乙ですわ。お姉さま
4 :
初代スレの45:05/03/19 21:17:05 ID:7fijMnrA
>>471お姉さま、乙ですわ。
AAに笑いましたw
それを持ってきましたかw
お疲れ様です、>1お姉さま。
今調べ直しましたところ、瑞穂さんの得票率は82%で歴代最高記録とのことですわ。
譲り合いによっての合計でならば94%でも問題ないでしょうか?
スレ立て乙ですのー
丁度一子ちゃんのシリアス話を書いているところでした……。
こっちは幽霊になってからの話だけど、過去の話しているとことか見事にかぶりそう ○| ̄|_
あっちはあっち、こっちはこっちでいいのかしら。
8 :
箱:05/03/19 21:33:15 ID:d1WHnt/3
スレ立て乙です
>>471お姉さま
前スレ
>>743=
>>5お姉さま
そういえば!!!そうでしたね・・・_no|||
少し誇張しすぎましたのですよぉ〜・・・
そうそう、職人の方々にひとつだけお願いを。
ダーク系や不条理系、同性愛系などの人を選びそうなSSを投稿する際は、
>>2にあります投稿掲示板の利用を推奨とのことですわ。
その後どんな作品かの簡単な解説を添えつつ、リンクを張って誘導してくださいまし。
二回戦第一試合
『エルダー!!!
私たち恵泉の生徒はこの言葉に飽くなき憧憬を禁じえませんッッッ
しかしッ しかしですッ そのエルダーが戦う姿を見た事があるでしょうか
その可憐な奥義が実戦の場で発揮されるのを見たものがいるでしょうかッッッ
我々はもうそろそろハッキリと云うべきなのですッッッ
エルダーは保護されているッッッ』
おぉぉおおおおおおおおおお
「梶浦先生……タブー中のタブーに触れてしまわれましたね……」
「何よ何よ 私はエルダーではなかったのですか……」
「ん〜、むつかしいですわね。紫苑さまの場合は
元エルダーと前回チャンプの半々と云ったところでしょうか」
『エルダーのエルダーたる強さを瑞穂が証明してみせるのかッッ!
それとも演劇戦士小鳥遊圭がその夢を粉々に打ち砕いてしまうのかッッ
今その回答が出ようとしています』
ドドドドドドドドドドドド
当たらない。全ての攻撃を無力化される圭。
「幕の引き時ですね……」
チュピッ
指を舐める瑞穂
「可憐にね えい♥」
ボッ
圭の首を指でつく瑞穂
ドサッ……
「圭さん……」
『強すぎるぞエルダ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜あ』
11 :
箱:05/03/19 21:36:44 ID:d1WHnt/3
>>7お姉さま
お気になさらないで下さいなのです.
一子ファンとしては一子ネタ書いてくれる人が多いことはいいことなのですよ〜.
二回戦第二試合
「瑞穂さん あなたに勝つ事は全恵泉生徒の夢です
そのチャンスに巡り合えた幸運を嬉しく思っています」
「え……えぇ、っと……
よろしく、お願いいたします」
『オオオッッお姉さまが深々と頭をたれているゥッ』
始めィ!!
ドン!!
「あははっ……さすが貴子さん。あ〜んなに飛んだや♥」
『合気です!!』
『古流柔術の最強奥義、合気が
講堂トーナメント究極ルールで炸裂したァッ!!
冴えわたってるぞエルダーッ!!!』
決勝戦
「しゃ、消力……? 合気が……通用しない……いや、使えない!?」
「あなた……本当にエルダー? 武から身を引きなさい」
見せてあげましょう、巨凶、鏑木の血……。
お姉さま、これ……私の最後の技です……。
「莫迦じゃないのッッ!! ふざけているのですかァッッ!!」
『し、死んで…………?』
「病死です……」
「武術の勝ち」
13 :
箱:05/03/19 21:38:17 ID:d1WHnt/3
vF+dWppAお姉さま割り込んでしまって申し訳ないです_no|||
>>11 そう言っていただけると助かりますです。
ありがとうございます。頑張って書きますね。
……さて、もうちっときばるか。
>8
いえいえ、誰にでも勘違いはあるもの。
あまり気に病む必要はないと存じますわ。
続き、楽しみにしていますね。
さて、ネタ派はさっさと消えよう。
皆さんSS執筆頑張ってくだされ。
>>13 んや、自分のはただのネタですから、お気になさらずに。
そもそも埋めネタのつもりだったものの、余りですからorz
>>前スレ718の初代スレの45さん(ややこしいな(´Д`;)ヾ)
ありがとうございます
よかった、「漢」とか「大漁」とか書かなくて。(書きかけた)
ええい、まりや分が足りん、足りんのだ!!
そしてエロも足らぬ!!
というわけで久々の投下。前回は別所に投下したので、こちらに投下するのはめちゃくちゃ久しぶりな気が。
『DRESS UP!! route C』
随分と開いてしまいましたが。『DRESS UP』のCルートです。随分と経ってしまったので、
2スレの28-43 or 保管庫様のほう(瑞穂ちゃんに分類)
ttp://www.type90.com/otome/ss/mizuho013.htm の選択肢のところまでですね(保管庫管理人様、失礼します
をご覧になってから読んだほうがいいかもです。
こんかいはほのぼの激しいH?で。
A.巫女服で。
B.メイド服で。
→C.恵泉の制服で。
『DRESS UP!!』.7C
がちゃり。部屋の扉を開ける。まりやがベッドに腰掛けて待っていた。
「来たね、瑞穂ちゃん。その格好なんだ。」
そういうまりやも、何故か恵泉の制服を着ている。
「あれ?まりやもなんで制服着てるの・・・?」
「さっき瑞穂ちゃんに着せたら、あたしも久しぶりに着たくなっちゃって。
あはは。さすがに年齢的に無理があるかな?」
「そんなことないよ。恵泉の現役生徒だって言っても通用すると思うよ?」
「う〜ん・・・。それって、どうなんだろう?あたしってば全然成長してない、っていうか子供っぽいの?」
「ははっ。デザイナーには純粋な心が必要なんでしょ?それに、女装が似合ってるよりはいいんじゃない?」
「それはそうかもね、瑞穂お姉さま?」
「いや、その、納得されても・・・orz」
「それにしても・・・ちょっと、胸がきついわね・・・。」
「へぇ。やっぱり大きくなってたんだ。」
「む。瑞穂ちゃん、目つきがいやらしいよ?」
「え、そ、そう?」
「そう。まったくもう。胸大きくなったの、瑞穂ちゃんのせいなんだよ?毎日揉むから・・・。
あたし、どんどん瑞穂ちゃんに開発されちゃってる・・・」
「僕だってまりやにカスタマイズされちゃってるよ。現にまりやのご希望でこんな格好でこれから、ねえ?」
「あ、あはは。そんな云い方されたら、なんか恥ずかしくなっちゃうよ・・・。」
『DRESS UP!!』.8C
「そうだ。まりやにお礼を言っておかないとね。ありがとう、まりや。」
「え?何が?そういえばさっきも云ってたね。」
「僕を恵泉に連れて行ってくれたこと。もし恵泉に行かなかったら、今の僕は居ないと思う。
それに、まりやとこんな関係になれなかったかもしれないしね。それを考えたら恐ろしいよ。」
「瑞穂ちゃん・・・。」
「一度、ちゃんと云いたかったんだ。」
「瑞穂ちゃん・・・ううん、礼を言うのはあたしのほうだよ・・・」
「え・・・」
「あたしが悩んでいた時はいつも背中を押してくれたし、あたしの支えになってくれた。
あたしがこうやってデザイナーとしてやっていけてるのって、瑞穂ちゃんのおかげなんだ。
それに・・・瑞穂ちゃん、あたしのものになってくれたし。」
「まりや・・・」
「ありがとね、瑞穂ちゃん!」
「さ、湿っぽい話はこのくらいにして、と。」
といって、まりやは僕を押し倒してきた!ちょうどベッドの脇に寄りかかる感じになった。
「わぁっ、まりや!?」
「ふっふ〜ん。せっかくこんな格好してるんだから、あの時みたいにヌいてあげよう!」
まりやは僕のショーツを下ろして、僕のを愛撫し始める・・・
「う〜ん、さすがにまだ元気じゃないね・・・?ふにふに。」
「うぅ〜。・・・ん・・・」
まりやは僕に体を押しつけてくる・・・ふたりの制服越しだけれど・・・やっぱり、まりやの体、やわらかい・・・
「あは。だんだん固くなってきたよ、瑞穂ちゃん。」
「う・・・ん・・・。まりやの体が気持ちいいから・・・」
「嬉しいな・・・瑞穂ちゃん・・・。ん、もう、準備OKだね・・・。それじゃ本格的にしてあげよう!」
『DRESS UP!!』.9C
「んぁっ・・・く・・・ん・・・っ!」
まりやが僕のを丁寧にしごいていく・・・僕の弱点を的確に攻めるように・・・
「ふふふ・・・瑞穂ちゃん、どお?」
「ん・・・っ、いいよ、まりや・・・。でも・・・女学生のテクニックじゃないよ、それ・・・」
「あはは。いいの、瑞穂ちゃんが気持ちよければ。」
あのときみたいに、手の動きと連鎖してまりやの体が上下に動いていて、
僕はまりやの暖かさとやわらかさを堪能していた・・・。
けど、やっぱりあのときとおんなじじゃ・・・やられっぱなしじゃあ、ね?
「ね、まりや・・・」
「ん・・・?きゃっ!?」
僕はまりやのスカートの中に手を入れ、ショーツを下ろした。
「ちょっと、瑞穂ちゃん!きゃんっ!」
僕はまりやのあそこをなぞるように愛撫した。
「あれ・・・?濡れてるよ、まりや。僕のを触わってるだけでこんなになっちゃうなんて、すっかりいやらしくなっちゃったね・・・?」
「ん・・・あぁっ・・・み、瑞穂ちゃん・・・」
「う〜ん、でももとからいやらしかったのかな?学園祭前のあのときだって、胸をちょっと触っただけでも濡れてたし、
ちょっと苛めただけでイっちゃったし、ね?」
「あっ・・・んっ・・・瑞穂ちゃんだからだよぉ・・・。瑞穂ちゃんが大好きだから、こんなに、なっちゃうんだよ・・・あん・・・」
「まりや・・・僕の前だけでこんなになっちゃうんだね・・・嬉しいよ・・・。
僕もまりやが大好き。・・・さ、まりや。手がお留守だよ?」
「あ・・・うん・・・。」
『DRESS UP!!』.10C
僕とまりやはお互いのを愛撫しあった・・・
「あっ・・・んっ!・・・ぁんっ・・・うんっ!」
「・・・は・・・ぁ・・・んぁっ・・・く・・・」
まりやの顔を見ると、もう赤く蕩けている。目ももう焦点が合っていない感じだ。そろそろイきそうなのかもしれない。
そう思って、僕は指を深く突き入れて、奥のほうをこねまわした。
「んあぁっ!み、瑞穂ちゃんっ、ダメ、そんな風にしちゃったらっあんっ、あたし、ダメだよぅっ!」
「ガマンしなきゃダメだよ、まりや・・・。僕はまだイかないよ・・・?ちゃんと待っててね・・・?待たないと、お仕置きだよ・・・?」
「きゃんっ!あぅっ、瑞穂ちゃん、ムリだよぉ・・・っ!そんなに強くしないでぇ・・・っ!」
「ふふ、ほら、手が動いてないよ・・・?僕にももっとしてよ・・・。そうしないとまりやひとりでイっちゃうよ・・・?」
僕のに添えられた手は、それどころではないのかもうほとんど動いていなかった。そして・・・
「ふああっ、も、もう・・・っ、ダメえぇぇ〜〜〜・・・・・・」
まりやの秘所から、愛液が吹きだして、僕の手を濡らした。
「あ・・・ぁ・・・」
僕は手を舐めながら・・・
「ふふっ、美味しいね、まりやの・・・。
でも、いけない子だね、まりやは・・・。僕をほったらかして自分だけイっちゃうなんて・・・、ねぇ?」
「ん・・・はぁ・・・み、瑞穂ちゃん、ひどいよぉ・・・あんな風にされちゃったら、待つなんてムリだよぉ・・・」
「まりや・・・可愛い・・・。でも、ダメだよ・・・?悪い子にはお仕置きしなきゃ、ね・・・?」
僕は、まりやを抱きかかえ、ベッドの上に横たえた。
「きゃ・・・ん・・・瑞穂ちゃん、やっぱり、オトコのコなんだね・・・。」
「そんな、こんなに肌を重ねてるのに、今更そんなこと云う・・・?」
「あ、はは・・・。だって、そんなカッコしてるし・・・」
「ふふっ、ホーント、今日は悪い子だね、まりや? じっくりお仕置きしてあげるから、ね?」
「やぁ・・・瑞穂ちゃん・・・。やさしくして・・・。」
『DRESS UP!!』.11C
僕のをまりやのあそこにあてがった。
「いやぁ・・・イったばっかりなんだから・・・ちょっと待って・・・。」
「ふふ、待たないよ?これはお仕置きなんだし。それに僕も早く気持ちよくなりたいし。」
「やっぱり・・・待ってくれないよね・・・ん・・・んああっ!」
あきらめたようなまりやの言葉。そんな言葉に笑いをこらえつつ、
僕はまりやに勢いよく突き刺し、そのまま大きく動く。
「ああぅっ!んあっ!、ちょ・・・待ってよぉ、そ、そんないきなり、強くしちゃ、いやぁっ・・・」
「んっ、く・・・ふぁ・・・ん・・・、ま、まりや・・・」
「んぁっ、イったばかりなのにこんなに、されてっ・・・感じすぎて、おかしくなっちゃうよっ、あぁっ!」
「いいよ、おかしくなっちゃって・・・おかしくなっちゃったまりやを、見せて・・・?」
「あぁん、ふあっ!やぁ、瑞穂ちゃんっ、もっと、やさしくしてよぉ・・・っ」
「だって、ん、ふたりとも、こんな格好、く、してるから。なんか悪いコトしてるみたいで、興奮しちゃって・・・!」
僕はさらに動きを激しくしながら、まりやにキスをする。
「ん〜、んむぅ・・・んっ・・・」
「ん・・・んん・・・む・・・」
舌を、からめあう・・・
「んはっ・・・はぁっ、んぁっ!く、苦し・・・瑞穂ちゃん・・・っ!」
「はっ・・・んっ・・・ま、まりや・・・」
『DRESS UP!!』.12C
まりやの胸を制服越しに鷲掴みにして、揉みしだく。
「んぁ・・・やぁっ、瑞穂ちゃぁん・・・また、大きくなっちゃうよ・・・ひゃんっ!」
「ホント、揉み心地がいいよ、まりやの胸って・・・んっ、制服越しでも、すごく気持ちいい・・・」
「はぁんっ、んっ!ふあぁ・・・っ、あぁっ!んんっ」
まりやの中がぎゅうぎゅうと締め付けてきて、僕を限界へと導いていく。
「ん・・・っ、ふ・・・んぁっ・・・ま、まりや・・・もう、すぐ・・・」
「あっ・・・!ああっ・・・あ、あたしも、また・・・っ!んぁっ!」
「くぅっ!・・・ぁんっ・・・んっく・・・んっ!」
「やっ!んぁっ・・・ふぁあああぁぁ〜〜〜っっ!」
まりやの中に入っていた僕のモノが、ものすごい力で締め付けられる。僕はソレに耐えることが出来ず・・・
「んっ・・・んぁ・・・んああっっ!!」
僕は、白濁をおもいっきりまりやの中に放出した・・・。
『DRESS UP!!』.13C
「まりや・・・」
「みず、ほ、ちゃん・・・」
僕たちは唇を重ねた。さっきとは違い、ソフトな、キス。
「なんか、こうやって、恵泉の制服を着てしちゃった、なんて、背徳的」
「僕も、すごく興奮しちゃったよ・・・」
「あたしも、ちょっと興奮しちゃったけど・・・瑞穂ちゃん、激しすぎ・・・あたし、動けないよ・・・」
「あ、はは・・・。でも、気持ちよかった、でしょ?」
「まぁ、それはそうだけど・・・。ホントに、瑞穂ちゃんてば、HのときはSになっちゃうんだから・・・」
「はは。判りきってるクセに。」
・・・
・・・
「さて、じゃ何か飲み物とってこようか。」
「うん。お願い・・・冷たいものがいいな。」
「はいはい。」
僕は扉を開けて、外に出た。
「「あ・・・」」
向こうから、ティーセットを持ってこちらに歩いてきていた楓さんと、目があった。
・・・いまこんな格好してるのに・・・まあ、Hしてるときに入ってこられなくてよかったけれど・・・
「か、楓さん・・・紅茶持ってきてくださったんですね・・・ありがとうございます・・・。」
僕はなるべく動揺を抑えて、平然を装って話しかけた。
けれど、楓さんは固まったまま、ビクリともしない・・・。
「か、楓、さん・・・?」
『DRESS UP!!』.14C
ガシャーーーーンと、けたたましい音が鳴る。
「さ・・・さち、幸穂さま・・・あぁ・・・」
楓さんの体がぐらりと揺れた。そして前に倒れこもうと・・・
「あ、危ないっ!」
僕は全速力で楓さんのもとに駆け寄り、体を支える。
・・・危なかった。あのまま倒れていたら、割れた食器や熱湯で大怪我をするところだった・・・
「瑞穂ちゃん、何今の音!?って、楓さんどうしたの?!」
まりやがふらふらとしながら部屋から出てきた。
「わからない・・・。僕の姿を見たら気を失ってしまったみたいで・・・」
僕は楓さんを抱きかかえて、僕らの部屋のソファーに寝かせた。さすがにベッドの上は、ちょっと、ねぇ?
「一体どうしたんだろう・・・」
「ねぇ、瑞穂ちゃん。楓さんって、瑞穂ちゃんの女装姿見たことあったっけ?」
「えーと・・・小さい頃くらいしかないと思う・・・。」
「じゃあ、幸穂さんと勘違いしたんじゃない?」
「あ・・・そういえば倒れる時、『幸穂さま』って・・・。」
「お義父様すら間違えるくらいだもん。楓さんが勘違いしても不思議じゃないよ。」
「そっか・・・。それじゃ僕を母様の幽霊とかと思って・・・」
「たぶん、ね。」
『DRESS UP!!』.15C
「ん・・・」
「あ、気がつかれましたか、楓さん・・・」
「ん・・・!さ、幸穂さ・・・」
「違います、僕です。瑞穂です。」
「み、ず、ほ、さま・・・?」
「はい、そうです。」
「・・・なるほど、まりやさまのご幼少からのご趣味、まだ継続中でしたか・・・」
「あはは・・・。」
まりやが苦笑いをする。
「びっくりしました・・・。普段の瑞穂さまも幸穂さまとよく似ておられると思っていましたが
・・・まさかそのような格好をなさると瓜二つ、とは・・・。・・・私が初めて幸穂さまとお会いした時、
幸穂さまはそのお姿だったのですよ・・・」
「楓さん・・・」
『DRESS UP!!』.16C
「・・・瑞穂さま。どうか、たまには私にそのような女装したお姿を見せていただけませんか・・・?」
「え・・・?」
「私も、旦那さまと同様、幸穂さまの死が辛いのです・・・。既に30年近くにもなるというのに・・・。
今では、悲しみばかりが残って・・・幸穂さまとのいい思い出ばかりが失われるようで・・・」
「楓さん・・・」
「瑞穂さんの今のお姿を見て、私は幸穂さまとの出会いを思い出すことができました・・・。
お世話係に過ぎない私がこのようなことをお頼みするのも筋違いかとは思いますが、
どうか私の幸穂さまとの思い出を色褪せないようにするために・・・どうかお願いできませんか・・・?」
「・・・楓さん・・・」
「いいですよ〜。是非見てあげてください。」
「ちょ、まりや!」
「なに?拒否する気?楓さんのお願いを。」
「いや、そういうわけじゃ・・・うーん。わかりました。そういうことでしたら・・・」
「瑞穂さま・・・まりやさま・・・ありがとうございます・・・」
「礼を言われるほどのことではありませんよ、楓さん。もっとあたしたちを頼っていいんですからね?
あたしたちが小さい頃から楓さんにはお世話になってるんですから。
特にあたしなんて、昔から強引に押しかけてるのに、いろいろ親切にしていただいちゃったわけですし。」
「ふふ。まりやさま、貴女はお変わりになりませんね・・・。元気で、純粋で・・・」
「う〜ん・・・なんか方々の人から言われるなぁ、それ。あたしってばやっぱり成長してないのか・・・」
「それが貴女のいいところです。いつまでもお変わりになりませんように。」
「あはは。なんか複雑・・・。さ、瑞穂ちゃん!今回の品評会のドレスはあらかた決まったけど、
次回もすぐにあるから、今度はさらに気合入れていくよ!覚悟してね〜!」
「ま、まりやぁ・・・また僕が着るんだ・・・」
「あたりまえじゃない〜。ホントは品評会本番でも着て欲しいくらいなんだから。それに、瑞穂ちゃんもあたしの新作着るの、嬉しいんでしょ?」
「う、うん・・・。まあ、そうなんだけどね・・・。」
「にはは〜。染まってきたね、瑞穂ちゃん!」
『DRESS UP!!』.16C-2(入りきらなかった)
「ふふふ・・・。本当に仲がよろしいですね、おふたりとも・・・。いつまでもお幸せに・・・。」
そういう、彼女の瞳はとても穏やかで、優しかった・・・
『DRESS UP!!』.えぴろーぐ1
・・・
・・・
―――数週間後の休日。会長室。
「・・・貴子さん、例の品だ。」
「ようやく完成したのですね、瑞穂さんの写真集が・・・あぁ・・・うっとり・・・」
「うむ。貴女のおかげだ。この間前身の写真集はおろか原稿まで没収されてしまったからな・・・
貴子さんに渡しておいたサンプルとこの新しい写真がなければ、これほどいいものは作れなかっただろう・・・」
「あぁ・・・瑞穂さん・・・これでいつでもじっくりと堪能できるのですね・・・。」
「(聞いてないな・・・)ごほん。午後に、出版社の人間が来る。これで瑞穂の素晴らしさを世に伝えることができるというわけだ・・・」
「あぁ・・・あぁ・・・瑞穂さん瑞穂さん瑞穂さん・・・」
「(ダメだこりゃ・・・)貴子さ〜ん!戻って来〜い!」
「はっ!わ、わた、くしったらなにを・・・」
「いいかね、貴子さん。くれぐれも瑞穂とまりやちゃんには気付かれんようにな。この間の二の舞は避けねばならん。
おそらくこれが最後のチャンスだろうからな・・・」
「は、はいっ!」
「さ、下がってよい。じっくりと堪能するとよいぞ。」
「はい!ありがとうございました、それでは総裁失礼いたしますわ。ああ・・・はわあ・・・」
「・・・ダメかも、しれんな・・・」
―――数時間後。
「・・・旦那さま、お茶ですわ。」
「すまんな、楓。わざわざ会長室まで呼び出して・・・。」
「いえ、旦那さまのお世話をするのが私の喜びですわ。」
「ふむ。苦労をかけるな。今日の用事は私用なのでな、そのために秘書を呼ぶわけにもいかんかったからな。」
「私用、ですか・・・。なにやら楽しそうですね、旦那さま。」
「そ、そうかね?」
「そうです。」
『DRESS UP!!』.えぴろーぐ2
コンコン
「失礼いたします。私、角山書店の鈴木と申します。例の件でお伺いさせていただきました。」
楓が扉を開けると、中年の少し太った男性が入ってきた。
「ああ、これはどうも。鏑木総裁、お会いできて光栄です。本日はどうかよろしくお願いいたします。」
「いや、お願いするのはこちらのほうだ。ご足労かけて申し訳ない。では早速だが・・・
ああ、すまない楓。席を外してもらえるかな。」
「は、はい。わかりました。それでは失礼します・・・」
「成る程、女性の方にお聞かせする話ではありませんな。」
「そういうことだ。さて、では話をはじめようか・・・」
・・・
・・・
「このような条件でよろしいのですか・・・?」
「ああ。頼めるかな?」
「そ、それはもう!鏑木総裁も随分と力を入れておりますな!」
「当然だ。最愛の息・・・ゴホン、娘の晴れ舞台だからな。」
「わかりました。それでは是非とも私にお任せを!」
『DRESS UP!!』.えぴろーぐ3
バタン!という大きな音がして、会長室の扉が開いた。
「!?しまった、瑞穂かっ!?」
そこには仁王立ちした楓が立っていた・・・
「・・・楓・・・?どうした・・・」
「嫌な予感がしましたので・・・申し訳ありませんが外で聞かせていただきました。」
「ぬ・・・。ま、まあ見てみろ、楓。ほら、幸穂そっくりだぞ?」
「・・・瑞穂さまが幸穂さまそっくりなのは存じております。
しかし、このように写真集にして世の晒し者にしようとは、どういった了見なのでしょう?」
「む、いや、瑞穂は俺の誇りだからな。自慢したくなるのも親心ではないか。」
「私は旦那さまと瑞穂さまのおふたりを守る義務があります。今日は、旦那さまのワガママではなく、
瑞穂さまの権利をお守りいたします。さ、鈴木さんでしたか。とっとと消えうせていただけますか?」
「ひ・・・ひいぃぃぃ〜〜〜〜お助け〜〜〜〜」
楓の眼光におびえをなした鈴木さんは荷物も忘れて逃げていってしまった・・・
「あっ!す、鈴木さんっ!俺を捨てないでくれっ!」
「さぁ、旦那さま・・・いえ、慶行ちゃん?覚悟は、できたかな?」
そういって楓は慶行の腕を掴む。
「か、かえ、でっ!ま、待って!ほ、ほらっ!これ、写真集のサンプルあげるからっ!」
「犬はエサで飼える。人は金で飼える。貴子さんは瑞穂さんの生写真で飼える。
だが織倉の楓を買う事は何人にも出来ん!」
ぽきり。
「ああ、いい音色。」
「ぎゃああああっ!た、貴子さんっ!あのサンプルを出版社に届けてくれよっ!あれはいいものだぁぁっ!!」
・・・
『DRESS UP!!』.えぴろーぐ4
・・・
「父様っ!」
僕とまりやは本部の会長室に踏み込んだ。
と、そこには楓さんしか居なかった。
「か、楓さん・・・?どうしてこんなところに・・・?」
「えぇ。慶行ちゃ・・・旦那さまの野望を打ち砕くために。」
楓さんが、さっき貴子さんから没収した『麗しきお姉さま-鏑木瑞穂写真集-完全版』のサンプルと同じものと、原稿を僕に手渡した。
「危ないところでした。先程角山書店の方がいらして、コレの生産・販売の相談を・・・」
「えぇっ!」
「お義父様ったら・・・なんつうコトを・・・」
「か、楓さん、助かりました・・・ありがとうございました・・・」
「いいえ。瑞穂さまをお守りするのも私の役目ですから。」
「それで、お義父様はどこに・・・?」
「・・・手加減したのですが・・・瑞穂さまのようにうまくいきませんね。」
「・・・え・・・?」
「先程病院に運ばれましたわ。外すだけのつもりだったのですが・・・」
「そ、そうですか・・・」
「ふふ。でも、不純な動機で瑞穂さまの女装姿を見るなんて、許せませんから・・・」
「か、楓さ〜ん・・・」
「あ、はは。ひょっとしてあたしも、不純な動機?」
「いえ、まりやさまは瑞穂さまの恋人ですから、不純でもいいんですよ。」
「にゃっはは〜。楓さんのお墨付きもらっちゃったよ。瑞穂ちゃん!」
「楓さん〜・・・。」
―――その日の夜。病院のベッドの上で・・・
慶行は貴子さんも写真集を取られてしまった事を知り、枕を濡らしたという・・・
「うぅ・・・だが・・・。 まだだ、まだ終わらんよ!」
終わってください。
あとがき
久々すぎです・・・第3スレでは別所に投下したことを報告しただけでしたし・・・
『DRESS UP!!』シリーズ完成させるまで何日かかってるやら・・・
いい加減Hのネタが尽きました(泣
今回楓さんが本格的に登場。
唯一突っ込み役として残りそうな感じですw
個人的設定としては、楓さんは慶行の幼馴染で好意を寄せていた(慶行はソレに気がついていない)。
慶行にはその後許婚として幸穂さんが現れ、ぞっこんになってしまった、と。
そして当初は幸穂のことをあまり良く思っていなかったんだけど、幸穂の優しさや不思議な雰囲気に惹かれるようになり
最終的には親友になった。とそんな感じ。なお、幼馴染と結ばれたまりやを羨ましいと思ってるとか。
機会があればこの3人のことを書いてみたいと思ってますが。
次は瑞穂ちゃんとまりやの婚約話でも書こうかなと考えています。
まだまだ、このスレにはまりや分が足りないっ!!
35 :
3-180:05/03/19 22:42:03 ID:9ub+fiI4
471さん、スレ立てお疲れ様です。
うーん、名前を設定した方がいい時期かなぁ……取り敢えず何か新作を書く気にならないといけませんなぁ
とうとう、幸穂様×一子ちゃんネタ投入されたか。
乙でした。
自分の書きかけの物は ここの空気に合いそうにないので
自分のPCの中に残しておこう。
>>幸穂様×一子ちゃんネタ
ちと気になったが、場所的に下から上(この場合、線路からホーム)へ
人なり物なりをぶん投げる場合、「投げ下ろす」じゃなくって
「投げ上げる」じゃないのかと
細かい話だけどなー
38 :
猫野:05/03/19 22:59:41 ID:N4NXbimz
36さん
おとボクSS投稿掲示板
ぜひここに投稿を
ネタ枯渇中。
なんか降りてこーい。
40 :
2スレ402:05/03/19 23:14:22 ID:itoz9+jR
瑞穂ちゃんネタ?降下してきた?
頑張って、筆記してみます。
はじめまして。
2チャン初カキコです。
で、さらにSS初挑戦です。
失敗等ありましたらご容赦を。
「優しくしてね、あん」
紫苑エンド後
まりあ視点
非エロ
朝、出社した私に、貴子が近づいてきた。
「まりあさん、後で、鏑木ソフトの企画部長がこられます。
一緒に、社長室までおいでくださいとのことです」
私は、小声で「ついて来て」というと、今は空いているはずの会議室に向かった。
誰もいない会議室で二人きりになると、早速状況を聞く。
「で、どうなの」
「昨日、本屋でゲーム雑誌を見つけて、例の物の内容を知ったみたい。
今朝、そのゲーム雑誌を丸めて持ってたわ」
「なるほど、それで鏑木ソフトの企画部長を呼んだというわけね」
「企画部長から、直接詳しい事を聞きたいみたいよ」
「じゃあ、情報源はそのゲーム雑誌だけなのね」
「そうでしょうね。
詳しいことを知っていたら、あなた、今すぐ社長室に呼び出されている筈だもの」
「瑞穂ちゃんの機嫌はどう?」
「不機嫌よー。覚悟してなさいね」
「まぁ、ここまでは織り込み済みだからね。
でも問題は、企画部長がどの程度、瑞穂ちゃんにばらすかよねぇ。
一応、釘はさしておいたんだけど、瑞穂ちゃんを前にしてどうなるか。
万が一のために、飲み物はぬるめでお願いね」
「了解」
「御門まりやです。失礼します」
社長室に入ると、既に鏑木ソフトの企画部長がこられていて、瑞穂ちゃんと挨拶を
交わしているところだった。
その後、3人で社長室のソファに腰掛けると、早速瑞穂ちゃんが話し出した。
「早速ですが、そちらの会社で製作中のこのゲームについて、詳しい話しを
お聞かせ願えませんでしょうか」
そういって、瑞穂ちゃんは広げたゲーム雑誌をテーブルに置く。
その本には、こんな記事が載っていた。
--------------------------------------------------------------------
鏑木ソフトが送る、レディス向けゲーム第1弾
『お姉さまメーカー(エルダーメーカー)』
あなたは、服飾デザイナーを夢見る女子高校生。
でもある日、親戚の1人のまだ幼い男の子の、教育係を頼まれます。
何でも、その子の祖父の遺言で、これを受ければデザイナーへの道も開けそう。
あなたは、もちろん引き受けます。
でも、問題はその教育方針。
何でも、この子の家系は、代々お嬢様学院の憧れの的「エルダーシスター」を
輩出してきたらしいのです。
でもこの子は一人っ子で、母親は既に他界してしまっています。
そこでこの子を女装させ、この女学院に送り込もうというわけです。
あなたは、この子に行儀作法やダンスなどの習い事、そしてまた社会勉強として
各種アルバイトをさせ、立派な「エルダーシスター」になれるよう教育していきます。
エンディングは、「エルダーシスター」になれるもの以外にも多数取り揃え、
さらには、隠しパラメータの好感度次第では、結婚エンドも。
この子に着せる服のデザイナーには、今話題の「御門まりや(鏑木テキスタイル・
プランニング)」を迎え、ブラウスやスカートなどの各パーツを組み合わせて、
自由にコーディネートが可能です。
詳細は、また次号にて
---------------------------------------------------------------------
私は素早く一瞥して、余計な情報が書かれていないか確かめる。
大丈夫。
「さて、こちらの御門君から聞いた話しでは、何でもそちらのゲームの服飾デザインを
頼まれただけと伺っていたのですが、どうもそれだけでは無いようですね」
そういってこちらを睨む。
「あれ、聞いていらっしゃらなかったのですか。
もともと、このゲームのプロットは、こちらの御門さんから伺った物ですが」
「やはりね、多分そうだと思いましてね」
「おや、このプロットに心当たりが?」
「ええ、少々」
ははは、そりゃ心当たりもあるわよねぇ。
しかも、こんなこと考え付きそうなのは、私ぐらいだと思ってるんでしょうし。
でもハズレ、実はこれを思いついたのは貴子と私の共同作業なのよね。
以前、2人で飲んだときに、どちらからとも無くこんなゲームが欲しいと
盛り上がったのよね。
で、あまりにもこのまま埋もれさせるのは惜しいと思った私が、鏑木グループの
パソコンゲームソフト会社に持ち込んだというわけ。
「企画部長さん、心配なさらずとも大丈夫ですよ。
このプロットが、パクリとかいうのじゃありませんから。
ただこちら社長のお母様が、とある女学院のエルダーシスターだったものですから」
「ああ。そうだったんですか。
さすがに、その血を引いてみえるだけあって、社長さんも優雅な振る舞いをされて
いらっしゃる」
血を引いているだけどころか、本人がそうだったんですもの、それは当然よね。
>DRESS UP!!
エピローグ長ぇっ!
でも、面白ぇ! 乙!
「まあ、そんなことは置いといて、ゲームの詳しい内容をお願いします」
ちょっと不機嫌そうな瑞穂ちゃんを前に、企画部長が慌てて説明をはじめる。
「基本的には、従来からある育成ゲームです。
ですが、ただ女性向ということで普通に男の子を育成するのでは面白くない。
そこで、女装ということで、この子のかわいらしさもアップし、さらに服装の方も
御門さんの協力により、かわいらしくなっています。
・・・・・・」
この後、長々と説明が続いていくけどパスするね。
「というわけで、例えば習い事に格闘技を多くさせ、アルバイトにレスラーを
多くさせるとエンディングはエルダーマスク、同じく格闘技と特撮ショーでは
仮面エルダーというようにいろいろなエンディングに分岐します」
「まあ、ゲームの内容はだいたい判りましたが、それで受けるのですか」
企画部長さんの一所懸命な説明で、瑞穂ちゃんもそれほど不機嫌ではなくなったみたい。
「まだ第1報を発信しただけですが、結構良い感触を得ていますよ。
それにですね、実はこのゲーム、パワーアップキッ」
ガシャン
それを聞いた私は、手に持っていたコーヒーカップを企画部長さんの膝に落とす。
「あらーー。
ごめんなさい、大丈夫・・・じゃないわね、急いで洗わないと染みになっちゃいますね。
ちょっと、貴子さん」
それを聞いた貴子が、ドアをあけて入ってくる。
ちょっと、早すぎじゃないの、あんたが盗み聞きしてたのばれちゃうじゃない。
まあ、企画部長さんはそんな余裕ないし、瑞穂ちゃんは鈍いから大丈夫だとは思うけど。
「こちらに洗面所がありますので」
企画部長さんを連れて行く貴子に、口止めお願いと目で合図を送ると、向うも頷いて返す。
ふう、危なかったぁ、実はこのゲーム、秘密があるのよね。
このゲーム、本体だけなら普通の全年齢版の育成ゲーム。
でも、同時発売のパワーアップキットをあてると、Hイベント盛りだくさん、さらには
結婚エンドでは初夜のシーンが加えられるというもの。
しかも、イベント通過フラグや各種パラメータ、さらに隠しパラメータの従順度によって
初夜シーンも違ってくるという懲りよう。
しかも、キャラクターデザイナーには、男の子のデザイン用に瑞穂ちゃんの写真を
渡しといたからねぇ。
これを瑞穂ちゃんに知られたら、絶対反対されちゃう。
発売されるまでは、なんとしてでも内緒にしとかないと。
コーヒーのこぼれた後を片付けていると、貴子に連れられて企画部長さんが戻ってきた。
「本当にうちの社員が、失礼致しました」
「いえ、別に染みにもならなかったようですし、たいしたことはありませんよ。
それよりお話しを続けましょう」
わき腹を擦っている。
ちょっと貴子、暴力はいけないわよ。
「このゲームはですね、過去のゲームより、イベント数やエンディング数、そして当然
ビジュアルも数段パワーアップしていますので、大丈夫です」
よし、企画部長さん、うまくごまかした。
「その上、御門さんのデザインを使用することにより、最先端のファッションをアレンジ
する楽しみを味わえるとなればヒット間違い無しです」
「それと社長、このゲームで人気のデザインを確かめる事もできますし、我が社としても
協力して損はないかと思いますが」
さすがに瑞穂ちゃんも、反論しにくいみたいで、このまま何とか押し切れそう。
そのまま押し切った私たちは、まだ多少不機嫌ながらも諦め気分の瑞穂ちゃんを残して
社長室を後にした。
もっとも、最後にドアを閉める直前の一言
「今度の休日に、このゲームのデザインから仕上げた服を持ってお邪魔しますので、
よろしくお願いしまーす」
これで、また不機嫌度はアップしたみたい。
エピローグ
「ただいま」
3日間の出張を終えた僕は、そう言って家に入る。
「お帰りなさい」
紫苑が出迎えてくれる。
「夕食はどうされます」
「帰りに食べてきたからいいよ、お風呂は沸いてるかい」
「はい、沸いてますよ」
そんな会話をしながらリビングに入ると、テーブルの上にノートパソコンが載っていた。
「あれ、紫苑、パソコン使ってたの?」
「ええ、この間頂いたあのゲーム、お姉さまメーカーをやってましたの」
「ああ、あれね」
苦笑しながら話し続ける。
何せ、出来上がったものを見たら、育てられる男の子が僕にそっくり。
全く、これもまりあの所為だろうな。
でもこれが発売されてから、なぜかうちの女性社員、なぜか僕を見ると真っ赤に
なるんだよね。
特に貴子さんなんか、何度か僕を見て倒れちゃうし。
あの程度のゲームでそんな風になるかなぁ。
「このゲーム、大人気らしいですわよ。
何でも、女性向に作ったのに男性の方も購入されるとか」
「へえ不思議だね、僕はゲームの事はよく判らないよ。
そういえば、これ女主人公と男の子の名前自由に入れられるんだよね。
紫苑は何にしたの?」
そう言ってパソコンの画面を覗いた僕は、固まってしまった。
そこには、ひらひらのレースのついた服を着た僕そっくりの男の子が、女主人公に
押し倒された絵が写っていた。
さらにスカートは捲りあげられ、男の子のアレが女主人公に握られている。
「なにこれーーーー」
そう叫びながらパソコンの横を見ると、前に貰ったゲ−ムの箱の横にもう1個別の箱が。
それには「お姉さまメーカー パワーアップキット」と書いてあり、成人指定のシールが
貼り付けてある。
「ああそれは、一昨日まりやさんが持ってきてくださったの。
これを使わないと、本当の楽しさは味わえないわよって」
まりやーーー、謀ったナーーーーー
「あ、そうそう。
ねえあなた、今夜はこのシチュエーションでしてみない?
うふっ、そのレースのドレス、どこにしまったかしら」
呆然とする僕を後に、紫苑は、まりやが置いていったドレスを探しに、衣裳部屋へと
駆けていく。
パソコンの画面にはあの絵が、未だに映し出されたままになっていて、下にはこんな
せりふが添えられていた。
瑞穂 「紫苑姉さま、僕初めてだから優しくしてね、あん」
END
50 :
41:05/03/19 23:47:15 ID:jgELLVgg
以上です。
お目汚し、失礼しました。
GJ
ただし、ところどころまりあになってるので-5点
52 :
猫野:05/03/19 23:53:08 ID:N4NXbimz
SS初挑戦でこれだけ書ければ十分ですよ
>>41 GJです。
私も「お姉さまメーカー」やってみたいですわ。拡張版込みで(ぉ
>>28の、上から3行目ですが
既に30年近くにもなるというのに → 20年にもなるというのに
に訂正してください・・・
一子ちゃんの命日と幸穂さんの命日ごっちゃになってた・・・orz
紫苑さまの誕生日まで、あと2日。
現在執筆中のSSはまだ3分の1といったところ。
日曜日も月曜日も仕事で書く時間がない。
あ、愛が、紫苑さまへの愛が試される時……。
ううっ。
確かに、まりやとまりあが混在してる。
ごめんなさい。
51さん、52さん、53さん感想ありがとうございます。
>>1お姉さま、乙でございました…お茶でも飲んでおくつろぎくださいませ。
またまた良作が多数投下されていて、皆様GJ!!でした!!
慶行パパと幸穂お姉さまの話はいつか俺も書いてみようと思ってたのですが…
良作投下で満足してしまいましたw
>>嘘予告の中の人
予告作成乙でした!!w
後はこれに負けない作品作りをするばかりですな…( ;´Д`)
順調にいけば今夜中には第三話を投下できる予定…ガンバリマス…
今日1日で名作の絨毯爆撃ですね。職人諸氏、乙でした。
さて、漏れの方は21日に間に合うのやら・・・微妙・・・。
58 :
3-180:05/03/20 00:51:58 ID:u94cmjvW
皆さん良作投下GJです。それに引き替え21日も近いというのに構想が上手くまとまらないorz
ところで、紫穂くらいの年の子に上げるお駄賃とかお小遣いってどれくらいが妥当なんだろう?
お小遣いなんぞ貰うこと自体妥当じゃないと思う漏れは貧乏人の子。
>>58 幼稚園前だとするならば小遣い無しでも問題ないと思うのだが。
せいぜいでも500円超えたら上げすぎと思う。
正直、今のおこちゃま達の小遣い事情はyよくはしらんわけで。
…紫苑さまかと思ったら紫穂なのね。
だったら定期的な小遣いなしでいいんじゃ?
特に欲しいものがあるときに小銭もらうって感じで。
62 :
3-180:05/03/20 01:15:43 ID:u94cmjvW
>>60 >>61 サンクス。その辺頭に入れて、取り敢えず書いてみます。
とはいえ、未だ漠然とイメージしてる段階なのだが。
俺は一銭も貰ってなかったなぁ…( ;´Д`)<小遣い
さて。無事(?)王座決定戦、第三話が書きあがりましたので投下します。
ようやく、試合に入りました…w
恵泉最強王座決定戦!!―第三話・試合開始!!―(1)
「…皆さんお待ちかね!!ついに、ついに…バトルエルダートーナメント、開催です!!」
緋紗子先生の声に続いて、黄色い声が体育館に響く。
体育館の中は満員御礼、二階の方まで人でいっぱいだ。
…緋紗子先生、ノリノリだなぁ…マイク掴んでる手の小指、立ってますよ…?
一説によると、バニーガール姿で出ようとして、流石に自粛したって話も聞くけど…
「それでは早速、選手入場です!!では最初は、この選手から!!」
緋紗子先生の叫びに続いて、体育館のステージ袖からまず現われたのは…
「文化祭以来人気急上昇中!!今や1年生の輝けるヒロイン!!
白菊の異名も囁かれる小さな巨人、今日もリボンを身に付けての出場、周防院奏選手!!」
恥ずかしそうに奏ちゃんが壇上に立つと、各所から
「奏ちゃん可愛い〜〜〜!!」
「頑張って、奏ちゃん〜〜〜!!」
あちこちから声援が上がる。…どうやら、年上人気が高いようだ…
「続いての登場は…未だ衰えぬカリスマと気品。優雅にして美麗の代名詞!!
長身である事は有利か?病弱である事は不利か?
第一回戦で証明されるか!?十条紫苑選手!!」
紫苑さんが壇上に現われると、さらに一際多く歓声が上がる。その点、流石は元エルダーだ…
当の紫苑さんは、真っ直ぐの指を伸ばした手を、軽く、小さく振って応える。が…
その仕草が、プロレススタイルの衣装と甚だミスマッチな気がする…
「急成長を続ける陸上部の若き新鋭!!ノーマークから一気にエースへと踊り出た努力の人!!
御門まりや譲りのファイトで、トーナメントも勝ちあがるか!?
俊足の乙女、上岡由佳里選手!!」
由佳里ちゃんは、紫苑さんとは対照的に、大きくてを振って回りに応えている…
なかなかどうして、由佳里ちゃんへの声援もかなり多い。
バレンタインの際のチョコレート作り指導や、陸上部での成績が大きいんだと思う。
「秘められた表情の奥に眠る、実力は如何に!?
前評判は意外と高い今大会のダークホース、舞台に咲く黒き薔薇!!演劇部部長、小鳥遊圭選手!!
メイド服で登場です!!」
「圭様〜〜〜!!」
「素敵です、部長〜〜〜!!」
恵泉最強王座決定戦!!―第三話・試合開始!!―(2)
文化祭のときも思ったけど、やっぱり圭さんもファンが多いなぁ…
その当の圭さんは舞台中央まで行くと、皆に向かってVサインをする…そしてまた上がる歓声。
……あ。良く見たら、美智子さんがじっと圭さんを見てる…
いや、ただ見てるだけならともかく、いつも通りの笑顔だけど…なんか、雰囲気が怖い。
圭さんもそれに気付いて、そっと視線を逸らしてる…嫉妬、してるのかなぁ…やっぱり。
「事件の裏にやっぱりまりや!!恵泉一のトラブルメーカー!?
常に先頭を走る超行動派!!その勢いでトーナメントも制覇か!?御門まりや選手!!」
「ちょ、ちょっと緋紗子先生!!なんであたしだけそんな紹介なの!?」
「ほらほら、まりやさん。言葉遣いが戻ってますよ」
「…こほん。とりあえず、訂正をお願いしたい所存でございますわ…」
あ〜あ。言葉遣いがすっかり乱れちゃってるよ…にしても。
「まりやお姉さま〜〜〜!!」
「カッコイイです、まりやお姉さま〜〜〜!!」
「素敵〜〜〜!!」
流石は面倒見の良いまりやだなぁ。黄色い声援が大量に飛んでる…
「次に登場は…我らが恵泉女学院の栄えある生徒会長!!質実剛健、文武両道!!
事実上恵泉の行事決定権を握る女、女帝・厳島貴子選手!!」
「貴子お姉さま〜〜〜!!」
「会長、ファイトです〜〜〜!!」
…なんか、一般の声援に負けないくらい、生徒会の面々の声援が力強く響いてるな…
ていうか君枝さんなんか、「貴子お姉さまファイト!!」なんて大きく書かれた応援旗を
ブンブンとブン回してるし…結構パワフルだなぁ、あの子…
「そして…お待たせしました!!最後に登場は我が恵泉学院史上最多得票を持つ、
歴史にその名を燦然と刻みつけた最強のエルダー!!
容姿端麗にして頭脳明晰、運動神経も抜群の最強乙女!!
現エルダータイトルホルダー、宮小路瑞穂選手!!今ここに入場です!!」
…物凄く装飾過剰なコールに呼ばれて壇上に立てば…
『きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!』
体育館を圧するような大歓声が上がる…実際、ちょっと耳が痛かった…
恵泉最強王座決定戦!!―第三話・試合開始!!―(3)
そして起こる数々の声援の中を、僕はゆっくりと壇上の中央へと歩き出す。
「以上、7名の参加者が出揃いました!!まずは第一回戦、第一試合を行います!!該当選手は
体育館中央、リング内へお願いします。その他選手は、選手席で待機願います」
こうして…遂に、恵泉最強王座決定戦は始まった…
体育館中央には、背の低い板で囲まれた闘技場が設置されていて…
今、そこには二人の少女が立っている。
云わずと知れた、第一回戦第一試合の対戦カード。奏ちゃんと、紫苑さんで…
どちらも心配なだけに、僕は正直気が気じゃなかった。
「宜しくお願いしますわね、奏ちゃん」
「は、はい、あの…宜しくお願いしますなのですよ…」
悠然としている紫苑さんとは対照的に、奏ちゃんは始まる前から完全に飲まれている…
「それでは、記念すべき第一回戦第一試合…エルダーファイト、レディ…ゴォォォォォ!!」
緋紗子先生の掛け声と共に、試合が始まる。始まると同時に、紫苑さんは奏ちゃんに向けて
走り出す…!!
「は、はやや…!!えっと、えっと…!!」
一方の奏ちゃんは、慌てるばかりで立ち尽くしたまま…このままじゃ、危ない…!!
両手を広げ飛び掛る紫苑さんに、奏ちゃんはぎゅっと目を閉じて、頭を抱える…!!
ぎゅ……………
『……え?』
会場はシンと静まり返り、目の前の光景に対して、全員が同じ声を上げる…
…何しろ、紫苑さんが奏ちゃんをぎゅっと抱きしめ、頬擦りを繰り返しているのだから…
「嗚呼…やっぱり、こんなに可愛い奏ちゃんを、攻撃したりなんか出来ませんわ…」
そう、満足げな顔で呟く紫苑さん…
「…えっと…と、とりあえず…十条選手、戦意喪失、と言う事で…周防院選手の勝ち!!」
『ええええええええええええ!?』
結局。緋紗子先生のその一言で、奏ちゃんの勝利が決まってしまった…
ま、確かに、これじゃあもう試合にならないし、先に「攻撃の意思の放棄」を宣言したのは
紫苑さんだしね…
第一回戦第一試合は、なんとも波乱に満ちた結果に終わったのだった…
つづく(久々に入れ忘れた…)
というわけで、まずは第一試合が終了です。
次は残る一回戦のカード、第二試合と第三試合を一気に消化、と言うところだと思われます。
今更ですが…この話はフィクションであり、実際の作中の展開とは一切関係ありません。
ご了承ください…w
貴子ED 「海に行こう!」シリーズを読まなきゃ理解できないです。
しかし、このシリーズ、ボケが供給過剰。
ビーチバレーだ!編
まりやさんと馬鹿な追いかけっこをした後、別荘のリビングに戻ってきた。
「無駄な労力を費やしてしまいましたわ」
「あんたが余計な事をするからでしょ」
お互いにお互いのわき腹を肘でつつきあいながら、濡れた体をバスタオルで拭く。
他の4人はすでにそれを終わらせ、キッチンで食事の準備をしているようだ。
使い終わったタオルを肩にかけ中に入ると、テーブルの上にそうめんがたっぷりと盛られた大きなガラスの器が置かれている。
「お帰りなさい。ちょうどおそうめんが茹で上がった所ですよ」
紫苑さまが麦茶のポットを置きながら、こちらを向いていった。
「瑞穂ちゃんはまだ寝てるの?」
濡れたTシャツを絞りながらまりやさんが紫苑さまにたずねた。
「一子さんが見に行かれてますわ。寝てましたら起こしていただくようにお願いしてます」
「おはようございます・・・」
まだ少し寝たりないような表情で、瑞穂さんが一子さんと一緒にリビングに入ってきた。
「おはようございます。ずいぶんと良く寝てましたわね。もうお昼ですよ」
「なんだか、夢見が悪くて・・・」
大きなあくびを吐いて、洗面所のほうへと歩いていく。朝見たときは気持ちよさそうな寝顔でしたのに・・・
入れ違いで、奏さんと由佳里さんが食器の乗ったお盆とつゆの載ったお盆をそれぞれ持って入ってきた。
「出来上がりましたよ」
「出来たのですよ」
(1/5)
お昼の食事はそうめん、つゆに梅肉を入れて食べると、酸味が利いて食欲を誘った。そして、デザートには朝に下ごしらえをしたフルーツポンチ。上品な甘さのシロップにつけられた色とりどりのフルーツはいくらでも食べられる。
と言う事で、ちょっと食べ過ぎてしまったみたい・・・このまま泳ぐとお腹が痛くなりそうですね。
それは他のメンバーも同じだったようで、しばらくはリビングで海を見ながらの休憩と言う事になった。
「私も食べたかったです・・・」
と、一子さんが涙を流して悔しがっている。幽霊ですからね・・・
「じゃぁ、僕も水着に着替えてきますね」
そう言って瑞穂さんが席を立つと、私たちは取り留めのない会話をしながら、瑞穂さんが帰るのを待った。
開け放たれた窓から、心地いい潮風が流れ込んでくる。そのおかげで気温は30度を超えているが、不快指数は低いに違いない。
「お昼から何をする?」
「泳ぐ以外に出来ることあるんですか?」
まりやさんの質問に由佳里さんが聞き返す。いわれてみれば、山はあったけどどう見ても手入れがされてる様子はなく、ハイキングを楽しめそうには思えない。
「ビーチバレーなら道具があるわよ」
「楽しそうですわね」
まりやさんの提案に紫苑さまが同意をすれば、反対するものは誰もいなかった。瑞穂さんが着替えを終えて帰ってくると、早速チーム編成のくじが作られた。
どう考えても運動神経が発達している、まりやさん、瑞穂さん、由佳里さんの3人が同じチームにならないように二人ずつのチームが作られた
「で・・・こういう組み合わせね・・・」
そういうまりやさんの顔には「私は絶対納得してないぞ」と、はっきりと書いてある。
瑞穂さんと奏さん、紫苑さまと由佳里さん・・・私とまりやさん・・・悪意を感じる。絶対悪意を感じる。
もちろん、私も納得してません。まあ・・・3分の1の確率なんですから、言っても仕方ないんですけどね。
総当りで勝ち数が一番多いチームの優勝、と言うルールでゲームが始まった。
ちなみにびりのチームが夜のバーベキューの焼き係をすることになっている。焼いてると食べれないんですよね、バーベキューって。
(2/5)
第一回戦:瑞穂チーム対由佳里チーム。
「頑張ろうね、奏ちゃん」
「はいなのですよ!お姉さま」
「私はあまりスポーツが得意ではないので、足を引っ張ったらごめんなさいね」
「紫苑お姉さまなら大丈夫ですよ」
四人がお互いに声を掛け合い、ネットの両側に別れる。ボールに触れない一子さんが審判になり、ゲームの開始を宣言する。
・・・
点を取る度に手を叩き合って喜んでいる・・・ゲームですからね、点を取ればこのくらいはしゃぐのは当然。
それをコートの外に立てられたビーチパラソルの下に座ってみている。
「・・・貴子」
「・・・なんですか?」
「顔、引きつってるわよ」
うっ・・・私だって、瑞穂さんと一緒にゲームを楽しみたかったんですものぉ・・・
ゲームは結局僅差で由佳里さんチームが勝った。敗因は、奏さんの飛び跳ねるたびにずれる2枚重ねのパット。
「うぅ・・・」
「気にしないでいいんじゃないかな?色々と・・・」
瑞穂さん、それはフォローになってない。
(3/5)
第二回戦:瑞穂チーム対まりやチーム
「貴子、いいわね、狙うのは奏ちゃん」
「卑怯な手を考えさせたら日本一ですわね」
「まりや、聞こえてるよ」
「まりやお姉さま、酷いのですよ」
「勝てば勝ちなのよ!」
確かに勝てば勝ちですけどね・・・
まりやさんの立てた奏さん狙いの作戦が功を奏し、ゲームはこちらの一方的な試合運びになった。実行してしまってる私も私ですけど・・・だって、瑞穂さんと奏さんが手を叩きあってるのは見たくないんですもの。
何度目かのスパイクが奏さんの元に飛んでいった。奏さんは思わず飛び込んでそれを拾った・・・瞬間、4つのパットがポロッと落ちた。
「あっ・・・」
全員の視線が『そこ』に集まり、時間が止まった。
しゃがみこんで半べそになる奏さん、思いっきり悪者になってしまった私とまりやさんに批判の視線が集中する。
「えっと・・・まりやさんチームの反則負け」
審判一子さんが宣言した。
(4/5)
第三回戦
由佳里チーム対悪者チーム
私たち、悪者チームですか?そうですか・・・
「悪者チームには負けませんよ、お姉さま」
「そうですね、今のは良くないですわ」
紫苑さまにそういわれると、余計凹むのでお願いですから止めて下さい。
「まりやさんの所為で、悪者チームになったではないですか!」
「あんただって、きっちり実行してたじゃないの!」
それはそこ、乙女心という奴で・・・
「悪者チームのサーブからです!」
審判まで悪者チーム扱いですか?そうですか・・・
結局、悪は滅びました・・・流石に悪者悪者と連呼される中、実力が出せるほど、私もまりやさんも面の皮は厚くなく、ズタボロに負けてしまった。
「悪者チームさん、お肉が足りませんよ」
紫苑さま、嬉しそうに、悪者悪者って言わないでください・・・
(おしまい)
ハンドル入れ忘れてた
GJです!
>>18-33 楓さん、ないすです。
貴子さんとお父様の夢、いつ「見果てたり」になるんでしょうね。
>>42-49 誰か作ってください。
>>64-66 そうですよね紫苑さん、奏ちゃんと戦うなんて出来ませんよね。
ぎゅ・・・・・・・・・
の所まで読んで、窒息させるのか!?と思いましたけど。
>>68-72 なんかビーチバレーしてる姿が浮かぶなぁ・・・。
楽しそうだなぁ・・・。
なんか降りてきた、というかふと浮かんだのでネタ投下します。
長く書いてるやつから現実逃避〜。
お姉さま?お兄様??それとも・・・・・・
「お姉さまは、男の人なのですか・・・?」
「そうよ。だからもう、お姉さまって云う呼び方は・・・・・・」
「・・・・・・では、瑞穂お兄様、ですか?」
「確かに正しいけれど、私自身それはあまり聞き慣れてないわね・・・・・・」
そう云うと、奏ちゃんは黙り込んでしまった。
そりゃそうだよね、今まで「お姉さま」だと思ってた人が、いきなり男の人だって云われたらね・・・・・・。
「・・・・・・では」
「?」
「瑞穂オネニーサマ、ではいけませんですか?」
「・・・・・・・・・」
「瑞穂様?」
「・・・・・・どこで覚えたのかしら、というかなんで知ってるのかしら」
その日から、奏ちゃんには「オネニーサマ」と呼ばれるようになった。
まだお姉さま、若しくはお兄様のほうがいいよ・・・・・・。
終わり
続かない。派生しない。
呼び方の元ネタは、8年くらい前の某アニメ。
ちなみに自分はまったく見たこと無い。
分かる人いるだろうか・・・・・・。
77 :
名無しさん@ピンキー:05/03/20 06:09:04 ID:TIr02Ed9
>>76 あかほりさとるのアレですか…。
小説のほうはエロ分結構高かったな。
>>66 し、紫苑さーん、奏ちゃん勝たせちゃって、二回戦以降が心配じゃないのかぁあ?
紫苑さんが優しくフォールしてくれなきゃあ、きっと二回戦以降で
「あなた、そうやって決勝まで進むつもりですか? ここは最強を決める場ですわよッッ!!」
メゴパァッッ!!!と……
瑞穂ちゃんはお化けで童貞を捨てたポルターガイスト・ファーストファッカーとして
十字架を背負って生きていかないといけないんだね。
>>79 じゃあ、俺達は瑞穂ちゃんで童貞を捨てたエルダーシスター・ファーストファッカーだな。
むしろセルフファッカー
前スレ723に追加してみるテスト。
ある日の鏑木家
まりや「さあ覚悟はいいか女の敵!じっくりかわいがってやる!泣いたり笑ったり出来なくしてやる!」
瑞穂「まりや、口調が変だけどそれって何かの真似…?」
まりや「まりやじゃなくてまりやさん。OK?さっき貴子に注意されたばかりでしょうが」
瑞穂「はい…以後気を付けますわ」
まりや「よろしい。それじゃ最初に寸法合わせから始めましょうか。貴子、クローゼットの中から適当に見繕ってきて」
貴子「ええ。…随分と沢山用意したのね、まりやさん」
まりや「うん、瑞穂ちゃんにどんな服を着せようかと考えたらどんどんアイデアが湧いてきてさ。折角だから全部作ってみたんだ」
紫苑「ということは、これは全てまりやさんが今回瑞穂さん用にデザインしたのですか?」
貴子「…その無駄なほど過剰な行動力は驚嘆に値しますわ、本当に」
瑞穂「ええっと、まりやさん。わざわざ新作を用意しなくても既製品で十分だと思うのですけど…」
まりや「そんなもったいないことできるわけないじゃない。だって瑞穂ちゃんだよ?」
貴子「…確かに、既製品では瑞穂さんの魅力を引き出せそうにありませんね」
まりや「というか、下手すると負けちゃうわね。服の方が見劣りするなんて、デザイナーとして屈辱の極みだわ」
紫苑「今回はまりやさんの勘が当たったといったところでしょうか?」
まりや「たまたまですよ、紫苑さま。本当はまたデザインし直したいところなんだけどね…予想以上だったから」
瑞穂「そんなことしなくていいです…」
みずほ「だって瑞穂ちゃんの女装だよ?趣味にはいくら労力をかけても惜しくないに決まってるじゃない」
瑞穂「…その集中力をもう少し仕事へと振り分けていただけるとありがたいのですけど」
まりや「あはは…それは無理。あたし気がノらないと全然湧いてこないからさ」
紫苑「うふふ、まりやさんらしいですわ」
貴子「まりやさん、まずはこれだけでいいかしら?」
まりや「うん、ありがと。はい、瑞穂ちゃん。早速着替えて」
瑞穂「ええっと…もしかしてあの服全部試着しないといけないの?」
まりや「当たり前でしょ。多分サイズはぴったりだと思うけど、念の為確認しておかないとね」
瑞穂「あの、まりやさん。クローゼットの中のものも入れるとざっと30着以上はあるみたいなんですけど…一週間分だから余裕を見ても10着もあればいいのではないかしら…?」
まりや「そんなの駄目に決まってるじゃない。どれがよく似合うか見比べないといけないんだから」
貴子「我が社の新作検討会も兼ねていますからご協力をお願いしますわ、社長」
紫苑「なるほど、抜け目ありませんね。それではじっくり吟味しませんと」
瑞穂「心底楽しそうですね、みなさん…」
「当たり前じゃない「もちろんですわ」「ええ、とっても」
駄目だ、目の色変わってる…
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貴子「まりやさん、カメラも用意しておきましたわ」
まりや「ナイス貴子!服に夢中ですっかり忘れてたのよね」
紫苑「それではまずはこれなんてどうでしょう?」
まりや「その前に下着も変えてもらわないと。あ、瑞穂ちゃん。ミニやタイトもあるから前張りも忘れないでね」
誰か助けて…
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85 :
3-206:05/03/20 11:39:47 ID:qt/pteZ4
むらむらして書いた。いぢめる気はなかった。反省しているが取り消さない。
瑞穂ちゃんが女言葉になると見分け辛いので名前を入れて見ました。
…というか台詞だけで書かずに地の文も書けや>自分
読みにくいようなら考えます。
梅雨の合間、少し控えめな日差しが桜並木を縫って湿った石畳を優しく照らしている。
昨夜の雨に濡れた桜の青葉が雫をきらきらと光らせながら、鮮やかな緑色を透かして揺れている。
校舎までの短い桜並木に、少女達の黄色い笑い声と軽い靴音が弾むように響いている。
その光景は、とても清純で美しく、清々しい。
「でも…どうして 俺 が通わなきゃいけないんだよっ?!」
「……何も、女装して生徒として通えだなどと無茶を云うつもりはないぞ?」
声色一つ変えずにおぞましい事を言ってのけやがった。
「当たり前だ! そんな変態みたいな真似はごめんだっ!!」
「言葉を慎め祐貴。私は父としてではなく、厳島グループ総帥として命令しているのだ」
総帥……として、ね。よく言う。
「計画書に目を通させて頂きました。お言葉ですが、これはどう見ても個人的なものと伺えるのですが」
親父の目の前に計画書を叩きつける。
「ようは変な転校生のせいでたかちゃんがエルダーシスターになれなかった上に、
影が薄くなりそうで本人が傷ついてる恐れがあるので、その転校生を監視しろって内容じゃあないですか」
「……大事な任務だ」
この親ばか爺が。
「大体、なんで俺がそんな事のために教師にならないといけないんですか」
「お前、教員免許、確か持ってたよな?」
「そういう問題じゃないでしょ!! どうしてもたかちゃんが気になるというのなら、
誰か自分の手のものを行かせてください! なんでわざわざ俺が……」
一気に捲くし立てると、それまで微動だにしなかった親父がそっぽを向いた。
「いや、だってそんな事を部下に命令してたら、親莫迦だと思われるじゃないか」
こいつは……頭が痛くなってきた。
「恥ずかしがりも大概にしないと……。親父、たかちゃんに嫌われてるぞ。
家庭を顧みない冷血漢とか思われてるぜ、きっと」
「そういうお前こそ、中学生にもなった妹と一緒にお風呂に入ろうとして以来、
色情魔扱いされて口も碌に聞いてもらってないじゃないか」
痛いとこを突きやがる、この糞爺。
「あれは……その、別にやましい気持ちがあったわけじゃ……。
それに、思春期の兄妹というのは大概にして仲が一時的に悪くなるもので……」
「現実を見ろ。お前ら、多分一生そのままだぞ」
やっぱり、もう仲直りできないのかなぁ、たかちゃんと………。
いけね、泣きたくなってきた。
こほんっと咳払いをする。
「…………とにかく、このような話を呑むわけには行きません。
私にも仕事があるのです」
「命令が聞けないと云うのなら、お前を次期会長の候補から外すぞ」
なんだかなぁ……。
「勝手にしてください。私は金や権力に釣られてそんな真似をするつもりなど、ありません」
上等だっつうの、こんな財産、いらないんだよ、俺は。
たかちゃんさえ元気でいてくれれば、俺は十分幸せなんだ。
……むっ、でも今そのたかちゃんが、悩んでいるのか。
何とかしてあげたいけど、まともに口聞いてもらえないから、相談にも乗れやしない。
「……お前が降りるというのなら、貴子に継がせよっかな、会長」
こんの狸爺。
「フザけるなっ! たかちゃんを会長なんかにしたら、財産に加えて権力目当ての悪い男がわんさか湧いてくるぞ!!
