>>初代269氏
シリーズ乙でした。うーん、予め根回しがされていたというのは仮説としては
面白いですね。如何に紫苑様とはいえいきなり男が混入してくりゃ混乱するかと。
#あー、あでもあの人の異次元級の懐の深さだとなー。なんとも言えない(笑)
>>4-385氏
ナレ無しってのはなかなか大変だと思うのですが。
なかなか素敵なエクストラストーリーであります。
流石、我らがエルダーシスター宮小路瑞穂(笑)
549 :
昔話:2005/03/25(金) 17:08:28 ID:Nrhhj1MH
久しぶりの私の部屋は恐ろしく寒かった。
凍え死んでしまうような思いで、暖房のスイッチを入れる。
どうせすぐには温まらないだろうけど、入れなければ一生寒いままだと言い聞かせる。
ごめんね……寒かったよね……?
クローゼットに手をかける。
ここにもたれ掛かるようにして最期を迎えたあの子の事を想うと、
切り裂かれるような思いがこみ上げてくる。
「ただいま……一子ちゃん」
前編:再会
寮にいるのは私一人のようだった。
皆、まだ実家で家族と一緒のお正月を過ごしてるはずだ。
こんなに早く戻ってくるのは、私くらいのものだろう。
私は一人、そのクローゼットに話し続ける。
「半年ぶりかな? 実家に帰ったのも。
次に帰るのは卒業の後でしょうね……そうしたら、私はすぐに慶行さまの所に嫁いで行きます。
でも……お父さまとお母さまには悪いけど、帰って来てしまいました」
何をしていても、この部屋が、一子ちゃんの事が気にかかってしょうがなかった。
ひょっとしたら今頃一子ちゃんが私の部屋で帰りを待っているのではないかと思えてきて、気が気でなかった。
「結婚まで、あと三ヶ月か……」
脳裏に浮かぶのは幼き日の慶行さまのお顔。
どんな風に成長なさっているのだろう。
愛しい殿方の事を想っても、今だけは感情の高鳴りは感じられる事はなかった。
「ねえ……一子ちゃん? 私……もうすぐ、結婚……しちゃうよ?」
私が慶行さまのお話をするとジト目でいじけていた一子ちゃん。
『嫌です駄目です許しません私がお姉さまのお嫁さんになるんですぅ〜』と手を取ってきた一子ちゃん。
「もう何も……言ってくれないんだね、……一子ちゃん……
……ぅう……ぁぁ…あああ……」
誰もいない寮で、一人涙にくれる。
駄目ですね、半年くらいでは一向に立ち直れそうにありません。
「一子ちゃんっ……一子ちゃん………
ごめんね……私の、……私が…………」
会いたい。また一子ちゃんに会いたい。
向日葵のような、あの真っ直ぐな一子ちゃんの笑顔を、見たい。
カランッ
クローゼットの中から、金属が落ちるような音がした。
何かに惹かれるようにクローゼットに手をかける。
何だろう、何の音?
「あ……、これ……」
出てきたのは小さな髪止め。
一子ちゃんがいつも付けていた……私が、一子ちゃんにプレゼントした……。
「……っ、………ぅうっ……っく……」
神様の莫迦、今更このような物を見せて、どういうつもりですか。
「一子……一子ちゃん……」
ガタガタガタッ
「わっきゃああ〜〜〜〜〜」
「……へ」
目に映ったのはお尻。そして暗転。
「あいったたたた……」
「ふみ〜っ、ふむむむっ」
「あぁああ、すいません下の方。只今、今っすぐどきますので。
って……お姉…さま……。お姉さまっ……!」
私の顔からお尻をどかした一子ちゃんと目が合う。
そして、次の瞬間には私に抱きついてきた。
「お姉さまお姉さまお姉さまお姉さまぁ…!
あ〜ん、お逢いしたかったですお姉さまぁっ……!」
「ちょっ、待って……いち、こ……ちゃん?」
「そうです一子です高島さんちの一子ちゃんですけど待つことはまかりなりません
私待てと言われて待てるほどこの感情の迸りを押さえられる
屈強な精神を持ち合わせてはいませんし
私自身の人間性といいますかとにかっ―――うっきゃあ!?
おおおおっ、お姉さまぁ〜!?」
「一子ちゃんっ……! 一子ちゃんっ…! 一子ちゃんっ……!
逢いたかったよぉ……一子ちゃん……、ふぁぁあああああんっ」
「えっ!? えぇ!? お姉さま!?
いったいどうなさったんですか、お姉さまっ!?
……ええと、はい、お姉さま。……私もお逢いしたかったです」
一子ちゃんの胸にしがみついて狂ったように涙を流す。
一子ちゃんだ。本当に一子ちゃんがいる……。
「……落ち着きましたか? お姉さま」
「えぇ……ごめんなさい、一子ちゃん」
一子ちゃんの胸に抱かれる事数分、私はやっと落ち着きを取り戻していた。
「あの……お姉さま。それでですね、一つ質問をよろしいでしょうか……?」
「ええ、いいわよ」
「私、浮いてませんか……? いえ、あの空気にそぐわないとかそういう意味ではなくてですね、
こう…なんというか、ぶぶっ、物理的にっ、浮いてないでしょうかぁ〜」
台詞の後半から涙目状態で自分の足を指差す一子ちゃん。
ふわふわ。
「……そう、ね……確かに一子ちゃん、浮いてますね」
「こここここ、これってどういう事なのでしょうかっ、お姉さまぁ〜!
