伏姫と八房の居場所は、金碗大輔こと丶大法師により、永らく封印され
人をよせつけないでいた。
たいせつな時を刻んだところには、微量の金木犀の芳香が漂っていた。
あまりにもの美麗さに、あたら想いをつよくさせるも、信乃と浜路姫は
理解した。
あらかたの様子を観回してから視線を落とすと、何かが中央に
置かれていることに気付く。
「いってみましょう」
信乃は興味を持って促がす。浜路姫は黄水晶のなかで晒される裸身に、
ちりりっ、と身を灼いて含羞をみせた。
「歩けます。ですから、降ろしてくださりませ。信乃さま」
抱かれた腕のなかから降りようと、浜路姫は信乃の肩を掴んで、
繊麗な躰と四肢を動かし、細い首筋を強張らせた。
「信乃さま……もう、かんにんッ」
浜路姫の裸身に頼りなげにある腰布だけを巻いた姿に、
信乃は顔を落としてくる。
白い花の乳房と硬直する裸身を見られ、浜路姫は男子の逞しい力に
尚も抗っていた。
浜路姫は背を反らし、濡れた躰を跳ねさせる。清麗な乳房を躍らせ、
臀を揺すっていた。信乃の肌に爪を立てないよう、気を配りながらでは
長くは続かない。
信乃は浜路姫の腰布を掴まず、あとわずかのところで落とすところだった。
「よいではないですか」
湖水を泳いでいた時は、ずっと乳房を信乃の背に圧しつけて、
しがみついていた。
責められても、仕方ないのだけれども。
「こう甘えてばかりでは、なりませぬ。ですから」
閨にずっと居て、心待ちにしていたものが、唐突に訪れたことに
あばれていた。
「いいでしょう、浜路。このままでも」
浜路姫はカアッと顔を火照らせる。あきらめるしかなかった。
「えっ、ええ……」
信乃にこのまま浄土へ、すぐに連れて行ってほしい。ゆめうつつに願いながら、
浜路姫はおとなしくなって、水の調べを聞いた。
浜路姫を抱きながら、歩く信乃の足元に、先刻取って来たばかりかと思う、
様々な木の実や果実が置かれていた。
伏姫と八房が日々の糧としていたもの。手折った花や枝も置かれていて、
ひとつの季節に咲いたものではなかった。
中央に立って、信乃は浜路姫をゆっくりと下ろした。
まあたらしい木彫りの菩薩像が数体置かれていた。精緻な彫りで
女人の柔和な顔立ちであった。ありがたくも、憐れ。
伏姫と八房。
一緒に両手を合わせて祈る、信乃の横顔に浜路姫の愛しさが募る。
浜路という同性の女性がもつ情動の導きなのか、浜路姫の肩は、
昂ぶった春情に喘いでいた。
心が剥き出しになりそうで、たまらない。
「伏魔殿の気……と共鳴……」
伏姫は死にたい、と言って閉じた眼を開いた。
『そうじゃ』
「なら、すぐにでも妾と契ってくれまいか」
『契る。一儀を欲するというか』
「いつわりなど、言わぬ。だから、色に……染めて……。
八房殿の傍へ、妾を往かせて……くださりませッ」
横たわり繭になっていた伏姫は、両脚を乳房にきつく圧しつけ、
足指を内側に曲げていた。
泣かぬ。
泣くものか、
と伏姫は心に念仏を唱えだす。
『それでよいというのなら、我に』
言った間もなく破り、八房は伏姫の閉じた両脚に、鼻を、ぐっ、ぐいっ、
と無慈悲に割って入れてきた。
『伏姫、傅け』
「ひッ」
八房の柔らかな顔の毛が伏姫の内腿を撫でた。
「ッ……、いっ、いやあっ」
八房は裂けた口から舌を出して、下になっていた内腿を舐めた。
躰を捻り、地から背を剥がして、伏姫は擦り上がろうとした。
獣の突っ込まれた濡れた鼻先が、伏姫の美富登の飾り毛ごと
