(;´Д`)ハァハァ
11様グッジョブ!
人少なげでいと哀し……
世間は次世代罰箱の話題で持ちきりですが、
まだまだ御伽で(;´Д`)ハァハァアゲ
ゆらゆらと揺らめく灯火に照らされ、人に非ざる美しき一対の男女が身体を繋げている。
仄かに紅色に染まった肌を彩る艶やかな黒髪、肢体を弄られる度に形の良い唇から漏れる切なげな吐息、噎せ返るような雌の匂い……其れらは、目の当たりにした者の好色な欲望を掻き立てさせるに充分であろう。
そして今、頼光もまた情欲を律する事叶わず、身の内に生じた熱を持て余し困惑していた。
「おや?……傀儡も我らに煽られておるのではないか?……ほれ、其方が相手をしてやるが良い。」
何時の間にか傍らに控えていた九尾の下僕が、主の命を受けてにたりと妖艶な笑みを浮かべる。
「……かしこまりました。御方の御心のままに。」
人外の女は何処か晴明にも似た表情を湛え、動きを封じられたままの頼光に歩み寄ってきた。
そしておもむろに頼光の衣の帯を解くと、襟に手を掛けて前を寛げる。
「晴明は御方の物ゆえ、最早貴様が其の腕に抱く事は叶わぬ。だが……晴明を白珠の毒気から救った褒美に、我が御相手仕る。御方の御慈悲に感謝するが良いわ。」
女はゆっくりと跪き、立ち尽くす頼光の雄に手を伸ばし―――口に咥えた。
「!!止せ……くっ!!」
真綿のように温かな口腔に包まれ、えもいわれぬ快感が頼光を襲う。必死に悦楽に耐える頼光の様を、女が愉悦の笑みを浮かべて見上げた。
「ふふっ……我を晴明と思うても良いのだぞ?」
「っ……くぅ……。」
情を交わした男の眼前で辱めるのみで飽き足らず、男に別の女を宛う……悪趣味極まりない九尾の嗜好に翻弄され、晴明の心は千々に乱される。
「頼光……!!」
掠れた声でうわ言のように愛おしき名を呼ぶ晴明であったが、其れは九尾の不興を買うのみで。
「我に抱かれている時に、他の男を呼ぶか?……困った娘よの。」
忌まわしげに呟きながら晴明の顎を捕え、噛み付くように口付けた。
「ん……ぅんんっ!!」
絡められる舌も、肌を這う掌の感触も、己を貫く陽根の熱さも……全てがおぞましいのに心地良い。
零れ落ちる涙の意味も分からず、晴明はただ、九尾の激情を其の身に受け容れ続けていた。
809 :
11:2005/05/27(金) 19:18:13 ID:wLWt899i
九尾ぱぱんは間違いなく佐渡……もといSだと思われ。
そして晴明さまはいぢめて啼かせてみたくなるのは何故でしょう。
ついでに頼光はヘタレがデフォですな_| ̄|○イメージ崩してスマソ。
たまには格好良い頼光も書かないとまた呪われてしまいそうです。
続きキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
イメージ崩すなんてとんでもない、というかイメージ通りです……
頼光も何だかんだ言いながらゲーム上では女人にこき使われている訳ですしw
ホシュカキコ(・∀・)っ/○☆チリーン
しかし我が家の罰箱様はものの見事に御伽&百鬼専用となってしまいました。
他に何かやってみようかな、と思っているうちに次世代罰箱発表……
3が発表されたら次世代罰箱も同じかもしれませんが
812 :
名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 06:41:12 ID:17uzB4el
ホシュあげ。
職人様お待ち。
813 :
名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 19:49:04 ID:WS1gaJdz
ホシュホシュ 寂しげだけどまだまだ萌えへ……
814 :
名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 00:12:15 ID:85rWuYb1