そりゃあ、たかちゃんには好きになった男と結婚してもらいたいと昔から言ってたけど、
たかちゃんはあれでかなり純朴なとこがあるんだから、
悪い男にコロッと騙される可能性だってないわけじゃないんだぞっっ!!」
俺が食いついてしまったのを確認すると親父は意地の悪い顔で
「なら、決まりだな」
と笑った。
「……ここが、恵泉女学院か……俺は、今日からここの世界史の教師なわけか」
親父の奴が全部手を回してしまったせいで、社長の仕事はしばらくお休み、
今日から教師、学院長にも根回し済みだったらしい。
今挨拶を済ませてきた所だ。
……ここって鏑木が創設者に噛んでた気がするんだけど、どうやったんだろう?
また、慶行さんとマージャン対決でもしたのかな、
幼稚園からの腐れ縁らしいからなぁ、あの二人。
まぁ、いいや。とりあえず突っ立っててもしょうがない、職員室行こ。
予鈴が鳴った後なので校舎を歩く人影は見られない。
「さすが、お嬢様学校、と云ったところかな」
たったったったったったったった……。
「あぁあ、このままじゃ遅刻だよ。エルダーともあろうものが……どうしよう。
もう、まりやったら朝からあんな……きゃっ」
「ぅおわっ!?」
突き当たりで飛び出して来た女生徒とぶつかってしまった。
「いたたた……、申し訳ありませんっ! 急いでいたもので、私ったら……」
「いや、こちらも余所見をしていた、すまない。だが、廊下を走るのは関心しな、……いぞ……」
その少女の姿を一目見た瞬間、そのあまりの可憐さに、俺は声を失っていた。
……この学園を舞台に、何かが起こり始めようとしていた。
何も起こり始めねーよ(断言)
終わり。
まぁ、ギャグって事で。決して続きません。
遂に厳島家の人々にも萌えSSキタ━(゚∀゚)━!
これはこれでGJ(*´Д`*)ハァハァ
厳島家もこんなんかよw
うわぁ、初の試みだ!
厳島家の隠れた真実?w
面白かったですわ、GJ!w
>「……何も、女装して生徒として通えだなどと無茶を云うつもりはないぞ?」
>「当たり前だ! そんな変態みたいな真似はごめんだっ!!」
瑞穂ちゃん・・・orz
鏑木、十条、厳島。
親馬鹿しかいない予感
御門もな
だがそれがいい
どのネタも見事なギャグになるではないか
やべぇ、続いて欲しいw
是非続けてくれ!!!
落ち着けお前ら!
下手に続くと、うほっになる可能性もあるぞ!
89には前スレ422の実績が…
もちろん最後は男と判明するものの、それでも構わんッ!と求愛し続ける兄をplz
そして貴子さんのツッコミが入る、と。
209は何で最近名無しなの?
これを連載にしてくれ!!
瑞穂の場合1 渡されなかった卒業証書4−4
ノエルも近いある日。瑞穂が勤めている会社でも、降誕祭の話題が出ていた。
キリスト教における降誕祭は、その後公現祭(顕現祭)つまり、東方の3博士がお祝いを持ってキリ
ストの元を訪れた日まで二週間ほど続く降誕節の始まりであり、欧米語のクリスマスないしそれに類
する語は降誕祭ではなく、しばしば降誕節を指して用いられる。
12月25日の4週間前の日曜日から、街のイルミネーションなども点灯され始める。11月末か
らクリスマスイブまでの4週間のことを、キリストの降誕を待ち望む期間アドベント(待降節)とい
い、1週間に1本づつ、ろうそくを灯す習慣がある。広い意味でのクリスマスシーズンは、11月終
わりもしくは12月初めから始まり、1月6日に終わると言える。
(ノエル・・・・クリスマスか。にわかクリスチャンだった私には関係の無い話だな)
キーボードを打つ手を休めると、ため息を漏らした。
(恵泉の降誕祭で、1時間半ばかり続けて踊った事も、今となっては、思いでの1つにしか過ぎない
けど、出来る事なら、あそこで卒業まですごしたかったな。決断したのは自分。他の誰も責めるわ
けにはいかない。未練が無いと言えば嘘になるけど・・・・)
『・・・ほ』
『瑞穂・・・』
かたわらで小リスのようにほほをふくらませているのは、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。地
元の名門エーデルフェルト家の令嬢。通称ルヴィア。本人曰く、社会勉強らしいのだが真偽は不明。
『ルヴィア』
『もう・・・・、2度も声を掛けましたのよ。』
『すまない。』
哀しそうな目をして、謝罪する瑞穂を見て
『なにかありましたの?』
『いいや。』
一度。区切ると、慎重に言葉を選んで
『昔。日本の高校時代・・・通っていた学校でも、降誕祭にあった礼拝と、ダンスパーティ。そのこ
とを思い出していたので』
瑞穂の場合2
瑞穂のごまかしを見抜くと、顔に掛かった金色の髪の毛を指先で払いながら
『それだけではありませんわね?今。言われたのは、むしろ楽しい思い出に分類されるものですわ。
なぜ?哀しい目をなさいますの・・・・』
瑞穂はしばらくの沈黙の後。平坦な声で事実のみを告げた。
『始まりは、些細な事件だった。・・・・感情の行き違いから、私の親しい人にまで排斥されるおそ
れが出てきた。時間がたてばスキャンダル事件として、おもしろおかしく書き立てられる可能性も
あった。私はともかく、私の周りの人々を好奇の目に曝すわけには訳にはいかなかった。私が身を引
けば排斥騒ぎが収まると考えて、自主退学という手段を・・・事実、私がいなくなった後、騒ぎは急
速に収まっていったそうだ。』
ルヴィアが、唇をかみしめて何か言いそうになるのを止めるように
『ルヴィア。もう済んだ事なんだよ。それに、その決断を下したのは私。他の誰でもない、ルヴィ
アの目の前にいるこの私なんだよ』
ルヴィアは、高ぶった気持ちを抑えるように、大きく息を吐いて
『でも、私が、納得がいきませんの。私の気分を害した罰として、イブの夜。つきあって頂きますわ
よろしいですわね?』
『お嬢様。仰せのままに』
瑞穂は立ち上がると、やや芝居がかった仕草で一礼をした。
昼休み。会社近くの小さなレストランを通りかかったとき、(偶然?)出会ったジュリオが立ちふ
さがって
『瑞穂。いまから食事かい?かまわないだろう?』
『ジュリオ。・・・・』
ジュリオは、瑞穂を強引に店の中に押し込み、席に着かせると、興味津々といった表情を浮かべて
『そういえば、ルヴィア嬢と話していたみたいだが?』
なにか怒らせたのかと言う、言外の意味を込めた問いかけに
『んん・・・・。日本の高校の時の事を話してたんだが、なにが、お気に召さなかったのか、気分を
害したから、ノエルの夜つきあいなさいと言われた』
呆れたように肩をすくめ、かんでふくめるように
『おいおい。それって、デートのお誘いじゃないのか?ったく。瑞穂は、恋愛関係鈍いくせに、女性
のちょっとした変化に気づいて声を掛けてるからな』
瑞穂の場合3
瑞穂の答えに、ジュリオは苦笑すると、届いた料理の皿を引き寄せながら
『天然だな・・・。いいか、まあ、服を変えたというのはわかりやすいが、髪の毛の長さのちょっと
した違いとか、体調の変化とか、新しいアクセサリを付けたのとか、コロンを変えたのとか・・即座
に違いに気づいてるじゃないか?こまめにカードとかも贈ってるみたいだしな』
(あははは・・・・、女子校で1年近く暮らしていたため、身に付いたなんてとてもいえない)
『気をつけろよ。下手すると後ろから”ぐさっ”っと刺されかねないぞ』
ジュリオは、肉用のナイフで刺す真似をする。
『で、イブの夜ともなると、いつもの服というわけにはいかないだろう?しかも、相手はルヴィア
嬢だからな。いっそのこと、”ドレス姿でいくかい?”』
地元の名門エーデルフェルト家の夜会ともなれば、ドレスコードが厳しいぞと匂わせた。
『い、いや。遠慮しておこう・・・・おもちゃにされるのはごめんだ。マスカレードならともかく』
『ふむ。マスカレードなら文句はないか・・・一度、ルヴィア嬢に進言してみるか』
ジュリオは、意地悪な微笑を浮かべると、食事に取りかかった。
(もしかして、墓穴掘った?)
待降節も半ばが過ぎた頃。ルヴィアは自分の書類を上司に提出した帰りに瑞穂の席に来て
『瑞穂。日曜日は空いてますわね?イブの夜の事で打ち合わせしたい事が有りますの。』
『ルヴィア・・・。衣装なら』
正礼装でいいだろうと言うのを遮って
『いいえ。ジュリオさんから、非常に興味深い提案を受けましたの。その衣装合わせの為に、”少し”休日の時間をいただきたいと思いますの。よろしいですわね?』
にっこり、華の笑顔を瑞穂にみせた。
(ジュリオ・・・恨むぞ)
瑞穂の場合4
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『あら?・・・私も、似合わない方でしたら、提案は受けませんわよ。』
『ジュリオのやつ。一度締めておくか。変な提案を起こすのを躊躇うようになるぐらいに』
『瑞穂。仕事に差し支えないように御願いしますね。”多少”人格は軽薄かと思いますが、ビジネス
面では立派な実績を上げてますので・・・』
『あ、ああ、”多少は”考慮することにしよう』
それならいいのですといわんばりに、ルヴィアは頷いた。
約束の日。瑞穂が借りている家の前に一台の車が止まると、運転席から黒のスーツの男性が降り
てきた。ドアに付けられた真鍮製のノッカーを2度叩き瑞穂が出てくると、礼儀正しく一礼をして
『瑞穂・鏑木さま。お迎えにあがりました。』
『ありがとう』
瑞穂は、黒のスーツ姿で片手に防寒用コートを持つと
『まだ、お名前を伺っておりませんが?』
『失礼致しました。私、エーデルフェルト家にお仕えしております、カーティスと申します。』
再び、一礼すると礼儀を守り、瑞穂を車の処まで案内した。ちり一つないまで磨き上げられた黒の
小型車が止まっていた。
『あれ・・・この車。ミニクーパー・・・じゃないですね。もしかして、ヴァンデンプラス プリン
セス?』
瑞穂の場合5
カティースは、口元だけで笑みを作ると、瑞穂に敬意を表して
『はい。おっしゃるとおりでございます。よくおわかりになられましたね。当地は、狭い道がおおご
ざいますから、このような車の方がよろしゅうございます。』
『ベンツよりも優先的に、ホテルのベルボーイがドアを開けるとか?書いてある雑誌を読んだ事があ
りますが』
記憶を辿るように呟いた言葉に、応えて
『よくご存じでいらっしゃいますね。イギリスのホテルではの話でございますが、この車が『お抱え
運転手に運転させる』事を前提に作られているという伝統に敬意を表してでございます。物をご存じ
の方が観れば、当地でも格式に応じた対応をして頂けます。』
カーティスは、にこやかな笑顔を浮かべて後ろのドアを開けた。
エーデルフェルト家に入ると、応対に出た執事のカーサは瑞穂に一礼すると
『日頃はお嬢様とご懇意にして頂き、この私からもお礼を申し上げます。また、イブの夜会にもご
出席頂けるとの事。お嬢様が大変喜ばれておりました。併せてお礼を申し上げます。』
(あはははは・・・夜会ですか?やはり、ジュリオ締める。・・・・締め落としてやる)
瑞穂が、物騒な事を考えながらカーサについて歩いていると、1つの部屋の前で立ち止まり
『お嬢様。瑞穂・鏑木様がおみえになりました。』
中から承諾の返事を待ち、瑞穂を案内する。
『カーサ。ご苦労様。お茶は用事が終わってからに』
『かしこまりました。』
カーサは一礼すると部屋を退出した。瑞穂はルヴィアに
『えーーと。いつの間に夜会に出席することになったのでしょうか?』
『あら?イブの夜おつきあいを御願いしましたのに、もうお忘れですの?』
にっこり笑顔で瑞穂に確認する。
『夜会なら、夜会と最初から言ってくだされば・・』
瑞穂の苦情を無視するかのように、可愛らしく舌を出して
『だって、最初から夜会と言えばお断りになりそうですもの』
瑞穂は大げさに息を吐くと、肩をすくめ
『やっぱり、ジュリオのやつ、・・・・早めにクリスマス休暇を取ってもらう事にするか?』
『まあ、それもよろしいのでは?病院のベットの上で迎えるのも、新鮮でよろしいかと思いますわ』
瑞穂の場合6
それで、話は終わりと言うように打ち切った。
瑞穂の化粧を終えて、ルヴィアの前に現れたメイク担当は、妙に疲れた顔をして現れた。
『あの?お嬢様』
『あら、終わりましたのね』
残った気力を振り絞るように、ルヴィアに訴える。
『あの方。瑞穂様は、本当に男性でいらっしゃいますか?私、女としての自信が揺らいでるのですが
あの、シルクを思わせる黒い艶やかな髪。シミ一つ無いきめの細かい肌・・・・。加えて、あの物腰
といいますか、立ち居振る舞い・・・あの方が男性というのは、なにか間違っているような気がしま
す。確かに、瑞穂様なら、女性より女性らしくなられるとは思いますので、やり甲斐はあるのですが
女としては・・』
しばらくして、同じように疲れたような顔をした着付け担当も
『あの・・・』
『着付けも終わりましたのね?』
『はい・・・瑞穂様は、男性なんですよね?・・・・男性のはずですが・・・・・私も、なにか間違っ
ているような気がします。だって、お嬢様のドレスを手直しなしで着られるんですよ。女としてのプ
ライドが、崩れかけています。さすがに、胸元を開けたドレスは無理かと思いますが、ホルターネッ
クのように胸元を隠したドレスでしたら、十分女性として通用します。それに、あの肌の綺麗さは反
則です。ええ、女の敵ですとも』
がっくりうなだれている女性に
『カーサにお茶を持ってくるように伝えてくださる』
言われた女性は、残っていた気力をかき集めると
『かしこまりました。お嬢様』
ルヴィアは、ソファーから立ち上がり、奥の部屋に入ると瑞穂の女装姿を見つめていた。
『これでは、家の女の子たちが、揃って自信喪失になるのも、無理はありませんわね』
『ルヴィア・・・』
『私でも、睨みたくなりますもの』
瑞穂の場合7
きれいな光沢のあるオーシャンブルーのロングドレス。ソフトワイヤーを使い胸のラインを綺麗
にだし、薄いパニエを入れてドレスに自然なふくらみを与えている。ホルターネックにしてたのは
胸に詰めるパットを見られないためでもある。シルクシフォンの素材を何枚も使い、ウエストの切り
返しから、緩やかなドレープが華やかな雰囲気を出している。同色の肘まである手袋を付け、ダイヤ
のイヤリングとお揃いのティアラを髪に挿して立っていた。
『瑞穂さん。お茶にいたしませんか?”いろいろ”お疲れではないかと思いますが?』
瑞穂は意識して、いつもより少し高めの声を出して
『そうですわね。些か疲れてしまいましたから、喜んでご馳走になることにいたしましょう』
ルヴィアを一瞥した瑞穂は、裾捌きも危なげなく優雅に足を進めていく。奥の部屋から出てくるとカーサ
が、お茶の支度をすませていた。
『カーサ。どうかしら?』
長年使えていた執事は、少しだけ目を見開くと
『このカーサ。これぼどまでにお美しい方を見た事は少のうございます。ホルターネックというのが、
些か興ざめではございますが、瑞穂様のご事情を考慮すれば妥協せざるをえないところですな。私な
りに、愚考しますれば、瑞穂様の肌の美しさを引きだたせるために、首の周りには、刺繍とレースの
飾りを、さらに首のしたからトップに掛けましてレース織を用いれば、さらに華やかになるのではと
思いますが?』
『カーサがそういうのなら、まだ夜会までに時間はありますわね?』
『はい。瑞穂様のドレスを新調なさるのでしたら、すぐ手配させて頂きますが?お嬢様のサイズで、
よろしゅうございますね。』
ルヴィアは、にっこり笑顔になると承諾を与えた。
『瑞穂さん。私からの贈り物・・・受け取っていただけますわね?』
瑞穂にもにっこり笑顔で念押しをすると、カーサが控えめに
『ただ、瑞穂様の名誉を守る口実を考えませんと、今後に差し障りがあるかと愚考いたしますが?』
瑞穂が、目だけで発言を求めるとカーサが話を振ってきた。
『瑞穂様のご意見をお伺いしておりませんでおりませんでしたな。』
瑞穂の場合8
『私の母親の旧姓を用い”宮小路瑞穂”と、夜会の間だけ名のりたいと思いますが?その後、お会い
しましても、”他人のそら似で”かわしやすいかと』
カーサは、少し間をおいて
『それはようございますな。夜会の間だけ、”宮小路瑞穂”と名のられるのをお勧め致します。事情
をご存じではないお客様には、旧いお友達とでもご紹介されればよろしいかと』
カーサの言葉が終わるのを待って
『私と賭をして瑞穂さんが負けたから”いたしかたなく”というのでは?』
『さようでございますね。付け加えますれば、お嬢様が強引に御願いされた事を強調されたほうが、
瑞穂様の負担を多少なりとも軽減できるのはと思います。夜会まで、まだ時間はございますので、そ
れまでには、妙案の出てくるのではないかと愚考致します。』
ルヴィアがカーサを一瞥すると
『瑞穂様。誠に失礼かと存じますが、ワルツのほうは?』
カーサからカップを受け取ると
『男性のステップでしたら些か嗜みましたが、女性のステップは』
『まあ、無理に踊る必要も無いかと存じますので、お断りなさるのがよろしいかと存じます。僭越な
がら奥にお部屋を用意させていただきますので、気分が優れないとでも理由を付けまして、奥の部屋
でお休みになられるのも1つの手段かと愚考致します。』
ここまでいうと、思い出したかように
『屋敷の女の子たちが、”女のプライドが”と力無く呟いておりましたので、不思議に思いましたが、
このお姿でしたら・・・納得出来ますな』
瑞穂の場合9
(女の敵・・・言われても、どうしろと)
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(男のプライドもズタズタなんですけど)
後日。この提案をしたジュリオは、イブの夜を病室のベットの上で迎える事になり、瑞穂の元には、
ルヴィアを通して、夜会の招待状が届けられるようになり、盛大に落ち込んだというのは、別の話。
ふう、何かがおりてきましたので、瑞穂側の一こまを書いてみました。
お嬢様口調とか、執事の言葉遣いとか・・・うまく書けてるか(^^;
ドレス関係は”ぐぐって”似合いそうなのをさがしたり、クリスマス関係をさがしてみたり
車も・・・net活用しまくりで・・・頑張ってみました。
紫苑さま・・・のが降りてこない・・・(^^;
よっしゃーーーリアルで見たぜ!!
感想?これだけしかいえない!!
あんた最高や!!!
何故か見覚えある名前が……Fate?
しかしGJ!
思いっきりふぁてのキャラが出てますなー。
ただ本編で名前が一度出るか出ないかぐらいのキャラですが。
しかしドレス姿の瑞穂(・∀・)イイヨイイヨー
某In Britainのキャラじゃないか……いいのかなぁ
ん〜なるほど。
でもちょっと気になったんですけど、どうして瑞穂は女装する気になったんでしょ?
これまで続いた重い話からいきなりなんでびっくり。
ちょっと気になっただけなんで、申し訳ない。
「ああっ…だめぇ。」
「まりやがそういっても、下は正直だよ。」
瑞穂はそういいながら、まりやの敏感な部分を攻め続ける。
「やぁ…んふぅ…は……あぁあんっ…はあん…ぁあ… 。だめぇ…。」
「じゃあ、やめちゃうね。」
瑞穂は手を離した。
「なんでぇ…。瑞穂ちゃん。」
「だって、まりやが嫌っていうのだもの。僕まりやが嫌がることはしたくない。」
「してよぉ。瑞穂ちゃん。」
「へえ、じゃあ、嫌って言うのは嘘なの?」
「う…嘘だよ。だからぁ、お願い。」
「へえ、嘘つきな子にはおしおきをしないといけないな。」
「わっ、わたしの…わたしのいやらしいオマンコにお仕置きしてぇ!! 」
「まりや、それ使い方違う気がする」
「さってと、気を取り直して、続きしよっか。」
さっきの会話で両方とも高ぶりが納まってしまったのだ。
「そ…そうだね。それじゃあ。」
といいながら、瑞穂はまりやのそこに手を伸ばした。
「お…お待ちなさい。」
「貴子!何?あんた、覗きが趣味なわけ?」
「いくら、社長とデザイナーの夫婦でも、会社で事を起こすのは感心しませんわね。」
「いや、それでも、もう深夜だし、硬い事は言わないの。」
「そんなことばかりいっているからいつまでも気品がないのですわよ。」
「気品じゃなくて、センスが必要なのよ、この仕事には。」
その後、まりやと貴子の口げんかが夜を徹して行われたのは言うまでもない。
「ねえ、まりや、僕のこれ何とかしてよ…」
「うっさいわね。手でしごいときなさい。」
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ううっ、妻に手でしごいとけって・・・。
つづけられない。
っていうか、瑞穂とまりやだったら、倦怠期すごそうだなあ・・・。
>>118 お祖父さんの遺言だったから。
瑞穂はこれに逆らえなかった。
>>122 いや失礼。
上の2スレ402様の作品の話です。
>>123 すんません。
内容よく読まずにレスしてしまいまして。
渡されなかった〜外伝2で
>一つの個性と割り切って楽しむ事を覚えました
と言ってるから、それでいいんじゃないの
>>125 なるほど、そっちにありましたか。
レスTHX
127 :
test:05/03/20 18:55:13 ID:MeOtytY0
おボク様 あなざぁ 『ハンバーグヒルの伝説』
夏休みのかなりの期間、学園の食堂やカフェテリア、売店は閉められるそうだ。
登校する生徒の数が少なくなるんだから、まあ当然だと思う。夏休みでも寮母さん
に頼めばお弁当を用意してもらえるし、学外のコンビニもあるから、早めに寮に
帰っても困ることはないと僕は思ってたんだけど……
「ハンバーグ分が足りません」
そういって寮の食卓でふさぎこむ子が出るのは予想外だった。
「えーと、その、ハンバーグ分って何かしら由佳里ちゃん」
「ハンバーグ分なんて聞いたことがないのですよ〜」
由佳里ちゃんはうなだれたまま僕たちに説明する。
「ハンバーグ分はハンバーグに含まれ、勉強すると減るんです」
絶対うそだ。奏ちゃんは感心したようにうなずいてるけど、絶対にうそだ。そもそも。
「私、夏休みに入ってから由佳里ちゃんが勉強しているところって見てないんだけど……」
「わーん、お姉さま意地悪です」
由佳里ちゃんはそのまま机にふせちゃった。
「由佳里ちゃんはハンバーグが食べれないのがショックなのだそうですよ〜。食堂が
ずっとやってると思い込んでたそうなのです」
そういえば、夏休み前には週3回はハンバーグ食べてたみたいだけど、そこまで好
きだったのか。
「そんなに食べたければ寮母さんに頼んだらいいんじゃないかしら?」
「頼んだら叱られちゃいました。毎日ハンバーグはダメだそうです」
さすがに毎日はダメだろうね。
続く
128 :
test:05/03/20 18:56:26 ID:MeOtytY0
「でも、何か好きなものがあるというのは良いことだと奏は思うのですよ」
奏ちゃんは可愛いなぁ。言ってることはちがうと思うけど。まあ、ここはしょうがない。
「毎日ハンバーグは無茶だけど、今日はみんなでハンバーグを食べに行きましょうか」
「グッドアイデア。当然瑞穂ちゃんの奢りね」
「うわっ、まりやいつからそこに!?」
まだ寮に戻っていないはずのまりやが、いつの間にか僕の後ろに立っていた。
「びっくりなのですよ〜」
「お姉さま……」
おどろく僕たちに、まりやは妙にうれしそうにVサイン。
「いやーびっくりさせようと思って、ちょっと隠れてたんだけど大成功だね」
何しに来たんだよまりや。
「もう着ない服を二人に押し付けようと思って持ってきたんだけど、せっかくだから
ドレスアップして食事に行こうよ。瑞穂ちゃんの奢りで」
「ちょっと待った。まりや、私の奢りというのは決定事項なの?」
「そうよー、いいじゃない可愛い妹たちのためだと思えばそれぐらい」
当然、まりや自身も可愛い妹に含まれるらしい。やれやれ、まりやらしいけど。
「あー、瑞穂ちゃんの分の服もあるから二階に持っていくの手伝ってよ。由佳里、
寮母さんに夕食は外食するって言ってきて」
「はい」
まあ、由佳里ちゃんもうれしそうだからいいのかな。元気になったみたいだし。
続く
129 :
test:05/03/20 18:57:35 ID:MeOtytY0
まりやにつれられて僕たちが来たのはステーキレストランだったんだけど、お店に
入った時から店員さんの態度が変だった。驚きというかどよめきというか。女の子4人
で入るのが珍しいのかな。うっ、最近自分を女の子として数えるのに抵抗がなくなって
いるかも。
「というわけで、第78回寮生大食い大会を始めます」
「まりや、なにそれ?」
そんなこと聞いてなかったんだけど。
「毎年寮では、しっかり食べることを奨励するために大食い大会をするの。夏バテ対策
でね。戦後の食糧難の時に余裕のある寮生が後輩を元気づけるために始まった伝統ある
行事なんだよ。おととしはノージャッジ、去年はうな丼3杯で私が優勝だったから。2
連覇めざすよ」
はあ、まりや女の子にしてはよく食べるほうらしいから。しかし、恵泉ってお嬢様学
校だと思ってたんだけど。
「瑞穂ちゃんも妹たちも食べ過ぎて逆に体調崩さないでよ。ムリしないでいいから。で
も優勝者は豪華な賞品があるんだけどね」
「お姉さま、賞品って何ですか?」
由佳里ちゃんの質問にまりやは胸を張って答える。
「聞いて驚け、賞品はエルダーエルダーの称号。なんと瑞穂ちゃんより偉くなって3日
間過ごせる夢の権利だ!」
「まりや、話作ってない?」
「えー、そんなにあたし信用ないかなぁーって、何でみんな黙るのよ!?」
いや、だって、まりやのいうことだし。
「寮のテレビは去年エルダーエルダーの賞品として先輩から頂いたものだし、嘘だと思
うなら帰って一子ちゃんにききなよ」
まあ、一子ちゃんなら嘘をつけそうにないから……みんなも同じらしく納得したようだ。
「って、あたしはそんなに信用ないんかい!」
いや、だって、まりやだし。
そんなこと言っている間にハンバーグができたようだけど。
続く
130 :
test:05/03/20 18:58:35 ID:MeOtytY0
「何これ?」
僕の前に置かれたのは冗談のように巨大なハンバーグ。
「瑞穂ちゃんと由佳里は最大サイズの1キロ。あたし達は150グラムでスタートね」
1キロって、男の僕でも、こんな大きいのは。
「うわー、こんなハンバーグ、私初めてです」
由佳里ちゃんは、なんかうっとりしてますか!?
「150グラムでも大きいのですよ〜」
「瑞穂ちゃん以外は、無理しないで残していいからね」
これ残さず食べたら怪しまれるんじゃないかと思うけど、残すのももったいないし……
って由佳里ちゃんは倍速モードでもりもり食べてる。そのまま一番先に食べ終わる。まりやも
一瞬目を丸くするけど、すぐに追加の注文をする。
「いやー、由佳里がここまでいけるとはねー。瑞穂ちゃんもがんばってね」
「いや、さすがにもう……って、私の分も頼んだのしかも1キロで!?」
僕と由佳里ちゃんの前に、また同じ巨大ハンバーグが出てくる。しかも、同じペースで
由佳里ちゃん食べてるんだけど。
「すごいです。奏はもう、お腹いっぱいなのですよ」
「どうせ勝てそうにないし、あたしももういいわ」
二人とも棄権か。僕も勝てそうにないけど、出てきたのに残すのはもったいないし。
結局、由佳里ちゃんが巨大ハンバーグ2枚目を先に食べ終わり、僕は喜んで負けを認めた。
「第78代エルダーエルダーは、由佳里お姉さまに決定」
まりやの宣言に僕も奏ちゃんも拍手する。お店の人やお客さんも拍手して、料理長が
出てきて由佳里ちゃんと僕に握手してくれた。なぜか写真も撮られる。そんなに食べる
お客さんなんていないんだろう。
続く
131 :
test:05/03/20 18:59:34 ID:MeOtytY0
「それで由佳里お姉さま、賞品として何かご希望は?」
まりやが由佳里ちゃんにウィンク。
「ええと、何でもいいんでしょうか?」
「ええ、私たちが負けたんだから、何でも言って頂戴」
由佳里ちゃんは目を輝かせて。
「それじゃ、これから3日間お昼はハンバーグが食べたいです」
結果1.僕は3日間ファミレスでハンバーグを由佳里お姉さまに奢った。
結果2.まりやは逃げた。
結果3.2年後の実際のエルダー選挙に影響があったとかなかったとか。
END
132 :
test:05/03/20 19:05:10 ID:MeOtytY0
以上、ゆかりんに新属性を加えてみるテスト。
あと追加するとしたら奏ブラック?
今日、お姉さまが私にお土産を買ってきてくださいました。
何でも、学校で評判になっているケーキ屋さんのもので、お姉さま曰く、以前から私に食べさせてあげたかったそうです。
一子感激です! お姉さまが私なんかのためにそこまでしてくださるなんて……もう涙が止まりません。
お夕飯の後、早速お姉さまのお体をお借りしてケーキを食べさせて頂きました。
昔にもケーキは食べたことがあったのですが、味は段違いにこちらのほうが上です。
それに私は幽霊ですから、ものを食べれるというだけでも嬉しくて。
次から次へといろんな種類のケーキを口に運んでいきます。
食べるたびに口に広がる味のハーモニー……至福の時とはこういうものを言うのでしょうか。
1/3
「一子ちゃん、今日のケーキはおいしかった?」
ケーキを食べ終え、お姉さまのお体から離れた私にそう尋ねられます。
「はい! それはそれはおいしかったです。甘さ控えめ、少しほろ苦い大人の味のチョコレートケーキもよかったのですが、私個人の意見
といたしましては、やはり甘い生クリームに包まれていながらも一つもしつこいことなく、後味さっぱり、心はウキウキ、イチゴのショー
トケーキが一番でしたね」
チョコレートケーキにチーズケーキ、モンブランにイチゴのショートケーキ……ああ、目を瞑れば今でも味が思い出されます。
「喜んでくれてよかったわ。でもね、一子ちゃん」
「あ、はい、なんでしょうか?」
目くるめく味の世界に旅立っていた私を、お姉さまが現実に呼び戻します。
「一度に全部は食べすぎだと思うわよ? 私が太ったら一子ちゃんのせいですからね」
お姉さまは少し困った顔をなされています。
そ、そうでした。食べている人こそ私ですが、体はお姉さまのものであって、ということはカロリー、糖分、その他色々なもの全てがお姉
さまのものになり、それはつまりお姉さまの素敵なスタイルを崩しかねないということであって……
「も、もうしわけございません〜。私、目先のケーキに捕らわれてそのことをすっきりきっかり忘れていました。かくなる上はこの一子、
切腹しお姉さまに詫びる次第です」
「あのー、一子ちゃん。ちょっとした冗談だから本気にしないで」
「ですが、カロリー方面のことは紛れもない事実であって、私のせいでお姉さまのスタイルを崩しかねないのもまた事実であって……やは
りこの一子、切腹してお姉さまにお詫びするしかないんですぅ……」
「一子ちゃん、落ち着いて。 これくらいなら少し運動すればいいだけだから」
「……お姉さま」
お姉さまの手が私の頭をそっと撫でて下さいます。
「ほら、泣かないの。一子ちゃんはケーキを食べれて幸せ、私も一子ちゃんに喜んでもらえて幸せ……これだけでいいでしょ?」
泣きじゃくる子供をあやすかのような優しい声。
お姉さまの手が声がとっても暖かいです……
2/3
「ふふっ、泣き止んだようね」
「は、はい。ご迷惑をおかけしました」
「気にしないで、冗談を言った私も悪いのだから。でも次からは気をつけてね」
「はい! もちろんです!」
私は元気一杯に頷きます。
「いい返事ね。では、私はお風呂に入ってきますからお留守番お願いね」
「任せてください! この一子、雨が降ろうが矢が降ろうがお姉さまのお部屋を死守いたしますっ!」
「そ、そう。じゃあ行ってくるわね」
お姉さまはそう言われると、着替えを持ってお部屋を出て行かれました。
「お姉さま……私……」
誰に話すわけでもなく、私は一人そう呟きます。
お姉さまがお風呂に入られている時間は、私一人。
まあ、お昼も一人きりなのですが、散歩をしたり、勉学に励む生徒さんたちを眺めたり、なによりお日様の光が暖かいですから。
夜のこの時間のように孤独感を覚えるということはありません。
お姉さまにお会いして直ぐのころはこんなことにはならなかったのに……。
何時からか由佳里ちゃんのお部屋にも遊びに行かず、考え事をするようになりました。
考えるのはこれから先のことです。
お姉さま方は遠くない未来、恵泉を卒業なされ寮を離れることになるでしょう。
私だってそう、昇天する方法を探して皆様とお別れする時がきます。
それは当たり前、当然のこと。
それでも私は、お姉さまとずっと一緒にいたいと思ってしまうのです。
……今思えば、これがいけなかったんだと思います。
無理な願いを毎日毎日飽きもせず強く願ったりしたから。
私だけでなく、お姉さまにまでご迷惑をお掛けすることになってしまったんです。
3/3
SS初挑戦のくせして、無謀にも連載ものです。
至らぬところがあると思いますがご容赦くださいませ。
……って、早速改行ミスしてるし。
ごめんなさい、ちょっと吊ってきます……
一子ちゃん、切腹って既に死んでるんじゃ・・・
139 :
箱:05/03/20 21:22:08 ID:2vNukN7D
>>37 ご指摘ありがとうございます.
自分では読み返して変なところがないかチェックしてるんですが・・・SS難しい・・・
>>133 SS初心者同士頑張りましょう.
どうでもいいことなんですが, 22年前ってモンブランとかあったのかなぁと・・・
チーズケーキは70年代からあったらしいのですが.
一子×幸穂SS第2部できたので投下します.
第1部 記憶の欠片 前スレ>>727-
>>738 第3部も今日中に投下できそうです.
双つの流れ星 〜〜閉ざされた扉〜〜
【7月13日】
幸穂お姉さまがエルダーになられてから2週間がたった。
この2週間も今までと同じように朝はお姉さまとご一緒に学校まで登校していたが、幸穂お姉さまがエルダーになられてからは少し、いやかなり周りからの視線が気になるようになった。
当然、私がお姉さまとご一緒に登校しているのを羨んでいる、または少しばかり妬んでいるのもあるのだろうけども、それもある意味新鮮で気持ちがいいものだった。
一子 「むふふふ、お姉さま〜」
幸穂 「どうしたの一子ちゃん?凄く嬉しそうな顔をして。何かいいことでもあったの
かしら?」
一子 「いえ、お姉さま!何があったといえばあったかもしれないのですが別段私自身
に何かあったわけではなくてですね、こうやってお姉さまと一緒に登校してい
るんだなぁ、っって思うと思わず顔がにやけてしまうわけでして、だから確か
にいいことがあったといえばあったかもしれないのですね。って意味不明なこ
とをだらだら長々と喋ってしまって本当に申し訳ありませんですぅ!!」
幸穂 「ふふふ、本当に一子ちゃんは面白いわね。そうね、一子ちゃんはまるでびっく
り箱のようですわね。」
一子 「お・・お姉さま、ありがとうございます。一子がびっくり箱ならお姉さまはき
っとお菓子箱です。それも色々な味が楽しめてとびきり豪華なお菓子箱です!」
幸穂 「ありがとう、可愛いこと言うわね一子ちゃんは。でもきっと、その中には少し
苦いお菓子も入ってると思うわよ。」
一子 「お姉さまなら全然かまわないです。むしろたまには苦いお菓子もいいかもしれ
ませんよ?」
幸穂 「あら?それじゃあ私も考えないといけませんね、ふふふっ。」
一子 「えへへへへ。」
本当にお姉さまと一緒にいるときは楽しい。楽しくてしょうがない。その分、いつかはお姉さまと離れなければならない日が来ることを考えてしまうと切なく、胸が苦しくなってしまう。
でも今は・・・今はお姉さまは一緒にいることができるの。今だけは・・・。
一子 「・・・あれ?」
学校に入ろうとした時、少し眩暈がして危うくこけそうになってしまった。
幸穂 「どうしたの一子ちゃん?大丈夫?」
一子 「はい、お姉さま。少し立ちくらみがしただけです。もう治ったので大丈夫です
よ。」
幸穂 「そうなの・・・一子ちゃん、ちゃんと朝ごはん食べてきたの?」
一子 「お姉さま、いくら一子が朝寝坊をよくするといってもちゃ〜〜んと朝ごはんは
毎日食べてきてますよ。今日も20分ほど寝坊しちゃいましたが、バスの中で軽
くトーストされたパンを2枚食べてきましたから全然平気なのです!!」
幸穂 「ふふふっ、それだけ食べていれば大丈夫ね。それじゃあ、私は自分の教室に行
きますので、またお昼にね、一子ちゃん」
一子 「はい、お姉さま!お昼休み、お迎えに行きますね」
お姉さまと別れた後、自分も教室に向かおうと目の前の階段を上がろうとしたその時、
一子 「・・・うっ・・・?!」
また眩暈がして立ちくらみに襲われた。
一子 「・・・今日、どうしたのかな私・・・熱でもあるのかな・・・」
自分でおでこを触ってみたが別段熱いわけでもなかった。
一子 「そ、そのうち治るわよね。」
まだ少し眩暈が残っていたが、私は気にせず教室に向かった。
1限目、2限目はなんとか授業を受けていたが眩暈は酷くなる一方で、さらに胸が圧迫されたような感覚になり息苦しくなってきた。
一子 「・・・ぉ、お姉さまとお昼を約束してるのに・・・行かないわけには・・・」
3限目は体育だった。
私はふらつく足取りで更衣室まで歩いていった。途中何人かの生徒が心配して話しかけてくれていたが、気分が悪くて返事をする気力さえなかった。
生徒 「先生!高島さんの体調が少しおかしいです!!」
体育の授業中クラスの誰かが先生を大きな声で呼んでくれていたみたいだけど、私には遥か遠くのほうでトンビが鳴いているようにしか聞こえなかった。
先生 「高島さん大丈夫ですか?顔色が優れないみたいですけど。」
一子 「せ、先生・・・だ、大丈夫ですから。」
先生 「大丈夫なわけないでしょう?そんな青ざめた顔して。さ、一緒に保健室にいき
ましょう。」
一子 「ほ、本当に大丈夫ですから先生。気にし・・ない・・・・」
先生 「高島さん?!高島さん!?だ、誰か保健室の先生を・・・!!!」
私の意識はそこで途絶えた・・・。
お昼休みになった。
私は教室で一子ちゃんが来るのを待っていたが、結局一子ちゃんは教室には来なかった。
幸穂 「一子ちゃんがお昼一緒に食べることを約束して来なかったこととか・・・今ま
では無かったわね・・・。」
なぜだかとても嫌な感じがその時はしました。そして、一子ちゃんが病院に運ばれたと聞いたのはその日の放課後でした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
一子 「・・・うぅっ・・・。」
あれ、なんで私寝てるんだろう・・・。最初は状況がよくわからなかったけれど、周りを見渡してここが病院だとわかった。
一子 「私・・・病院に運ばれちゃったのか・・・。」
やはり、体育の時間中に気を失ってしまったらしい。外を見るともう夜だった。
一子 「ぁっ・・・、お姉さまとお昼お約束していたのに・・・。」
故意に約束を破ってしまったわけではなかったけれど、申し訳ない気持ちで自然と涙がこぼれてきた。
一子 「明日・・・ちゃんとお姉さまに謝らないと・・・。」
そう心に誓い、ごしごしと手で涙を拭った。
気分も落ち着いて、少しお手洗いにいこうと部屋の外へ出ようとドアの側まで行った。眩暈はまだ若干残っているものの昼間のような息苦しさは無かった。
ドアを開けようとしたとき、外で誰かが話しているのが聞こえてきた。
女性 「・・・ぃ、先生・・・一子は、どうなんですか!?どうなんですか!?」
この声は・・・お母様だ。でもお母様の声がなぜか上ずっていた。
一子 「お母様・・・一子のこと心配してくださってるのね。」
普段は余り感情を表に出さないお母様だけど・・・やっぱり私が倒れたと聞いて心配してくれてると思うと少し嬉しかった。
お母様、一子はこの通り大丈夫ですよ!とドアを開けて元気一杯に話しかけようとした時・・・。
医者 「ご息女様は・・・この1ヶ月が山です・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?
一子母「・・・そ、そんな・・・先生!一子は助かるのですよね!?」
医者 「安心してください、我々もできる限りの手は尽くしますので。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
1ヶ月が山?私・・・あと1ヶ月で死・・・・・・。
死という言葉が私の脳裏をよぎると目の前が真っ暗になり、ドアの前で座り込んでしまった。
一子 「あ・・・私・・・あと1ヶ月で死んじゃうから・・・お姉さまにもう・・・お会い
できなく、なっちゃう・・・・。」
そんなの嫌だ・・・私は自分が死んでしまうことよりも、お姉さまに会えなくなってしまうことに頭の中が真っ白になっていた。
果てしない絶望感に打ちひしがれたまま、私はベッドに潜り込んだ・・・死という恐怖とお姉さまに会えなくなってしまうことへの悲しさから、私は一晩中泣き続けた。
一子ちゃんが病院に運ばれた翌日の朝、私はいつも通り寮を出た。
幸穂 「・・・・・・・一子ちゃん・・・。」
いつもいるはずの人がそこにいない・・・一子ちゃんと出会ってから半年間・・・1日たりとも一緒に行かなかった日は無かった。
一子ちゃんが風邪を引いてしまった時でさえ、朝寮を出ると一子ちゃんはいつものように寮の前で待ってくれていたときもあったのに・・・。
幸穂 「一子ちゃん・・・そういえば昨日少し、様子が変だったわね・・・。」
昨日の玄関での一子ちゃんを思い返すと、言い知れない胸騒ぎに襲われた。
7月の朝日を浴びながら校門から学校まで続く並木道を歩く・・・とても気持ちがいい朝のはずなのに・・・何か心の中にぽっかりと大きな穴ができてしまったようだった。
幸穂 「私・・・こんなにも一子ちゃんに支えられていたのね・・・。」
初めて一子ちゃんが私の中でどれほど多くを占めているかがわかったような気がした。
梅雨明けの爽やかな風に吹かれながら私は学校へ一人歩を進めた。
投下ペースが速くて、ほめるタイミングが掴みづらいぜ。
147 :
箱:05/03/20 21:37:23 ID:2vNukN7D
第2部完結です.
今第3部せこせこ書いてますが・・・
シリアスすぎてエロパロの名に相応しくない気が激しくしてます・・・
一子と幸穂のエロシーンを望んでいる皆様には大変申し訳ない_no|||
そう云えば、一子ちゃんも幸穂さまも、由佳里ちゃんのお義姉さまも、みんな病気で亡くなってるんだよねぇ…
”美人薄命”って言葉を思い出すな…造語だったと思うけど。
149 :
名無しさん@ピンキー:05/03/20 21:51:02 ID:7FpylZeN
日本語おかしかったり呼ばれてもいないのに駄コテで雑談したりすぐキャラ暴走させたり空気読めてないと思ったら月厨か 納得》402
造語とはちょっと違う>美人薄命
元は佳人薄命という言葉なんだけど、間違える人間が多すぎて今じゃこっちの方が人口に膾炙してるという例。
独擅場と独壇場みたいに。
>>箱さん
そう来ましたか。
昨日のSS見てて この夏には。。。。なのに
一子ちゃん すごく元気だな。と思っていたので
昨日 書き込まないでよかった。36です。
因みに「薄命」というのは元々「早世する」って意味じゃなくて「不幸」とか「不運」って意味。
つまり美人ほど早死にするって意味自体も誤用だったり。
>>147 「箱」さん、執筆中でお忙しいところ申し訳ありません。
第三話スレでは第一部「思い出の欠片」とありましたが、
>>139 では「記憶の欠片」となっています。
どちらが正式サブタイトルになりますか?
第三部投稿後で結構ですので、お教えください。
よろしくお願いいたします。
※SSスレ作品の作者別リスト、リリースしました。
間違いなどありましたらご指摘いただけると助かります。
>>153 お疲れさまです。
いつもいつもありがとうございます。
>>152 まぁ、それが転じて短命な人が多いってことなんでしょ。
広辞苑が全てとは思わないけど、
> かじん-はくめい 1 【佳人薄命】
> 〔蘇軾「薄命佳人」から〕美人には生まれつき病弱であったり、
> 数奇な運命にもてあそばれたりして、不幸な者や命短い者が多いということ。美人薄命。
ってなっているし、もう定着した言葉としてあつかってもかまわないような気はする。
>153
お疲れ様です。お忙しいようですけど無理はなさらずに。
>155
それは同感。少なくとも日本じゃそっちの意味だと思ってる人の方が多いだろうし。
字面だけ見ればそう見えるもんな。
158 :
箱:05/03/20 22:33:51 ID:2vNukN7D
>>おとボクまとめサイト中の人
いつもお仕事お疲れ様でございます.
昨日からテンパっててミス連発で申し訳ないです_no|||就活シンドイッス
○ 思い出の欠片
× 記憶の欠片
です.
訂正の方よろしくお願いします.
言い方が厨くさいだけで定着してないとは言ってないんだけどね
160 :
155:05/03/20 22:53:16 ID:dCr4gBkL
そうね。スレ汚しスマン。
>>132 由佳里の新属性ですか・・・
ハンバーグ狂・・・w
そういえば、由佳里が食べているハンバーグって実はいろんな種類があるそうで、
実は絵もいっぱいあるとかいうw
やっぱりそういうキャラなんでしょうw
>>136 一子ちゃん連載もの・・・なんか悲しい展開になりそうな終わり方で、ドキドキ。
がんばってください
>>147 こちらは幸穂さんと一子ちゃんの連載・・・。一子ちゃんの結末を知っている分
どんな風に進んでいくか気になります・・・っ!
いやあ、エロが無くても無問題ですよ。
むしろエロがあるほうが珍しいといいますかw
・・・
初代スレ45←異端児orz
>>おとボクまとめ中の人
いつもお世話様です&先程はお手数かけて申し訳ありませんでした。
これからもどうかよろしくお願いいたします。
嵐の前の静けさ・・・でしょうか・・・
あと10分くらいしたら怒涛のSSラッシュになりそうな予感・・・っ!!
私もちょっと用意させていただきましたので、あとで投下させていただきますわ。
漏れは3連休関係なく働いてるから、もう寝るよ…
明日仕事中に読むけどw
163 :
3-180:05/03/21 00:22:55 ID:vQuX38Wp
紫穂シリーズ番外編 お母様に花束を
「お母様のお誕生日?」
小首をかしげる愛娘に瑞穂は言う。
「そうだよ、今度の月曜日がお母様のお誕生日だよ」
「じゃあ、紫穂花束上げるの」
「花束にするの、何で?」
「奏先生が紫穂のお誕生日にくれたの。紫穂嬉しかったからお母様にも上げるの」
「そうなんだ、じゃあ綺麗な花束が用意出来るといいね」
「うん!」
そして、紫苑の誕生日。
「お母様、お誕生日おめでとう」
そういって紫穂が紫苑に丸めた紙を渡す。
「あら、私の絵ですのね。ありがとう紫穂」
そういって『おかあさん』と上の部分に書かれた、(ちなみに『さ』の字が鏡文字なのはご愛敬)絵を見てほほえむ紫苑。
「後ね、お花」
紫穂はそう言って大きな花束を紫苑に渡す。
「あら、すごい花束ですわね。どうしたの?」
「お爺さまとお父さんのお肩を叩いて、お駄賃を貰って買ったの」
紫苑は『お養父様たら、紫穂には本当に甘いのですから』と花束が大きくなった理由を想像(=事実)して一瞬微苦笑を浮かべる。
「そう、紫穂頑張ったのね。ありがとう」
「うん」
満面の笑みを無邪気に浮かべる愛娘を見て、紫苑は笑みを浮かべるのでした。
(終)
164 :
3-180:05/03/21 00:24:07 ID:vQuX38Wp
取り敢えず、紫穂シリーズの方で一編。本編キャラ限定の方も今日中に書き上がればいいんだけど……
休みじゃないから時間がね。ふぅ。
では僭越ながら次は私が。
紫苑さん誕生日記念SSです。
あくまで記念SSですので、誕生日が題材な訳ではありません。
私のSSシリーズ(まりやEND後)における紫苑さんの日常を書いてみました。
・・・のはずなのに・・・奏ちゃんメインになってしまった・・・
『hug-hug』1
―――蒼く澄んだ快晴の朝・・・とある孤児院にて・・・
「院長先生〜おはようございます〜」
「奏先生〜おはようございます!」
「おはようございます。みんな今日も元気で奏、うれしいです」
それは毎日繰り返される朝の儀式。奏にとってそれはとても掛け替えのないもので、
子供たちにとっても大切なものだと、そう奏は信じている。
と、奏の後ろから黒い影が忍び寄り・・・
ぎゅむ。
「おはようございます、奏ちゃん。」
「はややっ・・・!」
紫苑は後ろから奏を抱きしめた。
これもまた毎日の儀式。
『hug-hug』2
「し、紫苑お姉さま〜、おはようございますなのですよ〜」
「ふふふ、今日も奏ちゃんは可愛いわね・・・」
「紫苑先生〜おはようございます〜。あたしにもぎゅっとしてください〜!」
「あ〜っ!ずるいよ、美鈴ちゃんっ!私が先よ〜っ!」
「あらあら。だめですよ、みんな仲良く、ね?」
「「「は〜い!」」」
「紫苑お姉さま、大人気なのですね。奏ちょっと嫉妬してしまいます・・・」
「じゃあ院長先生!あたしをぎゅっとしてください!」
「え、えへへ・・・奏、嬉しいです。それでは・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・奏先生・・・。これじゃどっちがぎゅっとしてるか、わかんないよ・・・」
「う・・・うぇ・・・」
「わ、か、奏先生、泣かないで・・・」
「あらあら・・・奏ちゃん、本当に可愛いままで・・・ホント、お持ち帰りしたいわね・・・」
『hug-hug』3
―――紫苑が恵泉女学園を卒業してから6年以上の歳月が流れていた・・・
紫苑にとっては、波乱の日々だったのだろう。
恵泉を卒業して無事大学の教育学部に進学した紫苑は、ひとまず厳島グループの御曹司との結婚を免れた。
これが紫苑にとっては幸運だった。
翌年、厳島の御曹司は、違法風俗店で麻薬を使用していたところを警察に取り押さえられた。
さらにはこの事件の強制捜査中に、厳島グループの数々の株に対する不正が発見され、総帥の逮捕に至ってしまった。
これをきっかけに婚約は破棄となり、紫苑は自由の身となった。
またこの事件により、十条家は鏑木グループの目に止まることになり、瑞穂の働きかけと、
厳島に対する更なる追い討ちのためとの総裁の判断により、十条家は鏑木の支援を受けることとなった・・・
一方、奏は恵泉女学園を卒業した後、お世話になった孤児院の院長に少しでも恩返しがしたいという一心で、
自分が育った孤児院で働くことに決めた。
このことは瑞穂の耳にも入ることになり、奏の熱心さ、子供への優しさ・気配り、
エルダーとしての経験、そして瑞穂の支援により、2年後院長として就任することになった。
そして・・・紫苑は大学を卒業した年、瑞穂の紹介で孤児院の職員兼教師として就職することになった・・・
『hug-hug』4
―――午後になり、奏は子供たちと、職員を広間に集めた。
「みなさん、今年も例年同様、演劇をやりますよ〜。」
奏からイキナリそんな明るい言葉が飛び出した。
そうなのだ。奏が孤児院の職員になってからというもの、孤児院のみんなで演劇の練習をして、
養老ホームで発表するというのが恒例になっているのだ。
子供たちに、みんなと協力してなにかを作り上げるということの大切さを教えるのにも、また、
孤児ということで他人に接することが苦手な子が多いが、
その子達に人と触れ合うことの大切さ・暖かさを教えるのに実にいい機会になっている。
また、養老ホームの人々も楽しみにしているようで、毎年お手紙が届くのも子供たちにとって、
そして奏たちにとっても嬉しいことになっている。
奏が配役を伝えていく。
「え〜〜!なんでボクがこの役なの〜?」
「あ、あたしじゃこんな重要な役割、できないですよぅ〜」
子供たちから不満の声が上がる。これも毎年のことだ。
「ふふ。皆さん、いいのですよ、この役割で。奏ちゃんの配役は、これまで一度も間違ったことはないでしょう?」
そう。奏はいつも、子供たちがどのように成長すべきか・・・どんな弱点を克服し、長所を伸ばしていくかということを
考えて、劇の題材を、そして配役を決めている。
こんなところにも、エルダーシスターとして、演劇部部長としての経験が生かされている。
『hug-hug』5
―――演劇のお話が済み、その日の夕飯前。
「ふふ・・・。やはりみんな不満顔でしたね、奏ちゃん?」
「そうなのですよ・・・。奏、不安になってしまうのですよ〜。」
奏は、紫苑の前では昔の言葉遣いに戻ってしまう。・・・というより普段も混ざっているのだが。
「奏ちゃん、自信を持ちなさい。貴女はみんなのことを考えて配役を決めているのです。
いざ練習が始まれば、みんなそれに気がついてくれますわ。」
「し、紫苑お姉さま・・・ありがとうございますなのですよ・・・」
エルダーシスターとしての経験があっても、やはりまだ奏には内気な部分があり、それを支えるのが紫苑の役割になっている。
そして、紫苑の奏に勝るその包容力は、職員を含む孤児院全員の支えになっている。
「うふふ・・・ほんとうに、奏ちゃんは可愛いわね・・・」
むぎゅ
「ん〜〜〜、んむぅ〜、んぶぶ〜〜・・・」
『hug-hug』6
「紫苑さん、こんばんは。」
「紫苑さま、お久しぶりです。」
そんなところに、瑞穂とまりやがたずねてきた。
「あら、お久しぶりですね、おふたりとも。相変わらず仲がよろしいわね。」
「紫苑さまもお変わりなく・・・。あれ?奏ちゃんは・・・?」
「奏ちゃんでしたら、ここに。・・・あら?」
「・・・く る し ぃ n o d e s u y o...」
ばたり。
「わわ、か、奏ちゃんっ!し、しっかりっ!」
「あら。どうしましょう。」
・・・
・・・
「奏、死ぬかと思ったのですよ・・・向こう岸で院長先生が手を振っておられたのですよ・・・」
「うふふ、奏ちゃんったら・・・。そんなにむぎゅっとされて嬉しかったのかしら?」
「・・・紫苑さん、ソレは違うと思いますけど・・・」
「そうかしら・・・」
「し、紫苑お姉さま・・・もう少し手加減して頂けると嬉しいのですよ・・・」
「なっはは・・・。相変わらず過激な愛情表現ですね、紫苑さま。」
「だって、奏ちゃんはいつまでも可愛くて・・・ほんと、食べてしまいたいくらいですもの・・・」
「食べられるですか、奏、食べられちゃうのですか・・・?」
「うふふ・・・。目に入れても痛くない、とも云えますわね。」
「あらまあ。奏ちゃんの死に場所は紫苑さまの胸の中に決定だね?」
「ま、まりやお姉さま・・・。それだけ聞きますと魅力的ですけれど・・・奏、まだ死にたくないのですよ・・・」
まあ、こんな感じで、紫苑と奏は毎日楽しく過ごしているらしい。とか。
お話の盛り上がりもなしに終わる。
あとがき
ま、日常ですのでこんな感じで。平坦な話ですが。
紫苑さんといえば、「奏ちゃんにむぎゅ」と「瑞穂さんの胸パッドにご満悦」
っていうイメージが強いのです。
というわけで。
紫苑さま、お誕生日おめでとうございます。
>>158 の箱さん
サブタイトルの件、了解しました。
「思い出の欠片」で登録いたします。
>>162 の初代スレ45さん
こちらこそ間違いの件は申し訳ありませんでした。
これからも皆さんの作品を楽しみにしています。
>処女は俺に恋してない
これ、凄い設定が良くできてるのに作者は続けないってもったいないなぁ
他の人が続きを書いてみては?
まぁ作者が許可出せばだけど
だったらお前が書けば?
張った伏線回収するのがどれだけ大変か分かってんならなw
よく出来た設定ってんなら辻褄合わせも簡単だろ?