螺肉を小突く。
湖水に濡れた場所に、八房の絖りが刷り込まれた。
「やっ、いやじあぁっ、いやじゃあぁぁぁっ、あっ、あっ」
頤を突き上げ、それでも敵から眼を逸らすまいとすぐに引き降ろし、
臀を地面に擦りながら、泣き顔で淡いに潜む物の怪を睨め付けている。
『もう後戻りはできぬぞっ』
「やっ、やあああっ」
『仔種は、もういらぬのか』
八房から退こうとした、伏姫の両肘の動きは止んだ。
口惜しさから握りしめていた砂利も離し、あきらめた伏姫は後頭部を
地面につけて、黄水晶の耀きに照らされる天井を見つめる。
伏姫は顔を隠す袖もなく、両手で顔を覆う気力も失せた。
涙に明かりは幾重にもなって光輪を描いていた。
妾にはふさわしくないもの、と瞼をそっと閉じ合わせ、眦から涙が
流れるのがわかった。
「ん、んっ」
八房は伏姫の螺の綴じ目をただ舐め擦っていたわけではない。
熱い獣の舌が淡いを包むようにして、ざらりと擦る。
助けを求めたところで、だれがこんな所にまでくるものか。
掌で美富登を包まれて、上下に動かされているようなおぞましさ。
気丈さを取り戻した伏姫は悲鳴を殺し、かわりにくぐもった喘ぎが噴いた。
『かわいいぞ、伏姫』
伏姫の頬垂れ髪が、貌を裂くように貼りついて艶を極めようとする。
乳暈の周りと、匂う淡いの飾り毛には朝露を。
慄く腹に載る湖水の珠が散る。
揺れる八宝珠を掛けた胸元に、太腿にも流れても、さほど形を崩さずにとどまっている。
『伏姫が愛しい』
鞘を擦られ、剥かれた雛尖を掠められる。跳びそうに、腰が上擦りそうになると、
八房の舌はじっとして待った。美富登はじんわりと温かくなった。
八房を挟む、両の太腿に力がわずかに加わった。ただ伏姫は、これよりどうしたいのか、
どうすればよいのかがわからない。
「父上の……お声で……」
獣の双眸は、もうひとつの童女のような切れ込みを窺っていた。
臍の窪みは躰が屈曲になっているのにかかわらず、縦筋のようにきれいだったが、
やはりわずかに変形した。
伏姫の白い下腹もあわれ、女性(にょしょう)の岩戸をひらくようになる。
両膝を立てて秘する淡いに、八房の頭を挟み込み、仰臥していると
底知れない闇が迫ってくる。
八房にとって、伏姫はみだらに波打っていただけ。
空の白み始める、夜明け前こそが、真の闇と伏姫は知る。
怨霊を退ける、仔種を授かる為の時。
「父上の……声で……口上はいわないでっ……」
弱々しい哀訴をする。
『これが我のこえ。これしか知らぬ』
「おっ、お願いいたしまする」
『口上なども言わぬ』
血が滲みそうになるくらい、下唇を噛んだ。立てていた膝を伏し、
投げ出すようにし、伏姫は開脚した。
「ん、んっ、うっ、うっ」
かりそめの和合水を塗した八房は、仰臥する伏姫に地面を、
ざっざっ、と掻いて圧し掛かってきた。
八房の黒い爪で、素肌を破かれると伏姫は思った。
「あっ、ああっ」
押し潰されるのではないかという恐れと、鴨の腹のような体毛の心地よさが
伏姫の女体を刷いて悶えさす。
隆起と沈降を悩ましく繰り返す伏姫の腹に、八房は靫(うつお)を裂いて、
鴇色の絖った蛭の如き蛇神を出だす。
血を啜る余興とばかりに、伏姫の内腿と下腹を舐め廻していた。
「うっ、ううっ」
それを八房はせわしなく、出し入れをして、伏姫になんどもぶつけていた。
尖端は針のかたちからから、血汐が収斂されていって、壺か分銅の
ようなものとなる。そして。
鎌首に尖りが変化するのは、伏姫の膣内深くに昂ぶりを収めてしまう時。