私、一体どうなってしまったのですかぁ〜〜!!」
「……一子ちゃん、落ち着いて聞いてちょうだい」
この半年間の事を話すのは胸が張り裂けるくらい辛いけど、きっと私の責務のはず。
話しているうちに、一旦止まった涙は再び流れ始めていた。
・
・
・
・
「…………ええと、つまり私はもう死んでいて、
ここにいる私は幽霊か何かというわけですか……あはっ、あははは……」
乾いた笑い声をあげる一子ちゃん。やはり、ショックは大きいみたい。
「ごめんなさい……ごめんなさい……私のせいで……こんな……」
「そんなっ、お姉さまは何も悪くありません。そんな顔をなさらないでください。
むしろ、私が……私が勝手な真似をしたせいで、こんなにもお姉さまを苦しめてしまっていただなんて……。
やっぱり駄目な妹ですね、私……後先考えないばかりに、こんな……」
「ううん、一子ちゃんは何も悪くないわ。
それに、一子ちゃんの気持ちは嬉しかったし、こうしてもう一度逢えたのも、とても嬉しいわ」
「お姉さま……。私……お姉さまに、どうでもお逢いしたかったんです。
死んでしまう前に、一目でもいいからお逢いしたかったんです。
でも、おかげでこうしてまた逢えました。…………死ぬほど頑張った甲斐がありました」
「……それ、笑えませんよ、一子ちゃん」
私たちは、いつまでもいつまでも、互いを深く抱きしめ続けた。
「へっくちっ――」
一子ちゃんの可愛らしいくしゃみで意識が現実に引き戻される。
一体何時間こうしていたのだろう、私たちは。
……というか
「幽霊もくしゃみをするのね、一子ちゃん」
「ん〜、よく分かりませんが、漠然と寒いというのは感じます」
「そう……一子ちゃん、真冬なのに夏服ですからね。だから寒いのかもしれません」
「そういう問題なのでしょうか……?」
よく分からないという一子ちゃんを尻目に私は制服から、寝間着に着替える。
「今日はもう寝ましょう、一子ちゃん。私、泣き疲れてしまいました」
「はぁ……それはいいのですが、お姉さま。私幽霊なのですが、幽霊も眠るのですか?
むしろこれからの時間帯が、私の活動時間のような気もするのですが」
「そんな不良さんみたいな事を言ってはいけませんわ。さ、いらっしゃい。
一緒に寝ましょう」
ぽむぽむ、
掛け布団をめくってベッドを手でたたく。
「えっ、えぇぇえええ、いいんですかぁ〜お姉さまぁ〜〜〜〜!!」
一子ちゃんの顔がキラキラ輝く。
たまらなく心が満たされていくのを感じる。
こんなにも私は一子ちゃんを欲していたのですね。
なんだか、一子ちゃんの喜ぶ顔が見たくて、明日からいっぱい甘やかしてしまいそう。
「あぁあっ、でもでもっ、私不幸な事に幽霊ですからこんな寒い冬の夜に一緒に寝ようものなら
明日の朝にはお姉さままで冷たくなっているかもしれませんし下手したら私お姉さまへの想いが
想いにそれこそ思い余って取り憑いてしまうかもしれませんしいけませんお姉さま私何をするか分かりません
霊的にではなくてもやはり思い余って取り付いてしまうという事すら考えられます」
「だめですっ、離しません。絶対一緒に寝ます」
「お姉さまぁ……、ですがですがっ」
「はい、ストップ、そこまで。続きはお布団の中で聞いてあげますから。
さ、いらっしゃい、一子ちゃん」
ぽむぽむっ
再びベッドの…私の寝ているすぐ横を叩く。
「そ、それじゃあ……失礼します……お姉さま…」
二人、布団の中で手を取り合う。
目前には夢にまで見た一子ちゃんの顔。
そして私は、夢にも想わない形での再会を神に感謝する。
「お姉さま……暖かいです」
「そう? 良かったわ。でも一子ちゃんだってちゃんと暖かいわよ?」
一子ちゃんの体を抱きしめなおす。うん、感じる……しっかりと一子ちゃんを感じる。
「一子ちゃんに触れている部分から、だんだんと私の体が暖かくなっていくのを感じます。
それに……こうして一子ちゃんと言葉を交わしていると、
凍り付いていた私の心までが温まってくるの」
「お姉さまぁ……」
「一子ちゃん……」
布団の中で互いにしがみ付くようにして、眠る。
久しぶりに、安心して熟睡できそうな気がした。
「ん…………」
薄呆けた意識の中、包みこむようなその温かな感触に
もう一度眠りの中へ落ちていきそうになる。
「ふにゅう……む……ぉねえさまぁ……」
しっかりと私にしがみついている一子ちゃんに安堵する。
……夢じゃなかった。
「……お姉さまぁ」
寝言でもお姉さま、か……一子ちゃんったら。
「なぁに、一子ちゃん……」
「にゅんっ……お姉さま、くすぐったい〜」
起こす気にもなれないので、そのまま布団の中で過ごしてみる事にした。
どうせ冬休み中だし、いいよね。
それからたっぷり三時間ほど、一子ちゃんの寝顔を観察して、寝言を聞いて過ごしていたら、
ついに一子ちゃんが目を覚ました。楽しい時間だったけど、ここまでみたい。
「ふぁ……おふぁようございまふ……おねえさまぁ……」
ぎゅ
寝ぼけ目の一子ちゃんを抱きしめてみる。
「にゃあ……」
「おはよう、一子ちゃん。もうお昼よ、早くご飯にしましょう。
簡単な食事を作る材料なら、きっと厨房にあると思うわ。
今、この寮には私たちしかいないから、誰にも会う心配はないわ」
何せ幽霊ですからね一子ちゃん。知った人に見られたら大騒ぎになるだろうし。
「はいぃ〜、おはようございますぅ……お姉さまぁ……
……うぅ……なんだか、寝たりません……」
のそのそとベッドから這い出てくる一子ちゃんは、ちょっとだけ本物の幽霊じみていた。
「それにしても……あれだけ寝たのにまだ寝たりないのですか?
