【改蔵】久米田康司エロパロ総合 Part3【南国】
娘は何が起こったのかと驚いて飛び退きましたが、それが収まると今度は感動気味に呟きました。
「すごい――先生そんな風になるんだ」
最初は片手で、次は両手で、彼女は夢中になって陽物を弄ります。そう云えば彼女がしっぽを
好きになったのも、ぴょこっとして可愛いからだと聞いておりました。
つまり私の物が可愛いと云われたも同然です。娘が自分の性器に嫌悪感を持たなかった事に
安堵する反面、可愛いと云われて男としての自信を失う虚しさもあり、複雑な心境がいたします。
陽物に向けられた娘の眼差しを眺めていると、熱と真剣味を徐々に帯びて来ているのが判ります。
ただ女子高生の拙い指使いだけで達する事は難しく思えました。もどかしくは思いますが、
しかしその内に彼女が飽きて私を解放してくれるだろう、という何ら根拠のない期待を
心のどこかで抱いたりもします。
やがて彼女が私から手を離しました。少考して後、いきなり半袖のシャツを脱ぎ始めました。
私は逃げる事も忘れ、地味な下着に包まれた発育の良い二つの脹らみを凝視してしまいます。
乳房の肌地は極めが細かく、手で押したら突き立ての餅のごとく押し返して来そうです。彼女が軽く
屈んで後ろに手を回し、揺れる乳房の先端に色素の薄い先端が姿を現します。娘は更に革の腰帯を
解き、デニム地の長穿きを足首まで下げてから蹴るように脱ぎ払いました。
動き良さそうな下穿きを残して裸になった娘の身体を、私は改めて食い入るように観察しました。
女子高生としては豊かに実った胸に対して腹部の周りは細く、縊れた腰から下に目線を辿れば
雌鹿のようにすらりと引き締まった脚が体重を支えておりました。運動量の多い生活の賜物でしょうか、
娘の身体付きは健康的かつ均整の取れたものです。
私の視線に気付いたのか、娘はほんのりと顔を赤らめて乳房を両腕で抱えました。
「あんまり見ないで下さいよ先生。恥ずかしいんだから」
やや上ずった声でそんな言葉を溢します。劣情も露な私の視線から女人のふくらみを隠そうと
試みたのでしょうが、そうすると腕が乳肉に食い込んで谷間が寄り、余計に私の官能を刺激します。
私は再び首を擡げた陽物と直腸での脈動に呻き声を上げました。それでも堪えつつ娘を叱ります。
「恥ずかしいのだったらすぐに止めなさい!何考えてるんですか君は?!」
「何って――」
戸惑う気配も見せず、彼女は艶やかな微笑みを浮かべました。
「スキンシップよ。動物と解り合うには、それが一番効果的なんだもの」
既に僅かばかりの矜持を粉々に砕かれていた筈なのに、彼女の一言で胸の痛みが再び押し寄せました。
確かに菊座から尻尾を生やした無様な姿ではあれど、人間の端くれ程度には己を認識しておるつもりです。
それが動物呼ばわりされるとは――本来は憤怒として顕れるはずの感情が、それと等価の深い悲嘆と
なって私を苛みます。強いて喩えるなら、砕かれた心をさらに踏み躙られたと云うべきでしょうか。
「誰が動物ですか!いいから早く私を帰して下さい!」
そう反論したものの、欲望に苛まれる男性器を露にしたままでは説得力の欠片もありませんでした。
案の定彼女は私の意思を無視するように、膝を持って脚を広げます。
その間に入り込んで身体を横向けに寝かせた彼女の二の腕を、私は本能的に内股で掴みます。
娘は僅かにたじろぎましたが、すぐに桜色に上気した胸の柔肉を両手で持ち、小刻みに震える
陽物を挟んで一緒に揉み込んだのでした。
手で扱かれるのとは違い、娘の乳房は私の強張りを見た目通りの柔らかさでもって優しく包みます。
指で扱かれた時の戸板の如き堅い性感とは違い、真綿の如き分厚く深い娘の乳肉は、それ自体が
私にとって甘美な罠であり拷問でした。菊座の痛みが痺れに変わり、心地良く感じます。
時がこのまま過ぎればいい、とさえ私は思いました。靫葛に捕獲された虫は夢現の狭間に意識を
委ねたまま身を溶かされて行くと申しますが、その時は捕食される者の心地良さが理解できました。
まるで私の陽物と一体になろうとするかの如く、娘は上下に揺り動かし時折挟む力加減を変え、
次第に行為そのものへと没頭して行きました。
息遣いが大きくなるにつれ、娘の声には房事の時に屡耳にする高い物が混じります。
下腹から男根の付け根にかけて荒い吐息が掛かり、私がそこが気になって下を見遣りました。
俯いた娘の頭越しに押し潰された乳房が窺え、その隙間では私の亀頭が彼女の柔らかさに身を
委ねつつ、控えめに姿を現しておりました。
娘は鎖骨に掛かったお下げ髪を肩の後ろに撫で払います。
そして困ったような上目遣いで、瞳を射抜くように見詰め返して来ました。
正常な心拍が衝撃で大きく揺さ振られ、それが暫し尾を引いて呼吸を煩わせます。 娘の妖艶な
笑みは私の肉体的な部分のみならず、精神までも虜にしてしまったのでしょうか。
乳房の尖った先端が姿を現し、娘は乳で私の陽物を挟みながらもそれに指先を這わせ、快楽を
貪る行為に溺れた様子で尋ねました。
「どうですか先生――嬉しい?」
嬉しいも何もありません――そう言って私はぷいんと首を背けます。
嘘でしょう――娘は両の乳房をぴったりと寄せ合い、その手の指先で乳首を弾いて肩を震わせます。
「先生の、私の胸の中でぴょこぴょこ言ってるもの。動物は嬉しいとしっぽで反応するんだから」
娘が喘ぎ喘ぎ言う通り、私の物が女人の肉体に触れる喜びで脈打っていたのは事実です。ですが――
私のそれはしっぽではありません――私は目に涙を浮かべて精一杯否定しました。娘は無言で
胸を私の陽物から離し、お下げ髪を後ろへと鬱陶しげに払います。首を屈めながら一言、
「キスしちゃおう、っと」
張り詰めて表面に光沢すら走る陽物の先端に、娘は軽く唇で触れました。
私は大きな叫び声を上げながら立膝を泳がせます。
その間に私の先端は暖かな滑りに飲み込まれ、軟体動物の如き動きで絡み付く舌の肉感に愛撫を受けます。
私の意志を無視し、独立を図ろうとするようにびくびくと脈打つ私の陽物を、娘はさも愛おしそうに
吸い上げて嘗め回します。尻を僅かに浮かせ、内股を擦り合わせております。
私の菊座は再び訪れた陽物からの性感を、激しい痛みと知覚する程敏感に反応しました。
最早私は自身が人間であるという考えを捨て去っていました。そうするとこのまま果ててしまっても
構わないという余裕が若干生まれ、ならばそれまでの時間を楽しもうとさえ考えます。
しかし娘はまたもや私の浅薄な考えを裏切る行動に出ました。
娘の手が私の尻に回ります。どうやらしっぽを掴んだようです。
その途端菊座がぐいと掻き回され、何か固めの弾力を帯びた部分に触れて――
内蔵が抉られるような痛みと、腰椎に直接二十ジュウルの激しい電流を流されたような強い射精感の中、
私の意識は完全に消滅してしまいました。
激しい疲労と倦怠に揺蕩とする中、私は腕に力を込めて起き上がりました。下世話な意味も含めて
精も魂も尽きた状態で、立ち上がるのがやっとの事でした。
立ち眩みを堪えて場況を見渡すに、どうやら私たちは知らぬ間に床へ移動していた模様です。
足元には全身脱力した状態で娘が仰向けで寝ていました。だらしなく開いた太股の付け根から
腹にかけて信じ難い程大量の白濁液が纏わり付いており、娘と肉体関係を持った事実を私に
改めて突き付けます。
私も男ですから、茂みに覆われた娘の陰部から目を離せませんでした。縦の裂け目からは乳首と
