純愛SS

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1名無しさん@ピンキー
純愛エロSSのスレです。

『純愛』をテーマに書かれた作品なら、
オリジナルでもパロディ(*)でもかまいません。
作品の長さも自由です。
読み手の多くが「これは純愛だ」と共感できるようなSS、
「俺にはこれぐらいまでなら純愛って言えるな」っていう限界に挑戦したSS、
「こういう純愛のかたちはどうだろう?」なんて試験的なSS、
泣ける系、切ない系、純愛+お笑いの意欲作、なんでもオッケーです。

(*) 予備知識や専門知識のいるものについては、SSを投稿する前に
  補足説明してもらえると、読み手の多くに対して親切かと思われます。
2名無しさん@ピンキー:03/04/12 00:36 ID:tYYHI+OO
それと、感想・批評、軽い雑談など、SS以外のレスももちろんありですが、
純愛SSのスレであって、純愛について議論するためのスレじゃないつもりでいます。
「純愛とは……」とか、「それは純愛じゃないだろ」的な、
主観を人に押しつたり、他人の価値観を否定するようなレスは、
荒れの元にもなりますので、できるだけご遠慮ください。
また、そういったレスがついても、反応したり議論したりせずに
スルーしてくださると、荒れずに済んでいい感じなんじゃないかと思いますです。
純愛についての主張は、ぜひSSにして表現してくださいませ。

・・・なんて、即死候補のスレで荒れの心配してみたり。
3名無しさん@ピンキー:03/04/12 00:41 ID:yTqf9HqV
とりあえず乙。
4名無しさん@ピンキー:03/04/12 02:18 ID:SjOuSeoF
とりあえず即死回避に、じゃあなんか。
5名無しさん@ピンキー:03/04/12 03:30 ID:IONP/jij
そういや、スレたてて1日以内にある程度の書き込みがないと、DAT落ちするんだっけ?
6名無しさん@ピンキー:03/04/12 09:09 ID:d+h9xrTK
乙です。
さあ何書くかな。
7名無しさん@ピンキー:03/04/12 11:14 ID:tYYHI+OO
>>5さん
とりあえず、とりあえずとか書いちゃって、このスレ一気にとりあえずスレになるのを
防いでくれてありがとうございます。

まあ、自分でも即死候補とか書いてますが、
スレ立てた以上は責任もって落とさない努力をするつもりですんで、
dat落ちは(たぶん)しませんから、ご安心ください。
が、もしよかったら、今日中にたくさん書き込まなきゃ駄目ってことないですし、
1日たった1レスつけるだけで即死から免れますので、
dat落ち防止にご協力くださいませ。 ← クリック募金みたいだな

8名無しさん@ピンキー:03/04/12 11:36 ID:QYANyVWt
>>1さんへ

純愛の定義はよくわかりませんが、百合物とかを書いても良いのですか?
9名無しさん@ピンキー:03/04/12 12:11 ID:1oSnLD0i
ハナっから難しい問題だな。そいつは。
10名無しさん@ピンキー:03/04/12 12:21 ID:xYZ3/yAh
自分が純愛だと思うなら百合でもいいんじゃないの?
ホモの場合はどうかわかんないけど。
純愛ホモはオッケー? アウト?
11名無しさん@ピンキー:03/04/12 12:45 ID:Vzug822+
なんでみんなイキナリきわどいところから狙おうとするんだ(w
12名無しさん@ピンキー:03/04/12 14:21 ID:5pOKKcTC
つーかそろそろだれじゃ投下しないと危ないぞ!
13名無しさん@ピンキー:03/04/12 14:29 ID:SkyXQ8vJ
字数はどのくらい目安?
14名無しさん@ピンキー:03/04/12 15:10 ID:tYYHI+OO
>>8さん
>>10さんの言うとおり、書き手にとっての純愛なら、
どんなんでもオッケーのつもりで立てました。
『純愛』をテーマに書くこと以外の制限は、
書き手にはいっさいありません。
純愛の定義も、自分的解釈のみで結構です。

あ、当然のことながら、2ちゃんねる(およびBBSPINK)のルールには
従ってもらわなくちゃいけませんので、
ひろゆきがもしこのスレに来てギャグを言ったら、みんなで大爆笑・・・
じゃなくて、ホモは板違いってルールがあるなら、
ホモネタは禁止せざるを得ません。
そのへんどうなんすかねぇ?

立てるときは気づかなかったけど、
他にも他板のほうが相応しそうなネタとかシチュとかあるかな?
15名無しさん@ピンキー:03/04/12 15:12 ID:tYYHI+OO
>>11さん
ご安心ください。
この時点で、予想の3倍の書き込みがあるんです(← 自分しか書き込まないと思ってた)。
即死判定から外れる日もきっと近いはず。。

>>12さん
ごめんなさい。
長さは自由と、>>1で勝手に決めちゃいました。
16名無しさん@ピンキー:03/04/12 15:14 ID:tYYHI+OO
あう。。
>>15のレスは、
>>11さん → >>12さん
>>12さん → >>15さん
でした。
17名無しさん@ピンキー:03/04/12 15:18 ID:tYYHI+OO
・・・すみません。
>>16のレスの>>15のところは、>>13さんあてです。
もう今日は黙ってここに貼るSS書いてることにします。
18名無しさん@ピンキー:03/04/12 15:21 ID:5pOKKcTC
いや即死判定って2日以内ででるんじゃなかったか?
その間に規定のKBをクリアしてないと死ぬと聞いた。
とりあえずもっと量的にも数的にも書き込み内と厳しいと思われ。
19名無しさん@ピンキー:03/04/12 15:25 ID:5pOKKcTC
即死免れたらあとは書き込みまばらでも暫く生きていけるんだから。
まずは書き込みが大事じゃなかろうか。

一番わかりやすい純愛はやっぱショジョとドテーイかな?
204:03/04/12 15:55 ID:4rTM9Lce
ごめん、早々に書いちゃったよ。物議かもすかなあ。
サムライスピリッツのリム×ナコ妄想。姉妹レズ〜(´ロ`)
211/10:03/04/12 15:55 ID:4rTM9Lce
もう、姉の美しい裸身を隠すものは何ひとつなかった。
おなじ裸身の妹に組み伏せられて、しかし、もう、抵抗はしない。
ただ、見つめ返すだけ。
巫女として、誕生のその日から純潔を守ってきた肉体を。
けして少なくなかった、闘いの中その可憐さを摘み取ろうとした男たちに、
指一本触れさせなかった処女性を。
すべて実の妹に捧げ渡し、犯されることを受け入れた、姉の、目。
ついに想いを遂げられる瞬間が、
互いのすべてを捧げ合う夜が訪れたというのに、
リムルルにはしかし、わずかな逡巡…。
“嬉しい。嬉しい……!”
“でも……。ちゃんとできるだろうか?”
呼吸と共に静かに上下する、姉の白い乳房を見つめながら、逡巡する。

自分の身が震える寸前であることに気付くと、
身体に入った力を逃がしてそれを消し去ろうとする。
頭が真っ白になりそうになって、
懸命に考えを続け、自分の意識を呼び戻す。
姉の、白い乳房。
薄紅色の乳首。
形のいい臍(へそ)。
柔らかな翳(かげ)り。
薄く浮き出た鎖骨、あばら、腰骨。
染みひとつない白肌に覆われたそれら姉の肉体は、
未踏の白雪の如き処女性の顕現と思われ、
思わずむしゃぶりつきたくなるように人を誘う。
同性の、年下の娘である、妹をすらそう思わせる。
でも、貴重すぎて。
繊細にすぎて。
どこから触っていいのかすら、リムルルにはわからない。
“こ……恐い……”
222/10:03/04/12 15:57 ID:4rTM9Lce
夢が叶ったのに、現実となったその夢は大きすぎて、
自分を押しつぶしてしまいそうだ。
でも、ここでいまなにもできなかったら……
もう一生、自分は姉になにもできないだろう。
“口づけを……”
まず、一番の夢。
姉と接吻を。それだけでも。
顔を近づけていくが、もう、姉は抵抗しなかった。
もちろんリムルルは初めてだ。
姉もそうだ。
“どう、すればいいの?”
たぶん、こうするんだろう。
皮膚と皮膚が、触れた。湿った、柔らかく暖かいものが。
“あっ!!”
口づけ──
口づけ──!
同じ性の人と。実の姉と。そしてこの世で、最も愛する人と。
身体中がカッと熱くなる。呼吸が止まりそうだった。
“姉様! 姉様! ねえさま──っ!!”
「うっ、う……う……」
自分が泣いているのをリムルルは知った。
胸が熱くなり過ぎていた。
唇を合わせたままで、思わず、泣き声が出ていた。
訪れたその瞬間はあまりに甘美なもので、
一生に一度の機会になるかもしれないと思うと、
リムルルはもう簡単に唇を離せなかった。
一生懸命、自分の初めての唇を姉にこすりつけ続ける。
そして姉は、おとなしくそれを受け止めてくれた。
233/10:03/04/12 15:58 ID:4rTM9Lce
ちゅ……
と最後の水音をたててふたつの唇が離れると、
リムルルはそのまま姉の肩に頭を預け、
荒い息をしながら涙を流し続けた。
ナコルルは、自分も頬を染めながらくすっと笑った。
「……押し倒されたのは、私のほうよ?」
「ね、ねえさま……」
リムルルは姉の裸身をきゅっと強く抱くと、
もう一度、姉の唇を奪った。
姉も、もう一度、優しく受け止めた。
何度してもいいんですよね。
そう確かめるように、
リムルルは何度も唇を離し、押し付け、また離しを繰り返した。
その度にちゅ…ちゅっとあまりにささやかな水音が小屋に響いた。

「あ……あぅ……あンン……」
細い裸身が、てのひらでまさぐられ、こすられる度に、艶声が漏れる。
乳房の上を白い指が滑り。
乳首を捕らえて揉み。
脇腹をさすり落ち。
耳を、頬を手が弄んで、そして口づけ。
その度にナコルルは甘く喘いだ。
リムルルは、今度こそふるふると身体を震わせていた。
自分の手の動きが、姉を悶えさせ、喘がせている。
自分の手の動きが、姉を生まれて初めて性の世界へ堕(お)としゆきつつある。
妹の自分が。
その行為は、姉を、堕落させるものかもしれない。
いや、間違いなく、清廉の化身たる巫女を、性の坩堝(るつぼ)へ、
さらには同性の、そして禁断の血の関係に引き落とそうとしているのだ。
でも、欲望は果てしなく少女を中から燃やし続け、
甘美な地獄への前進は止まらなかった。
244/10:03/04/12 15:59 ID:4rTM9Lce
姉を自由にしている。
その思いは、何度も何度も繰り返しリムルルの胸を燃えたぎらせたから。
「んは……あふ……あ、あ……あっ」
唇でまで、乳首を愛撫する。
少女が母の次にしゃぶった乳首は、姉のそれとなった。
小さくて、硬くて、柔らかくて、口中で熱かった。それは。
「あっ…あっ…あっ…あっ…」
さらさらと長い髪の流れる美しい音がして、
見えなくても、姉が首を振って悶えていることをリムルルに伝える。
可愛い。
毎日接しているだけで涙が出るほどいとおしかったのに。
こんな見たこともない姿を見てしまったら、
さらにもっといとおしくなってしまう。
そんなの、どうやって我慢すればいいのか、リムルルにはわからない。
だからもう我慢しない。
震える手を下に伸ばすと、指先はそこに触れた。
「あっ……!!」
姉の処女地に、妹の指が触れた。
ふたり共に衝撃的な感触だった。
熱い秘密の場所に触れて、リムルルは頭が破裂しそうだった。
秘匿された場所に触れられて、ナコルルは恥に真っ赤になった。
しかし、行為は続行された。
「ああン、ああン、ああっ、ああっ、ああーっ」
もはや姉の自尊心もなにもなく、
ナコルルはそこの快楽と恥に真っ赤な顔を振り乱し、
恥ずかしい大きな声を上げ続けて止められない。
リムルルももう後退など念頭になく、ひたすらやわらかく
すばやく指を動かし続けて、姉を追い落とすのに必死だった。
そして姉は、堕(お)ちた。
「ああぅ、ああーっ! ああ! ああ! ああ──っっっっっ!!」
妹の腕の中で細い体を震わせ、ナコルルは幼い性の頂上を極めた。
25名無しさん@ピンキー:03/04/12 15:59 ID:tYYHI+OO
>>18さん
えーと、自分で組んだスクリプトでもないものを、
はっきりこうとか言えるわけじゃないですが、
即死判定は、一定容量以下のスレッドについて、
一定時間書き込みがない場合にdat落ちさせるもので、
BBSPINKはほぼ24時間書き込みがないと落ちる仕様になってるようです。

たとえ3日かかろうが、4日かかろうが、スレ容量が規定値以上になれば、
即死判定から外れて、何日書き込まなくてもdat落ちしなくなりますが、
即死判定入ってても、一定時間内の書き込みさえあれば落ちることはないです。
265/10:03/04/12 16:00 ID:4rTM9Lce
「ねえさま、足を、もう少し開いてください……」
「こ、こう……?」
幾度かの頂上に昇りつめたあと、そしてふたりは、儀式に入っていた。
互いに互いを捧げる儀式だ。
股間をいじる妹の手に、さらに自由な空間を与えるため、
姉は、下品にすら見えるほど足を開いてあげる。
「ねえさま……」
掛ける言葉をみつけられなかったから、
リムルルは唇を重ねることでその代わりにした。
指が、ナコルルの処女に侵入する。
抵抗が強い。
しかし、垂れ落ちるほどの量の熱い液に助けられ、
徐々にナコルルは掘り進められてゆく。
やがて妹の指は根元まで姉の中に収まった。
それで終わりではない。
一度指を引き戻すと、今度は妹はもう一本の指を添えて
姉を掘り進む。
「!」
痛みが大きくなったようだ。
しかし、ふたりとももうやめる気はなかった。
かたや耐え、かたや慎重に中を進み、やがて二本の挿入に成功する。
そして、さらに。
三本目。
三本の挿入を終え。
指をゆっくりと引きぬくと。
妹は我が指についた血糊を視認した。
“ああ──!”
今宵、私は……。
姉を、奪った。
鮮やかな色が、ナコルルを堕(お)としたあまりにも鮮烈な証しだ。
27名無しさん@ピンキー:03/04/12 16:00 ID:QYANyVWt
>>17
 すみませんが、もう一つだけ質問します。
 パロディ物でもOKとのことですが、掲載するSSと、同じ作品名の
既存スレがあっても、ここにUPできるのでしょうか?
(重複勧告とか、〇〇スレに帰れ、とかを懸念)
286/10:03/04/12 16:01 ID:4rTM9Lce
私の手で。
処女だった姉が。
性のなにも身に受けたことのなかった姉が。
今宵──。
もし悔いるにしても、ふたつずつの裸の乳房を触れ合わせて同衾(どうきん)し、
姉の破瓜血をみつめているいまでは、もう遅すぎる。
いま胸を押しつぶそうとしている重さは、後悔ではなく、
大きすぎる感動なのだと信じたい。そして。
次は、私の番だ。
「ねえさま。どうぞ」
姉はうなずくと。今夜初めてみずから動いた。
手を、無防備な妹の股間へと伸ばす。
今夜はまだ誰にも触られていないにも関らず、
そこは、彼女にとって過去最大の潤いに満ちていた。
当然のことだった。
一本目が挿入された感触は、妹の心を感動で震わせた。
“ねえさまが! ねえさまがとうとう私を! ああ──っ”
二本目は、大きな痛みと、喪失の幸福を。
“ねえさま……私も……とうとう……いっしょに……!”
三本目は、ふたりの愛と誓いの瞬間だった。
重い痛みと、いとおしい異物の感触と、喜びとに、リムルルは震えた。
“ああ……ああ。リムルルはもうねえさまを放しません。けして離れません”
指が抜かれたあとは、ふたり共に
じんじんとした股間の幸せの痛みに耐えながら、
裸で抱き合い、口づけを甘く繰り返した。
失い、捧げ終えた裸身を姉妹して結び合わせながら。
毛布の中で結ばれた手と手が、
ふたりの神聖な血を、絡み、混じり合わせている──

 * * *
297/10:03/04/12 16:03 ID:4rTM9Lce
さっき軽く目覚めた時はまだ裸の肩を閨(ねや)に寄せ合っていたはずなのに、
もう、毛布の中の隣に姉の裸身はなかった。
「姉様…」
人はいない。
帯も締めず裸の肩に衣を引っ掛けただけで外に出ると、
姉はすでに身を正して井戸水を汲んでいた。
朝餉(あさげ)の用意と、身支度をするため。
「…おはよう。リムルル」
いつもと違う夜を過ごしたにふさわしく、
いつもと違う紅色が、姉の頬に差した。
「姉様……身体は痛くないですか?」
「だいじょうぶ」
姉の方から、抱きしめてきてくれた。リムルルの、夢だった。
「あんなに優しく、あなたのものにしてくれたんだもの」
「姉様。好きです…」
「私も、好きです…。ずっと放さないでいて…」
血の繋がった姉妹の誓いの口付けの光景と共に、
朝日は山の稜線をゆっくりと離れ、地上をまぶしく照らしだす。

道を歩いて来た姉妹を、待ち受けていた人影があった。
「よう、ご両人さん。出立の支度はできたかい?」
声を掛けてきたのは、大刀(だいとう)を背にぶら下げた浪人者、
覇王丸と名乗る男だ。
ナコルルはなぜか、乱れてもいない衣服の前を押さえ、少し赤くなった。
リムルルは姉の左腕を抱えながら、やはり赤くなってその影に隠れようとする。
「は……はい、こちらはいつでも出立できます。では村を出ましょう」
「お、おう。じゃ、小屋の中の連中にも声を掛けて来てくれや」
足早に、というのでもなかったが、
姉妹はなにかそそくさと気まずそうにその場を去った。
覇王丸は隣の兵法者に声を掛ける。
「……あのふたり、やっぱり、その……しちまったのかねえ」
308/10:03/04/12 16:04 ID:4rTM9Lce
柳生十兵衛はふんと鼻を鳴らしただけだった。
「けどよ。女同士だぜ? ……実の姉妹でぇ……だぜ?」
「好きにさせておけ。いつ果てるも知れぬのが兵法者の習い。
なれば、思い残すことがないようにしておくのもまた、その者たちの好き好きよ」
「捌(さば)けてるな。オッサンも案外……」

 * * *

それから、姉妹がふたりで重ねた夜は、もう数知れない。
禁断の愛を押し込める理由ももはやなく、
ふたりはふたりだけの蜜事に、夜毎(よごと)溺れ続けていた。
初めての恋人に、心のすべてを奪われていた。
姉妹して、お互いの肉体に夢中だった。
日常は清楚な佇まいを失わないナコルルも、
夜はもう、妹の性の虜だ。
今夜は、仰向けにした裸身を海老のように折らせて、
天井を向いた秘部の潤いを妹にむさぼられるに任せている。
リムルルは自分のしている行為のいやらしさに、
姉の見せる、ふたりしか知らない媚態に、
胸を突くいとおしさに、夢中だった。
もし彼女が女でなかったら、姉はとっくにリムルルの子を孕んでいただろう。
眼前であらわにむさぼられるみずからの薄桃色のあわいに、
ナコルルの視線も茫洋としている。
リムルルは我が手で開通した姉の洞(ほら)を、
三本の指でじゅくじゅくと出し入れを繰り返している。
もう姉のその場所も、こんなにし慣れている。
同時にもうひとつの姉のすぼまりを舐めると、
いまだに姉は驚いた顔と声をあらわす。
319/10:03/04/12 16:06 ID:4rTM9Lce
空いた手で濡れた突起物を弾きながら、
そうして出し入れしているうちに、
姉の声は絶息に近いものとなり、やがて、
姉の最高の昂ぶりを表す、間欠泉のごとき熱い汁の迸(ほとばし)りを、
ぴゅっぴゅっと天に向って女の部分から飛ばしだした。
自分がいやらしすぎてほんとうにいやだ、と姉がみずから言う
その状態を、しかしリムルルはどうしても繰り返しさせてしまう。
可愛らしすぎるから。
欲望が、果て無く身を突き動かすから……。
やがて、全身を汗と妹の唾液とみずからの粘液で光らせたまま、
ナコルルは荒い息でくたっと身を横たえた。
少し息が整うと、腕を伸ばして妹を呼ぶ。
リムルルはいつものように自分の股間を姉の顔の前に動かす。
今度は、妹の番。
姉もいまや、妹の性器と排泄器官を喜んで舐めしゃぶってくれるのだ。
合い舐めの行為にすら、従ってくれる。
すぐに水音と妹の高い声が天井に響きだした。

今夜は妹の胸に頭を預けながら、
ナコルルは、激しい行為の余韻に浸っていた。
「ほんとにいつも夢中ね。リムルルは」
「……恐いから」
「恐い?」
「はい、姉様。幸せが恐いです」
まるで年下の恋人をあやすように、抱いた姉の髪を指ですきながら、
リムルルは言葉を続ける。
「生まれてから一番幸せなのに、その幸せの最中に、
ああしている夢の中みたいな最中に、どちらかが
消えてなくなってしまいそうな……なんでか、いつもそんな気が…して……」
声が揺れた。不吉な自分の言葉が、リムルルの涙腺を
みずから刺激してしまったようだ。
3210/10:03/04/12 16:07 ID:4rTM9Lce
ナコルルは涙を指でぬぐってやった。
「この世が揺れ動いている、こんな時。
毎日が戦いの日々のいま。確かに、今日は明日のなにごとも約してくれないわ」
お互いの、いま生きている証しの生身の体温を感じ合いながら、
姉の言葉は続く。
「それでも、なにが起きても生きてゆかねばならないのよ。
誰も皆、幸だけを味わって生きてゆくことはできない。
この世は、幸と不幸とが互い違いに織られてゆく、一枚の布のようなもの」
「一枚の布……」
「ええ。幸がない時も、明日の幸のために、誰かの幸のために、
力を尽くして生き続けてゆくのが人のさだめ」
「……でも、いつかねえさまとともに在れなくなるなんて、想像もできない……」
「いまの幸せを味わいましょう。このぬくもりを。愛しさを。
せめて、永劫、けして、忘れぬように……」
リムルルの涙は、姉の体温に暖かく包まれたまま
やすらかな眠りに落ちゆくまで、絶えることなく続いた。

ふたりに残された蜜月、残りあと僅(わず)か──
334:03/04/12 16:10 ID:4rTM9Lce
>>21-24
>>26
>>28-32

終わり。ああ、まだいろいろ話し合ってる最中だったのね……。
即死も大丈夫そうだし、もうちょっと待った方が良かったかな。
では他の人の投稿を待ちあす
34名無しさん@ピンキー:03/04/12 16:12 ID:tYYHI+OO
ぐわっ。
書き込む前にリロードするべきだった。。
>>4さん、割り込んじゃってホントすみませんでした。
35名無しさん@ピンキー:03/04/12 16:14 ID:QYANyVWt
同じく……
>>4さん、申し訳ないです。
364 ◆EFnBfqy67Q :03/04/12 16:16 ID:4rTM9Lce
とりあえずの催しみたいなスレだと思ったから、1の文面通り
とりあえず「純愛」であれこれなんでもありでいいんじゃないかな。
ホモはエロパロでは板違いなのかな? 801板の範疇で。
スカとか、抵抗受けそうなジャンルは、投稿前に
注意書きしたほうがいいかもね。

念の為上の作品用トリップ付けとこう(コテじゃなくて)
37名無しさん@ピンキー:03/04/12 19:21 ID:juEewhvQ
38名無しさん@ピンキー:03/04/13 10:40 ID:NNStgItp
ほしゅ
39名無しさん@ピンキー:03/04/13 19:12 ID:kGXjJIpn
スレ立て乙でした〜
保守ついでにダラダラと雑談めいたものを書き込ませて下さい。
SS職人の華麗なる祭典、純愛祭り成功するといいですね。

もう投下している職人ハケーン!
乙です。後で読ませていただきます。

私も書こうと思っているけど、パロでいくかオリジナルでいくか…
しかしこういうスレで書くとしたらパロはオリジナルをかなり崩して書いてしま
いそうです。でもオリジナルで「純愛」を考えるとエロにならなさそうで。
このお題は結構難しいかもしれないです。

みなさまの「純愛」楽しみにしていますね。
私もどうにかせにゃ…
40名無しさん@ピンキー:03/04/14 09:15 ID:303iYWb9
遅ればせながら、1さん乙ですー。
向こうで賛成した手前、私も早くSS書かなくては……。
ちょっとお待ちになってね。
41名無しさん@ピンキー:03/04/15 00:28 ID:G1hJ3dt6
純愛とエロの両立の部分が、ほんとうに難しいっす。
純愛を表現しようとすればするほど、エロがなくなっていく・・・
42名無しさん@ピンキー:03/04/15 01:08 ID:nTDwFQE/
エロパロを書こうとすると、常駐スレがばれてしまうよな…。普段書かないジャンルで書くか。
43名無しさん@ピンキー:03/04/15 15:01 ID:38I5o7cq
スレッド一覧でみると「純潔SS」に見えてしまうのは、なんでだろ〜
44名無しさん@ピンキー:03/04/16 17:21 ID:nbibOFfd
絶対大丈夫だとは思ったのですが、
責任持って保守すると言った手前、
やっぱり丸一日置くのはちょっぴり勇気がいりました。

が、これで、確実に即死判定から外れているのが確認できました。

今まで保守してくださった皆さんと、なにより圧倒的なスピードで
SSを仕上げ、投稿してくださった4 ◆EFnBfqy67Qさんに、
心からお礼を申し上げます。
控え室で話題を振ったときの反応の鈍さからも、
こんなに楽にこのスレを維持できるとは、思ってもみませんでした。

あとは、いろんなかたの純愛SSが集まって、
このスレの使命が全うできることを願うのみです。

皆さん、本当にありがとうございました&よろしくお願いします。
45山崎渉:03/04/17 12:21 ID:TKWjnpQP
(^^)
46山崎 渉:03/04/20 04:28 ID:IxIHzNin
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)
47名無しさん@ピンキー:03/04/24 15:27 ID:M6gFjl4i
控え室で出来るかもと言った、童貞×処女のフェラ・AFありの純愛SSに挑戦中。
……けっこう難しかったりして。
48名無しさん@ピンキー:03/04/25 04:47 ID:23RhyQEH
期待ホシュ
49名無しさん@ピンキー:03/04/26 12:29 ID:ImIB0UAq
ホシュしてみる
50名無しさん@ピンキー:03/04/27 12:00 ID:VIvu3SqM
h
51名無しさん@ピンキー:03/04/28 08:40 ID:hEkLzg6j
うわあ。
今一番下にいるから上げるよ。
ライターさんへのプレッシャーじゃないからね。
52正義の味方:03/04/28 10:56 ID:eCpLoKf+
「その約束を果たす為、俺は来た」正樹は、乃絵美の事を一途に想っていた
妹としていやそれ以上の存在として正樹は、妹を慕っていた、そして、その夜
は訪れた、正樹の部屋に行く乃絵美「お兄ちゃん」「乃絵美、俺、乃絵美の事が好きだ
愛してる」「私だって大好き」決して許されるはずのない言葉、だが彼等は
一途に愛し合った「お兄ちゃん、ああん」正樹の、大好きな兄のペニスに
乃絵美の腰が入る、「うう、」「どう、お兄ちゃん気持ちいい」「ああ、最高だ」
「そろそろイクよ」「うん、ああんだめえ」「イッチャう」「ドピュー」
正樹は、果てた、兄妹の淫らな行為だれにも気付かれずその日は過ぎた
53正義の味方:03/04/28 11:31 ID:aJrMzV9M
喫茶店ロムレット、正樹たちの家でもある、ここに一人の女の子が来た
氷川菜織、正樹の同級で正樹に恋心を抱いている、今日は、休みで
遊びに来たのだ「こんにちは」「あ、菜織ちゃん」「乃絵美元気
正樹は」「お兄ちゃんは」と顔を真っ赤にしながら呼びに行く
その様子に菜織は、「どうしたんだろ」と思い、カウンターに座る
「お兄ちゃん、菜織ちゃんが来たよ、」「あ、そうか、」「お兄ちゃん
チュ」「ううん、チュ」「遅いな」と思い、菜織は、中を見た
そして、ショックを受けたのだ、そう大好きな正樹と乃絵美がキスをしている
「う、嘘、嘘でしょ、ちょっと、あんた達何やってんのよ」「菜織
俺達は」「バカにしないでよ、あたし、あたしだって、正樹あんたの事が
好きなのよ」菜織は、涙を流してその場から去った
54正義の味方:03/04/28 11:38 ID:aJrMzV9M
正樹は、乃絵美をおいて菜織を追いかけられなかった
数年後、「パパ」「ママ」と呼ぶ声が聞こえる、「可愛いいな、真由美は」
「うん、そうだね、お兄あなた」「うん」そう、乃絵美には、新しい命が宿って
その子が生まれた、もちろん大好きな兄の子、暖かい日の事だった
55正義の味方:03/04/28 15:04 ID:0lgXFhE0
「隆景お兄ちゃん、今日は何にする」義妹の舞子に言われ、「じゃあカレーが
いいな」と答える、両親が亡くなり、母親の連れ子だった舞子を引き取り小さい時から
面倒を見ていた隆景、小さい頃から見ていた為、恋愛とは程遠いものを感じていた
今日は、学園祭、舞子と一緒に学校に来た隆景は、占いをしている真由美を見かける
真由美は隆景の幼馴染だ、小さい頃から高坂兄妹の付き合いは長く、恋愛とは
無関心だった真由美だったが、実は、彼女隆景のことがすきなのである
「お兄ちゃん、占いやってみよう」「いいよ、俺信じないし」「じゃあ、私一人で
やってくる」「待ってるぞ」「うん」「いらっしゃい、舞子ちゃん、で、何を占って欲しいのかな」
「私の運勢」「判った、ちょっと待っててね、」真由美は、水晶玉に手をあて念じる
「見えたわよ、舞子ちゃんの運勢は、大吉、いい人に出会えるって」「本当に」
「さあ、次はあんたよ」「俺は」「いいから来なさいって」「判ったよ」
「じゃあ、始めるわよ」「うん」真由美は、早速水晶玉に手をあて念じる
「見えて来たわよ、あなたの運勢は、大吉、次に出会った初めての人と結ばれる」
「そうか」「うん、そうよ、けど、次に出会った初めての人って」「真由美」
「あ、ああごめんね、今日はおしまいじゃあね」「ああ」真由美はショックだった
次に出会う初めての人が大好きな隆景と結ばれるのだから。学園祭が終わり
舞子と一緒に帰った隆景、舞子にその話をすると、突然不機嫌になる
「舞子、どうしたんだい」「な、何でもないわよ、それより、スーパーへいきましょ
カレーの材料買わなくちゃ」「ああ」舞子が怒っているので「アイツ一体どうしたんだ」
と考える隆景だった。「あの占いの事か、俺は信じてないけどな」しかし
その占いが、隆景の運命を変える事になる。
56正義の味方:03/04/28 15:16 ID:0lgXFhE0
翌朝、隆景と舞子が神社で散歩していると、可愛い巫女さんが現れる
名前は、池薙あやめ、神社で巫女をしているのだ「あ、お早うございます」
「お早うございます」舞子は昨日の話を思い出し「この人が、お兄ちゃんの
そんな嫌だよ、お兄ちゃんが他の女の人に取られるなんて」舞子は辛かった
隆景はあやめと話をしている「あやめさんか、いい名前だね」「いいえ、
それより、そちらの方は」「ああ、義妹の舞子」「よろしくお願いします」
舞子は、あやめをにらみながらこう言った「お兄ちゃんは、渡さないんだから」
「え、何の事ですか」「いいえ、気にしないで下さい」「あ、はい」
「じゃあ、また」「どうも」「あやめさんか、可愛かったな」「お兄ちゃん」
「イテテテ、何するんだよ」「お兄ちゃんの鈍感、バカ」家に帰り
舞子は、隆景に想いを伝えた「お兄ちゃん、お兄ちゃんは、あやめさんの事好きなの」
「舞子、何を言ってるんだ、そりゃ確かに可愛いけど、まだそこまでは」
「だったら、ずっと言おうと想ってたの、私ずっとお兄ちゃんの事が好きだった
真由美さんにもあやめさんにも負けたくないの、お兄ちゃんは、私の事」
「俺か、俺は、舞子の事、しかし、舞子は俺の」「判ってる、けど
私は好きなの、抱いて欲しいな」「ああ、お前がそこまで言うなら
大好きだよ、舞子」「お兄ちゃん」
57正義の味方:03/04/28 15:22 ID:0lgXFhE0
兄は妹を抱いた「お兄ちゃん、恥ずかしいよ」「大丈夫、俺がリードするから」
「うん、お兄ちゃん、」舞子を裸にしてストッキングを外す「いやあ見ないで」
そして、隆景は、舞子の胸を吸い、ペニスを窒内にいれ動かした「ああん、
いい、あはん」「俺も、もう出そうだ」「お兄ちゃん出して、私の中へ」
「ドピュー」二人は安眠した。数年後、若い男と女が子供と暮らしている
名前は、夫隆景、妻舞子、子供景子、高坂一家に新しい命が生まれた春であった
58あぼーん:あぼーん
あぼーん
59名無しさん@ピンキー:03/04/30 12:57 ID:aVLVOqnm
あのー、正義の味方さん、ちょっと話を端折りすぎでつ……。
あと、元ネタぐらいは書いて欲しかったりして。
60名無しさん@ピンキー:03/04/30 13:01 ID:a5TbYbMD
天然?
わざとやってるのかと思った
61正義の味方:03/04/30 13:35 ID:eeN8aTQE
52の元ネタは、withYoy〜みつめていたいで
55の元ネタは、CAMPUSです
62名無しさん@ピンキー:03/04/30 16:00 ID:DikNv0Hz
age
63名無しさん@ピンキー:03/05/02 00:22 ID:ebJ2j2d8
これは、あれ?
ネット上の駄目なエロSS?
64名無しさん@ピンキー:03/05/02 07:47 ID:Nl79dPQm
>>57の方は、
複数のスレを、駄SSを使って荒らしている、確信犯です。
完全放置を推奨します。
65名無しさん@ピンキー:03/05/06 02:02 ID:hl2PCBh2
愛し合う二人、つなぎ止めるのは純なこころ保守
66名無しさん@ピンキー:03/05/06 03:32 ID:xw29Vvov
職人さんいないの?
誰か投下して〜
67名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:04 ID:z4g6179A
>>47で予告した者ですが、GW中に書き上げたので投下させてもらいます。
ちなみに元ネタは、ナムコのPS用ゲーム「テイルズ・オブ・デスティニー」です。
68名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:05 ID:z4g6179A
〜不器用なふたり〜

「……で、何よ、話って?」
仲間達との酒盛りの後、あたしはスタンに誘われて、リーネ村の外れのほうまで連れて来られた。
あたしの名は、ルーティ・カトレット。
あたしは以前、ひょんな事からこいつ──スタン・エルロンと出会い、とんでもない事件に巻き込まれた。
一年前に天上王ミクトランを倒し、一応事件は幕を閉じたんだけど、それからが大変だった。
超古代の兵器、ベルクラントによって、世界中の町や村が壊滅的な打撃を受けていたんだ。
私達を含む8人の仲間は、それぞれ自分の国に戻って、色々と忙しい日々を送っていた。
そして一年後の今日、旧交を温めるために、スタンの故郷である、ここリーネ村に集まったのだった。
「その……つまり、何だ……」
「もぉ、しゃきっとしなさいよ、男でしょお?」
自分で誘ったくせに、ごにょごにょと口ごもるスタンに、あたしははっぱをかけた。
「うん、えーと……。そうだルーティ、孤児院の方は大変か?」
「え? あ、うん、まあね……。けど、今はどこも大変だし……、何とかやっていけてるわよ」
スタンに心配させたくなくて、あたしはちょっとウソをついた。
あたしが育てられた孤児院は、一年前の戦乱で、結局跡形も無くなってしまった。
冒険で集めたお金で、街の郊外に改めて孤児院を作ったけど、それで蓄えの殆どが消えてしまった。
あたし一人でモンスター狩りをするにも限度があるし、オベロン社が無くなったから、レンズも売れない。
実際のところ、あたしの経済状況は、かなり厳しかった。
69名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:06 ID:z4g6179A
「そうか……。あのさ、今日見てもらって判ったと思うけど、この村は大分持ち直したんだ」
彼の言葉通り、このリーネ村は、すでに以前の状態を取り戻していた。
でも、ここがこんなに早く復興したのは、スタンの頑張りがあったせいでもあるって、あたしには分かった。
何しろ、スタンの仲間だったってだけで、村中の人が暖かく迎え入れてくれたんだ。
彼の妹のリリスちゃんによれば、スタンは率先して辺りのモンスターを追い払い、田畑を耕したという。
村人みんなに信頼されているスタンが、あたしも自分の事のように誇らしかった。
……でも、その話とあたしの孤児院の話が、どう関係するんだろう?
あたしがそう思っていると、スタンは思い掛けない事を言い出した。
「でさ、今度は俺、ルーティの孤児院の建て直しに、力を貸したいんだ」
「……はぁ? アンタ、何言ってんの!? 同情なんて真っ平だって、前にも言ったでしょ!」
嬉しい気持ちを押し隠して、あたしはスタンの言葉を思いっきり突っぱねた。
一緒に冒険をしていた頃からずっと、あたしはスタンの事が好き……ううん、愛していた。
でもだからこそ、平和を取り戻したこの村から、わざわざ苦労するだろうクレスタに連れて行くなんて出来ない。
なのにスタンの奴は、急に真剣な顔になって、あたしに怒鳴り返した。
「同情なんかじゃないっ!」
「……!」
「ご、ごめん、怒鳴ったりして……。でも、本当にそんなんじゃないんだ。
 それに、ルーティが母親代わりになるとしても、子供たちには、父親役だって必要だろ?」
えっ!? そ、それって……。
スタンの言葉からある事を連想して、あたしの胸は大きく高鳴った。
70名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:07 ID:z4g6179A
やっ、やめてよ、そんな風に言われたら、変に期待しちゃうじゃない!
だけどスタンは、落ち着かない様子で身振り手振りを入れつつ、さらに言葉を続けた。
「もう、リリスも一人で大丈夫だって言うし、この村でも、俺の力はあんまり必要じゃなくなったし……。
 それに、孤児院の事が無くても、俺は、ルーティのそばにいたくて、だから……。
 つっ、つまり、結婚してほしいんだ!」
うっ……うそ、ホントに……?
決定的な一言に、あたしの頭は真っ白になった。
「ほ、本気で言ってるの……?」
「うん。その……、ルーティが良ければ、だけど。あ、勿論、断られても手伝いはさせて欲しいんだけど……」
「だって、チビ達の世話って大変だよ? それにあたし、結婚したって今まで通り、こき使うよ?」
「そんなに大変なら、尚更ルーティの力になりたい。まあ、最初はあんまり役に立たないかも知れないけど」
「でも、あたしフィリアみたいにお淑やかじゃないし、マリーみたいに料理も上手くないし……」
「そんなの関係ないよ。俺は、そのままのルーティが好きなんだ。……で、どうかな?」
「……スタンっ!!」
堪え切れなくなって、あたしはスタンの胸に飛び込んだ。
スタンはあたしの身体をしっかりと抱き止め、背中を優しく撫でてくれる。
今まで、誰にも頼らずに生きてきたけど、初めて安心して縋りつける相手を見つけて、あたしの胸が熱くなる。
物心ついて初めて、あたしは他人に素直な気持ちを曝け出し、喜びの涙を流した。
「スタン……、あたしも、アンタの事が好き……。大好きだよ……」
「ルーティ……」
71名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:08 ID:z4g6179A
あたしは、スタンの腕の中で告白しながら、彼の胸にぎゅっと抱きついた。
スタンの胸は広くて、ちょっと汗の匂いがして、何だかとっても落ち着く。
しばらくあたしがその温かさに酔いしれていると、何故かスタンはもじもじと動き出した。
「あっ、あの、ルーティ? あんまりくっ付かれると、ちょっとまずいんだけど……」
「え? 何でよ?」
いい気分でいるところに水を差されて、あたしはちょっとムッとして顔を上げた。
見るとスタンは、照れたような困ったような表情をして、耳まで真っ赤にしている。
「何でって、その、当たってるから……」
「へ? ……あっ」
足を踏み変えたあたしは、腰のあたりに固いものが当たって、視線を下に下げた。
スタンのズボンの前は、何だか膨らんでいて、まるでテントみたいに突っ張っている。
ついさっきまで、彼の胸に自分の胸を押し付けていたのに気付き、あたしは慌てて身体を離した。
「ちょっ、ちょっとお! 何考えてんのよっ!」
「い、いやっ、ごめんっ! ルーティが、その、あんまり柔らかいから……」
あたしは両腕で胸を隠しながら、自分の顔にみるみる血が昇ってくるのを感じていた。
あ、あれって、その、そういう事よね……。
今までそんな経験は無いし、その手の知識はマリーに訊いた事ぐらいしか知らないけど、おおよその察しはつく。
あたしの胸は、さっきまでとはちょっと違うときめきに、激しく跳ね回っていた。
「って、俺、何言ってんだ……。は、話の続きは、明日にしよう! じゃ、その、おやすみ……」
「……待って!」
72名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:08 ID:z4g6179A
くるりと背中を向けて歩き出したスタンの服の裾を、あたしは思わず掴んでいた。
あたしの頭の中で、初めての体験に対する躊躇いと、彼と一つになりたいという想いがせめぎ合う。
思い切って躊躇いを振り払い、あたしは顔を伏せたまま、小さい声で呟いた。
「いいよ……」
「え?」
スタンが意外そうな声で聞き返してくるけど、あたしは恥ずかしくって顔が上げられない。
「だからその、スタンがしたいって言うんなら、あたしは、最後まで、いいよ……」
「えっ……ルーティ、でも……」
「んもう! あたしだって、すっごく恥ずかしいんだから、何度も言わせるなっ!」
「ルーティ……」
スタンは振り返ると、もう一度抱き締めてから、あたしの顎をくいっと持ち上げて、ゆっくりと顔を寄せた。
胸のドキドキが止まらなくなって、あたしはぎゅっと目を閉じる。
「あっ……、スタンも目、閉じて……」
「あっ、ああ……」
スタンの温かい息が顔に掛かって、あたしの唇に彼の唇がそっと重なる。
たったそれだけで、あたしの身体から力が抜け、彼の逞しい腕に身を任せてしまう。
スタンは抱き締めてキスしたまま、あたしの身体をゆっくりと草のベッドに横たえていった。
              ◇  ◇  ◇
「あっ……ん……くっ……」
「ルーティ……柔らかいよ、とっても……」
73名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:11 ID:z4g6179A
服の上からスタンに胸を触られて、あたしは小さく声を上げた。
スタンの手はぎこちなくて、遠慮してるみたいに軽いタッチで、感触を確かめるように動いている。
男にこうして胸を触られるなんて初めてだけど、自分で触った時よりも、もっとずっと気持ちいい。
恥ずかしいのに、もっと触って欲しくなって、あたしは頭がぐちゃぐちゃになった。
「あ……ルーティ、ここんとこが、固くなってきたぞ……」
「っ……ばかっ! そんなこと、いちいち言うなっ……くぅんっ!」
スタンの奴は、あたしが恥ずかしくなるような事を言いながら、あたしの胸の先端を指でくりくりと弄った。
シャツの薄い布越しに、何度も何度もこすられて、自分でもそこが固くなってくのが判る。
段々あそこまでじんじんしてきて、あたしは軽く腿を擦り合わせた。
「ルーティ、脱がせても、いい?」
「えっ、あ……うん……」
上着のベルトに手を掛けたスタンにそう言われて、あたしはコクンと頷いた。
スタンは慣れない手つきでベルトを一つずつ外し、シャツを脱がせ、戸惑いながらブラのホックを外す。
あたしは彼にされるがまま、上半身に身に付けていたものを取り去られる。
隠すものがなくなった裸の胸をじっと見詰められて、あたしの頭にかぁっと血が昇った。
「あっ、あんまり見ないで……。あたし、あんまり胸ないから、恥ずかしい……」
「そんな事ないよ。ルーティの胸、とっても綺麗だ……」
「やっ、あんっ!?」
いきなり敏感な先っちょにキスをされて、あたしの背中がピクンと反り返った。
スタンは赤ちゃんみたいに片方の胸に吸い付きながら、両手でくにくにとあたしの胸を揉む。
74名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:12 ID:z4g6179A
ビリビリと痺れるような感じが身体の芯に走り、あたしはスタンの下で身体をくねらせた。
「ルーティ、こっちも見ていいかな……?」
「えっ、やっ、ちょっと待って!」
スタンの手と舌に翻弄されていたあたしは、ショートパンツに手を掛けられて、慌ててその手を押さえた。
「えっ、どうしてだよ?」
あたしにお預けされたのが不満なのか、スタンはちょっと口を尖らせる。
どうしてって……。ただ恥ずかしかっただけなんて言うのも、何となく悔しいし……。
「それは、その……。あ、あたしだけ脱ぐなんて、不公平じゃない!」
口からでまかせだったんだけど、そう言った途端、あたしはそれが正しい事だと思ってしまった。
そうよ、あたしがこれだけ恥ずかしい思いをしてるってのに、スタンったらまだ服着たままじゃない!
少しはスタンの奴にも恥ずかしがってもらわなきゃ、割が合わないってもんよ!
「あんたも全部脱ぎなさいよ! そ、そしたら、あたしも脱ぐから……」
「ぜ、全部!? ……わ、分かったよ、じゃ、ちょっとあっち向いててくれよ?」
スタンはそう言ってあたしに背中を向けると、そそくさと服を脱ぎ始めた。
こいつも、女の子の前で裸になるなんて初めてらしく、すごく恥ずかしそうだ。
……ざまーみろ。少しはあたしの気持ちが分かったか。
それを確かめてから、あたしもスタンと逆の方を向いて、残ったショートパンツとショーツを脱ぎ捨てる。
やだ……、ショーツがちょっと湿っちゃってる……。
あたしはスタンに見られないように、素早く脱いだそれをくるくると丸めると、畳んだ服の下に押し込んだ。
              ◇  ◇  ◇
75名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:13 ID:z4g6179A
少しして、スタンは服を全部脱いで、あたしの方を振り返った。
「……ルーティ、これでいいかな?」
顔を真っ赤にしながらも、スタンは前を隠さないであたしの前に立つ。
え……? なにそれ、なにそれ、なにそれっ!?
スタンの股間に付いているモノに、あたしは思わず目を疑った。
孤児院でチビ達の世話もしてたから、男の子のアレなんて、結構見慣れてたつもりなんだけど……。
何だか全然ちがーう!
チビ達のは、ちっちゃくてドングリみたいで、ちょっとカワイイな、なんて思ってたのに。
まるでキノコみたいな形で、かなりグロテスクな上、同じモノとは思えないほどおっきくなってる。
あ……あんなのが、あたしのあそこに入るわけ……?
初めてこう言う状態の男のモノを見て、あたしはちょっとビビってしまった。
「あの……じゃ、続けてもいいかな……?」
……はっ! そーだ、いつまでも硬直してる場合じゃない!
スタンの言葉で、あたしはようやくショックから立ち直った。
「だめっ! 今度は、あたしの方がする番でしょ!」
「え……ルーティの番、って?」
こう言う時の為に、マリーから色々訊いてきたんだから、ちゃんと手順通りにやらなくっちゃ!
「いいから、しばらくそこで立ってて! こら、隠さないの!」
「わ、分かったよ……」
股間を隠そうとしたスタンを押し止め、あたしは彼の足元に膝立ちになる。
76名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:14 ID:z4g6179A
……とは言ったものの、やっぱりあんな事をするのは、正直恥ずかしい。
ううう……ええい、こんなの、バナナかなんかだと思えば、何でもないっ!
あたしは半ばやけになって、スタンのモノを口で咥えた。
「わあっ!? ル、ルーティ、お前、なにしてんだよっ!?」
「ふるひゃい! ひゃまっへろっ!」
「わ、わ、わっ!」
あたしはくぐもった声で答えると、スタンのモノを口の奥に含んでいった。
ほんとは、『うるさい、黙ってろ』って言おうとしたんだけど、口にナニを咥えてるもんで、こんな声になる。
スタンのモノはすごく熱くて、思いっきり頬張っても、半分ぐらいしか口に入らない。
まずはマリーに教わった通り、あたしは唇で擦るようにして、前後に頭を動かした。
「んっ……、んっ、ふっ、ん、んんっ……」
「う……あっ、くっ、ルーティ……!」
あたしがそこをしゃぶり始めると、スタンは腰をピクンと震わせて、抵抗を止めた。
上目遣いに彼の顔を見上げると、きつく目を閉じて、何だか苦しそうな顔をしている。
おかしいな、こうしてあげると気持ちいいって聞いてたのに……。やり方がまずいのかな?
片手でそれの根元を押さえながら、あたしは恥ずかしいのを我慢して、舌でそこを嘗め回した。
「んちゅっ、ふむっ、ちゅ、はもっ……っぷ! ね、ねぇスタン、気持ちよくない?」
「いっ、いや……、すげぇ気持ちいい、けど……」
……ほっ、良かった。どうやら間違ってなかったみたいだ。
ちょっと自信が無かったんだけど、スタンに『気持ちいい』って言ってもらえて、あたしはホッとした。
77名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:33 ID:z4g6179A
同時にあたしの頭の中に、もっとスタンを気持ち良くさせてあげたいって気持ちが湧き上がる。
あたしはさっきよりも大胆に、スタンのそこをしゃぶり始めた。
「んっ! ふうっ、くぷっ、んちゅ、ふっ、くっ、ん!」
「くっ、ちょ、ルーティ、そんな……っ、ううっ!」
しばらくやってる内に、あたしはだんだんとコツを飲み込んできた。
特に、先っぽの継ぎ目みたいなところを舐められると、スタンはすごく気持ち良さそうな声を出す。
そこら辺を舌で何度もなぞりながら、あたしは音を立ててスタンのそこを頬張った。
その内、口の中に変な味が広がり出すけど、あたしも何か興奮してきちゃって、全然気にならない。
自分のあそこが熱くなってくるのを感じながらも、あたしはその行為に没頭していった。
              ◇  ◇  ◇
「……っはぁ。スタン、こんなもんで、いい?」
数分後、ちょっとアゴが疲れてきたんで、あたしはしゃぶるのを止めて、スタンにそう訊いた。
「え、あ? ああ、俺は別にいいよ……」
スタンはちょっと残念そうにしながらも、あたしにそう答える。
彼のアレは、あたしの唾液で根元まで濡れて、てらてらと月の光に光っている。
でも最初に見た時と違い、あたしはもう、それが何だか可愛く思えて来ていた。
「じゃ、次ね……」
「えっ!? ま、まだなんかするのかよ?」
あたしがそう言うと、スタンは何をする気だ、って感じでちょっと後ろに下がる。
まだ、なんて言われても、あたしがマリーに教わったのは、さっきのと、あともう一つしかないんだけどな。
78名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:35 ID:z4g6179A
あたしは目線を下げて、自分の胸を両手で持ち上げてみた。
成長期がまだ終わってなかったのか、この一年でちょっとは大きくなったけど、まだまだ控えめなサイズだ。
練習なんてしてないし、上手く出来るかどうか、さっきのやつより自信が無い。
まっ、まあ、『習うより慣れろ』よね。
「んっ……」
あたしは胸を寄せ上げて、その間にスタンのモノを挟みこんだ。
やっぱりちょっと大きさが足りなくて、挟むと言うより、胸の谷間を押し付ける、って感じになる。
「おいっ、ちょっと、ルーティっ!?」
そうした途端、スタンは慌てたような声を出した。
……ま、驚くわよね。あたしも、最初に聞いた時は、『何でそんなコトするの?』って思ったし。
でも、あのマリーが、あたしにウソを教えるなんてあり得ないし、多分こうするのが普通のはずだ。
あたしはその状態のまま、さっき口でしてたみたいに、胸でスタンのそこを上下に擦った。
「んっ……よっ……とっ……」
「なっ、なななななっ、何を……」
ちょっとぎこちない動きで、あたしは背筋を曲げたり伸ばしたりして、何とか訊いた通りの事を実行した。
さっきの唾液のせいで、スタンのモノはあたしの胸の間を動くたびに、ちゅくちゅくと水音を立てる。
動きながら、スタンのモノをじっと観察していると、先端の割れ目から、何か透明な液体が滲み出てきた。
これがさっきの、変な味の元なのかな?
何度か擦り続けると、ちょっとネバネバしたそれは、ぬめりを増して泡立ってくる。
気持ち良さそうに、ピクピクと動くスタンの熱いモノに、あたしも段々おかしな気分になっていった。
79名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:36 ID:z4g6179A
「ルッ、ルーティ、ちょっと待ったっ!」
「きゃっ! な、何よいきなり……」
いきなりスタンに両肩を掴まれて、あたしは彼の股間から引き剥がされた。
スタンの奴は、何だか全力で戦った後みたいに、はぁはぁと荒い息をついている。
彼はごくっと唾を飲み込むと、少し疲れたような顔をして言った。
「いっ、いや、その……。もう少しで出ちまう所だったから……」
「出る、って? ……あ、ああ、そっか……」
スタンの言葉の意味を理解して、あたしは顔が熱くなるのを感じた。
男の子がイク時は、あそこから白い液が出るんだって、マリーが言ってたっけ。
あたしの胸がそんなに気持ち良かったんだって思うと、嬉しいような恥ずかしいような、複雑な気分になる。
スタンは膝を突いてあたしと目線を合わせると、肩を抱いたまま押し倒してきた。
              ◇  ◇  ◇
「俺、ルーティのが見たい……。いいかな?」
「うっ、うん」
スタンに催促されて、あたしは閉じていた足をちょっと広げた。
見なくても、自分のあそこがすごく熱くなって、濡れちゃってるのが判る。
「ルーティ、もうちょっと広げて……」
「う……こう?」
恥ずかしいのを我慢して、あたしは言われるままに足の力を抜く。
どんな顔をしていいか分からなくて、あたしはぎゅっと目を閉じる。
80名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:37 ID:z4g6179A
さっきまで、スタンのモノを見てた時はそうでもなかったけど、自分のあそこを見られるのは恥ずかしい。
顔を横に逸らして、自分の顔を見られないようにしながら、あたしは股を大きく開いた。
「うわ……、すごい、濡れてる……」
驚きの声と共に、スタンの手がそこに近づいてくるのが、気配で分かる。
「……っ!」
スタンの指がそこに触れた瞬間、電撃に打たれたような快感があたしの身体を駆け抜ける。
なっ……なんで!? ちょっと触られただけなのに……。
あたしが、自分の身体の反応に戸惑っている間に、スタンは指先で入り口の辺りを撫で始めた。
「へぇ……。女の子のここって、こんなに濡れるもんなのか……」
「……っ! んっ、やっ!」
スタンは感心したように呟きながら、何度もなぞるように指を動かした。
薄目を開けて見てみると、スタンはあたしの足の間に頭を突っ込み、至近距離であたしのあそこを見ていた。
恥ずかしいのと気持ちいいのとで、あたしの心臓は狂ったみたいに跳ね回る。
スタンの吐息がかかる度に、あそこの毛がさわさわと動いて、あたしの肌に鳥肌が立った。
「……ルーティ、俺も、舐めてもいいかな?」
「えっ!? や、だめっ!」
スタンに言われて、あたしは慌てて足を閉じようとした。
指で触られただけでこんだけ気持ちいいんだから、舐められたりしたら、どうなっちゃうか分からない。
でも、間に入ったスタンの頭が邪魔で、しっかりと足を閉じることができない。
仕方ないので、あたしは両手をあそこに被せて、スタンの視線からそこを隠した。
81名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:38 ID:z4g6179A
「だめっ、絶対だめっ!」
「……何でだよ。ルーティだってさっき、俺のあそこを舐めたりしてたじゃないか」
あたしは必死でそう言ったけど、スタンは不満そうな顔で文句を言う。
「だって……、その、あれは……」
マリーにそうするって教わったんだもん、しょうがないじゃない。
そう言いたいけど、うまく言葉に出来なくて、あたしは口ごもる。
そしたら、スタンはあたしの手を少し強引に押さえつけて、更に顔を近づけてきた。
「ずるいぞ、ルーティ。隠さないで、ちゃんと見せてくれよ……」
「あっ、スタン、ちょっと待っ……ふあっ!?」
あたしの指の間から滑り込んだスタンの舌が、あそこの表面をぬるっと舐めた。
その刺激に、あたしの手から力が抜けた途端、そこを隠していた両手を掴まれ、脇にどかされてしまう。
「ぴちゅっ、ぴちゃ……、んっ、ルーティのここ、ちょっとしょっぱい味がするよ……」
「ああっ、あっ、あふっ!」
剥き出しになったあそこを、スタンの舌がぴちゃぴちゃ音を立てて嘗め回す。
お腹の奥にずしんと響くような快感に、あたしはもう抵抗する気力が無くなってしまった。
              ◇  ◇  ◇
「んっ……、ちゅっ、すげっ……。どんどん溢れてくる……」
「んくぅっ! んっ、はぁっ、くっ、んんっ!」
スタンの指と舌であそこを弄られて、あたしはもう堪らなくなってきていた。
彼の言葉通り、あたしのあそこは洪水みたいになって、お尻の方までエッチな汁が垂れて来る。
82名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:39 ID:z4g6179A
敏感なお豆をくりくりされると、頭の中で極彩色の花火が絶え間なく弾ける。
あたしはただ、スタンの動きの一つ一つに、振り回されるだけだった。
「ルーティ……、俺、もう……、いいかな?」
あたしの雫で口元を濡らしたスタンが身体の上に覆い被さってきて、あたしにそう言った。
あたしはぼんやりとスタンの顔を見上げ、視線を下にずらしてみる。
スタンは、さっきよりも大きくなったアレを片手で押さえ、興奮に身体を震わせている。
「ん、来て……」
あたしは彼が望んでいる事を悟り、小さく頷いた。
「うん、じゃあ、行くぞ……」
そう呟いて、スタンは反り返ったナニの先端を手で押し下げると、あたしのあそこに宛がった。
あたしの大事な所に触れたスタンのそれが、火傷しそうなぐらいに熱くなってるのが分かる。
ああ、ホントにあたし、これからスタンとしちゃうんだ……。
嬉しさと愛しさと、ちょっとの恐さが入り混じり、あたしの胸に表現し辛い感情が渦を巻く。
そして、スタンのそれがゆっくりと中へ……って、いっ……!?
「痛ったぁい!」
あまりの痛さに、あたしは思わず大声で叫んでしまった。
マリーからは、『指の股を思い切り抓ったぐらい』とか聞いてたけど、そんな生易しいモンじゃない。
まるでトゲトゲのついた棒をお腹に突っ込まれたみたいな……、とにかく、痛いっ!
「え……? まさか、ルーティ、初めて?」
「なっ、何よっ……! あたしが初めてだったら、そんなにおかしいっ!?」
83名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:40 ID:z4g6179A
意外そうに言うスタンに、あたしは痛みを堪えながら、小さく怒鳴った。
こいつったら、人の事を何だと思ってたのよ!?
「い、いや、おかしくは無いけど……。あんな事するから、てっきり……」
スタンは混乱した様子で、何だか訳の分からない事を呟く。
「その、そんなに痛いなら、もう止めるか?」
「……っ、へいきっ! あ、あたし、我慢できるっ!」
身体を離そうとしたスタンに、あたしは思わずそんな事を口走ってしまった。
本当は、今すぐ止めて欲しいぐらい、痛くて仕方が無い。
でも、それ以上に、スタンと一つになりたかった。
それに、モンスターに傷付けられたり、術を喰らったりしたのに比べれば、この位の痛さ……。
「そうか? じゃ、続けるぞ……」
「〜〜〜〜っ!」
ふええっ、やっぱり痛いよぉ!
ずぷずぷと熱くて硬いモノがあそこに入ってきて、あたしは声にならない叫びを上げた。
無意識にお腹に力が入って、あたしの中はスタンを止めるように、ぎゅっと収縮する。
だけどスタンは体重を掛け、あたしの抵抗を突破して、指で触った事もない奥の方に侵入してくる。
やがて熱い塊は、あたしの奥の突き当たりにコツンと当たり、スタンの下腹部があたしのお腹にくっつく。
「……っはぁ、ルーティ、全部入ったよ……」
「……っく、ふ……っ、んっ……」
スタンがそう言っても、あたしは答えることも出来ずに、ただ痛みを堪えていた。
84名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:43 ID:z4g6179A
              ◇  ◇  ◇
「ルーティ、俺、お前とこうして一つになれて、すごく嬉しいよ……」
スタンはそう言うと、あたしの顔に手を伸ばして、零れていた涙をそっと拭ってくれた。
「あっ……。あた……しも、すごく……、うれし……」
あたしも痛みに耐えながら、やっとそれだけ答えた。
だって、ずっと前から、初めてはスタンにあげようって、決めてたんだもん。
確かに痛いけど、スタンと身体も心も一つになった事を思えば、その痛みさえ嬉しく感じられる。
スタンはあたしの涙の跡にキスをすると、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「くっ、はっ、ルッ、ルーティの、なかっ、すごく、熱くて、気持ち、いいよっ……」
「……っく! っつ、んくっ、はぁっ、くっ、はんっ!」
気持ちよさそうに瞳を潤ませながら、スタンはあたしの中を出たり入ったりした。
あたしの方は、中がスタンのモノと擦れる度に、ズキン、ズキンと痛みが走る。
気持ち良くはないけど、スタンが悦んでくれてるから、そんな痛みなんて充分我慢できる。
スタンの動きは段々激しくなって、あたしのあそこからは濁った水音が響き出した。
「くっ、はっ……、あ、あれ?」
「……?」
いきなり痛みが無くなって、あたしはスタンの下半身に目を向けた。
スタンの身体の影になってよく見えないけど、どうやら動きすぎて、あたしの中から抜けてしまったらしい。
あたしは、大きく息をついて、じんじんするあそこの痛みを抑えようとした。
85名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:44 ID:z4g6179A
「ごっ、ご免、俺、初めてだから良く分からなくて……。こ、ここかな……?」
スタンはちらちらと下を見ながら、アレの先端であたしの入り口を探った。
ぬるぬるした先端があたしの下腹部を伝って、ちょっとくすぐったい。
そしてスタンのモノは、あたしのあそこ……を通り過ぎて、え、え!?
「こ、ここかな……、っく!」
「──────っ!」
あたしは思いっきり息を呑んだ。
だって、だって、スタンがナニを押し込んだのは、あたしの、その……、お尻の穴だったのだ!
想像すらしなかった事態に、あたしの頭は真っ白になった。
「うっ、くっ、ルーティ、ルーティっ……!」
「やっ……、スタ……、そこ……っ、ちがっ……!」
スタンは、入れる所を間違えたのに気付いていない様子で、さっきみたいに腰を動かし始めた。
あたしは、何がどうなってるのか分からず、ただ首を左右に振りながら、切れ切れに言葉を繋ぐ。
でも、夢中になっているスタンには、あたしの言葉は理解して貰えなかった。
「ルーティ、ごめん、まだ痛い……? 俺も、もうちょっとだから、我慢して……」
スタンはそう言いながら、今度は抜けないように、根元まで入れてから、小刻みに腰を振った。
彼の片手があたしの胸に触れ、尖っている先端を指の間で転がす。
ぬるぬるしたスタンのモノは、さほど抵抗無く、あたしの中を動き回る。
でも、あーん、そこは違うのにぃっ!
「ねっ、ねえっ、スタンっ……! あのねっ、そこっ、違うの……っ!」
「えっ、じゃ、じゃあ、こう……?」
86名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:45 ID:z4g6179A
「んっ、やっ、違うっ……!」
思い切って言ったのに、スタンは誤解したらしく、今度は胸全体をくにくにと揉み始めた。
それはそれで気持ちいいんだけど、あたしが言いたかったのは、そう言う事じゃなくて……。
でも、『そこはお尻の穴』なんて、気まずくて、とてもじゃないけど言えないし……。
「……えっ!? あっ、うそっ!?」
迷っている内に、感覚に変化が訪れて、あたしはますます混乱した。
何と言うか、その……。お尻の穴がむずむずして、段々気持ち良くなってきたのだ。
「あんっ……、いやっ、へん、こんなのっ、へんだよっ……ああんっ!」
頭では、こんなのおかしいって思ってるのに、お腹の中が次第に熱くなってくる。
必死に首を振って否定しようとするけど、口までがあたしの意思に反乱し、エッチな声が出ちゃう。
あたしはぶちぶちと草を千切りながら、押し寄せる快感を意識から追い出そうとした。
「ルーティ、俺、そろそろ、いくぞっ……!」
「あっ、だめぇっ! そんなっ、はやくっ、うごいちゃ、あ、あ、あっ!」
スタンの動きがますます速くなって、あたしはとうとう耐えられなくなった。
もう、お尻だからとか、自分がおかしいんじゃないかとか、そんな事はどうでもいい。
だって、だって、気持ちいいんだもんっ……!
あたしはスタンの背中に手を回し、ぐっと抱き寄せながら、未体験の快楽に身を任せた。
「くうっ、くっ、いくっ、いくぞっ……」
「だめだめっ、いっちゃ、いやっ……! きて、きてっ、いっしょにっ……」
あたしの足が、自然とスタンの腰に絡みつき、更に奥へと誘う。
87名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:46 ID:z4g6179A
「ごめんっ、もうだめだっ、ルーティ……っ!」
「んんっ、いいよっ、あたしもっ、くるっ、きてっ、スタンっ……!」
お腹の中で、スタンのモノがビクビクと震え出す。
「くっ、だめだっ、……くうっ!!」
「ふあっ、くうぅぅぅっ!!」
奥の方に何か熱いものを注がれたあたしは、スタンの胸に抱きつきながら、──イッてしまった。
              ◇  ◇  ◇
──翌朝、あたしはマリーの部屋で、夕べのさんざんな初体験について語っていた。
「……ぷっ! つっ、つまり、最初の一回で、前と後ろの処女を捧げた訳か……、はははははっ!」
「なっ、何よっ! マリーったら、笑わないって約束したでしょお!?」
堪えきれずに笑い出したマリーに、あたしは真っ赤になって怒鳴った。
マリーはあたしの古い相棒であり、少し年の離れたお姉さんみたいな存在だ。
あたしは昔っから、マリーにだけは上手く隠し事が出来た試しがない。
あたしはよろよろと内股で歩いている所をマリーに見つかり、洗いざらい白状させられてしまったのだ。
但し、最後の方で、お尻が気持ち良くなっちゃった事だけは、何とか隠し通したけど……。
だけど、そんなに笑わなくたっていいじゃない、もう!
「くく……、いや、済まなかった。しかし、それでスタンはあの有様だった訳か、くっくっ……」
からかう様な目でマリーに見られて、あたしはぷいっと顔を逸らした。
結局あの後、ついムカムカッときたあたしは、スタンの頬を思いっきりビンタしたのだ。
あたしは部屋に閉じこもっていたけど、マリーの話では、早朝にスタンがこの宿屋に顔を出したそうだ。
88名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:47 ID:z4g6179A
その時のスタンの頬には、くっきりとあたしの手形が残り、叱られた犬みたいな顔をしていたらしい。
……ふん、あのバカにはいい薬だわ!
「……で、結局スタンのプロポーズは断るのか?」
「じょ、冗談じゃないわ! あいつには、あたしの初体験を滅茶苦茶にされた貸しがあるんだから!
 一生掛かったって、利息を付けて償ってもらわなきゃ、割が合わないわっ!」
「ふふっ……。全く、素直じゃないな。まぁ、あんまり苛めて、話をこじらせないようにしろよ?」
何だかマリーには、あたしの本当の気持ちが全部見透かされてるような気もするけど、無視、無視!
「……しかし、ルーティも大胆だな。初めてでそこまでやるとは……」
……え? それはちょっと聞き捨てならないぞ?
「ちょ、ちょっと待ってよ。そもそも、マリーがそうするって教えてくれたのよ?」
「ああ……あの時か。いや、あの時は『私が男と寝る時にどうするか』と訊かれたから、ああ答えたんだぞ?」
た、確かにそう言う訊き方をしたけど、まさか『スタンとする時にどうすればいいか』なんて訊けないじゃない!
「えっと、じゃあ、舐めたりとか、その、挟んで擦ったりとかっていうのは……」
「まぁ、普通はしない……とまでは言わないが、少なくとも、乙女のする事ではないな」
マリーの言葉に愕然としながら、あたしはスタンがあの時言った台詞を思い出した。
『い、いや、おかしくは無いけど……。あんな事するから、てっきり……』
じゃあ、なに? スタンがあたしを処女じゃないって誤解したのって、あたしのせい?
あんなに恥ずかしかったのに、あれってば、スタンがやった事と同様、初体験にあるまじき行為なわけっ!?
「うっ……、ウソでしょお〜〜〜〜!?」
あたしは、村中に聞こえるぐらいの大声で、涙ながらにそう叫んだ。

〜END〜
89名無しさん@ピンキー:03/05/07 09:52 ID:z4g6179A
いろいろ考えたんですけど、結局「それが普通だと思った&間違えた」という卑怯な展開にしちゃいました。
ありえねぇシチュですけど、そこはまあファンタジーっつーことで。

ではでは、次の職人さんをお待ちしつつ、これにて失礼。
90名無しさん@ピンキー:03/05/07 14:51 ID:O0/06fjy
>89
乙〜。
これ向こうのスレで少し話に出てた、初でフェラやらパイずりってやつだね。
純愛というか、ほのぼのって感じだ。少しワロタ。
91名無しさん@ピンキー:03/05/08 01:28 ID:Po/stONV
>>68-88
おお〜大作だ。元ネタはなんですか?
92名無しさん@ピンキー:03/05/08 07:43 ID:BzITCWZ7
>91
>67にちゃんと書いてあるだろ。
いや〜サザムさん(68〜88さんが他スレで使ってるコテハン)堪能させてもらいました。
スタルー初体験エッチ(・∀・)イイ!
初々しいエッチてなかなかそそられますな。
93名無しさん@ピンキー:03/05/08 16:29 ID:RWh6E8B2
元ネタ知らないんで予備知識なしでしたが、読みやすく入り込みやすかったです。
雰囲気も、90さんのおっしゃる通り、ほのぼので良かった。
「初でフェラ&クンニ」は個人的な好みでもあるため、特に萌えました。ふー。

>92
わざわざ他スレのコテハンで呼ぶのはどうかと…。
ご本人が気になさらなければ別にいいのですが。
私だったら嫌だなと思ったので…。横からごめんなさい。
94名無しさん@ピンキー:03/05/08 19:57 ID:auim1xiS
ふと思ったんだけど、改めてルールつくったほうが良くないか。