どこか体の調子でも悪いのかしら」
「あはは……私、幽霊なんですけどね」
「そうだったわね、……それで、幽霊にも体調ってあるのかしら?」
一子ちゃんの額に手をやる。
「……熱は……ないわね」
くすっとふきだす一子ちゃん。
「もうっ、お姉さまったら。寝不足なのは寝るのが遅かったからですよ」
よく分からないけど、元気のようだから、いいかな。
「ささ、詳しいお話は食堂でしましょう……って、私はご飯を食べる必要があるのでしょうか?」
それもよく分からない。
「食べてみれば分かるのではないかしら」
「そうですね、それじゃ取り合えず行ってみましょう〜」
スカっ
「……あう?」
スカッ、スカッ
「お、おぉおお、お姉さまぁ〜、大変です、ドアノブが通り抜けてしまって回せません〜
これじゃ外に出れません〜〜!」
ドアノブがすり抜けるなら、ドアもすり抜けられると思うのですが……
面白いので黙っておきましょう。
代わりにドアを開けてあげる。
「はい、どうぞ」
「あうぅ……お姉さまに開けて頂くなんて、恐縮で光栄で恐れ多いですぅ。
私、自分じゃ何もできないダメダメ幽霊のような気がしてきました……」
およよよと泣き崩れて見せる一子ちゃんの背中を押して食堂へ向かう。
まだ寮母さんですらお正月休み中なので、勝手に昼食を作らせてもらう。
「ねぇ一子ちゃん。思ったんだけど、ドアノブをすり抜けたって事は、
その、……食べ物も……」
「おっ、おおお、お姉さま〜、大変ですっ! 大根がっ、大根がすり抜けて洗えません〜〜!」
やっぱり……。これでは食べるのも無理のようね。
「いただきます。…ごめんね、一人で食べちゃって」
「いいんですよ。どうせ私はしがない幽霊伍長なのですから。
ここでお姉さまが食べてるのを見ていますので、さっどうぞ。私はお気になさらずにっ!」
立ち直りの早い子だ。
「アーメン」
とは言いつつも、一人だけ食べるのも気が引ける。
「……あ、それでですねっ、お姉さま。さっきの話の続きなんですけど」
私、そんなに長い時間寝ていたわけではないです」
それはちょっと聞き捨てならない。
「一子ちゃん、ず〜っと寝てて起きないんですよ。
私、朝から一子ちゃんが起きるまで、何時間も寝顔を見てましたのに。
一子ちゃんったら私の腕に絡み付いて、お姉さまぁって甘えるのよ?
