたんだが、25歳〜?
612名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 00:09:09 ID:gBso3gj9
>>611
kwsk
もしかしてパクリなの?
613名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 04:10:54 ID:iPbHePVp
詳細期待あげ
614名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 05:48:06 ID:W0H749gM
だから、叫んだ。

 「何よ!、何でなの?理由を、理由を!言いなさい!!」

大きくはだけた、胸元からは白く歳のわりに豊かな乳房が零れ落ちんばかりに溢れていた。
そして、溢れているのは胸元だけはなかった。

 精一杯の強がり。
 涙は泥を溶かしたはずだった、今纏う高貴の香りは見せかけだと知り、それは知られている
はずだった。
 でも、それでも尚、求めてくれない。

 答えるようにはぐらかすように、男は片口を歪めて、へらへらと笑ってみせた。
 その表情を見て、新たに血を上せて少女は、女に踏み出した少女は声は張り上げた。

 「当然のことではなくって?何故?何故?わたくしを手にしたくはないの?
そうすれば金も名誉も思いのままなのよ!」

 男は一瞬、驚いたような表情を浮かべ、笑い出した。限りなく乾いた笑いだった。

 「嬢ちゃん、よーーーく聞けよ。」

 蒼い月の照らす庭園を貫く道、その向こうで背を向けたままで男は、嘲りと哀れみと哀しみと
それ以外の何かを含んだ声で続けた。
その顔は、擦り切れて疲れた表情だった。

 「意味なんか端ッからねぇんだよ。」

 「………」

 「世界が理不尽でも不条理じゃない、なーんて誰が約束したんだ?
  なぁ、意味なんぞ無いのさ。
  名誉にも金にも俺にもおまえさんにも、な。」

男は背を向けると、門へと向った。

そうして乾いた風の中、蒼い月光の中遠ざかる影を見送った後、少女は泣いた。
615名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 12:27:49 ID:poNMN+BS
下らない意地と、笑い飛ばすのは簡単だ。
だが、意地を通すのは困難だ。
男は、十分に意地を張り通してきた。
女は、それをわかっていた。
だからこそ、自分が相手を愛するようになった今こそ、
相手にもう意地を張らせなくて済むようになると思った。
だが、認識が甘かった。
「そんな……何でよ!? 私の事、好きだって言ってくれたじゃない!」
「……いつの話だ、馬鹿」
「そりゃ……もう、二年以上も前だけどっ! でも……」
男は、あくまで表面上は飄々とせせら笑い、女の懇願を寄せ付けなかった。
その笑顔は、どこまでも悲しげだった。
「私の事……嫌いになったの?」
女は、そうではないかと思いつつも、怖くて今まで聞けなかった質問を投げかけた。
「そうだよね……一杯、迷惑かけたもんね……
 一度はフっておきながら、中途半端に引き止めるような態度とったりなんかして、
 私があの人と付き合い始めてからも、あなたに彼の事を相談したり、愚痴をこぼしたり……
 もういい加減、愛想も尽きたよね……」
女には、思い当たる節が多過ぎた。
男の、限度の無い優しさに、甘え過ぎていた。
それでも、男は女の支えであり続けた。
自分以外の男の前で女が笑っていられるためだけに、愚痴を聞き、助言をして、安心させてやった。
例えそのお陰で女が笑えたとしても、その笑顔を見られるのは、自分ではないにも関わらず。

「お願い、謝るから……私、やっと気付いたの。
 誰が私の事を一番愛してくれていたのか、って。
 誰のお陰で、私は笑えていたのか、って……」
下唇を噛み締めながら、女は滲んだ瞳で男を見上げた。
だが、男は相手を小馬鹿にしたような、それでいて悲しげな、
そんな歪な笑顔を絶やす事無く、儚げな目で女に答えた。
「勘違いすんな。お前を笑わせてたのは、俺じゃなくてお前の彼氏だ。
 俺には、お前を『泣かせない』事は出来ても、お前を『笑わせる』事は出来ないんだよ」
男はそう言うと、握り締めていた片手から指輪を取り出した。
「それはっ……拾ったの!? あの川から!?」
「お陰で体冷えちまったよ馬鹿野郎……二度と捨てんじゃねぇぞ」
それは、彼氏を振り切るために女が川に投げ捨てた、彼氏とのペアリングだった。
「誰がお前を一番愛してるかなんて、計ったり比べられるもんじゃねぇ。
 大事なのは、お前が誰を愛してるか、だ。
 一時の同情に流されるんじゃねぇよ、馬ぁ鹿」
そう言うと、縋る女を振り切って、男は去って行った。
616名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 14:41:39 ID:eOj5iLUs
>>615 イイネ!
川に探しに行くなんてどんだけ真っ当なお人よしの馬鹿なんだよ、大のつく馬鹿だよ!てめぇはよぉ!!
と叫びたいほどに男に萌えた
617名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 14:52:20 ID:M9UuCxZm
>>614テラシブスwwwww
618名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 16:15:31 ID:poNMN+BS
>>616
ありがとう
郷ひろみの「君が泣ける場所になる」に触発されて書いたから
発想自体は借り物なんだけどね
619名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 18:19:23 ID:iBFEcPD1
パクリ解説マダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
620名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 21:16:35 ID:q3NdBOJ0
612・613
俺じゃなくて本人に聞けw

大雑把な前田破妖デフォ
・腹に一物あるキャラはくつくつと笑う
・キャラの思考を表現する文で、〜なのだけれど……。という文末表現使用
>それなら、まだ理解できるのだけれど……。
・ヒロインは自覚していないが実は化粧映えする美人で、魂が綺麗だとか敵妖魔にまでマンセーされる
・ヒロインは黒髪(=ブルネット)、化粧っ気がない、赤が似合う、本当は高貴な血筋だが不幸な目に遭い、途中で孤児同然になる
・ヒロインは魅了眼で妖魔を惚れさせる能力があるが、意識的に発動できない (ヒロインの母も魅了眼の持ち主、美しい緑の眼だった)
・下っ端敵(妖魔)がヒロインを追い詰めるとき
「〜であろうよ」「何故○○(例、我が君)は我らを差し置いて□□(例、このような人間如き)を」
などと返事を期待していないくせに次々にヒロインへ話しかけ、笑いながら嬲る
・強い奴は美形、ヒーローは超美形

盗作とは「他人の作品の全部 または一部を自分の作品として発表すること」をいい(大辞林)、
より厳密な著作権法上の定義としては、「他人の既存の著作物に依拠(アクセス)し、その内容及び形式を
覚知させるに足りるものを(無断で)自己の作品中に再製させること」

個人的には下っ端悪魔×3がヒロインを追い詰める辺りの描写、台詞内容、台詞の重ね方が似すぎだと思った

後は各自で調べて判断してくれ
以降スルーするんでヨロ
621名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 22:36:54 ID:iBFEcPD1
解説キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
それじゃ次は弁解or謝罪マダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
622名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 09:57:15 ID:TTLBLsMO
\\パ!ク!リ!パ!ク!リ!パ!ク!リ!パ!ク!リ!パ!ク!リ!パ!ク!リ!//
   \\  パ!ク!リ!パ!ク!リ!パ!ク!リ!パ!ク!リ!パ!ク!リ!  //
       _  ∩.     _  ∩.     _  ∩.     _  ∩.     _  ∩.     _  ∩.
     ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡
     (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡
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  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡
  (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.
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   し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J.   し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J.
623名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 10:53:18 ID:XXEb5g9e
煽り・AA煽りは止めよう
大人なんだし
被害者ぶられると面倒だし

荒野の人は投下終了時に反論すればいいよ
624名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 18:21:25 ID:UM2fqAGG
箇条書きの法則かよ
625名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:00:11 ID:omhfMYPr
煽る方もムキになって反論する方もガキとしか言えないがな。
無粋だしカッコ悪い。
好きな小説家に文体が似通う事なんかままあるし、特に小説は初めの内は書き方がわからないから既存の作家を真似る事も多い。
特に問題は無いと思うがね。
626名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 23:46:15 ID:/LGVtzTz
なんかコレ思い出した。
http://baka1.g.hatena.ne.jp/M_Nakazaki/

さておきかつて破妖の大ファンだった自分だが
特にパクリとは感じなかったよ。
SS本体から破妖を連想しなかっただけじゃなく
指摘レスの箇条書き見てもあんまピンとこない。
まぁパクリと言えないこともないかもしれないけど
ちょっとこじつけっぽいと思う。
てかマエタマが蒔いた種子は結構色んなラノベ
(特に少女系ファンタジー)に広がってるしな。
このSSの書き手さんもマエタマの孫か曾孫作品読んでても
マエタマ作品自体は未読の可能性が高そう。

せっかくなので商業作品の話とかしたいんだが
ここのスレタイみたいなシチュのやつなんか知ってる?
自分が今思いつくのは榛名しおりの作品群。
『マリア』『マリア外伝』『アレクサンドロス伝奇』とか。
正確には女性が求めてなかったりおしとどまってなかったりするが
女のために耐える男がエロかっこいい。
この人の作品は必ずレイプがあるのもポイントですね。
少女向けロマンスで10代のヒロインをあんな目に遭わせていいのか。

…あれ。すまんすげー長くなった。
627名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 09:07:48 ID:l/nonYMn
>>626
紅の豚のポルコとジーナ。
エロパロっぽくはないけども(ジブリだし)、ポルコはすげーエロカッコイイと思う。
豚なのに。いや、豚だからか?
ジーナの成熟した色気と低めの歌声もイイ。
628名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 12:10:22 ID:eWf1mf5T
相変わらずここの不文律が分かってないようだな。
せっかくの落としどころを無視して稚拙な擁護連発するな。
無粋とかカッコワルイとかいうレベルじゃない、逆効果だ。

2ch系で「下手糞な初心者だからパクも痛さも問題ない」はない。
それとアカピ並に具体性に欠けた反論は反感を招くだけだ。
箇条書きの法則を証明したかったら
620のデフォが全て当てはまる荒野〜と前田珠子以外の作家の
具体的な作品名を挙げろ。
629名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 13:23:30 ID:l/nonYMn
そんな噛みつかなくたって。
流れを変えようとしている空気を読んでないのは>>628の方じゃないのか。
でもまぁ一応。

・腹に一物あるキャラはくつくつと笑う
→そんな一般的な用法を挙げてもという気はするが、尚隆がそう。

・キャラの思考を表現する文で、〜なのだけれど……。という文末表現使用
→そんな一般的な文法(ry、泰麒の口調がこれ。

・ヒロインは自覚していないが実は化粧映えする美人で、魂が綺麗だとか敵妖魔にまでマンセーされる
→陽子。

・ヒロインは黒髪(=ブルネット)、
→ブルネットは褐色であって黒ではない。

化粧っ気がない、赤が似合う、本当は高貴な血筋だが不幸な目に遭い、途中で孤児同然になる
→高貴な血筋〜は貴種流離譚といって一般的な(ry、陽子。

・ヒロインは魅了眼で妖魔を惚れさせる能力があるが、意識的に発動できない (ヒロインの母も魅了眼の持ち主、美しい緑の眼だった)
→視線に呪術的な力が宿ると考えられるのは邪眼・邪視といっていっp(ry、泰麒の折伏、
陽子は碧の目。

・下っ端敵(妖魔)がヒロインを追い詰めるとき(中略)、笑いながら嬲る
→まぁ口調はともかくとして、蒼猿。

・強い奴は美形、ヒーローは超美形
→王は美形が多いそうです。

というわけで十二国記は破妖のパク(ry

そもそも完結してないんだし、ヒロインにそんな能力があると明言されてない部分も多い。
とりあえず様子見て、全部投下されてから結論出したっていいじゃないか。
630名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 14:53:13 ID:ut7dQ+Qj
あーあ、語るに落ちたね
ラノベ信者の廚腐は恐いなぁ

次の投下が楽しみだ
631名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 23:47:04 ID:ES6KT1Nr
 燃えさかる炎、吹き上がる黒煙の只中でひょろりと背ばかり高い若いサラリーマンは、
がくがく震える膝を両手で力いっぱい握り締めて無理やりに立ち上がった。

 「ひ…め………姫さ…ん……」

 こめかみを生温いものが流れる。血よりも熱い空気の中で薄れそうな意識の中にあるのは
この騒動の元であり、ここしばらく道行きをともにしてきた女性だった。

 走馬灯のように駆け巡る今までの道行きを振り払って、その姿を探しもとめ、よろばい歩
き出した。

 そう遠くはないはず、と、瓦礫の影に隠れ人影を見つけた。
 歩くような速度で駆け寄り、上半身を抱き起こそうとして腕が強張った。

 「ぐぅっ」

 その若い女は上半身だけだった。流れ出た血は煽り来る炎に煮えたぎって見たことも無い
赤に泡だっていた。

 脳がそれを認めた瞬間、胃がひっくりかえって口から胃液が吹き出した。
 自分でも判っていない無意識の反応で、かつて人だったモノを汚さぬように。
 いや、単にソレを目にとめないようにする防御反応の中で、四つんばいになって嘔吐を繰
り返した。

 ありったけの力で目を閉ざし、記憶をまさぐり確認した。

 ひめさんじゃなかったひめさんじゃかったいやもういち度見て
 駄目だでもちくしょう何でこんなことにおれはただの日本人でサラリーマンで
 ちくしょう施設の案内役だっただけで姫さんが来て俺は臆病なライオンで

 「…どこですか?」

 炎、銃声、爆音、悲鳴、自らの呼吸、それが渾然となった轟音を貫いてかすれ声が聞こえ
た。今まで味わったことのない感情にパニくりながら叫んだ。

 「姫さん!?姫さん!!」

 声の主を背後に認めると、震える膝を励まして立ち上がった。
 あちこち焦げて煤けてもなお、遠くベルベル人の血を引く神秘的なまでの美貌は、炎の光
と黒煙の影に彩られこの世のものとは思えなかった。
 背が伸びる。膝の振るえも止まった。姫さんに文字どおり駆け寄ることが出来た。
 姫さんが、姫さんがいる、姫さん姫さん。

 「もう、此処まで…ですね。」

 姫さんは、奇妙に平静な顔で告げた。が、もう聞いちゃいなかった。
 何か…そう車を探して……あるじゃねーかビックアップ、T○Y○TA!!ビンゴ!

 残ってる全力で駆け寄った。
姫さんの腕をつかんで、ドアを開けウインドウをぶちまけた車内に乗り込む。

 嗚呼
 こんな中東の紛争地帯に車を売る日本万歳!
 こんな糞頑丈な車作った日本メーカー万歳!!

 ついでに、ドアロックぶち壊した盗人もキー付けっぱなしの間抜け野郎にも万歳だ!!!

 「なにを…えっ?えっ!?」膝上から強引に助手席に姫さんを投げ出して、宣言した。

 「約束したろ?俺は、姫さんを、イスタンブールまで、送り届ける。」
632名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 23:53:06 ID:ES6KT1Nr
 アラー様!
 イエス様!!
 南無八幡大菩薩!!!

 もう艱難辛苦は腹いっぱいだ!俺に幸運をくれ!!
 祈りながらキーを捻る、何度か咳き込みながらエンジンが轟音を発した。

 「姫さん!行くぞ!!どっかにつかまってろ!!」

 もどかしくクラッチを繋いで、アクセルを踏みこむ。ビックアップは瓦礫の上でベリー
ダンスを踊り終えると、急加速し爆炎の中に飛び込んだ。

 ぽっかりと空いたフロントウィンドウからは、炎と陽射しに炙られた熱風が吹き込んで
一瞬二人を焼いた。

 割れたウインドウから煙を溢れさせながら、ビックアップは炎を潜り抜けた。と正面の
T字路に装甲車と、戦闘服の男達が銃を構えていた。

 「日本人を―――なぁ―――めんな――――――――――――!!!」
 「きゃ!ひっ!」

 伊達に(えこのみっく)野獣(あにまる)と呼ばれてるわけじゃねーぞ。

 銃弾が火花を散らしてボディを削った。咄嗟にハンドルを切る、タイヤを軋ませ車体を
レンガの壁に擦つけながら左の路地に滑り込む。薄暗い路地が火花で照らし出された。
 気が付くと姫さんが左腕にしがみついていた。

 あーもー戦争でも姫さんでも何でも来やがれ。
 道に散らばる瓦礫はよけろよけられなきゃ乗り越えろ。
 今なら銃弾だってよけてやらぁ。

 路地を恐ろしいスピードで駆け抜けるピックアップ、その破れたフロントから吹き込む
風にもぎ取られまいと声を張り上げた。

 「姫さん!でかい道は?こっくぐげ!  国境のは橋はどっちだ?」

 「大きい 道は駄目、見張っ  てるから。右!」

 舌噛んだ。
 姫さんは俺の腕にしがみついて、道端に積み上げた籠だの樽だのを跳ね飛ばすたびに
身を竦ませて言葉を途切れさせた。
 姫さんの支持に従い狭い路地を右に左に。そのたびに姫さんの胸が腕にあたる。

 あー胸が姫さん胸柔らけー汗で透けてたり。げふ!また舌噛んだ。
 前見ないとやばいってでもあーでも














 俺、勃起してる。
633名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 00:02:21 ID:/EfRhRr2
スマソ、ageちまった
ごめんなさい orz
634名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 02:54:13 ID:1PBlygxr
どこの誤爆だ
635304:2007/01/27(土) 07:05:30 ID:R5XhhyvE
「妾の相手は不服と申すか」
 傲然とした女王の言葉に、周囲の女達がざわりと殺気立つのがわかった。
女兵士に地面へと組み伏せられた屈辱的な格好で、男はそれを受け止める。
 アマゾネス、というのだろうか。女しかいない社会だ。領土争いに戦う兵士が
女なら、狩を行い一族を養うのも女、それでいて家を整えるのも女、子供の
世話をみるのも女。
 そして城の最深部、大勢の世話人を侍らせ堂々と君臨しているのもまた、
女だった。
 迷い込んだ先で捕らえられ、玉座の前に引き出された男を、女達は冷たく
見下ろしている。
「なんと無礼な」
「男如きが、身の程知らずな」
 囁き交わす声音に、男は頭を上げる。すかさず押さえつける腕に力がこもった。
苦痛に顔をしかめた男に、女王は鷹揚に腕を振ってみせる。
「よい、ゆるめてやれ。言いたいことがあるのであろう。言うてみよ、何が望みじゃ。
富か、栄誉か?」
 彼女はけして暴君ではない―――と男は思う。よい君主だ。統率ある女達の
様子を見ていれば、それがわかる。
 だからこそ、悲しかった。これだけはどうしても譲れない。彼と女王の道が
交わることはありえないのだ。
「陛下」
「うん?」
「陛下はお美しくていらっしゃいます」
 男の言葉に、女王は満足そうに頷く。話の続きを待つ姿勢になった。
「……ですが、おわかりください。私と陛下では住む世界が違うのです。
ご所望にお応えすることはできません」
「わかっておらぬようだな。ここは妾の国、妾が法律じゃ。身分の差など、
妾の望みの前には小さきことぞ」
「国の法律などという些細な問題ではありません。天の摂理というものです」
 女王の顔が不快げに歪む。
「好いた女子(おなご)でもおるというのか。天の定めた伴侶と申すか」
「……いいえ、けしてそういうことでは」
 一瞬遅れた返答が、女王の神経を逆撫でした。ぴしりと言い放つ。
「これで最後じゃ。今ならまだ許してつかわす。こちらへ来やれ。ひざまずいて
妾に忠誠を誓うがよい」
「できません」
「そなた!」
「私には無理なのです! 気に入らぬというならこの首落としていただきたい!」
 男の言葉に女王は憤怒の表情を浮かべる。激情を込めて叫んだ。
「よう言うた! ならば望み通り殺してくれよう! その者の首を刎ねよ!!」
636304:2007/01/27(土) 07:08:01 ID:R5XhhyvE



「―――とかだったらおもしろくね?」
「う?」
「……いや、いい。男同士の話はおまえにはまだ早かったな……」
 きょとんと見返す弟にそう呟くと、兄は『アリの巣穴観察キット』に目を戻す。
家の中で赤い羽根アリを見つけたので、針金を使って苦労しながら巣穴の奥に
押し込んだが、あっという間に黒アリ達にたかられてしまった。まぁこれはこれで
1つの研究成果だ。彼は『せいかつ』のノートに観察結果を書き記す。
『赤アリをすあなに入れてみました。赤アリはたべられてしまいました。くろアリと
赤アリはてきどうしなのだとおもいました。』
 アマゾネスというのがなんなのか、よくは知らない。ただ、父親のHなマンガに
そんなものが出てきたのだ。アリの世界はメスばかりだと聞いたので、そんな
感じかな、と彼は思う。あのマンガを見たときは女の人の裸ばかりで、とても
ドキドキした。以来時折こっそりと覗いている。
「にーた、にーた、アンパンマン!」
 当初にこにこしてアリを眺めていた弟は、兄がアリにばかり注意を向けるのが
おもしろくないのか単に飽きたのか、そう言いながらリモコンを押しつけてくる。
「あー、はいはい。アンパンマンね」
 仲良くビデオを観る兄弟の後ろで、アリ達は何事もなかったかのように、
せっせと砂糖の粒を運んでいた。



   END



またも動物ネタですんません。
637名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 11:18:36 ID:JNgVdGw1
父ちゃんHな漫画はちゃんと子供の手の届かないところに隠しとけw
638名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 17:34:18 ID:DX4DGWOA
ああ、狸と狐の人だ
確かに別種は餌でしかないわなw
639名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 23:14:20 ID:2EWau6gq
アンタは天才だ>>304
640名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 23:53:23 ID:Zzg49pdD
むむむ。毎度の如く思わずニヤリとしてしまう。流石です。

ところで>>1には
>本当はとても愛している。けれど、今はそれに相応しくない。
とあるけれど、男の方に全くその気が無いっていうシチュはアリなのか?
諸兄方のスレ内での認識を教えて頂きたい。
641名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 23:56:41 ID:He9vKvBA
オチが強すぎて、男の潔さが印象薄い件w
なんか子供の描写にタルルートくん思い出した。
当時はどきどきしたっけなぁ。
642名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 03:30:20 ID:lcGAmnVs
>>634
スマソ
あと2回ほどで、>>1になる予定なのだが・・・

ここで止めたほうがいいかな
643名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 16:32:51 ID:V4U318dB
ほれ。

つ【続く】

これを投下の最後につければ、連載だとわかる。
個人的には、独特の面白い文章だと思うので、もうちょっと読んでみたい。
644名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 22:59:22 ID:7yLXHk3D
>>640
スレの前の方で『スレタイ(だけ)に沿うならレズものもアリかも』とかいう意見が出てたな。
>>1ではなく、あえてスレタイのみに注目することで、表現の幅が広がっておもしろい
かもしれない。
645631、632の続き:2007/01/29(月) 00:56:47 ID:7EU2pqrN
>>643
ありがとう

でも2回じゃ終らなかった、つーかそれどこじゃなくないそうな予感もしてきた。
けど、一応投下
646631、632の続き:2007/01/29(月) 00:58:50 ID:7EU2pqrN
 薄暗い路地の先に光が差し込んだ。その時、姫さんが腕を強く引き叫んだ。

 「とめて!車をとめてください!!」

 タイヤの軋む音ともにピックアップは、つんのめるように停まった。

 徐々にアドレナリンハイから醒めて、恐怖が腹の奥から全身に広がり始めた。
 指が強張ってハンドルから離れない、呼吸が轟音となって耳に届く、脚が震える。
 奥歯を食いしばって耐えていると、姫さんは肩口に顔を伏せて震えだした。

