百合カプスレ@エロパロ板 三度目の正直

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1名無しさん@ピンキー

とにかく百合ならいけいけOK!というスレッドです。
創作パロディなんでもあり。

 ※一日一保守推奨。

前スレ
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi?bbs=eroparo&key=1082138248&ls=50
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi?bbs=eroparo&key=1082384534&ls=50


作品保管をしていただいているサイト:

百合ちゃんねる
http://lilych.fairy.ne.jp/
2あぼーん:あぼーん
あぼーん
3あぼーん:あぼーん
あぼーん
4あぼーん:あぼーん
あぼーん
5あぼーん:あぼーん
あぼーん
6あぼーん:あぼーん
あぼーん
7あぼーん:あぼーん
あぼーん
8あぼーん:あぼーん
あぼーん
9あぼーん:あぼーん
あぼーん
10あぼーん:あぼーん
あぼーん
11あぼーん:あぼーん
あぼーん
12あぼーん:あぼーん
あぼーん
13あぼーん:あぼーん
あぼーん
14あぼーん:あぼーん
あぼーん
15あぼーん:あぼーん
あぼーん
16あぼーん:あぼーん
あぼーん
17あぼーん:あぼーん
あぼーん
18あぼーん:あぼーん
あぼーん
19あぼーん:あぼーん
あぼーん
20あぼーん:あぼーん
あぼーん
21あぼーん:あぼーん
あぼーん
22あぼーん:あぼーん
あぼーん
23名無しさん@ピンキー:04/06/12 17:38 ID:bmXosTpd
保守。
即死ってどのくらいで回避できるんだろう?
24名無しさん@ピンキー:04/06/12 18:07 ID:bmXosTpd
適当に百合・レズSSについて語るスレより砂の闘士修正分

http://members.at.infoseek.co.jp/jigokugokuraku/gladiator1.html
25名無しさん@ピンキー:04/06/12 18:08 ID:bmXosTpd
26名無しさん@ピンキー:04/06/12 18:10 ID:bmXosTpd
27名無しさん@ピンキー:04/06/12 18:10 ID:bmXosTpd
28腐男子:04/06/12 18:26 ID:kkukAhS6
お疲れ様です。

エロのないラストを書いた当人が言うのもなんですが、
ここまでやったなら続きまで転載した方が統一性あるし、
容量稼ぎになるのでイイと思いますよー。

PINKBBSは速攻HTML化されるので、ログとして一気に取得しやすいですし。
291:04/06/12 23:47 ID:bmXosTpd
>>28
じゃあやってみます。
区切り方ヘタだから読みにくくなるかも・・・('A`)
30あぼーん:あぼーん
あぼーん
31あぼーん:あぼーん
あぼーん
32あぼーん:あぼーん
あぼーん
33あぼーん:あぼーん
あぼーん
34あぼーん:あぼーん
あぼーん
35あぼーん:あぼーん
あぼーん
36あぼーん:あぼーん
あぼーん
37あぼーん:あぼーん
あぼーん
38あぼーん:あぼーん
あぼーん
39あぼーん:あぼーん
あぼーん
40あぼーん:あぼーん
あぼーん
41あぼーん:あぼーん
あぼーん
42あぼーん:あぼーん
あぼーん
43あぼーん:あぼーん
あぼーん
44あぼーん:あぼーん
あぼーん
45あぼーん:あぼーん
あぼーん
46あぼーん:あぼーん
あぼーん
47あぼーん:あぼーん
あぼーん
48あぼーん:あぼーん
あぼーん
49あぼーん:あぼーん
あぼーん
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あぼーん
51あぼーん:あぼーん
あぼーん
52あぼーん:あぼーん
あぼーん
53あぼーん:あぼーん
あぼーん
54あぼーん:あぼーん
あぼーん
55あぼーん:あぼーん
あぼーん
56あぼーん:あぼーん
あぼーん
57あぼーん:あぼーん
あぼーん
58あぼーん:あぼーん
あぼーん
59あぼーん:あぼーん
あぼーん
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あぼーん
61あぼーん:あぼーん
あぼーん
62あぼーん:あぼーん
あぼーん
63あぼーん:あぼーん
あぼーん
64あぼーん:あぼーん
あぼーん
65あぼーん:あぼーん
あぼーん
66あぼーん:あぼーん
あぼーん
67あぼーん:あぼーん
あぼーん
68あぼーん:あぼーん
あぼーん
69あぼーん:あぼーん
あぼーん
70あぼーん:あぼーん
あぼーん
71あぼーん:あぼーん
あぼーん
72あぼーん:あぼーん
あぼーん
73名無しさん@ピンキー:04/06/13 00:32 ID:epRPXu3D
やっと終わった・・・
なんとか即死回避終了。
後は職人さんたち頑張って下さい。
(・∀・)ノシ
74名無しさん@ピンキー:04/06/13 00:52 ID:tO/dDZ1U
おいおい。何してんだ。
いくらなんでもやりすぎだぜ。
鯖の状況を考えてくれよ。
75名無しさん@ピンキー:04/06/13 03:14 ID:S+aIK1Bh
>2-22
>30-72
について、レス削除依頼出してきました。
特に>30-72はひどすぎるよ。
76名無しさん@ピンキー:04/06/13 06:04 ID:lFqgBAdb
いくらなんでもやりすぎだろう…
別に投稿はかまわんと思うがここまでしなくても…
77名無しさん@ピンキー:04/06/13 10:27 ID:bW1fQPkf
まあなんだ・・・即死回避についてはGJ。
78:04/06/13 11:15 ID:zLTxXD9X
スマソ…
途中から切るに切れなくなっちゃって…
(・ω・`)ショボーン
79名無しさん@ピンキー:04/06/14 00:37 ID:qgp+HEEa
乙!
80名無しさん@ピンキー:04/06/14 21:50 ID:xKGlM2hW
あぼーんだらけだな。
何を考えているのやら・・・
81名無しさん@ピンキー:04/06/14 23:48 ID:3u5/FX/h
しかし本当にあぼーんされるとは思ってなかった漏れ。けっこうガクガクブルブル
82名無しさん@ピンキー:04/06/15 00:41 ID:3FK1cdkf
>>78
ドンマイ、乙!ていうかスレ建てありがとん!
漏れも保守できなくて後悔してたひとりだったから。
「砂の闘士」の完結?もゆっくり読ませていただきます>腐男子さま

ついでに光源氏が実は女で、宮廷の姫君たちも密かにそれを知ってて
源氏に恋してた・・
みたいなssきぼんと言ってみるテスト
83名無しさん@ピンキー:04/06/15 13:09 ID:DRAvrXSl
聖霊狩りの美也×早紀子で
エロイノキボンヌ
エロイノキボンヌ
84名無しさん@ピンキー:04/06/15 15:34 ID:hPCux+9a
ベンジャイのウェスタ&ネイ×レイラキボン
85名無しさん@ピンキー:04/06/16 00:20 ID:AEv61Owh
NOIRキボン
86名無しさん@ピンキー:04/06/16 02:05 ID:wEWROre1
だめー!真・源氏物語じゃなきゃいやぁ!
平安レズビアン絵巻がいい〜ぃいっ!
巻名だけで後世に伝わってない「雲隠」の巻あるでしょ?
光源氏=オナノコの謎解きをして、物語文学の最高峰を
レズエロとして完結させるのぉっ!
87名無しさん@ピンキー:04/06/16 15:18 ID:H+Ln8XOc
とりかえばや物語&有明の別れがあるでしょー
88名無しさん@ピンキー:04/06/17 00:25 ID:L9K+uG5n
今回も即死か?(´・ω・`)
89名無しさん@ピンキー:04/06/17 01:06 ID:tUSlpFxA
しないでほしぃ〜。職人さん達、がんがってください。
特に初代スレで百合童話書いてた職人さん、戻ってきて
90名無しさん@ピンキー:04/06/17 04:20 ID:V5MtgziL
攻殻の素子の百合ネタってないのか
91名無しさん@ピンキー:04/06/17 06:08 ID:lH1a7LMs
中山かつみ「シニカルオレンジ」って百合だよな。
92名無しさん@ピンキー:04/06/17 18:23 ID:BLYqw+RN
>90
少佐 OSたん でぐぐってミホ
93名無しさん@ピンキー:04/06/18 13:42 ID:I8u02ZG+
櫻の園みたいな学園ものきぼん。
9490:04/06/18 22:10 ID:1U6Nx3z9
>92
SACのOST2ジャケの素子で百合ん百合んしてほしいと思っていたのだが
こういうのもエロ可愛くてイーネ!
95名無しさん@ピンキー:04/06/19 10:06 ID:JDlZRjyF
801は人気なのになんで百合は人気ないんだろう…
96名無しさん@ピンキー:04/06/19 22:13 ID:60PBUDji
オトコにとって、性的欲求不満解消の方向にはありとあらゆるシチュと手段と環境等、
いろいろな意味で多様性があるのに対して、
オンナにとって、ソレがほとんどなかったところへ801というニッチな方向が出来たから、
だと思う。
ま、それがすべてじゃないだろうけど、
堂々と(;´Д`)ハアハアできる方向は、801以前はあまりなかっただろ

97名無しさん@ピンキー:04/06/20 21:22 ID:f4TT+8By
801は「こうあるべき」とかややこしい原理主義がないし、
商業的にさっさと成立しちゃったからなあ…
まあ、百合の歴史はこれからですよ。
98名無しさん@ピンキー:04/06/21 10:30 ID:/z7dD5fl
無思慮、無分別、無鉄砲、無節操、無責任、無反省の六無主義ならあるかも
99名無しさん@ピンキー:04/06/21 21:18 ID:8PHOU74v
忘八者ですか?
無鉄砲は悪くないかも。
100名無しさん@ピンキー:04/06/22 20:58 ID:MgEXTfca
セーラームーンパロディ全盛のころは、皆なんにも考えずに百合パロ物を描きまくっていたもんだ。

前世紀の話じゃテ。
101名無しさん@ピンキー:04/06/23 18:29 ID:5rocBOJ+
SS書くってのは難しいもんですね。
百合ネタは何個もあるんですが、それを形にするのが困難(´・ω・`)ショボーン
102腐男子:04/06/23 23:12 ID:GhKKxtfE
>101
短い話ならば、
キャラ「(セリフ)」
形式でも、けっこうかっこうがつくもんですよ。

もしくは「こんなキャラのこんなイメージストーリーで誰か書いてくれないか」と
依頼気味に書き込んでしまうか。

その場合、自分のイメージとは違った物が仕上がってくる可能性の方が
高いですが…
103名無しさん@ピンキー:04/06/24 01:13 ID:N6Y6NjVX
腐男子氏キタ━━(゚∀゚)━━!!!
夏コミの方もガンガって下さい(*´∀`)
104名無しさん@ピンキー:04/06/24 21:30 ID:OZMY59dX
>>102
色々な方法があるんですね。
>キャラ「(セリフ)」形式
って、自分の場合なぜか逆に書きにくいんですよね……
SSを書くんだったら普通はそっちの方が楽なものなんでしょうか。

一応オリジナルで書いてみようかなーと思っているんで、
ネタ提案とかもアレですし、がんがって書いてみるとします(`・ω・´)シャキーン
105名無しさん@ピンキー:04/06/24 23:23 ID:OW+F6x0i
マイ/ペース柚子欄 でよければ書けそうでつ。
この土日あたりにでも。
106美也×早紀子←萌:04/06/25 12:56 ID:WL+z+9o9
被災の爪痕も生々しいアスファルトの道路から、高校の敷地へと足を踏み入れる。
腰まである太いおさげの少女、吉野萌は。いったん足を止めると、周囲を見渡す。
校庭には、平日の放課後だというのに、珍しく野球部の練習風景がない。
まあ、常ならば自分は習い事の真っ最中。『珍しく』という判断基準も、曖昧といえば曖昧ではあるが。
「……早紀ちゃん、まだ居るかな?」
お花の先生に身内の不幸があり、出来た、思いがけぬ暇。
ならおそらく、一人寂しくネームを切っているであろう熊谷早紀子と、ダラけた漫画談義に花を咲かせようと
こうして制服に着替え直し、引き返して来たのだが。
「……これで早紀ちゃん居ないと、ちょっと馬鹿みたいよね。」
携帯で先に確かめれば、とは、校門前に着いてから気付いた事。
もうここまで来たら目で確かめた方がスッキリするので。人気の無いグラウンドを横切り、ゆっくりと部室棟に近付いてゆく。
「…………。」
仮に居た場合、早紀子はさぞ喜んでくれるだろう。
別に、こういうの初めて、というわけでもないし。想像はつく。
しかしその反面。ドアを開けて、振り向いた早紀子が笑顔を見せる未来図に、なんか、妙に切ないものを感じる。
「……もう少し、あの二人が真面目に来てくれればいいんだけどなぁ」
一組の男女、端正な幽霊部員の顔が浮かぶ。
自分の見立てでは。けっして漫画が嫌いなわけでも、早紀子が嫌いなわけでも無いはずの二人。
いや、表向き軽々にそう見せないだけで。むしろ双方の気持ちは、明らかに同じベクトルを向き、競い合ってすら……
(…………。)
現実と地続きの妄想が『暗黒倉』の中で、枝葉を伸ばす。
本領の801の時ほどではないが、萌の目尻は、わずかに波打っていた。
「……まあ、早紀ちゃんにも問題、あるよね。」
建物の入り口を潜り、いくつかのドアを通過しながら。親友の問題点を挙げてゆく。
(鈍チンだし)
ちょっとあれは深刻だろう。
(同性愛に興味ないし)
差別感情とは違うが、『自分に関係ないこと』としか捉えていない。
(それに……)
上手くは、言えない。でも、わかる。
昨今の彼女がなにか、恋愛沙汰そのものに触れることを忌避し、恐れをすら抱いているということは。
(やっぱり……桜田先輩絡みかな……?)
107美也×早紀子←萌:04/06/25 12:57 ID:WL+z+9o9
最近あった、結構大きな地震で亡くなられた、早紀子の憧れだった前・漫研部長。
タイミングも合うし、自分に思い当たるフシといえば、それくらいしかない。
(なにか、あったのかな……)
考えてもしょうがない、そんな思索の海に、あとちょっとで浸りそうになるも
ふと、行き止まりに気付く。
いつの間にL字通路を曲がり終えたか、ここはもう部室前だ。
(……踏み入るばっりかが友情じゃない、か)
普段と同じ態度で、なにも知らないふりをして、日常を与え合うのもまた友としての務め。
軽く頭を振り、少しだけ沈痛になってしまった表情を戻し、ノブに
「…………っ」
手が、止まる。
建て付けの悪いドアの向こう側から、なにか声がした。
「……も……して」
また聞こえる。早紀子には、独り言の癖は無かったと思うが。
「……だ……おね……」
途切れ途切れで、内容は聞き取れない。
言い訳がましい気持ちになりながら。さりとて特に『これ』という動機も無いままに、細く開けたドアから萌は覗きこんだ。
「……………っ!?」
目に映ったものに、よろり、と重心が踵にかかった。

「……早く……はずしてっ……」
部室には、萌の予想に反し、二人の少女が居た。
一人はくだんの、現・漫研部長にして親友・熊谷早紀子。
もう一人は、萌・早紀子以外では唯一の女子部員、同じ二年生の小城美也だ。
ただ彼女がここに居るのは珍しい、が、その事自体はさして驚くことではない。むしろ喜ぶべきことだろう。
……部屋の真ん中近く、会議用の大机の傍らで
あるかないかの薄い笑みのまま、美也が早紀子を抱き締めている、という異常事態さえなければ。
「……どうしても?」
低くても、よく通るハスキーヴォイス。
こくこくと頷く早紀子の横顔は朱に染まり、目はきつく瞑られている。
「……座って。」
長身の美也は、腕の中から早紀子を解放すると、椅子ではなく机に促した。
108美也×早紀子←萌:04/06/25 13:01 ID:WL+z+9o9
萌すら見たこともない、早紀子の心細げで泣きそうな表情。一瞬すがるように美也を見て、躊躇の後に尻を乗せる。
(なにを、して……?)
美也が椅子を引いて、垂らされた早紀子の足の間、正面に座る。丁度彼女からは、早紀子のおなかが、目の前に見える位置だ。
「ほら」
剥き出しの膝裏を掴み、自分の座る腰掛けの端と端に、早紀子の上履きを乗せる美也。
抵抗も、疑問の問いも一切ない親友の異様さに。萌は我知らぬ内に、軽い興奮を覚えていた。
すっ、と美也の両手が、早紀子のスカートにもぐりこむ。
紺色のひだの下、両腿の外側で蠢く手が、なにかをスルリと脱がすのがわかる。
いや、なにか、などという言い方は変だ。元よりそこには、ひとつの対象しか無いのだから。
「ん……」
スカートの半ばで止まった手の動き。股を開かせているから、それ以上は『下げられない』のだろう。
しかしその先、複雑に変わった指先の作業に。やがて明らかに、早紀子の様子がおかしくなった。
「……っ!……っ!」
捧げ、突き出した下半身が強ばり、緊張と弛緩を繰り返す。
後ろ手をついた手の指が、鋭角に曲がって、指の腹を上板に押し付けている。
声をおさえようと、片手が自らの口をふさぎ。
うねくりながらゆっくりと倒れていくセーラー服の背中は。美也の手がスカートから出た時には、完全に机と接していた。
(うそ……)
声に出さないのが、やっと。
美也の手の中、小刻みに振動する、ピンク色の物体。
ローターと呼ばれる淫具だろうが。所詮、耳年増でしかない萌は、勿論実物を見るのは初めて。
スイッチを切られ動きを止めたそれが、コト、と置かれる。萌の位置からでも、テカりがわかる。
「……ぁ……はぁ……」
緩く胸を上下させている早紀子。
あんなものが入っていた、にしては、外見的に、ある意味、大人しいくらいな気もする。
美也は、早紀子の片足を踏み切りのように折り畳むと。そのまま机の横に回り、前かがみになり、垂れる髪をおさえて
(キス……してる……)
今更といえば今更。しかし、衝撃の光景。
早紀子の手、腰の横に力なく開いていた拳が、小さく握られていた。
影になって二人の顔は見えないけれど、どれだけ深く交わっているかは、他の部位の脈動だけでわかる。
「………んっ」
109美也×早紀子←萌:04/06/25 13:02 ID:WL+z+9o9
やがて離れ、斜めに座る形に、早紀子も身を起こす。
角度が変わり、正面を向かれて、心臓をおおきく鳴らす萌。
しかし、美也の白い手が、自分のタイを解き、ボタンを外しているのを、ただ見下ろしている早紀子は。こちらをちらりともしない。
(早紀ちゃん……)
悦んでいるとも、悲しんでいるとも取れぬ瞳。似てるといえば、熱に浮かされ苦しんでいる時の、薄い膜の張った涙目か。
丁寧に脱がされたセーラー服が、肩から落ち、肘で止まって半端な拘束服となる。
「…………っ」
美也の唇が早紀子の首筋にあたる。シンプルなブラにも、手が優しく添えられる。
細くて長い指が、繊細な美術品を扱うように柔らかく揉み込み
艶やかな黒髪の頭頂が、静かに静かに、下がっていく。その後に足跡を残す、キスマーク。
(あんな、ところに……)
顎下。服で隠せる場所では、ない。
余計な心配をしている間にも、早紀子の背中に回された右手がホックを鳴らし、ブラの肩紐が外された。
片方の乳房は、そのままパッドごと刺激を受け続けて
「やぁ……っ」
初めて拒絶らしき拒絶が、早紀子から漏れる。
美也の後頭部の向こうに、もう一方の乳房。
綺麗な顎の稜線が、ほんのわずか、ストローをふくむように動いていた。
肌は震え。皺を真ん中に寄せた眉が、優美な八の字を描く。
「ぁ……んっ……」
俯いて開いた早紀子の視線が、おそらく美也のそれと、合った。見ないで、とでも言うように、首がかえされた。
美也が動く。突起から糸を引いて、首を伸ばし、顔を傾けて、下からキスで掬い上げる。
唾液を交換し、整った歯並びを、舐るだけ舐って。
唇から徐々に、徐々に蕩かされてゆき。元々形だけのモノだったろう抵抗は、みる間に鈍っていった。
「…………。」
冷静さと、激情の注視。
昆虫標本をつくるコレクターの目で。弱々しく喘ぐ早紀子の昂まりを、ある程度見切ると。
美也の左手は胸から離れた。そしてそのまま
「あッ……やだッ!」
スカートに潜り込む。
「やっ……やッ」
ギシギシと、机の脚が鳴る。
110美也×早紀子←萌:04/06/25 13:04 ID:WL+z+9o9
跳ねた腿が、スカートを捲り。中途で放置された下着が見え。
その奥でいやらしい曲を弾く、ピアニストの指使いも見えた。
「いっ……やだっ……だめっ!」
上着に縛られた肘、から先が、慌てて曲調をとどめようとする。
なんとか手首を掴んで、自分を自分で無くしてしまう、その作業を止めようとする早紀子。
「……ぁんっ!」
うなじが、仰け反る。
激しい動作に、リノリウムの床のカン高い悲鳴。
「……ッ!……ッ!」
声にならない声。布の下で具体的に何をされているかは、闇が覆い隠して、萌には知る由もない。
しかし、どれほどの快感が早紀子を襲っているかは
すくんだ肩。しっとりと濡れた肌。きつくきつく絞られている美也の手首が、如実に教えてくれている。
「……いきそう?」
逃げる事も、かわす事も、出来ない。虚飾なき問いかけ。
かといって何かを言おうにも。今、口を開けば、喉から漏れ出るのはいやらしくあさましい嬌声でしかない。
切羽詰まった早紀子を見る美也に、しかしそれほどの『余裕』があるわけではないと、萌はその時、ようやく気が付いた。
(あんな顔も……するんだ)
優しさと苛烈さ、愛する人を見る、目つき。
早紀子ほどではないが、美也も明らかに熱い昂ぶりを覚えている。
紅をひいたような唇に、舌が少しだけ顔を出して、湿りを与えた。
「……やッ……やッ!……くぅッ……」
駄々を捏ねる幼児のように、早紀子が何度も跳ねる。美也の手は、それでも磁石ではり付いたように離れない。
というより、既に早紀子のそこは、逃げようとしてではなく、もっともっととねだるように上下を繰り返していたのだ。
111美也×早紀子←萌:04/06/25 13:06 ID:WL+z+9o9
「……ぁッ!……ゃだぁっ………いっ!!」
いっそう大きな音が室に響いて、早紀子の尻が落ちた。ぶるぶると背は弓なりにしなり、必死の形相。
覆い被さる美也が、蟲惑的に唇を曲げる。
なにが起きたかは、誰の目にも明らか、だった。
(…………早紀ちゃん……イッちゃったんだ……)
自らは経験した事の無いそれに思いを馳せ、萌の頭が混乱する。
結ばれた早紀子の口端から、透明な涎が一筋。
愛液にまみれた指を抜かれ、余韻に震える体を、介護するように美也が寝かせる。

…………………………………………………

スカートをたくし上げ、あらわになった早紀子の秘所に、今度は美也がくちづけたところで
萌は細心の注意を払ってドアを閉めた。

……夢では、ない。証拠に、絶頂冷めやらぬ粘膜を粘膜で触れられ、我を忘れてしまった高い声が
安普請の壁の向こうからまだ聞こえている。
耳鳴り。空言ではないリアリティに、眩暈すら感じる。
「いつ……から……? ていうか……」
ズルズルと壁に背を預け、ぺたりとお尻が落ちる。
「早紀ちゃん……」
胸が痛い。
何故か、視界が滲んだ。
112名無しさん@ピンキー:04/06/25 22:19 ID:iPjZB+Bc
覗きシチュって萌えますぅ
しかも親友ならなおさら(;´Д`)ハァハァ
113名無しさん@ピンキー:04/06/26 01:24 ID:kN5pX79U
上手いな。
ぐぐったら、元ネタはコバ△ト文庫か。
114名無しさん@ピンキー:04/06/26 21:23 ID:4fTDhb4D
おおー。
美也×早紀子萌え。
ググっても全然無いし、こんなところで読めて嬉しいっす。
続編キボン。
115名無しさん@ピンキー:04/06/26 22:46 ID:PImkmH80
ウボァァァァ!美也×早紀子バンザ―――――イ!!
116名無しさん@ピンキー:04/06/27 21:08 ID:0EPyS4ez
美也×早紀子さいこー。文章も上手い。
今度は早紀子視点の話も読みたいなあ、なんて。
117名無しさん@ピンキー:04/06/27 22:29 ID:mgkcNSoB
萌の複雑な心境もよいですv
118名無しさん@ピンキー:04/06/28 00:10 ID:fFM6Zdfk
>116
原作の早紀子はノーマルだから、何がきっかけでレズに目覚めるのか気になるね。
美也は積極的に、愛を込めて(?)早紀子に触りまくってるのに、
肝心の早紀子は過剰なスキンシップとしか思ってないんだろうなー。
119名無しさん@ピンキー:04/06/28 00:47 ID:E/wKOR6o
既刊の最新ので、美也が転校することを打ち明けてるから、
淋しくなってほだされちゃうとかないだろか。
120名無しさん@ピンキー:04/06/28 22:38 ID:unTquOk+
とりあえずあげ保守。
121名無しさん@ピンキー:04/06/29 22:31 ID:yRJfm3a4
>105=>106なのか?関係ないのか? とぐぐりもせずに聞いてみる。
122名無しさん@ピンキー:04/06/30 22:15 ID:15S16o+l
>106の元ネタ
p://cobalt.shueisha.co.jp/osusume/seireigari/index2.html

>105はよくわからない。
123名無しさん@ピンキー:04/06/30 22:54 ID:hDLgYBmi
遠征王のゲルトルード×オリエがみてみたい。
124名無しさん@ピンキー:04/07/01 21:25 ID:GhXHelXp
カラミティナイトのスレも無いみたいだな、この板に。
そう考えるとネタは色々・・・
125名無しさん@ピンキー:04/07/01 22:19 ID:ELCKK0Vi
>>124
前スレにカラミティネタはあったがな(T-T)
126名無しさん@ピンキー:04/07/01 23:06 ID:YmVLCnso
カルバニアのエキュー×タニア
楽園の魔女達のサラ×ダナティアとか
スキップビートのモー子さん×キョーコ
キボンヌ
127名無しさん@ピンキー:04/07/02 20:34 ID:iduTNuxv
エキュー×タニアか……エキューが受けっぽいな…
128101:04/07/03 02:19 ID:WoBdNNSv
先日のPRIDEを見て、格闘少女同士の友情モノってのを書いてみました。
ヘタレかつ長文でスマソですが、投下させてください。
129101:04/07/03 02:25 ID:WoBdNNSv
張りつめた四本のロープは、その特別な空間を外界から隔絶する。
ただ一人、戦いを裁く権利を有する者、レフェリー以外の誰もがけっしてその戦いを妨げ得ない。
純白のリングの上で戦う女たち、観衆は飛び散る女の汗と血に歓声を投げかけ、女たちは繰り出す拳でそれに応える。
片方の女が脚を掴んでもう一人を引き倒すと、すかさず幾度となく顔面へ、顎へと鉄槌を叩きおろしていく。
一方的な蹂躙。やがて一人が意識を喪失し抵抗することを止めた瞬間、その瞬間に歓声は屋根をも揺るがすほどに高まった。
勝者には栄光を、敗者には屈辱を。
ここは女子総合格闘技ATHENAの会場である。

「さあ、もう時間ですわ」
ハルカは、これから試合に臨む女の拳にグローブをはめ終えてそう言った。
オープンフィンガーグローブ。
拳を保護しながらも五指の自由を確保し、打撃だけでなく投げ技や関節技も許可された総合格闘技においては欠かせない。
「ああ……」
女の返事は上の空といったところ。ハルカは苦笑を浮かべ女のその様を眺めていた。
「アイさん。柄にもなく緊張していらっしゃいますの?」
「ああ……なっ、そんなわけないだろッ!」
アイと呼ばれた女は顔を真っ赤にして反論する。
沈着冷静との言葉が相応しい端正な容貌とは裏腹に、ちょっとからかっただけでいつもこうなのだ。
「もうすぐ貴女の出番です。これまで積み重ねてきた練習の成果を見せてください。もちろん、勝利という形でね」
「ああ……アンタに言われなくとも分かっているさ」
上目遣いでハルカを一瞥、それからようやくアイはベンチから立ち上がった。
130名無しさん@ピンキー:04/07/03 02:28 ID:WoBdNNSv
控え室を出て通路を左にまっすぐ進む。
狭い通路を歩いていくと、やがて光が見えてくる。これから向かう「戦場」の光だ。
ゲートをくぐる前に立ち止まり、瞳を閉じて数秒間、周囲の空気に意識を漂わせる。
ゲートの向こうからは、今宵の対戦相手の入場曲とそれを迎える観客たちの歓声が
そして傍らには自分を格闘家として育て上げた師、ハルカの息遣いが感じられる。
師。誇れるものもやりたいことも、若者の青々しい夢も、
何ひとつ持たなかった自分に格闘技という道を与えてくれた師。
アイにしてみるとハルカは年下だ。年下とはいえひとつしか離れていないが、
それでも自分の方が年長だという矜持が、師と呼ぶことに対する抵抗をアイの中に根付かせている。

ふたりの出会いは高校時代。
同じ地方の進学校に通いながらも、二人は対照的な道を歩んできた。
かたやハルカは成績優秀、品行方正、
なおかつ容姿端麗にして教師からも生徒からも人望が厚く皆に将来を期待された少女だった。
一方のアイはといえば、遅刻欠席当たり前、校内でこそ大人しくしているものの、
外に出れば他校のたとえ男子生徒であろうとも平気で喧嘩する、筋金入りの不良少女。
二人の出会いは穏やかなものではなかった。
街中で因縁をつけられたハルカが、アイを返り討ちにした。
まさか年下の校内一の優等生が柔術の使い手とは思わなかったのだろう、
なす術もなく絞め落とされたアイに対し、なにを思ったかハルカは手を差し伸べた。
 強くなりたくはないか、と。
131101:04/07/03 02:30 ID:WoBdNNSv
「街の素人相手ではない、はじめての実戦。怖いですか?」
ハルカの呟きはひときわ高くなった歓声の渦に飲み込まれた。対戦相手がリングに上がり終えたらしい。
「……怖くなんかない……今日の今日まで、
いけ好かない奴の言うこと素直に聞いてずっと練習してきたんだ」
「強くなるために、ね?」
「そうだ。強くなるために。アンタをブチのめせるくらいに強く、誰にも負けないくらいに強く!」
「貴女なら大丈夫ですわ。必ず勝てます……」
突如、アイは後ろから抱きすくめられた。豊かな胸の感触が背中に押し付けられる。
「お、おい、こんなときになにを」
「あら、折角ですから緊張を解きほぐして差し上げようと思ったのですけれど?」
「だから緊張なんか……ひゃんっ」
絡みついたハルカの手がコスチュームの上からアイの胸を弄った。
「あらあら、なんて可愛らしい声で鳴くのでしょう!」
「ちょっ、やめろっ……誰かに見られたら」
「あら、なんでしたら、お客さんにも貴女の可愛い声をお聞かせしては?」
「クッ……ふざけるなっ、いい加減に……ひゃん!」
ゆっくりと胸を揉みながら、耳に舌を這わせる。
アイは自分を拘束する腕を振り解こうと必死に身をよじるが、かえってそれが己の性感を呼び起こしてしまう。
132101:04/07/03 02:31 ID:WoBdNNSv
「あぁ……はんっ、あぅ、ああぁっ!」
アイの喘ぎ声に欲情を刺激されたのか、ハルカの愛撫は徐々に激しくなる。耳に、首筋に、次々とキスを落とす。一方で胸から二の腕へ、脇へ、太股へ、次々とハルカは指を滑らせていく。
「お肌はスベスベで張りがある。細身の身体は引き締まって、無骨な筋肉を覆い隠すようにうっすらと脂肪が乗って……」
「はうっ……もう、許して……このままじゃ、あうっ、試合にぃ」
「なによりこの素晴らしい感度!」
そう言いながらハルカはコスチュームの中に手を突っ込み、直に乳首を弄る。
「開発した私が言うのもなんですけれど……こうまで感じやすいと、試合で寝技になりでもしたら、感じてしまいません?」
「言うなぁ……いやっ!これ以上……ああんっ!」
膝がガクガクと震え、アイは立っているのがやっとだった。もはや声が漏れるのを我慢することすらままならない。
火照る体、股間からは生温かい液体が流れ落ちる。
「フフッ、私の可愛いアイ……」
「もう……ん!だめぇ……このままじゃあ、はぁッ!イっちゃうぅ」 
アイの喘ぎがひときわ大きくなった瞬間、不意にハルカは手を止めた。
「あ、はぁっ……はぁっ……なんでぇ」
「もう、入場しないと」
「なっ……そんなっ!」
恍惚の時間は、今まさに「小山内アイ」の名を呼ぶリングアナの声によって終わりを告げられた。
133101:04/07/03 02:33 ID:WoBdNNSv
「それ以上股間を濡らして客の前に出るつもり?」
「……ッ!」
己の見せた痴態に気づき、そして自分のおかれた状況に混乱し、
アイはハルカの与える快楽に蕩けた思考を急に現実へと戻せずにいた。
「もし絶頂に達したいなら……相手を叩き潰してきなさい」
いまだ全身を駆け巡る快楽の残滓に心を捕らわれ、
恍惚の表情を浮かべるアイの頬をハルカは二、三軽く張り、強引に意識を引き戻す。
「戦う者にとっては勝利こそ至高の快楽、違いますか?」
「ああ……」
宙を漂うアイの視線が、今しっかりとハルカの眼を捉えた。
そこには「女」としてのアイはもういない。日々の練習で見せた「格闘家」の眼があった。
「ならば貴女の使命は?」
「勝利することだ」
「そう。貴女は私の育てた最高傑作、敗北するわけがない!」
「当たり前だっ!私は勝つ!勝って、んっ……」
最後の言葉を紡ぐ前に、アイの口はハルカの唇によって塞がれた。首筋に巻きつけられた細い腕はひんやり冷たく、
それとは対照的にハルカの情熱的な舌遣いがアイの口腔を犯していく。
134101:04/07/03 02:35 ID:WoBdNNSv
「んんっ……っ!……ハルカぁ」
ようやく唇を解放される。唾液が一筋、銀糸となって宙に引かれた。
「意地悪……こんなときになって、ようやく名前で呼んでくれるのですから」
頬を紅潮させ、そのアジテーションからは予想できないほど可憐な少女の顔を見せるハルカに対しアイは戸惑いを覚える。
先程までの淫靡な顔はどこへ行ったというのか。
「本当はね、少しだけ不安なんです」
目の前に立っているのは、自分を「女」として目覚めさせた少女?それとも純粋無垢に強さを求めた年下の師?
敵わないな、とアイは思う。どちらがいったい本当の少女の素顔なのだろうか。
「負けないでください」
うつむき、アイの胸に顔をうずめ、微かな声でハルカが呟いた。
「ハルカ、今日までアリガトな。アンタのためにも必ず勝つ」
「はい。……貴女を信じていますから」
ハルカの真っ直ぐな眼差しを受け止め、アイはうっすらと頬を染めた。
「だから、さ。そのっ……帰ってきたら、続きをシて頂戴?」

そしてアイは歩き出す。進む道の先に勝利という名の栄光が待っていることを信じて。
ゲートをくぐると、光と歓声の渦がアイを包んだ。
 
135101:04/07/03 02:38 ID:WoBdNNSv
つーことで、お目汚し失礼しました。
初めてこういう風に投稿したもので、至らないところとかありまくりだと思いますが、
そこらへんはご容赦願いますというか、指摘してくださるとうれしいです。
136名無しさん@ピンキー:04/07/03 04:46 ID:xnyx44sY
気が強不良少女がどんな風に篭絡されてレズ道を歩んだのか想像補完して(;´Д`)ハァハァ
137名無しさん@ピンキー:04/07/03 19:30 ID:wnB2m6+f
B柔術か。
寝技自体がエロいので(見かけはね、やられてる方は痛い)
そのへんのダブルイメージが強く打ち出せるといいと思う。
美しい関節技をねちねち描写するだけで、かなりエロくなるから。
138名無しさん@ピンキー:04/07/04 14:57 ID:PP0oLwmE
139名無しさん@ピンキー:04/07/04 20:28 ID:hJK/bJyT
守る者のあるレズ・バトルの始まりですね!?ドキドキ・・・
期待してます>101さま
140名無しさん@ピンキー:04/07/04 21:16 ID:h7oOk4v6
百合エロって結構いい。
141名無しさん@ピンキー:04/07/05 16:10 ID:/0Atcre6
体育会系っつーと、レオメグとかか?
142名無しさん@ピンキー:04/07/06 01:32 ID:sZkqg6Up
大運動会だr
143名無しさん@ピンキー:04/07/06 22:14 ID:yCBzY5P/
大運動会は小説版がもっとも百合。
144名無しさん@ピンキー:04/07/07 19:14 ID:pRyf/vzA
暑い中、保守
今夜は七夕か…
145名無しさん@ピンキー:04/07/08 22:14 ID:Q2IVhudM
皆さん、乙です
146101:04/07/09 01:10 ID:51TbRC/A
とりあえず続き書いてみている……が
_| ̄|〇全然エロクナイ
試合シーンだからエロ入れる隙間がニントモカントモ
147名無しさん@ピンキー:04/07/09 01:23 ID:Q4n0OG6x
>>146
萌えられればまったく完全にOK。
もし萌えがなくとも燃えがあればそれはそれでとてもOK。
なのでお願いします。
148101:04/07/09 02:14 ID:DeaMkJTr
>>147
燃え、ですか。
燃え、かぁ……(´・ω・`)
とりあえずできたところまで投下してみます
149101:04/07/09 02:19 ID:DeaMkJTr
(まずいな……)
気圧されている。
(高校時代には空手で全国制覇を成し遂げたほどの猛者。
ATHENAの舞台に上がってからは三戦無敗、そのいずれも
KO決着。シャープな打撃に嫌味なくらい爽やかスマイル)
目の前の対戦者のプロフィールを記憶の隅からチェック。
齢、いまだ20。歳は自分とそう離れていないとはいえ、身に
纏う空気が違った。積み重ねてきた鍛錬、潜り抜けてきた
修羅場は如何程のものだろうか。
(ハルカのヤツ……寝技に引きずりこめばなんとかなるって
言ったって、なぁ)
アイは対戦者、二階堂ミズノの持つオーラに圧倒されていた。
(無理無理無理無理、しょーじき無理だって!)
そこまで持ち込める気がしない。
自分のタックルがことごとく切られ、反撃するまもなく押し倒され、
意識を失うまで殴られ続ける映像が瞼の裏でリアルに再生される。
いやもしかすると、蹴り一発で意識をトばされるかも?
大丈夫、大丈夫。アイはひたすら自分に言い聞かせた。
(まずジャブで意識を上半身に向けて、回りながら牽制で数発、
ワンツーからあわせてタックルにいく……「いーから寝かせろ」by.早川ハルカ だっけ)
ミズノにジッと睨まれながら、これまで何度も練習してきたことを
いまいちど頭の中で反復する。レフェリーの最後のルール説明も
アイの耳には届いていなかった。視線を逸らし、相手に背を向けて
自分のコーナーに戻ると、握り締めたオープンフィンガーグローブには
じっとりと汗が滲んでいた。
150101:04/07/09 02:24 ID:DeaMkJTr
「……クソッ!」
ふと、頭を暖かいなにかに包まれる。
「大丈夫ですわ、アイさん」
ハルカだった。緊張でテンパった頭を優しく抱しめられると
それまでの恐怖感はどこへやら、安心しきっている自分に
気づく。ちょっとだけ悔しかった。
「えぇと、その……おまじない」
ひたいにキスされた。頬がかぁっと染まっていくのが自分
でも分かった。
文句のひとつでも言おうと頭を回転させているところにセコンド
アウトが言い渡される。ぽんと背中を押されてリングの真ん中へと
押し出されると、試合の始まりを告げるゴングが鳴った。


ミズノが摺り足でじりじりと間合いを詰めてくる。
アイはミズノの周りを回るようにステップを踏む。回りこもうとするのか。
否、前へと放たれるミズノの圧力を逸らすための回避に過ぎない。
相手の打撃を封じるのなら懐に入りこめばよい、そう言われた。
頭では理解しているつもりだった。しかし、前に出られない。ミズノの
圧力がアイを制空圏から圧し出すのだ。
「臭うな」
「……?」
「なんていうか、さ。雌の臭いってーの?」
「……ッ」
「アイッ!脚を止めたらダメですッ!」
セコンドの声が耳に届くか否かの刹那、咄嗟にアイは身を屈めた。
寸前に頭のあった場所を、右足が通り抜けていた。
151101:04/07/09 02:29 ID:DeaMkJTr
ほんの一瞬の隙をついてミズノはアイを射程距離に捉えていた。
「油断しないで。ローがっ!」
次の瞬間、右の太股を衝撃が襲った。
重い。ひたすら重い。金属バットで振りぬかれたかのような錯覚を覚える。
「顔ッ!」
体制を崩しながら下がりかけたガードを上げる。手首に、思わず悲鳴を
上げたくなるほどの激痛が走った。
(一発一発が重いし、速い。おいハルカ!)
セコンドに指示を仰ぐ間もなくまたローキックが、対処する暇も与えずに
太股を捉えた。乾いた音がリングに響く。苦痛に顔が歪んだ。
「“イイコト”したあとじゃ腰に力が入らない?」
「ッ……!?」
「抱かれているんだろ? そこの"ハルカ"ちゃんに」
続く右フックは空を斬った。アイが瞬時にミズノの懐へと潜りこんだのだ。
力任せにミズノの胴に腕を回したアイは、その硬さに驚いた。
(細くて引き締っているのはいいけど、筋肉ばっかり……)
そのままミズノの脚を刈るように脚を絡め、体重を預ける。
「そんな色気のない躯じゃハルカと比」
膝の裏に回した左足が、次の瞬間撥ね退けられた。
つんのめるかたちでバランスを崩したアイの腹に、ミズノの膝が突き刺さった。
二発、三発。
アイの口から苦悶が漏れた。

152101:04/07/09 02:41 ID:DeaMkJTr
四つ目の膝が今度は顔面へと繰り出されようとした瞬間、
アイは瞬時にミズノとの空間を埋める。ゼロ距離ならば、
打撃は無力化できる。小振りな乳房が圧力に耐えかね歪んだ。
あるいはまるで久方ぶりの逢瀬を喜ぶ恋人のように、ふわりと
さりげなく、ミズノの首筋に腕を回してアイが身体を密着させて。
自分の全体重を後方に投げ出し、ミズノをグラウンドへと抱き寄せた。
クローズドガード、腰の後ろで脚を絡めると。
「ここからがね、私の時間」
手首を掴み、ミズノの自由を奪う。
「おんやぁ?アイちゃんってば、誘ってる?」
「アイちゃんゆーな」
「ありゃりゃ、つれねーの」
「"メスの臭い"だって?アンタも味わってみろよ」
軽口を叩きながら拘束を振り解こうと抗うミズノの手を巧みに抑え、
一方腰に回した両脚は徐々に上へ上へと移っていく。
太股で頸を絞めあげる、三角絞め。
頸の後ろで脚が組み終える前に、強引にミズノが頭を抜いて逃れると、
今度はそのまま掴んだ腕を脚で固めるように組んで、オモプラッタ。
アイのしなやかな体肢がミズノの剛直な挙動を絡めとってゆく。
流れるようにミズノの関節を操るアイの技術に、会場が息を呑んだ。
極まるか。

誰もが信じかけた。

「ヌルいよ、アイちゃん」
(嫌味なくらい爽やかスマイル……)
刹那、ミズノが回転した。捕らえていたはずの腕が力任せに引き抜かれた。
虚を突かれた、と。認識したときには、すでにミズノの剛拳が振り下ろされていた。

153101:04/07/09 02:43 ID:DeaMkJTr
|  |
|  |∧_∧
|_|´・ω・`)
|  | oSSo
| ̄|―u'
""""""""""

|  |
|  |∧_∧
|_|´・ω・`)
|  | o ヽコト
| ̄|―u'  SS
""""""""""

|  |
|  |
|_|
|  |ミサッ
| ̄|   SS
""""""""""
154名無しさん@ピンキー:04/07/10 01:36 ID:AOO8GyB+
AAがあまりにも可愛くてクラクラ
155名無しさん@ピンキー:04/07/10 09:11 ID:G2cAwGVN
>>153
スピード感と緊迫感がいいっすね。
でも命のやり取りみたいな事してるわりに
飄々としてるヒロインたちもカッコいいっす。
156147ですが:04/07/10 12:13 ID:RdLpgpVf
>>101
萌え以前に普通に面白い
つうかミズノさんカコィィ…
続き期待してます。
157名無しさん@ピンキー:04/07/10 20:33 ID:ndX1Ign7
>>103
腐男子さんは何日目?
それとヒントだけでもお願い!
158腐男子:04/07/11 20:35 ID:hBe6MAOL
>157 様
トップページ作りました。m(__)m
ttp://members.at.infoseek.co.jp/jigokugokuraku/index.html
159157ですが:04/07/12 00:06 ID:ziq1h5a4
>>158 腐男子様
ありがとうございます。頑張ってくださいね
なんとか都合をつけて買いに行きたいと思います
160名無しさん@ピンキー:04/07/12 22:08 ID:i7htgPTg
腐男子氏のスレ何かあった?
入れなくなったんだけど…
161名無しさん@ピンキー:04/07/14 23:11 ID:QspvjcKj
板ごと鯖オチの模様
162101:04/07/15 00:48 ID:sLCqkxiz
格闘描写って難しいですね……
夢枕獏みたいな色気のある文章なんてまったく手が出ません(´・ω・`)
続きをようやく書き上げたものの、エロには入れず……
とりあいず試合シーンの続きだけ落とさせてください
163101:04/07/15 00:53 ID:sLCqkxiz
セコンドのハルカがなにかを叫んだ。
ミズノの拳が顔を掠め、肌を切り裂いた。
ATHENAのルールにおいては、グラウンドでの顔面への打撃も許される。
アイが、蹂躙される。
鳩尾に、顔面に、鎖骨に。
無防備に寝転がったアイに、殺意の拳が雨のように降り注いだ。
本来拳を保護するためのグローブ、ミズノのそれがやけに硬く思えた。
気の遠くなるような鍛錬を積み重ね、拳を作り上げてきたのだろう。
重く、硬く。鍛え上げられた剛拳がアイの肉体に突き刺さった。
視界が真っ赤に染まる。切れた眉尻から流れ落ちる真紅の液体が
左の目を塞いでいた。
(……イヤだ)
自分の血で視界を遮られた状態で、無抵抗のまま殴られ続ける。
初めてだった。これまで体験した喧嘩では一度として味わったことのない、
一方的な粛清。
拳の雨が止むと次は側頭部を狙った蹴りが、これは空を切った。
(こんなのヤだッ!助けて!)
アイは亀のように身体を丸めて、襲い来る拳から必死に身を守ろうとする
より他ない。
「アイちゃーん、もう無理むりぃ?」
ミズノがあの軽薄な笑みを浮かべていた。笑いながら、無慈悲に蹴りつける。
背筋が凍りついた。
勝負あった。レフェリーがそう判断してもフシギではなかった。
164101:04/07/15 00:58 ID:sLCqkxiz
「アイ!」
ハルカの声が耳に届いた。
「こんなところで負けるつもり?私に勝つのではなかったの!?」
(無理言うなってよ……)
ミズノの上足底が美しく弧を描いてわき腹に突き刺さった。
たちまち口の中に酸の匂いが充満する。

「さっきの続きをしたいんじゃないんですかっ!?」

何かが、アイの中で弾けた。
今一度蹴り出されたミズノの足を、刹那、アイが無理矢理捕縛する。
「公衆の面前で……」
見上げるアイの瞳に、意志の光が戻っていた。
「ソレ言うなぁぁ!!」
咆哮とともにあらん限りの力を込めて重心を前に移動させる。
不意の反撃にミズノの表情から笑みが消えた。アイは立ち上がりながら、
なおも前へ前へと、ミズノという太い幹を倒そうと真っ直ぐに突き進む。
「ウソっ」
ミズノが、崩れた。
もはや恐怖はない。全身の細胞という細胞が昂揚して、無心のまま
身体の奥から湧き出る熱に突き動かされていた。
押さえつけられたミズノの顔色にわずかに焦りが垣間見えた。
アイを突き放して地に肩をつけた状態から脱しようと、掴まれた脚に
力を入れる。アイとミズノの体の間にわずかに空間が生まれた。
その一瞬の隙を見逃さず、自由なミズノの踵がいまだ鮮血の流れ
止まない傷口を狙って振り下ろされる。
165101:04/07/15 01:02 ID:sLCqkxiz
鈍い音が会場に響き渡った。
傷口から鮮やかな血が飛散した。しかしアイは、なおも
掴んだ脚を離そうとはしない。
足首を掴んだまま後ろに倒れこむと。
躯を弓なりに反らし、脇に抱えたミズノの足首を、持てる
限りの力で絞め上げた。
強引に足を引き抜くのか。抜けるのか?
立ち上がって関節を極めさせまいとするか。
「……ッッッッ痛ぇッ!!」
ほんのわずかな判断の遅れは、しかしミズノから
そのどちらの可能性をも奪い取った。
これ以上ないほど完璧なかたちでミズノのアキレス腱が
極められていた。
「こんのぉぉぉぉ!」
やがてミズノがマットを三度叩いた。降伏の意思表示だった。
(終わったぁ……)
まるで張り詰めた風船から空気が漏れていくように、
試合の終わりを告げるゴングの音とともに、アイは一気に脱力して、
放心したようにリングの中心に大の字に寝そべった。

166101:04/07/15 01:11 ID:sLCqkxiz
頭が痛い。
首が痛い。
肺は潰れそうだ。
腹筋に鈍重が残っている。
さんざんローで蹴られた腿が思い出したように痛い。
腕も引き攣りそうだ。
「あー、しんど……けど」
気分は最高、なんだかとってもハイな気分。
『1ラウンド7分12秒、アキレス腱固めによりぃ、
小山内アイ選手の勝利です!』
立ち上がってアイは絶叫した。
無名の新人の勝利に沸く観衆。高まる歓声の中、誰かが
抱きついてきた。
目は血が滲んで見えないけれども、アイにはそれが
誰なのかすぐに分かった。
数千の観客の面前でも臆面なく自分の唇を奪えるような奴は、
この地球上にひとりしかいないんだから。
マウスピースを履き捨てると、口の中が新鮮な空気と、それから
生暖かい舌の感触で満たされる。
彼女との、唇が触れ合うだけから舌を交える濃厚なキス。
場内の歓声も、アイのテンションも、最高潮に……
「……なにするんだぁー!!」
アイの叫びは歓声にかき消されていった。

167101:04/07/15 01:17 ID:sLCqkxiz
エロくなくて正直スマンカッタ(´・┏┓・`)
ようやくエロに入れるか。
本来一番ハッスルしなきゃならない部分なのですが。

>>155 >>157
ありがとうございます。
百合っぽくない殺伐としたモノ書いているもので、
レスがいただけるだけでもものすごく嬉しいです。



168双頭刃愛:04/07/15 02:17 ID:KR+J20v0
はじめまして。自分、『あずみ』で一発百合パロやらさせて下さい!!なにぶんケータイからなので改行ムリ、連続短文という最悪なパターンになってしまいますが、どうかお許し下さいねm(__)m

169By双頭刃愛→やえあXずみ@:04/07/15 02:24 ID:KR+J20v0
「やっ、やえちゃん、あやとりっての教えてくれない!?」
「うん、いいよ♪」
やえの指に複雑にからんだ糸を必死になって取ろうとするひゅうが。その光景をニヤニヤしながら眺めるあずみ。
(ひゅうがのヤツ…やえちゃんのこと好きでしかたないんだなあ)
170やえXあずみA:04/07/15 02:30 ID:KR+J20v0
突然ひゅうががガバッとやえを抱き締めた。傍で見ていたあずみとうきははひゅうがの行動より、やえの態度の変化に驚いた。
「何するのよ!!」和やかな微笑が一瞬で険しい表情へと移り変わり、憎しみすらこもった腕がひゅうがを突き飛ばす。
171やえXあずみB:04/07/15 02:36 ID:KR+J20v0
情けなく畳に尻餅をついたひゅうがは背中を向け去っていこうとするやえを引き止めるため、慌てて立ち上がり肩に手をかけた。
「ご、ごめんやえちゃん…お、怒ったのかあ!?」
やえは視線を向けてもくれず、バッとひゅうがの手を振り払って早足で部屋を出ていった。
172やえXあずC:04/07/15 03:17 ID:KR+J20v0
その日の夕食の際も他の者にはいつもどおりのやえだったが、ひゅうがにだけは一切口をきかず声をかけるなという無言の防壁を張り巡らしていた。
寝る時刻が迫り部屋へ戻ろうとするあずみにうきはがこう言ってきた。
「ひゅうがの奴、馬鹿みたいに落ち込んでやがる。悪いがあずみから、やえちゃんに機嫌を治すよう頼んでみてくれよ」
173やえXあずD:04/07/15 03:24 ID:KR+J20v0
部屋へ戻るとやえはもう寝巻きに着替え髪をとかしていた。「やえちゃん…ひゅうがのヤツ悪気はないんだよ。アイツやえちゃんのことが好きだからさ」
あずみは終始笑顔で喋っている。しかしやえの表情は曇ったままだ。彼女はくしを置き、俯きがちにあずみに尋ねた。
「あずみちゃんは…うきはさんのことが好きなの?」
174やえXあずE:04/07/15 03:33 ID:KR+J20v0
「俺はやえちゃんも爺もひゅうがもみぃんな好きだぜ!うきはだけ特別好きってことはないよ」
「あたし…男なんて大嫌い」あずみの答えを無視したかのような違う話をやえは続けた。
「いやらしくて傲慢で自分勝手で…考えるのも触られるのも嫌!」
やえが荒くれども三人からよってたかって陵辱されたことをあずみは思い出した。
175やえXあずF:04/07/15 03:40 ID:KR+J20v0
「やえちゃん…」
かけるべき言葉が思い浮かばなかったけど、あずみはとりあえずやえの掌を取りそばへ寄った。
その瞬間、目の前が暗くなったかと思ったら何か柔らかく湿ったものに唇を塞がれていた。
(えっ…?)
それがやえの唇であることに混乱したあずみの脳はすぐには認識できなかった。
176やえXあずG:04/07/15 03:49 ID:KR+J20v0
生暖かい吐息が伝わってくる。やえの掌があずみの頬、首筋、背中、そして胸の膨らみに触れている。
(何してるんだ?やえちゃん…)
やえの唇の動きが小刻みになり舌が差し込まれてきた。掌は衿の合わせ目から中へと侵入し、生の乳房を捉える。
「ん、ふぅっ…!」
敏感な乳頭を爪でいじられ、あずみの体がビクッと揺れる。
177名無しさん@ピンキー:04/07/15 20:50 ID:6p34zxMz
>>167
ハルカのひと声だけで逆転しちゃうアイさんも現金ですねw
いや、そこが百合なんですよね。愛のパワー?
試合後の感動のエロも激しくキボンします


>>168
おお、あずみ受けですね!やえちゃんってあの色っぽいお姉さんですよね?
世間知らずのあずみが経験豊富なやえちゃんの手管でどうなっちゃうのか
んもう楽しみですう(;´Д`)ハァハァ
178双頭刃愛:04/07/17 04:24 ID:a2Q6HFvp
177さん、レスどうもです♪ただ、やえちゃんてのは元旅芸人の一時期あずみ達と行動を共にしてた女の子で、おっしゃられてるのはたぶん、はつねかお鏡さんかと…。
てゆーかあずみの百合カプに燃えるのってこの世で自分だけ?同人誌とか誰も作らないし、自分的にはめちゃめちゃパロ化(エロ)しやすい漫画なんだけど…
179177ですが:04/07/17 07:49 ID:d98xcDOq
>>178
ご、ごめんなさい!そうでした。
自分的には、あずみが異常にやえにこだわりを持つところに
百合っぽいものを感じてました。続き楽しみにしてます。
180名無しさん@ピンキー:04/07/17 13:19 ID:uoXciehL
a
181名無しさん@ピンキー:04/07/17 20:29 ID:DOnNyrgN
>>168-176
iMonaでみると改行が手ごろな位置にきてよみやすかった。

百合カプということで大島永遠の「女子高生」(本スレは、漫画板)ネタは、どうですかね?
由真×綾乃 由真×絵里子 小柴×毛利 みつき×永遠 中等部生×香田とネタは、そろってるし百合姉妹でも紹介されたし。
182名無しさん@ピンキー:04/07/18 02:54 ID:7Ect9tEh
>みつき×永遠
ちょっと待てw
183名無しさん@ピンキー:04/07/18 03:02 ID:40hjrO80
そうだよ、おかしいよ!
やっぱ、永遠×二階堂だろ!?
184名無しさん@ピンキー:04/07/18 05:47 ID:nT0Ar8dp
やっぱ「ローズヒップダイアリー」だろ!?
185名無しさん@ピンキー:04/07/18 21:45 ID:5nmeb/xj
ブレイブナイト〜リーヴェラント英雄伝〜を原作に百合小説を書きました。
レミリアとルフィーナの組み合わせです。状況としては全員エンド後を基にしました。

レミリアとルフィーナがベランダに出したテーブルと椅子に掛けて、茶を啜っている。
おそらくはシフォンあたりに貰った物なのだろう、上等で二人の舌には良く合った。
だが、半分も飲まずにカップを更に戻して二人は同時にため息を吐く。
「ねえ、ルフィ。最近夜の方はどうかしら?」
レミリアが向かいに座るルフィーナに問うた。
「えっ! ……その、特に何も……レミィ、貴方の方ももしかして?」
お互いに夫からのお呼びが掛からない事を知って、黙りうつむいてしまう。
公務が忙しいとはいえ、最近カーライルは二人を軽く扱っている感じがあった。しかも
外では自分達以外の女を囲っているという噂もある。それを隠すどころかハーレム建設
を目的とした法改正まで考えているというから、二人は心中穏やかではなかった。
その日のお茶は、普段よりも苦く感じられた。
186名無しさん@ピンキー:04/07/18 21:46 ID:5nmeb/xj
珍しく、レミリアとルフィーナは夫カーライルと共に夕食を取る機会を得た。その席に
はレミリアの妹であり同じくカーライルの妻であるリィーナもいた。つまり、カーライ
ルは妻が三人いるのだ。それなのに、他所で別の女を侍らしているというのがレミリア
とルフィーナには耐えがたかった。
さっさと食事を終わらせカーライルは席を立つ。
「あ、あのっ! 貴方、今夜は……その誰と……」
レミリアが捕まえて言う。だが夫はそれを振りほどいて
「悪い。これから外に出るんだ……」
と言って三人を振り返りもせず出て行った。
レミリアは、まず怒ってそれから頭を振り「いけないいけない、夫は絶対」と心で言っ
てから退室し自室へ戻った。
ルフィーナはそんな様子を見て俯き、テーブルクロスの内側に隠れた手が膝の上で握り
拳になり、テーブルががたがたと震えた。
リィーナは初めきょろきょろしていたが、すぐに何事もなかったように食事を続けた。
彼女は立場に喜んでいる節があるので、夫の素行は特に気にしなかったためだろう。
187名無しさん@ピンキー:04/07/18 21:47 ID:5nmeb/xj
レミリアが一人、ベッドに座り泣いている。
こんこん、と扉を叩く音がしたので涙を拭ってから言った。
「どなた?」
「ルフィーナです。今、いいかしら?」
「ええ、鍵は開いているから……」
扉を開けてルフィーナが入ってくる。丁寧に、音を立てず戸を閉める。そしてレミリア
の隣に掛けた。
「泣いていらしたの?」
「えっ! 分かる? あの人の態度に腹が立って……それで」
「私も同じ気持ちですから」
二人は肩を寄せ合った。お互い涙が出て、しばらくは流れるままに任せ黙って時を過ご
した。
「最近、私たち二人でいる時間が多いわね」
「私、こちらに来るまで歳の近い人と、こんなに親しくする事はなかった」
カーライルが二人を娶ったからこその関係だった。二人とも立場が似ていたのですぐに
意気投合し今では古い親友の様であった。
「もしかして、あの人よりルフィの方が好きかも……」
レミリアの呟きにルフィーナはどきりとした。自分も隣の女に、尋常ならざる感情を抱
いていたからだ。
「だったら……してみる?」
「……な、何を?」
レミリアの質問にルフィーナは黙ったままで顔を近づけてキスをした。それが答えだっ
た。
「ん……うぅん……ちゅっ……はぁ」
「あっ……はぁぁ。あぁ……! そんな女同士で……」
「嫌だった?」
レミリアは黙った。嫌ではなかった。夫にされる以上に鼓動が高鳴った。そのときルフ
ィーナの手がレミリアの胸に触れた。
「あぁん!」
「すごい……どきどき鳴ってる! ねえ私の方も触ってみて」
188赤い垢すり ◆ojEY7H1URU :04/07/18 21:48 ID:5nmeb/xj
ルフィーナがレミリアの手を掴み、自分の胸を触らせて。自分と同じ胸の高鳴りがレミ
リアの手に伝わった。
(る、ルフィも……こんなに! 同じなんだ、私たち……)
やがて、どんどん興奮が高まって、触れていただけの手が動きお互いの胸を揉み始めた。
「う……ん……はぁ」
「はうぅ……いいっ」
いつの間にかルフィーナがレミリアの後ろに回って、ルフィーナが一方的に攻める形と
なった。
「服の内側に、手を入れます……」
さっと手を差し込む。直に触れるレミリアの肌の感触。しっとりと汗ばんでいる。
「すごい弾力があって……うまく掴めない」
「あぁ……ああっ!」
「前を止めているボタン、外す?」
「ええ、今外すわ」
レミリアは自ら服のボタンを外し胸が露になる。
「はぁ……涼しい」
「まだ……残っていますわ」
そう言ってルフィーナはレミリアのブラを一気に捲り上げた。勢いよく胸が上下左右に
揺れた。
(すごいボリューム……)
直にレミリアの胸を揉みながら、ルフィーナは思った。そのままま我を忘れて胸に執着
した。
「あっ! はあぁっ! ああん、だめっ! ルフィも脱いで……」
激しい攻めに喘ぎつつレミリアが懇願する。
「ご、御免なさい……私ばかり夢中になって」
自分の服に手を掛けてから、ルフィーナはある事に気づく。
「ねえ、私の服、レミィが脱がせる?」
その言葉に、レミリアは最初びっくりしたようだが「これでお互い様」と思って脱がせ
たのだった。
胸をはだけた者同士向かい合ってキスをする。舌を深くねじ込んで長い長い口付け。
ふーふーと鼻息が荒い。そのままでお互いに胸を揉み出して、一層息が荒くなる。
189赤い垢すり ◆ojEY7H1URU :04/07/18 21:49 ID:5nmeb/xj
「ん……ふぅ……んちゅぅ……んふぅ」
「ちゅ……ぱぁ……はぁんふぅ……ふぅ」
二人同時に息が上がり、弾けた様に口を放す。「ぱぁはっ!!」と二人の呼吸音が響き
ぐったりとベッドに倒れた。口を繋いだ唾液がシーツに染みて弧の字の線を書いた。

衣擦れの音がする。半脱ぎだった服を全て脱ぎ、二人は全裸となった。強く抱き合って
からベッドに寝そべる。ルフィーナがレミリアの秘所に手をやる。ぴちゃりと水っぽい
音がする。
「レミィ……濡れてるのね……こんなに」
「あ、貴方だって……」
負けじとレミリアがルフィーナの秘所に触れる。
「! はうんっ!!」
ルフィーナが高く鳴く。
「ルフィ!? どうしたの?」
「そ、そこ……だめっ!」
レミリアはルフィーナの淫豆に触れていた。それがルフィーナを感じさせた。レミリア
は状況を理解して、口元に笑みを浮かべた。
「気持ちいいんでしょ、ルフィ。もっとしてあげるから……」
愛液が絡まりすべりのよくなった指で、ルフィーナの秘所を執拗に擦る。縁に沿って指
を走らせ淫豆に触れて一周する。
「あぁ……ああん!」
レミリアの指が淫豆を通り過ぎる度にルフィーナは高く喘ぎを発した。それが何度も繰
り返される。
「わ、私……もう駄目……イきそう……」
「そうなの? 可愛いわルフィ……このまま私の手の中で果てなさい……」
指の動きを早めるレミリア。愛液の溢れる量が増え、まるで決壊前の堤防の様だった。
「うくぅ! あ、ああん……くぅっ! イ、イくぅーっ!!」
ぶしゅ! ぶしゃーっ!! と、激しく液が飛び出しルフィーナは体を震わせた。はぁ
はぁと息を整えるルフィーナは、お腹の辺りが冷やりとするのを感じた。レミリアが愛
液で濡れた手でルフィーナの腹を撫でていたからだ。
190赤い垢すり ◆ojEY7H1URU :04/07/18 21:50 ID:5nmeb/xj
「ふふ、こんなに出して……。お腹全体に広がりそうね」
「や、やめて……冷たいっ!」
イって敏感に成っている所を襲う寒さにルフィーナは思わず身を縮めた。

「今度は……私がレミィをイかせますね」
レミリアの広げられた足の間にルフィーナは身を移す。レミリアの秘所に顔を近づけ、
舌を突き出し舐めた。
「あ……はぁ……ルフィ」
レミリアの口から甘い喘ぎ声が漏れる。「もっと乱れて」とルフィーナは思って、舌で
レミリアの淫豆を突っついた。
「はぁんっ! はぁぁっ!!」
それだけでは足りない、とばかりにルフィーナは淫豆を軽く噛む。
「!! きゃあっ! ひぃ……イっくぅ!!!」
その瞬間、レミリアは体を仰け反らせ高く喘いでイッた。
ベッドに横になり、荒い息をつくレミリア。それを示すかのように胸が大きく上下して
いた。落ち着いた頃を見計らってルフィーナはレミリアの上に重なりキスをした。
「ねえ……レミィ……今度は」
「何、ルフィ?」
「二人一緒にイきましょう」
「も、もうルフィったら……」
お互い顔が今まで以上に赤くなった。それからもう一度キスをしてから強く抱き合った。
二輪の百合は開き始めたばかりだった。
191赤い垢すり ◆ojEY7H1URU :04/07/18 21:52 ID:5nmeb/xj
あくる日。
「ねえ、お兄ちゃん。今日はお休みでしょう、リィーと遊ぼう」
「悪い、今日は軍事関係の役人に接待を受ける予定があるんだ」
「もう、お兄ちゃんの馬鹿!! 知らないからっ!」
リィーナはカーライルに軽くあしらわれた。その様子をレミリアとルフィーナは隠れて
みていた。二人顔を見合わせ微笑んでからリィーナに近づいた。
「ねえ……リィーナ。今日は私たちとあそびましょう」
「えっ? お姉ちゃん達と? うーん、どんな遊びなの」
「ふふ……とても楽しくて気持ちがいいことよ、リィーナさん」
「そうなんだ。それならお姉ちゃん、ルフィーナお姉ちゃん、一緒に遊ぼっ!」
リィーナは元気よく跳びあがって二人と手を繋いだ。レミリアとルフィーナはもう一度
微笑みあってからリィーナを加えた三人で、城の奥へと消えた。
三つ目の百合が開く時も近かった。

192名無しさん@ピンキー:04/07/18 23:38 ID:gCkVvysx
元ネタはよく知りませんが、人妻百合ネタ堪能させていただきました。
  _, ,_   シュッ
 (;´д`)
 Σ⊂彡_,,..i'"': 
     |\`、: i'、
     \\`_',..-i
       \|_,..-┘
193名無しさん@ピンキー:04/07/20 17:36 ID:Nqcis10V
>赤い垢すり氏
GJ!!
こんないい奥さんを三人も持っときながら旦那がほっとくから
こんな喜ばしいことに…(;´Д`)ハァハァ
二枚目シュッ
194名無しさん@ピンキー:04/07/23 01:56 ID:SGFL/WKS
KURAU読みテー
第二話は朝チュンにしか見えなかったし!
195名無しさん@ピンキー:04/07/23 17:48 ID:LD50v377
朝チュンか・・・
補完してみないか?
196名無しさん@ピンキー:04/07/24 21:07 ID:1nceBfu9
クリスマス一人えっちネタを書いたんですが
ここじゃだめですかね?