同じ色の、花弁に良く似た形状の陰唇がはみ出し、行為の余韻にひくひくと打ち震えておりました。
娘が息を吐くたびに陰唇が小さく捲れ、男と触れ合うための粘膜が鮮やかな色を見せます。
そこから流れ出た生臭い体液の痕跡に混じって、処女を散らした名残が僅かに糸を引いておりました。
部屋に充満した性臭が鼻腔の粘膜を刺します。しかし私が顔を顰めたのは決してその所為
ばかりではなく、教え子に対して獣の欲望を打付けてしまった事に対する悔悟の念と、欲望を
制御し切れなかった自分自身への嫌悪感と絶望もありました。
明日からこの娘を前にして、私は一体どんな顔で授業を捏なさねばならないのだろうか――
娘が呼吸する度に、豊かな胸が上下に揺れました。何かを呟いているようにも見受けられます。
私は暫し迷って、何を言っているのかを自身の耳で確かめようと彼女に近付いて膝を折りました。
「しっぽ――」
訳の分からない事を呟いております。その意味を問いながら彼女の意識を呼び戻すと、
首を傾けて薄目を開け、情欲に身も心も溶かされた恍惚の表情で答えました。
――先生やっぱり
――しっぽが似合ってる
彼女の一言で、脳の片隅に追い遣った筈の忌まわしい記憶が洪水のように押し流されて来ました。
菊座に異物を捻じ込まれた痛み――
彼女から動物扱いを受けた屈辱――
そしてしっぽから受けた未曾有の官能――
娘が思うように動けないのを幸いに、私を未経験の性感で苛んだそれを抜こうと毛の部分を
掴んで力一杯引いてみたのですが――
――取れない
しっぽがまるで腸壁の一部と癒着したかに思えました。無闇に引っ張ると直腸の壁が剥離する
恐れがあります。誰かに取って貰わねばなりませんが、この娘は取って呉れないでしょう。
では父親に頼むかとも一瞬考えましたけれど、私がしっぽを挿入されるに至った経緯を説明すれば、
教師の身で生徒と関係を持った事実が明るみに出る恐れがあります。
ならば何とかして自分で引き抜き、医者に傷口を見て貰えば事実は闇に葬られます。ですが――
肛門科を訪れる自分を想像して、更なる身震いを覚えました。診察台の上に寝かされ、白衣を纏った
厳めしい医師に、怪我の理由について質問されるのです。どう対応するべきなのでしょうか。
しっぽが生えたのでそれを引き抜きました――などと正直に答えよう物なら失笑を買うでしょう。
最悪の場合怪我の治療を受けた後、自宅へ帰れずにそのまま石神井の大きな病院へと搬送され、長い間
箱庭を使った精神療法を受ける羽目になるかも知れません。
呆然と立ち尽くす私に首を向けて、娘は私の絶望へと穏やかに追い討ちを掛けました。
「そのしっぽ、私でも取れないの――これで先生は、私の物」
――ふさふさして
――素敵よ
この時の娘が見せた微笑ほど、私を激しく動揺させた物はありません。娘は絡新婦の如き淫蕩で以って
私を捕らえ、精も魂も奪い取るだけに飽き足らず、彼女の所有物としての刻印を私の肉体に施したのです。
嫌だイヤだと私は泣き叫びましたが、しかし尻の方で不自然な力を感じて恐る恐る振り向きます。
信じられない事に――
私の菊座から生えた、タヌキのように幅の広く毛並みのふさふさしたしっぽが――
何の物理的な支えも受けず、誇らしげに仰け反っておりました。
同時に私は背筋も凍る恐ろしげな気配を感じ、壁に目を遣ります。
娘の蒐集物である無数のしっぽ達が、一斉に
ゆらりと――
揺れました。
壁から密やかな会話が聞こえます。私は何故かその不明瞭な声をはっきりと聞き届けました。
――おい、オマエついにご主人様を捕まえたんだな。
――おめでとう。ぼくからの選別だけど、蛇の目の毛をあげよう。
――じゃあ俺等からはこの硬い鱗が選別だ。オメデトウ。
――有難うみんな。これで俺も久々に大手を振って街を歩けるってモンだ。
――いいなぁ。妾なんかもう五年もこの壁に付けられたままだっていうのに。
――おいおい、仲間の旅立ちに文句を付ける奴がどこにいるってんだ。
――その通りさ。今じゃワシントン条約に違反するってんで、私ゃ永久にお蔵入りの身なんだから。
――みんな済まない。俺ばっかり君たちを置いて外に出るなんて。
――何を言ってるんだタヌキの。オレ達の分も幸せになるんだぞ。
――うん。俺はこのご主人様の事、絶対に離さないからな。
私に付けられたしっぽに向けて、壁のしっぽが祝福の言葉を仕切に浴びせています。
その度に平衡感覚が捩れて私の視界が歪み、壁から生えたしっぽがまるで生きているかの如く揺らめきます。
私がこの家に留まっている理由など有りませんでした。もたついていると父親が帰って来て、私と娘との
情事を厳しく追及する事でしょう、それよりも――
娘が起き上がり、まだ何か物足りなげな悩ましい目付きを私に向けました。
私の陽物がいつのまにか屹立しておりましたが、最早これ以上娘と接するつもりもありませんでした。
無造作に脱ぎ捨てられた自分の衣服を、私は素早く拾い上げました。褌はしっぽが邪魔になるので諦め、
袴を穿いて腰帯を結びます。腰の辺りからしっぽがはみ出てしまいますが、この際致し方ない。
先生、と情欲に塗れた女の声で呼び止める娘をその場に、私は居間を飛び出して玄関に向かいました。
下駄を履いて扉を開け、家の外へと転がるように脱出します。
すっかり夕暮れが支配した街には美味しそうなライスカリーの匂いが漂って来ます。空きっ腹がぐうと鳴り、
娘の家で起こったしっぽに纏わるエトセトラが、幻の時に摩り替わるような安心感を覚えました。
振り返ればどこにでもありそうな平凡な家が一軒。しかしもうあの家には戻りたくありませんでした。
なぜならあの家には彼女がおります。あの娘は――
「変態です、あの娘は変態です!!」
私はしっぽを付けた間抜けな姿でいるのも忘れてそう叫び、逃げるように駆け出しました。昼間通りがかった
商店街を抜け、黄色い電車に乗ろうと駅を目指します。彼女の父親が雑貨屋で、サランラップの箱を片手に
店員と何か話しているのを見かけました。普段感じる背後からの視線も、今日に限って気になりません。
そんな心の余裕など、女からの陵辱にも近い昼間の情事で失われていたのですから。
胸板に衝撃を受け、私は立ち止まります。ずれた眼鏡を直して前の視界を確認すると、見覚えのある制服を
身に着け、眼鏡を掛けた娘が尻餅を突いておりました。
私の受け持ちの生徒です。彼女は立ち上がると、私の腰辺りに目を向けました。
「先生、しっぽ――」
「え?」
早々と生徒に情けない姿を見られた事に愕然とします。この娘から変態教師だと思われないでしょうか。
と、思いきや――
娘は私を馬鹿にするどころか、眼鏡の奥の瞳を輝かせて喜色を見せました。
「先生のしっぽ可愛い――何だか胸がきゅんってなっちゃう」
タヌキの耳を配ったカチュウシャを鞄から取り出し、眼鏡娘は足の竦んだ私へと躪り寄ります。
「しっぽ付けてるんだったら、これも付けるべきですよ」
どうやらこの眼鏡娘は、しっぽ娘と同じ人種に属する変態だったようです。
一日で二人もの変態と巡り合わせた不運を嘆く私を前に、眼鏡娘は私を家の中へと招き入れた時のしっぽ娘と
寸分変わらぬ嬉々とした笑みを浮かべ、静かに告げました。
「だったら――このタヌキ耳も付けるべきですよ、先生」
<<終>>
>396氏乙!
今回も面白かったです。
激しく萌えた・・・・・・(´Д`*)ァハン
また楽しみに待ってます!