第三者が書き方とかで、
これはあのコテだと気付いても指摘しない、とか。
まぁこれは本人が気にならなければ無問題なわけだが。

あと、パロのことだけど、どのジャンルだとか特に書かなくてもいいとか。
キャラ名やその世界観の専門用語らしきものでぐぐれば、
どのパロか判別できるし。そして逆に、パロの場合そのパロの本スレに
報告したりはしないとか。これは単純に摩擦を避けるために。
パロなら本スレに出せや(゚Д゚)ゴルァ!!とか言ってくる厨がいないとも限らないから。
…気にしすぎかな。
95名無しさん@ピンキー:03/05/09 05:46 ID:GHle3ZAH
本人が「名無しでコソーリ」ってつもりの人にはそれでいいと思うけど、
逆に本人がオープンな人なら、またそれもそれでいいと思う。
コテも常駐スレもOKっす、とか自分で書いちゃうっす、みたいな。
書いた後自分で「新作です。ここに投下したよー」と
常駐スレにリンクしたりする人も、別にいてもいいんじゃないかな。
そのへんは書いたご本人の自由で。
9667−88 サザム:03/05/09 09:06 ID:61PR8G1R
あうう、私の考えなしで問題が出ている……。
常駐スレで自分から誘導しておいて、こっちで名無しにした私がいけなかったです。
いや、控え室の流れで出来たスレだから、こちらは名無しの方がいいかな、と愚考したもので。
スイマセンでした〜。
97名無しさん@ピンキー:03/05/09 09:25 ID:XofUmX4K
お疲れ様です>サザム氏
いつも楽しませていただいております。
今回も良いですね〜♪

個人的には、名無しにしたい時は名無しでいいじゃないかと思います。
なのでサザム氏が謝る必要はないかと。
98名無しさん@ピンキー:03/05/10 21:35 ID:rxONhZb6
はみだし刑事情熱系の高見兵吾×根岸玲子のエロ小説を構想中ですが、ちょっとマイナーでしょうかね?
99名無しさん@ピンキー:03/05/11 00:46 ID:bDPGtIis
>>98さん
そのドラマ、あまりよく見たことないんですが、恭平×ジュンでしょうか?
若い人にはちょっとどころでなくマイナーな気もしたりしますが、
そんなことお構いなしに、個人的にはぜひ読んでみたい組み合わせですね。
たしか、好きあってるのに別れた夫婦(子供あり)って設定だったような・・・

大人の純愛、おいらも書きたかったテーマですが、、
まずは>>98さんのを期待して待ってます。
10098:03/05/11 15:39 ID:fsQhezYd
>99
レスありがとうございます。完成には少々時間がかかりそうなので、しばしお待ち下さい。
10198:03/05/12 18:15 ID:k1J5N2TE
>98で予告した小説ですが、何とか書き上げることができたので、早速アップしたいと思います。
元ネタは東映制作の刑事ドラマ「はみだし刑事情熱系」です。
(ちなみに兵吾は柴田恭兵、玲子は風吹ジュンです)
拙いものですが、読んでやって下さい。
10298:03/05/12 18:36 ID:k1J5N2TE
  「緋色の深夜」

一度は解散の危機にさらされた広域捜査隊が本庁上層部の判断で存続されることが決定して数ヶ月が経ったある日のことである。
その日はこれといった事件もなかったので広域メンバーの刑事たちは既に帰り、オフィスには兵吾と玲子だけが残った。
ピピピ・・・兵吾の携帯電話が鳴る。愛娘・みゆきからのメールだ。
『今日は友達の家に泊まります。』「友達?どうせ武田じゃないのか?」
みゆきの年上の恋人のことをよく思っていない兵吾はそうひとりごちると携帯電話の電源を切った。
「高見さん、何見てたの?」玲子が兵吾に声をかけた。「みゆきからのメール。あいつ、今日はダチの家に泊まるってさ」
「そうなの・・・あの子、今朝家を出るときは何も言わなかったけど」玲子が心配そうな口調で言う。
「大丈夫大丈夫、みゆきのことだから明日になりゃ元気に帰ってくるって、きっと」兵吾は心配するなとでも言うように玲子の背中をポンポンと叩いた。
「それもそうかも。あの子は誰かさんに似て悪運が強いものね」「おい、それどういうことだよ」
玲子の言葉に兵吾は少しむすっとしたが、内心では別のことを考えていた。
(久しぶりに玲子と二人きりか・・・・)
「そろそろ帰ろうかしら。」そう言ってオフィスを出た玲子を兵吾は追いかけた。
「玲子、待ってくれ!今日はお前んちに泊めて欲しいんだ」「どうしたの?いきなり」
兵吾は照れ笑いしながら答えた。「だって、毎晩カップ麺やコンビニ弁当ばかり食ってるわけにもいかないだろ?たまにはお前の手料理が食いたいよ」
「全くしょうがないわねえ」玲子は半ば呆れつつも、兵吾が自分の家に泊まることを許した。
10398:03/05/12 19:02 ID:k1J5N2TE
兵吾は久しぶりに玲子の家の玄関をまたいだ。多少殺風景な自分の部屋とは明らかに異なる空気に、彼の胸は高鳴った。
「高見さん、炒飯でいいかしら?」玲子の優しい声ではっと我に帰る兵吾。
「玲子の作るもんなら何でもいいよ」「本当?」玲子の顔に少女のような笑みが浮かぶ。
キッチンに立ち、フライパンを振る玲子の表情はリビングにいる兵吾には見えないが、きっとどこにでもいる主婦のそれだと兵吾は思った。
やがてリビングに香ばしい香りが漂い始め、玲子手製の炒飯が出来上がった。
兵吾は無言でそれをかき込み、あっという間に平らげた。
「美味かったよ、玲子」兵吾の満足そうな表情を見ていると、玲子の脳裏にかつての幸せな記憶がよみがえって来た。
今私の目の前にいる男はいつもこうだった。私の料理をいつも美味しそうに平らげ、私にやんちゃな坊やみたいな笑顔を見せてくれた。
警察という男社会の中でなめられないように女を捨てて生きてきた私を一人の女として認めてくれて、私を心底から愛してくれた・・・
「玲子、どうした?」「ううん、何でもないわ」兵吾に声をかけられ、玲子は少し気恥ずかしくなった。
「私、これからお風呂沸かしてくるわね」玲子はそう言ってバスルームに向かった。
「サンキュー、俺、ちょうどひとっぷろ浴びたかったんだ」「そうなの。じゃあ脱衣所にバスローブ置いておくわ」
玲子は真新しいタオル地のバスローブを脱衣所の籠の中に入れた。バスローブは、玲子が兵吾から「再婚指輪」をもらった翌日に、兵吾の為に内緒で購入してずっとしまいこんでいた物だった。
それから少し時間が経ち、兵吾はバスルームに向かった。
10498:03/05/12 19:42 ID:ayBPlJoG
少し熱めの風呂に浸かりながら、兵吾は父親であることよりも刑事であることを優先させたために妻の愛を失ってしまった時のことを思い出していた。
あの時俺が判断を誤らなければ、幼くか弱かったみゆきを全力で守っていれば、ずっと玲子と夫婦でいられたのに。本当に馬鹿だったよなあ、俺・・・
「高見さん、私も入るわよ」バスルームのドアを開け、玲子が入ってきた。玲子は兵吾の目前で体に巻いていたバスタオルを取り、体を洗い始めた。
玲子の小柄だが均整の取れた美しい裸体は、物思いに耽っていた兵吾から暗い気分を消し去った。
「玲子・・・!」兵吾は湯船から出ると、全身についた石鹸の泡を洗い流す為にシャワーを浴びている玲子に抱きついた。
「高見さん、ちょ、ちょっと待って」玲子の声に構わず兵吾は玲子を強く抱き締め、唇を奪った。兵吾がキスを繰り返す度に玲子の体に兵吾の胸板や熱くなった下半身が当たる。
出しっぱなしのシャワーに濡らされながらの抱擁と、兵吾からの久しぶりのキスは、玲子の気持ちを高ぶらせた。
「高見さん、離して。私が気持ちよくさせてあげるから」玲子はシャワーを止めると跪き、兵吾のものを口に含んで舌を動かした。
「玲子、お前そんなこと・・・どこで、覚えた・・・・?」気持ちよさと恥ずかしさで兵吾の言葉が途切れ途切れになる。
玲子は顔を真っ赤にしている兵吾を見上げながら舌の動きをいっそう強め、兵吾が果てると、口の中に放出された精液を全て飲み干した。
10598:03/05/12 20:23 ID:ayBPlJoG
「なかなかよかったぜ。」そう言うと兵吾はバスルームを出て、濡れた体をタオルで拭いた。
みゆきの読んでいた少女雑誌の記事を内緒で読み、その内容を真似してやってみた口での愛撫を褒められ、玲子は少し嬉しくなった。
「玲子、今日は一緒に寝よう。俺、お前としたくなっちまった」脱衣所から兵吾の声が聞こえ、玲子はゆっくりと立ち上がった。
すると、先程の熱いシャワーと抱擁で体が温められて血の巡りが良くなったからか、玲子の両脚の間からたらたらと血が流れ出した。
「高見さんごめんなさい、私今夜はダメだわ」
玲子が出したバスローブに着替えていた兵吾はドアを開けて玲子に聞いた。「どうしてだよ?」
玲子は再びバスタオルで体を隠し、うつむきながら言った。
「生理になっちゃったみたいなの。今の私としたら、高見さん血まみれになっちゃうわ」
「何言ってんだよ。俺たち仕事で血は見慣れてるだろ?」
兵吾はそう言うと玲子を抱きかかえ寝室に向かった。
兵吾は玲子をベッドに横たえると彼女の体を隠しているバスタオルを剥ぎ取り、乳房を愛撫し始めた。
兵吾の薄い唇に乳首を吸われ、玲子の顔が赤らむ。
何度も強く吸われ、時々軽く歯を立てられ、その度玲子の口から熱い吐息が漏れる。
兵吾は普段見られない玲子の悩ましく淫らな表情を堪能し、玲子の乳首から口を離した。
10698:03/05/12 21:08 ID:ayBPlJoG
「お前やっぱり感じやすいんだな」「それは高見さんが・・・」
玲子は兵吾と別れてから失意の中で他の男に体を許したことがあったが、乳房の愛撫だけで自分をここまで感じさせてくれる男は兵吾だけだった。
「玲子、四つん這いになって俺の方にケツ向けろ」玲子は兵吾の言葉に素直に従う。
「力抜いてろよ」玲子の秘所に兵吾の男にしては細い指が一本、また一本と入り込む。最愛の男の指が自分の中で動く度、玲子の体の奥が熱くなる。
「そろそろいいか?」兵吾は血と愛液でヌルヌルになった玲子の秘所から指を引き抜くと、自身の硬いものをそこに突き入れた。
「くっ・・・」兵吾の激しい腰の動きと、自分の体の一部が兵吾のもので満たされる感覚に玲子は唇を噛み締める。
「声殺さなくてもいいんだぜ。どうせ誰も聞いちゃいないさ」押し寄せる快感に声を噛み殺して耐える玲子に兵吾がそっと囁く。
「あっ、ああん、高見さん、高見さん・・・・・兵吾ぉ!!」
玲子は絶頂に達する間際に兵吾の事を二十年ぶりに下の名で呼び、その声に誘われるように兵吾もまた絶頂に達した。
兵吾のバスローブは汚れなかったが、ベッドのシーツには鮮血がぽたぽたと落ちた。
ことが終わり、ベッドにうつぶせになっている玲子の横で兵吾が聞いた。
「なあ、さっき俺のこと兵吾って呼んだろ?」玲子は兵吾のいる方に寝返りを打って答えた。
「いいじゃない。私たち、より戻したんだから。高見さんがくれた指輪だって、ほら」
玲子は左手の薬指にはめたプラチナの指輪を兵吾に見せた。
自分が大変な思いをして手に入れ、迷いの末にようやく渡すことができた指輪を玲子が職場にいる時以外も肌身離さずつけている。
そのことが兵吾にはとても嬉しかった。
「大事にしてくれてありがとう。愛してるぜ、玲子!」
兵吾は既に眠ってしまった玲子の頬にキスすると、自分も眠りについた。
二人が男女の関係に戻っても、二人が部下と上司の関係であることは変わらないし、当分の間は一緒に暮らすことも再婚を誓う為の「一枚の紙」に署名することもない。
しかし、二人にとっては今のこの幸せとお互いの心身に残る温もりこそが、指輪にも匹敵する復縁の証なのだ。(完)
10798:03/05/12 21:18 ID:kOCoyrih
元ネタとなったドラマの最終回が一度は別れた二人の復縁を暗示するような終わり方だったんで、その後の二人をイメージして書いてみたのですが、大人の純愛というか、ちょっと回りくどい話になっちゃいました。
(バスルームでのラブシーンは結構好きなシチュエーションなんですが・・・)
スレ汚し失礼。
108名無しさん@ピンキー:03/05/14 11:00 ID:QX//8bk7
98さん乙ー。復縁して純愛ってのも、なかなか良いですねー。
柴田さんは「あぶない刑事」の印象が強いんで、カメラ目線で「イクぜ!」とか言うイメージが……。
これじゃギャグか。
109名無しさん@ピンキー:03/05/17 02:28 ID:xLc5BB/3
遅ればせながら、98さん、お疲れさまです。
関係ないですが、恭『兵』でしたか。>>99で恭平と間違って書いちゃってましたね。
自分は>>108さんとは逆に、風吹ジュンのほうに思い入れがありまして、、
原田知世主演のTVドラマ、『セーラー服と機関銃』で
色っぽいお姉さん役で出てたのを見て、
すっかりお姉さん属性になった若かりし頃の記憶があります。

そうですかー、お姉さまはまだあがってないんですかー、
なんてジュン姉に失礼なことは考えず、
ちゃんとドラマのキャラクター同士の絡みとして楽しめました。
いや、>>108さんのレス読んでから、自分も兵吾には
恭兵のイメージ付いちゃって、「愛してるぜ」ってセリフも、
あぶ刑事で館ひろしに「タカ」って呼びかけてる口調で
言ってそうな気がしてきちゃいましたが・・・

ともかく、おもしろかったですー。
110名無しさん@ピンキー:03/05/17 02:29 ID:xLc5BB/3
・・・さて、あっちではすっかりログ流れちゃってるし、
気にかけてくれると言うことは、ここも読んでると言うことだと思うんで、
こっちでいまさらレス返したりすると、、
控え室の>>729さん、
べつにどこにいくともなく、生まれた頃から住んでる家にいて、
ここROMったりレスつけたりしてますよー。

このスレ立てたときも名無しでしたし、
おそらく、SS投稿するときも他の方同様名無しで投稿すると思うので、
1はどこ行ったとか探さず、まるで背後霊のようにこのスレにつきまとってると
思っててください。
壁|∀・)ニヤニヤ ←こんな感じ

うーん、自分で普段書かないような純愛SS書きたくて、
他の人のいろいろな純愛SS読みたくて立ててはみたものの、
純愛で、エロいSSというのが、これほど自分にとって難しいテーマだったとは、
正直思ってなかったです。
ま、もともと手の早いほうじゃないのは自分ではわかってたことだし、
このスレ終わるまでには1本は書き上げるつもりでいますので、
>>1は立て逃げとか、ここ閑散としてるのは>>1が悪いとか
思わないでいてもらえると助かります。

個人的には、ぜんぜん閑散としてるとは思わないんですけどね。
いい具合に下の位置にいて、適度なレスの量で、
まさにSSの落とし頃とか思ってるんですけど、、、
111名無しさん@ピンキー:03/05/20 04:43 ID:QzpRxeNG
>109
・・・てゆうか、アンタみたいなよく喋る職人始めて見たよ。
多弁なのはかまわんが、20行を超える文かくヒマがあったら次回作の構想なりねってくれ。
ぐだぐだ長文書いても読者からしたらめんどくさいのの「いいわけ」にしか聞こえん。
口はいいから、行動であらわしてくれ。
112名無しさん@ピンキー:03/05/20 22:05 ID:RXDrFfAB
>111
まあいいやん。多分>1は、立て逃げしたわけじゃないし
投下するつもりもちゃんとあるよ、と言いたくてちょこっと顔出したんだろう。
もしかして宣言することで自分に発破かけたのかもしらん。

自分も諸事情で眠らせてた版権もの、手直しして出してみるかな。
…てな風に、予告出して自分を追い立てないと発奮しない書き手も
いるってこった(藁 >1がそうなのかは知らないけどね。
113名無しさん@ピンキー:03/05/20 23:37 ID:dzItTWKf
とくかく、いま時純愛みたいなジャンルは性癖が多様化してる現在
化石のようなものであって(別に馬鹿にしてない)、貴重で、
ここくらいしか読めるとこ知らんからがんばってくれといいたい。

助言だが
>純愛で、エロいSSというのが、これほど自分にとって難しいテーマ
清純、清潔なものにこだわってるからでは?。
お互いが愛し合ってるものでも、ドロドロした堕落した退廃的な
関係を書けばいい。もしくは両者の性癖が過激なものだったり。
114名無しさん@ピンキー:03/05/21 02:33 ID:JF/agMDo
エロゲーの話だけど、エロゲ業界ではいま萌え+エロの萌エロが来てる。
「純愛ゲーはエロ薄いのが当たり前」という過去のつまらない通例を覆して
純愛だけど濃いエロ、エチ多め。これ。
そして終始ラブラブ。これ最強。
散発的には出てたけど、来たのはここ一、二年かな。
閑古鳥鳴いてたエロゲ板のジャンルスレもいまは順調に動いている。
115Wing:03/05/21 14:36 ID:Kqz1BZuh
「ねぇねぇ」
「え?」
「ほら! 今来た人。 ……でしょ?」

私たちの控え室は玄関のすぐ横。
玄関との間にガラスが一枚あって、入ってきたお客さんの姿がわかる。
でも当然だけど、それは向こうからは見えないマジックミラー。

おどおどしてる人、きょろきょろあたりを見回している人。
慣れてることを見せつけるように平然としてる人。
なぜだか男性従業員を見下すように態度が大きい人。
いろいろな人がいる。

はじめの頃は面白くて、来る人をずっと見ていたけど、
最近は、あまり注意を払うこともなくなっていた。

雑誌のネールアート特集の写真に見とれてた私は、
目を上げ、ヒカリさんの指差す方向を見た。

あ… あの人だ! また来てくれたんだ!

「へ〜 やっぱりあの人なんだ」
「え? なにが?」
「とぼけたってだめヨ。君枝ちゃんウソがへたなんだから。
 目の中、お星様輝いてるよ〜 いっぱい」
「そんなこと… ない… けど…」
顔が赤くなるのがわかる。
116Wing:03/05/21 14:37 ID:Kqz1BZuh

「いいのよ、隠さなくても。そっか。あの人なのね〜 フムフム」
「………」
この間、ヒカリさんに話しちゃったの、失敗だったかも…

------*------*------*------*------*------*------*------*------

目の前にいるヒカリさんは、
最初の日から気さくに話しかけてくれた人。
この店では半年ぐらい先輩になる。

その前に1年ぐらい別な場所で働いてたらしい。
年齢は同い年。あとで聞いたら私の方が3か月年上だったけど。
この業界のことを何にも知らない私に、いろんなアドバイスをしてくれた。

最初の日。
教育係の人に何時間かでサービスについて教えてもらった。
とてもじゃないけど、急に覚えられるような量じゃなかった。

「じゃあとは、自分の好きなようにやっていいよ。
 お風呂とマットさえやってくれれば、まず大丈夫。
 ここ、お店もお客さんも、あんまりうるさくないから」

え? これだけ? 一通り全部やっただけで、これで終わり?
私は控え室に戻ったとき途方に暮れていた。

いちおう経験はそこそこあるけど、プライベートだけだし。
男の人に積極的にサービスしたこともあまりなくて。
教わったことがちゃんとできるかどうか、とても不安だった。
だいたい、最初にどんな話をすればいいんだろ?
117Wing:03/05/21 14:40 ID:Kqz1BZuh

私のそんな様子を見かねて、ヒカリさんが助け舟を出してくれる。
「どちらからお見えですか? って、最初は聞くの」
そんなことから始まって、親身になっていろんな事を教えてもらった。

-------------------------------------------------------

最初の給料が出て、二人ともお休みのとき、
お礼にヒカリさんを食事に誘った。イタリアンのお店。
勤めてから3週間ぐらい経った頃。
で、結構ワイン飲んでいろんな話してるうちに、
私ポロッって言っちゃった。

「このあいだ来た…」
「?」
「お店に来た田中さんって言う人…」
「それって指名の人?」
「そう」

「もしかして… 君枝ちゃん、なんか、されたの? その人に」
「ちがうちがう。そうじゃなくて」
「?」
「なんか… えっと… いいかな〜って」
言ってて、自分の顔が赤くなってゆくのがわかる。

「え? ……ああ、そっか。そういうことね」
「ヘンかな? 私って。相手はお客さんなのに」
「ううん、全然ヘンじゃない。好きになることってあるし…」
118Wing:03/05/21 14:43 ID:Kqz1BZuh

耳元に口を寄せてヒカリさんがささやく。
「それだけじゃなくてさ」
「………?」
「なんか… 体が勝手に感じちゃう相手っていうのも… あるんだよね」

そう言われて、私は田中さんに抱かれた時のことを思い出してた。
そのときの興奮が、つかのま鮮明によみがえる。

「うん。それ… ある… かも」

「ふ〜ん。やっぱりそういうことか」
「え? あっ!」
「もう遅〜い!」
「………」
「いいんだよ。別に。
 うちら、商売だけど、少しぐらい楽しみがあってもいいんだし」
「あ、あ、」
「そっか。君枝ちゃんのそういうところ見ると、
 新人さんなのに、ご指名が多いの。なんか分る気がする」

-------------------------------------------------------

「いらっしゃいませ」
あいさつをし、頭を下げた。田中さんは照れるように頭を下げた。
ここは女の子たちが来て、お客さんを案内するための狭い場所。
私はごく普通のスーツ。特にセクシーなものを着てるわけでもない。
OLの通勤着にしか見えない、クリーム色の大人しいデザインのもの。
119Wing:03/05/21 14:44 ID:Kqz1BZuh

「どうぞ。こちらへ」
エレベーターで私の「部屋」に案内する。
田中さん、落ち着かない様子でフロア表示ランプを見つめてる。
私は私で、変に気持ちがはしゃいでいた。表情には出さなかったけど。

部屋に入って、キスをする。
「恋人気分で…」というのがここのお店の売り。
とはいっても、あまりに気分じゃない人とは、やっぱり形だけになる。
でも、今こうしてるのって、それとは違う。

田中さんは一番最初の日の、5人のお客さんの1人。
一番最後の人だった。
ぎらぎらした目をした他の人とはちがって、
落ち着いた雰囲気の40歳ぐらいの人。なにかが違ってた。

そんなことを思い出してるうちに、
ずっとキスしたままだったことに気づく。
あわてて唇を離す。

「ごめんなさい、気分… 出しすぎちゃいましたね」
「あ、いや」
「そうだ、ちゃんと言わなくちゃ。本日はご指名有難うございます」
「ん、それは、まぁ…」

なんか… 間がもてない。
120Wing:03/05/21 14:46 ID:Kqz1BZuh

あせって、ひざまずいてベルトに手を掛けた。
はずそうとする私の手が止められた。
「いや、自分で脱ぐからいい」
前の2回も、そう、そう言っていた。いけない。忘れてた。

こちらに背中を向けて服を脱いでる間に、
自分も手早く下着だけになって、鏡の前で髪を束ねる。
振り向いたら、バスタオルだけになって椅子に座っていた。

KENT Light をカゴの奥から出して、差し出す。火をつける。
ご指名のお客様の吸うタバコは、必ず用意することになっている。
でも、これは田中さん専用の入れ物。自分でデパートで買ってきたもの。
なんか他の人と一緒じゃ嫌だった。些細なことだけど、私はこだわってた。

「そこに座っててください。お湯、入れてきますから」
このときって、結構恥ずかしい。
あんまり出てるとこが出てない自分の体型を、
ヒョコヒョコ歩き回って、お客さんにお見せしちゃう瞬間だから。
もう1ヶ月近く経つのに、まだこれだけは慣れることが出来ない。

今のうちにマット出しておこうかな?
そう思って立てかけてある所に行って手を掛ける。
「今日は、それ、いい」
「?」
「いや、やらなくていい」
「え?」
121Wing:03/05/21 14:49 ID:Kqz1BZuh

おずおずとそばに行って、座った。
「……私、やっぱり、下手…ですか?」
正直、自分でもあまりうまくないのが分かっていて、恐る恐る聞いてみる。
「え? あ、ちがうちがう。そういう気分じゃないだけ」
「そうですか…」

「それに、あんな風にサービスしてもらうの、実は好きじゃないんだ」
「………?」
「変だよね。ここに来てこんな事言うやつ、いないだろ?」
「ええ、まぁ。あまり、いらしゃらないですね」
「う〜ん。やっぱり」

「お風呂は?」
「いや、それは入る」
よかった。じゃそっちで思いっきりサービスだ。二人とも裸になった。
「どうぞ」

でも、湯船に入っても、やっぱりなにもさせてくれない。
逆に、いつのまにか膝の上に載せられて首筋にキスされて。
最後には後ろから抱きしめられて。
恋人に抱かれてるみたいな、妙に落ち着いた気分になってた。
高いお金払ってもらって、こんな風にしてもらっていいのかな?

お風呂から出て、体を拭いてあげる。
あそこは、部屋に入ったときからずっとカチカチになってた。
座っててもバスタオルの真ん中が盛り上がってる。
あ、今日もこれで私は… って思ったら、
私の奥の方が熱くなって、潤みはじめていた。
122Wing:03/05/21 14:50 ID:Kqz1BZuh

いつもなら、見えないようにそっと入れてるものは、
使う必要もない。
あまりにも正直な自分の体の反応に、驚いていた。

二人のバスタオルをはずし、裸になった。
足の指をなめる。そして甲。足首。ふくらはぎ。膝。
順番に。
ちょっと乳首も。
「それは勘弁。くすぐったい」
やっぱりこれはダメみたい。
その間も私は片手で、硬くなったものをさすっている。
手の中から飛び出しそうに揺れ動いてた。

顔を下げる。
袋を口に含んで、手で固いのをさわって。
舌を動かすと、目の前で両ももが突っ張る。
「うっ」ってくぐもった声。
喜んでくれてる。嬉しい。

今度は逆に、口で固くなったものを含む。
上下に顔を動かしながら吸うように。
手が伸びて来て私の乳房をつかむ。乳首を探り当てる。
二本の指の腹で挟んで。これが好きみたい。
私もだけど。

両わきの下を両手がつかんでくる。口を離して、見上げた。
かまわず引っ張られる。
123Wing:03/05/21 14:52 ID:Kqz1BZuh

…この人、入れたいんだ、もう。

田中さんの腰にまたがって、片手を添えて導きいれる。
私が濡れてるの、ばれてるかも知れない。でも、かまわない。
逆に知って欲しい気もする。
私がどんな思いなのかということ。
私にとって、単なるお客さんじゃないってことを。

入り口の形だけの抵抗を潜り抜け、中へとおさまる瞬間は、
この人に会うまで知らなかった不思議な感覚。
そして奥まで入りきったときにも、
何の過不足も無く、すみずみまで満たされるように。
幸せ… なぜだかそう思う。

両方の胸がわしづかみにされる。
なんか、やっぱり私のって小さすぎるんだよな。
こうされるとしみじみと思っちゃう。
男の人はもっと大きい方がいいんだろうな、って。いつも。

ゆっくりと腰を上下する。私の中で動くものの形がわかる。
横に張り出した部分が、中の一部にひっかかって、
すぐプルンと開放されて。
そのたびに喘ぎ声が出てしまう。
快感を追い求めてしまう。
124Wing:03/05/21 14:53 ID:Kqz1BZuh

腰をつかまれ持ち上げられる。
「やっぱ、下になってくれる?」
困った、と思った。
前の2回は、私が上になってフィニッシュして、
だからこそ自分のペースでコントロールも出来たし。
でも、下になったら、なんか自分が押さえきれる自信がなかった。

うながされるまま位置を変える。

こうして下になって足を開いて、男が入れてくるのを待つのって、
何度経験しても、やっぱり恥ずかしい。
商売とプライベートの区別がつかないからなのか、
自分でもよくわからないけど。

改めて挿入される。
さっきより強い快感が押し寄せてきて、声が出そうになる、
あわてて手で押さえた。田中さんを見る。
気づいて… 無いみたい…
そのまま、じわじわって奥に。
収まりきったとこで大きく息を吐く。
ふたりが同時に。おかしいぐらい一緒だった。

ゆっくり動き始める。
正直言って、もうそのときは、仕事だっていうの忘れてた。
次々と押し寄せる快感の波に飲み込まれるばっかりで。
往復するものの動きが速くなったときには、
もう頭半分真っ白になってて。
125Wing:03/05/21 14:55 ID:Kqz1BZuh

うわごとにみたいにいろんなことを言ってたと思う。
「ダメ」とか「イヤ」とか、多分………
そんな気がする。

そして最後に「いくよ」って言われて、
私の中のものが硬直して、律動と一緒に熱いものが奥に放たれた。
なんか熱さだけはわかる。その感覚と一緒に私もイっちゃってた。
これで3回目。いつもこうなっちゃう。この人とは。

服を着ながら思う。
さっきの私の姿を、この人は演技だと思ってるんだろうか?
商売女のサービスだと。

気づいて欲しい。でもそれはそれで恥ずかしい。
どっちつかずの自分の気持ちがまどろっこしかった。

1Fでお見送りする。
「また来てくださいね」
「あぁ、また来るよ」
「ありがとうございました」

控え室に戻ったら、ヒカリさんともう一人が待機中だった。
「あれぇ、疲れた顔してるよ。なんかしんどい事でもあったの?」
「いえ、別に」
ちょうどボーイさんがもう一人の人を呼びに来た。
部屋に残ったのは、ヒカリさんと私だけ。
126Wing:03/05/21 15:01 ID:Kqz1BZuh

「君枝ちゃん、またイかされちゃったの? 田中さんに?」
突然ヒカリさんが聞いてきた。
そのあまりにも直接的な質問が、事実だっただけに恥ずかしくて、
うなずくのがやっとだった。

「ふ〜ん。 よっぽど体の相性がいいんだね。
 他のお客さんでも、そんなことあるの?」
「いえ、全然」
「じゃ、いいじゃない、気にしなくても。商売だけじゃつまんないし。
 なにより普通の男捕まえるの難しいしね、ここにいると」

「でもそれだけじゃなくて」
「じゃなくて?」
「え〜っと…」
「はは〜ん。惚れちゃったんだ、君枝ちゃん」
「もしかして… そうかも…」
「ま、悪いことは言わない、やめときな」
「?」
「こういう商売やってると、ちょっと優しくされるとさ、
 ホロッってなっちゃうんだよね。つい、ね。
 で、付き合うとさ、とんでもない奴だったりしてさ」
「田中さんは、そんな人じゃないと思います!」
「そう、それが危ないんだよ。」
127Wing:03/05/21 15:03 ID:Kqz1BZuh

「考えてもみなよ。
 金払ってここに来てるんだから、ま、正直なところ、体目当てだよね?
 ある程度いやされたいと思ってるのも確かだけど、それはついで。
 それに、私たちがお金で体を開く女だってのも事実。
 惚れちゃいけないって言うことじゃなく、
 まぁ、気をつけるんだよ、って言いたいだけ。わかる?」

ヒカリさんは私のことを心配してくれてる。
そのやさしい気持ちがじんわりと伝わってくる。

「……わかりました。気をつけます」
「うん、一応ね。男はいろいろだから。
 そうは言っても、懲りずに引っかかってる女もいるけど」
「え?」
「ここに」
ヒカリさんは自分を指差し、笑った。

-------------------------------------------------------

その翌月、霧のように細かい雨の降る夕方、田中さんが来てくれた。
いつも予約無しなので、
他のお客さんについてたら、どうしようと思ったけど、
たまたま私が待機中だったので、お待たせすることはなかった。

いつものようにやることをやって、
当然お約束のように、私はいかされてしまって。
128Wing:03/05/21 15:06 ID:Kqz1BZuh

でも今日は少し違っていた。
二人が服を身につけてるときに、田中さんが言いにくそうに話し始めた。

「こ… んどさ」
「?」
「外で、デートしてくれない?」
突然の申し出に私はとまどう。

「あ、そんな深い意味じゃなくて。
 デートって言い方がいけなかったかな?
 こんな部屋の中じゃなくて、外で会ってみたいって思って。
 どう、かな?」

それはとても嬉しかった。それだけじゃなく、
予想もしないデートの誘いに、私は言葉をなくしていた。

「やっぱり、ダメか」

え? 今、なんて?
その言葉の意味に気づいて、あわてて言った。

「いえ、ちがうんです、ちがうんです!」
「?」
「さっきの、あの、デートの話」
「?」
「私も… 行きたいんです! だから… あの…」
129Wing:03/05/21 15:08 ID:Kqz1BZuh

「なんだ。そうか。…よかった」
心の底からほっとしたようにため息をついてる。
私も、ひきこまれるように一緒に。

「メール、入れてください。
 水曜と日曜はお休みだから、だいたい予定は空いてます」
「わかった。じゃ今度の日曜は?」
「あいてます」
「じゃ、待ち合わせ場所の方はメールでいいかな?」
「はい。それで」

-------------------------------------------------------

次の週の金曜。待ってたメールが来た。

半分あきらめてた。
やっぱり冗談なのかなって。
待合室に戻るたびにチェックしてて。
そんな私を見て、ヒカリさんは笑ってた。

でも、来た!
「よかったね。だよね?」
目を上げると、微笑んでるヒカリさんの顔があった。

「いいなぁ〜 私も作ろうかな、いい人。
 うらやましいぞ、ほんとに、このぉ!」
130Wing:03/05/21 15:10 ID:Kqz1BZuh

あるいは以前ヒカリさんが言ったように、
単なるセフレとしてしか、私は見られてないのかもしれない。
お金を掛けずに抱ける女。都合のいい女として。

それでもよかった。
お客様と風俗嬢としてではなく、普通の男と女として会ってみたかった。
そしてこころゆくまで抱かれたかった。
たとえベッドの上だけの関係になってしまったとしても、
ともに過ごす時間が少しでも多く手に入るなら、それでもいい。
そう思っていた。

ただの一人の女として、好きな人に抱かれていたかった。

-------------------------------------------------------

仕事を離れた形で二人の時間が過ごせるという期待で、
とっくに私は舞い上がっていた。
田中さんを待っている間も、まるで初恋にときめく少女のように、
自分でも驚くぐらい落ち着きを失っていた。

「お待たせ」
「あっ」

背後から声をかけられ振り向いた瞬間、
そこに居る人の表情を見て、うれしくなって、
あいさつすることさえ忘れていた。
来て… くれた…
131Wing:03/05/21 15:10 ID:Kqz1BZuh

「なんか、イメージ違っちゃったかな? こんな格好だと」
「あ、いえ。えっと。そうじゃなくて」

たしかに、いつもお店に来るときはダークスーツだったけど、
今日はブレザースタイル。

「いやぁ、あんまり仕事用のスーツ以外、服を持ってなくてね。
 一番まともそうなの着てきた。
 デートなんだから、ちゃんとしないといけないと思って、
 奥のほうから引っ張り出してきたやつだから」

普通にデートって。そう言ってる。

近い身寄りもなくて、
とりあえず一人で暮らしていく糧を稼ぐ必要があって、あのお店に勤めた。
自分では十分に納得してたはずなのに、
こんなふうに普通に扱ってもらっただけで、
ふいに涙が出そうになった。

「あ。ごめん。つまんないこと言っちゃった?」
「そんなことないんです。うれしかった… だけです」
「ほんとに?」
「ええ。もうだいじょうぶ」
「よかった。でも女の子を嬉しがらせるようなこと、言ってないけどな。
 だいたい得意じゃないしな、そんなの」

思ったとおりの人だった。
また胸の奥からこみあげそうだったので、無理して話を続けた。
132Wing:03/05/21 15:11 ID:Kqz1BZuh

「あの… きょうは、どこに連れて行ってくれるんですか?」
133Wing:03/05/21 15:16 ID:Kqz1BZuh

長々とすみません。
で、このあといつ書けるか見当もつきません。というか、
ここまで書いてピタッと止まってしまいましたので、見切りUPしました。
忘れた頃に、またお邪魔することになると思います。
134名無しさん@ピンキー:03/05/21 15:19 ID:MUjID9EO
元ネタわからないけど(゚д゚)ウマー
続き楽しみにしてます。
135Wing:03/05/21 15:19 ID:Kqz1BZuh
>>134
オリジです
136名無しさん@ピンキー:03/05/21 15:42 ID:MUjID9EO
……すいません……
137名無しさん@ピンキー:03/05/21 16:07 ID:lZcf5Aj2
Wingさん、かなり変則球というか、魔球ぎみな純愛ですねー。
はっきり言ってこんなシチュ……大好きだあぁ!
やはりSS書きの控え室からの流れで出来たスレ、他と一味違う。
なんとしても完結するまで、このスレ保守したいと思いまつ。
138名無しさん@ピンキー:03/05/21 17:57 ID:yQ73JOOq
どんなデートだろ……。
シミジミさせて貰えそうなヨカーン。
グッジョブっす。 >Wingさん
139名無しさん@ピンキー:03/05/21 19:51 ID:/8K2rITj
細かいがネールアートじゃなく「ネイル」アートの方がいいと思。
これだけで男が書いたのかと思ってしまった。
140山崎 渉:03/05/22 02:17 ID:kEHAV9zG
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―
141名無しさん@ピンキー:03/05/23 12:23 ID:iqxHV/gy
>wingさん
遅ればせながら、萌えー!
淡々としてて淋しい感じがいい。キャラに幸せになってもらいたくなる話だね。
142名無しさん@ピンキー:03/05/25 13:24 ID:3BvfW5pn
d@(Y3eb
143名無しさん@ピンキー:03/05/25 18:12 ID:gztN4o4u
念のためアゲ
144名無しさん@ピンキー:03/05/26 01:04 ID:Tn9pKnQ6
>>Wingさん
読み入ってしまった…。
続き待ってまつ!
145山崎 渉:03/05/28 13:25 ID:1p/RwMnS
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉
146名無しさん@ピンキー:03/06/02 00:36 ID:MxVqLLAg
ageとく
147名無しさん@ピンキー:03/06/08 22:15 ID:hTL+7rVo
続き待ちつつ保守
148名無しさん@ピンキー:03/06/11 01:28 ID:iUBnrMzi
しばらく見守っていましたが、待ってるだけなのも何ので作ってみました。
Wingさん待ちの暇つぶしにでも読んでやってください。
純愛テーマとしては『身分違いの恋』ですが……あー、これ純愛か?
タイトルは『isosceles triangle(二等辺三角形)』となります。
内容はオリジナルです。
14901/34:03/06/11 01:29 ID:iUBnrMzi
 暗い、品のいい室内。
 下から聞こえる緩やかな音楽と人々の談笑が、ソファに横たわる樋山圭には
やけに遠くに感じられた。
 タキシードの上着は乱れ、ズボンのジッパーは下げられ、そしてそこには胸
元まで開いた高級そうなドレスを着た少女が顔をうずめていた。
「お嬢様、一つよろしいでしょうか……」
 押し殺した声で、圭は訴えた。
 二十代前半の髪を後ろに撫で付けた、線の細い青年だ。
 十代の頃は、さぞや年上の女性に好かれただろう、柔らかいマスクをしている。
 そして、彼の股間で肉棒をしゃぶっているのは、ウェーブ掛かったセミロン
グヘアの、いかにも気の強そうな少女だ。
「うん? 何よ、してる最中に……」
 凛とした、それでいて微かに頬を紅潮させた表情が、どこか不満そうに圭を
見上げた。
 名前を早河香菜里という。
 圭を見上げながらも手は休めず、彼のモノを細い指で包み込み、緩やかに擦
り上げていた。
「その、私とお嬢様は執事と主という……立場でして」
「そうね……」
15002/34:03/06/11 01:30 ID:iUBnrMzi
 思考が回らない。
 声を上ずらせながら、圭は今更のように何度目かの抵抗を試みる。
 ここは他人の屋敷であり、部屋も無断で借り(入り込み)、しかも立場的に
も大いにまずい。
 まずいが、圭の理性は香菜里の手によってボロボロと崩れ去ろうとしていた。
「ところで時々、声が詰まってるけど……?」
 楽しそうに笑みを浮かべながら、香菜里は竿に唾液を乗せながら舌を滑らせる。
 重い唾液の雫が竿を伝い、圭の根元の陰毛を濡らしていく。
「それは……っ……お嬢様が……」
 香菜里はその唾液を指で掬い、もう一方の手で袋を撫で回す。
 一方彼女の舌は徐々に竿を登っていき、括れに触れると圭の肉棒は敏感に反
応を示した。
「あら、私のせいだって言うの? 圭の根性が足りないだけじゃない」
「一方的に攻められてたら、そりゃ声だって出ますよっ!」
 途端、竿を撫で回していた指が滑り、親指の腹が鈴口を捻り上げた。
 鋭い痛みが、圭の先端から響いてくる。
「……仕える主を怒鳴りつけるのは、よろしくないんじゃなくて、圭?」
「くっ、あ……お、お嬢様、そこを捻るのはちょっと、シャレになりあいたた
た……も、申し訳ありません……けれど……」
「けれど? さっきから、ハッキリしないわね……」
15103/34:03/06/11 01:32 ID:iUBnrMzi
 圭が反省したのを見て取ったのか、さっきとは一転して、香菜里の舌が先端
を舐める。
 傷を労わるように穴から出る液を掬い、唇で吸い上げる。
 さっきまでそこを苛めていた指は、いつのまにか元の位置に戻り、射精を促
すように竿を扱いていた。
「お、お嬢様も、その、いずれは…っ…よい殿方と結ばれるのですから……」
「そうね……いつか…んっ…そういう日が来るとは思うわ。けれど…っ…それ
と、ん、くっ……これとは別ね。大体、もう手遅れじゃない。私の純潔を奪っ
たのは…はぁ…どこのどなた?」
 愉快そうに言いながら、香菜里の責めは少しずつ強くなっていく。
 香菜里の唇から垂れた唾液は肉棒を伝い、竿を扱く手の動きの潤滑油にし、
粘着質な音を室内に響かせる。
 香菜里自身、舐めながら感じてきたのか鼻息を荒く、しきりに熱い吐息が圭
の肉棒に当たっていた。
 それがまた、圭のモノを自身の意思とは別に、強く太く膨張させていた。
「ど、どこのって……んな、人が無理矢理襲ったみたいに……」
「こういう時、男って弱いわねー……」
「人に睡眠薬飲ませて、寝込みを襲ったのはどこのどなたですかっ」
「でも、途中から動いてたわよね……?」
 亀頭全体を舐め回しつつ、香菜里の鋭い目が圭を見つめる。
15204/34:03/06/11 01:33 ID:iUBnrMzi
 その目は強いながらも、見守るように優しい……が、圭にとっては面白がっ
ているようにしか見えなかった。
「そ、それは……『痛くないように努力しなさい』なんて命令する方がどうか
と思います!」
「口答えしない……痛くするわよ」
 軽く口に含み、亀頭に白い歯を突き立てる。
 もちろん本気でする筈はないが、使用人に対する脅しには充分なっていた。
「……くっ、す、すみませんでした」
「ん、分かればよろしい。大体、不公平なのよ。圭、知ってる? うちの世界
の男共が、どれだけ女を食ってるか」
 責めを甘いものに換えながら、香菜里は圭に質問する。
「お嬢様、はしたないです……」
「あら、失礼。とにかくね……向こうは甲斐性で、私達がすればふしだらなん
て、どうかしてるわ。だから、私は私で楽しむの。それが気に入らないのなら、
そんな連中は放っておけばいいのよ」
 言いながら、香菜里は圭のモノを口に含んだ。
「ですが……っ」
 袋を揉んでいた香菜里の指が、いきなり股の間に滑り込んだ。
 菊座には到らないが、その間を唾液に濡れた指先が押し付けるように往復する。
「ここが弱いのよね、圭は」
15305/34:03/06/11 01:34 ID:iUBnrMzi
「っ……あ……ま、まだ話が終わってません。だからって、どうして私なんで
すかっ」
 強烈にこみ上げてくる射精欲求を堪えながら、圭は香菜里に訴えた。
「だって、うちに男って圭しかいないじゃない」
 香菜里はその責めに飽きたのか、蟻の門渡りから指を離すと再び、袋に手を
這わせ始めた。
 圭はホッとしながらも、一度こみ上げた射精欲を鎮めるのは容易ではない。
「……屋敷の従業員をまとめて解雇した人間の台詞ですか、それが」
 そうこうする内にも、香菜里の口唇奉仕は徐々に滑らかになり、圭の弱い所
を的確についてくる。
「よって…っ…いずれ夫となる人の為に…ん…んくっ……技術を向上させる練
習台は…はぁ…圭しかいないのよ……」
 熱心に舐めながら、香菜里は言う。
「で、本音は?」
「女は…っ…んん……気持ちよくなっちゃ…んぅ…いかないの?」
 妖艶に微笑みながら、香菜里は首を傾げた。
「……そーですね。お嬢様はそういう人でした」
「それに……この若い肌を手付かずのまま放っておくなんて、……それこそ罪
悪だと思わないかしら? 圭も、そう思うでしょ?」
15406/34:03/06/11 01:35 ID:iUBnrMzi
 香菜里は、どこか拗ねるような表情になった。
 それでいて、どこかせっぱ詰まった口調……見ると、いつの間にか香菜里の
手の一方が、彼女のスカートの中に潜んでいた。
「それはまた、迂闊に返答しにくい質問です」
 そこで何が行なわれているかは、聞かない事にした。
「つまり…ん…若い性を発散させる為に……は、ぅん……圭は必要って訳」
 彼のモノを舐めながら、香菜里は自慰を行なっていた。
 自身の指を、圭のものに見立てショーツを脇に避けて秘処に挿入する。
 彼の指の太さには及ばないが、これまで何度も弄られたその動きは忠実にな
ぞる事が出来る。
「よかったわね、圭。こういうのを…っ…役得って言うのよ?」
「それに、どう答えろと……」
 快楽に支配される香菜里の表情に見惚れながら、それでも圭は反論した。
「あ……素直じゃないわねぇ。さっきから…ひ…んっ…そういう返事ばかりし
てる…くっ…苛めるわよ」
 香菜里の顔が、圭の蟻の門渡りに潜み始める。
 否、今度はさらに舌が進み、彼の窄まりまでその可憐な唇が進んでいく。
「うああっ……ちょっ、お、お嬢様……それ、駄目ですってば……」
「圭って…ぁ…時々可愛い顔するのよね…ん…む……」
 むずむずとした感触が、後ろの穴から背筋を駆け上がってくる。
15507/34:03/06/11 01:36 ID:iUBnrMzi
「男に向かって可愛いは……あまり褒め言葉になりません……ちょ、お嬢様っ!」
 いよいよ菊座に舌が入り込みそうになったところで、圭は本気で香菜里を制
した。
「素直に……受け取りなさい。それと、そろそろ……私にも楽しませてもらう
わよ……」
 香菜里が責めを中断してくれてホッとしたのもつかの間だった。
 香菜里の上体が持ち上がり、スカートの裾を咥えながら膝立ちになる。
 彼女は濡れた純白のショーツをずらした。
 恥ずかしげに頬を紅潮させているが、照明が点いていない為、その表情は圭
には見えないでいた。
 香菜里はもう一方の手を圭のモノに添え、照準をつけたかと思うと、ゆっく
りと腰を下ろしていった。
「くっ……」
 熱く濡れた肉に包まれていく感覚に、圭はたまらず呻き声を漏らした。
 香菜里も大きく息を吐きながら、根元まで圭のモノを鎮めていった。
 軽く、目元に浮かんだ涙を拭う。
 唇から離れたスカートが緩やかに落ち、繋がっている部分を隠してしまって
いた。
「ん……どう、圭?」
15608/34:03/06/11 01:37 ID:iUBnrMzi
 改めて、余裕の表情を作った香菜里は圭の胸元に両手をつきながら、具合を
確かめるように腰をくねらせた。
「は、はい……いいです」
「でしょう? でも、一人だけ楽しむのは一人よがりというのよ。だから、一
緒に楽しまないとね……」
 小さく呻きながら、香菜里は自分の腰を持ち上げた。
「んっ……」
 少し唸りながら、勢いよく香菜里の中から淫液まみれの肉棒が引き抜かれる。
「は、ぅんっ……」
 香菜里は再び腰を落とし、根元まで自分自身に突き入れる。
「あっ……あんっ……はっ……あ、あぁっ……!」
 震える両腕と、気を抜けばすぐにでも脱力しそうな足腰を支えに、香菜里は
圭の肉棒の感触を膣全体で噛み締める。
 悦びに泣きそうになる表情を悟られてはならないと、頭を俯け長い髪で顔を
隠した。
 何度も腰を上下させるたびに、長い髪が振り乱れる。
「ひ、ぁ……お、お嬢様……そ、そういうのは、私が……」
 気遣いながらも、圭の動きは弱々しい。
 躊躇しないで一気に動けばいいモノを、圭の理性はまだ主への忠誠心の方が
上回る。
15709/34:03/06/11 01:38 ID:iUBnrMzi
 それを削り取るように、香菜里の腰使いはより淫らに、彼を誘うように激し
く動く。
「あら……私…ぁ…圭の感じてる顔見るの…ん…ぅん……好きだもの。それと
も…っ…逆らう? 逆らってみる?」
 香菜里はジッと圭を熱い目で見つめながら、はだけた上着から覗く胸板に指
を這わせた。
「そ、それ、ずるいです」
「ずるく…あ…あぁっ……ないわよぉ。ここでは…ん…ぁんっ……公平だもの
…っ…自分が不利だと思うなら…ん…んんっ……口では無く態度で覆すのね……」
「してもしなくても、仕返しされそうですね……」
「何か…うぁ…っ……あっ……ひんっ……言った…かしら?」
「いいえ、独り言です。どちらも変わらないって言うのなら……」
 覚悟を決めた圭も、本格的な抽送を開始する。
 子宮を突き上げられ、香菜里は一瞬息が詰まった。
「んぅっ……! あ……あんっ……い、いきなり突き上げないでよぉ……ん…
こらぁっ…やめないのっ!」
「ですが、状況からしても、いつバレるか分からないですし」
 圭は、腰を上下に動かしながら、両手で香菜里の豊かな胸に手を伸ばした。
 ドレスの胸元をずらし、直に現れた胸を手の平で包み込むように揉み、指で
先端を弄んだ。
15810/34:03/06/11 01:40 ID:iUBnrMzi
「はっ…へ、平気よ。その時は、圭に汚されたって言うんだからぁ……ん、そこ
……いいわ……」
「……あながち、冗談に聞こえませんよ、それ」
「そう思うなら……もっと私を気持ちよくさせなさい。こんな風に……」
 香菜里が腰で文字を描くように動くと、圭のモノを包み込む膣内は舐めるよ
うに竿を刺激する。
「くぅっ……はぁ……お、お嬢様っ……」
 熱に浮かされたような圭の顔を見つめながら、香菜里は積極的に彼に奉仕する。
「ねえ……圭ぃ? まさか…あ…ぁあ……一人だけイッちゃうなんて事は…っ
…ん……んぅ……しないわよねぇ?」
「ええ……大丈夫……ですよ」
 圭は香菜里の腰の動きから導かれる快感を堪えつつ、それに合わせて自身も
突き上げ始める。
「ん……そうこなくちゃね…っ…私も愉しませるのよ、圭……」
 香菜里の身体が倒れ込み、圭の上体に覆い被さった。
 唇を重ねてくる香菜里に圭は逆らわず、自分の舌を絡めた。
「はい……」
「そうそう…ん…くちゅ……分かればいいのよ。時間は…ふぁ…気にしなくて
……ん…んむ…いいから、ね」
 香菜里の舌は、圭の頬を伝い、首筋や耳元まで舐め上げていく。
15911/34:03/06/11 01:41 ID:iUBnrMzi
「……っていうか…っ…単純に出るのが嫌なだけなのでは……?」
「いいのよ。気分悪い連中の相手をするよりは…あ、ん、そこ、もっと………
圭と気持ちいい事してる方が……あん…んっ…ああっ……正しいに…決まって
るわ。圭だって…っ…私の知り合いの女の子達に言い寄られては…ひ、あ…あ
ぁっ……困るでしょう?」
「ええ、まあ、それは……」
「ほらぁ……何の…っ…問題も……ないじゃない」
「ですが、部下を一人にしておく訳にも……んうっ」
 耳の穴に舌を入れられ、圭の身体がピクンと震えた。
「……ていなら…ふ…っ…んん……心配要らないわ。能力もない子を…く…ぅん…
…私が手元に残しておく筈がないじゃない……」
 お返しに、圭も香菜里の首筋を舌で上下させ、唇をなぞった。
「いえ、むしろ私の職場放棄の問題が――」
 香菜里は軽くキスを返し、彼の顔を舐める。
 圭が少しくすぐったそうに身をよじるが、そんな事で香菜里の行動を止める
事は出来ない。
 結局、最後にはお嬢様の気ままな愛撫に、圭は身を委ねてしまう事になる。
「――雇い主がOKって言ってるんだから…んっ…あっ……いいのよ。……ま、
しょうがないから…はぁ…はっ……一回だけで終わりにしてあげるわ」
 圭の表情は明らかにホッとしているようだった。
16012/34:03/06/11 01:42 ID:iUBnrMzi
「……でも…っ…覚悟しておくのね」
 圭の首にしがみつきながら、香菜里は呟いた。
「え……?」
「もちろん…っ…ん……んんっ……家に帰ったら続きをするのよ? さて、と…
…は、うんっ……んんぅっ!」
 香菜里の腰が、大きな円を描いて圭のモノを締め付ける。
 緩急をつけ、限界いっぱいまで圭の肉棒を引き抜き、また先端が奥に当たる
まで深く沈める。
「んっ、あぁっ……」
 同時に、彼女自身もこれまでとは違う場所を肉棒で擦られ、熱い息を漏らし
てしまう。
「は、ぁ……圭がこっちに…ぅん…集中できない…ん、あぁっ…みたいだし…
んっ…あんっ……ここではもう…っ…終わらせときましょうか……」
「こ、ここではって……?」
 少しずつ強く、そして早くなってくる香菜里の腰の動きに、今すぐにでも射精
したいのを堪えながら、圭は尋ね返す。
「私の部屋で…ね…あ…んっ…疲れてぐっすり眠れるまでするのよ…あっ…ん
…そうと決まれば……さっさと下で挨拶を済ませて帰りましょ?」
「あ……は、はい」
16113/34:03/06/11 01:43 ID:iUBnrMzi
 香菜里の目が、泣きそうな子供のような色に変わった。
「あと……最後ぐらいは、気を入れてよね……圭、お願いだから、ちゃんと、
して……」
「は、はい……」
 最後の、香菜里の甘えた声に圭は応え、力強く腰を突き上げ始めた。
「あ……あんっ……そ、そうよ……そうでなくちゃ……んっ……あぁっ!」
 圭にしがみつきながら、香菜里は膣内を掻き回す彼のモノを感じ取る。
 スカートの中で、何度もピストン運動が繰り返され、奥を突かれるたびに頭
の中が真っ白になる。
「あっ、ああっ、ふぁっ、圭、圭、いいの、もっと、もっと突いてぇっ……!!」
 香菜里は至福の時間に何もかも忘れ、それに支配されそうになっていた。
「お、お嬢様、声……」
 微かに聞こえる声。
「んっ、はぁっ、あぁっ、駄目!? バレないと思うけど……っ!」
「出来れば」
 圭の懇願に、香菜里は声を抑えようと唇を噛み締める。
 けれど、下からの突き上げにそれはあっさりと打ち砕かれてしまっていた。
「はっ……ん……ならっ……!」
 香菜里は圭に唇を重ねた。
 そして、貪るように圭の舌と唾液を吸い上げる。
「んうぅっ……」
16214/34:03/06/11 01:44 ID:iUBnrMzi
「これなら…っ…口も……塞がっ……文句、ないわよね?」
「はい……」
 圭も、主の唇を強く吸う。
「ん、んーっ……!!」
 鼻を鳴らしながら、それでも口付けをやめず香菜里は腰を振りたくる。
 圭と一致したその動きは徐々に加速し、スカートに隠れた部分から激しい水
音と肉が打ち合う音が響き渡る。
「んくっ……ぅん……んんっ!」
 ん、と圭の息が詰まる。
 急速に締め付けを開始する膣内で、彼のモノは最後の膨張を遂げた。
 来る、と感じた香菜里は、ギュッと彼を抱き締めながら最奥に先端を迎え入れる。
「ふっ……くっ……んんんーーーーーっ!!」
 互いに声を押し殺しあいながら、圭と香菜里は同時に絶頂に達した。
 圭は腰を突き上げたまま、香菜里の胎内で肉棒を脈動させ、大量の白濁液を
注ぎ込む。
「んっ……あ……はぁっ……あぁ……ん……んん……」
 その度に香菜里は鼻息を上げながら、子宮内を満たしてくれる愛人のエキス
の感触に満足げな気分を味わっていた。
「はぁ……」
 息苦しさに、圭は顔を引いた。
16315/34:03/06/11 01:45 ID:iUBnrMzi
「はー……はー……ぁ……圭のが、こんなにいっぱい……」
 どこか幼い、主の陶然とした表情に圭は見とれてしまう。
 いけないとは思いつつも、彼女をこんな無防備な表情にしたのが自分だとい
う満足感と支配欲が、圭の心の中でもたげてきていた。
「す、すみません……お嬢様……」
 そんな自分を戒めるように、圭は香菜里の髪を梳きながら彼女に謝った。
「いいのよ。ん、まだこんなに元気なんだから、もう一ラウンド……って行き
たい所だけど、我慢しなくちゃね……」
 香菜里は、一生懸命尽くしてくれた執事に、優しく口付けた。
「そうして下さい」
「……」
 ……香菜里は素の表情で、圭を見つめた。
「……何か?」
「ふんっ」
 そっぽを向くお嬢様に、圭は訳が分からない。
16416/34:03/06/11 01:46 ID:iUBnrMzi
「は、はい?」
 香菜里は荒々しく身体を起こすと、圭から離れた。
 まだ足が震えていたが、そんな所を圭に悟られてはならないとばかりに、
平然と身繕いをする。
 圭も、敢えてそんな香菜里の態度に言及しない。
 気になるといえば、香菜里の気分が著しく悪くなった原因が不明な点だったが、
まさか本人に聞くわけにもいかない。
「いいから、さっさと支度なさい! 適当に連中の相手をして、帰るわよ!」
「は、はい! かしこまりました!」
 圭も簡単に身を整えると、先に部屋を出た。
 扉を閉める直前。
「っとにもー……」
 後ろから不機嫌そうな、どこか寂しそうな聞こえてきたのが、少し気になった。
「……馬鹿ぁ」
16517/34:03/06/11 01:47 ID:iUBnrMzi
 ホールは、タキシードとドレスで埋め尽くされていた。
 ゆるやかな音楽と、人々の談笑の声は相変わらず。
 壁の華と化していたメイドの中に、圭は自分の部下を見出した。
 ショートカットの、素朴な顔立ちの少女だ。美人と言うより可愛らしい印象
を受ける。
 年齢は香菜里と同じだが、学校には通っていない。
 名前を南ていという、早河家唯一のそのメイドに圭は声をかけた。
「――状況はどうですか?」
 圭の姿を認めたていは、いつも通りの笑みを浮かべながら上司に応える。
「特に問題はありません。七、八人ほど、お嬢様の行方を尋ねられた方がいら
っしゃいましたけれど、今頃はいない筈の庭を探し回っている筈です」
「そうですか」
「主催でなくてよかったですね」
「……まったくです」
「それで、お嬢様は?」
「先ほど戻られまして、今は……あそこのようですね」
 香菜里の周囲には、何人もの人だかりが出来ていた。
 主に取り囲んでいるのは、年頃の男性だが、所々品のなさそうな中年男も混
じっている。
 相変わらずといえば相変わらずだが――その中心から、怒鳴り声が響き渡った。
「何をするっ!?」
 圭とていは顔を見合わせ、そっとため息をついた。
16618/34:03/06/11 01:48 ID:iUBnrMzi
 輪の中心で、香菜里と青年が対峙していた。
「お静かに。下品ですわよ」
 香菜里は腰に手を当てながら余裕の表情、青年は左右に心配そうな表情の女
性を侍らせながら顔を真っ赤にしていた。
 香菜里の手にはグラスワイン、そして青年の顔が真っ赤なのは決して血気の
せいだけではない証拠に、白いシャツにも赤い染みが出来ていた。
「こ、この……」
「ああ、騒がなくても下品ですわね。口説き方が酷過ぎますわ。何が『今度二
人きりでゆっくりと、お話しませんか』ですか。陳腐すぎます」
 ふぅ、と吐息を漏らしながら、香菜里はつまらなそうな視線を青年に向ける。
「それと、そういう発言をする時に、女性を口説く時に周りに他の女性を侍ら
せるのはどうかと思いますわ。貴方がどれほどおモテになるのか知りませんけ
どね、私をそこらの安い女だと思われてますの?」
 人ごみを掻き分けようやく騒ぎの中心に辿り着いた圭は、二人の間に割り込んだ。
「お、お嬢様……」
 けれど、香菜里の言葉は止まらない。
「もう少し洗練された方がよろしいですわね。せめて、うちの執事程度にはな
っていただかないと、私とは釣り合いが取れませんわ」
 言いながら、香菜里は圭の首根っこを引っ掴んで、青年と向き合うようにした。
 まあようするに、盾にしたと言ってもいい。
16719/34:03/06/11 01:49 ID:iUBnrMzi
「そんな執事と一緒にするなっ!!」
 屈辱に怒りの表情を浮かべた青年が、腕を振り上げた。
 喧嘩慣れしていないテレフォンパンチを、圭はあっさり手の平で受け止めた。
「ぐっ……こ、このっ!」
 圭の握力に、青年が顔を顰める。
 圭はどうしたものかと香菜里に指示を仰いだ。
「圭、やっちゃって」
「いいんですか?」
「先制攻撃は向こうからでしょ」
「……はい」
 殴るのも大人気ないので、圭は手加減する事にした。
「それでは、失礼しますね」
 拳を握ったまま、足の裏に力を込める。
 足首、膝、股関節と関節ごとに力を螺旋状に増幅させ、手首で最大限に達し
た威力を解放する。
「――よいしょっと」
 青年は立ったまま身体を勢いよく回転させ、後ろの野次馬達に向かって突っ
込んだ。
 ちょっとやりすぎたかもしれない、と圭は思った。
16820/34:03/06/11 01:50 ID:iUBnrMzi
「……よろしかったのでしょうか、お嬢様」
 手の埃をはたきながら、圭は気遣わしげに香菜里に振り返った。
「ええ、上出来ね」
 目を回したまま気絶した青年を満足げに見下ろしてから、香菜里は圭に微笑
んで見せた。
 そして、周囲の人間に丁重に頭を下げながら、優雅に身を翻した。
 テーブルにグラスを戻すのを忘れない。
「それでは、失礼いたしますわ。皆様、ごきげんよう。てい、行くわよ。圭は
車を用意して」
「あ、は、はい」
 香菜里の後ろにていが侍るのを見送りながら、圭は駐車場を目指して早足で
駆け出した。
16921/34:03/06/11 01:51 ID:iUBnrMzi
 自宅に戻り、深夜。
 ようやく香菜里を満足させ寝つかせた圭は、ヘロヘロになりながら自室に向
かっていた。
「うー……」
 廊下の壁に肘をついて身体を支えながら、少しずつ前進していく。
 香菜里は予告通り、屋敷に戻ると圭を部屋に呼んだ。
 そして、この時間まで相手をさせられていたのだが……。
「……三回はきついよなぁ」
 ボヤきながら台所に通り掛ったところで、誰かが立ち上がる気配に圭は気付いた。
「圭さん、お疲れ様でした」
 メイド服のままのていが、圭に微笑みかけた。
「てい、起きてたのか」
「明日の朝ご飯の仕込をしていただけですよ」
 ていは圭に近寄ると、腕を取って台所に迎え入れた。
 丸い椅子に腰掛け、ていが差し出した水を一息に飲み干す。
「ごめんな、てい。構って上げられなくて……」
 仕事中の、硬いやり取りではない。
 ていは圭の隣に座ると、年上の恋人の言葉にやんわりと微笑んだ。
「お嬢様の事が最優先ですわ。仕事とわたしでしたら、仕事の方を優先させて
くださいな。わたしは、圭さんと一緒のこのお屋敷にいられるだけでも御の字
なのですから」
17022/34:03/06/11 01:52 ID:iUBnrMzi
「そう言ってもらえると、助かる……」
 ふと、ていの頭が圭の方に傾いた。
 もたれるのかな、と思ったら違うようだった。
「ですけど、恋人としては他の女性の匂いが残っているのは悲しいです」
 ていは、小さく鼻を鳴らして寂しげな顔をした。
「シャワーは、浴びたけど……?」
 思わず圭は自分の腕や肩を嗅いでみた。
 もちろん分かる筈はなかったが、圭がそんな事をしている内に、太股にてい
の手が置かれていた。
「まだ、少し残っています。お疲れでしょうかれど、もう一頑張り、お願い出
来ますか?」
 無理なら構いませんけど、といった心配混じりの口調と共に見つめてくるていを、
圭は拒む事が出来なかった。
 昼間は仕事だし激務でほとんど休みはない。
 二人のプライベートな時間は貴重だったし、抱き合う暇も滅多にないのだ。
「ああ。じゃあ、部屋に……」
「ここじゃ、駄目ですか?」
 ていはそんな事を言った。
「いや、それは」
17123/34:03/06/11 01:53 ID:iUBnrMzi
「ずっと待ってたのに」
 太股のズボンの生地を握りながら、ていは拗ねる。
「てい、さっきと言ってること違う」
「じゃあ、正直に言いますと、圭さんが戻ってくるのをずっと待ってました。
ここ、圭さんの部屋への通り道ですし」
「だから、俺の部屋で……」
「……」
 ていは、尻尾のうな垂れた仔犬のような顔をした。
 こうなると、圭はお手上げだった。
 確かに、ていのやや特殊な性癖もあり、ベッドよりはここの方が、彼女を満
足させる事が出来るだろう。
「……分かった。もしバレても、知らないぞ」
「その時は、仲良くクビになると思います」
 ていは、椅子に座ったまま足を広げ、ゆっくりとロングスカートの裾を捲り
上げた。
 ガーターストッキングに包まれた足と、小さく染みの出来たショーツ、ヘソ
まで見える素肌が露わになった。
 圭は躊躇せず、手をていの股間に滑らせた。
 熱い液体の感触が薄いショーツ越しに伝わってくる。
「ん、もう濡れてるな」
17224/34:03/06/11 01:54 ID:iUBnrMzi
 強く押すと、染みの面積はあっという間に広がっていった。
「だからぁ……」
 恥ずかしそうにしながらも、ていは手を下ろさない。
 明らかに発情した顔で、圭の次の行動を期待していた。
「ホントに、ずっと待ってたんだな。こうされたかったのか?」
 圭は腰を浮かせながら、親指で淫核をショーツ越しに弄った。
 ジワリ、と愛液を椅子に滴らせながら、ていは強い刺激に身震いさせる。
「は、い……ん……圭…様……胸も……あ、んんっ」
 圭はスカートを持っていたていの手を払うと、もう一方の手で胸を鷲掴みにした。
「ていは、これぐらい乱暴な方が好きだろう?」
 ていの胸の形が変わるほど強く揉みながら圭が尋ねると、ていは上ずった声
で返事をした。
「は、ん、あぁっ、はい……好きです……」
「欲しいのは、胸だけ?」
 突起のある辺りを指で強く押しながら、圭は問い詰める。
「キスも……して欲しいです。息が出来なくなるぐらい……強いの欲しいです……」
 熱に浮かされたような口調で、ていは圭におねだりした。
「ていは欲張りだな……」
 圭は、ていに唇を重ねると、強く吸い上げた。
17325/34:03/06/11 01:55 ID:iUBnrMzi
「んっ…ん〜〜〜〜〜っ」
 ていが涙目になるのも構わず、舌を挿入し、乱暴に絡め取る。
 必死についてこようとするていの意思を置き去りにして、口の中に溜めた唾液を
彼女の口内に送り込んだ。
 ていがそれを嚥下したのを確認すると、圭はそっと彼女の唇を解放した。
「足、もう立たない? キスだけで」
 まだし足りないのだろう、ていは媚びるように圭にキスを繰り返しながら、
首を小さく縦に振った。
「はぁ……はぁ……はい……ごめんなさい」
「じゃ、そこに四つん這いになって。これからお前を可愛がってくれるものに、
挨拶するんだ」
「はい……失礼します」
 ていは、圭の前に跪くと彼のジッパーを降ろし、肉棒を取り出した。
 ていは言われた通りに四つん這いになり、熱い息を漏らしながら、既に硬く
なっているそれに舌を這わせていく。
 先走りの液が先端で玉を作っているのを見て取ると、亀頭にキスしながらそ
れを吸い上げた。
「美味しそうにしゃぶるな、ていは」
 ていの頭を愛しげに撫でながら、圭は腰を突き出した。
17426/34:03/06/11 01:56 ID:iUBnrMzi
 それを口に出し入れしつつ、ていはうっとりとした表情を圭に向ける。
「だって…ぅん…本当に…っ…おいしいですから……」
「そんなていに、ご褒美だ」
 圭は床に腰を下ろすと、そのまま後ろに倒れ込んだ。
 圭が仰向けになった状態でも、ていは彼の肉棒を離さずしゃぶり続ける。
「んぅ……ん……んん……あ、ありがとうございます……」
「そのまま、俺をまたいで」
「あ…はい……し、失礼します……」
 ていは身体を反転させ、圭の顔に自分の尻を下ろしていった。
「そう、それでいい」
 圭は指を二本揃えると、ていの秘処に乱暴に突き入れた。
 根元まで埋まったその指を、ていの中が強く締め付ける。
「あ、あぁっ……あああぁぁっ……!!」
 ていは一度大きく背を仰け反らせると、そのままクタリと倒れ込んだ。
 どうやら軽く達したらしい。
「口が休んでる。イクのはいいが、そんなだともうしてやらないぞ?」
 ズボズボと指を出し入れしながら、圭はていに命じる。
「はっ……あ、ご、ごめんなさい……ちゃんと、しますからぁ……もっと……
して下さい……」
 涙と涎で顔をクシャクシャにしながらも、ていは健気に圭の肉棒に舌を這わ
せていく。
17527/34:03/06/11 01:57 ID:iUBnrMzi
 まだ気が抜けているのか、それはただ舐めているだけで、圭には一向に満足
感を与えない。
 否、精神的には熱心に奉仕するていの仕草に圭は強い満足感を得ていたが、
それを表に出す訳にはいかなかったのだ。
「なら、ちゃんとするんだ」
 非情な口調で言いながら、空いた方の手でていの白い尻に平手を張った。
 中に入った指は乱暴にていの中を掻き混ぜ、ていに休む暇を与えない。
「んっ……んふっ……んんっ……ふあぁ……」
「よしよし、それでいい。しっかり言う事を聞いていれば……」
 圭は指を引き抜き、舌を秘処にねじ込んだ。
 口の中に溢れかえる蜜を嚥下しながら、構わず濡れた肉襞を舌で舐め回す。
 さらに、さっきまで膣内に入っていた指で、肉芽を緩やかに撫で上げる。
「あ、あああっ……ありがとうっ、ございますぅ……っ!」
 ガクガクと腰を震わせながら、それでも彼のモノに奉仕を続けるてい。
 気をやらないよう、必死にそそり立つ怒張に舌と手を駆使して刺激を与えていく。
「舌と指のままでいいのか?」
「はあ……ぁ……あっ……?」
 ていは、最初何を言われたのか分からないように、手を休めた。
「言わないなら、このまま出すぞ? まあ、ていはこの味も好きだろうけど」
17628/34:03/06/11 01:58 ID:iUBnrMzi
「あ、い、いやです……」
 ていは大きく首を振った。
「なら、どうすればいいか、分かるな?」
「はい……」
 ノロノロと這いながら、ていは圭から離れた。
 下着を下ろし、スカートを捲り上げる。
「……それでいい。それから?」
 ていは圭に向かってお尻を突き出し、指で秘処を広げた。
 愛液に濡れた、可憐な秘唇と肉襞が圭に丸見えになる。
「わ、わたしのはしたないここを、圭様の太いので貫いて下さい……い、いっぱい、
突いて……熱いの、注ぎ込んでください」
 ていの脳内で羞恥が快楽に転換し、とめどなく蜜が溢れ出す。
「承知」
 糸を引いて床に滴るそれに、ていは恥ずかしさで死にそうになりながらも、
確実に自分が期待しているのを感じていた。
 そんなていを、圭は昂ぶった自分自身で一気に貫いた。
「っぁ……んんぅっ!!」
 ていは拳をギュッと握り締め、背筋を震わせた。
「気をやるのはまだ早いぞ……これからなんだから」
17729/34:03/06/11 01:59 ID:iUBnrMzi
「あっ、あっ、はひっ……あぁっ、圭様ぁっ……」
 頬を床に当てながら、後ろから鋭く突かれる快感に、ていは必死で耐えた。
 けれど、圭の責めはていの理性をボロボロと剥ぎ取り、性欲を貪る牝犬へと
彼女を変えていく。
「ほら、もっとお尻を上げて。ていも、犬みたいに腰を振るんだ」
「んっ、んんっ、はぁっ、こ、こうですか、あ、あんっ!」
 主人に言われるまま、ていは出来るだけ淫らに尻を振りたくる。
「あんまり大きな声を上げると、お嬢様が起きるぞ。その姿を見られるつもりか?」
「はっ、あっ、で、ですけど……すごくて……あ、あっ、どうしても、声が!!」
「仕方がないな」
 圭は、ていの背中に身体を傾けながら、手を彼女の前に差し出した。
 正確には指だ。
「は、ぁ……」
 ていは、それをどうすればいいのか、言われなくても分かっていた。
 唾液の溜まった口内に含み、舐めしゃぶらなければならない。
「噛むなよ……? ちゃんとしたら、ご褒美をやるから、しっかりしゃぶるんだ」
「は、はい……頑張ります……ん、ちゅ……」
 揃えられた指を、圭の肉棒に見立てて舌で愛撫する。
 本物のそれと寸分たがわず、射精を求めるように精一杯、ていは指に向かって
奉仕する。
17830/34:03/06/11 02:01 ID:iUBnrMzi
「そうそう、上手だ……それじゃ、こっちも動くからね」
 指が突き入れられると同時に、後ろからも腰が送り込まれる。
「んっ……んうっ……んむっ……んふぅ……」
「上と下で、一緒に犯されてるみたいだろ? そんなにいいのか?」
「は、あ……いい、いいです……ん、圭様、指、ちゃんと咥えてますからぁ……」
「しょうがないな。それじゃ、もう一つの穴も……」
 圭は、空いている方の手を尻の谷間に滑らせた。
 繋がっている部分のわずかな上、小さな窄まりに指の先端が触れる。
「んうっ……!!」
 汗と愛液を中指に絡め、圭はそこをほじくった。
 これまでの開発でそこは、指二本が窮屈ながら入るようになっていた。
 とりあえず今日は中指一本を挿入し、引っ掛けるようにして肛内を刺激していく。
「こっちはもう少しってとこか。指三本まで入るようになったら、本物を入れ
てやるからな」
「はぁーっ……はぁー……た、楽しみです…っ……」
 擬似的とはいえ口、膣、肛門を犯す三本責めにていの太股はガクガクと震え、
膣の締め付けは次第に窮屈になっていっていた。
「だらしないな、ていは。また、イッちゃうのか?」
「も、申し訳ありません……だって、圭様のが……っ……気持ちよすぎて……
あ、あっ、お願いしますぅ……」
17931/34:03/06/11 02:02 ID:iUBnrMzi
「お願い? 何を?」
 分かっていながら、圭は冷然としたままていに尋ねた。
 その間も腰の動きは休めず、むしろ力強く加速を続けていく。
 自身のモノが膨張していくのを感じながら、圭は何度もていの子宮を先端で
突き上げた。
「ていの中に…ひ、ぁっ…いっぱい…っ…お情けを下さい! 圭様の熱いエキスで、
子宮の中を満たしてくださいっ……くっ…あ…あんっ…ああぁっ!!」
 ていが言い切ると同時に、圭は渾身の一撃を彼女に与えながら腰を密着させた。
「っ……んん!!」
 初弾がていの子宮底を叩いた。
18032/34:03/06/11 02:03 ID:iUBnrMzi
「っ……んんっ……っ〜〜〜〜〜っ!!」
 ていは、圭の指を精一杯に吸いながら、体内に迸る精液の感覚に身を委ねていた。
 熱い飛沫が胎内に浴びせられる度に、ていの全身を心地よい波が支配した。
「は、ぁ……」
 圭の射精は長く続き。
「あ……あ……あぁっ……」
 その度にていの身体が小刻みに痙攣を繰り返した。
「てい」
 圭はていの中から自身を引き抜いた。
「はー……はー……?」
 そのまま、息を荒げる彼女の前に座り込んだ。
 彼女の前には、やや柔らかくなり、精液と彼女自身の愛液にまみれた肉棒があった。
「ちゃんと出来たご褒美だよ。このまま、もう一度飲んでいいからね」
「ぁ……ありがとうございます」
 ていは、ほとんど力の抜けた身体に活を入れて圭に近付くと、彼の股間に顔
を埋めていった。
18133/34:03/06/11 02:04 ID:iUBnrMzi
「……うー」
 ほとんど死に掛けの圭に肩を貸しながら、ていは彼の部屋を目指していた。
 細身といえど男の身体。
 それなりの重量はあるはずだが、この早河家の雑務をほとんどこなしている
ていにとっては、さほど苦にもならなかった。
「お疲れ様でしたー♪」
 何と言っても、運んでいるのは恋人の身体なのだ。全然辛くなんかない。
 すっかり満足したていは、上機嫌に鼻歌を歌っていた。
「マジ、腰痛いんだけど……」
「じゃあ、お部屋でマッサージですね。あ、明日っていうか今日も早いですから、
簡単なのになりますけど」
「いや、それで充分。ともあれ、今日は身体を酷使しすぎた」
「今日も、ですけどね。……ごめんなさい」
 さすがに疲労困憊な圭の様子に、ていも反省する。
 今更といえば今更な話ではあるのだが。
「いいさ。これぐらいしか、今は出来ないんだから。お嬢様のほうも、もう少し…
…テンションを抑えてくれれば助かるんだけど」
 …………。
 ていは考え込むように天井を見つめ、それから圭を見た。
18234/34:03/06/11 02:05 ID:iUBnrMzi
「圭さん」
「うん?」
「お嬢様に、遊ばれてると思います?」
「というより、思いっきり振り回されっぱなしだね。ま、嫁いで下されば俺の
相手なんて、飽きると思うんだけど」
 大きく圭はため息をついた。
 それはどうかなぁ、とていは思うのだ。
「んー、飽きる、ですか」
「何?」
「私、予言します」
「うん?」
「お嬢様の二十歳の誕生日までは、続きますよ」
「……何故、分かる?」
「二十歳になれば、会社の全権はお嬢様のものになります」
「ああ」
「なら、身分違いの恋でも、口出しできるものはいませんから」
「……………………は?」
 圭は、よく分かっていないようだった。
 ていは、いつも通り、けれど、やや不敵な成分を含ませた笑みを彼に向かって
浮かべた。
「わたし、負けませんからね?」
183148:03/06/11 02:07 ID:iUBnrMzi
以上です。
マジ長くてすみません。
こういう形の愛もありかなぁという事で、ちょっとチャレンジしてみました。
ラブコメ混じり純愛系、楽しんでいただければ幸いです。
んでは、次の人を待ちながらROMに戻ります。
184名無しさん@ピンキー:03/06/11 06:43 ID:7fwXpFiA
内容は読んでないけど、書式がなんか変。
185名無しさん@ピンキー:03/06/11 07:34 ID:tm6QKphy
>148
ヒロイン2人が、一見対称的な性格してるのが好きです。
でも、2人とも熱くて負けず嫌いなのねw
それを含めて、続きを読みたい、と思わせる引きがいいなあ。
個人的にはお嬢に頑張って欲しい!
おつかれさまでした。堪能。

