ティファってイイ女だよね♪

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826名無しさん@ピンキー:03/09/06 00:36 ID:U9uy3TfZ
まだ待ってみる
827名無しさん@ピンキー:03/09/07 00:19 ID:FBLaFG6T
もっと待ってみる。
828名無しさん@ピンキー:03/09/07 23:57 ID:FBLaFG6T
もっともっと待ってみる。
829名無しさん@ピンキー:03/09/08 02:38 ID:FLwUeRF7
まだまだ待ってみる。
830名無しさん@ピンキー:03/09/08 05:25 ID:PFaOfbFa
待つのは一日一回にしろよw
お前暇すぎ
831名無しさん@ピンキー:03/09/08 12:03 ID:s2xA0A7W
背中を向けていたティファがかすかに動いた。
俺の目は薄闇の中でも視界がきくのだが彼女はそれをよくは知らない。
これまで想像するだけだった白い輝きが闇の中にこぼれ咲いた。
むせかえるような肌の熱い匂い。
咽がなった。たまってもない唾を無理矢理食道に送り込む。
浅ましいと思う。
彼女が好きだ。
とても好きだ。
これ以上大切な人間はいない、それなのに俺は彼女を毀したい。

ティファの熱い躯が俺の腕に触れた。
彼女は小さくうめくとすがりついてきた。
俺はその躯を受け止め、強く抱いた。
「クラウド…」
彼女がかすかな声で呼ぶ。
恥ずかしいのかもしれない。俺の背中にまだ腕をまわさない。
逃がさない。
タンクトップをたくしあげると彼女は顔を両手で覆ってしまった。
首を曲げ、甘い匂いで誘う膨らみに唇をつけた。
柔らかい…………。そう確認したのが最後だった。
832名無しさん@ピンキー:03/09/08 12:04 ID:s2xA0A7W
気付くとティファが耳もとで悲鳴をあげていた。
悲鳴なのだろうと思う。
俺が動くたびにティファが背中につめをたてて鋭い痛みが食い込んだ。
俺の名を限り無く呼び、彼女は俺のからだにしがみついていた。
嵐に揉まれる波間に浮かぶ獣のように、
熱い肉に挟まれたまま俺は動いた。
じっとしてはいられなかった。

だけど抵抗めいた爪の痛みは徐々に和らいで
奥深くまで楔のように打ち込んだ俺のものを持て余して、
彼女は切な気に喘いでいた。
空想したことのある淫糜な夢そのものの彼女の姿に、
俺は我が物顔に振る舞いながら歓喜していた。

長い長い黒髪が艶を含んで目の前で月光に輝いていた。
あの時にはどんな顔をするのだろう?
どんな声で俺を呼ぶのだろう?
俺に組み敷かれている彼女はあまりにも可愛くて
可愛くて可愛くて可愛くて
俺の貧弱な空想をはるかに上回るかわいらしさで、
不様に太股を開ききって俺の腰をはさみこんで
容赦のない自分勝手な攻撃を受けいれながら
それでも彼女は綺麗に見えた。
汗を滲ませた咽をのけぞらせてティファは俺の名を呼んだ。
「クラウド…クラウド…!」

どうすれば君はもっと俺のものになる?
どうすれば俺をもっと好きになる?
833名無しさん@ピンキー:03/09/08 12:05 ID:s2xA0A7W
俺はティファを貫いたまま、抱き締められた腕にキスをした。
内側の柔らかい膚を思いきり吸った。ティファが苦痛の喘ぎをかすかに漏らしたくらい強くだ。
しなやかな背を強引に抱き起こすと、膝の上にティファを乗せた。
「繋がってる」
そう耳朶に囁くと、彼女はまっかになって顔を伏せてしまった。
揺するようにその腰を引き寄せて、俺は彼女をゆっくりと上下させた。
「あっ…、………あ…」
途切れがちな喘ぎがそのたびにティファの唇から漏れた。
つやつやと柔らかい乳房が撥ねて、動きにあわせて細くひきしまった腰がくねる。
「ああ…」
ティファのうつむいた顔を夜気にむき出して、髪を耳の後ろに撫で付けてやると彼女が震える吐息をついた。
「う……う……ん…クラウド……」
こぼれる喘ぎごと唇を吸うと、彼女はなにも言えなくなって俺にすがりついてきた。
柔らかい粘膜、熱い粘液、甘い匂い…。
蕩けるようなその感触が、俺の口腔と舌と根を包み込んで蠢いている。
上と下で繋がったまま、彼女を力任せにかき抱く。

唇をはなすとひゅ、と酸素をむさぼって、彼女はとろりと躯の力を抜いた。
「……はずかしい…」
濡れた唇が動いてかすれた声を紡ぎ出す。
躯をひねり、彼女をよれよれになったシーツの上に押し倒し、そのしなやかな腰に乗る。
あとかたも残らないくらいめちゃくちゃにしたいんだ。
俺以外の男にはもう毀せないくらい徹底的に

この瞬間
彼女の閉じた目が魔晄の輝きを宿していない事実は
それが彼女にとっての幸運か俺にとっての幸運かはいざしらず
俺がどんな表情をしているのか彼女には見えない、ただそのための意味しか持たず
ただ、優し気な吐息をついて俺の首に腕をまわす
その彼女の体内に射精したいだけ
834名無しさん@ピンキー:03/09/08 12:06 ID:s2xA0A7W
もう彼女は怒らない
怯えない
怖れない
ただひたすらに俺を
牝にとってそれだけが愛の証だとでもいうように
俺を限界へ誘う


満足した証の汚濁を彼女に注ぎながら
受け入れてくれる女への代償が愛しているという感傷なんだろうかと
牡の疑念
だけど人間の俺はティファの耳に囁いている
愛している
愛している
切なくて
切なくて
溢れかえる彼女への感情
その膨張になにもほかには伝えられなくなる

愛している
愛している
愛している

膨らみが思考を暗く塗りつぶし
最後に俺が塗りのこすのは
きっと俺は彼女をまた抱くのだろうという予感
俺は彼女を毀しただろうか
俺は彼女に毀されたんだろうか


エンド
835名無しさん@ピンキー:03/09/08 20:51 ID:i9POuzDA
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!