475 :
元229:2005/07/15(金) 19:04:40 ID:mO4mE+Vf
>396氏
よかったっす。尻尾娘はイイ!ですね。あと、文体に苦労されたんじゃないかなあと思ったりしますです。
んでもって私も投下です。あと二話、なんとか保って欲しい…。
「例年どおり彼女だけは歳を取るから、あさっての卒業式で亜留美ちゃんは卒業するんじゃないの。看
護学校に進学す…あら?どうしてそんなびっくりした顔をするの?前から決まっていたことでしょ?」
亜留美は、なぜか固い無表情だ。すずは続ける。
「地丹くんだって『看護師になるのが亜留美ちゃんの夢だったんだから』って了解した事じゃない。そ
れに毎年ずっとこうだったでしょ、私は3年生、地丹くんは2年生で、亜留美ちゃんだけが進級して…」
「そんなのヘンだよ、非現実的だよ、そんなコトありえないよ、あるわけないだろ!!」
「どうしちゃったの地丹くんホント…今までと同じパターンでしょ?いつだって、毎年一瞬だけツッコ
ミが入って、後はさらっと流されてたじゃない。」
「いや、そ、それは…そうだった…けど…」
「大丈夫、私は卒業しても、ちょくちょくに遊びに来るよ。それに夜は一緒にいられるんだし。」
「いや、亜留美ちゃん、そういう問題じゃ…」
亜留美はまたきょとんとする。すずと顔を見合わせる。地丹は食い下がる。
「ねえちょっと待ってよ!じゃ、来年はどうなるの?再来年は?5年後は、10年後は…」
「ずっとこのパターンよ。私も地丹くんも、しえちゃんも神崎さんも今のまま。で、亜留美ちゃんだけ
歳を取っていくの。看護学校を卒業して、看護師になって、成人して、結婚して子供を産んで…」
「亜留美ちゃんは僕の婚約者じゃなかったの!?」
「そうよ。」
「ぼ、僕はずっと17歳のままなの?じゃ、永遠に結婚できないじゃないか!?」
「あら、改蔵くんは17歳のままで羽美ちゃんと結婚したでしょ。出来るのよ、色々あってね。」
「なんだよそれ、わけわかんないよ!!」
地丹は頭がぐらぐらし始めた。
こんな非現実的な話があるか、これは何かの間違いだ。そう思ったがぐらぐらは止まらない。
以前のように、まるで後付けのように記憶が思い出されてくるのかと思ったがそういうわけでもない。
すずと亜留美は『なんでそんな当たり前の事を驚いてるの?』という顔をしている。
何がなんだかわからないまま、状況は彼を完全に振り落としてどんどん進行していった。
そして地丹には何も納得できていないうち―――翌日は来て、卒業式になった。
卒業式も、物凄い勢いで式次第は進み…そしてあっという間に式は終わってしまった。
地丹は部室に1人でぼーっとしている。まだ呆然としたままだ。
『亜留美が卒業してしまう』という事実を知らされたのは昨日の放課後のはずだ。なのにあれからまだ
数分しか経ってないような気さえする。
おかしいな、あれから何したんだっけ、夕べの夜は何を…ショックから立ち直れないまま家に帰ってい
つも通りに亜留美を抱いたのか…?だめだ、まるで覚えていない。
そこに亜留美が入ってきた。
「あー、終わったー。とうとう卒業しちゃった…長いようで短い3年間だったなあ。」
感慨深げに言う。
亜留美は、卒業証書の入った筒を持ち、胸に『卒業おめでとう』のリボンの花をつけている。
「…ねえ、亜留美ちゃん…ホントに卒業しちゃうの?」
「はあ?」
亜留美は呆気に取られる。
「だって、卒業式で私の名前が呼ばれたの聞いてたでしょ?卒業するわよ、当然。」
「…僕は、2年生のままなんだよ?」
「そうよ。ずっとそうじゃない。ねえ、へんだよ地丹くん…昨日からずっとそこにこだわってるじゃん。」
「看護婦さんになっちゃうの?」
「最近は、『看護師』って言うのよ、後輩クン。いろいろな事情からそう決ま…」
「やだ。」
「へ?」
「やだよ。ずっと同じ学校の先輩と後輩でいようよ、科特部の部員同士でいようよ!そうでないなら、
秘密の同棲なんて止めだ、すっかり別れたほうがましだよ!」
「何わけわかんないこと…駄々こねてんじゃないわよ、ねえー?こ・う・は・い・クン?」
「後輩後輩言うなよ、2年前までは僕のことを『センパイ』って慕ってきてくれてたじゃないか!!」
地丹は亜留美を部室のベッドに押し倒した。からからん、と、卒業証書の筒が乾いた音を立てて転がる。
「きゃ!?ちょ…ちょっと…な、なにす…地丹くん、やだ、ん…ぐ。」
唇を塞ぎ、舌を無理やりねじ込み、右手は脚の間に入れてパンツの中に。亜留美は必死に口を離す。
「やだ、そんなふうにされたら痛いよ、痛いってば!」
抵抗する亜留美に構わず、ブラウスを引きちぎるようにして胸を開く。『卒業おめでとう』のリボンが取
れかかった状態で脇の下に垂れた。
黄色の布地に白糸で薔薇の刺繍のあるブラ。それをずり上げる。隠れ巨乳とその小ぶりの乳首が露出し
た。娘はまだ抵抗しているので、乳房は大きく暴れるように揺れている。
「やめてってば!こんなことしたらさよならだよ、無理やりなんてヤダ、同棲解消しちゃうから!!」
「もうどうでもいいよ、こんなんなら別れちゃったほうが…むちゃくちゃにしてやる…」
地丹は彼女のパンツ(ブラとおそろいの、黄色の布地に白の薔薇模様)を引きちぎった。
強引に太腿を開く。よく見知った彼女の性器が現れる。
陰毛は恥丘に申し訳程度に生えているだけで、割れ目の両脇はまったく生えていない…そして、ほんの
縦筋だけのピンク色の部分…。
地丹はすでに反り返るほどになった彼自身をズボンから引き出すと、その彼女のピンク色に突き立てた。
「ね、だめだったら…別れたくないなら止めて、挿れないで…どうしても挿れるならお別れだよ、ほん
とだよ、それでいいの?」
「いいんだ…もういいんだ、だから挿れる…そして中でイッて、それきりで終わりにするんだ…」
ぴたっ、と亜留美の抵抗が止まった。
「そう…」
躊躇せず地丹は挿入した。初めて、濡れていないところに無理やりと…亜留美の顔が苦痛にゆがむ。
「…痛い…挿れちゃったね…ダメだって言ったのに…」
答えずに地丹は腰を動かし続ける。
「これ、どういう事か、わかってる?ほんと、もう…これっきりだよ…そういう約束だから…これが最
後のエッチなんだよ…ねえ、答えてよ地丹くん…ああ、痛いよ…」
地丹がこれほど破壊的な感情になったのは、単に彼女が卒業してしまうから、ではない。
このまま、彼女だけが歳を取るということを繰り返してゆくとどうなるか…亜留美だけが成人し、子供
を産み、年老いて、自分が今のままなのに彼女は…その結末を悟り、慄然したからなのだ。
数分はそうして彼女の膣内を暴力的にかき回し続けた。しかし、やがて…
破壊的衝動は、嘘のようにおさまっていった。理由は定かではない。ただ『そうじゃない、僕のしたい
のはそういうことじゃない』という別の感情が、時につれ優勢になってきたのだ。
地丹の動きが変わる。彼女を、丁寧に、入念に愛してゆく…すぐに、亜留美は、さっきまで嫌がってい
た娘とは思えないくらいに濡れて昂ぶって来た。拒絶の心も溶けてくる。
「あ、あう…ああん…いい…いいよぉ…地丹くん…もっと…」
亜留美はそう口走りはじめた。ぐちゅ、ぐちゅ、と繋がったところから音がしている。
「あん…あん…ずっとこうしていたい…でも…ねえ、地丹くん…なんでこうなっちゃったんだろ…」
胸の、『卒業おめでとう』のリボンが取れかかったままゆらゆら揺れている。部室の外からは、卒業生と
在校生たちのやり取り、笑い声や泣き声などが聞こえてくる。そして室内では二人のあえぎ声。
「あん、ああん…ねえ、なんでなの…なんでなんだろ…私わかんないよ…」
「…はあ、はあ…はあ…」
「ねえ、地丹くん、答えてよ…あ、いい…ちゃんと…こたえ…あ、あん、ああ…あ、ああ!」
地丹は攻めた。彼の全力で亜留美を攻め続けた。泡だった愛液が、二人の繋がったところから滴り落ち
る。初めて使用されるそのベッドの真新しいシーツはもうぐしょぐしょで、二度と使えないだろう。
「あ、ちた…ん…くん…好き、あ、いく…好きだよ、来て…一緒に…一緒に…あん、あん、あああ!!」
地丹が我に返ると、すずが部室にいた。いつ入ってきたのか。
それに気づいているのかどうか、服を着直しながら亜留美が言う。
「ね…地丹くん、あの…さっきのは別に、約束ってことにしなくともいいよ?」
パンツを穿こうとする。だが、脇の部分で引きちぎれてしまっていて穿くことができない。
「あの、ね?やっぱ…お別れは無しで…」
「いいんだ…どうせ、君だけどんどん歳を取るなら…これでおわりにして別れたほうがいいんだ。」
「なんで?『ずっと一緒にいたいけど、看護師になりたいって言うのは亜留美ちゃんの長年の夢だった
から叶えてあげたい』って地丹くんも言ってくれたじゃない。」
「そんなこと…言った覚えないよ、そんな記憶ないよ…。」