>184
自分は気にならなかったけど、
後学のために、どこが変に感じたのか
具体的に挙げてもらえたら嬉しいかも。
186名無しさん@ピンキー:03/06/11 15:23 ID:OgpREhJG
>148
長編力作、乙〜。
三角関係そのものは大好きだけど、
鈍い主人公にちょっといらいら。Wヒロインには
もっと女の機微のわかる男探しにいけ! と言いたくなるなw

>185
私も気にならなかった書式。改行ヘンってこともないし。
見る環境によるのかな。
ちなみにかちゅで見てます。
187名無しさん@ピンキー:03/06/11 15:46 ID:9VjoSVp8
>>148
面白かったよ。設定が実は好みだったり。
個人的には、ドロドロな展開、且つ基本は純愛な展開を勝手に妄想したりw

ところで「香菜里」は何て読むのでしょう?「かなり」?
188名無しさん@ピンキー:03/06/11 17:48 ID:bp7FQ4zk
読み進めていくうちに、主人公の名前が「主(あるじ)」に見えてきた。
目がヘン? それとも狙ってるのかな(違
189名無しさん@ピンキー:03/06/11 18:09 ID:IiHm2wvp
単に老眼なんじゃねーの。
190148:03/06/11 21:21 ID:xHMDw7u5
感想どうもです。

>>184
私も気になるので、後々の為にもどこら辺が変なのか教えてもらえるとありがたいです。

>>185
背景は、竜虎相打つで炎が燃えてもおかしくないようなWヒロインです。
そう考えると、多分間の圭は弱いです、すごく。
続きは分かりませんが、作品の主人公が別作品の脇役ってのは私の中ではしょっちゅうなので、
また機会があればどっかで出てくれるかも知れません。
お嬢はお年頃故、次々襲い掛かる縁談を叩き潰していかなくてはいけません。
「圭に勝った人と結婚するわ」とか言い出し大変です。

>>186
ありがとうございます。
確かに三角関係の主人公は、鈍かったり優柔不断だったりですねー。
しかし、機微の分かる男ならさっさとどっちか決めてるか、
要領よくバランスを取ってるかになってしまい、複雑な所です。

>>187
お嬢の名前は『かなり』で合ってます。振り仮名つけるべきだったなと反省。
シチュエーションそのままでも、作者が違えばこれ、
ドロドロな展開に持っていけると思いますが、
らぶこめ属性の人間には今はこれが精一杯でした。

>>188
いえ、狙ってませんです。
なんとなく男でも女でも通じるような名前で考えたのが、
たまたま『圭』だったんですよ。
191名無しさん@ピンキー:03/06/11 23:48 ID:eTKEsvmP
ここって明るい系のSSは無しなんですか?
192名無しさん@ピンキー:03/06/12 00:08 ID:phCEhwFG
>191
自分で判断できないの?
193名無しさん@ピンキー:03/06/12 00:10 ID:fJHQyBfB
>>191
全然アリでしょ。>>1にも「純愛+お笑いの意欲作でもなんでもOK」って書いてある。
二等辺三角形だって別に暗くはないと思うし。
194名無しさん@ピンキー:03/06/12 00:20 ID:QnsT2DAT
>>191
某控え室の話題のことを言ってるのなら別スレのことだと思われ。
195名無しさん@ピンキー:03/06/13 00:45 ID:YahkckLm
改行の仕方が変。
40字程度の文章が多いのに35字くらいで自己改行してるのがバランス悪い。
かといって行末は揃うでも揃わないでもない状態になってるのが変。
原稿用紙上の作法にはそってても、かえって見にくくなってる。
1レスずつの行数も変。
読むの疲れる。
196名無しさん@ピンキー:03/06/13 11:55 ID:Z29DfSzE
148さん、乙カレ。
事に及びながら片方が敬語で喋ってるシチュがツボでした。SM系は苦手なんだけど…。
長編っていうけど、展開が面白いから全然飽きずに読んだよ。描写も良かったっす。

表記については勉強になった。この程度で「読めない」と言う人もいるんだとね。
自分と余りにも違うと受容できないのかも知れない。
とりあえず、左側のツラ(だっけ?)を合わせてみるといいのでは。
197148:03/06/14 04:12 ID:WytpoPAH
>>195
なるほど。
そういう方面で駄目というのもありなのですね。
参考に、なりました。
ありがとうございます。

>>196
ありがとうございます。
そういえば、普段の作品も敬語のキャラ多いですわ、私……。
198名無しさん@ピンキー:03/06/15 00:18 ID:qmdiWw98
ひとつ誤解させたかも。
読まなかったのは書式が変なのが理由というより、元々内容に興味なかったから。
面白そうだと思ったら変でも読んでる。
「読む読まないを書式で決めてる人もいるんだ」ということではないと思う。
199名無しさん@ピンキー:03/06/15 04:22 ID:mZai+lbS
SSサイト等ではけっこう見る書式だけどね。
(尻のほうが決まった字数で揃ってないのはともかく)
エロパロ板ではあまり見慣れない書式ってことかな。
200Wing:03/06/16 20:57 ID:ZFC2FgsU
>>132
「あの… きょうは、どこに連れて行ってくれるんですか?」
201Wing:03/06/16 20:58 ID:ZFC2FgsU
「ついてきて」
そう言って、田中さんはさっさと目の前の扉をくぐる。
おいでおいでをしてる。その後ろは華やかな照明とたくさんの人。
そう言えば、待ち合わせの場所はデパートの入り口だった。
導かれるように中に入る。

ずんずん歩いていく。なにか探してるみたいに。
振り返りもしない田中さんのあとを、あわててついていく。
たどりついたのはアクセサリー売り場だった。

え〜っと。
私の困惑に気づいてるのかどうか、
ぐるぐる回って、ショーケースを眺めてる。

「ちがうな〜」
「これも」
ときどき私の顔をじっと見てる。
「感じがちょっとな、う〜ん」

「何をお探しですか?」
「いや、いい。自分で探したいから」
店員が寄ってくるのを手で制止してる。
202Wing:03/06/16 20:58 ID:ZFC2FgsU
「お! これ!」
私の方をもう一度見る。なんか、恥ずかしい。
さらにもういちどそれを見て、うなづいてる。
店の人を呼び寄せてから、私に向かう。
「ほら、こっち」


鏡の中に私がいた。
耳には、さっきのイヤリングが、金色に光って揺れてた。
とまどいは隠せなかった。そしてうれしさも。

「どう?」
「え、あの、とっても‥ きれい‥ です」
何も考えられなくなって、ぼーっとしていた私は、
ただ感じたままを口にしていた。すごくきれいなイヤリングだった。

「こっち向いて」
言われるがまま向き直る。
「うんやっぱり似合うよ君枝ちゃんに。完璧だ」

「これ、もらうよ。カードで。
 はずさなくていい、つけたままで。そっちを箱に入れておいて」
「あ、でも」
「これぐらいしか、思いつかなかったから」
「こんな高いもの」
「気にしないでいいよ。ぼくがそうしたいと思っただけだから」
「でも‥」

「じゃ、次だ。今日は結構忙しいんだよ。行くよ!」
203Wing:03/06/16 21:01 ID:ZFC2FgsU

窓の向こうに広がる真っ暗な夜の海は、
様々な色のきらめきで、美しくいろどられていた。
かすかな揺れとたまに感じる潮の香り。
広いダイニングルーム。目の前にいるのは田中さん。
二人でテーブルをはさんで、今、食事をしている。
ワインは赤。すこし私には辛口だけど、料理に合ってる。

「こういうところ、よくご存知なんですか?」
「いや」
「もしかしていつも… このコースで女性を口説いてたり?」
困った顔をしたのを見て、自分が思っていた以上に酔っていたことに気づく。
「ごめんなさい。つまんないこと、言いました」
「…いや。普通そう思うよな。
 う〜ん。この際だ、正直に言っちゃおうか」
おもしろそうに笑ってる。なんだろ。

「実はね。今日のこのコースは僕のオリジナルじゃないんだ」
「‥‥‥?」
「だって、女性を口説いたことって一回もなくて」
「え?」
「このあいだ君とデートの約束はしたけど、あとで本当に困っちゃって。
 若い女性が喜ぶデートスポットなんて、見当もつかないからさ。
 で、ネットで探したんだよ。
 そしたら、おすすめ半日プランってサイトがあって、
 『絶対落としたい女性の場合』ってコースが、これなんだよ。
 あ〜あ、言っちゃった」
緊張してたのか、あわててグラスのワインを流し込んで、
そしてむせて咳き込んでいる。
204Wing:03/06/16 21:03 ID:ZFC2FgsU
「怒った?」
一息ついたとこで心配そうにこちらをうかがう。おかしいぐらい真剣に。
いたずらを見つかった子供のようなその表情に、
思わず噴き出してしまいそうになる。

「ぜんぜん」
「ほんとに?」
「もちろんです。だって… こんなに… 素敵なんですもの」
「ん〜 よかった。肩の荷が下りた」

ゆっくりと食事が進み、コーヒーのおかわりも飲み終える。

「上にデッキがあるみたいだ。行こうか」
しかしあいにくの小雨でデッキには居られず、あわてて戻る。
カジノ室のようなデザインの談話室でくつろぐ。
人がたくさんいて椅子が空いてなかったので、
はめ込みの船窓のへこんだところに、二人で座った。
窓の外、流れる景色が美しかった。
今までつらく感じてたあれこれが、別世界のように思えた。
時間がゆっくりと過ぎる。

目の前に、同じように夜景に見とれてる田中さんの背中。
引き寄せられるようにもたれかかる。
ビクッと驚いたのがわかる。でもふりかえらない。
次の瞬間、私は両手で背中に抱きついていた。あたたかい。
なぜか、そのときは恥ずかしいとは思わなかった。
そのまま、ずっと同じ景色を見ていた。二人で。
205Wing:03/06/16 21:11 ID:ZFC2FgsU
エンジンの音が静かになっていた。
閉じていた目をあけると、窓の外は船着場の景色。
そう、ここはディナークルーズの始まり、そして終点。
振り向くと、何人かのひとが階段を下りていくのが見えた。
この部屋に残っているのは、もう私たちだけ。

背中に顔を埋めた。
あんなに楽しかった時間が、もう終わろうとしている。
私の心をふさぐように、出口のない寂しさがつのっていく。
声を上げて泣きたい気分だった。

田中さんがそのままの状態で振り返る。
そして、私の耳元に口を寄せ、一語一語確かめるように言った。

「さっき車置いたホテル。あそこに、
 部屋… 予約してある… えっと…」

そして私に背中を見せて、言葉をつなぐ。

「無理にとは、言わないから……」

…うれしかった。
まだ、一緒に居られる。離れなくてもいいんだ!

「行きましょ?」
その言葉を口に出すのに、ためらいなんか全然なかった。
振り向いた田中さんは、私の笑顔に安堵の溜息をついた。

腕を組み、肩を寄せ、一緒にタラップを降りる。
206Wing:03/06/16 21:16 ID:ZFC2FgsU
その部屋からはブリッジの全景が見えた。
上端のライトは、光の帯となって夜空に向かい曲線を描いていた。
ときおり、ライトアップした船がその下をよぎる。
水面に映った光たちは、混じり合い、さざめき、きらめく。

そんな景色に見とれていた私の体が、後ろから抱きしめられた。
首筋にキス。右、後ろ、左。順番に。やさしく。
くるっと振り向かされる。
じっと見つめられて… 目を閉じるしかなかった。

唇が重なる。
伝わってくる思い。そして伝えたい思い。
沈黙の中、いきかうふたつのことばは、すこしの違いも無かった。

私の唇が強く吸われ、舌は二人の唇の境界線を越える。
狭い口の中で、あきることなくからみあう。どこまでも淫らに。
背中を押さえる手がときおり位置をかえる。
それを中心にして、暖かさがそのたびに広がっていく。

密着する胸。乳首は固くなってブラの内側に当たってる。

気づくと両手が私のお尻へと移動していた。
しばらく柔らかくなでられて、突然強くつかまれた。
そして引きつけられ、腰に強く押し当てられる。
おなかに硬いものがあたっている。それはかすかに脈打っていた。

体の芯がうずいた。
奥からあふれるものは、あっというまにすきまをすみずみまで満たす。
207Wing:03/06/16 21:21 ID:ZFC2FgsU
ひとつの思いが心を占領する。他の全てを押しのけて。

満たして欲しい… 
何も考えられなくなるくらい… すきまなく… うずめつくして…

そんな今の自分がとても淫らに思え、とまどいをおぼえても、
「うずき」はとっくに私の身も心もとらえていて、
押さえることなど出来なくなっていた。

そんな思いにこたえるように、
抱き上げられ、ベッドの上に降ろされる。
上から重なって、キスされた。
いとおしくて、そのたまらなさに広い背中を力の限り引き寄せる。
激しく唇を動かし、自ら執拗に舌をからませた。
与えられぬもののもどかしさは、くるおしい切望へと変わる。
期待に腰が知らず知らずうねる。止めようも無く。


体が… 離れようとしている?
だめ! いやだ! 行っちゃダメ!
そう思って、あわててしがみつく。

「カーテンが、あいたまま、だから……」
そのことばにあわてて腕をゆるめる。
私、なにやってんだろ。自分のしたことが恥ずかしくて、目を閉じる。

歩く音。カーテンを閉める音。再び近づく気配。
208Wing:03/06/16 21:25 ID:ZFC2FgsU
胸のところ…
ブラウスの1番上のボタンが… 今、はずされた。
反射的にその手をつかんでしまう。息をつめる。
私の手はやわらかく押しのけられた。
息を吐き出したとき、2番目のボタンがゆるめられる。

あっというまに1番下まではずされ、ゆっくりと前が開かれる。
ブラに覆われてない乳房のうえのほうに、やさしくキスが降った。

スカートもストッキングも、何もかもが剥ぎ取られ、裸にされる。
少しの間を置いてベッドが揺れ、体全面にいちどきに触れるものがある。
素肌が重なる。首に回された手が私の頭を支えるようにして、
唇が奪われ、同時に髪がなでられる。

……体のあらゆる部分がこの人を欲しがっている。
……髪の一本一本までが、触れ合いたいと泣き叫んでいる。

どうしようもない思いの中、私は両足を持ち上げて、腰をはさんだ。
からみつけるように、濡れた部分をおしつける。
そうしたくて動いたことが、なおさら「うずき」に火をそそぐ。

お願いを、私は口にした。
淫らな女と思われることの恥ずかしさよりも、
湧き上がる渇望のほうが私を支配していた。

入り口を探す動き。
もどかしさに、腰が知らず知らずうねってしまう。
ふとしたはずみで、位置が合った。
209Wing:03/06/16 21:29 ID:ZFC2FgsU
押し分けるように進んでくるもの。
それによってふたつに開かれたその部分が、卑猥な音を立てた。
恥ずかしさと、そして同じぐらいの欲望の強さに気づかされ、
目の前の胸に顔を埋めて、表情も思いも見えないようにした。

でも、つづいて中ほどまで埋められたとき、
その努力はすぐに意味を無くしてしまう。

もっと奥、お願い、もっと…

私はありのままの欲望を、はばかることもなく告げる。

そして… ついに私の中が、固くなったもので埋め尽くされた。
こみ上げる快感の中で、息をすることも出来ず、
ただ強く抱きしめることしかできない。

ゆっくりと、ゆっくりと押し付けられ、ゆるめられ…
そんな動きが始まったとき、
さっきの快感がほんの子供じみたもののように思えるほど、
あらがえない巨大な波に私は襲われる。

奥ののあらゆる場所にまんべんなく刺激が伝わり、
吸い込んだ息を吐き出すことも出来ず、ただなすがままになっていく。

私の意識とは無関係に、
奥のほうの場所が、つかみ、こねて、吸いこむようにあやしく動く。
訪れたものとたわむれるように、いくども。あきることなく。
そしてそのこと自体がもたらす強い快感が、さらに私を押し上げていく。
210Wing:03/06/16 21:31 ID:ZFC2FgsU

さきほどまでの押し付けるような動きが、今、少しずつ変化している。
211Wing:03/06/16 21:33 ID:ZFC2FgsU
今回はここまでです。
エンディングは決まってますが、途中がまだ全然です。
とぎれとぎれですが、いましばらくお付き合いください。
212名無しさん@ピンキー:03/06/17 22:30 ID:TqHIvnK6
wingさんキタ───(・∀・)───!!
エンディングまでこまめにホッシュ!
213名無しさん@ピンキー:03/06/18 15:56 ID:CqeWyv5C
Wingさんも148さんもよすぎです!
214名無しさん@ピンキー:03/06/23 12:55 ID:of8K+z+o
ヽ(`Д´)ノナンダヨー
捕手
215あぼーん:あぼーん
あぼーん
216名無しさん@ピンキー:03/06/27 19:17 ID:58buZhCC
ヲイヲイどうしたんだ…?
まさか毎週ライブな漏れとは違うだろうし…

取り合えずホスユ
217あぼーん:あぼーん
あぼーん
218あぼーん:あぼーん
あぼーん
219あぼーん:あぼーん
あぼーん
220あぼーん:あぼーん
あぼーん
221名無しさん@ピンキー:03/06/29 14:47 ID:GWjJ89iX
保麈
222あぼーん:あぼーん
あぼーん
223名無しさん@ピンキー:03/07/01 16:55 ID:EXUO2v4A
心が見えなくて、純愛迷宮
だけど、ゆびさき絡めあうの〜

二人でまよいこむ純愛迷宮
淋しい罪を分かち合って〜 
224名無しさん@ピンキー:03/07/05 15:36 ID:PBMSZNGW
>223
曲をつけてみました。
ttp://shibuya.cool.ne.jp/musique/jun-ai.mid
225あぼーん:あぼーん
あぼーん
226あぼーん:あぼーん
あぼーん
227あぼーん:あぼーん
あぼーん
228Wing:03/07/07 22:50 ID:n4CS60oz
さきほどまでの押し付けるような動きが、今、少しずつ変化している。

押し込まれたあと、少しだけ引かれて。
そのたびに、私の入り口の部分が引きずられながら、
まるで意思を持っているみたいに、まとわりつこうとしている。
全ての感覚が、私の中で動き回るものに集中してしまう。

引かれたものが次に押し込まれるのさえ待ちきれず、
自分から腰を動かしてしまう。
淫らに思われることなど考えもせずに。

多分うわごとのように、
「好き」とくりかえしていたと思う。
快感よりももっと強くこみあげる、
私の思いをどうしても伝えたかった。

激しい動きの中、
私の名前が呼ばれる。唐突に。

薄れゆく意識がその言葉で呼び戻され、
目を開けようとしたときに、最後の一撃が私を襲った。

突き抜けるほど… 奥まで… 

こらえきれないほどの快感で、体中が満たされる。
意識が途切れた。
229Wing:03/07/07 22:51 ID:n4CS60oz
それはほんの数秒だったと思う。
目を開けると、田中さんの顔が目の前にあった。キスをされた。

おだやかなキスとはうらはらに、
繋がったままの場所は、
余韻を楽しむように、いくども締め付ける動きをくりかえしていた。
挿入されているものの形が、いやというほどはっきりわかる。

今、この人と私はつながっている。
いとおしくて、うれしくて……
唇をむさぼるように押し付けてしまう。

ことばが… 見つからない…
そのとき私に出来たのは、
肌がより多くの場所で触れるように、強く抱きしめることだけ。
ただ、それだけだった。
そして、それで充分だった。
230Wing:03/07/07 22:52 ID:n4CS60oz
「ほほ〜 うんうん。 …なるほどね。
 あんな地味な顔して。あ、ごめん。気にしないで。
 いやぁ結構やるもんだから、ちょっと驚いた。
 つかみはアクセサリーで、今してるのがそれ?
 君枝ちゃんによく似合ってるよ。センスあるね〜、彼氏。
 お次がクルージングディナー。
 そして、海の見えるホテルの部屋がとってあって… と。
 やるな〜 敵ながら見事だ!」

「それでさ。やっぱりとことん、イかされちゃった… のかな?
 もしかして、前よりもっとよかった… とか?」

「ふふ。いいよいいよ言わなくても。その顔見てわかったから。
 女の喜び200%って感じだね」

「でも、聞くんじゃなかったな〜
 ここんとこ男日照り続きだもんな、私。
 つまみぐいでもいいから、ラブアフェアすっか。
 君枝ちゃん見習って。うん、そうしよ!」
231Wing:03/07/07 22:55 ID:n4CS60oz
それから、月に何度かデートをした。毎回、違うところに行った。
ステキなクラッシックの生演奏のある店でフルコースだとか、
イタリア人のシェフがピザの事を教えてくれるお店とか。

渋谷の焼き鳥屋さんとか。
横浜の中華街に行って豚まんをかじって歩くデートもあった。
私の行ったことのない、いろんな所に連れて行ってくれた。

食事が終わり、店から外に出て歩き始めると、
腕にぶら下がるようにしがみついてしまう。
もっとそばにいたい。肌を触れ合っていたい……
そんな思いで胸が一杯になってしまう。

じっと待ってる。ひとつのことばだけを。

不意に立ち止まり、私を見て、ひとことだけ。
顔を上げてうなずくとき、私はぎごちない顔をしてると思う。
うれしいのだけど、こんなあからさまなおねだりをする自分が一方で恥ずかしくて。

部屋に入ると、まずお風呂。
抱っこしてもらって、落ち着くのがお決まりの手順。

そこでは、私はおしゃべりになる。
他愛もないことを次から次へと。
ちょうど、幼稚園から帰ってきた子供が、
その日あったことすべてを母親に話すみたいに。

すべてのものから解き放たれていく時間。
二人っきりの部屋。あたたかいその腕の中で。
232Wing:03/07/07 22:57 ID:n4CS60oz
さっきまで私の胸の先端を舐めていた舌と唇が、
今、少しずつ下の方へと向かっている。
わき腹を伝わり、腰骨のところで一度止まった。

方向を変え、
もものくびれをなぞるように、ゆっくりと中心へと移動を続ける。
たどり着くだろう場所のこと。その目に映ってるはずの私の姿。
顔と体が急に熱くなる。

反射的に腰をひねろうとした。
でも両手が私のお尻をつかんでいて、ピクリとも動かない。
あきらめるしかなかった。

私の中心のすぐそばまで近づいたとき、唇が離れる。
陰毛のそばにとどまったままの顔。
期待とおそれで詰めていた息を吐き出す。
それでも、敏感になってしまった体は、息がかかるたびにピクッとなる。

お尻にあった手が両足をつかむ。
そしてゆっくりと外側に押しやられた。
とっさに手で隠す。

無言のまま、手にキスされた。
さとすような柔らかいその感触に、手足の力がじょじょに抜けていく。
音のない言葉が緊張をほぐしていく。
手がはがされ体の横にそっと置かれた。
233Wing:03/07/07 22:57 ID:n4CS60oz
直接、触れることはしない。
でも、唇がほんの数ミリのすきまを保ったまま、
はざまのすぐそばを、上から下へと動いているのがわかる。
かすかな動きをとらえようと、感覚がそこに集中する。
うぶ毛の先までが官能を捉えるために鋭敏になっていく。

上から下、そして下から上、いくどもくりかえされる。

そしてひだの横に感触。そのまま粘りつくように舌が上下する。
反対側も同じようにやさしく。
閉じられたままの部分を無視するように、
いかにもそれが最終目的だったかのように。

私の奥のほうが、かすかに熱くなって、うごめいた。
そこから入り口の方へと、何かが伝わって…

いやだ。
もう、中で… あふれて…… いる…

そう思ったとき、クリトリスに圧力を感じた。
覆っているものの上から。
下に向かってはじくように動いた。
強烈な刺激に思わず声が出てしまう。

舌は、そのままひだの頂上をたどって順繰りに下へと進んでいく。
一番下にたどり着き逡巡するようにとどまっている。
しばらくそうしていたかと思うと、かすかな圧力。
234Wing:03/07/07 22:59 ID:n4CS60oz
閉じられたものをかき分けて、もぐってくるやわらかさ。
あふれ出る粘液に満たされていた場所は、
あまりにもあっさりと二つに分かれる。

粘膜が外気に触れた感触とともに、あふれ出すものを感じた。
舌は左右に大きく開くように動き、
すくい上げたられたねばりを周囲に塗りこめている。

クリトリスの上にも垂らされたあと、
その周囲を、じらすように舌がくるくると回転する。
そしてまた、包皮の上に置かれる。
息を詰める。

軽やかな一撃。
「ダメ!」
そんなの… ダメ…
支えがほしくて、空いた手で頭をつかむ。
すぐさま強い力ではがされ、手首を握られ自由を奪われる。
そのあいだも、執拗に刺激が続けられる。

背中に力がはいってしまう。
拘束され身動きできないことに、恥ずかしさがつのる。

次々と押し寄せる快感は体中にいきわたり、
それが衰える間もなくつぎの刺激がくわえられ、
硬直した体が弛緩する間もない。
息ができない。
235Wing:03/07/07 23:03 ID:n4CS60oz
もう… だめ… いや… そんな…

そんな私の様子を見て取ったように、両手が乳房をつかむ。
指が器用に乳首をはさんで転がし始める。

あっ!
イク……

胸の上の両手を思いっきりつかむ。
次の瞬間、
真っ白なものが私の視界と意識の両方を埋め尽くした。


目を開けるとそこには田中さんの顔があった。

今、わたしがイってしまったところを、
見つめていたはずのその目。
恥ずかし過ぎる。目を閉じて顔をそむけた。

太ももが私の両足を跳ね上げる。
硬いものが入り口にあたる。
中に入ろうとはしないで、ゆっくりとひだの中を上下している。
先ほどの愛撫で濡れきっている場所から、そのたびに音がする。

動きが止まり、入り口にあたってる。
たぶん何の抵抗もなく奥まで入るはずなのに、
ゆっくり… 押し広げるように… 確かめるように…

感じるのは… 言葉にできないくらいの… うれしさ
236Wing:03/07/07 23:08 ID:n4CS60oz
奥までおさめられたとき、こらえきれず唇を求めた。
むさぼるように吸い、舌をからめる。

いつしか私の口の中へ侵入した舌は、
性器のように粘膜を刺激し、蹂躙し始める。
間違いなく、口の中でも私は犯されていた。
執拗な愛撫に、より多くの官能を求めながら、
男の欲望をただ受け止めることに喜ぶ女となって。

下半身から別の動きが伝えられる。
体すべてが虜となって、私をとどめるものはなにもない。
うれしさを言葉であらわし、抱き寄せ、要望する。

徐々に早くなっていく動き。
あっ… いく…
そう思ったのもつかのま、絶頂がすぐに私を襲った。

しかし動きはとまらない。
官能のカーブが下降線を描き始める前に、
なおも激しく、わたしの中へとつぎつぎと押し込まれるもので、
すぐさま新たな絶頂へと押し上げられる。

そうして、
立て続けに、いくども達してしまう。


私は、確かに愛されている。
この人に。
237Wing:03/07/07 23:11 ID:n4CS60oz
本日はここまでです。また、来ます。
それにしても最近、広告が多いですね、この板。
238名無しさん@ピンキー:03/07/08 01:52 ID:OU6a6ro1
いい……待ち続けてる甲斐がある……!
描写にもだけど最後の2文に撃沈。最高です。続き頑張って下さい。
239名無しさん@ピンキー:03/07/08 09:03 ID:LYjnwW36
なんつーか、WingさんのSS、リリカルだなぁ……。
君枝ちゃん、応援したくなる感じの娘だ。
あ、もちろん、Wingさんも応援してますよ。
240あぼーん:あぼーん
あぼーん
241あぼーん:あぼーん
あぼーん
242あぼーん:あぼーん
あぼーん
243あぼーん:あぼーん
あぼーん
244あぼーん:あぼーん
あぼーん
245あぼーん:あぼーん
あぼーん
246あぼーん:あぼーん
あぼーん
247あぼーん:あぼーん
あぼーん
248名無しさん@ピンキー:03/07/13 23:08 ID:vR5kTGP/
sageなのになぜ広告が来る?
249山崎 渉:03/07/15 11:09 ID:7GpObfWE

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
250名無しさん@ピンキー:03/07/15 11:11 ID:/D0t8z6J
さぁ?今や無差別だし、広告貼り付けだって、クリックされなけりゃ
ターゲットを絞るだろう、無駄なのになぁ。
251Wing:03/07/15 12:22 ID:6FjD0Ztx
私は、確かに愛されている。
この人に。

* * * * * * * * * * * * * * * * *

「で、なんなの? 用って?」
「えぇ、あの、ヒカリさんにはちゃんと話しておきたいと思って」
「なによ、急にあらたまって」
「私…… お店やめようと思って……」

「そんな、突然…… でもないか。
 君枝ちゃんがいつ言い出すかなって、正直、思ってた」
「?」
「ぶっちゃけ、彼氏以外の男に抱かれてるのがつらくなった。
 そうでしょ?」
「…ええ …まぁ」
「だよね〜」

「あの… ヒカリさんにはとってもお世話になったし、
 だから、ちゃんとお話しを」
「いいのいいの。たいしたことしてないし、私。
 気にしなくていいの」

「待てよ …ということは、借金はもう?」
「ええ。あらかた返しました。あと、当座のお金も残ってます。
 それに知り合いの人に、次の仕事紹介してもらえましたし」

「すごいね。半年で全部返したんだ。ふ〜ん。
 入ってきただけ出て行っちゃう私とは人種が違うのかぁ」
252Wing:03/07/15 12:23 ID:6FjD0Ztx
「あまりここでの仕事が長くならないうちに、
 地味な生活に戻ったほうが、君枝ちゃんにとってはいいかもね。
 もともと、ここに来たのが間違いみたいな感じだし」

そう言って、ヒカリさんはタバコに火をつけた。

「ところで、彼氏って… たしか所帯持ちだったよね?」
「えぇ」

「…余計なお世話だけどさ、あえて言うよ。
 いずれさ、傷つく日が来る。だよね? 覚悟はできてる?」


最初のデートの日。
田中さんは私に、家族がいることを告げた。
そして、家庭を壊す気もないと。

遊び… 
普通ならそう考えるべきだろう。

でも、それでもいいと思った。
あの人は私にとって世界で一人。一番やさしい人。
そのぬくもりは、いつだってやすらぎを与えてくれる。
腕も体も、手も指も、笑顔も言葉も。
すべてが私を幸せにする。
253名無しさん@ピンキー:03/07/15 12:23 ID:x4+VNIiO
というか249…
禁止しても苗字と名前の間にスペース空けてまたスクリプト荒し。
俺の行き着けのスレにこの新AAほとんどにきてるよ。

ほっと厳しく規制すりゃいいのに。
別に無害だけど。
254Wing:03/07/15 12:25 ID:6FjD0Ztx
かなうものなら、
あの人の腕の中で朝を迎え、
陽のあたるダイニングで、コーヒーをのんびり味わいながら、
たわいもない話をしてみたい。

さぁ、今日はどこに行こうか? って…

でも、もしも私が、かたくなにそれを望めば、
手の中にある何もかもが消えうせてしまう。

私は、その話を聞いたときに心に決めた。
ただあの人を愛することに。


「ええ、じゅうぶんに考えました」
「そっか。 …じゃもう言わない。幸せになんなよ」
ヒカリさんのそんな優しさに、思わず涙があふれた。

「こらこら! 君枝ちゃん!
 言ったそばから泣いてちゃ、先が思いやられるじゃない?」
255Wing:03/07/15 12:26 ID:6FjD0Ztx
新しい職場は、工場の入出庫を管理するところ。
重たいものは若い男の人がやってくれるので、
私はほとんど電話番のようになっていた。
とはいっても、電話、FAX、メールと、
さまざまな形でひっきりなしに入ってくる出荷依頼を、
整理してきちんと伝票に打ち込むのは、思ったより大変だった。

間違えないように必死の毎日。
つくづく物覚えが悪い自分を呪ってしまう。
小学生の頃からなにも変わってない自分がいた。

それでも1ヶ月を過ぎた頃、なんとか仕事に慣れることができた。


二人でお風呂につかりながら、
新しい職場での話をいろいろとする。
めちゃくちゃな時間に納期指定する営業さんの話をした時には、
めずらしく怒ってしまって。

そんな反応もうれしくて、子供のように抱きついてしまう。
甘えてしまう。

「がんばりすぎてない?」
耳元でそう言われた。

ひとつだけ、私は心に決めていたことがあった。
どんな意味でも、この人に負担をかけたくはない、と。
一人でちゃんと生きてる女として、
何も考えずに愛していたかったし、愛されたかった。
256Wing:03/07/15 12:27 ID:6FjD0Ztx
そしていつか、どうしようもなく別れる日がきても、
大人でありたかった。
泣いて引き止めることはしたくない。
自分のために、そしてこの人のために。

「よしよし。大変よくがんばりました。
 じゃ、がんばりやさんには、特別なごほうびをあげましょう」
「え〜 なんだろう?」

答えの代わりに、
私の太ももの上をてのひらが滑るように動き始める。
お湯の向こうにゆらゆら揺れる手、
そして足からやってくる微妙な感覚。
いつのまにか首筋にあてられた唇。
背筋をかけのぼる快感が徐々に増していく。

「これの… どこが… とくべつ… なの…」
「あ? あぁ。いつもより心をこめた愛情表現、ということで」
「そんな…  あっ!」
腿の間に来ていた指が、突然クリトリスを包皮越しに刺激した。
反射的にその手をつかむ。後ろに首を向けた。キスされる。
包皮越しの刺激はその間も止まらない。

「ね? どう?」
「ずる… い…  ウッ」
何度もくりかえされる愛撫に、言葉がどうしても途切れてしまう。
もたらされる心地よさの中、
問い詰めることより、官能に身を任せるほうを私は選んだ。
257Wing:03/07/15 12:29 ID:6FjD0Ztx
包み込まれるように両腕に抱きとめられ、愛撫が続けられる。
そしてすぐに、いつもとおなじように。

私が発したため息とも悲鳴ともつかぬ声が、
バスルームにこだましていた。
それは、自分の声とも思えないほど、淫らな女の歓びの声。


「出よう。このままじゃのぼせちゃう」
抱きかかえられるように連れ出され、ガウンをかけてもらい、
籐の椅子に座る。
二人で冷えたビールで乾杯した。

「それで…  はいこれ」
「?」
「いらないの? 『特別なごほうび』なんだけど」

紺色の紙で出来た小さな手提げ袋が、手の中に置かれた。
促されるまま開けると、小さな箱。
中身は、ピンクの石がペンダントになったネックレス。
宝石には詳しくないけど、とっても綺麗だった。

「はい」
私の手から奪い取ると、背中のほうにまわって、
うしろから付けてくれた。けっこう器用に素早く。
手際のよさに驚かされる。
258Wing:03/07/15 12:30 ID:6FjD0Ztx
有無を言わさず手を引かれ、鏡の前に連れて行かれた。

「ほら。お嬢さん、とってもお似合いですよ。
 このピンクトパーズはね、付ける人を選ぶんです。
 肌の白い方じゃないと、正直きついんですよね〜、これ」

おかしいくらいまじめくさって、店員になりきってる。

鏡の向こう。おそろいの白いガウンを来た二人。
私の後ろから、片手はゆるやかに私のウェストに回され、
もう一方の手は、私の髪をかきあげて肩へとおしやる。
胸元に輝く光。後ろから覗き込む笑顔。

これ以上の、なにが必要なんだろう?

言葉はいらない。
向き直りその胸に顔を伏せる。
洗い立てのコットンの香りと、そして彼のにおい。

あごを指で持ち上げられ、キスされた。
いつのまにかガウンが落とされている。

裸であることの恥ずかしさはなくなっていた。

抱き上げられベッドに落とされ、覆い被さってくる。
首筋にキスされながら、下半身では足が開かれ、
そして挿入される。

幸せの時間が始まる。
259Wing:03/07/15 12:33 ID:6FjD0Ztx
携帯が鳴った。一人で夕食の方付けをしていたときだった。
あわててダイニングの携帯に駆け寄る。

しかし、つかの間の期待は見事に裏切られる。
番号表示は、あの人からの電話ではないことを告げていた。

なんで連絡くれないの?
明日の晩だよね、デート。いいとこ連れていくよって言ってたけど、
どこで待ち合わせかも決めてないじゃない。
んもう、どうしたんだろ。
こんなこと今までなかったのに。

なんか腹立たしくて、知らない電話は切りたい気分だったけど、
そういうわけにもいかず出る。

「はじめまして。私は中山といいます。
 ちょっと田中のことで… 
 あ、君枝さん… ですよね?」
「はい、そうですけど」

この人は? なんで? この携帯に?

「田中とは同期入社で、ずっと友達… だったんですが」

………だった?

「あいつ、二日前の夜に、交通事故に巻き込まれて……」
260Wing:03/07/15 12:35 ID:6FjD0Ztx
沈黙。
直感が私にささやきかけてくる。
その言葉の続きを、私は聞きたくなかった。

「即死でした」

「1ヶ月前。あいつからあなたの電話番号を教えられて、
 『オレになにかあったときは頼む、連絡してやってくれ』
 そう頼まれていました」

「ひとに頭を下げることの嫌いなあいつが私に向かって深々と…
 あまりにも真面目なその姿に、何も言わず引き受けたけど、
 一月も経たずにこんなことになるなんて…」

「今思うと。もしかしたらあいつ、なんか感じてたのかもしれない。
 あんときに、」

どうして?
つい、このあいだだって、あの人と会ったし、

私はこんな嘘を信じない!

「明日の晩、お通夜です」
私の思いとは無関係に、場所と時間が告げられる。

「私はずっと会場にいるつもりです。
 あいつとは長い付き合いでしたから、
 じっくり見送ってやりたいと思っています。
 あいつは… ほんとにいいやつでした」
261Wing:03/07/15 12:39 ID:6FjD0Ztx
あの人は、高いひな壇の上で黒い額縁におさまっていた。
奥さんと子供が、その前で泣いている。

この場所で、私には感情を出す権利さえもない。
その事実の前に、必死で涙をこらえるしかなかった。

まぎれもなく、私はあの人のものだった。
でも決して、あの人は私のものでは、なかった。
過去も、今も。そして未来も。

部屋に戻ると、急に疲れを感じた。
そういえば昨日からろくに寝ていない。
喪服を脱ぎベッドに入るが、なかなか寝付けない。

…明日の朝、目が覚めても、あの人は戻って来ない。
そして一人っきりの私には、なにも残されてはいない。
生きる気力さえも。すべて。

昔読んだ神話が突然に脳裏によみがえる。
イカロスの翼。
教えを聞かず高く空を上り、太陽に近づきすぎて、
翼をつなげていた「ロウ」が溶けてしまう。

落ちていくとき… イカロスは後悔していたのだろうか?
262Wing:03/07/15 12:40 ID:6FjD0Ztx
翌日から会社に行った。
病み上がりということでみんなが大事にしてくれる。

あの日から半月が過ぎた頃には、
以前と同じように、日常は流れようとしていた。
私の心だけを置き去りにしたまま。

気が付くと、とっくに来てるはずの生理が遅れている。
ショック性のものかとも考えたが、もしやと思って婦人科に来てみた。

「おめでとうございます。妊娠3ヶ月です」
医師はそう言って、検査結果の紙から目を離し、私を見た。
そのなにげないしぐさは、私の心を見据えているように思えた。


そっか……

生きていく糧を失い、出口を失った私に、
これは、あの人がくれた最後の… プレゼント。
この世で、ただひとつ残された、ふたりのもの。

あの日からずっと私をおおっていた暗黒のベールが、
そのとき、ゆっくりと消えうせていくのがわかった。

「ありがとうございます」
笑顔の私を見て、医師は心なしか安心したように見えた。

「じゃ、忘れずに役所で母子手帳もらってください」
263Wing:03/07/15 12:43 ID:6FjD0Ztx
病院のドアをあけ、外に出る。
空は、雲ひとつなく晴れていた。

こんな決断自体がまちがいなのかもしれない。
おそらく、これまで以上につらいことが、たくさん起きるだろう。
一人で子供を産み、そして育てる。女一人では大変なことだらけだ。
でも、それに耐えられる自信が私にはあった。

足を止め、おなかに手をやる。まだなんの兆候もない。

でも、このことを悔やむことはないと思う。
これから先も、ずっと。
なぜなら、少なくとも私の生きる意味を、
この子は教えてくれたのだから。

たぶん『翼』が背中に生えているキューピッド。
この子がいれば、私はこの空に羽ばたける。

そう。三人が一緒ならば、私は、大丈夫。


翼 〜Wing〜      The end
264Wing:03/07/15 12:46 ID:6FjD0Ztx

長い間のご愛読ありがとうございました。
エンディングにはいろいろとご意見ありましょうが、
たかが小説でございます。適当にスルー気分でおながいします。
ではお次のかた、どうぞ。
265名無しさん@ピンキー:03/07/15 13:37 ID:/teO02QN
>264
乙彼様でした。まぎれもなく純愛。いいものを読ませて頂きました。
女性一人称の性交描写がお見事。
テンションを変えずに長編を連載できる技量も裏山です。
またどこかで拝見できますように。
266名無しさん@ピンキー:03/07/15 13:49 ID:rFL9mgJf
すごーい・・・
お疲れさまです。イイモノみさせていただきました。
267名無しさん@ピンキー:03/07/15 14:20 ID:aHDaQ2jD
どっひゃー、圧倒……。
エチぃくて切なくてエンディングも良し。どえりゃあ良作ですわ。
このスレの看板と言っても過言ではない純愛SS。
エクセレントですトレビアンですスパシーボです!

この後に続けるとなると、もうギャグに走るしかないな……。誰かがんばれ。(無責任)
268名無しさん@ピンキー:03/07/15 16:21 ID:+pTupjXq
泣かせる話でした。(つд`)

269名無しさん@ピンキー:03/07/15 16:25 ID:ZiHzsCgC
おー、そうきましたか。ああ涙腺が……。
連載乙っす!
270名無しさん@ピンキー:03/07/22 09:34 ID:bjroy0JJ
広告板かよ!
271名無しさん@ピンキー:03/08/02 02:26 ID:/eBWwuUM
いいなぁ…
泣かせていただきました。
272ぼるじょあ ◆yBEncckFOU :03/08/02 04:49 ID:JhYl1NY6
     ∧_∧  ∧_∧
ピュ.ー (  ・3・) (  ^^ ) <これからも僕たちを応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄ ̄∪ ̄ ̄〕
  = ◎――――――◎                      山崎渉&ぼるじょあ
273名無しさん@ピンキー:03/08/02 17:06 ID:+uSPALPz
しばらくほっとくしか無かろう、夏祭りまでもう日がないのだ。

デスマーチ〜極道入稿〜コピーすりまくり〜。・゚・(ノД‘)・゚・。
274名無しさん@ピンキー:03/08/08 00:39 ID:5hOm1h+R
最も効率の悪い連続貼りをここまで必死にやるのか。
手作業なら間違いなく最強クラスのアフォだな。
275名無しさん@ピンキー:03/08/08 01:21 ID:kvHRdgdU
>>302
漏れもそう思ったが、後でレス番纏めて削除依頼できるしいいんじゃない。

276 :03/08/08 01:55 ID:Q9IfuBOZ
277名無しさん@ピンキー:03/08/09 11:04 ID:5UCxGIiu
葉鍵板の「葉鍵的SSコンペスレ」を見て思いついて、この板でも
「コンペ」を企画してます。
第1回目のお題は「初体験」。締め切りは8/20のAM8:00までです。
詳しいルールは、下記のスレにありますので、ご一読の上、
是非とも投稿してください。お願いします。
URLはこちら
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1060124470
278SS保管庫の素人”管理”人:03/08/17 01:21 ID:wOgVNlY5
http://adult.csx.jp/~database/index.html
当方の保管庫にこのスレのSSを収蔵しました。
自分の作品を転載して欲しくない方は仰って下さい。削除します。
正式に作品名、作者名を付けたいという場合も仰って下さい。
誤字脱字、リンクミスなど発見されましたらご指摘下さい。


210.147.222.115 , FLA1Aar115.kyt.mesh.ad.jp
279名無しさん@ピンキー:03/08/23 01:26 ID:QzcaNOP6
圧縮はそろそろかな
280名無しさん@ピンキー:03/08/30 10:10 ID:cQUWDvOS
お疲れさまです。
281名無しさん@ピンキー:03/08/30 10:10 ID:s6bB3mNV
あ、誤爆すみません
282名無しさん@ピンキー:03/09/10 23:10 ID:nEXf7uJi
保守sage
283274 ◆CId.PpRwgI :03/09/14 19:16 ID:jAa8p4M1
>>276
ワロタ

ところではなし変わるけど、携帯ゲーム機"プレイステーションポータブル(PSP)

 久夛良木氏は,“PSPはゲーム業界が待ち望んだ究極の携帯機”として説明。「ここまでやるかと言われるスペックを投入した」という。
 発表によれば「PSP」は,曲面描画エンジン機能を有し,3Dグラフィックでゲームが楽しめる。
7.1chによるサラウンド,E3での発表以来,クリエイターたちにリクエストが高かった無線LANも搭載(802.11)。
MPEG-4(ACV)による美しい動画も楽しめるという。これによりゲーム以外の映画などでのニーズも期待する。
 外部端子で将来,GPSやデジタルチューナーにも接続したいとする。
また,久夛良木氏は,繰り返し「コピープロテクトがしっかりしていること」と力説。会場に集まった開発者たちにアピールしていた。
 さらに,ボタン設定なども明らかにされ,PS同様「○△□×」ボタン,R1・L1,アナログスティックが採用される。

この際、スク・エニもGBAからPSPに乗り換えたらどうでしょう。スク・エニの場合、PSPの方が実力を出しやすいような気がするんですが。
任天堂が携帯ゲーム機で圧倒的なシェアをもってるなら、スク・エニがそれを崩してみるのもおもしろいですし。かつて、PS人気の引き金となったFF7のように。

突然へんなこと言い出してスマソ‥‥
GBAと比較してみてどうですかね?シェアのことは抜きで。
284名無しさん@ピンキー:03/09/20 09:50 ID:m6l4nSDL
ほしゅ
285名無しさん@ピンキー:03/09/23 01:00 ID:dCOv9mjX
保守上げ
286名無しさん@ピンキー:03/09/28 21:19 ID:XfBqTHM/
ほしゅ
287名無しさん@ピンキー:03/10/04 17:57 ID:gkJalBv5
ここいいなあ
288名無しさん@ピンキー:03/10/08 02:12 ID:iPYt5RzW
ageage
289駄文書き:03/10/16 00:48 ID:pNBxuict
この作品は本当は『ライトノベルで抜こう!』向けに書いたのだが、
書いているうちにエロ要素が抜け落ちてきて悩んだ末ここに投稿します。
エロはソフトにしたつもりです。
元ネタはSWリプレイ第2部、タイトルは『芸術都市の繁殖者』、では。
290駄文書き:03/10/16 00:52 ID:pNBxuict
あんなモノを見てしまったせいだろうか?
 時々お股がムズムズする。リザードマンの集落ではこんな事は無かったのに。 
どうしても我慢できなくて机や椅子の角にアソコを擦りつけてしまう。
 あれだ、アラシャとフィリアンの『はんしょく』をみてからだ。そうに違いない!
 その行為がエスカレートして今では下着を脱いでアソコを直接いじっている。
 シア、16歳の夏の出来事であった。

 芸術の街ベルダインに落ち着いてもう1ヶ月になる。
 潮風と巨大帆船はもう見慣れた風景だ。
 服装も少し変った。髭の衛視に“下着同然でうろつくのは公衆道徳に反する”と言われ、アラシャがお古のチョッキとスカートをくれたのだ。最初は抵抗があったがすぐ慣れた。
 仲間たちは金銭に余裕があったので旅の目標に力を注ぎ始めた。シアは現在アラシャの実家に下宿している。
 といってもアラシャはほとんど神殿に行ったきりで彼女の弟も昼間は仕事でいない。自然と一人の時間があったのだ。
 朝、弟を見送ると部屋を掃除して風呂場へと向かう。別に綺麗好きな訳では無く、快楽を楽しむためである。一糸まとわぬ少女がそこにいた。
「ン・・・・」
 指がまだ発達していない肉芽に触れた。肩が震える。いつもながら肉芽への刺激が一番敏感に感じる。続いて空いている方の手が乳房を下からたくし上げる。
 この1年でシアの乳房は随分発育が著しい。細い身体も丸みを帯びてきた。
「ハ・・・・フゥ」
 艶やかな声が上がった。既に乳首は勃起し、肌は薄く朱に染まる。
 切ない、育ったリザードマンの集落で幼馴染のリザードマンが他の雌と交尾しているのを黙って見ていた時もそうだった。自分は繁殖相手を欲してしるのだ。その彼も既に草葉の陰。
 肉芽が摘むとコリコリといい感触がする。この1ヶ月で随分発達してきている。
 陰唇から溢れる淫液が床タイルを染める。粘つき糸を引く所が卑猥に映る。
 そろそろ限界だ。ラストスパートをかけるべく本能のまま一揆に敏感な所を貪った。
「アア・・・・!」
 仰け反るシア。軽い罪悪感が心に染みた。

291駄文書き:03/10/16 00:55 ID:pNBxuict
今日は家にアラシャの弟がいるので旧市街を散歩に出かけた。
 最近、自慰の回数が多くなっている。菊門に指二本入れてしまうほどだ。不自然は行為だと判っているのだが身体が求めてしまう。
(繁殖したい・・・・)
 ここ数日繁殖への欲求は高まりつつある。だからだろうか、こうしてあても無く市街を彷徨っているのだ。日も落ちてきて西日が眩しく視界が悪い。
 不意に腕をつかまれた。抗議しようと抵抗すると腕をひねられた。
「お嬢ちゃん、君みたいな可愛い子がこんなところうろついちゃいけないよ、ヒヒヒ」
 どうやら相手はスケベェ目的のチンピラの様だ。顔に嫌らしさが滲み出ている。
「は、放せ!」
「それは聞けない相談だなあ」
 チンピラも手がシアの胸を乱暴に握る。
「痛っ・・・・!」
 殺られる! そう思った刹那、チンピラの手が止まった。恐る恐るチンピラの顔を見上げると苦悶の表情で凍りついている。そしてその視線は正面の斑のフードを着た人物に向けられていた。
 フードの人物が疾風と化した。右の鉄拳がチンピラの顎に吸い込まれ、地面に這いつくばせた。さらに水月に爪先蹴りを食らわせると倒れたシアに対して手を差し伸べる。
「怪我、無い?」 
シアの位置からは逆光になって顔は分からないがどうやら少年の様だ。
「あ、ありがとう」
 手を握り返しシアは立ち上がるが辺りが騒がしい。チンピラをのした事で野次馬が集まりだした。
「こりゃいけない。走るよ、いい?」
 少年はシアの手を掴むと返事を聞く間も無く走り出した。
「ちょっと、いきなり・・・・」
 シアは西方の密林育ちである。大地を駆けるのはお手の物のはずだが、少年の足についていくのがやっとであった。むしろ少年の荷物にさえなっている。
「・・・・助けてもらったのは――――感謝するけど――――あなたは――――?」
 全力走行で息切れしながらシアは少年に話しかけた。
「僕は――――」
 斑のフードが逆風でめくれ、見知った黒い肌と尖った耳が現れた。
292駄文書き:03/10/16 00:57 ID:pNBxuict
 黒い肌の少年、ジールはシアのかつての仲間である。ダークエルフとの混血児で迫害から悪事に走り、後に心を入れ替え共に仮面の魔術師であるシアの実父を倒したのである。
 騒ぎを避けて二人は新市街の噴水広場へとやってきた。
 噴水が少し欠けている以外はヒューリカーのゲートを通ってきた時と変っていなかった。ここなら夕刻でも吟遊詩人や旅人も多く、フードを被った物がいても目立たない。
「ふう」
 二人は噴水の縁に腰を下ろして一息つく。
「あのね・・・・ジール、ありがと」
「礼には及ばないよ、友達じゃないか」
 ふとジールは気がついた。自分はシアを友達と呼んだ。
(友達、か・・・・)
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 会話が続かない。この二人、それほど親しい間柄ではない。
「あの、ジール」
 きっかけを掴もうとシアが口火を切る。
「どうしてベルダインへ?」
「君に会いたかったから」
 シアの胸がキュンとした。
「・・・・と、言ったら嬉しい?」
 ニヤッ、と笑ってジールがおどけて見せた。だが彼の笑顔はすぐに困惑へと変る。シアが顔を伏せて嗚咽し始めたのだ。
「・・・・ジールのいじわる・・・・シア、会いにきてくれたの嬉しかったのに・・・・」
「お、おいシア」
 シアの肩を抱いて落着かせようとするが、どうも周りの視線が痛い。別れ話をして女の子を泣かした様に見えているらしい。
「場所、変えようか?」
 とりあえず二人は埠頭へと向かった。
293駄文書き:03/10/16 00:59 ID:pNBxuict
「・・・・そう言う事だったのか」
 事情を聞きジールは思春期の少女の思いをくだらない冗談で返したのを後悔した。
 リザードマンの集落でシアの事は聞いていたつもりだったが、女性と接した経験の無い彼には乙女の思春期など知る由のなかった。
「シアは『はんしょく』したいの・・・・ジール、しよ」
「え? でも・・・・」
 ジールは迷った。彼とて童貞ではない。密林では時にスキュラやワータイガーの夜伽を勤めた事もある。もっといかがわしい行為をしこまれた経験だってある。
「だ、駄目だ。もっと自分を大切にするんだ、シア」
 勇気を持って突き放すジール。
「何で? 雌が雄を誘ってるんだよ。意気地なし、それともシアの事嫌いなの!?」
「そんな事は無い! けど、僕は・・・・」
 ダークエルフの血が混じっているんだ、危うく出かかったその言葉を必死で飲み込んだ。それを言ってしまったら自らの存在否定に繋がるし、亡き母親への侮辱にもなるからだ。
 だが目の前の少女がいとおしいと思うのは事実であった。
「どうなの? 答えて、ジール!」
 シアが急かす。ジールの脳内は混線し、どうにも収拾かつかなくなった。
「僕は、僕は・・・・!」
 彼は強引にシアの唇を奪う事で回答した。
 西の果ての村で厄介者扱いされて育った少年にとって、密林で育った少女は眩しかった。
 初恋といってよかったかも知れない。仮面の魔術師の命令でシアの尾行をするのは密かな楽しみだった。
 冒険者を誘き出すのに彼女の全裸の幻を創った時は不覚にも欲情してしまい罪悪感を覚えた事もあった。
 今その少女が自分の腕の中にいて唇を重ねている。
294駄文書き:03/10/16 01:00 ID:pNBxuict
(女の子って・・・・柔らかいんだな)
 肩に右腕をまわし抱き寄せる。キスをしたのはジールの方だがしだいにシアの舌が絡みつき始めた。彼はそっと胸元へと左手を伸ばした。小さくシアの肩が震えたが拒んではいない。
(意外と大きい。着痩せするタイプなんだな) 
 軽く膨らみを握ると肉が少し余った。そっと包む様に繰り返しに愛撫し、人差し指と中指で起ちかけた突起を摘む。
「ウン・・・・!」
 シアの唇が離れて唾液がツーと妖しい糸を引いた。
「もっと・・・・続けて」
 要求通り肩を抱く右手で乳房を愛撫し代わりに左手が腹部を伝い下着の中へと侵入し始めた。
 露出している肌よりも暖かく、しっとりとした茂みをかき分けて右手が進む。茂みが途切れたあたりに何かクレバスの様なモノが触れた。それは僅かに濡れていた。
「そこ・・・・気持ちいいの」
 中三本指がサワサワとじれったく撫でる。やがてジールはコツを掴み人差し指と薬指で陰唇を左右に開き、中指で優しく入り口をなぞった。さらに乳房への愛撫を下から支える型に移行し乳首を弄り、耳朶をしゃぶる。
「アアン・・・・」
 半開きの口が甘い歌声を奏でる。シアは空いた片乳房を弄り口にも指が進入させた。
 それからは二人とも無言だった。シアの軽い呻きと細波以外は服の粘つきと着ずれ音だけが聴覚を支配した。少女特有の香りもあってジールの男根が起立し、シアの腰を突いた。彼女もそれに気がつき振り返る。
「・・・・ジールの“産卵管”、入れて」
295駄文書き:03/10/16 01:01 ID:pNBxuict
(産卵管=生殖器はすなわち哺乳類ならペニスに該当しそれを女性器に挿入する事は生殖行為にあたり・・・・)
 ジールにとってこの『産卵管挿入要請』は最後通告に等しかった。
 今までは成り行きでシアを愛撫していたものの、彼女を抱くつもりは無かった。できればこのまま終わって欲しい、と願っていたがそれは叶わぬ希望となった。ここで彼女との性交を拒否すれば二人の関係は終わりなのだ。
(・・・・仕方なし) 
 取りあえずフードを敷いてシアを寝かせと下着を脱がせにかかった。
 ムワッと甘酸っぱい香りがジールの鼻腔を撫でた。シアの股間は霧吹きをした様に濡れている。ジールもベルトを外して砲身を上げた男根を取り出した。亀頭が綺麗な桃色に輝く。
 シアの両足を開くと肉芽に亀頭を擦りつけてじらす。
「いれるよ、いい?」
 恥ずかしそうに無言で頷くシア。それを確認すると肉の亀裂に男根を突き刺した――――
「ンン!」
 半分程挿入したところでシアガが呻いた。同時に陰唇が締めつける。
「(そりゃ初めてだろうな)痛かったら止めるけど・・・・?」
「いいの・・・・構わないで」
 シアを気遣いながらも抜き差しを続ける。彼女の膣はきつくて温かく、そして快感だった。
 辛そうなシアを案じて抱きかかえる様に覆いかぶさり口を塞ぎ同時に胸を愛撫した。それを受け入れるかの如くジールの後頭部を抱える。
 陰唇は裂け苦痛の証拠として流血が認められる。だが二人共行為の続行を望んだ。
 ズッズッズッズッズズッズッズッズッズ――――
 堅く濁った音だけが二人の耳を覆った。
(これが女の子の身体なのか。すごい締めつけ・・・・爽快だ・・・・!)
(今この瞬間、ジールがシアの中にいる・・・・)
 男と女、苦痛と快楽、繁殖欲と恋心が混じりあい二人の刻を演出した。
 やがてジールの限界が近づいてきた。唇を離し囁く。
「ねえ、そろそろ出すから手を離して」
「駄目!」
 答えるが早いかジールの顔を抱き両足で挟み込んだ、瞬間――――
 ドプゥ!
 シアの膣はタップリと精液を受け止めた。
296駄文書き:03/10/16 01:03 ID:pNBxuict
「何で、中出しさせたの?」
 ジールが射精の脱力感から回復して最初に口にした言葉はそれだった。
「・・・・ジールの子供、欲しかったから・・・・」
「・・・・だからって!」
 ハーフエルフの子供はたとえ人間でもその子孫は極低確率でハーフエルフが生まれてくる。そういう子供は親の片方がエルフの場合より顕著に差別される。ハーフダークエルフなら尚更である。チェンジリングが間引きされる例も珍しくない。
「もしかして自分みたいな黒い肌と尖った耳の子供が生まれるのが怖いの?」
「え?」
「自分が不幸だったからって生まれてくる子供も不幸だってどうして言えるの!?」
 見透かされた――――ジールは彼女の感覚の鋭さに驚嘆した。
「シアは密林で唯一人の“賢い尻尾なし(人間の事)”だったけど不幸だとは思わなかった! だって仲間がいたから・・・・!」
 目頭が熱い。思いを叫んでいたら涙が出てきた。
「だから・・・・支えるたり愛してくれたりする誰かがいれば・・・・不幸になんてならないよ・・・・」
 その言葉はジールの全てのわだかまりは崩壊していった。
「シア、僕は・・・・」
 重なるシルエット、月明かりが二人を祝福した。

「・・・・で、君は何もする必要は無い、と判断した訳だ」
 夜のベルダインを衛視と小さい者が見回っている。小さい者はグラスランナーである。
「だって恋人同士が愛を語らってたんだよ」
「青カンまでいってかい?」
 若い衛視があきれた。
「サーが聞いたら失望するよ。不肖の従者だってね」
「それは無いね。あの人はそんなに器の小さい人じゃないもん」
 衛視はため息をつく。
「・・・・やれやれ。じゃあお喋りはこの位にして任務にもどるか」
 二人は市街の治安を守らんと夜の闇へと消えていった。
297駄文書き:03/10/16 01:08 ID:pNBxuict
あとがき

ジールの登場が唐突だったりシアが人並みの性知識があったり
埠頭で青カンやってりゃすぐ見つかるだろとか突っ込まれる前に
あやまっときます。スマソ。
298名無しさん@ピンキー:03/10/16 01:12 ID:/3vLVdi3
なんと!
混沌の大地以上に忘れ去られてたこの地に神が降臨されるとは!!