 光に目を細めて先を見晴るかした。おそらくは大きな幹線道路に繋がっているのだろう。
 姫さんはゆっくりと左腕から腕をほどいた。

 「姫さん」

 向き直ると、姫さんは、目元を掌で拭いながら同じように路地の先に目を凝らしていた。
そして、

 「この先を右に行けば、」
 「国境の橋かい?」
 「そうです。」
 「いるかな?」

 姫さんは顔をあげ「見てきます」言った。破れたフロントから乗り出しボンネットを滑
りおり、こんな時でも優雅な足取りで路地を歩いていった。

 ピックアップのエンジン音と、どこかで砲弾が炸裂する重い音だけが響く。
 道の終りから差し込む光が、イスラム風タイルに反射し色とりどりの影を映し、

 そして、薄絹を透かして、女の柔らかな形を淡く浮かび上がらせた。

 成熟しつつあるものの、どこか固さを残す柔らかな女の影は歩いていく。
 路地から右を伺い、そうして影はこちらへ向き直った。

 風にもつれた髪は逆光に虹を飾り、
 整った鼻梁、秀でた額、柔らかな頬を淡い彩りの影に輝かせ、
 珊瑚の唇を柔らかく結び、
 翠の瞳をただ真っ直ぐに向けながら、



 天使――――――



 そして魔法の一瞬は終った。

 姫さんはドアの横に立ち、告げた。

 「います。20人ほどでしょうか、あと」
 「装甲車?」
 「ええ、2台でした。」

 姫さんは、一瞬のためらいの後、言葉を継いだ。

 「もう、ここまでで結構です。」
 「………………」
 「もう、十分です。
  こんなに ―こめかみに柔らかな手の感触― 傷だらけになってしまって…」
647631、632の続き:2007/01/29(月) 01:00:25 ID:7EU2pqrN
 目を閉じてその声を聞いた。声が潤んでる。顔を見たら、今、見てしまったら。

 「きゃ!何を!!」

 ドアを開き、強引に姫さんを抱き上げて助手席に積み込み、姫さんと目を合わせないよ
うに前だけむいて言った。

 「行くぞ、姫さん」

 思っていたより落ち着いた声が出せて安心した。

 「何故ですか?」

 姫さんの視線を感じる、沈黙の後、姫さんが言葉を重ねた。

 「何故ですか?このようになっ
 「俺は、姫さんが言ったようにオズの話に出てくる臆病なライオンみたいな奴だ。でも
このままじゃいられない。ずっと臆病なままじゃいられない。」

 姫さんの手が左腕に触れ、言葉を捜しているのだろう息遣いが感じ取れた。

 「それに―――」
 「それに?」
 「俺は――日本のサラリーマンだからな。」

 向き直ると姫さんの潤んだ瞳があった。姫さんは俯いてクリーム色の顔をもつれた髪が
その表情を隠した。

 そのまま姫さんは、小さく頭を振り髪を指でかき上げると、ゆっくりと身をよせ

 ――――唇が触れ合った。

 「日本人は、馬鹿なんですね。」

 涙で濡れた瞳で姫さんは微笑んだ。その瞳に笑って応える。

 「馬鹿なのは、日本のサラリーマンさ。」
 「判りました、日本のサラリーマンさん?では――」

 微笑みと涙を含んだ声が応え、柔らかな腕が左腕に絡んだ。

 アクセルを踏み込む。ボロボロのピックアップの応えが路地に響いた。
 ハンドルを撫ぜる。
 お互い苦労するよな。でも、もう少しだけ頑張ってくれ。

 姫さんに向き直って頷いた。姫さんも微笑を浮かべて頷いた。

 クラッチを繋いだ。
 粉塵に汚れ、破片を浴びて凹み、あちこち地金が露出し、銃弾に貫かれた日本製ピック
アップは駆け出す。
 熱い風を切り裂いて薄暗い路地を駆けて駆けて








 光の中へ――――――――――――――――
648631、632の続き:2007/01/29(月) 01:01:47 ID:7EU2pqrN
 揺れる荷台、荷台を覆う幌の破れ目から、陽射しが差し込む。差し込む陽射しは流れて
ゆく埃を暗がりの中に切り出して触れそうな光柱を象つくっていた。

 ぼんやりと目を隣に向けると、姫さんが肩に頭を乗せて眠りこけていた。綺麗な髪が入
り込んできた埃で白っぽくなっていた。

 髪を撫でてみた。埃が舞い上がり、むせた。

 ふと、前に目を向けると、薄汚れたリアウインドウから髭面の爺さんがニヤニヤ笑いに
顔を歪ませてこちらを見ていた。

 苦笑を浮かべて、手を振ると爺さんは窓から姿を消した。その後トラックの速度が落ち
たように感じたのは気のせいだろう。

 ぼんやりと、橋での出来事を思い起こそうとしてみた。だが、どうしてだか記憶には音
がなかった。
 憶えているのは、男達の光る汗。銃口の炎。装甲車の鈍い輝き。車体に踊る火花。
 姫さんに覆いかぶさったときの、姫さんの不思議な香り。

 他には、他には焼けるような陽射しだけが――――

 ピックアップは、橋を突破後1時間ほど走って力尽きた。ただただ真っ直ぐな道が前後
に続く道に降り立って見てみると、どうして走れたのか不思議なほどだった。無数の凹み、
傷、銃痕、ボンネットの隙間からは白い煙が僅かに漏れ、焦げた臭いが漂っていた。

 姫さんはしばらく、愛しおしそうに眺めていたが突然裂けてしまったスカートの一部を
引き裂いて細い指先に巻きつけると、焼けたボンネットに奇妙な図柄を描きはじめた。

 馬と剣となんだろう何かの花の絵柄を描き終えると、姫さんは悪戯の共犯者に見せる茶
目っ気たっぷりな笑顔で宣言してのけた。

 「これで、この車はわたくしの所有となりました。」

 火事場泥棒でくすねてきた車を所有物宣言とは…少々呆れるやらくすぐったいやら。

 「殿下の所有となりましたことを、この車を作った我が国日本のメーカー技術者達も誇
りと思うことでしょう。」

 こちらも少々の皮肉と笑顔で応じた。そうして二人して涙が出るほど笑った。

 川沿いを走って来たのだろう爺さんのトラックに拾われるまで、二人で顔を見合わせて
はくすくす笑いあっていた。

 そうして二人は生き延びた。
649631、632の続き:2007/01/29(月) 01:02:40 ID:7EU2pqrN
 窓から月が見える。

 結局トラック爺さんの知り合いの婆さんの家になんとか交渉の末、交渉したのは姫さん
だが、泊めてもらえることになった。
 娘しかいなかった婆さんは、姫さんに娘の着ていたという古いワンピースをを貸し与え
たものの、こちらには梨のつぶてだった。

 水浴びと洗濯を済ませ、埃やらなにやらを流してなんとかさっぱり。与えられた部屋で
ぼーっとしていた。スーツ下の生乾きのトランクスがどうにも気持ち悪い。

 中庭に面した窓から見上げて、どこでも月は変わらんな、とつまらないことを考えていた。

 と、ドアの外にかすかな気配を感じた。この騒動の間に妙なことが身に付いたもんだ。
 ドアの横に静かに移動。ドアが静かに開き、月明かりだけの室内に影が滲むように入って
きた。
 これは…

 「あの……」
 「姫さん?」
 「っ!」

 息を呑む音が聞こえた。

 「お、驚かさないで下さい。」

 何故か声を潜めながら怒ってみせた。それはこっちの台詞だ、とか思いながら招き入れ
る。
 なんだか、雰囲気が昼間と違った。

 どうしていいのか判らずおろおろと、きょろきょろしてる間に姫さんはふわりとベット
に座ってじっとこちらを見つめた。

 しかたないので、部屋に一つだけの木の椅子に座って、窓の外に目をやった。

 月明かりが照らし出す中、ワンピースを身にまとった姫さんはじっとこちらの顔を見つ
めていた。

 「わたくしは、貴方に謝らなければなりません。」

 何を言い出すんだ、大体謝るっていっても―――多すぎてどれだかわからん。

 「あああれか?俺の飯を勝手に喰ったことか?俺の
 「違います。」

 姫さんは微妙に怒ったようなすねたような表情で遮った。一度うなだれるように俯くと
自分を励ますように敢然と顔をあげ、言った。

 「あなたを、臆病なライオンと言ってしまいました。」

 唖然としていると、姫さんは続けた。

 「あなたは、あなたは、勇敢な人です。
  わたくしが間違っていました。お許し下さい。」

 姫さんが、深々と頭を下げた。原油産出国の、世界でも有数の資産を持つ王家の一族で、
頭も良くて、機転が利いて、美人で、笑った顔が可愛くて、泣いた顔も可愛くて、その姫
さんが。

 「やややややめ――おおお願いです、そそんな
 「教えてください。」
650631、632の続き:2007/01/29(月) 01:04:01 ID:7EU2pqrN
 姫さんは頭をあげると、微笑を浮かべていった。

 「へ?」

 間抜け面だっただろう、きっと。

 「ななな?
 「あの時のことです。何故ですか?」

 耳に声がよみがえった『もう、ここまでで結構です。』それからあの唇に触れた感触。

 「わたくしは、あなたを臆病者と謗り、あなたを傷付けてしまいました。何故ですか?
  貴方の命すらかかっていたのですよ?」

 真っ直ぐな視線を向けてくる姫さんに、真っ白になった頭のままで応えた。

 「一緒に居る間に、姫さんが大事な人になったから。
 「そうじゃなきゃ臆病者のままだったろう。姫さんが俺を臆病者じゃなくした。」

 姫さんの頬を涙がつたいおちた。月明かりの中、姫さんは立ち上がり柔らかな唇を開き、
言葉を発しようとした、が、その珊瑚の唇はついに言葉を紡ぐことなく、

 窓から染み込む夜気が揺れると、姫さんは俺の胸の中にいた。
 そのまま、月の青に光る涙を湛えた瞳を閉ざすと、微かな吐息ととも

 唇が――――触れた。

 姫さんが胸の中に姫さんの胸が胸に姫さんの唇姫さん姫さん――夢?
 何もかもが信じられない中で、壊れないように姫さんの華奢な体を抱きしめた。

 そうしてどのくらいだったのか、判らない時間が過ぎた。

 目を開けても、胸の中によれよれ穴あき肩袖無し血染みまみれのYシャツを握り締めた
姫さんがいた。

 「あなたを、あなたを本物の獅子にかえたのは、わたくしですか?」

 夢じゃない。はらはらと涙を零す翠の瞳もさらさらの黒髪も珊瑚の唇も姫さんだった。

 「姫さんの魔法にかかっちまったんだな、きっと。」

 ぼんやりとそう応えると、姫さんは潤んだ瞳のまま微笑んだ。そして、

 「では、わたくしのライオンさん
  臆病の魔法を解いた差し上げたお礼を、この魔女めに。」

 姫さんはふわりと離れ、窓から零れる月明かりの中に立った。
 白い両腕が、青い光の中で踊るように動いた。

 微かな衣擦れとともに、眩い天使の裸身が顕れた。

 「わたくしを、貴方のものにして下さい。
  わたくしが、貴方を獅子に変えたように、
  わたくしを貴方の女に変えて下さい。」

 天使は珊瑚の唇で甘く告げた。
651631、632の続き:2007/01/29(月) 01:06:03 ID:7EU2pqrN
とりあえず、書き上げた分の投下終わり
652名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 03:57:28 ID:uqCuZRR/
いや、ここまで来たらあと1回で終わるだろ。
てか、終わらせろw
せっかくの作品がgdgdになるぞ。
653名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 13:02:04 ID:AGXgXP+/
>>642
あーよかった
誤爆じゃなかったんだな
どこの誤爆かとあてどのない旅に出なきゃならんかとヒーコラしてたw
オリとして充分楽しいしパロなら元ネタ教えてほしくなるくらいだ

>>640
エロカッコ良ければOK
他の人はスルーかもだが個人的にはエロオモロくても桶
とりあえずエロければ桶かもしれない
654名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 00:59:03 ID:gbWqjF+T
今夜は>>642氏来ないのかなぁ。
655650の続き:2007/01/30(火) 01:16:45 ID:SpFnB2iB
>>652
無理です orz
前のでも2/3くらいまで削ったし orz

>>653
元ネタ…あえていうなら「ローマの休日」じゃないかと…

>>654
スマソ、忙しくて…レス一つ分が精一杯 orz
656650の続き:2007/01/30(火) 01:18:52 ID:SpFnB2iB





 甘い声に、鼓動が一拍遅れた。






 蒼い月の光に浮かび上がるすべらかに白い裸身は、自ら微光を放っているかのようだった。

 その光をまとう裸身を――――

 月光の環を戴く黒髪
 涙の真珠で飾る長い睫、
 愛らしく日焼けした高い鼻梁
 恥らいと誇りを掲げた細い頤
 なだらかな肩につながる鎖骨の窪み
 慄きに僅かに上下する乳房のふくらみ
 零れ落ちそうな頂上の蕾の乳首
 なめらか腹部の中央の臍
 透けるような肌に浮かぶ薄い肋骨
 柔らかな丘の淡い茂み
 しなやかな脚のえくぼのような膝小僧

                ――――影が彩る。

 天使は、涙の痕が光る頬を淡く染めながらも目を背けることなく潤む翠の瞳で真っ直ぐ
に見つめた。
 未だ少女の固さを残しながら女の丸みと柔らかさを帯び始めた、誰の手も触れていない
天使の裸身、未踏の処女地。

 全てを隠すことなく、その全てを捧げる。

 珊瑚の唇が言葉を紡ぎだそうとする、が、漏れ出るのは甘い吐息。
 一瞬輝く翠の瞳を閉ざし、勇気を振り絞って踏み出す。目を背けることなく、真っ直ぐ
に視線を向けたまま。

 目の前には、遠く離れた島国からやってきた若者。
 背ばかりが高く頼りない男性だと思った。時には馬鹿にしたような言葉も投げつけてし
まった。

 でも、この長いような短い間に、共に過ごし笑い泣き、共に危機を乗り越え、そうして
いる間に、いつの間にか心の中にあなたがいる。

 たおやかな白い腕が、頸にまわされた。

 乳房が胸の間でたわみ――――お互いの鼓動が溶け合った。

 頼りないと思っていたその胸は温かく広かった。
 側にいてくれて嬉しい。安心する。許されている。

 頂の蕾で鼓動を感じてしまい、甘い何かが背筋を駆ける。
 甘い吐息を言葉にかえて、天使は告げた。

 「わたくしは、貴方を愛しています。」
657650の続き:2007/01/30(火) 01:24:36 ID:SpFnB2iB
ageちまった…スマソ orz
658名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 21:35:25 ID:XBiNzf72
>>657
続き待ってるけど、無理はせんといてなー。
659656の続き:2007/01/31(水) 00:54:38 ID:Z4kqIwhx

 「ひ、姫さん――――」

 俺もだ。姫さん、俺も――――

 目を閉ざした。フラッシュバックのように今まで過ごした記憶が吹き抜けた。

 目を開く。

 沈黙に怯えてか、むずかる子供のようにきゅっと優しい力がまわされた腕にこもった。

 「姫さん。」
 「――――」
 「姫さんは、いつも俺に魔法をかけてくれた。」
 「それなら
 「でも――――」

 姫さんは、弾かれるように顔あげて視線をぶつけてきた。
 首にまわされた嫋やかな腕に、柔らかな乳房の感触に、蕩けてしまいそうだった。
 その真っ直ぐで強い視線に、微かにひらいた珊瑚の唇に、甘い息に、根こそぎ持ってい
かれそうだった。

 滑らかな肩に手を置いた。こんなに華奢なんだな、と改めて思った。

 「でも?」

 応えに怯えるように姫さんは俯き肩口に顔を埋めて、震える声で問うた。

 絡んでいた右腕が下り、心臓の辺りを掌がまさぐる。
 指先がボタンに絡んでやがて胸元に肌のぬくもりが伝わった。

 「姫さんの魔法が、姫さんが、俺を強くした。でも、姫さんが――側にいなければ。」

 姫さんが顔を上げた。そうして翠の瞳が涙の湖になった。

 白い指先がまばらな無精髭のあご先を、そして唇をなぞった。涙の湖が溢れて零れ落ち、
言葉も零れる。

 「だから――だからこそ――側に、側に。」

 怯えながらもなお振り絞って真っ直ぐに求める震える声に、折れそうになった。
 珊瑚の唇を白い指でなぞり、その指が再び顎にふれ、唇にふれる。
 その無邪気で妖しい愛撫に痺れてその心地よさに、溺れそうになった。

 「俺は――あなたを守れるようになりたい。その上であなたの前に立ちたい。」
 「いや!いやっ!!今のあなたがいい!!」

 今まで聞いたことのない強い語気ともに、激しく首を振って拒んだ。
 流れる髪が、零れた涙が、月光の雫となって飛び散り、熱い息が咽喉元をくすぐった。

 頬をボロボロのYシャツにすりつけようにして、熱く甘い涙が吐息がシャツに滲み肌を
濡らした。細い指が心臓の上をなぞり、その指が乳首を捉え小さな震えをもたらした。

 「側に…側にいてください…。愛して、愛しています。」

 だからこそ。そう、だからこそ。


 「姫さん、俺は、俺も――――――――――――」
660656の続き:2007/01/31(水) 00:55:39 ID:Z4kqIwhx
 街のざわめきに流されるようにして、二人で乾いた道を踏みしめてゆっくりと歩いた。
 太陽は中天を過ぎて、なおも空気を熱していた。


 朝、目を覚ますとベッドは空だった。寝覚めてぼーっとしたまま身じろぎすると、無理
な姿勢で眠ったせいか、躯のあちこちが軋んで痛んだ。

 掌には昨夜の幻のような温もりが残っているような気がした。そんなことを考えている
と、ドアが開き、姫さんが普通の顔に普通の声で現れた。

 「目は覚めましたか?朝食の用意も出来ているそうですよ?」

 なぜか奇妙な感じがしたが、今までが普通じゃなかったことに今更、気が付いた。
 何か狐につままれた感じだった。この中東の地にも狐がいるならどんな狐なんだろうか、
などと埒もないことを考えつつ階下へ向った。

 朝食を前にして、妙な空腹を覚えていたせいもありガツガツと喰らった。
 対して、姫さんは王女殿下に相応しい振る舞いで淑やかに朝食をしたためていた。

 姫さんが交渉したとおりに昨日のトラック爺さんが、婆さんの家の目の前で調子っぱず
れのクラクションを鳴らし催促していた。

 ガタガタゴトゴトと、まだ夜気の抜けきらない空気を抜けて行く間、荷台で姫さんと寄
り添って互いの温もりを感じていた。前夜の寝不足も手伝ってか温もりに思わずうとうと
している間、傍らに温かな体温と柔らかな感触を感じていた。

 そうしている間にも陽は高く昇り、街についた。このあたりじゃ一番大きな町だ。
街のはずれにある市場で爺さんを手伝って荷台に積んだ荷物を下ろした。

 その間、姫さんは荷台の端に掛け足をぶらぶらさせてこちらを見ていた。何故かその笑
顔が意地悪く見えたような気がした。


 それから人々が忙しく行きかう街を、二人であてどなく歩いた。

 昼食は、店先で大きな肉を炙ったものを切り出してくれるところで、二人で熱々の肉を、
あふあふはふはふ言いながら喰った。

 店先の電話に並ぶ、人の列を横目に見ながら、二人で目を見合わせては肉をほおばった
顔が面白くて互いに笑った。

 姫さんはあちらこちらに開いた露天商を覗き込んで、恐らくは安物なんだろう装飾品な
んぞを身に飾ってははしゃいでいた。

 「ほら、見てください!なんて……綺麗………」

 何か見つけるたびに、安物の金ぴかをペンダントやら、髪飾りやらを身に着けてはくる
くる廻って花のような笑顔を浮かべて見せた。

 膝の辺りはすっかり擦り切れてたスーツ下のポケットからやはりよれよれのしわくちゃ
の紙幣を溜息とともに掴みだし店の親父に渡すと、姫さんの笑顔が輝いてそっとその安物
を握り締めた。

 通りの看板に目をとめたのか、姫さんが茶を出す店があるといい腕をぐいぐい引っ張っ
て連れて行こうとした。諦め顔でついていった先は思いも寄らず、落ち着いた店だった。

 相も変わらずチンプンカンプンなアラブ語で姫さんが注文した茶を飲んでみたのだが、
一口含んであまりの甘さに噴出しそうになった。
 目を白黒させていると、姫さんが無遠慮にふき出した挙句に、声をあげて笑ってくれや
がって周囲の目を引いてくれたのには閉口した。
661656の続き:2007/01/31(水) 00:59:54 ID:Z4kqIwhx
 陽が傾き始めた。街の中央、そこは結構な広さの広場だった。

 いつもは市場が立つのだが ―姫さんが聞いた露店の親父の話では― 今日は家畜の無
事と穀物の収穫を感謝するための祭りが催されるとのことで、露店が集まり何処から集ま
ってきたものか多くの人が行き交っていた。

 その中を姫さんと手を繋いで歩いた。肩を触れ合わせるように互いの体温を感じながら。

 どこからかイスラム圏ならではといった感じのエキゾチックでいながら素朴で、どこか
懐かしい音が聞こえてきた。姫さんに聞くと

 「あれはウード、日本の琴に似ています。
  それから一つはタブラと言っていわゆる、太鼓、ですね。」

 その楽曲とざわめきを聴きながら、とりとめない言葉を交わす。

 「貴方の国にも、このような祭りはあるのですか?」
 「ああ、あるよ。」

 幾分、ぶっきらぼうに聞こえてしまったのかも知れない。
 ぷぅうっと頬をふくらせ――――睨まれた。

 ぷいっと横を向くと、小さな声が聞こえた。

 「わたくし、貴方のこと何も知りません。だから―――」

 そこまで聞いて、ちょいちょいと髪をつつくと姫さんは拗ねた顔で向き直った。
 握った手が拙い想いを伝えてくる。握り返して、小さかった頃のこと初めての出来た友達
のことを語った。

 姫さんは、そんな遠い日本での小さな何処にでもある話を真剣にときは笑いを浮かべて、
時に目を潤ませて聞いてくれていた。そうして初めて好きになった女の子のことを話すと、
収まったと思った拗ねた表情が、また現れた。

 ぷーっと膨れた頬をつついて笑うと、翠の瞳を潤ませ、くっきりした細い眉を逆立てて怒
った。怒った顔も可愛らしかった。

 それから広場の中央のかつて交易地として栄えたのだろう遠い昔に設えられた、風化して
摩滅した噴水のある水盤の縁に腰を下ろして話をした。

 「わたくしの――――

 可憐な珊瑚の唇から、訥々と零れ落ちる姫さん自身の、家族、友人、趣味、今まで訪れた
国々での出来事が語られた。
 その時々を思い出してかくるくる変わる姫さんの表情を見ていると、幸せだった。

 最後に一つ、姫さんに意地悪な質問をしてみた。
 姫さんは暮れ行く夕日に染まった顔を伏せて応えたが、聞き取ることは出来なかった。
 答えはもう聞いていたから、聞き返しはしなかった。