ああ、でも最近は伏線張るだけ張ってほったらかしってのが流行だったかw
だったらどんな無茶な設定やネタも出し放題だうはwwwwっおkwwwww
技量的には作者に任せるのが一番だわな。
下手に連作にしてグダグダにされるくらいなら、あのままの方がいい。
確かに、見たいと思うけど、それは閉め方が良かったからだろ。
さきほど書き損ねてしまったので……。
>>154 >>156 レスありがとうございます。
スレの皆さんにも改めて感謝します。
無理はしていない、というかできない人なので、どうぞご心配なく。
……それでは消えます。
ダラダラ続けてグダグダになってるマンガや小説なんて腐るほどあるもんなw
あそこで終わらせとけば名作だったのにとか、評価が地に落ちたりとかさw
紫苑さん誕生日記念SSです。
えー、途中までしかできませんでした……OTZ
紫苑×瑞穂のエロあり短編SSです。
タイトルの謎は最後に明かされます。
タイトル「ベンジャミンは見ていた」
「さあ、どうぞ。瑞穂さん」
わたくしは鍵を回して扉を開けると、廊下に立つ瑞穂さんをうながした。
窓の外、赤く色づき始めた木の葉が風に揺れている。
「失礼します……うわぁ……」
「驚いているようですわね、瑞穂さん。……作戦成功、といったところかしら」
「ずいぶんと広い部屋ですけど、今は物置として使われているみたいですね。
……それにしても、どうして紫苑さんがこの部屋の鍵を持っているのですか?」
「エルダーともなると、こういった普段使われていない部屋の鍵の一つや二つ、
なぜか手に入ってしまうものなのですよ」
「へえ、そんなものですか。……使われていない割には、お掃除も行き届いてますね。
紫苑さんは時々ここに?」
「一人になりたいときになど、よくここに来たものです。
まあ、今は瑞穂さんと二人っきりですけどね」
ウインクを一つ飛ばす。わたくしの計画を悟られないために。
後ろ手に扉の鍵をかけたことに気づかれないために。
「あら、もしかして私はお邪魔でしたか?」
冗談と思ったのか、笑う瑞穂さん。とんでもありません、瑞穂さん。
あなたはこのたびのメインディッシュなのですから、いなくなられては困りますわ。
「まさか。わたくしの急な申し出に、いやな顔一つせずつき合ってくれた瑞穂さんに感謝こそすれ、
邪険に扱うなどできるはずありませんわ」
古くはあるが掃除の行き届いた、一組の布張りのソファーに瑞穂さんを座らせる。
わたくしは瑞穂さんの向かいに腰をおろした。
「紫苑さんたっての頼みですからね。私にできることなら、なんだっておっしゃってください。
力になりたいんです。……それで紫苑さん。私と見込んでお願いしたいことって、なんですか?」
「ふふふ。頼もしいですわ、瑞穂さん。これは瑞穂さんにしかできないことなのですが……
わたくしに瑞穂さんの裸を見せてほしいのです」
「は?」
間の抜けた顔をする瑞穂さん。――ああ、瑞穂さん。その表情も可愛らしいですわ。
「実はわたくし、今まで男の方の一糸まとわぬ姿を一度も見たことがないのです。
振り返れば、幼い頃からずっと恵泉通いでしたし、あまり男の方と接する機会もなかったものですから……。
このようなこと、瑞穂さんしかお願いできる方がいませんの。……だめでしょうか?」
瑞穂さんにショックから立ち直る時間を与えてはいけない。冷静に考えれば、男の方の裸を知りたいだけなら
他にいくらでも方法があるはず。むしろ直接目にしたことのある生徒の方が少ないのではないでしょうか。
「じょ、冗談ですよね、紫苑さん……」
「あら、瑞穂さんにはわたくしがこのような冗談を言うように見えまして?」
「いえ……」
にっこり微笑み返すわたくしに、力なく答える瑞穂さん。
「もし瑞穂さんに断られたりしたら、わたくしショックのあまり瑞穂さんの秘密を誰彼かまわず話してしまうかもしれませんわ」
芝居がかった口調と仕草。おそらく瑞穂さんには、わたくしが悪魔のごとく見えていることでしょうね。
「紫苑さんは、そんなことをする人ではありません!」
一転した力強い瑞穂さんの声に、わたくしは思わず息をのんで返す言葉を失った。
瑞穂さんは、わたくしに脅迫されている自覚がないのでしょうか……。
「……もちろん冗談ですわ。ですが裸を見せてほしいというのは本気です。
ふふ。でも瑞穂さんにそう言っていただけて、わたくしなんだか嬉しくなりました」
「……分かりました、紫苑さん。でも、これっきりですからね」
「瑞穂さんの押しに弱くて流されやすい……いえ、友達想いで優しいところ、わたくしとても好きですわ」
瑞穂さんにならって、わたくしもソファーから立ちあがる。所在なげに辺りを見回した瑞穂さんが、わたくしに向き直った。
「あ、あの、着替えたいので、どこか場所をお借りしたいのですが……」
「この場で脱いだらいかがですか? いつも一緒に着替えている仲なんですから、遠慮することはありませんわ」
「そ、そんなぁ……」
困った顔の瑞穂さん。胸の前で両手を握る仕草が本当に女の子のよう。
「ふふ。可愛らしいですね、瑞穂さんは。では、わたくしはここで待っていますから、
瑞穂さんはあちらで服を脱いできてください」
保健室でよく見るような布が張られた目隠しを、わたくしは瑞穂さんに指し示す。
「では、服を脱いできますから少しの間お待ちください、紫苑さん」
「……」
そそくさと、ついたての向こうに回って服を脱ぎ始める瑞穂さん。だが瑞穂さんは気づいていない。
張られた布に瑞穂さんが淡いシルエットとなって写っていることを。
「脱ぎ終わりましたか?」
「も、もう少しです……」
見えているのだから、わざわざ訊ねる必要はない。それはちょっとしたスパイス。瑞穂さんが最後の一枚を脱ぎ終え、
ついたての向こうから顔を覗かせる。
「あの、紫苑さん。私が声をかけるまで後ろを向いていてくれませんか?」
「ふふ。いいですよ、瑞穂さんの頼みですもの。では、後ろを向いていますので良かったら一言声をかけてくださいね」
その場で回れ右をして、ついたてに背を向ける。――間近に迫る瑞穂さんの気配。少しだけ、わたくしの手に力がこもる。
「ど、どうぞ、紫苑さん。……振り返ってもいいですよ」
「――まあ、瑞穂さん。いつ見てもほれぼれするほどのスタイルですわね。それに肌も白くて、本当にお姫さまみたいですわ」
「こんな時にまで、そんなこと言わなくても……」
と、落ち込むあまり涙ぐむ瑞穂さん。
「そしてこれが――これが男の方の性器なのですね。わたくし、初めて見ました……」
保健体育の授業などで知ってはいましたが、実物を見るのは初めてでした。その、なんというか……グロテスクでもあり、
可愛くもあり――圭さんや美智子さんが言う、キモ可愛いというのは、こういうものを言うのかも知れません。
(続く)
以上ですが、一つだけ注意点を。
完全にアナザーストーリーになっています。
嫌いな方は、気をつけて。
185 :
箱:05/03/21 01:54:21 ID:dvSuBzc1
第3部書きあがったので投下します_no||
結末がわかっているのに・・・何度見ても泣けるのが一子ストーリー(´;ω;)
第1部 思い出の欠片 前スレ
>>727-738 第2部 閉ざされた扉
>>140-145
双つの流れ星 〜〜その想いは夏の陽射しの中に〜〜
一子ちゃんがいない朝ももうこれで4日目になる・・・・。
エルダーになってからはたくさんの生徒から挨拶をかけられるようにはなったが、一人で学校へ登校するこの4日間はなぜだか毎朝が辛かった・・・。
幸穂 「一子ちゃん・・・大丈夫なのかしら・・・今日放課後にでもお見舞いにでも
行ってみようかしら。」
その日の放課後・・・・。
私は一子ちゃんが入院している病院まで来た。
受付で面会の手続きをすまして、私は一子ちゃんの病室へと向かった。
一子ちゃんは一番奥の窓際のベッドで、体調がいいのかベッドの上で雑誌を読んでいるようだった。
幸穂 「一子ちゃん。お久しぶりね。身体のほうは大丈夫かしら?」
私の声に気づくと一子ちゃんは満面の笑顔で返してくれた。
一子 「お姉さま!!!お久しぶりです、お見舞いにきてくださったのですか!?」
幸穂 「ふふふ、そうよ。はい、これ差し入れね。ここに置いておきますからいつで
も食べてね、一子ちゃん。」
私は差し入れにもってきた果物をベッドの傍らの机の上に置いた。
一子 「お姉さま・・・ありがとうございます。一子・・・本当に、嬉しいです。」
見ると一子ちゃんの目にうっすらと涙を浮かべていた。
幸穂 「まぁまぁ、そんな泣かないで一子ちゃん?これからもお見舞いには来てあげ
ますからね。なんたって私の大事な妹ですもの。」
一子 「ぉ、お姉さま・・・お姉さまが側にいてくれれば・・・それだけで一子は幸
せです・・・。」
私はにっこりと微笑み、一子ちゃんの手を握った。
幸穂 「私はいつでも一子ちゃんの側にいるわ。だから、早くよくなってね、一子
ちゃん。」
一子 「・・・はい。早くよくなってまた毎朝お姉さまをお迎えに行きます!!」
幸穂 「ふふふふ、そうね。」
私はこの時、一子ちゃんの弾ける笑顔の中に潜む影に気づいていなかった・・・。
次の週も、その次の週も私は一子ちゃんのお見舞いに行った。
お見舞いに行った時の一子ちゃんはとても元気で、とても何週間も入院している患者とは思えないほどだった。それだけに、私は一子ちゃんの病症が気になって仕方が無かった・・・。
ただ、私は一子ちゃんに病気のことについて詳しく聞くことはとてもできなかった・・・。
もうすぐ1学期が終わろうとした7月の末、私は一子ちゃんのお見舞いに来ていた。
幸穂 「もうすぐ、1学期も終わりですわね。一子ちゃんと一緒に登校するのは2学期ま
でお預けかしらね?」
私はリンゴの皮を剥きながら、残念そうに言った。
一子 「お姉さま・・・申し訳ありませんです・・・一子がもう少し頑張れば1学期に間
に合ったかもしれませんのにぃ・・・。」
一子ちゃんは私が剥いたリンゴを食べながらシュンとしてそう答えた。
幸穂 「ああ、でも安心してね、一子ちゃん。私は夏休みもちゃんと一子ちゃんのお見舞
いに行きますからね。」
一子 「幸穂お姉さま・・・ありがとうございます。お忙しいはずですのに、毎週私のお
見舞いに来てくださって・・・。」
幸穂 「一子ちゃんは私の大事な大事な妹ですから、当然のことですわよ?ふふふ」
私がそう言うと、一子ちゃんは照れながら下を向いてしまった。
一子 「お姉さま・・・幸穂お姉さまはずぅーーっと、一子のお姉さまで、いてくだ
さいね・・・?」
私はこの時、一子ちゃんの表情の中に微かながらの陰りがあることに気がついた。
幸穂 「一子・・ちゃん・・・?大丈夫ですよ、一子ちゃんはいつまでも私の可愛い
妹です。」
一子 「・・・ぉ、お姉さま・・・一子、お姉さまと出会えて、本当に嬉しいです・
・・。早く病気を治して幸穂お姉さまと一緒にまた登校してお買い物に行く
のですぅ!!!」
一瞬、とても沈んだ表情をしていた一子ちゃんだったが、すぐにいつもの元気な一子ちゃんに戻っていた。
幸穂 「ふふふ、楽しみにしているわね、一子ちゃん。それじゃあ・・・私は帰りま
すわね。早くよくなってね、一子ちゃん。」
私が席から立ち上がろうとした時、一瞬一子ちゃんの目が何かを訴えかけているように見えた。
一子 「あ・・・あの・・・、お姉さま・・・?」
幸穂 「・・・?どうしたの、一子ちゃん?」
一子ちゃんは照れているとも戸惑っているともなんとも言えない表情で私にこう言った。
一子 「お、お姉さま・・・一子を・・・一子をぎゅっと、してくれませんか・・・?」
一子ちゃんはそういうと顔を真っ赤にして俯いてしまった。
幸穂 「一子ちゃん・・・わかったわ。」
私はできる限りの笑顔で一子ちゃんを優しく抱いた。
幸穂 「・・・こうでいいのかしら?一子ちゃん。」
一子 「さ、幸穂お姉さま・・・幸穂お姉さま、いい匂いが・・・します。」
幸穂 「ふふ、一子ちゃんも一子ちゃんの匂いがするわよ?」
一子 「お、お姉さま・・・一子、恥ずかしい、です・・・。」
どれぐらいだろうか、夏の気持ちいい風に吹かれながら数分の間私たちは抱き合っていた。
一子 「幸穂・・・お姉さま・・・。」
一子ちゃんが静寂の中、とても弱弱しい声で私に囁いた。
一子 「一子・・・お姉さまにいつもいつもご迷惑をおかけさせてしまっていて・・・
その・・・ごめんなさい。」
幸穂 「まぁ、一子ちゃん。どうしたの、いきなりそんなこと・・・。」
一子 「一子は・・・お姉さまがいてくれたお陰で、本当に楽しい毎日を過ごせてきま
した。これからも・・・ずぅぅっっっっと・・・一子の側に、いてくださいね
・・・。」
幸穂 「ふふ、何回も言っているでしょ?一子ちゃんは私の大事な妹ですから。」
私は一子ちゃんの頭を撫でてあげた。
一子 「お姉さま・・・あ、ありがとうございます・・・。一子は、いつまでもお姉さま
のことをお慕いしてますから。そのことを・・・忘れないで、下さいね・・・。」
一子ちゃんに視線を落とすと、一子ちゃんの目から頬に涙が伝っていた。
その時初めて・・・一子ちゃんの病気がただならぬものだということに気がついた・・・。
幸穂 「い・・・一子ちゃん・・・。」
私は一子ちゃんの涙を見て、かける言葉を失ってしまった・・・。
一子 「ぁ・・・あはははは、私変なこと言ってましたね。お姉さまお帰りになるのでし
ょう?私も早く病気を治しますので安心して下さい!」
一子ちゃんは頬の涙をぬぐって、満面の笑みを私に向けてくれた。
幸穂 「一子ちゃん・・・早く元気になるといいわね。それじゃあ、またお見舞いに来ま
すからね、一子ちゃん。」
一子 「はい!お姉さま!!お姉さまもお体にはお気をつけて下さいね。」
幸穂 「ありがとうね、一子ちゃん。それでは、ごきげんよう。」
一子 「ごきげんようです、お姉さま。」
私は一子ちゃんの病室を後にした。心なしか一子ちゃんの言葉の最後がとても切なさそうに聞こえた・・・。
【8月3日】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
眩暈が酷くてまともに立ち上がることさえできない・・・。気分も悪く、考えることをやめてしまいたくなるような息苦しさが私を襲う。
医者 「この1週間が山ですね・・・。」
お母様とお医者様が隣の部屋でお話をしていた。私には聞こえないが、この苦しさから・・・大体何を話しているのか見当はついていた・・・。
一子 「あはは・・・私、もうだめなのかなぁ・・・。」
私は独りそう呟いた。
ここ最近は毎日のように点滴や薬を打っている・・・時には人工呼吸器をつける時もある・・・。
お母様はいつも、「もうすぐ治るから頑張るのよ、一子!」と、励ましてくれた。
・・・でも・・・。
・・・でも・・・、自分の身体のことは・・・自分が一番わかってるの・・・。
一子 「ぉ、お姉さま・・・一子をもう一度・・・ぎゅって、して・・下さい・・・。」
私が・・・私が動けなくなる前に・・・幸穂お姉さまにどうしても会いたいんです・・・。
別段悲しくもないのに私の目から涙が溢れ、頬を濡らしていく。
その日の夕方、お母様とお医者様が私のところへやってきた。
一子 「お、お母様・・・?どうなさったのですか。」
いつもは気丈に笑顔で励ましてくれていたお母様が、今日はなぜかとても思いつめたような顔をしていた。
一子母「一子・・・大事なお話があるの、聞いてくれる?」
一子 「はい、お母様。」
一子母「あのね、明日・・・お医者様と話し合って手術をしようと決めたの・・・。ぁ、
そんなに驚かないで。本当は可愛い一子の身体に傷をつけたくなかったんだけど、
でも苦しんでいる一子を見ると、どうしてもやりきれなくて・・・ごめんなさい
ね、一子。怖いかもしれないけど頑張るのよ、手術をすればよくなるから。そう
すれば、前に言っていたお洋服一緒に買いにいきましょうね。」
お母様は優しく私にそう仰ってくれた。お母様の言葉は最後は涙声に変わっていた。
一子 「・・・はい、お母様。その約束、ちゃんと覚えていてくださいね?」
一子母「・・・い、一子・・・。」
お母様は私をとても強く抱きしめてくれた。
一子 「・・・(ごめんなさい・・・お母様・・・約束は、もう・・・いいです。)」
私は心の中でもう決心を決めていた・・・。
【8月4日 PM0:00】
刺すような夏の陽射し、目が眩むような熱さが私を包んでゆく。
一子 「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
桜の樹が、優しく護るように、私に影を差し掛けてくれる。息を喘がせて立ち止まってしまった足を、もう一度動かし始める。
今日手術を受けると・・・多分、私は一生お姉さまに逢えなくなってしまう・・・。
もう一度お姉さまに会って、ぎゅっとしてもらいたい・・・。そう思い、私は朝早く病院を抜け出してきた。
何度も意識を失いかけながらもやっとの思いで私は恵泉女学院の校門の前までやってきた。
もう少しで・・・もう少しで逢えるから・・・頑張らなくちゃ。
桜の葉影と、差し込む陽射しを交互に受けて、視界がやがて現実味を失っていく。
一子 「なんだか・・・水の中をあるいているみたい・・・あははは・・・。」
自分の発した、なんだか疲れ果てたような笑い声が、ゆっくりと自分の力そのものを奪っていく。
膝から下の空気が、まるで水のように重い。いや、空気を掻くことが出来るほど、私の脚に力が残っていないんだ・・・。
一子 「見えた・・・ぁ・・・。」
目指していた建物が、真夏の陽炎の中に揺れ立っていた。毎朝お姉さまを待っていた、何度かお邪魔したことのあるお姉さまの部屋。
一子 「お姉さま、驚く・・・かな・・・あは、は・・・。」
強い陽射しに、自分が着ている白い制服の輪郭がぼやけていく。白い輪郭が外の世界に溶けてゆき、ゆっくりと世界が色を失っていく。
一子 「はぁ・・・はぁ・・・。」
私はやっとの思いで館の扉にしがみつくと、ゆっくりとその中へと入っていった・・・。
お姉さまのお部屋は・・・二階の一番端・・・・・・。
一子 「しつれ・・・ぃ・・・します・・・おね・・・さま・・・・。」
辿り着いたそこには、お姉さまはいらっしゃらなかった。
一子 「ふぁ・・・授業、なの・・・・かな・・・・・・。」
一気に気落ちしてしまった私の精神は、自分の身体を支えることをやめてしまい、その場にどうと倒れこむ。
一子 「だ・・・め・・・。」
こんなことろで倒れていたら、誰かに見つかって病院に連れて行かれちゃう・・・。
一子 「んっ・・・。」
動かない身体をなんとかずるずると引き摺ると、扉に手を伸ばして鍵を掛ける。これを開けられるのはお姉さまだけだ。
一子 「ごめんなさい、お姉さま・・・おねえ・・・さまが・・・来るまで・・・おや・
・・す・・・み・・・させ、て・・・。」
真っ白なお姉さまのクローゼット。その色からは思いも寄らない冷たさに心地よさを感じながら、私は寄りかかり、ゆっくりと身体を横たえた・・・。
鍵が開いた時、それは、お姉さまが帰ってくる時・・・。
お姉さまが帰ってきたらまたご一緒にお買い物へ行こう。そして、今度こそあのレストランのケーキを食べにいこう・・・。
一子 「・・・・・・・・・・ぉ・・・・・・・・・。」
身体中から力が失われていき、もう喋ることさえできない。
一子 「・・・(このクローゼット・・・お姉さまの匂いがする・・・)」
薄れていく意識の中、私は病室でお姉さまに抱いてもらった時のことが鮮明に蘇った。
まるで、お姉さまに抱かれているような錯覚を覚え、蝉の鳴き声だけが私の頭に響いていた。
一子 「・・・(お姉さま・・・暖かいです・・・。一子・・・お姉さまのこと・・・
お姉さまから・・頂いた思い出・・・決して・・・忘れま・・・せ・・・)」
夢の中へ堕ちていくような感覚の中、次第にお姉さまの温もりだけが私を包んでいった・・・。
いつもと変わらぬ真夏の太陽が、緑いっぱいの恵泉女学院を照らしていた。
8月の鋭い陽射しが部屋に差しこみ、蝉の鳴き声だけが建物全体に鳴り響いている。
そう・・・まるで、お姉さまと初めて出会った、あの日のように・・・。
196 :
箱:05/03/21 02:05:23 ID:dvSuBzc1
第3部完結です.
途中原作の嵩夜あやさんの文章使わせていただきましたが・・・
並べてみるとやっぱり素人とプロの文章力の差がががががが。
おとボク全クリアしてますが未だにこのシーン来ると泣けてしまいます.
歳なのか実は涙脆いのか・・・
現在第4部執筆中です. このまま最後までシリアス調でいいのか!?自問自答している最中です_no||
ラッシュに便乗してお誕生日SSを投下します
コッチ、コッチ、コッチ、コッチ――
大きな壁掛け時計が刻む時の音が、正確に鳴り続けている。
それ以外に音はなく、静寂に包まれた居間の中央に、私は一人佇む。
もう大分夜も更けてしまった。
最近は毎日のようにこんな夜を過ごしている。
瑞穂さん、今日も遅いですわね……。
広い館の一室で、私は一人、最愛の夫の帰りを今か今かと待ちわびる。
「ただいま」
扉の向こうから愛する人の声が聞こえた。
瑞穂さんが帰ってきたみたい。
「おかえりなさいませ、あなた」
「ごめんね、今日も遅くなっちゃって。一人で寂しかったでしょう、紫苑」
すまなそうな顔をして、軽く私にキスをする。
私の旦那さまはこんなにも優しい方です。
私の事をこんなにも想ってくださっています。
だから、私はあなたの帰りを待つことができるのです。
「いいえ、今日もお仕事お疲れ様でした。年度末ですし、大変なのでしょう?」
「うん、やっぱりこの時期は、ね」
そうか……、やはりそうなでしょうね。
働いた経験のない私でも、ここ数週間の瑞穂さんを見ていれば、
痛いほどそれは伝わってきます。
特にこの一週間は、連日帰宅が深夜にずれ込むほどです。
でも……我侭を云ってはいけないと分かっていても、どうしても気になる事が一つだけ。
199 :
お誕生日:05/03/21 02:14:31 ID:6ebTkTZt
「あの……あなた。……明日も、帰宅は今日くらいになるのでしょうか?」
明日は、私の誕生日。
お忙しいのは分かっていますが、できる事なら明日くらいは早く帰って来て欲しい、
そんな事を考えてしまう私は、妻として失格なのでしょうか?
でも、私……やっぱり二人で誕生日を過ごしたいです。
「明日、ですか。……その、明日の事なんですけどね。
そうですね、……まずは紫苑に謝らなければならない事があります」
あぁ……そうか。
その言葉で私は理解する。
「いいえ、分かりました。いつか埋め合わせさえして下されば、それで……」
そこまで云ったところで、瑞穂さんが私の腰に腕を回してきた。
そして私の言葉を遮るように、
「ごめんね、ここのところ帰りが遅くて。
でもその分、明日はお休みを貰ってきたからね、紫苑」
と耳元で呟く。
「よっと……」
ドサッとソファーに座り込む瑞穂さん。
私の腰を抱えたままだったので、
抱っこをされるように、私も一緒に倒れこむ。
背中越しに瑞穂さんを感じる。
「ですが、大丈夫なのですかっ? お忙しいのでしょう?」
「うん……その分、ちゃんと今週頑張ったから、大丈夫だよ」
「で、ですがっ、皆さんにご迷惑がっ」
「そうだね、貴子さんにはちょっと悪い事したかなって思ったけど……是非って云うしね。
あっ、そうだ……貴子さんが紫苑さまによろしくだってさ」
貴子さん、ごめんない。 そして、ありがとうございます……あなたからの最高のプレゼント、確かに受け取りました。
「あはは……貴子さん、明日は大忙しなんだろうなぁ。
明日はまりやがこの家に近づけないように、会社に缶詰にするんだって」
「まあっ……まりやさんに悪いですわね」
「うん、でも……これで、明日は一日中二人っきりだよ、紫苑」
「あなた……私、とても嬉しいです」
涙が溢れてきてしまう。
悲しくても、寂しくても我慢できた涙は、
嬉しさに対しては無防備だったようだ。
ソファーで二人、貴子さんに感謝する。
「それで、明日はどうしますか? 紫苑」
「そうですね、取り合えず朝までの予定はもうできていますわ」
「あはは……朝まで、ね」
「ええ……今日まで寂しい思いをしてきた分、目一杯甘えますの」
「一つ年をとるのに、甘えるんだ?」
「あらっ、私はお婆ちゃんになっても、あなたに甘えますわよ?
……それとも、甘えん坊なお婆ちゃんは、お嫌いですか?」
キュッと私を捕まえた手に力が篭る。
「僕は、紫苑が好きだよ……」
後ろから耳元に囁くと、頬にキスをされた。
答えになっているような、なっていないような気がしたけど、
一番嬉しい答えだったのは間違いない。
ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン
ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン……
壁掛け時計の鐘の音が、十二時を告げる。
キュッ――
また少し力が篭った愛する夫の腕の中で、また一つ私は年をとった。
「Happy Birthday, 紫苑――」
おわーり。
いっつも捻くれたSSばかり書いてる私ですが、今回はお誕生日なので、
王道にしてみました。
紫苑さん、お誕生日おめでとー!
お誕生日おめでとうございます。紫苑様(ついでにオレモナー)。
職人諸氏の猛爆の中、小生の愚作を投下してみるであります。
体験版止まりなので思いっきり本編との整合性に問題あるかも。
その場合はオマージュってことにしておいてください。
「おめでとうございます、紫苑さん」
「おめでとうございます、紫苑さま」
「紫苑お姉様、おめでとうございますですよ〜」
「紫苑お姉様、おめでとうございます」
「まりやさん、貴子さん、奏ちゃんに由佳里ちゃんも、ありがとう」
大切な友人達、愛らしき『妹』達の祝いの言葉に鏑木紫苑は柔らかな笑みで答える。
「お誕生日おめでとう。紫苑」
「はい。ありがとうございます。あなた」
一際輝く笑顔で、『あなた』−夫である鏑木瑞穂−に答える。
今日、3月21日は紫苑の誕生日。それを祝してささやかなパーティーが鏑木邸
で催された。
本人たっての希望でプレゼント等は無しで会食形式をとなっていた。
和やかな空気。語られる思い出。4年間の大学生活、現役学生の奏や由佳里の事。そして
6人とって共通の最も貴重な恵泉時代の思い出。最も、瑞穂にとっては未だにその事実に慣
れることが出来ていないのも事実なのだが。
誕生会がお開きになり、瑞穂は紫苑を支えながら寝室まで戻ってきた。元々酒に強く無い
紫苑のふらつく足取りを見るに見かねてのことだった。
「紫苑、大丈夫?」
「ええ・・・大丈夫ですのよ。ごめんなさい。嬉しくて、つい」
微笑み。瑞穂は『かわいい』と叫んでしまいそうなのを必死に堪える。
「もう、大丈夫ですから」
そういってベッドに向かおうとした彼女の動きはそこで封じられた。瑞穂が後ろから抱き
しめていた。
「あなた・・・?」
「紫苑・・・お誕生日、おめでとう」
「まぁ、それは既に聞きましてよ?」
「うん。でも何度でも言いたい。おめでとう。この世に産まれて、ボクと出会ってくれてあ
りがとう」
耳元でそう甘く囁かれ、紫苑はこそばゆさに体と頬が熱くなるのを感じた。
「ずるいですわ・・・そんなこと言われたら私・・・ん・・・」
瑞穂は皆まで言わせることなく紫苑の唇を奪う。全てをとろかすような口吻。
妻の唇を堪能した瑞穂が顔を離す。
「ほんとうに・・・ずるいですわ・・・あ・・・」
瑞穂に抱き上げられ、一瞬だけ抗ったものの彼女はその身を預けた。そのままベッドサイド
まで運ばれていく。
そっとベッドに横たえると、瑞穂はその傍らに腰を下ろし、紫苑の髪を指で梳く。紫苑が心
地良さそうに目を閉じる。
「ごめんね・・・」
「何が、ですか?」
「本当に、プレゼント何も用意してなかったから」
「いいんですよ。あなたにこうして優しくしてもらえるだけで・・・十分」
「じゃぁもっと優しくしてあげるよ」
「本当かしら?あなたって本当に意地悪さんだから」
「じゃ、やめとく?」
「ほら、意地悪ですわ・・・・・・」
瑞穂はそう言って拗ねて見せる紫苑の上に覆い被さり、唇を重ねる。
それから数刻。快楽の余韻に浸りながら、二人は互いの体を抱きしめている。瑞穂の手が
紫苑の髪をゆっくりと梳いている。
「今日は随分と優しいかったのですね」
「そうかなぁ。いつも優しくしてるつもりだけど」
「あら、いつもはもっといぢわるでしてよ」
「う゛っ・・・今度からは気をつけるね・・・」
「ふふっ。期待してますわ。」
紫苑は微笑んで口吻ると、瑞穂の首筋に顔を埋めた。その表情は満ち足りた笑顔だった。
その翌年・・・
「・・・・・・(そわそわ)」
「落ち着け瑞穂。こういうときワシらは待つ以外にどうしようもない」
「でっ、ですが父様」
「ったく・・・お前は妙なところで弱いな」
瑞穂は父である慶行と共に病院の待合い室に居た。愛する妻は扉の向こうに居る。心配す
るな、という方に無理があろうと言うものだ。
悟りきったかのように悠然と構える父を頼もしく思った。最も、その慶行にしたところで
気が気でなかったのだが、息子の手前、貫禄を見せたまでだったのだが。
それから更に5分が過ぎただろうか。紫苑が病室に入ってから15分くらいたったことになる。
中から看護士が顔を出した。
「鏑木さん、おめでとうございます。元気な女の子ですよ!」
「えっ・・・ホント・・・ですか?」
「はい。母子共に健康ですよ。ほんとにおめでとうございます」
「よっ・・・良かった〜〜」
瑞穂はその場にヘナヘナと座り込んでしまう。
「おまえ、みっともないぞ・・・」
呆れた、という物言いをしながらも慶行は瑞穂の肩に手を置くと、
「良かったな。これでお前も父親というヤツだ。責任重大だぞ」
「ハイ」
・
・
・
「紫苑」
病室のベッドの中で子供の顔を眺めていた妻が振り向いた。
「あら、あなた・・・」
「よく頑張ったね。おめでとう」
「あなたが祈っていてくれたからですよ」
「そうかな・・・そうでもないよ」
言えない・・・母子共に健康と聞いてヘタリ込んでしまったなんて言えない。見破られない
ように精一杯強がりながら答える。
「君に、似てる・・・かな?」
「私は、あなたに似てると思いますわ」
絶対紫苑に似ている、と言おうとして思いとどまった。どちらにせよ、こんなに可愛いのだ。
それで十分だ、と。
「名前、考えないとね」
「それなら、もう決めてあるんですのよ」
「そうなんだ。聞かせてくれる?」
「あなたと私の名前から一つずつ取って、『紫穂』」
「『紫穂』か・・・・・うん、素敵だね。それにしよう」
「ありがとう。あなた。紫穂、ほら、あなたのお父様ですよ」
傍らで眠る赤子に微笑む妻の笑顔を、美しいと瑞穂は思った。見とれていた、と言うべき
かもしれなかった。
ふと、何かを思い出したように瑞穂は声をかけた。
「紫苑・・・」
「はい」
「お誕生日、おめでとう」
「ありがとう・・・あなた」
以上。
・・・・・・すみません。俺が悪かったです。最後のシーンのためだけにそれ以外を
こじつけたわけでorz。
現時刻をもって本艦は放棄。自沈するであります・・・
209 :
test:05/03/21 02:49:24 ID:yL3x86yZ
おボク様 あなざぁ 『0 奏ブラック』
ここに来るまで、どれだけ人を騙して来たのか。全ては奏が唯一の家族を亡くした時
に始まった。初めてのプレゼントに喜んでいる奏に、大人たちは何も言わなかった。
ただ、少し年上のお姉ちゃんが奏を抱きしめて泣きながら本当のことを教えてくれた。
園長先生の知り合いの子どもだったのだろう。奏よりもいい洋服を着ていて、奏よりも
愛されて育ったのだと思う。
今の奏はその時のお姉ちゃんを恨んではいない。奏を無条件に愛してくれた唯一の人
の死を悲しむことを教えてくれた、むしろ恩人だと思う。そして、親や周りの人に無条
件に愛されている人と奏がちがっていることを教えてくれた。
その日から奏は意識して人に媚びる事を覚えた。努力すれば出来る事と、努力しても
出来ない事を学んだ。
恵泉の奨学生枠は競争率がとても低い。対象者は奏で数年ぶりのことだそうだ。しか
し、いわゆる名門名家の御令嬢とも知り合う機会を与えてくれる。大学へも進める可能
性が出てくるし、そうなると中卒で働くよりもより大きな成功への可能性がある。それ
にホームを出て3年間は寮に住める。食費などの生活費も支給されることになった。園
長先生が恵泉の卒業生だったことも奏に有利に働いているようだ。
続く
210 :
209:05/03/21 02:49:38 ID:6ebTkTZt
一応ここで209をげっとしておこう。
211 :
test:05/03/21 02:50:43 ID:yL3x86yZ
奏は顔と名前を売るために、可愛いだけで何とかなりそうな演劇部に入ることにした。
部長が思ったより熱心だったのは誤算だったが、その分人数が少なく、主役は無理でも
何かの配役はあるだろう。そこで主役を食う自信はある。何しろ、奏は演じ続けてきた
のだから、可愛らしい御利口な女の子を。
まあ、寮生が予想よりも少なかったので、上級生の世話係を陸上部の人に取られてし
まったのは残念だけど、取り入る隙はあるだろう。最上級生の御門まりやは元華族の御
令嬢。いつか利用できるかもしれない。それに……
「もしかしたら、あたしの従姉妹が転校して来るかも知れないんだわ。最上級生なんだ
けどね」
「受験を控えていらっしゃるのに転校なんて、大変ですね」
「うん、だからまだどうなるかわからないんだけど、おっとりした秀才タイプの子だか
ら奏ちゃんには丁度いいかもね」
「奏にお姉さまが出来るなんて、とってもうれしいのですよ。由佳里ちゃんのことが、
うらやましかったのです」
奏はちょっとドジでも一生懸命な可愛い女の子。そう騙して、そのお嬢様に取り入る
ことなんか、きっと簡単に出来る。奏はそう思っていた。
END
ご め ん な さ い
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ノノノノj{_) ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ´θ^θン)u ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
213 :
箱:05/03/21 03:00:04 ID:dvSuBzc1
>>209さん
どんまいです(;´Д`)
リアルタイムで見ていて少し爆笑させてもらいましたが・・・w
>>197さん, >>前スレ226さん
そういえば今日は紫苑様の誕生日だったのですね.
ほのぼの系のSSに心が癒されました(´;ω;)シリアスばっかり考えてると鬱になる・・・
>>555TFSBWYQ
AWACS<<エースの帰還を歓迎する。次の出撃に備え、そのまま待機>>
とりあえずGJ!
大学受験も見事合格し、入学準備も進めていったある日の夜。
ベッドの中で紫苑は僕の首に腕を回しながらこう言った。
「あなた、その…今年もお願いします」
「…はい」
お姉さまと一緒第2弾 姉(あね)さん姉妹 1/11
「瑞穂ちゃんおはよう」
「まりや、おはよう」
「まりやさんおはようございます。あの、早速なんですが…」
「らじゃー、りょーかーい。じゃあ瑞穂ちゃん、いくわよ」
「お手柔らかに…って、ちょ、ちょっと」
まりやは僕の部屋へ引きずっていく。
僕は寮から持ち出した鏡台の鏡に久しぶりに向かった。
「さて、瑞穂ちゃん。紫苑さまのお誕生日プレゼントなんだから
お互い気合を入れていくわよ」
「う、うん」
僕は恵泉にいたときのようにテキパキと顔を整えていく。
「瑞穂ちゃん。まだ腕は衰えていないようね」
後ろでまりやは僕に着せる服を選んでいる。
僕は返事をせずに作業を続ける。
「あら、瑞穂ちゃん。ちょっと怒っちゃった?」
「別に」
「まぁまぁ。あら、顔の手入れは終わったようね」
「うん、で、服のほうは」
「今日はかなりおとなしいのにしておくわ」
「安心したわ。フリフリロリータだったら去年みたいに大変なことになってたかも」
「た、確かにあの時の紫苑さまと小父様は可笑しいを通り越して
お花畑まで飛んでいっちゃってたからね。あれは私も反省した」
「…」
2/11
- 去年の3月20日 -
「どうしたんですか、紫苑」
恵泉を出てからからそのあと、一緒に自宅近くの図書館で受験勉強を
していたときのこと、紫苑は何か物思いにふけっているようだった。
「私、明日誕生日を迎えますの」
「そうなんだ、おめでとう紫苑」
肩に優しく手を置くと紫苑が振り向く。
そこに僕は軽く唇を重ねる。
「…その、嫌ですわ。人が見てる前で」
「ふふ」
僕は意地悪く笑ってみせる。
「うぅ…」
紫苑は僕からの不意打ちに恥ずかしいやら悔しいやらで可愛く拗ねていた。
「でも…何も送るものが準備できなくて」
「あの…、贈り物はいいんですけど…」
紫苑が何やら押し黙っている。
「どうしたの?」
「あの…私の明日一日だけお願いを聞いてもらえますか?」
「僕にできることなら…」
「その…私の妹になって下さいませんか?」
「いいですよ…って、ええー!!!!!」
「声が大きいですわ、瑞穂さん」
そして次の日、紫苑の一日妹となったわけだがまりやに
服を頼んだのがまずかった。
黒を基調としたフリフリレースの所謂ゴスロリドレスを僕に着せたため
紫苑が終始抱きつきながら放心して体を放さないわ、
父様が母様を思い出して縋り付いてくるわで大変だった。
父様は兎も角、紫苑に抱きつかれたままというのもまんざらではなく
本人も満足してくれたようだったので今年もOKした
3/11
「瑞穂ちゃん、今回はこれでどう?」
まりやは白地に花の柄が大人しめにプリントされたワンピースと
ペールピンクのカーディガンを僕に着せていた。
「おとなしいながらもいい感じだよ」
「じゃ、あとは紫苑さまのご要望にあわせてっと…」
まりやは僕に慣れた手つきで三つ編みを編みこんでいく。
「はい、お下げの完成。あとはこれ、お願いね」
「…」
「どうしたの、まさか今更、嫌というんじゃないでしょうね?」
「いや、何か紫苑お姉さまのご趣味というのはちょっと…」
「あら、今から役作り?感心感心」
かちゃっ。
「おお、なんか純朴な感じが出て、これはこれで…おっといけない。
思わず頬ずりしちゃった」
縁が細めの伊達眼鏡を僕は今掛けている。
正直、ぶっとい黒枠眼鏡でなかったのが救いだったかな…。
紫苑が待っているリビングのドアをノックする。
「お待たせいたしました。お姉さま」
「入りなさい」
紫苑が優しく答える。
「し、失礼します」
かちゃっ。
「まぁ、こちらにいらっしゃい」
紫苑が隣に座るように僕に促す。
「は、はいお姉さま」
「はぁ…いつ見ても可愛いわ、瑞穂」
僕の肩に手を回してやっぱり頬ずりをしている。
「お、お姉さま」
「さぁ、今日は約束どおりお姉ちゃんと一緒に遊園地へお出かけしましょう」
「はい」
4/11
「瑞穂様、紫苑様。いってらっしゃいませ」
「「行って参ります」」
楓さんが送り出してくれた。
「まぁ、仲のいい姉妹ですね…」
遊園地についてからはティーカップ、幽霊屋敷、ジェットコースター、お昼ご飯に
ゲームセンターでもぐらたたきなど順当に敷地内を回っていった。
そして二人してベンチに座っていた。
「瑞穂」
「はい」
「疲れていませんか?」
「いいえ、特につ…」
「疲れていませんか?」
「はっ、はい!」
何か紫苑の笑顔に何か迫力を感じた。
そして紫苑は自分の太ももを軽くはたいた。
「どうぞ」
「は?」
パンパン。
「Come on!」
自分の太ももを両手で指差している。
どうも僕に膝枕をしてくれるらしい。
なにか紫苑のキャラクターが可笑しくなっているので大人しく従った方がいいように思った。
「お姉さま、失礼します」
僕はそっと紫苑の太ももに頭を置いた。
5/11
「お姉さま」
「お姉ちゃんはね、こうするのが夢だったの」
「…」
「一緒に遊んで、一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒のお布団で寝て…」
僕の頭を優しくなでながら紫苑は言葉を紡いでいく。
「ねえ、瑞穂。私はあなたにとっていいお姉ちゃんでいられているかしら」
「はい、お姉さま」
「そう、良かった…」
そのうち紫苑のなでる手が止まっていった。
「お姉さま?」
「…すぅっ…」
紫苑はいつの間にやら眠っていたようだ。
「膝枕をしておいて自分が眠っちゃうなんて…」
僕はそっと起き上がると紫苑の頭を肩に抱いてやる。
「僕もこんなお姉さまが欲しかった…かな。大好きですよお姉様」
「…ん、あら…わ…た…くし」
「お姉さま」
「あら、私眠ってしまいましたか…」
「はい」
「自分が膝枕に誘っておいて寝ちゃうなんて…だめなお姉ちゃんです」
紫苑はしょげている。
「いいえ。私のことを気遣ってくれてありがとうございます」
「でも…」
「いいですよ。可愛いお姉さまの寝顔を拝見できましたし」
「まぁ、そんな生意気なこと言って。お姉ちゃん拗ねてしまいますよ」
「ごめんなさい、お姉さま」
「ふふっ、冗談よ。そろそろ日も遠くなってきましたし、帰りましょうか」
「はい」
6/11
二人は鏑木家の玄関にたどり着いた。
「ただいま、戻りました」
うぉーーーん うおーーーん
なにやらけたたましくサイレンが鳴り響き、黄色いパトランプが点滅している。
"W A R N I N G ! !
A HUGE BATTLE SHIP
MY HOME DADDY
IS APPROACHING FAST"
なにやら英語の警告アナウンスが流れている。
「瑞穂様に紫苑様」
「どうしたんですか?」
「隠れて!慶行様が今、瑞穂様をお探しになっています」
「え?」
昨日、紫苑の妹になるという話が父様の耳に入ってしまい何もしていないのに
抱きついて放そうとしないため楓さんに頼んで僕が気絶させた後自室に鎖で体中を
ぐるぐる巻きにして拘束していた。
まさかそれを破ってくるなんて…。
「さーちーほー、どーこーだー」
眼前にいる父様はあふれ出るオーラで背中に「天」の字を描いている。
よく見ると使用人の何人かが父様の後ろで倒れている。
僕が父様の視界に入ったようだ。
「幸穂、幸穂…」
父様は片足を上げ、自分の残像を背後に従えて近づいてくる。
「こうなったら…」
僕は意を決した。
7/11
「あなた、どうしたの!」
「幸穂?!」
僕の言葉に父様は動きをとめた。
「楓さん、今です」
「はい、紫苑様」
一瞬の隙をねらって楓さんは父様の後ろをとった。
「いぃぃやっ!」
気合の掛け声とともに父様の後頭部にハンマーナックルを叩き込む。
「うぇっ…」
父様は廊下に叩きつけられ、そのままあっけなく気を失った。
「よっちゃん、ごめんね」
「楓さん、ご苦労様です」
「義父様はどういたしましょうか?」
「気が引けますが…、明日まで納屋に閉じ込めておきます。両手両足の親指と
小指を拘束すれば今度は大丈夫かと」
「父様には申し訳ないですがお願いします。」
「はい。では姉妹水入らずのお邪魔だけはしないようにこれにて失礼いたします」
「ありがとうございます」
倒れていた使用人に大きな怪我はなく…というよりも父様の形相と眼光に
射竦められてそのまま気を失ってしまったということだ。
僕たちは誰にも怪我がなかったことを幸いと思うのと同時に来年は二度とこのことを
父様の耳に入れまいと誓うのであった。
って、来年もするのか…。
8/11
「私の背中を流してくれますか?」
「は、はい。お姉さま」
今、紫苑と一緒にお風呂に入っている。
その、何度も肌を合わせているとは言え、一緒にお風呂に
入っているということが何やら恥ずかしい。
胸の大きい人はお風呂に入ると浮かんでしまうというがそれを目の当たりにしたのが
大きいのかもしれない。
「まぁ、瑞穂、私の胸をじろじろ見て。恥ずかしいわ」
紫苑は胸を両腕で隠して恥ずかしがる。
「と、とにかくお姉さまのお背中をお流しいたします」
紫苑は先に湯船から上がって腰を掛けた。
僕もあがると湯桶にお湯を汲んで紫苑の背中に回った。
「それでは失礼します」
紫苑の背中にお湯をかけ石鹸とタオルを使い洗っていく。
「ありがとう、瑞穂。では今度はお姉ちゃんが貴方の背中を…」
「いいえ、お姉さま。今度は前を洗わせていただきます」
「もういいわ。そんな…うっ…ん…」
紫苑の口を僕の唇でふさいだ。
「…ん…はぁ…こんなに私はお姉さまのことをお慕いしていますのに…
洗わせてくださらないのですか?」
「そんな、瑞穂。私、あっ…」
両手で紫苑の胸を優しくもみしだく。
「…よろしいですか、お姉さま…」
「そ…あっ」
「お姉さまの胸は…本当に柔らかいですね」
「…はぁ…あっ」
そして僕は右手をゆっくりと秘所に下ろし、そしてなで上げる。
「ひゃぁぁっ!!あぁぁ…」
「私でこんなに感じてくださってるんですね、お姉さま…。うれしいです」
緩急をつけて紫苑の胸と秘裂を撫で上げる。
9/11
「ふぅ、…んぁっ」
「それではお姉さまいきますよ」
僕は紫苑のクレバスから覗く蕾にキスをした。
「………っ」
紫苑から体の力が抜けた。どうも軽くイッたようだ。
「はぁ…はぁ…」
「気持ちよくなってくださいましたか?お姉さま」
「…あ、そんな…はぁ」
紫苑は何か混乱しているのかまともに受け答えができないようだ。
「では、またいきますよ。私で気持ちよくなってくださいね」
「えっ」
僕は紫苑の腫上がった肉芽を舐めあげる。
「うやっ、そんな…いけ…ま…せっんぁ」
「ん…、ちゅっ、む…」
時に乱暴に舐め上げ、時に唇で甘噛みして紫苑をまた
絶頂へと向かわせる。
「んぁ、あっ…」
僕も何か理性が飛んだのか口を動かすことが辞められなくなってきていた。
「はっ・・・み、瑞穂…」
「ん、な…なんですか?」
「その、私だけ…気持ちよくなっても…その、瑞穂さん…はいいのです…か?・・・あぁっ」
なにやら僕の呼び方が恵泉の頃に戻っている。
「お姉さま」
「さぁ、私に…」
「いいのですか、お姉さま?」
「さぁ…いらして、み…ず…ほ、さん」
10/11
僕は怒張を紫苑にあてがう。
「はぁっ」
「いきますよ、お姉さま」
僕の分身が紫苑を一気に刺し貫く。
「きゃうっ、はぁぁぁ…」
「…あぁ、お姉さまの中は熱いっ…あぁ…」
「あぁぁっ…んぁ…」
「…お、お姉さま…おねえ…さ…ま」
くちゅっ、ぐちゅっ。
淫らな水温が風呂場中にこだまする。
紫苑の中がマグマのように熱くて僕の欲望が融けていくような感じがする。
「はぁっ…あぁ…んっ!」
「お姉さま、お姉さま…」
「瑞穂さん、も、もうだめ…で…あぁっ!」
「お姉さま、わ、わた…しも、もう…、うぅ」
こみ上げてくる射精感にそろそろ耐えられない。
お互い、そろそろ限界のようだ。
「あの…ふぁっ…一緒に…い、いっ…しょに…」
「…うわっ…はいっ…お…ねぇ…さま」
二人で終焉に向かってラストスパートをかける。
「ひゃぁ、くっあぁ…み、ずほ…さん…」
「お、おねえさま」
僕が最後に勢いをつけて紫苑に突き上げる。
「あっ…ひやあああぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁっ!!…」
「うっ、くあぁぁぁっ」
紫苑が果てにたどり着くと僕も急いで引き抜いた。
それと同時に僕の分身からも白い欲望が彼女の腹と
胸に注がれた。
11/11
「さぁ、瑞穂。一緒に寝ましょう」
「はい、お姉さま」
僕たちは二人の部屋に向かっていた。
「今日は本当に良かったわ」
「はいお姉さま。私もです」
「それにしても、あなたって本当に甘えんぼさんね」
「え?」
「その、お風呂であんなことしなくても…」
「それはお姉さまをお慕いしているからですよ」
「嫌だわ、はずかしい」
「ふふっ」
ぼーん
柱時計の鐘が十二時を伝える。
「今日はありがとうございました、あなた」
「どういたしまして、紫苑」
「これから入学準備も大変ですけど頑張りましょう」
「そうですね」
二人は部屋に入り扉を閉めた。
「さちほぅ…、さちほーーーーーーーーーっ!」
納屋の方では何やら物悲しい咆哮が辺りに響き渡っていた。
続かない。
ということで以上、紫苑さまのお誕生日記念SSでした。
じつはエロSSは今回が初めてだったりするのですが。
紫苑さまは話の中で欲しいって言ったのは妹だったなぁと思って
思いついたりしたしだいです。
最後までコテわすれてた。
コテ間違えた・・・。
なんかこんなことばっかりです。
大人しく圭さんから邪神の洗礼を
受けてきます。
>>201 王道GJ!癒されました。
あと209奪還失敗ドンマイ
で、処女は俺に恋してないのリクが上記の通りに寄せられてるのですが、
やっぱり書かないのですか?
>>215-225 GJ!かわいいよ紫苑さんかわいいよ
ところでこの姉妹はどこに行けば手に入りますか?(w
どうでもいいことだが、昔から気になっていたことなので。
お風呂で身体を洗い合いながらそのままH突入ってのはよくあるけど
身体にソープの泡が残っているのに舐め合っても大丈夫なんだろうか・・・
描写されてないだけで洗い流した後なのかな?
誕生日記念間にあわねぇ……orz
>>職人様方
GJです
激しくハァハァしました
231 :
いつぞやの7:2005/03/21(月) 10:57:40 ID:H/4eP8Dw
|ω・`) < コソーリ・・・
|ω・`) < 誕生日記念SSのラッシュも今は止んでいるようだし
投下するなら今のうち・・・
232 :
いつぞやの7:2005/03/21(月) 11:02:38 ID:H/4eP8Dw
『2月14日』
Case1.
「それと、先程まりやさんがお見えになりましたので、社長室に通しておきました」
取引先の会社から帰ってくると、有能な秘書が業務連絡の最後にこう付け加えた。
(まさか……)
秘書に礼を言った後、ふとあることに思い至り、急いで社長室に向かった。
(……やっぱり!)
ドアを開けると、果たしてデスクを背にして、背後を隠すようにして立っているまりやがいた。
「あっ、瑞穂ちゃん……って!ちょっ…ま…っ!」
まりやの静止には気づかないフリをしつつ、まりやの脇を抜けると
デスクの上には、今朝には置いてなかった見慣れぬ箱が…!
まりやの方をちらりと見ると、彼女はあからさまに視線をそらしている。
思い切ってふたを開けてみると、なんと真っ白なハートマークが飾られたチョコレート!
『これ……まりやが?』
目で訴えかけると、ぶんぶんと首振り。
だけど否定したって無駄。だってホラ、どんどん顔が赤くなっていくもの。
「ま〜り〜やっ!」
ただそれだけ。もはや二人の間に余分な言葉は要らない。
「あ、あたし……用事を思い出したから……し、失礼するねっ…!」
まりやは慌てたように退室していった。
233 :
いつぞやの7:2005/03/21(月) 11:05:32 ID:H/4eP8Dw
Case2.
「それと、先程まりやさんがお見えになりましたので、社長室に通しておきました」
取引先の会社から帰ってくると、有能な秘書が業務連絡の最後にこう付け加えた。
(まさか……)
秘書に礼を言った後、ふとあることに思い至り、急いで社長室に向かった。
(……やっぱり!)
ドアを開けると、果たしてデスクを背にして、背後を隠すようにして立っているまりやがいた。
「あっ、瑞穂ちゃん……って!ちょっ…ま…っ!」
まりやの静止には気づかないフリをしつつ、まりやの脇を抜けると
デスクの上には、今朝から置いておいた貴子さんから貰った箱が…!
まりやの方をちらりと見ると、彼女はあからさまに視線をそらしている。
思い切ってふたを開けてみると、なんと真っ白な………箱の底!
『これ……まりやが?』
目で訴えかけると、ぶんぶんと首振り。
だけど否定したって無駄。だってホラ、どんどん顔が青ざめていくもの。
「ま〜り〜やっ!」
ただそれだけ。もはや二人の間に余分な言葉は要らない。
「あ、あたし……用事を思い出したから……し、失礼するねっ…!」
まりやは慌てたように退室していった。
234 :
いつぞやの7:2005/03/21(月) 11:06:50 ID:H/4eP8Dw
後書け
「それがこのネタの仕様だ」
これが、私の考えたネタだ。
「明らかに時期外れだ」とか「タイミング悪い」などと言う人もいるかもしれない。
それはこのネタを読む人が、この仕様に合わせてもらうしかない。
そもそもこれ先ほど思いついて勢いで書いたものだし、紫苑さんの誕生日は素で忘れてた。
瑞穂ちゃんがエルダーになったことに対して難癖をつける人はいない。それと同じこと。
___
, ´ `丶
./ 〃 / ノl 人、 ヽ
// 〃 イ ,ィ //ヾヾ、、 ',
l l リレ !//ノノ ヾ=!i l
l .V __ __ i トー6
ヾ,i `" `" ! !ノ〈ハ〉 なんでぇなんでぇ
Lil 〕> ! ! l ll 、 おいら人じゃなかったんかい
.lハ 人ヽ Lll ヽ
. L!`ゝ __ イ┬、ヽヽ `ヽ
l √ ヽ 0_,l 〉リ )
ノィ l ト</ヽ__>=l 、(
フ `ヽcロ/゙ヽ_lっ l ヽヽ_
〈 ヾ7 /ー-'"! )ヽ)
>>232>>233 両方ともまりやらしくていいですね。
ホントに設定がよく出来ていると思います。
あと、個別にはレスできませんが、お誕生日SSもGJです。
体験版しかやってないけど書いてみた。
設定とか勘違いしてたら笑ってやってくれ。
「ね、お願い…講堂に戻って…あなたは真実エルダーになるべき人間だと思うの」
「紫苑さん…でも……」
「私は大丈夫……だから、お願い」
「…………」
「わかりました……紫苑さんがそこまで云うのなら」
「………ありがとう」
…これでいい。
彼なら立派なエルダーになってくれる。
私がなれなかった、誰からも慕われる理想のエルダーに。
優しさと強さを秘めた、あの人なら。
私は、結局皆の期待に応えることすら出来なかった。
今も復学したとは言え、周りに溶け込めない異物でしかない。
それでも、あの人はそんな私にも温かい笑顔を向けてくれる。
私を私として見てくれる。
そう、あの人は私の夢の最後に現れた、初めての大切なお友達。
たとえまりやさんに頼まれなくても、きっと協力したことだろう。
不器用で、鈍感で、どこか抜けてて、でもまっすぐなあの人が好きだから。
…例え、それが決して叶わぬ想いでも。
これから、彼はいろいろと戸惑うことも多いだろう。
でも、それを糧にして大きく成長していくはず。
だから、せめてその彼の背中を支えよう。
そうすれば、無価値な私の人生にも意味があったと思えるから。
彼には私の分まで幸せになって欲しい。
…例え私のような人間でも、それだけを願うことは許されますよね?
238 :
133:2005/03/21(月) 12:05:18 ID:6eqqbtZo
保管庫を見ていたら同じ題名のものがありました orz
74様、誠に申し訳ございませんでした。
>228
本人に書く気ないんだから諦めろって。
無理やり書かせたって駄作にしかならんぞ。
幻滅するよりはよく出来一発ネタとして満足した方がいいだろ?
240 :
5時起き:2005/03/21(月) 12:25:21 ID:e1hZzSpr
ご苦労様です、皆様。
紫苑さん誕生日SS投稿です。
時期設定は『紫苑ED、卒業式の数日後』です。
241 :
5時起き:2005/03/21(月) 12:26:53 ID:e1hZzSpr
「紫苑、21日って紫苑の誕生日ですよね?」
「ええ、そうですわよ瑞穂さん」
ある、晴れた日の事。
予備校の入校手続きを取りに行った昼下がりの街の中。
「誕生日プレゼントは何がいいですか?」
「あら? ふふっ、瑞穂さんに気を使わせてしまいましたわね」
街角に立って居る桜の木々の蕾も、かなり色付いて来て居た。
この分だと、もうまもなくあの桜並木の様に淡い色の花を咲かせる
事だろう。
「いえ、それは気にしないで下さい。何と云っても、一緒に過ごす
初めての紫苑の誕生日ですから、僕が何かをしたいのです」
「まぁ…私は本当に幸せ者ですね」
紫苑はそう云うと、嬉しそうににっこりと微笑んだ。
不覚にも僕は、ちょっとだけその笑顔に見とれてしまう。
「それじゃあ……一つ、お願いしても宜しいでしょうか?」
優しそうな表情を浮かべて、紫苑はそう僕に云った。
「誕生日 DE デート」
先日、誕生日のお祝いに何が欲しいか聞いて見た所。
帰って来た返事は……。
『私、瑞穂さんとデートをしたいですわ』
と云う物だった。
242 :
5時起き:2005/03/21(月) 12:28:16 ID:e1hZzSpr
『デート? それでいいんですか?』
『ええ。順番が逆になってしまいましたが、せっかくの誕生日祝いに
初デートなんて、素敵じゃありませんこと?』
そう云われて気がついたけど、考えて見れば恵泉時代、紫苑と
デートをした事が無い。
僕達が約束を結んだのは紫苑の入院中で、その後恵泉を卒業を
して、それから今日に至って居るから、考えて見ればこれが紫苑が
云う様に初デート。
『そうか……そうですね、確かに素敵です』
『ふふ、そうでしょう?』
「で、取り敢えず街に出て来ましたけど、何をしましょうか?」
そう云いながら紫苑の方を見ると、紫苑は少し困った顔をして居た。
「……どうしました?」
「それが……私、殿方とお付き合いするのは初めての事ですから、
デートの時何をして宜しいのか解りませんの」
…ああ、なるほど。
「う〜ん……でも、女性とのデートは初めてですから、僕も解りませんよ?」
「あら、まりやさんとはデートなさった事は無いのですか?」
「…えーと、まりやの場合は単に買い物の荷物持ちに付き合わされた
だけですし……」
アレはとてもデートと呼べる代物じゃない。
そう云うと紫苑は少しきょとんとして、その後くすくすと笑い始めた。
「…僕、何か可笑しい事云いました?」
「ふふふ、いえ、何でもありません」
「?」
何か引っかかるけど、まあいいや。
「じゃあ、ここで立ち話をして居ても仕方ありませんから、取り敢えず
ショッピングとかして見ましょうか。それからはその後で考えましょう」
「はい♪」
嬉しそうに頷くと、紫苑は腕を組んで来た。
243 :
5時起き:2005/03/21(月) 12:29:22 ID:e1hZzSpr
「こうすると、デートしてるように見えますよね、きっと?」
「あはは、そうですね」
組んだ腕から伝わる温もりが、今の僕には心地よかった。
そうして、僕達は数件の店をウィンドショッピングして回った。
途中、僕はスカーフとネックレスを買い、紫苑にプレゼントした。
「ありがとうございます。…ふふっ」
「どう致しまして。でも、最後の笑みは何ですか?」
「いえ……瑞穂さん、何気に女の子のファッションとか、詳しく
なられてますよね?」
「う゛……えーと、恵泉でそう云う話題に触れる機会が多かった物
ですから、いつの間にか……」
「ふふっ、怪我の功名ですわね」
そう云うと、紫苑は嬉しそうににこにこと笑った。
何か、余り嬉しく無い……。
「そろそろお昼にしましょうか?」
「あら、もうそんな時間ですの? 楽しくて、気がつきませんでしたわ」
そう云って紫苑は腕時計を確認した。
時刻は既に12時を半ば過ぎて居る。
「でも…そうですね、一息入れたい所ですね」
「じゃあ、そこのカフェテリアでお茶を頂きながら何か食べましょう」
丁度目に付いた、余り気どって無い風なお店があったのでそこで
昼にする事にした。
「さて、何を頼みましょうか?」
「そうですね……あら?」
メニューを眺めて居た紫苑が、ふと何かに気がついたように顔を上げる。
「? どうかしました?」
「いえ、その、周りの御方が……」
「え……?」
244 :
5時起き:2005/03/21(月) 12:30:10 ID:e1hZzSpr
そう云われて、ふと周りの会話に耳を澄ますと……。
(ねえねえ……あそこのカップル、二人とも凄い美人じゃない?)
(美人って云うか、片方男の人でしょう?)
(ええ〜?! 私全然気がつかなかった……)
(でも、女の人だって云われても気がつかないわよねぇ〜)
(そうよね〜。……うぅ、何か私、女としての自信無くしそう……)
「……あははは……」
き、気にしない方がいいのかな、これは?
「ふふ、美人は得ですわね、瑞穂さん?」
「しおん〜……『美人』って……」
「うふふふ」
紫苑は嬉しそうに笑う。
ダメだ、紫苑すっかり楽しんでるモード入っちゃってるよ……。
その後、昼食も無事(?)終わり、映画を見たりまたちょっとだけ
ショッピングをしたりお茶したり、と云う感じで僕達は順調にデートを
続けて行った。
そして、夕方。
僕は、紫苑を公園に連れて来て居た。
この公園は家の近くにあり、周りが閑静な住宅街と云う事もあって、
一人静かに過ごしたい時なんかに時々使って居たのだ。
恵泉に入ってからはとんと来る事は無かったので、ちょっと懐かしい
気もする。
「まあ…静かな感じで、素敵な公園ですね」
「ええ、恵泉に入る前の、僕のお気に入りの場所だったんです」
「そうだったのですか…」
たまにいる体験版しかやってない人は、すみやかに製品版を買ってきて、
貴子さんの凛デレで萌え尽きるか、
紫苑様を救ってくるか、
奏ちゃんをぎゅーっとしてくるか、
まりやの気持ちに応えてくるか、
由佳里ちゃんとハンバーグを一緒に食べてくるか、
一子ちゃんに憑依されていちご大福を食べさせてあげてくるか、
瑞穂ちゃんがやっぱり一番萌える自分の正気を疑うか、
してから出直してきていただきたい。私たちはここで待っているから。
246 :
5時起き:2005/03/21(月) 12:30:56 ID:e1hZzSpr
夕日の光に目を細めながら、紫苑が嬉しそうに公園を眺める。
僕は、紫苑と一緒に、公園のベンチに座った。
「今日はお疲れでした、紫苑」
「いいえ、疲れては居ませんわ。だって、こんなに楽しかったのですもの」
そう云って紫苑は、夕陽をまぶしそうに眺めて居る。
「いい夕陽ですね……」
「そうですね」
とさっ。
紫苑は目を瞑ると、僕に頭を預けて来た。
「……紫苑……」
「ふふっ、ちょっとだけ、甘えさせて下さいね」
「……ええ、どうぞご存分に」
そうして、僕達は夕陽が沈んで宵闇が降りてくる頃まで、そのまま
肩を寄せ合いながらベンチに座って居た。
「…さて、ちょっと寒くなって来たから家の方に行きましょう。実は
楓さんにお願いして、晩ご飯準備して貰ってあるんですよ」
「まあ、それは楽しみですわね」
紫苑は嬉しそうに微笑む。
「……あ、そうだ」
ふと、僕は立ち止まる。
「? 如何なさいまして?」
「ええ、大切な事を忘れて居ました」
僕はそう云うと、紫苑の方に向き直る。
247 :
5時起き:2005/03/21(月) 12:31:45 ID:e1hZzSpr
「ダメですね、僕は。一番大切な事を忘れてるなんて」
「え?」
僕は、不思議そうな顔をしている紫苑をそっと抱き寄せながら。
「誕生日おめでとう、紫苑」
「…あ……」
少し驚いたような表情をした後、ぱあっと紫苑は嬉しそうに笑顔になった。
「ありがとう、ございます……」
そう云うと、紫苑はきゅっと僕に抱きついてきた。
「……瑞穂さん」
「何ですか?」
「もう一つだけ、私の我が儘を聞いて頂けます?」
「紫苑の我が儘なら、幾らでも聞いて上げますよ」
「ふふっ、そう云って頂けると嬉しいですわね。では……」
そう云うと、紫苑は僕の方を見て、そっと目を閉じた。
「……敵いませんね、僕のお姫様には」
僕はそう呟くと、紫苑に口づけをした。
そうやって少しの間、お互いの温もりを確かめ合った後、離れる。
「……瑞穂さん」
「紫苑……」
「瑞穂さん、ありがとうございます。……大好きですわよ」
少し頬を赤く染めて、紫苑がそう云って来た。
「紫苑……うん、僕も、紫苑の事が大好きです」
「……ありがとうございます」
248 :
5時起き:2005/03/21(月) 12:32:40 ID:e1hZzSpr
「…さ、デートの仕上げの夕食会をしましょう。楓さん待ちくたびれてる
かもしれませんよ?」
「ふふっ、そうですわね。……それから、その後も期待して宜しいかしら?」
「ぶっ……そ、『その後』、って……?」
突然紫苑がそんな事を云う物だから、危うくこけそうになった。
「あら? 今日は私、父様と母様には瑞穂さんのお宅にお泊りすると
云って来ましたのよ?」
「え……えええっ?!」
僕が驚いたような顔をすると、紫苑はぺろっと舌を出した。
「……確信犯ですね、紫苑は……」
「あら、誕生日に大好きな御方と共に夜を過ごせるなんて、この上ない
喜びですよ?」
そう云って紫苑はふふふっと笑った。
「ふぅ、やっぱり紫苑には敵いませんね。……じゃあ、今夜は寝かせませんよ?」
「あら? 恐いですわね、ふふっ。お手柔らかにおねがいしますね」
嬉しそうにそう云うと、紫苑はまた腕を組んで来た。
「じゃあ、いきましょうか」
「はい、瑞穂さん♪」
組んだ腕の温もりが、僕達のこれからを象徴して居るようだった。
終わり。
249 :
5時起き:2005/03/21(月) 12:34:07 ID:e1hZzSpr
以上であります。
昨日酒飲みながら書き始めたんで、やや細かい所で描写が
変な所があるのが今回の反省点だろーか_| ̄|○
まあ、ありがちなネタではありますがどうぞご笑納くだされば幸いです。
・・・しかし、自サイト掲載用の紫苑さんSS出しちまったしなあ・・・
どーしよ_| ̄|○
>>249 ぐあ。リロードチェックせずに割り込んでしまった……。
ごめんなさい。
あと、GJ! やっぱ、紫苑様好きだわ。
昨日のうちに紫苑様ENDを再プレイして
つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
そしてこのスレを読んで
つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
嗚呼、今年の3/21はなんて素晴らしいんだ・・・・デスマで休出な漏れの心は完全に
癒されたよ。全ての投稿職人様に(・∀・)bグッジョブ!!
といいつつ
>>212 意外とそういう話しも好き。というかそこまで黒くなくても、そういう心は奏の中には
あったとおもう。
だめだぁ・・。
紫苑様好きの俺にはもうたまらない一日だ・・。
萌萌萌萌萌!!!!!
職人様GJです。
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麒麟の消しゴムです・・・。
上手くいってるかどうか・・・?
>>255 キリンの消しゴムに見えなくも無いですが・・・
少々無理があるような気も致します
紫苑様にプレゼントを用意できなかった私の言う科白ではありませんね
やっぱ、無理がありますか・・。
AA作成は初めてなので。
やっぱり、難しいですね
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%/++/%##%%##%%%/++++/%-------------/%######%######
ツール使いました。
ごめんなさい。
紫苑様ですが、駄目ですね・・・。
もっと勉強してきます。
次は・・・誰でしたっけ?
ご迷惑をおかけします。209です。
処女俺の感想をくれた人、ありがとうございます。
書きたくないという訳ではないのですが、
続き物化については、このスレのカラーにそぐわないと思うので投下はありません。
ご理解のほど、よろしくお願いします。
この話題はここまでという事で。
>>174 それについては私の許可は特に要りませんです。
スレ汚し申し訳ない。
遅レスだが>215-225にワラタ GJ
慶行パパは巨大戦艦かと
ラスボスの曲が脳内流れてたよ
プレゼント('A`)ノ⌒ヽヤル
キリンの消しゴム
,,.. -‐'' ,.== 、‐- ..,_
;'" ~ r" ゙ヽ,.r‐.、 `' :..,,
;. { ∂ 〃 ',
; ';, ,._ 〃 ;'
;. .. ,,. /,r:=;.、";;〃 ,'
;`‐- :-‐ ./,;,'、. 丿〃`‐-::..,,, ,:';
; ./ ¨ ..〃 ;
; / ゙、 ;
,' /ヽ ,.r''ヽ ,'
. ; ./`'" .{ } ;'
; i;;`;;,.r‐:、 `''''/l ;
; `'''┘ ヽ,,_. .// ';
; ヾミiノ _,,..」
`‐-‐-- ,,,.... ,,, -‐`"--‐‐''"~
中の人
,.-- 、
.r" ゙ヽ,.r‐.、
{ ∂ 〃
.';, _,,,._〃
/i { 〃
/;.ノ. `〃
./ 〃
/ ゙、
/ヽ ,.r''ヽ
./`'" .{ }
i;;`;;,.r‐:、 `''''/l
`'''┘ ヽ,,_. .//
ヾミiノ
`"
>>214 こっちの方にAWACSの警戒網な張られてないとふんだのだが、バレたか(笑)
一週間かけてこの程度とは俺ももうダメぽですな。
>>262 うっ・・・・こう書くのか・・・。
AA版に行って修行してきます。
>163 (3-180氏)
>180 (初代スレ123氏)
>197
>202 (前スレ226氏)
>227 (お姉さまと一緒のなかのひと氏)
>237
>240 (五時起き氏)
お誕生日SS乙です&GJです。
う〜ん、わたくしのSSがなんとも稚拙なことやら・・・みなさんを見習いませんとねぇ・・・。
どなたかチェック漏れてたらごめんなさい。
>185 (箱氏)
双つの流れ星シリーズGJです。
さて、第四部はどんな風になるのか、楽しみです。
>209 (test氏)
奏ちゃんの裏、ですか・・・ちょっと悲しいお話ですね・・・GJ!