こういうの読みたかっただーョ!
836名無しさん@ピンキー:03/09/08 21:42 ID:36VhMeEh
職人さんキタ━━━( ゚∀゚ )━(∀゚ )━( ゚∀)━( ゚∀゚ )━━━!!!!
激しくグッジョブ&乙
経験豊富で積極的なタイプよりこういう方が萌えるな(;´Д`)ハァハァ
837名無しさん@ピンキー:03/09/08 23:21 ID:fLmb1kUk
乙華麗。
なんかいい話だった。
838名無しさん@ピンキー:03/09/08 23:34 ID:YDOeVe5D
 タイミングが良かった。
 ようやく書き手さんが登場しましたね。
 かなりイイカンジで、好きです。

 では、私も(もう少し後で)。
839名無しさん@ピンキー:03/09/09 00:25 ID:WBBBMVjk
すごーく良いです!!
ただヤってるだけよりこういう方がイイ!!
確かにティファは積極的よりこういうのが萌える。
840名無しさん@ピンキー:03/09/09 02:20 ID:3GI/8ylD
「憧憬」

 その女性は、街外れの一軒家に一人で暮していた。

 そこは、再開発が始まったばかりの地区の中で、一番最初に基礎工事が始まった数軒の内の
1つだったと、少年は記憶している。
『寂しくないのかな?』
 そう呟いて寝返りをうった少年の目には、窓から真円を描きかけた銀色の月が、雲一つ無い
蒼味がかった夜空にぽっかりと浮かんでいるのが見えている。
 ここは、10も歳の離れた異母兄と、お風呂の我慢比べで勝ち取った特別な部屋だった。少
し特殊な造りの彼の家には、2階のはじっこの、この部屋に限って、特別に天窓が取り付けら
れているのだ。そのお陰で、ベッドに寝転がりながら、夜空の星を見上げる事が出来る。
『僕だったら、寂しくて友達呼んでずっと泊まってってもらうけどな』
 無意識に、目にかかる前髪を右手で払いのける。彼の髪はひどいくせっ毛で、せっかくの綺
麗な金髪が、まるで近所の猫と格闘してきた隣の家の犬のベスみたいにくしゃくしゃになって
いた。父親にそっくりな兄とは違い、彼はこの街一番の美人だった母親に、よく似ている。そ
ばかすの散った鼻のあたりも年齢を経れば自然と消えて、きっと街中の女の子が放っておかな
い、整った顔立ちの青年になるだろうと思われた。もう少し大きな街に出れば、それなりの生
活を手にいれるのも難しくないかもしれない。もっとも少年は、酒屋を営む父親を尊敬してい
たから、この街を離れる気など無かったのだけれど。
 それに、この街には…。
『明日…会えるかな?』
 少年の恋焦がれる…あの女性(ひと)がいるのだ。
841名無しさん@ピンキー:03/09/09 02:22 ID:3GI/8ylD
>840
 少年は、もうすぐ12歳になる。
 もともと彼は、この年齢には珍しく、性的なものに対しての興味が薄かった。その上、こん
な田舎の街では、性の知識など容易には手に入らないのだ。
 けれど先日、兄の部屋にあった、裸の女の人がたくさん載ってる本を見た時、少年の胸はド
キドキして喉が乾いて、おちんちんが痛いほど硬くなって、

 腫れた。

 母さんの花壇の花にオシッコかけたわけじゃないのに、大きく硬く腫れて、痛くなって元に
戻らなくなった。彼は恐くなっていっしょうけんめいおちんちんを押さえたり叩いたりしたけ
れど、痛いだけでちっとも元に戻りそうもなかった。
 友達にも相談出来なかった。
 自分だけ、おちんちんがヘンだと知られたら、もう一緒に遊べないかもしれないからだ。
 ましてや、父親や母親になど相談出来るはずもなかった。
 それに少し前から、おちんちんの周りに、毛が生えてきていた。
 もじゃもじゃした、ヘンな毛だった。
 恥ずかしくて、どうにも嫌で、お母さんの裁縫道具からハサミを借りて、トイレでその毛を
全部切ったのは、何も1度や2度ではない。今年の夏に河で水浴びした時、同じ歳のナッツと
ジョンのおちんちんには、こんなにももじゃもじゃした毛は生えていなかった。
 自分はどこかおかしい。

