阿部「あれは最高のボール」

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716四畳半のウサギ 3
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1209786566/615
遠隔地の俺まったく揺れずKYでごめん   ※エロなし注意

(一行改行)
(…終わった……)
最後の科目の問題と解答を見直し終えて、俺はフーッと息を吐いた。
慎重にやったので時間はもうそれほど残っていない。
5分ほどで試験官が終了を告げ、室内の緊張した空気が一気に緩んだ。
今後の流れが簡単に説明されて、「お疲れさまでした」と締めの言葉で受験生たちがわら
わらと動き始めた。
解放感と気怠さが入り混じって何となく足元がふわふわしているような感覚に襲われる。
試験会場から駅に直行して今日の予定はすっ飛ばすことにした。
なぜって、朝の三橋の様子があまりにも不審なものだったからだ。
予備校は明日でも構わない。
だけど、俺のことを待っている家族には電話をしておかなければ。
『…タカってば、ご馳走つくって待ってたのにひどいんじゃない?』
「…本当に、ごめん…」
『いいわよもう。今度からタカの分はごはんとお新香だけにするから』
「ええーっ、それはちょっと…」
電話なのに俺は頭を下げまくって謝った。
まだ怒りが収まらないらしい母親に近々絶対帰るからと約束して、ようやく受話器を置く。
電車に乗ろうと改札に行きかけたが、思い直してまた電話のところに戻った。
「…もしもし、阿部です。あ、はい、終わりました……あの、三橋はもう帰りましたか?
 …あ、そうですか、…俺もこれから帰ります。……え?ああ、ちょっと予定が変わりま
 して……はい、どうも」
大家さんからほんの少し前に三橋が帰ってきたと教えてもらい、俺の心配は杞憂だったか
と胸をなで下ろした。