まほらば 〜鳴滝荘、ほがらかな三時〜

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1名無しさん@ピンキー
イイ書き手がたくさん集まる、『まほらば』のSS創作スレだゼ! 
エロじゃないのも大歓迎だから、ドンドン投稿してくれヨ!(sage進行でナ!)

前スレ 
まほらば〜鳴滝荘、2時…、かも。〜 
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1113669362/

まほらば〜鳴滝荘での一時〜 
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1106131763/

原作スレ(高速で埋まる可能性大だけどヨ…) 
小島あきら まほらば19号室 
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1116905118/

まほらば小島あきら 第5回鳴滝荘お絵描き大会 
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1117205655/

埋まっちまったスレのSSが読みたくなっても、 
ttp://www.geocities.jp/su27_flanka/mahoraba/index.html
にしっかりSSやCGが保管されてるから問題なしだナ。 

次スレは>>970を踏んだら立ててくれヨ!
…お前ら、たまにはオレのSSも書いてくれよナ!
2名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 21:02:35 ID:YQws4QWq
SSスレという事で乙>>1
3名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 21:02:43 ID:g43DAZZi
     _ _ 
    〃  ` ヾ
    ! ,ノノリ^)))〉
    !l>ロ゚ ヮ゚ノロ< >>1さん、お疲れ様です!
    !リと)水!つ
   ノ((fく/_|〉ノ
        し'ノ  
4〜ゆめ〜:2005/05/29(日) 21:03:02 ID:spQaM792
「あれ……」

 ――あいつ、どこ行ったんだ?


「……おーい」
 最初は、少し遠慮がちに。でも、多分聞こえてもいないと思う。
「どこ行ったー?」
 今度は少し大声で。
 ……まだ、返事は返ってこない。
「ったく……」
 小さく悪態をつきながら、俺はその中へ足を踏み入れた。


 この場所を初めて訪れたのは、高校の修学旅行だった。

 ……こんなのを、廃墟って言うんだな。

 初見でそう思うくらい、この場所は文句なしに廃墟だった。
 壁や天井は所々崩れ落ち、日の当たらない場所は例外なく苔むしている。
 名も知らない細い木が、ちょうど朝顔が支柱に沿って育っていくように、この建物に張り付いて天へとその幹を伸ばしている。
 誰もいない、誰も訪れることのない、山の麓にひっそりと佇むこの建物を、俺はあの時に初めて見たんだ。

 ……あいつも、修学旅行の時にこの場所を初めて見た。見上げるために首を上に向けすぎて、バランスを崩したっけ。
 俺たちはこの場所をいっぺんに気に入った。そして、今またここを訪れている。

「……どこだよ、まったく」
 片手で真っ赤なリンゴをもてあそびながら、俺は周りを見回した。……何かが動く気配すらない。いや、それは当然なのだけど。

 ――ほんと、いつまで経ってもガキなんだもんな。
5〜ゆめ〜:2005/05/29(日) 21:06:38 ID:spQaM792
 ふう、とため息をつき、俺は廊下だったらしい所へ入っていく。
 ずんずん歩き、角を折れると、そこには階段があった。……ただし、もう利用はできなさそうな。
 諦めて、もと来た道を戻る。途中、から、という音と共に頭に何かがぶつかった。
 石の欠片だった。ふーん、と呟き、そのまま最初の広間に戻る。
「つーか、さっさと出て来いよな……」
 近くにいれば聞こえるように、わざと大声で独り言を言う。……だが、やっぱり反応はない。この辺りにいないわけはないんだけど。
「……食っちまうかなー、これ」
 がたん、と今度は反応があった。しかも、相当近い。
 食い意地だけは隠せないのな、と心の中で小馬鹿にしながら、音の出た場所へ向かう。
「おい、さっさと降りてこいって」
 頭上にぽっかりと空いた、上の階に繋がっているらしき穴。どうやって上がったのかは知らないけど、降りてもらわなきゃ話にならない。
「……あーあ、最悪」
 上から呟きが聞こえ、すぐに顔をのぞかせた。
「何やってんだ、お前」
 少しだけバツの悪そうな笑みと共に、
「ちょっと困らせてやろうと思ったんだけどね。失敗しちゃったわ」
 そう言った。
6〜ゆめ〜:2005/05/29(日) 21:08:11 ID:spQaM792
「で?」
「ん?」
 ん、じゃないっての。
「何で降りてこないんだよ?」
「………………」
 答えろって。
「……ホントに食っちまうぞ、リンゴ」
 そう言うと、また上から顔が出てくる。
「カンベンしてよ」
「じゃあ降りろって」
 ……まだ来ない。何となく理由は察したけど、このままにしておくのも面白いかな。
 右手のリンゴを、口まで持っていく。
「ちょ、ちょっと! 食べないでっての!」
「だったら降りろって言ってるだろ」
 うう、とうめき声のようなものが聞こえ、
「……降りられなくなっちゃったのよ!」
 ――ホント、世話が焼ける。

「……何で降りられない場所に上れるんだよ」
 そう訊くと、俺の足元の辺りをあごでしゃくる。
 下を見ると、なるほど、こいつが足場に使ったらしい柱の残骸が転がっている。
「これ崩したのか?」
「もともとボロボロだったの!」
 はあ、とわざとらしくため息をついて見せる。
「……降りろよ、手貸してやるから」
 そう言って、リンゴを持ち替えて右手を伸ばす。
「うん……」
 お互いの手が触れるか触れないかという所で、

 がら……

 と、あいつが乗っているあたりはあっけなく崩れた。
7〜ゆめ〜:2005/05/29(日) 21:11:33 ID:spQaM792
「え――!?」
「んのっ、バカ……!」
 咄嗟にリンゴを放り捨て、落ちてくる体を受け止める。崩れた天井の石が次々と体に当たる。そんなに痛くはない。
「――いでっ」
 最後の一個が、顔に直撃した……

「……だっ、大丈夫!?」
「……じゃねー……かな」
 なんて言えるってことは、割と大丈夫だったらしい。
「あの……ゴメン」
「ホントだよ、このバカ」
「……ごめん」
 見る見るうちにしょげていく顔。あまり見たくない顔だ。
「いいから……そろそろ降りてくれないか?」
 今の体勢は、両腕でこいつの背中と足を支えている状態。つまり――
「……あ、あ〜〜っ!!」

 ――よりにもよって、お姫様だっこかよ――
8〜ゆめ〜:2005/05/29(日) 21:12:51 ID:spQaM792
「はぁ……どうなるかと思った」
 廃墟の外壁に二人でもたれ、座っている。
「……あたしも、びっくりした」
 それで済んだから、いいけどさ。
「……リンゴ……」
 別に、一個ダメになったくらいで……
「向こうの木に、まだいくらでもなってるって」
 突然、きょとんとした顔で俺を見る。
「へ……あるの?」
「はあ?」
 ……知らなかったのか?
「……なーんだ。じゃ、採りに行こ?」
 すくっと立ち上がる。
「反省しろ、少しは」
「いいじゃん、お互い無事だったんだし」
 頼む、本当に反省してくれ。
「フレームが曲がった」
「そんなの、二千円もあれば直るじゃん。それに、メガネ外しても見れるカオだし」
「そういう問題じゃないっての……」
 言いながら、俺も腰を上げる。
「ほら……こっちだぞ、リンゴの木」
「おーっ♪」
9〜ゆめ〜:2005/05/29(日) 21:13:08 ID:spQaM792



 ――夢か。見慣れた天井が視界に入ってから、そう理解する。
 去年……いや、もうすぐ二年になるか。
 早いもんだな――呟きながら、体を起こす。
「……そろそろ……顔、見に行くかな」
 メガネをかけ、カレンダーに目をやる。
 ――二月くらいには、向こうに行けそうかな。

 ペンを取る。白いシンプルな便箋に、スラスラと文を綴っていく。近況報告なんかじゃなく、
 “一度、帰ろうと思うんだ”
 この一言から始めて。



 ――十二月のその日、俺はエアメールを投函した。日本にいる、あいつへの手紙を。
10〜ゆめ〜:2005/05/29(日) 21:16:42 ID:spQaM792
というわけで、新スレ記念のSS投下でした。
>>1氏、乙&GJです!
さて…今回はこの2人の話を書いてみたわけですが、何というか、鳴滝荘より書きやすいんですね…
ネタが縛られてないからかも知れません。
で、あえて名前を出さなかったのは、
読み手の皆さんがどこで「ああ、この2人か」と気づくのかが知りたかったからです。
それにもお答えしていただければ幸いです。では。
11名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 21:24:23 ID:YQws4QWq
GJ!
部長引っ掛けSSもあってか
途中までバラさんの話だと疑ってたのは秘密だ。
12名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 21:43:15 ID:Wxd6rp0e
>>1
スレ立て乙。
>>10
新スレ記念投下乙&VGJ
13名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 22:39:48 ID:lnl4a3QY
>>1>>10両氏乙+GJ!
俺は>5で何となくわかったかな。
14名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 23:43:02 ID:VeODpoqv
>>1
おつデス

>>10
俺は>6の「カンベンしてよ」でわかった・・かも
15名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 23:58:37 ID:riCkCyuJ
    / /_ =ァ冂、 ̄‐-==ァ、 :l   :.:l:
   l く/ / l」 l」 \ヽ  〃 ヽ`l   :.:l.:
.   l lヘ 〃 / :|.  l:. ヽ,〃:l. l: l l  :.:.:l.:  l
  l l..:l.:Υ :|  ;|: 、l.:.  |.:. |:.:l:. l:l  :.:.:l.:  l
  l |:.l:.:.l-‐十'".|:.:. |``:十‐|-|__j:l  :.:.:l.:  l
  |  ̄:!丁彳゙ト、 ̄ ̄ ̄'´丁:::ト、.| : :.:.:!|.:  l
  |  :.::l:.:.l. l.::ー|      |.:::::ー|.|. .: :.:.l:|.: : l: >>1
  | :.:.:l:.:.:l  辷.j      辷_-j | .:.:.:.:l:.|:.: : l:.  お、乙……です……
  | .: :.:l:.:.:!| //// .      /////!.:.:.:.:.l:.:|:.:.: :.: .l.:.
  | :.::.:|:.:.::!ヽ、   r_;      ,. l :.:.:.:!:.:.l.:.:.:.:.:.:. !.:
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   l :.:.:.l:l:.:.:l  /イ . : : : : :          ヽ!:!.:.:.:.:.:.:.:.:

>>10
乙&GJ!俺も最初バラさんの話だと思ってましたが、>>5の後半でわかりました
16横綱:2005/05/30(月) 00:11:44 ID:Pw4cgaLa
親友

それはある休みの日のことだった。
「梢ちゃん、今日はどこか二人で遊びにいかないですか〜?」
「ごめん!珠実ちゃん!今日は白鳥さんと出かける約束しちゃったの!だからまた今度ね!」
また今度・・・この言葉果たして何回梢ちゃんの口から聞いただろう。別に数えたりしたわけではないが嫌というほど聞いた気がする。
それでも私はそんな敵意な感情を決して出さずに笑顔で応えた。
「そうですか〜それは仕方ないです〜じゃあ白鳥さんと楽しんできてください〜私はお留守番してますから〜」
「ありがとう珠実ちゃん!それじゃあ行ってくるね!」
梢ちゃんの足取りはとても弾んでいた。それに今まで見せたことないぐらいの笑顔だったのも私にとっては非常につらかった。
「いつから・・・こうなってしまったんでしょうね・・・」
私は以前白鳥さんと梢ちゃんのことで口論になったことがある。しかしそれはすべて私の単なる独占欲が招いた独り相撲だった。
白鳥さんは私みたいな醜い感情を持つことなくただ純粋に梢ちゃんのことが好きだとわかった。勝手に勝負心みたいなものをもってた自分が情けなかった。
だからこれからは温かくあの二人の仲を見守ろうと決心したのである。それが梢ちゃんに対する一番の厚意だと。でも・・・

17横綱:2005/05/30(月) 00:19:52 ID:Pw4cgaLa

それでも私は正直寂しい感情はなくならなかった。理想と現実のジレンマに立っていたのだ。
つまりたしかに理想としては梢ちゃんの幸せを願いたい、
しかし現実は私の今までの生きがいだった梢ちゃんが誰かのもとに渡ってしまうという虚無感があった。
でも私にはどうすることもできない・・・一番の理想は梢ちゃんが私を選んでくれることなのだから・・・
そんな夢物語はもう見ないことにきめたのだから・・・
そんなことを思って廊下を歩いてると梢ちゃんの部屋の前に着いた。
「昔はよく梢ちゃんの部屋で遊んだっけ・・・」
私は一人でそんなことをぼやきながら昔の過去の思い出に更けていた。あのころはすべてが楽しかった。
梢ちゃんがいればそれ以外何もいらないとさえ思った。梢ちゃんが私のすべてだった・・・
いまだってそうなのに・・・うう
私の目には自然と涙がこみ上げていた。とめようにもとめられない。こんなとこ他の誰かに見られたくない。
そう判断したときには私は梢ちゃんの部屋の中に入っていた。
「・・・・・・ほんと久しぶりです・・・梢ちゃんの部屋・・・」
その部屋は梢ちゃんのにおい、ぬくもり、言葉では表現できないようなものがたくさん感じられた。
しかしこの部屋にはあるべきものがなかった。
それは私が以前梢ちゃんにプレゼントしたぬいぐるみ。
梢ちゃんは宝物にしてくれるといってくれた。
だからそれ以来ずっとこの部屋には置いてあったのだ。しかしそれが今はない。

なぜ?どうして?宝物じゃなかったんですか?

18横綱:2005/05/30(月) 00:22:21 ID:Pw4cgaLa
それは私が以前梢ちゃんにプレゼントしたぬいぐるみ。梢ちゃんは宝物にしてくれるといってくれた。
だからそれ以来ずっとこの部屋には置いてあったのだ。しかしそれが今はない。

なぜ?どうして?宝物じゃなかったんですか?

私はもう完全に失望してしまった。もう梢ちゃんは私の知っている梢ちゃんではなくなってしまったのだ。
私の知らないところへいってしまったのだ。私の目からはまた涙があふれていた。
さっきあんなに泣いたというのにそれ以上に涙がでてきてしまった。
さっきは寂しさのあまりに泣いてしまったが今回は悲しさのあまりだった。一番裏切られたくない人に裏切られた、
そんな感じだった。私はもう部屋から出ることにした。
ついでにこの鳴滝荘から出ようとさえ思った。とそのとき
ガチャ
「あれ〜〜鍵かけてなかったんですね〜私ったら自分のことになるとつい、ってあれ?珠実ちゃん?」
梢ちゃんが帰ってきてしまった。
「あ、はい!ですから私が梢ちゃんの部屋に怪しい者が入らないように梢ちゃんの部屋で留守番してたんですよ〜」
私は泣き顔を必死に隠してごまかした。
「そうだったんだ〜〜ありがとう珠実ちゃん!」
ほんとに無邪気な笑顔だった。私が今まで何を思っていたのかも知らないで・・・
「それで今日は白鳥さんとどこに行ってきたんですか〜?」
私は別に答えなど聴きたくもなかった。この場をやりすごすために訊いただけだ。
「え〜〜と言っちゃっていいんですか?白鳥さん。」
なにやら二人で楽しそうに話している。もうこれ見よがしというかんじだ。私に対するあてつけですか?
「いいんじゃない、梢ちゃん。もう言っちゃって」
「はい!では!」

19横綱:2005/05/30(月) 00:26:42 ID:Pw4cgaLa


なぜ?どうして?宝物じゃなかったんですか?

私はもう完全に失望してしまった。もう梢ちゃんは私の知っている梢ちゃんではなくなってしまったのだ。
私の知らないところへいってしまったのだ。
私の目からはまた涙があふれていた。
さっきあんなに泣いたというのにそれ以上に涙がでてきてしまった。
さっきは寂しさのあまりに泣いてしまったが今回は悲しさのあまりだった。
一番裏切られたくない人に裏切られた、そんな感じだった。私はもう部屋から出ることにした。
ついでにこの鳴滝荘から出ようとさえ思った。とそのとき
ガチャ
「あれ〜〜鍵かけてなかったんですね〜私ったら自分のことになるとつい、ってあれ?珠実ちゃん?」
梢ちゃんが帰ってきてしまった。
「あ、はい!ですから私が梢ちゃんの部屋に怪しい者が入らないように梢ちゃんの部屋で留守番してたんですよ〜」
私は泣き顔を必死に隠してごまかした。
「そうだったんだ〜〜ありがとう珠実ちゃん!」
ほんとに無邪気な笑顔だった。私が今まで何を思っていたのかも知らないで・・・
「それで今日は白鳥さんとどこに行ってきたんですか〜?」
私は別に答えなど聴きたくもなかった。この場をやりすごすために訊いただけだ。
「え〜〜と言っちゃっていいんですか?白鳥さん。」
なにやら二人で楽しそうに話している。もうこれ見よがしというかんじだ。私に対するあてつけですか?
「いいんじゃない、梢ちゃん。もう言っちゃって」
「はい!では!」
20横綱:2005/05/30(月) 00:29:10 ID:Pw4cgaLa

「そうだったんだ〜〜ありがとう珠実ちゃん!」
ほんとに無邪気な笑顔だった。私が今まで何を思っていたのかも知らないで・・・
「それで今日は白鳥さんとどこに行ってきたんですか〜?」
私は別に答えなど聴きたくもなかった。この場をやりすごすために訊いただけだ。
「え〜〜と言っちゃっていいんですか?白鳥さん。」
なにやら二人で楽しそうに話している。もうこれ見よがしというかんじだ。私に対するあてつけですか?
「いいんじゃない、梢ちゃん。もう言っちゃって」
「はい!では!」
急に梢ちゃんは私に大きな箱を出してきた。私にはなんのことだがさっぱりだった。
「こ・・・これは・・・・???」
「珠実ちゃん!!お誕生日おめでとう!」
「これ僕と梢ちゃんからのプレゼントだよ。」
私はそれを受け取ったが頭の中が混乱してしまっていたので、何も言えなかった。
「実はね白鳥さんと一緒に珠実ちゃんのプレゼント買いにいってたの。ずっと前から白鳥さんと何をプレゼントしようか相談していろんなお店に行ってたんだけど・・・今まで秘密にしててごめんね、
白鳥さんが当日まで珠実ちゃんには黙っておこうって。
そのほうがビックリするからって、ね?白鳥さん」
「うん!それに鳴滝荘のみんなにもそのことは伏せてあるよう頼んでおいたからね。桃野さんなんか自分のことのようにはしゃいでて心配だったけどね。でもその様子だとみんな秘密にしててくれたみたいだね。
そうだ珠実ちゃん、箱の中開けてみてよ!」
「は、はい・・・・」
私は気持ちを落ち着けようとゆっくり箱の中を空けた。
「これは・・・・」
そのなかにはきれいなガラスケースの中に二つのぬいぐるみが入っていた。しかもよく見ると片方は私が梢ちゃんの部屋で必死に探したあのぬいぐるみだった。
「驚いた?実は珠実ちゃんからもらったあのぬいぐるみと私が選んだぬいぐるみを一緒のケースにいれてほしいってお店の人に頼んだの。こうすれば私たちいつも二人一緒だもんね!!」
「梢ちゃんは私のこと見捨てたわけじゃなかったんですね・・・・私・・・・私・・・・」

21横綱:2005/05/30(月) 00:32:50 ID:Pw4cgaLa
そのほうがビックリするからって、ね?白鳥さん」
「うん!それに鳴滝荘のみんなにもそのことは伏せてあるよう頼んでおいたからね。
桃野さんなんか自分のことのようにはしゃいでて心配だったけどね。でもその様子だとみんな秘密にしててくれたみたいだね。
そうだ珠実ちゃん、箱の中開けてみてよ!」
「は、はい・・・・」
私は気持ちを落ち着けようとゆっくり箱の中を空けた。
「これは・・・・」
そのなかにはきれいなガラスケースの中に二つのぬいぐるみが入っていた。しかもよく見ると
片方は私が梢ちゃんの部屋で必死に探したあのぬいぐるみだった。
「驚いた?実は珠実ちゃんからもらったあのぬいぐるみと私が選んだぬいぐるみを一緒のケースにいれてほしいってお店の人に頼んだの。
こうすれば私たちいつも二人一緒だもんね!!」
「梢ちゃんは私のこと見捨てたわけじゃなかったんですね・・・・私・・・・私・・・・」

22横綱:2005/05/30(月) 00:33:54 ID:Pw4cgaLa


「ううう・・・・・うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」
すべてを理解したそのときはもう号泣していた。私は自分が情けなかった。こんなに自分のことを思ってくれている親友を自分は疑ってしまい、
あまつさえ憎しみの感情まで抱いてしまった。私はこのときほど自分がバカだと感じたことはない。
「ど、どうしたの!?珠実ちゃん!!!私なんかひどいことした??だったら謝るよ!!」
私はそんな優しい梢ちゃんにまたもや感動してしまった。ただひたすら泣いた。しかしこの涙はさっきまで流したものなんかとは違い胸が熱くなる、
そんなとても心地がよいものだった。私は梢ちゃんを抱きしめた。
「梢ちゃん・・・謝らなくてはいけないのは私のほうですよ・・・私・・梢ちゃんが私のことキライになったんだって勝手に勘違いして・・・」
「珠実ちゃん・・・私は珠実ちゃんのこと大好きだから何も心配しなくていいんだよ・・・」
梢ちゃんはそう言いながら私の背中を優しくたたいてくれた。これがほんとうの梢ちゃんのぬくもりだった。そして私はやっとこの言葉を言った。
「ありがとう、梢ちゃん!」
「どういたしまして、珠実ちゃん!」

終わり
23名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:34:44 ID:prXCc8pM
SSは良い。だがちょっと落ち着け、あとsageような
24メリー:2005/05/30(月) 00:43:50 ID:3nc/MBxC
たしかに内容は良かったです。
が、色々と注意した方が良かったですね?
次回作も期待してますので、気を付けてみて下さい。
25名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:53:02 ID:RxJ8qsoK
小説はGJだが、同じ文章続いて吹いたw
26横綱:2005/05/30(月) 00:55:34 ID:Pw4cgaLa
ごめんなさい。はじめてなもんで、次からは気をつけます。
27名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 01:05:57 ID:mzUA0g8Z
>>26
……またsageてないし。

分かっていると思うが、メール欄に半角で

sage

と書くんだぞ。
せっかくSSは良いんだから、変なところで損しないように頑張ってくださいなのですよ。
28名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 02:28:26 ID:C8BXy9wp
ああ、もう3スレ目か

前スレの作品まだ全部読んでないのに…

この回転率はさすが
29名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 02:35:45 ID:5YJ8yDy+
お、おいつかねぇ……(涙)
流れが速すぎますよ、皆さん……GJですよ、皆さん。
30名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 02:54:08 ID:eDvuRkMT
>>26
よかったですよ。
でもワロタ
31名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 03:54:27 ID:YmteKmtp
保管庫を活用しましょうぜ。
32名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 06:52:17 ID:mB4VWR/j
>>26
確かにちょっとオチツケとは思ったけど
内容自体はかなりよかった。
珠実のせつなさみたいなのが伝わってきていい感じ。GJ!
33名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 06:58:08 ID:sCU8Yhpf
・・・なぁ、ここはエロパロだよな?
小説がみんなGJすぎて忘れてたけど
34名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 07:05:22 ID:dlz9v4R8
まほらばにエロパロは似合わないからね、基本的に。
第一話の着替えシーンとか、見ててかなり痛かった。

>>26
ウマー。
次回からはミスに気をつけてな!
35名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 10:10:51 ID:eDvuRkMT
>まほらばにエロパロは似合わないからね、基本的に。

価値観は人それぞれなので、こういうことを言わない
公共の掲示板にルールを押し付けずに、自分の中にフィルターをかけてください
エロはいらないみたいな雰囲気を作らないようにしてください。
職人さんがエロありSS書いたけど投下しにくい様なことのないようにお願いします。
3634:2005/05/30(月) 13:06:34 ID:dlz9v4R8
そうだな、反省…
エロパロが似合わないなんてこのスレの存在を否定してるも同義だもんな。
気をつけるよ。
3710:2005/05/30(月) 16:21:14 ID:GJhSfhP5
まーま、読むのは大好きだけどエロを書くのが得意じゃない俺が来ましたよ。

確か前スレで要望あった気がするんですけど、
エロール×みっちゃんの話(非エロ)ってまだ需要ありますかー?
まだあるようでしたら、今日中にうpできますが。
38名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 17:27:18 ID:sCU8Yhpf
あるヨ〜
39名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 17:46:05 ID:snIobgBh
むしろエロも見たい…
40名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 17:46:23 ID:Inbl33sk
有りまくり
4137:2005/05/30(月) 18:59:49 ID:GJhSfhP5
了解でーす。
ちょっと遅くなるかも知れませんが。
42名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 21:44:51 ID:1Tiw30Nq
皆さん、とても長い文章を書けて凄いと思います。
自分が書くとどうしても短くなってしまって中々長編を書く事が出来ません…
同じ表現を二度使わないように、など気を使っているのですが…
どうしたらそんなに多くの文を書けるのでしょうか?
43名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 21:52:09 ID:YmteKmtp
書きたい主題にあれこれ付け足していったら勝手に長くなってしまった、
と言うことが多いんじゃないかい。
簡単に言えばデコレーションのボリュームかね。

前スレのきおくなんて典型的かと。
44名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 21:53:11 ID:ckcTnwno
とりあえず同じ表現を使わなくて済むくらい表現の仕方を覚える。
そのために他の人のSSを一杯読む。文芸小説でもよし。
45メリー:2005/05/30(月) 22:30:58 ID:9NmjvB9L
私は同じ表現でもごまかして使うことがありますね(笑)
一回書くテーマが決まると大筋の内容は決まってきますから、
それに多少肉を付け加える感じですね。
あまり自分のインスピレーションには逆らわないことが多いです。
てゆーか逆らったら作品が出来ないんですがネ。
短くても”書く”ということが大事ですから、あまり気になさる必要は
ないんじゃないかな〜・・・・・・と。
一杯読んで、一杯書くのが一番の近道かと
4637:2005/05/30(月) 22:35:08 ID:vgkXb5tG
>>42
最初は短編をたくさん書いて、長編はそれからです。
短編はアイディアが浮かべば書けますけど、長編はちゃんと筋書きを立てないと途中で挫折します。
短、短、中、短、短、長くらいの割合が俺はちょうどいいと思いますよ。
それと、読者は読みやすい作品を読みますから、
表現方法が欲しいからと言って難しい表現を連発するのはあまり良くないと思います。
以上、同じ表現使いまくりで芸がない香具師からのアドバイス崩れでした。

>>43
痛い所をw
あれは改行規制と付け足しが半々くらいだったんですよ。

書き上がったので、エロールとみっちゃんの短編投下しまーす。

ノシ目
47コイゴコロ:2005/05/30(月) 22:44:51 ID:vgkXb5tG
 双葉台。
 通っている専門学校は、この街にはない。
 それでも、彼はこの駅で一度電車を降りる。
 向かうのは、公園。

「……おはよ」
「お、おはようございます…わ」
 お互い、友達と交わすものとは少し違う、ぎこちなさの残る挨拶。
 二人の一日は、ここから始まる。

「これ…」
 彼女は、何かが入った可愛らしい袋を差し出し、彼はそれを受け取る。
「なんか…いつも悪いな」
「このくらい、朝飯前ですわ!」
 扇子を広げ、少し自慢げに扇いでみせる。
「…確かに朝飯の前に作るモンだよな」
「そういう意味じゃ…まあ、そうなんですけど…」
 少し見当外れな答えじゃないかと、彼女は思う。
「大事に食うよ」
 彼はそう言って微笑み、彼女もそれにつられて顔をほころばせる。
「今日もお互い、頑張ろうぜ」
「そ、そうですわね…」
「それじゃ、また夕方にな」
 そう言い残して、彼は踵を返した。
48コイゴコロ:2005/05/30(月) 22:45:09 ID:vgkXb5tG
「まさか、あいつが風邪だなんてな〜」
「去年は一回も休んだことなかったのにね」
 そんな会話を交わしながら、三人は食堂へ入る。
「まあ、私たちも皆勤だけどね」
「アレだな、バカは風邪引かないってやつ?」
「…あんた、言ってて悲しくなんない?」
 テーブルに着き、それぞれの昼食を取り出す。
「あ、今日も彼女のお弁当?」
「エローリ…」
「バーカ、そんなんじゃねぇって言ってるだろ」
 ハエにまとわりつかれたような顔をしながら、彼は弁当箱のフタを開ける。
 色とりどり、と言うには少し足りないかもしれない。でも、真心はひしひしと伝わってくる。そんな弁当だ。
「お弁当作って渡すなんて、恋人じゃなきゃ何なのよ」
「いいから、サッサと食おうぜ」
「あ、ちょっとだけ食べさせてよ」
 言いながら、弁当をのぞき込む。
「おい、駄目だって!」
「いいじゃない、減るもんじゃないんだし〜」
「食えば減るだろ!」
 弁当箱を高く持ち上げ、“絶対にやらん”体勢を決め込む。

「…はぁ、本当にちょっとだけだからな」
 結局、二人が相手では守りきれるわけもなく、彼は諦めて弁当箱をテーブルに置いた。
「やった♪」
 彼女は嬉しそうにそう言い、小さい唐揚げをひとつ口に入れる。
「…どう? おいしいの?」
「…うん、おいしい。ちょっと味付けが濃い目だけど…何て言うか、『頑張って作ったんだ』って感じがする」
「そう…か?」
 少しだけ照れ臭そうに、彼は呟いた。
49コイゴコロ:2005/05/30(月) 22:45:27 ID:vgkXb5tG
「……またお昼抜きなの?」
 空の牛乳パックにささったストローをくわえたまま、彼女はベコベコと呼吸する。
「それ、返事かいな…」
 友人は、片や心配そうに、片や変なものを見る目つきで彼女を見ている。
「ホントに、どうしちゃったの?」
 小柄な、碧髪の友人が尋ねてくる。
「ふっ……」
 彼女は突然ストローから口を離して立ち上がり、
「お気遣いはご無用でしてよ! 私はようやく」

 ゴッ、

 鈍い音が響き、次の瞬間には彼女は頭を抱えてうずくまっていた。
「〜〜〜〜〜っぁ……」
「いきなり叫ぶな、恥ずかしゅうてかなわんわ」大阪弁を操る友人の左手には、漢語林が一冊。
「だ、大丈夫……?」
 しかし、今の彼女はこの程度ではへこたれなかった。
「…ふ、ふふ……」
「……壊れよったか?」
 間もなく立ち直り、再び…
「オーッホッホ! あなたたちが今の私の心境を知ることなどできはしませんわ! せめてあと十年ばッ!?」
 再び、床に崩れ落ちた。
「ホンマに、うるさい言うてるやないか」
 そう呟く彼女の右手には、広辞苑(ケース入り)が光っていた……
50コイゴコロ:2005/05/30(月) 22:45:52 ID:vgkXb5tG
「じゃあ、また来週ね」
「おう」
「またね〜」
 別れの挨拶を交わしながら、二人は賑やかな教室を出た。
 廊下を歩いていると、銀雅が向こうから歩いてくる。
「先生、さようなら〜」そう声を揃えて一礼する。
「はいはい、また来週〜♪」

 駅までの近道、二人は人通りのまばらな道路を歩いていた。
「な〜んか…幸せそうよねー、あいつ」
 隣の友人に、話しかける。
「そうだね…」
 ……それきり、会話は途切れる。
 また、道を歩く。
「もしかして、ヤキモチ?」
 少し経って、彼女はそう尋ねた。
「そうかも。…あんたは? うらやましいとか、思わないの?」
「私は絵を描いてるだけで楽しいからね。恋人って、いなくちゃ困るってわけでもないし」
「そっか……いいよね、絵の才能があるのって」
 そう呟いて、彼女は少しうつむく。
「そ、そうかな?」
「私なんて、絵がそんなに上手いわけじゃないしさ。あんたとか…あいつも、いつもはああだけど、絵は凄く上手いし」
 もう一人の友人は、言うまでもないし――口には出さないけれど、心の中でそう言う。
「昔から付き合いがある友達も、気がついたらみんな恋人できちゃってるしね。…あんただけよ、例外」
 ――ほんと、妬ける。
「………………」
「……こうやって周りを見るとさ、ちょっと孤独だなって感じるんだ……」
 また、沈黙が訪れる。
 二人は、黙ったまま道を歩いていく。
51コイゴコロ:2005/05/30(月) 22:46:34 ID:vgkXb5tG
「……好きな人、いないの?」
 先に口を開いたのは、またしても友人だった。
「好き…って言うか、ちょっといいなって思う人はいるけど」
「じゃあ、その人に会ってみたらいいじゃない」
 それを聞いて、彼女は苦笑いを浮かべる。
「…結構、年の差あるんだよね」
「それって、あの腹話術のおじさん?」
 友人の住む――鳴滝荘の住人だ。
「…何でわかったの?」
「あのアパートに遊びに行った時はいつも顔を見てるからね〜」
 友人の目は、誤魔化せないってことかな――心の中で、そう呟く。
「別に、年の差あったっていいと思うけどね。あの人、シブくてカッコイイと思うよ?」
「あんたもそう思う?」自然と、彼女の声は明るさを帯びる。
「……やっぱり」
 うん、と一人で頷き、
「チャレンジあるのみ、だもんね」
「そうそう! 私は全力で応援するからね!」


「待ったか?」
 訊きながら、彼は公園に足を踏み入れる。視線の先には、彼女が。
「…そんなに、待ってはいないですわ」
「なら、いいんだけど」
 ――嘘、なんだろうな。彼はそう判断する。
「…風邪引くぞ、お前」
 ぶっきらぼうに言いながらも、着ていた薄手のジャケットを渡す。
「……ありがと……」
 聞き取れるか聞き取れないかの小さな声で礼を言い、彼女はそれを羽織る。
「美味かったぞ、弁当」
 朝よりは軽くなった、袋を差し出す。
「あ、当たり前ですわ! この私が作ったんですから」
 ホホホと、それを受け取りながら高笑いの仕草をする。彼はその様子を見、静かに尋ねた。
52コイゴコロ:2005/05/30(月) 22:51:03 ID:vgkXb5tG
「…お前、ちょっとやせたか?」
「え?」
「やせたろ?」
 自覚がないのか、彼女は首をかしげる。
 軽くため息をつき、彼は言った。
「飯抜いたら、成長もしないだろ。やめとけよ」
「あ……」
「一日三食ちゃんと食って、俺は何をするにもそれからだと思うぜ」
 しばらくの間、彼女はぼうっと彼の言葉を反芻していた。あまり他の人の言うことを聞くのは気が進まない。でも……
「…そう、ですわね。まずは三食摂って、牛乳はそのついでに飲めば…」
「牛乳?」
 聞き返され、口を滑らせたことに気づく。
「なっ……何でもないですわ!!」
 顔を真っ赤にして大声を上げる彼女を見て、ふっと笑いをこぼす。
「まあ、牛乳の成果が出る日を楽しみにしといてやるよ」
「〜〜っ……」
 顔は赤いまま、彼女は怒鳴るのをやめる。
「…ゼッタイに、見返してやるんだからぁ……」
「ん? 何か言ったか?」
 彼が近寄る。はっと顔を上げ、彼女は一歩後退した。
「ななな、何でもありませんわ!! それより、そろそろ帰らないと!」
「ああ、そうだな……それじゃ」
 彼女の肩からジャケットをつかみ上げ、袖を通す。
「気、つけろよ」
 そのまま、公園の出口へと向かう。
「…ちょっと!」
 後ろから彼女の声が聞こえ、足を止める。
「……また、来週も……」
 最後の方は良く聞こえなかった。来週も待ってる、みたいなことを言ったんだろうと、彼は勝手に解釈する。
「…またな」

 後ろ向きに、右手を振った。ちゃんと毎日来るさ。そう言ってやる代わりに。
53名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 22:54:53 ID:vgkXb5tG
と、サクッと書いた短編でした。いかがでしたか?
途中、釘バットメインのシーンを作ってしまったのは自分でも疑問で(PAM
エロールとみっちゃんって、そんなにラブラブじゃないんですね。書いてて「クド…」とかは思わなかったです。
…先に言っておくべきでしたが、WING4&7月号を読まなきゃあまり内容がわからないかも…
まだ読んでいない人、すみません。
54名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 22:59:04 ID:gCuFf+Jd
>>53
お、これはよい年の差カップル。GJ!

まあ、こんな展開がその内本当に出来たりしてね…
釘バットは…まあ、別にいいのではないかと。

最後に、エローリには笑いました。
これだけでも読む価値があった。
55メリー:2005/05/30(月) 23:02:59 ID:9NmjvB9L
良いですなぁ〜・・・・・・。
まったりと感動しましたよ〜。
エロールがかっこよく表現されていて、
思わず微笑んでしまいました。
56名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 23:15:48 ID:dlz9v4R8
>>53
GJ!!普通に良いですよ。
最後、エロールがちょっと格好良かったのがまたなんとも。
それと、タイトル的には釘バットのシーンも悪くないと思います。

代名詞の連発で多少読みにくい部分はありましたが、内容でカバーできてましたね。さすがです。
57名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 23:18:21 ID:T4sOzTmn
またまた大作なヨカーン
58名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 23:20:10 ID:RxJ8qsoK
なんかこのスレのSS,作者がID変えて投稿してるようにしか見えんw
59名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 23:36:03 ID:EkrTzcD+
そうか?
結構作品ごとに癖が出てる気がするが

60家族(1):2005/05/30(月) 23:51:03 ID:gCuFf+Jd
「桃乃さん、なんでお祭が好きなんですか?」
「にゃ?何よ、藪から棒に」
「前々から疑問だったんですよ…イベントがあるといつもハシャいでますから」
「あー…そうね…」
今日は休講日。そんなわけで、僕は鳴滝荘にいる。
本来平日なワケで、この時間帯にいるのは桃乃さん以外にも、
灰原さんや沙夜子さんもいるはずなのだが、
桃乃さん曰く「二人とも出かけている」とか。
てなわけで、二人きり。
「オマケにいつも僕の部屋で宴会するし…宴会病じゃないかと思うくらいですよ」
「そんなにやったっけかな…」
苦笑する桃乃さん。
やっぱり自覚してない。
「まあ…何なんだろうね…嫌な事を忘れらるから、かな…」
「…嫌な事?」
「私ね、昔は荒れてたんだ」
―――荒れてた?
61名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 23:52:39 ID:HlwRCfrH
>>53
いいっすね〜。GJ!!
まさか、あそこでバラさんが出てくるとは思いませんでしたよ。
62家族(2):2005/05/30(月) 23:52:38 ID:gCuFf+Jd
「荒れてたって、暴力ですか」
「いや、自殺未遂」
自殺未遂。
この言葉が、この人の口から出るとは思わなかった。
「―――んな、まさか」
「話すと長くなるから端折るけど、私はプレッシャーから逃げるために、手首を切ろうとした。
 まあ、駄目だったけどね」
それは、桃乃さんの過去。
忌々しい過去。

それを―――僕なんかに語って、いいのか?

「―――ああ、やあね、そんな神妙な顔して。
 嫌な事ってそれだけじゃないのよ。実家と喧嘩したりとか、色々あるのよ」
明るい顔で桃乃さんは言う。
僕は―――苦笑すら、出来ない。
「―――だから、白鳥クンには感謝してる。
 私のあの馬鹿騒ぎに、何も言わずに付き合ってくれるんだから」
何も言えないのは昔からだけど―――
僕は、あえて言わない。
63家族(3):2005/05/30(月) 23:53:50 ID:gCuFf+Jd
そして、僕は気になった事を口にする。
「―――桃乃さん、何故、そんな事を僕に言うんですか?」
「…何故って」
桃乃さんは、何を今更、という風に答える。
「白鳥クンは、この鳴滝荘の家族だから」

家族。
その言葉に、僕ははっとした。

―――もしかしたら、桃乃さんが求めていたのは、家族だったのかもしれない―――

「白鳥クンだけじゃない。梢ちゃんも、珠ちゃんも、沙夜ちゃんも、
 朝美ちゃんも、バラさんも。
 私の―――大切な、家族。大切な―――人達」

家族。
現代では、こんな温かい言葉も冷たくしてしまう。
親が子を殺し、子が親を殺す。それが当たり前の時代。
そんな中、こんな古いアパートに、血も繋がらない赤の他人達が、家族のように付き合う。
それは、昔あった光景。
今では、最早天然記念物。
だから、こういう「家族」は、大切にしないといけない―――
64家族(4):2005/05/30(月) 23:54:51 ID:gCuFf+Jd
「ただいま〜」
梢ちゃんの声だ。帰って来た。
「おかえり〜、梢ちゃん。
 そうそう、今晩はバーベキューにしようよ」
「あ、いいですね、バーベキュー!早速用意しなくちゃ」
「ああ、私も手伝うわよ」

この「家族」において、彼女―――桃乃恵の役割は、
<面倒見の良くて、お酒が好きなお姉さん>―――なのかもしれない。
だから、今日は―――
今日ぐらいは、宴会に付き合ってもいいんじゃないかな、と思った。


ちなみに。
僕が二日酔いになったのは言うまでも無い。

<<Festival Sister>>is the end.
65家族(アトガキ):2005/05/30(月) 23:59:08 ID:gCuFf+Jd
てなわけで、白・桃短編「家族」でした。
即興で作ったので、稚拙なのは勘弁を。
桃乃さんのキャラが崩れかかっているような気もしないではないんですが…

前の二作よりもグレードが下がってるな…orz
まあ、その内、また長編を考えてます。
66名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 00:04:57 ID:0yyVMDQ0
短編キター(゜∀゜)ー!!

もう感想が浮かばないorz
67名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 00:11:01 ID:lJuw2ewx
>>65
GJ!!っす。話がうまくまとまっていて良かったですよ。
あと、途中割り込んで本当にすいませんでした・・・orz
68メリー:2005/05/31(火) 00:14:44 ID:y21iNMUd
桃乃の役割、そこにスポットを当てて書くのって、難しいと
勝手に思ってたんですが、これはソフトですんなりと受け入れられる
作品だと思いました。
短編だからこその味ってやつでしょうか。
69名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 00:25:58 ID:DQ4A8AAc
>>65
GJです。ガラにも無く家族を大切にしようとか思ってしまいましたよ…単純ですね
70名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 00:28:35 ID:Zk1lf5zB
何か1日ぶりに見てみたらすごい大作ラッシユ
書き手の皆様GJそして乙です。
71あしなみそろえて D-B 0/11:2005/05/31(火) 00:44:50 ID:VBol5Sck
はい、コンニチワー。
今日はようやく!ようやく白紺SS,『あしなみそろえて』の最終話を投下しに来ました。
思い起こせば第一回は4月。かれこれ一ヶ月以上に渡りだらだらと書いていたモノとなりますが、個人的には中々自分の書きたいものが書けた感じでよかったです。
やっぱり書き手としては読み手の人に喜んで貰うのが一番の栄養だけど、「自分で書いてて楽しめるのを書く」ってのを自分の基盤として頑張ってきたもので。
それでは投下開始します。
『あしなみそろえて』 D-B 行きます〜
72あしなみそろえて D-B 1/11:2005/05/31(火) 00:45:42 ID:VBol5Sck


沈黙が。

今は沈黙がこの空間を支配しているけど、きっと。

きっと棗ちゃんは僕に打ち明けてくれる筈だ。

だから、僕はただただそれを待つ。

彼女自身の口から、その答えを聞くまで。待とう。

そう思っていた矢先の事だった。
73あしなみそろえて D-B 2/11:2005/05/31(火) 00:46:07 ID:VBol5Sck
「隆士…君……」
落ち着いた声だった。
「何?棗ちゃん」
僕も、落ち着いた声でそれに答える。
「私…わ…たし…」
これから聞く事…それが、棗ちゃんの本当の、気持ち…
「私…怖い…隆士…君……」
「怖い…?」
「ん……私…隆士…君…達に…嫌な…娘だって…思わ…る…のが…怖い…」
「それ、僕が…僕達が棗ちゃんを裏切る事になるのが怖いってこと…なの?」
出来る限り優しく、問う。
でも。
その答えは、違っていて。
その答えは、とても彼女らしくて。
その答えは、とても悲しくて。

―――私…は…人に……裏切ら…るの…が…怖…ん…じゃな……の…―――
人に裏切られるのが怖くない。
その答えは、予想もしていないもので、さらに彼女は言葉を繋げていく。
―――私は…人を…裏切る……のが…怖い・・・の……―――
その答えは、僕を驚かせるには充分すぎるものだった。
74あしなみそろえて D-B 3/11:2005/05/31(火) 00:46:34 ID:VBol5Sck
「人を…裏切るのが怖い?」
棗ちゃんの言葉を聞いた僕は思わずそのまま聞き返す。
「ん…」
それに対して棗ちゃんは小さくうなずく。
「私は…今まで…隆士…君と…出会うまでは…ずっと…人と話す…こと…無か…た……から…」
棗ちゃんの口から少しずつ、少しずつ語られていく、理由。
「人に…信じて…貰…る……ことなん…て…無かった…から…」
悲しい、悲しい、理由。
「私…も…その人を…悲し…せず…に……済んだ…から…」
寂しい、寂しい、表情。
「でも…隆士…君と…友達になって…恵さん…達とも……友達…に…なっ…て…それ…から……」
―隆士…君……と…恋人…に…なって……―
その部分に少し、声に温かみが感じられたのは嬉しい限りだけど。
彼女の語りの中の冷たさを完全に取り去る事は、未だ出来ていない。
そんな僕に、棗ちゃんは話しを続ける。
「私…は…こんな…性格…だから…人に…嫌われても…しょうが…ない…から…
 だけ…ど……私…を…信じて…くれ…る……人たち……隆士…君や…恵さん…達…の…
 期待…や…信頼…を…裏切る……のが…怖いの…怖い……の……」
『嫌われてもしょうがない』?
違う。
そんな馬鹿な。
彼女を、棗ちゃんを本当に知っている人が、棗ちゃんを嫌いになる筈が無いじゃないか。
桃乃さんも。珠実ちゃんも。朝美ちゃんも。沙夜子さんも。灰原さんも。
―――僕も―――
―こんなに君のことが好きなのに―
そう、声に出したかった。
だけど、彼女は僕の意見を聞くことなく、全てを搾り出すかのように、話している。
75あしなみそろえて D-B 4/11:2005/05/31(火) 00:47:13 ID:VBol5Sck
「隆士…君…」
「何?」
「私が…見る…夢……の…話…聞いてくれる……?」
「うん、もちろん」
そう言って微笑む僕。どんな話でも聞こう。それで、彼女の温もりを取り戻せるのなら。
「気がついたら…私は…大きな…長…い……まっすぐな…道の…真ん中に…いるの……」
「道?」
「うん…」
そう言った棗ちゃんは、また少し、悲しそうな顔をしていた。
「そこには…たくさんの人がいて…皆…まっすぐ…歩いてる…の…
 中に…は……私が…知っている人もいるけど…私に…気がつかない…まま…歩いて…行っちゃう…の…」
 皆…私より…先を…歩いてる…の……ずっと…ずっと…先を…」
そう言った棗ちゃんはまた顔を伏せてしまった。
―そんな。
そんな悲しい夢、あるのか?
―いや、あってたまるか!
そう思っていると、顔を伏せたままの棗ちゃんが、震える声で言った。
「時間が…経つ…と…もう…周りには誰も……いなくて…私…独りで…歩いてて…
 ずっと…ずっと歩いて…いても…誰にも…追いつけなくて…」
―ふざけるな!!―
そう叫んでいいのなら、何度も、何度でも叫びたかった。
こんな悲しい夢、何故よりにもよって棗ちゃんが見なければならないのか。
棗ちゃんを、何故独りにするのか。
そういう夢は、僕に見せてみろ。彼女を独りにするな。僕が独りでも、彼女の側に一人でもいてあげてくれ。
そう、神に願いたかった。
「独りになって…時間が経って…もう嫌だ…って思って…立ち止まると…目が覚めるの…」
そう言って棗ちゃんは、また顔を上げた。
「そうすれば…夢は…終わるって…分かってるけど…いつも…歩くの…誰かに追いつける…かも…しれないから…」
そう言って微笑んだ棗ちゃんの笑顔は、
―消え入りそうなもので―
76あしなみそろえて D-B 5/8:2005/05/31(火) 00:48:49 ID:VBol5Sck
――ボクハ、ムリョクダ。――
今泣いている彼女に何も出来ない。してあげる事が出来ない。
これが無力以外の何だというのか。
彼女は、夢の中でも、ただただ一生懸命に、皆に追いつこうとしているのに。
僕は、そんな彼女に何をしてやれる?何を……

そうだ。

僕に出来る事。

僕にしか出来ない事。

棗ちゃんと、一緒に……

「棗ちゃん…」
「…何…?……隆士…君…」
「これから、僕が言う事、ちゃんと聞いててね?」
そう言うと、彼女は返事の代わりに僕の手をぎゅっと握ってきた。
それを僕もしっかりと握り返して言葉を続ける。
「―――大丈夫、だよ。」
「え…?」
「夢の話だよ。棗ちゃんは、自分が一人ぼっちだって言ったよね?」
「………」
無言でさらに強く僕の手を握ってくる棗ちゃん。
僕もそれに応えるように、しっかりと、手を離さずに優しく語りかけた。
「たとえ―たとえ今まで君が夢の中の道の途中で独りぼっちになったとしても…これからは…僕が、一緒にいるよ。」

6
77あしなみそろえて D-B 6/8:2005/05/31(火) 00:50:46 ID:VBol5Sck
「もし君が独りになったら、僕が来て、一緒に歩くから。」

「たとえ他の人たちが君を置いて行ってしまう事があっても、僕は、ずっと君の隣にいるから。」

「君が急ぎ足で歩くときは、僕も頑張って追いつくよ。」

「君が疲れて座り込んでも、僕は君が歩けるようになるまでずっと待ってるよ。」

「僕は君を、絶対に置いて行かないから。」

―君の隣で。

―同じスピードで。

―だから。

最後に、同じ言葉を彼女に。
「だいじょうぶ、だよ。」
78あしなみそろえて D-B 7/8:2005/05/31(火) 00:51:20 ID:VBol5Sck
―――そう。大丈夫だ。
僕は絶対に彼女を、紺野棗ちゃんを見捨てない。
世界中の全ての人がどこかに消えようとも、僕は棗ちゃんの側にいたい。
だから、大丈夫だ。

僕は棗ちゃんを見た。彼女はもう泣いていなかった。
強く。
温かく。
優しい瞳で。
微笑んでいた。

「…じゃあ、戻ろうか、棗ちゃん。皆のところへ。」
そう言って立ち上がろうとしたところで、また棗ちゃんに抱きつかれた。
「わわっ…! え?何、どうしたの?」
「……ううん…なんでもないの…でも……」
「でも?」
「もう…少し……このままで…いて…欲しい……かも…」
「棗ちゃん……うん。いいよ。もう少し、こうしていよう」
そう、もう少し、このままで。
そして、あと少ししたら、きっと。
79あしなみそろえて D-B 8/8:2005/05/31(火) 00:51:40 ID:VBol5Sck
例えばこの世界が滅ぶなら。
あなたには私の傍に居て欲しい。

例えばこの世界が滅ぶなら。
私はあなたの傍に居ます。

だから本当に世界が滅ぶ最後の一時まで。
二人で寄り添っていたい。
80創聖のあとがき地獄:2005/05/31(火) 00:56:35 ID:VBol5Sck
…ミスバッカリorz
今回でようやくひと段落着きましたー。
今後は少し休憩してからまた別のアイディアが浮かんでいるのでそれをSS化していくつもりです。
余談。「人に裏切られるのが怖いんじゃない、人を裏切るのが怖い」は、仮○ライダー5●5の主人公の台詞を元にしてみました。
だってだって、なっちんのイメージとぴったりだったんだもん!(もんとか言うな)
余談2。今回のタイトル、「あしなみそろえて」は、今回の投下の 6/8 をイメージして考えました。
原作の『step by step』のパクリとかイウナ。
ではでは〜また会う日まで〜♪そんなに遠くないと思うけど〜
81名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 01:32:28 ID:JQrqZLq4
供給率高いね…職人さんたちGJ!

自分もひと段落着いたので、この流れに乗って数日中にうpしょうかなと思います。
82メリー:2005/05/31(火) 01:54:24 ID:y21iNMUd
あしなみそろえて・・・・・・ほっんとに感動しました。
私は感動ものを読んだり見たりすると、体が震えるという変なクセ
があるんですが、本当に震えました。
ここのSSでは絶えず震えっぱなしで病院に行った方がいいじゃないかって
言われてもおかしくないくらい震えてます。
ビバッ! グッジョブ!
83名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 02:29:53 ID:b99wdrd0
泣いた
84名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 02:42:57 ID:58zGH/tv
素直に感動した
85名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 03:41:25 ID:1hLIoYG9
今日は平日だよな?
流れ早いぞ〜。

>>80
GJッス〜〜〜っ!!
それ以外に言うこと無いッス。
86名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 06:45:22 ID:sd/yA4xr
>>80
…感動した!
内容も(・∀・)イイ!し、個人的にはなっちん分を補給できて嬉しいです。
次もまた良作を待っていますよ!
87名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 07:29:05 ID:PAE3Ja1/
>>80
GJ!感謝不尽!
次の作品にも期待してます。
88名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 07:59:33 ID:aP3bkHGg
みんな凄すぎ!
いい物読ませてもらって感謝してるよー
89名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 08:20:36 ID:j8R5xpW3
お前らのエロがなくても満足させる腕にGJですよ。
90名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 12:04:37 ID:SRcsBYnS
>>80
GJ。お疲れ様でした。
やっぱあれたっくんの台詞からきてたのかw
91名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 14:01:50 ID:iMTYREZS
タックンジョニーオルフェノクガ!!
92名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 16:09:40 ID:0yyVMDQ0
供給率高杉だよorz

>>80
Very Good Job!!
93名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 16:29:26 ID:Vgn0nkK4
>>80
GJですよ。かなり感動できましたよ〜。


さて、ちょっと質問をば。
史上初(ぁ)RPGモノを書きたいな〜と思っているのですが、どうでしょう。需要ありますか?
4巻のあの出来のいい書き下ろしのイラスト、このまま無駄にしたくなくて。
ただし、内容はかなり長くなると思いますが…
94名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 17:31:13 ID:8KhiRlV6
OKだぜ
95名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 19:24:20 ID:0VzpY39v
さあ、どこからでもきやがれ93!
96名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 20:09:39 ID:GiJpWCKC
原作読んでないんだけど、今回のアニメ見て
沙夜子さんの純愛は黒崎としかできないことを通告された感じだ…orz
97名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 20:36:58 ID:cj+7JfeQ
黒崎としか純愛物が書けないのなら、黒崎との純愛物を書けばいいじゃn…
9893:2005/05/31(火) 20:59:46 ID:Vgn0nkK4
>>97
夫の名前がないから難しいんですよ、やっぱり。


RPG風のSS、とりあえずプロローグだけ。
↓ドゾー。
9993:2005/05/31(火) 21:00:06 ID:Vgn0nkK4
「どうにも、胡散臭いシロモノです〜…」
 ぼやきながら、珠美は玄関の戸を開けた。
 左手には、よく占いに使われるような、丸い水晶玉を持っている。
「まったく、こんなモノさっさと処分してしまうに限るです…」
 ぶつぶつと文句を垂れながら、自分の部屋――1号室に向かう。
 この時、スカートのポケットから紙切れが1枚抜け落ちたことを、彼女はまだ知らない。


「できましたよ〜♪」
 嬉しそうに言いながら、梢は皆を振り返った。
 この炊事場……いや、鳴滝荘全体に、食欲をそそる匂いが漂っている。
「よっしゃ、カレーだ〜!」
 恵が大げさなガッツポーズ。直後、ぐうっと腹の虫が鳴いた。
「いや〜、お腹空いてる時にはしゃぐモンじゃないわね……」
 反省反省、と頭をかきながら席に着く。
「あれ? 灰原さんは…」
「呼んだカ?」
 見ると、部屋の入り口に由起夫が立っていた。
「バラさん、おっそ〜い!」
「悪い悪い、ちょっと本に読み入っててナ」
 そう言いながら、空いているイスに座る。
 タイミング良く、梢がカレーの盛られた皿を配り始めた。
「わあ、今日は大盛りだよ、お母さん!」
「…大盛り……」
「おいしそうです〜♪」
 やがて全員に配膳され、梢は台所に近い席に座った。
「それでは、みなさん…」
 7人全員が声を揃えて、
『いっただっきま〜す!』
 そう言って、夕食を食べ始めた。
100M.M.O:2005/05/31(火) 21:04:36 ID:Vgn0nkK4
「あっと言う間に食べちゃったわね〜」
 食後の、至福のひと時を満喫しながら恵が言う。
「本当、美味しかったよ、梢ちゃん」
 隆士も、満足そうに声をかける。対する梢もまた、
「お粗末さまです♪」と、嬉しそうな声で答えた。

「なあ、さっき廊下でこんなモン見つけたんだけどヨ」
 突然、由起夫が切り出した。皆、自然と彼を見る。
 由起夫は懐から紙切れらしきものを取り出し、テーブルに置いた。
「何ですか?」
「さあ、色々書いてあるけど全然意味がわからねーゼ」
「なになに…?」
 恵がそれを手に取り、読み上げる。
「えーと…1、取扱いについて。…何これ、説明書? でも手書きだし…っつーか、何でこんなにカタカナ混じってんの?」
「いいから、早く読んでみてくださいよ」興味があるのか、隆士が急かす。
「わかってるわよ。…この取扱いには、十分に気をつけてくださいね。特に、使用中に壊してしまうと取り返しのつかないことに

なります…」
 ぴく、と珠美が反応する。席を立ち、
「すぐに戻ります〜」と言って、炊事場を出て行ってしまった。
「2、使用方法。使用方法は至って単純で、これを見つめながら、自分の心に『うたかたの幻想を見せよ』と働きかけるだけ…」
 彼女が読み進めるのに伴って、それぞれが疑念の眼差しを紙切れに送り始める。
「うたかたの幻想?」
 皆、首をかしげる。
「梢お姉ちゃん、『うたかた』って何?」
「…う〜ん、ごめんね朝美ちゃん、私にはわからないの…」
「『うたかた』ってのはだナ、もとは『水の上に浮かぶ泡』って意味だ。それが転じて、『消えやすいもの』って意味で使われるんだヨ」
「へえ〜、そうなんですか」
「ちょっと…アタシが読んでるんだから聞いてよ」
 雑談を始める周囲に待ったをかける。
「その必要はないです〜」
 大きな水晶玉を抱えた珠美が、そう声をかけた。
101M.M.O:2005/05/31(火) 21:10:15 ID:Vgn0nkK4
「珠美ちゃん、それは?」
 ため息をつきながら、彼女は答える。
「部長に持たされたんです〜。しばらくの間預かってほしいと言われまして〜」
「この説明書、それの付属品?」
「部長の手書きですけどね〜」
 言いながら、珠美はテーブルの中央に水晶玉を置く。
「…で?」
 一番訝っているのは恵だった。
「まあ、物は試しと言いますし〜」
 いつもの笑顔のまま、もといた席に座りなおす。
「どっちにしろ、暇つぶしにはなりますからね〜」
「…本当にやるの?」
 相変わらずこの手のものが苦手な恵は、水晶玉を見ようともしない。
「でも、もし本当に幻想の世界に入れたら、楽しそうですよね!」
 梢はすでにやる気まんまんだ。
「幻想の中なら……内職、しなくてもいいのね……」
 眠そうな瞳で、沙夜子が呟く。
「私、それならやりたいな!」朝美も乗り気だ。
「桃さ〜ん、ここはみんなに合わせるべきですよ〜」
 ふっと短くため息をつき、
「ま、やってやりますか」そう言って水晶玉に目をやる。
「白鳥さんも、やってみますよね〜?」
「そうだね、面白そうだし」隆士も笑顔でそう答えた。

「さて〜、それではいきますよ〜?」
 珠美が音頭を取り、全員が目の前の水晶玉を見つめる。
「今宵、うたかたの幻想を我らに〜…」
 十数秒もじっと見続けていると、やがてそれぞれに眠気が訪れ、
「………………」
 皆、テーブルに顔を預けて夢の中へと落ちていった。
『貴方たチニ、幸あらンことヲ』
 紙切れの最後には、そう綴られていた。
10293:2005/05/31(火) 21:10:46 ID:Vgn0nkK4
さて、次回からはファンタジー世界に突入です。
シリアスな話なんてひとつも出てこないと思いますので、それは覚悟しておいてくださいね。
103名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 21:18:56 ID:N4X3POFD
>>93
おー、続きが楽しみですなぁ。ぐじょぶ〜
104名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 21:41:44 ID:Ytm2HRRr
まほらばスレ中有数の超大作の予感
105名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 21:49:50 ID:sd/yA4xr
おいおい、そんなにプレッシャーをかけちゃいかんよw







ひと味違うまほらばに期待極大のヨカーン
106名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 22:17:26 ID:0yyVMDQ0
続きが予想出来ないので続きに禿しく期待。
10765改めテイル:2005/05/31(火) 23:33:01 ID:ggI8TQA2
65です。
数字で名乗るのも面倒なのでテイルと名乗ることにしました。
暫定ですが。

>>93
M.M.O…何の略なんでしょう?
それはともかく、最近のSSはシリアス系が大多数だったので、
お楽しみ系もいいと思います。
さて、明日にはどうなっているやら…期待してます。
108名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 00:02:39 ID:iMTYREZS
まったり、まほらば、おーいえー

…ネットゲーム用語の「Massive Multi-player Online」
多人数参加型ゲームの略語ですね。
ネットRPGが大抵これだったりします。
109名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 00:21:53 ID:ddCtrP6J
>>80
GJ!!次の作品待ってます。
>>93
こちらもGJ!!最近のSSとはちょっと趣向が違ってて面白いです。
続き待ってます
110名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 00:27:29 ID:daBHTYo7
>>107
桃野の桃色お伽草子の略じゃないか?

それはそうと、珠美じゃなくて珠実だな
間違えてるとエロ珠にお仕置きされちゃうぞw
111ぐうたら:2005/06/01(水) 00:29:43 ID:Rn01gOF4
どうもー。『あしなみそろえて』の作者です。
今後は「ぐうたら」をコテハンで行こうかと思っているのでよろしくです。
それで、何故ここにレスしているかというとですね、なんと…
次のSSの弟一回を投下しに来たからでーす!
自分でもビックリのスピード。そんなに長くないけど。
今回は最後に読み手の皆様の意見を反映させるつもりですのでよろしくどうぞー。
それでは新作SS、『熱 シラトリリュウシの場合』行きまーす!
112熱 シラトリリュウシの場合 @ 1/5:2005/06/01(水) 00:31:03 ID:Rn01gOF4

こんにちは。白鳥隆士です。
突然ですが今現在、僕は目が覚めたばかりなのですが、どうやら体調が悪い感じです。
原因と思われる事が多すぎて断定はないけれど、多分一番の原因としては、
昨夜の宴会で飲み(正確には、飲まされ)すぎたせいで布団も敷かずに寒い格好で寝てた所為かと。
おかげさまで上から順に、
頭がガンガン。目には寝不足でクマ。おまけに首も寝違えたようで。さらに体はだるい。
と、三拍子にラッピングをしたかのような症状に見舞われています。
とりあえず助かった点としては、今日が土曜日で学校が休みだという事ぐらいです。
とにかく朝食…水分ぐらいはとっておこうと思い、重い体を引き摺りながらも炊事場へ。
うう…廊下が長い…炊事場が遠い……
普段から鳴滝荘は結構広いと感じてはいたんだけど、今日になって普段の3倍ぐらい大きく見える…
そんなときだった。
「あっれ?白鳥クン?」
聞きなれた声だった。
「も…桃乃、さん…?」
「おっはよー白鳥クン!」
「あ、はい…おはよ…ございま…(ぼ〜)」
うお、マズい…視界が霞んでる…息も荒くなる…
113熱 シラトリリュウシの場合 @ 2/5:2005/06/01(水) 00:32:20 ID:Rn01gOF4
「…?どしたの?」
「…ハァ…はぁ…は…ハァ…」
顔が熱い…いや、それどころか体中が熱い…マズいぞ、かなりマズい。
「ま、まさか朝っぱらからこの桃乃さんの色っぽいお姿を見て興奮してるとか!?」
…ツッコむ力も出ない…マズい…
「ま、マズいわよ白鳥クン。
 そりゃさ…確かにキミの事は好きだって言った事もあるけどさ、
 キミには梢ちゃんがいるデショ?見境なくしちゃマズイわよ〜」
だ、だから違います…って…桃乃さん…
「そ、それにさ!私にだって、ほら、その、彼氏がいるしさ!だからキミがいくらオネーサンに萌え燃えしてもねぇ…」
桃乃さんの、長い長い勘違いトークは、僕の意識をこの東京都某所鳴滝荘3号室前廊下から遠い世界に飛ばすのには十分な時間だった。


ばたんきゅう。


「だから〜…ってうおーい!?白鳥クンどったの!?ちょ、気ぃ失ってるわけ!?こ、ここ、梢ちゃん!梢ちゃーん!!!」
114熱 シラトリリュウシの場合 @ 3/5:2005/06/01(水) 00:33:18 ID:Rn01gOF4
本日、二度目の起床。
場所は、僕の…部屋?
確か僕は桃乃さんの部屋の前で気を失って…
「おや、梢ちゃーん!目、覚めたみたいだわよ〜」
「そうですか!?あ、じゃあ珠実ちゃん、運んでくれてありがとうね。」
「いえいえ〜♪お安い御用です〜♪ではでは〜♪」
「うん、ありがとうね!」
梢ちゃんと、桃乃さん、珠実ちゃんの、声…?
「そいじゃ、後は任せたわね、梢ちゃん。」
「はい、桃乃さんも知らせてくださってありがとうございました!」
「いやいや、礼にはおよばないわよ〜、じゃね♪」
ばたん。
どうやら、桃乃さんの目の前で倒れて、
桃乃さんが梢ちゃんを呼んで、
梢ちゃんが珠実ちゃんを呼んで
珠実ちゃんがここまで連れてきてくれたらしい。
「こ、梢ちゃ…ゴホゴホ!」
「あ、だめです白鳥さん!熱が四十度近くもあるんですよ!!」
「え…そうなの…?」
「そうです!心配…したんですよ…?」
そう言って布団の中から僕の手を取り、ぎゅっと握る梢ちゃん。
「ゴメン…ね。心配…かけちゃって…ゴホ!ゴホ!」
「あ、もう寝ててくださいね!」
「はーい…」
梢ちゃんに言われ、布団を被ってごろりと横になる僕。
あ、なんだかこういうのって恋人よりも新婚さんって感じでいい……かも…
115熱 シラトリリュウシの場合 @ 4/5:2005/06/01(水) 00:33:51 ID:Rn01gOF4
「し、白鳥さん?大丈夫ですか?また顔が赤くなってますよ?」
「え?…あ、あ、うん!大丈夫…(ぐぎゅるるる〜〜〜〜)あ…」
「白鳥さん…おなか減ってるんですか?」
「あ、うん…何か食べようと思ってたトコで倒れちゃって…」
「そ、それだったら!私、何か消化にいいもの作ってきますね!おかゆとか!!」
元気一杯にそう言う梢ちゃん。今はこの太陽みたいな笑顔に救われるー…
「うん、お願い…楽しみにしてるね…」
「は、はいっ!!」
そう言って梢ちゃんはちょこちょこと小走りで部屋を出て行く。
116熱 シラトリリュウシの場合 @ 5/5:2005/06/01(水) 00:34:15 ID:Rn01gOF4
朝から高熱を出して寝込んで、良い事なんて無いと思ってたけど、
梢ちゃんの手料理つき看病があるならこういうのもいいなぁ…と、ニヤついてると



どってーーーーーーーん!!!!!!!!!!