もちろんクラウを想ってしてるという事前提で
197名無しさん@ピンキー:04/07/24 21:37 ID:V7aq/Fgt
問題ないッス
198失恋x:04/07/24 22:43 ID:1nceBfu9
では、3話を脳内補完して書いた
クリスマス一人えっちものを


てゆーか4話のふとんの上で恋しそうにクラウの名前を連呼する
クリスマスにはマジ撃たれました…

199失恋x:04/07/24 22:44 ID:1nceBfu9
その夜クラウの居ない部屋の中、クリスマスは一人
毛布を頭までかぶって眠りにつこうとしていた。

この日クラウは昼間から“お仕事”に出かけていて
家を出る時クリスマスは玄関で、行ってきますのキスの後に
明日の朝までは帰れないと言われた。
だから今夜クリスマスは一人で就寝を迎えなければならない。
実を言うとクリスマスが一人で眠るのはこの日が初めてだ。
仕事が忙しいと言ってもクラウは今までどんなに遅くなろうと
必ず夜には帰ってきてクリスマスと一緒に眠ってくれていた。
「……クラウぅ…」
返事がないのはわかっていてもクリスマスは想い人の名を
呼ばずにはいられない。
クリスマスは今ものすごい寂しさと、それでいてほんの少しの
恐怖心を感じていた。
クラウはいつもクリスマスを胸に抱き眠る。
そしてクリスマスはそれに安心してクラウが瞼を閉じるよりも早く
夢の中に入ってしまうのだった。
時には眠りにつく前にクラウがまだ幼いクリスマスには早いだろう
“イケナイ指遊び”を仕掛ける夜がある。
クリスマスはそんな夜のクラウもとても大好きだった。
いつも優しいクラウがその夜はクリスマスにいじわるをしたり
時にいつもの何十倍も優しくしたりするのだ。
200失恋x:04/07/24 22:44 ID:1nceBfu9
「……むぅ…」
そんな夜の事を想像してしまったのかクリスマスは思わず
クラウの指先の味を鮮明に思い出してしまう。
そして自分の身体が段々と熱っぽくなるのがわかった。
ふいに体にかけていた毛布をはだき、脇に寄せると
目を閉じ耳を澄ました。
クラウの姿を思い描きながらクラウの声を思い出す。

―――クリスマス

優しく微笑みながら自分の名を呼ぶクラウの姿がそこにはあった。

クリスマスは目を閉じたまま胸に手を置いて
自分を抱きしめては口付けを繰り返すクラウを想像していく。
そしてその夢の中ではクリスマスに触れるクラウの指が
段々と大胆になるのだった。
いつのまにかクリスマスの置いていた手がその胸を
ぎこちなく撫でていく。
「…ん…んん…」
かろうじて乳房と呼べるくらいにかすかにふくらんだ胸が
布越しにその持ち主の手の内で弄ばれていった。
201失恋x:04/07/24 22:45 ID:1nceBfu9
気付くとパジャマのボタンに手を掛けていて
それがひとつ外されるごとにクリスマスの鼓動と興奮は
高まっていく。
最後まで外し終えるとパジャマは自然にはだけていき
その可愛らしい胸があらわになる。
確認するようにまず先端の方に指を滑らすと
やっぱり…と心の中でクリスマスは思った。
いつもクラウがその唇に口付けるだけでかたく尖ってしまうソコは
クリスマスがえっちな事を想像しただけでも
同じようになってしまった。
「…あ…ふぅ…あぁ…」
クラウがいつもそうしてくれるようにクリスマスも
自分なりにソコを指で転がしたりつまんだりしていくと
そのあどけない口から快感に震える声を漏らしてしまう。
段々その声が大きくなるにつれその足がもじもじとしだし
すでに濡れてしまっているだろう“ソコ“に耐え切れず
ふとももとが忙しなく擦れ合っていく。
クリスマスは一人っきりでこんな事をしてしまう恥ずかしさに
耐えながらそのパジャマのズボンと下着に手を掛けると
湿った下着がその場所から糸を引いて離れていき
それは足首の方まで下ろされていった。
202失恋x:04/07/24 22:46 ID:1nceBfu9
降りてくるだろう快感に備え口を閉じ息を呑むと
頭の中で自分の指とクラウの指とを重ねそっとソコに触れてみる。
「あぁっ…!ク…ラウぅっ!…はぁ…あ…」
強烈な感覚に思わず居ない者の名を呼んでしまった。
一人でこんな事をするのが初めてなクリスマスは
ぎこちなくもクラウの指の感触を思い出しながら
淫蜜で溢れかえったソコで小さな指を行き来させる。
「あぁんっ…あぁ…ふぁぁ…あっあっ…」
快感と共にクリスマスの中では恥ずかしさも高ぶり
唇を噛みしめ、その声を漏らせないようにしても
その指が上下に動く度、唇は緩く開いてしまい
ひっきりなしにいやらしい水音と自分の声が重なって耳に響く。
想いとは裏腹にその指はクリスマスの鼓動に乗り
少しずつ大胆になっていった。
「あぁぁっ…!ふぅっ…んっんっ…あんっ…」
その一番敏感な頂に指を這わせると擦りつけるように動かす。
興奮に身をゆだね夢中でソコを弄ぶと快感の証が休みなく溢れ出し
お尻をつたってその身体を支えるマットを汚していく。
クリスマスは涙目に上気した表情でクラウの影を想った。
いつもならきっとここでクラウが上体をかがめて
クリスマスのいやらしい場所に唇を寄せるのだ。
203失恋x:04/07/24 22:46 ID:1nceBfu9
そんな時クリスマスは恥ずかしさに堪らず喘ぎながら
声で抵抗するが、興奮にほとばしったクリスマスの身体は
クラウの柔らかな舌先を求めずにはいられず
ソレに激しく舐めまわされるうち、自然にその口からも
もっともっと、というはしたない言葉を漏らしてしまうのだった。
「クラウぅっ…あっあぁっ…クラぅっ…あっ…」
そんな愛しい舌先と自分の指とを重ね再度ソコを掻き回す。
かたく敏感に起き上がった頂を重点的につまんだりして弄び
思い出したように膣口にも指を這わすと入り口に溢れ返った愛液で
海岸に足先だけ浸かって水遊びをする子供のようにその指は戯れる。

「はぁぁっ…あっ…あぁんっ…んっ…」
知らぬうちにその身体は反転しうつ伏せの状態になると
少し浮かせたお尻の下から子供らしくも夢中になってソコへ擦りつける
クリスマスの指先が顔を出す。
こんな恥ずかしいカッコ…とクリスマスは頭の何処かで思うが
今自分のソコを弄んでいるのがクラウの指だったらと考えると
理性が効く事はなく、少しずつそのお尻が浮いていき
クリスマスの想像の中でクラウは自身の指と舌先で
クリスマスを責めさいなむのだった。
「あっあぁぁっ…!クラぅ……クラウっ…!ああっ…!ふむぅっんっ…」
段々とその鼓動と声とが一際忙しくなり指先の動きも
本人にさえ止める事が出来ない程に激しさを増していった。
クリスマスはもう限界とばかりにその唇を枕の布地に噛みしめ
息を苦しくさせながらも辿り着くだろうソコへ向かっていく。
204失恋x:04/07/24 22:47 ID:1nceBfu9
「ふぅんっ…!んっ!んっんっ…!んぁぁっ…」
涙をポロポロと流し、唾液とで枕が湿めってしまう。
快感の証が染み出したソコからも絶えず滴が落ちていった。
クリスマスが再びその指をクリトリスへと這わせ
これ以上ない程に撫で回すとそれが引き金となって
クリスマスはその小さなな身体で絶頂の瞬間を迎えた。
「んはぁぁっ…あっあっあぁぁっ…
 あぁっクラウぅっクラウッッ…!ああぁぁぁっ!!」
弾けた一瞬に噛みしめていた布地を外してしまい
その快感の衝撃を物語るかのように甲高いクリスマスの声が
暗く誰も居ない部屋中に響き渡る。
最後の瞬間クリスマス瞼には優しくも激しく自分の全て貪り、愛してくれる
そんなクラウの姿が焼きつき、もう消える事はなかった。

「はぁぁっ…はぁ…ぁ…ぁぁ…」
乱れた息を漏らしながら頂点まで昇りつめた余韻に浸っていると
自然に眠気がその頭と身体にまで渡っていき
身体を仰向けに直すと、その虚ろな瞳で天井を見上げた。
乱れた着衣を直そうとか、そんな理性は既に残ってはおらず
その心はただただクラウを欲していた。
「クラウぅ……」
か細い声で愛しい人を求める声を発すると
絶頂を迎えた後いつもやさしく抱きしめてくれるクラウを
思い返しながらそっと瞳を閉じ、やがてその意識は切れた。
205失恋x:04/07/24 22:48 ID:1nceBfu9
「たっだいまー」
やっとこさ辿り着いた我が家、一番大切な人の待つ家。
その玄関を開けるとクラウはこれ以上ないほどの笑みを浮かべて
帰宅の挨拶を言葉にした。
「おかえりなさい!!」
そう言いながら駆け寄るとクリスマスは勢いよくクラウに飛びついた。
いつもなら逆なはずの立場にクラウ一瞬目を丸くする。
もしかしたら自分の居ない間になにかあったのではないかと思い
心配そうにその様子を伺うと、顔を上げたクリスマスは満面の笑みで
クラウの頬にちゅっと小さなキスをした。
「クリスマス…」
安心したように瞳を細めるとその身体を抱き上げて仕返しとばかりに
あどけない唇に甘く優しい口付けを落としていった。
そのまま寝室に行くのがわかったのかクリスマスはクラウの首に
自分の腕を絡ませたままその横顔に問いかける。
「ね、クラウ、ゴハンは……?」
その声にクラウははにかんで答えた。
「それよりもまずクリスマス♪昨日の夜は寂しかったんだからー」
昨日の夜、と聞いてクリスマスは思わず顔を赤らめさせてしまう。
クラウを想い、寂しさから自分自身を慰めてしまった恥ずかしい行為…。
でも寂しかった、という言葉にそう思ったのは自分だけではなかったと
安心感がその心を支配し、その腕で更に強くクラウを抱きしめた。
206失恋x:04/07/24 22:49 ID:1nceBfu9
クラウがマットにクリスマスの身体をそっと下ろし
耐え切れないというばかりにその身体に覆いかぶさると
先程より熱く大胆な口付けを繰り返していった。
「ん…んん…ふむぅ…」
角度を変える為クラウがその顔をわずかに離すと
クリスマスの両手がすっとクラウの両頬を包み込むように添えられ
上気した顔に潤んだ瞳でこんなにも近いクラウに問いかけた。
「クラウ…今日はずっと一緒に居てくれる…?
 どこにも行ったりしない…?」
そんなクリスマスの切なげな言葉にクラウの心と身体に火が灯る。
そしてその炎に任せクリスマスを力強く抱きしめた。
「何処にも行かないよ、もうずっとクリスマスから離れないから」
「やったぁ!」
クラウの言葉を聞くとクリスマスは子供らしくはしゃいだ声を出し
今度は自分から甘く大胆な口付けをクラウに贈った。

そうして朝の日差しなどには構わず愛し合い求め合うふたりが
影を潜め、その営みを繰り返す。
ふたりの心に灯る炎は誰であろうと、例えお互いでさえ消せる者はなく
そんな想いが大切だとわかった頃にはその気持ちは
離れない、という誓いに変わっていく。
ふたりは夢も見ず、ただただ愛し合うと
そしていつかは、身も心も一つに溶けていった。
207名無しさん@ピンキー:04/07/25 03:08 ID:ezrjbK2G
GJ!らぶらぶでいいですなぁ。
一見邪魔なお仕事パートも、一緒でない二人を描いてくれると考えれば萌えが加速。
自分も4話のパジャマで枕抱きしめには激しく萌でしたよ。
208名無しさん@ピンキー:04/07/25 23:06 ID:FMH12ck9
キヤガッタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ !!!
次の放映まで夜はこれで補わせていただきます…

いやいや失恋xさん前回に引き続き良いクリスマスを堪能させていただきますた
209名無しさん@ピンキー:04/07/25 23:31 ID:cnDJQU24
ニニンがシノブ伝しかない…と思ったので書いてみようかと思います。
210名無しさん@ピンキー:04/07/26 01:28 ID:NM9ba9kD
また209みたいなカキコか。「書いてみようと思います」
って宣言されても肝心の内容書い
てもらわねーと評価のしようもないんですが・・・こんなカキコして
る暇があったらさっさと書いてそれからどう
ぞお読みくださいって流れでお願いします
211名無しさん@ピンキー:04/07/26 01:46 ID:Tpf6gFgP
>>210
確かに>>196-198みたいな流れが滞りなくていいね

つー事で>>209さん
待っている人は居るだろうしがんがって書いてくり
多分アニメの流れからして忍→楓でいくんだろうけど
勝手な要望書くと楓×忍も見てみたいな
雅総受とかもいいが



>>198
クリスマスえがった…(*´Д`*)
最高!!!!
212名無しさん@ピンキー:04/07/26 08:56 ID:tfhXO5Ov
GJ!
213209:04/07/26 08:58 ID:a0WrpStE
わかりますた
うpまでまっててくだちい、遅くなるけどね。
214名無しさん@ピンキー:04/07/26 09:37 ID:N2igVHZE
(´‐`)…夏になると読み専の態度が横柄になるのはなんでだろう。
そこら中で「さっさとupしろやゴルァ( ゚д゚)」の嵐
まぁ漏れも読み専なわけだが、読み専はお座りして待つのが一番マターリできる
やっぱり夏厨が増…
荒れそうなので以下略
215名無しさん@ピンキー:04/07/26 14:45 ID:k/TkO4U/
>>214
はしたなくてよ?
216名無しさん@ピンキー:04/07/27 00:13 ID:GfbrvTZ+
>>214
>>210は縦読みでしょ。
217名無しさん@ピンキー:04/07/27 03:10 ID:QF6HmhEF
クラウゥーハァハァ
218名無しさん@ピンキー:04/07/30 04:34 ID:0xMlpyHe
>>198
エロパロなんか読まないと心に誓ったのに…
今夜のクリスマスの可愛さ…もといクラクリの威力は強烈でした

つぅ事でGJ!
219名無しさん@ピンキー:04/07/31 00:17 ID:GaUxJQnx
坂下千里子
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1091177829/
書き手さん募集。
220名無しさん@ピンキー:04/08/03 15:40 ID:IchCWdhO
保守
百合って人気ないのか
・゚・(つД`)・゚・
221名無しさん@ピンキー:04/08/03 17:58 ID:s7r1crv6
こら泣くんじゃない
まぁ待て
222101:04/08/04 01:41 ID:o/4UgK/A
落とすといっておきながら未だに続きがアレできず正直スマンカッタ
つーか百合って難すぃ。
カタカタ<<・∀・>>文章書いていると、今更ながら手に余ると気づいて
割と凹んだ夏の夜。
223名無しさん@ピンキー:04/08/04 01:54 ID:jCKEhVFt
それはしょうがないさ
自分が完全に満足できるレベル(たぶん商業レベル)>書くスキル
って人が多いだろう。
224名無しさん@ピンキー:04/08/07 12:16 ID:YVHQke6s
保守
225名無しさん@ピンキー:04/08/08 00:28 ID:2w7J4fR0
女体化百合だけど、個人的に大ヒットだったので。

http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1090767681/148-162

作者さんが続きを書くかもしれないらしい。
226名無しさん@ピンキー:04/08/09 05:47 ID:GOpU5VMa
百合ん百合んしやがれ!
227名無しさん@ピンキー:04/08/10 14:09 ID:+RB01l4b
夏コミの原稿が終わったらいっぱい書きたいなぁ…
もうほんと夜寝る度百合チックなノベライズが頭の中を錯綜して大変…
228名無しさん@ピンキー:04/08/12 17:49 ID:iArNHJR7
229名無しさん@ピンキー:04/08/12 21:06 ID:eUs9f+U5
羽×窓はここに書いたらだめですか?
230名無しさん@ピンキー:04/08/13 00:00 ID:J+II6AO8
問題ないと、思う。
231名無しさん@ピンキー:04/08/13 00:24 ID:pzduE70U
大歓迎です。
カモソ!
232名無しさん@ピンキー:04/08/13 02:20 ID:3kpK4MUq
お願いします
(*゚∀゚)=3
233229:04/08/13 17:07 ID:0h6vK9tM
では、禍襟と合流後の羽×窓で。
234229:04/08/13 17:16 ID:0h6vK9tM
study-3

ふと目を覚ました時、隣で眠っているはずのマドラックスの姿は、そこになかった。
ヴァネッサは、小さな不安に駆られてベッドから起き上がり、部屋の中を見渡した。
以前、マドラックスが、自分の眠っている間に傷を負って帰ってきたことがあり、
それを思い出して、かすかな胸騒ぎをおぼえる。
部屋には、朝の陽射しのやわらかな光線が幾筋も交差して、もうひとつのベッドで
寄り添うように眠っている、マーガレットとエリノアの頬を、ほのかに照らしている。
やはり、マドラックスは見当たらない。
ヴァネッサは、眠気を払うために何度か首を横に振ると、ベッドをおりて立ち上がった。

しかし、マドラックスはすぐに見つかった。
彼女は室内と、ベランダを隔てているガラス戸の向こうで、手すりに上体をもたせかけて
外を眺めていた。
朝早い時間帯に特有の、白っぽい光が、その背中を押し包み、肩や腕を形作る線を、
淡くにじませている。
ヴァネッサは、彼女と自分を隔てている扉に指先を押し当て、ガラス越しに、マドラック
スのどこか不安定な身体の輪郭を、なぞってみる。
肩に落ちる髪、彼女らしくしなやかな肩から腰の曲線にそっておりていき、真っ直ぐに
伸びた長い脚へと、流れるように指でたどる。
ふいに、マドラックスが振り返り、ヴァネッサは手を引っ込めた。
235229:04/08/13 17:23 ID:0h6vK9tM
考えてみればマドラックスが、背後から近づく人の気配に、気づいていないわけがなかった。
ヴァネッサはガラス戸を開けてベランダに出ると、マドラックスの隣に並んだ。
「珍しく早起きなのね」
「目が覚めてしまったの」
答えるマドラックスの手には本があった。外を眺めていたのではなくて、本を読んでいたらしい。
「彼女たちは?」
マドラックスは、室内を視線で示しながら、マーガレットたちのことをたずねた。
眠ってるわよ、とヴァネッサは答える。
「疲れてるみたいだった。まあ、当然だけどね」
「……マーガレットって、とても可愛い子ね」
マドラックスは、ぽつりとそう言った。
「それに、あなたのことを、とても慕っているみたい」
「そうかな?」
「そうだよ。ヴァネッサのほうは、あの子のこと、どう思ってるの?」
ヴァネッサは、少し考えてから答える。
「う〜ん。強いて言えば、歳の離れた妹って感じかな……大事に思ってるのは、間違いない
けれど」
ふうん、とマドラックスは小さくつぶやいた。ヴァネッサは思わず微笑む。
「何よ、なんだかおもしろくないって顔してるわよ」
指摘されて、マドラックスは少しうろたえる。
「してないってば。してないけどさ……じゃあ、私のことはどう思う?」
「どうって……わからないわ」
「わからないの?マーガレットは大事な人で、私のことは『わからない』なの?」
「だって、うまく表現できないのよ。怒ってるの?」
「怒ってないわ!」
マドラックスは頬をふくらませて言い返した。
236名無しさん@ピンキー:04/08/14 18:18 ID:pWlEzKea
>>235 の続き

しばらく、むっつりと黙り込んで空を眺めていたマドラックスが、また話を変える。
「ヴァネッサは、ナフレスに、付き合ってる人とか…いるの?」
期待と不安の複雑にいりまじった、子どものような目で、ヴァネッサを見つめてくる。
──この子って、案外分かりやすい。
ヴァネッサはそう思いながら、あえて意地悪く、こう答える。
「どうかしらね」
「えっ、いるの?……それって、彼、それとも彼女?」
「いるなんて、一言も言っていないのに」
「うぅ〜」
マドラックスは、むくれているのを隠そうともしない。
ヴァネッサは、そんな彼女を可愛いと思い、その髪に触れ、指を絡めて軽く引っ張るよう
にする。
それだけで、マドラックスは、まるで小さな女の子のように頬を赤らめた。
ヴァネッサは、つい笑みをこぼしてしまう。
「まあ、あなたも年齢的には、マーガレットと変わらないのよね。私からみれば…」
「妹なんていやよ」
マドラックスは、ヴァネッサの言葉をさえぎり、きっぱりとそう断じた。
驚いた顔をしているヴァネッサの手をつかむと、いきなり、自分の胸に押し付ける。
「私はもう大人だもの。ここだって、ほら、もうちゃんと女でしょ?だから、子ども扱い
しないで!」
「え〜?」
ヴァネッサは、にやにやと笑いながら、とぼけた声を出す。
237名無しさん@ピンキー:04/08/14 18:19 ID:pWlEzKea
「もう、ヴァネッサの意地悪!」
マドラックスは、ヴァネッサの肩を押しやるように手を伸ばしたが、ふいにその手首をつ
かまれ、ふわりと引き寄せられた。
ヴァネッサは、マドラックスを抱いて髪に指を埋めると、耳元で囁いた。
「そんなに言うんだったら、あなたがもう子どもじゃないってこと、確かめてあげるわ」
「ヴァネッサ?」
驚いて目を瞠るマドラックスの頬に、そっと何度も、唇を押し当てる。
「な、何を……」
「わかるでしょ。それとも怖い?いやなら、やめるけど」
指の腹を太腿の外側にあてがい、すっと撫で上げながら、ヴァネッサはいたずらっぽく細
めた目で、マドラックスを見やる。
怖くなんかないわよ、とマドラックスは少しうわずった声で言い返した。
「じゃ、いいのね」
ヴァネッサはもう返事を待たず、マドラックスのつややかな唇に、触れるか触れないかの
微妙なキスをした。
すぐに顔を離して、マドラックスの反応を楽しむように、その目を覗き込む。
マドラックスは、頬をさっと赤らめ、次は自分から引き寄せられるように、顔を近づけて
くる。
今度はしっかりと、重なり合う二人の唇。
238名無しさん@ピンキー:04/08/14 18:21 ID:pWlEzKea
そっと表面を撫でるような甘い口づけに、マドラックスの口の端から、はぁっという熱い
息がこぼれ、ヴァネッサが、うっすらと目を開く。
キスに没頭しているマドラックスの、うっとりとした表情を見て、また目をつぶり、彼女
の下唇を、口で優しく挟むようにする。
すぐに、マドラックスの唇がほどけるように開いて、ヴァネッサの舌を迎え入れた。
ヴァネッサは、規則正しく息を継ぎながら、お互いの口が覆われてしまうまで、少しずつ
舌を進めていく。
口をしっかりと押し付けながらも、ともすれば焦れて性急に舌を絡めてくるマドラックス
を、顎を使ってやんわりとかわし、ヴァネッサはひたすらに優しいキスをつづけた。
舌を舌の上に乗せるようにして重ねたり、舌の周りに絡めたりを繰り返すうちに、そこに
はさざ波のように寄せては引く、静かなリズムが生まれる。
いつしかマドラックスは、もどかしく求めるのをやめ、ヴァネッサの肩に手を置いたまま、
彼女のなすがままにされている。
ふいに、その腰からがくんと力が抜け、マドラックスははっとして手すりに背を押し付ける
と、崩れ落ちそうになる自分の身体を、すんでのところで支えた。
「……大丈夫?」
ヴァネッサは、相手の表情の変化を一瞬でも見逃すまいとする真っ直ぐな視線を、マドラッ
クスの目に、じかに注いでくる。
頷きながら、マドラックスはぼんやりとした頭で、どうしよう、と考える。
ヴァネッサは本気だ。
239名無しさん@ピンキー:04/08/16 13:47 ID:IgQeVx0J
>>238 の続き

ヴァネッサは、マドラックスを逃がすまいとするように抱き寄せ、彼女の着ているシャツの裾
から、するりと手を差し入れた。
わき腹の辺りから、素肌をなぞるように撫でて、その手は次第にシャツをめくり上げていく。
ふいに、ブラを付けていないむきだしの乳房を、掌で押し包むようにぎゅっとつかまれて、マ
ドラックスはびくんと肩を震わせた。
ヴァネッサはかまわず、その胸を、遠慮のない手で撫でまわす。
マドラックスが羞恥に駆られて目を伏せると、ヴァネッサの手の動きに合わせて、赤のシャ
ツが上下に、波打つように形を変えているのがみえる。
「ね、ねえ…」
マドラックスは、今にも泣き出しそうな、頼りない声を出した。
「今度はなあに?」
マドラックスの恐れをたやすく見透かして、ヴァネッサの目が笑っている。
「マーガレットたちに、気づかれちゃうよ」
「そうね。だから?」
「だから、って……」
「いいじゃない、私は平気よ。いやなら、あなたが静かにしていればいいだけの話でしょう」
「で、でも……」
「ああ、もう、あまり手を焼かせないでちょうだい」
ヴァネッサは焦れたようにそう言うと、シャツを一気に、胸の上まではだけさせた。
240名無しさん@ピンキー:04/08/16 13:49 ID:IgQeVx0J
「きゃあっ」
マドラックスは真っ赤になって、ヴァネッサの腕を押しやろうとするが、すでに遅い。
「わあ〜…綺麗なおっぱい」
シャツを押し上げた勢いで、大きく揺れたマドラックスの胸に、ヴァネッサは感心してため息
をもらす。
「確かに、ここだけは、大人になっているみたいね」
そう言うと、乳房を下から持ち上げるようにして支え、たっぷりと唾液で湿らせた舌の腹を、
淡い色にそまったマドラックスの乳首に押し当てる。
「は…ああぁっ」
いきなり核心を突くような強い刺激を与えられて、マドラックスは肩をぎゅうと丸め、反射的
にヴァネッサから逃れるような姿勢をとる。
ヴァネッサは、すかさずマドラックスの肩を捕まえて、さらに顔を押し付けてくる。
マドラックスはもう立っていることができずに、手すりに背をあずけたまま、ずるずると崩れ
込んでしまう。
ヴァネッサは、マドラックスの乳首を口に含むと、尖らせた舌を素早く左右に動かして、舐め
まわした。
その手は、胸や脇の周りを、優しく揉みほぐすように愛撫していく。
マドラックスはなすすべもなく、ヴァネッサの頭を抱え込むようにして、彼女にしがみついた。
241名無しさん@ピンキー:04/08/16 13:52 ID:IgQeVx0J
頭の後ろの方から、さむけにも似た痺れの感覚が起こり、じわじわと背筋を伝って、拡がって
いく。
舐められているのは胸なのに、首筋から耳にかけて、羽毛で執拗にくすぐられているような、
身体が浮き上がってしまいそうな鋭い快感が、何度も突き抜ける。
マドラックスはしきりに、すすり泣くような小さな声をもらす。
ヴァネッサはふいに身体を離し、唾液で濡れた口を、手の甲で拭った。
ほっとしたのもつかの間、今度は腰を抱え上げられて、マドラックスは身体をこわばらせる。
ヴァネッサはもどかしげに、その腰を包むホットパンツのファスナーを引き下ろすと、下着ごと指
をかけて、端を引っ張った。
「い、いやっ!」
「こら、あばれないの。そういうのも可愛いけれど、むしろ逆効果よ」
ヴァネッサは苦笑しながら、器用にパンツと下着を脱がせていく。
彼女の手慣れた指先に、安心よりも今は恐れのほうを、マドラックスは感じてしまう。
ヴァネッサもそのことは察していて、マドラックスを恥かしがらせないように目をつぶり、そっと優し
いキスを、下腹のあたりに浴びせていく。
「ごめんね。ほんとは、ちゃんとベッドの上でしてあげたいけれど、私が我慢できないの」
「ヴァネッサ……」
ヴァネッサは、手を下ろしてマドラックスの脚を割り、性器に指をあてがう。
「ふあぁ…っ」
マドラックスは、思わず喘ぎ声をもらし、ヴァネッサの肩に頬を押し付けて抱きついた。
242名無しさん@ピンキー:04/08/16 13:55 ID:IgQeVx0J
ヴァネッサはマドラックスの髪を撫でてやりながら、指をゆっくりと動かして、熱く火照りは
じめている彼女の陰唇を探り当て、周辺からなぞるように愛撫しだした。
薄い茂みに包まれた柔らかい肉を、膣口を中心に大小の円を描いて、マッサージする
ように撫でたり、さすったりする。
やがて、もうとろけそうに熱い愛液をにじませている、内唇に指をあてがい、押し拡げた。
「あっ…ふ…ッ」
彼女のクリトリスを、包皮の上から優しくなぜるようにすると、それだけでマドラックスは、
肩を小さく震わせ、熱い喘ぎをもらしはじめる。
包皮をめくってしまわないように注意しながら、クリトリスに指の腹をあてがい、軽く力を
加えて押す。
いきなりじかに触れて、強い刺激を与えても、相手にとっては痛いだけだ。
そのまま小刻みな振動を加えると、マドラックスは突然びくびくっと背を反らせた。
膣が、上下に蠢くように、収縮しはじめる。
「少しいっちゃった?」
ヴァネッサは、マドラックスの額に汗で張りついた髪を、指でかき分けてやる。
マドラックスは、恥かしそうに頷く。
「うん、ちょっとだけ……」
「じゃあもう、入れてもいいわよね」
そう言うと、ヴァネッサはマドラックスの膣に、指を挿し入れた。
243名無しさん@ピンキー:04/08/16 13:59 ID:IgQeVx0J
「ふあぁぁ…!」
マドラックスは小さな悲鳴にも似た声をあげる。
胸の奥に、疼くような切なさを覚えて、喉を詰まらせてしまう。
「あなたって、すごく敏感なのね。マドラックス」
ヴァネッサの指は、いったん奥深く沈んだが、すぐに入り口の浅いところまで、引き返してくる。
ものすごく微妙な快感が、身体の芯を熱く痺れさせ、もっと奥まで突き入れて欲しいと感じる
一方で、宙吊りにされたままの今の感覚も、呼吸するのを忘れてしまいそうなほどに快い。
ヴァネッサの指の動きが、ぴたりととまる。
マドラックスが、涙をにじませた目を、うっすらと開く。
「……どうしたの?」
「そういえば私、女の子の気持ちいいところって、よくわからないわ」
「ええっ?」
どういうこと、とマドラックスはたずねる。
「だって、女の子を抱くなんて、はじめてなんだもの。わからないのも無理はないでしょう?」
ヴァネッサは焦るでもなく、むしろ妙な余裕さえ感じさせる表情で、マドラックスを見つめる。
「そんな…どうするの?」
「どうしようかな」
「……」
244名無しさん@ピンキー:04/08/16 14:03 ID:IgQeVx0J
だんだん不安になってきたマドラックスに、くすりと笑ってヴァネッサが囁く。
「だから、お願いがあるの。あなたの気持ちいいところ、私に教えて?」
「……それって、どうすればいいの?」
何か嫌な予感が頭をかすめたが、こんなところでやめられたら、熱く潤んで彼女を待ち受けて
いるこの身体を、どうすればいいのかわからない。
ヴァネッサは、指を咥えたままのマドラックスの腰を抱き寄せ、膝立ちにさせた。
ヴァネッサと向き合う形で脚を開いていた、これまでの姿勢にも無理はあった。
しかし膝を突いて腰を浮かせると、脚が真っ直ぐ伸びてしまうせいで、膣に入っているヴァネッサ
の指が、クリトリスにまともに当たってしまうのに、マドラックスは気づく。
ヴァネッサの指から逃れるように、腰をもぞもぞと動かすマドラックスを、ヴァネッサはいたずらっ
ぽく笑いながら見上げている。
「……で…はあぁ…それで、どう…すればいいの?」
「だからね、私はこうやってじっとしてるから、あなたが動いて、私の指に教えてくれればいいの」
「無理よ!」
この体勢では、とマドラックスは心の中で付け加える。
「できないのなら、やめるわ」
ヴァネッサは、首を絞めたくなるくらい意地悪な笑みを浮かべて、マドラックスをおどかす。
マドラックスは、泣きそうな顔でヴァネッサを見下ろしている。
どうしよう。
「ふうぅ…わ、わかったわ」
どのみち、途中でやめられては困るのだ。
245名無しさん@ピンキー:04/08/16 14:16 ID:IgQeVx0J
マドラックスはヴァネッサの肩に手を置くと、ゆっくりと腰を動かしはじめる。
だが、すぐに喉元にせり上げてくる熱の塊のような快感に、がくがくと手が震えはじめる。
「ふあぁ…あ…うぅ…ッふ……あうぅぅ…!」
激しく脈打つ鼓動に同調して、波のように襲ってくる切ないめまいのために、マドラックス
の顎から汗が滴ってくる。
ぎゅっと目をつぶり、唇を噛んで、何とか堪えようとする。
ヴァネッサは、その顎や首筋に口を付けて、舌でぺろぺろと舐め取っていく。
「ん…上手よ、マドラックス。すごく締まって、熱くなってきた……」
ヴァネッサの額にも、汗がにじんでいる。
ぞくぞくと背中を突き抜ける痺れのような快感に、マドラックスは次第に予感めいたものを察
知して、どうしようもなく腰の動きが速まっていくのに、逆らうことができない。
自らの指を貪って、激しく腰を振りたてるマドラックスの姿態に、ヴァネッサは笑みをもらす。
「すごいわ……今のあなた、最高にいやらしいわよ…自分が今、どんな恥かしい格好をしてる
か、分かってる?」
「いやっ…言ったらだめ……ヴァネッサ!」
「そう、いったらだめよ、マドラックス。この程度でいっちゃだめ…マーガレットと違って、子どもじゃ
ないってところ、見せなさいよ」
そう言うと、ヴァネッサはいきなりマドラックスを組み敷いて、その身体の上に身を乗り出し
てきた。
「ああぁぁっ…!ヴァネッサ、だめ、だめだってば!」
マドラックスは、弾かれたように悲鳴をあげ、いやいやをする子どものように、首を左右に激
しく振る。
246名無しさん@ピンキー:04/08/16 14:20 ID:IgQeVx0J
「……なかなか上手だったけれど、ただなかに入れて擦ればいい、ってものじゃないのよ。
そうでしょ?」
ヴァネッサの顔も、切羽詰った表情に歪みはじめる。
マドラックスの中で、指を膣の天井のほうに向けて曲げ、そろそろと探っていく。
「はぁっ、はぁああ……ッもういかせてよ、お願い…頭おかしくなっちゃうよぉぉ!」
「だ〜め!何時間かかってもいいのよ、ほんとに頭おかしくなっちゃうまで、いっぱいいかせ
てあげるから」
熱に浮かされたようにつぶやいているヴァネッサの指先に、ゴムのような膨らみが触れる。
「あった。多分、ここでしょ?」
すかさず、その部分を押し上げるヴァネッサ。
「……ひぃっ!」
マドラックスが感電したように目を瞠る。
「ひああぁ!だめ、ヴァネッサ、それはだめ!……でちゃう、おしっこもれちゃうから!」
「ここなのね……もらしていいわよ、マドラックス」
限りなく的確な指が、小刻みな振動を起こし、マドラックスの頭のなかで何かが吹っ飛んでし
まう。
パニックを起こしてしまいそうなほど、限界をこえて、マドラックスはのぼりつめていく。
──彼女は、私の身体を、知りつくしている。
はじめて触れられたはずなのに、すでに彼女のものみたいに。
いや、これではまるで、自分で自分を抱いているのと、同じことだ。
ヴァネッサの指が引き起こす、嵐のような震動が、身体を宙に放り上げてしまう。
身体があわになってしまう。
247名無しさん@ピンキー:04/08/16 14:23 ID:IgQeVx0J
ぎりぎりまで引き絞った弓を放つように、ヴァネッサが、いきなり指を抜いた。
「……ッ!!」
プシッ、と音をたてて、何か透明な液体が、マドラックスの中から勢いよく飛び出た。
ついで、ピューッとおしっこのようなものが溢れ出てくる。
肩で息をしながら、マドラックスは信じられないという顔で、それを見下ろしている。
「あは……はぁ…はぁ…」
「大丈夫?」
ヴァネッサは、放心状態のマドラックスを優しく抱き寄せて、唇にキスをし、舌をゆっくりと絡
め取った。
マドラックスの太腿が、細かく痙攣して、彼女は思うように声を発することができない。
ヴァネッサの顔を見ようにも、すぐに目の焦点がぼやけてしまって、うまくいかないのだ。
肩で荒い息をつくばかりのマドラックスに、ヴァネッサは微笑む。
「ふふ、すごく可愛かったわよ、あなた」
「……にが」
「なあに、マドラックス?」
「なにが、よくわからない、よ……なに、これ。私に何したの?ヴァネッサの、変態!」
マドラックスの、精一杯の抗議にも、ヴァネッサは少しも動じない。
「でも……変態でも、好きでしょ?」
「知らない!」
「素直に、好きだって言いなさいよ。そしたら、もっと気持ちいいこと、してあげるから」
ヴァネッサは冗談めかして言ったが、その声には、微かに切実な響きがこもる。
マドラックスはしばらく、恨めしそうな目で彼女をにらんでいたが、やがて少し顔を赤くして、
言った。
「大好きよ、ヴァネッサ」
248名無しさん@ピンキー:04/08/16 14:30 ID:IgQeVx0J
その頃、互いに背を向けてベッドに横たわっていたマーガレットとエリノアは、二人ともすっかり
目を覚ましてしまっているのに、微動だにできないでいた。
マーガレットが思い切って、寝返りをうち、エリノアの方に向き直る。
「ねえ、エリノア?」
「はい、お嬢様」
「なんだか、さっきから、泣いているみたいな声が聞こえない?」
状況に似合わない、妙に能天気なマーガレットの口調に、エリノアは小さなため息をつく。
「……いいえ。それはきっと、気のせいです」
マーガレットはくすりと笑い、頷いた。
「そっか」

END
249名無しさん@ピンキー:04/08/16 18:51 ID:b9ocVKAQ
神様キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!
250名無しさん@ピンキー:04/08/17 17:40 ID:vui+5Uk4
251名無しさん@ピンキー:04/08/17 18:38 ID:di2KQciO
窓たんがすごくかわいい。GJです。
しかし、こちらに書いてくれたのは、ここの保守兼
向こうの人と被らないようにっていう配慮なのかな?
252248:04/08/17 20:28 ID:0h5Mnj7v
>>251
向こうのスレには以前書いたので。

書いているうちに話にかなり無理が出てきてしまい、今自分で
読み返しても結構きついです。
お目汚し失礼しました。
253名無しさん@ピンキー:04/08/17 23:33 ID:tqtlE/1/
イ、イイ(゜∀゜)!
254名無しさん@ピンキー:04/08/21 14:46 ID:oP226XyH
保守
255名無しさん@ピンキー:04/08/22 08:52 ID:08FQaDFP
腰振るマド
変態呼ばわりされるバネ
イーネ!
ああ、でも体位がわからん!
エロは体位がわからんとヤキモキするんだよ!
俺に読み取る力が無いのか?
チクショー、マドがバネの指に対してどうやって腰振ってるんすか?
おしえてアルムおんじー
256名無しさん@ピンキー:04/08/22 12:41 ID:30K0z8kE
某4コマ作家スレの嫌百合厨の頭の悪さに辟易…。
まぁアレは百合ヲタの方も香ばしかったからおあいこだけどね。
257名無しさん@ピンキー:04/08/25 00:39 ID:0cz05LCv
258名無しさん@ピンキー:04/08/25 13:02 ID:2KiJax4I
>256
4コマで百合か否かで揉める…あそこかなー。と思ってたら、案の定。
読んでみて、正直、百合漫画認定してる奴のがオカシイと思った。

なんにせよ、百合好きはこんなのバッカと思われそうなのが一番辛いな。
259名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:23 ID:OP2KR1QB
ROの某スレに投下したものをリテイクせずに再投下。石ナゲナイデ・・・・・・。
・・・
 その日、濃い霧がそのダンジョンの深淵を覆っていた。
 というかバイアラン島ダンジョンの四階は、いつも濃い霧に包まれている。 水のなかにいるような辺りの風景は、とても幻想的で神秘的。
 乙女ロマンチックハートホットショット放出モードだ。
 だが、ここにくる冒険者は決死の思いで狩りをしている。
 血潮が吹き上がる殺戮の戦場……霧はそれをも隠している……。

 まあそんなことはどうでもよくて。
「くーー……っ」
 という、悲痛な声が、このイズ四階で聞こえる。
 クルセイダーの女の子が走っています。狩りをしている者とはまた別な必死さで。
 額から汗が流れています。もつれる足を懸命に引きずりますっ。
 切実! 彼女は懸命に走ります! 親友を待たせたどこぞの羊飼いのように!
 彼女の願いはオンリーワン。
(お、おもらしする〜〜〜っ!)
 トイレに行くこと。

 とうぜん、ダンジョンにトイレなんてものは存在しない。
 いつもなら蝶の羽で颯爽と帰るところなのに……。
「うー。あの商人め…蝶の羽ぼったくりおって…」
 クルセイダーの意地が、原価超過した蝶の羽を買わせなかった。それが地獄の一丁目。
 そして時間もない、ただでさえピンチだった状況なのに。
 ふとモンスターに囲まれているPT、まして助けを求めているなら、救わないわけにはいかない。
 半分泣きながら倒したときには、もうほとんど限界に近かった。
 相手が何か言う前に、とっさに使ったハエの羽。だがますます出口から遠くなってしまった。
 きゅっ……。
「あっ…」
 苦しい。思わずぺたんと地面にへたれ込んでしまう。
 いますぐにでも放出してしまいたい、そんな衝動。
 幸いあたりに人はいない。ここでしちゃっても、ばれたりしない。
260名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:26 ID:OP2KR1QB
(な、何を考えているんだ私! はしたないぞっ)
 はっと思い直す。早くいかなくては。時間が経つたびに危険は増していく。
 そう思って一歩を踏み出す、けれど。
 ぎゅっ! お腹を締めつける苦さが急激に責めたてる。
「っ!」
 だめだ歩けない。ペタンとその場に座り込んでしまう。
 限界。目じりに浮かぶ涙を、慌ててふき取った。
「……」
 苦しい。だけどこんなところで……。…でも辺りには人もいないし…。
「…ちょっとだけなら」

 自分に言い聞かせるようにつぶやいてみる。
「…ちょっとだけ…我慢できるようになるくらいまで……」
 ほんの少しなら、いい。これ以上一歩も歩けないんだから。しょうがない。
 きょろきょろ、改めて辺りをうかがう。誰もいない。
「……よし」

 するり……。
 十字マークの入った前掛けを持ち上げて。下半身を守る鎧を地面に落とす。
 幸い、辺りに音はしなかった。
 このアーマー、一度脱ぐと簡単につけられないから…。
 一度はっと息を吸う。
「ん……」
 腰を落とした。鎧を脱いだ、素のままのお尻に霧の冷たい感触。
 あ、なんだかムズムズする。くすぐったいようなかゆいような……奇妙な感覚。
261名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:28 ID:OP2KR1QB
「はふ……」
 こわばっていた下半身が弛緩していく。こらえていたものが一気に出る、その予兆。
 知らず息が漏れていた。鼻にかかる熱い甘い息。
 なんだろう、この感覚。初めてだけど。とても心地よいような……。
 気持ちいい?
 きゅんっ……。
「あ……」
 出る。
 そう思った、次の瞬間――。

「見つけましたぁ!」
「!!」

 突然聞こえた、無邪気な声。驚愕とともに辺りをうかがう。だけど人の影も形も見当たらない。
「わかりませんか、ほら」
 目の前の霧が揺れた。擬態が解けて、徐々に人の姿をとっていく。
「あ、なた……」
「さっきのクルセイダーさん、ですよね?」
 クスッ。先ほど助けたPTの一人である女プリーストが、私を見て悪戯っぽく笑っていた。
「今度はすぐ去られないよう、クローキングで近づきましたけど、大成功!」
「っ……!」
 人がきた、なのにますます激しさを増す下腹部の疼き。
 あっ、もうだめ、耐え切れない……。
 ぷしゃ……。
 薄い、黄色い汚水が噴き上がる。私のおしっこ。この人の目の前で出して……。
 それはそのまま地面に落ちない。水の濃霧に交ざって、溶け合っていく。
 私は呆然とそれを見ている。
262名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:30 ID:OP2KR1QB
「きゃっ☆」
 プリーストから小さな歓声が上がる。
 私を見ている。
 だらしなく人前で放尿する私の股間を見ながら好奇に目を輝かせてる。
 全身から力が抜けた。
「み…ないで……」
 訴える言葉は、ひどく弱々しい。
 プリーストの喉がコクンと動いた。
「へえ…クルセイダーさん、おもらし、しちゃったんですか……」
「っ〜〜〜」
「さっきお礼いいそびちゃったけど…いいもの見せてもらいましたね……。
いつも頑丈な鎧で身を纏って……おもらしを隠すためだったんですね」
 ペロリ。プリーストは舌なめずりする。
「ねえクルセイダーさん」
「な、なに……?」
「私の服…あなたのおしっこで濡れちゃったんですよ……」
 いいながら、プリーストは自分の紫色をした服を指差す。
「それは…霧で……」
「だからその霧にあなたのおしっこがたっぷり入っているじゃないですか」
 くすくすと笑うプリーストの言葉に、全身がカッと熱くなった。
「おもらしのことも誰かにばらされたくないでしょう。
 ふふ、私のいうこと、聞いていただけますよね?」
「あ……」
 プリーストの手が近づいてくる。
 私はぎゅっと目を瞑った。
「大丈夫です…怖いことはしません。私にまかせてくれれば、ね……」
 プリーストの指が、おしっこと霧でびしょびしょになったお尻を撫でる。
 ぞくり。
 背筋を何かが滑るような感覚。
「やあ……」
「いやですか?」
263名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:31 ID:OP2KR1QB
 くすくす、プリーストは笑いながら私のお尻を丹念に撫で回す。
 またあの感覚。くすぐったいのに、気持ちよくて、そのまま続けて欲しい。
 でもさっきよりずっと激しい、その感情。やめて欲しくない…ううん、やめられたらどうにかなっちゃう。
 頭のなかがボゥッとして、甘い蜜に浸されているみたいな。
 プリーストは私の反応に満足げにクク、と喉を鳴らす。
「やめて、ほしいですか?」
「う……」
 頭で考えるより先に体が動き。首を横に振る
「わかりません。きちんとその口でいってください」
「あ……」
 頭の芯まで、甘くて熱い蜜に溺れた。
 私はかすれた声で、プリーストにおねがいをする。
「やめ……ないでください……」
「そう。素直なひとは、好きですよ」
 プリーストは私の首を優しく撫でて。
 ぴちゃり。
「ふ……」
「んむ……っ!」
 瞬間、私の唇に自らのものを押し当てた。
 自然開く口。滑り込む舌。柔らかい、湿った、どんなお菓子よりも甘い彼女の。
(キ…ス……?)
 気づくのにほんの数秒、間を必要とした。
 私にとってそれは書物で読んだことしかない、愛の営みという未体験のものだったから。
 ましてそれが女の子にされて――ううん、しているなんて。
「ん……」
 ぎこちなく。多分、呆れられるくらい不器用に、私は舌を動かす。
 一生懸命に、彼女の舌に合わせて、自らの花びらを絡ませる。
「ふふ……いいカオですね」
「ふ…みゅ…」
 プリーストは微笑み、一度私の唾をコクコクすべて飲み下すと唇を離した。
 チュパ、という水の音。離れてしまったつながり。なんだか、さびしい感覚。
「そんな物欲しそうな顔しないでいいですよ…すぐに」
264名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:32 ID:OP2KR1QB
「ん!」
 彼女の指。私の鎧にもぐりこむと、誰にも触れられたことのない双丘を弄る。
 撫でて、押して、引っ張って、揉んで。彼女の手の中でふにふにと形を変える。
 胸から感じるのは甘ったるい、おさとうみたいな――そう、快楽。
「ね。気持ちいいですか?」
「う…ん……。いいよぉ……!」
「くすくす」
 もっと、ってねだる声。きっとそれを聞き取ったのだろう、彼女はロキの笑み。
「お胸、気持ちいいんですね?」
「うん……」
「じゃあ、こっち……」
 プリーストの華奢な手が。再び私のお尻――いや。
 将来の伴侶にしか捧げられない純潔を、彼女は愛しそうに触れている。
 奪われる。奪われる……?
「いいですか?」
「……」
 ずるい、ひと。
 私にはもうすべて委ねるしか選択肢がないというのに。
「聞かないでも……いいよ」
「……ふ」
 心底うれしそうに、彼女は笑みを浮かべた。
「大丈夫です。感じさせますよ…そのための薬ですから」
「く…すり? ふあ!」
 一瞬の疑問は、突然身体に起こった変化の前に消し飛んだ。
 指、が。私のあそこに入り込んで。くちゅ、くちゅ、と湿ったそこを掻きまぜている。
 熱い。痛みもなく苦しさもなくて、ただ指が熱くて、温かい。
 ぬるぬるの液が、あそこから溢れてくる。彼女の指にしっとりと絡みついていく。
 ああ、全身がとろとろに溶けちゃいそう。
 もうだめ、何も考えられない……!
265名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:34 ID:OP2KR1QB
 ふっとプリーストは一度指を止めて、自身の髪を掻き上げた。
「いちおう教えておいてあげますけど。
 前もって、あなたの常備している回復薬に利尿剤と媚薬いれておいたんです。
 あのときあなたを横目に見たのは助けて欲しいわけじゃなくて、効果を確認するためだったんですよ。
 まあ効いていたみたいで助かりましたが」
「ど…して……あん!」
 指は動いていないのに。そこに彼女の指があるというだけで、私の全身は悦びに震える。
 とらわれている。
「くす。そんなの、好きだからに決まっているじゃないですか。
 気高いあなたを…私の下で、こんな風に喘がせてみたかったんです。もう、耐えられないでしょう?
 まるで魔物に蹂躙されるように、あなたの正気はこの女に陵辱されているのです」
 彼女に言われなくても、私の腰は、勝手に動いてしまう。
 気持ちいい。もう、このためなら何をしたっていい。
「うご…かして……」
「ふふ? いいんですか、こんな女の思惑通りに堕ちて」
「いいの……」
 私は彼女の頬に手を添えると、ゆっくり顔を近づけた。
 触れるだけのキス。
「あなたの望むとおりにして……」
 身体も、心も。あるいは運命すらも。生涯のすべて――。
 支配された――支配されたがった。
 彼女に、すべてを。
「……じゃあ、愛しますね」
 彼女は神妙にいうと、その衣をパサリと地に落とした。
266名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:37 ID:OP2KR1QB
 私はそのとき。
 唐突に、初めて気がつく。
「…名前、聞いてなかった」
 彼女はぱちくり目を瞬いた、今までの関係からは思いもよらない
言葉だったかもしれない。心すらも許していたのに。そんな。
 けれど、これから始まりだから――快楽、また彼女と私の服従、
そして恋愛関係、すべてこれからが始まり。
 彼女はぱっと笑顔を見せて。まるで太陽が差し込み、霧を裂くように、
あるいはランプの炎が花開くように明るい笑顔を見せて。
「私の名前は」

267名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:39 ID:OP2KR1QB
もう一つ。

・・・
 今日も元気に鼠退治〜♪
 ぽこ、ぽこ。下水でタロウとコウモリを相手に、私はチェインを振り回す。
 ポタはあっても、人気ポイントまでいけないアコライトはとっても貧乏。ビレタなんて他人の頭の上でしか見たことない。その日の人参代を、私は下水の収集品で稼いでいた。
 よかった。今日は人が少ない。順調にタロウを倒す〜。
「あ」
 ふと、タロウから何かがこぼれた。ま、まさヵこれは……。
「オ、オラオラ!」
 いそいで相場チェーック。バッと世界の外まで電波を走らせて、相場情報→オラオラ→検索。
 ページが表示されました。
「はうわっ!」
 なななーんと50k↑ではありませんか。貧乏暮らしもこれで脱出?!
 やりました奥さんっ(誰?)
 うれしゃーうしゃー。おおなんだか祝福の音がする。うしゃーうしゃー?
「のわ!」
 とかやってたら群がる蟲たち。ぱく。オラオラは食われた。
「がちょーん」
 しかし取られてたまるかぁ。今の私は執念の鬼、デブルチにも魂を売ったアクライトなのですよ!
 取られたのは雌と小さいのどっちかわからない。小さいやつは弱いし、まずこいつらから倒そう。こいつらがアイテムを落とせば雌だって引き寄せていられる。
 うしゃーうしゃー。
 ぽか、ぽか、ぽか、ぽか。ぐしゃ。うしゃーうしゃー。
 ぽか、ぽか、ぽか、ぽか。ぐしゃ。うしゃーうしゃー。ヒール!
「ふう」
 数が多いけれど倒せないほどじゃない。
 化け餌だってまだたくさんもっているのだよ( ̄ー ̄)フフフフフフ。
268名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:40 ID:OP2KR1QB
「あれ?」
 ふいに雌が軌道を変えた。何? 浮かぶクエスチョン。
 どん。炎のタマ。ぐしゃ。
「……」
 ぽろり、と落ちるオラオラ。ひょい、と炎のタマを撃った主は拾い上げた。
 マジの女。うさみみなんぞつけている金の亡者!
「ん……?」
「それあhわわした」
 ヒール!
 「わたしの」と言いかけたものの、群がる蟲たちのせいで上手く話せない。蟲たちは増えていくし、もう話すヒマもないほどにヒール! 殴り。
 怪訝そうにマジシャンは見ていたが、やがてスタスタ去ってしまった。助けなさいよ!
 うう、でも名前はチェックしたからね。WISして取り返してやる〜〜。
 なぜかさらに増える蟲たちに文字通り閉口しながら、私はハエを使った。
 ひゅーん。

 てくてくてく  λ......[地下水路]

「この辺でいいかな……」
 人気のない、湖の近く。ここからならあそこまで順調に届くだろう。
 どん、と立てた大きな板に名前を入力。プルルルル〜。

TO:もしもし〜〜
269名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:41 ID:OP2KR1QB
 (数十秒経過)
FROM:はい?
 (でてきた。ちゃんと普通のひとだ。再び連絡〜)
TO:あの、さっきオラオラ拾いましたよね
FROM:ん…ああ。下水で拾ったけど
TO:あれ…私が倒したタロウが落としたものなんです
TO:よろしければ、返してもらえませんか?
FORM:ん〜〜
FORM:今どこ?
TO:えと
(スラッシュwhere。自分の座標を確認すると、それを向こうに告げる)
FORM:わかった。行くから、そこでまってて
TO:はいー

 通信終了。板を戻して、私はしばし待機。
 なんだか普通に進んでよかったよかった。これは返してもらえそう。
 数分経過……。
 とことこ、と向こうから歩いてくる人影。うさみみをつけている。
 パー。パー。
「こんにちは」
「あい」
「それで、さっそくですけど……」
 あー、とマジの人は頭をかく。
「ちなみに、返さないよ」
 
 え?
「いや、あれは私のものだしさ。でも持ち逃げって思われるのもあれだし。
こうして会っておこうと思ってね」
「え、えと。でもそれは」
270名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:42 ID:OP2KR1QB
「まあ出したのはあなただけど? 拾わなかったのもあなた。あなたは小さい盗虫叩いていたもの、雌を倒して手に入れた私に非はないと思うわ」
 でも、あの時は――。
 言葉をごにょごにょさせる私に、マジシャンはたたみかけるように言う。
「それにね。こう考えることもできるのよ。あなたは雌を倒せなかった、だから強い人がとおりかかるのを待って、倒してもらった」
「そんな――!」
 思わず身をのりだす。マジシャンはふう、とため息をついた。
「だからね。私は返す義務なんてないわ。それとも、何か言い返すことある?」
「う……」
 悲しいことに、ない。
 でもでも、ここで引き下がるわけにはいかないっ!
「だ、だけど私貧乏なんです。くれたっていいじゃないですか」
「悪いけど、私は物乞いに情けをかける主義はないの」
「ほ、ほら。人の出したものって後味悪いと思います」
「それは悪癖ね。私は何回もアリの巣でロイヤルゼリーとハチ蜜拾っているわ」
 ダメだ。
 この人はどうしても返してくれる気がない。
 彼女はスッと立ち上がった。
「それじゃさよなら。ノシ」
「……これだからマジは……」
 苦し紛れの捨て台詞。ピクリ、と彼女の動きが止まる。
 ぶるっ。
 な、なんだか。少し寒くなってきたような……?

「……なんだって?」

「え」
 気のせいじゃない。彼女を中心に、強力な水の魔力が発せられている。
 あまりの冷たさに思わず膝をついた。
271名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:43 ID:OP2KR1QB
「なんで……うごけない……」
 そうだ、ワープポータル。震える手で呪文を唱えて。
 だけど。
「どうしてっ? 発動しない!」
「だれが」
 どん、と押し倒された。すごい力。
 彼女はククと唇を吊り上げる。
 冷たい視線。地面が形を変えて、それ以上身動き取れなくなってしまった。
 そしてもう一度――魔法を唱えながら、彼女は私にささやく。
「マジシャン、だって?」
「あ……」
 肌の触れ合うくらい近くまで。そして私ははじめて自分の間違いを悟った。
 この人は、マジシャンなんかじゃない。
「あたしはセージだよ……間違われるのが一番嫌いなんだ」
 ひゅん。どかっ。
 肘が、きりりと私の首を締め付ける。バサリと服が身体を覆いつくす。
 息がつまった。力なく手を伸ばすけれど、それも抑え付けられた。
「どうしてやろうか? オークにでもしてあげようか」
「ゆ、ゆるしてください……」
「許す? ふふ」
 肘が離される。咳き込んで、呼吸を整えようとする。
 彼女の手がヒュ、と風を切った。その瞬間に私の服が裂ける、バッと一面に散る法衣。
「やっ!」
「許すわけ、ないでしょう? 悪い子には罰を受けてもらわないとね……」
 そういって彼女は手にしたオーガ・トゥースを閃かせた。
「そうね。このまま、裸でプロンテラを一周というのはどうかしら?」
「い、嫌ですっ……」
「いやなの? へえ、あなたにはピッタリだと思ったけれど」
 喉元に突きつけられる魔剣。ゴク、と喉が鳴る。
「なら、あなたの好きなミッ(ryのところへ放り出してあげようかしら?」
「それ……は……」
「たっぷり蟲さんたちに可愛がられるわよ…ヒドラにもね」
272名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:45 ID:OP2KR1QB
 私は泣いていた。必死になって頭を振る。彼女はおかしそうに笑い。
「ふふふ」
 魔剣が離れた。だけど私は一歩も動くことができない。その場でへたり込む。
「それなら、しょうがないわね」
「ぅ……」
 彼女の冷たい瞳が近づく……、次の瞬間。
「んっ――」
「ふみゅ……」
 唇に押し当てられる、柔らかいもの。
 瞳は瞳を見ている。冷たい瞳に宿る戸惑いの瞳。私の目。
 唇をうごめく、何か。蟲よりも柔らかく、鼠よりも強い。
 それは私の唇をこじ開けて、なかへと進入。蹂躙する。獣のように。
 それから唇は噛まれて開くことができなくなり。野獣は閉められたなかで暴れる。
 蕩けるような、熱を感じた。
「んんっ……」
「ふぅ…」
 何かが私の喉を通り過ぎて。それは熱い水。
 コクン、と喉を鳴らした。
 ちゅぷ……。抜かれる。
「はぁっ」
 それが離れて、急速に冷める。口元をぬぐうと、手の甲に紅がついた。
 彼女を見る。少し頬を染めて、その唇を指でなぞっていた。

「あたしにすべて奪われるしかないわね」

 再び地面がゆがむ。地は縄、手足を縛るように絡みつく。
身動き取れない状態で、私は必死に首を振って抗議をする。
「い、いやです……!」
「だってそれ以外の選択肢、ないじゃない」
 そろり、と彼女の指が胸をなぞる。背筋がゾクゾクとした。
 身体を洗うときとぜんぜん違う、他人に触られることの違和感。
273名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:46 ID:OP2KR1QB
「何。別にはじめてじゃないでしょう?」
「そんなこと――!」
 ふん? と彼女は首をかしげる。それからぺたぺたと全身を触り始めた。
 く、くすぐったい。さっきまでとは信じられないほど軽いタッチ。
「なんだ、処女なの」
「……そうです」
「まあそうよね。この身体なら、……」
 まるで舐めるような視線で彼女は私を凝視する。
 すべて見抜かれるような、鷹の視線。思わず身をすくめた。
「っ……」
「やれやれ。面倒ね」
 彼女はため息をつく。それから、一転。優しい微笑を浮かべて。
 思わずドキッとする微笑。それは信じられないくらい、きれいな微笑み。
「っ――」
「怖くないわ。ほら、ね?」
 まるでそれは暗示か催眠術のようです。
 怖くない、こわくない。その微笑なら、無条件に信じてしまう――。
「あー、やっぱ面倒くさい」
 顔が戻る。しくしく、やっぱり怖いTT。
 ぶるぶると身体を振るわせる。
 彼女はほんの少し考えて。
「しょうがないわね。媒体使うか」
「え?」
 パキャンと何かの割れる音、あたりの空間がピンク色に包まれる。
「属性場の応用よ、『性』属性。ここなら誰でも淫らになれるわ」
「そ、それって……あっ?!」
 再び触れる彼女の手。まるで吸いつくように胸にフィットした感じ。
 それは私の小さな胸をくにくにと揉みほぐす。マッサージされるみたいな、でもちょっとだけ違う感覚に思わず息が漏れた。それは自分でも驚くほど切ない吐息。
274名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:46 ID:OP2KR1QB
「はぁ……ん」
「たとえ、清純な処女でもね……」
 ふっと耳元に息を吹きかけられる。蕩けてしまいそう。
 ぺちゃぴちゃと耳たぶが舐められるたび、全身から力が抜けていく。
 くすくす、と彼女の笑い声が頭に響いた。
「きもちいいでしょ?」
「そんな…はず……ないです……」
「ふーん」
 彼女の手が傾ぐ。躊躇いもなく、私の黒いパンティに触れて。
 そのなかになめらかな手が潜り込む。
 するり……。
「あっ」
「濡れているじゃない」
 顔が熱くなる。そして彼女の指が動くと、それを証明するようにくちゅくちゅという音が鳴って。
 恥ずかしい。それなのに気持ちいい。できるなら、このまま溶けてしまいたかった。
 彼女の指は私をこじ開ける。
 自分でさえ触れることを躊躇するところを彼女は楽しそうに弄る。
 その度身体をくねらせて、私は与えられる快楽を甘受した。
「ねえ?」
 耳元でささやかれる。それは先ほどとも違う、子供のように無邪気な声。
 ほんのわずかに熱のこもった声。
「気持ちいい、よね……」
 私はうなずきかけて、でも首を横に振る。
 これは嘘だ。ただ属性場で、こんなふうにされているだけ――。
 けれど彼女は、その言葉にニヤリと笑った。
「そうね。そんな簡単に折れちゃあ、ね」
 指が離れる。その指を舐めて、彼女は淫靡な笑みを浮かべた。
「あ……」
275名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:47 ID:OP2KR1QB
「んふふ……おいし……」
 トロトロに溶けたミルクを飲むように、その喉へと流し込まれた。
 私の恥ずかしい液。おいしい、なんて。
「やだ……そんなこと……」
「あら? またあふれているわ」
 パンティから漏れる水を指ですくい、彼女は濡れた布をつかむ。
「これじゃあ、もうこれは意味ないわね」
 するっと足から下着が抜かれる。スースして思わず膝を閉じた。
 全身を晒してしまって。羞恥と、彼女に見られる快楽を感じている。
「さて……」
 内股に手が掛かり。閉じたものを彼女は両手で開いていく。
 私は抵抗しなかった。できなかった。毒のように、快楽は私をその色に染めていた。
 そして彼女の視線がそこに集中する。貫かれるような刺激。
「……っ。きれいね」
 一言だけの呟き。全身が悦びに震える。
 それからゆっくりと舌でなぞられる……最初は優しい、なぞるような動き。
 それでも突起に触れられると、それだけで頭が痺れた。
 ――くちゅ、くちゅ――。
「どう?」
「あ……んん……」
 紅の唇が私の白濁液で汚れている。
 犯されて。それでいて犯しているような感覚。それは心を侵食する。
「悪くない、でしょう?」
「あふ……」
 ふわふわと。全身が浮かぶような錯覚。彼女は私の内股から手を離した。
 私は閉じることができなかった。
 彼女にすべてを見せることを、心が望んでいた。
「ふ……ちゅぷ……」
 くん、と深くまでいれられる舌。その瞬間、意識は真っ白になる。
276名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:48 ID:OP2KR1QB
 背筋を大きくのけぞらせる。あそこから何かがいっぱい出されて、彼女の唇を、頬を濡らして。注がれる。
 それを気にもせず彼女は笑った。
「あ……」
「イったのね」
 わからない。けれど、身体はまだ求めている。
「ねえ?」
「は……い……」
「きもちいいよね?」
 その言葉を、望んでいたように。
 私はうなずいていた。
「どうして欲しいの?」
「もっと……きもちよく…してください……」
「そう」
 ロキのように微笑み。
「乙女、いただいてもいいのかしら?」
「っ……」
 それは一つだけの答。
 もう二度といいたくない、恥ずかしい言葉。
「……どう…ぞ……おねがいします……」
 そして彼女は本当にうれしそうに、可憐な微笑を見せた。

 背中のロープが、ゆらゆらと揺れる。
 はじめにこれに気づいていれば、こんな風にならなかったのに。
「そうそう」
「……?」
「これ。セージの特徴なんだけど、何かわかる?」
 彼女が指差したのはその問題のロープだった。
「ロープ……ですか?」
277名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:49 ID:OP2KR1QB
「まあ当たらずとも遠からずかしら」
 彼女は何か唱える。すると、しゅるとロープが動いた。
「な、何?!」
「これはね、ペノメナの触手を改良したもの。だから……」
「え? あんっ!」
 触手が胸を刺激する。柔らかくてちょっとぴりぴりする触手に撫でられるだけで、声が漏れてしまった。
「……かなり気持ちよくなれるわよ」
 ずる、と触手は身体を這う。触れたところからHな身体になるみたい。
 そこが性感帯になったみたいに、ぬるぬるを心地よく感じる。
「これを入れてあげるわね」
「そ、それって……」
 ――こんなの入れられたら私どうなっちゃうんだろう……。
 じゃなくてっ。
 こんな人外のモノで初体験?!
「痛いのとどっちがいい?」
「ど、どっちも…いや……です」
 彼女は苦笑する。
「だったらやめる?」
「それも…いやです……」
「なら」
 しゅる、とロープが動いた。
「しょうがないわね。無理やりしてあげるわ」
「やっ! んんっ……」
 叫びかけた口のなかへと入ってくる触手。生暖かくてちょっと匂う。
 ずる、ずる。前後に往復するセージの触手。
 ぬるぬるが口のなかを犯して、それを無理やり飲み込まされる。生臭い。変な味が舌にのる。だけど何回も繰り返しているうちにそれは気にならなくなった。それどころか次第、心は求めていく。
「ん。んむ……」
278名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:50 ID:OP2KR1QB
 ぼー、とした意識のなか、ごくごく液体を飲み下している自分がいる。
 おいしい。そんな風に思いながら。
 ――トロトロ。
 触手の穴から、液体が流れてくる。それはとても甘くて、だけど飲むたび、身体が熱くなっていった。
「媚薬って、どんな味かしら?」
「ごく……おい…し……」
「そうなの」
 なら、もっとあげる。
 そんな彼女の声が、聞こえた気がした。
 どくっ、どくっ……。
「ふみゅ……っ」
 とたん注ぎこまれる大量の蜜を飲み下していく。けれど溢れる液体が口の端からこぼれた。
 それはピンク色のグロテスクな液体。
 普通なら飲むのをためらうだろうけど、今の私は悦んでそれを求めていた。
「ん……はぁ…っ…」
 いけないことなのに。あそこが疼いちゃってる。
 切なくてお尻を振るわせる。何でもいいから、入れて欲しい。
 彼女の触手はもうあそこに触れている。幼い頃から大切にしてた処女を化け物の触手に奪われる。
 なのに私はもう、それを待ち望み悦びにうち震えていた。
「入れるわよ」
 残酷で冷酷な、でも甘くとろけるような彼女の宣言。
「ん……!」
 ぴちゃ、という粘液の擦れ合う音。
 今たしかに私のなかに何かが入ってきていた。
 ぴたん、ぴたんとそれはウナギみたいに入り口で暴れている。膣の壁に擦れて、それがたまらなく気持ちいい。
 ――こんなのが奥で暴れたら……。
 ぞくり。痺れそうな電流が背筋に走る。
 私は期待していた。
279名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:51 ID:OP2KR1QB
「ふふ」
 くちゅ、くちゅ――。
 淫らな音色が私の股間から聞こえて、それをはっきり自覚させる。
 押し広げられて、かき交ぜられて。はじめてなのに、好きじゃない人なのに、私は乱れていた。
 そして彼女はいやらしい私を見ながら笑い。
 ちゅるんっ。
「ああ、――!」
「頂いたわ」
 引き裂かれたヴァーゴ。
 ずっと奥まで入る触手。溺れちゃいそうなくらいの快楽。
 それから処女を奪われた喪失感。だけど私は悲しくなくて、むしろうれしいって思っていて。
 そんなHな自分がはっきりとわかった。
 興奮した。
「もう大洪水ね」
「あ、はふ……」
「それなのに、ふふ。まだいっぱい」
 彼女は私の下半身を指でなぞる。
「あ――」
 くりゅ、くりゅ。私の奥を舐めるみたいに触手が動く。
 なかを広げられる。擦られる、引っ張られる。
 その度に逃れられない快楽が、頭を貫く。
「はぁ……もう……」
「可愛い顔」
 とろり。
 彼女の唇からこぼれる、唾液。
 私は舌を寄せて。
「んん……」
 彼女の頬を舐めるように、それをすくい取る。ちゅ、という液体の音。
280名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:52 ID:OP2KR1QB
 桃色に染まった頬というお菓子の器。極上の蜜。
「っ……ちょっと今のはきたわね」
「あぁ……んっ……」
「ご褒美。イかせてあげるわ」
 そう告げられた。その瞬間。
 びくくんっ。
「んああっ!」
 触手が、大きく震える。
 それだけでも相当な快感なのに、さっきとは比べ物にならないほど吐き出される媚液。
 それが膣内を駆け上り、子宮をうつ。
「あ、ああああっっ!!」
「いきなさい。獣みたいに、達するのっ……」
 何かがくる。
 自分が弾けてしまいそうな快感。私は彼女にすがるように、手を差し出す。
 彼女は、その手を取って。
「怖くないわ……」
「あ…だめっ!!」
 あの微笑み。
 それを見た瞬間、私は堕ちた。

「んん」
 目が覚める。まだ、下半身が疼いている。
 傍らにいる彼女が笑った。
「起きた?」
「あ、はい」
 それはよかったわ。彼女はそういって。
 ひょい、と立ち上がる。
281名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:53 ID:OP2KR1QB
「あっ」
「それ、あげるわ」
 そういって彼女は床に落ちた短剣を指差した。
「これは?」
「トリプル・ドラグーングラディウス」
 見上げる。彼女はおかしそうに、クスクス、クスクス。
「思った以上に、高い身体だからね」
「……――」
 私は彼女をにらみつけた。
 それをかわすように、ひょい、と肩をすくめる。
「それで、さよならにしましょ?」
「……」
 刀身を見るだけでわかる。これは相当の業物。
 売れば、相当な値段になる。だけど。
「嫌です」
「――」
「私……こんなに安い女じゃありませんからっ」
「へえ」
 興味深そうに、彼女は私を見た。
 スッとその目が細まる。
「なら、何が欲しいの?」
「それは――」
 彼女は私の頬にその手を触れて。
 もう一度囁く。
「何が、欲しいの? 私お金持ちだもの。何でもあげるわよ」
「……っ」
282名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:55 ID:OP2KR1QB
 きっと。
 この人には、わかっているんだ。だからこうして意地悪をする。
 だったら。
「そうですね」
 私だって、意地悪してやる。
 私は息を吸い込んで。
「あなたを……、ください。あなたの、魂を」

