http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1216665155/556 「でもオレ…阿部君と一緒、が一番良いから…」
「嘘つくなよ」
「ウソじゃな…。あ、阿部君が…」
「お前の一番はオレじゃねェだろ!」
カッとして阿部は扉を強く拳で叩いた。
「!」
チョコ受けとっといて、付き合うことにしたんだったら、そんな希望を持たせるようなこと言うな、と思う。
「さっきの女と一緒に帰りゃいいだろ」
「お、おんな…? だ、れの、事…」
突然の音にビクつきながら、三橋がこわごわと視線を向けてくる。あくまでも惚けようとする三橋が許せなかった。
阿部は自分でも凶悪な顔になっているという自覚があったが、構わず半眼で睨め付けた。
「さっき来てただろ。髪の長い女」
「髪の長い…、太田さんの、こと…?」
思い当たったのか、三橋がほんのりと顔を染める。困ったように下がる眉は、隠していたかったことがバレたからか。
阿部はこみ上げてくる苦い物を無理に飲み下した。
三橋が付き合うと決めたのだから、自分があれこれ言う話ではない。今までどおり、ただのバッテリーでいさえすればいい。
「お前の事、待ってたんじゃねぇの? 別にオレの事待ってねーで、彼女と帰ってて良かったんだぜ」
「み、見てた、の?」
ぎくりと体を強ばらせる姿にやっぱり、と思う。
また目の奥が熱くなるのを感じて、阿部はさっさと家に帰ろうと、立ちつくす三橋を避けるようにして机に向かった。
流石に三橋の前で泣くのだけは避けたい。
三橋が用意してくれたのだろう、どことなく雑な感じのする鞄を持ち上げる。すると、コトリと小さな音がした。
机の上に落ちたものは、あの忌々しい金色の箱で。
まるでそれが毒ででもあるかのように不快げに睨みつけると、触らぬようにしながら鞄を取った。