「ずるいよそんなの…私、どうしても看護師になりたいの。病気の人を、身も心も捧げつくすような献
身的な看護で治す仕事がしたいの…そもそも私が看護師になりたいと思ったのは、小学校の…」
「聞きたくないよ!そんな話聞きたくないよ!」
亜留美は口をつぐむ。すずはずっと黙っている。
しばらくは誰も何も言わなかった。やがて、
「…じゃ、私…記念撮影とかあるし…行くからね…もう、さよならだよ…」
パンツを穿いていない事が気になるのだろう、しきりに制服のミニスカートの裾を引き下ろしている。
亜留美は、そして最後に、切なそうにに彼を一瞥すると、そのままミニスカをひるがえし(その瞬間、
産まれたままの状態の下半身をチラッと見せつつ)部室を出て行った。
また、長い無言の時間。
「亜留美ちゃん、出てっちゃったわ…悲しそうだったわよ。本当にさよならなのよ、あれでいいの?」
少ししてから、すずが口を開いてそう言った。地丹は俯いたまま答えない。
「終わり方は残念だけど、全部地丹くんには好ましい方向に働いてたでしょ?亜留美ちゃんだけ歳を取
るから、年下の娘とクラスメートと年上の女性っていう状況を一気に体験できたし…」
「いらないよそんなの、したくなかったんだよ!」
すずを見ずにうずくまったまま、久々に地丹が口を開いた。
「こんな事になるなら、そんな経験したくなかったよ、何もかも最悪だよ…」
「…」
顔を上げずに、地丹は続ける。
「こんなのないよ、だいたいなんかヘンだよ最初から…まるで作りものみたいで…演技から始まった出
来合いの恋人関係も、思い通りに鉄道ばっかり出来る街ももううんざりだ…」
「地丹くん…」
「もうやだよ…そもそも、改蔵と羽美ちゃんが黙って転校なんて…するから…二人ともどこいったんだ
よ…リセットしてあの頃に戻りたいよ…そして亜留美ちゃんも年をとらないでずっと一緒に…。」
地丹は泣き始めた。泣きながら続ける。
「もういらないよ、こんな生活…とらうま町なんか、もう…消えて無くなってしまえばいいんだ…」
それきり黙る。すずは、少し時間を置いて、まるで自らに呟き聞かせるかのように言った。
「…本当にとらうま町がなくなってしまえばいいと思うの?」
地丹は頷く。
「本当にそう思うの?」
地丹はもう一度頷く。
「そう…実はね…」
すずは、外ハネを揺らしながら地丹の前に片膝をついてかがみこむ。
地丹からミニスカートの裾の奥が見える角度だが、特に気にしていないようだ。現に地丹には彼女の紫
色のパンツが見えているが、彼も特にそれで何かを感じるような心理状態ではない。
「実はね、私は…いいえ、私たちはね…あなたがその言葉を言うのを待っていたの。地丹くんがいつそ
う考えるようになるか、そのタイミングをずっと待っていたの…今回の事は、全て、そのために作り上
げられたものだったのよ…」
地丹は涙目の顔を上げ、すずを不思議そうに見た。
すずの表情が、いつもと違うことに気づく。いや、これが彼女の本来の表情なのだ…そう直感する。
「もう大丈夫ね。こんなダメージ受けたばかりの時で変に思うかもしれないけど…あなたは大丈夫よ。」
すずは立ち上がり、部室の壁際に向かう。向かいつつ胸ポケットからカードキーを取り出す。
ピッ、と電子音。すずが、部室の壁を押す。
この光景には見覚えがある…地丹はそう感じたが、なぜか思い出せない。
隠し扉が開いた。
「さあ…この扉をくぐるの。」
隠し扉の向こうから、明るい光が差し込んできている。
地丹は、その扉の向こうに行くと、二度と今のこの世界には戻って来れない事に気づいた。理由は判ら
ないが、間違いない、そんな確信があった。どうしようか…彼は少しだけ迷い、そして決心した。
すずがそこを先に抜けながら言う。地丹がついて来るのを確認し、軽く微笑みながら。
「いらっしゃい。あなたには…この扉のむこうにあるものを手に入れる権利があるわ。」
つづく
482 :
元229:2005/07/15(金) 19:20:43 ID:mO4mE+Vf
スレ汚し失礼しました。
思えば、地丹に >480 の最後のせりふを、すずに >481 の最後のせりふを言わせたいがために、
ここまで長々と話を引っ張ってきたともいえます。あとは、まとめをするだけ、です。近々投下予定。
で。
問題は、そろそろ、480KBの壁が迫ってきているということなんですが…。
このラストは泣けるなあ・・・
いやあ乙です。
次スレは・・・
>>500任せた
484 :
元229:2005/07/21(木) 19:01:46 ID:6eGaoQ0l
やっと最終回です。さあ、さくさくと投下。
6レス消費、直接のSEX描写はありません。では。
地丹が、病院の中庭…いつもの隔離病棟の中庭ではない、一般病棟の中庭…に出てきた。パジャマ姿の
まま、しえに付き添われて。美智子から花束を渡される。
看護師たちが口々に何か彼に言っている。すずの部屋からは距離があるのでよく聞こえないが、『退院
おめでとう』と言っているのだろう。
婦長がうれし泣きしている。眼鏡を取り、ハンカチで涙を拭う。
すぐ脇を、例の車椅子の少女が通り過ぎる。車椅子を押す山口さんも、そんなささやかなセレモニーを
見て微笑んでいる。
当の地丹だけが―――あの扉をくぐってからすでに一時間経った今も、まだ完全には状況を理解しかね
ているらしく―――所在なさそうにしている。
今回の『治療』を開始してからはだいぶ抜け毛が減り修復されつつある後頭部、そこだけがすずからは
見える。だが、すずには地丹が今どんな心理状態にあるのかがよく理解できた。
すずもそのセレモニーに参加したかったのだが…窓から見えるそれから目を離し、屋内に向き直った。
亜留美は窓の外の情景に背を向け、うつむいている。
すずが何か言おうとしたのを遮るように口を開く。
「すいません…私…」
涙が流れ落ちる。
「大丈夫です…恋とか愛とかじゃなかったんですから、平気です…だけど…ただ…」
「亜留美ちゃん…」
「気にしないで下さい…私、こう見えても結構タフなんですよ…ちょっとやそっとじゃくじけ…」
それきり言葉が続かない。窓枠の下にしゃがみこんでしまった。床に涙がいくつも滴り落ちる。
無理もない。すずは思う。どうしても必要なことだったとはいえ、つらい出来事ではある。そしてそれ
は、すずが計画し、こうなることはわかっていた上で亜留美に行わせたことなのだ。
すずは無言で彼女の肩に手を置いた。特に言うべき事はなかった。釈明も意味がないだろう。
亜留美はすずを恨んでなどいないと言う。
それが本当の事だとしても、恨みというものは数年、いや十数年を経た後で、突然沸き起こったりもす
る感情である事をすずは知っていた。まあ、恨みを買うのは慣れてるし…彼女はそれは構わなかった。
構わない、では済まないのは、亜留美の方だ。
『時がたてば心の傷も癒える』とよく言われるが、そう簡単に行くものではないことを、職業柄すずは
嫌というほど見てきていた。彼女は立ち直れるかどうか…。
すずはまだしゃくりあげている亜留美の方に、無言で手を置いたまま佇んでいた。
そうして、地丹は婦長の所に引き取られていった。
しえもほかの看護師も、ちょっと気の抜けたような状態になった。
『やっかいな患者さんだったけど、いなくなるとさびしいわね。』
皆の思いは同じようだ。竹田先生は話し相手がいなくなって手持ち無沙汰だ。
ただ、美智子だけが、なんだか浮かれた表情でいる。どうやら、新しい彼氏がSEX上手らしく、やっ
と彼女も本当の『天にも昇る気持ち』を堪能できるようになったらしい。きっと次に描かれる同人誌は、
彼女の実体験からのエクスタシー描写を大盛りに盛り込んだものとなるだろう。
しえは今では元ライバルとは仲良しだ。たまに過去の改蔵の事で口論になるが、それももう二つも前の
事件になってしまった。本気で言い争うには遠すぎる過去のことだ。
そうして地丹の不在は次第に埋め合わされていった。ちょうど、改蔵と羽美のそれのときのように…。
「説明してくれないか?」
今、すずは青松理事の部屋にいる。さっきまでは二人とも理事会に出席していた。すずはその中で小さ
な一議題として地丹の治療終了の報告をしてきた所なのだ。彼は自分の椅子にふんぞり返る。
「どうも理解できないんだよ。何であれで、いままで治らなかった坪内地丹の病状が快復したんだ?却
って傷つくんじゃないのか、あんなことをしたら…。」
「確かに彼は傷ついたでしょうね。でも、それも必要なことだったんです。」
理事は説明を開始しようとするすずに、ソファに座るように促した。
「今回の『治療』の要点は、彼に、とらうま町の存在を全否定させるためにはどうすればいいか、の一
点にあったと言っていいんです。そのために、彼に理想的な、思い通りにいかないという点でもリアリ
ティのある状況を箱庭世界に作り上げ、経験させのめりこませておいて、そこから一気にそれを壊す…」
