三橋「お おっきく なった よっ」

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http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1231765490/559 おやすみはし。
なんでそんな大物がこんな場末の店に!
親方と同じくミーハーな俺は思わず備え付けの色紙を取り出しそうになって我に返る。
今は接客の方が先だ。
それに、正直貰っても喜ぶのは親方だけだろう。
それに、自分で自分の職場を場末と卑下する事もあるまい。うん。
「先程はすみませんでした」
深々と頭を下げる俺に、にこやかに受け答えをする西広社長は見慣れた優しげな顔なのに、大物の貫禄十分だ。
外見年齢は30手前か。
DB(デザインボーン、遺伝子操作を受けて誕生した人間を指す)は間違い無いから、遺伝子的にアンチエイジングしてるかもしれないから、本当は幾つなのか判らない。
ニシヒロ型も年齢だけは展開しているから、十分見慣れた顔なんだけどな。
席を勧め、西広社長が座ったのを見計らったように、いつの間にか席を立っていたチヨがお茶を運んでくる。
「ありがとう」
ん?あ、そうか!きっとドクターゲーリーの紹介だろう。彼も大物だし。
俺は自分の推理が正解かどうか、本人にさり気無く訊く事にした。
「ん?ああ。阿部君がね、新しい愛玩人を自慢してくるから」
「へ、あ、阿部さん、ですか?」
「うん、そう。ここの顧客だよね?確か三橋君」
「ええ、そうです。おい、チヨ」
俺はチヨにレンを呼びに行かせる。
まさかの阿部さんか。大穴もいいとこだ。
俺は先日訪れた客の顔を思い出す。
これと、目の前のニシヒロと同じ顔した西広社長にどんな接点があるんだろう。
「しかし、お忙しいでしょうに、呼ばれたら見本を連れて参上しましたよ」
まずは手始めに、通称3D電話と呼ばれる立体映像投射装置付き電話で顔を見ると言う客もいる位だ。
「いや、俺、第二陣の四席だから」
サラッと答えたのに、俺は首を捻る。
「ハハハ、ごめん、分からないよね。
俺の仕事、忙しいからさ、自分が何人もいたらいいって思うこと、無い?」
「……あります」
ニコッと笑った笑顔の後ろに何人の西広社長がいるんだろう。
金持ちって予想以上のことをするよなあ。