>210 (209氏)
・・・どんまい・・・orz
>234 (いつぞやの7氏)
いやあ、まりやらしいというか・・・っていうか食うなっ!w
このたび、HPを開設してみましたので、是非ご覧下さい・・・。
まとめサイト様の作者別リストのほうから飛べますので。
・・・ホント、おとボクやってから新しいこといろいろやってるなあ・・・
SS書くのもそうだし、HP作るのも・・・
真夜中の恋人たち 前編
勝手に緋紗子先生ルート第二弾。
本編第三話、九月のお話です。
本編に比べりゃかなり圧縮してますが、それでも長いので
前後編に分けますた。
先生嫌いな人はすっぱりスルーするが吉。
夏休みが終わって、九月。まだまだ残暑は厳しい。
こんな季節にはお約束のように怪談が囁かれるけど、それはこのお嬢様学校である恵泉女
学院でも変わらないようだった。
例に漏れず、寮ではこういった話に強い奏ちゃんが『第二音楽室の怪』という話を仕入れてき
た。内容はと言えば、誰もいないはずの第二音楽室から夜な夜なピアノの音が聞こえるという、
極めてオーソドックスなものだ。八年ほど前に音楽特待制度が無くなって、第二音楽室が殆ど
使われなくなった為に出来た、よくある作り話かとも思ったけど、次の日に紫苑さんにも聞いて
みたら結構有名な話だそうで、実際に遭遇した、という体験談もいくつかあるらしかった。
その話に興味を持ったという事もあるし、一学期は何かとバタバタしていてゆっくりと校舎内を
散策する事も出来なかったので、丁度いい機会だと、第二音楽室に行ってみる事にした。
そういうわけで放課後、僕は第二音楽室前にやってきた。
「三階西側の一番奥……っと、ここだ。鍵は開いてるわけ……あれ、開いてる……?」
何気なく扉に手をかけたら開いてしまった。でも教室を使っているような様子はないし、人の
気配も感じられないようだった。僕はなんだか悪い事をしているような気分になって、音を立て
ないように扉を開けると、中に滑り込んだ。
誰もいないと思っていたけど、教室の奥に、窓から差し込む夕陽の中に立ちすくむ緋紗子先
生の姿があった。でもそこから見える先生の背中はとても小さく、まるで今にもオレンジ色の光
の中に掻き消えていってしまいそうな、とても脆く儚げなイメージを連想させるものだった。
「……緋紗子、先生……?」
僕はどうしていいかわからず、少しためらいがちに呼びかけると、先生はこちらを振り返った。
「…………み、ずほ……くん?」
その時の先生の顔は驚愕とほんの少しの落胆に彩られていた。
「すいません、驚かせてしまったようです……。でも、どうしたんですか? まるで幽霊にでも会っ
たような顔をして……」
「幽霊、か……そうかもしれませんね……」
「……?」
「……瑞穂くんは、こんな所に何か用ですか?」
「いえ、特に用事があるというわけじゃなくて……散歩の途中です」
「そうですか……私も別に、ここに何か用事があるわけではないんです」
「用がない……のですか?」
「うん……瑞穂くんには前にお話ししましたよね、私には人生を変えるほどの想い出があった
……ってこと」
「はい……それが?」
「ふふっ……実はここが、その想い出の舞台。
いつもね……夕陽が落ちる頃、ここでこうしているのが、私の日課なの……そう、いつも……」
「まさか、毎日……?」
「……ええ。生徒が利用していない日は毎日、ね。ここの先生になってもう二年経ったけど……
どうしてもやめられないの」
「どうして……?」
「さあ、どうしてかしら……?」
緋紗子先生は悪戯っぽくそう微笑むと、西の空で傾き始めた太陽を眺めて目を細めた。
そしてまた、僕が教室に入ってきた時に見たのと同じ、脆く儚げな雰囲気を漂わせ始める。
それは、いつもの柔和な先生でも、夏休みに垣間見せた妖艶な感じでもなく……何と言うか、
置いていかれた迷子の様な、そんな表情をしていた。
そんな表情の先生を見ているのはとても切なくて、そして苦しかったけど、今教室を出て行っ
たら先生はこのまま何処かへ消えてしまうのではないかという恐怖心から、僕は先生の隣に並
ぶと、同じように黙って窓の外の太陽を眺めていた。
結局、それからは一言も言葉を交わさないまま陽が沈むまで二人で夕陽を眺めて、その後
はどちらからともなく第二音楽室を後にした。
翌日、紫苑さんが第二音楽室と音楽特待制度が無くなった前後の事を調べてくれていた。
──八年前、まだ特待制度があった頃、一人の特待生がいた。とても寡黙で無愛想、放課後
は一人、第二音楽室でピアノを弾く、といった人だったらしい。
ところが、いつからか彼女の練習風景に一人の上級生が加わり、当時の話だと二人はとても
仲が良く、寡黙といわれた特待生も、横にその上級生がいるときは笑顔を見せる事があった。
しかしある日、上級生は親の都合で転校、それを機に特待生は以前の寡黙な性格に戻り、ク
ラスでも孤立。そして上級生がいなくなった一月後、全く偶然の事故で特待生は亡くなった。
噂や時期的な問題から自殺ではないかと取り沙汰されたりもしたが、最終的には事故という
形で決着が付いた。
それ以降、音楽特待の制度は廃止、誰も使わなくなった第二音楽室から時折夜になるとピア
ノの音が聞こえてくるようになった、という話だった。
尤も、音楽特待の制度が廃止になったのはそれとは関係なく、ただ単に上級音楽教員に欠員
ができたためらしい。
……第二音楽室、上級生、人生を変えるような……想い出……。
それに八年前。ちょうど緋紗子先生が在学していた時期なんじゃないだろうか……。
──緋紗子先生、まさか、あの人は……。
結局、その日は朝に紫苑さんの話を聞いてしまったために、ずっとそのことばかり考えていて、
授業に集中する事が出来なかった。あともう一つ、何か手懸りがあればバラバラになったピース
が繋がるのに。そんな事を考えていた僕に、思わぬところからも情報が飛び込んできた。
学院長室の掃除を終えた時、僕は学院長に呼び止められて、話をする事になった。
「宮小路さんはご存知かしら……梶浦先生が修道女であるということを」
「あ、はい。先生から伺いました。正直のところ、とても驚きましたが」
「ふふっ、そうですね……私はあの子を見ていると、好きな人から逃げるために、教会に逃げ
込んで修道女になったお転婆娘……という古い映画を思い出すのですよ」
「好きな人から逃げるためにシスターになった、ですか……。
……ん?あの子……ということは、緋紗子先生も学院長の教え子なのですか?」
「ええ……私の教え子ですよ。ですから正直なところ、修道女になると言われてとても驚いたの
ですけれどね」
「確かに、すごくらしくない感じがしたのは、私もそう思いましたが……」
「そうですか……実のところ、私も考えあぐねてしまいましてね。あの子は修道女に向いていな
いのでは、と思っているのです」
「……しかし何故、私にそのようなお話を?」
「夏休みが明けたくらいからでしょうか……あの子の様子がおかしいのです。どう、とは私にも
言えないのですが」
「………………」
「何かあの子……いや、梶浦先生から聞いていませんか?」
確かに僕は緋紗子先生から色々と聞かされていたし、普段は人には見せないであろう先生
の違った一面も見てきた……でもそれらは全て断片的かつ寓意的なものばかりで、まだ自分
なりの答えすら導き出されてはいない。正直なところ、どれ一つとっても学院長に説明出来る
レベルのものではなかった。
「ひょっとしたら何かお話できることがあるのかも知れませんが、上手く説明できないことばか
りなので……申し訳ありません」
「……そうですか。いえ、それなら良いのですよ……時期が時期だったものですから、気になっ
ていたのですよ」
「時期……?」
「ああ、それは良いのです……少し立ち入った事を聞いてしまいました。ごめんなさいね」
「い、いえ……」
話が終わると僕は学院長室を後にした。
「緋紗子先生の様子がおかしい……か」
それは僕も薄々感じてはいた事だったけど、なにせ僕はまだ緋紗子先生と会ってまだ日が
浅く、はっきりそうとは確信する事が出来ないでいた。でも、学院長が自分の教え子だったと
言う緋紗子先生を見て、様子がおかしいと言うのであれば、多分それは間違ってはいないの
だろう。
僕は情報を整理する為に図書室へと向かった。
図書室に着いた僕は、まず在校生名簿が置かれている棚へと足を運んだ。
「今から八年前の名簿は……これだ。緋紗子先生の名前は……っと、あった」
そして次に、その年に在籍していた音楽特待生の名前を調べる。その年に事故で亡くなっ
ているので、翌年度の名簿も調べて名前が無いことを確認した。
長谷川詩織。
おそらくそれが第二音楽室に現れると言う幽霊の名だ。そして先生の……。
緋紗子先生が学院に在籍していた頃や、音楽特待生が事故で亡くなったのは八年前。
そして第二音楽室で、人生をひっくり返してしまうような経験をした。その時期は夏だが八月
は夏休みだから、そうなると七月か九月と言う事になるが、七月は梅雨が明けるとすぐに夏
休みになってしまうから真っ白な夏、と言う表現はそぐわない。だとすると九月と言う事になる。
それなら学院長の言っていた、時期が時期だから、という事にも符号が一致する。
もっとも、先生がこの時期に昔の事を強く思い出すのは今年に始まった事じゃないはずだ。
にも拘らず、学院長がわざわざあんなことを言ったと言う事は、去年までと今年とでは緋紗子
先生の様子が違っていると言う事だ。
それは多分、夏休み緋紗子先生としたことも関係しているのだろう。
また、緋紗子先生が想い出と言っていた事と、紫苑さんの話を照らし合わせると、第二音楽
室の怪として伝わっている話の登場人物は緋紗子先生と長谷川詩織さんに間違いない。そう
するとやはり、第二音楽室の幽霊は詩織さんと言う事になる。
前に、食堂で奏ちゃんが「お姉さま」と言うのを聞いて酷く寂しそうな瞳をしていた事も、下級
生が特に親しい上級生を呼ぶときに「お姉さま」と呼ぶ、由佳里ちゃんとまりやの様な関係が、
緋紗子先生と詩織さんの間にもあったとすれば、頷ける。
そして、学院長が緋紗子先生の事を、好きな人から逃げる為に教会に逃げ込んで修道女に
なったお転婆娘、と例えたのは、詩織さんを失った事に向き合う事から逃げるためにシスター
になったという事を言っているのだろう。
緋紗子先生、第二音楽室、想い出、白い夏、学院長の話、上級生、音楽特待生、幽霊──。
全てが一本の線で繋がった。
そして、詩織さんの幽霊が今も第二音楽室に現れると言うなら、それはきっと緋紗子先生を
待ち続けているからに違いないだろう。
なら僕は、お節介でも二人を逢わせてあげたい。
エルダーになって放課後学校に残る事が多くなるからと、万が一の事が起こらないようにと宿
直のシフト表を貰っているから、今日が緋紗子先生が宿直の日だと言う事は分かっている。
どうせ実行するなら早いに越した事は無いので、今晩、動く事にした。
そのまま夜まで校舎内に居続ける訳にも行かないので、寮に戻って夕食を済ませると、一旦
部屋に戻った。
「それじゃ、お姉さまは第二音楽室の幽霊さんに会いに行かれるわけですか〜。一子も一緒に
行きたいです!」
夜中、部屋を空けることになるので、一子ちゃんにだけは学校に行く事を伝えておこうと思っ
て話をすると、彼女は同行を求めてきたが、それに対する僕の答えはノーだった。
「ごめんね、一子ちゃん。今回はちょっと色々な事情が絡み合っていて、出来れば一人で行きた
いの。本当にゴメン」
「お、お姉さまっ、そんな、謝ったりしないで下さい。お姉さまの真剣な顔を見ればそれがどれだ
け大事な事なのか解りますから。私のほうこそわがまま言ってしまってすいません」
「うん……ありがとう」
「いえいえ、それでは私は留守番をしていますので、安心して行ってきてください!」
「ありがとう、一子ちゃん」
そして、僕は夜の校舎へと向かった。
「お姉さまっ……!」
突然の声に振り返ると、そこには由佳里ちゃんと奏ちゃん、それにまりやがいた。
「三人ともどうしたの……?」
「由佳里に聞いたのよ。エルダー様ともあろうお方がこそこそ肝試しとは……っていうかま〜ぜ〜
て〜」
「いや、別に肝試しに行くわけじゃないよ……」
「まあまあ、やることはあんまり変わんないんでしょ〜?」
「わっ、わたしも……っ。私も行きますっ!」
「奏も行くのですよ〜!」
「……ごめん、遊びに行くわけじゃないから。確かに、これから第二音楽室に向かうけど、あま
り興味本位で首を突っ込んでいいことじゃない」
ちょっと冷たいかとも思ったけど、それでもきっぱりと断った。でもまりやはちゃんと僕の意を
汲んでくれた。
「……そっか、わかった。由佳里、奏ちゃんも。帰るよ」
「ええっ……でも、まりやお姉さま……」
「あんた怖がりなんだから、どうせ付いて行ったって足引っ張るだけよ」
「ううっ……」
「奏ちゃんもいいね」
「は、はいなのです」
「んじゃ、あたしたちは帰るけど……あまりムリしちゃダメだよ、瑞穂ちゃん」
少し不満げにしていた奏ちゃんと由佳里ちゃんをまりやが連れて帰ったのを見届けると、守
衛さんに見つからないように校舎に侵入し、第二音楽室へと向かった。
基本的に守衛さんは学院の敷地内への出入りを監視しているだけなので、一度校舎に入っ
てしまえば見つかる心配は殆ど無い。
そして、第二音楽室に着いた。
扉を開けようと試してみたけど、ちゃんと施錠されていた。でも、それについては心配していな
い。昨日、放課後の第二音楽室に緋紗子先生がいたと言う事は、無くなったスペアの鍵を持っ
ているのは先生と言う事になる。ここで待っていれば、そのうち見回りに来る先生に会えるだろ
う。僕は壁に寄りかかると、目を閉じた──。
>84に追加してみるテスト。連投すまん。
ある日の鏑木家
貴子「ところで、千穂さんがどのような方かは決めてあるんですか?」
紫苑「そういえば…考えてませんでしたね」
まりや「え?てっきりエルダーモード瑞穂ちゃんだと思ってたんだけど。そのつもりでデザインしたし」
貴子「…そうね、その方が演じ慣れているでしょうから襤褸も出にくい…か」
まりや「というわけで第一弾は…これだあ!」(ジャーン!)
貴子「ど、どこからシンバルの音が!?」
瑞穂「まりやですから…ってなんで恵泉の制服!?」
まりや「あの頃を思い出すにはもってこいでしょ?」
瑞穂「ええっと…新しい服の寸法合わせが目的だったのではなかったかしら…?」
まりや「まあまあ、まずは女になりきってもらわないと服が似合うかどうかより違和感が先に来ちゃうからね。それに、着慣れてるんだからリハビリにはもってこいでしょ?」
いろいろとツッコミたいけど否定できない…
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ノノノノj{_) ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ´θ^θン)u ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
まりや「因みに、あたしたちも制服に着替えるからね」
貴子「な…私たちもですの!?」
紫苑「まあまあ、面白そうじゃありませんか」
まりや「さっすが紫苑さま、話が分かりますね。というわけで貴子覚悟〜!」
貴子「いやっ、ちょっ、瑞穂さんがいるのにっ!」
まりや「まあまあ、裸になるわけじゃないんだしさ」
貴子「そういう問題ではありません!紫苑さま、紫苑さまも何とか仰ってください!」
紫苑「と云われましても…私とまりやさんは体育の時は瑞穂さんと一緒に着替えていましたから」
貴子「なっ!?い、一緒に…着替え…!」
まりや「そうそう、つまり下着姿なんかお互い見慣れてるからどうってことないってわけ」
紫苑「瑞穂さんが着替えている途中に後ろから抱きついたこともありましたわね」
まりや「というかほとんど毎回やってませんでしたっけ?瑞穂ちゃんの胸パッド目当てに」
紫苑「あら、そうだったかしら?」
貴子「……きゅう」
瑞穂「わあ!貴子さんしっかり!」
まりや「ほら瑞穂ちゃん、今のうちにあっちで準備してきなよ。貴子はあたしたちが介抱しておくからさ」
瑞穂「い、いいのかなぁ…」
紫苑「任せてください。こちらの準備が終わったらお知らせしますから」
まりや「あ、瑞穂ちゃん。テープとショーツ忘れてるよ」
瑞穂「え!?本当にやるの!?とほほ、僕のプライドって…」
紫苑「プライドと云われましても…」
まりや「そんなのとっくの昔になくなってるでしょ?」
即答ですか…
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ヽ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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まりや「それより言葉が男に戻ってるよ、瑞穂ちゃん。減点一ね」
瑞穂「減点って何…?」
まりや「さあねえ。うひひひひひ…」
紫苑「うふふふふふ…」
瑞穂(…不安だ、果てしなく不安だ…)
279 :
3-206:2005/03/21(月) 23:09:11 ID:yLE2/dTc
紫苑と貴子も一子の話を聞いていると勝手に設定。
いや、正体がばれれば一子なんて双子の妹が存在しないことはすぐにわかるだろうし。
するとプールのあれは何だったのかという話になり、やむなく説明することになるんじゃないかと。
紫苑さんはだからオーラが同じだったのかと納得してくれるだろうし、貴子も紫苑さまが信じるのならば…と判断するのではないかと。
…この辺の話でまた小ネタが書けそうな。
本当は紫苑さま誕生日SSを書こうと思ってたけど、複数の人たちのネタと微妙に被ってたから没。
それが悔しかったから書いた。でも一人で書きすぎるのは冷めると思った。今後はやらない。
うう、良いSSがどんどん投下されて…皆さんGJ!!
大分遅くなりましたけど…まだ時間ぎりぎりってことで、ようやく出来た誕生日SS
投下します(と、いうわけで最強王座決定戦はちょっとお休み)。
バースデー・プレゼント(1)
「誕生日プレゼント…ですか?」
「ええ。もうすぐ紫苑の誕生日だし…何か欲しいものはある?」
恵泉を卒業してから一年。浪人生となった僕たちは、無事受験を終え、大学に合格した。
そんなわけで、今日は僕の部屋で二人でささやかなお祝いをしていた。
当初、父様は少しあきれていたけれど、「まあ、良い社会勉強になるだろう」なんて笑っていて、
改めて、父様の懐の広さを思い知った気がして…
…閑話休題。僕はすぐそばまで差し迫った紫苑の誕生日に、何をプレゼントするか…
去年はまりやに相談してもらって用意したんだけれど、今年は本人に聞いてみる事にした。けど…
「もう、瑞穂さんったら…そういう事は本人に聞かず、自分で考えて贈るものですよ…」
「あはは…は…」
そう苦笑されて、僕は乾いた笑いを浮かべる。やっぱりそういうものか…
「でも、そんなところも瑞穂さんらしいですわ…
…ねえ、瑞穂さん。私、是非とも欲しいものがあるんですけれど」
「是非とも欲しいもの…ですか。何ですか?僕に用意できるものなら何でも言って?」
その言葉に、紫苑はにっこり微笑むと…
「そんなに手に入りにくいものではありませんわ。…それは、一枚の紙、ですの」
「紙…」
「はい。でも、ただその紙があるだけじゃ駄目なのです。
そこには、二人分の名前を書く欄がありまして…片方には私が名前を書いて、
もう片方には瑞穂さんの名前を書いていただきたいのです」
そこまで聞くと、僕はすぐ傍の引き出しに手を伸ばした。
「その紙って…ひょっとして、これじゃないかな?」
引き出しから、一枚の紙を取り出す。
その紙には、既に僕の名前、そして更に言えば僕の父の名前も、父母氏名欄に書かれてある。
…まあ、一言で言えば…後は紫苑が名前を書くだけで完成する、「婚姻届」だった。
紫苑は、驚きの表情を浮かべていて…
「み、ずほさん…これ…!!」
「大学受験が終わった時に…父と相談して、用意したんだ。
僕としては、大学合格祝いとして用意したんだけど、ね…」
僕がそう苦笑したとき…紫苑は、顔を覆って、泣きだしていた。
バースデー・プレゼント(2)
「し、紫苑?あの…」
僕はうろたえてしまったけれど、
「ありがとうございます、瑞穂さん。私、私…本当に、嬉しいです…!!」
「紫苑…」
紫苑は涙をぬぐって、僕に笑顔を見せてくれた。
「後は、私が名前を書けば…私は、十条ではなく、鏑木紫苑に、なるのですね…」
紫苑は、少し感慨深げに婚姻届を眺めていた。
…紫苑にとって、十条の家は「誇り」だった。
自らを犠牲にしても、守ろうとした家…でもその家は、僕と結婚する事で絶える事になってしまう…
それを考えると、僕は素直に喜べなかった。けれど…
「まだまだ未熟で、不束な嫁ですけれど…改めてよろしくお願いいたしますね、”あなた”…」
「…なんだか、照れるなぁ。そう呼ばれるの…」
「あら。私たちは夫婦になるのですし、そうお呼びするのが普通だと思うのですけれど」
紫苑は、笑顔でそう断言した。本当に、古風だなぁ…そう考えて。
…僕は絶対紫苑を幸せにしようと…そう、改めて誓った。
「あ。でも…大学には、「十条」の名前で生徒登録しますね。
…折角生まれて初めて共学に入るのですから、殿方にもてなくなるのは勿体無いですから…」
「…いや、あの、紫苑…?僕としてはそれは困るんだけれど…」
そう苦笑しながらも、僕には紫苑の考えが判っていた。
きっと、僕がヤキモチ妬くのをするのを楽しむつもりなんだろうなぁ、と…
「…でも、僕は絶対に紫苑を手放したりしないからね…?」
「…はい、あなた。しっかり、私の事を捕まえていてくださいね…」
紫苑が、僕に寄り添い頭を寄せる。僕はその頭をそっと抱き寄せて、優しく撫でる…
二人の、ほんの小さな…でも、大きな一歩が踏み出される。新しい生活が始まる。
けれど…僕たちは、ずっと一緒に歩いていくんだろう。ずっと、ずっと…
おわり…
久々に、シリアスものを書きました…w
ホントはコメディタッチのもあったんだけれど、そっちは大いにネタが他の職人さんと
被ったので、ボツに…orz
ともあれ、紫苑様誕生日おめでとうございます!!
誕生日今日だったのか、紫苑がいっぱい読めていいねー。
285 :
前スレ226:2005/03/22(火) 00:06:43 ID:qlOubrN2
>>初代126氏
Good Job!!流石であります。短くてもキッチリ綺麗にまとまってますね。
うーむ。自分もこうありたいです。
286 :
3-180:2005/03/22(火) 00:07:27 ID:6CXWqo0v
ふぅ、さすがにもう一つは無理だったか。作者の皆様GJです。
自分のが一番見劣りするのは仕様ですとあきらめるしかないかなorz
287 :
2スレ402:2005/03/22(火) 00:20:21 ID:plIVJjHl
>>283 初代スレ126氏
いいお話読ませて頂きました。
前スレ226氏
>うーむ。自分もこうありたいです。
これについては、全く同意見です。
真夜中の恋人たち 後編です。
全国二名の緋紗子ファンの皆様、お待たせしました。
先生のお話の続きです。
やっぱり先生嫌いな人はすっぱりスルーするが吉。
さらに大作がいくつも連発されて・・・GJ,実にGJですっ!!
ところで、第2スレの423で書かれている
人格交換ネタって、書かれているのでしょうか・・・?
思いついたので途中まで書いてみているのですが、
被ってしまうと悪いな・・・と思いまして。
そして数十分──。
コツ、コツ、コツ、コツ……
足音が聞こえてきた。おそらく緋紗子先生のものだろう。でも、その足音は第二音楽室に来
る前に停まってしまった。
僕は姿を確認する為に足音のした方向を見る。すると隣の修身室がある辺りに人影が確認
出来た。周囲が暗い為にはっきりと姿が見えたわけではないけど、そのシルエットは間違いなく
緋紗子先生のものだった。先生は僕の方には気が付いていないようで、どうも、こちらに来よう
かどうか逡巡しているようだった。
僕は先生に声をかける為に近付いていったけど、結局、先生が僕の姿に気が付く事は無かっ
た。
「緋紗子先生……」
「…………」
「……緋紗子先生!」
「きゃあっ!……だ、誰っ!?」
「僕です」
「み……瑞穂、くん……?」
「はい。先生は見回りですか?」
「……ええ、そうです。警備会社を頼んであるのに、未だに宿直制度なんていうものがあるお陰
でこの有様です……って、違います!」
「……?」
「はぁ……こんな時間に校舎内にいることに、何か理性的な理由はあるのかしら?」
緋紗子先生は溜息をつくと、呆れたような、可笑しそうな表情で僕を見る。
「それじゃあ……先生に会いにきた、と言うのはどうでしょう?」
「あら、嬉しい事を言ってくれますね。……その歳になって肝試しも無いと思うけど……どうして?」
「ふふっ、先生に会いにきたと言うのも嘘じゃありませんよ。あと、第二音楽室に用事があって」
「第二……音楽室……」
緋紗子先生の表情は、そこで僅かに硬くなる。
僕は先生に、ここ数日考えていた事を確認してみる事にした。
「緋紗子先生は第二音楽室の話、ご存知ですよね……?」
「……それが、どうかしたの?」
「……八年前に事故で亡くなった音楽特待生と親しくしていた先輩……というのは、緋紗子先生
の事ですね」
「!!」
僕は緋紗子先生と視線を真っ直ぐに交錯させる。しばらくの凝固の後に、不意に眼を逸らした
のは先生の方だった。
「…………」
「長谷川詩織。先生と仲の良かった音楽特待生の名前ですね」
「……そんな事まで知ってるんですか。瑞穂くんにあの話をしたのは……失敗でした。
そう……私はあの子を……長谷川詩織を置いて逃げた、卑怯な女よ──」
緋紗子先生は、捨てるように言葉を吐き出すと──月が照らす窓辺にすがり、外を眺めた。
そして緋紗子先生は、詩織さんとの想い出を話し始めた。
二人の出会い。
最初は頑なだった詩織さんが段々と緋紗子先生に心を開いていった事。
そしていつしか二人がお互いの事を好きになってしまった事。
詩織さんは先生に抱かれることを望み、でも先生は最後まで詩織さんに自分の爪痕を残す
事が出来なかった事。
緋紗子先生は詩織さんの望みに背いてまで、詩織さんを大切にした……それなのに。
二人の間には、永遠の地獄が口を開いて待ち構えていた──。
「私は……私は詩織をここに置き去りにした、卑怯な女なのよ──。
転校して一月、友達から電話を貰ったわ──あの子が、詩織が死んだ、と」
「でも緋紗子先生は、詩織さんの事を考えて身を引いたんでしょう……?」
僕もここに来て随分と考え方が柔らかくなったと思う。女の子同士の間に恋愛感情が発生す
る事なんて、きっと以前の僕なら到底理解出来なかっただろう。
「それは……ただの奇麗事なのよ!あぁ……」
緋紗子先生はそのままずるずると膝をつくと、壁にしがみついた。声が震えている。
「あの時あの子は……私に心から愛される事を望んでいた! 大切にされる事なんか望んでは
いなかったのよ……っ!」
緋紗子先生も詩織さんを愛する事を望んでいた。けれど自分の愛を押し殺してまで相手を大
切にしようとした……なのにその結果は最悪の帰結をもたらした。
愛し合う二人が結ばれる事も叶わず、大切にする事すら許されなかった。
そんな引き裂かれんばかりの胸の裡は、僕などには容易に想像出来るものではないだろう。
「そして詩織は死んでしまった……もう、二度と償う事は出来はしないのよ……もう……」
「……詩織さんが亡くなった事は、先生とは関係ないですよ?」
「……全ては結果なの。結果だけが私を苦しめ、私を赦さないのだから……」
その時──第二音楽室の方から微かにだけど、ピアノの音色が聞こえてきた。
「なに……なんなの……?」
緋紗子先生が驚愕に震えている。先生も巡回中にこの現象に遭遇した事はないようだ。
「……行きましょう。緋紗子先生も」
「どういうこと……なんなの……」
「詩織さんが待ってます」
「やっ……」
緋紗子先生は混乱した様子で頭を左右に振る。壁に寄りかかり、後ずさる。
「嫌よっ……!そんな……今更そんなのっ……詩織が……詩織が赦してくれるわけなんか……
無いっ……!!」
僕は逃げようとする緋紗子先生の行動を先読みして背後に回り、先生の両肩を掴む。
「いやあっ……!やめてっ!放してぇ……っ!!」
「そうやって、先生は苦しみ続けるつもりですか……逃げ続けるつもりですか……?」
「放っといてよ!あなたに何が解るって言うのよぉっ……!詩織を……っ、私をこれ以上苦しめ
ないでぇっ……!」
「何も解りませんよ、僕は先生でも詩織さんでもありませんから。でもね、この件に関しては僕は
もう無関係じゃないと思いますけど」
僕の言葉に反応して緋紗子先生は動きを止める。
「学院長がね、言ってましたよ? 夏休みが明けたくらいから先生の様子がおかしいって」
「……?」
「夏休み、僕とした事……後悔してますか?」
「……」
「詩織さんの代わりに僕を抱いてみて、気持ちは楽になりましたか、緋紗子お姉さま?」
「っ!!」
緋紗子先生は得体の知れないものを見るような眼で僕を見ていた。無理もない。夏休みにあっ
た事なんて誰にも言うわけはないし、先生がどう思って行動したかなんて先生にしかわからない。
そのはずなのに、心の闇と言えるような部分を見透かされてしまったのだから。
この学院で僕が鏑木だと言う事を知っているのはまりやと学院長だけだ。緋紗子先生から見
れば僕は、何かの事情で女装して女子校に通っている男の子、程度の認識でしかないはずだ。
それなのに、初めて会った時から先生は、ここにいてはいけないはずの僕に対して極めて協力
的だった。それは学院長の指示があったから、と言う理由だけでは到底説明できない。
多分、女装して女子校に通う、と言う事が僕にある種の背徳感を持たせ、それが女の子を好
きになった女の子、つまりは詩織さんの持っていた背徳感を思い出させるようなものだったから
なのだろう。
そして、詩織さんは既に亡くなっている。先生が彼女に対して罪悪感を感じていることは間違
いないけど、償いたいと思っても、もう償うことは出来ない。ただの逃避ではあるけど、そんな状
況で先生が僕を詩織さんに見立てて接してきていたとしても何もおかしくはない。夏休みの事も、
八年前に詩織さんを愛してあげられなかった事の代替行動だったという事だ。
ともかく、このままここで押し問答を続けているわけにも行かない。
僕は緋紗子先生の両肩を掴んだままそのまま前に押し出して第二音楽室の方に歩き出した。
「さ、行きましょう」
「いやあぁ……」
緋紗子先生は力なく、僕に押されて音楽室の前に立つ。蒼い部屋の中から僕は聞いた事の
ない、優しくて、そして不思議と悲しいメロディーが、ピアノに乗せてはっきりと流れてきていた。
「……さあ先生、スペアキーを」
「…………」
先生も勿論、第二音楽室の噂は耳にしていただろう。でも、噂の真偽を確かめて、もしそれ
が本当なら詩織さんに拒絶されるのが怖い。もし嘘だったら、それは詩織さんとの本当の離別
を意味してしまう。そんな想いがあったのだろう。
結局、先生はどちらも選べず、前進する事を放棄してその場に立ち止まる事を選んだ。
吹っ切る事も出来ず、割り切る事も出来ず、忘れる事も出来なかった。だから、夕方にいつ
も第二音楽室を訪れていた。
「開けて下さい、先生」
「……やぁ…………」
「緋紗子先生……いつまでそうやって甘えているつもりですか? そりゃあなたはそれでいいか
もしれません。悲劇のヒロインぶって自己陶酔してればいいんですから。でも詩織さんはどうな
ります? あなたの我侭に付き合わされてずっとそこに縛られたまま。全くいい迷惑ですね」
「そ、そんな……」
無論本心ではない。が、こうでも言わないと今の緋紗子先生の背中を押す事は出来そうに無
かった。謝罪でも何でも、とにかく今は先生を詩織さんに会わせることが先決だ。後のことを考
えている場合ではない。
「さ、どうしますか? 僕はどっちでも構いませんよ。別に会いたくなければ会わなければいいん
です。その場合は詩織さんが未来永劫ここに囚われ続けるだけの事ですから」
そう言って僕は先生の肩を掴んでいた手を離した。
「……わ、わたし……どうしたら……」
「今ここで会わなければ、この先詩織さんには二度と会うことは無いでしょう。そして、先生も詩
織さんもずっとここに囚われ続ける事になります。前に進んでいく事は出来なくなりますが……
先生はそれで良いんですか?」
それが僕の傲慢なのは解っている。それでも、出口のない先生の想いを何とかしたい。たと
え後で僕が責められるような事になったとしても。
先生は助けを求めるような瞳で僕の事を見つめていたけど、それが叶わない事を知ると、半
ば諦めたように第二音楽室の扉に向かい直った。
「…………し……おり」
開いた緋紗子先生の手には、既に小さな鍵が握られていた。
それはきっと、僕に逢う前から握られていた……そして自分の宿直当番が来る度に、緋紗子
先生はこうして逡巡を繰り返していたのかもしれない。
震える手で、先生は鍵を扉に伸ばす。
「……………………」
──ピアノの音が止んだ。
そして部屋には暗闇に沈めたかのような沈黙が降り積もる。
「………………………………」
雪のように冷たい、表情のないその姿。
月明かりの中、華奢なその少女は確かにそこにいた。
「………………し、お……」
「…………?」
少女の唇が微かに動き、言葉を紡ぎ出す。その声は僕には聞こえてこないけど……その途
端、緋紗子先生の身体が細かく震えだす。
「し、詩織……っ……」
少女は動かない。冷たく、無表情な瞳は一心に緋紗子先生を刺し貫いている。
緋紗子先生は、その視線を真っ向から受け止めようとしたけど、次第に体の震えが大きくなっ
て後ずさろうとした。でも、ここまで来た以上、僕はそれを許さなかった。
もはや退く事が出来ない事を知った緋紗子先生は、よろよろとした足取りで一歩一歩、少女
へと歩み寄っていく。
「……………………」
そして、緋紗子先生は少女の目の前に至る。だが、少女──詩織さんは微動だにしなかった。
「し、おり……詩織、ごめん……ごめんね……っ……!」
震える手で、緋紗子先生は詩織さんの身体を、ゆっくりと、きつく抱きしめた……。
「緋……紗、子…………お、姉さま……?」
「ごめんなさい……詩織……っ……」
強く抱きしめられた詩織さんの瞳に、ゆっくりと光が戻ってくる。
「緋紗子お姉さま…………っ……!!」
「詩織……!」
二人が抱き合った瞬間……強い光が僕を襲った。が、その光はほんの一瞬で消え去り、再び
目を開いた時にはもう、詩織さんは消えていくところだった。
「緋紗子先生……」
「……詩織、行っちゃった……」
先生は詩織さんを抱きしめた格好のまま呆然としていた。でも、その表情にはさっきまでの悔
恨や、苦しみは一切感じられなかった。
「大丈夫ですか……先生」
「うん。……たくさん詩織と話したわ。たくさん……八年分」
「そうですか……」
「ねえ、瑞穂くん。わたし、詩織に赦して貰えたかな……? 詩織が安心して逝けるように、ちゃ
んと送り出してあげる事、出来たかな……?」
「きっと大丈夫ですよ。消える瞬間、詩織さん笑ってましたから」
「そう、なんだ……よかった……」
緋紗子先生はそう言うと、張り詰めた糸が切れたかのように僕の方に倒れてきた。
「先生!?」
咄嗟の事だったけど、何とか抱きとめることが出来た。でも先生は離れようとはせず、僕に抱
きついたまま胸に顔を埋めていた。泣いているようだった。
「……先生?」
「ごめんなさい……もう少し、このまま……」
僕は先生の背中に手を回すと、ゆっくりと、優しく撫でた。
「落ち着きましたか?」
「ええ……ありがとう。ふふっ、これじゃ先生失格ですね」
「そんな事ありませんよ」
「うふふっ、いいんですよ。詩織にも怒られちゃいましたし」
「……?」
「死んだ人間にいつまでも構ってないでもっと現実を見なさい、って」
そう言って先生は僕から離れた。体を包み込んでいた温もりが離れていってしまって、少し寂
しい気分になる。
「ありがとう……瑞穂くん。あなたのお陰ね。わたしはやっと、前に向かって歩けるのね……やっ
と……」
「いえ、僕は……」
何もしていない、と言いかけてやめた。もともと僕はこのためにやって来たのだし、先生が前に
進むためのきっかけを作ったのは僕であることに違いはない。これは誇りに思ってもいいことだ
と思う。先生の感謝の気持ちは素直に受け取っておこう。
「さ、あまり遅くなると寮の皆さんに心配をかけてしまいますよ。瑞穂くんはもう帰りなさい。……
肝試しに来てたことは、特別に秘密にしてあげますから☆」
「……違いますって」
僕たちは一緒に通用口まで降りていった。
「瑞穂くん」
僕が校舎から出ると、緋紗子先生に呼び止められた。
「少しだけほろ苦くて、甘い……そんな世界って、理想だって思うわ。
……今日は、本当にありがとう」
そう言って緋紗子先生は、何かを吹っ切ったように清々しく、とても優しい、それでいて酷く寂し
げな微笑みを浮かべた。
その笑顔は僕の脳裏に焼き付き、この時から僕の心は先生に囚われてしまった──。
──To be continued
──To be continued とかあるけど
本編の体裁を真似ただけなんで続きません。
需要もないだろうけどなあ。
>>471 ごめんなさい、変なところで割り込んでしまって・・・
そしてGJです。
こんな風に瑞穂ちゃんとしてしまった理由とかが大々的に載っていれば
これほどセンセ、嫌われることも無かったであろうに・・・
302 :
5時起き:2005/03/22(火) 01:26:33 ID:9mQEj7XR
お疲れです、皆様。
改めて皆様の作品読み返して見ました。
コメント付けるの躊躇われるくらいいい作品揃ってますね、ホント。
GJとしか言いようがないです、ええ。
何か自分のやっつけ仕事ぶりが・・・うう_| ̄|○
>>245=
>>250氏
いえいえ、割り込みは気になさりませんように。
>>初代スレ45氏
まとめサイトさんからリンク発見したのですよ。
サイト公開おめでとうございます、発展を祈ってますよ。
私も、頑張って争奪戦を仕上げるか。
んで、次の誕生日は瑞穂ちゃんの5月12日ですね。
先はまだ長いなあ。
>>300 > 需要もないだろうけどなあ。
……って、そんなことないですよ。
そして
>>301 にまったく同感。
ただ、その理由も「お察しください」レベルではある
(すなわちそう難しくこねくり回す必要もない)と思いますが……。
海に行こう!番外編
人 間 性 ク イ ズ
〜後輩は不倫がお好き?大作戦!〜 1/7
「まりやのお笑いウルトラクイズ恒例、人間性クイズの
時間がやってまいりました」
まりやがピコピコハンマーを振りかざす。
ギャラリーは大盛り上がりである。
「今日のターゲットはもちろん瑞穂ちゃん。オトコオンナの癖に
同じ学校の生徒会長を慰み者にしたふてえ野郎であります」
「で、まりやお姉さま。どうやって瑞穂さんをはめちゃうんですか?」
「奏ちゃんに協力してもらうわ。簡単に言うと自分の部屋に一人いる
瑞穂ちゃんのところに奏ちゃんがやってきて愛を告白。そして自分との
関係を迫るという昼ドラよりもある種ベタな展開。健全な男の瑞穂ちゃんは
奏ちゃんをどうするのか?演劇部部長としての手腕が問われるわよ」
「さっきから私のことを慰み者とか勝手なことを言ってるようだけど
この縄を早くほどきなさい!」
貴子は座椅子に縄でグルグルに縛られている。
「その…瑞穂さまをだますのは気が引けるのですよ…」
奏は躊躇している。
「なぁにちゃんと私がフォローするから。私は兎も角、奏ちゃんなら
許してもらえるわよ。瑞穂ちゃんにしたって女だと奏ちゃんをだましてたんだから
おあいこでいいじゃない」
「瑞穂さんを恵泉に無理やり入学させる手引きをしたあなたに言う資格なんてありませんわ」
まりやはぴこっとハンマーを貴子に振り下ろす。
「手引きしてやらなかったらあんたは瑞穂ちゃんと一緒になれたかどうかなんてわかんないくせに。
むしろ感謝して欲しいくらいね」
「…」
2/7
「さて奏ちゃんと瑞穂ちゃんとの様子は部屋に仕掛けた隠しカメラからばっちり監視。
何かが起こってもすぐ駆けつけられるように私達はスタンバイ」
「ま、まりやさん。そんなものいつ仕掛けたんですか!!」
「昨日のお昼ぐらいかしら」
「て、ことはまさか…」
「ええ。カメラのテスト代わりに瑞穂ちゃんと貴子の夜のそれいけ大運動会は
ばっちり拝見させてもらったわ」
「…あ、…」
貴子は驚愕のあまり言葉が出せずにいる。
「ま、まりやお姉さま。それはいくらなんでも悪趣味じゃ…」
「ちなみにこんな感じにモニターされるわ」
『みず、ほ…さん…あぁっ』
『可愛いね、貴子さん』
監視モニターとは別のテレビから昨日の録画中継が映し出される。
由佳里、一子は顔を手で隠しながらも指の隙間からしっかりと
事の次第を目に焼き付けている。
奏はあまりの生々しさに何もできずに事のあらましを見据えているしかなかった。
「まぁまぁ、貴子さんたら」
紫苑はワインを三本あけてご陽気な様子である。
「外道ですわ!!まりやさん、覚えてらっしゃい!…うわぁぁあぁぁ!!」
貴子はやっとのことで言葉を紡ぎ出すと泣き出してしまった。
まりやは上映会を終わらせると監視モニターに目を向ける。
「あ、まりやお姉さま」
「これ以上見たらあんたたち、別荘にいる間はひとりエッチなしじゃ眠れないよ」
「ま、まりやお姉さま、な、何を言ってるんですか!!」
「由佳里は別にいつもしてるからいいか」
「な…」
「寮では週に2回は由佳里ちゃんの部屋から"致している"大きな声が聞こえてくるのですよ」
「私…聞かれてたの…」
「あの由佳里ちゃんには申し訳ないのですが、この一子も昨日…聞いてしまいました」
「もう由佳里はお嫁にいけない…うぅ…」
3/7
「さ、奏ちゃん。お願いね」
「…は、はいなのです」
落ち込む由佳里と慰める一子を尻目に奏は瑞穂の元に向かう。
「お姉さま…ごめんなさいなのです」
奏は瑞穂たちの部屋の扉をノックする。
『はい』
「奏です。よろしいですか」
『どうぞ』
『失礼致しますなのですよ』
『いらっしゃい、奏ちゃん』
監視室ではまりやたちがモニターを凝視している。
「ん…、すぅー」
紫苑はさらに焼酎を2本開けて眠ってしまった。
『瑞穂さま』
『何、奏ちゃん?』
『奏の話を聞いて欲しいのですよ』
「おお、奏ちゃん。さすが演劇部部長ね」
『奏は今日までずっと瑞穂さま…いいえお姉さまを追いかけてきた気がするのですよ』
『…』
『だから奏はこんなでも演劇部の部長やエルダーになることもできたのですよ』
『頑張ったんだね、奏ちゃん』
『ありがとうなのです。でも…』
『…?』
『お姉さまが卒業してから心にぽっかりと穴が開いたような気がするのですよ。
あれからずっと寝ても覚めてもお姉さまの…瑞穂さまの顔がう…うかん…で』
『奏ちゃん…どうしたの?』
4/7
「瑞穂さま…う、うわあぁあぁ…」
奏は、瑞穂の胸にいきなり飛び込む。
「奏ちゃ…」
「…瑞穂さま、好きなのですよ」
「…」
「本当はこの気持ちは奏だけの…秘密に…したかったのですよ。でも…お会いしてから
…もうこの気持ちを…うぅ…、くっ」
奏は瑞穂の胸で泣きじゃくる。
「…奏ちゃん、こっちを向いて」
「はい」
「ありがとう、奏ちゃん。でも僕には貴子さんがいるから…」
「その、奏を女として見てくれないのですか?奏は妹のままなのですか?」
「奏ちゃん、僕は…」
「その、貴子お姉さまが瑞穂さまの大事な方なのは…解っているのです。
でも、奏を瑞穂さまのお側に置いて欲しいのですよ」
「奏ちゃん?」
「お側に置いてくださらないのですか?」
「奏ちゃん、話を聞いて!」
瑞穂は語気を荒げた。
「は、はい!」
奏は思わず身をすくめてしまった。
「ご、ごめんね、奏ちゃん。隙だってありがとう。でも奏ちゃんの気持ちには応えられない。
だって僕の心の中には貴子さんでいっぱいだから」
「…」
「そして僕の中では貴子さんのことがどんどん大きくなってるんだ。
もう貴子さん以外では僕の…一緒になる人はありえない。
ちょっと気障な言い方だけど…だけどそれは断言できるんだ」
「瑞穂…さま」
5/7
『だからごめんね』
『…う、ごめんなさい瑞穂さま。奏、嘘ついてました。
実はこれはまりやお姉さまが考えた…ドッキリなのですよ』
「…駄目だったか、こうなったら由佳里…ってあれ?」
「由佳里さんはとっくの昔に一子さんに介抱されて一緒に出て行きましたわよ。
ばれてたことがよっぽどショックだったみたいですよ」
「……」
「で、どうするのまりやさん」
「やけに落ち着いてるわね、貴子」
「だって、奏さん…」
「貴子さん!!」
奏に連れられてとうとう監視ルームに瑞穂がやってきた。
「瑞穂さん」
「まりや、これはどういうこと?」
まりやに瑞穂がにじり寄る。
「どうしてくれましょうか、まりやさん」
「貴子、縛られてたんじゃなかったの」
「奏がほどいたのですよ」
貴子が指の関節を鳴らしてまりやに近づいていく。
「昨日の夜のこと覗いてたんだって?」
瑞穂のかもし出すオーラが頭上に"滅"の字を描く。
「あの…、ごかんべ…」
「「問答無用!!」」
「ぎゃあぁぁあぁあぁぁぁ!!」
6/7
「奏さん、夏とはいえ夜風は体に障りますよ」
貴子は外にたたずんでいる奏に話しかける。
「か、会長さん、さっきは本当にごめんなさいなのですよ」
「私はもう会長じゃないですよ。それにもういいです」
「だって奏は…」
「あれは…本当は瑞穂さんに…振って欲しかったんでしょ」
「…貴子お姉さま」
「だって、側に置いて欲しいとか言いながら表情は必死とか悲壮感とかいうよりも
既に諦めたようなというか何か言って欲しい答えを待っていたというか
そんな表情でしたよ。あのシチュエーションでそんな表情では変でしょ。
演劇部の部長さんらしくないですよ」
「…瑞穂さまは優しすぎるのですよ。こんなのただの奏のわがままなのに…。
それなのに瑞穂さまはあんなに…優しく…諭してくれました。奏は瑞穂さまに
あんなことを言っても貴子お姉さまが一番だって…言うのは…解って…いたのですよ。
でもこんな気持ちを…瑞穂さまがいる前で…抱え込んだままでいられるほど…
できた人間じゃないのですよ」
「奏さん…。言うことのほうが辛かったでしょうに」
貴子は奏を抱きしめた。
「うわぁああああああああぁ…、うっ…ぅっ…あぁぁぁああぁぁ」
「…奏さん」
奏が泣き止むまで貴子は側にいた。
7/7
翌朝。
「さ、皆さんご飯にしましょう」
「あの、まりやさんはどちらに?」
「食べ終わったら掘り起こしに行きましょう」
「ええ、瑞穂さん」
「うう、ごめんなさぁい。もうしませ〜ん」
まりやは首だけを残して全身を砂浜に埋められたまま一夜を過ごした。
ちなみに夜の大運動会のビデオは貴子が接収し、時折
瑞穂と観てはその後運動会第二部に突入するとかしないとか。
本編は初代スレ550さんに任せた。
白く、簡素な部屋に備え付けられたベッドの上で、全裸の男女が正座をしている。
「ほ、本当にやるんですか? 紫苑」
片やタオルを手に持って、やや狼狽え気味の瑞穂。
「ど、どうぞ。覚悟は出来ています」
片や瞼を閉じて、緊張のためか僅かに体を震わせている紫苑。
「えっと……紫苑? 別に僕は、無理にやる必要は無いと思うんだけど……」
震える紫苑を見て、ますます狼狽える瑞穂。
「いいえ、これは罰です。ならば私はそれを受け入れなくてはならない」
瞼を強く締め、口を横一文字にキュッと閉じて子供のように震える紫苑。
この不思議な状況を生み出した事の発端は数日前、酒に酔った紫苑が瑞穂を縛り上げて悪戯
したことへと遡る。その後しらふに戻り、怒濤のごとき勢いで謝る紫苑を見かねた瑞穂が、その場
を収めるために言った冗談を、紫苑が今正に実行しようとしているのだ。
紫苑曰く、「今度は私に目隠しをして、瑞穂さんが私に悪戯をなさって下さい」とのことだ。
当然、瑞穂は反対した。だが、古風な考えを持つ紫苑が、酒に酔った勢いで男性に悪戯をしたと
いう事実に対してショックを受け、その罰を受けなければと言って聞かないのである。
そしてとうとう、瑞穂が折れた。
「い、いいんですね? 本当に。いきますよ?」
ご丁寧にも、紫苑の用意していたタオルは黒色。これでは確かに何も見えまい。
「ど、どうぞ………」
紫苑は全裸で正座をしながら顔を僅かに赤く染め、相変わらず頑に瞳と口を噤んでいる。そ
の恰好は、まるで悪戯がばれて怒られている子供のようで………
「かっ………」
「かっ………?」
瑞穂は一瞬、躊躇した。だが、目の前にいる女性は既に半年前の関係とは違い、今は自分の
妻なのだ。そう思うと、言える気がした。
「かわいいよ、紫苑」
その一言に、一瞬紫苑が驚く。
「あ………え…………あなた? きゃあ!」
すかさず瑞穂は、手に持ったタオルを紫苑の目から後ろへと巻き付ける。そのあっという間の
出来事に、いくら覚悟をしていたとはいえ、紫苑は少し怖くなったようだった。瑞穂が紫苑の後ろ
でタオルを巻き終わると同時に、紫苑は瑞穂に抱きついてきた。だが瑞穂は、そんな紫苑を遠ざ
ける。
「駄目ですよ、紫苑。僕に抱きついてしまったらお仕置きにならないじゃないですか」
「で、でも………あっ……あなた………んっ」
遠ざけた紫苑の喉元に瑞穂が手を当て、そこから胸の双峰に向かって手を下ろすと、紫苑は
すぐに甘い声をあげた。そのまま手は胸の谷間をゆっくりと撫でながら下に向かい、腹部をさすり、
やがては両足の付け根に存在する薄く柔らかい茂みへと到達する。
茂みを手のひらで一度まさぐると、正座をしている紫苑の背中が僅かにぴくりと反応した。
「紫苑、視界を奪われるのは不安ですか?」
瑞穂は右手で茂みを探りながら、左手を紫苑の背中へと回す。
「は、はい………あぁっ………っ……」
暗闇の不安と、最愛の人の手を感じながら、紫苑は甘く頷く。
「安心して下さい、紫苑。優しくしてあげます。少し意地悪かもしれませんけど」
「え、えぇ? あ、あんんんんっっ!?」
気配を悟られない、瑞穂の完璧な不意打ちのキス。紫苑の口内へと舌を侵入させ、舌を絡め取る
ほどの濃厚なキス。そしてそのまま右手を茂みから更に下部へと素早く移動させ、紫苑の最も敏感な
部分を柔らかく刺激する。
「んんんっっっっ! んん〜〜〜〜!!」
口づけしたままの紫苑が突然の刺激に背中を反らし、犯されている口を離そうとするが、
しっかりと背中に回した瑞穂の左手がそれを許さない。
「んっ……んんっ………ぷは………いいんですよ、紫苑。一度イッてください」
右手からの刺激が一層強まる。といっても、実際は軽く撫でているに過ぎない。だが、視界
を奪われた、と言う不安が紫苑の皮膚の感度を上昇させ、軽い刺激ですら達するのに十分な
愛撫と同等の刺激を産む。
やがて、紫苑の声が徐々に頂点へと迫る。
「あっ……あっ………あぁぁぁぁ!」
咄嗟に瑞穂の左手が、紫苑の背中から離された。支えを失った紫苑は大きく背中をのけ反
らせ、まるで電気の刺激を受けたように体を痙攣させながら背中からベッドへと倒れ込む。
「ふぁ………あっ………あぁぁ………いやぁ……あなた……どこですか?」
目が見えない紫苑は、絶頂の余韻が僅かに残ることを示す震えを伴いながら、両手を前へと
突き出して瑞穂を捜す。
「ここですよ、紫苑」
その突き出された手を、瑞穂は左手で受け止め、紫苑に自分の存在を教える。そしてそれと
同時に、右手による愛撫を再び再開する。今度は先ほどよりも強く、弱いところを重点的に、激
しく攻めた。
「きゃっ……っ……はぁぁぁっっ………やぁ……ま、まださっきのが……ぁ…退いてない……ダメ
………ダメぇぇ!」
程なくして、紫苑は再び絶頂へと上り詰める。そして再び大きく体を痙攣させて、ぐったりとして
しまった。
「やぁ………だめぇ………あぁぁ………………からだが……あっ………ああぁぁ」
紫苑が突然声を張り上げた刹那、紫苑の秘所から瑞穂の手に、何か暖かいモノが降り注いだ。
「あれ? …………紫苑?」
失禁か、それともこれが俗に言われる潮という奴なのか。暖かい液体は尚も瑞穂の手に勢いよく
浴びせられていた。
「いやぁ………みないで…………みないでください………ぁぁぁ」
羞恥心と、恐怖と、快感が入り交じった紫苑は、もうどうして良いかも解らずに、瑞穂の腕に抱か
れながら体を弛緩させて放心している。そのあまりにも無防備な姿に、瑞穂の興奮は更に高まっていく。
「かわいい………………可愛いよ、紫苑」
それしか言葉が出てこない瑞穂は、何度もその言葉を繰り返しながら、もう一度紫苑にキス
をする。今度は軽く触れるだけの優しいキス。荒々しいキスで紫苑の口内を犯したいという願望
もあったが、それをすると今の美しい紫苑が壊れてしまいそうで怖かった。
そして口を離すと、今度は赤くほてった体を弛緩させている紫苑をしっかりと抱きしめる。
「僕が、わかりますか?」
もはや言葉も喋れないほど羞恥と恐怖と快感に打ち拉がれている紫苑は、僅かに頷いてそれに
応える。
「紫苑があんまりにも可愛いから、もう僕も我慢できません。このまま紫苑が欲しいです。いい
ですか?」
一瞬、これ以上の快楽におぼれることを恐れた紫苑だが、すぐに震える腕で瑞穂を抱き返し、
首を縦に振る。
「紫苑、可愛い。愛してますよ」
もう一度、軽いキス。そしてキスをしたままで、瑞穂の固く反り返った屹立を紫苑の秘所へとあてがう。
「んんっっっっっっ!!」
すっかりびしょびしょに濡れていた紫苑の秘所は、本人の意志に背いて何の抵抗もなしに瑞穂を
己の最深部へと迎え入れる。
突然自らの胎内の一番奥を刺激された紫苑は、いとも簡単にもう一度最高点へと達する。
だが瑞穂は、腰を止めない。激しく何度も腰を打ち付けて、紫苑の奧を犯し続ける。
もう何度達したかも分からない絶頂に、紫苑は昇り続けていた。気が狂いそうなほど敏感にになった
体が、全身で、特に体の最深部で瑞穂を感じ続ける。既に意識など、あって無いに近しい。
「やっ……あぁ………あっ……あっ………瑞……穂………さ…………あぁぁぁぁっっ!」
「紫苑、いきますよ? 紫苑さんの大事なところで、僕を感じて下さい!」
紫苑の胎内で、瑞穂の欲望が爆発する。子宮に次々と注がれていく瑞穂の精を確かに感じながら、
紫苑の意識は白い光の向こうへと飛んだ。
――――
「んん……………あ……なた?」
「紫苑さん。目が覚めましたか?」
あれから少しの間失神していた紫苑が目を覚ます。だが、その顔には未だ目隠しが付けられ
たままだった。
「あの………あなた? そろそろ取ってもいいですか?」
そう言いながら紫苑は、目隠しへと手を掛ける。
「あ、紫苑! もう少し待って下さい。まだ大事なことを忘れてました」
「大事な………事?」
「大事なことです。紫苑、左手を前に出して下さい」
紫苑は少し疑問に想いながらも、左手を前に出す。すると瑞穂が、その手を捕まえた。
「これから僕が、あることをします。それが何か当てて下さい」
紫苑はますます首をかしげる。一体何が起こるのだろうか? といった表情だ。
「いきますよ?」
そう言って瑞穂が紫苑の手を下から少し持ち上げる。そして、その直後に起こったことを、紫苑は
すぐに理解した。
「あ、あなた………これは」
「もう、目隠しを解いて良いですよ」
そう言いながら瑞穂は、空いた右手で紫苑の目隠しをサッと取り払う。
目隠しを取られた紫苑は、自らの左手を見て改めて驚き、涙が溢れてくるのを感じた。
紫苑の左手薬指には、エンゲージリングがはめられていた。
「本当は入籍の日に間に合わせたかったんですが、予想外に時間が掛かってしまって………少し
遅れましたけど、結婚指輪です」
瑞穂は、横に置いてあったもう一つの箱を取り出し、紫苑に渡す。
「今度は紫苑が、僕に渡して下さい」
そう言って、瑞穂は左手を紫苑に差し出す。
紫苑は震える手で、箱から取りだした指輪を瑞穂の左手薬指にはめる。そしてはめ終わると同時に
瑞穂に抱きつき、口付けを交わした。
白い部屋で、抱き合う二人の薬指が月夜を浴びて銀色に光る。
紫苑の頬に伝わる涙と同じ色で。
三作目です。話が段々短くなるのは、あまり気にしない方向で。
今までチキンでしたが、今度からはちゃんと別の場所でも使っていた518の名で投稿したいと思います。
さて、今回のポイント。
{エロい(強め瑞穂+お仕置き)・エロエロ(紫苑+受け身)+小道具}’
上の方程式、入試に出ます(嘘。微分を忘れないように(大嘘。
まぁ何と言いますか、趣味丸出しですね。
というよりも、何だかエロ担当になってますね、私。
>職人諸氏
いつもGJです。
相変わらず全てを読む時間がありませんが、こつこつと崩しましょう。
>まとめ氏
本当に乙です。
今までは言うの忘れてましたが、「無銘」は作者名ではなく作品名です。
作者名は「某518」とでもしておいて下さい。
あと、後書きの部分は一緒に移さないようにお願いします。
わがままを言って申し訳ありません。ご迷惑お掛けします。
感想を頂いた皆様、ありがとうございました( ;´Д`)
そして…日付変わって紫苑様分以外の投下がまた充実しましたね…
どの作品も非常にGJっす!!
てか、緋紗子先生に萌えなおしたり、奏ちゃんの切ない思いに涙したり、
紫苑様の痴態(待て)にハァハァしたり…大変な事に…orz
…俺も明日には続きを投下しよう…皆様、おやすみなさいませ〜
えー、紫苑×瑞穂SS執筆中に関西芸人が降って湧いてきたので、ちょっと寄り道。
一応前作に引き続き、4コマ漫画風ショートショート。原型がないくらいギャグ……のつもりです。
作者は大阪人の90%はノリ突っ込みができる、と固く信じてます。
「楓さんは見ていた2」
「パパの誕生日」
鏑木家のリビングルーム
慶行「瑞穂。来月のわしの誕生パーティーことで、少し相談があるんだが……」
瑞穂「いやです」
取り付く島もない瑞穂。
慶行「プレゼントのかわりに、わしの頼みを一つ……」
瑞穂「お断りします」
慶行「なんだよぉ。まだ何も言ってないじゃんか! 瑞穂のイケズ!!」
涙目で、瑞穂にすがりつく慶行。さも、迷惑そうな瑞穂。
瑞穂「言われなくても分かりますよ! また女装しろって言うんでしょう?」
慶行「誰が実の息子に女装を強要などするか……ただ、幸穂の格好で一緒にパーティーに出てほしい……」
瑞穂「同じだ、同じ!」
瑞穂の右ストレートの突っ込みが、慶行の顔面に炸裂した。
「パパの誕生日2」
慶行「いいじゃんかよぅ。パーティーの席で幸穂そっくりに育ったお前を、出席者の方々に自慢したいだけなのに……」
瑞穂「って、なお悪いわ! 鏑木家次期当主を見せ物にするつもりですか。とにかく、いくら父上の頼み事でもこればっかりはお断りします!」
慶行「瑞穂のバ〜カ、ア〜ホ! 瑞穂のけちんぼ! お前の母ちゃん、お前の母ちゃん……ぐずん、瑞穂がいじめるよぅ、幸穂」
背中を丸めて部屋の隅で、のの字を書く慶行。
楓「あーぁ、いじけちゃった。……よしちゃん、ああなると長いですよ。明日は確か重要な会議があったと思いますが。このままでいいんですか、瑞穂さん」
瑞穂「そんなこと言われても……」
慶行「やだやだやだ! 瑞穂が女装してくれなきゃ、やだ〜っ!!」
床に仰向けになって、手足をバタバタと
瑞穂「子供ですか、あんたは! ――まったく。分かりました、分かりましたよ。パーティー云々はともかく、誕生日の一日だけなら女装でもお母さんの格好でも、父上の希望の姿でいてあげます。それでいいですね?」
慶行「本当だな? 本当に本当だな?」
急に生気を取り戻す慶行。
瑞穂「え、ええ、約束します」
慶行「じゃあ瑞穂。男と男の約束の証に指切りしよう」
態度一変、当主にふさわしい風態を取り戻す慶行。
瑞穂「……指切り、ですか?」
自分の小指を差し出す慶行に合わせ、そっと右手の小指を絡める瑞穂。少し頬が赤い。
瑞穂「指切りげんまん……」
慶行「♪指切りげんまん、ウソついたら女装千日さ〜せる! 指切った!」
瑞穂「女装千日って……修行じゃないんだから……」
切られた小指につぶやく瑞穂。はしゃぎ回る慶行とそれを楽しそうに見ている楓。
(続く)
320 :
2スレ402:2005/03/22(火) 03:33:43 ID:plIVJjHl
私の書き方。設定その他お気に召さない方は、速やかにスルーすることをお勧めします。
紫苑X瑞穂のSSを書いていたときにでてきた副産物です。
321 :
2スレ402:2005/03/22(火) 03:34:27 ID:plIVJjHl
渡されなかった卒業証書4ーEx
10ヶ月ほど通った恵泉の正門に近づくと進路をふさぐように、警備員の一人が話しかけてきた。
「なにか、ご用でしょうか?」
「ええ。昔、在籍しておりました”宮小路瑞穂”と申します。しばらく、当地を離れておりましたの
で懐かしくなりまして、こちらに足が向いてしまいましたわ」
瑞穂は下げていたバックから当時の学生証を取り出すと、応対の警備員に提示して
「これが、私が当時在籍していましたという証明ですわ」
警備員は、瑞穂の学生証をチェックして
「で、本日のご用件は?」
「ええ。私の恩師でありました、梶浦緋沙子先生にお会いしたいと思いまして訪問致しました。お取
り次ぎを御願いできませんか?、実を申しますと、また、しばらく日本を離れる事なりましたので
その前に一度お会いして、久闊を叙したいと思いますので」
(はあーー、疲れる。早く、この場から離れたのだけど)
内心そんな事を思いながら、にこやかな表情を作って返事が来るのを待っていた。
来客用応接室に通された瑞穂が、しばらく待っていると
「宮小路さん。お待たせ致しました。」
そういいながら、笑みを浮かべている緋沙子が入ってきた。
「緋沙子先生。なんですか?その笑いは?」
「あっ、悪い意味はないけど・・・」
「しかたないですよ。”鏑木”の名前は使いたくありませんし、男の格好では、必要以上に警戒され
ますからね。」
「よく来てくれたわね。そういえば、学院長には?」
「いいえ、まだです。緋沙子先生が、在籍していてくれてよかったですよ。恩師への挨拶と言う事で、
簡単に許可がおりましたからね。いきなり、学院長に面会を申し込んでも、門前払いされる可能性が高
いですから」
「じゃあ、学院長室にいきますよ」
322 :
2スレ402:2005/03/22(火) 03:35:43 ID:plIVJjHl
渡されなかった卒業証書4ーEx
そう告げると瑞穂をともなって学院長室の前に立つと、ノックをして
「梶浦ですけど、学院長に面会の方がお見えになっております」
中から、承諾する声が聞こえると
「失礼します。お客様をお連れしました。」
「学院長様。ご無沙汰をしております。”宮小路瑞穂”です。」
「まあ、まあ、よく来てくれましたね。」
学院長は、目のふちに光るものを浮かべると、机の引き出しから1通の書類を出して
「これで、ようやく、預かっていました物をお返しできます。」
「これは?」
「当時、瑞穂さんが、提出された”自主退学届”です。私は預かるとはいいましたが、退学を受理
するとは一言も言ってませんよ。つまり、書類上は提出日以降は自己都合による欠席になってます。
卒業生名簿にも掲載されてますし、卒業証書を受け取る権利もあります。」
「学院長様のご配慮には感謝の言葉もありませんが、卒業証書の授与は辞退させて頂きたいと思いま
す」
「誤解の無いように言っておきますが、”鏑木”だから特別扱いをしているわけではないのですよ?