「残酷だな。」
「確かにそうです。だから最初に、今回の計画は強引だ、と申し上げたわけで。」
すずはしれっと微笑んだ。
「先に治った二人の快癒に関する解析がもう少し進んでからなら、『なぜ改蔵くんと羽美ちゃんがとら
うま町の全否定に至ったか』解って、それを地丹くんに対して応用できたんはずなんですが、そうも…」
理事が『私のせいかね?』という表情をしたので、すずは話題を切り替えた。
「ご存知の通り、この療法の根本は、『患者の病的部分を虚構の世界に思い切り吐き出させ、十分にそ
れが進んだ段階でその虚構世界を患者に全否定させる』ことにあります。患者自身に『自分の病的な部
分は虚構世界に置いてきたのだ、もうあの性格・性質は自分から切り離されたのだ』と考えさせること
が重要なんです。」
「…」
「そんな意味で、この療法は、普通一般のいわゆる『箱庭療法』とは異なるわけですが。とにかく、現
在は地丹くんに対しては、彼に強い印象が残っている内に『とらうま町は全て虚構だったのだ、地丹く
んの心の不具合の部分は全てあの町においてきたのだ、もうあなたは元通り健全な心の持ち主なのだ…』
という後暗示を与え、その状態の定着を見守っている所です。」
「そしてそれは上手く行っている、と。」
「はい。」
「SEXの関係にあった看護師に関する感情はどうなってるんだね?」
「…たしかに、今気がかりな点はそこにあります。彼女への恋愛感情が彼をあの世界に引き戻さなけれ
ばいいのですが…彼にとってはつらいことですが、はっきり言って、その点に関しては突き放して見る
以外に方法はないですね。今のところ、二人とも立ち直れそうな方向で状況は推移していますが。」
「そう推移することも、君の計算に入っていた部分なのかね?」
「いいえ。偶然です。こうはいくまいとの前提で対策案を立ててあったんですが…必要なくなりました。」
「つまり、彼らにとって良かったことも悪かったことも、全部君の計画にはプラスに働いた、という訳
だ…今回の事は全部君の評価点の加点になり、私の失点になった…」
理事は、椅子を回転させ彼女から視線をそらすと呟いた。
「つまらん。実につまらん。」
<以下、商店街>
地丹は街に出た。
新しい自宅から商店街への道を、戸惑いながら歩く。とらうま町ではないその市街地。しかし昔の自宅
からさほど遠くない…そこを、中学当時の記憶を引き出しながら。
ふと、一つのビルに目がいった。そういえばあのビルの2階に、鉄道グッズショップがあったはずだ。
そう思い行ってみると、そこは漫画喫茶に衣替えしていた。
(そうだよな…あれからもう、5年が経ってるんだ…)
仕方なく、当てもなくふらふらする。現実の街のはずなのに、何だかふわふわした非現実感がする。
そして思う…この街が現実なのだとしたら、この足が地に付いていない感覚は、きっと自分自身にリア
リティがないせいなのだろう。現実世界で自分はいったいどんな「坪内地丹」であるべきなのか。
どん、と誰かにぶつかった。思わず膝をつく…と、視界に、マンボウ柄のパンツが飛び込んできた。
ぶつかって尻餅をついた女の子、大開脚状態のその娘は女子高生か。
ぱっ、と両脚を閉じ、真っ赤になって地丹を睨み付ける、強気そうなショートの茶髪少女。
「すけべっ!!」
平手打ち。眼鏡が外れ、かちゃんと落ちる。
一緒にいた友人と思われる娘が眼鏡を拾いながら言う。
「だ、だめよ乱暴でしょ!?す、すみません、この娘ちょっと乱暴で…」
地丹は手渡された眼鏡をかけなおす。
礼を言おうと相手を見ると、その三つ編みの娘は少し頬を染めて彼に見とれていた。
ショートの方の娘が彼女の腕を引っ張り、耳元でささやく。
「またぁ…あんたね、誰でも彼でもー目見ただけでのぼせあがっちゃダメよ。」
「すみませんでした。じゃ。」
地丹は無表情でその場を離れた。彼女らは何か言いたそうだったが、それに背を向けて。
(…まるでラブコメの第一話冒頭みたいなシチュエーションだな。でも、この世界ではそうはならない
んだ…あの娘たちとは二度と出合うことはないんだろうな。)
それは正しいのかも知れないし、そうではないかも知れない。それは誰にもわからない。
なぜなら、この続きに関して、すずのようにシナリオを書いてくれている人はいないのだから。
また少し背中が痛んだ。亜留美との愛の行為の記憶が蘇る。
自分が完全に社会復帰できるまで、亜留美とは会うことが出来ない。
だが、地丹はもう亜留美と会うつもりはなかった。社会復帰できた頃は、おそらく彼女は彼女自身の新
しい恋を見つけているだろう。そうでなければいけないし、そうであって欲しいと思う。
だけどやっぱりそれは悲しい…地丹は無理やりにでも別のことに考えを移すことにした。
(そうだ…改蔵くんと羽美ちゃんのアパートに行ってみようか…。)
住所は教わっている。それほど遠くない所…もうすぐだ、その角を曲がると…
「…なのよね、あのアパートの新しい夫婦。苗字なんだっけ、『勝さん』だっけ?」
道端で会話する奥さん達の会話が耳に。地丹は立ち止まる。
「そうそう、ホント仲いいみたいよ。ていうか、まるっきりやりまくり夫婦なの。隣に住んでるOLっ
て人が事細かに話してくれたんだけど、今も週末なんて明け方までずーっとSEXですって。」
「こないだ薬局で、奥さんのほうがスキンのお徳用を大量に買い込んでるのを見たわ。そりゃもう、あ
のかわいい顔を恥ずかしそうに真っ赤にして。」
「そりゃ勤労学生の夫婦だし、避妊しないとね。でも昼は何の仕事を?二人とも日に焼けてるわよね。」
「これもOLさんからだけど、休みの日には、ちょくちょく二人で海を見に行ってるらしいの、電車を
乗り継いで。なんでも、『もっと広い世界が広がっている』っていう事実を実感しに行くんだそうよ。」
「ふうん…それより夜のほうの話はもう無い?二十歳そこそこの新婚夫婦の性生活、私興味あるのぉ。」
「あるある、あのね…」
そこまで聞いたところで、地丹は二人には会わずに引き返す事にした。
『もっと広い世界が広がっている』か…
よかった、二人が仲よさそうで、世界にリアリティを持てていて。
僕はもう少し待とう、そして、同じようにリアリティを感じられる自信をつけてから顔を合わせよう。
そうだ…とりあえず、それを今の自分のとりあえずの立ち直りの目標にしよう。
今は会えないが、改蔵も、羽美も、すずも、箱庭ではないこの街で自分と同じように暮らしてるのだ。
そして会える機会はないとしても、亜留美も…。
そう考えると、この街とその上に今立っている自分に、地丹はようやくリアリティが感じられ始めた。
<以下、病院内>
すずはまた箱庭のある部屋にふらりと入ってきた。
とらうま町。
住人を失ったその箱庭の街は、完成直前まで出来上がりかけていた新幹線の駅もそのままに、ひっそり
と静まり返っている。
ここに、とすずは思う、ここにまるで本当に人々が生活していたかのように、賑やかに活気溢れていた
時があったのだ。そしてその中で、自分も実際の生活者であるかのように振舞っていたことも…。
今その箱庭は存在意義を終えた。
しかしそれは十分に役割を果たしたのであり、今後は少しずつ解体されながらどのようにそれが作られ
たかを分析されることになっている。その分析データはまた、べつの治療研究に役立つはずだ。
すずは、箱庭と、窓の外の現実世界を見比べるように視線を移した。窓の外の世界では、いまも改蔵と
羽美が仲良く暮らし、地丹も街に出て新しい世界に慣れようとしていることだろう。
背後の廊下を、看護師たちが慌しくかけてゆく音が聞こえる。
「ほら急いで…今日は新しい仕事を覚えてもらうわ、ちょっときついけどがんばってね。」
「はいっ、わかってます亜留美センパイ、私がんばりますっ。」
足音が遠ざかる。
亜留美の下に、試験的に看護学生を見習いとしてつけてみたのだ。
しばらく虚脱状態だった彼女も、後輩ができてはりが出てきたようだ。
すずもそろそろ仕事に戻らなければなるまい。
彼女にも現実があった。青松理事は今後も彼女に絡み続けるだろうし、離婚調停や親権問題に関しては
彼女のほうが元夫より分が悪い状態なのだ。若先生のお誘いもいなさなければならないし…。
彼女は、もう一度箱庭を見つめ、その上で起きた色々なドタバタや愛憎劇を、最後に一度だけ思い起こ
し直した。面白かったことも、困り果てたことも、同じように懐かしみながら。
そして彼女はそれらの思い出を胸にしまいこんで踵を返し、病棟での仕事に戻っていった。
ドアが閉じられ、時が止まった箱庭の街の上には、いつまでも午後の日差しが穏やかに降り注いでいた。
おわり
>>299 あ な た は ネ申
…これしか言葉が出てこないんだ
元229神、お疲れ様でした。
素晴らしかった!公式って言われても違和感ないもん。
いいもの見せて頂きました〜ありがとう!
