http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1215572303/262 エロなし
高校最後の地区大会が始まった日も確かこんな快晴だった。
夏の思い出といえばそのほとんどが野球に関係しているおれだけど、縁側で泣き虫ヤローと話
している今この時も、忘れられない出来事の一つになるような予感がした。
「…阿部さ、お前を探しているんじゃないか?」
どうしてそんなことを聞いたのかというと、三橋が手ブラだったからだ。
「阿部のところに荷物とかなんか置いてきたんじゃねえの?」
三橋は下がり気味の眉をさらに下げて困り顔になった。
「う…ん、阿部君追いかけてきたけど、隠れてたら駅の方に行った…」
「どうすんだ?このまま帰るのか」
何気なく聞いた一言だったが、それを決めるのは三橋にとって天と地ほどの違いがあるのはお
れにだってわかる。
「…阿部君の下宿に、戻る」
しばらく考えてから三橋はぽつりと言った。
「そうか。阿部にばっかり話させんなよ。言いたいことはきちんと言え、忘れそうならメモし
てから喋れよ」
「う、うん、わかった」
心を決めたらしい三橋と顔を見合わせて2人でにへらっと笑う。
おれは三橋の個人的なことはほとんど知らないし、性格だってまったく違うのにヘンなところ
で通じているのがおもしろい。
三橋が西浦にいたらよかったのに。
マニアの阿部すら知らなかったのは、三橋が高校時代野球してなかったからだろうけど、巡り
合わせってホント大事だよな。
またみんなで集まって野球して、三橋が元からいたみたいになじんだらいいなって思う。