田島「俺の言うこと聞けねーんだ?」

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290西浦コンビニに強盗が入った
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1210168080/729

しばらくは二人とも警官が去っていった方向を見ているだけだったけど、急に垂れ目がバットから手を離したもんだからでかい音が周囲に響き渡った。
びびって思わず肩をすくめたが三橋の様子は気になるのでそのまま影からさらに身を乗り出して二人の様子を覗き込む。
声はよく聞こえないが垂れ目が三橋の名前を呼ぶのは聞こえたような聞こえないような。
あんなことがあった直後なんだから疲れているんだろうに雰囲気からして何事かで揉めているようだった。
というかいまいちオレにはこの二人の関係がわからない。
ただの店員同士にしてはあれだけ裏で怪しげなことをやってたわけだし。
さらにぐぐっと身を乗り出そうとしたところで垂れ目と目があった。
なにかデジャブを感じるような光景だが、退散にはちょっと早すぎじゃね?
できればもうちょっと覗いていたいんですけど、というオレの願いも空しく、やはり垂れ目の圧力に負ける。
すごすごと引き下がろうとしたオレの足元を猫がすり抜けていった。
その猫の姿を追うように背後の二人を振り返ると、バットを放置したまんま垂れ目が三橋の肩を押して屋内に入っていくのが見えた。
「あ……」
タイミング悪く猫の目の前で扉は音を立てて閉まった。
にゃーにゃーと鳴き声をあげながら猫はしばらく扉をかりかりしていたが、すぐに諦めてそのままどこかへと走っていってしまう。
うーんオレも少しは粘るべきだったのだろうか。
どちらにしても今日はもう時間はない。
ついつい騒ぎに足を止めてしまったけどホントは今日はあんまり時間がなくて、コンビニに寄る時間もあるかないかぐらいだったんだった。
……強盗騒ぎなんておきちゃったけど、コンビニはまたすぐに営業再開してくれるんだろうか?

「あ、阿部くん、警察の人まだ話あるって……」
「あとにしろ、あとに」
人質にされている間はあれだけ青ざめてぶるぶるしていた癖に、解放されてしばらく経ったせいか三橋はもうぴんぴんしていた。
それでもオレが強引に肩を押せば三橋がさっきとはまた違う怯えた表情を覗かせる。
三橋とオレが出会ってから一番変わった部分といえば、この空気だ。
二人きりじゃない時はまずこんな風になることはない。
けどオレにもわからないくらい突然、スイッチが切り替わる時がある。
三橋はそれをいつも敏感に感じ取って、すぐに表情に出す。
「で、でも……」
ほんとはそんなの、どうでもいいんだろう。