堪能しましたよ。

299名無しさん@ピンキー:03/10/16 01:35 ID:/3vLVdi3
ふと思ったが、シアに初体験は痛いという常識はあったのだろうか?
リザードマンに処女膜はあるのだろうか?
確か、処女膜があるのは人間とモグラだけと聞いたことがあるようなw
300名無しさん@ピンキー:03/10/16 13:40 ID:NR595+zv
良かったです。
確かにシアの野生っぽさは薄れてますがこれはこれで。
最後のおまけキャラもニヤリとさせられました。

ただ、この程度なら本スレに投下しても大丈夫だったかと思います。
301名無しさん@ピンキー:03/10/18 02:43 ID:wkLSsp2k
うーん、べりーていすてぃ。
あっちのスレで『はんしょくにっき』を希望した一人ですので、感謝感謝です。
ジール君を諭すシアがカコイイのう。いい話だ。
302名無しさん@ピンキー:03/10/20 11:51 ID:PfCj41Sz
保守。
303名無しさん@ピンキー:03/10/22 15:41 ID:rkGxQUcB
保守です。
304名無しさん@ピンキー:03/10/25 23:21 ID:EpNKRXlw
職人さん、いないのかな
305名無しさん@ピンキー:03/10/28 00:58 ID:YQdtq+/F
ほしゅ
306名無しさん@ピンキー:03/11/02 00:18 ID:lZzhg/Mo
ホッシュ
307名無しさん@ピンキー:03/11/03 00:24 ID:+/CAyA18
保守
308名無しさん@ピンキー:03/11/03 13:03 ID:y02EWqgK
保守アゲ
309名無しさん@ピンキー:03/11/10 03:24 ID:6DZq/7en
保守がてら投下。途中までですが。


 今夜は飲みすぎだな。天井がまわっている。
 ぐるぐるの変てこな渦に巻きこまれて、どこかに落ちていく。小舟に揺られている
ような、気持ちいいのと悪いのとの紙一重の感じ。頬っぺたがひどく熱い。
 渦の中に落ちて、ひきずりこまれていく。
 
 頭の中で“あたし”が、誰かに話しかけている。わたしはそれを上から見ている。
 “あたし”はわたしと一緒なんだけど、ちょっとだけ違う奴のようだ。即席で幽体
離脱して自分を上から眺めてる気分。いろいろな思考が流れこんでくる。やっと受験
が終わったとか、新しい制服が楽しみだなとか。
 しばらく眺めていて“あたし”が誰だかわかった。

 下にいる“あたし”は、高校に入る前のわたしだ。
 さっきからあたしが話をしている、この男のひとは誰?
 あぁ、先生だ。ひさしぶりだね。そうか、これは夢なんだ。だって先生とはずっと
会っていないもの。
 夢の中の“あたし”は、先生と肌を重ねている。あったかくて気持ちが落ちつく。
上から見ているだけでも、“あたし”の気持ちは全部わたしにもわかる。
310名無しさん@ピンキー:03/11/10 03:27 ID:6DZq/7en
「………………」
 え? いま先生、なんて言ったの?
 イヤだあ、恥ずかしいよ。でも駄目なんだね。先生が命令したら、あたしはイヤっ
ていえないんだ。必ずその通りにしなくちゃいけないの。
「いい子だ、真里子。ずっと続けなさい。僕がいいと言うまで、やめてはいけないよ」
 はい、先生。ちゃんと触ってます。やめたり……しません。
「これもだよ、真里子。忘れちゃいけない。わかってるね」
 はい。ちゃんと持って、いじります。だから先生、いやらしい真里子のこと、嫌い
にならないで。
 嫌われたくなくて、あたしは一生懸命だ。あそこに出たり入ったりする先生のもの
を、言われたとおり指を伸ばして掴んでいる。先生のものはあたしのいやらしい場所
から流れでた蜜でぬるぬるになってる。手のひらまで生暖かい液体にまみれて、指先
が滑ってしまう。
 でもこれをすると先生はとても気持ちがいいみたい。すごく喜ぶ。

「じゃあ聞くよ。いやらしい真里子のそこは、どうなっているの?」
 あたしは答えられない。先生の聞き方はいつも優しいけれど、ちゃんと答えないと
叱られる。お仕置きされちゃう。
 恥ずかしくて言えない。先生が大好きだから言えない。大好きなひとにそんなこと。
「もう一度だけ聞くよ。答えなさい、真里子」
 小さな声であたしが何か言っている。恥ずかしさでよけいに感じてしまう。先生の
腰があたしの上で跳ねた。深く進んで、先生のものがあたしの奥まで、根元まで埋まる。
 駄目。あたしどんどんよくなる。
「よく言えたね。でも右手がお休みしているよ」
 はい。ごめんなさい。
「ちゃんと触るんだ。まだやめていいって言っていないよ」
 はい。ちゃんとクリちゃんを、真里子さわってるから……せんせい……。
「気持ちいいんだね。感じているんだね」
 返事をする代わりに、体が小刻みに動いている。気持ちいいさざ波が押し寄せてくる。
311名無しさん@ピンキー:03/11/10 03:29 ID:6DZq/7en
「そう、上手だ。気持ちよくなったら、そんな風に動いていいんだよ。
 真里子のリズムに合わせてあげよう」
 よかった。体が勝手に動いてしまって、叱られちゃうかと思った。あたしの腰がも
ちあがるのに合わせて、同じリズムで先生が突きいれる。くいって腰が動くと、先生
が奥まではいってくる。クリちゃんを、膨らんで充血した突起を触っている指も、
一緒に動く。
 あたしのあんあんいう声も同じリズムになる。好きなひとの前でこんな恥ずかしい
こと、今すぐにでも止めたいのに、気持ちよすぎて手が機械みたいに素早く動く。
「いいんだよ。続けなさい」
 気持ちいい。すごくいい。
 好き、すき。先生だいすき。
 真里子なんでも先生の言うとおりにするから、どこにも行かないで。
 お腹のあたりが、気持ちいいでいっぱいになる。それがだんだん上がってくる。
もうすぐ、もうすぐ……。

「えっちな真里子、いやらしい真里子。大好きだよ」
 体ががくがくする。うれしくって体中が震えてる。
 あたしもだよ、先生。

 だからどこへも行っちゃ駄目。先生……せんせい……。


「うわッ!」
 意味不明の声をあげて飛び起きた。傍らで目覚ましもけたたましく鳴っている。
「久しぶりにあの夢か……」
 パジャマは汗でべっとり、喉はカラカラ。
 喉が渇いているのは単なる二日酔いのせいだけど。
 ドガッ! 隣の部屋との境、間仕切りが蹴られた。
「お姉ちゃん、うるさいよ! 目覚まし、さっさと止めてよ。こっちまで起きちゃうよ」
 なにをいう。あんたこそさっさと起きろ、このぐうたら女子大生め。
 腹立ちまぎれにお返しとばかり、ドカドカと壁を二発 蹴り返して、シャワーを浴び
に階下におりる。
312名無しさん@ピンキー:03/11/10 03:32 ID:6DZq/7en
「何なのよ、あんたたち。朝っぱらから騒々しい。
 これ、真里子! 朝の挨拶ぐらいちゃんとなさい!」
「おあよ……」
 歯ブラシくわえたまま、メクジラ立てて怒っている母にとりあえずの挨拶。
「まったくもう。いい年した娘が朝帰りなんて……」
 小言が続いているのに背を向けて、風呂場でシャワーを浴びる。さっきまでの夢が
嘘のような、いつもの朝の光景だ。できれば朝帰りじゃなくて午前様と言ってほしい。
昨夜帰ってきたのは1時半だったんだから。まだ夜中のうちだ。
 降り注ぐ湯しぶきに、だんだん頭がクリアになってくる。昨日は学年会議の後に飲み
会になって、同僚のグチをさんざん聞いて、それから……。
 家に帰りついて寝るまでの記憶が若干あいまいだが、駅で同僚に手を振って別れた
ところまでは憶えているから、まぁいいだろう、うん。
 手早くシャンプーしながら、さっき見た夢を考えてみる。


 原因は多分これかもしれない。
 鏡にうつった自分の姿、左胸の脇についた薄赤いくちづけのあと。
 数日前に隣の市にでかけ、そこで出会った名前も知らない年下の子とセックスした。
わたしは男性と寝て感じるのかどうか試したかったのだ。
 その時についた痕跡。
 あの子の言葉が今も耳に残っている。

「お姉さんってさ、もしかして不感症なんじゃない?」

 感じてる演技は上手にできたつもり。年は下でも相手のほうが一枚上手だった。
行為がすんだあと、ズバリ聞いてきた洞察力に、ちょっと舌を巻いた。
313名無しさん@ピンキー:03/11/10 03:33 ID:6DZq/7en
「どうしてそう思うの?」
「なんかさ、違うんだよ。無理してるっていうか。
 俺、それなり遊んでるから、けっこう自信あったんだけどな」
「んーっと、それは君のせいじゃないよ。あたしのほうの問題。ごめんね」
 遊びなれているようで、瞳の奥はどこか澄んでいる。その瞳にむかって素直に詫び
た。この子の誘いに乗ったのも、誘われるように仕向けたのも、わたしなのだから。
「俺、難しいことはわかんないけど、お姉さんの場合さ、カラダじゃなくて気持ちの
 問題って気がするよ。好きなヒトとか、いるでしょ」
「ん、そうかもね。でも今は会えない……」
 率直な口調に好感がもてた。名前も互いに知らないけれど、この子を一夜の友に選
んで正解だと思った。
 ぽろりと本音を漏らした照れ隠しに、キスをひとつした。お礼のキスを。
「あ、こらっ。何してるの」
 いきなり抱きつかれて、胸元を強く吸われた。胸の横に赤い花びらが散った。
「なんかちょっと妬けた。大変そうだけど、がんばんなよ。お姉さんも、さ」
「ありがと」
 ホテルの前で笑顔で別れた。二度と会うこともないだろう。


 そんな事を考えながら、ドライヤーをかけ口紅をひく。母じゃないけど、つい溜息
が出そうになる。これでいいのか、27歳のわたし。

 お友達の誰々さんちは、もうお孫さんができたらしいのよねぇ、等というエンドレス
テープのような母の話をBGMにして、手早く朝食を胃におさめる。どうやら母にとっ
ては、『いい年をした娘が嫁にもいかず、恋人もいないようだ』という現状が納得いか
ないらしい。十人十色という諺を知らないのか。
「たまには早く帰ってきなさいよ」
 釘を刺すのも忘れない。
314名無しさん@ピンキー:03/11/10 03:36 ID:6DZq/7en
 丘の上の、わたしが卒業した女子校が、今のわたしの職場だ。世の中からちょっと
かけ離れた規律や決まりで動いている学校。もちろん生徒たちはそれに合わせて生活
するフリをしているだけなんだけど。

「真里子せんせー、ごきげんよう!」
「ごきげんよう、相原さん。真里子先生って呼んじゃダメっていったでしょう。
 シスターに聞かれたらまた叱られるわよ」
「だいじょーぶですよ。ちゃんと表と裏の使い分け、できてますもーん」
 相原は小生意気だが憎めない生徒だ。すらりと伸びた手足に、わたしがかつて着ていた
のと同じ制服をまとっている。ベージュのシャツに紺のタイ。紺のジャンバースカート。
金ボタンのついた同色のジャケット。
 いつもの朝の光景だが、今日はひどくそれが眩しく見えた。朝の夢のせいだろうか。
 わたしはいつまで過去をひきずっているのだろう。


「ねぇ、真里子せんせ? いっつもそのロザリオつけてますよね」
「え? あ、そうね」
「それ素敵だけど、今日のスーツには合わないと思うな。真里子せんせ、らしくなーい」
「ふふ……これはお守りだからね、はずせないのよ」
 いまどきの生徒たちの服装チェックは手厳しい。今日はブラウン系のスーツなので、
シルバーの鎖についたロザリオは似合わないと言いたいのだろう。
 たしかに今日の装いならゴールドにするべきだ。でも……。

「あれ? 先生って洗礼うけてましたっけ?」
「うぅん。違うけど」
「へぇ〜っ。意外にマジメなんだー」
 宗教上の理由など、わたしには何もない。
 なんでこのロザリオは、はずせないんだろう。
「そういう訳じゃないけどね」
 微笑みながら相原と一緒に、昇降口まで歩く。
 ふいに降って湧いた疑問。指が首もとのロザリオに触れる。
 どうして、これが……。
315名無しさん@ピンキー:03/11/10 03:44 ID:6DZq/7en

 ―――これは……だよ。このロザリオはいかなる時でも、はずしてはいけない。

 頭の中に声が響いた。
 どくん。
 何か思い出せそう。何か……。

 ―――約束のしるしだから、はずしてはいけない。

 わたしは誰と約束したのかしら。

 ―――真里子。これは命令だよ。

 先生……。これは先生の声だ。
 どうして今まで忘れていたんだろう。こんな大事なことを。


「茅野先生っ。どうしたんですか」
 近くで相原の声がする。気づくとわたしは、校舎のそばでしゃがみこんでいた。
「あ……ちょっと立ちくらみがして」
「保健室に行きます?」
「ううん、もう大丈夫よ」
 相原の手を借りて、ゆっくりと立ち上がる。少し眩暈はするが気分は悪くない。
「それにしても、ちゃーんと茅野先生に戻るのね。あきれた……というより感心したわ」
「だってぇ。向こうに地獄耳のシスター日比野がいるじゃないですか」
 ひそひそ声が返ってきた。
「こらっ!」
「うふふっ。じゃあ茅野先生、のちほど。ごきげんよう!」
 スカートの裾をひるがえして、相原は昇降口にむかって駆けていく。
 同じ制服を着ていた頃のわたしは、どうだったろう。相原ほど屈託なく学校生活を
楽しめていただろうか。
316名無しさん@ピンキー:03/11/10 03:48 ID:6DZq/7en
 正直にいってうろ覚えだ。記憶がないのではない。ルーティンの日々をこなすだけ
で、印象が薄いのだ。先生との、この体に刻まれた強烈な日々に比べたら。
 またくらりと立ちくらみを起こしそうになった。こめかみを押さえて自分に言い聞
かせる。あの日々は過去のものだ。先生はわたしのそばにいない。記憶がどんなに鮮
明でも、戻ることはできない。

 それでも、消息を絶ってしまった先生に会えたら、わたしの何かが変わる気がした。





  ……と、中途半端&エロ薄味スマソ。
317名無しさん@ピンキー:03/11/11 16:32 ID:/5WrCqom
ミッション系女子校にて、先生と生徒…?なかなか興味深いイントロ。
続き待ってます。
318名無しさん@ピンキー:03/11/12 00:33 ID:f+0WN45W
おう、久々の神降臨。期待sage。
319名無しさん@ピンキー:03/11/13 01:38 ID:HfRu/f3M
うわーーー今新作が投下されているのに気が付いた!
むちゃくちゃ好きなお話の予感がします……。
続きお待ちしております!
320名無しさん@ピンキー:03/11/13 06:16 ID:2IqYMBBk
面白いね〜!
続き楽しみにしてまっせ!!
321名無しさん@ピンキー:03/11/15 20:56 ID:42TidfHg
保守しとくか。
322名無しさん@ピンキー:03/11/23 21:43 ID:pR/mF/jR
捕手
323名無しさん@ピンキー:03/11/27 22:05 ID:ecjgLcqL
ほーしゅーだーよー
324名無しさん@ピンキー:03/11/30 23:55 ID:8nBM18QN
ほ(ry
325名無しさん@ピンキー:03/12/01 22:15 ID:HFysHoaO
保守、ついでに質問

これから流行るジャンルってなんスか?
326名無しさん@ピンキー:03/12/08 21:25 ID:G0dSGcLe
age
327名無しさん@ピンキー:03/12/13 15:28 ID:EdZmTyu4
>>325
百合、といってみる。
328名無しさん@ピンキー:04/01/12 12:41 ID:PsFjYhRd





      ∧_∧    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ( ・∀・ )  <  気に入らない奴は死ねばよい!死ぬべし!
     /⌒~~`´~ヽ    \__________________
    / /    ノ.\___
    ( /ヽ   |\___E)
    \ /   |    ||
      (   _ノ |   Λ||Λ
      |   / /  (/ ⌒ヽ
      |  / /   | |   | ← 買春おやじ
      (  ) )    ∪ / ノ
      | | /     | ||
      | | |.     ∪∪
     / |\ \
     ∠/   ̄





329名無しさん@ピンキー:04/01/12 12:43 ID:G1o41Qcb

HEY!YOU!!
330名無しさん@ピンキー:04/01/12 17:49 ID:e+GXZHMT
俺も書いていい?
331名無しさん@ピンキー:04/01/13 00:24 ID:AzFGQ1bA
>330
書き手さんですか?大歓迎です。
332名無しさん@ピンキー:04/01/13 03:54 ID:UGTNofAe
俺も書いてみるか…
333名無しさん@ピンキー:04/01/13 16:48 ID:u/GYSJeK
レズっぽくても純愛ならOK?
334名無しさん@ピンキー:04/01/13 17:24 ID:AvPDstXb
>>333
しょっぱなの投下がナコ×リムの百合でしたがなにか?w
335名無しさん@ピンキー:04/01/13 18:54 ID:u/GYSJeK
んじゃあヴァンパイアよりバレ×フェリでvv
336名無しさん@ピンキー:04/01/13 19:24 ID:u/GYSJeK
設定はまずベッドの中でバレッタとフェリシアが一緒に寝てる所から始まります。
襲うのはフェリシア、受けはバレッタです。
337フェリシア:04/01/13 19:27 ID:u/GYSJeK
ね、バレッタちゃん、ココ(もちろんマ○コ)自分で触った事とかあるぅ?
(バレッタの秘部を弄くりまわす)
338バレッタ:04/01/13 19:28 ID:u/GYSJeK
(顔真っ赤で)な、ないよー。触らなくていいし、言わなくていいってばぁ・・・あ、やぁ・・・
339名無しさん@ピンキー:04/01/13 19:29 ID:PhUyZbGW
ト書きはやめれ。
340フェリシア:04/01/13 19:46 ID:u/GYSJeK
ふーん無いんだー。じゃ、あたしが初めてかにゃ?(乳首とクリトリスをコネコネと弄ぶ)
341バレッタ:04/01/13 19:48 ID:u/GYSJeK
ひっ・・・あ、だめっ そこ・・だけはだめぇ・・・(半泣き)
342フェリシア:04/01/13 19:50 ID:u/GYSJeK
ん、大丈夫♪ん・・・ちゅっ♪優しくしてあげるから・・・ね?
(微笑ましい顔でバレッタを見る)
343バレッタ:04/01/13 19:51 ID:u/GYSJeK
で、でも・・女の子なんだよ・・・あたしも、ふぇ、フェリシアも・・・
344フェリシア:04/01/13 19:53 ID:u/GYSJeK
うん。でも好きっていう気持ちは嘘じゃにゃいよ。
・・・ダメ?
345バレッタ:04/01/13 19:55 ID:u/GYSJeK
・・・んん。そ、その目は・・・反則・・・
(フェリシアの胸に顔を埋める)
346フェリシア:04/01/13 19:56 ID:u/GYSJeK
ああん♪あたしの胸に隠れないでぇ・・・(頭を撫でる)
ほら、ちゃんとそのお顔も見せたまんまで、ね?
347ナレーション:04/01/13 19:57 ID:u/GYSJeK
そう言って真っ赤なバレッタの頬にキスをするフェリシア
348バレッタ:04/01/13 19:58 ID:u/GYSJeK
うわ、あ・・・くすぐったいよぉ・・・
349ナレーション:04/01/13 19:59 ID:u/GYSJeK
バレッタの上になりながら秘部を触るフェリシア
350フェリシア:04/01/13 20:00 ID:u/GYSJeK
よいしょ・・・にゃははっ、バレッタちゃんのー・・・あれれ?
351バレッタ:04/01/13 20:09 ID:u/GYSJeK
ハァハァ・・・
352でんでん:04/01/13 20:59 ID:CmtPusyT
昼休み。
いつものようにあたし達仲良し4人組は、ぺちゃくちゃとお喋りをしている。
あたしの名前は渋沢ゆり。みんなには「ゆりっぺ」って呼ばれてる。
あたしの机の前にしゃがみ込んで話しているのはカンナ。
左に立っているのはミカで、右に立っているのはショウコ。
あたし達4人は学校ではちょっと有名。
問題ばかり起こすし、化粧も濃いとよく言われて、
いっつも先生に注意ばかりされてる。
あと一部の男子とかには「ヤリマン4人組」とか影で言われてるらしい。
ま、そんな事あたし達は全然気にしてないけど。
確かにカンナとミカはよく彼氏が代わるし、
ショウコに至っては、複数の人数とHした事もある強者だ。
でも・・・あたしは違う。
なぜなら・・・あたしはまだちゃんと男の人と付き合った事無いから。
もちろんHなんてした事無いし、キスだってまだだ。
けど・・・あたしは仲間はずれになりたくないから、
この3人、そしてみんなには2股かけてると嘘をついてる。
だから、男の話題が出てきた時はウザくて仕方ないんだよね。
もちろん自分が悪いって分かってるんだけどさ・・・。
353でんでん:04/01/13 21:17 ID:CmtPusyT
「ねーねー。ゆりっぺの二股どうなったの?まだバレてない?」
カンナが嬉しそうにあたしに聞く。答えるの面倒くさいなぁ。
「あ、うん。全然平気だよ。どっちも単純だし、余裕で騙せてる」
「ショウゴ君に、ユウイチ君だっけ?いや〜可哀想だねぇ」
ミカはそう言いながら笑った。
もちろんショウゴとユウイチなんて架空の人物だ。
「ね−ね−。何話してるの?」
一人の男があたし達の輪に入って来ようとした。
彼の名前は佐藤賢一。クラスではお笑い担当みたいな奴だ。
黙っていれば、結構カッコイイ奴だとあたしは思うんだけどな。
「うるせーな。ドーテー君にはまだ早い話題なんだよ」
ショウコが笑いながら賢一の太ももを蹴る。
「おいおい、同じ中学のよしみじゃん。仲間に入れてくれよー」
そう、賢一とショウコは同じ中学の出身だ。昔から結構仲が良いらしい。
だからこそ、こんな冗談が飛ばせる。
「駄目だっつーの。あっち行け、あっち」
ショウコはそう言うと、手でシッシッと追い払うマネをする。
それでも賢一は笑いながらあたし達の輪に入ろうとしていた。
「行こ」
あたしはみんなにそう言うと、早歩きで廊下に出て行った。
3人も笑いながらあたしについて来る。
「ゆりっぺって、佐藤の事かなり嫌ってるよねー」
「ゆりっぺってあーゆータイプ嫌いなのよ。調子乗ってるしね」
カンナとミカはあたしの後ろでそんな事を喋ってる。
馬鹿言ってんじゃない。
あたしは・・・賢一の事・・・好きなのに。
あたしはそう思いながら、ふてくされた顔で廊下をずかずかと歩いていた。
354でんでん:04/01/13 21:39 ID:2juLqMPH
その日、あたしはみんなと別れ、一人で帰っていた。
「彼氏の一人と会う」と嘘をついたからだ。
本当はみんなと一緒に帰りたかったけど、嘘をつき通す為には仕方ない。
あたしは電車に乗った。もちろん真っ直ぐ家に帰るためだ。
ドアに寄りかかりながら景色を眺めていると、
あたしの目の前にぬっと大きな影が現れた。
「よ!ゆりっぺ」
それは賢一だった。賢一の身長は180くらいあるので、
156センチのあたしにとっては、賢一の身長とは頭一つ半くらい違う。
「・・・なんだ、佐藤か」
あたしは不機嫌そうに返事をする。
二人きりで会えて、本当は凄く嬉しいのに。
「家に帰る途中?もし暇なら一緒に遊ばない?」
賢一はにこにこしながら、あたしにそう聞く。
マジで?マジで?これってデートってやつ?賢一となら絶対遊びたい!!
でも・・・どうしよう・・・。みんなに嘘ついちゃってるし・・・。
あたしはそんな事を考えながら、しかめっ面で黙り込む。
「ねー、いいじゃん。俺のオススメのゲーセンあるんだよ」
賢一はにこにこしながらあたしを誘ってくる。
こんなチャンス、もう2度と無いかもしれない。
「じゃあ・・・付き合ってあげるよ」
あたしは嫌そうに答える。もちろん全然嫌じゃないんだけど。
はぁ・・・素直に「行く!」と言える女の子になりたいよ。
「ほんとか?やったぁ!」
賢一は子供みたいに喜ぶ。ガキっぽい・・・けど、
あたしも似たようなモンだから、口に出しては言えない。
355でんでん:04/01/13 21:55 ID:VhJ19vE9
いざゲーセンに行くと、あたしと賢一は仲良くゲームに熱中していた。
始めて賢一の前で素直になれた気がする。
「うおっ・・・はえーよ!」
「こんなのできないって〜。あ〜」
二人で太鼓を叩くゲームをやっていたが、最後の最後でついていけず、
画面のは失敗の2文字が浮かびあがった。
「ね、ね、プリクラ撮ろーよ!」
「お、おう」
あたしは賢一のブレザーを引っ張ってプリクラに向かった。
好きな人と遊ぶのがこんなに楽しいなんて・・・。
あたしは「当分家に帰らず、ずっと賢一と遊び続けたい。」
とか思っちゃったりしてた。
「うわーやっぱりあたし変な顔だー」
プリクラの台から、女の子の3人組が出てきた。
それを見た途端、あたしの体中がピシッと凍りついた。
「あれー。お前らもいたのかぁ」
賢一が呼ばなくていいのに、わざわざ3人に呼びかける。
もちろん女の子3人組というのは、カンナ、ミカ、ショウコの3人だ。
「ん、賢一じゃん。・・・って、ゆりっぺ?」
ショウコが驚いた顔であたしを見つめる。
カンナ、ミカも同じような顔をしていた。
「あんた・・・今日彼氏と会うって言ってなかった?なんで佐藤と遊んでるの?」
「えっ・・・そーなの?」
カンナの言葉に、賢一も反応する。
ぜ・・・絶体絶命だ、ヤバイ。こうなったら無理矢理切り抜けるしか・・・
「そ・・・そーだ!あたし、こんな奴と遊んでる暇じゃなかった。
か、彼氏に会いに行かなきゃね!んじゃまた明日!」
あたしはそう言うと、ゲーセンからダッシュで飛び出して行った。
356でんでん:04/01/13 22:06 ID:U5K9atwM
あたしはそのままダッシュで家に帰り、制服のまま布団に飛び込んだ。
気がつくと、ポロポロと涙が出ていた。
なんであんな事言ってまで、嘘をつき通したんだろ・・・。
あたしに彼氏がいるって言っちゃったら、賢一は・・・。
あたしは馬鹿だ、あたしは馬鹿だ。
あんな嘘ついてるからバチがあたったんだ。
せっかく賢一と・・・仲良くなりかけたのに。
そう思うと、余計に涙が溢れてきた。
「う・・・あああぁぁぁん・・・」
あたしは布団にうつ伏せになり、泣き続けた。

何時間経っただろう。
お母さんの晩御飯の呼びかけにも、まったく反応しなかった。

次の日、あたしは学校を休んだ。
357でんでん:04/01/13 22:22 ID:YwnyCL4o
次の日、あたしは朝から夜までベッドで寝ていた。
晩御飯もあまり喉を通らなかった。明日も学校休もうかな・・・。
ピンポーン
家の呼び鈴が鳴った。
「ゆり、お友達よ」
あたしはお母さんの言葉を聞き、バッと起き上がる。
2階への階段を昇る音が聞こえ、
ドアを開けるとショウコが立っていた。

あたしはショウコを部屋へと招いた。
シーンと静かな沈黙が続く。
あたしはショウコに何を言えばいいのか分からなかった。
「ゆりっぺ・・・みんなもうバレてるよ」
やっぱり・・・。
あたしはますます気分が重くなる。
「ずーっと前からね」
ショウコがそう言うと、あたしの目が点になった。
「え・・・?」
あたしがそう言うと、ショウコは「はぁ〜」と言いながら口を開いた。
「もう完全にバレバレだったよ〜。あたし3人を見くびっちゃ困る」
ショウコはそう言うと、「ふふっ」と笑い出した。
あたしは急に恥ずかしくなって、顔が真っ赤になる。
全部・・・バレてたなんて。
「あとゆりっぺ、男の人と付き合った事ないでしょ?
付き合いたいと思ってるのは・・・賢一だよね」
「あ・・・あのぉ・・・その・・・」
あたしは顔中真っ赤になり、耳まで赤くなっていた。
こうも直に言われると、あたしは気が動転して何も言えなくなっていた。
358でんでん:04/01/13 22:41 ID:YwnyCL4o
「・・・で、仲間はずれになりたくないから嘘ついたと。
ゆりっぺってば、可愛い〜!あははははは・・・・」
ショウコがお腹を抱えて笑う。あたしの顔は未だに赤いままだ。
「何もそんなに笑わなくてもいいじゃん・・・」
あたしはちょっといじけた仕草を見せる。
「で、賢一の事はどうするの?もちろん告るよね?」
「そんな・・・告るなんて無理だよ・・・。
ショウコ、賢一君と仲良いんでしょ?手伝ってほし・・・」
「甘えるんじゃないっ!」
あたしが言い終わる前に、ショウコはそうビシッと言い放った。
「好きなら好きって本人が言わなきゃ。
あたしは好きな人ができたらいつもそうしてきたよ。
他人の力借りて付き合えても、あたしはそれは駄目だと思う」
遊んでばかりいるショウコの口から、こんな言葉が飛び出すのは以外だった。
あたしはそれを聞いて、何も言えずに黙ってしまう。
「・・・まあこれはあたしの持論だから、
ゆりっぺに絶対そうしろって言ってるんじゃないよ。
でも、自分から伝えないと・・・ね」
ショウコはそう言うと、家に帰って行った。


布団の中で・・・あたしは明日、学校に行こうと決心した。
そして・・・勇気を出して・・・賢一に・・・。
359でんでん:04/01/13 22:55 ID:YwnyCL4o
次の日。
あたしは放課後、賢一を呼び止めた。
人気の無い階段で、あたしと賢一は二人っきり・・・
という事は無く、向こうでカンナとミカとショウコが覗いている。
「あの・・・」
あたしは賢一の事を色々思い出していた。
不良っぽい子、オタクっぽい子、誰かれかまわずに明るく話しかける賢一。
文化祭では一番張り切って、外が暗くなっても一人で頑張っていたのをあたしは知ってる。
体育祭でクラスが優勝したのも、賢一がリーダーとして引っ張っていったからだ。
何にも着飾る事無く、見栄を張る事も無く、いつも「自分」を持っている賢一。
あたしは・・・そんな風に生きる賢一が羨ましくて・・・好きだ。
「あたし・・・賢一の事が好き」
あたしは顔を赤くしながら言いきった。
向こうで3人が笑顔で小さく拍手しているのが見える。
「・・・ちょっとついて来て!」
賢一はあたしの手を握り、玄関へと駆け出して行った。
な、何?何なの?賢一は一体どこに行こうとしてるの・・・?
賢一は自転車の後ろにあたしを乗せて、自転車を精いっぱいこぎだした。
360でんでん:04/01/14 01:21 ID:tIQ0zatc
「着いたよ」
賢一が連れてきてくれた場所は、高校の近くにある丘だった。
「うわぁ・・・この丘にこんな場所あったんだ」
ここから見る街は、凄く小さく見える。
あたし達がいつも行ってるカラオケ屋さんも、喫茶店も、
親指と人差し指で挟めるくらいだ。
二人でしばらく景色を眺めた後、賢一が口を開いた。
「俺も・・・ゆりっぺ・・・いや、ゆりの事好きだ」
その言葉は、あたしの胸をギュッと熱くさせた。
賢一も・・・賢一もあたしの事が好き・・・。
「この前の事・・・ショウコから聞いたよ」
「えっ・・・ショウコが・・・?」
賢一がコクリと頷く。
「ああ・・・。なんていうか、無理して自分を作るの・・・やめろよ。
俺は・・・ありのままの・・・ゆりが好きだ」
それを聞いて、あたしの目から涙がポロポロこぼれ落ちた。
「あたし・・・あたし・・・嘘ついてる自分が・・・本当は・・・嫌だったの。
素直に・・・なれ・・ぐすっ・・・なれない・・・自分が・・・」
賢一はそっとあたしを抱きしめた。
「う・・・あああぁぁぁん・・・」
あたしは感極まって、賢一の胸で泣き続けた。
嬉しくて、こんなに泣いたのは生まれて始めてだ。
361でんでん:04/01/14 01:34 ID:ZP9v0sy7
「あーあ・・・泣いたから化粧取れちゃってぐちゃぐちゃじゃん。ほら、これ使って」
賢一はハンカチをあたしに渡す。
「ありがとう」
あたしはハンカチで化粧を丁寧に拭いた。
「ごめんね、ハンカチ汚しちゃって・・・洗って返すよ」
「お、おう・・・。それより・・・ゆりって化粧取った方がその、綺麗・・・だな」
賢一があたしの顔から目を反らしながら言った。
賢一がそう言うなら、あたし・・・化粧薄くしてみようかなぁ。
「でも・・・賢一はどうしてあたしをココに連れて来たの?」
あたしがそう言うと、賢一は頭を掻きながら恥ずかしそうに答える。
「いや、なんつーか・・・俺の好きな人に早くこの景色を見せてやりたいっつーか、
その・・・好きな人ってのはもちろんゆりなんだけど・・・」
賢一が顔を赤くして黙り込む。
あたしはそれを聞いて、ますます賢一がいとおしくなる。
「そっかぁ・・・あたし、凄く嬉しいよ」
「ほんとか?」
「うん・・・。でも、ちょっとくさいね(笑)」
「ほっとけ」
あたしと賢一は笑い合った。
泣いて・・・泣いて・・・本当の自分を好きな人にさらけ出して、
あたしは凄くすっきりした。
バイバイ、ショウゴとユウイチ。
362でんでん:04/01/14 01:45 ID:AQTNQ5Xq
「この丘・・・風が凄く気持ちいいね」
ふわっとあたしの髪が風に乗る。
賢一はあたしをじっと見つめた。
あたしもじっと見つめ返した。
合図・・・かな。
あたしはゆっくりと目を瞑った。
賢一の唇があたしの唇と重なる。
ふわっとした感触が、あたしの唇全体に伝わってくる。
ただ唇を合わせてるだけなのに、胸がバクバクいってる。
ファーストキスが好きな人とできるなんて、あたしって幸せなのかなぁ?
そして、また・・・風が吹いてきた。
363でんでん:04/01/14 02:10 ID:J+78xGII
あたしが賢一と付き合いだして、一週間が過ぎた。
あたしは自分を無理して着飾るのをやめ、化粧が薄くなった。
賢一に気に入られたいってのもあるけどね。
そのおかげで先生の説教が減ったってのは嬉しいトコロだ。
もちろんあたしが少し変わっても、
カンナ、ミカ、ショウコとは相変わらず仲良し4人組だ。
一緒にカラオケ行ったりして遊ぶのも相変わらず。
ただ、あたしの変化にびっくりした子は結構いるみたいだけどね。

「ゆり、行こうぜ」
賢一があたしを呼ぶ。
「うん!」
あたしは大声で答え、賢一の自転車の後ろに乗る。
今日も紅葉が生い茂った山道を越え、あの丘に行く。
あたしと賢一の大事な場所へ。
364でんでん:04/01/14 02:16 ID:J+78xGII
今日はここまです。
エロが無いのは許して下さい。
続きでエロを書きますので・・・では。
365名無しさん@ピンキー:04/01/14 20:53 ID:tfII1BQs
素直に(゚д゚)ウマー
366名無しさん@ピンキー:04/01/15 00:23 ID:L7ipEMiq
読みやすいしツボついてますなあ。
素直な文章書ける人はウラヤマーでつ。
367名無しさん@ピンキー:04/01/15 23:41 ID:nTCGYxTj
早く続きが読みたいでつ(゚∀゚)
368名無しさん@ピンキー:04/01/21 12:24 ID:oJU13Gxe
保守
369名無しさん@ピンキー:04/01/24 18:51 ID:/d27d65h
人いる?
370名無しさん@ピンキー:04/01/24 22:18 ID:gMeoQDqG
ほい
371名無しさん@ピンキー:04/01/25 11:16 ID:C704G91m
ゆりっぺカワエエ。こういう作品は気持ち良く読めるね。
372名無しさん@ピンキー:04/01/31 23:46 ID:kMzRtig6
職人さん、待ってるよ〜!
373名無しさん@ピンキー:04/02/03 08:43 ID:EDYiqair
保守
374gimme:04/02/06 04:35 ID:FuGhEt1s
雪は教室から外のグラウンドを見ながらため息をついた。正確には
グラウンドにいる一人の少年を見ながらため息をついた。

どうしてあんなヤツ好きになったんだろう

雪が見つめる少年は大人数でサッカーをしている。遠くからでも彼が運動オンチ
なのがわかる。

あ、またミスしてる。何やってんのよ、まったく。

「ゆきー、どこみてんの?あ、一年のコがサッカーしてる。
もしかして好きなコがいるの?」
「え?ちがうちがう。そんなのじゃないって」
「えー、そんなにあわてて何かあやしい。どのコかな?」
「だからちがうって」

雪は必死に否定した。が、否定すればするほど顔が赤くなっていく自分に
気づきトイレに避難した。

あーもう、何で私が赤くなっているのよ。私はもっとワイルドで
がっちりしている年上の男がタイプだったのに!

375gimme:04/02/06 04:37 ID:FuGhEt1s
昼休みの終わりを告げるチャイムがなり、みんなと教室に戻る途中で正人は
見覚えのある女の子がトイレから出てくるのを見つけた。女の子の
方も正人がいることに気づいた。女の子が正人の近くまで来た。
「あ、あの、先輩、昨日はすいませんでした」正人の声は緊張で少し
どもっている。
「あんたサッカー下手なのね。やめといたほうがいいわよ」相手の言葉を
無視するように雪は言った。
「え?あ、先輩、見ててくれてたんですか?」
「ば、バカ、ちがうわよ!外見てたらたまたまあんたがいただけよ」
「そ、そうですか」正人は肩をすくめた。
がっかりした様子の正人を見て雪はうろたえた。
「ちょっと、なに落ち込んでんのよ。そ、その、あんたがサッカーしてる
のが目にとまってからはあんたの事を見てあげていたわよ。あっ!
っていうか何言ってんの私は!?」
おろおろしている雪を見て正人は小さく微笑んだ。
「授業あるんでそろそろ行かなきゃ。先輩、昨日は本当にすいませんでした」
そう言って正人は自分の教室に戻っていった。

376gimme:04/02/06 04:38 ID:FuGhEt1s
教室に入った正人は一緒にサッカーをしていた数人の友人に囲まれた。
「おい、正人。おまえ雪先輩と知り合いなの?」
「え?あ、うん。一応・・・」
「マジ?なんで?俺にも紹介してよ。うわー、うらやましい。でもおまえ、
全然雪先輩とタイプちがうのによく知り合いになれたなあ」
雪はこの学校で一、二を争う有名人だった。彼女は金髪に近い茶髪で中が見えそう
なほど短いスカートを履いていた。スタイルもよくアイドルのようなかわいらしい顔
をしていた。何人もの男子生徒が告白しては撃沈されていたが現在では彼女の「キツイ」
性格のせいかチャレンジャーはめっきり減っていた。
教師たちは雪のことを当然よく思わなかったが彼女の親が学校に多額の寄付金
をしていること、そしてなにより雪の学力が学年トップクラスであるため何も文句が
言えなかった。
対する正人はというと、勉強の成績がいいだけの普通の生徒だった。
というより、普通よりも下に位置している生徒だった。体格は華奢で身長も
平均よりも低く、顔は童顔でよくからかわれた。人見知りが激しいので友人も
少なかった。おおよそ雪とは不釣合いだった。

377gimme:04/02/06 04:39 ID:FuGhEt1s
一日の授業を終え、帰りの身支度をしているあいだ雪は昨日のことを考えていた。

*    *    *

「じゃあねー、バイバイ」
カラオケに行ったあと友達と別れて雪は一人で帰りの電車に乗っていた。
(あーあ、はやく着かないかなあ。あ、ウチの学校の生徒が乗ってきた。見た
ことないなあ、一年生かな。背は私と一緒くらいで顔は・・・まあまあカワイイ
じゃない。でも私のタイプじゃないわね。げっ、隣に座ってきた)
見た目とは裏腹に雪は男に免疫がなかった。理想が高すぎて今まで告白してきた
男はすべて振っていた。しかし、周りの友達に最近次々と彼氏が出来はじめた
こと、要するに経験を済ませていることに雪は内心あせっていた。

目が合うことを恐れて横を見ることが出来ずにしばらく電車に揺られていると
スースーと音がしていることに雪は気づいた。
(何かな?あっ、このコ寝てるの?スースー寝息を立てちゃって・・・やばい、
寝顔がカワイイ・・・って何言ってるの。うわっ、顔が私の肩にもたれかかって
くる!)
雪は心臓がドキドキしてくるのが自分でもわかった。男の顔がここまで間近に
迫ってきたのは初めてだった。
(何こんなことでドキドキしてんのよ私は、早く起きなさいよね、まったくもぉ)
しかし雪の願いもむなしく正人は気持ちよさそうに寝ていた。

378gimme:04/02/06 04:40 ID:FuGhEt1s
突然電車が大きく揺れたのを拍子に正人の頭が雪の肩からずれ落ち、ちょうど膝枕
する格好になった。
(うわぁーーー!すごい体勢になっちゃったよ!?)
雪は恥ずかしさのあまりあたりを見回した。幸い、車両の中に人はほとんど
いなくてこちらを気にしている人はいない。
(あーよかった。こんなとこ誰かに見られたら笑われるわ。ったく、このコは悠長
にいつまで寝てんのよ、こっちはこんなに焦っているのに)
心の中で文句を言いながらも雪は不快な感情がまったくないことに気づいた。
逆に、膝の上で寝ている少年に愛おしささえ感じていることに雪は驚いた。
(あぁ、顔が太ももにじかに当たってくすぐったいよぅ。こんなことならミニ
スカートはいてこなきゃよかったぁ。・・・えーと、まだ寝てるよね?頭撫でてみよ
うかな。なでなで・・・あ、今心臓がキュンってなった。な、なにこのカンジ?)
雪は自分の身体が熱くなっているのを感じた。それはいままでに感じたことの
ない身体の変化で気持ちが昂ぶり、心臓が締め付けられているようだった。
(へ?なに?このヘンな感情はもしかして、こ、恋に落ちちゃったってこと?
私がこのコに?嘘でしょ?だって私は坂口憲二みたいな人がタイプなのに。
うわ、なんか身体がすごく熱い。はぁぁ、あ、あそこが熱くてムズムズしてる!?
や、やばい、濡れてるかも。触ってもいないのになんで?)
電車が揺れるたびに膝の上で正人の頭が動き、それが性欲やら母性本能を
刺激してウブな雪はますます混乱していった。
(あぁ、私ヘンになってきちゃった。このコの頭が動いたり、私がこのコを
触ったりするたんびにコーフンしてる。私ってもしかしてヘンタイだったの?)
戸惑いながらも雪は正人に触れることを止めることができなかった。
(もう下着が濡れちゃってるわ、どうしよう。・・・まったく、なんてカワイイ
のかしら。見れば見るほど触りたくなってヘンになっちゃう。あっ!
降りる駅もう過ぎちゃってるじゃないの!)

379gimme:04/02/06 04:41 ID:FuGhEt1s
何かにやさしく包み込まれるような気持ちよさの中で正人は目を覚ました。
(んん、ふわぁぁ。あれ?寝ちゃってたのか。なんだろう、このふわふわした
感触は。げっ、女の人の足だ!な、なんで?えーっと、たしか、電車に
乗って席に座って横を見たら憧れの雪先輩がいてびっくりして・・・もしかして
これは雪先輩の足!?や、やばい、殺されるかも、雪先輩きれいだけど怖いっていう
噂だしなぁ。あれ、なんだ、僕の頭を撫でたり顔を触ったりしているのか?
雪先輩なにをしてるんだろう?で、でも、なんていうかすごく気持ちがいいなぁ。
あっ、そんなこと言ってる場合じゃない。どうしよう)


1 顔を上げて雪に謝る

2 雪の太ももに頬擦りしてみる

380名無しさん@ピンキー:04/02/06 05:14 ID:yOlLytRV
あえて1を選択し、謝られたのに逆にしどろもどろになる雪さんを期待。
381名無しさん@ピンキー:04/02/07 00:23 ID:fvnWgVvr
ho
382名無しさん@ピンキー:04/02/07 00:27 ID:30DFBtF/
1で。
383名無しさん@ピンキー:04/02/07 00:38 ID:B/mGEHsN
うお、見た目派手でも純情というのはスゲー萌える!
やはりここは王道的に1ではないでしょーか!?
続きをお待ちしています。
384名無しさん@ピンキー:04/02/12 23:33 ID:/YOWUes3
gimme 様、続きをお願いします。
385名無しさん@ピンキー:04/02/14 13:12 ID:Tl2aH7O4
2か? 2を選択しないといけないのか?!








gimme 様、続き早く書いてください。。。
386名無しさん@ピンキー:04/02/23 22:57 ID:IN/YLDBH
みんな専ブラじゃないのか?
ほしゅー
387名無しさん@ピンキー:04/02/28 13:50 ID:XoWugrzd
ほす
388名無しさん@ピンキー:04/03/07 22:28 ID:dVwHoaGL
一気に廃墟スレと化したね……
389名無しさん@ピンキー:04/03/09 00:54 ID:28TDCZ2W
人はおらんのか…
390名無しさん@ピンキー:04/03/12 22:13 ID:0AmqwNlX
保守
391名無しさん@ピンキー:04/03/13 01:33 ID:7hzUgb7K
でんでん氏もgimme氏も、専ブラ使えない人なのかな。
このスレ、常駐してる書き手の人はいない様子だし、雑談ネタも難しいから、投下がないと書く事ないんだよなぁ。
392名無しさん@ピンキー:04/03/13 01:59 ID:vh9LyT6z
純愛だけだとイメージしづらいんだよなぁ。
もっと縛りがあったほうが、書きやすいのよね。
393名無しさん@ピンキー:04/03/15 12:47 ID:9Mpr8ivX
ここで問う。
長くなりそうだけど、過疎ってるし、一気に落としていい?
ちなみに30行で分けて、20レスくらいになるやもしれん。
394名無しさん@ピンキー:04/03/15 13:17 ID:MBT7tLhf
かもーん。
395名無しさん@ピンキー:04/03/15 15:34 ID:OTEEV+O1
全然長くないじゃん。
どんどん行ってくれ!
396名無しさん@ピンキー:04/03/15 23:16 ID:iwDJ9giz
30行*20レスはげんなり。
一気に読むと疲れるから、4レス*5日くらいでいいよ。
余った時間の分推敲して、面白い作品にしてくれ。
397名無しさん@ピンキー:04/03/15 23:20 ID:isxjryJ2
長かったら自分で分けて読め。

396は無視していいから早く載せてくれ。
398名無しさん@ピンキー:04/03/19 19:56 ID:YZINAGH5
  ☆ チン

        ☆ チン  〃  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          ヽ ___\(\・∀・)<  >>393まだー?
             \_/⊂ ⊂_)_ \_______
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
        |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| :|
        |            .|/
399miki:04/03/19 20:14 ID:nAOzrP6t
10代からのギャルが勢ぞろい!
恋人気分で楽しんでね。

http://www.galsmode.com
400名無しさん@ピンキー:04/03/30 23:37 ID:YYNvbE+3
>>393
待ってるんだけどなあ
401名無しさん@ピンキー:04/04/04 08:48 ID:BR0fgH3Q
揚げ
402名無しさん@ピンキー:04/04/06 17:55 ID:szK2Rzlk
禿げ
403名無しさん@ピンキー:04/04/07 18:45 ID:2rAUqOED
404名無しさん@ピンキー:04/04/07 22:25 ID:Z368hRiX
405名無しさん@ピンキー:04/04/09 18:54 ID:c+o8Tw9S
投げ
406名無しさん@ピンキー:04/04/09 22:13 ID:28XD8pjG

407名無しさん@ピンキー:04/04/11 01:15 ID:8uUQIhUl
保守
408名無しさん@ピンキー:04/04/15 22:26 ID:zn94Dkak
hosyu
409名無しさん@ピンキー:04/04/18 22:09 ID:5xjHShot
age
410名無しさん@ピンキー:04/04/28 19:13 ID:uL3TLFuM
age
411名無しさん@ピンキー:04/05/02 08:52 ID:1/NmlJyK
age
412名無しさん@ピンキー:04/05/04 22:23 ID:r3DxjgT9
このスレ用のオリジナルss考えてるわけですが、徹底的に自分吐きしてて欝だ
こうでもしなきゃ話が作れぬ・・・くそう
413名無しさん@ピンキー:04/05/09 07:37 ID:+FFj216N
あげ
414名無しさん@ピンキー:04/05/11 00:07 ID:ihDOyBOE
 幸雄と結婚して一年と半年になりますが、子供はまだいません。幸雄は子供欲しい
みたいですけど、なんとなくわかる。わたしはまだ欲しくないの。育てていく自信
ないですし。虐待とかのニュースみて、自分がこわくなってます。ときどき、大声で
叫びたくなることがあるんですよ。一度、幸雄に八つ当たりしたことありますから。
いつもの喧嘩とはぜんぜんちがってたんです。ん〜。じゃあ、ヒントだけなら。
なにもかも捨てて、ひとりになりたいって思ったことありませんか。だめ。この話は
もうこれでおしまい。
なんですか?ええ、してますよ。避妊、ちゃんとしていますって。結婚の動機?
ひとりでいるよりも楽でしょ(笑)。おおっぴらにセックスもできちゃうし。もうやりまくって
ますから。ええ、ミスったりしてできちゃうかもしれませんよね。それは、それ。
いいんですよ。おっきなお腹で、お出かけしてみたいから。手を繋いだりして。
幸雄は嫌がるかも。これって(真央は両手で妊婦の膨らみをつくってみせた)、
オマ×コしてます宣言でしょ。いくら、セックスが軽くなったって言ってもですよ、
できちゃえば、みんなセックスマシーンだったわたしたちのこと、無条件で祝って
迎えてくれそうじゃないですか。なんか、角が取れて気持ちよくなれそうな感じがいい。
幸雄はいやがるかもしれないけど。

 でも、ちゃんとした理由もあるんですよ。おばあちゃんには、早く赤ちゃんを見せて
あげたいかなぁって。うん、ちょっぴり。少しだけ思ってます。でも、まだ自信ないんですね。
やっぱり。あのう、ところで、純愛と恋愛のちがいって、なんなんでしょうね?
 ああ、ついでに、保守しときますね。そいじゃ。
415名無しさん@ピンキー:04/05/16 23:05 ID:nwq/A2IQ
age
416名無しさん@ピンキー:04/05/21 22:14 ID:37a9inoX
age
417名無しさん@ピンキー:04/05/22 03:50 ID:WaKEH05J
このスレ見てる香具師、点呼始めぃ!
418名無しさん@ピンキー:04/05/22 03:55 ID:EaMEYAkZ
2 ノシ
419名無しさん@ピンキー:04/05/22 15:56 ID:DA9wOt5u
3! 携帯房っす ノシ
420名無しさん@ピンキー:04/05/22 18:31 ID:RJedL24s
4〜
421名無しさん@ピンキー:04/05/23 07:38 ID:Cmbsq/d+
伍 ノシ
422名無しさん@ピンキー:04/05/23 14:03 ID:DDrp9oFt
6ヾ( ゚д゚)ノ゛
423名無しさん@ピンキー:04/05/23 20:17 ID:i7tUn2r7
seven ノシ
424名無しさん@ピンキー:04/05/24 00:18 ID:ZxwDA6OZ
はち ノシ
425名無しさん@ピンキー:04/05/25 10:24 ID:ZPcWGms4
14 ノシ
426名無しさん@ピンキー:04/05/26 01:08 ID:CwrXC72C
なぜいきなり14なのだ(笑 >425

じゅぅ ノシ
427名無しさん@ピンキー:04/05/26 13:40 ID:sNA1zYj/
投下ないみたいだし、ナンカ書いてみるかな。

イレブン。
428名無しさん@ピンキー:04/05/26 16:53 ID:juFa3vcu
FF12は発売延期か。。
429名無しさん@ピンキー:04/05/26 19:18 ID:z7zPmalr
13番目の金曜日
430名無しさん@ピンキー:04/05/26 20:03 ID:E5CTADKN
>>427
お願いする!
431名無しさん@ピンキー:04/05/29 21:06 ID:ZoLVooJ2
>>427
盛れもお願いする!
432名無しさん@ピンキー:04/06/03 01:29 ID:wv3foxef
>>427
おながい
433名無しさん@ピンキー:04/06/04 17:13 ID:0sL8l/q1
>>427
オナguy
434名無しさん@ピンキー:04/06/05 16:27 ID:3xEuE2ua
>>435-
藻前らもお願い汁
435名無しさん@ピンキー:04/06/05 17:25 ID:Yb+w1lQN
>>427
お願い
あと>>424も頑張れ
436名無しさん@ピンキー:04/06/07 12:46 ID:7McoU6y9
大人気だな>>427
437名無しさん@ピンキー:04/06/07 13:54 ID:vK768jma
>>436
412、424、427 かな?
438436:04/06/09 15:42 ID:wxYNn4iK
393氏を忘れてますたスマヌ
439名無しさん@ピンキー:04/06/10 09:00 ID:/Wx9I3SU
一応ROMでつ。
暇がでけたら書きます。
趣味丸田氏にしそう・・・。
何で休日ないんじゃゴラァ!!!ヾ(д)ノシ
440名無しさん@ピンキー:04/06/12 01:31 ID:SDj/drDh
gimmeさんの続きまだかしら・・・
441名無しさん@ピンキー:04/06/12 01:42 ID:mN6jrgDG
d
442名無しさん@ピンキー:04/06/15 04:45 ID:GOvj73Uh
443名無しさん@ピンキー:04/06/20 20:12 ID:Pgg1dimS
age
444名無しさん@ピンキー:04/06/21 05:33 ID:GCtnYxFl
あg
445名無しさん@ピンキー:04/06/22 21:01 ID:AlTKPij1
汝らに問う!純愛とは何ぞや!!
446名無しさん@ピンキー:04/06/22 21:34 ID:4tzbB74Y
>>445
一途に相手を想い続ける事かな…。
447名無しさん@ピンキー:04/06/22 22:43 ID:AlTKPij1
>>446
じゃあアレでしょうか。ちょっとばかし偏執的でも変質的でも一途に相手を思っている小説なら、
ここに投下してもよろしいでしょうのでしょうか?
448名無しさん@ピンキー:04/06/23 00:49 ID:dPeVJzaM
>>445
ええ〜?
やっぱり廊下で蹴られるの?
449名無しさん@ピンキー:04/06/23 09:31 ID:trKjFmmD
>>447
漏れはそういうのも嫌いじゃないけどここではまずいんじゃないの?
450445:04/06/23 17:23 ID:vU2qsaCH
>廊下で蹴られる
そんなまさか!
暴力は無しで性格的な問題で・・・
例えばうーん・・・拾った娘がどこぞの誰かを好きになったのが気に食わなくて怒る義父とか、
親友だって割り切ってるのに女子に恋人ができるのが気に食わない男子とか。
遊びまくってる男の恋人的ポジションなんだけど、自分も有象無象の一人に過ぎない気がする女子とか。

451名無しさん@ピンキー:04/06/26 04:12 ID:/rnZ/Xws
>>445
相思相愛じゃね?
452名無しさん@ピンキー:04/07/04 09:24 ID:sovjBQFa
あげ
453名無しさん@ピンキー:04/07/10 02:45 ID:TwrpqBr5
ウェーーーーーィ!
454名無しさん@ピンキー:04/07/11 23:53 ID:LMNlKm53
DQのエロSS投下してよろしいでつか?
455名無しさん@ピンキー:04/07/15 21:32 ID:ZH7qUMWT
456名無しさん@ピンキー:04/07/16 22:16 ID:p14j62H/
がんばろうSURE。
457名無しさん@ピンキー:04/07/20 15:18 ID:yLPf6yTA
age
458名無しさん@ピンキー:04/07/23 19:02 ID:hzHqTpb/
あげ
459 ◆cp/.Q4S4Rw :04/07/24 03:13 ID:aCa0lden
ラヴレターな話

三年になって、岡野達則は、入学以来密かに憧れていた美少女の大崎千尋と、
はじめて同じクラスになった。
一学期の席順は出席番号で決まるため、なんと彼の席は彼女の真後ろだ。
なんて幸先がいいことだろう。
教室の一番左の窓際の列、その後の方に僕らの席はある。
長い髪を茶色のヘアバンドで留めて、
「岡野君は同じクラス初めてだよね? 一年間よろしくね」
そうやって、初対面と言っていい相手にも天使のような微笑みを見せる。
こんな笑顔を向けられたら誰でものぼせ上がってしまうだろう。
そんな彼女だが、浮いた話はなぜか聞かなかった。
「よ、よろしく」
言葉少なになんとか返すものの、まだ何といって話をすればいいのか、
彼にはわからなかった。
およそ女の子とつきあったり、遊びにいったりといった事をした経験がないからだ。

成績も、体育も芸術も、見た目も家柄も、
彼自身で判断できる範囲では、ことごとく彼の人生は上の下だ。
つまりそんなに目立つ程でもないが、
それなりに人望があって、サッカーやバスケがうまくて。
460 ◆cp/.Q4S4Rw :04/07/24 03:14 ID:aCa0lden
それが異性関係となると下の下に成り下がるのは、
中学を男子校で過ごしてきた事と関係があるかも知れない。
だから、これが男同士の事となると、彼はたちまち体育系の本領を発揮して
盛り上げたり仕切ったりできるのだが。
(でもその気になれば俺だって、とか思っていたりはする。年頃の男だから)

授業中の彼は毎日上の空。
元々それほど勉強しなくてもある程度の成績は取れる。
だから、彼女の背中ばかりを見ていた。
後ろからは、人並みに脹らんだ(と達則は踏んでいる)胸こそ見えない。
しかし、くびれたウエストから丸いお尻にかけてのなだらかなライン、
背中に透けるかすかな下着の線、ノートにペンを走らせるたびに動く細い腕。
教科書に目を落とすたびに流れる髪、その隙間から覗く白い首筋。
前を向けば視界一杯に夢のような世界が拡がる。
そして、春のさわやかな風が窓から入ってくると、
彼女の香りもそれに乗って達則の鼻をくすぐるのだ。

一度彼女が、(おそらく無意識のうちに)背中を指で掻いた事があった。
達則はその時だらしなく頬杖をついていた。
目の前に突然現れた彼女の左手に、一瞬ぎょっとする。
461 ◆cp/.Q4S4Rw :04/07/24 03:14 ID:aCa0lden
純粋な驚きと、まさかのよこしまな期待。
もちろん彼女が彼に差しのべたわけではない。
それでも達則は、その手が下着の線のあたりを悩ましく動いて、
また突然消えていくその一部始終を、まばたきもせずに見つめていた。
口は半開きで。
なんて小さく細く綺麗な手だろう。
そして、なんて細やかに動くのだろう。
その日の彼は木偶人形だった。

そのうち彼女についてはいろんな事が解ってきた。
基本的には優等生。
身体のバランス的に得意そうに見える運動があまり得意ではなく、
抜けているというか、ちょっと天然っぽいところがある。
しょっちゅう消しゴムを失くすか忘れるかしてくる。
なぜかいつも、どうしても消しゴム。
宿題をやってくる所を間違える。
そういう時にきょろきょろしているのがやたらかわいい。
また、うたたねをすることもある。
ペンでつついて起こしてやった時には、授業が終わった後で
真っ赤になりながらお礼を言ってきた。
462 ◆cp/.Q4S4Rw :04/07/24 03:15 ID:aCa0lden
そこまで恥ずかしがる事もないと思うくらいに。
背中をつついて感謝される女の子は彼女だけ。
そういう彼女がそこにいるだけで、達則の一日は上出来だ。

運命の日は突然訪れる。
ある放課後、彼の下駄箱の中に二通のかわいらしい封筒が鎮座していた。
軽く数分は固まっていた彼に、悪友たちが気付かなかったのは奇跡といっていい。
ひとつは、真白の上に淡い緑のシールのあしらわれたシンプルなもの。
もうひとつは、
ピンク地に濃いピンクのポイントの入ったとてもわかりやすいものだった。
(二通?)
生まれて初めてのそれが、一度にふたつというのが彼には解せない。
最初は一通であるべきだ。
いや、それよりも、どっちが先に入れられたのだろう?
下にあったからピンクのほうか?
後から入れた緑の方が勇者という事か?
いや、後から入れたから上に乗っているとは限らない。
動揺した彼はどうでもいいことを考え続ける。

我に返った達則は、慌てて周りを見渡し、目撃者のいないことを確認する。
463 ◆cp/.Q4S4Rw :04/07/24 03:15 ID:aCa0lden
まずはこの危険なものを早く隠してしまわないと。
差出人の確認もせずカバンに放り込み、靴を履き替えると、
一目散に校舎を飛び出していく。
そのままダッシュを繰り返して記録的な速さで彼は自宅にたどり着き、
自室に飛び込んでカギをかけた。
これで安心。
「まあ落ち着け、悪戯かもしれんしな、うん。検分しよう。まずは筆跡だ」
ぶつぶつ言って気を紛らわしながら、
「表の名前は……」
どちらも「岡野達則 様」だった。
「裏に名前は……」
どちらもアルファベットの様だ。怖くてまだ見られないので速攻で目を逸らす。

そんなことをしていてもしかたがないので、読んでみる事にする。
緑のシールの方から封を開ける。
女の子らしい文字と、文面にどきどきする。
書き並べられた言葉があり得ない程頭に入ってきた。
クラスが離れてしまってとても寂しい?
なんだかくらくらする。
いや待て、それは相手の正体がわかってからだ。例えばマッチョな女はかんべんだ。
464 ◆cp/.Q4S4Rw :04/07/24 03:15 ID:aCa0lden
押し流されるように読んでいく。
一週間後に返事を欲しいという。
放課後体育館の裏で、待っているという。
思いもよらない名前が、その最後に添えられていた。
塚森奈津子。
最初の感想は、
「は?」
である。

塚森奈津子は、二年の時同じクラスだった。
短髪でスポーティだが外見的にはごく平均的な、でも危険な女。
いや、胸は確か大きかった。
なんか揺れているのを見て感動した憶えがあるし。

塚森奈津子は達則をケツ蹴りした人生唯一の人間だ。
陸上部だからというわけでもないだろうが、口より速く足が出る。
(あれはとても痛かった)

また、塚森奈津子は達則の弁当を午前の授業中に食べた人生唯一の人間だ。
まさかというか、達則は昼休みまでまったく気付かなかった。
(あれはとても悲しかった)
465 ◆cp/.Q4S4Rw :04/07/24 03:16 ID:aCa0lden
次に、塚森奈津子は二年の時達則の英語の教科書を、
自分の濡れたごわごわの奴とこっそり取り換えた人生唯一の人間だ。
なんで濡らしたんだろうと思いつつ、
年度が終わりかけた頃に隅っこにとても小さな塚森という字を発見した。
(あれはとても悔しかった)

さらに、塚森奈津子は達則が自慰行為を見られてしまった人生唯一の人間だ。
仮病で休んだものの、親の留守に暇になってしまって、ちょっとやっていたら、
突然部屋に入ってきた彼女に、あやうくひっかけてしまいそうになった。
(あれはめちゃくちゃ気まずかった。
 というか、なんであいつはウチにやってきたのか)

こうして思いかえすと、二年の頃はやたら酷い目にあわされたものだ。
(あいつは煙草を吸ったり、少し不良の面もあった。
 そうじゃなかったら、十分ストライクゾーンだったのに。
 その「あいつ」が?)
少し遠い目。

気を取り直し、達則はもう一通を開く。
ピンクに統一するというメッセージ性そのままに、
乙女心を切々と綴った綺麗な文章に気持ちが動かされる。
466 ◆cp/.Q4S4Rw :04/07/24 03:16 ID:aCa0lden
こういうものを書くのは、
すごく女の子らしい女の子なんだろうな、と想像してみる。
しばし読みふける。
入学してからずっと好きだった?
なんともったいない話だ。いや、下級生だろうか?
一年生だとしたら、ほとんど一目惚れ同然だが。
こちらも、一週間後という返事の期限が書かれていた。
放課後、新校舎の屋上。
やはり、一週間というのがきりのいいところなのだろう。
ふたつ同時に届いたラブレターだから、
無難な期限の「一週間」が過ぎるのも同時。
ただし、待ち合わせ場所は違う場所だ。
便箋の上には名前は記されていなかった。
でも。
封筒を取りあげて裏を見る。
CHIHIRO
と、それだけ書かれていた。
(まさか、前の席の、愛しの千尋ちゃん? なわけないよな。
 いや、でも読みしかわからないし、字はなんか……似てる。
 そうだとしてもそうじゃないとしても、なんかありえる……のか?)
そのまま、名状しがたい難しい顔をして。
達則は風呂に入ろうと思い付くまでずっと固まっていた。

467 ◆cp/.Q4S4Rw :04/07/24 03:17 ID:aCa0lden
そして一週間が過ぎようとしていた。
達則はこうなってしまってからの自分の気持ちがわからない。
それに加えて、達則にはちょっと気になる事があった……

当日の放課後。
達則は、

A 塚森奈津子の待つ体育館の裏へ
B 大崎千尋(推定)の待つ屋上へ
C 第三のポイントへ
468名無しさん@ピンキー:04/07/24 04:14 ID:EhfNUlke
A
469名無しさん@ピンキー:04/07/24 11:06 ID:zwJ1nZtX
何で三人称の文章なのに>459に「僕らの」とかあるの?
470名無しさん@ピンキー:04/07/24 14:29 ID:zPeVcQzj
A
>>469
何人称と限定してない書き方だと思うけどな
漏れ的にはこういう文体は「あり」でつ

cp/.Q4S4Rw氏ガンガレ
471名無しさん@ピンキー:04/07/24 21:46 ID:V7aq/Fgt

期待してます。
472 ◆cp/.Q4S4Rw :04/07/24 23:14 ID:aCa0lden
あああっ
普通に見落としてました。
(「彼ら」あたりで脳内補完して)見逃してください。
473名無しさん@ピンキー:04/07/26 02:22 ID:JXdYRq8S
マルチエンディングでお願いします
474名無しさん@ピンキー:04/07/26 19:51 ID:5SDvf6qB
描写が青春って感じがしてとても良かったです。ロングでヘアバンドの
千尋が魅力的なのでBを希望。できれば二人とも書いてほしいです。
エッチも楽しみ。
475名無しさん@ピンキー:04/08/01 08:39 ID:dN9W1LXc
保守
476名無しさん@ピンキー:04/08/06 21:14 ID:Yz5RnxU/
保守
477名無しさん@ピンキー:04/08/11 01:05 ID:A2NTjnJJ
ほしゅ
478名無しさん@ピンキー:04/08/15 02:19 ID:chEF7Y14
479名無しさん@ピンキー:04/08/16 05:17 ID:lwHlUinl
ageときますね
480名無しさん@ピンキー:04/08/16 08:40 ID:89HxtGOk
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/ningyo/a01.htm

貼っとくね。ラスト3話は泣いた人が即出した
クリリン×18号物
481名無しさん@ピンキー:04/08/16 08:49 ID:89HxtGOk
482名無しさん@ピンキー:04/08/16 18:37 ID:A23AcARp
>>481
確かに泣いた。素晴らしい。
483名無しさん@ピンキー:04/08/16 21:09 ID:gH4fdjrU
>>481 マジで神だ。感動した・・・
484名無しさん@ピンキー:04/08/16 22:18 ID:TW+dz4Hg
>>481は漫画板SSスレ・通称「バキスレ」で絶賛されてた作品。
確かに多くの人が泣いた名作だが、この作品貼りまくってる奴がいるな。
作者本人か?w確かにラスト3話とエピローグは神の域。
485名無しさん@ピンキー:04/08/17 08:17 ID:WeIT36r2
>>481
後編9話とエピローグの余りの素晴らしさにマジ泣きした。
クリリンと18号、お幸せに。やっぱりこのカップルはいいな
486名無しさん@ピンキー:04/08/18 21:43 ID:r1b3uBf1
保守
487名無しさん@ピンキー:04/08/24 11:04 ID:6hUopKsy
◆cp/.Q4S4Rw氏はどこ?
488451:04/08/25 16:05 ID:GjJkfCCK
◆cp/.Q4S4Rw氏の先にうpしても良いでつか?
自分のサイトでやれやゴルァ!な内容と量ですけど
設定としては幼馴染スレでもいいんですけど、あっちは素晴らしい職人が連載してる最中
なもんで
489名無しさん@ピンキー:04/08/25 17:39 ID:v1n91J9H
>>488
気にするな、どんどん行け
長いならキリのいい所で分けて、時間を置いてまた投下すればいい
490451:04/08/26 16:02 ID:IcNEiT/X
了解っす
早ければ明日、遅くても来週の頭の辺りにはうpします
一気に全部どかーーーっと
491四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 12:38 ID:Ko34c+6d
451です
うp開始します
一応前編、後編、エピローグの三部構成です