神の降臨をお待ち申しage
最近職人さんが来なくて寂しい(´・ω・`)っ/○))★リリーン
御伽の続編が来たらもっと盛り上がるんだろうか・・・。
職人さん達も忙しい時期なんですよ。(´・ω・`)っ/○))★リリーン
817 :
661:2005/06/25(土) 07:03:33 ID:90jBVYRE
職人さん達がお休みの間、御留守番に参りました。
濡れ場は…現状では無いに等しい状態な上に、有ったとしても
そこに行くまでが長過ぎると言う
此処に投下するには場違いやも知れませぬが、職人さん達が参られる繋ぎにしてくだされ。
818 :
娥光ー1:2005/06/25(土) 07:05:39 ID:90jBVYRE
「今宵は何が有っても決して館の外には出られませぬ様」
寝所を整え退室する際に、貞光が言い残して行った言葉だ。
初めは然程気には留めなかった。
寧ろ、晴明の留守を預かる身として何か有ってはならぬとの彼女なりの心使いであると思っていたからだ。
だが、いざ床に就き眠ろうとすると、何とも例え難い違和感を覚えた。
燈明の灯りに照らされた室内は普段と変わらぬ、だが何かが違うと己が肌を伝って感じる。
火を吹き消すと、妻戸の僅かな隙間より月明かりが射し込む。
頼光は目を閉じ、耳を澄まし意識を集中させた。
チャリ…ジャリ……
中庭の玉砂利を踏む音であろうか…何かが居るのが判る。
其れは音からしても小さい生き物である様な…。
『獣が迷い込んだか…』
妻戸に手を掛けるが、貞光に言われた言葉を思い出す。
暫し躊躇し考えるが、館の外に出ねば良いのだと結論付け、僅かに戸を開けた。
そして外の様子を伺えば、眩いばかりの月の光。
視線を巡らせれば銀色の光を淡く放つ一匹の狐が居た。
『何と見事な毛並であるか…』
あまりに美しい姿に目を奪われ、息をするのを忘れそうになる。
よく見ると、光を放って居たと思われたその体は、白く透き通る毛に月明かりが反射している所為だと気付いた。
白狐は何をするでもなく、唯々静かな佇まいで空を仰ぎ見ている。
819 :
娥光ー2:2005/06/25(土) 07:08:00 ID:90jBVYRE
何れ程の刻が経っただろうか…。
暫し見つめて居ると、狐の体が霞掛ったかの如くぼやけ、光の中に包まれて行くかの様な…。
頼光は目を擦り、再び外に視線を戻した。
「な…」
思わず身を乗り出し、凝視する。
朧になった狐の輪郭は、光と混じり形を変えて行く。
そして成すは人の姿…。
頼光は正に『狐に抓まれた』様な光景に呆気に取られていた。
次第に明確になって来るその貌…。
肌は狐の毛色と同じくして白く透き通り、美しい曲線にしてまろい肢体。
顔は背を向けている為見えないが、恐らくは…。
頼光は首を振り思考を絶つと、傍らの剣を手にした。
『姿に惑わされては為らぬ…此れはあやかしぞ…』
頼光は一呼吸して後、勢い付けて庭に躍り出た。
あやしの者は、僅かに首を横に向けたが、別段驚いた様子も無く、かと言って構える様子も無く…。
「其処なるあやしの者よ、何をしに此処へ参った?返答次第では容赦はせぬぞ」
相手の出方を様子見て、頼光はそう言い放った。
「今宵は外へ出てはならぬと…貞光に言って有った筈だが…」
聞き覚えの有る声に頼光は眉をひそめて、今一度問掛けた。
「お主…何者ぞ?」
問われる彼の者は、溜め息を一つ付くと少し待つ様に言った。
手を髪に運び、梳る様に数本抜き取ると、其れを符の代わりとして呪を唱えた。
頼光は気を張り詰め、何時でも剣を構える事が出来る様にと柄を握り、其の者の仕草を注意深く見守って居た。
彼の者は、呪より作りし衣をゆたりと纏うと、漸く頼光の方を向いた。
「待たせましたね…」
