ルリ「レンレンきっちりしなさいよ!」

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73あおき(めばえ)
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1197636232/552,948

「ほんとに?」
阿部は隣の三橋に首を回してなぁ?と同意を求める。三橋はやたらときまじめな顔を立てに振った。
「ってことで、まぁ、迷惑かけんな」
そう言って笑う阿部の気配に三橋も頬をゆるめた。
「まぁお前らがそれでいいならいいけどよ……」
ぶつくさと愚痴っぽい口調になってしまい、うーんおれも器が小さいなと思う。
「泉はさっきなんて言ってた?」
この問いには三橋が答えた。「なんか、今まで引っかかってたトゲが抜けたみたいだ、これからもよろしくって、仲良くしてくれると嬉しい、って言ってた」
苦笑いというのは三橋としてはめずらしい表情だ。
「ふーん、阿部って泉には前になんか言われたりとかしてたの?」
「おれは別になんも。でもおれもまぁ、泉と同じでさ、一区切りついたって感じはしたから」
阿部は肩をすくめておれを見た。
「お前は怒るかもしんねえけど、やっぱ重荷が下りたって感じはする」
おれが怒るってなんだよと思ったけど、確かにおれにも泉と阿部の表現はストンと腑に落ちて、だからやっばり腹が立った。
というのはおれはどっちかというと三橋の味方だから、阿部の額にスモウレスラー的つっぱりを食らわせてやった。
「ぅがっ!」うめき声を上げて阿部は後ろによろめいた。ざまーみろ!と低レベルな勝利にひたる余韻もなく、おれは後ろ頭に衝撃を食らって阿部の上に前のめる。
二人して地面に絡まり転倒し、ハッ!!っと背後を振り返ると三橋が拳をブルブル震わせて仁王立ちしていた。
それで両目からダラダラ水を流していた。すぐに鼻穴からも似たようなもんが垂れてきて、顎で合流して三橋滝が地面になだれ落ちる。
「三橋」つぶやいたおれをドッカーン!と押しのけて、阿部が三橋の元に走り寄っていく。
「なに泣いてんだよ、テメェッ!!」おこらんといて、三橋、おこらんといて。おれはささやき えいしょう いのり ねんじた。
ガッと三橋の肩を後ろから抱き込みサブミッションを決め、バタバタとペンギンのように腕を振るのを問答無用で引きずっていった。
そのまま二人はしばらく体育館の壁に向かってささやきあっていた。
おれはそれをボーッと見つめながら考えていた。
さっき泉の言葉を聞いて初めて思いついたことだけど、ひょっとしてこいつらが別れること考えたのって、べついきなりってわけじゃなかったんだろうか。
ずっと二人っきりでため込んできたんだとしたら、そりゃしんどかったのかもしんない。ああいう目で見られてることを意識してるってのは楽しいことじゃないだろう。
でもなんだかんだと続かせてきた関係の中で、二人はいったいなにをしたかったんだろうか。
どっちにしろ、もうおれからこの話題は出せないなと思う。三橋が早く泣かなくなるといいなぁ、でもあいつ鳥頭でいろいろ忘れっぽいから、気にしなくてもいいのか。
でも嫌な目にあったことは10年後でもしっかり覚えているタイプな気がする。犬に噛まれたとか。
「だーかーら、もう泣かねっつったろ?」
阿部が三橋の手を引いて戻ってくるのをながめつつ、三橋はまだまだ阿部に甘えたいんだろうなぁとおれは思った。さて、どっちが待たせて、どっちが待ってるんだろうか。