凄く可愛かったわ」
「それは……なんだかとても恥ずかしいですねぇ」
「……それなのにまだ眠いだなんて、……一子ちゃん、本当に大丈夫なの?」
半年振りに活動しているから、疲れているのかもしれない。
「それが……ですね、先程も言いかけたのですが、
実は私、昨日寝付いたのがお姉さまよりも随分後でありまして……」
「私が寝た後も中々寝付けなかったという事?」
顔を真っ赤にした一子ちゃんが恐縮している。
「ええとですね……お姉さまが私の事をむきゅ〜っと抱きしめて、
一子ちゃん、一子ちゃんと名前をささやかれますもので、とても眠れなかったというか……」
なるほど……私の抱き癖が、一子ちゃん相手に炸裂してしまったせいだったのか。
「そうでしたの……寝ぼけていて、覚えていませんわ。
きっと嬉しかったのでしょう、私も。でも……これでおあいこですね」
気がつくと私の昼食は全てなくなっていた。
話しているうちに、自然と箸が進んだのだろう。
一子ちゃんも、気を使ってくれたのかもしれない。
「さ〜、それでは食後にはやっぱり私の淹れるお茶が欠かせませんよねぇ〜お姉さまっ。
では早速、不肖一子。お姉さまのために至高の一杯を淹れてきますっ!」
「あっ、一子ちゃん待って――」
私の制止も届く事なく、一子ちゃんは厨房へと消えていった。
「なっ、なっ、何でですかぁああああああっ!!」
ほどなくして、厨房から怒号とも絶望ともとれる絶叫。
「だから、待ってって云ったのに……」
こうして、私と幽霊となってしまった一子ちゃんとの少し奇妙で、
とても奇跡としか思えないような、幸せな時間が動き始めた。
誰もいない図書館に行く私に付き添ってくれたり、
「お姉さま〜、私も本を読みたいですぅ〜」
「しょうがないわね……ページをめくってあげるから、読みたい本を持っていらっしゃい」
「わ〜い! さっすがお姉さま。……はいっ、じゃあこれをお願いします」
「乙女の港……? 川端康成の本ですか」
「とーっても面白いらしいですよ」
「分かりました。じゃあ、私も一緒に読みますから、次のページに行くときは云ってくださいね」
「はいっ、あぁ〜幸せ。お姉さまと読書〜☆」
………
……
…
「お姉さまぁ、まだページをめくっちゃダメですってばぁ!」
「ご、ごめんなさい。つい……」
「もう…………」
「……一子ちゃん…その、まだかしら」
「……うぅ、だって……とっても意地らしくてっ、私この子の気持ち、よく分かります……」
「……私は……早く続きが読みたいです」
一緒に並木道を歩いたり、
「わ〜、お姉さま、お姉さまっ、雪が降ってきましたよ〜。
きゃ〜、冷た……くなぁあいっ! 雪が雪がっ雪さんまでが私を素通りしていってしまうのですねぇっ!!」
「一子ちゃん、何も泣かなくても……」
「私毎年初雪が降ってきたらお空に向かって大口を開けるのが慣例でしたのに〜〜!」
「そんな事をしてたのですか……まぁ、初雪はとうに過ぎているのですけどね……。
でも、楽しそうですね、それでは、代わりに私が……、あ〜〜ん」
「はうっ、ダメですいけませんお姉さまっ! エルダーともあろうものが
そんなはしたない行為をなさってはマリア様もお空からきっと見ていらっしゃいますよぉ〜!
しかもそれが私の真似だなんて知られたら
きっと私はお姉さまをそそのかした極悪人として地獄に落とされてしまいます〜〜〜!!」
「あ〜〜〜……、いけません一子ちゃん、人が来たわっ!」
「きゃ〜、きゃ〜〜〜! お姉さまがこんな事をなさっている所を人にお見せするわけには行きませんっ!」
「そうじゃなくて、一子ちゃん幽霊なんだからっ、ほら、早くお隠れになって……」
「お姉さま、お隠れになるだと、死んだという意味になると、古文の先生がおっしゃてました……」
「あ〜、も〜っ! そんな事はどうでもいいですからっ、早く隠れなさ〜い!」
迷子になった子を送ってあげたり、
「お姉さまお姉さま。この子、初等部から迷い込んできて
帰り方が分からなくなってしまったらしいのですが……」
「……一子ちゃん、あなた……もうちょっと幽霊だという自覚を持ってみてはどうでしょうか……」
「はぅう、お姉さま、ごめんなさい〜」
「一子さまをおこらないでください、お姉さま。
一子さまはわたくしがこまっているのを見かねて声をかけてくださったのです」
「そう……そうですか。ごめんなさいね、一子ちゃん」
「いえいえいえっ! そんな、謝らないでください、お姉さま。
……ぇと、それで…お願いがあるのですが……」
「そうね……。さすがに一子ちゃんを送りに行かせるわけにはいかないし、私がお連れしましょう」
「ありがとうございますっ、お姉さま〜!」
「それじゃあ行きましょうか、お嬢さん。
私の名前は宮小路幸穂よ。お嬢さんは、なんていうのかな?」
「ひさこ……。かじうらひさこと言います。
……あの、さちほお姉さまは、エルダーシスターの、さちほお姉さまですか?」
「まあっ、初等部の生徒にも、私の事を知っている人がいるのね、嬉しいわ」
「さすがですっ。さすがお姉さまです! そのご威光は高等部には決して留まらないのですねっ!」
「わたくしも、大きくなったらお姉さまのようなエルダーになりたいです」
「そう……緋紗子ちゃんなら、きっとなれますわ」
「はいっ。わたくし、がんばりますっ」
「……なんだか私、歴史的な瞬間に立ち会ったような気がします……」
寮で私のお世話係りになっている子にヤキモチをやいたり、
「いつも美味しいお茶をありがとう」
「そんな、お姉さまに褒められると、秦は照れてしまうのでありますよ〜」
「ふふっ、それは可愛らしいですね」
「はわわぁ〜、そ、それでは秦はこの辺で失礼するのでありますよ〜」
「…………ふぅ。一子ちゃん、もう出てきても大丈夫ですよ」
「う〜ら〜め〜し〜やぁ〜」
「一子ちゃん、ちょっと怖いかも……」
「き〜、何ですか何ですか〜! 秦ちゃんったら私がいないのをいい事にお姉さまを独り占めしていただなんてっ!