確かに、あの事では、あなたの心に大きな傷を残したかと思います。ですが、心に傷を負ったのは、
あなただけでは無いのです。当時の生徒会長の厳島貴子さんを始め、多くの在校生たちも心に傷を
負ったまま、卒業されていったのです。ここにいる緋沙子先生もその一人です。」
また逃げるのですか?という言外の問いかけに、しばらく間をおいて
「そうですね。いつまでも、逃げてもいられませんね。ここでの生活を懐かしく思っている自分が
いるのも事実ですから・・・だめですね。いつまでも、引きずってるようでは」
学院長は、小さく首を横に振ると
「緋沙子先生。生徒会に連絡してください。」
「私たちにも。けじめをつけさせてくださいね。」
その後。学院長室でささやかに瑞穂の卒業式が行われた。それを見ながら緋沙子は
(ようやく、私も新しい道を歩き出す事ができそうですね)
声に出さずに、呟いていた。
323 :
2スレ402:2005/03/22(火) 03:50:57 ID:plIVJjHl
4の番外編と言ったところでしょうか
時間的には、貴子が渡欧する直前ぐらいになりますか
拙者、証書だけが心残りでした
作者別リストにいけない・・・
319の続きです。
「楓さんが見ている3」
「パパの誕生日3」
慶行の誕生日パーティーまで後一週間にせまった鏑木家の一室。
まりや「さあ、瑞穂ちゃん。衣装合わせをするから、ちょっと衣装に袖を通してみて」
瑞穂「な、何この量。タンス二棹分はあるんじゃない?」
まりや「だって瑞穂ちゃんに合う衣装を考えたらさ、イメージがどんどん湧いちゃって……。
とりあえず全部作ってみたのよ」
瑞穂「全部って、まりや……」
楓「量もですけど、それぞれの衣装の生地も凄く手が込んでいます。
刺繍やレースをあしらったものから、ダイヤモンドやルビーを縫い込んだものまで……」
瑞穂「ううん、宝石だけじゃない。刺繍には金糸や銀糸が使われてるし、
服に合わせるアクセサリーや小物も半端じゃない」
楓「ティアラですか……これはまた、いい仕事してますね」
慶行「はっはっは。今回金に糸目はつけなかったからな」
まりや「めいっぱいドレスアップした衣装を、ってオーダーだったからね。
ロンドンだろうがパリだろうが、このまま社交界にデビューできるぐらいよ。
それこそ、ハリウッド女優のドレスにだってひけはとらないわ」
瑞穂「これだけのものを一ヶ月もかけずにそろえるなんて……
お父さま、衣装その他ひっくるめて、いったいいくら使ったんです?」
慶行「はっはっは。今回金に糸目はつけなかったからな……別荘一軒売っちゃった」
瑞穂・まりや「ええーっ!!」
慶行「売ったというのは冗談だが、まあそれくらいお金をかけたということだ」
瑞穂「バッ、バカバカバカ! お父さまのバカ! こんなことにそんなお金をかけるなんて、
何考えてるんですか」
慶行「――!!」
衝撃度MAX、凍りつく慶行。
楓「……だから言ったのに」
ただ、ため息をつく楓。
慶行「ううっ、まりやちゃん。瑞穂が、瑞穂がいじめるよぉ……」
まりや「泣かないで、小父さま。……ちょっと瑞穂ちゃん、それは言い過ぎじゃない?
小父さまだって、瑞穂ちゃんのためを思ってしたんだからさ。愛されてるじゃない。み・ず・ほ・ちゃん?」
瑞穂「でも、やりすぎです。こんな衣装まで……バニーガールの衣装なんか作って、
どうするつもりだったんです?」
まりや「どうするって、着せる。ついでに写真を撮る」
慶行「着て接待してもらう」
瑞穂「いえ、そんな鳩が豆鉄砲食ったみたいな顔で言われても……
これじゃあただのコスプレじゃないですか!」
慶行・まりや「違うの?」
瑞穂「いえ、真顔でそう答えられても……」
328 :
2スレ402:2005/03/22(火) 14:42:18 ID:plIVJjHl
>>278に追加してみるテスト
瑞穂に渡されたテープを紫苑は取り上げると、一冊の本を渡して
「女性になるのでしたら、テープなどで誤魔化さずに、その本の付箋を付けてあるところを見て」
(なんか、とてつもなく不安だ。・・・絶壁を命綱なしで登るぐらいに)
「ど・・・どうしても?」
「はい。どうしてもです。」
にっこり笑顔で、年を押す紫苑。付箋の処を見た瑞穂
(男性の収納法?)
ここまで要求する
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ノノノノj{_) ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ´θ^θン)u ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
(男言葉に戻ると、また、減点だというし)
「どうしたら、よろしいのかしら?」
ため息を吐きながら、ショーツを握りしめる憂い顔の瑞穂。
「と、とりあえず着てみたけど、どうかな? まりや」
「んー、瑞穂ちゃん、綺麗よ。本当、男にしとくのもったいないぐらい。
今からでも遅くないから、女として人生やり直してみない?」
「しません!」
「ふっ、まだまだ甘いな、まりやちゃん」
「……お父さま。今日は『幸穂〜好きじゃぁ〜』とか言って飛びついてこないんですね」
「何を馬鹿なことを。誤解してもらっては困るが、わしは『瑞穂』を愛しているのではない。
わしが愛しているのは『幸穂』だけだ。始めから瑞穂と分かっているのに、
間違って抱きつくなど、わしがすると思うか? わしが……幸穂〜っ!」
「してるじゃないですか!!」
慶行に突っ込みの膝蹴りを見舞う瑞穂。
「あっ、楓。何をする、こ、こらやめろ。
これではまともに歩くことさえできんではないか」
慶行の両腕を後ろに回し、手錠をはめる楓。
続いて丸い鉄の玉のついた足枷を左右の足に固定する。
「ちょっと小父さま。今の言葉、聞き捨てなりませんわ。
私のコーディネイトのどこが甘いというのですか?」
「まだ分からないとは……。それでも新進気鋭のデザイナーか!」
「――くっ!!」
器用にジャンプして手錠でつながった手を前にもってくる慶行。
そのまま人差し指をまりやに突きつける。
「今、それを教えてあげよう……」
「――きゃあ!」
慶行の手が一閃し、まくれあがる瑞穂のスカート。
少し大人びたピンクのショーツが、かいま見える。
「いきなり何をする、何を」
「……ふっ、強くなったな、瑞穂」
煙を上げる瑞穂のこぶし。ボコボコに殴られ、床にはいつくばる慶行。
「懲りないわね、よしちゃんも……」
「見えないところにも気を使うのが真のオシャレというもの」
すばらしい回復力を見せる慶行。ボコボコだった顔も、元に戻っている。
「なっ、このどこがダメだって言うんですか?
イタリア製のシルク100%、一流ブランド品ですよ!」
「ちょ、ちょっとまりや。手を、手を離して」
興奮したまりやは、瑞穂のスカートをつかんで持ち上げる。
それを必死になって両手で押さえようとする瑞穂。
「一言で言えば、セクシーさが足りない。楓、私がもってきたものをここに」
楓から手渡されたバックのファスナーを開く慶行。中から出てきたのは……。
「ひ、ひもパン?」
「うわぁ、スケスケ……」
「あ、これTバックだ……」
「見てよ、瑞穂。ここの部分が蝶になってる。蝶カワイイ」
「セクシー下着というやつだ。どれ、これなんかどうだ、瑞穂」
「ひもパンでもスケスケでもなければなんでも……」
「ね、ねえ瑞穂ちゃん。このショーツ、股の部分にスリットがある……」
「……何をさせる気だ、何を」
「……」
血反吐をはいて床に転がる慶行。今度はぴくりとも動かない。
「本当に懲りないわねぇ……」
慶行を助けおこし、活を入れる楓。
「……それにしても小父さま。いったいこんな下着、どこで買ってきたんですか?」
手にした下着の数々を品定めしつつ、ようやく復活した慶行にまりやが訊ねた。
「何を言っとる。……生前の幸穂の私物だぞ、それ」
――真っ白に燃え尽きる瑞穂とまりや。
以上です。
何でこんなものが、降りてきたんだろう……あっ、2週間ほど前に「GS美神〜」を全巻読破したからか。
ということは、美神令子が瑞穂で横島が慶行なのだろうか……。
では、こんどこそ、紫苑×瑞穂の続編SSをアップする予定です。
すいません。保管サイトの中の人。
318・319はそのままでは読みにくいと思うので、抵当なところで改行を入れてください。
332 :
2スレ402:2005/03/22(火) 19:45:24 ID:plIVJjHl
>>328にさらに追加してみたり
ある日の鏑木家
紫苑とまりやの視線の圧力に耐えかねた瑞穂は、付箋のページを開くと
(え・・ええ・・・・)
いきなり固まった瑞穂は、気力を振り絞って復活すると
「まりや・・・むだ毛処理の剃刀ある?」
「はい。これ、必要だろうと思って、買っておいた。ビキニラインも処理するの?」
「ええ、巻き込むと、痛いらしいので・・・少し処理する必要があるみたい」
「にししし・・・本格的だね。うん。うん。」
即座に渡されたむだ毛処理用の剃刀を手に、とぼとぼとバスルームに向かう
(はあーーー。まりやの暴走は、酷くなる一方。契約を見直す必要がありそうだな。・・・まあ、契約満
了時に切るかどうか考える事にしよう。)
瑞穂のつぶやきを知らないまりやは、着せ替えの衣装を並べて考えていた。
シャワーを浴びて余分な油分を落として戻ってきた瑞穂は、本を見ながら
(えっと、下から押して・・窪みは・・)
「ふうーーーきついな。まずは、1つ」
(よいしょ・・・っと2つめ。後は・・・)
姿見とかを利用して、どうにか処理をすませてショーツを履くと、痛そうな顔をしてへたりこんだ。
「あ、あの・・瑞穂ちゃんだ。大丈夫?」
「大丈夫にみえる?」
まりやを一瞥すると、ブラを付け、制服姿になった。
333 :
2スレ402:2005/03/22(火) 19:46:42 ID:plIVJjHl
ようやく、瑞穂ちゃん制服姿を披露しました。
ちょっと?(かなり?)ご機嫌ななめっぽいです。
なんというか、このスレ、このままだと駄目になってしまうんではないんかって気がする。
続き物ばっかりで追うのも疲れるし、単発も埋もれがちだし。
ある程度以上長いものや続き物は投稿掲示板の方にUPをお願いするとか、
なんか対策せんといかんような気がするんだが、そう思っているのってオレだけかなぁ。
お前みたいな偉そうな乞食がいるくらいだからなw
職人とかおだてられてるアフォどももそのうち嫌になって消えるだろw
で、GJGJうるせえそれしか言えねえヴァカ目当てのオナニー野郎のチラシの裏ばっか残るってわけだwww
とりあえず続き者書いてる香具師はとっとと終わらせたら?
長文読めない香具師もいることだしさw
まあアフォとヴァカのなれあいでちょうどいいかもしれないけどなwww
続き物が悪いと言うか、問題は、
・単に書けた分だけ投下するから山も落ちもないのが何回も投下される。
・ダラダラ単に思いついたことを続けてる。
のパターン。
前者は誘惑振り切って形になるまで投下すんな。
後者は続き者にしないで個別の作品としてネタを消化しろ。続き物にする意味が分からん。
好きにしたいって思うなら好きにしてくれて構わないけどな、どうせオナニーの場なんだし。
ところでスレの行く末なんて語る必要あんのか?
自分の嫌いな職人あぼんすればいいんでないかい。
337 :
名無しさん@ピンキー:2005/03/22(火) 23:01:51 ID:qQUFQ6XG
何でそんなに必死なの?
>337
同意
336よ、グダグダ語ってる割には「投下すんな」とか行ってんの、もう見てらんない。
気に入らないなら黙ってスルーするのが大人。2chのルール。
ルール無用で好きに書き流すのがエロパロだろ。なに熱くなってんの?
むしろ336みたいのにマジレスするなと。
340 :
猫野:2005/03/22(火) 23:57:33 ID:fOGRIIBe
みなさん、仲良く行きましょうよ
みんな、処女はお姉さまに恋してる が好きで
ここ見ているんですから
>>337-338 >気に入らないなら黙ってスルーするのが大人。2chのルール
お前らへの言葉でもある。
気に入らないなら黙ってスール かと思った。
山田く〜ん!
>>342の座布団全部持ってっちゃえ。
あと、ガラス片もまいといて
スールってなに?
>>344 お前はぐぐるからアク禁でも食らってんのか?
山田く〜ん!
>>345の座布団全部持ってっちゃえ。
あと、硝子片もまいといて
皆さん、仲良くしてください・・・「優雅に礼節を以て」・・・
議論するのはいいことなのですが、少なくとも、喧嘩口調で喋るのは控えてください・・・。
折角スレが盛り上がっているのですから、このような事で空気を悪くするようなことはなさらないで下さい。
とはいえ、私見ですが、長編ものの場合は完成させてから複数回に分けて
日に一回投下するという形のほうがいいのでは、とは思います。
私の場合は『DRESS UP!!』のほうでいくつかの分岐を書きましたけれど、
分岐部分についての投下が随分と遅くなってしまったため(スレすら変わってしまったり)
見にくくしてしまったかな、と自分でも思ったので。
まああくまで私の考えに過ぎませんので、職人方各々の判断でよろしくお願いいたします。
無論、リレーSSや勢いで書いた作品というのも味があっていいものですから、是非続けてもらいたいですね。
(リレーSSについては、次に書く方はあらかじめ宣言したほうがいいのでは、とも思います。)
追記。
>>289 のほうでも書いたのですが、
第2スレの423の方やそのほかの方、人格交換ネタって、書かれているのでしょうか・・・?
明日にでも出来そうなので、投下しようと思っているのですが、他の方が書かれているのでしたら
自分のサイトで公開するだけにいたしますので。
漏れは焦らされるのがたまらないMなんで「イントロだけ書いたんでうpします」とか言われ
るの、もうたまんない。ていうか、完成させてから〜とか言ってたら、AnotherPairみたいな
長編大作は辛いような。ま、今まで通りの流れでマターリキボン。
と言う訳で五月晴と新興宗教は密かに待ってます。
349 :
箱:2005/03/23(水) 03:07:56 ID:1JfYMjV+
長編もの書いている自分としては非常に耳が痛いお言葉です_no
だらだらと長く書いているつもりはないのですが・・・.
すっきりぱっきりめっきりとした長編SSに仕上げたいとは常々思っている所存です.
で、「双つの流れ星」ついに第4部完成しました.
完成したのですが, 余りに第4部が長すぎる展開になってしまったため・・・2つに分けることにしました.
@2話で完全完結です. 読んでくれている方々もう少しのお付き合いお願いします.
第1部, 第2部
>>185 参照
第3部
>>186-195
双つの流れ星 〜〜最期の誓い〜〜
【8月4日 PM2:30】
1学期が終わってから、私は実家に帰省していた。
一子ちゃんの様子が気になり、本当ならば家族で旅行に行くはずだったのだがキャンセルしてもらい、私は一子ちゃんのお見舞いに病院に訪れた。
幸穂 「すみません。宮小路幸穂と申しますが、高島一子さんにご面会をお願いできま
すでしょうか。」
受付 「はい、少しお待ちになってて下さいね・・・。高島・・一子さん・・・ぁ、宮
小路様、申し訳ありませんが・・・。」
幸穂 「・・・はい?」
受付の方が大変困ったような顔でこう仰った。
受付 「高島一子さんは・・・その、実は今朝から病院にいらっしゃらないのです・・・。」
幸穂 「・・・・それは、退院したということなのでしょうか?」
受付 「いえ・・・実は、昨日の夜か今朝にかけての間に病院から抜け出されたようなのです。
病院もご家族の方も大慌てでお探しになっておられるのですが・・・。」
幸穂 「えっ・・・!?高島さんは病院にはいないということなのですか?」
私は驚きのあまり思わず受付に身を乗り出して尋ねてしまった。
受付 「え、ええ・・・。おそらく、高島さんご自身でどちらかに行かれてしまったもの
と・・・今のところは考えております。」
幸穂 「そ、そうですか。・・・お忙しいところ申し訳ありませんでした。」
受付 「もしよろしければ、高島さんが戻ってこられた場合ご連絡差し上げますがよろし
いですか?」
幸穂 「いえ、お気遣いありがとうございます。」
私は軽くお辞儀をするとそのまま走り出した。
直感にも似た感覚だが・・・私には一子ちゃんの行き先がわかるような気がした・・・。
恵泉女学院の寮の前まで来た時には学院の木々が橙色に染まろうとしていた。
幸穂 「寮の扉が・・・開いているわ・・・。」
今の時期は寮の生徒は全員帰省しているはずなのに・・・、直感にも近かった感覚が確信へと変わっていく。
私は小走りに寮へと入り、2階の自分の部屋へと向かった。そして、ドアを開けようとドアノブを回すと、
ガチャガチャっ
幸穂 「・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」
おかしい・・・。帰省中は寮母さんが掃除できるようにドアに鍵はかけていないはずなのに・・・。
私の頭の中でばらばらだった思考回路が一つに繋がった。
幸穂 「一子ちゃん!!!!!!!!!!!!!いるのでしょう!?」
自然となぜか目から涙が溢れてくる。私は震える手で鍵を開けて勢いよくドアを開けた。
幸穂 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!?」
ドアを開けた私はその場で時間が止まったかのように立ちつくしてしまった。
窓から西日が差しこみ部屋全体が幻想的に橙色に染まっている。クローゼットや机の白と対照的にコントラストを描いてまるで御伽噺のワンシーンのような光景だった。
白いクローゼットの側に横たわる一人の女生徒・・・。
幸穂 「ぃ・・・・・・・一子・・・ちゃん!!?」
私はすぐにでも駆け寄って倒れている女生徒を抱き上げてたかったが、体が震えて言うことを聞いてくれない。
幸穂 「・・・ぃ・・・・ああっ・・・・・・・・・・・・。」
私は震える足取りで一歩ずつ女生徒に近づいた。
数歩進んだところで・・・、倒れている女生徒が一子ちゃんだとわかった・・・。
幸穂 「・・・ぃ・・・一子ちゃ・・・・ぅっ・・・。」
涙が溢れて視界がぼやけてくる・・・、一子ちゃんの側まで辿り着き、私は跪いた。
そっと一子ちゃんの背中に手を回し、私は一子ちゃんを抱き上げた。
幸穂 「い・・・一子ちゃん!しっかりして、一子ちゃん!!!」
まるで迷子になった子供のように、泣きじゃくりながら一子ちゃんの名前を叫び続けた。
・・・・暖かい・・・・・・、お姉さまにぎゅっとしてもらっているような心地よさ・・・・。
このまま・・・私の身体が消えてなくなってしまっても・・・・この心地よさに溺れていたい・・・・。
「・・・・・・・・・ちゃ・・・・・ぃちこ・・・・・!!」
遥か遠くの方で誰かが私を呼んでいる気がした。
今は邪魔しないで・・・・お姉さまと一緒にいるんですから・・・・・・。
「・・・・ぃちこちゃん・・・・・一子ちゃん!!」
・・・・!?こ、この声は・・・・お姉さま・・・・?!
私の意識が奈落の底から戻ってくるように、全身の感覚が現実世界に戻り始めた。
一子 「・・・・ぅ、・・・・ぉ・・・ぇ・・・・ぁま・・・・・。」
私はゆっくりとまぶたを開いた・・・・。
目が部屋の明るさに慣れてくると・・・目の前には幸穂お姉さまのお顔がそこにあった。
幸穂 「・・・一子ちゃん!一子ちゃん!!!」
一子 「・・・・ぉねぇ・・さま・・・・。」
幸穂お姉さまは目から流れる涙を拭こうともせずに一子を強く抱きしめてくれていました。
幸穂 「ぃ、一子ちゃん・・・本当に、ごめんなさいね・・・・私・・・一子ちゃんの
側にいてあげるって・・・約束したのに・・・。」
・・・嬉しい・・・一子・・・幸穂お姉さまに・・・もう一度、ぎゅって・・・してもらえました・・・。
様々な感情が私の中を駆け回り、自然と涙が溢れて頬を濡らしていた。
一子 「・・・ぉ姉さま・・・一子・・・・もう一度、お姉さまに逢うことができて・
・・本当に良かったです・・・。」
幸穂 「・・・一子ちゃん・・・・・・・。」
・・・私はなんて愚かな人間なのだろう・・・大切な妹一人すら護ってあげられないなんて・・・。
一子 「・・・お姉さま・・・泣かないで、下さい・・・・お姉さまが泣いておられる
と・・・一子も悲しくなってしまいます・・・。」
そう言ってくれた一子ちゃんは、瞳から涙は流れているけれども天使のような笑顔を私に向けてくれた。その笑顔が、逆に今の私には心を刺されるように痛かった・・・。
私は・・・一子ちゃんの笑顔と元気が心の支えだった・・・、果たして私は一子ちゃんの心の支えになれていたのだろうか・・・。
幸穂 「ごめんなさい・・・一子ちゃん・・・私は一子ちゃんに何一つしてあげられま
せんでした・・・。愚かな姉で、本当にごめんなさいね・・・・・・・。」
それを聞いた一子ちゃんは一瞬とても悲しそうな顔になった・・・けれどもすぐにいつもの笑顔に戻っていた。
一子 「お姉さま・・・・。一子は・・・・お姉さまから数え切れない思い出を、優し
さを・・・いただいてきました・・・。幸穂お姉さまは・・・誰にも負けない
・・・一子の・・最高のお姉さまです。」
幸穂 「・・・・・・・ありがとう・・・一子ちゃん。一子ちゃんみたいな妹を持てて
・・・私は世界で一番幸せな姉ですわ。」
油断しているとすぐにでも涙で顔がくしゃくしゃになりそうだった。涙を堪えながらできる限り優しい笑顔を作って私は一子ちゃんに微笑んだ。
幸穂 「・・・さ、一子ちゃん。病院に戻りましょう。ちゃんと病気を治して、朝のお
迎えをお願いしないとね。」
私は寮母さんを呼びにいこうと一子ちゃんを抱き下ろそうとした・・・・その時、一子ちゃんが弱弱しい力で私の袖を引っ張った・・・。
一子 「・・・お姉さま・・・・、一子と・・・一つだけ・・・・約束してくれません
か・・・?」
一子ちゃんが訴えかけるような瞳で私にそう囁いた・・・、まるで先週病院で帰ろうとする私を引き止めようとしたあの時の瞳と同じだった・・・。
幸穂 「はい。一子ちゃんとの約束なら、どんな約束でも守りますわよ?」
私は精一杯笑顔で返事するように努めた。
一子 「ありがとう・・・ございます。・・・あの、もしも一子がどうなったとしても
・・・お姉さまは、悲しまないで・・・下さいね・・・。」
幸穂 「・・・一子、ちゃん・・・・・・・。」
一子 「人は・・・人は、流れ星と一緒なんです・・・自分自身を、削りながら・・・
光輝いてるんです・・・。」
幸穂 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
一子 「流れ星は・・・いつかは燃え尽きて・・・なくなってしまいますが・・・一つ
、消えてなくなると・・・・また新しく流れ星が生まれるのです・・・・・。
その、だから・・・一子がどんなことになったとしても・・・一子が一子でな
くなったとしても・・・必ず、お姉さまに・・・お逢いに行きますので・・・
そのことを、覚えておいて・・・くだ、さ・・・ぃ・・・。」
言葉の最後は涙でかき消されてうまく聞き取ることができなかった・・・。
幸穂 「・・・約束したわ・・・一子ちゃん・・・・。」
笑顔でいようと決心していたのに・・・もう涙が止まらなかった・・・・。
一子 「・・・・お姉さまと・・・はぁ、はぁ・・・・初めてお逢いした場所・・・。
必ずあそこで・・・待っています・・・絶対に・・・はぁ、はぁ・・忘れな
いで・・・・くだ・・・・さ・・・・。」
私の手の中で、一子ちゃんの顔からみるみる肌の赤みが失われていく・・・。
幸穂 「い、一子ちゃん!一子ちゃん!しっかりして、一子ちゃん!」
私はすぐさま寮母さんに救急車を呼んでもらい、救急車が来るまで一子ちゃんを励まし続けた・・・。
救急車が来るまでの間・・・一子ちゃんがとても苦しそうにしていることはわかっていた・・・なのに、額に脂汗を滲ませながらも最後まで優しく私に微笑んでくれていた・・・・。
その表情を思い出すと、私は今でも胸が張り裂けそうになる・・・・。
恵泉女学院で過ごした3年間・・・人生の中で一番大切な人と出逢い、そして人生の中で一番大切な人を失いました。
この悲しさはとても簡単に乗越えられるものではないでしょう・・・。
しかし、悲しさに明け暮れているばかりではだめなのです・・・一子ちゃんとの約束を守るためには・・・。
一子ちゃんとの約束を守ること・・・。それだけが、私が前に進むための「力」となってくれたのでした・・・。
357 :
箱:2005/03/23(水) 03:26:40 ID:1JfYMjV+
第4部完結です. 次回で「双つの流れ星」は完結します.
書き始めの頃は・・・最後はどうするかを予め考えておいて書いていたのですが,
段々書いているうちにより一層, 一子&幸穂に感情移入してしまって・・・.
本気で幸穂のキスで一子が奇跡の生還とかそういう展開も考えたりしてました(汗
ただ, それではこの長編タイトルの名前が意味をなさなくなってしまうため, 泣く泣く一子ちゃんには・・・(´;ω;)
本編とも微妙に異なる点も出てきますが, それはSSということで大目に見て下さい.
皆様、お疲れでごんす。
相変わらず、長編、すごいですなぁ。
上の長編続編どうのこうのの議論に関して私の意見。
こ こ は 2 ち ゃ ん だ 。
てことで。
ま、私は性分のせいか全部書き上げてからじゃないと気が済まないので。
一子ルートようやく終わったので、いま書いてるやつの突破口が見えました。
がんばります。
皆様、347のはただ私の考えを書いただけですので、気になさらぬよう・・・
>>358(1話スレ241氏)
の云うとおり、2chですから・・・
皆様のペースでやっていただくことが一番ですよね。
>>349 (箱氏)
ホント、一子ちゃんはいい子ですよね。
読んでいるうちに本編の昇天時を思い出してしまいました・・・
次回完結ということで、ここからどんな展開になるのか、楽しみです。
皆様、乙です。
>箱氏
GJ エンディング楽しみにしています。
>初代45氏
日に1回1本投下ー>私も今後そのようにします。
>ALL
「いつかは心も五月晴れ」ですが、投下は明日になると思います。
連休中インフルエンザで倒れてしまって…(旅行行けなかった)
もし続きを待っている方がいらっしゃいましたら、ごめんなさい。
あと、今後は「初代269」としてカキコさせて頂きます。では。
361 :
前スレ226:2005/03/23(水) 10:53:12 ID:uLvl6ZV/
>>箱氏
乙です。ええ話ですな。ほろりさせられました。
エンディングに期待しております
長編云々については
「嫌ならスルーすれば」
今まで通りでやってればよろしいかと思います。
「この先にはわが妹達と生徒会が待ち構えています。さぁ、かかってきなさい!」
「え〜?私が一番手なんですかぁ?!・・・えっと、私達は生徒会長さんの妹達・・・。あたしは
ザ・ゆかりん。おまえにこの世で最高の痛みをやろう。行くぞっ!(完全棒読み)
・・・って、どうすればいいんですかぁ〜」
「怒りだ!あたしはザ・マリー!怒りの炎であんたを焼き殺してやるわ!
貴子にコキ使われていることへの憤怒よ!ていうかなんであたしが紫苑様に
こんなことしなきゃなんないわけよっ!?」
「ザ・奏、任せたわ」
「私はザ・奏なのですよ〜。えーっと、紫苑お姉様に未だ見たことのない本当の恐怖を見せて
さしあげるのですよ〜。奏のお部屋の中で・・・」
「ザ・圭、いるの?」
「悲しい・・・。悲しい・・・。この世は、悲しい・・・。あたしは、ザ・圭・・・
美智子との予定を邪魔されたあたしの悲しみを知るがいい・・・いあいあはすたー・・・」
「ザ・一子は普段死んでいる。時がくれば目覚める。そして奴は・・・ジ・エンドだ」
「紫苑様〜聞こえますか〜。私はザ・一子なのですよ。どうしてこうなったのかわかりません
けど恨みはないんですけど瑞穂お姉様の大事な人にこんなことしたくはないのですけども
行きがかり上貴様に本当の終焉を見せてやるのですよ〜」
「これで5人揃ったわね。今度は卒業の時まで一緒・・・」
「恵泉学院はもともと一つだったのだ
引き裂かれた学院を一つにする
そのためには力が必要だ。学院をまとめるに足る絶対的な切り札が。
それがエルダーシスター。そして宮小路瑞穂」
ついカッとなってやった。
コブラ部隊ならなんでもよかった。
少し反省している。
ちなみに
スネーク=紫苑様
ザ・ボス=貴子
ヴォルギン=慶行パパ
っつーことで。
携帯から失礼を。
>>359 >一子ちゃんの本編の昇天時
あれ?私、一子ちゃん昇天してない…
……
もう一回逝ってきます…
365 :
名無しさん@ピンキー:2005/03/23(水) 11:42:52 ID:6KLTFMAi
86サンのを見て、父親と兄がそうなのなら、貴子さんの母親はきっとこんな感じでは
と考え、書きました。
父親と母親の名前が分からないので適当に名前は決めました。
366 :
名無しさん@ピンキー:2005/03/23(水) 11:43:57 ID:6KLTFMAi
貴子さんの誤解シリーズ その1
長い栗色の髪をたなびかせ一人の女性が街をさっそうと歩く。
その外見は色っぽく、男性なら誰でもお近づきになりたいだろう。
その体に鬼気さえ伴ってなければ。
彼女の名前は厳島紗枝。近年急成長した厳島グループの会長婦人である。
年齢はその若い外見に反してもう四十を過ぎている。これでも二人の子供の母親だ。
「ここね・・・」
その彼女の足は一つの民家の前で止まった。
何の変哲の無い民家だ。ただ、屋根の赤いどこにでも在りそうな二階建ての民家。
なぜ、そんな所に彼女は鬼気を背負って来ているのか。
その答えは簡単だ。
最近彼女の夫の帰りが遅い。もともと会長職を務めていることもあり、彼女の夫は帰
りが遅いのだが、最近は輪をかけてそれが遅くなった。
それが気になり、彼女が密かな情報ルートから調べてみると何やらとある家で女性と
密会しているらしいではないか。
浮気である。
許せないと彼女は思った。
彼女は玄関の前に立ち呼び鈴を鳴らす。
ピンポーンという音のした後数秒玄関のドアがガチャリと開く。
367 :
名無しさん@ピンキー:2005/03/23(水) 11:44:53 ID:6KLTFMAi
彼女の目の前に立っているのは二十代前半の若い女。
この女が・・・
彼女の怒りのボルテージが上がる。
彼女は断りも無く玄関から上がりこんだ。後ろで女が何か言っているが彼女は気にし
ない。気にも留めない。
そして、人の居る気配の方に進むとその部屋のドアを開ける。
彼女の夫はそこに居た。ひどくうろたえている。
そして、彼女の顔に亀裂が入った。さっきまで鉄仮面のようだった顔が見る見るうち
に変わっていく。
次に現れるのは修羅のような怒りの表情だろうか?
彼女の唇は引きつり、目には涙が・・・
涙?
「健ちゃんのばか〜
私がこんなに愛しているのに、なんでなの?
ぐすっ」
その姿はまるで迷子の幼子のようであり、捨てられた子犬のようだった。
傍から見るとその姿はひどくかわいらしい。
彼女の夫もそれを見て思わずかわいいと頬が緩むがすぐにしめなおした。
彼女は潤んだ目で彼を見つめる。本人は睨みつけているつもりだが、迫力がないため
この場合は見つめるであっているであろう。
368 :
名無しさん@ピンキー:2005/03/23(水) 11:45:25 ID:6KLTFMAi
二人が見詰め合うこと数秒。その拮抗は第三者の笑い声によって打ち砕けられた。
浮気相手の女である。
彼女は何がおかしいのよと言わん限りに女を睨みつけた。
「あはは、奥さん違いますよ。
私と彼はそんな関係じゃありません。
そこのテーブルの上を見てください」
女に言われ、彼女はテーブルの上を見る。そこには作りかけのビーズ細工がのってい
た。
そこで彼女は数週間前のことを思い出した。
369 :
名無しさん@ピンキー:2005/03/23(水) 11:46:01 ID:6KLTFMAi
『ねぇ、みてみて。健ちゃん』
『家ではあなたと呼べと言っているだろう』
『いーじゃない。二人っきりだし。それよりもほら』
『まだ持っていたのか』
紗枝の手のひらに乗っているものを見て、彼女の夫は恥ずかしそうに、しかし懐かし
そうに笑った。
『当然じゃない。ちゃんと宝石箱に厳重に保管して有るわよ。
さっき宝石箱を整理していたらつい懐かしくなっちゃって』
彼女の手のひらの上に乗っているのはビーズで出来た指輪。お世辞にもできは良いと
はいえない。
370 :
名無しさん@ピンキー:2005/03/23(水) 11:48:21 ID:6KLTFMAi
それは、もうかれこれ二十数年も前のこと、その頃は厳島グループはただの弱小企業
に過ぎなかったし、その経営もひどく苦しかった。
『あの時の健ちゃんの言葉うれしかったなぁ
今はこんなちんけな指輪しか贈れないけど、いつか光輝く豪華な指輪をプレゼント
してやるって』
『そんな、恥ずかしいこと言ったかな』
『照れない照れない。
健ちゃんはいつまでたっても恥ずかしがり屋さんね。
約束も守ってくれたし、私すごく幸せよ。
でも、また健ちゃんの自家製指輪が欲しいなぁ』
371 :
名無しさん@ピンキー:2005/03/23(水) 11:48:55 ID:6KLTFMAi
その時、彼女の夫はもう二度と作らないと言っていたが、そのテーブルに有るそれは
。
「その、部下に知り合いにビーズ細工のうまい奴がいると聞いて、通っていたんだが
、心配をかけてしまってみたいだな。
誕生日まで、その秘密にしようと思ってたんだが」
紗枝は自分の顔が赤くなるのを理解した。もう茹蛸のようであろうと。
それは夫を信じてやれなかった恥ずかしさと、夫の気持ちのうれしさによってだ。
そして、
「きゅう〜」
彼女はあまりもの感情の高ぶりによって倒れこんだ。
372 :
名無しさん@ピンキー:2005/03/23(水) 11:49:51 ID:6KLTFMAi
そこ頃の厳島家。
「すいません。お母様がどこにいったか知りませんか?」
夏休みで帰省中の貴子は、彼女の母親がどこにも居ないのが気になり、使用人の一人
に声をかけた。別にあんな母親顔をあわせたくも無いが、いないならいないで何やら
気になっていた。
「奥様でしたら、旦那様の浮気現場を押さえると、先ほどお出かけになりました」
「そう」
相槌を打つ貴子の声は硬い。
(そんなにも次期会長の母親の座が大事なのですか)
こうして今日も、貴子の家族に対する誤解は増えていく。
貴子ルートを見てるとだね、母親の事も、誤解の事も、
ありそう……と思えてくる。
>332に追加してみるテスト。
ある日の鏑木家
時は少し遡って。
とぼとぼとバスルームへ向かう瑞穂さんを見ながら、まりやさんは決まり悪げに小声で呟きました。
「あちゃ〜…ちょっとからかいすぎたかな」
「そうですね…フォローしておいた方がよさそうです」
「それじゃあたしがタイミング見計らって謝っときます。紫苑さまには貴子の世話をお願いできますか?」
「はい。…厄介事を押し付けてしまったみたいでごめんなさい」
「いえ、あたしが主犯ですから。それじゃ行ってきますね」
そう云って笑うとまりやさんも瑞穂さんを追っていった。
学院時代を思い出して懐かしかったとはいえ、ちょっとはしゃぎすぎてしまったようです。
後で私からも瑞穂さんに謝っておきませんとね。
静かになった部屋の中で、貴子さんの寝息が聞こえてきます。
ふふ…いつもは凛としてらっしゃいますけど、随分とあどけない寝顔ですね。
先ほどの慌てぶりといい、まりやさんがすぐちょっかいを出すのも判る気がします。
そうだ、折角ですから膝枕をしてあげましょう。
「くすくす…可愛いですわよ、貴子さん」
ついでに頭も撫でてあげましょうか。
…うん、髪のお手入れも欠かしていないようですね。感心感心。
「……う…ん………あ…紫苑……お姉…さま…?」
「お目覚めですか、貴子さん?」
まだ焦点の合わない目でぼんやりと私を見上げる貴子さん。
その目に光が戻ると…
「…!す、すみません紫苑さま!私ったらなんて粗相を!」
慌てて立ち上がっちゃいました。
あら、もったいない…。
「ふふ…別に迷惑なんかではありませんでしたよ。それどころか可愛い寝顔を見ることが出来て役得というものです」
「そ、そんな…もう、紫苑さま!からかわないでください!」
途端に顔を真っ赤にしてうろたえる貴子さん。
普段からは想像も付かないそんな姿を見ると…
「本当に可愛いですわ…」
思わず抱きしめたくなっちゃいます。
「む!むぐぐっ!?ひ、ひおんはまっ!?は、はなひ…」
一方その頃。
「あ、あの…瑞穂ちゃん。だ、大丈夫?」
「…大丈夫にみえる?」
うわ…まずい。瑞穂ちゃんかなり不機嫌だよ。
いや、追い詰めたのはあたしなんだけど。
「え、ええっと…瑞穂ちゃんごめん!」
ぐずぐずしててもしょうがない。
こういう時は先手必勝!とにかく謝っちゃわないと!
「いくらなんでも悪乗りしすぎだったって反省してる!本当にごめん!」
「……」
うう、無言が痛いよ…。まだ雰囲気がピリピリしてるし…。
内心怯えながら返事を待つ。
実際は1分も経ってなかっただろうけど、私には1時間にも感じられた。
「……ふう。いいよ、まりや。父様も云っていたけど、元は僕がその場凌ぎに吐いた嘘が原因なんだから」
「瑞穂ちゃん…」
「そう、一度やるって決めたのに、僕が駄々を捏ねているだけなんだからね。まりやが気にする必要なんてない」
「そんなことないよ…。だってあたしが面白半分に始めたことで…」
「たとえそうでも、紫穂の為にって思って始めたのは本当なんだよね?だったら親として感謝はしても恨んだりはしないよ」
「瑞穂ちゃん…」
「ほら、まりやさん。瑞穂ちゃんじゃなくて千穂さんでしょう?」
「…あ、あはは。これは一本取られちゃったね」
「ふふ、私だっていつもやられっぱなしではありませんよ」
「もう…千穂さんってば…」
…良かった。瑞穂ちゃんに嫌われなくてすんだ。
そう安心したあたしはその場にへたり込んでしまった。
「ま、まりやさん?」
「にゃはは…安心したら腰が抜けちゃった」
「仕方ありませんね…立てますか?」
「ん…ちょっとまだ無理みたい」
「それじゃ…失礼」
「うわわっ!瑞穂ちゃん!?」
「また瑞穂って…私は千穂ですよ?」
「いや、そうじゃなくてお姫様抱っこなんて!」
「これは罰です。さっきまでのね」
そう云って悪戯っぽく笑う瑞穂ちゃん。
うわ、まずい。顔が熱くなってきちゃった。
「お、降ろしてってば!恥ずかしいよ!」
「だぁめ。それじゃ罰にならないでしょ?」
「うう…千穂さんいじわるですよ…」
「まりやさんほどではありませんわ」
くすくすと笑う瑞穂ちゃん。
ああ…なんだか気持ちいいな…。
紫苑さまには悪いけど、ちょっとだけこのままでいさせてもらおう…。
「本当に大丈夫?」
「ん、もう大丈夫。立てるから降ろしていいよ」
流石に抱きかかえられたまま居間に戻るのもね。
誤解されても困るし、紫苑さまの焼餅は怖そうだし。
「それではまりやさん。これからは私の事を千穂と呼んでくださいね?そう呼び慣れておかないと、紫穂ちゃんの前でうっかり瑞穂と呼びかけてしまうかもしれませんから」
「ええ、わかりましたわ。千穂さん」
「ご協力感謝します」
畏まった挨拶の後、お互い顔を見合わせて笑いあう。
うん、もういつものあたしたちだ。
いや、あの頃の…かな。
覚悟が決まったのか、瑞穂ちゃんの雰囲気もすっかり恵泉時代に戻ってるみたい。
「紫苑さん、貴子さん、ただいま戻り…って紫苑!?」
「どうしたんですか、千穂さん…って貴子!?」
そこには、恍惚としている紫苑さまの胸のなかでぐったりしている貴子の姿があった。
あの…なんかピクリとも動いてないみたいなんですけど?
慌てて駆け寄る瑞穂ちゃん。私もその後に続く。
「まりやさん、私が紫苑さんの腕を緩めますから貴子さんを引っ張り出してください!」
「合点承知!」
「紫苑さん、正気に戻ってください!」
「貴子、しっかり!まだあんたにはやることがあるでしょうが!」
…幸い命に別状はなく、数分後には息を吹き返しました。
「ま、まだくらくらしますわ…」
379 :
3-206:2005/03/23(水) 13:48:11 ID:IpL5qMxq
【WARNING】
このシリーズは紫苑END後のホームコメディドラマです。
断じてまりやEND後のラブラブ話ではありません。
妙なフラグも立ったりはしません。多分。
というわけで、エルダーモード瑞穂お姉さま復活。
雨降って地固まるというかショック療法というか開き直ったというか何というか。
紫苑さま怖いな
女装しての通学、全校生徒のお姉さま、エルダーシスターに選ばれる、全然幽霊に見えない元気一杯な女の子、一子ちゃんとの出会い、第二音楽室の幽霊騒動に立ち会い……と、恵泉に来てからというもの、普通に生活していたら絶対に体験できなかったことばかりあった。
だから多少変わったことには耐性がついてると思っていたんだけど……
「あはは、あはははは……」
今の僕の口からは乾いた笑いしか出てこない。
そうか、これは夢なんだ。
その証拠にほら、頬をつねっても全然痛く……やっぱり痛い。
ああ、これは逃げようのな現実なんだ。
「あは、あははははは……」
駄目だ、もう笑うしかないや。
ねえマリア様、朝起きたら僕の体が女の子になっているって一体どういうことですか?
1/3
数分後、僕はやっと現実を受け入れることにした。
本当は受け入れたくなんてないけど、現実逃避していても意味がない。
でも、これからどうしたら……って学校に行くしかないか。
誰か他の人に相談できたら違う案があるんだろうけど、僕が男の子だと知っているのは、まりや、紫苑さん、一子ちゃん、緋沙子先生、学院長だけ。
相談するとなると、まりやか紫苑さんか一子ちゃんに絞られてくる。
でも、まりやと紫苑さんにはこのことを知られたくないし……。
そうすると残りは一子ちゃんなんだけど、一子ちゃんは僕が目を覚ましたときには部屋にいなかったから、相談したくてもできない……ちょっと待って。
一子ちゃんがいない、そして僕の体が女の子になっている。
もしかして……
『一子ちゃん聞える?』
僕は自分の中に向けて話しかけてみる。
すっかり忘れてたけど、一子ちゃんが僕の体に憑依すると何故か女の子になるんだ。
もしかしたらこの状況はそれが原因なのかもしれない。
(お姉さま、私……)
僕の体の奥から声が聞えた。
どうやら予感は的中したみたいだ。
よかった、一時はどうなるかと思ったよ。
でも、一子ちゃんに僕の体から出てもらえば万事解決だ。
『一子ちゃん、お願いがあるのだけど』
(私、もう食べれませぇん……)
って、寝てる!?
『一子ちゃん起きて、朝だよ。一子ちゃん!』
必死に呼びかけるも、一子ちゃんはまったく起きる気配がない。
2/3
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
せっかく元に戻れると思ったのに、このままだと女の子の体のまま学校に行かなきゃいけない。
精神的にもきついけど、今の状況がまりやと紫苑さんにばれたらと思うと……。
でも、いつものように振舞っておけばばれないかなぁ……駄目だ、今日は体育があるんだった。
着替えの時になったらすぐにばれてしまう。
一子ちゃんが体育の時間までに起きてくれたらいいんだけど、都合よく起きてくれる保証はないし。
「もしもーし。瑞穂ちゃん起きてる?」
「ひゃっ!?」
いきなりノックの音と一緒に部屋の外からまりや声がする。
多分、部屋から出てこない僕の様子を見に来たんだろう。
「なに今の声。どうしたの?」
「な、なんでもないよ。すぐに行くから下で待ってて」
「そう? 瑞穂ちゃんがそう言うならいいけど。皆待ってんだから早く来てね」
それだけ言い残すと、まりやは食堂へ戻っていった。
もう考える時間は無い……か。
よし、覚悟を決めよう! 長くても一子ちゃんの目が覚めるまでの辛抱だ。
それくらいならごまかしきれると思う。
問題は体育の時間に間に合うかだけど、間に合わなかったときは休むことにすればいい。
と、思うだけなら簡単なんだけど……本当に大丈夫なのかな?
うぅ……一子ちゃん、少しだけ恨むよ。
3/3
384 :
133:2005/03/23(水) 14:42:08 ID:aINQiHN/
以上です。題名が保管庫にある74様の作品と被っていた為「お姉さまといっしょ」からこちらに変更します。
確認せずに作品の題名をつけてしまい申しわけありませんでした。
まとめ人様、可能でしたら題名の変更お願いします。
しかし、時間掛かってる割には量も内容も薄いです。
書きたいことがあっても上手く表現できないのが情けない。
文章も三点リーダー(……)で誤魔化しているところも多いですし。
他の職人様の作品を読んでは毎日へこんでます。
本当に職人様方を尊敬いたします。
あとモンブランについて調べてみたところ、その発祥はフランス説と日本説に分かれるが詳しくは不明。
フランス説は1907年以降、日本説が1933年以降なので、どちらにしても22年前にはモンブランはあったみたいです。
ちなみにチーズケーキは1873年、チョコケーキは1887年、ショートケーキは1926〜1936年の間とのこと。
(いずれも日本に来た年代を示しています)
……全然知らなかった。
皆さん初めまして。
こちらで様々な方の小説を読ませていただいて感銘を受け、及ばずながらも初めて筆を取ってみた一人です。
先ほど一段落を書き終えたのですが、どうも連載小説並みに長くなりそうな感じですので、少しばかり皆さんにお聞きしたいことが出来てしまいました。
こちらでは連載みたいな長編小説は好まれるのでしょうか?それとも短編小説の方が好まれるのでしょうか?
皆さんの考えをお聞かせ頂けたらと思います。
長編でも構わないということでしたら、もう暫くしてある程度書き上げてから投稿いたしますし、短編の方が好まれるのでしたら今ある文を割っていくつかの短文にして投稿したいと思います。
何分こういった小説を書くことは初めてですので、文章力はありませんしだらだらとしていて読みづらいものとなっているかもしれませんが、そのあたりも含めてお願いいたします。
一方的な問いで気分を悪くされましたら申し訳ありませんが、お答えのほうよろしくお願いいたします。
ちなみに、現在書いているものは「本編のエキストラルート」のようなものです。
誰一人として問題を抱えた人は居ないという状況で卒業式を迎えたい、という思いから書いています。
ガタガタ抜かす前に筆で語れや
ひとつだけアドバイスしてやろう
物書きに慣れてないのにいきなり長編書くのはやめとけ
書いてるうちに膨らみすぎて収拾つかなくなったり、途中で飽きたりするだけだ
>>385 前の方のヤツを受けての発言だと思うけど、そういうのを気にしすぎるのはあまり
良くないと思うよ。なんだかんだ言ってもここは2ch。やりやすいようにに書き
殴るので全然問題なし。
大体、後何ヶ月かすれば過疎化を免れない時事スレなんだから、むしろ追うのが大
変なほど職人が頑張っている今が華。
と言うわけで長編大作キタイシテル!マジデ!
388 :
名無しさん@ピンキー:2005/03/23(水) 15:23:40 ID:TqCaVMHB
書くのはかまわんが、連載やる気ならもうちょっと要点絞った文章書けるようにしてからにしてくれ。
今のリレーみたくだらだら続けられても筋が見えなくなるだけだ。
はじめてなら短篇にしとけ。
389 :
4-385:2005/03/23(水) 15:28:46 ID:0BZzzy6e
皆さんアドバイスありがとうございます。
そうですね、初めて書くものなのにいきなり長編は虫が良すぎたようです。
短編から入って、今書いている長編は慣れたころに読み返し、書き返してみることにします。
ということで、暫く短いものを書いてきます。
390 :
前スレ226:2005/03/23(水) 15:33:12 ID:uLvl6ZV/
>>385 やっちゃってください。
「これが俺の作品だ」というのならば遠慮容赦なく投下すべし。
収拾がつかなくなりそうとか心配ならば、有る程度目処がついた時点で分割
して投下すれば良いのだし。
迷ったらうpしてみる。それでいいと思うのだが。
391 :
瑞穂:2005/03/23(水) 16:40:53 ID:+nPk2JuC
僕の考えからすると、長編逝ってよし!!とか言ってる人は
SS保管庫を利用したらどうですか?
分けられてるからそこまで苦にならないと思うよ
つうか、面白ければ何でもいいよ。
つまんなかったらスルーするだけだし。
貴子ED貴子視点 海に行こう!シリーズの7本目。過去のシリーズは必読。読まなきゃ、意味がわからないかも。
雨の日のすごし方編
ざーざー・・・大粒の雨が窓ガラスと水面と砂浜を叩く音がしている。
昨日まで走り回っていた砂浜は薄暗く、出しっぱなしだったビーチパラソルとチェアーが雨に打たれている。
朝食を取り終え、リビングでくつろぐ7人。テレビのニュースでは今日の瀬戸内地方は一日雨との事。外に出るのは無理でしょう。
ここに来てからは毎日、朝から晩まで海辺で遊びまわっていた。だから、こうやって静かにすごすのは久しぶり。
「退屈ねぇ・・・」
この状況に一番最初に音をあげたのは、予想通りまりやさんだった。
テレビはどこのチャンネルをかけても、大して面白いとは思えない下世話なワイドショーか、ずいぶん昔のドラマの再放送しかしていない。平日の昼間ですからね。
「それじゃ、奏は夏休みの宿題をするのですよ」
「えっ、奏ちゃん宿題持ってきてるの?」
「はいなのですよ。お姉さま、久しぶりに勉強を見てもらってもよろしいですか?」
ニコニコと嬉しそうにバッグから参考書と問題集を取り出して、瑞穂さんに声をかけると、良いですよ、と瑞穂さんは奏さんの隣に席を移した。
「あうぅ・・・奏ちゃ・・・」
「駄目なのですよ、宿題は自分でしないと」
由佳里さんが情けない声を上げようとするのを、さえぎるように奏さんがピシャリと言い切ってしまう。
「変な所でまりやさんとそっくりですわね。由佳里さんは」
ボソッと小さな声でつぶやいたのが、由佳里さんの耳に届いてしまったようだ。
「・・・まりやお姉さまとそっくり・・・」
「何で落ち込むのよ、由佳里」
そう言ってまりやさんが丸めて投げたティッシュが、ポコンと由佳里さんの頭に当たって跳ねた。
「いたぁい」
由佳里さんが大げさに痛がり、リビングに笑い声が響く。たまにはこういう時間の過ごし方も良いのかもしれない。
奏さんが持ってきていた別の宿題を由佳里さんに与え、それを帰ったら寮で写し合うということになった。
微妙に勉強が苦手な所も、まりやさんにそっくりですわね。言うと、由佳里さんが落ち込むので言いませんが。
「紫苑お姉さま、少し聞いてもいいですか?」
ソファーでくつろいでいた紫苑さまに由佳里さんが声をかける。
(1/5)
「ええ、私で判るのでしたら」
テーブルで宿題をする二人の両側に、瑞穂さんと紫苑さまが座り、手元を指差したり、何かを教えたりしている。
そうなると取り残されるのは、宿題もなければ、後輩に頼られもしない先輩二人と、幽霊三等兵一人。
「退屈ねぇ・・・貴子」
「退屈でしたら、前期の復習でもなさってはどうですか?」
「あんたこそやれば?」
「私は退屈などしていませんから」
「私も退屈ですね」
一子さんまでもが参加し、後輩たちの勉強の邪魔にならないよう小声でが話し合う。
「貴子だって暇なんでしょ?何かアイデアを出しなさいよ」
「だから、私は退屈などしてませんと・・・」
「まあまあ、貴子さんも忙しいわけではないのですから」
「そうそう、忙しいとは言わせないわよ、貴子」
確かに忙しいわけではないですけど・・・
「大体、どうして私まで巻き込むのですか?」
「そりゃ、こういうのは頭数が多い方が面白からに決まってるじゃない」
そんな所だろうとは思ってましたけど・・・
「あなたはいつもそうですわね。面白そうと言うだけで、騒動を起こして、それに私まで巻き込んで・・・」
「別にあんたを巻き込むつもりなんてないわよ。貴子が巻き込まれるところにいるだけじゃない」
「嘘ですわ、幼稚園の時だって」
「あっ、あんた、あの事、まだ覚えてたの?相変わらず執念深いわね」
「あのような事をされたら、嫌でも忘れられませんわよ」
「貴子さんとまりやさんのお二人は、幼稚園の頃からご一緒でしたのね。もしかして、幼馴染ですか?」
「そうですわ、あの時も私が後でどれだけ恥ずかしい・・・」
顔を上げると、勉強をしていたはずの4人が車座になった私たちを見下ろしている。
「あっ、続けてください。貴子お姉さま」
「なのですよ〜」
「私もぜひともお聞かせ願いたいですわね。貴子さん」
「僕もちょっと聞きたいですね」
コホンと軽く咳払いをして・・・
「宿題、お続けください」
(2/5)
そう言うと、4人は落胆の声を出して、元のテーブルに戻っていった。
「後で皆に教えてあげるわね」
「まりやさん・・・あれ、言いますわよ」
「あれを言えば、貴子のあれもばらすわよ」
顔を近づけ、お互いの黒歴史を囁きあう。
「えぇ、聞きたいです〜秘密はお墓の下まで持っていきますから」
どこでそういう言い回しを覚えたのかは知らないが、すでに墓の下に入ってしまっている一子さんが言う。
「一子ちゃん、それ、全然、説得力ないし」
「とにかく、過去の汚点には触れない事にしましょう。お互い」
「先に触れたのは貴子じゃない」
瑣末な過去のことなど忘れました。
「えー、そうなんですか?」
「つまらないのですよ」
「あらあら、残念ですわね」
「聞きたかったんですけど・・・」
不満を漏らしながら、4人が元のテーブルに戻る・・・油断も隙もない人たち・・・
はぁ・・・溜息が漏れる。全く、噂好きなのは恵泉の伝統でしょうか・・・
トントンと言う包丁がまな板を叩く心地いい音がキッチンに響く。隣では奏さんがスープの味を取っている。
食事は交代で作ることになっていたはずだが、一子さんは食べれないし、瑞穂さんは作る意欲はあってもレパートリーが決定的に不足している。逆にまりやさんはレパートリーはあるはずなのだが、意欲が決定的に不足している。
そういうわけで、残りの4人の中で手のあいているものが適当に作る事になってしまった。
11時30分を少し回った、この調子だとお昼は少し早めになりそうだ。
由佳里さんはまだ宿題のノルマが出来上がっていないので、紫苑さまに見てもらいながら、テキストの前でうなっている。
奏さんの作っていたスープが出来上がった。次は私がコンロの前に立ち、中華なべをコンロにかける。
実家ではあまり中華が食卓にあがることはなかったが、瑞穂さんが好きで最近はよく食べるようになった。
そういうわけで、今日のお昼は簡単にチャーハンと中華風スープに決定。
「6人分も作るのは凄く大変なのですよ〜」
大きな鍋になみなみと作ったスープの味を調えるのに苦心していた奏さんが悲鳴を上げる。
(3/5)
「そうですわね・・・私も普段は二人分ですから」
油を引いた中華なべにハムや野菜を入れて炒めていく。人数が倍だから調味料も倍、では美味しくないのが料理の難しい所。
「そういえば、貴子お姉さまはお姉さまと一緒に暮らしていらっしゃったのですよね?」
「ええ・・・そうですわよ」
「それでお食事の準備をして。まるで主婦みたいなのですよ」
顔がカーッと熱くなってしまう。
「奏も好きな男性に食事を作ってあげたいのですよ」
「そっそうですわね」
主婦みたい・・・主婦・・・今すぐにでもなりたい。
お忙しい瑞穂さんの帰宅にあわせて、たっぷりと時間をかけた料理を作った待つ・・・ご近所の方に奥様とか呼ばれて・・・
「貴子お姉さま、チャーハンを作って欲しいのですよ」
やっぱり、瑞穂さんのことはあなた、とお呼びするのが正しいのでしょう。あなた・・・でも、私はお前と呼ばれるのは嫌ですわね。貴子と名前で呼んでいただくほうがいいですわ。
「駄目そうなのですよ・・・」
あっ、瑞穂さんがどうしてもお前と呼びたいのでしたら、もちろんそう呼ばれるのに異存は全くないというか、それはそれで嬉しいと言うか・・・そういえば、瑞穂さんはいつまで私を「貴子さん」と、さん付けで呼ぶつもりなのでしょうか・・・
「貴子、いつまでトリップしてんのよ!」
パカンと言う心地良い音で私の後頭部でなり、現実世界に引き戻された。叩かないでください、まりやさん。
なお、私の作っていたチャーハンは奏さんが仕上げて、すでに盛り合わせていた。いつの間に・・・
昼食が終わる頃には雨は小降りになり、夕日が水平線に落ちる頃には空の大部分から雲は消え去っていた。
雨が空を洗ってくれたおかげで、夕日の残り日が西の空を朱色に染め上げ、東の空には美しい星空が広がり始めているのが、普段異常に美しく見える。
キッチンからは紫苑さまと由佳里さんが用意している食事のいい香が漂い始めてきた。
今日は一日ごろごろしただけ。こういう時は変な疲労感を覚える。慌しい方が性にあってるのでしょうね、私は。
外に置きさらしだったビーチサンダルは、雨に濡れて少し冷たい。それに足を入れて、雨に濡れて硬くなった砂浜に下りた。
「あれ、貴子さん、もうすぐ食事ですよ」
声をかけてきた瑞穂さんに「散歩ですわ」と答えると、彼も同じように砂浜に降りてきた。
(4/5)
「お付き合いしますよ」
「はい」
どちらからともなく手を繋ぎ、夕闇が支配し始めた雨上がりの砂浜を歩く。
西の空を覆い始めた星のきらめきは、明日の好天を予告しているよう。最終日の夜には、対岸の港で大きな花火大会があるそうだ。
「久しぶりですわね、二人っきりは」
「そうですね。ベッドに入ってもお互い、すぐに眠ってしまいましたから」
「毎日、朝から晩まで浜辺で駆け回っていれば、疲れて当然ですわ」
たわいもない会話をしながら砂浜を歩いているうちに、波打ち際についてしまった。雨の所為で海水が素足のつま先に少し冷たい。
振り向けば明かりのついたリビングで、友人たちが夕食の準備をしている。あの調子でしたら、もう少しは二人っきりの時間が楽しめそう。
特に何をするわけでも何を話すわけでもなく、私たち二人は手を繋いだまま、夜が訪れようとしている海を見つめ続けていた。
「そろそろ帰りましょうか?ご飯も出来てるみたいですし」
瑞穂さんにそういわれ、顔を別荘の方に振り返れば、一子さんがふわふわと浮かびながら手を振っているのが見えた。
本当にたまにはこう言う一日の過ごし方も悪くないですわね。
その頃の別荘。
「キス、しなかったから、私と奏ちゃんの勝ちね。紫苑さまと由佳里、はい、500円」
(おしまい)
長編でもこういう風にいちいちオチがつくなら大歓迎ですな〜。
面白かったです。
いつも続き楽しみにしてます。
>>357 遅レスですが箱氏乙です。
一子スキーの漏れとしては最高の作品だと思います。
漏れも何か書こうかな・・・
これからも出来れば一子関連を作り続けて下さいね。
>>初代550氏
いつもながらお見事であります。次は最終日の夜でしょうか?
続きが楽しみであります。
>398
同意。
ただきりがいいところでぶった切りましたってのはやめてほしいよな。
誰とはいわないけど。
そういやまとめサイト見てたんだけど、途中で止まってる連載って意外とあるんだな。
一度始めたんならやっぱ完結させてほしいよな。
まあ打ち切りマンガみたいに雑な代物で茶を濁されるよか未完のままの方がいいのかもしれないけど(w
いつもショーもないSSにレス頂けて、ありがとうございます
>>401 次回で最終回ですよ
流れで使えなかった小ネタが1つ2つあるから、それでちょっと短めの番外SSを書くかもしれないけど・・・
405 :
4-385:2005/03/23(水) 23:22:52 ID:0BZzzy6e
短編物をひとつ書き上げてみました。
感想のほどを頂けたら幸いです。
406 :
4-385:2005/03/23(水) 23:24:36 ID:0BZzzy6e
「んー、やっぱりいいねぇ…」
「そうね、季節外れだけどこれはこれで良いものがあるわね。」
「お姉さま、まだまだありますのですよ〜」
「綺麗です…」
『揺らめく炎』
事の発端は昼過ぎのこと。まりやは買い物から帰ってくるとなにやら大きな袋を抱えていた。
「あれ?まりや、何を買ってきたの?」
「お、瑞穂ちゃん、何時に無く鋭いねぇ」
「まりや…そんな大きなビニール袋を持ってたら誰だって気づくわよ…」
「にゃっはっは、まぁ気にしない気にしない。夜のお楽しみってことよ」
やけに大きな袋―しっかりと口は結ばれていて中は見えない―を抱えて、まりやは部屋へと戻っていった。
「気になるわね…」
「気になるのですよ〜…」
「気になります…」
いつの間にか集合してまりやの動向を不審に思うお三方。
407 :
4-385:2005/03/23(水) 23:25:10 ID:0BZzzy6e
そんな三人をよそに
「ふっふふ〜ん♪」
鼻歌を歌う部屋の中の約一名。
「な、何だか怖いわね…」
「ふ、冬の寒さも災いして不気味なのですよ…」
「い、今のうちに対策を考えないと、後々大変なことになりそうです…」
なんだか物々しい雰囲気になってきたところで、当のまりやがとどめのように
「♪〜待っててね〜ゆかりん〜♪」
「ひぃっ!!」
由佳里ちゃんは完全に竦み上がってしまった。
「…こんなにハイテンションなまりやなんて見たこと無いわね…」
「ハイテンション…なのでしょうか…?」
「本人はね…周りにちょっとばかり害を及ぼしてるけど…」
「と、とりあえずここを離れないとますます由佳里ちゃんが大変になりそうなのですよ…」
「そ、そうね…」
由佳里ちゃんは夜の校舎に入ったときと同じような状況で固まっていた。
408 :
4-385:2005/03/23(水) 23:25:50 ID:0BZzzy6e
そして10分後、3人は食堂で対策会議(?)を開いていた。
「一体まりやは何を買ってきたのかしらね…」
「まりやお姉さまがお洋服関連以外の物をお買いになるところを見たことがないのですよ…」
「確かに…まりやはそういうこと以外は関心薄いからね…」
「…」
由佳里ちゃんはまだカチカチに固まっている。
「ゆ、由佳里ちゃん…幽霊さんでもみたようなお顔なのですよ…」
「ひ、ひぃっ!!」
「奏ちゃん、それは明らかに逆効果よ…」
「あ……しまったのですよ…」
由佳里ちゃんは最早動かなくなった機械…蝋人形のようになってしまった。
すると誰かが階段を下りる足音がして…
「あれー?みんなして何を話してるの?」
話の元凶がひょっこり顔を出した。
「え?いやぁ、特に何を話そうってわけでもなく、ただのんびりしているだけよ」
「そ、そうなのですよ〜」
「…」
「ふうん、まぁいいや、何度も話す手間が省けたわ。」
「「「?」」」
「えっと、今日の夜9時ぐらいに寮の裏手の広場に来ること。寒いから風邪引かないように厚着してね。」
「え?何をするの、まりや?」
「ふふーん、ひ・み・つ ってさっきも言ったでしょ?じゃ、よろしくね〜」
突然のまりやの提案(強制)にあっけに取られていると
「あ、奏ちゃん、私は今日夕飯はいらないから。寮母さんにそう言っといてね〜」
捨て台詞(?)を残して食堂を出て行った。
409 :
4-385:2005/03/23(水) 23:27:17 ID:0BZzzy6e
「お姉さま、どうすればいいのでしょうか…」
「奏も分からないのですよ…」
「とりあえず、行くしかなさそうね…あんなまりやを見るのは初めてだからどうなるかは私にも分からないけれど…」
「…」
そして、特に良い考えも浮かばないまま、その時間を迎えてしまった。
410 :
4-385:2005/03/23(水) 23:27:52 ID:0BZzzy6e
「お、来たね三人とも。」
「まりや…そろそろ教えてくれても良いと思うけれど?」
「瑞穂ちゃん、あせらないあせらない。さぁて、これ何に見える?」
と、まりやがポケットから取り出したのは短くて白い棒。チョーク…ではないが…これは?
