三橋「キャ、キャ、キャラット・キャキャキャラット♪」

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258三橋家のちすじ ◆j.MTGaYEYdeP
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長い部活が終わった。
田島は着替えを抱え練習着のままで花井の静止を振り切ってグラウンドの向こうに消えていった。
「なんだぁ?何かあったんか、誰か知ってるか」花井の言葉に首を振る泉。
「わかんね、落ち着きねーのはいつもの事だけどな」
「用があるとか言ってたよ、だけど何か隠しているっぽかったな」バッグから通学着を出しながら西広が呟いた。
「ここ片付けたら行ってみねえ?」
「迷惑じゃん、仮にも用事あるって言ってたし」
「でもねー、三橋の件もあるし」水谷の何気ない一言で皆が固まった。
「そういや、田島、シガポと喋っていたよな」
「しのーかが三橋の事聞いてたみたいって言ってた」
「三橋が頼るって言ったら、先ずは田島だよな」
「だな」
「うん、そうだな」
皆の視線が花井に集まる。
「あのなぁ、俺たちが疑ってどうすんだよ」花井が頭を掻く。
「今日はそんなに遅い時間じゃないし」
「忘れ物届けにきたって言えば」
「・・・ったくしょうがねえ、ここ片付けて着替えてからな」
259三橋家のちすじ ◆j.MTGaYEYdeP :2010/05/03(月) 13:23:53
>>258
田島は玄関から自分の部屋に真っ直ぐ走って行った。
「悠!廊下を走らないっ」美輪子の怒鳴る声も田島には届かなかった。
荷物をドアの所に投げ捨てると猫の姿を探した。
ベッドの脇に置いた猫用ダンボールが無い。
ベッドの上には?布団を剥いでもベッドの下にも机の下にも猫の姿は無かった。
どうした、何が起きた?田島は背中に変な汗が滲むのを感じた。
「お、おかあさん!ね ねこは?!」
「あ、ああ、猫ね、ごめんなさいねえ、言ってなかったわねえ」
「ねこ、猫はどどこに」
珍しく狼狽している息子に美輪子は困惑した。
「猫ね、町会長さんが欲しいって言ってね、お孫さんにってね」
「ええーっ あげちゃったの」
「うん、でね、持っていったんだけど、途中で逃げちゃって・・・見つからなくて・・・断り無くてごめんね」
あげたならそこに迎えに行きゃいいけど、行方不明!どうする?!どーすんの!!
今ここにいないという事は自宅に戻ったか?それならいいが、もしそうじゃないとしたら・・・。
「お、おかあさん!!逃げたのどの辺?」
「お孫さん岩槻だっていうから車でね・・・122号に差し掛かる辺りだったかしら、窓からぴょんって」
やばいやばい、三橋はあの辺は知らねえぞ。ともかく行ってみっか。ソレしかねえ。
田島は美輪子が止めるのも聞かず練習着のまま外に飛び出した。
260三橋家のちすじ ◆j.MTGaYEYdeP :2010/05/03(月) 13:25:47
高速道路と幹線道路が重なりあうこの辺りは真夜中でも微妙に明るい。
しかし交通の便が余りよくない場所でもあるので
近くのサッカー場で試合でも行われない限り夜遅くの人通りは殆ど無い。
おかあさんが岩槻に行くんだったら使うのはこの道だよな、田島は見当をつけてチャリで道を辿っていく。
今の所車に轢かれた猫の姿は無い。猫のまま死んじまったら洒落にならない。一生行方不明のままだ。
周りは民家も少なく、道を外れるとぼんやりと草原が広がっている。
畑なのか田圃なのか葦原なのか野原なのか道から遠くなればなる程それが何なのか判別がつかない。
取っ掛かりが掴めないまま田島は息を吸い込んだ。
「三橋ぃーっ いるかーっ いたら返事しろーっ」
返事は無い。田島はチャリを降りた。辺りを歩きながら大声で三橋を呼んだ。
人もいない民家も無いこの場所なら不審者として警察を呼ばれることも早々無いだろう。
もし何か言われたら迷い猫を探していると言えばいい。実際探しているのは猫なんだし。
15分もそうしていただろうか、どこからか、か細い声でみぃと聞こえてきた。
「三橋!三橋なのか?!どこだ?三橋なら2回鳴いてくれ」
みぃみぃと声が聞こえてきた。
「三橋か!!よかったぁ!オレの事見えっか?遠くなったら二回鳴いてくれ近くなったら一回な」
田島はうろうろと声のした辺りを歩き始めた。みぃと言うか細い声に語りかけながら。
程なく足首に何かしがみつくものがあった。泥まみれでくたくたになったガリガリの若猫。
「三橋ぃ畜生、心配したぜったく、さあ帰んぞ!今日こそ元に戻ろうな、ゴメンナゴメンナ」
ふるふると震えているみすぼらしい猫を荷台に乗せて田島は信じられない速さでチャリをとばした。

今日中に終わらせます、長い事すまなんだ