あぁ〜〜私にお茶を淹れる事ができれば絶対に一番おいしいお茶を淹れてあげる自信がありますのに〜〜っ
それは確かに秦ちゃんは私が存命だった頃と比べて格段にお茶の淹れ方はうまくなっているけどお姉さまの
寵愛を一身に受けて生きてきたのかと思うと思わず無意識のうちに呪ってしまいそうな気分にさせられるというのに
私ってば幽霊兵長のくせに意識的にすら人を呪ます術すら知らない半端もんなわけであ゙〜〜〜、ぐやじぃいいいっ!」
「もう……一子ちゃんったら、物騒な事を言ってはいけませんよ」
「はい……私だって本当は秦ちゃんの事は大好きです……少しだけ、羨ましかっただけです……」
「ふふっ、でもこうして私と毎晩一緒に寝ているのは一子ちゃんだけですよ?
さ、いらっしゃい、一子ちゃん」
ぽむぽむっ
「お姉さまぁ〜〜〜!」
本当に夢のような日々が過ぎていった。
でも、ずっと気がかりに思っていた事も二つだけあった。
「……おはよう、一子ちゃん」
「……んむぅ……すぴ〜〜〜〜。……むにゃぁ……」
「一子ちゃん、一子ちゃんっ、朝ですよ、起きなさいっ」
「ふなぁ……あ゙いぃ……」
一子ちゃんの慢性的な寝不足がずっと続いている事と、
……それが日に日に重くなってきているように感じること。
そして、私の幸せな日々は、終わりの時を迎えようとしていた。
以上前編でした。
後編に続きます。
リアル遭遇
後編が気になりすぎる。
あと19KBですので、投下の際はお気をつけ下さい。
長編物でしたら、次のスレが立つまで待たれた方が
よろしいかと存じますわ。
4.89KB なのでよろしいか
いいんじゃない。はみ出しちゃったらそのとき考えるってことで。
>>549-564 長編乙。後半が気になる。が、そろそろ限界なので
後半は次スレに投下する方が懸命と思います。
「あの…まりやお姉さま」
「何?ゆかりん」
「ゆかりんじゃありません!お姉さまのことで聞きたいことがあるんですけど」
「あたしのスリーサイズなら教えないわよ」
「そんなの聞いてどうするんですか!瑞穂お姉さまについてのお話です!」
「うわ、ちょっとショック受けたわよ今の言い草」
「まりやお姉さまが茶化すからです」
「うう…あたしの妹は反抗期…」
「はいはい…瑞穂お姉さまって甘いものは苦手でいらっしゃるんですか?」
「ん?どうだろね…苦手ってことはないみたいだけど」
「でもコーヒーはブラックで飲まれるみたいですし…」
「…はは〜ん?ゆ〜か〜りん♪」
「な、何ですかその新しいおもちゃを見つけた猫みたいな笑いは」
「うんうん、恋する乙女全開って感じだねえ」
「な、な、な、こ、恋する乙女ってなんですか!」
「ん?言っていいのかにゃ〜?」
「…な、何のことだかさっぱりです」
「…後一ヶ月(ぼそっ」
(びくっ!)「え、ええっと…何かありましたっけ?」
「…ふっふ〜ん。いや〜、まったく罪なお人だよ瑞穂ちゃんってば」
「い、い、いえいえいえ、いつもお世話になってますから義理です!義理チョコなんです!感謝の品なんですー!」
「ん?あたしは一言もチョコなんて言ってなんだけど〜?」
「あうあうあう…ど、どうかお姉さまには内密に…」
「ぐれ〜てるのケーキセット3日分でどう?」
「は、はい…わかりました…とほほ…」
「まあまあ、応援したげるからさ。うーん、瑞穂ちゃんの好みねえ…」
「……お好みは?」
「やっぱりスウィートよりもビターの方がいいかな。で、量は少なめにして丁寧に飾り付けた方がいいと思うよ」
「それじゃチョコケーキなんてのもいいかもしれませんね。お姉さまなら大人っぽく少しブランデーを効かせて…」
572 :
3-206:2005/03/25(金) 21:28:46 ID:MZtFfPj/
埋め代わりの寸劇なんでオチなし。
何かと不遇なゆかりたんに愛の手を第一弾。第二弾があるかどうかは不明。
ヴァレンタイン前の一コマってことで。
人生ゲームの数日後と思いねえ。
「今日はこいつでリベンジよ!」
「…懲りないね、まりや」
「当たり前よ!この御門まりやに敗退の二文字はない!背を向けたまま終わると思うてか!」
「と申されましてもまりやお姉さまは目下お姉さまのみならず奏ちゃんや由佳里ちゃん相手にも連戦連敗、ワースト記録絶賛更新中なのではないでしょうか?」
「うぐっ…ツッコミきつくなったわね、一子ちゃん」
「無理な一発逆転を狙うからよ…」
「うるさい!リスクを恐れてちゃリターンもない、ちまちまやっててゲームを楽しめるか!」
「それで失敗してちゃ元も子もないと思うんだけど…」
「あれ?でも確かまりやさんはチェスならば瑞穂お姉さま相手に百戦百勝なのではありませんでしたか?」
「それじゃ意味ないでしょ?勝てばいいって物じゃないんだから。ゲームは対等の条件で勝利してこそ価値があるの」
「なるほど〜誇り高きギャンブラーというわけですか」
「…それはちょっと違うような気がするのだけれど」
「うるさい!というわけで夕食後開催だから奏ちゃんに伝えておいて。由佳里はあたしが引っ張ってくるから」
「はいはい…まったく、本当に負けず嫌いなんだから…」
「まりやさんらしいといえばらしいんですけどねえ…」
続かない。
宣言してから立てようや。重複しかねんし。
ということで次の人よろ。