振り向きしその顔に頼光は驚愕した。
820 :
661:2005/06/25(土) 07:10:34 ID:90jBVYRE
「日●昔話」の様な内容のブツですが、まぁサラッと流して下さいませ。
新たな職人様キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
「日●昔話」のような話の中に漂う、微かなエロスの空気に期待します(;´Д`)ハァハァ
しばらく覗いていない間に新たな神が御降臨(;´Д`)
期待して続きをお待ち申し上げまする。
823 :
名無しさん@ピンキー:2005/06/29(水) 06:30:31 ID:Un3AxkST
ほしゅあげ。
職人様達の萌え文待ち。
新しい職人様の続きも(*´Д`)ハァハァしながら待ち。
(;´Д`)ハァハァ
続きを伏してお待ち申し上げまする。
825 :
娥光-3:2005/07/01(金) 21:31:56 ID:1epSg6L5
「晴明…か…?」
だが、そんな筈は無かろう思う所為も有り、剣の柄に手を掛けたまま…。
「正か貴方に斯様な姿を見られてしまうとは…」
そう言い、『晴明』はゆっくりと歩み寄った。
そして白い手を頼光の柄に掛けた手にそっと添えた。
途端、脱力感に襲われてあわや剣を落としそうになるも、それを地に突き立て自重を支える。
「何をした…」
訝し気に問うと
「済みませぬ…。ですが…」
ちらりと剣を見やると
「信じて頂けましょうか…」と呟く。
頼光は暫し考えると諾し柄より手を離した。
「して、其方は一体何者ぞ?」その場に腰を落ち着けると本題を切り出した。
まだ警戒を解かぬのか、剣の横に侍る。
『成程…噂に違わぬ武人であらせられる。』
晴明は小さく頷くと、ぽつりと話し始めた。
「先の事でお判りと存知ますが、私は只人に非ず。ですが…妖鬼とも言えぬ存在にござります。
…貴殿方が『月』と呼びし処からこの地に降りて参った者でございます」
そう言い空を仰ぎ見る。
頼光も自然とそれに習い、その白き玉輪と彼女の横顔とを交互に見比べた。
『成程。人を魅了する程の貌はそれ故か…』
826 :
娥光-4:2005/07/01(金) 21:33:36 ID:1epSg6L5
「して、月の眷属を語る其方が何用でこの地に参ったのだ?そして何故私を現世に呼び給うた?」
「貴方を黄泉返らせたは…眠りの場で申した通り…あの言葉に偽りはございませぬ。この地に降りて参ったのは…」
晴明は遠くを見つめると、少し考える素振りを見せた。そして淡く微笑むと
「人に焦がれ、人と成りたいとの想いが有ったからでございます。」
月明かりに照らされた彼女の笑顔に、どうして疑いを持てようか?
頼光は脇に突き立てた剣を引き抜くと、それを両手で差し出し深く頭を下げた。
「済まぬ…其方を疑ってしまった…」
晴明は少し驚いた表情を見せたが、再び微笑むと
「信じて頂けて嬉しゅうございます。」
と頼光の前に膝を付いた。
「して、もう一つお聞き致すが、其方は如何して斯様な時分に表へ?日中館には居らなんだ様子であったが…」
頼光は面を上げると、先と同じく膝を崩して座した。
「はい…最早隠すつもりはございませぬ。お話し致しましょう」
偽りは言わぬとの意志を示す為であろう、真っ向から視線を合わせて 晴明は語り始めた。
827 :
娥光-5:2005/07/01(金) 21:34:51 ID:1epSg6L5
「この地に住まう者達に陽の光が必要な様に、月の者である私にはこの光が必要不可欠なのです。
この地の者らを昼の住人とするならば、私は云わば夜の住人…。私は月の力を身の内に蓄え巫力として居ります。
故に日中あまり討伐に出る事が出来ませぬ。」
晴明が強大な力を持って居るのは知っていたが、然し、かと云って率先して討伐をしている訳では無く、