「あ、ろうそくなのですか?」
「さっすが奏ちゃん大正解〜、使うものはまずこれと…」
まりやはマッチを取り出し、器用にろうそくを少し溶かして地面に固定させた。
「あとはこれね。」
と、まりやは後ろにあったバケツを取り出した。置くときに重そうな音がしたのは水が入っていたからだ。
「?」
何が何だか分からない僕を尻目に、まりやは着々と準備を進めていく。
「さぁて、使うのはこの3つとこいつだけど、何だか分かるかな〜?」
まりやは大きなビニール袋を指し示しながらニヤニヤ笑っている。
「ろうそくと…マッチ…水の入ったバケツ…あと何か…?」
「分からないのですよ〜…」
「うーん、瑞穂ちゃんはちょっと難しいかもしれないねぇ…」
「私は…難しい?」
余計分からない。私は難しいって…?知らないというならまだしも、難しいというのは何なのだろうか…
「「うーん…」」
隣では奏ちゃんと由佳里ちゃんが必死に首をかしげている。
411 :
4-385:2005/03/23(水) 23:28:48 ID:0BZzzy6e
数分後…
「あれぇ、わかんないかなぁ…」
「分からないわね…」
「奏もなのですよ〜…」
僕と奏ちゃんは既に降参宣言。
「由佳里は?」
「うーん…どこかで見た組み合わせなんですよね…ろうそくと水の入ったバケツって…」
「うんうん、どっかで見たことあるはずだよ?そうだねぇ…季節外れ かな?」
「季節…外れ…ということは夏…?」
奏ちゃんはもう考えるのを放棄して由佳里ちゃんをじっと見ている。
「夏……ろうそく…水……あっ!」
「お、ゆかりん気づいた?」
「お、お姉さま…もしかして…」
何故かまりやに耳打ちをする由佳里ちゃん。
「大正解〜 由佳里が一番馴染みがあるよね?」
「そうかもしれませんね。夏にはほとんど毎年やってましたから。」
「デパート歩いてたらさ、私も懐かしくなって買ってきちゃった。季節外れかなって思ったんだけど、おかげで安かったしね。」
「まりやお姉さまもお好きなのですか?」
「当ったり前よ。これを嫌いっていうならあたしは日本人と認めないからね。」
「あはは、そうですね。」
談話に花を咲かせるまりやと由佳里ちゃん、置いてけぼりの僕と奏ちゃん。
「あの〜、そろそろ答えを教えていただけないのでしょうか…」
「そうそう、何なの、まりや?」
「ああ、これはね…」
412 :
4-385:2005/03/23(水) 23:29:55 ID:0BZzzy6e
パチパチと火花のはじける音がして。あたりが白い光で包まれる。
「それにしても、花火ね…納得したわ…」
手に持った棒から光を飛ばしながら呟く。
僕が持っているのは普通のもの。まりやは何やら大きくて派手なもの。奏ちゃんと由佳里ちゃんは…
「あ〜…玉が落ちてしまったのですよ〜…」
「奏ちゃん、揺らしちゃだめだよ〜」
物静かな線香花火。
「ね?瑞穂ちゃんは難しいかもって言ったでしょ?」
「そうね、私は普通の花火なんてやったことないからね…」
花火っていうと、父様に連れていていって貰った、どこかの川での打ち上げ花火の印象が強いんだよね…
「でもまりやらしくないわね?しかもこんな時期に…」
「瑞穂ちゃん、ちょっとひどいわよそれは。」
「ふふっ、普段の行いが示してるんですよ?」
「あー…まぁ否定できないけど、これは由佳里のためよ。」
「…由佳里ちゃんの?」
まりやは終わった花火をバケツに放り込むと、線香花火を持ってそばにしゃがみこんだ。
413 :
4-385:2005/03/23(水) 23:32:02 ID:0BZzzy6e
「由佳里がさ、やっと吹っ切れた…っていうのかな、気持ちに整理がついたんだろうね。この前あの子に部屋に呼ばれてさ、
何やら真顔で話そうとしていたから何かと思ったらお義姉さんのことでね。ちょっと昔の話をしてくれたのよ。
どうして恵泉女学院に入ろうと思ったのか、お義姉さんがどんな人だったのか、いろいろとね。」
「そう、由佳里ちゃんが…」
「そのときにさ、思ったのよ。由佳里はお義姉さんを目標にしていたけれど、うまく言えないけど…想い出を捨てていた…ううん、忘れていたんじゃないかってね。」
「想い出…?」
「うん、想い出。お義姉さんはもう亡くなっているんだからさ、その人との関係で一番強いのって想い出じゃない?
瑞穂ちゃんは約束って言うと思うけど、あたしはそういった束縛的なものじゃなくってさ、写真やなんかよりもやっぱり実際の想い出って強く残ると思うんだ。
いくら目標を決めたからといってさ、それがただ単に達成されるものだけだったら、思い出として何一つ残らないものだったら
意味は無いんじゃないかなって。」
「由佳里ちゃんはね、『お義姉さん』そのものになろうと思っていたのよ。ただ、前までは自分はそんな風にはなれないって思ってたのよね。だから…」
「分かってるよ、瑞穂ちゃん。それもちゃんと話してくれた。うつむいたりせずに、しっかりとあたしを見て…ね。
お義姉さんのようになりたいって思う反面で、そんなこと無理だって思っちゃってたこと。自分のやりたいことを殺してまで陸上とかをやっていたこと。
そして…瑞穂ちゃんは全部を分かってくれた…ってこと。」
「…強くなったわね、由佳里ちゃんは。そうやって全てを話せるようになったというのは…」
「うん、あたしも凄いことだと思う。いや、あたしには一生出来ないかなって思ってる。
…だけどね、由佳里が話してくれたことの中に、想い出…みたいな物って無かったんだ。」
「想い出が…無かった…?」
414 :
4-385:2005/03/23(水) 23:33:26 ID:0BZzzy6e
「うん、あたしの聞いた限りでしかないけれど、お義姉さんの容姿とかどんな人だったかを話してはくれたけれど、どんなことをしたとか、どういうことがあったとか、
そういう類の話が一言も出なかったんだよね。だからさ、あたし聞いてみたのよ。お義姉さんの想い出話は無いの?ってね。」
「確かに…私のときも…ほんの少ししか無かったわね。いつも優しくて…ぐらいのことしか…」
「そうでしょう?まあそれも想い出の類に入るけれど、由佳里がお義姉さんになりたいと思ったきっかけの理由が含まれているのよね。
それ以外の普通の想い出…一緒に遊んだとかそういうのが出てこなかったのよ。」
「由佳里ちゃんは…まだしまいこんでいるのかしら…」
「由佳里自身は気づいてないと思うのよね。想い出がどんなにたくさん溢れているか。ここですごしてる時にたまに聞くことはあったけれどさ、
ちゃんと聞いて話をし始めたら、それこそ山のように話すことがあったのよ。学校で遊んだこと、一緒に料理を作ったこと、海で泳いだこと…色々とね。
その中でも特にたくさんあったのが夏の話でね。その中に花火があったのよ。一緒に海岸で花火をやった想い出っていうのがね。」
「由佳里ちゃん…」
「だからさ、ちょっと考えちゃったわけよ。ここで寮に住んでいると少なからず普通の世界とは隔離されちゃっているのよね。
だから小学校までを普通の世界で過ごしていた由佳里にとってさ、想い出と言うものを思い出すきっかけというのが無かったのよ。
ここでは学校で遊ぶなんてことは滅多にないし、海でも泳がないし、料理を教わるのも授業の一環だしね。花火なんてのはもってのほかなわけで。」
415 :
4-385:2005/03/23(水) 23:34:21 ID:0BZzzy6e
「そうね、言われてみればそうだよね…僕はそういうことを考えてあげられなかった…」
「ううん、瑞穂ちゃんもどこかで分かってたと思うよ。ただうまくいえなかった、それだけのこと。
由佳里の場合は想い出の上に義務がかぶさっていたっていうことと、想い出に浸るきっかけが無かった、その二つだけなのよ。」
「まりやは凄いよね…そういうところをちゃんと見抜いて、こういうことをしてあげて…」
「やだな、瑞穂ちゃん、瑞穂ちゃんは…言っちゃ悪いかもしれないけれど普通の世界で育ってはこなかったでしょ?
あたしも、奏ちゃんもそうだからさ、由佳里の気持ちにすぐに気づく人がいなかったのよ。それでもさ、瑞穂ちゃんは一番最初に私の気持ちを口にしてくれたって、由佳里は言ってたよ?
一番の大役者は瑞穂ちゃんなんだから、ほら元気出して。」
「うん…ありがとう、まりや…」
「どういたしまして、瑞穂ちゃん。さあ、由佳里のためにも残りの花火を燃やし尽くすぞ!」
「うん!」
まりやは本当に凄い。由佳里ちゃんのことを真剣に、わが子のように考えることが出来て。
それで、こんなに努力をしていて。由佳里ちゃん、本当に幸せそうで。
僕は気づかなかったけれど、今まで気づかなかったのならこれから埋め合わせをしてあげないと。
これから…僕が卒業するまでの間に。まずは今出来ることから…
「ねえ、由佳里ちゃん?花火に何か思い入れがあるの…?」
それは、揺らぐ気持ちを表すような、炎の揺れる1月の物語…
416 :
4-385:2005/03/23(水) 23:35:03 ID:0BZzzy6e
『あとがき』
強くなった由佳里ちゃん、優しいまりやの妹思いの一面、そんな二人を書いてみました。
本編では由佳里ちゃんルートの「瑞穂と一緒に寝る〜正体がばれる」の間になります。1月の下旬でしょうか。
由佳里ちゃんの話についてはなるべくおかしい点が無いように頑張りましたが、変だったら申し訳ありません…
確かに,由佳里に関しては難しいんですよね.からめる人が実質瑞穂かまりや
しかいないので…しかも,瑞穂は理由としては弱いですし.
ですが,まりやが由佳里に対して心配している心情がでていていいと思います.
少し,由佳里の心の成長が見えたらいいな〜思いましたが,これはへたれSS書
きのざれごとで,流して下すってかまいません.
えと,投稿遅れています.もう少し推敲して投稿したいと思います
>>416 まりやや瑞穂の由佳里への優しさ、想いが伝わってきて実によかったです。GJです。
私はこういう話書けないので・・・羨ましいです。
このようないいお話の後に投下するにはちょっと気が引けますが、
予告していた通り、投下させていただきます。
今回は長くなってしまったので、前編と後編に分けます。
前編、予定通りなら11レス分です。
『One-After-Another前編』.1
―――それは残暑、9月の物語・・・
宮小路瑞穂がエルダーシスターに選出されてからはや3ヶ月。
女装して女子校に通っていることを除けば、平穏な毎日。そんなある日に起きた、ちょっとした大事件・・・
朝。今日は陸上部の朝連がお休みのため、寮生みんなで朝食をとることになっていた。
「まりやお姉さま、遅いですね。」
「そうね。いつもならご飯の時は一番に食堂にいるのに・・・」
「奏、呼んで来るのですよ〜。」
「奏ちゃん、いいわ。私が呼んできます。」
「ん〜・・・ふぁ・・・」
瑞穂が階段に向かうと、ちょうどまりやが降りてくるところだった。
「ん・・・あ〜、瑞穂ちゃん、おはよ〜」
「おはよう、まりや。もう朝ごはんよ?みんな待っているわ。」
「ん〜・・・」
まりやが寝ぼけ眼で階段から降りてくる。
と、
「んっ、わわっ!」
まりやが階段を踏み外し、そのまま階段下に落下し・・・
「まりやっ!」
瑞穂がまりやを受け止めようと下にもぐりこんだ!
ごち〜ん
どさばたっ
『One-After-Another前編』.2
「・・・ん〜・・・瑞穂ちゃん、ごめん・・・大丈夫・・・ってな、なにっ?」
という声が、瑞穂の口から紡ぎだされた。
「だ、大丈夫だけどって・・・ええっ、ど、どういうことっ!?」
という声が、まりやの口から紡ぎだされた。
次の瞬間、ふたりは自分自身の姿を見ていた・・・
「な、なんじゃこりゃーーーー!!」「な、なにこれ〜〜〜っ!!」
ふたりの絶叫が、寮内に響いた。
「お姉さま、どうしたんですかっ!?」
「瑞穂お姉さま、まりやお姉さま、大丈夫なのですか〜?」
「ちょ、ちょっとまったっ!い、いいっ、ふたりとも、だ、大丈夫だから、と、とにかく食堂に戻ってまってなさいっ!」
「は、はいっ!?」
「はいなのですよぅ〜っ」
普段の瑞穂から考えられないような強い言い方にびっくりして、由佳里と奏が怯えて食堂のほうに戻る。
「ど、どういうこと、これっ!?」
「と、とにかく、まずは瑞穂ちゃんの部屋に・・・っ!」
ふたりは慌てながら、瑞穂の部屋に向かった。
『One-After-Another前編』.3
瑞穂の部屋に入り、カギをかける。
「「はぁ・・・」」
ふたりはとりあえず、ため息をついた。
「お姉さま、まりやさん、どうなさったんですか・・・?」
「いやぁ、あたしにもよく・・・」
「お、お姉さま・・・?」
瑞穂の言葉遣いに驚く一子。
「ああ、一子ちゃん、ちょっと待ってね。いま、確認するから・・・」
「えっと、瑞穂ちゃんなんだよね、あたしの中の人?」
「えーっと、うん、そうなるのかな・・・。」
「そんでもって、この長い髪。やっぱりこの体、瑞穂ちゃんのだよね・・・?」
「う、うん。確かに僕の体だよ・・・」
「つまり・・・頭をぶつけた衝撃で、入れ替わっちゃったってこと?」
「そ、そうなるね、きっと・・・」
「「そんな、ベタベタな・・・」」
ふたりは、もう一度ため息をついた。
『One-After-Another前編』.4
「え〜っと、つまり・・・まりやさんの体の中にお姉さまが、お姉さまの体の中にまりやさんがいらっしゃるわけですか?」
「そうみたいね・・・」
「なんというか・・・非科学的な・・・っ!」
「あの〜、幽霊の私が云うのもなんですけれど、幽霊が存在するわけですから、
こんなことも起こりうるんじゃないでしょうか・・・?」
「「・・・」」
「と、とにかく、戻る方法を考えないと・・・っ!」
「そ、そうよねっ! 手っ取り早い解決法は、やっぱり頭ぶつけることよね!瑞穂ちゃん、覚悟っ!」
「え・・・ちょ、ちょっとま・・・」
瑞穂(まりやが中の人)がおもいっきりまりや(瑞穂が中の人)に頭突きをする。
ごつ〜んっ!
「〜〜〜〜〜〜っ!」
「く・・・ぐ・・・っっ!」
・・・
・・・
「やっぱり、ダメか・・・。」
「そう思ってたんならやらないでよ・・・」
「こんなベタベタな話だから、これで済むかなと思ったんだけど、現実はそこまで甘くないわね・・・」
「と、ともかく!もう時間もないし、今日はこのまま過ごすしかないわね。」
「そ、そんなぁ〜」
「で、さ。ちょっと気になることがあるんだけど・・・」
『One-After-Another前編』.5
「気になることって・・・?もう何も驚かないよ・・・」
「あのさ、なんで、あたしの体に、胸が無いの・・・?」
「・・・え・・・?」
「ていうかなんなの、この胸の変な感覚はっ!?」
といって、瑞穂(まりや)が制服の上を脱ぎだす。
「な、なんじゃこりゃーーーー!!」
そこには、豊満な胸の上に、シリコン入り胸パッド(6万円相当)が乗っかっていた。
「な、ど、どういうことよっ!み、瑞穂ちゃんも、ぬ、脱いでっ!」
「え、ちょ、ま、まりやっ!?」
瑞穂(まりや)がまりや(瑞穂)の服を脱がす。
「な、なっ・・・っ!!」
まりや(瑞穂)のショーツを強引に下ろした。そこには・・・オトコの象徴が・・・
「あ・・・あ・・・あたしの・・・っ、か、からっ、身体が・・・お、オトコのコに・・・っ」
「え、ええっ!?」
「わぁ、まりやさん、カッコイイです〜。美男子ですね〜。」
一子が両手で顔を隠しつつ、そのスキマからまりや(瑞穂)の体を眺め、場違いなコトを口にした。
「い、いや・・・一子ちゃん。ソレ、凹む・・・」
「・・・っつうことは・・・っ!!」
瑞穂(まりや)は自分のスカートをめくりあげて、ショーツを下ろした。
「み、瑞穂ちゃんの、か、からだが・・・お、オンナのコに・・・っ!」
『One-After-Another前編』.6
「つ、つまり・・・性別って・・・中の人で決まっちゃうってコト・・・?」
「そ、そうなのかも・・・前、僕の身体に一子ちゃんが乗り移った時も女の子になっちゃったし・・・」
「こんな、こんなことって・・・」
「・・・頭、痛い・・・。これ、頭ぶつけたから、じゃないよね・・・」
「あ、あたしもショックだわ・・・。あたしの身体がオトコになっちゃったなんて・・・」
「と、とにかく、今日はこれで過ごさなきゃダメなんだよね・・・」
「そうね・・・。瑞穂ちゃんはあたしの振りをしながらオトコのコであることを隠して・・・
あたしは瑞穂ちゃんの振りをしてエルダーとして振舞う、と・・・はぁ・・・。」
「はぁ・・・なんでこんなことに・・・」
「でさ、瑞穂ちゃん。」
「な、なに?」
「あのさ・・・あたしの体で、妙なことしないでくれない・・・?」
「え・・・?」
「あ、あたしの体で、オトコのアレ、勃たせないでよっ!」
「え・・・ああっ!」
まりや(瑞穂)が自分の股間を見ると、アレがそれはもう元気に・・・
「ちょ、どういうことよ、瑞穂ちゃんっ!まさか、女の子になった自分の裸見て、興奮しちゃったのっ!?」
「え、いや、それは、その・・・」
「みみみ、瑞穂のヘンタイっ!ナルシストっ!」
ガシャーーーン
『One-After-Another前編』.7
・・・
・・・
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
瑞穂(まりや)が息を切らせている・・・。
「ま、まりや・・・落ち着いた・・・?」
「な、なんとかね・・・。でも・・・瑞穂ちゃんはまだ収まってないみたいだね・・・」
「え・・・あ・・・」
「はぁ。しょうがない。このままじゃ、あたしがオトコのコだと勘違いされかねないから・・・」
といって、瑞穂(まりや)がまりや(瑞穂)を押し倒す。
「わぁ、ちょ、ちょっとまってっ!い、一子ちゃんも居るのにっ!」
「待たない。自分のハダカ見て興奮しちゃうような瑞穂ちゃんにはたっぷりお仕置きしないとっ!」
瑞穂(まりや)はまりや(瑞穂)のアレを掴み、そのまま強く扱く。
「んっ・・・あぁっ・・・」
「ちょっと・・・瑞穂ちゃん・・・あたしの身体でそんな色っぽい声出さないでよ・・・」
「そ、そんなこと、云ったって・・・あ・・・ん・・・」
瑞穂(まりや)は前のように、まりや(瑞穂)に身体を押し付ける。
「ねぇ、自分の女の子になった身体、やわらかい・・・?」
「う・・・・うん・・・んっ・・・うぁ・・・」
「あたしの身体と、瑞穂ちゃんの身体、どっちが気持ちいい・・・?」
「え・・・」
「ほら、答えて・・・・?」
「そ、それは・・・まりやの、かなぁ・・・素直に喜べるし・・・んっ・・・ふぁ・・・」
「あはは・・・なんか、微妙な答えね、ソレ・・・。素直じゃなかったら自分の身体がいいの・・・?」
『One-After-Another前編』.8
そんな様子を見ていた一子は・・・
(私、すっかり忘れ去られちゃってますねぇ・・・。それにしても・・・おふたりってやっぱり幼馴染を軽く超越しちゃってます・・・)
やっぱり指の間からしっかり様子を見つつ、顔を赤面させながらそんなことを考えていた。
「わぁ・・・なんかすっごくいけない事してる感じですねぇ、ええっと、まりやさん。」
「そう?このくらい、フツーじゃない?」
「普通じゃないよ、全然・・・っていうか勘弁してよぅ、まりや・・・」
「フツーって言い切れるところが凄いですねえ。
それにしても、こうお姉さまがまりやさんを襲っているところをハタから見ますと、
幼少の頃からまりやさんにからかわれたりしているお姉さまの怒りがついに爆発!幼馴染だろうがお構いなしっ!
お姉さまが深層に隠しておいた獣の本性がついに炸裂しまりやさんに襲い掛かるっ!
でもまりやさんはお姉さまのウルトラテクでメロメロに・・・っていう感じですねぇ?」
「あはは。一子ちゃん、それ面白いね。でも・・・あたしは瑞穂ちゃんになら襲われてもいいかな〜なんて・・・」
「「・・・え・・・?」」
「あ・・・っ! あ、あはは。冗談冗談っ!ふ、ふふ・・・瑞穂ちゃん、今ので興奮した?余計におっきくなったよ?」
「・・・んぁ・・・ふぁ・・・っ!」
「う〜ん・・・それにしても、なんか複雑よね・・・。自分を犯してるみたい・・・」
「あんっ・・・んん!・・・んく・・・」
「あれれ、瑞穂ちゃん、もう余裕なくなっちゃった?ほら、もう先端からお汁出てるし・・・もうすぐ・・・?」
「ぁ・・・あぁっ・・・あっ・・・」
「いいよ・・・イっちゃって・・・ほらっ・・・」
「ぁっ・・・ああっ・・・!!」
まりや(瑞穂)のから、勢いよく白濁液が飛び出し、瑞穂(まりや)の手と、まりや(瑞穂)のお腹を汚す。
『One-After-Another前編』.9
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; . / j ))ソ ;;;←中の人:まりや
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ノノノノj{_) ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ´θ^θン)u ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
「・・・」
「ど、どうしたの・・・?ていうか凹みたいのは僕のほうだよ・・・」
「な、なんで・・・あたしの身体から、精液が出るのよ・・・完全に、オトコのコになっちゃってるわけ・・・?」
「そ、そうみたい、だね・・・」
「ねぇ、もどってもそのまんまだったら、どうしようっ!」
「いや・・・どうしようも・・・」
「もしそうなったら、瑞穂ちゃんっ!責任取ってよねっ!」
「もとはといえば、まりやが階段から落ちたのがいけなかったんじゃないか・・・」
「じゃあ、あたしが責任とって、瑞穂ちゃんをお嫁さんにするわっ!」
「お、およめさん・・・」
orz
『One-After-Another前編』.10
・・・
・・・
とりあえず、ふたりは服を着た。
「あたしと瑞穂ちゃんだと、背は違うけど線はあまり変わらないから・・・胸パッドもちょうどいいわね。
さすがにいつものスカートだと瑞穂ちゃんもイヤだろうから、長めのスカートにして・・・。これでいいわね。
あたしはいつもの瑞穂ちゃんの制服で、と。」
「これで・・・外見的には、問題ないかしら・・・?」
「たぶん、ね。一子ちゃん、どう?」
「ん〜、大丈夫だと思われます。でも、まりやさんが急に長いスカートを穿いていると変だなと思われてしまうかもしれませんね。」
「確かにそれは問題なんだけど・・・瑞穂ちゃんがこのところ短いのは穿いてないから・・・オトコだとばれちゃうよりはマシよ。」
「そ、そうね・・・。」
「そうですねえ・・・。それじゃ、今日はまりやさんは風邪気味なので、
冷やさないために長いのを穿いている、ということにするのはどうでしょう?
「あたしも、それを考えてた。というわけで、瑞穂ちゃん、そういうことでよろしく。」
「うん。わかった・・・。」
「さて、それじゃ食堂に戻ろう。随分と待たせちゃったし。」
「そうね。でもまりや、入れ替わってしまったこと、云っておいたほうがいいと思うのだけれど・・・」
「う〜ん・・・。たしかに、さっき瑞穂ちゃんの声できついコト云っちゃったから、話しておいたほうがいいかもしれないね。
・・・理解者が居たほうが、心強いし。もっとも、性別については当然隠しておくけれどね。」
『One-After-Another前編』.11
・・・
・・・
瑞穂(まりや)とまりや(瑞穂)は朝食をとりながら、由佳里と奏に事情を説明した。
奏 「そうなのですか〜。それはとってもファンタジ〜なのですよ〜」
由佳里「私はまだ信じ切れていないんですけど・・・一子さんみたいな幽霊も居るんですから・・・」
瑞(ま)「あたしも・・・じゃなかった、私も信じたくはないのですけれど・・・、
こうなってしまった以上とりあえずは受け入れるしかないのよね・・・」
由佳里「えーっと・・・まりやお姉さま、ちゃんとなりきらないと、ヘンに思われてしまいますよ?」
瑞(ま)「あ、はは・・・」
ま(瑞)「ふふ、猫かぶり歴、長いのではなかったのかしら、瑞穂お姉さま?」
奏 「えと・・・瑞穂お姉さま、寮内でその口調は違和感あるのですよ〜」
ま(瑞)「あ・・・そう、ね。難しいわね、まりやのマネって・・・。ただお嬢さま言葉にするだけではおかしいし、
それに相手によって口調が変わるものね。」
瑞(ま)「云ってるそばから普段の口調に戻っていますよ、瑞穂お姉さま?あたしのようにちゃんとなりきらないといけませんよ。」
ま(瑞)「あ・・・」
由佳里「まりやお姉さま、一人称が「あたし」になってますよ。それにちょっとヘンです。」
瑞(ま)「・・・あた・・・じゃなくて私・・・ボロ出しそうね、学校で・・・。ふたりとも、先行き不安だわ・・・」
「「「「はぁ・・・」」」」
4人は、深いため息をついた。
はたして、入れ替わってしまった瑞穂とまりやはどうなってしまうのか・・・?
続く・・・
前編はこれにて終了です。
このネタは、書くほうも混乱するという罠が待ち構えているので、どっかヘンなところがないかと、不安ですw
エロ部分は、本編での瑞穂ちゃんがまりやを愛撫する絵から妄想なさってくださいw
学校での出来事〜解決〜エピローグは次回ということで。
・・・後編+エピローグで19レス分・・・
長いけど途中で切れないので明日一気に投下しちゃうかな・・・
ちなみに後編にはエロはありませんです。
>>430GJ!!
なんていうか一子ちゃんがひたすらいい味出してますwww
後半もまってます
>まりやは大きなビニール袋を指し示しながらニヤニヤ笑っている。
>「ろうそくと…マッチ…水の入ったバケツ…あと何か…?」
ここで一瞬「恵泉名物油風呂」なる単語が脳裏を掠めました
職人の皆様毎日毎日お疲れ様です( ;´Д`)
割と不定期になりがちで他の真面目な方々に申し訳ない…orz
なにはともあれ、王座決定戦の続き出来上がりましたので投下します。
一回戦、残り全試合一気に消化であります。
>>4スレ385氏
数少ないゆかりん物ですね。
ちょっと切ない感じがよろしくあります。
#てか本編やってねーからイマイチわからんところもあるわけですが。
>>初代45氏
Great Work!笑わしてもらいました。猛烈な嵐の予感。
今後が楽しみです。ガンガって!
恵泉最強王座決定戦!!―第四話・四強揃う…!!―(1)
「こほん。…えー、気を取り直して、第一回戦第二試合を行います!!
上岡由佳里選手VS小鳥遊圭選手!!」
歓声が上がる。リングの中に立った二人は、じっとお互いを見つめている…
「…でもなんで、由佳里ちゃんは出場を…?」
僕は、気になっていた疑問をすぐ側のまりやに訪ねる。まあ、なんとなく理由は想像できるけど…
「ん?だって、アタシ達寮生の内だれか一人でも優勝すれば、恵泉はアタシのものじゃん?」
「…いやいやいや、なんで誰が優勝してもまりやのものになるの…?」
「細かい事は気にしないの。…餌も用意したしね…」
「餌…?」
…そう言えば由佳里ちゃん…えらく気合入ってるなぁ…圭さん相手に真っ向から見据えてる。
「そ。優勝したら、”アタシと瑞穂ちゃん、好きな方と卒業するまで添い寝できる権”」
「え゛!?…あの、勝手に私景品にされてるの…!?」
「まあまあ、気にしない気にしない。」
「気にするよ…だって、由佳里ちゃんと添い寝だなんて…」
は、恥ずかしい…しかも、由佳里ちゃんってば僕が寝てる間に、その…キスもしてるし…
…凄く、気恥ずかしいなぁ…
「そんな事より…試合、始まるよ?」
「それでは…エルダーファイトォォォ!!レディ…ゴォォォォォ!!」
緋紗子先生の号令で、遂に第二試合が始まる…!!
始めに動いたのは、由佳里ちゃん!!
「行きますよ!!小鳥遊お姉さま!!」
陸上部のバネを生かして一気に間合いを詰めると、連打を浴びせ掛ける。
「…………」
だが、圭さんはそのことごとくを無言のまま受け、払って、避けて…有効弾が入れられない。
「誉めてあげるわ。素人でそこまで出来る才能を。けど…終わりね」
スッ……
圭さんが何か呟いたかと思ったら、静かに…けれど素早く、由佳里ちゃんの横をすり抜ける。
由佳里ちゃんが連打を放ってる最中だったにもかかわらず…
「あ………」
一瞬、由佳里ちゃんは硬直したかと思ったら…ぱたり、と、その場に倒れ伏してしまった。
恵泉最強王座決定戦!!―第四話・四強揃う…!!―(2)
「由佳里ちゃん!?」
僕とまりやは、由佳里ちゃんに駆け寄る…大丈夫だ。気絶してるだけみたいで、怪我はないみたい。
「そこまで!!第一回戦第二試合…勝者、小鳥遊圭!!」
緋紗子先生のコールで、体育館に歓声が響き渡り、圭さんは小さくVサインをする。
その様子をちらりと見つつ、由佳里ちゃんを抱き起こす。
向こうでは、、勝利者へのインタビューに入ったようだった。
「なんだか良くわからない間に倒しちゃったけれど…あの技は何?」
「小鳥遊流葬兵術・二十六式…「通り過ぎたら相手が気絶しちゃった」拳」
「…あの、それが技の名前…?」
「技の名前を装飾過剰にするのは、格闘家の見栄でしかありませんわ。
それっぽい名前を付けて、カッコ良く見せて門下生を集めようなんて、不純です。
…その点、この名前ならおいそれと学ぼうなんて気にはならないでしょ?」
「な、ナルホド…判ったような判らないような…ともかく、第二回戦進出、おめでとう!!」
「お疲れ様です、圭さん」
「ありがと…」
試合が終わって、リングから出ると…何時もの如く笑顔に彩られた美智子が待ち構えていた。
…どうやら、私が負けるなんて、これっぽっちも思ってなかったみたい。ま、当然だけど。
私は差し出されたドリンクを受け取って、軽く呷る……っ!!
「………(ごっくん)み、美智子…これは、何?」
「お疲れの圭さんが元気を取り戻すようにと、特別製のドリンクを造ってきましたの」
「…あんまり聞きたくないけど、原材料は何」
「えっと、赤マ○シドリンクと、ユ○ケル黄○液と、それから、」
「いや、もういい。それ以上聞くと吐いちゃいそう…」
「そうですか?身体にいいのに…
とりあえず、今日の夜の分くらいは体力残して置いてくださいね?」
まださっきの事を根に持ってるのか…参った。
今夜のことを考えて、怖さ半分、期待半分なのが…我ながら、情けないと思う…
恵泉最強王座決定戦!!―第四話・四強揃う…!!―(3)
「…あ…私は…?」
「良かった、由佳里ちゃん、気がついたのね」
丁度インタビューが終わった頃、由佳里ちゃんは目を覚ました…意識もはっきりしてるみたいだ。
「あ、そうか。うう、負けちゃったんですね…はぁ、添い寝が」
「え?」
「あ、あああ、いえ、何でもありません!!
…それより、次の試合がありますから、ここから出ないと…!!」
そう云って、スッと立ち上がると、自分の足で選手席に戻って行った。
…うん、大丈夫そうだ。
「さて、と。それじゃ、次はアタシの番だね…!!」
まりやも立ち上がり、キュッとハチマキを締め直す。その視線の先には、
「貴子さん…」
対戦相手の貴子さんが、リングに降り立ちまりやを見据えている。
僕は不安を抱えたまま、選手席へと戻らざるを得なかった…
「貴子さん。覚悟は決められましたかしら…?」
「あらまりやさん。そのお言葉、そっくり貴方へお返ししますわ」
「ふふ、云うじゃない…にしても派手な格好ねぇ。もうちょっとセンスを持ってもらいたいわね」
「あ、貴方に云われたくありませんわ!!」
「あ〜ら。私のはちゃんとした空手家としての装束でございますから?
貴方のように見栄えばかりで実用性に乏しいモノとは違うと思いますけれど?」
「あら?貴方のような方に空手の技術はともかく、精神まで学べたとは思いませんけれど…?」
「ほほぉ…云ってくれますわねぇ」
あぁ、始まる前から火花が飛び交ってる…本気で怖い。
「はいはい、それじゃあ、続きは試合でね…それでは行きます!!エルダーファイトォ!!レ…」
「レディ!!」
「ゴォォォォ!!」
「それ、私の科白…」
ともかく、試合は熱くなった二人の叫びで始まった。
恵泉最強王座決定戦!!―第四話・四強揃う…!!―(4)
「たぁぁぁぁぁっ!!」
先制したのは、貴子さん。跳躍すると、一気に間合いを詰めつつ飛び蹴りを繰り出す。
…速い!!
「甘い甘い!!」
それを軽いフットワークでかわすと、まりやは貴子さんにハイキックを繰り出す。
素早くそれを避ける貴子さん。けれど、まりやはその勢いを残したまま後ろ回し蹴りへと
繋げる!!
「っ!!」
それも、紙一重でかわして間合いを取る貴子さん。
…その攻防に飲まれ、完全に沈黙していた体育館内が、その瞬間爆発した。
「きゃ〜〜〜!!お姉さま方素敵です〜〜〜!!」
「会長、頑張って!!ファイトです〜〜〜!!」
僕も呆然としてたけれど…何この展開!?これって「ドタバタギャグSS」じゃなかったの!?
「なかなか白熱した攻防のようですね…」
「あ、紫苑さん」
試合が終わり、着替えに行っていた紫苑さんが戻ってきて、僕の隣に座る。
「でも心配です…二人とも熱くなってるから、大事にならないかと」
「そうですね…でも、どうにも止まりそうにありませんわよ、あの二人」
話してる間に、再び二人が激突する…!!
貴子さんの攻撃を、がっちりと受け止め、なぎ払って。
まりやの攻撃を、次々と紙一重で全てかわす。かなり高度な戦いだった。
正直、貴子さんがここまで出来るとは思っても見なかった。
まりやはわかる。まりやはちっちゃい頃に空手道場に通っていた頃もあったから。
しかし貴子さんはこういう世界とは無縁だと思ってたのに。うわ、すごい。
ぼ、僕の知らない貴子さんが居る…!!
「けれど貴子さん、不利ですわね」
「ええ、そうですね…」
紫苑さんも気付いたらしい。…貴子さんは、ずっとまりやの攻撃を避けて、受け止めない。
でもそれは、受け止めないんじゃなくて”受け止められない”んだ。
恵泉最強王座決定戦!!―第四話・四強揃う…!!―(5)
貴子さんは、攻撃を見ても判るけど、決して力は無い。まりやが、
しっかりと防御を固めているとはいえ攻撃を受けても平然としているのを見ても明らかだった。
しかしまりやの方はしっかりとした力を身につけている。
これは昔から僕相手にいろいろと技を試してきた過程でついたんだろうけど…
ともかく、恐らく貴子さんはガードしても、吹き飛ばされてしまう。だから、受けられない…!!
「ほらほら、どうした貴子!?息が上がってるわよ…!!」
「くっ…!!」
まりやもそれに気付いてる。このままだと、貴子さんが先に消耗しきって…負ける。
どうしよう?このままだと貴子さんが怪我をしちゃう可能性が…
もう試合を止めるべきなのかもしれない。僕はそう思って、リングの淵に手をかけた
「ダメです、瑞穂さん」
「紫苑さん…けれど、このままじゃ危険です!!」
「貴子さんは諦めていません…本人が諦めていないのに、他人が止めることなど出来ませんわ」
「しかし…!!」
僕はリングに視界を戻す。貴子さんは息を荒げながら、それでも構えを解かない。
「まだ…まだですわ!!」
貴子さんは、苦し紛れの左のバックナックルを繰り出す。まりやはそれを余裕でかわす…けど
「!?違う、あれは…!?」
苦し紛れじゃなかった。バックナックルは囮で、その振り出した拳の勢いを乗せた右掌打が
まりやの胴を狙う…!!
「やば…!!」
命中確実のその一撃を…しかしまりやは、咄嗟に右拳を貴子さんに叩き込む。
体勢は崩れ、苦し紛れに出した一撃はほとんどダメージを与えられなかっただろうけれど、
貴子さんの勢いを僅かに殺し…それでも、まりやは脇腹を抉られ、僅かに吹き飛ばされる!!
「まりや!!貴子さん!!」
身を乗り出し僕は叫んでいた…が、その声は回りの歓声に掻き消された。
貴子さんの乾坤一擲の一撃で、場内はますますヒートアップする…!!
「会長!!そこです、一気にヤッってしまうのです!!」
うわ、ふと見ると君枝さん、旗が折れんばかりにブン回してる…キャラ、変わってる?
恵泉最強王座決定戦!!―第四話・四強揃う…!!―(6)
「…っく…や、やるじゃない、貴子…油断したわ」
「このまま…終わりにして差し上げますわ!!」
脇腹を抑えるまりやに、勝負を決めようと貴子さんが襲い掛かる…そのとき!!
「…あ!!瑞穂ちゃんそんなハシタナイ格好を…!!」
「え!?」
突然のまりやの言葉に、後ろを振り向き僕の方を見る貴子さん。
…一方、僕もいきなりの事に目をきょとん、とさせている。当然、僕の格好は変わってない。
「し、しま…っ!!」
「遅い!!」
振り向いた隙を突いて、まりやの拳が飛び…それでも貴子さんは身体を捻り避けようとして、
ビリッ…
『あ』
場内の声がハモった。貴子さんのドレスは左の肩口が破れ、胸元まで裂けて…さけ、て…?
「う、うわわわわわっ!!た、貴子さん!?」
「あ、ヤバ……」
「…いやあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
貴子さんの悲鳴が響く。…見ちゃった。貴子さんの、下着。
白かった…
「まぁりぃやぁさぁぁぁぁぁぁん…!!」
「え、ちょ、ちょっと。貴子、落ち着こうよ。ね…?」
右手で肩口を押さえ、一応の露出を防ぎながら…まりやに迫る貴子さん。
うわ、なんかオーラが立ってる…
ちょっと、いや、かなり怖い。
「問答、無用!!」
「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
貴子さんが振り上げた左拳は、まりやを正確に捉え吹き飛ばし、
まりやは放物線を描いて上昇、後下降。床に激突する。
あの、貴子さんの背中に鬼が見えたような気がするんですが…?
恵泉最強王座決定戦!!―第四話・四強揃う…!!―(7)
「きゅう…」
…まりやはモノの見事にKOされてしまい、
「そこまで!!勝者、厳島貴子!!」
再び歓声が体育館を包み、貴子さんはその中で優雅に手を振って応えている…
「まりや、しっかり…まりや」
まりやの側に駆け寄ると、頬を軽く叩く。ややあって
「うぅ…ん…あ、瑞穂ちゃん………げ!!ひょっとしてアタシ、負けちゃった!?」
「うん、まあ…そうなるね」
「うう、貴子に負けるなんて…負けるなんて…!!」
「勝者の厳島貴子選手、見事な試合でしたね」
丁度後ろでは、貴子さんへのインタビューが始まっていた。
「ありがとうございます…けれど、お恥ずかしい姿もお見せしてしまいまして…」
「いえいえ、こういうハプニングがあるのも盛り上がるから…ああほら、そんな目しないで。
はい、お疲れ様でした〜〜」
こうして…第一回戦は、全ての試合が終了した。
次に始まるのは第二回戦。奏ちゃん、大丈夫だろうか?相手はあの圭さんだし…
そして、ついに僕の出番も…貴子さんと、本当に戦わなきゃならないんだろうか…?
一体どんな試合になるのか、僕は不安に包まれていた。
「瑞穂ちゃん、絶対勝つのよ!!負けたらどうなるか解かってるでしょうね…!!」
…とほほ。ホント、どうなるんだろう…?
…作者の趣味により、後半なんだかえらく格闘描写が熱入ってしまった。
貴子さんが活躍するなら何でも良かった。今は後悔している。
でもちょっとすっきりもしている…w
予定では、後二回というところです。長々とした作品になってしまいましたが、
ご容赦いただける限りは最後まで頑張ろうと思いますです。
>>432 「魁!恵泉学院」…は難しそうだな。
三号生はともかく、一・二号生と塾長の
キャスティングに無理がありすぎる。
この作品は「ベンジャミンは見ていた」の続きです。
「あ、あの、そんなに見ないでください……恥ずかしいです……」
視線をそらし、頬を赤く染める瑞穂さん。
「まあ、わたくしとしたことがうっかりしていましたわ。喜びも悲しみも、ともに分かち合うのが
友情というものですのに……。瑞穂さんにだけ恥ずかしい想いをさせるなんて、友達失格ですわね」
「あ、あの、紫苑さん? 何を言っているのか分かりませんが……」
「瑞穂さんにだけ恥ずかしい思いをさせるわけにはいきません。わたくしも裸になりますわ」
「し、紫苑さん? どうして紫苑さんまで裸になる必要があるんですか?」
「言ったじゃありませんか、わたくしたちの友情のためですわ
――少しお待ちになってくださいね、瑞穂さん」
わたくしは裸の瑞穂さんをその場に残し、ついたての裏へと回った。もちろん裸を見られるのは恥ずかしい。
水着や下着姿とは違う。でもそれは瑞穂さんも同じはず。
「しっ、紫苑さん?」
「どうかしましたか? 瑞穂さん」
布に写ったシルエットに気づいた瑞穂さんが驚いて声を上げる。が、わたくしは今さら慌てたりしない。
「い、いえ、別に何でもありません……」
わたくしの無茶な頼みを受け入れてくれた瑞穂さん。そんな瑞穂さんを一人にしたくなかった。
たたんだ制服を瑞穂さんの制服の隣に寄せる。心臓が早鐘のように鳴っている。体の芯からわき上がる熱。
わたくしは一つ深呼吸をして気持ちを整えた。
「お待たせしました、瑞穂さん。……あら、どうなさったのですか?」
ゆっくりとした足取りでついたての影から出たわたくしは、瑞穂さんの正面に立った。
瑞穂さんはなんだか落ち着かない様子で、両手で股間のあたりを隠している。
「あ、あの……」
「どうして隠すのですか? 今さらわたくしたちの間に、隠し事はなしにしましょう、瑞穂さん。さあ、手をどけてくださいな」
恥ずかしさのあまり、瑞穂さんの体が小さく震えている。頼りない足元からは、普段の瑞穂さんを想像することはできない。
「見ないで、見ないでください、紫苑さん」
隠して隠しきれるものではない。わたくしの目に飛び込んできたのは、先ほどの何倍もの大きさに膨張した男性器だった。
「……まあ、その瑞穂さんのおチンチンがさっきより大きくなっていますわ。これが、あの、
男の方が性的に興奮すると起こる、勃起なのですか?」
確かに、それは知識として頭の中にありました。ですが瑞穂さんがこうなることを、
わたくしは全然予測していませんでした。わたくしの裸に興奮するなんて……。
「ごめんなさい、その……」
申し訳なさそうに黙り込む瑞穂さん。わたくしのしたことが、かえって瑞穂さんを傷つけてしまう結果に
――謝らないでください、悪いのはわたくしなのですから。
「こんなに張りつめて……痛くはないんですか?」
わたくしは膝をついて、それに顔を近づけました。独特の臭いが、かすかに鼻を突きます。間近で見る勃起したおチンチン。
わたくしは不思議と、気持ち悪いとか怖いとか感じませんでした。
「え? は、はい。痛くはないです」
「あの……触ってみてもかまいませんか?」
「ええっ?」
「――! ごっ、ごめんなさい、瑞穂さん。変なことを言って。今のは忘れてください」
瑞穂さんの声に、わたくしは自分が何を言ったのか気づきました。自分でもどうしてそんなことを口にしたのか分かりません。
「……いいですよ、紫苑さん。触りたければ触っても。触ってみたいんでしょう?
今さらわたしたちの間に隠し事はないのですから、遠慮することはありませんわ」
わたくしは瑞穂さんの口調が変わったことに気がづきましたが、それ以上に、瑞穂さんの言葉に逆らえない自分を感じていました。
「え? その、あの……ではちょっとだけ……。ああ、凄く熱いです。それにビクビク震えていて固くて……」
「少し不公平じゃありませんか、紫苑さん」
「……え?」
手に伝わる感触に、恍然となっていたわたくしの反応が少し遅れた。
「わたしばっかり恥ずかしい想いをさせて。ずるくありませんか、紫苑さん? 私にも紫苑さんのあそこを見せてください」
「ええ? そんな、恥ずかしいです……」
「私だって恥ずかしいのを我慢したのですから、それくらい紫苑も我慢してください。それともできませんか?」
「……あの、わたくし、どうしたらよろしいのですか?」
「こっちに来て、紫苑さん。……そう、こっちにお尻を、体の向きを逆にして私の体に覆い被さるように。
これでお互いのものがよく見えます。……ふふ、紫苑のここ、綺麗ですよ」
瑞穂さんはわたくしの手を引くと、まず自分がソファーに座った。そして互い違いになるように、ソファーに寝そべった瑞穂さんに
馬乗りになるような形でわたくしをひざまずかせる。自然とお互いの性器を見せ合うような格好になった。
「こ、こんな格好、恥ずかしいですわ……」
「この体勢をシックスナインというのですよ。一つ勉強になったでしょう?」
「あぁっ、そんな、触ったらダメです、瑞穂さん」
突然体を襲った今までにない感覚の波に、わたくしは簡単に押し流された。
「でも、さっきから紫苑さんも私のを握って離さないじゃないですか。これでおあいこです」
「み、瑞穂さん。そんなところにキスをしないでください……あっ、イヤッ」
「ごめんなさい、紫苑さん。紫苑さんの声があんまり可愛かったものだから、つい……。恥ずかしいですか、紫苑さん」
「ええ、とても。……顔から火が出そうですわ」
「では紫苑さんだけに、そんな恥ずかしい想いをさせるわけにはいきませんね。わたしが紫苑さんのあそこにキスしたように、
紫苑さんもわたしのあそこにキスしてください」
「え? あの……こうですか? これでいいのですか?」
「そうです……上手ですよ、紫苑さん。ではお返しです」
そう言って瑞穂さんはわたくしのあそこにキスを繰り返す。
「あっ、瑞穂さん、わたくしも……んっんっ」
「気持ちいいですよ、紫苑さん。紫苑さんは今どんな気分ですか?」
「は、恥ずかしくて……それから、だんだん変な気持ちになってきてきました。
なんだかとても不思議な気分です……」
「紫苑さんものってきましたね。では、これはどうですか?」
「ひゃぁっ、瑞穂さん、そんなところ、舐めたりなんか……しないで、ください」
「どうですか? 気持ちよくありませんか?」
「きっ、気持ちいいです……瑞穂さんも気持ちよく……なってください」
ただただ、目の前のものに舌をはわせた。高ぶれば高ぶるほど激しく。
「しっ、紫苑さん。そこ、そこは気持ちよすぎて感じちゃうから、ダ、ダメェ……」
「ここ、ここのところを舐められるのがいいんですね、瑞穂さんは」
先端近くの、キノコでいえば傘のふちあたりが弱いみたい。
「ああ、ぼ、僕、もう出ちゃう……いっちゃうよ、紫苑さん」
「射精、射精するのですね。……見せて、わたくしにいくところを見せてください、瑞穂さん」
「紫苑さん、僕、イク、イクよ、紫苑さん――!!」
「瑞穂さん、わたくしも、くる、何かが……」
薄れゆく視界の中で、瑞穂さんのおチンチンから出た白濁液が、わたくしの体に降りかかるのが見えた。
ああ、あれが精液、瑞穂さんの精液なのですね……。
「……うぅ」
「気がつきましたか? 紫苑さん」
「あ、あら、わたくし……どうしたんですの?」
瑞穂さんに抱えられ、わたくしは目を覚ました。お互いまだ裸のまま。
「気を失ってたんですよ、紫苑さんは。そのようすだと、
どうやらイッたのは初めてだったみたいですね」
二人ともまだソファーに座ったままだ。わたくしの胸元にかかったはずの精子は、
ぬぐわれたのか一滴も残っていなかった。
「……ええ、あんなことは初めてでした。――あっ、じゃあ、わたくしも瑞穂さんと同じように、射精してしまいましたの?」
「ぷっ……はははははは」
「み、瑞穂さん?」
それからしばらく瑞穂さんは笑いが収まらず、まともに答えてはくれなかった。わたくしが「絶頂」という言葉を知ったのは、
二人が制服を着終わった後になってからでした。
知らなかったのも無理ありませんわ。だって保健体育の教科書には載ってなかったんですもの……。
翌日のお昼休み。屋上にて。
「ど、どうしたんですか? 紫苑さん。こんなところに連れてきたりして」
「瑞穂さん。昨日の放課後のこと、くわしく覚えていますか?」
朝、教室で顔を合わせたときは大変だった。二人とも顔を真っ赤にしてしまい、美智子さんや圭さんに不審がられた。
今では少しは落ち着いてきて、何とか普通に話せるほどにはなっている。少なくともわたくしは。
「答えてください、瑞穂さん。昨日のこと、瑞穂さんはどれくらい覚えていますか?」
「お、覚えていますよ。忘れられるわけないじゃないですか」
少し顔を赤らめて答える瑞穂さん。
「何かおかしな点はありませんでしたか?」
「おかしな点……特に気がつきませんでしたけど」
本当に気づいていないみたいだ。
「不思議に思いませんでしたか? 普段使われない部屋に、どうして観葉植物が置かれているのか……」
「あぁ、そう言えば……なぜなんです?」
「じつ、ある仕掛けがしてあったんです……これを見てください」
わたくしは手にしていたアルバムを瑞穂さんに差し出した。写真屋さんなどでくれる、あれだ。
「写真ですね……って、これ私の着替え写真じゃないですか!」
アルバムには昨日の瑞穂さんの服を脱ぐところがバッチリ写ったいる。もちろん、……もバッチリだ。
「瑞穂さん。わたくしのお願い、また聞いてくれますよね?」
微笑みを浮かべウインクを飛ばすわたくしに、瑞穂さんはこわばった笑みを浮かべ力なく頷いた。
以上です。
落ちが落ちていないですね。>>402のスレが耳に痛いです。
誰か、僕の落ち知りませんか? ……OTZ
やはり、エロシーンは難しい。人様の文には平気でいちゃもんつけてる癖にな。
それにしても恐るべきは瑞穂のおチンチン。お姉さま並みのカリスマ持ちですよ。
平時の時は紫苑さんの目を奪い、勃起時には紫苑さんの理性をも奪うとは。
数値にしたら、こんな感じでしょうか。
瑞穂のおチンチン
魅力/100(勃起時120)
攻撃力/50
防御力/30
回復力/80
ちなみに瑞穂は特殊能力「言葉責めA+」を持っているので、攻撃力が30ほど加算されて80ですけどね。
では、このへんで。
次の「G−1グランプリ 恵泉女学院一発ギャグトーナメント」にご期待ください。
主役は梶浦緋紗子先生になる予定ですが、何か?
451 :
箱:2005/03/24(木) 10:33:42 ID:ku/pF1pS
「双つの流れ星」最終話(←今まで部だったのに・・・)投下します.
自分としては全然思ったように書けなくて投下しようか迷ってましたが, 日本語(表現)力の限界を感じたため諦めました_no
第1部, 第2部, 第3部 SS保管庫にあります.
第4部
>>350-356
双つの流れ星 〜〜約束の場所〜〜
【恵泉女学院卒業から5年後の6月】
私は恵泉女学院を卒業してすぐに、鏑木家に嫁いだ。
男の子にも恵まれ、今の幸せな生活には満足していた。けれでも、私の心が完全に満たされることはなかった・・・。
幸穂 「・・・・はぁ・・・・。」
2歳になったばかりの瑞穂を寝かしつけた私は独りベランダから夕陽に染まる街並みを眺めていた。
今でも夕方になると、あの寮の自分の部屋を鮮明に思い出せることができる・・・・。
幸穂 「・・・・・・・ぁっ・・・・。」
ぼーっと眺めていた私は思わず声を上げてしまった。地平線にほど近い夕焼けの空で、流れ星が一つ煌いた。
幸穂 「流れ星・・・。」
『人は・・・流れ星と一緒なんです・・・自分自身を、削りながら・・・光輝い
てるんです・・・。』
一子ちゃんの言葉が私の頭に蘇る。
幸穂 「私は一子ちゃんとの約束を守るために・・・ここまで歩いてきました・・・。
私はちゃんと約束を守れているのでしょうか?これからも約束を信じて生きて
いけばいいのでしょうか?教えて・・・・一子、ちゃ・・ん・・・・。」
いつのまにか、私の目からは涙がこぼれ落ちていた。
きっと一子ちゃんがこんな私の姿を見たら、『お姉さま、もっとしっかりして下さい!』と、叱ってくれるでしょう・・・。
幸穂 「いつまでくよくよしているの!しっかりしなさい、幸穂!貴女は恵泉女学院の
エルダーシスターだったのですよ!」
私は自分自身を戒めた。すると、下から瑞穂の泣き声が再び聞こえてきたので私は慌てて家の中へ戻った。
幸穂 「流れ星は・・・消えてなくなっても、また新しく流れ星が生まれる・・・のね。」
私は一子ちゃんの伝えたかったことがわかるような気がしてきた・・・。
【恵泉女学院卒業から5年後の7月】
梅雨明けの晴れやかな青空が気持ちいい7月の休日。
私と夫の慶行、そして瑞穂の3人で近くの公園に遊びに来ていた。
慶行 「あ〜、こういういい天気の日には外でのんびりするのに限るなぁ。」
幸穂 「ふふふ、貴方もたまにはお身体を休めないと。瑞穂は私が見ておきますから少し
日向ぼっこでもなされたらどうです?」
慶行 「はははは、それもいいかもしれないなぁ。幸穂、少しの間瑞穂を頼んだぞ。」
瑞穂 「パパ〜?」
慶行 「お〜、よしよしいい子だ。瑞穂、少しの間ママと一緒に遊んでおいてくれないか?」
そういうと私に瑞穂を預けて、木に吊るしてあるハンモックで横になり、すぐに寝息が聞こえてきた。
幸穂 「やっぱり・・・疲れていたのね。ほら瑞穂ちゃ〜ん、ママと一緒に遊びましょ
うね〜。」
私は瑞穂を連れて砂場に向かった。
454 :
初代269:2005/03/24(木) 10:35:58 ID:VUaOpRy2
>初代123氏
無垢な感じの紫苑さん、いいですねぇ。GJです。
長らく時間が空いてしまいましたが…
「いつかは心も五月晴れ」第4部投下します。
最初は一緒に遊んでいたが、瑞穂が砂山を作るのに夢中になっていたため、私は心地よい陽射しもあってか少しぼーっと昔のことに想いふけっていた・・・。
『一子がどんなことになったとしても・・・一子が一子でなくなったとしても
・・・必ず、お姉さまに・・・お逢いに行きますので・・・そのことを、覚え
ておいて・・・くだ、さ・・・ぃ・・・。』
『・・・・お姉さまと・・・はぁ、はぁ・・・・初めてお逢いした場所・・・。
必ずあそこで・・・待っています・・・絶対に・・・はぁ、はぁ・忘れないで
・・・・くだ・・・・さ・・・・。』
この3年間・・・ずっと悩んできた・・・思い返す度に悲しくて仕方がなかった・・・一体どうすれば約束が守れるのかわからなかった・・・。
幸穂 「一子ちゃん・・・貴女は・・・きっともう一度恵泉に・・・。」
何かが吹っ切れたような気がした・・・。胸の中にあるもやもやしたものが取り除かれたようなそんな感覚だった。
幸穂 「貴女は必ず私に逢いに来てくれる。そう信じてていいのよね?一子ちゃん。」
私は自分にそう言い聞かせた。今まで私の心を縛り付けていたものが取れたような、心の底から迷いがないそんなすがすがしい気分を数年ぶりに味わえた気がした。
ふと、我に返り目の前の瑞穂に視線を向けると・・・。
幸穂 「・・・・!?瑞穂、ちゃん・・・?瑞穂ちゃん!!!!」
目の前で遊んでいたはずの瑞穂の姿がどこにもない・・・。私は慌てて周りを見渡してみた。
幸穂 「っ?!瑞穂ちゃん!!!」
私の目に公園から出て道路を危なっかしい足取りで歩いている瑞穂の姿が飛び込んできた。
さらに、その後方に目をやると・・・。
幸穂 「み、瑞穂ちゃん!!!!!!!!!!!!!」
向こうからトラックが1台走ってくる。そして、そのトラックの前方を私の瑞穂が渡ろうとしていた・・・。
幸穂 「瑞穂ちゃん!!!!!!戻っておいで!!!!!!!!」
私は走りながら必死に瑞穂の名前を叫んだ。だが、瑞穂は全く気づいていないのか、そのまま道路を渡り始めた・・・。
さらに運が悪く、公園の出入り口の側に軽自動車が止まっており、それが死角となってトラックから瑞穂は全く見えなかった。
幸穂 「瑞穂ぉぉ!!!ママのところに戻っておいで!!!!」
それでも瑞穂は道路の上をふらつく足取りで歩いていった・・・。
キィィィィィィィィィィィィィィィ
耳をつんざくブレーキ音が辺りに鳴り響く。
ドガッ
昼間の閑静な住宅街に低く鈍い音が鳴渡った・・・・。
『・・・・お姉さまと・・・はぁ、はぁ・・・・初めてお逢いした場所・・・。
必ずあそこで・・・待っています・・・絶対に・・・』
混濁した意識の中、徐々に身体の感覚が戻ってくるような感じがした。
感覚が戻ってくると同時に、全身・・・特に腹部が焼けるような痛みが私を襲ってきた・・・。
光久 「・・・ちほ・・・幸穂・・・?」
うっすらと目を開けると、お義父様のお顔がそこにあった。
トラックと瑞穂がぶつかる寸前に、私は瑞穂を抱きかかえてトラックから逃げようとした・・・。だが、私はトラックを避けきれずに・・・そこで私の記憶は途切れていた。
幸穂 「・・・ぉ、お義父様・・・。瑞穂は・・・瑞穂は、無事なのでしょうか?」
光久 「瑞穂は少しばかり怪我をしただけじゃ、安心してよいぞ。」
幸穂 「・・・そう・・・・よかった・・・・。」
瑞穂の無事を聞き少し安心してしまったのか、腹部の痛みが一層強くなってきた・・・。
光久 「手術は一応、成功した・・・。じゃが、まだ今晩もう一度大きな手術をしな
ければならない・・・。」
普段はほとんど表情をお変えにならないお義父様の目頭に一粒の涙が見えたような気がした・・・。
私の怪我の重大さは・・・人に聞くまでもなく、腹部の焼けるような痛みですぐにわかった・・・。
幸穂 「はい・・・瑞穂が、あの子が大きくなるまでは・・・倒れるわけにはまいり
ませんから・・・。」
私は精一杯頑張って笑顔を作ってお義父様に返した。お義父様の目から一筋の涙が流れ落ちた。
幸穂 「安心して下さい・・・私・・・身体の方には自信が・・・ありますので。」
身体の痛みを押し殺して、できるだけ笑顔で振舞うようにした。
光久 「・・・幸穂・・・。頑張るのじゃぞ・・・・。」
お義父様は私の手を握ってそう仰ってくれた。
部屋のドアが開いて一人の先生と看護婦さんが3人部屋へやってきた・・・。
看護婦「あと5分で集中治療室のほうへ移動します。ご家族の方々、よろしいで
しょうか?」
光久 「わかりました。幸穂を・・・よろしくお願いします・・・。」
お義父様はぺこりとお辞儀をした。
意識がはっきりしてくるに従って、猛烈に腹部や全身が痛くなってきた。余りの激痛で思わず声が出てしまいそうになる。
・・・私・・・もう、助からないわね・・・・。
ただ、不思議と悲しくはなかった。そんなことよりも・・・一子ちゃんと・・・一子ちゃんとの約束が・・・。
幸穂 「一子、ちゃん・・・ごめんなさい・・・私・・・私も・・・。」
私の目から一筋の涙がこぼれた。その涙にお義父様がお気づきになられた。
光久 「幸穂?!どうした、どこか痛むのか!?」
とても心配そうなお顔で私を気遣って下さった・・・。
幸穂 「・・・いいえ。身体のほうは全く大丈夫です・・・。ご安心、下さい・・・。」
本当は麻酔が弱まっており、意識が飛びそうになるぐらい腹部が痛かった。しかし私には、一子ちゃんとの約束を果たせない心の痛みのほうが何より痛かった・・・。
一子ちゃんも・・・本当は・・・辛かったのでしょうね・・・。
頭の中に過去の思い出がたくさんフラッシュバックされるような感じがした・・・当然、一子ちゃんとの思いでも・・・。
幸穂 「一子ちゃんは・・・いつも笑顔で・・・いつも前を、見続けていたわね・・・。」
私のやるべきことが・・・一子ちゃんとの約束を果たすために・・・私が立ち止まっていては、いけないわね・・・。
私の中で一つの決心がついた。
幸穂 「ぉ・・・お義父様・・・。幸穂の我侭を・・・きいてもらっても、よろしいで
しょうか?」
光久 「ぉぉ・・・なんでも、申しつけてくれ・・・。」
お義父様はとても優しいお顔で答えてくれた。
幸穂 「恵泉女学院の寮の私の部屋を・・・私が使っていた家具を、そのまま残してお
いて下さい。」
光久 「・・・?わかった。幸穂が卒業した時に言っておいた通りそのまま残してあるが、
今後も残しておくことにおしておこう。」
幸穂 「あ、ありがとうございます・・・おお義父様・・・。あと、もう一つ・・・
これが私の最後の我侭になります・・・。」
光久 「・・・・・うむ。」
幸穂 「瑞穂を・・・慶行さんと私の大切な瑞穂を・・・大きくなったら・・・私が通っ
ていた・・・恵泉女学院に編入させてあげて・・・下さい・・・。」
お義父様は一瞬驚かれたような表情をなさったが、すぐに私の想いを受け取って下さったのか小さく頷いてくれた。
幸穂 「・・・ありがとう・・・ございます・・・。」
私のやるべきことが終わったからなのか、安堵感から緊張が解け、私の意識が徐々に遠ざかり始めた・・・。
幸穂 「・・・(必ず・・・逢いに行きますからね・・・一子ちゃん・・・)」
私のこの想いは、きっと私の血を受け継いだ瑞穂が・・・果たしてくれるに違いない・・・。
幸穂 「・・・(今度こそ・・・ずっと一緒に・・・いられるように・・・)」
身体から徐々に痛みがなくなり、安らぎが私を包んでいった。まるで一子ちゃんと抱き合っていたかのような・・・。
【16年後・・・】
恵泉女学院の寮から学校へと続く並木道・・・初めて見る光景なのになぜだかとても懐かしいような錯覚に襲われる。
風に揺れた木々が、心安らぐ葉擦れの音を響かせている。僕の感じている明日への不安も、今この一瞬だけはなりを潜めてくれていた。
空気の中に、少し水の匂いがする・・・多分今晩は雨が降るのだろう。
瑞穂 「お祖父様は、どうしてこんな事をしようと思ったんだろう・・・?」
突然、僕はお祖父様のご遺言によって恵泉女学院に転入させられてしまった。
なぜお祖父様が僕を女学院に入ることをご遺言になさったのか・・・・。
しかし、考えて答えの出るような問題ではないことは確実で・・・それでもどうして、と思ってしまうのは僕の性格なんだろう。
ザァァァァァァァァ・・・・・
僕が風に吹かれていると、空気の中に、香水のような薄く芳しい匂いが紛れていた。
風の吹いてくる方向に目を向けると、一人の女の人が立っていた。
女生徒「・・・こんにちは。いえ、こんばんわ、かしら・・・もう夕方ですのもね。」
瑞穂 「こ、こんばんは・・・。」
一瞬、人間じゃなくて妖精か何かかと思ってしまった。思ってしまってから我ながら少女趣味のような感じがして、気恥ずかしくなった。
あたりはすでにほの暗く、夕陽の光も微かだったが、その微かな光に支えられて、その人はとても美しかった。
女生徒「お散歩かしら・・・?」
瑞穂 「ええ、まぁ・・・そんなところです。」
優しい声色だった。鋭い美しさを持つその人の声は、まるで少女のように甘やかで、そして透き通っている。
ただ、何か違和感を感じずにはいられなかった・・・。僕はこの女性に逢ったことがあるような・・・いや、そんなはずはない。実際には今日初めて出逢ったはずなのだが・・・。
言葉では上手く説明できないが、今日ここでこの人と出逢うことを「約束」していたかのような・・・そんな感覚だった。
ザァァァァァァ・・・・・・・
桜並木を走り抜ける風が順番に並木を揺らし、葉擦れの音が彼女の向こうから、僕の後ろまでウェーブを描いて通り過ぎてゆく。
女生徒「いい、音がしますね・・・・。」
そう云って彼女は目を閉じ、そんな並木の葉擦れに耳を傾ける。
そんな彼女の優しい声色に、僕も素直に目を閉じ、その音に耳を傾けることが出来た。
瑞穂 「そうですね・・・落ち着ける、いい音です。」
女生徒「ええ、本当に。」
ザァァァァァァ・・・・・・・
少し水を含んだ風に、彼女の長い髪がなびいている。僕は、それがとても綺麗だと思った。
女生徒「ふふ・・・では、私はこれで。ごきげんよう。」
嬉しそうに笑った後、彼女は優雅に頭を下げて僕の脇をすり抜けてゆく。
・・・理由はわからない・・・。なぜか、胸の奥から熱い何かがこみあげてくる感じがした。
横切りざまに彼女が呟いた言葉が僕の耳に飛び込んでくる。
女生徒「また・・・逢えそうな気がします。」
僕は驚いて振り返り、呆然と優雅に歩く彼女の後姿に目を奪われていた。
僕の目からは不思議と涙がこぼれていた・・・。なぜ泣いてしまったのかはわからない・・・けれども、今日僕がここにいるのはただの偶然ではないということだけはわかるような気がした・・・。
この日の夜、恵泉女学院の星空の片隅で流れ星が双つ・・・交差するように流れ落ちた・・・。
幸穂と一子の約束が果たされたのどうかは、誰にもわからない・・・。
確かに言えることは、二人の物語がちゃんと存在し、それが終わりを告げたということ・・・そして、それが新たな物語の始まりだということ。
今日もまた・・・この星空で新しい流れ星が生まれ、新しい物語が奏でられようとしている
双つの流れ星 〜 完 〜
463 :
箱:2005/03/24(木) 10:45:11 ID:ku/pF1pS
「双つの流れ星」完結です.