 そう思った。
 もし、すごく大変な病気だったら?
 そしたら、この街に一人しかないお医者さんのベゼット爺のところにつれて行かれてしまう。
ベゼット爺のところでは、学校で少年と仲の良いソフィアのお母さんが、看護婦をしているの
だ。もし、この事がソフィアのお母さんからソフィアに知られたら?
 自分はきっと恥ずかしくて死んでしまうだろう。
 少年はその日、大きくなったまま戻らないおちんちんを握ったまま、泣きながら眠った。
842名無しさん@ピンキー:03/09/09 02:24 ID:3GI/8ylD
>841
 それから数日後だ。
 今度は、朝起きたらパンツがしっとりと濡れて、なんだかぬるぬるしてゴワゴワしていた。
少年はおねしょしたのだと思い、お母さんに知られる前に洗ってしまおうとパンツを脱いで、
今度こそ、自分はもうダメだと思った。
 黄色っぽくてどろどろした半透明の“ぬとぬと”が、ズボンの前の内側にべっとりとついて
いたからだった。
 世界の終わりが来たと思った。
 自分の世界が終わってしまったと思った。
 そうすればいいのか、わからなかった。
 自分でもどうしたらいいのかわからなくて、まだ6時になったばかりの肌寒い廊下を歩き、
下半身裸のまま兄の部屋を訪れた。
 兄なら、なんとかしてくれるかもしれない。
 無意識に、そう思ったのかもしれなかった。
 ゆさゆさと、丸まった掛け布団を揺すって兄を起こすと、兄は、イライラした声でブツブツ
言いながら寝ぼけ眼まま起き上がり、おちんちんを出したままの少年に驚き、そして、泣きべ
そをかいたままの少年の情けない顔を見て、

 げらげらと笑った。

 兄に相談しようとした自分が間違いだった。
 そう思ってくるりと背中を向けた少年に、兄は言った。
「そうか、お前ももう大人なんだな」
 それから兄は、替えのパンツを少年の部屋から持ってきて履かせると、少年の頭をくしゃく
しゃと撫でた。

 兄は、それがオトナになることだ…と教えてくれたけれど、少年は正直、おちんちんが硬く
なって熱くなって大きくなって元に戻らなくなるのがオトナになるって事なら、オトナになん
かなりたくないと思った。
843名無しさん@ピンキー:03/09/09 02:26 ID:3GI/8ylD
>842
「夢を見たか?」
 そう聞かれた。
 見たような気もするし、見てないような気もする。
 けれどその時、少年の脳裏に、あの女性が浮かんだのだった。
 あの、街外れの一軒家に一人で暮している、素晴らしく綺麗で、優しく、そして、やわらか
くていいにおいのする女性の、豊満な体が浮かんだのだった。

 少年は、恋をしているのだと、兄は言った。
 そして兄は、恋をすると男は子供から大人になるのだとも、言った。
 恋は、おちんちんが大きくなる事なのだろうか?
 少年にはわからなかった。
 ただ、あの女性(ひと)の事を思うと、胸がどきどきした。あの女性(ひと)のやわらかそ
うな唇を思うと、大きなおっぱいを思うと、息が出来ないくらい胸が苦しくなった。
 そして………その人が微笑んでくれたなら、バハムートだって倒せそうな、
 そんな、気がしたのだ。


 少年がその女性に初めて出会ったのは、夏の終わり頃…9月の初めの事だった。
 街中で仲間と遊んでいる時、派手に転んでしまったところを、誰あろう、その彼女に助け起
こされたのだった。
 ひと目で、奪われた。
 心を、目を、想いを。
「大丈夫?」
 そう言って、しゃがみ込んで、少年の膝や、尻や、手の砂と汚れを払ってくれた女性からは、
なんとも言えないいい匂いがした。少年と視線を合わせて微笑むその頬は、ふっくらとしてす
べすべしていそうだった。長い黒髪は流れるように艶やかで、頭のてっぺんのところには光の
輪っかが出来ていた。
 聖書に出てくる、天使様かと思った。
844名無しさん@ピンキー:03/09/09 02:28 ID:3GI/8ylD
>843
「怪我は無い?」
 そう言って、少年の左頬に触れた手はやわらかくて、少しひんやりとしていた。襟ぐりの大
きく開いた胸元からは、おおきな……お母さんや、学校のアデット先生よりもおおきなおっぱ
いが、少年の目に飛び込んできた。

 見ちゃダメだ。

 咄嗟にそう思って、慌てて視線を下げて、それから返事をしていなかった事に気づいてコク
コクとまるで人形みたいに首を縦に振った。
 その女性(ひと)は、優しく「くすっ」と笑うと、
「元気なのはいいけど、怪我には気をつけてね?」
 そう言って、少年の癖っ毛の金髪を、まるでお母さんみたいに優しく撫でて立ち上がった。
 顔を、上げられなかった。
 火照って、熱くて、胸がどきんどきんとうるさいくらいに高鳴って、こめかみまでがずきず
きした。喉かカラカラに乾いて、握った手の中で汗がじっとりと滲んだ。
「じゃあね?」
 そう言って彼女が背中を向けて、初めて少年は顔を上げる事が出来た。
 女性の、あの長い艶やかな黒髪は、お尻の下まであった。それが、彼女が歩くたびに左右に
揺れる。
 お礼を言うのを忘れた事に気づいたのは、遊び友達のジョシュアにお尻を蹴り上げられてか
らの事だった。

 その日から、少年の目は、あの女性の姿をいつでも、どこででも探してさ迷った。
 翌日は学校があって、同じ時間とはいかなかったけれど、心配したお母さんが探しにきた夕
方の5時半まで、昨日と同じ場所でずっとあの女性が通らないか待ち続けた。
 結局その日は見つける事が出来なかった。このままもう会えないかも…とさえ、思った。
 ようやく彼が、あの女性の姿を見たのは、3日目の夕方の事だ。
845名無しさん@ピンキー:03/09/09 02:30 ID:3GI/8ylD
>844
 すぐに、お礼を言おうと、思った。
 あの時のお礼を言おうと、思った。
 3日前、転んだ自分を助け起こしてくれたお礼を言わなければ、と思った。
 でも、言えなかった。声をかける事も出来なかった。
 緊張して、顔が熱くなって、物陰から見ている事しか出来なかった。
 声をかけたい。話したい。もう一度、優しく微笑んで欲しい。
 頭を撫でて欲しい。
 頬を撫でて欲しい。