どちらと言えば、助言や策を下したりと…。
彼女自身が修伐すれば、妖鬼共は立ちどころに消え失せように…なのに何故…そう疑問に思って居ただけに酷く納得がいった。
「そうであったか。なれば今宵の月の如く望月なれば、其方の力もより強大なものになろうな…。
差詰め、遠き地にて一仕事終えて参ったと言った所であろう」
労う様に笑い掛ければ、彼女は小さく頷いた。
「では、今宵はこれまでとするか…」
腰を上げ館の内へ戻ろうとする頼光を手で引き留めると。
「この事はどうか内密にして頂きたく…それと…」
やや躊躇し口ごもる。
「まだ何用か?」
先を促されて、晴明は口を開いた。
「その…月陰の時は私は動く事もままなりませぬ故…其の時はどうか…」
「あい判った。其の時は必ずや力になろうぞ」
頼光は強く頷くと館の内へ戻って行った。
その頼もしい後ろ姿を見送り、そっとその背に語りかける。
『真…我が刃たるにふさわしき武人ぞ』
一人中庭に残された晴明は満足気な表情で空を仰いだ。
『必ずやこの刃でお前を滅してくれようぞ』
828 :
661:2005/07/01(金) 21:37:51 ID:1epSg6L5
ゑ露には程遠い内容ですが、穴埋めで投下。
他の職人様の御降臨、お待ちしてますぞえ〜
661殿GJ!凛々しい中にも色気ある晴明様(;´Д`)ハァハァ
830 :
娥光-6:2005/07/03(日) 22:53:25 ID:ewjjj1DI
日を追う毎に増える妖鬼共の数、それに比例し討伐に赴く数も自然と増えていった。
「こうも立て続けに蟲退治とは、流石の儂でもいい加減嫌になるぞ。やはり元を絶たねばキリが無いか…」
館に着くなり綱が言う。
「此所数日、晴明殿が奴らの塒を探って居った様じゃが…どうしたもんかのぅ」
続いて季武が門を潜って来た。そんな二人を貞光が出迎える。
「晴明様は庵の方へ居られます。明後日には戻られましょうが…。討伐の件は伺っておりますので、公時が戻りましたら皆で話を…」
「頼光はどうした?」
館の内を覗き込む様に見、綱が問いかけた。
「頼光様は遠くの討伐の地に向かわれるとの事で、今朝方晴明様と共に館を出られました」
831 :
娥光-7:2005/07/03(日) 22:54:07 ID:ewjjj1DI
最も天に近く、そして最も清洌なる場所…
天の麓…そう呼ばれる場所に辿り着いた時、一番最初に頭に浮かんだ言葉である
「大丈夫か…?」
己の肩にしがみつき、今にも倒れそうになっている晴明を、頼光の逞しくも細い腕が支える
「情けのぅございます」
晴明は薄く笑うと溜め息を一つついた。
「よし」
頼光の声に何を?と顔を上げた時、不意に晴明の体が宙に浮いた。
「なっ…!何を!」
頼光は晴明の体を軽々と抱きかかえると、そのまま歩きだした。
「庵までは後少し、自分で歩けます!降ろして下さいませ!」
腕の中で暴れる晴明に
「後少しの距離を歩くのも危ういのだから、おとなしくして居られよ。さもなくば落としてしまうやも知れぬぞ」
少々脅しを含んだその言葉に、彼女は閉口した。
庵の側迄来ると、晴明は此処で降ろす様言った。
「この辺りからは呪が施して有る故…」
頼光に支えられながら、印を切る。すると靄が掛っていると思われた辺り一帯の視界が開けて来た。
『成程…結界か…』
再び抱き抱えようとする頼光に、首を振って断ると肩に手をかけ歩く様促した。
庵の内に入ると、其れは僅か1間の部屋が有るのみで、その事からも彼女1人の為だけに在る建物だと言う事が判る。
晴明は烏帽子を取り腰を落ち着けると、頼光にも着座を勧めた。
「此処は高地故に、月の力も幾分か強い。私には此処が一番落ち着くのです。」
格子戸の隙間から僅かに射し込む日の光…
其の光が短く消えゆく様子を見ながら、呟いた。