楽しみにしてきた連載がついに簡潔…
299氏、乙でした。
ほんとなんて言ったらいいかわかんないけど、ありがとう!面白かった。
真にGJです
お疲れさまでした。
sage
hoshu
>元229氏
超GJ!読んでいて毎度気分が爽やかになったものでした。
次回作もお待ちしております。
何とか次スレ即死予防用のSS書いてるから、ちょっと待って頂きたい。
あ、埋め立て用のSSも必要か…もうすぐ圧縮があるからいいか
499 :
元229:2005/08/02(火) 18:49:56 ID:agk86CT7
皆さん多謝。スレ落ちが怖いのでまた後程…。
500 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/04(木) 21:57:04 ID:H+M96zxK
500get&age
これは、『勝手に改蔵』のもうひとつの物語。
502 :
スレタイ案:2005/08/07(日) 22:44:13 ID:9nqWjZw0
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part4【改蔵】
字数大丈夫かな…
一応絶望先生でSS出来ました。もう次スレ行っても即死回避はバッチリです。
問題はこっちなんですが、きっちり残り容量使い切った方がいいんでしょうか?
504 :
元229:2005/08/11(木) 19:05:30 ID:sU8AU/6e
>503
>一応絶望先生でSS出来ました。もう次スレ行っても即死回避はバッチリです。
>問題はこっちなんですが、きっちり残り容量使い切った方がいいんでしょうか?
次スレ行きませう。題名は>502 でイイ!と思うです。
こっちは…静かにこのまま置いといてはどうでしょうか?自然に任せる、と。
昨日の今日ですいませんが、こっちの分も書いちゃいました。
なので投下しようと思います。
舞台は南国アイス22巻の『超強力接着剤』の話から。
二人がそあらの部屋で寝ている所から始まります。
では投下開始
軽くて暖かい毛布を跳ね除け、オレはベッドの上で身を起こした。
きちんと毎日干してあり、シーツも清潔で快眠を保障してくれそうな寝具なのに、
そこに身を横たえても変に目が醒めて仕方ない。普段オレが使っている煎餅布団と
違うのも原因の一つだろう。オレは枕が替わると眠れない性質なのだ。
だがどちらも些細な理由に過ぎなかった。オレは部屋の中を見渡して思う。
持ち主の性格よろしくきっちり片付いた部屋、教科書やノートをコーナーに揃えた机。
内装の趣味、枕元に置かれた縫い包みの数々、それから――
頭を掻こうとして、オレは自分の右手が使えない事を思い出した。自分の肩から
腕へと視線を移して行き、やがて右手の先へと辿り着く。
少し骨張った俺の右手の中に、細くて柔らかい左手が収まっている。
これがオレが眠れない最大の理由だった。
別に好きでこうやって手を繋いでいた訳じゃない。
話せば長くなるが、事の発端は彼女が叔父である毒田博士の所に行ったのが始まりだった。
博士の所から接着剤を持って帰った彼女と街で偶然出会い、ちょっと貸してくれと彼女が
持っていた接着剤入りのチューブを握り込んで中身が飛び出して、何とかしようとした
彼女がオレの手を掴んで――
結果的に手を繋いだまま、今日一日を過ごす羽目になったのだ。お蔭で散々な目に遭って
疲れているというのに、彼女がオレの傍で不用意な寝姿を晒しているかと思うと妙に興奮する。
こんな事別に初めてでもないのに何故だろう。彼女の家という特殊な状況のせいなのか。
「そあら――」
呼びかけるでもなく、オレは不眠の原因となったこの女の名前を呟いた。
彼女の寝顔は無邪気そのもので、本当にコイツがあの凶暴なそあらなのかとつい疑ってしまう。
パジャマの襟から覗かせている鎖骨に、オレの目が引き寄せられた。白い喉元がびくりと
動いて、同時に彼女の寝息が一層大きくなる。
誘惑されているのだろうか、などとあらぬ妄想を思い浮かべた。そあらは痩せて胸も尻も
薄い癖に、こういう所だけ妙に女らしいのだ。
言ったらそあらに付け込まれるので、彼女の前では言わないのだが。
いっそ襲い掛かってしまうか、とオレは考えた。
寝る前にくれぐれも襲わないようにと釘を刺されたのだが、オレを差し置いて
自分だけ気持ち良さそうに眠っているコイツを見ていると何だか無性に腹立たしい。
それにオレも健全な男である。好きな女とベッドを共にしているというのに、
手を出さないなんて事があって堪るか。
こういうのを日本語で何と言ったっけ。そうそう、『据え膳食わぬは男の恥』だった。
そあらを起こさないよう、オレは手を引っ張らないように注意しながらシーツの上を
こっそり這った。彼女の脇にぴったりと寄り添う形になる。
高級なボディーソープの匂いがオレの鼻をくすぐる。普段のポニーテールを下ろしただけで、
彼女の雰囲気がまるで違って見えた。
そっと彼女の頬っぺたに横から顔を近付けて――
握られたオレの手に力が篭り、そあらの寝息の不自然さにオレはようやく気付いた。
「人聞きの悪い事言うわねアンタ。こうなったのも不可抗力でしょ?」
そうだよ不可抗力だよ――月斗が腹立たしげに声を荒げた。
「お蔭で今日は一日振り回されて大変だったよ。キャプテン達に追い回されるわ、ゲーセンで
対戦ばっかりやって時間は潰すわ、カラオケではデュエットばっかり歌ってしまうわ――」
いつの間にか彼は私と顔を突き合わせて喋っていた。どうせお話するのなら、お互いの目を
見ながらした方が遥かに楽しい。
「ホントだね。よく考えたら手と繋いだままでも別々に歌えたのに、それをからかわれたもんね」
「マイコちゃんが一番酷かったな。彼女絶対仲人とかやりたがるタイプだよな」
「あはははは、確かにそうよね。マイコってあれで結構おせっかいだし。ねえ月斗知ってる?