と、『誰か』が思い切りすっころぶ音。
……この場合の『誰か』とは、高確率で梢ちゃんだろう。
そして皆さんもお気づきの通り、このまま梢ちゃんが『蒼葉 梢』ちゃんの人格を保持できているとは思えない。
…ユックリヤスミタイヨ、パトラッ(ピー)。


117アトガキ ジゴク:2005/06/01(水) 00:38:37 ID:Rn01gOF4
今回は短く短くここまでです。
ここからは分岐点です。下からお選びください。
1、奇跡的に梢ちゃんのまま。 蒼葉 梢 ルート
2、早紀ちゃんになってました。 赤坂 早紀 ルート
3、魚子ちゃんになって、看病どころじゃないヨ! 金沢 魚子 ルート
4、雄叫び一発、千百合ちゃん推参。 緑川 千百合 ルート
5、棗ちゃんになって、かいがいしく看病。 紺野 棗 ルート
…いじょう5コースから、多かったものから 順 に書いて投下していきます。
あくまでも 順 になので、多分全部投下するとは思います。
誰からも指定が無い場合は作者の好みで選びます!
それが嫌なら選べ!以上!!
オヤスミナサーイ。
118前スレ867:2005/06/01(水) 00:57:03 ID:7U/sruXe
ぐうたらさんGJッス!超GJッス〜!
千百合スキーな私としては4を激しく最優先希望

取り敢えず新作です
とりあえず書けた所まで
多分全体の半分くらいです

エロなしSS第5弾
「だから、笑いましょう」

それでは投下ー
119だから、笑いましょう:2005/06/01(水) 00:59:01 ID:7U/sruXe
0/


記念写真が嫌いだった。

いや、写真というモノ自体も写真を撮られる事も、私は別に好きでも嫌いでもない。

―――ただ、写真を撮る時の、あの言葉。

写真屋のヒトも、
お母様も、
私に向かってカメラを構えると決まって口にする、あの言葉。


「笑って」


―――その言葉が、私は大嫌いだった。

何が楽しくて、無理に笑わなければならないのか。
…笑う事の、何が楽しいのか。
笑わない事の、何がいけないのか―――
120だから、笑いましょう:2005/06/01(水) 01:00:01 ID:7U/sruXe

―――――――――…………


―――そして。

私は、それらの疑問を解決する糸口すら掴めないまま。
私の覚えている限り、一度たりとも笑う事が無いまま。

この世に生を受けてから、13年の歳月が流れた―――

121だから、笑いましょう:2005/06/01(水) 01:01:10 ID:7U/sruXe
1/


「……こまった」
既に朱が差しかけている空を眺めながら、水無月まひるはぽつりと呟いた。

何が「こまった」のかと言うと。
端的に言えば―――彼女は今、穴の中に居る。

数分前。
何時ものように庭で一人でボール遊びをしていたら、
ふとした不注意から足を滑らせ、
すってんころりん。

―――とまあ、至極簡潔に述べればこんな所なのだが、
何しろこの穴、狭いくせに意外に深い。

穴に落ちた時は「何故こんな所に穴が」と一瞬考えもしたが、
今はそれどころではない。
手を伸ばしても飛び跳ねてもギリギリで届かないと悟った時は自分の背丈の低さを呪ったりもしたが、
やっぱり今はそれどころではない。

事態は、意外に深刻だ。
122だから、笑いましょう:2005/06/01(水) 01:02:26 ID:7U/sruXe
こんな時に限って、唯一頼りになるタチバナは居ない。
母曰く、五日前からイタリアへ「訓練」に行っているのだそうだ。
何の訓練かは知らされていないが―――明らかに不必要な数の銃器類を抱えて家を出た所からしても、
その辺りの事は容易に想像が付く。
帰って来るのは今日の予定だが―――タチバナ曰く、
「空港で『敵』が襲って来るかも知れないので、もしかすると夜中までかかる」らしい。
「敵」については、私も母も知らない。
というか知らない方が良いような気がするので、触れない事にしている。

父もまた然り。
今日は彫刻作品の展示会があると言って、割方遠くにある美術館へ行ってしまったのが朝の事。
帰って来るのは、夜遅くになるそうだ。

母は陽が落ちるまで外に出られないし、
仮に私を見付けたとしても、母の力では私を引き上げる事は恐らく出来ないだろう。

「…………」
流石に、飲まず喰わずで夜中まで穴の中で一人―――というのは、
体力的にも精神的にもかなり辛いモノがある。

タチバナも×。
父も×。
母も×。

あとは―――

「…アイツ、か」
まひるはそう呟くと、淡い茜色の空をもう一度見上げた。
穴の縁でまるく切り取られたその空は、何時もより少しだけキレイに見えた。

123だから、笑いましょう:2005/06/01(水) 01:04:02 ID:7U/sruXe
2/


タチバナが水無月家に来たのは、私が小学校に入学して間もなくの事だった。

彼女自身も良家の出身で、頭も良く、運動も「運動以上の事」も万能。
当然ながらメイドとしての素質も文句無しで、一を聞いて十を知り百を行うような手際の良さで仕事を熟した。

一言で言えば、正に「何でも出来る奴」。
私はそんなタチバナを誰よりも頼りにしていたし、現に今だってそうだ。
寧ろ―――コレは本人には内緒だが――― 一種の憧れのようなモノを、私は彼女に対して抱いている。

我ながら、私はタチバナに良く懐いていたと思う。
子供のお守り同然の仕事でも、彼女は嫌な顔一つせず私に付き合ってくれた。
一緒に遊んでくれもしたし、学校の勉強を教えてくれたり(家庭教師は居たが、タチバナの方が教え方が上手かった
ような気がする)ダーツの投げ方を教えてくれたり、拳銃の撃ち方―――は流石に教えてくれなかったが―――

だけど、そんな彼女でも、ひとつだけ。
教えてくれない事が―――否、教える事が出来ないモノが、あった。


それは―――笑う、ということ。
124だから、笑いましょう:2005/06/01(水) 01:05:48 ID:7U/sruXe

同じだったのだ。―――彼女も、私と。

いや―――或いは、父が敢えて「そういう」人物を私に宛ったのかも知れない。
どちらにせよ、私にとってそれは実に有り難い事だった。

月日が経ち、年齢が二桁を数えても尚。
私は笑うという事を、一切しなかったから。
笑顔を強要される事が、何よりも嫌いだったから。
そして、何より。
自分と同じ人間が居るという事で、私は確固とした心の安息を手に入れる事が出来たから―――


「笑わない事の、何がいけないのか」。

―――笑わなくても、楽しいじゃないか。




そんな時だった。

「そうですか? 笑った方がもっともっと楽しいですよ〜?」

―――そんな私に、あいつがそんな事を言ったのは。

タチバナが来てから5年半後。
あいつが水無月家の門を叩いたのは、私が12歳になって間もなくの事だった。

125118:2005/06/01(水) 01:08:01 ID:7U/sruXe
と言う訳で、今回はまひる話です

「あいつ」というのは勿論、あの人の事です
タチバナメインを期待していた方、ゴメンナサイ

というか私もコテ付けた方がいいんでしょうか…


では
126名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 06:13:24 ID:H2FwtFzd
>>117
(・∀・)イイ!! GJ!桃乃さん暴走してんなぁ・・・w個人的には2か5がいいデス。

>>125
まひる話キター!めずらすぃですね、いいかんじっス、GJ!
127名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 07:53:51 ID:t78v60zW
>>117
乙&VGJ

続きを禿しくキボンヌ
128名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 07:56:44 ID:Hw01xHLj
>>117
早紀ちゃんでお願いします。(`・ω・´)シャキーン

>>125
あいつのドジっぷり期待してます。
129テイル:2005/06/01(水) 08:10:15 ID:Rhk7UgKS
>>117
千百合・棗でお願いします。
千百ちゃんカモーン!
130名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 10:06:05 ID:yTYJBVHM
ココはやはり千百合部員デスね
131名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 10:21:58 ID:WemzkK+4
GJ!俺も千百合で。
132たびびとの人:2005/06/01(水) 11:04:16 ID:qqNkEQdr
なぜ梢希望者がいない・・・! 王道だからか・・・!?
自分は梢希望でお願いします。

で、まぁレス=新作ということで。
超短編一個投下しに来ました。
固有名詞無しにしましたが多分誰と誰かはわかると思います。
133「月見酒」:2005/06/01(水) 11:08:08 ID:qqNkEQdr
湖面に浮かぶ月を肴に、日本酒をちびちびと。
何かを考えるわけでもなく、ただ日々を思いつつ、また一口。
「・・・?」
がさりと葉の揺れ擦れる音がして、彼は視線を動かした。
その姿を認めて、軽く手をあげる。
「・・・」
「・・・」
向こうはこちらの姿を認めて、割と近くに腰を下ろした。
彼は日本酒の瓶を掲げてみる。
「・・・」
「・・・」
沈黙ながら、僅かに頷いた相手に杯を持たせ、少しだけ注ぐ。
「眠れねーのか?」
「・・・・・・」
相手は頷くと、少しだけそれを口に含んだ。
「夢を、見るの」
「そーか」
内容は聞かない。再び、沈黙が落ちる。
葉が一枚湖面に落ち、浮かぶ月を僅かに揺らした。
「昔が懐かしいか」
134「月見酒」:2005/06/01(水) 11:09:06 ID:qqNkEQdr
「・・・」
無言の肯定が帰ってくる。
静かに、また一口飲む。吹き抜ける静かな風。
「じゃあ、今は不幸だと思うか?」
「いいえ」
はっきりとした否定に、彼は頷くと、
「なら比べんな」
「・・・そうね」
再び沈黙。月が少しだけ雲に隠れて翳る。
「幸せってな、この月みたいなもんだ。時々完全に隠れちまうけど、それでもじっと待ってりゃまた顔を見せる」
「・・・」
「これから先、お前はもっと幸せになれるさ」
そして、今度は一息に杯を空にする。
「だから、昔は懐かしむだけがいい。昔を羨んだってどーしようもねぇ」
「・・・ええ」
微笑を浮かべ、頷く。
「もう寝ろ。また娘に迷惑かけるぞ」
「・・・」
彼女は頷いて、立ち上がる。
「お酒、ご馳走様・・・」
「ああ」
彼女が去って行く音。それが消えると、再び静かな空間に戻る。
彼は杯に酒を足すと、またゆっくりと味わい始めた。
135たびびとの人:2005/06/01(水) 11:12:15 ID:qqNkEQdr
以上です。思いっきり短いですが、割と即興物なのでご容赦を。
ついでに今後の書き込みはこの名前で行こうと思ってます。
名前考えるのが面倒だったとかいうわけではないですよ?
136名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 11:41:24 ID:a6shzJJ6
バラさん!? GJですよ!


>>117
隆士が玉無し不能男になったら困るからなっちんで
137名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 12:45:44 ID:sULsxyDw
>>135
バラさんカッコヨス
GJ!!
138メリー:2005/06/01(水) 14:06:47 ID:U3MMUx5Y
ぐうたら様
いいですねぇ〜、個人的には5がいいです。なんだか面白くなりそうな
よ・か・ん。
がんばって次、書いてください。

>>118
まひるネタは珍しいですね。
あの人が誰なのか、その答えがあってるかどうか気になります。
グジョブー!

>>135
バラさんがかっこ良かったです。
「幸せってな、この月みたいなもんだ。
 時々完全に隠れちまうけど、
 それでもじっと待ってりゃまた顔を見せる」
このセリフがとても気に入りました。
 名ゼリフをもっと量産してください。
 GJでした!
139名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 16:07:22 ID:yR5LLRZ7
GJ!ここは激しく『5』を推薦です。
140名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 18:28:51 ID:9Fd3Po0m
保管庫に行けないんですけど。
141名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 18:31:24 ID:D3lYYvZY
同上。更新中かな?
142名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 18:58:31 ID:yTYJBVHM
角煮の方でも話してるけど、デリられた可能性が。
143名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 19:19:23 ID:Ubj2jj4f
デリられたサイトでも「このページは準備中です」って表示されるもんなのかな?


と、デリられていないことを切に願う。
144名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 20:07:11 ID:z0w8P/ky
geocitiesめ・・・
145名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 20:26:55 ID:HrjZe6vb
かちゅ使いです。前スレ1001まで取得する前にdat落ちしてしまいましたが
どうしればよいでしょう?
146メリー:2005/06/01(水) 21:29:12 ID:0vq4I9gJ
思いつき、というか本を読み返してなんとなく指が動いて出来た作品です。
色々と稚拙で雑な物に仕上がっていますが、こう、雰囲気とか
ムードらしさは精一杯だしたつもりです。
短いですが、よろしければ拝見ください。
ではどうぞ。
147―アキ―1:2005/06/01(水) 21:29:52 ID:0vq4I9gJ
 今よりは昔だけど、昔よりは今のお話です。
 鳴滝荘という所に様々な人が住んでいました。
 中でも管理人とそのはとこの関係にあるふたりは、恋人同士でした。
 二人はとても仲良しでした。
 二人はいつも笑っていました。
 二人でいると、とても楽しくて、とても幸せだったからです。

 管理人にはとても不安なことがあります。
 それは鳴滝荘に住む皆がいなくなることです。
 でも管理人には分かっています。
 それを止めることは自分には出来ないことを。
 自分の道を歩く人を止めることを出来ないことを。
 分かっていても心が寂しくなります。

 管理人は庭先を掃除していてふと思います。
 秋風に落ち葉が舞い、景色を彩る季節。
 嫌いな季節じゃないけれど、なんだか悲しい気分になってくる。
 出会いを求め、別れを惜しむ。
 それが一番ステキな形だけど、それを望むのはわがままでしかない。
 だけど、だからこそ人と別れたくないのです。

 管理人はかつてを思い出します。
 それはまだはとこのその人が来る前のこと。
 時折自分が自分じゃなくなったような感覚。
 けれども少しも嫌じゃない感覚。
 でもそれが少しだけ心を痛める。
 周りに気づかれないように、自分でも気づかぬ振りをしています。
148―アキ―2:2005/06/01(水) 21:30:12 ID:0vq4I9gJ
 管理人は幸せです。
 なぜなら出会うことが出来たから。
 少しだけ昔に少しだけ話した人と。
 そしてその人がいつも一緒にいてくれると言われたから。
 昔の想い人と恋人になれたから。
 誰よりも好きな人と一緒になれたから。
 
 管理人は今日も掃除をしたり、料理をしたり、挨拶をします。
 綺麗になった所を綺麗と言って貰うと嬉しくなる。
 料理を作った時に美味しいと言って貰うと嬉しくなる。
 挨拶をしたらおはようって返ってくると嬉しくなる。
 だから今日も掃除をし、料理をし、挨拶をする。
 明日も明後日も、いつまでもそれを欠かしません。

 それが、自分だから。
 別れを悲しむこと。
 誰かと別れること。
 自分を締め付ける何かがあること。
 それでも幸せな自分。
 誰かがいるということ。
149―アキ―3:2005/06/01(水) 21:30:29 ID:0vq4I9gJ
 ガチャ・・・・・・。

「梢ちゃん、ちょっと・・・・・・」
「はわっ・・・・・・」
 慌てて机の上にあった鉛筆や色鉛筆を落とした。
「あ、ごめん。驚かせるつもりはなかったんだ。でも、その、
 ノック何回かしたんだけど、返事がなかったから。
 いや、入るつもりはなかったんだよホントッ!
 でも部屋にいるって珠実ちゃんが言っててっ」
 まくしたてるように言い訳をする。
「あ、いえ、こちらこそすみませんでした。
 あの、それで用事というのは?」
「あ、うん。ちょっと課題があるんだけどさ、もし迷惑じゃなかった
 でいいんだけどさ、その、夜食作ってくれると嬉しいんだけど」
「あ、はい良いですよ。それでは後からお部屋にお持ちしますね?」
「ありがとう。それじゃ・・・・・・。
 あれ、これ色鉛筆?
 梢ちゃん、絵とか描いてたの?」
「い、いえっ! た、たまたまです」
「そ、そうなの? じゃあ、僕いくから」
 小さく手を振って部屋から出て行く。
 足音が小さくなるのを感じて、一気に緊張がほぐれていった。
「はふぅ・・・・・・。ビックリしました」
 机の上のノートには女の子のような優しい雰囲気を持った男の子と、
 そばに寄り添うように立つ女の子の絵が描かれていた。
150メリー:2005/06/01(水) 21:37:10 ID:0vq4I9gJ
いわずもがな、”ハル”に影響されました。
別れを悲しむばかりでなく、それを乗り越えて出会いを喜ぶ。
それをこの二人で演じられたらいいなぁ、と。
本当はもっとちゃんとした物を作れる気はしたんですが・・・・・・。
とはいえ、完成したものに文句を言ってもしかたないです。
良くも悪くも作品には気持ちは込めましたし。
151名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 21:39:38 ID:2acj4nIU
GJ!梢ちゃんが描いたっていうのが(・∀・)イイ!!
152名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 22:13:08 ID:vr2kZ11D
ぬくぬくした
153名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 22:18:51 ID:yR5LLRZ7
GJ!!
なのだが、保管庫に入れない・・・まだ読み途中なのに 〇| ̄|_     本当に消えてしまったのか?
154名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 22:33:51 ID:yTYJBVHM
角煮の方に詳細が。
公開停止処分だそうです…。
155名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 22:36:20 ID:vr2kZ11D
はあぁあ??????
156ぐうたら:2005/06/01(水) 22:43:38 ID:AS4edICp
むぅ、公開停止処分ですか……
お絵かき大会の絵を見るのが簡単だったし何より一書き手としても保管して貰ってるので残念です。
どうにかして復活できないのかなぁ…そっち方面には疎いからなぁ、俺…
157名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 22:49:03 ID:9Fd3Po0m
訳わかんないよぉ…
158名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 22:49:55 ID:0vq4I9gJ
なにゆえ公開停止処分?
むぅ、絵が見たかったし、SSも読むのに便利だったのに
159153:2005/06/01(水) 22:56:13 ID:yR5LLRZ7
>>154
サンクス
しかしあの数々すばらしき作品が停止を受けたなんて・・・
早期復帰を切に願うばかりだ
はぁ〜これで帰りの楽しみが・・・
160名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 22:59:23 ID:yTYJBVHM
ジオはエロ禁止だから、運営に見つかってあぼーんってことだね。
元々エロ禁止のレンタル鯖だったから仕方ないっちゃ仕方ないこと。
16193:2005/06/01(水) 23:05:08 ID:Ubj2jj4f
本当だ、角煮に書いてある…OTZ
建て直すにしても、エロOKのレンタル鯖を探すのが手間ですね…
作品自体は作者が保存しているでしょうから多分大丈夫だとは思いますが。


「M.M.O」、今日はうp無理ぽです。誰ですか、昨日「明日が楽しみ」みたいなことを言った人はw
しかし、明日は必ずうpしますので!

>>110氏、ご指摘ありがとうございますorz
この分だと、「きおく」も全部珠美になっちゃってるかなぁ…失敗失敗。
162名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 23:15:51 ID:DdkEOYrI
>>117
なっちん好きとしては5で!

しかし・・・保管庫早く復帰して欲しいですね
163名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 23:17:30 ID:WemzkK+4
そんな・・・orz
164名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 23:18:47 ID:5VF7Mi9x
このスレで「サクラ」でページ内検索したら悲しくなってきたよママン
165テイル:2005/06/01(水) 23:49:50 ID:Rhk7UgKS
生扉ブログに緊急避難用の臨時SS倉庫を作るとか。
まあ、それまでに本家が復帰すれば意味無いけど…
166名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 00:15:36 ID:pQNU6RUj
ジオ!戻せ!何故戻さん!!
167名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 01:23:24 ID:h9nR/KgG
キャッシュでいいから何とか見れんもんかな
168名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 01:27:22 ID:uHHG1byD
>>117
5!!!!!
169名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 02:30:46 ID:tDj72pXq
>>117
じゃあ、4で
170「終わりの始まり」筆者:2005/06/02(木) 09:29:06 ID:HT0ODqLY
いやね、続き書いてるには書いてるんですよ。ちょっとづつちょっとづつ。

…副駅長!熱っぽいのに「代わりがどうにも見あたらないから入ってくれぃ!」は無しでしょ…。
おかげで4日間、バイトと学校行く以外は床に伏してました。ネットも中断気味で…。
今日から執筆再開。6日ぶりに来たら、やけに大作落っこちてるのね。ウマーだわ…。これ超える自信ないよ…。
…前スレで続き待ってる人がカキコしてたし、がんばろ。
今日は3限と4限だけだし、多分帰ってきたら徹夜で書くかと。明日3限だけだし。それで投下できるか分からんけど。
>>117
お楽しみはあとに取っておくという意味合いから
1→千百合
2→魚子
3→早紀
4→棗
5→梢
の順番で投下カモーン!(実は早紀と棗が期待大)
171名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 18:06:43 ID:zTK2bUBZ
メリー氏GJ!
ところで勝手に思ったことなのだが、―アキ―は詩をイメージされたのか?
六行で一つ、という風に感じた。
もしそうなら詩と小説のコラボ?
172テイル:2005/06/02(木) 20:15:19 ID:XcnGXhmG
保管庫デリで一気に冷めたな、ここ…

そんなわけで中編投入。
「冬の終わり」です。

まあ、>>1の要望に応える形になるわけだけど、
オリジナルの設定だらけなので、読む際はご注意あれ。
今現在、未完です。
173冬の終わり(1):2005/06/02(木) 20:16:24 ID:XcnGXhmG
「お母さん〜、どこ〜?」
朝美の声が聞こえる。大方、沙夜子が逃げ出したのだろう。
黒崎親子。
あの若さであれだけの苦労をしているのは、日本広しと言えど、彼女達しか考えられない。

俺は、いつものように釣りをしている。
鳴滝荘にある池。
健在だった頃の梢の両親曰く「昔は鯉を泳がしていた」とか。
無論、今は魚などいない。
では何故釣りをするか。
釣りをしていると、何も考えなくなれるからだ。

しかし、今日は何か変だ。
朝から珍しくどんよりとしている雲が、自分の心持を代弁しているようだった。
どうしても、集中できない。
仕方なく、朝美のほうに視線をやる。

―――朝美、か―――

俺の娘が亡くなったのも、あの年頃だったか―――
174冬の終わり(2):2005/06/02(木) 20:18:24 ID:XcnGXhmG

俺は、作家だった。
あの頃は、小説界も活発だった。
松本清張、山村美紗、西村京太郎、森村誠一。
そういった昭和を代表する作家達が一同に会した時期でもあった。
俺は、学生文壇から小説界にデビューした、若造だった。
それでも、俺の作品は次々に売れて、「若き日の石原慎太郎」という声もあった。
俺は、20代前半にして、名声も金も手に入れた。


しかし、何かが足らなかった。


俺には嫁がいた。
気立てのいい、正しく大和撫子を具体化したような感じだった。
ただ、気が弱く、占いに完全に頼り切ってしまっているのが難だった。
新婚の頃は、俺も然程気にならなかった。
執筆活動に熱中していたせいもあるのだろう。

後で、それが俺の人生を変える原因になろうとも知らず―――
175冬の終わり(3):2005/06/02(木) 20:19:08 ID:XcnGXhmG

俺とあいつの間に、男の子を授かった。
それは、とても可愛かった。
初めての子供。
俺は、たくさんの愛情を注いだ。

否、注ごうとした。

30年前。
冬のある日。
散歩から帰ってくると、子供がいない。
あいつに訊いた。
「あの子は、どこだ?」
あいつは答えた。
「―――あの子は、養護施設に出しました―――
 ―――占いで、そうお告げがあったから―――」

俺は愕然とした。
占いで、子供を、養護施設に、出す、だって――――?
どこにそんな占いがある。

俺は問いただした。どこに預けたのか、と。
しかし、あいつは言わなかった。
それどころか、俺をさらに驚かせる事を言い出した。

「―――また、子供が出来てるの―――」

176冬の終わり(4):2005/06/02(木) 20:19:55 ID:XcnGXhmG

二人目は女の子だった。
俺は、真奈美と名づけた。
俺は―――最初のあの子への贖罪の意味も込めて、この上ないまでに大事にした。
溺愛した。
それこそ、宝物のように。
あるいは、恋人のように。

それから暫くは、平穏な日々が続いた。


俺は、昔から腹話術が得意だった。
隠し芸にするわけでもなく、俺は真奈美と遊ぶときに腹話術を使った。
口を全く動かさず、それなのに話せると言う芸を見た真奈美は喜んだ。
「お父さん、すごい!」と。
俺は、真奈美の笑顔を見ると幸せになる。
執筆活動の傍ら、俺は腹話術の技術向上に時間を割いた。

全ては、真奈美のために―――
真奈美の未来のために―――

しかし、そんな幸せな日々も終わった。
177冬の終わり(5):2005/06/02(木) 20:21:49 ID:XcnGXhmG
17年前。
冬の寒い日、中学一年になった真奈美は交通事故で死んだ。
相手の居眠り運転が原因の、事件だった。
真奈美の未来は、絶たれた。

真奈美の訃報を聞いたあいつは、とうとう気が狂った。
元々気が弱かった上に、心の支えでもあった子供を失ったあいつは、
正しく後を追うように自殺した。
養護施設に出したという、あの子の行方も言わずに。
そうして、俺は一人になった。

手元に残されたのは、自分が積み上げてきた膨大なお金と、
何とも言えない空虚な心だった。


それからは、仕事も手に付かなかった。
作品を書いても売れず、スランプが続いた。
俺は悩んだ。
このまま小説を書いていていいのか、と。
ボロボロの精神で、何が出来るのか、と。

そんなときに声を掛けてくれたのが、蒼葉一家だった。
蒼葉夫妻は、俺が若い頃からの付き合いだった。
俺に、蒼葉夫妻が切り盛りするアパートに移らないかと提案してきた。
最初は乗り気ではなかったが、結局移り住むことにした。
10年前。
そうして俺は、鳴滝荘に移った。
178冬の終わり(6):2005/06/02(木) 20:22:51 ID:XcnGXhmG
入居するとき、一人の女の子に出会った。
当時6歳の、蒼葉梢だった。
入居してから暫く、梢は俺に懐かなかった。
まるで、怖い物を見るような顔をしていた。
それだけ、俺の顔がボロボロだったのだろう。

あの子には―――
あの子には、笑顔でいて欲しい。

真奈美が死んで以来、久しくやっていなかった腹話術をすることにした。

「よう、俺は流星ジョニー!よろしくナ!」
「うわー、すごーい!」
それが、俺が初めて見た、梢の笑顔だった。
そして、俺の分身―――
「流星ジョニー」が、誕生した瞬間だった。

そうして、日々が過ぎていく。
入居者の入れ替わりも頻繁に起こった。
そんな中、黒埼親子が入居し、珠実が入居し、恵が入居し、

そして、今年、白鳥が入居した。
俺は、鳴滝荘の古株となったわけだ。

でも、50を過ぎた今でも、あの子の行方は判らずじまいだった―――
179テイル:2005/06/02(木) 20:23:56 ID:XcnGXhmG
今はここまでです。
バラさん、フラグというフラグが無いからやりづらい…orz
まあ、続きは首を適当に長くして待っていてください。
180名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 20:30:03 ID:H3JeqfDZ
バラさんもの…。
難しい挑戦でしょうがガンバッス。

保管庫は…仮復旧だけなら18禁作品を取っ払えば
なんとか出来そうですけど、ちょっと…ですねえ。
18193:2005/06/02(木) 21:01:25 ID:U+Tr2BZ1
>>170
終わりの始まり、続きを楽しみに待っていますよ〜。
無理のない程度に頑張ってください。
>>179
エロールの「さいはてのうた」を思い出しました…
いやもう、どうぞこんな俺を気の済むまで殴ってやってください。
バラさん話、グッジョブです! このスレのバラさんって何だか格好いいですね。


さて…
「M.M.O」、ようやく続きを投下です。
4巻を片手にお読みくださいませ。


第1話「ようこそ、大いなる幻想の中へ」
182M.M.O:2005/06/02(木) 21:02:04 ID:U+Tr2BZ1
 ……目を覚ますと、視界いっぱいに抜けるような青空が広がっていた。
「……え……」
 当然、すぐに状況を判断できるはずもなく、
「……昼……?」
 そうとだけ、彼は呟いた。

 やがて、意識がはっきりとしてきた。
 自分のいる場所を確認するために、隆士は体を起こす。動きに伴って、かちゃりと金属音が聞こえた。
「あれ、重い……」
 異変を感じ、自分の体を見る。
「……な、何、これ!?」
 驚くのも無理はない。知らぬ間に、彼は鎧らしき物を着せられていたのだ。
(まさか、千百合ちゃん…!?)
 咄嗟に周囲の状況を確認すると、その考えがおそらく正しくないということはすぐに理解できた。
 周りで倒れ、眠っている他の住人たちも、まるでゲームに出てくるような服装をしている。梢も例外ではない。しかし…
(珠実ちゃんと…灰原さん)
 2人の姿が見えない。不安を覚えながらも、隆士は他の人たちを起こし始めた。

 そして、20分後。
 ようやく全員が落ち着きを取り戻し、円になって座っていた。
 起こされるとまず自分の格好で混乱し、他の人たちの姿を見て混乱し、現在の状況を知って混乱する。
 ひとりが取り乱し、その騒ぎでひとりが目を覚まし、また取り乱す…それが連鎖し、隆士が全員を落ち着かせるのにこれだけの時間がかかったのであった。
「……で」
 難しい顔をしながら、恵は切り出した。
「アタシたち、かなりヤバい状況だと思う」
 皆、一様に頷く。…いや、沙夜子ひとりを除いて。
「まさか、本当に幻想の中に入っちゃうなんてね…」
 オカルトもバカにしたもんじゃないわ、そう付け足す。
「白鳥さん、珠実ちゃんと灰原さんは…」
 訊かれるが、隆士は首を横に振る。
「そう…ですか」
 悲しそうに、梢は目を伏せた。
183M.M.O:2005/06/02(木) 21:02:24 ID:U+Tr2BZ1
「ここは…」
 今度は、沙夜子が呟く。
「鳴滝荘じゃ、ないのね……」
 中でも重要な問題だった。
 ここまでの状況、彼らのいる場所が鳴滝荘だったら、一応色々と説明はつく。
 だが、見た限りでは、ここは住み慣れたアパートではなかった。
 広く、地平線の向こうまで続く草原。彼らの近くには、まるで巨大なブロッコリーのような森。
 少なくとも、ここが東京でないことは火を見るより明らかだ。それどころか、自分たちのいる場所が日本であるという自信すら、この場の誰も持ってはいない。
「……あれ?」
 突然、朝美が声を上げた。
「どうしたの?」
 彼女は、じっとしたまま動かない。
「何か……聞こえる」
 その言葉を聞き、皆が耳をそばだてる。
「……何も聞こえないけど」
 恵が言い、隆士と梢も彼女に同意する。沙夜子は何も答えず、耳の後ろに手を当てて音を聞き取ろうとするだけだ。
「でも……こっちに近付いてきてるよ」
 朝美は意見を曲げようとしない。
 何となく、沈黙の空気が流れる。やがて――
「……来たよ」
 彼女がそう言うのと同時に、見覚えのある顔が森から現れた。
「珠実ちゃん!!」梢が立ち上がる。彼女に続いて、全員が珠実に駆け寄った。
「珠実ちゃん……良かった……」
 今にも泣き出しそうな梢を、珠実はそっと抱きしめる。
「梢ちゃん、心配させてごめんなさいです…」
184M.M.O:2005/06/02(木) 21:05:22 ID:U+Tr2BZ1
「ちょっと周りを見てきましたけど、やっぱりここは幻想の世界に間違いないようです〜」
 彼女は、開口一番そう言った。やっぱり、と全員が再認識する。
「それで、バラさんは?」
 腕組みをしながら、恵が尋ねる。誰もが聞きたかった質問だ。
「私たちが目を覚ました場所の辺りにはいなかったです〜。先に起きて1人で行っちゃったか、もしくは最初から違う場所に出たか、どっちかでしょうねぇ〜」
「灰原さんが僕たちを置いていくっていうのはちょっと考えられないから…」
「じゃあ、灰原さんだけ…」
「ま〜、これはあくまで夢の中ということですし、目が覚めたらそれまでなんでしょうけどね〜」
 でも、と梢が手を上げる。
「やっぱり心配ですし、捜した方が…」
「梢ちゃんがそう言うなら、私は大賛成です〜」
 他も、異論はない。
「珠美ちゃん、僕たちの格好は…?」
 これも、全員が持っている疑問だ。当たり前である。
「曲がりなりにも幻想世界、相応しい服装というのはあるものです〜」
 即答だ。しかし、これだけでは納得がいくわけもない。
「相応しい服装って言っても…」
「RPGにはモンスターが付き物というコトですよ〜」
 モンスター? 5人は目を丸くする。
「何でもありってワケ?」
「近いものはありますね〜」
 今度は顔を見合わせた。それから、それぞれの格好を。

 隆士は上半身を守る軽鎧が何よりも目立つ。腰に差された鞘から、聖柄が顔を出している。
 梢は白を基調として、明色で彩られたローブを纏っている。所々、十字の染め上げが見られる。
 恵が着ているのはチャイナ服の面影がある、動きやすい服だ。二の腕にはタトゥーが刻まれているが、書いてある文字は読み取れない。
 朝美の服装も動きやすさを重視したものらしい。少し地味な色合いではあるが、髪の結び目に差された虹色の羽根がそれを打ち消している。
 沙夜子のものは、何よりも「魅せる」ことに重点を置いているようだ。腰に備え付けられた毛皮付きの扇を見てもそれがわかる。
 そして、珠実は梢とは対照的に暗色で染め上げられたローブ。途中から折れたとんがり帽子が、いかにもな雰囲気をかもし出している。
185M.M.O:2005/06/02(木) 21:05:48 ID:U+Tr2BZ1
「ちょっと周りを見てきましたけど、やっぱりここは幻想の世界に間違いないようです〜」
 彼女は、開口一番そう言った。やっぱり、と全員が再認識する。
「それで、バラさんは?」
 腕組みをしながら、恵が尋ねる。誰もが聞きたかった質問だ。
「私たちが目を覚ました場所の辺りにはいなかったです〜。先に起きて1人で行っちゃったか、もしくは最初から違う場所に出たか、どっちかでしょうねぇ〜」
「灰原さんが僕たちを置いていくっていうのはちょっと考えられないから…」
「じゃあ、灰原さんだけ…」
「ま〜、これはあくまで夢の中ということですし、目が覚めたらそれまでなんでしょうけどね〜」
 でも、と梢が手を上げる。
「やっぱり心配ですし、捜した方が…」
「梢ちゃんがそう言うなら、私は大賛成です〜」
 他も、異論はない。
「珠美ちゃん、僕たちの格好は…?」
 これも、全員が持っている疑問だ。当たり前である。
「曲がりなりにも幻想世界、相応しい服装というのはあるものです〜」
 即答だ。しかし、これだけでは納得がいくわけもない。
「相応しい服装って言っても…」
「RPGにはモンスターが付き物というコトですよ〜」
 モンスター? 5人は目を丸くする。
「何でもありってワケ?」
「近いものはありますね〜」
 今度は顔を見合わせた。それから、それぞれの格好を。

 隆士は上半身を守る軽鎧が何よりも目立つ。腰に差された鞘から、聖柄が顔を出している。
 梢は白を基調として、明色で彩られたローブを纏っている。所々、十字の染め上げが見られる。
 恵が着ているのはチャイナ服の面影がある、動きやすい服だ。二の腕にはタトゥーが刻まれているが、書いてある文字は読み取れない。
 朝美の服装も動きやすさを重視したものらしい。少し地味な色合いではあるが、髪の結び目に差された虹色の羽根がそれを打ち消している。
 沙夜子のものは、何よりも「魅せる」ことに重点を置いているようだ。腰に備え付けられた毛皮付きの扇を見てもそれがわかる。
 そして、珠実は梢とは対照的に暗色で染め上げられたローブ。途中から折れたとんがり帽子が、いかにもな雰囲気をかもし出している。
186M.M.O:2005/06/02(木) 21:06:14 ID:U+Tr2BZ1
「確かに、それっぽい服だけど…あ、装備って言うの?」
「と言った方がしっくり来ますね…」
 恵の疑問に、隆士が頷く。
「梢ちゃん、とっても似合ってるです〜♪」
「そ、そうかな…?」
 珠実は、角度を次々と変えて彼女の姿を堪能している。梢は照れながらも少し嬉しそうだ。
「それに引き換え〜」
 今度は隆士の装備をジロジロ。
「白鳥さんは、全っ然似合わないですねぇ〜」
 全然…は言い過ぎだろうが、確かに似合っているとは言いがたい。
「で…でも、これ僕が選んだものじゃないし…」
「まあ、一応は前線向けのようですし〜」
 言いながら、腰の鞘に目をやる。そこに全員の視線が集中した。
「あ〜、確かに装備だけならバリバリの『剣士』って感じだわね…」
「け、剣士!?」
「桃さんは、さしずめ武闘家といったトコロですかね〜」
 それを聞いて、恵はうんうんと納得する。
「なるほどね……そうなると、梢ちゃんが僧侶で、珠ちゃんは魔法使い? プッ、似合いすぎだわ」
「…桃さ〜ん、聞き捨てならないですよ〜?」
「ねえ、じゃあ私たちは何かなぁ?」と朝美。
 珠実は少しの間前後左右から2人を観察し、やがて答えた。
「…あ〜、微妙ですねぇ〜……沙夜子さんは踊り子じゃないかと思うんですけど〜」
「踊り子ねぇ…沙夜ちゃん、ダンスはできる?」
 間があってから、眠そうな顔でこくりと首を縦に動かした。
「大丈夫かな……」
187M.M.O:2005/06/02(木) 21:06:33 ID:U+Tr2BZ1
「結局、朝美ちゃんの職業はわからないまま、か」
「職業?」
 珠実と恵以外の頭上に、疑問符が現れた。
「RPGの世界では、こういうのを『職業』とか『ジョブ』とか言うんです〜」
 ふーん…と、わかったようなわからないような表情。続いて、朝美が声をかけた。
「…あのね、珠実お姉ちゃん。さっき、お姉ちゃんの足音が私にだけ聞こえたんだけど……」
「そうそう、珠実ちゃん! 朝美ちゃん、とっても耳が良いんだよ」
 ほうほう〜、と考え込むそぶりを見せ、やがて顔を上げて珠実は答える。
「きっと、朝美ちゃんはこの世界に順応してきてるんでしょうねぇ〜」
「じゅん…のう?」
「平たく言えば、この世界に慣れてきたってコトです〜。年齢が低いと順応のスピードも速いみたいですねぇ〜」
「ってことは……」
 恵の言葉から、隆士が続ける。
「これから先、僕たちも耳が良くなったりするの?」
「白鳥さんの耳が良くなることはないでしょうね〜」
 即答。隆士は軽く落ち込んだ。
「朝美ちゃんの感覚が鋭くなってきているのは、職業のおかげでしょうから〜」
「職業、わかったの?」
 珠実は自信ありげに頷く。
「その装備と感覚、狩人のセンが濃いですねぇ〜」
「と言うと?」
 先程からの質問攻めに、わざとらしくため息をついてみせる。
「桃さん、ちょっとは自分で考えてくださいです〜」
「狩人って…弓とか銃で狩りをする、あの?」
 恵の質問には、隆士が答えた。
「おお〜、白鳥さんの答えでほぼ正解です〜。まあ、これぐらいは常識ですか〜?」
「はは……」
188M.M.O:2005/06/02(木) 21:06:51 ID:U+Tr2BZ1
 RPG経験者の珠実と恵がいたのは、何も知らない隆士たちにとってかなりの助けになった。
 しばらくの間、2人はたっぷりと質問を浴びせられたのであった。

「さて……もう質問はないわよね?」
 恵が4人に確認を取る。皆、どうやら納得できたらしい。
「あ〜、最後にひとつだけ〜」
 珠実が手を挙げる。そして、隆士に向き直った。
「白鳥さん、ちょっと剣を抜いてみてもらえますか〜?」
「…え?」
 突然何を…と言いたげな隆士だが、珠実には考えがあった。
「いざモンスターと戦う時に、剣も満足に抜けないフヌケでは困りますからねぇ〜」
「…フヌケ……」
 その言葉がぐさりと心に刺さる。これまで、彼女には色々言われてきたものだ。
 珠実は彼の心境を知ってか知らずか、周りに離れるように指示している。
 隆士が顔を上げる頃には、全員が彼から一定の距離を保っていた。
「さあ、どうぞ〜」
「わかったよ……」
 諦めたように、右手で柄を握る。
 すっと息を吸い込み、一気に右腕を持ち上げた。が――
「うわっとと…」
 剣は思いの外重量があった。刃は鉄なのでそれは当然だ。
 隆士は重みによってバランスを崩し、抜き身は地面にさくりと刺さった。
「…これは〜……」
 腕組みをする珠実と恵。
「期待薄…かもねぇ……」
 特に何の反応も示していない沙夜子の隣で、梢と朝美が心配そうに彼を見つめていた……
18993:2005/06/02(木) 21:08:32 ID:U+Tr2BZ1
というわけで、RPG型SS(…と呼べない長さになるかも)「M.M.O」本格的にスタートです。
桃と珠はRPGをやったことがあるだろう…と勝手に想像してしまいました。多分やったことあると思うんだけどなぁ。
さて、おそらく疑問に思われるのが「隆士→センシ」のジョブ。
この先、キシのネタは使うところがありますので、心配ご無用です。
次回からはいよいよバトルが入ってきます。このバトルシーン、皆さんの予想を裏切った出来になると自負しております。
ではでは、続きをお楽しみに。


…これから先、朝美ちゃんが大活躍するヨカーン。
19093:2005/06/02(木) 21:14:04 ID:U+Tr2BZ1
うわ、>184と>185がかぶってる…
気にしないでやってくださいorz
191テイル:2005/06/02(木) 21:21:30 ID:OOCacLLL
>>189
乙・GJ!
成程、朝美は耳がいいとしましたか。
他のキャラの特性とかどうなっているんですかね〜
第2話に期待。

そういやバラさんは、あれならk(ry
192名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 21:27:20 ID:KHplm0Fu
こんなにいい作品が来てるのに…
保管庫がない(´・ω・`) 仮でもいいから早くきぼん
193名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 21:56:58 ID:2r4meA0A
>>189
GJ!!かなりイイ!
隆士がカッコわるいのも笑えますたw
マジで続きが楽しみだ!

>>191
何気にID凄いな。
194名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 23:44:40 ID:qQl15P+P
おお、2日ぶりに来たら、大作ラッシュだ。
>>117>>125>>135>>150>>179>>189諸氏GJ!!です。
しかし、保管庫の公開停止とは・・・。自分も楽しみだっただけにきついです
それと>>117氏、1が5でよろしくお願いします。
195メリー:2005/06/02(木) 23:53:39 ID:zQyQZFgP
>>171
詩をそんなに強くイメージしたわけではないんですが、確かに六行一つを
目指してやりました。詩的表現も含めればいいなぁ、と思ってやってみた
のですよ。
コラボってほどのことではないと思いますが、上手く形にはなってくれた
のかなぁ・・・・・・と。

テイル様
バラさんをメインで、しかもオリストを作り出す技術がすばらしい。
続きをどうするのか、気になる所なので、頑張ってください。
>>189
MMOのキャラで、隆士がフヌケな剣士という、まさにありうる設定に
おー! と関心。
第二話が楽しみです。


196名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 10:21:08 ID:m3DODS+p
誰もいない…
保守する………かも……
197名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 16:20:04 ID:B6AvEAH8
保守すルことヲ欲すルでスヨ。








…こレハ失敗でスネ。
198名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 19:00:10 ID:vU7pRmpi
一日くらいじゃ落ちんて
199名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 20:34:19 ID:AX5HQ4bJ
>>53
この次はエロ有でww
20053:2005/06/03(金) 21:02:20 ID:DNLWbr/U
>>199
いやぁ、エロ書くのちょい苦手なんですよ、俺。
それにエロールは正式な名前もないですし、なかなか難しいかな、と。
翼(仮)と三千代て、カラミにくい名前…


「ふあ……翼…さん……

「三千代…大丈夫、オレに任せろ……


立つモンも立たないですね、「三千代」って…orz
書いてみたいんですけどねぇ。この2人好きなんで。
201名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 21:31:28 ID:RzLea98D
保管庫消えた?
202ぐうたら:2005/06/03(金) 21:35:34 ID:kfG4/gBQ
>>201
ジオから公開停止処分を受けたとか何とか。
詳しくはお絵描き大会スレの>208で管理人様のコメントアリ。デスヨ〜
203テイル:2005/06/03(金) 22:47:06 ID:PaOgPfYQ
>>200
みっちゃんでいいよ…そっちのほうがとっつきやすい。

それと、有志でSS臨時保管庫「まほログ」を独自に作りました。
http://blog.livedoor.jp/maholog/
本家が復帰してくれればいいんですけどね…
ブログなんで携帯対応です。
204メリー:2005/06/03(金) 23:06:31 ID:M28wXljg
テイル様
乙&ありがとうございます。
早く本家が復帰してくれることを私も祈ってます。
暗くなっていてもダメなので、今明るいネタでSSを書こうとがんばっています
とりあえず、落ちないようにがんばりましょー! オー!
205名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 23:08:21 ID:B6AvEAH8
>テイル氏
タダ者じゃないよあんた!
テラゴッジョブ!!
206名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 23:09:04 ID:e21e9Gh/
乙〜♪

SSだけでなくこちらまで…
感謝感謝。
207テイル:2005/06/03(金) 23:50:51 ID:PaOgPfYQ
大体の投稿が終わりました…
手持ち分と、このスレに投下されている作品を格納しました。
未完の作品は、完成次第保管する予定です。

あと、「あしなみそろえて」の作者>>80様、
全体のデータを頂けますでしょうか?
宜しくお願いします。
208名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 23:56:36 ID:S2UO6sBO
  l:.:.|:.:.|: .|:.:l:.レ'  :|:.:.:.:|: . .|:.|-‐─ ''|:.:.:..|:.:.l:.:.: . l l : |:.:.:.|:.:
  :.:.|:.:.|:.:.|:.:l:.| ',:|:.:.:|:.:.:.:|:.:.:.:| |     |:_|_:.:.|:.:.:.:.:.|:.:.:|:.:.:.|:.:
  :.:.|:.:.|:.:.|:.:|:.| ',:. ;|、r: :i':"゙´|`    ´|:.:/l:.::`ソ:.: .::l:.:.:|:.:..:ハ
  :.:.|:.:.|:.:.|:.:|:.|  ',:.:|;:.:.:._|、L、|     ノ,ィゥ:.‐k//::/:.:./:.:/:.::
  :. |:.:.|:.:.|:.:l:.:l  〉:,.ィ::::::::::::|       l::::::::1ノィ/:.;.イイ:.:|:.:
  :.:l:.:.:l :.:|:.:|:.:|‐〈. '´ {::::::::::::|       |っ:::j イ |´::.|:.:.|:.:.|:.:
  :.:|:.:.:|:.:.|:.:| :.| |ヽ l.ノ_t:ノ       ̄ ´::::| |:.:.:|:.:.|:.: |::
  ::l|: . |:.:.|:.:|:.:.| l  :::::::::       '     人 |: ..|: .|:.:.:.|:  >>207
  :.:.|: . |:.:.|:.:l:.:.| |ヽ、           , イ:   |:.:.|:. |:.:.:.:|  お疲れ様…かも
  :.:.:|:.:.:.l:.:.l:.:l:.:.| <介 、    ' ,、<、:.::|__|:.:|:.:l:.:.:.:.:
  :.:.:.l:.:.:.',:..',::',:.:| ̄|  `'ー-`ニ_ー_´/ /|:.:.:.:.|:.:.:.:.:l:.:|:::::.:.:
  :./|:.:.:.',:.:',:.',:.',´`ヘ          /`|:.:.:.:.l:.:.:.:..l::|ヽ:.:.:.:
  '  ',:.:.:.',:.:',:.',:.',   ヾ、 r─--‐ァ^  |:.:.:.:.|:.:.:.:.:|}'  ヽ;:
     、:.:.:',:.:',:.'、:',     7 ハ ヽ,   |:.:.:.:.|:.:.:.:./    ,
      ヽ:.:.'、:ヽ:.:.ヽ    \/ ∨   |:.:.:.:.l:.:.:./
209ぐうたら:2005/06/04(土) 00:24:20 ID:2iWkotLN
>>207
えと、全体のデータ、といいますとここに投下するんですか?
210テイル:2005/06/04(土) 00:31:57 ID:cm3HttIN
>>209
いえ、どこか適当なうpろだにうpして頂ければ…
211名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 00:32:45 ID:ukI0aSjo
txtファイルにでもまとめて何処かにうpとかでいいのでは(横から失礼
212ぐうたら:2005/06/04(土) 00:37:12 ID:2iWkotLN
う、うpろだとかは…苦手、でして…
213名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 00:38:23 ID:yyorEbUO
214ぐうたら:2005/06/04(土) 00:40:14 ID:2iWkotLN
>>213
な、ナイス!!
215テイル:2005/06/04(土) 00:41:29 ID:cm3HttIN
ttp://tool-ya.ddo.jp/2ch/trash-box/index.html
こことかが簡単ですかね。
書いた内容をテキストファイルにしてうpして頂けたら幸いです。
216ぐうたら:2005/06/04(土) 00:44:17 ID:2iWkotLN
>>215
>>213のログじゃダメなのかな…かな?
217テイル:2005/06/04(土) 00:58:19 ID:cm3HttIN
>>216
投稿完了しました〜>ぐうたら様
長かったです…ログを追うのって大変な作業だと痛感しました。
これからも、折を見て投稿していきますので、宜しくお願いします。

オヤスミナサイ…orz
218ぐうたら:2005/06/04(土) 01:02:19 ID:2iWkotLN
テイル様、お疲れ様でした。ヤクタタズデゴメンナサイオヤスミナサイ。
ログも何とかうまく言ったようなので、書きあがったSSを投下します。
詳しく集計してないので分かりませんが、順位的には1、なっちん 2、千百ちゃん 3、早紀ちゃん 4、梢ちゃん 5、魚子ちゃん
だったようですが、頭の中で一番イメージの固まっていた千百ちゃんにトップバッターを任せました。
そしてなんと!今日は豪華!梅雨寸前だよ二本立てスペシャル〜!と、言う事で千百ちゃん版のSSと、ふと頭に思いついたフレーズを文章化した詩的SS、『思い出のカケラ』を投下します。
お楽しみいただければ幸いですヨ。
それではまずは、『熱 〜シラトリリュウシの場合〜 緑』です。ではでは〜
219熱 〜シラトリリュウシの場合〜 緑 1/4:2005/06/04(土) 01:05:13 ID:2iWkotLN
梢ちゃんが倒れたと思われる音がしてから、十数秒が経ちました。
ボヤける視界で開いたドアを見ているても何も分からないけど、とりあえず見てみる。
さらに十数秒。一向に何か起きる気配は無い。と、思ったそのときでした……

「ホーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」

嗚呼、この、声……

「隆ちゃーーーーーん!!!」
彼女は…
「隆ちゃん隆ちゃん隆ちゃーん!!」
千百合ちゃん…
「隆ちゃん!!熱は!?めまいは!?吐き気は!?」
部屋に飛び込んでくるなりに症状を聞いてくる千百合ちゃん。
心配してくれてるみたいだけど…
「ち…千百合…ちゃん…も、少し…声、小さく…すごく、頭に響く……」
「ホ!?す、すみません隆ちゃん!ああ、どうしましょう!隆ちゃんお顔が真っ赤!
 なにか冷やしたほうがいいですよね!?冷やすもの冷やすもの…
 え、●ッケルザク○〜〜!!!」
「そ、それはマズい…って…やめて…」
「え、あ、そ、そうですよね。だったらこの●ゥリンダル○で…」
「だから…ちょっと、千百合ちゃん…?」
もはや僕の熱を冷ます方向からは真逆の方向に行ってる…エッ●ル○クスの時点で既に違うけど…
「何ですか?あ、もしかしてオーソドックスに●スカリボル○のほうがいいのですか?
 もぅ〜隆ちゃん、そういうのは先に言ってくださ…」
「お願い…頭…割れそ…寝かせとい、て……」
「ホ!?そ、そうでしたね…ゴメンナサイ、隆ちゃん…」
そう言ってしょげる千百合ちゃん。どうやら心配している事だけは確かなようだ。
220熱 〜シラトリリュウシの場合〜 緑 2/4:2005/06/04(土) 01:05:46 ID:2iWkotLN
「あのさ、千百合ちゃん…冷たいもの…氷のうとか…氷枕とか…そんなの持ってきてくれると助かるんだけど…お願いできる?」
「もも、勿論ですよ隆ちゃん!隆ちゃんのラバーとしてこの私、correctな行動に移りますよ!ちょっと待っててくださいねー!」
「う、うん…よろしくね、ありがとう…」
「何のこれしき!礼には及びません!さあ、しっかり寝ておきなさいな隆ちゃん!」
「うん、お言葉に甘えて…」
「じゃ、じゃあ、何か冷たいものと食べ物持ってきますね!ホーーーッ!!」
うあ〜…その、ホーってやめて…頭…割れ……


「隆ちゃーん?おかゆ作ってきましたよー?」
「…………」
千百合ちゃんの声が…聞こえる…
またちょっと寝てたみのかな…?
声はしっかりと聞こえてるけど体がそれに応えずに動いてくれない…うぅ、辛い…
「隆ちゃん?寝てるんですか?」
声と一緒に近づいてくる千百合ちゃんの気配。
その気配が僕のすぐ横に来た。
「隆ちゃん、苦しそう…」
あ、分かる?そう、今ホントに苦しいんだよ。
「それにしても綺麗な顔立ちですねぇ…こうしてみていると女の子どころかお人形のようですね…」
け、気配が重い、熱い…
「何しても起きないんでしょうか…ホー…」
え、ち、千百合ちゃん?
「あ、あ〜ら大変!隆ちゃんてば汗びっしょりじゃないですか!
 これは、き、着替えさせないと、いけませんね?いけませんよね?」
ま、まさか…!?
「着替えさせなければいけませんね!…無論、correct!な服飾にぃーーー!ホーーーーー!!!」
そう高らかに叫んだ千百合ちゃんは(多分)何処からとも無く服を出す。
221熱 〜シラトリリュウシの場合〜 緑 3/4:2005/06/04(土) 01:06:08 ID:2iWkotLN
や、やめて千百合ちゃん〜…
「ハァハァ…隆ちゃん…」
怪しげな声を発しながら僕の上着に手をかける千百合ちゃん…ヤバいってば…まだはやい(?)よ…
「ホホーゥ…隆ちゃん、服の上から見たときよりもすべすべそうなお肌…本当に男で無けれ…ノンノン!
 今の隆ちゃんはマイラバー!彼氏!男です!!」
うあ〜…いつの間にか上着が脱がされてるぅ〜〜〜……本当にマズくなってきた…
「ホ!?」
と、短い奇声を上げて動きを止める千百合ちゃん…の気配。
「考えても見なさい緑川千百合!今、隆ちゃんは高熱で動けない役立たず!」
う、動けないのが歯痒い、歯痒い〜…
「今はこの私の思うがままままま!!」
 ま が多いよ!!
「そう、今こそ…恋人の行き着く最終地点!!隆ちゃんと…」
ま、まさ、か…千百合…ちゃん……!?

「隆ちゃんと……隆ちゃんと……」

神様ドウカボクノカンガエガハズレマスヨウニ。神様ドウカボクノカンガエガハズレマスヨウニ。
神様ドウカボクノカンガエガハズレマスヨウニ。神様ドウカボクノカンガエガハズレマスヨウニ。
神様ドウカボクノカンガエガハズレマスヨウニ。神様ドウカボクノカンガエガハズレマスヨウニ。
神様ドウカボクノカンガエガハズレマスヨウニ。神様ドウカボクノカンガエガハズレマスヨウニ。
神様ドウカボクノカンガエガハズレマスヨウニ。神様ドウカボクノカンガエガハズレマスヨウニ。
神様ドウカボクノ…………

「隆ちゃんと……connectォォォォォォ!!!!」

い゛や゛−−−!!?
222熱 〜シラトリリュウシの場合〜 緑 4/4:2005/06/04(土) 01:06:26 ID:2iWkotLN
「りゅ、りゅりゅりゅりゅりゅ隆ちゃん!!さ、さささささぁ!!脱ぎ脱ぎ、しまshow!!」
か、体がァァァ…動かなァいィィィィィィィ!!!
上の服が完全に脱がされたようで、千百合ちゃんの息が余計に荒く危ないものになっていく。
そのままズボンに手を掛けて…!それはっそれだけはぁっ!!!
燃ぉえ上がぁれェェェェェェェェェェェェ!!!僕の小宇宙ォォォォォォォォ!!!
と、言っても40度超(ぐらいにあがった感じがします)の体で小宇宙は燃やせないので気力を振り絞って体を動かす。
「ち…ゆり…ちゃ…だ…メェェ…」
「ホーーーーー!!!」
「ダメえええええぇぇぇぇ!!(がばぁっ)」
「ホァ!?」
香港スターみたいな声を上げる千百合ちゃん。
「りゅ、隆ちゃんっ、い、いつごろから、お、おおおお目覚めに!?」
「まぁ、その…千百合ちゃんが部屋に入ってきた辺りから…体が動かなかったけど…」
「そ、それでは…ぜ、全部聞こえて……」
「う…うん…」
「ほ、ほ、ほ、ホーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―」
高熱を出している僕にお構いなしに本日一番の雄叫びを上げる千百合ちゃん。あ゛だま゛がい゛だい゛〜…
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」
叫び終えた千百合ちゃんはその場に倒れこむ。

一人残された僕は、とりあえず上着を着て、千百合ちゃんの手作りおかゆ(やや冷め気味)を独りですすっていました。
追伸、風邪は一晩寝たら治りました。
223サンズノカワ:2005/06/04(土) 01:08:08 ID:2iWkotLN
えー、千百ちゃん編、適当でスイマセン。
コネクト!はかなり企画段階で思いついてたネタなので、早く書きたいが余りになっちんをスルーしてしまいました。ゴメンネナッチンナッチンゴメンネ。
誤字脱字はご勘弁…

続いて『思い出のカケラ』です。ドゾー。
224思い出のカケラ 1/6:2005/06/04(土) 01:10:55 ID:2iWkotLN
彼は優しい笑顔を持っています。
彼女は暖かい笑顔を持っています。

彼は温かい笑顔を持つ人と出逢いました。
彼女は優しい笑顔を持つ人と出逢いました。

彼と彼女は出逢いました。
二人の笑顔は、優しく暖かいものになりました。


暖かな春の日に。
優しい光の差す春の日に。

暖かな春の日に。
桜の花舞う春の日に。

暖かな春の日に。
二人は出逢いました。


私は幸せでした。
毎日が楽しかったから。

私は幸せでした。
皆がいつも笑顔だったから。

私はとても幸せになりました。
憧れていた、あの人と逢えたから。
225思い出のカケラ 2/6:2005/06/04(土) 01:11:19 ID:2iWkotLN
暑い夏の日に。
海が輝く夏の日に。

暑い夏の日に。
空が眩しい夏の日に。

暑い夏の日に。
二人は思い出を作りました。


僕は楽しかった。
彼女と一緒にいることが。

僕は楽しかった。
皆で一緒にいることが。

僕はとても楽しかった。
彼女と笑いあえることが。
226思い出のカケラ 3/6:2005/06/04(土) 01:11:41 ID:2iWkotLN
涼しい秋の日に。
草木の朱い秋の日に。

涼しい秋の日に。
虫たちが歌う秋の日に。

涼しい秋の日に。
二人は幸せでした。


私は不安でした。
皆の笑顔が見れなくなることが。

私は不安でした。
皆の居場所が無くなることが。

私はとても不安でした。
あの人の笑顔が見れなくなることが。
227思い出のカケラ 4/6:2005/06/04(土) 01:11:59 ID:2iWkotLN
寒い冬の日に。
体の凍る寒い日に。

寒い冬の日に。
心も凍る冬の日に。

寒い冬の日に。
二人は温もりに包まれました。


僕は知りました。
皆が幸せでいられる訳を。

僕は知りました。
僕が幸せでいられる訳を。

僕ははじめて知りました。
彼女の心の中の不安を。
228思い出のカケラ 5/6:2005/06/04(土) 01:12:19 ID:2iWkotLN
暖かい春の日に。
二人は出逢いました。

暑い夏の日に。
二人は思い出を作りました。

そして今、二人はいつも一緒です。
僕達は、幸せです。

涼しい秋の日に。
二人は幸せでした。

寒い冬の日に。
二人は温もりに包まれました。

そして今、二人はいつも一緒です。
私達は、幸せです。


まほらば。
皆が笑顔でいられる場所。

まほらば。
彼が笑顔でいられる場所。

まほらば。
彼女が笑顔でいられる場所。


まほらば。
皆の笑顔が集まる、大切な場所。
229思い出のカケラ 6/6:2005/06/04(土) 01:13:01 ID:2iWkotLN
鳴滝荘、縁側。
まだ肌寒い夜空の下、隆士と梢は座っていた。
「やっぱり、まだ寒いね」
隆士は、梢に問いかけるように話す。
「そうですねぇ…」
梢もそれに応える。
「でも」
梢は続ける。
「すぐに、ぽかぽかなお日様が、春が、また、来ますよ。」
優しい微笑み。
「うん。そうだね。」
この一年、春も、夏も、秋も、冬も。
二人は一緒だった。
これから先も、ずっと
「これからも、よろしくね。梢ちゃん」
ふたりは
「は、はいっ!よろしくお願いしますね、白鳥さん!」
いっしょに。
230アトガキジゴク:2005/06/04(土) 01:15:06 ID:2iWkotLN
二本一気に投下は…キツい…
緑のほうはかなり急いでたし、思い出〜の方は、SS的にしようと最後の部分を急ごしらえでくっつけたし…
かなり粗いところもありますが、平に、平にご容赦を。
ああ、眠い…
オヤスミナサイ…
231名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 01:16:57 ID:CMSVO9Ot
連続でGJ&乙w
232名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 03:47:28 ID:xw01e3vS
GJ!!
この調子で、なっちんのかいがいしい看病に、激しく期待
233名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 04:18:16 ID:IzbW/zv4
神が降臨してきている……

>>230
連乙!!そしてGJ!!
暴走しまくっている千百合ちゃんに爆笑させて頂きました。
次は棗ちゃんですかね?期待しております!!
234名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 07:26:42 ID:uH+wyg1D
魚じゃないの?
235名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 08:41:17 ID:xw01e3vS
順番はともかくなっちんに期待ということ
236名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 09:32:40 ID:DPNhjAoA
てか保管庫消えてねえか?おまいら
237名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 10:59:10 ID:CvOsEYnG
ここエロくないだろ
238名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 11:28:51 ID:l7dHiEKi
まあ、200超えてもエロがないのは確かにそうだけど。
今頑張ってる人もいたよな、確か。
期待して待ってるよ。
239メリー:2005/06/04(土) 11:36:06 ID:w/rni5AP
>>230
千百合編GJ! 笑わせてもらいました。
個人的に『燃ぉえ上がぁれェェェェェェェェェェェェ!!!僕の小宇宙ォォォォォォォォ!!!』
がツボでした。
その後の思い出のカケラはとてもしんみりと、良い詩だと思いました。
春夏秋冬とリズムを上手く繋げてるなぁと関心しました。
―アキ―を書いた身としては、季節をそんな風に使うのもアリなのか、と
再認識させられました。
なにはともあれ、両作品とも乙&GJ!!
240名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 12:05:56 ID:VR2kc3Pe
沸々とネタがわき始めたけど、構想練ってたらSSじゃなくて
長編になっちゃったよ…。
ここに載せるか躊躇してますorz
241名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 12:13:45 ID:l7dHiEKi
是非うp汁。たのんます。

ある程度書いてからの方がいいけど。
242名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 13:05:52 ID:rdHqLNRt
そうそう。じゃないと今の俺のようになるぞ





イキヅマッタヨ…orz
243名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 13:55:52 ID:uRtEfs8X
俺は全部書き終えるまでは出さない主義だな。
途中で投げ出すのは嫌だし。
244名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:13:13 ID:rN0Yyoz9
通りすがりに黒崎母メイン(?)の話を書いてみました。
梢好きの人はスルーでひとつ。
エロはないです。
245名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:13:33 ID:rN0Yyoz9
誰よりも愛した人。
誰よりも愛してくれた人。

けれど、あの人は、もういない。
死んでしまったから。
事故で死んでしまったから。
だから、あの人は、もういない。

何度も後を追おうと思った。

けれど。
私にはあの子がいた。
愛するあの子が。
私を愛してくれるあの子がいた。
だから。
生きる。
私の残りの人生は、あの子の為に生きようと思う。

あの子の為に。
あの子が望むことを。

一番欲しいだろうモノはわかっている。

「…朝美……お父さん欲しい?」
「いっぱい欲しい!!」

…………???どーゆうことかしら???