 もう、この人から逃れられないから。
 楽しそうに彼女はうなずくと、私の唇に紅を重ねた。
283名無しさん@ピンキー:04/08/26 21:57 ID:OP2KR1QB
とりあえず20スレほど消費しつつ保守。
お目汚しスマネ。そのうち新作ツクルヨソノウチ・・・
284名無しさん@ピンキー:04/08/27 02:15 ID:WpafIGtV
>283
良い!
はげしくGJ!
285名無しさん@ピンキー:04/08/28 01:19 ID:VHvcYXWx
>283
神!
ROネタなら良かったらプリ×ソヒの和姦系キボンヌと言ってみるテスト
286名無しさん@ピンキー:04/08/30 13:31 ID:z+H7G/MU
保守。
287名無しさん@ピンキー:04/09/02 09:09 ID:+NXIW662
288名無しさん@ピンキー:04/09/03 12:40 ID:5xieuqVA
289名無しさん@ピンキー:04/09/03 21:50 ID:OW0cALaU
290名無しさん@ピンキー:04/09/03 22:20 ID:+m3aV3EN
×
291名無しさん@ピンキー:04/09/03 23:32 ID:zhRdKqct
腐男子氏は降臨しないのかしらん
百合不足ですよん
さびしいよ
292名無しさん@ピンキー:04/09/06 17:14 ID:L61FebmR
保守
293名無しさん@ピンキー:04/09/10 08:00 ID:G2hZVb10
294失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:37:57 ID:EWD7oj4F
えーと以前ここでクリタンの一人えっちネタを書いた者ですが
どうにもクリタンへの愛が収まらずまたまたやっちまったので
保守ついでにコソーリ置かせて頂きます…

今度はきちんとクラ×クリで

それでは
295失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:39:48 ID:EWD7oj4F
――ギュルルル…
朝、というにはどうにも遅い時間に
クラウは自身のたてた音で目を覚ました。

霞んだ天井を見上げながら、すっと息を吸い込む。
「…おなか、すいたな」
身体のどこかが痛いわけでもない、だけど
どうにも力が出ない、その理由は空腹からだとすぐにわかった。
「なにが食べたい?」
昨日はエキサイトしすぎたかな、と心でつぶやいていると
同じ音で目を覚ましたのであろうクリスマスが
うつぶせの格好で、枕に頬を預けたまま
息もかかるほど近いクラウに問いかけた。
296失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:40:44 ID:EWD7oj4F
悪戯っぽくはにかむクリスマスを見てクラウも自然と頬が緩む。
「可愛いなぁ」なんて胸を浸らせ、いつもの事ながら
クラウはクリスマスに溺愛なのであった。
昨日の夜も寝支度中クリスマスがパジャマに着替えていると
突如狼と化したクラウが閉じたばかりのボタンを全て外し
夜更けまでその身体を解放しなかった。
――朝寝坊も寝起きのだるさも確実にそれが原因だ。
と言ってもふたりが相思相愛なのは間違いなく
そんな強引なクラウでもクリスマスにとっては
「だいすきなクラウ」に変わりはない。
今だって空腹なのはクリスマスも同じはずなのに
クラウが喜んでくれるものを食べさせてあげたい、と
まるで新妻みたいな事を思うのだった。
297失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:41:37 ID:EWD7oj4F
しかしそんな健気なクリスマスを裏切って
クラウの欲求は別の向きへと傾きだしていた。
今日は仕事も何もないという安心感が
クラウを卑猥な欲情に駆り立てたのかもしれない。
「んー…」
何が食べたいかな、と無理やり思考を巡らせようともしたが
一度浸ったトキメキにはなかなか抜け出す事が出来ず
わずかに残った予備電源でその身体を呼び起こしてしまう。
「クラウ?………キャッ!」
上体を起こしたクラウを追いかけようと
自身も起き上がろうとした時、何かが背中に覆いかぶさった。
「クリスマスがいいな」
298失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:42:13 ID:EWD7oj4F
うつぶせの格好だったクリスマスをそのまま抱きすくめるように
身体を重ねると、クラウは顔をその長い髪にうずめる。
「いいにおい…きもちいい…」
花のような心地よい香りと絹のように柔らかい髪
それに抱擁され、このまま眠ってもいいかも、なんて
今まさにクラウの中で三大欲求が火花を散らしていた。
「ク…ラウッ…だ…め…」
その首筋にクラウの息がかかったのか
敏感なクリスマスはたったそれだけで甘い声を出してしまう。
「クリスマス…」
そこでもう勝負はついていた。
クリスマスが上気させた顔を後ろへ向けると
そこには夜更けに消えたはずの「狼」がいた。
299失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:42:45 ID:EWD7oj4F
クリスマスの長く腰までのびた髪を脇に寄せると
クラウはその身体を覆うパジャマの上に手を掛ける。
確か昨日の情事の後、クリスマスにはこの一枚しか着せていない。
記憶通り、それをめくりあげると下着はつけていなかった。
「やぁっ…だ……あっ…ぁ…」
恥ずかしさから抵抗をしようとしたクリスマスだったが
クラウがそのあらわになった背中に唇を落とすと
わずかに浮かせた身体をマットに沈め、力なく喘ぎを漏らした。
「クラウ…ん…ふ…ぁ…」
恥ずかしいという気持ちも抵抗しようとした事も確かなはずなのに
クリスマスは、クラウの唇で全てが嘘に変わるのがわかった。
クラウに敏感な素肌をかすかに触れられただけで
頬は上気し、瞳は潤み、鼓動は高まり、その速さは増す。
誰よりもそれをわかっているクラウは、半ば観念したかのように
逃げる手をとれなくなったクリスマスを、更に追い詰めるのだった。
300失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:43:14 ID:EWD7oj4F
手際よくヒザをつかせ、クラウは枕にしがみつくクリスマスを
四つんばいの形にさせる。
「んッ……く…はぁ…あぁっ…」
マットとの間に空いた隙間からその長い腕を伸ばし
果実をもぎ取るように、まだ幼いふくらみかけの乳房を弄んだ。
「クリスマス、もう気持ちいいんだ…」
優しく包み込むようにクラウがソレを撫でると
手の平にあたるかたくとがった感触に気付く。
「ク…ラウがっ……はぁっ…い…けないん…だもん…」
すぐ感じるえっちなコ、と言われてるみたいでクリスマスは
その罪をクラウに被せた。
301失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:43:53 ID:EWD7oj4F
調子に乗ってその胸をもみしだいていくとクラウはふと口を開ける。
「なんか最近…クリスマスのココ、大きくなった?」
「え…えぇ…?」
調べ上げるようにその手を滑らすと
快感にひくつくクリスマスに構わず一人納得したようにつぶやいた。
「うん、間違いない…これは将来が楽しみね」
一体なにが楽しみなのか、とクリスマスは上手く回らない
思考で考えてみたが、クラウの大胆さを増す手指に
全てかき消されてしまう。
「こっちはどうかな」
背中から腰にかけて赤い跡を濡れた唇で記しながら
やがてその場所へ辿り着くと、覗き込むように
クラウはクリスマスの秘所を指で開いた。
302失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:44:25 ID:EWD7oj4F
「あっッ…やぁぁッ…そん…な…ひらいちゃ…あぁ…」
恥ずかしさから声をあげるクリスマスだが
その想いと裏腹にまだ触れてもいないソコは
蜜を堪えてクラウを待っているようだった。
「こんなになってる…どうしてほしい?」
「やぁ…んっ…そんな…こと…いわないで…」
見られているというだけで感じてしまうのか
喘ぎの混じった声で、切れ切れと言うクリスマスに
クラウはイジワルするのさえ勿体無く感じた。
「じゃあ好きにしちゃうから」
そう言うとクラウは手の平を指が下を向くような形にして
クリスマスの秘唇へあてがい、湿りきったその場所で行き来させる。
「あぁっッ!…あぁっ…んッ…んぁっ…あぁぁっッ…」
最初はゆっくりと、だが何度も指先がクリスマスの
一番敏感な頂に触れ、その反復の勢いは増していく。
303失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:45:06 ID:EWD7oj4F
「だ…めぇ…あぁぁッ…あっ…あっ…はぁっッ…」
「ん?ここがいいの?」
往復をやめ、かたく起き上がったソコだけに指を集中させると
中指と親指ではさむようにソレをこね回す。
「あぁぁぁっッ…はッ…あっ…んんっッ…んぁぁっッ…」
与えられる快楽に夢中で耐えるクリスマス。
それを愉しみながらクラウはヒクヒクとモノ欲しそうに
何かを待つ陰唇に唇を這わせた。
「やぁぁ…あッ…あッ…あぁンっッ…
 な…かがぁ…あっ…あぁッ…あぁぁぁっッ…」
クラウが入り口からそっと舌を差し込み、中を弄ると
クリスマスが一際激しく反応する。
「なかはイヤ?」
一旦唇を離し、試すような口調でクラウは言う。
その手はクリスマスの一番敏感な場所を弄んだままだ。
304失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:45:43 ID:EWD7oj4F
「やっ…あっッ…だ…め…んぁっッ…や…やめないで…」
ふっと笑って、クラウは陰蜜の堪えたソコへ再び舌を絡ませた。
今度は丹念にその周りをなぞりながら
溢れるばかりのそれを飲み干し、そしてまた溢れさせる。
「んっ…んんっッ…んぅッ…あぁっ…あぁぁっッ…」
これ以上ないというほど恍惚な声をあげるクリスマス。
その身体の限界は、すぐそこまで近づいており
枕にしがみつき、虚ろな瞳でクラウを促すように腰を震わせた。
それに気付くとクラウの舌は更に大胆になって、膣内に侵入していく。
「クラウっッ…クラウッ…あぁっ…あぁぁンっッ…はぁぁっッ…」
内で淫らに暴れるクラウの柔らかな舌を感じながら
クリスマスは愛しい者の名を呼んだ。
それに応えるようにクラウはクリスマスも知らない
その奥にある引き金を抜いた。
305失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:46:35 ID:EWD7oj4F
「あッ…あッ…んッ…あンっッ…あぁぁぁっッ…あぁぁぁぁっッ…!!」
クリスマスの絶頂を示す声が部屋中に響き渡ると
その身体は強張り、足がガクガクと頼りなく震える。
クラウは噴き出した愛液を丹念に舐めとり
ヒクつくその場所を綺麗にすると、唇を離し満足げに微笑んだ。
「ふぁ…ぁ…はぁ…はぁ…ぁぁ…ぁ…」
淫らな吐息で酸素を吸い込みその余韻がクリスマスの思考を遮る。
そんな虚ろな顔をクラウが覗きこんだ瞬間
本日二度目の大合唱がその腹で鳴り響いた。
――ギュルルル
そこでクリスマスは正気を取り戻す。
306失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:47:06 ID:EWD7oj4F
「…もう!昨日あんなにしたのに!クラウのバカ!」
「え?え?」
クラウは突然のクリスマスの様子の変化に困惑する。
ムードを壊した事によっての非難なのかと思えば
どうやらそれは違うようだった。
「もうクラウには何にも作ってあげないんだから!」
そう言って寝室から出て行くクリスマス。
取り残されたクラウは、唸り声をあげしばらく考え込み
乙女心を傷付けてしまった事にようやく気付いた。
ともかく追いかけなくてはと、立ち上がる身体に
力を入れようとした瞬間、それは舞い戻ってきた。
307失恋x ◆YURIxM0T/Q :04/09/12 00:48:51 ID:EWD7oj4F
「クリスマ……」
その名前を呼び終わらない内に、クラウの唇を
甘い味覚が塞ぎ、額には柔らかなクリスマスの唇が触れる。
淫れたパジャマを直してきたクリスマスは
ヒザをついて、クラウの顔に自身の顔を寄せると
少しすねたような口調で言った。
「もう、クラウの嫌いなモノ作っちゃうんだから…」
それまでコレを食べていて、という意味だろうか
何も言わなかったが、クリスマスは翻し
クラウの足元にはその口に頬張らせたリンゴが
いくつか皿に乗って置かれていた。
きっと急いで剥いてきたのだろう。
くわえていたリンゴを、一口噛み砕きながら
クラウは心の中で「ごめん」と、反省するのだった。
308名無しさん@ピンキー:04/09/13 11:10:51 ID:A2X82/gi
>>294
禿しくGJ
ハァハァスレに告知した方がいいと思う

あと、「溺愛する」は使うけど「溺愛である」は使わない希ガス
309名無しさん@ピンキー:04/09/14 22:57:23 ID:++lQ1q3R
>>294
クラクリ萌えました…ハァハァ
GJです!
310名無しさん@ピンキー:04/09/15 22:31:23 ID:uB2v5ErO
311名無しさん@ピンキー:04/09/16 00:09:46 ID:2VR8xlRP
>>310
それは削除人が決めること
312名無しさん@ピンキー:04/09/16 01:59:43 ID:mdT39E/F
いまさらだけど

失恋x氏超GJ!
313名無しさん@ピンキー:04/09/23 00:01:48 ID:oPqR7WO3
保守
314名無しさん@ピンキー:04/09/27 06:28:38 ID:V1LVgJ0F
ほしゅ
315名無しさん@ピンキー:04/09/28 08:51:29 ID:DbMgYCY6
〜283のROパロ、非常に良かったです。
ROお色気担当というとすぐアコプリが思い浮かぶところを、他職が負けじと活躍できてる辺りが特にツボ。

…と感想書きつつ本日の保守。
316名無しさん@ピンキー:04/10/01 15:22:55 ID:lnDPdQIl
保守がてら

今月のまんがタイムきららMAXの「最後の制服」はガチガチで大変よかった。
あそこまでやられると、逆にこちらで妄想できる部分はもうエロしか残ってないっぽいけどね。
317名無しさん@ピンキー:04/10/04 17:01:34 ID:Yk3cTZ50
>最後の制服
んむ、いいですねえ。
でも、あの作者の作品は踏み込み過ぎないバランスが気に入っているので、私は逆にえち要素を追加できない…
感性とかツボの違いでしょうか?

…と保守。
318名無しさん@ピンキー:04/10/06 02:32:39 ID:NsqngVIw
>>317
エチ要素は「できる事」であって「やりたい事」ではないのです。
ぶっちゃけていうと、作品自体で完結してるから二次創作はやりづらいですな。

「最後の制服」は百合漫画って事でマターリ語れる場所があるけど、
Pocketは気の毒ですな。良い漫画なのに。…と保守
319名無しさん@ピンキー:04/10/07 09:46:25 ID:dfEnE2tC
俺は大綾先生と累の百合がみたい。

累「先生のおっぱい・・すっごぉい・・・サワサワ」
大綾「やっ・・コラ!伊知川さん・・・」
320名無しさん@ピンキー:04/10/09 12:55:37 ID:yZciGTmd
MAXよりは本家きららのほうがパロにはしやすいですよねえ。
過去の連載で人間関係とかがしっかり設定されてる分、ネタが出やすいと思います。

…と、発売日に乗じた保守。
無理に話のタネを作らなくても、SSでも投稿できれば一番いいんでしょうけれど…
321名無しさん@ピンキー:04/10/10 14:43:56 ID:QYhvj9KF
三キャプは
みずほ×たから と
たから×みずほ の
どっちが良さげ?

…と微妙に解りづらそうなネタ振りをしつつ保守。
322名無しさん@ピンキー:04/10/12 08:35:33 ID:V0g+dUuL
いっそ とみか×みずほ&たから というのはどうでしょうか、艦長!w

…はやく復活希望…13日をドキドキ待ちつつ保守。
323名無しさん@ピンキー:04/10/12 15:39:57 ID:WsBas9QO
つまり、巡洋艦による言葉責めってシチュですね。(*´Д`)

13日って何か出ましたっけ? と言いつつ保守。
324名無しさん@ピンキー:04/10/14 22:35:31 ID:pH2awtum
保守がてら、SS投下。エロはないです。というか、書けませんので
どうぞよろしく。カップリングはトリコロのにわ×八重。
325トリコロ にわ×八重1/12:04/10/14 22:36:34 ID:pH2awtum
  <プロローグ>
「潦(にわたずみ)さん、それなら、この花なんていいと思うわ。」
烏の濡れ羽色をした、長い髪の女性が紫色の花を指差す。髪をツインテールに結った少女が
その花を見て女性に尋ねる。
「綺麗な花ですね。なんて名前なんです?」
「…それと、白いバラ。あ、この花の名前? ライラックよ。
 -----花言葉は----- 」

《WITH LOVE,FROM ME TO YOU.》

ある春の月曜日の放課後。
「なあ、マキちー、八重ちゃん。帰りにハンズ寄ってかん?」
「いいですねえ。…あれ、にわちゃんは?」
「にわ? もう帰ったみたいやけど」
珍しいこともあるものだ、と七瀬八重と由崎多汰美は顔を見合わせて首をかしげた。
にわちゃんこと潦景子とはいつも分かれ道まで一緒に帰っていたものだし、八重、広島出身の
多汰美、大阪出身の青野真紀子が同居している七瀬家へ寄ることもしょっちゅうだ。それなのに
何も言わずに先に帰るなんて。
「なんか用でもあるんやろ。私らも、もう帰ろ」
真紀子に促され、その日は三人で帰ることになった。
326トリコロ にわ×八重2/12:04/10/14 22:37:16 ID:pH2awtum
次の日の昼休み。
「そういえばにわちゃん。昨日はどうして早く帰ったんですか?」
八重に訊ねられて、景子の顔はさっと赤くなった。
「き、昨日は…用事、そう用事があったのよ!」
(あやしい……)八重と真紀子がいぶかしんでいると、多汰美がにこにこ笑いながら言い
放った。
「私らに言えんような『いい人』と逢っとったけえ、詮索したらいかんよ。八重ちゃん」
二人が見ると、ますます景子の顔は茹蛸のように真っ赤になり、
「そ、そんなわけないってば! い、いい人…、うんいい人だけど…、いやそうじゃ
なくって…」
(ますますあやしい……)湯気が出るのではないかと思えるほど上気した顔でうつむく
景子を見て、八重と真紀子は無言で紙パックの牛乳を飲み干した。
327トリコロ にわ×八重3/12:04/10/14 22:37:55 ID:pH2awtum
それから数日。景子は月曜日以来、八重たちとは別に帰っている。
「やっぱりにわちゃんは『いい人』と逢っとるんじゃねえ」
「またそれか、多汰美。…でも、なんであいつ、何も言わんのやろ。あんまり隠し事する
やつやないのに」
帰り道、多汰美と真紀子が歩きながら最近の景子のことについて話している。二人がふと
八重を見ると、八重はあまり浮かない顔をしている。足取りも重い。
「八重ちゃん?」
「あ、はい。」はっと我に返る八重。「えっと…、にわちゃん、大丈夫でしょうか?」
「何が?」「やっぱり男は狼じゃけえねえ」
「じゃなくて! 最近にわちゃんの手、傷だらけなんですよ。あの月曜からずっと、絆創膏
何枚も貼りっぱなしなんです」
「何をしとるんやろうな、にわは」
あごに手を当てて真紀子は首をひねる。すると多汰美はポンと手を叩いて提案した。
「いいこと思いついた。明日、にわちゃんの後を尾行するんよ」
「せやな。はっきりさせた方がええし。決定」
「え、そんな! そんなの良くないですよ、真紀子さん、多汰美さん。」
「八重ちゃんも心配なんやろ? まさかとは思うけど、性質の悪いのに暴力振るわれとるかも
しれんのやで? まあ、にわに彼氏できたんなら、八重ちゃんもにわが泊まる日、夜の心配
せんでもいいやろけど」
にやにや笑いながら真紀子が煽る。やさしい八重のことだ、どうせ止めるだろうからせいぜい
からかってやろうと真紀子は高を括っていた。だが。
「分かりました。明日は私も行きます。」
八重は毅然とした態度で真紀子と多汰美に向かい、そう言い切った。
328トリコロ にわ×八重4/12:04/10/14 22:38:31 ID:pH2awtum
金曜日。前日の夜打ち合わせたとおり、景子が先に帰らないように八重が軽く引き止める。
「にわちゃん、月曜日のお弁当、何がいいですか?」
「え、あ、七瀬が作ってくれるんだったら、なんでもいいわよ。珍しいわね。いつもそんな
こと訊かないのに」
「たまにはリクエストに応えたいと思いましたから」
「ありがと。あ、ごめん、七瀬。用事があるから、先に帰るね。また来週」
「うん。じゃあ」

早足で帰る景子を、元陸上部の多汰美が見失わないように後をつける。景子はいつもは使わ
ないはずの歩道橋を通り、普段あまり自分たちが行かないようなビル街へ入っていった。
「ビル街だから買い物じゃないな…。あ、花屋さん」
そこは、企業向けのテナントビルに囲まれたなかでひっそりと営業している生花店だった。
周りのビル街に埋もれているけれども、野に咲く可憐な花のようなたたずまいで控えめな
自己主張をしているような、そんな店だった。
多汰美は生花店「Evergarden」に入ってゆく景子を確かめると、携帯電話で真紀子に連絡する。
「あ、マキちー?『Evergarden』って花屋さんに今入った。…うん、座って店員さんと話し
とるけえ、間に合うと思う」
329トリコロ にわ×八重5/12:04/10/14 22:39:09 ID:pH2awtum
五分ほどして、真紀子と八重は多汰美に追いついた。
「わあ…、こんな所に素敵な花屋さんがあったんですね」
「素敵なのは店構えだけやないみたいやけどな」
「どういうことです?」
八重が店内を見ると、すらりとして落ち着いた感じの長身の女性が景子の話し相手をしている
のが目に入った。どちらかというと人見知りをする性質の景子が、自分の知らない人とにこ
やかに話している。八重にとって、それはなんだか奇妙な光景に思えた。
「『いい人』はあの店員さんだったんじゃねえ。狼じゃのうて」
多汰美がぽつりと呟く。
「そ、そんなこと…、きっとお花を買ったらすぐ出てきますよ…あ、れ?」
八重は言葉を失った。花を選んだ景子が会計を済ませたのは見えた。普通なら店を出るはずだ。
だが、目に映った光景は違った。景子と店員は談笑しながら、店の奥の部屋へ入っていった。
そのまま三人は生花店の前で様子を伺っていたが、一時間経っても出てこない。結局、景子が
出てきたのは二時間後で、そのあとは自宅のマンションにまっすぐ帰るのを見届けることと
なった。
330トリコロ にわ×八重6/12:04/10/14 22:39:45 ID:pH2awtum
その夜。
八重は明らかにおかしかった。多汰美の部屋で得意のシューティングゲームをしていても
あっさり負けてしまう。シューティングは苦手、という真紀子と一緒にプレイしても足を
引っ張る始末。
「…お茶、淹れてきますね」
「う、うん」
意気消沈して八重は階下の台所へ行った。お盆と、急須。湯呑は、一つ、二つ、三つ、四つ。
……四つ?
おっちょこちょいだな私、と八重は薄く笑う。今日は景子はいないのだ。いつも週末になる
たびに来るものだから、つい癖で準備をしてしまった。ふと脳裏によぎる今日の夕方の生花
店での光景。背が高くて、腰まで伸びた黒髪が綺麗な大人びた店員。年は自分たちより一、
二歳位上だろうか。
「にわちゃんだって、私たち以外の友達がいたって何もおかしくないんだから」
八重は自分にそう言い聞かせる。
「でも、どうして私に何も言ってくれないの?」
そこで八重ははっと気付く。「私に」?「私たちに」ではなくて? 
そう、友達になってからの景子はいつも八重と一緒だった。過剰なくらいのスキンシップを
はかってくる度、ちょっと苦しいと思う反面、もし昔欲しかった妹がいたらこんななのかな、
と嬉しくもあった。いつの間にか、いてくれて当たり前、慕ってくれて当たり前と思って
いなかったか---。
夕方からのもやもやした気持ち。その気持ちの名は、嫉妬。
331トリコロ にわ×八重7/12:04/10/14 22:40:20 ID:pH2awtum
土曜の朝。八重の携帯が鳴る。景子からだ。
「もしもし。にわちゃん?」
「あ、七瀬。おはよう。あのね、今日の夕方、時間ある?」
「いいですよ。でも、私がいたらお邪魔じゃないですか?」
言ってしまってから、八重は口に手を当てた。これではまるで嫌味を言っているようでは
ないか。そんなつもりじゃないのに。
「七瀬?」
「あ、ごめんなさい。でも最近のにわちゃん、夕方に用事があるってことが多いですから。
だから邪魔したら悪いかと思ったんです」
心とは裏腹に景子に返す言葉はとげとげしくなっていく。このままでは景子が不審に思う
ではないか。けれども、頭から黒髪の綺麗な彼女が消えない。八重は固く目を瞑り、頭の
中の彼女を追い払おうとする。
「…あのね、そのことも含めて話があるの。青野や由崎にちょっと聞かれたくないから、
一人で来てほしいんだけど」
「…分かりました。それじゃあ、いつがいいですか」
「四時にウチに来て」
花屋ではないのか、と拍子抜けした。だが、よく考えてみれば昨日の尾行のことは景子は
知らないのだ。分かった、と返事をして八重は電話を切った。
332トリコロ にわ×八重8/12:04/10/14 22:40:54 ID:pH2awtum
三時五十分。ちょっと早いかなと思ったが、景子の住むマンションに八重は着いてしまった。
昼の間も「真紀子や多汰美に聞かれたくない話」のことが気になって仕方なかった。昨日の
尾行の手前もあり、真紀子たちには買い物に行くと嘘をついてここに来た。疑われるかと
思ったが、「ゆっくり行ってきてね」と二人からは予想外の返事が返ってきた。今日はなん
とも調子が狂う日だ。こんなことで、景子の話を冷静に聞けるのだろうか。
オートロックを開けてもらい、八重は景子しかいない潦家の居間に通された。
「あの、にわちゃん、話って何ですか」
八重は思い切って単刀直入に話を振る。景子は、顔を赤らめてテーブルに置いた手を見て
いる。
「あのね、…私、好きな人がいるの」
予想した中で一番最悪の告白に、八重の目の前は真っ暗になる。そんな八重を知ってか
知らずか、景子は続ける。
「最近、夕方に用事があるっていうのは…」
「好きな人に会うためですか?」
気付いたら八重の目には涙が溜まっていた。自分の目を拭いながら、八重は言いたくもない
ことを口走る。
「昨日、見たんです。にわちゃんが花屋さんに入っていくのを。花屋さんに好きな人が
いるんですか?」
「七瀬?…どうしたの。どうして泣くの」
「どうして隠すんですか! 好きな人が女の人だから、言えないんですか!」
「…やっぱり、女の人が好きだっていうの、おかしいよね」
景子の呟きのあと、二人のいる居間に重い沈黙が流れる。壁時計の針が刻む、カチコチと
いう音だけがやけに響く。二人はうつむいたまま、黙り込んでしまった。
333トリコロ にわ×八重9/12:04/10/14 22:41:38 ID:pH2awtum
何十分にも、何時間にも感じられるような長い沈黙を破ったのは景子だった。
「七瀬、部屋に来てくれる?」
八重はうなずいて、景子の後についていった。部屋に入ると、テーブルの上にはバスケット
に入った綺麗な花が飾られていた。紫色の花を中心に、白いバラが周りを囲んでいる。なか
なか上品なつくりのフラワーアレンジメントだった。
「綺麗…」
八重はうっとりとバスケットを眺める。
「気に入った? 私が作ったの」
にっこりと景子が優しく微笑む。八重は驚いて景子のほうを向く。
「にわちゃんが作ったんですか? 上手ですねえ」
「そう。誕生日おめでとう、七瀬」
「あ、…え、ええっ!」
ここしばらくの騒ぎですっかり失念していた。今日は自分の誕生日だったのだ。
334トリコロ にわ×八重10/12:04/10/14 22:42:22 ID:pH2awtum
「今日、誕生日でしょう? だから。何かプレゼントしようと思ったけどいいものが浮かば
なくて迷っていたの。そしたら、お母さんの会社の近くに素敵な花屋さんがあったのを思い
出して。花屋さん、…伊鈴さんっていうんだけど、その人がね、じゃあ手作りアレンジ
メントでもあげたら、って勧めてくれたの」
景子の言葉に八重は目を白黒させる。景子が好きなのは花屋さん−伊鈴さんではないのか?
「あ、あの、じゃあ用事っていうのは」
「アレンジメントなんていっても、初めてだったから、伊鈴さんに教えてもらったの。七瀬の
誕生日まで一週間しかなかったから、放課後に行って習うしかないし」
「その手の怪我は?」
「花を扱うのに慣れてないから。バラのとげが刺さったり、水切りのときに鋏で手を引っ掛け
ちゃったり。さすがにオアシス、あ、花の土台ね、あれを切ったとき、カッターで手まで切っ
ちゃって、その時ばかりは伊鈴さんに呆れられちゃったわ」
傷だらけにした手を八重に向けて、景子は苦笑した。あまり器用とは言えない景子が花と悪戦
苦闘している姿を思い浮かべると、自然と八重の口から微笑が漏れた。ついくすくす笑って
いるうちに当初の大きな疑問を思い出してしまった。
「それじゃ、にわちゃんの好きな人って……誰……?」
335トリコロ にわ×八重11/12:04/10/14 22:43:17 ID:pH2awtum
八重がうっかり漏らした、問い掛けとも取れる呟きを受けて、景子が答えた。
「私が好きなのは、七瀬よ」目を伏して付け加える。「女の子が好きだなんて、自分でも
おかしいと思う。でも、伝えないままではいられなかったの。…ごめんね」
「どうして謝るんですか」
「だって、同性から恋愛感情込みで好きだって言われても、普通困るじゃない?」
「そ、そんなことはないです」
八重の言葉に今度は景子が目を白黒させる。八重も自分の口から滑り落ちた言葉に戸惑った。
自分は景子のことをどうおもっているのだろう。
もちろん、友達としては、好きだ。真紀子や多汰美は他人だけれども今では家族のような
存在だ。それでは、景子は? 景子は自分にとってどんな存在なのだろう。
伊鈴に関心を取られたと勘違いしたときに自覚したこの気持ちは−−。

八重は、肚を決めた。

「にわちゃん、あの、答えを言いますから、座ってもらえますか」
景子はおどおどした様子で椅子に腰を掛ける。まるで裁判に掛けられた被告人みたいに。
ああ、ペットショップで苦手だった犬を抱いていたときのあの表情にそっくりだ、と
八重は思う。あの時の景子は結局犬に慣れて、帰る頃には照れながら笑っていた。今度は?
「答えは……」
八重は優しく景子の顔を両手で包み、そっと景子の唇に口付けをした。
336トリコロ にわ×八重12/12:04/10/14 22:44:08 ID:pH2awtum
  <エピローグ>
「紫のライラックの花言葉は『初恋』。その人の誕生日は5/30でしょう?誕生花なのよ」
伊鈴は景子に花言葉を伝える。
「『初恋』…。」
景子は反復するように呟く。届くかどうか分からない、初めての気持ち。この気持ちが八重に
届くことは果たしてあるのだろうか。
伊鈴はバラを数本手に取り、紫のライラックと他の数種類の花とまとめて紙にくるむ。
「白いバラを加えるといいと思うわ。花言葉は『私はあなたにふさわしい』。潦さんの心が
その人に伝わるように願って」

                                    おしまい。
337名無しさん@ピンキー:04/10/14 22:45:49 ID:2Rboey4e
保守
338324-336:04/10/14 22:48:13 ID:pH2awtum
補足1。原作では八重の誕生日は不明。作中の会話から判断するとおそらく4〜6月と思われる。
補足2。伊鈴は本編未登場。設定資料だけはあるキャラで、この中ではほぼオリキャラ。

チラシの裏に書いてろAAとともに逝って参ります。ありがとうございました。
339名無しさん@ピンキー:04/10/15 01:26:59 ID:2D+7KQEj
>>338
GJでございます。
340名無しさん@ピンキー:04/10/15 08:32:41 ID:M7IBjrpX
ナイストリコロ♪
伊鈴さん登場のあたり、凝ってますねえ。あの話は本編でも読みたいものですが…載らないんでしょうね…

13日はラブリー発売日〜…しかしキャプターズはやはり未掲載でした。
どうなってるんでしょうか…

みずほ「まだ本調子じゃないのでトリコロで精一杯?」
たから「…みずほとの過去編が最後。打ち切られた」
とみか「実は作者の人も忘れちゃってるとか!」

とりあえずアンケートに復活願いを書いて出してきます。
…とみか説が当たりだったらやだなあ…
341名無しさん@ピンキー:04/10/15 11:21:41 ID:OeK152me
ID:pH2awtum
激しくGJ!!
伊鈴さんの使い方が大変上手いと思いました。

>>340
海藍HP見ると

>■ラブリー■
>キャプター
>****
>『魔物への道』

と書いてあるのでみずほ説がFAみたい。
342324-336:04/10/15 12:51:26 ID:zL/H+Qmf
>>339-341
ありがとうございます。ここだけの話、初代スレの真紀子×多汰美が
きっかけでトリコロにはまったものですから感無量です。あの作品の
足下にも及びませんが。

>伊鈴さんについて
以前、海藍スレで「伊鈴がにわにちょっかいを掛けて、三角関係っぽく
なったら面白いんでない?」というレスを見たものですから。プレミアムを
参考に、八重ちゃんとは正反対の雰囲気を想像して書いてみました。

>にわ×八重
八重ちゃんに何かしてあげたい、と一途なにわちゃんが好きなので。
(初登場のエピソードやパンを焼くエピソードがお気に入り。)原作では
受身な八重ちゃんを動かしたくてこうなりました。
読み返すとむしろ八重×にわっぽいけど…、ラストの後で「いただきます」
したということにしておいてください。

>ID:pH2awtum
今月号のきららのネタで「PH2」があったものだから笑えました。

長々と失礼しました。
343前スレ638改め、らい:04/10/15 23:42:24 ID:Fru2RIUG
>ID:pH2awtum氏
 ハローですw 前スレの真紀子×多汰美の作者でつ。
 久々に覗いてみたらトリコロ投下されてたので勢いで書き込み。
 嫉妬心メラメラの八重タンに(;´Д`)ハァハァ

 角煮の某スレには前スレの完結バージョンを投下していたのですが、
 こっちには投下してなかったんぁ〜、と思ったので投下しておきます。
 中身は真紀子×多汰美が二作と、ID:pH2awtum氏に対抗して(とゆーわけでもないですが(笑))、
 にわ×八重が一作のお得な三点セットw 変なものは入ってない――と思います(ぇ

 ttp://ranobe.com/up/updata/up8813.zip
344名無しさん@ピンキー:04/10/17 07:58:36 ID:mOujeYVc
久しぶりに来たらトリコロ祭ですかコレ

両氏、禿しくGJでございます!
345324-336改め 酸性温泉:04/10/17 08:27:57 ID:0jtBylxa
保守。
「WITH LOVE, FROM ME TO YOU」の続き書きたいんですけど、
プロローグとエピローグだけ出来てて、肝心の中身の文章が
浮かばないです。頑張って15禁くらいを狙いたいのですが。
(あの二人でバリバリのエロは想像できないのと、自分が筆力
ないのとが問題)
346名無しさん@ピンキー:04/10/17 08:47:28 ID:l3yMrMoP
百合スレだからえろえろじゃなくてもいいんではないかな
347名無しさん@ピンキー:04/10/17 12:19:41 ID:AyJidKSy
手をつないで寄り添ってるだけで満足
キスシーンがあればお腹いっぱい
もちろんそれ以上も大歓迎
348名無しさん@ピンキー:04/10/18 20:43:07 ID:bEev9Mh3
手をつないで寄り添ってるだけで満足
キスシーンがあればお腹いっぱい
それ以上はもちろん別腹に全部いただきますw

…ごめんなさいただの保守です…orz
349酸性温泉:04/10/18 21:10:47 ID:WcFgqPvA
秋のトリコロ祭、「WITH LOVE, FROM ME TO YOU」の続編がほぼ完成。
推敲が終わったらまた後日投下します。
350酸性温泉:04/10/19 20:19:29 ID:fZgbiXJi
本日の保守。トリコロの にわ×八重その2です。
前の話は>>325-336にあります。
351トリコロ にわ×八重1/14:04/10/19 20:20:45 ID:fZgbiXJi
  <プロローグ>
友情と恋愛感情はどこが違うのだろうか。
最初は、友達になりたかった。彼女はいつも優しく笑っている。同居しているという青野や
由崎と一緒の彼女はいつも楽しそうだ。昼食のときにちらりと見えた、彼女が作っていると
いうお弁当はいかにも温かな家庭の匂いのする、美味しそうなものだった。三人で楽しそうに
話をしながら食べている姿は、その素晴らしい御馳走を彩る調味料に見えた。
−−−温かいものに触れてみたい。それが私の最初の気持ちだった。
352トリコロ にわ×八重2/14:04/10/19 20:21:18 ID:fZgbiXJi
《GREEN RIBBON》

あなたは特別だ、と伝えたかった。どうすればそれが伝わるだろう? 自分を好きだと告げた
景子に対しての答えとして、八重が選んだのはキスだった。
八重は重ねた唇をゆっくりと離す。目を開けて景子を見てみると、今起こったことがさっぱり
理解できないといった風情で呆然としている。目の焦点も合っていない。
「にわちゃん?」
「…………???」
「にわちゃんてば!」
「ヴァーー!!?」
八重に肩を揺さぶられて驚いた景子は、派手に椅子から転げ落ちた。
「何してるんですかー!」
「な、何って、な、七瀬こそ、な、な何したの?」
「い、言わせないで下さいよ、そんなこと!」
今更己のしたことが恥ずかしくなって、八重はプイッと横を向いてしまう。逆上した八重の
剣幕に驚いた景子はただ狼狽しておろおろするばかり。何で怒らせたのかと焦ってしまう。
「何か私、変な事言った? ごめん」
普段は景子の言動に振り回されっぱなしの八重だが、今は全く逆。つい可笑しくなってしまう。
「いえ、違うんです。あ、あの、恥ずかしかったものですから」
八重は膝をついて、座り込んだ景子を横からそっと抱いた。深呼吸して、伝えたかったことを
言葉に翻訳しなおす。そして、耳元で甘く囁く。
「私もにわちゃんのことが好きです」
353トリコロ にわ×八重3/14:04/10/19 20:21:49 ID:fZgbiXJi
「ほ、ほんとに?」
嬉しさ半分、狐につままれたような顔半分で八重を見つめる。八重は頬を染め、軽くうなずく。
景子は、体を四分の一回転させて八重と正対し、腰に両腕を回して抱き寄せる。弱くはないが、
強すぎでもない力加減。大切な宝物を扱うようにして抱き締める。
(なんだか不思議…)八重は景子に抱かれながら目を閉じて思う。景子が八重を抱き締める
ことは今までもよくあった。けれど、今の抱擁はこれまでとは違う。今までは幼児がお気に
入りのぬいぐるみを抱くような一方的な抱き方だった。今の抱き方からは、景子が自分を
いとおしむ気持ちが穏やかに流れてくる。
(にわちゃんって、あったかい)
あまりにも気持ちよくて、眠くなりそうだ。もしかしたら、自分はもう夢の中にいるのかも
しれない。八重はぼんやりとしてきた頭で、それでも景子を想い続ける。
354トリコロ にわ×八重4/14:04/10/19 20:22:16 ID:fZgbiXJi
どのくらい抱き合っていただろうか。ぽつりと景子が呻いた。
「…七瀬。体が痛くなってきた」
夢心地から醒めた八重がそろりと離れる。景子は椅子から落ちてから床に直に座りっぱなし
だったし、力の抜けた八重を支え続けていたものだから、お尻や背中に負担がかかったらしい。
「ちょっともったいないと思ったけど」
くすりと笑いながら、景子がぎこちなく立ち上がる。パンツの汚れを払ってから、首や腰を
ひねる。八重もつられて立ち上がる。
「ごめんなさい、その、つい気持ち良くなってうとうとと」
「なら、いいんだけど。窒息されたら困るから。せっかく好きだって言ってもらえたのに」
そう言って景子は、八重の頬を撫でる。八重の体は小さい。景子の背が平均より高いことも
あるが、顔一つ分ほど背が高い相手から撫でられていると、まるで子ども扱いされているようで
少し寂しくなる。
「もう、にわちゃんまで、真紀子さんや多汰美さんみたいに妹扱いしないで下さいよ」
「妹?」
拗ねた八重を見て、今度は景子が露骨に不機嫌な顔になる。
「…七瀬は、妹じゃないわよ」
さっきまでとは打って変わって、景子は八重を強引に抱き寄せ、体全体を持ち上げる。八重は
驚いて景子の背中に手を回し、落ちないようにとしがみつく。景子は力任せに八重をベッドまで
運び込んで、そのまま己の体もろともベッドへ雪崩れ込ませた。
態度を急変させた景子から乱暴な扱いを受けるかと警戒して、八重はとっさに身を固くする。
けれども、左耳から聞こえたのは景子の悲痛なほどの懇願だった。
「今だけ、今だけでいいから、青野と由崎のことは言わないで」
355トリコロ にわ×八重5/14:04/10/19 20:22:47 ID:fZgbiXJi
八重は言われてみて初めて、景子が真紀子と多汰美に嫉妬していたことに気付く。自分が伊鈴に
嫉妬していたように。
「ごめんなさい。…妬いてた?」
「七瀬が青野と由崎を好きなのは分かってる。青野と由崎がいなかったら、私が七瀬と話す
こともなかったかもしれないってことも。それは分かってる。そういうものだって。私だって
青野と由崎のことが嫌いなわけじゃない。でも」
混乱した口調で話す景子を八重はそのまま受け止める。
「…うん」
「お願い、今だけでいいの。あの二人のことは言わないで」
景子の声には少し涙声も混じっていただろうか。八重は景子の背中に腕を回し、自分の胸へと
抱き寄せる。色々な想いとぶつかりながらも、景子は自分の全てを愛してくれている。それに
応えたくて、両手で優しくあやすように景子の背中を撫でる。
景子は両腕を八重とベッドの間から抜き、腕立て伏せの要領で体を起こす。指で八重の前髪を
かき上げ、額に自分の唇を押し当てる。今度は目の上。頬。顎。少しずつ場所をずらしながら、
景子は八重の顔にキスの雨を降らせる。そして最後に八重の唇に熱い接吻を交わす。友達だと
いう言い訳を二人にもう許さないように。
「七瀬…、七瀬……」
景子は胸が熱く焦がれるような想いを抱きながら、うわごとのように八重の名前を呼び続ける。
顔から唇を離すと、首筋にキスをする。右手は八重の腰を押さえ、左手はブラウスのボタンを
外しにかかる。八重は景子の熱を胸の奥に流されているような錯覚を感じながら、景子の背中に
回した手の指先に力を入れる。
「に、にわ…ちゃ……ん」
自分を呼ぶ愛しい人の切なげな声を体全体で受け止めて、景子はボタンを外したブラウスの
中へと左手を侵入させていく。
「や……っ」
八重が体を緊張させて強張らせたその瞬間、それまでの静寂を破る音が部屋に響いた。
356トリコロ にわ×八重6/14:04/10/19 20:23:14 ID:fZgbiXJi
『ピリリリリリリリ』
鳴ったのは、八重の携帯電話。不意打ちを食らった景子は跳ねるように八重の体から離れる。
八重は気まずい顔をしつつ、スカートのポケットから携帯を取り出した。真紀子からだ。出ない
わけにはいかない。
「もしもし。真紀子さん?」
「あ、八重ちゃん? 今どこにおるん?」
ギクリとしながらも、その場をしのぐ言葉を考える。家の者には買い物だと嘘をついて出てきた
手前、景子の家にいると正直に言う訳にはいかない。
「今、大園です。ちょっと気に入る物がなかったものですから、時間かかっちゃいまして」
「そうなん? あ、もう帰ってきてもいいよ。こっち、準備できたから。八重ちゃん、誕生日
おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
「携帯掛けてにわも呼んだりー。いくら最近綺麗なお姉さんにかまけとっても、八重ちゃんの
誕生日無視するほど、あいつも薄情やないやろ」
「そ、そうですね」
「もう六時近いし、花屋とのデートも済んどるんちゃう?」
「えっ、もうそんな時間なんですか!」
「せや。おばさんも多汰美もななせも待っとるから。早う帰りや」
「はい、ありがとうございます」
357トリコロ にわ×八重7/14:04/10/19 20:23:45 ID:fZgbiXJi
電話を切って景子を見ると、ふてた顔で窓の外を見ている。慌てて八重は手を合わせて謝る。
「あ、あの、にわちゃん、ごめんなさい!」
「いいわよ…本当はちっともよくないけど。口裏合わせればいいんでしょう。……それより、
七瀬?」
(うあぁ…、あそこまで許しておいて中断させちゃったから、にわちゃん怒ってるよね)
「青野の言ってた『花屋とのデート』ってどういうことよ!?」
「フォアッ! そ、そっちですか!?」
「誰が伊鈴さんとデートだって? それになんで青野が、私が伊鈴さんの所に行ってたのを
知ってるのよ?」
八重は昨日、自分と真紀子、多汰美の三人で景子の尾行をしたこと、ついさっきまで三人とも
景子が生花店の娘、伊鈴を好きなものだとばかり勘違いしていたことを白状した。
「あんたたち、そんな誤解をしてたわけ」
「だって、『いい人』って言ってたじゃないですか」
「フラワーアレンジメントを教えてくれて、色々アドバイスしてくれた人が『いい人』じゃない
わけ、ないじゃない。…それより、あのエロガッパ、今日こそシメてやるんだから!!」
「ちょ、ちょっとにわちゃんっ、本当にやったら、もううちに入れませんからね!」
それから二十分後、なんとか興奮する景子をなだめて、八重は景子を連れて一緒に家に帰る
ことが出来た。
358トリコロ にわ×八重8/14:04/10/19 20:24:17 ID:fZgbiXJi
七瀬家。
「ただいまー」「おじゃまします」
「あらお帰り、八重。潦さんもいらっしゃい」
八重の母、七瀬幸江が二人を出迎えてくれた。景子が右手に持っている大きな袋に気付き、
中身は何かと訊く。
「あ、これ、誕生日プレゼントなんです。中は後でお見せしますから」
「にわちゃん、いらっしゃい」「お、にわ、来たんか」
エプロンを着けた真紀子と多汰美も二人を出迎える。…ちょっと待て、「炭生成機」の異名を
持つ殺人的な料理テクニックの二人が何をしていたのだ。八重と景子の顔色が悪くなる。
「あ、あの、真紀子さん、多汰美さん。何を作ってたんです?」
「誕生日に作るゆうたらケーキやろ」「じゃね」
「…………」
「青野、由崎、それ食べられるの?」
それからまた、恒例の真紀子と景子の小競り合いが始まった。いつもは真紀子の優勢勝ちで
終わるのだが、今日ばかりはさっきまでの景子の怒りの剣幕を恐れた八重がなんとかとりなして
ドローに終わった。ちなみに、ケーキは市販のスポンジに果物をはさんで生クリームを塗った
だけなので、味に問題はなかった。
359トリコロ にわ×八重9/14:04/10/19 20:24:47 ID:fZgbiXJi
夕食が終わって、プレゼントの時間。幸江からは昔着ていた着物を仕立て直したものを、真紀子
からは八重お気に入りの作家の新刊本、多汰美からはかわいいくまのぬいぐるみ。そして、景子
からは手作りのバスケット入りアレンジフラワー。紫色のライラックを中心に、白バラ、ガー
ベラなどをあしらったアレンジメントに一同は賞賛の声を上げた。鳩のななせも箪笥の上から
見ている。
「なあ、にわちゃん、これどこで買ったん?」
多汰美に訊かれて、景子は答える。
「花は『Evergarden』ってお店で買ったの。そこの店員さんが親切な人でね、バスケットも
譲ってくれたし、アレンジのやり方も一から教えてくれたの。ここ一週間、これを習いに通い
続けてたんだけど」
「にわも結構やるやん。ところで、本当に花だけが目的やったんか?」
「……青野、どういう意味よ?」
「早う帰る理由をもう言わんから。デートかと思っとったわ」
「七瀬を驚かせようと思って黙ってたのよ。お生憎様、疑われるような相手なんかいないわよ。
ほんっとにあんたってエロガッパね」
「まだ引っ張るか、そのネタを!」
危うく第二ラウンドが始まりそうになるところを八重と多汰美が引っぺがす。八重は真紀子に
多汰美の部屋でテトリスでもしようと持ち掛け、二階へ連れて行く。多汰美は二人に、お茶
持って行くけえね、と告げて、景子を台所へ連れて行く。
360トリコロ にわ×八重10/14:04/10/19 21:12:22 ID:fZgbiXJi
台所にて。
「でも、良かった」
多汰美が茶葉を量りながら景子に言う。
「何がよ?」
湯呑を用意しながら景子が訊く。
「八重ちゃんには言わんといてね」
「うん」
「ここしばらく、にわちゃんが構ってくれんかったから、落ち込んどったんよ」
「え、七瀬が?」
「昨日の夜なんかお通夜みたいじゃったけえね。驚かそう思うのもいいけど、あんまり心配掛け
させたらいけんよ?にわちゃん」
「うん、…ごめん」
(「姉」にはある意味、敵わないのね)景子はお盆に茶漉しと湯呑を載せ、多汰美を一瞥し、
苦笑した。
361トリコロ にわ×八重11/14:04/10/19 21:13:19 ID:fZgbiXJi
多汰美の部屋にて。
真紀子は黙々とブロックを積んでゆく。八重はそれを傍らで見ている。
「八重ちゃん、ごめんな」
視線はテレビ画面にやりながら、真紀子がぽつりと呟く。
「何がですか?」
「にわのこと。本気で気にしとったんやろ? 離れていくんやないかって」
「ええ、まあ」
「八重ちゃんのこととなったら、あいつ、なんでもするんやなあ」
感心しながら、真紀子は山のように積んだブロックを次々と消してゆく。八重は微笑みながら、
プレイ中の真紀子を眺めている。
「…八重ちゃん」
「はい?」
「にわに変な事されそうになったら、すぐに呼ぶんやで」
「……はい」
(真紀子さんには敵わないな)先刻の携帯電話の掛かってきたタイミングを思い出し、八重は
冷汗三斗の思いをする。
362トリコロ にわ×八重12/14:04/10/19 21:14:01 ID:fZgbiXJi
夜も更けて、八重の部屋。
さて困った、とパジャマに着替えた二人は考え込む。いつも景子が泊まる日は、一組しかない
布団で一緒に寝ていた。しかし、夕方の出来事の記憶が生々しすぎて、通常通り一緒に寝る
のには色々と問題がある。隣の部屋では真紀子が寝ているのだから続きをするなど論外だし、
そうかといって今日に限って別々の部屋で寝たりしようものなら、真紀子と多汰美にまた要らぬ
心配をさせてしまう。
結局、二人は考えた末に一緒の布団で背中合わせに寝ることにした。
「そろそろ電気消しましょうか」
「うん」
「にわちゃん」
「…ん?」
「今度、伊鈴さん紹介してくださいね。お花も見てみたいですし」
「…うん。じゃ明日皆で行く? いい加減、青野と由崎の誤解をしっかり解かないとまたやや
こしくなるから」
「ふふ…はい、じゃ明日、一緒に行きましょう。みんなで」
「……七瀬」
「はい?」
「今度は、携帯の電源切っといてね」
「にっ、にわちゃん!?」
「おやすみ〜」
真っ赤になってうろたえる八重をよそに、景子はしれっとした顔で横になった。
363トリコロ にわ×八重13/14:04/10/19 21:14:37 ID:fZgbiXJi
一時間後。
なかなか寝付けない八重は、もぞもぞと寝返りを打って右側にいる景子の方を向く。いつも
自分より早く眠るのを見たことはないが、今日は八重のほうを向いて穏やかな寝顔で眠って
いる。その姿があまりにも愛らしくて、思わずそっと頬にキスをする。
上体を起こして枕元を見遣ると、緑色のリボンが二本置いてある。以前、八重が景子に譲った
髪留めだ。
『七瀬からもらった物だから、いつもお守り代わりに持ち歩いているの』
八重は右手でリボンを一本手繰り寄せる。
『いつも七瀬がそばにいてくれると思うだけで、私安心するから』
手繰り寄せたリボンの両端を景子の右手首と自分の左手首に軽く巻く。
『これからも、ずっと一緒にいられますように』
「にわちゃん、おやすみなさい」
小声で景子に告げて、八重は目を閉じる。やがて八重はゆるやかに眠りに落ちていった。

夢の中で景子に逢えるように祈りながら。
364トリコロ にわ×八重13/14:04/10/19 21:15:40 ID:fZgbiXJi
  <エピローグ>
「七瀬、友達と恋人ってどこが違うのかしらね?」
七瀬家に向かう道すがら、空を見上げて景子が問う。
「今までとこれからと、私たちの間で何か変わるかしら」
「難しいことはよく分からないのですけれど……」
八重はそっと右手を景子の左手へと伸ばす。届いた左手を軽く握る。
「今は手でつながってますけど、いつも心でつながってますから」
八重の手は温かかった。景子は八重の温もりをしっかりと受け止める。
「これからは、私の右手はにわちゃんのために一番に空けておきます。それでいいですか?」
景子は八重の手を握り返す。互いの温かさを確かめ合うように、そのまま手をつないで二人は
夕焼けの中を歩いていった。

                                                  おしまい。

365酸性温泉:04/10/19 21:17:07 ID:fZgbiXJi
これで完結でございます。ありがとうございました。
にわちゃんが好きなのは七瀬家三女(仮)の八重ちゃんだと解釈しておりますので、ちょっとでも
伝われば幸いです。ちなみに一番やりたかったのは、ケーキのネタです。
366名無しさん@ピンキー:04/10/19 22:05:37 ID:rRzwi2ZB
>>365
乙!!トリコロ祭は未だ開催中ですか!!

次は携帯の電源を切った話をうわお前ら何する
367名無しさん@ピンキー:04/10/20 05:45:43 ID:7LcO+bGW
>>酸性温泉氏
グッ…GJGJGJゥゥウ!
萌え死にますた!
368名無しさん@ピンキー:04/10/20 09:31:53 ID:YwiyGBJk
トリコロって良く判らないけど、面白かった!
読んでてドキドキしました…ハァハァ
369酸性温泉:04/10/20 20:23:26 ID:nRfYX3za
>366 エロスは無理です。勘弁してください(w もともと「伊鈴に会わせろ」と
「携帯電話の電源切れ」のセリフはなかったんですけどねえ。
気が向いたら「一日独占権」の話でも書くかもしれません。

>367 ありがとうございます。読んでてかゆくなりそうなほど少女漫画
趣味全開ですが、気に入っていただけて光栄です。

>368 ttp://jugem.websozai.jp/kirara/14.htm の左が八重ちゃん(主人公)で
右がにわちゃんです。ラストの緑のリボンの元ネタです。
370名無しさん@ピンキー:04/10/20 21:31:55 ID:ZWnRjWj6
四文字タイトルの作品って多くて萎える。やめて欲しい。
だけどSSが萌えたので、明日単行本買ってくる。クソ、悔しいな。
371名無しさん@ピンキー:04/10/24 05:40:05 ID:NRyBq6cg
保守。
4コマだったら「はるなちゃん参上!」のはるひ×はるな とか
「ひまじん」の理沙×つぐみ とかどうだ と言ってみるテスト。
372酸性温泉:04/10/25 20:32:44 ID:gfeJHN0L
秋のトリコロ祭の後夜祭です。次の職人さんがいらっしゃるまでの場つなぎにどうぞ。
>>343様に敬意を表し、ラストは真紀子×多汰美です。にわ×八重の番外編も兼ねて。
373トリコロ 番外編1/12:04/10/25 20:34:31 ID:gfeJHN0L
  <プロローグ>
どうして選んだ料理があれだったのだろう、と改めて青野真紀子は考える。
最初は、なんでも良かったのだ。もともと自分は負けず嫌いだ。それは自覚している。だから
前の高校も地元でトップクラスの学校に進学したのだし、勝負事となると我ながら呆れてしまう
ほど熱くなってしまう性格だ。だから、負けたくない、という気持ちが先ずありきだった。
少なくとも、あの時までは。


《HER WARMTH IS MY HAPPINESS.》

それは、風の中に冬の気配が混じり始めた十月下旬のこと。
学校から家までの帰り道、友人の潦景子が、七瀬八重に話し掛ける。
「七瀬、料理って慣れてくると楽しいわね」
八重は母親が子供の話を聞くような表情をしながら、景子の話を聴いている。もともと景子は
八重に食べさせてもらうのが専門だと思っていたが、最近は作る側にも挑戦しているらしい。
由崎多汰美が景子と八重の話に参加する。
「にわちゃん、今どんなん作っとるん?」
「最初は、卵焼きから始めたんだけど…。やっと最近、綺麗に巻けるようになったのよ。七瀬が
作ってくれるのに比べたらまだまだだけど。……少なくとも炭造りからは脱出できたわ」
「このあいだ食べさせてもらいましたけど、美味しかったですよ」
と八重が優しくフォローする。まだまだだ、と言いつつも景子は嬉しそうだ。私はそれを聞いて
いて複雑な気分だった。自分は料理が不得手だ。知り合った頃の景子も自分と同じくらいの調理
レベルだったのだが、その景子も努力して腕を上げているらしい。料理は出来ないよりは出来た
ほうがいいに決まっている。手料理に縁の薄かった景子が八重の料理にコロッとやられたのを
見ても、それは明白だ。
…これは悔しい。また私の負けず嫌いが心の中で頭をもたげてくる。
374トリコロ 番外編2/12:04/10/25 20:35:11 ID:gfeJHN0L
帰宅後。
着替えてから階下の台所に降りてみると、八重が夕食の準備をしている。
「あれ、八重ちゃん、おばさんは?」
「今日は町内会の会合らしくて、八時頃まで帰ってこれないらしいんです。だから今日は私が
夕飯を作りますね」
七瀬八重は私と多汰美が同居するまで、母親の幸江と二人暮らしだった。だから一人きりになっ
ても、最低限の家事は全てこなせる。もちろん、料理も。
「なあ、八重ちゃん。どうやったら料理って上手になるんやろ?」
私の質問に、じゃがいもの皮をむきながら八重が答える。
「そうですねえ。まずは練習することが第一ですね。回を重ねれば上手になりますよ」
「ふーん」
「あとは、ご自分の好きなものを作るのもいいですよ。にわちゃんは卵焼きが結構好きですから
ね。甘い物好きですから蜂蜜入りのを教えたら喜んでくれました」
「うーん、好きなものなあ」
「でも、真紀子さん、どうしたんです?急に」
「いや、少しは料理上達したいなあ、思うて。前お好み焼き作ったときもアレな結果やったし。
なんかないかなあ。簡単で、美味しく出来て、達成感のあるやつ」
皮をむいたじゃがいもを切りながら、八重が考える。
「でしたら煮物なんてどうです?最近寒くなってきましたし。味付けさえしっかりして、時間を
掛けて煮込めば滅多に失敗しませんよ」
煮物。カレーライスさえろくに作れない自分にそんなものが可能なのだろうか。でも『滅多に
失敗しない』は魅力的な言葉だ。
「じゃあ、おでんがええな。関西風のやつ。私でもできるやろか?」
「大丈夫ですよ。私も手伝いますから」
八重は協力を約束して、じゃあ週末にでも作ってみようと私に提案した。
375トリコロ 番外編3/12:04/10/25 20:35:45 ID:gfeJHN0L
土曜日。
先日の約束どおり、今日の夕食におでんを作ることになった。材料を買いに八重と二人でスー
パーへ買い物に行く。多汰美にはどんな風の吹き回しかと言われるのが嫌なので、料理にかかる
まで黙っていることにした。
「寒くなってきたら、練り物の品揃えも充実してきましたね」
八重が事前に用意してくれたメモを見ながら一緒に材料を買い揃える。大根、蒟蒻、ちくわ、
その他いろいろ。籠の中を見て、結構いろいろな具があるものなのだな、と改めて感心する。
帰宅してから、すぐに二人で調理に取り掛かった。
「下ごしらえさえちゃんとすれば、美味しくなりますよ。失敗する可能性も減りますし」
「え、ただ鍋に入れて煮るだけでいいんちゃうん?」
「それだと生煮えになったり、アクが浮いたりして食べられませんよ。さ、手伝いますから、
真紀子さん、大根お願いしますね」
八重に大根を突きつけられ、私はピーラーで皮を剥く。さすがに輪切り位は料理下手な自分でも
出来る。全部切り終わり、これでいいかと鍋に入れようとすると、待ったを掛けられる。
「あ、真紀子さん、面取りと隠し包丁もお願いしますね」
め、面取り?隠し包丁? なんのことか分からない顔をした私を察して、八重が見本を見せて
くれる。煮崩れないように切り口の角を取るのが面取り、味が染み込むように裏側に切り込みを
入れるのが隠し包丁だそうだ。慣れればそれほど難しくはない。それに、こんなことにも気が
利いているとなれば、卵焼きを巻く技術にも負けないかもしれない。考え事をしている間にも、

八重は卵をゆで、牛すじの下茹でまでしている。自分もいつかこんな風に、手際よくやれる日が
来るのだろうか?
しばらくして、
「おじゃましまーす」
の声とともに、景子が遊びにやってきた。八重が出迎えに玄関へ行く。
376トリコロ 番外編4/12:04/10/25 20:36:20 ID:gfeJHN0L
「七瀬、今日は何を作っているの?」
「今日は真紀子さんがおでんを作るので、その手伝いです」
「…青野、それ食べられ…むぐっ」慌てて八重が景子の口をふさぐ。
「失礼やな! 見とれ、ちゃんとしたのを作るんやからな」
「大丈夫ですよ。ちゃんと出来ますから」
「七瀬がそう言うんだったら…。あれ、由崎は?」
なんだかものすごく失礼なことを言われたような気がした。ますます己の負けず嫌いに火が付く
のを感じる。よし、何がなんでも景子があっと驚くようなおでんを作ってやる。
「多汰美さんはジョギングしてくるって言ってましたよ。あ、真紀子さん、蒟蒻に切れ目入れて
くださいね。そのままだと火が通りにくいですから」
分かった、と返事をして蒟蒻に格子状の切れ目を入れる。美味しいのが出来るのだったら、なん
だってやってやろうではないか。切れ目を入れ終えると、玄関の扉が開く音がした。
「ただいまー」
多汰美がジョギングから帰って来た。台所にやってきて、汗を拭いながら私に話しかける。
「マキちー、何作っとるん?」
「おでんや」
てっきり多汰美も景子と同じように反応するかと思っていた。が。
「あ、じゃ出来たら食べさせてね。にわちゃん、オセロしようよ」
やけにあっさりとした答えだった。多汰美はにこにこ笑いながら私に手を振って、景子を居間に
連れて行く。意外な反応にぽかんとしていたら、八重が私の注意を引く。
「真紀子さん? 卵が茹で上がりましたから、殻を剥いて下さいね。大根も下茹でしますから」
八重は米のとぎ汁を鍋に入れて、私が切った大根を中に入れて下茹でする。
…本当におでんって簡単なのか? 騙されてないか? 八重に促され、私は悩みつつ、十分
冷やされたゆで卵の殻を剥くのだった。
377トリコロ 番外編5/12:04/10/25 20:36:53 ID:gfeJHN0L
八重が言うには、材料によって味の染み込む時間が異なるから、大根・卵・蒟蒻・牛すじは先に
煮ておき、あとで練り物やつくねを入れるものらしい。…知らなかった。だいたいいつも出来
上がったものしか見ていなかったから、全部まとめて煮ればいいと思っていた。これでは景子が
自分の作るものを不安がるのも無理はない。
言われたとおりに鍋にだし汁を張り、火にかける。ひととおり下茹でが済んだ後、これもついで
だと別の鍋で練り物の油抜きをする。
「あとは沸騰するまで何もしなくていいですから。お茶でも飲みましょうか」
「そうなん。あ、頼むわ」
慣れないことはするものではない。私は軽い疲労を覚えて椅子に腰掛ける。毎日八重はこんな
事をしているのか。たいしたものだ。
「お茶が入りましたよ」
「ありがと。なあ、八重ちゃん。大変やない? いつもお弁当作って」
「そんなことないですよ。慣れてますから」
「私らの分に、にわの分で四人分。ごっつ大変やと思うけど」
八重は小首をかしげながら考え込む。
「うーん、それほど大変って考えたことないですね。あ、お鍋。沸騰してきたみたいです」
お茶もそこそこに私たちは立ち上がって、鍋に戻る。だし汁が沸騰したのを確認して、今度は
味付けですよ、と八重は言い、酒、砂糖、味醂、醤油を準備する。
「あれ? いつも使うとる醤油と違わんか、八重ちゃん」
「真紀子さん、『関西風がいい』っておっしゃってたでしょう。淡口醤油を使えば、色が薄めで
関西風に仕上がりますよ」
なるほど、八重の気遣いには頭が下がる。私の好みまで察知して、そこまで予め用意してくれる
とは。言われたとおりに調味料を量り、鍋に入れる。入れ終わった後で味見し、微調整をする。
煮汁が煮立った後、準備した具材をそっと鍋に入れて弱火にかける。
「これでしばらくは煮込むだけですから。一時間くらい経ってからちくわとか入れますから、
それまで休憩しましょうか」
378トリコロ 番外編6/12:04/10/25 20:37:27 ID:gfeJHN0L
居間に行くと、多汰美と景子がオセロをしている。
「どっちが勝っとる?」
「ん〜、私の三勝四敗。最初は私が勝ってたんだけどね。由崎に逆転されちゃった」
「やっとエンジン掛かってきたかなって感じ。にわちゃん結構強いから、どうなるかと思った
けど」
「青野、私と代わる? 七瀬、このあいだ見たいって言ってたアルバム持ってきたけど」
「あ、見せてください」
「にわの小さい頃の写真? 見せて」「にわちゃんの写真見たいなー」
私と多汰美が催促すると、景子は真っ赤になって首を激しく横に振る。
「やだってば、恥ずかしい。それに、七瀬だけに見せるって約束したんだから!」
「はいはい、ごちそうさん。じゃ、上で八重ちゃんと一緒に見たら?」
こう冷やかすと、景子は余計なお世話だと毒づきながら八重と二人で二階へ上がっていった。
オセロの駒を並べなおし、多汰美と勝負を始める。エンジンが掛かった後の多汰美は強敵だ。
最初から気合を入れて相手をしなければ。私が盤に集中して打っていると、多汰美が話しかけて
くる。
「なあ、マキちー。急におでんなんて、どういう風の吹き回し?」
「別に…。挑戦してみたくなったから」
景子に負けたくないからだ、とは恥ずかしくて言えなかった。
「誰かのために作ってあげたいとか」
「ああ、そんなんやないない。深い意味は全くないんや。このあいだ私ら二人で作ったお好み
焼き、散々やったやろ。このままやといかんと思うただけで」
「ふーん…残念」
残念?何が? そうこうしているうちに、角を取られ、あっさりひっくり返されてしまった。
しまった、油断した。
379トリコロ 番外編7/12:04/10/25 21:13:06 ID:gfeJHN0L
一時間後。
「大根も箸が通るようになりましたし、練り物を入れましょうか」
八重に言われて、準備が出来たちくわやごぼう天、つくねを並べて蓋をする。鍋が吹きこぼれ
ないように注意すれば、あと一時間弱で完成だという。
「ほんとにこれでええんかな?」
「大丈夫ですよ、ちゃんと味見もしましたし。あとは待つだけです。お疲れ様でした」
不安がる私を八重が優しく力づけてくれた。やはり作ったからにはいいものが出来てほしい。
私は最初の意地も忘れて、祈るような思いで湯気が漏れる鍋を見るのだった。

さらに一時間後。
「八重ちゃん、一時間経ったけど、どうやろ?」
八重は火を止めて、小皿に大根を一切れ取り上げる。半分に割って、二人で味見をする。
「あ…、おいしい」
「真紀子さん、成功ですね」
大根は中までしっかり火が通っていて、味もしっかり染みていた。淡口醤油のおかげか具の色も
やたらと黒くなく上品な色に仕上がっているし、味もあっさりとした関西風になっている。案外
上手に出来たことに私は驚く。半分くらいは八重に手伝ってもらったのだけれど。
「八重ちゃんのおかげや。ありがとう」
「私は手伝っただけですよ。味付けしたのは真紀子さんですし。きっと喜びますよ」
「え、誰が?」
「みなさんがですよ。ごはんが美味しければ、誰だって嬉しいですから」
380トリコロ 番外編8/12:04/10/25 21:13:41 ID:gfeJHN0L
夕食の時間。居間に下宿先の主人・七瀬幸江と八重、私、多汰美、景子が揃う。
八重が温め直してくれたおでんを私が大皿に並べる。真紀子さんはセンスがいいから綺麗に並べ
られるんですね、と八重に褒められ、私は照れ笑いをする。
「いただきまーす」
自分は美味しいと思ったし、八重も美味しいと言ってくれたが、皆が箸をつけてなんと言うか、
実はかなり不安だった。八重の方に目を遣ると、(大丈夫ですよ)と微笑んで私に目配せする。
「お母さん、今日は真紀子さんがおでんを作ったのよ」
「真紀子ちゃん、美味しいわよ。関西風もあっさりしていていいわね」
「青野、結構美味しいじゃない」
「ありがとうございます。ほとんど八重ちゃんに手伝ってもろうたんですけどね」
「私はそれほど手伝ってませんよ。真紀子さんの実力です。ね、多汰美さん」
言われてみて初めて多汰美を見てみると、いつも明るく談笑しながら食べる多汰美が無言で卵を
食べている。大皿を見てみると、卵が一つもない。
「多汰美! 全部食べるもんがあるか!?」「由崎、独り占めしないでよ!」
私と景子が非難すると、やっとこちらに気が付いたという風にけろりとした顔で私に言う。
「だって、美味しいけえ、全部食べたいって思うのが人情って思わん?マキちー」
「程度ってモンがあるやろ。他の人の事も考えんか!」
私と多汰美がやり合っていると、八重がくすくす笑いながら私たちに言った。
「良かったじゃないですか、真紀子さん。喜んでもらえて。多汰美さん、卵はまだありますから