彼女キャプテンと付き合っているんだって」
「だろうとは思ってたけど、しかしあのキャプテンのどこがいいんだか。あいつ重症のマニアだろ?」
「好きになったら仕方ないわよ。ねぇ」
最後の方は身を起こしながら、月斗の顔をじっと見つめて言った。コイツ鈍いから私の目が
何を訴えているか察する事は出来ないだろう。それに口に出して言えるほど私は可愛い女じゃない。
月斗がぷい、と顔を背ける。さっき愛い奴と言ったの訂正、可愛くない奴。でも――
「――楽しかったね」
月斗がぴたっと固まったのが見て取れた。そっぽを向いた彼の横顔が見る見る真っ赤になる。
私はそんな彼の様子を面白がって眺めていたけれど、彼がだんまりを決めた事で私の口数も
自動的に減ってしまう。
無意識の内に、私の自由な右手が彼のシャツを掴んでいた。気付いたけれども手を離したくない。
気恥ずかしさというのは心細さと連動しているのかも知れないな、などと私は思った。
済みません
>>507でミスりました。こっちが本物↓
「そあら――起きてたのか」
月斗が私の耳元で甘く囁いた。くすぐったさに私はぎゅっと目を瞑る。
――ええ起きてましたとも、ベッドに入った時からずっと
私は目を開けずに、心の中で月斗に返事した。だって仕方ないじゃない。
家族が留守にした家で、彼氏と手を繋いで眠るなんて新婚夫婦の寝室みたいな状況なんだもの。
がさつな月斗には、私がどれだけ嬉しかったか解らないだろう。そんな事を言うと付け上がるので
彼の前では絶対に口にしなかったのだが。
私はそんな甘々な気分を思う存分味わっていたかった。もう少しで幸せな気分に包まれて
眠りに落ちて行けたのに、彼の誘うような声がそれを妨げる。
「寝た振りするなよ。それとも本当に寝てるのか――」
私の左隣でシーツの擦れる音が聞こえ、私は胸を揉み回される前に目を開けて横を見る。
絆創膏が目立つ彼の顔が間近に迫っていて、胸の動悸を悟られまいと私は努めて自然に応じた。
「起きてるわよ月斗。それより寝てる間に私の胸を触ろうとしてたでしょ」
「してねーよ」
「してました。そのヤラしい手付きが何よりの証拠よ」
言い返せなくなった月斗が拗ねた顔になり、左手で鼻の頭を掻いた。中々愛い奴じゃ。
そう思えば心に余裕が生まれて来る。私は肘をシーツに突き、彼と身体が軽く触れる程度に近付いた。
「月斗でも眠れない事があるんだ、知らなかった」
オレはナイーブだからな――目線を私の元いた場所に落として月斗が呟く。
「オ○ニーだってオマエが見てたら出来ない位だぞ」
私の前で下ネタ話するぐらいなら目をちゃんと見ろ。全くこのバカ男は小心なんだから。
「女の子の前でオナ○ーの話は禁物です。だからアンタ女の子にモテないのよ」
私以外にアンタと付き合う女なんて誰もいないんだからね――口に出さずにそう付け足す。
「うるせぇよそあら。大体そんなオレをベッドに誘ったのは何処の何奴だって言うつもりだ?」
「人聞きの悪い事言うわねアンタ。こうなったのも不可抗力でしょ?」
そうだよ不可抗力だよ――月斗が腹立たしげに声を荒げた。
「お蔭で今日は一日振り回されて大変だったよ。キャプテン達に追い回されるわ、ゲーセンで
対戦ばっかりやって時間は潰すわ、カラオケではデュエットばっかり歌ってしまうわ――」
いつの間にか彼は私と顔を突き合わせて喋っていた。どうせお話するのなら、お互いの目を
見ながらした方が遥かに楽しい。
「ホントだね。よく考えたら手と繋いだままでも別々に歌えたのに、それをからかわれたもんね」
「マイコちゃんが一番酷かったな。彼女絶対仲人とかやりたがるタイプだよな」
「あはははは、確かにそうよね。マイコってあれで結構おせっかいだし。ねえ月斗知ってる?
彼女キャプテンと付き合っているんだって」
「だろうとは思ってたけど、しかしあのキャプテンのどこがいいんだか。あいつ重症のマニアだろ?」
「好きになったら仕方ないわよ。ねぇ」
最後の方は身を起こしながら、月斗の顔をじっと見つめて言った。コイツ鈍いから私の目が
何を訴えているか察する事は出来ないだろう。それに口に出して言えるほど私は可愛い女じゃない。
月斗がぷい、と顔を背ける。さっき愛い奴と言ったの訂正、可愛くない奴。でも――
「――楽しかったね」
月斗がぴたっと固まったのが見て取れた。そっぽを向いた彼の横顔が見る見る真っ赤になる。
私はそんな彼の様子を面白がって眺めていたけれど、彼がだんまりを決めた事で私の口数も
自動的に減ってしまう。
無意識の内に、私の自由な右手が彼のシャツを掴んでいた。気付いたけれども手を離したくない。
気恥ずかしさというのは心細さと連動しているのかも知れないな、などと私は思った。
あれほど熱心にオレをからかっていたそあらが、唐突に黙り込んでしまった。同時に手が力強く
握られ、シャツの襟を引っ張られる形で彼女と向かい合う。
無意識の内に、オレの自由な左手が彼女の肩をそっと抱く。そあらはオレの胸に顔を埋め、
それまでの饒舌が嘘のように訥々とか細い声で呟いた。
「ご飯――美味しかった?」
「ああ。ピーマンとかシイタケとか、自分の嫌いな物ばっか食わそうとしたのはアレだけど」
とは言え食卓にぴったりと並んで座り、右手の使えないオレの口へと箸を運んでくれたのには
一瞬ドキッとときめいた物だった。もしオレ達が本当に結婚などしたらそんな風になるのだろうか。
メチャクチャ恥ずかしい気もする。しかしオレとそあらが人目に触れる恐れがない所でどれほど
恥ずかしく振る舞うのかと考えると、羞恥心を振り切って本当にやりかねないだろう。
ゴメンね――そあらがオレの襟を引き寄せながら言う。シャンプーの匂いが心地よい。
「私好き嫌い多いから――お子ちゃまだよね」
学校とか街中でそあらのそんなセリフを聞いたら、間違いなくからかっていただろう。
そして調子に乗ってそあらの鉄拳制裁、というのがお約束だ。
もっともそあらはこんな可愛いセリフ、人前で吐く事は絶対に有り得ない。
オレと二人きりの時だけ、そあらは妙に可愛くなる。
誰も知らないそあらの姿を知っているのは堪らなく嬉しい気分だ。もっとも口に出して言えば
そあらが付け上がるので、絶対にそんな心境を告白する事はないのだが――
そあらの身体を引き寄せる。密着して彼女の肉感と体温をパジャマ越しに味わう。
肩から背筋にかけて優しく撫でていると、目を瞑るそあらの赤い唇が迫った。
上唇を吸い、次は下唇。攻めるのは月斗よりも寧ろ私の方だった。
手を繋いでいた事で、私は妙に積極的になっていたようだ。彼の右手は封印されていたから、
その分私にはアドバンテージが与えられていたように思えた。
いつもいつも月斗にばっかり主導権を握られるのは癪に障る。だから私から求めるのだ。
ムキになった月斗が、反撃とばかりに私の前歯を突付く。彼の舌が進入するより早く、
私は彼の上顎の凹凸を嘗め回した。
「んー、んんー」
月斗が目を剥いて何やら苦しげに呻く。その拍子に舌の裏側を舐められた。
「……んっ!」
今のは月斗じゃない。胸を触られて急に息苦しくなったのだ。服越しでも感じ過ぎて
頭の中が飛んでしまうから、人目があったら絶対胸は触らせない。
けれど今は月斗とのキスに酔っていたかった。パジャマの襟元のボタンが一つ一つ外され、
彼がブラの中に手を入れて来る。お互いの舌を絡めて舐める度に、月斗の手が私の手を
強く握り返す。彼も興奮しているのだ、とハッキリ判るのが嬉しい。
だから私は彼を受け入れてしまったんだろう。
蕩けた頭の芯が、胸の先に生まれた痛い痺れでがんがんと揺れる。
彼が私をパジャマもブラも半脱ぎの状態にして、貪るように胸を吸っていた。
少し高価なレースのブラだったんだけど、彼は気付いているかどうか。彼の興味は
私の下着より、専らその中身に向いているようだった。
彼はパンツの上から潤みを触り、私が腰を浮かせている間に染みの出来たそれを脱がせて
中に指を突っ込んだ。
普段はもっと荒々しい手付きで中を弄るのだけれど、今日の彼はどうしちゃったのだろう。
入り口と突起をねちっこく愛撫して来る。おまけに突き出した舌の先同士で軽く触れ合って
いたので、脚を大開きにしてそこへ顔を埋めるような真似もしない。
そして二人はずっと手を繋いだままだ。時がこのまま過ぎてしまえばいいとさえ思った。
だが今日は――
絶頂が普段よりも早く訪れる予感を覚えた。
「そあら――」
月斗の声が切なく響く。私の中に早く入りたがっているのだ。
私が無言で返事する。彼は私から離れ、ベッド下に脱いだジーパンに左手を伸ばす。