>>573 名前、口調とも似ているが微妙に違う別人だな
奏:なのですよ〜
秦:でありますよ〜
深い意味はないでしょ、まさか
それでは、立ててきますのですよ〜
>576
すまん、自分も送信ボタン押してから気が付いた>宣言してない
はねられたからよかったけど、以後気をつける。
581 :
1/3:2005/03/25(金) 23:32:49 ID:FAH9fzbu
ふうっ、やっと着いた。
ここがあの寮なのね。
少し古ぼけた建物の前に私は立っていた。
もう、使われていないその寮は私に何か訴えかけてきてる気がする。
その横の まっさらな2階建ての建物の中に入っていく。
ここが私がこれから生活する女子寮だ。
寮母さんが出てこられた。
「はじめまして。今日からここに住まわせてもらう 2年の鏑木紫穂です。」
そう、本当は高等部入学と同時に入りたがったが
工事中ということで誰も入居できなかった。
「そう、貴女があの鏑木様の・・・・
でも、ここでは特別扱いはしないで一般のお嬢様と 同等に扱いますよ」
紫穂「はい。心得ております」
キーを受け取ると私は2階の自分の部屋に繋がる階段を上りはじめた。
前に立っていた建物と寸分違わなく建てられたらしいけど
やはり、伝統とかあまり感じなかった。
自分たちが作っていくのかなと思えてしまう。
ここに入る時 お父様や母様に反対されると思っていた。
(大事な娘を、寮とはいえ外に出すなんて)とか
お父様も母様も自宅から学校に通って
寮生活なんて経験無いから 不安でしかたないと。。
でも、最後の切り札としてまりやおば(あ、駄目。又叱られちゃう)
まりやお姉様に説得してもらおうと考えてた。
アルバムにもまりやお姉様や学友さんの楽しい光景を写した写真が
それを見て、私もこの寮に住んでみたいなと小さな頃から思っていた。
やっと念願がかなう。
でも、お父様や母様は反対どころか
瑞穂「紫穂が行きたいんだったらパパは構わないよ」
まりや 紫苑「貴方がそうおっしゃるなら私は反対いたしません。 いってらっしゃい。紫穂」
「ねっ。私が出るまでも無いでしょう。紫穂ちゃん」
まりやお姉様はウインクしながらそう言ってくれた。
582 :
2/3:2005/03/25(金) 23:36:20 ID:FAH9fzbu
ようやく、部屋の前に立つとキーを差し入れてドアを開く。
眩しいまでの部屋。
ここでどんな生活が待ち受けてるのか期待と不安な中ドアを閉めて椅子に腰をかける。
ふっとため息をついて、しばらくぼんやりしているとドアをノックする音が。。
「誰かしら」
「はい。お姉様が入寮したと聞いたのでご挨拶に参りました」
ドアをあけると 二人の少女がたっていた。
「お入りなさい」と言うと静々と入ってきた
「これから、お姉様のお世話を致します○○です」
一人の少女が話しかけた。
「そう。あ、自己紹介忘れてたわね。鏑木紫穂です。
よろしくね。でも、私の方が寮に後から入ってきたのに
お世話をしていただくなんて心苦しいわ」
「でも、私の叔母もここの卒業生ですけどお姉さまが三年の春に
転校されてこられて 叔母の友人がお世話したらしいです。
ですから、そんなお気遣いは・・・」
「そう、わかったわ。じゃぁ、お願いするわね。
で、そちらにお立ちのお嬢さんは・・・」
部屋に入ってから下を向いたまま一言も発しない女の子。
顔をあげると 涙ぐんだ表情をみせると急に
「お姉様、お姉様、お姉様、会いたかったです。お姉様・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
とマシンガンのように言葉を発した。
「えっと、ストップ」
私は脳裏に浮かんだ言葉が口から躊躇い無く出てきた。
「おちついたかしら。お名前を聞かせてほしいわ」
「千穂。高島千穂です。お姉様、よろしくお願いします」
「千穂、千穂ってどう書くの?高島さん」
「漢数字の千に稲穂の穂です」
千穂・・・・・・・・・・・・・・・お父様や母様から聞かされた小さい頃私を可愛がってくれた、まだ見ぬ叔母様。
その方と同じ名前の少女。彼女とは初対面じゃなくて古くから知っていた不思議な感じを覚えた。
これからどんな学園生活が待っているのだろう。
楽しみのような、ちょっぴり不安なような・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・zzzzzzzzzzzzzz
zzzzzzzzzzzzzzzzz
紫苑「まあ、いやだわ。この娘(紫穂)ったら居眠りしながら、
ニヤニヤしてる。へんな子ね。」
瑞穂「今日は恵泉の幼稚部の入学(園)式だったから
緊張して疲れたんだろう」
紫苑「貴方のお膝でずっと寝かしつけていますけど
お疲れじゃありません?}
瑞穂「そうだな。そろそろベットに寝かしつけるか」
よいしょっと紫穂を抱えあげると二人で紫穂の部屋まで歩き始めた。
瑞穂「だけど、紫穂はこれからあそこでどんな友達と出会うんだろうね」
紫苑「それはもう、貴子さんのような人やまりやさんみたいな人
奏ちゃんや由佳里ちゃんみたいな・・・・・・」
瑞穂「それは、すごく楽しそうな所だなぁ」
紫苑「それから、瑞穂さんみたいな人と出会えるかも」
