http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1215186262/528 エロなし
確かに三橋は男にしては色が白いし、童顔で体格も華奢な方だ。
あとのことを考えるとやりすぎだったが、クリスマスパーティ用に軽い冗談のつもりで選んで
やったベビードールが妙に似合っていたっけな。
可愛いとは思ったけど、だからと言っておれが三橋に友達以上の感情を持つことはおそらくな
いだろう。
阿部だって化粧した三橋をタヌキ呼ばわりしたくらいだから、あれで悩殺されたんでもなさそ
うだ。
じゃあどうしてなのか、とおれは考える。
阿部は野球でずっと捕手をしていたからなのか、投手に対して並々ならぬ思い入れがあるのを
おれも含めたチームメイトたちは知っている。
だけどそんなの西浦の一員じゃなかった三橋にわかるはずもない。
阿部の理想のピッチャーらしい三橋に、強力な補正をかけて夢を見ているんじゃないかなんて、
意地の悪いことを想像してしまう。
鼻をかんで涙を拭いた三橋は、膝を抱えてその上に顎を載っけた。
おれが今思ったようなことを、三橋は何度も繰り返し自問したのかもしれない。
口元を引き結び、庭石の陰で雑草に混じって揺れているコスモスだけを見つめているような横
顔は、話しかけるのがためらわれるほど硬いものだった。
「…阿部君は、」
おれに言っているのかひとり言なのかわからないそれは、一際大きくなった蝉の声にかき消さ
れそうに弱々しかったが、しっかり耳に届いた。
「…一緒にいたら、苦しい。でも離れると、もっとつらい」