>>706 ____________
宛名:花井
件名:三橋、迂闊すぎだろ!
本文: 水谷殉職。キティがそっち行った。
-END-
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「手遅れか」
「…うあ、ど、どうし よ」
火照って血色の良かった三橋の顔が、見る見るうちに蒼褪める。
え。おい。まさかちっとも考えてなかったのか対策。浮かれるにも程があるだろ、一昨日の阿部抜き緊急ミーティングで組んだフォーメーションが早速役に立っちゃうのかよ、面倒くせえぇぇぇ…!!!!
嬉しさ余って野球部全員に一斉送信で68点の写メを送ってしまったらしい三橋は、まさに天国から地獄と言った具合に頭を抱えている。不穏を察してかこっそり逃げ腰の浜田を拿捕。
隣でオレの携帯を覗き込んでいる田島は「キティじゃなくてさー。やっぱキ印のがいいんじゃね?」と的外れな指摘をして笑ってる。笑い事じゃねえよ。
「デルタフォーメーション決行だ」
ビビッてんじゃねえよ、それでも年上か浜田。露骨に目を輝かせるな田島。
申し訳無さそうに肩を窄ませている三橋を引き寄せて四人で円陣を組む。周りのクラスメイトが背後でドン引いた視線を送ってくるのがわかる。が、構ってられない。花井がわざわざ接近を知らせてくると言うことは、向こうは余程の興奮状態にあると見て間違いない。
犠牲になった水谷を犬死にさせないためにも、オレたちはこのミッションを恙無くコンプリートしなければならない!もうあの練習試合のような衆人環視で赤っ恥!の二の舞はゴメンだ!!
ヤケクソ気味にテンションを上げる。
「まず浜田、お前が渡り廊下まで足止めに行け。並行して田島は撹乱しつつ囮になって作戦地点まで誘導。そこからはオレが説得と交渉にあたる。三橋はこの隙に教室を出てできる限り人目につかない場所まで逃げろ」
遠くまで逃げ切れ、とは言わない。無理だから。
言葉にしなくとも察しがついたのか、三橋はさっきとは打って変わってハハハと乾涸びた笑みに口元を引き攣らせてガックリ項垂れた。か細く「ごめん ね。みんな…」と漏れた涙声は頭をワシワシ掻き撫でてやることで封じる。
チームは一蓮托生だ。気にすんな。
「以上。質問は無いな、…散開!」
三橋がわたくたと教室を出て行くのを見届けて、オレたちもまたそれぞれの任務を果たすべく教室を飛び出した。
__________ここまで