瑞穂「それは、どういう意味ですか。
し・お・ん・さ・n
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ノノノノj{_) ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ´θ^θン)u ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
紫穂の夢が現実となるのは十数年先のお話。
なるのかよw
>>581 開幕の「ここがあの寮なのね。」でホワルバのフラッシュを
思い出してしまいました。。。
587 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:44:40 ID:BOQcfkuC
|柱|ω・`)誰も居ない…
|柱|ω・`)埋め代わりにSS投稿するなら今のうち…
ゴクリッ
589 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:45:33 ID:BOQcfkuC
『瑞穂争奪祭 第四話 ダーツ』
「…さて、じゃあ気を取り直して第三ラウンド、行ってみよっか」
やや疲れた顔をして居るまりやがそう言った。
「結局、ババ抜きの勝負つくまでに20分以上かかっているのですよ……」
「それに、まりやお姉さま負けてるし……」
「君達、過ぎ去った事にいつまでもこだわって居ても仕方ないのだよ、
解るかい?」
「まぁ、負けは負けですものね。ほほほ」
「……五月蠅いわね(泣)。次でぎゃふんって言わせてやるんだから」
「その台詞、そっくりそのままお返ししますわ」
「ふん、一回勝った位で調子に乗って」
「なんですってぇ?!」
「ま、まあまあ二人とも……」
例の如く言い合いを始めた二人に、苦笑いしながら瑞穂がそう言った。
「次はこれよ」
そう言ってまりやが取り出したのは。
「ダーツ、ですの?」
「はい、紫苑さま。でも、『ただの』ダーツじゃないのよね、これが」
そう言うとまりやは、的を取り出した。
「投げるダーツは一回につき一本。的はこのとおり、得点じゃ無くて
A〜Fまでの記号とあといくつかの品名が書かれて居るの」
590 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:46:51 ID:BOQcfkuC
そう言ってまりやが見せた的は、確かに幾つかに区切られており、
何やら書き込まれて居た。
「んで、みんなクリスマスプレゼントを持って来たわよね? それを
ここでダーツで当てた記号ので交換会をしようって感じなのよ」
「ふわ〜、面白そうなのですよ〜」
「あ、でもまりやお姉さま、もし的にダーツを当てられなかったら
どうするんですか?」
由佳里がもっともな疑問を口にする。
「その場合は、一旦他の人に順番を回して、一巡したらまた投げるのよ。
こんな所で外れ引いても仕方ないじゃない?」
「それもそうですね」
「それはいいのですがまりやさん、何ですか、この景品欄の中にある
『たわし』って?」
的を眺めて居た貴子が、たわしと書かれた所を指してまりやに聞いた。
「ああ、それはお約束よ。ダーツと言えばたわしじゃない? 車は無い
けどね。にゃはは」
「そんなお約束知りませんけど……」
「あれ? そう言えば、景品欄には瑞穂さんのお名前が書かれて
居ませんが……?」
横から的を覗き込んで居た紫苑がまりやに尋ねた。
「瑞穂ちゃんはみんなの景品が決定した後、ここに用意したくじを
瑞穂ちゃんが引いて、決定するって感じです」
「こ、今度は私が引くの?」
驚いた様にまりやの方を見る瑞穂。
「その方がスリルあってどきどきするじゃない?」
「……私は心臓に悪いんですけどね」
「にはは、まあそう言う事だから。じゃ、みんな、そこのテーブルに
プレゼントを並べてね〜」
その言葉に、全員が持ってきた景品を並べ始める。
「まりやお姉さま、並べ終わりましたよ」
「よ〜し、じゃあ始めようか」
591 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:47:40 ID:BOQcfkuC
まりやの言葉で、それぞれがダーツの矢を手に取った。
「じゃあ、まずは瑞穂ちゃんから。さあ、一投目、どうぞ〜」
「では…」
すうっと、軽く呼吸を整える瑞穂。
「……っ!」
しゅっ、すこん。
「「「「「「あ……」」」」」」
「瑞穂ちゃん……」
「いや、その……えっと」
「気持ちは解らないでもないけど…なんでど真ん中に命中させちゃう
かなぁ?」
「……うう……」
「瑞穂さんったら、よくばりさん♪」
「駄目ですわよお姉さま、独り占めは」
そう言って紫苑と貴子はくすくすと笑う。
「じゃあこれはノーカウントって事で、瑞穂ちゃん一回休みね」
「そんなぁ……はぁ、何でこんな時に限って……」
その後は順調にダーツが進んで行った。
ちなみに、まりや、紫苑、奏、由佳里は順調に当ててゆき、景品を
ゲットして居る。
「では、私の番ですわね。……えいっ……ああっ?!」
そう言いながら貴子が当てたその的は。
「な、なななななんで私がたわしなのですかっ!」