832 :
661:2005/07/03(日) 23:00:05 ID:ewjjj1DI
前回投下迄で話が終りだと思われるとイカンので、続きを投下しました。
ゑ露になる迄、だらだら逝っちゃうので、スルーして下さい。
|・ω・)…… 。
職人様方がお留守のようなのでほしゅがてら投下させていただきまつ。
文章書き若葉マークなのであちこち読みづらいと思いますがそこは目を
瞑って下さると幸いとです。
お口に合わない方もスルーで宜しくとです(´・ω・`)っ/○☆チリーン
心地よい夜風が吹き抜け、書物を記していた晴明の手元にはらりと紅葉の葉が落ちた。
筆を休め、葉を拾い上げてみればそれは赤子の掌のように愛らしい。
「・・・・もう、紅葉の季節なのですね・・・・」
ついこの前までうだるような暑い日が続いていたというのに、夜半ともなると少々肌寒い。
紅葉の葉を硯の側へ置き、再び筆を取ろうとしたその時――――――
風の音に混じり、何処から微かに響く澄んだ笛の音に手が止まる。
聞き覚えのある、優雅で繊細な旋律。吹いているのはおそらく彼だろう。
書きかけの書物をそのままに、晴明は笛の音に誘われるように庭へと降りた。
天上に浮かぶ月は十六夜。
銀色の月明りに、かつてのような禍々しさは無い。
かの白き巨妖―――九尾の狐を屠り、星降りの儀を阻止したのはもう幾月も前の事。
しかし未だ地上には妖鬼が蔓延り、白珠を失った人々は都の復興に相当の苦労を強いられていた。
先日も数多の死霊が蠢く地にて赤毛の鬼を退けたばかりだが、その時彼は随分と深手を負い
仮初の身体を存続させるのが危うい程巫力を失い、一時はどうなる事かと肝を冷やしたのだが。
――――臥せっていたはずの彼が、何故このような夜分に?
随分と遠くから笛の音は聞こえてくる。音を辿り、晴明は天の麓を駆けた。
あちらこちらの岩盤が剥がれ、地が抉れているのはかつて彼と戦った時にできたもの。
その跡も、今は紅葉に埋もれ紅に彩られていた。
竹林を抜けると、視界が開け眼前に断崖の小島が聳え立つ。
音のする方―――――頭上を仰ぎ見れば、はるか高台の上に彼の――――頼光の姿があった。
漆黒の髪が夜風に揺れ、月光を受けて輝く姿は美しいが、どこか寂しげで。
いつに無く儚い笛の音に、晴明は胸を締め付けられるような感覚を覚える。
――――何故、そのような悲しい笛を吹かれるのですか・・・・・?
彼の所へ行くべきか否か、躊躇っている間に笛の音が止んだ。
気配に気づいたのか、頼光がゆっくりと振り返り、その長い漆黒の髪を風が煽った。
「・・・・・晴明か・・・・・?」
「頼光、そちらへ行っても・・・・宜しいですか?」
承諾する彼が普段と変わりない様子だった事に安堵し、晴明は崖を駆け上り高台まで跳んだ。
白い狩衣がふわりと夜空に広がり、招くように手を差し出した頼光の腕の中に舞い降りる。
「・・・・笛の音で起こしてしまったか・・・・?」
「いえ、雑用を済ませていた折、笛の音が聞こえたもので・・・・・頼光、御身はもう良いのですか?」
「巫力さえ戻れば大事無い。貴女の処置が迅速であった故、この身は滅びずに済んだ・・・・かたじけない」
心配そうに顔を覗き込む晴明の髪を撫で、頼光は微かに口元に笑みを浮かべる。
人前では滅多に見せない、彼の緊張の解けた表情につられるように、晴明も頬を緩ませた。
「もったいないお言葉・・・・・・・貴方の力無くして、かの鬼を退ける事は適わなかったでしょう。
礼を言わねばならぬはこちらの方です・・・」
謝礼を述べる彼に、ゆるりとかぶりを降って其を否定する。と、彼の傍の木に奉魂の剣と彼の武具一式が
立掛けてある事に気付いた。磨き上げられた白銀の甲冑の肩に付いている非対称の角の片割れは、
先日戦ったかの鬼―――酒呑童子のものであったか。
