阿部「三橋、逃げろォッ!」

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166三橋家のちすじ ◆j.MTGaYEYdeP
久々過ぎてすまん
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1264411419/372
野球部の朝は早い。まだ暗い内に目覚ましが鳴りそれに合わせて反射的に身体を起こす。
失敗すると二度寝して大変な事になるので考える前に起きる、これが大事な事になる。
ベッド下の籠の中で猫がスースーと寝息を立てている。
猫は語源が寝子だと言われているが、なるほど良く眠っている。
学校に連れて行くわけにもいかないが、田島は一応声をかけた。猫は微動だにせず眠りこけている。
昨日の事がまるで嘘の様に思えるが、ゴミ箱のティッシュの量を考えると決して夢や幻では無かった事が伺える。
まあ、今晩一発抜けば三橋も元通りだもんな、田島は暗い部屋の中で伸びをした。
スポーツバッグに通学着を詰め、練習着を着込んで台所に駆け込む。
台所には市場に合わせて出荷作業を始めるべく田島の祖父と祖母がおむすびを食べていた。
「ゆういちろう、早いな」
「うんっ じいちゃんも、な」
「おうっ 胡瓜はさっさと採らんと悪くなる一方だからな。美味い内に出荷しないといかん」
「胡瓜、まだ採れんだ!」
「うむ、ぼちぼち終わりの時期だがな。来週からは稲の刈り取りがはじまんぞ。稲が終わったら少し楽になるな」
「新米、楽しみだ」
「今年は照ったからな、おいしいぞ」
「うちの米、うめえもんな」
「当たり前だ、じいちゃんが丹精込めたお米だからな。そういや、ゆういちろう、猫どうした?」
「俺の部屋にいるよ。あいつ大人しいからそのまま置いておいても大丈夫だよ」
「うちにゃ、タマがいるからなあ。タマが嫌がるだろう」
「学校の友達に欲しいって言ってたのがいるから今日聞いてくるよ」
「そうか!人の畑に捨てる不届き者が多くて困ったもんだ。猫は悪くないんだがなあ」
田島は一瞬冷や汗をかいたが、この場を切り抜けられたようでホッとした。
そう、今晩、猫から三橋に戻れば何の問題も無いのだ。
「じゃあ、じいちゃん、ばあちゃん、行ってきます」
田島の母親の作った弁当をスポーツバッグに入れて台所の勝手口から田島は外に飛び出した。
「あ、おかあさんにヒトコト言ってこなかったな・・・まあいいか」
ママチャリをこぎだすと頬に当る風が少しだけ涼しかった。
167三橋家のちすじ ◆j.MTGaYEYdeP :2010/04/11(日) 17:58:56
>>166
部活での話題は専らいなくなった三橋の話だった。
田島は昨日起きた事を流石に言い出せなくてやきもきしたが、それも今晩までだと自分に必死に言い聞かせた。
顔に出ていたらヤバイよな・・・野球部にも勘のいい奴はごまんといる。野球部員は正確には10人、関係者合わせて13人だが。
特にシガポと西広はヤバイ。何気に鋭い所を突いて来る。
「田島、最後に会った時三橋の様子はどうだった?」って
シガポに聞かれてもう少しで昨日の事を言ってしまいそうになった。
「ふ 普通でした。三橋んちに行く前に俺んちに寄ってもらって取れすぎた茄子もってって貰って・・・それから」
「それから?」
「メールで、えーっと三橋のおばさんからお礼のメールが来て・・・」
「三橋くんは一度家に帰っているんだよな、それからいなくなっている。おかしいんだよね」
・・・・家に帰ってから猫になっちゃったんだよな、三橋。田島は心の中で反芻した。
あれ?そういや、あいつ昨日何がきっかけで猫になったっけ。エロビデオ見てて人間に戻ったんだよな。
それから何をして猫に逆戻りしたんだっけ?
「田島?どうした?何か思い出したかい?」
「い、いえ、何でもないっす。昨日変なビデオ見ちゃったんで」
「変な?どんなの見たんだい?」
「えっと、人が動物になる映画・・・です」
「ああ、狼男とかそういう類の」
「実際、そういう事が起こりうるのかなって」
「多毛症や呪術による暗示、または隠匿しなければならない人間が外部から狼と認識されてしまったことは有るけどね
月見てみるみる獣になっていくっていうのは・・・映画や小説の中だけだよ」
「そ、そうっすよね、やっぱ」
「三橋くんと何か関連が?」
「あ、い、いえ、と特には。み三橋も見たがっていたから」
「珍しいねえ、三橋くんが映画をねえ、ふーんそうなのか・・・又何か思い出したら教えてくれよ」
「あ、は はいっ」
シガポはしのーかに飲み物の残りを聞くとグラウンドを後にした。