http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1244596803/510 まずいと思った時にすぐ逃げなかったことを、三橋は後悔した。
勝手に探られたバッグから、財布を追って野球の硬球が落ちる。
あうあう言っている間に、男の一人は三橋の自転車に乗って向かいの公園に入ってしまった。
財布の中身の少なさに文句を言うその男の元まで他の二人に追い立てられ、三橋は泣きそうになるのを堪えた。
「あの、かえ…、うあっ」
返してという言葉は途中で途切れた。
水飲み場の下の地面、排水口にいきなり倒されて空を仰いだ三橋の顔の上で、水道の蛇口が勢いよく開かれた。
「汗臭ェから洗ってやんよ!」
「オカマのくせに野球とかやってんじゃねっつの」
退屈していたところに見つけた、いたぶり甲斐のありそうなオモチャが暴れる。
男達は起き上がろうとする三橋を蹴りつけ、踏み押さえて水びだしにした。
植えられた木の向こうに人影が見えたのを機に、男達は水を止めて三橋を公衆便所へ引きずり込んだ。
人通りがほとんどないとはいえ、ごくたまに犬の散歩や仕事帰りの近所の住人が通る。
冷水といくらかの暴力を浴びせられた三橋は、腕を振りほどく力を奪われていた。
「あーあ砂ついたなぁ、もっぺんシャワーな」
「ご ごめ、なさいぃ…ごめ、やめっ」
男はほろ酔いに調子付くまま、二人がかりで三橋のシャツを脱がせて腕に巻きつけ、ズボンを膝下まで下ろした。
もう一人が、物入れから引っ張り出したホースを手洗い場の水道にくっつける。
三橋は水が放たれたホースから逃げ、自分のズボンに足をとられて壁にへばりついた。
獲物が壁際でなすすべもなく水をかぶる様子を、男達が馬鹿にして笑う。
三橋の脳裏に、集団で囲まれて罵倒された中学時の経験がよみがえった。
しかしその時は今にも腕を折られそうで恐ろしかったものの、殴られたりされることはなく、次の日はいつも通りマウンドに立てた。
その出来事はぎゅうぎゅうに心の隅へ押し込めて、なかったことにした。
なかったことにできる。その方法を知っている。