http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1246025544/919 夜の練習も終わり、部員は各々と喋りながらぱらぱらとベンチ付近に走ってきた。
朝の集合時間の確認などは寒い時期、部室で着替えながら行っていたのだが
梅雨が過ぎた頃からなるべくだったら部室にいたくない・・・というのが暗黙の了解になって
ベンチ付近で総括、そして、部室では短時間でさっさと着替えて帰ると言うのが日常になっていた。
「三橋、今何て言った?」田島の大きな声に部員全員の目が集まった。
ベンチの天井に点いている心許無い蛍光灯の下で三橋はそれでも田島にすがり付いて下を向いていた。
「わりい、三橋を脅かすつもりはないよ、だけど、だけどよ 何でもっと早く言わないんだよ」
「何事だよ、田島」泉がすいと田島に近づいて行く。
普段なら茶化したり、たじろいだりする田島がその時は微動だにしなかった。
「ああ、いい話じゃねーよ・・・つーか・・・うん・・・とにかくだ、俺じいちゃんに報告しなきゃなんねえ
直ぐ戻ってくっから待っててくんねえ?皆の協力が必要だと思う」
そう言うと田島は真っ暗なグラウンドを横切ってフェンスの向こうに消えていった。
「どういう事だ?三橋??」泉はそう言って三橋の肩を叩いた。
「う・・・あのね・・・今日の、お昼の時、見ちゃったんだ・・・昨日のお化け」
一瞬、部員の全員がはぁ?という顔になった。
「お化けって、あの麦藁帽子の?」栄口が聞くと三橋は小さく頷いた。
「子供の頃に見たっきりだって言っていた奴だろ?何で今頃?」阿部が凄む。
「わ、分からない、ん で でも田島君のおじいさんが、は 話を聞いてよくないのだからって
何かあったら必ず報告するようにって昨日の夜 め メールが来てて・・・」
「で、何、今日の昼間にそいつに遭遇したって?」沖の声は少し震えている。三橋は力なく再び頷いた。
「田島、普通じゃなかった よな」阿部の問いに泉が答える。「ああ」
「え、と、西広は昨日の話しに似たの、詳しかったっけ」花井が西広に話を振った。
「うん、昨日の繰り返しになっちゃうんだけどあくまでも、ネットの噂話でしかない話なんだよ・・・
それは、本来結界に囲まれていて外に出てこないものである事
一度魅入られた数日とたたずに取り殺されてしまう事
本人以外は姿が見えない事・・・ただドアを叩く音とか、声は聞こえる事が有るみたいだけど
あと、夜は移動しない方が良いって」
「夜?どうして?」
「向こうの力が増すからこちらが逃げ切れなくなるんだってさ」
>>399 程なく田島が戻ってきた。
田島は信じられない程、的確に仕事を配分すると皆に向かって言った。
「多分、理屈を言っても分からないと思う けれど三橋の命にかかわる事が起きているのは確かなんだ
最近、この周辺で幾つかの宅地造成がいっぺんに行われた
そこで大事なものが残されているかどうかじいちゃん達は危惧していたんだ
10年前にも同じような事が有ってその時は直ぐに大事なものを元に戻す事ができたんだそうだ
今回はまだ確認が取れていない 4箇所のポイントの内、2箇所が未確認のままだ
昔の人だったらそんなヤバイ事はしないんだが、代替わりしてて解んないでやっている場合もある
俺とじいちゃんの2手に別れっから、三橋の傍に居る奴以外はそれぞれどちらかについてくれ
あ、大事なものってお地蔵さんの形にしているって、じいちゃんが言っていた
それから、三橋、これ、じいちゃんから」
田島は読めない字が絵の様に書かれた小さなお札(ふだ)を三橋に手渡した。
小さな紙切れは三橋が手を触れるとみるみる黒く変色し消し炭の様に粉々になった。
「三橋、籠る部隊は野球部の部室の隣借りて待機してっからな
夜は危ないって言うから朝7時になったら出てきてくれ」
言葉は冷静なものの、花井の声は震えている。
「夜の間、ドア開けちゃ駄目だよ、アトね、朝になって外に出る時は三橋が1人の時出てきてね
誰かに呼ばれても出ちゃ駄目だよ」
沖が半べそをかきながら三橋に訴えた。
西広はお札の束とコンビニの袋に入った飲み物と食べ物を三橋に寄越した。
「これを部室の壁に沢山貼って、ドアのところには特に沢山ね
それから、窓は新聞で覆って外を見えなくした方がいい、暑いけど頑張って」
三橋は皆の言葉にひたすらうんうんと頷いた。
花井、沖、西広がドアの向こうに消えた。
ここにいない野球部員は二手に分かれて封印の地蔵を探しに行っている。
各家庭の親族の所には田島の家の方から“田島の家に泊まるので心配しないように”と連絡が行っている。
三橋の両親のところにも連絡が行っている筈だ。
以降書きあがり次第投下します