三橋「ほんとのパイパンになれるかも?」

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611ケモノの憂鬱 ◆Z6TNEi.Aqw
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1219110173/797
※阿部獣化注意

数回チャイムが鳴って目が覚めた。
宅配の予定はないから訪問販売の類だろう。どうでもいい。
しかし、鍵をかけていったはずのドアが開く音に俺の全身は緊張で一気に漲った。
三橋じゃない別の人間の匂いが流れてくる。
あいつが鍵をかけるのを忘れて出かけたのかとも考えたが、いや施錠の後ドアを引いて確認し
ていたっけと思い出した。
俺も三橋も身内に鍵を渡すようなことはしていないのに何故開けられてしまったのか。
泥棒かもしれないが、この匂いはどこかで嗅いだことがあるような気がする。
どちらにしても隠れるなり人間に戻るなりしないと困ったことになりそうだ。
だが変身するには時間がかかるし、隠れようにも適当なスペースがない。
部屋の狭さを考えて収納付きのベッドにしたのが悔やまれる。
クローゼットも一杯だがどうにか潜り込んでみようと立ち上がりかけた俺は、人の近づく気配
にここは動かない方が得策かと考え直した。
死んだ振り、つまり剥製の真似をするのはやはり無理がありすぎるだろうか…。

「…勝手に入っちゃったけど、あの子ったら電話にも出ないなんてどうしたのかしら。まさか
 まだ寝てるとか…?」
この声は三橋のお母さんじゃないか!
俺はもう開き直ってできるだけ置き物に見えるようなポーズで動きを止めた。
寝室の入口からおばさんがひょいと顔を見せる。
「……えっ?」
玄関のドアがもう一度開く音がした。
今度は三橋の匂いだ。
狼狽したのか何か物が落ちるような音が響いた。
大変だ!とか知らない人のクツがある!とか騒いでいるけど、今さら遅いよお前…。