246名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:13:54 ID:rN0Yyoz9
時刻は深夜。
よい子はもう寝る時間ではあるのだが。
中学一年生のよい子、黒崎朝美は寝ることなくせっせと内職に励んでいた。
もちろん理由がある。
母、沙夜子のいつものサボり癖+大量隠匿のせいだ。
内職の期日は明日の朝一。
朝美はフルスピードで作業を進める。
「…朝美……お父さん欲しい?」
「いっぱい欲しい!」
とにかく今は人手が欲しい。
母の言葉の意味はよくわからないが今は父でも猫でもなんでもいいから手を借りたい。
「ほらお母さんも手を動かして!」
「うん……」
返事こそ素直だが沙夜子の作業は極めて遅い。
「ううう〜……無理だよ〜…ぜったい終わらないよ〜……」
珍しく朝美が弱音を吐く。
だが神はよい子を見捨てたりはしない。

 コンコン

不意にノックの音。
「はーいどうぞー」
「こんばんは」
そう言って入ってきたのは白鳥隆士。
「お兄ちゃん、こんな時間にどうしたの?」
247名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:14:15 ID:rN0Yyoz9
「うん、内職が大変そうだって桃乃さんが言ってたからちょっと気になって。
あ、これさし入れ。朝美ちゃんにはプリン、沙夜子さんには水ようかん」
「わ〜!ありがとうお兄ちゃん」
「水ようかん…」
笑顔を見せる二人の様子に隆士も笑顔。「それ食べて休憩しなよ。根を詰め過ぎると身体に毒だよ」
「でも仕事が」
「僕も手伝うからさ。少し休もう?ね?」
「え、でも……」
申し訳なさそうに俯き加減で隆士の顔色を窺う。
「わがまま言えるは子供のうちだけの特権だよ。
朝美ちゃんはいつもいい子にしてるんだから。少しはわがまま言ってもいいんだよ」
そう言って、隆士はまたにこりと微笑む。
朝美はきょとんとしていたが、
「私もう中学生なんだから。子供扱いしないでよお兄ちゃん」
言葉こそ拗ねている様だが顔は笑っている。
「ごめんごめん。そうだね、子供扱いしちゃダメだね。
お詫びに仕事手伝わせてもらっていいかな?僕明日は学校午後からだし」
「うん。ありがとうお兄ちゃん」
ニコニコ笑顔。
そんな二人の様子を沙夜子はじっと見つめていた。
248名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:14:36 ID:rN0Yyoz9
その後、三人は(まあ沙夜子はほとんどずっと寝ていたが)頑張った。
途中で朝美はウトウトしまったのだが、その分は隆士が頑張った。
なにはともあれ、朝には全作業を終わらせる事が出来た。
「お兄ちゃんありがとう。ごめんね、私途中から寝ちゃってて」
「いやいや、朝美ちゃんは学校があるんだから。少しは休めた?」
「うん」
「よかった。あ、学校の時間はまだ大丈夫?」
「ああっ!もう行かないと!」
慌てた様子で学校の準備をする。
「お母さん、親方さんが荷物取りにきたらお願いね。それじゃあいってきまーす!」
「いってらっしゃい…」
「気をつけてね」
短い睡眠時間ながら元気に出かける姿を沙夜子と隆士、手を振って見送る。
見えなくなった所で隆士は「う〜ん」と大きく伸びをする。
「さて……学校の時間までひと眠り――」
しようかなと思ったのだが……視線を感じる。
「…沙夜子さん?」
無言でジーッと見つめられる。
「どうかしました?」
「……(じ〜)」
「えっ〜と……お、おやすみなさい!」
無言のプレッシャーに耐えかねて自室に逃げ込む。
「なんだったんだ、いったい?僕なにかしたかな?」
昨夜の自分を振り返ってみる。
視線を向けられるような事はしていない……と思うが、なにぶん寝不足で頭が動かない。
「……寝よう。起きてから考えよう。それでもダメならまた聞けばいいし」
目覚ましをセットし、布団に潜り込む。
「おやすみなさい」
そう言って目を閉じる。
至福の一時。
隆士はすぐに眠りに落ちていった。
249名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:14:57 ID:rN0Yyoz9
隆士が寝ついて小1時間。
ドアを開け、部屋の中に不法侵入する人影。
沙夜子だ。
いつもの、何を考えているのかよくわからない表情のまま寝ている隆士に近寄る。
寝顔を覗きこむ。
じっと眺める。
凝視する。
「……」
何を思うのか、その表情からは読み取れない。
しかし、瞳にはいつになく強い光。
沙夜子は布団の上に乗る。
「ううう……」
下敷きにされた隆士がうめきを上げるが、起きそうにない。
沙夜子は隆士の髪を触る。ちょっと強めに引っ張ってみる。
「んん……」
まだ起きそうにない。
沙夜子はさわさわと頬に触れる。
「んむ…」
まだ起きない。
ぎゅぅっとつねった。
「いたたっ!……な、なんだいったい?……あれ?沙夜子さん?」
自分の上に乗っかる沙夜子を見つける。
「あの……とりあえずどいてもらえますか?」
「いや…」
「『いや』っていわれても…」
困り果てる隆士。
普通に乗っかられているのなら力技でなんとでも出来るのだが、
布団があるため手足にかなりの制約があるためどうにも出来ない。
250名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:15:17 ID:rN0Yyoz9
「沙夜子さん……いったい何が目的なんですか?」
「……」
「……」
「……」
無言で、至近距離で見詰め合う。
雰囲気に耐えかねた隆士が口を開こうとした時、
「…朝美に、作ってあげたくて」
ポツリと零した沙夜子の言葉に隆士、少々驚く。
朝美の為に……というか、沙夜子が積極的に何かをするというのがかなり珍しいからだ。
「作ってあげる?なにをですか?」
「お父さんを作ってあげたくて…」
「そうですか。朝美ちゃんのためにお父さんを……ん?」
隆士、ここにきて不穏な雰囲気にようやく気付く。
「朝美ちゃんにお父さんを?」
「そう…」
「だれがお父さんに?」
自分を指差される。
「ちょっ!なんでそうなるんですか!?」
隆士大慌て。
「朝美もあなたには懐いてるから…」
「そーいう問題じゃないでしょう!?」
「朝美が、嫌い?」
「そーじゃなくて……あ!亡くなった旦那さんの事はいいんですか?」
隆士の言葉に、沙夜子がピクリと反応する。
ここぞとばかりに隆士はさらに続ける
「まだ好きなんじゃないですか?旦那さんの事」
「ええ…あの人のことは……好き…大好き……心の底から愛してる……これからも…ずっと…」
静かな声。
だが、秘められた想いは限りなく強い。
その証拠に、隆士は何も言うことが出来ないでいた。
251名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:15:39 ID:rN0Yyoz9
沙夜子は続ける。
「でも……私は……朝美のことも愛してるから……あの人はもういないから……
朝美の為になるなら……朝美が望むのなら…私は……」
そう言って顔を近づけてくる。
「待って!待ってください沙夜子さん!」
手は動かせない。
ならば口で動きを止めるしかない。
「とにかく落ちついてください。
朝美ちゃんの事を想うならもう一度考えてください。
朝美ちゃんは言ったんですか?本当に望んでいるんですか?お父さんが欲しいと」
「あの子はなにも言わないわ……優しい、いい子だから…」
「それは……わかります。本当にいい子です」
いつも笑顔で、明るい、優しい子。
「だから…私が……私が…」
意を決したように、一気に顔を近づける。
顔を近づけて何をしたいかなんて言うまでもない。
父になれとは夫になれということ。
夫婦の契り。
「う…わぁぁ!!」
唇が触れる寸前。
隆士はあらん限りの力で沙夜子を跳ね除ける。
ころんと畳の上を転がる沙夜子。
一方の隆士は壁際まで退避し、緊張と瞬間的肉体酷使の為に荒くなった息を落ちつける。
そんな隆士に沙夜子はにじり寄る。
「だから待ってください!沙夜子さん!」
「…私が…嫌い?」
「っ!?」
隆士の顔が歪む。
「嫌い…なの?…」
「そんなこと…ないです」
「じゃあ……お願い…朝美の為にも…」
252名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:16:16 ID:rN0Yyoz9
沙夜子はさらににじり寄ってくるが、
「…ダメです」
隆士は沙夜子の願いを拒否する。
「沙夜子さん、本当に朝美ちゃんは喜んでくれるんですか?」
「??」
「あなたが朝美ちゃんの為に何かをしたいと思うのは立派な事だと思います。
けど。そのためにあなたの意志が踏みにじられたなら。
朝美ちゃんは喜んでくれると思いますか?」
「……」
「違うでしょう?さっきあなたも言った通り、
朝美ちゃんは優しいいい子なんですから。きっと悲しみます」
「あ…」
考えに至ったようで、沙夜子は小さく声を上げる。
「もし…もしですよ?もしも、本当に、沙夜子さんが……その…僕の事を…
その…す、好きになってくれるのなら…僕だって色々考えますけど。
今の状況では誰も幸せになんかなれませんから。だから……ごめんなさい」
深深と頭を下げる隆士。
そんな様子をじっと見つめていた沙夜子も。
「…ごめんなさい…」
頭を下げた。
「いえ、わかってもらえてよかったです。
でも、どうして急に朝美ちゃんにお父さんを…なんて考えたんですか?」
「これ…」
沙夜子がポケットから出したのは四つ折りにされた紙。
もとは丸めてゴミ箱にでも捨てられていたのか、くしゃくしゃになっている紙。
受け取り、内容に目を通し、隆士は納得。
「なるほど……だからですか」
コクリと頷く。
「大丈夫ですよ。これなら僕にもきっと力になれると思います」
首を傾げる沙夜子に、隆士はまた笑顔を浮かべた。
見る者をも優しい気持ちにさせる笑顔を。
253名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:16:46 ID:rN0Yyoz9


その日は日曜日だったが朝美の通う中学校は賑わっていた。
今日は父兄参観日。
娘息子の学校での姿を見ようと休日を利用し父兄がやってくるのだ。
家族に見られる緊張と、気恥ずかしさのためか。
どのクラスのどの生徒も妙に浮ついている。

けれど例外はある。
例えば朝美のように父と死に別れていたりする場合。
朝美にとって父兄参観はあまり楽しいものではい。
小学生のころから誰も来てくれないから。
友達が自分の父を、兄を自慢したりするのを羨ましげに見ているだけだったから。
今日もそうだと思っていた。

けれど。

何気なく後ろを振り返ったとき。
彼の姿が飛びこんできた。
(お兄ちゃん!?)
下宿先の、優しい住人の姿。
朝美と目が合うと、彼はこっそり手を振ってくれた。
254名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:17:07 ID:rN0Yyoz9
(なんでお兄ちゃんがここに!?)
「じゃあこの問題は…坂下に大田原に――黒崎、前に来てやりなさい」
「あ、はい!」
考える間もなく教師に当てられ黒板へ向かい、後ろを気にしながら問題を解く。
得意な数学だったので一番に式と答えを書き終わる。
「できました」
「ふむ…よーし、黒崎正解だ。難しい問題なのによく出来たな」
誉められて席に戻るその途中、隆士を見ると。
彼は笑っていてくれた。
(なんだろう…なんだか凄く……)
嬉しかった。
彼の前で答えられた事が、誉められた事が。
そして背後から感じる視線。
見守られる感覚。
妙にくすぐったく、心地よい。
(そっか……だからいつもみんなあんなに緊張してたんだ)
朝美にもやっと理解できた。
(お兄ちゃん……ありがとう…)
そんな朝美の心を知ってか知らずか。
隆士は朝美の後ろ姿を優しく見つめていた。


255名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:17:27 ID:rN0Yyoz9
「お兄ちゃん!」
授業も無事終わり、下校の時間になると朝美はすぐさま隆士の元へ。
「やあ朝美ちゃん。ごめんね、家族でもないのに来ちゃったりして。
でもどうしても朝美ちゃんが頑張ってる所が見たくて」
「ううん!そんなことないよ!わたしすっごくうれしよ!
ありがとうお兄ちゃん」
そう言って。
感極まったのか、隆士の胸に飛び込む。
「でもどうして?どうして今日父兄参観があるってわかったの?」
「沙夜子さんが教えてくれたんだよ。あ、そうそう。
校門で待ってるから一緒に帰ろうって」
「お母さんが?」
「うん」
校門に行ってみると門柱の影から校庭を伺う人の姿。
「お母さん!」
朝美は母を呼び、駆け寄り、胸に飛び込んだ。
「朝美…」
「…ありがとう……プリント見せずに捨ててごめんね」
朝美の謝罪になにも言わず。
そっと頭を撫でた。
ギュッとよりいっそう強く抱きつく朝美。
二人の間に血の繋がりはない。
けれど、間違いなく家族。
母と娘。
いまどき実の親子でもこれほどの信頼で結ばれてはいないだろうに。
256名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:17:50 ID:rN0Yyoz9
(朝美ちゃんは沙夜子さんが。沙夜子さんは朝美ちゃんが。
お互いが本当に好きなんだなぁ)
微笑ましい気持ちで二人を見守っていた隆士。
「じゃあ、帰ろうか。みんなにも朝美ちゃんの活躍を聞かせてあげたいしね」
「ええ!?わ、私そんな活躍なんてしてないよ」
「沙夜子さん、朝美ちゃん凄いんですよ。
先生に当てられた時一番最初に正解したんですから」
「わわわ!言わなくていいよお兄ちゃん。恥ずかしいよ〜」
「えらいわ、朝美…」
「そんなことないってば〜」
仲睦まじく、手を繋いで帰る三人は間違いなく家族。
いや、三人だけじゃない。
家路の先にある、あの場所にいるみんなが家族。
だから、玄関をくぐる時こう言うのだ。

「「「ただいま〜」」」


 END
257名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:19:07 ID:rN0Yyoz9
終い。
ちょっと各々別人な気がしないでも。
難しいです。
258名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 14:44:28 ID:l7dHiEKi
GJ!!
親子愛てのはいいもんだ!
259名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 15:00:42 ID:bO2oafEn
乙!!
白鳥が羨ますぃ(*´Д`)
260名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 15:11:15 ID:DP2RTik0
かちゅーしゃ使いの者です。前スレを1001まで取得する前にdat落ちしてしまいましたが
保管庫が飛んだ今どうすればよいでしょう?

261名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 15:41:41 ID:VR2kc3Pe
>>257
凄く、書き慣れてる感じですね…。
通りすがりと言わずに滞在していってみませんか。


>>260
課金して過去ログ見れるようにする…とか。
持ってる人にログもらう…とか。
保管庫復活するまで待つ…とか。
泣き寝入りする…とか。
262メリー:2005/06/04(土) 15:49:28 ID:TX8THD/p
>>257
GJ! ちょっと強引な沙夜子にはビックリしましたが、
親子愛に感動です。
263260:2005/06/04(土) 16:15:54 ID:DP2RTik0
ならば持ってる方にファイルのうpを頼んでよいでしょうか。
264名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 16:31:04 ID:uH+wyg1D
みっちゃん エロールより
みっちゃん さっちゃんを・・・
265名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 16:34:45 ID:610FSJ2b
>>260
dat(ギコナビ用)とhtml化したものを下記のディレクトリにアップしました。

http://black.skr.jp/mahoraba/dat/
266名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 16:38:54 ID:0VVVEw9I
保管庫復活して無いか?
267名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 16:48:00 ID:TbgYwBzE
ほんとだー、何で?
268名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 17:00:34 ID:exO1isnz
保管庫復活キタ━―━―━―(゚∀゚)━―━―━―!!
これで、またすばらしき作品が、観覧できる!

何ででしょうwまぁ細かい事はキニシマセン
269名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 17:01:58 ID:VR2kc3Pe
ジオがエロ不可って事自体は変わってないから、
あんまり楽観視出来ない気がする…。
またいつ見れなくなるかわからないし。
270名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 17:55:00 ID:l7dHiEKi
全ページのhtmlデータを別に残しておけば一応安全だけど…

根本的な解決になってないなorz
271名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 19:23:24 ID:mg11pCjT
確かに移転するまでここに保存しとくってのも手だな。
見れなかった時期を思い出すとそれくらいやっといてもいいかもしれん。
272名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 21:27:52 ID:CEuRpNS/
他で根本的解決方法はないのだろうか。
273名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 21:36:37 ID:VR2kc3Pe
手っ取り早い方法は18禁OKの鯖を探して移転することだと思うよ。
下手に分割すると管理人も閲覧者も手間だし。
274名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 21:42:21 ID:l7dHiEKi
でも無料+エロOKって探すの手間だね…
275テイル:2005/06/04(土) 22:10:24 ID:cm3HttIN
一部の作品の説明文が臨時避難所のものになってる…>保管庫

まあ、もう避難所の役割は終わったわけで、閉鎖してもいいんですけど。
しばらく放置プレイかな…

今「冬の終わり」の続き書いています。
今日中に完成するかな…?
276ぐうたら:2005/06/04(土) 22:29:29 ID:nf154rC/
あ、保管庫の俺の名前が前のまでぐうたらになってるーw
何か嬉しいぞ!?
保管庫の管理人様、いつもお疲れ様ですー。
いろいろ大変でしょうが頑張ってくださいネ〜。
もし見ていらしたらお茶ドゾー。つ旦

追伸。現在 『熱』の紺バージョン製作開始!
277名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 22:37:08 ID:ZgYjcc/q
>>275-276
頑張って下さい。キリンくらい首を長くしてでも待ってるよ。




でも、うpされなかったら恨むわ…呪うわ…
278名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 22:51:09 ID:LvpQSfxC
277 は 275 と 276 に のろいをかけようとしている!
279名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 23:06:31 ID:l7dHiEKi
275 と 276 は のろわれている!

275 の ぶんしょうりょく が さがった!

276 の こうそうりょく が さがった!
280名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 23:13:23 ID:l7dHiEKi
…なんて書いてみたけど…

M.M.Oと翼×三(エロ頑張る)だったらどっちを先に読みたいですか?
281名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 23:15:01 ID:ZgYjcc/q
M.M.Oの続きが激しく気になる。だからM.M.O!
282名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 23:28:00 ID:1rO+v6mn
せっかくだから俺は翼×三(激エロ)を方を希望するぜ!!
283名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 23:31:10 ID:mFbsAawn
MMOの続きが気になりますね〜
と、いう事でMMO推薦します。
284名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 23:33:05 ID:iIAyqdBb
まだ見ぬ作品より、すでに公開されている作品の続きのほうが激しく気になるですよ
ということでMMOを!
285名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 23:33:15 ID:uH+wyg1D
結論

エロMMO
286名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 23:38:52 ID:BMIvBnI5
今どう考えても鬱な終わり方しか出来無さそうなもの書いてんだけど需要ある?
エロ無しなんだけど。
あるならここに、無いなら自分のHPにUPするんだけど。

もっともまだ完成しきってないんだけど。
バラさんの(と言うかジョニー)の口調が出来なくて苦戦中
287テイル:2005/06/04(土) 23:52:50 ID:cm3HttIN
>>286
そんな事を書き込む暇があるなら、まずここにうpする事を奨めます。
案ずるより産むが易し。

ようやく「冬の終わり」が完成しました。
>>277に呪いをかけられそうになったせいで、どうもクライマックスの部分が納得いかない。
でも、こんな「まほらば」もありそうだと思う。そんな結果。
てなわけで、投下します。
288冬の終わり(7):2005/06/04(土) 23:54:00 ID:cm3HttIN

夜。
縁側で一人、焼酎を飲む。
しかし、気分が乗らない日の酒ほど不味い物はない。
いつもは横にいるはずの恵も、今日は午後から体調を崩して寝ている。
だから、一人。
愚痴をこぼそうにも、こぼす相手がいない。
酒の肴になりそうなものも無い。
今日はホドホドにして切り上げるか―――
そう思い直した時。

ドアの開く音がした。

音の主は、白鳥でも梢でも、珠実でもない。
朝美だった。
日付も変わろうとしているのに起きているのは、内職が終わらないせいか。
宿題をする暇はあるのだろうか、と何となく考えていると…
その異変に気付く。

いつもの、朝美らしさが、無い。
疲れている、という訳ではない。
むしろ、世の中に疲れた、とでも言いたげな顔。
中学1年生の女の子には似合わない。

声を掛けずには、いられなかった。
289冬の終わり(8):2005/06/04(土) 23:55:14 ID:cm3HttIN

「―――朝美」
「あ、灰原さん、こんばんは」
「こんな時間まで内職しんのか」
「うん―――いつもの事だけど、お母さん、サボっちゃったから」
「そうか」
「でも、大丈夫だよ。徹夜にも慣れてるし」
「…………」
この齢で徹夜に慣れた。
ある意味、悲しい響きだ。
それが内職なら尚更だ。
「お前、そんなんで勉強とかは大丈夫なのかヨ」
「うん、学校の友達が色々教えてくれるから、今は大丈夫」
「今は、か……」
今は中学1年生。
でも、この生活がずっと続くとしたら―――

きっと、取り返しがつかなくなる。

俺は、前から思っていた事を訊いてみる。

「朝美、お前は将来の夢は何だ?」
「…将来?」
思いもしない事を訊かれ、きょとんとする朝美。
290冬の終わり(9):2005/06/04(土) 23:56:13 ID:cm3HttIN
「それって、どういう…」
「まあ、お前が将来やりたい事は何かって事だ」
「将来、か…」
少し考える朝美。
「うーん…今は、特にしたいってものはないかな。
 お母さんといられれば、それでいい。一緒にいれば、私、幸せだから」
「そうか…今はそれでいい。
 でもな、将来があるって事は、とても大切なコトなんだ」
「大切な事…?」
「そうだ―――将来を奪われた子だって、いるんだからナ」
「え…?」

それって、どういう事―――?

そう言おうとした朝美は、絶句する。
何故なら。

俺がが、灰原由起夫が、流星ジョニーを外していたからだ。

「え、灰原さ―――」
「―――俺にはな」
俺は、自分の口で、話し出す。
夜空は、相変わらずどんよりしている。
291冬の終わり(10):2005/06/04(土) 23:57:03 ID:cm3HttIN
「二人、子供がいたんだ…男の子と、女の子。でも、今は―――いない。
 男の子は養護施設に出されて―――女の子は、事故で死んだ」
「事故―――」
事故という言葉に、朝美が反応する。

―――私のお父さんも、事故で死んだ―――

「丁度、朝美ぐらいの歳の時に死んじゃった。冬の、寒い日だった。
 あの子には、未来が―――将来が、あったのに―――
 生きていれば、沙夜子と同じ位の歳だったろうな。
 好きな事も、たくさん出来ただろうに―――」

俺は―――何を、しているのだろう。
こんな、子供相手に、なぜ身上話をしているのだろう。
本当は、知らなくてもいいのに。

本当は、こんな苦労を背負わなくてもいいのに。

「―――おっと、何か変な話をしちゃったな。悪かったな」
相当酔っているんだろうな―――
そう言って、俺は朝美を向く。
朝美は泣いていた。
「―――朝美」
292冬の終わり(11):2005/06/04(土) 23:57:54 ID:cm3HttIN
「灰原さん、何か、可哀相―――自分の子供に、先立たれるなんて。
 でも―――灰原さんって強いんだね。そんな目に遭っても、泣かないなんて」
「いや―――そんな事は無い。俺だって、そんな強い男じゃないよ。
 それに、このジョニーだって、子供がいた頃の名残だからな」
「え―――そうなの?」
「ああ。子供が喜んでな、それで頑張ったものだよ。
 結局、無駄になってしまったけど」
「そうだったんだ……」
朝美は、それきり、黙ってしまった。
俺も、黙ってしまった。

重い空気が漂う。
それは、あまりにも、俺にはきつい物に思えて―――
それを、この娘には、味わいさせたくなかったから―――

「―――だからな、お前には、人生を大切に生きて欲しいんだ。
 父親を亡くしたお前なら、その意味が解るはずだから。
 俺には何も出来ることはないけど―――でも、何かあったら言ってくれないか。
 辛い時はさ、俺でも、白鳥でも、梢あたりでもいいから、話すんだ。
 そうすれば、楽になるから」
俺の手に、ペンは無い。
あるのは、ただの腕人形だけ。
だから、俺が出来ることは、見守る事ぐらいだ。
でも、この子の力になりたい―――
「―――うん、何かよく分からないけど、そうするね。
 ありがとう、灰原さん」
「―――ああ」
俺は、朝美に微笑む。
ようやく、朝美らしい笑顔が戻ったからだ。

「―――え?」
293冬の終わり(12):2005/06/04(土) 23:58:53 ID:cm3HttIN


私とお父さんの思い出は、数えるほどしかない。
でも、よく憶えているのは、お父さんの笑顔。
私といる時は、いつも笑顔だった。
そんなお父さんが、私は大好きだった。
もう、その笑顔に出会える事は無いと思っていた―――

でも。

灰原さんの笑顔が、お父さんに見えた―――

なんで。
そんなまさか。
有り得るはずがない。

でも。
もしも、あの子が、お父さんなら―――灰原さんは―――

294冬の終わり(13):2005/06/04(土) 23:59:47 ID:cm3HttIN
「―――灰原さん」
「ん?」
ふと呼ばれて、俺は朝美に目をやる。
「―――泣いても、いいかな」
「――――――ああ」
そう言うと、朝美は俺の胸に飛び込んできた。
「――――朝美?」
「――わた、し―――たいへ、だった―――
 さみ、かった――――ふたり、きり―で――
 お父さ、に、逢いた、ても、逢え、な、で―――
 いま、は、さみし、ない、け、―――で、も、―――

 ―――――逢いたかったよ、お父さん―――――」

泣きじゃくる朝美。
俺は―――何も言わず、抱きしめる。
17年間、忘れていた、この感覚。
それを、今、噛みしめている。

だから、彼女に、幸あらんことを――――
この苦労に見合うだけの、幸せを。


295冬の終わり(14):2005/06/05(日) 00:00:51 ID:cm3HttIN

翌朝。
「ああ、何してんのお母さん!」
「…大丈夫よ、箱の中が出ちゃっただけだから。
 それよりも、そろそろ学校へ行く時間じゃないの?」
「ああ、そうだった!
 行って来ます、お母さん!」
「気をつけてね…」
部屋から、朝美が出て行く。
「……」
残された沙夜子は、写真を手に取る。
古ぼけた、あの人が写っている写真―――
沙夜子は、それを、ぎゅっと、抱きしめた。


「お、朝美か。おはよう」
朝美と出会う。学校へ行くようだ。
「おはよう!ああ、学校に遅刻しちゃう!」
急いで玄関に向かう朝美。
「―――ああ、そうだ」
ふと、朝美が俺を向く。

「行って来ます、おじいちゃん!」
296冬の終わり(15):2005/06/05(日) 00:01:44 ID:cm3HttIN
「…………ああ、行ってらっしゃい」
そうして、朝美の姿が消える。
廊下には、俺だけがいる。
「……おじいちゃん、か……」


―――――親父、朝美は幸せですか―――――?


「…………?」
ふと、そんな事を言われた気がする。
でも、周りには誰もいない。
気のせい、だろうか。

でも。

「―――あの子は、幸せに暮らしてるぞ―――
 天国で、沙夜子に感謝するんだな」

俺は、誰にともなく、そう呟いた。


もうすぐ春がやってくる。
それは、俺のあの冬にも、終わりを告げそうだ。


<<Winter encounter>>is the end.
297冬の終わり(アトガキ):2005/06/05(日) 00:04:55 ID:5JVujY8d
…燃え尽きたぜ、真っ白に…OTL
本当に、後半がボロボロです。呪われました(違
何か、フラグがない分、好き勝手に書いてしまったから、この結果に…

ええ、何とでも言ってください。
流石に難易度が高かった…小島さんももう少しバラさんを大切にしようよ…
と、思うまで。
週末はゆっくり過ごすぞー、なテイルでした。
298名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 00:12:06 ID:VpfBWcbM
そう繋げてきますか…。
さすがです。

設定がないって事はその分想像を働かせることが出来るって事ですから
強みにもなり弱みにもなりますね。
GJでした。
299286:2005/06/05(日) 00:13:08 ID:CZQ9mtEn
>>297
GJッス。
ちょっと別の所行っている間にこんなに素晴らしいものが。
バラさんがかっちょいい!!

とりあえず自分の奴はある程度形がまとまってからうpさせて貰います。
まだ全然なので。
案ずるよりも産むが易し……ありがとうございます、踏ん切り、尽きましたヨ!
300名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 00:13:25 ID:aRXUSBPt
GJ!!!
納得いかないとはとんでもない!
黒崎が、バラさんの息子とは、思ってもみませんでしたw
これからも、良作期待しています。
301名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 00:14:26 ID:univm0Y2
おじいちゃん???
とか思ってたらそういう事か!上手いよGJ!!
302メリー:2005/06/05(日) 00:37:05 ID:6R185BBe
テイル様
凄すぎますよっ!
ありきたりな言葉ですけど、率直な感想です。
繋げ方がすばらしいです。
次の作品を期待して待ってますから。
303名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 00:47:38 ID:VpfBWcbM
えーと、240です。
かなり長くなりそうなんですが、ウホッ書かないか?と励ましを戴いたので。
文書書きじゃないので稚拙ですが頑張ってみます。

まずはさわりの部分だけですがどうぞ。
304恋のマホウ:2005/06/05(日) 00:50:51 ID:VpfBWcbM

「ん……」
薄暗がりの中、僕は目を覚ました。
こんな夜中に目を覚ますなんて珍しいな、と思いつつ布団から起きあがると奇妙な感覚に捕らわれる。
何かを忘れているような、そんなもやもやしたものが心に引っかかった。
それになんだか酷い気怠さを感じる。
(…なんだろう?)
電気をつけて手近にあった時計で時間を確認するとまだ午後8時前。
思ったよりもずっと早い時間だった。
それよりも電気をつけたことによって自分がコートを着たまま寝ていたことにようやく気がつく。
(アレ…? えーと、確か今日は…)
嫌な予感を感じて、今までの経緯を思い返す。
(確か、珠実ちゃんにつき合わされて学校に行ったんだっけ…そこで確か…)
そこまで思い出して、ようやくわだかまりの正体に気付く。

(オカルト研究部の部室に…連れて行かれたんだっけ……)
305恋のマホウ:2005/06/05(日) 00:51:33 ID:VpfBWcbM
僕は、そこから先の記憶がすっぽり抜け落ちていることに気づき、愕然となった。
あれからどうなったのか?
いや、それよりもなんのために連れて行かれたのか?
それにどうやって帰ってきたのか…。
不安がはっきりとした形になって僕の心を支配した。

「おや〜、白鳥さん、ようやくお目覚めですか〜」
呆然としている僕のそばにいつの間にか彼女は立っていた。
いつものようにのんびりとした口調だが、今の僕には小悪魔的な含みを感じることが出来た。
「おはようございます、白鳥さん〜。 と言っても今は夜ですけど〜」
「おはようございます、じゃないって珠実ちゃん! 僕はいったい…」
「あ〜、大変だったんですよ〜。 ここまで連れて帰ってくるのは〜」
僕は慌てて彼女に詰め寄ったがクスクスと笑い、はぐらかすような答えを返してきた。
「そうじゃなくって! さっきのアレはなんだったの!?」
「あんなこと頼める人、白鳥さんくらいしかいなかったんですよ〜」
「いや、だから…」
「最初は私も信じられなかったんですけどねぇ〜」
のらりくらりと質問をかわして珠実ちゃんは楽しそうに笑った。
306恋のマホウ:2005/06/05(日) 00:52:17 ID:VpfBWcbM
「まぁ、私が口で説明するよりも自分の胸に手を当ててよ〜く確かめてみればいいと思いますよ〜?」
「胸に、手を当てて…」
考える、じゃなくて確かめる…?
僕は言葉に違和感を覚えながら言われたままに自分の胸に手を当てて考えてみようとした。
───ふに。
布越しに感じる柔らかい感触。
「……え…?……」
「部長のオカルト好きもバカに出来ないもんですねぇ〜」
───ふに、ふに。
不思議な感触の正体を確かめるように胸に視線を下げるとそこには見慣れないふくらみが存在していた。

いや、正確にはまったく見慣れないわけではない。
これと似たようなものは何度か経験したことがある。
───ふに。
でも、この感触はまったく、異質、だった。
「あの…珠実、ちゃん……?」
「ま、そういうわけです〜」
「えっと、これって、何……?」
「わかりませんか〜?」
珠実ちゃんはやれやれといった感じで僕の前に立つと躊躇なく上着のボタンを外してしまった。
「ちょっ、珠実ちゃ……、………っ!」
「は〜い、ご開帳〜ですぅ〜」

大きく開け放たれた僕のシャツの中には大きな2つのふくらみが存在していた───。
307名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 00:56:03 ID:VpfBWcbM
こんな感じです。
平たく言ってしまえばTSモノです。
もっとぶっちゃけていえば

「白鳥くんを女の子にしてしまいたかった」

という邪な発想から始まったことでした。
正直、すまんかった。

もうしばらく先まで書いてありますが、今回はさわりと言うことでこの辺で。
308名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 01:07:30 ID:pueiut67
まるで生殺しだ・・・
309名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 01:14:34 ID:VpfBWcbM
おっと、ちなみにエロなしなのでそっちの期待はしないでください。
ふつーに話は進みますので。
310メリー:2005/06/05(日) 01:23:06 ID:6R185BBe
>>307
おお、慣れていない発言の割にはちゃんと書けてるじゃないですか。
どんどんうpしてくださいよ。
それにしても私もTSで白鳥くんを・・・・・・、を書いているのですが、
う〜ん、先を越されてしまったですよ。
ま、私の場合はまったく進んでいないので、うpするのは先になるんですけどね。
がんばれ〜!/~~~
311保管庫”管理”人:2005/06/05(日) 02:11:27 ID:YtJzkXpZ
ここ最近、週末ここみるのが楽しみのひとつになってるYo(w 職人様方GJ!

ところで、ちと連絡が遅れてしまったけど、
保管庫の公開停止で色んな方に迷惑かけちゃって申し訳ないですorz
保管庫の公開停止処分は一応解けたんですが、
警告により一部作品が公開できない状態なので、
なるべく早く次の移転先を決められるように現在画策中ってことで完全復活まではもう少しお待ちを。

>275
スマソ、いくつかの紹介文はテイル氏のブログよりコピペさせていただきました。
自分のセンスのない文章で紹介文をつけられるよりは、
各作品もずっと幸せだろうと思ったんですが、もしまずかったらすぐに変更させていただきます。
臨時避難所のほうはできれば、ぜひ公開を続けてくれると嬉しい・・・かも。
もしまたなんらかの理由で保管庫が見れなくなったときの備えになるし、
各作品に簡単に感想もつけられるブログは便利ですし。
(もし問題なければ保管庫からブログにリンクさせていただきたいです)
312名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 04:11:21 ID:6Br6CEBN
>>311
保管庫の更新、お疲れ様です。

更新前の全ファイルをダウンロードして、有料鯖(アダルトは二次元なら可、コミケカタログに広告有り)にミラーサイトを作りました。

http://black.skr.jp/mahoraba/

アダルト可の無料鯖はいくつかありますが、どれも広告(アダルト)が多くてまともに使えません。
普通の無料鯖ではアダルトは規約で禁止されています。
インフォシークは規約でアダルトが禁止されている以上、削除される可能性があります。
格安の有料鯖を検討してみてはいかがでしょうか?
313名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 13:08:08 ID:5PA3QQcJ
フフフ、素晴らシいデスよ>>312サン
314名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 13:37:59 ID:VpfBWcbM
>>312
乙です。
しかし、有料鯖ですか。
そこまで行くと負担が増えることになりますし、難しいところですね。
315240:2005/06/05(日) 13:58:51 ID:VpfBWcbM
なんだか中途半端なところで切れちゃってるので続き投下しておきます。
ベタネタですが。
316恋のマホウ:2005/06/05(日) 13:59:41 ID:VpfBWcbM
「な、な、なっ…………なにこれ!?」
絶句、と言うほかない。
広げたシャツの下にはたわわになった胸が揺れていた。
明らかに作り物の類では、ない。
「見ての通りですよ〜、白鳥隆子マーク2さん〜」
「はぃっ!? っていうか、マーク2ってなに!?」
「なんでしたら下の方も確かめてみたらいかがです〜?」
言われるまま慌てて下の方も確かめてみると19年間共に過ごしてきた僕の男の子も居なくなっていた。
大きくなった胸、居なくなった僕の男の子。
そう、いつもの女装、ではなく僕の体は本当に女の子になっていた。
「あらあら、そんなにみだらな格好して隆子マーク2さんってば意外と大胆ですねぇ〜」
「ちょっ、珠実ちゃん見ないでよ!」
「もう、どこから見てもばっちり完璧な女の子、ですよ〜」
確かめるためにはだけてしまった服を慌てて直したが、動揺は隠せない。
ていうか、ぶっちゃけあり得ない…。
「と言うわけで、ご協力感謝します〜」
「と言うわけで、じゃないって! どうなってんの、これ!?」
「まあ、かいつまんで説明するとですね〜

『珠実部員、実は新しイ魔術書が手に入ッタので試シテみたイのデスが』
『えぇ〜、またですか〜?』
『まァマぁ、そうイワずに。 コレなどは面白そウデスよ。 クッ』
『マ゛〜…。 …『民明書房刊・変幻秘法百選』ですか〜? なんだか胡散臭いですね〜』
『と言ウわケで被験者が必要ナノデスよ。 協力シテ頂キますよ、珠実部員』
『え〜…』
『珠実部員が断ルとイうのナら仕方ナいデスね。 梢部員に声をかけてみマしょウ』
『! すぐ実験体を連れてくるです〜!』
『感謝しマスよ、珠実部員。 クッ』
317恋のマホウ:2005/06/05(日) 14:00:50 ID:VpfBWcbM
───というわけで、白鳥さんに協力してもらったわけなのですよ〜」
「…………」
そこまで聞いてようやくやっと納得いった。
つまり、学校までつき合わされたのはこういう目論見があったわけだ。
オカ研に連れて行かれた時点である程度は覚悟していたけど、さすがにこれは予想外だった。
いや、予想出来るわけがない、か…。
「でも、なんで女の子になってるの…?」
「あ〜、それはですね〜。 『変身』のイメージが一番簡単だったからですね〜」
「『変身』…?」
「白鳥さんはよく女装してるでしょう? 姿が変わる、つまり変身です」
「いや、好きでやってるわけじゃないんだけど…」
桃乃さんや珠実ちゃんにイタズラされたり、千百合ちゃんにつき合ったりはしてるけど
決して望んでいるわけじゃない、と思う。
っていうか、そう思いたい。

318恋のマホウ:2005/06/05(日) 14:01:52 ID:VpfBWcbM
「そういうわけで実験は無事に成功ですぅ〜」
「はぁ…。 珠実ちゃん、なんだかんだ言って楽しんでるでしょ?」
「どうせやるなら楽しまなきゃ損ですから〜」
楽しそうな笑顔の珠実ちゃんとは対照的に僕はどどんよりとなった。

鏡に映る僕は確かに『変身』してしまっている。
しかも、外見は女装させられたときの『白鳥隆子』とも違う。
カツラは着けてないけど、なんだか少し髪も伸びているし、胸だって詰め物じゃない。
元から中性的だったといっても、それはあくまで「近い」というレベルだった。
でも、いまは完全に女性のそれになってしまっている。
自分から見ても明らかにもう”女装”と言えるレベルじゃなかった。
珠実ちゃんが言うようにまさに『白鳥隆子マーク2』っていうところなんだろう。

「…自分の体だからって変なこと考えちゃダメですよ?」
「か、考えてないよ!」
「ホントですか〜? まあ、貴重な体験だと思って諦めてください〜ですぅ〜」
「ひ、人ごとだと思って…」
「状況を楽しんだ方が得ですよ〜?」
他人事のようにマイペースな珠実ちゃんのリアクションにガックリうなだれた。
「…で、いつまでこの姿なの?」
「さぁ? 私も詳しい本の内容までは読んでませんから〜」
珠実ちゃんは事も無げに即答した。
「まぁ、一生そのままって事はないと思いますよ〜、多分」
「それって慰めになってないよ……」
彼女の返事は僕をますます不安にさせるのだった。

319240:2005/06/05(日) 14:04:47 ID:VpfBWcbM
てなわけで、ほぞほぞと続いていきます。
まだまだへっぽこですが人に魅させる文章を書きたいですわ…。
文章に表すってホント難しいです。
320名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 14:16:58 ID:pueiut67
エロ無しであるのが実に残念だ。
321名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 15:04:49 ID:univm0Y2
GJ!
いや、あえてエロ無しなのがイイのではないか!

にしてもここは神が集いまくりですね。
322テイル:2005/06/05(日) 16:02:16 ID:5JVujY8d
>>311
そういう事なら構いません。
リンクもOKです。
避難所として細々とやっていきます。

さて、次のSSはどれがいいですか?
1.桃乃の妄想SFアクションもの(9巻43話「彼と彼女」参照)
2.終戦60周年関連の戦争ネタ(大長編覚悟)
3.阿甘堂の二人(短編っぽくなりそう)

数日間、希望を取ります。
その順位で次のSSを書きたいと思います。

…まあ、戦争ネタは、お盆辺りにやったほうがいいのかも知れないケド…
323名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 18:04:59 ID:RMBXcRBW
3!!
324名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 18:50:31 ID:cL9C5POl
>>322
2は内容によっては「戦争の記憶」とかぶる可能性がありますから、ちゃんと構想を練らないと二番煎じですね…
どんな作品を書かれるかは想像もできませんがw
個人的には読み切りが好きなので3を希望です。
325名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 18:52:29 ID:univm0Y2
俺もさんがいいヨー
326名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 18:59:11 ID:YRy0nmBs
俺は1がいいな
327テイル:2005/06/05(日) 19:04:27 ID:5JVujY8d
>>324
考えているのは「まほらば番外編」って感じです。
出てくる場所は鳴滝荘ではありません。

まあ、自分でもどうなるかは想像がつきませんが…
328名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 19:13:12 ID:ZcaXGm8Q
>>322
3でお願いしますヨー
329黒衣:2005/06/05(日) 19:35:35 ID:u/Smoy8N
>322
2でしょうか。シューティング関連から私も妄想していたもので
330メリー:2005/06/05(日) 19:57:09 ID:APqPeFd2
テイル様
1がいいですねぇ
がんばってくださーい
331名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 20:25:30 ID:VpfBWcbM
鈴木さんの話が興味深いかな、やっぱり。
332保管庫”管理”人:2005/06/05(日) 21:35:35 ID:QK5hG73+
>322
許可サンクス!
では次回更新時にさっそくリンクを張らせていただきますね。

>312
アダルト可の無料鯖は確かにエロ系の広告が鬱陶しいので、
移転先として推薦のあったinfoseekを使うことを考えていたのですが、
まぁ、確かに削除されるリスクが付きまとうのはネックですね。
しかし有料鯖まで借りて保管庫をやる気は申し訳ないけどないですし・・・。
この際、312氏が既に有料鯖を借りてるのなら、
もしよければ312氏に管理業務を引き継いでやってもらう訳にはいかないでしょうか?
333日斗:2005/06/05(日) 21:43:16 ID:Q9c3fDMe
SS初投稿なのですが、とりあえず,作ったものを投下させてもらいます。今のところは未完でも、構いませんよね?
 
お楽しみ頂ける訳もありませんが、勝手な事をお許し下さい。
334We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/05(日) 21:44:37 ID:Q9c3fDMe
・・・何かおかしい。
俺がそのことに気付いたのは、晩春もうららかな昼下がり、通い慣れはじめた学校の、校門前の広場でだった。
いつも一緒にいるあいつらがぎこちない。特に、一歳年不だからっていつも俺たちを引っ張りまわすアイツが、だ。
今も、ヤツが待っているっていうのに、アイツはヤツの前に出てこようともしない。
チラチラと姿を目にするし、学校には来ているようだけれど。
思えば、様子がおかしかったのは一週間前、まだ酒を飲んじゃ行けないはずの俺達を酒盛りに連れていった翌日だった。
酒盛りは綾乃のいつもは見れない様な姿が見れたりだの、いつもはうっとおしいだけのヤツの映画?蓄が、酔った頭には意外に面白かっただのでアイツもむしろ楽しんでいただろうと思う。
問題はその後、俺と綾乃がほろ酔い気分で公園で星を見ていた時間におこったにちがいない。
二次会にも行かず俺たちとアイツ、つまり桃野たちと別れたのは、紫羽がアイツだけに話すことがあるといっていたからだ。
その話が・・・きっと原因なんだろうな。
335We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/05(日) 21:45:29 ID:Q9c3fDMe
二次会にも行かず俺たちとアイツ、つまり桃野たちと別れたのは、紫羽がアイツだけに話すことがあるといっていたからだ。
その話が・・・きっと原因なんだろうな。


「本条君!」
ぼ〜っと考えていると、聞きなれた声がした。ぱたぱたと小走りの足音は、もはや弁当を持ってくるときの合図になっている。
「いつも悪いな、綾乃。今日は何だ?・・・あ、コレ、もしかして」
「うん、コレ。コロッケだよ〜。本条君、昨日言っていたでしょ?食べたいって。今日は授業が午後からだから、家で揚げてきたんだよ。」
いつもの通り二人並んでベンチに腰掛け、いつものとおりクロスを広げる。大学に入ってからも、ずっと変わらない昼下がりだ。
でも、きっとそれこそが・・・
「どうしたの?本条君。」
そう、俺たちの関係は・・・
昔すれ違いがあったものの、俺と綾野はとても宜しくやっている。文字どおり何も変わらずに。お互いに隠し事はしない。それは、俺たちの間では大切な約束のままだ。
だけど、それ以不踏み込めない。隠し事をしない代わり、今度は逆に相手に重荷を負わせたくないと言う考えが渦巻いてしまう。
今のままでいいと思いつつ、このまま変わらなければ、いつまでも本当のパートナーになれないんじゃ無いだろうか。そういう思いがあるのも確かなのだ。
俺は臆病だな。
だからこそ、アイツらに、おそらく変わっていくことを告げた紫羽と、それに戸惑っているのかもしれない桃野が気にかかるんだ。
336We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/05(日) 21:46:13 ID:Q9c3fDMe
だからこそ、アイツらに、おそらく変わっていくことを告げた紫羽と、それに戸惑っているのかもしれない桃野が気にかかるんだ。

「・・・うくん?・・・本条君?」
「うわあっ」
「きゃ・・・び、びっくりしたぁ。」
「あ・・・ご、ごめん綾乃っ!ちょっと考え事してて。」
あーもう、俺のバカ!せっかく綾乃が来てくれたってのに!
「ふあ〜、いいよ。でも、珍しいね。本庄君が私と話しているときに考え込むなんて。・・・何を、考えていたの?星のこと?来週に見に行くときは、晴れるといいね〜」
・・・いつも、気を使ってくれてありがとうな、綾乃。でも、今日はそうじゃ無くて、
「いや、アイツらのことなんだけど・・・何か、聞いていないかな?」
俺が親指で示した先には、眼鏡をかけた影が一つ。紫羽が校門の前で佇んでいる。
桃野を待っているんだろうか。
「あ・・・もしかして、メグちゃん達のこと、だよ、ね。」
とたんに綾乃が表情をかえる。
重くはないけれど、静かな雰囲気が辺りを包む。
言うべきなのかどうか、しばらく迷った後、綾乃はゆっくりといった。
「・・・実は、メグちゃんが言っていたんだけど、なんかね、紫羽君、海外へ行きたいんだって。それで、メグちゃんが・・・」
綾乃が悲痛な顔つきになってしまう。俺は慌てて、
「あ、それ以不は言わなくていいから!綾乃が哀しむことは・・・」
「ん、分かってる。私がどうにかできることじゃ無いって言うのは。けど・・・」
参ったな。こういうところは綾乃のいいところだけれど、どうにもできないことに対してもこういう態度を取ってしまう。
・・・ここは、気分転換を計った方がいいかな?
「っと、コロッケがあったな。貰ってもいいか?」
綾乃の表情が綻ぶ。
「うん、今日のコロッケは自信作だよ〜。ついさっき揚げたばかりだから、まだ温かいと思う。」
その後、俺と綾乃は綾乃謹製コロッケを食べつつ、いろいろなことを話した後で、授業へと向かった。
けど、綾乃は俺との会話を喜ぶ一方で、どうしても視線が紫羽と、そして、この場にはいない桃野の方へ向いてしまうのは隠しきれていなかった。
この顔は見たくないな。どうにかできるなら、どうにかしたいと思う。
・・・俺、綾乃に感化されているのだろうか。
337We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/05(日) 21:46:59 ID:Q9c3fDMe
この顔は見たくないな。どうにかできるなら、どうにかしたいと思う。
・・・俺、綾乃に感化されているのだろうか。



授業の後、まだ講義が残っていると言う綾乃を待ちつつ、俺は校舎をぶらついていた。大学都市っていうのは、まあ、散歩に最適の都市でもあるし、本屋などを巡りつつ、時間を潰していた。
と、その中の一つ、学術系の本の充実度合いに関しては定評のある、大きな書店で天文雑誌を買ったとき、俺は桃野が映画関連書籍の棚にいるのを見る。

やっぱり、ヤツを嫌いになった訳では無いんだろうな・・・

そんな事を思い、俺は好機だと考えた。俺はアイツらのために、ひいては綾乃のために、どうにかしたいと思っていたところだったから、アイツが動き始めるまで様子を見て、その後、アイツに近付いたのは当然のことだった。
だけど・・・
「放っといてよ・・・あたしたちの問題なんだからさ。」
後ろも振り向かず、桃野は言った。
あなたはエスパーですか?
「あんな天文書に何時間も食らい付いているのは、あんたくらいのもんよ。顔見ないでも分かるって。」
う・・・見られてたのか。そんな俺を尻目に、アイツはそのままスタスタと本屋を出て、駅に向かう。
俺はとりあえず、無難な言葉をかけた。
「放っておけないよ。俺と綾野にまで心配かけて・・・アイツも、多分話したがっていると思う。今日だって・・・」
「授業にも出ず、あたしを待っていたんでしょ。おかげでガッコ、入れなかったわよ。」
338We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/05(日) 21:47:45 ID:Q9c3fDMe
「授業にも出ず、あたしを待っていたんでしょ。おかげでガッコ、入れなかったわよ。」
そんなことまでしていたのか・・・俺ですら、昼に軽く見ただけだったのに。そう思ったとき、俺は気付いた。そんなことは、『コイツからも』ヤツを見ていないと分からない、と言うことに。
ヤツも、そしてやっぱりコイツも・・・
「なおさら放っておけないって。」
そう、素直に思った。
「なんでなのよ・・・おせっかいでしか無いわよ。あんたは、あんたの好きな事やってればいいでしょ!あたしはあたしで、あたしの望むペースで・・・」

その言葉を聞いたとたん、俺は激昂した。
「それで、本当に自分が満足できると思っているのか?」
気付いたときには俺は口に出していた。
正直、なんでこうなったのか、よく分からない。
もしかしたら、変わる勇気を持てた紫羽に対して、変わる決心を持てていない俺と桃野。その事がフラッシュバックしたのかもしれない。
これは、俺の、俺に対する本心だ。
果たして、桃野はぴくりと震え、足を止めた。
こちらを向く。その顔は、涙で真っ赤に腫れていた。俺と出会ってからのものじゃない。多分、もうずっと、何日も・・・

コイツは、まくしたてた。
「あたしがどう思うか、じゃないでしょ!あいつが、あいつの満足する事をする。あいつがこれからの関係に満足する!そっちのが・・・ずっと大切でしょ!あんたに言われる事じゃないわよ!」

綾乃は、本当に、今の関係に満足しているのか?
・・そう問われた気が、した。俺の心を抉る。
だから、かっとなった俺は、いきなり桃野の手首をつかんだ。左の手首を。
そして、俺は見た。

「ッッッ!」
「・・・見たわね。」
顔を歪め、下を見て、桃野が呟く。
「・・・コレを見ても、あいつは私を受け入れてくれた。そして、必要としてくれた。どこにもなかった私の居場所は、あいつが来てからこそ・・・」
桃野の独白は、俺にはよく分からない。おれにわかるのは、今のコイツらの関係の由来であろうと言う事と、俺が踏み込んではいけないと言う事だけだ。
だけど、次の言葉だけは、俺にも間違いだと分かった。
339We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/05(日) 21:49:20 ID:Q9c3fDMe
だけど、次の言葉だけは、俺にも間違いだと分かった。

「だから・・・私が、あいつの枷になるなら、私は離れるべきなんだよ!」

「そんな事して、紫羽が好きなようにできると思うか?満足できるか?」
言わずにはいられなかった。
臆病なはずの、自分らしくないな、とは思う。でも、
「俺たちの場合なら、少なくとも俺なら、綾乃が俺の邪魔になると思って離れていったら、何やっても満足しないよ。」
・・・ずっと前にも、似た様な事を考えた事を思い出した。
ただ、あのときは、綾乃が二股をかける、つまり、俺が綾乃を満足させられないならと言う事だった。今回は、それの裏返しだ。
あのとき、俺は自分が何をやっても満足させられないならと思ったけど、こいつは自分が何をやっても満足させられないと言う事を前提においている。
・・・本当に、そうなのだろうか。俺も、綾乃を・・・ 
「・・・あたしは」

「・・・本条・・・君?」
桃野の台詞を、別の声が中断させた。
「綾・・・乃っ?」
綾乃は目を見開き、俺たちを見ている。
今の俺たちは手を繋ぎ、向かい合っている。桃野は泣き腫らしている。これをはたから見ると・・・
「これは・・・違う!そうじゃない!綾乃!」
「あ・・・」
俺と、桃野の声が重なる。まずい。
綾乃が下を向く。顔が見えない。
「そっか・・・」
そんな・・・そんなバカな。
340We form in the crystals 「中書き?」:presents by日斗:2005/06/05(日) 21:51:14 ID:Q9c3fDMe
今のところここまでです。
もし続きを見たいと言う奇特な方がいらっしゃったら,書くと思いますです。
341名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 21:52:35 ID:univm0Y2

  _   ∩
( ゚∀゚)彡 GJ!!  続き! 続き!
 ⊂彡

こんないい所で終わらせないで下さい。待ってますよ。
342名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 21:55:33 ID:VpfBWcbM
むむ、斬新な切り口ですね。
ここで止められるのはお預け犬状態なので是非完結を。

一つ、ツッコミを入れるとしたら
桃乃、ですよ。
343名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 22:02:02 ID:lAKZ4OE1
なんとも、生殺しな部分で終わりますな…
続きщ(゚Д゚щ)カモォォォン
344日斗:2005/06/05(日) 22:03:27 ID:Q9c3fDMe
>>342 あちゃ,申し訳ないです・・・

こういうのって、(自分の駄作が入ったらの話ですが)保管庫に入るときに修正されるものなんでしょうか?
それとも,自分で修正版を投下すべきなんでしょうか。
345メリー:2005/06/05(日) 22:11:19 ID:APqPeFd2
日斗様
いいじゃないですか。うん、こういうネタはない(のかな?)ですし。
続編を求めますよあたしゃ。
保管庫は・・・・・・どうなんでしょう?
346名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 22:23:24 ID:Jmo7iAQS
>>340
おぉ〜、これは凄い。GJです!
いや、巧&綾乃は書きたいと思っていましたが、先を越されてしまいましたw
ここの住人が死滅する前に早く続きをお願いします!

保管庫ですが、うpろだに修正版を上げておけばそっちを保管してくれますよ。
347日斗:2005/06/05(日) 22:44:16 ID:Q9c3fDMe
自分のものなどを楽しんでいただいて,幸いです。ありがとうございます。
>>346
ネット初心者なので,そっちの方はとんと疎いんですよね・・・
スレ違いと分かってはいますが,どうしたらいいのでしょうか?
PCがリンゴでも,問題なく出来るんですかね・・・
348恋人:2005/06/05(日) 23:19:17 ID:univm0Y2
小鳥のさえずりが聞こえる。もう朝か。
「昨日は例によって宴会があっていつの間にか寝ちゃったんだ…」
といってももう慣れたが。僕はそのままトイレに行こうと立ち上がった。
部屋を出ようとドアまで歩くとと何か“違和感”があった。
が、さほど気にせずそのままドアを開けトイレへ向かった。
「おはようございます〜白鳥…さん」
と、向こうから珠実ちゃんがやってきた。
「あ、おはよう。あれ?学校は?」
「なにいってるですか〜。今日は日曜日ですよ〜。」
「あ、そうか…まだ寝ぼけてるみたい。ははは…」
「冗談はからだだけにして下さいよ〜。ではでは〜」
そういうとすたすたといってしまった。
「へ?からだ?何かついてるのかな僕?」
そうつぶやき自分のからだを見る。
あれ?………この服装はどこかで…………
349恋人:2005/06/05(日) 23:20:20 ID:univm0Y2
「ぐはぁ!!!!」
思わず変な声をあげてしまった。
「な…なんで女装してるんだよっ!!!」
そして思わず自分に突っ込んでしまった。
今の僕は桃乃さん命名の白鳥隆子、友人命名の麗子さんだったのだ。
(もしかして知らずうちに女装を……)
とか思ってしまったがそんなわけはない。どう考えても桃乃さん(+珠実ちゃん)の仕業だ。
「とっ…とにかく部屋に戻ろう!」
僕はUターンし、急いで部屋へ向かった。
(もし…もしまた梢ちゃんに見つかって正体がばれたら…僕は…僕は…)
「…あの〜」
と後ろから僕を呼ぶ様な声が聞こえた気がしたが
(聞こえないっ!今の僕には聞こえないんだぁ!!)
と自分に言い聞かせ走り去った。

なんとか部屋に滑りこむようにして入った僕は急いで着替えた。
「全く桃乃さん達ったら…」
とつぶやいているとふと、さっきの僕を呼ぶ声の事を思い出した。
(そういえばあの声は誰だったのだろう?住人の誰かだよ…な…)
350恋人:2005/06/05(日) 23:21:25 ID:univm0Y2
女性の声だったので、灰原さんではないだろう。小夜子さんとも思えない。
珠実ちゃんとはさっきすれ違ったから違う。
僕をあんな姿にした張本人、桃乃さんなら「白鳥くーん」と呼ぶだろう。
朝美ちゃんか梢ちゃんか………
……って朝美ちゃんか梢ちゃん!?
「あ…あの声は多分…」
その時ドアをノックする音が聞こえた。
「あの〜白鳥さん。」
これは梢ちゃんの声だ。僕はドアを開けた。
「あの…さっき白鳥さんの部屋に入った女性の方はお友達ですか?」
!!!!!!!!
やっぱり梢ちゃんだったのかorz
「え…あの…その…それは…」
「?」
どうしよう…帰ったというのは無理臭いぞ…
「たっ大切な友達なんだ。今いろいろ忙しいからそれじゃあっ」
「あっ…」
僕はあわててドアを閉めてしまった。
閉めてから僕は悪い事をしたと思った。だが謝ろうにも安易に部屋から出られない。
…それにさっきの一言。
僕が梢ちゃんの立場なら気にならないわけがない。
でも梢ちゃんは温い人だから。心の片隅でそう思っていたから特に気に止めなかったのかも知れない…
351名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 23:26:54 ID:univm0Y2
54 :作者の都合により名無しです(sage):2005/06/05(日) 22:18:39 ID:QuBJcRWd0
2号室にこっそり入っていく隆子ちゃんを見て浮気してると勘違いする話はまだですか?

という何気ない書き込みで書きたくなり投稿。
駄目だ…他の神達とは比べ物にならねぇ('A`)
一応続きありますが…NGワードに恋人推定かもしれんぞこりゃ…
352名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 23:38:32 ID:c3ts3Hrn
>351
それ書いたのわしだw このあと梢ちゃんがお茶を持ってくるも
もう帰ったからと誤魔化す白鳥→しかし梢は見てしまった、
慌ててたために白鳥が隠し忘れたブラジャーを…という流れでよろしこ。
353テイル:2005/06/05(日) 23:44:52 ID:5JVujY8d
>>351
スマソ、話が読めなかった…orz
一応、未完なのかな?
何となく尻切れ蜻蛉だから早く続きキボン

>>340
これはよいアナザーまほらばストーリー。
続き期待してます!

まあ、良ネタが投下された後だから言いづらいんですけど、
>>322の投票はまだやっています…なんて。
今の所、1(桃乃)に2票、2(戦争)に1票、3(阿甘)に5票入っています(メモ)
このスレの住人は短編志向…なのかな?
<世界の中心で愛を叫ぶ、ただし3分間>みたいなっ!