 ちがう。

 そうじゃない。
 僕が触れたいんだ。
 あの髪に触れたい。
 あの唇に口付けたい。
 あのおっぱいに………………
 そこまで考えて、自分がとんでもない事を考えている事に気づき、その汚さ、汚らわしさに
自己嫌悪して、逃げるようにしてその場を離れた。
 おちんちんが大きくなって、硬くなっていた。

 あの女性を汚してしまった。

 もう会えない。
 こんな汚い自分には、あの人に会う価値なんか無い。
 でも。
 それでも、焦がれた。
 彼女を想わない日は無かった。
 用も無いのに街を歩き、彼女を見かけては物陰から見つめ、そして決まって自己嫌悪で逃げ
るようにして家に帰った。
 そんな日が、何日も続いた。
 9月も中頃になり、紅葉が始まりつつあった。
846名無しさん@ピンキー:03/09/09 02:32 ID:3GI/8ylD
>845
 ある日、兄貴の代わりに、お得意さんのバーまで酒を届けに行く用があった。
 とは言え、子供に何本も運べるわけもない。ただ、この辺りでは流通自体していない珍しい
酒であり、それでも、バーの常連に頼まれていたものらしく、お父さんが特別に2本だけ仕入
れたのだという。
「こんにちはー…『火喰い鳥』から来ました…御注文のお酒を………」
 薄暗い路地裏を進み、ゴミバケツの横の扉を開けながらそこまで言って、そして奥から出て
きた女性を見て……少年は、危うく手に下げた酒瓶袋を落としそうになった。長い髪を掻き揚
げながら、「ごくろうさま」と微笑んだのは、あの女性だったからだ。
「御勘定、月末でいいかな?それとも、現金で持ってく?あ、でも、もう遅いからお金持って
ると危ないね?」
 声も出なかった。
 相手が子供だからだろうか。
 彼女は、砕けた口調で、優しく、まるで先生が生徒に諭すような感じに話し掛けてきた。
 少年の事は、覚えていないようだった。そしてそれは、ほんのちょっぴり彼を落胆させるに
十分過ぎるほどの力を持っていた。
 けれど、少年は傷付くよりも、嘆くよりも、もっと激しい感情の波に呑まれようとしていた。
『きれい……だぁ……』
 その女性(ひと)の姿は、あの時に見た服装よりも、もっともっと綺麗で、そしてもっともっ
と…………少年をドキドキさせた。
 袖の無いドレスは、胸元が思い切り開いて、おおきなおっぱいがこぼれ落ちそうになってい
た。やわらかそうな唇は、控えめに口紅が塗られ、艶っぽく光っていた。ドレスには深いスリッ
トが入っていて、太ももよりもっと上、腰の辺りまで肌が見えていた。

 目が…チカチカした。

「ん?どうしたの?」
 かがんで、少年と目を合わせた拍子に、たっぷりと重たそうに重力に引かれたおっぱいが形
作る、むっちりとした深い谷間が、凶悪なまでの迫力で少年の目の前に迫った。
 甘い香りは、香水だろうか?
 目と、鼻が……視覚と嗅覚がたちまちのうちに虜にされてしまった。
 ……気がした。
847名無しさん@ピンキー:03/09/09 02:35 ID:3GI/8ylD
>846
「あ…う…あ…」
 そこから先はよく覚えていない。
 気が付くと、少年は何か柔らかいものに頭を乗せて天井を見ていたのだった。
「………??……」
 ぼんやりとした視界の右半分を、なんだかすごくおおきなものが塞いでいた。
「あ、気が付いた?」
 その“おおきなもの”の影から、あの女性の顔が覗いた途端、少年は自分がどういう事になっ
ているのか知り、慌てて体を起こした。
 …が、
「きゃっ」
「あっ」
 彼女の大きな胸に、あろうことか下から頭突きをする形になり、
 バランスを崩した少年が寝かされていたソファから転げ落ちそうになり、
 そして、
「んむっ」
 慌てて少年の頭を抱え込んだ彼女の胸に、彼の顔は埋もれる形となってしまったのだった。
「あららー…役得ね、キミ」
「もう、ママ、ふざけないで下さい」
 目を回しながらそれでも起き上がろうとする少年を、彼女は抱きしめたまま、カウンターの
中から“にやっ”と笑う年配の女性へ唇を尖らせた。
「だってぇ…ティファちゃんのおっぱいにタダで顔を埋められるなんて、そうそうあることじゃ
ないわ」
「この子、まだ子供ですよ?」
「やあねぇ…男よ。オ・ト・コ」
 細い紙巻き煙草を唇から離し、バーのママは“ふうっ…”と紫煙を吐き出す。そして、その
煙草を持った指で、少年のズボンを指差した。
「………………」
 立派に張ったテント状の布地に、ティファと呼ばれた女性の目が見開かれる。
「ね?」
 目を細めて、唇の左端だけちょっと引き上げる…という、見ようによってはひどく皮肉げな
笑みを浮かべて、ママは灰皿に煙草の灰を落とした。
848名無しさん@ピンキー:03/09/09 02:38 ID:3GI/8ylD
少し長いですが、このスレ内で終わります。
たぶん。
終わらなければ、えっちくなる前に終えます。
前半エロくないのはダメですか?
849名無しさん@ピンキー:03/09/09 12:50 ID:+LHv842c
↑(・∀・)イイ!!
 