「うあっ」
ちょん、と突いて、ぬらっと肌を這う。伏姫は眦を吊り上げていた。
八房は眼を細めて腰を使いながら、歓びに躰をぶるっと震わせる。
『そろそろ頃合か。挿入るぞ。尻を向けよ』
八房は四肢で伏姫を潰さぬように、踏ん張りを利かせている。獣の下で
伏姫は降り掛かった悲劇に、重たくなった躰を廻し、腹這いになって
獣へと臀を向けていった。
八房の律動は、舌を尖らせて臀を舐め廻されたようでむず痒く、
熱い吐息が洩れそうになった。
伏姫は臀をさしだし、逸物が仔壺に分け入るのを耐えて待った。
母、五十子の貫禄には及びはしないものの、乙女の清美を結ぶ。
その双臀の淡いにある、笹舟のように楚々としたものをさしだす。
獣に絖りを授かった場所を。
鎮めるのは人の逸物ではなく、獣のもの。
本来なら金碗大輔と添い遂げるまで、守るべき操のはずだった。
人ではない八房は、鮮麗な伏魔殿の明かりのなかで、交媾の態をいかに
取ろうとも、伏姫の陰影を描いていた、臀の笑窪も賞でることは
十分にできてはない。
それでも、あえかなる花を手折るこの歓び。伏姫の仔壺の肉襞を存分に
あじわうことに八房は意識を傾けた。
乳暈に載る尖りはしこって痛くなり、伏姫は地面に突いていた肘を後退させ、
背に深い窪をこさえると、躰をしなわせ、八房の逸物を求めていた。
「うっ、あうっ」
後足で地を蹴って、乙女の白い躰を衝きあげる。八房の低い唸り声が
背から滲みた。
伏姫は焔に身を投じていると思った。その焔をもってしても罪は永劫に
浄化されず、人と獣との交わりを御仏は決して赦しはしないだろう
と確信する。
観世音菩薩の写し身などではなく、もうひとりの玉梓となり仔を成して、
里見家に災いとなる魔との戦いに身を置き備えるなり。
八房が伏姫と交媾を望んだのは恋情と肉情。一儀に及ぶかたちは
純粋に血を残さんがための、弱き牝に君臨する、強き牡の猛々しい姿。
だが、八房は伏姫の臀に黒爪を使って、躰を起こして腰を振ろうとはしなかった。
伏姫は手を掻き寄せて、人差し指を噛んだが、灼熱の肉に攪拌される
痛みは増すばかりだ。
肌に散っていた珠だの湖水は、伏姫が噴いたあぶら汗になる。
しかし、自分を制圧する八房の力、躰の隅々まで及ぶ。
強き力を残さんがために孕まんとする女子の等しき願いに通じ、堪えながら
無意識に息んだ。
伏姫の菊座と円らな孔は窄まり、それにより仔壺は八房の逸物をとば口で扱く。
「ととさまあぁぁぁ……かかさまあぁぁぁ……ッ」
上の口からは乙女の叫び。
弱音を吐き出して、涙と涎を垂らし、土に滲ませる。
突かれる地獄の痛みに、右手の指。ぜんぶを含んでも追いつかず、
吐き出して額を地に擦って泣き叫んでいた。
両手は土を掻き毟って童女に帰る。八房にしぶかれて、ついに伏姫は
意識を跳ばし屈服させられた。
待望のシーンキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
伏魔殿の交媾は、伏姫に前で両腕を組み、面をそこに伏せる余裕すら与えず、
凄まじいものとなった。
「ん、んっ、うあっ、うっ、う……」
淡いから頭を裂くような疼痛が伏姫の総身に拡がり、穴という穴から
血を噴く思いに身を捧げ、獣との交媾に揺れたあと。
もう地面を掴み、掻き毟ることもできなくなってしまった。歯を食い縛っていた所は
徐々に弛んでいった。
伏姫の唇だけは、すぐに血流を収斂させてよみがえり、深い哀しみに戦慄きながらも