このネタが分かる人がいない事を祈る…
354名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 00:04:04 ID:unLHY46A
>>340
GJ!!この先どう展開するか気になる
>>351
いいですよ〜、続き待ってます。
>>353
2も捨てがたいですが、ここは3でお願いします
355240:2005/06/06(月) 01:00:38 ID:dSCAJt1A
>>351
おっ、隆子ものですか、いいですね。
修羅場の予感がしますね。クッ。


ということで相変わらず駄文ですが寝る前に『恋のマホウ』第3回投下です。
356恋のマホウ:2005/06/06(月) 01:01:11 ID:dSCAJt1A
とにかく、いつまでも悄気ていても仕方ないので現状をどうにかする必要があった。
三人寄れば文殊の知恵と言うし、まずは桃乃さんの部屋に行くことにする。
珠実ちゃんはいつもの調子だし、他に頼りになりそうな人がいなかったからだ。
「あら〜? 白鳥くん起きたの…っていうか、どうしたの!?」
ドアから顔を出した桃乃さんはすぐに僕の変化に気がついていた。
そこまで衝撃が大きかったのか、ぽかんと口を開け呆然としている。
改めて僕は変わってしまったと言うことを痛感させられた。
桃乃さんでさえ、これだけのショックを受けてしまったんだ。
いま梢ちゃんに会えばどういう事になることやら───。

「実はかくかくしかじかで〜」
珠実ちゃんが桃乃さんにかいつまんで事情を説明している。
ああ見えて意外と非現実的なことは嫌いな桃乃さんだったけど、僕の状況を見てとりあえずは納得していた。
というか、信じざるをえない、というべきか。
まぁ、そこは梢ちゃんの多重人格だって受け入れた桃乃さんだからこそなのかもしれないけど、
とにかく事情は察してくれたようだ。

「状況はだいたいわかったけど…。 まったく、このエロ珠もろくなことしないわね〜」
「私だってまさかうっかりしっかり成功するなんてこれっぽっちも思ってなかったんですけどねぇ〜」
「まったく、白鳥くんも災難ねえ…。 それにしても……」
といって、桃乃さんは呆れたように僕の全身を見回す。
「ホントに”完璧な女の子”になっちゃったわねえ」
「です〜」
「いや、それはもういいです…」

357恋のマホウ:2005/06/06(月) 01:02:25 ID:dSCAJt1A
放っておくと雑談になりそうな雰囲気だったので僕はまず着替えを頼んだ。
桃乃さんの部屋に来た理由の一つはそれだったからだ。
「はいはいっと。 あっ、今はパット要らないのね。 珠ちゃん、白鳥くんどれくらいだった?」
「………。 ……でー……ななじう………です…」
「D70!? は〜、望んでも全然成長しない人もいるってのにね〜…」
「…も〜も〜さ〜ん〜?」
「にゃはははっ、ゴメンゴメン♪ あっ、白鳥くんが使わないから貸そうか?」
「うーふーふーふーふー」
「あ、いや、冗談だからっ」
…………。

358恋のマホウ:2005/06/06(月) 01:03:10 ID:dSCAJt1A
しばらくそんなやりとりが続いた後、桃乃さんは着替え一式を揃えてくれた。
「はい、これで全部っと」
「ありがとうございます…って、あの、これ…」
僕は手渡された着替えの一番上にあるものに視線を落とした。
それは小さくて可愛らしいリボンのついた…。
「ん? パンツがどうかしたの? ちゃんと新品だから大丈夫よ?」
「いや、そうじゃなくって…」
「だって白鳥くん、今ついてないんでしょ? 下のアレ」
「そ、そうです、けど……」
「だったら、女の子のパンツじゃないとダメよー? いつもみたいにトランクスのままってわけにもいかないでしょうに」
さすが桃乃さんと言うべきか、割り切りが早かった。
しかし、僕の方はまだ抵抗があった。
今まで何度か女装させられていたけど、これだけはいつも断っていたからだ。
いわば最後の防衛線、男としての最後の意地…だったわけなんだけど…。
「もう女の子になっちゃったんだからいいじゃない?」
「機能的に考えても男物じゃダメですよ〜」
「トランクスじゃ食い込んじゃうわよ〜?」
「桃さん、卑猥です〜」
「にゃにおー!」
と言う至極真っ当な理由で結局押し切られることになってしまった。

359恋のマホウ:2005/06/06(月) 01:03:45 ID:dSCAJt1A
するすると今まで着ていた服を脱いでいく。
なんだか本格的に男を卒業するような気がしてやるせない気持ちになった。
それでも現状を受け入れないわけにはいかない。
とは言え…。
「…あのさ〜、白鳥くん」
声をかけられて衣擦れの音がぴたっと止まる。
「な、ななんですか?」
「そんなに恥ずかしそうに着替えられるとこっちも意識しちゃうからさ、もっと自然にね?」
「そ、そ、そうですか? 自然に…自然に…」
なるべく意識しないようにしていたけど、さっきから二人にじーっと着替えを見られている。
見せ物になっているような、と思ってしまうとどうしても意識してしまう。
「しっかし、ホントになくなっちゃったのねぇ」
「だから、見ないでくださいってば!」
「白鳥さん、綺麗です〜…」
なっているような、じゃなくて実際見せ物状態だったけど…。
「なるほどね〜、千百合ちゃんが見境無くすわけだわ」
「う゛〜、神様は不公平です〜…」
居心地が悪いなんてものじゃないです…。


360240:2005/06/06(月) 01:06:33 ID:dSCAJt1A
と言うわけで第3回でした。
なんか、すごく長くなりそうな予感です…。

それではおやすみなさい。
361名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 01:11:40 ID:LC7Tsqt6
超遅レスだが
>>251
「…私が…嫌い?」 「嫌い…なの?…」 ですげえ萌えたのは
俺だけでいい
362名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 04:35:18 ID:xaoNWwSN
>>358
男の俺には分からんのだが・・・トランクスって食い込むのか?
363名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 04:52:43 ID:QMFO+hfy
>>360
やばい、TSものが死ぬほど大好物で女装だとまだ物足りない俺には
萌え死しそうな勢いで最高デス!なるべく長く続いてくれることを祈っちゃう!
超超GJ!
364名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 05:14:24 ID:cqNePXFN
どうもおはようございます、月曜日は毎週徹夜の私がやって参りましたよ〜。
まほらばがお休みな今夜。腹いせにうpできるくらいの量、続きを書きましたので、投下します。

それでは、「終わりの始まり」続きです。
365「終わりの始まり」:2005/06/06(月) 05:15:50 ID:cqNePXFN

しばらく隆士は、棗を抱きしめていた。ぽつりぽつりと話をしながら。その中で、ふと棗は切り出した。
「隆士くん…?」
「なんだい?棗ちゃん」
「…課題、途中なのに…、よかった…かも?こう…してて…」
夜食を持ってきたという記憶はない物の、とりあえずレポート用紙の散らばった室内の状況から、それは容易に想像できた。
「いいよ。提出はかなり先なんだ。でも、ちょっとアイデアが浮かんできたから、それをまとめようと思った、それだけだよ」
「そう…なんだ…。」
「それに、僕はこうして棗ちゃんを抱きしめてるの、好きだからね」
棗が顔を紅くし、隆士の腕を抜け、二人は顔を見あわせた。
「だから、そんな心配はしなくていいんだよ。棗ちゃん」
「…うん」
少し沈黙…。破ったのは隆士だった。
「課題…、ね。筋書きできたら、棗ちゃんにも読んでもらおうかな?」
「…いい…、…かも?」
「うん。いろんな人の感想を聞きたいからね。ぜひ棗ちゃんの感想も聞きたいな」
「…うん、わかった。待ってる。がんばって…ね」
棗は嬉しそうな笑顔を見せる。その笑顔は、梢の笑顔に負けないくらいの破壊力を持っていた。
「…棗ちゃん!」
まだ10代後半の若い男、その笑顔には耐えられなかった。気付けば棗に隆士が覆い被さっていた。
「…」
「…ごめん、いきなり。…その、なんていうか…」
「…嫌…、とは…、言ってない…、かも」
棗の顔が、思いっきり紅くなる。
「棗…、ちゃん」
「隆士くん…、…、キス…、してほしい…」
そのまま、二人の影は重なった。

366「終わりの始まり」:2005/06/06(月) 05:19:42 ID:cqNePXFN
隆士が気が付いたのは、ちょうど「サングラスの熟年男と色黒の高視聴率男がデットヒートを繰り広げる時間帯」だった。平たく言えば12時頃だ。
今までも課題の関係で、昼まで寝ていた事があった。
そんな時は、決まって梢が電子レンジで暖められる料理を作り置きしてくれていた。
今日はというと、銀先生の都合で全て休講だった。最近睡眠時間が短かった事もあり、起こさないでおいてくれた梢の配慮に感謝をする隆士。
「とりあえずお腹空いた…」
そう呟いて部屋を出ようとする。…あれ?と隆士は止まった。
どうして全裸だったのに服を着ているんだろう…。っていうか、局部がなんか違和感…。
「…ま、、、まさか梢ちゃん、昨日のゴム…!」
外されていた。つまり梢(恐らく元に戻った)は、朝起きた時にそれを外し、服を着せて出かけていったと言う事になる。と言っても、湿度が高かった故の配慮か、上はシャツ一枚という格好だが。
それだけならまぁ、問題はなかった。しかし最大の問題はその先にあった。

367「終わりの始まり」:2005/06/06(月) 05:21:50 ID:cqNePXFN
「お酒!へっ、へっ、変な事件さ〜(へっへっ)…、」
「おはようございます…、桃乃さん…」
ばったりと、妙な歌を口ずさみながら歩く恵に会う。
「おはよ〜って、もうこんにちはだわよ〜?」
「ええ、今日は休みですから。昨日も遅かったですし。」
頭をぽりぽりと掻く隆士。
「ほほ〜う、さては梢ちゃんと…」
「あああ、あや、あ、い、いやぁ〜、っそそそっっそっっっそおそそlそsぉそそsぉぉsっlそおsss、そういうわけじゃなくて、あの、ピザが、実質三千円で、いやっっぁ、っそお、そんなの関係なくって、あのぉおおおぉんおのlんlんぉんlのおお……。」
ぶんぶん手を振りながら否定する隆士が、恵には思いっきり笑えた。
「あはははは、な〜にあわててみさくら語になってるかな……、って…あんた」
恵が隆士のうなじに目を止めた。恵はちょっと驚き、ニヤリとしつつ、
「…ふーん、なるほどね。そういう事ね…、ふーん…」
「え?桃乃さん、それってどういうk…」「ニブチンさんはシャツを脱いで鏡を見てきなさーい」
(  )ノシ 「ボスカ-ボスカ-ユ-ヴィギ-リア゙ンディィ-ザァン…、うーん、オンドゥル語じゃしまらないわねぇ〜…」
隆士の発言を遮って、それだけ言い放って去っていった。また変な歌を口ずさみながら。
恵がそういった理由は、言われたとおりにしてすぐに分かった。
「!!!!!!!!!!!」
首筋には歯形と唇の形が、うっすら赤みを帯びて残っていた。
昨日、棗が寝るまでそんな事はされなかった。つまり…。
(こっっっ梢ちゃんっ!?)
そういう事だ。

(白鳥くんも飼われてるね〜。しかし、梢ちゃんがああまでやるか…)
恵にも、梢の本性は案外見抜けなかったりした。
368「終わりの始まり」:2005/06/06(月) 05:23:13 ID:cqNePXFN
隆士は、休講と言う暇をどうにかしようと思うも、課題に手をつける気にもなれなかった。
梅雨の晴れ間、これから数日は天気が保つという。何となく公園に出てみる。
時間は大体「筋骨隆々の男がワイドショー番組をやってる時間帯」、そういえば梢の帰宅時間は…、
(そういえば今日は…、帰る時間が早いとかなんとか…、5限までって…、)
そう台所の冷蔵庫にメモが貼ってあった。時計を確認する。経験上、5限までというと、帰宅はもう少し。珠実は最近、部長に捕まえられて何かをしているようだ。
(…たまには、途中で捕まえるのも良いかな?)
お出迎えより帰り道でばったりの方が、どこかへ連れて行くのにも気分が違って良いかもしれない。
(それに、たまに学校まで行くと、意外と周囲の目線が…)
穏和な女子校として名高い梢の高校。それ故か、そんなところで仲睦まじく歩く二人に向けられる乙女たちの羨望の眼差しは、優しく重い。
(…よし。)と、尻ポケットの財布を確認する。そこそこ。時間もちょっと出かけるのに良い感じ。
そうして隆士は、梢を探して歩き始めた。
369「終わりの始まり」:2005/06/06(月) 05:25:21 ID:cqNePXFN
「あれ?隆士さん?」
ちょうど交差点を渡ったところで、梢を見つけた。
「こーずえちゃん、ん?珠実ちゃんは?」
「あ、はい、今日も部長さんと。部長さんが抱えていきましたよ」
その構図を想像し、吹き出しそうになる隆士。
「珠実ちゃんも大変だね」
「なんか最近部室から、変な歌が聞こえてくるんですよ。一寸法師を無くしたら大変だとかなんとか」
「…分かんないからいいや(何でこんなに妙な歌ばっかり…)」
「踊り念仏かなにか…、でしょうか?」
「…梢ちゃん、それ和風すぎるよ」
もう深くつっこむのは止めようと、隆士は話を切り出した。
「ところでさ、梢ちゃん。時間は平気?」
「え?あ、はい。お夕飯までは、だいぶ時間はありますし。」
きょとんとする梢。実は隆士、この顔がちょっと気に入ってたりする。
「じゃあさ、どっか行かない?この時間だと、近場くらいしか行けないけど。」
「え?今からですか?でも、今からどこへ行くんですか?」
隆士はちょっと困った顔をする。
「うーん、そうだなぁ…。じゃぁ、梢ちゃんの行きたいところ、なんてどう?」
「え?私ですか?うーん、そうですねぇ…」
しばらく梢は考えて、

370「終わりの始まり」:2005/06/06(月) 05:25:37 ID:cqNePXFN
「…海」
「え?」
「海が見たいです。何となくですけど」
隆士は少し考えた。
「今ここからだと、あの電車の終点まで行けるかどうか…」
「あ、無理そうなら良いんですよ?私は隆士さんと一緒なら、どこでも…」
二人とも、ちょっと照れくさくなった。
「…大丈夫じゃないかな?時間は無い訳じゃないし」
「でも、でも、夕方までには帰らないと、皆さんが…」
隆士はほほえんで、
「大丈夫だよ、ちょっとくらい遅くなっても。ね」
「…はい。じゃあ、お言葉に甘えて」
「そ。ちょっとくらい甘えても罰は当たらないって」
二人は駅に向かった。
371「終わりの始まり」:2005/06/06(月) 05:27:17 ID:cqNePXFN
電車が終点一つ手前に着く。東京の西側にあるここは、内海ではある物の、外洋に近い為が、そこそこきれいな海岸である。しかし、梅雨時の平日とあって、人はあまり見あたらない。
「きれいですねぇ…」「きれいだなぁ…」
きれいにハモって、思わず顔を見合わせて笑う二人。
それからしばらく二人は、海を見たり、歩いたりしていた。

ふと、梢が呟いた。
「実は…、私、ここに来た事があるんですよ」
「そうなの?…もしかして、他が良かったとか」「いえ、そういう訳じゃないんですけど」
梢は隆士の発言を、慌てて否定する。
「小さい頃なんですけどね。数少ない、お父さんやお母さんとの記憶です」
「…そっか」
「あの頃から、二人ともいろいろ大変だったみたいで、お出かけに連れて行ってもらえるのも久しぶりで。はしゃいでずぶ濡れになっちゃったりして」
梢の顔は笑顔のまま。でも、言葉の調子は少し低い。
「お父さんもお母さんも、あの時は笑ってました。あんまり笑わなかったお父さんも、笑ってました」
笑顔のまま、段々言うのが辛くなってきたのか、下を向き始める。
「でも…、でも…、」
「もういいよ」
隆士が梢の顔に手を添える。
「梢ちゃん、あんまり無理に話さなくて、良いよ。つらそうじゃない」
「…はい」
「…大丈夫?」
「…大丈夫です」
努めて明るく振る舞おうとする梢が、痛々しかった。
何となく、棗をなぐさめるときと、同じ事を梢にしてみた。
「…りゅ、隆士さん」
少しくすぐったそうに、でも、どこかほっとしたような梢。どうやら落ち着いたみたいだ。
「落ち着いた?」
隆士は優しく聞いた。梢は少し服を引っ張って、
「ごめんなさい。もう少しこのまま…」
隆士はそのまま梢を抱き続けた。
372「終わりの始まり」:2005/06/06(月) 05:28:46 ID:cqNePXFN
何分経っただろうか。梢が呟く。
「…すいません。何だか気を回させちゃったみたいで…」
「別に気にしないの。梢ちゃんさえ良ければ、それで、ね」
隆士は優しい顔で梢に言った。

日の色が変わり始める。少し遠いところに来ているため、時間が気になり始めた。
「あの、隆士さん。そういえば時間は…」
「あ…、日が…、」
言いかけて少し微笑み、隆士は優しく言った。
「もうしょうがないね。日暮れまで、いようか」
梢もこのときばかりは、そのままでいたいと思ったのだろう。
「はい」
安心しきった表情で、そう言った。


日暮れを見て、それから紅い電車に乗る。鳴滝荘にたどり着いたのは、結構経ってからだった。
どうやら夕食は、朝美ちゃんが超格安サバイバル料理を、みんなに振る舞っていた。暖めて食べたが、結構おいしかった。

夕食をすっぽかした事で、梢はあまり気負いしている訳ではなかった。住人も何となく了承と言った感じだった。
ただ…、隆士はそうでもなかった。どうも引っ掛かる事があった。それは…。
(梢ちゃんは一体…)
どういう過去を持っているのか。
海岸で話してくれたときのあの感じ。それは…、棗ととても重なる感じ。
折れてしまいそうな弱々しさ。どこか心細そうな声。
当たり前だが、二人とも共通の過去を持っているのだろう。
なら、その過去はいったい何なのだろう。それが棗の「いつもの夢」とも繋がるのではないか。そう思った。
373「終わりの始まり」:2005/06/06(月) 05:30:17 ID:cqNePXFN
その夜、夜も更けた頃。
梢はどうやら疲れたようで、早めに寝ていた。
しかし、白鳥はどうにも眠れなかった。何だか、いろいろ頭の中に回っているからだ。
昨日の棗と、今日の梢、別人格だが、どうも何だか引っ掛かる。
(そう言えば、僕は梢ちゃんの事、詳しく知らないなぁ…)
そう考えていると余計に、梢の過去、梢自身について、知らない事が多すぎると実感し、同時にそれを知りたいと思う心が強くなる。
(どうすれば、梢ちゃんの事を…、本人に聞くってのは野暮だし…)
そう考えていると、ドアーの外に人の気配がした。
(誰だろ。こんな時間に)「…どなたですか?」

そこには梢の姿。いや、今は棗の人格だ。
伊達に恋人をやっている訳じゃない、隆士は雰囲気の違いから人格が変わっている事を読み取った。
「…棗ちゃん?」
「…………」
何も言わず、隆士に抱きついた。しがみつくと言っていいくらい強く。
「棗ちゃん?どうしt」「……………りゅ………ぃ…ん(隆士くん…)」
か細い声で呟く棗。明らかに様子がおかしい。
とりあえずそのまま棗を中に引き込み、ドアーを閉めた。
374「終わりの始まり」:2005/06/06(月) 05:33:12 ID:cqNePXFN
「棗ちゃん、どうしたの?何かあった?」
敷いてある布団の上に座る。既に灯りは落としてあり、月明かりのみが部屋を照らす。
「………、隆士くん……。」
「…どうしたの?何かあった?」
そう優しく声を掛けると、棗が堰を切ったように話し出す。
「…変な夢…、見たの。…お葬式、…誰のかは…、分からないけど…、二人。何だか悲しくて…、それで…、…あたしに、変なおじさんが…、言うの。
『君のような子供がいるのに、あんな事をするなんて。でも、君さえいなければ、もっと違っていたかもしれないのに』って。
よく分からないけど……、なんか…、胸が…、胸がきゅーって……、痛くなるの…」
そこまで言って、棗は隆士を抱きしめる力を一層強くした。
その顔は、隆士が見た中で、一番痛々しくゆがんだ物だったように見える。
しかし、棗は泣かないように努めている、それが痛々しさを一層引き立たせていた。
隆士は、そんな棗を見ていられなかった。
「棗ちゃん…、悲しいときは、泣いても良いんだよ。僕はここにいるから。ずっとこうしていてあげるから、泣きたいだけ泣いて良いよ…」
「…隆士くん…、…隆士くん…隆士くん…」
そう言いながら棗は、こらえきれずに泣き出した。思いっきり泣いた。そして隆士は、そんな棗の頭を、撫で続けた。
そうしながら、隆士は考える。
棗が見た夢は、恐らく両親の葬式の時だろう。隆士にはその状況をすべて読めた訳じゃなく、分からない事だらけ。
ただ、一つだけ分かるのは、棗にとってその出来事が、相当な心の傷になっていると言う事。
棗を含む他の人格や、梢自身の両親との記憶の曖昧さも、もしかしたらその心の傷から来ているのかもしれない。そう思えた。
しかし、結局
(僕は…、梢ちゃんの事を知らなすぎる…。過去の事も含めて…)
そこに尽きる。
棗の心の内を解き明かすには、それを知る必要がある。しかしそれをするにはどうすべきか、それが問題だった。
「うっ……、え……ぐ……、あ…ぅ………ぐす…」
いま目の前で泣きじゃくっている少女を救ってあげたい。なのに自分には頭を撫でてあげるしかできない。
そんな歯痒さを、隆士は味わっていた。
375「終わりの始まり」筆者:2005/06/06(月) 05:38:30 ID:cqNePXFN
ここまで〜。
次回はあの人が大活躍…の予定…。
しかし、これだけ書くのも楽じゃない…。諸先輩方の力の凄まじさを実感せずには居られませぬ…。

…また一限目遅刻かな。「ジャーナリズム論」は受けときたいから、とりあえず仮眠しますか。
ではノシ
376名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 07:53:42 ID:VmUdEQWq
棗ちゃんが梢ちゃんの負の部分を背負ってるのですね。(つД`)
377名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 07:55:08 ID:VmUdEQWq
共有と言うべきだったかな。
乙でした
気をつけて出かけてください。
378メリー:2005/06/06(月) 09:55:47 ID:n45Y+m2R
グッジョブでした!
いやはや悲しい内容で、引き付けられました。
徹夜で体を壊さぬように気を付けて〜
379名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 11:49:10 ID:dSCAJt1A
こんな時間に大作が…。
ぬくさと切なさの使い分けがとてもよいですな。
これからの展開が気になりマス。


>>362
トランクスは縫い目が真ん中にあるのでいろいろとアレなんです。
女性下着の構造とまったく逆の発想なので問題があると思いますた。
380260:2005/06/06(月) 17:50:35 ID:Sssf0lRA
>>265様、ありがとうございます。おかげで読めなかった部分を読むことができます。
あと、かちゅーしゃでうpされたファイルを見る方法はないでしょうか?
381名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 21:00:53 ID:08erc/xs
>>322
私は2でお願いします。
382名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 21:09:32 ID:jCj5aUw0
なんか一日見ないだけですごいことになってますね。
遅レスながら>>322氏、3希望です。
383名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 21:14:21 ID:cYz531YH
>>322
素直に3希望です。
384テイル:2005/06/06(月) 22:34:37 ID:LbgOp45v
>>375
おお、いい展開。続き期待してます。
というか、この話大好きです!

>>381-383
了解しました。

えーと、ここまでの集計は…桃乃2、戦争2、阿甘8、と。
…相当阿甘堂ってニッチなんだな…
予想に反して大躍進です…


漏れが大変なだけだけどねorz
さて、今晩はどんな良作が投下されるやら…
385名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 22:54:59 ID:n3G8CuI5
>>375
本筋よりもむしろどこか生々しい既成事実に(;´Д`)ハァハァしてしまった私は駄目人間。
386恋のマホウ:2005/06/06(月) 23:13:09 ID:dSCAJt1A
そんなこんなでなんとか着替えを済ませた僕だったけど、本題はこれからだった。
「…で、どうするの? 白鳥くん」
「どうする、って言われても…」
「とりあえず、現状の問題と対策を考えるです〜」
僕たちはさしあたって当面の問題を考えてみることにした。

まず、性別が変わってしまったこと自体に対して。
「そうねえ…。 やっぱり男の子とはいろいろ勝手が違うから大変だと思うわよ」
「女の子はデリケート〜っていいますしね〜」
「まあ、あたしらも男の子の事情は知らないけどさ」
「その辺は何かあったらみなさんに聞くことにします」
「ウブな白鳥くんじゃ知らない女の子の秘密がいっぱいあるだろうしね♪」
「手取り足取りいろいろ教えてあげるです〜」
「は、はい、お手柔らかに…」
(ふ、不安……)

次に、この事実を他の人にどう知らせるべきか、これが難点だ。
「バラさんや沙夜ちゃんたちならなんとかなるだろうけど、問題は梢ちゃんよね…」
「ですねぇ〜…。 さすがにどうなるか予想出来ないです」
「あっ、学校が…」
「そっちはいざとなったらサボっちゃいましょ〜」
「うぅ、折檻が……」
「となると、やっぱり問題は梢ちゃんね。 まさか、彼氏がいきなり女の子になるなんて夢にも思わないだろうし」
「千百ちゃんは喜びそうですけど〜」
「いや、それもちょっと…」
387恋のマホウ:2005/06/06(月) 23:13:41 ID:dSCAJt1A
最後に、一体いつまでこのままで居なければならないのか、だ。
「こればっかりは部長に聞いてみないと何とも言えませんね〜」
「珠ちゃんはなんか知らないの?」
「無茶いわないでください〜。 オカルト知識なんて部長にかなうわけないじゃないですか〜」
「へぇ〜、意外ね〜。 じゃ、いまから連絡とかつけられない?」
「部長のプライベートのことなんて知りませんよ〜。 っていうか、知りたくもないです〜」
こっちは考えても無駄ってことらしい。
388恋のマホウ:2005/06/06(月) 23:14:25 ID:dSCAJt1A
とりあえず、さしあたっての問題のメドは立ったけど…。
「梢ちゃんがどう反応するか、か〜…。ちょっと、対策しづらいわね」
「都合良く千百ちゃんが出ていてくれれば説明もしやすいのですが〜」
「説明しやすい相手一人を納得させればみんなに伝わる、ってこと?」
「です〜。 でも、そんなに都合良くいくものじゃないですし」
「う〜ん…」
仮定で話しているけど、そもそも千百合ちゃんだって簡単に受け入れてくれるかどうかわからない。
梢ちゃんたちは僕と恋人関係になったことで改善の兆候を見せたんだ。
その僕が男じゃなくなってしまったら、それは関係の消滅を意味しないだろうか?
それが一番の心配事だった。
「常に最悪の事態を想定しておいた方がいい、とは言いますがこればっかりは考えたくないですね〜」
「とは言え、具体的な対処法がないからねえ」
「じゃあ、いつもの逆に男装するっていうのはダメですか?」
女の子でダメなら、男にしてみよう、という逆の発想だ。
「…ダメね。 普段なら通用するけど、ほら今は完全に女の子顔だし」
いい案だと思ったけど、ダメ出しは早かった。
確かに桃乃さんが言うように鏡に映る顔はどう見ても女の子そのものだ。
「やっぱり、正面切って話しちゃった方がいいんじゃない?」
「うーん…」
「そうですね〜。 元に戻るまで顔を合わせない、っていうのも話がこじれそうですし〜」
「でも、知られないならそれに越したことはないよね…」
389恋のマホウ:2005/06/06(月) 23:14:47 ID:dSCAJt1A
結局、具体的な解決策は出ずに、話は平行線を辿るばかりで
今日のうちは絶対に梢ちゃんと顔を合わせないようにする、という消極案で話はまとまった。
君子危うきに近寄らず、ということだ。
「とりあえず、明日部長に聞いてみることにしますね〜」
「そうね、元は言えば珠ちゃんのせいでもあるんだからしっかり頼むわよ」
「はい〜、白鳥さんのせいで梢ちゃんが落ち込むところは見たくないですから〜」
「僕のせいなの!?」
3人寄っても文殊の知恵、と言うわけにはいかないようでした…。
390240:2005/06/06(月) 23:19:34 ID:dSCAJt1A
以上、第4回でした。
我ながら構成力があまあまです。
先輩方のようないい文章は難しいものですねぇ…。

>>384
ヨーちゃんたちは角煮のほうでも全然出てないからじゃないですかね。
題材としては面白そうですが何故か扱われてないですから。

>>380
かちゅーしゃにはスレッド型掲示板を見る機能しかないので諦めましょう。
391メリー:2005/06/06(月) 23:39:28 ID:mF0UY0fP
240様
乙&GJ。続きが気になる所です。
392恋のマホウ:2005/06/07(火) 01:40:27 ID:iZYaqvzd
「は〜……」
湯船に浸かり、深くため息をつく。
「ふたりとも強引なんだもんなぁ…」
話がまとまった後、急にふたりは僕にお風呂に入るように言ってきた。

『さぁ〜て、白鳥くん。 まずはお風呂よ、お風呂!』
『お〜いえ〜』
『なんですか、いきなり!?』
『なーにいってんの。 こういうシチュエーションじゃお約束でしょ?』
『ダメですよ、そんなの!』
『こ、これが僕の体? どうなってるんだろう、ここ、うわぁ〜…って感じ〜?』
『初めて見る女の子の体にドキドキ〜、ですぅ〜』
『やがて行為はエスカレートしていって…。 ああん、もうダメぇ〜』
『ふ、ふたりとも勝手に変な想像しないでくださいよ!』
『と、いうことで行きなさい、隆子マーク2!』
『嫌ですってばぁー!』


着替えたばかりだって言うのに有無を言う暇は与えて貰えず…。

……………。
結局、なし崩しでこうなっちゃうんだけどね……。
393恋のマホウ:2005/06/07(火) 01:40:55 ID:iZYaqvzd
(女の子、かぁ……)
視線を下げてちらりと自分の体を見る。
「はぁ〜……」
水面に揺らぐ凹凸がはっきりした輪郭。
裸になることでそれをはっきりと思い知らせてくれた。
「確かに、桃乃さんたちの言うとおり早く慣れなきゃダメなんだろうけど…」
(これからどうなるんだろう…)
一人になって再確認した漠然とした不安。
はっきり言って、今の事態は普通じゃない。
ひょっとしたらこのままずっと女性として生きていかなきゃいけないのか?
こんな風になってしまった僕を梢ちゃんはどう思うのか…。
「はぁ〜……」
(いくら考えたって意味がないとはわかってるけどさ…)
ざばっと浴槽から出て、浴室に取り付けられた大きな鏡の前に立つ。
「はぁ〜……」
鏡に映る深いため息をつく見慣れない女の子の姿。
その子は手を振れば同じように手を振り替えし、笑顔を見せればほほえんでくれる。
(…これが今の僕、なんだ…)
受け入れたくなくても、受け入れざるをえない現実。
「どうなっちゃうんだろう……」
その問いに答えてくれる人はいなかった───。
394恋のマホウ:2005/06/07(火) 01:41:33 ID:iZYaqvzd
「はぁ〜…」
勝手の違う体に悪戦苦闘しながらなんとか入浴を済ませ浴室を出る。
「確かに、桃乃さんの言うように慣れるまで大変かも…」
バスタオルで体を拭きながらまたため息一つ。
でももう体に関してはもう割り切るしかない、これが現実なんだから。
「よし、いつまでも落ち込んじゃいられないぞー!」
事情はどうあれ、事実は受け入れなきゃならない。
沈みがちになる気持ちを奮い立たせ、鏡の中の自分にカツを入れた。
しかし、運命はもっと意地悪だった。

鏡の前でグッと気合いを入れているとがちゃっ、と扉の開く音。
入るときに脱衣所の鍵を閉めていなかったのだろうか。

「あっ、ごめんなさい。 お先に入ってました…か……」
「えっ……?」

扉を開けてしまった人物は

「……………」
「こ、梢、ちゃん………」

いま、一番会ってはいけない人だった。
395240:2005/06/07(火) 01:45:05 ID:iZYaqvzd
と言うことで寝る前に投下です。
我ながら長い話始めちゃったと思いますが今しばらくおつきあいくださいorz
396名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 06:46:53 ID:sed2NbtX
>>395
もう最高!ドキドキするわ、今しばらくとか言わないで永遠に続いても個人的にはOKっス!GJ!
なんでTS物っつうのはこうも萌えるのか・・・。
397名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 06:49:03 ID:mqIoTfSo
GJ!

この後、女風呂に白鳥が入ってることに驚いた梢が気絶して千百合が降臨して(ry
398名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 07:03:10 ID:2gKZFvTf
むしろ梢ポンとの背中流しっこキボンウ(;´Д`)ハァハァ
399名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 08:44:23 ID:aV/whRXC
早紀ちゃんに隆子ちゃんをいじめてほしい(;´Д`)ハァハァ
400名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 11:07:08 ID:9XJM0ZTO
魚子ちゃんが豪快に興味を抱いて、よく解ってないまま隆子の身体をいじくり回すってのはダメですか?
401名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 11:49:13 ID:3lTTkNF3
エロール登場だろ
402メリー:2005/06/07(火) 14:55:59 ID:4ggK9CMC
240様
グジョブーですよ!
梢がどうなったのか気になるぅ〜
403名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 17:12:40 ID:KMvfwVaZ
続きが気になって課題がはかどらないorz
404恋のマホウ:2005/06/07(火) 18:40:58 ID:iZYaqvzd
「あっ………」
時間が停止する。
バスタオル1枚の姿の僕。
ドアノブを握ったまま硬直している、彼女。
僕もそのままの姿勢で動けないでいた。

梢ちゃんは、僕の頭から足先をゆっくりと視線を向ける。
「あ、あの………」
そしてまた足先から視線を戻し、僕と目を合わせた。

見られた!? 見られた!? 見られた!? 見られた!? 見られた!? 見られたの!?
どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうすればいい!?
見られちゃった! 見られちゃった! 見られちゃった! 見られちゃった! 見られちゃったかも!
梢ちゃんに!? 梢ちゃんが!? 梢ちゃんは!? 梢ちゃんを!? 梢ちゃんと!?

考え得る最悪の状況。

(どうする!? どうやって乗り切ればいい!? なんとか誤魔化さないと!
いや、でも全部見られちゃってる!? 上から下まで隅々と見られちゃってるよ!
ここは他人のふりをする!? あ、でも梢ちゃんって呼んじゃってる!!
えーと、えーと、えーと……
ああああ、どうしよう!? どうしよう!? どうすればいいんだ!?)

万事休す、四面楚歌、袋小路、絶体絶命………
405恋のマホウ:2005/06/07(火) 18:41:24 ID:iZYaqvzd
「………さ………で…か………」

最悪だ、梢ちゃんに見つかっちゃうなんて……。

「……し…と…さん……なん……か………?」

ああ、また梢ちゃんが倒れて大変なことになっちゃう……。

「……らとり…さ……なんで…ね……?」

梢ちゃんがショックで意識を失って…。

ごとっ、と人が倒れ込む音。

「…っ、白鳥さん!?」

あれ? なんでだろう、やけに視線が低いような…。

「白鳥さん! 白鳥さんっ!!」

急に梢ちゃんの顔が見えな……

「珠実ちゃん! 桃乃さん! 誰か、誰かーー!!」


…………。
目の前が暗くなり、僕の意識は深い闇の中に落ちていった───。
406240:2005/06/07(火) 18:42:52 ID:iZYaqvzd
なんか、課題がはかどらない人がいるみたいなんで続き出しておきます。
御期待の展開と違うかもしれませんがご容赦を。
407名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 18:51:57 ID:KMvfwVaZ
>>406
続き投下乙&GJ&dクス
408ぐうたら:2005/06/07(火) 21:54:26 ID:FhnKB72E
>>406
いやいや、予想を裏切る展開にワクワク感が倍増ですヨ。GJ!

あ、自分のほうはも少し待っててくださいな。
409テイル:2005/06/07(火) 22:17:26 ID:wL4fbmKd
しょうがない、阿甘堂SSを書き始めるとしよう…


…正直、全くネタなしになりそう…
むしろ思考停止状態。
410名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 22:30:11 ID:vy1YFx8R
>>409
じゃあ何で選択肢に入れちゃったんですかw

…ふう、俺も続きはもう少し先になりそうです。
着々と書けてはいるんですけどね…
今週は正直試験で辛い、某RPGモノの作者でした…
411名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 22:34:23 ID:iZYaqvzd
>>409
いやいや、辛いようでしたらまたネタが浮かんだときにでも
書けばいいんじゃないですか?
やっぱり、二次創作なんですから自分が書きたいものを書かないと。

苦心しながら書いてもやっぱり納得出来るものにはなりにくいですからね。
キュピーンと来たら書きましょう。
412テイル:2005/06/07(火) 23:22:21 ID:wL4fbmKd
>>409
最初は「これに来ないだろう」と踏んで入れてました…
予想では1が人気を集めるだろうと踏んでました。
それでも、一応構想は練ったから大丈夫です。

それでは、阿甘堂短編「笑顔」投下します。
413笑顔(1):2005/06/07(火) 23:24:34 ID:wL4fbmKd
「ありがとうございました〜」
ここは、双葉銀座。
色々な商店が軒を連ねる、ちょっとしたショッピングセンター。
そして、私がいる阿甘堂。
ただの雇われ店員の私はよく判らないが、それなりに歴史のある
古い和菓子屋なのだとか。
そんな我らが阿甘堂の看板メニューは、鯛焼き。

…鯛焼きは本来和菓子ではないらしい(ウソか本当かは私も分からない)が、
国民食となった今、広く和菓子と認識されているようだ。確かにあんこを使うし…

「鯛焼き、いかがかヨ〜」

私の隣で声出しする後輩。
中国人のような発音をする。
実際、大陸の出身だと言う。(故郷には18人の弟がいるというから怖い)
そんな彼女を、私は「ヨ〜ちゃん」と呼んでいる。
あまり自分の事は話さないが、知り合いの客曰く、
「今までに色々な仕事をしている」、いや、していたらしい。
414笑顔(2):2005/06/07(火) 23:27:04 ID:wL4fbmKd

彼女がこの店にやってきた頃を思い出す。
「お願いヨ〜、私を雇ってくれヨ〜」
「雇ってと言われても…」
渋る店長。
「いいんじゃないですか、丁度人手も足りてない事だし」
助け舟を出したのは、私。
「…分かった、雇うことにしよう」
かくして、彼女はバイトとなった。
私の、初めての後輩。

でも。
問題が一つ。
いつも、怪しげな商品を掴まされるのだ。
「先物取引で一旗揚げるヨ〜」と言っていたら、まんまと罠に掛かった。
しかも、彼女を騙した人物も中国人だったと言う。
それでよく不渡りを出さないで生活しているものだ。
何か裏技でもあるのだろうか…

でも。
これだけは言える。
…ヨ〜ちゃん、商売人としては不向きかもね…
415笑顔(3):2005/06/07(火) 23:27:55 ID:wL4fbmKd


「あ〜、一段落」
客の列もようやく捌き終えた。束の間の休息。
日もそろそろ傾き始めている。
「今日もたくさん人が来たヨ〜」
「本当に…でも、同じ事の繰り返しって、なんだか退屈だわ」
「そうかヨ〜?」
なんで、というような口振りでヨ〜ちゃんは言う。
「あんたは退屈じゃないの?この商売」
「全然楽しいヨ〜、今までの苦労に比べれば随分楽だし〜」
「…今まで?」
「ああ、こっちの話だヨ〜」
そう言えば、ここに来る前に色々な職を転々としていたとか…
それはともかく。
商売が、楽しい、か…
「商売は面白いヨ〜、売れれば儲けが出るし、お金持ちになれるし」
「恐ろしく即物的ね…」
「でも、それだけじゃないヨ〜」
「?」
「やっぱり、お客の喜ぶ顔が嬉しいヨ〜。今まで色々な商売に手を出してきたけど、
 あまり喜ぶ顔を見る事は無かったヨ〜。でも、ここの仕事は最高だヨ〜。
 旭さんにも出会えたし、商品はおいしいし、何より…」

「ここには、沢山の笑顔が集まるからヨ〜」
416笑顔(4):2005/06/07(火) 23:28:51 ID:wL4fbmKd
笑顔…スマイル、か…
英語で言っても変わらないけど。
「例えば、あの女の子みたいな男の子ヨ〜。彼には何度もお世話になってるヨ〜。
 迷惑もかけたけど、それでもあの子は笑っているヨ〜」
あの子はむしろお人好しと言うのだろうが…
ヨ〜ちゃんは続ける。
「笑顔を見るのって、売り手としてやっぱり嬉しいヨ〜」
「まあ、そうだね」
「笑顔がある店って繁盛するヨ〜。だから、この店は大好きだヨ〜」

…そっか。
金が絡むけど、やっぱり原点は、そこなのか…
なんとなく、気持ちがすっきりしたようになる。
やっぱり、この繰り返しが大切なんだろうな…


と。


店の前に車が停まった。
この付近では珍しい、黒塗りの車が一台。

「……?」「……?」
私とヨ〜ちゃんは、顔を見合わせる。
大口注文をするような客は、阿甘堂にはいない。

男が数人降りてきた。かなり事務的な顔だ。
「すみません、黄有麗さんはいらっしゃいますか」
「…?私だけど、何か用かヨ〜?」

「入国管理局の者です」
417笑顔(5):2005/06/07(火) 23:30:00 ID:wL4fbmKd

そして。
「ヨ〜……」
ヨ〜ちゃんは、車に乗せられた。
あるいは、連行させられた。
「…えーと」
こういう時は、どう対応すればいいの…?
仕方なく、職員の一人に話しかけてみる。
「…鯛焼きはいかがですか」
「いえ、結構」
あしらわれた。
つうか、冷徹過ぎるぞこの人。
「それでは、失礼します」
ヨ〜ちゃんを乗せた車は、走って行った。

「…あれ?」
私は首を傾げる。


「…………ヨ〜ちゃんって、不法入国者だったっけ?」


翌日。
ヨ〜ちゃんは帰ってきた。
どうも、人違いだったようだ。
「日本の公務員は仕事が雑で困るヨ〜」
「だったらあんたも真面目に仕事しな」
「ヨ〜…ゾンナ、アザヒザーン…」
そんなこんなで、阿甘堂の日常は今日も続く。


<<Smiley Merchants>>is the end.
418笑顔(アトガキ):2005/06/07(火) 23:34:35 ID:wL4fbmKd
ヨ〜ちゃんを随分いじっちゃったかな…
まあ、短編なのでこんな感じです。
一部、どこかで見たようなモノがありますが、それはそれ。
気分転換になった…ような、気がします。

それでは…明日も早いな…orz
419名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 23:35:04 ID:P3EJq802
>>412
GJ!!!
ありがとうございました!!ヨ〜ちゃん(;´Д`)かわぇぇ…
420日斗:2005/06/07(火) 23:38:05 ID:dJ+ORi/2
>>418さん
こういうのどか+ドタバタなものは、自分は好きです。
まったりしてて,まほらばらしさがよく出てるとおもいます。

前回の続き,書きあがりました・・・
前回の最後がちょっと気に入らなかったので,多少加筆しました。
なので,多少重複しているのをお許し下さい。
421We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/07(火) 23:39:18 ID:dJ+ORi/2
「・・・本条・・・君?」
桃乃の台詞を、別の声が中断させた。
「綾・・・乃っ?」
綾乃は目を見開き、俺たちを見ている。
今の俺たちは手を繋ぎ、向かい合っている。桃乃は泣き腫らしている。こんな状況は,果たして,周りからはどう見えるのだろうか。
「これは・・・違う!そうじゃない!綾乃!」
「あ・・・」
俺と、桃乃の声が重なる。くそ,よりによって・・・まずい。
綾乃が下を向く。顔が見えない。
「そっか・・・」
そんな・・・そんなバカな。
俺は・・・そもそも,誰のために,何のためにこうしていたんだ?
矛盾している。俺は,綾乃のために・・・

沈黙が続く。

綾乃が背を向けた。何も言わず、向こうへと。
このまま終わるのか?明日から、俺は、綾乃に・・・
綾乃に・・・どうすべきなんだろう。
422We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/07(火) 23:39:56 ID:dJ+ORi/2
綾乃が背を向けた。何も言わず、向こうへと。
このまま終わるのか?明日から、俺は、綾乃に・・・
綾乃に・・・どうすべきなんだろう。
果たして,俺はこういう形でも,「変わること」を望んでいたのだろうか?
分からない。でも・・・
少なくとも,俺は,「変わらないこと」も望んでいたのも,確かな事だ。
そうだ、分かるか分からないか、理解できるかできないかは今、どうでもいい。
大切なのは,今,俺が何をしたいかを認める事だ!
そして,認めた通り、変わらないでいるために,俺の体は動く。
無我夢中で、俺は去ろうとする綾乃を捕まえた。
「綾乃っ!」
「あ・・・」
綾乃を背後から抱き締めた。

綾乃は動かない。生暖かい風が一陣、吹く。
綾乃は、震えている。
423We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/07(火) 23:40:30 ID:dJ+ORi/2
綾乃は、震えている。
どの位経ったんだろうか。
不意に綾乃がぎゅ、と自分自身を抱き締める。
そして、言った。
その一言,それは

「・・・ごめんね。」
「・・・へ?」
我ながら情けない声が漏れる。
「ごめんね・・・今、一瞬だけど、本条君の事、疑っちゃった。隠し事はしないって約束、本庄君が破ったって。」
涙をぽろぽろこぼしながら、綾乃が言う。
「あ・・・」
俺,どうかしてたな。
今,綾乃が考えた事は、俺の考えた事と殆ど同じだった。「相手を信用しきれなかった」と言う事。でも・・・
嬉しいと思った。あんな状況でも、印象に捕われず、綾乃が『約束を思い出して』俺を信じてくれた事が。
だから,これだけは言わなきゃならない。

「こっちこそ,ごめん。俺も,今,綾乃が・・・」
言わないで,と綾乃が釘をさす。
424メリー:2005/06/07(火) 23:40:49 ID:4ggK9CMC
テイル様
おほうっ! GJじゃないですか! ネタ無しって言ってたのに、
ヨ〜ちゃんと旭さんのストーリーがっ!
凄すぎですよ、いやはや・・・・・・
425We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/07(火) 23:41:24 ID:dJ+ORi/2
「こっちこそ,ごめん。俺も,今,綾乃が・・・」
言わないで,と綾乃が釘をさす。
お互い,考えている事が何となく分かる。
だから,次の綾乃の言葉を先取りした。
「「許して,くれる?」」
綾乃と俺の言葉が重なる。
綾乃が真っ赤になる。
「あの、その・・・」
はは,と苦笑いしながら,綾乃の方に手を置く。
良かった,いつもの俺たちだ。
同時に,慌てた様な,いつも通りの綾乃の声を聞き、自然に言葉が漏れていた。
「・・・言いたい事が,あるんだ。」
「・・・え?」

俺は綾乃をひとときでも信じきれなかったけれど,それは綾乃も同じだった。

だけど,信じられなかったと言う事を通して,お互いの言いたい事も,分かった。

そう、形はどうあれ,今の俺たちは,相手の事を理解しあえた。
そして・・・ふと、思い不がりかもしれないけれど、俺がこの所綾乃に対して思っていた事も、きっと綾乃も感じていただろうとなんとなく考える。

俺は思う。昔、噛み合ない事を恐れた歯車は、もう今は噛み合っているんじゃないか。いや,それは,昔から噛み合っていたんだ。
ただ・・・昔は,噛み合った歯車を,「隠し事」と言う回転数の違いで動かせなくなる事を恐れていた。もう,俺たちにそれはない。
・・・だけど,回転数が同じでも,歯車は,ふとした事で外れそうになってしまう、不安定なもののように思えた。今のように。
426We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/07(火) 23:41:59 ID:dJ+ORi/2
・・・だけど,回転数が同じでも,歯車は,ふとした事で外れそうになってしまう、不安定なもののように思えた。今のように。

だから,俺は焦っていた。それを崩さないように,変えないようにする一方で,どうにかしようと,変えようとしていたんだ。
だけど,今,歯車が揺らいでしまった。俺は,それを直すためにもう一度設計図を,俺たちの関係を見直したんだ。
・・・そして、認めてはいたけれど,分からなかったもの・・・それが何であるのかを理解した。
だから,俺は今の言葉を口にした。
それは、歯車を「変わらない」様なものに「変える」ための言葉だ。

「鈴原綾乃さん,どうか,俺の恋人になって下さい。」

「え、あ、???」
綾乃が呆気にとられる。
「・・・何となく一緒に居たけど,今まで口に出して言った事はなかったよな。」

俺が誓う事。変わらないために,変わる。ずっとそのままでいるために。
これこそが俺の望んだ事だ。

綾乃の顔が徐々に朱に染まる。黙りこくってしまう。
それでも、
「あ・・・は・・・はいっ。」
返事をしてくれた。
そのまま,俺にしがみつく。
427We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/07(火) 23:42:26 ID:dJ+ORi/2
返事をしてくれた。
そのまま,俺にしがみつく。
顔が真っ赤になっているが,いつのまにか,満面の笑みがそこにある。
だが,疑問は残ったようで
「・・・でも,何で?今までも・・・」
「その為だよ。今まで通り,変わらないでいるために,変わる。・・・俺は,ずっとおまえと居たいから,だから・・・」

「ぷ・・・あは,あは、あははははははははははははははは!あっはっはっはっはっはっは!」
俺の言葉を笑い声が中断した。
・・・せっかく決めていたのに。
声の主は,当然,桃乃だ。何がおかしいんだ,全く。いつもながら遠慮なく笑いやがって・・・
・・・いつもながら?
「あ,あははははは,そう・・・だよね。変わらない為に変わる,そういう事でも・・・いいんだよね。変にセンチになってもしゃーないか。・・・あいつが,夢を果たして帰ってきたときの為に,あたしが変わらない様に変わる。」
気が付くと,コイツはすっかりいつも通りになっている。
「・・・ありがとね。アタシを無視してラブラブモード入ってるあんたたち見てたら,悩んでるのバカバカしくなっちゃった。やりたいようにやる為に,自分を変わらないように変える。そんなテキトーな考え方もアリってことか。」
「オイ,テキトーって何だよ。俺は真剣に・・・」
だが,にゃははとオレをあしらいつつ,コイツは学校に向かって歩き出していた。
「・・・もう一度,話してみるかね。アイツと。」
428We form in the crystals :presents by日斗:2005/06/07(火) 23:43:20 ID:dJ+ORi/2
だが,にゃははとオレをあしらいつつ,コイツは学校に向かって歩き出していた。
「・・・もう一度,話してみるかね。アイツと。」

・・・何なんだ全く。勝手に自己完結しやがって。
「ねえ・・・メグちゃんたち,大丈夫になったのかな。」
「大丈夫だろ。明日にはヤツのお別れ会とか称して飲み会開いてるかもしれないな。」
実際,そうだったらいいけど・・・な。
「うん。・・・あ,そういえば,一つ,私からもいい?」
何だろう。・・・もしかして,さっきの事,咎められるのか?
「いいけど・・・」
まあ,しょうがないか。成りゆきとは言え,桃乃と手,繋いじまったもんな。
「うん。・・・これからも,よろしくね。巧君。」
・・・なんだ。
「当たり前だろ。こちらこそよろしくな、綾乃。・・・え?今・・・」

俺の,名前。
「これも,変わる事・・・だよね?」
綾乃がはにかみ、微笑みながらこちらを見ている。
夕暮れの中でも,俺は紅潮した顔を隠せている自信がない。
はあ・・・参ったな。当分の間,今まで通りにいかないかもしれないな・・・


FIN
429We form in the crystals {あとがき}:presents by日斗:2005/06/07(火) 23:46:02 ID:dJ+ORi/2
ふう・・・なんとか形になりました。つくづく自分の文才のなさが目に付きます・・・

ちなみに,どうでもいい事ですが,タイトルはとあるゲームのED曲が由来です。
執筆中にも聞いていたので,この駄作のBGMとして考えていただけたらなあ・・・と思います。
430テイル:2005/06/07(火) 23:47:58 ID:wL4fbmKd
>>429
乙!

…のどかだな…
431名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 23:49:31 ID:iZYaqvzd
ぉぉう、力作連投が…。

>>テイル氏
なんだかんだいってしっかりしたものを書いていて素敵です。
SSとはこういうもんだといわんばかりでGJです。

>>日斗氏
呼び名を変えるってのはうれしはずかしの一大イベントですね。
2組の有り様が対照的でいい感じでした。
432メリー:2005/06/07(火) 23:54:21 ID:4ggK9CMC
日斗様
呼び名を変えるシーンでにやっとしてしまいました。
体の奥から恥ずかしさが込み上げてきましたよ。
めちゃめちゃGJですb
433名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 23:57:04 ID:KMvfwVaZ
大作連続投下キターーー(゜∀゜)ーーー!!
課題がめっさはかどるわ。
434恋のマホウ:2005/06/07(火) 23:57:21 ID:iZYaqvzd
「……と、言うわけなのよ」
2号室に集まった鳴滝荘の面々は布団で眠る白鳥を囲むようにして桃乃と珠実から事情を説明されていた。
それぞれが複雑な表情でそれを聞き、白鳥の寝顔を見守っている。
結局、解決策が見つからぬまま全員に知られることになってしまったが、白鳥は静かな寝息を立てたままだ。

「あの…白鳥さんは大丈夫なんでしょうか…?」
一番心配しているであろう梢が沈黙を破って口を開いた。
梢は意外にも白鳥の変貌を目の当たりにしてもショックで倒れずにいた。
いや、普段とは逆に白鳥が先に倒れたことで理性を保ったのかもしれない。
とにかく、梢の人格が変わることはなかった。
「詳しいことまではわかりませんが気を失ってるだけだと思います」
桃乃に変わって珠実が答える。
「のぼせただけかもしれませんし、別の理由があるのかもしれませんが…」
「ふーむ…。 ま、それはともかく白鳥はホントに女になってるのか?」
灰原がまとめるように珠実に質問する。
「それは…間違いありません」
「なんてこったい…。 こいつはちっとばっかり非現実的過ぎるゼ」
「魔法って本当にあるのね…」
「お兄ちゃん…」
珠実の念の押すような返答に皆ため息をついた。
435恋のマホウ:2005/06/07(火) 23:58:13 ID:iZYaqvzd
「お兄ちゃん、大丈夫なんだよね?」
「身体的な悪影響はないと思いますからそれは大丈夫です…多分」
事が大きくなりすぎてしまったためか、さすがの珠実も罪悪感を感じているようでいつもの覇気はない。
具体的な解決策が未だ見つかっていないことや、間接的にも梢を傷つけてしまったことに負い目を感じているせいだ。
「梢ちゃん、ごめんなさいです。 私が白鳥さんを巻き込んだばっかりに…」
「うぅん、珠ちゃん、それはもういいから」
そうはいってもやはり梢に元気はなかった。
「責任の一端は私にありますから、私も全力で白鳥さんを元に戻す努力をするです」
「うん…」
「それにしても、なかなか目を覚まさないわねぇ」
桃乃は沈みがちな雰囲気を払うように話題を切り替える。
それを合図にして『変身』した白鳥を肴にし、問題を忘れるように話の花が咲くことになる。
436恋のマホウ:2005/06/07(火) 23:58:37 ID:iZYaqvzd
しばらくして、梢と珠実以外の住人たちはそれぞれの部屋に帰っていった。
部屋に残ったふたりは白鳥の目覚めを待ち続けている。
「白鳥さん……」
「………」
心配そうに白鳥を見つめる梢。
そんな梢を見守る珠実もまた葛藤していた。
白鳥が梢とつき合うことを容認したのは白鳥が決して届かないところにいたからだ。
つまり、性別の壁がそこにあったからこそと言える。
しかし、いまその壁が取り払われ白鳥と自分は同じラインに立っている。
ひょっとしたらこれはチャンスなんじゃないだろうか?
(…なんてことあるわけないですよね)
少しでもそう思ってしまった自分に嫌気がさした。
「梢ちゃんは…」
「え…?」
「梢ちゃんは本当に白鳥さんのことが大切なんですね…」
そんな自分を敢えて抑えるための、愚問。
「…うん。 白鳥さんは私の…恋人だから…」
「そう…ですね」
悔しさと寂しさを感じるのは未練なのだろうか。
そして、こんな自分だからこそ、白鳥に勝てなかったと痛感することになる。
「白鳥さん……」
437恋のマホウ:2005/06/07(火) 23:58:54 ID:iZYaqvzd
「う……ん……」
どれくらい時間が経過しただろうか。
とっくに日付も変わった頃、ようやく白鳥に反応があった。
「あっ…!」
梢はすぐさまそばにかけより白鳥の顔をのぞき込む。
「よかった…白鳥さん…」
「あれ……? 梢ちゃん、どうしたの…?」
「心配したんですよ、本当に…」
涙ぐむ梢の様子にあっけにとられたように白鳥は布団から身を起こした。
「…わたし、なんかあった?」
「お風呂場で倒れてしまって…なかなか目を覚まさないから心配したんですよ」
「お風呂場で…? 確かにお風呂に入ってたような気も…」
「は〜、白鳥さん、ようやくお目覚めですか〜」
「あ、珠実ちゃんもいてくれたの?」
ようやく緊張が解けたのか、ふたりの顔に笑顔が戻る。
「私はおまけ扱いですか〜?」
「あっ、ゴメンゴメン。 ひょっとしてふたりともずっとわたしのこと看ていてくれたの?」
「はい」「です〜」
「そっか…心配かけてゴメンね」
ちらりと時計を見て、どれくらい心配させてしまったのか察した白鳥はふたりに深々と頭を下げる。
「それより白鳥さん、あのこと全部みなさんにばれちゃいましたよ」
「あのこと…?」
「白鳥さんの体のことですよ〜。 忘れちゃったですか?」
「えっ…? わたし、なんかあったの…?」
「何って…部長の実験で女の子になっちゃったんじゃないですか」
ようやく白鳥の様子におかしいことに気付いた珠実は少し真面目な口調で改めて言い直したが。

「何言ってるの、珠実ちゃん…? わたし、前から女なんだけど……」

「……え……?」
438240:2005/06/08(水) 00:01:48 ID:iZYaqvzd
投下しようと思ったら力作連投ですっかりタイミングを逸してしまいましたが、
「恋のマホウ」第7回です。
何となく予想した人もいたかもしれませんが、こんな展開です。

ついでに角煮のほうに設定画みたいなのもおいときました。
439メリー:2005/06/08(水) 00:18:54 ID:fyawiqMy
240様
予想だにしなかった展開!
激しく引き込まれました!
続きが果てしなく気になりますよ〜
440名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 00:20:30 ID:2zwMMvNk
>>438
GJです〜。

スイマセン、角煮って何処ですか?
441名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 00:23:21 ID:Dm9MmnvS
横レス
ここじゃないですか〜?
まほらば小島あきら 第5回鳴滝荘お絵描き大会
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1117205655/
442名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 00:29:06 ID:2zwMMvNk
>>441
ありがとうございます!

可愛いなぁ
443ぐうたら:2005/06/08(水) 00:32:59 ID:dl804Lfh
とりあえずなっちん編を書き上げたけど今は新人サンの津波が来てるので、ヨボヨボな自分は祭りが収まり次第一人でぽんと投下します。
てな訳で投下は明日か、それ以降の方向で。サラバァー!
444名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 06:00:09 ID:tl5fv9Ej
>>438
キタ━━(゚∀゚)━━( ゚∀)━━( ゚)━━( )━━(゚ )━━(∀゚ )━━(゚∀゚)━━!!!
まさかこうくるとは・・・ちょっと予想外。完全女の子化白鳥君激萌え!(*´Д`)ハァハァGJ!
445名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 06:14:41 ID:uu9oaqiq
身も心も女の子に(;´Д`)ハァハァ
446恋のマホウ:2005/06/08(水) 12:18:39 ID:f1169K+Q
「ど、どうしたの、ふたりとも…。 わたしなんか変なこと言った?」
きょとんとした顔で白鳥はふたりの顔を見回した。
「白鳥さん、冗談は時と場所を選んだ方がいいですよ?」
「えっ? 」
「そういう冗談はつまらないです」
呆然とする梢を察して、真顔の珠実が白鳥に詰め寄った。
「…えと…なにいってるの?」
豆鉄砲を喰らったような顔で驚いている。
その顔に演じているような素振りは、ない。
「…あなたは白鳥隆士さん、ですよね?」
「隆士…って、それ男の格好させられたときの?」
「!?」
「わたしは、白鳥隆子、ですよ…?」
「なっ……」
そう言い切る白鳥には冗談を言っている様子は感じられない。
突然の出来事に、梢と珠実は言葉を失うしかない。
「珠実ちゃん…? なんでそんなこと聞くの?」
「…っ!」
「あっ…!」
ついに耐えきれなくなったのか梢は部屋を飛び出していってしまった。
「梢ちゃん!?」
「白鳥さん! 待ってください!」
「何よ、珠実ちゃん!」
慌てて立ち上がり追いかけようとした白鳥を珠実は制する。
「あなたにお尋ねしたいことがあります」
「……?」
447恋のマホウ:2005/06/08(水) 12:19:13 ID:f1169K+Q
「梢ちゃん?」
しばらくして白鳥の部屋から出てきた珠実は梢の姿を探していた。
「梢ちゃん…」
程なくして、縁側に座りうつむく梢の姿を見つけることが出来た。
「あ……珠実ちゃん」
「梢ちゃん…」
振り返る梢の瞳は潤み、頬には涙の跡が残っていた。
「………」
「……梢ちゃん」
そんな親友の悲痛な面持ちを見て歯噛みする。
珠実は梢の隣に座り、しばらく沈黙の時間が過ぎた。
重い時間が流れたが梢は意を決したように口を開いた。
「…話して、珠実ちゃん」
「…いいんですか、梢ちゃん?」
「うん…白鳥さんのことはちゃんと知っておきたいから…」
「…そう…ですか…」
448恋のマホウ:2005/06/08(水) 12:19:36 ID:f1169K+Q
珠実はしばし天を仰ぎ思案した後、ゆっくりと話し始めた。
「端的に言いますと…今の白鳥さんは記憶が入れ替わっているんです…男女の」
「記憶が…入れ替わる…?」
「そうです…今まで生きてきた記憶の全てが『女として生きてきた』記憶に置き換わっている…ようなんです」
「そんな……」
「原因は……わかりません」
「…………」
しかし、珠実には思い当たることがあった。
白鳥の記憶が入れ替わった理由…おそらくそれは変わってしまった自分を守るための記憶の補完…。
つまり、梢と同じ、だったのだ。
「ただ……」
「……?」
「梢ちゃんへの想いは変わっていないようです」
「そう…ですか」
梢は一瞬嬉しそうな顔を見せたがその顔はすぐに複雑な表情に変わった。
「それで、白鳥さん今は?」
「お疲れでしょうからもう休むようにいいました」
「そうですね…」
「私たちももう休みましょう、考えすぎてもよくありませんから」
「うん…そうだね…」
立ち上がる珠実に促され、梢も立ち上がる。
しかし、その視線はまだ2号室の方へ向けられていた。
(白鳥さん…)
449240:2005/06/08(水) 12:22:47 ID:f1169K+Q
出かける前に投下〜。
以上、第8回でした。

しかし、いきなりAA作って貰えるとは思いませんでしたわ。
450名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 15:35:37 ID:5ogAO1PR
              r‐´ヽー──- 、
           /          `ヽ
             /〃               ',
           i,イ / | | i   i  | i   ',
           | | {  |Lヽ| ト、弋 l |   |
           ! ヽ!ヽ! iリ ヽl トヒrヽト| l | |    >>449
.               l ー' 、   ー-' レ ) |!|    乙&GJです
             !ヽ、 フ    し'|  | !
                  ヽトヽ _ -‐ |_| |  |
            〆`ヽ. /ノ _,/ ヽ ,ノ
           /´`ヽ、l´/ヘ ノ\ / `ヽ、
         r'`ヽ、 ソ   y'  `´   `ヽ
          i     /´  ,      r ,/  i
            |    {   i        ',    |
         l      ',   l         ,'    |
         l      l i   |       ,イ    |
コレだよな?
451テイル:2005/06/08(水) 15:39:49 ID:r0GvzyTG
>>449
乙・GJ!
TSモノは個人的に食わず嫌いしていたのですが、
こういう展開になったか…
なんか普通にオドロキ。
続きが予想できるようなできないような。

とにもかくにも、我々の予想をいい意味で裏切る作品にしてください。
続き待ってます!
452名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 16:41:22 ID:cwxqx4wd
>>449
VGJ&今日も課題が(ry
453240:2005/06/08(水) 19:22:22 ID:f1169K+Q
なんかたくさん反応もらっちゃって嬉しいやら恥ずかしいやら…。
書けてはいるんですが、続きはもうちょっとお待ちください。

>>450
AA作ってもらったのは有り難いけどめっちゃ恥ずかしいッスorz
454恋のマホウ:2005/06/08(水) 21:23:03 ID:f1169K+Q
翌朝───。
白鳥が起きてこない時間を見計らって鳴滝荘の全員が食堂に集まっていた。
珠実が中心となって白鳥に起こった変化を皆に説明している。
記憶の補完、と言うことを聞き全員がちらりと梢の方を見るが本人は考えにふけったままだった。

「なんだか…面倒な事態になってるナ」
「事情はだいたいわかったけど…」
桃乃は珠実を捕まえて耳打ちした。
(つまり梢ちゃんと同じって事?)
(多重人格ということはないと思うですが、近い症状だと思います〜)
(あちゃ〜…)
厄介なことになったといわんばかりにため息をつく桃乃。
「まー、あたしらに出来ることは特にない、か…」
「解決策が出るまで白鳥さんを女の子として扱う、くらいですかねぇ〜」
「女として扱うったってナァ…」
やれやれと言った感じで皆ため息をついた。
455恋のマホウ:2005/06/08(水) 21:23:17 ID:f1169K+Q
それからしばらくして、ようやく白鳥は食堂に現れた。
「みなさん、おはようございます」
「あ、うん、おはよう、白鳥くん」
「…? どうしたんですか? 変な顔して」
「あ、ううん、なんでも」
不思議そうな顔をしている白鳥を皆はじっと見つめた。
桃乃から借りた女物の服も普通に着こなしている。
昨日よりも髪が伸び───腰の下くらいまでの長さがあるだろうか、それを軽く三つ編みで結っていた。
そこには鈴のついた髪飾り。
皆が知る“白鳥隆士”とはあまりにもかけ離れた女の子がそこにいた。
「おに…お姉ちゃん、お、おはよう」
「おはよう、朝美ちゃん」
「う、うん…」
「どうしたの、朝美ちゃん? どっか調子悪いの?」
「う、うぅん、なんでもないよ!」
「…?」
自然…あまりにも自然体だった。
まるで昨日のことはなかったかのような白鳥の振るまい。
それはずっとそうであったかのような自然な振る舞いだった。
(本当に変わっちゃってるのね、白鳥くん…)
(自分が男だったこと、まったく覚えてないんです)
(はぁ、厄介ねえ…)
桃乃たちも白鳥の変貌を目の当たりにしてさすがに複雑な表情になった。
これにはさすがの住人たちも声もない。
ただひとりを除いて。
456恋のマホウ:2005/06/08(水) 21:23:52 ID:f1169K+Q
「白鳥さん、すぐ朝ご飯食べますか?」
「あ、うん、梢ちゃん。 なんかお腹空いちゃって」
「じゃ、すぐ用意しますね♪」
一番心配しているであろう梢が、何事もなかったかのように朝食を用意している。
鼻歌を口ずさみすっかりいつもの梢に戻っていた。
「白鳥さん、夕べはご飯食べていませんでしたからいっぱい食べてくださいね」
「あ、いや、お腹空いてるっていっても朝からはそんなに食べられないよ」
「そうですか?」
「でも、ちょっと多めにしてくれる?」
「はい♪」
自然な、自然すぎるふたりの会話。
他の住人たちは唖然とするしかなかった。
(梢ちゃん、どうしちゃったの? まさかもう慣れちゃったとか?)
(いえ、白鳥さんを気遣ってるんでしょう…)
(え…?)
(…耐えてるんですよ)
(お姉ちゃん…)
梢が取った選択…それは気丈にも『変わってしまった“彼女”を受け入れる』こと。
しかしそれは…白鳥以外の全員に痛々しさを感じさせるものでしかなかった。
「あっ、そういえば桃乃さん。 また、わたしの服隠したんですか?」
「へっ…?」
「着替えようと思ったらタンスのなかは男物ばっかりだし…。 そういういたずらは止めてくださいよね」
「えっ? あっ、うん、ゴメン…」
平然と男であったことを否定するような発言をする白鳥。
皆、そんな“彼女”を前に戸惑いを隠せずにいた。
457240:2005/06/08(水) 21:27:22 ID:f1169K+Q
本日分の投下です。

でも、初期案では隆子いじりSSだったはずだったんだけどなぁ…。
いつの間にかシリアス路線になってしまいました。
458テイル:2005/06/08(水) 21:34:25 ID:r0GvzyTG
>>457
いやいや、全然グッジョブだから。
なんか「それから」「−きおく−」「終わりの始まり」に並ぶか、
それらを越える大作になりそう…

最後に、日本代表ドイツ行きGJ!
459名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 21:55:57 ID:3tNTGLDX
>>457
GJ!良い意味で期待を裏切ってくれてるなw
しかし、投下のペースが速いのが何よりも嬉しいな。

>>458
概ね同感。



けど、「きおく」がそんな大作だとは思(PAM

…すまん、忘れて。
460240:2005/06/08(水) 22:04:51 ID:f1169K+Q
一応、2話先まで書いてから投下するようにしてるんです。
ペースが速いのは…家帰ってきてからずっと書いてるからでしょうか?
最近はゲームもやってないんでサクサク打ち込めます。
おかげで角煮の方に全然出せてないけどorz

でも終わってもいないのに大作とか言われちゃうとビクビク…かも(´・ω・)
過去の良作に負けないようにしたいッス。
461名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 22:23:29 ID:3tNTGLDX
>>460
集中できるのは羨ましいことだな…
それと、これまでの名作とはまた一線を画しているわけだし、そんなに気負わずにまったりと書いていっていいんじゃないか?



…サッカー、ちと後味の悪い終わり方だったな…
462名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 00:57:40 ID:pm2t+l24
きおく の同人誌、どうする気だろう?長すぎるたろ
463名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 01:07:38 ID:2xLUibn7
>>460
思うがままに書いちゃってください。
いつでも待ってますよ。
464名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 01:32:00 ID:S4LYhC0M
耐えてる梢ちゃん(´・ω・) カワイソス
465恋のマホウ:2005/06/09(木) 01:36:10 ID:QyaEfpRr
「どーしたもんかしらねえ…」
白鳥の変貌を目の当たりにして、さすがの住人たちも動揺していた。
「どうもこうもあるかヨ。 梢のときもそうだったが白鳥も変わりすぎだろ」
「胸、大きいし…」
「いや、そこはツッコミどころじゃないだろ…」
学生たちが学校に行っている頃、鳴滝暇人3人組は緊急会議を開いていた。
「ともかく、今のまんまじゃ落ち着いてらんないゼ」
「今日は土曜日だから梢ちゃんたちも早く帰ってくるけど…早めに対処法を考えたいところね」
「そうね…」
「まー、梢と違って性格まで変わってるわけじゃないから楽かもしれんがナァ」
3人はちらりと2号室の方を見遣る。
渦中の人物は自室で課題に取り組んでいるようだった。
「白鳥くんの学校が休講でよかったわ。 そうじゃなきゃ平然といってただろうし」
「問題を余計に大きくするのは避けたいところだしナ」
「最初は白鳥くんが男に戻ればいいだけだと思ってたんだけどねえ…」
「魔法って不思議…ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜……」
「はぁ、やれやれだわ…」
会議と言っても積極的に意見を出そうとしない灰原とそもそも論外の沙夜子が面子では、
名前ばかりでほとんど愚痴大会になっていた。
466恋のマホウ:2005/06/09(木) 01:36:35 ID:QyaEfpRr
そんなこんなで昼時を過ぎ、学生たちの帰宅時間。
縁側で駄弁っている桃乃たちのところへ下校した朝美がやってきた。
「ただいま〜…」
「朝美、おかえり」
「おっ、朝美ちゃん、お帰り。 …どうかしたの?」
「えっとね…」
桃乃は朝美が少し困惑したような表情に気付いたがその理由はすぐ判明した。
「おぅ、帰ったぞ〜」
「この声…」
「あははは…」
「おっ、ここにいたのか」
梢と声と容姿は同じだが、その中身は別物。
朱い瞳とポニーテールが印象的な少女だった。
「早紀ちゃん、お帰り〜」
「おぅ、帰ったぜ」
「あれ? 珠ちゃんは一緒じゃなかったの?」
制服姿のところからすると学校にいるときに変わったらしい。
しかし、人格が入れ替わったときはいつもそばにいるはずの珠実の姿は見あたらなかった。
「ああ、なんでも部活に出るとかいってたな。 先に帰ってろなんて言われたの初めてだぜ」
「あ〜、そっか…。 そうだったわね」
「…? それにしても腹減ったなぁ。 朝美、昼にしようぜ」
「あ、うんっ」
467恋のマホウ:2005/06/09(木) 01:36:58 ID:QyaEfpRr
「は〜、喰ったくった」
「ごちそうさま〜」
「ところで桃、隆子はどこだ?」
少し遅めの昼食を終えた早紀は突然桃乃に尋ねた。
「へっ? 早紀ちゃんなんで知ってるの…?」
「はぁ? なにいってんだ、アタシが知ってちゃおかしいか?」
「いや、おかしくは…ない…かも?」
「それより部屋にいるのか?」
「あ、うん、出かけてないから、多分」
気圧されるように素直に答える桃乃。
その場にいた皆が早紀が白鳥に起こった変化を知っていることに驚く。
と、いっても最近は記憶の一部が繋がりはじめているし、
これだけ衝撃の大きいことは覚えていても当然と言えるかもしれない。
「そうか…。よし」
「よしっ、ってどうしたの!?」
「おぅ、ちょっと行ってくるぜ」
ただならぬ雰囲気に何かを感じた桃乃だったが、早紀はグッと拳を握り部屋から出て行ってしまった。

「あっ、ちょっ、早紀ちゃ…!」
「ど、どうしちゃったんだろう…」
「さぁ…」
468240:2005/06/09(木) 01:47:36 ID:QyaEfpRr
さて、今日も寝る前の投下です。
ネタはほっといても勝手に出てくるスイッチが入ったので大丈夫。
まったりもっさりと書いていきますです。
469名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 01:48:59 ID:XwlbwbY7
見るたびにいつも思うが
話の切り方がうますぎる
つづきが気になって気になってしょうがない
470名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 06:13:35 ID:IDimGshl
>>469に激しく同意!すっげぇ続き気になる。しかも面白いし最高!GJ!
471名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 06:38:34 ID:5H+PgDqT
まあ、欲を言えば一日の投下は一回にまとめてくれってことなんだろうけど…
もう気にならんわwGJ!
472名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 06:42:42 ID:5H+PgDqT
連レス。
>>462
一冊丸ごと…は当然にしても、確かに長いよな。
でも本当に漫画化(?)したら絶対欲しいと思っている俺ガイル。
473名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 11:30:36 ID:S4LYhC0M
早紀ちゃんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
期待!!
474名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 13:16:54 ID:RaaByI5H
由紀夫じゃなくて由起夫ですよね…<保管庫「冬の終わり」
いや、いきなりすみません。ちょいと気になったもので。
475「終わりの始まり」筆者@講義中from携帯:2005/06/09(木) 15:26:49 ID:5+JNfnHo
…「終わりの始まり」、「恋のマホウ」には絶対敵わないとか思って、自信喪失気味な俺ガイル・オブ・ジョイトイ。(←言ってて訳が分からない俺ガイ(ry)
いや、「恋のマホウ」、もうね、凄い。まさかああ来るとはね。あそこで早紀を出すって言う意外性、何回読み返してもおもしろい。講義中にも拘わらずまた読み返して「ヒャッハー」とか言いそうになりますたよ。
って言うか、ここまで入れ込められる集中力がヤウ"ァイ。
…挫けそうにゃ。
挫けないためにジゴロウストラップ撫でて、耐えてますにゃ…。
明日は講義は少ないけどバイトのある金曜日、良いにゃ。自暴自棄にゃ〜。妙なテンションで書いてやるにゃ〜。
じゃ、無駄話おしまいにゃ…。

(何となくトロっぽくなりました。ムカついたら許してください)
476名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 16:34:55 ID:5H+PgDqT
もちつけ。
「終わり〜」もめちゃ気に入ってるぞ俺は。
つーことで続きキボン!