ね。好きなだけ食べてください。にわちゃん、今お鍋から卵取ってきますから」
381トリコロ 番外編9/12:04/10/25 21:14:35 ID:gfeJHN0L
夕食後、八重の部屋。
お風呂の順番が来るまで、八重と景子は二人でアルバムを見ている。
「にわちゃん、今日のおでん美味しかったでしょう?」
「うん。青野も結構やるじゃない。ね、七瀬、今度私にも作り方教えてね」
「ふふっ…分かりました。今度はにわちゃんの家で作りましょうか。きっと、お父さんやお母
さんも喜んでくれますよ」
潦家の親子三人が写った写真を見て、八重が景子に微笑みかける。写真の中の景子は自宅マン
ションの前で真新しい制服に身を包み、新品のランドセルを担いで晴れやかな顔をしている。
現実の景子は八重をそっと横から抱きしめ、照れながら囁く。
「…ありがと、七瀬」
「真紀子さん、さっき『毎日お弁当作るの大変じゃないか』って言ってたんです。よく考えたら
そうなのかもしれないんですけどね。でも、にわちゃんがいつも喜んで食べてくれるでしょう?
だから、私…」
八重は景子の頭を緩やかに引き寄せ、静かに唇を重ねる。
382トリコロ 番外編10/12:04/10/25 21:15:35 ID:gfeJHN0L
多汰美がお風呂を済ませて、私の部屋に入ってきた。私は今日は一番に入浴したので、髪を乾か
しがてら、ヘッドホンを掛けてCDを聴いていた。多汰美はテーブルの近くに陣取ってちょこん
と座る。
「マキちー、何聴いとるん?」
「市立図書館で借りてきたクラシック。最近、ちょっとバロックもええかと思うて」
ヘッドホンを外して私は答える。デッキの停止ボタンを押そうとして壁の方を向くと、多汰美が
嬉しそうに話しかけてくる。
「おでん、美味しかったよ。また作ってね」
「そんなこと言うて…、多汰美、卵ばっかり食べたらあかんで。いくら好き言うたかて」
あまりにも直球表現で褒められて照れくさくなった私は、わざと礼を言わずに皮肉混じりの答え
を返す。後ろにいる多汰美の表情は見えないが、どんな顔をしているのだろうか。
「うん。好きやね」
「そんなにか。でも、卵の食べすぎはあかんで。体に悪い」
ヘッドホンを片付け多汰美の方を向くと、肘をついた手で自分の顔を支えながらこちらを見て、
にこにこと笑っている。あまりにも邪気のない顔に、なんだか居心地の悪いような、むずむず
するような、そんな心地がしてつい視線を逸らしてしまう。
「褒めても、なんも出んのやで」
そんな私の言葉をよそに、多汰美は膝を浮かせながら、そろそろと私に近づいてくる。
383トリコロ 番外編11/12:04/10/25 21:16:33 ID:gfeJHN0L
「マキちーにお礼せんといかんね、たまごの」
「お礼?」
怪訝な顔をした私は、一瞬視界から多汰美の姿を失う。次に気が付いたときには、左頬に柔らか
くて温かい感触があった。なんや、この生温かい感触は……も、もしかして。
「なーーーーーーっ!!」
思わず奇声を上げて多汰美を見ると、舌をぺろりと出して立っている。
「たまごのお礼。これでいい?」
「ごはんのお礼で、キ、キスするやつがあるか!」
私は顔を朱に染めて、多汰美に今の行為への抗議をする。
「え……、マキちー、キスより全裸のほうが良かったん?」
「それも違う!」
狼狽して突っ込む私に構わず、多汰美は踵を返して襖を開け、呑気に言い放つ。
「お茶淹れてくるけえね〜」
「ちょ、ちょう待て、多汰美!」
慌てて後を追うように私は立ち上がるが、遅かりし由良之助。既に多汰美は鼻歌交じりに階段を
降りている。
(鼻歌が『やさしい悪魔』やなんて、あいつ、いくつやねん。)
……などと考えながら、私は部屋の前でぼんやりとたたずむ。左手で妙に温かさが残る頬を
撫でながら、今夜の夕食のときの家族の皆の顔を思い浮かべる。なるほど、八重が毎日弁当を
作ってくれる理由、景子が料理を作る側に挑戦した理由が少しは分かった気がした。
「あんだけ喜んでくれるんやったら、また作ってみようかな」
私は回れ右をしてから、軽く伸びをして、窓の外を眺めつつこっそり呟いた。

−−今度は、多汰美のために。
384トリコロ 番外編12/12:04/10/25 21:17:28 ID:gfeJHN0L
  <エピローグ>
「真紀子さん、料理の上達法をもう一つ教えましょうか」
「なんやの。まだなんかいい方法あるん?」
私はもっと秘訣を知りたいと思い、身を乗り出して『上達法』をききたい、と八重に告げる。
八重は周りを見回して誰もいないことを確認してから、私の耳元でこそっと小声で言う。
「自分の好きな人が『おいしい』って喜ぶ顔を見たいって思いながら作るんですよ」

                                              おしまい。
385酸性温泉:04/10/25 21:19:37 ID:gfeJHN0L
一応トリコロ百合SSシリーズ(?)はこれでおしまいです。ありがとうございました。
一部改行に失敗しておりますが、あぼーんしてください。

エロパロ板なのに、エロなししか書けず、申し訳なく思っております。原作のほのぼのさが
好きなので、そのへんは平にご容赦ください。
書いてる最中、多汰美→真紀子→にわ→八重という恐ろしい妄想に駆られたことはここだけの
秘密です。
386名無しさん@ピンキー:04/10/25 23:23:25 ID:rhFboC5+
どうも。
トリコロ祭の最中にすみませんが、アカイイトのSSを投下させていただきます。
考えなしにつらつら書きつつったので話にまとまりがありませんが、よかったらどうぞ。
あとサクヤトゥルーEDのネタバレを含みますので未クリアの方はお気をつけ下さい。
387名無しさん@ピンキー:04/10/25 23:24:38 ID:rhFboC5+
どうやらサクヤさんは悪戯好きらしい、ということが、ここ数日で判明した。
お母さんが生きてた頃はよく遊びに来て泊まっていくことも何回かあったけど、
こうやって二人っきり、お布団を隣り合わせながら寝たことなんてなかったから。

――世間で言う丑三つ時。

パジャマの裾からお腹を探るように進入してきた大きな手にわたしは目を覚ました。
一体誰の、なんて。確かめるまでもなく犯人はわかりきっているんだけど。
もぞもぞと無遠慮に肌を這う細い指を抓りながら、隣のお布団へ顔を向ける。

「ねえ、サクヤさん。なにやってるのかなぁ」
「さぁ? なにやってるように見える?」

あ、質問を質問で返すのはズルイ。
う〜っ、と唸るわたしを意地悪そうに笑いながら見つめる彼女、サクヤさん。
そしてその間も容赦なく、身体の線をなぞるように上下する温かな手のひら。

くすぐったい。
そしていつも――むずむずするような変な感覚が走る。
無視して眠ろうにも、なんだか気になってしまって眠れやしない。
388名無しさん@ピンキー:04/10/25 23:25:36 ID:rhFboC5+
「もう、わたし明日早いんだよ?」
「なんだい。冷たいねぇ……」
「冷たいとか冷たくないとかそういう問題じゃなくて」

いじけたように、おへその周りをその細い指先がぐるぐると弧を描く。
いやいや、騙されちゃいけない。サクヤさんのこれは「ふり」なのだ。
まともに取り合ってたら最後、彼女の悪戯で朝まで徹夜する羽目になるだろう。
日直で早朝から学校に行かなくてはいけない身としては勘弁してもらいたいところ。

「桂はあたしより学校が大事ってわけかい」
ツンツンと、今度は爪の先でノックするように脇腹を刺してくる。
さすがに鬼と戦うときのような鋭さはなくて、どっちかって言うと痛痒いような感じ。
逃れるように身体を捻ると、サクヤさん自身がその隙間を埋めるように寄って来た。

一人分のお布団に二人分の体温。
さすがに古い木造アパートとは言え隙間風が入り込むほどボロくはないけれど、
こうやってサクヤさんに抱きしめられるのは嫌じゃないし、むしろ結構好きだった。

「どうしたの?」
「……こういうのは嫌かい?」
「ううん、全然。嫌じゃないよ」
精一杯腕を伸ばして、わたしもサクヤさんの背中を掴まえた。
まるでお母さんに守られているような、でも、それとは全く違う別物の安心感。

だってその月のように綺麗な金色の瞳には少し怯えたような影がちらついている。
もしわたしが嫌だって拒否したらどうしようって、多分そんなことを考えている。
だから、ただ守られるだけじゃなくて、守ってあげたいなって思ってしまうんだ。

こういうのなんて言うんだっけ。
この感情を名づけるのに一番適切な言葉があったはずなんだけど。
389名無しさん@ピンキー:04/10/25 23:26:17 ID:rhFboC5+
「……ここ最近さ、桂はずっと勉強やら学校やらばっかりだっただろう?」
「え? そうかなぁ」

いつの間にかわたしの髪をいじっている彼女の顔はどこか元気がない様子。
あまり自覚はないけど、サクヤさんがそう言うならきっとそうなんだろう。
もうそろそろ受験のことも考えないといけない時期だから勉強にも熱が入る。
折角お母さんがわたしのために残してくれた貯金を無駄になんかしたくないし――

「……あっ」
漫画か何かみたいに、頭の中で豆電球がぴんぽーんと音を立てて光る。
サクヤさんのこの子供みたいな態度。意地悪な悪戯。さっきの発言。今の状況。
なんだ、答えは簡単。全ては一本の糸で簡単に結ぶことができるじゃないか。

「サクヤさん拗ねてるんだー」
お返しと言わんばかりに精一杯の意地悪な顔と声を作ってみせた。
案の定、こういうことにはとことん弱いらしい彼女の顔が見る見る内に赤くなる。

「す、拗ねてなんかいないよっ」
「嘘だー嘘だー、顔真っ赤だもん。図星なんでしょ? そうなんでしょ?」
「うるさい!」
あ、そっぽ向いちゃった。

でも抱きしめてくれる腕の力は緩まない。
そんな何気ない優しさも、強い大人らしさの中に残ってる甘えん坊な子供っぽさも、
独立独歩なくせに人一番寂しがり屋で、人恋しがり屋で、実は涙脆そうなとことかも。
今のわたしは他の誰にも見せられないぐらいにやけた笑顔を浮かべているだろう。

だって全てをひっくるめてそんなサクヤさんのことがわたしは――そう。
390名無しさん@ピンキー:04/10/25 23:26:43 ID:rhFboC5+
「もう、すっごく愛しいなぁ……」
ぎゅって力を込めて、大切な宝物を抱くようにサクヤさんを包み込む。
身体の大きさはもちろんわたしの方が小さいから、そう上手くはいかないけど。
そんなに愛しい人がわたしのことを好きでいてくれてるということ。
ただそれだけの事実が本当に嬉しくて仕方なくて。だからすぐには気づかなかった。

「なっ……」
サクヤさんの耳たぶは触ればきっと火傷しそうなぐらい真っ赤だ。

――よくよく考えてみると。

愛しいってさ、大好きより恥ずかしい言葉っぽくない?
ていうか、今どきそんな言葉あり得ないとか思わない?
冷静なもう一人の自分がバカなわたしの痛いとこを突くような質問をする。
そしてわたしも火傷しそうなぐらい真っ赤な顔になっていた。

「あああのっ、あのねっ、別にその、変なあれじゃなくてっ」
変なあれってどんなあれだ。
頭はぐちゃぐちゃだって言うのに、妙に醒めたコメントを繰り出すもう一人のわたし。

形勢逆転かと思われたわたしの立場は自分自身が繰り出した発言により見事自爆。
みっともないくらい取り乱しているわたしよりも先に、サクヤさんが復活した。
とにかく落ち着きな、って。そう言いながら少し乱暴な感じで頭を撫でてくれる。
391名無しさん@ピンキー:04/10/25 23:27:22 ID:rhFboC5+
「…………」
「…………」

残ったのは妙な沈黙と、急に暑くなってきたお布団の中の温度。
あれだ、きっとわたしとサクヤさんの体温が上昇しちゃったからだ。
二人分どころか三、四人ぐらい詰め込まれてそうな妙な暑さに顔もなかなか冷えてくれない。
それでもお互いがお互いの身体を離そうとはしないのは、その――あれです。
自惚れかもしれないし、実際そう想っているのはわたしだけとかだとショックだけど、
サクヤさんだって同じ気持ちなんだろうって信じてる。そう思っていたい。

さすがに二度目の自爆は避けておきたいので、敢えて言葉は意識しないようにした。

「……ごめんね、サクヤさん」
「……ん?」
「……寂しかったんだよね?」
「だっ、だから別に、そんなんじゃ」
「折角の二人暮らしなんだもん。今までしたことないこといっぱいやろうね。
 家のことだって、もっと一緒に……そうだ。サクヤさん、今度料理教えてよ」
「えぇ? 桂が料理〜?」
「……なに、その目」
「いや別に」

今度はそっぽと言うか、確実に視線を逸らした。
む〜っ、と唸るわたしをなだめるように三度ぐらいぽんぽんと優しく叩く。
392名無しさん@ピンキー:04/10/25 23:27:58 ID:rhFboC5+
「ほらあれだよ。桂はあたしに教わらなくたって十分美味しいご飯が作れるだろう?」
「? 大根の桂剥き?」
「それは料理じゃ……いや、まあ、ある意味正解に近い気もするけどさ」
なんだろう。正解に近いってことは当たらずとも遠からずって事だろうか。

二人暮しを始めてからの家事分担は料理がサクヤさん、その他がわたしとなっていた。
サクヤさんに掃除を任せるとテストの紙やらなんやらポイポイ捨てられてしまうのだ。
部屋は綺麗にはなるけど、貧乏性のわたしからすればもったいないことこの上ない。
それにカメラのお仕事もあるしね。出来ることはわたしが引き受けないと。

「もしかして……血とか言わないよね?」
「確かに桂の血は格別だけどね。でも、今言ってるのはもっと美味しそうなものだよ」
うーんうーんと考え込むわたしを、またあの意地悪そうな顔で見つめるサクヤさん。
あ、またお腹のとこくすぐってる。その手を軽くぺちぺち叩きながら頭を回転させた。

「大根の桂剥き、桂剥き、かつら……」
そういえば、初めて大根の桂剥きをしたとき何か思わなかっただろうか。
どこか嫌な感じがするとか、不吉な字面だとか――字面?
ふと脳裏に浮かぶ桂剥きの三文字。そしてちょうど良い具合に句読点がつく。
桂、剥き。他の読み方として振り仮名をつけるとしたらつまり、
393名無しさん@ピンキー:04/10/25 23:28:43 ID:rhFboC5+
「けい……むき……?」
サクヤさんの指がいつもよりも急緩をつけた不規則な動きを見せる。
そしてなんだか――いつもより、強く感じるこのむずむず。
自分じゃよく理解できない不思議な感覚に戸惑っているわたしの顔を見て、
にっこりと笑う彼女は、やっぱり悪戯好きというか、意地悪というか。

「じゃ、早速いただくとするかねぇ」
「え、え……ちょっ、えっ?」

哀れ子羊は本能的に察知した身体の危機に頭の中を真っ白にしていく。
うわ、サクヤさんすごく楽しそうな顔してる。ていうかいつもの意地悪な顔をしてる。
艶かしい唇の間から覗く、真っ白で鋭く尖った犬歯が少しずつ少しずつ近づいていた。
やっぱり血を――いやいや、違う。だってそれは彼女自身が否定したじゃないか。
血じゃなくて、もっと美味しそうなものがあるって。それをいただくって。

血じゃなくて。
それよりもっとサクヤさんが欲してるもの――?

「今までしたことのないようなことを一緒にやるんだろう?」
「う……うん」
「折角の二人暮しだし」
「折角の、二人暮しだし……?」

それ以上何も言わず、彼女は息がかかるぐらいの距離まで顔を近づけてくる。
反射的に目をぐっと閉じたら、数秒後、耳たぶをはむはむと噛まれていた。
394名無しさん@ピンキー:04/10/25 23:29:12 ID:rhFboC5+
「ひぁっ?」
今まで感じたことのない不思議な感覚。
身体の中のうずうずが刺激されて、一緒に強くなっていく。

「……ね、ねえ、サクヤさん。なにをやってるのかなぁっ?」
「さぁ? なにやってるように見える?」

――だから、質問を質問で返すのはズルイってば。
恐る恐る開けた瞼の向こう側にサクヤさんの顔が至近距離で飛び込んでくる。
相変わらず意地悪そうな、でもどこか楽しそうにも見える笑顔がより一層輝いている。

ああ。やっぱりサクヤさんは悪戯好きということが、今ここでしっかり判明した。
でももう遅いよ。今さら気づいていも、もう遅い。元々羊の皮すら被ってない狼が
がおーっと隣の子羊を襲ってしまってもそれは子羊がアホだったっていうだけのこと。

「う、うううっ……」

なにをされるのかはよくわからないけれど、とりあえず明日は遅刻かも、って。
いつの間にかパジャマのボタンが三分の二まで外されていることにも気づかずに、
子羊はのん気にそんなことを考えていた。
395名無しさん@ピンキー:04/10/25 23:32:25 ID:rhFboC5+
一応終わりです。
エロさとか全然なくてすみません、これで精一杯でした。
あとサクヤさんらしくないとか桂がアホっぽくないとかすみません。
1レスにもう少し詰めた方がよかったかもと今さら後悔していたりも。

とりあえず最後に、にわ×八重ハァハァ
396名無しさん@ピンキー:04/10/25 23:33:59 ID:fjr3oSSl
エロ板ではエロをちゃんと入れろよ……。
馬鹿どもが。
397名無しさん@ピンキー:04/10/25 23:46:04 ID:RlmwcVEA
そのままエロに行ったら激しくグッジョブだったが
398名無しさん@ピンキー:04/10/26 00:16:43 ID:mVOD2fvn
他の職人が投下した直後に自分のを投下するのはいただけない。
399395:04/10/26 00:29:01 ID:88NnHFuu
>>396-398
うわ、エロ話の力不足な上、時間まではきちんと確かめてませんでした。
不愉快な思いをさせて申し訳ありません。
400名無しさん@ピンキー:04/10/26 00:34:43 ID:amZ9laXY
>>395
いやいや、GJ!!
みんなエロが足りなくてちょっと拗ねてるだけだから気にするな。
401名無しさん@ピンキー:04/10/26 02:15:59 ID:p3Mwo1hF
>>酸性温泉氏、395氏
お二方とも……蝶GJです!
特に酸性温泉氏の作品はトリコロ読者の俺には刺激が強杉ます…

⊃(。Д。)つモエシニマシタ…

395氏の作品も元の作品は知らないですが充分(;´Д`)ハァハァ出来ました!
今後もお願いします!
402名無しさん@ピンキー:04/10/26 05:02:28 ID:k/DgXgaY
サクヤトゥルー見たら読ませてもらうが
とりあえず先に言っとく
GJ!
403名無しさん@ピンキー:04/10/26 07:49:04 ID:3iqVUPM7
ちょうど元作品をほぼクリアしたところだから萌えた。GJZ!
404403:04/10/26 07:49:48 ID:3iqVUPM7
なんだよGJZって・・・orz
GJね。
405名無しさん@ピンキー:04/10/26 23:41:32 ID:i1c7RCH+
ひとり嵐はいるがrym板に

[あの娘と]小説でレズらせてみよう[あの娘で]
http://sakura02.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1096872664/l50

というスレがある。いちおう関連として紹介。
406酸性温泉:04/10/27 04:56:07 ID:pwJINpHP
番外編10/12の多汰美さんのセリフ間違えた(;´Д`)
×「うん。好きやね」
○「うん。好きじゃよ」

>395 GJです。桂さんがかわいいですな。
>396−397 スマヌ、ただいまにわ×八重のエロありエンドを作成中。
>401 ありがとうございます。次のもがんがります。…完成させられたらいいなあ。
407名無しさん@ピンキー:04/10/27 20:42:06 ID:VbJySlnp
>395

元ネタはなに? このSS読んで、すっごい興味出た。
キャラが可愛いですね。
408名無しさん@ピンキー:04/10/27 21:10:15 ID:3OhtQBhI
>>407
PS2のアカイイト。かなり百合の比重の高いゲーム。

アカイイト 〜第三章〜
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1098203527/
409395:04/10/27 21:17:58 ID:hA+74DfQ
>>400-403
>>406-407
元ネタは10月21日に発売したPS2ゲーム「アカイイト」からでした。
主人公が女の子、攻略対象も女の子と個人的には結構オススメです。
伝奇物で、人によっては薀蓄がうざいという意見もあるようですが。

このスレに書くのは初めてのことで色々不手際もありましたが、
読んでもらえて嬉しかったです。どうもありがとうございました。
410名無しさん@ピンキー:04/10/27 22:11:10 ID:VbJySlnp
>395
サンクス&GJ、ぐぐったら一発でした。
サクヤの中の人はでじこの中の人と一緒か。
桂がフルーツバスケットの透っぽいトコとかがツボ。

エロなしで怒っちゃった人もいるようですけど、
微妙な真柄の表現がすっごい上手くて尊敬です。
自分もSS書いてるので、色々と参考にさせて頂きます。

これからの作品も楽しみにしてますよ。
411名無しさん@ピンキー:04/10/27 22:20:01 ID:kfxUnwC0
408のスレ見てみた

>564 名前:名無しくん、、、好きです。。。 投稿日:04/10/24 23:03:39 ID:Dw11OzYC
>このスレ見て、買おうか少し悩んでて今特集サイトとか回ってみたけど
>某所でエロエロユメケイとサクヤ烏月桂の混浴シーン見かけたから買うことにするよ。

>570 名前:名無しくん、、、好きです。。。 投稿日:04/10/24 23:30:38 ID:Cvpykc+b
>>564
>ぶっちゃけ、このゲームに「混浴シーン」なんてものは存在しないけどな

>571 名前:名無しくん、、、好きです。。。 投稿日:04/10/24 23:32:20 ID:eA8Ar7NL
>Σ(゚д゚)ソーイエバソウダ

正直ワロタ
412らい(♂):04/10/28 18:06:45 ID:ItflzkEY
>酸性温泉氏
ちょっと目を放した隙に、いつの間にやらハイエナ×マキちーがーーーーっ!Σ(w0; )ノ
個人的には真紀子攻め思考だが、多汰美攻めもイイ(;´Д`)ハァハァ
にわ×八重もだが、ハイエナ×マキちーのエロ有りエンドもこっそり期待してみるw

どーでもいいが、関西風おでんを関東炊き(かんとだき)とゆーのはウチの地方だけなんだろうか……。

にしても、今回は伸びがよさげ……余裕があればまた百合投下したいなぁ……。
413酸性温泉:04/10/28 20:33:17 ID:6MNwUJt+
>412 らい様、ありがとうございます。あんな展開なんですけど一応エロガッパ×ハイエナ
なんです(w やおいで言うところの誘い受け。

とうとう誘惑に負けてにわ×八重のエロありを書いてしまいました。その3になります。
これまでの話は>>325-336>>351-364、時期の設定は番外編>>373-384よりちょっと前です。
414トリコロ にわ×八重1/17:04/10/28 20:34:00 ID:6MNwUJt+
  <プロローグ>
私の好きな人は、寂しがり屋だ。
初めて私に話しかけてきたときの彼女は他人を寄せ付けないような雰囲気の人だった。けれど、
付き合っていくうちに、その雰囲気とは寂しがり屋を外から守る殻から発せられたものだと私は
気が付いた。私は外の世界は怖くないのだと彼女に伝えたかった。
夜は怖い。だけど、一歩踏み出せば昼のお日様があなたを待っている、と。
415トリコロ にわ×八重2/17:04/10/28 20:34:33 ID:6MNwUJt+
《ふたりの子供は夢を見る》

きっかけは、アルバムだった。
ある秋の日の夕方、七瀬八重と潦景子は、八重の部屋でアルバムを見ていた。七瀬家の同居人、
青野真紀子と由崎多汰美が引っ越してきたときに家の整理をしていて出てきた八重のアルバム
だ。景子が誕生のページから繰りながら言う。
「七瀬って、あんまり変わってないわね」
「……よく言われます」
へこんだ八重を見て景子はしまった、と思う。八重は高校二年生だが、体は小柄で童顔、面識の
薄い人から中学生かと訊かれる事が多いのをコンプレックスに思っている。慌てて景子はとり
なすように真意を伝える。
「あ、いや、そういう意味じゃないの。どの写真を見ても嬉しそうに笑ってるじゃない? 今の
七瀬もいつも嬉しそうに笑っているから。ね?」
まだ少し拗ねた表情の八重を横目に見つつ、景子はページを繰る。父親と遊ぶ八重、幼稚園の
お遊戯会で歌っている八重、家の前で小学校の制服に身を包み両親と一緒に写っている八重。
皆自分の知らない八重だが、幸せそうな姿には好ましさを覚える。だが、ページが進むに連れて
景子の表情は曇る。そこに写る小学校高学年と思われる八重は確かに笑っている。だが、どこか
違和感を感じる。撮った場所が悪いのか、どこか表情に陰が見える。不思議に思った景子は、
ページを行ったり来たりしながら、違和感の元を探る。そして気が付く。
「……七瀬は、お父さんが好きだったんだね」
八重は景子の言葉を受けて、微かにうなずいた。
416トリコロ にわ×八重3/17:04/10/28 20:35:14 ID:6MNwUJt+
八重の父親は小学生の時、亡くなった。中学生頃までの写真にどこか表情に憂いが透けて見える
のはそのせいだったのだ。普通、子供にいて当たり前の親がいないというのは寂しいものだ。
両親が共働きで留守がちの景子にはそれがよく分かる。八重達と初めて話すようになったとき、
景子の気持ちを最初に見抜いたのが八重だったのは偶然ではなく、必然だったのかもしれない。
父親を亡くした八重を包んだのは、新しい家族の真紀子と多汰美だった。ならば、寂しかった
景子を包むのはいったい誰だろう?
今度は景子が物思いに沈み、黙ってしまう。

「にわちゃん?」
八重に袖を引かれ、景子は我に返る。
「あ、ごめんね。ボーッとしてた。アルバム返すね。ありがとう」
景子はアルバムを閉じると立ち上がって窓に近付き、外を眺める。北の方を見遣ると、自分の
住んでいるマンションが見える。
自分にとって八重はどんな存在なのだろう。友達と言うには想いが強すぎる。七瀬家は自分に
家族の温かさを与えてくれるが、八重と自分は家族ではない。恋人と言うにも、何か確証が足り
ない気がする。八重も自分のことが好きだと言ってくれたし、自分も八重が好きだ。では、何が
足らないのだろう。
「八重ちゃん、にわ、ちょっとええかー?」
景子がしばらく考え事をしていると、襖を開ける音が聞こえた。真紀子と多汰美だ。
417トリコロ にわ×八重4/17:04/10/28 20:35:54 ID:6MNwUJt+
「八重ちゃん、にわちゃん、新聞屋さんから遊園地の招待券を二枚貰ったんじゃけど、一緒に
行ってきたら?」
多汰美が招待券を見せて、八重と景子に一枚ずつ渡す。
「あ、ありがとうございます。でも、お金を足して四人で行ったほうが良くないですか?」
「そうよ、由崎。あんたこういう所、好きそうじゃない」
八重と景子が一緒に行こうと誘うと、多汰美が説明する。
「夏休みのときに会った東香ちゃんって子に、また会いに行くって約束したんよ。このあいだ
またマキちーと一緒に遊びに来てくれって葉書が来たけえね。な、マキちー?」
「せや。…まあ、会いに行くのはええんやけどな」
「どうしたのよ、青野。変な顔して」
頬を掻きながらうつろな視線であさってを見る真紀子を気にして、景子が話しかける。
「あ、マキちーの犬嫌い克服も兼ねとるんよ。最近東香ちゃんのところのくろ、前より居ついて
くれるようになったらしいけえね」
「東香ちゃんのところ行かんでも、ちゃんと犬嫌いは克服しようとは思うとるんやで」
「12年計画のどこが『ちゃんと』なんよ!」
多汰美が少し呆れつつ真紀子をたしなめる。
「で、私ら今度の土曜日に行くけえ、二人で遊園地に行ってらっしゃい」
八重と景子に手を振って、不本意そうな真紀子を引きずりながら多汰美は部屋を出て行く。
二人が出て行ったのを見計らって、八重は景子の耳元で内緒話をする。
「じゃ、今度の土曜日デートしましょう。二人で」
418トリコロ にわ×八重5/17:04/10/28 20:36:40 ID:6MNwUJt+
次の土曜日。
幸い天気は晴れて、絶好のデート日和だ。気温も最近は涼しくなったので過ごしやすい。折角
だからデートらしいことをしようと二人で考え、大園駅の前で待ち合わせをすることにした。
十時の約束だったが、景子は九時四十分に着いた。待ち合わせに指定したモニュメント近くの
ベンチに腰掛け、鞄から招待券を取り出す。
(『長織ゆうえんち』…か。)
招待券を眺めながら、景子は予感を感じる。先日からの疑問――八重と自分との関係――の答え
が出るのではないかと。何か確証が得られる、そんな期待をしながら再び券を鞄にしまいこむ。
十五分ほど経って、パタパタと人が駆けてくる音が耳に届く。八重だ。
「はあ、はあ。ごめんなさい。待たせましたか?」
「な、七瀬、落ち着いて。まだ十時前なんだから。私が早く着きすぎたのよ」
「私ももっと早く来たかったんですけど、お昼を作ってきたものですから」
息せき切って話す八重の背中をさすりながら、八重の荷物を見る。小さな布のバッグに、やや
大きめのバスケット。おそらくお弁当が入っているのだろう。ああ、今日は八重との初めての
デートなんだなあ、と景子はしみじみ実感する。
「はあ、にわちゃん、もう大丈夫です。それじゃ、行きましょうか」
「うん」
景子はバスケットを持ち、息がやっと整った八重の手を引いて駅の構内へと歩いていく。
419トリコロ にわ×八重6/17:04/10/28 20:37:29 ID:6MNwUJt+
『長織ゆうえんち前、長織ゆうえんち前、到着です』
私電で四駅ほど離れたところに遊園地はあった。二人は電車を降りて、遊園地に向かう。
「はあ、遊園地なんて久しぶりですねえ。……にわちゃん?」
八重が景子を見てみると、景子は入場門をぼんやりと眺めている。不思議なものを見るような、
忘れ物を思い出したかのような顔だ。
「ああ、ごめんね。ちょっと考え事をしていたものだから」
「最近、考え事が多くないですか? 何か悩みでも…」
「ううん、大したことじゃないのよ。行こうか、せっかく遊びに来たんだし」
景子は八重を促して、園内へと歩いてゆく。

遊園地は面白い。絶叫マシンの類を嫌がる八重を引っ張ってジェットコースターに乗り、次に
メリーゴーランドに連れて行く。メリーゴーランドでいくらか機嫌を直した八重を景子がホラー
ハウスの前に連れて行くと、入る前から絶叫される。
「そういえば七瀬は怪談とかそういったのが苦手だったわね」
ちょっと意地悪く笑う景子に、半泣きの八重が懇願する。
「知ってるんだったら、やめましょうよ! にわちゃんの意地悪っ」
「青野や由崎が一緒でも、きっとこうなるんだから」
結局八重は強引に押し切られてホラーハウスに連れ込まれ、景子にさんざんしがみついて悲鳴を
上げたのだった。
420トリコロ にわ×八重7/17:04/10/28 20:38:20 ID:6MNwUJt+
十二時を過ぎ、お昼の時間。八重は持ってきたバスケットからお弁当を取り出す。
「わあ、すごい。私の好きな物ばかりじゃない」
景子が包みを取ろうとすると、八重がにっこり笑ってお弁当をひらりと上に上げる。
「午前中はさんざん私の苦手なところばっかり連れて行かされましたから、にわちゃんの分は
ないです」
形勢が逆転し、今度は景子がお願いする番になった。笑って自分に意地悪なことを言うときの
八重は難物だ。とにかく機嫌を直してもらうしかない。八重に手を合わせて謝るのだ。
「七瀬、ごめんなさい! お昼からは七瀬の好きなところに行けばいいから。だから、お弁当
食べさせて」
「本当ですか? 騙したら嫌ですよ」
「本当! このとおり」
景子から言質を取るとやっと八重は機嫌を直し、お弁当を下ろしてくれた。内容は景子の好物で
占められている。サンドイッチはツナ入りとチキン入り。サラダはポテトサラダ。デザートは
マロンのタルトレット。上機嫌でツナサンドを口に運ぶ景子を八重は微笑んで見守っている。
「でも七瀬、大変じゃなかった? 朝からこんなにお弁当作るの」
「サンドイッチもサラダも昨日の夜に下ごしらえしましたし、タルトは売っている生地を使い
ましたから。そんなに大変じゃないですよ。…それに、せっかくのデートですから」
八重の言葉に二人ともすっかり顔を赤くし、うつむいて食事を口に運ぶ。
「な、七瀬、ありがと」
聞こえるか聞こえないかの景子の声が、秋の涼風の中に消えた。
421トリコロ にわ×八重8/17:04/10/28 20:39:05 ID:6MNwUJt+
昼食を終え、約束どおり八重のリクエストに従った行動をとる。びっくりハウスに入って目を
回した後は、一緒にゴーカートに乗ろうと言って広場に連れて行く。八重がハンドルを握ると
巧みなハンドル捌きを見せ、景子を驚かす。結構こういうものの操縦は好きなのだと得意げに
語る八重を景子はかわいいと思いながら見つめている。何度か休憩を挟み、いろいろなアトラク
ションを巡った後、景子は最後はあれがいい、と指差した。その先には大きな観覧車があった。
「こ、怖くないですか? 結構高いし、揺れたりとかしませんか」
「大丈夫…だと思う。でも、遊園地に来て観覧車に乗らないっていうのはないんじゃない?」
八重は景子の言うことも尤もだと思う。いくら景子が許したわがままとは言え、長い時間好きな
所を回らせてもらったのだ。最後くらい景子の望む観覧車に乗ったっていいではないか。
「それじゃあ、最後は一緒に観覧車に乗りましょう」
「うん。」
422トリコロ にわ×八重9/14:04/10/28 20:40:00 ID:6MNwUJt+
二人は手をつないで観覧車の乗り場へ行く。運良く自分たち以外のお客さんはまばらで、すぐに
乗ることができた。タラップを上る途中、景子の袖にしがみついて八重が頼む。
「にわちゃん、揺れたら嫌ですから、隣に座っていいですか?」
「いいわよ。でも七瀬、そんなに怖がらなくても…」
「と、隣がいいんです!」
ゴンドラに乗り込むと八重は袖にしがみついたまま、景子の隣に陣取った。ゴンドラは時計回り
にゆっくりと上がってゆく。最初は怖がっていた八重も次第に慣れ、景色を楽しむ余裕が出て
きた。
「あ、あっちに学校が見えますよ。結構遠くまで見えるんですねえ。ねえ、にわちゃ…」
はしゃいだ八重が左にいる景子を見ると、頬に涙がつたっていた。
「にわちゃん?」
「あは…ごめん。ごめんね、七瀬、ごめん…」
八重はバッグからハンカチを取り出して景子に差し出し、慰めるように抱きしめる。
「…最近、考え事が多かったですよね? それと関係あるんですか」
「分かったの、私、七瀬が好きだって…」
「それは誕生日のときにも言ってくれましたよね」
「うん、だけど、だけど……っ」
それきり景子は言葉を失って泣きじゃくる。八重はあやすように景子の背中を撫で続ける。
「夕日が…綺麗ですね」
八重はなんと言葉を掛けて良いか分からず、外を眺めてぽつりと呟いた。
423トリコロ にわ×八重10/14:04/10/28 20:46:47 ID:6MNwUJt+
二人は遊園地を後にして、電車に乗り帰路に着く。景子は泣きやんだものの、口が重い。二人は
無言のまま電車に揺られ、駅に着くのを待つ。
当初は、駅に着いたら別れる予定だった。しかし、このままの景子を放って帰る事など八重に
出来るはずもない。電車を降りてから、八重は携帯電話を取り出し、家に電話を掛ける。
「あ、お母さん?うん、私。今日、にわちゃん体調が悪いって言うから、泊まってついててあげ
てもいい? …うん。じゃ、一度家に寄ってから、…うん。じゃ、また後でね」
「…七瀬?」
「さっきのこと、はっきりさせてくれないと、今日はとても一人で帰れませんよ。私」
「…ごめん」
「私は一度家に帰って荷物を取ってきますから。家で待っててくれますか」
「…うん」
一旦二人は駅で別れてそれぞれの家に帰ることにした。
424トリコロ にわ×八重11/14:04/10/28 20:47:35 ID:6MNwUJt+
一時間ほどして、八重が泊まる準備を整えて潦家を訪れる。景子はさっきよりも落ち着いている
が、あまり元気がないのには変わりがない。八重が心配して尋ねる。
「…もう、話を聴いてもいいですか」
二人は景子の部屋のベッドに並んで腰掛ける。景子は組んだ手を見つめながら、ぽつりぽつりと
話し始める。
「ずっと悩んでいたの。私、七瀬が好きなのって、どういう気持ちで好きなんだろうって。最初
は友達だって思ってたけど、それとも違う。好きだって思うのも、七瀬がやさしいから、まるで

お母さんかお姉さんみたいに思って甘えているだけなんじゃないかって考え始めて…」
八重は黙ってうなずきながら景子の話に耳を傾ける。
「『長織ゆうえんち』って、いつも忙しいお父さんとお母さんが一度だけ、私を遊びに連れて
行ってくれたところなの。……楽しかっ…た…」
再び泣き崩れる景子を八重は黙って包むように抱きしめる。寂しさで景子が消えてしまわない
ように。
「遊園地に行けば何か分かると思った。あの時も最後に乗ったのは、観覧車だったから。七瀬が
隣にいてくれて……わたしっ…私…う、れしかった…」
425トリコロ にわ×八重12/17:04/10/28 20:48:38 ID:6MNwUJt+
「―――私は、」
八重が穏やかな声で景子に語る。
「にわちゃんに『好き』って言われる前、思ったんです。にわちゃんを伊鈴さんに取られたく
ないって。友達を取られるっていうのではなくって…。もし真紀子さんや多汰美さんに恋人が
出来たとしても、あんな気持ちにならないと思います。だから、私『好き』って言ってもらった
とき嬉しかった…」
「な、なせ…」
「あの時、『自分だけ見てほしい』って言ってましたよね。でも、私が真紀子さんや多汰美さん
のことを大事に思っていることも、にわちゃんは認めてくれました。私は、その言葉のほうが
嬉しかったんです」
八重は力をこめて景子を抱きすくめる。
「私は、どんな形でもいいんです。友達でも、家族でも、恋人でも、あなたのそばにいられるの
なら。にわちゃんが私の全てを認めてくれることに変わりはないんですから。私もにわちゃんの
ことを全て認めたいんです。…それではいけませんか?」
「……うん。私も七瀬のそばにいたい…ずっと。観覧車に乗ったとき、分かったの。私にとって
七瀬は誰の代わりでもないし、誰も七瀬の代わりになれないって。もう私、迷わなくてもいい
……ありがとう、七瀬…」
二人は抱き合ってさめざめと泣いた。涙で体が溶けてひとつになれたらどんなにいいだろうと
思いながら。
426トリコロ にわ×八重13/17:04/10/28 20:49:35 ID:6MNwUJt+
泣いてからしばらく後のことは二人ともよく憶えていない。何も口に入れないのは良くないと、
二人で八重の母、幸江が用意してくれたおにぎりを食べ、順番にお風呂に入って今日の垢を洗い
落としたことだけぼんやりと記憶に残っている。
その後、パジャマに着替えて、二人はベッドの上で寄り添い合うように座る。
「七瀬」
景子は八重の名前を呼ぶ。静かに腕を伸ばして左側にいる八重をそっと抱き寄せる。
「『好き』とか『愛してる』よりももっと強い言葉があるなら、いま言いたい」
「…にわちゃん」
八重も景子の気持ちに応えるように、景子の背中に手を回す。二人は自然に目を閉じて唇を重ね
合わせる。長いキスは八重の誕生日にベッドで交わして以来だ。景子は舌で八重の唇をゆっくり
舐め上げその柔らかい感触を味わう。八重は口に走る心地よい刺激に体を任せ、もっと景子に
近づきたいと強く体を抱きしめる。景子の舌はやがて口内に侵入し、八重の舌を求めてゆっくり
と動き回る。八重は最初どうすれば良いかと戸惑っていたが、景子に応えたいと思う気持ちが
勝ち、己が舌を景子のものにおずおずと絡ませる。そして二人の舌は互いをむさぼるように求め
合う。何度も唇を重ね合わせては離し、深いキスを繰り返す。
「…はぁ…っ、七瀬、七瀬…」
景子は何度も八重の名前を呼び続け、頬や首筋に吸い付くようなキスをする。最初は腕に力が
入っていたが、やがて景子から与えられた熱に飲まれ、抱き寄せる力も抵抗する力も八重から
失われていった。
427トリコロ にわ×八重14/17:04/10/28 20:50:20 ID:6MNwUJt+
(私、どうしたらいいんだろう…。胸がドキドキして体が浮いていくみたい…。)
景子の唇から与えられる熱は予想以上に熱い。八重は心臓が早鐘のように脈打ち、体の中心が
熱をうつされて焼け付くような錯覚を感じながら、景子の接吻を受け止める。
次第に景子の熱は自身の体をも焦がすように包む。耐えられなくなった景子は乱暴に服を脱ぎ
捨て、下着だけになって八重の体にしがみつくように抱きついた。
「に、にわちゃん、私も…あつい……」
「七瀬…」
やがて八重の熱さへの我慢も限界に達する。訴えを聞いて景子は両手で一つずつ八重のパジャマ
のボタンを外していく。すべて外し終えると、八重は協力するように上半身を浮かせ、景子は
八重の腕から袖を抜いて服を投げ落とす。次いで浮いた上半身を右腕で支えつつ左手でズボンも
脱がせて投げ落とす。そのあとブラのホックを外して奪い、八重の白くて小ぶりな乳房を露に
させた。
「…にわちゃん、恥ずかしい」
「どうして?」
「だって私、多汰美さんみたいにスタイル良くな…んぅっ!」
恥ずかしがる八重の抗議を唇で塞ぎ、景子は左手をそろりとわき腹から胸へと這わせる。下から
やさしく持ち上げるように包み、じっくりと刺激する。最初は触れられるのに抵抗していた八重
も景子の手が与える刺激の前に陥落し、溺れきってしまわないようにと景子の体にむしゃぶり
つく。景子は八重が嫌がってはいないことを察すると、唇を離し、首筋から鎖骨をゆっくりと
舐めながら舌を降下させる。ついに舌は胸まで達し、景子の舌は八重のピンク色の突起をざらり
と舐めあげる。
「や…っ! にっ…にわ…ちゃ…」
八重が上げる喘ぎ声に景子の情欲はますます掻きたてられ、景子はそのまま舌先でつついたり
なぞったりを繰り返す。最後には、幼子が母親の乳を求めるように八重の固く尖りきった突起を
吸い上げる。景子の唇から発せられる八重を欲する衝動を全て受け止めてやりたいと、八重は
景子の後頭部をくしけずるように何度も何度も撫で続ける。
428トリコロ にわ×八重15/17:04/10/28 20:51:02 ID:6MNwUJt+
「な、七瀬」
少し息苦しくなった景子は八重の胸から唇と手を離し、八重の体を起こして掻き抱く。
「どうすればいいのか、もう私、分からない。…もっと七瀬が欲しいの」
「…うん」
哀願するように八重にしがみつく景子を八重はやさしく抱き返し、頬にキスをする。
「だったら、にわちゃん、ずっと私のそばにいてくれる?」
「…ずっと、いる。もう迷わない。離れない」
景子はそう断言すると、再び八重に口づける。八重は自分を包むための右手を約束してくれた。

自分に足りなかった確証とは、そんな八重を形に惑わされずに愛し続ける覚悟だと判ったのだ
から、そう八重に誓うのだ。
景子は八重を静かに押し倒し、下腹部に右手を滑らせる。もっと八重に近づきたいと左手で自分
の上下の下着を外して脱ぎ捨て、八重の体全体に覆いかぶさる。右手でいたわるように下腹部を
撫で、次いで指を内股へと滑らせる。下着に指を押し当てると、じわりと湿っている。そこを
もっと潤すべく、景子は布の上から花弁の外側をそっと中指でなぞる。
「あっ…、そんなとこ……や…だっ」
切なげに声を上げる八重の首筋にキスをしながら、景子は人差し指を下着の内側へと挿しいれ
る。八重は侵入してきた指に驚いてびくりと震え、景子の頭にしがみつく。
「七瀬、力…抜いて。無理にしないから」
景子は緊張する八重をなだめつつ、侵入させた指を花弁の内側にゆっくりと這わせる。何度か
指を花弁の中央をくすぐるように上下させた後、挿しいれた親指と人差し指で一番敏感なところ
を探り当てそっとつまむ。
429トリコロ にわ×八重16/17:04/10/28 20:51:47 ID:6MNwUJt+
「にわ…ちゃんっ…私…おかしくなりそ…っ」
景子の指の責めに耐えかねて、八重は脚を内側にきつくしならせる。溢れ出てきて指を濡らす
ぬめりと八重が抱きしめる腕の力の強さが、景子に八重の限界が近いことを知らせる。
(七瀬を楽にさせてあげないと…)
景子は自分を抱きしめる八重の腕を解き、右手を下着の中から抜き取って、最後の下着を脱が
せる。左手で八重の脚を開いて押さえつけ、景子は唇を八重の入口に寄せ、接吻した後ゆっくり
と舐め上げる。
「やっ、やだっ! に…にわ…ちゃ…」
八重は口で与えられた刺激に感電したように反応する。景子はぬめりを何度も舐め取り、その
合間に陰核を指でつついて刺激を加える。八重は下腹部の奥から湧いてくる強い波に意識をさら
われて、シーツを持った手を爪が食い込むほどに強く握り締める。八重の口から漏れる泣き声が
混じったような喘ぎ声を聞きながら、景子は溢れてくるぬめりを舌で掬い取り続け、陰核を吸い

上げた。
「も、もう…だ、め…っ! やあ…っ!」
八重は一際高く声を上げて達すると脚を一度内側にびくりと痙攣させ、シーツを掴んでいた手を
解きベッドに体を沈ませた。
「な、七瀬、大丈夫!?」
景子が慌てて八重を抱き上げると、八重は力なく笑って答える。
「だ、大丈夫…です。力…入らなく…なっちゃって」
「痛くなかった? 無理しなくていいから」
「大丈夫。…心配しないで。」
放心状態の八重をそっと横にし、景子は添い寝をして抱き寄せた。
430トリコロ にわ×八重17/17:04/10/28 20:58:33 ID:6MNwUJt+
しばらく経って意識が現実に戻ってきた八重は、隣で寝ている景子の手をとって言う。
「……あのね、私」
少し息をついてから、
「にわちゃんがそばにいるって感じられたから…私、嬉しかったし、良かったです」
景子は八重の手を握り返し、右手で八重の長い髪を撫でながら答える。
「…私も、七瀬に近づけたと思ったから…良かった」
二人は静かに唇を重ねたあと、そのまま眠りの世界へと落ちていった。

――――寂しかったふたりの子供は、今宵どんな夢を見るのだろうか。



  <エピローグ>
朝起きたときに好きな人が隣にいてくれたら、どんなに幸せだろう。
私の好きな人は、陽だまりのような暖かさでいつも私を包んでくれる。そして、私にこう話し
かけながら、起こしてくれるのだ。
「にわちゃん、朝ごはん出来ましたよ。一緒に食べましょう」
朝は再生の時間だという。私は暗闇の世界から彼女のいる美しい世界に戻り、こう言うのだ。
「おはよう、七瀬」

                                                 おしまい。
431酸性温泉:04/10/28 21:00:24 ID:6MNwUJt+
エロありも書いたから にわ×八重もひとまず終了です。ありがとうございました。
今回は力の抜きどころが少ないので、書いててきつかったです。にわ×八重が好きだからここまで
書けたのだとしみじみ思います。東香ちゃんとくろ、サドVer.八重もなんとか出せました。

…ところでエロってこんな感じでよろしいんでしょうか?_| ̄|○<エロナンテハジメテカイタカラワカンナイノ(嬢)
432名無しさん@ピンキー:04/10/29 00:29:34 ID:55j4iSBt
てめーはシネ
433名無しさん@ピンキー:04/10/29 01:00:15 ID:DAaqdYId
>>431
GJエロー!
エロがなくても好きでした。次回作楽しみにしてます。

>>432
おまいが氏ね
434名無しさん@ピンキー:04/10/29 01:33:37 ID:+lwXoJN5
>>酸性温泉氏
貴方は俺を頃す気ですか?(褒め言葉)
何はともあれ蝶グッジョブです!

>>433
池沼は相手にするなw
435名無しさん@ピンキー:04/10/29 17:11:10 ID:VPT33tEt
>>431
最後の一文はいただけないな。
エロ書くのを楽しめないなら、他の場所に投稿したほうがいいよ。
436酸性温泉:04/10/29 18:25:59 ID:Y+74v1fz
>435 読み返すと、確かに読んだ方を不快にさせてもおかしくない不適切な言い方でした。
申し訳ありません。

>433-434 ありがとうございます。難産でしたが、二人の気持ちの行方にけりをつけられたので
自分としては満足しております。
437名無しさん@ピンキー:04/10/30 01:06:07 ID:0wskUrNy
このスレでは俺の書くような百合コントなど、とても許されないだろうな……。
438名無しさん@ピンキー:04/10/30 02:14:39 ID:QxhHYtUT
>437
カモォーンナッ!!恐れるな、飛び込めっ!










……や、ぜひとも投下していただきたく。
439名無しさん@ピンキー:04/10/30 02:29:11 ID:0xuLMBEt
自分にために描きたまえ
440名無しさん@ピンキー:04/10/30 21:42:06 ID:vYZsbJzj
百合コントってどんなものなんだろう
441酸性温泉:04/10/30 21:51:16 ID:Yg3YENp/
>>414-430のおまけ。もうこれで完全にネタ切れましたのでフェイドアウトします。
皆様、ありがとうございました。

※東香ちゃんのところに行く電車の中の真紀子さんと多汰美さん。
真:あの二人だけで遊園地に行かせて大丈夫やろか?
多:あ、八重ちゃんの身長制限気にしとるん? 大丈夫、130cm超えてたら大概の乗り物に
  乗れるけえ。
真:違う! 観覧車の中で二人っきりにさせたら、にわが間違い起こさんかと…
多:遊園地ネタで真っ先にそれが浮かぶって、さすがエロガッパじゃねえ、マキちー。
真:やかましい!!

>百合コント
甘々バカップルなネタでしょうか?
442名無しさん@ピンキー:04/11/01 23:52:12 ID:oj1r/cH+
トリコロ乙。
ノーマルが次第に百合に引かれてくのは実に美味しゅうございます。
443名無しさん@ピンキー:04/11/02 22:16:49 ID:jazVH81c
保守
444酸性温泉:04/11/03 14:43:05 ID:ochgTYZo
本日の保守。
エロなしの三作を>>1に記載されている百合ちゃんねる様に投稿しました。一部
書き直しと修正を加えています。
一気読みしたい方、改行の失敗が気になる方は是非どうぞ。

18禁版は今のところ投稿する予定はなし。書き直ししたらきりがなさそうなので。
445名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:19:27 ID:/7zDD77u
どうも。初めてですけど大丈夫ですかね。
最近クリアしたばっかりのアカイイトから。
出てくるのは桂ちゃんと葛ちゃん。
非常に疲労困憊なので、
「日本語下手だよ!!」「キャラ、全然違うじゃんか!!」
「長すぎ!!」「クリームでそんな漢字絶対書けないよ!!」
とかいっていじめるのはお手柔らかに頼む。
          「恐怖日記」
446名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:21:15 ID:/7zDD77u
――葛の日記帳:2004年12月25〜26日より――

「うう〜遅くなってしまいました〜」
今日はクリスマス。もう夜中だというのに町は活気であふれている。
すれちがう人はみんな幸せそうな顔をしている。
そんな中、私はプレゼントを片手に期待と不安半々で桂お姉さんのアパートに急ぐ。

桂お姉さんに会うのは、あの夏の終わりの日以来のことだ。
―――本当は、あの日は桂お姉さんを近くで見るためだけだったのだけれど。
鬼切りの頭となれば、一般の人に軽率に会いに行くことは出来なくなる。
そのことはよくわかっていた。
最後に桂お姉さんにだけは…。もうお姉さんは私のことを覚えてないけれど…。
それでもいい。私の一番大好きな人――桂お姉さんの姿を心に焼き付けておくんだ。
そう思って会いに行ったのに。

―――お姉さんの記憶は、私が確かに消したはずだ。
それなのに、桂お姉さんは私の顔を見るなり「葛ちゃ〜〜ん!!」と叫んで
ぎゅ〜〜と抱きしめてくれたのだ。
なんで?という疑問は浮かばなかった。私はただただうれしくてたまらなかった。
447名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:23:09 ID:/7zDD77u
「ふえぇぇーーーん!!け、桂お姉さぁぁん!!私のこと、誰だかわかるんですか!?
う…う、うえぇ〜〜ん!!うれしいよう!!」
私は周りの目も気にせず叫びながら抱き返した。
私のことをさらにぎゅっとしてくれるお姉ちゃん。
「ごめんね、葛ちゃん。私、顔を見るまで葛ちゃんのこと思い出せなかったよ。
…本当にごめんね?」
そんなことはどうでもよかった。大好きなお姉ちゃんが私の名前を呼んでくれて、ぎゅっとするとぎゅっと抱き返してくれる。それだけで私は十分すぎるほど幸せだった。

―――私は今でも、自分の罪の意識に押しつぶされそうになったり、
…夜一人で寝るのが怖くなったりすることがある。
そんなときにはあのぎゅっという感触を思い出し「桂お姉さぁぁん…」と
小声でつぶやきながら丸めた布団に抱きつくと、とても気分が良くなるのだ。
―――この秘密は一生誰にもしゃべることはないだろう。…というかこんな事を
誰かに知られてしまったら私は恥ずかしさのあまり死んでしまう…
448名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:24:07 ID:/7zDD77u
話が脱線してしまった。私のぐずり泣きが収まったあと、私たちは今後のことについて話し合うことにした。私はそのとき
「もう二度と桂お姉ちゃんに会えないなら私もう生きていけないです!!」
とか何とかしゃべった気がする。今思い出すと悶え死にしてしまいそうだ。
しかし、桂お姉さんも
「私も生きていけないよ、葛ちゃん。悲しくって死んじゃうよ。」
と言ってくれた。私はうれしくてうれしくてまた泣き出してしまった。
泣きやむまでまたしばらく待ってもらった後、いつ会うことができるか話し合った。
私は何とか頑張れば年に1〜2日は自由行動が取れると言った。
…まぁ、それもあちこちに頭を下げてやっと取れるかどうかなんだけれど。
そして話し合いの結果、私たちは今度のクリスマスの夜はお姉さんのアパートで
いっしょに過ごすことに決めたのだった。
私はたとえ死にかけていたとしても這ってでも行きますからとかそんな馬鹿なことを
口走っていた気がする…。はぅ…。
449名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:25:12 ID:/7zDD77u
―――今日はそんな大切な日なのに…。私は遅刻をしてしまった。
まあ、仕方ないと言えば仕方なかったんだけれど。
こんな日に急の仕事が入るとは思ってもみなかった。
うぅ、これでも全速力で終わらせて最低限の身だしなみだけ整えて
飛び出してきたんだけどなぁ。
―――桂お姉さん怒ってないよねぇ?
私の仕事の大変さはよくわかってくれていると思うし…。うーん…でも…。
…それ以前に、いつのまにかお姉さんに恋人ができていて、
私との約束のことなんかとうの昔に忘れてたなんて事があったら…。
うっうっ…。

そんな不吉なことを考えているうちにアパートが見えてきた。
エレベーターに乗って四階へ。
401、402・・・あった、403―羽藤 桂―。ドキドキ…。
―――よかった、明かりはまだついているみたいだ。

そしてふと足下のミニクリスマスツリーが目に入る。そこには


   ―――メリークリスマス!!葛ちゃん!!―――

と書かれた手作りのカードがぶら下がっていた。
450名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:25:56 ID:/7zDD77u
私の不安は一瞬で吹き飛んでしまった。桂お姉さん…。
気分が一気に軽くなってチャイムを押そうとしたが、やめた。
ふふふ、驚かせちゃおうかな。
ノブを回してみる。どうやら開いているようだ。
ガチャッ!!
「メリークリスマスです、桂お姉さ…はぅ!!」
扉を開けた瞬間、何か柔らかい物が顔を直撃した。
…うーん、いったい何事だろうか。
状況が把握できないうちに、また何かが顔に当たった。
いったい何事かと目をこらすと…。いた。桂お姉さんだ。
ソファーに座りながらこっちをじ〜〜っと見ている。
どうやら投げてきたのはお姉さんのぬいぐるみコレクションの一部らしい。
私は呆然と立ちすくんでいた。
ぬいぐるみを新たに二個手に持ってお姉さんはぼそっと言う。
「…時計」
え?よく聞き取れなかった。
「…時計、見て」
私は自分の腕時計を覗いた。12時40分…。
あ…もしかして…。
451名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:26:50 ID:/7zDD77u
今は何月何日の何時何分ですかぁ〜?」
うう…やっぱり。
「12月…26日の0時40分ですぅ…。」

「バカぁ!!!葛ちゃんのバカぁぁ!!!」
第三、第四のぬいぐるみが私めがけて飛んでくる。
「もうクリスマスは終わっちゃったじゃない!!!
葛ちゃんが約束やぶったぁぁ!!!うううっ!!」
…。わたしはちょっとむっとして言った。
「あのですねぇ、桂お姉さん、遅れてしまったのはホントにごめんなさい。
しかしですねぇ…」
そういっている間にもぬいぐるみはぼんぼん飛んできた。
「…私も自分の立場上…」
がすがすっ。もう玄関はぬいぐるみで一杯だ。

「…私たち、約束したんだよね?『クリスマスの夜に』二人で会うって!!
あんなに固く約束したのにぃぃ!!葛ちゃんのばか!!嘘つき!!
おたんこなす!!」
最後にソファーのクッションを投げながらお姉さんは言った。
452名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:27:45 ID:/7zDD77u
…と、私はそこで気づいた。怒っているにしてもあんまりにもお姉さんの顔が
真っ赤なこと。それにこの匂いは。
「…桂お姉さん、もしかしてお酒飲んでます?」
「…う、うえぇぇーーん!!葛ちゃんが約束破ったよぅ!!
ひどいひどい、あんまりだよぉぉ!!!」
今度は突然泣き出してしまった。間違いない、アルコールだ。
「…桂お姉さん…もちろん私だってお姉さんと一緒にクリスマスの夜を
過ごしたかったですよ。でもですね…」
「葛ちゃんは私の事なんてどうでもいいんだ!!私のこと大っ嫌いになったんだ!!
うわぁぁーーん!!」
そういってお姉ちゃんはだだっ子のように手足をばたつかせている。
…これ以上何を言っても無駄なようだ。
私はお姉さんに背を向けて押入をあけて、布団を一枚出して引いた。
そしてお姉さんをやっとのことで布団まで運んであげた。
すると泣き叫ぶのはすすり泣くのに変わり、すすり泣きは聞き取れない
独り言に変わった。もうじき眠ってくれることだろう。
一応コップに水を入れておいておこうか。
…しかし、疲れたなぁ…。
453名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:28:53 ID:/7zDD77u
私は携帯電話を取り出した。気分が重い…。ピポパ。
「…あの…葛ですけど…」
「…なんでしょうか、葛様」
「…今日の午後までには必ず帰ります…。はう、だから心配しないでください」
「…了解しました。楽しいお時間を」
組織にも頭の柔らかい人がいてすごく助かるんだけど…。迷惑かけっぱなしだなぁ…。
ちょっと後ろめたい。
でも、このまま桂お姉さんと別れるのは後味が悪すぎる。
――ちゃんと仲直りしないと。
私はとりあえず玄関に散らばったぬいぐるみを片づけることにした。
――あ、このびんは…。桂お姉さんが飲んだお酒だな。
確かにジュースに似ているけれど、普通は気づくよね…お姉さんらしいなぁ。
しかし、桂お姉さんの酒癖があそこまで悪いとは思わなかった…。
大人になっても桂お姉さんと飲みに行くのはやめておこう…。

びんを捨てに台所にはいると、テーブルの上のたくさんの料理が目に入った。
うわぁ、桂お姉さんの手作りだな。シチューに、サラダに、七面鳥。
そして、テーブルの真ん中にはチョコレートケーキ。
そこにはクリームでこう書いてあった。
454名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:30:06 ID:/7zDD77u
―――メリークリスマス葛ちゃん!!
―――愛を込めて from桂

「うう、桂お姉さん…」
私、ひどいことしちゃったかな…。料理がさっぱりな桂お姉ちゃんがここまで
頑張って準備してくれたんだよね…。
…よし、朝になったら一緒にこのお手製料理を食べて仲直りしよう。
朝からこのメニューはちょっと重いかもしれないけど、どんなにまずくても
「おいしいです〜!!」と言ってあげるんだ。
それで機嫌なおしてくれるといいなぁ。
私はラップをかけて料理を冷蔵庫にしまいはじめた。
…試しにシチューを指で取ってなめてみる。う…こ、これは…。
…不安だ…。

桂お姉さんはどうやら寝てくれたらしい。物音たてずにしーんとしている。
私はおねえさんの隣に布団をもう一枚引いた。
そうだ、押入の中にあった浴衣を貸してもらうことにしよう。
私は浴衣に着替えながら目の前の問題について考えていた。
…ちゃんと「おいしい」って言えるかな…。
455名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:31:01 ID:/7zDD77u
とにかく今はもう寝ることにしよう。
私は浴衣に着替え終わると、自分の布団にもぐり込んだ。

…しばらくすると、桂お姉さんが私の布団にすべりこんできた。
―――まだ、起きてたんだ。
振り向く間もなく、桂お姉さんが言った。
「つーづらちゃーーん?」
「は、はい?」
「わたし、すっごく、すっごぉく怒ってるんだからね」
「はい…すみませんです…」
「…ホントに反省してる?」
「…わたくし、とっても、とっても反省しております…」
「…じゃあ、私のお願い聞いてくれたら許してあげるかも」
―――えっ!?
「な、何ですかそのお願いって!?私に出来ることなら…」
「…しっぽ…」
「えっ!?」
なにか非常に嫌〜な予感が…。
「しっぽ…さわらせて…」
―――予感は的中した。
456名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:31:52 ID:/7zDD77u
…確かにしっぽの出し入れはコントロールできる〜と言うより「力」を使おうと
すると長耳と一緒に勝手に出てくるのだ。
…でもあれをお姉ちゃんに触られると変な気分になるんだよね…。
私が躊躇していると桂お姉さんが叫んだ。
「ねえ、だめなの葛ちゃぁん!?わたしの頼み、きいてくれないの!?」
…断るとまた暴れそうだしなぁ…うう…。仕方ない。
「わかりました、ちょっと待っていてください…」
私はしぶしぶ布団を抜け出して、構えを取り、気を高めた。
すぅ…「ハッ!!乾!!」
私の周りに光が飛び散る。
そして私の頭から耳が飛び出し、浴衣からしっぽがはみ出た。
―――お姉さんはらんらんと光る目でこっちを見ている。
泣きじゃくったせいで真っ赤になった目といい、危なそうな笑顔といい…。
まるでノゾミちゃんみたいな顔だよ…。
どうやら酔いはさらに悪い方へ向かっているらしい。うう、大丈夫かなぁ…。
私はおそるおそる布団に入り込んだ。
「さぁどうぞ…好きなだけ触って…はう!!」
お姉さんは言い終わらないうちに私にすり寄ってきてしっぽをつかんだ。
――ふにぃ、ふにぃ、さすさす。
あぅぅ…。な、なんだかずいぶんいやらしい手つきなんじゃないかな…。
457名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:32:36 ID:/7zDD77u
―――またあの変な気分になる…。全身の力が抜けて、お腹の下の方がちくちくする
妙な感覚がやってくる。
「ふぅぅ…」
私は唇をかんで声を押し殺した。
「ねぇ…。葛ちゃん?」――すりすり、すりすり…
「ひぁ!!あぅぅ…」
――ぎにぃ、ぎにぃ、さすさす…
普段のお姉さんからは想像できないような鋭い動き。
そんな指使い、いったいどこで覚えたんでしょうか…。
――ぎゅっぎゅっ、するする…
「つーづらちゃーーん?」
いつもの桂お姉さんらしくない、艶めかしく色っぽい声だ。
「う…はぅ?」
「私ね、すごく、すっごく心配してたんだよ。もしかして、葛ちゃん私との約束なんて
忘れてしまったんじゃないかって…」
――すりすり、こすりこすり…
「…私以外に好きな人ができたんじゃないかって…」
――長耳に桂お姉さんの息が当たってむずがゆい。
「…また自分一人で何もかも背負って…私をおいてけぼりにして
どこかに行ってしまったんじゃないかって…葛ちゃん?聞いてる?」
458名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:34:17 ID:/7zDD77u
そこまで言って、桂お姉さんは私の顔をまじまじと見つめた。
「ねぇ、葛ちゃん約束して…。もう私にこんな寂しい思いをさせないって…。
葛ちゃんが12時になっても来なかった時、わたし…
本当に寂しくって死んじゃいそうだったんだよ…」
「…桂お姉さん…」
後ろを振り向くと、桂お姉さんはいまにも泣き出しそうな顔をしてこちらを見ていた。
…うう、なんてかわいい顔なんだろう。
私ははっきりと宣言した。
「…わかりました。約束します。私、もう何があろうともぜぇぇったい桂お姉さんを
悲しませたりしません。…だから、もう泣かないでください…」
私は桂お姉さんを正面からぎゅうっと抱きしめた。
「…葛ちゃん。私、すっごくうれしい!!うれしくって死んじゃいそうだよ!!」
そういってお姉さんも私の背中を強くつかんでくれた。
―――そうして二人で抱き合っていて、しばらくすると。
459名無しさん@ピンキー:04/11/05 13:34:58 ID:/7zDD77u
桂お姉さんが私の長耳に口を近づけて言った。
「…葛ちゃん?私幸せすぎてもう…我慢できないよ…。
…ねぇ、もっと先に行ってもいい?」
「…先?それはいったい…ふあぅ!!!」
桂お姉さんはいつのまにかまた私のしっぽをつかんでいた。
「…ねぇ?いいでしょ?ねぇ?」
――すりすりすり――
――どうやら私に選択権は全くないようだ…。
「は…はいですぅ…」

桂お姉さんは右手でしっぽをつかんだまま背後に回り、私を座らせた。
開いている左手で私の髪をいじっている。
「葛ちゃん、髪伸ばしてるんだ…ふふふ、こっちの方が似合ってるよ。
もう、かわいくてかわいくて…私…」
そして、お姉さんの左手は私の浴衣の襟へと伸びた。
シュルシュルという衣擦れの感覚。
ほてった肌に夜風があたって気持ちいい。
「…今は葛ちゃんは私だけのものだよ。ふふふ…」
――私はいったいこれから何をされてしまうんだろう…。
ぼんやりとそんなことを考えていた。
460名無しさん@ピンキー:04/11/05 14:09:12 ID:/7zDD77u
――桂お姉さんの顔が肩に乗る。
そしてお姉さんは、かわいらしい舌を出して私の鎖骨のくぼみをなめはじめた。
――ちろり、ちろり。
「あっ!!ふぅぅ!!」
体全体に電流が走る。
そ、そんなところ…。
思わずのけぞってしまう私の体を、お姉さんは左手をのどに回し、
肩にあごをかけて強く押さえてくる。

「大丈夫だよ、葛ちゃん。安心して…力を抜いて…」
右手のしっぽいじりを続けながらお姉さんがつぶやく。
――その後も桂お姉さんは執拗に私の鎖骨をなめ続けた。
意地悪く緩急や強弱をつけて私を攻める。
「はぁっはぁっ…ふぁぅ…」
しっぽをさする動きも止まる気配はない。
「くはぁ!!ひゃおぅぅ!!」
…私はほとんど失神寸前だった。


「うっふふふ…葛ちゃん。いい声だよ。ね?もっと…」
お姉さんの声が遙か遠くから聞こえる。
そして、お姉さんは鎖骨なめとしっぽふにふにのスピードをさらに上げた。
――チロチロチロ――ふにふにふに――
――体ががくがくする。絶叫が押さえられない。
私はなにかの恐ろしい予兆を強く感じていた。
「 葛ちゃん…私も…もう…」
――桂お姉さんのしっぽをつかむ手に強く力が込められる。

「ふ、ふぁぁぁ!!!くひゃぅぅぅ!!!!!」
――その瞬間、私の精神はどこかへ遠くへ飛んでいった。
461名無しさん@ピンキー:04/11/05 14:09:26 ID:/7zDD77u
――桂お姉さんの顔が肩に乗る。
そしてお姉さんは、かわいらしい舌を出して私の鎖骨のくぼみをなめはじめた。
――ちろり、ちろり。
「あっ!!ふぅぅ!!」
体全体に電流が走る。
そ、そんなところ…。
思わずのけぞってしまう私の体を、お姉さんは左手をのどに回し、
肩にあごをかけて強く押さえてくる。

「大丈夫だよ、葛ちゃん。安心して…力を抜いて…」
右手のしっぽいじりを続けながらお姉さんがつぶやく。
――その後も桂お姉さんは執拗に私の鎖骨をなめ続けた。
意地悪く緩急や強弱をつけて私を攻める。
「はぁっはぁっ…ふぁぅ…」
しっぽをさする動きも止まる気配はない。
「くはぁ!!ひゃおぅぅ!!」
…私はほとんど失神寸前だった。


「うっふふふ…葛ちゃん。いい声だよ。ね?もっと…」
お姉さんの声が遙か遠くから聞こえる。
そして、お姉さんは鎖骨なめとしっぽふにふにのスピードをさらに上げた。
――チロチロチロ――ふにふにふに――
――体ががくがくする。絶叫が押さえられない。
私はなにかの恐ろしい予兆を強く感じていた。
「 葛ちゃん…私も…もう…」
――桂お姉さんのしっぽをつかむ手に強く力が込められる。

「ふ、ふぁぁぁ!!!くひゃぅぅぅ!!!!!」
――その瞬間、私の精神はどこかへ遠くへ飛んでいった。
462名無しさん@ピンキー:04/11/05 14:32:48 ID:/7zDD77u
↑大失敗。申し訳ない。

「…ちゃん?起きてる?」
う〜ん、何だろう?聞き覚えのある声が聞こえる。
…ここは、いったいどこだろう。いつもの寝室じゃないことは確かだ。
「葛ちゃん、目、さめた?」
ああ、この声は。私がずっと聞きたいと思っていた声。
――桂お姉さんの声だ。
頭を上げて、目をごしごしこするとすぐ近くに桂お姉さんの顔が見えた。
「おはよう、葛ちゃん」
…そうだ、思い出した。昨日はクリスマスで、私はずっと前から約束していた
パーティーのために桂お姉さんのアパートを訪ねて…それで…

……ぼっ!!!