赫(あか)く、玉梓の娘になってしまったかのような紅を刷いた。
「うっ、ううッ」
地面に額を擦りたて、地に突いている、乙女の菩薩顔から鬼のようにゆがませ
紅潮させた伏姫の貌を、八房は窺えはしたものの、地面に潰すことを恐れ、
観ることはしなかった。
それは物理的な意味においてで、原初の本能には従い、しぶいたあとでも、
火消壺への追撃の蹂躙は止むことはなく、伏姫の臀に肉情を穿っていた。
今は糸の切れたあやつり人形のように、伏姫を空ろがつつむ。
伏姫は衝き上げに地面に顔を擦って、砂利を口に含んだ。
よりどころはなにもなかった。
玉梓が精神に語りかける。
伏姫や。仔を授かり、どこから出すのじゃ。
産道より、八つの仔を出すのか。
それで、もつかのう……憐れじゃ、憐れじゃ。
そうじゃ、そうじゃ。
妾が、そちの肚をこの爪で裂いて、取り出してしんぜようか。
それがよい。さすれば、里見は安泰じゃ、ハッハハハハハッ。
嗤いが掻き消えて、伏姫は海に裸身を浮かべている。赫の糊にあっても
髪は藻のようにたゆたい、伏姫は月を見て狂う。鮮麗なれども心寂しい
伏魔殿に朽ちて、伏姫はその身をずぶずぶと沈める。
母五十子は命を賭してでも、父義実に直訴し止めようとしたのに、
伏姫が忠義を言ってしまったことで、獣を誘って内に招き入れてしまった。
今また、玉梓の怨が肉体に憑こうとするならば、その毒を食らえばいいと肚を括り、
八房の血を受け入れることになってしまった。
「うっ、ううっ」
風が吹いたように、汗に貼り付く前髪が巻き上がる。
八房に組み敷かれた伏姫の頬に、妖女(あやかし)の手がぞろりと
触れていった。
玉梓が伏姫の痴態を嗤った。
「うんっ、んっ、うむっ……」
獣の一儀に艶めかしく蠢いていた、乙女の両の肩甲骨は鎮まった。
掴むものが無くなった掌は細い指の花弁をひらき、まだ終わらぬ肉交の
荒波に揉まれて流れる二輪の白椿となる。
伏姫は号泣からあと、啜り泣きを渦に巻き込みながら、絶息するような
生臭い呻きをあげて堕ちていった。
八房に乙女の華を踏み躙られるように褥をともにし、天井から降り注ぐ
光りがあっても漆黒の闇と化す。
躰の奥深くにまで男根という塊になって届いて、抱かれてはいても、
針の一穴からの洩れ来る光りをつい探して見てしまう。
それが、伏姫の首に掛けられた八宝珠。淡い青白に調和を
もたらそうとして耀くが、女の表情を讃えつつある背は、果てた獣の重みの
情愛すら受けず、淋しく凍えていった。
八房は額を地に突いて臀を捧げる体位を保ったままの、伏姫の頭に
触れるか触れないかの距離ぎりぎりに、あくまでも愛した女性(にょしょう)の
肉襞のこだわり、成就させようとした。
父、義実が望み選んだ許婚、金碗大輔孝徳とは契れていれば、
初夜の一儀に難儀し苦悶したとしても、倖せに満ち足りて、至る歓びに
伸びきることのできた、その躰を伏姫は――葬った。
獣のしるしを押し付けられたあとも、火縄の銃で何弾も躰を
射られたように、屍のような躰を八房に揺すられつづけた。
伏姫は里見の娘としての哀しい道を担い、女となって歩み出した。
男子と女子の恋情。観ているものも、生き方も……それはちがった。
まして女人と犬畜生。半身は魔性のもの。もう半身は人ではあるけれども。
稀におなじものを見るとすれば、閨事でことなのかもしれない。
足りないものを互いが求め与え、そして奪い合う。堕ちた先に、