592 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:48:31 ID:BOQcfkuC
「おやおや、大当たりだね〜、にっしっし」
「う〜〜〜〜〜、や、やり直しを要求しますわ!」
「ダーメ。瑞穂ちゃんだって後回しになったんだから、諦めなって」
そう云うと、まりやは貴子の前に、ご丁寧にもリボンを付けられた
たわしを置いた。
「はーい、たわしゲットおめでとう〜」
「……はぁ……何で私がたわしなど……」
溜め息をつきつつ貴子がふと顔を上げると、困ったような顔をして
居る瑞穂と目が合った。
「……くすっ。まあ、致し方ありませんわね。自分で当ててしまったん
ですもの」
「おや? やけに素直じゃない?」
「ゲームごときで駄々をこねても仕方ないじゃありませんか。さ、次は
お姉さまの番ですわよ?」
「あ、はい」
その後は順調に、瑞穂も貴子も普通の景品を貰う事ができた。
「さーて、ではお待ちかね。瑞穂ちゃん、このくじ箱から誰の景品に
なるか引いてちょうだい」
「はいはい……って、何でみんなそんなに真剣になって見てるの?」
まりやに出された箱から引こうとした瑞穂が、ふと周りを見渡して
そう言った。
「え? だって、今度こそ当たって欲しいですし……」
「お姉さま、今度は奏に当たって欲しいのですよ〜」
「まあ、そう言う事ですわ♪」
「……たわし……はぁ」
「な、何だかそんなに真剣に見つめられると、やりづらいわね…」
593 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:49:20 ID:BOQcfkuC
そう言いながら瑞穂は、箱の中に手を入れると、1枚の紙を取り出した。
「えっと、これは……」
がさがさ。
「……あ、『たわし』。と言う事は……?」
「おや? 貴子大当たりじゃん」
「……え、ええええっ?!」
驚いた顔をして貴子が瑞穂の引いた紙を覗き込む。
「ほ、本当ですわ。……じゃ、じゃあ……」
貴子が少し顔を赤らめながら、瑞穂の方に向き直る。
「はい、貴子さん。……あの、余り無茶なのは出来れば……」
「解っておりますわ。…えっと、その……」
そう言って、少しの間を置いたあと。
「……あ、あのっ、み、瑞穂さん……その、わ、私を、ぎゅーってして
下さいます?」
「……え? ぎゅーって、というのは、つまり私が貴子さんを抱き締める
って事ですか?」
「あら、貴子さんってば、私が瑞穂さんを抱き締めたのがそんなに
うらやましくて?」
「いえ、あの、その、えっと……」
そう云うと何やら貴子はしどろもどろになって居た。
そのやりとりを眺めて居た瑞穂だったが、そんな貴子の様子に、
ちょっとだけ笑みがこぼれた。
「その……や、やっぱり、駄目、ですよね……」
「くすっ。良いですよ、貴子さん?」
「ほ、本当ですか?!」
「ええ、今日は私が景品ですから。何なりとお申しつけ下さい。ふふっ」
594 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:49:54 ID:BOQcfkuC
そう云うと、瑞穂は軽くスカートの裾を持っておじぎをした。
「そ、そんな格好でお辞儀されたら、反則ですわよ瑞穂さん?」
そう云う貴子は、すっかり顔が赤くなって居る。
「まあ、今日だけですから。…じゃあ、貴子さん、どうぞ」
そう云うと、瑞穂は両手を広げた。
「…じゃ、じゃあ、失礼します」
そう言って、貴子は瑞穂に抱きついた。
瑞穂も、貴子を抱き締める。
「はぁ…………瑞穂さん………」
貴子は、すっかり安心し切ったような表情を浮かべて居た。
「何だ、貴子って意外と甘えん坊さんなのね?」
「……べ、別に良いじゃありませんか? たまには私だって、誰かに
甘えて見たくなる時もあります」
「……」
(そうか、貴子さんはいつも凛としてるから、甘えさせてくれる人って
居ないのか)
そんな事を考えながら、瑞穂は貴子を優しく抱き締めて居た。
595 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:51:28 ID:BOQcfkuC
「はぁ……瑞穂さん……」
「…」
「瑞穂さん………」
「……えーと……」
「貴子、貴方いつまで抱き付いてるつもりよ?」
「みずほさん………」
「……駄目だわ、貴子すっかりとろけてるわよ」
「あは…あはは……」
貴子が正気に戻るのに、それから10分を要したと言う。
まだ続きます。
596 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:52:28 ID:BOQcfkuC
と言う感じです。ちゃんと埋まったかな?
|柱|ω・`) >588さんに見つかってるよ…
ところがどっこい
−−−−−−−−−− 再開 −−−−−−−−−−
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そして
−−−−−−−−−− 終了 −−−−−−−−−−−
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