財布から包みを取り出して彼が戻り、私たちは協力して包みを開けた。
避妊具は私が付けてあげる。利き手が塞がっていたんだもの、仕方ない。
それにしても月斗のアレ、つくづく大きくなる物だと思う。彼は小さいと気にして
いたけど、する時気持ちいいから私には充分なのに。
何で男ってアレの大きさを気にするのか私には判らない。私たちが胸の大きさを
気にするのと同じ心理なんだろうか――
「何ジロジロ見てるんだよ」
ゴメン、と謝りながら月斗に抱き付いた。キスをしている間に仰向けに寝かされる。
パジャマの下とパンツを抜かれ、私はいつもの受け入れ態勢を取る。今日は股間よりも
私の顔を見つめていたので、脚を開く事への抵抗は少なかった。というか早くして欲しい。
ずっと繋ぎっ放しの左手だけじゃなく、もう片方の手も彼と繋ぐ。
熱い視線で見詰め合い、固くなった彼のアレがゆっくりと打ち込まれる感覚に身を委ねた。
「月斗、月斗ぉ……!!」
オレが動く度、そあらは切羽詰った大声を上げた。家の者に聞こえないという状況が、
彼女から遠慮を取り去っていたのだろう。
実際オレの部屋でする時も、ソアラは声を押し殺してオレの愛撫にじっと耐え続けている。
普段の気の強いそあらも、いじらしいそあらも良いのだが、しかしこうやって快楽に溺れる
そあらもオレは好きだ。
などと口に出して言ったら付け上がる性格だから、絶対そあらには言わないけど。
正直パジャマの上下と下着を半脱ぎ、というのは裸よりもかなりエロい格好じゃないか。
女の子に恥ずかしくて動きの不自由な格好を強いる事で、何物にも替え難い興奮と征服感を
得られるからだろう。
中が妖しくオレを締め付けた。多分無意識だろう、彼女は腰を前後に激しく振る。
そあらが熱に潤んだ目をオレに向けた。キスの合図だ。
お互いの唇に食らい付き口を塞ぐ。酸欠になりそうだったので離れたが、そあらの唇は
それでも離すまいと最後まで未練がましく吸い付いた。
「もっと……もっと!」
せがまれたのでツンと勃った乳首を口に含んだ。舐めて吸って舌で転がして、その度に
そあらの身体でも一番セクシーな白い喉が仰け反る。
限界は意外と早く迫ってきた。オレはとっさに体位を変える事を思い付き、左手を解いて
息も絶え絶えになったそあらの片足を持ち上げて繋がったまま横に寝かせる。
オレのが中で捩れ、そあらは苦しげに顔を顰めた。こうして右手を繋いだまま交われば――
思った通り、亀頭がそあらの一番奥に当たった。しかも膣の絡み方がいつもとは違う。
「月斗――それ、いいの……ああ、ああぁ……」
ポニテを解いたそあらが、オレの動きに合わせて髪を振り乱していた。
繋いだ手を引いて、深く深く腰を打ち付ける。余った手をパジャマの前に運び、ブラから
こぼれた彼女の乳房を弄りながら最後に大きく奥に擦りつける。
絶叫が途切れ、がくがくとそあらの肩が揺れる。
彼女の細い手が力一杯オレの手を握った所で、オレもそあらの奥深くで達した。
翌朝二人並んで家の玄関を出た所で、私たちはその場に立ち尽くした。
キャプテンにスズキくん、それにマイコ――昨日私たちを散々からかった面子が、
冷やかすような顔付きで出迎えてくれたのだ。
「おはようそあら、仲良く並んで登校だなんて羨ましいわね。それより昨夜はどうだった?
月斗くんスケベだから、かなり激しいんじゃないかと思うんだけど――」
「違うわよマイコ、彼と手が繋がったままだから仕方なくよ。それに昨日は別に
何も無かったんだから」
自分がここまで白々しい嘘が言えたのは、ちょっとした発見だった。私たちの関係を
隠す為には嘘も方便、って奴ですか。
「ふーん、そうなんだぁ」
マイコはヤラしい事考えてますよ、と言わんばかりにニヤニヤしている。私の事全然
信じてない。一方キャプテンとスズキくんは月斗に駆け寄り、わざとらしく彼を祝福した。
「おおついに月斗も大人になったんだなぁ」
嘘泣きなんかして、キャプテンも中々いい性格をしている。それに比べたら
スズキくんは軽いジェラシーを見せていた分、キャプテンよりは素直だろう。
「チクショー、オレも女とよろしくヤリてぇよ」
「その前にオマエはインキン治さないとダメだろう」
ああダメだな――月斗がキャプテンに相槌を打つ。知ったな、と凄い剣幕で睨むスズキくんを
華麗に躱し、彼は私に目で合図を送った。
――気にすんなそあら。コイツら冗談半分で言ってるだけだから
私が首を横に小さく振る。
――けど昨日一緒に家に入るトコと、今朝出て来る所の両方見られてるのよ
月斗の目はあくまで自信に満ちていた。
――大丈夫だって。いざとなったらキャプテンとマイコちゃんの話で反撃すりゃいいだろ
「あんた達――」
マイコの呆れたような感心したような声で、私たちはアイコンタクトを中止する。
再び何事も無かったように取り繕い、私はマイコに向かって逆に問い返した。
「何か?」
「いや、あんた達今目で会話してたような」
私が反論しようと一歩踏み出す前に、月斗が気のせいだろ、と誤魔化してくれた。
「それなら別にいいけど――手は?」
スズキくんがそれ以上突っ込む前に、私は素早く月斗の手を取って握った。
実は私たちの手を繋いでいた接着剤は、とっくの昔に効き目が切れていた。
その事に気付いたのは、家族の留守をこれ幸いにと散々愛し合った末に、彼の腕枕で
まったりと快感を思い出していた最中だった。
不自由なはずの右腕に、私は頭を預けていたのだ。お蔭で折角の後戯が台無しになった。
一度気付いてしまえば、それまで気にも留めなかった些細な矛盾点が幾つも出てくる。
最初は月斗の手の甲を持っていた筈なのに、掌同士で握り合っていた事。そこから更に
手を組んで繋ぎ直した事。
だいいちお風呂に入った後、私はどうやって手がくっ付いたままでパジャマに袖を
通す事が出来たのだろう。トポロジカルに考えても不可能じゃないの、だとすれば――
接着剤が切れたのは少なくともその時、いやお風呂に入る前という事になる。
それでも。
手が繋がったままのエッチは本当に幸せな物だったし、それに――
自由になったが故に、かえって手持ち無沙汰になった私の左手を、月斗は眠っている間中
ずっと握っていてくれた。お蔭で私は心細さを感じる事もなく、幸せな気分で眠りに就いた。
寝ている間に私に振り回されても、ベッドの床に身体を叩き付けられても、それでも
彼は私が目覚めるまで手を離さなかったようだ。
寝相の悪い私のせいで、月斗は翌朝までにボロボロになっていた。この時ばかりは私も
素直に謝ったし、彼も気持ち悪い位あっさりと許してくれた。
いきなり手を握られたので何事かと少し驚いた。が、そあらの行動でその理由を察する。
「ほらこの通り、生憎と全然取れなくて困ってるの」
そあらはオレと繋いだ手をスズキに見せ付けていた。そう言えばそあらの家を出る時、
オレは手を繋ぐのを忘れていた。まさか三人が迎えに来る事もあるまい、と楽観的に考えて
いたので、気恥ずかしさからそうしなかったのだが。
スズキは一応納得した様子で腕時計に目を落とした。
「そろそろ学校行かないとヤバいぞ」
あっホントだ――マイコちゃんも自分の時計で確かめるや、キャプテンの手を取る。
先行する三人衆の後に続き、オレ達も手を繋いで登校した。公園の前を通り過ぎて、
先週もこの面々でお花見に行ったなと回想した。あの酔っ払いサラリーマンは、多分
マイコちゃんの親父さんじゃなかったかと思うんだが――
今や公園の桜もすっかり散ってしまった。最近特に時間の流れが速くなった気がする。
オレの左手を歩くそあらの横顔を覗き見て、オレはそのまま首を動かせなくなった。
嬉しさを噛み締めるようで、本当に幸せそうな顔だ。
左手に少し力をかけるとそあらがこちらを見た。オレは彼女に目で会話を送る。
――今偶然接着剤が切れたとか言って手を離すか?
――学校に着くまでまだ時間あるよ。もう少しこのままでいて
そあらは自分の意志を確かめるように小さく頷くと、微笑みながらキュッと握り返す。
オレはそんな彼女の冷たい指先を擦ったり、手の甲の肌を撫でたりするのが心地良かった。
キャプテン達に気付かれぬよう注意しながら、オレ達は手でじゃれ合う。
三人の真ん中を歩く、キャプテンの後頭部が傾く。唸り声に続いてキャプテンが
漏らした言葉に、オレ達は致命的なミスを思い知らされた。
その場に固まったオレとそあらの心に、キャプテンの軽い口調が重く圧し掛かる。
気付いてないのか、それとも単にとぼけているのか、オレには何とも判断の下しようがなかった。
「なんか違うんだよなぁ――月斗の奴昨日は右側だったっけ、それとも左だったかな?」
<<終>>