忘我の境にあって、白閃光で灼かれ歓喜に咽ぶ。
だが、伏姫は十六とはいえ稚かった。まして獣などとの和合など知りもしない。
伏姫の反応が消えていたことに、八房は急に戸惑いだし、前肢で地面を
慌しく掻いて、乙女の仔壺から逸物を抜きにかかる。
伏姫の躰からはようやく、小夜嵐は去ってゆく。仔種を授かろうとした、
女性の本能は絞りにいって、肉襞は逸物に縋りついた。
抜かれる逸物瘤の所為で襞が捲れてしまうのか、伏姫は疼きにまた、
小さな呻きをあげて下肢を顫動(せんどう)させていた。臀を八房に捧げた
浅ましいかたちのままで。
伏魔殿の黄水晶の鮮麗な明かりに照らされる、一儀の終わり。
みだれ髪は去ろうとする男子を引き止めるかのように、意思とは裏腹に
八房の前脚に、――妖しく纏わりいた。
地面に散り咲く、濃やかな、湖水と八房の肉情で芯までも凍えさせた
濡れ黒髪は、煌く砂にも飾られ、まばゆいばかりに白い柔肌とみごとに融和した。
更なる構築を遂げようとする。
無残絵図から窮極へと導く、伏姫の萎れ華の蠱惑。
伏姫の下腹は波打って生きている証しをしめす。いのちの営みに悲劇を体現した、
引き攣りを時折に交えながら、悩ましく迫り出させる。
(;´Д`)抜いた
時々読めない漢字がある\(^o^)/
八房は伏姫のもたげられた臀(しり)を凝視し、総身から醸される美醜に
酔いながら、その所業いかなるものかを見極めようとする。
主君である女性(にょしょう)を犯したこと。心に悔恨と寂寥(せきばく)の訪れを
悄然(しょうぜん)と待った。
八房は童女ころから伏姫に眼を注いできた。女性のからだつきの成長は
花そのもの。眺めるに歓びが八房のなかでふつふつと湧く。
華奢な躰にあって、せわしない四肢の動き。時には、四肢を太くも
見せたりもする童女の頃の愛らしさ。
玉梓の化身の狸に育てられた季節の記憶が蘇る。仔の兄弟が、
八房がそうであったように、魔性であっても愛らしく無邪気でいた。
それでも伏姫は違っていた。
時に花のように美しく、温かく、あえかな女性。八房は慕った。
玉梓の気とはあきらかに異質な存在。憧憬に、闇が光りに触れ恋焦がれた。
ゆるやかな時にあって、童女の名残をもののみごとに羽化させ、気がつけば
伏姫は清美な蝶となる。八房は伏姫への恋情を人知れず育んでいった。
そして、いまから伏姫の命は、八房の庇護という囲いの中にあって、
伏魔殿に起居(ききょ)をともにする。
一夜限りに咲く花も八房は知っていた。玉梓の記憶だったのか。
月下に花は玉体(ぎょくたい)をさらし、その朝に萎えてしまっても、
夜の鮮烈を刻みはするけれど――。
冬の厳しさを越せぬならば、蝶の命もまたみじかい。
獣の交会(こうかい)に及んだ時にあらわれた、臀の側面から太腿の
外に掛けての仄かな陰影は霧消した。八房は伏姫の姿勢を崩そうと、
弛緩した臀肉を鼻で押す。
伏姫の細い腰がわずかに沈む。
それを待たずに、すでに下の口からは血生臭い乙女の証しに愛液が。
八房が放った津液(しんえき)とが混じる和合水が、とろりと、
伏姫の子壺からあふれ、御殿の砂地を穢していた。
八房は、まだ垂れてくる液汁の刺す臭いを避けるように、伏姫の横に廻った。
交会の怯えの痕を追うように。
伏姫の躰を硬くして、窪みを描いていた臀の側面を八房は小突いた。
両手は土を掻き毟って童女に帰る。八房にしぶかれて、ついに伏姫は
意識を跳ばし屈服させられた。
八房が射精したのってここらへんでいいの?