…あぁ、まだ講義中?
477240:2005/06/09(木) 17:38:26 ID:QyaEfpRr
ぅゎ、なんか反響たくさん戴いちゃったようで…。
御期待に添えるように頑張るッス。
投下が飛び飛びなのは1章ごとに投下してるのもあるんです。
連続して投下すると量が増えちゃうかなって感じだったんですがね。

>>475
いや、いやいや。
勝つとか優越じゃなくて、やっぱり書きたいものを書きましょうよ。
私だって他の作家さんの作品に期待してるんですからそう言わないで。
テンションが上がったのならネタを書いちゃいましょうよ。
478恋のマホウ:2005/06/09(木) 17:40:24 ID:QyaEfpRr
「………」
ここは2号室の前。
彼女───赤坂早紀は硬直していた。
(落ち着け、落ち着けよー。 アタシらは恋人だ、これが当たり前なんだ!)
しかし、ドアを叩こうとする手は一向に動かない。
(えぇい、ここまで来て何迷ってんだ、アタシは!)
すぅっと大きく深呼吸して意を決した後、早紀は扉を叩いた。
「ぉ、おーい、隆子ー。 いるかー?」
しかし、返事はない。
もう一度戸を叩いてみてもやはり返事はなかった。
「…? 寝てんのか…?」
ドアノブを握ってみると鍵はかかっていない。
「おーい、入るぞー…」
一応断りをいれてから入ると部屋の主は机に向かって黙々と作業をしていた。
早紀が部屋に入ってきたことも気付かずに夢中でキャンバスにペンを走らせている。
(なんだよ、いるじゃねぇか…驚かせやがって)
早紀はほっとしたと同時に心配させたお返しにと気付かれないように隆子に近づいていった。
すぐ後ろに立ってキャンバスをのぞき込むとそこにはデフォルメされたたくさんの動物たちが描かれている。
(ふぅん、相変わらず女々しいもん描いてんなぁ───)
気付かずにキャンバスと格闘する隆子。
(でも…いい顔してんじゃねぇか)
早紀はすっかり毒気を抜かれて、隆子が気付くまで待つことにした。
479恋のマホウ:2005/06/09(木) 17:40:45 ID:QyaEfpRr
「……っ!?」
「おっ、ようやく気付いたか」
隆子が気付いたのはそれから10分後のことだった。
「えっ、あっ、いつからそこに!?」
「んー、ちょっと前。 お前があんまり熱中してるんで話しかけるのも悪くてな」
「ビックリしたぁ…っていうか、早紀ちゃん!?」
「おぅ、早紀ちゃんだぜ」
隆子はいきなり現れた早紀に驚いたのかし、どろもどろになりながらも居住まいを正した。
「もぅ、ドアくらいノックしてよ!」
「したけどおめーが気付かなかったんだっての。 まっ、いいもん見られたからいいけどさ」
「え? そうだったんだ…って、いいものって?」
「あ、いや、それよりお前、飯も喰わずにずっと絵描いてたのか?」
「えっ? あ、もうこんな時間!?」
言われて初めて気付いたのか、隆子は時計を見て驚いている。
「気付いてなかったのかよ…。 大した集中力だなぁ」
「いやぁ、筆が進んじゃって、つい、アハハ…」
「まあ、いいけどな。 …それよりこれから時間あるか?」
「え…?」
「こんな昼間っから部屋に籠もりっぱなしじゃ体に悪いだろ。 たまにゃぱーっと遊びに行こうぜ!」
「ええっ!?」
「なんだよ、ひょっとしてそんなに忙しかったか…?」
突然の提案に驚く隆子。
しかし、それもつかの間、早紀の意図を感じ取ってすぐに了承した。
「ううん、いいよ。 丁度行きたいところもあったし」
「おし、決まりだな!」
480恋のマホウ:2005/06/09(木) 17:41:06 ID:QyaEfpRr
「おやおや…そういうことなのね」
「デートだぁ…オトナだなぁっ」
こっそりつけてきて物陰で見ていた桃乃たちは予想だにしない展開に燃えていた。
「なんだか気張ってると思ったら思いがけない行動に出るナ」
「しかしまー、早紀ちゃんもこんな時に大胆ねえ…でも…」
今朝の梢の様子を思い出し、納得するところもあった。
「早紀ちゃんも早紀ちゃんなりに頑張ってるのね。 ふふ、これは目が離せないわっ」
「尾行ね…」
「お母さん、私たちは内職だよっ」
「〜っ…」
481恋のマホウ:2005/06/09(木) 17:41:52 ID:QyaEfpRr
「ところで早紀ちゃん、行き先決めてあるの?」
「ん〜、いや、特には決めてない」
出かける準備を手早く済ませ、ふたりは鳴滝荘を後にした。
早紀も隆子も久しぶりのふたりきりの外出にすっかり浮かれている。
こっそり尾行者がついてきていることなど知るよしもない。
「いい加減だなぁ…」
「ま、いーだろ。 お前、行きたいところあったんだろ?」
「あっ、うん。 着るものとか買いたかったから」
「それじゃ、前に行ったデパートがいいな」
「デパート…そういえば、前のデートの時もそうだったね」
「バッ、バカヤローッ!! デデデデッ、デートとか言うなっ!!」
「あっ、ゴメン…」
「い、いや、謝るなよ…実際そうなんだし…」
482恋のマホウ:2005/06/09(木) 17:42:16 ID:QyaEfpRr
「あ、あの…」
「ん……?」
ふざけあうふたりのそばにいつの間にか小学生くらいの男の子が立っていた。
華奢な印象を受けるその男の子はおどおどしながらふたりに話しかけてきていた。
「ん? なんだ、ボウズ?」
「あ、あの……」
「あれ、キミは……」
「お姉ちゃん…あの時はありがとう!」
「ん〜…? おめーはあんときの弱虫ボウズじゃねーか」
相変わらず歯に衣着せぬ物言いの早紀だったが、この少年のことは覚えていたようだ。
「オゥ、久しぶりだな! あれから頑張ったか?」
「うん! 親戚のおじーちゃんから合気道を習い始めたんだよ!」
「へー、合気か。 護身にゃぴったりだな」
「それでね、健一くんたちにいってやったんだ。『もうおまえらなんかに負けないぞって』って!」
よっぽど嬉しかったのか、少年は目をキラキラさせながら武勇伝を早紀に報告していた。
早紀もそれをうんうんと聞き、まるで我が身のように喜んでいた。
「…でもな、ボウズ。 お前に一つだけ言っておくぞ」
「うん、なに、お姉ちゃん?」
「自分の力を振りかざすんじゃないぞ。 無闇に力を誇示すればあいつ等と同じになるからな」
「……」
「もしそういうことに気付いたら、自分がイジメられたときの気持ちを思い出せ。 あんな気持ちは嫌だろ?」
「うん…」
「それを知ってるお前ならわかるな? 後はお前の気持ち次第って事だな」
「うん…わかったよ、お姉ちゃん!」
「よし!」
そういうと笑顔で笑い合う早紀たち。
少年は早紀と約束すると元気に手を振りながら帰っていった。
483恋のマホウ:2005/06/09(木) 17:42:44 ID:QyaEfpRr
「早紀ちゃんって、やっぱり優しいんだね」
「べっ、別にそんなんじゃねーよ!」
少年とのやりとりを見守っていた隆子は素直な感想を言った。
途端に早紀は真っ赤になってしまう。
「でも、早紀ちゃんのそういうところは好きだなぁ」
「なっなななななななななっ!!!???!?」
「あっ、いや、これは、その、えと」
「バッ、バカヤローッ!! エロいことゆーなッ!!!」
「ええっ!?」

「あらあら、早紀ちゃんったら相変わらずねえ」
相変わらずの小学生カップルっぷりに尾行する桃乃も苦笑していた。


真っ赤になった早紀のゲンコツが隆子に飛んだのは言うまでもない。
484恋のマホウ:2005/06/09(木) 17:43:32 ID:QyaEfpRr
デパートに到着したふたりはとりあえず軽い食事を済ませてからショッピングを楽しむことにした。
「んーと、洋服買うんだったか?」
「うん、服だけじゃなくて下着もだけどね」
「ああ、そか」
衣料品売り場にやってきた隆子は適当に手に取ったものを買い物かごに放り込んでいる。
黙ってその様子を見ていた早紀だったがとうとう見かねて口を出した。
「…なぁ。 前々から思ってたんだけどさ、お前もうちょっと服に気を遣った方がいいぞ?」
「えっ…?」
「えっ、じゃねーよ。 だいたいなー、お前は服に無頓着すぎるんだ」
「そ、そうかなぁ…?」
突然、千百合みたいなことを言い出した早紀を見て思わず目を見つめてしまった。
しかし、その瞳は朱く早紀のままなのは間違いない。
「今だって、桃の服借りてるからマシなんだろうがそのかごに入れた服はなんだっての」
「うぅ…」
「こんな地味地味した服じゃ一緒にいるアタシが恥ずかしいだろーが!」
「そ、そんなぁ…」
「おめーだって、作家の端くれだろー。もうちょっと外見にも気を遣えって」
「う、うん…」
「だーっ!! ウジウジすんなっての!!」
隆子本人も気にしていたのだろうか、すっかりどんよりした表情になっている。
「ホレ、アタシも一緒に選んでやるからちゃんと見て回ろうぜ」
「え…?」
「ホラ、こっちだこっち、さっさと行くぞ」
「あ、う、うん」
485恋のマホウ:2005/06/09(木) 17:43:54 ID:QyaEfpRr
「こっちはどうだ?」
「え、ちょっと派手じゃない?」
「そか? じゃ、こっちだ」
「こ、これスカート短いよ!?」
「注文の多いヤツだなー…。 これなんかどうだ?」
とっかえひっかえ服を合わせていく早紀。
「なんだか子供っぽいような…」
「そーだなー。 お前背もあるしスタイルもいいから、意外と難しいな」
「あっ、これなんかどうだろう?」
「い、いや、それはちょっとエロくないか?」
「そ、そう?」
なんだかんだ言いつつ隆子もすっかり楽しんでいた。
486恋のマホウ:2005/06/09(木) 17:44:12 ID:QyaEfpRr
「うーん、じゃ、こいつでキマリだな」
試着室に持ち込んだいくつかの服合わせがようやく終わった。
「ふぅ、ありがと、早紀ちゃん」
「気にすんなって」
「うーん…せっかくだから、この服着ていっちゃおうかな」
「なに、着て帰るのか?」
「うん、そうするよ。 すいませーん、会計お願いします〜」
「まっ、いいけどな」
早紀も自分の選んだ服を気に入ってもらってまんざらでもないらしい。
程なくして会計員がやってきた。
いつぞやの怪しい口調の店員ではなかったがテキパキと仕事をこなしていく。
「これとこれ、あとこっちも。 それとこの服は着ていきます。 あと…」
「結構な量になっちまったなぁ」
「うん。 じゃ、早紀ちゃん、はい、これ」
「へっ?」
そういって渡してきたのは上下揃いになった洋服だった。
「今日、誘ってくれたお礼」
「な、ななななっ!? いいって、いいっての!」
「受け取ってよ、わたしが早紀ちゃんにって選んだんだから」
「えっ? あ…、そ…そうか…? あ、ありがとな」
真っ赤になりながらも隆子から受け取った服を鏡に向かって合わせている早紀は何となく嬉しそうだった。
「…おし、アタシもこれ着て行くよ」
「ええっ!?」
「へへっ、これで、おあいこだな」
「あ、あはは…」

「ふふっ、早紀ちゃんったらすっかり上機嫌ねえ」
物陰から覗いていた桃乃もふたりのバカップルぶりには苦笑するしかなかった。
「さて、一応珠キチにも連絡いれておきますか、っと」
487240:2005/06/09(木) 17:46:15 ID:QyaEfpRr
ということで、連投11〜13話まででした。
どこで区切りになったかは結構わかりやすいと思います。
さて、現在16話…。
今週中には終わるかもしれません。
488名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 17:49:55 ID:5H+PgDqT
いや危ない、投下中にレス入れる所だった。
早紀スキーはシャキーンだな、今回は。
続き、楽しみにしてる。
489名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 18:12:10 ID:V9YrIJkb
GGGGGJ!!
シャキーンですよもう
490名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 18:21:04 ID:D2I61qdL
GJ!

シャキーンがキャシャーンに見えたのは俺だけだな
491ぐうたら:2005/06/09(木) 18:43:49 ID:Dy2acj1u
むあぅ…GJ!…だけど…
今書いてる奴が終わったら終わったら書こうとしてたのが早紀ちゃんモノなんだよおぉぉぉ…
余りにも自然な早紀ちゃんに、以前自分が長ったらしく書いたアレが脳内で音を立てて崩れ去っちゃった…
492名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 19:24:52 ID:5H+PgDqT
>>491
(‖- -)ノアンマキニスンナ


さて、そろそろエロも(略
493メリー:2005/06/09(木) 19:32:53 ID:lPJpknJi
240様
GJ!
なんかもう隆士じゃなくて隆子が普段通りな感じがしてきました。
494名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 20:08:56 ID:WAu/4DxU
>>487
VGJ!
今日は課題が無い(´・ω・`)ショボボーン
495名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 20:54:14 ID:G5mk7s+i
角煮板スゲーことになってるな・・・
隆子がもはや独立したキャラとして扱われているぞ

>>487
GJ&乙!
偉業を成し遂げたな!
496240:2005/06/09(木) 21:00:49 ID:QyaEfpRr
いや、元々角煮の方で絵描いてる人なのであっちの方はちゃんと見てるッス。
なんか予想外の大反響で嬉しいやら恥ずかしいやら…。

自分もエンジン全開になってきたのでラストまで頑張るッスよ
20話完結予定、現在第18話執筆中です。
497名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 21:28:27 ID:Qln6WMAg
前スレの、中坊の作文以来エロスが全く足りない件について
498名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 21:30:32 ID:WAu/4DxU
大人ならエロ無しで我慢。
499名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 21:32:40 ID:NNKp5+GL
>>240
絵が描ける、文も書けるアナタが裏山C。
500240:2005/06/09(木) 21:39:40 ID:QyaEfpRr
エロッスか?
実はこの話、元々エロかったりします。

以下、回想
隆「た、珠実ちゃん、もうやめてよぉ…」
珠「ふふふ、何言ってるんですか〜? もうここはこんなになってるじゃないですか〜」
隆「そ、それは珠実ちゃんが…もうやめてよぉ」
珠「ホントにやめて欲しいんですか〜? そのわりには抵抗してませんねえ」
隆「だ、ダメだよっ、珠実ちゃん!」
珠「白鳥さん〜、ホントはもっとして欲しいんじゃないですか〜?」
隆「やっ、そん、なこと…なひっ」
珠「ふふ、白鳥さん、可愛い…」
千「…correct!!」
回想終わり

いや、変わりすぎだろ。これ。
501名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 21:40:37 ID:3wm9nQXJ
そんなこんなでエロ無しのまま500突破。
まだ2週間も経ってないのに半分行ったな…
502テイル:2005/06/09(木) 22:10:10 ID:UWxw4Xil
>>487
ヤベェ、設定画に萌えたorz
TSもここまで伸びると神認定だな…

さてさて、自分の作品もこれが終わるまで投下を見合わせるべきか…
いつ投下されるか分からないし…

あ、需要があるならエロをさらりと出してもいいんですけど。
今、脳内に構想が一つ、但し激しく黒に近い。
流れ的に保管庫の「D.D.R」に近いかも。
503ぐうたら:2005/06/09(木) 22:14:34 ID:Dy2acj1u
ところで…TSってなあに?
504名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 22:18:02 ID:vmuDpVxv
TransSexual(性転換)
505240:2005/06/09(木) 22:44:32 ID:QyaEfpRr
怒濤の勢いで文章が出来ていくので続いて14〜17話を公開します。
18〜20話は明日公開。

ではどうぞ。
506恋のマホウ:2005/06/09(木) 22:44:50 ID:QyaEfpRr
「さーって、買い物も終わりだな」
「うん、つきあってくれてありがとね、早紀ちゃん」
「気にすんなって、元々アタシが誘ったんだし」
買い物を終えてデパートを後にしたふたりはおろしたての服に袖を通し上機嫌だった。
「なあ、ゲーセン寄ってくか?」
「えっ…でも」
手荷物の多さと沈みかけた陽に目をやりながら躊躇する隆子だったがすぐ答えは決まった。
「…うん、いいよ。 久しぶりだしね」
「おっし、めいっぱい遊ぶぞー!」
「お、お手柔らかにね」

「おし、そこ気をつけろよ!」
「う、うん!」
「いけ、アクセル全開でインド人を右に!」
…。
「なにこの弾!? 避けられないよ!」
「あははは、大往生して死ぬがいい!」
「わわわっ?! え〜い、もう自棄だー!」
「っ!? 8の字避けだとぉ!?」
……。
「リズムに合わせてボタンを…って、早紀ちゃん、これバーが消えちゃうんだけど…」
「ああ、そういうもんだからな」
「ええっ!?」
「考えるな、感じるんだー!」
「そんな無茶苦茶なー!?」
………。
楽しい時間が過ぎていく…。
507恋のマホウ:2005/06/09(木) 22:45:27 ID:QyaEfpRr
「おーし、じゃあ次は格ゲーだな」
「でも早紀ちゃん、もうやってる人がいるんだけど…」
隆子が見る筐体の反対側には人が座っているのが見えた。
「いーんだよ、格ゲーはそういうもんなんだから」
「そ、そうなの?」
「元々、知らない者同士でやるもんなんだぜ?」
「へぇ…」
早紀ちゃんは指で弾いてコインを投入すると意気揚々と席に着いた。
ちらりと反対側を見るといかにもガラの悪そうな学生連中が陣取っていた。
(うわ、早紀ちゃん、なんか相手の人たちまずそうだよ!?)
(あぁん? 格ゲーにんなこと関係ねーだろ。 これは勝負なんだから)
(えぇ!? でもっ)
(まー、見てろって)
そうしているうちにゲームは始まる。
が、早紀も相手も様子を見てなかなか動かず、心理戦が続いた。
「ケッ、そんなごついキャラ使って待ち戦法かよ。 みみっちいことしやがるなぁ」
しびれを切らしたのか、早紀が先手を打ち、それを待っていたかのように相手も動いた。
しかし、それは早紀のフェイク。
反撃しようと動いた相手に早紀のカウンターが見事に決まり、勝敗は決した。
「へっ、どんなもんだ。 アタシに勝とうなんざ百万光年早いぜ!」
(ひぃ〜、こっち睨んでるよぉ!?)
508恋のマホウ:2005/06/09(木) 22:45:48 ID:QyaEfpRr
「ったく、弱ぇぇくせにしつこいヤツらだなぁ」
それから早紀の快進撃は続いた。
が、すでに早紀はあまりに手応えのない相手に飽き飽きしていた。
それに反比例するように反対側からは悪態をつく舌打ちや機械を殴るような音がして険悪な気配が漂ってくる。
(さ、早紀ちゃん、そろそろ帰ろうよぉ)
「あぁん? なんだよ、あいつら追っ払わないと一緒に遊べないだろ?」
(も、もういいってばぁ)
「ん? なんだ、おめービビってんのか?」
(ほ、ほら、もう時間も遅いしさ…)
「んー…。 そか?」
ちらりと時計を見ると確かに午後7時を回っている。
早紀はふむ、と納得すると席を立った。
「んじゃまー、雑魚と遊んでてもつまんねーし帰るか」
「う、うん…」
早紀が席を離れたことにより、早紀のキャラは一方的に倒されていた。
帰ろうとするふたりの後ろでひときわ大きく筐体を殴る音が響いた。
509恋のマホウ:2005/06/09(木) 22:46:14 ID:QyaEfpRr
「オイ、ねーちゃん…勝ち逃げかよ…!?」
「あん? アタシがいつ帰ろうがアタシの勝手だろ?」
「んだとぉ!?」
「アタシらはもう帰るから好きなだけやってりゃいいじゃねーか」
「ふざけんなぁ!!」
たむろしていた不良連中は早紀の傍若無人な物言いにすっかり気色立っていた。
「さ、早紀ちゃ〜ん……」
「ん、ああ、行こうぜ、隆子」
「待てよぉ!!」
すっかりブチ切れた不良たちは早紀立ちの前に立ちふさがった。
「このまんまじゃ俺たちの面子は丸潰れだ! もう一度勝負しやがれッ!」
「ったく、あれだけやったんだ。 もう結果は見えてんだろ?」
「まだだ! 俺が本気になりゃおめーなんざ…!」
「本気出してないのにそんなに頭に血を上らせてんのか? やめとけっての」
「〜〜〜〜〜〜ッッ!!!」
「ちょ、ちょっと、早紀ちゃ〜ん………」

「な、なんかやばい雰囲気ね。 とりあえず珠ちゃん呼ばないと…」
物陰で見守っていた桃乃は急いで珠実に連絡を取っていた。
510恋のマホウ:2005/06/09(木) 22:46:43 ID:QyaEfpRr
桃乃が応援を呼んでいる頃、早紀たちは一触即発のムードになっていた。
「お、お客様、店内でのもめ事は…ピッ!」
慌てて止めに入った店員さえも不良たちに一撃K.Oされていた。
野次馬が群がりすっかり騒ぎは大きくなっている。
「ちっ…」
「ねーちゃんよぉ、逃げられると思ってんのか?」
「ったく、めんどくせーなー…」
「てめぇ! ちゃんと話を聞きやガッ…!?」
掴みかかってきた男の動きが止まる。
よく見ると踏み出してきた男の足の甲に早紀のつま先が突き刺さっていた。
早紀が足を離すと男は大げさに悲鳴を上げ屈み込んだ。
「オィ、やめよーぜ。 つまんねーことでケーサツの世話になりたくないだろ?」
「やろぉ!!」
「ちっ、隆子、下がってな」
「う、うん」
「ダッシャァ!!」
早紀は殴りかかってくる相手を華麗にかわし、カウンター気味にアゴに反撃をいれる。
よろける男をそのままもうひとりの不良に投げつけた。
「ぐぼぁ!」「うごッ」
511恋のマホウ:2005/06/09(木) 22:47:07 ID:QyaEfpRr
「いまだ、隆子! 逃げるぞ!!」
「あ、うん!」
不良たちが怯んだ隙にふたりは店を飛び出した。
しかし、相手も余程執念深いのかしぶとく追いかけてきた。
「待ちやがれぇ!」
「ケッ、しつこい野郎共だな…!」
「さっ早紀ちゃん〜」
「走れ、隆子、全力ダッシュだ!」
「う、うん!」
が、町中での逃避行は前を走る方が不利なもの。
しかも、動きづらい女物の服を着てたくさんの荷物を持っているとなればなおさらだ。
ついに早紀たちは路地裏の袋小路に追いつめられてしまった。
「ちっ、行き止まりか…」
「ハァハァ…さ、早紀ちゃん、どうしよう…」
「ふぅぅぅぅ、鬼ごっこもおしまいだなぁ、ねーちゃんたち…」

「やるしかないか…ッ」
512恋のマホウ:2005/06/09(木) 22:47:31 ID:QyaEfpRr
「ハァ…ハァ…しぶといヤツらだ…な…」
「さ、早紀ちゃん…」
「大丈夫だ…4人までならいけるぜ」
屈強な不良を相手に早紀も善戦しているが体力的な差がじわりじわりと彼女を追いつめていた。
「キャオラァッ!!」
「くっ…たりゃぁ!」
「ぐぼっ!」
カウンターでの鳩尾への正拳、崩れる相手へのハイキックでまたひとり沈める。
しかし、早紀の疲労の色は目に見えて濃くなっていた。
「よう、ねーちゃん、そんなに足を上げたらパンツ丸見えだぜー」
「てめぇ、何言って…!」
ジャッ!
「く、しまった…!」
一瞬の隙を突かれ、早紀の右腕が鎖で絡め取られた。
続けざまにもう一本の鎖が飛んできて早紀の左足を絡め取ってしまった。
「ちっ、ドジったぜ…!」
「ククク、待ってたぜぇ、この時を! この“鉄鎖のジャック”様の頭脳プレーの勝利ってことさ」
「や、やったぜ、石丸くん!」
「鉄鎖のジャックって呼べっていってんだろ!」
ジャックことリーダー格の男が鎖を操り、早紀の動きを封じる。
「これで年貢の納め時だなぁ、ねーちゃんよぉ!」
「俺たちをコケにした罪…たっぷり味合わせてやるぜぇ…へへっ」
「くそっ、いい気になるなよ!」
ひとりの不良がナイフを片手に早紀ににじり寄る。
513恋のマホウ:2005/06/09(木) 22:47:54 ID:QyaEfpRr
「やっ………やめてぇぇぇぇっ!!」
早紀の危機に堪らず飛び出した人影が奔る。
「隆子っ!? バカ、出てくるなッ!」
「な、なんだ、てめぇ!」
隆子はナイフを手にした不良の腕にしがみつく。
「はっ離せっ!」
「早紀ちゃんに手は出させないんだから!!」
「隆子ッ!下がってろッ!」
「いやッッ!!」
「こ、こいつっ、離しやがれっ!」
「離さないッッ!!」
それでも必死にしがみつく隆子。
ふたりがもみ合ううちに手が滑ったのだろうか。

引き裂かれる衣服───。
───飛び散る鮮血。

「…ッ!!!!」

ナイフにしたたる朱い血───。
───ドサリ、と人が倒る音。


その場の空気が凍り付く。


「りゅ……隆士いいいいいいいいぃぃぃぃ!!!!!!!!」
514恋のマホウ:2005/06/09(木) 22:48:56 ID:QyaEfpRr
「てっ……てめえらぁぁぁぁ!!!!」
「なっ…!」
早紀は己を縛っていた鎖ごとジャックを引き寄せ、顔面に鉄拳を叩き込んだ。
一瞬の出来事に呆気にとられる不良たち。

気勢の殺げた相手など激情した早紀の敵ではなかった───。
515恋のマホウ:2005/06/09(木) 22:49:47 ID:QyaEfpRr
「隆士…隆士、しっかりしろよぉ…!」
不良共を撃退した早紀は白鳥の元へ駆け寄った。
「…ッ!」
急所は外しているが右腕が大きく傷つき、出血が真新しい服を染めていた。
「バッカヤロー…こんな無茶…するから…!」
早紀は自分の着ていた服の袖を破り、ぐったりする白鳥に応急処置をする。
その手も白鳥の血で濡れていく…。
「ちくしょう…ちくしょう……ッ!」
早紀は混乱しながらも必死で白鳥に処置を続けた。
「うっ…」
「隆士…!?」
「あ、早紀ちゃん…」
荒い息を立てながらも白鳥は目を覚ました。
「早紀ちゃん…怪我は、ない……?」
「バッ……バカヤローッ!! てめえの心配しろよ!!」
「ぼ、僕は…男だから…。 彼女を守るのは…男の…役目…だから…」
「隆士、お前…っ!」
玉のような汗を浮かべながらも白鳥は笑っていた。
516恋のマホウ:2005/06/09(木) 22:49:59 ID:QyaEfpRr
「早紀、ちゃんが、無事…なら…僕はいいんだ…」
「バカッ、もういい! しゃべんなっ!」
「あ、でも、こ、この体じゃ男なんて…言えない、かな…はは……」
「バカ野郎……ッ」
白鳥の左手を握る手に零れるしずく。
早紀の目には涙が溢れていた。
「な、泣かないで…早紀ちゃん…」
「泣いてなんて…ねぇよ…!」
「僕、は…へいき…だ、か…ら……」
握り返す手の力がだんだんと抜けていく。
「な、か…ない…で……」

「おい…隆士ッ! 目を開けろッ!」
「……」
「目を開けてくれよッ!」
「………」
「アタシをひとりにしないでくれよぉぉぉぉ!!」
517240:2005/06/09(木) 22:51:42 ID:QyaEfpRr
…というところで終了です。
…我ながらイヤなところで切ったモンだなぁ。
なるべく早く完結させます。
518名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 22:58:38 ID:5TYjU51m
>>517
GJ!
けどこんなとこでやめないでぇ〜!!
519名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 23:07:01 ID:V9YrIJkb
相変わらず切り方が上手いw
まったりほんわかで来ると思ってましたがこういう路線もイイ!GJです!
520メリー:2005/06/09(木) 23:15:31 ID:lPJpknJi
240様
いい!
すっごい引き込まれました。
明日が待ち遠しいですよ
521名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 23:17:17 ID:G5mk7s+i
しまった!ここは天国だったか!!
>>517
GJ
522ぐうたら:2005/06/09(木) 23:18:28 ID:Dy2acj1u
>>504
わー、そんな意味だったんだー!アリガトです。
>>517
焦らしのプロかおまえさんは!もう!!

ちなみに自分のはなっちん版が完成、現在魚子ちゃん版を書いてるけど、なっちん版を先に投下しといたほうがいい?
523名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 23:19:09 ID:5H+PgDqT
…なるほど、そう来ましたか!
はあ、最終回が楽しみだけど名残惜しい…
524テイル:2005/06/09(木) 23:20:14 ID:gOtH1wRs
>>517
相変わらず間の取り方が巧い…
黒澤明かアナタは。

しかし、こうなると保管庫が大変になるな…orz
525名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 23:22:23 ID:5H+PgDqT
>>522
TS、逆から読んで性・転換とか言ってみる。
魚子キボンです。
526名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 23:33:48 ID:S4LYhC0M
続きが気になる━━━━━━━━━━━━!!!
527名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 23:54:22 ID:QPi8vr8q
なっちん版の早期投下をキボウさせていただきます
528名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 23:59:12 ID:WAu/4DxU
続きうp&新作投下キボーン
529118:2005/06/10(金) 00:11:37 ID:kWfNYRQR
良作続々投下の合間にひっそりこっそりちまちまかつ久々に投下。

エロなしまひる話
「だから、笑いましょう」

それでは投下ー
530だから、笑いましょう:2005/06/10(金) 00:13:13 ID:kWfNYRQR
3/


陽が、沈んだ。

「…………」
―――みんな、どうしているだろう。

母はそろそろ、私の帰りが遅いのを心配している頃だろうか。
もしかしたら父も今頃、私達の事を考えてくれているかも知れない―――アレで結構、家族想いな所があるのだ。

タチバナは―――もう、空港に着いた頃だろうか。
…いや、もしかしたら本当に「敵」とやらと交戦しているのかも知れない。
あのタチバナがそう簡単にやられる事は無いとは思うが―――心配していないと言えば、それは嘘になる。
―――大丈夫だろうか。
怪我とか、していないだろうか―――

「……………ん」
ふと、鼻の頭に何かが触れる。
拾い上げてみると、桜の花びら。

既に星々が瞬き始めている空を見上げると、穴の縁の辺りから満開の夜桜の高枝が見え隠れしているのが見えた。
531だから、笑いましょう:2005/06/10(金) 00:14:26 ID:kWfNYRQR
「……………」
―――考えてみれば、今タチバナの身を一番案じているのは、あいつなのかも知れない。

何度説教をされて拳骨を喰らっても、尚も失敗を繰り返しながら慣れない手付きで熱心に仕事に取組んでいるのは、
あいつがそれだけタチバナを慕っている証拠でもあるのだろう。

あいつにとってタチバナは、
唯一人の仕事仲間であり、
仕事の伊呂波を教えてくれる先輩であり、
或いは目標であり、憧れでもあるのだから。


「………」
―――それが、縱え「仕事」だとしても。

あいつは今から、私を捜しに来るだろうか。

穴に落ちた私を見付けて、慌てふためくだろうか。

無事に助け出された私を見て、何時ものように微笑うだろうか。


底抜けに明るいあの笑顔を、また私に見せてくれるだろうか―――
532だから、笑いましょう:2005/06/10(金) 00:16:04 ID:kWfNYRQR
4/


「お願いですからココで働かせてください〜!」

朝。
屋敷全体に響き渡るかと思う程の(事実そうだったと思う)その大声の所為で、
私の休日の贅沢、遅起きの清々しい目覚めは早くもぶち壊しになった。

「失礼します」
そこで丁度ドアがノックされ、タチバナが部屋に入って来る。
「…タチバナ、何だ今のは」
「申し訳ありません。直ぐに摘み出します」
「…いや、そうじゃなくてだな…」
「…?」

―――タチバナの話によれば、"彼女"が此処を訪ねて来たのが凡そ1時間前。
たまたまドアを開けた母に、"彼女"は開口一番「ココで働かせて下さい!」と頭を下げたそうだ。

「…で、今もまだしつこく粘っている、と」
「はい。今は御主人様が取り合っておられます」
「…………」
―――まあ、その根気は買うとして。
533だから、笑いましょう:2005/06/10(金) 00:18:05 ID:kWfNYRQR
正直、雑用的な仕事はタチバナ一人で間に合ってしまっているのが現状だ。
父もその事は承知の上だろうから、本人には悪いが恐らく確実に断られるだろう。


階段を降りると、
居間のテーブルを挟んで、父と―――20歳くらいだろうか、栗色のショートヘアの若い女性―――が、向かい合って座っていた。
―――いや、正確に言うと女性の方は身を乗り出して―――

「ぉお願いでぇすかぁらぁぁ〜!」

……訂正、「泣き付いて」いた。

「お願いしますお願いしますお願いしますからぁ〜!でなきゃ私とヒロちゃんD.O.A.なのぉぉ〜!!」

それはもう、文字通りしっかりがっしりと。

「………………」
一方、泣き付かれている当人―――父は苛々と肩を震わせている、かと思うと。
「…えぇい解った!解ったから離れろっ!」
ガタンと大きな音を立て、痺れを切らしたように椅子から立ち上がった。
「タチバナ!」
「はっ」
返事をするや否や、タチバナは彼女をひょいと小脇に抱えてドアに向かう。
534だから、笑いましょう:2005/06/10(金) 00:19:30 ID:kWfNYRQR
―――と。

「待て。摘み出せとは言っとらん」

「…え?」
「……?」
振り向く二人の視線の先で、煙管の灰が甲高い音と共に灰皿に落ちた。
「…タチバナ、夕ちゃんを呼んで来い」


―――結局その日から、彼女は水無月家に住み込みで働く事になった。
父曰く「確かに現時点ではタチバナ一人で十分に仕事を賄えているが、
それでも人数面の問題ばかりは拭えない」のが採用の理由らしい。

半分は本当の事だろう。
しかし、半分はきっと嘘だ。

何か、もっと―――別の理由がある。
子供心ながらに、私はそう直感していた。


そんな、小さく大きな出来事。
―――それが、私とサクラの出会いだった。
535だから、笑いましょう:2005/06/10(金) 00:20:47 ID:kWfNYRQR
今回はここまでです

時間軸の移動がややこしいと思いますがどうか御容赦下さいな

では
536テイル:2005/06/10(金) 00:28:41 ID:OmOVNvBd
>>535
乙です
さてさて、続きがどうなるやら…

しかしこの作品、保管庫だと「完成」扱いになっているんだな…
それとサクラがとても気になります…
537240:2005/06/10(金) 00:36:58 ID:jNuALjoP
おや、前は続きますと書いてあったような。
保管庫の方が記述ミスだったんじゃないですかね。

しかし、まひるのモノローグというのは起伏がないだけに難しいですね。
ガッツファイトッス。


…さて、書き上がったけどどうしよう。
他の作家さんが投下した直後だと迷いますね。
538名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 00:46:01 ID:26fDjFAk
投下キボン
539名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 00:48:18 ID:sj0WckGm
読ましてくれないと、苦しみ悶えて悶々ナイト・・・
540240:2005/06/10(金) 00:54:31 ID:jNuALjoP
とりあえず、宣言通り日付も変わったし、あんまり焦らすのもなんなので
18〜20話投下します。

7巻止めとかアニメ2週止めとか、イヤだったし。
541恋のマホウ:2005/06/10(金) 00:55:12 ID:jNuALjoP
その後───。
駆けつけた桃乃たちによって白鳥は病院に担ぎ込まれることになった。
さいわい、命に危険はなかったが傷は残ってしまうかもしれない、とのことだった。

「アタシ…バカだ…」
白鳥の眠る病室に早紀、珠実、桃乃が集まっていた。
重い空気に包まれたそこで早紀はぽつりぽつりと話し出した。
「あのボウズに…力を誇示するななんて言っておいて…このざまだ…」
「早紀ちゃん…」
「アタシが調子に乗っちまったばっかりに…隆士を…」
「早紀ちゃん、もういいから」
「なにがいいもんかっ!!」
立ち上がり頭を振る早紀の瞳から零れる大粒の涙。
「アタシがっ、アタシが隆士を巻き込んだばっかりに隆士は…ッ!」
「早紀ちゃん、もうやめて!」
「全部アタシが悪いんだ……」
力無く崩れ落ちる。その胸には自責の念。
「アタシが隆士を誘ったりしなければ…こんな事にならなかった…誰も傷付かなかった…」
「……」
「やっぱり慣れないことはするもんじゃなかったのかな…。 アタシ、バカだからさ…暴力奮うしか脳がない女だから…」
その視線の先にはボロボロになったプレゼントの服───。
「アタシ…アタシは……」
542恋のマホウ:2005/06/10(金) 00:55:43 ID:jNuALjoP
「そんなこと、ないよ」
「───っ!」
ベッドに泣き伏す早紀に語りかける、優しい声。
「だから、泣かないで…。 早紀ちゃん」
「隆士っ!」
「僕は気にしてないから…もう泣かないで」
「隆士…りゅぅしぃぃぃ!!!」
早紀は隆士の笑みを見ると弾かれたように抱きつき、声を上げて泣き始めた。
しかし、その涙の意味は先刻までのものとは変わっている───。

抱きしめ合うふたりを残して桃乃たちは病室から立ち去った。
543恋のマホウ:2005/06/10(金) 00:56:06 ID:jNuALjoP
「…早紀ちゃん、落ち着いた?」
「ん…ぐすっ」
「心配させてゴメンね…」
「ゴメンじゃねーよ、バカ…」
早紀は隆士の腕に抱かれて、涙声のまま悪態をついた。
その言葉とは裏腹に早紀はとても嬉しそうだった。
「早紀ちゃんには辛い思いさせちゃったね…」
「ん、いい、気にしてないから」
「うん…」
そう言ってグッと抱き寄せる。
怪我をした右腕は包帯まみれで動かせなかったが自由な左腕で強く抱きしめた。
「隆士…ちょっと恥ずかしいな…」
「うん、僕も…」
「でも、もう少しこのままいさせてくれないか…?」
「うん、僕も」
抱きしめる腕の力が強くなる。
「ゴメンな…服、ボロボロになっちまったよ…」
「いいよ、服はまた買えばいいんだから」
「その傷、一生残るかもしれないって…」
「傷は男の勲章っていうじゃない? それに早紀ちゃんを守って出来たならむしろ誇らしいよ」
「バカヤロー…かっこつけやがって…」
隆士は右腕を見て小さく笑う。
「作家の卵なんだから利き腕は大事にしなきゃダメだろーが…」
「うん…だけど、今は左手にあるものの方がもっと大事だから」
「…バカ」
「バカでいいよ…」
「ん……」

見つめ合うふたりは、やがてその唇を重ね───。
544恋のマホウ:2005/06/10(金) 00:56:41 ID:jNuALjoP
病室から出てきた桃乃は安堵のため息をつく。
とりあえず、心配の種が一つ片づいたからか急に肩の力が抜けたのだろう。
「…あ〜あ、なんか妬けちゃうわね」
「早紀ちゃん…」
閉じた扉の向こうを見てうつむく珠実。
「珠ちゃん…」
「いえ、わかってるんです…梢ちゃんの幸せは私の幸せ…だからいいんです」
「珠ちゃん、無理すんなって」
その頬を伝うひとしずくの涙。
「こうなることは…わかってましたから…大丈夫、です…」
「珠ちゃん…。………。 …笑顔だ!」
「え…?」
突然の言動に驚いた珠実は桃乃の方を振り向いた。
545恋のマホウ:2005/06/10(金) 00:57:07 ID:jNuALjoP
「祝福するなら笑顔! 喜ぶなら笑顔! でしょ?」
「……。 ハァ?」
いきなり意味不明な発言をしだした桃乃にぽかーんとする珠実。
「そんな泣き顔で幸せを願ってどうするのよ? だから笑顔!」
「……。 人が落ち込んでるっていうのに何いってんですか〜? このエロメガネは〜」
「にゃにおー! 人が心配していってやってるのにー!」
「そういうのを追い打ちっていうんですよ〜。 桃さんはデリカシーがないですね〜」
「え〜…そーかなー」

───親友が教えてくれたこと。

辛いときも、悲しいときも、うつむかずに前を見よう。

だから、笑おう───。

546恋のマホウ:2005/06/10(金) 00:57:32 ID:jNuALjoP
翌朝───。
僕は病院のベッドの中で目を覚ました。
「ん……朝…か」
視線を動かすとベッドの脇ではポニーテールの少女───早紀ちゃんが眠っている。
(きっと目が覚めたときには梢ちゃんに戻ってるんだろうな…でも…)
左手でその髪を撫でる。
右手はまだ痛むけど、それは今は心地よいものだと言ってもよかった。
(僕たちの思い出はみんなのものだよね、早紀ちゃん…)

547恋のマホウ:2005/06/10(金) 00:57:49 ID:jNuALjoP
「白鳥くん、おはよーうぉっとぉ!?」
「あっ…!」
そばで眠る彼女に気を取られている隙に桃乃さんたちがやってきた。
「ひゅーひゅー、朝からお熱いねえ」
「白鳥さんのえっちー」
「お、大人だね!」
いつも思うんだけどこの人たち、タイミング見計らってるんじゃないだろうか…。
「ん…あれ、ここは…」
「おっ、眠り姫のお目覚めね」
目覚めた梢ちゃんはしばらくあたりの状況をキョロキョロと見回した。
「あれ…私…ここは…」
「おはよう、梢ちゃん」
「…。あっ!」
僕と目のあった梢ちゃんは途端に涙目になってしまった。
「白鳥さん! 大丈夫ですか!?」
「うん、もう平気」
「よかったぁ…。 すっごく心配したんですよ…」
「ゴメンね、心配させちゃって」
「よかった…本当に…」
548恋のマホウ:2005/06/10(金) 00:58:08 ID:jNuALjoP
「あー…ふたりの世界に入ってるところ悪いんだけどさ…」
「あっ、ごめんなさい」
呆れたような桃乃さんが話しかけてきた。
どうも最近、こういうパターンが増えてる気がする…。
「珠ちゃんがさ、いろいろ調べてきてくれたんだってさ」
「あっ、なんかわかったの?」
「はいです〜。 っていうか、まずご自分の体を見てください〜」
「体…? あっ!」
言われたままにシャツの隙間から覗いてみると大きな胸がなくなっていた。
注意してみると下の方も何となく戻っている感触はあった。
「元に戻ってる!?」
「です〜。 どうやら元々長続きするような術じゃなかったようです〜」
「そうだったんだ…」
「なので白鳥さんも安心してくださいです〜」
「よかったですね、白鳥さん!」
「うん、ありがとう、梢ちゃん、珠実ちゃん!」
「おめでとう、おにいちゃん!」
「うん!」
549恋のマホウ:2005/06/10(金) 00:58:34 ID:jNuALjoP

それから───。
検査を終え、退院してきた僕を労うためささやかな宴会が開かれた。
傷は痛むけど、みんなの笑顔が僕を何より元気にさせてくれた。

辛いことも、楽しいことも、
大切な人たちといるとき、
何よりも大事な人がいるとき、
その一つ一つが僕を作る大切な思い出になるんだ───。



<恋のマホウ> Fin.
550恋のマホウ:2005/06/10(金) 00:58:57 ID:jNuALjoP
「あー、白鳥さん〜」
「えっ、なに、珠実ちゃん?」
「一つ言い忘れていたのですが〜」
とそこで言葉を切り、なにやらもごもごと呟いた。
「この術は持続時間は短いのですが潜在的には効力を持ち続けますので〜」
「へっ…?」
という彼女の言葉に呼応するかのように───。
「呪文を唱えるとこの通り〜」
「えっ? えええええ…っ!?」
みるみる僕の体は女の子になってしまった───。
「いつでも女の子になれちゃいま〜す」



「えええぇぇ〜〜〜〜〜〜っ!?!?!?」






<恋のマホウ> …ミンナニハ ナイショダヨ?
551恋のマホウ 後書き:2005/06/10(金) 01:06:35 ID:jNuALjoP
と言うことで、紆余曲折のTSものサイドストーリー<恋のマホウ>でした。

何度か書きましたが最初は邪な発想から生まれた話なんですがねえ。
気付いたらシリアスものになる、これがまほらばクオリティ?
とにかく書きだしたら止まらず、ロケットで突き抜けるように書ききってしまいました。

いや、ホントは千百合スキーなんですけどね。
物書きの神が「早紀にしろ」って囁いてきてこうなってしまいました。
まあ、楽しんで頂けたのなら幸いです。
なんかあちこちで大変評判がよかったのでビクビクものでしたが。
概ね好評で頑張った甲斐があったと思います。
ではでは。

PS.あ、Z隆子の鈴リボンの伏線消化し忘れた…。
552名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 01:13:47 ID:4ggSFiBK
GOODですよ〜
気になるところと言えば、白鳥君の記憶の混乱の後遺症が残ったのかどうかとか、気になるって感じですね
553メリー:2005/06/10(金) 01:18:02 ID:4DOdNKfx
240様
乙&GJ!
最後の”まだ完璧には治ってませんでした”ネタには正直驚きが隠せません
最後の最後でオトすとはっ!
次回作待ってま〜す。
(ってウチもはよう書かなあかんなぁ〜・・・・・・)
554名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 01:23:52 ID:UQy07WSO
ところで白鳥君が男に戻ったときって下着は当然女物ですよね?う〜ん、コレクト!GJです!
555名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 01:37:48 ID:Cl1Nm7QZ
とてもよかったですよ
556だから、笑いましょう:2005/06/10(金) 02:09:46 ID:Bm1et5Ck
>>551
乙&GGGGGJです!

先程のまひるSSですが、構成上もうひとつ分投下する筈が何故か忘れてしまっていました orz
という訳で今更ですがちょっとだけ投下します

エロなしまひる話
「だから、笑いましょう」

それでは投下ー
557だから、笑いましょう:2005/06/10(金) 02:10:52 ID:Bm1et5Ck
5/


姉妹共々、よく笑う奴等だった。

よく笑い、
よく泣き、
よく笑い、
よく笑う。
姉であるサクラは、特にそういう奴だった。

一言で言えば、騒がしい奴。
そのくせ、何も出来ない奴。

皿を割ったり、
バケツを引っ括り返したり、
その先に居るのが、例えば私だったり母だったり。

お陰で水無月家は、今迄より少し、賑やかになった。
558だから、笑いましょう:2005/06/10(金) 02:12:16 ID:Bm1et5Ck

―――家の敷地の外へ出る事が滅多に無かった私にとって、
母よりよく笑う人間が身近に居る、という事実は少なからず私を驚かせた。

そして―――その事実が、私には欝陶しかった。


姉妹揃ってこんな性格なのだから、両親もさぞ賑やかな人間なのだろう。
―――そんなつもりで、或る時私は、あいつに訊ねてみた。
帰国してから幾年も経っているのに、相変わらずの至らない日本語で。

「……お前、親は?」

―――軽い気持ちだった。
「どんな人なのか」と、私はそう訊きたかっただけで。
だから、そんな返答は想定すらしていなかったし、無論望んでもいなかった。

―――その時のあいつの表情は、今でも脳裏に焼き付いている。

私に訊ねられた瞬間の、笑顔が一瞬だけ消えたあいつの表情。
559だから、笑いましょう:2005/06/10(金) 02:13:36 ID:Bm1et5Ck
だけど、それは本当に一瞬の事で。
次の瞬間にはまた、あいつの表情は笑顔に戻っていて。
―――でも、それは何時もの、満開の桜みたいな笑顔とは決定的に違っていて。

「―――両親は」

決して、無理に笑っていた訳ではない。
無理に笑顔を造っていた訳ではない。
本人と―――或いは、目の前で見ていた私が、一番良く解っていた筈、なのに。

なのに、

それは、

「…2年前に、亡くなりました。車の、事故で」

あまりに自然で、
どんな悲痛に歪んだ表情よりも悲しく、

それなのに、明るい所だけは何時も通りの、あいつの笑顔―――
560556:2005/06/10(金) 02:17:29 ID:Bm1et5Ck
とりあえずココまでです

ちまちまでスイマセン、ホントに

では
561名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 05:51:40 ID:4atDjlTi
>>551
激しくGJ!>>552さんといっしょで記憶の混乱の部分がちょっとだけ気になりましたが
もう最高でした!萌えまくり(*´Д`)ハァハァ

>>560
GJ!まひるとかサクラものって珍しいから貴重。続き期待してます!
562名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 11:18:04 ID:jNuALjoP
>>552>>561
ヒント:未回収の伏線の有効利用

ゴメン、ウソ。
入れようとも思ったけど蛇足になるから割愛した、が正解。
すっかり忘れてた伏線もあったけどorz
563名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 13:11:42 ID:W88Wabwz
>>560
こんな切なさが大好きです。GJ!!

急に書きたくなったSSです。
アニメの「親・子」「大事」に触発されたムカシサヨコもの。
もしかしたら「だから、笑いましょう」にも感化された…かも。
「いとしきもの」第一部、前編投下しまーす。


ノシ目
564いとしきもの:2005/06/10(金) 13:17:59 ID:W88Wabwz
 その日は、何か特別な出来事があったわけではなかった。
 いつもと同じ。何も変わらない、平穏な日常。
 整然と並んだ植木の横を、当てもなく歩いていく。


『…おお、さすがは我が娘だ!』


 通う学校の成績簿を見、喜びを露わに唸る父。


『素晴らしいわ…本当、あなたには凄い素質があるのね』


 幼い頃から習っているバイオリンを弾いて見せれば、手を叩いて褒めちぎる母。


 両親は私に期待をかけ、私はそれに応え続けてきた。

 二人が私に望む事を残らず具現化する力が、あの時の私にはあったから。



 ――だけど。


 私の『世界』は狭すぎた。


 まるで童話に登場するお姫様のように。

 私は、自由を手にすることを許されていなかった。
565いとしきもの:2005/06/10(金) 13:21:03 ID:W88Wabwz
 泉のへりに腰かけ、私は天を仰いだ。
 蒼い空の中を、薄く小さな雲がゆっくりと泳いでいる。
 それから、私の視線は正面の屋敷へと移動する。

 今、家に父はいない。簡単な言い置きを残して、朝にどこかへ出かけていった。
 母はいる。肌が荒れると言って、あまり日中は外に出たがらないけれど。

 そして――

「ねえさまー!」

 愛らしい、幼い妹。私にはない、母譲りの金色の髪が春の日差しに映える。

「…どうしたの?」

 ボールを小脇に抱え、輝くような笑顔で私の顔を見ている。

「いっしょにあそぼ!」

 そう言って、ボールを差し出した。受け取り、私は彼女の頭を撫ぜてあげる。

「いいよ。向こうで遊ぼうね」

「うん!」


 ――自由はなかった。

 でも、私には妹がいた。それがどんなに幸福なことだろうか。

 微笑ましい、先を走るその姿を見つめながら、私は胸をきゅっと締め付ける心地良い感覚に身を任せていた。
566いとしきもの:2005/06/10(金) 13:21:28 ID:W88Wabwz
「…イタリア、に?」

 予想もしなかった父の言葉。思わず、鸚鵡返しで聞き返してしまった。

「好奇心の盛んな今の時期、多くのことを見知っておかなければな」

「でも…」

「お前とあの子、それぞれに違う期待をかけたい。そのために、お前が学び、知ってきたこととはまた違う物を見せる必要がある」

 昔から全く変わらない、何もかもを撥ね付ける凛とした声。

 逆らうことを許さない父を前に、私は全てに従ってきた。

 でも。

「まひるは…? それを望んでいるの?」

 そう尋ねると、父は腕を組み、椅子から腰を上げて窓を見やった。

「知らせたところで、わかりはすまい。もう便の予約も済んだ。来月の末、まひるは日本を発つ」

 愕然とした。まひるは何も知らされないまま、海外へ旅立たされようとしているのだ。

「そんなの、おかしいわ」

 思わず口をついて出たその言葉に、父は私を振り返った。
567いとしきもの:2005/06/10(金) 13:22:28 ID:W88Wabwz
「おかしい…だと?」

 その語気は、わずかに荒い。

「血を分けた子を立派に育て上げることは、親の責務だ。おかしなところなど、何もない」

「まひるは絶対に嫌がるわ。私は、誰よりもあの子の気持ちをわかってあげられる」

 言いながら、自分の行動に驚いていた。今まで一度も逆らうことのできなかった父に、自分の意見をぶつけていることに。

「沙夜子」

 はっとするほどの力強い声に私の思考は中断され、現実に引き戻される。

「…一体、どうしたのだ。お前とて、まひるの立派な将来を望んでいるはずだろう」

 それは――確かにそうだ。

「……でも、あの子が望まない未来なら、私も望まない」

 さっきの言葉に、嘘はないのだ。父よりも、母よりも、誰よりもまひるは私になついてくれている。

 そう思うと、考えずとも言葉は飛び出してくる。

「まひるが行くのなら、私も行くわ」

「馬鹿を言うな」

「私はまひるを、まひるは私を必要としているもの。離れ離れなんて考えられない」
568いとしきもの:2005/06/10(金) 13:23:06 ID:W88Wabwz
「沙夜子!」

 一喝。思わず体がびくんと縮こまる。

「我侭は大概にしろ! 互いに頼り切っているようでは何も得られないと知れ!」

「っ…!」

 生来の大声で叱り飛ばされ、私は反論する気を失った。

 一歩後ずさり、逃げ出すようにドアへ駆け寄る。

 ――いつもこうだ。私は何を覆すこともできないまま、居たたまれずにその場から逃げ出すのだ。

 無力な自分を呪い、くっと歯を食いしばった。右手をノブにかけたまま立ち止まり、左でぎゅっと拳を作る。


 逃げたら、まひるは――


 …そして私は、今まで出したこともないような大きな声で宣言した。



「……私は」

 ――それは、

「絶対に、認めない」

 この家に生きてきた私の、初めての反発だった。
569↑書いた人:2005/06/10(金) 13:26:46 ID:W88Wabwz
最初の方、改行で失敗しましたが…
はい、やたら丑三が悪役なシナリオです。
沙夜子がやや喋りすぎな気もしないでもないですが、今書いてるもうひとつの方だとほとんど喋らないので自分としては釣り合いが取れると(謎
次回は第一部・後編です。ちなみに二部構成となっています。
570名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 13:52:23 ID:WILk8aIl
>>569
昼ドラな展k(ry

いやいや、GJですよ。
571名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 14:37:44 ID:8o323Vff
むしろ水無月って苗字自体が(ry
>>569
いいよ。普通にいい。
早く続きを読みたいヨ〜。
572名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 21:05:00 ID:jNuALjoP
沙夜子さん、昔から母性に溢れる女性だったのですね。
続き楽しみにしてます。
573名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 21:18:59 ID:rq906zd9
魚子&棗ま〜だ〜?
574ぐうたら:2005/06/10(金) 21:37:18 ID:9JVUpsAa
>>573
あとチョットだから…!!
575名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 21:43:09 ID:rq906zd9
>>574
がんがれ。
576名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 21:43:45 ID:xYky42EO
完成してるなっちんのかいがいしい看病を!
577名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 22:19:17 ID:Cj0y/vzZ
漏れは魚子をキボン。
578名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 22:29:11 ID:rq906zd9
両投下Щ(゜д゜Щ )カモーン
579名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 22:46:32 ID:8o323Vff
まったく贅沢棚


むしろ早紀を激しくキボン!
580名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 22:48:57 ID:VIiXCBzI
皆がんばってるんだから、あまり希望ばかり言わない方が……
急かしてその分内容が伴ってなかったら意味ないわけだし。
こっちの出来ることっていったら感想を言うしかないんだから、
辛抱して待つのも必要じゃない?
と、言ってみる。
581名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 23:22:30 ID:jNuALjoP
ここは自由な投稿スレなんだから、思い切って自分で書いてみるって言うのはどうでせうか。
妄想だけで終わらせるのは勿体ないですよ。
582ぐうたら:2005/06/10(金) 23:46:28 ID:9JVUpsAa
もう、このせっかちさん共め!ははは!
とりあえず連チャンでなっちん編、魚子ちゃん編行きます。
魚子ちゃんは完全ギャグに走ってるのでキニシナイデネ?
それでは、『熱 〜シラトリリュウシの場合〜 紺』
     『熱 〜シラトリリュウシの場合〜 金』
二本続けてドゾー。
583ぐうたら:2005/06/10(金) 23:46:56 ID:9JVUpsAa
(多分)梢ちゃんが転んでから、数秒で、足音が僕の部屋に近づいてきた。

―――人のモノでは、無い、足音が―――

人のものにしては足音が軽すぎる、そして、二本の足では速すぎる廊下を踏む音のペース。
その『何か』がドアの影から…
「ナ〜」
ね、猫ぉ?
しかもその猫には見覚えがあった。
薄れ行く記憶の中から思い出すその猫は…確か…
あ、そうだ。
前に桃乃さんと一緒に遊んでた猫だ。
確か桃乃さんは、『マフィア』って呼んでたかな…?
急に僕の目の前に現れた猫=マフィアは、さらにとことこと僕が寝ている布団の横に来る。
…あれ?確かこの猫含むあの五匹の猫はこの間車に忍び込んで沙夜子さんの実家に行ったんじゃなかったっけ?
その途端、マフィアの体がぶくぶく膨らんで…ってえ゛エエエエエ!!?
僕が目を見張っていると、マフィアはついに破裂してしまった!?
「う、うわアアアァァァァァァァ!?」
爆発したマフィアから煙が吹き出る。
咳き込みながらも煙が晴れるのを待つと、そこには見慣れた姿が、見慣れた顔があった。
「……隆士…君……」
棗、ちゃん…?
584熱 〜シラトリリュウシの場合〜 紺:2005/06/10(金) 23:47:34 ID:9JVUpsAa
「隆士…君…だいじょ…ぶ…かも…?」
そう言って棗ちゃんはその紺色の瞳を僕に向け、てふてふと歩み寄ってきます。
「う、うん…あまり…調子はよくない、かな…」
「ほんと…に、ぐあい…悪そう…」
心配そうに、その純真無垢な、まだ幼さの残る顔を、寝ている僕の顔にどんどん近づけ…って、
「ちょ、ちょっと舞って!」
「…?踊る…の?」
「ああゴメンミスタイプ!!ちょっと待って!」
「待つの…?」
「うん、その…ね、僕、朝から何も食べてないからさ…何か食べれるもの、作ってきてくれないかな?」
「食べる…もの……、うん、わかった…待ってて…作ってくる…かも…」
いや「かも」じゃなくて!まぁ、口癖なのでそんなに気にしてないんだけど
「それじゃ…少し…待ってて…ね?(ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽんっ!!)」
「うん…ありがとう…棗ちゃん…」
僕の周りを花で埋め尽くした棗ちゃんはとてとてと部屋を後にする。
それから数分、棗ちゃんがミスタイプしなかったおかげで舞う必要は無く、布団を被っておとなしくしていました。

そして、棗ちゃんが僕の部屋に来る足音がしてきました。
「隆士…君…起きてる…かも……?」
「あ、棗ちゃん…うん、起きてるよ」
体力の落ちている体を頑張って起こす僕。
目の前にいる恋人の女の子に笑顔を向けます。
「これ…おかゆ…かも…」
「かも」といっていますがモチロン目の前に差し出されたお盆の上には立派なおかゆ。
上にちょこんっと乗った真っ赤なうめぼしが白いおかゆのアクセントになって朝から何も食べていない僕の五感全てに襲い掛かってきます。
うわぁ、今、口開けたらヨダレが吹き出てきそう。
「ありがとう、棗ちゃん。それじゃ、いただ…」
と言いながらおかゆの土鍋を載せたお盆に手を伸ばすと、それを持っている棗ちゃんの手が、すすす、と引いていく。
585熱 〜シラトリリュウシの場合〜 紺 3/4:2005/06/10(金) 23:48:21 ID:9JVUpsAa
「あ、あれ…?棗、ちゃん…?」
お、お預け!?オアズケ!?O・A・ZU・KE!?!?
「………」
見ればほんのり顔を赤らめ、おかゆを見つめる棗ちゃん。
数秒の間を置いて、決心したかのようにその瞳に力強い光が宿りました。
「隆士…君…」
「な、何っ?」
空腹の絶頂に置かれて尚、目の前の食事を下げられ、狼状態の僕は、棗ちゃんの呼びかけに応える声も少しばかり荒くなります。
「ぁ……て…ぃ…かも……」
「え?何?」
「ぁー…し…かも…」
余程ハズカシイ事なのか、棗ちゃんの声は何時にも増して小さく、聴覚以外の感覚がMAXの僕には、さらに聞こえ辛いものとなっています。
「ゴメン、聞こえなかったんだ。もう一回、言って?」
「あーん…して…ほしい…かも……」
「へぇー、あーん、かぁ…」
あーん、ねぇ…
あーん…?
あーん…
あーん
あーん!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あぁああああぁああぁぁぁぁああああぁんんんんん!?!?
「あ、ア、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あー…ん!?」
「…ん…」
僕がカラクリジカケの人形の様にやっとの事で紡ぎだすと、それに対して心底気恥ずかしそうにうなずき、俯く棗ちゃん。
だが彼女の目には光が宿っている!本気だ!彼女は本気だっ!?
そんな気力あふるる彼女の眼力にアてられた僕は、熱で赤い顔に、さらに赤い絵の具をブチマケタように赤みを足す。
そして、彼女の提案(=あーん)に応じるコトとなった。
586熱 〜シラトリリュウシの場合〜 紺 4/4:2005/06/10(金) 23:48:42 ID:9JVUpsAa
「はい…隆士…君…あー…ん…して…?」
「う、うん…あ、あー…ん……」
棗ちゃんの差し出す手の上には、土鍋から小分けされた小鉢に入ったおかゆと、そこからレンゲで掬った一口分のおかゆ。
それを僕の顔の前、口の前まで持ってくると、ぴたりと止まる。
はむ。とそのおかゆを口に含む。
固すぎず、病人用に程よく柔らかくされたお米と、軽い塩味の協力タッグは、僕に容赦なくマッスルドッキングを放ってきました。
「どう…味付けが…濃かったり……しない…?」
少し自信のなさげな表情で見つめてくる彼女に、僕は、とんでもない、といわんばかりに首を横に振り、
「ううん、ちょうどいい塩加減だし、ご飯も柔らかくて丁度いいし、とっても美味しいよ。」
と、彼女に賛辞の言葉を送る。
「あ…りがと…はい…あーん……」
「うん、あーん…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
とっても美味しくいただきました。

おかゆも食べておなかもいい具合にふくれたので、もう一度休むことにしました。
今は、棗ちゃんが気を利かせて利かせて持ってきてくれた氷枕でひんやりと快適です。
加えて周りには告別式かの如き花。
横には笑顔で座ってくれている恋人。
とっても素敵な状況で、僕は再び眠りの中へ……

目が覚めると、もう日はほとんど沈みかけていて、すっかり窓からは朱い光がこぼれています。
隣には、そう。すぐ隣には、恋人の横顔。
棗ちゃんは、いや、もう眠っているのだから梢ちゃんになるだろうか?
ずっと看病してくれただろう彼女の顔は、多少疲れが見える。
僕の事を一日中心配してくれた、梢ちゃんと棗ちゃん。二人のコイビトに感謝の気持ちをこめて、彼女の頭を軽く撫でました。
そして僕は、彼女の寝顔を見ながら、もう一度、幸せに包まれて眠りにつきました。
587ナカダルミ:2005/06/10(金) 23:49:11 ID:9JVUpsAa
続いて 金 行きます。
588熱 〜シラトリリュウシの場合〜 金 1/4:2005/06/10(金) 23:49:47 ID:9JVUpsAa
梢ちゃんと思われる人が転ぶ音がして、間もなくこっちに駆け足で向かってくる気配がしてきました。
その気配は、凄いスピードで部屋の前に現れ、イナーシャルドリフトでこちらを向き、そのまま足のばねを最大限に利用して…
「おにいちゃーーん!!!」
…飛び込んできました。
「げぶふっ!!?」
強烈なタックルを腹部に喰らい、僕は く の字に体を折り曲げ、もんどりうってしまいます。
当然です。誰でもおなかに超スピードで頭突きを喰らえば吐血ぐらいはきっとします。
突如として室内に走る戦慄。その場に佇む一人の少女、蒼葉梢ちゃんの体を持った少女。
名前は、金沢魚子ちゃん。
そして、その目の前を腹を押さえてうずくまる僕。
部屋を、形容しがたい空気がそっと包み込みました。
「……な………」
まだ悲鳴を上げている大腸さんや小腸さん達を涙目でお腹越しに撫でながら、声を出します。
「な…な…こ…ちゃん…」
「なぁに?おにいちゃん!」
「あ…のね…お願いだからさ…腹部に頭突きは…勘弁して…おにいちゃんもう立ち直れなくなっちゃう…」
「そうなの?」
「そうなの…」
「うん!次は別のところに― 「もう何処にも頭突きしちゃダメ!!もう僕の体に頭をつけないで!もうッ!」 お、おにいちゃん…?」
ついカッとなって思いのたけをブチマケテから気付きます。また怒鳴ってしまったことに。
そしてつい数分前まで僕の体は熱に犯され、頭からつま先まで謎の痛みが襲っていたことに。
さらにその症状は現在進行形で、尚且つさっきの頭突きで症状が悪化してしまったことに。
589熱 〜シラトリリュウシの場合〜 金 2/4:2005/06/10(金) 23:50:10 ID:9JVUpsAa
「ぐおおぉぉぉおおぉおぉぉおお………」
きしむ僕のナチュラル・ボーン達。
それを自分の体を抱きしめるような体勢で、魚子ちゃんに言います。
「ご、ゴメンね?魚子ちゃん。怒鳴っちゃったりして…」
「んーん。魚子もおにいちゃんが困るようなことしちゃったから…おにいちゃんお風邪で寝てるのに…」
さすが6歳。根は素直なイイコです。
「分かってくれたの?」
「うん!」
元気一杯の頭に響く声。痛い…
「えっと…それじゃあ、僕ちょっと寝たいから…いいかな?」
「うん!魚子、お兄ちゃんのじゃまはしないよ!」
「ありがとう。それじゃ、よいしょ・・・っと」
もう一度横になる僕。すぐ横には笑顔の魚子ちゃん。
僕は、彼女の笑顔を見ながら、もう一度、幸せに包まれて眠りに―――
「魚子がねー!おにいちゃんがよく眠れるようにお歌、歌ってあげるー!!」
―――つくにはもう少し時間がかかりそうです。(涙)
590熱 〜シラトリリュウシの場合〜 金 3/4:2005/06/10(金) 23:50:47 ID:9JVUpsAa
「う…歌…?」
「うん!魚子ね、このあいだ、たくさん桃ちゃんにお歌教えてもらったのー!」
「も゛も゛の゛ざ ん゛……」
滝のような涙を流しながら、倒れた僕の第一発見者、この場にはいない桃乃さんの名前を呼びます。
「おにいちゃん…」
「はっ!?」
壁―3号室側の壁に向かって体育座りで桃乃さんの名前を連呼している僕の背中に、魚子ちゃんの少し弱めの呼びかけがぶつかります。
振り向けば魚子ちゃんは、目にうっすら、いや、はっきりと涙を浮かべ、今にも泣き出しそうです。
そんなことされたら珠実ちゃんにバッチリすっぱぬかれて、殺されます。すっぱぬかれた上に、殺されるんですよ?どっちかにしてください。
「おにいちゃん…魚子がお歌歌ったら…ジャマ?」
「じゃ、邪魔なんてとんでもない!!あ、ありがとう魚子ちゃん!それなら僕もゆっくり寝れそうだよ!」
「ホント!?」
途端に魚子ちゃんの顔に光がさします。単純なんだから…
「じゃあじゃあ!お歌歌うよ?いい?」
「うん…お手柔らかにお願いします…」
小声で呟いた僕の願いは、魚子ちゃんには届かなかったようで…
「いくよ!まずは、このお歌!」

魚子ちゃん、『撲殺天使ドク■ちゃん』熱唱中〜
(刺して晒して垂らしてぇ〜♪)
(魚子ちゃんやめ…!!)
(血祭りどんどこドク■ちゃん〜!)
(頭がぁ〜!!)
(ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪)
(ふおおぉおぉおぉぉぉぉぉ……)
〜終了…
「じゃぁ、次のお歌歌うね!」
591熱 〜シラトリリュウシの場合〜 金 4/4:2005/06/10(金) 23:51:28 ID:9JVUpsAa
カラオケボックスで一人でずっとで歌っているオロカな運動部の先輩のような魚子ちゃんの行動はエスカレートしていきます。

魚子ちゃん、『●キャットマ○』熱唱中〜
(スカッパラパピリルバビルリラバリバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレ
バビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルリレバビルロ……)
(イヤァァァァ!!!)
〜終了……
「…ダメ…頭…痛…死にそ…」
一曲目の時はどうやったら寝れるかがミッションでした。
でも、今現在のミッションはどうやったらこの歌の威力を減らせるか、そして、いかに熱を42度台まで上がることを防ぐかになっています。
それなのに、魚子ちゃんは僕に課せられたミッションを踏みにじるかのように、次の曲名を高らかに宣言しました。
「次はね、次はね!えと、えーと、そうそう!『☆はマシンガン』と、『★もマシンガン』!!」
イヤアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

魚子ちゃん、『☆はマシンガン』熱唱中〜
(やってきましたとてもあついなつ!)
(頭がァァァァ!!)
(いっぽんだけ色のちがうめんが入ってるとわんだふる!!)
(われるぅ!!ワレルゥゥゥゥゥ!!!)
(い〜つまで〜も〜、わ〜たしマ!シ!ン!ガ!ン〜!!)
〜終了………

続いて魚子ちゃん、『★もマシンガン』熱唱中〜
(一個だけ雪玉に石を入れたらとてつもなくデンジャラス!)
(アウチ!頭痛いってば!)
(あ〜、冬もマ!シ!ン!ガ!ン〜!!)
(桃乃さんのバカー!!)
今日この日、僕は魚子ちゃんに恐らくこの歌の数々を教えたであろう桃乃さんを怨みました。
翌日、案の定熱は42度どころか43度を越え、さすがに医者を呼ばれてしまいました。
592アトガキ ジゴク:2005/06/10(金) 23:53:38 ID:9JVUpsAa
一応コレで全体の3/5ですね。
残るは早紀ちゃんと梢ちゃん。
個人的には根っからの早紀ちゃんスキー。
このスレのデビューSSが早紀ちゃんモノなぐらいに!
だから今までは全部4レスで納めてた各人格のストーリーですが、早紀ちゃんの場合は際限なく伸びるかもしれないのでアシカラズ。
梢ちゃんはラストにまわしました。
おやすみなさいませ。
593名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 00:01:33 ID:mkFDX1DW
GJッス!
でも、魚子のインパクトのせいでなっちんが割り喰った感じですね。

泣いて甘えて突撃して
それが魚子の愛なの
594テイル:2005/06/11(土) 00:40:19 ID:FQ2hFUdE
恋のマホウ、いとしきもの、熱、それぞれ作者氏GJです!