私の顔から火が出た。
昨夜の出来事が頭に浮かぶ。
――あの後お姉さんにい、いったい何をされてしまったのだろうか…。
――そもそも…き、気持ちよくされて気絶してしまうとは…。
――それに、あの声…あんな破廉恥なな声で叫んで…。お姉ちゃんに全部聞かれた…。
はぅっ…。思い出すだけで耳まで真っ赤になる。は、恥っずかしぃぃ!!!
穴があったら入ってそのまま埋まってしまいたい…。



463名無しさん@ピンキー:04/11/05 14:43:32 ID:/7zDD77u
「…葛ちゃん、大丈夫?」
桂お姉さんが私の顔をのぞき込んでくる。
うう、顔をまともに見られないよう。
私はかけ布団で顔をすっぽり包む。
「…葛ちゃん、…聞いてほしいことがあるの」
…桂お姉さんらしくないずいぶん真剣な声だ。
わたしはかぶっていた布団を降ろし、お姉さんの顔を見た。
桂お姉さんは何とも言えない表情で私を見つめている。
とりあえず酔いは引いたみたいだ。
そして、桂お姉さんは私の布団に入り込んできた。
わたしはお姉さんの方を振り向いた。
「…まずね、遅れちゃったけど…メリークリスマス、葛ちゃん」
「…メリークリスマスです、桂お姉さん」
「…昨夜は、ホントにごめんね。…何度謝っても、謝り足りないぐらいなんだけど。
わ、私…下らない屁理屈を言って、無理してまできてくれた葛ちゃんに
ひどいこと言ったり…。赤ん坊みたいに大暴れしたりして…。」
ありゃ、桂お姉さん、あれだけ酔っぱらっていたのに覚えてるんだ。
半分泣きながら言葉を続けるお姉さん。
464名無しさん@ピンキー:04/11/05 14:49:21 ID:/7zDD77u
「…私だってもう子どもじゃないんだから、うっうっ、葛ちゃんのお仕事の
大変さはよくわかってるつもりだったのに…。それなのに葛ちゃんを
傷つけるようなひどいことをずいぶん言ってしまって…。
…私、あのときよくわからないけど妙に興奮してたの。
しかも、しばらくすると逆に心がずーんと沈んだりして…何でだったのかなぁ」
もしかして…この人は自分がお酒を飲んでいたことに気づいていないのかな…。
「それで…私…心ないことをみんな葛ちゃんにぶつけて…。
…葛ちゃんだって好きで遅れたわけじゃないのに…」
桂お姉さんの目が潤んでいる。
「ごめんね、ごめんね、葛ちゃん。うっうっ…
このとおり、手をついて謝りますぅ…。
それで、その、…厚かましいんだけど…私のこと、
許してくれないかな…」
お姉さんの目から涙が一筋こぼれる。
私はお姉さんの涙を指で拭いて言った。
「大丈夫ですよ…私、ぜんぜん怒ってなんかいませんよ、桂お姉さん…。むしろ、
お姉さんが私と一緒に過ごすことをどれだけ待ち望んでくれていたか
よーくわかって、うれしかったぐらいですよ。」
「…葛ちゃん…」
桂お姉さんは信じられないといった顔でこちらを見ている。
465名無しさん@ピンキー:04/11/05 14:54:30 ID:/7zDD77u
「だから、もうそんなに自分を責めないでいいですよ…」
私はお姉さんの頭をなでなでしてあげる。
――うう、お姉さんかわいいなぁ
その時、わたしのいたずら心がちょっとうずいた。
桂お姉さんの耳につぶやく。
「…それにですね…だだっ子みたいな桂お姉さんも…
なかなかかわいらしかったですよ…ふっふっふ」
桂お姉さんの顔がゆでだこみたいに真っ赤になる。
「…もう!!葛ちゃん!!」
お姉さんぷいっとそっぽを向いてしまった。
ホントにかわいい人だなぁ…。
――ちょっと経ってから桂お姉さんはこっちに向き直った。
「葛ちゃん、ちょっと後ろを向いて…」
???わたしは反対向きに転がった。
「こっちを見ちゃ、だめだからね…」
私は後ろを見ないで頷いた。
「それでね、その、あの…」
「…どうしたんですか、桂お姉さん…」
お姉さんの方を振り向こうとすると、強い力で押し返された。
「こっち見ちゃだめだってば!!」
466名無しさん@ピンキー:04/11/05 14:59:28 ID:/7zDD77u
「それでね…あのう…」
「どうしたんですか、はっきり言ってください」
「……ゆうべ、私が葛ちゃんの布団に入っていった後…
わ、わたし、なにかもっと馬鹿なこと…というか…とんでもないことを
な、何度も言っていたでしょう…?」
――桂お姉さんの顔の熱がこっちまで伝わってきた。
――私も思い出して耳たぶまで真っ赤になる。
「きれいさっぱり忘れてくれって言うのは無茶だけれど…
…あのとき私が口走ったことを誰かにしゃべったりしちゃ絶対だめだからね!!!
…そんなことされたら、私、もう顔を出して街を歩けないよう!!!」
467名無しさん@ピンキー:04/11/05 15:17:39 ID:/7zDD77u
…桂お姉さんは私があんな事を誰かに打ち明けるかもしれないと
本気で思っているのだろうか…。
そんなことするわけ…いや、できるわけないじゃないですか…。

「…桂お姉さん、それはいらない心配ですよ…。
絶対誰かに漏らしたりしませんから。安心してください。」
「葛ちゃん…」

振り向いてまた頭をなでてあげようと思ったら、また押し返された。
「…待って、葛ちゃん。もう一つあるの」
お姉さんは私に近づいて小声でつぶやいた。
「葛ちゃん…昨夜私がしたこと…嫌じゃなかった?
その…葛ちゃんが嫌だったなら私もう絶対やらないから…。
…もうやめてほしいなら一回、…また、してもいいなら二回頷いて…」

――私はこくこくと二回頷いた。
468名無しさん@ピンキー:04/11/05 15:21:09 ID:/7zDD77u
「葛ちゃん!!」
――本当は断られるんじゃないかと心配でたまらなかったのだろう。
桂お姉さんは私を振り向かせて唇に思いっ切りキスをしてきた。
私も夢中で唇を押しつけ返す。

――しばらくして、桂お姉さんはわたしから唇を離した。
「うう…葛ちゃん…別れたくないよう…。」
笑ったり泣いたり忙しい人だ。
「…私もそうですよ、桂お姉さん…でも…そろそろ時間が…」
「うん、分かってる…」
「…そんな顔をされるとよけい別れづらくなるじゃないですか…」
…そうだ、と私は布団を飛び出した。
ゆうべ脱いだ服の所をごそごそ探る。
あ、あった。私はプレゼントをつかんでお姉さんの所に戻った。
「はい、クリスマスプレゼントです!!桂お姉さん!!」
私は小さな包みをお姉さんに渡した。
「うわぁ、いったい何だろう。」
お姉さんは包みを破いた。
469名無しさん@ピンキー:04/11/05 15:25:00 ID:/7zDD77u
出てきたのは小さな十字架のネックレス。
お姉さんは早速それを身につけて鏡をのぞき込んだ。
「…気に入ってくれましたか?」
「…うん、すっごいいいよ!!ありがとう、絶対大切にするからね!!」
お姉さんは最高の笑顔を見せてくれた。

――と、突然桂お姉さんの顔が曇った。
「…ど、どうしたんですか桂お姉さん!!やっぱりそのプレゼント、
気に入らないんですか?」
「うぅ、私、日本一のドジ娘だよ。まさか、肝心のプレゼントを買い忘れるだなんて。
うっうっ…」
「ちょ、ちょっと…お姉さん…」
――お姉さんらしいといえばお姉さんらしい。

470名無しさん@ピンキー:04/11/05 15:29:27 ID:/7zDD77u
「私はお姉さんの笑顔が久しぶりに見れただけでもう大満足ですから。
そんなに気になさらず…」
「それじゃあ不公平だよ。…ああ!私のドジは死ななきゃ直らないのかな…」
「…。あ、そうだ、私、プレゼントの代わりに桂お姉さん手作りの料理を
全部もらって帰りますよ。タッパーか何かに入れて…」
「…それでもまだだめだよ…。そうだ、葛ちゃん、この家にある物で、
何かほしい物ってある?あったら何でも言ってね?プレゼントしちゃうよ」
「…うーん…分かりました…」
私は部屋を見渡した。うーん、私が特別ほしい物はこれといって見つからない。
ふと、桂お姉さんに目がとまる。
――そうだ、あれはどうだろう。
471名無しさん@ピンキー:04/11/05 15:32:50 ID:/7zDD77u
「…じゃあ、私、桂お姉さんが今付けているリボンが欲しいんですけど…
いいですか?」
「もちろんいいよ!!…本当にこんな物でいいの?私てっきり、
『それなら桂お姉さんをもらっていくですぅ!!』
とか言われるんじゃないかと思ってて…えへへ」
――自分で言っておいて赤くなる桂お姉さん。
こっちまで恥ずかしくなってくるよ…。
「…わかった。ちょっと待っててね。今切って持ってくるから…」
立ち上がろうとするお姉ちゃんの服をぎゅっと引っ張る。
「…葛ちゃん?」
「わたしは、桂お姉さんが『今』付けているリボンがほしいんです…」
ぽけぇ〜と私のことを見ている桂お姉さん。
472名無しさん@ピンキー:04/11/05 15:36:46 ID:/7zDD77u
――やっと言葉の意味が分かったらしく、お姉さんはにんまりと笑った。
「もぅ、ホントにしょうがないなあ葛ちゃんはぁ〜♪」
――あんまり桂お姉さんには言われたくない…。

桂お姉さんは自分のリボンをはずして、私の髪に着けてくれた。
かすかにお姉さんの髪の匂ひがする。
「どうかな、葛ちゃん。私は、すっごく似合っていると思うよ」
「うぅ…。うれしいですう…。」
「…大事にしてよね、葛ちゃん。私も、あのネックレス一生の宝物に
するからね…」
「はいです…」
473名無しさん@ピンキー:04/11/05 15:39:27 ID:/7zDD77u
そうこうしているうちに時間はもうほとんどなくなっていた。
急いで桂お姉さんの料理をタッパーに詰める。
――全部もらっていく、なんて思わず言ってしまったのを今更になって後悔する。
これを誰かにちょっとお裾分けする、なんてできないしなぁ…。
でも、残すわけにはいかない。頑張って完食しよう。
…帰りに胃薬を買うのを忘れないようにしよう…。
「ごめんね、葛ちゃん。今度会う時にはプレゼント、大奮発するからね」
「いえいえ、気にしないでください。…私、このピンクのリボン、
すっごく気に入ってるんですから」
「そう―?それならよかったんだけれど…」
474名無しさん@ピンキー:04/11/05 15:41:37 ID:/7zDD77u
私たちは次に会うのはいつにするか手短に話し合った。
その結果、次の再会の日は7月7日に決定した。
何でも桂お姉さんの家の近くですっごくきれいな七夕祭りがあるそうなので、
それを二人で眺めたいのだそうだ。
お姉さんと一緒に祭りを眺めるの、すっごく面白そうだなぁ。
…それに、毎日会いたくてたまらないのに会えない私と桂お姉さんは、
まるで織姫と彦星みたいで…。ぽっ。
こんなこと言っている自分が恥ずかしくてたまらない…。
しかし、あと半年以上もお姉ちゃんに会えないかと思うと寂しくてたまらない。
475名無しさん@ピンキー:04/11/05 15:48:21 ID:/7zDD77u
「…それじゃあ、葛ちゃん、またね!!7月7日だよっ!!
忘れちゃだめだからね」
「うう、まだずいぶん先のことですけどねぇ…」
「うっうっ、寂しいよぉ…」
「…、もうそろそろ行かないと…」
「…それじゃあね、葛ちゃん。7月7日、楽しみに待ってるからね!!」
「私もですぅ!!おねえちゃぁぁん!!」
――私たちはもう一度長いキスをして、さよならをした。
476名無しさん@ピンキー:04/11/05 15:50:56 ID:/7zDD77u
…冷静になって日記のこの部分を読み返してみる。…桂お姉さんが以前に
言っていた。「もう顔を出して街を歩けない!!!」とかなんとか。
大げさな…。とあの時は思っていたが、今思うとまんざらそうでもない…。
…この日記は厳重に隠すことにする。
私の一番の隠し場所、ベットのマットレスの下だ。
ここなら多分見つかる心配はないだろう。
――それでも、もしこの日記にのぞき見された痕跡が見つかったりしたら。
ーーそれは私のすべての尊厳の崩壊を意味する。
私はどんな手段を用いてでも犯人を見つけ出す。
そして非常に残念なことだが、全身全霊をかけてその人をこの世から
『抹殺』
させてもらう。――言っておく、私は本気だ。
私はそんな悲しいことが起きなければいいとただただ願うばかりである…。

―完―
477名無しさん@ピンキー:04/11/05 16:08:33 ID:hZLpim6j
MAXグッジョブ!!!!!

やっぱツヅケイはいいなー
出来れば続編なんかも読みたい。
あるいは俺内でツヅケイと並び双璧たるユメケイなぞを…
478名無しさん@ピンキー:04/11/05 17:23:03 ID:/7zDD77u
477どうもどうも
書いている途中で葛ちゃんは別人ですが。
ユメケイ:
それ以前にユメイさんのルートが見つかりませんぜ…。
479名無しさん@ピンキー:04/11/05 17:41:28 ID:1G5z9Gns
ケイツヅキター(・∀・)!!
480名無しさん@ピンキー:04/11/05 17:50:18 ID:Hr9cdg6V
ケイツヅ(;´Д`)ハァハァ
>>445氏GJ!!
481名無しさん@ピンキー:04/11/05 19:08:08 ID:fQnoiMCZ
おやおやなんですかこの破壊力は。
>>445氏果てしなくGJッッッ!!
482名無しさん@ピンキー:04/11/05 21:45:29 ID:KaC4Xogm
>>445
GJ!
もっとアカイの増えるといいなぁ。
483名無しさん@ピンキー:04/11/05 23:23:13 ID:tHGBmEVD
>>445
GJ。寝る前に良いもの読んだ。
484名無しさん@ピンキー:04/11/05 23:35:54 ID:/FiZKo1D
>>455氏(;゚∀゚)=3ハァハァw
七夕デートも気になる…葛可愛いなぁチクショウ
485名無しさん@ピンキー:04/11/07 00:51:48 ID:fMXuwzZe
477,479〜484
どもです、また気力が湧いてきました。ついでに

アカイイト関連の話:第5章

ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1099731264/

激しく良いアカイイトの小説

ここのページの
>>386

ttp://up00.homelinux.com/up/trash-box/contents.jsp?file=20041106210513113.txt
ttp://up00.homelinux.com/up/trash-box/contents.jsp?file=20041106210429112.txt

などなど。
486名無しさん@ピンキー:04/11/07 00:54:27 ID:jXIV0WUj
sageてね
487名無しさん@ピンキー:04/11/07 01:36:55 ID:rlTThqIH
>>445
くあーーーー!!
禿しくGJGJ!!いいものをありがとう!!!
488名無しさん@ピンキー:04/11/08 21:19:00 ID:rYqkNwHw
新刊でたばっかの遠征王キボン
489酸性温泉:04/11/08 22:13:28 ID:57MZniD/
続編が書きたくなって戻って参りました。
トリコロの真紀子×多汰美>>373-384の続きです。
490トリコロ 真紀子×多汰美1/14:04/11/08 22:14:49 ID:57MZniD/
  <プロローグ>
またCDでも借りようかと思い、学校帰りに市立図書館に寄った。
新着図書コーナーを眺めていたら、とあるベスト盤が目に入り、思わず手に取った。あの曲が
入っているだろうと思ったから。裏面を見てみると、案の定、収録されている。私は貸し出し
用のカードを財布から取り出し、CDケースを持ってカウンターへと足を向けた。
頭の中では、彼女たちの歌声が響いていた。


《DON'T LOSE A CHANCE!》

多汰美が風邪を引いた。
昨日は少し熱があったようだが、今日は幸い回復したようで私は安心した。本人も大した事は
ない、少しのどが痛いだけ、と言っていたが、八重から「また風邪がぶり返したらどうするん
ですか」と心配されたので、まだ布団に横になっている。今日は日曜なので、午前中は私が
多汰美のそばについてやることにした。
「…マキちー」
「なんや?」
「八重ちゃんとおばさんはどこ行ったん?」
「おばさんは町内会の清掃。八重ちゃんは、にわのところにおでんの作り方教えに行った」
「ふーん。八重ちゃんはデートか」
「ちょう待て。料理を教えに行くのが、なんでデートになる?」
「二人で過ごすことや出かけることを広島では『デート』言うんよ」
「…やったら多汰美、このあいだ私らが東香ちゃんのところに行ったのも、デートか?」
「うん。そう」
「大阪じゃ、それはデートとは言わん」
491トリコロ 真紀子×多汰美2/14:04/11/08 22:15:25 ID:57MZniD/
私はついと顔を後ろに向けて外を見遣る。相変わらず多汰美は人を食ったような言動が多い。
だが、先週のキスといい、今の物言いといい、最近その行動が妙に恋愛めいた方向に引きずら
れがちなのは気のせいか。なんだか間が持たないような気がして、私は別の話を振る。
「そういえばな、金曜に図書館に行ったら、CDあったで。キャンディーズの」
「そうなん?」
「『やさしい悪魔』も入っとった。このあいだ、歌っとったやろ。風邪が治ったらあのプレー
ヤーで聴かせたるから。…あ、もしかして別に好きやないか?」
「好きじゃよ。でもあの曲、私も好きなんじゃけど、母さんがいちばん好きなんよ」
「ふーん。ああ、77年の曲やからな。母さんらが私らくらいの頃、流行ったんやろ」
「私の母さんと、マキちーのお母さん。それとおばさんの三人でよく歌ってたって。キャン
ディーズも三人じゃろ?」
「せやな」
私は若い頃の母さんたち三人を思い浮かべる。三人揃っていつもどんな話に花を咲かせていた
のだろう。テレビの話だろうか。ファッションの話だろうか。おばさんは将棋に忙しくてそう
いったことには疎かったかもしれないが、アイドルには興味があったのだろうか。ぼんやりと
私は空想にふける。
492トリコロ 真紀子×多汰美3/14:04/11/08 22:16:23 ID:57MZniD/


最近寒くなってきたせいか、風邪を引いてしまった。
薬を飲んで眠っている間に昔の夢を見た。普段私はあまり夢を見ないものだから、やけに
鮮明に覚えている。

夢の中で今よりも若い母が台所でキャベツを刻んでいる。今日も機嫌がいいらしい。鼻歌は
いつもの『やさしい悪魔』だ。
「おかあさん、その歌好きじゃね」
私は夢の中では幼稚園児だった。
「そう。お母さん、よく友達とこの歌を歌っとったんよ。楽しかったなあ、あの頃」
「ふうん。おかあさん、お友達と仲良かったんじゃね」
「うん。多汰美にもあんな友達ができたらいいなって、お母さん思うんよ」
そう言って母は幼い私の頭を撫でる。
「おかあさんのお友達ってどんな人?」
「一人は幸江って言ってね、将棋を指すのがお仕事の人。いつも着物ばっかり着ていたもの
だから、一度もう一人の友達と無理やり短いスカートをはかせたのよ。あの時はほんと、おか
しかったわ」
そういって母は、心から愉快そうに思い出し笑いをする。
「もう一人のお友達は?」
「もう一人の友達はね――――」
493トリコロ 真紀子×多汰美4/14:04/11/08 22:17:03 ID:57MZniD/
そこで夢から覚めた。おそらく夢の中の母が言いたかったのは真紀子の母のことだろう。私の
母も私と八重、そして真紀子のような関係だったのだろうか。楽しかったんだろうな、と思う
と私の顔はいつの間にかほころんでいた。なんだか久しぶりに笑った気がした。そう感じた
のは、近頃うまく笑えていなかったような気がするから。
――――どうして私は、真紀子のことが好きなんだろう。
この想いを自覚してから、表情を出すのが少しずつ下手になってきた気がする。

友情ではなく、恋愛感情として真紀子のことが好きな自分。真紀子は八重に気のある素振りを
見せる景子には鋭く反応するくせに、自分のこととなるととんと鈍感だ。その鈍感さに今の
自分は助けられているのだけれど、と私は苦笑する。
『八重ちゃん、真紀子ちゃんといい友達になってほしいんよ』
そう母は言っていた。私も真紀子と友達になりたかったし、友達でいつづけたかった。
だから、先週のキスはやり過ぎたかなとちょっと反省している。でも、嬉しかったから。私の
ためではないと分かっていても、真紀子が私の一番好きな料理を作ってくれたのはとても嬉し
かった。

同性の友達を好きになるにしても、その相手が景子だったらこれほど悩まなくても良かった
だろう。彼女が相手ならば母の言葉に固執する必要はない。仮に告白したとしても見事に玉砕
する別の結末が待っているだけで。
八重を好きになったらどうだったのだろう。これはあり得ない話だ、と一蹴できる。自分に
とって八重は、友達以前に大切にしたい妹だから。口に出して言うと「妹扱いはやめてくだ
さいよ」と拗ねるだろうけど。
結局、最後は同じところに疑問は帰り着く。
――――どうして私は、真紀子のことが好きなんだろう。
――――どうして真紀子でないといけないのだろう。
494トリコロ 真紀子×多汰美5/14:04/11/08 22:17:42 ID:57MZniD/


私がぼんやりと空想にふけっている間に、多汰美は襖のほうを向いて横になっている。何か
話しかけたほうがいいのだろうか。
「多汰美。」
「……んー?」
「眠たいんやったら、私、部屋から出てこうか?」
「……マキちー、行かんといて」
やはり病気になると人は心細くなるのだろうか。あまり気弱な所を見せたことがない多汰美が
『行くな』と言うとは思わなかった。
「寂しいんか?」
「分からないんよ」
「分からんって……どういうことや?」
心細い、というのとは違うらしい。何かがおかしい。なんだか暗い雲がかかったような気持ち
になる。どうして? 何が『分からない』のか? それに、私に『行くな』というくせに私の
顔もろくに見ようとしないのはどういうことだ。いつも私の顔を見て快活に話す多汰美が。
風邪のせいと言うにはあまりにもおかしすぎではないか。

「多汰美。悩みでもあるんやったら言うてみ。いま、誰もおらんから。私しかおらん。八重
ちゃんやにわに聞かれたくないことで、私が聞けることやったらなんでも聞くから。な?」
私はなだめるように多汰美に言って聞かせる。だが、多汰美は窓側の私と目を合わせようとは
せず、じっと襖のほうを見つめている。何を言えばいいのか、何も言わないほうがいいのか。
多汰美が『行くな』と言ったのだから、私は動けない。多汰美が何か反応するまで、私は黙っ
て待つことにした。
495トリコロ 真紀子×多汰美6/14:04/11/08 22:18:23 ID:57MZniD/


『悩みがあるのか』――――おおありだ。
『八重や景子に聞かれたくないのか』――――それは聞かれたくないに決まっている。景子
ならば、もしかしたら私の気持ちを分かってくれるかもしれないが。
『真紀子にしか聞けないこと』――――きっと、そうなのだろう。だけど、正直に言えるもの
か。困らせるに決まっているではないか。「あなたのことが好きだ」なんて。

昨日一人で考える時間が多かったせいだろう。今日は妙に真紀子を意識してしまう。顔を合わ
せて、どう話をすればよいのか分からなくなってきた。
恋をする前は、好きな人がいれば楽しいものだと思っていた。それもすぐ近くにいるのなら、
なおさら。まさか、こんな気持ちになるだなんて思わなかった。どうしたらいいのだろう。
……分からない。そばにいてほしい。でも、このままでは胸が締め付けられたままだ。もう
軽口で誤魔化すこともできない。自分の中から何かがとめどなく溢れ出そうで。

「マキちーは、好きな人っている?」
「……私か。恋愛対象って意味なら、おらんで」
「先週マキちーが急におでん作るって言うから、誰か好きな人に食べさせたいのかと思った
んよ」
「それはこのあいだも言うた。あれは料理が上手になりたいから挑戦しただけで。別に、好き
な人がどうとかやない」
「…うん」
「多汰美は、誰か好きな人がおるんか?」
言える訳がない。すぐ後ろにいる人がそうだなんて。だから、こう答える。
「おらんよ」
496トリコロ 真紀子×多汰美7/14:04/11/08 22:19:00 ID:57MZniD/


ますます訳が分からない。
悩みがあるのか、と聞いてみたら『好きな人はいるのか?』と返してくる。だから恋愛関係の
悩みかと思って話を振ってみれば、答えは『好きな人はいない』。
深いぬかるみに両足を突っ込んだような気分だ。はっきりとしない。

そこで、はたと気が付いた。きっと多汰美は好きな人がいるのだろうが、嘘をついているのか
自分の気持ちがはっきりしなくて迷っているのだ、と。だから思わせぶりに聞こえる言い方を
してしまうのだ。嘘にしろ迷いにしろ、すっぱりと言えないのはきっと辛かろう。どうしたら
そんな多汰美の気持ちを楽にさせてやれるだろうか。いつも私たちににこにこと笑ってくれる
多汰美。けれど、いまの目の前にいる多汰美は何かのせいで顔も見せてくれない。うつむいて
動かない、そんな彼女を見続けるのは、私も辛い。私がなんとかしなければ。
「……あのな、」
「うん」
「おでんの話に戻るけど。最初はな、にわに負けたくなかったから挑戦したんや。正直に言う
と。でも、作っとるうちに気持ちが変わったんや」
「…そうなん?」
多汰美は相変わらず私と目を合わせようとしない。それでも私は続ける。
「八重ちゃんが言うとった。『ごはんが美味しければ、誰だって嬉しい』って。せやな、料
理って結局、食べてくれる人がおってこそ、作り甲斐があるってもんや。だから、多汰美の
言う事もある意味、正しい。」
「…そう」
「思うたんやけど、さっき、私は『好きな人はおらん』言うたな。でも、もしかしたらそれは
嘘になるかもしれんな」
「…どうして?」
私は視線を一度天井にやり、深呼吸をした。あせらずに、少しずつ話を続けよう。
497トリコロ 真紀子×多汰美8/14:04/11/08 22:19:45 ID:57MZniD/
「いまは、作ってあげたいって思える相手が出来たからな。そういう人の事を『好きな人』と
言うなら、私にも好きな人がおるって言われてもおかしくはない」
ここまで言ってしまって、多汰美を見る。喉が痛いせいか、相槌も打ってくれない。てっきり
それは誰なのかと張り切って訊いてくるかと思ったが。



真紀子と目を合わせられない。
さっきは話の継ぎ穂がないのに困って、思わず『好きな人はいるか』と直截な言い方で訊いて
しまった。「いる」と言われれば諦められるかもしれないと思った。「いない」と言われたら
どうしようかと思った。チャンスはあるのかもしれないが、真紀子が誰かに目を向けるまでの
間、自分の気持ちを言えないままずっと苦しむことになるかもしれない、と。
真紀子の答えは『YESかもしれない』だった。これはどう解釈すればよいのか。
いや、それよりも『YES』の相手は誰なのだろう。怖くてそんなこと、とても質せない。
ついさっき「諦められるかも」なんて思ったのはとんでもない大嘘だった。真紀子の好きな
人はやはり知りたい。
相手は学校の誰かなのか、実家のある大阪にいる誰かなのか、それとも――――?

「多汰美。」
真紀子が私の名を呼ぶ。
「好きな人がおるって、どんな気持ちなんやろうな。にわは、恋愛じゃないかもしれんけど、
変わったな。初めて八重ちゃんに話しかけてきたときは、どこの不良かと思うたけど。いまの
あいつ、幸せそうや」
真紀子は穏やかな声でゆっくり私に話しかける。私はなんと返せば良いのか分からず、布団の
端をじっと見る。
「私はな、あんなに分かりやすく変われんけど、これでもちょっとは変わった思うんや。他の
人から見たらでかい変化じゃないかもしれん。でも、私にとっては大きいんや」
私も変わりたい。でも、どうしたら私の胸をきつく縛るものから逃れられるのだろう。
498トリコロ 真紀子×多汰美9/14:04/11/08 22:20:22 ID:57MZniD/
「前はな、誰かのために何かを作ってみたいなんて、思いつかなんだ。あ、八重ちゃんは別や
で。あの子だけは、特別や。多汰美もそうやろ?」
私は小さくうなずく。布団が少し動いたから、真紀子にも多分伝わっただろう。
「好きな人ができたら、ドキドキしたりするかと思うたけど、違うたな。ああ、違う意味で
ドキドキするけどな、次はどんなことをやらかすかと思うと」
そう言って真紀子はくすくす忍び笑いをする。誰のことだろう。
「人を食うのが趣味のようなやつやからな。でもな、多汰美、なんでも食うたらあかんで。
食中りを起こす」
そう言って真紀子は、かすかにスカートから衣擦れのような音をさせて立ち上がる。
「下行って、薬を取ってくるから。どこにも行かんで。心配するな。…それとな、私は言うた
からな。多汰美も、好きな人のこと、言いたくなったら言えばいい」
真紀子は膝を軽くついて、私の肩のあるあたりに手を置いて言う。
「辛そうな顔せんと笑うてくれ。多汰美にそんな切ない顔されるのが、私には一等つらい。
……こう思うのも、変化のうちかもしれんな」
真紀子は私の顔をじっと見つめ、再び立ち上がると襖を開けて、私の部屋を出て行った。階段
が人の重みできしむ音を聞きながら、私は安心して目を閉じる。

眼鏡越しの真紀子の目が教えてくれたから。もう、何も不安に思わなくても良いのだと。
499トリコロ 真紀子×多汰美10/14:04/11/08 22:21:06 ID:57MZniD/


居間の薬箱から私は風邪薬の入った袋を取り出す。
私の話を聞いて多汰美はどう思っただろう。部屋を出る前に顔を見たら、放心したような顔を
していたけれど、苦しそうではなかった。私の推測が当たっているなら、もうつらい顔を見ず
に済むだろう。外れていたとしても、それは構わない。どちらにしろ、あのとき多汰美は私に
微笑んでくれたのだから、私としてはそれで十分だ。

台所を見てみると、私の昼食と多汰美用のお粥が用意してある。八重が景子の家に行く前に
用意してくれたらしい。メモには『お母さんは町内会の人とお弁当を食べるそうなので、二人
で召し上がってください』とあった。時計を見ると、十二時を過ぎている。
冷蔵庫からお茶を取り出し、コップ二つに注いで薬袋と一緒に二階へ持って上がる。多汰美の
部屋に入ってみると、話し疲れたからか静かに寝息を立てて眠っている。
「起こしたら悪いかもしれんけど……、しゃあないな。もう十二時済んだし、ご飯食べさせて
薬飲まさな。多汰美。起きやて!」
500トリコロ 真紀子×多汰美11/14:04/11/08 22:21:38 ID:57MZniD/


いつの間にか眠ってしまっていたらしい。真紀子に揺さぶられて、私はゆるりと目を覚ます。
もう大丈夫。私は笑えるよ、マキちー。

「吐き気とかはないか? もう昼食の時間やから。食べな治らんで。いまご飯持ってくるから
な。食べるやろ?」
「うん。食べるよ」
私がそう答えると、真紀子は台所に行って食事を持ってきてくれた。真紀子の昼食は塩昆布
入りと梅干入りのおにぎりが一つずつに、豆腐のお味噌汁。私のご飯は卵入りのお粥。二人で
テーブルについて熱いお粥と味噌汁を覚ましながら口に運ぶ。
「マキちー、美味しいね」
「食べ物がうまいって思えるんなら、もう明日学校行っても大丈夫やな。…明日だけ、特別に
予習のノート貸してやるから。今日はゆっくり休むんやで」
「ありがとう」
「せや。そうして笑っとれ、多汰美」
そう言って真紀子は髪をくしゃくしゃにしながら私の頭を撫でる。二人とも、互いの顔が自然
とほころびるのを見てますます可笑しくなる。母さんが望んだ形とはちょっと違ったけれど、
これが私たち二人が選んだ二人の形だ。私は、自分を縛っていた見えない鎖が溶けて消える
のを感じた。
501トリコロ 真紀子×多汰美12/14:04/11/08 22:22:15 ID:57MZniD/
昼食を終えて、真紀子が薬袋を取り出した。朝で買い置きの薬が切れたらしく、新しい薬を
買ってきたらしい。真紀子が袋を開けると、中にはトローチと錠剤の風邪薬が入っていた。
「八重ちゃん、えらい気を遣うてくれたな。わざわざトローチまで買うて来るなんて」
真紀子はトローチの入った箱を眺めながら微笑する。私が小さい頃トローチが好きだったと
言ったのを八重は覚えていたらしい。私は瓶から錠剤を取り出して、お茶と一緒に流し込む。
「マキちー、せっかくだから、トローチもくれる?」
「ああ、待っとれ。いま開けるから」
真紀子はそう言うと、柑橘類の絵が描かれた箱からトローチを取り出す。パキリと封を切って
トローチをひとつ、口に放り込む。…え、真紀子が?
「マ、マキちー? マキちーも風邪引……んぅっ!」
真紀子は私の唇をふさぐと、舌で器用につるりとトローチを私の口の中へ滑り込ませた。私の
舌の上には、真紀子に濡らされたトローチが乗っている。
さっさと唇を離してしまうと、真紀子は勝ち誇ったように私に宣言した。
「おでんの時の仕返しや」
「マキちー…」
「なんや?」
「ファースト・キスってほんとにレモンの味なんじゃねえ」
「…いちいち言うことがずれとるな、ほんまに」
真紀子は呆れ顔でついとそっぽを向く。仕方がないじゃないか。つい思ったことが口に出て
しまったのだから。
502トリコロ 真紀子×多汰美13/14:04/11/08 22:23:06 ID:57MZniD/
今度は真紀子が私と目を合わせてくれないので、右手の袖をちょいちょいと引っ張る。
「マキちー、マキちー」
「…今度はなんや?」
「続きはいつしてくれるん?」
「風邪が治ったらな……って、アホなこと言わすなあぁーーっ!!」
真紀子は私の手を振り払うとすっくと立ち上がって、襖に向かって真っ直ぐ歩を進める。あら
ら、またドキドキさせた? 怒ったかな、と私は真紀子の後ろ姿を見る。真紀子は襖の取っ手
に掛けた手を俄かに止めて、小声でひそりとこう言った。
「どうせまた、エロガッパ言うんやろ? それで結構。嘘はついとらんからな。
 ――――やっといつもの多汰美らしくなってくれたな」
パタンと襖を閉めると、向かいの真紀子の部屋の襖が開く音がする。しばらくすると、微かに
『やさしい悪魔』が聞こえてきた。

「……マキちーは、エロガッパの照れ屋さん。」
私は一言呟いて、また横になる。八重が買ってきてくれたトローチはレモン風味で、やけに
スースーする。後ろ姿からちらりと見えた真紀子の耳は真っ赤だったな、と思い出しながら
私は再び眠る。いまのキスでまた熱が上がったら困るけえ、ね。
503トリコロ 真紀子×多汰美14/14:04/11/08 22:23:54 ID:57MZniD/
  <エピローグ>
すっかり風邪が治った私は今、真紀子の部屋で『やさしい悪魔』を聴いている。隣には真紀子
と八重もいる。
「はあ、お母さんもこの人たちの歌が好きだったんですか?」
「この曲が出た頃かな、この人ら、ごっつ人気あったらしいで。社会現象級の。解散前の最後
の紅白でこの曲歌ったんやて」
真紀子と八重は楽しそうに話をしている。いつか私たちも、母さんたちのように三人で一緒に
過ごしたことを懐かしむ日が来るのかな。私はそう思いながら、かつて母が見せてくれた、
セピア色をしたジャケットのレコード盤を思い出すのだった。

                                                おしまい。
504名無しさん@ピンキー:04/11/09 04:07:57 ID:NVXaffSF
>>酸性温泉氏
…えっと、もっかい言うぞ?

  『あんたは俺を頃す気か!』

てな訳で蝶GJ!
俺もとあるスレで八重×にわを書いたコトがあるが
蝶エロエロのふたなりモノ…… orz
酸性温泉氏のを読んでると心が洗われると同時に自分が汚れたモノに思えるよ…
俺も今度純愛モノ書いて此処に投下してみます…
505名無しさん@ピンキー:04/11/09 07:01:09 ID:4W7a0yIO
GJ!! なんか和むね

>>504
とあるスレの見当が付く
506名無しさん@ピンキー:04/11/09 20:41:09 ID:Dn3TwV6l
GJです。

>>504
もしかしてそれってpinkのキ(ry板の二j(ryスレに投下しました?(・∀・)
507酸性温泉:04/11/09 21:24:21 ID:ihkN2dKI
>504-506
ありがとうございます。普段は懐メロ邦楽板住人なのでこんなお話になりました。
キャンディーズのグループ名候補の一つに「トリコロール」があった、という話が
今回のネタ元です。タイトルもキャンディーズの某曲から引いております。

次回があるなら、真紀子×多汰美のエロありを書く予定です。
最近の原作での真紀子さんと多汰美さんの胸の増量具合はいかがなものかと
思いますが。
508304:04/11/09 22:27:06 ID:NVXaffSF
>>306
まさにそのスレの335です…
しかもさっき誤爆しますた…… orz
509504の間違いだ…:04/11/09 22:28:46 ID:NVXaffSF
しかも名前とレスアンカー間違えた…… orz
510名無しさん@ピンキー:04/11/10 17:26:20 ID:5Dj3t5U2
>>酸性温泉氏
今回も百合分をしっかり補給させてもらいました。
ごちそうさまです。

>>509
まぁ餅つけ。深呼吸して五分は止めろ。楽になるから。

いつか姉妹の方程式で一本書いてみたいですな。
511酸性温泉:04/11/10 18:28:01 ID:PDj2l5bI
今月号のきらら買って良かった…。原作からしてにわ×八重、真紀子×多汰美
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!! やっぱり多汰美さんはマキちーが好きなんだな!?と
曲解するに充分な内容でした。

>510 ありがとうございます。今回の真紀子×多汰美はきっちり百合にできました。
(前回は「おでんの作り方」としか言いようのない内容)
512395:04/11/11 00:14:12 ID:jG360GLV
どうも、懲りずにまた来てしまいました。
エロに挑戦してみたくて試行錯誤したアカイイトSSを投下させていただきます。
初めて書くので未熟な部分が目立つかと思いますが、読んでいただけると嬉しいです。

短いですがサクヤトゥルーEDのネタバレを含みますので未クリアの方はお気をつけ下さい。
513名無しさん@ピンキー:04/11/11 00:15:12 ID:jG360GLV
サクヤさんの細長い指が、わたしという存在そのものをかき混ぜていた。
混濁していく意識。夢と現の境目なんてとっくにわからなくなっている。

「ほら、桂……聴こえるだろう」
くすぐる吐息とは別に、耳たぶを温かく濡らす新たな感触に背筋が喜びを訴える。
一際高くなるわたしの嬌声に負けじと大きくなっていく水音が――唯一の耳障り。
粘着性を感じさせるそれは、サクヤさんの指が乱暴な動きをする度に聴こえていた。

「……っゃ……だ……」
「ん? 何が嫌なんだい?」
「お、音、立て……ちゃ……」
本当はきちんとわかっているくせに、わざとわたしを焦らすような声。
中指は中心を蹂躙したまま、今度は彼女の親指が少し上の部分を刺激しようとする。
まるでそれは――わたしが皆まで言い切るのを阻止するように蠢いていく。

「ふふ、それは無理な相談だねぇ」
顔を上げれば予想通り、サクヤさんがいつもの悪戯っぽい表情を浮かべていた。

そう、いつもの悪戯顔。彼女だけを見ればそれはいつもと何ら変わりない日常。
でも確かにわたしが今置かれている状況は、普段とはかなり一線を画いた非日常。
514名無しさん@ピンキー:04/11/11 00:15:37 ID:jG360GLV
「気持ち良いんだろう? こんなにして……今さら何を恥ずかしがってるんだい」
「……っ……!」
水音は、この部屋の隅々まで響かせるようにどんどんと音量を上げていく。
くちゅくちゅと――ぴちゃぴちゃと、十分濡れていることを証明するかのように。
羞恥心とそれに対する背徳心がわたしの理性的な思考をざくざくと削り取っていく。

肌を這うサクヤさんの艶やかな唇が、オレンジ色した蛍光灯の光を受け悩ましく煌く。
わたしは抵抗らしい抵抗もできないまま、為すがまま、されるがまま、囚われていた。

「……まだ溢れてくるよ」
先ほどから何度もそう囁く声に耐え切れず、ついに瞼を閉じてしまった。
明かり一つの室内とそう変わりない暗闇の中で彼女が与える感触だけが支配する。

駄目だとわかっていた。本当はいけないことなんだとわかっていた。
彼女はお母さんの親友で、わたしのことを小さい頃から面倒見てくれた古い知人で、
経観塚でのあの出来事から命がけで守ってくれた命の恩人であって、同居人で家族で。

ねえ――本当はいけないことなんだよね。わたし、ちゃんとわかってるんだよ。
子供だけど、サクヤさんからしてみれば赤子とそう変わりない幼い子供だろうけど、
本気でわたしのことを好きでいてくれてるってことぐらいちゃんとわかってるんだよ。

鎖骨辺りを優しくなぞる舌先。そのまま喉、顎下、頬まで来て、浅い口付けをされる。
小鳥が啄ばむようなキスを繰り返して、そっと髪を梳く手のひらから温かさを感じた。
515名無しさん@ピンキー:04/11/11 00:16:04 ID:jG360GLV
「ふ、ぁ……んぅ……っ」
漏れる声はもう自分の意思じゃ止められない。
彼女の言う通りだ――軽く触れられただけなのに身体はこんなに反応していた。
今さら恥ずかしがっても遅いぐらい、わたしはきっとはしたない格好を晒していた。

いやらしい子だと呆れられたかもしれない。嫌われてしまったかもしれない。
そう考えると本当に悲しくなって、今の自分がどうしようもなく腹立たしくて。

「桂の身体は本当にやらしいねぇ」
そんな含み笑いが込められた言葉が脳に届いたとき、わたしの中の何かがはじけた。
まるで張り詰めた糸が途切れてしまったように――目尻から零れた水滴が、多分涙が、
こめかみを伝って真っ白い枕のシーツに濃い染みを作っていく。

「っく……うぅっ……」
「……? 桂? 桂……ちょっ、いきなりどうしたんだい」
実は自由に動かすことができた両手で、情けない泣き顔を覆い隠す。
サクヤさんの指は止まり、少し慌てたような声で何度もわたしの名前を呼んだ。

「あー……ごめん、悪戯が過ぎたね」
泣きじゃくるわたしの頭を抱き寄せて、サクヤさんは優しく耳元で囁く。
さっきまでの少し意地悪そうな口調じゃない。相手をいたわるようなそんな声。
516名無しさん@ピンキー:04/11/11 00:16:34 ID:jG360GLV
途切れた糸――わたしの涙腺は、簡単に結びなおせるほど優秀なものじゃなかった。
彼女を困らせちゃいけないと頭ではわかっているのに、どうしても泣き止めない。
わたしは一人生まれたままの姿で。サクヤさんはいつものジーンズ姿のままで。
あやされる赤ちゃんみたいに、大人しく彼女の腕の中でしゃっくりをあげていた。

「あんまりあんたが可愛い反応してくれるからさ、少し、調子に乗ってた」
「ぐすっ……か、かわ、いい……?」
「やだやだって言われたら無理やりしてみたくなるのが人情ってものだしねぇ」
「……意地悪はやだぁ……」
「ああ。わかったよ」
目尻の涙を掬うような軽い口付け。ごめんね、ってそんな気持ちが流れ込んでくる。

「嫌いに、ならない……?」
「ん?」
「はしたない子だって……呆れたりしない?」
「……ぷっ……くくくっ」
喉の奥で笑うような声。
抱っこされてるわたしの目の前にはサクヤさんの白い喉が露わになっている。

「桂はあたしのこと好きかい?」
「うん……」
「嫌われたくない?」
「……ん」
517名無しさん@ピンキー:04/11/11 00:17:23 ID:jG360GLV
そんなの当たり前だ。
わたしはサクヤさんのことが好きで、嫌われたくないと思ってる。
その好きがどんな意味での好意かと問われれば少し迷ってしまうけれど、
多分きっとそれは友情愛であり、家族愛であり――恋愛感情でもある気がした。

駄目だとわかっていても、本当はこんなのいけないことなんだと思っていても、
わたしを好きでいてくれるサクヤさんを拒まないのは、そういうことなんだ、と。

「あたしのことを好きだからこそ……こんなに感じてくれたんだろう」
膝裏から太ももにかけて、何かを確かめるようになぞっていく細長い指。
それはわたしという存在そのものまで揺るがしてしまうほど――愛しい指先。

「そんな桂をどうして嫌いになれるって言うんだい?」
サクヤさんの唇が耳たぶを軽く挟んで、意識を蕩かせるような甘い言葉を囁く。

「……好きだよ、桂」

大平原までいかないけど、お世辞にも大きいとは言い難いわたしの胸を包む手のひら。
とくんとくんと伝わってくる彼女とわたしの中で生きる贄の血の鼓動を聞きながら、
わたしは軽く頷いて、彼女の手のひらに自分の手のひらを重ね――身を任せた。
518395:04/11/11 00:20:02 ID:jG360GLV
終わりです。少しはエロ……っぽかったかなあ?
書いてる分には楽しかったんですが、知識が足りなくて少々四苦八苦。
サクケイだけじゃなくユメケイも書きたいんですが、なかなかネタが浮かばず……。
再挑戦はもう少しエロについて修行を積んでからにしてみたいと思います。それでは。
519名無しさん@ピンキー:04/11/11 00:35:26 ID:NHqurJ3+
>518
欲を言えば、最後まで!ってところだけど、
心情の描写が非常に丁寧で良かったです。
「気持ちいい…でも、嫌」って状況、萌えますね。

是非、ラストまでのリトライをキボンヌします。
520名無しさん@ピンキー:04/11/11 04:34:38 ID:tM1AO1r5
>>518
GJ!
ラブラブな感じが良いなぁ。
アカイイト本スレといいこのスレといい、SSが増えてて嬉しい限り。
521名無しさん@ピンキー:04/11/11 18:05:20 ID:lAFQnrNO
>>518
GJ!
522名無しさん@ピンキー:04/11/11 19:52:05 ID:cgll9gzz
>>518
イイヨーイイヨー
とにかくGJ!
サクヤが服着てて、桂が裸という状況がまたエロくてよろしい
523445:04/11/11 21:49:53 ID:qh6mpgbs
>>518
よいよいよいよい!!バンザーイ!!
なんでもアカイイト専用のところが出来るそうですよ。
524名無しさん@ピンキー:04/11/11 21:52:33 ID:K/AURhG7
>>523
はしゃぎ過ぎだw
でも、これでもっと活気付くといいなぁ
525名無しさん@ピンキー:04/11/12 13:46:38 ID:/eUU145b
>518
これぐらいのエロが好きという香具師もここに居るぞ!
526395:04/11/12 20:16:53 ID:uQqMV14z
>>519-525
このぐらいじゃエロと呼べないかな、と色々心配していましたが、
なかなか好評みたいで安心しました。ありがとうございます。
ラストまでのリトライは技術を磨いてから考えてみたいと思います。
527名無しさん@ピンキー:04/11/13 02:55:51 ID:msdkhLib
>526
このぐらいじゃエロではない! 書き直せ!


…なんつってな。
ここまで書けたなら大丈夫、もっとエロイのも書けるはずですよ。
今後の展開に期待してます。
528445:04/11/14 01:53:38 ID:SMQBr9mG
やっとのことで書き終わりました。投下します。
以前別のスレに書いたショートギャグをふくらませてみました。
長いですが良かったら読んでください。
529名無しさん@ピンキー:04/11/14 01:55:36 ID:SMQBr9mG
「騙し合い合戦」

―――時は200×年、夏。場所は羽様のお屋敷にて。
ここでは葛、烏月、サクヤによる三つ巴の桂争奪戦が日夜繰り広げられていた!!

「ちょっと烏月ぃ、あんたもうそろそろ鬼切りの仕事にもどったらどうなんだい?」
「…傷が完全に癒えるまでは任務に戻れませんので。それに、サクヤさんに
言われなくても自分で判断しますから」
――バチバチッ!!

サクヤ「ちょっと葛、お子様がこんなに長い間外泊していていいのかい?そろそろ自分の家に戻った方がいいんじゃないの?」
葛「あはは、どうぞ私の家庭のことなどお構いなく。それより、サクヤさんも
写真のお仕事の方は大丈夫なんですか?」
――バチバチバチ!!

果たして、この中で誰が超にぶちんの桂ちゃんをゲットするのであろうか!!
530名無しさん@ピンキー:04/11/14 01:57:18 ID:SMQBr9mG
――今日は大掃除の日。朝からみんなで頑張っております。

「ふぅ…。本当にだだっ広いお屋敷だねぇここは。
全部掃除してたら一日が終わっちゃうじゃないか」
「うん、確かにみんなで暮らすにしても広すぎるかも…」
「…それなら、どうだい桂。あたし達だけでアパートに移って、そこで仲良く愛の巣を…」
「お掃除、お掃除、ぱたぱたぱた〜♪」
――あんた、全然聞いてないね…。

――しばらくして。

「うわ〜ん!!桂お姉さ〜ん!!」
葛の悲鳴が聞こえた。どたたたた…。こっちに走ってくる。
「…葛ちゃん?どうしかしたの?」
ばふっ。葛が桂に抱きつく。
「はぅぅ…。私が掃除をしていたら…とかげが…畳の下から
おっきなとかげが出てきたんですよぅ〜うっうっ…」
――むぎゅっ。すりすり。
531名無しさん@ピンキー:04/11/14 01:58:33 ID:SMQBr9mG
「私、もう怖くて怖くて…。あの、もう少しこのまま抱っこしてもらっててもいですか?」
「もう、しょうがないなぁ葛ちゃんは。甘えんぼさんなんだからぁ。」
…おいおい、ちょっと待て葛。あんたがとかげぐらいで怖がるタマかい!!
「…ちょっと葛。あんたいったい何いってんだい。私ゃねぇ、あんたが
とかげどころかゴキブリを平気で叩きつぶすところを…」
「ふぇぇん…」
「よしよし…」
…ちょっとは人の話を聞けよ…。
と、葛がこっちをちらっとみて、意地悪く笑った。
「うっうっ…。サクヤさんがよく分からないこと言って私のこといじめるですよぅ…」
「もう、サクヤさん!葛ちゃんはまだこんなにちっちゃい子どもなんだからね!
意地悪しないの!」
「う…」
つ、葛の野郎…。晩飯の時は覚悟してろよ…。
ふと隣を見ると、いつの間にか来ていた羽月の奴もうらめしそうに二人を見ていた。
532名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:00:29 ID:SMQBr9mG
――またしばらくして。

「う…痛っ!」
今度は庭の方から烏月の大声がした。まさか、あいつ…。
「ちょっと烏月さん!大丈夫?」
桂が声の方に走っていく。
…ちょっと、あの声はいくら何でも不自然すぎるんじゃないかねぇ。
「どうしたの、羽月さん!?…あ、たいへん、指から血が出てるよ!!」
「…ああ、これかい?たいしたことはないよ。
ちょっと箒のトゲが刺さってしまってね…。放っておけばすぐ止まるよ」
…羽月、あんた演技はほんと下手くそだねぇ…。
「そんな、だめだよ。烏月さん、指出してみて。ほら…」
ま、まずい、このままでは烏月の思惑通りになっちまう!!
「…ちょっと、烏月、あんたねぇ、いったいそのプラスチックの箒でどうやったら
ケガするって言うんだい?私にはその傷はあんたが刀でわざと切ったようにしか…」
――ぎろっ。烏月の右目がこっちを睨みつける。
533名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:02:11 ID:SMQBr9mG
――よけいなことを言うな言うな言うな…
う…。す、すごい迫力だ。
「…サクヤさん、何か言った?」
「いや、あはは、何でも…」
「そう…。じゃあ、はい、羽月さん」
――ちゅうぅぅぅ。桂が烏月の指を吸った。
「あっ…」
あああ、思惑クリーンヒット!!
「はい、これでもう大丈夫だよ、羽月さん。あとは絆創膏でも貼っておいてね」
「…ああ、わざわざすまなかったね桂さん。ありがとう」
うう、白々しいぞ烏月!!顔、にやけてんぞオイ!!
534名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:03:35 ID:SMQBr9mG
――さらにしばらくして。

くっそ〜、みんな桂をだましていい思いしやがって。
桂の奴、いくら何でも単純すぎだよ。
…。いっちょ、あたしも桂を引っかけてやるかねぇ。

…今は桂とあたしの二人っきりだ。チャンス到来!!
「ああぁん…」ふらり…バタッ!!
「ちょ、ちょっとサクヤさん、大丈夫…?どうしたの?立ちくらみ?」
「うう…。桂、あたしはもうだめかもしれないよ…」
「ええ〜!?」
「この前の戦いでの傷が突然開いちまったみたいだ…」
「そっ、そんな!!」
「ああ、もうだめだ、目の前がかすんできたよ…。
……でも、桂が血を飲ませてくれたらひょっとしたら立ち直れるかも…
って、あれ?桂?け〜い〜?」
535名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:05:14 ID:SMQBr9mG
――桂はすでに大声で叫んでいた。
「ユ、ユメイさ〜ん!!早く出てきて!!」
「――桂ちゃん!?一体どうしたの!?」
「大変だよ!!サクヤさんが、サクヤさんが死んじゃうよ〜!!
ユメイさん、早く傷口を見てあげて!!うわぁぁん!!」
「――サクヤさん、大丈夫ですか!!治療しますから早く見せてください!!」
「………」
――と、さらに悪いことに戦闘モードになった葛と刀を抜いた烏月までやってきた。
「――一いったい何事ですか〜!?この騒ぎは!?」
「――まさか、新手の鬼が!?」

――あはは、やっばいかも…。
536名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:06:57 ID:SMQBr9mG
――またまた、しばらくして。

「じろ〜〜〜〜…」
…三人の視線が痛い…。
「ううっ…ひぐっ…サクヤさんが…いなくなっちゃうよう…」
桂はユメイに抱っこされながらまだぐずっている。
「…サクヤさん、言っていい冗談と悪い冗談がありますよ。
…桂ちゃんは何でも信じ込みやすいんだから…」
「うう…その、ごめん…」
「全く…人が心配になってきて来てみれば…。そんなことだったんですか!!」
「ほんとに人騒がせな…。まったく、サクヤさん、悪ふざけもほどほどに
しておいてくださいよ…。」
――お前ら二人には言われたかないわ〜!!
「…ごめんよ桂。冗談の度が過ぎたよ。ほら、あたしは
このとおりぴんぴんしてるだろ?だから安心して…」
――ぎゅっ…
「…サクヤさん…」
ユメイに変わって桂を抱きしめてやると、ぐずり泣きは次第に収まっていった。
――三人の視線がさらに鋭くなったが、今は無視するとしよう。
537名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:08:34 ID:SMQBr9mG
「とにかく、もう夜中になってしまったことですし、今はもう寝ることにしましょうか」
「…そうですね…。また明日の朝早くから掃除の続きをやらなければならないですし…
全く、誰かさんのせいで…ぶつぶつ…」
「…だから、悪かったってば…」
「それはそうと、ユメイさん、こんな事で呼び出したりしてすいませんでした」
「いえ、全然大丈夫ですから…。――サクヤさん!!」
「うっ!!な、なんだい?」
ユメイは私の耳に口を近づけて言った。
「――今度また桂ちゃんを泣かせたりしたら、ただじゃおきませんからね…」
「う…わ、わかりました…」
538名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:10:25 ID:SMQBr9mG
――さらに時は流れて。

自分の部屋に戻って布団に入っても、あたしは興奮していてなかなか寝付けなかった。
今日の出来事を思い返してみる。
――それにしても、桂があたしのことをあんなに真剣になって心配してくれるとは…。
…正直言ってすごくうれしかった。
…しかし、ユメイのしゃべり方はドスがきいていたなぁ…。気を付けないと。
あいつなら本気で…。
――と、そのとき突然ふすまの向こうから声がした。
「…サクヤさん?まだ寝てない?」
「け、桂!?どうかしたのかい?」
「…中に入ってもいいかな…」
「い、いいけど…」
いったい何なんだろう…。ドキドキ…。
ふすまを開けて桂が入ってきた。ずっと泣いていたせいで目は真っ赤だ。
「…今日は、サクヤさんと一緒に寝てもいいかな…?」
キ、キタ〜〜!!パンパカパンパンパ〜〜ン!!
――じゃなくて、落ち着け自分…。
桂が布団に入ってきた。早速あたしに抱きついてくる。ぎゅっ。
539名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:12:03 ID:SMQBr9mG
「今日、サクヤさんが死んじゃうって言った時に、やっと気づいたんだ。
…サクヤさんが、私にとってとっても大切な人なんだってことに。
無くしてみて初めてわかるその大切さ…みたいな感じでね、やっと…」
――ぎゅううう…。ちょ、ちょっと密着しすぎ…。
「桂…」
「…サクヤさん…もう冗談でもいなくなっちゃうなんて言わないでね…お願いだよ…」
――むぎゅううう…。すりすり…。
「う、うん、わかった…」
――あたしはもう我慢の限界だった。
右手が勝手に桂のお尻をまさぐっていた。
桂の体がびくっと反応する。
「…さ、サクヤさん!?いきなり何するの!?」
桂は布団から飛び出して後ずさった。顔にはおびえの表情――。
「――私、サクヤさんのこと信じてたのに…最初からこんな事が目的だったなんて…
最低!!変態!!」
――ズキッ!!
「――け、桂、ごめんよ!!ついからだが勝手に動いちまって…
もうしないから、どうか許しておくれ!!」
「…いやっ!!近寄らないでよサクヤさん!!」
――ズキズキッ!!
「うう…ごめんよ桂…この通り謝るから…どうか戻ってきておくれよ…」
「………」
「…桂の頼み事、何だって聞いてやるからさ…ね?だめかい?」
540名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:13:55 ID:SMQBr9mG
「…へっへ〜!!確かにこの耳で聞きましたよ!!サクヤさん、やさしいなぁ♪
私のお願い事を何でも聞いてくれるなんて♪」
「………へっ?」
――桂の顔にはさっきまでのおびえた表情はどこにもなかった。
にこにこ笑いながらこっちを見ている。
――も、もしかして…
「えへへ、さっきのことのお返しだよ♪私もちょっとは演技うまくなったでしょ?」
――桂に、引っかけられた!?ガ、ガガーン…。
「ふふふ、サクヤさん本気でオロオロしてるんだもん。かわいかったよ…」
「………」
――あたしはまだ呆然としていた…。ま、まさか…桂にだまされるとは!!
「あ、そうだ、忘れるところだった。へっへ〜、頼み事、何にしてもらおうかなぁ〜?」
桂はあごに手を当てて良からぬ事を考えているようだ。
「…あんまり無茶じゃないことにしておくれよ…」
「う〜ん…。それじゃあ、今から私が質問するから、サクヤさんはそれに
正〜直に答えてね?いい?」
「…そんなことでいいなら…」
541名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:15:50 ID:SMQBr9mG
「では、質問その1です。サクヤさんは子どもの私にお医者さんごっこを
仕掛けて、しかもそのことがばれてユメイさんにぶちのめされたっていうのは
本当のことですか〜?」
――う…。いきなりいや〜な質問を…。
「…はい、全くその通りでございます…」
「ありゃ、本当のことだったんだ。本当にサクヤさんってしょうがない人だね…」
――私は耳たぶまで真っ赤になってしまった…。
「では、質問その2。サクヤさんは、私のこと…好きですか?」
「…好きです。大好きです」
「…じゃあ、私のこと、愛してる?」
「…愛してるよ…」
「………私のこと、抱きたい?」
「うん…。抱きたくて抱きたくてたまらないよ…」
「…………いいよ……サクヤさん………」
桂は顔を赤らめてぼそっと言った。
――その言葉を聞いた瞬間、あたしの理性はどこかに消えてしまった…。
542名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:19:27 ID:SMQBr9mG


エロは自分には書けないっす…。ごめんなさい!!
ほんとに申し訳ない…。



543名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:20:44 ID:SMQBr9mG
――すべてが終わって、しばらくして。

――心地よい疲労感でうとうとしていると…
「…サクヤさん?まだ起きてる?」
――桂の声が聞こえた。
「ん…?どうかしたのかい、桂?」
「…最後に、もう一つだけ質問していい?」
「…なんだい?いってごらん」
「…私のこと、一生大切にしてくれる?」
――あたしは精一杯まじめな顔をして答えた。
「桂のことはあたしが一生大切に守るよ。――約束する。」
「サクヤさん…うれしい…」
そういって桂はまた抱きついてきた。あたしはまたムラムラしてきたんだけど…。
とりあえず朝も早いことだし…。今は二人仲良く眠りに落ちることにした。
――まだあたし達二人の生活は始まったばっかりだしね…。

――完――
544名無しさん@ピンキー:04/11/14 02:36:06 ID:lCckvH11
>>543
サクヤさんの一人勝ち〜!
GJ!
ただ、烏月が所々羽月になってるぞ
545名無しさん@ピンキー:04/11/14 04:56:52 ID:PbCHpnpN
>>529氏 GJ!
もう桂タンサイコーーー!!!
お幸せに〜(*^∀^)=3
546名無しさん@ピンキー:04/11/14 08:51:47 ID:Y7GpM4xD
>>542
エロ書けない子がここにいちゃダメだろ。
消えろよ。
547名無しさん@ピンキー:04/11/14 10:53:37 ID:RZvy341B
>>543
GJ!萌えた。
エロ抜きならギャルゲ板のアカイイト本スレに投下するって手もアリかも。
548名無しさん@ピンキー:04/11/16 03:19:04 ID:4DGjNsSe
そういえば最近腐男子氏見ないな・・・
もうとっくにコミケは終わってるはずなのに・・・
(´・ω・`)ショボーン
549名無しさん@ピンキー:04/11/16 23:20:38 ID:CCEqbCNm
はやてスレ落ちてる…!ショック
550酸性温泉:04/11/17 06:30:14 ID:yNKoXxS/
今月号のきららはいい燃料になりました。今回は八重×にわです。
エロありの続編は明日うpしますので少々お待ちください。
551トリコロ 八重×にわ1/11:04/11/17 06:31:12 ID:yNKoXxS/
コンビニの袋を見ながら、潦景子はため息をつく。
別に、景子自身には問題はない。成績は秀才の友人・青野真紀子ほど良くはないが、赤点を
取るようなこともない。人間関係もかつての自分を思えばいまは極楽のようなものだ。
では何が問題なのかと言うと、――――景子の最愛の人のことである。
552トリコロ 八重×にわ2/11:04/11/17 06:31:55 ID:yNKoXxS/
《KNOWING YOU IS KNOWING ME. -Side "White Rose"- 》


「そろそろ寝ましょうか?」
七瀬八重が自室の部屋の電気を消そうと思って、布団から立ち上がる。
今日も景子はじゃんけんに負けてしまい、布団の温め係になってしまった。八重は、景子は
温かいから布団もいい具合になって嬉しいと言うのだけれど、四連敗はちょっと悔しい。
なので、ちょっとした悪戯を仕掛けることにした。
「七瀬」
忍び足で近付いて、スイッチに指を当てた八重を後ろから抱きすくめる。
「に、にわちゃん、駄目ですってば。隣に真紀子さんがいるんですから」
小声で八重は景子に抗議する。
「ちょっとだけ…ね?」
景子は壁と八重の間に回りこむと、柔らかくて瑞々しい唇にそっと己の唇を重ねる。いつもは
布団の中で頬にキスをする程度で済ませているのだが、好きな人とは恋人同士のようなキスを
したいというのが人情というものだ。八重が怒らないように、軽いキスにはしたのだが。
景子が唇を離して八重を見ると、ぽかんとした顔をしている。てっきり恥ずかしがっているか
怒っているかと思われたのだが。
「七瀬? あの…嫌だった?」
「あ、え、ええ嫌じゃない…んですけど、ええ、…おやすみなさい」
八重は視線が定まらない顔をしてふらふらと布団に潜り込んだ。電気も消さずに。
景子は自分のした悪戯がものすごく大きな失策を生んだ気がした。しかし、謝ろうにも八重は
頭から布団をかぶってしまい、取り付く島もない。明日の朝に謝ろうと決めて、景子は部屋の
電気を消した。
553トリコロ 八重×にわ3/11:04/11/17 06:32:26 ID:yNKoXxS/
次の日の朝。
景子が目を覚ますと布団の中にはもう八重の姿はない。代わりに由崎多汰美が景子を起こしに
来た。
「にわちゃん、おはよう」
「おはよう…。七瀬は?」
「下でマキちーと一緒にテレビ見とるよ。にわちゃんも早くご飯食べたら?」
そう多汰美は言い残すと軽快な足取りで階段を降りていく。とても数日前まで風邪で寝込んで
いた人と同じとは思えないのだが。多汰美を見送りつつ、景子は徐々に起きてきた頭で彼女の
言葉を思い出す。八重は真紀子と一緒にいる、と。ああ、これでは昨夜のことを謝れないでは
ないか。真紀子は特に八重のこととなると景子には容赦がない。八重を傷つけたと知れたら
大変だ。いつになったら八重に謝れるんだろう、と考えながら、景子は布団から出て階下へ
向かう。

皆より遅い朝食を済ませてから身支度を整え、八重たちがいる居間に入る。
「おはよう」
「なんや、まだ寝とったんかいな。寝る子は育つ言うけど、まだ育つ気か?」
にやにや笑いながら、真紀子が景子の朝寝坊をからかう。その言葉についついむきになって、
景子はキッと言い返してしまう。
「もう背が伸びる年じゃないわよ。どこぞの誰かさんは変なことばっか考えているから、髪の
毛は育ち放題でしょうけど」
「考えてへんわ!」
ここでまた恒例の小競り合いが始まり、あわてて多汰美が真紀子をなだめる。多汰美が何か
小声でひそりと耳打ちすると、真紀子は真っ赤な顔をして黙り込んでしまったのでなんとか
収拾はついた。景子が八重を見てみると、炬燵の上でがっくりとうなだれている。いつもなら
真紀子と景子が喧嘩になると真っ先に仲裁に割って入るのは八重なのに。
554トリコロ 八重×にわ4/11:04/11/17 06:33:13 ID:yNKoXxS/
これは、かなり事態はまずいのではないか。景子は背中が凍りついた。理由ははっきり分から
ないが、昨夜のキスから八重は態度がおかしい。とにかく八重の機嫌を直す方法を考えなけ
れば。
「ちょっとコンビニに行ってくるけど、何か欲しいものある?」
「あ、ならミルクティー」「私カフェ・オレー!」
真紀子と多汰美は即答した。が、八重はうなだれたままだ。
「七瀬は? 何がいい?」
「…牛乳がいいです」
視線はテレビに遣ったまま、気のない声で八重は答えた。本当に、これは、まずい。


七瀬家から一番近いコンビニに行く途中、景子は八重が機嫌を損ねた理由を頑張って考える。
やはり昨日の行為が悪いのだろう。あの時、確かに八重は『駄目だ』と言った。それを押し
切って唇を重ねたのがやはり良くなかったのだろうか。景子は考えているうちに、あることに
気が付いて足をぴたりと止める。
(よく考えたら私、いつも無理やり迫ってばっかりで、七瀬の気持ちを無視してる!)
初めて八重の部屋に泊まった日に興奮して抱きついてしまい真紀子に羽交い絞めにされた事、
八重の誕生日に告白したときも嫉妬に狂ってベッドに押し倒した事、思い出すだけでも顔面が
蒼白になる。さすがに遊園地に行った日の夜の行為は八重の合意を得てはいるが、今までの
事を考えると八重は景子が体目当てで付き合っていると考えてもおかしくはない。景子は深く
後悔する。うかつだった。とにかく八重に謝らなければ。
555トリコロ 八重×にわ5/11:04/11/17 06:33:55 ID:yNKoXxS/
景子はコンビニで買い物を終えると、ドリンクの入った袋を見ながら考え込む。なんと謝れば
いいのだろう。とにかく、昨日無理やりキスしたことは謝らなければならない。あとは八重の
体にみだりに触れないことを約束することも大事だ。景子にとって八重は、誰よりも大切な
親友であり家族なのだから、自分のわがままを犠牲にすることなど当然だと結論付けて七瀬
家に戻る。

「ただいま」
「おかえり、にわちゃん」
ジョギングに行く準備をした多汰美が玄関で靴紐を結んでいる。
「はい、カフェ・オレ。七瀬と青野は?」
「二人とも自分の部屋じゃよ。マキちーはそろそろ降りてくるかな。今日私と一緒に走って
みたいって言うけえ」
「たまにはな」
景子が視線を上に向けると、ジャージに着替えて髪を縛った真紀子が立っていた。
「めずらしいわね。どうしたの?」
「多汰美がたまには運動せえって言うからな」
「マキちーとデートしたいけえね」
「ゆ、由崎!?」
多汰美の発言に景子は素っ頓狂な声を上げて驚いた。あわてた真紀子が多汰美の口をふさいで
言葉をさえぎる。
「また『広島じゃ二人で出掛けることをデートって言う』って言うんか!? 大阪や長織では
言わんのや! …もう行く! にわ、留守番頼むからな。ジュースは、冷蔵庫に入れとけば
ええから」
真紀子は景子に言うだけ言って、多汰美の袖を引きずって連れ出し扉をピシャリと閉めた。
「ゆ、由崎も……相変わらず言うことが凄いわね。予測不能というか」

556トリコロ 八重×にわ6/11:04/11/17 06:34:30 ID:yNKoXxS/
冷蔵庫に二人のドリンクをしまった後、八重と自分の牛乳を持って二階の部屋に上がる。
「七瀬、ただいま。牛乳買ってきたわよ。入ってもいい?」
「…どうぞ」
八重の返事はまだよそよそしい。これはすぐに謝らなければ。景子はそう決心すると、八重に
手を合わせて謝罪した。
「七瀬。昨日の夜は、その、ごめんなさい。もう七瀬の体に触ったりしないから!」
「…え?」
「いままで、私、七瀬の気持ちを考えてなかったから、七瀬が怒っても仕方がないと思うの。
私は友達でも十分だから。ごめんなさい!」
「にわちゃん?」
敷きっ放しになっていた布団の上に座り込んでいた八重は、土下座せんばかりの景子の勢いに
びっくりして正座をしなおし、おろおろと周りを見回す。
「に、にわちゃん、落ち着いて! 私、怒ってませんてば」
「昨日も七瀬は駄目だって言うのに……え、あ、うえええ? 怒ってない?」
「怒ってませんよ。だから、顔を上げて」
「う、うん」
八重にやさしく諭され、景子はゆっくりと顔を上げる。
「ところで、やっぱり…私に触れるの、嫌?」
「全然! そんなことない! ただ、その今まで七瀬がいいって言ってないのに、キスしたり
抱いたりしたのは本当に反省してるから。七瀬が嫌ならもうしないって決めたの」
「い、嫌じゃないですよう。ただ、ちょっと、ムードは大事にしてもらえたら、とは思います
けど」
『ムードを大事にする』確かに今までの行為には欠けていた、と景子は別の反省をする。
557トリコロ 八重×にわ7/11:04/11/17 06:35:31 ID:yNKoXxS/
「う、うん。じゃ、昨日キス…してから元気なかったのはどうして?」
上目遣いで顔色を伺うようにして景子は八重に核心を問う。
「にわちゃん」
「うん?」
「牛乳下さい」
景子から牛乳を受け取ると、八重はストローを差し込み、勢いよく飲み込んだ。
「にわちゃんは、どんな人が好みですか?」
「え?」
「私、真紀子さんがうらやましい」
「あ、青野が? 私、青野のことは嫌いじゃないけど、好みっていうのとは話が違う」
「あの、ちょっと言いにくいんで、耳を貸してください」
八重は景子に近付くと、そっと耳打ちした。

「私の背が低いから、にわちゃん、キスするときかなり前かがみになってたでしょう? もし
真紀子さんくらい背があったら、にわちゃんと普通にキスできるなって思ったんです」
景子は真っ赤になってうつむく八重を見ながら、いままでのことを思い出してみる。記憶を
手繰ると、二人とも立ったままで唇を重ねたのは昨日が初めてだったことに思い当たった。
考えてみれば、八重は妹扱いされるのを嫌がっていた。その裏には景子や真紀子、多汰美と
対等に付き合いたいという気持ちが隠されているのだろう。

「ごめんね。さっき『もう背が伸びる年じゃない』って言っちゃって」
景子が八重の手をとって言う。
「成長は個人差があるから七瀬もまだ伸びるかもしれないけど、待ってられないわよね。でも
ね、七瀬は身長のこと、気にするなって言っても無理だろうけど、気にしなくていいわよ」
「…うん」
558トリコロ 八重×にわ8/11:04/11/17 06:36:11 ID:yNKoXxS/
「誕生日にあげた花のこと、覚えてる? 白薔薇の花言葉は『私はあなたにふさわしい』って
いうんだって。七瀬はそのままでも十分、大事な人だから。それどころか私のほうがなんでも
もらってばかりでいつになったら返せるか分からないけど……」
これで自分の言いたい気持ちは八重に伝わっただろうか。たまに暴走することもあるけれど、
景子は八重のことを想うといつもじんわりと胸が温かくなる。八重は、景子が望むものをなん
でも惜しみなく与えてくれる。体は小さくても、心の大きさは誰にも負けていない。景子は
そんな八重が大好きなのだから。


どうすれば八重のコンプレックスを解消させてやれるのか、景子はしばし思考した。何か良い
方策はないものか。
「…そうね。だったら、七瀬、一度私を押し倒してみる?」
「え、ええ!?」
「上から見下ろされてばっかりだと、嫌なんでしょう? 背は一日やそこらで伸びないしね。
それなら、押し倒せば七瀬は私より上になると思うけど」
景子にはそれしかいい方法が見つからなかった。自分がかがむにしても、八重が背伸びをする
にしても八重の身長への劣等感の根本的な解決にはならないように思われた。それに、八重が
心の底で望んでいるのは精神上の対等さなのだから、立場を変えるというのも案外良い方法
なのではないか。
559トリコロ 八重×にわ9/11:04/11/17 06:37:26 ID:yNKoXxS/
八重は景子を押し倒すなんて、想像もしたことがなかった。けれども、自分の気持ちを変える
には、このぐらい思い切ったことをやらないといけないのかもしれない。
「そ、それでは、失礼します……」
八重は遠慮がちに呟くと、空いた右手でそっと景子の肩をつかみ、布団の上に押し倒した。左
手は景子の右手を握ったまま、体に覆いかぶさる。
「ど、どうすればいいんでしょう?」
「いや、あの、七瀬がしたいようにすれば……」
二人ともいつもと反対の立場に戸惑って、ついおろおろしてしまう。八重は気持ちを切り替え
ようと踏ん切りをつけた。とにかく形から変えなければ。

「―――景子」
耳にかかる八重の吐息がやけに熱っぽくて、景子は心臓がぎゅっと鷲掴みにされたような感覚
を覚える。
「景子、愛してる」
耳元でそう甘く囁いて、頬にそっと口づけをする。八重からキスをされるのはこれが初めて
ではないが、潤んだ瞳で見つめられて景子は自分が抱く以上の興奮を感じた。
560トリコロ 八重×にわ10/11:04/11/17 06:38:07 ID:yNKoXxS/
「な、七瀬…」
景子はつないだ手の指をぐっと絡ませながら、八重の名前を呼ぶ。八重は返事をする代わりに
ついばむように唇に軽いキスをする。一度顔を上げると、右手で景子の耳の上を撫でながら、
もう一度頬にキスをする。景子はそれが嬉しくて、もどかしくて、空いた右手で八重の背中を
引き寄せる。
八重がやさしく尋ねる。
「もっと…しても、いい?」
「…ん」
このままだと蕩けてしまいそうだ。そう思いながら、景子は八重にキスを落とされる。何度も
繰り返される接吻。唇だけは巧妙に避けて、八重の体温が景子の顔中に広がっていく。
「なな、せ…もっと」
ねだるのは、はしたないことに思えた。けれど早く八重が望む形で「本当のキス」をしてもら
いたい。景子の気持ちを察した八重は、一言口にして、唇を重ねる。

「ずっとそばにいるからね。景子」
景子は視界を涙で滲ませながら、八重が挿し入れた舌を受け入れる。八重の作ってくれる料理
はいつも美味しい。作る本人がどんなご馳走よりも美味なら、それは当然なのではないだろう
か。
561トリコロ 八重×にわ11/11:04/11/17 06:39:16 ID:yNKoXxS/
数秒にも、何時間にも思える接吻を終えて顔を上げた八重は、大きく息を吐き出して言った。
「に、にわちゃん、私、もう駄目…。やっぱり、いつもの通りでいいです」
ぐったりとして八重は景子の胸に顔を埋めた。景子は八重の髪を撫でながら答える。
「そう? 七瀬にもっとしてもらいたかったんだけど」
早鐘のように打つ胸の鼓動を悟られまいと、わざと景子は軽口を叩く。八重は真っ赤になって
立ち上がり、洗濯物を干しに行くと告げて急いで部屋から出て行こうとする。
「な、七瀬、待って!」
「な、なんでしょう」
「その、…身長のこと、もう気にしてない?」
「そ、それは、まあ、その、なんとか……はい。」
荒療治だったが、なんとかなったようだ。安心した景子は、つい余計なことまで訊いてしまっ
た。
「もう、『景子』って呼んでくれないの?」
飛び上がらんばかりに体を縮み上がらせた八重は、泡を食って襖を開け、一言叫んで逃げる
ように階段を降りていった。
「に、にわちゃんは『にわちゃん』です!」


ああ、だから自分は『ムードを大事にして』ないのだ、と軽く自己嫌悪を感じて、景子は頬を
掻く。外を見ると、今日は秋晴れ。洗濯物もよく干せるだろう。青野と由崎はどこまで行った
のかな、と思いながら、景子ははるか遠くを眺めるのだった。

                                                   つづく
562名無しさん@ピンキー:04/11/17 09:12:21 ID:kkYkki44
朝からいいものを読ませていただいた…GJ!!