では前編
492四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 12:40 ID:Ko34c+6d


皆悲しんでいる。当然の事。そういう場所だしそういう時なんだから。
でも、僕はそんな気分じゃなかった。


493四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 12:42 ID:Ko34c+6d
目が開く。
深呼吸、よし。
時間は朝の六時。目覚ましが鳴る十五分前。何時も通りの目覚め。
布団を押しのけて手早く普段着に着替え、カーテンを開いてから台所に足を運ぶ。
朝食を作る。と言っても火を通せばお終いの、簡単な物ばかりだけど。
テーブルに食器を並べて親父を待つ。
親父の出勤は早い。六時半には玄関を出なければならない。
と、我が家唯一の稼ぎ役が居間に入ってくる。その足取りはしっかりしていて、
起きて数分後とは思えない。
「おはよう」
「ん、おはよう」
短い挨拶。それきり沈黙したまま親父は食事を始める。
仲が悪い訳じゃない。もう何年もこうしているから、お互いに言う事もなくなっただけ。
僕はまだ食べない。今食べたら昼までもたないからだ。
「ご馳走さん」
きっかり五分で終了する。立ち上がり、洗面台へ向かう。
僕は使い終わった食器を水に浸し、ついでに仏壇に線香をあげる。
もう一人の住人だった母さんは僕が高校に入る前に死んだ。
急性の白血病。本当にあっという間に死んでしまった。恩返しをしたかったけど、
もう叶わない。その分を親父にしてやりたいけど、それも出来るかどうか。
洗濯機を回して居間に戻ると、ちょうど親父が部屋から出てきた。
鞄を持ってスーツ姿、髪も整っている。
早い人なら額が広くなり始める年だけど、その兆候は全くない。
「気を付けてね」
「ん、行ってくる」
これまた短い会話だ。時間もないし、驚くような事件がある筈もないし。
起きぬけと変わらず全然危なげない歩き。
僕も寝起きが良いのは親父の遺伝か。はたまた生活環境への適応なのか。
どちらかと言えば前者だろう。僕は未熟児で生まれてしまい、理由は忘れたが親父と
血液を交換したのだ。その傷跡はまだある。その行為には長い時間がかかったのだろう。
親父を見送ってから、ようやく食事を摂る。
494名無しさん@ピンキー:04/08/27 12:44 ID:Ko34c+6d
食器が触れ合う音が響く。テレビは見ない。新聞は一応は目を通すけど、
その後は必ずインターネットでチェックする癖がついた。
テレビの反対側に置いてあるPC。2台とも電源は入れっぱなしだ。
食器を洗ってから、右側の一番機のマウスを揺らして定番のサイトを表示させる。
…やっぱり、ウチで取ってる地方紙は偏ってるよなあ。所謂「左」の方へ傾いてる感じ。
ま、それをどうこうするつもりもないけど。どうなると期待もしてないし。
一通り見終わって、右下の青い豆としか表現できないアイコンをダブルクリック。
母さんが死んでからこれを、UDがん研究プロジェクトに参加した。白血病や癌の治療薬を、
世界中のPCを繋いで作り出そうというプロジェクトだ。
母さんの命を奪った病が憎いという事もあるけど、
それ以上に僕のような家事に時間を費やす男子高校生を増やしたくはないし、
何よりも『何かを残せる』というのが一番の理由だ。
サーバーから課題を受け取り、解析が済めば自動的に戻されて新たな課題がやってくる。
その繰り返しで薬が出来てしまうのだ。えらく簡単なカラクリだけど、それ以上の説明もない。
電気代以外の費用は必要ではないし、そして何か物理的な対価を得られる事もないけど。
興味があるならこちらまで→http://ud-team2ch.net/
課題の提出回数と、それに付随するポイントは確実に伸びている。
PCはメーカー品じゃない所為か一時期やたらと不安定だったけど、
それも今は落ち着いている。さらに興味半分でCPUクーラーやら電源やらを何度か変え、
随分と静かなマシンになった。
二番機はもう少し値が高くてCPUメーカーが違う物なんだけど、解析の進み具合はあまり変わらない。
人間と同じく向き不向きがあるらしい。
二番機も、止まっていない。よし。
三番機も組んでしまう予定だ。親父は僕に家事を任せきりなのを負い目と思っているらしく、
『財布は預ける。上手く使え』と出費の方針には無関心を決め込んでいる。
それでもまぁ、この二台に関しては一応の説明もしたけど。
…そろそろ時間だな。
495四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 12:47 ID:Ko34c+6d
洗濯物を脱水にして、部屋に戻って制服に着替える。
鏡を見ながら短い髪に手櫛をかける。くせのある髪は簡単にいつもの形になった。
三度洗濯機の前に立つ。手早くしわしわの洗濯物を取り出して縁側に干す。
男二人だと数えるくらいのものだ。秋も半ばになった。空気が冷たい。
塀の外に黒い髪が覗いている。…もう待ってるのか、早いな。
いかに幼馴染とはいえ、待たせるのは好みじゃない。
ばたばたと小走りで準備を済ませ、玄関をくぐる。鍵、よし。
496四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 12:49 ID:Ko34c+6d
「おっす」
「おはよ、ひろちゃん」
静かな返事で、相変わらずの『ちゃん』付けだ。
角倉美里。顔はそこそこの造形だと僕は思うのだが、親しい友人から言わせると『かなりの上玉』
だとか。どうしてもそこまでは評価出来ないんだけど、価値観の相違は無くしなければならない!
なんて宗教はやっていない。違うから他人。違わなくなったら自分がなくなる。それだけの話。
癖のないセミロング。頭のてっぺんは丁度僕の鼻と同じ。幼い頃から背丈の関係は全く変わらない。
てくてくと無言で僕たちは歩き始めた。
ここ最近、女の匂いになってきたなぁなどと妙な感慨を持っている。
これまでは半分妹みたいに扱っていたけど、それも改めなきゃならないかな。
こいつとは驚くべき事に保育園からずっと同じ学び舎なのだ。小中高、そして大学も、だろうか。
嫌とは思わないが、良いと肯定もし難いというか。
保育園の頃。美里がひどくいじめられていたのを偶然発見してしまい、
いじめていた連中を力づくで追い返してから何かと関係を持つようになった。
本人もいじめられていたのが積極性のなさだと自覚したらしく、助けた次の日からは明るく振舞う
ようになって、今では結構な人気者である。あるのだが、僕だけには昔と同じ姿を見せる。
猫かぶりもここまで徹底しているなら尊敬すべきかな。
「そうだ」
とある事を思い出す。
「何、ひろちゃん」
「姉御、どうしてる?連絡とかある?」
「お姉ちゃん?…どこにいるんだか」
「ふうん。そうか」
僅かに心配しているようだけど、あの人ならどんな問題も蹴散らすだろうな。
美里には五つ上の姉が居る。
あらゆる事に秀でた才を発揮し、性格も『剛毅』としか例えられないものだった。
背が高く、艶のある長髪に引き締まった美貌。
大学では数々の伝説をぶち上げ、卒業とともに失踪。それでも毎月結構な額の仕送りがあり、その
生存だけは間違いないそうだ。しかし、あの人が似合う仕事は…
正義の味方、万能の請負人、まあそんな所か。
美里に対する評価が高くないのも、多分姉御の所為だろう。
497四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 12:51 ID:Ko34c+6d
校門を通り、上履きを換える。僕と美里は同じ教室なんだけど、下駄箱は随分と離れているから
ここで肩を並べて歩くのは終わりだ。
「いよう、今日も元気かい?」
「…、そりゃどうも」
唯一と言える友、阿川桂介がばんばんと僕の背を叩く。
ぼさぼさの髪を揺らし、曇る事を知らない眼。珍しいくらいに活気を持つ男だ。
「良いぞ良いぞ!」
人目を気にせずからからと笑い声を響かせるその様は、こいつと縁を切りたいと
思わせるに十分だったりする。
ぐあ、見知らぬ人々が注目している。絶対同類扱いされてるよなぁ…
「おい、早く教室に行くぞ」
「せっかちね、外崎浩史くんは!」
うるせー馬鹿。
ここでやり合うだけ無駄、つーか不利益だ。
しかしまぁ、小学校の頃と変わらないヤツだ。中学は遠い私立に通い、公立高校で再開という
やや変則的なパターンである。
こいつが通ってた中学は県内でもトップ級の学校だったのに、こうして進学校としては二流の
公立高校にいる理由は不明だ。訊くつもりもないけど、何かあったんだろう。
で、教室に到着。
ざわめく級友達の間を縫い、窓際の後ろから二番目の席につく。
続いて桂介が後ろの机についた。
明るい笑い声があちこちから聞こえる。
「やだ、さっちゃんたらぁ!」
美里も僕以外の人がいればあの様に笑う。
その辺りに釈然としない気持ちはあるけど、他人を全て解ろうなんて冒涜はしたくない。
天気は良い。気分も良い。僕の場合は天気と気分は大概同じなのだ。
晴れの日はそれだけで心配が減るからだ。
498四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 12:53 ID:Ko34c+6d
滞りなく授業は進む。
とはいえ、こうして夜の献立が脳内で生成されていくのはいかがなものか。
近所のスーパーのチラシはとうの昔に分解され、整理と整頓も終わっている。
家計が厳しい訳ではないのに、あれこれと安く仕上げるようにメニューが構築されてしまう。
まあ、こうして考える事自体が僕にとっては気持ち良い行為だ。
頭脳が普通に回るのは幸せだ。体が普通に動くのと同じ。
「外崎、この問題を解いて」
白髪の先生が言う。黒板の数学の問題。大したは事はない。
かつかつと小気味良いチョークの音。ちと丁寧に書きすぎたかな。
「よし、正解」
渋い声だ。この声で昨年の学園祭にて『一番好きな先生』に選ばれたんだよな。
性格も予想を裏切らない堅実な人だ。
席に戻った途端に思考は献立に戻る。授業の事も動いてはいるんだけど、解りきったものに
そんなに大きく思考を割く必要はない。今は良くて二割程度か。
とんとんと肩を叩かれる。犯人の要求は手を伸ばせ、と相場は決まっている。
左手を後ろに伸ばすと、紙切れを押し付けられた。
『えらく簡単に解いたな。予知能力?』
阿呆か。
『うるせー馬鹿』
と書き足して返してやる。
499四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 12:55 ID:Ko34c+6d
いつだったか、桂介に稀だけど正夢を見ると言ったことがある。
正夢といっても数秒程度の長さしかなく、もしその場面に出くわしても、
『あ、夢に出たな』
と思った頃には見ていない場面に進展しているのだから、全く意味がない。
僕が考えるには、時間というのは深くて大きな河みたいなものだ。
普通の人は頭のてっぺんまで水に浸かっている。で、何の拍子か顔だけその河から出てしまった時に
正夢というのを見れる。流れの外なのだから、どんな流れになっているのかを知る事が出来る。
では川岸はあるのか。当然のように空気に相当するものだってある筈だ。
流れがあるのだから、源流は高い山の中にあるのは間違いないだろうし、その山に
登って振り返ればどんな世界があるのか。
山と水で河になる。こうしてここにいるのは偶然であり必然でもある。
河が流れつく先は海。海の水はどういう仕組みで山に戻るのか。
河の中と海の中では何が違うのだろうか。
・・・しかしまぁ、つくづく意味がない思考だよな。心で苦笑いをしつつ授業を意識する。
こんな感じで僕の授業時間は過ぎていく。
500四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 12:57 ID:Ko34c+6d
何回見ても飽きないよな。
ここは学食。目の前には僕の昼飯があり、その向こうに桂介と彼の分の飯がある。
「・・・・・・・・・」
桂介は親の仇のように飯を睨み、無言で口を動かし続ける。
普段なら何かと口に出す奴なんだけど、飯の時間だけは別人に見える。
で、僕が何か言うと不機嫌そうに睨まれるし。桂介に倣って黙々と食べるしかない訳で。
「・・・・・・・・・・・・」
髪は自分で切るし言動もかなり大雑把なんだけど、やっぱり良家の御坊っちゃんなんだよなぁ・・・
躾が半端じゃない。
中学が私立だったのも、家の事情だとか。高校も私立の予定だったらしいけど、
どんな手を使ったのかこうして公立にいる。
その辺に結構な怖さを感じるのは僕だけかな。
学食は安いんだけど、自分で弁当を作れば更に安上がりだというのは知っている。
夜に作っておくのは十分可能だけど、それだと課題を処分する時間がなくなってしまう。
かといって朝だと確実な実行は出来ない。
時間を買えるなら安いもの、だな。
時々は購買で済ませる事もあるけど、こいつは教室でも全く同じ様子で食べる。
将来はきっと頑固親父だろうな。いや、何となく。
501四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 12:59 ID:Ko34c+6d
全ての授業が終わる。少し前までは美里と一緒に帰るのが日課だったけど、
最近あいつは終業と同時に学校を出てしまう。教室を見回す。…今日も、既にいない。
横から桂介が言う。
「浩史、どっか行かねえか?」
「また今度な、悪い」
僕の返事を聞いた桂介は少しだけ考え込み、いつも通りの明るい声で言った。
「遊びたいんならいつでも言えよ。KOするまで連れまわすからよ」
ふ、と笑ってしまう。たしかに、こいつならやりそうだな。
「期待しとくよ」
桂介は僕の肩を軽く叩いて教室から去った。
そういう事に興味がない訳じゃないけど、やることがある。
「外崎君」
振り返ると、美里と親しい水原小夜がいた。ウェーブがかかったやや茶色の髪が印象的な子だ。
「美里ならもういないよ」
一応、訊いておくか。
「あいつ、どこいってるの?」
「市立図書館。何か調べてるみたいだよ」
図書館。何日もかかるような調べ物。何だろう?
まあ、危ない事をしていないなら心配はいらないか。
「ギブアンドテイクって事で、一個だけ訊いて良い?」
ぴ、と人差し指を立てて言う水原。
「良いけど、何?」
「課題しかやってないのに、何であんなに点数取れるの?」
僕は課題以外の勉強は一切してないと美里に言っている。あいつから聞かされたのは
予想に難しくは無い。あんなに、とは試験での順位の事だろう。
入学以来、学年で三位より下に転落したのは一度もない。
課題だけでその学力は納得出来ない、と水原は言っているのだ。
・・・まぁ、これも望んで努力した結果なら、多少は自慢の種にはなるんだろうけど。
502四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:02 ID:Ko34c+6d
納得してもらうには一番解りやすい二番目の理由が良いだろうな。
「集中力。水原も集中力をつければあのくらいは簡単だぞ」
「えー?本当に、それだけ?」
「だけ。じゃあな」
不満そうな表情。それ以上の追求を避ける為に背中を見せ、教室から出た。


水原の問い。一番目の理由。
僕は思考する事に快感を覚えるから、だ。
裏を返せば思考出来ない苦しさが身に沁みているから、とも言える。
人に限らず全ての動物は快楽を追いかける。快楽には本当に果てが無い。
ただひたすら『気持ち良いから』という理屈ですらない感情を満足させるべく続ける。
僕にとって、それに値する行為の中で『思考する』が最も強い。
何時だって思考は出来る。朝ごはんを作る。学校に向かって歩く。授業中。下校途中。
常に情報の柱は何本も立っている。霧のような小さな情報が固まり、崩れ、変質し、舞い上がる。
意識を向けない情報も止まる事を知らない。
頭の底から引き上げる必要なんてない。ただ目を向けるだけでいい。
もちろん底辺に沈んだ情報も多い。僕がいらないと判断した物から、
いらないと判断しなければならなかった物まで。
・・・・・・ごみ捨て場だな。拾えるのは、どれだって手にするのが嫌な物ばかり。
だから、可能な限り様々な情報を沈ませないのかも知れない。
503四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:04 ID:Ko34c+6d
家に着く。
着替える前に洗濯物を取りこむ。うむ、しっかりと乾いているな。
親父と僕の下着やら靴下をたたみ、いつもの場所に置く。
そして着替えてから買い物だ。夕方と呼ぶにはまだ早い時間で、僕のような若者が買い物カゴ
を持つ姿は目立つ。もっと遅い時間なら人も多く、そんなに珍しいものではなくなるけど、
それだと目的の物が買えなくなる恐れがある。
こうして買い物をするようになって二年が経つ。レジのおばさんとも馴染んでいて、
『いつも感心だねぇ』という笑みすら見せてくれる。
何事もまめにすべし。母さんの教えだ。
家事を覚えたのは小さい頃に友達を作らなかったのが大きい。
余る時間。退屈しのぎに家事を手伝い始め、洗濯や掃除、料理も覚えてしまう。
母さんにとって、僕は良い生徒だったらしい。
面と向かって『女の子だったら良いのにね』などと言われる事もあった。
女の子だと何が違うのか…ああ、そうか。もしそうならもっと色々な事を伝えられるから、
そう言ったのだろう。僕は十分だと思ってたけど、母さんは更に仕込みたかったのだろう。
ま、それも中学三年の春で終わり。
それ以来、僕が家事全般を仕切るようになった。
慣れてるとはいえ、最初は結構失敗をやらかした。ずっと見ていた母さんがいなくなっただけで
あんなにも不安になるとは予想外だ。
最近では迷う事はなくなった。我流ながら新しい料理なんかも身につけてしまう。
本当に、一般の男子高校生とはかけ離れてしまったかな。
世間の流行には疎いし、遊びまわる事もないし、金銭感覚もあるし。
若年寄確定である。
504四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:07 ID:Ko34c+6d
昨日まではあっさりした献立だったから、今日は辛めの方向で。
親父が帰ってくるのは八時半を過ぎてしまうから、何かない限りは先に夕食を済ませてしまう。
今日もそのつもりで台所に立つ。
もう少しで完成することろで電話が鳴った。
液晶画面に写る相手の番号。見慣れた数字の列だ。
『私、美里だよ』
「どうかした?久しぶりに電話で話すけど」
『ええと、今日、晩御飯一緒にしていい?』
美里のお母さんは市立病院の看護婦だ。勤務時間が度々変わってしまい、ひとりきりで夕食を
摂らなければならない時がある。その寂しさを紛らわす為に僕と一緒に食べる、というのが
以前から何度かあった。
ま、断る理由はない。
「おう。手ぶらでもいいよ」
『お米くらいは持っていくよ。・・・ありがと、ひろちゃん』
ちなみに、美里の親父さんは単身赴任中だ。
当時は揉める事もなく、すんなりと決定したようだ。
・・・どうも僕は角倉一家から当てにされてるらしい。
美里は明言を避けているけど、どうやら『困ったら僕に相談してみろ』と言われているようなのだ。
年頃の女の子を、同年代の男に任せるなんてどうかしてる!と言いたいんだけど、
そうも言い難い感情もあり、表面上は渋々、内面的には期待しつつ面倒を見ている。
最近の美里。
外見はその期待を裏切らず、変化をしている。
心情面は推測のしようもないが、まあのんびりと待つ事にしよう。──って、何を?
『ぴんぽん』
とチャイムが鳴る。美里の家はすぐ近くだ。丁度斜め前にある。
相手が美里ならエプロンを着けたままでも構わないか。
開錠し、玄関を開ける。
薄い桜色のシャツと白いスカートの美里が居た。
505四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:09 ID:Ko34c+6d
赤い手提にはさっき言っていた米が入っているのだろう。それとは別に小さい鍋を持っている。
「お邪魔するね、ひろちゃん」
「それは?」
顎で指して訊いてみる。
「うん、作ってみた。味見してよ、コック長」
こりゃまた懐かしいあだ名を。
小学の家庭科で、料理実習をやった時の話だ。
その頃は既に料理の仕方も覚え始めた時期で、授業での作業は呆れるくらい簡単だった。
つまらないから早く終わらせようと包丁を振るう僕。黙々と作業するその姿がいかにも
『レストランのコック長』らしかったようで、その後暫くは『コック長』と呼ばれた。
「うん、任せろ」
美里を家に入れる。ふとシャンプーの香りが鼻をくすぐった。
・・・こいつは、僕をどう想っているのかな。
洗髪してきた理由は何だろうか。他人の家にあがるからなのか。それとも、
僕を異性として意識しているからなのか。
その後姿だって、もう女性らしい曲線で創られている。目が離せない。
くそ、どうにも意識してしまう。
「どうしたの?ひろちゃん?」
気が付けば美里は食器を並べ終えている。
「いや、大したことじゃないよ」
熱っぽい感情を押さえつけ、台所の夕食を運んだ。
506四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:11 ID:Ko34c+6d
「ん、まあまあだと思うよ」
「本当に?良かった…」
珍しく微笑んで答えてくれた。
実際、美里の作った料理はなかなかの出来だった。
僕の真似から始めたようだけど、やはり感性の違いは否めない。
しっかりと美里の味になってる。僕を目標にしているみたいだけど、この分じゃ将来的には
随分と違うものを作るようになるだろう。
「ご馳走さまでした、ひろちゃん」
「うん、お粗末さま。いつでも食わせてやるから」
二人で食器を台所に運ぶ。何も言わなかったのに協力してくれるのは躾が出来てるからだな。
そういえば箸もきちんと持っていたか。
「ひろちゃんはさぁ、・・・」
やや暗い声で言い出す美里。少し待ったけど続きを言わない。
「・・・ごめん、何でもない」
「?言いたいなら言ってくれよ。何でも聞くよ」
「いいの、うん・・・あ、そうだ。今日の数学の問題、どうやって解くの?」
誤魔化すように話題を振ってくる。無理に言わせる必要もないか。
「あれは・・・、書いて説明するか」
電話の側のサインペンを取ってテーブルに戻り、裏が白いチラシに問題を書く。
美里はちょこんと僕のすぐ隣に座り、紙を覗いている。
「うん、で最初は?」
「まずはだな・・・」
つらつらと書きながら、ちらちらと美里の胸元に目が行ってしまう。
白い下着。その膨らみは予想以上に大きい。着痩せするタイプだったんだな。
「うんうん」
「で、こうなるだろ」
肩が触れ合う。柔らかい。美里の匂いだ。
いつから、こんなふうに女として見るようになったのかな。
「ちょっと待ってよ。ここって、何で?」
「ん?じゃあこれは解る?」
さらさらと流れる髪。触ってみたい。
出来る事なら、それ以外の部分も触れたい。見たい。
507四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:13 ID:Ko34c+6d
「え?こうなるんじゃないの?」
「違うって。こうきて、こうだろ」
美里は僕をどう見ているのか。
まだ幼馴染なのだろうか。仲の良い友達なのか。
まだ、異性ではないのかな。
「え、あ!そっか!」
「何勘違いして覚えてるんだよ。これで解るだろ?」
どうしたら異性として見てもらえるのかな。
強引にでも、そう見て欲しい。駄目だ傷つけるだけだろ。僕は美里を、どうしたいのか。
「そっか、うん、解る」
「そんなに難しい問題でもないだろ」
美里は僕にどうして欲しいと思ってるのかな。
聞きたいけど、聞いていい事なのか。その時まで待つべきじゃ、ないのか。
「流石ひろちゃんだ。私、やっと解ったよ」
「そりゃどうも。授業中で理解しろって」
こんな事を考えるなら、僕の気持ちなんて決まってるのも同然。
思い切って、言うか──
「ひろちゃん?顔、赤いよ?」
その言葉と目でようやく正気に返った。それでも、はっきりと固まった気持ちが消える訳じゃない。
それが動き始めないように、なるべく平静を装って答える。
「気のせいだよ。で、あとは解らないこと、ある?」
僕は美里の気持ちが解らない。
この問題、どうやって解いたらいいのか。
「え、…うん。ない、みたい」
二人で沈黙する。肩は依然触れたままだ。温かさが伝わってくる。・・・僕は動けない。
失うにはあまりにも勿体無い時間だから。
静かな時計の音をやっと意識出来た。見ると、美里が来てから随分経っている。
「そか。もう遅いんだから帰った方がいい。送るよ」
「・・・うん、もう、そんな時間だったね」
それきり僕達は何も言えないまま立ち、半ば機械のように一緒に玄関を出る。
やっぱり、言えば良かったかな。・・・後悔しても遅い。
次の機会なら、きっと。
508四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:15 ID:Ko34c+6d
美里の家に着く。一分もかからない近さだ。用があれば便利な距離。
でも、もっと遠くても良いと初めて思った。
玄関前で美里が振り返る。薄暗くて表情はよく見えない。
何となく僕と同じ顔になってる気がした。後悔と、その下には期待。
「おやすみ、美里」
「おやすみ、ひろちゃん」
美里が見えなくなって、僕はため息をつく。
全く、どうしたらいいんだろう。・・・いや、布団に入ってから考えよう。
朝食の準備をしなければ。それから課題を済ませて、風呂に入ろう。
美里の事を考えるのはその後だ。
一番大事なことだっていうのに、何で一番最後にしなきゃいけないのか。


朝。目が開いて、深呼吸。
今日も何の変化の無いサイクル。
朝飯。授業。昼飯。放課後。夕日。
いつものサイクル。安定した一日。安心する、一日。
大丈夫。大丈夫なんだ。
不安ならどうにかしろ。当然の思考。どうにかなるなんて幻想。体験からの答え。
誰にも解ってもらえない。誰にも解ってほしくない。
誰にも──背負わせるなんて不可能。支えてくれるのも絶対無理。
それで良いんだ。僕は、その道を選んだ。
だったら、何故。
『プルルルル』
・・・電話だ。
『ええ?何で?ひろちゃん助けてよ』
何だか力が抜けた。緊張感の欠ける援護要請だな。
「美里、何?」
予想はつく。大方、
『揚げ物上手くいかないよ。こうして、ええ?』
だろうな・・・じゅうじゅうと音が聞こえる。
509四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:17 ID:Ko34c+6d
僕は無料サポートセンターじゃないぞと思いつつ返事をする。
「火、止めて待ってろ。すぐ行くよ」
昨日の失敗を取り戻す機会だと確信。今日なら、言えるか。
幸いにして親父と僕の晩飯は準備が済んでる。
そんなに長い時間はかからないだろう。親父が来るまでは時間もあるし。
とにかく行くか。
角倉家の玄関でチャイムを押す。
「入って!」
まだやってるらしい。
止めろって言っただろうに。火傷したらどうするんだよ。
引き戸の玄関はからからと軽い音を立てる。
中に入って、台所に行く。
髪を後ろで結ってる美里。難しそうな顔で失敗作らしい揚げ物を凝視していた。
「で、何?」
「ひろちゃんのみたいに、サクサクしない。何でだろ?」
周辺には使用する物がいくつか置いてある。
ふむ・・・そうだな・・・
「パン粉がちょっと少ないかな。あと油の温度、低い感じだよ」
コンロの火力を調節して、実践して見せる。
「・・・うわあ、ぜんぜん違う・・・」
赤いエプロンの美里が心底関心したと言葉で表す。
しかし。
「結構な量、作るつもりなんだな。二人でこんなに食べるのか?」
「うん、・・・多分ね」
その声音で解る。失敗したなぁ、と感じているのだろう。
丁度いいか。昨日の続き、出来るかもしれない。
「食えないならそう言えって。手伝うよ」
目を大きく開いて僕を見つめる美里。
「え?いいの?」
「いいの。んじゃ家から適当に飯とおかず持ってくるよ」
疑問を肯定に変えて返事にした。こいつの好意を無駄にはしたくないし。
510四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:19 ID:Ko34c+6d
揚げ物の数はやはり多すぎたけど、三人分にする事で普通の量になった。
僕と美里が作ったものを美里のお母さん、聡子さんにも食べ比べてもらおう、ということに。
「ご馳走様。美味かったよ」
「揚げ物、駄目だったでしょ・・・」
「そんに悪くはないよ。それに他は良かったっての。本当だよ」
二人で昨日の様に肩を並べて食べ終わる。
聡子さんの分以外はきれいになくなってしまった。
育ち盛りが二人も居れば当然かな。
さて。
昨日の、続きか。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
僕が話題を振る場面だ。どうにも不自然な雰囲気だけど、言うしかないんだ。
緊張する。もし、僕の一方的な感情だったら、・・・聞いてから判断する事だろ。
美里の顔を見ながらだと流石に言えない。何となく、という感じで言うんだ。
「なあ、美里・・・」
「なに、ひろちゃん・・・」
ごくりと喉が鳴る。・・・よし、言うぞ。
『がらがら』
「ただいまーぁ。美里、お客さん?」
・・・人生なんてこんなもんさ。そうとも。簡単に思い通りに行くかっての。
「・・・お母さん、帰ってきたね」
「・・・そう、だね」
どすどすと元気な足音。
さて。僕は立つ。すぐ後にショートカットの聡子さんが居間に着いた。
予想通りとの表情で聡子さんは言う。
「あらいらっしゃい」
「お邪魔してます」
言ってから頭を下げる。親しき仲にも礼儀ありだ。
聡子さんはにっこりと笑い、
「そんなのいらないから、ゆっくりしてていいの」
と鷹揚に応えた。
511四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:22 ID:Ko34c+6d
曇りのない笑顔だけど、僕に向けられた目には微妙な光が灯っている。
下心、見透かされてるな。絶対。
この母ありてあの姉あり、だな。
「珍しいわね、浩史くんがウチに来るなんて」
「私が呼んだの。揚げ物、失敗したから・・・」
美里が言いにくそうに僕がいる理由を説明する。
聡子さんは、んん?と首を傾げて疑問の顔で数秒止まる。
そのまま美里の揚げ物を口に入れた。
もぐもぐと咀嚼して飲み込む。数瞬して、またしてもにっこりと美里に笑う。
「こんな日もあるわよ。次は上手くいくって」
何回かは成功しているのか。この腕前なら納得できる話だけど。
「解ってるよぉ・・・」
頬を膨らませ、不機嫌な声で美里が言う。そんなに気にする事なのかな。
下手なら失敗しても当然だろうに。
ま、何にせよ帰るか。もう昨日の続きは無理だな。
聡子さんは着替えの為だろう、自室に戻っていく。
「じゃ、帰るよ」
家から持ってきた食器をお盆に載せる。
今日も駄目だったか。・・・仕方ない。落胆が大きくなる前に帰ろう。
「ひろちゃん」
お盆を持つと、美里が言う。
「次は、もっと上手に作ってみせるからね」
その顔は何か強い決意が漲っている。僕も、そうなって欲しい。
「そうだな、期待してるよ」
ゆっくりと美里は笑顔になる。僕だけの為の笑顔。どくん。跳ね上がる心臓。
見惚れそうになって無理やり目を逸らす。
もう幼馴染じゃ満足できない。
完全に想いを寄せる女の子になってしまった。
「?」
「何でもない。じゃあな」
別れの挨拶もそこそこに家に帰る。
全く、上手く行かないよな。
512四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:24 ID:Ko34c+6d


鳥居。このむこうに、みさとちゃん、いるかな。
すこしあるいてひとやすみ。すこしあるいてひとやすみ。すこしあるいてひとやすみ。
わかってるよ、かあさん。じかんがかかるけど、やれないことなんてないんだよね。
神社のしょうめんにあるブランコ。・・・いた。みさとちゃんがいた。


513四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:26 ID:Ko34c+6d
苦。苦。──苦。
苦。吸う、苦。吐く、苦。
くそ、苦、せんそく、発作、苦─苦。ついて、苦、ないな。・・・苦。
身体、起こさなきゃ。苦。吸う、吐く苦。
何時、苦、だろう。苦、苦、三時、半。苦、今日は、もう、苦寝れないな。苦苦。
ゆっくり、吸え。苦──ゆっくり、吐け。苦、冷静に苦、繰り返すんだ。
「は、ひゅーーぅ、・・・は、ひゅーーぅぅ、かはっ」
痰が出る。苦。ゴミ箱に捨て、る。苦。もっと出せ。出さないと、苦、楽にはなれない。
何度か痰を出す。はぁ、はぁ。少し、楽になった苦かな。
水が欲しい。苦、気管を湿らせて、痰を出したい。苦、苦。
まだだ。もっと、苦。酸素を貯めないと。とりあえずは、肺。
吐く。吸う。苦、苦吐く、吸う。もっと動けよ肺。
ようやく、脳が、思考がナメクジのように苦、動き始める。遅い。苦いらいらするなぁ苦。
違う。苦。絶対にそんなのは、正確じゃない。苦。本当、どうかしてる。
インターネットじゃ、く、苦。何だっけ、『ストローをくわえたまま息をする苦しさ』苦、
だったか、そんな例えをしてるけど、苦違う。馬鹿にしてるのか、それは。
そんなの、医学的な苦説明でしかない。気管の、苦、状態を例えているだけ。苦。
誰が例えられるか、こんなの。苦・・・苦。
腕も苦脚も、頭も、肺も苦。全部が苦酸素を失ってるなんて、どう言えばいい?
全身全霊で苦呼吸して、ようやく意識を失くさないで済んでる感覚って苦、的確な表現はあるのか?
まともに考える苦事も許されない苦状態で、どうしてそんな表現を苦思いつけるのか?
だから、理解されない。苦、どれだけきついかなんて、伝えられない。苦。
雨、降ってるな。
何で気圧の低下が、発作の原因になるんだろう。
水が欲しい。苦、まだだ。今、苦動いたら、手足に酸素を分けたら苦、肺を動かせなくなってしまう。
ちょうど四時半だ。何度か呼吸。
なんだ、もう五時半。早いぞ、時計。
514四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:28 ID:Ko34c+6d
でも、少しだけ動けるか。ああ苦そ、折角酸素、貯まったのに、使い切ってしまうな。
「ふ、っ!」
気合を入れてベッドから降りる。着替えて、台所に向かう。
「は、す、・・・は、すーぅ」
目が覚めた頃からは、楽にはなってる。といっても、毛の先程度だな。
たった数メートルを、何回も足を止め、何十回も呼吸して到着。
腕に酸素がまわるのを待って、水を飲む。
ごぼ、と大量の痰が出る。透明で、指で摘まんで持ち上げても切れない硬さ。
「は、あ、ふぅ、は、」
また一段階、楽になった。薬、飲まないと。
苦い薬。飲み終わってからも水を何度も飲む。
「はあ、ふう、ふ、う」
とっくに汗だらけだ。脚の筋肉は大した運動をしてないのに張ってる。ぎしぎしと動きが悪い。
腕も重い。味覚もろくに働いてない。
こんなだから、朝は簡単なものしか作れないようにしてる。
さて、もう一回動くか。親父の朝食、作らなきゃ。
515四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:30 ID:Ko34c+6d
親父が起きてくる。
「おはよう」
挨拶をしてくれるけど、答えるだけの活力は使い切ったばかりだ。
ソファに座って、頷くので精一杯。それを見ただけで親父は僕の状態を把握した。
「無理そうなら、休んでもいいんだぞ」
解ってるけど、そんな事はしたくない。
・・・?親父がいない。って、当たり前か、出勤時間はとっくに過ぎてる。
のろのろと冷えた食器を片付ける。今日は朝食の時間はないか。洗濯も無理らしい。
でも仏壇に線香はあげる。微量の香りが気管を通って、症状が悪化。
それでも、これだけは守らなきゃ。
身体を引きずるように部屋に戻って、制服を着る。
本日木曜一時限目、体育。見学、するか。
外に出ると、美里がこっちに歩いてくるのが見えた。
「おはよ、ひろちゃん」
「・・・・・・」
片手を上げて答える。声を出すのもきつい。
薬は飲んだけど、完全に収まってくれるのは昼頃、じゃないな。下校時間にはそうなるかな。
「ひろちゃん、大丈夫?」
美里は気付いている。病気の事も言ってある。
「ああ、・・・いつもの、事だよ。慣れてる」
そう。こんな事、何回もあった筈だ。
──何回目なのか解らないし、前はいつだったかな・・・最近もあっただろうけど、思い出せない。
「・・・行こ、遅刻しちゃうよ」
美里の言う通りだ。早く行こう。
516四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:32 ID:Ko34c+6d
「おーす、浩史」
「・・・、おはよう」
「・・・そっか。早いトコ教室行くか」
同級生で僕の状態を見定めることが出来るのは桂介と美里だけ。
普段とどのように違って見えるのかは知らないけど、聞いたところでどうにもならないだろう。
どすんと椅子に座る。ああ、疲れた。
いつもならどうでもいい話題を振ってくる桂介も、こんな日は静かなものだ。
助かるけど、気を遣わせてる自分が嫌だ。
HRが終わり、一時限目。
担当の先生に体調不良で見学したいと伝える。
「精神が弱いから、そんな病気になるんだ」
……何と言ったか。こいつは。
弱い、だって?ふざけるな。ただの思い込みだと言うのか。
そんな事で、あそこまでなってしまうと、言うのか。
「大した事ないんだろう。甘えるな」
頭にくる。頭にくる。
そうまで言うなら解らせてやろうかこの場で徹底的に容赦なく皮肉血骨髄液まで
一生涯忘れられないように毎夜悪夢として出るように。
こいつが、どんなに──
「俺からも頼みますよ、先生」
・・・桂介。
沸騰しかけていた脳が静まっていく。
「無茶させて救急車なんて、一番拙いのは先生じゃないですか?」
ちらと桂介を見る。その目も口調も真剣そのものだ。
また助けられた。『ダチに貸し借りなんてねーんだよ』とこいつは言うけど、
いつか、なにかをしてやらないと。
「ふん、休んでろ」
不機嫌なのを隠そうともせず、僕を体育館の隅に追いやる先生。
桂介は『してやったり』と会心の笑みを僕に見せて、休んでろと手で表現する。
精一杯の笑みで返事をする。後で礼を言わなくちゃ。
517四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:35 ID:Ko34c+6d
二時限目からは寝不足による吐き気との戦いも加わる。
対策には、水原が言った問いへの二番目の答、集中力を高めて押し出すしかない。
発作もまだあるけど、朝に比べれば少しは楽か。
さて、集中だ。授業の情報に意識を向ける。平時よりは動きは鈍いけど、まあ何とかなるかな。
雑音が五月蝿い脳。こんな時に普通に思考出来る幸せを思い知らされる。


昼飯の時間になった。
学食に行かず、購買にも行かず。
水飲み場でがぶがぶと喉を鳴らし、貯まってた痰を出し尽くす。
あー、・・・腹減ったな。やっぱり朝飯抜きは堪えるな。
今から学食に行っても席はないだろう。購買に至っては運動部連中の買占め政策で売り切れだろうし。
仕方ない。帰るまで我慢するか。
「ひろちゃん」
美里の声。背を伸ばして彼女に向きなおす。
「これ・・・」
おずおずと伸びた手にはパンが二つと缶ジュース。
「悪いな美里。ありがたく貰うよ」
行儀が悪いと知りつつ、その場で袋を開けて噛り付いてしまう。
うむ、美味い。『空腹は最高の調味料』とはよく言ったものだ。
一つ目を胃袋に収納し、美里の思い詰めたような顔に気付く。
「ひろちゃんはさ、・・・」
「何?どうかした?」
やや俯いて、続けた。
「今日、一緒に帰ろ。絶対だよ」
珍しく強い口調だ。何か話したいことでもあるのかな。
「わかったよ。そうだ、調べ物はもういいのか?」
「・・・うん、・・・校門で、待ってるから」
そこまで言った美里は教室に戻っていく。
残ったパンをジュースで流し込み、身体の状態を確認。
・・・ふう、八割方回復か。
後は眠気をどうやり過ごすかが問題。ま、いつもの事だ。
518四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:37 ID:Ko34c+6d
言った通りに美里は校門で待っていた。
教室から一緒にならなかったのは、人目を意識しての事だといいけど。
「お待たせ」
「うん、行こ」
暫くは無言で歩く。すぐにでも話してくれて良いのにな。
それなりの決意が必要とくれば、用件は限られてる。
僕から言い出すべきだったかな、この想いは。
この気持ちを伝えられるなら、言い出すのが美里でもいいだろう。
さっきまで降っていた雨で道路は濡れている。あちこちの水溜りに夕日が写っている。
空には赤い雲。僕の方もほぼ回復し、気分がいい。
「ひろちゃん」
やっとか。
「何?美里」
視線を送ると、ひどく思い詰めた表情だ。
つい理由を聞いてしまう。
「どうかした?」
「その、病気のことなんだけどさ、……」
ちょっと予想外。…いや、僕が期待し過ぎただけだろう。
「きっと大した事ないよ。ちゃんと───、……」
……。大した事ない。
お前まで、そんな言い方をするのか。
「───ゃん、聞いてる?」
うるさいもう口を開くな。
「どうしたの?何か言ってよ」
そうか。聞きたいか。なら言ってやる。
「何で、そう簡単に、否定するんだ」
美里の顔が強張る。ふん。聞きたいんだろう?
腕を掴む。じっくりと聞かせてやるから、そこにいろよ。
519四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:39 ID:Ko34c+6d
「知ってる。重い方じゃないってくらい知ってるよ。
 だから何だって?そう言い聞かせれば、少しは楽にしてやれる?
 心の持ちようで治るって?妄想だよ。馬鹿にするのもいい加減にしろ。
 ああ、確かに精神面の影響もあるだろうな。否定はしない。そういう病気だからな。
 で?僕がどれだけ苦しんできたか知ってるのか?
 どれだけの時間をこいつと過ごしたのか想像がつくのか?
 そうだよな、こいつの事を一握りだって感じた事ないんだっけ。
 ただの一回も、こいつで苦しんだ事ないんだよな。
 だから、簡単に否定するんだ。大した事ないなんて言えるんだ。
 こいつの苦しみを、全く想像出来ないんだ。
 僕の体験をなかった事に出来るんだ。
 僕の今までをなかった事にするんだ。
 言えよ。一体どんな理由で、僕を否定してるんだ?」
美里はうなだれている。謝罪か?遅いぞ。
「精神が弱い。そんな理由で、あんな事になるのか。
 ・・・そうか、美里は知らないんだよな。
 夏休みに親戚の叔父さんが死んだ。僕と同じ病気で死んだ。
 夜が明ける前、奥さんが気が付いた時には唇が紫色だったらしいよ。
 すぐ救急車を呼んだけど、間に合わなかった。
 僕もそうなる可能性はあるんだ。
 眠るのが怖いって感じた事、あるのか?
 朝、目が覚めるのが嬉しいって感覚は?
 噛み締めるように息をした事はあるのか?
 明日の存在そのものに不安を抱いた事は?
 僕の何を知ってるつもりなんだ。
 思い上がるのもいい加減にしておけよ美里」
さあ満足しただろう。何か言えるなら言ってみろ。
手を離す。美里の肩は震えていて、直後に背中を見せて走り去る。
がちゃりとアスファルトと衝突する鞄。見向きもしないで行ってしまった。
520四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:41 ID:Ko34c+6d
「何なんだ、くそ」
美里の鞄を拾う。と、ばさばさと中身が落ちてしまった。
授業で使う教科書、ノート、それに筆記用具。後は何だろう。
白い紙にびっしりと書かれた文字。手にとって目で追った。
「・・・何なんだ、くそ」
美里はあの言葉の後、何を言ったのか。
完治は無理でも軽くする事なら十分出来るよ、と言っていただろう。
それを証明する為の文字列。僕の病気についての出来る限りの情報が載っている。
「何なんだ、くそ!」
三度目の罵倒。馬鹿野郎。僕の馬鹿野郎。
美里の好意を蹴り飛ばしておいて、何してるんだ。
さっきの美里の顔。思い詰めた顔。
早く見つけて、謝るんだ。ありがとうって言わなきゃ。
そうしないと、あいつは馬鹿な事をするかも知れない──!
「くそ、どこ行った・・・っ!」
まずは美里の家だ。
は、はあ、はぁ。
息を弾ませてようやく着いた。暗くなり始めているのに、窓には明かりがない。
そして玄関前には足跡がない。いない、と判断するべきか。
「どこだよ美里、教えろ」
愚痴ったところで意味はない。次に行きそうな所は・・・
と、その前に。美里の鞄を側に置く。
僕の鞄も邪魔だ。素早く家に戻り、靴箱に置く。
「さて、どこだ」
美里と行った所。
美里と行きたかった所。
美里が行きそうな所。
出鱈目に走る。思いつく所に向かって走る。
「は、ひゅーーう、は、ひゅーぅ」
ああくそ、発作がぶり返してきやがった。
それでも走る。今、走らないとずっと後悔する。
521四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:43 ID:Ko34c+6d
「!、っと」
何も無い道路で躓く。転びはしないけど、脚が上がっていない証拠。
心臓がガンガンと五月蝿い。休む?馬鹿言え。美里に何かあったらどうするんだ。
後、美里が居そうな所ってどこだ。
美里。美里。みさと。みさと。
くそ、あたまに酸素がたりてない。思考がもやもやしはじめた。
ここは、そうだ一丁目だろ。しっかりしろ。
まったく、どこいったんだろ、みさとちゃんは。
「は、・・・かはっ!・・・ひゅーーう、はああ、ひゅーーぅ・・・」
なんでさがしてるんだっけ?まあ、いいや。探してから、かんがえよう。
みさとちゃん、と、はじめてあったところは、まだみてないよな。
こんなに暗くなるまで、なにしてるんだろ。
鳥居。このむこうに、みさとちゃん、いるかな。
すこしあるいてひとやすみ。すこしあるいてひとやすみ。すこしあるいてひとやすみ。
わかってるよ、かあさん。じかんがかかるけど、やれないことなんてないんだよね。
神社のしょうめんにあるブランコ。・・・いた。みさとちゃんがいた。
「は、・・・、は、・・・」
ちかくの木にせなかをあずける。もううごけない。
けどまあ、ぶじで良かった。これであんしんだ。
「・・・!──、・・・!」
みさとちゃんが、なにか言ってる。すぐちかくでなにか言ってる。
ごめん、もうすこし、やすませてくれよ。
そうしたらなんでもきいてあげるから。
あれ、いない?またどこかに行ったのかな。みず、のみたい。
「が、っぐ、うう!は、・・・!、う、ぐうう!」
くそ、やばい。アかしんごう。きけンとまれ。みズ。みず。
キカンがかたまる。たんがデナい。うまる。うまってしまウ。
クウキがなんのていこうモなくいったりきたり。
いとみたいなくうきガおうふくしてるだけだ。はいなんてうごくハズがない。
・・・なんで、いきてるんだろ。
522四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:45 ID:Ko34c+6d
「ぁ、・・・っ、ぅ、──、・・・」
かたまった。かたちをカエナイ。でない。
あとは、うまる、だけ。
──、おわる、らしい。
くるしいのが、おわるのかな。
なら、いいや。
やっとおわる。おそすぎだろ。
なんで、もっとはやく、おわらなかったのかな──
「   、・・・!──!!」
・・・みさとちゃん、もどってきた。ペットボトルをみっつもモってる。
蓋をねじって、ぼくにおしつける。さすがみさとちゃんだ。わかってるな。
ごくり。がは、ごくごく。げほっ、げほっ。は、ふう、ふ。
くうきが「は、ああ!」気管をとおる。よし、「げほっ!」その調子だ。
焦るな、ゆっくり「が、・・・はあっ!」広がってくれよ。
・・・今、何時だろ。「はあぁ、・・・があっ!」美里の身体、冷えるな。
早く、帰さないと。
「ひろちゃん!何で?何でこんなに無理したの!?」
何でって、・・・何でだろ?
探してた理由。それは。
「好きな女の子が、自棄になりそうなのを、放って置けないだろ」
ああ、頭が、回らない──
「僕の所為で美里に、何か、あるなんて、許せるもんか。
 僕はどうなってもいい、んだ。僕が美里より先に、消えるのは当たり前だ。
 当然の事なんだ。でも、僕より先に美里が、いなくなるなんて、許せない。
 絶対にそんな事に、なっちゃいけないんだ。
 ・・・うん、何もなくて、良かった。本当に、良かった」
がしがしと美里の頭を撫でる。何もなくて良かった。
あとはどうでもいい。僕はちょっとやばいところだったけど、美里が無事ならそれでいい。
三つ目のペットボトル・・・コーラだったのか・・・に口をつける。額の汗を拭う。
膝が揺れてるな。ま、こんなに走ったのは久しぶりだからな。
523四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:47 ID:Ko34c+6d
「は、すーー、はああ、すーーぅ」
肺がすこしは広がってる。良し、四割、回復。
美里のおかげだ。僕ひとりだったらどうなってるか解らなかったな。
さて、ゆっくり歩くくらいなら出来る、はずだ。
「帰ろう、美里。身体、壊すよ」
「まだ休もうよ、ひろちゃん」
美里、そんなに不安な顔するなって。
「いや、大丈夫、だって。お前に、何かあったら、いけない」
空のボトルをゴミ箱に捨て、美里の手を引いて帰る。
・・・やっぱり冷えてるよな。僕の所為だ。
524四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:49 ID:Ko34c+6d
「え?美里?」
玄関前で別れたはずの美里が、家の中までついて来る。
「本当に、大丈夫なの?」
余程不安らしい。安心するまで帰ってくれないようだ。
「・・・大丈夫、だっての。美里の、おかげだよ」
何度も痰を出してから薬を舌に乗せ、口の中で水と混ぜて一気に飲む。
・・・眠い。今朝の寝不足がやってきた。眠気を感じる程に回復してるんだから、心配はない。
でも、寝るにはまだ早い。ちゃんと回復してから寝ないと、また発作が起こるかもしれない。
ああ、そうだ。
「美里、ひとつ、だけ頼んでもいいか?」
「何?ひろちゃん」
居間に戻りながらの受け答え。
「今から、寝るからさ、十五分くらい経ったら、起こしてくれよ」
「大丈夫、なの?」
「うん、他の人はどうなのか、知らないけど、収まりかけてる時に、ちょっとだけ寝ると、
 随分楽になれるんだ。頼むよ、美里」
ソファに腰を下ろす。横にはなれない。横になるにはまだ厳しすぎる。
「・・・解った」
美里も左に座る。幾分ほっとした顔だ。もっと安心させないと。
黒い髪を撫でる。
「悪いな、美里」
背もたれに身体を預けて力を抜くと、すぐに意識が消えた。
525四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:52 ID:Ko34c+6d
「・・・ちゃん。時間だよ」
「ん・・・、ああ、サンキュ」
吸う。みしみし。肺が平時と同じく膨らむ。
空気が引っ掛かる感覚は僅かにあるけど、それでも八から九割、回復。
とはいえ、咳やくしゃみで七割程度には落ちるかもしれないけど、もう安心。
「すーぅ、はぁぁ」
全身に酸素が渡ってる。きりきりと脳が回転している。全身の筋肉が張ってるのは
当然だろうな。いつもの事だ。
「──え、」
・・・手を、握られている。美里の両手が、僕の左手を。
美里が何かを祈るように下を向き、沈黙している。
さっき神社前で言った言葉がじわじわと思い出される。・・・ぐあ、しまった。
「美里、さっきの、その、ええと」
くそ、もっとちゃんと言うつもりだったのに、何であんな状況で言ってしまったんだ。
時間と共に顔が熱くなる。心臓が高鳴る。今、言い直すのか?凄く格好悪い事じゃないか?
「最低、だよ」
絞り出すような、美里の声。
「何で、あんな事、言うの?」
見れば、その細い肩が震えている。
「やっと両想いなんだって解ったのに、何でひろちゃんは私より先に居なくなるなんて言うの!?
 ずっと居てよ。お願い、いなくなっちゃ嫌だよ!いつまでも一緒に居てよ!」
驚いた。
こんなに感情を出す美里は初めて見る。言葉も真っ直ぐで、とても──僕の芯を揺さぶる。
「美、里」
何て返せばいいのか解らず、それでも名前を呼んでしまう。
ゆっくりと美里の顔があがる。瞳が濡れている。頬も僅かな赤みを帯びていて、僕は右手を
美里の肩に伸ばしていた。
美里も身体を乗り出してくる。この後にする事は、ひとつ。
どちらからともなく唇を重ねる。柔らかくて、温かい。
離れると、美里は更に赤い顔で目を逸らしている。
恥ずかしさと、嬉しさと、期待で染まった表情。僕は衝動に抵抗しきれない。
しなやかな身体を思いっきり抱きしめる。
526四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:54 ID:Ko34c+6d
はあ、と。美里の息がゆっくりと肩を撫でる。その小さい手も背中を伝う。
女性を表すふくらみが胸に当たっていて、ぞくぞくと本能がくすぶる。
その熱を受けた僕は、無言で美里を押し倒した。
きれいな脚。スカートの皺。ほっそりとした腰。
微かに上下する胸のボタン。受け入れるために開かれた腕。この先を促す、閉じられた瞳。
・・・・・・・・・駄目だ。
惜しいけど、悔しいけど、身体を離す。
「ひろ、ちゃん・・・」
美里を正視出来ない。
気持ちはこんなにも盛り上がっているのに、応えようとしない身体の状態。
今ほどこの病気を恨めしいと思った事はない。
くそ、今を逃がしたら、次はいつなのか。
「今日は、遅いから、帰った方がいいよ。・・・親父、帰ってくる時間だ」
美里の期待を裏切った。この事実は間違いない。
本当に自分を叩き潰したくなる。
「解ってるから、・・・そんな顔、しないでよ」
身体を起こした美里が、さっきと同じように手を握る。
理解してくれているのは嬉しいけど、それでも心が晴れる訳がない。
「でもな、・・・」
「私は、いつでもいいんだから、・・・ひろちゃんがいいって思ったら言ってよ。
 ・・・その、私、だって、したいんだから・・・」
聞くだけでこんなにも恥ずかしいんだから、言った美里は文字通り茹でたように真っ赤に。
・・・そうだよな。美里も、同じ気持ちなんだよな。
「うん、解った。・・・僕も早く、美里を抱きたい」
僕も素直に言った。紛れもない本音を、正面から。
「…待ってるからね、ひろちゃん」
ほんの少し照れ笑いをしながら美里は返事をしてくれた。
その後は手を繋いで美里を家まで送った。何も言う必要はない。手の感触だけで
十分に心が通じている。
玄関先で見せてくれた美里の笑顔は、一番可愛いものだった。
527四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:56 ID:Ko34c+6d
「おっす」
「おはよう、ひろちゃん」
いつも通りの朝。いつも通りの挨拶。
そして、いつもと違う感情。
お互いに表情を盗み見しあう。普段のように動こうとしても相手を意識してしまい、
うまく次に移れない。
・・・よし、やってやる。
無言で美里の手を掴み、学校に向かう。
「ひろちゃん、ちょっと・・・」
美里の顔なんて見なくても解る。こうして手を繋いでの登校は初めてだから、
恥ずかしいのは当然だよな。僕も、同じ。
「美里」
「え、何?」
足を止めて振り返る。
・・・あ、顔、やっぱり赤いな。
「今日はしないから、安心、じゃないな、がっかりしないでくれよ」
「・・・そうだよね、昨日の今日だもんね・・・」
昨日の事を気にしてるのかな。美里がいたから助かったのに。
だから、今約束する。
「明日だ。絶対に明日だ。いいな?」
「う、ん。解った」
「明日は土曜だろ。時間、あるし」
「・・・・・・!、・・・・・・。──、・・・・・・・・・」
驚いて、恥ずかしがって、俯いて、上目使いで覗く。
くそ、可愛いぞ。こんなに可愛いのは反則だろ。
これ以上話してたら間に合わなくなってしまう。
「ほら、行くぞ」
僕は美里に背中を見せて歩く。手は繋いだままだ。
校門を通ってから何やら視線が集まってるけど、気にしない。
下駄箱に着く。美里を見ると、はにかみながら『ばいばい』と小さく手を振って行ってしまった。
528四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 13:58 ID:Ko34c+6d
あー、いいな。こういうの。
緩みそうな顔を固める。一応ポーカーフェイスで通してきたから、そのイメージを壊すのは
何となく避けたい。
ふと悪寒を感じて横に身体を移すと、両腕を突き出した桂介が後ろから通り過ぎた。
「んだよ。ノリ悪いぞ浩史」
言いながら僕に向く桂介。
「不意打ちしてその台詞はなんだよ」
男に抱きつかれて嬉しいと感じる人じゃないぞ。
そう言おうとした矢先、桂介の眉毛が片方だけ釣りあがる。
「どした?何かいい事あったか?」
お前に言うかっての。
「ないよ」
「バレてるんだから嘘吐くなって。ま、内容は訊かないでやるよ」
にやにやと意地の悪い笑みだ。言い返してやらないと気が済まない。
「頼まれても言わないよ。安心しろ」
けけけ、と奇怪に笑いやがるし。くそ。

放課後。
毎度のように何かと誘ってくる桂介だけど、今日はさっさと帰ってしまった。
そんなに解るものなのかな。・・・自分で考えて答えが出る問題じゃないな。
今日はちゃんとした晩飯、作らないと。昨日は結局時間がなくて店屋物にした。
朝飯だって簡単すぎる物だったし。
やっぱりそれなりの物でないと駄目だな。腹が持たない。
「帰ろ」
美里の声。
529四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:00 ID:Ko34c+6d
その顔は皆に見せてる明るいものだ。その筈なのに、何となく特別な表情に見えてしまう。
正直言って、誰にも見せたくない。
「帰るか」
僕は短く答え、一緒に教室を出た。
生徒玄関を過ぎた所で合流。歩き始める寸前に、ふわりと手を握られる。
・・・うん、まあ、いいか。
僕たちは無言で歩き始めた。
何回か口を開きかけて、止める。何も言わなくてもいい。そんな滅多にない静けさを
大事にしたかった。例えどんな話をしても、結局は明日のことに辿り着くだろうし、
そうなったら本当に何も言えなくなってしまうだろう。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
家の前に着く。美里の家もすぐそこだ。
足を止めて美里に顔を向ける。穏やかな目で僕を見つめている。
少し手に力を込めて言う。
「じゃ、また明日な」
「・・・あ、そうだ」
今まで忘れていた、と美里が言い出す。
「明日って、お父さんは休みなの?」
言ってなかった、な。うっかりしてた。
「休みじゃなかったら約束してないって。残業ないから親父が帰るのは、六時過ぎだよ」
学校が終わって帰れば一時。大体五時間。
ゆっくり、できる。
う、顔が熱くなってきた。
「う、ん。・・・じゃ、明日」
美里も頬を染めながら言い、ばたばたと帰ってしまった。
明日か。・・・いや、今日は今日のことを考えよう。
まずは晩飯か。
530四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:02 ID:Ko34c+6d
晩飯は昨日の不手際を挽回すべく量と質を両立させた。
あとは寝るだけだからそんなに豪勢にする必要はないとの説はあるけど、
やっぱり晩飯くらいはがっちり食いたいものだ。
しっかり食ってしっかり寝る。精神的な安定にはこれが基本だと思う。
風呂からあがり、あとは朝飯の準備と学校の課題を終わらせれば今日はおしまい。
もうすぐ親父が帰ってくる時間だな。
『プルルル』
受話器を取る。
『私』
「美里か。飯なら食い終わったけど」
流石にこれ以上は食えないぞ。
『そうじゃなくて、今から、会いに行ってもいい?』
「・・・え?」
会いに来る。他の用事はなくて、ただ会いに来る。
生まれて初めての出来事に上手く返事ができない。
断るつもりなんて微塵もないけど、どう肯定していいのか。
『行くね、ひろちゃん』
僕の言葉を待たずに美里は電話を切る。
…来るって、本当に?僕に会う為だけに?
『ぴんぽん』
来ちゃったよ、おい。…こうなったら成り行きに任せるしかないのかな。
玄関に足を運ぶ。
「今開ける」
開錠。かちゃ、と軽快な音でドアが開く。
一見して解るくらいの普段着で美里がいた。服の所々が傷んでいて、しかも
靴下にサンダルという警戒心のなさだ。
『ちょっとそこまでお買い物』どころじゃない。どう見ても『家族だから構わないよ』
との意思表示。表情も演技なんかじゃない、ごく自然な笑顔。
美里にとって僕がそういう存在になっている証拠。明日はもうひとつ向こうの関係になる。
「入っていい?」
「あ、うん」
531四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:04 ID:Ko34c+6d
我ながら気の抜けた返事だと思うけど、美里は意に介さずにあがって、僕に抱きつく。
「あは、ひろちゃん、だ」
胸元には黒い髪。背中には小さい手がふたつ。美里の香りが、酸素と一緒に全身に沁み込む。
美里が、僕の腕の中にいる。
とっくに理性は揺らいでいる。なんとか抑え付けようと力を入れても、美里を抱く腕が余計に
力強くなるだけだ。揺らぎはひどくなる一方。
──このまま、したくなる。明日の予定、今に変えるか。
さらり。黒い艶が流れて、赤い頬になる。潤んだ目になる。魅力的な唇になる。
申し合わせたように口付け。何度も何度も、軽く触れ合わせる。
満足したらしく、再び僕の胸に顔を埋めて熱い息を吐く美里。
熱い。何が熱いって、僕の気持ちが。美里は満足だろうけど、こっちはその先に進みたくて
しょうがない。
「明日だよね」
その通りだけど、・・・くそ。美里との約束を破る訳にはいかないだろ。
今日は我慢。
「そうだな。明日だ」
美里が顔を見せて言う。どうにかしたくなるくらいに可愛い笑顔だ。
「ひろちゃんは、・・・初めてだよね?」
面と向かって言う台詞かよ。・・・まあ、あんまり正直に言うのも何だか格好がつかない気がする。
「そりゃ、まぁな」
「・・・、よかった」
その笑顔が眩しい程の明るさになって、さらに恥じらいの色が加わる。
何だろう。美里はそれきり黙ってしまい、僕はそれでも待った。促す必要なんてない。
美里の準備が出来るまで待とう。
「私も、初めてだから・・・」
うん、まあ、そうだろうな。美里が僕以外の異性と親しくしてる所なんて見た事ない。
女友達は随分居るようだけど、それがかえってよかったのかな。
「それでね、ひろちゃん・・・その、なんにもつけないで、して欲しい」
532四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:07 ID:Ko34c+6d
・・・それは。
「ちゃんと、中で、して欲しいの」
駄目だろ。
それだけは、駄目だ。
「美里、駄目だよ。そういうのは、ちゃんとしないと」
責任が取れる環境じゃない。責任を持てる段階じゃない。
責任を取れる、持てるようになってからする事だろ。
「・・・そういう、お薬、あるから、・・・」
「絶対じゃ、ないだろ。美里、僕は、」
「お願い。初めてなんだから、ちゃんとしてよ。お願い・・・」
目も声も震えている。
僕は──断れない。こんなふうにお願いされるのは、間違いなく初めてだ。
つけないでしたい、というのはあるけど、それ以上に美里の願いを叶えるべきだと思う。
「解った」
「・・・うん!」
さっきの眩しさが戻った。よかった。美里の暗い顔なんて二度と見たくない。
っと、そろそろ時間だな。
柔らかい身体を離す。手だけを握って、僕は言う。
「じゃ、また明日な、美里」
「うん、ばいばい」
別れ際にもう一回接吻。僕たちは無言で手を振り合って離れた。
明日、この指が美里の肌に触れる。唇だって今日とは違う場所に這う。
思考の熱が冷めない。落ち着け。まだその時じゃないぞ。
『かちゃ』
「ただいま」
親父が帰ってきた。ドアを閉めず、外に視線を向けたまま言った。
「今の美里ちゃんだったよな。ちょっと見ないうちに、随分女の子らしくなったなぁ」
振り返った目には優しさがあった。僕とは小さい頃からの仲だ。親父も近所の子供以上の
親しみを感じるのは無理もないことだ。
「うん、そうだね」
明日には『女の子』から『女』になるし、そうするのが僕で、…いかに親父とはいえ、
それを話すのは躊躇われた。
533四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:09 ID:Ko34c+6d
まじまじと僕を見据える親父。感慨深げな表情だ。
ふ、と小さく笑って靴を脱ぐ。
「しっかりな」
昔からの口癖を僕の肩を掴みながら言う。親父の期待を裏切ることはしないつもりだ。
「解ってるよ」


「あちゃ、やっちまった」
火加減、失敗。微妙に納得出来ない程度の焦げ目がついてる。
「浩史、どうした?」
親父が言いながらテーブルに着いた。
「失敗した。今日のは美味くないかも」
親父は飯の出来にあれこれと言う人ではないけど、だからといってまずい物を出すのは
僕が納得出来ない。
「食えるんだろ?なら文句はないさ」
いつものように箸をつける親父。
失敗の理由なんて決まってる。
意識するなと思えば思う程、意識してしまう。
一応の計画としては、昼飯食って一息ついてから、のつもりなんだけど、
上手くいくだろうか。
いや、あまり考え込んでも駄目か・・・細かい所はその場で判断するしかない。
親父が出勤し、毎度の作業をこなして僕も出た。
「おっす」
「おはよ」
挨拶は出来たけど、その後は目を逸らしてしまった。
こいつの顔を見てるだけで、他の事がどうでもよくなってしまう。
「行こ」
手を取られて歩く。美里はきっと笑顔だろうけど、見ない事にする。
見たら、・・・多分、家に連れ込んだだろう。
そして、そのまま。
全く考えない展開ではないけど、やはり最低限の日課は済ませるべきだろう。
生活のサイクルが狂えば、他の事も上手くいかない気がするし。
534四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:11 ID:Ko34c+6d
「ひろちゃん」
いつの間にか生徒玄関。
美里を見ると、少しだけばつが悪そうな表情。
「?どうした美里?」
「授業終わってから、ここで待っててね。すぐには来れないと思う」
土曜の放課後。・・・だよな。友達の多い美里だ。そういった誘いは
僕とは比べ物にならない数だろう。ひとつひとつを断るだけで結構な時間を要するのは
当然かな。
「了解」
笑いかけながら承諾する。これまた写真に撮りたいくらいの笑顔が返ってくる。
心の緊張がやっとほぐれてくれた。


誰もが軽い足取りだ。
生徒玄関から校門までを明るい喧騒が埋め尽くしている。
放課後は大抵こんな感じだけど、土曜となれば殊更賑わう。
眩しい。手が届かないもの。届かないと知っているもの。そうするべきだと決めたもの。
だったら見なければいいだろう。だから、見ているのか。
「ひろちゃん」
声に振り返ると美里が少し息を切らせて立っていた。
「早かったな。もっとかかると思ってたよ」
手を握って歩き出して、会話。
「うん。ちょっと無理して来た」
「大丈夫なのか?仲が悪くなってもいいなんて考えるなよ」
「大丈夫だよぉ。いっつも聞く側なんだよ。偶に断るくらいなら平気だよ」
「ならいいんだ、うん」
周囲に振り回されてる印象はないか。大人数との付き合い方を心得てる様だし。
・・・本当にあの頃とは違う。ひとりでブランコに乗ってた気弱な子が。
変われば変わるよな。
535四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:13 ID:Ko34c+6d
「で、これからどうするの?」
美里の問い。あー、感情の熱が上がってきたな。まだ抑える所だろ。
「飯食ってからだ」
簡潔に答えた。言葉を重ねる程、口が止まらなくなりそうだ。
「・・・うん、そうだね」
美里も感情を冷ましているのだろう。声が小さい。
僕の立てた予定に肯定してくれてるようだし。後は、その衝動をどうやって
やり過ごすか、だな。
家の前に着く。でも手は離さない。
一度だって帰すつもりはないと意思表示する。
美里は、僕を正視していなかった。離さない手に熱のこもった視線を向けている。
表情ははっきりと何かを表していないけど、期待してくれているのかな。
目だけが僕に向いて、美里は頷いた。

美里を家に入れて、ドアを閉じる。
落ち着け。落ち着け。まずは昼飯だろ。落ち着け。
靴を脱ごうとしている美里。やや前屈みの後ろ姿。
「……、──」
…これが、我を忘れるってやつなんだな。初めてだ、こんなの。
一瞬だけ頭が空っぽになって、気が付けば美里を後ろから抱きしめていた。
両手はへそのあたりに。鞄は多分その辺に落ちてるんだろう。
美里の香りに昂ってしまう。計画なんて破棄だ。
「ずっと、美里の事、考えてた」
僕はありのままの本音を口にする。
「ん、は…ひろちゃん」
苦しそうに身をよじる美里。…何してるんだ、僕は。
勝手に先走ってどうする。ちゃんとしてやるって決めてただろ。
「…ごめん」
腕を緩めて美里を楽にする。
536四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:15 ID:Ko34c+6d
美里は鞄を靴箱に置いて、
「正面から、してよ」
言葉通りに僕の胸に顔を埋めた。僅かに覗く耳は赤い。
嫌がってない。だったら、このまま。
美里の顎に手をあてて上を向かせ、口付けた。
…物足りない。もっと深いところまでしてもいいのかな。
舌の先で美里の唇を突いてみる。
「っ!」
びくんと跳ねる身体。やっぱり、早すぎだった。
一旦離れるか。
「っ…、美里?」
離れる瞬間、ちろりと舐められた。僕の、唇が。
興奮を隠そうともしない美里の顔。
「私も、してみたい」
なら、しよう。
537四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:18 ID:Ko34c+6d
小さい背中を抱き寄せながら唇を重ね、舌を伸ばす。
美里の柔らかい唇を押しのけて、歯に当たった。
「ん、っ!」
だんだんと開く口。
待ちきれずに突き入れる。湿った美里の舌が触れた。
途端に引っ込んでしまったけど、すぐに戻ってくる。恐る恐る僕のに触れて、
止まる。安心させてやりたくて、じっと我慢。
少ししてからゆっくりと触れ合う面積が広くなる。きゅ、と撫でられる感覚。
限界、だ。
「ん!っふ!あ、む!」
誰も触れた事がないところに、誰も触れた事がないものを擦り付ける。
性交と何の違いがあるんだろう。その、本番だって同じように濡れているモノを
くっつける訳で、・・・だから、もっとしたくなる。
背にあてていた手を動かして、尻と胸に。
「んん、ぁん、…は、んく」
胸の中で悶える美里。
制服の上からでもこんなに感じてくれている。本当、我慢の限界。
強く揉む程、艶声は大きくなる。
しわが付いてしまうだろうけど、止めない。僕が触れた証拠をもっと作るんだ。
「んぁ…くぅ、ん、あぁ…ん」
首に何度も着地する唇。尻の谷間に指が食い込む。胸にある下着の感触。
もどかしい。直に触れたい。何だって服が邪魔してるんだ、くそ。
『がたん』と鞄を蹴飛ばす音で、思考の熱がやや下がった。
顔を離して美里を見る。高揚した頬と、潤んだ瞳。
前哨戦はこれでお終いだ。次の本戦は布団の上でしなきゃ。
538四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:21 ID:Ko34c+6d
『ぐううきゅるるううぅぅううう』
…最悪。
偶には譲れ、食欲。我も三大欲の一角ぞ!なんて主張は解るけど、時を選べっての。
くすくすと美里が笑い出す。
いや、可愛いんだけど、…この腐れ胃袋め。
「こんなの、考えてもいなかったね」
あははと心底可笑しそうに言う美里。全く・・・何だか、気が抜けてしまった。
「こんなことも、あるんだな…ったく。飯、何でもいい?」
無念さを誤魔化して僕は言う。
「何でもいいよ。美味しく作ってよ」
「おし、まかせろ」
そうして僕達はやっと靴を脱いだ。


飯を一緒に食べる為に家へ入れた訳じゃない。
ということで、手っ取り早く出来上がるチャーハンにした。
美里は大人しくテーブルについて、テレビを見ている。
バラエティー番組らしい。派手な笑い声が響き、大した内容ではないのだろう、
美里は落ち着いた表情でくつろいでいる。
──美里。さっきの、僕の胸で喘ぐ美里。これから、・・・いや、止めよう。
昼飯の完成が先だ。美里のことはそれから。
「はいお待たせ」
二人分のチャーハンをテーブルに並べた。
味噌汁も出して、他のおかずは朝の残り物だ。
「いただきます」
それからは終始無言で食べた。話題ならなくもないけど特別過ぎて話せない。
つまりは、これからの事しかないのだ。
いや、それは僕の考えだ。美里はどう思ってるのか。
「ごちそうさま、ひろちゃん」
「お粗末様」
硬く、そのくせ濃密な雰囲気を感じながら、食器を台所に運ぶ。さてどうするか。
ボウルに食器を入れて水を貯める。
539四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:23 ID:Ko34c+6d
やっぱり、あのまました方が良かったのかな。こうなると上手い具合にきっかけが
作れない。
『ざぶざぶ』
ボウルから水が溢れる。こんなふうに簡単に感情を溢れさせる事が出来たら
楽なんだろうけど、一度抑えた感情はなかなか溢れ出してくれない。
小さい頃からの癖。感情の変化すらも発作のきっかけになりえるから、常に冷静に。
面倒だとは思わない。残念だとも思わない。
とっくに慣れているし、身を守る為でもあるし。
『ざぶざぶ』
…洗うか。水に触れて少しでも頭を冷やせば何か思いつくだろう。
一歩踏み出そうとして、動けない。シャツを背中から引っ張られてる感覚。
見なくても解る。引っ張ってる美里の顔はきっと必死なんだろう。
ちゃんと、答えてやりたい。
水を止めて振り向く。予想通りに俯いているけど、その姿が訴えるのはひとつだけ。
しよ、と。無言で伝えてくる。
「ちょっと待ってろ、美里」
誰にも邪魔なんてさせない。これからは二人だけの時間にするんだ。
玄関に足を運んで、施錠。ついでに電話線も抜く。
僕の行動を見ていた美里は、より不安そうに期待を高めたようだ。
落ち着かない顔で、所在なく両手を組んで立ち尽くしている。
…僕を、待っている。こういう時は男が動くものだろう。
少しでも緊張を和らげる為に笑いかけて、手を取る。
美里も笑ってくれた。
540四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:25 ID:Ko34c+6d
『ぱたん』
僕の部屋の唯一の出入り口が閉じる。
ばくばくと心臓が連打している。抑えようにも方法がない。
脳への血流も格段に激しいのだろう。正気を保ってるのが不思議なくらいに頭が熱い。
初めてなんだから、多少の不手際は覚悟すべきだろう。
・・・・・・──、・・・よし、やるぞ。
思い切って振り返る。
「ひろちゃん」
先手を取られたけど、やり直しなんて不可だ。
とにかく、・・・どうする。
ぐ、と抱きつかれた。黒髪が僕の胸にある。この体勢、さっきの──
「もう一回、してよ」
「・・・解った」
顎に手を当てて、上を向かせる。
とっくに加熱している頬が可愛い。期待してる瞳も。
「ん・・・」
唇を重ねて、すぐに赤い舌を結んだ。
541四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:27 ID:Ko34c+6d
ぐちゃぐちゃに唾液を混ぜあう。二度目だから、どうすれば深いところまで
触れ合わせられるのか、何となく解る。
「は、ん・・・ふは、ん・・・、・・・ん、ぁ・・・」
ドアに美里を押し付け、さらに続行。
唾液が垂れる。追うように唇を外して、首筋まで遠征。
「ふぁ、あ・・・は・・・、っ、やぁ、ん!」
口なんかじゃ足りない。僕の全身で美里の全身に触れたい。
戻して舌を絡ませて、美里の制服のボタンを外す。
「っ!んん!あむぅ・・・は、んん!」
羞恥の声が出そうになる度に、口を塞ぐ。
脱がせる方だって恥ずかしいんだ。一度でも止めたら、続かなくなってしまう。
ぷちぷちと全部外し、開いた上着の中に両手を差し入れてゆっくりと揉む。
「んん!・・・あぁ、ん・・・く、ふぅ・・・ん」
口を離して手の動きに集中する。
美里は目を瞑って胸を突き出して、僕の拙い愛撫に酔っている。
ひとつ揉む度、悩ましげに眉の形が変わって、艶かしいため息が喘ぎ声と一緒に出てくる。
シャツの上からなのに、こんなに乱れている。もっと触れたい。
片手を離して、スカートの中に。足も絡ませて、唇で耳をこねる。
どこも柔らかい。女性の身体。
僕の性器だってとっくに充血してる。本来の役目を果たせる状態だ。
それを知って欲しくて美里に押し当てる。
「──っ!、ひろ、ちゃ、ぁん!」
小さく叫ぶと、急に力が抜けた。
「ん、あぁぁ…、ん…」
甘い声と共に腕から抜け落ちて、ぺたりと床に座ってしまった。
「美里?どうした?」
「ひろちゃん、すごい、上手…」
惚けた顔で、そんな事を言う。
542四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:30 ID:Ko34c+6d
こっちはただ必死だっただけだ。優しく出来たかどうかも解らない。
視線の高さを合わせて訊いてみる。
「そんなに、よかった?」
「…うん、立っていられなかった。…気持ち、よくて」
色っぽい笑顔で答える美里。
ここで、気持ちいいと言ってくれたところで終われたらいいんだろうけど、
まだ先がある。痛い思いをさせなくちゃいけない。
それを考えると気持ちが萎えそうになるけど、ちゃんと最後までしよう。
美里との約束を守るんだ。
「立てる?」
言いながら手を伸ばす。美里は笑顔のまま頷いて、僕の手を取って立ち上がった。
そいて後ろにあるベッドに視線が向く。
美里も最後までするって言っている。・・・躊躇う必要なんてない。
「服、脱ごうな」

