456 :
452:
>>453>>454 需要があるようで安心しました。昨日書き終わったんでうぷします
コックピットプレイじゃないですけど(w
20話と21話の間の話と思って読んで下さい。
砂漠の虎こと、アンドリュー・バルトフェルドとの決戦に控え、アークエンジェルクルーと
レジスタンスは物資弾薬の搬入作業に追われていた。
「虎との決戦近し・・・か」
その慌ただしい様子を横目にムウ・ラ・フラガは、艦の外を歩いていた。
晴れて「明けの砂漠」の協力を得てザフト軍と戦う事になったものの、レジスタンスの
戦力ばかりに頼り切るわけにはいかなかった。
(はぁぁ・・・どうなんのかねぇ今度の戦いは)
これまで、数々の死線を潜り抜け「エンディミオンの鷹」とまで呼ばれてきた来たムウで
あったが、大きな戦力差のある戦いを前に、少々落ち着かない様子であった。
「どこかに、こんな俺を慰めてくれるイイ女はいないもんかねぇ」
このような状態でもいつもの調子であるムゥであった。
457 :
452:03/03/13 09:33 ID:MRh6hksp
「そろそろ艦に戻るか」
気晴らしに散歩へ出かけたムウであったが、日が傾き始めているのを見て艦へ急いだ。
「時間に遅れたら、バジルール中尉にどやされちまうからなぁ・・・・・ん!?」
ふと,岩陰に誰かがいるのに気がついて足を止めた。
(誰がいるんだ?)
人の気配がする方へ向かっていったが、そこには思いがけない人物がいた。
(お・・お嬢ちゃん?)
そこにいたのは、カガリだった。
岩に背を預け、切ない表情で夕暮れの空を見つめていた。
(どうしたんだろう、あんな悲しそうな顔をして)
夕日に照らされて、余計に寂しそうに見える少女の横顔を見ながら、近寄っていった。
「よう、嬢ちゃん!!」
「・・・っ!?」
いきなり姿を現したムウに、カガリは驚いた。
「どうしたんだよこんなところで」
「嬢ちゃんじゃない、カガリだ!!あんたこそなんでここにいるんだ?」
不機嫌そうな顔をしたカガリに、ムウは飄々として答えた。
「あ、俺?俺はどっかにイイ女がいないか探してたところ。そしたらカワイイ女神様が、
ここにいたってわけよ」
「お前・・・私のことをバカにしてるのか!?」
ムウお得意の軽い物言いに、カガリは本気になって怒った。
「あぁ、ゴメンゴメン、そんなつもりはないんだけど、気に障ったんなら謝るよ」
ムウは謝りながらも、内心カガリの可愛らしいリアクションに微笑んでいた。
「ここを通りがかったら、君が浮かない顔をしてて気になってね、あ、隣いいかな?」
「・・・勝手にしろ」
カガリの許しを得て、隣へ腰掛けた。
「まぁそのなんだ、君が何ともないって言うんならそれでいいんだけど、もし悩んでいる
事があったら話してくれないか?こんな俺でも何か力になれると思うから」
「・・・・・・・」
カガリは暫く俯いたまま黙っていたが、やがて、意を決したように話し始めた。
458 :
452:03/03/13 09:45 ID:MRh6hksp
「この前、キラに言われたことを考えていたんだ」
[気持ちだけで、一体何が守れるっていうんだ!!]