大型作品の投下が終わったところで、ひっそりと作品を作っています。
あの、桃乃の妄想ネタです。
最終的には夢オチになるわけですが、真ん中をどう膨らますか…
中々大変です。
595名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 07:43:03 ID:4irUVtqS
>>592
(・∀・)GJ!
お預けの棗タソ禿しく萌え!

>>594
がんがれ
596名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 08:19:59 ID:Uj+6GH42
…いやごめん。
緑の時からそうだったけど、
金の地の文読んだ瞬間に撲天正直くどいと思った漏れがいますた。
しかもその直後にしっかり歌入れたし…
紺はすごく良かったけど、今まで全体的にやり過ぎ感が否めなくてね…?
まあ、こんな意見出すの漏れだけだし、気にせんといて…

文句つけてゴメンナサイm〇m
紺は満足しますたよ。
597名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 10:26:10 ID:N/yYU7Wq
撲殺天使の略なんだろうが、「撲天」「正直」の天と正によって
天正やおよろずを連想した俺ガイル。
598名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 10:44:08 ID:4VE7WWCl
>>240さん、恋のマホウVGJです。
なんかいままで生きてて気付かなかったんですが、どうやらTSが自分の趣味にど真ん中なようで
読んでる途中で何度も悶え死にそうになりましたよ。新たな世界に目覚めそうで怖い…。

ラストを見ると更に続けられそうな感じですね。もし続けられる意思がおありでしたら
呪文を具体的に決めちゃった方が良いのでは?できれば日常生活でも時々出てくるような。
そうすればお珠の居ない場面でも素晴らしい(自分にとってですがw)展開が待ってそうです。
例えばエロ〜リと一緒に銭湯とか・・・白鳥君相撲大会出場とかw・・・
599ぐうたら:2005/06/11(土) 10:48:52 ID:qrUQthYF
>>596さん
やっぱくどかったですか…
自分は最近読んだものに感化されやすいタチなんで撲殺の文章が凄く面白かったからそれにかなり影響されちゃったみたいで…
これからはよっく考えてから書きますね。
ほかの皆さんも気に食わない点がありましたらビシバシご指摘ください。
それによって皆さんの満足できるSSを書けるように精進いたしますので。
ではでは。
600名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 11:04:06 ID:mkFDX1DW
>>598
その辺は実は考えてあったりします。
まあ、続編の内容までは考えついてませんが。
(いま妄想してるのは隆x早の純愛えちとか)

そう言えば、私のもパロディネタをふんだんに盛り込んじゃったんですが
これも気になった人はいるんでしょうかね…。
601596:2005/06/11(土) 11:15:07 ID:Uj+6GH42
>ぐうたら氏
いや、漏れも大して後先考えずにあんな発言しちゃったわけで。
今は後悔してるorz
撲天が面白いってのはわかる、漏れは小説とコミック持ってるしね。
ぐうたら氏の文章は面白いし、これからもそうだと思う。
ただまあ、これに限ったことじゃないが他作品パロが多く入ってる時は宣言した方がいいと思うわけで。
…ほんとすまん、自分じゃ書きもしない香具師の浅はかな文句ですたOTZ
602名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 11:42:03 ID:pTiNw/p0
流れを真っ二つに…

保管庫が移転してますよ! インフォシークですね。
こちら↓
ttp://whitebrown.hp.infoseek.co.jp/mahoraba/index.html
これで心置きなくエロも…
603名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 11:56:28 ID:ExSqmUZ4
>>600
考えておられますか。いやー楽しみだなぁ。

せっかく女の子になったんだし男キャラに掘らせ、否、惚れさせたいっすよね。
でもこのマンガ男少ない…。やるとしたらやっぱ百合ですか。
あっ!まさか隆×早って…。早紀ちゃん無茶するなあ。




すんません妄想爆発で、吊ってきます。
604名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 12:05:12 ID:yUfrh1eO
>>592
紺は良かった。
でも金は面白くない。正直なところ、イタい。
前も誰か言ってたけど、固有名詞出しすぎ。
あと気になったのが常体と敬体を混用してること。
何か意図があるなら構わないけど。

・・・と言ってみたけど、>>596が切り出さないと
こんなこと書かなかったと思う。
所詮そんなもんだから、心の隅にでも留めといてくださいノシ
605ぐうたら:2005/06/11(土) 12:44:12 ID:qrUQthYF
>>604さん
むぅ…ビシバシ言ってくれと自分で言ったのだけれども、やっぱりキツい…
常体、敬体は敬体のほうがメインなんだけど、たまには白鳥クンだってパニくって状態にだってなるんですよ?と、言い訳がましいことを。
金がイタいと感じられるのも自分でも納得です。
だって6歳と19歳でラブコメなんか出来るかってんだー!とか思って半ばヤケになった所もあったのです。
ご指南のほど、ありがとうございました。
赤は、皆さんに良かったといって貰えるようにしていきたいと思います。

606ぐうたら:2005/06/11(土) 12:52:58 ID:qrUQthYF
連レスでごめんなさい。
>>605の二行目、「パニ食って常態」ではなく「パニくって常体」です。
607名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 13:09:34 ID:mkFDX1DW
ガンバですよ。
まあ、苦言全てを鵜呑みにするのではなくそれをどう昇華していくかが大事じゃないですかね。
自分の持ち味まで消しちゃうのはなんですから。

>>603
あ、いや、考えていると言っても「恋のマホウ」の続きじゃないです。
設定はまったく別なんでそっちで期待されると辛いかも。
ぐうたらさんのが投下された後にでもほぞほぞと出しておきます。
608名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 14:24:24 ID:xYUL/6eU
保管庫の棗のギャルゲみたいな画
グッドだね!
609テイル:2005/06/11(土) 15:16:08 ID:FQ2hFUdE
ある程度進んだので、初めの部分を投下します。
さわりなので、ちょっとつまらないかも知れませんが。

それでは、「M.I.W.」第一次投下を開始します。
610M.I.W.(1):2005/06/11(土) 15:17:42 ID:FQ2hFUdE
今年も、間もなく終わろうとしている。
今日は、珠ちゃんと二人で買出しだ。
珠ちゃんは梢ちゃんと行きたかったみたいだけど、たまたま用事があったみたいだ。
梢ちゃんも女子高生とはいえ、鳴滝荘大家。
年の瀬にもなれば、色々な雑務があるのだろう。
本当、大変だな…
出来ることなら、白鳥クンとの青春を目一杯楽しませてあげたいんだけど…

買い物からの帰り道。
「麺 麺 カロリー麺〜 戦車に ちゅーじゅーぱっちゅ 
 モードが しっくりばっちょん…」
「桃さん、何ですかその変な歌は」
「ネットでちょっとばかり話題になっててね、それが結構印象に残っちゃって…」
「どうでもいいですけど、日本語になってないです」
「そりゃそうよ、これは韓国の歌だもの」
「…はぁ?」
「気分がいいから、つい歌っちゃった。ホント、今日はついてるし」
そう、今日は物凄くついている。
前々から欲しかったDVDが上手い具合に安売りになっていたし、
手に入るとは思わなかった絶版モノを掘り当てたと来れば、これを
「ついている」と言わないで何と言うんだろう。

今日は、いい事が二度もあった。
二度あることは三度ある。
さて、三度目には何が来るのやら…
611M.I.W.(2):2005/06/11(土) 15:18:29 ID:FQ2hFUdE
「珠ちゃん、この曲聴いたことない?結構耳に残るよ」
「私は梢ちゃんラブですから、そんなワケのワカラナイ曲に興味はないです〜」
「そっか…残念だわね…
 母ちゃん 母ちゃん 目医者は嫌よ アップの提灯で 猿がチャチャチャ ヘイ…」
しょうがないので、また口ずさむことにした。
ダンス系の曲で、中々のアップテンポで私は好きなんだけどな…
今度、聴かせてあげようかな…
「とにかく、早く帰ろうか。梢ちゃんも大変だから、手伝ってあげなきゃ」
「です〜」
一応大掃除は終わったが、それ以外にもやる事はたくさんある。
面倒事はさっさと片付けて、大晦日は紅白をのんびり見なくちゃ…

見慣れた道に入る。
そこの角を曲がれば、もう鳴滝荘だ。
いつもの賑やかな家族が待っている。

いつものように敷地に入り。
いつものように、勢い良く玄関を開ける。

「たっだいまー!」


それが。
これから始まる悪夢の、第一章だった。
612M.I.W.(3):2005/06/11(土) 16:04:59 ID:FQ2hFUdE

玄関を開けてまず、血の臭いが鼻を突く。
女子ならば誰でも慣れてはいるが、これは、量が多い。
「…な、なんなの、これは…」
不安と焦燥に駆られながら、私達は廊下を進む。
どうやら、三度目は、なさそうだ。

そして、突き当たったところで。


黒崎朝美。
黒崎沙夜子。
灰原由起夫。
白鳥隆士。
私と珠ちゃんは、四人の死体を発見した。


朝美ちゃん。
胸を一突き。
ピクリとも動かない。
沙夜ちゃん。
腹を抉られている。
血が、まだ流れ出ている。
バラさん。
手足を?がれている。
ジョニーも、そこに転がっている。
出血多量。

そして、白鳥クンは――――

「―――白鳥クンっ!!!」
613M.I.W.(4):2005/06/11(土) 16:06:53 ID:FQ2hFUdE
白鳥クンは、まだ生きていた。
文字通り、虫の息だ。
お腹の出血を辛うじて押さえているが、それでも血が流れ出る。
「白鳥クン、大丈夫!?何があったの!?ねぇ!?」
「桃乃、さん…ワケの分からない、物体が、空から、やって、きて…
 僕達を、ことごと、く、倒して、いって…こずえ、ちゃ、を…」
「もういい!しゃべらないで!出血が止まらない…」
「…もう、いいん、です…もも、の、さ…」
白鳥クンは、それでも喋り続ける。
「ももの、さん…たま、み、ちゃんに、伝えて、下さい…
 僕は、梢、ちゃ、を、守れ、なかった…約束、を、守れ、なくて、ゴメン、と…」
そこまで言って。
何があったかを私に伝えて。
白鳥くんは―――息絶えた。
「―――白鳥クン!白鳥クン!目を開けて!白鳥クン!」
何度言っても、白鳥くんは目を開けなかった。

「―――桃さん」

後ろから、珠ちゃんが話し掛ける。
「―――どうしたの」
「梢ちゃんが―――」


「梢ちゃんが―――どこにもいないです」


「―――ええ、アタシも、今さっき、白鳥クンから聞いた」
「ですか…」
614M.I.W.(5):2005/06/11(土) 16:07:22 ID:FQ2hFUdE
白鳥クンとのやりとりを、珠ちゃんにも話す。
「…白鳥クン、最後に珠ちゃんに謝ってたわ…梢ちゃんを守れなかったって。
 でも、こんなんじゃ、誰だって、梢ちゃんを守れないのは目に見えているのに…」
ワケのワカラナイ物体。
思い当たる節は――ない。
「ここまでするなんて―――人間業じゃ、ないです。
 こんなことをするのは、悪魔か―――あるいは」


「―――あるイは、地球外生命体デスよ、珠実部員」


そこには。
青短高オカルト部の部長がいた。


「…部長…どうしてここに…」
「前々カラ、少しこノ辺の様子ガ変だっタのデスよ。
 周囲を調査しテいたら…ここニ、辿り着キましタ」
部長さんは続ける。
白鳥クン達の亡骸には、目もくれず。

「梢部員は、彼ら―――異星人の標的ダッタのデスよ、珠実部員」
「!?…なぜ、梢ちゃんが…」
珠ちゃんの顔はみるみる青ざめていく。
予想もしない事実に。
「それハ」
部長さんは言った。


「―――梢部員ガ、多重人格だからデスよ」
615テイル:2005/06/11(土) 16:20:30 ID:FQ2hFUdE
今はここまでです。
SFモノなんで、当然の如く部長召喚です。
このあとどうなるかは、お楽しみで…

テイル は こうそう を ねりに はいった!
616ぐうたら:2005/06/11(土) 17:15:51 ID:qrUQthYF
うぐぅ、凄くハードやねぇ…
展開の読めなさにGJ!
続きが気になりマス。
617テイル:2005/06/11(土) 17:37:38 ID:FQ2hFUdE
あ、>>612の「?」は「もがれている」です。
漢字変換で「?がれている」と打ったら認識してくれなかったようです…orz
618ぐうたら:2005/06/11(土) 18:04:23 ID:qrUQthYF
>>617
また認識されてないよまた認識されてないよww
619テイル:2005/06/11(土) 18:15:00 ID:FQ2hFUdE
あれなのかね、常用漢字ではないみたい…orz
620名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 18:37:34 ID:mkFDX1DW
まさに表現不能な状態。
621名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 22:29:06 ID:GKC9SaBt
まあ常用されてたら嫌な漢字ではある
622名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 23:08:37 ID:mkFDX1DW
というか、タイトルはやっぱり麺・イン・ブr…
623ぐうたら:2005/06/11(土) 23:15:43 ID:NQm7lWRy
ふおおおおおゥッ!!!
凄い!凄すぎる!!
……ゴメンナサイ、取り乱しました。
今現在赤を製作中ですが、なんかめちゃくちゃハイスピードで執筆中です!
筆(じゃないけど)が止まらないとはまさにこのことッ!
明日中には投下できそうなので、皆様に喜んでいただけるモノを提供できるようになりたいです!
では〜
624テイル:2005/06/11(土) 23:50:25 ID:FQ2hFUdE
>>622
まあ、アレダヨ…たまたま重なったダケダヨ?
勿論全然チガウヨ?

しかし、登場主要キャラがこれだけだから、執筆(タイピング?)スピードも
遅めにセーブされています…
別にATS-Pを設置した訳でもなく。

場違いネタスマソ
625名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 23:57:39 ID:OmY+DcfB
>>624
>ATS-P
ここでこの単語をが聞けるとはw
626名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 00:00:33 ID:OmY+DcfB
連投でごめんなさい
「単語をが」ではなく「単語を」です
627名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 00:21:11 ID:5tHvNyUU
まほらばスレ7月以降は失速の予感。
何故その予感がしたかはガンガン本誌を読んだならばわかります
628名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 00:21:43 ID:5tHvNyUU
sage忘れスマソカッタ
629名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 00:24:38 ID:g5N0qNso
630M.I.W.(6):2005/06/12(日) 00:32:05 ID:IUsGYpne

「―――な」
なぜ、そのことを。
珠ちゃんはそう言いたかったのだろう。
でも、それは出来なかった。
部長さんは、手を上げて珠ちゃんを制す。

「ドウやら、お客サンのようデス」

私達は後ろを向く。
そこには―――

中庭には、人の形をした、異形が立っていた。
それも、複数。

「―――な、なによ、あれ」
私は、ようやく口を開く。
姿形は人のように見える。
しかし、その顔に表情は無い。
まるで、粘土で作った人形のようだ。
何よりもまず、そう思った。

「オマエラ、ナニモノダ…?」
「…<リーズヘクテ>デハナイナ。デハ、キエテモラウ」
「<リーズヘクテ>デハナイモノハ、キエロ」
彼らは、否、あいつらは、私達に向かって歩いてくる。

否。
それよりも早く、珠ちゃんが飛び出していた。
631M.I.W.(7):2005/06/12(日) 00:34:27 ID:IUsGYpne
「――――珠ちゃん、待って!!!」
「うわあああああああああああっっっ!!!」
珠ちゃんが、一気に庭へ飛び出す!!!
普段の珠ちゃんとはかけ離れた、疾い動き。
一跳びで、奴らの目前に躍り出る。
そこからは、珠ちゃんの独壇場。

「だあああああああああああああああ!!!!!!!
 よくも…よくも梢ちゃんを!!!!!」

それは、珠ちゃんだけの舞台に思えた。
奴らは…次々に薙ぎ倒されていく。
目にも、留まらぬ速さで。
ある者は首を落とされ。
ある者は腕を引き千切られ。
ある者は胴体と四肢を分離させられ。

そしてそこには、肉塊が生まれた。
何体分とも分からない、肉塊が。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………」

一方の珠ちゃんは、一応、無傷だった。
それでも、相当に疲れている。
それもそうだろう。
相手は、少なくとも人間ではない。
そんな訳の分からない物体相手に……何が、出来るというのか。

「よくも、よくも、梢ちゃんを……」
珠ちゃんは、また呟く。
632M.I.W.(8):2005/06/12(日) 00:35:54 ID:IUsGYpne
そして。
その言葉に反応するかのように。肉塊が動き出した。

「―――え」
それは、私と、珠ちゃんが発したものだった。
それは――みるみるうちに、先程の人形に戻っていく。

「―――ナンダ、オマエハ」
「ナンナンダ、ソノツヨサハ」
「ナゼ、アノ<リーズヘクテ>ニシュウチャクスル?」
「梢ちゃんは――私の全て。だから、私は全力を以てあなた達を倒す」
「ムリダ」
彼らは断言する。
「オマエニオレタチヲタオスコトハデキナイ」
「ドウバラバラニサレテモ、マタモトノカタチニモドル」
「――そん、な」
最後通牒を突きつけられたような、感じ。
珠ちゃんは、力無く、その場に座り込んだ。
「ジャマモノハキエテモラウ」
「ジャマモノハキエテモラウ」
そして、彼らが歩み寄る。
珠ちゃんに、とどめを刺そうとするために。


「待ちなサイ」


そう言ったのは、こともあろうに、部長さんだった。
633テイル:2005/06/12(日) 00:38:38 ID:IUsGYpne
続きを書いたので第二次投下です。
これから、部長が大活躍します。

というか、思い切りあのネタをパクっていますねorz

しかし、鳴滝荘の面々は部長を何と呼べばいいのやら…
妙案がないものか…
634名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 01:01:19 ID:5rid62BI
作品としては悪くない、むしろいい作品だと思いますけど
まほらばにはちょっとあわないかな…とか思ってみたり


>>627
読んだが分からなかった
635名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 01:13:27 ID:vukOtnbu
>>634
アニメが終わるからじゃないか?
もしくはファンブックが出るから細かい設定が出てSSが書きにくくなるとか
636名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 01:52:00 ID:pAELn+Tb
まさか連載終了なんて言わないよな。
637名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 02:36:49 ID:ExLsf/oW
そら急過ぎ…
638名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 02:43:13 ID:9t+IIxUK
それはnight信じたい
639名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 07:02:19 ID:8vliPQdK
>>622
何を言っているんだ!麺なわけないだろ?だって男は皆死んで…








ハッ!煤i゚д゚ )エローリか!!
640名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 07:17:28 ID:PfQtBt9B
>>632
>>そう言ったのは、こともあろうに、部長さんだった


・・・・・・・・・・・・・・『こともあろうに』って・・

部長さんに発言の自由無しデスか・・orz
641名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 16:39:02 ID:cBAvqX/9
>>633
ふと―――。
珠実が格闘しているモンスターを「パポップ」で想像してしまった。

ギャグとしか思えなくなったorz
642名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 18:07:35 ID:ExLsf/oW
キノコ食った奴はパプッペだったような。
643名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 18:38:39 ID:cBAvqX/9
複数いるから敢えてキノコの方にしたんですよ
644テイル:2005/06/12(日) 19:07:34 ID:IUsGYpne
>>640
いや、単に発言の機会が無かっただけだから…ゴメンね。

なんか敵が一人歩きしてる…
いや、それはともかく。

「M.I.W.」第三次投下、開始します。
なんか、暴走気味ですが。
645M.I.W.(9):2005/06/12(日) 19:08:29 ID:IUsGYpne
奴らが現れてから、沈黙を保ち続けていた部長さんが、口を開いた。
「―――ちょ、ちょっと、これは遊びじゃないのよ。
 あんたの魔女ごっことはワケが―――」
「―――私ノ黒魔術ヲ、舐めナイでくだサイ、あばずれさン」
「………」
いや―――そこで、その呼び名はやめて欲しい。
やめて欲しい、けど―――
部長さんは、前に出る。
「――ア?」
「―――アリスト」
部長さんは、何かを呟く。
右手を差し出して。
水晶玉を、その手のひらの上に持って。
「アリスト・エル・デール・ヒョイル・ダスティ・マリーズ・ミルトゥ・シーズ・
 ノアール・スクリー・バルク・ガシルトゥス・コモナス・バビーク」
これは…詠唱?
何かの魔術の、詠唱だろうか。
しかし、効果が目に見えている。
彼らは…動けないでいる!!
「…オマエ、ナニヲシタ?」
「ソレハイッタイ、ナンナノダ?」
彼らの問いに構わず、部長さんは続ける。
「グラン・ジョンミン・メイル・ヨギ・シンジ・クミンガ・サラン・テリーガ・
 エロイム・ウラーム・マロイム・ラクルム・サンウ・ベッカ――――――」

「――――アゾルト!!!」
646M.I.W.(10):2005/06/12(日) 19:09:25 ID:IUsGYpne
その瞬間―――
彼らは、爆発した。
爆風に目が眩む。
「――――――――――!!!!」
何も聞こえない。
聞こえるのは爆音だけ。


そして。
そして、爆風が収まった。


「―――ふう」
た…助かった。
殺し屋ブラザーズ以来の危機だったような…
とにかく、生きている。
それだけは、確か。

一方、中庭に目を移す。
そこには、辛うじて生き残った、奴らのうちの一体がいた。
その他は、どこにもいない。
「ガ……………グ…………」
今にも、死に絶えそうだ。
しかし。

「―――あなタに、訊きたイ事ガありマス」

部長が、中庭に降りる。
そして、生き残りに問い掛けた。
647M.I.W.(11):2005/06/12(日) 19:11:10 ID:IUsGYpne
「―――あなタがたノ言う、<リーズヘクテ>とハ何でスか」
「―――カミダ。<リーズヘクテ>ハ、フクスウノカオヲモツソンザイダ。
 ワレワレハ、コノホシニソンザイスル<リーズヘクテ>ヲシラベテキタ。
 ソシテ、コノバショデ、サイコウノ<リーズヘクテ>ニデアッタ」
「―――梢部員を、どうスル気でスか」
「アレハ―――ワレワレガモライウケ、センノウスル。アレニハ―――」

「ワレワレノミライヲサユウスル、カギガ、アル――――」

そこまで言って、奴は絶えた。
そして、砂となって消えた。

「――<複数の顔ヲ持ツ存在>―――<リーズヘクテ>、でスか」
部長さんは呟く。
「―――すごいのね、今時の魔女ごっこって」
「これハ『ごっこ』でハありマセン。殺戮を目的とシた―――正真正銘の魔術デス」
「そんな、ことが、ある、ワケ…」
いや―――実際、あるのだろう。
私は、嘘臭い事は信じない。
でも。
これは。
どう考えても、嘘ではない…
それは、結果として、そこに存在している―――
648M.I.W.(12):2005/06/12(日) 19:12:14 ID:IUsGYpne
部長さんは、珠ちゃんに歩み寄る。
「何をしテいるノでスか、珠実部員」
「……部長……」
「梢部員ヲ、助ケルのでハ、なイのデスか」
「……私は……無力だった……」
無力。
力が無いこと。
何も、出来ないこと。
「……悔しクは、なイのでスか、珠実部員」
「……え……?」
「梢部員ヲ奪ワレ……大切な人達ヲ殺サレ……ソシテ、」

「あなタの大切ナ場所ヲ汚サレて、悔しクは、なイのですか」

鳴滝荘。
私達が、偶然、出会った場所。
でも、それが偶然でも。
私達は、その偶然を大切にした。
たくさんの喜びや、苦労を、共にした。
私達は―――家族。
鳴滝荘に一緒に住む、大切な、家族。
649M.I.W.(13):2005/06/12(日) 19:12:58 ID:IUsGYpne
「―――私は、悔しい、です」
「はイ」
「私達の大切な場所を―――汚されて、とても、悔しいです」
「はイ」
「だから―――私は、梢ちゃんを、取り戻します。
 部長も―――協力してください」
「最初かラ―――そノつもリデスよ、珠実部員」
「桃さんも―――やってくれますよね?」
珠ちゃんは、私を見る。
その眼には、決意があった。
覚悟を決めた、眼。
その想いは―――私も、同じだったから―――
「―――当たり前でしょ。梢ちゃんを、取り返さなくちゃ」
「―――です!」
私達は。
奴らに、宣戦布告する。
梢ちゃんを、取り返すために。

大切な人を―――取り戻すために。
650テイル:2005/06/12(日) 19:18:19 ID:IUsGYpne
今回はここまで。
次回は、休養期間…かな?

文の一部は、私の好きなある作家を題材にしています。
13とか、バリバリ似ていると思います。

次はいつ書けるかな…
でも、ぐうたらさんの「赤」も気になる……
651名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 19:41:03 ID:cBAvqX/9
乙です。
なにやら浪漫ホラーっぽい感じですな。
まあ、桃さんの妄想、なら十分アリでしょう。

ところでぐうたらサンじゃないけど赤いの投下してもいいですか?
恋のマホウほどじゃないけど長くなっちゃいますが…。
652ぐうたら:2005/06/12(日) 20:13:05 ID:BHWd8rUP
>>651サン 
どぞどぞ。
こっちはも少しかかりそうなんで。
本当に4レス分オーバーしちゃったよ…乞うご期待!
653Simple:2005/06/12(日) 20:22:08 ID:cBAvqX/9
「はぁぁぁ〜〜〜〜……」
梅雨を開け、晴れ渡った空の元。
鳴滝荘の縁側に腰掛け彼女───赤坂早紀は悩んでいた。

悩みの原因は彼女とその恋人、白鳥隆士の事である。
白鳥とつきあい始めて半年以上が過ぎ、二人の仲も随分進展した…と思っていた。
しかし、実際のところはようやくキス1回を済ませたきり。
お世辞にも進展が早いとは言えない状況だった。
(あらあら、早紀さん、まだお悩みですか?)
「ん…? なんだ、千百合か」
心の中からもうひとりの自分───緑川千百合がささやきかけてきた。
(まったく、あなたは奥手でいけませんねぇ)
「んなこたぁ、わかってるって…」
(そんなに考え込んで、あなたらしくもないですよ?)
「わかってるっつってんだろ…」
早紀は千百合の言葉を遮るようにぼやいた。

あれから自分の中に別の自分がいると理解し、最近では各々コミュニケーションが取れるようになっていた。
まだ、相性がいい相手以外とはなかなか話し合うことは出来ないが、
その相性のいい相手がよりによって千百合だったことが早紀の悩みを大きくしていた。
(愛があるならそれは当然のことですよ?)
「わかってるっての…」
早紀の悩み…それは白鳥との関係をなかなか進展させられないことだった。
この体の主…蒼葉梢を筆頭に、積極的な千百合、引っ込み思案な棗でさえ白鳥と一線を越えていた。
しかし、自分は未だにその一線を越えられないでいる。
初めは「そういうこと」は他の連中に任せればいい、と思っていたがやはり早紀とてひとりの女の子。
次第にその想いは強まりはじめていたのだった。
654Simple:2005/06/12(日) 20:22:34 ID:cBAvqX/9
「はぁ〜…」
(怖いのは最初だけですよ? あとは目眩くラヴライフが待っているんですから)
「べ、別に怖がってなんていねーよ!」
(そうですか? まぁ…覚悟の問題なのでしょうけど)
実際のところは怖いと思っているのかもしれない。
しかし、白鳥とだったら一線を越えてもいいと思っている自分もいる。
躊躇しているのは一線を越えることでふたりは変わってしまうんじゃないか…そんな思いがあったからだ。
要するに千百合の言うように『覚悟の問題』なわけだが。
「どーすっかなぁ…」
(私も最初は悩みましたけど…済んでしまえば意外とあっけないものですよ?)
「うーん…」
(自分の気持ちに素直になるのも悪くはないことです)
「おめーみてーに割り切れれば楽なんだろうけどな…」
正直なところ、千百合の自分に正直なところは羨ましかった。
ちょっと行き過ぎなきらいはあるが、それでもその積極性と行動力は早紀に足りないものだ。
(愛する人のために変わる努力をする、それはとても大事なことです)
「ああ…」
(なんだったら私がリードして…)
「いい! いいっての! アタシはアタシのやり方でやるから!」
(そうですか? 残念ですねえ…)
そうはいってみてもやはり踏ん切りがつくわけでもない。
早紀はまた一つ大きなため息をつくのだった。

「愛があるなら、かぁ…」
そう呟き唇に指で触れた。
一度きりのことだったが、白鳥との口づけは今でもはっきりと覚えている。
「白鳥……」
その温もりを、その愛を、もっともっと欲しい。
いつしかその想いは抑えきれるものではなくなっていた。
「はぁぁぁ〜〜〜〜…………」
655Simple:2005/06/12(日) 20:22:58 ID:cBAvqX/9
「…早紀ちゃん?」
いつからそこにいたのだろう。
呼ばれて振り返るとそこには白鳥が立っていた。
「ふぇ!? し、白鳥、いつからそこに!?」
「えっ? い、いや、いま通りかかったところだけど…」
「そ、そうか…。 ビックリしたぁ……」
突然現れた思い人に早紀はすっかりうろたえていた。
「それより、早紀ちゃんどうしたの? なんか悩んでるみたいだったけど」
「なっ!? ななななんでもねえよっ!!」
「でもなんかため息ついてたし…」
「いいいい、いいんだ! 気にすんなっ気にしないでくれっ!!!」
「でも…」
「いいからっ!!」
必死で取り繕う早紀。
まるでウブな少女のように慌てふためき、自分を見失う。
(あああ、なにやってんだ、アタシは! こんな調子じゃダメだろうがっ!)
「はぁ…」
ふと気付く、そんな自分の不甲斐なさ。
なんだか急に自分情けなくなってガックリと肩の力が抜ける。
「あの…早紀ちゃん?」
「ん…あぁ」
「ホント…大丈夫? 悩みがあるなら相談に乗るけど…?」
「あぁ…」
すっかり悄気て投げやりな返事を返す早紀。
そんな早紀を白鳥は本当に心配するかのような眼差しで語りかけてくる。
(なにやってんだ、アタシは…)
「…悩み、か……」
「…早紀ちゃん?」
「なぁ、白鳥…」
「な、なに…?」
「今日…………暇、か…………?」
656Simple:2005/06/12(日) 20:23:18 ID:cBAvqX/9
「う〜ん、いい風だぜ」
「そうだね。 でも折角ならもうちょっと早く出ればよかったね」
「ま〜な〜。 思い立ったのが遅かったからしょうがねーか」
電車に揺られること1時間あまり。
早紀と白鳥は少し遠くへ足を伸ばし、海の見える公園に来ていた。
「こんなところまで来たの、久しぶりだよ」
「あぁ、そーだな」
ふたりは海辺の手すりに腰掛け、港に出入りする船を眺めていた。
初夏の潮風が頬を撫で、髪を揺らす。
「たまには家を離れて外を見るのも悪くないもんだなー」
「うん、そうだね。 それよりこれからどうするの?」
「ん〜、特に考えてねーんだ」
「そ、そうなの?」
「単に外に出たかっただけってのもあるからな」
そう言って水面を行くカモメたちを目で追いかける。
別の意味も含んでいたが白鳥は当然気付かなかった。
「外の空気が吸えりゃどこだってよかったんだ、ホントは」
「そっか…。 じゃ、せっかくだしこの辺りでも歩こうか」
「ああ、特に行くところもねーしな」
657Simple:2005/06/12(日) 20:23:32 ID:cBAvqX/9
その後───。
アウトレットモールでウィンドウショッピングしたり。
異国の様々な輸入雑貨を見て驚いたり。
展望台に上って景色を楽しんだり───。
久しぶりに恋人としての時間を満喫した。
でも───。

(…やっぱダメか……)

白鳥と一緒に過ごす時間は確かに楽しかった。
笑ったり驚いたり喜んだり。
いろんなことを体験出来たし、ふたりだけの思い出も増えた。
しかし、どうしても心が満たされない───そんな思いは消えなかった。
いや、むしろどんどんその気持ちが強くなっている感じさえした。
言い様のない気持ちが彼女の心をかき乱す。
そんな自分を隠すように早紀ははしゃぐフリをしていた。

「なぁ、白鳥。 次はあれ乗ろうぜ」
658Simple:2005/06/12(日) 20:23:49 ID:cBAvqX/9
───。
ふたりを乗せたゴンドラがゆっくりと上がっていく。
海辺の観覧車から見る沈み行く夕日。
夜のとばりがおり始めた街をぼんやりとふたりで眺めていた。

「……早紀ちゃん?」
「…ん?」
ゴンドラの高さが中腹までさしかかった頃、それまで何も言わずに黙っていた白鳥は口を開いた。
「どうしたの? やっぱり今日の早紀ちゃん、なんか変だよ?」
「…そうか?」
「うん…さっきから心ここにあらずって感じで…」
「ん…そう、か…。 そう、かもな…」
「一体どうしちゃったの? なんか悩みがあるなら相談に乗るよ?」
気付いていても何も言わずにつき合ってくれていた。
そんな白鳥の優しさが、何故か胸にチクリと刺さる。
「どうか…しちゃったのかもな…」
「早紀ちゃん…?」
「なぁ、白鳥……」
「え…?」
「…なんでもない」
「………」
そうしてまた訪れる沈黙。
遠くに見る沈み行く太陽を自分の心境に重ねてみたり。
センチになる自分にまたため息が漏れるのだった。
659Simple:2005/06/12(日) 20:24:07 ID:cBAvqX/9
観覧車を降りたふたりはどこへ行くわけでもなく海辺の遊歩道を歩いていた。
すっかり日は沈み、辺りは夜の空気が満ちはじめていた。
会話はなく、ただ時が過ぎる。
「…………」
「…ねぇ、早紀ちゃん。 そろそろ帰ろうか?」
先に口を開いたのは白鳥だった。
「……」
「早紀ちゃん…?」
「…もうちょっとだけ」
「でもそろそろ帰らないと、みんな心配しちゃうよ…?」
「………」
早紀は無言で歩み寄り、白鳥の手を取った。
「…頼む」
「………」

結局、そのままふたりで夕食を摂ることにした。
外出してふたりで夕食を食べるなんて事は初めてだ。
しかし、それに特別な感情がわくこともない。
ふたりの間にはこれといった会話もない。
料理の味なんかわからなかった。

食事を済ませたふたりはまた夜の街を彷徨っていた。
微妙な空気、微妙な距離。
それが今のふたりを表していた。
660Simple:2005/06/12(日) 20:24:43 ID:cBAvqX/9
「早紀ちゃん、そろそろ帰らないと…」
「………」
時刻は夜10時を過ぎ、そろそろ帰りの電車が厳しくなる時刻だった。
それでも早紀からは家路に着こうという意志は感じられない。
「早紀ちゃんってば」
「…珠実には、今日は帰らないって、言ってある」
「……え?」
長い沈黙を破って早紀はぽつっと呟く。
突然のことに白鳥は言葉の意味がわからないでいた。
「ど、どうしたの? 早紀ちゃん…」
「今日は、帰らない」
2度目の宣言。
俯きっぱなしで表情は見えないが早紀の口からは確かにそう聞こえた。
いくら鈍感な白鳥でも早紀の態度からその言葉の意味を理解することは出来た。
「早紀…ちゃん…」
「頼む…」
そう呟くと早紀は俯いたまま戸惑う白鳥の手を取り、ネオンの灯る建物へと足を向けた。
661名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 20:29:00 ID:cBAvqX/9
と、ここまでです。
とりあえず、3/7まで投下して今6書いてますが
お察しの如くこの後はアレでナニです。

いや、割り切れない分だけ純愛って難しいなぁって感じ。
遅々として筆が進みませんよ、とほほ。

赤い人なのに3倍速はむりぽ。
662名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 20:34:36 ID:JnZixDMv
ホーーーーーーーーーーーーーーッ!
な、生殺しですよ。

続き期待しています!
663テイル:2005/06/12(日) 20:44:57 ID:QSbqT1H2
>>661
GJ!!
この後の展開に期待。
664名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 21:13:10 ID:cqHL0zRx
>>661
続きが気になって課題がはかどr(ry
665名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 21:19:41 ID:CHCnGBRU
>>661
GJ!
早紀(;´Д`)ハァハァ
首を長くして待ってます
666名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 21:39:53 ID:jNln1KMB
>>661
GJ!
久しぶりに来るか?来ちゃうのか?
667名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 21:48:42 ID:/5NDk6xc
中学生の作文以来キタ───(・∀・)───
668名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 21:56:07 ID:1EyazyPQ
厨房のってどれのこと?
669ぐうたら:2005/06/12(日) 22:02:48 ID:BHWd8rUP
あれだよ…俺が少し喧嘩売った…梢の四人の〜とか言うの。保管庫にあるよ。
670名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 22:02:52 ID:9t+IIxUK
くる〜(・=・)
671名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 22:03:53 ID:9t+IIxUK
あげちゃいましたすいません
672名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 22:17:52 ID:cBAvqX/9
な、なんか反響いっぱい!?
えと、もう少し待ってください。
今入れてますんで。

放送前には出せる…かも?
673名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 23:06:16 ID:OFQHeBhY
>>672
期待してますよ〜
674名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 23:09:18 ID:8vliPQdK
>>672
は、早く続きを…ハァハァ
でないと…ホー(ry


これではバイトに身が入らんorz
675名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 23:22:45 ID:ExLsf/oW
さっき既に違う漫画の妄想で抜いてしまった漏れはどうしたら(略
676名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 23:28:28 ID:T1RmCBcJ
…エロが投稿されていなかったからと言って…
>>675が他の漫画の妄想で抜いたりしたら私…

 恨むわ…
 呪うわ…
677テイル:2005/06/12(日) 23:38:02 ID:IUsGYpne
>>676
ヒィー((((((((iiii∩;゚д゚;))))))))呪われる…

あー、今の自己満足小説が終わったら千百ちゃん書こうっと。
678名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 23:46:15 ID:BHWd8rUP
ところでこのスレの書き手で21未満いる?
679名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 23:47:24 ID:BHWd8rUP
うわw俺のIDバスト・ヒップ・ウエスト、アップwww
680名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 23:48:25 ID:cqHL0zRx
一人は確実にいる。
681テイル:2005/06/12(日) 23:51:03 ID:IUsGYpne
ノシ

一応自己責任の下でやっているから。
ここみたいに一般向けSSが多い所はU21も多いと思うけど…
でもこの質問ほど無意味な質問は無いな。

流れを変えちゃうようでスマソ
682ぐうたら:2005/06/12(日) 23:56:30 ID:A4QjsMiP
あ、俺もー。
ってかバリバリ学生なんだけど…
だから本当に21以上の方には生意気な口きく場合もあるけど御用者のほどを。
まぁ、俺は一生エロは書かないんだけど。
赤、現在鋭意製作中〜。団長!手が止まらねええぇぇぇ!!!
683テイル:2005/06/12(日) 23:58:15 ID:IUsGYpne
>>682
隊長!乙であります!
自分、作品の完成を楽しみに待っているであります!
684名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 00:03:25 ID:R5nhmlAZ
ここの>>240さんのTSモノ読んでから妄想爆発しちゃってるんですが、
思いつくのは全部240さんの作品の設定を土台にしてしまうので
投下の可否をお聞きしたいのですが・・・
685名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 00:07:33 ID:StCipK2e
ん?いいッスよ。
私は1作品の設定をあまり使い回ししないんで気に入って頂けたならどうぞです。

あ、自分はバリバリ21以上ですな。
とりあえずSimpleのほうは最終調整中です。
686テイル:2005/06/13(月) 00:10:48 ID:OZbz8Guw
>>684
多分大丈夫…だとは思う。
>>240氏の理解が得られればいいのかな…

どちらにしろ、作品がなんとなく面白そうなので投下きぼん。
687名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 00:13:29 ID:R5nhmlAZ
>>685
ご了承ありがとうございます。では取り掛かることにします。
688名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 00:16:53 ID:R5nhmlAZ
>>686
うわ、実はSSを書くのは初めてなもんで不慣れなトコロもあるので
あまり期待しないでください。できるだけ頑張りますが。
689名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 00:16:55 ID:ejmqecQJ
年齢関係のことは、気にする人もいるだろうし、(エロ関係なしに)一応この板のルールとかでもあるので、
あんまし大きな声で言わないほうが(話題にしない方が)良いですよのこと。変に場が荒れちゃったりしたらアレだしね。

というわけで、赤白続ききぼんうー。正直、自分の書いた同様シチュのと比べたら、自作のあまりの稚拙さに恥ずかしくなってしまうですよ。
690名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 00:26:41 ID:StCipK2e
んじゃ、だいたい編集終わりましたんでSimpleの続き投下します。
さっきより長くなるのでしばしお待ちを。
691Simple:2005/06/13(月) 00:27:07 ID:StCipK2e
ザー───。
「…………」
ホテルにチェックインした後、早紀はバスルームに籠もっていた。
考えることが多すぎて何も考えられないまま時間だけが過ぎる。
(その様子だと…まだ決心が付かないようですね)
「……」
心ここにあらずのまま立ちつくしていると千百合が語りかけてきた。
(まだ、怖いんですね)
「……」
(あなたの迷いもわかります。 ただこれだけは言わせてください)
「……」
何も言わぬ早紀に千百合は優しく語り続けた。
(隆ちゃんを、信じてください)
「…信じる…?」
(そう、あの人はあなたの愛する人、白鳥隆士さんなのですよ?)
「アタシの…」
(だから大丈夫。 隆ちゃんに委ねちゃいましょう)
「………」
顔は見えないがもうひとりの自分、緑川千百合は自分に微笑みかけてくれているような気がした。
(じゃ、私は引っ込みます。 頑張ってね♪)
「白鳥を…信じる…」
早紀は千百合の言葉を反芻して、その意味をかみしめた。
「白鳥………そっか、そうだよな」
(何迷ってたんだ、アタシは…)
意を決したようにシャワーを止め、バスルームを後にした。
その瞳にはもう迷いの色はなかった。
(早紀ちゃん、頑張って!)
(ファイトっ…かも)
(じーーーーーーーっ)
692Simple:2005/06/13(月) 00:27:27 ID:StCipK2e
「早紀ちゃん…」
先にシャワーを浴びて待っていた白鳥が早紀の姿を確認して立ち上がった。
「待たせたな、白鳥」
「あの、早紀ちゃん…無理しないでもいいんだよ?」
白鳥はあくまで早紀を気遣っていた。
今ならわかる。
そんな白鳥だからこそ、早紀は迷っていたのだ。
その優しさが怖かったから。
自分自身の生き方を否定してしまいそうだから。
「いや、もういいんだ」
「もういいって…」
言葉の意味がわからないのか、白鳥は戸惑っていた。
「アタシの気持ちの問題だからさ」
「早紀ちゃん…?」
「バカだよな、アタシ。 ずっと意地張っちゃってさ」
そう言って白鳥に身を預けた。
「あっ…」
「こうやって、し……隆士に甘えるのが怖かったんだ…」
「早紀ちゃん…」
早紀は隆士の温もりを確かめるようにギュッと抱きしめる。
「いつもつっぱって男勝りなフリして…気がついたら誰かに支えてもらうのが怖くなってたんだ」
「……」
「でも…もういいよな? 隆士…」
「早紀、ちゃん……」
「アタシは隆士のこと…好き…だから……」
そう言って早紀は隆士の胸に顔を埋める。
隆士も返事の代わりに強く抱きしめ返した。
693Simple:2005/06/13(月) 00:27:49 ID:StCipK2e
「ん……」

お互いの意志を確かめ合うような長い口づけ。
ふたりはお互いの温もりを感じあうかのように強く抱き合った。

「ん………ふぅ……」
「………!?」

唇を離し、目を開いたとき早紀の瞳には涙が溢れていた。
「さ、早紀ちゃん!?」
「ん、あぁ…」
予想外のことに隆士は慌てふためいた。
「ど、どうしたの!? やっぱり嫌だった!?」
「いや、そうじゃないんだ…」
「えっ……」
「なんかさ…張りつめてたものが切れたって言うか…」
「……」
「悩んでたのがバカらしくなったっつーか…」
隆士の腕に抱かれたまま、早紀はぽつぽつと呟く。
「…なんだろーな。 よくわかんねーや……」
「早紀ちゃん…」
「でも、これだけは言える。 …アタシは今シアワセだ」
零れる涙とは裏腹に早紀の表情は晴れ晴れとしていた。
「……」
「だけど…もっと……欲しいな……」
そう言って隆士の顔をまっすぐに見据え目を閉じる。
「うん……」
隆士は彼女の意志に答えるかのように頷くと、再び唇を重ねた。
694Simple:2005/06/13(月) 00:28:07 ID:StCipK2e
「ん……んんっ……」
口づけを繰り返すうちに早紀の吐息が徐々に熱を帯びてくる。
隆士は抱きしめる腕を緩めると早紀の髪を、体をゆっくりと愛撫し始めた。
「早紀ちゃん…」
「ぅん…隆士……」
隆士自身は梢を含めた他人格の彼女たちとは何度か経験していた。
しかし、早紀にとっては初めての経験。
隆士はゆっくり、優しく早紀の緊張をほぐしていった。
「ちぇ…おめー、なんか手慣れた感じで悔しいぞ」
「そ、そう?」
「そりゃ、アタシは初めてだけどさ…ぁん」
ガウンの上から隆士の手が早紀の胸を優しく撫でる。
「ちょ、ちょっとまてっ」
「あ、嫌だった?」
「そ、そうじゃなくてまだ心の準備がっ…」
「あ、うん。 そっか…」
隆士はいったん手を離し、戸惑う早紀の体を強く抱きしめた。
「あっ……」
「大丈夫だから…」
「ちぇっ、ずるいヤツ…」
自分を包み込む隆士の暖かい温もり。
早紀の緊張はゆっくりと和らいでいった。
695Simple:2005/06/13(月) 00:28:24 ID:StCipK2e
しばらく抱き合ったままだったがやがて早紀はゆっくりと離れた。
「もう平気だ」
「早紀ちゃん…」
「うん……」
早紀はまとっていたガウンをゆっくり脱いでいく。
初めて自らの意志で晒す自分の肌。
形のよいバスト、引き締まったウェスト、すらりと伸びた四肢。
その全てに隆士の瞳は釘付けになる。
早紀の体は緊張のためか紅潮していた。
「りゅ、隆士は他のヤツとしてるから、もう見慣れてるかもしれないけど…」
「………」
「アタシの体、どうだ…?」
「あ、うん…綺麗…だよ」
「そ、そうか…よかった…」
早紀は安心したのかどこか照れた笑みを見せる。
ふたりはどちらともなくまた抱き合う。
「なんか、悔しいな」
「えっ…?」
「他のヤツらはこんないい思いしてたんだなぁって…」
「早紀ちゃん…」
早紀は隆士の腕の中で安らぎを覚えながら目を閉じた。
「千百合のヤツなんか、いっつも自慢しててさ…正直、羨ましかった」
「……! 早紀ちゃん、もしかして…」
「あっ! 違うぞ、アタシはアタシの意志で決めたんだからな!」
「そっか…」
「アタシはただ…隆士にアタシのこともっと知って欲しかったんだ。 だから…」
そう言葉を句切るとふたりはまた唇を重ねた。
696Simple:2005/06/13(月) 00:28:47 ID:StCipK2e
「なんか…恥ずかしいな」
「うん…でも、大丈夫」
早紀はベッドに仰向けに寝転がり、その上に隆士が覆い被さるよう格好でふたりは見つめ合った。
隆士は軽くキスした後、早紀の胸をゆっくりと揉み、もう片方の胸にも唇を這わせる。
「んっ…ちょっとくすぐったいな…んくっ」
最初はむずがっていた早紀もだんだんと熱い吐息を紡いでいく。
「な、んだこれ……こんな…気持ち、初めて………」
「早紀ちゃん……」
隆士にイジられる胸がどんどん熱を帯びていくのがわかる。
先っぽがジンジンと痛いくらい硬くなり、そこに隆士の唇が触れる。
「くふぅ……りゅ、りゅぅし…あ、んんっ……」
「早紀ちゃん、気持ちいい…?」
「わ、わかんね………っ…で、も…もっと」
「うん…」
隆士は早紀の胸を丹念に愛撫しながらも片手を胸から腹部へ、腹部から下腹部へと向かわせていた。
「っ…! あっ、ちょ、ちょっと…!」
「大丈夫…」
戸惑う早紀の制止を振り切って、隆士の指が下腹部の茂みを越えそこに到達した。
(人に与えられる快楽を知ったら、自分の考えがいかに小さなものか思い知らされましたよ)
脳裏にそんな千百合の言葉が思い浮かぶ。
隆士の指が湿り気を帯びたそこに触れたとき電撃が走ったように体が反応した。
「あ、ぅぅ!」
「早紀ちゃん…」
隆士が割れ目からゆっくり指を離すと透明な粘液が絡みついていた。
「んッ…ハァ…見るな、バカァ…」
「早紀ちゃん…初めてなのに感じちゃった?」
「…バカ」
早紀は恥ずかしさのためかそっぽを向く。
実際のところ、早紀の心はどうあれ肉体自体は性的快感に慣れていた。
なので隆士の愛撫で感じるのは当たり前なのである。
697Simple:2005/06/13(月) 00:29:02 ID:StCipK2e
隆士は早紀がそっぽを向いている間に体の位置を変え、早紀の股間に潜り込んでいた。
「っ! ちょっ、まっ……!」
早紀は股間に感じる吐息で状況に気付いたが止める間もなく隆士の愛撫は再開された。
「あっぁああっ!!」
クレパスに沿って隆士の舌が這う。
それはゆっくりとしたものだったが不慣れな早紀にとっては刺激が強すぎた。
「あっ、あっ! ああっやっ!」
割れ目が舌によって開かれるたびにぴちゃぴちゃと水音を立て、全身がビクビクと反応する。
早紀は完全に未知の快感に翻弄されていた。
「や、ぁ…ハァ…ハァ、ハァ…あっあああああっ!!」
愛撫する隆士の指が谷間を突き抜け早紀の最深部に到達したとき、最初の絶頂が押し寄せた。
698Simple:2005/06/13(月) 00:30:18 ID:StCipK2e
「ハァ…ハァハァ…」
「早紀ちゃん、大丈夫?」
「ッ…ハァ…大、丈夫?…じゃねーよ…ハァハァ…」
早紀の全身はぐったりと脱力し、肩で息をしていた。
「少し休憩しようか?」
「……いや…へいき……」
そう言ってのそりと起きあがる。
「さ、早紀ちゃん?」
「今度はアタシの番…」
はいずるように隆士に近寄りガウンを脱がしにかかる。
「えっ、あっちょっと!」
「おめーばっかり好きにはさせねーからな」
慌てふためく隆士を無視して、着ていたガウンをはぎ取った。
途端に彼の股間にそそり立つモノが現れる。
「……で、でけぇな」
「あ、あんまりまじまじ見ないでよ」
「なにいってんだ、さっきアタシの散々いじったろ」
「ええぇ!?」
隆士を問いつめる間に素早くそれを手に取った。
それは想像よりもずっと熱く、硬かった。
初めて間近で見、手にする男のモノに早紀は息を飲み込んだ。
699Simple:2005/06/13(月) 00:30:42 ID:StCipK2e
「す、すげぇ……」
「さ、早紀ちゃんあんまり強く握らないで」
「ん? 強く握るとダメなのか?」
(そう言えばエロ千百が言ってたな)
早紀はたしかこう…と呟きながら隆士のモノをしごき始めた。
途端にビクンと隆士の体が反応する。
「か、感じてんのか? 隆士」
「早紀ちゃん、ちょっと、ダメだってば!」
よく見れば先端から液体が滴り、早紀の手を濡らしていた。
(ア、アタシの手で隆士が感じてるのか…?)
ごくりと生唾を飲み込む。
まじまじとそれを見ていた早紀は意を決したように口を近づけた。
700Simple:2005/06/13(月) 00:31:43 ID:StCipK2e
「ッ! ちょ、ちょっと早紀ちゃん!?」
「お・か・え・し・だ」
早紀はぺろりと先端を舐め、ゆっくりと口に含んだ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!」
(すごく…熱い…)
隆士の体がひときわ大きく反応する。
早紀は千百合から聞いた知識を動員し、手と唇、舌を使って隆士に総攻撃を開始した。
「んっ、んむっ、むっ、んっ」
「早紀ちゃん…早紀ちゃん…!」
(隆士がこんなに感じてる…)
自分の愛撫にこんなに感じてくれている。
それだけで早紀はなんだか嬉しくなった。
嬉しくなったついでに更に激しく隆士を責め立てた。
「さっ、早紀ちゃん、ダメだよっ!」
「んっ?」
「も、もぅっ……!!」
(えっ……?)
あまりの激しい責めに隆士の限界が来ていた。
早紀が気付く間もなく隆士のモノから何かが迸る。
701Simple:2005/06/13(月) 00:31:57 ID:StCipK2e
「んっ!? な、なんだっ!?」
早紀は違和感を感じ慌てて口から引き抜くがもう遅い。
ビクビクと脈打つそれは白濁をまき散らし容赦なく早紀の顔を汚した。
「なっ、なんだこれ!?」
呆然とする早紀の顔を、胸を隆士から迸った白濁が滴った。
「なんだこりゃ…うわ、ネバネバする…ちょっと飲んじまったよ…。 オイ、隆士こりゃは一体…」
「ハァ…ハァ…」
早紀は我に返り、慌てて隆士に詰め寄ろうとするがその隆士はぐったりして肩で息をしていた。
「な、なんだ…? ひょっとして隆士、イっちまったのか…?」
「さ、早紀ちゃん……」
「てことは…これは……」
早紀は己の性知識をフル動員して考えた。
考えた末、出た答え。性交時に男性器から出るもの。答え:セーエキ
「うわわわわわわわっっっ!?!? 隆士、なにしやがんだっ!」
「さ、早紀ちゃん、酷いよ……」
702Simple:2005/06/13(月) 00:32:23 ID:StCipK2e
「ったく、ビックリさせやがって…」
「ははは…」
早紀はティッシュで顔についた精液を拭き取りながら悪態をついた。
「まっ、これでおあいこだな」
「そ、そうだね」
気がつくと早紀のぎこちなさは消え、いつものふたりに戻っていた。
「で、隆士、やるんだろ? 続き」
「えっ?」
「どうなんだよ、やるんだろ? やりたいって言えよ」
「えっ、いや、それは…早紀ちゃんがしたいなら」
すっかりいつもの早紀に戻っていたせいか、いつの間にか立場が逆転していた。
「っかー! それでも男か! 素直にやりたいって言えよ!」
「えええええっ!?」
「ほれほれ、据え膳喰わねば武士の箸って言うだろ?」
「それを言うなら恥だよ! ってなんで僕に迫るわけ!?」
そんな煮え切らない隆士の態度を見て、早紀は涙目になり俯いてしまった。
「…隆士、やっぱりアタシとじゃ…嫌か…?」
「えっ…?」
「ホントは嫌なんだろ…? やっぱり、梢とか棗みたいな大人しい子のほうがいいんだよな…?」
「え…いや、そ、そんなことは…」
「アタシとしたいか…?」
「う、うん……したい」
「ホントにアタシとしたいか?」
「うん…早紀ちゃんが欲しい」
そう隆士が言うなり早紀はぱっと顔を上げニヤッと笑った。
「よーし、よーやく言ったな!」
「ええっ!?」
「んじゃ、しようぜ!」
「早紀ちゃん、謀ったね!?」
703Simple:2005/06/13(月) 00:32:52 ID:StCipK2e
「ねぇ、早紀ちゃん、ホントにいいの…?」
「アタシはいいっていってんだろ?」
未だに煮え切らない態度を取る隆士とは裏腹に早紀はすっかり腹を決めていた。
「こんな中途半端なところで終わられちゃアタシも納得できねえんだよ」
「……」
「なっ、隆士…」
「わかったよ…」
そう言うと隆士は覚悟を決めたように再び早紀の体を抱き、愛撫し始めた。
今度は早紀も積極的にそれを受け入れ、次第にふたりの気持ちは高まっていった。
「早紀ちゃん……」
「ん……いいぜ、隆士……」
隆士は頷き、早紀の割れ目に数回なぞるように走らせた後、ゆっくりと中に入っていった。
「んっ……くぅっ……!」
くちゅりという音がして、ずぷずぷと隆士のモノが侵入してくる。
早紀は異物の挿入に違和感を感じたが、意外と耐えられるものだった。
実際は身体自体が経験済みのため慣れているせいだったが早紀は気付かなかった。
隆士はゆっくりと押し進め、ついに一番奥まで辿り着いた。
結合部からあふれ出た愛液がとろりとこぼれ落ちる。
704Simple:2005/06/13(月) 00:33:06 ID:StCipK2e
「早紀ちゃん、入ったよ…」
「あ、あぁ、わかる…熱いのが…入ってるな……」
「大丈夫?」
「ん、ああ、思ったより…平気…」
「じゃ、動くよ…」
隆士は2,3回突き入れ感覚を確かめた後、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「あっ、あっああっ、なんかっ、すごっ」
腰が動くたびに未知なる快感が駆け上ってくる。
舌や指でされた事などとは比べモノにならないような刺激が体を貫いた。
「あっひっ、あくっ、りゅ、しっ、あぁ、はァっくぅ!」
「ッ早紀ちゃん…!」
ふたりは無心になってお互いを貪りあった。
初めは一方的に受け入れているだけの早紀だったが、次第にリズムを掴み隆士の動きに合わせるように自分も動く。
そうすることでより深い一体感を味わい、快楽に変える。
いつしか互いのこと以外考えられなくなり、結合部から聞こえる淫らな水音さえも至福の音と思えた。
705Simple:2005/06/13(月) 00:33:27 ID:StCipK2e
「ハァハァハァハァ……」
「早紀ちゃん…!」
そろそろ限界が近いことを感じ、互いに荒い息を立てさらにヒートアップした。
繋がったまま互いの唇を貪り、玉のような汗がこぼれ落ちる。
「早紀ちゃん、もう……!」
「あっ、あぁ…!」
「くっ……!」
隆士は限界ギリギリまで突き入れ、絶頂の瞬間引き抜こうとした。
が、あろう事か早紀は両足で隆士を捕まえそれを許さなかった。
「ちょっ!? 早紀ちゃん!?」
「あ、ああああぁぁぁぁぁ!!!!」
「うわあああぁぁぁ!?」
一瞬先に達した早紀の内部が激しく収縮し、隆士のモノを締め上げる。
限界まで来ていた隆士がそれを止められようはずもない。
どくどくと早紀の一番深い部分でそれは迸った。
「りゅ、りゅぅしぃぃっぃぃっっ!!!!」
「さ、早紀ちゃん、ダメだよおおおぉぉぉぉぉっ!」
隆士の叫びが虚しく響く。
勢いよく迸るそれはもう止められない。
全ての白濁を早紀ちゃんの中に出し切ってしまった。
ビクビクと痙攣していたモノがやがて大人しくなると同時に早紀の全身から力が抜け、隆士は解放された。
「ハァ…ハァ…」
「…あ、あぁあああ……」
隆士がモノを引き抜くと入りきらなかった精液が早紀と繋がっていた場所からどろりと溢れた。
706Simple:2005/06/13(月) 00:33:42 ID:StCipK2e
「早紀ちゃん……」
「あ〜あ…やっちまったな、隆士」
「早紀ちゃんのせいでしょ!?」
全てが終わった後、早紀ちゃんは満足げに悪戯っぽくニヤニヤ笑っていた。
「な〜にいってんだ、オ・ト・コの責任だろ?」
「そんな無茶苦茶な…」
「アタシゃいつできるかわかんねーからな、目一杯楽しませてもらったよ」
「人ごとみたいに…」
早紀とは対照的に隆士はどんよりと落ち込んでいた。
「あー、もう落ち込むなって」
「わっ」
早紀は肩を落としている隆士の頭を捕まえると胸の間に抱きかかえた。
「わわわっ」
「へへっ、いいじゃねーか。 こーんな可愛い彼女捕まえてガックリもないだろ?」
「そ、そうだけど…」
「だったら、いーじゃねーか。 そんときゃ、そんときだ」
「はぁ…」
すっかり気も晴れたのか早紀は曇りのない笑顔で笑っていた。
「でも、早紀ちゃんが元気になったならそれでいいかな」
「オゥ、おめーにいっぱい元気もらったからな」
と言ってポンとお腹を叩く。
「は、はは……」
707Simple:2005/06/13(月) 00:34:03 ID:StCipK2e
(どうですか? 簡単なことだったでしょう?)
(ん? 千百合か。 そーだな)
(前に進む努力さえすれば、悩みなんて吹き飛びますよ)
(だな。 おめーにゃ世話かけたな)
(いえいえ、早紀さんは私に似てらっしゃるからついお節介を)
(オゥ、サンキュ!)

