http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1243063706/291 養護の教諭が驚いた様子でカーテンを開ける。
悪い夢を見ただけですと何とか言い、そろそろラストの授業が終わる頃だと聞いて、泉は部屋を出た。
偶然通りすがったのか、運んできてくれたのは野球部顧問の志賀だったという。後で礼を言いやすい。
最新の記憶は体育倉庫だ。一緒にいた三橋には、きっと迷惑をかけたんだろうなと思う。
けれどそれよりも、頭を支配するのはあの悪夢だった。どういうわけかすっかり抜け落ちていたようだが、泉は確信していた。
あれは現実に起こったことの記憶だ。
自分達はどうやってあそこから脱出したのか。
誰かが見つけてくれたのか。
大きなショックとストレスを抱えたはずの出来事を、何故ここまで完全に忘れてしまったのか。
親は、当時の担任は、友人達は知っているのか。
間違いない。小学生の頃、自分は三橋に会っている。
あいつは、あれを覚えているんだろうか。
教室に戻る足取りは重かった。
突然倒れたということで泉は体調を心配されたが、柔軟運動であっさり体が適応し、結局普段どおりの練習メニューをこなした。
だが三橋の方を自然に見れない。
「阿部やめろ、三橋がすげーバカになったらどーすんだ」
阿部に頭を拳で挟まれた三橋がヒィヒィ言っているいつもの光景にさえ、らしくなく反応してしまう。
「そーだそーだ、テストのとき西広が死ぬぞー」
「オレ引っ張る!ウメボシされたとこ引っ張ったら、普通のバカに戻るぞ三橋!」
水谷と田島が笑いに持っていってくれて助かった。
アタマどうこうではなく、三橋が誰かの手に触れられ、ビクついているのが耐え難いなどとはまさか言えなかった。
家に帰ったらまず、事実を確かめたい。
両親が知らないと言うのなら、あるいは顔色ひとつ変えずに隠し通すのなら、二度は聞くまい。何事もなかったのだ。