まさかここまで長くなってしまうとは・・・まじで予想外です.
エンディングは・・・本当に最後まで色々悩んでました.
どんな切ないお話でも最後だけはハッピーエンドにしたい, そう思って書いたのですが(微妙にハッピーエンドじゃないなぁ・・・)
ただ, 本編では一子と幸穂は結局最後まで結ばれ(?)ませんでした. そこが悲し悔しだったのでどうにかしようと思ったのが書き始めたきっかけです.
間違い, 突っ込みどころも多く本当に長かったですが、読んでくれていた方々ありがとうございます.
次はもっとコミカルでエロいのも挑戦したいなぁっと.
464 :
初代269:2005/03/24(木) 10:47:10 ID:VUaOpRy2
>箱氏
実に美しいお話でした。次作も期待しています。
それと、途中で割り込んでしまってほんとにごめんなさい。
465 :
初代269:2005/03/24(木) 10:49:06 ID:VUaOpRy2
改めて「いつかは心も五月晴れ」第4部投下します。
466 :
初代269:2005/03/24(木) 10:50:02 ID:VUaOpRy2
いつかは心も五月晴れ第4部
時間は少し遡る。
紫苑が華道部に向かっていた頃、貴子はA組に来ていた。
教室には、これから遊びに行くのであろう、帰りの予定を話し合う生
徒たちが楽しそうに帰り支度を整えていた。
「あら、会長。私どものクラスに何か御用ですか…?」
他の生徒同様、帰り支度をしていた美智子がドアの辺りから中の様子
を窺っている貴子を見つけて声を掛ける。
「あ、高根さん…こんにちは。…おかえりですか?」
「いいえ、すぐには……友達が来るのを待ちますので」
美智子は笑顔を浮かべて云う。
「そうですか」
美智子は圭と一緒に帰るために彼女の部活が終わるのを教室で待って
いることが多い。
「…それで、どうかいたしましたか?」
やはり笑顔のままで貴子に問う。
「あ、いえ…紫苑様がいらっしゃるか、と思いまして……」
云ってキョロキョロと教室を見渡す貴子。
「……どうやら、いらっしゃらないようですね」
紫苑の姿を見つけられず落胆する貴子。そんな姿を見た美智子が、
「紫苑様なら…確か今日は華道部に行かれると仰っていましたよ。
昨日は挨拶に行けなかったからって…」
「…そうですか。華道部に……」
貴子が少し顔を曇らせて云うと、美智子は
「?……会長?」
心配そうに顔を覗き込む。
「ああ…いえ、何でもありません。…お時間をお取りしてしまって
申し訳ありませんでした。」
では、と会釈をすると貴子は心配顔の美智子を置いて、教室を出た。
美智子は、そんな貴子の後ろ姿を不思議そうに見送った…
467 :
初代269:2005/03/24(木) 10:50:46 ID:VUaOpRy2
「ご苦労様です、会長」
貴子が生徒会室に戻ると他の役員が挨拶をする。
「お疲れ様です、皆さん」
皆に挨拶を返すと貴子は執務机に着く。
生徒会室には役員それぞれの机があり、入って手前側に副会長・書
記役・会計役の机が、一番奥の窓側に生徒会長の机が置かれている。
「…はぁ」
業務報告書に目を通しながら貴子は溜息を吐いた。紫苑が華道部に
顔を出しに行ったということは、今年度の予算のことが耳に入った可
能性がある。会計役の君枝からは予算減額については華道部長の了解
を得ている、との報告を受けているが……
(紫苑様はどう思われるかしら…)
快くは思わないであろうことは想像に難くない。それを思うとつい
溜息が出てしまった。
「?…君枝さん?」
気を取り直して作業を続けようとしたところ、君枝の視線を感じた。
「あ、いえ……なにやら溜息を吐かれていたようですので……少し
気になりまして…」
心配そうな面持ちで告げる君枝。
「ああ、少し気掛かりな事がありまして……」
貴子は溜息を吐いていたのを見られていたことが恥ずかしかったの
か、少し顔を赤らめながら云う。
「気掛かりな事……ですか?」
なんだろう、という顔で君枝が云う。
「ええ…華道部のこと……で、ちょっと…」
貴子は視線を落とし、右手で髪を弄びながら呟いた。
貴子の言葉を聞いた瞬間、君枝が微かに顔を強張らせたが、再び考
えの淵に沈み込んでしまった貴子は、その微小な表情の変化には気付
かなかった……
468 :
初代269:2005/03/24(木) 10:51:28 ID:VUaOpRy2
「それでは、失礼します」
「皆さん、お疲れ様でした」
生徒会の今日の業務が終わった。今の時期はまだそれほど忙しくな
いこともあり、早めに帰宅することとなった。
最も、後二週間もすれば『エルダー』選考委員会の委員の決定や投
票日当日の総会に向けての準備などで大忙しになる。
「ねぇねぇ、どこか寄り道して行きましょうよ」
「…却下」
他の役員たちがわいわいと話をしながら会室を出て行くのを見送っ
た貴子は鞄を携え自らも部屋を出る。
…かちゃ。
「…よし」
貴子は、鍵を掛けもう一度戸締りを確認すると歩き出した。階段を降
り昇降口に向かって行く。
下駄箱で靴を履き替えようとしたとき、
「あ…」
昇降口を出て、少し行った辺りに黒い長髪を風に靡かせて歩く、紫苑
の姿が見えた。
「し……」
貴子は、大きな声で紫苑に呼び掛けそうになったが、その言葉を飲み
込んだ。
(…紫苑様?)
それは、貴子の記憶には無い紫苑の姿であった。貴子の知る紫苑は、
身体は弱いところがあるが、完璧な立ち居振舞いを身に付け、いつも優
雅で優しく、また同姓である貴子から見ても美しい、正に理想の女性像
を体現した姿である。
それが……
遠目なのではっきりとはしないが、紫苑は肩を落としてトボトボとい
った落ち込んだ様子で歩いていた。らしくない姿、である。
落ちかけた太陽の光が作り出した、細長く頼りない影を連れて歩いて
いる紫苑の後ろ姿は、酷く頼りない、弱々しいものに思えた…。
469 :
初代269:2005/03/24(木) 10:52:21 ID:VUaOpRy2
太陽は西の空に傾きかけ、空を見やれば青空と夕焼けの境界線が美
しいコントラストを描いていた。
校門へと続く並木道。時折、部活中の生徒たちの賑やかな声が聞こ
えてくる。
「……はぁ」
柔らかな風が髪を撫でる。普段ならば心地よく感じるその風も、今
の紫苑にとっては煩わしいだけだった。
華道部に出席した、その帰り道。紫苑は重い足取りで歩を進めてい
た。やや猫背気味に肩を落としながら歩くその様は、普段の紫苑を知
るものが見れば目を疑うに違いない。
紫苑は落胆していた。自分の所為で周りに多大な迷惑を掛けてしま
ったことに…
紫苑が落胆するその要因は、華道部の予算減額の件である。
(…私の所為…で……?)
紫苑は、はたと歩みを止めて、瞳を閉ざし思案する。
…心に引っ掛かる事があった。それは別れ際に茅乃が云った一言。
『何故減額されるのか、その説明が全く無くて…来られた方は一方
的に要件を告げて帰ってしまったのです。しかもいつの間にか、わ
たくしが了解したことになっていて……』
これは明らかにおかしい。あり得ないことだと云える。
増額、減額を問わずその理由を明示するのは当たり前のことである。
理由が分からない、では賛同も反対も出来ない。
一体どういうことなのか…
「……紫苑様」
思案に暮れていると、紫苑の背後から遠慮がちな声が聞こえた。
「…貴子さん……」
目を開け振り返るとそこには貴子が居た。急いで着たのであろうか
肩を上下させ、顔も紅潮している。
「……」
貴子なら詳しいことを知っているに違いない。
そう思い、紫苑は口を開いた。
470 :
初代269:2005/03/24(木) 10:53:38 ID:VUaOpRy2
「…貴子さん、ちょっとお聞きしたいことがあるのですが……」
宜しいですか、と紫苑が云う。
「!…っ」
一瞬、びくりと肩を震わせた貴子だが、
「…はい」
すぐに気を取り直し返事をする。
「…場所を変えましょうか……人目もありますし…」
ちらりと視線を周囲に這わせて紫苑が云う。部活が終わったのであ
ろう女生徒たちがちらほら見える。中には興味津々と云った様子でこ
ちらを伺っている者も居た。…『前エルダー』と『生徒会長』の組み
合わせである。注意を引くのも無理は無い。
「わかりました。では中庭にでも参りましょうか…」
如何ですか、と目で問い掛ける貴子。
「ええ、では参りましょう」
貴子の提案に頷き、そのまま中庭に向かう紫苑。
「あ……!」
慌てて後を追う貴子。
先を行く紫苑の歩く様は、普段通りの実に優雅なものであった…
「それでお話とは…?」
中庭に着くと貴子が問う。ここは人影も無く落ち着いて話せそうだ。
「…華道部の予算についてです。少々不審な点がありまして…」
こう切り出した紫苑は茅乃から聞いたことを事細かに話す。
「……おかしいですわね」
話を聞き終えた貴子の第一声である。
「私は部長さんの了解を得た、との報告を受けておりますが…しか
もこのような重要な用件の理由の説明も無かったなんて…にわかに
は信じ難いお話ですね……」
髪を指で弄び、首を傾げながら云う貴子。
「ですが、茅乃さんは嘘をつかれるようなお方ではありません」
その一方で貴子も嘘をつくことはしないとも紫苑は思う。…では?
471 :
初代269:2005/03/24(木) 10:54:46 ID:VUaOpRy2
貴子は、紫苑の言葉に頷きつつ、しばし思案を巡らせ
「…わかりました」
と云った。続けて、
「紫苑様。この件については私が詳しく調べてみます。…少々、お
時間を頂けますか…?」
髪から手を離すと紫苑に云う。
「…ええ。では、宜しくお願いしますね」
しばしの逡巡の後、紫苑は微笑みながら云った。
中庭を離れた二人は並木道を並んで歩いていた。話が長くなってし
まい、気が付くと空は真っ赤に染まっていた。グラウンドと見ても既
に部活動は終わったらしく、生徒の姿は無かった。
「…そう云えば……」
間も無く校門に差し掛かる頃、紫苑が思い出したように口を開いた。
「華道部の予算減額の理由って一体なんだったのでしょうか…?」
初めに茅乃から話を聞いたときは『エルダー』としての責務を果た
せなかった紫苑自身の所為かと思ったが、冷静になって考えてみると
腑に落ちない点が見られる。生徒会長である貴子は私利私欲の為に公
私混合を良しとするような人間ではないこと、そして紫苑に対する報
復ならば、そのことを仄めかす言動があって当然なのにそれが無かっ
たこと。…紫苑の所為であることを知らしめなければ、華道部員から
紫苑が怨まれることは無いのだから…
「そう云えば、まだお話していませんでしたね…それはこういうこ
となのです」
貴子が語り出す。
昨年度の予算では当時二年生だった紫苑が、いくつもの華道展覧会
で金賞を受賞したり入選していたため、予算が大幅に増額されたのだ
が、紫苑が華道部を離れてからは目ぼしい活躍が見えず、茅乃が一度
入選しただけだったので予算の減額が決定した。
とりあえず減額することを知らせ、話し合いでその幅を決定する流
れになっていたのだが…
472 :
初代269:2005/03/24(木) 10:56:19 ID:VUaOpRy2
「何故か話し合いが行われずに決定してしまった…ということなの
ですね…?」
紫苑は軽く嘆息し、呆れたような口調で云った。
はい、と紫苑の言葉に頷く貴子。
「一番初めの提示額はかなり低めに設定しているのです……そして、
それがそのまま、予算として決定されてしまった…」
云って、貴子も嘆息する。
どうしてこうなってしまったのか、貴子にも分からない。
その場に立ち止まり、思案に暮れる二人。
「…考えられることはただひとつ……」
紫苑が呟く。
「はい…考えたくないことではありますが…」
貴子にもひとつの考えしか浮かばなかった。
「担当の役員の方が…嘘の報告をした……」
そう、それしか思い浮かばなかった。
翌日。貴子はいつもよりも早く登校し、生徒会室にいた。
華道部の予算折衝の報告書に目を通す。
「…君枝さんが」
担当者は会計役の君枝であった。報告者の記名欄にも君枝の名が記
されている。
「あ、おはようございます。会長…今日はお早いのですね」
会室の扉が開き、君枝が入って来た。貴子は挨拶を返すと君枝を呼
付けた。君枝は貴子の目の前までやって来た。
「…君枝さん。…お聞きしたいことがあります」
自然と厳しい口調になった。
「なんでしょうか…?」
君枝は身を硬くして問い返す。少し顔が強張っているように思える。
473 :
初代269:2005/03/24(木) 10:58:15 ID:VUaOpRy2
「…華道部の予算折衝についてです。今、報告書に目を通していた
のですが…これは君枝さんお一人で最後までやった、ということで
間違いはありませんね…?」
報告書を指でパンと弾きながら貴子は云う。
「……はい。…間違いありません」
蒼ざめた顔で弱々しく答える君枝。
「お顔の色が優れないようですね……君枝さん、何か云いたいことが
あるのではありませんか?」
優しい声色で語りかける貴子。だがその眼差しは声色に反して鋭いも
のである。
「もも申し訳ございません!私…その…嘘の報告を…していました…」
頭を下げ、ぽつりぽつりと君枝が云う。
「…はぁ。話して下さいませんか?ことのあらましを…」
やはり原因が生徒会側にあったことに落胆し、溜息と吐きながら貴子
が云った。
「…実は……」
華道部の元に赴いたのが報告書を提出する期限の日で、焦っていた君
枝はとりあえず減額となる旨だけを伝えて報告書の作成に入ってしまっ
た。先に回った部活動では減額を提示額そのままに受け入れてくれてい
たので、今回も受け入れられるだろうと判断して勝手に部長の了承を得
た事にしてしまった。…ということだった。
「……はぁ」
話を聞き終えた貴子は頭を抱えて大きな溜息を吐いた。
「…も…申し訳…ぅ……ありま…せん…っ」
嗚咽交じりに謝罪する君枝。
「…過ぎてしまったことは仕方がありませんね…華道部には予備費か
ら不足分を回すことに致しましょう。あと、君枝さんは華道部の方々
に事情を説明し謝罪すること…宜しいですね?」
はい、とうな垂れながら返事を返す君枝。
過失をそのままにすることは出来ない。償いはしっかりと行い、信用
を取り戻すには今後の行動で示せばよい。大事なのは繰り返さないこと…
474 :
初代269:2005/03/24(木) 11:00:16 ID:VUaOpRy2
「…と云った次第です。…ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
昼休み、紫苑の元を訪れた貴子は事のあらましを話し、頭を下げた。
「…事情はわかりました。では、華道部の予算はある程度の補填がな
される…というわけですね…?」
「はい、前年度と同じ…というわけには参りませんが、出来る限りの
補償はさせて頂きます」
紫苑の言葉を受けて貴子が答える。
「…それにしても」
紫苑が苦笑を浮かべて云う。
「随分とお粗末なお話でしたわね…」
初歩的ではあり且つ重大な失敗。お粗末としか云えない。
「…仰る通りです。生徒会長として恥ずかしく思います…」
貴子自身、今回の件については怒りを通り越して呆れてしまっていた。
「結局、泰山鳴動してネズミ一匹…でしたわね」
紫苑にとっても有りもしない裏を勘繰るあまりに振り回された徒労感
が残っていた。考えまいとしていてもやはりネガティブな思考に陥って
しまっていた。ところが、蓋を開けてみれば実に単純なことだった。
「…とりあえず」
「?…とりあえず?」
紫苑の呟きに貴子が反応する。
「…いえ、何でもありませんわ……ふふ」
笑顔を浮かべ首を振りながら貴子に云う。
(生徒会と云えども、全てを鵜呑みにするわけにはいきませんわね…)
「?」
小首を傾げ、不思議そうに見詰めてくる貴子を微笑ましく思いながら
紫苑はそう考えていた…
つづく
475 :
初代269:2005/03/24(木) 11:05:56 ID:VUaOpRy2
投下終了しました。
次回で最終回を迎えます。とりあえずここまででシリアスな紫苑×貴子の絡みは終わります。
貴子には好意を持ち始めているが、生徒会と厳島家には不信感が残ったまま…のつもりです。
長い上に落ちもありませんが、気にいって頂けたら幸いです。
476 :
4-385:2005/03/24(木) 11:26:26 ID:kXw5V/PT
おっかなびっくりの初投稿でしたが…
>>417さん
由佳里ちゃんはおとボクのなかでも一番普通に近い人なんですよね。
それだからなのか、自分は感情移入しやすいので…なんというか、幸せになってもらいたいな…という思いです。
成長の場面も書こうかと思ったのですが、今回はまりやの思いについて書いてみました。感想ありがとうございます。
>>418さん
いいお話だなんて…ありがとうございます。
自分は他の職人様より圧倒的に経験が少ないのでどうかなと思いましたが、良い感想が返ってくると嬉しいです。
気が引けるなんて思わないでください…他の方のほうが質としては勝っていると思いますから…
>>432さん
そ、そんなものが存在したとは(笑)
まりやの拷問開始ですかね…
>>434さん(前スレ226さん)
感想ありがとうございます。
出来るだけ切なく、それでいて優しく を表現してみました。
由佳里ちゃんの投稿は少なかったのでチャレンジしてみましたが、良い感想を持っていただければ幸いです。
2度目になりますが、皆さん感想ありがとうございました。
読者の感想が作者のやる気に繋がるということを初めて実感させて頂きました。
現在新しい短編物を書いているので、完成次第投稿したいと思います。
>>初代126氏
今回は熱いですな。まぁ格闘系はあんまりダメポなんですが>私
さて、次回の瑞穂タンと貴子のキャットファイトの結末や如何に?!
>>初代123氏
エロい・・・エロ過ぎます。勃っちまいました。
ていうか紫苑様、ブラックです。それは余りにもブラック過ぎます。
それでも瑞穂タンのチンポの前には無力なわけですが
>>箱氏
悲しくも美しい話ですな。終わり方はこういう方が良いと思うのですが。
変にハッピーエンドよりは最後に希望がある方が話が引き立つと思うのですよ。
>>初代269氏
毎度ご苦労様です。まぁ一つ一つに無理矢理オチつけるよりかはこういう形態の
方が綺麗だと思うのですが。ラスト、がんがってください。
/二二l
/斤/ ../
,,イ`/ /
庁./ /
、 ,イ`/ /
//ゝ./ /
_,,..::_--┘j l`ヽ、く
,.r'" _,. -‐-- 、 ヾ彡"
// ,r" "~`ヽ`, .l
,';'. 〈 l ヽ、ノ .j l
{.{ .r、\.ゝ,,_,,丿 ノソ
'; ゝ、\\ ,,r',x'
ヽ、,`ー'' `彡"
~"~
_
'´ `ヾ
〈(从ハリル !
ミ |i、-.゚ リ) |
⊂i夭(つ .l
┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻
───────────────────────
チラシの裏
男バレシナリオ考え中だけど、どうにもまとまらなくてこまっちんぐ。
そんなわけで気分転換に作ったAA投下。
<<絶望的な光景は見慣れているが、コイツは強烈だ!>>
・・・ていうか元ネタ知りませんです・・・orz
<<紫苑ルートを再度とれ!繰り返す、紫苑ルートを再度侵攻しろっ!!>>
ところで、あそこで投げられたのが鍵じゃなくて、キリンさんだったら、結構ショックだな。
まぁ、それはできなかったというのが重要なのだろうけど。
話は変わるがあのシーンでデカイ宝石を海にぶん投げたタイタニックのばーさんを思い出した。
一子ちゃんのSSを書いてるうちに名作が投下されて凹んでる俺。
うほ。
もう400KBか。早いな。
明日にももう立つんじゃないんか?第5。
ギャグにエロにシリアスに・・・短編に長編に・・・
相変わらずみなさんGJです。
さて。では昨日の続きで
『One-After-Another』の後編及びエピローグを投下します。
これをさらにふたつに分けたほうがいい気もしますが
切るに切れないので、一気に。
『One-After-Another後編』.1
―――いつもの通りの残暑厳しい9月の朝。
恵泉女学院の校舎への道。その道を、2人の女学生が歩いていた。
ひとりは恵泉女学院の代表であり、学生たちの憧れの的である『エルダーシスター』、宮小路瑞穂。
もうひとりはその瑞穂の片腕的存在であり、体育系部員で知らぬものは無いといわれる、御門まりや。
・・・けれど、いつもと様子が違っていた。
瑞(ま)「はぁ。今日も暑いわねぇ・・・。」
といいながら、髪の長い少女は片手で顔を扇ぐ。
ま(瑞)「ちょっと、まり・・・じゃなくて瑞穂お姉さま、そのような無作法な真似はやめてください。」
瑞(ま)「・・・っと。そっか。そうでした。って、あまりに静々しすぎよ、瑞穂ちゃ・・・まりやさん。」
ふたり「「はぁ・・・」」
そう。やっぱりふたりの様子はおかしかった。
『One-After-Another後編』.2
女学生A「おはようございます、お姉さまっ!」
女学生B「おはようございます!」
ま(瑞)「おは・・・ぐっ・・・」
瑞穂(まりや)が慌ててまりや(瑞穂)の鳩尾に肘鉄を食らわした。
瑞(ま)「おはようございます、みなさん。」
女学生B「お姉さまに挨拶を返していただけましたわ・・・今日はとっても良い一日になりそうですわ・・・」
女学生A「ああ・・・夢のようですわ・・・」
瑞(ま)「あ、危なかったわ・・・。まりやさん、気をつけていただかないと・・・」
ま(瑞)「ご、ごめんなさい・・・。で、でももうちょっと手加減してよ・・・。コレ、まりやの体なんだから・・・」
瑞(ま)「そうでした。それでは、元に戻ったら手加減なしでやらせていただきますね、まりやさん?」
ま(瑞)「そ、それも勘弁してください、瑞穂お姉さま・・・」
なんだかんだで校舎につき、ふたりは各々の教室に向かうことになった。
瑞(ま)「それじゃ、覚悟はいい?み・・・まりやさん・・・っ!」
ま(瑞)「え、ええ・・・。お互い、ボロを出さないように・・・」
瑞(ま)「特に、まりやさんは今性別がアレなんですから、その点も注意してくださいね・・・」
ま(瑞)「わかってます・・・。それじゃ、健闘をっ・・・」
『One-After-Another後編』.3
・・・
瑞穂(まりや)は3−Aの教室に向かった。そこには既に紫苑の姿があった。
「あら、おはようございます。瑞穂さん。」
「おはようございます、紫苑さま。今日も暑いですね。」
途端、紫苑の顔色が悪くなり、よろよろと後ろに下がる。
(・・・あ、あたし何かボロ出した・・・?あいさつしただけなのに・・・)
「ど、どうしたんですか、紫苑さま・・・?」
「み・・・瑞穂さん・・・わ、私たち、お友達なのでしょう・・・?わ、わたく、し・・・何か瑞穂さんに嫌われるようなことを・・・?」
「え・・・あ、ああっ!?」
(や、やっちゃったっ! そういえば瑞穂ちゃんは紫苑さまのことを「紫苑さん」と呼んでたっけ・・・っ!)
「瑞穂さん・・・っ、ご、ごめんなさい・・・わたくし・・・わたくしっ・・・!」
そう云って、紫苑は駆け出した。
「ああっ、ちょ、ちょっと待ってください、紫苑さま・・・じゃなくて紫苑さんっ!」
あわてて、瑞穂(まりや)は紫苑を追いかけた・・・
『One-After-Another後編』.4
―――一方、その頃。
「はぁ・・・緊張するなぁ・・・」
3−Bの教室の前。まりや(瑞穂)が妙な気合を入れていた。
(そういえば、まりやが自分のクラスでどんなふうに振舞っているか、見たことなかったわね・・・)
まりや(瑞穂)が教室の扉を開けて、入りながら・・・
「おはようございます、みなさん。」
そうまりや(瑞穂)云うと、教室内に居た学生が凍りつき、異様な雰囲気になる。
ざわっ・・・
「・・・え・・・?」
ざわっ・・・ ざわっ・・・
「な、なに・・・?」
「ま、まりや、さん・・・。な、何か悪いものでも食べたの・・・?」
「・・・へ?」
「メディック(衛生兵)!メディ〜〜ック!・・・じゃないわ、保健委員っ、至急まりやさんを保健室へっ!!」
「え、ええっ!?」
(ちょ、ねぇ、まりや、どういうコトよ、コレぇ・・・っ!?猫かぶり暦長いんじゃなかったのっ!?)
・・・
・・・
『One-After-Another後編』.5
―――ところ変わって、校舎の屋上。
「それで、一体・・・どういうことなのでしょう、瑞穂さん・・・。私、貴方のお友達で居てはいけないのですか・・・?」
紫苑はしゃがみこんで、瑞穂(まりや)を見上げながらそう云った。
「かっ・・・」
「・・・か・・・?」
(云えない、紫苑さまに可愛いなんてとても・・・っていうかそれどころじゃないでしょ、あたしっ!)
「え、えっと・・・そのですね。」
(どうしよう・・・。ヘタに誤魔化そうとするとあたしのコトだから事態が悪化しそうだし・・・。しょうがない、正直に話すか。)
「紫苑さん、聞いてください。私は、いえ、あたしは瑞穂ちゃんじゃないんです。」
「・・・え・・・?」
瑞穂(まりや)は制服の胸部をはだけさせた。
「・・・み、瑞穂さん・・・とうとう、男の方をお止めに・・・?」
「違いますってば・・・」
「あ、もしかして・・・一子さん、ですか? 瑞穂さんの妹さんの・・・」
(ん〜・・・。そうやって誤魔化すのも手だけど・・・。いま、あたしの体に瑞穂ちゃんが居るわけだから・・・云っておくしかないかな)
「それも違うんです。実は、あたしは、まりやです。」
「ま、まりやさん・・・? う、嘘・・・で、でも・・・」
瑞穂(まりや)は紫苑に事情を説明した。
『One-After-Another後編』.6
「そ、そんなコトが・・・」
「あたしも、信じたくなんてないんですけれど・・・これが現実ですから・・・。
いま、瑞穂ちゃん・・・つまりはあたしの体に胸パッドが付いてますから、揉んでみれば紫苑さまもわかると思います。」
「そうですわね・・・そこまで云われては、信じるしかないですわね・・・」
(胸パッドで信じちゃうんだ・・・紫苑さまってば、ホントにあの胸パッドお気に入りなのね・・・)
「紫苑さま、ありがとうございます。ついでにといってはなんですけれど、
あたし、ボロだしそうなんでサポートしていただけないですか?」
「ふふ、いいですわ。でも、まりやさん・・・いえ、瑞穂さん、私のことはちゃんと「さん」付けで呼んで下さいね?」
「あっと、そうでした。」
(これで・・・平気かな・・・。紫苑さまにサポートしてもらえればなんとかなりそう・・・ていうかなってください・・・)
むにゅ。
「きゃあっ!」
「あら、ほんとうに、ホンモノですのね・・・。」
紫苑がいきなり瑞穂(まりや)の胸を鷲掴みした。
「ちょっと、紫苑さまっ!や、やめ・・・」
「あら、ダメですよ、まりやさん。いえ、瑞穂さん。私のことを「さま」付けで呼んでは。」
ふに。むに。
「し、紫苑さんっ!胸パッドじゃないですってばっ!や、やめてくださいっ!」
「うふふ。瑞穂さんのホントウの胸も、触りごこちがいいですわね。それともまりやさんのかしら?」
「やっ・・・紫苑さん・・・ひょっとしてそっちの趣味が・・・?」
「いいえ。ただ触りごこちが良いものですから・・・それに、そんな風に身悶えする瑞穂さんも可愛らしいですわ。
まりやさんにも是非見てもらいたいですわね・・・」
(ひー、紫苑さま、このカッコで「さま」付けで呼んだこと、怒ってるんだ〜・・・)
『One-After-Another後編』.7
―――昼休みになり・・・
美智子「あら、奏ちゃんに由佳里ちゃん、いらっしゃい。瑞穂さんね?」
どうやら、ふたりがお昼の誘いに来たらしい。
由佳里「瑞穂お姉さま、今日お弁当お持ちでないんですよね?食堂に行きましょう!」
奏 「紫苑お姉さまも一緒にいかがなのですか〜」
紫苑 「ふふ。それではお言葉に甘えさせていただきますわ。」
瑞(ま)「ふたりともいらっしゃい。でも、お目当ての人はBクラスのほうなんじゃない?」
由佳里「あ・・・そうでした。それじゃ失礼しますね。」
瑞(ま)「こら、由佳里!・・・ちゃん。えーと、それヒドイです。」
一瞬いつもの通りの声を上げようとして慌てて訂正する。
由佳里「あははっ。冗談です。みんなで一緒に行きましょう。」
圭 「瑞穂さん・・・。」
紫苑・奏・由佳里が既に教室の外に出て、続いて瑞穂(まりや)が出ようとすると、急に圭が呼び止めた・・・。
瑞(ま)「わっ・・・!な、なによ・・・っと、ど、何処に隠れていたんですか、圭さん・・・」
(あぶない、ちょっと地が出るところだった・・・)
圭 「ふ・・・。中の人、いい仕事してます・・・」
瑞(ま)「な・・・っ!」
圭 「・・・それではごきげんよう・・・」
そう云って、美智子のほうに行ってしまった。
瑞(ま)「な、何者なのよ、あんた・・・」
『One-After-Another後編』.8
・・・
まりや(瑞穂)を誘うため、4人は3−Bの教室に向かった。ところが・・・
3B生徒「まりやさんですか?・・・授業が終わった途端、どこかにいってしまいましたけれど・・・」
瑞(ま)「え・・・。何処に行ったかわかりませんか?」
3B生徒「ごめんなさい、お姉さま。申し訳ありませんが、存じません・・・
そういえば今日はまりやさん、何か様子がおかしかったですね。」
瑞(ま)「そ、そうですか。・・・ごめんなさいね、呼び止めてしまって・・・」
3B生徒「い、いえ。お姉さまとお話できるなんて、夢のようです。」
瑞(ま)「は・・・はは・・・」
紫苑 「どこにいってしまったんでしょうね、まりやさんは・・・」
瑞(ま)「ええ・・・。まあ、中の人が中の人ですから・・・大丈夫だとは思うのですけれど・・・」
奏 「まり・・・ではなくて、瑞穂お姉さま、あの、この件のこと、紫苑お姉さま知っておられるのですか?」
瑞(ま)「ええ。いきなりドジしちゃって。あたしじゃ誤魔化せないと思って、仕方なくお話ししちゃった。」
紫苑 「まあ、言葉遣いが戻っていてよ、瑞穂さん?」
瑞(ま)「あ・・・いけませんね・・・。ちょっと油断するとこうですもの・・・。」
紫苑 「ふふ・・・おふたりは幼馴染ですから、簡単に真似できるのではないのですか?」
瑞(ま)「確かに、お互いのことはよくわかってますけれど・・・真似するのはまた別次元の話ですから・・・
さ、仕方ありませんから、私たちだけでお昼にしましょう。み・・・まりやもお弁当持ってないですから、
そのうち来るかもしれませんし。」
紫苑 「そうですわね。行きましょう。」
由&奏「は〜いっ!」
『One-After-Another後編』.9
―――その頃、まりや(瑞穂)は、テラスのほうに居た。
「はぁ・・・はぁ・・・まりや・・・一体どういうことなのこれ・・・」
何故こんなところに居るのかというと、昼休みになった途端、一心不乱に逃げ出してきたからである。
「なんで、私が一言喋ったりするだけで、」
ざわ・・・ ざわ・・・
「とかなるの・・・?まりやの言葉遣いを色々試してるのに、どれもコレもだめ・・・。
まりや、一体クラスでどんなふうにしてるの・・・?」
テラスにある椅子に座り、気を落ち着かせる。
「はぁ・・・帰ったらまりやに聞いてみるしかないよね・・・。っていうかそれより元に戻る方法見つけなきゃ・・・」
と、まりや(瑞穂)が顔を上げると、生徒会長・厳島貴子の姿が見えた。
(そういえば、この間一緒に居る時に倒れたんだよね。大丈夫なのかな・・・?)
そう思って、まりや(瑞穂)は自分の今の状況すら忘れて貴子に近づいていった。
『One-After-Another後編』.10
「貴子さん、ごきげんよう。あれから具合はいかがですか?」
そうまりや(瑞穂)が貴子に話しかけると、貴子はまりや(瑞穂)を睨み付けながら、
「なんですか、まりやさん。貴女から離しかけてくるなんて気色の悪い!今度は一体どんな企みですかっ!?」
「え・・・?あぁっ!」
(し、しまった・・・今、僕まりやだったんだっけ・・・。どうしよう・・・)
「それに大体、『あれから具合はどう』って・・・お姉さまに聞いたのですか・・・!?
お姉さま・・・やはり貴女は私の敵なのですか・・・よりによってこの性悪女に云うなどと・・・っ!?」
「ち、違います、私はただ、貴子さんのことが心配で・・・それだけなんですっ!」
「・・・っ!ま、まりやさん・・・」
(あ・・・しまった、またいつもの調子で・・・私はまりや、まりやなのっ!)
「・・・えっと、貴子さん・・・」
「な、なんですか・・・っ!?」
普段と違うまりや(瑞穂)の様子に、貴子は戸惑いを隠しきれない。
「えっと、そのですね・・・」
・・・
・・・
『One-After-Another後編』.11
―――時は過ぎて、その日の夕方。
まりや(瑞穂)が寮に戻ると、食堂で机につっぷしている瑞穂(まりや)を見つけた。
「あ〜、瑞穂ちゃんお帰り〜・・・」
「ただいま。なんかすごく疲れてるみたいね・・・」
「あたりまえじゃない・・・瑞穂ちゃん、ごめんね。エルダーってこんなに大変だったんだ・・・」
「ふふ。少しは私の苦労、実感できた?」
「うん・・・。ごめんね、あたしが瑞穂ちゃんがエルダーになるように仕向けたんだもんね・・・。」
「今日は随分素直ね、まりや。それにしても、まりやって、クラスでどんな風に接してるの?」
「ふえ・・・?どんな風にって・・・普通だけど?」
「・・・その割には、私がまりやの口調を真似ても、何かするごとにどよめきが起こったんだけど・・・」
「ん〜〜〜・・・。瑞穂ちゃんさ、あたしの口調を真似ただけだったんじゃない?」
「え・・・?」
「振る舞いとか、エルダー様のままだったら、そりゃみんな不気味がるわよ。あたしが云うのもなんだけどさ。」
「ああ・・・。なるほど・・・。確かに振る舞いはあまり意識してなかったかも・・・。」
「でしょ?瑞穂ちゃん、優雅すぎるのよ。あたしみたいにガサツじゃないから・・・。」
「ふふ。まりや、私にそういう点で負けちゃったら、オンナのコとしてどうなのかしら・・・?」
「あはは。あたしはもうあきらめてるから、そういうの。それに、あたしにゃ似合わないし。」
「そうね、まりやはやっぱり元気なのが一番ね。」
「むう。そんなに素直に納得されると、ちょっと傷つくわね・・・」
「あ〜・・・。いつもの口調でしゃべったから、少し楽になったわ。さて、また瑞穂ちゃんになりきらなきゃ・・・」
「・・・私は、普段どおりの口調・・・だったのかしら・・・。ねぇ、まりや。それよりも、戻る方法を考えないと・・・」
「ええ、そうね。・・・なにかいい方法思いついたかしら?まりやさん。」
「いいえ。全然。」
「「はあ。」」
『One-After-Another後編』.12
―――夕食後、由佳里、奏、一子を交えて解決策を模索したが、結局何も見つからず、仕方ないので眠ることにした。
「はぁ。どうしようかね、まりやさん?」
「どうしよう。瑞穂さん。」
「「はぁ。」」
「とりあえず、寝よ寝よ。」
「そうね、とにかく今日は疲れたから・・・」
「お姉さま、まりやさん。なんでしたら、明日学校をお休みして、解決策を考えてみたらどうでしょうか?」
「・・・」
「・・・」
「お姉さま・・・?まりやさん・・・?」
「よくよく考えたら、今日無理して学校行かないで考えてればよかったんじゃない・・・」
「・・・まったく思いつかなかったわね・・・」
_| ̄|○ ○| ̄|_
「はぁ。もういいわ。で、どっちがどっちの部屋で寝る?
というか、一子ちゃん、外の人が瑞穂ちゃんか、中の人が瑞穂ちゃんのどっちがいい?」
「え、私ですか!?そんな、私ごときお姉さまやまりやさんが苦しんでおられるのに何のお役にも立てない
幽霊三等兵の意見などお聞きになる必要などありませんといいたいところではあるのですが、
やはりここは中の人がお姉さまなほうがいいのではないかと愚考するわけでありまして・・・」
「ふふ。一子ちゃんは面白いわね。わかりました。外の人はまりやだけど、いい?」
「はいっ、ありがとうございます、お姉さま」
「くひひ。瑞穂ちゃんモテモテね。外見じゃなくて中身が重要なんだってさ?」
・・・
・・・
『One-After-Another後編』.13
―――翌朝・・・
「ん・・・」
瑞穂の部屋で一子と寝ていたまりやが起き出す。
(なんだろう、この、冷たいんだか暖かいんだかよく判らないやわらかいものは・・・)
「・・・って、一子ちゃんっ!?」
「ん・・・ほえ・・・?」
「な、なんであたし一子ちゃんと寝てるのっ!?」
「・・・? あれ、まりや、さんなんですか・・・?」
「・・・えーっと・・・もしや・・・!」
まりやは、起きだして鏡を覗き込む。
「や・・・やったっ!も、元に戻ったあぁぁーー!」
バタン。という音がして部屋の扉が開いた。
「まりやっ!元に、元に戻ったよっ!」
「うん!よかった、元に戻って・・・っ!」
ふたりは抱き合って喜ぶ。
「おふたりとも、元に戻ってよかったですね。」
「ほーんと。ほっとしたわ。」
「それにしても、寝れば戻るなんて・・・」
「そういえば、以前お姉さまに一子が乗り移った時って、私が眠ってしまうと戻ってしまいましたよね・・・?」
「「・・・」」
「・・・そういう、原理なの?コレ・・・」
「・・・まあ、何はともあれ、戻ってよかったよ・・・性別もちゃんと戻ってるみたいだし。」
『One-After-Another後編』.14
―――朝食の時間になり、寮生のみんなが食堂に集まる。
「それにしても、よかったですね。元に戻って」
「ホントなのですよ〜。でも、奏としましてはちょっと面白かったので、残念なのですよ〜。」
「う・・・奏ちゃん。勘弁して。もうエルダーの真似するのはコリゴリよ・・・。」
「ねぇ、まりや。私はこれからもそのエルダーの真似をやっていかなくちゃならないんだけど?」
「そんな、真似なんて・・・。お姉さまは自然にエルダーなのですよ〜。優雅で、お優しくて・・・いつものお姉さまがエルダーなのですよ〜。」
(自然に・・・いつもの・・・って・・・僕、男なんだけどな・・・。)
「私も、まりやになるのはもうコリゴリだわ。」
「あ・・・瑞穂ちゃん、それなんか傷ついたぞ。」
「ふふ。やっぱり、まりやはまりや本人だからこそ、魅力的なのよ。他の人じゃまりやの魅力は引き出せないわ。」
「む・・・瑞穂ちゃん、ホント、やるようになったわね・・・」
『One-After-Another後編』.15
「私は、やっぱりいつものまりやお姉さまがいいです。なんか優雅なまりやお姉さまなんて、不気味でしたし。」
「なっ・・・。そんなコトを云う口は、この口かこの口かこの口かぁ〜!」
「あ、あいやおれいはあ、やえへふあはい〜(ま、まりやお姉さま、やめてください〜)」
「なんか、ここんとこ、由佳里って妙に反抗的よね・・・。今日の夕御飯、たしかハンバーグとか寮母さん言ってたけど、
変更してもらっちゃおうかな〜?」
「ほ、ほんあ、ひろいれふ、ありやおれいはあ〜!あはひはあはんあーふほっはああいがおほうっへいうんえふは〜!
(そ、そんな、ひどいです、まりやお姉さま〜!私からハンバーグ取ったら何が残るって言うんですか〜!)」
「え〜っと、八重歯なのですよ〜」
「・・・そうね、アホ毛とか・・・」
「う〜んと・・・、ヘンなポーズの立ち絵?」
「ひ、ひろふいあふ〜!!(ひ、ひどすぎます〜!!)」
「ふふ。冗談です。由佳里ちゃんにもいいところはいっぱいあるわ。自信を持ちなさい?」
「そうよ〜。瑞穂ちゃんの云うとおり!」
「そうなのですよ〜」
「い、いんあ・・・あいはほうおあいあふう〜・・・(み、みんな・・・ありがとうございます〜・・・)」
「ねぇ、まりや。もう離してあげてよ・・・いいところが台無しじゃない・・・」
―――暑さの残る9月の、不思議な物語。
それは消えかかった蜃気楼のような、おぼろげで夢のような物語。
・・・しかし、それは蜃気楼などではなく・・・確実に爪あとを残していた・・・
『One-After-Anotherエピローグ』.1
―――朝の登校時間。
「おはようございます、お姉さま!」
「おはようございます!」
「おはようございます、みなさん。今日もいい天気ですね。」
「お姉さまに挨拶を返していただけましたわ・・・」
「ああ・・・夢のようですわ・・・今日はなんて素晴らしい日なのでしょう・・・」
「あらあら、大人気ですにゃ〜、瑞穂お姉さま?それに今日はサービス精神旺盛で。」
「ふふ。昨日は肘打ち受けて挨拶できなかったものですからね。」
「瑞穂ちゃんたら、すっかりエルダーの風格をかもし出しておいでですなあ〜。」
「・・・・・・」
「・・・?」
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ノノノノj{_) ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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「・・・エルダーとして居ることが普通だとか、落ち着くとか思ってしまった・・・。もう、僕戻れないのかも・・・」
『One-After-Anotherエピローグ』.2
・・・
・・・
まりやが教室に辿り着いた。
「みなさん、おはようございま〜す。」
「おはようございます、まりやさん。・・・よかった、今日は普通ですわ。」
「あ、はは・・・。昨日はお騒がせしました・・・。」
「まりやさん、珍しいお客さまがお待ちですよ。」
「お客さま・・・?」
教室の中を見ると、そこには生徒会長の姿が。
しかし様子がおかしい。うつむき加減で顔を赤らめている。
「貴子さん・・・何か御用で?」
怪訝な表情をしつつまりやがそう尋ねる。
「まりやさん・・・少々お付き合い願えますか・・・?」
貴子は、まりやを階段の踊り場に連れて行った。
「で、何のようなの、貴子。」
「・・・昨日は失礼いたしました。」
「昨日・・・(瑞穂ちゃんと会って、一悶着あったんだ・・・)」
「私ったら何も考えずにヒドイことを・・・」
「いいって、貴子。あんたにそう素直に謝られたら、調子狂っちゃうわ。」
「いいえ。私が悪かったのですから、謝らせて下さい・・・」
「いや、ホントに・・・困ったわね・・・(何があったか、わかんないからどうしていいのやら・・・)」
『One-After-Anotherエピローグ』.3
「それに・・・昨日まりやさんとお話してから・・・いろいろ考えていたのです・・・」
「・・・何を?」
「いろいろ、ですわ・・・。何故貴女の前だと私は感情的になってしまうのか・・・。
何故貴女相手だとすぐに怒り出してしまうのか・・・」
貴子は完全にうつむいて、そう独り言のように告げる。よく見えないが、顔が真っ赤に染まっているようだ。
「・・・(何か、ヘンね、今日の貴子・・・)」
「そして、昨日一晩じゅう考えて、答えがわかりましたわ・・・」
「へぇ。それで、その答えってのは?」
きっ、とまりやの顔をまっすぐ見つめて、貴子は・・・
「ま、まりやさん! わ、私は貴女を、あ・・・愛しています!」
『One-After-Anotherエピローグ』.4
・・・
「あら。戻ってしまったのですか・・・残念ですわ。」
「し、紫苑さ〜ん。勘弁してください・・・」
「ふふふ。でも、少し活発な瑞穂さんも可愛らしかったですわ。」
ド ド ド ド ド
「か、可愛らしいって・・・って、なんだろう、この音・・・」
ドドドドドドド バターン!!
勢いよく教室の扉が開かれたと同時に、絶叫がこだまする。
「み、瑞穂ちゃんっ!あ、あんたいったい、貴子になにしたのよ〜〜〜っ!!」
「ま、まりやっ!?ど、どうしたの・・・?」
「どうもこうもないわよっ!い、一体どういうことなのよコレ〜〜〜!」
「こ、コレって・・・あ・・・」
遅れて、貴子が教室に入ってくる。
「まりやさん・・・ヒドいですわ・・・。私を置いて走っていってしまうなんて・・・」
目をまりやから少しそらして、顔を赤くしながらそんなことを口にする。
そして、ふわり、とまりやに抱きつく。
「わっ・・・!ちょ、ちょっと!た、貴子?!」
キャーーーーーーーー!!
黄色い声が教室内に充満する。
「は、離れてっ!た、貴子・・・って・・・」
「ああ・・・まりやさんまりやさんまりやさん・・・・・・きゅう〜〜〜〜・・・」
「き、気絶、した・・・。っていうか、瑞穂ちゃん、一体全体何をしたって云うのよ・・・」
「あ、はは・・・。ちょっと2人が仲良くなれるようにと、思ったんだけど・・・」
―――その後、誤解が解けたかどうかは定かではないとか。
終わり。
あとがき
瑞穂ちゃん、一体貴子さんに何をしたんだ・・・?w
ある意味、こうなると、まりやに対する貴子さんって完璧なツンデレだと思ったり。思っただけですけど。
妙なフラグはたちません、たぶん。
うーん、もっと短く出来ればいいんですけどね〜。
あまりに長すぎたためある程度削ったので、ちょっととびとびになってしまったのかも。
まあ、まりや(瑞穂)と貴子の会話がアレしかなかったのは元々からの仕様ですがw
よくやった!!>>初代45氏
どうやって落とすのかと思ったらこう来たか(笑)
1日だけだったからこんなもんなんでしょうけど、これが1週間続いたら恵泉は
死傷者続出ですか?
しかしながらエピローグが更にウケたのは内緒だ。
空気を読まずに投下。
???
Friend G<<隊長、支援爆撃の報告がありましたが、かれこれ1時間は降ってきません>>
Friend G<<ええい、上空の味方機! かまわんから全弾ここに落としてくれ!!>>
509 :
506:2005/03/25(金) 00:05:29 ID:8Yv0e+JY
前振りだけ 書いて書き込み 押しちゃった。スマソ
「ふふ、やっとあなたの出番が来るわ」
恵泉の制服の上に油で汚れた白衣を羽織る女が何かに語りかけている。
「これで私達が卒業しても恵泉はあなたが守ってくれる」
聖守護者JANNE
「私に御用でしょうか?」
貴子をはじめとする役員達、そして瑞穂の前には科学部の部長が立っている。
B組所属でプラネタリウムの立案者だった生徒である。
「これは会長に、お姉さま…。ご尊顔をお見受けできて光栄です。」
「そこへお掛けになって」
「失礼します」
貴子は着座を促すと部長はいつもは会議に使うパイプ椅子に座った。
「ご用件は?」
「1月の始業式の日のことをまだ覚えていらっしゃいますか」
「「…」」
そう、貴子が暴漢に襲われていたところを瑞穂に救われたあの日のことである。
「あの、会長。顔が赤いのですが具合が悪いのですか?」
「…い、いぃぃえ。なな、何でもありません」
「私は兼ねてより警備用ロボット、特に人型警備用ロボットを私的に研究しておりました。
そしてあの事件以後、学院の警備強化と鏑木重工のロボット開発の実績を上げるという利害が
私の研究と合致。学院と鏑木重工の援助と協力で人型警備ロボット完成いたしました。」
「「「「「は…?」」」」」
いきなりのことに全員が呆気にとられていた。
「にわかには信じがたいですわね」
貴子の尤もな言葉が返ってきた。
「土日で極秘の運用テストを続けていたのですがうまくいきまして…。
一般への公開を前にぜひ皆様にお披露目しておきたいとここに来た次第です。
お手数ですがぜひラボ兼格納施設まで私とご一緒いただけますか?」
瑞穂は自分の父親の関連企業の名前が出てきたことを気に掛けていた。
科学部部長に連れられて瑞穂と生徒会役員はラボ兼格納施設と彼女が呼ぶ
プレハブの建物にやってきた。
外見は小汚いプレハブではあるが中は最新のセキュリティ装置をはじめとする
ハイテク機器が装備されていた。
「まるで戦隊ものの秘密基地みたいです」
「放送局のミキサールームとかではありませんよ」
君枝の一言に部長は応えるがそんなもんじゃないとでも言わんばかりに
何か苛立ちがこめられていた。
そして何やら棺のようなものが立掛けられていた。
その棺にはパイプやコードが色々と取り付けられている。
「私はこのロボットに百年戦争のフランスの英雄"JANNE"と名づけましたわ」
部長はリモコンらしきものを手に持っていた。
「さぁジャンヌ。目覚めなさい」
部長がボタンを押すと棺が徐々に開いていく。
恵泉の制服のスカートのすそが覗いている。
"オハヨウ ゴザイマス"
電子音声の挨拶が聞こえてきた。
「おはよう、ジャンヌ」
部長は挨拶に答える。
姿を現したジャンヌは確かに人型だった。
ただその姿を一言で言うなら"長髪のボディビルダーに恵泉の制服を着せたもの"。
おまけに上半身が不自然に大きく、腕も下げればひざ先まであるぐらい長い。
学園の外に出れば警官による職務質問を受けるのは間違いなかった。
"ミナサマガタ オハヨウゴザイマス"
目を赤く光らせながらジャンヌは挨拶をする。
「は…あぁ…」
「会長、しっかりしてください」
貴子さんはジャンヌの姿の異様さに恐怖し卒倒寸前である。
JANNE
格闘スタイル 力まかせ
年齢 0歳
身長 235cm
体重 168kg
血液型 ガソリン+燃料電池
趣味 自分のオーバーホール
好きなもの 秋○電子 共○シリコンハウス マ○ツ
仕事 恵泉女学院の警備
技
メガトンパンチ
メガトンスイープ
ロケットアッパー
パニッシュメントドロップ
ブラッドファン
パワーシザース
サイクロンスルー、等
これが部長によるジャンヌのプロフィールである。
「このジャンヌと、そしてジャンヌと連動する警備システムを開発しました。
学院内には来客スペースを除いて侵入者を検知するセンサーを配備しています。
センサーからの警告を受けてこのジャンヌは出動するというわけです」
「はぁ…。」
説明を施設のソファーで瑞穂たちは腰掛けながら聞いていた。
"こぉひぃヲ モッテマイリマシタ"
ジャンヌがコーヒーをみんなに配る。
「あ、あぁぁ、ありがとう」
貴子は落ち着きは取り戻しているがまだ表情は引きつっている。
「次は表情を作るということが課題なのです。さすがに守られる側が
警備ロボットに恐怖されては…!」
ウォーン ウォーン…
いきなり施設から何やらサイレンが鳴り響いてきた。
"シンニュウシャヲ ハッケン コレヨリ ハイジョニ ムカイマス"
ごぉーーーーー!!
ジャンヌは両手を広げると轟音を上げながら両足裏から何かを噴射すると
そのまま飛び上がり屋根を突き破っていった。
「「「「「だ、大丈夫…?」」」」」
瑞穂と役員達は一抹の不安を覚えるのだった。
まりやは寮に戻る途中で正体不明の黒服の男4人に囲まれていた。
(くっそ…逃げ道が塞がれちゃった。てか、ここの警備はあれからどうなってんのよ)
4人が徐々にまりやに近づいてくる。
すると何か空から大きな音が聞こえてくる。
(…?)
「がぁっ…!」
すると男のうちの一人が何かの落下物に激突した。
"シンニュウシャヲ ホソク"
落ちてきたものは恵泉の制服を着た異様な何か、ジャンヌだった。
「あ、あわぁぁ…」
まりやはあまりのことに腰を抜かしてしまった。
"ココカラ ソウキュウニ タチノキナサイ"
踏み潰された男はそのまま伸びている。
「!」
男がジャンヌに突進してくる。
ジャンヌは左腕を振り上げながら突進を横にかわすとそのまま男に左拳を振り下ろした。
「ぐあ!」
振り下ろした左手は男の背中に命中。
すると男は地面に打ち付けられた後、バスケットボールのように体が跳ね上がる。
"ふん、ふん、ふん、いぃぃやっ!"
空中に浮いてる男にジャンヌは気合の声とともに右ストレート2発、挟み込むような両腕パンチ、
そして強烈な右ストレートを命中させる。
"モウイチド イイマス ココカラ タチノキナサイ"
男の一人がまりやを羽交い絞めにする。
「ここからどけ!!」
「いやぁぁぁっ!」
"ソノコヲ ハナシナサイ"
「だったらどかないかっ…て…」
ジャンヌはいきなり男のこめかみを左手でつかむ。
「あっ、がぁあぁあああ」
男は強烈な痛みにまりやを離す。
ジャンヌはそれを確認した後、そのまま男を掴んだまま下から振りかぶり
空に向かって放り投げた。
男が落ちて地面に激突するのと同時にジャンヌのショルダータックルが命中。
吹っ飛ばされ、木にぶつかる。
そして最後の男が拳銃を構える。
"アブナイ"
まりやの前にジャンヌは立ちはだかりながら男に近づく。
男はジャンヌに発砲する。
「きゃあ」
まりやは悲鳴を上げる。
ジャンヌのわき腹に弾は命中するが構わず男に近づく。
ジャンヌは男の前まで来ると男の頭の後ろに両手をあて
そのまま顔面を地面に打ち付ける。
さらに男を引きづりあげ無理やり立たせると
頭を地面に持ってくるようにひっくり返して男の胴体を抱える。
"ふぇっ"
ジャンヌはそのままパイルドライバー。
4人の男達は起き上がっては来なくなった。
"ダイジョウブ デスカ"
「あ、あ…」
無表情のジャンヌとめちゃくちゃにされた4人の男の有様にまりやは
声が出せずにいた。
「まりやじゃないの。大丈夫だった?」
「み、瑞穂ちゃん」
瑞穂たちが現場に駆けつける。
「侵入者って…、この人たちはとりあえず生きてはいるようね」
「ジャンヌには侵入者に攻撃するような場合でも相手を殺さないように
プログラムされてます。」
ジャンヌは部長に振り返る。
「お疲れ様ジャンヌ」
"…"
「ジャンヌ?」
"…"
「あら、もうガソリンとバッテリーがなくなったのね。次期開発への
課題に稼働時間の延長も追加だわ」
ジャンヌはエネルギー切れで動かなくなっていた。
「それにしても表情はないのだけれど…」
「何ですか瑞穂さん」
貴子は瑞穂に問いかける。
「何か満足げな顔をしているように見えませんか?」
「…そうかも…知れませんわね」
「父様の関連企業も協力したって言ってましたけど、やっと自分の父様の
経営というか…仕事というものに誇りをもてたような気がします。」
「瑞穂さん…」
「か、会長…」
貴子が瑞穂の腕に寄り添う姿を全員に目撃されてしまった。
「あ、あのっ…こ、これはっ」
(か〜〜〜〜〜〜〜っ、ぽんっ)
「あら、貴子。見せ付けてくれんじゃないの」
「毎度のことながら妬けちゃいますわね」
それから三日後、弾痕も修復し晴れて全校生徒とさまざまな報道陣の前で
ジャンヌはお披露目となった。
しかしジャンヌは分厚い胸板…もとい豊満な胸を打ち鳴らしながら暴走し倒れてしまう。
ジャンヌの姿もあいまってお披露目会場となった体育館は阿鼻叫喚の
大騒ぎとなった。
それからシステムの安定化など改良が施されたJANNE-2が開発される…
いうのは別の話。
続かない。
>>510-517 一応JANNEの元ネタは解りますが、
個人的にこれは「おとボク」SSじゃない気がします(´・ω・`)
>>508 いや、そこは
<<支援のSSが投下されない!話が違う!>>
でしょ。いや、それでもいいとは思うけど。
しかし、あっち方面からも密かに飛来していたとはねぇ(笑)
>>一緒の中の人
すんません元ネタ知りません。
でもそこまでやるならパワーローダーの方が・・・
#DoLLS編成できるじゃないか(謎)
>>518 ちょっとこれは調子に乗りすぎました。
ちょっとこれはあなたの言うように違うもんだ。
ちょっと頭を冷やすために寝ます。
工作での冷静なレスを見てるとだいぶ恥ずかしい。
>>519 >しかし、あっち方面からも密かに飛来していたとはねぇ
あっちでも昔は肉まん狐やメイドを尾翼に描いた機体が飛び回っていた
もんさ(謎)
>DoLLS編成できるじゃないか
メビウスリンク艦隊でも可(マテ
522 :
133:2005/03/25(金) 03:01:13 ID:sRn+rpP+
133です。
まず最初に、申し訳ございませんでした。
作品の続きを早くださなければいけないという不安から投稿したしたのですが、皆様方の意見を読ませていただいて、誠にその通りだと痛感しています。
ただ、一度書き始めたからには最後まで書ききろうと思います。
今後はゆっくりとですが、作品をおとボクSS投稿掲示板の方へ投稿させていただきます。
以上です。スレ汚し失礼致しました。
いまだに処女は俺に恋してないの続編を誰かが書いてくれる事を期待している俺
524 :
初代269:2005/03/25(金) 12:55:41 ID:t+mUTm1R
「いつかは心も五月晴れ」最終話、投下します。
525 :
初代269:2005/03/25(金) 12:56:23 ID:t+mUTm1R
「おはようございます。紫苑様」
紫苑が教室に入ると美智子から話し掛けてきた。
「おはようございます。美智子さん」
にっこりと微笑みながら挨拶を返す紫苑。
紫苑が復学してから二週間程が過ぎていた。最初は戸惑っていたク
ラスメイトも自然に接してくれるようになっていた。…積極的に話し
掛けて来る者はまだ少ないが…
中でも目の前にいる美智子とその親友である圭は、紫苑にとって気
兼ね無く話せる仲になっていた。
貴子ともそれなりに親しくはしているが、生徒会に近寄りたくない
心情もあって自ら話し掛けるほどではない。
「あら?…何か良い事でもあったのですか…?」
紫苑の顔を見て、美智子がそう切り出した。
「え?」
…顔に出ていたのであろうか。
確かに紫苑にとっては、良い事というか、とかく沈みがちな心が軽
くなるようなことがあった。…昨晩のことである。
自宅でいつものように独りで夕食を済ませ、部屋に戻ろうとしたと
き、母親の私室の僅かに開いた扉から、呻き声が漏れ出ているのに気
が付いた。不審に思い覗き見ると、そこには紫苑の子供の頃のアルバ
ムを開いて泣きじゃくる母親の姿があった。
自分は愛されていないのだと思っていた。愛されていないから厳島
との政略に使われるのだと……だが、涙する母親を見てその誤解は氷
解した。私は愛されていたのだと…。それだけで充分だった。
自分を愛して育ててくれた両親に恩返しをする…そう思うと幾分救
われた気持ちになれた。例え、結果に変わりはなくとも……
「ふふっ…そうですわね。あったのかもしれません…」
身の不幸をただ嘆いて後ろ向きな姿勢だった昨日までの紫苑はもう
いない。誰かの為に力になりたいと思う気持ちは、前向きに生きる力
を与えてくれた。
…少なくとも当面の間は頑張れる。そう紫苑は思っていた。
526 :
初代269:2005/03/25(金) 12:56:58 ID:t+mUTm1R
「…おはようございます。紫苑様」
間も無く始業ベルが鳴ろうかという頃、圭が教室に入って来た。
「おはようございます、圭さん。…随分とゆっくりとした登校です
ね…?美智子さんが今か今かと、やきもきしておいででしたよ」
挨拶を返した紫苑は悪戯な表情で云う。
「…真打は遅れて登場するものです」
しれっと切り返す圭。
「ふふ…それって、ヒーローは、ではないのですか…圭さん…?」
美智子が笑いながら突っ込みを入れる。
「…ふ……そうとも…云う」
キンコーンカンコーン…
圭が何かを口にするのと同時に始業ベルが鳴り響いた。
「……」
圭はぱくぱくと口を動かしていたが、やがて自分の席に戻って行った。
「それじゃあ、私も席に戻ります」
美智子はそう云うと自分の席へと戻った。
「お昼はどうなさいます…?」
昼休み、美智子が紫苑に聞いてきた。このところ昼は紫苑と美智子
と圭の三人で摂る事が多い。
「ああ、私、飲み物を買いに行って参りますので先に召し上がって
いて下さい」
「わかりました…いってらっしゃいませ」
笑顔で見送る美智子であった。
「?…あれは……?」
パックのお茶を購入した紫苑は教室に戻ろうと廊下を歩いていた。
窓から外の景色を見ながら歩いていたのだが、中庭に気になる人影を
認めた。
527 :
初代269:2005/03/25(金) 12:58:01 ID:t+mUTm1R
(まりやさん…?)