「…早紀ちゃん?」
「ん、ああ、わりぃ。 ちょっと千百合のヤツがな」
「ち、千百合ちゃんが…?」
「あいつがずっと後押ししてくれてたんでな。 ちょっと礼を言ってたんだ」
「そうだったんだ…」
708Simple:2005/06/13(月) 00:34:25 ID:StCipK2e
自分の中のもうひとりの自分が教えてくれたこと。
愛すること、愛する人を信じること。
それはとてもシンプルで、とても難しいこと。
でも、アタシはもう迷わない。
愛する人を愛し続けるために。



「じゃ、第二ラウンド行くか!」
「えぇぇぇ〜〜〜〜〜!?」



<Simple>    Fin.
709名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 00:37:50 ID:SUWjvVdE
久々にエロGJ



ってこのスレ初エロですかw
710テイル:2005/06/13(月) 00:40:40 ID:OZbz8Guw
GJ!
他の人格と会話が出来るようにしていたのは、
詰まる所このためか…
乙でした
711ぐうたら:2005/06/13(月) 00:42:44 ID:+vkXrYg9
GJ!!
なんかよく分からないけど途中の『エロ千百』に萌えたw
712Simpleあとがき:2005/06/13(月) 00:48:36 ID:StCipK2e
と言うわけで早紀x隆士SSでした。
やっぱ<恋のマホウ>で二人の仲がいい感じだったからでしょうか?
設定自体は引きずってないんですが、別のハッピーエンドを書いてみよう、
ってのが書き始めるきっかけでした。

そしてもう一つの動機は「エロパロらしい作品を」です。
ま、これは言わずもがなですがまほらばでちゃんとした純愛エロが書けるか?
というのがあったわけでしてそこに挑戦してみました。
そんなわけで表現はなるべくソフトに、と気をつけて書いてます。
えちシーンで「それ」「モノ」とか抽象的な表現が多いのはそのせい。
出力75%ってところですか。

わりと難産でしたが一つの愛の形、を書けたかなと思えます。

まあ、18禁モノと言うことで賛否両論でしょうが「恋愛の先にあるもの」という
欠かせない要素を書きたかっただけなんですわ。
そんなわけで感想とかありましたらどんとこいッス。
713名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 00:57:09 ID:SMMX4uKV
超GJ!!!!!!!!!
714ぐうたら:2005/06/13(月) 01:01:29 ID:+vkXrYg9
ゴメン、赤は今夜中には無理ぽ。
明日の夜中には・・・いけそう?
715名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 01:07:11 ID:xFlW4dL+
スレがたってから700…ようやくエロがきましたか、GJ!!
716名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 01:17:46 ID:fUcPZA3X
すっごい久しぶりだな〜。
でもGJ! 一皮向けた早紀がちょい得ろな設定がグー
717名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 01:32:55 ID:wvmxb3NK
>>712
ヤバい萌え尽きた…
課題やる気力が無くなっちまったorz
718名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 01:39:55 ID:xFlW4dL+
>>717
お前実は元から課題やる気ないだろw
719名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 01:44:27 ID:wvmxb3NK
>>718
それ言われると結構凹むよ…orz
720名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 02:01:27 ID:ejmqecQJ
ここでの暮らしが長い私なんぞは、もう、「課題」と聞いただけで、
「課題」→「課題に悩む白鳥」→「そこへ梢sの誰かが・・・」という妄想が脳内に展開されるようになったぜ!

というわけで貴方はまだ大丈夫。心を落ち着かせて課題に集中しましょう。
721名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 02:05:23 ID:cpaNF7NK
GJです。
久しぶりのエロでこんな大作を拝めてとても良かったです。
これからもぜひ頑張ってください!!
722名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 08:20:33 ID:TnnNuNRW
>>712
すげーよかったです。
悩む早紀ちゃん、受け入れる早紀ちゃん
攻める早紀ちゃん、最後の意地悪そうな早紀ちゃん
顔射の所の「うわわわわわわわっっっ!?!? 隆士、なにしやがんだっ!」とか
出した後の「な〜にいってんだ、オ・ト・コの責任だろ?」など最高!
ほかの人格とお話しする所などもよかったです。
723名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 08:41:13 ID:yLuPFEQ5
>>712
久しぶりに良いものを見た。世界に引き込まれたよ。GJ!!
724名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 16:27:31 ID:bZrybEAh
白鳥君は受けタイプだと思うんだけど、
相手が通常の梢さんなら梢さんも受けタイプですから・・・

・・・この2人、そもそもそういう知識がなさそうなんだけど
で、桃乃さんとかが余計なこと言い出すとかそういう想像が・・・w
725名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 17:15:05 ID:wvmxb3NK
>>724
そして桃の入り知恵によって鬼畜プr(ry



スマソ('Α`)
726名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 17:20:06 ID:bZrybEAh
この場合天然度の高い梢さんの方が言われた事をそのまま実行しちゃいそうなので
梢さん攻め白鳥君受けですか?

・・・ちょっと見てみたいかも
727名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 17:26:56 ID:StCipK2e
余計な知識がないと逆に溺れやすくなるっていうネタはよくありますな。
まぁ、梢はともかく白鳥きゅんは多少は知識有るでしょう。
なに想像してるんですか〜、で焦ってるし。

>>725
とりあえず課題をry
728名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 18:02:39 ID:pipvrGsr
梢ポンは桃から、白鳥タソは友人Aからそれぞれ入れ知恵されてそう
729名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 18:23:04 ID:pvPFF6x5
あからさまに恥ずかしがる白鳥君は多少はあると思うし、梢さんだって恥ずかしがるシーンがあるから知らないってわけじゃなさそうだし。
そもそも現代劇として『全く知らない』というのはありえないからね
ただ・・・無論、学校だけの知識じゃ全然足りないんだよね。
2人とも学校で聞いた事しか知らないんでしょうねぇ。純粋純粋
730名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 18:39:24 ID:wvmxb3NK
>>727
今日は課題ないぽ。
>>729
純粋杉るのも考えものだな。
731名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 18:48:04 ID:pvPFF6x5
もっとも、現実的にこのくらいの純粋さならいないとも言い切れないってレベルですかね
私は21だけど白鳥君の反応を見るまで梢さんと同じように『いい人』の意味がわからなかったし・・・
732名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 18:55:46 ID:AAWTt30f
まあ子供の作り方を知らない夫婦が現実にいるんだからこれもありだよ。
733名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 20:08:34 ID:dq0cPxA1
>>732
ははぁ・・・さてはお前のこt(ry
734名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 20:11:06 ID:StCipK2e
知識の有無はともかく、そういうシチュをどう活かすかが妄想の要なわけですよ。
735名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 20:31:05 ID:Sx/2+ed7
隆子とエロールのエロSSキボンヌ
736名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 20:32:51 ID:pvPFF6x5
知識が無いぎこちない梢さんと白鳥君って雰囲気は最高の見えられると思いますね
737ぐうたら:2005/06/13(月) 21:42:43 ID:Lj9+ymXg
赤、他のより量が二倍ぐらい…ナンデコウナッタカナー?
738名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 21:53:56 ID:wvmxb3NK
>>737
気にするな。そしてЩ(゜д゜Щ)カモーン
739ぐうたら:2005/06/13(月) 22:00:07 ID:Lj9+ymXg
>>738
もう少しかかるからそれまで何か一発ギャグよろ。
はい3・2・1…
740名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 22:07:47 ID:pvPFF6x5
フトンがふっとんだーデすよ
741テイル:2005/06/13(月) 22:16:38 ID:lwDwP/Dp
>>740
クックック……

ぐうたらさんがまだ時間が掛かるようなら、こちらの短編を投下しましょうか…
急に思い立ってサクサク進んだネタなので……

ちなみに「MIW」は暫く休みます。
完成版は、いつか「まほログ」に載せておきます。
742テイル:2005/06/13(月) 22:44:24 ID:lwDwP/Dp
連投スマソ。

ツナギを置いときます。
つ「ホコトン」
743ホコトン(1):2005/06/13(月) 22:47:19 ID:lwDwP/Dp
「ただいま〜………?」
鳴滝荘に帰ってくると、そこには皆が揃っていた。
何かを話し合っているようだ…

何を?
宴会の打ち合わせか?

「あ、白鳥さん、お帰りなさい」
「ただいま……って、皆何をしているの……?」
「ああ、白鳥クン。ちょっとこの鳴滝荘について話し合ってたのよ」
「ここ……についてですか」
「そうよ。白鳥クン、変だと思わない?」
「……変?」
何が?
住む上で何か問題でもあるような類なのか……?
「いや……特に何も思わないけど」
「やれやれ、白鳥さんはニブチンです〜」
「……珠実ちゃん……」
珠実ちゃんは言う。
「じゃあ、訊き方を変えるです。白鳥さんは、鳴滝荘はどんなトコだと思いますか?」
744ホコトン(2):2005/06/13(月) 22:48:19 ID:lwDwP/Dp
「どんなトコって……」
いや、思いつくのは「宴会だらけ」なんだけど……
珠実ちゃんが訊きたいのは、そっちではないのだろう。
鳴滝荘の特徴。
それは、僕が思う限り―――
「―――やっぱり、広い、かな」
「です〜。ここは都内の一等地にも関らず広いですね〜」
満足したように頷く珠実ちゃん。
「……で、何が言いたいの、珠実ちゃん」
「ああもう、気付かないですか〜?他の皆は分かっていると言うのに…」
珠実ちゃんは呆れ顔だ。
「でも、分からないものは分からないって…」
「珠実お姉ちゃん、何が問題なの?」
「……水ようかんより大切なコト……?」
「…………」
頭を抱える珠実ちゃん。
彼女にしては珍しい行動だ。
「……だから……この広さに対して部屋数が少なすぎるって事です!」
「…………あ」
ああ……納得。
「なるほど……言われてみれば、そう、かも」
「お前、気付くのが遅いゾ」
「まあ、白鳥クンだから」
色々と突っ込みを食らう。
いつもの話。
745名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 22:50:48 ID:w1GHBsz7
連載中断なのかよ!<MIW
746ホコトン(3):2005/06/13(月) 22:51:20 ID:lwDwP/Dp
「でも……なんでそんな事が……」
「さあ……私にも分からないです〜」
珠実ちゃんも分からないって……
鳴滝荘七不思議ってか?
「梢ちゃんは、何か知ってることはある?」
「さあ……私は、ひいおじいさんや両親が残したものを、そのまま使っていますから」
そうか……いくら大家とはいえ、女子高生。
そんな細かいことまでは把握してはいない、か。
まあ、当たり前と言えば当たり前だけど……
「どうしてなんでしょう……?」
「うーん……」
「どこかに秘密の扉があるって事かなぁ?」
「……別に問題は無いと思うケド……」
「謎だわねぇ……」
「臭うナ……コイツはヤバイ臭いがするゾ」
ワイワイと、井戸端論議が始まる。
でも、結論は出ない。
ただ、時間だけが過ぎていく。


「あの〜、みなさん」
747ホコトン(4):2005/06/13(月) 22:54:03 ID:lwDwP/Dp

ふと、珠実ちゃんが手を上げる。
「何よ、珠ちゃん」
「ここらで証人を召喚したいと思うのですけど〜」
「証人……?まあ、いいけど……」
「というか、誰を呼ぶわけなの……?」
「わあ、面白そうですね〜」
「……召喚?魔法?」
「水ようかん呼び出して……」
「どうでもいいケド、早くしてくれヨ」
「分かりました。では〜……」

「いでよ〜!!!」

ボン!!

と言う馬鹿でかい音と煙を伴って出てきたのは、
748ホコトン(5):2005/06/13(月) 22:54:53 ID:lwDwP/Dp
 .__
ヽ|・∀・|ノ
 |__|
  | |


作者だった。
749ホコトン(6):2005/06/13(月) 22:56:49 ID:lwDwP/Dp

「あれ……ここ……どこ?」
「どこって、鳴滝荘です〜」
「え!?うわ、ナマ珠実だ〜!ってことは、うわ〜、すごい、みんな揃ってる!
 なぜ?どうして?でもいいや。鳴滝荘に来る事も出来たし。感動〜……」

「感慨に耽っている所悪いですが訊きたい事があるです馬鹿作者〜」

珠実ちゃんは作者に訊ねる。
「え?何?質問って」
「どうして鳴滝荘の広さと部屋数が一致していないんですか?」
「…………へ…………?」
予想もしない質問にきょとんとする作者。
「調べたら、建物の窓の数も一致しなかったです。どういう事ですか?」
「いや、それは…」
どもる作者。
「本来ならもっと部屋数があって然るべきなんですが」
「…………………いや…………………それは」
段々無口になる。
「それは、なんですか?」
作者は答える。
「単に、キャラの数を増やしたくなかった、っていうのはダメ?」
「…………………」
750ホコトン(7):2005/06/13(月) 23:00:13 ID:lwDwP/Dp
黙る珠実ちゃん。

周りから、怒りのオーラが発されている。
それも、二重三重、と。

…………………怖い…………………
怖いよ珠実ちゃん……
「……………あのですね、私達はそれぞれにアナタに恨みがあるのですよ」
「へ……………?」
その言葉を皮切りに、各々不満を言い出す。
「アタシの年齢は20なのに19とか書くし」
「俺の扱いはこのメンバーの中で一番酷いゾ」
「どうして私はいつも制服しか着ていないの?」
「…………水ようかん……………」
「何で毎回僕の部屋で宴会なんですか…………?」
「あの、なんでこの建物に矛盾を造るんですか」
「…………………あう…………………」
皆に責め立てられ、黙る作者。
「……………………」
「しょうがないですね〜……ここは一つ、強硬手段に出ますか〜」
「へ……?強硬手段って、何?」
「ちょっと、考えがあるです〜。ギャンブルっぽいですけど」

……ギャンブル?
それって、まさか――――
751ホコトン(8):2005/06/13(月) 23:01:19 ID:lwDwP/Dp
「梢ちゃん〜」
梢ちゃんに近づく珠実ちゃん。
「なあに、珠実ちゃん」
「ゴメンです〜」
珠実ちゃんは梢ちゃんのミニスカートの裾を持ち。
そして一気に、上に持ち上げる。
「――――――!!!」


しろ。
ご丁寧に、リボンのワンポイント。


「―――――――――」
赤面する梢ちゃん。
そして、そのまま、床に倒れる。
「――――こ、梢ちゃん!?」
梢ちゃんは、動かない。
「ちょっと珠実ちゃん、どうしてこんなこと―――」
「ちょっと<あの人>を呼び出すためには、こうするしかなかったかと〜」
あの人?
まさか。
まさか、彼女じゃないよね……?
752ホコトン(9):2005/06/13(月) 23:02:31 ID:lwDwP/Dp

「―――――あ」
ムクリ、と梢ちゃんは起き上がり。
長い髪を後ろに束ねて。
赤坂早紀が、そこに現れる。
「―――よう、珠じゃねぇか。どうした?」
「実は〜、これこれしかじかで〜」
「かくかくうまうまって訳か。よし、そうと分かればやる事は一つだ」
「―――――――――――」
作者の声は、最早声になってない。
早紀ちゃんの雰囲気に。
珠美ちゃんのオーラに。
そして。
僕達の怒りに、震え上がっている。

「よし、おまえら――――」


「――――下克上の準備はいいか?」


その日。
「ギャーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
作者の断末魔が、鳴滝荘に響きましたとさ。



<<Rebellion>>is exploded.
753名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:03:48 ID:w1GHBsz7
ちょwwwwwwwまっwwwwwww
ホトコンペタワロス!!
文章読んで爆笑したの久し振りだw
しかし、携帯からだからなのかモノリスが痩せているように見えるのがなんとも残念。
おまいGJすぎ!
754名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:06:38 ID:pvPFF6x5
そういえば『ヒカリ』の時点で桃乃さん20歳っぽいって感じの話に余談でなってたけど、
アニメ版だと最初から20歳って表現されてますね
755ホコトン(アトガキ):2005/06/13(月) 23:07:13 ID:lwDwP/Dp
勢いで書きました。
なんとなく、作者をいじりたかったから……
あと、鳴滝荘の矛盾(ホコトン)を取り上げてみたくて。
ある意味、謎な作品だと思う。自分で書いといてなんだけど。
でも、書いてスッキリしたかな。

あ、早紀ちゃんが出てきたのは、偶然デスヨ?

>>745
許せ……orz
あれは絶対に書き上げるから。
書き上げたらうpして連絡するから。
いつになるかは分からないけどorz
756名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:10:06 ID:wvmxb3NK
>>742
本当に『つなぎ』だな。
MIWの続きが読みたいなぁ…
757名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:11:20 ID:pvPFF6x5
2巻7「かくれんぼ」の時の地図を見る限りでは、1部屋あたりの広さがとても大きいことになりますね
758名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:11:46 ID:w1GHBsz7
>>754
ヒント:酒
759名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:18:22 ID:O7yRNmAB
じゃあ、次は自分がここを繋げるとしよう。
760お兄ちゃんと一緒:2005/06/13(月) 23:21:30 ID:O7yRNmAB
夜。白鳥隆士は課題をでかしていた。
頑張りのかいあってその休みの課題は全部終らせることができた。
次の日は休日だからゆっくり休むことができる。
そんな時だった。
ドタバタという足音。この家でこんな風に走ってくる人物は一人しかいない。
隆士は身構えた。
バタンと開かれたドア。
そして予想通り―――
「お兄ちゃーん!!」
パジャマ姿の金沢魚子が突撃してくる。
隆士はそれを見事に受け止める。伊達に何度もやられているわけではないのだ。
「…魚子ちゃん、突撃するのはちょっと勘弁して…て、魚子ちゃん…?」
見ると魚子は隆士の胸の中で泣いていた。
「わ、え?ちょっと魚子ちゃん?どうしたの?どこかぶつけた?」
「違うの…グス……魚子…怖い夢見たの…」
「怖い夢?」
「うん…お部屋に置いてあったてっぽーを取ったらね、天井が落ちてくる夢を見たの…」
瞳に涙をためながら魚子が言う。
(なんの夢見てるんだろうこの子は…)
761名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:22:41 ID:O7yRNmAB
それはともかく。
「怖くて眠れないよ…」
「大丈夫だよ。僕が側にいるからね」
そう言うと魚子は擦り寄ってくる。嗚呼、天国地獄。
「お兄ちゃん…魚子と一緒に寝てくれる…?」
「えっと…まぁ、いいかな」
梢や他の人格と一緒に夜を過ごしていることもあるのだ。
彼女だけダメ、というのはひどいだろう。
「えへへ…お兄ちゃんと一緒〜」
魚子は嬉しそうに布団に入った。隆士も電気を消して布団に入る。
(あぅ…やっぱり柔らかいなぁ…)
魚子のふにふにとした感触が伝わってくる。
魚子がもぞもぞと動くからなおさらだ。
…て、何で、もぞもぞと動く?
「…魚子ちゃん?何してるの?」
「ぅ…ん…お兄ちゃん…あのね、こうすると良く眠れるの…」
そう言って魚子は自分のパジャマのズボンの下に手を入れている。
「え…ちょっと、ダメだよ!そんなところ触っちゃ…」
言っても魚子はやめようとはしない。
「あぅ…お兄ちゃん…触って…」
「えぇ?」
762名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:24:10 ID:O7yRNmAB
「茶ノちゃんがね、こうするとお兄ちゃんが喜ぶって言ってたの」
そう言って隆士の手を魚子の股間へとやる。
もう既に少し濡れていた。
別に触ったことが無いわけでもないし、触りたくないわけでもないが…
相手は魚子。精神年齢6歳。
しかし、
「ふぁ…気持ちいよぅ…お兄ちゃんもっと…」
こんな声を聞くと理性が保てなくなってくる。
手の動きを少しずつ速め、より激しくなっていく。
「はぅ…お兄ちゃん…」
気持ちよくなった魚子は瞳を蕩けさせて隆士を見る。
(っ…ダメだ!もう限界だよ!!)
我慢が限界にきて隆士が魚子の服を脱がす。
「わ!お兄ちゃん…?」
「魚子ちゃん…もっと気持ちいいことしよう?」
「…もっと気持ちいいこと?」
「うん。二人で気持ちよくなろう」
「…うん。魚子、お兄ちゃんと気持ちよくなりたい…」
頷く魚子。
それを見ると、隆士は再び服を脱がした。
763名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:25:44 ID:O7yRNmAB
魚子を裸にすると、いつもみたいにじゃれ合うように体を擦りあう。
「魚子ちゃんの体、柔らかいね」
「お兄ちゃんは暖かいよ」
スリスリと体を触れ合わせる。
「魚子ちゃんは胸も大きいね」
「ひゃ…ぁ…お兄ちゃん…んん…なんだか…変な感じ…」
魚子の胸の谷間に顔を埋め、柔らかさを楽しんだり乳首を舐めたりする。
その度に魚子は知らない感覚に悶える。
(胸の方はしたことないんだ…)
胸を集中的に責め続ける。
「あぅ…はぅ…お兄ちゃん……気持ちいいの…」
乳首を軽くかんだりしてやるとピクピクと悶えるのがたまらなく可愛い。
魚子は責め続けられだいぶ感じるようになってきた。
(魚子ちゃんだって恋人なんだし、体は17歳だから、大丈夫だよね…)
隆士は自分のモノをズボンから出す。
「魚子ちゃん、ちょっとだけ痛いかもしれないけど、我慢してね」
「…?なあに…?」
すっかり気持ちよくなった魚子は思考力が低下している。
まぁ、あまり感覚が無い方がいいのかもしれない。
764名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:26:49 ID:O7yRNmAB
隆士は魚子へと挿入する。
「いくよ…」
「あ…あぅ…」
すっかり濡れた魚子の秘所は簡単に隆士のモノを受け入れた。
以前から何度かやっているし、痛みも少ないだろう。
「気持ち…いぃ…お兄ちゃん…」
「もっと気持ちよくしてあげるからね、魚子ちゃん」
そう言うと、ゆっくりと腰を動かしだす。
「あああ…」
気持ちよさそうに甘い吐息を吐く。隆士はさらに激しさを増す。
「魚子ちゃんの中、気持ちいいよ…」
「魚子もっ…気持ちいいの……あぁ…もっと、もっとぉ…お兄ちゃぁん…」
幼いせいだろうかすぐに快楽にのまれ魚子自身も腰を動かす。
今までこんなに激しくしたことは無かったため、二人ともすぐに絶頂へと達した。
「あああ…おにいちゃあん……」
「魚子ちゃん…!」
中に熱い液が流れ出て、魚子の白い腹が波打つ。
765名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:28:24 ID:O7yRNmAB
まだ余韻が残る中、隆士が言う。
「これで一つになれたね…魚子ちゃん」
「一つに…?}
「うん。そうだよ」
「お兄ちゃんと一つになったんだね…」
嬉しそうに魚子が言う。
「お兄ちゃん大好き…」
「うん、僕もだよ…」
気が付けば魚子は既に寝息を立てている。
パジャマは魚子の愛液で汚れてしまったので、隆士のワイシャツを着せてあげた。
「お休み、魚子ちゃん。いい夢を見てね」
魚子の頬をそっと撫でると隆士も眠りについた。
766名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:33:49 ID:pvPFF6x5
やわらかい雰囲気でエロ過ぎないエロ・・・いい感じでです〜
私はこういう雰囲気好きですよ〜
767名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:34:49 ID:w1GHBsz7
な、魚ちゃんになんてことをするんだおまいは!
もうGJ!!
魚ちゃんとの夜ってまともなやつは初かな?

唯一指摘するとしたら「茶ノちゃん」だな、魚ちゃんは彼女を「珠ちゃん」と呼んでいたはず(4巻)。
あ、あと>765のかぎ括弧な。まあ気にしないが一応。
768つなぎのつなぎ:2005/06/13(月) 23:37:33 ID:O7yRNmAB
魚子の本番エロは無かったので書いてみました。
表現とかはかなり簡単にしてますけど…文才ないなぁ
いつも長くなる傾向があるんで短くしたんですけど…だめでした。
指摘サンクスです。
ですが、魚子の二人称ですけど9巻では「茶ノちゃん」といっていたはずです。

それでは。







なんて。まだ終わらんですよ?
769名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:38:19 ID:StCipK2e
ええい、さりげなく起きたら裸ワイシャツ状態に持っていくとはこのえっちめ!

>>767
8巻では「茶ノちゃん」デスよ。
770テイル:2005/06/13(月) 23:38:21 ID:OZbz8Guw
今までの魚子ネタの中でも良質かも。
あっさり系でGJでした。


お客様の中に千百合ネタを書ける方(ry
771暖かな朝:2005/06/13(月) 23:39:06 ID:O7yRNmAB
朝。
日の光が窓から差し込み、鳥の鳴く声がする。

ここは…見慣れない部屋。しかし、見覚えのある部屋。
白鳥隆士の部屋。
「ん…」
蒼葉梢は目を覚ました。男物のワイシャツ一枚の自分と、隣には隆士の姿。
(そうか…昨日は白鳥さんと一緒に…)
性交したのだと理解する。実際にしたのは魚子だが、記憶の共有、そして補填で理解した。
自分がしたと思うと、なんだか体が熱くなってくる。
なので、なんとなく隆士に抱きついてみる。
「う………朝…?」
梢に抱きつかれたのに気づいたのか、隆士は目を覚ました。
「あ…すみません。起こしてしまいましたか?」
「あれ…梢ちゃん、……!?……て、そうか。昨日…」
昨日したことを思い出す隆士。
「えっと、おはよう梢ちゃん」
「あ、はい。おはようございます…」
ぎこちなく挨拶する。ワイシャツ一枚で、見えるか見えないかギリギリの姿が目に毒だ。
772名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:40:25 ID:O7yRNmAB
「起きなくてもいいの?ご飯作らないと…」
朝から性欲が湧いてくるのを抑えるため隆士が言ってみる。
「今日は皆さんお出かけで…朝食もいいって…桃乃さんはいますけど、お昼まで寝てますし」
「そっか…じゃあ、僕等だけなんだね…」
二人だけ。なんとなくいい響き。
「それじゃあ、もう少しこうしていませんか…?」
「え?」
「あの…もう少し、一緒に寝てたいです…」
そう言ってぎゅっと抱きつく。下着を着ていないから柔らかな感触がよく伝わるはずだ。
「ま、まぁ…梢ちゃんがそう言うなら…」
「ありがとうございます」
嬉しそうに体を寄せる。
「わ…!梢ちゃん…」
「白鳥さんは暖かくて気持ちいいです…」
「…梢ちゃんも暖かくて、柔らかくて気持ちいいよ」
そう言われて、やっと自分が下着を着ていないのを思い出す。
しかしどうとなることでもなく、顔を赤らめて、自ら擦りあわす。
昨日からずっとふにふにとした胸の感触が隆士を襲い続けている。
「白鳥さん…その……気持ちいいですか?」
「うん、とっても気持ちいいよ」
穏やかな休日の朝。恋人達がイチャイチャしている。
773名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:41:54 ID:w1GHBsz7
うわ、ほんとだ…<×9巻 ◎8巻
表記揺れかモノリス。
続きあるのか!? 禿しく期待!
774名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:41:54 ID:O7yRNmAB
暖かくて気持ちいいからか、隆士は再び眠りに入る。
梢はそれを見て、優しい笑みを浮かべる。
「白鳥さん…」
頬に手を触れて顔を近づける。
「好きですよ…」
そう言って口付けをする。
そしてそのまま眠りに付いた。


梢は再び目を覚ます。
目の前にある隆士の顔に少し顔を赤らめる。
彼はまだ眠っているようだ。
そろそろお昼になると思うし、恵や自分達の食事も用意しないと…
そう思い、隆士を起こそうとする。
「白鳥さん、起きてください。ご飯にしますよ」
「ん……」
言っても起きない。
「白鳥さん、起きてください」
さっきよりも少し大きめの声でゆすりながら言う。しかし、起きず。
ちょっと顔をしかめた梢は最終手段に出た。
775名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:43:12 ID:O7yRNmAB
「……えいっ」
「はぐ…ふぐっ…!?」
隆士の鼻を塞ぐ。口でしか息ができない。そしてさらに追い討ち。
「…ん………」
梢はその唇で隆士の口を塞いだ。
「○&#☆※∀〜〜〜〜〜!!!」
顔を青くする隆士を確認すると塞いでいた手と口を離す。
「おはようございます♪白鳥さんっ♪」
「おはよう…か、過激な起こし方だね…」
「起きない時はまたしますよ?」
「あはは…」
苦笑いする隆士。
そしてまた、お互いに見つめ合い―――キスする。
「……白鳥さん――」
光に照らされた梢が言った。
「―――おはようございます♪」
「うん…おはよう、梢ちゃん」
そして今日も、少し遅めに一日が始まった―――
776名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:47:49 ID:O7yRNmAB
というわけで今度こそ終わりです。
一応二つとも続いてますよ。
なんとなく、
「朝のゆっくりとした時間。二人でイチャイチャする話」
を書きたかったんです。
あとは裸ワイシャツ。保管庫にあるCGからの妄想です。
もうちょっと描写力を養いたいですねぇ…
777テイル:2005/06/13(月) 23:50:42 ID:OZbz8Guw
>>776
ツボを押さえてるし…しかも最高だ。

乙・GJ!
778名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:51:01 ID:StCipK2e
なんか、ほのぼのでいいですなぁ…。
短くまとまってて読みやすかった。
ぐじゃぶ!
779名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 23:52:13 ID:w1GHBsz7
清々しいエロに乾杯!
みんないい仕事しすぎじゃないか…
まったく、連投が続いたおかげで眠れな……


Σ危ない、アニメの録画忘れてた…作品に感謝。
780ぐうたら:2005/06/14(火) 00:04:21 ID:xY84V6RQ
昨日今日とエロラーーーーーーーーッシュ!!!
に、負けじと赤が完成!!
今までの三人は4レス分だったのに早紀ちゃんだけ 8 レ ス …? 
あ…愛?(チガイマスヨ?
久しぶりにエロエロしてるスレを駆け抜けろ!ガンダ…
それでは『熱 〜シラトリッリュウシの場合〜 赤 』8レス分行きます!
お楽しみください〜
781熱 〜シラトリッリュウシの場合〜 赤 1/8:2005/06/14(火) 00:05:10 ID:xY84V6RQ
梢ちゃん転倒事件から今や数分たちました。
それなのに一向に梢ちゃんが起き上がる気配はしません。
いつもはすぐ側にいてゆすったりするからすぐに目覚めるんだろうけど、さすがに長すぎです。
ひょっとして、どこかにぶつけちゃったとか…!?
一度そう考えるともう他の考えは頭からはじけ飛びます。
恋人の女の子が怪我をしてるかもしれないと思ったら、彼氏としては動かずにはいられないものです。
たとえ視界がぼやけ頭は酷く痛み、寒気はするしお腹は痛いし何か体中マンベンなく痺れた感じがしたとしてもです!!
そうと決まればいざ行動。休息を激しく要求している体をヒキズリヒキズリ、部屋を出ます。
でて少し、ほんのすこし歩けばそこに彼女はいました。
案の定転んだのは梢ちゃんで、見たところによると転んだのは廊下のド真ん中なので、柱や壁に頭をぶつけたとかはないようです。

「こ…梢ちゃん…?」
とりあえず元の人格の名前を呼びます。
ゴホゴホゲホゲホ。咳も止まらないし、本当にヤバイんデスヨ?
「ん……」
トテツモナク小刻みに肩を揺らしたお陰か、梢ちゃんが目を覚ましたようです。
さて、今回は誰に…?

「し…ら…とり……?」

―白鳥―
こう呼んでくるのは全人格中彼女一人です。
そう、彼女は―

「こ…このバカタレー!!」
「痛い!!?」
―彼女は赤坂早紀ちゃん。
全人格中一、二を争うほど優しい娘なんだケド、全人格ぶっちぎりで凶暴な娘です。
そして今、僕はその早紀ちゃんに思いっきり殴られました。
うぅ、何で…?
782熱 〜シラトリリュウシの場合〜 赤 2/8:2005/06/14(火) 00:05:59 ID:xY84V6RQ
「白鳥!お前、風邪引いてんだろ!?なぁに部屋の外出てやがんだ!!」
「そ、それは…早紀ちゃんが転んだみたいで、心配…だったから…」
思いっきり殴られて痛む頬をさすりさすり、言います。
「んなっ…(かー)ば、ばかっ…!あたしはどーでもいいんだよ!お前の風邪のほうがしんぱ…」
「え?心配してくれてるの?」
「!?あ、いや、その…あーもう!いいからお前は寝てろってんだよ!!」
そう言うや否や、早紀ちゃんはむんずと僕の服の襟を掴み、ものすごいスピードで僕を引き摺りながら2号室へと走ります。
「おりゃっ!」
「うわあぁッ!?」
部屋の前に着くと早紀ちゃんは回転を加えて僕を敷き布団の上へと投げ飛ばします。
「いいか!!」
びしぃっ!っと、僕に向けて人差し指を突きたてて、
「今から何か作ってきてやるから、ちょっと待ってろよ!」
と、言い放ち、さらに、
「ぜっっったいに動くなよ!少しでも、少しでも動いてみろよ?ブチ殺すからな!!」
と続け、またダッシュでドタバタと部屋を後にします。
僕は、早紀ちゃんを起こしてから今までの、一分あるかないかのやり取りに、ポカンとしてしまいます。
「えっと…一応、心配してくれてるんだよ…ね?」
誰に言うでもなく、ぽつりと呟きます。
動くとブチ殺すそうなので、じっと寝ておくことにしました。
あぅ…殴られたり投げ飛ばされたりしている内にまた少し頭痛等が悪化した感じがします。
やっぱり風邪は辛いです。う…ホントに辛くなってきたかも…
783熱 〜シラトリリュウシの場合〜 赤 3/8:2005/06/14(火) 00:06:15 ID:xY84V6RQ
「おい!動いてねえだろーな!!?」
数分後、またまたダッシュでドアを蹴り開けた早紀ちゃんの第一声が、コレですよ。
「あ、早紀ちゃん…うん…動いて…ないよ…」
正直かなり辛いので、息も絶え絶えです。
「オイ、なんか辛そうじゃねーか。大丈夫かよ?」
「はは…風邪だからね…辛いよ…」
「ま、そりゃそうだけどさ…」
僕の辛そうな表情を見た途端に語勢も弱く、心配したような素振りを見せる早紀ちゃん。
あーもう、こういう時の早紀ちゃんは本当に可愛いなぁ……
「あ…そ、そーだ。あのさ、白鳥…」
ふと思い出したかのように早紀ちゃんは言います。
「?何?」
「こ、これ…おかゆ、だけどさ。さ、さっき作ったんだ。く、食いたいなら…食え、よ…」
もじもじ。早紀ちゃんはたまにこのようにとてつもなく可愛くなるからたまりません。
「あ、ありがとう…早紀ちゃん…」
そこでまたゴホゴホと、短い咳が何度か出ます。
「ホントに辛そうだな。大丈夫か?起きれるか?」
「うん…多分、ね…」
とは言うものもやっぱり頭がガンガンクラクラで正直なところ起き上がるのがイッパイイッパイです。
「……しょーが、ねーなぁ…」
ぼそりと、呟くようにそう言ったのは早紀ちゃん。
「え…何、が?」
思わず聞き返してしまいます。
「お前がキツそうだそうだからさ……その、何だ…あたし、が…食べさせて…やるよ…」
――――――――――へ?
「さ、さささささ、早紀、ちゃん?今…なんて…?」
「だ、だからっ、あ、あたしが…食べさせてやるって…言ってんだよ」
………な、ななな…なんだってーーーーー!!?
784熱 〜シラトリリュウシの場合〜 赤 4/8:2005/06/14(火) 00:07:01 ID:xY84V6RQ
「さ、早紀ちゃんが…食べさせて、くれるの…?」
「あー、もう!さっきからそう言ってるだろうが!…それともさ…」
「…?」
「あ、あたしじゃ、さ……い、イヤ…なのか?」
……………ぐっっっはあああああああん!!!?
た、隊長!素敵な宇宙船シラトリリュウシ号は早紀ちゃんのしおらしい態度に撃沈寸前です!
総員退避!退避ィーー!!………


一呼吸。ヒッヒッフー。


落ち着いて現実に目を向ければ、この空間にいるのは顔を俯かせて、真っ赤になってる早紀ちゃんと、同じく顔を赤くした僕。
なんともいえない空気が漂っています。
「えーっと……」
口を開いたのは、僕。
「それじゃ…食べさせて…もらえる、かな?」
「っ!?」
さらに顔を赤くする早紀ちゃん。恥ずかしいなら別にいいのに……
とは言っても、それでも辛そうな僕を見て恥ずかしいのも我慢してそう言ってくれてるんだろう。
本当に、優しい娘なんだから……
「し、仕方ないよな!うん、白鳥、キツそうだし、食べさせてやらねーとな!うん、そう。仕方なく…仕方なく…仕方なく…」
仕方なく…と自分に言い聞かせるように連呼する早紀ちゃん。
その顔は、さっきと同様に赤いながらも、どこか嬉しそうな顔。
「その、さ…急いでたし…あたしってあまり料理上手くないからさ…ちょっと…見てくれは悪いんだけど…」
そう言って、おずおずと出てきたのはおかゆ。
まだ湯気も立っていて、確かに見た目は少し雑な感じがするけど、
それでも早紀ちゃんが―コイビトの女の子が一生懸命作ってくれた、という嬉しさに、見てくれは関係なんてないのです。
785熱 〜シラトリリュウシの場合〜 赤 5/8:2005/06/14(火) 00:07:15 ID:xY84V6RQ
「じゃ、じゃあ…」
すっ…とレンゲに掬ったおかゆをこちらに向けてきた早紀ちゃん。
「あ……」
その顔は、今日一番の赤さで。
「……あ、あ、あーん……」
真っ赤な真っ赤な早紀ちゃんの、この一言に、
〈ズキュゥゥゥゥゥゥゥン!!!〉
と、僕の中枢機関は全滅です。
(大佐殿!シラトリリュウシ号、右翼が破損!)
(左のエンジンに一つ火が着きました!爆発します!)
〈ちゅどぉぉん…!!!〉
爆発した僕号の左のエンジンは煙を上げます。
(大佐ァ!メインエンジンにトラブル発生!もう今の高度を維持できません!)
(ぬうぅ…)
僕号の大佐は、乗員の命を考え、遂に決断を下します。
(総員…総員退避だ!!船を捨てよ!)
(た、大佐!?)
(じ、自分は最後までこの船と一緒に…!!)
(この船より、一人でも皆の命が助かるほうが…大事だ)
(大佐…!)
(大佐っ…!!)
〈全員で〉(サー・イエッサァァーーー!!!)
大佐(ナイスガイ)のナイス判断で、僕号から、全乗組員が脱出し、僕号は、目の前のおかゆと向き合うこととなります。
786熱 〜シラトリリュウシの場合〜 赤 6/8:2005/06/14(火) 00:07:35 ID:xY84V6RQ
「あ……」
少しずつ。すこーしずつ口を開けて…
「あーん……」
おかゆの受け入れ態勢は万全ですドクター。

もぐ、もぐ、もぐ。早紀ちゃんの作ってくれたおかゆを、噛み締めるように食べる。
うん、美味しい。
人格によって得手不得手はあるものの、やっぱり料理に関しては、梢ちゃんベースの腕前で、基本は出来てるようで。
「ど…どう、だ…?」
不安げな表情でこちらを見る早紀ちゃん。
「うん。とっても美味しいよ。」
「ほ、ホントか!?」
「うん。本当に美味しい。ありがと、早紀ちゃん」
疲れているものの目の前の恋人に笑顔を向ける僕。
「っ…!///ま、まーな!礼にゃ及ばねーよ!
 そ、それよりホラ!もっと食えって。ほれ、あーん…」
「あーん…」
数分後、おかゆはキレイサッパリ頂きました。
「ふう…ごちそうさま、早紀ちゃん。」
「お、おう!口にあったなら何よりだな。うん」
お腹いっぱいで満足な僕と、幸せいっぱいな早紀ちゃん。
あったかムードが溢れてます。
「あ…」
何かに気付いたように、早紀ちゃんが声を漏らします。
「何?どうしたの?」
「いや…白鳥、随分汗かいてんなー、って…」
「え?あ、そういえばそうだね。もともと風邪ひいてるし、熱いおかゆも食べたし…」
787熱 〜シラトリリュウシの場合〜 赤 7/8:2005/06/14(火) 00:08:35 ID:xY84V6RQ
「そうかぁ、そうだよ、な……」
少し黙って考え込む素振りを見せる早紀ちゃん。
十秒足らずで、少しずつその顔が赤くなっていくのが分かります。
「……?どう…したの?」
多少。多少ですが、嫌な予感を覚えながらも、尋ねます。
「え!?あ、いやさ…その…え、と…ほら……」
早紀ちゃん、明らかに挙動不審です。怪しいです。
「さ、早紀ちゃん?」
「ぴえ!?」
オーバーリアクション。怪しさの極みです。この怪しさなら引田天○もMr.○ックも目じゃありません。
「い、いや…その……」
「?」
「着替、え…させてやる……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――へ?
「さ、割きイカ、じゃなかった!早紀ちゃん!?き、ききききき、着替えぇ!?」
「うん…」
ああもうままならない!!ここは「なんてな!冗談だよ!!」か、悪くても「ああ…」でしょう!?
何でこの場面で「うん…」なの!?可愛くてたまらないじゃないですか!
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤイバヤバイヤバイヤバイバ。何がヤバイって全部ヤバイ!
このまま早紀ちゃんをぎゅ〜〜って抱きしめたいです!抱きしめたいです!!
「そ、それじゃ、早速…」
そういって僕の服に手を伸ばす早紀ちゃん。って何がそれじゃ、なの!?何が早速なの!?
ぷちん…
ボタンが、一つ。早紀ちゃんの手によって外されます。
「さ、早紀ちゃん?恥ずかしいでしょ?む、無理はしないほうが……」
「い、いや…ぜ、ぜぜ、全然…?」
「どこが全然!?いっぱいいっぱいじゃん!早紀ちゃんいっぱいいっぱいじゃん!!」
「す、据え膳食わぬは武士の箸ー!」
「だから恥だよ!ってゆーかそれは>>702あたりでやったよ!あれ?>>702って何!?」
788熱 〜シラトリリュウシの場合〜 赤 8/8:2005/06/14(火) 00:08:52 ID:xY84V6RQ
「第二ボターン!!」
ぷちん…
「わわわ!?」
「あーもーうっせーなー!!」
ばきいっ!
ま、また殴られた!?僕、病人なのに!?
前述の通り病人な僕に早紀ちゃんのパンチを二発も耐える力は持っていないので気絶同然にぐたっとなってしまいます。
「お、やっとおとなしくなりやがったか!」
『なりやがった』、じゃなくて『させやがった』でしょ…
「そ、それじゃ改めて…」
うわー!?やめて早紀ちゃん!!あれ?声が出ない!うわ!?体も動かない!?
ちょ、何コレ!?まさか今のパンチ!?なんでこの場面で新必殺技だすの早紀ちゃん!
あー!?もうそれ以上は…ち、千百合ちゃんのオーラが見えるよー!!
ぷちん…
ぷちん…
…………どさっ
!?数えて四つ。残るボタンが一つというところで早紀ちゃんの動く気配は消えました。
そして続いて僕の胸にのしかかる、人物。
人物といってもこの場合早紀ちゃんしかいないんですけど。
全裸の落ち武者とかは勘弁です。
数秒後、早紀ちゃんの必殺パンチの効果が切れたのか、体が軽くなりました。
「早紀、ちゃん…?」
目を開けながら、名前を呼びます。
しかし返事は無く、そこにいたのは、顔を真っ赤にしてさらに目を回して倒れている早紀ちゃんの姿。
様子から察するに気丈な早紀ちゃんでもさすがに恋人の服を脱がすのは恥ずかしくてたまらない、ってところでしょうか。
恥ずかしがりやな早紀ちゃんの精一杯の行動だったんでしょう。
とりあえず、早紀ちゃんに薄い布団を掛け、隣に寝かせてから、僕も眠りに着きました。
明日からはまた早紀ちゃんに負けないぐらい元気な日々が送れますように。おやすみなさい。

789アトガキ ジゴク:2005/06/14(火) 00:12:50 ID:xY84V6RQ
ふう〜…
熱シリーズで一番書きたかったなっちんと早紀ちゃん。
ようやくどちらも掛けて一息ついた感じです。
残るはラスボス、アオバコズエちゃん…!
でも、しばらく充電期間で一週間ぐらいかかると思うけどそこはゴカンベン。

保管庫の管理人様、ここから下は更新しないでね〜
ってかもうこのスレは700オーバーでもうすぐ800ですか。
早いな〜…初代スレにいたときが嘘みたいデスヨ。
このスレを支えてくれる書き手、読み手の皆さんに感謝!
そして前代未聞の魚子ちゃんエロの>>776さんとモノリス出現のテイルさんにGJ!!
オヤスミナサイマセ。
790メリー:2005/06/14(火) 00:15:10 ID:c4LZqh8X
皆早すぎだよ〜。
そしてGJすぎっ!
うぅ、負けられない……
791テイル:2005/06/14(火) 00:17:06 ID:L/rWXUVA
>>789
ぐうたらさん、白鳥くんはあなたの代理品ではありません!!

と、突っ込んでおく。
恐ろしいまでの愛がある…

乙・GJでした。
次は大将・梢ちゃん。ガンガレ
792名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 00:18:30 ID:aD3B8h7i
いや、なんつーか、混乱っぷりが独特でいい味ですな。
そしてリンクされてしまった、武士の箸ー。

やっぱり早紀ちゃんはこれくらい勢いがあった方がらしくていいですな。
ぐじょばー。
793名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 00:24:47 ID:GGpklriG
・職人がコテ丸出しで感想レスをつける
・21禁の板なのに堂々と年齢未満を告白して悪びれてもいない
・マンセーレスしかついていない

ここが一種の楽園状態なのはある意味幸せなんだろうけど、
その状態は気持ち悪いぞ
794名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 00:25:05 ID:IUZ/Kt2k
えーと、前代未聞の別のSSに話を振ってる「それは>>702あたりでやったよ!あれ?>>702って何!?」
ここ、保管する時どーするんですか?(笑)

いや、この部分にはいろんな意味で爆笑して面白かったんですけどね
795名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 00:30:43 ID:+kr6nsNA
自分はぐうたらさんのノリにはついて行けません…
いや、ネタは好きですよ?
シチュエーションも。
ただ今回は悪ノリしすぎな感がある・・・
それも書き手の個性ですけどね。
796名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 00:30:54 ID:Hl3DiZYc
793さんは何か職人さんのSSに不満が?
不満があるならちゃんと言うことも職人を育てる方法ジャマイカ?
797名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 00:32:32 ID:g11sS5C+
ギャグのりならこれが持ち味なんでしょうね。
ただオマージュ系は随所に入れたりするとダメですよ。
あとは……テンポ悪いかな?
798名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 00:35:28 ID:g11sS5C+
>793
>コテまるだしで感想〜

まあ、それは余り関係ないかと。
799名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 00:36:35 ID:+kr6nsNA
>>797
それだ。今回はなんというかテンポが悪い気がしたんですよ。

あまり話から脱線するオマージュネタは多用しすぎるとダレてしまうんで、
適度に入れてくれるとよいです・
800名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 00:36:37 ID:GGpklriG
SS自体にはさほど気になるものはない。
だから三つ目は言いがかりだな、それは申し訳ない。すまなかった。
ただ職人の姿勢があまりにも…というのはちょっと苦言を呈しておきたい。
801名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 00:47:06 ID:aD3B8h7i
2chだからって必ずしも名無しである必要はないからね。
職人が感想言っちゃいけないとかルールがあるわけでもなし。
いや、自分、名無しだけど。

ぐうたらサンのはこういう作風の人がいるのもいいかなってとこです。
みんなが小綺麗にまとまったSS出す中、ハイテンションなSSは印象的です。
ま、SSの感想はあんまり鼻につくようだったら苦言を言うなり、スルーしますよ。
あくまでわたしは、ですけど。
802684:2005/06/14(火) 01:25:26 ID:zpIF+ZsM
>>240さんの作品に感化された者です。
完璧な続きものみたいになってしまいました。
803Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:26:50 ID:zpIF+ZsM

「えええぇぇ〜〜〜〜〜〜っ!?!?!?」


「そういうことです〜、あっそうそう、いくら女の子になれるからって
 男子禁制の場所に入っちゃだめですよ覗き魔さ〜ん。」

そんな珠美ちゃんのいびりに反応することもできず、
僕は縁側に立ち尽くすしかなかった。
そう、何も解決してなかったのだ。
僕の体は、今更言うまでも無く、

「女っ!?」
「そうですよ〜、戻れて嬉しいですか〜?」
「そ、そんなわけないでしょ!その、その、時間は?」
「はい〜?現在午後7時35分です〜。」
素っ惚けた顔で時計を見ている。わざとだ、絶対わざとだ。
「そうじゃなくって、体が元に戻る時間は?」
「それがですね〜、現時点では分からないとしか言えないんですよ〜。」
「んなっ!じゃあなんでこんなことするの!!」
「御心配なくです〜。今の適当な呪文の掛け方なら
 おそらく1時間と持たないです〜。」
「え、そうなの?」
804Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:27:34 ID:zpIF+ZsM
ホッとした、脚が萎えそうなくらいの安堵感が体を包む。
それにしてもいつもながら悪質ないたずらを…、これじゃ男のプライドが…。
いや、今は女だけど(泣;;

「あれぇ〜白鳥クン、元に戻った早々また変身してんのー?
 実は結構気に入っちゃってんじゃないの?」
うげっ、桃乃さんに見つかってしまった。
さっさと部屋に隠れてればよかったものを。

「何言ってるんですか、変な事言わないでくださいよ。」
「いいのよ、いいのよ。たとえどんな趣味を持っていようと
私は白鳥クンの味方よ♪」
「そうです〜、さっさと認めちゃいなさいですぅ〜♪」
う゛う゛〜ヒトノハナシキイテマスカー?;;

「じゃあさ、ついに女であることに目覚めた隆子ちゃんの為に
  おねえさんがプレゼントしちゃうわ。」
そう、嫌な予感はしていたのだ。桃乃さんの右手に持つバッグはおそらく…
「あ、あの〜、プレゼントっていったい…」
「いざ参らん皆の衆〜。」
「合点承知の輔!ですぅ〜。」
といつもの如く連れ去られる僕。なんで断れないんだ〜。

805Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:31:28 ID:zpIF+ZsM

「も、桃乃さん、それでプレゼントというのは?」
場所は移って桃乃さんの部屋。
「じゃじゃ〜ん、女の子の武器、コスメグッズでーす。
 これほどの逸材、捨て置いておられやしょうか?」
「うむ、この展開でお化粧とはまさに王道。腕を上げましたな桃乃守殿。」
「かたじけのうござる。」
「い、いやだと言ったら…?」
「珠ちゃ〜ん?」
「分かりました分かりました、って、うはっ…ぷっ。」
「ちょっと目ェ閉じてて〜♪」

それから15分弱ぐらいだろうか、桃乃さんは最初のノリとは打って変わって
真剣な眼差しで僕の顔を弄くってる。
それを目の前にして寝るわけにもいかず、
かといって、にらめっこするわけにもいかない。
どうにも歯痒い状態が続いた、というか鼻が痒い、掻けない…

806Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:32:16 ID:zpIF+ZsM

「できたっ!うーん我ながら中々…。」
「出来が良いのは素材に因るところ大ですぅ〜。」
その珠実ちゃんは何故か後ろ向きに座っている。
「あれ珠実ちゃんどうしたの?」
「お楽しみは最後に取っておきたいんですぅ〜、
 それにお化粧中のレディーを見るのは失礼ですからぁ〜。」

ぐっ、何か一言いわなきゃ気が済まないのかこの娘は…

「じゃあ、拝見いたしましょう〜。」
「はいどーぞ。」

くるんと座ったまま半回転する珠実ちゃん、そして

「ほおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」

顔の穴という穴を真円にした状態で固まってる。
普段はまず、お目に掛かれない表情だ。

807Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:33:10 ID:zpIF+ZsM

「どう?惚れちゃったかなお珠さんや。」
「なっ!何を言うですか、私と梢ちゃんの愛の絆は
 そんなにヤワなもんじゃないですー!」
「ふふっ、随分と慌てるじゃない
 それに梢ちゃんとの事なんて誰も聞いてないわよ〜。」
「う…くっ…か、勝手に言ってるですー!!」

とまあここまでは良いけれど(良くないって
普段滅多に動じることのない珠実ちゃんの
あの反応には、流石に一抹の不安を感じる。
一体何に対しての不安なのかは分からないけれど…

けれど確かめなくちゃならない。自分が果たしてどうなっているのか。
それが必要となる時が近い将来、いや、すぐに来る。

恐る恐る鏡を覗いてみる、なんか既視感を感じるなぁ。



「!!!!!?????」

「どう、驚いた?それが白鳥隆子、
 あなたの姿よ。」

なんだか桃乃さんは得意げだった。でもその気持ちも分からなくない。
正直に言って化粧ひとつでここまで変わるなんて…
珠実ちゃんはあんな風に言ったけど
桃乃さんって凄い人なのかも知れない…。

808Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:33:50 ID:zpIF+ZsM


…それにしても…この感覚は何なんだろう…
さっきからまともに自分の顔を見られないでいる。
まるでそうすることが罪であるかのように……。

……僕と梢ちゃんは…男と…女で…
…でも僕は時々…女になって……
…女の時の僕は…梢ちゃんよりも…もっと…もっと…

って、何考えてるんだぁ〜〜〜!!!!

(いいじゃないか、自分に素直になれよ。)
駄目だ。僕には梢ちゃんという大事な人が、
守らなくてはいけない、守っていきたい人がいるんだっ!
(何言ってるんだ?オマエの顔だろう、何を躊躇う?)
駄目だ、駄目だ、だめだ、だめだダメダダメダダメ

「ダメだぁーーーー!!!!!!」
「うわぁ、どうしたの白鳥クンっ!」

「…どうせ自分の姿みて変な事考えてたんですぅ〜。」

……悔しいけどその通りだった…
思わず珠実ちゃんを睨んでしまう。
珠実ちゃんはそんなものは一向に意に介さない。
いつのまにかペースを取り戻してる。
   
809Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:35:54 ID:zpIF+ZsM
   
「ん〜、白鳥クンなんかオカシイわね……
 こんな調子で大丈夫かしら?」
「さぁ〜、ど〜でしょ〜?でも中止したら
 あの人達、怒りますよ〜?呪われますよ〜?」
「う、確かに。……う〜、考えててもしかたない。
 こうなりゃ自棄だっ!良薬口に苦しっ!!」
「オーイエー、結果オーライ、イッツ・オーケー!」

も、もうちょっと考えてください〜〜〜;;;

810Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:38:54 ID:zpIF+ZsM
「バンッ!!!」
案の定、二人によって扉は開かれた。

そしてその奥にいたのは、当然のごとく
鳴滝荘の住人たち。

灰原さん

沙夜子さん

朝美ちゃん


そして、










ジョニー


じゃなくて、

梢ちゃん 

《梢ちゃんっ!?》
811Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:39:47 ID:zpIF+ZsM

「おに、じゃなかった、おねえちゃん、すごおい・・・・・・」

「……眩しいわ…」

「これが白鳥だってえのか?信じられねえゼ。」



そんな言葉達は、すべて意味を成さずに記憶の海に埋没していった。

僕に見えるのは梢ちゃん、君の顔だけ。
いや違う、まるで金縛りのようにそこから視線を逸らせられない!
部屋の入り口に立つ君と僕の隔たりは、ごくわずか。
君の表情一つ一つがありありと見えてしまう。

君は僕を見てどう思うだろうか?
不安?嫌悪?怒り?嫉妬?

その口から僕を串刺しにする言葉を放つのだろうか?
そんなこと僕には耐えられない!

812Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:41:12 ID:zpIF+ZsM
逃げればいい!逃げるんだ!でも動けないっ!

あ・・・梢ちゃんが何か…僕に話し掛けてる!!
聞くんじゃないやめておけどうなってもいいのか引くなら今だぞさあ早く・・・・・・・

         《ウルサイッ!》




「・・・・・ら・・さ・・・れ・・・・・」

え・・・・なに・・なんていってるの・・・?


「・・・・しらとりさん、きれいですよ・・」

えっ・・・・それ・・・だけ・・・・・・?

「本当に、びっくりするぐらい綺麗ですよ・・・」


813Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:42:04 ID:zpIF+ZsM




      だーーーーーーーーー;;;;;;

「うわっ、いきなり泣き出したぞーコイツ。」
「お、おかあさん!なんでおに、じゃなくておねえちゃん泣いてるのー!?」
「・・・大人になると、泣きたい時もあるのよ・・・」


「こ、梢ちゃん、あ、あのこれはね、今変身しちゃってるのはあのその珠実ちゃんがね
 あのその別に好きでなってるんじゃなくて、そのメイクもえーと桃乃さんがっ!
 確かにその、鏡を見て変な気持ちになったけど、僕は・・・僕は・・・」


「大丈夫ですよ。」

「え・・・・・?」

「私はそういうところも全部含めて、白鳥さんが大好きなんです。
 …ですからそんなに不安な顔をして、泣かないで。」

814Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:42:34 ID:zpIF+ZsM

気が付くと僕は走り出して梢ちゃんに抱きついていた。
梢ちゃんに抱かれて、その胸の中で僕は咽び泣いた。
もう涙で顔はグジャグジャだ。
最初は戸惑っていたみたいだけど、梢ちゃんはやさしく僕の頭を撫でてくれた。

そう、梢ちゃんは僕がこんな体になった時も、
いやな顔ひとつせずに受け止めてくれたじゃないか。
それなのに僕は・・・・・・。
梢ちゃんを守るだなんて・・・・・・・・守られてるのは僕の方じゃないか!

815Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:43:39 ID:zpIF+ZsM



「落ち着きました?」
「・・・・・・うん、ありがとう。」
「それは良かったです。」
僕はゆっくりとその体を離した。

「・・・梢ちゃんっ、最近の僕は君に心配ばかりかけて
 本当にダメダメで・・・。でもこれからは君を守るために…」
僕が言い切る前に梢ちゃんは言った。

「白鳥さん、私は白鳥さんに出会えて本当に幸せなんですよ?
 白鳥さんは私の人生で抜け落ちていたモノを埋めてくれたんです。
 私はもう、白鳥さん無しでは生きられません。
 そばに居られるだけでいいんです。
 そのためなら、たとえどんな事があろうと耐え抜く自信があります。」

僕は驚いた。それは今までに見たことがない、凛とした顔だった。
しかしそれは決して冷たい表情ではなかった。慈愛に溢れていた・・・。

梢ちゃんの言葉が沁み込んで来る。
普段の僕たちなら、はにかんでしまう所だけれど、
今はしっかりと見詰め合っている。 
僕達はもう一度抱き合った、
今度は互いの体温を確かめるように、優しく・・・・・・。

816Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:44:20 ID:zpIF+ZsM


「・・・・・・白鳥さん。」
「・・・なんだい?梢ちゃん。」
梢ちゃんは俯き気味で恥ずかしそうに言った。
「先ほどはあのように言いましたけど・・・・
 あのお顔は・・・
 ・・やっぱりちょっと妬いてしまいます・・・あ・・んっ・・!」

堪らなく愛しい気持ちを伝える手段はこれくらいしか無かった。
今までのどんなキスよりも・・・長く・・・熱く。



817Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:45:09 ID:zpIF+ZsM

「それにしてもなんだってメイクしたくらいで
 あんなに取り乱してたのよ白鳥クンは?
 梢ちゃんなんかより、よっぽど危なっかしいじゃない。」
「仕方ないです〜。今は体の変化に心がついていけてないんです〜。
 私もまさかあそこまで白鳥さんが参っているとは思いませんでした。
 反省してますぅ〜。」
「ほーぉ、いつに無く殊勝な態度ねェ、珠ちゃん。
 やっぱり隆子ちゃんに惚れたわね?」
「マ゛ー、またそれですかぁ〜?」
「珠ちゃんも結構な面食いねぇ、梢ちゃんといい隆子ちゃんといい。」
「勝手な推測で決め付けないでくださいですぅ〜。」
「いっそのこと二人とも愛しちゃえば?そうすればハッピートライアングルが生まれるわよ?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・今ちょっと悩んだでしょ?」
「う、うるさいですー!そんなことあるわけないでしょー!!」
「あははっ!今日の珠ちゃんはカワイイわね〜。」
「(うぬっ、この借りはいつか返してやるです〜。)」
818Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:47:11 ID:zpIF+ZsM

「あの二人まだやってんの〜?白鳥クンも頑張るわねー、
 って、あれ?いつのまにか元に戻ってるじゃない白鳥クン」
「あ〜ほんとです〜、時間切れですねぇ〜。
 予想よりもだいぶ早いですぅ〜。」
「おう珠さんや、今日はカワイイだけじゃなく気の利いた事するじゃない?」
「知らないですぅー、あんな呪術をコントロールできるほど
 人間辞めてないですぅー。」
「え、本当?」
「それはどういう意味ですか〜?」
「じゃあ、考えられるのは・・・」

「梢ちゃん・・・ですね・・・。」
「珠ちゃん・・・。」
「いいんですぅ〜、もう分かってることです〜、
 梢ちゃんの気持ちはもう動かせないですから。
 それにこう毎度毎度見せつけられると、しんみりも何も無いですぅ〜。」
「・・・そこで隆子ちゃんを」
「だ〜が〜ら゛〜、その話題から離れるですぅ〜!」


ぷっ!   くすっ!

この時の珠美ちゃんが、心から笑えたとは思っていない。
彼女から梢ちゃんを奪った僕が言うのもなんだけれど、
珠実ちゃんには笑っていてほしい。
梢ちゃんの笑顔は、珠美ちゃんの笑顔あってのものだから・・・。


819Hard Shiratori:2005/06/14(火) 01:48:29 ID:zpIF+ZsM

「おい、おめ〜ら、アタシの白鳥を随分可愛がってくれたみたいだな。
 ちょっと来て貰おうか。」
「早紀ちゃん、もういいんだって!僕はもう大丈夫だし。」
「おわっ!こ、梢ちゃん、いつの間に?って、え、早紀ちゃん?
(げ、なんか目が怖い・・・珠ちゃん、ひょっとして早紀ちゃん相当怒ってるのかな?)」
「(ひょっとしなくても相当怒ってるです〜。白鳥さんチクリましたね。)」
「(チ、チクるなんてとんでもない!ありのままを言っただけだよ〜;)」
「さあ早く来いっ!!」
「「うひぃぃぃっ!!!」」

             【おわり】
820684:2005/06/14(火) 01:52:08 ID:zpIF+ZsM
最初はギャグでいこうと思っていたんですが、
白鳥君が暴走してしまいこんな感じになってしまいました。
まあなんとか纏められたんで良かったです。いい経験になりました。
821名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 02:03:47 ID:aD3B8h7i
乙!
いや、なんか凄く上手く料理していただいてホントありがとうございます。
一部考えてたネタ使われちゃったけど、もう全然おっけい!
ていうか、初めてでこれだけ書けるって凄いですよ。
(一応つっこむとすれば「」内の締めくくりに。はいらないかも)

また妄想爆発したら是非是非投下してくださいです。
822名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 05:42:21 ID:I+5phZ8q
やば、TS物マジ最高!萌え死にそう。
しかもこの間のアレかなり好きだったから作者様は違うみたいですけど
続編的な位置の作品は個人的には特に最高!激しくGJ!
823名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 05:46:19 ID:RPJ//xg4
今日もたくさん読めて幸せでした。
書き手さん乙
824名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 06:58:25 ID:26DFuz6X
アレ…もうレスが800をコエテルヨ?
それはともかく、両氏乙でした。しかし…

>ぐうたら氏
いや、今回もかなり暴走してますね…
ネタはいい。早紀スキー大満足のラブラブっぷりですね。
ですが、>>795氏と同感でやり過ぎ感がありました。
自分が受け入れられないだけかも知れませんが、全体に見て取れるドクロちゃんのノリは…
自分、文句をつけすぎですが、一度撲殺スレでノリをぶちまけてみては?
そうすればきっと熱も醒めてまた良い物を書けるようになるはず。
ホントに、文句ばかりですみません。

俺も続きうpしなきゃなぁ…
825名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 07:55:20 ID:dfjOq433
電車の中からだけど


GJ!
826名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 10:52:23 ID:nkX/A87E
>>820

>ジョニー

電車内なのに吹いちまったww
827名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 10:52:43 ID:yqcs+POD
>ぐうたら氏
前よりマシにはなったけど、もう少し抑えて欲しかった。

>>684
珠と桃が無神経杉&白鳥君弱気杉な気が。
まあ、キャラの解釈が違うだけだろうから
あんまり気にしないでください。
全体としてはGJですよ〜。
828名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 11:06:00 ID:Hl3DiZYc
携帯からですが、ぐうたらです。
今のノリは自分の個性だと思っているので変えるつもりはありません。
皆様は俺に何を求めているんですか?俺にどうして欲しいんですか?
829名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 11:21:59 ID:1qPuO+TP
21以下をカミングアウトした職人は職人ではいられない・・・
イギリスのことわざだ。
830名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 12:09:01 ID:aD3B8h7i
>>828
苦言が多いと言うことはそれだけ期待してるってことですよ。
ネタも文書力はしっかりしてるんだから力作を読んでみたい…そんな読者心かと。
個性が強いって事はそれだけ苦手とする人が増えるってことでもありますし。
内容のない無闇な煽り、叩きではないのでその辺はわかると思います。

ご自分の個性だと思うのでしたら、その辺は心しておくといいですね。
あとはどれだけ冷静に受け止められるか、ですよ。
831名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 13:34:55 ID:RPJ//xg4
俺はSSがいっぱいUPされる今の状況がすき。
複数書き手がいるから当然嫌な(合わない)SSもあるだろうけど
そんなときはスルーすればいいと思う。
ああしろ、こうしろと言ってるとネタ自体も同じようになってきて、そのまま先細りしそうな気がする。

>>828
俺は今のままでいいと思いますよ。
832名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 13:55:53 ID:8F0UZCV2
書き手擁護というわけではないですがこういう場で一番なのはやはり自分の個性を出す事かと。個性を殺しちゃったらいいSSというものはできませんから。
>>828
あなたの思うままに書いて頂ければ十分です。個性を最大限に発揮してください。
833名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 14:04:52 ID:27CJfFIt
ただ人の意見を全て取り込むのではなく、自分でも改善すべきだと
思った点は参考にする。勿論個性を失わない程度に。
そうすれば、より良い作品ができる・・・かも。
834名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 14:45:46 ID:SZUQrnjC
別にパロディがいけないなんて決まりは無いんだしさ
835名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 16:35:50 ID:26DFuz6X
知らない人を取り残さず、知ってる人に「おっ」と思わせる程度がパロディの理想かと。
あまりに大っぴらだと元ネタを知っていようがいまいが読者は引いていきますしね。
そこをどう線引きするかがパロディを入れる時にまず考えることでは?
パロディ≠個性の方程式は絶対。
ただ入れるのではなく、パロディはあくまで隠し味だと言うことを心に留め置いていただければ幸いです。

それと、>>830氏の言うとおり苦言は期待の裏返しですから、ある程度聞き入れることで
自分の作品が今よりも良くなることは間違いないでしょう。
しかし聞き入れ過ぎが個性を潰すことも事実なので、そこも書き手の腕が問われる部分ですね。
ただ「乙!」「GJ!」と言われるより、細かなことでも指摘される方がよっぽど幸せだと思いますよ。
どうあっても、自分が産んだものを客観的に見るのは難しいことですからね。
間違いはあって然るもの、必要なのは間違いをしないことではなく間違いを正す力です。


と、先月末に21になったばかりの某書き人でした。
836名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 16:42:38 ID:L8QcdOON
9人がスルーしても1人が爆笑するパロディが俺の理想…かも。
837名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 17:53:48 ID:rnl1PFam
年齢なんて実際はわかんないんだから、
30過ぎたけどまだ童貞だぜ!イヤッホウウゥゥゥ!
とかいえばいいんだよ。
838アトガキ ジゴク:2005/06/14(火) 18:00:46 ID:AW0FYS8z
帰宅してまいりました、ぐうたらです。
>>828では少しネガティブになってヤケ気味に発言してしまい申し訳ありませんでした。
自分の力量不足でバランスやテンポの悪い作品になってしまい、見る人によっては不快感を与えてしまったようで…
これからは、『個性』『テンポ』『オマージュ』のバランスを考え、読んでくださる皆様は勿論、書いている自分も楽しめる作品を作りたいと思います。
俺のことを考えて発言してくださった皆さん、本当にありがとうございます。

それと、保管庫の管理人様。
>>783の下から五行目。
「お前がキツそうだそうだからさ」の部分を「お前がキツそうだからさ」に直して掲載してくれませんか?

