http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1212053280/341 「また、海、だ」
「さっきとは反対側、だと思うけどな」
推測というよりもそれはオレの希望に近かった。
あれだけの距離を歩いて森を抜けたのに出た先がたいして離れてもいない砂浜だったとしたら泣けてくる。
方向感覚に自信があるかないかと言われれば正直どちらとも言い難い。
普通の街中ならともかくこんな自然のど真ん中を闇雲に歩いたのは生まれてはじめてだった。
「もうすぐ暗くなりそうだな。三橋、今のうちにどっか休めそうなとこ探すぞ」
「う、うん」
頷く三橋を見てから、それまでずっと手を繋ぎっぱなしだったことを今さら思い出した。
じゃあお前あっちな、と向かって右側を指差してオレは左側へと向かう。
砂浜は障害物になるものがなにもなかったから多少距離が離れても心配はないだろうと思った。
「なんかあったらでかい声出せよ……って出せるか?」
喉をあたりを押さえてみる。
オレでさえも今の状態では普段通りの大声が出せるか怪しいところだ。
だというのにさっきまでまともに喉から声を出せなかった三橋にそれができるはずがない。
「え、えっと」
大丈夫、と言えばそれはまず間違いなく嘘になるだろう。
三橋は視線を彷徨わせ、しばらく迷ったような素振りを見せたあと首を振った。
「やっぱ一緒にいくか……」
「ご、ごめん、ね」
枯れた声で心細そうに三橋が謝り、オレ達二人の手がもう一度繋がる。
「いいよ別に。とりあえずあっち、様子見てみよう」