畠「おしおきだベェ」

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49fusianasan
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※すまん投下しそびれ

背中がヒュンヒュン冷える感覚。首筋にまで到達して、口の中を干上がらせる感覚。
足がもつれて、呼吸は乱れるばかりで、必死に背筋を這い上がるその悪寒を振り払おうと走るのに、まったく速く走れない。
中距離走なら田島君よりもいいタイムを出せるオレの両脚は、今はてんで役立たずだった。
少しでも速度を弛めればたちまち膝が笑って立ち竦んでしまうだろう。
「う、あ、どこに…っ」
どこに逃げよう。人目につかない場所、と言われて最初に思いつくのは部室。だけど鍵が無い。校舎裏は配管工事で業者が入ってる、中庭は昼休み人多いし、ど、どっかの専科教室の準備室…。うまく回らない頭で必死に考えながら闇雲に階段を駆け上がる。
阿部君はもともとオレのことよく見つめる人だったけど、オレが「穴宣言」してからは見つめるなんて穏やかなアレじゃなくて、こう、凝視する みたいな。時折、切羽詰った目をするようになった。
体感瞑想の時に繋いだ手に指が絡んできたり、トイレでばったり出くわしたら必ず隣同士肩を押し付けるみたいにして用を足したり、部活が終わった後は着替えの遅いオレをじっと眺めてたり。
でも、何か仕掛けてくるってわけでも無くて、オレは困ってしまっていた。
そんな風に見られると誤解と言うか、期待と言うか。うん、誤解、では無い な。たぶん。
オレの期待したとおり、だと思う。阿部君の目線からはなんとなく、オレが和さんを見るのと同じものがムワーって漂ってる気がする、から。今なら、そう確信できる。
阿部君はオレと同じだ。違うのは穴か棒かってことだけだ。
きっと、和さんとああいうことにならなければ、どちらからともなく割れ鍋に綴じ蓋だった。
オレが視線に耐えられなくなって誘ったかもしれないし、阿部君が見るだけに飽きて何かしてきたかもしれない。
もしも、の域から出ない想像だけど。田島君がオレの背中に悪戯の張り紙を貼らなければ、そう遠くない未来、西浦にガチホモバッテリーが誕生してたんでは。そう思う。
ある意味、入学直後よりも薄氷の上を歩くような酷い緊張状態だったオレと阿部君の距離に皹が入ったのは田島君がうっかり漏らしてしまったオレの「脱・処女」情報だった。
剃り上げた頭皮にまで鳥肌を立てて「相手は誰だまさかオレらの誰かなんじゃ(ry」叫ぶ花井君、沖君と二人して瞬間移動かと目を疑う光の速さでオレから飛び退く水谷君誰だ…誰がやったんだ…ざわ…ざわ…と疑心暗鬼にお互いを見やって距離を取り合うみんな。
泉君に脇腹をぎゅうぎゅう抓られて涙目の田島君。一触即発だったけど、泉君が「学外の奴だよ」とアッサリ疑惑を払拭してくれたので、前みたいな部内分裂大惨事にはいたらなかった。
「決まった相手、できた!から、もう、心配ない よー」
それまでまるで女の子みたいに薄いロッカーを盾にしてコソコソ着替えてた花井君たちは、不安げな顔をしつつもようやく屈託を無くしてくれたのか、芋荒い状態の狭い部室で気を使うことは無くなった。
いくら三星で対人氷河期時代を渡りきったと言えど、やっぱり巣となる場所は居心地いいにこしたこと無い。みんなとの距離感がやっと元通りに縮まって、オレはちょっと泣いてしまった。
ストレスで胃腸を痛めつけられても態度を変えないでいてくれた栄口君が「よかったなー、三橋」と言ってくれたのを皮切りに、
それから他の面々にも「病気には気をつけろ」「試合前には自重してくれよ」「フィストファックだけは丁重にお断りするんだぞ」と心温まる励ましを貰って。
オレ的には大団円だったのだけど。

「お前、そいつとしかヤんねーの」