三橋「い、磯野カツオ君!」

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283春 花見て笑う
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1211073909/817,820,826
http://www8.uploader.jp/dl/mihashi/mihashi_uljp01481.txt.html(前回まで)
虫描写・・・は暫く先になります

捜査は思うように進まなかった。今迄に分っていた事を繰り返すばかりだった。
分った事は今まで亡くなった被害者は中等部高等部とに跨っているが、この三星学園の男子生徒である事。
5人は共に同じグループ内にいてあまり素行の良い生徒では無かった事。
ただ誰かから特別恨みを買うようなワルでは無かったと皆口を揃えていっている事。
それぞれの担任の教諭から教えて貰って、同じグループの生徒の何人かから話を聞いたがこれと言って収穫は無かった。
グループのメンバーを書き出してメモを取る。全部で20人程。その中でよく一緒にいるのは10人程だと言う事だ。
これは彼らに恨みを持った特定人物の犯行なのか? それとも人以外のものが原因?
食べる物が悪かったり特定の疾患であればもっと被害が広範囲に渡るだろう。
それに、もし、そうであれば警察は駆り出されない。ただ、そうなってくると死因があまりにも奇怪だ。
刑事は後輩に目を向けるとしきりに唸っていた。
似合いもしない眉間の皴をシャーペンのノック部分でカチカチ音を発てて突付きながら。
後輩の苦悩はよく分る、刑事は思った。今の時点で分らない事が多すぎる。5人も死んでいるのに。
「もう、当たれるだけは当たったか?」俺は後輩の肩を叩いて声をかけた。
あと何人か残っているのは分っていたがこの沈んだ空気を払拭する為にも声をかけずにいられなかった。
「あ・・すいません、えっと、後2人・・・ここに呼ばれてくるのが2人、その後は理事長の所に」
学校側から借りた生徒指導室のドアが不意に開いた。
其処には2人の男子生徒が酷く怯えた様子で立ちすくんでいた。
「あ、1人ずつでお願いし・・」後輩刑事の言葉の終えない内に震えた声が遮った。
「た 助けて く 下さい」
刑事2人は制服を着崩して如何にも“ぐれています”と言った風貌の2人を招きいれた。
この怯え方は尋常じゃない。何が彼らを怯えさせているのか。
本署だったらお茶でも飲ませて気持ちを落ち着かせるんだがな、
頭を掻きながら刑事は2人の男子生徒の対面に座った。
「本当なら1人ずつなんだけど、良いっすよね、先輩」後輩刑事がおずおずと刑事の隣に座りながら言った。
「うん、構わないよ 話し易いところからでいい 話して貰えるかな」
青い顔をした生徒2人は暫く下を向いていたが、毛先の色を少し抜いた方が口を開いた。
「俺達 の 呪い殺される 絶対、アイツだ 他に考えらんねえ 刑事さん 俺達死にたくねえ」
284春 花見て笑う:2008/06/15(日) 05:20:17
>>283

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グラウンド脇の木の陰に彼らはいる。少ない時で5人多い時だと10人位。
申し合わせた様に練習の終わる頃に集まってくる。そして、荷物を持って帰ろうとする三橋に手招きをする。
唇を噛み下を向いて三橋は彼らの集団へと向かう。野球部は誰も気が付かない。
唯一三橋を気にかけている叶も居残り練習でグラウンドにいるから三橋には目が行かない。
連れて行かれる先は、体育用具の倉庫であったり、着替えの為のロッカー室であったり、高等科の空き教室なんて時もあった。
こんなのは嫌だし、何度も逃げ出して誰かに助けを求めたかった。けれど教室や野球部に相談できる人は居ない。
ピッチャー独占の後ろめたさから、叶ともまともに喋らなくなって随分になる。せいぜい挨拶をする位だ。
それじゃあ、先生やお祖父さんに話を?何度もそう思った。
けれど、その度に彼らに耳打ちされる。
「お前、こんな事ばれたらマウンドに立つどころか一生野球出来ないぜ」
マウンドに立てなくなるなんて絶対に嫌だ。野球が出来なくなるなんて絶対に嫌だ。
だからばれちゃいけない。絶対に誰にも悟られてはいけない。
これから起こることを思うと、足先から、指先から体が冷たくなっていく。
こわばった腕を引っ張られてなすがままに移動する。どこかの部室に連れ込まれた。
今日の人数は7人、どれ位時間がかかるだろう。三橋は鞄を胸に抱きしめて目をつぶった。
「なあ、いつまでも突っ立っているんじゃねえよ 服破かれたくなきゃあ さっさと脱げよ」
一番体の大きいリーダー格が声を荒げる。三橋は体全体の震えが止らなくなった。
「ぬ ぬぐ から 破くのは」鞄を床に置く。力加減がコントロール出来なくて落とした様に大きな音を立てた。
遠くから笑い声が漏れ聞こえて来る。薄暗い部屋の中、窓が白く感じる。
「それじゃあ、早くしろよ こっちは待ってるんだよ」
震えから上手くズボンのボタンが外れない。どうしよう、余計に酷い事をされると焦れば焦るほど手元が狂う。
そうこうしている内に、ふいに両手首を後ろから掴まれる。痛みよりも恐怖が走る。
反射的に振りほどこうとするも相手の方が体も力も数段上でもがく事すら叶わない。腕をねじ上げられる。
「あ ああ いやだぁ」
「嫌だじゃねえよ もたつくのもいい加減にしろ、手伝ってやれ」
その言葉をきっかけにして幾つもの手が体に伸びてくる。
口を手で押さえられ、様々な熱を帯びた指が体のあちこちを這い回る。
ふくらはぎや腿に触れる手が生々しく感じるのはズボンが剥ぎ取られた所為だろう。三橋は目を閉じて抵抗するのを止めた。