 すごく
 
 (・∀・)イイ
850名無しさん@ピンキー:03/09/09 18:37 ID:aEnTpMuv
職人さんが降臨なさった…(;´Д`)ハァハァ
>>848
後半エロいなら問題無し
熱く激しく期待sage
851名無しさん@ピンキー:03/09/09 19:49 ID:+LHv842c
別に俺はエロがなくても(・∀・)イイ!!!
オパーイちゅうちゅうなんてあったら昇天するが・・(謎
852名無しさん@ピンキー:03/09/10 23:43 ID:aUhQGuNn
>847
「この小僧、いっちょまえにオスを主張してやがる」
 ティファの肩越しに、客らしき男が顔を覗かせた。色が黒くて目がぎょろりと大きい。鼻が
ぼてっとして、唇が薄かった。
 見た事のある顔だ。
 3ブロック北にある、煉瓦工房の下働きの男だった。前に、配達した酒にオマケとして付け
たコップを「もっとくれ」と言って無理言ってきた男だった。あの時はお父さんが上手く応対
したけれど、それ以来ちゃんとオマケをつけないときまって文句を言うようになった、とても
とてもイヤなヤツだった。
 目だけを動かして店内を見れば、まだ時間が早いのか客は3人くらいしかいない。ソファに
2人と、カウンターに1人だ。そのカウンターに座っている、頭がかなり白い男の人の横には、
飲みかけのコップが置いてあった。きっとトイレか、もしくはもう帰ってしまったか…だろう。
「あ…あの…」
 ふにふにとやわらかく、あったかくて甘い香りのするティファのおっぱいの谷間から、少年
は真っ赤に茹で上がった顔を上げた。少しでも顔を動かすと、そのふにふにのぷにぷにが頬を
圧迫して、なぜだか知らないけれど背中がぞくぞくしてしまう。彼女は下着を着けていないの
だろうか?そのやわらかさは、どこまでも顏が埋ってしまいそうに頼り無いのに、しっかりと
張り詰めて圧し返してくる強さを持っていた。
 おっぱいの間からは、彼女の心臓の音が聞こえる。もっとその音を聞いていたい気も少し…
いや、かなり…したが、そうも言っていられない。身体が熱く、またおちんちんが硬く大きく
なってしまったのがわかるからだ。
「あ、ごめんね…大丈夫?もういいの?」
 何がいいのだろう?……少年はそう思った(「おっぱいはもういいの?」と聞かれたかと思っ
たのだ!!)が、気分は大丈夫なのか?と聞かれたのだと気付いて、慌ててこくこくと首を振っ
た。だが、不用意に首を振った事で、彼女のふくらみに顔を擦り付ける事になり、少年はます
ます身体が熱くなるのを感じてしまう。
853名無しさん@ピンキー:03/09/10 23:44 ID:aUhQGuNn
>852
「あ…ん…」
 彼女が目を細めて、頬をゆるめた。
 …甘い声だった。
 けれど、性に感じた声ではない。
 それは、悪戯っ子のした事を優しく咎める声であり、粗相(そそう)をした赤ん坊を甘く叱
る『困った子ね』という声と、同じものだった。

 少年は、彼女とバーのママにお礼を言い、代金は月末に頂く事をなんとか伝えると、客の男
達にからかわれながら、慌てて勝手口へと向かった。顏が熱くて頭がくらくらして、体から立
ち昇る彼女の残り香に、胸が激しく高鳴っている。これ以上ここにいると、また倒れてしまい
そうな気分だった。
「ね、ちょっと待って?」
 けれど、ドアノブに手を掛けた時、あの女性(ひと)のやわらかい手が少年の右肩に置かれ
たのだった。
「はい、これ」
 振り向いた少年の手に、彼女はにっこりと笑って、何かを握らせた。目の前で手を広げてみ
ると、それは、薄紙に包まれたオレンジ色のキャンディだった。
「ごくろうさま」
 彼女は、ぽんっ…と軽く少年の肩を叩いて店内に戻って行ったが、少年は不思議と、「子供
扱いされた!」といったような感情は浮かばなかった。
 ただ……彼にはこのキャンディが世界で一番美しく、世界で一番貴重な宝石のように感じて、
ポケットにあったくしゃくしゃのハンカチに包み、丁寧に……まるでガラス細工でも扱うかの
ように、胸ポケットへと入れたのだ。
 これは、食べない。
 ぜったい、食べない。
 あの人からの贈り物なのだから。
 あの人がこの僕に、くれたものなのだから。
 ただ、キャンディをもらっただけなのに。
 彼女は、なにも特別な思いでくれたわけではないのに。ただの「駄賃」でしかないのに。
 それでも。
 少年は、顏が、自然とほころんでくるのを感じた。
854名無しさん@ピンキー:03/09/10 23:47 ID:aUhQGuNn
>853
 何より嬉しかったのは、あの女性(ひと)の名前がわかった事だ。

 『ティファ』

 なんて素敵な名前だろう。
 舌の上でその名を転がすだけで、心が高揚して、身体中が震えて、今にも踊り出してしまい
そうだ。自分を取り巻く全てのものが輝いて見える。擦れ違う人々へ、誰彼構わず、今のこの
想いを話してしまいたくなる。
 家に帰ってからも、食事中も、風呂から出てきても、ベッドに入る時でさえ、終始にやにや
と顏が緩みっぱなしの少年を見て、お父さんもお母さんも気味悪そうに見ていた。
 ただ、兄だけが、歳の離れた、血の繋がらない弟を見て、遠い昔に無くした何かを懐かしむ
ような…そんな顔をしていたのだった。 ティファからもらったキャンディは、薄紙に包んだ
ままガラス瓶に入れた。
 薄い…オレンジの色が透けるほど薄い、紙。
 ちょっと濡れただけで破れてしまいそうな…………けれど、それに包まれたキャンディは、
きっと素敵に甘いのだろう。
 素敵に甘くて………たぶん、ほんのりと酸っぱいに違いない。