 ウードとタブラの楽の音が高まった。

 背を伸ばし立ち上がって、姫さんに向き直り深々と一礼する。
 手を差し伸べて、咳払い。

 「姫さん?」

 姫さんは微笑みを浮かべ、その手に白い手を重ねて応えた。

 「ええ、喜んで。わたくしのライオンさん。」
662656の続き:2007/01/31(水) 01:01:59 ID:Z4kqIwhx
 ふたりは身を寄せ、手を繋ぐ。

 周囲は擦り切れ汚れたスーツの傷だらけの男と、時代遅れのワンピースの美貌の少女に視線を送った。
 やがて髭面の男達もベールで顔を隠した女達も、笑顔ではやし立てはじめた。

 少女は軽やかに笑顔を振り撒きながら、男は不器用に照れながら。

 兄妹なのか幼い恋人同士なのか、ふたりにならって子供たちが踊りだした。

 ふたりは笑顔を向けた。スーツの男は男の子に、ワンピースの少女は女の子に。

 子供達はくすくす笑いあい、笑顔を返した。女の子はワンピースの少女に、男の子はスーツの男に。

 興を覚えたのか、粋な楽士がその甘い音をいっそう高める。

 風が吹く。
 風が吹く。
 ふたりに風が吹く。

 陽が落ちる。
 落ちる。
 落ちる。

 世界の半分を支配した陽光は、空を有り得ざる朱に染めながら去り。
 世界の半分を所有しに月光は、空を有り得ざる藍に染めながら来る。

 世界の境界にふたりは立ち、踊る。

 道を選び男へと踏み出した青年は、不器用に。
 時を得て女へと踏み出した少女は、軽やかに。

 時代遅れのワンピースを纏った少女は、世界に憂うことなどありはしないかのような微笑んで。
 擦り切れ汚れたスーツを纏った青年は、世界に信じる得るものを見出し旅立つ緊張を浮かべて。

 奏でる楽の音は響きわたる。

 ウードはさらに甘く。
 タブラはさらに激しく。

 踊る――――踊る――――

 繋いだ掌が世界の中心

 踊る――――踊る――――

 笑顔でお互いを照らしながら

 踊る――――踊る――――

 世界を支配し所有するふたりは

 踊る――――踊る――――

 そうして時は尽き、甘く激しい鳴く楽の音が、尽きゆく。

 そうして

 ――――陽は、落ちた――――

663656の続き:2007/01/31(水) 01:02:55 ID:Z4kqIwhx
 残照が薄闇にかわった。

 広間の周囲にまばらに立つ街路灯の灯りからも外れた水盤の縁、その薄闇の中に、二人
は並んでたたずんでいた。

 人影もまばらになった広間に、風が吹き過ぎた。
 陽が落ちると広場に集っていた人々は、ある者は家へ、ある者は露店をたたみ宿へと、
消えていった。

 広場の向こうに人工の光が瞬いた。

 ヘッドライトは視界の中で大きく眩くなり、目の前にTVでしかお目にかかったことの
ないリムジンが驚くほど静かなエンジン音とともに現れ、停まった。

 朝、町外れの市場の電話で姫さんはもよりの領事館へ連絡していた。

 領事館に元々あったのか、なんとか都合をつけてきたものか。とにかく、姫さん、彼ら
の王女殿下の迎えはやって来た。

 前部ドアが開き、やはり髭面で、どっちが前だか横だかわからない体の厚みの男が3人
降り立った。
 二人が周囲に視線を巡らせながら二人の斜め前方広間を向いて立った。残りの一人が手
に何かを捧げもち、こちらにやって来た。

 姫さんは進み出て、男 ―おそらくは王家の護衛なのだろう― の正面に立つとアラブ
語で、話しかけた。男から何かを受け取ると、姫さんはこちらを振り返ると、唐突に言った。

 「上着を」

 手を差し伸べる姫さんを前に、ぎこちなくスーツの上着を脱いだ。
 ぼろぼろで片袖がちぎれた ―ちぎったのは姫さんだが― Yシャツにやはりぼろぼろ
のスーツの下といった、今まで気にしていなかった有様が急に気になりだした。

 姫さんの手に上着を渡すと、姫さんはそれを背後の男にわたし、男の捧げもっている包
みから、何かを取り出すと踏み出した。

 目の前に立った姫さんが、ふわりと腕を動かすと肩になにかが着せかけられた。

 スーツだった。

 再び背後を振り向くと、男から妙に手触りのいい布地の包みを受け取るとこちらに手渡
し言った。

 「これは今までのお礼です。無論、正式なお礼はいずれ致します。」

 目の前に立つ人は、一国の王女の顔でそう告げた。

 そうして、かわらぬ珊瑚の唇が翠の瞳が、ゆらいでゆらいで。
 震える右手がワンピースのポケットから何かを取り出し、包みを持つ掌に絡み、それを
握らせた。
 あの時と同じように、真正面から見つめる翠の瞳は潤み、珊瑚の唇から漏れる吐息は甘
かった、何かを紡ごうとした唇は微かに震えていた。

 そして姫さんは微笑んで

 「ありがとう、わたくしのライオンさん。そして――――――――――――――――」

 珊瑚の唇から言葉が零れ落ちた、後半は小声のアラブ語だった。

 姫さんは、姫さんと王女殿下を行き来する表情のまま背を向けると車中に、消えた。
664名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 01:03:56 ID:uVKp2cu6
>>655
エロカッコよさが「ローマの休日」を通り越して
「鎧なき騎士」のレベルにまで逝っちゃってるぞ(褒めてる)

佳きエンディングをひたすら待つ
665656の続き:2007/01/31(水) 01:07:52 ID:Z4kqIwhx
>>664
ありがとう。
「鎧無き騎士」って読んだことないや、今度探してみるよ

とりあえず、あと少し…嘘かな、まだ全部あれやらこれやら取ってないし
改行制限がきつくて…
200行くらいなら削る作業に時間を取られなくていいんだけどな
666663の続き:2007/02/01(木) 02:16:23 ID:KFH/B4ub
 広場のすぐ近く安宿を見つけ、何とか身振り手振りでの交渉が実を結んで部屋の番号を
書いた木の札を渡された。
 意外にもしっかりした階段を上り、番号の部屋に入った。
 別に疲れているわけでもなかった。だが、全身の力が全て抜け落ちてしまったようだった。

 室にはベッドと小さな机、椅子が設えられていた。飯を喰う気分になるはずもなく、灯
りもつけず窓から差し込むわずかに街頭の灯りを頼りに椅子にスーツをかけた。ベッドに
包みをおき広げた。そこにはスーツの下とネクタイ、何故かYシャツは無かった。

 投げ出すようにベッドに横たわった。右のポケットに手を突っ込んで幾枚かの紙幣、コ
インと、姫さんが握らせたそれを取り出した。摘み上げて目の前にかざしそれを見つめた。

 それは指輪だった台座に乗った見た目より軽い飾りの表面には月と馬と薔薇のが刻みつ
けてあった。指輪を握り締めた手は力なくベットにおかれた。

 窓を通して差し込む光は頼りなく薄ら寒かった。


 夢を見ていた。天使と獅子の夢だった。

 砂漠の大地を踏みしめる足は強く逞しく、たてがみは黒く豊かに風に波打つ。
 獅子の傍らには、同じように黒髪を風に靡かせる天使がいた。

 柔らかな光をまとう天使は、優しくたてがみを梳いて頬をよせその珊瑚の唇で祝福の
 口付けを与える。
 天使はしなやかな裸身を獅子の背に添わせると、翼をひろげた。

 天使と獅子はひとつになって駆けた。
 そうして眼下には見渡す限り広がる砂漠の荒野が。
 月と太陽が所有し支配する朱と藍の空、その境界を駆けた。

 獅子は思った。どこまでも駆けてゆける。空すら飛べる。
 誇りと歓びに吼えた。力の限り吼えた。

 その時、その背に在った優しい温もりが遠くなった。
 落ちる。荒野へ落ちる。

 天使は遠ざかった。
 伸ばされた白い手が容赦なく遠ざかる。

 翠の瞳からは哀切の涙が、珊瑚の唇からは悲痛な叫びが。

 落ちる。 


 突然の衝撃に目が覚めた。気が付くと床に横たわっていた。どうや眠りこんでしまい、
ベッドから落ちたらしかった。

 夢の記憶が抜け落ちてゆき、虚ろな寒さが残った。
 見上げた窓からは、中天に上った月の光が差し込んでいた。
 目覚めきらない頭のままで半身を起こし、周囲を見渡した。

 いなかった。
 姫さんは何処にも、いなかった。
 頭を振って後味の悪い夢の手触りを追い出し、全身の寒気を脱ぎ捨てた。

 のっそりと立ち上がって、椅子にかけた。
 窓から差し込む月の光に、姫さんのことを思い浮かべた。
667663の続き:2007/02/01(木) 02:26:22 ID:KFH/B4ub

 「姫さん、俺は、俺も――――――――――――」

 姫さんは息をとめて待っていた、次の言葉を。

 「―――愛してる。」

 その柔らかな唇から微かな吐息が甘く漏れ、触れ合った。
 その口付けは、今までの触れるだけのものとは違い、深く長く、そして、甘かった。

 お互い息を交わらせて、唇が離れると微かに濡れた音が響いた。
 姫さんの、翠の瞳は陶酔の余韻を漂わせてより深く輝き、珊瑚の唇は歓びの深さに妖し
く濡れていた。
 心臓の上をなぞっていた指が動きを止め、最後の問いが紡がれようとした。

 「姫さん、俺は姫さんが好きだ。」

 その問いを視線で押しとどめ、続けた。

 「でも、今の俺じゃ姫さんを守れない―――」

 この騒動の始まりから折りに触れて感じ、考えていたことを聞かせた。
 頭のよい姫さんに判っていないはずはなかった、

 「だから俺、行かなきゃ。このままお互い甘えていたら駄目になっちまう。」

 姫さんは、俯いてその黒髪で瞳を隠したまま応えた。

 「でももう――わたくしには何も残ってはないのです。」

 涙を湛えた翠の瞳が見上げ、戦慄く唇が切なく告げる。

 「だから――お願い――側にいて――」

 気付いていた『もう、此処まで…ですね。』あの言葉を耳にしたときから。
 これが姫さんに残された最後の勇気だった。それを振り絞ってここに立っていた。

 でも今、姫さんを自分のものにしてしまったら、二度と離れられなくなる。

 応えなければならなかった、でももう限界だった。
 言葉は尽きてからっぽだった。
 だから、力を込めて抱きしめた。
 怖くないように、寂しくないように、勇気を取り戻せるように。

 どのくらいの間、そうしていたのか。

 姫さんの強張っていた裸身から力が抜けていった。首に廻っていた手が胸におかれると、
柔らかな力がこもり、眩い裸身が離れた。

 そして、姫さんは微笑んでみせた。優しく、儚く。

 「ごめんなさい。
  わたくし、卑怯でした。
  あなたに――嫌われてもしかた――ありませんね。」

 黙って首を振ると、後ろ手で椅子から上着を取り上げ震える華奢な肩にかけた。
 そうして黒髪から小さくのぞく愛らしい耳に顔をよせ、答えを繰り返した。

 天使は、今度こそ子供のように泣き出した。
 その姿が、愛しかった。
668663の続き:2007/02/01(木) 02:50:46 ID:KFH/B4ub

 泣き止んだ姫さんをベットに寝かせ、椅子を寄せて話をした。
 手を繋いでいて、と言うので仰せのとおり従った。

 明日になったら街に行き迎えを呼ぼう、ということになったが、一緒に来いとか行かな
いとか押し問答になった。が、結局姫さんが折れた。
 珍しいこともあるもんだと笑ったら、姫さんは拗ねた顔をした。

 やがて静かな寝息を立てはじめた姫さんを確かめて、目を閉じた。

 繋いだ掌はそのままで。



 そんな昨夜から今日一日のことごとを思い浮かべている間に、再び眠りにおちていた。。

 今度は、夢は見なかった。


669663の続き:2007/02/01(木) 02:51:48 ID:KFH/B4ub
ああ、段々文章削るのが難しくなってきた……orz
670名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 09:07:43 ID:ZMVQI3Vj
押しとどめてたのかー! もうマジでライオン格好いい!
職人さん毎日乙です。アンタはすごい。

幸いなことに(いや悲しいが)このスレはレスも投下もあまり多くはないんで、
気にせずどんどんレス数使っていいと思う。てか読ませてくださいw

EDを迎えるのをwktkして待ってます。
671名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 01:45:16 ID:qcJo0Tcp
ごめん、規制くらって部屋からのカキコができません…orz
何か考えないと終わらせられない…
672名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 22:56:25 ID:ajlYvRUA
まあもちついて考えてごらん。
気長に待ってるぞ。

673荒野の悪魔<注意書き>:2007/02/02(金) 23:03:49 ID:3oH77WTR
職人さんがおいでになれないようなので。

<注意>
・近親ロリネタが含まれます。
・もう分割しません。その分かなり長くなるかと……。
・スレが荒れてしまって、住人の皆様には本当に申し訳なかったです。
 一応、見解らしきものは投下の最後に。
674荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:06:42 ID:3oH77WTR

 救済を求めて伸ばした腕が、空を掻いたことを覚えている。まだ幼い、丸みの
少ない腕だった。
「女というものは穢れている」
 男はそう囁きながら怯えるリリの頭を撫でた。浮かべた笑みは優しげだったが、
真に優しいものではなかった。荒い鼻息や充血した眼の意味を知るのは、彼女が
もう少し長じて後だ。ただ、その言葉と笑みが、彼女に罰を―――苦痛を与える
開始の合図であると、それだけは理解していた。
 リリの罪は女であることだ。男は繰り返しリリにそう教え込んだ。アダムに従属
するものでありながら、女は蛇に唆され堕落した。あまつさえそれに、仕えるべき
アダムを巻き込んだ。
「おまえは罪深い。だが私はおまえを見捨てはしないよ」
 罰を与えるのは愛ゆえだ、と男は囁く。いつか完全に罪を償い、神の園へ迎え
入れられるために。
 それが本当か嘘か、幼いリリには判別できなかった。事の真偽よりも、辛い
時間が早く終わってくれるよう、ただ願うばかりだった。
 白い裸身をねっとりと舌が這う。この段階はさほどに苦痛を伴わないので、
リリはぼんやりと、母もこの罰を受けていたのだろうか、と考える。先日母が他界
するまでは、この部屋は母のものだった。リリは滅多に入ることを許されず、
入っても立派な調度の数々に触れないよう、厳しく言い含められていた。屋敷で
一番上等の部屋、重厚な扉の前を通るたびに、漠然と恐れを抱いていたことを
思い出す。
 何かしら漂う禁忌のにおい。
 それは、この罰だったのだろうか。
 考えはするが結論は出ない。そもそもリリは、母のことをあまりよく知らない。
 リリの母は、娘をことごとく疎んじた。生まれて十年あまり、母の温みを感じた
覚えがリリにはない。接触は暴力と同義、時に悪魔の子と罵り、時に産むのでは
なかったと嘆いた。そうして涙に掻き暮れながら、母はロザリオを手繰ってひたすらに
聖句を唱えていた。
 リリは母の意識に触れぬよう、息を殺してその様を眺めていた。邪険にされても
母が恋しく、物陰からそっと様子をうかがってはできうる限り近くに在ることを望んだ。
自分は『呪われた子供』なのだとわかっていたが、それでも、寂しかった。
 母を真似て何気なく聖句を呟いたのはいつだっただろう。聞き咎めた母がものすごい
形相で振り返り、リリの細い肩を渾身の力で揺さぶった。何かまずいことをしたらしいと
身を竦めるリリに、母は今言ったことをもう一度繰り返せと執拗に迫った。どう謝罪
しても受け容れられないことを悟ると、リリは涙を浮かべつつ、つっかえつっかえ聖句を
口にした。
675荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:08:57 ID:3oH77WTR
 そうして―――リリは初めて母の抱擁に包まれた。
 驚きに身を固くするリリの耳元で、母は神に感謝の言葉を捧げていた。狂った
ような歓喜の声だった。
 主の御言葉を口にした、この子は悪魔の子ではない!
 それがどういうことなのか、リリにはよくわからなかった。ただ、覚えた言葉を
口にすると母が喜ぶこと、笑顔を向けてもらえること、頭を撫でてもらえること、
褒めてもらえること―――焦がれ続けた母の愛情を得られることを知った。
 以来リリは必死になって祈りの文句を覚えた。それは文字通り母とつながる
唯一の手段だった。母は神に関する言葉以外をリリに許さず、母もまた、それ
以外を語ることがなかった。けれど、それでもリリは嬉しかったのだ。
 ―――おかあ、さん。
 男に体を弄ばれながら、リリは心の中で呼びかける。焦点の曖昧な視線が、
黒檀の天蓋の上を滑って落ちた。
 今頃あなたは、神様の国で幸せでいるでしょうか。



 鬱々と自室で過ごしていたアゼルは、窓を叩く音にふと顔を上げた。窓といっても
硝子は嵌まっていない。荒削りの板戸があるばかり、開けるとするなら棒を噛ませて
固定する形になるが、外は茫漠と広がる灰色の荒野で、見ても楽しいことはない。
故に、ほとんど閉めきってある。
 こつこつ、と再び硬い音がする。どことなく急かす調子で、アゼルは寝台を離れ
窓を開けた。途端、視界を横切って黒い鳥が飛び込んでくる。鳥は部屋を軽く
旋回すると椅子の背に止まり、アァア、と太い声で鳴いた。
「……鴉……? どうして、こんなところに」
 呟いたアゼルに、鴉は再度アァ、と鳴く。ちょこんと片足を挙げた。それでようやく、
アゼルはそこに黒い筒のようなものが結ばれているのに気づいた。伝書鳩ならぬ
伝書鴉ということらしい。漆黒の使いは、魔の住まう世界にふさわしいといえば
ふさわしいのかもしれなかった。
「私に?」
 訊いてみると、いい加減焦れたのか鴉はばさばさと羽を動かす。このままでは
その鋭い嘴でつつかれそうで、アゼルは鴉の足から筒を外した。幾重にも巻かれた
用紙を取り出す。
「―――!」
 文面に目を落とし、その内容に息を詰める。思わず鴉を目で追ったが、当の
鴉は用事は済んだとばかりにさっさと飛び立っていた。呼んではみたが戻って
こない。アゼルはもう一度知らせに目を通す。踵を返して部屋を駆け抜け、
地上へと向かった。
676荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:11:37 ID:3oH77WTR


 ―――マリア。
 マリアマリアマリア。
 焦りのままに名前を繰り返して、アゼルは地上に顕現するや、先日の教会を
目指して一目散に走り出す。周囲に気を配る余裕もなかった。突如現れた美しい
青年に、通行人が奇異の視線で振り返る。その中の一人、中年の女は首を
傾げたが、その頃にはもう背中が遠い。なんだろうねぇ、と呟いた足元を、それまで
追っていた豚がすり抜けた。女は慌てて意識を戻し、それきり青年のことを忘れた。
 そんな光景がアゼルの行く先々で見られたが、彼の視界にはまったく入って
いなかった。ただ、先程目にした文章が、ぐるぐると脳裏を巡っている。知らせは
アゼルからのものだった。悪魔が三人ばかりマリアの所へ向かったようだと、
一文だけが記された手紙。
 ―――マリア。
 無事でいて欲しい、と心底願う。その一方で、最悪の想像ばかりが膨らんで
いった。悪魔達がマリアの元へ向かうなら、目的はひとつしかない。アゼルが
いつ再会の約束をしたのかわからない以上、そう時間をかけたやり方はしない
だろう。勢い方法は限られる。手段を選ぶとも思えない。
 どうしてもっと気を配らなかったのか、とアゼルはひたすらに悔やんだ。
予想してしかるべきだった。下界でアゼルは、けして快く思われていないのだから。
 髪を乱しながら最短距離を駆け抜ける。勢いを殺さぬまま教会の敷地に駆け
込もうとし、その寸前。
 本能が、アゼルの足を止めた。
 入り口には、聖衣も黒い老人が一人、番人のように立ちはだかっていた。
アゼルの脳裏で警鐘が鳴り響く。
 この神父はまずい、と咄嗟に思った。
 滅多にいないが、真に徳の高い聖職者は悪魔を退け、祓う力がある。この
神父は、その希少な人間に該当するように思われた。教会を守護する力が、
明らかに強くなっている。先日であればアゼルだけでも敷地程度には入れた
ものを、今日は見えない壁が立ちふさがっているかのように、足が進まない。
 これが普段の食事であれば、アゼルは構わず神父に声をかけただろう。
実際のところ、精気を吸う相手に教会の関係者を選ぶ時点で、祓われる危険性は
常につきまとう。
 どちらでもいい、と思っていた。
 精気を得ても、あるいは祓われ滅ぼされても。
 どちらでも大して変わらない、と。
 だが、今はここで滅ぼされてもいいとは言えなかった。かと言って教会に用が
ある以上、逃げることもできない。
 咄嗟の判断に迷って立ち尽くすアゼルに、神父が重々しく口を開いた。
「どなたかな」
 年のわりに頑健そうな体にふさわしく、ずっしりと響く声だった。真っ白な眉の下、
灰色の厳しい目がアゼルを見据えている。アゼルの背筋に震えが走った。
「あの、私は……先日こちらでお世話になった者で……あの、マリアさんが
暴漢に襲われたと聞いて、それで」
 しどろもどろの説明の間、神父は一瞬たりとも視線を逸らさなかった。
 ―――祓われる。
 かつてこれほど明確に身の危険を感じたことはない。恐ろしさに肌が粟立った。
アゼルは息を詰める。これまでだな、と思った。
677荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:12:39 ID:3oH77WTR
 だがせめて、マリアの安否だけは確認しておきたい。
「マリアさんは……無事でしょうか」
 やっとのことで振り絞った声に、神父は少し間を置くとゆっくりと頷いた。
「……本当、に?」
「ああ」
 ほっと全身から力が抜ける。
 それなら―――いい。
 あの緑が失われずそこにあるのなら。
 アゼルは聖人の前に膝をつく。不思議に静かな気持ちだった。無防備に
身を投げ出して、ただ、願った。
「マリアさんに伝えてください―――健やかに、と」
 しばらく、沈黙が流れる。
「……君は、アゼル、かね?」
「はい」
「そうか」
 神父は一歩身を引いた。
「マリアから話は聞いているよ。―――入りなさい」
 一瞬何を聞いたのかわからずに、アゼルは顔を上げる。
「今……なんと」
「お入りなさい、兄弟よ。マリアに会っていくといい」
 老いた手がアゼルの腕を掴んで聖域へと導いた。その地を司る者に招かれて、
アゼルの体はあっさりと境界を越える。
「あ、あの」
「マリアはあちらの小屋にいる。晩餐は三人でとろうと伝えておくれ」
「神父様!?」
「悪いが私はこれで。旅から戻ってみればどうにも周囲が騒がしくていけない。
浄めてまわらねばならないのでね」
 そうして神父は再び門へと向かう。アゼルは呆然とそれを見送って、恐る恐る
小屋へと近づいていった。
 正体を―――見抜かれなかったはずはない。
 でも、では、何故自分は今もここにいるのだろう。
 自分の手が戸を叩くのを、どこか遠くのことのように聞いた。
 けれども次の瞬間、はい、と聞こえてきた声に胸が震える。
 この声を、聞きたかった。
 扉が開く。
 驚いたような緑の目があった。

678荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:14:44 ID:3oH77WTR



 どうぞ、と招き入れられた小屋は、この前と何も変わらないように見えた。
 アゼルは小屋に入るやいなや、深く頭を下げる。
「申し訳ない」
 その後を続けようとして、ふと、言葉に詰まった。
 ―――知られて、いるのだろうか。
 醜悪なるアゼルの正体を。狼藉者達が悪魔であったことを。
 知られていなければいい、と思った。この期に及んでそう願う自分の浅ましさは
感じたが、マリアにそうと知られることは、どうにもいたたまれなかった。
 迷った末に、アゼルは当たり障りのない言葉を選んで口にする。
「この教会にお一人なのはわかっていたのに……私が、もう少し気を利かせて
いればよかった。本当に申し訳ない」
「何故アゼルさんが謝るんです?」
 マリアは静かに答える。
「こんなことになるなんて、誰にもわからなかったのですもの。私も夢にも
思いませんでした。教会に……押し入ろうとする者がいるなんて」
「いいえ。私がもう少し気をつけていれば」
「直前に神父様が戻っていらして、何事もありませんでしたから。こうして
無事におりますし、気になさらないで。あなたのせいではないのですから」
「けれど」
 言い募るアゼルにマリアは少し悲しげに微笑んで、複雑そうに、けれど
まっすぐにアゼルを見つめた。
「……それとも、本当にあなたのせいなのですか?」
 え、とアゼルは口を噤む。マリアは視線を逸らさずに続けた。
「本当にあなたは堕天使で、あなたに恨みを持った悪魔達が意趣返しをする
ために、私は襲われたのですか?」
 ―――ああ。
 知られていた、とアゼルは瞑目する。取り繕おうとした己の卑小な思惑が
滑稽だった。だが、それでも、マリアに嫌悪され蔑まれるかと思うとどうしよう
もなく胸が苦しい。いっそ神父に祓われていればよかったとさえ思う。マリアが
アゼルを憎むことには変わらないだろうが、滅んでいればそれを知らずに済んだのに。
 アゼルは深く頭を下げる。他にどうすることもできなかった。
「……申し訳ない」
 マリアは答えない。しばしの間、無言の時間が流れた。
 もしや口をきくのも汚らわしいと思われているのだろうか、とアゼルが思い
始めた頃、マリアはすっと身を翻すと鍋を手に暖炉へ近づいていく。
「……お座りになって」
 え、と訊き返したアゼルに、マリアは背を向けたまま乳壷を傾けた。白い液体が
鍋の中に注がれる。
「毎回同じもので恐縮ですけれど。他にないので許してくださいね」
 それが歓待を示す言葉であると悟って、アゼルは呆然とマリアの背中を見つめた。
立ち竦むアゼルに、マリアは少し強い口調で、座ってください、と繰り返す。
679荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:17:05 ID:3oH77WTR
 戸惑いながらもアゼルが椅子に腰掛けると、マリアは振り向かないまま鍋を
かき混ぜ、口を切った。
「……私の母は、前の神父様の愛人でした」
 唐突な言葉の意図をはかりかねて、アゼルはマリアの方を見る。だがその
後姿からは、何を推し量ることもできなかった。それで、おとなしく疑問を口にする。
「神父に……愛人、ですか?」
「そうです。街の皆には慈愛深く高潔なと評判の高い方でしたが、教会の荘園に
あるお屋敷に、密かに母を囲っていました」
「そんな」
「馬鹿な、とお思いになります? けれども事実です。……物心ついたときには、
私もその屋敷にいました。恐らくはそこで生まれたのだと思います」
 マリアの手つきは変わらない。ゆっくりと鍋をかき混ぜ続けている。
「十のときに母が死にました。私はそのまま、母の代わりに神父様の愛人にされました」
 アゼルは言葉を失う。凝然とマリアの背中を見つめた。
「なにぶんにも子供の体ですから、最初は痛くて仕方なかった。恐ろしくてなり
ませんでした。けれど神父様はこれは罰だというのです。罪深い私を清める
ための行為だと。本当か嘘かはわかりませんでしたけど、どちらにせよ私には
拒む術がありません。いえ―――どちらかといえば、信じていたのかも。母は
よく私を悪魔の子と罵ったので、自分が忌まわしい存在なのだということは、
私には自然なことだったのです。やがて体が慣れ、苦痛が去り、快楽すら覚える
ようになる頃には、私も神父様の言葉が欺瞞だとわかっていました。むしろ、
貞節の誓いを破るこの行為のほうが罪深いと。けれどわかった頃には遅かった。
思えば私は幼い頃から、ずっと罪の意識に苛まれていました。それがこのことを
きっかけに、一気に表へ出たのです。神に怯え続け、恐れ続けた私は、信仰を
捨てました」
 アゼルは瞠目する。震える声で尋ねた。
「神があなたを救わなかったのが……恨めしかった?」
「そうですね」
 マリアは振り返らない。
「けれど、むしろ私は神などいないとすることで、自分の罪から目を逸らしたのです。
神を嘲笑することが、私の罪を消すことだった。私は奢侈に走りました。元々
屋敷には良い物が揃っていました。神父様は贅沢がお好きだったのです。
望めば高価な衣装も宝石も、幾らでも与えられました。そこそこ見られる姿
だったのでしょう、限られた範囲でしたが、神父様は社交の場にも私を連れ歩く
ようになりました。もちろん神父様が愛人を連れて行くようなところですから、
その内容は知れたものですが、私は初めて知った華やかな世界に夢中に
なりました。そこにいた方々と美しさを競い、華やかさを争った。扇の陰で微笑み
ながら人を嘲り、飽きることなく美食を口にし、朝まで踊り明かして。それがまた
罪深いと神父様は私を責める口実にしましたが、もうそんなものは恐くなかった。
言いようのない後ろめたさと不安から解放された私は、ただ浮かれていました。
神のいない世界が楽しかった。いえ、楽しんでいると、思っていました」
 マリアは淡々と語り続ける。
680荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:19:36 ID:3oH77WTR
 もはや挟むべき言葉もなく、アゼルはひたすら耳を傾けていた。これはアゼルの、
ありえたかもしれないもうひとつの姿だ。自らの罪に恐れおののき、苦しむ者の姿。
 ずっと、悪魔達が享楽的な理由が理解できなかった。神を嘲笑することを楽しみ、
ことさらに背徳的な行為を行う訳を。ただ、そういう者達なのだと、邪悪に生まれ
ついたのだと、そう思っていた。けれど。
 悪魔達もこうなのかとアゼルは思う。恐らく口にすれば彼らはまた馬鹿にした
ように笑うだろう。愚かなのはアゼルの方だと、いつまでお綺麗な幻想にしがみ
ついてとアゼルを指さして笑うに違いない。それでも。
 ―――罪は、邪悪な者が犯すとは限らない……。
 ただ幼子への愛ゆえに、アゼルを引きずりおろした母のように。
「やがて私は……母と同じ立場になりました。子を孕んだのです。私が十五のときでした」
 マリアはふ、と動きを止める。しばし何かの物思いに耽っているようだった。
あるいは次の言葉を探していたのかもしれない。幾許かの沈黙の後、マリアは
我に返ったように動き出すと、自在鉤から鍋を外し、素焼きのタイルの上に置いた。
椀に山羊の乳をよそってアゼルの前に置き、自らも椀を持って、アゼルの座る
位置と垂直な卓の辺に腰掛ける。その間視線は一度も合わなかった。
「その段になってようやく、私は母があれほど私を疎んじた訳を悟りました。
……悟った、と思いました。私は確かに罪の子でした。結婚という主の祝福を
受けないでできた子供であり、貞節の誓いを欺いてできた子供です。加えて私の
場合、実の父の子供でもありました。口に出して確かめたことはありませんが、
きっとそうなのだと思います。……子供ができたことを知って、私は急に恐くなりました。
そんなものを産みたくはないと、本当に心底産みたくないと思いました」
「……でも……あなたは神を信じていなかったのでしょう? 何をそんなに恐れた
のですか」
「罪を犯すことをです」
 疑問に瞬いたアゼルに、マリアは少し笑った。
「神が禁じたことをあえて犯すのは、結局神の存在が頭にあるからでしょう。
そう、例えば―――極端な話、神が放埓を愛せよと言ったなら、私は貞淑に
したでしょう。神の言葉に逆らうことが、私の目的だったからです。私は神から
逃れてはいなかった。神を信じていたのです」
「それならむしろ、罪の子を産む方が、あなたの気持ちに沿うことになりはしませんか。
神を踏みにじる行為であるはずだ」
「そうですね」
 マリアは静かに笑う。
「けれども私は―――より卑怯だったのです。それまでの私の罪は、消極的な
ものでした。言うなれば私は被害者だった。望んで罪を犯したわけではないと、
言い訳のきくものでした。母が私を罪ある子供に産んだのです。神父様が私に
姦淫の罪を犯させたのです。私は贅沢を望みましたが、それすら、最初は
神父様が私に覚えさせたものでした。―――だから私は悪くない、と」
 アゼルは胸を押さえる。それは彼自身思ったことではなかったか。望んで
犯した罪ではない―――なのに何故神は私を許さないのだろう、と。
681荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:23:08 ID:3oH77WTR
「もちろん子を孕んだことも私の望んだことではありません。望んで産んだわけ
ではない、と言うこともできるでしょう。……おそらく母はそう思っていました。
だから私を嫌ったのです。母にとって罪があるのは、自分ではなく私の方だった。
望んで母が産んだわけではなく、私が母から生まれてきてしまったのです。
私には、それがわかってしまった……」
 マリアは何かを諦めるように吐息を吐いた。
「いかに私のせいではないといっても、少なくとも私の子は、私に罪があると
思うでしょう。私がそうであったように。生まれて初めて、私は誰になすりつける
こともできない罪に直面しました。真に神がいないのなら、私はその子を産んでも
よかった。けれども私は神を信じていたのです。自ら進んで罪を犯すこと―――自分が
悪であると認めることは、尋常でない苦痛です。私は何とかそれから逃れようと
しました。冬の川に数時間浸かったり、子を流す毒を飲んだり。私は大層体を
損ないましたが、それで生じる苦痛など、罪の子を産む恐怖に比べれば何ほどの
こともなかった。……けれど、その心根こそが新たな罪でありました。神は私に
罰を与えた。そこまでしたのに、奇跡的に―――それこそ神の御業としか思えない
ことです、子供は無事に生まれてきてしまった。男の子でした」
 マリアは片手で顔を覆った。
「私は打ちのめされました。お腹を痛めた子供です。頼りなく柔らかい、無力な
赤ん坊でした。乳を含ませもしたのです。それでも、どうしても、私は彼を愛せなかった。
愛しいと思うことができませんでした。泣き声が悪魔の呼び声に聞こえました。
あるいはひたすらに私を責め、弾劾する声のようにも聞こえました。
そして……時を同じくして、神父様に司教を任じるお声がかかりました。本当に、
巷では聖徳の呼び声高く、慕われていた方だったのです。私は罪の子供と二人きり、
この教会に置き捨てられました。……司教ともなると、さすがに愛人を連れて行く
ことはできなかったのか……私に飽きたのか、あるいは神父様も、子供を疎んじた
のかもしれません。女の子ならともかく、男の子でしたから」
 マリアは一旦言葉を切る。膜の張って温くなった乳を口に運んで、唇を湿らせた。
「私は絶望していました。死ぬことも考えましたが、地獄に落ちるかもしれないと
考えるとそれも恐かった。事情を知らない街の人々は、私をどこの男のものとも
しれない、不義の子を産んだ淫売女と罵ります。私はもうどうすることもできなかった。
……そんなとき、今の神父様が赴任してこられました。私を見るや、着任直後の
膨大な仕事を後回しに、司祭館へ入れて事情を尋ねてくださいました。
……あれほど激しく泣いたのは、後にも先にも覚えがありません。きっとこれからも
ないでしょう」
 マリアは微かに笑う。
「神父様は、子供を遠い修道院に預ける手はずを整えてくださいました。私は
彼を愛せませんでしたが、殺すこともできなかった。今でも……愛することは、
できないと思います。ただ時折、今頃どうしているだろうかと思うのです。彼の
年齢を数えて……今なら四つですね、教会に来る子供達の中で同じくらいの
子供を見つけて、こんな感じなのかと思います。神父様はそれでいいと
おっしゃいました。私も……それでいいと思います。というより、それが私に
できるすべてのことなのです。……けれど、彼は自分を捨てた母のことを恨む
でしょう。そろそろ自分の境遇がわかりはじめる歳です。寂しい思いもするでしょう。
母に愛されない辛さは、私も身をもって知っています。けれど……その非難を
受けることは仕方ないと、覚悟はできました。私はあの子に、私のようになって
欲しくない。できることなら、幸せになって欲しい……」
 吐息のようにこぼされた願いに、アゼルは俯いた。何か言いたかったが、
何と言っていいのかわからない。ただ胸が詰まったように一杯で、何かの
気持ちが飽和していることだけはわかった。顔を上げたマリアが笑う。
682荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:25:12 ID:3oH77WTR
「……泣かないでください」
 アゼルは慌てて頬を拭う。自分の同情など何の価値もない―――どころか、
自分如きが彼女の境遇に涙することは、かえって彼女を侮辱することのような
気がした。
「神父様はさらに、私が住まうためにこの小屋をくださり、下女として雇い入れて
くださいました。洗礼を施し、新しい名前をくださいました。何より私の話を、
何度でも聞いてくださいました。今お話した私の罪への意識は、当時からそうと
認識していたわけではないのです。神父様と幾度となくお話して、ようやくここ
までまとまりました」
 マリアは、少し寂しそうではあっても穏やかに笑っている。ここに辿りつくまでに、
この人はどれだけ泣いたのだろう、とアゼルは思った。
「私は、無知で、愚かで、卑怯でした。けれども……そうと自覚したときに、私は
ようやくわかりました。そんな醜くちっぽけな私を、主は愛してくださいます」
 マリアはアゼルを慈しむように笑う。
「主はすべての人の罪を背負って十字架にかかり、罪を贖う供物としてご自分を
差し出されました。私の罪は―――最初から許されていたのです」
 長い話をそう締めくくり、マリアはアゼルの手を握る。
「……天使様、あなたの罪は何ですか?」
「私の、罪……」
 アゼルは呆然と繰り返す。先程恥じたにもかかわらず、涙はあとからあとから
溢れて零れた。
「私に話さなくてもよいのです。どうぞ、お考えになってください。主はお聞き
届けくださいますでしょう」
 それは預言者の言葉のように、アゼルの耳に厳かに響いた。



 その夜、アゼルは司祭館での晩餐によばれ、泊まっていくよう勧められた。
与えられた寝室を夜半に抜け出し、ひっそりと礼拝堂にもぐりこむ。神父が
教会のいかなる場所にも自由に出入りしていいと、夕食の席で宣言してくれた
ために、堕天使である体もあっさりと扉を潜り抜けた。
 聖堂に入るのは、あの夜以来初めてだった。高く掲げられた十字架を前に、
いつものように膝をつく。
 ―――主よ。
 アゼルは心の中で呼びかけた。マリアの言葉のひとつひとつを脳裏でなぞり、
己の記憶に目を向ける。
 ずっと、罪は姦淫を犯したことだと思っていた。―――いや違う。対外的には
そういうことにしてあったが、アゼルはあのとき、己を襲った女を殺した。
 事が終わって力の抜けた女の体を、突き飛ばした感触を覚えている。
 そのまま女の体に馬乗りになって、細い首をひたすらに絞めた。
 自分の手首に食い込む女の爪。滲む血液。ばたばたと体の下で暴れる女の脚。
 泡を吹いて。変色した舌が飛び出して。哀れな女はこの手の中で息絶えた。
683荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:27:06 ID:3oH77WTR
 憎んでいたわけではない―――とアゼルは思う。彼を罪に堕とした者は、けして
邪悪な者ではなかった。ただ子を想う心を悪魔の囁きにつけ込まれ、禁忌の道に
踏み出したのだ。哀れだと思う。思いはするが―――
 ―――私は、もっと哀れだ。
 そう、間違いなく心の奥底で、アゼルはずっとそう思っていた。無理矢理罪に
踏み込まされ、その事実に心底恐れおののいた。アゼルは天使だった。天使は
一点の穢れもなく清らかなものだ。それが、望まぬ罪によって天使ではなくなる。
己が天使でなくなることは、アゼルの存在意義を脅かしだ。自分が自分でなくなる。
自分という存在が消えてしまう―――。
 憎しみではなかった。ただ恐ろしかったのだ。女の存在を消すことで、
罪そのものを消そうとした。けれどもその卑小な思惑は、激痛によって破られた。
アゼルの翼は腐って落ちた。
 どれほど悔やんだことだろう。夜毎朝毎繰り返す祈り。
 ―――私は罪を犯しました。
 意に染まぬ姦淫の罪を。
 それ故に本意ではない殺人の罪を。
 堕天使となったがために、数多くの命を奪う罪を。
 主よ、哀れんでください。すべて私の意志ではありません。罪を犯さざるを
えないことが、こんなにも苦しいのです―――。
 その祈りこそが、アゼルの罪だ。どれほど祈ろうと許されるわけがなかった。
すべては己の傲慢が招いた苦しみ、己の怯懦が招いた事態だった。
 ―――私の苦しみが、どれほどのものだ。
 少なくとも、アゼルは今、特に不自由を感じることもなく生きている。
 幼子を残して逝く母の悲痛は、どれだけ深かっただろう。
 他者に害され、命絶える絶望は、どれほど深かっただろう。
 なんて哀れな者達。それを己可愛さに切り捨てて、その罪から目を逸らした。
どれほど罪を犯そうと、一番哀れなのは己だと思っていた。
 ―――主よ。
 今こそ祈りを捧げます。
 私は罪を犯しました。私が傷つけた人達に、どうぞあなたの愛を注いでください。
 瞬間、アゼルの体に何かが満ちた。胸の中心に熱を感じる。
「……天使様……」
 吐息のような声に振り向けば、マリアがそこで微笑んでいた。そうして振り
向いた拍子に、白く視界をよぎったものは―――
「綺麗な羽ですね……」
 静寂を乱すことを怖れるような、微かな微かな囁き。アゼルは敬意を込めて
その前に跪く。
「あなたの、おかげです」
 万感の思いを込めて告げた。
「そして……今まで、愚かな私を支えてくれた友と、愚かな私を生かしてくれた
すべての命のおかげです」
 深く深く頭を下げる。この世にある、すべてのものに感謝した。
684荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:30:04 ID:3oH77WTR
「お立ちください、天使様」
 細い手が促して、アゼルは顔を上げる。
「どうか今までどおり、名前で呼んでいただきたい」
「アゼル様」
「はい」
 マリアはわずかに頬を染めた。
「お喜びを申し上げます、アゼル様。……僭越なお願いですが……どうか私の
懺悔を聞いていただけますでしょうか」
「あなたは私の恩人です。大仰な言葉遣いはやめてください。……私なぞで
よろしければ、どうぞいくらでも」
 マリアは胸の前で手を組んだ。
「私は、罪を犯しました」
「どのような?」
「……私は、恋をいたしました。初めての恋です。彼は美しい方でした。一目で
心捕らえられました。なのにその方は、私などの瞳を美しいと褒めてくださいました。
罪深い私と同じように、己の罪にあえいでいる方でした。私の異状をどこかで
お聞きになったのでしょう、なりふり構わず駆けつけてくださいました。愚かな
私の告白を最後まで聞き届け、私を軽蔑しなかっただけでなく、涙しても
くださいました……」
 アゼルは目を見開く。
「そして……私は浅ましいのです、天使様。その方がようやく願いを成就された
にもかかわらず、私は……私はその方と離れたくなくて……天の国に戻って
欲しくないと、そう願っているのです」
 マリアが縋るように手を伸べる。思わずその華奢な体を抱きしめた。胸の中で
マリアが嗚咽をこらえながら告解を続ける。
「お慕いしております、アゼル様。悪魔達に体に触れられて、思ったのはあなたの
ことでした。この想いは罪です。わかっているのです。けれど、それでも……
どうか私を哀れんでください。天の国に戻る前に、お情けを。どうか」
 マリアの手がアゼルの手を包み、胸の膨らみへと導く。布越しではあったが、
柔らかく温かく、そして早鐘のように、そこで鼓動が脈打っていた。
「マリア」
 アゼルは切なく名を呼んだ。全身の血が泡立って沸騰しそうだ。甘やかな
香りに脳髄がしびれる。けれど。
「……できません」
 手首を返して、そっとマリアの手を掴む。彼女は大きく緑の目を見開いて、
一瞬後、自嘲するような笑みを浮かべた。
「そう……ですよね。私ったら、天使様になんてことを」
「名前で呼んでくださいと言ったはずです。……そういうことではありません。
私も、あなたに焦がれています。初めてその目を見たときから、ずっと。
あなたが私を救ってくださった。私を迷妄の闇から掬いあげてくださったのです。
けれども、だからこそ」
 アゼルは敬虔な思いで囁いた。
「あなたが気づかせてくれた罪だから、私はまずそれを償わねばなりません。
主はすべての人の罪を背負われましたが、私は天使です。己の罪は己で
償わねば。……そうして我儘を言わせていただくなら……私が、あなたに
ふさわしい私になったそのあかつきには、お迎えにあがりたく思います。
その日まで……マリア、あなたは待っていてくださるでしょうか」
「アゼル様」
「待っていてほしい。お願いするのは私の方です。マリア、どうか」
「……はい」
 アゼルの腕の中、マリアは細い体を震わせる。聖なる十字架の下、どちらから
ともなく唇を合わせた。ほんの一瞬温もりを分かち合うだけの、切ないほど短い
口づけだった。
685荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:34:03 ID:3oH77WTR



「―――で」
 バアルは呆れていることを隠しもせずに、白い影に呼びかける。
「なんで君がここにいるのかな、アゼル? というか天使様」
「バアル」
 アゼルは額の汗を拭って振り返った。
 灰色に広がる、大小の岩で埋め尽くされた下界の荒野。呪われた不毛の地の
一画を、天使は無心に耕している。
「ちょうどよかった」
 アゼルが笑うと、バアルは嫌そうに顔をしかめた。
「先に言うけど、いくら僕でも手伝ったりしないよ。僕は悪魔だ。労働なんて絶対にしない」
 アゼルは吹き出した。
「そうかい。肝に銘じておくよ。でも……君は本当に、絶対に働かないのか?」
「もちろん絶対だとも」
 アゼルは笑みを深くする。けれども素知らぬ顔で大地にかがみこんだ。作業を
再開しながら、友人に語りかける。
「君にききたいことがあったんだ」
「なんだい?」
「君は―――本当に悪魔なのか?」
 バアルは笑った。
「おかしなことを訊くものだね。僕が悪魔以外の何かだとでも?」
「鴉を遣いに寄こしてくれたとき」
 アゼルは畝を起こし、種を落としていく。
「君は一体どこにいた?」
「さぁ、どこだったかな。そもそもあれは君が言ったんだよ。しばらく顔を見せるなって」
「あぁなるほど。そうだったのか。ところで、知ってるかい、バアル?」
「うん?」
「君の影響で、私も東の文献に手を出してみたんだ。東のある国では、鴉は
神の遣いだそうだよ」
「それはいけない」
 バアルは大仰に肩を竦める。
「鴉を使うのを考え直さなくてはいけないな。じゃあ僕からもひとつ教えよう。
昔、ある悪魔が人間に呼び出されてこう言った。『悪魔は必ず嘘をつく。しかし
私だけは嘘をつかない悪魔である』とね。さぁこの悪魔は嘘をついているだろうか、
いないだろうか?」
 アゼルは笑う。笑いながら、柄杓に水をすくって撒いた。
「それが答えか?」
「さぁ、どうだろうね」
 バアルはのらりくらりと笑ったが、ふと真顔に戻った。
686荒野の悪魔:2007/02/02(金) 23:34:38 ID:3oH77WTR
「何がしたいのか予想はつくけど、無駄だよアゼル。この地で植物は育たない。
君の故郷を再現することは無理だ」
「無理ではないと思うよ。精気なら私が与えてやれる」
 バアルは眉をひそめた。
「……アゼル。ここは君の故郷とは違う。精気の届かない場所なんだ。
なのに精気を垂れ流したら、それこそ君が滅んでしまうよ」
「垂れ流すは酷いな」
 アゼルが笑うと、バアルはむっとしたようだった。
「笑い事じゃない」
「うん、わかっているよ。ありがとう。……でもね、私は滅びないよ。滅びる気が
しないんだ。この地にあっても、主は私と共におわします。それが今の私には
わかるんだ。主の恵みはこの地に満ちるだろう。望まぬ罪に傷ついて、苦しむ
者がこの世界に落ちたとき、彼らは主の愛を知るだろう。……それが私の償いで、
私に課せられた仕事なんだ」
「どうあってもやめる気はない?」
「うん。心配してくれてありがとう。……大丈夫だよ。私はいずれマリアを迎えに
行くのだから」
 アゼルは晴れやかにそう言って、呪われた灰色の大地に膝をつく。敬意を込めて
不毛の荒野に口づけた。