まりやは中庭に備え付けられた椅子に座っていた。いつも活発に動き
回るまりやからは想像できない、うな垂れたような様子であった。
「まりやさん…?」
何となく気になった紫苑はまりやに歩み寄ると声を掛けた。今日はや
や風が強い為か、中庭には他に人はいなかった。
「え?…あ、紫苑様…」
まりやは、声を掛けられて初めて人が近くにいることに気付いた。
「どうかなさいましたか…?」
紫苑は優しい口調で問い掛ける。何か悩みを抱えていることは容易に
見て取れた。
「あ、いえ…ちょっと……」
何ともまりやらしくない煮え切らない様子である。
「…お話してみませんか?話せばすっきりするかもしれませんし…」
紫苑の言葉に逡巡するまりや。一人では持て余すことなのかもしれ
ない。大きなお世話かもしれないが見知らぬ振りは出来なかった。
「紫苑様」
紫苑に向き直り真剣な表情を浮かべるまりや。
「はい…」
思わず紫苑も姿勢を正す。
「このことは他言無用に願います。…実は……」
「…それは……本気…なのですか…?」
まりやが話した内容は真に受けがたいものだった。
…こともあろうに女学院に男が来るなんて……
「はい…もっとも、まだ来ると決まったわけではないのです」
抱えていたものを吐き出したからか、少し元気を取り戻したまりやが
云う。
「…というと……?」
まりやに詳細を促す紫苑。
528 :
初代269:2005/03/25(金) 12:58:57 ID:t+mUTm1R
「本人がどうしてもいやだと云えば、それまでですから…」
確かに、普通に考えれば女装をしたからといって誤魔化しきれるもの
ではないだろう。ばれたときのリスクを思えば断る可能性の方が高い。
…だが、
「もし本当に来られることになったら如何なさるおつもりですか…?」
率直な疑問を投げかける。
「うーん…そのときは…」
頭を掻きながら云うまりや。
「そのときは…?」
鸚鵡返しに続きを促す紫苑。
「ま、全力でバックアップします。…他の人にばれないように」
ふっきれたように明るい笑顔で云うまりや。
「そうですか…わかりました。まりやさんがそのおつもりなら、微小
ながら私もお手伝いさせて頂きますわ…」
これも話を聞いてしまった縁であろう。そう思って紫苑は返答した。
「本当ですか!?ありがとうございます。紫苑様が味方に付いて下さ
るなら心強いです」
嬉しそうに破顔するまりや。
「まあ。あ、そうそう。私が、その方が男性である、ということを知
っているというのは、本人には伝えないで下さいね。まあ本当に来る
ことになったら…ですけど」
悪戯な微笑を浮かべて紫苑が云う。
「構いませんけど……なんでですか?」
不思議そうに問うまりや。
「…だって、その方が面白そうではありませんか」
本当に楽しそうに紫苑は云った。
「ぷ…あはは……」
きょとんとした顔で紫苑の言葉を受けていたまりやが笑い出した。
「あはは…紫苑様って、結構お茶目さんなんですね…」
目に涙を溜めて笑い続けるまりや。釣られて紫苑も笑い出す。
二人の笑い声が中庭一杯に広がっていった…。
529 :
初代269:2005/03/25(金) 12:59:56 ID:t+mUTm1R
六月の第一日曜日。
紫苑は午前中に突然、担任の梶浦緋紗子から連絡があり、午後五時
頃に学院まで来て欲しいとの要請を受けたのだ。
電話では云えない用件があるということで、紫苑は休日にもかかわ
らず制服に身を包み学院に来ていた。
校門を潜り、校舎へと向かう。休日も部活動を行う運動部もあるの
だが、今日は既に終えたのか、元から休みだったのか、生徒の姿は見
えなかった。
校舎に入り職員室に向かう。緋紗子は職員室にいるはずだ。
コン、コン。
「はーい」
ノックをすると間髪入れずに返事が返ってきた。
(…待ち構えていたのかしら)
思わずそんなことを考えてしまう。緋紗子ならありえそうなことだ。
「…失礼します」
扉を開けて中に入る。…職員室には緋紗子しかいないようだ。
「ああ、十条さん。いらっしゃい」
椅子から立ち上がり出迎える緋紗子。
「こんにちは、緋紗子先生…」
近寄ってくる緋紗子に挨拶をする紫苑。
「…ごめんなさいね。折角のお休みなのに……」
緋紗子は、紫苑のすぐそばまで歩み寄り、云う
「いえ…それで、どういったご用件なのでしょうか…?」
来る間も考えてみたが、思い当たることが無かった。
「…あのね。…実は用があるのは私じゃないのよ」
悪戯っぽく笑う緋紗子。
「え?」
困惑の表情を浮かべる紫苑。
「ふふ…こちらへどうぞ」
云って歩き出す緋紗子。紫苑は云われるままに付いて歩いた。
530 :
初代269:2005/03/25(金) 13:00:56 ID:t+mUTm1R
「こちら」
緋紗子に連れられて行き着いた先は学院長の部屋だった。
「学院長先生が…?」
何の用であろうか…
「そ。どうしても十条さんに話したいことがあると仰っていたわ」
云いながら扉をノックする緋紗子。
「どうぞ…お入りなさい」
部屋の中から学院長の声が聞こえた。
「失礼します…十条さんが参りました」
緋紗子が開けた扉から顔だけ出して告げる。
「そうですか…入って貰って下さい」
学院長の言葉を受け緋紗子が扉を大きく開いて紫苑を中へと誘う。
「失礼します」
促されるまま紫苑が中に入ると
「それじゃあ、私はこれで失礼します…」
パタン。
緋紗子が扉を閉めた。
「良く来てくれましたね…さあ、お掛けなさい」
云ってソファに腰掛けるように薦める。
「失礼します」
紫苑も云われるままにソファに腰掛ける。
学院長はいつもの黒い修道女の服装をして椅子に座っている。そして、
紫苑に優しく微笑みながら語り掛ける。
「どうですか…久しぶりの学院生活は……?」
「おかげさまで特に問題なく過ごさせて頂いております…」
紫苑は軽く会釈をしながら答える。
「そうですか。それはなによりですね」
優しく微笑んだまま軽く頷く学院長。
「ところで、十条さん…?」
変わらず微笑を浮かべたまま学院長が切り出す。
531 :
初代269:2005/03/25(金) 13:01:54 ID:t+mUTm1R
「はい…」
今日呼ばれた本題に入るのだろう。紫苑は真っ直ぐな視線を学院長に
向ける。
「今日、来て貰った用件なのですが…」
笑みを消して真面目な表情になる学院長。
「…貴女は秘密を守れますか?」
真剣な口調で云う。
「…はい。口は堅いほうだと自認しております」
紫苑も真剣な表情で答える。
「…ならば貴女の言葉を信じてお話しましょう」
学院長は再び微笑を浮かべながら語り出した。
「…実は明日から我が恵泉女学院に転入してくる生徒がいます。…そ
の生徒は少々特殊な事情があってこちらに転入することになりまして
ね。…その特殊な事情というのが…」
「その方が男性である…ということでしょうか…?」
学院長の言葉を受け、繋げる紫苑。
「!…十条さん…何故…?」
驚いた顔で紫苑を見詰める学院長。
「その方のことでしたら、既に御門さんから伺っておりますので…」
にっこりと微笑んで答える紫苑。どうやら件の男性は本当に転入して
来るらしい。
「…そうですか。…御門さんが……」
学院長は合点がいったのか、気を取り直した様子で話を続ける。
「既に知っているのなら話は早いですね…十条さんにはその方のサポ
ートをお願いしたいのです」
学院長は紫苑の様子を伺いながら告げる。
「かしこまりました。お引き受け致します。ただ一つだけ条件がご
ざいます」
「条件…?」
訝しげな顔で問い返す学院長。紫苑は悪戯な微笑でこう答えた。
「私がその方の正体を知っていることは、内密に願います…」
532 :
初代269:2005/03/25(金) 13:03:16 ID:t+mUTm1R
ザァァァァ………
「……ぁ…」
学院長の部屋を辞して校舎から出た瞬間、強めの風が吹き付けてきた。
風に吹かれて紫苑の長髪が宙に踊る。
外は夕暮れを迎えていた。西の彼方に赤く染まった太陽がその半身を
山肌に隠し始めている。山の際には薄い雲が掛かりそこから吹き付ける
風は微かな水気を帯びていた。
サラサラ………
校門へと続く並木道。風に揺られた木々から、心安らぐ心地よい葉擦
れの音が響いている。
紫苑は、その葉擦れを共にゆったりとした歩調で歩みを進めていた。
(…どのようなお方がいらっしゃるのでしょう……?)
まだ見ぬ転入生に思いを馳せながら並木道をゆく。
「……?」
ふと紫苑が歩みを止める。考え事をしながら歩いていたため、直ぐに
は気付かなかったが、前方に人影が見える。
(…こんな時間に……?)
遠目に見た限りでは紫苑の知る人物ではなさそうだ。学院の制服を着
ているからには学院の生徒に間違いはないだろうが…
(新入生かしら…いえ、二年生…?)
昨年度の長期間を休んでいた紫苑は、現在の二年生の顔を殆ど知らな
い。新入生についても同様である。
女生徒は何か考え込んでいるのか、桜並木に視線を向けたまま動かな
い。まだこちらにも気付いていないようだ。
「……」
紫苑は先程までと変わらぬ、ゆっくりしたと歩みを始める。
ザァァァァ………
二人の距離が程近くなったそのとき、紫苑の背後から風が吹きつけて
きた、その瞬間その女生徒がこちらを振り向いた。
533 :
初代269:2005/03/25(金) 13:04:47 ID:t+mUTm1R
「!」
紫苑は目を奪われた。眼前に立つその女生徒に……
驚いたのか大きな瞳を丸くしてこちらを見る女生徒。紫苑と同じくら
いの長身に均整の取れた体付き。少し幼い感じの残る整った顔立ちに風
に美しく靡く栗色の長髪。
紫苑は瞬きすら忘れるほどに魅入られてしまっていた。
…何故かその女生徒も固まったまま動かなかったが……
「………こんにちは、いえ、こんばんは、かしら…もう夕方ですものね」
我に返った紫苑が挨拶をする。まだ少し動揺が見られる。
「こ、こんばんは……」
優しい音色の言葉が、はにかんだ笑顔を浮かべた女生徒の唇から零れる。
(……ああ…なんという…)
美しさと愛らしさを併せ持つその姿に紫苑は魅了される。
…お近づきになりたい。
紫苑の心に芽生えた思慕の情…
「お散歩かしら……?」
「ええ、まあ…そんなところです」
紫苑の問いに答える女生徒。他愛のないことではあるがこんな単純な会
話でさえ、紫苑の心を躍らせる。
ザァァァ………
桜並木を走り抜ける風が順番に並木を揺らし、葉擦れの音が、紫苑の
後ろからウェーブを描いて通り過ぎてゆく。
「いい、音がしますね…」
紫苑は目を閉じ、葉擦れの音に耳を傾ける。
「そうですね……落ち着ける、いい音です」
「ええ、本当に」
紫苑は、眼前の人と思いを共感できる喜びを感じていた。
ザァァァァ………
少し水を含んだ風が紫苑の髪を靡かせる。目を開けると…目を閉じ、
風に髪を靡かせ夕陽の光に佇む女生徒の姿があった。
それはとても幻想的な光景に見えた…
534 :
初代269:2005/03/25(金) 13:06:18 ID:t+mUTm1R
やがて女生徒が目を開ける。
自然と二人の視線が絡み合った。
「ふふ………では、私はこれで。ごきげんよう」
紫苑は視線が合ったことが少し恥ずかしかったが、悟られぬように出
来るだけ自然に笑みを浮かべながら会釈をし、女生徒の脇を通り抜けよ
うとした……が、擦れ違う瞬間…
「また……逢えそうな気がします」
自分の願望を隠したそんな言葉が、口をついて出てしまった。
「…え?」
背後から困惑した女生徒の声が聞こえてきたが、紫苑は振り返らなかっ
た。
(…今振り返ったらきっと、真っ赤になった顔を見られてしまいますも
の……)
恵泉で迎えた四度目の春。今までとは違った生活が待っている…そんな
予感を覚えた紫苑であった……
この生徒との出会いが自らの運命すらも左右するものであったことを紫
苑は知らない。
今はただ、この生徒との再会を望んでいる自分の心に少しの戸惑いを覚
えているだけである。
全ての物語は今日、この日、この場所から綴られていく。
…それは、青く澄み渡る梅雨の晴れ間のような……青春の物語………
fin
535 :
初代269:2005/03/25(金) 13:13:18 ID:t+mUTm1R
投下終了しました。
色々と突っ込み所があると思いますが……許して下さい。
最後に、長い間お付き合い下さった方々に御礼申し上げます。
では。
大作乙あんどGJです。実は予め知っていたというのはなかなか面白い説ですね。でも本編でもまりやは紫苑にバレたことについてまったく触れてなかったですから、実はこうだったのかもしれないですね。次の作品も楽しみにしてます。
537 :
4-385:2005/03/25(金) 14:02:42 ID:ng3Bg/n2
>>535(初代269さん)
そういう事情があったとは…予想もしていませんでした。GJです。
こんな良作の後に続けるのは気が引けますが、一本投稿させていただきます。
新たに一本書き上げてみたら驚異的にシリアスな話になってしまったので、これはヤバい、
投稿できない、ということで、新しく別に一本書きました。
ベタな設定と流れですが、お許しください。
538 :
4-385:2005/03/25(金) 14:03:39 ID:ng3Bg/n2
Februaly 16th
Dear Takako Itukushima
その後変わらず御元気でしょうか?2年前に恵泉女学院を卒業しました、宮小路改め鏑木瑞穂です。
『Tear letter』
私はここ2年は特に病気も怪我もせず、イギリスの郊外で健康な生活を送っています。
父の推薦でこちらに赴任した当初は不安で一杯でしたが、最近になりましてようやく仕事が軌道に乗り始め、
少しばかり余裕が出来ましたので筆を取った次第です。
卒業後すぐにこちらへ来てしまったので、まともな挨拶も出来ないまま一時の別れをしてしまったご無礼をお許しください。
あれからもう2年が経ちまして、今年奏ちゃんと由佳里ちゃんが卒業するとなると、時の流れの速さを実感してしまいます。
貴子さんとまりやは良い大学生活を送られているかと存じますが、いかがでしょうか?
さて、私はこの地に留まって2年ほど経ちますが、近いうちに仕事を辞めて日本へと戻る所存です。
突然何を、と貴子さんならおっしゃるでしょうが、これが私たちの出した結論です。
戻って父の会社を継ぐかどうかは分かりませんが、私たちの今の気持ちはひとつです。早くみんなに逢いたいという。
今までは有意義な時間ではありましたが、同時によく寂しさを覚えていました。
何故逢えないのだろうか、何故このような寂しい思いをしなければならないのか、考えなかった日はありませんでした。
決意を固めるのに相当の時間がかかってしまいましたが、紫苑も喜んで同意してくれました。
日本へと戻った際には、卒業式のメンバー全員が揃うことを期待しています。
本年度の卒業式に間に合わせたいと思っていますが、残念ながら、それまでに帰れるかは分かりません…
再開出来るその日を夢見て、短いながらも筆を置かせて頂きます。
Your Best Friend
Mizuho Kaburagi & Shion Kaburagi(Jujoh)
539 :
4-385:2005/03/25(金) 14:04:25 ID:ng3Bg/n2
Februaly 18th
Dear Mizuho Kaburagi & Shion Jujoh
お久しぶりです、瑞穂さん、そして紫苑様。
貴方達がイギリスへと渡ってから連絡が全くなく、連絡しようにも宛先が分からなくて
という日々を過ごすのは私にとっても、まりやさんにとっても寂しい日々でした。
現在、私は国立のT大学で経済学を、まりやさんはK大学でファッションの勉強をしています。
厳島の家を出てから暫くは不安が募る日々でしたが、海外で頑張っている瑞穂さんを思って私も頑張ってきました。
ひと月ほど前、まりやさんと一緒に恵泉女学院の寮を訪ねたことがありました。
そこで奏さんと由佳里さんを交えて思い出話をしたのですが、やはり瑞穂さんに会えないためでしょうか、
あんなに明るかった二人はなんだか元気がないようで…
思い出の話でも瑞穂さんの話がほとんどで、話せば話すほど瑞穂さんに会いたいと思ってしまいます。
そういうわけなのでしょうか、瑞穂さんの手紙の中で日本へ戻るというところを読んだときに、感動のあまりに…
まりやさんと一緒に読んだのですが、まりやさんも途中からは涙を浮かべていらっしゃって、
瑞穂さんという存在の大きさを改めて知った思いです。
日本にて再開できる日を心待ちにしています。
帰国の日どりが決定しましたら知らせていただければ、と思います。あの日の学友全員で空港へ迎えに行くことでしょう。
今後も健康でお過ごしくださいますよう、お祈りしております。紫苑様も御体にはお気をつけて。
Your Best Friend
Takako Itukushima
540 :
4-385:2005/03/25(金) 14:05:14 ID:ng3Bg/n2
「で、貴子、あれから瑞穂ちゃんからの手紙は無いの?」
「来ませんわ…どうなさったのでしょうか…」
「日本に戻るって言ってたからそれなりの準備は必要だけど、瑞穂ちゃんの性格からして、まず返事はだすよね…」
「そうですね…ですから一相不安になりますわ…」
「そうね…卒業式には間に合わせるって言ってたけど…間に合わなかったみたいね…」
「ええ…もう明日は卒業式ですものね…」
「…」
トゥルルルル……トゥルルルル……
「電話…こんな時間に…?」
「珍しいわね…」
「はい、厳島ですが…あ、奏さん……ええ、まだ手紙も連絡も……ええ…残念ですが明日には間に合いそうに……そうですね…私も残念な思いで一杯で……」
「貴子、ちょっと代わってもらっていい?」
「はい……ええと、まりやさんがお話をしたいそうなので代わりますね」
「もしもし、奏ちゃん……うん、瑞穂ちゃんは間に合いそうにないけどさ、あたしたちはちゃんと行くからね?泣かないで……
ふふ、瑞穂ちゃんが帰ってきたら叱らないとね?……うん…頑張ってね…由佳里にもよろしく言っておいてね…」
カチャッ
「奏さん…泣いていましたね…」
「うん…多分由佳里も部屋で泣いてるんだと思う…」
「瑞穂さん…こんなに可愛い子を二人も泣かせて…悪い人ですね…」
「ほんと、瑞穂ちゃんは鈍感なんだから…」
「ええ…本当…に…」
「た、貴子…あんたも泣いちゃうの?」
「ええ…今日は…泣きたい気分…です…わ…」
「全く…貴子ったら……あたしも…辛くなってきたじゃない…」
541 :
4-385:2005/03/25(金) 14:05:59 ID:ng3Bg/n2
「瑞穂お姉さま…来ませんでしたね…」
「そうね…でも帰ってくることは確実だから…待つしかないわね…」
「お姉さまがいない卒業式は寂しいのですよ…」
「私も…寂しいですわ…」
「…」
「そろそろ…時間ですわね…」
「ええ、私たちも来賓の席へと行きましょう、まりやさん…」
「はい…」
「只今より、第百十一期・卒業証書授与式を執り行います…」
「始まっちゃったか…」
「どうしたのですか、まりやさん?」
「いやね、最後の最後まで瑞穂ちゃんが来ないかな…来てほしいな…って思っちゃったのよ。」
「そうですね…」
542 :
4-385:2005/03/25(金) 14:06:47 ID:ng3Bg/n2
「上岡由佳里…」
「はい…」
「上岡由佳里…以下同文」
「ありがとう…ございました…」
「もうすぐですから、待っていてくださいね…」
「えっ…?」
コツ、コツ、コツ…
「由佳里ちゃん…どうしたのですか…?」
「もうすぐ…って何だろう…」
「え…?何のことですか…?」
「周防院奏…」
「は、はいっ!」
「周防院奏…以下同文」
「ありがとうございました…」
「もうすぐ…ですからね…」
「え…」
コツ、コツ、コツ…
「言われたでしょ、奏ちゃん?」
「はいなのです…」
「続きまして来賓の方からご祝辞を頂きます…」
「―――」
「続きまして、在校生代表から―――」
「―――」
「由佳里ちゃん…もうすぐって何なのでしょうか…」
「わかんない……でも…式がもうすぐ…終わっちゃう…」
543 :
4-385:2005/03/25(金) 14:07:33 ID:ng3Bg/n2
「最後になりますが、この学園の卒業生で、第百九期エルダーの宮小路瑞穂さんと第百八期エルダーの十条紫苑さんから
お祝いのお手紙を頂いておりますので読ませていただきます…」
「えっ!?」
「ええっ!?」
「み、瑞穂ちゃん!?」
「み、瑞穂さんが!?」
「静粛に、皆さん静粛に!」
「せ、静粛にって…無理ですよぉ…」
「そうですね…こういうことだったのですか…もうすぐというのは…」
「うん…まさかとは思ったけれど…」
「コホン、では失礼いたします。」
「…」
544 :
4-385:2005/03/25(金) 14:08:28 ID:ng3Bg/n2
第百十一期卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
本来でしたら私自らがお祝いの言葉を述べにに参る予定でしたが、時間の都合上できなくなってしまいましたので
せめてもと文面で御挨拶をいたします事をお許しください。
卒業生の皆さんは私達を覚えていらっしゃるかも知れません。
卒業式の際に壇上に立って言った私達の言葉を覚えている人も居ると思います。
あれから2年が経過しましたが、今度は貴方たちが社会へと飛び立つ出番です。
そして…私達が2年前に出した宿題の答えを、出す時になりました。
まず、自分自身が3年間の学院生活において、何を創ることが出来たかをよく考えてみてください。
自分自身、学院、友人、創ることの出来たものはたくさんあると思います。
それを一つ一つ、ゆっくりと思い出し、吟味してみてください。
…
卒業する場に立って始めて実感した人も居ると思います。
ですが、貴方たちは卒業生であると同時に、妹たちから見れば「永遠にお姉さま」なのです。
どうか、そのことを常に忘れないようにしていてください。
そして、私は恵泉女学院の卒業です…と、胸を張れる生徒でいてください。
私達は姉として、過去のエルダーとして、貴方たちが幸せな将来を送ることが出来るよう、心から祈っています…
第百九期卒業:宮小路瑞穂、十条紫苑
545 :
4-385:2005/03/25(金) 14:09:16 ID:ng3Bg/n2
「み、瑞穂お姉さま…」
「お姉さま…ありがとうなのですよ…」
「瑞穂ちゃん…」
「瑞穂さん…ありがとうございます…」
「静粛に…これにて、第百十一期・卒業式を閉式致します。」
「瑞穂お姉さま…最高の…思い出をありがとうなのですよ…」
「瑞穂ちゃん…本当に…本当にエルダーになって正解だったね…」
「ええ…私も瑞穂さんと知り合えたことを…心から…感謝いたしましたわ…」
「瑞穂さん…うわぁぁん…」
「由佳里ちゃん…でも今日は…みんなで泣く…の…ですよ…」
「ええ…奏ちゃん…」
「連日…泣いてばかりですけれど…それが…瑞穂さんへの思い…なのですね…」
それは、一通の手紙が奇跡を起こす、涙流れるの3月の物語…
546 :
4-385:2005/03/25(金) 14:10:02 ID:ng3Bg/n2
『エピローグ』
March 3rd
Dear "Takako Itukushima, Mariya Mikado, Kana Suohin, Yukari Kamioka"
この手紙が届くころには、恵泉女学院では卒業式を過ぎているでしょう。そう思いますと残念でなりません。
日本へと帰る際の手続きが思った以上に上手くいかず、残念ながら卒業式に出席することは出来ませんでした。
また、恵泉女学院のほうへ卒業のお祝いのお手紙をお送りするのに時間がかかってしまい、
その間連絡が取れなくて申し訳ありませんでした。
ですが、奏ちゃんも由佳里ちゃんも、そして多くの妹たちも、胸を張って立派に卒業できたことと思います。
さて、私たちは3月10日に、ついに日本へ帰れることになりました。
空港ではきっと泣いてしまうでしょうが、私はそれで構いません。きっと私も泣きたくなるでしょうから…
文面は早めに切り上げて、一日も早くみんなに会えることを楽しみに待っています…
Your "Best Friend" and "Elder Sister"
Mizuho Miyanokohji & Shion Jujoh
547 :
4-385:2005/03/25(金) 14:12:30 ID:ng3Bg/n2
『あとがき』
手紙に纏わる涙の物語。文字が人に与える大きな影響。
2年後の卒業式、エクストラストーリーです。
紫苑様ルートで大学へ行かず、そのまま二人で海外へと旅立ってしまったという仮定の下で書きました。
ナレーションを一切入れずに、人物の声・手紙・効果音だけで構成しましたが、いかがでしょうか。
手紙は全部で4通。エピローグの手紙とそれ以外の相違点に気づいて下さればありがたいです。
書きたかったイメージは「いつまでたっても、瑞穂はみんなのお姉さま」。瑞穂の純真な思いは永遠です。
>>初代269氏
シリーズ乙でした。うーん、予め根回しがされていたというのは仮説としては
面白いですね。如何に紫苑様とはいえいきなり男が混入してくりゃ混乱するかと。
#あー、あでもあの人の異次元級の懐の深さだとなー。なんとも言えない(笑)
>>4-385氏
ナレ無しってのはなかなか大変だと思うのですが。
なかなか素敵なエクストラストーリーであります。
流石、我らがエルダーシスター宮小路瑞穂(笑)
549 :
昔話:2005/03/25(金) 17:08:28 ID:Nrhhj1MH
久しぶりの私の部屋は恐ろしく寒かった。
凍え死んでしまうような思いで、暖房のスイッチを入れる。
どうせすぐには温まらないだろうけど、入れなければ一生寒いままだと言い聞かせる。
ごめんね……寒かったよね……?
クローゼットに手をかける。
ここにもたれ掛かるようにして最期を迎えたあの子の事を想うと、
切り裂かれるような思いがこみ上げてくる。
「ただいま……一子ちゃん」
前編:再会
寮にいるのは私一人のようだった。
皆、まだ実家で家族と一緒のお正月を過ごしてるはずだ。
こんなに早く戻ってくるのは、私くらいのものだろう。
私は一人、そのクローゼットに話し続ける。
「半年ぶりかな? 実家に帰ったのも。
次に帰るのは卒業の後でしょうね……そうしたら、私はすぐに慶行さまの所に嫁いで行きます。
でも……お父さまとお母さまには悪いけど、帰って来てしまいました」
何をしていても、この部屋が、一子ちゃんの事が気にかかってしょうがなかった。
ひょっとしたら今頃一子ちゃんが私の部屋で帰りを待っているのではないかと思えてきて、気が気でなかった。
「結婚まで、あと三ヶ月か……」
脳裏に浮かぶのは幼き日の慶行さまのお顔。
どんな風に成長なさっているのだろう。
愛しい殿方の事を想っても、今だけは感情の高鳴りは感じられる事はなかった。
「ねえ……一子ちゃん? 私……もうすぐ、結婚……しちゃうよ?」
私が慶行さまのお話をするとジト目でいじけていた一子ちゃん。
『嫌です駄目です許しません私がお姉さまのお嫁さんになるんですぅ〜』と手を取ってきた一子ちゃん。
「もう何も……言ってくれないんだね、……一子ちゃん……
……ぅう……ぁぁ…あああ……」
誰もいない寮で、一人涙にくれる。
駄目ですね、半年くらいでは一向に立ち直れそうにありません。
「一子ちゃんっ……一子ちゃん………
ごめんね……私の、……私が…………」
会いたい。また一子ちゃんに会いたい。
向日葵のような、あの真っ直ぐな一子ちゃんの笑顔を、見たい。
カランッ
クローゼットの中から、金属が落ちるような音がした。
何かに惹かれるようにクローゼットに手をかける。
何だろう、何の音?
「あ……、これ……」
出てきたのは小さな髪止め。
一子ちゃんがいつも付けていた……私が、一子ちゃんにプレゼントした……。
「……っ、………ぅうっ……っく……」
神様の莫迦、今更このような物を見せて、どういうつもりですか。
「一子……一子ちゃん……」
ガタガタガタッ
「わっきゃああ〜〜〜〜〜」
「……へ」
目に映ったのはお尻。そして暗転。
「あいったたたた……」
「ふみ〜っ、ふむむむっ」
「あぁああ、すいません下の方。只今、今っすぐどきますので。
って……お姉…さま……。お姉さまっ……!」
私の顔からお尻をどかした一子ちゃんと目が合う。
そして、次の瞬間には私に抱きついてきた。
「お姉さまお姉さまお姉さまお姉さまぁ…!
あ〜ん、お逢いしたかったですお姉さまぁっ……!」
「ちょっ、待って……いち、こ……ちゃん?」
「そうです一子です高島さんちの一子ちゃんですけど待つことはまかりなりません
私待てと言われて待てるほどこの感情の迸りを押さえられる
屈強な精神を持ち合わせてはいませんし
私自身の人間性といいますかとにかっ―――うっきゃあ!?
おおおおっ、お姉さまぁ〜!?」
「一子ちゃんっ……! 一子ちゃんっ…! 一子ちゃんっ……!
逢いたかったよぉ……一子ちゃん……、ふぁぁあああああんっ」
「えっ!? えぇ!? お姉さま!?
いったいどうなさったんですか、お姉さまっ!?
……ええと、はい、お姉さま。……私もお逢いしたかったです」
一子ちゃんの胸にしがみついて狂ったように涙を流す。
一子ちゃんだ。本当に一子ちゃんがいる……。
「……落ち着きましたか? お姉さま」
「えぇ……ごめんなさい、一子ちゃん」
一子ちゃんの胸に抱かれる事数分、私はやっと落ち着きを取り戻していた。
「あの……お姉さま。それでですね、一つ質問をよろしいでしょうか……?」
「ええ、いいわよ」
「私、浮いてませんか……? いえ、あの空気にそぐわないとかそういう意味ではなくてですね、
こう…なんというか、ぶぶっ、物理的にっ、浮いてないでしょうかぁ〜」
台詞の後半から涙目状態で自分の足を指差す一子ちゃん。
ふわふわ。
「……そう、ね……確かに一子ちゃん、浮いてますね」
「こここここ、これってどういう事なのでしょうかっ、お姉さまぁ〜!
私、一体どうなってしまったのですかぁ〜〜!!」
「……一子ちゃん、落ち着いて聞いてちょうだい」
この半年間の事を話すのは胸が張り裂けるくらい辛いけど、きっと私の責務のはず。
話しているうちに、一旦止まった涙は再び流れ始めていた。
・
・
・
・
「…………ええと、つまり私はもう死んでいて、
ここにいる私は幽霊か何かというわけですか……あはっ、あははは……」
乾いた笑い声をあげる一子ちゃん。やはり、ショックは大きいみたい。
「ごめんなさい……ごめんなさい……私のせいで……こんな……」
「そんなっ、お姉さまは何も悪くありません。そんな顔をなさらないでください。
むしろ、私が……私が勝手な真似をしたせいで、こんなにもお姉さまを苦しめてしまっていただなんて……。
やっぱり駄目な妹ですね、私……後先考えないばかりに、こんな……」
「ううん、一子ちゃんは何も悪くないわ。
それに、一子ちゃんの気持ちは嬉しかったし、こうしてもう一度逢えたのも、とても嬉しいわ」
「お姉さま……。私……お姉さまに、どうでもお逢いしたかったんです。
死んでしまう前に、一目でもいいからお逢いしたかったんです。
でも、おかげでこうしてまた逢えました。…………死ぬほど頑張った甲斐がありました」
「……それ、笑えませんよ、一子ちゃん」
私たちは、いつまでもいつまでも、互いを深く抱きしめ続けた。
「へっくちっ――」
一子ちゃんの可愛らしいくしゃみで意識が現実に引き戻される。
一体何時間こうしていたのだろう、私たちは。
……というか
「幽霊もくしゃみをするのね、一子ちゃん」
「ん〜、よく分かりませんが、漠然と寒いというのは感じます」
「そう……一子ちゃん、真冬なのに夏服ですからね。だから寒いのかもしれません」
「そういう問題なのでしょうか……?」
よく分からないという一子ちゃんを尻目に私は制服から、寝間着に着替える。
「今日はもう寝ましょう、一子ちゃん。私、泣き疲れてしまいました」
「はぁ……それはいいのですが、お姉さま。私幽霊なのですが、幽霊も眠るのですか?
むしろこれからの時間帯が、私の活動時間のような気もするのですが」
「そんな不良さんみたいな事を言ってはいけませんわ。さ、いらっしゃい。
一緒に寝ましょう」
ぽむぽむ、
掛け布団をめくってベッドを手でたたく。
「えっ、えぇぇえええ、いいんですかぁ〜お姉さまぁ〜〜〜〜!!」
一子ちゃんの顔がキラキラ輝く。
たまらなく心が満たされていくのを感じる。
こんなにも私は一子ちゃんを欲していたのですね。
なんだか、一子ちゃんの喜ぶ顔が見たくて、明日からいっぱい甘やかしてしまいそう。
「あぁあっ、でもでもっ、私不幸な事に幽霊ですからこんな寒い冬の夜に一緒に寝ようものなら
明日の朝にはお姉さままで冷たくなっているかもしれませんし下手したら私お姉さまへの想いが
想いにそれこそ思い余って取り憑いてしまうかもしれませんしいけませんお姉さま私何をするか分かりません
霊的にではなくてもやはり思い余って取り付いてしまうという事すら考えられます」
「だめですっ、離しません。絶対一緒に寝ます」
「お姉さまぁ……、ですがですがっ」
「はい、ストップ、そこまで。続きはお布団の中で聞いてあげますから。
さ、いらっしゃい、一子ちゃん」
ぽむぽむっ
再びベッドの…私の寝ているすぐ横を叩く。
「そ、それじゃあ……失礼します……お姉さま…」
二人、布団の中で手を取り合う。
目前には夢にまで見た一子ちゃんの顔。
そして私は、夢にも想わない形での再会を神に感謝する。
「お姉さま……暖かいです」
「そう? 良かったわ。でも一子ちゃんだってちゃんと暖かいわよ?」
一子ちゃんの体を抱きしめなおす。うん、感じる……しっかりと一子ちゃんを感じる。
「一子ちゃんに触れている部分から、だんだんと私の体が暖かくなっていくのを感じます。
それに……こうして一子ちゃんと言葉を交わしていると、
凍り付いていた私の心までが温まってくるの」
「お姉さまぁ……」
「一子ちゃん……」
布団の中で互いにしがみ付くようにして、眠る。
久しぶりに、安心して熟睡できそうな気がした。
「ん…………」
薄呆けた意識の中、包みこむようなその温かな感触に
もう一度眠りの中へ落ちていきそうになる。
「ふにゅう……む……ぉねえさまぁ……」
しっかりと私にしがみついている一子ちゃんに安堵する。
……夢じゃなかった。
「……お姉さまぁ」
寝言でもお姉さま、か……一子ちゃんったら。
「なぁに、一子ちゃん……」
「にゅんっ……お姉さま、くすぐったい〜」
起こす気にもなれないので、そのまま布団の中で過ごしてみる事にした。
どうせ冬休み中だし、いいよね。
それからたっぷり三時間ほど、一子ちゃんの寝顔を観察して、寝言を聞いて過ごしていたら、
ついに一子ちゃんが目を覚ました。楽しい時間だったけど、ここまでみたい。
「ふぁ……おふぁようございまふ……おねえさまぁ……」
ぎゅ
寝ぼけ目の一子ちゃんを抱きしめてみる。
「にゃあ……」
「おはよう、一子ちゃん。もうお昼よ、早くご飯にしましょう。
簡単な食事を作る材料なら、きっと厨房にあると思うわ。
今、この寮には私たちしかいないから、誰にも会う心配はないわ」
何せ幽霊ですからね一子ちゃん。知った人に見られたら大騒ぎになるだろうし。
「はいぃ〜、おはようございますぅ……お姉さまぁ……
……うぅ……なんだか、寝たりません……」
のそのそとベッドから這い出てくる一子ちゃんは、ちょっとだけ本物の幽霊じみていた。
「それにしても……あれだけ寝たのにまだ寝たりないのですか?
どこか体の調子でも悪いのかしら」
「あはは……私、幽霊なんですけどね」
「そうだったわね、……それで、幽霊にも体調ってあるのかしら?」
一子ちゃんの額に手をやる。
「……熱は……ないわね」
くすっとふきだす一子ちゃん。
「もうっ、お姉さまったら。寝不足なのは寝るのが遅かったからですよ」
よく分からないけど、元気のようだから、いいかな。
「ささ、詳しいお話は食堂でしましょう……って、私はご飯を食べる必要があるのでしょうか?」
それもよく分からない。
「食べてみれば分かるのではないかしら」
「そうですね、それじゃ取り合えず行ってみましょう〜」
スカっ
「……あう?」
スカッ、スカッ
「お、おぉおお、お姉さまぁ〜、大変です、ドアノブが通り抜けてしまって回せません〜
これじゃ外に出れません〜〜!」
ドアノブがすり抜けるなら、ドアもすり抜けられると思うのですが……
面白いので黙っておきましょう。
代わりにドアを開けてあげる。
「はい、どうぞ」
「あうぅ……お姉さまに開けて頂くなんて、恐縮で光栄で恐れ多いですぅ。
私、自分じゃ何もできないダメダメ幽霊のような気がしてきました……」
およよよと泣き崩れて見せる一子ちゃんの背中を押して食堂へ向かう。
まだ寮母さんですらお正月休み中なので、勝手に昼食を作らせてもらう。
「ねぇ一子ちゃん。思ったんだけど、ドアノブをすり抜けたって事は、
その、……食べ物も……」
「おっ、おおお、お姉さま〜、大変ですっ! 大根がっ、大根がすり抜けて洗えません〜〜!」
やっぱり……。これでは食べるのも無理のようね。
「いただきます。…ごめんね、一人で食べちゃって」
「いいんですよ。どうせ私はしがない幽霊伍長なのですから。
ここでお姉さまが食べてるのを見ていますので、さっどうぞ。私はお気になさらずにっ!」
立ち直りの早い子だ。
「アーメン」
とは言いつつも、一人だけ食べるのも気が引ける。
「……あ、それでですねっ、お姉さま。さっきの話の続きなんですけど」
私、そんなに長い時間寝ていたわけではないです」
それはちょっと聞き捨てならない。
「一子ちゃん、ず〜っと寝てて起きないんですよ。
私、朝から一子ちゃんが起きるまで、何時間も寝顔を見てましたのに。
一子ちゃんったら私の腕に絡み付いて、お姉さまぁって甘えるのよ?
凄く可愛かったわ」
「それは……なんだかとても恥ずかしいですねぇ」
「……それなのにまだ眠いだなんて、……一子ちゃん、本当に大丈夫なの?」
半年振りに活動しているから、疲れているのかもしれない。
「それが……ですね、先程も言いかけたのですが、
実は私、昨日寝付いたのがお姉さまよりも随分後でありまして……」
「私が寝た後も中々寝付けなかったという事?」
顔を真っ赤にした一子ちゃんが恐縮している。
「ええとですね……お姉さまが私の事をむきゅ〜っと抱きしめて、
一子ちゃん、一子ちゃんと名前をささやかれますもので、とても眠れなかったというか……」
なるほど……私の抱き癖が、一子ちゃん相手に炸裂してしまったせいだったのか。
「そうでしたの……寝ぼけていて、覚えていませんわ。
きっと嬉しかったのでしょう、私も。でも……これでおあいこですね」
気がつくと私の昼食は全てなくなっていた。
話しているうちに、自然と箸が進んだのだろう。
一子ちゃんも、気を使ってくれたのかもしれない。
「さ〜、それでは食後にはやっぱり私の淹れるお茶が欠かせませんよねぇ〜お姉さまっ。
では早速、不肖一子。お姉さまのために至高の一杯を淹れてきますっ!」
「あっ、一子ちゃん待って――」
私の制止も届く事なく、一子ちゃんは厨房へと消えていった。
「なっ、なっ、何でですかぁああああああっ!!」
ほどなくして、厨房から怒号とも絶望ともとれる絶叫。
「だから、待ってって云ったのに……」
こうして、私と幽霊となってしまった一子ちゃんとの少し奇妙で、
とても奇跡としか思えないような、幸せな時間が動き始めた。
誰もいない図書館に行く私に付き添ってくれたり、
「お姉さま〜、私も本を読みたいですぅ〜」
「しょうがないわね……ページをめくってあげるから、読みたい本を持っていらっしゃい」
「わ〜い! さっすがお姉さま。……はいっ、じゃあこれをお願いします」
「乙女の港……? 川端康成の本ですか」
「とーっても面白いらしいですよ」
「分かりました。じゃあ、私も一緒に読みますから、次のページに行くときは云ってくださいね」
「はいっ、あぁ〜幸せ。お姉さまと読書〜☆」
………
……
…
「お姉さまぁ、まだページをめくっちゃダメですってばぁ!」
「ご、ごめんなさい。つい……」
「もう…………」
「……一子ちゃん…その、まだかしら」
「……うぅ、だって……とっても意地らしくてっ、私この子の気持ち、よく分かります……」
「……私は……早く続きが読みたいです」
一緒に並木道を歩いたり、
「わ〜、お姉さま、お姉さまっ、雪が降ってきましたよ〜。
きゃ〜、冷た……くなぁあいっ! 雪が雪がっ雪さんまでが私を素通りしていってしまうのですねぇっ!!」
「一子ちゃん、何も泣かなくても……」
「私毎年初雪が降ってきたらお空に向かって大口を開けるのが慣例でしたのに〜〜!」
「そんな事をしてたのですか……まぁ、初雪はとうに過ぎているのですけどね……。
でも、楽しそうですね、それでは、代わりに私が……、あ〜〜ん」
「はうっ、ダメですいけませんお姉さまっ! エルダーともあろうものが
そんなはしたない行為をなさってはマリア様もお空からきっと見ていらっしゃいますよぉ〜!
しかもそれが私の真似だなんて知られたら
きっと私はお姉さまをそそのかした極悪人として地獄に落とされてしまいます〜〜〜!!」
「あ〜〜〜……、いけません一子ちゃん、人が来たわっ!」
「きゃ〜、きゃ〜〜〜! お姉さまがこんな事をなさっている所を人にお見せするわけには行きませんっ!」
「そうじゃなくて、一子ちゃん幽霊なんだからっ、ほら、早くお隠れになって……」
「お姉さま、お隠れになるだと、死んだという意味になると、古文の先生がおっしゃてました……」
「あ〜、も〜っ! そんな事はどうでもいいですからっ、早く隠れなさ〜い!」
迷子になった子を送ってあげたり、
「お姉さまお姉さま。この子、初等部から迷い込んできて
帰り方が分からなくなってしまったらしいのですが……」
「……一子ちゃん、あなた……もうちょっと幽霊だという自覚を持ってみてはどうでしょうか……」
「はぅう、お姉さま、ごめんなさい〜」
「一子さまをおこらないでください、お姉さま。
一子さまはわたくしがこまっているのを見かねて声をかけてくださったのです」
「そう……そうですか。ごめんなさいね、一子ちゃん」
「いえいえいえっ! そんな、謝らないでください、お姉さま。
……ぇと、それで…お願いがあるのですが……」
「そうね……。さすがに一子ちゃんを送りに行かせるわけにはいかないし、私がお連れしましょう」
「ありがとうございますっ、お姉さま〜!」
「それじゃあ行きましょうか、お嬢さん。
私の名前は宮小路幸穂よ。お嬢さんは、なんていうのかな?」
「ひさこ……。かじうらひさこと言います。
……あの、さちほお姉さまは、エルダーシスターの、さちほお姉さまですか?」
「まあっ、初等部の生徒にも、私の事を知っている人がいるのね、嬉しいわ」
「さすがですっ。さすがお姉さまです! そのご威光は高等部には決して留まらないのですねっ!」
「わたくしも、大きくなったらお姉さまのようなエルダーになりたいです」
「そう……緋紗子ちゃんなら、きっとなれますわ」
「はいっ。わたくし、がんばりますっ」
「……なんだか私、歴史的な瞬間に立ち会ったような気がします……」
寮で私のお世話係りになっている子にヤキモチをやいたり、
「いつも美味しいお茶をありがとう」
「そんな、お姉さまに褒められると、秦は照れてしまうのでありますよ〜」
「ふふっ、それは可愛らしいですね」
「はわわぁ〜、そ、それでは秦はこの辺で失礼するのでありますよ〜」
「…………ふぅ。一子ちゃん、もう出てきても大丈夫ですよ」
「う〜ら〜め〜し〜やぁ〜」
「一子ちゃん、ちょっと怖いかも……」
「き〜、何ですか何ですか〜! 秦ちゃんったら私がいないのをいい事にお姉さまを独り占めしていただなんてっ!
あぁ〜〜私にお茶を淹れる事ができれば絶対に一番おいしいお茶を淹れてあげる自信がありますのに〜〜っ
それは確かに秦ちゃんは私が存命だった頃と比べて格段にお茶の淹れ方はうまくなっているけどお姉さまの
寵愛を一身に受けて生きてきたのかと思うと思わず無意識のうちに呪ってしまいそうな気分にさせられるというのに
私ってば幽霊兵長のくせに意識的にすら人を呪ます術すら知らない半端もんなわけであ゙〜〜〜、ぐやじぃいいいっ!」
「もう……一子ちゃんったら、物騒な事を言ってはいけませんよ」
「はい……私だって本当は秦ちゃんの事は大好きです……少しだけ、羨ましかっただけです……」
「ふふっ、でもこうして私と毎晩一緒に寝ているのは一子ちゃんだけですよ?
さ、いらっしゃい、一子ちゃん」
ぽむぽむっ
「お姉さまぁ〜〜〜!」
本当に夢のような日々が過ぎていった。
でも、ずっと気がかりに思っていた事も二つだけあった。
「……おはよう、一子ちゃん」
「……んむぅ……すぴ〜〜〜〜。……むにゃぁ……」
「一子ちゃん、一子ちゃんっ、朝ですよ、起きなさいっ」
「ふなぁ……あ゙いぃ……」
一子ちゃんの慢性的な寝不足がずっと続いている事と、
……それが日に日に重くなってきているように感じること。
そして、私の幸せな日々は、終わりの時を迎えようとしていた。
以上前編でした。
後編に続きます。
リアル遭遇
後編が気になりすぎる。
あと19KBですので、投下の際はお気をつけ下さい。
長編物でしたら、次のスレが立つまで待たれた方が
よろしいかと存じますわ。
4.89KB なのでよろしいか
いいんじゃない。はみ出しちゃったらそのとき考えるってことで。
>>549-564 長編乙。後半が気になる。が、そろそろ限界なので
後半は次スレに投下する方が懸命と思います。
「あの…まりやお姉さま」
「何?ゆかりん」
「ゆかりんじゃありません!お姉さまのことで聞きたいことがあるんですけど」
「あたしのスリーサイズなら教えないわよ」
「そんなの聞いてどうするんですか!瑞穂お姉さまについてのお話です!」
「うわ、ちょっとショック受けたわよ今の言い草」
「まりやお姉さまが茶化すからです」
「うう…あたしの妹は反抗期…」
「はいはい…瑞穂お姉さまって甘いものは苦手でいらっしゃるんですか?」
「ん?どうだろね…苦手ってことはないみたいだけど」
「でもコーヒーはブラックで飲まれるみたいですし…」
「…はは〜ん?ゆ〜か〜りん♪」
「な、何ですかその新しいおもちゃを見つけた猫みたいな笑いは」
「うんうん、恋する乙女全開って感じだねえ」
「な、な、な、こ、恋する乙女ってなんですか!」
「ん?言っていいのかにゃ〜?」
「…な、何のことだかさっぱりです」
「…後一ヶ月(ぼそっ」
(びくっ!)「え、ええっと…何かありましたっけ?」
「…ふっふ〜ん。いや〜、まったく罪なお人だよ瑞穂ちゃんってば」
「い、い、いえいえいえ、いつもお世話になってますから義理です!義理チョコなんです!感謝の品なんですー!」
「ん?あたしは一言もチョコなんて言ってなんだけど〜?」
「あうあうあう…ど、どうかお姉さまには内密に…」
「ぐれ〜てるのケーキセット3日分でどう?」
「は、はい…わかりました…とほほ…」
「まあまあ、応援したげるからさ。うーん、瑞穂ちゃんの好みねえ…」
「……お好みは?」
「やっぱりスウィートよりもビターの方がいいかな。で、量は少なめにして丁寧に飾り付けた方がいいと思うよ」
「それじゃチョコケーキなんてのもいいかもしれませんね。お姉さまなら大人っぽく少しブランデーを効かせて…」
572 :
3-206:2005/03/25(金) 21:28:46 ID:MZtFfPj/
埋め代わりの寸劇なんでオチなし。
何かと不遇なゆかりたんに愛の手を第一弾。第二弾があるかどうかは不明。
ヴァレンタイン前の一コマってことで。
人生ゲームの数日後と思いねえ。
「今日はこいつでリベンジよ!」
「…懲りないね、まりや」
「当たり前よ!この御門まりやに敗退の二文字はない!背を向けたまま終わると思うてか!」
「と申されましてもまりやお姉さまは目下お姉さまのみならず奏ちゃんや由佳里ちゃん相手にも連戦連敗、ワースト記録絶賛更新中なのではないでしょうか?」
「うぐっ…ツッコミきつくなったわね、一子ちゃん」
「無理な一発逆転を狙うからよ…」
「うるさい!リスクを恐れてちゃリターンもない、ちまちまやっててゲームを楽しめるか!」
「それで失敗してちゃ元も子もないと思うんだけど…」
「あれ?でも確かまりやさんはチェスならば瑞穂お姉さま相手に百戦百勝なのではありませんでしたか?」
「それじゃ意味ないでしょ?勝てばいいって物じゃないんだから。ゲームは対等の条件で勝利してこそ価値があるの」
「なるほど〜誇り高きギャンブラーというわけですか」
「…それはちょっと違うような気がするのだけれど」
「うるさい!というわけで夕食後開催だから奏ちゃんに伝えておいて。由佳里はあたしが引っ張ってくるから」
「はいはい…まったく、本当に負けず嫌いなんだから…」
「まりやさんらしいといえばらしいんですけどねえ…」
続かない。
宣言してから立てようや。重複しかねんし。
ということで次の人よろ。
>>573 名前、口調とも似ているが微妙に違う別人だな
奏:なのですよ〜
秦:でありますよ〜
深い意味はないでしょ、まさか
それでは、立ててきますのですよ〜
>576
すまん、自分も送信ボタン押してから気が付いた>宣言してない
はねられたからよかったけど、以後気をつける。
581 :
1/3:2005/03/25(金) 23:32:49 ID:FAH9fzbu
ふうっ、やっと着いた。
ここがあの寮なのね。
少し古ぼけた建物の前に私は立っていた。
もう、使われていないその寮は私に何か訴えかけてきてる気がする。
その横の まっさらな2階建ての建物の中に入っていく。
ここが私がこれから生活する女子寮だ。
寮母さんが出てこられた。
「はじめまして。今日からここに住まわせてもらう 2年の鏑木紫穂です。」
そう、本当は高等部入学と同時に入りたがったが
工事中ということで誰も入居できなかった。
「そう、貴女があの鏑木様の・・・・
でも、ここでは特別扱いはしないで一般のお嬢様と 同等に扱いますよ」
紫穂「はい。心得ております」
キーを受け取ると私は2階の自分の部屋に繋がる階段を上りはじめた。
前に立っていた建物と寸分違わなく建てられたらしいけど
やはり、伝統とかあまり感じなかった。
自分たちが作っていくのかなと思えてしまう。
ここに入る時 お父様や母様に反対されると思っていた。
(大事な娘を、寮とはいえ外に出すなんて)とか
お父様も母様も自宅から学校に通って
寮生活なんて経験無いから 不安でしかたないと。。
でも、最後の切り札としてまりやおば(あ、駄目。又叱られちゃう)
まりやお姉様に説得してもらおうと考えてた。
アルバムにもまりやお姉様や学友さんの楽しい光景を写した写真が
それを見て、私もこの寮に住んでみたいなと小さな頃から思っていた。
やっと念願がかなう。
でも、お父様や母様は反対どころか
瑞穂「紫穂が行きたいんだったらパパは構わないよ」
まりや 紫苑「貴方がそうおっしゃるなら私は反対いたしません。 いってらっしゃい。紫穂」
「ねっ。私が出るまでも無いでしょう。紫穂ちゃん」
まりやお姉様はウインクしながらそう言ってくれた。
582 :
2/3:2005/03/25(金) 23:36:20 ID:FAH9fzbu
ようやく、部屋の前に立つとキーを差し入れてドアを開く。
眩しいまでの部屋。
ここでどんな生活が待ち受けてるのか期待と不安な中ドアを閉めて椅子に腰をかける。
ふっとため息をついて、しばらくぼんやりしているとドアをノックする音が。。
「誰かしら」
「はい。お姉様が入寮したと聞いたのでご挨拶に参りました」
ドアをあけると 二人の少女がたっていた。
「お入りなさい」と言うと静々と入ってきた
「これから、お姉様のお世話を致します○○です」
一人の少女が話しかけた。
「そう。あ、自己紹介忘れてたわね。鏑木紫穂です。
よろしくね。でも、私の方が寮に後から入ってきたのに
お世話をしていただくなんて心苦しいわ」
「でも、私の叔母もここの卒業生ですけどお姉さまが三年の春に
転校されてこられて 叔母の友人がお世話したらしいです。
ですから、そんなお気遣いは・・・」
「そう、わかったわ。じゃぁ、お願いするわね。
で、そちらにお立ちのお嬢さんは・・・」
部屋に入ってから下を向いたまま一言も発しない女の子。
顔をあげると 涙ぐんだ表情をみせると急に
「お姉様、お姉様、お姉様、会いたかったです。お姉様・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
とマシンガンのように言葉を発した。
「えっと、ストップ」
私は脳裏に浮かんだ言葉が口から躊躇い無く出てきた。
「おちついたかしら。お名前を聞かせてほしいわ」
「千穂。高島千穂です。お姉様、よろしくお願いします」
「千穂、千穂ってどう書くの?高島さん」
「漢数字の千に稲穂の穂です」
千穂・・・・・・・・・・・・・・・お父様や母様から聞かされた小さい頃私を可愛がってくれた、まだ見ぬ叔母様。
その方と同じ名前の少女。彼女とは初対面じゃなくて古くから知っていた不思議な感じを覚えた。
これからどんな学園生活が待っているのだろう。
楽しみのような、ちょっぴり不安なような・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・zzzzzzzzzzzzzz
zzzzzzzzzzzzzzzzz
紫苑「まあ、いやだわ。この娘(紫穂)ったら居眠りしながら、
ニヤニヤしてる。へんな子ね。」
瑞穂「今日は恵泉の幼稚部の入学(園)式だったから
緊張して疲れたんだろう」
紫苑「貴方のお膝でずっと寝かしつけていますけど
お疲れじゃありません?}
瑞穂「そうだな。そろそろベットに寝かしつけるか」
よいしょっと紫穂を抱えあげると二人で紫穂の部屋まで歩き始めた。
瑞穂「だけど、紫穂はこれからあそこでどんな友達と出会うんだろうね」
紫苑「それはもう、貴子さんのような人やまりやさんみたいな人
奏ちゃんや由佳里ちゃんみたいな・・・・・・」
瑞穂「それは、すごく楽しそうな所だなぁ」
紫苑「それから、瑞穂さんみたいな人と出会えるかも」
瑞穂「それは、どういう意味ですか。
し・お・ん・さ・n
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; _,.'⌒ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; '´ `ヽ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; . / j ))ソ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; / / / /ノ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ノノノノj{_) ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ´θ^θン)u ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
紫穂の夢が現実となるのは十数年先のお話。
なるのかよw
>>581 開幕の「ここがあの寮なのね。」でホワルバのフラッシュを
思い出してしまいました。。。
587 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:44:40 ID:BOQcfkuC
|柱|ω・`)誰も居ない…
|柱|ω・`)埋め代わりにSS投稿するなら今のうち…
ゴクリッ
589 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:45:33 ID:BOQcfkuC
『瑞穂争奪祭 第四話 ダーツ』
「…さて、じゃあ気を取り直して第三ラウンド、行ってみよっか」
やや疲れた顔をして居るまりやがそう言った。
「結局、ババ抜きの勝負つくまでに20分以上かかっているのですよ……」
「それに、まりやお姉さま負けてるし……」
「君達、過ぎ去った事にいつまでもこだわって居ても仕方ないのだよ、
解るかい?」
「まぁ、負けは負けですものね。ほほほ」
「……五月蠅いわね(泣)。次でぎゃふんって言わせてやるんだから」
「その台詞、そっくりそのままお返ししますわ」
「ふん、一回勝った位で調子に乗って」
「なんですってぇ?!」
「ま、まあまあ二人とも……」
例の如く言い合いを始めた二人に、苦笑いしながら瑞穂がそう言った。
「次はこれよ」
そう言ってまりやが取り出したのは。
「ダーツ、ですの?」
「はい、紫苑さま。でも、『ただの』ダーツじゃないのよね、これが」
そう言うとまりやは、的を取り出した。
「投げるダーツは一回につき一本。的はこのとおり、得点じゃ無くて
A〜Fまでの記号とあといくつかの品名が書かれて居るの」
590 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:46:51 ID:BOQcfkuC
そう言ってまりやが見せた的は、確かに幾つかに区切られており、
何やら書き込まれて居た。
「んで、みんなクリスマスプレゼントを持って来たわよね? それを
ここでダーツで当てた記号ので交換会をしようって感じなのよ」
「ふわ〜、面白そうなのですよ〜」
「あ、でもまりやお姉さま、もし的にダーツを当てられなかったら
どうするんですか?」
由佳里がもっともな疑問を口にする。
「その場合は、一旦他の人に順番を回して、一巡したらまた投げるのよ。
こんな所で外れ引いても仕方ないじゃない?」
「それもそうですね」
「それはいいのですがまりやさん、何ですか、この景品欄の中にある
『たわし』って?」
的を眺めて居た貴子が、たわしと書かれた所を指してまりやに聞いた。
「ああ、それはお約束よ。ダーツと言えばたわしじゃない? 車は無い
けどね。にゃはは」
「そんなお約束知りませんけど……」
「あれ? そう言えば、景品欄には瑞穂さんのお名前が書かれて
居ませんが……?」
横から的を覗き込んで居た紫苑がまりやに尋ねた。
「瑞穂ちゃんはみんなの景品が決定した後、ここに用意したくじを
瑞穂ちゃんが引いて、決定するって感じです」
「こ、今度は私が引くの?」
驚いた様にまりやの方を見る瑞穂。
「その方がスリルあってどきどきするじゃない?」
「……私は心臓に悪いんですけどね」
「にはは、まあそう言う事だから。じゃ、みんな、そこのテーブルに
プレゼントを並べてね〜」
その言葉に、全員が持ってきた景品を並べ始める。
「まりやお姉さま、並べ終わりましたよ」
「よ〜し、じゃあ始めようか」
591 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:47:40 ID:BOQcfkuC
まりやの言葉で、それぞれがダーツの矢を手に取った。
「じゃあ、まずは瑞穂ちゃんから。さあ、一投目、どうぞ〜」
「では…」
すうっと、軽く呼吸を整える瑞穂。
「……っ!」
しゅっ、すこん。
「「「「「「あ……」」」」」」
「瑞穂ちゃん……」
「いや、その……えっと」
「気持ちは解らないでもないけど…なんでど真ん中に命中させちゃう
かなぁ?」
「……うう……」
「瑞穂さんったら、よくばりさん♪」
「駄目ですわよお姉さま、独り占めは」
そう言って紫苑と貴子はくすくすと笑う。
「じゃあこれはノーカウントって事で、瑞穂ちゃん一回休みね」
「そんなぁ……はぁ、何でこんな時に限って……」
その後は順調にダーツが進んで行った。
ちなみに、まりや、紫苑、奏、由佳里は順調に当ててゆき、景品を
ゲットして居る。
「では、私の番ですわね。……えいっ……ああっ?!」
そう言いながら貴子が当てたその的は。
「な、なななななんで私がたわしなのですかっ!」
592 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:48:31 ID:BOQcfkuC
「おやおや、大当たりだね〜、にっしっし」
「う〜〜〜〜〜、や、やり直しを要求しますわ!」
「ダーメ。瑞穂ちゃんだって後回しになったんだから、諦めなって」
そう云うと、まりやは貴子の前に、ご丁寧にもリボンを付けられた
たわしを置いた。
「はーい、たわしゲットおめでとう〜」
「……はぁ……何で私がたわしなど……」
溜め息をつきつつ貴子がふと顔を上げると、困ったような顔をして
居る瑞穂と目が合った。
「……くすっ。まあ、致し方ありませんわね。自分で当ててしまったん
ですもの」
「おや? やけに素直じゃない?」
「ゲームごときで駄々をこねても仕方ないじゃありませんか。さ、次は
お姉さまの番ですわよ?」
「あ、はい」
その後は順調に、瑞穂も貴子も普通の景品を貰う事ができた。
「さーて、ではお待ちかね。瑞穂ちゃん、このくじ箱から誰の景品に
なるか引いてちょうだい」
「はいはい……って、何でみんなそんなに真剣になって見てるの?」
まりやに出された箱から引こうとした瑞穂が、ふと周りを見渡して
そう言った。
「え? だって、今度こそ当たって欲しいですし……」
「お姉さま、今度は奏に当たって欲しいのですよ〜」
「まあ、そう言う事ですわ♪」
「……たわし……はぁ」
「な、何だかそんなに真剣に見つめられると、やりづらいわね…」
593 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:49:20 ID:BOQcfkuC
そう言いながら瑞穂は、箱の中に手を入れると、1枚の紙を取り出した。
「えっと、これは……」
がさがさ。
「……あ、『たわし』。と言う事は……?」
「おや? 貴子大当たりじゃん」
「……え、ええええっ?!」
驚いた顔をして貴子が瑞穂の引いた紙を覗き込む。
「ほ、本当ですわ。……じゃ、じゃあ……」
貴子が少し顔を赤らめながら、瑞穂の方に向き直る。
「はい、貴子さん。……あの、余り無茶なのは出来れば……」
「解っておりますわ。…えっと、その……」
そう言って、少しの間を置いたあと。
「……あ、あのっ、み、瑞穂さん……その、わ、私を、ぎゅーってして
下さいます?」
「……え? ぎゅーって、というのは、つまり私が貴子さんを抱き締める
って事ですか?」
「あら、貴子さんってば、私が瑞穂さんを抱き締めたのがそんなに
うらやましくて?」
「いえ、あの、その、えっと……」
そう云うと何やら貴子はしどろもどろになって居た。
そのやりとりを眺めて居た瑞穂だったが、そんな貴子の様子に、
ちょっとだけ笑みがこぼれた。
「その……や、やっぱり、駄目、ですよね……」
「くすっ。良いですよ、貴子さん?」
「ほ、本当ですか?!」
「ええ、今日は私が景品ですから。何なりとお申しつけ下さい。ふふっ」
594 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:49:54 ID:BOQcfkuC
そう云うと、瑞穂は軽くスカートの裾を持っておじぎをした。
「そ、そんな格好でお辞儀されたら、反則ですわよ瑞穂さん?」
そう云う貴子は、すっかり顔が赤くなって居る。
「まあ、今日だけですから。…じゃあ、貴子さん、どうぞ」
そう云うと、瑞穂は両手を広げた。
「…じゃ、じゃあ、失礼します」
そう言って、貴子は瑞穂に抱きついた。
瑞穂も、貴子を抱き締める。
「はぁ…………瑞穂さん………」
貴子は、すっかり安心し切ったような表情を浮かべて居た。
「何だ、貴子って意外と甘えん坊さんなのね?」
「……べ、別に良いじゃありませんか? たまには私だって、誰かに
甘えて見たくなる時もあります」
「……」
(そうか、貴子さんはいつも凛としてるから、甘えさせてくれる人って
居ないのか)
そんな事を考えながら、瑞穂は貴子を優しく抱き締めて居た。
595 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:51:28 ID:BOQcfkuC
「はぁ……瑞穂さん……」
「…」
「瑞穂さん………」
「……えーと……」
「貴子、貴方いつまで抱き付いてるつもりよ?」
「みずほさん………」
「……駄目だわ、貴子すっかりとろけてるわよ」
「あは…あはは……」
貴子が正気に戻るのに、それから10分を要したと言う。
まだ続きます。
596 :
5時起き:2005/03/26(土) 10:52:28 ID:BOQcfkuC
と言う感じです。ちゃんと埋まったかな?
|柱|ω・`) >588さんに見つかってるよ…
ところがどっこい
−−−−−−−−−− 再開 −−−−−−−−−−
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ノノノノj{_) ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ´θ^θン)u ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
そして
−−−−−−−−−− 終了 −−−−−−−−−−−
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