>>837
30過ぎたけどまだ童貞だぜ!イヤッホウウゥゥゥ!
839ぐうたら:2005/06/14(火) 18:01:23 ID:AW0FYS8z
名前戻し忘れてました…重ね重ね申し訳ありません。
840名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 18:25:33 ID:7iMxYFi1
一つ忠告。
SS書きの「作品」を住人は求めてるけど、それ以外のものは特段欲しがっていない。
だから自分の作品がどうこうとかはあまりいらない。
やるなという訳ではないが、多すぎるとそれを読んでいるような気にさせられる。
いい作品だったら好評価がつくし、悪ければスルー、もしくは批評が入るだろう。
それを生かして良SSを仕上げてくれれば、それでいい。
841名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 19:14:41 ID:yILLEKQu
>>840
……俺の読解力が無いのかもしれんがそれって職人はただSS書いてりゃ良いみたいに聞こえんだけど
842名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 19:36:50 ID:86q5kM/t
>>840も悪気があったわけじゃないと思うが、書き方が悪いね。
でも職人にもスレが荒れかねないよう細心の注意は払っていただきたいところ。
そのへん、どうも微妙なのは気になる。
843名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 20:18:32 ID:B+hs5d2G
どうでもいいけど、何で2ちゃんは18禁でなく21禁なんだ?
844テイル:2005/06/14(火) 20:42:37 ID:VTiYzzuG
>>843
単に鯖がアメリカにあるだけ。
やってることは18禁だけど、いざという時のために現地の法律に沿っているらしい。
(ウィキペディア)

何で日本に置かなかったんだ……?
845名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 21:11:31 ID:blc02tqm
金がかかるのか
置き場所がないのか
846名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 21:55:54 ID:26DFuz6X
ほら、日本は国土が狭いからw
847テイル:2005/06/14(火) 22:18:55 ID:VTiYzzuG
進んだ〜……

てなわけで「M.I.W.」第四次投下を開始します〜
続きを待っていた方、お待たせいたしました。
あまり、暴走気味にならないようにしてあります。
848M.I.W.(14):2005/06/14(火) 22:20:57 ID:VTiYzzuG

白鳥クン達の亡骸は、一応7号室(空き部屋)に移動させて置くことにした。
今すぐには葬式も出来ない。
なんだか、可哀想だけど……これしか、処置は、ない。
「本当に……何なんだろうね」
「何ガですカ?」
部長さんが訊ねてくる。
「何で……白鳥クンは、皆は、殺されなくちゃいけなかったワケ?
 何をした訳でも、ないって言うのに……」
「…………」
束の間の沈黙。

暫くして。

「……私ハ、あなた達ガ少シ羨ましイのデスよ」
「……え……?」
何を、言い出すんだこの娘は。
でも、羨ましいって?
「私ハ、それなりニ裕福ナ家ニ生まれましタ。おかゲで、好きな事モ自由ニできまシた」
「……へぇ……」
「でモ、家族の愛なんテものハ、そこでハ見せ掛ケに過ぎマせんデした」
「……見せ掛け……?」
「あんナ、私の成績しカ見なイ親なんテ、親でハありマせンよ」
「………………そうだったの………………」
人には誰にも過去がある。
私にも過去がある。
人生いろいろ。家もいろいろ。家族もいろいろ。
849M.I.W.(15):2005/06/14(火) 22:22:28 ID:VTiYzzuG
「そノ点、あなタがタの住む鳴滝荘がとてモ羨まシかっタでス。
 実際にハ血も繋がラなイ人達が、家族のヨうな付き合イをしテいる。
 私ハ―――トても、羨まシかっタ」
「……」
魔女っ娘って、あまり恵まれていないのね……
半ば当然かも知れないけど。
「ところで部長〜」
「なんデすカ、珠実部員」
「どうして、梢ちゃんの<病気>を知っていたんですか」
珠ちゃんは―――半分、絶望したような顔で部長さんに訊く。
梢ちゃんの病気―――梢ちゃんの多重人格を知っているのは、他ならぬ鳴滝荘の面々だけ。
何故なら―――
『その事実』が漏れるのを、珠ちゃんが防いでいたから。
「伊達にあなたヨリ長ク生きてイなイのデスよ、珠実部員。
 梢部員ガ、多重人格でアる事は―――私の情報網かラ、把握しテいまス」
「―――そん、な」
珠ちゃんは、愕然としている。
己の無力さに。
850M.I.W.(16):2005/06/14(火) 22:23:15 ID:VTiYzzuG
「いツか言いマしタよね―――世の中ハ自分のモノサシだけでハ測れナい、と。
 それト同じ論理デ―――世の中ハ、意外と広いものデすヨ。
 あなタは自分ノ能力を過信しテいタようデスが……
 完全ナんテ、有り得なイ話でスよ、珠実部員」
「………………」
井の中の蛙大海を知らず。
珠ちゃんは押し黙っている。
何を考えているのだろうか。
「…………自分ノ能力が足りテなイと考えルのハ莫迦ガする事デすヨ、珠実部員。
 それニ、今はそんナ事をしテいる場合でハないデしょう……」
「……分かって、います、けど……」
「今ハ梢部員ヲ取り戻すのガ先デす」
「………はい………」
「………ハぁ………あなタらしクありませんネ、珠実部員。
 アナタには、いつモのようナ覇気のあル珠実部員デいテモラいたいモノでス。
 でナいと、梢部員に会っタ時ニ心配シますヨ?」
「………」
無言の珠ちゃん。
そして、顔を上げて。
851M.I.W.(17):2005/06/14(火) 22:24:26 ID:VTiYzzuG
「アナタに言われずとも分かっていますです〜、この陰湿陰険ドロドロ魔法ヲタ〜」
「……ヲタ……!?
 アア……そノ嫌ナ響キ、最高でス……モット、もっト私ヲ罵っテ〜」
「このスレにエロが戻ってきたのもあなたのせいです〜、エロエロ将軍〜」
「エロ……!?あァ、スゴい、心の底かラ震エ上がりソう……
 あまりノスゴさにモう私昇天しテしまイそウデス!!!!!」
「あの〜、昇天しそうな所悪いんだけど」
というか、<このスレ>って何の話よ?
訳が分からない……
「それより、ここを早く出なくちゃ。ここにいても、梢ちゃんは救えないわよ」
「そうです〜、早く行くです〜」
珠ちゃんは行く気満々になっている。
これでこそ、茶ノ畑珠実。
「そうデすネ……でハ、行くコトにしマすか……」
部長さんも、意を新たにする。
「……でも、どこに行けばいいの?」
「それはどこでしょうねぇ〜……?ねぇ部長〜?」
珠ちゃんは部長に振る。
「……ドコ、でスって?そんナの、決まってマす」
何を今更、という風に部長さんは言う。


「新宿ニ、決まっテいルじゃなイでスか」
852テイル:2005/06/14(火) 22:29:30 ID:VTiYzzuG
今回はこれまで〜。

いや、少し遊んでしまいましたが。
>>851のあの発言はスルーしたって下さい。
単に私がやってみたかっただけなので……

人間の頭ってすごいもので、色々構想が浮かぶんですね〜
千百合とかホワイト(ry

まあ、お楽しみ、という事で。
批評があれば受け付けます。
853名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 22:42:06 ID:dfjOq433
>>852
GJ。
随分長くなったなこりゃ。
854名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 22:55:02 ID:bkbNTUt1
>>852 乙です

部長が主役?のSS書こうかと思ってましたが、
テイル氏の部長見てびびっちまいました…。
俺には無理かなあorz
855テイル:2005/06/14(火) 23:17:32 ID:L/rWXUVA
>>854
いやいや、是非中身を練って投下してください。
今のSSの部長なんて少し暴走気味なんで、新たな世界を切り開いて欲しいです。
856名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 23:22:54 ID:aD3B8h7i
なんだなんだ、みんな部長でネタを構築中かっ。
シンクロニシティ!

ていうか、いちいちカタカナに変えなきゃならないからめどくさいよ、部長orz
857部長:2005/06/15(水) 00:14:00 ID:esXbzhni
カナ変換ヲ面倒ダと思わナくナッた時、私ヘの愛ヲ実感でキルのデすネ。

カナ変換はソんなニ大変カナー。



…クッ。
858名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 00:19:39 ID:7FglMuK4
まア、漢字に変換シタ後でナイとカタカナをちりバメらレナいから2度手間ニナルのは確かデすかラネ
859名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 00:29:36 ID:KGV0JCfv
部長語は「〜デス」はほぼ確実にカタカナ。
例外的に「いいです」>「イイでス」等全部カタカナになる場合は微妙に変化。
「シ」「イ」の変換率も高い。
特に「シテ」「イク」「スル」等微妙なエロ要素を含む時が多い。
後は前後のバランスを考えて適度にカタカナを混じらせる。

こんな変換法則を調べるこだわり派。
860名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 00:31:15 ID:vWkq9NoU
例えバ、こんナ感ジでスカ?
861名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 00:56:52 ID:Wx75eq0v
>>859
部長語変換ツール作ってください
862名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 01:07:34 ID:KGV0JCfv
SSに使ウだケで勘弁シテくださイ…。
863名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 08:00:33 ID:J8jXI8CX
部長語ガ流行ッてマすネ。
>>859 参考ニさせテモらいまス。
864名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 09:02:11 ID:bQo7BJfy
ひらがなを検出して高確率でカタカナになるパターン「です」「し」「い」「して」「いく」「くる」を
カタカナにして、あとはひらがなが連続しているところをランダムに、カタカナが連続しないように変換・・・
言うのは簡単ですけど実装は面倒ですね・・・
865We'd get there someday:2005/06/15(水) 13:11:28 ID:KGV0JCfv
「う……〜ん」
朝。
窓から差し込む光と小鳥たちの囀りによって僕は目を覚ました。
布団から起きあがった僕はカーテンを開け、朝の空気を吸い込む。
「今日から夏休みかぁ…」

僕がここに来て2年目の夏。
鳴滝荘もずいぶんと変わっていた。

桃乃さんはアメリカの恋人の元へ旅立った。
別れ際、珠実ちゃんが本気で泣き出したのには驚いたけどみんな笑顔で見送った。
この間届いたエアメールに同封されていた写真の桃乃さんは自慢げに指輪を見せていた。
なんでも来年の春には結婚するらしい。

黒崎親子は実家にいることの方が多くなった。
沙夜子さんはその才能を認められ、先日は個展を開いていた。
沙夜子さんが朝美ちゃんを助け、朝美ちゃんが沙夜子さんを支える。
そんなふたりの姿はとても幸せそうだった。

灰原さんは小説がヒットしたのもあるが、その独特のパペット芸が受けたのか
最近ではテレビ出演しているところをよく見るようになった。
そんな多忙の中、鳴滝荘に帰る日もだんだん減っていった。

866We'd get there someday:2005/06/15(水) 13:11:44 ID:KGV0JCfv
今───。
この鳴滝荘の住人は実質3人。

梢ちゃん、珠実ちゃん、そして僕だけだった。

出会いがあるから別れもある。
それは悲しいことだけど、僕と梢ちゃんは共に手を取り歩んでいく。
ずっと、ずっと。
そう、誓い合った。

珠実ちゃんはそんな僕たちを影ながら支えていてくれた。

桃乃さんたちが巣立っていき確かに寂しくなったけど、僕たちはこうして暮らしている。
僕たちの鳴滝荘がここにある限り。

867We'd get there someday:2005/06/15(水) 13:12:05 ID:KGV0JCfv
「さて、と。 着替えなくっちゃ」
僕は着ていたパジャマを脱ぎ、下着を代え、服を着替えた。
長い髪をクシでとかし、いつものように梢ちゃんとおそろいのリボンで三つ編みをまとめる。
ノースリーブにミニスカートとちょっと大胆な格好だったけど折角のお出かけだから張り切ってみた。
自分で言うのもなんだけど、鏡に映る僕はとても可愛───。

「……アレ?」

可愛い?

「…………えっ?」

鏡に映る僕はどう見ても男の姿じゃなかった。


868We'd get there someday:2005/06/15(水) 13:12:22 ID:KGV0JCfv
「たまたまたまたまたまたまたまたまみちゃあああああん!!!!」
異変に気付き、猛ダッシュでキッチンに駆け込んだ。
「なんですか〜、白鳥さん。 朝っぱらからうるさいですよ〜?」
「おはようございます、隆士さん……あら?」
「あれ〜? どうしたんですか、そんな格好して」
「どうもこうもないよ! 朝起きたらこうなってたんだよ!!」
僕はわけのわからないまま珠実ちゃんに食って掛かった。
こんな悪戯する人間はほかにいないからだ。
「今回は私は何もしてませんよ〜? っていうか、ずいぶんしっかり着替えてますね〜」
「他にこんなことする人いないでしょ!? いや、服は自分で着たんだけど!」
「私は何もしてませんってば〜。 それに解除呪文教えたでしょう〜?」
「あ、そっか! えっと…『パポップ・ペプッポ・ピペッポ』!」
慌てていてすっかり忘れていたけど、一通りの呪文は教えてもらっていた。
気を取り直して呪文を唱える…が変化がない。
「違います〜。それは変身呪文です〜」
「えっと、そうだっけ? 『ペプッポ・パポップ・プピッパ』!」
「それは男女の中間になる呪文ですよ〜」
「あれ、そうだっけ? 紛らわしいなぁ…」
「隆士さん、『パ・ポ・パ』ですよ」
「あ、そっか! 『パポップ・ポペッピ・パプッペ』!」
梢ちゃんに助け船を出してもらって今度はちゃんと解除呪文を唱えた。
……し〜〜ん。
「おや〜〜〜〜?」
「…アレ? もう一回! 『パポップ・ポペッピ・パプッペ』!」
何度やっても反応なし。
僕の体は一向に男に戻る気配はなかった。
「どうなってるの!? 珠実ちゃん!」
「さぁ〜、私に聞かれても〜…」
「どうしましょう、困りましたねぇ…」
869We'd get there someday:2005/06/15(水) 13:12:48 ID:KGV0JCfv
「ドウやら魔力の暴走のようデスね」
食堂の片隅で今まで様子を見守っていた人物が口を開いた。
「えっ……いつからそこに!?」
「サッきからイまシタよ、タマなしサン」
「なんで部長がいるんですかー!?」
「あっ、私が呼んだんだよ、珠実ちゃん」
「梢ちゃ〜ん……」
「皆サン、ご機嫌ヨう」
彼女───元オカルト研究部部長は優雅にお茶をすすっていた。
「最後に変身シタのはイつデスか、タマなしサン」
「え? えっと……3ヶ月くらい前かな?」
「ゴールデンウィーク中だったからだいたい2ヶ月半ですね〜」
「チョっと失礼しマスよ」
聞いているのかいないのか、部長さんはスクと立ち上がると僕の顔をのぞき込んできた。
吐息が触れるほど顔を近づけて僕の目をのぞき込んでくる。
生気のない瞳が迫ってくる様はホラー映画のよう…。
部長さんはまじまじと僕を観察した後、スッと離れた。
870We'd get there someday:2005/06/15(水) 13:13:01 ID:KGV0JCfv
「フ〜ム……やっパリ思っタ通りデスね」
「えっと…どういうこと?」
「マァ、端的に言ウとサッき言っタよウニ魔力の暴走デス」
「暴走……?」
「長期間、術を行使セずにイると蓄積シタ魔力があふレ出てシまうのデスよ」
コップに水を入れるような仕草で説明する。
知識をひけらかせるのが嬉しいのか部長さんは喜々として語り始めた。
「私のヨうに卓越シタ魔女ッ子なラ自力で処置出来るのデスがタマなしサンのような人だとソうなってシマうわけデス」
「何となく理屈はわかったけど……。 どうすればいいの?」
「普段からトキどき放出すレばよイのデスが、そうナってシマっては普通には解除出来マせん」
「ええええぇぇっ!?」
「自然に抜ケルのを待つシカないデスがドれくらイ持続スルのかも予想出来マせんネ。 ご愁傷様デス」
「そんな……。 これから旅行だっていうのに…」
「困りましたねえ…」
871We'd get there someday:2005/06/15(水) 13:13:17 ID:KGV0JCfv
そう。
さっきもいったようにこれからみんなで一泊二日の旅行に出かけることになっていたのだ。
第3回鳴滝荘水泳大会。
立案者の桃乃さんはもういないし人数は減ったけど規模は大きくしよう、と今回は泊まりがけの予定だった。
「まぁ、支障があるわけじゃないからいいんじゃないですか〜?」
何となく嬉しそうに珠実ちゃんは言った。
悔しいけれど、実際のところ変身することにはもう慣れてしまって問題がないと言えばなかったりする。
珠実ちゃんはどことなく梢ちゃんに似ているこの姿が気に入ってるらしかった。
「支障がないからいいってわけでもないよ〜…」
「そうデスね。 私も一緒に行きマスので特に大キな問題はナイでしょウ」
さらりと重大なことを言ってのける部長さん。
「………えええぇぇぇ!? 部長さんも来るの!?」
「オヤ、聞イテいなカッたんデスか?」
「なんで部長も来るですかー!?」
「あっ、私が誘ったんです。 …いけませんでしたか?」
「こっ、梢ちゃ〜ん……」
「アァ、ご心配なく。 車は私が出しマスのデ」
「はぁ……」

こうして今年の夏───。
前途多難な一泊二日の旅が始まったのでした。
872We'd get there someday:2005/06/15(水) 13:13:38 ID:KGV0JCfv
「……なんですか? 部長。 このいかにも曰くありげな車は?」
「私の愛車『カール』デスよ」
鳴滝荘の玄関を出ると一目でわかる年代物の高級車が停車していた。
部長さんが誇らしげに紹介する自動車だが珠実ちゃんがいうように異様なオーラを放っていた。
内部にお札が貼ってあったりマズそうな雰囲気がぷんぷんする。
「え、と…これに乗っていくの?」
「勿論デス。 そのタメに屈服さセたんデスから」
「く、屈服!?」
「チョッと骨が折れマしたが今でハすっカリ従順デスよ。クッ」
不穏な発言と含み笑いでますます不安にさせるが、車自体はかなりの高級車のようで彼女が自慢するのも分かる気がする。
分かる気はするけど、本能的にやばいと感じさせる車だった。
「サァ、ドウぞ。 荷物を積み込んデくだサイね」
「あ、うん」
「…っていうか、部長〜。 免許あるんですか〜?」
「失礼ナ」
ちょっと心外だったのか部長さんはいつものぬいぐるみから免許証を取り出して見せてくれた。
それは確かに正規のものらしく、さすがの珠実ちゃんも納得せざるをえないようだ。
「むぅぅ〜〜…」
「……あの、この写真の右上のは?」
それはともかく、やたらに気になっておそるおそる免許証の写真を指さす。
そこには半透明な顔のようなモノが写っていたからだ。
「アァ、そレは教習中に事故で亡くナった方デスね」
「…………」
それはそれは彼女らしい心霊写真付き免許証でした。
873We'd get there someday:2005/06/15(水) 13:29:25 ID:KGV0JCfv
そんなこんなで部長さんの運転する車は一路海を目指して高速を走っていた。
意外と言っては失礼だけど、部長さんの運転はとても安定していた。
「部長さん、運転お上手なんですね〜」
「物事ヲ冷静に見ル目を持てバ運転など容易いモノでス」
「ところで部長〜、短大のサークルの方はいいんですか〜?」
「愚問デスね、珠実サン。 サークルは一時のモノ、パートナーは一生のモノでスよ」
「…聞いた私がバカでした」
珠実ちゃんはやれやれと大きくため息をついた。
実は部長さんはもう高校を卒業し、珠実ちゃんたちとは部長と部員の間柄ではなくなっていた。
部長さんはそれに伴い呼び名から「部員」を抜いている。
しかし、珠実ちゃんはあくまで自分は部長代理だ、と言い張り部長と呼び続けていた。
こんな珠実ちゃんでも一応、部長さんに敬意を払っているらしい。
なんというか、ふたりとも妙に律儀な性格だった。
というか、僕は未だに部長さんの本名を知らなかったりする…。
「ちナミに私の所属はミステリーサークルでス。クッ」
「マ゛ー…」
「はは……」

874We'd get there someday:2005/06/15(水) 13:29:57 ID:KGV0JCfv
「ほら、梢ちゃん、海が見えてきましたです〜」
「あっ、ホントだ」
「オヤ、あンなとコロに自縛霊が。 クッ」
「部長さん、前見て! 前!」
出発前に危惧したほどのこともなく、僕たちは夏の太陽の降り注ぐ海岸通りを進んでいた。
因果関係はどうあれ、部長さんの車は順調に目的地へ向かっていく。
年代物の車だったからと思っていたけど、中はしっかりエアコンもありカーナビまでついている。
スピーカーからたまにうなり声のようなモノが聞こえるけどもう気にしないことにした。
「隆士さん、潮の香りがしますねえ」
「そうだね…」
「ココからしバラく行ったトころに自殺の名所の吊り橋がアッて…」
「どうして部長はそういう雰囲気を壊すようなこというですかー!」
「そう言えば去年もここ通りましたね…」
「あ……」
梢ちゃんが寂しそうに呟いた。
桃乃さん、沙夜子さん、朝美ちゃん、灰原さん……。
梢ちゃんが賑やかだった去年の夏を思い出し、ちょっとセンチメンタルになるのもムリはない。
「梢ちゃん」
「えっ……?」
「今年も思い出に残る夏にしようね!」
「……。 はいっ!」
僕はそんな梢ちゃんを励ますように笑顔を向けた。
過ぎた日々を懐かしんでも立ち止まらずに。
それが楽しかった思い出をくれた人たちへの一番のお返しになるから。
「梢ちゃん、私たちもいるです〜」
「一緒に一夏の思イ出を作るデスよ、珠実サン。 クッ」
「冗談じゃないです〜!」
875名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 13:33:10 ID:KGV0JCfv
連投規制めorz

と言うことで『恋のマホウ』続編です。
未来像に不満があるかもしれませんがその辺はご容赦を…。
設定的によくわからなかったことは適当に決めちゃってます。
なんか、前より長くなる予感…。

タイトルの由来はわかる人ならわかると思います。
876名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 13:37:08 ID:bQo7BJfy
キターーーーーー♪
確かに未来設定はわからないところ多いですが、
そこは「パラレルワールドの1つ」「未来の可能性の1つ」
ってことで気にせずに♪
877メリー:2005/06/15(水) 14:57:43 ID:ILoIj03m
875氏
良かったーー!
どんな思い出になるのか今から楽しみですよ。
長くなる文にはぜんぜんよかとです!
878名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 15:07:24 ID:xHAw/jRL
>>875
『恋のマホウ』結構好きなので期待してます。がんがって下さい。

ただ、なんとなく部長が魔女っ子というよりただの霊能力者になっている気が…
そうか!部長の本名は宜保あいkうわなにをsやめr(ry
879名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 15:40:39 ID:sihnNXrJ
>>875
とても(・∀・)イイ!!ですね
続きを期待しています!

>タイトルの由来はわかる人ならわかると思います。
やっと意味が判りました。恋のマホウと繋がってますね。
880名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 15:52:24 ID:xUc/UJrU
恋のマホウと聞いたらよく間違えられる四文字のあれしか……


どうにせよ、かなりいいですね。

賛美は後にとっておきましょう
881名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 16:04:20 ID:mdLQQZLu
部長があの雰囲気で免許取りに行く様子を想像してワロタ。
882名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 16:58:21 ID:g3zcsJ6w
おおっ、アレの続編ですか、これまた期待。
ところで車の名前がカールってもしかして悪のナイト2000?
883We'd get there someday:2005/06/15(水) 20:54:16 ID:KGV0JCfv
「あっ、部長さん。 ちょっとそこ曲がって貰えますか?」
「! 梢ちゃん、ここは…」
「イイでスが、何ヤら私にハ近寄りガたイ気配が漂ってイますネ…」
表情を少し曇らせながらも部長さんは言われたとおりに進路を変えた。
梢ちゃんが指し示す方向には『この先、恋人岬』という標識が立っていた。

「…ナニやらここハ私にハ場違イな場所のヨウでス」
「おや〜? 部長はこないんですか〜?」
「神気トハまた違ウ何かガ満チテいマスね…」
「部長も私と一緒に行きましょうよ〜」
駐車場に車を止め、降りようとした僕たちだったが部長さんが渋っていた。
よくわからないけど、確かに神社が苦手な部長さんにはここの雰囲気は厳しいのかもしれない。
「珠実サンが是非とイウなら仕方がナいデスね」
「部長さん、大丈夫ですか?」
「ご心配なく、梢サン」
「早く行くです〜」
珠実ちゃんは嫌がる部長さんをよっぽど連れて行きたいのか珍しく率先して手を取っていた。
このパターンは初詣の時と同じだけど…。
「う〜ふ〜ふ〜ふ〜ふ〜ふ〜」
「アハゥアッ!!」
展開もやっぱり同じだった…。
884We'd get there someday:2005/06/15(水) 20:54:35 ID:KGV0JCfv
「もぅっ、珠実ちゃんったら酷いわ!」
「……」
「いっつも意地悪するんだもん……」
「…………」
「珠実ちゃん…もしかして私のこと…嫌い?」
神社の時とは様子が違うけど、部長さんはまた別人になっていた。
まぁ、予想の範囲内と言えばそうなんだけど…。
「……ちょっと失敗したかもしれませんね〜」
「ははは……」
「部長さん、大丈夫ですかね…」
別人のようになってしまった部長さんはすっかり拗ねていた。
「やっぱり…珠実ちゃん…私のこと嫌いなのね……ぐすっ」
「あ〜も〜、うざいから泣きやむです〜」
「くすん……」
「ほら、部長、さっさと行くですよ〜」
「あっ……」
珠実ちゃんは見るに見かねて部長さんの手を取ってすたすたと歩き出した。
途端に部長さんの表情はパッと明るくなった。
「えへっ…珠実ちゃん、大好き〜♪」
「あ〜、失敗したです〜……」
「珠実ちゃ〜ん♪」
「はぁ〜…」
珠実ちゃんは部長さんに腕組みされながら先に行ってしまった。
885We'd get there someday:2005/06/15(水) 20:54:51 ID:KGV0JCfv
唖然としていた僕たちは残される格好になった。
「…なんだったんだ、いったい…」
「隆士さん、私たちも行きましょうか」
「あ、うん」
「あの……」
「え……?」
歩き出そうとした僕を梢ちゃんが呼び止めた。
ちょっと、躊躇した後、手を差し出してきた。
「えっと…私たちも手、繋ぎませんか?」
「……。うん、そうだね」
時は悲しいものばかりを積み重ねるものではない。
僕たちは一年という時間が育んだものを確かめるように手を繋ぎ合った。
886We'd get there someday:2005/06/15(水) 20:55:15 ID:KGV0JCfv

僕たちは手を取り合って岬の展望台までやってきた。
富士山を一望出来る絶景を楽しめ、ここから大きな声で叫ぶと願い事が叶うといわれている場所である。
「あ……」
そこに辿り着いたとき梢ちゃんの表情が僅かに曇った。
「……富士山、見えないね」
「…はい」
元々、雲に隠れやすい山なので仕方ないといえばそれまでだけど、去年が雲一つない絶景だったためか少し残念だった。
それでも僕たちは展望台の一番先まで行き、景色を眺めた。
「そう言えば、梢ちゃん」
「はい?」
「去年、なんて言おうとしたの?」
あの時はみんなに急かされて梢ちゃんは言いかけのままここを立ち去ることになったのだ。
「隆士さんと…みんなとずっと暮らせますように…って」
「……梢ちゃん」
「今思えば、あの時お願いしなかったからみんないなくなっちゃったんですね…」
「そんなことはっ」
「なんてこと、ないんですよね。 皆さん、ご自分の進むべき道を行かれたんですから」
影を落とし俯く梢ちゃんは自分に言い聞かせるように呟いた。
「…それに、私も」
「えっ?」
「私も自分の道を見つけましたから大丈夫です」
「梢ちゃん…」
「別れを恐れず、また出会うために…。 ですよね、隆士さん!」
顔を上げた梢ちゃんは笑顔を見せていた。
その笑顔はたくさんのものを含んでいたけど、力強い意志を感じられた。
887We'd get there someday:2005/06/15(水) 20:55:28 ID:KGV0JCfv
「さっ、隆士さん」
「あ、うん」
梢ちゃんに手を引かれるように僕たちは台座の上に立った。
梢ちゃんは大きく息を吸い込むと遙か遠くへ向かって叫んだ。

「みなさーん、元気ですかーーーー!!」

たくさんな思い出を乗せ。

「私たちは、元気でーす!!!」

未来への意志を乗せて。

「頑張って、いきましょーーーーー!!!!」

その思いは今は遠い、あの人たちに届くと信じて。
888We'd get there someday:2005/06/15(水) 20:56:08 ID:KGV0JCfv
その頃、珠実と部長は迷子になっていた。
「あ〜も〜、道に迷ったです〜」
「ねぇ、珠実ちゃん…」
「なんですか〜?」
林の中の遊歩道が続いているが周りに人影は見えない。
もじもじと言葉を濁す部長にうんざりしながら珠実は返事を返した。
「ねぇ、珠実ちゃん…私のこと、好き?」
「なにいってんですか、この…」
しかし、その表情を見たとき珠実はハッとなった。
「私は…珠実ちゃんのことが好き…世界の誰よりも…」
「部長…?」
不安、恐怖、愛情、決意。
様々な感情がその言葉を通じて伝わってくる。
「たとえ、私たちが女同士だって構わない…だって好きなんだもん」
「……部長」
「誰がなんて言ったって…私の気持ちは変わらない…変えられないの」
「…………」
いつもの珠実なら悪態をついて突っぱねることが出来ただろう。
しかし、その言葉の一つ一つを聞くうちに珠実は言葉を返せなくなっていた。
「珠実ちゃんがどう思っているか…ホントに私のこと嫌ってるかもしれないけど…」
「…」
「この気持ちだけは知ってもらいたかったから…」
「………」
「でも、もういいの。 この気持ち、伝えられたから。 私、それだけで……」
「部長……」
彼女は言いたいことを全て伝えて、珠実に背を向けた。
珠実は───それを笑い飛ばすことなんて出来なかった。
たとえ、どんな風に思われても、たとえ叶わぬ恋でも心を尽くす無償の愛。
その気持ちは珠実自身が一番知っていたから。
889We'd get there someday:2005/06/15(水) 20:56:23 ID:KGV0JCfv
気付けば珠実は彼女の手を取っていた。
「部長……私は……」
ザザ、と木々がざわめく。
「珠実…ちゃん…………」

『みなさーん、元気ですかーーー!!』

遠くから聞こえる梢の声。
その声でふたりはハッとなった。
「こっ、梢ちゃんの声です〜」
「あっ、珠実ちゃん……!」
「ほ、ほら、部長、行くですよ〜」
「あ……」
珠実は慌てるように部長の手を引いて走り出した。
返事を聞けなかったことに彼女の表情は曇っていく。
「……少し……考えさせてください」
「……珠実ちゃん」
複雑な思いを乗せ走るふたりの耳に梢の声が通り抜けていった。
890We'd get there someday:2005/06/15(水) 20:56:34 ID:KGV0JCfv
岬で合流した4人は揃って駐車場まで帰ってきていた。
「もう、ふたりともどこ行っちゃったのか心配したんだよ」
「え〜? 白鳥さんは梢ちゃんとふたりっきりの方がよかったんじゃないですか〜?」
「そ、そんなことないよ」
「じゃあ、梢ちゃんとふたりっきりは嫌だと〜?」
「そんなことないないない!!」
帰って来るなり珠実ちゃんの口から出たのは冷やかしの言葉だった。
でも、なんかいつもと違うような…。
「珠実ちゃん……?」
「なんですか〜? 梢ちゃん〜」
「ハッ!? 私ハ今までナニを?」
「あ、部長さんが元に戻った」
恋人岬の発する結界?によって人が変わっていた部長さんはようやく元に戻った。
「あー……」
「大丈夫ですか、部長さん?」
「エぇ、何故か心がスッきりシタようナ気がシマすよ」
「何かいいことでも?」
「ヨく覚えてマセんが何カ胸のツカえが取れタ感じデスね」
「そうなんですか?」
「……」
一緒にいた珠実ちゃんを見ると考え込むように黙りこんでいた。
僕は普段とは違う何かを感じ、結局何も聞くができなかった。

様々な思いを乗せ、僕たちは恋人岬を後にした───。
891名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 20:59:17 ID:KGV0JCfv
連投規制しょぼーんになるので分割回数を多くさせてもらいます。
とりあえず、今回の投下分はここまで。

>>882
なんのことかわかりませんが車種は黒のトランザムです。
892名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 21:24:14 ID:Wx75eq0v
期待シテまス
893名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 21:44:33 ID:D7Hq3+aY
>>891
いやね、萌え萌えですよ。特に部長とか部長とか部長とか。
894684:2005/06/15(水) 22:41:21 ID:ykhkNGj4
>>891
おお!!遂に来た。待ちに待ったものが来たー!

って、そんなことより自分わざわざお褒めのレス貰ってるのに気付いてませんでした。すんません。
いやなんかもう、自分のを読んでみた後、240さんの作品を読むと、ただ邪魔しちゃっただけのような気がします。
文がはっちゃけ過ぎですし、展開も急ぎすぎな感が否めないっす。
もしまた書くとしたら、皆さんの作品を参考にしてもう少し落ち着いた文にするよう心掛けます。

それにしても部長とお泊りかぁ〜、一度目をつぶったらおしまいなような気が・・・
895名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 23:19:02 ID:KGV0JCfv
>>894
いや、実は続編書く気はなかったんですが、>>684氏のSS読んでから
インスピレーションが沸きまして書くことになったのですよ。
本当のところ別のSS用のネタとの合体だったりしますが、
御期待に添えるように頑張りたいと思います。

でも部長出すと他のキャラ喰っちゃって難しいですね。
大人しい白蒼メインだと見事に押されてしまいます。
896684:2005/06/15(水) 23:37:50 ID:ykhkNGj4
>>895
そこはやはりTSの強みを使ってはどうでしょう?
例えば白鳥君が一分毎に変身しちゃうとか、
上下半身、左右半身が男女になってしまうとか。  えー、冗談です。
897名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 23:48:25 ID:J8jXI8CX
>>895 乙!! 部長の水着姿ハ出ルのデスか?ハァハァ

>>896 あしゅら男爵?
898名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 00:19:20 ID:i34zNNLm
部長が男になって珠を押し倒す。
899名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 06:36:42 ID:fMsBbXZg
むしろ白鳥がどっちの更衣室を使うかが気になる
900名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 06:40:09 ID:ugAODsd1
>>895
超GJ!やばい、正直個人的にはまほらばそのものより好きかもしんないw
マジ最高!部長も良いし、なにより全体の雰囲気が(・∀・)イイ!!
901魔法少女シニカル朝美:2005/06/16(木) 09:47:04 ID:VNYQOwRi
パロネタ投下してみるテスト。(以前角煮にまひるのフェイトコスがあったことから)

 新番組スポット

 魔法少女計画

 (OPスタート)

 平凡に暮らす、ちょっと貧乏な中学生…黒崎朝美にあるときどかんと訪れた、
超絶弩級の大事件!

部長「・・・・・・ソンなわケで、お豆サン・・・今日カらアナたハ、魔法少女デス・・・・・・」
朝美「えええええぇ〜!!」

 突然びっくり、黒魔術の国からやってきた、無茶苦茶怪しい女神様!

部長「鳴滝荘ガ、魔界カらノ侵略者ニ破壊さレルと・・・・・・・・・世界が崩壊シて
    シまウのデスよ・・・」
朝美「・・・・・・そ、そんなマクロなお話を、突然持ち出されてもぉ・・・・・・」

千百合「魔法少女の必需品、おとものいかした使い魔は、こちらに!」
パポップ「よろしく〜」
千百合「お腹が空いた時の食料に!頼れるいかした実用派!」
パポップ「僕アン○ンマンじゃないよ〜」
千百合「でも、ただそれだけで意外と役に立たないかも知れませんね」
沙夜子「おいしいから、許すわ・・・」
902魔法少女シニカル朝美:2005/06/16(木) 09:48:27 ID:VNYQOwRi
千百合「コスチューム関連も、私にお任せ!・・・・・・Correctなステッキを、作ってあげま
     すよ♪」
朝美「・・・・・・そ、そのものすごーく気合の入ったのが…もしかして、わたしの魔法の
    ステッキ・・・?」
千百合「発砲アクリル、ポリパテ、ウレタン塗料なんか使っちゃって、
     さらに可能な限りの軽量化を実現し、とっても便利でお買い得♪」
朝美「・・・・・・全然分かんないよ・・・・・・しかもお金取るのぉ?」
千百合「正しさを追求するには、資本が必要なのです!」

 魔法少女なのに、予想通り世知辛い世界観!

沙夜子「黒魔術の国の・・・女神様・・・」
部長「ソうナのデス・・・・・・タだ、お豆サンガ魔法少女にナるマデ、
    帰れなくテ・・・・・・・・・・・・何かオ仕事ヲクれまセンか?
    ・・・・・・黒魔術以外ハ、大しタこトはデきマセんガ・・・」
沙夜子「そう・・・・・・じゃあ、私の代わりに内職やって・・・(バタッ)Zzzzzz・・・・・・」
朝美「ちょ、ちょっと寝ちゃダメだよ!お母さんも内職やらないと!」
部長「はウッ!(ゾクゾク)」

 展開される女神いびり!

白鳥「朝美ちゃん、内職手伝おうか?」

 いつも優しいお兄ちゃん・・・・・・うう、心の支えだよ・・・
903魔法少女シニカル朝美:2005/06/16(木) 09:49:37 ID:VNYQOwRi
丑三「夕ちゃん♪」
夕「丑三さん♪」
桃乃「・・・・・・どうにかならないの・・・?この万年新婚夫婦は・・・」
朝美「あ、あはは・・・・・・」

 吹き荒れる夫婦愛!

さっちゃん「・・・覚悟はできとるか?」
みっちゃん「六法全書は!六法全書はさすがに私でも〜!!」
朝美「・・・み、みっちゃーん!」

 巻き起こるバイオレンス!

ジョニー「・・・・・・・・・ふう・・・・・・茶が、美味いナ」
沙夜子「・・・・・・・・・ヨーカン・・・・・・」

 ・・・・・・なごんでるサイレンス!

ホモスキー「朝美ちゃん・・・・・・!元気?」
朝美「あ、うん・・・久しぶりだね、お姉ちゃん」
ホモスキー「・・・・・・今日も可愛いわ(焦点の合わない眼)」
朝美「ひいぃー・・・・・・(鳥肌)」

 ・・・・・・いかれてるマッドネス!
904魔法少女シニカル朝美:2005/06/16(木) 09:50:40 ID:VNYQOwRi
まひる「魔法少女の先輩として、いろいろ教えてやろう。
     魔法少女心得、そのいち。復唱しろ。」
朝美「ま、魔法少女心得、そのいちぃ〜」

白鳥「・・・・・・さあ・・・・・・分からないなあ・・・僕は絵本が好きだから。
    ・・・・・・ただ・・・朝美ちゃんのことは、大切だって思うよ」
朝美「・・・・・・お兄ちゃん・・・」
千百合「・・・・・・あ、いたいた隆ちゃん♪隆ちゃん用の新しい服が
     出来たから一緒に来て下さい!」
朝美「ううっ」

ブラブラ「ふっふっふっ・・・魔法少女だろうが生活委員だろうが・・・この
      妖精魔王ブラウニー・ブラウンに勝てますかね〜?」
朝美「・・・・・・せ、生活委員は関係ないけどぉ・・・わたし、負けない!」

朝美「家賃に内職にタイムセールに・・・・・・その他もろもろで、大忙し!
   ・・・・・・・・・だけど、魔法少女として・・・・・・がんばらないと!」

朝美「新番組、魔法少女・シニカル朝美!
    第1話『魔法少女でシニカルなの!?』」

朝美「・・・・・・放送開始に、シニカル・マジカル・エコノミカル!
    ・・・・・・みんなで幸せに、なろ!」

 ※このCMは、一部または全部が嘘の可能性があります。

 ※ていうかぶっちゃけ嘘なので本気にしないでください。
905名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 11:34:43 ID:+CJojmhM
脳内で映像が流れてるよ…
梢の出番が殆ど無いのが何とも
906名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 12:09:50 ID:iOJU2rKj
たとえ白鳥君が女の子になったって、梢さんが男の子になったって(!)、
この2人の深い優しさで結ばれた仲を引き裂くことはできない・・・と思う
907名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 18:38:31 ID:7J4RUN6y
>>906
そのシチュで一作キボンヌ
908名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 18:59:38 ID:Z5oEk9GY
今度は部長の黒魔術が梢さんにかかるんですか?w
状況は誰でも想像出来てもシナリオ組むのは上手い人じゃないとなかなかできないものですよねぇ
909名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 21:08:15 ID:VN+13Uoa
もう900ですかー
4時が始まりますねー
910We'd get there someday:2005/06/16(木) 22:03:53 ID:LZIkNHWm
白い雲。
輝く太陽。
蒼い空。
蒼い海───。

「海よ〜、私は帰ってきた〜!です〜」
「やめなよ、珠実ちゃん! 恥ずかしいってば!」
「桃さんの代理です〜」

太平洋に面した広い海岸───。
今年もまたこの場所へやってきた。
911名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 22:04:07 ID:I4aG68cI
>>906
そうすると珠は、より合法的に(ry
912We'd get there someday:2005/06/16(木) 22:04:08 ID:LZIkNHWm
「ふ〜、今年もいっぱい人がいるな〜」
浜辺はたくさんの海水浴客で賑わっている。
「それじゃさっそく拠点を作るです〜」
「珠実ちゃん、荷物持ったよ」
「サ、さすガに炎天下はキつイものガありマスね…」
「こんなくそ暑い中でもマントなんかつけてるからです〜」
「これハ魔女の嗜みとシテ…」
僕たちは車から荷物を下ろし、拠点になりそうな場所を探して歩いた。
大きい荷物は珠実ちゃんがまとめて抱えている。
「男手が少ないと苦労するですね〜」
「うぅ、ゴメン……」
「いえ〜、端から白鳥さんは男手と思ってませんから〜」
「がーん」
今は変身しているせいで男の時よりも随分力が落ちていた。
元々あんまり自信がある方じゃないけど、それに輪をかけて…。
「白鳥さんももう少し頑張らないとダメですよ〜」
「うぅ……」
「梢ちゃんに腕相撲で負けるなんて男としてちょっと情けないです〜」
「そ、それを言わないでよ〜…」
「ま、まあまあ、隆士さん。 これから頑張ればいいじゃないですか」
前に変身したときに露呈したこと。
それは変身中は誰よりも筋力が低かったことだ。
身体能力的には早紀ちゃんと同じ梢ちゃんはともかく、朝美ちゃんや沙夜子さんにも負けたことはかなりショックだった。
「普段ペンしか持ってないからです〜」
「…頑張ります」
913We'd get there someday:2005/06/16(木) 22:04:28 ID:LZIkNHWm
程なく歩いてようやく拠点を作るスペースを見つけて腰を落ち着けた。
「パラソルセットオーン!」
「珠実ちゃん、お疲れ様」
「お安い御用です〜」
「ハァハァ……コの陽射しにハ私の信念モ負けソウでスよ……」
「さっさとその暑苦しいマントを脱ぐです〜」
「アァ!? お、オやめなサイっ!」
「とりあえずさっさと水着に着替えればいいんです〜」
「ハッ、そウ言えばソウでスね」
「……水着?」
僕は出かけるときから引っかかっていたことをようやく思い出す。
「あぁ!!」
「どうしたんですか、白鳥さん〜……あ〜」
慌てて荷物を見てみるとそこにあったのはやっぱり男物の海水パンツだった。
「ど、どうしよう……」
「白鳥さん、トップレスで泳ぐつもりですか〜?」
「そっ、そんなことするわけないよ!」
男ならともかく女の状態でそんなこと出来るわけがない。
なんで恥ずかしいのかわからないけど、とにかく恥ずかしいものは恥ずかしい。
「あの…隆士さん、私、予備持ってきてますよ」
「えっ、ホント!? 梢ちゃん!」
「はい、ちょっとまってくださいね」
と言って梢ちゃんが出してきたのは(千)と描かれた巾着だった。
(梢ちゃん、それって予備じゃないんじゃ……)
僕の心配を余所に何故か梢ちゃんは嬉しそうにごそごそと袋の仲を物色している。
「ん〜っと……隆士さんにはこれがいいと思いますよ♪」
「あ、うん…。 ありがとう、梢ちゃん」
「白鳥さん、私たちは下に着ちゃってるんで脱ぐだけですからマッハで着替えてくるです〜」
「じゃ、行ってくるよ」
僕は梢ちゃんが出してくれた水着を受け取ると急いで更衣室へ向かった。
914We'd get there someday:2005/06/16(木) 22:04:49 ID:LZIkNHWm
「ハァハァ…手間取っちゃった」
「お帰りなさい、隆士さん」
「遅いですよ〜」
「ああいうところはまだ慣れてないんだよ〜…」
いつもの癖で慌てて男子更衣室に飛び込むというハプニングもあったけど、
なんとか着替えを済ませてみんなのところに戻ってきた。
「やっぱり、外の更衣室はまだダメだよ…」
「まぁ、白鳥さんじゃ仕方ないですね〜」
着替えに時間がかかったのは他の女の人の着替えを見るのにどうしても慣れないからだ。
他の人から見れば同性なんだろうけど、本来男の僕はどうしても罪悪感を感じてしまう。
「マサに真のタマなしデスね。 クッ」
「ひ、ひどいよ…」
「そんなことじゃ女としてやっていけませんよ〜?」
「いや、やっていくつもりはないから…」
「隆士さん、水着のサイズは大丈夫でしたか?」
「あっ、うん。 ちゃんとサイズはあったよ。 でも……」
「どうかしましたか?」
「これ、ちょっと大胆すぎないかな…」
そう言って自分の体を見下ろす。
梢ちゃんから受け取ったのはいわゆるビキニタイプの水着でだいぶ露出が多かったのだ。
しかも、紐を結ぶような形で下手をすればほどけてしまいそうな水着だ。
「そうですか? 可愛いと思うんですが…」
「あ、いや。 か、可愛いことは可愛いと思うけど…」
「白鳥さん、よく似合ってますよ〜。 モデルさんみたいです〜」
「た、珠実ちゃん、恥ずかしいからあんまりじろじろ見ないで…。 ってカメラ! カメラはダメ!」
「え〜、桃さんや朝美ちゃんたちにも見せてあげるですよ〜」
「余計にダメーーー!!」
915We'd get there someday:2005/06/16(木) 22:05:04 ID:LZIkNHWm
ちなみに───。
梢ちゃんは去年と同じく清楚な白のワンピース。
珠実ちゃんも去年と似たような動きやすそうなスポーツタイプ。
そして部長さんは……大胆な黒のビキニだった。
いつも長袖+マントでわからなかったけど、意外に高いプロポーションを誇っている。
白い肌と黒のビキニのコントラストがまぶしい…。
「…タマなしサン、梢サンの前デ他ノ女性にジロジロ色目を使ウノはよクないデスね」
「ふぇ!? い、いや、そんなつもりは!」
「そリゃ、私はセクシィでミステリアスな魔女ッ子デスけども…」
「ええっ!?」
「…部長〜、いつも思ってたんですがその年で魔女っ子は辛いと思いますよ〜?」
「アァ!? 皆が思ってイテ敢エて言わナイその事実を!? グッジョブでス、珠実サン!」
「マ゛ー…」
916We'd get there someday:2005/06/16(木) 22:05:39 ID:LZIkNHWm
波打ち際ではふたりの闘士がにらみ合っていた。
「こんなところまで来てやりたくなかったんですが…」
「フッ、私ニ勝てルとお思イでスか」
「いざ、勝負! 出でよ、クラーケン!」
「大海魔デスか。 ナかなかイイ選択デスがまだ未熟…。 出デよ、ニャラルトホテプ!!」
「くっ…。 そんな邪神を呼ぶなんてー!」
「言ッタはずデス、アナたはまダマだ未熟、と」
「そうそう勝てると思うなですー! いけー、テンタクルスパイラル!」
「テンタクル…? ショ、触手!? イケません、イけマセん、珠実サン!! 太イのが、細イノがッ!!」
「一気に攻め落とすですよー!」
「ハフゥゥゥン! ソ、そんナニ激シクされたラ昇天シテしまイそうデス!」
「ワハハハハー!! 思い知ったかですー!!」
917We'd get there someday:2005/06/16(木) 22:05:55 ID:LZIkNHWm
「ふたりとも元気だなぁ…」
「とっても仲がよろしいんですね」
「そ、そうかな…」
ひとしきり遊んだ後、僕と梢ちゃんはビーチパラソルの下で休憩していた。
珠実ちゃんと部長さんはまだまだ元気なのか波打ち際で遊んで?いる。
(よく考えたらこの格好のまま日焼けの跡が残ったらまずいなぁ…)
「あの…隆士さん…」
「なに? 梢ちゃん」
梢ちゃんは急に声のトーンを落として僕をじっと見つめた。
正確には僕の右手を。
「その傷…もう大丈夫なんですか?」
「ああ…うん、平気だよ」
梢ちゃんが気にしていたもの、それは前に早紀ちゃんを庇ったときに出来た傷だった。
さいわい、腕を動かすには影響がないけど傷痕は消えずに残ってしまっている。
彼女としてもやっぱり負い目になっているんだろうか…。
「大丈夫だよ、梢ちゃん。 この通りなんともないから」
「……」
「僕はもう気にしてないから、そんな申し訳なさそうな顔しないでよ」
「はい…」
「ふたりともなーにまったりしてるですかー」
「あっ、珠実ちゃん」
さっきまで浜辺にいた珠実ちゃんがいつの間にか帰ってきていた。
小脇にはぐったりした部長さんを抱えている。
「休んでばっかりじゃせっかくの水着が台無しですよ〜」
「うん、そうだね。 いこっか、梢ちゃん」
「あ、でも荷物が…」
「それなら、コレ置いておくから大丈夫です〜」
「ハフぅン…」
918We'd get there someday:2005/06/16(木) 22:06:15 ID:LZIkNHWm
「隆士さん、頑張って!」
「ハァハァ…」
僕は必死で泳いでいた。
ゴールには梢ちゃんが待ってくれている。
「も、もうちょっとだ!」
「相変わらずヘタレですね〜」
「そ、そんなこと…いったって…ハァハァ」
少し沖に出た僕は梢ちゃんたちと泳ぐ練習をしていた。
いや、練習というかスパルタ特訓といったほうがいいかも…。
「たかが10m泳ぐのに大げさです〜」
「波が…あるのに…急にそんな…泳げって…言われても…」
「あとちょっとです、ファイト!」
「喋る元気があるならまだ行けます〜」
「ああっ!?」
あとちょっとでゴールというところで珠実ちゃんは『さめざめたまみ号』で梢ちゃんを連れて行ってしまった。
さっきからこの繰り返しだ…。
「た〜ま〜み〜ちゃ〜ん〜……」
「さぁ、お姫様はここですよ〜。 頑張るです〜」
「隆士さん、ホントに大丈夫ですか…?」
「梢ちゃんのためなら…これくらい……!」
そうやってまた泳ぎ出す。
梢ちゃんの見ている前で弱音は吐いていられない。
「ハァハァ…」
「隆士さん…」
「…なんだか、私が悪役みたいです〜」
919We'd get there someday:2005/06/16(木) 22:06:32 ID:LZIkNHWm
僕は必死で泳いだ。
求めるゴールまでもうすぐそこだ。
「隆士さん、あとちょっと!」
「ゴ、ゴール……っ!」
「きゃっ!?」
やっとの思いで梢ちゃんのところに辿り着いた…と思った瞬間。
突然大きな波が僕の背中を押していた。
当然、僕は勢いに押され、その先にいるのは梢ちゃん。
「………」
「………あっ」
波が去ったとき、僕たちは密着するような格好になっていた。
間近に身を寄せ合い、視線を合わせたまま時間が止まる。
「こ、梢ちゃん、ごめ…って、うわわわっ!」
「……。えっ? きゃっ!?」
ぶつかったときのショックのせいだろうか。
水着がずれてめくれてしまったところに手が触れていた。
梢ちゃんの手が、僕の胸に。
しばらくふたりとも硬直して動けずにいたが、我に返った梢ちゃんは慌てて手を引っ込めた。
「ごっ、ごめんなさいっ!!」
「い、いやっ、そのっ!」
「白鳥さん、さっさとその胸しまうですー」
「ああっ!?」
珠実ちゃんに言われてパニックになりつつも水着を直そうとすると、さらなる不幸が僕を襲う。
ぴしぃぃぃぃぃぃっ
(!?!?!? 足がっ!!!?)
「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
突然足が激痛と共に言うことをきかなくなり、僕はジタバタともがきながら波間に沈んでいく。
「がぼがぼがぼがぼ…」
「なにやってんですか、白鳥さん〜。 …おや〜?」
「隆士さんっ!?」
ろくに泳げない僕が足をつったなんてことを理解出来るわけもなく、あっさりと波にのまれた。
920名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 22:09:02 ID:LZIkNHWm
てなところで、今日の投下分終了です。
なんだか、ネタが予想されてたりしょんぼりでつorz

このスレ中には終わらせられそうもないなぁ…。
921名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 22:37:35 ID:hrDTD1NI
・・・良すぎて・・・何も言えない・・・
922テイル:2005/06/16(木) 22:50:28 ID:1FLQb62N
>>920
ニャルラトテップ!?

スマソ、スルーして。
というかこのスレにどれだけこのネタが分かる人がいるだろうか…
魔法少女朝美然り。
むしろこちらは正にり(ry
923名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 22:52:57 ID:Z5oEk9GY
はうぁ〜〜〜〜
白鳥君がどんな状態でも、まったり感の梢さん
白鳥君がどんな状態でも、相変わらずからかう珠実さん
日常っていいわ〜♪ いや、白鳥君の状態が日常じゃないんだけどね
924名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 23:21:12 ID:brol8ik9
いいですねー
頭に思い浮かんできそうです隆子ちゃんの水着姿・・・・
925We'd get there someday:2005/06/17(金) 00:14:00 ID:CQSqAzET
>>904
とりあえずその勢いで第1話スタートを。
926名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 00:14:50 ID:CQSqAzET
…ごめんなさい、ごめんなさいroz
許してください、ご主人様…
927名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 00:15:08 ID:G7pW2ImT
>>922
黒い人相手なら代名詞なタコさんを呼んでも良かったんじゃないかと思う俺が来ましたよ
928名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 04:12:52 ID:fEhoTHiR
>>926
随分とアクロバチックな格好ですねw
929名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 04:19:29 ID:G7pW2ImT
連邦軍のボールが伏せている所に見えてきた
930名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 10:45:35 ID:sbnAGYog
漏れは魚の頭に見える。
931名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 11:33:17 ID:H1IT4z0Q
あと一つSS投下されたら次スレかな
いつか本編うんぬんでもうすぐ勢い落ちるって誰か言ってたけど
この板で今一番勢いあるのは間違いなくここだと思う
まだしばらくはこのスピードで
932名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 13:05:36 ID:pPq8Pkb0
今書いているSSは長くなりそうなので、次スレで投下しようと思います。
933名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 14:20:03 ID:YQoon9QO
じゃ、ここからはリクエストに使っていいですか?
沙夜子さんのエロィのをぷりーず
934名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 15:05:00 ID:zp53bZNy
>沙夜子さんのエロィの
「魔法少女シニカル朝美」のアニメ版(笑)において、何の説明もなく黒崎父が
生きてる設定になれば不可能でもないんじゃないかと思う俺ガイル
935名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 16:15:27 ID:USIke/Y2
ムカシサヨコと黒崎なら全く問題ないと思う俺ガイル。
936名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 16:23:34 ID:2nZgAomF
黒崎さんがどんな人かわからないのがボトルネックになりそう
937名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 17:00:36 ID:sbnAGYog
だからさ、ムカシサヨコが黒崎を思ってオナn(ry
938名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 17:14:36 ID:2nZgAomF
939名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 18:58:47 ID:CQSqAzET
せっかく思いついたのならSSにすればいいのに…。
940名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 19:00:02 ID:XrHNNroW
ツギスレハダレガアンナイスルノカキニナッテイルモレミタイナバカハコノスレニハイナイカラカッテニアンシンシテイルバカハオレ
941名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 19:15:57 ID:PYf7k8Yj
>>940
ツギスレハダレガアンナイスルノカキニナッテイルモレミタイナバカハコノスレニハイナイカラカッテニアンシンシテイルバカハオレ

  ス             キニナッテイル          ノ   ハ              テイル    
942名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 20:38:38 ID:3PIEIlkx
>>940-941のワケのわからん暗号文は置いといて、とりあえず>>937に禿同
943名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 21:20:05 ID:Skz+Z+cb
…書けたら書く…かも。新スレ記念になってしまうかもですが。
前スレに続いてテンプレ案作ってみたので貼っときます。


…イヤ、ケッシテキャラネタデハ ナイデスヨ?
944テンプレ案@隆士:2005/06/17(金) 21:20:24 ID:Skz+Z+cb
まほらば 〜鳴滝荘のうららかな四時〜

えーと、ここは皆さんが作った『まほらば』の創作SSを投稿するスレです。
全年齢対象の作品はもちろん、18禁作品もどんどん出し合ってください…
…18禁……梢ちゃんの……ぷっ!!(鼻血)

前スレ
まほらば 〜鳴滝荘、ほがらかな三時〜
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1117367671/

まほらば 〜鳴滝荘、2時…、かも。〜
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1113669362/

まほらば 〜鳴滝荘での一時〜
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1106131763/

原作スレ(※こっちももうすぐ埋まります!)
小島あきら まほらば20号室
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1117942274/

まほらば小島あきら 第5回鳴滝荘お絵描き大会
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1117205655/

…あ、それと、過去スレに投稿された作品はこちらに保管されているそうですよ。
ttp://www.geocities.jp/su27_flanka/mahoraba/index.html

次スレは>>970を踏んだ人が立てるルールだそうです。
では書き手の皆さん、頑張って投稿してください!
945名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 21:24:15 ID:CQSqAzET
白鳥くん、保管庫の場所は移動してるわよ!
946944:2005/06/17(金) 21:30:12 ID:Skz+Z+cb
はは…訂正です。
ttp://whitebrown.hp.infoseek.co.jp/mahoraba/index.html
保管庫は↑こっちですね。
失礼しましたorz
947テイル:2005/06/17(金) 21:51:59 ID:8caxxT9Z
白鳥クン、保管庫の避難所も載せといて!
ttp://blog.livedoor.jp/maholog/

と叫んでみるテスト。
所詮避難所ではあるorz
948テンプレ案改訂版@隆士:2005/06/17(金) 22:21:49 ID:Skz+Z+cb
 まほらば 〜鳴滝荘のうららかな四時〜

えーと、ここは皆さんが作った『まほらば』の創作SSを投稿するスレです。
全年齢対象の作品はもちろん、18禁作品もどんどん出し合ってください…
…18禁……梢ちゃんの……ぷっ!!(鼻血)

前スレ
まほらば 〜鳴滝荘、ほがらかな三時〜
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1117367671/

まほらば 〜鳴滝荘、2時…、かも。〜
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1113669362/

まほらば 〜鳴滝荘での一時〜
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1106131763/

原作スレ(※こっちももうすぐ埋まります!)
小島あきら まほらば20号室
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1117942274/

まほらば小島あきら 第5回鳴滝荘お絵描き大会
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1117205655/

…あ、過去スレに投稿された作品はこちらに保管されているそうですよ。
ttp://whitebrown.hp.infoseek.co.jp/mahoraba/index.html
それと、SSのみですが保管庫の避難所もあるんですね。
ttp://blog.livedoor.jp/maholog/

次スレは>>970を踏んだ人が立てるルールだそうです。
では書き手の皆さん、頑張って投稿してください!
949948:2005/06/17(金) 22:22:25 ID:Skz+Z+cb
と言うわけで(どんな流れだ)改訂版を貼り付け。
>>945>>947両氏dクスです。
…沙夜子のやつ、果たして今から書き始めて埋まる前に投下できるだろうか。
950名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 22:35:16 ID:3PIEIlkx
新スレ記念でイイやん。
951名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 22:46:20 ID:SklcNYBt
個人的に黒崎の名前は、
正午(しょうご)か暁(さとる)だと思っている。
でも正午はまひると被るけどな。
952テイル:2005/06/17(金) 22:51:39 ID:8caxxT9Z
>>941
………漏れ?


(((( ;゜Д゜))))アワワワワワ…………
953名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 22:53:42 ID:cKB08AF4
無駄レスしてる暇あったらSS書いてくれ
954名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 23:01:30 ID:CQSqAzET
投下分はあるけど、スレの残量が微妙で次スレ待ち。
955名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 23:08:11 ID:ibvIONce
ならマターリシチュ妄想してレス進めましょうよ

梢さん男の子化
・やはり部長が原因?
・珠実さんがどう動くか
・白鳥君はあたふたするか?
・梢さん本人はその事実を同受け止めるか

沙夜子さんエロ
・第1候補:黒崎さんと
・第2候補:朝美ちゃん?(無茶)
・第3候補:謎の物体に・・・

語呂だけ思いついたもの
・まじかる★ちゆりん
956名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 23:12:25 ID:HAovvmr0
部長の男化&幽霊化キボン
957949:2005/06/17(金) 23:17:33 ID:Skz+Z+cb
>>955
沙夜子さんエロ、第1候補+αで書き進めてますよ。
新スレまでには…無理かも。少し長くなりそうで。
958名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 23:17:36 ID:lkxBSOwb
〈〈951
深夜(しんや)とか?
959ぐうたら:2005/06/17(金) 23:19:31 ID:PYf7k8Yj
えー、最近『タイガー○ドラゴン』を見たせいで落語の面白さが尋常ではないと思い始めましたぐうたらです。
もうこのスレも終了ですか…
本当にペース速くなってきましたねー
次スレもこのペースを維持して行って欲しいものです。
や、いや、自分も投下しますけど、も少し時間がかかるっぽいです。
企画段階で2、3新作もあるのでしばらくはここに入れると思います。
それでは、次スレまで突っ走れー!
960名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 23:28:37 ID:SUUJzNCB
>>955
>まじかる★ちゆりん

俺の創作意欲エンジンに火が付きかけている
961If…:2005/06/17(金) 23:29:54 ID:C+ADnCQq

夜中にふと目覚める。
掛け布団を蹴っ飛ばして寝ていた所為か、寝冷えをしてしまった。

途端に尿意に襲われる。
僕は急いでトイレに向かう。

暗くて視界が悪いのがもどかしい。
やっと着いた。

じょろろろろろ〜

どうやら先客がいるようだ。
といっても僕以外でここに来るのはあの人しかいない。
一緒に並んで用をたす。

「ふ〜ぅ、最近暑いですからねぇ。掛け布団を蹴っ飛ばして寝てたみたいで、
 おなかが冷えちゃいましたよ」
なんとなく話し掛ける。
「ええ、私もです。白鳥さん」
「梢ちゃんっ!?」



                 梢さん男の子化 END

962名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 23:31:48 ID:C+ADnCQq
即興で書いた、反省はしてない。
963名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 23:38:56 ID:ibvIONce
その簡潔さ、落ちの無さがかえって潔くて笑えましたw
964名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 23:39:43 ID:CQSqAzET
まるで一発ネタのお手本のようだ…。
965名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 00:17:50 ID:8p1R58cz
>>962
グランドワロスwwwwwwwww
966名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 00:22:06 ID:TaeymkZ5
なンだって〜〜
967名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 00:33:23 ID:SC+DLDcR
(ま) まったりと〜
968テイル:2005/06/18(土) 00:33:30 ID:7JJWE9XQ
>>962
これはよい鶴m(ry

しかし、やたら簡潔なやり方だな…
今まで長文が多かったから新鮮に感じる反面、
物足りなさもあるな…
白鳥くんとの掛け合いとか面白そうなのに。

まあ何にせよ乙でした。
もうそろそろスレ立てか?
969部長語講座:2005/06/18(土) 01:56:48 ID:YxqqLwIZ
穴埋めついでに

・法則1 「特定文字の優先変換」
代表的な単語は「デス」「マス」
「シ」「イ」「テ」「マ」「ス」なども優先的に変換される。
あくまで優先なので変換しない場合もある。

・法則2 「基本的にはアクセントの強いところをカタカナにする」
意外とランダムと思われがちだが、口頭発音でアクセントを
つける部分がカタカナになっていることが多い。

・法則3 「カタカナ変換は連続2文字まで」
単語も含めてカタカナを続けるのは2文字まで。
例えば「たまなしさんです」>「タマなしサンでス」になる。
ただし、「しゃ」「まっ」など拗音を含む場合は2文字と扱われる。

・法則4 「元々カタカナの単語はそのまま使われる」
カタカナ表記されるべきものはそのままカタカナで表記される。
ただし、ひらがな表記するものはカタカナにすることがある。

・法則5 「以上の状態を含まない場合は前後の文節を考慮し適当に入れる」
これはそのまんま。
ひらがなが続きすぎない程度にアクセントとして入れる。
970名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 05:22:29 ID:G8UzhAAt
部長語ジェネレーター作ってみたけど、上手くいかない。
長いコードで努力しても、やはり規則性がなく、モノリスの感性で
最も会話の流れで相応しいネーム振っているみたいなので、どんな
高度なジェネレーターでどうこうなるものじゃないみたい。
971名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 08:01:00 ID:WvNrhOUa
空気読まずにいってみる。
千百合ちゃんをメイド喫茶に連れてったらどうなるかと。
972名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 08:35:44 ID:LMXB3tBj
(÷)〜
973名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 08:58:14 ID:HrZYoy7l
それより>>970は次の(略
974名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 09:37:07 ID:tdtC7iU9
>>969
部長語が分からずに、部長のSSを書けない人もいるだろう。
テンプレ追加キボン。
975名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 10:10:38 ID:YxqqLwIZ
>>970
確立した法則性がないから、機械変換は厳しいところ。
一番それらしくするには原作での部長の発言を見て
ポイントを理解するっていう事しかないと思う。
ところで次スレ立てry

>>971
男性客ばっかりなので入りたがりません。
いや、最初からコスプレしている人にはあんまり食指がわかなさそう。
976名無しさん@ピンキー
面接官「特技はコレクトとありますが?」
千百合「はい。コレクトです。」
面接官「コレクトとは何のことですか?」
千百合「服飾です。」
面接官「え、服飾?」
千百合「はい。服飾です。女の子を正しい服装に着せ替えます。」
面接官「・・・で、そのコレクトは当社において働くうえで何のメリットがあるとお考えですか?」
千百合「はい。服装が間違っていても正せます。」
面接官「いや、当社には制服があります。それに人の服装に口出しするのはお節介ですよね。」
千百合「でも、美少年も範囲内ですよ。」
面接官「いや、範囲内とかそういう問題じゃなくてですね・・・」
千百合「美少年にメイド服ですよ。」
面接官「ふざけないでください。それにメイド服って何ですか。だいたい・・・」
千百合「メイドさんの制服です。お手伝いさんともいいます。メイドというのは・・・」
面接官「聞いてません。帰って下さい。」
千百合「あれあれ?怒らせていいんですか?やりますよ。コレクト。」
面接官「いいですよ。やって下さい。コレクトとやらを。それで満足したら帰って下さい。」
 梢 「あれ?私は今まで何を・・・。」
面接官「帰れよ。」