 誰の姿もなくなった灰色の大地に、バアルは一人佇む。アァ、と鴉が鳴いた。
「自ら苦界に身を落とし……ね。馬鹿だなぁ、さっさとマリアと幸せになればいい
ものを。まさか本当にやるとはねぇ」
 呟いた足元に、染み入るほどに鮮やかな緑が、小さな葉を懸命に広げていた。



   END
687荒野の悪魔<見解>:2007/02/02(金) 23:51:42 ID:3oH77WTR
まずは、長々とおつきあいいただき、ありがとうございました。
また、自分の至らなさにより、せっかくのスレが荒れる結果になったことをお詫びします。
意識した出典を明らかにしますと、

・銀の食器→ご指摘のとおり、レ・ミゼラブルより
・嘘つきの悪魔の話→嘘つきの証明だかなんだったか、数学の証明問題
・地面への口づけ→罪と罰
その他、マリア・アゼル・リリは聖書、バアルはソロモン王の鍵です。

<パクリ疑惑について>
言われてみれば、確かに破妖のザコの口調に大変よく似ています。
脳内イメージは全然別作品の鬼畜三人衆、しかも原作未登場でしたので、
ご指摘あるまで気づきませんでした。誤解を招く筆力で申し訳ない。
その他の指摘については、今回の投下分で明らかになった設定等、
ピントのずれた部分もありますので、申し上げることはありません。
……あ、ひとつだけ。悪魔は甘言をもって人を惑わします。褒め言葉を
真に受けないでください。詐欺や新興宗教にお気をつけて。

最初厨なキャラが、色々あってラストで格好よくなる話を書きたかったのですが、
もうやりません。長々とスレ消費すみませんでした。名無しに戻ります。
688668の続き:2007/02/03(土) 00:46:54 ID:O/admPcW
テスト
689668の続き:2007/02/03(土) 00:47:56 ID:O/admPcW
 書斎に戻った部屋の主は、設えられた豪華な革張りの椅子に、高価なビジネススーツを
投げ出すと王女殿下は厳しい表情で、デスクの電話から受話器を取りあげ何事かを静かな
口調で告げていた。
 広い窓にかけられたレースのカーテンを透かし、夕日がその美貌を照らしていた。

 ひとしきり言葉が交わされた後、タイトスカートに包まれた長いすらりとした脚を優美
に運び、デスクの向かいに設えられたテーブルとソファ、ソファに深く腰を下ろした。

 王女殿下は今日のイスタンブールで開催された原油採掘権、その、採掘施設に関する各
国政府機関、企業との協議での一場面を思い起こし不安な表情を浮かべていた。

 強くならねば。

 今まで自国の基幹である原油関連の国有企業に副社長として名を連ねていたが、それは
単に飾りとしてのものでしかなかった。

 慇懃無礼な不在に対する質問と、その後のよく戻ってこれたものだ、という聞こえよが
しの囁き。

 あの方が言われたとおりだった。そしてそれは自身でも推測していたことだった。

 今回の事件は単純な、一部の過激派による突発的な行動ではなく、いずこかの政府、企
業の関与――それは複数であるやもしれない――が濃くうかがいとれた。

 世界の各国、原油の安定確保を基に経済軍事の拡張を目指す国、また資源輸出により世
界に影響力を広げようとする国、これらの国の思惑、宗教的対立、それらが遠因となり中
東に地に長く続く紛争、内戦、戦争。

 今回の騒動の始まりとなった事件についても、今日の囁きにせよ、何らかの意図が透け
て見えた。

 そう、一刻も早く強くならなければ。たとえ一人でも、今出来ることをしなければ。

 今日の装いはその意志の表れ。いつもは王族に供される名誉職を現すように控えめなも
のであったがドレスが通例だった。またイスタンブールに宿泊もせず王宮、この書斎に文
字どおり飛び戻ったのも、今日の結果から今後の備えを整えるためだった。

 だが――

 事件にあってから、自分の目で、耳で、感じ取った、生の暴力。
 そして今日のあの囁き――その生の暴力を行使する者の囁き。

 寒気が襲った。
 もちろん、優秀なスタッフもいる。信頼に足る臣下もいる。
 だが、彼女を対等なひとりの人間として、そして女性として支えてくれる人はいなかった。

 側に――側にいてほしい。

 ひとり胸の中の想い人に弱音を漏らす。そう、これは弱音。

 控えめなノックの音が響いた。
 ドアの先に何かを捧げもつ侍女があらわれた。
 侍女は丁重な手付きで目の前の分厚いテーブルにそれを置いた。

 侍女が引き下がると、埃は払い落とされクリーニングされてなお、黒ずんだ血の染みが
こびりつき、あちこち焼け焦げ擦り切れ薄汚れたスーツの上着をそっと手に取った。

 傷痕、血の染み、焼け焦げ。それらを細い指先が愛おしげになぞった。

 そして、優しく胸に抱きしめ甘く溜息をついた。
690668の続き:2007/02/03(土) 00:49:01 ID:O/admPcW
 イスタンブールの日本領事館では、大使を初め居並ぶ各省庁、外務省、経済産業省など
から会議に派遣された面々が――――頭を抱えていた。

 怒号が飛び交う中で、誰かがつぶやいた。

 「日本企業施設への襲撃、イスラム過激派組織、視察に訪れた王族、拉致、そして」
 産油国、その王族のひとりであり、その原油を扱う国有企業の副社長というポストにあ
る人物が行方不明となった事実は各国の同意により厳重に秘せられてきた。
 そこには拉致の疑いが濃く、国際的な問題が持ち上がることは必死だった。

 ―実際には拉致ではなく襲撃からの逃亡だったが、そのことをまだ彼らは知らない―

 「3週間。3週間だぞ?事前に何の情報もなく――どっから現れたんだ!」
 「情報を取りまとめて本省に連絡しろ。局長?次官だ、次官を呼び出せ!」

 参加した国の一部からの恫喝じみた不穏当な発言も混乱に拍車をかけていた。

 そして所在不明のはずの当人から、日本の関係者に通知された一つの名前。

 拉致にあったとされるこの男、襲撃された施設に所属する、いわゆるサラリーマンこの
男にに関する条件というか要求、これは一体?

 『かの者を、当国に於ける原油採掘権、及び、それらに関する全交渉に参加させよ。
  末席でよい。』

 そもそもこの男は一体、今どこに?



 王女殿下の美貌に微かな憂いの色が浮かんでいた。

 もし、万が一にも足取りを掴まれてしまった時のために、また目晦ましのため、あの街
に残ると言った。必死に反対したのだが押し切られてしまった。

 あのときの判断は正しかったのだろうか。

 上着を抱きしめる腕にわずかに力がこもった。

 今、どこにいらっしゃるのですか?
 日本の大使館に無事、お着きになりましたか?




 「――――――――――」

 その声は奇妙にかすれていた。
 考えたそのままが口を付いて漏れ出ている出ていることに気が付くには、疲弊しきって
いた。

 視界に映るものは、緩やかに波打つ低木、埃を被って白くなったもつれた草がまばらに
茂りる荒野。
 そしてそれを貫き左右に伸びる真っ直ぐな道。ただ、それだけだった。

 その男は、葉もまばらな木の幹と夕日をその背に脚を投げ出して座り込んでいた。

 塩を噴いた顔、片袖がひきちぎれたYシャツ。スーツと包みを手じかに置き、わずか
ばかりに水の入っているボトルを抱え、ぼんやり道を見つめてつぶやいた。

 「パスポート、金、メモ」
691668の続き:2007/02/03(土) 00:49:43 ID:O/admPcW

 王宮の片隅にある王族の服飾に関する管理を行う部署、その片隅の分別ゴミ箱の中には、
危うく廃棄物として処理してしまうところだったスーツの内ポケットから取り出されたも
のが無造作に捨てられていた。










692668の続き:2007/02/03(土) 00:50:25 ID:O/admPcW

 宿を出ようとして気が付いた。

 手渡したそれまで来ていたスーツの上着、正しくはその左側内ポケット。
そこには騒動の間も後生大事にもっていたパスポートと社員証などが収まった財布が入っ
てた。
 日本の領事館に連絡しようにも、財布に入れていたメモがなければ番号すら判らなかっ
た。そして無論、財布には金も入っていた。

 宿代は脱ぐわけにも行かなかったスーツ下の右ポケットに入っていたわずかばかりの紙
幣とコインで払った。
 問題は払っちまうと、ほぼ一文無し、ということだった。
 逃げちまおうかとも思ったが身分を証明するものもないし。これで捕まったらどうなる
かわからんし。

 幸い、誰かが姫さんを探してるような様子はなかったし思ったような事は起きなかった。

 とにかく、自力でアンカラくらいは行ってみせよう、そう思って道行く車を乗せてもら
い前の町まできた。

 乗せてもらった車内ではできるだけ運転手と話をしてみた。とりあえず出来ることから
始めないと、文字通り話にもならん。
 前の町じゃ車が捕まらず、道沿いに歩いてみたが

 「もう、歩けねぇ」



 小さくかぶりを振って、不安を追い出した。
 ううん、きっと大丈夫。あの炎の中でもあの橋でだって―――

 急に頬を赤らめると、つぶやいた。

 「野獣―――だって―――」

 あの、あんな状況なのに―――『俺、勃起してる。』―――

 そして、誰もいないのに思わず手にしたスーツに顔を隠してしまった。

 その時、控えめなノックの音が響いた。
 びくりと震えると、しばし深呼吸を繰り返して落ち着きを取り戻し、上着をそっとテー
ブルに置いた。

 なんとか元の王女殿下の表情に戻り、入室を許した。

 侍従が一礼と共に現れ、一枚のメモを差し出した。
 頷いてメモを受け取ると、侍従は再びの一礼と実に微妙な無表情と共に退出した。

 再び一人になった王女殿下はメモに再度目を通すと、赤みの残る頬に満足げな微笑を浮
かべた。

 あの方の故郷で作られたあの健気な車。

 あの路地を駆け巡った―――あの路地裏はまるで聖堂のようだった。
 そして、あの路地裏――聖堂――で、初めての口付けを交わした。

 思い出したように胸元に指を伸ばすと、そのまま流れるように両腕がうなじにまわり細
い銀の鎖を取り出した。
693668の続き:2007/02/03(土) 00:51:32 ID:O/admPcW

 鎖の先でまわり窓からの光を反射させる、その安物のリングを見つめながら想った。

 あの方からのリングとわたくしの指輪
 そのリングを見つめていると、ふとひとつの言葉が思い浮かんだ。

 ―――運命―――

 天使は微笑むと、小さくかぶりを振ってその言葉を追い出した。

 早く迎えにいらして下さい。強くなって迎えにいらして下さい。
 そしてあの街でのように甘えさせて下さいね。
 いいえ、あんな楽しいけれど切ないのは嫌。今度はずっと一緒に。

 たとえ、運命でなくとも――――――



 道の彼方、地平の彼方に微かな翳りが生じ、見つめているとそれは確かに近づいてきた。

 アラー様!
 イエス様!!
 南無八幡大菩薩!!!
 姫さん!!!

 よろよろと道に這い出し、力の限りに手を振った。

 頼む、停まってくれ―――

 荷を積んだ大型トラックは、特有の空気が抜けるような音を発しながら埃を舞い上げて
停まった。

 どうにかして分けてもらったボトルに残った最後のぬるい水を咽喉を鳴らして飲み干す
と、その遥か彼方とも思える30メートルほどをよろめき走りながら道中習い覚えた
「お願い」「乗せてくれ」を連呼した。




 たとえ、運命でなくとも――――――


 天使は想った。

 あの、月の夜。
 あの、わたくしたちの夜。

 ライオンさんの心臓に記した、円月刀(シミター)と馬と薔薇。
 王家の、わたくしの、徴。

 徴が、獅子をわたくしへと導く。

 『ありがとう、わたくしのライオンさん。そして――――――――――――――――』
 「ありがとう、わたくしのライオンさん、そして早く迎えにいらしてね愛しいあなた」

 天使は愛しいライオンの迎えを想って、翠の瞳を夢見るように閉ざし珊瑚の唇から甘い
溜息を漏らした。
694668の続き:2007/02/03(土) 00:52:48 ID:O/admPcW

 天使のライオンを乗せたトラックはひた走る。
 道は大きく西に傾きトラックは没した太陽を追う。
 その荷台を覆うシートを繋いでいた索が解け、ひるがえった。

 舞い上がる埃を透かして月光は、傷付き汚れ弾痕が穿たれた”T○Y○TA”の文字を
照らし出した。










 獅子は長じて育った群れを離れ、荒野を目指す。
 荒野の果てに獅子の愛する天使は待つか?










 天使は、荒野の果てなんかにゃいない。
 荒野のど真ん中、で待ってるはずだ。

 たぶん。


695668の続き:2007/02/03(土) 00:54:13 ID:O/admPcW
終劇

誤字脱字申し訳なし

スマソ、漫画喫茶からなんで、sage忘れてた
一箇所、編集マーク取るの忘れた orz
696668の続き:2007/02/03(土) 01:08:31 ID:O/admPcW
誤解の無いように最後に、一言

俺の車は日産車です。
断じて”T○Y○TA”の回し者ではありません。
697名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 01:10:29 ID:ZKXm3/XC
乙 たいへん乙
保田良雄の冒険小説「カフカズに星墜ちて」を思い出したよ
698663の続き:2007/02/03(土) 02:37:06 ID:RFzEX60V
解除されてるなら、30分もかけて漫画喫茶にいかなきゃよかった…orz

>>670
ありがとうです。
これにて終劇です。

>>672
なんとか、終りました。

>>697
カフカズに星墜ちて、ですか
また読んだことのない本が…orz

では、読んでくださった方、ありがとうございました。

ちょっと、別のこと、
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1165324405/195n
とか、
>>614を誤爆した先での話とか考えてますが、ちょくちょくのぞくようにしますね。

では
699名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 04:08:18 ID:90e5/pka
姫さんとライオンさんの話、すごく面白かったです(エロカッコよくってスレなのに面白いとか書いてすみません)
長編でも全然飽きませんでした。作者様お疲れ様でしたーまた書いてほしいです。
700名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 12:14:43 ID:RtJRJyBn
348〜ここまでのまとめ

短編
 >>375 >>382 >>419 >>431 >>498 >>545(30リメイク)
701名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 12:16:02 ID:RtJRJyBn
短編
>>548 >>561 >>603 >>614 >>615
702名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 12:18:08 ID:RtJRJyBn
703名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 12:20:01 ID:RtJRJyBn
704名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 12:21:43 ID:RtJRJyBn
705名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 12:23:50 ID:RtJRJyBn
706名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 12:25:44 ID:RtJRJyBn
707名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 12:28:24 ID:RtJRJyBn
リレー
>>569>>571


間違えてたら修正ヨロ。
あと、投下は完成させてからしてくれると助かる。
あんまりアンカー多いと、規制かかっちゃうんで。
708名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 12:56:53 ID:RtJRJyBn
×あと、投下は完成させてからしてくれると助かる。
○あと、話は完成させてから、ある程度まとめて投下してくれると助かる。
709名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 16:28:27 ID:9UZwiC+r
まとめ乙
710名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:01:13 ID:0rHUN3Bl
>>699
ありがとうです。

また、何かスレに則したものを思いついたら伺いますね。
711名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 03:54:42 ID:tZqEeiKe
>荒野の人
お疲れ、いろんな意見がある中で最後まで書きあげて
投下してくれてありがとう。
おいしく頂きましたよ。


>姫さんの人
いやぁいいもん見せてもらったわ
ライオンと姫さんが好きだ


>まとめの人
投下の間が空くと前の展開を忘れてしまうので
本当にありがたい。
まとめを生かしてきっちり読み返させて頂きます。


みんなGJGJGJ!!!

712名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 11:19:23 ID:FBqkvDES
荒野
発想もシチュも文体もあちこちからつまんでいるのが見え見え。
オリジナルとはいい難い。
丸パクじゃないから法的にセーフではある。
だが逆にパクリが悪いと分かってやっている悪質さを感じて読んでいて
気分が悪い。

被らないネタを出そうと努力し、被るときは一言断る、
全然違う話になってもネタ元を明記する者までいる。
他人の作品やオリジナリティに相応の敬意を払うここの職人達に対して
失礼すぎると思わないのか?

オマージュ(リメイク・リレー含む)とパクリの違いが理解できてない間は
よそに投下しても荒れる元だと思う。


ライオン
ちまちま投下して、その度に言い訳がましいコメントをつけると誘い受けと
取られる。注意されたし。
格好良い男を書きたい熱意は伝わってきた。


711
せっかく切った流れを引き戻すな。
713名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 11:29:49 ID:TMEo6qAV
◆pVdGUF5Fso 私怨ウザ
714名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 11:33:08 ID:POm2288r
>>712はキツい目付きと男言葉でもって書き手を叱責するツンデレ系お姉さま
715名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 14:29:13 ID:FBqkvDES
ツンデレ系お姉さまをエロ格好良く押しとどめるにはどうすればいいんだ?
716名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 14:59:49 ID:FBqkvDES
ID変わって証明出来んが、昨日の「まとめの人」なんだが。
私怨って、713は氏に何か恨まれるようなことをしたのか?
717名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 19:20:52 ID:Q7J44ESC
>>712
パクリって決めつける態度もどうかと思うぞ。
自分が知ってる元ネタがすべてだと思わないほうがいい。
だって元ネタが聖書なんだぜ?
一言で言うなら馬鹿一の集積みたいなもんだし、
そりゃあ似た作品は多いだろう。
成功しているかどうかはともかくとして、正面から王道に取り組んでいると
捉えることもできる。
それに本人も言ってるじゃん。つきあえないならNG指定しろって。
読んでて気分悪いならスルーすればよろしいがな。

>荒野の人
そんなわけで、次回もガンガレ。
718名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 20:00:33 ID:b+RRuc7e
アメリカ映画の巨匠 セシル・B・デミルは、サイレント時代にあまりにエロ過ぎる映画を撮り
それをとがめられると、今度は聖書ネタの大作映画を作って見せて
そのくせ生け贄の女性は乳首と股間がギリギリ隠れてるだけってなシーンまで撮って公開して平然としてた
80年も前の話だ。

まあ何を言いたいかって言うと、結果として面白ければいいんだ

とりあえず現状を出版社の編集部に萌え変換してみる
どうせ作者以外の我々読者なんてたわけた萌えネタにしかならないと諦めておく

>>712は編集部きっての有能なツンデレ美女編集者で、
新人作家に厳しく当たってしまった
でも実はその新人作家に密かに思いを寄せている
>>717はその上司である人生経験豊富な姐御肌のおばさん編集長で
部下をいさめている >>712の片想いに気付いていてニヤニヤ

とか嫌がらせしてみる
719名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 22:55:44 ID:2CitREbt
すると、上司に諭されて少し反省したツンデレ編集者は、散々迷ったあげく
次回作の進捗を確かめるという名目で新人作家に電話をかけ、ついでに
謝ろうとするんだな?
で、話してるうちにまたキツい言葉を吐いてしまい、電話を切った後に
「なんで私ってこうなんだろう……」と一人落ち込む、とw
720名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 23:32:44 ID:ch/LKixY
突如、新人作家宅のドアが激しく叩かれる。
立っていたのは、泥酔したツンデレ編集者。
「お仕事の進捗状況を拝見しにきました。上がっていいですか?」
言葉だけ聞くなら素面のようだが、まともに立っていられないツンデレ編集者。
慌てて手を貸す新人作家の肩にすがりつくツンデレ編集者。
引きずるように居間に通す新人作家。
「私だって、あんなことやこんなこと、言いたくないんです!」
「センセイにまともな文章書いてもらうのが、私の仕事なんです!」
「私だって本当は…」
新人作家の胸に頭を預ける体勢になっているツンデレ編集者の重み。
アルコールの臭いに混じってツンデレ編集者の髪から立ち上る甘い香り。
有能な出版社員が、一人の女に見えた瞬間。
721名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 23:40:07 ID:QGbrXLoI
仕事帰りに主任712を
近所のバーまで引っ張っていく717編集長・・・

「あんたは?」
「ジントニックでいいです」
言うなり712は、既に幾度も来て見慣れた狭い店の一隅を見やる。
そこでは店の格に不釣り合いなタンノイのウッドスピーカーが、白人女のうつろに嗄れた歌声を響かせている。
よくわからないが、ジャズだろうか。
編集長はわざわざ「後回しでいいから」と断って「いつもの」とだけ言った。
712の知らない曲だったが、歌詞の端々に「blues」というフレーズが出てくるから、これもブルースの端くれなんだろう。

初老のマスターはほどなくボンベイサファイアのボトルを片寄せ、「お待たせしました」とグラスを差し出した。
喉越しが苦いのは、カクテルのせいなのか、それとも気分のせいなのか。
編集長は、712の胸中を知ってか知らずか、ニヤニヤと笑みを浮かべている。
どうもこのバツイチ四十女の腹は読めない、と712は思った。
「いつもの」竹鶴12年のオンザロックを舐めながら、717はつぶやくように言った。
「焦ったってすぐに結果は出ないよ。仕事も、恋も」
次には微笑みつつ、意地悪げな目付きで712を見る。
「道理の判らない歳じゃないでしょ?」
712は答えず、黙ってスピーカーの方を向き、グラスの中身を飲み干して、溜め息を吐いた。
722名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 23:43:00 ID:QGbrXLoI
何だかうまくダブったような

流れからすると、>>721で激しく酔っぱらった末に、>>720な展開となった、としよう
723名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 00:19:33 ID:mfYQdKHl
胸にあった筈のツンデレ編集者の頭が、いつの間にか首筋に来ている。
わざとなのか無意識なのか、首筋に柔らかい唇が触れる。
興奮しているのか気分が悪いのか、息が荒くなっている。

焦ったってすぐに結果は出ない?この人には才能がある。結果はすぐに出る。
私にはその手助けが出来る。私にもその才能がある。すぐに結果を出してあげなければ。
気持ちが悪い。寒い。支えていてほしい。