「頼光・・・これは・・・?」
訝しそうに頭を傾げる晴明からそっと離れると、頼光は奉魂の剣を手に取り己の前に掲げる。
「・・・・・かつてこの手で奪いし数多の魂への、慰めにと思うてな・・・・・」
「それで・・・笛を・・・?」
「・・・・・ああ・・・・・」
刃毀れ一つ無い見事な刀身は月光を受けて輝き、その光の宿らぬ瞳の中で揺らめいた。
手にした剣をもう片手の手首に押し当て滑らせると、鮮血が溢れて滴り、みるみるうちに袖を緋色に染める。
「な、何をなさるのですか……!」
血に濡れた腕を晴明の前に差し出すと、傷口から淡い光の粒子が零れ、傷口が塞がり始めた。
「かつては一度剣を振るう度、業を重ねる度、この血に宿る穢れた何かに己が蝕まれていく……
斯様な恐怖に私は怯えていた。故に心を殺し、傀儡となってこの力と向かい合い、贖罪を果たそうとした。
だが、かの鬼と初めて刃を交えた時……私はこの力を使う事に愉悦を覚えた。
この力を使ても勝てぬ相手に出会えた事に、密かに悦びを感じた……」
ぽつり、ぽつりと語り始める頼光の意思が汲み取れず、当惑しつつも晴明は
其の言の葉を聞き漏らすまいと真摯に聞き入る。
「この力を憎いと、穢れていると思いながらも戦う事を止められぬ。剣を振るえば振るう程、
力を使えば使う程、この身が穢れて行くのを感じながらも鬼と戦った。剣を収め我に返った時、
私は己の内に沸き上がる罪悪感を抑える事ができなかった……」
腕の傷口は完全に塞がり、血の痕跡は跡形も無く消えていた。憂いの眼差しでそれを見つめていた
頼光だったが、深く溜息をつくと、剣を収め再び木に掛けた。
「……もう千年も昔の話であるが……先日かの鬼と再び刃を交え、その事を思い出した迄の事。
皮肉なものだ……この背に負いし我が罪は忌むべきこの力でしか贖えぬとは……」
自嘲するように呟く頼光の肩が、微かに震えているのは気のせいか否か。
無口な彼がここまで口を割り、己の感情を吐露する事など滅多に無い。
どう取り繕って良いものか考えあぐねていた晴明の肩を、頼光が軽く叩いた。
「……つまらぬ感傷につき合わせてしまったな……」
済まなそうに微笑む彼に、一瞬驚くが晴明も柔らかく微笑み返した。
「つまらぬ等……貴方が御自身の事を語って下さった事、光栄に思います。ですが……」
するりと晴明の両手が頼光の頬に伸び、包み込む。そして――――――
「折角巫力が戻ったというのに、無駄遣いしないで下さいませ!」
彼の両頬を、ぎゅうっと思いきり抓った。
「望月は過ぎましたが、見事な月夜に御座いますね」
「……ああ」
岩に腰を下ろし、晴明は夜空を見上げる。その隣で、赤く染まった頬を擦りながら頼光も
夜空を見上げた。雲一つ無い、澄んだ夜空である。
「月は人の心を惑わすというが……斯様な月に酔わされたようだな……
今宵の事は忘れてくれ、晴明」
小さく嘆息し自責する頼光を、晴明は暫しの間見つめていたが
口元に袖を当て、悪戯っぽい笑みを浮かべながら彼にそっと身を擦り寄せた。
「承知致しました……ですが、忘れてしまうのは少々惜しい気が致します」
自ら進んで自身の過去を話す事は勿論、その内に秘めた闇をを吐露するなどと――――
日頃見せない彼の一面を知り、時間と理に隔たれた距離が少しでも縮んだような気がして
嬉しさと愛しさが込み上げ、胸が熱くなる。
「………晴明」
「戯言故……お気になさいますな」
呆れたような表情を向ける頼光の、その頬に先程抓った跡が赤く残っている事に気付く。
「まあ……斯様にきつく抓った覚えはありませぬが……」
晴明は頬に顔を寄せ――――――――その跡をぺろりと舐め上げた。
「………っっ!?」
突然の行動に面食らい、慌てふためく頼光など気にも留めず晴明は獣が傷を癒すように
舌を這わせる。
「せ、晴明……!何を……?」