 それは、少年の、

 そう、それは彼の、初恋…………だった。
855名無しさん@ピンキー:03/09/10 23:49 ID:aUhQGuNn
>854
 それから、時々少年は、自分から家業の手伝いをするようになった。
 配達するお父さんについていって、空の酒瓶を運んだり、代金を受け取ったり……といった、
簡単な仕事だ。
 いつもは面倒臭がって、あまりやりたがらないそれらの事を自分からやりたいと言い出した
彼に、お母さんはちょっとだけ訝しんだけれど、お父さんは息子と仕事が出来て、すごく嬉し
そうだった。
 もちろん、少年はお父さんを尊敬していたし、将来は、ちっとも家業を手伝わない兄とは違っ
てお父さんの跡を継ぎたいとまで思っていた。けれど、今はまだ家業に縛られるのはあまり好
きではなかったし、友達と遊んでいる方がずっとずっと好きだったので、配達が好きになった
…というわけでは決してなかった。
 お父さんについていくのは、あの女性(ひと)が働くバーに、堂々と行く事が出来るからだ。
子供の身では、いかがわしい繁華街などには、とても脚を踏み入れる事など出来ない。
 けれど、「仕事」なら別だ。
 少年は、少しづつティファと言葉を交わすようになり、そして、名前を覚えてもらえるよう
にもなっていった。

 10月も下旬になる、ある寒い日、少年はお父さんやお母さんには内緒で家を抜け出し、夜
遅くに彼女の働くバーへと向かった事があった。
 その頃には、あのバーの営業時間は知っていたし、彼女がどこに住んでいるのかも知ってい
たから、どうしても彼女に逢いたくなって、つい店の勝手口で、彼女の仕事が終わるのを待っ
ていよう……と思ったのだった。

 だが、結果は………。

「なにしてるの!?こんな遅くに!!」
 閉店する1時間も前に見つかってしまい、彼女自身に店のバックヤードに引き入れられて、
こっぴどく叱られてしまった。
856名無しさん@ピンキー:03/09/10 23:51 ID:aUhQGuNn
>855
「お母さんが心配するでしょう!?どうしたの?…ねぇ…何があったの?」
 まさか、「貴女に逢いたくて来たんです」とも言えない少年は、ただ俯いてもごもごと口を
動かしている事しか出来なかった。
 結局、怒っても宥めても口を利かない少年に、ティファは溜息を付き、彼女にそんな溜息を
付かせてしまった自分を思って少年は益々肩を落として黙り込んでしまった。
 そして最後には、客の一人が少年の店…『火喰い鳥』を知っているということで、その客に
連れられて帰る事になったのだった。
 店を出てしばらく歩き、振り返ってみると、雨が降り始めた繁華街の明かりの中で、彼女は
ずっと心配そうに少年の方を見つめていた。
 幸いだったのは、その客が「話のわかる人」だったこと…だろうか。
 彼は、お父さんにもお母さんにも黙っていてくれる事を約束してくれて、少年は家の裏手の
木をよじ登り、自分の部屋へと帰る事が出来た。
 けれど少年はその夜、ベッドに潜り込んでも、ずいぶんと長い事、眠る事が出来なかった。
 彼女を怒らせてしまった。
 哀しませてしまった。
 その事実が、少年の胸を重く塞いでしまっていたからだ。
『もう………逢えないのかな……』
 嫌われてしまったかもしれない。
 もう、あの微笑みを向けてはもらえないかもしれない。
 そう思うだけで、息が苦しくなり、涙が滲んだ。
 天窓を見ても星は見えず、小雨が降り続いていた。
 少年にはそれはまるで………自分のどろどろと濁った…心の中そのもののように思えた…。
857名無しさん@ピンキー:03/09/10 23:52 ID:aUhQGuNn
今宵はここまでに。
858名無しさん@ピンキー:03/09/11 00:14 ID:gVVqH0tI
乙。
クラウドは一体何処に消えたんだ?
859名無しさん@ピンキー:03/09/11 03:15 ID:a1sYwZ3v
正直、クラウドなんてどうでもいい
乙です>>857
860吉野エミ:03/09/11 12:25 ID:GV7+qa32
これからもティファレス作っていこう!
861名無しさん@ピンキー:03/09/11 12:32 ID:GV7+qa32
クラウドかっこいいしホントはクラティがいいけどたまにはこうゆうのもいいと思う!
862●のテストカキコ中:03/09/11 12:47 ID:3sPtq8k8
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863●のテストカキコ中:03/09/11 13:04 ID:3sPtq8k8
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864○のテストカキコ中 :03/09/11 18:28 ID:sIO0rqN5
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865名無しさん@ピンキー:03/09/11 23:52 ID:zAsDjetE
>856
 それから少年は、お父さんの配達に付いてゆくことをやめた。
 あの女性(ひと)の顔を見るのが、恐かったからだ。
 あんなに恋い焦がれた人であったのに、……いや、恋い焦がれた人であったからこそ、また
彼女の瞳が苛立ち(?)と哀しみで曇り、溜息があのやわらかそうな唇から漏れることに、耐
えられそうにもなかったのだ。
 そして…少年はあのバーばかりでなく、その場所の近くにさえ行く事も無く、不用意に彼女
と顔を会わせる事も無く、半月近くが、あっという間に過ぎていった。