ああ、俺の小説はいつ完成するのだろうか(泣)
563504:04/11/17 14:32:01 ID:tcFoNNMu
あぁ、ちくしょう…やっぱ酸性温泉氏の書く
SSは萌え氏ぬなぁ……⊂ ̄⊃。Д。)⊃パタッ

俺もハイエナ×エロガッパで何か書きたいけどネタが無いよ(´・ω・`)
564名無しさん@ピンキー:04/11/18 01:35:50 ID:JyzYS8qu
つか海藍スレでネタ振るなや。
またぞろ頭の悪い嫌百合厨が湧いてきたやんか。
しかし、なんであいつらあんなに自信満々なんやろか?
まぁ我々常人には基地外の考えてる事なんざ理解しようがないがな。
565酸性温泉:04/11/18 06:19:42 ID:3Xhg7n61
>562-563 ありがとうございます。八重&にわは真紀子&多汰美より書くのが
難しいのですが、にわちゃんの八重ちゃんへの笑顔がいい燃料になります。

>564 前にもきららスレでURLを張ってた人がいてまずいのでは、と思いました。
本スレで過度の百合ネタはひきます。原作もギリギリのさじ加減なんですから。

昨日の予告どおり>551-561の続きです。
566トリコロ 八重×にわ1/11:04/11/18 06:20:40 ID:3Xhg7n61
《"White Rose" Part2》

八重が景子の家に泊まりに来た。口実としては、このあいだの七瀬家の耐震工事の際にお世話
になったから、その後片付けも兼ねて遊びに来たという事になっている。その実は、たまには
二人きりになりたいということなのだけれど。

客間に掃除機をかけたり、一緒に夕食を作ったり。お弁当じゃ食べられないですから、と言っ
て二人で作ったトマトと豆腐のグラタンはなかなか美味しかった。七瀬が作ってくれればなん
でもおいしい、と無邪気に喜んで食べる景子に、八重は二人で作ったからですよ、と返す。
ある意味いつもどおりの、幸せな二人。

食後の片付けとお風呂を済ませた後は、二人でゆっくりと景子の部屋で過ごす。学校での出来
事、景子がいないときの七瀬家の話、毎日顔を合わせていても話は尽きることがない。
ふと時計を見ると十一時近い。そろそろ寝ようか、と景子が誘う。
567トリコロ 八重×にわ2/11:04/11/18 06:21:11 ID:3Xhg7n61
「今日は、…しないんですか?」
八重が額を景子の肩に寄せて訊ねる。
「もっとムードが大事に出来るようになったらね。このあいだも失敗したし。七瀬、洗濯に
行っちゃったもの」
苦笑しながら景子が答える。
「七瀬に押し倒されたときは、なかなかドキドキしちゃった」
耳元でそう囁かれて、八重は湯気が出るほど真っ赤になった。
「も、もう! その話はやめてくださいよ!!」
「今日は七瀬が押し倒してくれるんだったら、する。」
嫌って言うかな? 景子はそう思いながら俯いた八重の顔を覗く。
「…きょ、今日だけですからね」
八重は景子のパジャマの膝元を握ってぼそりと呟いた。
568トリコロ 八重×にわ3/11:04/11/18 06:21:43 ID:3Xhg7n61
八重は景子の首に抱きつくと、体重をかけて景子の上半身をベッドに沈ませた。手を白い喉元
にあてがい、唇を首筋に押し当てる。
「にわちゃん…」
「七瀬、今日は名前で呼んでくれる?」
「…うん。景子、キスしていい?」
「うん」
景子が目を閉じると、八重は微笑んで唇を重ねる。最初は、触れるかどうかの加減で、二度目
は深く。舌で少しずつ景子の唇を濡らし、ゆっくりと口中へ挿しいれる。景子には恥ずかしく
て言えないが、八重はキスが好きだ。景子は甘いものが好きなせいか、キスをするとふわりと
甘い香りが鼻腔をくすぐるから。何度か唇を離しながら、髪を梳くように撫でて八重は接吻を
繰り返す。
「景子って綿菓子みたい」
「なんで?」
「柔らかくって、なんだか甘い、いい匂いがする……」
569トリコロ 八重×にわ4/11:04/11/18 06:22:18 ID:3Xhg7n61
匂いの元を確かめるように、八重は唇を再び首筋に押し当てる。髪からもシャンプー独特の
いい香りが漂ってくるが、キスをしたときの香りとは微妙に違う。やはり景子の匂いなのだ
ろうか。
八重は景子のパジャマのボタンに手を掛けて、ゆっくりとボタンを外す。景子が嫌がっていな
いかと確認すると、羞恥心からか、顔を真っ赤にして横に背けている。いつもは不器用だから
ついつっけんどんな態度をとりがちの景子が自分にだけ見せる姿に、八重は胸の鼓動が速まる
のを感じた。
「あったかい……」
パジャマのボタンを全て外し、八重は露になった鎖骨に頬ずりをする。
「七瀬……」
景子は八重が自分を慈しんでくれるのが嬉しくて、八重の小さな体をふわりと抱き寄せる。
八重は景子に抱かれるのが嬉しくて、子供を可愛がるように肩や頬を愛撫する。
しばらく抱き合っていて、八重はしまった、と心の中であわてる。今日は景子を押し倒すと
言ったのだから、いつもどおりに甘えてはいけないのだ。景子を驚かさないようにやおら体を
起こし、パジャマの上着を脱ぎ捨てる。
「景子も…いい?」
景子は黙ってうなずいて上半身を浮かせた。八重は袖を抜いてそろりと落とし、次いでズボン
を脱がせる。寒い思いをさせたくないからと体を密着させて、ブラのホックを外し、パジャマ
とまとめてベッドの下に置く。
570トリコロ 八重×にわ5/11:04/11/18 06:22:50 ID:3Xhg7n61
(うぅ、やっぱりにわちゃん、綺麗だなあ……。)
銭湯に行ったときにもちらりと見たが、景子は均整の取れた体をしている。背は自分より20cm
は高いし、胸も自分と比べて大きさが全然違う。景子はそのままでいい、と言ってくれたが、
少しだけ悲しくなる。
(でも、今だけは私のものだもの。誰にもあげないんだから。)
八重は自分のものだと印を付けるかのように鎖骨に吸いつき、手を脇腹へ滑らせる。
「やっ、七瀬、…七瀬っ……」
景子は高い声を上げて反応する。鎖骨が弱いのだろうか、脇腹が弱いのだろうか。八重は脇腹
を撫でるのを止めて鎖骨に沿って舌を滑らせる。
「やぁ…っ、だ、だ、めだって……な、なせ」
どうやら鎖骨のほうだったらしい。左側をなぞり終えた後、右側を丁寧に舐め上げる。右手は
脇腹を支えながら、左手で乳房を包む。綿菓子のようなものを想像してしまっていたが、景子
の胸は随分と弾力があった。
「にわちゃ…景子、もっとしてもいい?」
「う、うん、七瀬が、したいように……して」
少し意地悪く確認してから、左手で乳房を弄ぶ。自分も初めて触れられたときに陥落したのだ
から、景子も弱いかもしれない。いちばん感じるところを避けながら、卵を扱うようなつもり
でじっくりと愛撫する。
571トリコロ 八重×にわ6/11:04/11/18 06:23:30 ID:3Xhg7n61
「七瀬の…意地悪」
「どうして?」
「おかしく、なりそう…」
景子が再び八重を抱き寄せる。景子に抱きつかれると八重は弱い。誘惑に負けないようにと
気持ちを振り絞り、焦らされて固くとがった突起を口に含む。
「や、やだっ! な、七瀬、…なな…せぇっ……!」
いままで頑張って声を抑えていた景子も我慢できずに叫びにも似た喘ぎ声を漏らす。八重は
景子が感じてくれていることに喜びを覚え、丹念に舌で突起を舐め上げ、左手の指でもう片方
の突起を転がすように刺激する。その度に景子は嬌声を上げたい衝動と戦いながら、八重の
背中に爪を立てる。

「…痛っ、景…子、力、入れないで」
いつもなら「七瀬、ごめん」と答えるであろう景子だが、八重の愛撫に気を取られてしまい、
声も届いていない。八重は痛みを我慢して、右手を下腹部へと滑らせた。
「あぁ……っ、だめ! な、なせ、七…瀬ぇっ!」
指が秘所に到達すると、再び声が漏れる。景子は意識が飛んでいかないように、八重の名前を
呼び続けながら八重の頭を掻き抱く。最後に残った下着はぐっしょりと濡れている。八重は
濡れそぼった布の上から花弁の外側を人差し指で外側から中央に這わせる。
572トリコロ 八重×にわ7/11:04/11/18 06:24:04 ID:3Xhg7n61
「……くっ…あっ、な、なせ…」
景子が我慢しきれずに脚を内側にしならせてきた。自分の時を思い出すと、景子もかなり限界
に近づいている。八重は乳房にあてがっていた左手を離し、ショーツを脱がせた。
一度に決めようかと思ったが、性急に事を運ぶのがなんだかもったいなく思われて、八重は
いったん体を離す。
「ななせ…やめるの?」
朦朧とした意識のまま、景子は八重の腕を取って問う。
「ううん。私も服を脱ぐから、ちょっと待って」

八重がズボンと下着を脱いで片付けている間に、ぼんやりと景子は八重のことを好きになった
頃のことを思い出す。その時は小さな子供が母親にくっついて甘えるように、とにかく一緒に
いたかった。告白しようと決めてからは、どうしたら八重に喜んでもらえるかを考えるように
なった。まさか両想いになれるなんて思わなかったから迷うこともあったけれど、八重を愛す
ることも八重から特別に愛されることも、こんなに幸せだとは思わなかった。どうしたらこの
人をもっと大切にしてあげられるのだろう。そう思える自分が、景子は少し誇らしい。
573トリコロ 八重×にわ8/11:04/11/18 06:24:43 ID:3Xhg7n61
やがて景子の肌全体に人の温もりが広がる。生まれたままの姿の八重が、景子を慈しむように
抱いてくれるから。
「―――景子は、私のこと、名前で呼んでくれないの?」
「…呼ばない」
「どうしても?」
「青野や由崎と一緒の呼び方、したくないから。…だから、一回だけ。」
「うん」
「―――八重、愛してる」

八重は景子の言葉を確かめると、改めて唇を重ねる。自分を抱き寄せてくれる景子の腕が心地
よい。八重が頭を上げると、景子の顔にぽたりと水滴が落ちる。八重が舐めとると、塩の味が
した。
「景子…」
囁くような微かな声で、八重は景子の名前を呼ぶ。それとなく雰囲気を察した景子は腕の力を
解いた。八重は体を起こすと、一度だけ頬にキスをし、右手は軽く乳房に触れる。景子の心臓
の鼓動を確認するように胸の中央に顔をうずめてから、右手をゆっくりと下腹部へ、そして
太腿へと這わせる。
(ここも、あったかい……熱いくらい。)
たどりついた内股からはじっとりとするほどの熱が伝わってくる。手を温めるように腿を軽く
掴んでから、徐々に指を秘所へと這わせる。
574トリコロ 八重×にわ9/11:04/11/18 06:36:00 ID:3Xhg7n61
「は…ぁ……っ、な、なせ…」
ちりちりと走る感覚に驚いた景子はびくりと震えて、八重の両肩に手を回す。八重が入口から
溢れ出る粘液を掬うように指でかき混ぜるたび、電流が走るような感覚がますます景子の下腹
部の奥を刺激する。八重は景子が感じるところを探ろうと花弁の回りをまんべんなくほぐす
ように指を這わせる。
「あ……っ! や、やぁ……ぁっ! だ、だめ……っ!」
中指が陰核に達すると、景子は悲鳴にも似た声で一際高く喘ぐ。
「景子…ここ?」
八重が景子の様子を見ながら訊ねるが、景子は目を固く瞑り唇を噛み締めて堪えているので
まともな返事が返ってこない。指に絡みつく粘液が指の付け根にまで伝ってきたので、きっと
このあたりがいいのだろうと八重は判断して、陰核をくすぐるように、時にはこねるように
人差し指と中指で刺激を与え続ける。
しばらくは下腹部からせり上がる波を堪え続けていた景子も、八重の指が与える刺激に陥落
してついに最後の声を上げた。
「やぁ……っ! なな…せ、…ななせ…っ、もう…っ、…あ、あぁ……っ!」
声をあげたと同時に一度大きく全身を痙攣させ、景子はベッドにぐったりと沈んだ。八重も
景子を達せさせたことに安堵して、景子の体から身を離す。一度上半身を起こしてから、静か
に景子の隣に体を横たえ、息が上がって力が抜けている景子をやさしく抱きしめた。
景子がいつ意識をはっきり現実に戻してもいいように。自分が離れていては夢から覚めた時に
景子が寂しがるだろうから。
575トリコロ 八重×にわ10/11:04/11/18 06:38:03 ID:3Xhg7n61

景子が意識を戻した後、二人で一緒にシャワーを浴びて、着替えをしなおした。
八重がもう押し倒すのは懲りた、と訴えるので、景子はベッドの上に座って八重をやさしく
抱きしめる。
「七瀬、ありがとう」
絹糸のような八重の髪を撫でながら、景子が言う。
「うぅ、これでもうしませんからね? 恥ずかしい……」
赤くなった顔を隠すように、八重は景子の胸に顔をうずめる。
「じゃ、私、いつも恥ずかしいことしてるんだ?」
景子がからかうと、八重はますます景子にしがみついて、くぐもった声で反論する。
「にわちゃんがしてくれる分にはいいんです…」
「今度はいつになるか分からないけど、そのときはもっと大事にするから」
「…はい」
576トリコロ 八重×にわ11/11:04/11/18 06:39:14 ID:3Xhg7n61
「あのね、今日最後のわがまま、聞いてくれる?」
「聞けることなら聞きます」
「最後に一言だけ、言ってほしい言葉があるの」
八重の体を軽く離して、景子はその言葉を耳打ちする。八重はもうこれ以上赤くなれない、と
いうほど真っ赤になって恥ずかしがる。けれど、その言葉は八重も初めて景子と結ばれたとき
に言われた中で一番嬉しかった言葉だったから。同じ言葉を望む景子にも告げてあげたい。
八重は胸に手を当てて、少しでも落ち着こうと深呼吸した。
「もう、十二時回っちゃったから、にわちゃんが言ったとおりには言いませんからね?」
「うん」
八重は景子を抱きしめて、約束の言葉を口にする。

――――私、ずっとにわちゃんのそばにいるからね。

脳裏には、景子がくれた紫のライラックと白いバラが焼きついていた。

                                                  おしまい。
577名無しさん@ピンキー:04/11/18 11:59:57 ID:OL48GSD2
>>566-576
いつもGJっス。モニターの前で悶えてますよl。

ところで、海藍スレの一件は困ったもんですよね。
リンク張ったのもアンチの仕業なんじゃないかと疑いたくなりますが・・・。
SS職人さんのサイトに荒らしに行くからURL教えろとか言ってるのもいたし。
ただ不愉快な思いをさせられるだけならまだ我慢できますが、
個人サイトに突撃されてはシャレになりません。
578酸性温泉@エロガッパ:04/11/20 20:56:15 ID:koFCmZqF
保守。

>577 ありがとうございます。今回のテーマは「甘々でラブラブ」でございます。
少しでも(;´Д`)ハァハァしていただければ幸いです。

真紀子×多汰美の続きはどうしましょうかねえ…。《KNOWING YOU IS KNOWING
ME. -Side "Lemon Bomb"-》 というタイトルだけしかできてないし。気が向いたら
書きます。
579通勤電車 1/3:04/11/21 14:04:55 ID:HIahiThi

「うわーん。絵里ちゃん、満員だよぉ」
 可愛らしい顔立ちをした少女は悲鳴をあげた。
「美咲っ、離れないで」
 朝のラッシュに巻き込まれた高校生二人は、詰め込まれた他の乗客達に押し
潰されそうになっている。
 先程聞いた放送によると、前を走る電車が事故にあって、後続のダイヤが大幅に
遅れているとのことで、混雑は輪を掛けて酷くなっている。
 黒や灰色のスーツの大群に埋もれながら、美咲と絵里はお互いの身体が半ば
くっつく形でいることを強制されていた。

 暫く列車に揺られた後。
「ひゃん」
 スカートの上かお尻を撫でられているのに気づいて、美咲は裏返った声をあげた。
(ち、痴漢さん?)
 驚いて後ろを向くと、絵里が人差し指を口に当てて、小さく笑っている。
「え、絵里ちゃん!?」

(まさか。えっと、どうしてっ)
 混乱して戸惑う親友に構わずに、お尻にあてた手を動かしていく。
「こんなことしちゃ、だめだよっ」
 あどけない顔を歪めて弱々しい拒絶の声をあげる少女の姿に、性的な興奮を覚えた
絵里は言った。
「ふふっ、気持ちいい? 」
「気持ちよくなんかないよぉ」
 イヤイヤ、といった感じで身を捩る。
「ふーん。じゃあキモチヨクなるまでしてあげる」
 幼い美咲とは対照的に、大人びた雰囲気を醸し出している少女は、今まで
お尻を撫で回していた手を使って、器用にボタンとファスナーを外し、中に手を
潜り込ませていく。
580通勤電車 2/3:04/11/21 14:06:41 ID:HIahiThi

「や、やめてっ」
「美咲〜、気づかれちゃうよ」
「あっ」
 自分たちの淫らな行為を知られることに恐怖を覚えて、慌てて口に手を押さえる。
「そうそう。いい娘だね」
 淡々といった調子で言いながら、下着越しに、少女の割れ目に沿って指先を
這わせていく。
「……んぐっ」
 押さえた美咲の口元から、くぐもった声が時折漏れる。
(ど、どうしよう)
 気持ち悪いだけのはずだったのに、少しずつ快感が混ざり始め、美咲はふっくらと
した頬を紅く染める。
「んんっ…… んあっつ」
 両膝を震わせながら、高まりつつ快感に必死に耐えている少女に、嗜虐心を覚えた
のか絵里は美咲の耳元に囁く。
「パンツの中、ぐしょぐしょだよ」
「い、言わないでっ」
 列車がレールの継ぎ目を刻む規則的な音に紛れて、股間から溢れた液体と微かに
生え始めた陰毛が卑猥に擦れる音が、はっきりと美咲の耳に届く。
581通勤電車 3/3:04/11/21 14:08:07 ID:HIahiThi

「ふああっ、どうしてっ」
 混乱から立ち直れない少女に欲情を覚えながら、絵里は下着の中に指先を入れて、
愛液で濡れた陰部の表面を直に擦っていく。
「やああ、絵里ちゃん、駄目えっ」
 気持ちが良くなる場所を絶え間なく襲う愛撫に、腰が砕けそうになって、美咲は
頭一つ分だけ高い親友にしがみついた。
(だめっ、いっちゃう。イッちゃうよお)
 蕩けるような快感が、達しそうになる瞬間を必死に引き伸ばそうとするが、
絵里の愛撫はより激しくなるばかりで、とても耐える事ができない。
「いやあああっ、あああああ! 」
 身体を細かく震わせながら、あっという間に少女は頂きを通り越してしまった。

 混雑した電車からやっとの思いで降りた後、絵里は傍らに歩いている少女の顔を
覗き込んだ。
「いっちゃった? 」
 しかし、美咲は思いっきり頬を膨らませて、ぷいっと横を向いている。
「絵里ちゃんなんて、もう知らないっ」
「あはは、ごめんごめん。お詫びにメープル屋のケーキおごるからさ」
「ホント!? 」
「うん。美咲の好きなもの頼んでいいよ」
「やったあ」
 あまりにもあっさりと機嫌を直してしまった親友に、あきれ混じり苦笑を浮かべ
ながら、絵里は意地悪そうな口調で囁いた。
「太っても私のせいにしないでね」

(了)
582 ◆5xcwYYpqtk :04/11/21 14:09:17 ID:HIahiThi
突発的ですが短編を書いてみました。
よろしければどぞ〜
583名無しさん@ピンキー:04/11/21 14:45:23 ID:M4UF3gVp
>>582
おつかれさまです。
欲を言えば、エロ部分をもう少しふくらませて欲しかったのと、
(周囲の人間の目を意識するなど、そういった羞恥プレイ的な内容)
それと、エピローグ部分をレズと関連づけて欲しかったですね。

美咲がノーマルだと仮定して、たわむれだとしても、
親友だと思っていた相手がレズ行為を仕掛けてくるというのは、
一般常識で考えれば「異常」なわけじゃないですか。
なので、なんで美咲が受け入れたのか(絵里が好きだから、とか)
ってところがあったら、もっと萌えたかなーと。
男書きたくねえからレズで、ってのもあるんでしょうけど、
やはり精神的な絆があってこそのレズかな、と私なんかは思います。

好きなシチュエーションだったこともあり、楽しませていただきました。
つたない感想で申し訳ありません。
584582:04/11/21 19:50:58 ID:HIahiThi
>>583
丁寧なレスありがとうございます。
エロ描写に深みを欠いた点、美咲が絵里を受け入れる理由についての
描写が無かった点は、ご指摘の通りです。
改善して次に生かしたい思います。
585名無しさん@ピンキー:04/11/23 21:31:46 ID:lScpOr9M
腐男子氏こないかなー
586名無しさん@ピンキー:04/11/25 00:08:29 ID:IoOiA1pe
>>585
では、昨日誕生日だった漏れが捨て身で腐男子氏を召還してやろう。

…砂の闘士・クルス編の続きがほぼできたけど、載せていい?w
濡れ場の入れようがないから書きませんが、とかあったので。

(クソ長いわりに濡れ場が今のところ一箇所だけ…総ブーイングくらいそうw)
これで第3話を腐男子氏(もしくはその他腕に覚えのあるヤシ)が書いてくれないかな、と。
587名無しさん@ピンキー:04/11/25 01:22:25 ID:ZyA7nrV9
>>586
はぴばすでー。
588名無しさん@ピンキー:04/11/25 02:00:34 ID:/X7M9j2N
>>587 わーい、超ありがとー。(つ∀;) 見も知らぬ方にまで…なんか嬉しかったyo。
いっぺん切ったから、ID違うけど、まだ起きてたw
589名無しさん@ピンキー:04/11/25 07:52:07 ID:vgMOV1fG
>>586
ハァッピバースデートゥーユ〜(モンロー風)

マジで? 召還してして。
…そうか。そういうのもアリなのか。
待ってるだけじゃ駄目なんですね。
590名無しさん@ピンキー:04/11/26 02:01:58 ID:vCdNlVMR
>>589
今日もまだ起きてた…もう寝るけど。セクシーモンロー(もどきw)超ありがとう!超うれしいよ!(^v^)
(♪Happy Birthday Mr. President...だよね)悩殺されたよ…w
今、完成させてるからもうちょっとだけ待っててね。

589も何か書いてよねぇーっ?(短編でもいいから)期待して待ってるよーっ。
腐男子氏も召還魔法に呼び出されて出てきやがれ!…いや、出てきて続き書いて?

(エロシーン1箇所と予告しても、2回ハッピバースデーをゆってもらったから、載せてもいいってことかな?w)
591名無しさん@ピンキー:04/11/28 02:12:26 ID:neIyN9EP
できました。仮のHNはくだものだものです。全部載せても大丈夫かな?

腐男子氏による冒頭↓

26 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:04/06/12 18:10 ID:bmXosTpd
砂の闘士 女版ラスト

http://members.at.infoseek.co.jp/jigokugokuraku/ss/13.html
592砂漠の薔薇:04/11/28 02:14:14 ID:neIyN9EP
―――――不安で鎮まらない胸のうちを誰にも打ち明けられず、三日後、王の謁見の間。

華やかに着飾った家来や侍女たちがかしずく中、正装のクルス=ファルカット=マルジャーンが、王の御前にまかり出る。
「…?」
貴賓の宿舎に滞在中に帯びていた儀礼用の刀ではなく、銀の鞘に収められた三日月刀を腰に下げているクルスを見て、マルレンが首をかしげる。
「どうして今日はあのような、飾り気のない太刀を帯びていらっしゃるのだろう…?」

「都より南方、マルジャームから、偉大なるアッシュールの王にご挨拶申し上げたくはるばるお目通りを願いました、クルス=ファルカット=マルジャーンと申します」
 深々と頭を下げると、灰色の長い髪がマントの肩をさらさらと滑り落ちる。

 豪華な絨毯の上、黄金のうてな、金糸銀糸で飾られたクッションの上に寝そべり、酒をついだ金の杯を片手に、側女に扇であおがせながら、クルスの顔を不遜に見やるイスハーク=ハーキム=アッシュール王。
壮年の王は、陽に灼けて精悍に整った顔立ちでありながら、眼を合わせる者を不安にさせずにはおかない不穏な眼光を持っていた。
593砂漠の薔薇:04/11/28 02:15:02 ID:neIyN9EP
「…?」
 未だ何も答えない王に、クルスがふと頭を上げる。
(…?…私の計画が、ばれたりはしていないはずだが…?)
居並ぶ侍女の列でおとなしく控えるマルレンも、不自然なほど長い沈黙にはっとクルスのほうを見やる。
二人の頭の中に、くぐもった恐ろしい声が響く。

 ふふ、隠してもわかるぞ。お前、以前わしに楯突き刃を向けた砂漠の獅子、女盗賊シェラ=マルジャーンの魂を受け継ぐ者だな。
そこな侍女は、その想われ人の生まれ変わりか…以前、魔道に弱いと言っておったな…なるほど…お前たちの魂が今、わんわんとうるさいほどに共鳴しておるわ。
そこになおれ、二人とも並べて今度こそきれいに始末してくれようぞ!

 周りにはこの声は聞こえない。クルスとマルレンの顔が青ざめ、侍女や家来たちが不思議そうにざわめきはじめた。
「…ううっ…」
マルレンは今までになく激しい耳鳴りと頭痛に耐えられなくなり、こめかみを押さえて細い身体を折りまげる。
やがて控えの間から魔王に操られた兵士たちの群れが剣や槍を手になだれ出で、王の間は叫び声や悲鳴であふれ騒然となった。
 
「まずい…マルレン様、こちらへ!」
 とっさにマルレンを抱きかかえると、混乱に乗じて兵士たちをすり抜け、中庭の生け垣を飛び越えて、いっきに厩まで駆け抜ける。

「ジン!」
 見事な葦毛の美しい馬が、鼻息荒く厩の柵を蹴破り、主人のもとへと馳せつける。
「走れるな…行け!」
主人と娘を乗せて、王城の混乱を尻目に、砂漠の魔物の如く軽やかに砂漠へ駆け出した。
594砂漠の薔薇:04/11/28 02:16:31 ID:neIyN9EP
-----------------------------------

 ひとしきり走らせると、
「ここまで来ればひとまずは大丈夫でしょう」
乗馬の足をゆるめ、クルスが侍女に問う。
「魔王の声が聞こえましたね、あなたにも…?あなたももうあそこには戻れない。安全な場所に着くまで、私がお守り致しますから…マルレン様」
クルスの胸に、震えながらしがみつくようにして乗っていたマルレンが小さな顔をやっと離し、おずおずと訊く。
「あの、クルス様…お付きの方たちは…?」
「万一の場合を考え、すでに国に帰してあります。今度のことは国の意向ではなく私の一存で、そのようなことで彼らにまで巻き添えを食わせるわけにはいきませんから」
そしてマルレンの絹のドレス、薄いヴェールといういでたちに目をやると、
「…その恰好のままでは暑いでしょう、ここから二つ目のオアシス、アルサラームに我が王室と懇意の者がいます。しかしそれまでにまず、我々と馬に、水…それから休息する場所が必要です。一番近い南のオアシスに着くまで、これで少し我慢していていただけますか」
6フィートほどもある長身のクルスが、礼装用のマントの中にマルレンをすっぽりと包み、ジンの手綱を取り、砂漠を駆け出す。

 温かくゆっくりと脈打つクルスの胸にもたれて、マルレンはなぜか少し胸がどきどきする。
(この方の衣服に、さきほどから南方独特の香油の香りが…)
自分の身の上に起っためまぐるしいほどの出来事と重なって、小さな胸の鼓動が、まるで息をつくひまもなくせわしなく打ち続ける。
595砂漠の薔薇:04/11/28 02:17:03 ID:neIyN9EP
---------------------------

最初のオアシスで馬に水と飼葉を与え、つかの間の休息を取った二人が二つ目のオアシスを目指す。
「ジンは、私が子供の頃…父上がはるばる北方のエフタルの民から仔馬を手に入れ、私に与えてくださったものです。以後、私がずっと世話をして、まるで兄弟のように育ってきました」
戦友のたてがみを撫でながら、
「…さあ、着きましたよ」
見渡す限り砂ばかりだった景色に、ぽつんと現れた次のオアシスの影へと向かう。

点在する小さなオアシスの中でも、ひときわ栄えたオアシスの町、アルサラーム。
ジンを連れて、小さいながらもにぎやかな市場を歩く。
「少しの食料と…それから、あなたのために陽をさえぎる物が必要ですね…しかし、私の少ない手持ちで足りればいいのだが」
クルスが衣装を売る露天商の前で立ち止まる。
「お客様、安くしておきますよ!これなどきっと、美しいあなた様にぴったりでしょう…」
髭面の商人はもみ手をして愛想笑いをすると、最も高価そうな刺繍のマントを取り上げ、マルレンに差し出して見せた。
マルレンは腕にたくさんはめてある金の輪を一つはずし、商人に差し出すと、
「…ではこれを。クルス様、身の回りに少しあったお荷物や金子は、殆ど置いてこられたのでしょう?…これ以上は、ビタ一文出しませんわ。あと…そこにある塩漬け肉と、固パン、オレンジと木の実も少し」
苦笑して降参のポーズをする商人から、マルレンがマントを受け取ってはおる。

「ずいぶん、交渉上手なのですね…。王宮を出たことのない侍女だと思っていたから…意外でした」
驚くクルスに、マルレンが青い瞳を輝かせながら言う。
「ふふ、驚かれましたか?…私は、アッシュールの下町の育ちなのです。市場で値切るのは得意中の得意ですわ」
596砂漠の薔薇:04/11/28 02:21:42 ID:neIyN9EP
---------------------------------------------

「スライマーン師!」
みすぼらしい土壁の家のわきの木にジンの手綱を結びつけながら、クルスがその家の主を呼んだ。
「先生、クルスです!」
入り口の麻布をめくって、身長よりも高い杖をついた老人がよぼよぼと現れる。
「おお、クルス、久しいな、しばらく見んうちに…おお、よしよし…ジンも元気そうじゃな」
「…スライマーン師、お久しぶりです…実は少しご相談したいことが」

台所の他は二間だけしかない老師の家で、マルレンの作った夕食を囲みつつ三人が話し込む。
「…ふうーむ…そんなことが…」
もぐもぐと口を動かしつつ、熱心にクルスの話に聞き入る。
「王室付きの家庭教師として、私にその比類なき知識を惜しげもなく与えてくださった、スライマーン様ならこの件に関しても何かご存知なのではと思いまして…」
塩漬け肉のスープに、固パンを浸して口に放り込みながら、
「…魔道に関しては、わしも詳しいことはよく知らん…が、今、何よりもまず先に考えなければならない事は、お前とマルレン嬢の安全じゃな」
老師がマルレンを見やる。
「…クルス様と、私の…?」
「マルレン、アッシュール王は人であって人ではない。魔道の力を誇示し、専横搾取の振る舞いを欲しいままにしている。
それは城にいたお前が一番よく知っておろう。つまりそれはどういうことか?…目の前にいなくとも、超常の力でお前たちをひとひねりにできると言うことじゃ」
マルレンが息を呑む。
597砂漠の薔薇:04/11/28 02:23:26 ID:neIyN9EP
「ただ、今この時点で王が何もしてきていないということは…あちらのほうでも何か考えているのかも知れんな」
こともなげに言いながら、自分の器を下げて台所の水がめのほうへ行く。
「いいがかりをつけてマルジャームに攻め込むにしても、口実ぐらいはいるじゃろうしの…ふむ、あの高慢な王のことじゃ、お前が戻ってくるのを待っているかも知れんぞ、案外と」
空の器に水を満たしてごくごくと飲む。
「王の居室のはるか奥、誰も入ったことのない地下の祭壇に、魔道の力を増幅する宝珠があるらしい。
それを盗みに入り、命を落とした向こう見ずな盗賊もかつていたという話だが…本当なのかも知れんな。全力でお前を倒すため、城に来るのを待っているのだろう。何、やろうと思えばいつでもできるはずじゃからな、たった今、この瞬間であろうとな」
クルスがごくりと唾を飲む。
「…相手が待ってくれるのなら、国に戻って力を蓄え、もう一度出直してはどうじゃな?…まあわしが言わずとも、お前はそうするつもりだったのじゃろうがの」
クルスが老師の目をみつめてにこりとした。
「…ええ」
「ああ、久しぶりの美味い食事で眠くなったわい…狭い所じゃが…二人とも、わしの部屋の隣りの間で寝るといい」
身体をぼりぼりとかきながら、
「…困ったらまたいつでもくるがええぞ、クルス」
微笑むクルスに、背中越しに片手を振ってみせ、老人が奥の間へ消える。
598砂漠の薔薇:04/11/28 02:24:25 ID:neIyN9EP
 がらんとした土壁の部屋、粗末な敷物の上に敷布を一枚だけかけて、二人は寄り添うように休む。
「…アッシュール王が魔道の力をお持ちなのは知っていましたが…そのようにまで恐ろしい方だとは」
おびえるマルレンにクルスが問う。
「…あなたは、なぜ王宮の侍女に…?アッシュールのお生まれなのですか?」
「…100年以上も前、アッシュール王都の中心地区に、ルマームという富裕な商人の家があったそうです。
今は荒れ果てていますが、残された屋敷からも、当時の栄華が容易にしのばれるほどの、それはそれは大きなお屋敷です。
私もそのお邸をこっそりと見に行ったことがありますが…。
16年前、赤ん坊だった私が、その門前に捨てられて泣いていたと、育ての親が話してくれました。
昔、その商家にいた美しいご令嬢の肖像画が今でもどこかの貴族の家に残っているそうで、養父母がその方にちなんで私に名をつけました。
16になったので、人のくちききで王城に仕事を得、国外の貴人をお迎えする役目を言いつかり、お仕えいたしておりました」
クルスをじっと見つめ、言う。
「そこであなたにお会いしたのです…あなたはとても…なつかしい感じがします…とても不思議なことですが」
599砂漠の薔薇:04/11/28 02:26:53 ID:neIyN9EP
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砂漠の要塞都市、マルジャームの城門を抜け、白馬が王城に入る。
「クルス様、心配しましたぞ、どういうわけか部下も帰されておひとりで」
「突然アッシュール王に目通りを願うなどと言い出されて」
どやどやとクルスを囲む大臣や部下たちが次々と大広間へ出てくる。
「…皆すまなかった、不在中世話をかけたな」
軍の中尉、平民の出ながらクルスの腹心の部下、イスマイールも出てくる。
「…クルス様、心配いたしましたぞ」
「詳しい話は後だ…こちらはアッシュールの王城で仕えていられたマルレン様だ…しばらく滞在するのでご不自由のないようにお世話してさしあげてくれ」
それだけ言い残すと、クルスの自室にマルレンを連れて行く。

「王にこちらの意図がばれてしまった今、謁見を装ってうかつに王都に近づくこともままならなくなりました…ここは少し休み、装備を整え、今後の対策を練りたいと思います。
老師の話が本当なら…王都の図書館ほどたいしたものは揃っていませんが、城の書庫でもう少し、魔王についても調べ直さねばなりませんし」
マルレンの手を取り、
「あなたにとっても、アッシュールよりわが国のほうが安全だ。お好きなだけ滞在するといい。寝室を用意させますから」
笑いながらそう言った。
600砂漠の薔薇:04/11/28 02:27:46 ID:neIyN9EP
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「クルス、書庫にばかりこもっていないで少し出かけないか、そちらのお嬢さんも」

白い肌につややかな黒い髪の青年が書庫の入り口に立って、調べ物をしていたクルスとマルレンに声をかける。
「イズディハール兄上様…不在中は大変ご心配をおかけしました…が、今はそれどころでは」
「まあ、いいからいいから…気分転換になるぞ。俺の友人と、イスマイールも連れて行こう」

むりやり連れ出されるようにして出かけた城下のバザール。
蛇使いや占い師、香油売り、絹のヴェールやじゅうたんを所狭しと並べた商人、羊肉の串焼きの屋台、夕刻まで商売人と客でごったがえす市場を楽しくひやかしつつ、通り過ぎる。
「…兄上、もう暗くなってきましたね」
「クルス、面白いところへ連れて行ってやろう」
「…これからですか?」
上機嫌のイズディハールに連れられるまま、一行は市場のはずれにある建物の、石の階段を降りた地下室に入っていく。
「兄上の馴染みの店ですか、私は初めてですね」
「踊りを見せて、食事と酒を出す店だ…さあさあ、アッシュールのお嬢さんも一度見ておくといい…お、丁度、見せ場になったみたいだぞ」

たいまつの灯りが神秘的に照らす舞台、前座の踊り子たちが退場すると、殆ど半裸のきらびやかな衣装と、宝石で飾り立てた主役の踊り子が、舞台の中央へ進み出る。
601砂漠の薔薇:04/11/28 02:28:09 ID:neIyN9EP
「あれが俺のひいきの踊り子、辺境とは言えマルジャームの城下一の踊り子、ジャスミンだ。どうだきれいだろう。俺はジャスミンのためなら多額の祝儀も全く惜しくはないのだ」
こころもち顎を上げて得意げな兄に、クルスが答える。
「…なるほどたしかに、大変な美人ですね」
(美人…?そりゃあ私は、美人ってタイプじゃないけど)
マルレンは、どうして自分がムッとしているのかわからない。

ジャスミンが客席のほうを向いて、どんな男も殺さずにはおかない妖艶な笑みをなげかける。
ヴェールをなびかせ、手足の金の輪と鈴を鳴らして思わせぶりにゆっくり踊りながら、一歩一歩客席のほうに近づいてくる。
「ここの踊り子は、その夜一番気に入った客のところに降りて来てくれるそうだぜ」
イズディハールの友人、貴族の子弟のにやけた青年が面白そうに言う。
やがて踊り子はクルスの前に跪き、投げキッスをして、流し目で見上げる。
「初めてお見かけしますわ、お美しく、りりしいお方…あなた様の高貴なお名前を、どうかこの踊り子めにお教え下さいませ…」
「…いや、私は…」
手を取って口づけされながら、少し顔を赤らめてはにかんだように横を向くクルス。
怒る兄の横で、ぷいと横を向き、自分がますます腹を立てているのに気がつくマルレン。
(…どうして、こんなに怒ってるんだろう、私…?)
602砂漠の薔薇:04/11/28 02:28:45 ID:neIyN9EP
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ある夜、小さなランプを下げたクルスとマルレンが、城から少し離れた森の中、小さな泉のそばまで散策する。
「少し、話しておきたいことがありまして…昨夜はよくお休みになれましたか?あれでも貴賓用の寝室なのですが…武骨で小さな城だとお思いでしょう、アッシュールの絢爛たる王城に較べれば。戦さのことばかり考えて作られてありますからね」クルスが笑う。
「…いえ…とても居心地のいいお城ですわ。皆様とてもよくして下さって…」
マルレンが目を伏せた。
「…私がなぜ、そのアッシュールに行ったかをまだお話していませんでしたね」

「私にはどうも、先祖や子孫の記憶や預言を夢で見るという不思議な力があるようです。
アッシュールの城で、ナツメヤシの話をしたことを覚えていますか?」
クルスがぽつりぽつりと話し始める。

小さい頃から夢に出てくる剣士がいる。男か女かわからないが、自分と同じ色合いの、灰色の髪を褐色の肌にまとわせて雄々しく立つその美丈夫は、自分にペルシャの王都にゆき、魔王を倒せと言う。
いつもよく見る単なる夢というには、あまりにも鮮明で繰り返し繰り返し、それこそ剣士の一字一句がぬきがたく心に刻まれるほど、小さな頃から繰り返し繰り返し見た不思議な夢だ。
父や兄、その頃はまだ元気だった母にも話したが、誰もそんな夢は見たことがないし、その剣士に心当たりもないと言う。
マルレンの小さな顔を見下ろす。
「わが国に伝わる剣で、魔道の力で砂漠を畏怖させ続けているあの強大な王を倒せると、その剣士は言うのです」

「…世の中には、不思議なことがたくさん、本当に存在するといいますが」
マルレンはクルスの顔を下から眺めながらじっと聞いている。
「その夢も、本当かも知れぬという永年の思いがどうしても抑えられなくなって、私はあなたの国に行ったのです…もしかしたら、ただの夢ではなく、本当なのかも知れないと…おかしいですか?」
一生懸命首を横に振るマルレンに微笑みかけ、言葉を継ぐ。
603砂漠の薔薇:04/11/28 02:29:59 ID:neIyN9EP
 わが国も、アイラ様以前は、武力にすぐれた強国で、砂漠の美しき薔薇マルジャームとも長くうたわれたそうだ。
伝説の老賢者率いる盗賊団による再建以降、マルジャームは、貧しい商人と盗賊からなる砂漠の小国家だった。歴代の王の働きもあり、辺境ながら、今はそこそこの規模の国となったが。
自分には国を豊かにし、民の生活を餓えや外敵から義務がある。
いつまでもアッシュールに押さえつけられてびくびくしている国ばかりでは困るのだ。

しかしこの通り、見渡す限り、なつめやしと砂塵ばかりの世界だ…肥沃な土地が広がっているわけでもなく、
例え手足を切られる重罰があろうとも、民は餓えれば盗賊になる。それは致し方のないことだ。
しかし、これからはそれではだめだ。
 商人は、おのれの知恵と足を使って世界中をまたにかけ、渡り歩く。
ならば、これからは教育も必要だ。産業を興し、学校を作り、農地を拓き…。
604砂漠の薔薇:04/11/28 02:30:41 ID:neIyN9EP
「もしかすると、一時だけかもしれない、はかない試みかも知れないが…私はやってみたいのです。
民は…剣だけではなく、知によっても幸福を守れると信じています。
私は、魔道という力を使って、民を押さえ付け、搾取しているようでいながら、実は民におびえ、民をさげすみつつ治世を…それを治世と呼べるのならですが…行うアッシュール王が許せないのです。
わが国も、近頃は武力を以って近隣を次々と勢力下に収めていますが…それだけでは、私は、あの王となんら変わりがなくなってしまう。それだけではだめなのです。
辺境の小国の一皇女がと、世は嗤うかも知れませんが…それでも私はやってみたいのです。
…万一私が魔王と刺し違えるようなことがあっても…幸い私には、兄もおりますし、国のことは心配ありませんから。
…しかし、本当だったのですね…シェラ=マルジャーン…かのアッシュールの王、いや、魔王の告げた名が、私の夢の中に出てくる彼…いや彼女の…アイラ様が語り残された名、私のご先祖さまか…
私は、アイラ様が彼女を呼んだ名にちなんで父に名付けられたそうです…ファルカット。
そして、アイラ様は、もしもマルジャームの血を色濃く引く者が生まれたら、クルスと名付けるようにとも言い残されています。理由は残されていないのですが…」

 夢のように静かな泉のほとりで、二人が静かに考え込む。
ランプを消した静かな森の湖面に、砂漠の月と星々が明るい光をなげかけている。
605砂漠の薔薇:04/11/28 02:31:08 ID:neIyN9EP
「…それに、…魔王の話だけではなく…剣士シェラはこうも言ったのです」
 思わずどきっとしたマルレンの小さい肩にふいに手をかけて、
「私の半身…かつてその剣士の半身だった者が、魔王の城にいて、長いこと私を待っていると」
秀でた額、りりしい眉、吸い込まれそうなほど澄んだクルスの瞳が褐色の輝きをたたえてマルレンを見つめる。
「私が助けに行くのをずっと待っているのだと」
マルレンの胸の鼓動が早鐘のように鳴り、止まらない。
「あなたなのですね…私の運命の相手…あなたこそが、まるで砂漠の薔薇のようだ」
マルレンの肩に手をやり、
「…しかしあなたまで、このようなことに巻き込んでしまって…二人とも、もはや明日さえわからない日々…しかし私は、それでもあなたを」
「…いいえ、これが、運命だったのです。あなたとわたくしの…」
そっと目をつぶるマルレン。
砂漠の泉のほとりに咲いた、小さな薔薇の花びらのような唇をゆっくり吸い、長いこと重ね合う。
606砂漠の薔薇:04/11/28 02:31:33 ID:neIyN9EP
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「…ああっ…」
飾り気のないクルスの自室、ベッドの上。
ベッド脇の小さな灯りが、裸のクルスとマルレンを照らし出す。
「…マルレン…」
褐色の引き締まった身体がマルレンの上で動くたび、灰色の長い髪がさらさらと揺れる。
長い指がゆっくりと、マルレンの体内をさぐってゆく。マルレンの睫毛と青い瞳に涙の露がたまり始める。
「…もう痛くはないでしょう、初めての夜ほどには…」
動きにつれて揺れる豊かな乳房に口づけながら問う。
「こんなに濡れているし」
「…あ、…あ…クルス様…」
親指で小さな真珠粒に触れながら、壁の内側を何度も往復すると、マルレンは細い体をいっぱいに反らし、ぎゅうと目をつぶってふるえた。
「ああっ」
シーツの上を長い黒髪がうねる。
白い腕がクルスの砂色の背中を求めてはいまわり、金の腕輪がシャラシャラと鳴る。
「…あぁっ…はぁ、はぁ、はぁっ…あ、あなたにも、触れたいの…クルス様、どうかあなたに、触れさせて…」
息も絶え絶えに、涙のたまった瞳でマルレンがやっとのことでそれだけ言う。
表情も変えずに、マルレンを見下ろすクルスが答える。
「…いいえ、だめです…もっともっと、あなたを狂わせてから…」
「…あ…クルス様…あ…ああぁっ…ん!」
巧妙な指の動きに再びわずかな技巧を加えると、マルレンの喘ぎ声と、波のように襲いくる快感をこらえる涙がますます大きくあふれ出した。
607砂漠の薔薇:04/11/28 02:34:03 ID:neIyN9EP
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朝からの調べ物に倦んだクルスがマルレンと共に中庭から城門のほうへと歩いていると、頭上からいきなり聞き慣れた声が響く。

「クルス!」
ふと見上げると、門の上の城壁に兄が腰に長剣をさげ、マントをひるがえして立っている。
口を開けて見上げるクルスと、不安そうに見守るマルレン。
「…この国の王位継承権は、今夜をもってこの兄がいただく!…いやだというなら…」
後ろを向いて指をパチンと鳴らす。
「実力行使だ!」
にやりと笑ってみせる兄の後ろから、高価そうな鎧と剣で身を固めたにわか作りのイズディハール軍が現れる。

半開きに開いたクルスの口が驚きの形に変わる。
「バカな、兄上、…今何とおっしゃられた…王位継承の件は父王がお決めになったこと。その決定にそむくことは父上にそむくことだとおわかりか」
いらだちを隠さずに妹を見下ろすイズディハール皇子。
「いつもお前ばかりだ、俺は以前から思っていた、父上も、家老どもも、兵士たちも…、それに先夜の、ジャスミンまで…俺の周りの女はみんな昔から」
「兄上様にはお優しい母上様がおられるではないか…公式行事の時にしかお目にかからないが、母を無くしたこの私にもいつも優しく接してくださる…。
兄上がこのようなことをなされたと知ったら、この世で兄上のことを一番大切に思っておられる母君様がどれほど悲しまれることか」
「…ええい、うるさい、うるさい!とにかく俺は決めたのだ。…国を滅ばせぬためと、能力と見込みのある者に代々継がせるなどと言って…とつくにでは、年齢が上の者や男子が国を継ぐ慣わしが多いと言うではないか。
さすれば、俺が王位を継ぐのが道理と言うものではないか?…確かに、俺はお前のようなみごとな灰色の髪は持たないが…実力でもお前などに引けはとらんつもりだぞ、クルス。俺がお前に勝ってみせれば、父上もお考えを改めてくださるだろう。
いつも我が物顔で王軍を統率しているが、その頼みの精鋭部隊もなしで、その娘を連れて、この兄に勝てるかな?」
かかれ、生け捕りにせよ、のイズディハールの手振りと掛け声に続いて、城門の脇へ続く石の階段を総勢50名ほどの兵士たちがなだれ降りてくる。
608砂漠の薔薇:04/11/28 02:35:01 ID:neIyN9EP
 いくらクルスでもこの体勢ではいかにも不利だ。それに、まずはマルレンを守らなければならない。
反射的にもと来た方へマルレンの手をひっぱり駆け出すと、軽装で身軽なこともあって追っ手から見えぬ中庭まで逃げ込むことが出来た。
と、茂みの中から「クルスさま、こっちです!」と声がする。

イズディハールの侍女、マリアムが二人を中庭から城内の家老の居宅へと導く。
「クルス様…イズディハール様は、本当はお優しい方なのです。本心からクルス様を害そうと、あのようなことをなさる方では…」
「…わかってる、ありがとう…あなたのような優しい人がいつも側にいることに、兄上もいずれきっと気がつくことだろう、マリアム。兄上を頼むよ」
侍女は少し赤くなる。
609砂漠の薔薇:04/11/28 02:37:25 ID:neIyN9EP
 侍女に導かれ、家老の居宅に入ると、後ろからイスマイールが息を切らせて駆け込んできた。
「…クルス様、お探し致ししましたぞ。今、イズディハール様の軍は、城中外をしらみつぶしにクルス様とマルレン様を探し回っております。わたくしがもっと早く気付いていれば…申し訳ございません。
イズディハール様の手下の貴族の子弟たち以外は、言うまでもなくわが王軍は全てクルス様のお味方でございます。
…さっそく全軍に召集をかけ、兄上様を討たれますか?赤子の手をひねるよりたやすいことですが」
無論クルスがそうしろと言うものと期待顔で立って待っているイスマイールに、ぼんやりとろうそくの炎を見つめていたクルスが、そこから視点を全く移さずに答える。
「…兄上とその一味はすぐに父上に鎮圧される。悪くても禁固半年ぐらいのものだろう。だから放っておいてもよいが…」
家老の大理石の机から羊皮紙と鵞鳥の羽ペンを取り、何やら書き付け、最後にサインをすると、イスマイールに手渡した。
「それに、私が姿を現さなければ、兄上にはどのみち何もできないだろうからな。父上に、兄上に対する寛大な処置をお願い申し上げた書簡だ」
イスマイールが神妙な顔をして一礼し、丸く巻いた書状を懐におさめた。

「…姫様は、昔からおやさしゅうございますな、そう言われると思いましたぞ」
白い髭を胸まで伸ばした家老がぽつりとそうつぶやいた。
イスマイールが驚いて家老のほうを振り返り、怒ったような表情で少し顔を赤くする。

暖かく晴れた春の日、泉のほとりで無邪気に遊ぶ王子と姫を微笑みながら見守るマルジャームの二人の王妃。
剣の鞘でチャンバラをするイズディハールとクルス、ナツメヤシの木に登ろうとして兄の上に落ちるクルス、転げ回ってはしゃぐ二人。

「…あの頃は…まだ母上様も……」
610砂漠の薔薇:04/11/28 02:38:15 ID:neIyN9EP
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「…つい、昔のことを思い出してしまったな…イスマイール、もうひとつ頼まれてくれないか」
薄暗い部屋の隅の椅子に座って静かに聞いていたイスマイールがふと顔を上げる。
「はい」

「今、この国のみならず、砂漠の平安が一人の魔王により永年おびやかされている。
周辺にちらばる弱小国では、まともに軍隊を出して立ち向かったとて、どうなるものでもない。
それに相手には魔道という恐ろしい武器がある。無謀なようだが、この方法しかないのだ。丁度いい、兄上とのもめごとも避けられる。このまま放っておいて、父上や母上、兄上…それに、国の民にまで被害が及んではならぬ」

「金子と、衣類と食べ物を少し…そして砂漠では何よりも大切な、水」
イスマイールはこくりとうなずいた。
「それから…私の居室にある、水晶の留め玉のついた銀の剣」

マルレンを振り向いて言う。
「マルレンは…」
「ここよりは、老賢者様のところが安全でしょう」
イスマイールが助言する。
「…ええ、それに、城の内部のことも私がお教えしておかないといけません」
マルレンがクルスの顔を見上げる。
611砂漠の薔薇:04/11/28 02:38:43 ID:neIyN9EP
「わかりました。今夜はこちらでお泊りになり、明朝早く、兄上様が動き出さないうちにご出立なさいませ」
家老がうながす。
「あとは、私の娘が姫様がたの寝所のお支度をいたしますゆえ、安心してお休みなされませ」
家老が一礼して下がると、色鮮やかな絹の衣装を身に着けた家老の娘が現れる。
「クルス様」
白い肌に褐色の長い髪が映える派手な美女がクルスの手を取り、寝室に案内する。
「さあクルスさま…狭い所ですが、こちらです。そちらのお嬢様も、こちらへ、夜着もご用意してございますゆえ」
「サミーラ、ありがとう…ひさしぶりだね」
サミーラと呼ばれた美少女は、クルスをなまめかしくちらりと見上げて、
「…今度、私の部屋にすごろく遊びをしにおいでなすってください…それとも外国の珍しい絵巻物を眺めるのがよろしいかしら?…遅くなったら、泊まっていってくださってもよろしいのですよ…」
ほほをそめていそいそと着替えを手伝うサミーラとクルスを、一人で着替えながら横目で見つめるマルレン。
「…ふーん…」
612砂漠の薔薇:04/11/28 02:40:33 ID:neIyN9EP
「…お美しい方ですね」
大のおとなが優に三人は横たわれる、客間の天蓋付きベッドに入ると、マルレンがそうつぶやく。
「…ん?」
楽な夜着に着替えたクルスが頭の下に両腕を組んで上を見上げたまま答える。
「…ええ、サミーラ、私と2つ違い、16なのですけれど、しばらくみないうちにきれいになりました。私も、最近父上の補佐で忙しくなって」
思わずぷうとふくれっつらをするマルレン。
「私と同い年ね…それに彼女、あなたのことがとてもお好きなようですし」
マルレンの口調にはじめて気付いたクルスが、おもしろそうな顔をしてそちらに向き直り、マルレンを腕に抱いた。
「ふふ、やきもちを焼いているのですか?」
にこにこしながらぎゅうと抱きしめる。
「サミーラは妹みたいなものだから…昔からおませで美人だから、物語で読んだ恋愛を自分も早くしてみたいと、恋を夢見ているのですよ」
マルレンの額に顔を寄せながら、
「はしかみたいにね」
「…クルス様も、そんな恋をしたことがあるのですか?」
「…私ですか?
私はいつも、剣術や軍略、語学や数学、商学の勉強なんかが忙しくて…いえ、それはもちろん、大人の恋のまねごとも、少しは…でも、それより私は、小さい頃から夢の中の剣士の、自分に何かをしろと訴えかけるような眼差しが、何よりもとても気になっていたから…」

少し落ち着いた表情のマルレンが、クルスの腕の中で考え深げに問う。
「…私やあなたの、今のこの恋心も、はしかみたいにいつか消えてしまうとお思いですか、クルス様…?」
しばらく黙っていたクルスが、マルレンを再びぎゅうと抱きしめる。
「…思いません。私にはそうは思えないのです…不思議なことですが。あなたにも、運命だと、もうわかっているのでしょう?」
いとおしげに見つめるクルスに、抜け目ないマルレンが訊く。
「…ええ…私もそう思います…不思議ですね…でも、ご家老のお嬢様は妹みたいだとおっしゃるけど…あの美人の踊り子さんは?」
じいっと見上げるマルレンにどぎまぎしたクルスが、
「…さ、さあ…彼女のことは私はよく知りませんよ…明日は早いから、私の腕の中で安心してもうお休みなさい」
ベッド脇のろうそくをあわてて吹き消す。
613砂漠の薔薇:04/11/28 02:41:08 ID:neIyN9EP
 出立の朝、家老と家老の娘、家老の家臣が居宅玄関にて密かに二人を見送る。
「私に万一のことがあったら…父上と母上をよろしく頼む、きっと心配なさって止めるだろうし、自分で始めたことの始末は自分で付けたいので黙って行く」
「姫様に万一のことなど…ございません。私は信じておりますぞ。姫様は、何かをやり始めたら必ず最後までやり遂げる性格のお方。わたくしが一番よく存じております。兄上様のこともおまかせくださりませ」
家老にこく、とうなずくと、マルレンに、腰から優美な作りの金鞘の剣をはずして手渡した。
「亡くなった母の物ですが…老賢者の家のあるオアシスまでの、道中の用心に、身に付けておいて下さい。戦闘用ではないですが、母をしのんで、安全な城内や城下ではいつもこの剣を下げているのです。護身用ぐらいにはなるでしょう」
「あなたと一緒なら…きっと何の心配もいりませんわ」
色とりどりの宝石で飾られた宝剣を受け取りながら、マルレンがそう言った。

手綱をひいたイスマイールが小声で告げる。
「クルス様、ジンはこちらに…」
「ありがとう、イスマイール…行ってくる、皆も…さあ、ジン!」
マルレンを乗せ、ひらりと飛び乗ると北を目指していっさんに駆け出した。
614砂漠の薔薇:04/11/28 02:41:34 ID:neIyN9EP
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次の日の朝、アルサラーム、老賢者の住居前、馬上のクルスが見送りに出たマルレンに言う。
「マルレン、昨夜、スライマーン師にあなたのことはお願いしてありますから…あとのことは」
「…クルス様は、私を置いてはいかれませんわ」
マルレンが不敵に宣言する。
「…昨夜あなたに教えた城の見取り図は…嘘よ。私がいなければ、王の寝室はおわかりにならないでしょう?」
それを聞いたクルスの表情がふとくもる。
「…いいえ…あなたが来ると迷惑だというのではなくて…自分のほかにあなたまで守りきれるかどうか、それが心配なのです」
「きっと、足手まといにはなりませんわ…あなたと一緒に行きたいの…」
あきらめたように笑い、ため息をついてマルレンをジンの上にふわりと引き上げる。
615砂漠の薔薇:04/11/28 02:42:10 ID:neIyN9EP
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マルレンが手引きする。
「こっちよ、ここから入れるわ」
夕刻の王都、アッシュール城のはずれからしのび込む。
「この小部屋で夜を待ちましょう…いつもは、誰もこない部屋なのですね?」
マルレンがうなずく。
「夜、王の休む寝室までの道順は、先ほどお教えした通りです」

次第に夕闇が王宮を濃く包み、窓からの月明かりだけが小部屋を照らす。

「…クルス様」
銀の剣を脇に抱えて壁際に腰をおろすクルスがマルレンのほうを振り返る。
しかしマルレンは、小窓の方向を驚いた表情で見つめている。

窓から真っ直ぐに差し込む満月の光の中、白い絹の衣をまとった黒髪の少女が幻のように現れ、二人に語りかける。
「ああ、クルス、あなたには、私の愛しいあのひと、シェラの面影があります…これをお持ちなさい。あなたも、あなたの愛する人も、魔王のたくらみなど退け、永遠に転生されるでしょう…」
差し出した細く白い両手には、この宇宙のシンボル、永遠に滅びぬウロボロスをかたどった指輪とペンダントがあった。
「…あなたは…」
クルスのかたわらで、幻を真っ直ぐに見つめたマルレンが言う。
「…私にはわかります。あなたが、ルマーム家のマルレン様ですね」
616砂漠の薔薇:04/11/28 02:42:32 ID:neIyN9EP

悲しげに微笑んでみせるマルレンの背後から、もう一つの影が近づく。
「クルス…私だ」
「シェラ様」
クルスと同じ肌、髪の色をした剣士が、夢で見たままの武装姿でクルスの前に立っている。
「…お前には、わが一族の重い使命を背負わせてしまった…すまなかったな。…その剣を」
クルスが差し出した三日月刀にシェラが触れると、シェラの手と、剣が白い光に包まれて輝いた。
「かつて私や私の父、そのまた先祖たちが望んだように…民が安心して暮らせる国を作ってくれ、お前なら出来るだろう」
新しい力を得て輝く剣をクルスに返しながら、
「そして心の清いお前なら…その剣の魔の力に負けて食われてしまうこともないやも知れん…そう思ってな」
獅子は、かつてと全く変わらない不敵な表情で、自嘲気味ににやりと笑ってみせる。
「魔王は必ず倒せる。…もし困ったら…お前が何者なのか、お前の名を思い出すがいい」

そしてまぼろしのなかで、ただ一人の恋人と手を取り合い、まぶしい光の彼方へと消え去っていく。
「マルレン、またやっと、お前に会えたな…」「ええ…行きましょう、私だけのシェラ…ふたりで…永遠に」
二人が最後に一瞬だけ、こちらを向いて微笑んだように、クルスには見えた。
617砂漠の薔薇:04/11/28 02:43:05 ID:neIyN9EP
---------------------------

「これはあなたに」
クルスはペンダントをマルレンにつけてやり、自らの指に指輪をはめ、剣をたずさえて立ち上がった。
「もう行かれるのですね…私も参ります」
「…マルレン、もうはやご気分が悪くなっているようですね。あなたは魔道の力にとても敏感だったでしょう。毒気に当てられてはいけません…ここにいて下さい」
思うように体の動かないマルレンがふしょうぶしょう、小部屋の椅子に戻って座る。
「気をつけて下さいましね…」
「ふふ、私の先祖が盗賊だったのをお忘れですか…ハーレムに忍び込むことぐらい、朝飯前です」
マルレンにそっと口づけをすると、身軽に部屋の外へと飛び出した。
618砂漠の薔薇:04/11/28 02:43:45 ID:neIyN9EP
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色とりどりの衣装、宝飾品と香料で我が身を飾り立てた幾多の美男美女が王を待つ後宮を目指し、敏捷に塀を越え、壁を登り、幾十もの豪華な広間を通り抜けると、謁見の間まで辿りついた。
「…この奥に、魔王の眠る、本拠地がある」
昼間は兵士や家来、派手な衣装をまとった侍女たちでにぎやかにさんざめく王の間にも、今は誰もいない。

…と、玉座の上、闇に光る二つの目が開き、ぎらりとクルスをにらみつけた。
「…来ると思っておったわ、待っておったぞ、盗賊めが」
玉座に座り、微動だにせぬイスハーク=ハーキム=アッシュール王の両脇のたいまつが、ひとりでに静かにともる。
「盗賊の末裔が、深夜王の寝所に何用だ?…後宮でわしにかしずく、幾千人もの美男美女をさらいに来たか?」
昼間の姿とは異なり、真っ赤な眼球と不気味に青く光る瞳、どす黒い皮膚から黒い爪を生やした怪物がクルスを見下ろしていた。

魔王の玉座からごうごうと吹き寄せてくる黒い風。
風に倒されぬように片膝をついて、顔だけは上を向いてキッとにらみつけるクルス。
いつもは穏やかな褐色の瞳が、獲物に対峙する獅子のように金色に輝く。

「…ほほう、温和で思慮深く理知的、やがては父以上の賢君になろうと専ら評判のマルジャームの姫が…そのような表情も見せることができるとはな」
魔王がクルスをからかう。
「…だが、あの闘士ほどの殺気はおまえには…」
619砂漠の薔薇:04/11/28 02:44:20 ID:neIyN9EP
「私にも、いくらか剣の腕におぼえがあるんだ…私をなめるんじゃない!」
立ち上がり、切っ先を魔王に向けてから、蛇の形の指輪をした指に力を込めて剣を構え直す。

