阿部「オレのエクスカリバーはどーよ」

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194碧い鎖 ◆r2YHExa9lY
ホラー注意
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1216566618/506

【11】
幾人かがトイレに行くと言い出し、俺も俺もと連れ立ってぞろぞろ歩いていく。残ったのは浜田と沖、篠岡に、志賀と百枝だった。
「おっ、元気戻ったな。沖って1人部屋?梶山たちと俺んち泊まり来るか?」
浜田のあまりの気さくさに戸惑いつつ、沖は首を横に振った。
「ばあちゃんがちょっと具合悪くしてて…そういう時いつも親がばあちゃんとこで寝てるんすけど、今日は俺がついてよっかなって…」
「うっわ、優しーなお前」
「ち、違くて、いつもはそんなのほとんどしない…怖いからその、口実だし」
沖は焦ったそぶりで、みんなに言わないで下さいよと言った。

外の手洗いは倉庫と隣接しており、入口は正面にはない。
用を足し終えた者から角を曲がって出てくる。阿部・栄口・梅原が最終組で、ともに手洗いを後にした。
倉庫前で待っていた者たちと連れ立って歩き出そうとする。遠くにベンチ付近の明かりが見え、辺りはもう真っ暗だった。
「あれ、栄口は?」
聞かれて振り返ると、すぐ後ろにいた栄口の姿が消えていた。
そして阿部と梅原が曲がったばかりの角から、動揺に引きつった声が聞こえた。

全員で駆け寄った。建物の陰に栄口が真っ白な顔で佇んでいる。
「足が、動かない。なんで」
他人事のように呟いた直後、がくりと膝を折る。
栄口の脳裏に田島の足を掴んでいた灰色の指が浮かび、背筋が凍えた。両手で足を叩きつけ目を凝らしたが、何もない。
「手貸してくれ、おぶってくから!」
背を向けてしゃがんだ梶山に栄口を乗せようと、皆が手を伸ばす。しかし60kgにも届かないはずの体が異様に重く、動かせない。
「な…う、わ、あぁっ」
覚えのある冷たい指が、後ろから栄口の首に巻きついた。
「栄口、どうした!?」
「さかえぐち、くんっ!」
やはり誰にも見えていない。歯がガチガチと鳴る。それでも振り返る。確かめなければ、どうしても!
「お前っ、誰だ!なんの、怨みが…!」
栄口は左後ろに赤く充血した目の男を見た。だが視線は合わなかった。化け物は栄口の肩越しに左側のただ一点だけを見ていた。