 やがて、11月も半ばを迎え、この地方では早くも初雪が降りた。
 3年前起きた『狂気の英雄事件』での、惑星規模での一連の大規模災害…メテオと、ライフ
ストリームの奔流による爆発的な、人類の生活圏への森林の侵食…により、気流の流れが変動
し地脈が乱れ、この地方では本来なら12月も下旬にならなければ、雪など降る事も無かった。
それが、11月初めには気温が急激に下がり、今ではすっかり吐く息が白い。
 肌が乾燥して頬が突っ張り、唇が割れる。
 少年の手足には霜焼けが出来て、足の小指の横には皸(あかぎれ)さえも出来てしまった。
 痛みと、それと同じくらいの痒(かゆ)み。
 むず痒くて、思いきり掻いてしまいたくなるが、そんな事をすると血が吹き出してしまう。
 それはそのまま、破れかけて…けれどまだ諦めきれない、あの女性(ひと)への恋心に……
よく似ていた。
 諦めきれない。
 自分は、あの女性(ひと)にまだ何も伝えていないのだ。
 けれど、彼女の前に立つ勇気が無かった。
 ……そう思い悩み、鬱々(うつうつ)として日々を過ごしていた少年は、まるで誰かが仕組
んだ喜劇のように、街で不意に彼女を見付けた。
 意識していないつもりでも、視線は彼女をいつもしっかりと探していたのだ。
 それを、今度こそ少年は、はっきりと自覚した。
866名無しさん@ピンキー:03/09/11 23:53 ID:zAsDjetE
>865
 彼女に見つからないように先回りして、建物の影に隠れて正面から彼女を見た。
 彼女は、うっすらと降りだした小雪の舞う中、薄茶色のハーフコートを着込んで、手にはいっ
ぱい荷物を持っていた。首に巻かれたミルク色のマフラーがふわふわとあったかそうで、それ
は彼女の艶やかな黒髪に良く似合っている。左手には、ぱんぱんにふくらんだ布性の買物袋。
右手には、肘にもう一つ布袋を下げて、その上、大きな紙袋を抱えていた。
 布袋の中身が何かは、わからない。けれど、紙袋の上からは、長いバゲットと野菜の頭らし
い緑色が覗いていた。
『夕食の材料……??』
 もし両手に持った袋の中身が全部食料だとしたら、他の地域に比べて食糧事情がそれほど悪
くは無いこの街でも、それはとてもすごいことだ。これほどの食料を、彼女は一人で…そして
どこで買いつけてきたのか。
『……バーだってやってるんだから、そういうルートがあるんだろうな…』
 1年前にはもう、酒や菓子などの嗜好品の流通が正常化したこの街なら、そのルートは決し
て細くはないのだろう。
 けれど、少年を驚かせたのは彼女の荷物などではなく、何より、彼女の表情そのものだった。

 嬉しそうだった。

 寒空の下だというのに、この世の春を謳歌しているような表情をしていた。
 少年には、お父さんから誕生日プレゼントをもらった時のお母さんの表情のように見えた。
目がキラキラと輝き、口元は嬉しそうに、恥ずかしそうに、緩んでいる。頬はほんのりと赤く
染まって、それは気温が低いから…というだけではなさそうな、そんな感じがした。
『何か、すごくいいことがあったんだ』
 直感だった。
 そしてそれは、『すごくいいこと』どころか『すごくすごくいいこと』に違いなかった。
 なぜなら彼女は、少年が見た中で、初めて…と言っていいくらいのとびきりの笑顔だったか
らだ。バーの店内で見る、客やママに向ける笑顔なんかよりも、街中で見る、知り合いらしい
人に向けるよそいきの笑顔なんかよりも………そして……少年にとってはとても悔しいけれど、
彼に向ける笑顔なんかよりも……とてもとても、いい…笑顔だったからだ。
867名無しさん@ピンキー:03/09/11 23:55 ID:zAsDjetE
>866
「あっ…」
 少年が“ぼー…っ”と見ていると、その彼女がデコボコになった石畳に躓いてつんのめった。
紙袋が傾き、中から橙色の果物が転がり落ちる。この辺りでは金持ち連中に流れてしまって、
ちっとも一般家庭の食卓には上らなくなった、果実……グレープフルーツだった。
 まるで、時間が何倍にも延びたような感覚だった。
 グレープフルーツがゆっくりと地面に落ち…………転がって……そして…少年の足に当たっ
て、止まる。
 少年はそれを目で追い、足元に転がる黄色い果実を注視した。
 突然、世界に音と光と匂いが戻ってくる。
 少年は無意識に、自分でもわからないまま、しゃがんでその果実を拾っていた。ひんやりと
して、そして中身がたっぷりと詰まった重さだった。
「…あ」
 ふと目の前に、黒の革のブーツがあった。
 顔を上げると、驚いた表情の彼女と目が合う。少年は咄嗟に何も言えず、ただ、彼女のルビ
ー色の瞳を見つめた。

 何か言わなければ。
 こんにちは?
 ごめんなさい?
 はい、どうぞ?

 違う。
 そんなんじゃない。
 …でも…じゃあ…何を?

 僕は貴女が………

 唇は動くのに、言葉が出て来ない。代わりに少年は、俯いて手を伸ばした。
868名無しさん@ピンキー:03/09/11 23:57 ID:zAsDjetE
>867
 少年の手の平の上の果実を見て、
「……ひさしぶりだね。どうしてたの?」
 彼女は、ほんのりと頬を染めたまま、少年の心を覆った硬い殻を溶かしてしまうような微笑
みを浮かべた。
『ああ……』
 彼女の「香り」が鼻をくすぐる。
 胸が苦しくなり、息が出来ない。
 苦しい。
 逃げ出してしまいたい。
 でも、だめだった。
 やはり、どうしても忘れられない。
『僕は……このひとが……好きだ…』
 それを思うだけで、涙が出そうになる。
 視界が滲んで、俯いて唇を噛んだ。
 どうして今まで彼女に逢おうとしなかったのだろう?
 どうして自分から殻に閉じ篭るようなことをしていたのだろう?
 彼女は、少年が突然肩を震わせてしゃくりあげ始めたのを見て、ちょっと困った顔をした。
 そして、彼の癖の強いもしゃもしゃした金髪に、そっと手を置こうとして…両手が荷物で塞
がっているのに気付き、左手の買物袋を石畳に置いた。
「ね、私の家に来ない?あったかいお茶…ご馳走するから。……ね?」
 少年は、手袋に包まれた彼女の左手が、ゆっくりと頭を撫でるのを感じながら、壊れたオモ
チャみたいにコクコクと、ただ、頷き続けていた。