目の前で仲間を失い、初めて頬をはたかれ、戦いの現実を思い知らされたあの日・・
「色々あったみたいだね・・・・」
ムウはその現場には居なかったが、どのようなことがあったかは、話で聞いていた。
「私は、必死になって戦えばどんな敵にだって勝てると信じていた・・・けど」
少年の命が目の前で消えていく光景が、フラッシュバックする。
「アフメドを死なせてしまった・・・私が一度の勝利に浮かれていたから!!」
少女の口から、後悔の言葉が吐き出された。
「気持ちだけでは何も守れない・・・・あいつの言うことはよく分かっているつもりだ」
「嬢ちゃん・・・?」
「それだけに・・・・・・非力で浅はかな自分が・・・悔しくてたまらないんだ・・・」
カガリの目から涙がこぼれ落ちていた。
普段気丈に振る舞っているが故に、少女の憤りと悲しみは、その涙で痛いくらいに伝
わってくる。
(・・・・何やってるんだ、私は・・・人前で泣くなんて情けない・・・)
心の中ではそう思っていても涙は止まらない。彼女はソッポを向いた。
「地球軍のエースには、こんな話をしたって分かんないだろうけど、とにかく
ありがとうよ・・・」
カガリは話を切り上げてこの場から立ち去ろうとした。自分の泣いている顔を、見られ
たくなかったからだ。
そんなカガリを見て、ムウは少女の心中を察した。
(こんなに若い、しかも女の子なのに一人で抱え込んじまって・・・)
459 :
452:03/03/13 09:48 ID:MRh6hksp
「待てよ」
立ち去ろうとするカガリの肩をつかんで、引き止めた。
「・・・!?な・・・何を!?」
「君の気持ちはよく分かるよ」
「え・・・?」
「俺だっていつも上手くいってたわけじゃない。自分の力が及ばず、敗北を味わっ
たこともある。それで死に直面した事だってあるよ」
過去の戦いを思い出しながらムゥは続けた。
「だけど俺は、それらをただの負けとして受け止めたくなかった。その敗北を糧に、
強くなって勝ち続けたいと思ったから、これまで戦い続けてきたんだ」
ムウは、自分の戦いにおける想いを語った。
「・・・・・・」
「だからさ」
カガリの視線に合わせた。
「今は自分の失敗に嘆いたっていいんだ。君自身の為にも、死んでいった仲間の為
にもこれから先を頑張っていこうぜ、な?」
「・・・ッ」
ムウの優しい言葉と力強い眼差しを見て、カガリは溜め込んできたものが溢れ出す
のを感じた。
「うっ・・くっ・・うう・・・・ひっく・・・」
本来、彼女は、弱音を吐いたり,弱さを見せたりすることはなかった。
その性格が災いして、誰にも、従者のキサカにさえも打ち明けることができなかった
心の内。
その心の内に触れた人間を前に、カガリは泣き崩れた。
「うっ・・えっ・・く”・・うぅ・・・・・うああああああああっ!!」
次から次へと涙がでていった。
ムウは何も言わず、泣きじゃくるカガリを抱きしめ、優しく髪を撫でた。
460 :
452:03/03/13 09:53 ID:MRh6hksp
「ちょっとは落ち着いてきたかい?」
「ああ・・・すまない・・・・・」
ようやく止まった涙を拭いながら、カガリは答えた
「その・・・」
「ん?」
「お前って・・・意外といい奴だったんだな」
ムウは、カガリのこの発言を意外に思った。
タッシルの町での一件以来、自分に対する印象は良くなかったはずだから。
「あの嬢ちゃんからそう言ってくれるなんて光栄だねぇ。あっ、ひょっとして俺に
惚れちゃったとか?」
「・・・・・」
(なんだ?どうしたんだ?)
ムウのいつもの軽口に対して、カガリがまた怒るのを予想していたのだが、何か
様子が変だ。
「わ・・・私は・・・」
「お前のことを・・・・・もっと知りたい・・・・お前に・・触れてみたい・・・
だから・・・・その・・・・」
頬を真っ赤に染めながら自分の想いを解き放った。
「私のことも・・・お前に・・・触れてほしいんだ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えええええっ!?」
ムウは一瞬あっけにとられたが図星であった、とも取れるカガリの告白に驚愕した。
(ええ・・・と・・・・それって・・・そういう・・・こと・・・?なのか?)
その一方で、カガリ自身も驚いていた。
只、抱きしめられ、慰められただけなのにこのような事をいうなんて・・・・・
しかし、ムウの強さと優しさに触れ、彼に強く惹かれていく自分がいるのも
事実だった。