「センせ…い」
724663の続き:2007/02/05(月) 02:01:38 ID:ced/qNex
>>711
ありがうです。

>>707
>>712
スマソ、その日その日に書いて校正してレスしてたんで…
今度から考えをまとめてからにします…
725663の続き:2007/02/05(月) 02:02:50 ID:ced/qNex
*お詫びの小ネタ

 「抱かないの?」「ああ」
 目の覚めるようなブロンド、ブルーアイ、そして突き出したバストにそいつ覆うわずか
ばかりのチューブトップ、ストリートに立ってても可笑しくない際どいパレオ、典型的な
田舎から出てきたアメリカ女。
 この街でスターダムにのし上がるなんて一束幾らという安い夢を追って、自分の体を安
く振り回して、グラス、コーク、ドラッグを捌くところまで堕ちちまった。

 ―――馬鹿な女、哀しい女、そしていい女―――

 愛した男を殺させないために、ここまで抱かれにくる。そんな女。
 装弾を終え一振りすると、エジェクターロッドが硬い音を発てて弾倉がロックした。
 女はどぎつくルージュを塗った唇を噛み締めて、チューブトップを毟り取った。
 「こちらを見て、そして抱いて」
 女を見る。売った笑顔、売った体、金のためにヤクを売り、売れるものは何でも売った。
そして俺を売る、そのために自分を俺に売りつける。
 ジャケットの後ろでベルトに手挟むと、何時ものとおり何時もの重さ、馴染んだコルト
・コブラが今日は重かった。
 静かにドアの前に立つ女を押しのけ、ドアを開けた。
 腕が首に廻った。背中で泣きながら「お願いいかないで、あのひとを殺さないで」告げる。

 ―――売ったもの、売らないもの、売れなかったもの―――

 静かに、腕を振り解くとドアをくぐった。
 「ベロシのところに行ったわ、あんたお終いなのよ!」
 叫びの後には、微かな啜り泣きが漏れてきた。それは階段を下りるにつれて外の雑踏の
音に紛れて消えた。

 血と汗と反吐とスナッフィング用のストローと注射にスプーン。そんなものが散らば
る路地を抜けていく。
 「よお」
 男はいた。メキシコ訛りで何時ものバァで会ったかのように挨拶をし、左手に下げた壜を
呷って、投げてよこした。左手で受け取って呷る。
 「ワイン?」
 「ああ、フランスならお互いに喧嘩のネタにゃならねぇ」
 「そうなのか?」「ああ」
 互いに笑った。
 「抱いたのか?」「………………」
 「抱いてないのか。お前さんらしいな」
 「このまま笑ってじゃあな、で終るわけにはいかんのか?」
 「駄目だな」
 「お互い良い友達になれそうなのにな」
 「無理だろう。お互い似過ぎてるからな」」笑いを含んだ声が応えた。
 「違いない」
 また、お互いに笑った。男は言った。
 「ベロシを殺った」
 「………………」
 「もし、俺が死んだらあいつを殺してやってくれ」
 黙って頷いた。
 「じゃあ―――」

 ―――売ったもの、売らなかったもの、売れなかったもの―――

 あの女も俺達も、売れるものは命でも二束三文で売った。そうして守ったもの、売らな
かったものは、誰も見向きもせず何の値段もつかなかった。

 そして銃声が響いた。
 「約束は守る」そういって止めを撃った。ポケットの弾は後二発だった。
7261/2:2007/02/05(月) 08:38:18 ID:8rf1rXDo
 …なぁ。
 いいかげん喋ってくれてもいいだろうが。
 何でわざわざ御社抜け出して、こんなとこまで来たんだよ。
 もうすぐ竜窟に入る日なんだろ?
 異性との接触は厳禁だって聞いたぞ?




 …だんまりか。
 ったく。

 あのさ。
 俺は、ホントにおまえには感謝してるんだ。
 俺たちが食いつないでこれたのは、おまえがちょいちょい『おすそ分け』に来てくれたからだ
っていうのを、俺もうちのチビどももみんな知ってる。 
 それから、おまえの着てた綿入れがずっとおふくろさんのお下がりだったっていうのも知ってるし、
今だから言うが…おすそ分けに来たはずのおまえの腹がなってる音も、実は聞こえてた。

 だから。
 変な遠慮はするな。

 俺たちは、おまえのためなら何でもする。
 おまえの頼みなら、なんだって全力でかなえてみせる。
 後のことなんて心配するな。
 俺の腕、知ってるだろ?
 チビどもも、自分のことぐらい自分で何とかできる程度の実力はついた。
 …村の連中のことなんか気にする必要なんかない。
 おまえをオロチの生贄にして助かろうとしてる連中の心配なんて、するだけ無駄だ。
 
 だから何でもいい。
 俺に何かできることがあるなら…
7272/2:2007/02/05(月) 08:41:53 ID:8rf1rXDo
 っておい。
 
 まて。ちょっとまってくれ。
 
 いやだからちょっとまてって!
 何で服を脱ぐんだ!

 え?
 いや、じじいの監視抜け出してくるんだから、逃げるのを手伝ってくれ、とか
 そういうことを頼まれるんだと…
 ちょ、まて、なんで怒るんだ!
 おまえが助かる方法つったらそれくらいだろうが!!

 いや、そこで黙り込まれても困るんだが。
 他に方法があるのか?

 オロチは処女しか食べない?
 それはまた何というか…偏食だな。

 
 おちつけ、おちつけって!
 確かに不適切な返事だった!
 わるかったからこの体勢はまずい…というか、何でわざわざ絡んでくる!
 何?何かいった……!!??
 ど、どけ!いいからどけ!!
 当たってる、当たってるから!
 後でちゃんと聞くからとにかく今は、



 ……。



7283/2:2007/02/05(月) 08:43:06 ID:8rf1rXDo
 なぁ。

 本気、か?

 そうじゃない、伊達や酔狂で言ってるんじゃないことくらいわかってる。
 
 死にたくないからとりあえず抱いてくれ、処女じゃなくしてくれって。
 本気でそういってるのか?

 …よかった。
 言い淀んでくれるんだな。


 悪い、前言は撤回する。
 おまえの言うことは聞けない。

 ちょ、やめ、人の話をちゃんと最後まで聞け、お前は!

 ったく。
 俺はおまえの言うことは聞けないけど、おまえをオロチなんかに殺させたりもしない。


 …俺が、オロチを殺す。
 おまえに不幸を強いるものから、おまえを守ってみせる。





 おまっ、そこで笑うか普通!?

 …本気だよ。
 本気でそういってる。

 笑う所じゃない!
 くそ、もう帰れ御社に!
 二三日もおとなしくしてれば、オロチはいなくなってるからな!





 ったく。見えなくなるまでずっと笑い続けやがって。

 何が「期待してる」だ。
 笑いながら言ったって説得力ないっつの!


 …でも、「無理だから、やめろ」とは言わなかったな。あいつ。

 さて。
 オロチ退治といきますか!
729蛇足:2007/02/05(月) 08:48:36 ID:8rf1rXDo
御社=おやしろ
   ≠おんしゃ

思いつきでやった。
今は反省している。

ご意見ご批判ありましたら反省の足しにするので
どんどん言ってもらえるとうれしいです。
730名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 09:29:24 ID:N94hs1TN
ああ……エロ格好いいぜ……

妬ましいほどにエロ格好良く書けている!
731名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 20:14:22 ID:2XoeoTKe
>>729
GJだ。こういう1人語りは、書くのも読むのも大好きだ!
3レス目が、3/2となってしまっているのは、2レスでエロかっこよく押し留めようとしたものの、
ほとばしる女の情念に思いのほかててこずったからだ、と解釈しとくぜ!
732場つなぎに:2007/02/06(火) 23:27:15 ID:rTj+oYVi
>>721>>723
音楽はペギー・リーからいつしかエラ・フィッツジェラルドの歌声に変わっている。
初老のバーテンダーは、コースターに何杯目かのロックグラスを置いた。
「サンキュー、マスター」
編集長がそう言ってグラスを手に取った。今夜の客はもう彼女一人だ。
働き者のバーテンはといえば、カウンター隅のシンクに回ってグラスを幾つも洗っている。
全部ジントニック用のグラスだった。

飲んだ本人――712――はしばし前、何杯目かのグラスをすっかり空けるやいなや
「やり残した仕事がありました」と福澤翁を1枚おいて、釣り銭も取らずに出て行った。

「彼女があんなに飲むとは思わなかったわよ、マスター。
『身体に毒よと囁いた 呑み屋の娘がいじらしい♪』って歌もあるでしょ」
「編集長も古い歌をご存じで。しかし、『心の憂さの捨てどころ』とも言いましてな。
まあ、あれなら大丈夫でしょう」
「マスター、あたしよりネタが40年古いわ」
グラスを拭き終えつつも微笑を絶やさないバーテンダーに、717は苦笑してみせる。
「いいけどね。マスターも飲まない?」
初老の男は急に居住まいを正した。
「申し訳ありません。こんな商売ですが、仕事中は禁酒しとるんです。自分なりのルールでして」
「それは残念」
「ところで、712さんのお釣りを預かっておいて頂けますか?」
717が頷くと、バーテンはカウンターの端から出てきて玄関に歩み、ドアの外に手を差し出した。
「OPEN」の札を「CLOSED」にひっくり返し、窓のシェードを降ろす。
中年女はふふふふと笑った。
「なるほど、ルールはそうやって守るのね」
「昔いろいろありまして……お客さまからは、たとえお相伴のお求めがあっても丁重にお断りしております。
しかし、何事にも例外はある。アイラモルトはお嫌いですか?」

同じ頃――
「先生、わた、わたしは、あなたの才能と、表現力、それに、それにあなた、あなたという人のことが……」
712はろれつの回らない声で、それでも激励と叱咤と恋情を綯い交ぜにして切々と訴え続けていた。
あのシビアな完全主義者の女性編集者が、酔って度を失っているとはいえ、
涙ながらに間近で訴えかけてきているのだ。
恋愛経験皆無な新人作家は、冷蔵庫のミネラルウォーターを差し出すタイミングも失って
ひたすら呆然としながら、己の身体の震えを抑えつけるのに難渋していた……
733名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 23:54:01 ID:dZTJE304
熱い息。
赤い顔。
潤んだ目。
ほつれた髪。
胸の感触。
首に絡みつく腕。
近づく唇。
「先生、私、どうすればいい…?」
小説でなら100万回も読んだのに。
空想でなら100万回も繰り返したのに。
734名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 23:15:10 ID:cCXdk26e
 落としたシェードの合間を影が濡らして行過ぎる。

 マスターが無言で注いでくれた琥珀のグラス。コースターに置かれ汗を浮かべるグラス
を、斜めにゆらしてクラスの氷を啼かせた。

 アイラ島、その石ころだらけの大地を梳いて、麦を育て、酒を仕込み、樽を潮風に晒し、
寝かせて作った癖の強い琥珀が、咽喉を焼いた。
 ふうっと肩を上げながら息を呑み込んで香りごと呑み下した。

 舌より咽喉に香りが残る。その香りを味わいながら世の中に毒ほどの美味は無い、と思
う。

 自分なりのルール、そしてその例外。語らないのが大人の毒。
 そんなことをクラスの底を見つめながら思っていた。



 そう、こんな時、こんな時に。
 自分の思い描いた理想の男はどうしただろうか?
735名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 09:13:37 ID:Kmmie6Sn
保守age
736名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 20:43:19 ID:5BMLCtlK
ホッシュ
737名無しさん@ピンキー:2007/02/14(水) 23:33:08 ID:LjraNut9
お願いします、と彼女は思い切ったように箱を差し出して、それから微動だにしない。
肩口で切りそろえられた髪から覗く耳や首元が仄赤く染まっていたが、
これはもちろん寒さのせいではないだろう。
「あの……、オレに?」
恐る恐る確認すると、小さな頭がこくんと揺れた。この状況で他の可能性など
あるはずもない。マヌケなことを訊いてしまった、と彼は内心身悶えした。
受け取ってもらえませんか、と黒目がちの大きな瞳が上目づかいに彼を見上げる。
―――2月14日。聖バレンタインデー。
これはもうどう考えても紛うことなく、

……新手の拷問?

彼は遠い目をした。
嫌がらせか。イジメか。はたまた精神修行の一環か。
差し出された物体は緑色をしていた。
一部は紫だった。
何とも言えない発色の本体はマーブル模様を描いて、うごうごと自律的運動を
行っている。
さながら未開の島で発見された、超稀少種のナマコ(足つき)のようであった。
彼女の脳内認識における『チョコレート』の定義を小一時間(ry

しばし悩んで、彼は覚悟を決めた。
「……あのさ、これ……何?」
彼女は頬を染める。
「私の子株です」
「コカブ?」
彼女は恥ずかしそうに俯いた。
「あの……今まで黙っていましたが、私、実は地球人ではないんです」
「いやそんなこたわかってるけど」
つーかバレてないと思ってたんですかお嬢さん?
「それで……この付近の風習では、今日は好きな人に自分を食べてもらって
交尾を行う日だと聞き及びまして」
彼女はもじもじと子株ナマコを差し出した。
「生憎と私の体ではそのような生殖方法ができませんので……代わりに、これを」
「……あー、そう」
彼が得た生涯初めての彼女は、色んな意味で普通でない。
彼は天を仰いだ。
「……それじゃ、まずは一緒にスーパー行こうな」
「え。な、何か付け合わせが必要でした?」
「んー、とりあえずそいつしまって」
カルチャーギャップを乗り越えて彼が彼女と結ばれるのは、もう少し先のことに
なりそうだ。
不満がない、と言えば嘘になる。
だが、たとえ常識ぶっとんでようが実は宇宙人だろうが子株が緑紫ナマコだろうが、
惚れちまったんだから仕方ないよなぁ、とチョコレートの説明から始める
彼であった。

とほ。



なんとか間に合った。ハッピーバレンタイン!
738名無しさん@ピンキー:2007/02/14(水) 23:56:21 ID:S3AzJ2qe
GJ。
二人の子供が生まれるまでの過程も読んでみたくなる。
739名無しさん@ピンキー:2007/02/15(木) 02:03:53 ID:+g7A2UT5
ワロタw

こういうコメディチックなやつはけっこう好きだ
GJ!
740名無しさん@ピンキー:2007/02/16(金) 00:25:28 ID:S42yjFQb
GJ!
おにゃのこエイリアンに禿萌えた。
741名無しさん@ピンキー:2007/02/16(金) 14:18:04 ID:miT8+Xv6
>>737
GJ!
人外スレあたりで続きが読みたい
742名無しさん@ピンキー:2007/02/16(金) 22:03:07 ID:8H31/Vhx
>>737 確かに押しとどめている!目からうろこだ!!
743名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 11:18:36 ID:MfnoEEHV

   /l、
   (゚、 。`フ ごはんも、なでなでも、だっこも、うれしかった
   」  "ヽ
  ()ιし(~)〜


   /l、
   ( ゚、 。 フ でももう、いかなくちゃだめなの
   」  "ヽ
  ()ιし(~)〜


   /l、
   ("゚. 。 フ ずーっと、だいすき、いっぱい、だいすき
   」  "ヽ
  ()ιし(~)〜
744名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 11:19:07 ID:MfnoEEHV
誤爆した スマソ
745名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 12:53:46 ID:OmGUMee7
おーい、真っ直ぐ歩けてないぞ。
女は飲み過ぎたら足にくる奴多いよな。
っ、と。気をつけろよ。

頭?
はいはい、いくらでも撫でて差し上げますって。
……ま、元気出せよ。
あいつよりイイ男なんか、星の数ほどいるんだぞ。
あとな、少なくとも俺はお前のこと嫌いじゃないからな。

…え、そこのラブホ?
駄目だ。勢いだけでヤッちゃうと絶っ対後悔するって。
俺だって送り狼になりたかねぇし。
ほら、帰るぞ。
あ?怒ってないから気にすんな。


デレてくるのは嬉しいけどある意味拷問だよな。
いつになったら幼馴染みから彼氏に昇格させてくれるんだか。

女を無事家に送り届けた男は、溜息と共に紫煙を吐き出した。



ツンデレ溶かすにゃ炎はいらぬ
少しの優しさあればよい

などとオマージュしてみたり。
746名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 12:59:54 ID:OmGUMee7
IDがMeって、できすぎだw
747名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 11:29:52 ID:tfAUJZeW
日本語でおk?
748名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 00:14:42 ID:gXcFwQQh
ゲロ甘注意。


「よく考えたらズルくない?」
唐突な美里の発言に、恭介は、ん? と首を傾げて話の先を促した。
休日の夕方、恭介の部屋で二人まったり過ごしていたときのことである。
奔放なタチの美里が脈絡なく思考を口にするのはいつものことだ。
美里曰く、『ポニーみたいにおっとりしている』恭介としては、その美里の
おしゃべりに一言二言相槌を挟みながら過ごす時間は大概微笑ましく、
幸福なものだった。
が。
今回はちょっと、勝手が違った。
「正常位ってあるじゃない」
「ん? うん」
「で、後背位ってのもあるでしょ」
「……うん」
なんですか夜の不満ですか。
恭介は心の中でちょっぴり焦った。
最近手抜きしたっけ、と思わず記憶を探ってしまう。
そんな恭介に、美里は大真面目に訴えた。
「つまり、恭介は前からもバックからもできるのに、あたしは後ろから
できないわけでしょ。ズルい」
「…………あー、そう?」
一瞬、返答に困った恭介である。
しかし、美里は大きく頷いた。
「そうよ。……もちろん、男女における体の構造上難しいってのはわかるんだけど。
とゆーわけで恭介、なんとか公平を期せないか、今から実験してみない?」
「……何故そんなところで公平にする必要が?」
「えー。だって背中とられっぱなしって悔しいじゃない、なんとなく」
ぷうぷうと文句を言う美里は、これで理系研究所に籍を置く才女だ。
普段ほとんど隙のない彼女が、恭介の前ではこんな姿を見せること自体は
『かわいいなぁ』とほのぼのする恭介なのだが。
恭介は試しにバックからされる自分を想像してみた。
……さすがにそれはちょっと、勘弁してほしかった。
恭介はしばらく考えて、首をひねる。
「美里は、バック嫌い?」
「んん? 別に嫌いじゃないんだけど」
「なら、美里が後ろから僕を抱けないように、僕も後ろから美里に抱いて
もらえないんだから、不公平度はさしひきゼロだと思う」
「……ん?」
美里は首を傾げた。
「えーと、あれ? そ、そうかな?」
「うん」
「……そっか。じゃあいいや。実際動きにくそうだし」
「うん」
頭いいはずなのにあっさり詭弁に騙される美里は、やっぱりかわいい、と恭介は思う。


二人は、今日も幸せである。


終わり
749名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 00:20:09 ID:hinQWyox
あっまぁぁぁぁぁぁぁい!
GJ.
750名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 00:25:21 ID:WbNupEbQ
やべー、あっま―――い!
だがGJ! 美里かわいいよ美里
こういう押しとどめ系もいいなぁ。

もちろん決して結ばれてはいけないからというので押しとどめるのもいいのだが。
751名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 03:26:56 ID:qC1b5tbj
桃の蜂蜜漬けなんかメじゃないくらい甘いぜ!!
GJ!!
752名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 13:45:50 ID:lW+W9cl6
とろけそうですゴチソウサマ♪
GJっ。
753名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 20:32:16 ID:XDbhUKtk
小ネタ

ある泉に夫婦が水を汲みにいく。が、妻が足を滑らせて、うっかり泉に落ちてしまう。
直後に女神が現れて、
「あなたが落としたのは金の妻ですか、銀の妻ですか、普通の妻ですか?」
ハニーブロンドの肉感的美女が胸の谷間を強調しながらウインクをよこせば、
プラチナブロンドのスレンダー美人が白い太ももをちらちら見せながら投げキッス。
プラス、見慣れた口うるさい古女房。

金銀の誘惑を見事に断ち切り、古女房を選べばうはうはハーレムライフが待っている!
……かな?
754名無しさん@ピンキー:2007/02/28(水) 23:21:59 ID:Af5UEpYD
保守
755名無しさん@ピンキー:2007/03/04(日) 06:26:52 ID:zTxRGcn9
過疎ってるなぁ。
ほしゅ。
756名無しさん@ピンキー:2007/03/07(水) 23:04:30 ID:Hk4h/Azp
ほす
757名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 17:50:31 ID:BMu2k3tc
ほす
758名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 02:21:41 ID:Ieq8sFmZ
ほしゅ
759名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 16:20:40 ID:8DC73i/l
ほしゅ
760名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 08:41:09 ID:s1iU3FKl
法主hage
761名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 13:35:22 ID:7YB66+Ie
>>760
ベネディクト16世猊下になんという暴言を……
762名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 16:47:48 ID:s1iU3FKl
>>761
ちっ、ばれたとは…


取りあえず神でも紙でもいいから降臨規模運
763名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 01:13:37 ID:Oj8jfP7l
美里の部屋の玄関ドアが開いたとき、恭介はちょうどフライパンを振るっている
ところだった。
時刻は日付が変わるまであと数分。かちゃりと安全チェーンまでかけた美里が、
へろへろと靴を脱ぐ。
「ただいま〜。いらっしゃい恭介〜」
「おかえり。お疲れさま。台所借りてるよ」
一瞬目を向けた先にいた彼女は、疲れた顔とこの時刻にもかかわらず、
きれいにメイクをしていた。恭介が訪ねることはメールしていたから、
帰り道のどこかで化粧を直してきたのだろう。どうせすぐ落とすものなのに、
いまだに小さな努力を重ね続ける美里がいじましく、可愛いなぁと思う恭介である。
「お腹すいてる?」
「ぺこぺこー」
情けない声をあげて、美里はぺたぺたと台所兼廊下を横切っていく。
「今日は現場離れられなかったの〜。もーネズミン達がカリカリ食べてる
ペレットが羨ましかったぁ」
「……重症だね」
生物実験を行う現場は飲食禁止なのだそうで、デスクに戻る暇がないと
どうしても断食することになる。
美里は荷物を置いてジャケットを脱ぐと、テーブルを拭いていそいそと恭介の
そばに寄ってきた。嬉しそうな顔だ。
「ごめんね、ありがとう」
「ん」
美味しいご飯が嫌いな人間などいない。ましてや仕事で疲れて帰ってきた
ときに差し出されればなおさらだ。何かのアンケートで、夫婦円満のコツに
『胃袋を押さえること』とあったのも頷ける話である。しかも美里は美味しそうに
物を食べる人間なので、餌付けのし甲斐もあるというものだった。
二人揃って食卓を囲む。ジャコ炒飯と野菜スープ、それに苺のヨーグルト。
テレビがない部屋に、あれこれと美里のおしゃべりが満ちると、なんだか
ホッとする恭介である。
「……でね、この部長がわかってないの。『高い機械を入れたっていうのに
まだ結果が出ないのかね』て言うのよ。機械で大腸菌の分裂速度が上がったら
世話ないっての」
「30分だっけ?」
「うん。30分。……あ〜早く年度末終われ〜。なんで実験に年度が関係あんのよぅ」
「そうだね。店もお客さん少ないよ。みんな忙しいんだねぇ」
「春なのに〜。恭介に髪切ってほしい〜」
「うん。僕も触りたい」
正直に言うと、ぴた、と美里の動きが止まった。箸をくわえたまま上目使いで
視線をよこしてくる。
「……恭介、明日お休み?」
「うん。でも片付けたら帰るよ」
「……帰っちゃうの?」
うわぁ可愛い。
764名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 01:25:04 ID:Oj8jfP7l
残念そうな不満顔がクリーンヒットだ。
「美里明日も仕事でしょう。ちゃんと寝なさい」
「……だって」
「一段落ついたら、髪切ってあげるから」
「春なのに〜。猫ですら恋の季節なのに〜」
「今日は美里の顔見にきただけだから」
「恭介淡白……」
違います。焦らして楽しんでるだけです。
心中でこっそり愛しい彼女のあれこれを楽しみつつ、
恭介は素知らぬ顔で「ご馳走様」と手を合わせた。


終わっちまえ


あまりうまくまとまらなかったが、次までのつなぎに。
765名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 01:43:04 ID:Oj8jfP7l
ごめんなさい、最初の一行が抜け落ちてました。

美里と恭介お借りします。

ややこしいことしてすんませんでした。
766名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 08:57:40 ID:niigQXV5
おおうw
このスレ独自のオリキャラ確定ッスね。
GJ.
767名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 23:05:40 ID:DU7JdBYS
以前のも甘かったがこれも甘いな砂糖がごとく。
GJ!! 美里可愛いなおい。
768名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 08:53:18 ID:kGKsElZa
GJだねっ!だねっ!
769名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 03:30:22 ID:3rfHFK7i
恭介黒いよ恭介w
原案者として、キャラが愛されるのは素直に嬉しいです。
『職業:美容師』はグッドチョイス!