 彼女の家は、再開発が始まったばかりの地区の中で、一番最初に基礎工事が始まった数軒の
内の1つだった。周囲には、倒壊寸前の家屋や、建設中の建物や、すっかり整地された空き地
ばかりで、街灯はあるものの、人通りがすごく少なくて寂しくい場所だ。
 彼女は、こんな所に住んでいるのだろうか?
 彼女の買物袋を両手に下げながら、少年は薄暗い周囲をきょろきょろと見回した。
 25メートルおきくらいにある街灯の合間は、夜空よりも黒い闇がわだかまっている…。
869名無しさん@ピンキー:03/09/11 23:58 ID:zAsDjetE
>868
「やっぱり重いんじゃない?」
 気遣わしげな彼女の声が聞こえて、少年は慌てて前を向いた。曖昧な笑みを浮かべた彼女が、
立ち止まって後を歩く少年を見ている。
 その紅い瞳が、「やっぱり重いんでしょう?」と言っていた。
「へ…平気。それに、女の人にこんな重いの、持たせらんないよ」
「……ふふっ…紳士なんだ?」
「僕は男だからね。女の人には親切にしなくちゃいけないんだ」
「えらいなぁキミは」
 そう言って、彼女は優しく微笑んだ。
 それだけで、少年の心臓が面白いように飛び跳ね、顏が“かああぁぁ〜っ!”と熱くなる。
彼はそれを誤魔化すようにして彼女を追い越し、先頭を切って歩き出した。
「さ…さあ、早く行こ!」
「ふふっ…そうだね」
 少年の背中を、彼女がブーツで石畳を踏む規則正しい音が押す。
 彼女の前に立って夕闇の中を歩く。
 それだけで、自分が彼女を「護っている」気がする。
 そうだ。
 男は、好きなひとを護るんだ。
『僕は男だから』
 そう思うと、不思議と廃屋と瓦礫が左右に迫る暗い夜道も恐くなかった。
 肩越しに、ちらっと彼女の顔を見た。
 彼女はにこにこと笑みを浮かべ、小首を傾げて少年を見る。「なあに?」と紅い唇が動いて、
そしてその動きがあんまりにも魅力的で、少年はつい慌てて前を向いてしまった。
 そうしてしまってから、今のは素っ気無かっただろうか?気を悪くしなかっただろうか?と
気になってしまい、また恐る恐る後を振り返る…という事を刳り返してしまう。
 彼女はそんな少年の仕草が可笑しいのか、それとも笑顔の一番最初の原因の『すごくすごく
いいこと』を思い出しているのか、ずっとにこにこと、優しい微笑みを浮かべていた。
870名無しさん@ピンキー:03/09/12 00:00 ID:GaJMxd4F
今宵はここまでに。
871名無しさん@ピンキー:03/09/12 20:45 ID:ZKIgdoFc
(;´Д`)ハァハァハァハァ otu でつ
872名無しさん@ピンキー:03/09/12 22:39 ID:2xQt72BJ
早くエロが読みたい(;´Д`)ハァハァ
873名無しさん@ピンキー:03/09/13 00:33 ID:a1GnJG9x
乙。
874870:03/09/13 18:32 ID:OnBQHBB3
エロに入る前にスレ残が無くなりそうですね。
ごめんなさい。
875名無しさん@ピンキー
>869
 彼女の家は、1階建ての木造建築だった。土台にはゴツゴツとした自然石が使われ、太くて
黒っぽい建築材は、もう既に何十年もの月日がその身を撫でていったような色艶をしている。
 まだ使える廃材を利用したからじゃないかな?…と、彼女は言った。森の木を切り出し、加
工するにも、人手や資金は必要だ。だが、今はこの街も落ち着きつつあるが、3年を経ても尚、
再開発を含めた生活圏の復旧はままならないのが現状だった。
 再開発地区での住居の建築は、整地だけでもかなりの人手を必要とする。実際には、まだ4
0%も進んでいないというのが実状なのである。
『真っ暗だ…』
 窓の外は日がすっかり落ち、闇が満ちていた。
 時刻は、まだ夜の6時にもなっていない。
 精緻な加工技術を行う工場(こうば)が失われたためか、窓にはまっている板ガラスは、わ
ずかに映った少年の顔を歪めてしまうような感じのものだ。窓の外には、モンスター防止用の
ネットの上に取り付けられた、風鳴り音を出す風車の赤い色がうっすらと見ている。
『本当に、街外れなんだな…』
 魔晄炉の運転が年々減らされてゆくにつれ、魔晄炉が開発される以前の、自然燃料を基盤と
した生活へと人々の生活は移りつつある。だが、それでも原始的な生活ではない。風力・水力
によって電気もそれなりに配給されるし、魔晄を触媒にした完全リサイクルなエネルギー抽出
方法も研究されている。魔晄エネルギー利用の全てを否定するわけではなく、「星の命」を出
来るだけ削る事無く、最低限のレベルで利用していこうとしているのが、旧神羅から派生した
新組織の方針であり、現トップであるリーブの意志だった。