流石に脱ぐところを見られるのは恥ずかしいらしく、さっさとパンツ一丁になった
僕に、ベッドに座って目を閉じてて、と美里は言った。
布が擦れる音が何度かして、僕のすぐ隣に美里が座った。
ベッドが軋む音が響き終わって、数秒して美里の声。
「いいよ、ひろちゃん」
「ん」
目を開けて美里を見る。
僕と同じく一枚だけ下着を着けている。形のいい胸。
それとは場違いな程、落ち着いた微笑みを浮かべている。
「ずっと前から、こういうふうになりたかったんだよ、ひろちゃん」
その告白に、頭が真っ白になる。
「あ、・・・うん」
気の利いた返事が出来ないけど、そのくせ馬鹿なことを言ってしまった。
「美里は、落ち着いてるな」
こっちは未だに心臓が鳴りっぱなしだ。
「・・・そんなこと、ないよ」
その顔に、赤みが戻ってくる。瞳に日の光が反射して──
543四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:32 ID:Ko34c+6d
って、
「カーテン、閉めるの忘れてた」
慌てて閉めてベッドに戻る。・・・思わず、苦笑い。
「こんなのばっかりだな」
何をするにも邪魔が入ってしまう。
今度こそは、と思っていても上手くいかない。
ふふ、と小さく笑った美里。僕の手を握って言う。
「これからは、何があっても無視しようね」
「・・・そうだな」
何回しても飽きない軽い口付けと、何度しても気持ちいい深い接吻を
しながら押し倒した。
さらりと広がる艶のある髪。上気した顔。うん、すごく、
「可愛い」
正直に言ってしまった。
今度こそ夕日のように染まった美里。
何かを言おうとして口をぱくぱくさせて、ようやく声を出す。
「・・・ばかぁ」
いや、それも可愛いんだけど。
つられて顔が熱くなる。ちょっとしたやりとりで下がっていた興奮にも飛び火して、
無言で抱きしめてしまう。
「は、ぁ・・・」
美里の鼓動が伝わってくる。とくんとくん。
僕のもきっと伝わっているだろう。すこしの間、お互いの鼓動を確かめ合って、
赤い頬に口付け。
気持ちが盛り上がってきた。美里は、どうだろうか。
「美里、いい?」
「いいよ、ひろちゃん」
幾分余裕が出来たらしい。声もしっかりとしている。
美里を見つめながら鎖骨に唇を這わせ、舌で唾液を塗りつける。
その心を昂らせたくて、意識して音を立てた。
544四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:34 ID:Ko34c+6d
ぬちゃ、くちゃり。
「んん、…ぁ、ん…」
所謂性感帯ではないところ。骨を直接愛撫するのに等しいけど、
それでも感じてくれている。
「何か、くすぐったい感じ・・・ぅ、ん」
つるつると薄皮を撫でながら喉元、そして胸の谷間へ。
喘ぎが少しずつ早くなっていく。膨らみに到達するのを待ちわびているのだろうけど、
まだしない。
胸の上下がさらに加速する。薄く目が開いたかと思うと、僕の首に腕が巻きつく。
「ひろちゃんの、ばかぁ」
恥じらいよりも、その先への好奇心が勝ったからこその言葉だ。
緊張も大分解けているようだ。
「解ったから、離して」
するりと腕が解けて、美里の目が閉じる。
僕は視線をきれいな丘に向ける。…いきなり突起に触れるっていうのは
間違ってる気がする。その少し横に口付け。
「ふ、あ…っ!」
ただ押し当てただけなのに、ぶるりと身体全体が震える。
未知の感覚に慣れてないから、こんな過剰な反応をするんだろうな。
だったら、溺れるくらいにいっぱいしてやればいい。
突起に触れないように何度も口付け、吸い上げ、舐める。
もう片方も手でしてあげる。
「くぁあ…ん!きもち、いい…んん!」
震えは捩れに変化する。ねだるような、妖しい仕草。
美里の手は僕の髪をかき混ぜ、頭皮を強めに撫でている。
やっぱり無意識の行動なのかな。…でも、気持ちいい。
美里の柔らかさを確かめる度に、自制を失っていく。
僕だけじゃ、駄目だ。美里も同じにしてやろう──。
「ふ、ああああん!」
乳首に軽く口付けただけなのに、一番大きな声だ。
545四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:36 ID:Ko34c+6d
硬くて、唇でしっかりと挟める。舌でくりくりと転がる。
周囲は舌で突付いた分だけ形が変わる。ふにふにとした柔軟な感触。
側面の柔らかさとは対照的に、程よい硬さを持つ突起。
女の子のからだって、何でこんなにも色っぽい矛盾があるんだろうか。
美里は荒く呼吸をしながら首を振っている。
今までにない快感を受けるのに必死、という感じだ。
まだだよ美里。もっといけるんだよ。
胸にあった手を、ふとももの内側へ伸ばす。
「ふあぁ、──っ!」
一気に上体が反り返る。そっと撫でてるだけなのに、全身がびくびくと跳ねあがる。
「あぁ、ん、ああああ!」
僕の頭を撫でていた手が枕元のシーツを握り締める。
下着に近づく程、音量はあがる。シーツのしわが深くなる。
──下着に、手が届いた。
「っく、ああぁぁ──っ!」
一際喘いで身体を硬くして、嘘のように弛緩する。
「おい、美里?」
「ん、うぅ・・・ん」
・・・その、達してしまった、らしい。虚ろな目。僅かに痙攣している脚。
少し経ってから、ようやく意識のある目を僕に向ける。
「ごめんね、ひろちゃん…」
「何で?」
「私だけ、気持ちよくなっちゃった」
「いいんだよ…僕なら、これからでもなれるし、その…」
これから痛い思いをさせるんだから、一回くらいは気持ちよくさせたかった。
美里の視線に不安が混じって、直後に消える。
「怖くないって言えば嘘になるけど、…うん、ひろちゃんが一緒なら大丈夫だよ」
覚悟は決まってるみたいだ。だったら、やり遂げるだけだ。
「…解った」
唯一残っている白い下着に指をかける。
美里は羞恥を隠そうともせず、それでも腰を浮かせて協力してくれた。
546四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:39 ID:Ko34c+6d
股間の茂みを開放し、きれいな脚を通り抜ける下着。
そして、おずおずと開く。
「っ、……」
美里の大事なところが見える。もっと見たくて、顔を近づける。
…見てるだけじゃ駄目だろ。ちゃんと、しなきゃ。
指を伸ばして、その入り口に触れた。
「くぅ…っ!」
じりじりと熱くて、同じくらいの熱量を持った液体が零れている。
時間をかけてよかったと思う。この潤滑液がなかったら、本当に痛いだけだろう。
・・・濃密な美里の匂いに、頭がくらくらしてしてしまう。
今すぐ入れたいけど、もっとこの液を出してやろう。
人差し指を入れた。
「ふ、あ、あ、あああ!」
大して太くもない指なのに、こんなにきつい。
ぎゅうぎゅうと肉の壁が押し付けられて、異物でしかないと訴えるようだ。
根元まで入れるのが躊躇われて、途中で抜く。
「ん、くぅ・・・ん」
美里の原液が後を追うように溢れ出して、尻の穴を濡らす。
僕の指だって濡れている。
こんなに狭いんだ。もっと広げなきゃ、充血した僕のなんて入らないだろ。
思い切って指の付け根まで入れる。
「ひぁああああ!」
さっきと同じくきつい。広げようとして円を描くように動かすけど、
みっしりとまとわりつかれて、熱い膣は形を変化させない。
「ああ、ん!・・・や、──っ!」
一本じゃ、駄目か。中指も使わないと。
抜く時もがっちりと掴まれて、その感触に僕も抜きたくなくなってしまう。
正直、本能が狂いそうだ。
狂ったように美里を犯したい。美里を犯してもっと狂いたい。
駄目だよ。ちゃんと抱くんだ。僕だけが満足しちゃ、いけないんだ。
出かけた本能を飲み込んで、濡れた人差し指に中指を添える。
547四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:41 ID:Ko34c+6d
「・・・まって、ひろちゃん」
美里は、より不安を増した顔をしている。
「どうかした?」
「う、ん・・・指で、しなくても、いい」
そうは言っても、
「その、・・・ちゃんと広げないと、痛いだろ?」
その顔に、不安を塗りつぶす程の恥じらいが表れる。
「ひろちゃんのと、・・・、同じかたちに、したいから・・・」
「──っ!」
沸騰した。身体の隅々まで、余すところなく。
もう待てない。美里はひとつになりたいって言ってる。
何が何でも叶えなきゃいけない望みだ。
限界まで漲った性器を露出させる。
美里は驚いた様子で、僕のものを見詰めている。
ぐびりと唾を飲み込んでいる。緊張するなっていう方が無理だよな。
反り返る性器を抑え付け、美里の秘所に少しだけ入れる。
「ん!」
美里は僅かに呻く。
それ以上進まないようにしながら上半身を乗り出し、美里の顔を見下ろす姿勢に移る。
かける言葉なんてない。どんな言葉でも、美里を楽にしてやれる筈がない。
「いくよ」
「・・・うん」
目を閉じる美里。
僕も覚悟を決めて、性器を侵入させた。
「──・・・・・・っ!ぁ、ぅ、〜〜っ!」
痛そうだ。まだ途中だ。止めることは許されない。
女の子の部分が応戦している。必死に、そのままで居たいと。
ごめんね。僕はその先の関係に進みたいし、美里だってそう言っているんだ。
幼馴染はもう十分だ。想いを寄せ合う恋人同士でも満足できない。
男と女の関係に、なるんだ。
もぎ取られるような締め付け。その中でも僕の性器は行為を止めず、
最後の抵抗も貫く。
548四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:43 ID:Ko34c+6d
そして、美里自身も触れたことがない場所に辿りついた。
「ぃ・・・っ!ぁ、っ!・・・は、ああ!」
気を抜けばすぐにでも果てそうだ。
熱いぬめりがぎゅうぎゅうに絡んでくる。それこそ自慰なんて子供騙しの
快感にしか過ぎないだろう。
美里は──痛そうだ。眉が歪んで、呼吸すらも上手く出来ていない。
「美里、大丈夫?」
「・・・、う、ん。何とか、・・・っ」
無理をしてる声音だ。やっぱり、今日はここで終わらせるべきかもしれない。
「はぁ・・・いいよ、ひろちゃん」
その身体を走り抜ける痛みを堪えて、美里は言ってくれた。
「解った」
その痛みが消えることなんてないだろうから、少しでも慣れて欲しい。
ちょっとずつ動かそう。
「くぅ・・・ん、ん!」
声を噛み殺す美里。何か、痛み以外に気を引きつける方法。
この姿勢じゃ、唇を重ねるくらいしかない。
「ひ、ん・・・はむぅ・・・っ!──ん、んん!」
舌を伸ばし合って、性器と同じく密着させる。
じゅぶりと音を立てて、性器の動きは滑らかになる。
美里の中も、微かではあるけど僕の動きに合わせるように収縮を始めている。
膣内を満たすと拒むような締め付け、引き抜くとそれを阻むように掴まれた。
一往復させる度に、理性が蒸発しそうになってしまう。
本能の暴発はすぐそこまで来ていた。
美里は痛そうに喘いでいる。
早く終わらせたいけど、これ以上激しくするのも気が引けるし。
「・・・っ、く、あぁん・・・ん、ふ、ぅん」
その声に理性の大半が揮発した。
僅かではあるけど、快楽の声が混じっている。
・・・くそ、滅茶苦茶に動きたい。もっと美里の悦声を響かせたい。
549四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:45 ID:Ko34c+6d
「ひろちゃ、あぁん・・・」
「美里?」
一見して無理やりだと解る笑みだ。
「そんなに、我慢しなくても、っ、いいんだよ?」
「そう言うけどな、・・・」
「そんな苦しそうなひろちゃんなんて、見たくない」
自分がどんな顔なのか解らないけど、美里が嘘をついているとは思えない。
苦痛の中での艶声も、嘘じゃない。
なら、
「どうしても痛かったら、言えよ。止めるからな」
「うん、言うから、・・・続き、しよ」
薄皮一枚の理性を総動員して深いキスをする。
「あん、・・・ん、んん、・・・ん!、ぅん!」
口付けながら、僕の腰は信じられない強さで美里に打ち付け始める。
半ば他人事のようで、そのくせ快感だけは脊髄を駆け上がってくる。
「い、──っ!ああ!きゃ、あああん!」
勝手に動く腰。邪魔だぞ本能。美里を抱いていいのは僕だけだ。
僕の美里なんだ。
支配権を奪い返して、先端が抜け出る寸前まで腰を引いて、叩き付けた。
「はぁ、っ!」
短い喘ぎを僕は受け止め、もう一回。
がくん。
「〜〜っ!ん、ああ!」
苦痛で歪む顔が、僅かに快楽の色を増していく。
僕の拙い行為で美里が変わっていく様子に、際限なく昂ってしまう。
とっくに出そうだけど、その最後を拒否してしまう僕。
…理由は明確だ。
「はぁあああん!っは、…っ!は、あ!」
何度も何度も、気持ちをこめて打ち付けた。
はじめて見る女らしい美里。ずっと見ていたいけど、こっちが限界だ。
550四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:47 ID:Ko34c+6d
一番奥の所を小刻みに愛撫しながら、言う。
「美里、…っ!出すよ!」
僕の言葉に、美里の膣内はぐんぐんと締まってくる。
「うんっ!うんっ!いいよぉ!」
背中を反らせて、ぐいぐいと膨張しきった性器を押し付けた。
美里の締め付けも今までで一番きつくなる。背骨が反り返って、僕の性器が
より深いところまで埋まっていく。
「く、う!」
「っく、ふぁああああん!」
性器が潰れそうに狭くなる膣内で、射精する。
どくん。どくん。
一回一回に味わった事がない快楽が伴う。精液が尿道を通る快感が、美里の締め付けで
普段より数倍もはっきりと自覚出来る。
「は、──っ!、くぅ…っ」
精液の勢いはもう失われているけど、尚も性器を押しつけ続ける。
一滴だって外にこぼしたくない。全部、美里の中に入れるんだ。
「ん、…ぅ、ん」
美里が僕のを全てを受け入れたのを確認して、脱力。
どくどくと心臓の音が聞こえる。美里を見ると、放心状態だ。
目は半開きで、焦点はどこにも合っていない。
・・・とにかく、一度離れよう。このまま身体を重ねてしまいたいけど、美里の負担を
増やすわけにはいかない。
やや力を失った性器を引き抜く。美里の秘蜜で光り、先端には粘つく精液が糸を引いている。
じわじわと秘所からも精液が溢れ出している。
その、自分でも信じられないくらいの量だったと思う。恐らくは濃さも。
しかもコイツは今だにやる気を失っていないし。ちょっとした刺激で一気に機能を回復
するんだろうな。
シーツには赤い点が幾つかあった。血が出るくらいの損傷。痛かっただろうな。
仰向けの美里に添い寝する。髪を撫でながら、丁度いい言葉を思いつけない。
痛かったか、なんて言えないし・・・それを謝るのもおかしいだろうな。
とりあえず、頬に口付ける。
551四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:49 ID:Ko34c+6d
もう苦悶の様子は殆どない。
と、半眼の黒目が僕に向き直す。
「・・・ひろちゃんは、大丈夫?」
僕の身体を気遣う問いだ。普通なら反対だろうけど、それも仕方ない。
「うん、何とかな」
本心を言えば、こういった行為に耐えられるか疑問だった。
運動で発作を起こす人だっている。僕も何度か運動中に起こった事はあるけど、
それは本当に限界まで動いての場合だ。そうは理解していても、不安はあった。
美里を抱いて、その不安がなくなった。歳を重ねた分だけ少しは軽くなってるのかな。
「よかった・・・」
言いながら僕の腕にしがみ付いてくる。
「じゃあさ、ひろちゃん・・・」
かと思いきや、僕の上に這い上がってくる。
「み、さと・・・?」
「私が、動く番だよね」
未熟ながらも、妖しい笑み。胸に当たる柔らかさと重複して、僕の
性器はあっという間に硬さを取り戻す。
ぶるんと振り上がり、美里の丸い尻をかすめた。
「・・・あは」
胸に顔を載せる美里。やけに嬉しそうに、恥ずかしがる。
続けるつもり、みたいだけど。
「美里、・・・その、痛くないのか?」
「痛かったけど、ちょっとは気持ちよかったんだよ」
囁くような声だけど、何だか──背筋がぞくぞくしてしまう。
「ひろちゃんと私って、身体の相性、いいんだよ」
「・・・ばか、そんな事言うなって」
恥ずかしくて美里を見ているのがつらい。
だからね、と美里は続けて言った。
「次は、もっと気持ちいいと思うよ」
妖艶な微笑みで腰を浮かせ、僕の性器に指を絡める。
「──っ!」
552四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:52 ID:Ko34c+6d
ぎこちない指使い。だけど、がちがちに性器が充血してしまう。
美里がそんな事をしているという事実が、余計に僕を興奮させる。
「ん・・・っ」
ずぶずぶと秘所に性器が埋まる。さっきよりは随分と楽に入っていく。
締め付けも弱く、でも視線は熱いままだ。
突き上げようとする本能を固めて、待った。
美里は自分から動くって言った。ちゃんと待ってあげないと。
「は、あん・・・こう、かな?」
僕の胸に両手をついて、腰を振り始めた。
目は閉じてない。とろんと下がった目尻が、身に渦巻く快感を示しているのか。
「ん、ん、やっぱり、・・・いいみたい、ひろちゃん・・・」
その呼吸はだんだんと浅くなっていく。その合間に色めいた声が混じり始めた。
「ぅん、…あ、んん…ね、知ってる?」
ひどく妖しい顔で美里は言い出した。
「私にこういう事していいのって、ひろちゃんだけなんだよ」
その妖しさは薄れていって、真剣な面持ちになっていく。
「ひろちゃんにこういう事していのは、私だけなんだよ」
ぎしぎしとベッドを軋ませる美里。
視線は強くて、振るう腰にも感情がこもって、
熱にうなされるように僕の名前を呼んでいる。
ひろちゃん。ひろちゃん。ひろちゃん、ひろちゃん。
…思い出す。
美里をいじめっ子から助けた後、僕はひどい発作を起こしたんだ。
動くに動けなくて、ただじっとしてるしかなかった。
ひろちゃん。ごめんね。ひろちゃん。ごめんね。ひろちゃん、ひろちゃん。
何回も僕に謝る美里。答える余裕なんて全然なかったけど、
それでも美里は僕を呼び続けた。美里は全然悪くなんかないのに、謝り続けてくれた。
次の日からは見違えるように明るく振舞うようになった。
おとなしい子が、それこそ人が変わったように明るくなる理由。
自分の為にそうするなら、僕と二人っきりの時でもそうする筈だ。
なのに、そうしない。僕にだけ、おとなしい、本来の自分を見せる。
僕にだけは。
553四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:54 ID:Ko34c+6d
…こんな時だっていうのに、胸がいっぱいになる。
美里が他の人に明るくなった理由。
僕をあの時のように苦しめたくないから、なのか。
いじめられないような明るさを演じているのは、その為なのか。
あんな昔からずっと続けてきたんだ。僕にだけ特別な感情を持っていた、ということだろう。
何で気付けなかったのか、僕は。
「ごめんな、美里」
「…ひろ、ちゃん?」
もっと早く気付くべきだった。
小さい頃からずっと見ていた美里。もっと早くから、報われるべきだった努力。
僕以外に誰が報いてやれるんだ。
「ごめん。気付けなくて、ごめんな」
離れていた美里の身体を引き寄せて、今度こそ正面から言った。
「好きだよ、美里」
「…っ!ひろちゃん…うん、私も、好きだよ」
そのまま唇を触れ合わせて、ベッドの弾みを利用した突き上げを始める。
もう止まっていられない。これまで気付けなかった分を、返そう。
「ん、あ!く、あ、あぁ!」
悦声がひとつ漏れる度に、上体が起き上がって背筋が伸びていく美里。
かたちのいい乳房が上下に揺れて、快感の水かさはどんどん高くなる。
性器と密着している膣も、僕の射精を促すようにきりきりと搾り始めた。
ただきつかった最初の性交とはまるで違う快感。
美里にもちゃんと感じて欲しい。熱っぽい声を浴びながらひたすら突き上げて、
時には尻を掴んで入り口を擦る。
「はぁ、あ、あ、ああ!」
一層美里の声が高まって、それと同調するように射精感も強まっていく。
次も全部注ぎ込む。それには、なによりも勢いが必要。溜めて溜めて、一気に全てを
解き放つんだ。
ありったけの体力を使って美里を踊らせた。
「ひろ、ちゃ、あぁん!こわ、れ、んああ!」
554四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:57 ID:Ko34c+6d
そんなのは僕だって同じだ。溜まりきったのが、今にも爆発しそうだ。
「ひ、あ…っ!──っ!〜〜〜〜っ!」
美里は肺の空気を出し切って、声を出せないまま絶頂した。
僕にも限界が訪れ、放出。
「っ!ふ、ぅ…!」
僕の精液を受け止める美里。全身がわなわなと緊張しながら震えて、数瞬してから
くず折れた。胸と胸が重なって、美里の興奮ぶりがよく解る。
とくとくとくとく。鼓動が全く同時だ。
心拍数が時間と共に落ちていく。二人一緒に。
肩口にあった黒い滝が流れて、美里の笑みになる。
何も言わないけど、それだけで美里が満足してるのが伝わってくる。
温かい身体。いい匂い。離すのが勿体無い。もう少しこのままでいよう。
555四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 14:59 ID:Ko34c+6d
ひとつの布団の中で向き合って、意味もなくじゃれ合う。
きれいな髪を撫でると、気持ちよさそうに目を閉じる美里。
しばらくすると僕の手を掴んで頬擦り。うっとりとした表情が可愛い。
何となく掴み返して僕の胸に押し当てた。年相応の、小さい手のひらが温かい。
それを追うように胸に顔を埋めてくる美里。
と、布団に入って初めての声。
「あ、凄い」
「何が?」
僕にやや驚きの表情を見せて、続けた。
「ひろちゃんは解らない?」
何だろう…特別してることなんてないけどな。
「うん、解らない」
「意識してないのに腹式呼吸してるよ。私は、出来ない」
言われてから気付いた。確かに腹だけが動いて、胸は全く動いていない。
意識して胸を膨らませて呼吸。しかし。
「なあ、何でこんな苦しい呼吸してるの?」
本当に疑問だ。僕にとっては苦しいだけの胸式呼吸だけど、美里はこれを自然にしている。
普通はこうなんだろうな。
美里の表情が曇る。
「そうだよね、昔からだもんね…」
何か言いたそうな顔だ。
「どうした?」
「訊きたい事、あるんだけど…」
「何?」
「うん、…答えたくないなら無視していいからね。気分悪くしたらごめんね。
 …、ひろちゃんは、ご両親を、恨んだことはないの?」
……?何でだ?
「いや、ないよ」
「本当に?私、今でも思い出せるよ。小さい頃、夜中にひろちゃんの家にタクシーが来て、
 すぐに走っていくんだよ。あれって、発作だったんでしょ?」
あー、その話か。
「らしいけど、一回も覚えてないんだ」
556四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 15:01 ID:Ko34c+6d
母さんや親父から何回も言われた事だ。あんなに連れていったのに覚えてないのかって。
思い出せないんだからどうしようもない。
「何回もあったんだよ?何日も続いた時だってあったんだよ?…本当に覚えてないの?
 …そんな身体で産んだご両親に、そういう感情は本当にないの?」
僕の喘息はアレルギー体質によるものだ。
間違いなく遺伝によるものだろう。母さんも親父もそういった症状は少しはあったみたいだ。
美里がそんな事を思うのは当然とも言える。
けど。
「恨むなんて、これっぽっちもないよ」
これについてはまず間違いなく断言できる。
「小学の運動会の、マラソンは覚えてる?」
「…何となく」
だろうな。
美里や他の人にとっては、面倒で疲れるだけのプログラムに過ぎないだろうけど、僕は違った。
「あの時は僕も走った。体力ないのにな。…で、当たり前だけど一番最後にゴールしたんだ。
 前にゴールした人の、十分以上も後にね」
途中で何回も歩いたけど、足を止める事はなかった。
「母さんがね、いつでもしつこく言うんだよ。時間がかかってもちゃんと最後までやれって。
 やれない事なんてないんだってね」
「……」
美里は黙って聞いている。
「走ってる最中はそればっかり頭にあった。やれない事はない。それを守りたかった。
 守ったところを見せたかったんだよ」
ゴール前の拍手。どんな気持ちなのか解らないけど、いらない。僕が欲しかったのはそんなものじゃない。
「で、運動会が終わって家に帰ってから、思いっきり褒めてくれたんだ」
マラソンが終わった直後は普通に振舞ってたけど、それは他人の目があったからだろうな。
子供心にもそのくらいは解った。家に帰ってからは凄かった。
「何ていうか、うん、あれがあったから、こうしていられるんだと思うよ」
やってよかった。諦めなくてよかった。とても、嬉しかった。
苦労する事に価値があるって確信したのは、あれが初めてだと思う。
557四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 15:04 ID:Ko34c+6d
「母さんがいなかったら、こういう性格にはなってなかっただろうし、
 親父がいなかったら、そもそも生活だって出来ていない」
──あ、そうだ。思い出した。
「言うの忘れてた。…ありがとうな、美里」
美里は呆けたような顔だ。どうやら本人も忘れているらしい。
「…?」
「僕の病気、調べてただろ」
「あ、・・・うん、そうだけど、ひろちゃんはさ、」
すこし苦しそうな美里。そのままでいいのか、と続けるのだろうけど。
「…何もしなかった訳じゃないよ」
それなりにはやった。あれこれと試して、効果はあまりなかった。
これからも付き合う覚悟はもう出来てる。治らないと確信さえしている。
それに、
「何もかも損ばっかりって訳でもないよ」
不思議そうな顔で僕を見つめる美里。
まあ、理解するのは難しいか。
「そりゃ、発作は苦しいけどな。…治まった後なんかは『生きてる』っていうのを
 本当に実感出来るんだよ。思い通りに頭も身体も動く。当たり前の事なんだけど…
 うん、気持ちいいんだ。
 友達はいなかったけどな・・・
 思考の快楽なんていう簡単には得られない感覚が身についた。
 単純な計算だけじゃなくて、普通とはちょっと違う方向の発想もしてくれるし。
 多少の寒いのやら厚いのやら、痛いとか苦しいなんて発作と比べれば何てことない。
 損ばかりじゃないんだよ」
改めて向きなおして、僕は言う。
「それと、美里とこういう仲になれたし、な」
一番の人が出来た。こんなにも早く。
美里はというと、恥ずかしそうに顔を隠してる。
絶対に守りたい人。これから迷う事はない。僕は、この人を守るんだ。
恩返しなんかじゃない。僕がそうしたいからそうする。
美里だから、そうするんだ。
558四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 15:06 ID:Ko34c+6d
胸元からのちろちろと窺うような視線に、声が重なる。
「…言ってて恥ずかしくない?」
ぐあ、それを言うか。
なら反撃してやろう。
「言わせた方はどうなんだよ?」
また顔が見えなくなった。照れてるんだ。
それでも背中にまわってくる腕。嬉しさの表れだよな。
少し経ってからそろそろと顔をあげる美里。
「ね、ひろちゃん」
「何?」
「ちょっとだけ、眠ってもいい?」
初めての体験への緊張が解けたのだろう。
忘れていた疲労が噴きだすのも無理はない。
「いいよ。時間になったら起こすから」
「うん、ありがと」
すぐに静かな寝息が聞こえるようになった。
僕も眠いけど美里を起こすまで我慢だ。
過度の熱が冷めて、温かい静謐で満ちる部屋。
同じ布団の中には大事な人がいて、無防備な寝顔を見せてくれている。
・・・きっと、そうだ。
勝手な思い込みだろうけど、
これは間違いなく『幸せ』のかたちのひとつなのだろう。

前編 終
559四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/27 15:11 ID:Ko34c+6d
スンマセン予定が狂いやがって時間がなくなりますた
今日はここまで
560名無しさん@ピンキー:04/08/27 15:41 ID:02nd9IHE
・・・・・・

言葉もありません。すごいです。エロパロ板でこんな作品見れるなんて
思いませんでした。


喘息の苦しさってやつは体験しないと分からないんですよね。
俺は風邪引いたときにしか出ないから軽い方なんでしょうけど。
描写もすごい良かったです。タダで読めるのが幸せですよ。ホントに。
561名無しさん@ピンキー:04/08/27 23:41 ID:hXVSV3xB
<真面目モード>
素晴らしい作品でした。
本職の方…でしょうか? このレベルの作品は
一朝一夕には書くことが出来ないと思います。

特に喘息というキーワードを効果的でした。喘息に少しでも
関わっていれば、主人公への共感の度合いが強くなります。
反面、喘息を知らない方には、主人公への共感度が
低くなってしまう諸刃の剣かも知れません。

最後に、残念な点を二つほど。

作品中にUDプロジェクトについて、詳細に言及していますが、
これは全体の雰囲気からすると、大きく扱いすぎかと。

もう一つは、>>498の「『うるせー馬鹿』と書き足して返してやる」です。
少々興ざめかと感じました。どうしても例のAAが…。

後編とエピローグを、心待ちにしております。
</真面目モード>
562名無しさん@ピンキー:04/08/28 00:31 ID:P70cjG1L
新着が70超えててちょっとビビリましたが、丁寧な作風に思わず読み耽ってしまいましたよ。
正にスレッド名に違わぬ、切なくて甘い純愛話。いやほんと、このスレ巡回していて良かった。
四条さん、続き楽しみに待ってます。
563名無しさん@ピンキー:04/08/28 03:38 ID:23VWpKsV
普通ならここでエピローグときてEDなんでしょうが、まだ前編が終わっただけなのか……俺には想像もつかん程のスケールみたいだ。
小説書いた事無いけれど、どう足掻いてもここまでレベルの高い小説を自分が書けるとは到底思えん……
中条氏、GJ!!!!!!!!!!!!! です

>>561
『うるせー馬鹿』は俺的にはアリかと。2chに投下された小説である事を嫌でも実感させられるし。
つーか、食ってたカップラーメン吹きそうになりますたw
564563:04/08/28 03:39 ID:23VWpKsV
ぐあ……

× 中条氏
○ 四条氏


スマソ吊ってきます
565名無しさん@ピンキー:04/08/28 08:39 ID:2kXZOpOn
あのAAはわかるけど、「うるせー馬鹿」程度で2chがどうこうってのは俺には少しわからない。
それはさておき、面白かったよ。
566名無しさん@ピンキー:04/08/28 10:11 ID:jqUApZuC
作者は女性でしょうか?
勃ったけど抜けなかった、というより抜くタイミングがつかみづらかった。
その点で作者は男性ではないのでは?などとかんぐってしまいました。
スレ汚しすみません。

内容も文体も大好きです。
567四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:29 ID:qOKKLZmt
皆さんレスありがとうございます
励みになります

>>561
UDはかなーり強引につっこんでありますが、雑談スレで話題を振った野郎として
一回くらいはやっておくべきかな、と。
UDを芯に置いた話も考えたりするんですけどね、一体どうしろと?って感じですな。

「うるせー馬鹿」は全体が重い内容なんでちょっとでも軽いところを作っておこうと
……これも強引杉。反省しろ自分。

>>564
ィ`

>>566
他のスレでも訊かれた事ですが、男です。
身長1850mm体重95000g強のどこからどうみても男です。
が、エロは苦手なので実用性の低い出来になってしまうのですよorz


では後編
568名無しさん@ピンキー:04/08/28 13:30 ID:0qTNOw7y
でかっ!
569四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:31 ID:qOKKLZmt
「はぁ」
下校途中の重いため息。白く変化しながら舞い上がり、霧散する。
そのはるか向こうに季節外れの風船が浮かんでいた。
たったひとつだけで、どこに行くのだろう。
──思い出す。
小学校の頃だ。風船に将来の夢を書いた紙切れをつけて飛ばすという
他愛のない行事があった。その頃の私はお母さんと同じ看護婦になりたいと思っていた。
迷う事なく札に書き終わって、風船のひもにくくり付ける。
すぐ隣にたひろちゃんの札には何も書かれていない。
色々と考えがあって、どれにすればいいのか迷っているのだろう。
校庭に集まる私達に先生の声が響いた。
『皆書いたわね?合図をしたら一斉に飛ばすんだよ』
ひろちゃんはまだ書いていない。もう時間がないのに、まるで焦っている感じはない。
何もせずに、白いままの札を見つめている。
『いいわね?せーの、それ!』
クラスの皆が手を放して、色とりどりの風船が空に飛んでいく。
私の青い風船も一緒に飛んだ。ひろちゃんの赤い風船はまだ飛んでいない。
飛んでいく風船の群れを見届けたひろちゃんは、ようやく手を放す。
将来の夢を書く筈の札はついていない。それどころか、皆の風船とは全然違う方向に
飛んで行ってしまった。同じ風に乗る事が出来なかったのだ。
なのに、満足そうだ。
『いいの?』
私は訊かずにいられない。何でそんな事に満足しているのか。
『いいんだよ。これでいいんだ』
ふらふらとひとりぼっちで飛んで行く。
私には耐えられない事。それなのに、ひろちゃんはそれを選ぶと言う。
何でだろう。
570四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:33 ID:qOKKLZmt
続いて目を移したのは、手に収まっていた真新しい鍵だ。
一度も使っていないけれど、既に様々な思い出が詰まっている。
ひろちゃんと初めて身体を重ねて随分経つ。
デートらしき事もしたし、身体をひとつにしたのも数える程にはした。
何度目かの温かい時間を共有して、この鍵を渡された。
『僕の家の鍵だよ。美里ならいつでも来ていいから』
その言葉の意味に翻弄されながら、私もスペアの鍵を渡そうとする。
『いらない。行く時は必ず連絡するから、嫌だったら断っていい』
感情の薄い顔だけど、優しかった。
私が嫌な事はしない。私を大事にしてくれると言う。
『…うん、解ったよ』
その気持ちが嬉しくて、真っ直ぐな返事をする。
満足そうに頷くひろちゃん。
そんな顔をさせた事に、私も満足だ。
保育園の頃に助けられ、二度とあんなことにならないように明るい子を演じるようになると
様々なものを得られるようになった。
友達とか、クラスでの今の位置とか、他にも沢山ある。
全部、この人から貰ったようなものだ。
お返しをするきっかけが今まではなかったけれど、これからはちゃんと返せる。
少しずつ、返そう。
571四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:35 ID:qOKKLZmt
だというのに、何でこんなことになっているのか。
ここ二週間、ひろちゃんとまともに会話をしていない。
少し前から何となく避けられてる感じがあったけれど、それを訊く機会がなくて
こんな状況になってしまった。私だけじゃなくて、阿川君とも話をしていないようだ。
今日の登校も別々だ。あの手の感触は失われている。
気付かないうちに傷つけてしまったのか。……それは考えにくい。
どうしても耐えられない失言があれば、それなりの言葉が来る筈だ。
あの雨の日だって私の言葉に激しく反応したし、笑うときは目いっぱい笑う。
クラスの皆はひろちゃんを『感情の薄い人』なんて言うけど、そんなことはない。
薄いというよりも、常に出す状況を選んでいるのだ。
それなりの背丈だし、わりと整った顔だと思う。
試験での点数も高いし、突飛な発想も出来る人だ。
皆の前でも感情を出せば結構な人気にはなるだろう。
なのに、しない。
どこか思いつめたような表情だし、それに加えて無駄のない行動が機械じみた印象を
強めてしまう。友達は口を揃えて言うものだ。
『なんだか近寄りがたい人だね』
実際、私と阿川君以外の人がひろちゃんと親しくしている所は見た事がない。
その事実もあって、彼女達の言葉を否定出来ない。
阿川君がどういったきっかけでひろちゃんと親しい仲になったのかはしらないけれど、
私と同じく、ひろちゃんにとっては特例なのだろう。
……そうなのだ。特例なのだ。
普通の相手だけならば、ひろちゃんの周りには誰もいないのだ。
何故だろう。
逆なら納得も出来る。嫌な人には決して近寄らず、それ以外の人にはそれなりの
対応をするのが当たり前だろう。そうやって自分の許せる相手を探すのがごく一般的な
感覚の筈だ。同姓なら良い友達だし、異性ならば恋愛の対象になるだろう。
なら、ひろちゃんは最初から誰にも理解させない方向なのだろうか。
572四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:37 ID:qOKKLZmt
……思い出してみると、彼は小さい頃からひとりでいた。
特定の誰かを選ばず、不特定の多数にも入らず、
たったひとりきりで過ごしていたのを何度も見てきた。
何よりもひとりを選ぶなんて、それこそ人付き合いで手痛い失敗をすればの話。
しかし、ひろちゃんにはその相手さえいなかった。誰とも接したことがないのに、
誰とも接する事を避けていた。接する事を絶っていた感すらあった。
そういう事に小学校の中学年のあたりで気が付いて、私はひろちゃんに積極的に
触れる行動をとったものだ。時を同じくして阿川君とも話すようになったひろちゃん。
時間を追うごとに私や阿川君とは親しくなったのだから、一度は解決した事だと言っていい。
人と接するというのがどんなものなのか、ひろちゃんは理解しただろう。
問題は、今の状況だ。
特例だった私と阿川君を放棄する理由。
何か──大変な事になっているのではないのか。
「……、──って、角倉」
誰かの声に顔を上げる。
冷えた教室。放課後。阿川君だけがいて、他の人は全員帰ったらしい。……ひろちゃんも。
やや心配そうな顔をしている阿川君が言う。
「どしたい?えらく考え事してたらしいけど?」
「……うん、ちょっとね」
恐らくは水原さんとかが声をかけてくれたのだろうけれど、それにも気付けなかった。
こんなにも悩むくらいなら正面から訊くべきではないのか。
でも、信じて待つ方がいい結果になる気がするのも確かだし。
「あいつ、浩史のことだろ?」
バレてるけれど、隠す事なんかじゃない。
「うん、…ひろちゃん、どうしたんだろうね」
肩をすくめて同意する阿川君。
この人でも解らないらしい。
「帰ろうぜ。じきに暗くなるぞ」
573四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:39 ID:qOKKLZmt
冬の夕暮れは早い。
途中まで送ると阿川君は言ってくれて、私は承諾した。
誰かといるだけでこんなにも心が安らぐ。ひろちゃんだったら、意識せずに笑顔になって
しまったものだ。
私は阿川君と特別仲が良い方ではないので、こうして送ってもらっている事に少しだけ疑問を
感じている。教室では他の子を相手にすることが殆どだ。この人と話す機会なんて数える程だった。
……ひろちゃんともっと話すべきだったな。
昔の、いじめられていた頃の思い出。その再現が怖くて他の友達との付き合いを選んでいた私。
ひろちゃんとは家が近く簡単に行き来できるということもあって、学校ではまず接することが
なかった。──それが、原因なのだろうか。いや、違う気がする。
「お、あそこだな」
阿川君が何かを見つけたように顔の向きを変える。
その先には小さな公園があった。ブランコやシーソー、水飲み場などがある。
「ちょっと話したいことあるんだ。時間、いいか?」
珍しく真剣な様子だ。教室ではどこかおどけたような仕草を絶やさない人だから、
相応の内容なのだろう。
「いいけど、何?」
「長いから、あのブランコに座って話すか」
赤い二つのブランコは両方とも空いている。
近づいて座ろうとすると、
「ちょっと待った」
阿川君はハンカチを懐から取り出して、私が座ろうとしていたブランコに敷く。
こういう風に妙に気がまわる人だ。
「ありがとう、阿川君」
「なに、俺の家ってこんなのには煩いんだ。…ちょっと待ってろ。
 飲む物買ってくる」
小走りで近くの自動販売機まで行って、ホットコーヒーを二つ買った。
「お待たせ」
私は受け取りながらお金を出そうとすると、いらないよと制止された。
「俺にわがままに付き合ってくれる相手に、そんなことさせられないって」
阿川君は少し笑いながら隣の席に座る。
574四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:42 ID:qOKKLZmt
コーヒーに口を付ける。熱さが喉から身体全体に沁み行く感覚が気持ちいい。
阿川君も無言で飲み始め、懐かしむように言い出す。
「…ここでさ、浩史と喧嘩をしたんだよ。小学の時だけどな」
目の焦点をどこにも合わせずに、つらつらと続ける。
「いや、喧嘩じゃないか…」
喧嘩だけど、喧嘩じゃない?
「いや、悪い。順に話す。
 小学の時だよ。浩史の病気のこと知って、親にどんなもんなのか訊いてみたんだよ。
 んで、俺は学校の帰りに浩史の前で聞いたまんまのことを言って、
 本当かって訊ねたんだよ。
 そしたらさ、何て言うか…能面みたいな無表情で俺の襟を掴んで、
 ここに連れ込まれたんだ。
 で、喧嘩になったんだ」
ひろちゃんの病気を調べたから解る。
すこし前まで喘息という病気は精神的、心理的なものが原因だとされていた。
今でもそれを信じている人は少なくないようだ。
阿川君のお父さんも、多分これを信じていたのだろう。
「さっき喧嘩じゃないって言ったけどな、要するにそのくらい一方的だったんだ。
 俺だけが殴られて殴られて殴られて。
 必死に殴り返すんだけど、全部避けられた。
 冷静にキレるやつって怖いな。普通なら、がぁーって触れないくらいに熱くなるんだろうけど、
 浩史の場合はドライアイスみたいにぎんぎんに冷え切って、触れない感じだな」
感情の爆発ではなく、理屈の狂走。
ひろちゃんらしい怒り方だと思う。
「一発は大したことないんだけどな、あんなに連続で食らえば
 さすがに堪えるぜ。…で、こりゃ敵わねぇかなって思った時に、
 浩史の手が止まった。
 肩で息しててな、そんな体力で喧嘩売るんじゃねえ!って思いっきり
 殴ってやろうとして、……出来なかったよ」
阿川君も見たのだ。
私と同じものを見てしまったのだ。
575四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:44 ID:qOKKLZmt
「凄い汗、出してた。目の焦点はどこにも合ってなくて、…聞いたこともないような
 音で呼吸してるんだ。
 そのときは何も知らなかったけど、ただ事じゃないのは理解出来た。
 少し待ってもそのまんまだった。不安になって、声をかけたんだ。
 大丈夫かって。…でも、反応しない。
 ふらふら歩き始めて、何となく動かすのは拙い気がしてな、腕を掴んで止めたんだ。
 ……。冷たかった。本当に生きてるのかって思ったくらいだよ。
 浩史は俺のことなんかいないみたいに水飲み場まで行って、水を飲んでた。
 馬鹿みたいに飲んでて、それでも息は荒いままなんだよ。
 飲み終わった後も俺の方を一回も見ないで帰ったんだ。
 ふらふら歩いて、躓きかけたりしてな。
 …俺は、何も出来なかった。見てるだけだったな」
私も同じだった。訳がわからなくて、なにも出来なかった。
ひろちゃんの名前を何回も呼んだけれど、恐らくは届いていなかったのだろう。
「俺、家に帰ってから考えたんだよ。
 あの時のあいつ、どんなところにいたのかなって。
 ……意識にあったのは家の場所くらいだろうな。
 それ以外の、俺の声とか、掴んだ手とか、晴れた空とか、あそこの焼き鳥屋の匂いとか、
 涼しい風とか、──ひょっとしたら、色も、名前も、時間も。
 ……全部が全部、塗り潰されてたんだろ。その発作の苦しさでな。
 ──どんな世界だ、それは」
理屈だけなら想像もつく。理屈だけだから想像がつく。
実際に体験すれば、想像もしたくないような世界だろう。
「んで、次の日はけろっとした顔で学校に来るんだよ。
 俺にちゃんと謝ってくれたよ。浩史は悪くないのにな。
 その時の事を聞いたら、いつもなんだから気にしないでいいって言うんだ。
 ……いつも、だって?そんな世界に慣れてる?
 何だそりゃ?そんなのが、日常だって言うのか?そんな日常を認めてるのか?
 色んなヤツと知り合ってたけど、あいつが一番解らないヤツだよ。
 何とか解りたくて、何回も話しかけてるうちに友達みたいなものになってた。
 ……なってたつもりだったんだけどな」
576四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:46 ID:qOKKLZmt
阿川君はようやく顔を上げて、私に向きなおす。
やや明るい声で私に訊いた。
「角倉はさ、……浩史とは、深い仲になったんだろ?」
頬は赤くなってるだろうから、言わなくても解るだろう。
でも、ちゃんと言おう。
「うん、……そうだけど」
ふ、と弱々しい笑みになる阿川君。
「だよな……うん、あいつの事頼むよ。
 今、俺の声が届かない所にいるらしいんだ。
 あの時の、浩史を殺しかけた事への償いをしなきゃいけないのに、俺じゃどうしようもない」
阿川君は立ち上がって、私に頭を下げた。
「……頼む。俺に出来るのは、お前に頼むくらいしかないんだ」
私も座っていられずに立って、しどろもどろに答えた。
「解ったから、頭をあげてよ。……うん、なんとかしてみるよ」
確証なんてないけれど、阿川君に約束する。
私だって以前の関係に戻りたい。戻して、お返しをしなければいけないのだ。
頭をあげた阿川君は私を真剣に見詰めて、もう一度よろしく頼むと言ってから帰った。
迷うのは止めた。ひろちゃんの家に行こう。ひろちゃんと、話そう。


薄暗い夕暮れの中で、真新しい鍵だけが場違いなくらいによく見える。
ひとつの傷もない鍵。こんな気持ちで使うなんて想像も出来なかった。
……使おう。
チャイムを押したとしても、まず反応はないだろう。
その事実は確実に私を萎えさせるに違いない。だから、押さない。
私の重い気持ちを嘲笑うような軽い音で、鍵は開く。
きぃぃ。ドアが開く音も何だか空虚な印象だ。不安になる。
来るのが遅すぎたのではないだろうか。
中の様子は、暗くてよく見えない。
明かりが点いていない。多分、お父さんが帰ってくる寸前まで、この暗さなのだろう。
577四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:48 ID:qOKKLZmt
パソコンの音だけが聞こえる。無機質な起動音。
ざわざわと焦りが濃くなっていくのを感じる。嫌な感じ。
──ひろちゃんが、大変なことになってる。すぐにでも助けなきゃ。
明かりのスイッチを探す時間がもったいなくて、
暗いままひろちゃんの部屋に向かう。何度も往復した廊下だ。
目を瞑ってもどこに何があるのか解る。それ程に親しみのある風景なのに、
暗いというだけで殆ど異世界としか思えない。
……そうだ。こんな所から、ひろちゃんを取り戻すんだ。
こんな所に居ていい人じゃないんだ。
ひろちゃんの部屋。冷たいノブを掴んで、捻る。
開くドアは無音だった。その向こうのひろちゃんの部屋も、無音だ。
横のカーテンは開いていて、僅かだけれど明かりの代わりにはなっている。
正面のベッドに座ったひろちゃんの脚だけがうっすらと見える。表情は全く見えない。
──行かなきゃ。ここから先に行けるのは、私だけなんだから。
踏み出した足が、微かな音をたてる。
みしり。
「……美里、僕をひとりにしてくれ」
ひどく暗い声だ。勢いなんて全然ないのに、気圧されそうになる。
止まってはいけない。もっと近くまで行こう。
歩く度にみしみしと何かに亀裂が入りそうな音がする。
すぐ側まで近寄ると、ふとももの上に投げ出された両手が見えるようになった。
でも、顔は相変わらず見えない。
震えそうな喉に力を入れて、私は言った。
「何で、そう思うの?」
微かに笑ったような気配。こんな、すり潰されそうな暗闇で、笑える意味。
「簡単な話だよ。
 欲しいものがあった。欲しくて欲しくて、あまりにも欲しかったから、
 僕はそれを考えないようにした。そうやって生きてきたのを忘れてた。
 忘れてればよかったけど……思い出した」
見えないけれど、その笑みが深くなっていくのが解る。
自分を笑うための表情。
578四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:50 ID:qOKKLZmt
「絶対に手に入らない欲しいもの。そんなものの中にいたらおかしくなるのは当然だ。
 だから、欲しくないと決めたんだ。
 ──そう決めなきゃ、壊れるだけだ。壊すだけだ。
 でも欲しい。その気持ちは、やっぱり消えてくれなかった。
 ずっと殺し続けたんだけど、死んでくれなかった」
ひろちゃんが欲しがるもの。それでも絶対に得られないものなんて、
ひとつしかない。
「まだ羨ましいって所で止まってる。
 何とか止められている。……誰かといたら、その先に進んでしまう。
 だから僕の側にいない方がいいよ、美里」
その先が何なのかは予想はついてる。高く積まれた嫉妬が崩れる時、それは大量の暴力を伴う。
でも、ひろちゃんをひとりになんかさせない。
私はその気持ちをこめて、ひろちゃんの両手を握った。
それに応えるように、ひろちゃんの指が絡まってくる。
「なぁ、解るだろ?
 美里に、ひどい事、したくないんだ。
 離れてくれよ」
私はそういう事にはならないと思う。
だって、
「……大丈夫だよ。ひろちゃんは、ずっと頑張れたんでしょ?
 私にはとても出来ない事をしてきたんだよ?
 ひろちゃんは強いんだから、そうはならないよ」
何年も耐えられたなら、それ相応の強さがある筈だ。
「……強い?お前、何言ってるんだ?」
しかし否定される。
肯定して欲しくて、私は必死に続けた。
「前に、損ばっかりじゃないって言ったでしょ?
 あんな風に受け止めるなんて、強くなかったら出来ない事でしょ?
 私には出来ない。そんな事が出来るひろちゃんは強いんだよ?」
「本気にしてたのか、あれを」
またしても否定された。
579四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:52 ID:qOKKLZmt
ひろちゃんの息が、荒くなっていく。
「ああ、そうだ。損ばかりじゃないさ。
 ……そう思わなきゃ、やってられないんだ。確かに嘘じゃないけど、
 本音でもない。建前ってやつだよな。
 ──そんな、建前にしがみ付かなきゃ立ってられないなんて、どこが強いんだよ。
 そんなのは強さじゃないだろ。
 どう考えたって、弱さでしかないだろう」
ひろちゃんの手が少しだけきつくなった。
「だから、離れろ。こんな弱いヤツ、何するか解らないんだぞ」
はぁはぁと荒い息。
嘘だ。その言葉は絶対に嘘だ。
これも建前だ。誰も近づけさせない為の壁だ。
「……本当に、そう思ってるの?」
もし本当なら、私の手をこんなにも優しく握るなんて不可能だ。
「本当だ。……これ以上僕に近づくな。
 美里に、ひどいことするんだぞ」
……これも、建前。
手の優しさは変わらない。本心では行くなと言いたいのだ。
もうひとりは嫌だと訴えている。
それなのに口からは離れろ、という言葉。
「──違うんでしょ?」
本当にしたい事はもっと違うはずだ。
「…………」
答えはない。
私とより距離を置こうとしているのが解った。
そんなところに行ってもなにもないだけなのに、何故行きたがるのか。
私は、行って欲しくない。ちゃんと恩返しをしたいのに。
580四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:55 ID:qOKKLZmt
不意にひろちゃんの手から力が抜ける。
慌てて掴みなおし、強めに力を入れると僅かだけど反応があった。
本当は行きたくないのだ。なのに、行こうとしている。
理由も語らずに、誰も触れられないところに消えようとしている。
許せなかった。こんなに苦しんでるのに解らなかった自分が。見ているだけで良くなるなんて
思い込んでいた事が。待っているのが一番の解決方法だなんて決め付けていた私が。
全て、この人を知っているという傲慢が生んだ結果だ。
数回身体を重ねただけなのに、知った気でいた。
……私はひろちゃんの事を何も知らない。知っていたら、こんな目に会わせることなんてなかった。
「ひろちゃん……」
「………」
答えはない。
あの時と同じだ。
ひろちゃんはひとりで必死に耐えている。私は、見てるだけだ。
あの時と同じで良いのか。何も出来ないと諦めたいのか。諦めて、抜け殻のように歩くひろちゃんを
見たいのか。私の想いが全く通じなかったひろちゃんにしたいのか。私への想いが全くないひろちゃん
にしたいのか。
私は、この人を喪いたいのか。
……嫌だ。それだけは嫌だ。やっと掴まえたひろちゃんの手。絶対に離しちゃいけない。
この向こうに隠れているひろちゃんを、助けなきゃいけない──!
「ひろちゃん!」
握っていた手を、思いっきり引っ張った。
ずるりとひろちゃんが闇から出てくる。その勢いで、私に圧し掛かってくる。
月に照らされたその顔は苦痛に歪んでいて、今にも泣き出しそうだ。
これが、ひろちゃんの素顔だ。誰も見せた事がない、本当の顔。
「……駄目だよ。僕に触れるな」
「何で、そう思うの?」
ぎり、と歯を食い縛るひろちゃん。
そして抱きしめられた。ひろちゃんの顔は私の肩に埋まって見えないけれど、
さっきと変わらないだろう。
581四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:57 ID:qOKKLZmt
ぼそぼそとひろちゃんは語る。
心の闇で色づけした暗い声だ。
「……。この心は病んでる。こいつの芯は、苦しみで出来てるんだ。
 何度も何度も苦しんで、それにも慣れてしまって、……どうかしてるよ本当。
 苦しいのが正常。楽なのが異常。
 この苦しみがなくなったら、それこそ僕は狂ってしまうんだよ。
 ……こんな考えは絶対におかしい。おかしいのに、僕にとっては絶対の真理だ。
 だから、こんな危ないヤツは捨ててしまえ。
 美里までこんな風になる必要なんてないだろ。
 触れたら、僕みたいになるんだぞ?」
ならない。そんなことは嘘だ。
「大丈夫なんだよ?ほら、私なら全然平気だよ?」
「それでも、だ。……僕は、美里とは違う。同じ事が出来ない。同じものが見れない。
 同じように歩いて、将来に向かえないんだ。
 誰とも一緒になれないなら、皆から離れてしまえばいいんだ。
 解るだろ?
 ……だから、捨ててきたんだ。走ったり跳んだり投げたり、友達も知り合いも先輩も後輩も。
 全部捨てて生きてきたんだ。いつ消えてもいいようにしてきたんだ。
 繋がりが多ければ多いほど、残る悲しみは大きいだろ。
 だから、ひとりになるんだよ僕は。
 どんな時に何があっても、誰も苦しまなくてもいいようにするんだよ。
 僕の所為で、美里を苦しめたくないんだ。
 ……美里を、不幸せにしたくないんだよ」
その言葉で私は確信する。
ひろちゃんを取り戻すことが出来る。こんな暗い所から連れ出せる。
「……だったら、余計離せないでしょ?」
「どうして、そんなことが言えるんだよ?」
ひろちゃんと過ごした時間が次々に思い出され、胸に湧き出る感情は確かに本物なのだ。
「今、私は幸せなんだよ?」
582四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 13:59 ID:qOKKLZmt
「……っ!」
ぐらりと揺れる大きな身体。
「私を不幸せにしたくないなら、ずっと傍に居てよ。ひろちゃんが居なくなったら、
 私は不幸せになるんだよ?」
「……みさと」
「ひろちゃんだって、私が傍にいる時は幸せなんでしょ?私から離れて不幸せになりたいの?
 ……本当に、ひとりに戻りたいの?」
はぁはぁとひろちゃんの呼吸が荒くなる。
「……ちがうに、決まってる……っ!」
搾り出すような声で、ひろちゃんは最奥の感情を形にし始めた。
「ひとりは、もう嫌だ。寂しいのは嫌だ。やっと美里と一緒になれたのに、離れるなんて事は
 したくない。ずっと一緒に居たい…!」
ぎゅう、と私を抱く腕に力が入る。
私を離さない為の言葉と行動だ。これで、ひろちゃんは何処にも行かない。
私の傍にいる事を選んでくれたのだ。
「ねぇ、……もっと言いたい事、あるんでしょ?いくらでも聞いてあげるよ?」
ひろちゃんは全体重を私に預けている。今にも倒されそうだけれど、重くなんかない。
この人は、もっと重いものを背負ってきたのだから。
「私なら大丈夫だよ?ひろちゃんの代わりに支えてあげるから、
 全部支えてあげるから!…ちょっとだけ楽になってもいいんだよ?
 休んでもいいんだよ?
 もう、我慢しなくてもいいんだよ?」
いつも疑問だった。
興味本位で何度も訊ねたものだ。どのくらい苦しいの、と。
決まってひろちゃんは同じ答えをする。つくりものの笑顔で、機械のように全く変わりなく。
『きついぞ』
そんな顔と声で塗り固めなければならない程、膨大な感情が渦巻いているのに、
何でそんなに我慢してるんだろう。
苦しい、きつい、楽じゃない。もっと適切な表現があるのに、それを使わない。
何故、それを言うのを我慢してるんだろう。
583四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:01 ID:qOKKLZmt
「ねえ、誰もいないんだから、私しかいないんだから、
 言いたい事、言ってもいいんだよ?」
それを言わせたいと思う。
ずっと溜め込んでいた感情を、その言葉と一緒に吐き出させてあげたい。
「……意味ないだろ、そんなの」
「言ってよ。滅多にない機会なんだよ?」
「馬鹿。そ、んなこと、言えない。美里に、聞かせられない、だろ」
とっくに出掛かっている。言葉を詰まらせながら、ひろちゃんは言おうとしない。
多分、私が特別な存在だからだ。自分への評価を下げまいと頑固に意地を張っているのだ。
私は腕に力を入れ、胸と胸をより密着させる。何を聞かされてもどこにもいかないと伝えたかった。
「……、みさと」
「なに?」
数秒だけ沈黙して、その身に満ちていた誰にも言えなかった感情が、ついに噴き出した。
「みさ、とぉ……ぐ、うう!」
震える声と、身体。
「──つらかった、よぉ……っ!」
意味のある言葉になったのはそれだけだった。
その後からも出てくる感情は涙と嗚咽にしかならなかった。
長年の蓄積。時間がどれだけかかるか解らないけれど、全部を出させてあげて、
全てを受け止めよう。
そして、私が大丈夫なところを見せてあげるんだ。
もうひとりにならなくても良いと教えてあげよう。
意地を張る必要がない、素直になれる相手がいる事も解らせてあげるね、ひろちゃん。
584四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:03 ID:qOKKLZmt
ぐしぐしと顔を拭いて、ひろちゃんは暫くぶりの言葉を発した。
「ああ、泣いた」
私と一緒の時に見せる優しい笑み。ほっとする。ひろちゃんはやっと戻ってきたのだ。
私は彼の頬に口付け、迎えの挨拶。
「お帰り、ひろちゃん」
「……うん、ただいま、美里」
もっと実感が欲しくて、何度も軽い接吻をする。
ひろちゃんも嬉しいのだろう、月明かりに照らされた頬が赤くなっていく。
「ん、…は、んん……」
ひろちゃんの勢いが増していく。抱きしめる腕にますます力が入っていく。
どうやら私を抱きたくなったらしいけれど、今はしない。
「は、あ。待って。時間、ないんでしょ?」
ひろちゃんのお父さんが帰る時間までは少ししかない。
そういう仲だと知らせる良い機会だと言えなくもないけど、私としては
そんな事を気にせず行為に没頭したい訳で。
「……うん、そうだよな」
やや残念そうな顔と声音。
それも一瞬だけで、すぐに両方とも真剣なものになる。
「ありがとうな、美里。助かったよ」
「……うん、もうこんな事しちゃ、駄目だよ」
頷くと、もう一度肩口に顔を埋めるひろちゃん。
「でかい貸し、作っちまったな」
そんな事はない。私が貰ったものに比べれば大したことがない程度だ。
それに私一人の力なんかじゃない。こうしてひろちゃんを戻せたのは、阿川君の言葉もあったからだ。
「阿川君も心配してたんだからね。ちゃんと言わなきゃ駄目だよ」
「……うん、解った」
それから少しの間、私達は無言で抱き合った。
私よりも太い腕。厚い胸。ゆっくりとした鼓動。
──身体の芯が、じんじんとむず痒くなっていく。抱いて欲しい。ひろちゃんを、
全身で感じたい。
けど、今日は駄目だ。
585四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:06 ID:qOKKLZmt
「ね、三つだけ、お願いしていい?」
気付けばそんな問いを口にしていた。
その三つは既に頭にあって、そんな馬鹿な事を言わなければならないことが恥ずかしい。
「なに?」
ひろちゃんの声は穏やかで、その内容を全く想像できていないようだ。
恥ずかしいけど言いたい。この疼きをきれいに消化したい。
「一週間後、お昼ご飯食べてから、私の家に来て」
顔が熱い。ひろちゃんの耳元で、私を抱いて欲しいと宣言したのだから当然だろう。
「……明日じゃ、駄目か?」
それも悪くはないけれど、どうせなら思いっきりしたいのだ。
一週間後も経てば冬休みに入る。そうなればお母さんに気を遣う必要もないし。
「うん、駄目。で、二つ目はね」
ひろちゃんの首に腕を巻きつけて引き寄せ、口付け。
「ん、っふ……ぅん、……っ」
とろとろの唾液と熱い舌を吸い合った。
思考が熱を持ち始めて、でも支配されないように気合を入れながら続ける。
くちゅくちゅと淫らな音。意識がはっきりしてる分、普段よりも強い快感。
「は、んん、みさ、……っ、は、むぅっ……」
息苦しいけれど、もっとしよう。
もっとして、ひろちゃんの心を私の感触で埋め尽くしてあげよう。
「…っ、……っ!ふはぁ……」
月明かりが伸びながら落ちる透明な糸を万色に彩る。
ぞくぞくと燃え盛る本能を力づくで抑えて、私は言った。
「こういう事、毎日しようね」
自分でも解るくらいに艶めいた声だった。おそらくは顔だって相応のものになっているのだろう。
ひろちゃんは苦笑いして答える。
「この先までってのは、駄目か?」
ひろちゃんは私よりも盛り上がってるらしい。私の身体に直に触れたいと言う。
けど、そこまでしてしまったら絶対に止められなくなってしまうだろう。
だから、ここまで。
586四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:08 ID:qOKKLZmt
「うん駄目……それで、三つ目、なんだけどさ……」
これを言うのが一番恥ずかしい。
ひろちゃんは僅かに笑っている。どんな言葉が出るのか楽しみにしている感じだ。
「えっとねぇ、その時まで、ひとりで慰めちゃ、駄目だよ」
我ながらひどい事を言うよなぁ……
「美里、それは、……流石にきついぞ」
何だか今にも死にそうな顔になった。私は笑いを噛み殺して、止めを刺す。
「その、いっぱい、したいんだから、……頑張って溜めてね」
……凄い恥ずかしい事言ってるな、私。
もうちょっとは遠まわしな言い方をしたかったけれど、そんな余裕がないくらいに
昂っているのは確かだ。
はしたないと思われそうだけれど、そういった欲情を溜めに溜めて、一気にぶつけ合いたい。
ふ、と何か諦めるような笑いでひろちゃんは承諾してくれた。
「ま、頑張るよ」
ひろちゃんの事だ、間違いなく守りきるだろう。
「うん、頑張って」
励ましの言葉を言うけれど、こんな使い方をする人なんて私くらいだろう。
「な、美里」
「なに?ひろちゃん」
「美里も我慢しろよ。僕だけじゃ、意味ないんだからな」
かぁ、と思考が白熱した。
言われると、その言葉の凄さが解る。その、本当に──我慢するのが難しいことなのだ。
しかし約束したのだから、私も守らなきゃいけないのだ。
「……解ってるよぉ……」
「よろしい」
ひろちゃんは笑いながら私の頭をガシガシと撫でた。
私を褒める手。いつもの手の感触。
──って、簡単に立場が逆になってるけれど、まぁいいだろう。
私の表情の変化を見届けたひろちゃんは、腕を伸ばして部屋の明かりを点けた。
『ぱちり』
587四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:10 ID:qOKKLZmt
明るい部屋。本来の明るさ。いつものひろちゃんだ。
安心したのを知って欲しくて、その胸に頬擦りする。
これは私にとっての求愛行為の一歩手前だったりする。
両手でひろちゃんの腰を必要以上に突き出させて、そのまま胸から覗きあげれば
私がその気なのだとひろちゃんには伝わる。
ちなみにひろちゃんの求愛行為というのは私のそれよりも思いっきり直球で、
私を正面から抱きしめて、耳元で『お前を抱きたい』みたいな事を囁くのだ。
その仕草と言葉に凄く感じるものがあって、わざと言わせるように振舞った事もある。
私の中途半端な行為に、ひろちゃんはお返しとばかりに耳元で囁いた。
「じゃ、一週間後」
ふるふると私の大事なところが悦んでいる。予行練習のように収縮して、
顔に出ないようにするのがやっとだ。
待ち遠しい。これからの一週間は天国か地獄なのか、その判断が難しいところだ。
「ん、……一週間後ね」
同意と性的な喘ぎが混じった甘い鼻声が出た後に、確認の言葉。
お互いの言葉が届いたのを確かめ合って、私達は無言で部屋を出た。
ぱちん。ぱちん。
弾けるようなスイッチの音と共に明かりが戻る。廊下、居間、台所。
戻った。これで、元通りだ。
何の不安もない日常が蘇ったのだ。
「……よかった」
「──そうだな。……悪かったな、美里」
手を繋いでいたひろちゃんが謝罪の言葉を言う。
何も悪くなんかないのに。いつかは整理しなければいけない事なのに。
でも、この言葉で全てが終わるならば否定ではなく肯定すべきだろう。
「うん、許してあげる」
その後は久しぶりに送ってもらって、私は自分の家の前で振り返る。
「じゃ、また明日ね、ひろちゃん」
ひろちゃんはにっこりと笑って、
「──っ!」
無断で私に唇を重ねた。
588四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:12 ID:qOKKLZmt
軽くなんかない。舌を噛み合わせる深い口付けだ。
「は、ん……ふ、はふ……」
予期しない快感に、私はあっさりと陥落した。気が付けば
ひろちゃんの胸に指を食い込ませて、より深く結合出来るように顎を差し出していた。
辺りは真っ暗だけど、誰かに見られるかもしれないという事実が余計に私の気分を
盛り立てる。
「ん、……ぁ、ぅん……」
寒い屋外は熱い吐息を白いかたちに変えた。
とすんと玄関に押し付けられながら、私はひろちゃんの胸で悶える。
私を抱く腕は力強くて、停止と続行の決定権はひろちゃんだけが持つ状態。
不快じゃない。求められ、与えることが出来ているのが素直に嬉しいと思う。
かちかちと歯が当たり、つるつると涎が行き来する。
口からの音響が全身に響いて、これ以上喘ぎが大きくならないように
自制しているのがつらい。
気持ち、いい。
「……、っ!、──、は、あぁ……」
快感の残滓を拾い上げるので精一杯。他の事に意識が向けられない。
鼻先が擦れるくらいの距離で、雄性を剥き出しにしたひろちゃんは言った。
「今日の分だよ、美里」
これが、一週間も続く。とっくに身体は加熱していて、ひとりの時でも冷ます事も許されないのだ。
やっぱり地獄だ。幸福の地獄だ。
とんでもない約束、しちゃったなぁ……
「頑張れよ美里」
ひろちゃんの声でやっと現実に戻れた。
目の前の人だって同じ気持ちなんだ。その言葉の半分は自分を励ます
つもりで言ったに違いない。
「うん、頑張ろうね、ひろちゃん」
私は目一杯力を入れて返事をした。
ひろちゃんは軽く頷くと、おやすみと言って帰っていった。
……本当、約束しなければ、すぐにでも部屋にこもって自慰に耽っていただろうな。
ひろちゃんの指とか、唇とか、充血した性器を思い浮かべながら、……待った。
そこで終了だよ、私。
589四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:15 ID:qOKKLZmt
「ねぇ美里、なんか変だよ?」
「何でもないったら、大丈夫だってば」
「具合が悪いんなら、早退しなよ。終業式終わるまで、本当に持つの?」
「平気だって」
不審がる水原さんを必死に誤魔化す私。
明後日だ。
とっくにそういう欲は臨界まであがっていて、ちょっとした刺激、例を挙げるなら
着替えの時の下着の感触とか、お風呂上りのバスタオルが撫でる感覚とかに
私の身体は正直に反応してしまうのだ。
心だってそうだ。何かある度に、これがひろちゃんの手だったらなぁ、とか思ってしまう。
普段の何気ない会話や行動にも影響してしまい、こうして水原さんにも心配されてしまう。
ひろちゃんは何も変わらない雰囲気だけど、阿川君のイタズラが回数を増している
辺り、私には読み取れないような変化があるのだろう。
あの日以来、ひろちゃんは阿川君に話しかけることが多くなった。
阿川君も驚いていたようだったけれど、すぐにその理由を察したらしい。
時折私に視線を投げかけ、笑いながら頷いたものだ。
ひろちゃんが私との事を話すとは思えないけれど、それ以上に阿川君の
眼力が優れていたのだろう。阿川君にもそれなりの経験があったから、
それほどのものが身についたのだと思う。
私がこれから得る様々な経験は、どんなものをくれるだろうか。


弛緩した空気で終業式が終わり、HRも問題なく終了。
がやがやと教室が賑わい、波になって流れ出した。
私とひろちゃんは事前に申し合わせた通りに教室に残って、静かな廊下を
ふたりっきりで歩く。
学校で指定している内履きの底は決して硬くはないけれど、廊下の硬さと
衝突すると小気味よい音を生み出す。
とつとつとつとつ。
590四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:17 ID:qOKKLZmt
こんな時が一番困る。ひろちゃんを意識せざるを得ない状況。
私の中の本能がむくむくと首をもたげる感覚。
少しでも抑えつけようと、考えなしのまま言葉を発した。
「今年は、色々あったね」
「全くだ。随分、変わったよな……」
それが誰のことを指しているのかは定かではないけれど、
この場で該当するのは二人だけだ。
ひろちゃんの顔を盗み見る。平時の、感情を抑えた表情。
この人とはちょっとしたきっかけで近づいて、ちゃんとした理由があって離れ、
それを乗り越えて元に戻る。
これからの人生から見れば些細な事だろう。
それでも今の私達にとっては重大な出来事だし、ずっと忘れないと思うのだ。
「………」
「………」
明後日の行為は今年最後の総決算みたいなもの、かな。
生徒玄関、校門を通り抜ける。
それでも私達は言葉を交わさなかった。伝え合う事なんてないし、話題も特に──
あ、そうだ。
「ねぇ、ひろちゃん」
「ん、なに?」
「初詣、一緒に行こうね」
不思議そうな表情だ。私、変なこと言ったのかな。
「当たり前だろ。他に誰と行くんだよ」
……どうやらひろちゃんの中では既に決まっていた事項らしい。
「だよね、うん」
嬉しい。どうって事ない約束だけど、きれいに積み重ねていけば絶対に崩れない絆に
なりえるだろう。
591四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:19 ID:qOKKLZmt
どうせなら少しは驚かせてあげよう。数年ぶりに振袖姿でひろちゃんの家に迎えに行こう。
お母さんの実家がそういう事にうるさくて、私も少しだけ作法を習ったし、
ちゃんとした振袖も作って貰っているのだ。
振袖姿はクラスの友達には見せた事がない。ひろちゃんだけが知っている私の秘密。
子供じみたくすぐったい嬉しさが湧き上がる。
どんなに大人になっても、こういう気持ちをずっと持っていたいものだ。
「?」
「何でもないって」