「…お前に、借りを返してもらいに来たのさ」
微笑みながら、クルスも負けずに軽口を叩き返す。
「わが祖先、わが祖国…そして、圧制に苦しむ近隣の国々、たくさんの尊い命…。
お前にはたくさんの貸しがある。私はそもそも商人の国の出だからな。貸し倒れでは商人失格だ。
本来、どんな財宝を持ってしてもつぐないきれない尊いものだが…この際、借りはきっちりと返してもらう」
にっこり笑うと、
「貴様の命でな」

「そのへらず口がいつまで続くかな」
不遜に笑う魔王がふところから黒く光る宝珠を取り出す。
「我が魔道の力の前には、どんなに威勢のいい者もやがてはひれ伏してきた…それがわからぬ愚か者は…消え去るだけだ。お前のようにな」
魔道の珠を高く捧げる。
「放置せず、早めに潰しておくべきだったな、マルジャーン…お前などに使うのはもったいないが、この珠で魔道の力を増幅し、我に楯突くこうるさい盗賊の末裔を今度こそ全力で叩き潰してやろう」
620砂漠の薔薇:04/11/28 02:45:12 ID:neIyN9EP

 凄まじい音を立ててクルスの頭上から稲妻が二つ、三つと地に落ち、大広間が青い光に一瞬照らされる。
とっさに跳ね飛んでよけたクルスがさっきまで立っていた大理石の床がぶすぶすと焦げ、煙を立てている。
「…さすがに身が軽いな、盗賊…では、これではどうかな?」
魔王が前に突き出した黒い手のひらから、黒い波動がほとばしる。

「ぐっ」
三日月刀を身体の前に構え、波動をはね返すが、立っていられないほどの力で吹き飛ばされる。
「…つっ」
仰向けに倒れたクルスが頭に手をやると、額から垂れる血がべっとりと手のひらを濡らした。
立ち上がりかけたクルスを、黒いつぶてが襲い、ばらばらと床に落ちて火の粉のように燃える。

「…ふっ…威勢がいいのだけは認めてやろう…だが、お前はわしに近づき、その剣を振るうことすらできまいが…」
「…何…を、まだまだ…だ…このっ…」
かたわらの剣を求めて、右手で床を探る。

「クルス様!」
広大な王宮の長い廊下を、壁につかまりながらようよう王の間までたどりついたマルレンが叫ぶ。
「はっ」
額から血を流しながら、床にうつ伏せ朦朧とするクルスが声の方向を向いてつぶやく。
「馬鹿…マル…レン、…来る…な…、今の私には、お前を守るだけの余裕が…残ってない…」
「クルス様!これを!」
金の剣を高く放りあげる。
621砂漠の薔薇:04/11/28 02:45:51 ID:neIyN9EP

 宝剣を空中で捕まえたクルスが、シェラの最後の言葉を思い出す。
「魔王は必ず倒せる。…もし困ったら…お前が何者なのか、お前の名を思い出すがいい」
「…私の…名前」
三日月刀を柄をつかむと、立ち上がる。

「我が名は…クルス=ファルカット=マルジャーン」
金の鞘を片手ですらりと払い、
「エズムン=シムルグ=マルジャーンより続く、正統なマルジャームの戦士」

「わが祖先シェラ=マルジャーン…子供の頃より、わたくしの夢の中にいつも現れた美しくも雄々しい剣士、そしてその恋人、マルレン様…どうか私をお守りください…」
目を閉じて祈る。
「……母上様……そしてわたしの、マルレン………」

最後の力を振り絞って立ち上がり、銀色に輝く三日月刀と十字に重ね合わせ、構えると魔王の動きが鈍った。
「…ぐ…やめろ…苦しい」
黒い爪が魔物の喉をかきむしる。
「…どうしてわかった…今まで誰も…気付かなかった…のに」
622砂漠の薔薇:04/11/28 02:46:40 ID:neIyN9EP

 肩でようやく息をしつつ、吐き出すように言い放つ。
「貪欲な砂漠の怪物よ、人の世の幸せを、もうたらふく呑み込んだであろう?…お前の住処、地獄に消えるがよい」
そのまま剣の重さと共に両腕を振り下ろし、黒い珠ごと魔王の胴体に、力いっぱい十文字に斬り付けた。

「…ぐああぁっ…!」

 魔王のつんざくような絶叫とはうらはらに、クルスが斬り込んだ刀には驚くほど手ごたえがなかった。
黒い宝珠は四方に霧散し、無様に倒れた王の胴体にぱっくりと口を開いた十文字の傷から、黒い亡霊のような影が身もだえながら這い出してくる。
ぶすぶすと煙のようなものを出しながらゆっくり溶け、砂漠の朝日が差し込み始めた謁見の間の、大理石の床に黒いしみを作り、やがて消えた。

 朝日を受けて、全てを浄化し、金と銀に輝く剣を両手にさげたまま、血まみれのクルスがつぶやく。
「…ラ ガーリブ イッラッラー…(神の他に征服者は在らず)…そして、この私も…」

 そしてゆっくりと、
「マルレン」
彼女の恋人のほうに向き直った。
623砂漠の薔薇:04/11/28 02:49:50 ID:neIyN9EP
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 後年、クルス=ファルカット=マルジャーンは、父シャリーフ=ハイダル=マルジャーンV世の後を継ぎ、クルス=ファルカットT世として即位した。
魔物からその身を解放され魔道の力を失ったアッシュール王は王都をクルスに献上し、以後、アッシュールの都の宰相となる。
以後クルスは、マルジャームとアッシュールの両都市を、広大な領地をかかえるマルジャーム朝の王として治める。
武力と商才で砂漠じゅうを征し、民を豊かにしたマルジャーム王朝の長い歴史の幕開けとなる。
マルジャームの都は兄イズディハールが宰相を勤め、次代の王朝はその長子シェラザードが継ぐこととなる。
良政をしき、商業と産業をますます発展させ、のちに「商人の庇護王クルス」と称され、語り継がれた。
新たな隊商の道を開拓し、灌漑を進め、農業を奨励し、特にナツメヤシの栽培地を拡大させ、飢饉に備えた。
624砂漠の薔薇:04/11/28 02:50:29 ID:neIyN9EP
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 アッシュールの王宮、光あふれる庭園の中、ナツメヤシの木の下。
寄り添いながら佇む二つの影があった。
褐色の肌と灰色の髪、すらりとした武人らしい姿勢は変わらないが、老いたマルジャームの前王が優しい目で傍らの婦人に語りかける。
「…この木のことを言ったのを覚えていますか…?」
今年もたくさんの実をつけた木の幹をそっと撫でる指には、蛇をかたどった指輪がはめられている。
「…ええ、覚えていますわ…」
優しい色のドレスの胸に、同じ意匠のペンダントをつけた婦人が、穏やかな目で見返す。
「愛するあなたと二人で人生を送れて幸せでした…私の一生は、とても忘れられないものになったわ…クルス様」
「…私は、きっとあの日から、ここへ戻ってくることがわかっていたのでしょう…そう、他ならぬあなたと一緒に…私のマルレン…」
二人は静かに抱きしめ合った。

「…さあ、兄上と姫宮や孫たちが、大広間でお茶の準備をして待っています。あなたのお好きな甘い干しナツメヤシも用意してあるそうですよ。行きましょうか」
「やんちゃな末の姫様が、クルス様に剣のけいこをつけてもらうんだとはりきっていましたわ」
微笑み、手を取り合って、陽の差す庭園から、王宮の広間へと消えていった。



                            -Fin-
625名無しさん@ピンキー:04/11/28 02:54:04 ID:neIyN9EP
連投規制も受けず、載せられたようですね。
誰か第3弾を書いてくれないかな〜…読みたいんだけど。
626名無しさん@ピンキー:04/11/28 11:03:47 ID:QIAsNpea
>592-624
大作乙です。いまからゆっくり読むことにします。
627名無しさん@ピンキー:04/11/28 22:43:13 ID:D5yrczkx
>>592-624です。

ああ…間違いがあちこちある。
小さいのもあるし、ワードをコピペしてったら、なぜか行頭1字下げもめちゃくちゃ…。
あと(マルレンは1つ目のオアシスでマントを買うんじゃなかったのかw)ぼそっ…。
出来上がる前に誕生日に酔ってレスするから、急がなきゃいけない気分になって
急ぐと碌なことないな…。直したいYO。(TAT)
第三弾、腐男子氏か誰か書いてよ〜。(また、シェラたんタイプのワイルドヒロインもいいかも)

↓あと、自分で書いてて以下のAAを思い出したYO…w

兄に向かってその態度とは
いつから偉くなったんだ?
   (⌒\  .∧_∧
    \ ヽヽ( #´_ゝ`)
     (mJ     ⌒\
      ノ ∩   / /
     (  | .|∧_∧
  /\丿 .| .(    .)兄者待て!
 (___へ_ノ ゝ__ ノ ときに落ち着けって!
628無しさん@ピンキー:04/11/29 00:13:15 ID:IiP2MtSO
>>592-624
おつ。こ、こんな大作とは・・・
よっしゃ! 腐男子氏の方から読み直してきますわ!
629名無しさん@ピンキー:04/11/29 22:40:53 ID:P/7ATJ/t
なぁなぁちょっと聞いても良いか?
女同士でも子供って出来るんだっけ。
630名無しさん@ピンキー:04/11/30 00:38:47 ID:ijerQjfX
>>629
マウスかなんかを使った実験で卵子同士の接合による生殖は可能になっていたはず。
631名無しさん@ピンキー:04/11/30 21:00:59 ID:eduV6lx0
素でポインティングデバイスのボール同士を擦り合わせる図が
浮かんできたのはないしょだよ
632酸性温泉:04/11/30 21:38:46 ID:Cj0QKBvO
>490-503の続編です。>551-561の真紀子×多汰美バージョンになります。
これで通算八作目、一応これで真紀子×多汰美の純愛編の完結になります。
633トリコロ 真紀子×多汰美1/14:04/11/30 21:39:48 ID:Cj0QKBvO
『多汰美も、好きな人のこと、言いたくなったら言えばいい』
真紀子は私にこう言ってくれた。だから、私も伝えたい。あなたが好きだ、と。
けれど、言葉にするのは難しくて。照れくさいわけではない。口にした時点で自分の本当の
気持ちと言葉がかけ離れてしまうのが怖いから。どうすれば私の気持ちを真紀子に上手に伝え
られるのだろう。
――――ふと、多汰美はわが脚を見る。
634トリコロ 真紀子×多汰美2/14:04/11/30 21:40:24 ID:Cj0QKBvO
《KNOWING YOU IS KNOWING ME. -Side "Lemon Bomb"- 》

多汰美が「明日は晴れるみたいじゃけえ、一緒に走ってくれる?」と訊いてきた。私は取り
立てて用事もないから「ええよ」と返事をした。

おとといの日曜日に告白してからも、表面上は私たち二人に大きな変化はない。ぎくしゃくも
していないが、かといってべたべたもしていない。…正確には結構べたべたしたがる多汰美を
私がなんとかかわし続けている、ということなのだが。
昨日も、「また風邪引いたら嫌じゃけえ、一緒に寝てくれる?」と平気で訊いてきた。意識し
すぎなのかもしれないが、おとといに八重と景子が一緒の布団で寝ていると聞いて、布団が
温かいのがうらやましい、私らも一緒に寝たいと言い出して焦ったところだ。あのときの景子
の表情は思い出すだけでも腹立たしい。「なに焦ってんだか、このエロガッパが」とでも言い
たげに冷笑していたから。一応、自分は景子とは違って、多汰美に下心はない……はずだ。
たぶん。おそらく。私が多汰美を好きなのも、恋愛と言うよりは保護者気分の方が大きい気も
するし。
などと考え事をしているうちに、いつもの寝る時間になった。明日は祝日なのだからもう少し
夜更かししてもいいのだけれど、明日は久しぶりに運動するのだ。早めに休んだほうがいいと
判断して、部屋の電気を消す。隣の部屋の八重が景子と話をしている声を微かに聞きながら、
私は目を閉じた。
635トリコロ 真紀子×多汰美3/14:04/11/30 21:41:10 ID:Cj0QKBvO
翌朝。
「――――で! どのくらい走るんやっ!?」
玄関前で準備運動をしながら、多汰美に訊ねる。声に怒気が少しこもってしまっているのは、
多汰美が景子に余計なことを言ったからだ。また余計な誤解を招くようなことを言わなくても
いいのに、わざわざ「デートに行く」だなんて。
だいたい、この話には前段がある。さっきも景子と言い争いになったとき、「あとでデート
なんじゃけえ、こんなところで体力使ったらいけんよ。マキちー」と耳打ちされて私は凍り
付いてしまった。八つ当たりだとは分かっているけれど、ついつい声を荒らげてしまう。
「まさか、10kmマラソンとか言わんやろな!?」
多汰美が関節をほぐしながら、苦笑して答える。
「そんなことないよ。ついてくればいいんよ。だいたい二キロくらいかな」
「ゆっくり走ってくれや。元陸上部のもんと、同じペースでは走れんからな」
私は運動音痴ではないが、さすがに多汰美と同じペースで走れるとは思えない。これだけは念
押しをしておかないと、置いてけぼりを食うことになるだろう。
「うん。今日は走るだけが、目的じゃないけえね」
私が膝を曲げつつ多汰美を見上げると、今日はなんだかやけに彼女の笑顔が眩しい。今日は
抜けるような青空、天気がいいからそう見えるのだろう。気のせいだ。
「今日は珍しく、髪を縛っとるんじゃねえ」
「走るとき、邪魔になるからな。三つ編みにした。…たまに休みの日、そうしとるやろ」
「うん。そうじゃったね。じゃ、行こ」
話もそこそこに、多汰美は西の方へと走っていく。最初から置いていかれてはまずい。私は
急いで多汰美のあとについてゆく。
636トリコロ 真紀子×多汰美4/14:04/11/30 21:41:44 ID:Cj0QKBvO
タッ、タッ、タッ、タッと正確にリズムを刻みながら、模範的なストライド走法で多汰美は
駆けていく。本来ならば足音の間隔はもっと短いのだろうが、私のペースに合わせてくれて
いるのだろう。それほど脚力に自信のない私は、速めのピッチ走法で彼女の後についていく。
学校やいつも買い物に行くアーケードは家から東のほうにあるので、このへんは初めて通る。
いつも多汰美はこんなところを走っていたのか、と初めて知った。最初は近所の住宅街、そこ
を抜けて右に曲がると、小さな神社。車通りの少ない農道を抜けて、私たちは紅葉の目立って
きた山の中へと進んでいく。
「…ハァ、ハァ、なあ、多汰美ー!」
「…なにー?」
足音は徐々に私の耳から遠ざかり、気が付いたら多汰美は十五メートルほど先に進んでいた。
私は大声で彼女を呼び止める。
「ちょう、待ってくれ。いま…ハァ、ハァ、追いつくから」
私のほうを向いて軽くもも上げをしながら待っている彼女の元へと駆け急ぐ。やっぱり自分も
運動不足だった。太腿やふくらはぎがつっぱっているのをこらえて足を前に進める。
「二キロくらい…ハァ、ハァ、言うとったけど、まだあるんか? ごめん、ちょうきつなって
きた」
637トリコロ 真紀子×多汰美5/14:04/11/30 21:42:18 ID:Cj0QKBvO
つい弱音を吐くと、多汰美は足を止めた。
「ごめんね、マキちー。この坂を越えたところがゴールじゃったんよ。歩いていこ」
私が追いつくのを待って、二人で緩やかな坂道を上っていく。軽く足を押さえたり叩いたり
しながら坂を上りきると、鬱蒼と茂った木々の世界から一転、まばゆいくらいの光の束が私の
目に飛び込んできた。いや、よく見ると眼下には川が流れているのだ。光の束だと思ったのは
太陽光を水面が反射したものだと気付くのにやや時間がかかった。
「…こんなところが、あったんか……」
「うん。ここ、綺麗じゃろう?」
私たちが着いたのは、綺麗に整備された石畳の遊歩道。坂道から石段を数段降りたところが
入口になっている。最初に私の目に飛び込んできた光は、遊歩道沿いに定間隔で植えられた
桜の木の間から漏れたものだったから、余計眩しく感じたらしい。私は首にかけていたタオル
で汗を拭いながら、足を止めて遊歩道下の川を眺める。
「マキちー、あそこにベンチがあるから。しばらく休んでいこう。疲れたじゃろ?」
多汰美が指差した先には、オーク調に塗装された木製のベンチがあった。
638トリコロ 真紀子×多汰美6/14:04/11/30 21:42:52 ID:Cj0QKBvO
「私、何か飲み物でも買ってくるけえ、そこで待っとって」
多汰美に促され、私はベンチにどさりと腰掛けた。徐々に息を整えながら上を見上げると、雲
ひとつなく晴れ渡った空が広がっている。一面の青、青、青。まるで空を泳ぐ魚になったよう
な気持ちで、体に染み渡った疲労感に身を任せつつ、背もたれに体重を預ける。普段私は家で
読書したり音楽を聴いたりすることが多いから忘れがちだったが、空はこんなに鮮やかな青色
だったのだ。

ふと以前、多汰美が外で走るのは気持ちがいいよ、と言っていたので、それなら一度連れて
行ってくれと頼んだことがあったのを思い出した。昨日彼女が私を誘ったのは、そのことを
覚えていたからだろうか。鮮やかな空の青と、紅く色づいた木々を眺めながら、なるほど、
こんな所を走るのはさぞかし気持ちがいいだろう、とぼんやり考える。いつも一緒にいるから
なんでも相手のことを知っていると思っていたが、結局自分は多汰美のことをあまり知らない
のだ。まるで何年も前から一緒に過ごしてきたような気でいたが、知り合ってからまだ半年強
しか経っていない。不思議なものだ。いまでは多汰美や八重、景子がいない生活など、考え
られないのに。
639トリコロ 真紀子×多汰美7/14:04/11/30 21:43:29 ID:Cj0QKBvO
私は天に向けて真っ直ぐに腕を伸ばす。もちろん空なんて掴めないけれど。
「――――近いような、遠いような…。不思議なもんやな」
ぽつりとひとりごちると、視界にヘアピンで留められた髪が目に入る。多汰美が戻ってきて
くれた。
「ジュース買ってきたよ。烏龍茶がいい? スポーツドリンクがいい?」
「あ、じゃあ、その青い缶のくれるか?」
「はい」
多汰美に手渡されたスポーツドリンクを受け取って、その冷たい感覚を確かめるように缶を
もてあそぶ。多汰美は私の左側に座って烏龍茶のプルタブを開け、ゆっくりと飲み始めた。
「…何が不思議なん?」
いまの独り言を聞かれていたらしい。
「空のこと。多汰美が戻ってくるまで、ずっと見とったんや。青色って、距離感がつかめん色
なんやて」
「ふーん」
私も缶のプルタブを開け、乾いた喉を潤すようにゆっくりとドリンクを飲み下す。
――――空と多汰美は、似ている。すぐ近くにあるように見えるときもあるが、はっきり掴む
ことは不可能なところが。
「ここ、いいところじゃろ」
「せやな。こんなところがあるって知らなんだ。いつもここを走っとるんか?」
「時間があるときはね。たまに散歩の人がいるくらいで、お昼前のこんな時間じゃと、人が
少なくていいんよ。走っても人の邪魔にならんけえね」
たしかに、遊歩道を見回してみると、私たちのそばには誰もいない。三十メートルほど離れた
向こう岸には管理が行き届いた芝生が広がっていて、小学生の男の子たちがサッカーに興じて
いるのとは対照的だ。
640トリコロ 真紀子×多汰美8/14:04/11/30 21:44:10 ID:Cj0QKBvO
「今日は、マキちーと一緒にここに来たかったんよ」
「…うん、ええとこやな。ありがと。来てよかった」
「ここはねえ、」
飲み終わった缶を脇に置き、多汰美が立ち上がって数歩足を進める。足下の砂利が鳴る音だけ
が、わずかに響く。
「私の広島の実家の近くと似とるんよ、雰囲気が。じゃけえ、二人で来たかった」
ちょうど逆光で、多汰美の後ろ姿は輪郭がぼんやりと浮いている。眼鏡越しのせいか、やけに
光がちらついて見える。
「ここの生活も楽しいんじゃけどね、たまに寂しくなったときはここに来るんよ。…あ、八重
ちゃんやおばさんには言わんといてね」
「…ああ、言わんで」
私も時々、大阪が恋しくなるときがある。決していまの生活に不満があるわけではない。けれ
ど、誰にでも望郷の念はあるのだ。多汰美にもそれがあったって、何も不自然ではない。
「ここでなら、言えると思ったんよ」
「…何を」
「――――マキちー、好きじゃよ」
641トリコロ 真紀子×多汰美9/14:04/11/30 21:44:57 ID:Cj0QKBvO
どう答えていいか、分からなかった。いや、この言い方では正確ではない。多汰美の言葉を
認識した次の瞬間には、私は彼女の後ろ姿を抱きしめていたのだから。
「…マキちー?」
急に抱きすくめられて驚いたのだろう。小声でいまの抱擁の意味を問うように、多汰美が私の
名を呼ぶ。
「多汰美、どこにも行くな」
「行かんよ。私、どこにも行かんよ。だって、私の家はもうここじゃけえね」
そうではない。光に多汰美がかき消されるかと思って、私は怖くなった。心がはっきりと掴め
なくてもいいから、体の輪郭だけでも感じたかった。だから私は彼女を抱きしめる。
「多汰美、好きや。好きや――――」
視界が涙で滲む。人を好きになるということは、どういうことなのか。私は認識が甘かった。
一緒にいられれば嬉しいものだと思っていた。それも正しいけれど、それだけではないのだ。
「失う」という恐怖を知るということも、人を好きになるということなのだ。
『多汰美を失うのが恐ろしい』
背筋がぞくりとするほどの、恐怖。
このことを知ったいま、私は彼女に本気で恋をしていることを痛いほど自覚した。
642トリコロ 真紀子×多汰美10/14:04/11/30 21:45:33 ID:Cj0QKBvO
「マキちー」
腕が緊張で痺れて力が少し緩んだ隙に、多汰美は体を半回転させて私を抱き返す。
「あんなあ、私いつもマキちーのこと見とったんよ。気が付いたら、いつも目で追っとった。
最初はなんで女の子が好きなんじゃろ、って思ったんじゃけど…」
涙で視界が歪む。視覚で確認できない代わりに触覚で確認しなければ、不安が消えない。私は
多汰美を抱きしめ続ける。
「私、マキちーだから、好きなんよ。日曜日のマキちーの話、嬉しかった。いつもマキちーが
私を見ててくれるけえ、私は安心してここにおれるんよ」
いつも自分が多汰美や八重、景子を見守っているのだと思っていた。でも、違った。いや、私
も薄々気が付いていたのだ。自分も彼女に見守られていたことに。
「ああ、私もそうや。おでん作ったときな、…最初なんでも良かったんや。料理が上手くなれ
たらええって。八重ちゃんが煮物どうやって勧めてくれたんやけど、そのとき最初に浮かんだ
のがおでんやったんや。多汰美はおでんの卵、好きやからなあ……」
おでんの話の後、私の言葉はもう形を成さなくなった。
643トリコロ 真紀子×多汰美11/14:04/11/30 21:46:06 ID:Cj0QKBvO
「うん。好きじゃよ」
私の結ばれた髪を撫でながら、多汰美が答える。
「…たまごも好き。でも、おでんを作ってくれたマキちーは、もっと好き。今日はね、これが
言いたかったんよ」
多汰美の言葉と川の流れの音が、ゆるやかに私の体に流れ込んでくる。
「いつも私、マキちーに突っ込まれてばっかりじゃけえねえ…上手く言いたいこと言えてるか
伝わってるか分からんのじゃけど……。これでいい? 『私の好きな人』の答え」
「ああ、そんでええ……」
多汰美を失うのは怖い。けれど、恐れてばかりで彼女と一緒に過ごす時間を大切にしないのは
私の心をもっと痛めつける。だって、多汰美は誰よりも大切なのだから。
「…あのときの『続き』するか?」
多汰美は私の問い掛けに黙ってこくりとうなずいた。一度抱きしめていた腕を解き、タオルで
濡れた目を拭ってから、彼女の顔を正視する。
「――――多汰美、好きや。私も、どこにも行かんから。」
目を閉じる前に見た彼女の顔は、この遊歩道の鮮やかな紅葉のように赤く染まっていた。
私はもう一度多汰美を抱き、唇を重ねる。手から伝わる彼女の体温。唇から伝わる彼女のぬく
もり。二度目のキスは初めての勢いまかせの口移しとは違って、多汰美の輪郭がはっきりと
認識できた。本当に好きになれば、多汰美は空とは違って掴めるのだ。
644トリコロ 真紀子×多汰美12/14:04/11/30 21:46:42 ID:Cj0QKBvO
目がくらむほどの甘い口づけを終えて唇を離すと、正午を知らせるチャイムが向こう岸から
響いてきた。
「もう、昼なんやな。そろそろ帰らんと」
「うん」
「でも、もったいないなあ。なんか」
空を見上げて、私は呟いた。ここを離れると、いま二人で過ごした遊歩道での時間がなかった
ことになるようで、なんだか名残惜しかった。
「マキちー」
「…なんや?」
左手に多汰美の指先が触れる。
「急いで帰るのもったいないけえ、帰りは歩いて帰ろ」
「せやな」
私は指先の冷えてきた多汰美の手を握り、もと来た道を二人で歩いて帰っていった。
645トリコロ 真紀子×多汰美13/14:04/11/30 21:47:19 ID:Cj0QKBvO
その夜。
私は、枕と本を用意して多汰美の部屋に入った。多汰美がお風呂に入っている間、先に入浴を
済ませた私が布団に入って彼女を待つ。小説を二十頁ほど読み進めたころ、多汰美が階下から
戻ってきた。

「今日は、一緒に寝てくれるんじゃね」
「…今日だけやで。また風邪引かれたら困るからな」
視線は閉じたばかりの本に落としつつ、私は答える。幸い今日は景子は泊まっていないので、
からかわれる心配はない。
「にわには絶対言うなや。また、何を言い出すか分からんから」
「…うん。また朝みたいに喧嘩されたら困るけえね」
掛け布団を少しだけまくって、滑り込むようにして多汰美が入ってきた。
「やっぱり、あったかい。今日だけなんてもったいないんじゃけど、延長してくれん?」
「あかんて、今日だけ! なんもせんと済ませられる保証が出来んから!」
こんなのが毎日続いたら、私も八重に興奮して抱きついた景子のことをとやかく言えなくなっ
てしまう。近いうちに下心にあっさり負けてしまうのは、火を見るよりも明らかだ。
646トリコロ 真紀子×多汰美14/14:04/11/30 21:48:09 ID:Cj0QKBvO
「別にいいんよー。マキちーも年頃なんじゃけえ、狼になっても。いや、なってほしい」
「アホなこと言うな! あっこら、腕にまとわりつくな、多汰美!」
どこまで本気だか知らないが、抱き枕にくっつくように多汰美が私の腕にしがみついてくる。
ああ、いけない。このままでは「近いうち」どころか、いますぐにでも誘惑に負けてしまう。
そのくらい風呂上がりの石鹸の匂いと多汰美の胸の感触は、いまの私には甘いわなだ。
私はあわてて多汰美の腕を振りほどき、枕元の灯りの電源を落とす。
「えー、『続き』って布団の中でしかできんことのことかと思っとったんじゃけど、私」
「まだ早いわ、そんなん! …寝る。今日はもう、寝るんや。おやすみ!!」

まるでダイナマイトか爆弾のような少女。それが、私のいちばん大好きで、大切な女の子。
いまはまだ振り回されっぱなしだけれど、いつかは普通に付き合える日が来るのだろうか。
…無理かもしれない。いや、私を振り回さない多汰美なんて、有り得ないか。
―――そう思いつつも背中に感じる多汰美の体温に安心しながら、私は眠りの世界に落ちて
いった。

                                                  おしまい。
647酸性温泉:04/11/30 21:55:43 ID:Cj0QKBvO
真紀子さんがハイエナさんを襲う狼になる話はいつか書く予定です。
とりあえず、この前の八重×にわで空になったエロゲージを
満タンにしなくては。
648名無しさん@ピンキー:04/12/01 01:27:01 ID:QBYaLVz5
>>647
(*゚∀゚)=3 ムッハ-!!

激しくGJ!!
649名無しさん@ピンキー:04/12/01 02:17:58 ID:qWLv8Ioo
>>647 酸性温泉氏
激しくGJ!!AAでも貼りたいけど、携帯だからそれは止めとく。
よく考えたら、酸性温泉氏の書き出したいわば『第一話』からそんなに時間が経ってないんだね。
数週間から数カ月で距離縮んだなぁ、みんな…w

とにかくお疲れ様でした。
狼×ハイエナに期待します。
650名無しさん@ピンキー:04/12/01 02:26:19 ID:qWLv8Ioo
俺のLv、8かぁ…sto
651名無しさん@ピンキー:04/12/01 03:44:14 ID:Y0yMkNBH
>>酸性温泉氏
⊂⌒~⊃。Д。)⊃モウモエシニマシタ……
652酸性温泉:04/12/02 20:50:10 ID:RX6bjpv+
>648-651
ありがとうございます。自分の萌えツボは、振り回される人×振り回す人の
カップリングなんで、こういう話になりました。据え膳を食わない真紀子さんは
偉いと思います。

>649
設定としては第一話・二話は5/30、おでんの第三話は10/24、遊園地の第四話は
10/17、風邪引きの第五話は10/31、第六・八話は11/3、第七話は11/7です。
真紀子×多汰美は10日くらいでまとまってるんですね…さすがエロガッパ。
653名無しさん@ピンキー:04/12/03 23:39:16 ID:Y+ewjYwW
>>592-624です。
あのー、ちょっと無駄話してもいい?
割り込んだら悪いので待ってましたが、そろそろいいかな?、と。

>>629
かなりのあわてんぼうさんのようだが、シェラ編ではアイラが、クルス編では兄貴が、マルジャームの血を後世に引き継いでいます。
>>630さんもレスしてくれてますが、♀×♀での子孫は動物実験の段階では最近出来たらしいから、遠い未来の百合や薔薇カップルのスタイルはまた変わるかもね。
ツッコミ大歓迎。そういう議論はしていて楽しいし、勉強さしてもらいます。(単なる叩きはガッ)

辻褄合わせに非常に苦労したw ナツメヤシを過去形で語ってるのはマジで恨んだよw どうしろとアナタ…(T∀T)
(他の人だったらどうするかなー、とこれも興味あるんだが)
最初に城を出ないルートも考えたが濡れ場が無理ぽ。
はしりばしり、早口で要所だけまくしたてた感じで、もうちょっと脇道やぜい肉をつけてもよかったかなと思ったり、冗長なのよりは必要にして最少でよかったのかなとも思ったり…。
本当はこういうムダ話もだらだらとしたいんだけど腐男子氏はサイトの掲示板にも現れなさそうだしなー…。
ここじゃスレ違いだろうし、以前「適当に語るスレ」で感想書こうと思ったらスレが消えてるし。
(夏頃、あらすじを考えてからパソ故障、数ヵ月壊れたまま、最近2週間くらいで仕上げた)
アンハッピーエンド、片目の少年、などが(一読者の勝手な感想ながら)激しく無言でorzだったので(マジで落ち込んでいた…w)今回はこのようにまとめてみました。(砂の闘士パロと、爆裂天使スレで幾つか書いたヤシです)
魔王と対決シーンは頭の中でドラクエのバラモス戦BGMが鳴りました(もう、恥ずかしいったら…十字に構えるだってオオゥ)
凍てつく波動。

   あ、どうも、腐男子ですー。(゜ヮ゜)ノ
       │ ‖‖    ||||
       .__/\__
       \/ ̄ ̄\/
       /\__/\ オォオオォン!
        ̄ ̄\/ ̄ ̄
サバトマ!腐男子召還魔法!
654名無しさん@ピンキー:04/12/03 23:39:54 ID:Y+ewjYwW
楳図かずおの名作「イアラ」を思い出したり…。さなめー!イアラー!!!知ってる人いるよね?ちょっと前に文庫で買いました。
(話題のダルビッシュ投手196cmは、イラン人のパパと日本人のママらしいですね。シェラやクルスもあんな顔?)
あのへんはいろんなところの血が混ざる交差点で、美男美女が多いので有名ですね。
ペプシコーラのコロッセウムのCM(We will, we will rock you!)でシェラたんを思い出した人いなかった?
(あと、デスノの4巻の表紙、ミサの死神レムを見ると、自分はどうしてもシェラを連想してしまう)
腐男子氏のクルス編もぜひ読んでみたかったですね。アラブ商人のはしり、身長180cm超の温厚クルスちゃんでした。
ムダ話ゴメン。ちょっと雑談したかったので…。また何か思いついたらHNまたは名無しで書くことにしますね。ノシ>ALL

>>589セクシーモンローたんにも何か披露してほしいな…と思ったり)
リレー小説みたいになったりして。前作までの全ての設定と決して矛盾してはならず、しかも萌え萌えで面白くなければならない。後の人ほど四苦八苦する様がある意味楽しい、リレー小説w
(但しうまく書ければ逆に神!後の人ほど難しいから…逆に腕の見せ所)
(都合よく便利な魔法やら突然新設定やらいっぱい出てきそうでこれもまた楽しいne…w)
腐男子氏、男女ノーマル物って書かないのかな…フタナリ物は爆裂天使スレに書いてたね。
(個人的に、男女物と百合物まで…801だけは、嫌悪感は全くないが全然わからなかった…( ´_ゝ`)フーンって感じ)

そしてまた発見した…うごっ…w
>>603餓えや外敵から義務がある。→守る義務がある、ですね。
他にもいっぱいありそうyo…(;д;)
655名無しさん@ピンキー:04/12/03 23:41:37 ID:Y+ewjYwW

なーがーいーよー

ゴメン…www

IDにもwwwがいっぱい…週末だから許してwww

次なる百合カプエロ職人さん、ドーゾ!!!みんなで待ってます!!!
656酸性温泉:04/12/04 09:19:36 ID:JUzxJZ5x
保守。

八作も書いたらサイトが作れるのではないかと思い、保管庫を
作ってみました。最終話ができるまでは残しておきます。
ttp://acidspa.nobody.jp/index.htm
657名無しさん@ピンキー:04/12/07 01:55:51 ID:ThbbmSVD
>>656
お疲れ様です。
正直ありがたいです。
658名無しさん@ピンキー:04/12/09 08:45:19 ID:LHmDFhmD
本日きらら発売日です。
金属がしゅわしゅわ言うスパのオープンに1ヶ月近づいた…のかな?
これでまた酸性温泉さんの投稿意欲に追い風がかかる事を期待して、保守です。

P.S.
スパがオープンしたらにわちゃんは今度こそあのデジカメ使えるんでしょうかねぇw
659名無しさん@ピンキー:04/12/12 10:49:29 ID:2T0sncsg
保守
660酸性温泉:04/12/12 21:31:27 ID:qOCNlkcL
>657-658
ありがとうございます。すいません、最近書くスピードが鈍っておりますので、完結編が
書けるのはもう少し後になりそうです。

>656のサイトに>633-646の後日談を書きましたので、よろしかったらご覧下さい。

ああ、今月号はにわ×八重が良かったですよ。堂々とくっつきまくりですよ。誰か
ラブラブ(死語)のにわ×八重書いてください(;´Д`)
661酸性温泉:04/12/14 18:26:30 ID:hLOC2K8M
ほかの職人さんがいらっしゃるまでの保守がわりに>660のSSを
投下します。>>566-576と同じ日の設定です。
662トリコロ 真紀子×多汰美1/14:04/12/14 18:27:50 ID:hLOC2K8M
「それじゃ、真紀子さん、多汰美さん、行ってきますね」
「いってらっしゃい」「車に気ぃ付けてな」

八重は泊まり用の荷物を入れたバッグを肩に掛けて、景子の家へと出掛けていった。この前の
耐震工事の際、潦家に三日間ほど私たちはお世話になった。今日はそのお礼と掃除を兼ねて
遊びにいくのだと言う。私はてっきり、八重が一人で景子の家に行くのを真紀子が止めるもの
だと思っていたが、すんなりと許していたので不思議に思っていた。


《 ある夜のたくらみ 》

「…ん? どないしたんや、多汰美」
気付かないうちにじっと見つめてしまっていたらしい。真紀子が私の顔を覗きこむ。
「な、なんでもないんよ。ちょっとぼーっとしてただけで」
「そうか? あ、いまから買い物行こうと思うんやけど、ついてくるか?」
「うん。行く」
真紀子は私の返事を聞くと、財布を取りに二階へと上がっていった。私も後を追うように二階
に上がり、出掛ける仕度をする。
鞄を用意しながら、私はぼんやりと考える。いつもの真紀子だったら、景子が私たちの目の
届かないところで八重と二人きりにさせることなど考えられないのに、と。景子は八重のこと
となると見境がない。私はぎりぎりまで放置する放任型だが、真紀子は保護者よろしく景子に
口やかましい。珍しいこともあるものだ、と思いながら、外出用のパーカーを羽織る。

「多汰美ー、準備できたか?」
「うん、いま行くけえ、待っとって」
階下から声がしたので、私は急いで玄関へと降りていった。
663トリコロ 真紀子×多汰美2/14:04/12/14 18:28:53 ID:hLOC2K8M
「買い物って、何買うん?」
アーケードに向かう道すがら、今日の目的を真紀子に訊ねる。
「シャンプーがそろそろなくなりそうやからな、予備を買うとこ思うて」
「マキちー、髪の毛長いから、すぐ減るじゃろ?」
「せやな。多汰美みたいに短かったら、それほど減らんかもしれんけど…すぐ伸びるから切る
のもめんどいし、難しいところやな。あ、見てみ、ほら」
真紀子が指差した方角には、紅く色づいた街路樹が道路わきに並んでいた。
「綺麗なもんやな。こないだの休みの日、二人で行ったあそこも紅葉が綺麗やったけど……、
な、多汰美?」
「う、うん。綺麗じゃね」
急にあの日の話を振られ、私はどぎまぎする。四日前の祝日に、思い切って真紀子に好きだと
告白したことと、遊歩道でのキス。思い出すだけでも真っ赤になりそうだ。ここ数日私たちの
間であの日のことを話題に出したことはなかったのだけれど、真紀子にとってはあの日のこと
はどういう位置づけになっているのだろう。彼女にとっては私とのキスくらい大したことでは
ないのだろうか。そのわりに私が甘えると、逆上と抗議が待っているのだけれど。

他愛もない話を続けているうちに、目的のドラッグストアに着いた。真紀子が入口右側のヘア
ケア商品を扱った棚を物色している間、私はふらふらと店内を見て回る。いくつかこまごまと
したものを買い会計を済ませると、詰め替え用のシャンプーを買い終えた真紀子が出入口の
そばで待ってくれていた。
「あ、もう買い物済んでたん? ごめんね、のんびりしとって」
「いや、ええんや。まだ五時やし、慌てんでもいいんやから。まだどこか寄るか?」
「もういいよ。どこも寄らんでも。じゃ、帰ろ」
664トリコロ 真紀子×多汰美3/14:04/12/14 18:29:34 ID:hLOC2K8M
家に戻る途中、それとなくさっきの疑問をぶつけてみる。
「いまごろ八重ちゃんとにわちゃん、何しとるかなあ、マキちー」
「せやなあ、掃除しとるんちゃう? 三日も泊まらせてもろうたから。帰るとき一応私らも
掃除したけど、家事となると八重ちゃん、しっかりしとるから」
たしかに八重は家事のことはしっかりしている。長い間母子二人で暮らしていたせいか、同じ
年とは思えないほど料理や掃除、洗濯はきっちりできる。きっと景子の家でも甲斐甲斐しく
世話を焼いていることだろう。
「うん。八重ちゃんなら安心じゃね。にわちゃんの家なら何も危なくないし」
「ああ。オートロックに震度8に耐えられるマンションやから、大丈夫やろ」
やっぱりおかしいな、と思う。いつもだったら、『にわがいちばん危険や』と言うだろうに。
でも、わざわざ食い下がって理由を質すと不審に思われるかと考え、黙っておいた。

「多汰美」
不意に外気に冷やされた真紀子の指が私の頬に触れ、どきりとする。
「な、なに、何なん!?」
「あ、いや、ゴミ付いとったから。そないにびっくりせんでも」
思ったより大きな声を出してしまったらしい。なんだか今日は私一人がやきもきしていて落ち
着かない。真紀子のほうは至って普通なのに。よく考えたら同性の友人の家に泊まりにいく
のに心配するほうがおかしいのだ。八重が嘘をついて景子以外の誰かの家へ外泊するような子
じゃないのは私たちは百も承知なのだから、杞憂が過ぎるのは私なのだろう。
そう自分を納得させているうちに家に着いた。
665トリコロ 真紀子×多汰美4/14:04/12/14 18:30:19 ID:hLOC2K8M
少しでも気を鎮めようと、自分の部屋に入って荷物を片付けてから、南向きの窓から秋晴れの
外を眺める。

『多汰美、好きや』
さっき真紀子に触れられた左頬を撫でながら、ぼんやりと先日の遊歩道での真紀子の言葉を
反芻する。

――――ずっと片想いだと思っていた。

自分に同性愛を極端に嫌悪する感情はないけれど、相手にそれがないとは限らないし、仮に
同性愛に抵抗がない人でも必ずしも自分を選んでくれるわけではない。それを思えば、真紀子
が私を好きだといってくれたのは奇跡のようなものだ。嬉しい以外の何者でもない。
でも。…でも、いままで抑えていた願望が心の奥底でざわざわとうごめく。

――――もっと真紀子に愛されたい。私だけのものになってほしい。

なんて自分は欲張りなのだろう。友達でも、家族でもまだ足らないだなんて。もっとあのやさ
しい腕に抱かれたいと思う自分は、あの柔らかい唇を独り占めしたいと思う自分は、なんて
わがままなのだろう。

『多汰美、好きや』
頭の中にこだまする真紀子の言葉を外に逃さないように、私は愛を告げられた左耳を手で覆い、
目を閉じた。
666トリコロ 真紀子×多汰美5/14:04/12/14 18:31:15 ID:hLOC2K8M
どのくらい時間が経ったのだろう。階下から私を呼ぶ声がする。
「多汰美ちゃん、夕飯できたわよ。降りてきてちょうだい」
「あ、はーい!」
おばさんに呼ばれて、私は夕食を取りに一階の居間に向かう。

居間に入ると、真紀子が夕食用の食器を用意していた。
「なんや、多汰美。こんな中途半端な時間に昼寝しとったんか? ポケーッとしとらんと、
お皿持って来い。今日は多汰美の好きな焼きそばやねんから」
まだ思考がうすぼんやりとしている私を見て、真紀子が微笑みながら頭を撫でて仕度を促す。
「うん。あ、いい匂い」
「今日は八重も潦さんもいないから、ご飯が余ると困ると思って、多汰美ちゃんの好きな焼き
そばにしたの。真紀子ちゃんが勧めてくれたから」
おばさんがソースのいい匂いがする焼きそばを盛った大皿を持って居間に運んできた。私は
それを受け取り、テーブルに置く。
「せやでー。はよ手伝いせえ、多汰美」
真紀子が台所から私を呼ぶ。
「うん、いま行くけえ」
667トリコロ 真紀子×多汰美6/14:04/12/14 18:32:02 ID:hLOC2K8M
台所で真紀子に言われたとおりに食器や漬物をお盆に載せて、居間へと運んでいく。いつもは
五人分用意することが多いけれど、今日は三人。けれど、なんだか半分以下になったような
妙な感じがする。
「これだけでいいん?」
「せや。今日は八重ちゃんとにわがおらんからな。調子狂うやろ」
「ん…うん、そうじゃね」
曖昧に笑う私を見て、真紀子が軽く肩を叩く。
「明日帰ってくるねんから。そんな顔するなて」
そう。無駄に心配させてはいけない。特に真紀子には。
「うん。マキちー、焼きそば食べよう。今日のも美味しそうじゃね」

夕食を終えてから片づけをして、お風呂に入る。入浴を終えてから、次に入る真紀子を呼びに
彼女の部屋に行く。
「マキちー、お風呂空いたよー」
「ああ、いま行くで」
タオルを用意した真紀子が襖を開けて出てきた。
「…多汰美」
「なに?」
「私の部屋で待っとるか。…今日、二階には私らしかおらんからな」
どきっとした。まさか、真紀子のほうから誘ってくるなんて。
「う、うん。待ってる」
「あの二人がおらんと寂しいんやろ? 案外多汰美も寂しがりやなんやなあ。あ、八重ちゃん
には言わんとくから。『多汰美さんがとっても寂しがってました』って」
真っ赤にのぼせる私に構わず、からからと笑いながら真紀子は階段を降りていった。
668トリコロ 真紀子×多汰美7/14:04/12/14 18:32:36 ID:hLOC2K8M
……恥ずかしい。ものすごい勘違いをした。

よく考えたら真紀子から私を誘うなんてありえないじゃないか。手をつなぐのを許してくれた
のも、あの遊歩道から帰るしばらくの間だけだったし、キスだって二人きりのときは何度か
あったけれどまだ二回しかしていない。それ以上だなんて、冗談でねだっても『まだ早いわ』
『アホなこと言うな!』の返事が常なのだから。

もしかしたら真紀子は好意を持っている私をかついでいるのじゃないか、とついつい考えて
しまう。でも彼女は冗談が分かる人だけれど、そこまで悪意のあるいたずらはしない。風邪を
引いたときも、遊歩道で告白したときも彼女の言葉には誠意があったし、二度目のキスは頭の
芯が痺れるほどのものだった。だから、彼女も私のことが好きなはずだ。

タオルを片付けながら、私は夕方の買い物の包みを見る。
今日は私一人がばたばたしている気がする。もちろん悪いのは私自身なのだけれど、ちょっと
は真紀子にだって責任があるはずだ。半ば八つ当たりのように私は枕とドラッグストアの包み
をぐっと抱え込み、彼女が戻るのを待つために真紀子の部屋に向かう。
669トリコロ 真紀子×多汰美8/14:04/12/14 18:33:19 ID:hLOC2K8M
テーブルの上で雑誌を見ながら待っていると、三十分ほどして真紀子が帰ってきた。
「ただいま。…って言うのも変か。ん、何持ってきたんや多汰美?」
「枕じゃよー。今日は寂しいけえ、マキちーと一緒に寝たい」
…私は内心ふてくされていたのかもしれない。持ってきた枕を胸元に抱えこんで、ありったけ
の笑顔を作って彼女を見る。
どうせ真紀子は『一人で寝ろ』と言うだろうけど、今日だけは絶対に引き下がるものか。半分
意地になって私は言い切った。

「多汰美」
「いかんの?」
「まだ寝るには早いから、枕は端っこに置いとけ。ええよ、一緒に寝ても」
予想外の返事だったけれど、ほっとした。夕方から変に張り詰めていた気分が少し緩む。
真紀子が濡れた髪をバスタオルで丁寧に拭いながら、テーブルに置いた包みに目を落とす。
「多汰美は今日、何買うたんや?」
「綿棒じゃよ。あ、耳掃除してみたい! マキちー、させてくれる?」
「風呂上がりやからちょうどいいけど…頼むから、耳突かんといてくれや」
「うん」
私が綿棒をケースから出している間に、真紀子は座布団をテーブルの下から引っ張り出す。
「ところで耳掃除って、どうやってするんや」
「そんなの膝枕じゃよ。準備できたよ。はい、どうぞ」
人が横になれるだけのスペースに座布団を並べて敷いて、いちばん奥の座布団に正座をして
真紀子を促す。彼女の顔に少し赤みが差して見えたのは、風呂上がりのせいだろう。
670トリコロ 真紀子×多汰美9/14:04/12/14 18:34:11 ID:hLOC2K8M
「じゃ、頼むわ」
座布団の上にごろりと横になった後、顔をオーディオの置いてある壁に向けてから真紀子は
頭を私の膝の上に置いた。
「なあ、眼鏡外したほうがよくない?」
「せやな」
外した眼鏡を手渡され、私はテーブルの上にそっと置いた。

右耳の上を左手の指で支えながら、綿棒で耳の溝をなぞりながら掃除をする。
「マキちー、八重ちゃんとにわちゃん、いまごろ何しとるじゃろか」
なんとなく話題が見つからなかったので、二人の話をする。
「…向こうもおんなじこと言うとるかもしれんな。『真紀子さんと多汰美さん、今頃何してる
でしょう』って」
「かもしれんね」
「にわは八重ちゃんと話ができれば、なんでもええやろけど」
溝の掃除が終わったので、奥を掃除する。
「いまから中の掃除するから、動かんといてね」
「わかった」

いま真紀子は動けない。だから。
671トリコロ 真紀子×多汰美10/14:04/12/14 18:35:01 ID:hLOC2K8M
「今日のマキちー、変じゃね」
「なんでや?」
「八重ちゃんがにわちゃんの家に一人で行くって言っても、反対しなかったけえ」
変なのは真紀子ではなくて、私なのかもしれないけれど。
「別に…、なんかあったら連絡せえって言うてあるし。携帯の電源はちゃんと入れてあるで」
「いつもマキちー、にわちゃんが八重ちゃんにくっつくと怒ってるけえ。…そうじゃね、女の
子の家に行くのに心配なんて普通せんよね」
「にわの本音は分からんけど……別に、にわが八重ちゃんのこと本気で好きでも、泊まること
には反対せえへんで」
「…どうして?」
景子が八重のことを本気で好きなら、なおさら止めるものだと思っていた。先月に二人だけで
遊園地に行かせたときも、真紀子は八重の心配ばかりしていたから。
「なんとなく。もし、にわが友達より上の関係を望んどるとしても、私は何も言わん……ん、
どした、多汰美?」
いつの間にか掃除の手を止めてしまっていた。綿棒を上に引き上げてから、掃除のやり残しが
なかったか確かめる。
ティッシュで軽く耳を押さえて掃除を仕上げながら、私はぽつりと呟く。
672トリコロ 真紀子×多汰美11/14:04/12/14 18:36:16 ID:hLOC2K8M
「…やっぱり、変」
「そうか?」
「次、左耳じゃね」
体勢を変えるように促すと、真紀子は体をゆっくりと起こす。
「多汰美は、八重ちゃんもにわも好きなんやな」
「…うん」
「私も、好きや。だから、あの二人には仲良くしてほしい。そんなこと起こらんと思うけど、
私らが実家に帰ることになったら、八重ちゃんのそばにおれるのは、にわだけやから」
「…うん、そうじゃね……」

気が付いたら、私は真紀子の胸の中にもたれていた。真紀子が私の背中をやさしく引き寄せて
くれる。
「多汰美。あのな、私は八重ちゃんのことは心配やで。これでも、にわのことも気にしとる」
「うん」
「もし、にわが八重ちゃんに手を出して仲をこじらせたら、八重ちゃんは傷付く。それと同じ
くらい、いや、それ以上ににわも傷付くかもしれん。あいつはそれが分からんほど愚かやない
はずや。本気で八重ちゃんのことが好きなら、なおさらや」
八重が傷付くのは分かる。だけど、景子が八重以上に傷付くかもしれないとはどういうこと
なのだろう。
673トリコロ 真紀子×多汰美12/14:04/12/14 18:37:11 ID:hLOC2K8M
「にわちゃんが傷付くって…?」
「あいつは友情か恋愛感情か…どっちか分からんけど、八重ちゃんがいちばん好きや。好きな
人を傷つけるのが怖い、失くすのが怖い…だから。八重ちゃんを失くしたら、あいつは不幸に
なる。それは、私もよく分かる」
私を引き寄せる腕がかすかに震えている。彼女が緊張しているのがその腕から伝わってくる。
そして、彼女の気持ちも。
「私も、多汰美を失くすのが怖い。好きやから。誰よりも」
「マキちー……」
いちばん愚かなのは私だったのかもしれない。真紀子は誰よりも私を愛してくれている。その
ことに、あの遊歩道でのキスで気付くべきだったのだ。真紀子は景子みたいにはっきり好きだ
と行動や言葉で意思表示はしない。だけど、そのかわりに、何気ない行動の端々から気遣いを
見せてくれる。私が彼女を目で追い続けていたのは、それを少しでも見逃したくなかったから
ではなかったか。

「…マキちー、ずるい」
「なんでや。好きやって言われるの嫌か?」
真紀子は駄々っ子をあやすように私の頭を撫でる。撫でられて嬉しいような、自分の子供っ
ぽさが恥ずかしいような。そんな複雑な気持ちのまま、私は真紀子のパジャマの裾をぎゅっと
握る。
「いつもマキちーばっかり好きって言うとるけえ…ずるい」
私も真紀子のことが好き。誰よりも、誰よりも。言葉では言い足りないくらいに。
674トリコロ 真紀子×多汰美13/14:04/12/14 18:37:52 ID:hLOC2K8M
「――――マキちーとキスしたい」
いまだけは、断らないで。お願い、いまだけは。

「ええよ。私からばっかりするのも、ずるいからな」
顔を上げて真紀子を見上げると、いつもどおりいたずらっぽく笑っている。ただ、いまは眼鏡
を掛けていないから、いつもよりも目の表情がよく見える。いつも私たちを見守ってくれる、
優しい瞳。

「マキちー、好きじゃよ」
私が指でそっとまぶたに触れると、真紀子は両目をゆるやかに閉じる。
「…大好き」
言い終えてから、頬にそっと唇を押し当てる。最初にあれだけ欲しかった唇にキスをしない
のは、真紀子を信じなかった自分への罰。私の頬へ流れてきた髪からは、シャンプーのいい
匂いがした。
短いキスを終えてから、両手で真紀子の頬を支えて唇を重ねる。二度目のキスのときと同じ
ように、唇から彼女の気持ちが私の胸へと流れ込んでくる。あのときは告白することばかりに
気を取られてそれに気付く心の余裕がなかったけれど、いまなら分かる。真紀子の気持ちも、
私の気持ちも。

私も真紀子もどこにも行かない。帰るところは二人、同じなのだから。
675トリコロ 真紀子×多汰美14/14:04/12/14 18:38:42 ID:hLOC2K8M
唇を離すと、真紀子がにっこりと笑っている。
「満足したか?」
「うん」
「じゃあ、今日は一緒に寝んでもええな」
眼鏡を掛けながら、にやにや笑う。いつもの真紀子に逆戻りだ。
「えー、約束が違う!」
私が膨れて抗議すると、真紀子は立ち上がって押し入れを開ける。
「…嘘や。おいで、多汰美。布団敷くのくらい、手伝ってくれるやろ?」

真紀子が私に差し伸べた左腕の周りは真空なのだろうか。無意識のうちに私は立ち上がって
彼女の元へと吸い寄せられるように足を進める。意識が現実に戻ったときには、私は彼女の
腕の中に包まれていた。
「うん。今日はマキちーの布団、私が温めるから」
「ありがと」
けれど、真紀子の腕の中がいちばん温かいのに、私にそれ以上温められるのだろうか。口から
苦笑が漏れる。そんな私の髪を撫でながら、真紀子が話し掛ける。
「あ、耳掃除、まだ片方残っとったな。…膝枕もいいもんやな。寝るのはその後でもええか?
多汰美」
「…ん、いいよ」
言葉と一緒に真紀子を抱き返して、私は返事をした。

                                                   おしまい。
676名無しさん@ピンキー:04/12/14 21:45:05 ID:/ljwI0si
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!

二人ともカワイイよ二人とも(;´Д`)ハァハァ
677名無しさん@ピンキー:04/12/14 21:47:51 ID:qTn5g+rT
二人ともカワエエのう(;´Д`)ハァハァ
あと、会話に登場するにわと八重が刺激的でしたわ。
678名無しさん@ピンキー:04/12/15 23:15:56 ID:5hSqot4A
百合って女の子同士の純愛、って事ですよね?
679名無しさん@ピンキー:04/12/15 23:32:03 ID:EmgZYrdH
定義はいいよう……('A`)
680酸性温泉:04/12/16 18:18:55 ID:m0LRrsiH
>676-677
ありがとうございます。今度こちらに参るときこそ、完結編を投下したいです。
>677
一応どちらのCPも向こうが付き合っているとは知らない、という設定です。
…なぜ、ばれないんだろう……。
681名無しさん@ピンキー:04/12/18 09:13:31 ID:UMClvgHw
>なぜばれない…
多分、お互い自分達のことに手一杯で向こうの様子に気づかないんではないかとw
恋は盲目…
682名無しさん@ピンキー:04/12/18 22:12:59 ID:fdf5BZ1n
「禁忌を破る」っていうのが百合物のひとつの魅力なわけで
自分達以外の身近な人がそんな関係に有る訳が無い、ぐらいに
登場人物が思っているほうが、その辺が強調されて宜しいかと・・・
683名無しさん@ピンキー:04/12/19 20:33:23 ID:n6pQZb0r
684名無しさん@ピンキー:04/12/21 04:37:55 ID:3TP+W04j
知らない作品だ・・・
685名無しさん@ピンキー:04/12/21 18:47:22 ID:nUH9jvsr
ジャンプでやってる実にジャンプらしい作品


とおもいきや百合が。わたくしべっくりしました
686名無しさん@ピンキー:04/12/21 22:06:18 ID:8nu6mS44
japの黒肌少女なんてほとんど見ないから最初男かと思っていたよ。
687酸性温泉:04/12/24 18:14:11 ID:VprS4bod
ミナサマ、メリークリスマス。コソーリト>662-675ノツヅキヲオイテイキマス。
688トリコロ 真紀子×多汰美1:04/12/24 18:14:57 ID:VprS4bod
《ある深夜のたくらみ》

左耳の掃除も終わってから、二人で音楽を聴いたり、話をしたりして。八重にはちょっと悪い
けれど、たまには真紀子と二人きりになるのもいいな、と思ってしまう。

時計を見るといつもの寝る時間になったので、予め布団の中に入っていた私の右隣に真紀子が
入ってきた。
「どう、あったかい? マキちー」
「ああ、ぬくいで」
よかった。前に一緒に寝たときは真紀子の背中にくっついて眠ったのだけれど、そのときは
とても温かかった。あれに比べたら、自分の体温などでは真紀子は温まらないのではと思った
から。
「じゃ、電気消すから。おやすみ、多汰美」
「待って!」
枕元の灯りの電源を落とそうと右手を伸ばした真紀子の手を思わず取ってしまった。
「なんや、忘れ物でもしたんか」
当然だが、真紀子はいぶかしむ。忘れ物なんてしてないけれど、せっかく二人だけでいられる
夜なのにこのまま眠ってしまうなんて、なんだかもったいない。どうしよう。何かいい口実は
ないだろうか。
「うん。…おやすみのキスしてほしい」
689トリコロ 真紀子×多汰美2:04/12/24 18:15:45 ID:VprS4bod


天使が通り過ぎるか、空気が凍りつくかという十秒ほどの間を置いて、私は枕で派手に頭を
殴られた。
「ア、アホなこと言うな!!」
夜だから大声で叱責はされなかったけれど、真紀子は真っ赤だ。ああ、またやってしまった。
どうしても真紀子と二人きりになると、こういうことを口走ってしまう。
真紀子から私に手を出すことは滅多にないから、ついついねだってしまうのだけれど、やはり
そういうのは興ざめなのだろうか。
枕を据え直した真紀子が、私に背を向けて横になってしまう。やっぱり怒ったのだろうか。

「マキちー、…ごめん。気悪くした?」
せっかくさっきまで、私のわがままをきいてくれていたのに。ここでまた機嫌を損ねられては
申し訳が立たない。口から出てしまった言葉はもう戻せないけど、謝らないと。
真紀子のパジャマの裾を指先で軽く引っ張ると、ぼそりと返事が返ってきた。
「…怒ってへん。ただなあ……」
ゆっくりと私のほうに寝返りを打つ。
「キスしたら、それ以上のこともしたくなるからな。…我慢できへんのが困る」
私のあごにそっと彼女の右手が添えられる。やや冷えていた指先の感触に気を取られている
うちに、唇に人の体温を感じた。ああ、指先は結構冷えやすいけれど、マキちーの唇っていつ
でもあったかいのね……って、ええっ、ちょっと待って。
690トリコロ 真紀子×多汰美3:04/12/24 18:16:22 ID:VprS4bod
頭がパニックを起こした私に構わず、真紀子は唇を離す。
「…こんでええか?」
まだ顔に赤みが差したままの真紀子に見つめられ、私まで顔が火照ってくる。今日の真紀子は
やさしすぎる。ここまでわがままをきいてくれるなんて。
「マ、マキちー、今日は変じゃよ」
「なんでやっ。キスせえ言うからしてやったのに」
真紀子もむきになって言い返してくる。
そう、ねだったのは自分。だって、いつも何もされないと思っているから、やりすぎだと思う
くらいねだっていたのだ。簡単にポンポンと言いすぎていた。
「い、言ったけど、本当にするなんて思わなかったんよ」
予想外のことにびっくりしてしまって、涙が出そうだ。それを悟られまいと私は敷布団に顔を
うずめてごまかす。

「せんほうが良かったか?」
「そ、そんなことない。…うれしい」
真紀子が顔をうずめたままの私の頭を撫で続けてくれる。抱かれるのも、キスされるのもいい
けれど、ときどきこうやって私を甘えさせてくれるのが、いちばん嬉しい。
691トリコロ 真紀子×多汰美4:04/12/24 18:16:59 ID:VprS4bod
「…あのな、多汰美」
「うん」
「いつも素直になれんで、ごめんな」
「ううん。私もいつも無理なことばっかり言うとるけえ…」
真紀子も私も、性格が簡単に素直になることを許してくれない。ちゃんとつながっているって
ことは今日で十分、分かったけれど。
「いつも甘えさせてやれんからな。たまには甘えさせたいと思うて…今日くらいは」
真紀子はこう言うけれど、私は彼女がいつもそばにいてくれると安心しているから、いつの間
にか甘えている。仏様の掌の上の孫悟空みたいなものかな。いや、私が孫悟空だったら、三蔵
法師のほうが近いかな? 私の口元から笑みが微かに漏れる。

「…でも、今日はこれで勘弁してくれるか? 止められなくなったら困る。…多汰美はかわ
いいから」
「なあ、続きはいつしてくれるん?」
真紀子に『かわいい』と言われて、ついまた調子に乗ってしまった。あわてて口を押さえて身
構えるが、私の頭を撫で続ける彼女の手の動きは止まらない。
「もうちょっと待ってほしいんや…。勢いだけでしたくないから。その、初めてキスしたとき
も勢いでしてしもうたし。それに、私も女やから、無理やり変なことして、多汰美のこと傷
つけるのは嫌や」
692トリコロ 真紀子×多汰美5:04/12/24 18:17:39 ID:VprS4bod
真紀子の言葉は、胸にじんと来る。
よく考えてみれば、真紀子は景子の八重に対する感情を否定したことがない。彼女が怒るのは
景子が八重を傷つけたり迷惑を掛けたりするのを危惧したときだけだ、と。景子が伊鈴さんの
ことが好きなのではないかと私たちが誤解したときも、落ち込んだ八重を心から心配していた
彼女の姿を私は見ていたから。
八重の誕生日前後にやたら景子に突っかかっていたのも、いま思えば彼女なりに、景子に八重
の気持ちを大切にしろという意思表示だったのだろう。私もそのときは八重のことがとても
心配だったから、よく分かる。

私たちはみんな、真紀子に大事にされているのだ。

「…うん」
「待ってくれるか。それとも、すぐに手を出さんいくじなしじゃ、アテが外れたか?」
「…ううん、待つよ。だって『どこにも行かん』のじゃろ」
「せや」
私の頭を撫でていた手が、左頬へと下がってきた。垂れ下がっていた私の髪がさらりとかき
あげられる。私の顔色を伺うように、真紀子が布団に伏せた私の顔をじっと見つめる。眼鏡を
掛けていないからと分かっていても、吐息がかかりそうなほどの至近距離で見られては、私の
鼓動は速まりっぱなしだ。
693トリコロ 真紀子×多汰美6:04/12/24 18:18:26 ID:VprS4bod
「マキちー、そ、そんなに見られると、なんか恥ずかしいんじゃけど」
「多汰美がもう寂しがっとらんか、それだけ気になってな。八重ちゃんとにわがおらんから、
夕方ちょっと変やったし」
「だ、大丈夫じゃよ。マキちーがおるんじゃし。それに、明日二人とも帰ってくるけえね」
「そんならええ。じゃ、おやすみ」
真紀子は灯りの電源を落とすと、私の頭を軽く撫でてから、私に背を向けて横になった。私は
彼女の背中に寄り添うように、敷布団にうずめていた体を少しだけ起こす。

「…こっち向いて寝てくれんの?」
小声で問うと、少し間を置いて答えが返ってきた。
「……そんなんしたら、ドキドキしすぎて眠れへんから」
返ってきた言葉に、今度は自分がドキドキする。だって、ちょっと前まで真紀子は私に恋愛の
意味でときめいていないと言っていたのに。
「私、なんにも驚かすようなことしとらんよ。犬もおらんのに。…それともマキちー、私に
夢中とか」
もう、何をどう言っていいのやら、良くないのやら。自分の気持ちとは裏腹に、口が勝手に
すべる。また枕アタックがきたらどうしよう。

「…アホ。そうやとわかっとるなら、そんでええわ。おやすみ、多汰美」
うろたえる私の心配とは反対に、返ってきたのは冗談にくるまれた、おだやかな答え。

――――明日になったら、私たちはまた元の友達同士に戻るけれど、いまだけは、このままで。

私はそう思いながら、真紀子の背中に頬を寄せて眠りの世界へと旅立った。

                                                    おしまい。
694名無しさん@ピンキー:04/12/24 19:52:52 ID:oMoqlrog
totemo ii !
695名無しさん@ピンキー:04/12/24 20:10:57 ID:iKzOwG//
うおおおおおおゴッド!
GJ!GJ!GJ!
萌え尽きそうっす!
696名無しさん@ピンキー:04/12/25 00:00:25 ID:DjWm8COz
キテタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!!
ああもう可愛すぎ(;´Д`)ハァハァ
697名無しさん@ピンキー:04/12/25 03:18:00 ID:HEyTyeku
エロ板なんだからエロを入れろ!