「ねー、きょーすけー」
「ん?」
ベッドの上で足をぶらぶらさせながら雑誌をめくっていた美里の呼びかけに、
恭介は顔をあげた。その前に、美里はページを指さしつつ、見ていた冊子を差し出す。
「こういうの、好き?」
「…………」
雑誌だと思っていたのは、通販カタログだった。実際のところ、イイ通販
カタログというのは雑誌とほとんど変わらなかったりする。
それはともかく。
開かれていたのは、ランジェリー特集ページ、だったりした。
『目指すのは愛されキュート? 小悪魔セクシー?』という謳い文句が踊っている。
「……美里が着るの?」
「うん。ベビードールやらガーターベルトって、誰が着るんだと思ってたけど、
一着くらいあってもいいかなーって。男の人ってこういうの好きなんでしょ?」
……そりゃ嫌いじゃありませんが。
恭介は試しに脳内想定してみた。
ピンクのふわ透けベビードールと美里。
ワインレッドの鮮やかレースガーターと美里。
ついでに水着とかバニーとか白衣とかエプロンとか以下略で、ご飯3杯イケそうです。
「……まぁ、止めはしないけど」
「え? あんま乗り気じゃない?」
「大事なのは、結局中身でしょう」
言うと美里は、ばったりとその場に突っ伏した。恐る恐る尋ねてくる。
「……た、体重増えたのバレてる?」
あ、そっち?
「触り心地は変わったかな」
「きゃー! 言わないでー!」
思ったまま口にすると、美里は耳を押さえてじたばたした。
「うう……。やっぱ朝早くて夜遅くて、不規則な食事してれば当然かぁ。
最近化粧ノリも悪いし」
「しばらく忙しかったからね」
「う〜」
「でも、僕は綺麗であろうと努力する美里が可愛いのであって、実際に
綺麗かどうかはそんなに問題じゃないよ」
「……恭介、微妙にフォローになってない」
あれ。言い方間違えましたか。
「……えぇとつまり、仕事、好きでしょ?」
「……うん」
「そんな美里だからいい」
「きょーすけー!」
ごろごろと懐いてくる美里の頭を撫でる。
「大好きーv」
「うん。でも体は大事ね」
「はぁい」
綺麗でいることと健康でいることは、結構近い位置にある。
ただ手間かけたいだけなら、結婚しようって言うんだけどねぇ。
あれこれ考える恭介が、問題の下着で迫られるのは、もうちょっと後のことである。

770名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 03:31:38 ID:3rfHFK7i
微妙にお題から外れてる気がする。
ごめんなさい。
771名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 09:19:41 ID:O6uyw2hE
>>770
GJ!何ら問題はないですよ


>問題の下着で迫られる
続編期待してますから
772名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 08:03:39 ID:EDGpqkPt
ぐばあっ(血を吐いた音)

甘い……甘いよ……いやGJ
773名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 22:04:57 ID:EDGpqkPt
てかここ勝手に拝借するの有り?
774名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 23:27:50 ID:Pkb/22l9
リレーの延長線上ってことになるか?
まぁ本人がいいって言ってるんだから、この件に関しては無問題ジャマイカ。
作品に萌えて創作神が降臨するってのもあるだろうし。
ただ、自分なりの味付けを加えたオリジナルに仕上げた方が無難かもしれんけどね。
775名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 11:14:14 ID:7zsBimZT
甘々な流れを豚切って投下。



「……今、なんと言ったかしら?」
 彼女は精一杯の平静を装ってそう問い返した。はりついたような笑みに
なっているかもしれないが、確かめる術はない。ただ、綺麗に磨き上げた爪が、
持ち上げているティーカップの縁に触れて、かちかちと震えていた。
 そのカップを優しい手つきで女から取り上げて、彼は先程の言葉をゆっくりと
繰り返した。
「もう、ここは貴女がおいでになる場所ではありません、と申し上げました。マダム」
 ふんわりと巻いた髪が落ちかかる、剥きだしの肩がはっきりと揺れる。
「わたくしは、あなたと過ごすために来ているのよ、ハル?」
「存じております」
「ここまで来て、お茶だけ飲んで帰れと?」
「イエス、マダム。そして、もうおいでにならないでください」
「それはどういう意味!? あなた、わたくしの言うことが聞けないというの!?」
「その通りです、マダム」
 甲高い声で叫んだ彼女に、彼は穏やかな口調を崩さず、しかし断固として頷いた。
 彼はいつもそうだ、と女は思う。
 彼女がどれほどヒステリックに泣こうとわめこうと、彼は泰然と構えて嫌な顔
ひとつ見せない。女の言葉に耳を傾け、黙って寄り添い、宥め、落ち着かせ、
しかし女に非があれば柔らかに指摘する。その態度があまりに優しくて、女も
最後には納得せざるをえないのだ。
 けれど―――今回ばかりは、無理だ。彼がなんと言おうと、絶対に頷くことは
できない。
 唇がわななく。なんとか息を吸い込んで、吐いた。
「二度は許さないわ。……わたくしを満足させるのがあなたの務めです。果たしなさい」
「マダム」
 ハルは女の前に恭しく膝をつく。その瞳は優しいままだ。女の両手に自分の
それを重ねる仕草も、敬意と思いやりに溢れて変わらない。けれど、その首は
ゆっくりと横にふられた。
「そのご要望にはお応えすることができません。おわかりください」
「どうして―――わたくしを捨てようというの!? まさか」
 瞬間脳裏をよぎった想像に、全身の毛が逆立つような気がした。
「まさか……他の女ができたのね!? そうなんでしょう!」
 叫ぶ彼女に、彼は目を伏せて小さく首をふる。少し、咎めるような声で彼女を
呼んだ。
「マダム。……私は、そのようにはできていません。ご存知のはずです」
「でも―――だって、ハル!」
「私は……私達は、けして裏切らない恋人です。そういう、商品ですから」
 ほのかな笑みと一緒に吐き出された言葉は、むしろ悲しみに彩られているように
聞こえた。
 ―――それとも、そう聞こえているだけだろうか。
 女はきつく唇を噛んだ。
「……そうよ。あなたはわたくしに買われているの。四の五の言わずに抱きなさい」
776名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 11:15:57 ID:7zsBimZT
「それが、貴女の真の望みなら……そうするのですが」
 彼は、そっと彼女の目を見上げた。
「私は貴女の下僕です。貴女のお望みを叶えるためだけに存在しているのです。
観劇でも買い物でも、どんな場所でもお供しますし、歓楽をお求めならいくらでも
さしあげましょう」
「なら!」
「……最近、貴女は夜中に暗い顔をなさっておいでです」
 困ったように、彼は口を開いた。
「ご存知のように、私に睡眠は必要ありません。寝ているようでも、常に貴女の
ことを見ています。あらゆるデータをもって、貴女が心地よいよう動くために」
「……それは」
「それができるのは、私がセクサロイドだから。……感情があるように見えても、
それはそのように組まれた行動パターンに従っているからに他なりません。
貴女が……最近お悩みの通り、私に愛情はないのです」
「―――ハル!」
 悲鳴のように言葉を遮った女を、彼はただ見つめる。その眼差しは深い。
―――深い、ように思える。
「私に感情を読み取れる貴女は、まさしく人間らしい方なのです。愛情に愛情を
もって返して欲しいと望むのも、人としてはごく自然なこと。……ですから、
貴女はもうここにいてはいけません。あなたの心に心で応え、愛してくれる人を
見つけなくては」
「……そんな人、いないわ」
「いますよ。必ず」
「いないわ! いたら……そんな人がいるなら、わたくしはここに来たりはしなかった!」
 彼は穏やかに笑って、立ち上がった。上体をかがめ、そっと彼女の額に唇で触れる。
「―――大丈夫、あなたは魅力的な女性です」
「ハル」
「貴女が求めているのは心です。それは、私には差し上げることができません。
心を得ようと思えば、傷つくことも、辛いこともあるでしょう。……人とは、難しい
ものです。けれど、諦めないでください。貴女は、セクサロイドに過ぎない私を、
人間と錯覚するくらいに優しい方なのですから」
 優しく触れる指先も、その体も唇もこんなに温かいのに。
 私は人ではない、と彼は言いきる。
 そんなこと―――わかっていた。とうの昔に。
777名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 11:16:30 ID:7zsBimZT
 ……だから、か。
 何かが胸の奥にすとんと落ちた。ぽつりと、つぶやく。
「わたくしは……人間なのね……」
「そうです」
「感情が……あるの。ハル、あなたが本当に……好きだった」
「光栄です」
「でも苦しかった。マスター登録さえされていれば、あなたは誰でもいいんだわ」
「……ええ、その通りです。マダム」
 ハルがゆっくりと女の髪を梳く。
「私の役目は終わりました。……貴女は幸せになれる方です。そのことを、どうか
忘れないでください」
 深く一礼して、彼は女に背を向ける。その姿が扉の向こうに消えようとした瞬間、
女は大きく声をあげた。
「ハル!」
「はい」
「もしいつか……そんな人ができて……表のお店であなたを呼んだら……あなたは
一緒に、お茶を飲んでくれるかしら……」
 彼は、彼女が愛した顔でふわりと微笑む。
「ええ、喜んで。アネッサ」
 そのまま、もう二度と振り返らずに、出会ってずっと二人が過ごした部屋を出て行った。
 ―――アネッサ。
 それは昔、『幸せな子』と意味を込めて、祖父がつけてくれた名前だ。
 ハルが―――彼が今まで、一度として呼ばなかった、彼女の。
 たくさんの思いが込みあげて、アネッサは一人、気が済むまで泣き通した。



「マスター情報をダンデータフォルダへ移行します。よろしいですか?」
「はいよ。……寂しいか、ハル?」
 男の問いかけに、彼は静かに答えた。
「私が寂しいと感じることはありません、オーナー」
「……うん、そうだな。さ、次のお客様が待ってるぞ」
「はい、オーナー」
 データ移行承認を出す寸前、彼は、唇だけで小さく、さよなら、と呟いた。



     END
778名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 12:49:27 ID:707czyJO
ありふれた設定だが自然な流れでぐっとくるな。切ねぇぇぇ。
そして何よりエロカッコヨス。GJ!
779名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 13:31:06 ID:h3QaDdI4
う、うぅ……格好いい、格好いいよ、ハル!
780名無しさん@ピンキー:2007/04/06(金) 23:51:25 ID:vm0rME8V
こういうのは嫌いじゃない。職人さんGJと思う。

……けど最近、なんか女性比率が増えたっつーか、骨太のカコヨサ分が足りない気がする。
泥臭さが欲しい。
781名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 22:45:31 ID:QMpQF7TR
あげ
782名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 19:57:44 ID:fQDX6+zo
ほしゅ
783名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 01:03:11 ID:iduQNmTy
神横井
784名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 08:59:07 ID:9iZcAKDS
「ほしゅ」「ほしゅ」
「あんた好きだねぇ」
「保守」
「こんなスレ落としちまってさぁ」
「ほしゅ」「ほす」
「ほらほらあんた『欲す』になってるよ
ヤッパリ、欲しいんでしょ」
「ほしゅ」
「あんたも頑固だねぇ」

なんか勢いで書いてみた…
785名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 09:46:54 ID:QCALM4aJ
>>784
電車内でニヤニヤしちゃったじゃんか(;´д`)
どうしてくれる。
786名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 22:29:04 ID:vcLOq4tt
その日、知り合いの経営する見た目普通なコーヒーショップに寄った。
その知り合いはガキの頃からの付き合いで、そのコーヒーショップは俺の仕事の窓口の一つだった。

俺は別に運命とか神とか信じちゃいなかったんだが、その店のカウンターに、天使を信じてもいいぐらいには綺麗な娘がいた。
その娘は明らかに偽名を名乗った。だから俺もいつもの仕事用の名を名乗った。
いまいち分かりにくかったが、その娘はどこかのいいところの子供なのは確かだった。

ストーカーから逃れるため(にしてはやり方が微妙だが)に名前を変えて一人暮らしを始めたが、すぐにストーカーに見つかってしまい、いろいろと悩まされていた。らしい。
全く証拠を残さない相手らしく、警察は動かず、親が雇った人はまるっきり役に立っていないとか。
それで、この界隈でそういうことに慣れてるという噂の俺に依頼をしに来たと言った。

その後、あまりシリアスにもなりきれない展開を経由してストーカー騒ぎは解決した。

………解決といっても、そいつを逆にはめてやって警察に投げ込んだだけだが。
787名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 22:30:54 ID:vcLOq4tt
んで俺としては仕事分の金もらってさよなら。
のはずなのに何を血迷ったかその娘、高槻 晴菜(偽名であることは認めたが本名を教える気は無いらしい)はいきなり「依頼料は身体で払います」とかトチ狂ったこと言い出して、毎朝最初に出会ったコーヒーショップで俺を待っているのだ。
788名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 22:33:55 ID:vcLOq4tt
軽く欠伸をしながらコーヒーショップ『かんな』のドアを開けて中へ入る。
現在時刻は午前六時半。
もちろん喫茶店としては営業時間外、俺のダチでもある『かんな』のマスター、乾 直(いぬいなお、通称カンナ)が開店準備に励んでいるはずだ。
「おはようさん、朝からご苦労様」
俺はカンナにのみ意識を向けて挨拶する。
が、カンナは素知らぬ顔で、というよりコイツをどーにかしろみたいな目で俺を睨んでから棚の整理を始める。

「おはようございます、今日はどちらへ行かれるんですか?」
カンナの代わりに応えたのは高槻 晴菜(偽名)・二十歳(自称)。
俺の請けたとある仕事の依頼人、なのだがこの依頼人、金が無い、わけは無いだろうに金を払わないばかりか、本人が〈自分が〉依頼料だと言って聞かないのだ。

「アンタには言ってねえ、というより教えたら―――つうか教えなくてもついて来るんだよなアンタ………」
「はい♪―――貴方が私を貰ってくださるまで」
「あぁーもう! だからそーゆう発言をやめろ!」
「………え?」
「え?―じゃねえ!
俺がいつアンタの身体を要求したんだよ!」
「…してないんですか?」
789名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 22:35:03 ID:vcLOq4tt
なんでそこで瞳をうるうるさせるんだ、あんたは…。
「してない」
「そんな―――じゃあどうやって依頼料をお支払いすれば」
「フツーに金払え!」
「……えと、家出中なのでまとまった金が用意できな…」
「嘘つけ…この間のストーカーうんぬんの話は家族も了解してる筈だろ?」
「貴方に初めてを貰って欲し…」
「こんな迫り方する奴が…初めて?」
「う…。貴方はこの美少女の身体に欲情しないと言うのですか?」
―――うわ、確かに可愛いし、抱きたいと思うぐらいには良いスタイルしてるが自称二十歳が〈美少女〉って………自分で。
「………」
「何故黙るんですか」
「いや、ベツニ、何も?」
「で、受け取ってもらえますね?」
「……いや、無理だ。悪いが心と身体を金などでは買わないし、換えるつもりもない」

「「っ………ぁぁ!」」

一瞬店内の空気が停止した後、カンナは何故か頭を抱えているし、晴菜は更に瞳を潤ませて俺を見ている。
「?…どうした?」

「馬鹿」
とカンナ。
「絶対貰われてみせます!」
と晴菜。

何がなんだかよく分からないが、一つだけ分かったのは晴菜につきまとわれる暮らしは、まだ当分続くらしいということだった。


「………勘弁してくれ」
790名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 22:39:22 ID:vcLOq4tt
すまん。なんかスレにおもいっきし合ってないよね。
続きは書かない。
791名無しさん@ピンキー:2007/04/23(月) 19:17:57 ID:T+tV4n4K
いや、スレをまたぐシリーズがあっても良いと思う。
このスレに書いたのが押しとどめ編、違うスレに続編とか。
792名無しさん@ピンキー:2007/04/24(火) 00:21:58 ID:kOLZK0N9
こないだカラオケで初めてルパン三世の一番有名な曲の歌詞を知った。
まさにエロカッコ良く押しとどめていて、一人で禿萌えた。
他にこのスレに合う曲ない?
793名無しさん@ピンキー:2007/04/24(火) 07:11:45 ID:d4Pa2tBE
あぶない刑事の挿入歌、柴田恭兵の「ランニングショット」はどうだろう。
794名無しさん@ピンキー:2007/04/27(金) 01:21:02 ID:njymcz/s
圧縮回避保守
795名無しさん@ピンキー:2007/04/28(土) 01:01:42 ID:RlJwBS57
HIV検査陽性だったから無理。
796名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 01:11:50 ID:Pe0RFO/n
「ふははははは! よくぞここまで辿り着いた、光の勇者よ!」
「貴様が闇の魔王か!?」
「いかにも!」
おどろおどろしい輪郭の影が、朗々と声をあげた。謁見の間を思わせる大広間の
最上段、玉座と思しきものに、それは泰然と腰かけていた。

思しき―――というのは、椅子にしてはいやに幅が広いからだ。四方を幾重にも
垂れ幕が囲っている。正面だけが左右にかき分けられて、立派な飾り房で
止められていた。

影はゆったりと立ち上がる。勇者は改めて剣を構えた。
「……それが貴様の獲物か」
「そうだ! これこそ聖剣エクスカリバー! これをもって貴様を下す!」
「いいだろう、相手にとって不足はない! 人間とは前例のないことだが、
我が求愛者たちを残らず倒してみせたその意気やよし! 慣例に従い夫と認め、
見事貴様の子を孕んでみせよう!」

「…………」
「…………」

しばし見つめあう勇者と魔王。

「……おっと……?」
「そうだが? どうした、寝台はこれだ。早く来い」
「いやあの……え? なんで?」
「なんでも何も。今年は二百年に一度、我が婚姻が行われる年だ。次期魔王の
父となる者が脆弱では話にならん。腕に覚えのある者が命をかけて競い合い、
勝者が我が夫となる。古来よりの伝統だ」
「え……。それじゃその、魔物が人間襲ったり攫ったりは……」
「喰って力をつけるのだろう。男のことはよくわからんが。稀に献上品として
持ってくる者もいるな」

「つまり……」
勇者はぎこちない動きで魔王を指した。

「お……女ぁっ!?」
「見ればわかるだろう」
ちょっと不快げに魔王。
「魔物の性別なんかわかるかっ! こちとら人間だっ!!」
「む。しかし求愛レースに参加したのだろう」
「そ……それはたまたまっ」
「たまたま?」
魔王は傷ついたようだった。
「元より次代の魔王の父となることが目的で、我がことなど子を残すための
腹でしかないと見られる覚悟はしていたが……たまたま……そうか、たまたま……」
「ちょ、待て! お前そんなナリで本気で落ち込むなよ! 俺が悪いみたい
じゃねぇか!」
「悪い」
恨めしげに魔王。
「魔界一の美貌と讃えられたこの我が」
「え。そうなの?」
「〜〜〜〜っ! こんな者を夫にせねばならんとは―――っ!!」
「や、無理。頼むから別の奴探して」
797名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 01:16:36 ID:Pe0RFO/n
「別のは貴様が殺したろうが!」
「……あー……ごめん」
気まずい沈黙。

ややあって、魔王が低く笑い出す。
「ふ……ふふふふふ、ふははははは! なんの、我が魔力を舐めるな!
こうなったら人間の女に化けてくれるわ! 貴様には何が何でも夫の務めを
果たしてもらうぞ! さぁ言え、どんな姿が好みだ!?」
「いや……そんなこと言われても……」
勇者は困ったように自分の姿を見下ろした。
「俺も、女だし」



その後魔王の婿取りがどうなったのか、いかなる古文書にも記されてはいない。



798名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 08:42:29 ID:CjPTq3cM
ちょw 魔王www
正直オチの見当はついたが、流れが流れだけに楽しく読めた。すげぇw
799名無しさん@ピンキー:2007/05/05(土) 13:09:19 ID:F8hzn7Aw
人間の女に化けられる位だから、
多分人間の男になって女勇者と…
800名無しさん@ピンキー:2007/05/08(火) 23:09:09 ID:Uqb8OJ6w
あげ
801名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 23:46:52 ID:f0j7oMg7
・季節外れな2月頃の話
・ホラー表現あり