もう片方の頬に顔を寄せようと、身を圧し掛からせてくる彼女の肩を押さえて制すると
晴明はその手を外して己の口元へと運び、指先に口付けた。
「……一体どうしたというのだ、晴明……?」
「どうやら、私も月に酔ってしまったようです…その…」
恥じらいながら、潤んだ瞳を向ける晴明の頭に、狐の耳が生えていた――――――
ように見えたのは、気のせいか…。
「…はしたない事だと……判っては……おりますが…頼光……」
するりと頼光の懐に身を割り込ませ、途惑いがちに唇を重ねる。
積極的に誘いかける晴明に一体どうしたものかと思案していたが、柔らかい唇の感触が、
仄かな甘い芳香が、間近に感じる彼女の吐息が冷静な思考を鈍らせていく。
応えるように晴明の身体を抱きしめ、舌を忍ばせ深く重ねる。
「…っん……ふぅ…ッ……ん……んん………っ」
口端から零れる唾液をそのままに、貪るように互いの舌を絡ませ合った後、ようやく解放する。
荒い息を整えると、頼光は晴明の衣に手をかけるが、彼女はそれをやんわりと制止した。
「……頼光、今宵はどうか、私に………任せて下さい……」
「……任せる、とは……?」
「…で、ですから……っ…私が………」
言葉の意味が判らず顔を顰める頼光の上着を、論より証拠とばかりに脱がせ始める。
そして露になった首筋に、鎖骨に、その逞しい胸元に唇を落としていく。
「……っ……!?」
探るように指を這わせながら胸の突起を舌で転がすと、頼光の身体がぴくりと弾んだ。
その反応に気を良くしたのか、口に含んで柔らかく吸い上げ、もう片方の突起を
指先で弄りながら広い胸板に幾つもの口付けを落としていく。
「……何処で、斯様な事を覚えたのだ……?」
「貴方がいつも致すように真似てみたのですが……」
「……そ、そうか……」
女人にいいように弄ばれる事に頼光は少々複雑だったが、日頃高貴な彼女が妖艶に
誘う姿に身体が熱を帯び、劣情を催してくる。
それに気づいたのか、晴明の手が下腹に伸び腰紐を解きにかかる。
「せ、晴明!?」
「今宵は私が、と申しましたでしょう?」
くすりと蠱惑的に微笑む晴明に、頼光は抗う事ができなかった。
839 :
833:2005/07/04(月) 00:14:28 ID:Nnux1u2i
とりあえずここまででつ。早速…が読みづらッ・゚・(ノД`)・゚・
661様GJです!がんがってくだされ(`・ω・´)
他の職人様のご帰還をお待ち申し上げまする(・∀・)っ/○☆チリーン
職人さん大量降臨嬉しや(・∀・)っ/○☆チリーン
661様の庵に連れ込まれた頼光(;´Д`)ハァハァ
833様のお狐様モードな押せ押せ晴明さまも(;´Д`)ハァハァ
ここに来てこんなに御伽話が投下されていることに
喜びを隠せませぬ(;´Д`)ハァハァ
続きを伏して待てり(・∀・)っ/○☆チリーン
か、神が……神が大勢……(*´д`*)タマランノウ……
661様、833様よくぞ御出でになってくださいました!
しばらくスレが寂しげだったのでハァハァが止まりません……
続きお待ち申し上げまする(・∀・)っ/○☆チリーン
現在のスレ容量が478KBで、そろそろ次スレが必要なわけで。
確か512KBが限界だった希ガス>容量
でも、500に入る前に次のスレ立てた方が良いかもしれないね。
よもや御伽で次スレに行けるとは思わなかった。
これも職人様達の萌え文のおかげで(・∀・)っ/○))★チリリーン
>>843 正確には500KBでそれ以上書き込めなくなる。
それに、480KBを越えると、一週間書き込みが無かった時点で自動でDAT落ちする。
>>844 詳しくサンコス(・∀・)
あと1KBで480ですな。
次スレ用にテンプレ作って、新しいスレ立てる準備した方が良いかも。
/\ /|
, ゞ ̄ヽ
! ノ人 ゙)<いれとく?
