ホラー注意
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1215485843/734 【3】
監督とマネージャーに余計な心配をかけるわけにはいかない。
自分達は男なんだからとこだわり、動揺を悟られないようそれぞれ練習に精を出した。
一旦夢中になってしまえば、気持ちの切り替えは早い。
少し遅れ気味で全員一緒にグラウンドに現れた時点で、監督の百枝は少し不審に思ったが、咎めるほどのものではなく、とくに声はかけなかった。
「やあ野球部諸君!今日も青春してるね!」
受け持ち学年の違う体育教師が、手を振ってやってくる。
夏大会初戦の桐青高戦終了と同時に練習場へ頻繁に現れるようになったこの男は、一方的に野球部を気に入っているらしい。
諸君とか青春とかいちいち言葉がウゼェんだよと不満げにしていた泉も、いい加減慣れたようで、形だけ脱帽して会釈している。
顧問の志賀がいれば彼をうまく引き取って処理してくれるのだが、あいにく今日は不在だった。
坊主頭を撫でられる者、サウスポー君だのセカンド君だのあだ名で呼ばれて背中を叩かれる者、好き放題の行動に死んだ目で苦笑いするしかない。
「こんにちは投手君。うーん、いつ見てもいい投手尻だねぇ!」
「ひゃふあ」
三橋は尻を揉みしだかれて硬直した。
帰り道、コンビニの前で輪になる。
「三橋、とにかく気にすんなよ。この変なアザのことはわかんねーけど、あの紙はたちの悪い嫌がらせだ」
「う、うん!オレ、気にし ない」
三橋は首をぶんぶん振った。いつものように菓子パンのカスを口の横につけ、それほど暗い顔はしていない。
「けど、恨み持ってる奴がいるってことだよな。三橋だけじゃなくて、俺らに」
「九つの生贄だっけ?あーなんかムカついてきた!」
藁人形に釘を打って体を痛ませる、傷つけるという呪いは誰でも知っている。
傷のできた原因としてそんな馬鹿げた手段しか思いつかず、腹が立つが、スコアボードのプリントのせいで1つはっきりしたことがあった。
三橋の机に紙を入れた「犯人」がいる。
体につけられた青い線のことも、この嫌がらせをした人物と繋がっているとしか思えない。
「一人、いるな」
「…うん」
自然と声が低くなる。全員一致で思い浮かべたのは、ある男のことだった。