>>696 飛沫いたと書いてあるので、お前さんと同じ解釈をしているよ
そうです。
683から684がしぶき。
687以降が、
八房に抜かれることなく腰を使われて、
もみくちゃに玩弄される伏姫と
逸物を抜去したあとの八房の心の揺り戻しです。
わかりにくくて、すみませんでした。
躰が横倒しになりかかり、臀に戻って、両太腿の淡いに八房は鼻を突っ込んで拡げる。
かといって、伏姫を腹這いにはさせるほどに落としはしなかった。
八房はふたたび伏姫の横に戻って、すばやく土を掻き、鼻筋を伏姫の
腹の下にもぐらせた。
顔と胸を支えに臀をもたげる、伏姫のもうひとつの支点のほうを攻める。
膝すこし上をかるく叩いて、伏姫の肉体を伸ばしていき、降りてきたところを、
八房は鼻筋に乙女の腹を受けて、くいっ、と繊麗な肢体を仰向けに返す。
「うんっ……」
華奢な四肢がもつれあい、吊るされたようになって転がり、裸身に
黒髪も巻きながら、伏姫の顔を伏魔殿の天上にさらした。
伏魔殿の砂を濡れた肌に、まばらに貼りつかせはしているが、
伏姫の美しさは損なわれてはいなかった。
仰臥した伏姫の裸身に、八房は激しく昂ぶった。眠るような相にも
ぞくっとした。収まったはずの逸物が疼く。
転がった伏姫は弾けたように四肢を拡げ、あられもない姿にさせられる。
鴇色(ときいろ)の管が、破瓜の血糊を附着させたままの靫(うつお)をひらいて、
二度三度、にゅるっ、にゅるっとせわしなく出し入れを見せていた。
伏姫の屍の蠱惑に八房は酔い、戯れを続けたいという澱みが湧いて、
労わろうとしたやさしさとせめぐ。もどかしい。触れたいのに、獣では
抱きしめることも叶わない。
「んっ、ん」
八房は地面に鼻先を擦り、仰向けになった伏姫の腰の括れを鼻で押して
揺すっていた。
盆の窪を僅かに上げて、八房に貫かれて顔を仰け反らせるかのように、
細る頤(おとがい)を突き出して、白い喉を伸ばした。
湖水に溺れた濡れ肌は、快美感に惑溺する女性に伏姫を変えた。
眉は受け月から、徐々に眉間にうっすらと縦皺をこしらえ、
せつなそうな顔にする。水から引揚げられたように、地に頭頂を突いて、
ぐらぐらと揺れていた。
白足袋は濡れた砂に穢れていた。首に掛けた数珠にも及んでいて、
そこに伏姫のほつれ髪が妖しく絡みついた。
腰括れから入った鼻は背に移り、翼の名残を撫でて、伏姫の首近くにも滑って、
八房の鼻息がうなじに吹いた。
揺すられながら、伏姫は閉じていた瞼をひらく。唇も薄くひらかれ、
腫れぼったくて、じんじんとしていた。たぶん瞼もそうなってしまい、
髪ももみくちゃな醜女になっているのだと、伏姫は思った。
口元から唾液の雫が垂れる。疼きのなかで、だらりは快美感に
身をゆだねようとする感じを伏姫に芽吹かせる。ゆめうつつの、
黄水晶の明かりが伏姫に及ぶ。
ふと、女性として、閨(ねや)のたしなみを伏姫は思い出したが、
ここに御事紙(おじがみ)などあるはずがない。
顔をわずかにしかめさせていた。血に塗れた、獣の逸物を
頬張らなければならないのかと、ぼんやりと考えていた。
痛いところは他にあるのに、どうしてか、食い縛っていた
下唇のほうが気になる。伏姫は惚けたような顔で、舌を出し
先でなぞり始める。涙の頬に唾液が流れていた。
下唇は切れてはいなかったが、口には血の味が広がる。
揺さぶりに舌を噛んでしまい、伏姫の黒い瞳は痙攣し白目を剥いた。
切れていた上唇にも犬歯がまた傷をつけ、いくらか舌を口腔に
戻そうとはしたが、あきらめてされるがままになった。
わずらわしい、と思いながら波に揺られた。
淡いからの痛みに躰を跳ねさせ、乳房を揺らした。気がつけば、
八房の頭が天上に向かって拡げられた股間にあって、一儀の残滓を
舐め取ってくれていた。和合水に血のまじったもの。
ひととおりの始末を終えて八房が上がってくる。対面で契る格好に躰を
舐めまわす。下腹から肉を圧しあげられ、息が上がり喘ぎかける乳房にも渡った。
乳暈に載る尖りを倒し、乳房を掴むように附着する砂を舐め取られる。
八房は人肌の温かさの肌と、鴨に似るやわらかな毛で伏姫に圧して
伏姫の裸身を撫でつけていた。