そして、ひろちゃんの家の前。
いつものように私の手を放さずに、ひろちゃんは鍵を開ける。
私も無言で引かれる手に従うだけだ。変なことを言って、これから起こる欲情の津波に堤防を
作ってあげる気がないからだ。
『ぱたん』
まだ、しない。
私達は靴を脱いで、ひろちゃんは暖房の電源を入れて制服の上に着ていたコートを脱ぐ。
私は先に脱いで居間のソファに座り、ひろちゃんを待った。
鞄はテーブルに立てかけてある。私達がこれからそうするように、二つは寄り添っている。
きしり。ひろちゃんは落ち着いた感じで私の隣に座った。
私の中にある雌の部分に、厳重な檻で囲むイメージをした。
勝手に暴れても良いようにする。とりあえずは表に出ないだろう。
僅かな衣擦れの音に顔を向けると、ひろちゃんが私の頬に手を伸ばしてきている。
迷いはない。その表情からは抑えられた興奮を感じ取れた。
頬に添えられた手に、私も手を重ねる。離れないように。放さないように。
ゆっくりとひろちゃんの顔が近づいて、言葉もなく私達は口付け合った。
初めは軽い触れあい。唇の柔らかさとお互いの存在を確認する為の行為だ。
ひろちゃんのもう一方の腕が背中にまわって来て、私の自由を奪う。
本格的な交わりの為の布石。
「ん……、──っ」
592名無しさん@ピンキー:04/08/28 14:21 ID:+Ao1B1Yw
支援AGE
593四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:22 ID:qOKKLZmt
私の閉じられた口内で生まれた喘ぎにひろちゃんはしっかりと反応する。
「は、ふん……ん、あん……」
開いた二つの唇の間で二枚の赤い舌が踊っている。
表面の唾液を奪い合って、擦り付け合う。
更に吸って吸われて。唾液の量はますます多くなって、だらしなく
口の端から垂れ下がって、落ちる。
「んぁあん……ん、んん」
くちゃり。ぬちゅ。
音がする度にどちらのものと言えない唾液が舌に乗って相手に渡る。
何度も往復する熱い液体。思考を吸い取る粘液。
「ん、ん、ん、……っ、ぷはぁ……」
一度だけ大きく空気を吸いたくて唇を離した。
「や、ぁあ…ぁ…っ!」
ひろちゃんの唇は離れない。私の首筋にくまなく吸い上げて、それでも
飽き足らずに耳まで愛撫し始めた。
「ん!く、う!ひ、ろ、……っ!」
耳の穴に吹き付けられる吐息が脳髄を痺れさせる。ぐらぐらと檻が揺れている。
……止めよう。今日は、もう止めよう。
我慢出来なくなってしまう。ひろちゃんとの約束、守れないよ。
身を縮ませて必死に耐えるけれど、ひろちゃんの勢いは増すばかり。
つるりと耳を舐められた瞬間、檻が爆ぜた。
「ひろ、ちゃん!」
抑圧されていた雌性が躍り出た。
襲うようにひろちゃんをソファに押し倒して、お返しとばかりに耳を咥えていた私。
腕はがっちりと頭を抱きしめ、その上、恥じらいもなく囁いた。
「しよ。ひろちゃん、しようよ。我慢出来ないよぉ。
 ひろちゃんだってしたいんでしょ?私だってしたいんだよ?
 我慢するの、止めよ?私も我慢したくないんだよ?
 ほら、こんなにどきどきしてるし、……ここだって硬いんだよ?
 ひろちゃんはしたいんでしょ?私もしたいんだよ?
 ね、今しようよ。明後日なんて待てないよ。
 ひろちゃん、私を、抱いてよ。抱いてよぉ」
594四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:24 ID:qOKKLZmt
その全身を撫でながら内側の猛りをぶつけた私は、ひろちゃんの顔を覗く。
驚きと羞恥と欲情と興奮と抑制と暴発。
どれを取ろうか迷っているひろちゃん。私は迷っていない。
迷いを捨てさせるには、──そうだよね、それがいいんだよね。
雌の教えに私は素早く従った。
身体を起こして上半身の制服を脱ぎ捨て、下に着ていたセーターのラインがはっきりと
見えるようにしてから、スカートをたくし上げた。
薄いセーターに手を入れて、あまり大きくない乳房を揉む。
形の変化が解りやすいように目一杯手を動かす。
開かれた両足。丸見えになっている下半身の下着にも指を当て、秘所の入り口を
くりくりと擦った。
「くああ、ひろちゃん!ん、はぁん!ひろちゃぁぁぁん!」
ひろちゃんの前で、私は激しい自慰を始めた。
男の人にとって、大事な女の子が触れもせずに自分の意思に反して絶頂を迎える様を
見なければならないのは、多分、一番つらいことだ。
私の雌の部分が教えてくれた事。間違いじゃない。
今だにひろちゃんの奥にいる雄の部分は出てきていないけれど、
すぐにでも顔を出すに違いない。
「ん!くぅん!──っ、……っ!ひあぁぁああん!」
ひろちゃんだって我慢出来ない筈だ。私の痴態を黙って見届けるような人じゃない。
絶対に何かをしてくる筈なのだ。
「はぁー、はぁー、しよ、ひろちゃん……」
下着の透明な染みが表面に出たのだろう。指の動きに合わせてごしごしと
湿った衣擦れ音がするようになった。頬だって真っ赤、目尻も下がっているに違いない。
…まだ、駄目なのかな。もっと激しい媚態をさらすべきなんだろうか。
だったら、もっと解りやすいように、見えやすいように脱いでしまえ。
セーターに手をかける。指に力を入れて、
「待て、美里」
「──っ!」
大事なひろちゃんの言葉、あるいは最愛の雄の命令に私は停止した。
595四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:26 ID:qOKKLZmt
でも、停止したのは外側だけだった。中はこれ以上ないってくらいにぐるぐると
悦びが走り回っている。
ひろちゃんに抱いてもらえる。やっとしてもらえるんだ。
「待てってば……な、美里」
私を優しい笑顔で押し倒しながら、そっと言い出したひろちゃん。
「僕との約束、どうするの?」
でも、したいんだよ。
「僕は美里との約束、守りたい」
守らなくていい。したい。
「美里は僕との約束を破りたいの?」
守りたいけど、……。
うん、守ろう。破っちゃいけない事なんだ。
「……ごめん、ひろちゃん」
すう、と激情が冷める。……馬鹿みたい。一人で勝手に、何してたんだろ。
ひろちゃんに約束させたのは私だ。
私が守らなきゃ、ひろちゃんだって守らないだろう。
「よろしい」
「……うー」
がしがし。頭を撫でられる。
約束を取り付けたのは私なのに、何故守った事で褒められているんだろう。
世の中は不思議だらけだ。
「けど、なんだ、あれだよな」
ひろちゃんはあやふやな言葉を口にする。視線は中空を泳いでいて、
その顔もさっきとは全然違う年相応のものだ。
何を言いたいのだろう。
「すげー声だったよ、うん。びっくりした」
「……わ、忘れてよぉ!」
あの痴態を見せつけた事自体は納得してるけど、だからって言われてしまえば
どうしようもなく恥ずかしい。
596四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:28 ID:qOKKLZmt
ひろちゃんのからかう口調はまだ続く。
「色っぽかったしなぁ。一生忘れられないだろうなぁ」
にやにやと意地悪な笑み。私が嫌がってるのを知ってて、続けようとしている。
「駄目!今すぐ忘れて!」
こんちくしょう。こうなったら力づくだ。
「だってさ──」
「このっ!」
その口を塞ごうと両手を突き出して、あっさりと抱きしめられた。
ぼそぼそと私だけに聞こえるようにひろちゃんは言う。
「あんな可愛い美里、初めてだったからさ」
「〜〜〜〜っ!」
ずるい。
そんな事を言われたら、抵抗出来なくなってしまう。
胸元に顔を埋めて、せめて羞恥の表情だけでも隠そうとする私。
ひろちゃんはそれを咎めることなんてしない。私の心を安心させるように
頬を頭髪に押し当て、私達が触れ合う面積は最大になった。
「………」
「………」
静かな時間。
さっきの自慰で多少は欲情を吐き出せたのだろう、昨日とは比べ物にならないくらいに
心身が落ち着いている。……そんなの、私だけだ。
ひろちゃんはそれなりにこみ上げるものを耐えているに違いない。
だから。
「ね、ひろちゃん」
「なに?美里」
「さっきは、ごめんね」
「いいんだって」
「ひろちゃんがしたいなら、もう少し先まで、してもいいよ」
「………」
「ちょっとだけ、楽にしてあげたいんだよ」
私だけが楽になるなんて許せない。この身体をちょっとだけ自由にさせて、
ひろちゃんにも楽になって欲しい。
597四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:30 ID:qOKKLZmt
もっとも、男の人が欲情を吐き出せる行動なんてひとつしかない訳で、
それをしてしまったら約束を破らせるだけなのではないだろうか。
「ごめん、……無理だよね、そんなの」
「あ、と……そうでもない、かな」
身体を離して向き合うと、ひろちゃんは恥ずかしそうにぽりぽりと頬を掻いている。
詳しい説明が始まらない。言葉を必死に選んでいる様子だ。
「ひろちゃん?」
「えっとな……」
待ってあげよう。そんなに難しい内容なのだろうか。
数秒して、意を決したらしいひろちゃんが言い出す。
「美里はさ、さっきので、……イったのか?」
興奮で赤い頬を隠そうともしないで、とんでもない事を口にしている。
「あ、あの、…その……」
私だって恥ずかしいし、その興奮もうつってしまう。
どんな意図があるのだろう。私をからかっている様子ではない。
ちゃんとした問いなんだから、ちゃんと答えないと。
「…イってない、と思う」
達するところまではしなかった、ような気がする。
ひどく盛り上がっていたから、あまり明確に覚えていないのだ。
「あの約束のひとつは『自慰するな』だよな。なら、その、
 相手に慰めてもらうってのは、ありだよな?」
私にして欲しい、ということだろう。
でも、
「それ、だと、」
「解ってる。…ええと、出る寸前まで、して欲しいんだ。これなら約束を
 破ったことにならないだろ。さっきの美里のは、半分くらいは僕がさせたことなんだから、
 これでおあいこだよな」
必死に理屈を言葉にするひろちゃん。
この理屈がなければ一気に最後までしてしまうと感じているのだ。
大した自制心だと思う。
「う、ん、そうなる、かな」
598四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:32 ID:qOKKLZmt
「もし我慢出来なくて…出たら、この場で美里を抱くよ。……これで、いいか?」
断る理由なんてない。少しでもひろちゃんの為になるなら、なんでもしてあげたい。
さすがにこの提案は思いもしなかったけど、ひろちゃんが望むならしてあげたいと
思う。
「うん、いいよ」
なるべく真剣な表情で私は答えた。
ひろちゃんも戸惑いを隠しきれず、それでも頷いてくれた。


ズボンを足首まで下げたひろちゃんがソファに浅く座っている。
やや開かれた股間に、硬直したひろちゃんの性器が天井に向いている。何もしてないのに
先端が濡れていて、凄くいやらしい印象だ。
私は彼の両脚の間に身体を潜り込ませ、その熱棒をまじまじと見詰めていた。
最初はファスナーを下げて、ズボンの中から屹立した性器だけが飛び出していた状態だったけれど、
私は全部見たかった。お願いしてズボンを下げてもらったのだ。
こうして間近で見るのはこれが初めてだ。汗とは違う匂い。鼓動にあわせてゆらゆらと揺れている。
見ているだけなのに、体温が上昇していく。やっぱり、本能的なものだろうか。
その熱さを吐き出すようにため息を吐くと、ひろちゃんの性器がびくりと震えた。
「ひろちゃん?」
「…うん、そんなもんなんだよ。美里の大事なところと一緒だよ。
 ……敏感、なんだ」
頬を赤らめて言うひろちゃん。息がかかっただけなのに、大きな反応だった。
その言葉は嘘じゃない。あんな事でも感じるんだ。
「………」
…見惚れてる場合じゃない。
ちゃんと、してあげなきゃ。
「いい?」
「うん」
私は決意して、指を数本だけ側面に触れさせる。
「っ!」
599四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:35 ID:qOKKLZmt
どちらかといえば色白のひろちゃんの身体で、唯一黒ずんだ所。
その反応。同じ身体なんだ。そう知ってしまえば、触れることへの抵抗感は格段に減った。
右手の指を全て使って、掴む。それだけで性器は僅かに太くなった。
これって、
「気持ちいいの?」
「…いいよ、うん」
なら、もっとしてあげよう。ゆっくりと手を上下させてみる。
じんわりと漏れ出す液体が増えた。裏の筋を伝って、動いていた私の手に絡み付いた。
じゅ、くちゅ、にちゅ。
「ん、……く、ぁ……っ」
粘っこい音だ。恐らくは相応の粘度なのだろう。私との性交を思わせるひろちゃんの表情。
眉毛が寄って、目は閉じられている。私の手の動きに集中しているのだろう。
ひろちゃんが私の行為に酔っている。加減も知らない愛撫なのに受け入れてくれている。
興奮、してきた。
手が往復する度に性器は熱くなる。太くなって、ふるふると悦んでいるようだ。
私もうれしい。ひろちゃんに快感を与えることが出来ているから。
「はぁ、はぁ、は…ぁ」
私の呼吸も荒い。あそこがじんじんと疼いて、手を伸ばしたくなる。
一緒にすれば、もっと気持ちいいんだろうな。──待った。今は、してあげるのが優先だ。
黙って自慰をしても気付かれないだろうけど、約束は守ろう。
万が一にも伸びないように両手でがっちりと掴んで、より力強く擦った。
「は、……ぁ、いいよ、美里……っ」
てらてらと光る性器が時折跳ね上がる。
足りない。もっと、直に感じたい。指よりも繊細な神経が通っているところ。
指よりも様々なものを感じる器官。膣内が一番だけど、それは駄目。
二番目は、やっぱりここなんだろうな。
「ひろちゃん、聞いてる?」
夢中になっていた彼を快感の渦から引き戻す。
何も言わないで始めてよかったのかも知れないけど、私は知って欲しい。
「ん、んん、なに?」
「口でしてあげるね、ひろちゃん」
600四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:37 ID:qOKKLZmt
「無理、しなくても、──っ!」
先端に口付けると、腰すらも跳ねた。
「は!……ああ!ぅ……っ!」
私の大事なところと同じだ。その形の頂点が、一番敏感なんだ。
ひろちゃんは喘ぎ、爪をソファに突き立てて狂っている。
私がもたらす快楽に狂っているのだ。
濡れた手を放して、ひろちゃんの手に重ねる。とたんに掴まれ、私は口だけに集中出来るようになった。
出来るだけ膣と同じ形にしよう。歯を立てたら駄目だ。顎を開いて、唇はすぼめる。
そして、挿入。
「ふ、……ん、んん!」
さらに太さを増したひろちゃんの性器が口の中で暴れている。
膣と間違えて蹂躙しようと動いているのかな。
どっちでもいい。もっと、悦ばせてあげよう。
奥深くまで含んで、裏筋を舌で撫でる。少しだけ口から引き抜いて、先端の割れ目に舌を押し付け、
頭を退かせながらずるずると唾液を塗りたくる。
「ふ、あ!美里、すご……っ!」
ゆで卵みたいな先端への口付けに戻って、もう一度。
「くぅぅぅぅ……っ!」
ひろちゃんの性器を口いっぱい頬張って、続いて匂いも鼻腔に充満。
昂られずにはいられない匂いと熱さだ。頭がぼおっとする。
脳にきめ細かく造形を写したくて、先端を中ほどに位置させてから、
頭の角度を変えながら舌に神経を集中させて、僅かな凹凸を確かめた。
皺ひとつない先端。その向こうには鋭角な角があって、私は納得する。
こんなので掻きまわされたら気持ちいいのは当然だ。
その角を一番上からなぞると、だんだんと先端に近づいて割れ目のすぐ下に到達。
びくんびくんとひろちゃんの腰が蠢く。ここが、一番いいらしい。
「ふっ、……く!そこ、待てって……!」
強すぎる刺激から逃れるように私の奥まで入ってきて、ひろちゃんは一息ついた。
「は、あ。美里、もう、いいよ。これ以上は、ちょっと…」
私は性器を口から抜いて、答えた。
「駄目ぇ。もっと、ぎりぎりまでしよ?」
601四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:39 ID:qOKKLZmt
そうなのだ。私はひろちゃんの追い詰められた顔が見たいのだ。
それを見届けたくて、竿の横腹に口付け。
「こら、美里、……うぅ!」
つるつるの先端とは全く違うごつごつとした感触。逞しいとさえ感じてしまう。
先端ののように敏感ではないらしいけれど、逆に鈍い快感がひろちゃんの心を煽るのだろう、
さっきよりもずっとつらそうな、いい顔だ。
「ん、んん、……はぁっ、は、ぁっ」
目は閉じられているけど、これは無意識なのだろうか。
ひろちゃんの腰が、僅かに前後している。性交の時のように、淫らにうねっている。
やっぱりしたいんだよね。私の所為で、一生懸命耐えてるんだよね。
……出させてあげよう。今日は本番をしなくてもいい。
一回だけ射精させて、ひろちゃんを助けてあげよう。
私は鼻先を擦り付けて匂いをかいで気分を盛り上げ、本格的な擬似性交を始めた。
「ん、ふん!──ん!んん!」
最奥まで届かせ、じゅぷじゅぷと表面の唾液ごと性器を吸い上げ、射精を促した。
顎が疲れているけれど、気にしない。可能な限り、強く吸いついて、搾る。
滅茶苦茶に頭を動かして、私自身も口内からの強烈な快感に溺れ始めた。
「は、うう!美里ぉ!……う、ぁあ!」
ひろちゃんの顔を見上げると、本当に達する寸前らしい。
我慢しなくていい。出してもいいんだよ?
頑なに耐え続けるひろちゃん。突破口を開けたくて、性器の割れ目に舌をねじ入れた。
「うああ!やめ、出……っ!」
ぐちゃぐちゃの口内をひろちゃんの膨張しきった性器が踊っている。
こときれる寸前の舞。もうすぐ、陥落するんだ。
「美里、っ!うぅ、……っ!は、う!」
私の頭をひろちゃんの手が掴んで、ごつんと一気に貫かれた。
がくがくと振動する灼熱の性器ときりきりと収縮する私の膣。
そして──
602四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:42 ID:qOKKLZmt
「……っ!う、はぁ!は、はあ……」
出なかった。どくんどくんと脈動してるけど、射精しなかった。
最後の一手を私にさせない為の貫通だったのだ。
息も出来ない程、深くまで貫けば私は何も出来ない。それを知っての行為だ。
本当、残念だ。私の顎は長時間の奉仕で疲弊しきっていて、もう動かせない。
「ん、……は、くぅ、……ふう」
ひろちゃんは快感が収まるのを待ってから、私の口から性器を抜いた。
果てなかった性器は硬くて。まだ力を失っていないのに、私だけが続行不能。
何だか、悔しい。
「これで、おあいこだよな、美里」
ひろちゃんは全身から快感の余波を滲ませながら言った。射精寸前の快感で
少しは気持ちが晴れたのだろう、興奮が抜けきらないけどさっぱりした、という表情。
いきり立っていた性器が、今日は終わりとばかりに垂れ下がってしまう。
芯には硬さが残っているのか、完全には戻らない。
私の秘所も蜜を滲ませていて、じくじくと疼いている。
……うん、これなら良し。
今日の分が上乗せされた明後日の性交は激しいものになるのだろう。
ひろちゃんはティッシュで私の口を拭って、同じように性器を拭いてから
下着とズボンを戻してから小さい声で言う。
「なぁ、美里。……明日、どうする?」
視線を合わせると、ひろちゃんは迷っている様子だ。
毎日するって約束はどうなるんだろうか。
「いや、明日もするけど、今日みたいに深いのはしない方がいいと思うんだ。
 ……多分、我慢出来なくなる」
ひろちゃんは何が何でも明後日にするという約束を守りたいのだ。
その為の妥協。私の為の、提案だ。
「私も、多分そうなると思うから、…うん、明日は軽く、しよ」
私もひろちゃんの気持ちと同じだった。明日ならひろちゃんを落とせるかな、なんて
少しは考えていたけれど、今の言葉でそれは却下だ。
全力で明後日に備えよう。
「よかった」
ほっとしたように胸をなでおろすひろちゃん。
603四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:44 ID:qOKKLZmt
心底思う。本当に私のことだけを考える人だ。
……想像も出来ないくらいに深い孤独だった証拠。
信じられないくらいに誰にも触れたことがない証明。
それが覆った事を、もっと確かなものにしてあげよう。私の時間をひろちゃんの為に
使いたいと本気で思い始めた瞬間だった。
焦る必要はない。確実に進めるのが第一だ。
私は制服の着て、乱れを直す。家に帰ったら、とろとろに濡れきった下着を換えなきゃ。
幻想じみた交わりの時間は終わりだ。明日の幻想時間まで、現実に戻ろう。
「じゃ、また明日ね、ひろちゃん」
「うん、いつでも来ていいからな」


昨日の口付けは本当に軽く、時間も短いものだった。
それでも終わってから長い事見詰めて、明日、つまりは今日の情事を想像していたのだ。
まあ、ひろちゃんはどうなのかは解らないけれど、……何の証拠もない妄想だけど、
同じ事が頭をよぎっていたに違いない。
早めの昼食を摂った私は、服装の事で悩んでいた。
待ちに待った日なんだから一番いい服だろうか。でも、普段着の方がどう考えたって自然だし、
ひろちゃんも落ち着くだろう。とはいえ、少しでも私を女の子だと感じて欲しいなら、
いい服を選ぶべきじゃないのか。あからさまだけど、気を遣っているのを教えたいし。
無理したところで不自然なだけだ。意味ない。でも、特別な日なのだ。普通が適切とは思えない。
……朝からこの調子だ。終わらない。普段着の、膝まである長いスカートと厚手の長袖で
家のあちこちをうろうろしている。
とりあえず、下着は新しいのをおろした。ブラジャーはフロントホックのを選んだし、
これは正しい選択だと思う。
普段着にしろ外行きの服にしろ、ひろちゃんが脱がせやすい服なんてそう多くはない。
……だからこそ、こんなに迷うのだ。
『ぴんぽん』
来た。
『からからから』
早いよひろちゃん。もう少し時間頂戴なんて考えは今更無意味。
玄関に急行する。
604四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:46 ID:qOKKLZmt
硬い顔。やっぱり緊張してる。ひろちゃんも普段着だったのが救いかな。
「……美里」
「……なに?」
はぁ、とため息をはいたひろちゃんは背中を向ける。
直後にかちりと鍵をかけた。
振り返って、ずいっと私の前に立つ。
「戸締りはちゃんとしろって」
あう。早くも失点だ。機嫌、悪くしたかなぁ……
ぐ、と両肩を掴まれて、
「邪魔入ったらどうするんだよ、美里」
甘い声音が耳に飛び込んだ。
…本気だ。本気で、私を抱こうとしている声音だ。
身体の芯が電熱線みたいに赤く、熱くなっていく感覚。
私も対抗するように胸に飛び込んで、ひろちゃんの腰に手をまわす。
頬擦り。そして上目で覗く。
「いっぱいしよ、ひろちゃん」
「うん、いっぱいしような、美里」
いつもしていた、気持ちを確かめ合うような触れ合いは無しだ。
私達は荒っぽい口付けで今日のスタ−トを切った。
「ん、はぁ、ん!……ぅ、ぁん!」
遠慮なんて微塵もない激しい結びつきが口で行われる。
ずっと待っていた感触。背筋がびくびくと痙攣しながら伸びて、ひろちゃんの身体と
ぴったりと重なるようになる。押し付けた胸はその鼓動を感知し、密着した腰はひろちゃんの性器が
膨れ上がるのを感じ取っていた。
私の血流も速くなる。大事なところが微妙な動きをして、私を責め立てる。
早くひとつになれ。一番奥まで満たしてもらえ。
「く、うぅぅん……ひろ、ちゃあん……」
興奮に歯止めが効かなくなっていく。一度でもそれが暴れてしまえば、理性的な行動は不可能だろう。
今、言わないと。
「待って、ぁん、ちょっと、待ってよ」
「どうした?」
605四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:48 ID:qOKKLZmt
ひろちゃんは耳たぶを甘く噛んで、私のお尻の丸さを強調するような愛撫で言葉を遮ろうとしている。
今すぐこの場で、強引にひとつになってもおかしくないくらいの獰猛さだ。
嬉しい。けど、ちゃんと言わないと。
「うん、聞いて、よぉ……今日は、つけないで、しよ?」
ぴくん、とひろちゃんの身体が緊張して、私を正面から見据えた。
避妊薬を使うことにひろちゃんは強い抵抗感を示す。それを使ったのは最初だけで、
それ以外はひろちゃんは避妊具を使ってくれた。
避妊具を使った方がより安全だとは知っているけれど、
今日は直に触れてほしい。直接、ひろちゃんの想いを受け止めたいのだ。
「………」
興奮の中には決して小さくない躊躇が混じっている。
……止めよう。
私のわがままでこれからの行為に水を差すなんて、ひどい裏切りに思えた。
撤回しよう。ひろちゃんには安心して私を抱いて欲しい。
「解ったよ、美里」
と、同意の返事。
「本当に、いいの?」
その顔から緊張が抜けて、照れくさそうな表情になる。
「一週間も頑張ったからな、ご褒美だ」
ちゅ、と私の頬をひろちゃんの唇が吸う。
私もお返し。どうせなら三回して、嬉しさを教えてあげよう。
心地良さそうに受け取ったひろちゃんは耳元に口を寄せる。
「……どうする?ここで、する?」
もし良いなら、ここでしたいとひろちゃんは思っているのだろう。それほどまでに
昂っているのだ。
鍵はかかっている。誰も来ない。ちょっと迷ったけど、私は決めた。
「部屋で、しよ」
606四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:50 ID:qOKKLZmt
「随分変わったな、うん」
ひろちゃんは私の部屋に入るなり、そんな事を言った。
前に入れたのはいつだったかな……たしか、中学の頃だった。
受験勉強中にどうしても解らない所があって、ひろちゃんを呼んで教えてもらったのだ。
その頃は完全な幼馴染だった。どこか大人っぽいひろちゃんは、子供っぽい私を
妹のように扱っていたと思う。ひとつひとつを手取り足取り。厳しいようで、実は甘い。
思い出してみると、あれはあれで恥ずかしい事だ。当時はそんな考えを持てなかったけれど、
今では赤面するほどの思い出だ。
──そして、今日。
この部屋にひろちゃんとの新しい思い出が刻まれる。
「変わらない方がおかしいでしょ」
あちこちを眺めるひろちゃんにそう言って窓のカーテンを閉めようとすると、
ぐいっと後ろから抱かれる。
「女っぽくなったよ、うん」
耳元での囁き。私の背中はひろちゃんの胸よりも小さい。
包むような腕も太くて力強い。あの頃とは違う。男らしくなった、と思う。
女っぽくなった。それは何の事を言っているのだろう。
「それって、どんなところが?」
「いい匂いがするようになったよ。見た目も、昔とは全然違うし」
「本当に?」
「本当に」
即答だ。
偽りのない言葉。誰にも言えない、私だけに言える本音だ。
それに対して、私は本音を言い返さない。ひろちゃんも男らしくなったよ、と。
言葉では限界があるし、いくらでも嘘を吐ける。だから、行動しよう。
「待ってよ。ちゃんと見せてあげるから、……その後で、もう一回言って」
首をまわしてひろちゃんに向けると、唇が重なった。
力強く引き寄せられ、私は半ば倒れこむような姿勢になってしまう。
ひろちゃんの身体はびくともしない。私の体重が加わっているのに、何ともないらしい。
……私が思っていた以上にひろちゃんは成長している。
607四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:53 ID:qOKKLZmt
成長期だから当然だけれど、そんな事にさえ、私は喜びを覚えてしまう。
頼もしい人なったから。身体と心を預けるのに相応しい存在になったから。
私のひろちゃんが、大きくなったから。
吸い合っている唇に神経を集中していると、不意にスカートが脱げ落ちた。
スカートを脱がして腰をまさぐっていた手が気持ちよくて、うっとりしてしまう。
「んっ、はぁ、……、くぅん」
それでは物足りないと、長袖のシャツに潜り込む。
胸まで登ろうとしている手を、へその辺りで私は止めた。
「ちゃんと脱がせてよ、ひろちゃん」
「うん、解った」
昂った声が聞こえて、私の身体はひろちゃんと向き合うように回転する。
幾分楽しさが増した視線。服を脱がしてもらうのは前に抱いてもらった時が初めてで、
ひろちゃんはやけに嬉しそうだった。目の前で私が裸になっていくだけじゃなくて
そういう事をさせてもらえる、というのも嬉しいらしい。
私としても間近で見てもらえる訳で、はっきり言えば気に入っている行為だ。
ひろちゃんは笑みを浮かべて私の服を脱がす。
優しい笑いの中には隠しようがない興奮が読み取れる。
私もだんだんと気持ちが加熱していく。ちりちりと、日向ぼっこをしているような感覚。
……私にとっての太陽、というのは大げさだろうか。
私を下着だけにしたひろちゃんは額に軽く口付け、私達はベッドに座る。
ぎしりと昔から使っているベッドが初めて軋んだ。
「──あ」
「どうした?」
隠すことじゃない。教えてあげよう。
「うん……私ひとりだと、こんな風に音がしないんだよ。こんな音、初めて聞いた」
「ふたりであがってるんだもんな……」
誰かと初めて使うベッド。その相手はひろちゃんなのだ。
心拍が速くなる。……何だか、初めて抱いてもらった時みたいだ。
「美里」
声に振り向くと、ひろちゃんの手が伸びてくる。
腰に巻きついて、胸も抱き寄せられる。……難しいことを考えるのは止めよう。
ひろちゃんに、全てを任せよう。
608四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:55 ID:qOKKLZmt
ひろちゃんは私を抱きしめながらベッドに押し倒す。ぎしり。
また鳴った。お互いの舌を触れ合わせ、私はそんなことを考える。
私が僅かに身体を捩るだけでも鳴っているようだ。
これなら、
「もっと鳴るな、美里」
…ひろちゃんも同じ考えだった。
さすがに壊れるなんてことにはならないだろうけど、少しは不安かも。
「にしても、美里」
ひろちゃんは私の胸の谷間に顔を埋めながら言う。
「いい匂いだよ、うん」
くりくりと鼻先で乳首をブラジャーごしに撫でている。
敏感な突起から鈍い快感が染み渡るように広がって、自然に音声になってしまう。
「ぁ、ぁぁん……きもち、いいよぉ……」
頬や唇での愛撫も始まって、頭の芯がじんじんと疼いていく。
「ん、あれ?」
ひろちゃんは私の背中に両手をまわし、疑問の声をあげていた。
「……あ、今日のは、前なんだよ。今、外すね」
ブラジャーを外そうとしていたらしい。
ひろちゃんは身体を少しだけ離して、私の行動を見守っている。
羞恥を押しのけ、外れたとたんにひろちゃんの顔が真っ赤になった。
「ひろちゃん?」
「あ、いや、すげーえっちな感じだよ」
「……そうなの?」
まだ脱ぐところまではしていないのに、随分と興奮しているようだ。
「うん。微妙に隠れてる感じがいいんだ」
ひろちゃんはブラジャーと胸の隙間に手を滑り込ませ、すくい上げるように揉み始めた。
優しく撫でるように、そうかと思えば握るように強く搾る。
じいん、と身体全体の神経が敏感になっていくのが解った。
「ん、熱くなってきたよ、美里」
ひろちゃんも抑えが効かなくなっているらしい。だんだんと、手の動きが大胆になっていく。
609四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:57 ID:qOKKLZmt
私達の呼吸のペースは変わらないけれど、一回毎に行き来する空気の量は格段に多くなっている。
はぁー、はぁー。
理性が崩れていない証拠。
もっと、崩してあげよう。崩れてみせよう。
「んぁあん…ひろちゃん、…ぅん、早く、してよぉ……」
秘所の疼きを感じて欲しい。沸騰しきっている事を知って欲しい。
黒い短髪に手を添えて胸に吸い付いている唇を剥がし、私の唇と密着させる。
何度も何度も舌を押し込んで、こんな事をして欲しいと私は訴える。
「ん、ああん、してよ、ひろちゃん、ねぇ、してよぉ……」
「解った、んん、美里、離してくれなきゃ、出来ないぞ」
知らず知らずにひろちゃんの首を腕で固定していた。
「……、ごめん」
力を抜いて、絡んでいた腕をほぐす。
どんな顔をしているのだろう、ひろちゃんは数秒だけ私を見つめた後に、残った最後の下着に
指をかける。
皮膚に指が食い込む僅かな感触。ひくりと腰が震え、ひろちゃんは構わずに下着を脱がす。
するんとあっけないくらいに簡単に引き抜かれ、私の両膝を思いっきり開けるひろちゃん。
あそこの入り口も開いて、とくとくと液体が零れてお尻の穴が埋まる。
「やぁ……恥ずか、しい」
こんなにも淫らになっている事に激しい羞恥を感じてしまう。
ひろちゃんは股間に顔を近づけ、私の大事な所を観察するように言う。
「濡れてるよ美里。どんどん溢れてくる」
言葉と視線に刺激された私はより高く興奮し、本当にどうにかなりそうなくらいに
ひろちゃんが欲しくなった。
その想いが自然と口から出た。
「なら、しよ?」
「うん、そうだな」
ひろちゃんはそう言うと背中を向けてトランクスを脱いだ。
振り返り、私の目は最大限に大きくなった性器だけを見ていた。
これから一仕事しようという決意。
最も深い所まで愛そうという意思。
ごくり、と私の喉が鳴る。
610四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 14:59 ID:qOKKLZmt
「……じゃ、いくよ」
腰を落とし、反り返る性器を抑え付けながら前進するひろちゃん。
じれったい。もっと一気に来てもいいのに、何でこんなにも慎重で、……優しいのか。
つぷ、と先端が埋まっただけなのに、私の下半身は跳ね上がった。
「……っ!」
ふるふると膣が踊っている。待ちわびた瞬間の訪れに、最大の蠢動で悶えている。
一呼吸したひろちゃんは、腰を進めて私と深く繋がった。
「ひ、んんあぁぁあああぁああ!」
直後にぱちんと意識が弾け、心が真っ白になる寸前に布団と背中の隙間に
腕が差し込まれた。その感覚でどうにか失神を免れる。
「ぁ、ぁ……ん」
私を塗りつぶそうとする快感を際どい所でやり過ごしてひろちゃんを見ると、
悩ましげに眉が寄っていて、濃密なため息を漏らしている。
なんだか、凄く気持ち良さそうだ。
「……ひろちゃん?」
「うん、……美里の中、気持ちいいよ」
目が開いて私を捉える。……私の心が落ち着くのを待ってくれているようだ。
出来る限り私に優しくしようとの心遣いが嬉しい。
「うん、いいよ」
ひろちゃんは無言で頷くと、ゆっくりとした抽送を開始した。
一秒近い時間をかけて腰を引いて、同じだけ時間をかけての挿入。
「……ぁ、ぁああん……」
聞き届けてから、もう一度。
私の存在を確かめるような愛撫。
「は、……んぁああ、ん……」
ひろちゃんとの性交で、この時が一番好きだ。
一緒に絶頂までの階段を登っている感覚。一歩一歩、着実に足を進める感じがたまらない。
……今更だけど、実感した。ひろちゃんが戻ってきた事を。
嬉しくて嬉しくて、何だか泣きそうになってしまう。
「ん、どうした、美里?」
「……やっと元通りなんだなって、思ったらさ、……うん、ごめん……」
611四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:01 ID:qOKKLZmt
ひろちゃんは微笑んで、私に口付け。
「こっちこそごめんな。寂しかったよな……」
「ん、許してあげるから、……もっと、してよ」
ゆったりとした快楽に身体が慣れてしまい、物足りなくなっていた。
快感の小波よりも、その後からやってくる余韻の疼きの方が強いのだ。
これはこれで感じるものがあるけれど、もっと大きな快感が欲しい。
ひろちゃんは私を少しでも満足させようと舌を求めて、より強く腰を叩き付けた。
「ん、……っ……は、ん……」
私はひたすら酔った。喘ぐ声すらも快感に変換され、体内でうねっている。
「……っ、ふは、ああん、くあぁ、……ぁあ!」
唇が離れた途端に溢れ出す悦声。こうして間近で聞かれるのは恥ずかしい事なのかもしれないけど、
私は聞いて欲しい。ちゃんと感じているのを理解して欲しいのだ。
ひろちゃんは一定の間隔で私を突き上げる。気持ちよさそうだけど、私を観察する程度の
余裕はあるらしい。
「可愛いよ、美里」
私だけが感じているみたいだ。ひろちゃんもそれなりの快楽を得ているらしいけど、
もっと感じて欲しくて下腹に思いっきり力を入れた。
「くぅ…っ!」
ひろちゃんの顔から一気に理性が消えていく。
「うわ、……ちょっと、待て……っ!」
急激な刺激から逃れるように性器が引き抜かれ、腰に絡む私の両脚がそれを阻んだ。
どすんと腰が密着する。
「は、ああぁっ!」
ぶるぶると太さを増した性器が振動している。
私の膣にも伝播して、その快楽の大きさがよく理解出来た。
「……美里、何するんだよ」
「よかった?」
苦笑いし、答えてくれた。
「かなり、な」
私だって好きな人に感じてもらえるのは嬉しい訳で、力を緩めないように気をつけながら口付け、
ひろちゃんを促す。そろそろ高みに連れて行って欲しいと。
612四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:03 ID:qOKKLZmt
ひろちゃんは止まっていた性器の運動を再開する。
「ん、……絡みつくみたい、だ」
見えないけど、繋がっているところがどんな状況なのか細かく想像出来てしまう。
ひろちゃんの性器が往復する度に私の秘所からは液体が溢れ出し、
じわじわとシーツを濡らしているのだろう。
私から快楽を引き出して、叩きつける。もっと私を快楽まみれにしようとひろちゃんの
ペースはあがっていく。
「は、ああ!いいよぉ、んん!ひろちゃぁん……っ!」
荒い息をしながらひろちゃんは行為を続行する。
私を締め付ける腕に力がこもって、まるで抱きかかえられているみたいだ。
「くう……美里、……、どんどん、締まってくるよ」
がくがくと私の身体は揺さぶられ、絶頂に近づくほど、全身から力が抜けていく。
快感への抵抗が弱くなってしまう。心も身体もひたすら快感を貪り、
もっと脱力する身体とは裏腹に私の膣はより快楽を搾り出そうと収縮している。
それに応えるようにひろちゃんの性器も膨張し、より深い所まで届く。
「ふあぁ……んは、ぁあ、あああ!」
奥深くまで触れて、ごりごりと肉壁を引っ掻きながら次の突入に備えるひろちゃんの棒。
私はその摩擦が生み出す感覚に必死に耐えるだけだ。可能な限り、達してしまうのを
遅らせようと快感を抑え付けるけど、余計に興奮の度合いが高くなってしまう。
結果として快感がどうしようもないくらいに大きくなるだけだった。
ひろちゃんの抽送は素早く、そして強いものになっている。
口からは色めいた溜め息が何回も零れて、もっと動こうとする身体にブレーキをかけている
ように見えた。
「ひろ、ちゃん?」
「ん、どうした?」
停止したひろちゃんが私を見つめる。それだけなのに体温が上昇し、言葉を形にするのが
難しくなってしまう。
「……あの、我慢、しなくてもいいんだよ?」
「……」
ひろちゃんは丁度いい言葉を見つけられないのだろう、数秒だけ沈黙して、
決意を私に伝えた。
「痛かったら言えよ。すぐ止めるから」
613四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:06 ID:qOKKLZmt
先ほどの行為は慣らし運動だと言わんばかりの律動。
私は声すらも押し殺して、ひろちゃんの身体を抱き締める。
「……っ!ん……ん!」
一握りだって外に漏らしたくなかったのだ。この行為がもたらす幸福感に、
思う存分浸りたかった。激しく愛される事の嬉しさをそのまま飲み込みたい。
ひろちゃんの性器が私の子宮に直接精液を注ぎ込もうと、さらに膨張していく。
「ふく、ぅう!当たっ……は、ひあぁあぁ!」
「は、……ぁあ!美里……っ!」
返事をする間もなく、私はひろちゃんに抱きかかえられた姿で真っ白な絶頂に到達した。


最高の恍惚から覚めてひろちゃんを見ると、今だに射精の最中のようだ。
眉が皺を作っていて、微かな呻きと共に何度か性器を往復させている。
……お腹の中に、原始的でありながら官能的な熱さ。じんわりと全身に沁み込んで、心が高揚する。
本能的なものだとは考えたくない。ちゃんと愛してもらった証拠だ。
ひろちゃんの想いを直に受け取る事は、私にとってはこの上ない悦びなのだ。
「ん……ふ……」
重い艶声を漏らし、ひろちゃんは性器を引き抜く。
快楽の余韻も重くて、全身から力が抜けてしまう。目を開ける分すらも溶けてしまったようだ。
きし、とベットが鳴る。
そして、ひろちゃんも身を横たえて、私を広い胸に抱きしめ──ない?
予想を裏切られ、薄目でひろちゃんを見ると、座った姿勢で何だか思い詰めた表情だ。
「美里、いいか?」
「…え、なに?」
少しだけ顔を伏せて、戸惑うようにひろちゃんは言い出す。
「もっと抱きたい。もっともっと、美里の中に出したい。……つらくなったら言えよ。
 自分でも、何回すれば収まりがつくか予想出来ないんだ」
寝ている私からも見えるくらいに反り返っていくひろちゃんの性器。
どくんと心臓が叫ぶ。私の身体も応えるように艶と力を取り戻したと思う。
「……可愛いよ美里」
ひろちゃんはくの字に重なった私の足を開こうとせず、覆いかぶさるように
再度の挿入を始めた。
614四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:08 ID:qOKKLZmt
その後、ひろちゃんは三度も想いを放ち、私が絶頂に至ったのはそれを超える回数だった。
獣のように相手の身体を貪り合い、何ヶ月も逢えなかった恋人同士のように自らの愛を見せつけ合う交わり。
「は、ぁ……」
ようやくにして私はひろちゃんの胸に収まる。
至福の時間。
心地よく気だるい疲労を噛み締めあいながら、微笑みを見せる。
ひろちゃんも荒い呼吸をしているけど、発作は起こっていないらしい。
あれだけ激しい交わりだったのに、しっかりと体調を崩さないペースを守っていたようだ。
この行為に慣れた証拠。その相手は私なのだ。
私の気持ちには何の隔壁もなくて、ちょっとだけ考えた事が簡単に口から出てしまう。
「もっと、こういうこと、したいね……」
「毎日?」
羞恥を覚えながら、素直に私は答える。
「うん、出来れば、ね」
「僕は月一回くらいにしたいけどな」
……そんなものなのだろうか。この年頃の男の子なら、それこそ毎日でも可能な時期だと
思うし、そういう欲情だってある筈ではないのか。
「ま、そりゃあ、発作がない限りはしたいけどさ……」
疑問の表情を覚えつつ私は訊く。
「じゃあ、何で?」
照れを隠そうともせず、ひろちゃんは私を見据えて言った。
「今日の美里、可愛かったからな。前にした時よりもずっと可愛かった」
咄嗟に返事が出来ない。何て言えばいいんだろうか。
肯定するのはおかしい気がするけれど、否定したところでひろちゃんの気持ちは変わらないだろうし。
悩んだ結果、
「……本当に?」
芸もなく確認の言葉が言えただけだった。
ひろちゃんは何の臆面もなく私に言う。
「うん、本当。ちょっとだけ我慢して今日みたいな美里を見れるんだったら、
 毎日はしたくない。……美里はどう思う?」
615四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:10 ID:qOKKLZmt
どうもこうもない。ひろちゃんが見たいものを見せてあげたい。
「ひろちゃんがそれでいいんだったら、…いいけどさ」
了承の印としての口付け。じっとりと汗ばんだ肌が重なる。
さて、今日の目的を果たそう。
「ひろちゃん、お風呂に入ろ?」
かあ、と頬を染めたひろちゃんがしどろもどろに言葉を紡ぎだす。
「その、一緒に?」
「うん、一緒に」
「ば、馬鹿、恥ずかしいだろ」
「何で?こういう事しても、恥ずかしいの?」
「いや、そうじゃないけどな、……いいけどさ……」
何となく理解出来た。
性交を前提にしないでの裸の晒し合いが恥ずかしいのだろう。
私としては欲情を抜きにした冷静な目で見て欲しいのだ。
「じゃ、行こ?」
身体を起こしてひろちゃんの手を引く。
「ふ、仕方ないか」
苦笑いを浮かべ、ひろちゃんはベッドから降りた。
616四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:13 ID:qOKKLZmt

すぐに脱ぐと解っていても、私達はきちんと服を着てから部屋を出た。
裸を見せ合っても良いのはベッドの上とお風呂だけだ。……今のところは。
部屋を出てすぐにひろちゃんが言った。
「水、飲んでもいいか?」
訊かれて私も意識した。随分と喉が渇いている。
ひろちゃんはずっと動いていたのだから、私よりも数段渇きは上だろう。
二人並んで台所に立って水を飲む。
私は一杯だけだったけれど、ひろちゃんは三杯も飲んでいた。
「そんなに渇いてた?」
「まぁな」
コップを置いたひろちゃんが思い出したように口を開く。
「美里、バスタオルとかは、──」
「あ、脱衣室にあるからね」
「準備いいな、──って事は」
「うん。今日の本題だよ」
ひろちゃんは私の目を見詰めて、軽く笑った。
「大胆になったよな……」
「ひろちゃんも、だよ」
私に断りもせずがっちりと肩を抱き寄せたあたり、ひろちゃんが変わった確かな行動だ。
そして平然と許す私。男女の仲、とはこういうものだと思う。


「後から来てね」
私はそう言い残してひろちゃんを脱衣所の外で待たせた。
狭いというのもあるけれど、やっぱり恥ずかしさの方が理由としては上なのだ。
服を脱ぎながら思う。
ひろちゃんは私のスタイルについては一度も言及することがなかった。
私のお姉ちゃんをよく知っている人だ。比較されるのは無理がないし、今でもお姉ちゃんのスタイルには
全く太刀打ち出来ないだろう。
可愛いとの言葉には嘘はない。けれど、実際はどうなのだろうか。
617四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:15 ID:qOKKLZmt
お世辞にも豊かな胸ではないし、お尻だって体格通りに小さいと思う。
私が思っている以上に、魅力に欠ける気がしてならない。
浴室に入って、湯船の蓋を取り除いて温度を確認。
私のお母さんはお風呂が大好きで、湯船の温度が常に一定になる電気式のものにしてある。
夏でもこれに入るのだから筋金入りだ。
私が浴室に入ったのを察したひろちゃんが脱衣所に入った。
曇りガラス越しにひろちゃんの身体が動いている。
迷いは感じられない。ちょっと無理な提案だったと思うけれど、ひろちゃんは文句も言わず受け入れた。
……沢山の恩があるのに、なかなか返せない。焦っては駄目だと自制している間にも、
こうして良くしてもらっている私。今日のも半分くらいは空振りのような気がする。
──と、ひろちゃんがこちらに歩いてきた。
背中を向けて正座する。正面の鏡は水滴で曇っていて、室内に入ってきたひろちゃんの身体が
見えない。
ぺたり、と肌と床が触れる音。
「お湯、かけるよ」
「うん」
ひろちゃんは桶を使って湯船からお湯を汲んで、私の背中を流す。
ざざぁ。顔が熱くなっているのはお湯の温かさが沁みただけじゃない、と思う。
性的な感情がないからこそ、こんなにも恥ずかしさを覚えてしまうのだろう。
「スポンジとボディソープ、取って」
「あ、うん」
振り返らないように後ろ手で渡す。ほどなくして冷たい感触が背中に触れた。
「っ、……」
ごしごしと遠慮のない手つき。
さっきまで考えていたスタイルへの不安のようなものが湧いて、少しだけ迷ってから
口にする。
「ねぇ、私の身体って、……どうなの?」
動いていた手が止まる。
突然の問いに戸惑っているのだろう。
「……どうって?」
「その、……大したこと、ない?」
618四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:17 ID:qOKKLZmt
泡を生み出す作業が再開する。
肩から肩甲骨へ。
「あー、そうか。姉御と比べてるんだな」
「うん、まあ……」
さすがに読まれたようだ。あからさま過ぎたけれど、訊けるなら良しだ。
「姉御のは、……そうだな、格好が良いって感じだろうな」
「格好が良い?」
「うん、モデルみたいに形が整ってて、……はっきり言えば、触れるのにはかなりの勇気が要るな。
 確かに目を離しにくいし、良いスタイルだなって思うんだけど、……どうしようもない壁が
 ある感じだよ。どことなく現実離れしてて、自分のものにしたいって気にはなれにくい、かな」
理想ではあるけれど、理想であるがゆえに触れにくい。
……もしひろちゃんがお姉ちゃんと並ぶくらいの美形だったら、私は近づけないだろう。
ひろちゃんがお姉ちゃんをどう見ていたのか、ようやく理解した。
「そういう意味じゃ、美里の方がいい身体してるよ。よいしょっと」
ひろちゃんは私の身体を持ち上げて、胡坐の真ん中に座らせた。
って──硬い、ものが、お尻に……!
「っ!……ひろ、ちゃん?」
ひろちゃんの顔は見えないけれど、隠しようがない興奮を帯びている声が響く。
「うん、色っぽい身体だよ、美里」
スポンジは捨てられていて、泡だらけの手が私の胸を弄んでいる。
ぐちゅぐちゅと理性を掻き混ぜるような音。快楽が呼び起こされる艶音だ。
「ぁあ、ん……さっき、あんなにした、んんっ、でしょ?」
「さっきのは昨日までの分な。これからは、今日の分だ」
首筋を舐められ、私の身体は勝手にうねり始めた。
私の背中とひろちゃんの胸がいやらしい音をたてる。文字通り、身体全体を使った愛撫だ。
「ふ、うぅん、……あ、……ふああああ!」
「美里って、ここが弱いんだよな」
太ももの内側。私の一番敏感な性感帯をひろちゃんはゆるゆると触れる。撫でる、ですらない
感触に信じられないくらいの快感を得てしまう私。
「んん!く、ああ……っ!」
身体は正直に反応して、ひろちゃんの腕の中で激しく跳ね回った。
かくかく、ひくひく。
619四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:20 ID:qOKKLZmt
見れば、胸元から爪先まで泡が着いている。ひろちゃんの指が伝った証。
「流すよ」
ざぶざぶとお湯で押しのけられる白い泡。
艶やかに光る私の身体がひろちゃんの理性を排除させたらしい。
本能を剥き出しにした口付けの後に、私に命令が下された。
「立て、美里」
「……は、い」
快感で力が抜けそうな膝。やっとのことで機能させて立つ。
直後に後ろから性器を突き立てられた。
「ふ、はぁ……っ!」
悦びのため息が漏れ、目尻が下がるのが自覚できた。
私を抱きしめたひろちゃんは顔を横に向かせて、口付ける。
「ん……む、ぁん……」
踊る二枚の舌。勢いは完全にひろちゃんの方が上だ。
ただただ翻弄されるだけの口付けなのに、この上ない悦びを感じている。
私の口内を存分に味わったひろちゃんが言う。
「見ろよ、美里」
ひろちゃんが指差す先には、室温と同程度に温まって曇りがなくなった鏡。
逞しい腕に抱かれ、性交渉の真っ只中にある私がこちらを見ている。
「ほら、どんどん、色っぽくなる、よ?」
ごつごつと子宮を攻められる私が、ひろちゃんの言葉通りに淫らになっていく。
口は半開きで、涎を拭こうともぜずに快楽に溺れている。突き上げる肉棒に自らの蜜壷を
突き出している。
これが、私。
「ふ、ああ、すごい……」
「だろ?……ん、締まる……っ!」
ぱんぱんと濡れた肌が弾け、その音が部屋中に響き渡る。その大部分は私とひろちゃんが吸収しているの
だろうか。快感が天井知らずに高まっていく。
お腹から迫り来る途方もない快感に、私は我を失った。
「ん!……くぁああん!っ!……っ!ふああぁぁ……ん!」
620四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:22 ID:qOKKLZmt
一緒に果てた私達は今度こそ身体を流し合い、手を繋いで湯船に入った。
さっきと同じようにひろちゃんは胡坐をかいて、その中に私は収まる。
背中を好きな人に預ける感触がたまらない。ひろちゃんの呼吸の度にお腹が膨らんで、
私を僅かに揺らす。ゆりかごを連想させる優しい揺れ。とても安心出来る。
……ひろちゃんにも感じて欲しい。
ばしゃばしゃとお湯を掻き分け、湯船の反対側に移動する。
「美里?」
「ね、こっち来てよ」
「重いだろ」
「お湯の中なんだから平気だって」
「だったらいいけどな」
ひろちゃんは楽しそうな顔で私の胸に背中を預ける。
……大きい。昔とは全然違う。家事でそれなりに鍛えられた筋肉が逞しい。
私はひろちゃんの首に腕をまわして、密着する面積を増やす。
もう離さない。私の傍に居てもらうんだ。
「ここが、ひろちゃんの居場所なんだからね。どこにも行ったら駄目だよ?」
ひろちゃんは私の手を掴んで、同意した。
「ん、そうだな」
お互いの身体を確かめ合う沈黙。
……そうだ、言い忘れてた。
「ね、ひろちゃん。あのバスタオル、あげるからね」
「……了解」
「私が呼んだ時は、必ず持ってきてね」
「ん、了解」
次の機会も、この時間を味わいたい。
もう暫くしてから、ようやく私達はお風呂からあがった。
621四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:24 ID:qOKKLZmt
洗面台で湿った髪をドライヤーで乾かしていると、ひろちゃんが私に声をかける。
「コーヒー淹れるけど、美里も飲む?」
淹れてもいいか、ではない。ひろちゃんがこの家に馴染んでいるからこその問いだ。
それほど喉は渇いていないけれど、ありがたく飲ませてもらおう。
「うん。美味しく淹れてね」
にっこりと笑うひろちゃん。
「期待して待ってろ」
どたどたと台所に向かったひろちゃん。私のお腹に計五回も出したのに、元気だ。
やっぱり年頃の男の子なのだと認識してしまう。
私も満足だ。嬉しい疲れが溜まっている。
多分、ひろちゃんが帰ってすぐにベッドで眠ってしまうだろう。
ひろちゃんの匂いに包まれて眠る。……うん。待ち遠しい。
お風呂では髪までは洗わなかったから、すぐに乾いてしまった。
居間に戻ると、丁度淹れたコーヒーがテーブルに置かれているところだった。
「ありがと、ひろちゃん」
「いいって」
早速テーブルについてカップに口をつける。
温かいコーヒー。微かな甘みが舌に拡がって、喉を過ぎてから少しだけ苦味が残る。
私は結構な甘党だけど、これはこれで美味しいと思う。
「どう?」
「うん、美味しいよ」
答えてからもう一口。
私の様子を見たひろちゃんもカップを持つ。
こくりと喉を鳴らして、ふぅ、とため息を吐いている。
ようやく人心地ついたという感じだ。
「そんなに渇いてたの?」
「あー、……いや、隠すもんじゃないな」
ひろちゃんはカップに視線を向けながら言う。
「発作、起きてるんだ」
622四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:26 ID:qOKKLZmt
「……本当に?」
全然そんな風には見えない。
こんこんと爪でカップを叩き、ひろちゃんは言った。
「そうだな……『軽い』の『軽』くらいだな。放っておいても治まるかなって思ってたけど、
 その先まで進む気配があるからこうして対策してる」
……心が沈んでいく。
私を抱いてくれたから、そうなったのかな……。やっぱり、あんなにしたのが拙かったのだろうか。
「気にするなって。美里を抱いたからじゃないよ。こんなの、週に何回もあるんだ」
「……本当に?」
ひろちゃんは頷いて、また一口飲んだ。
長い体験に基づく対処法なのだろう。……そういえば、
「ひろちゃんはさ、吸入薬って言うの?あの小さい筒みたいなのは使わないの?」
「あれは、なぁ……」
少し困ったような表情で天井を見上げて続ける。
「簡単に発作が治まるけど、使いたくはないんだよ」
どういう事なんだろう。簡単に治められるなら、使った方がいいのではないのか。
ひろちゃんは視線をカップに戻して、とつとつと語る。
「最初使った時はびっくりしたよ。こりゃいいや、ってな。……何回か使って、いつも視界
 にないと気がすまないようになってた。目に見えないところにあるだけで、不安になってしまうんだよ。
 ……それが、良くない。今みたいな軽い発作でもちらちら目を向けて、結局は使ってたと思う。
 すぐに治めさせる事が出来るって知っていれば、それだけで普段からの予防方法が疎かになるし。
 そのくらいに依存してしまう自分が嫌になって、使うのを止めた」
「………」
「僕のは重くないんだから、それを使わなくてもいいんだって身体に言い続けなきゃいけないと思う。
 ……ま、いつも薬があるとは限らないし、こうやって薬以外のもので鎮める方法を一つでも多く
 覚えておきたいしな」
「……そう、なんだ……」
軽めの口調だけど、こうした結論を得るまではそれなりの苦しみがあったのは想像に難しくない。
ひろちゃんは自分のことを弱いと言うけれど、私から見ればやはり強いと思えてしまう。
623四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:28 ID:qOKKLZmt
思い切ったようにひろちゃんが言う。とても真剣な顔だ。
「……な、美里もさ、薬使うの止めろよ」
避妊薬の事だろう。お母さんから貰ったのは所謂『後飲み』の薬だ。
お母さんはこの手の知識には随分と詳しく、私には徹底した教育を施しているのだ。
「詳しくは知らないけどさ、お前の身体にも負担をかけるものなんだろ?」
「……うん、そうなんだけど……」
副作用は思っていたよりもはるかに少なく、こんなので効いているのか?などと相談したものだ。
しかし月に一回だけと強く言われている。自覚出来ないだけで、負担は決して軽くないのだろう。
不安を少しでも軽くしてあげようと私は言った。
「その、ひろちゃんも、着けないでしたいんでしょ?ちゃんと使えれば、そんなに
 心配する必要もないんだよ?」
ひろちゃんの真摯な表情は変わらない。
「駄目だって。万が一、美里の身体が壊れたりしたらどうするんだよ。
 焦んなくてもいいんだよ。僕が責任取れないような事はするな。
 ……必ず責任取れるようになってやるから、使うな。いいな?」
その言葉の意味は、ひとつしかない訳で、……困った。どんな返事をしたらいいのだろう。
「……あの、それって」
「悪い。忘れてくれ」
ひろちゃんは頭を抱えてテーブルに伏せてしまった。
勢いにまかせた告白なのだろう。それなりの状況と雰囲気を作ってから言いたかったのに違いない。
でも、嬉しい。これ程までに私の身体を心配してくれて、なおかつ一生大事にすると言う。
「……いいよ」
「……ぇ?」
この際だ。私も言ってしまえ。
「何回言い直されるか解らないから、今のうちに言うの。──いいよ、ひろちゃん」
恐る恐る伏せていた顔があがる。
様々な感情が渦を巻いていた。数秒間混乱は続いて、
「はぁ〜」
と安堵のため息。
ひろちゃんは心底ほっとしたようだ。
両手を後ろについて、天井を見上げている。
「……、よかったぁ……」
624四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:31 ID:qOKKLZmt
「そんなに安心した?」
「そりゃ、な。男としては一大決心なんだぞ」
余裕を取り戻したひろちゃんは笑いながら言う。
女の子としても滅多にない出来事だろうけど、あまり吃驚はしなかった。
突然言われた分だけ戸惑いの方が大きく、衝撃を吸収したのかもしれない。
ぐい、とひろちゃんはカップに残っていたコーヒーを飲み干し、落ち着いた顔になった。
「断られたらどうしようかって思いっきり悩んだぞ」
そして、驚いた。
ぱたぱたと水滴がテーブルを叩くから。
「本当に…ひとりにならなくても、いいんだよな」
表情をそのままに、涙だけが不自然に流れている。
止めさせようとして、思い止まる。この涙は全部出し切らせるのが一番いいのだろう。
「今、美里がいてくれて本当に良かったって思ってる。この前、もう少し遅かったら
 ずっと一人で生きようって決めてたと思う。絶対に一人で死ぬんだって気持ちを固めてた」
綺麗な瞳に射抜かれ、私はどきりとした。
誰も触れられなかった心が私に姿を見せてくれているのだ。
「ひろ、ちゃん……」
「何かあったら、何でも言ってくれよ。美里の為なら何でもしてやるからさ」
いつになるかは解らないけれど、本当にどうしようもない問題があったら言おう。
その時までは私も頑張ろう。
「とりあえず、顔拭いて。そのまま帰って欲しくないよ」
「ん、そうだな」
時間が随分と経っている。
そろそろ帰ってもらって、休ませてあげよう。
「じゃ、今日はここまでね」
「…そうだな」
今一番したいのは、一緒に布団に入って気が済むまで眠り続ける事だ。
ひろちゃんも同じ考えだろう。
残念だけど、それを実行できる関係ではないのだ。
625四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:33 ID:qOKKLZmt
「送るね」
「いいって。玄関までで十分だよ」
私はひろちゃんの背中について行く。あっという間に玄関だ。
ちょっとでも多くこの人を見ていたいけど、ひろちゃんは私の身体を考えて、ここで
別れようと言ったのだ。
靴を履いたひろちゃんが私に向きなおす。
「じゃ、またいつかな」
「うん、バイバイ」
『からから』
玄関が開くひろちゃんの動きが止まる。
「どうしたの?」
「あれ?勘違いしてたかな…?」
何だろう?勘違い?
ひろちゃんは強引にその疑問を打ち消したらしい。顔だけ私に向けて言った。
ニヤリとからかう表情。
「明日でもいいぞ」
「えっち!」
ははは、と笑いながらひろちゃんは出て行った。
反射的に言い返したけど、余裕でかわされてしまった。
というか、予定通りの対応だったのか。
「ふあ……ぁ・……っ」
大きな欠伸。ひろちゃんがいなくなって、一気に緊張が緩んだみたいだ。
さて、薬を飲んで、鍵をかけて、眠ろう。
626四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:35 ID:qOKKLZmt
数日後。
勉強していると、宅配便の車が家の前から発進して行ったのに気付く。
荷物、かな。
一階に下りて玄関まで行くと、休みのお母さんが荷物に貼ってある伝票を見ていた。
「あら、あの子からだわ」
「お姉ちゃん?」
お母さんは頷きながら、荷を解く。
もち米と、小豆だけが入っていた。
手紙とかは入っていない。他に渡したいものはない、という事らしい。
この二つが伝えたい事なのだろうか?
お母さんがぼそりと口にする。
「……赤飯?」
めでたい時に食べる物。祝い事。
「……あ」
鍵。この前に、ひろちゃんが帰る時に言ってた。勘違いかな、と。
かけたはずの鍵が開いていたからだ。思い出してみれば、確かにひろちゃんは鍵をかけたはずだ。
『戸締りはちゃんとしろって』と。
なのに、帰る時は開いていた。
627四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:37 ID:qOKKLZmt
──あの日、お姉ちゃんは帰って来てた?あの情事の一部始終を聞いてた?見てた?
そういう事なんだろうか。……それ以外に説得力のある仮説はない。
加熱する頬で我に返ると、お母さんが優しそうな笑みで私を睨みつけていた。
「あの薬の在庫状況なんかを聞きたいな〜」
私の思考は見抜かれてるらしい。
どうせなら、正直に言った方が被害は少ないだろう。恥ずかしいけれど。
「使ったけど、……もう減らない」
使わないと決めた。ひろちゃんが言うとおりに、彼に責任が取れないようなことはしない。
予想外の答えだったらしい。お母さんはぱちぱちと大きな目を瞬かせ、直後に笑い出した。
「お、ほほ!おほほほほほ!今夜は豪勢にしましょうね!
 いやいやそれだけじゃ駄目ね、外崎さん家のふたりも呼ばなきゃ!ね、美里!」
……私の一言で全てを察したようだ。恐ろしい推理力。
ずっと前、ひろちゃんを家に呼ぶ為にわざと料理を失敗した事があったけれど、
あれも結局は見破られていたし。
流石、我が姉の母だ。
で、お母さんは嬉しそうに電話のボタンなんかを押してるし。
夕食はどんな会話になるんだろう……覚悟ならどれだけしても、十分じゃないんだろうな。


後編 終
628名無しさん@ピンキー:04/08/28 15:38 ID:W8MSzDI3
支援。
629四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:40 ID:qOKKLZmt
エピローグは短いです
ではうp開始
630四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:43 ID:qOKKLZmt
親父が死んだ。
三年前の春。僕の入学式を見届けた次の日に倒れ、それきりベッドから降りることはなかった。
そんなにも重い病魔に冒されながらも三年も生きたのだから、驚嘆すべきなのだろう。
仏間に入り、こうして遺影を見ているだけで思い出す。
「どうしたの?」
僕は声の主に向き直さず、考えていた事を口にする。
「なんで、あんなに幸せそうにしていたのかなって。……それが今でも解らないんだ」
病院では親父の最期が今でも語り草になっているらしい。
631四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:45 ID:qOKKLZmt
──昏睡状態が続き、後は心臓が止まるのを待つだけ、という状況での診察中に突然に目を覚ます親父。
驚きながらもあれこれと言葉を並べる医者を全く無視して、親父は言ってのけた。
『あと二時間しかない。人を呼んで欲しい』
その人数は両手の指で足りる程で、僕もその中に入っていた。
報せを聞いた僕が到着した時には既に何人かいて、親父は身体を起こして──名前、思い出せないな──
知り合いの医者と言葉を交わしている最中だった。
他の人は最期の挨拶を済ませてしまったのだろう、部屋のあちこちに所在無く立ち尽くし、皆違う
表情だ。涙を流し床に目を落とす人。潤んだ目を親父から離さない人。
壁に身体を向け歯を食いしばる人もいた。
そして親父は、元気そのものだ。病気が発覚する前の明るい顔と明瞭な声。
…白い入院着には、びっしりと汗が染み込んでいる。髪からもぽつぽつと流れ落ちている。
その身体は間違いなく絶叫している。苦しいんだから眠らせろ、さっさと失神してしまえ、と。
親父はそれを無視して、身体を使う。ひょっとしたら、その苦痛も感じない程に心と身体の繋がりが
薄くなっていたのかもしれない。
親父がばんばんと話していた人の肘を叩き、これで最期だと頷く。
そして僕を手招きした。
最期なんだと動かない脚を叱咤して、どうにか親父の傍に立つ。
……何も言えない。親父も何も言わない。言葉もなく、ただ見詰めあうだけだ。
思い出が次々と浮かんでくる。一般的な父親よりも、実の息子である僕との会話は多かった方だろう。
所謂スキンシップも堂々とやってくれた。
ことある毎に大きな手が頭を撫でたり、僕の手を優しく掴んだり、時には拳骨と化して脳天を
直撃したり。…思わずやりかえしてしまい、きっちり三倍返しされた事もあったか。
632四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:48 ID:qOKKLZmt
その手と言葉が今日限りになる。
──何も、言えない。何か言わなきゃいけないのに。
言葉を捜して俯きかけ、不意に肩を掴まれた。
倒れる前の力強さがひしひしと伝わってくる。……ちゃんと顔を上げよう。
最期なんだから、親父の気が済むまで観察させてやろう。
僕はとっくに子供じゃないって事を。
時間が止まったように僕と親父は視線を外さなかった。数秒か数分か、随分と長い瞬間見詰め合ってから
親父は納得し、僕に一言。
『しっかりな』
いつもの口癖だった。僕を戒め、正しい方向に伸ばしてくれた言葉。
──最期の、言葉だ。
『……っ!』
ごうごうと荒れ狂う感情を塞き止め、僕は頷く。
親父の期待に応えるんだ。しっかりしているところを見せてやるんだ。
唇は震えているし、涙だって今にも流れそうだけど、親父の教えが身についている事を証明するんだ。
それを見た親父は噛みしめるように頷いて、ぽんぽんと肩を叩く。
終わった。僕との時間は、僕が何も言えないままに幕を閉じてしまった。
床に貼りついた足の裏を剥がして、壁際に移る。
後悔しても遅いんだ。せめて感謝くらいはすべきだった。
633四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:50 ID:qOKKLZmt
全員に挨拶を済ませた親父は清々しい表情をしていた。
その場に居る人達を網膜に焼き付けるようにゆっくりと見渡し、遊び疲れた子供のように
欠伸をする。
『やっと安心して眠れるんだから、出来るだけ起こさないでくれよ』
傍に控えている医者にも目を向け、蘇生措置は遠慮すると伝える親父。
誰もその言葉を訂正させようとしない。
皆、納得しているから。仕方がない事なのだと。
『じゃ、またな』
極めて簡単な別れの言葉を言って、親父は横になって眠った。
部屋は静かだ。ぐにゃりと親父が歪んで、光の波だけが見える。
……こんな世界に行くんだな、親父。
光が集束して、頬から滑り落ちる。
僕はまだ行けないけど、いつかは必ず行く。その時までに沢山の思い出を作ろう。
全部、親父に聞かせてやろう。
634四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:53 ID:qOKKLZmt
「孫の顔だって見てないのに、まだまだ色々やれた若さなのにさ、……あんな顔で逝けるものなのかな」
「そうね、まぁ……出来る限りの事をやれたから、でしょ」
あの歳、あんな身体で、満足出来た人生。
どうすればあんな風になれるのか。
「………」
「ほら、しっかりしなさいって」
落ち込んでいると思っているのか、明るい声で僕を励まし始めた。
「お父さんに立派なところ、見せなきゃ駄目でしょ?
 もう三年生なんだから、ちゃんと出来るって」
全く、落ち込んでなんかいないってのに。
「……三年って言うけどさぁ」
僕は座ったまま身体ごと振り返って言う。
「中学三年生に何が出来るって言うんだよ、母さんは」
それを聞いた僕の母、外崎美里はころころと笑う。
「その調子よ、一浩(かずひろ)」
元気付けようとわざと言ってたらしい。
すんなりと感謝の言葉なんて出るはずがなく、ついつい反抗してしまう。
「で、何が出来るって?」
優しく微笑みながら母さんは答えた。
「沢山あるでしょ?」
『どたどたどたどた』
「兄ぃ!」
「あにー!」
「夜宮に行くぞー!」
「いくぞー!」
騒々しく乱入してきた六つも違う双子の妹、真樹(まき)と千花(ちか)が僕の両腕に掴みかかり、
手漕ぎトロッコよろしくギッコンバッタン。
まだまだ日は高いってのに、母さんに浴衣を着せられてとっくにその気になってるようだ。
「着せるのはいいけどさ、早すぎじゃないか?」
「可愛いんだから早く見たかったの」
まぁ、確かに絵にはなるんだろうけど、こんなにも活発だとそれもぶち壊しだ。
635四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 15:56 ID:qOKKLZmt
チビ二人が交互にまくし立てる。
「綿飴!」
「たこ焼き!」
「リンゴ飴!」
「お好み焼き!」
食い物しか頭にないのか、お前らは。更に爺さんまでもが仏間に来てしまった。
「よしよし、爺さんとちょっと覗きに行こうか?」
二人はぎゃあぎゃあと騒ぎながら爺さんにまとわりついて、行ってしまった。
真樹と千華は親父と一緒に遊び倒したお陰で、度が過ぎるくらいに懐いてしまったな。
悪くはないと思うのだが、これからの事を考えれば失敗だったかもしれない。
女の子がタンコブ付きの男と上手く付き合うってのは難しいのではないだろうか。
「夕食の下ごしらえ手伝ってね、一浩」
受け入れるのを全く疑わない口調で母さんが言う。
「まだ教える気かよ?」
僕ほど料理が出来る友達はいない。そんなに仕込みたいのか。
「そうよ。お父さんはもっと出来たんだよ?」
「知ってる。何でそんなに料理させたいのかって事だよ」
「あら、絶好のアピールポイントになるのよ?」
ああ、意地悪な笑みだ。こんな顔の母さんが言う事は決まっている。
「あの子とは上手くいってるの?」
「……うるせー」
塾帰りにあいつと歩いている所を見られたらしい。事ある毎にこうして母さんは僕をそそのかす。
母さんと親父がかなり早い時期からくっついていたのは聞いている。
が、僕までそうさせようってのはどうかと思う。
「ほら、行くわよ」
「はいはい」
母さんに続いて部屋を出ようとすると、風鈴が鳴った。
多分、親父が鳴らしたのだろう。顔だけ後ろを向けると、触れそうな程に親父の気配がする。
あの日に言えなかった言葉、言おう。
「大丈夫だよ。親父の分まで頑張るよ」