でもそれを差し引いてもGJ過ぎます!乙です!
萌え死にました!
698酸性温泉:04/12/26 20:37:07 ID:iCrxmvyN
>694-697
クリスマスプレゼント替わりの小品ですが、ありがとうございます。
>697
すいません、完結編はちゃんとエロ入れますから、勘弁してください。「手を
簡単に出さない理由」を明言させたかったものですから。

…ただ、エロが無い方が反応がいいような気がするのは、気のせいですよね?
サイトもエロありの方が閲覧者の方が多いようですし。
とにかく完結編はがんがりますです。皆様、よいお年を。
699名無しさん@ピンキー:05/01/01 23:05:23 ID:oBSJY8IT
女の子が女の子をいじめるお話
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1092212174/173以降
既出かもしれませんがとてもいいと思う。
700名無しさん@ピンキー:05/01/01 23:50:12 ID:2NdrsHHf
マリみてと某アニメ作品の設定をごく気楽な態度で重ね合わせ(マリみてキャラはほとんどでてきません)、
エロ成分はちゃんとに含むけどうす寒いギャグも少々ある、
しかしとりあえず百合ジャンルに属することは確かというSSの投下先はここでいいですか?
どこに投げ込むか迷う……。
701名無しさん@ピンキー:05/01/01 23:53:15 ID:DPhf+4Uy
気楽にいこうぜщ(゚Д゚щ) カモォォォン(
702名無しさん@ピンキー:05/01/02 03:54:23 ID:TL4GAhoF
>>700
読んでみたいから、ここに投下ヨロ
703名無しさん@ピンキー:05/01/02 14:16:16 ID:PslqJT1Q
某アニメって何?
704名無しさん@ピンキー:05/01/02 15:55:07 ID:ocUtf2OG
神無月じゃない?と千歌音盲が言ってみる
705名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:38:34 ID:l1vF8U5P
オリジナル吸血鬼ネタでひとつ。
…アカイイトではどうしても出来なかった…ムリダヨ…
706名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:39:21 ID:l1vF8U5P
「ミーサー。ミサミサー」
「アタシは犬か? ……なんだよ」
「せーりよーひん貸してー」
「……使った後のやつを返してくれるのか」
「んなわけないっしょ!」
「急にきたんだろ? とーぜん一日目だよな。一日目ってアレだよな。下手すっと二日目より辛いときある

よな。わりかし多めだったりとか」
「し、知らない! ミサのバカっ!」
「……」
「……」
「ほれ、忘れもん」
「……ありがと」
「後で返せよ」
「そのネタいつまで引っぱるのミサ」
707名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:40:09 ID:l1vF8U5P
 重苦しい下腹部をかかえて帰宅した北原を六畳間で迎えたのは同居人。
「……みなみ、いいにおいがする」
 リーザレインはおかえりも言わずにそんなことをのたまって、犬のように鼻を鳴らしてみせた。
「えっと、買い食いもしてないし、調理実習の残りも持ってないし……?」
「そういうふつうのごはんのにおいじゃなくて……血の、においがする」
「あー……今日、生理きたから、そのせいかな」
 同性相手だからこその気軽さ。生理の話題なんて女子高生には珍しくもないものだから、北原はなんの気

なしにその単語を口にした。しかし。
「せーりって、なに?」
「へ?」
 思わぬ反応に一瞬思考が停止する。
 話をすること三十分弱。
 どうやら大人びた容貌とはうらはらに、リーザレインはいまだ初潮をむかえていないらしい。その事実は

北原にとってかなり意外だった。
 そして、きちんとした性教育を受けていないことも知る。
(まあ、まだ中学生だし、ガッコもきちんと行けてないんだからしょうがないよね)
 ちなみにこの時点で、北原の悩内に人間と吸血種の間に存在するかもしれない、深くて遠い種族差などと

いうものは存在していない。
 すでに起きていることを放棄してスウェット姿で畳の上に横たわる北原を、リーザレインはしばしじっと

見つめていたが。
「ね、みなみ。おねがいしてもいい?」
「? どしたのあらたまって」
「ん、えっと、そのぅ」
「なーに恥ずかしがってんのさあ。言ってごらん?」
「あ、あのね」
708名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:41:32 ID:l1vF8U5P
 赤い顔で手招きされたので、ころんと寝返りをうって近づく。吐息と大差無い耳打ち。それを聞いた北原は、リーザレインよりさらに頬を朱に染めて飛び起きた。
「なぁ?!」
「ね、いいよね、みなみ」
 先ほど見せた恥じらいはどこへやら。期待に満ちた眼差しが上下して、北原の身体を検分しだす。北原、思わず自分自身を抱きしめて後ずさり。
「だ、ダメ! ダメダメダメっ!」
「えー、みなみ、いっつもじぶんからたべてっていうのに」
「そ、それとこれとは違うっしょ! 全然っ!」
「ちがわなーい」
「ちっ、違うったら!」
「ねー、なんでそんなにイヤなの?」
「だ、だって、そんなの、汚いし、汚れちゃうし、恥ず、かしいし、その……」
 なんか、えっちい。
 アパートの一室に、ささやかなささやきが溶け、残ったのは沈黙。
 ささやきを受け止めたリーザレインは困った顔で沈黙を破る。
「…………みなみ、いつものみなみも、けっこうえっちだとおもう」
「ええぇえっ!」
 衝撃的な告白に目眩。
「うそー……」
 なんともいえない脱力感に苛まれ、へたり込む。
 かおとかー、こえとかー。と、ひとつひとつ上げ連ねてゆく言葉を無言で制し、飼い主は観念する。
「……わかった。いいよ、リーザ。して、いいよ」
 だって、よく考えてみれば。
 差し出せるものは、このカラダしか持っていない。
「そのかわり……」
709名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:42:37 ID:l1vF8U5P
 この行為のために出した条件は三つ。
 一つ、風呂場ですること。
 一つ、目隠しをすること。
 一つ、指で触れないこと。
 全ての準備を整え、ユニットバスの狭いバスタブのふちに腰掛けた。見おろせば、素裸の下半身と、バスタブの底にしゃがみこむ、タオルで目隠しされたリーザレイン。
 ひとつ、深呼吸。
「じゃあ……いいよ、リーザ」
「うん。いただきます」
 視覚を奪われているにもかかわらず、迷いも惑いもせずに両膝を掴んでくる手。そっと押し広げられ、一瞬抵抗しようと足に力が入ってしまう。
「ご、ごめ、ちょっと待って」
「うん」
 ふたつめの、深呼吸。
 心臓の音が、うるさい。
 見えてないのに。
 恥ずかしい。
「……っ、いい、よ」
 脚を開いて、待てのできる従順なペットを招き入れた。
 明るい茶髪を見おろして、ほんの少し、後悔する。
 むしろ自分の方が、目隠しをすべきだったのではないだろうか。
 その方が、こんなにも羞恥をおぼえなかったかもしれない。
 だって。
「ん……」
 だって、このやり方は、あまりにも似すぎている。
 過去に経験した行為に。
 過去に戒められた行為に。
 よく、似ている。
710名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:46:07 ID:l1vF8U5P
「あ」
 舌に、鼻先に、唇に。
 こすられて、押しつけられて、かすめとられて。
 はしたない音をたてて、すすられる。
 ざらり、となめ回される。
 下腹が、熱い。
「く、ふぅ」
 ただ、味わうためだけの為に、無言で無心に舌を使われる。
 はずなのに。
「は……ぁ」
 熱い、吐息。
 こぼれる、声。
 じわりとにじむ、経血とは異なる液体の存在。
「恥、ずっ……か、し、なあ……もぉ」
 ぞくぞくする。ずきずきする。じんじんする。
 身体を苛む様々な感覚をごまかしたくて、必死におどけてみせようと努力するのだが、すべて失敗。声はうわずり、とぎれとぎれで、逆に自分の状態を自覚させられる。バスタブを掴む指がすべりそう。
「……ね、リー、ザ……おいしく、ないっしょ?」
 裂け目をたどる舌の動きにふるえながら、問う。問いかけに意味などない。ただ、何か口にしていなければいけないと、奇妙な脅迫観念に捕らわれてしまって。
「……ぅんん」
「っ!」
 リーザレインからの、問いかけの答え。それは言語としての意味を為す音声では返らなかった。首を横に振る。それだけのしぐさ。しかし、場所が悪い。裂け目の上端、張りつめつつある小さな突起が、しぐさに

合わせて鼻先で左右に揺さぶられる。まるで予想していなかった刺激に、身体もココロもついてゆけない。
「ふぁっ! ……んんぅ!」
711名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:46:50 ID:l1vF8U5P
 ぎりぎりの精神にとって。ちいさなちいさな油断、髪の毛一筋ほどの傷だって命取り。
 ほら、もう。
 落とされる。
 陥とされる。
 堕とされる。
 みとめて流されてしまいたい。
 イヤ。
 そんなのは、ヤだ。
 だって。
 だってこれは、リーザのおしょくじなんだから。
 だから。
 餌のわたしが、こんなふうに感じるのは。
「んぁあ……んく、ふ、あ、ぁあ」
 のけぞる。冷たいタイルに頭をぶつける勢いでこすりつけ、その温度と硬度で理性を取り戻そうとしても、昂ぶりはとどまることを知らない。
「ぁ、やぁっ、そこ、」
 裂け目の奥、狭い入り口に熱く柔らかなものが触れた。息を詰める。一拍の空白。ずるり、と体内に入り込む他者。本能が待ちこがれていた刺激。
「ぁああぁっ!」
 ずり落ちることを恐れながら、震える左手をバスタブから放す。緩んで恥ずかしい声を垂れ流したままの口元へ手首をあてがい、その皮膚を強く、強く噛みしめた。
「……! ……っ! っ!」
 頭はもう、羞恥とか快感とかそういったものでいっぱいで、真っ当に動いてなどくれない。
 体ももう、快楽を受け取ることしかできないただの感覚器に成り果てて、まともに動いてなどくれない。
 中をまんべんなく味わい尽くす動きは北原の官能を探し出し掘り起こし衆目に晒す。
 薄い水のヴェールに覆われた世界の底。
 いまだ解放してくれない補食者の髪をバスタブから引き剥がした震える右手で掴む引き寄せる。
 欠片ほどの理性とは真逆の行動。
 水風船のイメージ。
 満たされて、今にもはじけてしまいそう。
 内腿を伝う薄桃色の液体。
 その行方を無意識のうち皮膚感覚でトレースしようとして――――
712名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:48:38 ID:l1vF8U5P
 目が醒めた。
「あれ?」
 見慣れた天井。慣れた重みの毛布。肌に馴染んだスウェットの肌触り――――
「……あれ?」
 自らの状況を鑑みて、ぱちくりとまばたきひとつ。
 もしやこれは。
「ゆ、夢?」
 だとしたら――なんて、なんて、
「おきたの? みなみ」
「リー……ザ、」
 襖悩を中断させたのは、聞き慣れた声。愛すべき同居人の呼びかけに、どんな身体の反応より早く、頬が熱くなる。
 思い出した。
 夢であるわけがない、先ほどの一連の行為。ただ、記憶があやふやなのは……?
 上体を起こした北原に、牛乳の入ったカップを手渡してくれるリーザレイン。こちらもいささか居心地悪そうにしながら、事の顛末を説明してくれた。
「みなみ、きぃうしなっちゃったんだよ。おぼえてる?」
「ぜ、全然」
「おふろばできれいにして、あがってこっちでふくきて。……ナプキン、おかしくない?」
「う、うわぁあ」
 なんてことだ。それじゃあ、目隠しなんてまるで意味など無かったんじゃないか。あられもない姿で失神した自分を、どんな顔をしてリーザレインは介抱してくれたのやら。見ずとも触らずともわかる「下」の感

触に、違和感は無い。先刻の簡易的保健の授業がさっそく役に立ったのはなにより。なにより、なのだけれど、それにしたって、それにしたって。
 頭を抱えてうずくまる。襖悩再び。ついでに煩悶。
 人は恥ずかしさで死ぬことは出来ないけれども、今なら可能かもしれない。いや、今まさに、北原が人類史上における、初の「恥ずかしくて死んだ人」第一号になれるかもしれない。
713名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:50:12 ID:l1vF8U5P
「え、っと、みなみ? だいじょぶ?」
 弱りきった声音。乾いた笑いを浮かべて見せると、吸血鬼は心底困り切った顔になって黙り込む。よく飼い慣らされたペットにとって、飼い主は絶対で。飼い主の意向こそが、最優先事項だから。
「……ごめん、ね、みなみ。あたしがあんなことたのんだから。だからみなみ……」
 だがそれは、餌にとっては息苦しい状況になる。
「や、いいんだよ、そんな。わたしがいいって言ったんだから、いいの。リーザは、悪くない。……でも、まあ……出来れば、その、恥ずかしいから、今度からこの方法はなしにしてほしいな」
「ん……ごめんね、みなみ」
 カップを空にしたところで、食欲を満たした身体が次を求める。図らずも、生物の三代欲求を下位から順にクリアしていった北原は、その誘惑にあらがえない。顔の半分を口と化すあくびをし、ころりと布団に転がった。
「……ごめ、ちょっと寝るね」
 リーザレインの夕食は済んだし、現在特に急ぎの懸案は存在しない。
 身体が求めるがまま、眠りの中に埋もれてゆく。
「うん。……おやすみ、みなみ」
「ぅん…………ね、リーザ」
 髪をくしけずる指先の優しさ。ここに、北原を傷つけるものは存在しない。その絶対の安心感がひたひたと満ちてゆく。
 夢うつつの中、無意識に問いかけた。
「なんで……あんなこと、思いついたの?」
 少女/飼い主/餌の対象をぼかした率直な疑問に、吸血鬼/ペット/補食者はしかし対象を理解した上で率直に答える。
「ああいうふうにすれば、みなみに、きず、つかなくていいかなっておもったから」
714名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:51:38 ID:l1vF8U5P
 いっつもおもってたんだ。
 たべなきゃいけないのは、あきらめたんだ。
 たべなきゃ、おかしくなっちゃうから。
 でも、みなみをたべるには、きずをつけなきゃならなくって。
 たべると、みなみのまっしろなくびすじにあかくきずがのこるでしょ。
 それがイヤで。
 だから、なんとかできないかな、って、ずっとかんがえてた。
 でもゴメンね。
 みなみがアレ、イヤならもうしない。
 震える声。
 おびえが、声を、リーザレインを、侵している。
 ああ。
 夢の底で北原はかすかに嘆息した。
 謝らなければならないのは、わたしの方だ。
 両腕を伸ばし、適当に見当をつけた辺りの空間を掻いて吸血鬼の身体を探り当て、抱き寄せる。
「ごめんね」
 不安にさせて。
 言葉が足りなくて。
 そっと背を撫でる。小刻みに震える背骨に沿って、何度も手のひらを往復させる。
715名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:52:52 ID:l1vF8U5P
「リーザにされたのは、いやじゃ、なかったよ」
 それは真実。
 北原は嘘をつかない。
 嘘がつけない。
「ただね、恥ずかしかったの。いろんなこと思い出しちゃったのと、それと、リーザの食事なのに、エッチな風に感じたことが」
 思い出した事柄については、話せない。
 話さない。
 話さないことは、嘘をついているわけではないから、罪悪感など無い。
 腕に力を込め、密着する。ペットを安心させるために。柔らかな頬の感触が心地よい。
「そっか。リーザはわたしのこと思ってくれてて、だから、ああいうこと思いついたんだね」
 それは、純粋に嬉しい。
 でも、あのやり方は、やはり恥ずかしい。
 しかし、それでも。
「嬉しい、よ」
 肯定。
「でね、そんなに傷ついちゃうのがいやなら……そだね、月一回しか出来ないけど、あの方法で食べてもいいよ」
 譲歩。
「リーザがしたいんなら、してもいーよ」
 これは、なんなのだろう。
 睡魔に浸食された思考が、首をひねる。
 命令、なのだろうか。依願、なのだろうか。
 ただ、確実なのは。
 この肯定も譲歩も、腕の中の吸血鬼でペットで補食者であるところの同居人を、つなぎ止めておくためのものであるということ。
 命令か依願か。そんなものはたいした違いではない。
 大切なことは、ただひとつ。
716名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:54:08 ID:l1vF8U5P
「だから、そばにいて」
 リーザレインが、ここにいてくれるかどうか。
「どっか行っちゃ、やだよ」
 これは呪縛。
 ペットにつけた、首輪と鎖。
 最低だ、とあざ笑う飼い主。
 知ってる、と微笑み返す餌。
 欲しいものは、ただひとつ。
「うん。みなみのそばにいる。ずっといる」
 手に、入れた。
 唇が満足げに歪む。
 欲しいものを、手に入れて。
 北原は最後の意識を手放した。


 部屋の中。一人、取り残されて。
 リーザレインは幸せそうに、幸せそうに頬を緩める。
 ここには望んだものが全て在る。
 飼い主の腕の中。一人、取り残されて。
 虜となった補食者は無邪気に微笑んだ。

 【FIN】
717名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:58:08 ID:l1vF8U5P
ただでさえ読みどころ無いのに、改行間違い多くてすみません。
初めての長文投下ですが、慣れないこたぁするもんじゃないっすね。
てなわけでお目汚し失礼しやした〜(シモテハケ)
718名無しさん@ピンキー:05/01/04 02:03:35 ID:QRpH9uh2
GJ!!!
楽しませてもらったよ
最初は変態プレイかと思ったけど
とても純粋で…とにかく良かった!
719名無しさん@ピンキー:05/01/05 01:46:39 ID:Hio6/R/G
sugoku ii
totemo ii
good job
720酸性温泉@エロガッパ:05/01/05 06:20:21 ID:vgKc06QB
真紀子×多汰美の完結編ができたので投下します。今回は長いです。
いつもは14レス前後ですが、今回は20レスの予定。
721トリコロ 真紀子×多汰美1:05/01/05 06:21:02 ID:vgKc06QB
  <プロローグ>
彼女のことを好きになったのは、いつのことだっただろう。
最初は、一緒に暮らすのだから仲良くなれたらいいな、と思っていた。良い友達、良い家族に
なりたいと。それは、母の望みであり、私の望みでもあったから。いつしかその想いはもっと
特別な関係を望むものに変化していった。けれども、彼女は私のそんな想いに応えてくれた。
最初に望んだ関係とは違ってしまったけれど、私は後悔していない。
――――それは私が、いや、私たちが選んだ形なのだから。


《 還るべき場所 - WE FEEL WE ARE ONE. - 》

今年ももう終わろうかというある師走の土曜日のこと。
真紀子と多汰美、八重、八重の母の幸江の四人は、長織駅の一番ホームで次に来る下りの電車
を待っていた。
「おばさん、楽しみですね、温泉」
多汰美が満面の笑みをたたえた幸江に話しかける。
「ええ、この瀬田沢温泉っていい所なのよ。ちょっと山に入ったところだけど、静かだし、
お風呂もいいのよ」
今回の旅行は一泊二日。八重が持ち前の強運で地元のタウン誌のホテルペア宿泊券を当てたの
を元手にして、四人で旅行することにしたものだ。最初は真紀子たちの友人、潦景子も誘って
いたのだが、親戚の法事があるとのことで今回は一緒には行けなかった。けれど、法事はすぐ
に済むから大丈夫、と景子は八重の飼っている鳩のななせの留守中の世話を引き受けてくれ
た。景子は八重のこととなると甘いくらい優しい。景子が一緒に行けないと聞いて残念がって
いた八重もそのやさしさのおかげか、今日の旅行までにはすっかり機嫌をよくしていた。
722トリコロ 真紀子×多汰美2:05/01/05 06:21:50 ID:vgKc06QB
「にわも一緒に行けたら良かったのにな、八重ちゃん」
真紀子がそう話しかけると、八重はにっこり笑って答える。
「大丈夫です。近いからまたいつでも行けますよ、って話しましたから」
「そうじゃね。電車で三駅、送迎バスで20分じゃったね」
多汰美がパンフレットとホームの電光掲示板を見比べながら、時間を計算する。
「片道40分くらいじゃけえ、近い、近い。いつでも行けるね」
「ええ。にわちゃんも気にしないで楽しんできてって言ってましたから。ちゃんとどんな所か
帰ったら話をするって約束しましたし」
そうこうしているうちに、電車がホームに滑り込んできた。四人はそれぞれの旅行鞄を手に
電車へと乗り込んだ。

真紀子は電車の窓から外の風景を眺めながら、晴れてよかったな、と思う。二日前のクリス
マスイブに平年より幾分早い初雪が降り、一時期交通機関が麻痺したり転んで怪我をした人が
続出するなどのニュースが最近の最も大きな出来事だったから。幸い雪も一日だけで、今日は
こうして無事旅行ができる。七瀬家としての初めての家族旅行だから、何事もなく過ごせたら
いいなと思いつつ、八重とおしゃべりに興じる左隣の多汰美を見る。
そういえば最近あまり多汰美を甘えさせてやれていなかった、と真紀子は軽くため息をつく。
自分の気持ちの整理がつくまで待ってほしい、と告げてから一ヶ月半以上が過ぎた。その間、
期末試験や学校や家での日々の細々としたことに忙殺されてしまい、多汰美との関係をやや
うやむやにしてしまったきらいがある。今日の旅行は四人全員で過ごすことが多くなるだろう
けれど、少しでも多く多汰美と一緒にいる時間を取ろう、と決めて目的の駅に降りた。
723トリコロ 真紀子×多汰美3:05/01/05 06:22:59 ID:vgKc06QB
駅に着いてからしばらくして、送迎バスがやってきた。四人がバスに乗り込んであたりを見る
と、思ったよりお客さんは少なかった。そのことについて多汰美が尋ねると、六十がらみの
運転手のおじさんは、このあいだの雪でキャンセルが何件か出てしまいましてね、と苦笑いし
上り電車から降りた宿泊客をバスへと案内しに出向いていった。

バスが発車してからしばらくすると、徐々に民家が減り、あたりは山と畑ばかりの風景が広が
るばかり。どこに連れて行かれるのやら、と真紀子と多汰美がやや不安に思っているうちに、
だんだんとやや古風な建物のおみやげ店や食事処が見えてきた。「せたざわ街道」と書かれた
通りには年配の夫婦や若い女性のグループが散策をしている姿が目に入った。
「いかにもひなびた温泉街って感じでいいのよ、ここは」
と幸江が通路を挟んで座っていた真紀子と多汰美に説明する。やがてバスは今日宿泊する予定
のホテルに到着した。
チェックインの手続きをしてくるから、と幸江と八重はフロントに向かった。真紀子と多汰美
はロビーのソファに並んで腰掛ける。
「楽しみじゃね、温泉。レストランで食事っていうのも初めてじゃし。あ、でも四人一緒の
部屋で寝るのは、にわちゃんの家で何度かあったから初めてじゃないね」
「せやな。でもまあ、人の家とホテルとはまた違うから」
二人がホテルのパンフレットを広げながら、散策の予定を話していると、幸江と八重が戻って
きた。
「あ、部屋どこですか。上のほう、それともロビーに近いところですか?」
真紀子が幸江に尋ねると、複雑な顔をした幸江から部屋のキーを見せられた。数は、二つ。
724トリコロ 真紀子×多汰美4:05/01/05 06:23:36 ID:vgKc06QB
「このあいだの雪がこのへんではかなり酷かったらしいのよ。泊まる予定だった和室は風で
ガラスが何枚も割れて畳まで傷んだんですって。そのかわり洋室のある階は無事だったから、
そのお詫びにデラックスルームを二部屋使ってくださいって」
「私とお母さんは二階の201号室を使いますから、真紀子さんと多汰美さんは三階の301号室を
使ってください」
八重から部屋の鍵を渡された真紀子は、目の前が暗くなりそうなほどの心の中の動揺を気取ら
れないようにと顔を引き締めて八重に返事をした。
「ありがと。あ、こういう所って内線電話で話できるんやから、ちょっとくらい離れとっても
大丈夫やて。むしろ、いつも通りに近いんちゃう?」
「ふふっ、そうですね。じゃあ荷物を片付けてから……そうですね、四時にロビーに集まりま
しょう」
「うん、分かった。四時じゃね。いまから二十分くらいあとじゃね」
多汰美は時計をちらりと見てから八重に返事をした。

エレベーターの途中で七瀬母娘と別れてから、真紀子は深いため息をついた。
まさか多汰美と二人きりにさせられるとは、予想もしなかった。いや、向こうは実の親子で、
こちらは友達同士、傍目から見れば部屋をそう分けるのは当然だ。しかし、誰にも言えないが
自分と多汰美は友達同士というより恋人同士と言った方が近い関係だ。二人だけで夜を過ごす
のは、ものすごく問題があるのではなかろうか。ちらりと多汰美の顔を見遣ると、にこにこと
無邪気に微笑みながら自分の顔を見ている。
725トリコロ 真紀子×多汰美5:05/01/05 06:24:27 ID:vgKc06QB
(こっちの気も知らんで、呑気やなあ……。)
真紀子は恨めしそうに手許のキーに一度、目を落とす。エレベーターを降りてから近くの案内
板で部屋の場所を確かめ、多汰美と一緒に301号室へと向かった。
301号室は三階の一番奥の部屋にあった。鍵を開けて中に入ると、角部屋の利点を生かして
大きく窓が取られており、とても広々と感じられる。多汰美がベランダに駆け寄って外を眺め
ると、下には清流が流れていた。
「なーマキちー、下、川流れとるよ。あ、向こうに遊歩道もあるよ。あそこ歩けるみたい」
はしゃぐ多汰美とは反対に、真紀子は手荷物をテーブルに置いた後、セミダブルの大きなベッ
ドにぐったりと倒れこんだ。人の重みでベッドのスプリングがかなり軋んだらしい。多汰美が
驚いて部屋のほうを振り返る。
「マキちー、……どしたんよ?」
「…し、心臓に悪い……」
「バスに酔ったん? マキちー、車酔いしたっけ?」
部屋の中に戻った多汰美が、ベッドにうつぶせになった真紀子の背中をさする。
「車酔いやのうて…、その、今日多汰美と二人っきりというのが……きつい」
「どうして。私、マキちーと二人だけになれて嬉しいんじゃけど」
多汰美はテーブルに備え付けてあるティーバッグを取り出して、急須に入れてお湯を注ぐ。
「いや、その、……うん」
真紀子はベッドにぐったりと沈み込んで言葉を濁す。最近はかなり収まりを見せているが、
付き合い始めてからしばらくの間、二人きりになったときの多汰美の真紀子へのべったりぶり
はすごいものがあった。どこまで本気か分からないが、キスより上の関係をやたらと求めて
くるのだから。二度ほど同じ布団で一緒に寝たが、よく自分でも我慢しきれたものだ、と己の
禁欲具合に感心するほどだ。「気持ちの整理がつくまで待ってくれ」と多汰美には言ったもの
の、いざこう二人きりにされるとあっさりと動揺してしまう。電車の中では甘えさせてやり
たい、と思ったがこうも己に余裕がないとそれも無理なのではないか。自分の情けなさに深く
ため息をつきつつ、真紀子は多汰美の淹れてくれたお茶を受け取って喉を潤した。
726トリコロ 真紀子×多汰美6:05/01/05 06:26:06 ID:vgKc06QB
「マキちー、一緒の部屋がいやなほど私のこと嫌い?」
やや不安げな顔をした多汰美に上目遣いで見つめられて真紀子は焦る。
「そ、そんなことあらへん。ただ……、今晩我慢しきれるかと思うてなあ」
「そんなん、我慢せんでもいいんじゃよ。私はマキちーにいつ狼になられても一向に構わんの
じゃけえ」
ハイエナに言われたないわ、の言葉を飲み込んで、自分に懐く多汰美の髪を撫でながら真紀子
は思考をめぐらせる。
多汰美はかわいい。どことなく猫を思わせるような愛らしい容姿も、人懐こい性格も、動物
にも人にも愛されるやさしさも、すべてが愛おしい存在だ。それとは分かりにくいがそっと
空気のように包み込む彼女の優しさに、自分はどれだけ助けられてきただろう。自分が同性
ながらも彼女に惹かれたのは、その点だ。彼女のことが好きなのだから、多汰美を抱くのは
簡単なのかもしれない。なのに、自分が気持ちに整理をつけられないのはなぜなのだろう。

「なんで、多汰美はそんなに私に抱かれたいんや」
どこまで本気で言っているだろう。そう思いながら真紀子は多汰美に訊ねる。
「マキちーだけのものになりたいけえ。それじゃいかん?」
多汰美の言葉に、真紀子は即答ができなかった。口調はいつものように軽いが、真紀子を上目
遣いに見る彼女の目は決して笑っていなかったから。
――――もう、自分たちの間に「友達」の逃げ道はない。二度目のキスをしたときからそれは
二人とも分かっていたのだ。いまの問答も、単なる確認作業でしかなかったのかもしれない。
真紀子は目を閉じて、大きく息を吐いた。
「…分かった。今日の夜は期待しとけ」
彼女の心に嘘はない。ならば、自分も彼女の気持ちに精一杯応えよう。真紀子はそう決意して
自分の二の腕に体を寄せる多汰美を抱き寄せた。
727トリコロ 真紀子×多汰美7:05/01/05 06:27:01 ID:vgKc06QB
事前に約束したとおりロビーに真紀子と多汰美が行くと、ホテルの浴衣に着替えた八重がバス
タオルなどの入浴道具を抱えてソファに座っていた。
「八重ちゃん、散歩行かんの?」
多汰美が八重に尋ねると、八重は苦笑して答えた。
「お母さんが、お風呂に入りたいって言うんですよ。申し訳ないんですけど、散歩はお二人で
行ってもらえませんか。…お母さん、一人にさせておけないし」
「そっか。おばさん、お風呂好きじゃもんねえ。じゃあ、私らは夕食まで散歩に行ってくる
けえ、酔わんように気をつけてね」
八重は半分諦めの入った笑みを浮かべつつ多汰美を見る。八重の母、幸江はお風呂がケタ外れ
に好きだ。以前皆で銭湯に行ったときも、いちばん湯船に浸かっているのが長かったのは幸江
だった。私が監視していないと何をするか分かりませんから、と付け加えて八重は大浴場に
向かった。

「じゃ、どこに行く?」
「さっき向こう側に遊歩道があるのが見えたんよ。あそこに行きたい」
真紀子はそれならそこに行こう、と返事をして玄関に向かう。風除室ではフロント係の女性が
手荷物を運ぶためのワゴンを整理していた。
「あの、すいません。遊歩道ってどう行けばいいですか?」
「それなら、出口を出て右に曲がってまっすぐ行った所に橋がありますから。その橋を渡れば
遊歩道に出られますよ」
真紀子が礼を言ってから出口に向かうと、女性が二人を呼び止める。最近は天気が荒れやすい
から用心のために傘を持っていった方がいいですよ、と貸出用の傘を一本手渡され、真紀子は
再びフロント係の女性に礼を言って傘を受け取り外に出た。
728トリコロ 真紀子×多汰美8:05/01/05 06:27:46 ID:vgKc06QB
教えてもらったとおりに道をたどると、簡単な舗装だけがされた駐車場の隣に細い下りの坂道
があり、そこを見下ろすと石造りの小さな橋が架かっていた。車が一台通れるかどうかという
ほどの小さな橋を渡ってそばの石段を降りると、遊歩道の入口になっていた。多汰美が上流の
方を見遣ると、山には雪が残っているが遊歩道にはほとんど雪が残っていなかった。
「向こうの方まで歩けるみたいじゃね。1kmくらい向こうに滝があるってパンフレットに書い
てあるけえ、そこまで行ってもいい?」
「ええよ。でも多汰美、今日は走ったらあかんで。あそこと違って道幅は狭いし、地面が濡れ
とるからな。危ないで」
真紀子が手袋をはめた手をこすり合わせながら、多汰美に注意する。マキちーはまるで私の
お母さんみたいじゃねえ、と多汰美はくすくす笑いながら軽い足取りで上流に向かって歩き
出した。真紀子は黙ってその後についていく。ふだんは八重、景子と一緒に四人で行動する
ことが多いけれど、時折ジョギングや散歩と称して多汰美のジョギングコースである遊歩道を
歩いたりベンチに掛けて話したりするのがいつもの二人のデートだ。自分の吐く息があたりに
白く拡散するのを見ながら、デートができてよかったと真紀子は思う。自分は景子のように
相手に堂々と甘えたり好意を素直にぶつけたりはできない。二人だけのときに少しだけ甘え
させるのが精一杯の愛情表現だ。今日は二人きりになれるとは思えなかったから、いつもの
デートコースどおりに多汰美と過ごせるのは望外の喜びだった。滝に早く着くともったいない
気がして、わざと真紀子はいつもよりゆっくりと歩く。

多汰美はゆっくりと後ろをついてくる真紀子をちらりちらりと見ながら歩く。真紀子は風景を
楽しんでいるのだろうと判断して彼女のペースに合わせて歩を進める。
729トリコロ 真紀子×多汰美9:05/01/05 06:28:37 ID:vgKc06QB
数日前の雪がわずかに残る木々を眺めながら、多汰美は考える。自分との関係のことになると
言動が慎重な真紀子が自分を抱くと言い切ったからには、彼女は大きな覚悟をしたのだろう。
自分は真紀子に告白されたときから、彼女に抱かれることを望んでいた。けれど元々は異性愛
者の真紀子に自分を抱いてほしいと要求してきたのは、自分が思っている以上に負担だったの
ではないかという後悔が頭をかすめる。真紀子がもとから八重に甘える景子のような行動を
取ってきたのならば話は別だ。でも、実際はそうではない。自分も彼女と同じくらいの覚悟、
もしくは犠牲を払わなければ真紀子を手に入れられない気がする。それならば、どうすれば
よいのだろう――――?

やがて、二人の耳に水が激しく落ちる音が届く。目的の滝が近いらしい。二人は足を同時に
止めたが先に歩き出したのは、真紀子だった。
「多汰美、滝に着いたで。どうした、寒いんか?」
空を見上げると鉛色の雲が広がっている。寒がりの多汰美にとって雪が残るほどの寒い場所は
堪えたのだろうかと真紀子はコートの上から肩や背中をさすって足を止めた多汰美の体を案じ
る。多汰美は顔を微かに赤く染めて、大丈夫じゃよと一言残し、滝へと急ぐ。

真紀子はいつも自分は多汰美を甘えさせてやれない、と言うけれど、こんなふうにいつも自分
を気遣ってくれる。そのたびに自分の胸は高鳴るのだ。大きな覚悟とは言えないかもしれない
けれど、真紀子には前から言いたかったことがある。せめて今はそれを伝えたい。決心をした
多汰美の足音は、いつものランニングのステップのごとく規則的で力強いリズムを刻んだ。

「さすがに、こんだけ冷え込むと、滝を見に来るような人は少ないな。みんな街道のほうに
行っとるんやろか」
「そうじゃね」
二人があたりを見回すと、川の流れの音と滝の音だけが周りを包んでいる。人は自分たちしか
いない。まるであのときの再現のよう、と先に漏らしたのはどちらだったか。
730トリコロ 真紀子×多汰美10:05/01/05 06:29:25 ID:vgKc06QB
「マキちー」
「ん…なんや」
滝壺のそばのやや大きな岩の上に立った多汰美が、遊歩道の上に立つ真紀子に話しかける。
「私なあ、ひとつだけ後悔しとることがあるんよ」
「なにをいな?」
もしかしたら『後悔』とは「自分を抱いてほしい」と言ったことに関してだろうか。多汰美が
それを嫌がるのであれば、自分はさっきの発言を撤回するのにやぶさかではない。いくら好き
な相手だからといって、いつでも身を許せるというものでもないだろう。彼女が何を言っても
今日の自分はそれを素直に受け止めるまでだ。真紀子は多汰美の次の言葉を待つ。
「私、いつもマキちーに甘えとるけえ」
「…それやったら、私が甘えさせたいと思うてやっとることや。気にするな」
「それだけじゃのうて…その、あんなあ」
岩から落ちたら困ると手を差し伸べる真紀子の手をとって、下に降りた多汰美は濡れた石畳に
ややバランスを崩して真紀子の体にすがるように身を寄せる。真紀子は多汰美を怪我をさせ
まいと両腕と胸でしっかりと受け止めて抱き寄せる。預かった傘が真紀子の手から滑り落ちる
音がかすかに川岸に響いた。
「何を後悔することがあるんや。…いま誰もおらんから、言うてみ」
「ひとつだけ……私な、先にマキちーに好きって言いたかった」
「ああ」
「風邪引いたとき、ずっと考えとったんよ。マキちーのこと好きじゃけど、好きって言ったら
困らせると思って……。結局、マキちーが先に言ってくれたけえ、楽になったけど、……いつ
も私、甘えてばっかり」
多汰美は真紀子の肩口に顔をうずめる。
731トリコロ 真紀子×多汰美11:05/01/05 06:30:39 ID:vgKc06QB
「…多汰美は誰とでもキスできるか?」
「できんよ。――――好きな人としか」
「それやったら、私も後悔しとることがあるで。多汰美はノリでキスできるんかと思っとった
から、派手なことせんと驚かんかと思うて口移しでキスしてしもうたし。…あれ、多汰美は
初めてやってんな」
「…うん」
「もうちょっと考えてすればよかったなあ……。やっぱり雰囲気とか大事やから。ごめん」
「いいんよ。二回目のでおつりが来るけえ」
「そうか。…もう後悔しとることはないんか?」
「もうないよ。こうして一緒にいられるだけで、嬉しいけえ…マキちーは私を選んで後悔して
ない?」
真紀子は己の肩口に顔を寄せる多汰美の髪を撫でながら、一言二言囁く。激しい水音でかき
消されたかと思ったが、多汰美の耳にはその言葉ははっきりと届いた。
――――私も初めてキスしたのは多汰美やから。多汰美以外とは誰ともせえへん。

夕方になったからか、ひどく冷え込んできた。これでは多汰美がまた寒がるではないかと思っ
て、真紀子は多汰美を強く抱き寄せて空を見上げる。鉛色をした空からは、はらりはらりと
花びらが舞うように雪が降ってきた。
「…フロントの人の言うこと聞いといてよかったな。雪やで、多汰美」
真紀子の言葉につられて多汰美も空を見上げる。上に広がるのは鉛色の空と、それとは対照的
なほどの白い雪。眺めているうちに、自分の体が真紀子と一緒に天に吸い込まれていくような
錯覚を覚えた。このまま二人、ずっと一緒にいられたら――――。いつか二人で一緒に見た
秋空を思い出しながら、多汰美は真紀子にその身を預けて目を閉じた。
732トリコロ 真紀子×多汰美12:05/01/05 06:31:17 ID:vgKc06QB
「寒くなってきたな。温泉に入って温まらんと」
しばらくしてお互いの体温だけでは耐え切れないと判断した真紀子が、さっき落とした傘を
拾いなおして二人の頭上にさした。
「うん。ご飯の前に一回お風呂入った方がいいね。…八重ちゃんだけにおばさんの監視させる
のも酷じゃけえ」
真紀子と多汰美はやや小さめのビニール傘に身を寄せながらもと来た道を辿りなおしてホテル
に戻った。
二人が浴衣に着替えて大浴場に行くと、八重とロビーで別れてから一時間以上経っていたが、
八重も幸江ものんびりと湯船に浸かっていた。そういえば温泉に行きたいと最初に言い出して
ハガキを書いたのは八重だった。結局この二人は似たもの親子なんだなあ、と真紀子と多汰美
は顔を見合わせて笑い、檜風呂にゆっくりと浸かって冷え切った体を温めなおした。

夕食をとってから、八重と三人で二階の部屋で一緒にテレビを見たり、ゲームコーナーでエア
ホッケーやシューティング・ゲームで遊んだあと、もう一回お風呂に入ってくると言う八重と
別れて真紀子と多汰美は三階の部屋に戻った。
しばらくはテレビを見たりお茶を飲んで話をしたりしてくつろいでいたが、時計の針がいつも
の寝る時間に近づくにつれて二人を包む空気が重くなる。
(やっぱり、多汰美は私に誘われたいと思っとるやろな。)
意を決した真紀子が、ベッドで隣に腰掛けている多汰美に切り出した。
「多汰美。約束どおり『布団の中でしかできん続き』するけど、電気消してええ?」
もっといい誘い文句を考えつけなかったのかと心の中で舌打ちしつつ、多汰美の左手をとる。
多汰美は真っ赤になりながらも黙ってぎこちなくうなずき、ベッドの中に潜り込んだ。真紀子
はナイトテーブルに付いているスイッチを調節して部屋の電気を消し、間接照明のスタンドを
点けた。
733トリコロ 真紀子×多汰美13:05/01/05 06:31:57 ID:vgKc06QB
「多汰美、こっち向いて。多汰美の顔が見たい」
真紀子に諭されて、多汰美は体を起こしなおす。真紀子は多汰美の髪をやさしく撫でてから、
髪の毛を留めているヘアピンを一本ずつ、ゆっくりと外していく。四本全て外し終わった後、
真紀子は眼鏡を外してヘアピンと一緒にベッドの隣のナイトテーブルの上に置いた。
「…狼は怖くないか?」
多汰美をゆるやかに抱きしめながら、真紀子はなるべく穏やかな声で多汰美に訊く。
「大丈夫じゃよ。私ずっと、マキちーとこうしたいって思っとったけえ……」
多汰美は真紀子を抱き返して、真紀子の瞳を見つめる。もう、二人とも目に迷いは無かった。
そのことを確かめると、二人は目を閉じて唇を重ね合わせる。一度唇を離すと、多汰美はにっ
こりと微笑んで告げた。
「これで、五回めじゃねえ」
真紀子が苦笑いしてやり返す。
「もう、何回でも、数えきれんくらいしてやるから」
真紀子は再び多汰美を抱いて唇を重ねる。初めてのキスがやや強引だったのが心の中でずっと
引っ掛かっていたが、もう遠慮することはない。今度はゆっくりと唇を舐め上げて感触を味
わってから舌を挿しいれる。多汰美も先程の真紀子の言葉で意を汲んだらしく、挿しいれら
れた舌に怯えることなく自分の口内を貪る真紀子の舌の動きに応える。何度も何度も繰り返さ
れる接吻。真紀子の唇を受け入れるたびに、多汰美は想像していた以上の強い快感を覚える。
自分が愛する人に本気で求められるというのは、まるで天国にいるような気持ちだ、と。
何度も唇を重ねるにつれて、徐々に多汰美は真紀子に覆いかぶさられる体勢になった。体勢が
変わったのに合わせて、真紀子は唇をおとがいや首筋に押し当てはじめた。左腕は多汰美を
抱きながら、右手で首筋や肩をなでさする。
734トリコロ 真紀子×多汰美14:05/01/05 06:32:33 ID:vgKc06QB
「マキちー……」
「ん…どした? してほしいことでも、されたらいやなことでも、なんでも言え。初めてや
からな。上手にできなんだら、ごめん」
「私も初めてじゃけえ、なんにも分からんよ。…もう一回キスして」
多汰美の言葉を聞いてから、真紀子は髪を梳くように何度も撫で、それから口づける。愛しい
人、望むことならなんでもきいてやりたい。真紀子は頭の半分でそう思いながらも、もう半分
の意識は多汰美の全てがほしいという欲が支配していた。けれどいまはまだ、多汰美の望む
とおりに。多汰美を甘えさせるいつもの調子で、真紀子は顔に接吻を繰り返し、頭や肩を撫で
つづける。
多汰美は真紀子に抱かれながら、背中をそっと抱き寄せる。扱いが上手じゃない、甘えさせて
やれないといつも口にするけれど、真紀子は二人きりになるといつでもやさしい。それだけ
でもものすごく贅沢な思いをさせてもらっているのに、いまの真紀子はそれにも増してやさ
しい。触れられたところからとろけてしまいそうな感覚を覚えながら、多汰美は真紀子の口
づけに応じる。

何度も真紀子に触れられているうちに、多汰美の浴衣が着崩れてきた。照明は最低限の明るさ
に調節してあるが、それでも胸元の白い肌ははっきりと確認できる。真紀子が顔を赤くして
襟元を揃えなおすと、多汰美が真紀子を抱き寄せて、そっと耳打ちする。
「――――マキちー、キスだけでいいん?」
「…正直言うと、我慢できん」
735トリコロ 真紀子×多汰美15:05/01/05 06:33:12 ID:vgKc06QB
真紀子が多汰美の顔を見ると、潤んだ瞳で自分を見つめてくる。その瞳に魅入られるように
吸い込まれた拍子に真紀子の緊張の糸にぷつりと切れ目が入った。その綻びからは、多汰美の
全てが欲しいという欲が奔流のような勢いで溢れ出し、真紀子の全身にあっと言う間に浸透
する。
気が付いたときには、両手は多汰美の浴衣の帯を解きにかかっていた。
「多汰美…もう止められんから……」
一言呻くように漏らした後、あとは全身を駆け巡る欲求に従って帯を外して抜き取り、浴衣を
脱がせにかかる。乱暴ではないが、迷わずに力強く自分を求めてくる真紀子にやや驚きつつも
真紀子の欲求の奔流に呑まれるように、多汰美は体を浮かせて真紀子の動きに協力する。多汰
美の浴衣を脱がせたあと、真紀子も自分の浴衣を脱ぎ捨てて今度は多汰美のブラのホックを
外して奪い、一緒に床下へと払い落とす。
今まで服で守られていた体が一度に外気にさらされ、多汰美は身を固くする。いままでさん
ざん誘ってきたことも何度も一緒にお風呂に入ったことがあるのも頭では理解できているが、
いざそのときが来ると激しい羞恥心が沸き起こってくる。腕で隠した胸に意識を向けると、
両方の突起が固く膨らんで腕の皮膚を押し上げているのがはっきりと分かる。自分の体が真紀
子を受け入れるのを待っているという事実を改めて多汰美は認識し、恥ずかしさで顔と体を
シーツで隠そうとする。
真紀子は上半身をねじって身を隠そうとする多汰美の動きを許すまいと強引に抱き寄せて、頭
を自分側に向けて再び唇に口づける。頭の中にわずかに残った理性が多汰美が嫌がらないかと
恐れるが、自分の腕に直接伝わる肌の温かさと柔らかさの前にはもう抑えきれない。抵抗され
ないのをいいことに後ろ手で自分のブラを外して脱ぎ落とし、その勢いのまま多汰美の乳房へ
と左手を這わせる。中央の方は腕で隠されているので、下からそっと持ち上げるように触れ、
ゆっくりと刺激する。もっと全体を触りたいのを我慢し、多汰美が許してくれるまで待つつも
りで真紀子は撫でるような力加減で刺激しつづける。
736トリコロ 真紀子×多汰美16:05/01/05 06:33:52 ID:vgKc06QB
「…あっ……はぁ……っ、や……マキ、ちー……」
緊張が徐々に解けてきた多汰美は少しずつ声を漏らす。浴衣を脱がされたときには驚いたが、
ここまできても決して乱暴なことを自分にしないように振舞うのは、いつも自分に誠実な彼女
の姿と同じだ。
――――いつも真紀子が欲しいと思っていた。いま、その彼女が手に入っている。もっと彼女
が欲しい。もっと、もっと。
多汰美は自分の体を守っていた腕を解いて、すべてを許すように真紀子の背中を抱き寄せて
告げる。
「もう……いいよ、私、マキちーのものになりたい……」
もう自分を想う真紀子の心は痛いほど伝わった。今度は自分がすべてを彼女に捧げたい。心を
決めた多汰美は真紀子の左手を取って、自分の右胸の中央へと導いた。
真紀子は導かれた胸にじっくりと触れる。肌は温泉から上がったばかりのせいかしっとりと
自分の手に吸い付いてくる。軽く押すと程よく筋肉の付いた乳房の弾力が伝わってきた。
ここで、完全に真紀子の中に残っていた理性の糸は完全に切れた。
もう頭を、体を支配するのは多汰美のすべてを欲しがる狼か虎のような感情だけ。真紀子は
もう何度目かわからない口づけを交わしてから舌を首筋に這わせ、乳房へと降下させる。一度
軽く胸にキスをしてから、真紀子は多汰美の尖りきった突起を舐め上げた。
「……あ…っ、…マキ、ちー、マキちー……っ」
右胸は真紀子の左手に、左胸は真紀子の唇に支配され、もう多汰美には目を固く閉じて全身に
走る快感に体を任せることしかできない。腰のあたりに真紀子の長い黒髪がかかっているのが
分かる。いまはその髪のさらさらとした感触すら自分を抱く彼女の腕のようだ。何度か真紀子
に抱かれるところを想像して自慰をしたことがあるが、本物の真紀子が与えるのはその何倍
もの悦びだ。もっと真紀子に近付きたくて、もっと真紀子に自分を与えたくて、多汰美は目を
固く瞑ったまま手探りで彼女の艶やかな髪と頭を撫で続ける。
737トリコロ 真紀子×多汰美17:05/01/05 06:34:32 ID:vgKc06QB
真紀子は何度も多汰美の胸を貪るように味わい続けていたが、心の奥底から新たな強い欲が
沸き起こり、頭の中をうるさいほどに刺激する。
――――もっと多汰美が欲しい。すべてを呑みこんで、ひとつになりたい。
自分を支えていた右手を多汰美の腰から放し、人差し指と中指を下腹部へと滑らせる。触れた
布地を軽く引っ張って促すと、多汰美は真紀子の意図を察し、頭を抱き寄せていた腕の力を
解いて、腰を浮かせた。胸から離れるのは惜しいが、いまはそれを我慢して真紀子は多汰美の
ショーツを脱がせ、ついで自分の下着も脱いでベッドの下へと落とす。自分のショーツを脱ぐ
ときにやっと己の体に神経がいったが、自分の秘所は全く刺激を与えていないのに濡れそぼっ
ていた。
(なんもせんでも、こんなんなるなんて……。)
真紀子は感情だけでなく肉体も多汰美を欲しがっていることに驚き、ある種の感動にも似た
喜びを覚えた。
「多汰美」
「…うん」
「多汰美の初めてのもの、全部もらうから。そのかわり、私のも全部やるから」
真紀子の声が多汰美の体に甘く響く。
「うん。…マキちーに全部…、持っていってほしい」
真紀子は多汰美の言葉を確認すると、右手の指を秘所へとあてがう。多汰美の秘所も既に濡れ
そぼり、真紀子を受け入れる準備を終えていた。真紀子はじっくりと花弁を刺激する。秘所が
指の刺激を受けて立てる湿った音が二人の情欲にますます火を点ける。最初は軽く触れるよう
な力加減だったが、二人ともそれだけでは満足できない。真紀子はこじ開けるように左手で
多汰美の脚を広げ、右手の指で秘所を開き、多汰美のいちばん敏感な部分を確かめる。おそる
おそる舌を伸ばして陰核を舐め上げると、多汰美は悲鳴にも似た声を上げて体を跳ねて反応
する。その反応を見ながら微妙な加減で舌を動かし、さらなる刺激を与え続ける。
738トリコロ 真紀子×多汰美18:05/01/05 06:35:52 ID:vgKc06QB
「…あ、あぁ……っ! マキ…ちー、だめ…じゃよ、ふ…ぁ…っ」
ここまできてしまっては、もう真紀子も止められない。口で刺激を与えながら、右手を濡れ
そぼる入口にあてがい、くすぐるように、ときには回すように刺激する。多汰美はもう口では
抗う言葉も何も出せず、ただただ喘ぎ声しか発せられない。シーツを握り締め、意識が飛ば
ないようにと真紀子のことだけを考え続ける。だんだん途切れがちになる喘ぎ声と、ひくつく
入口。多汰美が達するのも近いと判断した真紀子は、最後の行動に出た。
口を秘所から放して一旦体を起こし、左腕で多汰美の体を抱き寄せる。触れた背中は汗をかく
ほど熱を持っていた。いまからすることは、もしかしたら多汰美が思っているよりも荒っぽい
ことになるかもしれない。それを紛らわせるかのように真紀子は乳房に吸い付き、突起を刺激
する。
「多汰美、ここの力抜いて…」
一度秘所から手を放し、注意を引き付ける。多汰美がくたりと軽く脚の力を抜くのを確認した
後、右の掌を秘所全体に当て、リズミカルに刺激する。
「…痛かったら、言うんやで」
一言だけ言い残してから真紀子は中指を深く秘所の中央に挿しいれた。
多汰美は自分の中を侵入してきた異物に驚く。痛みを与えないように、けれど進むことを決
して止めずに自分を侵す真紀子の指。しかし、多汰美をいちばん驚かせたのは、初めてなのに
まるで受け入れるのが当たり前であるかのようにスムーズにそれを受け入れる自分の体。
真紀子の指は何度か後戻りと侵入を繰り返す。そのたびごとに、多汰美の全身をこれまでに
経験したことがない痺れるような快感が襲う。
胸を刺激する唇、陰核を刺激する右手。真紀子の指が自分を貫いた瞬間、多汰美の頭は真っ白
になった。
739トリコロ 真紀子×多汰美19:05/01/05 06:36:36 ID:vgKc06QB
「……あ、あぁ……ぁっ! …マキ…ちー、マキちー、…マ、キ……っ!!」
多汰美は最後に真紀子の名前を叫んで、果てた。
真紀子はゆっくりと指を抜いてから、ぐったりとベッドに沈んだ多汰美を抱き寄せた。自分の
名前を最後に呼んだ後何も言えずに体を横たえる多汰美の髪を、真紀子は胸元で何度も撫で
続けて目覚めるのを待つ。

時計を見ていないので具体的な時間は分からないが、しばらくして多汰美は目を覚ました。
「マキちー…私……寝とった?」
「ああ」
「いまなあ…夢見とったんよ」
「…そうか。どんな夢やった?」
真紀子が問うと、多汰美は真紀子の胸に顔をうずめて答える。
「マキちーの心臓の音だけ聞こえてなあ…、夕方に一緒に見た空が見えた。なんかなあ、自分
が見とったんか、マキちーが見とったんか、よう分からんのじゃけど、……うん、空が見えた
んよ」
「そうか」
真紀子は多汰美の髪をやさしく撫でる。それに応えて、多汰美は一言告げた。
「マキちー、……好きじゃよ」
「私もや。ずっとおるから。どこにも行かんから」
「…うん。おやすみ、マキちー。」
「おやすみ、多汰美。」
それから二人は、眠りに落ちた。
740トリコロ 真紀子×多汰美20:05/01/05 06:37:24 ID:vgKc06QB
  <エピローグ>
――――真紀子は、夢を見た。
場所ははっきり分からない。目の前には川が流れている。天を見上げれば、鮮やかな青空。
前も、どこかでこんな風景を見たような。緑広がる向こう岸を眺めていると、後ろから自分を
呼ぶ声がする。
『マキちー、もう帰る時間じゃよ。なあ、またおでん作ってくれる?』
『たまご、たくさん入れればええんやろ』
振り返ると、いちばん愛しい少女がそこには立っていた。
――――いつでも帰るのは、あなたのところ。


                                                  おしまい。
741名無しさん@ピンキー:05/01/05 10:17:22 ID:zVuXbYsh
長杉w
742名無しさん@ピンキー:05/01/05 10:26:37 ID:hGmCgXdk
>>酸性温泉氏
キィィトゥアァァァ−−−(゚∀゚)−−−!!!!!
(;´Д`)ハァハァハァハァ カ、カワエエ…

激しく…激しくGJ!!!!!!
743名無しさん@ピンキー:05/01/05 12:54:15 ID:q0VoFc7o
『た…隊長!奴は…奴は我が軍の攻撃が効きません!それどころか…我が軍の損耗率90%越えました!
隊の殆どが萌え死にました!』

『くそう…酸性の温泉は化け物か…?』


…訳わかりませんが、酸性温泉氏、超GJ×千です!
744名無しさん@ピンキー:05/01/05 15:03:00 ID:IXMFaqtZ
>>705
禿げしくグッジョブです!
二人の違う話も読んでみたいな
745名無しさん@ピンキー:05/01/06 01:57:20 ID:neaMC3v5
どちらもすごく(・∀・)イイ!
746酸性温泉:05/01/06 21:48:45 ID:Bqu+fdEh
後半を少し加筆したバージョンをサイトにアップしました。よろしかったら
どうぞ。↓
ttp://acidspa.nobody.jp/ss10.htm

>741
orz<ゴメンナサイ
>742-743 >745
ありがとうございます。素人が書いた11作はとりあえずここで打ち止めです。
エロいのの手持ち札がもう切れましたのでw
747名無しさん@ピンキー:05/01/10 02:14:21 ID:nArVk4HE
保守
748名無しさん@ピンキー:05/01/11 03:49:47 ID:p3wqoWNJ
しゅらしゅしゅしゅ
749名無しさん@ピンキー:05/01/15 11:44:46 ID:es+5bUUm
保守
750名無しさん@ピンキー:05/01/19 12:57:05 ID:usUyjL3b
しゅ
751名無しさん@ピンキー:05/01/24 03:41:26 ID:069/f05J
ほしゅしゅ
752名無しさん@ピンキー:05/01/31 02:47:21 ID:urDBBPP5
保守
753名無しさん@ピンキー:05/02/02 22:33:11 ID:E7J7bm+3
職人さん щ(゚Д゚щ)カモォォォン
754酸性温泉:05/02/03 22:01:23 ID:cFBiCCnR
場つなぎに>721-740の番外編を投下します。
初心に戻ってにわ×八重です。
755トリコロ にわ×八重1:05/02/03 22:02:14 ID:cFBiCCnR
《約束》

道星高校の生徒たちが期末試験という名の枷から開放された、十二月上旬のある日のこと。
八重、真紀子、多汰美が学校から帰ると、茶の間では八重の母の幸江が喜色満面の笑みで封筒
を眺めていた。
「お母さん、ただいま。…なにそれ」
八重が幸江に持っている封筒を渡されて見てみると、『七瀬八重様』と宛名書きがされた書留
だった。
「八重ちゃん、どしたん? 中は何が入っとるん?」
多汰美に封筒の中身を尋ねられて、八重は開封済みの封筒から書類を取り出した。
「えっと…、『タウンながおり』からですね。あ、温泉旅行が当たりました!」
「そうよ。瀬田沢温泉のペア宿泊券。真紀子ちゃんも多汰美ちゃんも一緒に行きましょうね。
初めての家族旅行だから、楽しみだわ」
家族旅行と聞いて八重たちは三人とも嬉しくなった。毎日一緒に過ごすのも大事だけれど、特
別な行事を一緒に過ごすというのも大事だし、楽しみなものだ。
「なあ、八重ちゃん。瀬田沢温泉ってどのへんなん?」
「このへんの地理はまだ疎くてなあ」
真紀子と多汰美が同封されたパンフレットの地図を見ながら、温泉はどんなところかなあ、と
楽しげに話をする。八重はそんな二人を横目に見つつ、幸江に相談を持ち掛けた。
756トリコロ にわ×八重2:05/02/03 22:03:10 ID:cFBiCCnR
「ねえ、お母さん。にわちゃんも誘っていい?」
「そう思って、さっきもう二十六日の土曜にホテルに五人で泊まるって予約したわよ。あなた
たちも冬休みの方がいいでしょうし、私も一月だと町内会の用事や新年会が詰まってるのよ。
だから八重、潦さんにも遠慮なく来てねって伝えてちょうだい」
「うん。お母さん、ありがとう」
八重は幸江に礼を言った後二階へと駆け上がり、自室に入ってから景子へ携帯電話を掛けた。
きっと景子も喜んでくれるだろう、と期待をして。



雑誌を買いに出掛けた多汰美が夕方家に戻ると、玄関には景子の靴があった。今日は一度家に
帰ってから七瀬家を訪れると帰り道で話していたので、きっと自分が出掛けている間に来たの
だろう。八重から旅行に誘われれば景子のことだ、すっ飛んで来たに違いないと多汰美は噴き
出しそうになるのをこらえながら居間に入る。だが中を覗くと、こたつに入った真紀子しか
いなかった。
「ただいま。あれ、にわちゃんは?」
「にわは八重ちゃんと一緒に二階に行ったで」
鳩のななせを膝に乗せて文庫本を読んでいた真紀子が返事をする。多汰美はこたつの上に買っ
てきた雑誌を置いて、真紀子のはす向かいに座った。
757トリコロ にわ×八重3:05/02/03 22:06:50 ID:cFBiCCnR
「にわちゃん、飛んできたじゃろ?」
くすくす笑いながら多汰美が真紀子に尋ねる。
「いや、にわのやつ、行けんのやて」
「八重ちゃんが誘ったのに?」
多汰美が驚いて重ねて尋ねるので、真紀子は景子の家の事情を説明した。
「…そっか。それじゃあ、仕方ないね」
多汰美は組んだ手の上に軽くあごを乗せてため息をつく。自分たちにとって景子は大切な友人
だ。多汰美ができることなら一緒に行きたかったね、と真紀子に同意を求めると、真紀子は
文庫本に目を落としながら、小声で答えた。
「せやな。…まあ、にわもがっかりしとるやろうから、今二人だけにさせとるんやけど」
「ふうん。信頼しとるんじゃねえ」
多汰美が真紀子の顔を下から覗き込んで少し意地悪く笑う。
「八重ちゃんになんかあったら、ここの家の敷居は二度と跨がせんだけや」
からかわれてややムッとした真紀子がやり返すと、それを意にも止めずに多汰美もけろりと
言い返した。
「まるでマキちー、花嫁の父親みたい」
「多汰美!」
半ば呆れ、半ば怒った真紀子の声に驚いたななせが膝から飛び立ち、多汰美の頭の上に移動
した。そのままななせは頭の上に居座るかと思ったが、せわしなくばたばたと髪の毛の上を
動き回っている。
758トリコロ にわ×八重4:05/02/03 22:08:04 ID:cFBiCCnR
「あ、ななせ。八重ちゃんのところに行きたいんじゃね?」
多汰美が訊くと、ななせは返事ができない代わりにおとなしく多汰美の頭の上に鎮座した。
「じゃ、私ななせを二階に連れて行くけえ。…ごめんね、その……このあいだの『にわの気
持ちもよく分かる』って…あれ思い出したけえ、あの、気を悪くしたら……マキちー、ごめん
ね!」
多汰美は置いた雑誌をひったくるように掴んで、ななせを頭に抱えて二階へと駆け上がって
いった。それを呆然と見送った後、真紀子は顔を真っ赤にしてこたつ布団の上に突っ伏した。
「…多汰美のアホ、あんな恥ずかしい告白思い出させるな。…いや、その前に突っ込む所は
『花嫁の父親』か? ああ、もうっ……」



「――――残念です。でも、法事じゃ仕方がないですね」
しょげかえった八重が右隣に座っている景子の肩に寄り掛かる。八重は期待して電話を掛けた
が、二十六日は景子の親戚の家の法事が入っているから旅行は無理だ、という景子の返事。
景子も旅行には一緒に行きたかった。けれど法事はずっと以前から決まっていたことだったし、
法事のある家は景子の両親がよく世話になった家なので、いつもは忙しい景子の両親も揃って
出席するほどの大事な用事なのだ。両親思いの景子がわがままを通してまで旅行に行けるはず
がないのは、八重もよく分かっている。それでも。
「…にわちゃんと一緒に温泉に行きたかったです」
景子を困らせたくはなかった。でも、八重は温泉には前々から行きたかった。好きな人と行け
たら、その楽しみは何倍にもなると思っていただけに、八重の落胆は大きかった。
759トリコロ にわ×八重5:05/02/03 22:08:58 ID:cFBiCCnR
「七瀬」
景子は自分の肩に寄りかかる八重に視線を落とす。あまり自分の前でがっかりする姿を見せた
ことがない八重が、気落ちした言葉を吐いている。自分たちでは致し方のないことだと自分も
八重も重々承知していることは頭では分かっているが、景子は八重を落胆させたことに対する
罪悪感を感じていた。
「七瀬…ごめんね」
景子には謝ることしか思いつけなかった。そっと八重の右手を握り、天井を仰ぎ見て静かに
大きく息を吐く。

「私こそ、無理を言ってごめんなさい」
八重は景子の左手を握り返す。そのつもりは毛頭ないのに、景子を責めるようなことを言って
しまった。景子はいつでも八重にやさしい。自分が責めるようなことを言えば、反撃するより
も落ち込むことになるのは分かっている。でも、どうして自分はこんなに一緒に旅行に行け
ないことにがっかりしているのだろう、と八重は改めて考え込む。
景子とはいつも一緒にいるし、泊まるということなら、二人きりで夜を過ごしたこともある。
温泉だって今度近くにスパがオープンするのだから、これだって一緒に行こうと思えばなん
とかなるのだ。それでは、どこにここまでがっかりする理由があるのだろう?
760トリコロ にわ×八重6:05/02/03 22:09:48 ID:cFBiCCnR
「七瀬…えーと、鳩の方の『ななせ』だけど」
景子は我ながらややこしい名付けをしたものだと思いつつ、八重に話を切り出す。
「ななせは、旅行のときどうするの? 瀬田沢は近いけど、七瀬の家は車がないし、行くと
したら電車になるわよね。車ならこの子賢いから連れて行っても大丈夫だろうけど、電車や
ホテルには連れて入れないんじゃない?」
「あっ、そうですね。ななせは……、ななせも行けませんね」
自分の話だと分かるのだろうか、ななせは八重が自分の名前を口にした後、軽く首を上げて
飛び立ち、八重の膝の上に止まる。
「ななせも……行けないんですね」
八重は自分の言葉をもう一度反芻するように繰り返す。そして一言、そうか、と呟いた。

八重が景子に旅行に行けないと言われてがっかりした理由。それは、七瀬家が揃って行くはず
の『家族旅行』なのに『家族』が欠けてしまうから。確かに自分たちは元は赤の他人だった
かもしれない。けれど、真紀子と多汰美は良い友達、そして姉妹になってくれた。景子は姉妹
とは少し形が違うけれど、自分や七瀬家を助けてくれる大切な家族になってくれた。ななせも
元は違う飼い主のもとにいただろうが、いまでは立派な七瀬家の一員だ。八重は父を亡くして
から家族旅行というものをしたことがなかった。――――だから、景子と行きたかったのだ。
761トリコロ にわ×八重6:05/02/03 22:11:22 ID:cFBiCCnR
「八重ちゃん、入ってもいい? ななせを連れてきたんじゃけど」
襖の向こうから多汰美の声がする。景子は静かに八重の手を握っていた左手を離して膝の上に
置き、多汰美に沈んだ顔を見せまいと目を固く瞑って顔の筋肉に力を入れた。
「あ、はい。どうぞ」
八重が返事をすると、軽い音を立てて襖が開いた。次に響くのは、ばささ、とななせが多汰美
の頭から羽ばたく音。ななせは八重と景子の前に着地すると、そのままぺたりと床に座り込ん
だ。
「じゃあ八重ちゃん、ななせ置いていくけえ」
多汰美はそう言い残して、襖を閉めて部屋から出て行った。この寒いのにどこを走ってきたの
か、顔が上気していたが、と景子は不思議に思いながら、畳の上に目を落とす。ななせは餌を
ねだるでもなく、誰かの頭の上に居座るでもなく、おとなしく床に座っている。
この八重が飼っている鳩の「ななせ」という名前は景子が付けたものだ。ななせは元は台湾
から迷い込んできた飼い鳩だ。怪我をして野良の状態だったのを七瀬家で面倒を見たのが縁で
八重のペットとなった。
762トリコロ にわ×八重8:05/02/03 22:12:10 ID:cFBiCCnR
八重は自分の膝の上に居座るずんぐりとした灰色の鳩の背を撫でる。
(あなたも、私の家族なんですよ。)
そう思いながら。
八重の母、幸江はもちろん自分を大事に育ててくれた。真紀子と多汰美はそれまで静かだった
七瀬家に楽しさと賑やかさをもたらしてくれた。母娘二人の生活に大きな不満は感じなかった
けれど、家族が何倍にもなったいまの生活は、何物にも変えがたい貴重なものだと八重はしみ
じみ思う。そして、自分の隣にいてくれる、この人の存在も。

「……あの、さ。この子は七瀬が旅行に行っている間、私が預かるから」
景子はななせの背を撫でる八重の右手の上に軽く手を重ねて提案した。
「にわちゃん……」
「法事は家から近いところのお寺だし、せいぜい二、三時間くらいだって言われたから。その
くらいなら、ななせを一人にしても大丈夫だと思う。この子、私の家にも何度か来て慣れてる
だろうから」
「ええ」
「だから、七瀬も安心して旅行に行けばいいのよ。青野と由崎も一緒に旅行に行くの、初めて
じゃない? ななせは…この子は、私が面倒を見るから。七瀬やおばさんより信用されてない
かもしれないけど、私もこの子の家族のつもりだから」
照れ笑いを浮かべて自分を見る景子の顔を見て、八重は目頭が熱くなった。景子も自分と同じ
ことを考えてくれていた。それだけのことだけれど、それはとても八重にとって意味が大きい
ことだった。
763トリコロ にわ×八重9:05/02/03 22:14:04 ID:cFBiCCnR
「ななせ、分かった?」
景子が軽く指でななせの背をつつくと、返事がわりだろう。ななせは八重の膝から飛び立ち、
景子の頭の上に居座った。ななせは気を許した人間の頭の上にしか座らないのだ。
「分かったみたいね。じゃ、七瀬。私の分も『家族旅行』に行ってきてね」
景子はななせを頭から下ろして膝に座らせなおし、八重の右手をとる。
「…はい、ありがとうございます」
ハンカチで涙を拭う八重のこめかみのあたりに景子の右手が触れる。髪を指で梳くように軽く
撫で、そのまま髪を持ち上げて景子は八重の頬にキスをした。
「八重、泣かないで。私、……八重に泣かれたら、どうしていいか分からない」
「にわちゃん……ごめんなさい。でも私、悲しいんじゃないんです。嬉しいんです」
自分をそっと包みこむ腕に抱かれながら、八重は景子の胸に顔をうずめる。景子はめったな
ことでは八重を名前で呼ばない。いつも「七瀬」と苗字で呼ぶ。わざわざ景子が名前で呼んで
くれた意味は、いまの二人には十分通じ合った。
――――この人は、私の恋人であり、親友であり、家族なのだ、と。

ようやく八重の気持ちが落ち着いた頃、景子がこっそり呟いた。
「…でも、この子、結構重くなったわね。七瀬が旅行に行っている間、餌やらなくてもいいん
じゃないかしら」
「そんなこと言うと、にわちゃん、またななせに突っつかれますよ」
景子の腕の中で安心しきった八重が、微笑を浮かべて返事をする。
「大丈夫。ちゃんと餌は好きなの買っとくからね、ななせ」
景子が左手で撫でると、ななせは嬉しそうにクルル、と鳴いた。
764トリコロ にわ×八重10:05/02/03 22:15:12 ID:cFBiCCnR


明日は期末試験明けで学校は休みなので、今日も景子は七瀬家に泊まることになった。
いつもどおり夕食と入浴を済ませた後、四人でテレビを見たりトランプをしたりして過ごす。
真紀子と多汰美は八重が思ったよりも落ち込んでいないことに心の中で安堵しつつ、景子の
分まで自分たちが八重と一緒に温泉に入ってくるよ、と笑いながら景子をからかった。

ゲームが終わったあと八重と景子は、八重の部屋に戻る。
夕方に多汰美が新製品の綿棒を何本か譲ってくれたので、八重が景子の耳掃除をすることに
した。八重が布団の上に正座をして、景子はその膝の上に頭を乗せて横になる。
「動いちゃだめですよ」
「うん」
景子は母親の言いつけを聞く幼稚園児のように返事をした。自分が困っているときは進んで
助けてくれる景子だが、ときどきやけに小さな妹のように見えるときがあるのだから、八重
にはおかしくて仕方がない。小さな子を見守る母親のような微笑を浮かべて、八重は景子の
耳を丁寧に掃除する。
「ねえ、七瀬」
「はい、なんですか。痛かったら言って下さいね」
「…ありがとう」
「まだ終わってないですよ、にわちゃん」
八重がにっこり微笑んで、最後の仕上げにかかる。何か言葉が続くだろうかと思ったが、景子
はそのままおとなしくなったので、八重も黙って景子の耳の掃除を続けた。
765トリコロ にわ×八重11:05/02/03 22:16:32 ID:cFBiCCnR
「おみやげは何がいいですか」
右耳の掃除を終えた後、八重が話を振る。
「んー…なんでもいい。あ、七瀬の浴衣の写真さえデジカメで撮ってきてくれれば、それで
いいから」
しれっとした顔で八重の質問に答えて、景子は向きを変えて再び横になる。
制服姿も私服もパジャマも見られていて、一緒にお風呂にも入ったことがあるのだから裸も
見られているのに、どうしてそこまでこだわるのかな、と八重は小首を傾げつつ左耳を掃除
する。そういえば夏に景子をおいて真紀子、多汰美と三人でプールに行ったときも、八重の
水着姿が見たかったと数日ごねていたことを思い出し、八重は苦笑した。
「わかりました。真紀子さんか多汰美さんに撮ってもらいますから」
「うん。温泉、どんな所か教えてね」
「はい」

ちょうど耳の掃除も終わり、八重が肩を叩いて促すと景子はゆっくりと体を起こした。眠気が
差しているのか、目が少しとろんとしている。
「いつか、一緒に行こう」
「はい。また、懸賞出しますから」
八重が嬉しそうにそう言うと、景子はかぶりを振った。喜んでくれると思ったのに、と景子の
反応をいぶかしむと、景子は右手でそっと八重の手を包みこむ。
「いいの、もう懸賞は出さなくて。いつか、……そうね、アルバイトでもして、自分のお金が
持てるようになったら、そしたらそのお金で七瀬と一緒に行きたい」
また運を使って七瀬が成長を削ってしまったらいやだから、と付け加えて景子は笑う。さっき
まで眠そうだった目もしっかりとした光を持ち直して八重を見つめている。
八重は景子の言葉に胸を熱くして、景子の右手を握り返す。
「はい。行きましょう。……いつか、二人で」
「うん」
景子は八重の右手をとりなおして持ち上げて片膝をつき、姫君に忠誠を誓う騎士よろしく八重
の手の甲にキスをした。
「――――約束する。私はずっと、七瀬と一緒だから」

                                                    おしまい。
766酸性温泉:05/02/03 22:20:30 ID:cFBiCCnR
すみません、投稿順序を間違えました。>>755-759>>761>>760>>762-765
順にお読み下さい。(761が6、760が7)

それでは、次の職人さん、あとはよろしく頼みます。
767名無しさん@ピンキー:05/02/04 01:36:33 ID:ydLF1Kda
>>766
キタ━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━!!!

甘ーい、甘すぎるよ2人とも。
(*´∀`)b GJ!!
768名無しさん@ピンキー:05/02/04 08:55:57 ID:9nW4diyc
>>766
乙です。いつもありがとう。
769酸性温泉:05/02/06 21:33:11 ID:SeEyr1RK
>767-768
ありがとうございます。ああ、やっぱりにわ×八重は好きだと再確認。
真紀子×多汰美も好きなのですが。
ただ、これから当分エロいのは書く予定がないので、巣>>656に帰ります。
多汰美×真紀子のエロでも書けたらまた来ます(無理)。
770名無しさん@ピンキー:05/02/07 19:51:19 ID:BJxYtdTd
ふたつのスピカは百合的にも結構良さげな題材だと思うんだけど…見ないね。
圭×アスミ×マリカとか良さげなんだけど
771名無しさん@ピンキー
マリカ×アスミだといいな。
桐生が激しく邪魔だが。

桐生と離していたマリカっぽい子はマリカとは別のクローンだということでいいのだろうか。
そうならば、桐生はその子とくっつけばいいんだ。