ヾリ ゚ -レ
∧ノ/》_テ》\
!W|,ヽ/| |´|ムノ
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/ヽ,ヘ
ヽノヽノ
〃'´⌒⌒ヽ,
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リ○・∀・○
q ̄ リ ハyノ リ ̄P
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テンプレも揃ったし、次スレ立てても桶?
850 :
娥光-8:2005/07/09(土) 07:01:13 ID:+lmlxsdQ
「して、此度は如何なる用件で此処へ連れて参ったのだ?」
沈黙を破り、頼光が口を開いた。
「頼光…望月の夜に交わした言葉を覚えておられるか?」
忘れ様筈も無い…。狐より人の貌と成りしあの光景…其れに信じ難い事実を突き付けられた衝撃と動揺…。
今だ昨日の出来事の様にも思えて来る。
「嗚呼、だが月隠まではまだ日が有ろう?」
「そうですが…最近の妖鬼供の動き…早急に元を絶たねば取り返しがつかなくなるやも知れませぬ。」
冷静に見える彼女の表情にも、些か焦りの色が伺える。
確かに…。此処数日の間に、もう何十回と討伐に赴いている。
頼光とて例外ではなかったが…、浄化の能力の違いからか、
将又 仮初めの身体ゆえにか…差程疲れを感じては居なかった。
然し、四天らの疲労は相当な物となっているのであろう。この間なぞ珍しく愚痴を零して居た。
彼女なりの気遣いと云った所か…。
「その元へと、私に?」
「はい…ですが其処は結界により固く閉じられて下ります故、私も共に参ります。
討伐は、妖鬼供の力が弱まる月隠…ですから、直ぐにでも力の回復をせねば」
意味する所を悟り、頼光は頷いた。
「判り申した。して…私は如何すれば良いか?」
「難しい事ではございませぬ。其方の身に宿る巫力を少し分けて下されば良いのです」
そう言うと、頼光の肩に手を添えた。
851 :
娥光-9:2005/07/09(土) 07:02:42 ID:+lmlxsdQ
「!」
途端に合わされた唇…。
あまりに突然の出来事で、頼光は只目を見開くのみでどうする事もできなかった。
晴明は、困惑している頼光を気にも留めず、貪るかの如く唇を重ねる。
が、頼光は正気に戻ると彼女の肩を掴み押し離した。そして口許を拭うと一喝。
「いきなり何を為さるか!其方は!恥を知るが良い!」
晴明には、頼光が何を怒っているのかが判らず只呆然としているのみ。
「私は…只貴方に巫力を分けて頂こうと思ったまでの事。」
掴まれた箇所が痛むのか、晴明は肩を擦りながら呟いた。
「巫力を?然し其方は妖鬼からは手を介して獲て居ったと思ったが…」
やや壁際に後退りしながらも尋ねる。
「外皮より獲られる巫力など僅かに過ぎませぬ。
ですが、身の内ならばより多くの巫力を獲る事が出来ます。頼光…お嫌でしたか?」
首を傾げ覗き込む様に問掛ける。
頼光はわざと視線を反らすと
「そう言う訳ではござらぬ。然し…」
判らないと言った表情の晴明に呆然となる。
『もしやこの者…この行為に如何なる意味が有るのか知らぬ訳ではあるまいな…』
852 :
661:2005/07/09(土) 07:09:14 ID:+lmlxsdQ
833殿>文章書き若葉マークは自分も同じにございます〜!職人様の続き光臨まで
共に御留守番致しましょう。
846殿>テンプレ張り付け御苦労様です!
…なにやらスレ跨いでの投下となりそうな気が致しますが、なるべく早めに終えたいと思ってます;
っつか、ゑ露に情緒がなくて苦戦中でございます;萌え無くてすみません;
職人様グッジョブ!
いつも萌えをありがとうございます(;´Д`)ハァハァ
ところでそろそろ次スレ貼った方が良いかな?
良いとオモ
661殿次スレでも萌をよろしくお願い致します(;´Д`)ハァハァ