 彼は夜半に目を覚ました。
 自室は暗い。ありふれた六畳一間の1K。安物のカーテンは外の明かりを
たやすく透過させ、数少ない家具の輪郭が朧に浮きあがっていた。
 カンカンカン、と遠くで踏み切りの音がする。とすれば時刻はまだ終電前だ。
夕方、二十四時間耐久レースのようなバイトから戻って、食事もそこそこに
万年床へ倒れこんだ。六時間ほど眠った勘定になるが、彼は結構寝汚い。
いまだ覚醒しきらない頭でぼんやりと、どうして目が覚めたのだろう、と思った。
 踏み切りの音はまだ続いている。元が警報音であるために、よく響く上
やたらと癇に障る音だ。ましてや随分遅くまで鳴るものだから、近くの住居が
嫌われるのも無理はない。おかげで相場より随分安く借りられて、フリーターの
彼にはありがたい話だった。睡眠中の雑音は気にならないタチだ。だからたぶん、
この音が原因ではない。
 まぁいいか、と彼はこだわりもなく思考に見切りをつけた。たまたま目が覚めた、
答はそれで十分だ。
 彼はもう一度眠るべく寝返りを打つ。否、打とうとして、異状に気づいた。
 体が動かない。
 金縛りか、と思った。少々息苦しさを感じたが、彼は構わず寝ようとした。
踏み切りの音は止んでいる。静けさの戻った室内で、彼が再度まぶたを閉じたとき、
ふと、かたん、と小さな音がした。
 それは六畳間のドアの向こう、玄関の方から聞こえたように思えた。夜中と
いってもまだそう遅くはない。同じアパートの住人が、何かしている音が壁を
伝わってきたのだろうか。
 彼はぼんやりとしながらそう思って、続いて聞こえてきた、ずるり、という何か
濡れたものをひきずるような音に眉をひそめる。今のは、なんだか明らかに
台所から聞こえた気がした。
 訝しさに耳をそばだてていると、一定の間隔で、ぺたり、ずるり、と音は続く。
台所だか通路だかわからない狭い空間を、ゆっくりとこちらに向かっているように。
 ―――いやいやいや。俺、ユーレイとか見たことないし。
 心の中で自分を笑う。とはいえ、耳を澄まさずにはいられなかった。動悸が
激しくなるのを感じる。
802名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 23:49:03 ID:f0j7oMg7
 ぱたり、ずるり。
 ぺたり、ずるり。
 いつの間にやら息を潜めて聞き入っていた音は、ちょうどドアの向こうで止んだ。
 もしも幽霊なら、そのまま帰ってほしい。単なる音ならこのまま止んでくれ。
 彼は身動きのきかないまま、布団の中でそう願う。こんなおかしな『単なる音』を
たてるのがどのような現象なのかは不明だったが、それはもはやどうでもいいこと
だった。
 あらゆる神経がドアの方へ向かう。しばしの静寂。
 ―――終わっ、た?
 何事もなくある程度の時間が過ぎて、彼はほっと息を吐く。顔が動くなら、はにゃ、
と気の抜けた笑いを浮かべたことだろう。変な音だったが、気のせいだ。あるいは
起きているつもりで寝ぼけていたのかも。
 やれやれ、と彼は思う。思ったところで、こん、こん、とゆっくり二回、ドアが鳴った。
油断していた分、心臓が跳ね上がった。
 ―――いや。いやいやいやいやいや。
 意味もなく心中で『いや』を繰り返す。
 ほら、俺今動けないし。だからノックされても困るし。おとなしく帰ってくれ、な?
 必死で音にそう願う。また、しばらくの沈黙。
 やがてしくしくとすすり泣く声が聞こえてきた。痛いよ、と合間に洩れる呟き。
若い女―――おそらくは高校生くらいの、少女の声。
 ―――ちょ、マジ本物!?
 いまだに体の自由はきかない。ほんの少し枕元に手を伸ばして、ケータイで
誰か友人にでも電話すればすべてが消える気がするのに、指先はぴくりとも
動かなかった。
 恐怖が背筋を這い上がってくる。それでもどうすることもできずにいると、不吉に
濡れた音が再開する。
 ぺたり、と。
 それは部屋の中から聞こえた。
 どっと冷たい汗が噴き出す。ドアは開かなかった。間違いなく開かなかった。
なのに音は六畳間に侵入して、いまや泣き声がはっきりと耳に届く。
 部屋の隅で寝ている彼のもとまで、もう距離は幾らもない。普通に歩けば三歩か
四歩、たったそれだけのわずかな隔たり。
 彼は必死で首を巡らそうとした。見えないからこんなにも恐いのだ。見てしまえば
何もないに違いない。常と変わらぬ部屋の様子だけがそこに在って、拍子抜け
することだろう。
 が、どれほど力を込めようと、やはり体はほんのわずかすらも動かなかった。
ひゅー、ひゅー、と自分の荒い呼吸が耳に届く。
 ずるり、ぺたり。
「……痛いよ……痛いよ……」
 ずるり、ぺたり。
「……あたしの脚……どこいっちゃったの……」
 ―――この生臭さはなんだろう。打ち捨てられ錆びた鉄の、つんと鼻にくる臭い。
 ずるり、ぺたり。
「……どこを探してもないの……」
 ―――そういえばこの音、一体何をひきずっているのか。
 ずるり、ぺたり。
「……だからお願い……」
803名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 23:49:58 ID:f0j7oMg7
 強ばりきった頬に、ひやり、と冷たい手が―――そう、人の手としか思えない
ものが触れる。彼の視野に、ついに泣き濡れた少女の青白い顔が現れた。
 鼓動も呼吸も、限界まで高まる。一方で咄嗟に、低い、と思った。彼は床に
寝ている。なのに少女の顔の位置が。座高ほどしか。
 ほんのわずか、首が動いた。違う、少女の両手が彼の頬を挟んで、彼女の
方へ向けたのだ。視界が巡って、彼女の全身が見えるようになる。
 ―――床に、血の川が流れていた。
 そこに浸かるようにして、少女の体がはえている。ドアからまっすぐにつながる
川の両側には、点々と赤い手形がついていた。
 一瞬で彼の脳裏に、少女の移動の様子が描かれる。両手を前に出して、
体を支え、胴体を引きずって、ずるり、と前進する姿が。
 彼は歯の根も合わないほど震えていた。少女の唇が笑みの形に釣りあがる。
「お願い……あなたの脚を、あたしにちょうだい……」
 瞬間、激痛が太股のつけねに走った。途端に呪縛が解ける。

 彼は、声の限りに絶叫した。

804名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 23:53:26 ID:f0j7oMg7
「こちらです」
「どーも」
 大家の五十嵐が開けてくれたドアをくぐり、木下祐は問題の部屋に足を
踏み入れた。人のいない部屋は寒々しい。家具や生活用品の類がひとつも
ないともなれば、なおさらだった。冷え切ったソフトフローリングの床が、靴下
越しに体温を奪っていく。
 狭い台所を抜け、祐はドアを開けて六畳の部屋へと入った。そのまま窓辺に
寄って、がたがたと雨戸を開ける。
「電気と水道は使えるようにしてあります。……あの、本当にガスはなくて
よろしかったんですか」
「コンロもないのにガスが使えても仕方ないでしょう。大丈夫、一晩くらい
コンビニ食でなんとかなりますから」
「はぁ……」
 祐は越してきたわけではない。そう長いことこの部屋に留まるつもりもなかった。
 五十嵐は落ち着かない様子で部屋を見回すと、祐に部屋の鍵を渡し、
それでは……、と頭を下げそそくさと立ち去った。祐はやれやれと肩をすくめ、
窓を開ける。寒いが、前の住人が引越してからしばらく閉め切られた部屋は、
陰気な気配がしていた。空気は入れ替えた方がいい。
 そうして、下の駐車場に止めた車のトランクから、さしあたって必要なものを
運び入れる。電気ストーブ、電気コンロ、やかん、寝袋。途中のコンビニで
調達した食料、トイレットペーパー、ロウソク、その他こまごましたもの。何度か
往復するはめになってしまった。
 ひととおり今晩を過ごす準備が整うと、ベランダに出て一服した。細く煙を
吐き出していると、カンカンカン、と踏み切りの音が聞こえてくる。周囲の下見は
してあった。踏み切りからこのアパートまでの距離なら、電車の走行音も聞こえる
はずだ。案の定、さほど時間を置くことなく、電車が走り去っていった。確認して、
祐は一人頷く。
 祐のもとへ五十嵐がやってきたのは、三日前のことだった。しどろもどろに、
アパートに少女の霊が出る、と言う。五十嵐はこのアパートには住んでいない。
しかし、姪が受験のためこちらでしばらくの間滞在することになったので、ちょうど
空いていたアパートの部屋を貸したのだという。

805名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 23:55:16 ID:f0j7oMg7


「数日経って、姪が二時過ぎに半狂乱になって電話をしてきました。幽霊が出た、
と泣きじゃくり、私が車で迎えに行く間、電話を切ることも嫌がりました。仕方ないので、
妻がずっと電話口で慰めている有様で」
 祐は無感動に相槌を打つ。都内のある喫茶店でのことだった。
「行ってみると、姪は立ち上がれもしませんでした。なんとか家に連れ帰り、
よくよく話を聞いてみると、金縛りにあって、じっとしているうちに女の子の霊が
出たと言うんですわ。脚がなくて、両手で体支えて近づいてきた、と。そんで、
おまえの脚をくれと言われた途端、両脚のつけねがものすごく痛んだと」
 祐は軽く手を挙げて五十嵐の言葉を遮った。
「姪御さんはその日の日中、試験じゃありませんでしたか。あるいは翌日辺りに
試験を控えていたとか」
「あ……はぁ。確かに、最初の試験があった日の夜でした」
「ならばそれは、おそらく心霊現象ではないと思います」
「いや、そんなはずは」
 五十嵐が不満そうに言うのを、祐は宥めるように笑ってみせる。
「金縛りというのは、簡単に言うと体が寝ていて頭が活動している状態です。
これをレム睡眠といい、この状態のときに夢を見ることがわかっています。
このとき、なんらかのきっかけで半端に意識状態が覚醒してしまうことがある。
これが金縛りです。日中激しい運動をして体が疲れているとか、神経が興奮
していたりするとなりやすい」
「いや、しかし」
「本人は起きているつもりでも、実際はまだレム睡眠中なものだから夢を見る。
しかもこの状態の夢は五感にかなり鮮明なものになりやすい。幻視、幻聴、
幻触なんかがメジャーですが、まぁ寝ぼけているだけです。実際に金縛りに
あっている人間を観察すると、目を閉じたままであることの方が多いんですよ。
科学的に認知されている事実です」
「だが理恵の脚が動かないんです!」
 いつものとおりの説明をした祐に、五十嵐は焦れたように叫んだ。え、と祐は
口を噤む。
「私だって、幽霊やらなんやらを頭から信じたわけじゃない。受験生ともなれば
結構なプレッシャーもあるでしょう。まして、慣れない環境で生活しているわけ
ですしね。疲れているだけだと慰めて、その夜は妻と一緒に寝かせました。
しかし、翌日になって脚が動かないというんです。医者に連れて行きましたが
異常はないという。それでも精神的なものだと思いました。受験が嫌で、逃避して
いるんじゃないかとね」
806名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 23:56:14 ID:f0j7oMg7
「……正しいご判断だと思います」
 同意した祐を、五十嵐は睨めつける。
「けれども、同じ頃不動産屋から電話がありました。以前部屋を貸していた若者が、
引越すにあたって『幽霊が出た』と洩らしていたというんです。こういう商売は、
悪い噂が立つと何かと差し障りがある。大丈夫かと問い合わせてくれたんですわ」
「はぁ」
「それで、アパートの住人にそれとなく話を聞いてみました。……十五人全員、
同じ体験をしていた」
 祐は目を丸くする。
「単身者用アパートで、こんなご時世ですから、住人同士の交流なんてないに
等しいでしょう。そんな状態で皆が判で押したように同じ話を語るのです。これは
もう何かあるとしか」
「ちょっと待ってください」
 祐は話を遮る。
「皆さん脚が動かないんじゃ困るでしょう。どうしてるんです?」
「脚が動かないのは、次の犠牲者が出るまでの期間だけです。大体二日から三日、
長い人で一週間。怖い思いもしたし、おかしな体験でしばらくは怯えていたけれども、
仕事や学業がある中で、そうそう引越すこともできんでしょう。人に話して信じて
もらえるものでもないし、後遺症もなくなった。だから黙っていたというんですな」
「……なるほど」
「恐らく、引越した若者が最後の遭遇者でした。夢かと思っても、脚が動かない
証拠があるんじゃそりゃあ怖いし、何より生活できないでしょう。そうして引越した
ところに、しばらくして姪が入ったのではないかと」
「一度来た人のところには、二度は来ない?」
「今のところ、そうです」
「ご近所で似たような噂は」
「聞きません。……が、おおっぴらに話される内容でもないと思います」
「わかりました」
 祐は頭を下げる。
「早合点で不快な思いをさせて申し訳ない。お引き受けします」

807名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 23:57:20 ID:f0j7oMg7


 祐は持参した灰皿に吸いさしをねじこんだ。五十嵐の妻に協力してもらって
噂を集めたところ、この近辺では半年ほど前から似たような事例が起こっている
らしい。よく今まで表沙汰にならなかったものだ、と思う。
 その現象は踏み切りの音から始まる。しかし、電車の音を聞いたという者は
いなかった。時刻は大概夜中の二時頃。非常にスタンダードな時間で泣けてくる。
確かにその時刻では、電車は終わっているだろう。実際には聞こえないはずの
警報音。
 しかしまぁアレだね、と祐は心の中で呟く。
 五十嵐の家はここから車で十分ほどだ。歩けば駅からそれなりの距離になる、
客室がない、親戚の家は何かと窮屈だろう……といった諸々の理由でこの
アパートに滞在を決めたらしいが、短期間とはいえ何もない部屋で生活するのと
どちらがマシなのだろう。一応、小さな机と寝具くらいは入れたらしいが。結果として、
理恵は今受験に支障をきたしている。
 おとなしく最初から世話になりゃよかったのになぁ、と思うのは、自分が祖母に
育てられたせいだろうか。とはいえその心情を考えるとやっぱり可哀相なので、
早く解決してやりたいと思う。
 ―――それに、霊の方も。
 祐は部屋に戻ると、コーヒーを入れてから商売道具一式をとりだす。筆、文鎮、
フェルトの下敷き。岩塩でできた盆の上に硯。床が冷たいので寝袋を広げて座る
場所を作る。大きく深呼吸して、墨をすりはじめた。
808名無しさん@ピンキー:2007/05/12(土) 23:58:52 ID:f0j7oMg7

     *

 ケータイのアラームで仮眠から覚める。午前一時半。よっこいしょ、と伸びを
して部屋の様子をうかがった。まだ異常はないようだ。
 外の明かりと電気ストーブの光でそれなりに物は見えるが、ライターを探って
用意していたローソクに火をつける。一本、二本、三本。眠気覚ましにもう一度
コーヒーを入れて一服すると、正座をして再度墨をすりなおす。心静かにその時
を待った。
 ―――カンカンカンカンカン
 来た、と祐は小さく呟く。立ち上がって六畳間と台所を隔てるドアを開け放った。
玄関に向かって座り直す、その膝の前には書道具がある。
 ことん、と小さな音がするや、滲むように少女の上半身が扉から湧いて出た。
祐と目が合って、ぽかんとした表情を作る。―――理性があるのだ。
 よかった、と祐は息を吐く。これなら大分楽に済みそうだ。よぉ、と話しかけた。
「こんばんは」
「……こ……こんばんは……」
 少女は戸惑ったように言った。その下、腰と床が接している部分に、じわりと
赤い血が滲む。
「痛そうだな。可哀相に」
 祐が言うと、じわりと少女の目に涙が浮かんだ。うん、と頑是なく頷く。
「痛いの。とても痛い……」
「だろう。だから、俺に診せちゃくれまいか。治してやれると思う」
 少女は瞬く。
「あなた……誰?」
「俺ぁこう見えて医者でね。ただし、幽霊専門」
「お医者さん……?」
「おぅ。いや、ちょっと人間の医者とは治し方が違うが、実際治してやれるん
だから医者と言っていいと思う。あんたは患者で、医者のところに来た。札を
見ただろう?」
 少女は小さく頷く。夕刻、最初にすった墨は玄関に貼り付けた札と、祐自身に
使った。両手にくねくねと黒い文字が書かれているのが少女にも見えるはずだ。
札は少女をスムーズに招くもの、祐のは霊の影響を避けるためのものだ。
金縛りにあっては治療ができない。
「でも……あたしの脚、見つからないの」
「大丈夫だ。名前を聞かせてくれるか?」
「斎藤……亜紀、です」
「了解。俺は木下祐だ。で、斎藤さん。俺に治療させてもらえるかい?」
「は……はい」
809名無しさん@ピンキー:2007/05/13(日) 00:00:34 ID:f9r6vxKk
「そこじゃちょっと不便だな。動くのが辛けりゃ俺が運ぶが、どうだろう。傷口擦る
のは痛いだろう」
「あたしに、さわれるんですか?」
「何言ってんだ」
 祐は笑う。
「聞いた話じゃ、斎藤さんは人に触ってるんだろう? そっちから触れるもんが、
こっちから触れないわけあるかい」
「え? あ……うん? そ、そうなんですか?」
 しきりに首を傾げる少女に、そういうもんだ、と断言して祐は立ち上がる。
近づいて、背後にまわった。脇の下に腕を入れる。
「あとちょっとの辛抱だからな。頑張れよ」
 はい、と頷いた少女を抱き上げる。ぱたた、と赤い液体が床を叩いた。
痛ましさに祐は眉をひそめる。少女の体は体温がなく、ひんやりと冷たかった。
「あ……あの、あたし重くないですか」
「軽い軽い。気にすんな」
 六畳間までは五、六歩の距離、あっさりと体を運んで床の上に寝かせる。
そうして、文字の書かれた手の甲を見せた。
「これ、見えるか?」
「はい。何ですか?」
「お経」
「……へぇ」
「これと、同じじゃないけど似たようなものを斎藤さんの体に書く。やることは
それだけだ」
「なんか……耳なし芳一みたいなんですけど……」
「うん、まぁイメージとしてはそんな感じだ」
「……あたし、お経なんか書かれて大丈夫なんですか。なんか苦しんじゃいそう」
 祐はぽんぽん、と少女の頭を撫でた。
「うん、なんかオカルトっぽいマンガとかだとそんなイメージだよな。でも、仏さん
はこの世のすべてのもんが幸せになるよう願ってる人……いやヒトじゃないけど、
願ってるんだ。その仏さんの言葉が、苦しいようなことは絶対にない。
……信じられるか?」
「えぇと……あたし、仏教徒でもないんですけど……」
「問題ない。大丈夫だ」
 言い切った祐に、少女はしばらく迷ったようだったが、頷いた。
「お医者さん、なんですよね? じゃあ、お任せします」
「任された。……でな?」
「はい」
「若い娘さんには言いにくいんだが、服、脱がさせてもらう」
 少女は言葉に詰まったようだった。
「俺は医者だ。人間の場合も手術衣に着替えるだろう? 変な意図はない。
斎藤さんは俺にとって……なんつーか、女じゃなくて患者なんだ」
 少女は顔をうつむけて、恥じらいながら小さく、お任せします……と呟いた。
はいよ、と返して、祐はなるべく優しく着衣を剥いでいく。
「恥ずかしかったら、目をつぶってるといい」
 囁いて、前ボタンをはずすと、背中を支え、腕を抜いた。そのままブラのホック
を外し、これも取り去る。優しい手つきで寝かせた。
「ちょっと辛抱してくれな」
 腰に手を伸ばし、なるべく傷に触らないよう、血に染まった腰周りの布も外した。
少女の白い裸身が、ロウソクの赤みを帯びた光に浮かびあがる。
810名無しさん@ピンキー:2007/05/13(日) 00:01:48 ID:f9r6vxKk
 祐は筆をとりあげた。
 まずは少女の額に、ゆっくりと筆先を下ろす。ひやりとしたのか、少女は一瞬
体を強ばらせた。
「なるだけ楽に。力を抜いて」
 続いて頬に穂先を滑らせる。
「……あ。痛くなくなった……」
「そうか、よかった」
 首に筆が下りると、くすぐったそうに肩をすくめた。
「はいはい動かないでねー。字が崩れるから」
 右腕から右の手の甲まで。左腕も同じように。筆を硯に戻して、再度書き始める
ときに、ぴくんと少女の体が震える。冷たいのだろう。
 鎖骨から胸元へ。徐々に少女の体に熱が戻ってくる。
 胸を筆が撫ぜたとき、あっ、と小さく少女の唇から言葉が零れた。ぎゅっと強く
目をつぶる。
「なんか苦しいか?」
「いえ……大丈夫です……。もっと……続けてください……」
 恍惚を帯び始めた口調に、祐は心の中でだけ、やっぱこの方法にはいささか
問題があるよなぁ、と呟く。だが表面上は何も気づかぬふりで筆を進めた。
わき腹、臍の上。
 そうして丹田に最後まで経文を書ききる。筆を置いて、静かに合掌した。
 と、すぅっと文字が薄くなる。白い肌に吸い込まれるように消えて、よし、と祐は呟いた。
「斎藤さん、目を開けて」
「……?……」
 少女はうっとりとした表情で目を開く。
「どこか痛いところはないか? 大丈夫? ……じゃ、ゆっくり起き上がってみな」
 少女が体を起こす。拍子に、脚がわずかに動いた。
「あたしの脚……!」
「おうよ。お疲れさん。……治ったから言うが、自分の脚がないからって、他人の
脚をとろうとするのは感心しないぞ」
 感激したように瞳を潤ませていた少女が、その言葉にしゅんと肩を落とした。
「ごめんなさい……どうしても、痛くて。耐えられなくて……」
「あぁ。でもやっぱ他人の脚じゃ治らなかったろ?」
「うん。ごめんなさい……」
「わかりゃいい。一応、合わないとわかったら返してたみたいだしな。でも、それで
迷惑したり悲しんだりした人がたくさんいたってことは、ちゃんと覚えておいてくれ」
「……はい」
「いい子だ。さて、そいじゃ斎藤さん」
「……あの、亜紀って呼んでください、先生」
「……亜紀ちゃん。もう心残りはないな?」
811名無しさん@ピンキー
 言う祐に、少女は頬を染める。いつの間にか、少女の肌には血の気が戻って
いた。もじもじとうつむいて、やがて思い切ったように顔を上げる。
「……あの」
「ん?」
「その……あ、あたし……先生に、抱いてほしい、です」
 いまやすっかり生前の姿を取り戻した少女は、揺れるロウソクの火影に美しい
裸身を照らされていた。まだ少し青さの残る、けれど十分に丸みを帯びた体。
まろい胸の形から腰がくびれて、なだらかにのびやかに脚へと続く芸術的なライン。
大きな瞳は零れそうに潤んで、ぽってりとした赤い唇をしている。取り戻した脚が、
もじもじと擦りあわされていた。
「こ……こんなこと言うなんてはしたないけど、でもきっともう、あたしに残された
時間って多くないし。その……このまま、色々経験しないで消えちゃうのって、
すごく悲しい気がして……。それに、なんだかさっきから、すごく体が熱くて」
 恥らってうつむく首筋から、におやかに立ち上るものがある。祐は天井を仰いだ。
「亜紀ちゃんは、魅力的な女の子だよ」
 なるべく優しく囁く。
「でもな、亜紀ちゃんの言うとおり、体を取り戻した以上、亜紀ちゃんに残された
時間はもうそんなにない。それを、知り合ったばっかの、いわば行きずりの男の
ために使っちまうのは、俺は賛成できない」
「先生はあたしの恩人です!」
「うん、そう言ってもらえるのは嬉しいけどな」
 祐は荷物からバスタオルを取り出して、少女の肩にふんわりとかける。
「俺ぁ医者だ。亜紀ちゃんを助けるのが仕事だった。だから助けた。そんだけなんだよ」
「でも」
「それよりも、会いたい人がいるだろう? 家族とか、友達とか……恋人とか。
思い出せるか?」
 肩に手を置いて覗き込むと、少女は大きく目をみはった。
「お母さん……お父さん……」
「うん。今まで亜紀ちゃんを愛してくれた人たちに、最後の別れをしておいで。
きっと皆、すごく悲しい思いをしていると思う。亜紀ちゃんが今まで、とても
辛かったように。亜紀ちゃんが望めば、夢枕に立てるから」
 少女の目から涙が零れる。
「そっか……あたし、本当に死んだんだ……」
「うん。とても残念で、悲しいことだけどな」
 祐は少女の頭を撫でた。
「亜紀ちゃんはよく頑張った。よく痛みに負けず、辛さに耐えて、正気を手放さず
にいたな。それはとてもすごいことだ。だから、皆に会っておいで。それが、
神様がくれたご褒美だ」
 少女は泣きながら笑う。
「お経を使ったのに、神様なの……?」
「いやまぁ、なんかそんな感じで」
「いいかげんだなぁ……」
 少女は笑って、次々に涙を溢れさせながら、祐に腕を伸ばした。祐が逆らわず
にいると、ぎゅっと腕に力を込めて、額に口づける。
「……これで我慢する」
 祐は笑った。
「うん。いい子だ」
「……あたし、もう行きます。次は絶対、もっと幸せになる……」
「あぁ」
「先生、本当にありがとう」
 頬を滑り落ちる涙が零れてはじけて、そうして少女は姿を消した。