エピローグ 終
636四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/28 16:01 ID:qOKKLZmt
飽きもせず読んでくれた方、ありがとうございました。

で、投下直後にこんな事を書くのは何ですが、
正直言ってオリジナルSSを書ききったとは感じてないのです。
ひたすら自分吐きしてただけです。
オリジナルというのはこの向こうにあるものなんだろうな、と。
637名無しさん@ピンキー:04/08/28 16:02 ID:A1CydFwd
>>636
いやいや、よかったよ。乙。
638名無しさん@ピンキー:04/08/28 20:30 ID:TBmnesXI
何と言うか、目指す処がえらく高いお方ですな。
一応私はエロパロ書きですが、これだけの物を書けたら自分で絶賛してますよ。
若々しいエロスの迸りに狂おしいほど発情。
本当に、モニターへ手を合わせて拝みたくなる良作でした。心より感謝!
639名無しさん@ピンキー:04/08/29 02:51 ID:f1UjV2l0
>>636
素晴らしい作品を読めたことを心から嬉しく思います。
本当に感謝したいです。ありがとうございました。

>UDプロジェクト
こういうプロジェクトがあることは知っていましたが…
作品を読んで自分なりに前向きに少し考えてみようかと。
貧弱なPCですが。




640名無しさん@ピンキー:04/08/29 04:16 ID:sF5heJ0P
読めてよかったです。
最後まで読めたんだなぁ、っていう余韻を味わえるような
作品に出会えるとは思ってませんでした。最高でしたよ。
ありがとうございました。
641名無しさん@ピンキー:04/08/29 04:56 ID:IJ7ujwNt
吸入薬は早めに使えと医者に教わったんだが、とか
(もちろん1日あたりの使用回数はともかく)
発作じたいが心臓に負担かかってよくないんで
軽めの発作が起きたくらいで吸入して止めるべきと言われたんですけどとか
(吸入使わない理由を言っていたけど、あれが逆によくないと教わったんで)
抗アレルギー薬ちゃんと飲んでるかー?とか
最近は結構いい薬とかでてるよー?とか
同じような症状を持つ者としては”彼”にいいたいところとかはあったりしますが^_^;
・・・アレルギーにもいろいろあるからっていうか、
はっきり言ってスレ違いorz

そんなはなしは、ほんとはどうでもよくて。

大変素晴らしい作品でした。
生きてると言うことと、
人を好きになったり、大事に思ったりすることと、
セックスすることと、
全部つながってて、全部意味があるって
そう思わせてくれて。
ついでに、・・・こんな可愛い彼女欲しいぞとか
(「しよ?」っていうのがすごく可愛い!激萌えです!)
いい恋愛したいなとか思わせてくれて。

一言で言えばアレですか

ネ申

GJでした!
642名無しさん@ピンキー:04/08/29 05:01 ID:CcftQsy6
はぁ……………すごいものを目撃してしまった。なんて緻密で、そして立体感のある文章なのだろう。
自分ではまだまだ満足してない様子だけど、あなたの書いた小説を読むことができて、本当によかったと思うよ。ありがとう。
643四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/29 13:32 ID:Ke4NSC+K
こんなに暖かいレスがついたの初めてで、いやー嬉しいです
>>641
ちゃんと喘息と向き合ってる人から見れば作中の野郎って言うか漏れは
全然『やってない』方だと自覚はしてます。
リアルだと作中よりもちょっとだけ放置されて育って、何倍も周囲を放置して過ごしてきた
奴なのですよ。
うーん…まぁ、こういう付き合い方をしてる香具師もいる、という事で。


ますます拙いモノが書けないっすね……
ま、頑張ります
644641:04/08/30 01:42 ID:Wm5bznzA
うーむ、やはりちょっと無粋でしたね^^;
これで最後にしますので。レス不要です。

私が前半で言いたかったのは、
すごくいい作品だから、たぶんたくさんのひとが読みに来ていると思うので
そのひとたちに、アレルギー性喘息について誤解して欲しくなかったってだけなんですよ。
特に、発作のときにつかう吸入薬のところとかね。
依存したくないと思ってがまんする、というのは、心構えとしては素晴らしいけれど、
これは彼独特のやり方で、逆に症状を重くしてる可能性もありますっていうこと。
今はだいぶ研究も進んでますから、という
一種の注意書きだと思ってくれれば^^;

#ま、ぶっちゃけ私も、抗アレルギー薬を朝晩飲んでるだけで
#ほかには何もしてないので、医者に実情知られたら怒られること必至です。
#ある程度歳がいってからの喘息症状だったので、
#気楽につきあっていられるのかもしれないですしね。
#子供の頃から発作があったり、まだいい薬や対処法がなかったり、
#何より不理解がある状況だったりではしょうがないのかも・・・

でもほんとに、すごい筆力だと思いますよ。
描写も構成も素晴らしい。
自分吐きしてただけだとおっしゃるけれど、
”渾身の自分吐き”だったからこそ
ここまで凄い作品になったのかな、となんとなく思います。

ぜひ、次の作品を。楽しみにしています。心の底から。
失礼しました。
645四条 ◆JeifwUNjEA :04/08/30 02:28 ID:/MWFhSsR
とんでもないです補足ありがとう

>私が前半で言いたかったのは、
>すごくいい作品だから、たぶんたくさんのひとが読みに来ていると思うので
>そのひとたちに、アレルギー性喘息について誤解して欲しくなかったってだけなんですよ。
>特に、発作のときにつかう吸入薬のところとかね。
>依存したくないと思ってがまんする、というのは、心構えとしては素晴らしいけれど、
>これは彼独特のやり方で、逆に症状を重くしてる可能性もありますっていうこと。
>今はだいぶ研究も進んでますから、という
>一種の注意書きだと思ってくれれば^^;
こういった所までは頭が回らなかったので助かります。
本当に疎かにいてたんだなぁとか実感しますた。つか、20半ばまで
軽度発作を『発作の前兆』くらいにしか思ってなかった自分をちょっとは殴りたい気分でつ。
この辺りの事情があったので投下する事自体に思いっきり悩んでたり。

今回のはそのまんま『徹底的に自分吐き』を目標にしただけのSSなので
読んでくれた皆さんにも書けると思うんですよ
得る物も結構あったので皆さんも挑戦してみては?とそそのかしてみる。

次作は……う〜ん、大体の方向はあるんですが、ネタが出ないってところですか。
でもまぁ、オリジナルって嵌りますね。いい感じに。
646名無しさん@ピンキー:04/08/30 11:01 ID:bKeFzDx9
実際にある病気だから、こだわりのある人もいるんですね。

ところで、吸入薬って気持ちいいですよねー。甘いのが最高。
シュッって吸った途端、甘〜い味と共に
喉とか肺とか脳とか、いろんなところに掛かってた負担がスッと消えていく。
もうすっごい快感。治った今でも忘れられない。
647名無しさん@ピンキー:04/08/30 19:03 ID:UsCksd27
>>646
朝、目が覚めても全身の倦怠感のせいで起きた気がしなくて、
吸入薬使って深呼吸してやっと起きたって感じ。
わかるなぁ。
648名無しさん@ピンキー:04/08/31 18:46 ID:zkbfgBqO
>>636
最後まで読んで、とても感動しました。
GJ!
649名無しさん@ピンキー:04/08/31 22:35 ID:ZfHjjK62
しばらくここに来なかったら、えらい大作が投下されてた‥‥
飽きさせることなく一気に読ませる構成と展開。すごいなぁ。

ここは腕の立つ書き手さんが多いとこだなとつくづく思いますよ。
650名無しさん@ピンキー:04/09/01 00:11 ID:BZw68BcG
UDに参加しました。
今現在20%弱ですがグラフが伸びていくのを眺めているのもいいもんですね。
651名無しさん@ピンキー:04/09/01 01:42 ID:UwP9E8gZ
>>636
この感動をうまく伝えられる文才がないことが悔しいです。
本当に、久しぶりに心から「神!!」と思いました。
私も6歳の頃から喘息持ちなので主人公にとても感情移入してしましました。
ちなみに幼馴染みスレからの誘導できたのですが、今度からこのスレも巡回に
加えます。
名作をありがとうございました。
652名無しさん@ピンキー:04/09/01 11:35 ID:Uwbn7Bh6
>>521-552
の苦しんでる表現のとこが月姫
653四条 ◆JeifwUNjEA :04/09/02 15:17 ID:ejamhgN0
ヒィィ!またレスついてるぅ!最多記録ですよ。

筆力とか構成とか展開とか描写とか、実は全く解りません。
漏れとしては○×の判断基準は『引っ張られる感じ』があるかどうかくらいしかないんです。
それを出そうと文章をいじって強める為に前後を入れ替えて、てなもんです。

それと次作の事ですが、今のところは他のスレに投下する予定になってます。
このスレに落とせるような話になるかもしれないですが、そうなったとしても
何ヶ月も先なので巡回スレに入れるとかはしない方がいいと思われ。本当に。
つか、完成までいけるのかもあやしいので。

>>652みたいなレスも初めて貰いますた。
えーと、マジレスしたほうがいいんでしょうか?
654名無しさん@ピンキー:04/09/02 16:04 ID:zZroHXGj
>>653
放置しる。
655四条 ◆JeifwUNjEA :04/09/03 13:00 ID:iIcqXZF7
>>654
了解

んじゃ丁度いいネタがあればまた投下しに来ます
さいなら
656名無しさん@ピンキー:04/09/08 20:53 ID:JMdY53ze
hoshu
657名無しさん@ピンキー:04/09/14 01:37:38 ID:3enj4Il0
ほしゅ
658名無しさん@ピンキー:04/09/19 19:39:56 ID:99/61ib0
保守
659沙羅双樹 ◆AkbMPnHxHE :04/09/24 13:41:12 ID:TZPrn1uc
【思いつきで書いた。魔族の女と人間の男の恋物語。
魔族の女は200歳ちょい、人間の男はすでに他界…。
ちょー短編、私はSS書きに向いているのでしょうか?】

バラの香りの中、一人の魔族の女が佇んでいた。
スラリとした長身、どこか気だるげな雰囲気を漂わせている。
髪は肩を少し過ぎた辺りまで伸びた、しなやかな銀髪のセミロング。
美しさと、可愛らしさの混じりあった風貌。澄んだ紅い…瞳。
黒い簡素なドレスに身を包み、なにやらバラの手入れをしている。
なにやら気配を感じ、ゆっくりと振り向く。花開く満面の笑み。
男「やあ、ここにいたのか…」
魔族の女「フレデリック!!」
ドレスの裾が乱れるのも構わず、魔族の女は男の元に駆け出す。
その勢いのまま、男に飛びつく魔族の女。男の方はどうやら人間だ。
しばし戯れる安らぎのひととき、そして二人は唇を重ねた……。
バラの香りが二人を包んだ…。甘い…、香り……。

夢を観ていたわ…。遠い昔の夢…。還らない日々…。
そして私は忘れる…。そして思い出す。その繰り返し。
緩慢な動作でカーミラは椅子から立ち上がり、紅茶を煎れる。
ダージリンの香り。テーブルに戻り、暫し物思いに耽る。
向かいのドアが開き、使い魔のBBが姿を現す。
BBは無口だが良く気が利く。使い魔というよりは友人に近い。
BB「あるじ、メデゥーサ様から手紙が届いております」(念話)
カーミラ「そう…、ありがとう。下がっていいわ」
手紙に一通り目を通すと、ため息をひとつ付き、返事を書く。
暫くは退屈な日々を過さずに済みそうだ。そう思いながら……。
660名無しさん@ピンキー:04/09/27 18:44:35 ID:frVpcYkw
hosu
661名無しさん@ピンキー:04/10/01 08:16:32 ID:txILiNpA
保守
662名無しさん@ピンキー:04/10/01 16:27:01 ID:IZsSUR4C
一応投下、カナーリ不安なので感想求む

なんでだ、どうして、どうしてこんなことになってしまった。
あーーーーーーーーーーーーーーーーーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁわからないわからないわからないわからない
落ち着け落ち着け
まず落ち着け、そして自分の理性の質問に答えろ
Q、俺は誰だ。
A,俺は竜元敬二、16歳で図書委員をやっている
OK、じゃあ次の質問だ。
Q,ここはどこだ?何をやっている
A,ラブホテルのベッドの上で正座をしている
Q,何でここにきた?
そりゃあ……
俺は後ろのシャワーの音へと目を向ける

A,安藤唯に連れてこられた。
Q,安藤唯とは誰だ?
A,俺の学校一可愛いといわれている女子だ、唯の姿を見に先輩後輩問わず教室にやって来る。ファンレターも他校の男子からもらってるとこを見たこともある。
Q,その安藤唯がなぜ図書委員を型にはめて作ったようなお前をラブホに連れてくる
A,知るか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

後ろでドアの空く音がする。
それに少し遅れてシャンプーの臭いが部屋に充満する。
「どうしたの?けーくん」
呼ばれた条件反射で後ろを向く。
そこにはバスタオルを身体に巻いただけの唯が立っていた。
高校2年生にしては幼めの顔立ち。
少々イレギュラーな胸のふくらみ。
くびれた腰。
その全てが敬二を誘ってるように見える。
「な、なんでもありません!!!!」
663名無しさん@ピンキー:04/10/01 16:30:16 ID:IZsSUR4C
自分でもわかるくらい声が裏返っていた。
静まれ、静まれスケベ心、静まれ俺のチ○コ。静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ
「何してんの?」
不意に俺の横から唯の声が聞こえる。まずい、スケベ心はどうにもならないことを察し、チ○コだけでも落ち着かせようと握って押さえつけていた手を慌てて離す。嗚呼、我ながらなんて情けない。
「い、いやなんでもありましぇ〜〜〜〜ん」
泣きそうな声で叫びつつ、自分のブレザーとカバンをもって部屋から飛び出そうとする。
「待って」
唯がそういう、俺はそのままの姿勢で後ろを振り向く。
いきなり唇にやわらかいものが当たる感触を覚える。
そして目の前には唯の顔がどアップで目に映る。
664名無しさん@ピンキー:04/10/01 16:33:48 ID:IZsSUR4C
ひょっとして、これがキス?
「待って」
もう一度、唯が言う。
「好きです」
今なんつった??好き????え????マジ????俺は夢でも見てるのか?学校のアイドルから告白???????どういうこと?
「好き」
唯が抱きついてくる。彼女の胸の感触が、ほっそりとした腕の感触が、彼女の吐息が直に伝わってくる。
不意に股間から熱いものの感触が伝わる。やばい、勃ってる。これまで経験したことがないくらい勃ってやがる。
とりあえず冷静に処理しろ。敬二の冷静な部分からの命令だ。
OK、俺だって冷静になろうと思えばなれるさ。落ち着け、落ち着け、落ち着け、
「あのさ、唯ちゃ…」
「唯でいいよ」
「ごめん、唯、ちょっと聞いていいか?」
「何?」
「俺のどこが良かったんだ?」
完璧だ、完璧なまでに冷静に言えた。
「真面目そうなとこ!!」
無邪気に答える。が、その後急にうつむいて唇が動き、何かをしゃべる。
「え?」
「だから、けーくんの好きなところは真面目そうでやさしそうなところところ!!」
さっきより語調が強い。まるで何かを隠しているのかのように。
665名無しさん@ピンキー:04/10/01 16:34:44 ID:IZsSUR4C
「あ…ああ」

さっきのことが気になり、あいまいな言葉しか出ない。

「ね、抱いて」

さっきまで落ち着いてた俺の愚息が一気に膨張する。

「抱いてくれないとけーくんにレイプされそうになったって明日言っちゃうから」

「はあ?」

「そのあと保護者やら先生やらが来てけーくん退学だね♪」

「そんなことサラリと言うんじゃねえこの子悪魔!!退学になったらこの先どう責任とってくれるんだコラア!!」

「だからそうならないようにしたいでしょ?
だから抱いて」

数分の沈黙(原因は俺)

「わかったよ」

このことが新聞部の連中に知られなきゃいいがな。
ファンクラブに殺されかねん
666名無しさん@ピンキー:04/10/01 16:39:08 ID:IZsSUR4C
もう吹っ切れた、相手がやろうとしているんだからそれでいいじゃないか。
そうすれば2度と休日にオナニー10連発なんてことをする羽目にもならない、学校アイドルの彼氏にもなれる、童貞だって喪失。
ワォ、一石三鳥じゃないか。だから早く動けってんだよ俺の体ぁ!!
かれこれ三分同じ格好でその場に固まっていていいモンじゃねえだろおい。
動けよ、動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け
動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け!!


やっぱり駄目だ、動かねえ
「できないよ。」
そのかわり俺の口がこう動く
「どうして?」
「だって俺らまだ高2だろ?
早すぎるだろ」
違う、俺がまだセックスを拒むのは訳がある。だが自分でもそれがわからない。
「私は本当にけーくんが好きなんだよ?だったらいつやろうが関係ないじゃん」
唯は無邪気にそう答える。だが、俺はその問いに答えない、否 答えられない。
「あーーーーーーーーーーーもう!!けーくんは私のことが嫌いなの?
唯が嫌いなの?」
「そりゃ好きか嫌いかでいわれたら好き……だけど……」
「だったらいいじゃん、ねえ、やろうよ。」
667名無しさん@ピンキー:04/10/01 16:39:53 ID:IZsSUR4C
唯が俺の手を胸に当ててくる。
瞬間、俺の中で何かが変わった。
体が自由に動いた、いまなら唯をベッドに押し倒すことも出来る。
俺は唯に押しかぶさるように体重をかけ、ベッドに押し倒す。
「きゃっ」
唯は短い悲鳴を上げ、少しの間お互いを見詰め合う。
唯の唇に俺の唇を重ね合わせる。
電撃が体中を駆け巡る。
唯が舌を俺の口の中に入れてきた。
再び電撃が走る。
やられっ放しは癪だから自分も唯の口に舌を入れてやる。
「んっ」
唯の舌が激しさを増す。
それにあわせて俺も唯に負けないように激しく愛撫する。
お互いの舌がお互いの唾液を、快楽を求め、次々と進入を繰り返し、ぐちゅグちゅ、という音が口のあたりから聞こえる。
668名無しさん@ピンキー:04/10/01 16:40:55 ID:IZsSUR4C
やがて離したら、お互いの口から唾液が出てくる。
「もっと、してぇ」
思わず俺の口からそんな言葉が漏れる。
だが同じプレイはつまらない。
今度はバスタオルに手をかけ、その豊満な胸をさらそうとする。
「待って」
唯は俺の手を取り、そう言う。
「でんき、けして」
言った後、唯の顔が少し火照る。
やっぱり好きな人とはいえ、自分の裸を見られるのが恥ずかしいのだろう。
俺は唯が望むとおりに電気を消す。
だが、ベッドの傍にあった調光式のライトの電源をつけ、かろうじて唯のからだが見えるように調節する。
「これでいいだろ」
「……うん」
どうやらこれぐらいの光量なら唯もOKのようだ。ああ、ふたり○ッチ読んどいてよかった。帰りに古本屋よって3巻ぐらい買ってこよう。
再びバスタオルを剥がす作業に戻る。
俺の意図を察したのか、唯はバスタオルの結び目をほどき、ベッドの下に落とす。
唯の胸は、想像していたよりも小さかったが、一般的な高校生にしては大きいほうだろう。
669名無しさん@ピンキー:04/10/01 16:41:41 ID:IZsSUR4C
ええと、確か……こういうときどうするんだっけ?
確か俺の持ってるエロ本の中に書いてあったような……
ああそうだ、こうするんだった。
俺はゆっくりと唯の胸に顔を近づけ、ペロリと軽くなめてやる。
「ふっ」
成功!!エロ本は偉大だ、軽く一舐めしただけなのに、シュチュエーションに興奮して乳首が固くなる。
「気持ちいい?」
こう聞いてやることにより、さっきやられたことを正確に情報化しようとして顔が赤くなる。
「えっと、あの、その、気持ちいいのかよくわからない」
それでいいんだよ、経験の浅い女性はこういう事になれていないからそんなに感覚が鋭くない。
そもそも初めて乳首を舐められて感じまくる女なんかいやしないよ。エロ本の受け売りだから根拠は無いけど。
「濡れてる?」
さりげなくマ○コに指を這わせる。
唯の身体が軽く震えた。
「エッチ!」
唯がそう叫ぶが、それは拒絶を表したものではなく、拗ねたような口調だった。顔を赤くしながら膨れっ面をする唯はたまらなく可愛かった。
何回か這わせると、固いコリコリしたものが指に当たる。
「何これ?」
670名無しさん@ピンキー:04/10/01 16:42:42 ID:IZsSUR4C
何なのか見ようとして唯の股間に目を向ける……
って痛ってええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!
「おいコラ!!人の頭を足にはさむな!!痛てえだろうが!!」
「見るなあああああああああああああああああああ!!」
只今戦争中。しばらくお待ちください






「んで、何でお前はあそこでいきなり暴れだしたんだ」

畜生、あのあと蹴られた所とか即頭部とかがまだズキズキする。何が起きたんだよ、ったく
「ヘンなとこ見ようとしてるんだもん」
一方唯は何故か暗がりでもハッキリわかるほど顔が赤くなってる。
「何か当たったからそれを目で確認しようとしてただけだろ、なんでけられたりする必要があるんだよ」
「あんなトコ見ようとしてたからでしょ!!!!」
おいそこ、なぜ逆ギレする。
「んじゃああれはなんだったんだよ、あのコリコリしたやつ!!」
つい俺も逆上してしまう、サルか俺は
「あんただってわかるでしょ、股間で・・・・・・
もう知らない!!!!!」
あ・・・・・・思い出した、俺が触っていたのクリトリスか……
わかったよ、俺が悪かった、ヘンなこと聞いて申し訳ない。だからラブホでふて寝はないだろ唯。おいコラ
671名無しさん@ピンキー:04/10/01 16:44:40 ID:IZsSUR4C
今思ったらこれ殆どセクースシーンねえ
OTL
かなりエロ度低っポ
672名無しさん@ピンキー:04/10/01 16:58:44 ID:CJfMFzbb
終わり?軽いノリが好きだけど純愛では無いような…
673名無しさん@ピンキー:04/10/01 17:11:12 ID:JB4DBTyk
エロ云々の前にもっとみやすい文を目指したほうが・・・
674671:04/10/01 17:13:53 ID:IZsSUR4C
いちおうこれからも続くが具体的にどんな感じにすれば見やすく出来るのかのう?
675名無しさん@ピンキー:04/10/01 17:19:55 ID:JB4DBTyk
!マークの数を減らすとか(少々多すぎの感が・・・)
同じように、
>って痛ってええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!

>見るなあああああああああああああああああああ!!」
などの、「え」や「あ」の数をもう少し減らすといいかもしれません。
676名無しさん@ピンキー:04/10/01 17:29:02 ID:9XUswRXX
OKOK、なんか純愛っぽくないが結構楽しく読めるぞ。
がんがれ。
677名無しさん@ピンキー:04/10/01 18:38:25 ID:xnHH6azl
面白い。この一言に尽きる。
エロ小説としては需要無いけど、スラップスティックとかラブコメとして見ると、のっご面白い。
純愛っぽくはないけどね。

でもどうせなら、このスレで連載書いて下さい。ラブコメとして。
最終的に純愛になれば全てよし。

・・・ところで、16歳ならそもそもラブホに入れない希ガス
678671:04/10/01 19:08:43 ID:IZsSUR4C
と言うことは、>>675の意見を取り入れて、!や叫んでるセリフをもっと短くすれば
ここで書いていいということなのか?
679名無しさん@ピンキー:04/10/01 20:01:31 ID:Y8rQZc43
>>678@671さん
あと、一行の文章がやたら長いのがたまにあるんで、長い文章は
改行をしてもらえば読みやすくなりますよ。
個人的には、多くても一行あたり40字程度がいいような気がします。
他の皆さんはどうでしょうか?
680671:04/10/01 20:40:38 ID:IZsSUR4C
>>679
返信dクス!!
やる気が出てきた。
あさってあたりにうpするわ
681名無しさん@ピンキー:04/10/02 02:48:45 ID:+FpL/j34
何ていうか、ジェットエンジンを三基くらい積んで、
なおかつ先の事を考えず全開で飛ばしてる感じの文章だな。
漏れ的にはOKでつ。がんがれ。
682671:04/10/02 13:34:55 ID:kSYFuj9z
以外にも好評なので今日投下
「起きろよ、唯ぃ」
俺は少々乱暴に唯を抱き起こし、彼女の秘所に指を挿入する。
「ちょ、ちょっとお!!」
唯が驚きと怒りの入り混じった声で抗議をしたが、俺はそんなのには耳を貸さずに、指に沿って自分のモノを差し込む。
「うわっ」
唯が女らしくない悲鳴(?)をあげる。
しっかし、エロ小説でよく聞く「オマソコが吸い付いてくるよう」という表現はそっくりそのまま当たっているな。
今日はオナニー5連発かましたのにもうザー×ンがお外で遊びたくて抗議してやがる。
畜生、ちっとは持てよ俺の逸物、
唯の処女膜が完全に取れるまで持ってくれなきゃ奪った事にならねえからな。
「ひ・・・・・・ひ・・・・・・ぎ・・・・・・」
マズイ、唯が言葉にならん悲鳴を上げている。
ちっと激しくしすぎたか。
それにしてもエロ本とは反応が大違いだな。
挿入した程度で身体がガクガクと震えるとは聞いてなかったぞ。
「いやあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」
突然唯が俺を吹き飛ばす。
「痛ってえ、何すんだよおい!!まったくお前はワケ解ら…」
そこで俺は凍りついた。
683名無しさん@ピンキー:04/10/08 10:07:31 ID:0FuSZS2E
保守
684名無しさん@ピンキー:04/10/10 10:02:19 ID:OZ4Vmckm
保守
685名無しさん@ピンキー:04/10/13 11:18:20 ID:nwVGCRau
先週からパンツ下ろして続きを待ってるんだが・・・まだか?
686名無しさん@ピンキー:04/10/18 03:10:24 ID:y5dRfP4h
誰か恋!
687名無しさん@ピンキー:04/10/18 06:05:13 ID:qpq3hq40
スレの流れも凍り付いてます
688名無しさん@ピンキー:04/10/23 01:19:04 ID:/6MNYHVg
689名無しさん@ピンキー:04/10/26 23:39:46 ID:b1NJfc00
690名無しさん@ピンキー:04/10/27 16:57:34 ID:moM6XlmZ
691名無しさん@ピンキー:04/11/01 08:16:35 ID:4VkcN8nI
692名無しさん@ピンキー:04/11/01 08:48:36 ID:CjZwHWmQ
693名無しさん@ピンキー:04/11/01 17:59:27 ID:AYAGd8oC
いでよ職人!
694名無しさん@ピンキー:04/11/07 23:43:05 ID:dwV9EUh3
ぱぱらぱー
695名無しさん@ピンキー:04/11/08 00:31:44 ID:2SL3Bzb7
プロット書いたから完成するまで沈まないでくれ








いつ書き終わるか知らないが
696名無しさん@ピンキー:04/11/10 11:41:20 ID:FhDvA3Xd
あぁあ
697名無しさん@ピンキー:04/11/12 17:05:26 ID:Loglo+jY
唯は身体を弓なりになって、悪魔でも取り付いたかのような悲鳴を上げている
「おい!!どうした唯!!」
俺は暴れる唯を必死に押さえつける。
「ひっ……………あ」
唯は俺の顔をその眼で捉えると、頭から毛布をかぶる
かぶったその毛布がわずかに震えている
「おい!!どうした!!?」
俺はその毛布を引っぺがそうとするが、唯が抵抗する
俺は力任せに毛布を上へと引っ張り上げるが、バランスを崩して横へよろける
グぁん!!!
途端、今までの抵抗がなくなり、毛布がベッドから落ちる。
「ウソだろ・・・・・・おい」
唯は顔を涙でしわくちゃにしながら、四肢をだらんと伸ばし仰向けに寝ていた。
死んじまった・・・・・・のか・・・・・・
698名無しさん@ピンキー:04/11/12 17:11:36 ID:Loglo+jY
まただ、またやっちまった。
「ぅ・・・ぁ」
自分に関係のない人間を
「ぁあ・・・あ・・・」
殺しちまった
「ひっ・・・ぐぁ」
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった殺しちまった
「あああああああああああああああああああああああああ!!」
699名無しさん@ピンキー:04/11/12 18:21:02 ID:qjQhCbux
・・・?
700名無しさん@ピンキー:04/11/16 10:54:40 ID:bRhwz7wc
>>695
щ(゚Д゚щ)カモォォォン
701名無しさん@ピンキー:04/11/20 01:49:44 ID:eA3Nom4h
こう…
純情にしようとつらつら書いてたら5000字書いてもまだエロに入らないんだが…
まだ半分も終わってないし
もはやSS?って感じ
702四条 ◆JeifwUNjEA :04/11/20 03:33:59 ID:/tU29RQK
>>701
そんなもんです
がっちり書こうとすば字数なんていくらでも必要ですよ本当に

ちなみにここに投下したSS?の前編のエチーまでかかった字数は
2万8千字以上ですた
んでエチー&じゃれ合い〜終わり、で約1万2千字

蝶ガンガレ>>701
703701:04/11/20 18:09:06 ID:eA3Nom4h
>702
に、2万8千……(゚д゚;)
合計で4万字近く?(((゚д゚;)))

ごめんなさいすいません
自己記録を軽く更新してたので調子こいてました_○/|_
流石ですじゃナモナモ

まぁまともなSSなんて書いたことありませんけd(ry

純愛は思いのほか書きやすいです
蝶ガンガル(`・ω・´)
704四条 ◆JeifwUNjEA :04/11/21 13:16:16 ID:5IqD+K1T
>>703
4万と聞くと凄そうですけど、実際は原稿用紙で100枚程度なんですね
世の中には数百枚数千枚なんて量を書く人がごろごろしてる訳で
何を詰め込めばそんなに書けるんだろ……?

その舞台に爪の先だけでも届かせたい、が今の目標
705701:04/11/21 19:15:27 ID:OwydFbTl
>>704
貴方様の高い志には感心するばかりです、ナモナモ

実際、単行本ってのはどれくらいの量なんですかねー

まぁ、俺は人種が人種なのでゲームのシナリオの文量のほうが気になあわなにをするやめ(ry
706名無しさん@ピンキー:04/11/27 02:27:37 ID:kfXpYLE/
 
707名無しさん@ピンキー:04/12/01 18:26:21 ID:2Ip0rV9j
>>お二方
…随分と……。

まぁいいけど
708名無しさん@ピンキー:04/12/03 20:35:06 ID:PMUDJQ8d
あの、自分も書き終わったら投下してもいいですか?
大したものにはならなさそうですが…
709名無しさん@ピンキー:04/12/03 20:44:46 ID:rH7lEf0L
>>708
おk。
かかってきなさいw
710名無しさん@ピンキー:04/12/06 21:06:48 ID:8iRhOOre
私も参加してみます。
純愛とは呼べないと思いますけど。
711名無しさん@ピンキー:04/12/10 06:55:50 ID:hYpGrwg9
>>710
色々な視点やバランス感覚があるからね。形はひとつじゃないんだし、あなたが思う純愛が描ければそれで。


以前も風俗嬢の話があったけど、透明感があって独特な純愛のイメージを構築していたし。
チーズはたしかにおいしいけど、
712名無しさん@ピンキー:04/12/10 08:36:34 ID:y5tCaUXd
・・・おいしいけどなんだ!?
713名無しさん@ピンキー:04/12/15 07:00:02 ID:CuTtCfHi
臭い
714名無しさん@ピンキー:04/12/18 01:24:51 ID:NHtZjBDu
 見上げた空は灰色で低く、手を伸ばすと触れられるような気がした。
 コートのポケットから右手を出して、空に突き上げてみる。
 もちろん触れられるわけもない。馬鹿な事をした。
 恥ずかしくなって、慌てて手をポケットに戻す。それでなくても斬りつけてくるみ
たいに冷たい空気のなかに、いつまでも手袋もしてない手を出しておきたくはない。
 今更ながら周囲の目が気になって辺りを窺った途端、私はさっきの私の首を絞めて
殺してしまいたくて仕方がなくなった。
 公園の入口に、ブランコに乗った私を目を丸くして見詰めている少女がいたのだ。
 最悪なことに知った顔だった。
 いや、こんなときじゃなくて顔をあわせたんだったら、快哉を叫んですぐさまお上
品に少女を洒落た喫茶店にでも拉致しようと図るだろう。
 それくらい、好意を抱いている相手にこんなヘンなところを見られてしまった。
 凍りつく私に、少女は困った顔で考え込んでいる。
 おそらく、さっきの私を見なかったことにしたほうがいいのか、悪いのか、判断が
つかないのだろう。
 そういう優しいところも可愛いな、などと思いつつ覚悟を決める。
 精一杯普段の顔を繕いながら少女の名を呼ぶと、彼女は一瞬小首をかしげ、素直に
公園の中へ足を踏み入れてきた。
715名無しさん@ピンキー:04/12/18 01:26:51 ID:NHtZjBDu
 スカートのプリーツを整えながら私は立ち上がり、砂場の辺りで合流した。
 日本人の平均身長にほぼ等しい私より、目線一つ分背の低い少女は、子犬のような
目をくりくりとさせて私を見上げてくる。
 オレンジ色のリップが淡くのっている唇から出た、なにをしていたんですか? 
という無邪気な問いに、飼ってる猫を総動員。今壁の上を横切ってる野良猫も掻っ
攫う勢いでゆっくりと笑う。
 空が泣き出しそうだったから、つい、手を伸ばしてしまったの。
 一度も色を抜いたことのない、腰まで伸ばした自慢の髪をかきあげながら、自信
たっぷりに言い切ってみた。
 そうなんですか、と素直に感心したような返答に、水準よりかなり高い容色に生み
出してくれた両親に心の中で感謝する。十人並みの容姿でこんな事を言ってしまっ
たら、まったく笑える冗談にさえなりはしない。
 そのまま無言の時間。
 寒々しくなっていく空気に、焦りまくる。
 いつもだったらいろいろと話題を振って少女の歓心をかおうと努力するのだけれど、
さっきのショックがまだ残っているのかなにを言えばいいのかまったくわからなかっ
た。
 互いに見詰め合ったまま、どれくらいの時間が過ぎたのだろう。
 ひときわ強い風が、少女の猫っ毛をかき乱した。
 くしゃん、と可愛らしいくしゃみが一つ。
 はっとする。
 確か、この子は寒さにそう強いほうではなかったはずだ。現にそばかすがうっすら
と浮かぶ鼻の頭は赤くなってきている。
 慌てて、帰りましょう、と促した。
 この公園からだったら、適当な店よりも少女の家のほうが近い。
 少女はますます目を丸くした。
716名無しさん@ピンキー:04/12/18 01:27:59 ID:NHtZjBDu
 その眼差しに、少し居心地が悪くなって視線をずらす。
 ・・・・・・・たしかに、まあ。
 いつもの私なら、少女と話せる機会に有頂天になって、少しでも長く自分の側に
引き止めようと必死になっているところだ。
 でも今日はなぜか、そんな気分ではなかった。
 私が普段の私ではないせいか、少女も普段の少女ではなかった。
 いつだって私はかまいたくて仕方がないのに、いつもするりと魚が銀の腹を踊らせ
るように見事に逃げ切ってしまう少女は今日ばかりは逃げ出したりせず、こくりとうな
ずく。
 その仕種に目を疑った。
 先輩のおうちも同じ方向ですよね。一緒に帰りましょう?
 その言葉に、耳を疑った。
 夢でも見てるのかしらと頬をつねりかけて、あまりにもみっともないその行動を
全力で堪えた。
 いい子にしていたらきっと、こういう日だってあるのだ。
 寒いですね、という少女に、そうね、と答える。
 手でもつなぎましょうか、という少女に慌てて、コートのポケットの中で手のひらに
滲んだ汗を拭った。
 はじめて握る少女の手のひらは、小さくて、熱い。
 これは私の手のひらが緊張で冷たくなっているからかもしれないけれど。
 とくとくと血の流れる音さえ聞こえてきそうなほど暖かい手のひら。
 頭の芯がぼおっとなりそうだった。
 じわじわと、全身に広がっていく幸福感が私の足取りを軽くする。
 今まで生きてきた中で、一番、手のひらに神経を集中した。
 気持ちがよすぎて死んでしまいそう。


 少女の家まであと百メートル。永遠に、道が続けばいいのに。


 END
717名無しさん@ピンキー:04/12/18 01:28:58 ID:NHtZjBDu
百合純愛。
手を握るのってエロイよねってことで…
718名無しさん@ピンキー:04/12/18 01:52:39 ID:4IvmmyJf
あれ?もう終わりですか?
GJですけど、なんか面白そうな展開がもったいない気がするなぁ‥‥
濃ゆいレズプレイまで話を持ってってくれとまでは言いませんが、
もうちょっと書いて、このドキドキ感を楽しませて欲しかったです。

出来れば続編をキボン。
719名無しさん@ピンキー:04/12/18 02:14:20 ID:NHtZjBDu
お、レスが。
サンクスです。風呂はいってるときに思いついて即興で上げたので、
続き考えておりません…_| ̄|○
思いついたらまた投下しに来ます。
720名無しさん@ピンキー:04/12/18 03:42:20 ID:YD3jFz28
GJ
なんか幸せになったよ(*´∀`)
721名無しさん@ピンキー:04/12/19 01:56:50 ID:zXRdVPdz
GJ!
(・∀・)イイ!
722名無しさん@ピンキー:04/12/22 22:05:52 ID:ueYW2KE6
やっぱ愛だよなぁ……ピュアラブ最高!
723名無しさん@ピンキー:04/12/23 11:59:14 ID:dJgXHBkH
愛は世界を滅ぼす
724名無しさん@ピンキー:04/12/23 12:03:37 ID:ZAad76SC
愛は恥丘を救う
725名無しさん@ピンキー:04/12/24 02:25:40 ID:deq2FOQ3
救うのは恥丘だけではない。他にも色々救うぜ、愛ってやつは。
726名無しさん@ピンキー:04/12/27 13:25:55 ID:lcnt+oPt
愛は全世界に幸福を与える。陵辱は世界を廃頽させる。
727名無しさん@ピンキー:04/12/30 02:29:17 ID:Aarq/biG
//1
「次、100m8本。1分10秒サークル。よーい――」
学校の室内プール。
うちの水泳部は冬だろうが練習がある。
昔は夏の一部で無いとプールなんて使えなかったというのに。
文明の発達なのか、それともただ金をかければいいもんなのか。

ピッ!

笛の合図に合わせて壁を蹴る。
そのまましばらく伸びた後、手を掻き始める。
リズムよく、テンポよく。
初めは色々と意識していたが、そのうち頭の中が真っ白になってくる。
脳が酸欠気味になって、だんだんと体が熱くなる。
この感覚が、俺は好きだった。

「ふぃー。」
練習は2時間ちょっと。終わるのは6時ごろである。
結構きついが、それでもあっという間に終わってしまう。
「お疲れー。」
着替えを済ませ、タオルで髪を拭いながらロッカーを出ると、それを見つけた先輩に声をかけられた。
「お疲れ様でーす。」
こちらも挨拶を返す。
「調子いいみたいだね、清夜クン。うん、良い事だ。」
と、自分のことのように嬉しそうに笑う。
それだけで、少し幸せな気分になった。
728名無しさん@ピンキー:04/12/30 02:29:31 ID:Aarq/biG
国東 清夜、それが俺の名前だ。
話しかけてきたのは、この水泳部のマネージャーである辰田 鈴先輩。
何でむさい男の裸ばっかり見る羽目になる水泳部のマネージャーなんかをやってるのか不思議なくらい、綺麗な人だ。
―――まぁ、理由は分かっているんだけれど。

「で、清夜クンは今から帰り?」
小首をかしげて顔を覗きこむようにきいてくる。
こんな些細なことなのに、ドギマギしてしまう自分は重症だな、とつくづく思う。
「ええっと…そのつもりでしたけど、先輩は?」
「んー。いや、帰るんだったらいいや。」
「なんすか、言ってくださいよ。」
そんなこと言われて、帰れるわけがない。
「んんー。」
唸りながら、少し困ったような顔をする。
「今のは、私の失敗だったかな。」
「別に俺はかまわないですって。何なんですか?」
「―――じゃあ、お言葉に甘えて。」
729名無しさん@ピンキー:04/12/30 02:30:13 ID:Aarq/biG
「こういうのって、フツーは部長とかがやるんじゃないんですかー?」
ここは部室。
目の前にあるのは部費に関する書類の束。
「うち部長ってあんなんじゃない?こういう仕事やりたがらないのよ。」
全くしょうがないよねぇ、なんてため息を着く先輩。
迷惑そうな口調と裏腹にその顔は柔らかで、なにかやりきれない思いになる。
三学期になったら、すぐに後期の部費の予算折衝だ。
プールの管理費やらで、他の部とは一回り多い部費を必要とする水泳部では死活問題である。
そういうわけで、二学期のうちから部費関係の書類の整理くらいはしておかなきゃならないのだ。
部活終わった頃はまだうっすらと明るかった空が、もうどっぷりと暮れてしまっている。
「でもいいんですか、先輩。」
「ん、何が?」
「いや、こんな遅くまで、さ。どこに人の目があるのか分からないしわけだし―――」
実際、学校でそういう噂は結構あった。
色々多感な年頃だから、しょうがないっちゃしょうがないんだろうけど。
自分はどうでも良かったが、先輩に関してそんな噂が流れるのは俺が耐えられそうになった。
730名無しさん@ピンキー:04/12/30 02:30:32 ID:Aarq/biG
「ん?嬉しいねぇ、私でもそんな風に見てもらえてるんだ。」
俺の顔を見ながら、先輩がからかうように言った。
「い、いや!俺がどう思うとかではなくてっ!」
きっと、赤くなってしまってると思う。
自分ばかり妙に意識していたようで、恥ずかしかった。
「冗談だよぉ。清夜クンのことだもの、もうそういう人はいるんでしょ?」
「まさか!からっきしですよ。」
その通りだった。
まさにからっきしそういうことには縁がない。
某友人曰く、周りが見えてないだけ、らしいけど。
「んー。みんな見る目ないねぇ。誰か紹介してあげようか?」
そう言って笑う。
つられてこちらも苦笑いこぼした。
「なんちゃってねー。やっぱりおばさんはイヤだよねー。」
この人は………わかってやってるんじゃないだろうか。
「年は関係ないっすよ。人間中身です。」
「まぁ、そうだよねー。人間中身だ。」
「そう、中身中身。」
こんなんで会話が終わっていいんだろうか、なんて思うようなところで会話が止まるのは、いつものことだった。
731名無しさん@ピンキー:04/12/30 02:31:38 ID:Aarq/biG
「いよっし、終わり!」
作業は30分ほどで終わった。
「結構早く終わりましたねー。」
「今日は、整理だけだからね。」
そういって書類をしまっていく。
「ゴメンね、清夜クン。部活の後でわざわざつき合わせちゃって。」
「別にいいっすよ。そうたいした作業でも無かったですし。」
だいたい作業のペースが違いすぎる。
俺も頑張ったが、到底先輩のペースには及ばなかった。
俺の3倍はやってるんじゃないだろうか、先輩。
「…そうだ、なんか奢ってあげようか?」
「いいですって。なんで女の人に奢らせなきゃいけないんですか。」
そんなことさせたら男が廃るってもんだ。
「んー。」
先輩は不満に唸る。
並んで階段を下りて、校舎を出た。
「なんかお礼したいんだけどな…、お。」
何か見つけたようだった。
駆け出す先輩。
どうも、自販機で何かを買っているようだった。
缶を取り出して、また駆けて戻ってくる。
「はい。コーヒーでよかった?」
そういって温かい缶コーヒーを差し出してくる。
「いいって言ったのに…」
遠慮がちに言う。
「これくらいいいでしょ?手伝わせちゃったものは事実なんだし。
 なんかしないと私の気が済みません。」
半ば無理やり缶を握らされる。
かじかんだ指先に、熱い缶の表面が心地よかった。
732名無しさん@ピンキー:04/12/30 02:31:51 ID:Aarq/biG
「…わかりました。じゃあ、ありがたくいただいておきます。」
ため息混じりに言う。
先輩は楽しそうに笑った。

「それじゃ、また明後日、かな。」
「はい。また明後日。」
校門を出て、先輩は俺を反対方向の道を行く。
先輩が角を曲がって消えるまで、俺はずっと校門の前を動けなかった。
「何を鼻の下を伸ばしてる。」
「うおぁっ!」
突然、横から声。
「そんなに驚いたか?」
「そ、宗司…?なんでこんな遅くまで?」
「予算折衝で忙しいのは生徒会も同じだ、たわけめ。」
何か偉そうなこいつは、代々木 宗司。
俺の友人且つクラスメイト。
部活もやらず、生徒会一筋という変態だ。
「それにしても…、なかなかいいムードだったじゃないか?」
意地悪な笑みを浮かべて宗司が言う。
「うっさい、ほっとけ。」
プイと顔を背けて、道を歩き出す。
「なんだ、連れない奴だな。」
言いながら、宗司が後ろから付いてくる。
高校に上がってから、これかいつものスタンスだった。
733名無しさん@ピンキー:04/12/30 02:32:14 ID:Aarq/biG
「お前も、さ。そんなにぞっこんなら、さっさと告白しちまったらどうなんだ。」
道中、宗司が突然そんな話を切り出してくる。
「何の話だよ。」
「いや、お前。あんな幸せそうな顔をしてて惚けるも何も無いと思うんだが。」
チッ、と舌打ちをする。
俺も、なんでこんな奴に打ち明けたんだか。
「実際、綺麗な人だよな。早くしないと誰かに先を越されるぞ、お前。」
宗司はズカズカと人のデリケートな部分に踏み込んでくる。
一発、その顔面にお見舞いしてやろうかと本気で考えた。
「もう、遅いよ…」
風にかき消されそうなほど、小さな声だった。
「ん?何だって?」
「いや、何でもない。」
その後、俺は一言も宗司と言葉を交わせずにいつもの交差点で別れた。
別れる時、申し訳なさそうに手を振った宗司の顔を見て、本当に奴には悪いことをしたと、そう思った。
734名無しさん@ピンキー:04/12/30 02:32:32 ID:Aarq/biG
プシュ!
缶が開く音が自室に響く。
温かかったコーヒーは、すっかりぬるくなっていた。
最初、コーヒーを手渡された時は、密かに凄く嬉しかったので、いっそ飲まないでそのまま保管しようかとまで思ったが、なんだかストーカーチックだから止めた。
そんなことを考えてしまう辺り、いよいよ重症だ。

―――そう。
俺こと国東清夜は、先輩であり部のマネージャーである辰田鈴のことが、好きだ。
そりゃもう、現在進行形で。
きっかけは、些細なことだった。(こんなことのきっかけは些細なことだと相場が決まっている)
高校に入りたての頃、それまで地元の学校に行っていなかった俺は、どうも馴染めずにいた。
そんな中、孤立しかけてた俺を、たまたま、本当にたまたま今の水泳部に誘ってくれた人。
小学校・中学校と男子校に投獄されていて免疫が出来てなかった俺は、それだけでコロリといった。

そして現在、水泳部に入ったはいいものの、未だ何のアクションも出来ていない自分がいた。
というのも、目も前に大きな問題があるからだった。
所詮俺は1年ボーズ、後から入ってきた存在だ。
先輩にはそれまでの学園生活があったわけで。
それなら、先輩に既にそういう相手がいるっていうのも、至極当然な話ってわけだ。
735名無しさん@ピンキー:04/12/30 02:32:47 ID:Aarq/biG
敵は、水泳部部長の鹿浜勇輝。
やる前から勝負を捨てるのは主義じゃないが、到底俺が適うような人じゃないのも事実。
飄々としてるけど、頭は切れるし、水泳のタイムも半端じゃない。
加えて、達の悪いことに俺もあの人のことは好きだった。
そもそも嫌えるような人じゃないのだ。

そんなこんなで、俺の恋路は絶望的。
でも、まあこんなんでもいいかな、なんて思っている自分が居る。
先輩は、今日も楽しそうに笑っていた。
それならそれで十分じゃないか、と思う。
無理してない、と言ったら嘘になる。
きっと逃げてるんだろう。
それでも、恋愛感情ってのは、必ずしも独占欲を伴うものじゃないだろう。

「―――まったく。青春してるな、俺。」
そうこぼして、クイっと最後の一口を飲み干す。
『微糖』のコーヒーは、中途半端に甘かった。


もうすぐ、冬休みがやってくる。
736名無しさん@ピンキー:04/12/30 02:41:35 ID:GRnfgjvo
おや、これはオリジナルかな?
続き期待してます。
737名無しさん@ピンキー:05/01/03 20:59:46 ID:1Eht2tXq
あけおめ
ことよろ
スレのび
738名無しさん@ピンキー:05/01/04 06:52:08 ID:hC8k7mdd
む、新年一発目に覗いてみると面白そうなのが投下されている。
期待してますぞぅ〜

>国東 清夜

ごめん、どうしても「清夜」が「精液」に見える俺はそこら辺で吊ってくる。
739名無しさん@ピンキー:05/01/04 07:42:18 ID:0Dpkk3RZ
>738
・・・
バカー!
もうそういう風にしか見えないじゃないかー!
740名無しさん@ピンキー:05/01/04 14:30:33 ID:uqYD6Vpi
今年こそ作品が落とせますように(なむなむ
741名無しさん@ピンキー:05/01/09 09:27:38 ID:IG2KULw5
>>740
飲み過ぎたのは、あなたのせいよ。
742薬屋:05/01/11 17:12:20 ID:Z81OlEPR
「先輩・・・ずっと貴方のことを見てました。
 私とお付き合いしてくだs」
「ごめん。」

神速。というか言い終わってすらいない。
・・・う、やっぱ呆然としてるな。

「いやそのな、君が悪いわけじゃないんだ。」

実際悪くない。というか、むしろすごくイイ。
つやつやとした鴉の濡れ羽色のセミロングに、黒目がちに潤んだ目。
うお、あの睫にマッチ棒とか乗せてみたい・・・。
全体的な造作も綺麗にまとまってて、大きく特徴はないものの
10人中7人は振り返ると太鼓判の押せる美少女だね。
さらに言えば、俺の好みにジャストフィットだったりするわけだけど。

「どうして、なんですか?」

我に返ったみたいだな。やべ、泣きそうじゃないか。
どうするよ俺!
743薬屋:05/01/11 17:13:58 ID:Z81OlEPR
「あー、その、なんだ。」
「・・・。」
「俺、君のこと全然知らないもん。」

ま、正論だ。というか、実際の理由もそうなんだが。
だいいち、なんで俺に告白したのかさっぱりわからないが
俺と付き合ったって楽しいわけがない。あとで泣くのがオチだよ。

「・・・。」
「・・・。」

なんともいえない沈黙が帳を下ろす。
彼女は俺の次の言葉を待っているようだが・・・
俺、これ以上言うことないんだけどな。

「あー、その、なんだ。」
「・・・。」
「君のことよく知らんのに、『はい是非とも』とか言うのさ、
 すごいかっこ悪い。誠実でない。無責任だし。」

これも本心。俺ぁ確かに見てくれパっとしないメガネ君だが、
自分に恥ずかしい、かっこ悪い生き方だけはするなと
親父に言われている。俺も実に同感だ。
残念ながら女の子を泣かせることと天秤にかけるハメにはなってしまったけども。
744薬屋:05/01/11 17:14:30 ID:Z81OlEPR
「んじゃ、そういうことで。ごめんな〜。」

背中を丸めてポケットに手を突っ込み、ひらひらと手を振りながら
よたよたとその場をあとにする。
ま、これで少しでも幻滅してくれりゃ彼女の悲しみも
ある程度癒されるとは思うんだが。

「待ってください!」
「・・・は、はい。なんでしょう。」

げ、なんか怒ってる感じ・・・あ、いや、これは怒ってるのとは違うか?

「先輩、問題点は先輩が私をよく知らないことだけなんですね?」
「あぁ。」
「では先輩が私をよく知った時点でもう一度告白すれば、
 まだ可能性があると考えていいわけですね。」
「そうくるか。」
「え?」
「いや、こっちの話。」

うん、面白くなってきた。実に面白いよこのコ。

「では、まずはお友達からお願いします!」
「OK。」
「は?」
「今日から我らは友だ。せいぜい幻滅してくれ!」

目を白黒させる彼女の右手を取り、にぎにぎと握手をする。
はっはっは、変人度合いでは負けんぞ。

この冬の寒い日の握手が、俺と彼女の出会いである。
・・・あ、まだ名前聞いてなかった。
745名無しさん@ピンキー:05/01/11 18:14:36 ID:pH7k1Qcw
お、なんか面白そうなのが来てる。
続きщ(゚Д゚щ)カモーン
746名無しさん@ピンキー:05/01/11 19:55:52 ID:Chz72reU
期待。
747薬屋:05/01/12 08:41:34 ID:Pz9eLLIg
だれが呼んだか変人窟。
ここ文化人類学部室は、俺らの通う両道冠学舎の中でも
屈指のミステリースポットと言われている。
道すがら尋ねたところ、彼女は俺が人文部所属ということも
ちゃんと知っているらしい。

「怖いもの知らずと言うかなんと言うか。」
「はぁ・・・人文部の勇名はいろいろと耳にしてますけど。」

曰く、人文部は生徒会よりも権力がある。
曰く、人文部は満月の晩にはサバトをやっている。
曰く、校内新聞は人文部が作っている。
曰く、人文部にはおやつ常備。
曰く、人文部にはABC兵器も常備。エトセトラ。
まあ・・・普通の人なら近づこうとは思わんだろうな。

文武両道に冠たる人材育成を目標に掲げる両道冠には、
いわゆる一芸入試枠がある。
一芸入試といってもそこらの大学がやっているようないいかげんな
シロモノではなく、3年の春・・・早い者については2年の
2学期頃から専従のスカウトがついてその「一芸」を見極められるのだ。
人文部は、その「一芸」で入学した者たちが基本的に所属する部活なのである。

「先輩は一芸なんですか?」
「いんにゃ、違う。家が近かったからだよ。」
「(ということは、元から変人・・・)」
「なんか言った?」
「いえ何も!」

聞こえてるんだけどな。まあ、変人であることは否定できないんだが。
748薬屋:05/01/12 08:42:49 ID:Pz9eLLIg
両道冠が誇る特殊教室棟の最上4階。
この階ぜんぶが人文部の部室だ。
階段を上ってふたつ目の部屋には「藤木研究室」というフダが下がっている。
ん・・・にぎやかだな。もうみんな居るみたいだな。

「ま、入ってくれ。」
「藤木研・・・すごい、先輩の部屋なんですか?」
「いや、俺の名前がついてるだけだから。」

扉を開いてから思い当たった。この期に及んで俺、まだ彼女の名前を聞いてない!

「お、室長おかえりー。呼び出しってなんだっ・・・」

パイプ椅子でゲームラボを読んでいた霧島洋平が
俺に声をかけようとして固まった。
あー。視線が俺の後ろで固定されてやがる。

749薬屋:05/01/12 08:44:33 ID:Pz9eLLIg
「わぁ、かわいい〜!淳くん、この子誰?」

なんでセンター試験も近いのに部室で遊んでるんですか、藤堂瑛先輩。

「私、推薦だもん。」
「そういうことは早く言えよ!てか心を読むなよ!」
「淳くんがわかりやすいだけだよ。」
「ったく・・・あれ?他の面子は?たった今までなんか賑やかだったけど。」
「啓太郎と紗枝ちゃん、小枝ちゃん、昭江ちゃんがいまPC室に入ったよ。」
「あー。Kと3Eがいるのか。」
「あのぅ・・・。」

おっと、彼女をほうりっぱなしだったぞ。

「てか室長、俺のDB(データベース)によると本年度校内ナンバーワン美少女
 1年生の部投票において、3位に輝いた倉敷祐子ちゃんがなぜここに?」
「びっ・・・!?投票!?」
「おまーはその説明口調をどうにかしろよ・・・。」

しかし、この際洋平の説明癖には感謝だ。ふむ、倉敷祐子ね。
750薬屋:05/01/12 10:46:23 ID:Pz9eLLIg
さて。

基本的に藤木研の打ち合わせでは、IRC(インターネット・リレー・チャット)
が用いられる。
部員の一人である霧島紗枝が聴覚障害であるためで、
手話を覚える気のない俺たちが取った代替手段がこれだ。

KEI>>で、淳よ。その娘は?
JUN>>あー。なんと言えばいいか。

まさか告白されたともいえないし、さりとて一般人が人文部に来る理由もない。

YUKO(guest)>>私が、藤木先輩に告白したんです。
「なにぃ!?」
「うっそ!?」
「・・・うぁぅ!?」
「言っちゃうのかよ・・・。しかもおまいら、その驚きようはなんだ。」

喋りも不自由な紗枝が声を上げるほど、俺ってモテないと思われてるんかいな。
751薬屋:05/01/12 10:47:19 ID:Pz9eLLIg
YOUHEI>>ほんで室長、OKしたん?
YUKO(guest)>>いえ、それはお断りされてしまったんですが。
「ざけんな!」
「身の程を知れ!」
「かわいそう!」
「女の敵!」
「・・・ぅ。」

JUN>>ひでぇ言われようだな・・・つか、おまいらならわかるだろうが。
JUN>>俺がよく知らん女の子に言われて、ほい付き合おうと言うような奴か?
KEI>>ま、そりゃそうだがな。
AKIE>>しかし、祐子ちゃん物好きだねー。
KOEDA>>ほんと!お兄ちゃんなんかPC以外にいいとこないのにね!
JUN>>(#゚Д゚)・・・
KOEDA>>(・ε・)〜♪ピーロリロリーロリロリーロリーロ リロリー
752薬屋:05/01/12 10:48:08 ID:Pz9eLLIg
しかし、確かにそれは疑問だ。
自分でも確かに自覚はあるが、俺は運動駄目で見た目もパッとしない。
まあ、成績はトップを争えるレベルだが・・・
某恋愛シミュレーションじゃあるまいし、テストの点に女が惚れるとも思えない。

YOUHEI>>某恋愛シュミレーションじゃあるまいし、
YOUHEI>>テストの点に女が惚れるとも思えないけど。
JUN>>お前は俺か。しかもまちがっとる。ゲーマーのくせに。
YOUHEI>>ゲーマーだからだよ。あんなのはシュミで充分だ。
JUN>>まー一理あるな。

ま、とりあえずその日は俺が倉敷さんを友として迎えたことを説明し、
皆もそれで納得したようだった。理由についてはうやむや・・・か。
さて、いったい何がどうなっているのやら。
753名無しさん@ピンキー:05/01/12 11:39:14 ID:tCyi1jQr
わくわく。おもろい!
754名無しさん@ピンキー:05/01/12 13:01:44 ID:pTRskNgP
いきなり風呂敷が大きくなって不安・・・
頑張って続けてください!
755薬屋:05/01/12 14:37:04 ID:Pz9eLLIg
SIDE 金森紗枝

(コンコン)

モバイル「こえだ、おふろ、あがったよ。」
返事が聞こえないのは当たり前。部屋から顔を覗かせた小枝が
見せる手まねを見て頷き、キッチンに向かう。

モバイル「おかあさん、こえだが、おふろ、はいるって。」
母さんも頷いて、優しく微笑みながら手まねを見せてくれる。

モバイル「だいじょうぶ、もうふ、だしたから。」
モバイル「おやすみなさい。」

・・・耳が聞こえなくても、みんなと繋がれる。
コンピュータ技術の発達は、私たち聾の障害を持つ者にも
等しく恩恵を与えてくれた。

このモバイルパソコンは、藤堂姉弟の特製。消費電力を極限まで
切り詰めながら高パフォーマンス、超軽量を実現した逸品。
テキスト・トゥ・スピーチのソフトウェアは、藤木君のお手製。
私には聞こえないけど、私の声をサンプリングして作ったとか。
ほかにもいろんなところに藤木研のみんなの手の入った、
誕生日プレゼント・・・私の宝物だ。
756薬屋:05/01/12 14:37:44 ID:Pz9eLLIg
ポチポチ、ポチ・・・

小枝に「明日のお昼は学食で食べよ」という旨のメールを
書きながら、昼間の出来事に思いを馳せる。

───綺麗な娘だったな。

いつの間にか手が止まっていたらしく、スタンバイモードに入った
真っ暗な液晶に映った自分の顔を見る。
自分の作る表情はおかしい・・・ように思う。
どこか、自然ではない。作り物めいている。

髪をかきあげ首をめぐらせると、耳の下からうなじに走る傷跡。
反対側にもある。あの事故の後遺症を何とかしようと、手術をした痕。

───醜い。

目をそらすようにモバイルをスタンバイから復帰させ、
ずっと言いたかった言葉をあのソフトに入力する。

───藤木君、好きです。

再生ボタンを押すことが出来ない。周りには誰もいないのに。
調子のいい戯言と冗談ばかりつむぎだす口だけど、
真剣に悩んでる人には優しく、時に厳しく、相談に乗ってくれる。
彼の声が聞きたい・・・優しい声で、好きだよと言って欲しい。
757薬屋:05/01/12 14:38:19 ID:Pz9eLLIg
可笑しくて、涙が出た。
そんなことを言ってもらえるわけがない。
だいいち、どんな言葉も自分には聞こえないではないか。

無意識に、指が股間に伸びていた。下着の上から、その場所を擦る。
喉の奥から空気が漏れる感触がした・・・
私は今、どんな声を出しているのだろう。
脳裏に浮かぶのは、昼間の娘・・・倉敷さんと自分の想い人が
寝台で睦みあう様子。

おかしくて、悲しかった。
なんという、いやらしくて汚い娘なのだろう。
出逢ったばかりのあの二人がまだ付き合うと決まったわけでもないのに、
その秘め事を思い描き・・・もしそれが自分だったらと妄想し・・・
浅ましいにもほどがある。

「・・・っ!」

じきに、指先が敏感な部分を探り当てた。
下着越しの緩やかな刺激では物足りず、脇から指を差し込んで、
そこをこねくり回す。
喉が震えた。声が出ている。
小枝に聞こえてしまうかもしれない・・・いや、妹はいま風呂のはずだ。
パジャマの胸元のボタンも外し、湯上りでブラをしていない裸の胸の
先端に触れた。股間と胸の先から響く刺激に身を任せる。
758薬屋:05/01/12 14:39:05 ID:Pz9eLLIg
「・・・ぁっ!」

暗い水の底に引きずり込まれそうになった。
インターネットで読めるエッチな小説とかでは、女の人は「イク」らしい。
しかし、自分の感覚では、このようにしか表現できなかった。
ゆっくりと、自分が自分でない場所に連れて行かれてしまう不安感。

じっとりと重く水分を吸った下着に指を差し入れたまま、机に伏せた。
肩がマウスに触れる。

モバイル「ふじきくん、すきです」

再生中を示すLEDが、鮮やかに点滅した。

───しばらく、涙は止まりそうにない。
759薬屋:05/01/12 14:40:17 ID:Pz9eLLIg
キャラクター紹介 金森 紗枝(かなもり さえ)

両道冠学舎1年生。人文部所属。金森小枝の姉。

藤木淳が小学校5年生の時に、聾学校から一般校である
藤木の小学校、同じクラスに転校してきた。
幼少時の事故により聴力に障害があり、言語も不自由。
日常生活では小枝のサポートを受けている。

中学校に上がる際に1年休学し、小枝とともに入学したため、
年齢的には淳、藤堂啓太郎と同い年であるものの1学年下となっている。
彼女の持つモバイル端末とテキスト・トゥ・スピーチのソフトは、
啓太郎と淳の謹製。
所持しているスキルはWEBデザイン関連。非常にセンスがいい。

一般的に聴覚障害者の学習進捗は遅れがちになると言われるが、
元より知能が高かったのと障害が後天的である程度言語基礎を
固めてからのものだったことから、学業成績はきわめて優秀である。
760薬屋:05/01/12 14:47:26 ID:Pz9eLLIg
>>754
広げすぎの自覚はありますので、がんばりたいと思っています。
761名無しさん@ピンキー:05/01/12 18:34:39 ID:pTRskNgP
つかスレ容量がやばくね?
せっかく神が来たのに。
762名無しさん@ピンキー:05/01/13 01:20:07 ID:l/R+0L3p
連載中の書き手さんが二人もいるんだし、次スレは立てても大丈夫だよね。
投下の準備ができたら立てますので、それまでは週一ペースで保守します。
(最終レスから一週間レス無しでdat落ち)
763薬屋:05/01/13 09:19:21 ID:tWR6hENs
SIDE 藤堂啓太郎 with 藤堂瑛

「しっかし、ようやく淳の魅力に気づくオナゴが現れたか。」
「そうねえ・・・いままで手付かずなのが不思議だったけど。」
「まあ、奴は意図的にヘボく振舞ってる感はあったからな。」

実際のところ、淳はサッパリ運動が出来ない以外については
上物の男の部類に入るだろうな。
成績は他の追随を許さないしあの開発スキルはきわめて将来有望で、
実は容姿的にも・・・髪をいじって眼鏡をもっとシャレたのに
取り替えればヨン様と充分以上に張れるんじゃないか、と俺は思う。

そういや・・・姉ちゃんはどうなんだろ?
俺は筑前煮のレンコンに箸を伸ばしながら、探りを入れてみることにした。

「姉ちゃんは、淳とかどうなんよ。」

直球じゃんよ。俺。

「んー。淳くんはいいコだと思うけど、なんでか牝の本能が
 疼くって感じじゃないのよネ。」
「・・・エロ姉め。」
「あっはっは、いつものことじゃない。」
「しかし、長年姉弟やってるが・・・姉ちゃんの男のシュミってのは
 いまだによくわからん。」
「私自身さえわかんないし。」

たしか、いかりや長介に抱かれたいとか言ってたな。
んあー。思い出したら混乱してきた
764薬屋:05/01/13 09:19:51 ID:tWR6hENs
「まあ、あれだ。あのコ・・・倉敷さん?・・・が口火になって
 我も我もと淳に告白したりするようになったりしてな?」
「そりゃないでショ。淳くんのよさって、外から見えないところに
 主に集中してるんだしサ。」

俺が淳のマブダチを続けてるのも、そこだ。
奴はちゃらんぽらんに見えるものの、義理人情に関わることに関しては
きわめて真剣だしな。性格的に、男でも漢でもなく、侠と書いて「をとこ」と
読むとぴったり来るところだ。

「ま、その辺は今後の展開に乞うご期待ってとこだな。」
「啓にも彼女が出来るといいのにネ。」
「るせーや。」

仕込みはちゃんとやってんだよっ。
ここまで来るのに時間はかかったが・・・来年はキメるっ!

八宝菜をかっ込みながら、あいつのことを思い浮かべた。
こちとら3年越しなんだ。ここで諦めるわけにはいかない。
ふと見ると、姉ちゃんがニコニコしながらこっちを見ていた。

「がんばってネ。」
「ああ。・・・それと姉ちゃん、八宝菜にはウズラの卵をちゃんと入れてくれな。」
765薬屋:05/01/13 09:20:47 ID:tWR6hENs
キャラクター紹介 藤堂瑛 & 藤堂啓太郎

人呼んで藤堂姉弟。揃ってコンピューター・ハードウェアに
深い造詣を持ち、簡単な部品なら自作してしまうほどである。
啓太郎は藤木淳の幼馴染で親友だが、基本的に淳と瑛の間には
ほとんど接点はなかった。(たまに顔をあわせる程度)
なお、淳の先代の室長が瑛で、当時の藤木研は「藤堂研」であった。

基本的に今作で活躍するのは啓太郎であるが、彼の性格としては
温和で面倒見とノリがよく、自然と回りに人が集まるタイプ。
藤木研、ひいては人文部の中でも数少ない「普通人」のカテゴリに
分類される人間である。

現在、誰かさんに片思い中らしい。
766薬屋:05/01/13 09:24:02 ID:tWR6hENs
思いつくままにてれてれと書いてだらだらと投下してるんで、
次がいつになるかはわからないのです(´・ω・`)
767名無しさん@ピンキー:05/01/13 09:46:20 ID:Igam96dk
登場人物の名前は書く前にきちっと決めた方がいいぞ。
768薬屋:05/01/13 10:06:08 ID:tWR6hENs
あ、一応それは決まっております。
これまでで何か、齟齬がありましたら、
恐縮ですがお知らせください。
769名無しさん@ピンキー:05/01/17 10:55:59 ID:hRYW8Y+G
次スレ立てようか?
770名無しさん@ピンキー:05/01/17 10:59:40 ID:SvQYHf93
いくらなんでも早すぎる希ガス
771名無しさん@ピンキー:05/01/17 12:11:06 ID:L5J5etc9
残り7KBでガス
772名無しさん@ピンキー:05/01/17 12:24:05 ID:hRYW8Y+G
>>770
書き込み数は800弱だが、容量制限の方に引っかかりそうなのさー
773770:05/01/17 14:46:18 ID:SvQYHf93
そうかそっちのほうか
皆、正直スマンかった
774名無しさん@ピンキー:05/01/22 02:00:03 ID:K8NIckhN
 
775名無しさん@ピンキー:05/01/22 11:52:09 ID:05fh1i46
設定厨ウザいとか言っちゃっていいのかな。
ああ、その設定全部使いきるのか、ならいいのか。OKOK.
776名無しさん@ピンキー:05/01/23 01:14:39 ID:01Go6Ybt
>>775
それ以前に次スレが立たんことにはなんとも
あとお前はもう来んな
777名無しさん@ピンキー:05/01/25 19:55:53 ID:yNCZ3LBO
というワケで>>775が777を頂きますね
778名無しさん@ピンキー:05/01/27 10:11:08 ID:b3ektZFe
(・∀・ )っ/凵⌒☆
779名無しさん@ピンキー:05/01/27 13:46:44 ID:O4A6mH9I
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780名無しさん@ピンキー
次スレ立てたよ

純愛SS『其の2』
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