あらわになっていた伏姫の秘園は露を取り戻し、うつつに引き戻されては
闇に沈んだ。
伏姫の瞳は濁って、何を見ているのか、いまだわからない状態のままにあった。
秘所の円らな孔はひくつき、広がってしまう。伏姫は湯放(ゆばり)を放出した。
水流は徐々に勢いを見せ、溜まっていたものを放つ弧は、八房の腹に当たって砕け散る。
まばらに落ちた先で、伏姫は御殿の土に、にわか雨のあとをこさえた。
八房が下を向いて伏姫の犬畜生にも劣る羞恥に傷つくうつろな瞳を見る。
伏姫には八房の貌は見えてはいなかった。眼をひらいていても、
尾から読むほど容易くはなく、心をみることはできない。
伏姫にしるしを入れた。八房も伏姫からのしるしを欲していた。
だから不浄のものという意識はない。
八房の育ての母、玉面(たまつら・狸の別称)が子にしたように、
愛しい女性のものであれば、食して下の世話もできた。
が、伏姫は躰を赦したからといって、そればかりは頑なに拒むだろう、
とゆばりを下腹に受けながら八房は思っていた。
伏姫が眠りから醒めると、大の字になって寝ていた。慌てて、両足を
引き寄せて閉じて折りたたみ、斜め横から上体は倦怠を引いて、
ゆるりと起きあがる。
獣の嵐を思い出し、両足を大きくひらいて寝ていたことが伏姫を激しく
傷つける。粗相をした記憶も。
無礼討ちにはされなかったのだな、と突いていた右手を胸元に持ってきて、
八宝珠を過ぎて、親指と人差し指の股で喉に触れていた。
喉笛は裂けていない。裂かれていれば、玉梓の見せた幻視の
赫い海に横たわって居たことだろう。伏姫は下腹に頭を落として見た。
玉梓の糸を手繰り、八つ子に留まる。そのまま滑っていって、
伏姫は腹に触れてみた。獣の子。人と獣の血の交わり。
祈り結願することなく、子壺は崩漏(ほうろう)となり、流れてしまうだろうか。
なにが望み……。
伏姫の腹は血を流す傷口に触れた怯えに痙攣した。炎に手を差し出して、
撫で擦った。ひくつきはなかなか治まらなかった。
伏姫はあたりを見廻した。八房は御殿には居ない。伏魔殿にひとりぼっち。
淡いにぴりりっとしたものを感じ、両肩を竦めそうになって、伏姫は無性に
腹立たしい思いに駆られる。
立とうとして、ふと眼を足袋のほうにやると、土を掛けたあとがあった。
こんもりと盛り上がる、滑稽でつまらない眺めにも、伏姫のなかには
熱いものが込み上げる。
砂に手を添え、撫でるように触れていた。
足袋の金具留めを解き、素足になって起き上がり、地下湖水へ
しっかりとした足取りで歩いてゆく。
右手を下腹に、左手はだらりとしたまま、水面をじっと見て、
「恥を恥ともせずに、妾は生きていこう」と伏姫は発話する。
これでおわりです。
メインである獣姦が少なくて
すみません。
読んでくれて、ありがとうございました。
>>705 楽しく読ませてもらったよ、保守し続けてよかった
これで終わりで少し寂しいけど、乙カレ
怒涛のような連載に感動した。乙でした。
普段使わないような語彙が多いのですが、普段から文を読み書きしてるのでしょうか?
基本に夏から秋、厳しい冬、そして春に死す
のイメージはあったにはあったんですが、
伏姫と八房だけに絞り込むと、日常の淡々とした心裡描写と
ただやりまくってるだけ、になりそうでしめました。
それにいままでのように
玉梓の過去を八房に語らせてみたり、他の犬士たちの閨とかを
入れていると、流れを把握できなくなりそうで。
繋がりで調べてみました。
なかでも赫い唇、鴇色はかなり気に入ってます。
雰囲気とかに合うと思って使っていましたが、
ひらがなの柔らかな表現をもっとうまくできればとも思いました。
ほんとうにありがとうございます。
保守
たまたま通りがかったものだが、良い物を読んだよ!
心の底からGJ!
このスレが終わりなんて俺は認めない
ヒント:スレタイ
保守
新作、まだ〜?
保守
保守
まとめサイトとかないのだろうか?
正直、八犬士に興味はないし、八房×伏姫だけを読みたいんだが
保守
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