三橋「阿部くんの ばかあ!」

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522碧い鎖 ◆r2YHExa9lY
ホラー注意
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1217342820/268

西広は手洗いに入ることなくどんどん階段を上り、屋上に出た。
フェンス越しに地面を見下ろし、思案する。
ダメだ、こんなとこから落ちたら見てしまった人も含めて多大な迷惑をかける。

目の前でなすすべもなく人が倒れていく。
血を吐いた沖は、死んでしまうのではないかと思った。

お前が死ねばいい

突きつけられた言葉が頭から離れない。
眠り続ける花井や泉の衰弱、阿部と三橋に降りかかる沖以上の苦痛の可能性、どれにも震えが来る。
どうせ殺されるなら早くても遅くても、と考えてみるが、根田宮のために死んでやることになるのが腹立たしい。
嫌な人間に対し、いなくなれと思うことは誰でも簡単にできる。
その願望を、傷害や殺人ではなく呪術で実現してしまえる力を持っていたあの男は、実行したまでだ。
自分が原因で間接的に害を被った者の怨み、という住職の言葉を反芻してみる。
根田宮があんな様子のうちは聞いても無駄だろうが、彼に死んで詫びねばならないほどの害を与えたとは思えない。

自殺の方法など、いざ考えるとどれも迷惑だらけでどうにもならなかった。
まだだ、今日一日、学校中を探しつくすまでは諦めない。


「に しひろ、くん」
「わっ、三橋?」
屋上の扉から、綿毛のような頭がぴょこんとのぞいた。