三橋「触ると気持ちいいっていうのは、知ってた」

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765冷たい部屋
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1211569793/842
※ホラー注意、軟体動物注意

ズズ……ズズ……という音の合間になんとも形容し難い粘着質の音が混じる。
思わず振り向いたオレは暗闇の中に蠢く何かを見てしまった。
あの男が追いかけてきたのだと思ったオレは絶望で目の前が暗くなった。
手足が震えて全身の力が抜ける。
逃げたいのに体が思うように動かない。
今すぐ立ち上がって走れたらオレは助かるのにどうしてなんだ…!
だけどなぜか男はゆっくりとしか進んでこない。
ぼんやりと人の形が見えてきたが、オレの目がどうかしてしまったのか背が縮んでいってい
るような気がする。
オレは男が倒れたのかと思ったがそうではなかった。
男の体は奇妙な形に歪みながらオレの方に向かってくる。
逃げなければならないと頭ではわかっているのに男の姿から目を離すことができない。
オレの意識と体はまるで別物みたいだった。
無意識に足が絨毯を蹴ってずりずりと後ろに下がる。
手に触れる感触で気付いたが、ここは最初に通されたリビングだった。
薄明るい室内が時折雷光で白く光る。
窓の外の土砂降りと雷鳴にうっかり気を取られたオレは男から目を離してしまった。
はだしの足先に何か冷たくねっとりしたものが触れオレは思わず悲鳴を上げた。
…恐ろしいことに男の体はすでに人間の形を成していなかった。
黒っぽくぬめぬめとした、巨大なナメクジのような得体の知れない生物がオレのすぐ側で蠢
いている。